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1997-04-16 第140回国会 参議院 国民生活・経済に関する調査会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月十六日(水曜日)    午後一時開会     ―――――――――――――    委員異動  四月十五日     辞任         補欠選任      金田 勝年君     中原  爽君      三浦 一水君     阿部 正俊君   出席者は左のとおり。     会 長         鶴岡  洋君     理 事                 小野 清子君                 大島 慶久君                 牛嶋  正君                日下部禧代子君                 笹野 貞子君     委 員                 阿部 正俊君                 大野つや子君                 太田 豊秋君                 鈴木 省吾君                 中原  爽君                 海野 義孝君                 小林  元君                 林 久美子君                 三重野栄子君                 朝日 俊弘君                 一井 淳治君                 堂本 暁子君                 小山 峰男君     事務局側        第二特別調査室        長        林 五津夫君     参考人         日本経済新聞社         論説委員会論説         委員      井上  繁君         摂南大学工学部         建築学科教授  田中 直人君         東京大学大学院         経済学研究科教         授       金本 良嗣君         大阪学院大学経         済学部教授         大阪大学名誉教         授・同先端科学         技術共同研究セ         ンター客員教授 鬼木  甫君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国民生活経済に関する調査  (二十一世紀経済社会対応するための経済  運営在り方に関する件のうち住宅生活環境  に関する社会資本整備在り方について)  (二十」世紀経済社会対応するための経済  運営在り方に関する件のうち交通通信に関  する社会資本整備在り方について)     ―――――――――――――
  2. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) ただいまから国民生活経済に関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、金田勝年君及び三浦一水君が委員を辞任され、その補欠として中原爽君及び阿部正俊君がそれぞれ選任されました。     ―――――――――――――
  3. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) 国民生活経済に関する調査を議題とし、二十一世紀経済社会対応するための経済運営在り方に関する件のうち、住宅生活環境に関する社会資本整備在り方及び交通通信に関する社会資本整備在り方について参考人から意見を聴取いたします。  まず初めに、住宅生活環境に関する社会資本整備在り方について、お手元に配付の参考人の名簿のとおり、日本経済新聞社論説委員会論説委員井上繁君及び摂南大学工学部建築学科教授田中直人君のお二人に御出席をいただき、順次御意見を承ることといたします。  この際、井上参考人及び田中参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本調査会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。  本日は、本調査会が現在調査を進めております二十一世紀経済社会対応するための経済運営在り方に関する件のうち、住宅生活環境に関する社会資本整備在り方について忌憚のない御意見をお聞かせいただき、調査参考にさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。  議事の進め方でございますが、まず両参考人からお一人二十分程度ずつ順次御意見をお述べいただきました後、八十分程度委員からの質疑にお答えいただく方法で進めたいと存じます。  質疑につきましては、あらかじめ質疑者を定めず、自由に御質疑をいただきたいと存じます。質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って質疑を行うようお願いいたします。  なお、できるだけ多くの方が質疑をできるよう各委員一回当たりの発言時間を一分程度とさせていただきたいと存じます。  また、時間に制約がありますので、質疑答弁とも簡潔に行っていただくようよろしくお願いいたします。  なお、参考人からの意見陳述、各委員からの質疑及びこれに対する答弁とも着席のままで結構でございます。  それでは、最初に井上参考人からお願いいたします。
