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1997-02-20 第140回国会 参議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月二十日(木曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員異動  二月十八日     辞任         補欠選任      松村 龍二君     林  芳正君      阿部 幸代君     山下 芳生君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木宮 和彦君     理 事                 沓掛 哲男君                 吉村剛太郎君                 片上 公人君                 前川 忠夫君     委 員                 大木  浩君                 斎藤 文夫君                 中曽根弘文君                 林  芳正君                 平田 耕一君                 加藤 修一君                 木庭健太郎君                 平田 健二君                 梶原 敬義君                 竹村 泰子君                 藁科 滿治君                 山下 芳生君    国務大臣        通商産業大臣   佐藤 信二君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       麻生 太郎君    政府委員        公正取引委員会        委員長      根來 泰周君        公正取引委員会        事務総局経済取        引局長      塩田 薫範君        公正取引委員会        事務総局経済取        引局取引部長   山田 昭雄君        経済企画庁調整        局長       土志田征一君        経済企画庁物価        局長       河出 英治君        経済企画庁総合        計画局長     坂本 導聰君        経済企画庁調査        局長       中名生 隆君        通商産業大臣官        房長       広瀬 勝貞君        通商産業省通商        政策局長     林  康夫君        通商産業省貿易        局長       伊佐山建志君        通商産業省産業        政策局長     渡辺  修君        通商産業省環境        立地局長     稲川 泰弘君        通商産業省生活        産業局長     村田 成二君        工業技術院長   佐藤 壮郎君        資源エネルギー        庁長官      江崎  格君        資源エネルギー        庁石炭部長    中村 利雄君        資源エネルギー        庁公益事業部長  岡本  巖君        中小企業庁長官  石黒 正大君    事務局側        常任委員会専門        員        里田 武臣君    説明員        文部省体育局学        校健康教育課長  北見 耕一君        労働省労働基準        局賃金時間部労        働時間課長    松井 一實君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (通商産業行政基本施策に関する件)  (経済計画等基本施策に関する件)     —————————————
  2. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十八日、阿部幸代君及び松村龍二君が委員を辞任され、その補欠として山下芳生君及び林芳正君が選任されました。     —————————————
  3. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) 産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題とし、通商産業行政基本施策に関する件及び経済計画等基本施策に関する件等について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 おはようございます。  きょうは、私、七十五分質問させていただきますので、時間の配分上、一番質問の短い公正取引委員会最初に、それから次に経済企画庁、そして時間をたくさんかけてやりたい通産省を一番最後にやりますので、よろしくお願いいたします。  それでは、公正取引委員会の方に質問させていただきます。  ことしは独占禁止法が施行されて五十周年と記念すべき年であり、また公取委員会が昨年、組織、人事とも強化され、委員長も交代され、いよいよ本格的に始動する意義のある年だと思います。  新聞紙上をしばしばにぎわせております持ち株号会社制度解禁は、橋本内閣経済構造改革を初めとする六つの改革を円滑に進めていく上でも極めて重要な役割を果たすものと思います。しかし、議論の多くは解禁しない範囲をどうするかに集中しているようですが、それもかつての三井、三菱財閥のようなごく限られたもので、現実問題としての可能性はほとんどないもののようですから、これからは解禁した場合の持ち株会社利用方法メリットなどを国民にわかりやすく説明していただきたいと思います。  私なりにメリットを整理してみますと、一つ、多くの企業持ち株会社解禁事業ごと会社を分けることで得られる賃金人事政策自由度増を期待している。二番目、資本の論理が前面に出ることにより、親会社子会社に利益の極大化を要求するが、その一点を達成すれば子会社自主経営権グループ化によるメリットを確保できる。三番目、持ち株会社経営の最も大きいメリットは、子会社化した事業の売買を通じて本来の意味でのリストラクチャリングを徹底できることにあります。また、不採算事業を切り捨て、戦略分野経営資源集中をすることでグループ運営機動力と価値を高められると思います。四番目に、国際的法制度との八ーモナイゼーションが図られることにより、外国企業にとって最も得意な経営ノウハウを活用するための持ち株会社形態での対日投資が促進する等であります。  我が国経済活性化のため、また経済構造改革を円滑に進めていくためにも、持ち株会社制度解禁に全力を挙げていただきたいと思います。これについての委員長の御所見をお願いいたします。
  5. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) ただいま委員から御指摘のありましたように、持ち株制度メリットというのは、いろいろの方面からそういう点を挙げられて持ち株会社解禁ということを主張されているわけでございます。  御承知のように、昭和二十二年に独占禁止法ができましてからずっとこの方、純粋持ち株会社というものについては禁止してまいりました。それは、やはり財閥ということの反省ということに立ちまして、独占禁止法の第一条の事業支配力過度集中を防止するという趣旨で九条の規定があるわけでございます。  そういうことでございましたけれども、片一方ではそういう持ち株会社メリットといいますか、そういうことが主張されまして、先ほど申しました九条の事業支配力過度集中を防止するという範囲が広過ぎるのではないかという主張もまた片やあるわけでございます。そういう主張に私どもも当然耳を傾けまして、要するに九条の持ち株会社禁止という中にも事業支配過度集中にわならない、そういうおそれのない部分があるのではないかということで、いろいろの研究会でも研究していただいて一応の結論を得たわけでございます。  そういうことで、現在私どもは、事業支配過度集中を防止するという第一条の精神を忘却する、これを無視するというわけにはまいりませんけれども、そういう立場に立ちまして九条をどのように広げていくかということを研究しているわけでございます。そういうことで、研究の末、一応の素案をつくりまして、与党といいますか三党に提示しましていろいろ御検討を願っているわけでございます。  そういうことで、衆知を集めた結果、法案を作成して、これはまた内閣の方にお願いして国会に提出する運びにいたしたい、こういうふうに思っております。
  6. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 次に、再販問題について質問したいと思います。  化粧品医療品を対象とするいわゆる指定販売については皆様方の御努力で廃止方向で進んでいるようですが、法定再販としての著作物関係新聞業界出版業界等において国民の知る権利や文化論をもとにその廃止反対しております。昨年も法定再販については推進派反対派がぶつかり合い、見送られた経緯があります。  昨年は商工委員長をしておりましたので両方の意見をよく聞かせていただきました。私は、この再販価格の問題は業界別のほかに地域性も絡んでいると思います。都市部廃止に賛成、地方反対というものです。それぞれのエゴがあると思いますが、もう一度原点に戻って御検討願いたいと思います。  著作物等再販価格問題について委員長の御所見をいただきたいと思います。
  7. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) もう十分御理解いただいておりますように、政府規制等競争政策に関する研究会再販問題検討小委員会というのがございまして、その一応の中間報告といたしまして、競争政策という立場に立って理論的に考えた場合に著作物再販というのは廃止すべきであるという結論をちょうだいしているわけでございます。しかし、その小委員会結論の中には、これは理論的な側面からの結論でございまして、これから国民的な議論をしていただいて、その結果、国民合意を得て再販というのを廃止する方向がどうだろうかという示唆をいただいているわけでございます。  そういうことでございますので、私どもはその中間報告基本にいたしまして、今度はその親委員会といいますか、政府規制等競争政策に関する研究会というのにお願いいたしまして、これからその研究会で約一年ぐらいかけてさらに御検討いただくということにしております。  なお、御指摘のございました地方意見でございますけれども、既に近畿地区中部地区東北地区北海道地区におきまして著作物再販制度を考えるシンポジウムを開催いたしまして、いろいろの意見をいただいております。さらに、本年度中には中国地区四国地区九州地区において同様のシンポジウムを開催する予定にしております。そういうことで、委員の御指摘地方意見というのも十分考慮いたしまして、さらにこの研究会で御検討をいただくという段取りになっております。  私どもも、競争政策ということをユーバーアレスといいますか、それを最上のものと考えているわけでございませんので、いろいろの観点からの意見をちょうだいして、またその結論を得た上で国会に法律の改正なりをお願いしたい、こういうふうに思っております。ひとつよろしくお願いいたします。
  8. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 どうもありがとうございました。  次に、「国立国会図書館が計画している情報ネットワークシステム事業化調査日本電信電話(NTT)が一円で落札した問題で、公正取引委員会は十七日、独占禁止法で禁じている不当廉売にあたる恐れがあるとして、今後同様の応札をしないようNTTに厳重注意した。」と新聞等で報じられております。NTTがと、全く情けない思いもいたしますが、ここで着目しなければならないことは、二番札、三番札も常識外の安値で応札していることであります。  この背景には、システム基本計画を安い価格で落札しても、その後のプログラムの詳細設計コンピューター本体等入札に際しては有利になり、わずかな金額の基本計画費営業費で賄えるという見方もあるからだと思います。  このような考え方に対する公取所見をいただきたいと思います。
  9. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 御質問の件につきましては、国立国会図書館統合システム基本計画実施化委託調査に係る入札につきまして新聞報道されまして、こういった情報に接しまして、直ちに事実関係につきまして関係者から事情を伺った次第でございます。  NTT自身は、二月七日に本契約を既に辞退しておるわけでございます。こういった政府発注情報システム関係業務におきまして、有力な事業者でございますNTTがこのようなフィージビリティースタディーの入札におきまして著しく低い対価で入札する場合には、競争事業者事業活動を困難にさせるおそれがあり、不公正な取引方法第六項に規定する不当廉売に該当し、独占禁止法十九条の規定に違反するおそれがあるということで、先生指摘の、今月の十七日にNTTに対しまして、今後このような行為を行わないよう厳重に注意したわけでございます。また、独占禁止法遵守方の社内の徹底も図るように通知したわけでございます。  違反行為を行った者はNTTでございます。しかし、関係する事業者もあるわけでございまして、一般に注意を喚起するという意味で、同日、二月十七日でございますが、この旨を報道機関にも明らかにいたしまして、そのような行為独占禁止法規定に違反するおそれがあるということを周知したわけでございます。
  10. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 私の公正取引委員会への質問は以上でございます。  次に、経済企画庁質問いたします。  最近のいわゆる円安傾向についてお尋ねします。  新春での経済評論家のことしの為替レート見通しは一ドル大体百七円から百十七円でしたが、最近は百二十四円前後となっています。G7蔵相会議円安ドル高について議論され、一応方向が決まりましたが、依然百二十四円前後となっています。急激な変化は困りますが、我が国産業経済の現状から見て一ドル百二十円は特に円安という状況でもなく、国際化の時代ですから、中小企業も元気が出る面もあると思いますが、この一ドル百二十円をどう見ておられるのか。また、これによる景気への影響はどうなのかについてお尋ねいたします。
  11. 麻生太郎

    国務大臣麻生太郎君) 御質問の中にもありましたように、一ドルは幾らが適切なのかというのはいろいろ御意見の分かれるところでありまして、円安円安とよく新聞に書いてありますが、何に対して円安なのかというところが極めて不明確だと思っております。八十円に比べれば確かに円安ですけれどもプラザ合意当時の二百四十円に比べれば円高でありますので、どの辺が円として適切なのかというのは購買力平価によります換算方法、いろいろ分かれておりますので、説がいろいろございますので、どれが最も正しい円の価格かというのはなかなか判断の分かれるところだと思っております。  ただ、いずれにいたしましても、急激に円相場が上がったり下がったりいたしますのは経済にいろいろ影響が出ますので、価格の変動が急激に変動したり、またその幅が大きかったりするのは非常に経済に与える影響が大きいというのが基本だと思っております。  また、円が安くなれば当然のこととして輸出はしやすくなりますし、輸入は抑えられるというプラス面もあれば、逆に言えば円が安くなればその分だけ輸入物価が上がることになりますので、そういった影響が出てまいります。少なくとも輸入物価に関しましては、平成八年の四月以降、前年度比二けた台で輸入物価は上がっております。しかし、輸入物価は上がっておりますが国内卸売物価消費者物価にまでは影響は出ていないということによって、結果としては今の日本国内卸売物価消費者物価いずれも安定をした形になっております。  いずれにいたしましても、今後の円相場というものがどのような形で動いていくか、これは大変大事なところで、私どもとしては注意深く見守りたいと思っておりますし、これが日本に与える影響につきましては、今のこの段階で来年度までにこの百二十四円で落ちつくのか落ちつかないのか、またさらに上がるのか下がるのか、極めてまだ見通しのつかないところでありますので、今の段階でこうなりますとはっきり申し上げられる段階にはないと思っておりますが、注意深く見守って対処してまいりたいと思っております。
  12. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 次に質問いたします。  二月の月例経済報告で、「企業収益は、改善している。また、企業業況判断には、先行き慎重な見方があるものの、緩やかな改善がみられる。」と述べられています。  我が国経済は、バブル影響から脱し、民需による自律的回復軌道に入ったと見ておられるのでしょうか。地方ではなかなかそういう実感が出てまいりません。私の郷里の石川県でも、景気がいいと見られるのは渋谷工業とか日成ビルドとかほんの二、三の企業でございまして、またもちろんこのことはいろいろ地域的にも格差があるということなのかとも思いますけれども、一体どのように現在の景気判断されておられるのか、またこれからの見通し等についても御所見をいただきたいと思います。
  13. 麻生太郎

    国務大臣麻生太郎君) 全体と石川県という北陸地方ということになろうかと思いますが、二つに分かれての御質問でございましたけれども、まず全体につきましては、所信表明のときにも申し上げましたように、昨年、一昨年に比べまして景気回復の動きを続けておると理解をいたしております。中でも、民間需要は堅調に推移をいたしております。  例えば設備投資を見ますと、設備投資は明らかに伸びが大きくなってきておりまして、設備投資は今まで中小におきましては過去数年間いずれも前年同期比マイナスでしたけれども、本年に入りましてからはいずれもこれはプラスに転じているというのも大きな数字でありますし、住宅建設は大体年間百四十から百四十五万戸、建設出身沓掛先生よく御存じのところでありますが、大体百四十−百四十五万戸が通常と言われておりましたけれども、十一月は百六十九、十二月は百六十一、その前の十月は百八十九でしたし、いずれにいたしましても非常に高い水準でございます。  消費動向につきましても、個人消費も、これは家電、自動車、特に自動車、いずれも大きな伸びを、数字を示しておりますので、そういった意味ではこういうものの背景を受けて生産としては増加傾向にあると思っております。  ただ、今御質問になりましたように地域別で見させていただきますと、これは若干の差があると思っております。いいところといいますと、これは自動車、いわゆる電機、産業用電子機器という分野におきましては特に顕著であるという点も反映いたしまして、地域でいけば関東、東海そして東北というこの三地域は明らかに他の地域に比べて回復基調が高いと思っております、沖縄は少し観光需要という別の需要が入っておりますけれども。そう思って見ておりますけれども北陸に関しては、これは繊維製品が特に大きな業界であるせいもあるんだとは思いますけれども、今の申し上げたような三地域なり沖縄に比べますと、まだこの地域においては緩やかな回復という感じのものがあって、マイナスにはなっておりませんけれども、いずれにいたしましても、その回復基調は先ほど申し上げた四地域に比べては遅い、緩やかということになっているのが実態だと理解をいたしております。
  14. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 どうもありがとうございました。  さて、次の質問ですが、これは麻生大臣経済企画庁に行く前の話なんですけれども、非常に重要なことなので質問したいと思います。それは、この平成八年度の年次経済報告、いわゆる経済白書についてでございます。  経済白書というのは我が国では最も信頼されている白書だし、また一番広く読まれている白書だというふうにも思います。私は昭和四十年から二年間経済企画庁でお世話になりましたので、そのとき輪講でこの経済白書を読んだのですが、それが経済白書を見た最初でした。それから私はずっとこの経済白書が出るたびに目を通させていただいております。少なくも平成七年度まではそういう違和感を持ったデータあるいは記述というのはなかったんですが、この八年度の経済白書は、私は非常にゆがめた、大変重大なミスを犯しているというふうに思いますので、そのことを指摘いたします。  それでは、経済白書の百五十ページ。きのう来られた方に百四十八ページの後段から三、四ページ、百五十三ページの前段までよく読んでくださいというふうにお願いしておいたんですが、全部はやれませんので、まず百五十ページのところにこういう記述があるんです。  公共投資拡大は、九三年から九四年にかけてGDP成長率を一%ポイント程度押し上げる効果があったとみられる。これは、九二年度から九三年度にかけて公共投資が一五%前後増加したことと対応しており、公共投資GDPに占めるシェアが八%程度であったことを勘案すると、九〇年代においては、公共投資自身需要としての効果が主体であり、公共投資はそれ自体成長率押上げ効果から景気を下支えしたものの、民間需要に対する波及効果バブル崩壊等影響により相殺されて顕在化しなかったとみられる。というこの記述についてであります。  私の言うことに対して、またこのデータ云々というなら、私はそれなりにまた次の資料を用意していますからやりますけれども、まずこれを素直に読んでいただくと、要するに公共投資を増大した、しかしそれによってGDP押し上げ効果は余りなかったということを言っている。そして、その例として公共投資を一五%ふやしたけれどもGDPは一%しか押し上げていないというふうに、さっと読めばそういうふうにとられますね。  そこで、ここに書いてあるように公共投資GDPに占めるシェアは八%ですね、ここに書いてあるとおり。そうすると、一五%ふやすということは、いわゆる公共投資GDPの一・二%ふえたことになります。しかしそれにもかかわらず、いわゆるGDPは一%しかふえなかった、だから波及効果がなかったという結論ですね。これは単純に読めばこういうことですね。  さて、皆さん考えてください。公共事業GDPの一・二%ふやして、GDPがこのときは四百幾らですけれども、そしてGDPが一%しかふえないということがあるでしょうか。簡単ですから、仮に公共投資一兆二千億円ふやした、そうしたところがその年において、GDPが一兆円しかふえないということは、一体二千億はどこへ消えていくんでしょうか。公共事業というのは一兆二千億円、すぐそれぞれ資材も買えます、労務費も払います、それがすぐみんなに支払いとして行くわけですから、一兆二千億円それ自体は直ちに一兆二千億円のGDPを押し上げ、そしてそれが次々と波及していって、波及効果として、大体このころでも一・三倍ぐらいの乗数効果になっているんですが、したがって、計算すると一・六%ぐらいGDPを押し上げているはずなんです。  それが、ここに書いてあるような、この記述はただただ、こう次もまた出てくるんですけれども公共投資というのは需要創出効果生産力増大効果生産力効果があるんですが、まずこの論調はずっとその需要創出効果がないということを強調しているのがこの前段です。後段では生産力効果もないと。したがって、そういう公共投資は役に立たないものだから、財政的云々から見て極めて遺憾なものだという結論を書いているんですよ。ですから、まず前段申し上げたことに対して、経済企画庁はどういう意図でこういうことを書かれたのかをお尋ねいたします。
  15. 中名生隆

    政府委員中名生隆君) お答え申し上げます。  今、委員が御指摘のように、昨年度の経済白書では公共投資についての記述をいたしております。その中で、公共投資のいろんな効果を持つ側面の中で、ただいま委員から御指摘をいただきましたように、短期的な需要拡大効果についても触れております。この点につきましては、今委員白書の文章も読み上げて御紹介を賜りましたけれども、九三年、九四年というようにいわゆるバブルが崩壊した後の経済が非常に停滞している局面で、政府景気を刺激するために公共投資拡大等を図ったわけでありますが、それにもかかわらず、なかなか景気がはかばかしく回復をしてこなかった、それはどうしてかということを分析しているわけでありまして、結論的には公共投資景気を下支えする効果があったということを言っているわけでございます。  ただ、それではどうしてほかの民間需要が出なかったかということでございますが、これについては企業のバランスシートが非常に傷んでいるという状況で設備投資が減少を続ける、そういう状況がありましたので、公共投資効果を持っていたわけでありますけれども、それが相殺をされるという形で、この時期にはGDPを大きく押し上げるということには至らなかったということを書いているわけでございます。  したがいまして、最近の状況ということになりますと、先ほど大臣もお話しいたしましたように、設備投資は増加に転じてきている、また住宅投資も高水準、それから個人消費も緩やかではありますが回復ということで、民間需要が堅調に推移をしてきているという状況になってきておりますので、そういう公共投資効果が減殺されるという状況は薄れてきているというふうに考えております。
  16. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 そういうことを言っているんじゃないんですよ。今がどうとか言っているんじゃないんです。去年皆さん方がこれを出したことによってどういうことが起きたかというと、公共投資たたきが起きたんですよ。公共投資は何の役にも立たないという、日本一権威のある経済白書がそう言われたんだから。ここで、あなたの今の論理は成り立たないんですよ。じゃ、一兆二千億の公共投資をしたら、ここで言うと八%ですから、一兆円のGDPしか押し上げないというのはどうしてですか。一兆二千億を投資すれば、それ自体がすぐ経済成長率の一兆二千億になるわけですよ。そして、それは確かに波及効果は、今おっしゃったように幾分減っているかも知れません。減っているからこそ、かつて二・幾らもあった乗数効果が今一・三ぐらいになるんですよ、このころでも。だから、それはないといったって、一兆二千億あるんだけれども、その二千億はどこへ飛んで消えていったんでしょうか。そのことを質問しているんですよ。
  17. 中名生隆

