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1997-04-22 第140回国会 参議院 商工委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月二十二日(火曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  四月二十一日     辞任         補欠選任      木庭健太郎君     益田 洋介君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木宮 和彦君     理 事                 沓掛 哲男君                 吉村剛太郎君                 片上 公人君                 前川 忠夫君     委 員                 大木  浩君                 倉田 寛之君                 斎藤 文夫君                 中曽根弘文君                 林  芳正君                 平田 耕一君                 加藤 修一君                 平田 健二君                 益田 洋介君                 梶原 敬義君                 竹村 泰子君                 藁科 滿治君                 山下 芳生君    国務大臣        通商産業大臣   佐藤 信二君    政府委員        経済企画庁総合        計画局長     坂本 導聰君        通商産業大臣官        房長       広瀬 勝貞君        通商産業大臣官        房審議官     藤島 安之君        通商産業省生活        産業局長     村田 成二君        工業技術院長   佐藤 壮郎君        資源エネルギー        庁長官      江崎  格君        資源エネルギー        庁石炭部長    中村 利雄君        中小企業庁長官  石黒 正大君        中小企業庁計画        部長       田島 秀雄君    事務局側        常任委員会専門          員        里田 武臣君    説明員        大蔵大臣官房企        画官       山崎 康史君        大蔵省証券局証        券市場課長    柏木 茂雄君        労働省労働基準        局賃金時間部労        働時間課長    松井 一實君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○中小企業創造的事業活動促進に関する臨時  措置法の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付) ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (派遣委員の報告)     —————————————
  2. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十一日、木庭健太郎君が委員を辞任され、その補欠として益田洋介君が選任されました。     —————————————
  3. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) 中小企業創造的事業活動促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 おはようございます。佐藤通産大臣にお出ましいただいておりますが、懸案の労働省との絡みのものがありますので、そちらの方が簡単なので、先にそちらをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  本年四月一日から、週四十時間労働制小規模企業特例措置を除き全面的に実施されました。これについて、去る二月二十日の商工委員会質問いたしました。特に月給制の方々の給料取り扱いについてお尋ねいたしました。  労働省来ておられますね。  労働省からは、日本商工会議所等からの質問に対し、懇切に指導している、時間当たり賃金が下がらないようにすること、生産性の上げられない企業では週四十時間所定労働時間とし、場合によって四時間超勤をして対応させる等の説明がございました。この場合は、一カ月の給料の額は下がるが超勤でカバーする、超勤割り増し分だけ、すなわち二・三%上がることになると伺っていました。そのほかドイツでの例、ボーナスを組み入れるというような例、それから生産性が上がる場合の例等をお聞きしていますが、四月一日に実施された状況はどうなっているでしょうか。
  5. 松井一實

    説明員松井一實君) お答えいたします。  ただいま先生からありましたように、労働省としては、日本商工会議所などの中小企業団体からの問い合わせに対しまして、特に週四十時間労働制への移行に伴う月給者取り扱いに関しまして、五十六年当時、商業などの特例措置対象事業所、そこの所定労働時間を短縮する際に発した通達の考え方を踏まえまして、週四十時間労働制への移行に伴う月給者に対する賃金取り扱い等については、基本的には労使話し合いで解決すべきものであるけれども、週四十時間労働制への移行に伴う賃金改定に当たっては、時間当たり賃金を減少しないなどの労働時間の移行との関係から見て合理性があれば基準法上の適用上問題とはならない旨を回答いたしました。それを踏まえて、今先生が言われましたような啓蒙啓発文書を四団体が出したという状況がございます。  これを踏まえまして、四団体各傘下の会員企業に、啓蒙文書を前提とした指導、すなわち週四十時間労働制への移行を不可欠とした上で、これに伴う賃金取り扱いなど、今いろいろ指導がなされておるというふうに聞いております。
  6. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 そんな生ぬるい話を言っているんじゃないんですよ。実施したんですから、実施状況はどうなのかを聞いているんですよ。私の聞く限り、大企業はもう既に四十時間になっていますから今回は余りかかわりはないんですけれども、中小企業のほとんどが月給据え置きですよ。したがって、生産性は横ばいですから、生産性の上がるところもあるかもしれませんが、ほとんどありませんから、超勤分、すなわち一〇%強人件費が上昇すると思いますが、これについてあなたはどう思いますか。  中小企業でいわゆる給料月給制の人、据え置きでなかった、逆にあなた方が言っていた一番目のように、まず差し当たって一時間当たりは同じにして下げた企業一つでもありますか、あったら教えてください。
  7. 松井一實

    説明員松井一實君) お答えいたします。  この四月一日から四十時間労働制適用されることになりました事業所数、数にいたしまして約二百十五万事業所に上ります。したがいまして、そういった事業所での週四十時間労働制移行する対処方法はさまざまであろうかと思われます。  現段階で、先生指摘のように個々のどなたかということは、施行されて間もないということもあって十分検証しておりません。しかしながら、御指摘のように、基本給を下げることなく一週間について四十時間を超えて労働させるといったような場合、その四十時間を超える部分基準法上いわゆる割り増し賃金支払い対象になりますので、その部分人件費が上昇するといったような事態は生ずると考えられます。
  8. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 そう簡単に上がりますじゃ困るんですよ。今みんな死ぬか生きるかの状況なんですよ。  そこでお尋ねしたいんですが、これは中小企業庁長官も答えていただきたいんですけれども、我が国経済活性化のためにも、また産業空洞化対策としても我が国高コスト構造是正は最も緊急かつ重要な課題で、国を挙げて取り組まなければならないと思っています。そうでなかったら我が国経済はがたがたになりますよ。橋本内閣抜本改革の成否をも握る私はキー、かぎであるというふうに思いますが、人件費の増大を招く今回の措置労働省中小企業庁はどのように考えているのか。何か対策はあるんでしょうか。  ただ、そのままどんどん人件費が上がったんでは、今高コスト構造を下げるためのポイントとしてそういうものをみんな下げているのに、労賃だけがそうして上がっていったんじゃやっていけないんですけれども、これに対する対策等をどのようにお考えか、労働省中小企業庁長官にお尋ねします。
  9. 松井一實

    説明員松井一實君) お答えいたします。  まず、我が国経済活性化ということにつきましては、極めて重要な課題であるということは先生指摘のとおりであろうかと思います。ただ、その際、確かに高コスト構造是正といった視点とともに、労働行政といたしましては、ゆとりある勤労者生活の実現、いわゆる調和のとれた国民経済発展という視点も欠かせないというふうに考えておりまして、この四月からの週四十時間労働制はそういった視点も加味して実施されることになったというふうに考えております。  この週四十時間労働制実施に伴う特に賃金問題、これにつきましては、何といっても第一義的には労使自治にゆだねられた性格の問題であるというふうに考えておりまして、まずもって労使間での十分な話し合い、これを行っていただいて解決していただきたいというふうに考えております。  ただ、その際において労働省としては、この週四十時間労働制定着を確実に図るために二年間の指導期間というものがこの時短促進法で設けられたというふうに考えておりまして、その指導期間の一環といたしまして、特に中小企業が行う省力化投資あるいは労働時間制度改善といった取り組みに対しまして援助を行うということ、そのための中小企業労働時間制度改善助成金制度、そういったものを創設したところでございますので、こういった助成措置も活用しながらその円滑な定着に努めてまいりたいというふうに考えております。
  10. 石黒正大

    政府委員石黒正大君) お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、高コスト構造是正という問題は、中小企業も含めまして我が国経済全体にとって喫緊の課題でございまして、そういう視点に立ちまして、通産大臣を先頭にいたしまして経済構造改革に取り組んでいることは御案内のとおりでございますが、高コスト構造是正のためにはいろんな対処といいますか、いろんな観点について対応を講じていく必要があると思います。いろいろありますが、先生指摘のように、人件費をどうするかという問題も重要な視点だと思っています。  翻って、中小企業実態にかんがみますると、雇用維持あるいは人件費の問題あるいは時短の問題、それぞれ大きな課題でございますけれども、このあたりの重要課題をどうやって現実のものとしてこなしていくかというのが今横たわっている物すごく大きな問題だったわけでございます。  前回の委員会の際にも御答弁申し上げましたけれども、中小企業実態にかんがみて、この時短問題についてはそういう厳しい状況の中でいかに軟着陸をさせていくかという観点から、いろいろ労働省さんにも乗り出していただきまして、措置をして今回法案の成立を見て、その実施を今やっているところでございます。この実施状況につきまして、先ほど御議論ございましたけれども、今渦中であろうかというふうにも考えております。  いずれにしても、なかなか難しい問題でございますけれども、賃金の問題は労使で話し合うというのも一つの大きな原則でございますので、それも踏まえながら、私どもは中小企業の全体がどうなっているかというのを常にウォッチしてまいりたいというふうに思っています。
  11. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 今、橋本内閣の最重要課題日本再建のための抜本改革で、総理みずからが火の玉になり、国民痛みを我慢してもらって実行しょうとしているんですよ。そして、賃金というものは労使だと言うけれども、そのための一番基本になる労働時間を国で、国というか政府、みんなで短くしろ、四十時間にしろというふうに決めて、一番大きな環境をそういうふうに決めて、あとはおまえたちでやれと言うんじゃ、これは政治じゃないんですよ。  それから、今二年間とおっしゃったけれども、この四月一日にこうなったんですから、みんなそこで労働時間は四十時間にしているんですよ。私の会社だけは四十四時間だというのは聞いたことありません。みんな四十時間にして、そして賃金も前のままなんですよ。それは社長さんが今いわゆる労使関係で四十時間になったから一割カットだとそんなことを言える状況ではないので、これから二年間と言っているけれども、二年間というのは、罰則の適用を二年間いろいろ見合わせるというような意味であって、今申し上げたような賃金それから労働時間というものは二年間の間に徐々にやるというものじゃなくて、四月一日にぴしゃりと決まったんですよ。ですから、そのことの重要性というのをひとつ皆様にぜひ理解していただきたいというふうに思いますので、今後ともひとつよろしくお願いいたします。  そこで、提案されている法案についてこれから質問するんですが、その前段として、この法案重要性我が国経済の面から少し見てみたいと思います。  ここ数年間において、我が国経済と深く関係している要因としては、一つ産業活動二つ財政政策三つ資本市場金融情勢といったもの、この三つの分野だと思います。これらに着目しながら、我が国経済の推移をさっと申し上げてみたいと思います。  九二年の経済成長率は〇・四%、九三年は〇・五%、九四年は〇・七%とバブルの後遺症で低成長となっていますが、九五年には二・四%、九六年には三・六%とかなり高い成長となっております。その牽引車となったのは設備投資で、六%から七%近くの勢いで伸びております。  経済全体が低調な時期に設備投資が大きくふえた理由ですが、それにはその前の不況時、すなわち九二、九三、九四年における企業行動を見る必要があると思います。  その企業行動の特徴としては、一つ余り失業者を出さない。完全失業率は三・五%ですが、それは我が国にとっては非常に高いもので、過去と比べれば高いんですけれども、欧米先進国と比較すれば低い方ですね。それから二番目、企業倒産も少ない。メジャーな産業製造業では倒産は余りなかったと思いますが、そういう状況の中で、日本企業は次の三つのことのために努力してきたというふうに思います。  第一番目は、減収の中での増収を図ったことであります。そのためリストラを行っておりますが、一番効果のあったのは製品輸入で、我が国輸入額の六〇%がこの製品輸入でありました。製品輸入国内でも海外でもつくれるものを輸入するわけですから、不況となれば安い輸入品コスト引き下げ利益回復を図るわけです。  二番目としては、規制緩和効果としての設備投資を行いました。流通業界では、スーパーやディスカウントショップ大型店舗規制緩和国道沿い店舗拡大を展開し、設備投資を行ってきております。  三番目は、技術革新による投資でございまして、ハンディーホンや携帯電話といった情報通信産業設備投資規模は自動車や鉄鋼をはるかに上回って、現在では四兆円規模にも達しております。  以上の結果がこの九五年、九六年の設備投資の高い成長となり、経済成長牽引車になったのだと思います。  以上のことを踏まえて、次に経済企画庁にお尋ねいたします。  米国では、一九七〇年代、八〇年代の不況時には企業営業譲渡や買収、合併、倒産が頻繁に行われ、レイオフや首切りの激しい反面、一方ではベンチャー等の新しい産業の台頭が非常に活発でございました。日本は、従来の体制でできるだけ身を低く構えじっと我慢したことが、実は不況を長引かせ、その後の回復を緩やかにしているんではないかと思います。  そこで、今までの日本企業の経営のやり方、すなわち不況時でも耐え抜き、雇用面でも頑張って、ほとんどの企業がとにかく生き残ってきたという粘り強さが競争力を支えた反面、それには新しい産業への転換をおくれさせてしまうというマイナス面も伴ったと思います。  今後の我が国産業政策として、失業率の数字にこだわることなく、つぶれる企業にかわって新しい産業をどんどん育成するというアメリカ流を取り入れることがいいのか、あるいは従来型で推移するのか、いずれが適しているのか、この考え方について経済政策上どういうふうにお考えになりますか。
  12. 坂本導聰

    政府委員坂本導聰君) お答えいたします。  委員指摘の、我が国経済の将来展望というものを切り開いてまいりまして中長期的な発展確保していくというためには、委員指摘経済構造改革が不可欠でございまして、政府としてはそのために各般の施策を講じているところでございます。  経済構造改革しまして経済活性化させるためには、市場原理を貫徹いたしまして競争促進することが何よりも必要で、その過程の中で副作用が生ずることも当然あると考えられるわけでございます。しかしながら、委員指摘のように、こうした副作用があるということを理由にして構造改革を行わないということは、少数の利益を守るため国民経済的に得られるはずの多数の利益を失う、犠牲にするということになろうかと思います。したがって、痛みを恐れて改革の歩みを緩めたりあるいは先延ばししたりするという考え方に立つことなく、現在あるいは将来の豊かな国民生活を実現する観点から経済構造改革に取り組む必要があると考えております。  他方、その過程で生ずる経済的弱者問題等副作用につきましては、その副作用自体対象とした別の政策手段が用意されるべきでありまして、経済活動資源配分には市場原理をという考え方、そして経済的弱者には弱者に対する対策というように、複数政策目標に対しては複数政策手段が必要でありまして、政策割り当てを行いながら全体としての経済構造改革を進めていく必要があると考えております。  今、委員指摘の、経済のあり方としてアメリカ型がいいのか日本型がいいのかという御指摘でございますが、日本的スタイルあるいはアメリカ的スタイルというものを完全に類型的に分けてしまうということはなかなか困難でございます。我が国経済社会構造改革当たりましては、改革を進めることに伴う痛みにもやっぱり配慮するということによって社会的な安定など日本社会のよさを生かしつつ経済構造改革を進めていく必要がある。つまり、アメリカ改革の進め方のいいところは進め、それに伴う副作用についても配慮していくという必要があろうかと考えております。
  13. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 経済再建をしていく上において、その際の経済活性化に必要とされる需要としては、個人消費、それから民需の代表としての設備投資、それから財政支出代表としての公共投資等がありますが、アメリカの例、一九九一年から設備投資がふえ、消費中心の国であったのが設備投資中心経済成長へと変貌しており、その中身は、電機、通信情報、機械、コンピューターが非常に大きなウエートを占めております。  今後の我が国産業を支える需要中心となるのは何であるというふうに考えておられますか。経済企画庁お願いします。
  14. 坂本導聰

    政府委員坂本導聰君) 一義的に、個人消費あるいは設備投資公共投資、どれというふうに決めつけるわけにはいかないと思いますが、経済全体の中でウエートを占めるという点では特に個人消費支出と。しかし、それをさらに喚起させるために設備投資民間設備投資あるいは民間住宅建設投資、そしてそれを全体経済経済は生き物でございますから、その時々の経済状況景気状況を踏まえながら、公共投資等についても考えていくということではないかというふうに考えております。
  15. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 もう一つ、これも経済企画庁にお尋ねしたいんですが、我が国財政再建景気維持を両立させることができるのか。できるとすれば、この方策についてお尋ねします。  米国の場合は、これをうまく両立させているというふうに思います。すなわち、一九九一年、米国のGDPの成長率マイナス一%と底入れし、九二年は二・七%、九三年は二・三%、九四年は三・五、九五年は二、九六年は二・四%と、かなり高い実質成長をいたしております。その原動力となったのは、一つ軍事費の減、二つ金融財政政策の見事な組み合わせ、それから三つ目が一番大きな理由で、これはアメリカ産業自律的活力にあったというふうに思います。八〇年代におけるベンチャー企業雇用吸収力は千九百万人にも及んでおります。  これを我が国に当てはめてみると、まず第一番目には財政支出縮減二つ目金融財政政策組み合わせ三つ目産業自律的回復力考えられますが、この一と二、財政支出縮減金融財政政策組み合わせは、米国の場合より非常に難しい問題もあると思います。したがって、三番目が最も重要ではないでしょうか。規制緩和によって企業活力を十分引き出すような政策をとらなければならないと同時に、起業家自身あるいは産業界みずからが自力で活路を開いていく気概、そういうものがこれからこれを両立させる上においてぜひ必要だというふうに思いますが、経済企画庁の所見をお願いします。
  16. 坂本導聰