  4. 井上繁

    参考人井上繁君) 一般的な世の中の感覚では、どうも最近公共事業そのものに対する不信感というものがかなり出ている。それは、ごく一部であり、残念なんですけれども、公共事業の談合の問題ですとか、あるいは公共事業の受発注をめぐってわいろのやりとりがあったとか、そういうようなことが日常的にかなり行われていることが報道されたりしているわけでございます。  一方では、予算に計上したがために、実際はニーズが少ないにもかかわらず仕事をするというような、つまり予算を消化するための公共事業といったようなことも一部では行われたりしているわけでございます。  私は、社会資本整備に関連しまして、公共事業そのものを否定する気などは毛頭ございません。二十一世紀、将来に備えて日本社会資本整備のあり方はどういうところに重点を置いたらいいのか、これは大変大事な問題だと考えております。ただ、今までの公共事業のやり方をこれからも継続すればいいのかというと、決してそうではないように思うんです。  レジュメの一番のところには、「豊かさをはかる物差し」というふうに書かせていただきましたが、これはちょっと時間の関係で、また後で時間があればお話しすることにいたしまして、いきなり「日本社会資本整備は十分か」というところから入ってまいりたいと思います。  公共事業大変幅が広いわけでございますけれども、例えば下水道普及率一つとってみましても、皆さんが平成八年の六月にまとめられた国民生活経済に関する調査報告では、過去と数字を比較しまして、これだけ普及率が高まっているというような記述がございますけれども、ただ、これを海外と比較してみますと、九五年度末の日本下水道処理人口普及率は五四%ですけれども、イギリスの九六%とかドイツの九〇%などに比べますと、まだ格段の差がございます。  一人当たり都市公園の面積を見ましても、九五年度末の見込みで、日本の場合には全国平均で七平方メートル、イギリス・ロンドンの場合は約二十六平方メートル、あるいはドイツのボンの場合ですと三十七平方メートルということで、やはりかなりの差がございます。住宅とか道路の延長、あるいは治水対策等についても同じようなことが言えるわけでございます。おくれているということです。  今申し上げましたのは日本全国平均なわけなんですけれども、地域ごとにも随分ばらつきがございます。特に、いわゆる都市部での社会資本整備がおくれているんではないか、こういう感じを強くしているわけでございます。鉄道混雑解消対策などもなかなか進んでおりません。あるいは都市の中の交通通過交通とを分けないと都市の中の交通が渋滞してしまうわけですけれども、そういった通過交通のためのバイパスづくりなども余り進んでいないのが現状でございます。  公共事業に関連しまして、予算配分が硬直化しているということを申し上げたいと思っております。  国の予算を見ますと、ごく大ざっぱに申しまして、建設省が七割、七〇%ですね、農水省が二〇%、運輸省が七%、これで九七%なんですね。残りの三%をそれ以外の省庁が受け持っている。ごく大ざっぱに言いまして現在の予算配分はそういうふうになっております。  実は、今申し上げましたこの予算配分比率は、一九六五年と申しますと、東京オリンピックがありましたのが六四年ですから、その一年後ですよ。つまり、今から三十年以上前のデータを見ますと、やはり今申し上げた比率なんです。この三十年間、世の中は大きく変わったにもかかわらず、一般公共事業費各省シェアは変わっていない。余りにもお金の使い方が硬直化しているんではないかということを日ごろ感じております。  三番目に「社会資本ハードソフト」ということが書いてありますけれども、ここで申し上げたいのはただ一点でございます。それはどういうことかといいますと、とかく社会資本整備と申しますと物をつくるということに目が行きがちなんです。  例えば、国民生活に身近な医療の問題でいきますと、病院診療所ベッド数幾つあるのか、あるいは病院の数が幾つあるのかということに関心が行きがちなんですけれども、考えてみますと、そういうことももちろん大事ですけれども、例えば二十四時間の医療体制が整っているかとか、あるいは救急医療に十分対応できているとか、あるいは診療中身が大事なわけで、必ずしもハードだけではないんです。地方に多いホールとか劇場などを見ましても、とかくいすが幾つあるかといったようなことに目が向きがちなんですけれども、そこでどういう公演が行われているのか、あるいは利用率がどうなっているのか、こういうところにも目配りをしていく必要があると思っております。  四番目に「何が欠落しているのか」ということと、五番目に「社会資本整備する視点」というふうに書かせていただきました。この辺がきょう申し上げたい、特に力を入れたいところでございますけれども、時間の関係がございますので、まず五番目の「社会資本整備する視点」の方から申し上げたいと思います。  ここでは三つお話ししようと思っております。  一つは、環境の問題でございます。環境は、エコロジー都市を積極的につくっていこうではないか、こういう提案一つ、それからもう一つ社会資本整備するに当たってそれを環境面からもっとチェックする必要がある、この二つでございます。  エコロジー都市、やはり次の世代にきれいな地球を残していくということは、今に生きる私たちの責務であろうと考えております。