    政府委員中名生隆君) お答え申し上げます。  昨年度の経済白書の中では、若干の推計を行いまして、その結果、今委員が御指摘になられましたような数字を掲げているわけでございますが、これは公共投資をふやさなかった場合のGDPというものと、それから現実のGDPの数値というのを比較しているわけであります。その結果というのは、今委員が御指摘になりましたように、GDPで申し上げまして一%ぐらいしか差が出なかったという形になっているわけでございますが、もちろんこういう推計そのものは、数値については幅を持って解釈すべきものということで白書でも断っておりますけれども、どうしてそういう形になったか。つまり、公共投資をふやした分から漏れているというのは一体どういうことだということで御質問いただいているわけでありますけれども、これは先ほども申し上げましたように、企業が資本ストックの調整を進めるという形で設備投資を減らしておりましたので、公共投資が支えたにもかかわらず、それ以外の部分で減ることによってGDPがそこまで増加をしなかったという、そういう形になっているということだろうと思います。
  18. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 ほかの影響でなったというのならほかの影響といえばいいんだけれども、ここではともかく公共投資拡大は何の効果もないということを言っているんです。  あなた方がこういうことをしているからこんな結果が出たんです。それを言おうと思ってここへ書いてきたんですよ。(図表掲示)  それは、あなた方の計算はこの九四年のGDPと九三年のGDPで、九四年が一%ふえたと言っているんですよ。そのときに公共事業はどうかというと、ここの九二年度の公共投資に対して九三年度の公共投資は一五%ふえた。そうすると、まずこの公共投資というものは、まず投資した九三年、ここまでで九カ月、それから九四年GDPで入る分が三カ月なんですよ。だから、それ自体のものは九三年にもどんと影響しているんです。実は、九三年度はぽんと公共事業がふえていますけれども、九四年度は余りふえていない、逆にいえば、下がりぎみなんですよ。その下がりぎみのものが九四年に入るわけですから、九四年は上がるわけがないんですよ。あなた方はこの前提条件を間違えているんで、九三年と九四年を比べるなら九三年に投資した公共事業幾らで九四年に投資した公共事業幾らかという、それを比較して出すべきなんです。九四年度というのは公共投資はふえていませんから、ここの九三年に投資したのと九四年に投資したものと差はほとんどないんです。  ですから、こういうふうにあなた方前提条件を間違えてやっているんですよ。百メートル競争に私だけ百二十メートル走らせて、お前おそいからもうやめろと、そういう論理なんです。前提条件を間違えているし、あなた言われていろいろんなことは私も全部読みました。だから、ここはもう基本的に間違っているんですよ。その間違っていることをもとにして結論だけ断定しているんです。その断定は、公共投資拡大しても乗数効果はないよということがまず一点、まずそのことが非常に重大なこと。  それから次の、今度はいよいよ生産力効果ですね。これは百五十ページの下の方です。「また、財政政策の中長期的な効果についても検討する必要がある。財政支出のなかでも公共投資は産業活動の基盤を提供し、経済活動が効率的に行われるようになることから、民間部門の生産性を上昇させて経済の中期的な成長力を高める効果を有するとされている。これを公共投資生産力効果と呼ぶが、」、これは二つ目の効果なんですね。非常に定義は立派です。「こうした生産力効果を推計してみると、七〇年代後半以降、下がってきているとみられる。ただし、八〇年代には小幅な上昇を示した。なお、以上の結果はあくまで推計値であり、幅をもってみる必要がある。」要するに、公共投資についても生産力効果がどんどんなくなってきたということを言っているんです。  ところが、公共投資というものは中身がどんどんどんどん変わってきているんですよ。生産力効果を大きく持っていたそういう事業、例えば道路なら道路事業が大幅に減って、今度は住宅とか下水道とかいう生活環境の公共事業がふえてきているんですよ。それをごっちゃにして見るから、確かに下がってきているとは思いますけれども、それは内容が違うんで、やっぱり生活重視になれば生産力的なものが減ってくる。それをあたかも公共投資全体の生産力効果がなくなったという、そういうことを言っておられるんです。  数字的に言うと、私が直接やっていたからなんですけれども昭和四十年、建設省の道路事業というのは——ほかの省庁まで言うと正確を欠くから建設省だけで言うと、昭和四十年、建設省の中で道路事業費のシェアは六九%でした。現在は四一%なんです。二八%はどこへいったかというと、下水道とか住宅とか、そういう生活のところへいっているわけなんです。ですから、それをごっちゃにして生産力効果がないからだめと。そして、最後にこういう結論で結んでおられるんですね。この項の一番最後の方で、「中長期的には、以上のような財政政策の側面も考慮していく必要がある。」その前に何行かあるけれども、それを読んでいる時間はないけれども、要するに財政政策の側面公共投資拡大というものは、このいわゆる波及効果経済成長を押し上げるという需要創出効果もない、そして生産力をふやしていくという生産力効果もどんどん下がっている、そういうことを考えて財政政策を考えにゃいかぬというのがこの結論でしょう。  公共投資たたき、これから物すごい、去年の秋ごろというか、これが出てからいわゆる公共投資反対派に理論的な権威を与えたんですよ。そのことは本当に事実なんです。そういうことをしてもらっちゃ困るんで、何といったって経済白書というのは我が国で最も権威のある書物ですから、これはもう私は学校の教科書以上だと思います。これはもう絶対正しいということで読んだら、今のおっしゃるような結論になるんですよ。  それが今のような前提条件をあれしてみたり、つまみ食いして、それはそうですよ、前提条件を変えればどんなことだってできます。初めから何となくだめだだめだという、そういう私は結論になっていると思えてならないんですが、これに対してのまず所見をお願いします。
  19. 中名生隆

    政府委員中名生隆君) 今、委員から御指摘をいただきました第二点の社会資本の生産力効果のところでございますけれども、この昨年度の経済白書で言っておりますのは、公共投資というのは日本の社会のインフラを整備することによりまして、一国経済全体の生産性を高める効果があるということを言っているわけでございます。その全体としての生産性を高める効果というのを高度成長期と現在とを比較いたしますと、高度成長期に比べて小さくなっているということを確かに言っております。  それはどうしてかということになりますと、まさに今委員が御指摘になりましたように、例えば下水道でありますとかあるいは公園でありますとか、そういう生活環境をよくしていくための公共投資というのは公共投資の中の割合を高めておりますから、それは直接的な意味での経済の効率を高めるということにはつながらない部分もありますので、そういうものが一つの大きな要因になっているということでございます。  それから、もちろん全体としての社会的なインフラの整備が進んでまいりますと、それがまだ未整備なときに比べて限界的な効果が小さくなってきている、それはやむを得ざるところでありますから、そういう影響によって下がっている、そういうことであるというふうに考えております。
  20. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 それなら、経済に及ぼす影響というのは、公共事業だけでなくほかのものもみんなそういう傾向にあるんです。確かに、何もないときには少しあればすごい効果が出るけれども、だんだん豊かになればなくなっていくというのはこれは当然ですから、ここで公共投資だけをやり玉に上げてたたくようなことはしないでいただきたいということなんです。  本当におととしまでの経済白書というのはこういう問題でもきちっと整理して、本当に適切な判断を全部しておられたと私は思いますよ。ところが、突然ここのほんの三、四ページだけどうして、だれがここを書かれたのかなと、本当に何か意図的なものを強く感ずるんですよ。初めから結論ありきというそういうことなんで、それに対して私は非常に疑義を持ちましたのでいろいろ御質問をさせていただきました。  これ以上やっていると通産大臣にいろいろお尋ねできませんので、経済白書、私らもこれが出るのを楽しみにして読んでいるんですから、これからひとつそういう余り意図的なことでなくて客観性を持った形で、平成七年度までのような形でぜひ経済白書をまとめていただくことをお願い申し上げまして、次に移らせていただきます。  では、通産省に質問させていただきます。  まず第一に、通産大臣は所信の冒頭で、在ペルー日本国大使公邸占拠事件についてお考えを述べられましたが、ペルーの存する中南米との通商についてお尋ねしたいと思います。  私は、昨年八月、ブラジル、アルゼンチン、ペルーを訪れる機会がありました。それを踏まえてですが、我が国の通商は米、欧、アジアが中心です。中南米は資源の豊かな、そして親日的な地域です。しかし、貿易量は微々たるものです。それは余りにも距離が遠いからだったと思いますが、近年は交通、通信の発達に伴い時間距離は大幅に短縮されています。  今後、中南米との経済的交流を深めていくことについての大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  21. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) 今、委員のおっしゃるとおりでございますが、御案内のごとく中南米というのは全体で約四億七千万の人口を擁していますが、一方、国土の面積は日本の五十四倍と非常に広大なわけでございます。そういうことで鉱物資源、農産物などの天然資源が豊富であるということに加えて、九〇年代には多くの国で経済の自由化、構造調整が推進されて、経済も安定的成長の方向に進んでいるというふうに実は認識しております。  そういうことで、今APECの中にメキシコとチリが入っているんです、太平洋でございますから。また、メキシコとチリのほかにもペルーが参加したいというふうな意向を示している地域でございます。  御指摘のように、地理的には遠隔でございますが、我が国にとっては資源の供給を受ける地域であり、今後、今言ったようなことでございますので消費市場としてもさらに発展していくことが大いに期待されるということで、この中南米との交流というのはもっと深めていくべきだと考えております。  昨年の八月に橋本総理が中南米を歴訪されました。このような観点から、我が国と中南米との今後の経済の緊密化ということでもって非常に意義が深かったというふうに認識しております。
  22. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 次に、大臣は日本海におけるロシア船ナホトカ号の海難事故による重油流出事故被害について述べられておられます。私の郷里石川県が最大の被害県であり、今後とも大きな問題を残しております。  ところで、我が国は大量の原油を中東から輸入しています。現在、産油国である中国もインドネシアも自国での石油消費量が増大し、間もなく石油の輸入国になるとも言われています。そして、アジアの各国みんなが中東から原油を輸入することになったとき、油輸送船は同じ航路を使用することになり、その際の輸送のセキュリティーは大丈夫なのだろうか。インドやパキスタンの協力も必要になるでしょう。ロシアの老朽船と違った意味で油の輸送のセキュリティーが今後ますます重要になると思います。  これらの対応等について、大臣の所見をお伺いいたします。
  23. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) 御賢察のとおりでございまして、今我が国では原油の輸入の約八割というものを中東地域に依存しております。そして、今御指摘のように、中国だとかインドネシアにこうした動向が見込まれまして、世界の原油の埋蔵量の三分の二を占める中東地域からの輸入という、こうした依存度が今後ますます高まってくるということが考えられます。  そこで、通産省といたしましては、我が国の石油の安定供給を確保するために、石油輸送ルートの周辺地域とODAを含めた幅広い協力関係の構築というものに努めているところでございます。通産省としても、今後とも必要に応じて関係省庁とも連携をとりながら石油の需給や輸送に影響し得る情報の収集を行って、そして石油の安定供給というものを進めていくというふうな考え方でございます。
  24. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 時間の関係でいろいろ御質問を出しましたが、順序を少し変えさせていただきます。  昨年十二月、閣議決定されました「経済構造の変革と創造のためのプログラム」を私は選挙戦中のあの不安と希望との入りまじった気持ちで熟読いたしました。  序文で、現状に安住した場合には産業と雇用の空洞化が急激に進展し、長期的には経済の潜在的な活力が低下し、国民負担率が大幅に上昇する。しかしながら、痛みを恐れずに経済構造改革を行政改革、金融システム改革、社会保障構造改革及び財政構造改革とともに大胆に行えば、我が国経済の新たな発展の可能性が開かれるとし、特に新規産業の創出とそれから国際的に魅力ある事業環境の創出、そして公的負担の抑制というものが実施されるならば、豊かな国民生活と健全な財政、質の高い福祉の実現が可能だというふうに述べられております。  そこで、まず第一番の新規産業の創出についてでございますが、これには技術革新が不可欠であり、それには基礎研究の充実が必要です。  我が国研究は、民間が主体である応用開発研究費はかなり充実していますが、国立研究所や大学等が中心となる基礎研究費はアメリカの三分の一程度です。その上、研究者に対する処遇にも格段の差があり、米国では世界じゅうから優秀な人材を集めています。それによって豊かな知的財産が形成されております。  我が国の基礎研究を促進するための施策についてお尋ねいたします。
  25. 佐藤壮郎

    政府委員佐藤壮郎君) ただいま委員指摘のとおり、我が国経済構造改革を推進して新規産業を創出するためには、科学技術の振興が大変重要であると私ども強く認識しております。このような認識のもとに、通産省といたしましては、平成九年度の予算案の中で前年度比一二%増、四千七百二十四億円の科学技術関連予算を計上しておりまして、予算の拡充に努めているところでございます。  さらに、研究開発環境を柔軟かつ競争的なものにするということも大変重要と考えておりまして、昨年には国の委託共同研究の相手先企業に対しまして研究成果の優先的な使用権を付与するということをいたしております。それから、昨年十月には国の研究者の兼業許可に関する基準を整備いたしておりますし、さらに十一月には国立研究所における研究開発成果の個人帰属を許可するということをしておりまして、研究者のインセンティブの向上に努めているところでございます。さらに、傘下の国立研究所におきまして、競争的研究開発制度の創設、それから新規産業創造型提案公募制度の拡充、厳正な評価の実施等、競争的かつ効率的な研究開発を推進することといたしております。  当省といたしましても、科学技術基本法、基本計画に基づきまして、今後とも真に創造的な研究開発を進めてまいります所存でございますので、先生方におかれましては、引き続きまして御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
  26. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 ちょっと私聞き落としたのかもしれませんけれども、いわゆる研究者個人が特許権を得たとき、それを国と個人とで半々にするのか幾らにするのか、それぞれの省庁の決め方だと思いますが、そういう制度を通産省が導入されたと聞いておりますが、それをもう一度確認したいんですけれども
  27. 佐藤壮郎

    政府委員佐藤壮郎君) 申し上げましたとおり、昨年十一月に国立研究所における研究成果、これは具体的には例えば特許でございますけれども、これを原則二分の一その特許を取った研究者に帰属させるということを許可するようにいたしております。
  28. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 私も大学を出て五年間国立研究所にいたものですから、研究所の問題点、研究者の気持ちをよく知っているつもりです。そういうことでおととし、科学技術基本法をつくるときにいろんな発言をさせていただき、今申し上げたようなことを特に強調したので、それがこの科学技術基本計画でちゃんと十九ページにうたわれ、そしてそれを一番先に通産省が取り入れていただいたということで、これからも各省庁の模範としてやっていただきたいし、これから科学技術委員会が恐らくこれを所管するので、私もそっちに属していますから、ほかの省庁を呼んで、ひとつまた皆さんにも来ていただいて、通産省はこんなによくやっているのにお前たちは何やっているのかと刺激を与えながら促進したいと思いますので、またひとつお力添えをいただきたいと思います。どうもありがとうございました。  次に、国際的に魅力ある事業環境の創出についてでありますが、まず第一に、我が国の高コスト構造の是正のためにはぜひこのことが必要であります。その高コスト構造の代表例として、エネルギー、特に電気料金についてちょっと質問してみたいと思います。  日本では、海外で比較的高いドイツより二割、電力改革が進んでいる英米より三割も高いと言われております。この割高な我が国の電気料金を二〇〇一年には国際水準まで引き下げるといった数値目標が立てられていますが、今申しました経済構造のプログラムにそういうふうに記述がありますが、どのような具体的な措置を考えておられるのか、その中で、新聞で時々出ておりました発電と送電の分離についても検討されるのかどうか。  さらにまた、次の質問もこれと関連するので時間の都合で一緒にさせていただきますと、ことしの春の本プログラムのさらなる具体化に当たり、これらの措置の具体化に向けたスケジュールをできる限り明確化するとやはりこのプログラムにあるんですが、春までにすると書いてありますけれども、あと一カ月余しかありません。現状はどうなっているのか、春にいかなる内容のものができるのかについて質問いたします。
  29. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) まず、包括的に私の方から申し述べたいと思います。  今、委員指摘のように、経済の構造改革を実施というかやるということで、十二月の閣議決定で「経済構造の変革と創造のためのプログラム」というものを閣議決定したわけですが、その中において、やはり産業の空洞化というものの進展と、そして片一方では高齢化社会の到来ということで非常に活力を失うということから、徹底した規制緩和というものと高コストの是正、これを二つの柱にしたわけであります。  その中で、やはり高コストと言われて国際的に見て非常に問題があるというのが物流部門であり、そして一つはエネルギー問題だと、こういうふうに考えまして、その部門にメスを入れるということでございます。  そこで、電力の方がどうも国際的に見て高いということでございますので、この値段、料金を徹底的に下げるように努力させるし、まずその環境というもの、これを実は私たちもつくっていくということでございます。  そこで問題なのは、今まではやはり料金を下げる手段として、高い原因というものは、負荷率が欧米と日本は違うではないだろうかと。日本はどうしても夏場の最も電力の消費が多いときに合わせてやはり設備増強というものを図っている、こういうことでございます。もう一つは、一昨年から導入いたしましたIPPというもの、こういうものをさらに発展させ拡大をすることによって料金を下げていこう、こういうふうなことでもって始めております。そこでもってどれぐらい下がってくるのかというと、これはもう徹底して下げることです、だれも反対者がいないわけですから。  しかし、今御指摘のように、電力会社の方から考えると、自分たちには安定供給という責任があるんだと。安定供給ということで問題なのは、今、日本の場合には停電というのが年平均して七分だと。ところが、欧米では六十分から八十分ほどあるんだということで、自分たちがその責任を持つためにはコストがそんなに下がるわけないじゃないか、こういうふうな話が実はございます。しかし、これは至上命令であって、とことん下げなければ、やはり今申しているこれからの経済構造改革というものが初めからこれはもう挫折するということで、これを突破口にしたい、かように実は考えて取り組んでおります。  そこで、今おっしゃるように、二〇〇一年とは言うけれども、その間に、一遍に二〇〇一年になって値段が下がるというわけにもいかないだろうから、どういうふうにこの五年間というものを持っていくのかということで、タイムスケジュール的なものをつくってくれということを今エネ庁の方にも指示しておるわけでございます。それが今春には一応出てこよう、こんな実は運びでございます。
  30. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 どうもありがとうございました。  では、今大臣のお話の中にも触れてまいりました産業・雇用の空洞化対策についてお尋ねしたいと思います。  中国やASEAN諸国へ直接投資する企業はふえており、今や海外生産比率は一〇%程度となっています。海外生産比率だけで見れば米国は二十数%ですが、米国へは日本やドイツ等の企業が直接投資をして米国で生産活動をしており、出入りが均衡しているので問題ないけれども日本の場合は入ってくる外国企業はほとんどないので、産業や雇用の空洞化が発生するのだと思います。  海外の日本企業の経営者はそれなりに苦労もしておられました。一昨年、マニラでのAICOの会議も、マレーシアと中国の特別区蘇州を訪ね、日本企業の方々と会って苦労話を伺いました。我が国のリーディングカンパニー等が海外へ出ていく気持ちを起こさせないような施策をぜひとっていただきたいと思います。そのための産業・雇用空洞化対策について所見をお願いいたします。
  31. 渡辺修