    政府委員坂本導聰君) 委員指摘のように、現在の我が国財政状況は極めて厳しい状況にございまして、特にアメリカと比較しても、今後の少子化という点を考えますと、さらに厳しいものになるというふうに考えております。  財政支出縮減は、当面は需要の減少ということで景気マイナスにさせる効果がございますが、財政赤字をこのまま放置いたしますと、そのこと自体日本経済全体の成長に極めて悪い影響を中長期的には与えるということになろうかと思います。したがって、委員指摘のように、まず産業企業が自由に活力のある競争あるいは事業ができるようなそういった土壌をつくる、つまり規制緩和、これを徹底的に行っていく必要がある、委員指摘のとおりだと考えております。
  17. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 これから我が国財政再建を図り、さらに景気を上向きにさせていく上において、産業界自律的回復というか成長というのは最も重要な課題だと思います。  本日出されております法案も、そういう意味で大きな役割を果たすものというふうに思いますが、これからこの法案に即した個々質問をしたいと思います。  まず第一ですけれども、昨今の企業活動国際化の進展、アジア地域の急速な経済発展等を背景に、我が国産業空洞化に対する懸念が一層強まっております。さらに国内市場においては、生活水準が上昇し、耐久消費財普及率が著しく高まるなど既存産業成熟化が進展し、また消費者購買意識、ニーズの変化等に伴い、我が国経済成長をリードしてきたリーディング産業の停滞が指摘されております。  一方で、近年においては開業資金高額化資金調達困難性技術・ノウハウの高度化など開業に対する障害が大きく、開業率は低調に推移しているものと聞いております。  そこで、まず初めに、我が国産業開廃業率の現状に関する認識についてお尋ねしたい。よろしくお願いします。
  18. 石黒正大

    政府委員石黒正大君) 産業開廃業率の問題でございますが、全産業開業率は近年やや持ち直しが見られるものの、長期的には低下傾向にございます。他方廃業率上昇傾向で推移しておりまして、平成元年から平成三年の間に初めて逆転をいたしまして以降、廃業率開業率を上回るという状況が続いております。  ちょっとブレークダウンいたしますと、業種別に見ますと、製造業におきましては近年さらに開廃業率の差が開いておりまして、創業をめぐる環境は厳しいものとなっているという認識をいたしております。  その原因につきましては、本日閣議決定されました中小企業白書でいろいろ分析をしておりますけれども、資金面では自己資金に頼らざるを得ないものが多いこと、人材面では知名度がない、高い賃金が支払えない等によりまして人材確保が困難であること、さらには、取引面では販売先受注先確保が困難となっていることなどさまざまな面で創業者が厳しい状況に置かれているということが考えられております。  いずれにいたしましても、我が国経済の現状としては、開業率の低下によりまして我が国経済活力が損なわれていくことが懸念されている状況にあると基本的に認識をいたしております。
  19. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 今御説明のありましたように、開業率が落ち込んでいる、そういう状況を打破して我が国産業活力あふれるものとするためには、新たな事業に積極果敢に挑戦するベンチャー企業を支援していくことが不可欠であると思います。言うまでもなく、ベンチャー企業のほとんどは中小企業であり、規模が小さいことを逆にメリットとして大企業を凌駕するような事業展開を行う企業を積極的に支援していくことが必要であると思います。  本日審議いたしております中小企業創造活動促進法はベンチャー企業支援を明確に位置づけたものと認識しておりますが、我が国中小企業政策におけるベンチャー支援の位置づけはどのようになっているのでしょうか、もしあれであれば大臣の御所見をいただきたいと思います。
  20. 佐藤信二

    ○国務大臣(佐藤信二君) 我が国経済は緩やかな回復を続けている、かようなことでございますが、この中において中小企業の景況、これは委員再三御指摘のように、依然厳しい状況にあります。また、産業空洞化の懸念が高まっているということなど、中小企業をめぐる経営環境は引き続き厳しい状況にある、かような認識を持たざるを得ません。  こうした状況に対応すべく、中小企業対策としては、きめ細かな金融対策など経営の安定・強化対策に努めているところでございます。  今御指摘ベンチャー企業でございますが、これはこうした厳しい経済環境の中にありながら、新たな事業機会を積極的にとらえ、みずからの強みを生かし、かつ大企業や大学などと連携しながら俊敏な事業活動を展開するものであります。こうした企業活動は、新たな産業分野を切り開くということと同時にその経済活性化の原動力、新たな雇用の担い手になるものでございまして、今後その活躍に大いに期待する、こういうことでございます。  こうした観点から、中小企業政策として、このベンチャー支援策をその重要な柱の一つと、かように実は位置づけておりまして、本日御審議をいただいております中小創造法を初めとする諸施策を講じてこれに対応していくわけでございます。  そういうことで、今後とも、引き続き積極的に支援策を展開していくところでございますので、よろしく御指導、御協力をお願いしたいと思います。
  21. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 ありがとうございました。  さて、言うまでもなく、政策は実際に利用されて初めて意味を持つものであります。本日審議しておりますこの中小企業創造活動促進法は、平成七年に制定されて以来既に二年が経過しておりますが、その間にどの程度利用されたのか、また我が国ベンチャー企業育成の観点からどのような役割を果たしてきているのか、現状認識についてお伺いします。
  22. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) 先生指摘のとおり、中小企業創造活動促進法は、中小企業の創業あるいは研究開発を御支援申し上げる、そういったことを通じて新たな中小企業の分野の開拓を図って、ひいては産業構造の円滑な転換等々に資するということを目的にしてつくられたまだ比較的日の浅い法律でございますが、平成七年四月の施行以来ことしの三月までで既に都道府県知事の認定を受けております件数が二千百五件に上ってございまして、補助金、債務保証、減税措置等の活用によって日本全国たくさんの中小企業の皆様方、積極的な研究開発等が進められておると承知をしてございます。  先ほど来の御議論がありますように、研究開発を積極的に進めて、それをベースに新しい企業が創業される、あるいは企業が新しい分野に発展されるということは大変重要なことで、中小企業施策の中でも重要な施策でありますこれがその大きな一翼を担っていくものと考えております。今後とも、この法律の施行に最大限の努力をしてまいりたい、かように存じております。
  23. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 今御説明いただきましたように、ベンチャー企業は大きな成長の可能性を有する一方で、将来性が不透明であり、また信用力、担保力に乏しい場合が多いため、成長に必要な資金を融資のみによって調達することは極めて困難な状況にあると思います。そのため、株式投資を初めとする直接金融制度を充実することが重要であり、中小創造法についても昨年三月に一部改正を行い、直接金融制度の拡充を図ったことは承知いたしております。  その一環として、直接金融を支援する機関であるベンチャー財団が多くの自治体で設置されていると聞いておりますが、その活動状況について教えていただきたいと思います。
  24. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) 私ども、先生から先ほど御指摘のありましたように、七年度の二次補正でまとまった資金を計上いただきまして、中小企業事業団と都道府県が協力して直接金融の支援を行うという事業を創設いたしました。  この事業では、ベンチャー企業への投資の窓口となりますいわゆるベンチャー財団を各都道府県に設置していただいて、そこでベンチャーキャピタルから創業期の企業に円滑な出資やあるいは転換社債の引き受け等といった形の資金供給が行われるということをお手伝い申し上げる、こういうシステムでございますが、現在、四十一都道府県におきまして財団の設置が見られておるところでございます。  このベンチャー財団等を、さらに昨年の四月に、今御審議いただいております創造法を改正しまして、中小企業信用保険公庫による再保険制度対象にいたしまして、またそのシステムの強化を図ったところでございまして、こうした結果、ベンチャー財団によります投資実績はこれまでに百四十二件、合計で七十二億円というふうになってございます。七年度は一けたでございますが、八年度百三十三件ということで、これから大きな期待を持っておるところでございまして、私どもとしても、この財団による円滑な投資の支援に引き続き努力をしてまいりたいと存じております。
  25. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 今回提出されました中小創造法の改正案では、いわゆるエンゼル税制を導入する措置がとられております。  今伺ったベンチャー財団制度も含めて、これまで資金面での支援策は相当程度実施されてきましたが、これにさらにエンゼル税制の措置を講ずる必要性、意義についてどのように考えておられるのか、お尋ねいたします。
  26. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) 先ほど来委員から新規産業の創出の必要性について御指摘いただきました。  私ども、そのために各般の施策を講じておるところでございますが、特に資金面でいろいろ対策が講じられて、その上でなぜエンゼル税制を創設するのかと、こういうお話でございますけれども、創設期の企業につきましては、我が国千二百兆円と言われる豊富に存在する民間資金が、リスクが高い、こういうことでこうしたベンチャー企業になかなか向かない、それが一つベンチャー企業が創出されにくい要因である、こういうふうに指摘されているわけでございます。こうした状況を打開するためにこのエンゼル税制を提案させていただいておるわけでございます。  いわゆるエンゼルというのは個人投資家を指しているわけでございますが、こうした個人投資家がリスクの高いベンチャー企業投資をする、その際にそのリスクをできるだけ軽減してまいりたい、それを税制上の措置でしていこう、こういうことでございます。  具体的に申し上げますと、創業五年未満であって、試験研究費等の費用が売上高に対して一定以上の割合を占めますベンチャー企業投資を行った個人につきまして、その企業の解散等により損失が生じた場合には、損失が生じた年度における他のキャピタルゲインとの損益通算、これは現在の所得税法で認められておるわけでございますが、その翌年度以降三年度にわたって通算できる、こういった損失の繰り越しの制度を新設する、こういうことでございまして、こうしたことによりましてリスクの高い創業期のベンチャー企業に個人のエンゼルの資金ができるだけ回るようにしていきたい、こういう措置でございます。
  27. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 後半の方は次にお尋ねしょうと思っていたらもう言っていただいたので、それについて、今のお答えについてさらに質問したいと思います。  さて、一定の要件を満たすベンチャー企業の株式を取得した個人投資家がキャピタルロスを受けた場合に、当年度及び翌年以降三年間の他の株式譲渡益との損益通算が可能ということでありますが、では他の株式投資をしていない、私のように株は嫌いだから株投資をしていない人が意外に多いんですよ、そういう人では何の関係もないことなんですね。これは要するに、現に今ほかの株をいっぱい持っていて、そしてそこでもうけたと。しかし、こっちでそのとき、これのロスを入れれば税金を払うことが少ないということなんですね。  私は当初は、このエンゼル税制というのはほかの所得もみんなこうやって損益通算できるんだと思っていたんですよ。そうしたら株だけというんでしょう。株を持っていない人が大部分で、そういう人に、じゃ何かもう一遍株でも買えと、そうすればおまえ、もうけたときでも税金が低いという、余りそういうのは私は何か必ずしも好ましくない。やっぱりこれだけ我が国の大黒柱となろう、経済構造改革の一番担い手にもなろうとするこのエンゼル法案が、何だか株だけ、ほかで買って少し持っていた、それでもうけたときの税金を少し減らしてやるよというのは、何か余りにもこそくなような気持ちがしてならないんです。ちなみに米国では、ベンチャー企業への投資ロスはほかの所得との損益通算ができるようになっているとも聞いているんです。  一回になかなか全部の目的は達せられないでしょうけれども、これからの税制改正等でも少しでもよくなるようにぜひやっていただきたいと思いますが、これについてのひとつ御所見をいただきたいと思います。
  28. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) 米国のエンゼル税制の御紹介がございました。委員指摘のとおり、アメリカの場合は総合所得に合算して損益通算できる、こういう制度でございます。日本の場合はキャピタルゲイン課税が特別に別の体系になっておりまして、そういう関係で、今回エンゼル税制を創設するに当たりまして大蔵省当局と大変いろんな議論をさせていただいたわけでございますが、キャピタルゲイン課税そのものを全体として見直す場合はともかくとして、現行の体系の中ではこれが精いっぱいだった、こういうことでございます。  今後の課題としまして、委員の御指摘の点も踏まえまして、いろいろ勉強してまいりたい、こういうふうに考えております。
  29. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 では、次の質問に移りたいんですが、今度の法律の第七条の二、「診断及び指導」というのが新しく入れられるわけですが、「通商産業大臣は、特定中小企業者であって、その事業の将来における成長発展を図るために積極的に外部からの投資を受けて事業活動を行うことが特に必要かつ適切なものとして通商産業省令で定める要件に該当するものに対して、その投資による資金調達の円滑な実施に必要な経営状況に関する情報の提供について診断及び指導を行うものとする。」ということになっているんですけれども、ここで言う指導及び診断というのは具体的には何なんでしょうか。そして、その費用はどうなるんでしょうか。  そこで、私は非常に気にかかるのは、ここで通産省がかかわることになって、そして国民企業実態以上の評価を与えることにはならないか。この企業が通産省のお墨つきで立派なベンチャー企業としていい企業だよという、そういうお墨つきをいただければ、私が企業の経営者なら、通産省のマークを一番紙の上にどんと出して、通産省からも推奨いただいているすごいいい会社なんだからどんどんベンチャーで投資してくださいと。そして二、三年たったらつぶれてしまったと。  そうしたとき、国民は、通産省が推薦してくれたから、かかわっていたから私ら投資したんですよと。そうでなけりゃ、こんなちっぽけな、いいかげんの会社を私は信用しなかったんだ、損害賠償よこせとか、そういう何か、皆さん方、法律上ここには抜け道がないと恐らく言われるんだろうけれども、それだけでは決して十分ではないんで、やっぱりその辺を、このことは非常にもろ刃の剣で重要なことなんで、非常に重要なことなんだけれども、一つ間違えると逆に、ほかの例を言うと怒られる、そんなものとまたけた違いだと怒られるから申しませんけれども、そういう疑惑を国民にまた不信を抱かせないように、そしてうまく各社が評価されて、国民がある程度適切に判断しながら投資できる、何かそういうことをぜひやっていただきたいと思うんですが、これについてのお考えをお尋ねしたいと思います。
  30. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) 御指摘の条項の診断、指導、基本法等の用語例を使っておりますので大変かたい印象を与えるかとも存じますけれども、その意図するところは、ベンチャー企業が個人の投資家から資金を円滑に調達を期待いたしたいということを考えますと、ベンチャー企業側から投資家に対しまして現在の経営状況がどうなんだろうか、あるいはこれからどういうふうに事業に取り組んでいこうと思っておるのか等々的確な情報を提供するということは、投資家が的確に投資の判断をする、あるいはかたい言葉で言いますと株主の保護といいましょうか、そういったことも踏まえて大変重要であるというふうに考えてございます。  特にベンチャー企業の場合にはいろいろな不確定要素もリスクもございますものですから、十分に投資家にそういった点を理解していただいた上で投資をいただくということが大事である、こういうふうに思っております。  そんな観点から、私どもといたしましては、投資家の御判断に通常必要とされる情報が円滑に提供されますように、どんな情報がその際必要なんだろうか、どんな形態で提供されることが望ましいんだろうか、そういったことをわかりやすくマニュアルといったような形で御提供を申し上げて普及をしたいということを考えておる次第でございます。  本来、投資家と潜在的なエンゼルとの間にはひとつの市場といいましょうか、出会いの場といいましょうか、そういったものが確立をしていくということは大変望ましいことでございますので、そちらに期待するところも大きいわけでございますが、なかなかまだそういったことは不十分な状況でもございますので、私どもとしては、かたがたベンチャープラザ等でこういった出会いの場というものを設営し、御支援をしながら、御指摘のございましたこの条項での情報の提供に関するアドバイスといったようなこととあわせて投資の円滑な促進を図りたい、こういうふうに思っておるところでございます。  そういう意味からは、先生御懸念されました通産省お墨つきで云々といっだような、いったような懸念も総体的には少ないと存じますけれども、いやしくもそのようなことのないように心して対応いたしたいと思います。
  31. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 では、次に移ります。  本制度の導入は、創造的事業あるいは産業の振興にあるのであれば、拡大する支援対象者として、設立から五年以内の中小企業者としているんですけれども、適用期間五年は余りにも短過ぎないかというふうに思います。  今までベンチャー事業への進出のための優遇政策はなかったのですから、新しく設けるんですから、当面、三年か五年ぐらいの間は設立十年以内とか、既にもう創業して三、四年たっている、そういう企業に新しくこういう制度が導入される、それじゃ、ちょうど私も二、三年やったけれども、なかなかあれだからとか、あるいは二、三年の上にこういう知恵も出てきたからという、そういうような形で準備していけば五年超えてしまうとかということで、設立五年以内ということじゃなくて、設立十年以内の中小企業者をも支援対象としてもよいのではないか。暫定的に私は経過措置としてそういうものがあってもよいのではないか、またその方がすそ野も広いんではないかというふうに思います。  私、いろんな立派な政策出してくださるんですけれども、非常に小出しなんですよ。平成七年度にこの法律つくった、そうしたら去年もまた改正していただいた、ことしも改正していただいた、また来年も改正する、毎年毎年改正するのは、お役所や国会はいいとしても、これを利用する側から見ると本当にわからないんですよ。もう法律の名前も長いですし、これ本当に大変なんで、こういうときは短く五年と言わないで、当面、経過措置として三年、五年ぐらいは十年以内の設立の企業というと私は随分すそ野が広がるし、ある程度そういう経験も積んできて有益だと思うんですけれども、一般に施策が、これは通産省だけでなくて、私は税制の改革なんか見ていると、本当に一年ごとにひどいのは変えるんですね。そんなばかな税制はないと思うんですけれども、そういう気持ちでひとついろいろ、すぐ御検討はできないと思いますけれども、どのような御所見かをお伺いしたいと思います。
  32. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) 今回のエンゼル税制の趣旨は、創業期の研究開発を一生懸命やっていただいておるといったような中小企業に対しまして、個人投資家からの資金の供給が円滑に進むような環境整備ということでございますが、何をもって創業期の中小企業であるかと、こういう問題でございます。  なかなか何年ということで方程式を解くと答えが出るというようなものではないかもしれませんけれども、現行の創造法も創業支援と研究開発ということを進める法律でございますけれども、創業期の企業として一応設立後五年という規定がございまして、そういった現行の規定等も踏まえまして、やはりこのぐらいの企業が最も資金調達手段に困難を来しているんではなかろうかというようなことで、今回の措置対象にも設立後五年以内の企業ということにいたしておるわけでございます。  なお、蛇足ではございますけれども、五年を超えた企業が創造法の対象外になってしまうということではございませんで、この認定を受ければ技術改善費補助金でありますとか、融資制度対象にはなるのはもちろんでございます。いずれにいたしましても、税制改正でいろんな御議論があったものでもございます。  結果として、せっかく芽を出していただきましたエンゼル税制でございますので、まず私どもとしてはこれを着実に御利用いただいて、ベンチャービジネスへの資金の円滑な供給に大きな役割を果たす、こういうことがまず大事だと思います。  先生指摘の点につきましては、これからそういった実情等も踏まえて勉強させていただきたい、こういうふうに存じております。
  33. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 ベンチャー企業は新しく開発された技術の所有者がベンチャーの起業家となり、その事業化に必要な資金を投資家から得るというものが多かったと思いますが、現在、ベンチャー企業に必要とされる科学技術に関する知的資産を有する者は国の研究機関あるいは大学等にもたくさんおられますので、これらを有効に活用するためにも、起業家それから投資家、そして新技術開発者等の出会い、協力のしやすい、そういう環境をぜひつくってもらいたいというふうに思います。  今までは起業家と投資家との出会いは相当力を入れておられたようですが、新しく知恵を持っている、そういうものがなければベンチャーが出てこないわけですし、そういう知恵を持った人はたくさんいてもなかなか実用化しにくい環境にあるわけなので、そういう三者が一体となっていろいろ協力できるような、そういう場と申しますか、環境づくりをぜひやっていただきたいと思います。  それについてひとつまた所見をいただきたいと思います。
  34. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) 今、委員の方から、ベンチャー企業の振興をするためには大学あるいは国立研究所をもっと活用すべきではないかと大変大切な御指摘をいただいたと思います。  冒頭、アメリカとの比較の議論がございまして、大学における研究開発活動について若干御紹介申し上げますと、一九九四年における大学の特許の申請件数を比較してみますと、アメリカが千八百六十二件に対して百二十四件と大変低いわけでございます。それから、日米の大学におけるライセンスをしたロイヤリティー収入を見ますと、日本は約二千万円、アメリカでは二億六千万ドルと、これも彼我の差は大変大きいという状況にあるわけでございます。  したがいまして、私ども、まず産学連携を進めまして、こうした大学の研究成果を多くし、それをもとに新規産業ベンチャー企業を生み出していく、そういった考え方が非常に大事ではないか、こういうふうに考えるわけでございます。そのためには、大学と産業界との間の人的交流が活発に行われること、それから大学から生み出される研究開発成果が意欲あるベンチャー企業に円滑に提供されること、それからベンチャー企業が成功した場合にはその果実が大学の教育研究に還元される、そういったシステムを日本においても確立していく、そういったことが大切であると考えております。  こうした考え方に基づきまして、私ども各種の改革を進めておるわけでございますが、いろんな課題がございます。これを検討するために、大学関係者、経済界あるいは関係省庁による研究会をつくりまして、大学における知的財産の管理あるいは流通のための仕組みの整備について検討を進めております。検討を進めながら、その結果を踏まえて所要の措置を講ずるように努めてまいりたいと考えております。  委員指摘情報提供という面について一言申し上げさせていただきますと、平成七年度の通産省の事業としまして、主要な国立大学や国立研究機関の研究者の研究内容につきましてCD−ROM化を実施して、それを都道府県の公設試験研究機関に配付しましたところ、これを契機に大阪大学や北海道大学などにおきましても研究内容を冊子にまとめたり、ホームページを開設するなど大学側の情報提供体制も整いつつあるわけでございます。  こうした努力を続けまして、大学あるいは国立研究機関の成果がベンチャー企業事業の推進に役立つようにしてまいりたい、かように考える次第でございます。
  35. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 では、次に移らせていただきます。  ベンチャー企業がその必要な資金を導入しやすいように種々の制度考えられ、つくられているのですが、私は基本的にはベンチャー企業のための株式店頭市場ができれば一番合目的だと思います。合目的という意味は、ベンチャービジネスへの投資は、危険度は高いが当たれば大もうけができるという性格で、公的機関の仕事には本来なじみにくいものじゃないかと思うからでございます。しかし、平成七年七月、ベンチャー企業が公開しやすい市場として、従来の店頭市場の公開基準を緩和した市場、すなわち店頭特則市場が創設されておりますが、平成九年三月一日現在、登録企業は二件のみと伺っております。  せっかくの店頭特則市場の利用がこんなに少ないのはなぜなんでしょうか。この市場の飛躍的な活用のための施策は何かできないものでしょうか。これは、大蔵省来ていますか、お願いします。
  36. 柏木茂雄