例えば今、国連大学等中心になりましてゼロ・エミッション廃棄物をなくそう、ゼロにしよう、そういうゼロ・エミッションという実験が鹿児島県の屋久島などで始まっております。廃棄物をなくして、例えば生産の循環過程でできるものもまた次に何かに利用していくということで、ごみとして捨てないという物の考え方、それを地域内で循環させようではないかというゼロ・エミッション、こういった考え方はこれから大事だと思います。  水道でいいますと、上水道下水道下水道普及率には問題がございます。上水道下水道がございますけれども、その真ん中の中水道、例えばお手洗いの洗浄水なども何も塩素で殺菌した水を使う必要はないんじゃないか、中水道なんかが普及できないものだろうか。あるいは雨水、島などではそれをかなり使ったりしておりますけれども、都市部でも雨水利用するようなことができないのだろうか。水は限られた資源です。例を挙げれば切りがないんですけれども、一例を挙げますとそんなことを考えております。  社会資本整備環境面からチェックする、道路の建設あるいは河川の工事、そのほかあらゆる社会資本整備においてこれからますます大事になってくる視点ではないかと思います。社会資本整備する視点として、一番目に環境の問題を申し上げました。  二つ目は、日本人口構造変化への対応という問題でございます。  高齢社会に入っているということはそのとおりでございます。そういうことから、バリアフリーあるいはエージフリーという物の考え方がこのごろ随分言われるようになりました。例えば、ホールとか劇場であるとかあるいは公民館であるとか、そういう施設の中でのバリアフリー、例えばトイレですとかあるいはスロープですとか、これは大分充実してきているように思います。  ただ、ハンディを持った方々は家を出てからそういった施設に行くまでが大変なんですね。といいますのは、町の中のバリアフリーはまだまだ日本の場合には工夫する余地があるように思うんです。例えば歩道橋、これはハンディを持った方々にとっては大変です。これはやはり車優先社会一つの産物だと思うんです。本来歩行者を優先する、つまり車は少しスロープ立体交差をして歩行者は平面的に歩けるような、そういう町づくりが必要ではないか、例えばそんなふうに思っております。  歩道車道の幅を考えてみますと、車道の方が普通は広いんですね。日本には自転車道がまだ少ないです、もっとつくる必要があると思います。それから歩道の幅、国会の前の歩道などは広いですけれども、普通の地方都市歩道などを歩いてみますとやはり狭い、少なくとも車いすがすれ違えるくらいのそういう歩道が必要ではないでしょうか。  時間の関係でこれもほんの一例なんですけれども、そんなことを感じております。  女性社会への進出が目立っております。そういうようなことから少子化社会ということも言われております。でも、子育てしやすい環境を整える、例えば働く女性が育児と仕事ということを両立できるような、そういう社会がこれからますます日本においても必要になってくるんではないか。安心して働くためには、お子さんを預けるような施設が身近なところにある必要があるんですね、例えば駅前とか。しかも、そのオープンの時間はそれなりに長くなければぐあいが悪い、こんなことも感じております。  社会資本整備する視点の三番目でございますけれども、安全、防災の問題でございます。  これも先ほど環境のところで申し上げましたけれども、一つは安全、防災を創造するような町づくり。私も阪神大震災の後、現地に取材に参りました。そういう中で、公園の役割、大変大きいものを感じております。それほど規模が大きくなくても公園があるとそこで火がとまっているんです。焼けどまり効果、これは実際に見て痛切に感じました。もう一つは、日常的な社会資本整備を安全、防災面からどうチェックしていくかというこの二つの問題でございます。  時間の関係で、四番の「何が欠落しているのか」というところに移らさせていただきます。  ここでも三つ申し上げます。  一つは、社会資本整備に当たって総合的な視点、やはりこれが欠けているのではないかと思っております。  例えば、交通の問題一つ考えてみましても、道路鉄道と空港、このリンクが必ずしもうまくいっていないところがございます。あるいは道路だけを考えましても、高速道路一般国道農免道路と言われるような農道ですね、これが例えば並行して走っているようなこともあるんです。投資としての効果が本当にこれでいいのかどうなのか、疑問に思うようなことがございます。  下水道縦割り行政については、既に指摘されておりますので余り詳しくは申しません。  二つ目は、市民参加という問題でございます。  これはこれからの日本社会においてますます大事な考え方ではないかと思っております。つまり、社会資本整備するに当たって、役所できっちりしたプランをつくってから市民に説明するのではなくして、計画段階から市民参加をしてもらう、こういう考え方でございます。もう計画が全部できてから市民に公表して意見を求めても、なかなかそれが直ることが少ないという問題がございます。  三番目、最後になりますけれども、評価の問題でございます。  つまり、今まで社会資本予算を使って、税金を使っていろいろ整備してまいりました。ただ、そういった社会資本がどういった効果があったのか、そういうことの評価が従来はややというかかなりなおざりであったのではないかと感じております。つまり、民間の会社が物をつくる場合に、あるいは何か新しい事業を始める場合に、あるいはその中間の段階において厳しく評価されます。だめなら撤退ということになるわけです。日本経済新聞も随分いろいろな事業から撤退をしてまいっております。  つまり、社会資本整備することにかかわる費用とそれによる便益がどうなっているのか、これを常に考えていく必要がある。こういう評価システムがまだ日本社会において足らないのかな、こんなふうに思っております。  時間になりましたので、失礼いたします。ありがとうございました。