    政府委員(渡辺修君) 先生今御指摘ございましたように、我が国の製造業の海外移転が急速に進展しておることは事実でございます。これは、消費地に近いところで安く物を生産してそこで売っていくというのが原則で動いておるわけでございます。経済原則にのっとって、また国際分業を果たしていくという意味で、一つの自然の流れであるという受けとめ方をしなければいけないというところがあると思います。  と同時に、今先生指摘がございましたように、そうは言っても、国内で十分比較優位を持ち得るそういう産業までが高コスト構造その他の諸制約のもとに外に出ていくということになってまいりますと、これは大変問題でございます。  こういう問題意識のもとに、先ほど大臣から御説明申し上げましたように、経済構造のプログラムの中で思い切った高コスト構造の改善、これはエネルギーあるいは物流、そういった分野の規制緩和を柱にしておる、これが一つでございます。  それから二つ目が、先ほど先生から御指摘ございました持ち株会社その他の解禁も含めた経営をもっと柔軟に行えるようにしよう、さらには雇用の流動性の問題、これをより円滑に行えるようなそういう雇用制度についても手をつけていこう、こういったような制度改革を行うというのが第二点目でございます。  さらに、地域産業の活性化を図っていこうということで物づくり対策をしっかりやっていく、こういったような各種の中身をこの中に入れ込みまして、先ほど御質問がありました新規産業の創造というもう一つの大きな柱とともに、高コスト構造を改善し、猛烈な国際間の産業立地競争が行われております我が国の国土をそういう魅力ある事業環境にしていきたい、こういうことでこれから全力を尽くしてまいりたいと思っております。
  32. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 労働省、来ておられますか。  本年四月一日から週四十時間労働制が小規模企業の特例措置を除き全面的に実施されることになっております。円滑な移行のため、中小企業庁あるいは労働省で大変御苦労をなさっておられますが、本当に御苦労さまです。  さて、今問題になっているのは賃金の取り扱いです。特に月給制の方々です。労働省でその対応をいろいろ検討いただいているとのことですが、週四十四時間から四十時間に労働時間が短縮されたから、時間給は変えないで月給を一割下げ、それを基本として上積みをしていくというような、そういうことがいろいろ言われておりますが、なかなかこの話は労使ともども理解しにくい面があります。もちろん、そう言われたからといって月給を据え置けばコストが一〇%も上がることになり、このような経済情勢下では企業にとって死活問題です。  労働省で今いろいろ地方からの質問に対して答えておられるのを私も間接的に聞いているんですけれども、その考え方というのは、まず時間給は変えないとしますと、一時間一万円の人は月給四十四万円だったのが四十万円になります。しかし、それじゃ問題であろうから、ある一定期間だけは超勤をある程度約束しておいて何とか減給を補完するとか、あるいはドイツの例のようにボーナスを組み込んで少し減らないようにするとか、あるいは生産性の上がった分だけ上げるとか、いろんな方法が考えられるんでしょうけれども、何といっても今私らが地元へ帰って中小企業の経営者と会うと、そんな難しいことはとってもできぬ、四十四時間を四十時間にしたのは政府がやったんだから、そんなもの勝手に一割賃金カットなんかできないから、給料はやっぱりそのままだ、そのままにしないで下げるなんと言ったら労働争議が起きて大変だと。  そこで、いろいろな問題があるんですけれども、だからといって四十四時間と同じ時間制で賃金を出せば、これはまたコストアップで大変ですから、労働省と中小企業庁の皆さんのやっておられることは私なりに理解できますから、そのことをもっと地方の人たち、そういう経営者の人たちにわかりやすく説明する。例えば、皆さん方が一緒になって各県へ行ってそういう人たちを集めて、これからこうだこうだということをよくやっていただく。  大体みんな経営者というのは横をにらんでやっているんですよ。ですから、横がみんななればまあまあというところに落ちつかせられるわけですから、労働省と中小企業庁で一体となって、これからが一番大事なときなんです。今からなんです。ですから、ぜひそういう機会をつくって地方にPRをし、よく実施面での説明をお願いしたいと思います。これについて、まず労働省から回答をお願いします。
  33. 松井一實

    説明員(松井一實君) お答えさせていただきます。  先生指摘の問題、実はことしの四月一日から厳しい経済状況の中で四十時間制への移行と定着ということをやっていただくということになっております。  そういう状況の中で、御指摘のような問題がございますので、労働省としては懇切丁寧な指導、援助をやるといった基本認識、これが不可欠であるという基本認識に立った対応をしたいというふうに考えております。そのため、実は日本商工会議所あるいは中小企業団体四団体、そういった団体も四十時間制への移行を御理解いただきまして、どういった対応をするかということについて一部お問い合わせがございました。  これにつきまして労働省は、今御存じだということでありますけれども、説明させていただきますと、実はこういうふうなお答えをさせていただいております。  四十時間をやっていただく中でなかなか生産性が上げられない、そういった中で対応しなければいけない企業は四十四時間、つまり四十時間所定労働時間にしながらも、場合によっては四時間超勤ということで対応せざるを得ないケースがあろうといったことを頭に置きまして、どこまでぎりぎり基準法上許されるのかということを労働省としてこの際お示ししていこうということでお答えしております。  週四十時間労働制移行に伴う賃金改定に当たりましては、時間当たりの賃金を減少させないといったような対応、労働時間等の変更、そういった関係から見て合理性があれば基準法の適用上問題になりません、こういったお答えをさせていただいております。また、こういったお答えをさせていただいたということを労働省の第一線機関にも既に通知済みでございます。  この賃金面での取り扱いといいますか対応、これにつきましては、四十時間労働制への円滑な移行・定着をぜひ図りたいという視点に立ちまして、当然今言われましたように中企庁あるいは企業が横並びを見ながらやっていくという傾向がありますので中小企業の団体、こういったところとも十分連携をとりながら進めていかなければならないと考えており、着実にその方向でやらしていただいております。  賃金問題、これに関しましては、本来、賃金というものが労使自治のもとで処理されるべき性格のものであるということも十分頭の中に置きながら、労働省として、御指摘も踏まえながらできる限りの対応をやっていきたいというふうに考えております。よろしくお願いします。
  34. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 賃金は労使で決めるものだから官庁で口を出しにくいというなら、労働時間も労使で決めるべきものですよ。それだけ勝手に決めて、それを守らなきゃだめだというそんな政治はないですよ。それはそういうことを言ってもらっちゃ困る。もちろん、労使で賃金を決めるのは当然の話だけれども、それを前面に打ち出して私の質問に答えてもらっても困るんです。  ともかく、そういってみても四月一日から四十時間制になるんですから、そして各経営者は非常に困っている、どうしたらいいのか。下手をすると労使問題に火がついてしまう。そうかといって、前回のように四十四時間になったり、そのときはそのまま丸々認めたわけですけれども、こんな景気情勢でそんなことはできる状態にもない。一体どうしたらいいのかというのが、私ら帰るといつもそういう話です。今おっしゃったように労働省さんから通達を出したり、いろいろ質問に対して回答を出させているという話もよく聞いています。しかし、なかなかみんなよくわからないんです。  そこで、労働省さんは労働時間でしょうけれども中小企業庁長官はやっぱり中小企業を守ってもらわなければいかぬので、今労賃というのは月給制なんですよ。パートの一時間のやつは皆さんの御指導によって二・三%ぐらい上げればいいとか、それはそのときでいいんだけれども、月給制の人たちに対して、三月いっぱいが一番大事なときですから、中小企業庁長官、長官室にばかりいるんじゃなくて、ひとつ地方にも出かけて、労働省を引っ張っていって、そして今労働省さん言われたのが一つの知恵だと私は思いますから、ぜひ円滑に四十時間制が四月一日から給料とともに決めていかれることをお願いしたいと思いますので、まず中小企業庁長官の決意をひとつお願いします。
  35. 石黒正大

    政府委員(石黒正大君) 時短問題でございますが、中小企業を取り巻く厳しい環境の中で、近時、とりわけ時短問題についての悲鳴というのが高まってきていたことは御案内のとおりでございまして、時短問題、これをどう決着するかというのが大問題だったわけでございますけれども、その過程におきまして委員の積極的な御指導等をいただきまして、現在、時短問題は基本的には労働基準法体系ということで処理される問題、法律的にはそういうことになっておりますので、その流れの中で時短促進法の延長というような法的整備も含めまして決着を見つつあるところでございますが、おっしゃいますように、現実の問題としてはこれからでございます。  そういう問題の重要性にかんがみまして、中小企業関係四団体は、物すごくこれを自分の問題として重要視いたしておりまして、積極果敢に行動をしてもらっております。先ほど労働省の方からも御答弁がございましたように、それぞれ自分の方から労働省に質問状を発出する、それの回答を踏まえてそれを各地域に流す、また場合によっては地方の相談窓口も設置するというような形での対応を含んでいるようでございまして、私ども中小企業団体に任せることなく、折に触れて適宜適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
  36. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 ぜひ積極的にお願いしたいと思います。  お役所の皆さん、文書を出したらもうそれで仕事が終わったとすぐ思われては困るんですよ。なかなかその皆さんの難しい文書を読めて理解できる人というのはそういないんですから。ひとつ中小企業庁長官、ぜひ現地へ行ってその顔を見せて、そうするとみんな安心しますから。それをぜひお願いしたいと思います。  時間がございませんので、最後に大臣にお尋ねして終わりたいと思います。  通産省職員の綱紀について所信で述べておられます。学識、経験ともに豊かな通産官僚の持つその職権を利用するために、政治家を仲立ちにして巧妙に接近してくる手練手管の人間がいるものです。政治家が、だから全部悪いというわけじゃない。そういう人も何人かはいるということです。  私が役所に入ったころも汚職問題はありましたが、常々先輩から、志は高く、身は清く、生活は低くと教えられました。そういう大変難しい環境の中でございますので、ひとつぜひこの綱紀粛正については大臣からも強く御指導いただきたいと思いますので、大臣の御決意をお伺いいたしまして、終わりたいと思います。
  37. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) 公務員は公私の別を明らかにして、いやしくも国民の不信を招くような行為については厳に慎むべきだということは当然でございまして、私といたしましても、大臣就任以来、行政改革、これはやっぱり柱は綱紀粛正だと、こういうことから大変厳しく実は職員にそうした喚起を促しているところでございます。  具体的には、御存じのように昨年の十二月に事務次官会議、これの申し合わせに基づいて、通商産業省職員倫理規程というものを設定いたしまして、服務管理委員会などの会議を通じて職員にそうした趣旨の徹底を図っているところでございます。  今、委員のおっしゃったこと、これを拳々服膺しながら同規程の尊重、遵守を初めとする綱紀の粛正については一層の徹底を図っていって、そしてその実を挙げてまいりたいと考えております。よろしくお願いいたします。
  38. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 では、以上をもって質問を終わります。  佐藤麻生両大臣、また両省庁、それから公取の皆さん、ありがとうございました。
  39. 加藤修一

    ○加藤修一君 平成会の加藤修一でございます。  私は、まず最初佐藤通産大臣に御答弁をお願いしたいわけでございますけれども、環境アセスメント法についてでございます。  環境庁は今国会にアセス法案を提出すると。アセス法につきましては、先進諸国で法制化していないのは我が国だけでございますけれども、その内容については、現在、通産省を含め環境庁との間でさまざまな調整が行われているというふうに聞いております。  通産省と環境アセスメント法との間の経緯、歴史といいますか、発電アセスメント法をいわゆる環境アセスメントの中に入れない、通産省のそういう考え方、そういう闘いの歴史もあったように思いますし、環境アセスメント法が通産省と調整がつかない、そういうことで過去何回か廃案になったような経緯があるというふうに聞いております。  現在に至るまで、OECD加盟国二十九カ国の中で、申し上げたかもしれませんが、ただ日本だけがアセス法がない、そういった原因の一端は通産省にもそれなりの責任があったのではないか、そのように考えられる部分もある、そういうことを踏まえまして、今回の環境アセスメント法案が出てくるわけですけれども、実効的な法案になるように進めていただきたい、私自身としてもそういうふうに思っておりますので、通産省としての今までの経緯とそれについての見解、それから実効的な面についての大臣の御見解をお聞きしたい、このように思います。
  40. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) 今、加藤委員指摘のように、この環境アセスについては長い歴史があり、今までもたびたび法案の提出があったように聞いております。その中で、例えば発電所のアセスメントについては、かつて環境影響評価法案というのは昭和五十八年でございますが、出されて廃案になったというようなことが記憶の中にございますが、それよりか早い、実は昭和五十二年に通産省としては省議決定に基づいて大変厳しい手続を実施しております。その結果、ほかのOECD諸国に比較して、SOxの排出量は約二十四分の一、またNOxの排出量は八分の一というふうな世界最高水準の実績を上げてきた、こうしたことがございました。  しかし、今回のアセス法、これに関しましては、中央環境審議会の審議が行われておりまして、早くからうちの方は法制化の必要というものは認めておりましたが、それが果たして当省が関係する発電所の今までやっているのとどういうふうにかかわりがあるのかなということで、実はこの答申というものを注意深く見守ってまいっていたわけでございますが、御案内のごとく、二月十日の日に総理に対して答申を出されました。それを受けられて、十二日の予算委員会でもって総理が御答弁をされまして、それで一応方向が決まったということでございます。  具体的には、やはり環境保全上実効のあるアセスメントをいかに実現するかという観点から、現在、環境庁と関係部局との調整を図って所要の法案を本国会に提出したい、こういうふうに考えております。
  41. 加藤修一

    ○加藤修一君 ただいまの御答弁と多少私の見解が食い違う部分があるかもしれませんが、昨年の八月の中央環境審議会のヒアリングにおいて、通産省は時期尚早と法制化に反対した立場をとったと、そういうような報道もありました。法制化方針が決まると、一転して発電所アセスメントは電気事業法で対応する考え方を表明した、そういう報道もございます。  ただいまの答弁の中にございましたように、総理が予算委員会で、別建てをしないというような意味合いの表現があったことを踏まえていわゆる別建てアセスメント法を断念する、いわゆる統一法の中で特例を設けるように環境庁に調整をしているというふうに聞いているわけですけれども、総理の言われた統一的な環境アセスメント法と発電所アセスメントの関係、また今後の発電所のアセスメントの方向性について、御答弁をお願いしたいと思います。
  42. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) 今、委員が御指摘のように、今考えておりますところは、発電所をアセス法の対象の事業にまず入れるということが一点でございます。  そういうことで、今申したようにアセス法に基づく一般原則を発電所には適用するわけでございまして、先ほど申したようにさらにやはりきつくしなければいけない点があるというふうに考えておりまして、発電所のアセス手続はほかの事業と異なる、いわゆる発電所だけに適用しなきゃいけないという部分を電気事業法の改正で対応する、こういうふうに実は考えておりまして、今のところそうした字句その他の点でもって環境庁の方と打ち合わせをしている、こういうことでございます。
  43. 加藤修一

    ○加藤修一君 今の御答弁の内容についてさらに質問させていただきたいわけですけれども、いわゆる一般原則を踏まえつつ、実は付加的な部分については電気事業法にのっとってやると。そこにおきましては、さらに国の主体的な関与、こういう答弁はなかったわけでございますけれども、そういう理解でよろしいでしょうか。
  44. 岡本巖

    政府委員(岡本巖君) 大臣の諮問機関でございます電気事業審議会が今週の月曜日、十七日に発電所に係る環境アセスメントについての報告を取りまとめていただいたわけでございますが、そこにおきましては、中環審の答申にありますような住民の参加とか早期段階のスコーピングの手続とか、先ほど大臣が御答弁なさいました十の中環審答申の原則をすべて発電所についても適用するということにしまして、その上で別途環境保全と電源立地というのを両立させる必要があるという観点から、早い段階から国が主体的に関与しながら厳しく環境アセスメントの一連のプロセスをチェックする必要がある、そういう方向での報告を取りまとめていただいているところでございまして、そういうものを踏まえながら私ども政府部内の今調整に臨んでいるところでございます。
  45. 加藤修一

    ○加藤修一君 国の主体的関与についても、それはそれで理解してよろしいというふうに判断してよろしいですね。発電所アセスメントについては国の関与があると、厳正な意味での。
  46. 岡本巖

    政府委員(岡本巖君) 先ほど御説明申し上げましたように、電気事業審議会の報告にありますように、発電所についてのアセスメントが発電所の立地について地元を含む関係者合意形成というのを進める上で非常に重要なステップになっているという一面がございますものですから、環境対策及びその前提としてのアセスメントにつきましては、引き続き厳しい手続、それから万全の環境対策をやっていただくということを前提に、そういったものを、これまでもそうでございますが、私ども通産省環境審査顧問会の専門家の方々の御意見も伺いながら厳しく早い段階からチェックをしているわけでございますが、そういう意味での国の主体的な関与という電事審報告の趣旨を体しながら、法制化に当たって政府部内での調整に臨んでまいりたいというふうに考えているところでございます。
  47. 加藤修一

    ○加藤修一君 今の答弁の中に厳格、あるいは先ほどの大臣の答弁の中にはきついという発言があったわけで、それから電気事業審議会の需給部会の報告の中には「国の主体的関与による厳格な環境影響評価手続」、こういう形になっております。厳格なという意味では非常にうれしいと思いますし、厳格の中には公平性あるいは中立性、そういったものが保たれるというふうに理解しているわけですけれども、この点はどうでしょうか。
  48. 岡本巖

    政府委員(岡本巖君) 厳格にという点は、従来私ども省議決定に基づきますアセスメントの一連の手続、それを電気事業法の中におきます工事計画の認可でありますとか発電所を使う前の使用前検査、運転開始後の定期検査、そういうものと一体的に結果のフォローもやってまいっているわけでございますが、そういう意味での厳しい手続という点に加えまして、アセスメントの評価の部分というのは客観的な作業でございますので、各分野の可能な限り最高度の知見を有する専門家の方々の御意見も伺いながら、客観的で公正なアセスメントの評価の結果の審査というのをこれからもやってまいりたいというふうに考えております。
  49. 加藤修一

    ○加藤修一君 国の主体的関与という点につきまして、先ほど紹介申し上げました電気事業審議会需給部会で出された「発電所の環境影響評価制度の在り方」、この中の発電所アセスメントの新スキーム図の中には「通産省の審査」というところが三カ所ほどございます。  私は提案したいわけでございますけれども、いわゆる厳格な意味のことをずっとおっしゃっておりますので、あるいはそのアセスメントが中立性あるいは公平性を保たれる、そういう担保をとるためにも審査会の中に環境庁も入れるべきであるというふうに考えていますけれども、この辺についての御見解をいただきたいと思います。
  50. 岡本巖

    政府委員(岡本巖君) 私ども、これまでのアセスメントの審査の結果につきまして、実は環境庁が現状におきましても電源開発調整審議会の法定メンバーでございまして、発電所の計画はすべて電調審に上程して、そこで御了承いただいて国の電源開発基本計画に組み入れるという形で初めてゴーサインが出るわけでございますが、その電調審の法定メンバーである環境庁との間では非常に丁寧な調整を実は電調審前にやっておりまして、環境庁からも発電所のアセスの対応ということについては私どもなりに大変高い評価をいただいているというふうに自負しているところでございまして、こういう環境庁との非常に丁寧な協議というのは引き続きやってまいりたいと思います。  もう一つ、都道府県との関係におきましても、電調審前に都道府県から同意をいただいて初めて電調審にかけるということにいたしているわけでございますが、これまでも私どもが審査した結果を担当者が県に出向いて御説明をし、県の方でお持ちの環境情報とこれまた緊密なすり合わせをやりまして、その上で初めて電調審にかけるという運用をしてまいっているわけでございますが、こういった環境に関連する情報なり知見を有している部局との緊密な連絡調整というのはこれからも引き続き十分やってまいりたいというふうに考えております。
  51. 加藤修一

    ○加藤修一君 今の答弁の中にありましたように、確かに電調審の中には環境庁を含むという形で新しいスキームがなっているわけですけれども、私が申し上げているもう一つの意味は、スコーピングの段階の通産省の審査、いわゆる環境審査顧問会、それから評価書が作成された後の通産省の審査というところになっておりますけれども、その二つのレベルにおいても環境庁を参画させる、あるいは審査させる、そういう意味合いで申し上げているつもりでございますけれども、その辺についてどうでしょうか。
  52. 岡本巖