    説明員(柏木茂雄君) ただいま店頭市場についての御質問をいただきました。私どもといたしましても、店頭市場というものはこれからの成長産業資金調達の場として極めて重要な役割を果たしていくものと思っております。  特に、これから二十一世紀は高齢化社会になりますけれども、これからのいわば次世代を担う成長産業にとって、資金供給を図っていくということは極めて重要でございますので、店頭市場がこれからますます重要な役割を果たしていくものだと思っております。  先生指摘がございました店頭特則市場、これは特にベンチャー企業による資金調達を円滑化するため、一定の要件を充足する企業対象といたしまして登録基準を大幅に緩和しまして、御指摘のとおり平成七年の七月に開設されたところでございます。  その後、その市場には、昨年の十二月でございますけれども、ベンチャー企業が二社登録を見たところでございます。その間、期間があったと申しますのは、やはりこういう企業にとってはこういうところに登録してくるにいろいろな準備が必要だということでございまして、私どもとしては、今後ますます多様なベンチャー企業をこの市場に登録し、同市場がいろいろ活発に活用されるということが期待できるのではないかと思っております。  この店頭市場、特則市場を含めまして店頭市場のあり方につきましては、現在証券取引審議会総合部会におきまして、そのあり方についていろいろ見直しを行っているところでございまして、本年六月にはその結論を得ることになっております。
  37. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 最後に、産業空洞化に向けた対策をお伺いしたいと思います。  いわゆる産業空洞化を防止するためには、ベンチャー企業の育成、支援が重要であることは論をまちませんが、一方それだけでは決して十分ではないと思います。  先般、本委員会で特定産業集積活性化法を審議した際も空洞化対策説明を受けましたが、通産省として産業空洞化に対してどのような処方せんを考えておられるのか。その全体像と、それに取り組む決意を通産大臣からお伺いして終えたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  38. 佐藤信二

    ○国務大臣(佐藤信二君) 委員指摘のように、我が国経済においては、高コスト構造、また制度的制約、こういうものを背景として、本来であれば国内において比較的優位な立場にある製造業までも海外に進出というか移転するという、いわゆる産業空洞化、この懸念が一層高まっていることは御指摘のとおりでございます。  こうした懸念を払拭すべく、我が国経済の中長期的な発展を可能にしようということで、昨年の十二月に政府としては六つの改革一つ経済構造改革、こういうものを掲げまして、これからの施策の基軸になる「経済構造の変革と創造のためのプログラム」というものを閣議決定したわけでございます。  具体的には、この中で、新規産業を創出する観点からは、個別産業分野ごとのニーズに対応した規制緩和人材育成、技術開発等の総合的な施策、あるいは新規産業創出にかかわる共通の課題を解決するための資金、人材技術面の施策という施策を推進していくというのが一つの柱でございますし、また国際的に魅力ある事業環境を創出する、こうした点からいえば、高コスト構造是正のための規制緩和、これは主に物流、エネルギー、情報通信、こういう分野を対象としております。もう一つは、企業労働に関する諸制度改革、これは持ち株会社の解禁だとか、企業税制の見直し、有料職業紹介事業の見直し等でございます。もう一つは、地域の産業、技能集積の活性化、こうした施策を盛り込んでいるところでございまして、この今お願いしております創造法の着実な実施を図るだけではなく、プログラムに盛り込まれたこうした事項を着実に推進する、こういうことでこの五月の中旬に行動計画というふうな名のもとに今のプログラムをさらに具体化して、そして経済構造改革を強力に進めていく、こうした考え方でございます。よろしくお願いいたします。
  39. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 どうもありがとうございました。
  40. 平田健二

    平田健二君 平成会の平田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  まず、大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、通産省は産業構造転換の中で、ベンチャービジネスの育成ということを政府の施策の中でどのようにとらえておられるのか、どういう位置づけなのか、ベンチャー企業をどういうふうに育成しようとしておるのか。  例えば、先ほどもお話がありました八〇年代長期低迷から回復した米国ではその原動力の一つとしてこのベンチャー企業の貢献が大きい、こう言われております。いろいろ資料を見てみますと、アメリカに追随していけば何となく日本ベンチャー企業は成功するんじゃないかな、こういう印象を強くするわけですけれども、まずベンチャー育成ということについて大臣から最初にお伺いをしておきたいと思います。よろしくお願いします。
  41. 佐藤信二

    ○国務大臣(佐藤信二君) 平田委員にお答えいたしますが、このベンチャー企業は、良質な雇用機会、これを提供するということと同時にやはり経済活力の担い手ということで、産業空洞化の懸念あるいは高齢化の進展による経済活力の低下の懸念、これを払拭する上でその育成は重要な課題だと、こうした認識を持っております。  そこで、当省といたしましては、ベンチャー企業の育成を図るためにこれまでも店頭特則市場の創設だとかストックオプション制度の導入、技術開発に対する助成制度の拡充等、資金面人材面技術面からの総合的な支援を行ってまいったところでございますが、さらにこれに加えて、本法では個人投資家によるベンチャー企業に対する投資リスクを軽減する、いわゆるエンゼル税制というものを創設いたしまして、豊富に存在する民間資金がベンチャー企業に円滑に投入されるよう資金面での環境の一層の充実を図ろうとしているところでございます。  今後は、本法の円滑な運営に努めるとともに、昨年十二月に閣議決定をいたしました「経済構造の変革と創造のためのプログラム」、これの着実な実行を図って、ベンチャー企業を含めた新規産業創出のための環境整備、こういうものを図ってまいる所存でございます。よろしくお願いいたします。
  42. 平田健二

    平田健二君 それでは、具体的にお尋ねをいたします。  個人投資家、エンゼルのベンチャー企業に対する関心度といいますか、こういったものについてちょっとお尋ねをいたしたいんですが、幾ら環境を整えても、いわゆるエンゼルにベンチャーへの関心がなければ支援策は成功するわけはないんですね。そういった意味では、投資家サイドにおけるベンチャー支援の関心度の状況をどういうふうに掌握されているのか、アメリカ状況が違いますので、その辺のところをお尋ねいたしたい。  それから、中小企業庁では昨年、全国で十三カ所ですか、ベンチャープラザと名づけた起業家と投資家の出会いの場を設けられたということですけれども、その参加者の中で個人投資家がどの程度参加されたのか、具体的にお尋ねをいたします。
  43. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) まず、ベンチャー企業に対する個人投資家の関心度という点でございますけれども、いろいろな数字はございますが、アメリカの例ですと、ベンチャー企業が必要とされておられる資金の八割ぐらいがいわゆるエンゼルと言われる個人投資家から供給をされておるという数字もございますが、日本ではこの手の数字はございませんけれども、いろいろなアンケート等で見まするとまだまだ大変低い率にとどまっておるというふうに理解をしてございます。さればこそ、いろいろな努力を私どもも続けていかなければいかぬ、こういうふうに思っておるわけでございます。  御指摘のベンチャープラザでございますが、ベンチャー企業が創業して成長していくという上では、資金、人材情報技術等々多くの経営資源が必要でありますが、概してベンチャー企業というのはこういった経営資源に乏しい、なかなかこれが入手も難しいというようなことで、ベンチャー企業ベンチャー企業を支援する方々との出会いの場を設けることが必要ではないかという問題意識で、平成八年の三月にベンチャープラザという試みを東京で実施いたしまして、その後全国九ブロック、通産局、地元のいろいろな関係団体の御協力をいただきまして、合計十三回にわたってベンチャープラザという催し物をやってきた、こういうことでございます。  八年度中の実績で言いますと、ベンチャープラザにおきまして約六百のベンチャー企業の方がプレゼンテーションを行っていただいておりまして、これに対しまして千六百名に上る投資家の積極的な参加が得られるなどかなりの盛況を呈したと理解をいたしておりまして、投資家のベンチャー企業支援の機運もだんだん高まってきておる、こういうふうに認識をいたしてございます。この千六百名の中で個人投資家がどれぐらいということは手元にあれがございませんが、そこそこの個人投資家も入っていたというふうに聞いております。  今後とも、このベンチャープラザの事業、これを都道府県等にも拡充するといったようなことを通じまして出会いの場を確保することを図りまして、昨年のベンチャー財団とかあるいは御審議いただいておりますエンゼル税制の施策とも相まって、ベンチャー企業の創業や発展に寄与してまいりたいと考えてございます。
  44. 平田健二

    平田健二君 それでは次に、現在、我が国でエンゼルといいますか個人投資家の皆さんがベンチャー企業へどれだけ投資をしておるのか掌握されておりますか、お尋ねをいたします。  それからまた、今回の法改正で相当多数のエンゼルが投資をしてもらえると期待をしておると思うんですが、どの程度効果があるのか、効果はどの程度と想定されているか、お聞きします。
  45. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) 大変難しい御質問をいただきました。  エンゼルというのはベンチャー企業を積極的に育成しようという個人投資家のことでございまして、単にベンチャー企業に対する資金供給を行うだけではない。具体的には、例えばみずから事業経験を有する者あるいは技術、経営等に専門的な知識を有する者あるいは一定の資産、収入を有する者、そういったものが想定されるわけであります。アメリカにおきましては、こうしたエンゼルとなる個人投資家に対する税制措置が古くから設けられておりまして、そういったベンチャー企業に対する投資が積極的に行われているという状況でございます。  しかし、残念ながら、日本は今までそういった環境にございませんでして、私どもも実際に今現在エンゼルが日本にどのくらいいるのかというのを掌握しているわけではございません。個人の貯蓄は約千二百兆円と言われておりますけれども、これをエンゼルの形でどうしてベンチャー企業に結びつけていくか、こういうのが大きな課題で、エンゼル税制もその一つの対応策、こういうことでございます。  そして、こういうエンゼル税制をとった場合にどの程度の資金がこのベンチャー企業に誘発されるのか、これもなかなか難しい問題でございますが、一定の収入以上の人の一%とか、そのぐらいがそちらの方に回ると仮に計算いたしますと、これはあくまでも試算ですが、二百億円程度になるのは期待できるかなと、こういうふうに思うわけでございますけれども、アメリカのエンゼルは約二百億ドルの投資規模と、こういうふうに言われております。  二百億円というのは試算でございますけれども、これでも初めの金額としては、ベンチャー企業にとっては大変大きな資金源だと、こういうふうに思いますが、いろんな施策を講じまして、それをできるだけ大きくしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  46. 平田健二

    平田健二君 やはり法律を改正するわけですし、新しい試みをするわけですから、数字がないというのは仕方がないかもしれませんが、ある程度はやっぱり数字をつかんだり、この程度は投資を見込めるとか、そういったものがないと、やはり本気でやっておるんだろうかなという気がしますので、もう少し具体的な数字をつかむ必要があるんではないかなというふうに思います。  次に移ります。  今回のエンゼル税制の創設というのは、個人投資家のためにつくるんじゃないんですね。ベンチャー企業を育てるための制度ということなんですよね。そういう意味では、ベンチャー企業にとってなぜエンゼルが必要なのか、エンゼルじゃないといけないのか、具体的にお尋ねをいたします。なぜエンゼルじゃないといけませんか。
  47. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) ベンチャー企業の中でも創業期の企業対象に、今回エンゼル税制を導入することといたしたわけでございますが、創業期の企業につきましては、御案内のように大変創業のリスクが高いわけでございます。したがいまして、各般の資金面対策を講じておるわけでございますけれども、なかなか資金がそちらに回らないという現状にあるわけでございます。  そうした中で、アメリカベンチャー企業の隆盛の一因として、先ほど御説明申し上げましたエンゼルの存在がある、こういうことがわかってまいったわけでございます。それで、その投資のインセンティブとして税制がある、こういうふうなことになっておるわけでございまして、アメリカ制度をヨーロッパでもいろんな国で導入を始めております。日本もそれに合わせましてエンゼル税制を導入し、これがハイリスクのベンチャー企業に対して資金的に回る、こういうことがベンチャー企業の創出のために必要だと、こうした観点から今回エンゼル税制を導入することとした、こういう次第でございます。
  48. 平田健二

    平田健二君 多分お答えはそうなると思うんですが、ベンチャー企業を育成するためにはどうして個人投資家じゃないといけないのかなという疑問なんですよね。    〔委員長退席、理事沓掛哲男君着席〕  もう一度、済みません。
  49. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) いろいろな面でベンチャー企業に対する資金的な措置が講じられておるわけでございますが、今般、エンゼルについて、個人投資家についてそうした制度を設けることにしたわけでございます。  そのほか、年金基金がこうしたベンチャー企業に流れるように、未公開・未上場企業に対しても、その合同運用を解禁するといったような措置がとられておりますし、先ほど御質問のございましたベンチャー財団もそうした資金の流れる仕組みの一つでございます。  各般の政策を講ずる中の一つだと、こういうふうにお考えいただければと思います。
  50. 平田健二

    平田健二君 私は、個人投資家だけではなくて、ベンチャーキャピタル、いわゆる創業期の資金誘導ということで、必要性はよくわかるんですけれども、今の日本社会の実情からしますと、ベンチャーに資金を送り込むためには、個人だけじゃなくて、やはり今申されましたように、ベンチャーキャピタル税制も必要ですし、通産省の平成九年度の税制要求にも、エンゼル税制と並んでベンチャーキャピタル税制も要求したようですが、その内容と大蔵省との協議の結論、そして今後の方針についてお聞きします。資金が流れやすいような方向で大蔵省と検討しておると思いますが、具体的にお尋ねします。
  51. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) 今回の措置は、個人投資家から創業期の企業に出資が行われやすくなるようにということでございますけれども、豊富な民間資金が市場等々を通じて円滑に創業期のベンチャー企業に供給をされるということが望ましくもあり、必要であるというふうに認識をいたしてございます。    〔理事沓掛哲男君退席、委員長着席〕  この観点から、昨年、ベンチャーキャピタルからベンチャー企業への投資促進策といたしまして、昨年は所得控除の制度でしたか、税額控除の制度でしたか、そういったベンチャーキャピタルの投資リスクを軽減するといった税制措置を税務当局に御要望申し上げた次第でございます。  税務当局といろいろな協議がございまして、その結果、ベンチャー企業への投資促進施策の重要性については理解が得られたわけでございますけれども、どういう仕組みで措置を構築するのかといったような点についてはなお検討の必要があるんではなかろうか、こういうことになったところでございます。  このため、現在、私どもにおきまして、関係業界あるいは学識経験者の皆様方の御意見をもお聞きしながら、関係省庁とも連携をとりつつ、投資事業組合というものに着目をいたしまして、投資事業組合のあり方、それからベンチャーキャピタルの株式消却の方法といったような点について、いろんな点からの検討をいたしておるところでございまして、検討結果を踏まえて、またどういう措置が講じられるのか、最善の努力をいたしてまいりたいと思っております。
  52. 平田健二

    平田健二君 次に、エンゼル税制の対象となる定義について、先ほどもちょっと御質問があったようですが、七条の二ですね。エンゼル税制の対象となる法案七条の二ですけれども、これは通産省令で定めることとなっている。この部分は本来なら法案の骨子の部分でありますから、法令だろうと省令だろうとやはり明確にすべきだというふうに思うんですね。審議するわけですから、最初から明確にする必要があるんではないかと思います。  一定の要件を満たすもの、もうこれだけなんですね。一定の要件を満たすものとはどういうことだとお尋ねをしたら、例えば同族会社ではない、株式会社だ、大企業の子会社ではないこと、こういったいろんなことがあります。例えば同族会社ではないといったっていろんな同族会社がありますし、じゃ、どういう同族会社はだめなんですか。大企業の子会社といっても、どういう大企業のどういう子会社ならいいんですか、だめなんですか。こういったことをやはりきちっと最初に明確にしておかなきゃいかぬ。議論にならないというふうに思いますが、明確にしていただきたいと思います。
  53. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) この法律案に基づきますエンゼル税制の対象としては、創業期の研究開発等を一生懸命やっていただいておる企業でありまして、積極的に外部から投資を受けて行う必要があるというような中小企業対象にすることとしてございます。  先生指摘対象企業でございますけれども、具体的には新商品の開発等に積極的に取り組みながら、創業間もないために信用力が乏しいといった中小企業を支援対象と想定しまして、その趣旨は法律に、創業後五年以内あるいは研究開発のウエート三%以上といったようなことで定め、さらにやや技術的にわたります部分につきましては、省令におきまして、大規模法人の子会社ではないこと、あるいは同族会社ではないこと、未上場・未登録企業であることといったようなことを定めさせていただくということにいたしてございます。  省令の内容、それ以上の省令の具体的な内容のお尋ねかと思いますけれども、法律が御審議を賜っている段階で省令の具体的な案はまだないわけでございますけれども、法律の成立をいただきました末には早急に具体的な内容を詰めたいと思いますが、例えば同族子会社とか同族会社といったような概念につきましては、税法等でそれなりの実績、規定例もございますので、そういったことを踏まえてこの税制措置対象としてふさわしい内容にいたしたい、こういうふうに思っております。
  54. 平田健二

    平田健二君 言わんとするところは理解できるんですが、やはり議論をする段階できっちりとしたそういったものが明らかにならないと、私どもどうやって議論をしていいかわからないという部分もございますので、そういったことでひとつ御理解いただきたいと思います。  次に、先ほどもちょっと御質問があったようでしたけれども、少し違う角度から、今回の法改正では、倒産した場合はキャピタルロスで計上できるわけですね。ところが、いつまでも上場できない場合にはキャピタルロスとしては認められないんです。仮の話ですが、大変大きな資金を持っておるエンゼルが複数のベンチャーの株主となっている場合、いつまでも上場の見込みがない、これは譲渡しても余り価値がないぞというようなベンチャーに対して、ほかのところで得たいわゆるキャピタルゲインの相殺のためにベンチャーをつぶすと、こういったことが想定できませんか。お尋ねいたします。
  55. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) 今お話がございましたように、エンゼル税制は、個人が特定中小企業者に対して投資を行った場合に譲渡損失が出た、そういう場合に免税措置になる、そのほかにも会社の解散などの損失についても、損失が生じた年度におけるほかのキャピタルゲインとの損益通算に加えまして、その翌年度三年度にわたって通算できる、こういうことでその損失を繰り越せる、したがいまして損失のときを選べるような制度になっているわけでございます。したがいまして、そういったその時期を悪用するんではないかと、こういう御質問かと思います。  大変難しい御質問をいただいたと思いますけれども、商法上の解散事由でございます、いろいろございますが、存立時期の満了とか、総社員の同意とか、会社の合併、それから会社の破産とか、解散を命ずる裁判とか、そういった一連の手続があったときに解散と、こういうことになるわけでございます。半分以上エンゼルが株主である、そういったような場合にはおっしゃるような事態は起こるかと思いますけれども、それは自分の会社と、そういうふうになるわけでございますが、一般の場合ですと、エンゼルというのは一株主の立場になっておりますので、こうした解散を自分で左右できるというのはなかなか難しいんじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。  しかし、御指摘のような悪用がないかどうか、我々はそうないんじゃないか、考えにくいと思っておりますけれども、注意してまいりたい、こういうふうに考えております。
  56. 平田健二

    平田健二君 次に、情報公開といいますか、ベンチャー側がきちっとしたやはり情報を提供するということについてお尋ねをいたします。  ベンチャー側の情報がきちっと正確で公正でなければ投資のしようがないわけですね。また、誤った情報といいますか、そういったものを市場に流して投資をさせるというようなことはないと思いますが、ある程度公正を期さなきゃなりませんし、そういったことでは法案の第七条で国が診断と指導を行うとありますが、具体的にどのように行うんでしょうか。
  57. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) ベンチャー企業が個人投資家からの投資を期待される以上、今度はベンチャン企業の方からも投資家に対しまして経営状況でございまするとか、あるいはどういうことに取り組もうとされておるのかといった的確な情報を流すことが必要であると考えております。特に、不確定要素も多い、リスクも伴うというようなことでございますれば、なおさらに十分にそういったことを投資家に理解をしていただいた上で投資を受けるということがその後のトラブルを回避するといったようなこと等々からも大事であると思っております。ただ、現時点ではベンチャー企業、もちろん未上場、未公開でもございますし、情報提供というのは必ずしも十分でない上に、どういった情報を提供したらいいのかということは必ずしもわからないといったような御指摘も賜っております。  このため、私どもといたしましては、投資家が御判断をされる上に通常どんな情報が必要となるんだろうか、どんな形態で提供されたら望ましいんだろうかといったようなことを公認会計士でありますとかコンサルタントでございまするとか等々、あるいは企業経営者の方といったようなお知恵も拝借をして、わかりやすいマニュアルといったような形にまとめて、これをベンチャー企業の方々に普及をしていったらいかがかと、そういったことを想定しておるといったことでございます。  また、これに加えてベンチャープラザ等々の場におきまして、ベンチャー企業とそれをいろんな形で支援をしてくださる方々との出会いの場といったような機会を提供することにも一生懸命努力をしてまいりたいと考えております。
  58. 平田健二

    平田健二君 ぜひ徹底していただきたいと思うんです。  多分ベンチャープラザの中でのインターネットの紹介だったでしょうか、企業名、社長名、住所、よくて百字程度の事業案内、こういったものですよね。これではどうも投資の判断なんかできませんね。もっとしっかりした情報をきちっと提供できるようにぜひひとつ指導をお願いしたいと思います。  次に、エンゼルの保護あるいはPR、こういったものについてお尋ねいたします。  今回の改正では個人投資家をたくさん募る、あるいは個人投資家というよりも年収一千万程度の皆さんの普通の方にもエンゼルになっていただきたい、こういった思惑もあると思いますが、しかし先ほどからお話がありますように、非常にこのベンチャー企業というのはハイリスク・ハイリターンなんですね。ですから、相当危険を伴いますよということもやはりしっかりPRをしていかなきゃならぬ。先ほどもお話がありましたが、通産省がお墨つきのベンチャー企業だから投資したら倒産しちゃったというようなことになって、国は何をやっているんだということにならないように、ぜひそういった面のPRも必要だと思いますが、どういうふうに工夫されているのか、していくのか、お尋ねいたします。
  59. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) ベンチャー企業のリスク性につきましては、個別企業の場合は先ほど田島計画部長から御答弁させていただいたとおり、中小企業庁でいろんな施策を講じていく、こういうことでございます。  ベンチャー企業のためのディスクロージャーマニュアルをつくりましてこれを企業家にも示し、あるいはベンチャー企業にも情報開示を促していく、そういったことが行われておりますし、それからベンチャープラザでもそういったことを積極的に広報していく、こういうことでございます。そのほかエンゼル税制一般につきまして、いろいろ税制の内容やベンチャー企業投資の有するリスク性について正確に国民に知らせろ、こういうことであろうかと思いますが、パンフレットの作成をしたりそれを配ったり、あるいはインターネットを通じてのPR等、いろいろ今後工夫してまいりたい、こういうふうに考えております。
  60. 平田健二

    平田健二君 次に、マッチングシステム、今まで、昨年度は通産省で十三カ所ベンチャーブラザを開催してきたということですが、今年度からはそれぞれの都道府県に一任をする、こういうふうになるというふうに聞いております。いろんな資料を見てみますと、やはりそれぞれ都道府県の取り組みに濃淡があるんですね。非常によく取り組んでおるところと余り関心のない県とがあるようでして、ぜひひとつ国の方でフォローしていただきたいと思いますが、どのような計画があるのか、お尋ねいたします。
  61. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) ベンチャー企業とその支援者の出会いの場といったようなものにつきましては、やはり両方の方々から利用しやすい形態で設けられるということが大事だと思います。  このため、私どもとしましては、これまで地域ブロック単位で開催をしてきましたベンチャープラザ事業を東京でやり、それから各通産局単位でブロックごとにやるということでございましたけれども、今年度からは都道府県で開催するものにまで拡充をすべく、新たな予算措置も計上しておるところでございます。  都道府県単位の開催につきましては、各自治体の創意工夫等によりまして、地元の市町村、大学、その他いろんな関係する諸機関などと連携をされて開催されることを期待しておるところでございます。都道府県ごとにいろんな濃淡があるという御指摘でございましたけれども、極力私どもとしましては都道府県のそういった意欲というのを喚起してまいりたい、こういうふうに思います。  また、既にベンチャープラザのホームページを立ち上げて、ベンチャー企業情報の発信を開始しているところでもございますけれども、各地で行われますベンチャープラザに関する情報を集約して、だれでもいつでもアクセスできるような体制を今年度は整えたいというふうにも考えてございまして、こういったことを通じて出会いの場の常設化といいましょうか日常化といいましょうか、そういったことの一助にしてまいりたいと考えております。
  62. 平田健二

    平田健二君 昨年の法改正でベンチャー財団を各県ごとに設立するようになっておりますけれども、その設立状況についてお尋ねをいたします。各都道府県ごとにどういうふうになっているのか。それから、昨年一年間のベンチャー財団が行った融資の予定額と実績、実行率をお伺いいたします。
  63. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) 中小企業創造活動促進法は、十分御案内のことと存じますけれども、中小企業の創業、研究開発を支援するというためにつくられた法律でございまして、研究開発のための計画を承認して助成をする制度というものに加えまして、さらに昨年はベンチャー財団の制度を追加いたしたわけでございます。現在までに四十一の都道府県で設立をされてきてございます。  これらのベンチャー財団による投資の実績は、まだ大変日が浅うございます、一年とちょっとということでございますけれども、百四十二件、投資実績で七十二億円、こういうことになってございまして、私どもの心づもりで想定をいたしておりましたところと比べますと、この七十二億円という実績は大体半分くらいということでございます。一年ということでは大変頑張っていただいたなということもございますが、なかなかどこの県の財団にとりましても新しい事業でございますし一審査もどういう企業を取り上げて投資をするのかということが試行錯誤的なプロセスでもございまするので、これからだんだんと着実に進んでいくんじゃないかと期待申し上げているところでございます。かたがた、各ベンチャー財団の実際の一線の現場に携わっておられます職員の方にできるだけほかの財団の経験等も踏まえて勉強していただくといいますか、経験を積んでいただくといいますか、そういったことの場を設けるような努力もいたしておるところでございます。
  64. 平田健二

    平田健二君 先ほどアメリカの例がありましたように、やはりアメリカもそうですけれども、企業年金からのベンチャーへの資金の流入ですか、こういったものが大変大きいんですよね。日本では今後どのようなふうに見込まれておるのか、お尋ねいたします。
  65. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) 今アメリカのお話がございましたけれども、日本でもこの四月から企業年金の信託銀行を通じた合同口の運用対象といたしまして未登録、未上場の株式が追加され、解禁されたところでございます。  どの程度投資されるかは、年金資金の運用委託者である年金基金等の判断に基づくものでございまして、なかなか見込みを持つのは難しいかと思いますが、アメリカのお話がございましたのでアメリカの例を参考にして単純な試算を行ってみますと、今回規制緩和された信託銀行の合同口の金額は約二十七・四兆円でございます。アメリカの年金基金のベンチャー投資の割合が一・二%、これを掛け算いたしますと三千二百八十八億円、こういうことでございますので、アメリカ並みになりますとすれば三千億円程度かなと、あえてこういう試算をさせていただくわけでございますけれども、この三千億というのは、日本のベンチャーキャピタルあるいは投資事業組合がベンチャー企業投資している現在の残高は八千二百五十八億円ということでございますので、約四割ぐらいということで、大変大きな金額になるわけでございます。  こうした金額になるためには、やはりベンチャー企業情報開示とかいろんな形での環境整備が必要と考えておりまして、こうした年金の運用の解禁に伴いベンチャー企業にお金がうまく流れるような環境整備を一生懸命頑張ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  66. 平田健二

    平田健二君 法案とは多少外れますが、大臣にお尋ねをいたします。  先日、新聞報道によりますと、自民党の特殊法人改革案に通産省も合意したということで、繊維産業構造改善事業協会の廃止が対象となっているという報道がされました。協議の経過について全く私どもとしては納得ができません。通産省としてどういう方針を考えているのか、まずお尋ねをいたします。
  67. 佐藤信二

    ○国務大臣(佐藤信二君) 橋本内閣は行政改革、これが最大の課題ということで、橋本内閣が誕生して一躍そのことをうたっていることは御案内のとおりでございます。そういうことで、この問題が現内閣の最重要課題だと、こうした認識のもとにこうした決定というものを了承したところでございます。  しかし、こうした事業協会の廃止ということによって繊維産業、繊維行政というものを今後どうするか、これが大事だと、こういうふうなことでございますので、やはり必要な事業に関しましては中小企業事業団へ移管する、こういうことで一般の中小企業対策と一体的に実施をしていこう、こういうことでございます。
  68. 平田健二

    平田健二君 この協会を廃止するということは、繊維産業構造改善臨時措置法も更新しない、こういうことですよね。そうしますと、今大臣からお話がありました、その後は中小企業事業団で対応していこうということですが、融資とか債務保証とかいうことですといいんですが、それだけじゃないんですね。ですから協会というのが設立されたわけでございまして、繊維は、前から言いますように川上から川下、流通段階まで一貫した対策が必要でございまして、一昨年でしたか、クイックレスポンスの対応やいろんな施策が必要なわけです。余りにも議論がなさ過ぎる。やっぱり繊維業界も余りにも唐突な提案だったというふうに受けとめておるようですが、いかがでしょうか。余りにも一方的過ぎないかということですけれども、いかがでしょうか。
  69. 佐藤信二

    ○国務大臣(佐藤信二君) 今、委員指摘のように、繊維産業構造改善臨時措置法、いわゆる繊維法というのが平成十一年六月の末でもって期限切れになるということを踏まえまして、これからいわゆる国際的な大競争時代において繊維政策全体をどういうふうに考えればいいか、そのあり方の見直し作業、これにやはり入らなけりゃいけないだろう、こう思うんです。今申したように、この事業協会というものの根拠法があくまでも繊維法というものであった以上、これの期限が切れるということに合わせて検討するのが当然だろう、かように実は思っているわけでございます。  そういうことで、我々の方としては、今も申したように繊維政策全体のあり方、私自身も就任してからそれなりに以前からも勉強しておりましたが、タッチして、聞いてみると、今御指摘のようになかなか複雑怪奇というか、川上、川中、川下、その中において特に重視しなきゃいけないのは、大企業中小企業とのつながりというものが非常に私は複雑のような気がしております。  そういうことでもって、こういうことをも踏んまえ、国の方針である特殊法人としての事業協会、一応これの廃止という方針と同時に、今申したように、この繊維法が切れる平成十一年六月というものを目指して、これからの繊維行政のあり方全般というものを皆様方と相談をしながら、これから繊維産業というものが大競争時代において生き残れる、また活力が見出せるようにしたい、こうした考え方でございます。
  70. 平田健二