    政府委員(岡本巖君) その点は、これから法案の具体的な中身を環境庁を初め政府部内の関係方面と調整する中で一定の結論を得てまいりたいと考えておりますが、いずれにしましても、私ども、環境庁との緊密な意見調整というものは法制化に当たって十分に考えてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  53. 加藤修一

    ○加藤修一君 国の主体的関与ということについてなんですけれども、この国という中身は通産省並びに環境庁というとらえ方はまずいですか。
  54. 岡本巖

    政府委員(岡本巖君) 国の電源開発につきまして、先ほど申しましたように電調審にかけて初めて最終的に計画が前に進むということでございますが、その電調審におきまして環境庁も非常に重要な法定メンバーでございますが、実は建設省とか水産庁を抱えます農林水産省でありますとか、政府部内の電源開発に関係する各省との間で事前に十分な連絡協議を行っておりまして、私どもそういう中で、アセスメントに関しまして、あるいは環境対策に関連する議論というのが非常に重要な協議の対象になりますものですから、そこに向けて通産省で環境審査顧問の方々の御意見を伺いながら厳正な審査をしてまいっているわけでございますが、こういった今のいわゆる省議アセスのスキームというものを法制化に当たりましても踏襲することを基本にして、電事審の報告にあります国が主体的に関与する一連の手続というものを法制化に当たって検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  55. 加藤修一

    ○加藤修一君 国の関与については検討していく、中身の問題については検討していくと。  それから、環境庁が審査会の中に入る入らぬという問題について、つまりスコーピングの段階と、それから評価書の作成の後の審査の中に入る入らぬという問題については現在検討中というか調整中という答弁でよろしいわけですね。
  56. 岡本巖

    政府委員(岡本巖君) 先ほど御答弁申しましたように、法制化につきまして今環境庁を初め関係方面と鋭意協議をいたしているところでございまして、私どもとしましては、環境庁との間で申しますと、これまでも非常に緊密な協議というのをしてまいっておりますので、そういう気持ちを持ちながら政府部内での調整に真摯に取り組んでまいる所存でございます。
  57. 加藤修一

    ○加藤修一君 環境アセスメント法については、かなり広範な分野にわたっていますし、関係委員会もございますので、私は委員長の方に要望したいわけですけれども、連合審査を要望したいと思いますので、理事会の方で御検討をよろしくお願いしたいと思います。  それでは次に、地球温暖化の問題についての質問をさせていただきたいと思います。  地球環境問題は皆さん御存じのように非常に深刻なわけでございまして、酸性雨の問題、森林破壊、砂漠化、そういった生態系の破壊、そしてオゾン層破壊、温暖化といったいわゆる地球レベルでの危機が強まっている、もう無視をすることができない。こういった問題が地球的課題として明確に認識されたのが一九七二年だと。いわゆるローマ・クラブの「成長の限界」でありますけれども、また同じ一九七二年に、かけがえのない地球というテーマのもとで国連人間環境会議が開催されたと。その中で環境問題は人類への脅威ととらえて、国際的に取り組むべきものとしていわゆる人間環境宣言が採択されているわけです。そして一九九二年でしょうか、地球サミットが開催され、環境と開発に関するリオ宣言あるいは持続可能な開発を実現していくための行動計画としてのいわゆるアジェンダ21の採択、そういった一定の成果があったわけですけれども、こういった努力が徐々に国際社会で積み重ねられてきております。  しかしながら、それをはるかに上回る勢いで地球環境問題が深刻化していると。種々のレポートを参考にしてまいりますと、例えば国連環境計画、これは昨年の四月でございますけれども、地球環境はほとんどあらゆる面で危機的状況にあり、現在の流れを大きく変えなければ地球の日を祝う意味はない、そういう警告を出しております。また、ワールドウォッチ研究所は地球白書の中で、今日世界は変革の必要に迫られている、そのために与えられている時間は極めて短い、変革に失敗するならば破局は免れないと強調しているわけでございます。さらに言うならば、UNDPのレポートにおきましては、社会的公平性あるいは世代間公平性、そういったものが示されております。まさに地球環境問題は従来の考え方を延長するだけでは解決できない、現在の流れを大きく変える発想、行動の転換が強く求められていると。  これらの意味を踏まえて考えていきますと、いわゆる旧来の国益中心の考え方をやはりある部分においては克服しなければいけない、いわゆる人類益を基盤とするそういった視点が大切であろうと私は思います。環境汚染は生命への危機であり、つまり生命を守る立場から考えますと、理念的なものとしてはヒューマンセキュリティー、そういう視点からも考えることができると。このような点を踏まえた形で産業の中身を改革していくことも考え方としてはあると思います。  以上のような地球環境問題の状況を踏まえて、やはり我が国は抜本的なアクション、それを国際社会に向けて強力なイニシアチブをとるべきだと考えているわけでございます。この点につきまして大臣の御認識並びに決意をお伺いしたいと思います。
  58. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) 今、加藤委員指摘のとおりでございまして、地球の環境問題というのはまさに一国の問題ではなく、人類の存続にかかわる、こうした問題だと思っております。  ちょっと個人的なことを申し上げて恐縮でございますが、平成元年、私が運輸大臣のときに気象庁から、非常に地球の温暖化現象というのが続く、そうなると俗に言う高温多雨ということでもって大変なことになるんだと。ちょっとうろ覚えでございますが、一度上がると海水面が二十センチですか三十センチですか上がると、こんな実は報告を初めて日本ではさせてもらったんだと思います。そこで、当時の竹下内閣といたしましても、非常にこの問題は重要だということで関係閣僚会議を発足したんですが、つくった途端に竹下内閣があのようなことで瓦解したと、こういうことでございます。それだけに私自身そうしたような思いでもってこの問題を実は見詰めておるわけでございます。  今おっしゃるように、気候変動問題というのはまさに環境問題と同時に経済やエネルギーと大変深いかかわりを持っているということから、産業エネルギー、これを所管する通産省としても積極的に対応していくということは当然でございます。具体的には、本年の十二月に地球温暖化防止京都会議、COP3というものが開かれますが、そのときにやはり日本がイニシアチブを握ってこの会議の成功ということをさせなければいけない。通産省といたしましては、それに対する協力、これからとしては省エネと新エネ、これとやはり原子力、これのエネルギー政策、環境エネルギー技術の開発、技術移転、こういうことに全力で取り組んでまいりたい、かように思っております。  以上です。
  59. 加藤修一

    ○加藤修一君 日本政府は、昨年の十二月にジュネーブで行われました気候変動枠組条約の附属会議の一つ、いわゆるベルリンマンデート・アドホックグループ会合において、二十一世紀の先進各国の温室効果ガス目標として、総排出量の削減率目標と国民一人当たり目標との選択制を提案したというふうに伺っているわけですけれども、いわゆる選択制にしたその理由はなんでしょうか。
  60. 稲川泰弘

    政府委員(稲川泰弘君) 御指摘のように、昨年十二月、日本の議定書案として選択制を提案いたしてございます。これは、各国の目標をこれから二〇〇〇年以降定めるわけでございますが、各国の過去の省エネ努力の違いを踏まえまして、できるだけ公平な努力をするということをねらったものでございます。  いささか具体的に申し上げますと、先進各国の現在の炭酸ガスの排出状況を見ますと、これまでの過去の省エネ努力あるいは電源構成その他の努力などによりまして、温室効果ガスの排出状況に相当の差がございます。したがいまして、特定の年を基準といたしまして各国一律に削減割合を課するいわゆる一律削減目標を置きますと、こうした各国の排出状況の違いが考慮されないという結果になります。例えば、排出効率の非常に悪い国あるいは省エネを今まで余り進めていない国に比べまして、過去かなりの努力をした国が厳しい削減努力を強いられるという結果になるものでございます。  他方で、国民一人当たりの排出量を同じくするという目標を設定いたしますと、地球的な公平性はある程度満たすものではございますが、現実の一人当たりの排出量というのは、フランスで見ますと一・八トン、多いアメリカで見ますと五・四トンというような大きな開きがございます。こういう現状を踏まえますと、一人当たりの排出量というものだけを適用すれば、これは短期間に大幅な削減を課すという部分が出てくる、こういう意味で、現実的に非常に受け入れが困難という状況になります。このため、日本政府といたしまして、一律削減、もう一つは国民一人当たりの排出量という二つの目標から各国がいずれかを選択いたしまして削減の方向に向けてそれぞれ努力をするという趣旨で提案を行ったものでございます。    〔委員長退席、理事沓掛哲男君着席〕
  61. 加藤修一

    ○加藤修一君 今の答弁の中に、いわゆる公平な努力あるいは省エネ努力に差がある等々、各国の状況が違う、努力した国にとっては厳しい対応を迫られる、そういうケースを生じるものもあると。  ちょっと複雑な話かもしれませんが、一人当たり排出量、それを削減目標としたと仮に考えた場合、例えばEUは十五カ国平均で一人当たり排出量が二・五トンである、日本の現状というのは二・七トンである、そういうことを目標に排出削減するように日本が提案したとしますと、日本、EUはほとんど削減を要しない一方で、先ほど答弁にありましたように、米国は相当大きいわけですから、アメリカ、オーストラリア、カナダといった国々は相当過重な排出削減を求められることになってしまう。そういった意味では国際合意が非常に困難になる状況が出てくる。  さらに途上国の件について考えていきますと、今言った二・七トンとか二・五トンというものを目標にいたしますと、途上国としてはまだまだそのレベルに達していないわけですから、ちょっと言葉は適切でないかもしれませんが、そのレベルまで汚してよいという印象を与えてしまう。将来途上国を巻き込んだ形でこの温暖化防止に対しては対処していかなければいけないわけですから、そういった点を考えますと、非常に将来に向けての禍根を残す。  つまり私の言いたいことは、一人当たり排出目標については余り国際合意を得られる見込みはないのではないかと。通産省がどういうふうにその辺の一人当たりのトン数を頭の中に想定しているかどうか私はわかりません。ただ、先ほどの答弁の中で、公平な努力あるいは公平性、そういう答弁がありましたけれども、通産省の言うように一人当たり排出目標では削減率が大きくなり過ぎる国、そういう国については総排出量削減目標を選ぶことができる、そういうふうにするならば、一人当たり目標を選んだ国と総排出量目標を選んだ国との間に対策をやっていく努力をしていく上での配分の公平性というのは確保できないように私は思いますよ。その辺については、配分の公平性ということについてはどのように考えていらっしゃいますか。    〔理事沓掛哲男君退席、委員長着席〕
  62. 稲川泰弘

    政府委員(稲川泰弘君) 今御指摘のような国々を含めて世界が二つ、三つに分かれて議論をいたしてございます。今回の提案、各国に課する目標設定の考え方を我が国としては示したものでございまして、具体的な削減量あるいはやり方については各国の意見も踏まえながら検討していきたいということでございます。  我が国が出しましたいわゆる差別化目標のやり方につきまして、例えばフランス、スイス、ノルウェーなどが同じような一人当たりの排出量を目標設定に使うという趣旨で提案をいたしてございます。案の内容はそれぞれフォーミュラのつくり方が違います。そういう意味で、各国それぞれ今議論の途中でございます。御指摘のとおり、一人当たりという目標を定めましたときに、その数字の置き方によりましてはアメリカ、豪州に非常に大きな削減努力を課すことになりまして、したがいましてアメリカとしては別の一律削減のような方向を考えるものだと思います。  御指摘のその配分の公平性というところを厳密にどこまで追求し得るかということは、今後の議論の中でいろいろ検証がなされることと思いますが、我々考えておりますのは、この先進国の間で行います削減努力について、大臣も申し上げましたように、この炭酸ガス問題というのはエネルギー問題であり経済問題でもございますので、現実性という趣旨を重ねて強調しながら議論したいと思っております。
  63. 加藤修一

    ○加藤修一君 先ほど大臣の答弁の中で、いわゆる地球温暖化問題に対しては積極的に対処していかなければいけない、いわゆる省エネあるいは新エネあるいは原子力、そういう話がございまして、大臣の認識の深さがわかったわけです。  これは最後の質問にしたいと思いますが、長期エネルギー需給見通しの中で、二〇三〇年に三・二億トン、最大限の省エネ、新エネ政策の強化を実施した場合にようやっと二〇三〇年に三・二億トンの一九九〇年の水準にすることができる、三十数年後ですよ。実は国際社会の中でこういうデータが出ているわけですよ、こういうシミュレーションをやったデータが。最大限やってもこうであるという表現がされているシミュレーション、非常にこれは私は重大なシミュレーション結果だと思います。これは最後の質問ですから、次の方が待っていますのでやめますけれども、別の機会にこの辺については議論を深めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  以上です。
  64. 平田健二

    平田健二君 まず、私は最初に、先日行われました通産大臣の所信表明の中にもありましたが、環境と共生する経済社会の構築という観点から、産業廃棄物の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  大臣も御承知のように、今、全国の至るところで産業廃棄物処理場をめぐる争いが多発をしております。私の地元岐阜県でも今、産業廃棄物処理場の建設をめぐって大きな問題となっておりまして、近くその是非をめぐって住民投票が行われるという予定になっております。  産業廃棄物の処理問題につきましては、この狭い日本で今や埋め立てるところが少なくなっているという状況にあるわけでして、厚生省を初めそれぞれの自治体では懸命にこれらの対策をしていただいておる状況でございます。  この問題につきましては、処理場をどうつくるかということも大切なことでありますけれども、廃棄物の量をどう減らしていくかということもまた大変重要なことだというふうに思います。最近では、これは日本ではありませんが、大変危険な廃棄物をお金を出して外国に引き取ってもらうというような報道もされております。日本ではそういうことはないと思いますが、狭い日本ですから行き着く先は廃棄物処理場がなくなる、こういった事態に陥らないとも限らないわけでして、私は産業廃棄物そのものの量を削減する、あるいは廃棄物をリサイクルするということにもっと積極的に取り組んでいかなければならないと思っております。  その点について、最初に大臣のお考えをお聞きいたしたいと思います。
  65. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) 今、平田委員指摘のとおりでございまして、産業廃棄物の排出事業者を所管する、あるいはまたリサイクルというものを所管する立場から、この産業廃棄物問題というのは極めて重大な問題だというふうな認識をまず持っております。  こうした観点から、産業構造審議会の廃棄物処理・再資源化部会のその中にある企画小委員会というのがございますが、そこにおいて産業廃棄物問題について検討が進められております。本年の一月二十四日に取りまとめられました同委員会の報告を踏まえ、数値目標の設定等による産業廃棄物の減量化、リサイクルの推進、また排出事業者の適正処理に向けた取り組み、こういうものを強化していくというふうに考えております。
  66. 平田健二

    平田健二君 ぜひひとつ積極的な取り組みをお願いいたしたいと思います。  次に、この十八日に厚生省の審議会であります生活環境審議会から廃棄物処理法の改正についての答申が出されました。この答申の中には通産行政にかかわる部分もございまして、例えば廃棄物の多量排出事業者における減量化の推進とか、不法投棄対策として、投棄者不明の場合には産業界と行政が協調して手当てをする制度を創設するものであるとあります。  この答申につきましては、私は一歩前進として基本的には歓迎をしておりますが、答申は出されたばかりでございまして、これから厚生省と通産省あるいは各省庁間で調整が行われると思われますので、この答申に関するコメントを求めるつもりはございませんが、通産省の生活環境への取り組みを重視するあらわれとして、ぜひ通産省としても、このような産業廃棄物、またその不法投棄に対する企業の社会的責任ということを強く指導していただきたいと考えるわけでございますけれども、大臣の御見解をお聞きいたしたいと思います。
  67. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) 現行廃棄物処理法においては、事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物をみずからの責任において適正に処理しなければいけないということが規定されております。排出事業者としてはその規定の趣旨を踏まえて産業廃棄物の適正な処理をするべきだと、かように考えております。  通産省としては、産業廃棄物の排出事業者を所管し、またリサイクルを所管する立場から、産業構造審議会の廃棄物処理・再資源化部会における検討の結果をまず踏まえて、排出事業者の適正な処理に向けた取り組みの強化、これを図ってまいりたいと考えております。
  68. 平田健二

    平田健二君 時間がございませんので次に移りますが、いずれにしても、大臣、産業廃棄物は産業が出す廃棄物ですから、やはり厚生省のいわゆる処理場の問題じゃなくて、産業が出す廃棄物ですから、産業を指導する行政の通産省としてぜひしっかり指導していただきたい、余り大量に廃棄物を出さないというようにぜひ指導をお願いいたしたいと思います。  続いて、繊維のセーフガードについてお尋ねを  いたします。  昨年の十一月に前の塚原大臣が談話として出されまして、一昨年の十一月に引き続いてTSGの発動が事実上見送られました。私は何でもかんでもTSGを発動しなきゃならぬというふうには考えておりませんが、しかし大臣談話が発表された翌日のマスコミの報道を見ますと、発動また見送り、また見送りというような見出しが踊っておりました。多くの繊維の関係者の期待と予想を裏切ったものだと私は思っております。  私は、この繊維のセーフガードに関する質問が今回で三回目になります、多少しつこくなりますが。日本の製造業が抱えるさまざまな問題を繊維産業が一歩先にその苦難を受けているにすぎないと考えておるからでございます。言いかえれば、繊維産業への対応を誤ると、我が国の産業対策的にも、また通商交渉的にも後々我が国の製造業全体に大きな禍根を残すのではないかと思うからでございます。  日本はTSGの発動に私どもから見ますと非常に消極的だというふうに見えます。とりわけ中国との交渉には過敏になり過ぎているんではないかなとさえ思えるわけでございまして、MFA協定等による繊維の輸入規制は日本はまだ一度もしたことがないわけでございまして、G7参加国の中で繊維の輸入規制を一度もしたことがないという国は我が国だけであります。  昨年の八月に通産省が実施した緊急実態調査では、綿織物の産地すべてが三〇%以上の減産となっております。また、産地として健闘しているところも現実には減収増益、雇用を減らし、リストラによって収益を上げておる。全体としては必ずしもいい状況にはないという報告がされておるわけでございます。  繊維産業の空洞化と軌を同じくして商社の繊維部門の海外移転が進んでおりますし、産業の空洞化あるいは金融の空洞化と言われていましたが、今では商社までも空洞化しつつあります。日本の繊維産業は日本の製造業のそういう意味では先駆けでありまして、単にもう繊維は時代おくれだから、もう日本になくなってしまってもいいよというものではないというふうに私は思っておりますが、通産大臣のお考えをぜひお聞きいたしたいと思います。
  69. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) 今、平田委員指摘のとおりでございますが、言うまでもなく、我が国の繊維業は我が国の製造業の雇用の約一割を抱え、そしてまた地域経済の担い手として活躍しております。また、国民生活の基礎である衣料の需要を支えるとともに、産業界の求めるさまざまな先端技術を生み出してきたという重要な産業分野であるという認識は持っております。しかし一方、今日、経済のボーダーレス化や国際的な大競争時代の中で、非常に厳しい状況に直面しているというのも事実でございます。  しかしながら、このような状況を直視しながら、我が国繊維産業のポテンシャリティーを活用した対応策を講じていけば、繊維産業というものは将来にわたって日本経済の発展に大きく貢献を果たしていけるもの、かように考えております。そのため、我が国の繊維産業の構造をより一層市場志向型で創造性を発揮できるように改革していくことが必要だと、かように考えます。  そのため、通産省としては、繊維産業構造改善臨時措置法を軸に産業全体の情報化推進、産地の市場創造基盤の整備や人材育成等積極的に支援して、そして我が国繊維産業が大競争時代の中で創造的な発展を遂げるようこの構造改革を支援していきたい、かように考えている次第でございます。
  70. 平田健二