    平田健二君 大臣の御発言では、夏前に改革に着手するというふうに発言をされておられるようですが、ぜひひとつ要望しておきたいのは、関係業界の皆さんの意見をよく聞いて方針を策定してほしい、要望しておきたいと思います。
  71. 佐藤信二

    ○国務大臣(佐藤信二君) 今御指摘のように、平成十一年というものを考えると、やはりことしの六月ぐらいまでに着手して、そして平成十年度の概算要求、それでその次の年と、こういうふうに持っていくということでございます。今委員指摘のように、私が申すようにやはりこれは非常に大きな問題でございますので、まず関係業界、そしていわゆる地域性も非常にこれはあるものでございますので、地域の人の御意見、こういうものもやはり総合的にお聞きし、そして新しい施策を講じていきたい、かように考えております。
  72. 平田健二

    平田健二君 次に、基盤技術研究促進センターの件についてお尋ねをいたします。  昭和六十年に設立されました基盤技術研究促進センターというのがございますが、その組織の設立経過と概要、そして今日までの事業内容と収支についてお尋ねをいたします。
  73. 佐藤壮郎

    政府委員佐藤壮郎君) お尋ねの基盤技術研究促進センターにつきましては、NTTの政府保有義務株、これの配当益等を原資といたしまして産業投資特別会計から出融資を受けまして、基盤技術の研究開発の促進のために民間に対する出融資等の事業を行っているところでございます。  実績といたしましては、昭和六十年の設立以来、出資については平成七年度までに百三件、出資総額二千二億円でございます。それから、融資につきましては、平成七年度までに三百二十四件、融資残高四百二十二億円でございます。  また、新規事業の創造に資する研究開発への支援の昨今の必要性を踏まえまして、平成九年度からは中小・中堅企業の行う研究開発を対象にいたしました新たな出融資制度を創設しております。
  74. 平田健二

    平田健二君 今お話がありました、今日までの投資が約二千億円、その見返りの特許収入が十七億円ということですね。  二十一日、マスコミに「政府資金二千二百億円回収困難 新年度も約二百億円投入 投資の仕組みに無理」と見出しで報じられたわけですけれども、この問題は国会でもちょっと議論になりました。いろいろと言い分はあるでしょうけれども、やっぱり国民はこれはむだ遣いと思っております。  大臣、このことについてどういうふうにお考えでしょうか。
  75. 佐藤信二

    ○国務大臣(佐藤信二君) この基盤センターの出資事業、これまでに三千件を超える特許、これを出願しております。私たちの方はこれで着実に研究成果が出ている、こうした認識でございます。  しかしながら、今御指摘のように、出資事業対象になる技術というものは基礎研究を含む基盤技術であり、また研究終了後まだ間もないプロジェクトが多い、こういうことで、その実用化というものには時間がかかるものだと、こういうふうに認識しております。  現在、研究成果を活用した製品も徐々にあらわれ始めておりまして、民間における実用化に向けた研究の進展に伴って収益が増加するもの、こういうふうに期待しております。  通商産業省といたしましては、今後ともこうした基盤センター事業の収益性の向上というものに努めて、そして民間の研究開発を効果的に促進してまいる、こうした考え方でございます。
  76. 平田健二

    平田健二君 この研究センターはことしから新しい施策としてベンチャー支援に乗り出す、こういうことのようですが、そしてまた直接投資をする、中小企業庁と別々に進められておるようですね。ベンチャー支援の内容を、センターと中小企業庁との整合性というものについてお伺いをいたします。
  77. 佐藤壮郎

    政府委員佐藤壮郎君) 基盤センターにおきます新たな制度は、新規産業の創造のための民間研究開発の促進を目的としておりまして、中小企業のみならず中堅企業も支援の対象としております。それから、出融資の対象といたしましては、先端的かつ波及効果の大きな研究開発に着目しているものでございます。  一方、今回御審議いただいております中小創造法におきましては、創業期の中小企業及び新規事業に取り組む中小企業活動を研究開発のみならず、その成果の利用と需要の開拓までを含めて補助金、税制などにより総合的に支援していくものと承知しております。  したがいまして、両制度はその政策目的を異にしますけれども、これらの両施策をそれぞれ適切に運用することによりまして我が国ベンチャー企業の支援に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  78. 平田健二

    平田健二君 お話としてはわかりますけれども、やっぱりわかりづらいんですね。確かに、中小のベンチャーには中小企業庁。今おっしゃられるのは中小企業じゃない大企業といいますか、あるいは先端技術といいますか、そういったベンチャーにはセンターがあると。私はやっぱりちょっと国民にわかりづらいなという感じ、印象を強く受けております。だからどうせいということではありませんが、ひとつ一考を要するんじゃないでしょうか。  このセンターができたのは、一九八五年、確かに当時の日本アメリカに比べて基礎研究が足りないというふうに声高に言われておったような気がいたします。実際に、八五年当時、我が国の基礎研究の費用、官民合わせて一兆三百億円程度、これが九五年には約二兆円、およそ倍近くになっておるわけですけれども、その後、科学技術基本法ができたこともあって、基礎研究をめぐる状況は一変しておるわけですね。毎年確実に二百六十億円が入っている組織です。今日の通産行政の課題からすると、ベンチャー支援に大きく軸足を移した方がいいんではないかなという気がいたしております。  ベンチャー財団の昨年の融資総額は七十二億円、基礎研究には二百六十億円。大きな金額、そう多いとは言えないということもありますが、大きい額ですね、ベンチャーには二百六十億円、二百六十億円という金額はベンチャー支援には大変大きな金額なんですよね。この二百六十億円がベンチャー支援に向かえば、大きな成果が期待できると思うんですが、いかがでしょうか。
  79. 佐藤壮郎

    政府委員佐藤壮郎君) 今、先生指摘のように、確かにこの数年、おかげさまで基礎研究を中心に研究環境、大変いい方に向かっております。したがいまして、先ほど御説明申し上げましたように、基盤センターにおきましては、平成九年度から中小・中堅の研究開発型企業事業化を目指した研究活動対象とした新たな出融資制度をつくったわけでございます。  当省といたしましても、今後もこうした時代の要請を十分に踏まえまして、基盤センター制度を運用することによりまして、いわゆるベンチャー企業を含めた民間の研究開発をより効果的に促進してまいりたい、こういうふうに思っております。
  80. 平田健二

    平田健二君 終わります。ありがとうございました。
  81. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。    午前十一時五十三分休憩      —————・—————    午後二時二分開会
  82. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、中小企業創造的事業活動促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  83. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 産業空洞化に対して我が国産業活力あるものにするためには、新たな事業を次々に起こしていくことが必要であるということは言うまでもないのでありまして、通産省がこの創造的中小企業活性化に取り組むという本法案についてはもちろん賛成であります。  私は、今ずっと審議を聞いておりまして第一に感想を持ったことは、通産省、中小企業庁の意欲は非常にあると買っておるものでありますが、ただ、これは無から有を生ずるような話でありまして、こういう投資家の土壌がないところにこれをつくるというんですから、そういう点では少し現実離れをしているといいますか、大丈夫かなと、こういう印象をまず持ちました。  私は、さっき話が出ました基盤技術研究円滑化法の審議、昭和六十年でしたか、ずっと皆さんが出してきました法案の審議にほとんど携わってきましたけれども、第一感、これはうまくいくなとかいかぬなというのは、我々の感覚であるわけですね。やっぱりそういう意味では、この法律を実行する過程の中では、よっぽどやり方をうまくやらないと、これは絵にかいたもちになってしまうんではないかな、このように思いました。  このみそといいますかポイントになるのは、一つはベンチャープラザ事業のやり方ですね。これは、これまでの報告をいただいておりますが、これをやるなら本格的に若干通産省が前に出て、いろいろ批判があっても前面に出てやることが必要ではないか。そこで機運が盛り上がってこなきゃ、幾ら若干の税制の措置をしたとしても、これは大した税制の措置じゃありませんから、そう簡単にはいかないんじゃないか。熱い思いで、やはりこういう法案を提出してやるという以上は通産省の取り組みを期待したいんですが、大臣、決意を聞かせてください。
  84. 佐藤信二

    ○国務大臣(佐藤信二君) 今おっしゃることもなるほどなと思うと通産大臣としては務まりませんので申し上げますが、今御指摘のように、この発想というのは、これからの経済空洞化、こういうことを考えた場合に、どうしても新規産業、そのときに中小企業の方々に頼らざるを得ないと。やはり将来を明るいものにしていかぬといけない。  御存じのように、企業を起こすという場合には、資金と技術人材、これが三要素だと思うんです。そのうちにおいて、貴重な技術は持っている、いわゆる人材的、またその経営者が人物的にはしっかりしている、いかんせん金がないと。こういうことで、今おっしゃるように、まさに国を挙げてやるべきことだと思うんですが、しかし現実問題としては、こうしたベンチャー財団にしろ、やはり国からの出資ということになると、今のような財政状況だと。ほかのことでよく言われるように民間活力、こんなことを言うように民間の方が金を持っている。こういうところから、何とかこうした新しい企業産業を起こす人たちに対して支援するのを官民一体となってしなきゃいけないだろうということからいって、まずこうしたベンチャーというものに対して、その持っておる性格、そういうものを一般の方々にも知ってもらおうというのが私は今度の法律として一番大きい意味だろうと思うんです。  そういうことによって、そういうふうに時代が変わって、少しでも自分が持っている金を有意義に使ってもらおうということでもって出資してもらう、金を出してもらうと。しかし、その場合にもやはり非常にリスクが伴うわけですから、それを少しでも行政をして助ける方法はないだろうか、こういうふうなことでこの法律を出したということでございまして、今委員指摘のように、我々としてはない知恵を絞ったというふうにお考え願いたいと思っております。
  85. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 ベンチャープラザ事業というのは、少し資料をいただきましたが、概略先ほど皆さんからもずっとお話がありましたマッチングコーナー、アドバイスコーナー、啓蒙施策普及コーナーとか、そういうものを設けてやって、たくさん集まるという、これはおもしろい取り組みだと思いますが、その中から生まれた成果、その実感といいますか感触といいますか、そういうものがあれば教えてください。
  86. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) いわゆる出会いの場ということで平成八年の三月に東京でやりまして以来、各通産局管内ブロックで実施をしておるわけでございますが、これで合計累積で十四回にわたります。こういったベンチャープラザにおきましては、延べで言いますと六百社のベンチャー企業が御自分の企業の構想、展望を述べられて、千六百名の投資家の卵といいますか、投資の意欲を持っておられる方の参加が得られたわけであります。  まだそんなに年を重ねておるわけではございませんけれども、具体的な成果としましては、平成八年三月のベンチャープラザについてフォローアップをいたしておりますが、その場でプレゼンテーションに参加した三十社のうち、約半数の企業投資または融資を受けられたということになっております。また、六割の企業が、初めての試みだったこともありましょうけれども、マスコミ等に取り上げられていろいろ信用が増したというようなことを指摘されているなど、私どもが期待をしていた以上の成果が出たんじゃないかと思っております。  私も、先日の早稲田大学で行われましたベンチャープラザ、ちょっと拝見をしに参りましたけれども、その節、ある社長さんにお会いをいたしました。これは一つだけの具体例で恐縮でございますけれども、神奈川県で金属の加工・溶接技術を一生懸命やっておられる小さい企業でございます。従業員数が十八名というような企業でございますが、第一回のベンチャープラザに参加をいたしました結果、ベンチャーキャピタル二社から一億円ずつの出資を得られましたし、それから自治体からも七千万円の債務保証が得られたというようなことで、その上に大手新聞に十数回記事に書いていただいたというようなことで、大変に喜んでおりまして、大企業を含めて新たな取引先が十社以上ふえた。さらに、何とシリコンバレーの企業やスウェーデンの企業からも問い合わせがあったりなんかしておるのだそうでございまして、こういった話は大変私どもとしては心強く、うれしく思う次第でございまして、引き続きフォローアップを続けるかたがた内容の改善や、それから今年度から都道府県のプロジェクトにも御支援を申し上げることにいたしておりますが、そういったことでベンチャー企業者と支援者の方の利用しやすいものになるように努力をしていきたい、こういうふうに存じております。
  87. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 出資を受けられたという、その出資をした人は天使さんですか、それともベンチャーキャピタル、要するにそういう財団ですか、それとも個人から。
  88. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) 今申し上げました例ですと、ベンチャーキャピタルでございます。  それから、私先ほど一億ずっと申し上げましたが、合計二社で一億でございます。失礼いたしました。
  89. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 法案の意図しているところは、アメリカの例にならってエンゼルが登場することを究極の焦点に当てておりますが、十四回やりましたプラザ事業の中でそういう個人の投資家、そういう人の参加というのは大体どういうぐあいなんですか。そこの感触はあるんですか。
  90. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) 先ほど、私三月の早稲田のベンチャープラザにお邪魔をしたと申し上げましたが、その早稲田のプラザでは三百名を超える投資家に御参加をしていただいたわけでありますが、そのうち個人の投資家が約六十名、二割ぐらいは個人の方だというふうに承知をいたしております。
  91. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 この個人の投資家をふやしたいんでしょう、エンゼルというのか何か知らぬけれども。アメリカにそんなにエンゼル様がおるならば、アメリカの彼らも投資をすることは可能でしょう。その辺はどうなんですかね。
  92. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) エンゼルというのは、アメリカにおきましてベンチャー企業を積極的に育成しようという個人投資家のことでございまして、起業家から見ると天使のように見える、そういうことでそう呼ばれていると聞いております。  このエンゼルというのは、アメリカではベンチャー企業にとっては最大の資金供給源になっているわけでございます。数で申しまして、大体百万人ぐらいいるんではなかろうかと言われております。年間収入が千五百万円以上の人が百六十万人、こういうことでございます。日本では千五百万円以上の年収がある方は六十万人、そういう一応の数字がございます。その六十万人の方がエンゼルになってほしい、こういうふうに私ども願っておるわけでございますが、そのためにはこういう税制の整備のほか、いろんな意味での環境整備が必要であると考えております。  アメリカのエンゼルが日本投資をするようなことを考えたらどうかというお話でございますが、そういうのはやはり証券市場の透明性を高めるとか、あるいは日本ベンチャー企業情報開示を十分にしていく、そういったようないろんな意味での環境整備が必要であると考えております。そうした面で充実していけばアメリカのエンゼルも日本投資していただけるようになる、そういうことにしていきたい、そういうふうに考えております。
  93. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 それから、先ほど沓掛委員の方からもお話がありましたように、五年というのはちょっと短過ぎるんじゃないかと思うんです。  例えば、中小企業でうだつが上がらぬで、厳しい線を越えていたけれども、考え抜いた末に新しい方向に着目して、研究を始めて事業化をしていくという場合もよくあるんですね。事業開始後何年というのはどういう意味ですか。新しい事業でしょうか、それとも会社経営そのものを始めて何年と、どちらにウエートを置きますか。
  94. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) 今回のエンゼル税制にかかわりまする対象企業は創業期の中小企業ということで、会社を設立してから五年以内の企業であって、ほかの要件も多少ございますけれども、そういうものを対象にいたしております。  この趣旨は、創業期の企業につきましてはまだ信用力も非常に乏しい、なかなか会社の創業を立ち上げるに要する資金を集めるといったことが困難でありますし、もちろん技術面、経営面もいろいろ困難も多いわけでございますが、資金面につきましてもそういうことでございますので、特にそういった期間につきまして税制上の措置を講じて、今回の場合につきましては個人の投資家からの投資の円滑化を図る、こういう趣旨でございます。
  95. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 そこがちょっとかたいんですね。例えば、中小企業創造活動促進法認定実績一覧というのをおたくからいただきました。その中で、私の地元の大分県を見ますと二十八ぐらいあるんです。地元ですから、知っている企業が大半ですね。これらはもうできて随分たっているのが指定をされておりますよね。そこはどのように考えるんですか。
  96. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) 現行の創造法は、研究開発等事業計画の都道府県知事による承認を受けて研究開発を一生懸命される方に対しまして、税制あるいは金融上の措置で御支援を申し上げていくものでございますが、適用企業は、必ずしも創業といった側面でものをとらえてございませんので、創業の企業もあれば創業後比較的長い企業対象になっておるということでございます。
  97. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 それから、中小企業事業者が創業時に障害となった要因の中で、これは中小企業庁中小企業経営状況実態調査というのに基づいて調査をされたその状況を見ますと、その障害となった要因の中で一番大きいのは自己資金の不足です。それから、借り入れによる資金調達が困難、二八・三%、その次に出資による資金調達が困難、これが六・七%、このようになっておりまして、これはもう皆さんお互いの常識です。いろいろと施策がありますが、金を借りに行っても担保とか経営状況とか、過去何カ月間の、何年間の決算を見せてくれと。そこで優劣がついてくるんですね。なかなか簡単ではない。それで、エンゼル様か何かあらわれてさっといけばいいんですけれども、今のお話聞いても、これもなかなか時間のかかることです。  当面の問題の解決として一番いいのは、認定した事業については信用保証協会が優先的に保証する、担保がなくてもですね。何かそういう思い切った手がないと——信用保証協会というのを見ますと、国の経済が悪くなって不況になったら代位弁済が物すごくふえるんですね。しかしまた、いっときしますと、その代位弁済も景気がよくなり出すとその率が非常に減ってくるんです。信用保証協会は、ここも担保とか何とかいって通産省から今も非常に締めつけが厳しいんでしょう。非常にかたい。かたいけれども、少なくともこういうベンチャービジネスにはある程度、当分エンゼル様があらわれる前には、今自己資金の不足というのは四五・二で、借り入れの資金調達が困難、二八・三、ここに障害があるわけですから、ここをひとつもう少し考えていただきたい。何かありましたら。
  98. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) 創業期の企業、ベンチャービジネスに対しまして円滑な資金供給ということを考えますると、いろんなチャネルから資金の円滑な供給が図られるということが大変大事だと認識をしてございます。  今回は、個人投資家のお金も預かって貢献をしていただきたいという趣旨でございますが、ベンチャー財団の制度は昨年つくらせていただきましたし、政府金融機関からの融資制度もございます。御指摘の信用保証制度につきましても、創造法の認定を受けた者につきましては債務保証の限度額を、これは保険で限度額を広げておりますので、結果として保証協会がそういった保証の制度をつくる、こういうことでございますが、普通の債務保証の限度額が二億円でありますところを三億円に拡充する、あるいは無担保枠につきましても五千万円から七千万円に拡充をするというような債務保証の特例の措置を講じておるところでございます。
  99. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 まあ、そこいらの後ろの人が資料をくれたんでしょうけれども、私は、信用保証協会に金を借りにいった連中が何人も来て、皆さんだったら、そこで何が問題で借りられたのか借りられないのかというのは全部わかるんですよね。そこで、ベンチャービジネスとして県が認定した企業等については、そうすぐエンゼル様があらわれるわけじゃないから、当分はここらを活用するようにしたらどうですかということを言っておるんです。  アメリカのまねもいいですけれども、日本でも松下幸之助さんがソケットから事業を起こした、あるいは本田宗一郎さんの単車づくり、それから京セラの稲盛さんが苦労した話なんか私は聞きました。本も読みました。私の身近に森喜作というシイタケの種ごまを考えついた人が、この人がもう本当に財産も売り払って、裸で仕事をしてやっとできて、できたけれどもだれも使ってくれない。大分県のシイタケ組合が、よし、それならうちが使ってみようということでやって、出たんです、シイタケが。本当に苦労した話も聞きましたし、こういう例はいっぱいあると思うんだ、日本には。こういう人たちの本当に苦しんだ、そして苦しみのあげくにうまくいった、そういう例をやっぱり精査して、そして配る。今こういうベンチャービジネスをやっている人は、ほとんど成功する人の方が少ないと思うんだね。少ないけれども、希望を持ってやれるような、何か日本型の企業起こしに対して参考になり血が沸くような、そういうものを用意をしたらどうか、このように思うんですが、いかがですか、最後に。
  100. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) 何度も申し上げて恐縮ですけれども、ベンチャービジネスに多くの企業が果敢に挑戦をしていただいて、いろんな困難もあるんですけれども、あえてそれに打ちかって挑戦をしていただくという観点からは、資金面の問題、経営面の問題、技術面の問題等々いろんな意味環境整備を行い、かたがたそういったものを育てる、それが日本の将来を担うんだということを国民の皆様にも御理解をいただくというような多面的な総合的な環境整備が必要だというふうに考えております。  ただいま先生のおっしゃったようなことは大変示唆に富む御指摘でございまして、ベンチャービジネスはこんなに一生懸命やっているんだというような例を私どももできるだけ集めて皆さんに御理解いただいてPRに相努めてまいりたい、そういうふうに思う次第でございます。
  101. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 終わります。
  102. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 午前中から今の梶原先生のお話も含めて、今の日本産業、特に経済の置かれている状況考えて新しい業を起こす、産業構造を転換していこう、そういう視点からベンチャー育成についてさまざまな手だてを講じるということについては基本的に私も賛成をしているわけですが、特にここで言うベンチャー企業というものをどんなふうな概念でとらえておられるのか。  といいますのは、例えば従来型の経済の構造の中で見てみますと、大企業というのはむしろ今人を減らしているわけですね、生き残りのために。その分を製造業で仮に吸収をしようということになると、かなりの数の企業を起こしていかなきゃならないんですね。ですから、新しい創造的な業を起こすということだけではなしに、全体としての中小企業の起業数がどうなっているのか。あるいは廃業との関係は、一時期言われたように起業数がむしろ廃業数を下回っている、これを何とかしたい、こういうことだったはずなんですが、その辺のベンチャーというものの位置づけと、それからそういうものを含めた起業数あるいは廃業数の関係が最近どうなのか。  ここ数年、通産省は一生懸命この問題に取り組んでおられますので、その辺の経過についてちょっとお聞かせをいただきたいと思うんです。
  103. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) ベンチャー企業と言う場合に、今委員おっしゃいましたように具体的にどういうものを言うんだというお話でございますが、定義づけというのははっきりしたものがあるわけではございません。一般に独立性、成長性が高く、商品、サービスあるいは経営システムに独創性のある企業のことを指していると言われています。こうした企業が新しい産業の担い手であり、日本経済を牽引していくものだと、そういうふうに期待されているということでございます。  中小企業創造法では、対象企業を創業から五年以内の製造業等一定の企業の者、あるいは試験研究費の売上高に占める比率が三%以上の者等々の定義がございまして、一応ベンチャー企業の範囲の確定に努力はしているわけでございますけれども、具体的にこれといった範囲はございませんので、統計は残念ながら明らかでないということでございます。  全体の数字を開廃業で見るとどうだと、こういうお話がございましたが、最近では開業率が四・六%、一方廃業率が四・七%、これは一九九四年の数字でございますが、開廃業が逆転している、こういう状況は御案内のとおりであります。アメリカは逆でございまして、開業率が一三・六%、廃業率が一一・六%、こういうふうになっております。そういうふうに全体で見ますと、我が国事業を起こす起業状況というのはまだまだ活性化していないという状況にあろうかと思います。  どのくらいの数をイメージしているのかというふうに言われますと、なかなか難しいんですけれども、ある研究所のデータで見ますと、中堅企業、株式会社約百万社を見ますと、七%以上成長している企業はどうかと見ますと、いわゆる元気印の中堅・中小企業ということになりましょうか、それが全体の二・三%ということで二万三千社、こういうデータもございます。これでは全体から見ますとまだまだ不十分でございます。  したがいまして、きょう御議論いただいておりますようなエンゼル税制も含めていろんな意味でのベンチャー企業の振興のための環境整備に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  104. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 そこで私は、ここ数年、いわゆるバブルが崩壊をした後の中小企業金融の問題について、特に中小の場合には、先ほど梶原先生からも御指摘がありましたが、なかなか金融、資金繰りが必ずしも十分にいかないという、経営上大変だというふうに言われているわけですが、最近の中小企業における資金調達、その中でもいわゆる政府系の公的な金融機関とそれから民間の場合の状況がどうなっているのか。政府系の金融機関につきましては、いわゆる五%を超える部分についての借りかえといいますか、これについてさまざまな手だてをとっていただいて、まだ継続中でございますかね、こういう状況が最近どうなっているのか、その点を含めてもしわかりましたらお伝えいただければと思います。
  105. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) 中小企業資金調達でございますけれども、例えば設備資金の数字を、手元には設備資金しかございませんけれども、やはり内部資金等が三割程度で七割ぐらいは借入金に依存をしておるというような状況になってございます。  中小企業の資金繰りは、昨今、例えば直近の三月の日銀短観等で見ましても、楽だという企業から苦しいという企業数を引いた資金繰りのDIで見まするとマイナス七というようなことで低迷をいたしておりまして、大企業がプラスということになっているのに比べまして依然として厳しい状況が続いておるというふうに認識をいたしております。  借入金全体、先ほど設備資金では七割と申し上げましたけれども、政府系のウエート中小企業資金調達の全体の中で中小企業金融公庫や国民金融公庫や商工中金合わせまして大体八%程度ということで、全体の景気回復基調にあるとはいいながら、中小企業設備投資がまだまだ一歩二歩おくれております関係でなかなか資金需要も出てきておりません。そのあたりで資金需要は低迷をしておるといいますか、大きな動きを見せていないという状況になっておるかと承知をいたしております。
  106. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 確かに、これから業を起こそうという場合、なかなか民間の金融機関が、先ほどからのお話のように、十分な担保があるわけでもない、あるいはもともと業を起こしていたわけじゃありませんから信用もない、金を貸すというところはなかなかないわけですよね。そこで、今この法律でも議論をしておりますようなベンチャーに対する民間の支援、なかんずく個人の投資家を呼び込もうということなんだろうと思うんです。  そこで、私は、日本アメリカの場合、特にアメリカの場合にはいわゆるエンゼルというものがかなりもう定着をし層も厚いといいますか、こういうことは常々報告を聞いたりあるいはニュース等で見ておるんです。ただ、これが日本に本当に定着をするのかなという点については実は甚だ懐疑的でありまして、調査室の方でもいろんな資料をつくっていただいて見ているんですが、例えばアメリカのエンゼルの場合の資産、個人の持っている資産ですとかあるいは収入ですとかさまざまな条件を見ていまして、果たして日本でこういう資産というと、例えばアメリカの場合には住宅を除いても大体一億円ぐらい持っているんじゃないかというふうに言われているんですが、日本の場合に果たしてそういうことになっているんだろうかな、あるいはそういうような人たちが起業なりあるいはベンチャーにみずから投資をしようということになるんだろうかなと。  通産省がお考えになっているようなこととどうも違和感が正直言ってあるんですね。もちろん、それは期待をされているということ、あるいはそういう芽を育てようという意欲を否定するんじゃないんですよ。否定をするんじゃありませんけれども、アメリカ的な土壌と日本的な土壌の違いも含めまして、その辺についてどんなような認識をお持ちなのか、あるいはどんなこれからの期待感をお持ちなのか。午前中や午後の質疑と若干ダブる点がありますが、お聞かせをいただければと思うんです。
  107. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) アメリカの例と日本の例の比較をして日本にエンゼルは根づくかと、こういう御質問であったかと思います。  先ほどもお答え申し上げましたように、アメリカにおけるエンゼルの数は約百万人と言われております。日本でエンゼルの担い手として考えられますのは、みずから事業経験を有する成功した方々あるいは技術、経営等に専門的な知識を有する方々あるいは一定の資産、収入を有する方々、そういったことが想定されるわけでございます。これを収入の面で仮に一千五百万以上の年収を得ておられる方というふうに考えますと、現在六十万人ほどおるわけでございます。これが先ほど申し上げた方々から見てどういう方々がエンゼルになっていただけるかと、こういうのが最大の課題かと思うわけでございます。  日本にどの程度根づくか、今後の努力によることが多いと思いますけれども、最近エンゼルの顕在化というようなことがいろいろな面で起きてきていることもまた事実だろうかと思います。エンゼル等の組織化がいろんな意味で報じられております。これは、成功した方々が自分の経験をもとに、そうした資金面で苦しむベンチャー企業に対して仲間を語らって投資をしていこう、こういった動きが見られるわけでございます。今回の税制も含めまして、先ほど来ベンチャープラザのお話もございました。いろんな活動を活発化してできるだけ多くのエンゼルを育てていきたい、そういうふうに考えております。
  108. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 意気込みやあるいは期待を否定するつもりじゃもちろんありませんので、私どもが果たせる役割は果たせる役割としてしていきたいと思うんです。  ただ、午前中も沓掛先生の御指摘の中で、細かく少し改正し過ぎじゃないのという話がございましたですね。たしかこれ平成七年にできた制度、昨年はベンチャー財団というので一部改正をして、今回またこのエンゼル税制について改正をして、要するに効果を検証する間もないくらい次々と改正をするんですね。これは小回りのきくのは大変いいことなんですが、今まで何が足りなくてどういう手だてをすればいいんだという改正の目的そのものが、こういうふうに年じゅう変えますとあいまいになってしまうという危険があるんですね。私はそんな気がするんです。  ですから、その辺はこの後きちっとフォローをしていただいた上で、こういう点に問題があった、したがってこういう点をこういうふうに改正すればこういう効果が発揮できるというようなものをできるだけ明確にできるようにひとつこれからは御努力をいただきたい、これは要望としてとりあえず申し上げておきたいと思います。  そこで、現在は国の方の直接の出資はしておりませんが、一応法律で定められています中小企業投資育成株式会社、この件についてちょっとお聞きをしたいと思うんですが、現在三つの会社がございますが、それぞれの経営状況についておわかりでしたら、ごく簡単で結構ですが、御報告をいただければと思います。
  109. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) 投資育成会社は、昭和三十年代の末に特殊法人として中小企業の自己資本の充実ということを目的として設立をされたわけでございますが、六十一年に御指摘のとおり民営化をされております。  この三社合計で申しますと、投資残高は三月末現在で千六百七十六社に対しまして七百十八億円の投資残高がございます。累計で申しますと、二千五百八十五社、千二百八億円、こういうことになってございます。  投資育成会社の収支状況でございますが、配当収入のほか、もちろん無配のものもございますけれども、近年の投資企業の上場とか店頭公開といったようなこともありまして、比較的順調に推移をいたしておると承知をしております。
  110. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 実は一昨年でしたか、私もこのことについてこの委員会質問をさせていただいたことがあるんですが、かなりこの会社の株式投資を求めるには条件がきついんですね、それなりの収支状況が担保されていないといけないとか。これらについては、たしかこの前の委員会の中ではそう機械的にはやっていません、弾力的にというお話がありましたけれども、私は今度の法改正の中でも要件緩和をするということは大変結構なことなんですが、どうも今お話をお聞きしまして、それなりの経営状況だと、ある意味じゃ当たり前と言ってしまえば当たり前なんですね。投資をするに当たっての投資の要件を厳しくしておけば、しっかり利益が出るような仕組みというのはっくれるわけです。  ただ、その場合、私大変気になりますのは、地方公共団体もかなりの出資をしているんですね。そのことが結果的には会社の運営あるいは投資の要件等について厳しくせざるを得ないということがあるんじゃないかという思いがあるんですが、その辺はいかがなものですか。
  111. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) 中小企業投資育成株式会社は、先ほど申し上げましたように、五十八年の臨調答申で、六十一年に民営法人化されました。同社が会社の経営基盤を安定させて、再投資を継続しながらできるだけ中立的な投資を行っていくというためには、成長性とか収益性といった観点も必要な観点というようなことで、一定の基準に即した事業活動が行われておるわけでございまして、地方公共団体が出資をされておられるからというようなこととは直接の関係はないんじゃないだろうか、そういうふうに存じております。  なお、投資企業が創業期の企業であるような場合などにつきましては、先生おっしゃられた基準というのは、例えば配当率でありますとかそういうことなんでございましょうけれども、こういった形式的な基準によらないで経営者の能力とか事業計画の妥当性でございますとか、会社の成長性などを総合的に勘案をして投資を行う、こういう運用をいたしておるやに承知をしております。
  112. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 片やいわゆる個人投資家、エンゼルを求める。私はベンチャーとかあるいは業を起こすという場合のいわゆるリスクというもの、時として先ほどからも議論がありますように、この種のものというのはいわゆるハイリスク・ハイリターンということでかなりリスクを伴うものなんですね。片やエンゼルに対してはさまざまな税制上の優遇措置も講じながらそれを求めておいて、一時期国がかかわって、今民営化されているとはいうものの、投資株式会社のように本来中小企業を育成する目的でつくった仕組みが、堅実に堅実にということでやっておくというのは私は何となくちぐはぐなような気がするんですよね。この辺についてはどうなんですか。
  113. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) 一部繰り返しになりましてまことに恐縮でございますが、投資先が新設企業の場合とか、それから投資企業がベンチャービジネスの場合等につきましては、配当あるいは利益、一株当たり利益といったような形式的な基準に必ずしもとらわれないで、実態を判断させていただくといったような運用もいたしておるところでございまして、しかもそういうことになればこそ、なればなるほどといいましょうか、リスクを伴うというようなことでもございますので、今回、個人投資家に対しましてエンゼル税制を設けさせていただくということと直接関係があるわけではございませんけれども、中小企業投資育成株式会社につきましては、平成六年度から中小企業の創業に伴うような政策的な投資案件につきましては、毎年度投資額の一定割合を準備金として積み立てるというようなことでリスクを軽減するための仕組みを設けさせていただいたところでございます。  また、昨年の四月の創造法の改正の際に、いわゆるベンチャー財団というのを法的に措置をいたしまして、債務保証等による支援をいたしたわけでありますが、保険公庫からの再保険を含めた債務保証制度の仕組みをつくったわけでございますが、中小企業投資育成会社もこの場合のベンチャーキャピタルとしてこの措置対象になるというようなことで、リスクの軽減がその限りで図られるということになってございます。
  114. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 中小企業の皆さん方にしてみれば、かつては政府が一枚かんでいた投資会社ですから、それなりのことはやっぱり期待をされると思うんですね。ですから、今さまざまな手だては講じておられるということですから、ぜひこれからもベンチャーに対する支援というのは、こういう会社を通じてでもきちっとできるような仕組みをさらに御努力をいただきたいということをお願いしておきたいと思います。  そこで、中小企業の会社の皆さん方、特に私の場合には製造業の皆さんとのおつき合いが深いものですから、物をつくっておられる方々といろんなお話をしておりますと、金融とかあるいは資金繰り以外にさまざまな悩みを抱えておられるんですね。それは、例えば新しい技術を開発したい、あるいは何かないだろうかと思っても社長一人の頭じゃどうにもなりませんから、そういう意味では優秀な技術者もほしい、あるいは人材確保したいよというような人の面での悩みがまずあります。  それから、仮に新しい業を起こしましょう、あるいは何か新しい製品を考えつきました、ごく簡単なものですからつくりましたといった場合でも、どうやってそれを販売ルートに乗せていったらいいんだろうか、もう既にそういう経験がある方はいいんですけれども、そうでない方の場合、販路とかあるいは営業だとか。あるいはこういう製品を一つ考えついて商品化をしたんだけれども、もたもたしているうちにすぐ寿命が来てしまうとか、商品サイクルが速いですから、今。果たしてそれだけのために投資をして元が取れるんだろうかというような不安ですとか、さまざまな問題があるわけですね。そういう投資をしたものを回収ができるんだろうかということもありますし、あるいは非常に付加価値の高いものをつくることによってコストが多少高くてもペイできる、あるいはこれは非常に簡単なんでひとつ量産をして数で稼ごう、さまざまな仕組みというのはあるんですね。そういう問題について特に製造業中小企業の皆さん方、日夜考えておられるわけです。  そこで、私は大臣にお願いをしておきたいんですが、今御承知のように、規制緩和でさまざまな競争政策というのが導入をされていますね。既存の大企業と今これから業を起こそうという中小、まさに零細ですね、これからベンチャーとして何か起こそうという方々とが対等に競争できるような条件をつくっていただけないだろうか。これは何もそのことだけを優遇しろと言っているんじゃないんです、ずっと優遇しろと言っているんじゃない。少なくともスタート段階で同じような条件で戦えるような仕組みをつくっていただけませんか。  これはちょっと事情が違う話なんで恐縮なんですが、せんだっても実は電気商の組合の方と懇談をしまして、さまざまな要望を寄せられました。御案内のように、電気のYKKというんですか、ヤマダ電機、コジマ電機というような安売りのあれと、片や町の電気屋さんとの熾烈な戦いが今展開されているんですね。今、大店法の問題やさまざまな規制緩和が進んでいまして、中小企業庁さんにもお願いをしたり、あるいは公取さんにもこれは何とかならないのかということでお願いをしていますが、なかなか的確な手が打てない。  私は、今度のベンチャーの問題というのは、これとはちょっと質が違うかもしれませんが、例えば町の電気屋さんがつぶれていくということは雇用の問題ですね、町の問題ももちろんありますが、雇用の問題もあります。新しく何か業を起こそうという意欲を持った方々をやはりそれなりに条件を整えてやることによって既存の大企業競争させても大丈夫だというような、スタート段階での条件づくりといいますかルールづくり、こんなことを私はぜひ考えていただきたい。できれば大臣にこの辺のところの、政府全体としての規制緩和を私は頭から否定をしているつもりじゃないんです。ないんですけれども、ねらいとする、新しい産業を起こそう、あるいは雇用を何とか拡大していこうという意味からそういう意欲を持っている方々が対等に戦えるような、あるいは対等に商売ができるようなルールづくりについて、大臣の御決意をちょっとお聞かせいただきたいと思うんです。
  115. 佐藤信二