    平田健二君 そこで、次にちょっと細かなことをお尋ねいたします。  九五年の十一月、そして昨年の十一月、それぞれ業界からTSGの発動要請がなされましたけれども、それぞれ見送られました。九五年の十一月のTSG発動の見送りのときにはこういうことになっておるんです。国内産業の被害は認められるが、中国側の自主規制に期待するということで見合わせるということだったんです。その措置のわずか八カ月後にまた同じ要請がされました。ですから、九五年の十一月に当時通産省が出された政策判断は、これは失敗だったということでしょうか。  ここに平成七年十一月十日に通産省が出した文書がございますが、読んでみますと、「なお、中国との間では、一年半にわたり、繊維製品輸入急増問題について話合いを行ってきていますが、これまで、本年一月から自主的な輸出管理措置をとるとともに、その管理の実効を高めていきたい等の説明を受けており、」云々とあります。中国はいつもこういうことを言っておるんです。そのことでもってTSGの発動が見送られました。  重ねて言いますが、九五年の十一月、そして九六年の十一月、同じように発動が見送られました。九五年の十一月の発動見送りは政策的に誤りだったかどうか、お尋ねいたします。
  71. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) セーフガードの調査につきましては国際ルールがございまして、それに基づいて可及的速やかに結論を出すということで進めてきておるつもりでございます。  先生指摘のとおり、九五年十一月の時点では、最終的には国際ルールに基づいた輸入の状況というものを判断いたしましたときに、綿製ポプリン・ブロード織物の輸入が直近の十二カ月の前年同期比で減少していたということがございまして、そういう環境であった。ルール上、そういう環境ですと発動の要件を満たさないということになりましたものですから、セーフガードの発動を見送ったところでございます。  その後はどういう状況になったかということは今先生がおっしゃったとおりでありまして、大変急増という状況がございまして、再度関係業界の方からの調査要請がございまして、去年の八月に再調査をしたということでございます。
  72. 平田健二

    平田健二君 今の御説明ですと、九五年の十一月の発動見送りについては、数量的に減ったからというふうに理解をしてよろしいんですか。
  73. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 輸入量だけではございませんけれども、その当時の判断といたしましては、輸入量が三五%減っておったということで見送ったことは事実でございます。
  74. 平田健二

    平田健二君 それでは、昨年十一月、これは事実上まだ見送りということではありませんが、大臣の談話ということで発表されていまして、事実上これは見送り、実際にはことしの八月五日まで期間があるわけでございますけれども、事実上は見送りというふうに判断をしておりますが、今回の大臣談話で事実上見送ったことは、私どもから見ても、技術的な数量としてはきっちりセーフガードを発動してもいいという水準にあると思うんですが、その辺はどうですか。
  75. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 委員十分御認識のとおり、私どももどういう対応をするかというのは、いろいろなオプションがございまして、それで検討を進めておったところでございますが、中国側が積極的に自主的な輸出自粛措置を講ずるということで、従前も委員指摘のとおりやったこともございますが、それが必ずしも十分きちっとしたものでなかったという反省を込めまして、いわば新たに十分な、十分な輸出自主管理措置をとるというお話がございまして、そういたしますと、繊維のセーフガード措置で最終的に仮にそれを適用した場合にも、相手国、輸出者側がどういう措置をとるかということが結局キーになりますものですから、輸出国側の内容いかんによってはセーフガード措置によって期待される事態と同じような事態を期待できるということでございまして、形の上では調査を打ち切ったということでございます。
  76. 平田健二

    平田健二君 今回の大臣談話の中にあります中国の自主規制、「中国側海関統計で見た一部綿織物の対日輸出が大幅に増加せず安定的になり、三年後の水準は最近四年間ないし五年間の対日輸出数量の平均と同等の水準となることが見込まれる。」これは貿易の安定化ということでありますが、最近の四年ないし五年の輸出平均量と同等となるという保証はございますか。数量は幾らか。
  77. 村田成二

    政府委員(村田成二君) 今、委員のお尋ねの中身、多分二つに分かれると思います。一つは、最近四年ないし五年間の年平均輸出量と同等の水準になる、その数量自体のあいまいさがどうかという点と、それから二つ目はそれを実現できる、きちっと確保できる手段があるのか、実効性はどうかと、この二点かと思います。  まず第一点につきましては、文字どおり、委員御紹介いただいたとおりなのでございますが、具体的に少し敷得して申し上げさせていただきますと、中国側の海関統計で見まして過去四年ないし五年間といいますのは、具体的には一九九二年ないしは九三年から一九九六年まで、ここの実績が出るわけでございます。  その実績の年平均数量、これをとりますと、幅がございますけれども、ごくわずかな乖離でございまして、大体二億九千万メーターから三億メーターぐらいの幅におさまります。それを三年後の水準として、その間安定的に輸出管理をしていく、こういうことでございますので、かなり具体的なラインは設定されているんだろうというふうに私ども理解しております。  問題は、それをどうやって確保するかという点でございますけれども、もう委員御承知と思いますけれども、中国側で輸出自主管理をするという、従来中国側が申しておりました輸出自主管理という具体的な中身、これと比べてみますと、はるかにそこはきっちりした仕組みがつくられてきているものと理解しております。  すなわちまず一つは、中国側で正当に管理された輸出であるかどうかという証明印を、中国紡織品進出口総公司駐日本代表処というところがございますが、ちょっと長ったらしい名前で恐縮でございますが、そこにおきまして輸入インボイスに、中国側で管理された正当な輸出であるという証明印を押していただく、こういうことになっております。  それから、加えまして日本側としましては、正当な輸出であるかどうか、証明印が付されたものであるかというあたりをきちんと輸入通関時に確認をするという制度を導入いたしました。したがいまして、この両国措置の効果が相まちまして実効性が確保されるというふうに私どもは考えている次第でございます。
  78. 平田健二

    平田健二君 過去、中国との交渉はそういったことの繰り返しでして、中国側の自主規制を期待するということで、何度も何度も期待を裏切られてきたという歴史があるわけでございます。これはいろいろ言っても仕方がないことでございます。  通産省は業界と中国との真ん中に立って中立的なレフェリーなんという気持ちでやってもらっては困るわけでして、本当に国内産業をどう守るんだということの立場に立たなければ、何となく繊維の交渉については中国と日本の繊維産業の間のレフェリーみたいな格好でやられておるような気がしますので、ぜひひとつ国内産業を守るんだという立場からさらに実効性のある交渉をしていただきたいというふうに要望をしておきたいと思います。  次に、関連してですが、今インボイスに中国側の証明印があるものがということでしたが、それ以外にも日本にはたくさん繊維製品が入ってきておるわけです。  迂回貿易の実態について通産省は調査をされておりますでしょうか、お尋ねいたします。
  79. 村田成二

    政府委員(村田成二君) 迂回貿易、すなわち中国原産の織物、繊維製品が中国以外の例えば香港ですとかその他地域を通じて日本に入ってきているかどうか、こういうことでございますけれども、実は一九九四年からインボイス統計を利用いたしましてある程度の推計を行ってきております。  ちなみに、セーフガードで問題となりましたポプリン・ブロード織物について申し上げますと、九四年では二十数%迂回してきている。それから、九五年は九%にそれが落ちております。それからまた、実は九五年の十二月から外為法に基づきます輸入報告制度を活用いたしまして、それによりましてポプリン・ブロードだけじゃなしに、それを含みます今回の自主管理措置の対象になりました、あるいは日中の合意の対象になりました平織物につきまして調べておりますが、それについては九六年が対象になるわけでございますが、約八%の迂回比率ということになっております。
  80. 平田健二

    平田健二君 中国から正規の形で輸入されるものについては過去四年から五年の間の平均値で日本へ持ってくる、これは理解できました。  実は迂回貿易、これが大きな問題でして、二月二日にアメリカと中国で新しい繊維協定ができましたけれども、アメリカはきつくきつく迂回貿易についても取り締まるんです。なぜ日本はできないんですか。アメリカと日本ではなぜそんなに違うのかということがちょっと私は理解できないんです。迂回貿易もやっぱりきちっと話し合いをするということをしてもらわないと、大変な量が入ってくるんです。その辺についてもう一度お尋ねいたします。
  81. 村田成二

    政府委員(村田成二君) 実は今回の措置自体が、委員御案内と思いますけれども、WTOの新繊維協定下におきましては、基本的にまず輸出国側の措置を前提とするということにもなっておるということから、やはり中国側の自主管理措置をベースとしてその実効性をどう確保するかということで工夫いたしたわけでございますが、おっしゃるとおり、第三国からあるいは地域からの迂回というのは実は非常に頭が痛い問題でございます。  中国側の自主的な措置ということになりますと、どうしても中国側で管理できるものに限定されますものですから、そこから抜け落ちてくるものがあるということはおっしゃるとおりでございます。したがいまして、私どもとしましては、昨年の十一月でございましたけれども、APECのフィリピン会合がございました際に、ここにおられます佐藤通産大臣から中国側の呉儀対外貿易経済合作部長に対しまして、この点を強くまず第一番目に指摘いたしております。  中国側としましても、難しい問題だけれども、いずれにしてもこの合意が実効性をなくすということ自体が非常に大きな問題を生ずるという観点から、きちんと対処していきたいという意思の表明をもらっているところでございます。  いずれにしましても、この問題につきましては私どもなりにまたきちんとフォローする必要があるというふうに考えておりまして、実は昨年末以来、日中繊維貿易に携わっております日本側の商社に対しまして相当厳密なきちんとしたヒアリングを実施いたしております。  したがって、こういった迂回の実態をそういった調査を通じて把握いたしますとともに、この機会を通じまして日中の今回の合意というものがいかに大事なものであるか、その趣旨、目的、それからそれが実効性をなくすとどういう問題を生ずるかというあたりをきちんと周知徹底を図っているというところでございます。  おっしゃるとおり、これはなかなか把握しがたい面もございますが、今申し上げましたような手段を通じまして引き続き私どもとしましてもきちんとフォローしていきたいし、それからまた問題があれば直ちに中国側と緊密な連絡をとって対応措置を求めていくということにいたしたいと思っております。
  82. 平田健二

    平田健二君 これは直接セーフガードと関係ありませんが、中国が、日本がTSGを発動するかどうか調査を開始して、発動しそうだなと思ったら対抗措置を講ずると。対抗措置かどうか、表現はどうかは別として、マスコミには日本がTSGを発動すれば中国側は対抗措置を講ずる、こういう報道がされました。  このセーフガードは、特に繊維製品については相手国の特定が許されて、しかも代償措置も不要なんです。日本がセーフガードを発動したから相手国が制裁措置なり対抗措置を講ずるなんということは本来できないんです。中国側が対抗措置を講ずると言った対抗措置とは何なんですか。ちょっと教えてください。
  83. 村田成二

    政府委員(村田成二君) 委員指摘のように、新聞報道ないしは不規則発言として話し合いの場以外の場での発言はあったかもしれませんが、私どもは確認いたしておりませんし、できません。  私は具体的な話し合いの当事者でございますけれども、話し合いの全体を通じまして一つ二つ申し上げたいことがあるのでございますが、まず結論的に申し上げまして、対抗措置に中国側は言及したことはございません。むしろ、そういった問題を言及することよりも、一番中国側として今回真剣に臨んできたと思いますのは、やはり中国としての繊維貿易の大事さ、重要さ、特に日本相手の貿易の大事さというものをひしひしと実感している。しかも、そういった大事な問題分野から違う問題に飛び火させていくというのはむしろ防ぎたい、こういうことであったように私は印象として抱いております。  したがいまして、先ほど来先生おっしゃるとおり、いつもおりているじゃないか、また返上かと、こうおつしゃられるんですが、従来のスタンスあるいは合意ないしは話し合いと今回は大分違うところまで進展したというふうに私どもは認識いたしておりまして、そういった進展もひとえにやはり中国側としての問題をほかに波及させたくない、仮に中国側がきちんとした対応をとらなければ、むしろ日本側がきちんとした一方的措置をとってくるに違いない、こういうこともあったように感じております。したがいまして、対抗措置云々の話は、場外で不規則発言等があったかもしれませんけれども、正式の場では全くございませんでした。
  84. 平田健二

    平田健二君 最後に、お願いをして終わりたいと思います。  セーフガードのいわゆるガイドライン、運用指針、これは我が国の内規といいますか取り決めでありまして、外国には関係ないことであります。この運用指針が非常に厳しい。繊維産業というのは御承知のように川上から川下までずっとつながっているわけでございまして、ある部分の製品だけが外国から大量に入ってきたからその部分の関係者しかTSGの発動要請ができないという指針になっておるんですね。これではやはりちょっと問題がございますし、ぜひこのガイドラインを改正する、どこからでもという言い方はちょっと問題がありますが、繊維産業に携わる者だったらどこからでも発動要請ができるというふうにぜひ指針を変えていただきたい、ぜひそういった検討をいただきたいということを要望申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  85. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      —————・—————    午後一時二十分開会
  86. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題とし、通商産業行政基本施策に関する件及び経済計画等基本施策に関する件等について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  87. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 三井炭鉱が閉山になろうとしておりますが、敗戦後、我が国の復興エネルギーを支えてきた石炭産業が消えていく寂しさを感じておりますし、私は九州ですが、炭鉱節がはやったああいう時代を思い出すと、本当に寂しい限りであります。  この三井鉱山の閉山に伴う今日の状況、それから今後の対応、特に地元に相当大きな打撃を与えるだろうし、また従業員や家族のことも大変心配であります。この辺のことがどうなっているのかを伺います。
  88. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) 今、梶原委員が御指摘のように、非常に歴史の深い三井三池炭鉱、この閉山提案ということは、梶原委員と同じような思いを全国の人がしている、かように思います。  御案内のごとく、二月十七日に会社側から閉山の提案がなされまして、現在は労使間で話し合いが進められているところでございます。当省といたしましては、この労使間の十分な話し合いというものを経て、みずからの責任と判断による結論が見出されるよう実は見守っているというのが現状でございます。  しかし、閉山に至った場合、雇用状況に多大な影響を生ずるということは言うまでもありません。これに対して、三井石炭鉱業が閉山提案時に千七百四十四名分の再雇用先を提示しております。当省としても、離職者再雇用について会社の一層の努力を促すとともに、地域経済団体等に対して協力を呼びかけていく予定であります。さらに、三井鉱山グループの行う新分野開拓事業に対する支援等を通じ、地元の雇用の開発に努めてまいりたい、かように考えております。
  89. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 なかなか雇用問題というのは、長いこと地元で生活してくると根が生えているんですね。できるだけ地元で雇用が確保できるような、そういう支援をお願いしたいと思いますし、当商工委員会も、委員長、できれば早く現地に委員派遣をして、事が事だけに実態を知り、委員会としても何かできないか、こういうことで委員派遣をできないか、理事会で御検討願いたいと思います。
  90. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) 理事会でもって相談させていただきます。
  91. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 引き続いて、エネルギー問題ですが、たくさん人が集まっているときに、三井石炭鉱業閉山問題について、一体我々が昭和二十年代に果たしてこういう事態になるということをあなた方想像していたか、想定できたか、こう言ったら、みんなそんなことは考えられなかった、こういうことでございまして、私もそう思うんです。本当に無限に九州には石炭があるんじゃないか、炭鉱節を歌いながらそんな感じを持っておったんですが、なくなってしまった。もう採算がとれない。  それで、石油資源も、この前私も本会議で申し上げましたが、これは地下に何億年もかかって埋蔵されて、そしてできたものが今この調子でどんどんくみ上げていけば、必ず我々が意識するよりもっと非常に早く石油の底が見えてくるようになるだろうと私は思います。  そこで、省エネの問題やあるいは新エネルギー開発促進について、新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法が今度提案をされますが、こういう問題や、いろいろと大臣の演説の中にも強調されておるのはよくわかりますし、本当にその前向きな取り組みに対する評価をしたいと思います。  また、予算の中も見てみますと、新エネルギー分野については対前年に比べて伸びもいいということも承知をしておりますが、さらに二つのことをしっかりやらなきゃならないんじゃないかと思います。  一つは省エネです。確かに所信の中にありますが、一方では石油精製工場やあるいは小売店は石油をどんどん売りたい。売らなきゃコストの関係があって、売ることが利益につながるわけですから、売らなきゃ食えない。それから電力業界も原子力発電の関係もあるんでしょうが、とにかく電力をどんどん使ってくれと。そして夜、価格を安くしてもどんどん使ってくれ、こういうようなことで売り込みに躍起でございます。  だから、省エネを政府が旗を振るとすればそこらにもつと切り込んで、力強くやっぱり省エネをやろうじゃないかと。資源やあるいは環境の問題も考えてもっとやらないと、どうも困ったときの省エネに取り組む政府の姿勢と、ここずっと最近の石油はむしろ余りぐあいの状況の中での省エネの呼びかけというのは、指導の仕方というのは私は弱い、このように見ております。省エネに対する大臣のお考えをさらにお願いしたいと思います。  それからもう一つは新エネルギーですが、いろいろと配慮をされて取り組まれておるんですが、私はやっぱり抜本的な対策がないかと。通産省もどこかで少し提起をされておりましたが、ドイツも研究しておりますが、太陽光を発電して、そして水を分解して水素を取り出してそのエネルギーを使うとか、これは石油がなくなることを想定すれば、大がかりなエネルギーの新開発に向けて力を尽くさないと、これは気がついたときにはもう手が遅い、こういうことになりかねませんので、新エネルギー開発に対する取り組みは相当今金がかかっても、ほかのところの予算を節約してもそこに投入していくべきだ、このように考えております。  省エネと新エネの開発に向けて、二点お尋ねします。
  92. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) 新エネの問題では本会議でも梶原委員から御質問がございまして、大変この問題に取り組まれている委員の姿勢にまず敬意を表します。  御指摘のように、今のエネルギー源だと言われている化石燃料、石炭だけではなく化石燃料によって非常に地球上の環境問題への影響がありますし、そしてまた埋蔵量からいっても、石油というものもそんなに長い寿命でもないだろう。こういうことから、今おっしゃるように、まず省エネということを徹底してしなきゃいけないと思うんです。  これは既に通産省も音頭をとってやっておりますが、産業用の方は割と徹底してまいりました。これは使用が減っておりますが、逆に民生または運輸部門においてはこれが増加しているということが現状であります。ですから、やはり民生ということになりますと一般の家庭が対象でございますので、そうした啓蒙運動も進めていかなきゃいけないだろう、こう思っております。  そして、今おっしゃるように新エネの開発でございますが、これも当省を中心にやっておりますが、御案内のごとくまだ一%ぐらいしか全体の中で新エネというものが使えないという現状でございまして、やはりその最大の理由はコストの問題を言われるわけなんです。最終的には今御指摘のように太陽光による水素の分解、こういうふうに持ってくるわけですが、これにはまだ研究過程で時間がかかるということでございます。今通産省としても、本国会に新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法案というものを提出して御審議をお願いしたい、かように考えております。  そういうことで、新エネルギーの導入というものを加速的に進展させて、政府国民に新エネルギーに対する取り組み方を明確化したいというのがこの特別措置法案の柱でございますので、その辺に対する御支援のほど、よろしくお願いしたいと思います。
  93. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 ありがとうございました。ぜひ頑張っていただきたいと思います。  次に移ります。  泉井石油商会問題でございますが、二月十三日の新聞報道によりますと、エネ庁の元幹部が三菱石油のC重油を泉井さんにどうも依頼された疑いがあり、そして中部電力あるいは関西電力に働きかけたという記事が載っておりまして、そしてどちらも断られたが、中部電力は東邦石油を紹介して、そこに十四万キロリッターを納入した実績がある云々という、そういう記事が出ております。これに対して、新聞報道では、牧野次官は、OBの問題であり実態を調査する考えはない、このように新聞で報道されております。  そのエネ庁の幹部という人は、この当時はエネ庁の現職職員だったのではないかと推測をいたしますが、このOBの調査はもう関係ない、しないというような形の新聞報道というのはそういうことであれば大変遺憾でありまして、ぜひ調査をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  94. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) ちょっと若干先に経緯を申し上げたいんですが、昨年の暮れに通産省でもって六名の者の処分を行いましたが、そのいきさつのときに、それはあくまでも泉井問題ではなく綱紀粛正ということで、そういういかがわしい人というものに対する接触が多かったという、その人たちをまず対象に、あるいはまた監督責任、こういうことで処分を行ったわけです。  そのときに、OBという者を一体調査の対象にしたのかと、こういうことがございましたが、今申したように、綱紀粛正という見地から判断をいたしましたので、OBまでは実は話は聞かないんだと、こういうことを申したわけでございます。そして、今委員が御指摘の話というのは、私も新聞報道でもって存じております。  そういうことで、先般の衆議院の予算委員会で、この問題に関しましては、資源エネルギー庁の元幹部が特定会社からのC重油購入を一部電力会社に働きかけた報道があった件について、泉井氏の接触により石油行政がゆがめられたことがなかったかどうかというふうな観点から通産省として調査を行う、こういうふうに実は申し上げたわけでございます。  ですから、当然その場合においてはOBの方々、対象になるわけでございますが、そうして調査を行うと申し上げましてまだ日がたっていないので、今、実は調査に着手したばかりだということで、今の場合にはまだ事実関係、これはまだ御質問がございませんが、では何とも申し上げることができないということでございます。
  95. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 ぜひ本委員会にもその結果が出ましたらお知らせをお願いしたいと思います。  次に、経済企画庁にお尋ねしますが、今、円安の状況が続いております。政府平成九年度経済見通しを立てたときの円レートは百十三円をもとにしておられるようでありますが、今のような円相場の状況を勘案すると、実質GDP国内生産に及ぼす影響というのは大体どのぐらい見ておられるのか。
  96. 麻生太郎