    ○国務大臣(佐藤信二君) 今、前川委員指摘のように、規制緩和、これは我が国経済高コスト構造是正して、ビジネスチャンスの拡大やベンチャー企業の育成などのメリットを中小企業にももたらすものだと、かように実は認識しておりますが、一方では、今御指摘のように、規制緩和によって一部の中小企業痛みを生ずること、これも事実でございます。  こうした点を考えまして、昨年の十二月に「経済構造の変革と創造のためのプログラム」、これでもその点は言及してございますし、規制緩和実施に当たっては、重大な影響を受ける事業者に対する構造改善や新分野への進出のための支援策等の環境整備に万全な配慮を行う必要がございます。また、規制緩和により市場原理に基づく自由な競争を促す一方では、大企業及び中小企業両者にとって公正な競争秩序というものを維持することが必要不可欠でございます。そこで、不当廉売だとか優越的地位の乱用等の不公正な取引に対しては、独禁法によって厳正にこれに対処していく、こういうふうな方針でございます。  なお、きょう先ほどからお聞きしておって、今のベンチャーに対するうちの方の事務方の答弁を聞いていて、前川委員もそうですし、それから梶原委員も、大体戦前生まれの方というのは私も含めてやはり同じような感覚を持っているなと思うんです。これは一つだけつけ加えますと、やはりベンチャーというものが持っている性格というもの、先ほども御指摘がございましたようにこれがどうもはっきりしていないというか、明確な定義がないところに問題があろうかと。これはもう委員御存じのように、この語源というのはアドベンチャーからきているということで、アドベンチャーということは冒険ですから、まさにハイリスク・ハイリターン、リスクがあるということだと思います。  そこで、これからの中小企業を一体どうするかということになると、やはり既存というか今まであるのがベースになって、それはあくまでもある意味では地味かもわからないけれども、これは金融措置その他のあらゆる施策を通じてこれを保護育成していく。ところが、新しい時代になって、しかも新しい産業、本当にやってみなければわからないというようなものをいかにして育てるかというのが実はベンチャーというものに対する支援だ、こういうふうに御理解いただきたい、かように思っております。
  116. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 時間がありませんので、最後に長官にお伺いをしたいんですが、実はせんだって北陸経済連合会が研究会をつくってまとめた「北陸における新技術・新産業の創出」という報告書をいただいて、私も生まれが富山県なものですから関心を持って見ておったんですが、その中でもやはり今のベンチャーの問題やなんかもかなりいろいろと書かれておりまして、私はこれを見ながら先ほどちょっと申し上げた中小企業の悩み、これを裏返しますと大企業はみんな持っているんですね。人もある、あるいは営業の販路もたくさんしっかり持っている、さまざまなものを持っているんです。中小がこれから何か始めようとしたらほとんどないわけです。そういうものがうまくドッキングができないかどうか。  大企業というのは割合柔軟性がないものですから、さまざま今工夫はしておられるようですが、ところが中小、これから業を起こそうという方々は、いろんなアイデアは持っているけれども、それをつくる工場もない、機械もない、金もない、あるいはつくっても売るルートもない。ところが大企業は持っているわけです。これをうまくドッキングできないか。そういう一つのルールができないものかどうか。  それから、この報告書の中にもあるんですが、それぞれの大企業の場合にはいろんな研究所を持っているんですね。例えば、大学と提携をしたりあるいは企業の研究所と提携をしたり、さまざまなことが実際には地域においてやられているわけです。そういうものをやはり通産省全体としての仕組みの中に組み込むようなものが何かできないものかどうか。ぜひ長官にもお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  117. 石黒正大

    政府委員石黒正大君) お答え申し上げます。  二点、中小企業と大企業をドッキングする新たなルールができないかという点が第一、第二が大学等との連携、このあたりをパッケージとしてやっていったらどうかという御指摘でございますけれども、まさに時代はそういう時代に入っていると思います。  先般御審議いただきました特定産業集積活性化法の審議の際も申し上げましたけれども、物づくりネットワークというような話も私どもの方からいろいろさせていただきましたけれども、物づくりネットワークというのは、ある意味ではそれぞれいろんな分野、販路の開拓の方からも、それから物づくりの方から全部含めまして、技術人材だ資金だ、そういうことも含めまして、パッケージとして一番いい形はどういうものかというのを追求するためのネットワークづくりだというふうに考えられるわけでございます。  これは別に日本だけじゃなくて、アメリカにおきましてもアウトソーシングという流れの中で一番得意な分野、中小企業であろうが大企業であろうがそれは問わず、そういうのをさっさっさっと集めてきて最適のサービスあるいは物の提供をするという形でのバーチャルオーガナイゼーションなんという形も出てまいっておりまして、そういう社会になりますと、まさに中小企業の機動性と申しますかよさといいますか持ち味といいますか、そういうものが生かされる社会になる可能性を秘めているというふうに考えております。  したがいまして、先般の空洞化対策での法案もそうでございますけれども、日本の中におきましても、今御指摘の北陸でもいろいろ勉強が進んでいるやに伺いましたけれども、各地でそういう萌芽が出ておりますので、私どもといたしましてはそういう環境をサポートすべくいろんな施策をそこに集中的に投ずるという形で進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  118. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 終わります。
  119. 山下芳生

    ○山下芳生君 私どもは、今回の法案は創業期の中小企業資金調達促進する可能性を含んでいるというふうに考えるものでありまして、法案そのものには賛成です。    〔委員長退席、理事沓掛哲男君着席〕  ただ、この法案の目玉であるエンゼル税制についていえば、この制度に過大な期待を寄せるのほかえって危険だというふうにも思うんです。なぜならば、この制度によってエンゼルと呼ばれる個人投資家が急増して、それでエンゼルの株式投資による創業期の中小企業に対する資金供給が急増するとは私到底思えないからであります。  そこで、まず聞きたいんですが、現在、我が国にはエンゼル、個人投資家と言われる人たちは何人いらっしゃるんでしょうか。
  120. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) エンゼルという言葉自体アメリカから来た言葉でございまして、これは創業期のベンチャー企業に対する個人投資家と、こういうことでございますが、日本でそのエンゼルの担い手として考えられるのは、具体的にはみずから事業経験を有する者、技術、経営等に専門的な知識を有する者、あるいは一定の資産、収入を有する者というような方々が想定されておるわけでございますけれども、具体的な数については掌握しておりません。大体千五百万円以上の収入の方が六十万人ございます。アメリカではエンゼルは百万人ということでございますが、年収一千五百万円以上でございますと百六十万人の方。百六十万対百万ということでございますから六十万対幾らになりますか、これをなるべく多く育ててベンチャー企業に対する資金供給の人々となっていただきたい、こういう希望を込めた今回の法案改正でございます。    〔理事沓掛哲男君退席、委員長着席〕
  121. 山下芳生

    ○山下芳生君 結局、現在何人いるかというのはわからないということでして、非常に頼りないと私は思うんですね。  これはなぜそういうことを言うかと申しますと、創業期の中小企業の資金需要の大きさと比べて、現在このエンゼル、数はわからないけれども恐らく何人かいらっしゃるエンゼルの数が圧倒的に少ないということは、これは間違いないわけです。  例えば平成七年十一月の中小企業庁中小企業経営状況実態調査によりますと、創業時の資金調達方法をいかにしてやったか。このトップは自己資金、これは七〇・二%。その次が民間金融機関からの借り入れ二四・一%。次が知人・親戚からの借り入れ一七・〇%。その次が知人・親戚からの出資八・九%。そして、政府金融機関からの借り入れ八・一%。元の勤務先・親企業からの出資六・一%。同じく元の勤務先・親企業からの借り入れ四・三%のその次に個人投資家・ベンチャーキャピタルからの出資一・一%ということになっているわけでありまして、しかもこの中にはいわゆる証券系や銀行系のベンチャーキャピタルが入っての数字ですから、個人投資家、エンゼルというのは極めて少ないと言わざるを得ないのが現状ですね。  四月二十日に報道されましたリクルート社の起業家調査報告を見ましても同じような傾向が出ておりました。三十六歳が平均的な起業家の年齢だそうですけれども、大体最初の資金が一千万円余り必要だと。やっぱり今のような割合で借りている、調達している。ベンチャーキャピタルからの出資を受けている人は比率で言えば〇・八%だということであります。  ですから、いずれにしても非常に少ない。この現状を変えたいというのが今度の法律のねらいであり、皆さんの願望だというふうに思うんですが、一体どこのだれがエンゼルになるのか、そしてその株式投資をするために必要な資金をどこから持ってくるのか。これ、どうお考えでしょうか。
  122. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) 先ほども申し上げましたように、日本のエンゼルの担い手として考えられますのは、具体的にはみずから事業経験を有する者あるいは一定の資産、収入を有する者等でございますが、最近では店頭市場が充実してまいりまして、店頭公開をした企業で大変な資産家も出てまいります。昨年ではそういういわゆるオーナーが百三十七社ほど出ております。そういう方々がエンゼルとしてこうしたベンチャー企業を自分の経験を生かしながら育てようということで連携する動きも出ております。そうした動きがいろんなところで起きてまいりまして、これが全体として大きな力になってくる、そういうふうに期待しておるわけでございます。
  123. 山下芳生

    ○山下芳生君 今、具体的な方々のイメージをお言いになりましたけれども、法律の趣旨、それから通産省の説明によりますと、やはりエンゼルとして期待をするのは一千二百兆円の個人資産ですね。この中から幾らかそういうふうに回ってくればというのを全体とすれば想定されていると思うんですね。私は、それは想定はいいんですが、想定どおりいくというふうにはなかなか思えない。やっぱり甘いと思うんです。  今、個人金融の資産残高がどうなっているかを見ると、やはりずっとふえてますね。八五年六百兆円、これが九四年千二百兆円ですから、もう本当に急増して倍になっている、十年足らずで。しかし、その内訳、構成比を見ると、有価証券の割合というのは逆に八〇年代の後半から九〇年代にかけて年々低下しているんです。ですから、株に対する、株式投資に対する国民の持つイメージ、期待というのがやはり低下している、割合としては。これはもう仕方がないと思うんです。九一年の野村証券のあのスキャンダルで暴力団との関係が明らかになったり、大企業など特定の大口顧客に対しては、四十八法人一個人ですか、合わせて二百七十五億円損失補てんをやっていた。九一年ですよ。ところが、今回また同じ野村証券が元総会屋の親族企業に株売買の操作によって三千八百万円利益を供与していた。また、別にVIP口座という口座があって、そして特定の顧客に対して利益を供与する仕掛けがつくられていた。  ですから、本来株式投資というのは自己責任でやるべきであるにもかかわらず、一般の投資家はそういう自己責任で損をしたら自分でかぶるというふうになっているのに、一方でそういう特別な人たち、顧客に対して絶対損しない、必ずもうかるという株式投資の常識とはかけ離れた現実がいまだにずっと続いていると。こういう現実があったら、先ほど本委員会の与党筆頭理事の沓掛委員も株は嫌いだとおっしゃっておりましたけれども、そういう方がやっぱりふえるような今風潮があるんですね。そういう状況の中で、このエンゼル税制を導入したからといってこれが急速にふえると私は思えない。これ、いかがでしょうか。
  124. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) 証券市場の不祥事のお話がございました。確かにこれは大きな問題でございます。  ベンチャー企業にとっては証券市場を通じた資金調達というのは大変重要なものでございます。証券市場が活性化されるということはその公正性が確保されるということで極めて大事なことだと思います。そういう意味で、投資家からの信頼が失われるとすれば、大変私どもは残念なことだと考えております。証券取引等監視委員会等積極的な活動によりまして、一刻も早くその回復が図られることを期待したい、こういうふうに考えておりますが、証券市場につきましては店頭特則市場の提案とかいろいろなことで改革を申し上げております。今回の金融ビッグバンの中でより一層透明性、公正性が増した市場形成が図られるようお願いしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  125. 山下芳生

    ○山下芳生君 非常にそういう意味では、環境の悪い中で出発せざるを得ないというのもリアルに見る必要があると思うんです。  それから、今回のエンゼル税制で付与されるインセンティブですけれども、これは三年間キャピタルゲインとロスを相殺できるということなんですが、通産省の説明を聞きますと、A、B、Cの三社に対して投資をして、そのうち一社でロスが出てもその他のゲインで相殺することが可能になる、しかも一年限りじゃなくて三年間可能だということの御説明があったんですが、私、この創業期の中小企業、いわゆるベンチャーに投資をして、三社に投資してロスが一社だけで済むというのはこれはかえってまれに見るケースであって、三社に投資してもやっぱり三社ともロスが出る方が多いと思うんですね、比率からいえば。そうなったときにインセンティブというのは実際あるんでしょうか。
  126. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) 全体のキャピタルゲインとキャピタルロスを通算するということでございますが、今委員がお挙げになったのは、三社に対して投資をした、その三社がすべてベンチャー企業である、こういう場合かと思いますけれども、キャピタルゲインはいろいろなところで得ちれるわけでございまして、そのキャピタルゲインの中でゲインとロスを通算できるということでございますから、仮に三社が全部つぶれたとしても、一般の通常の大企業に対する投資でキャピタルゲインを得た、そういったものが通算できるということでございますから、それはそれで大変大きなメリットがあるのではないか、こういうふうに考えております。
  127. 山下芳生

    ○山下芳生君 そうなりますと、相当資産のある方、余裕のある方じゃないとなかなかできませんね。持っている資産をあるいは資金を全部ベンチャーに対する投資として、エンゼルとして使っちゃうと、これは倒れてしまうという方が多いわけですから、よほどの余裕がある方じゃないとなかなか手出しできないということにもなるんじゃないか、そういうインセンティブだというふうに理解せざるを得ません。私は別に反対じゃないんです、賛成する立場なんですが、そういう心配があるということを指摘しているわけです。
  128. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) 今、委員おっしゃったこともあろうかと思いますけれども、今までそういうお金が全然エンゼルに回らなかった、それをこういう税法上のインセンティブを与えることによって少しでもエンゼルとしてベンチャー企業に回るようにしたい、そういうねらいが込められているものでございますから、御理解を賜りたいと思います。
  129. 山下芳生

    ○山下芳生君 少しでもというふうに理解をいたしました。  それで、私はいわばそういう当てのないエンゼルに過大に期待を寄せるだけではなくて、寄せたらあかぬというわけじゃないんです、これはこういう可能性があるわけですから、それだけではなくて、やはり既に制度として確立されている中小企業へのさまざまな支援策、これをやはり充実させるあるいは利用しやすいように改善する、これも大事だというふうに思うんです。例えばいろんな制度融資がありますけれども、なかなか利用しにくい。その一つのよく聞く声として手続が複雑、面倒だということがあります。  きょう少し具体的に紹介したいんですが、中小企業設備近代化資金貸付という制度がございますが、これを借りようと思ったらどのぐらいの手続が必要かと。大阪府に資料をいただきますと、提出書類という一覧が袋についておりまして、ずらずらずらっといろんな提出書類があるんですが、申請書や支払い条件表、連帯保証人調書、不動産担保物件図面表などなど、例えば個人企業の場合ですと十二種類の書面を提出することになっている。しかも、その十二種類の書面の一種類ずつにかなりページが盛りだくさんついておりまして、書き込みがたくさん必要になっているという状況があります。  ですから、いい制度なんですけれども、ここまで全部書かないとなかなか運用できないということでおっくうになるという声は、これだけじゃなくてほかの制度融資についてもよく聞くことです。  この点では、アメリカは非常に工夫をしているということを私最近知りました。これはクリントン政権で始められたプログラムだそうですけれども、ロードックというプログラムがあって、比較的小口のローンの申し込み手続とそれから審査の簡素化を目的としたプログラムです。これは上限は十万ドルだそうですけれども、ロードックというのはロードキュメント、つまり書類の山が低い、そんなにたくさん書面を出さなくていいということでありまして、この垂オ込みに必要な用紙はわずか一枚、片面に借入を行う企業が記入し、その裏面に金融機関が記入する。審査はその記入されたことに基づきながら、重視されるのは事業主の人物像と信用歴であるということで、これは書面の複雑さという点からいえば、日米を比較してかなり努力されているんじゃないかなと私は思いました。  そういうことも含めて、中小企業がいろんな制度を利用しやすいようにする努力、例えばこの書面の簡素化、いかがでしょうか。
  130. 田島秀雄

    政府委員(田島秀雄君) 設備近代化資金制度あるいはその他の補助金の制度等御利用いただくためには計画書等々をおつくりいただいて審査を受けていただく、主として都道府県の審査ということでございますが、そういうものとして一定の書類をお出しいただくということでございます。この際、中小企業者の方が実施されようとする設備近代化計画や技術開発の内容等あるいは財務体質等々も含めて、そういったことがわかりますように必要最小限の書類をいただいておるというふうに理解しておりまして、今日までの間、先生指摘の点は私どもも重々踏まえてできるだけ書類の簡素化、処理時間の短縮化等々には努力をしてまいってきておるところでございます。  申請書類は必要だとしても、できるだけ過重な負担にならないということは申すまでもございませんので、引き続きそういった観点から努力をしてまいる考えでございます。
  131. 山下芳生

    ○山下芳生君 大体いつもの答弁という感じなんですが、きょうは具体的にロードックという、一枚ということでアメリカは既にそういうことをやり始めたということを御紹介したわけですから、それと比べてなぜ書面の数が減らないのかということを深く分析もしていただきたいというふうに思います。  次に、今ある制度といいますか、中小企業に対する支援のやり方としてもっと検討すべき問題として私が提起したいのは、現在中小企業の資金繰りを自己資金の次に支えてきたのが民間の金融機関ですね。この民間の金融機関、とりわけ信用金庫や信用組合というものが地域の金融機関として地域の中小企業の資金繰りを支えてきた。実際、これもある調査なんですけれども、例えば東京都という大都市では、やはり圧倒的に都市銀行が強いわけですよ。預金残高、平均すればもう八割近くを東京都では都銀が押さえている。ところが、その同じ東京都でももう少し地域を細かく分けてみますと、東京二十三区でも都市銀行の預金残高が集中的に圧倒的に高いところは千代田区、中央区、港区、いわば官庁や大企業の本社が立ち並ぶそういう地区ですね。それに対して、江東区だとかいわゆる中小企業の町、地域になりますと様相が変わってまいりまして、北区、江戸川区、足立区、荒川区などになりますと、信用金庫と都銀の力量は拮抗していると。足立区、荒川区に至っては、占有率の第一位の座は信用金庫だと。都銀はその座を明け渡しているわけですね、信金に。  ですから、実態としても中小企業の町において果たすべき地域金融機関、とりわけ信金、信組という役割が大きいということを示していると思うんですが、これは実際、政府もそういう地域金融機関についての役割をきちっと位置づけていると思います。  金融制度調査会の金融制度第一委員会中間報告、平成二年七月に出ておりまして、「地域金融のあり方について」というレポートがありますが、この中で、地域金融についての位置づけ、どうされているでしょうか。
  132. 山崎康史

    説明員(山崎康史君) お答え申し上げます。  御指摘金融制度調査会金融制度第一委員会におきまして、平成二年七月に地域金融のあり方について取りまとめられたところでございます。この報告におきましては、地域金融課題といたしまして大きく分けまして、地域の住民、企業金融ニーズの多様化、高度化や地域社会の質的向上のニーズヘの対応、それから地域間格差への拡大への対応といったものが課題として挙げられておるところでございます。  この報告は、こうした課題を踏まえまして、地域金融の役割といたしまして、まず地域住民、企業等のニーズの高度化、多様化に対応するために、地域金融機関が地域住民、企業等の資産形成、資産管理のニーズにきめ細かく対応する、あるいは地域企業発展は地域活性化のために不可欠でございまして、地元企業の育成、振興を幅広く支援していく、あるいは地域金融機関が今後さらに幅広く地域社会の質的向上を支援していくといったことが期待されているといったような内容が盛り込まれておるところでございます。
  133. 山下芳生

    ○山下芳生君 大体そういうことでありまして、私が印象的な文言として目にとまったのは、こうあるんですね。地域と運命共同体的な関係にある金融機関と言える、それから収益性、効率性をある程度犠牲にしても地域住民等のニーズに応ずる性格を有する金融機関と。  ですから、収益第一じゃなくて、地域の住民や地域の中小企業にやはり貢献するために存在するのが地域金融機関なんだという位置づけを金融制度調査会でもされているわけですね。これは非常に大事で、今から金融の自由化、規制緩和ということが進められようとしておりますが、そういう中でもこういう役割はしっかり守られてしかるべきだと私は思いますが、大臣これはいかがでしょうか。
  134. 佐藤信二

    ○国務大臣(佐藤信二君) 全く同感ですが、ただ、今おっしゃる信用組合、信用金庫、一連の不祥事もこれあり、そうした当初の設立したときと実態が大分変わっていると。それで、御存じのように、今大蔵省が中心となっている金融システム、これの一般的な見直しということでございます。  あわせて、中小企業に対してはそういうふうに大変地域の金融機関の方への依存度が高いわけですが、やはり公約三機関、これらの業務のやり方、そういうものをめぐっても、やはり今委員指摘のように、公的にはどうしても書類だとか保証人だとか担保とか、非常にこれは厳重だということで、そういうところを今全般的に見直さなければいけないなと、かように考えておるわけでございます。  全く今おっしゃるようなことで、よく御趣旨はわかっておるつもりでございます。
  135. 山下芳生

    ○山下芳生君 語尾が余り聞き取れにくかったんですが、ぜひ地域の金融機関の役割、中小企業を所管する大臣として認識をしていただきたいというふうに思います。  最後に、アメリカの例をいろんなところで今回の法案についてお引きになるんですが、私もう一つアメリカのことを参考にするならぜひ参考にしていただきたい事例を紹介したいと思うんです。  アメリカは御承知のとおり日本よりも早く産業空洞化の波に洗われまして、ある地域ではもう企業が多国籍企業化してしまって、残っているのはサービス業しかないと。そういう中で、地域が疲弊して町の財政が破綻して学校の経営が成り立たないとか、そんな状況もるる報道されております。そういう中で、アメリカは積極的な中小企業づくりを先ほどの政策も含めてとってきた。  一つ注目したい事例として、ピッツバーグという町があります。これは御承知のとおり、かつて鉄鋼王と言われたカーネギーを生んだ伝説の町ですけれども、ここはもうひどい空洞化の打撃を受けてがたがたになったと言ってもいい状況だったそうですが、今地域再生をされています。この原動力となったのが中小企業です。やはりその中小企業に対する地域ぐるみの支援システムがピッツバーグでは具体的にとられていたというのが教訓だというふうに思うんです。  例えば、カーネギー・メロン大学とかピッツバーグ大学、この二つの大学の中に中小企業を支援する施設や人材がたくさんストックされている。ハイテク協議会、ベン・フランクリン技術センターなどが全部大学の中にあっていろんな支援をしている。しかも、産学協同というのは、この場合大企業と大学の協同ではなくて、中小企業と大学の協同。ですから、巨大なお金が動いて研究が進むんじゃなくて、目は、視点は地域をどう活性化させるのかという点で地域の企業と大学が協力、協同しているということであります。  例えばスタッフも、技術センターは正式のスタッフは十八人。しかし、そのほかに十年間かけて地域から四百人のボランティアを組織しておりまして、そのボランティアの方々、大学の先生だとか研究者だとか意欲のある方、そういう方々がスタッフとして地域の中で起業家、意欲のある人たちを見つけてくる、そして審査をして支援をするということになっているわけですが、日本でしたらお金があるかとか担保があるかということが審査の対象になるんでしょうけれども、ここではどんな無名の青年であっても、いいアイデア、意欲を持っていて、そしてボランティアを含めたスタッフの審査にかなえば、目ききにかなえば、これは具体的な数字ですけれども、一千万から二千万円、数年間を通じて数えれば数億円単位の支援、資金が提供されると。それで、事業を失敗したら返さなくていいということなんですね。そのかわり、成功したら年数%を売上高の中から還元していくというシステムをとっているようで、成功率が四割だそうですから、六割失敗しても、その成功した企業から還元される収益によって町の税金としてはふえていっているということも聞きました。  全体として地域ぐるみで、もうけたろという目的からの投資じゃなくて、地域の中に必要な中小企業を育てていくという観点でそういうシステムがつくられている、体制がつくられている。私はこれは非常に大事な教訓でありますし、エンゼルだけに頼るのではなくて、そういう地域ぐるみの支援システムをつくっていくことがこれはやはりベンチャーを育てる大道ではないかというふうに思ったわけですが、最後に大臣の所見を伺って終わります。
  136. 佐藤信二

    ○国務大臣(佐藤信二君) 全く今の山下委員のお話同感で、やはりこのベンチャー企業の支援というものは地域ぐるみということで、その中心になるのは公的な機関、それを核に専門家、投資家、こういうのがやっぱり連携協力してネットワークをつくると。先日お願いいたしました活性法、私はあの中にこうしたものを実は描いているわけでございます。  よろしく御理解、御協力をお願いしたいと思います。
  137. 山下芳生

    ○山下芳生君 終わります。
  138. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。——別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  中小企業創造的事業活動促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  139. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  140. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  141. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) 次に、産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  去る十五日、三井三池炭鉱閉山に伴う地域振興対策等の実情に関する調査のため本委員会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員の報告を聴取いたします。片上君。
  142. 片上公人

    ○片上公人君 三井三池炭鉱閉山に伴う地域振興対策等の実情に関する調査のため、去る四月十五日に行われた委員派遣について御報告申し上げます。  派遣は、木宮委員長、林委員、木庭委員、梶原委員藁科委員、山下委員及び私、片上の七名により行われました。  三井石炭鉱業株式会社三池鉱業所は、百二十年余りの歴史を持つ我が国最大の炭鉱でありましたが、本年三月三十日をもって閉山に至りました。このため、閉山に伴う炭鉱離職者の再雇用や地域の振興などが大きな問題となっております。  私どもは、このような状況下で、福岡県大牟田市及び熊本県荒尾市に赴き、関係者から実情や要望等を聴取するとともに、現地を視察してまいりました。以下、順に御報告申し上げます。  まず、最初の視察先である昭和アルミニウム缶株式会社大牟田工場は、大牟田市が炭鉱離職者の再就職先を確保するため誘致に取り組んできた企業一つであります。同工場は、第一期建設計画では、約一万三千坪の敷地に四十七億円を投資して、年間四億缶を生産するためのラインが本年六月に稼働する予定であります。工場の従業員数は五十七名でありますが、そのうち炭鉱離職者の採用は十名程度であるとのことでありました。  次に視察した三池港は、三池炭の積み出し港として三井鉱山の私有港でありましたが、昭和四十六年から福岡県が港湾管理者となっております。しかし、現在までのところ、県による公共バース等の施設はなく、また重要港湾として唯一港湾計画が策定されていない港湾であります。なお、同港については、公共埠頭を確保するため、会社からの用地の譲渡が懸案事項となっております。  午前中の現地視察を終了した後、大牟田文化会館におきまして、福岡県、大牟田市、高田町、大和町の行政及び議会から、三池炭鉱の閉山に伴う地域振興及び諸対策に関する要望を聴取いたしました。  まず、麻生福岡県知事から、炭鉱の閉山は、明治以来三池炭鉱とともに発展してきた地域にとって、雇用産業構造に重大な影響を及ぼす旨の懸念が表明されました。  今後の対策としては、三千人を超える炭鉱離職者や関連下請企業離職者の再就職先を確保するための三井鉱山株式会社等に対する指導政府中小企業金融機関の貸し付けについて担保評価等の弾力的運用、産炭地域振興臨時措置法に基づく財政援助措置や産炭地域振興臨時交付金等に対する特段の配慮、地域振興対策として石炭産業にかわる環境、新エネルギー、リサイクル産業に対する国の支援、大牟田テクノパークの早期分譲、三池港の公共埠頭の整備と第九次港湾整備計画での位置づけ、有明海沿岸道路の整備、有明海の海底陥没の完全埋め戻し復旧に対する指導等さまざまな要望が出されました。  また、これらの要望事項に対する国の回答は、今月二十三日に開かれる産炭地域振興関係各省庁等連絡会で出されることとなっており、その実現に向けて特段の配慮をお願いしたいとのことでございました。  その他、大牟田市からは、三池港や有明海沿岸道路に対する前倒しの整備、大和町からは六千六百ヘクタールに及ぶ有明海の海底陥没の完全復旧と菊池川の土砂を活用した海底陥没地の埋め立て等について要望が出されました。  その後、経済団体から要望を聴取いたしました。  まず、大牟田商工会議所からは、炭鉱閉山による被害を最小限にするための金融支援策、町おこしのためのインフラの整備、炭鉱閉山の跡地における大型店の出店が既存商店街に及ぼす影響に対する善処等について要望が出されました。また、荒尾商工会議所からは、地域振興対策として荒尾産業団地等における企業誘致、国際ハブ空港の荒尾・大牟田沖等への誘致について要望が出されました。さらに、高田町商工会及び大和町商工会からは、町おこしに対する支援等について要望が出されました。  大牟田市における実情説明の聴取を終了した後、荒尾市に向かい、緑ケ丘リニューアルタウンを視察いたしました。この地域は、炭鉱住宅の跡地を有効活用するため、荒尾市土地開発公社が約二十ヘクタールの土地に一戸建て約三百八十戸、集合約二百戸の住宅を建設するもので、平成八年五月から分譲を開始しております。  その後、荒尾総合文化センターにおいて、三井石炭鉱業株式会社から雇用対策について説明を聴取いたしました。本年四月現在、三千四百名の求人があり、あっせん紹介の結果、就職内定者は約二百六十名となっているとのことでありました。  次に、三池炭鉱の三労働組合を代表して三池炭鉱新労働組合から、離職者の大半が地元への就職を希望しているため、一層の地元雇用に対する支援や住宅対策等について要望が出されました。  最後に、熊本県、荒尾市の行政及び議会から実情を聴取いたしました。  まず、福島熊本県知事から、離職者の再就職先については年齢的にミスマッチがあり、閉山の影響が地域の中小企業にも波及し、離職者が五百人以上に上ることの懸念が表明されました。このため、雇用対策、民生・教育対策、中小商業対策、地域振興対策等に対する国の十分な支援についての要望が出されました。  また、九州新幹線鹿児島ルートの最優先着工、大牟田・荒尾地先における九州国際空港の誘致、万田坑の文化財指定と財政支援、荒尾産業団地の早期完成等の要望が出されました。  次に、荒尾市からは、地元雇用先の確保に対する指導、万田坑周辺地域の整備と財政支援、炭鉱跡地の有効利用として荒尾市地域交流館の建設事業に対する支援等について要望が出されました。  なお、最後に記者会見を行いました。  以上が調査の概要であります。  今回の委員派遣の目的は、三井三池炭鉱閉山に伴う地域振興対策等の実情に関する調査でありましたが、県や市などが閉山後の地域振興等について真摯に取り組まれている姿をつぶさに見てまいりました。  現地でお受けした要望事項につきましては、私どもといたしましても、関係省庁と密接な連携を保ちつつ、その要望にできるだけ沿うよう最善の努力をしていく所存でございます。  最後に、今回の派遣に御協力をいただいた麻生福岡県知事を初めとする福岡県、大牟田市、高田町、大和町の行政及び議会の皆様方、福島熊本県知事を初めとする熊本県、荒尾市の行政及び議会の皆様方、大牟田商工会議所及び大牟田全市商店連合会の皆様方、荒尾商工会議所及び荒尾市商店連合会の皆様方、高田町商工会及び大和町商工会の皆様方、三井石炭鉱業株式会社の久保代表取締役社長を初めとする関係者の皆様方、三池炭鉱の新労働組合、職員組合及び労働組合の皆様方、昭和アルミニウム缶株式会社の大畠取締役社長を初めとする関係者の皆様方、並びに派遣に終始御同行いただいた井田九州通商産業局長を初めとする同局の関係者には大変お世話になりました。この機会をおかりいたしまして御協力に感謝する次第であります。  以上、御報告を終わります。
  143. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。  なお、ただいまの報告にありました現地の要望事項につきましては、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  144. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十一分散会      —————・—————