    国務大臣麻生太郎君) 数字につきましては政府委員の方から御説明をさせていただきますが、基本的には、円安という言葉がよく出ていますが、円安というのは何を基準に円安なのかと言われると、例の九五年に八十円へ行きましたときに比べれば円安、ついこの間まで二百何十円とか百八十円といったころに比べれば円高ということになりますので、どの辺が適当かが極めて難しいところでありまして、いろいろまだ御説いっぱいあるのは御存じのとおりであります。  したがいまして、今の状況の中で、購買力平価指数、いろいろの数字が使ってありますけれども、今の状態がずっと続くというのもまた難しいところでありますので、この円相場がどのような形になっていくかというのがはっきりした見通しがたっておるところではございませんので、今一概にこの数字が答えだというようなことがあるわけではございません。
  97. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 想定をしますと、百十三円で想定したのが十円ぐらいずっと上がっていくと、GDPを押し上げる効果というのは〇・六%ぐらいだと、大体民間のシンクタンクあたりはそのくらいの数字をはじいているのではないかと思うんですが、大体いいですか。
  98. 土志田征一

    政府委員土志田征一君) 民間のシンクタンク等の試算として、今先生指摘のように、十円ぐらい円安になったままでずっといった場合にどの程度かというような報道があることは事実でございますけれども為替レート、先ほど大臣からも申し上げましたように、そういうふうにそもそもずっといくというような仮定でいつの影響を見るかというのは非常に難しい問題だというふうに思っておりますし、また、特に最近輸出入構造が非常に変わっているというようなこともございますので、今の時点ではっきりこうした数字であるということはなかなか申し上げるのは難しいというふうに思っております。
  99. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 我が国のファンダメンタルズは一体どこかという議論をいろいろとやってまいりました。そこで政府が大体答えるのは、百十円前後じゃないかというんですね。一般的にそういう議論をずっとしてまいりましたが、そこらを見ると、円安の状況が続いているような気がしております。数字は、先ほど言いましたようにずっと続いた場合に、十円ぐらい安くなった場合に〇・六%ぐらいGDPを押し上げる効果があるのではないかという、そこをちょっと聞いたんですけれどもね。  次に、こういう状況が続いていった場合、場合と申し上げますが、消費者物価に及ぼす影響というのは一体どのようにお考えでしょうか。
  100. 麻生太郎

    国務大臣麻生太郎君) 御存じのように、ドルが高くなりますと、日本からの輸出がふえてその分がプラスになる面、また円の力がそれだけ弱まりました分だけ輸入する絶対量を抑えるという両方の面のプラス面と、もう一つは輸入物価に及ぼす影響というのは非常に大きなものになっておると理解をしております、委員がよく言われる、通常的に言われるところですけれども。  今回の場合も、円が安くなった分と、それから石油の値段がこのところ上がってきておりますので、その石油の値段が一時期バレル二十ドルぐらいまで上がったと記憶しています。今、一月で十ハドルぐらいだと思いますが、バレルに対しまして、ドルが強くなった、逆に円が安くなった分だけ輸入石油製品の価格は総じて上がっております。  そういった意味では、輸入物価というのは総じて円安になりましてからずっと上がってきておりますが、おかげさまで今までのところ輸入物価が上がった分だけそのまま卸売物価並びに消費者物価影響しているわけではありませんで、今のところ、輸入物価が上がったにもかかわらず、卸売物価消費者物価は今のところ極めて安定をしており、特に国内卸売物価は前年度比マイナスという状態がずっと続いておるというのが今の現状であります。
  101. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 もう時間がなくなりましたが、政府経済見通しては一・六%の物価上昇をするだろうという見込みのようですね。消費税が二%上がった分が一体一・六%のうちに幾らぐらいかと。そうすると、そのほかに恐らく相当輸入物価も上がってきますから、その分を足してみると、この一・六%というのが大分上がるようなことになるのではないか。予測として、それはこの段階経済企画庁ともあろうものが、一・六%はそう上がらぬと言うのか、いや、これは恐らく上がるだろうと、こう見るのか、そこらのやっぱり少し権威を持たせた見通しをお願いしたい。
  102. 河出英治

    政府委員(河出英治君) 九六年度の消費者物価政府見通してございますけれども、消費税の引き上げ効果、これを一・五%程度と見込んでおりますが、それを含めまして、先生指摘のとおり一・六%の上昇と見込んでおります。  ただ、最近の物価の状況でございますけれども、先ほど大臣が御説明申し上げましたように、輸入物価は二けたの上昇をしておりますけれども国内卸売物価はなおマイナス消費者物価は、十二月が季節商品を除きまして〇・三%の上昇、一月は、速報ですけれども〇・一%の上昇ということで非常に安定している状況でございます。  この原因といたしましては、国内の需給テンポがなお緩やかに改善をしていること、それから国内品に比べましてなお安価な輸入品の存在が潜在的な供給圧力となっていること、それから規制緩和の進展等に伴いまして企業間の競争が活発化していること、こういった要因によりまして、輸入物価は上昇しておりますけれども国内卸売物価あるいは消費者物価とも安定した状況にあるということで見ているわけでございます。
  103. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 最後に、貿易収支の黒字は拡大方向に向かっているというふうに言われておりますが、どういう傾向であるのか、そして私は恐らく貿易摩擦がこの状況では再燃してくるのではないかという気がしておりますが、その点はいかがでしょうか。
  104. 麻生太郎

    国務大臣麻生太郎君) 御指摘のように、貿易のいわゆる経常収支の差というのが、過去円高と言われておりました時期に比べましては着実にその差がずっと減ってきておったんですが、九六年の第二・四半期を底にほぼ横ばいの状況に移っておりまして、九六年の第四・四半期、いわゆる十−十二月で見ますと、少し収支がまたふえてきておるということになっておりまして、今御指摘がありましたように、今後ともこの状況が続いていきますと、貿易収支において黒字幅はふえてくるという基調になり得る可能性は高いと思っております。  また、細かい数字を見ましても、このところ見ている範囲でいけば、十−十二までのところでいきますと、特に対世界におきましては少し減っておるような感じがいたしますけれども、対米だけで見ますと、特に対米は自動車等々の関係もあって前年度よりずっと減ってきた傾向がまた少しふえてきておりますのが第四・四半期で言えるところだと思っております。  ただ、今までと違って、こういうような影響が一番よく出るのは自動車ですけれども自動車の場合は今までというか、かつてと違って、各社少し違いがありますが、アメリカで既に生産をしております日本車、いわゆるトヨタのアメリカ車、ホンダのアメリカ車等々はいずれも米国内における生産台数の比率が、全生産台数の五八%がトヨタ、ホンダに至っては七五%を現地生産いたしておりまして、日本車全体で見ましても平均六四%をいっております。また、日本側もアメリカ製の自動車部品を日本輸入しておるというのも一部出てきておりますので、従来のように円安になった以降、それがそのまま全部自動車にはね返ってくるというような急激な形にはならないというような感じもいたしておりますので、注意深く見守ってまいりたいと思っております。
  105. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 終わります。
  106. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 民主党・新緑風会の前川でございます。  最初に、これは通産省の方に要望をしておきたいと思いますが、今も社民党の梶原先生の方からも御指摘がございましたが、泉井石油をめぐる問題というのはまだ現在進行形の部分もございますので、きょうは時間もありませんから触れませんけれども、大臣の所信表明の中にも通産省の職員の倫理規程を少し厳格に運用していきたいという御指摘がございました。確かに、組織ですからきちっとしたものをつくって運用するということは大変大事であります。と同時に、守る側の人間の心構えの問題がやっぱり大事だと思うんですね。しばらくたつとそんなものがあったのかいと言って忘れてしまって、また問題を起こす。どうもこの繰り返しのような気がするんですね。ぜひ日常的にさまざまな機会をとらえて、この種の問題については、これは通産省だけの問題ではもちろんありません、公務員全体の問題として徹底をしていただくように繰り返してお願いを申し上げておきたいと思います。  それから、もう一点のお願いは、三井三池の問題です。私、三池の炭鉱の中にはさすがに入りませんけれども、あの町に何度もお邪魔をしています。行くたびに町が寂れていくんですね。大変寂しさを感じました。これはもちろん三井三池だけではなしに、北海道にありましたたくさんの炭鉱もほとんど閉山をして、今本格的に操業しているのは太平洋炭礦だけですよね。私は、炭鉱というのは政府のエネルギー政策の転換によってある意味では安楽死を求められた産業だと思うんですね。それだけに、残されたこの二つの炭鉱、もう三池は閉山間近です、これについては政府としてあるいは通産省としてまさにできる限りのことをひとつやっていただきたい。これは単に従業員だけの問題ではありません。当該の大牟田市、それから荒尾市、商工業者の人たちは大変なわけですね。ぜひ十分な手だてというものをとってやっていただきたい、これが私は政府の役割だろうというふうに思いますので、ぜひお願いを申し上げておきたいと思います。  そこで、最初経済企画庁の方にお伺いをしたいわけですが、現在の経済の現状と、それからこれからの見通しを含めてまずお伺いをしたいんですが、いろんなアンケートを見ておりますと、国民の皆さん方からのアンケートで一番やはり政府に対して最近多いのは、景気対策という意味景気を何とかしてくれというのが多いわけですよ。ところが、経済企画庁の発表は、景気は緩やかに回復というようなトーンがここしばらくずっと続いているんですね。このギャップ、国民の皆さんの意識とのギャップは一体何なんだろうというふうに私は思うんです。  実は、昨年の暮れからさまざまに議論されて、「平成九年度の経済見通し経済運営の基本的態度」というのを一月の二十日付で経企庁の方では出されました。その中で、これは政府見通しとしては平成九年度の経済見通し一・九%、一・九という数字は経企庁として経済見通しを立てられるようになってから一番低い見通しなんじゃないでしょうか。こういう数字を見まして、一般の人たちは、これは感覚の問題です、景気がいいという実感をしないわけですね。  それから、今衆議院の方で議論が進んでいます来年度の予算案ですけれども、これはさまざまに議論があるところですから断定的な言い方は私もしませんけれども、例えば消費税を三から五に引き上げる、あるいは特別減税を打ち切る、あるいは医療費の負担がふえそうだ、こういう既に厳然としたものが含まれた政府の予算案を見ていまして、これから景気がよくなるなんて実感はだれも持たないんですね。むしろ、もっとひどくなるんじゃないか、大変になるんじゃないか、これがやっぱり国民の皆さんの実感なんです。  このことについての、今現在、予算委員会のやりとりをお聞きをしていますと、とにかく予算を早く通してもらって切れ目のない予算の執行をという、これは毎年お聞きをしていますから、そのことと現状とが全く食い違っているんじゃないかという私は感じがするんですが、長官いかがでしょうか。
  107. 麻生太郎

    国務大臣麻生太郎君) 基本的には役所の立場による数字というものと今おっしゃった気分の問題というのはかなり違って、例えば今アメリカでは非常に景気がいいということになっておりますけれども、アメリカは今年度の経済成長は多分二・五%になると思います。日本が本年度末、平成八年度末、この三月末でほぼ二・五%、同じ数字であります。アメリカの方はそれは景気よく感じられ、我が方は景気よく感じられぬというところが非常に気分的には問題なところなんだと思っております。  かつてと違いまして、そうですね、五五年体制と言われたあの時代、安保等々、あの昭和三十五年で日本のいわゆるGNPが十六兆、昭和四十年で倍になりまして三十二兆。そのころ平均が一〇%か一五%台いっておりましたけれども、仮に一五%いったところで五兆でございますが、今日本GDPで五百兆、一%いっても五兆。だけれども、やっぱり一%と言われると、何となくかつてのあれからいきますと、五%、一〇%いった思い出やら何やら強く印象に残っているところですから、何となく数字的には一%というとえらく少なく感じられますけれども、それでも一%でも五兆、一・九%といいますと約十兆近くのものは数字伸びるということになります。そういった意味では、数字から感じられる雰囲気というのは大きく違っているなというのが一つ。  それからもう一つ違うと思いますのは、あの当時はインフレであります。間違いなくずっと確実に右肩上がりと言われたインフレですけれども、今は生産伸びておりますのでデフレとは言えませんけれども、いわゆる消費者価格、卸売価格、いずれも下がっておりますので、従来ほど忙しく働いても、いわゆる売上高からいきますと、逆に卸売物価は下がったりしておりますので、そういった意味では価格が上がったような雰囲気にならぬ、何となくちょっともうかったような気にならぬという、これは気分の問題としては非常に大きなものであるのが二つ目。  もう一つは、やっぱり先行きどうなるかというところは非常に何となく不安ということでして、不満ならエネルギーになりますが、不安はエネルギーになりませんので、何となく先行きどうかなというところが一番肝心なところで、そういった意味では経済構造改革などというものが出てくると、これによって明らかに日本でいろいろな規制が取り払われることになりますので、これが実際動き始めますと大きく動く部分が出てくるので、それに光明を見出す方も多いと思います。同時に、規制のおかげで楽々飯が食えておった方々にとりましては、規制が外れることによってどんな影響が出るかということに関してはよくまだ見えてこないところがおありですから、その意味では不安というのがやっぱり出てくるのはやむを得ぬところだと思っております。そういう意味では、規制緩和なりなんなり一連の関連のものがきちんとした形で出てきて、もっとわかりやすい形で出てきますと、それなりにまたこの分野でとか新しい分野でという活力が出てくるとは思いますけれども、いずれにいたしましても、今申し上げたようなことが全部複合的に重なってきて、もう少したたないと景気がよしという気になかなかならぬというところが一つ。  あと、多分高齢化というのが一つの大きな問題としてどんよりかぶさっているところがあの時代とは少し違った、人口構成の問題は非常に大きく、目に見えない形ですけれども響いておるのかなという感じがいたしております。  ただ、じゃこのままじっとしておればということを言うと先行きはありませんので、どうしても構造改革には手をつけにゃいかぬということになっておるのだと理解をいたしております。
  108. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 今、長官からもお答えがありましたように、私ども自身の体の中に成長体質みたいなものがしみ込んでいるんですね。かつては二けた成長しないと成長じゃない。そのうち五、六%が成長だと。そのうち三%以上じゃないと成長じゃない。そういう体質はもちろん変わっていかなければいけないんだろうというふうに思います、ある意味では。  このことが先ほど自民党の沓掛議員の方から提起がありました社会資本ですとかあるいは公共投資ですとか、そういう分野にも実は関連をしてくるんですね。もちろん、これまでのように経済が発展をしているときというのは割合税収も潤沢ですから、ある程度の社会資本に、インフラに回す金もありました。だんだんそれが少なくなる。むしろ、今は借金の方がどんどん膨らんでいるわけですよね。そういうときに政府自身が何か成長体質のままでいいんだろうかという反省を私はしなければいけないんじゃないか。金がなくなったら税金を上げればいいんだという発想はもうないとは思いますけれども、ここを私はこれからの行財政改革基本にまず据えてもらわなきゃならない。と同時に、いわゆる経済構造を変えていきましょうというのは、何か稼ぎ出すもとをつくらなきゃいけないわけですね。私はそういう政府自身の転換がまず必要だと。  今の政府自身が例えば経済だとかあるいは景気に果たせる役割というのは、かつてのように例えば公共投資をやりますということによって刺激をするということも一つはありました。あるいは金利を、これは日銀の専管事項というふうには言われていますけれども、金利を操作することによって資金の需要なり回転をよくして景気を刺激する。さまざまな手法がとられたんですが、これから一体どうするんだろうかという問題があるんですね。  まさに、民間に任せればいいんだということだけなのか、政府自身がやることは一体何なんだろうかということになりますと、先ほど申し上げたように、従来型のあかをやっぱりこの際落とすべきだという意味で、公共事業といえども僕は聖域ではなくなってくるんじゃないか。もちろん大事なものもあります、あるいは新しくやらなきゃならないものもあります。しかし、もし惰性でやっている部分があったらば、それはどんどん切り捨てていく勇気がないと私はいけないと思うんですが、この辺のこれからの経済を運営していくに当たっての基本的なスタンスといいますか、長官の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  109. 麻生太郎

    国務大臣麻生太郎君) おっしゃるとおり、やっぱり世の中が変わったんだと思うんですね。そういった意味では、今までと違って公共投資の内容が変わるのは当然だと思っております。やっぱり国民の方も豊かになってきて、国民の方の要求も変わったんだと思うんです。  例えば、治山治水でいけば、川の方は、今までは護岸の工事というのは、これは洪水なんかに耐えるだけで大変だったんですが、護岸ブロックを積んできちんとすると今度はそこには蛍が出なくなったとか、魚が生息しにくくなったとかという御希望が、また別の要望が出てきて、今度護岸ブロックにまた土かぶせて見えなくなるようなところにまた金がかかるというふうに、やっぱり豊かさを感じるにはそれなりのコストがかかるようなことになってきておるなど、例を挙げれば幾らでもありますけれども、そういうものも出てきましたし、飛行機はぜいたくな乗り物から、あれはだれでも乗れる乗り物に変わりましたので、飛行場などというものは、今までと違って、大きなハブ空港をつくってそこからやらなきゃならぬという時代になったにもかかわらず、あそこに使われる公共投資というものは極めて限られたものしか使えないということになったりしております。  いろいろ例を挙げれば幾つも御存じのとおり出てくると思っておりますが、そういったものに対する公共投資の配分の仕方はもちろん今後とも見直さなきゃいかぬところだと思っております。  また、今までと違って銀行は金がないといいましても、世界の銀行で預金残高、総資産残高でいきますと、一番から十番のうち七行ぐらい日本の銀行がずらっと入ってきておるというのが実態で、銀行の持っている資産量、資金量は大きい割に、金が使え得るほど何となく内容がよくないなどというのは、やっぱり金がうまく回らぬというところなんだと思います。  そういう意味では、日本の銀行の内容も、財政投融資の問題を含めて公共、いわゆる開銀とか輸銀とかいろいろ政府系の金融機関を含めて、今見直しという話が出ておりますが、こういった特殊法人を含めて、民間でできるところはもう民間にという方向にやっぱり流れていくという例もありましたし、いろんな意味で、今までとは違って、やっぱり貧しい国が豊かになるための国の制度としてはよくできた制度が日本だったと思います。それでなきゃこんなに豊かになるはずがないと思いますので。  ただ、既に豊かになった国の制度としてはいろいろ規制が多過ぎてみたり、いろいろ細か過ぎてみたりということで、世界の流れというのからは少し取り残された形になっておる部分を、今規制の緩和、見直し、撤廃、いろいろ表現がなされておりますけれども、そういったものを含めて、政府のかかわり合うべき形というものは非常にこれは真剣に検討しなきゃいかぬところで、その中から多分六つの構造改革といろいろ表現が出ておりますが、そういったものが一挙に今ここになって出てきておるんだと理解をいたしております。
  110. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 佐藤通産大臣にお伺いをしたいんですが、私は、通産省というのは、先ほど言いましたが、日本のもうけを稼ぎ出すためのチャンスをつくる役所だと。ほかのさまざまな官庁の皆さん方も似たようなことをおっしゃるかもしれませんが、やっぱり通産省というのは、私はその役割は非常に大きいと思うんです。  実は、先ほど経済企画庁にお伺いをしたように、景気は緩やかに回復をしているといっても、雇用の状況を見ていますと相変わらず悪いんですね。昨年も予算委員会あるいは商工委員会でも質問させていただきましたが、雇用の問題というのは一番生活にとっては不安なんですね。先ほど三井三池のお話をしましたが、あれほど明らかになってなくても、いつどうなるんだろうかという不安というのは、やっぱり一番行政の側、政治の側としては考え、さまざまな手だてを打たなきゃならない分野だと私は思うんです。  そこで、これまでも新しい産業や技術開発にさまざまな手だてを講じていただいております。私も十分承知をしていますし、あるいはこれから出てくる法案の中にもその種の法案があることも承知をしているんですが、はっきり言って余りにも細かいんです、スケールが小さいんです。それは金だけ使えばいいというんじゃないですよ。ドラスチックだとまでは言いませんけれども、あ、なるほどなと言われるような、つまり衰退をしていく部分が余りにも大きい割には、新しく発展をするのにはこの可能性だけにかけているという部分があり過ぎはしないだろうかと。  産構審の報告書もかなり丁寧に私は読ませていただいたつもりなんですが、かなりまゆつばな部分もあるんですよね。これはあくまで見通しですから断定的なことを言ってはいけないのかもしれませんが、私は、労働省は失業したら何とかしょうというお役所、通産省は失業者を出さない役所になっていただきたい。そういう意味で、これからの通産省の行政としての基本的なスタンスを最初にお伺いさせていただきたいと思います。
  111. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) 今、前川委員の御指摘のとおりでございます。  ちょっと若干話が長くなりますが、現在、我が国経済、言うまでもなく、高コスト構造や制度的制約を背景にいわゆる産業の空洞化という懸念が一層深刻化しております。加えて、今後の急速な少子・高齢化、この進展が我が国の活力ある経済を維持していく上でもさらなる制約要因になっている、こういうことも心配されますので、こうした状況を回避するためには、事業者の方々の自主的な取り組みが積極的に進められるということが基本ではありますが、しかし我が国経済全体としては構造的な問題が顕在化してきており、こうした事業者の努力を妨げている面も否定できないところでございます。そういうことで、政府の役割というのは、事業者の取り組みが最大限発揮されるような環境整備に努めていくことが必要だと、こうした実は認識を持っております。  こういうことで、我が国経済の中長期的な発展を可能にしなきゃいけないということで、六つの改革の一つに経済構造の改革というものを掲げました。それで、今後の施策の基軸となる「経済構造の変革と創造のためのプログラム」を昨年の十二月、閣議決定したということは御存じのとおりでございます。そして、経済構造改革を進める上で雇用の需給のミスマッチ等が問題になりますということは御指摘のとおりと認識しております。こうした認識に基づいて、本プログラムでは新たな雇用の担い手となる新規産業の創出を大きな柱の一つに掲げております。労働力の移動の円滑化に資するため、参入しやすく転出しやすい労働市場の構築のための諸制度の見直しを行うこととあわせて明らかにしているところであります。  国民各位の御理解を得ながら円滑に経済構造改革を進めていく、こういうことが基本的な考え方でございます。
  112. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 時間の関係がありますので一部飛ばして、中小企業庁の方にちょっとお伺いをしたいと思うんですが、昨年、商工委員会の中で私は円高中小企業の問題についてお伺いをしました。  今、先ほど梶原先生から御指摘がありましたように、きょう現在も百二十四円台という円安の状態、昨年と比較をして。昨年、円高のときに円高対策としてユーザーから猛烈なコスト引き下げが中小業者にかかったんです。今、円安になったから値を戻したかというとほとんど戻ってないんです。これは商取引ですからしようがないじゃないかと言ってしまえばそれまでなんですが、先ほど沓掛先生指摘だったんですが、例えば労働時間の問題やなんかもありますけれども、一番つらいのはここなんです、コストの問題なんですよ。これは商売だから、あるいはユーザー対下請の関係だからしようがないじゃないかとは言えないんですね。やっぱり公正な競争が確保できる条件を整えることが私は必要だと思うんです。  そういう意味では下請振興基準だとか、あるいは公取さんとの関係もあるんでしょうけれども、下請代金支払遅延等防止法とかさまざまな法律があるわけです。もしこれが、こことここが不足をしている、ここをこうすればこうなるというのがあれば、やっぱり時代の変化に合わせて見直して、大企業中小企業がともに生きていけるようなそういう条件づくりのために仕事をするのが僕は中小企業庁の役割だと思うんです。現状を含めてどうお考えになっているか、お聞かせいただきたいと思います。
  113. 石黒正大

    政府委員(石黒正大君) 円安下における下請の状況についてどう思っておるかという御質問でございますけれども、一時期の円高傾向の際はもとよりでございますけれども、最近の円安の状況下におきましても、必ずしも御指摘のように受注単価の上昇ということには至っていないというふうに基本的には認識をいたしております。  ただ、これをどう考えるかという問題でございますけれども、親事業者に限りませず、下請の企業の方々の両方ともがこの厳しさを増す国際競争下の中でコストダウンの努力を継続している、それによって競争に生き抜いていこうということで御努力をされているという経営判断・戦略というものが大部分の要因だろうというふうに考えております。  しかし、御指摘のように、それだけに任せていていいのかということは当然でございまして、個々の取引におきまして、親事業者から相対的に弱い立場にございます下請業者に対しまして下請代金の一方的な縮減であるとか、そういった下請法に違反する行為が行われる場合には厳正に対応するということでやってきているところは御案内のとおりでございます。  現時点において円安がこれからどうなるか、先ほど議論がございましたけれども、わかりませんけれども、一般的には、円安につきましては我が国からの輸出の増加というような傾向も見られることから、関連中小企業に仕事が回ってくるという面はあるんだろうと思います。そういうこともあり、こういうのをうまく、好影響をいかに生かしていくかということで親企業、下請企業両方が努力をしていくべきだと思います。その環境整備に努めてまいりたいというふうに考えております。
  114. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 最後に、少し細かいといいますか具体的な話でお伺いをしたいんですが、私は、中小企業にとっては、もちろん金も大事ですし、そういう意味ではやっぱり優秀な人材をいかに確保するか、あるいは確保しておくかが大変大事な役割だと思うんですね。  実は労働時間の問題とか賃金の問題というのは非常にそういう意味では密接に結びついているんです。先ほど沓掛委員からも御指摘がありましたが、これは政府自身も、これは国際公約でもあったんですけれども、千八百時間を目指してさまざまな施策を講じてまいりまして、ようやくことし四月一日から労働時間に関しては週四十時間制が、特例は除きますけれども、一応猶予がなくなって全部に四十時間が適用されるということになりました。  八八年にこれはスタートしましたから、もう実質十年近くかかっているわけですね。もちろん、その間段階的にやってきたんですけれども。実は私も一時期中央労働基準審議会のメンバーだったものですから、中小企業の皆さんからは随分突き上げられました。おれたちを殺すつもりかと責められました。今度こういう立場で、昨年から中小企業の皆さんからもいろんな要望があって、労働省ともあるいは中小企業庁の皆さん方とも何かいい手はないかということでいろいろやりましたけれども、やっぱりこれはやってもらおうと。ただし、何か行政の側でできる手だてを考えようよということで、さまざまな時短にかかわる奨励金ですとか時短促進法を含めて手だてをしましょうということでやったわけです。  実はこの過程の中で、商工会議所やあるいは中央会を含めた中小四団体の方から私どもの方にもいろんな要望書が来ました。そのときの理由は、とにかくことしの四月一日からというのを延長してくれ、強制的に罪人をつくるのか、国の法律で、しかも自動的に一二・五%のベースアップを法律で押しつけるのかといって言ってきたわけです。いや、私はそんなことにはならないと実は思っていたんですが、そういうことをおっしゃる団体の方もおられた。私もある時期は黙って聞いていました。最近になってふたをあけてみましたら、こういうことをやると一二・五%上げないで済みますよというあれが流れているんですよね、こういうところから、二・三%で済みますよと。これは先ほど沓掛先生おっしゃっていました。僕は中小企業の皆さんにとって苦しい苦しい選択なんだろうと思います。本当は賃金を上げたい、結果的に、労働時間下がった分だけ結果的に賃金が上がるのもやむなし、したいんだろう、だけれども苦しいからということはよくわかります。  私が一番腹が立っていますのは、政府が補助金を出している、商工会議所そうですね、補助金が出ていますね。中央会も出ていますね、指導員や何かに。こういう団体が、政府自身が決めている施策なりなんなりに事前の段階反対するのは僕はやむを得ないと思います。決まった後に本来の趣旨から外れるようなことを、あるいは当初言っていたこととは違うことをやろうとしているというのは、私は正直言って腹が立つんです。これは中小企業の従業員から見ますと、おれたちが払った税金を使っている団体がおれたちの首を絞めるのかということになりかねませんよ。  商工会議所の中西さん、副会頭ですか、今月の「財界」という雑誌の中に、当初の労働省案を二年延長してくれということで圧力をかけた。おかげさんで通産省、中小企業庁と一緒になってこれから取ったと書いてあるんですね。中西さんの哲学は僕は否定しているわけじゃないんですよ。こういう誤解を平然と与えるようなことをやっている団体に補助金を出しているということに対して私は腹が立ってしょうがないんです、はっきり言って。公正にやってもらわなきゃいかぬ、国の税金使うんだったら。  いずれこの問題は、こういう限られた時間ではできませんので、改めてやるつもりでいますけれども、きょう現在こういう問題についてどんなふうにお考えになっているか。私は、中小企業の問題というのは大変大事だから、さまざまなことで私ども努力をしたいんですよ。だけれども、例えば人材を集めよう、確保しようという努力を私たちがしているにもかかわらず、片や人が逃げていくような施策を——私から言わせりゃそういうことになるんです。そりゃそうですよ、時間短縮になった、ああ、これで一息つけるなと思ったら、その分賃金下げますよというようなことを平然とやられるというんじゃ、これはたまらないですよ。もう、さよならと言いたくなるんですね。こういう後ろ向きのやり方を平然とやらしちやいかぬと思うんです。しかも、名前出ているんですよ、通産省の名前が。どういうことなんですか。お聞きをして、私の質問は終わります。
  115. 石黒正大

    政府委員(石黒正大君) 時短問題につきましては、午前中にも御議論がございましたけれども委員おっしゃいますように、人は石垣、人は城と申しますが、従業員をどうやって確保するかというのは、大企業に限らず中小企業にとりましても重要な問題だというふうに考えております。  るるお話がございましたけれども、一つだけ申し上げますれば、今回中小企業団体は、これを自分の問題としてどうしたらいいかというので行動したんだろうというふうに思いますけれども、その中で、結論として、二年間の猶予期間はあるけれども、時短はやらなきゃいかぬのだ、四十時間はやろうじゃないかというスタンスに立って、これをいかに円滑に実施するかという観点からいろいろ活動していくというふうに理解をしておりますし、私どももそうなるように努力をしてまいりたいと思います。
  116. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 大臣は、所信の中で、大量消費・大量廃棄社会から循環型社会への転換を目指すということで、リサイクル推進の重要性を訴えておられます。  そこで、改めて大臣のおっしゃいます循環型社会とはいかなるものか、端的にお答えをいただきたいと思います。
  117. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) 今おっしゃる循環型社会、これは平成六年の十二月に閣議決定されました環境基本計画にあるとおり、生産、流通、消費、廃棄等の社会経済活動の全段階を通じて経済社会システムにおける物質循環を確保することによって、環境への負荷をできる限り少なくする一つの社会の形である、こんな実は認識でございます。  具体的には、資源やエネルギーの面で一層の循環・効率化を進め、不用物の発生抑制や適正な処理等を図るなどを達成することによって、今後、中長期的にこうした社会を実現していくことが極めて重要である、かように考えております。
  118. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 産業活動、そして人間の社会活動、つまり人間が生きていくと必ず廃棄物が出ると言われます。本来は、その廃棄物をできる限り出さない、減量する、リサイクルする、再使用する、そして廃棄物の処分をする、こういう考え方の優先順位をきちんとした上で、つまり現状はそれでも大量生産、大量廃棄物社会と言われる中にまだあると思うんです。そして、その大量廃棄物社会に対応するために、もう捨て場がないから、仕方がないからリサイクルするというのではなく、やっぱり循環型社会をどうしたらよくつくれるのだろうかと。その上で、きちんと再使用などの方策をどんどんとっていくべきだというふうに思っております。  そこで、再商品化についてお伺いいたします。  例えば、牛乳パックなど再商品化した際にコストの面でどうしても再生商品の価格が高くなる、そのためにリサイクルによって回収したものがだぶついたりすることがよくあります。北海道のようにカレットなど、つまりリサイクルにとって非常に大切な要素の一つに製瓶工場がなかったり、あるいは運搬のコストが高かったり、そのようなところでひっかかってしまうということがあるわけですけれども、この運搬するコストなどはどこの負担になるのでしょうか。自治体でしょうか、それとも業者でしょうか。
  119. 稲川泰弘

    政府委員(稲川泰弘君) 具体的なコストの分配はケースによっていろんな場合があろうかと思われます。再商品化の過程で物を集めて工場まで持ち込んでいく、あるいは工場の中で原価の中に折り込んでいく、いろんなケースが一般的にはあろうかと思われまして、一概にちょっとお答えは難しいかと思います。
  120. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 私が何を言いたいかといいますと、今のようにどこかで突っかえてしまっては、つまりせっかく再商品化しようと思って回収しているのに、それがうまくスムーズに動かない、つまり循環がどこかで詰まってしまうというようなことがあっては、循環型社会への移行は極めて困難ではないかと思うんです。ドイツのDSDシステムのように、廃棄物に関しては明確に製品の製造責任も含め、事業者の責任を明確にすべきなのではないかと思います。  大臣もこの辺のところはもう十分におわかりでいらっしゃると思いますけれども、この法律の円滑な施行でよしとせず、論議が高まってきておりますデポジットについても本格的に取り組むべきと考えますが、大臣いかがお考えでしょうか。
  121. 稲川泰弘

    政府委員(稲川泰弘君) デポジット制度について御指摘がございましたが、ビール瓶や牛乳瓶の一部に従来から活用されているものでございまして、瓶などの容器包装の回収率の維持あるいは向上、再商品化の促進に有効な方法ではございます。  しかしながら、容器包装を用いております商品は非常に多種多様でございますので、回収拠点の整備、運営の手間あるいはコストなどの問題がございまして、全国一律に標準的な制度として導入することはいかがなものかという困難さがあろうかと思われます。ただ、リターナブルな容器の利用はリサイクル対策としては極めて有効でございます。そういう趣旨で、容器包装リサイクル法におきましても、例えば第三条で各主体の利用拡大にかかわる役割を定めまして、また第四条で事業者及び消費者の責務としてリターナブル容器の使用を定めておりますし、また十八条におきまして再商品化の義務の対象外とするというような配慮をして位置づけておるところでございます。
  122. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 大臣にもお考えを聞きたかったんですが、きょうは私は非常に時間が短いので少し先を急ぎたいと思いますので、少し問題提起させていただきたいと思います。  この社会の商品の中にはリサイクルの方法が既に確立をしていて、ある程度コストの面でもやっていけるもの、例えば缶容器などがありますし、またリサイクルの方法が未確立の、例えばプラスチックなど、コスト面で採算がとれるとは決して言いがたい。また紙や牛乳パックなどの品物が混在している。現在、今のような形でリサイクルを進めるとしたら、結果的に条件のよいというか、リサイクルという方法に見合うコストのあるいは合理性のある缶容器など、ワンウエー容器の増産につながっていくのではないかと私は大変心配しております。それは、大臣がおっしゃる省エネの方向としては逆になってくると私は考えるんです。  そこで、ちょっと視点を変えてこんな問題を提起してみたいと思いますが、きょうは文部省にもおいでいただいております。こんな問題もあるということを大臣、どうかお聞きになっていてください。  文部省は、環境教育指導資料というのを出しておられまして、その中の八ページのところに、「環境教育は、消費者教育の視点も併せもつものである。」ということから、「生産過程においては環境への負荷の高い物質を他のものに変えることや使い捨て製品及び有害物質を含む製品を作らないこと、流通過程においては省資源、省エネルギーを進め、再使用・再利用を図ること、」「商品選択や意志決定能力を育成していくことが必要である。」というふうな環境教育の基本を文部省は示しておられるんです。  そこでお聞きをしたいのは、環境教育の指導資料がたくさん近ごろ整えられており非常に熱が入っているんですけれども、給食の牛乳の容器、これが瓶からパックに変わっているという現状があるんですね。これは岡山の場合なんですけれども、岡山だけじゃないと思います、全国的にはあちこちにあると思いますが、私がきょう持ち出しているのは岡山の場合なんですけれども、文部省はこのことについてどう考えていらっしゃいますか。
  123. 北見耕一

    説明員(北見耕一君) 牛乳パックにつきましては、畜産振興事業団の調べでございますが、学校給食の中で約六割程度使われているというふうに考えているところでございます。牛乳パックにつきましては、学校におきます環境衛生活動の基本的な内容を規定しております学校環境衛生の基準というものがございます。そちらにおきましては、リサイクルできるごみとして活用を図るように今指導をしているところでございます。  リサイクル活動などを通じまして、循環型社会システムを形成していく必要があるという環境教育指導の理念と著しく矛盾するということはないのではないかというふうに考えているところでございます。
  124. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 ここにありますのは、岡山のある小学校の「学校長殿」と出ているんですけれども、雪印から「学校給食用牛乳の紙化への移行のお願い」というのが出ておりまして、「学校給食用牛乳の供給コストアップの吸収と事業の効率化を図りたく思考しております。」そして、「監督官庁よりは、効率化によるコストの吸収を強く指導を受けている状況にもあります。  このような現況から、供給コストのアップを吸収するため、瓶から紙に移行して運送費用の削減を図るべく、ご協力をお願い申し上げます。」というふうな「お願い」が出てるんです。時代に逆行するのではないかと思いますが、今六割ぐらいはとおっしゃいましたが、平均すると六割ぐらいになるのか、私、全国の瓶容器と紙容器の給食用の牛乳パックの比率のものを持っておりますけれども、所によっては一〇〇%瓶を使っているところもあります。ニカ所あります。それから九十何%紙パックであるというところもあります、トータルしていませんけれども。  それで、文部省は子供たちが環境に対して深い理解と配慮を持って成長するために給食用の牛乳をすべて瓶にするよう、つまりリユーズ、そしてリターナブルです、そういうことができることを瓶によって教えるつもりはないのでしょうか。
  125. 北見耕一

    説明員(北見耕一君) 学校給食の実施に当たりまして、どのような物資をどこから購入するかということにつきましては、これは学校の設置者にゆだねられているところでございます。文部省では、学校給食用の牛乳につきましても瓶装であれ紙パックであれ、どちらの包装形態の牛乳を購入するかということについては学校給食の実施者でございます市町村の判断にゆだねられているところでございます  したがいまして、先ほど御指摘の通知につきましては、文部省あるいは岡山県、岡山市の教育委員会等による指導ではないというふうに御理解いただければと思います。
  126. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 確かに地方分権の時代ですから、文部省が何でもかんでも上から統括するというのは違うかもしれませんが、環境の教育指導資料というのまで出していらっしゃって、この中にあるのとは違うことをもし地方がする場合には、やっぱり文部省は少し異議を唱えてもいいのではないかと思いますが、さっきの「お願い」の中にあります「監督官庁よりは、効率化によるコストの吸収を強く指導を受けている状況にもあります。」というのは、これはどこの官庁ですか、文部省ですか。
  127. 北見耕一

    説明員(北見耕一君) この監督官庁につきましては、先ほどお話し申し上げましたように、文部省あるいは岡山県の教育委員会あるいは岡山市の教育委員会というところから指導した事実はございません。  一般的に申し上げまして、監督官庁、こういった食品の関係でございますから、農林水産省の可能性があろうかと思います。
  128. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 農水省の可能性があるということですね。じゃ、今度農水省に聞いてみましょう。  それで、こういうことで、つまり子供に対する教育的配慮からではなく、牛乳のパックとか瓶とか、小さいことじゃないかとお思いになるかもしれないけれども、環境教育をしっかりとしなきやと言っているやさきに、こういうふうにして新たに、これはことしの一月です。新たにこういう「お願い」が出て、そして経済効率のみを考えた給食に対する企業の姿が見えるわけですけれども、給食は利益最優先の考えが教育としての給食より優先するのかどうか、文部省に聞きたいと思います。どうですか。
  129. 北見耕一

    説明員(北見耕一君) ちょっと長くなって恐縮でございますが、学校給食実施上の教育的な意義といたしましては、栄養バランスのとれた食事を提供するということとともに、児童生徒の健康の増進、体位の向上及び正しい食習慣の形成を図ることとか、あるいは児童生徒間や教師と児童生徒の心の触れ合いの場をつくること、あるいは児童生徒に集団生活を体得させ、共同、協調の精神を身につけさせる等の意義があるわけでございます。また同時に、リサイクルなどを通しまして環境問題を考えさせる機会ともなるわけでございます。  しかしながら、その一方で、安全で豊かな給食を保護者負担の軽減ということにも配慮しながら実施しなければならないという要請もあるわけでございます。こうした教育上の効果と、それから保護者負担の軽減の可能性ということのバランスを考えながらそれぞれの設置者、市町村の教育委員会等におきまして学校給食を実施していく必要があるというふうに考えているところでございます。
  130. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 今の問答を聞いておられまして、大臣、どんなふうにお考えになりますか。
  131. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) 実は今の応答を聞いておりまして、大変政府のまたは閣議の決定、こういうものが徹底していなかったかな、こういう気がしたんです。と申し上げるのは、廃棄物処理それからリサイクルを進めていく考え方というのは、委員指摘のとおりに平成六年の十二月に閣議でもって環境基本計画というのが決定されておるんです。  その第一にうたってあることは廃棄物の発生をなるべく抑えていこう、こういうことがまず第一の問題です。次の段階として使用済み製品の再利用、リユースというのが二番目にございます。今の指摘はこの項目だろうと思うんです。三番目に回収されたものをどうしてリサイクルするか。それから四番目が適正な処置をする、残ったものはしようがないから捨てる、こういうことになるわけでございまして、今言われた中で、そういうことで困るのがリサイクルした場合にコストアップということが考えられます。これはやはり、もちろんそうしたものでもってなるべくコストダウンするようないわゆる技術的な指導またその開発、これをすることは当然でございますが、やはり共通の国民全般の御理解というか御協力が要るんじゃないだろうか、こう思います。  卑近な例を申しますと、私、実は一月にドイツに参りまして、先生もおいでになったかもしれませんが、ドイツは非常に紙が悪いんです、ティッシュペーパーだとかトイレットペーパーが悪い。どうして悪いのかと思いまして、そしてこんなに悪いんだから安いんだろうと思ったら、高い、こう言われるわけです。それを聞いてみたら、それは全部再生紙なんです。そのことを国民がよく理解して、高くてもそういうものを使用してくれるんです、こういうことを実は言われました。  そういうことで、私自身、今の委員の御指摘よくわかりますので、これからそれを通産行政に反映していきたい、かように考えております。
  132. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 時間が来ておりますのでやめなければなりませんが、今の大臣のお話で、確かにそういうこともあります。それからデンマーク、フィンランド、イタリア、ノルウェーなどは包装材に関する製品課徴金というのを、つまりごみの減量化や再使用、リサイクルのできない物については製品の課徴金をかけている、そういったこともお考えいただきたい。  それから、私おととい産業環境ビジョンというのをいただきました。通産省の産業構造審議会がこういうのをお出しになるようになったと。まだ全部読ませていただいておりませんけれども、大変勉強になりました。ただ、こういうものをお出しになるだけではなくて、これをいかに周知徹底させるかということが大事だろうと思いまして、またこれを改めて質問させていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  133. 山下芳生

    山下芳生君 大臣は、所信表明で今後の通商産業政策の推進に当たって四つの課題をお挙げになって、その一つとして環境と共生する経済社会の構築を掲げられました。私は、環境には地球環境もそれから足元の地域環境も含まれると理解をしております。  そこで、お尋ねをいたしますが、本年一月二十四日付で奈良県吉野郡大淀町の喜多町長から佐藤通産大臣あてに特別高圧架空線路の施設計画に関する現地調査の実施についての要望書が出ていると思いますが、通産省はどのように対応されたでしょうか、簡潔にお願いいたします。    〔委員長退席、理事沓掛哲男君着席〕
  134. 岡本巖

    政府委員(岡本巖君) 私ども、地元の市町村それから自治会の方々からそういった御要望をいただいております。
  135. 山下芳生

    山下芳生君 要望をいただいたというだけだったと思うんですが、私先日、我が党の辻第一衆議院議員と一緒に現地に調査を行いました。住民の皆さんとも懇談をしてまいりましたけれども、その現地は非常に閑静な住宅街でして、周囲を山林、原野、田畑に囲まれて、吉野連山が望める大変環境のよいところであります。ですから、住民の皆さんはついの住みかとしてここにお住まいになっておられます。    〔理事沓掛哲男君退席、委員長着席〕  現在は、この住宅地の中を三十メートルの高さの鉄塔が数本立っており、七万七千ボルトの送電線が張られているわけです。これでももう住宅のすぐ真横に鉄塔が立っていますのでかなり威圧感があるわけですが、関西電力の計画では、同じところにさらに百メーターの高さの鉄塔を立てて五十万ボルトの送電をするというものになっております。さすがにこれは圧倒的多数の住民の方々が、これではちょっとついの住みかとしての環境がかなり崩れるという思いで、ルート変更も含めて関西電力には誠意を持って話し合ってもらいたいという態度で今臨まれているそうです。  関西電力はそういうことも踏まえて、九四年の九月と十二月にこの地域の自治会と確認書を交わしました。内容は、話し合いをしている間はボーリング調査及び本体工事は行わないというものになっております。こういう、その地域の自治会の代表の方と関西電力とが確認書を交わすというようなことはよくあることなんでしょうか。
  136. 岡本巖

    政府委員(岡本巖君) 今、先生指摘の確認書は、内容的に先ほど先生おっしゃいました点と並びまして、別途関西電力が平成十一年十月に完成したいという方針について地元に配慮をしていただきながら話し合いをしていくという、そういった意味も入っておりまして、いずれにしても送電線の建設について地元と話し合いをしていく中で、この種の了解事項を積み重ねながら話をしていくということが間々あることかと承知をいたしております。
  137. 山下芳生

    山下芳生君 それはもちろん十分承知しております。相互理解という言葉が入っております。  ところが、ついこの間、一月二十二日の早朝、三時か四時だったそうですけれども、この確認のされた約束を踏みにじって関西電力は抜き打ち的に調査工事に着手をいたしました。住民の抗議も無視をして、大淀町長の要請も無視をして工事を強行したわけです。お手元の資料にそれを報じた朝日新聞の奈良版を載せておりますけれども、住民と作業員がもみ合いになったということまで報道されております。  私は、この事件があってから現地を訪ねまして、住民の皆さんは関西電力に対する非常に強い不信感と怒りを募らせております、この事件を契機に。鉄塔の建設予定地の近辺に見張り用のテントまで何張りか張られまして、それで二十四時間体制で寒空の中、住民の皆さんが交代で監視をすると。まさに、行きましたら異常な事態ですよ。  私は、関西電力という地域独占を認められた公益企業がみずから確約した合意を踏みにじる、こんな行為をすることはやはり許されるべきものではないと。電気事業を所管する通産省としてどう認識されるのか、ぜひ大臣の所見を伺いたいと思います。
  138. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) 今の山下委員の説明をお聞きして、実は大変申しわけございませんが、私自身よく事実がわからなかったわけでございますのですが、これに対する認識を新たにしたわけでございます。  言うまでもなく、送電線の建設というものに当たっては、地元の住民とよく話し合って、そして相互の理解のもとにそうした建設を進めるということが重要だという認識を持っております。ですから、関西電力に対しましては、事実の確認と同時に、やはり地元の住民に対して誠意ある対応で取り組むように、こういうふうに指導していきたいと思っております。
  139. 山下芳生

    山下芳生君 ぜひお願いしたいと思います。  現在一千戸、約四千人の方が住まわれております。それから将来二千四百戸、一万人の団地になる予定になっておりますので、こういう方々の安心静穏な住環境、これをやはりしっかりと保障していくということも公益企業としては大事な観点であると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  次に、和歌山県田辺市とその周辺町村で発生している梅枯れについて、これまた関西電力の御坊発電所の排気がその原因ではないか、疑念が持たれている問題について質問をさせていただきます。  この問題は、九五年の二月二十日の衆議院予算委員会第五分科会で我が党の寺前衆議院議員が質問しております。そのとき通産省の御答弁は大きく言って二点です。一つは、省議決定に基づく環境アセスメントを実施し、環境上支障のないことを確認した。それから二つ目に、発電所周辺における硫黄酸化物の濃度についても発電所運転開始前と後では変化が生じていないということだったと思うんですけれども、つまり御坊火力発電所が梅枯れの原因とは言えないという答弁だったと思うんですが、今も通産省はこういう御認識でしょうか。
  140. 岡本巖

    政府委員(岡本巖君) 今、先生の御指摘の中にもございましたように、御坊第一の発電所の運転開始前後における硫黄酸化物、窒素酸化物の排出濃度についてほとんど差がないという、そういう観測の蓄積というものが一方にあり、それから電力中央研究所で今の実際の御坊火力発電所の着地濃度よりかなり強い濃度の硫黄酸化物に実際に暴露する、さらすというそういう実験をやった結果、あるいは酸性雨との関係についてpHでかなりそのpHの低いというか、pH三以下というような、あるいは四とか七というそういう間のpHでの試験なんかもやりまして、その結果では今の御坊の排出とそれから梅枯れとの間において有意な関係があるということを断ずる材料はないというような結果が出ているわけであります。  今、先生の御指摘のように、ないことの立証というのは大変難しい作業でございますが、私ども電気事業者から聞いておりますところでは、先ほど申しましたような事実がございますものですから、その点をもってお答えにさせていただきたいと思います。
  141. 山下芳生

    山下芳生君 今、現状がどうなっているかということで少し認識を深めていただく上で御紹介したいんですけれども、資料として二枚目に、これは出典を記すことができずに申しわけなかったんですが、二枚目の資料は紀伊民報という和歌山の地元紙に出た広告なんですね。紀州田辺梅干協同組合が出されたもので、こういう実態と仕組みがあるんじゃないかということです。それから三枚目は、これはJA紀南が署名お願いの趣意書というものをつくりまして、その裏側に印刷している資料であります。  ですから、梅生産者の皆さんが、いろいろ原因は言われてきたけれども、どうも御坊火力発電所というものについての疑念がやはり払われない、しかも一方被害はだんだん拡大しておりますので、そういうことが今強まっているわけです。  この資料のJA紀南の「署名お願いの趣意書」というものも私は見せていただいたのですけれども、少し引用させていただきますけれども、こう書いてあります。  当地方のウメは、古く田辺藩時代より、先人の努力と工夫によって生産拡大、またウメ加工業界のご尽力と相まって全国一の生産地を築きあげるまでになりました。現在では、地場産業の主力として六百億円規模と言われるまで成長、雇用機会の増大はもちろん当地方経済の振興、地域活性化に大きな役割を担うに至りました。   ところが、   昭和五十九年御坊火力発電所が操業を開始してから、ヤマザクラが枯れはじめました。なぜな——と、不思議に思っているうち私たちの栽培しているウメが枯れはじめました。異常なウメ枯れに直面した私たちは、土壌に問題はないか、水管理はといった栽培面、さらに病理・生理面の課題を取り上げ、各種改良資材の試用や農家の労力と知恵の限りを尽くしつつ県・市のご指導を得ながら、大学や研究機関の調査試験を繰り返してきました。  しかし、現在まで原因究明の決め手がなく、平成八年七月調べで三万二千三百九十六本約百八ヘクタールという被害となってしまいました。秋津川地区では既に成園の五〇%が枯れ、他地区を含め被害は拡大の一途であります。このままいくと田辺・南部周辺ではウメが作れなくなり、ウメ産業への打撃に止まらず、田辺市周辺の経済活動に尽大な影響を与えることとなるでしょう。   ウメ栽培農家は長いウメ作りの歴史と、前述の通り自らの体験において「この障害の原因は、昭和五十九年の御坊火力発電所の営業開始と関係があるのでは——」との強い疑念を持っています。   このため私たちは、現稼働中の火力発電所に脱硫装置を設置すること、脱硝・集塵装置等の設備改善による高性能化を早期に実現すること、御坊第二火力発電所の建設計画は梅生育障害の原因が解明されるまで凍結・延期することを西口勇和歌山県知事と秋山喜久関西電力株式会社社長に対して要望書を提出する署名運動を展開しています。 となっております。  それで、JA紀南の理事長さんのお名前で住民の皆さんに説明しながら、これは二月の文書ですけれども、今現在、短期間に田辺市内で四万二千人の署名が集まりました。市内有権者の八割なんです。  ですから、私は、こういう状況にあるわけですから、一回アセスもやっている、あるいはないということを証明するのは難しいということにとどまらずに、改めて地元の皆さんの理解を得るために、ここで提起されているようなことをまず検討する必要があるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  142. 岡本巖

    政府委員(岡本巖君) 事実に関するところだけ私からお答え申し上げたいのですが、御坊発電所は、アセスメントで予測しましたとおりに、現在大気汚染防止法の排出基準をはるかに下回ります排出基準の三十分の一ということで二百六十四ノルマル立米パー・アワーということで、大変低い排水のレベルになっているわけですが、先ほど先生指摘の中にありました脱硫装置は確かに設置いたしておりませんが、そのかわりに御坊発電所は〇・一%の低硫黄重原油という大変ローサルファの原油をたくということにいたしておりまして、そのことによって先はどのような出口の排出濃度、それから着地濃度で申しますと〇・〇〇三五ppmという大変低い着地濃度に現になっておりまして、この状況はその後もずっとモニタリングをやっているところでございます。  ほかの発電所でローサルファを使わないようなところでは脱硫装置を設置するという対応をすることもございますが、アセスで私どもがチェックしました例えばS分について排出濃度は現に達成されているという現状にあることを御説明させていただきたいと存じます。
  143. 山下芳生

    山下芳生君 それも十分わかっております。しかし、その上でいろいろ農家の方々は自分なりにほかの要因も調べてみたけれども、確かに環境基準にはもちろんクリアしておりますけれども、こういう被害がふえているということで今農家の方々が改めて御坊火力発電所に対して疑念を強めているんです。  私は、関西電力が梅枯れについて発電所が原因ではないということを宣伝しているパンフレットをいただきました。これをよく検討してみますと問題点が少しあるんじゃないかなということに気がついたんです。  第一は、まず運転開始前と後の周辺地域の大気環境の変化が見られなかったということなんですけれども、しかしこのデータのとり方をよく見ますと、周辺地域というのはどこに設定しているかと申しますと、十二局測定所を設置しているんです。その十二局は実は梅産地には一つもないんです。しかもごく発電所に、ごくと言ったら語弊があります、比較的近いところの地域に十二点が集中しています。ここは煙突二百メーターですから、大体ふうっと風が吹いて流れますと、近くよりもむしろ十五キロとか二十五キロとかのところにたくさん着地をするんじゃないかということが言われておりますので、これは、こういう測定地点のとり方はいかがかと。しかも、よくよくまた見ますと、この火力発電所に常に吹く風は北側からの風が強いというデータが載っているんですけれども、この測定十二地点はほぼ北側に、風上の方に大体集中しているということですから、これをもって前後の大気の環境が変化がない、梅の生育について影響がないと断定はできないのじゃないかということが一つです。  それからもう一つは、この元データ、ここにはもう一つデータが載っておりまして、和歌山県果樹園芸試験場及び先ほど出た電力中央研究所においてSO2、NO2、オゾンの暴露試験を行いましたということが載っております。結果として、「現状レベルのSO2、NO2、O3濃度では梅に対して被害は認められないことがわかりました。」ということにもなっております。  しかし、実際やられた二つの研究機関のデータを取り寄せて見てみますと、例えば和歌山県果樹園芸試験場の実験ですけれども、まず「背景と目的」というところにこう書いてあります。「御坊火力発電所の稼動による大気環境の影響予測によると、発電所を起点として半径十四ないし二十四キロメートル付近が、亜硫酸ガス、窒素酸化物、浮遊ばいじんの最大着地点となり、その影響は十六市町村の地域におよぶことになる。」この地域には果樹などがたくさんあると。「環境影響予測から判断すれば、直接の影響は考えられないものの、硫黄酸化物等の恒常的な排出により、土壌の酸性化を始めとして、農作物等に対する低濃度汚染の慢性影響、特に作物体への蓄積による不化視的作用、散布農薬との関連性等未解決な問題が多い。」というふうに問題意識を設定されて、それでいろいろ梅とかその他の作物について実験をされています。  結論を見ましたら、梅の生育への影響というところで、葉の分析結果は、葉中に含まれる硫黄の含有率ではSO2ガス濃度の濃い区ほど有意に高まったと。しかし、この濃いというのはどの程度の濃さかというと〇・〇四ppmですので環境基準のぎりぎりのところですね。もちろん、現場の梅の産地あるいは周辺では、これ以下の測定基準が出ておりますけれども、それ以下の実験はしておりません。  それから、もう一つの電力中央研究所の報告書を見ましてもやはり同じような試験をされて、「低濃度ガス接触実験」にこう書いてあります。低濃度のガス接触においては「実験に供試したウメ、スモモ、ハマナスとも」「S(イオウ)の含量が増加していた。増加したSとしては特に水溶性Sの増加が著しく、〇・〇四ppmのような低濃度のガスも植物にかなり取り込まれていることを示している。」結論として、「今後の大気環境は、低濃度の大気汚染が慢性化していくものと予想されることからも、大気由来のSの植物体への蓄積、被害発現の限界濃度等に関する知見の集積が望まれるものと思われる。」と、こう結論づけております。  ですから、確かに〇・〇四ではやっておりますけれども、それ以下の低濃度での試験というのはやっていない。しかも低濃度であっても葉中硫黄の増加というのが見られる、これからこの点に関して知見の蓄積が必要だというのがこの実験の結論なんです。ですから、これをもってして梅に対して影響がないということを言い切るというのもまたいかがなものかなと私は思いました。  ですから、ここはやはりこれだけ事実として被害が出ているわけですから、しかも試験の詳細な結果というのは、これから知見の集積が必要だというふうに言っているわけです。もっと言いますと、私は重大だと思うのは、運転開始前から低濃度の汚染の慢性的な影響というものを予想しているわけです。しかも、県の試験場では十四ないし二十四キロが最大の着地点だというふうに予想している、これからの知見の蓄積が必要だということも結論として出している。  しかし、そのまま運転を開始して、予想どおりと言ったら失礼ですけれども、やはり十四ないし二十四キロ最大着地点に広がっている梅に今立ち枯れがずっと広がっていっているわけです。それが広がってきたらこんなパンフを出して、安全なんですということを、このデータをちょっと正確ではない使い方をして広げるというのは、私はこれはいかがなものかなというふうに思います。  ですから、こういうことがあるわけですので、地元の皆さんが要求している脱硫装置をつけること、それからきちっと影響調査をやること、それからそれがはっきりするまでは御坊第二火力発電所の建設はやらないこと、延期することということは、やはり通産省として当然指導すべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか、大臣。
  144. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) 先ほども申し上げたように、電源立地の推進ということではやはり地元住民の御理解というのがまず不可欠であるというふうに申しましたが、そのとおりでございます。  それで、今御指摘の、二つございましたが、今計画中の御坊の第二発電所という問題については、事業者が本年三月の電調審上程を希望しておるということで、これに向けて関係者間の調整が行われているということを聞いております。  この上程に当たっては地元の知事さんの意見をよく聞くということになっておりますので、当省といたしましては、知事の意見を踏まえて対処していくというのがこの問題でございます。  しかし、いずれにいたしましても、今御指摘のように一号発電所との関係の梅枯れの問題、そういう関係の有無を含む環境問題については地元の御理解が得られなければいけませんので、事業者をそのような方向でもってよく指導してまいりたいと思います。指導ということは、よく事情を聞いて調査をするということでございます。
  145. 山下芳生

    山下芳生君 終わります。
  146. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) 本件に対する質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後三時四分散会