  5. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) ありがとうございました。  以上で井上参考人の御意見陳述は終わりました。  次に、田中参考人にお願いいたします。
  6. 田中直人

    参考人田中直人君) きょうは、私は阪神大震災被災地である神戸から参りました。  阪神大震災直後、悲惨な状況の中でつぶさに現場の調査等を通じまして感じたこと、あるいはそれから見て今までの町づくりで感じたことを一冊の本にまとめました。その本の内容につきましては、皆様のお手元に届くかと思いますが、きょうはその中で感じたことを御紹介したいと思います。  まず、レジュメの方をごらんになっていただきたいわけですが、阪神大震災による都市環境変化によってたくさんの方が犠牲になられたとか、あるいはその中には高齢者とか障害者の方が多かったとか、あるいはライフラインの欠如によって大変なことになったと。そういったことは、マスコミの報道あるいは現地皆様方調査等によって十分御理解いただいていることかと思います。  しかし、そういった一連阪神大震災での町づくりでの問題というのは日々時間がたつにつれてどこか風化している部分もありまして、改めて私はこれから二十一世紀、超高齢社会という中でどういった町づくりを考慮していくべきかということについて述べてみたいと思います。  レジュメの方の三番目に移っていただきたいんですが、阪神大震災の後、とにかく強い町づくりということが非常に叫ばれました。都市のいろんなインフラ部分を壊れないようにする。鉄道であり、道路であり、住宅であり、建築物であり、そういったものが壊れなければいいんだという発想でやられました。しかし、都市というのは人が住む場所でありますから、単に器が丈夫だけでは住みにくい町だと言えます。そこで、復興計画というものが進む中で福祉的な町づくり視点から幾つかの提案をさせていただきました。(OHP映写)  ここにありますように、少し見にくくて申しわけないんですが、まず、安心して住み続けられる住宅づくりであるとか、住宅にかかわるソフト技術開発、自立を支援する技術開発と介護・看護システム、こういった一連の細かい提案があるわけですが、私は、提案の中で大きく七つにくくらせていただきました。  一つは、先ほど井上参考人の方からお話もありましたが、都市の中で自然環境がたくさん残っている部分もあります。今回、神戸という町は六甲山それから大阪湾という海があったわけですが、意外とそういった自然環境が生かされなかったということです。そういったもともとの自然環境を生かした、例えば山の緑、市街地の緑の回廊及び水辺のウオーターフロントによるネットワークをすることによって、日常的にそれらを市民の憩いの場として活用しながら、いざというときは緊急時のいろんな活動に供するということがその一。  それから、提案のその二は、商店街の再生ということです。今までの商店街というのは、大型店舗等に押されまして、旧市街地では非常に零細な小売、お父さん一人やっているようなお店がどんどんつぶれていっています。市場という非常にコミュニティーの場でもあるところが今回大変な被害を受けました。しかし、逆に今回の震災の中で立ち上がりが一番早かったのはそういった商店街からだったわけです。こういった商店街を再生することによって町の活性化を図ると同時にコミュニティーのコアにしようという提案です。  その三が、交通とか情報中心を人を中心にして、とかくハイテクに頼りがちなんですが、とにかく人を中心にしたコミュニティーの場で町の顔を形成する。要はわかりやすい町づくりをやったらどうかというのが三つ目です。  その四つ目は、空間が非常に複雑で高度化してきました。そういうことで、地下あるいは地上ということで、土地の立体利用等で非常にわかりにくい空間になって、あるいは危険な場所が多いわけですが、そこに安全、快適なつなぎ空間をたくさんつくる、わかりやすくする、快適にする、こういったことを四つ目に挙げました。  五つ目は、利便性の高い駅前、これはとかく今までの町づくりの中では、例えば大型商業の銀行であるとか、そういった商業施設に占められていましたが、これからの社会の中では、高齢者とか障害者、いろんな人たちが一番便利な場所に一番多くの情報が集まりやすい快適な空間をつくるということがまず大事ですから、そういう駅前という地区についての利便性あるいは快適性を高めた町づくり提案しました。  六つ目は、コミュニティーということは非常に今回大事とされました。すなわち、今まで都会に住んでいて声もかけ合わなかった人が声をかけ合う。そして、困ったときにいろんな物を出し合い、あるいは情報を提供し合いながら助け合う、これがまず町に住む、集まって住むという原点である。こういった認識の中で、新たにコミュニティーをどうしたらいいのか、こういった機運現地では高まりました。この機運のヒントをぜひこれからの高齢社会の中で生かしていく町づくりが必要ではないか。そういったことから、これまでの住宅地のつくられ方の中において、コミュニティーの核となるような仕掛けづくり、これをぜひ入れないといけない。それは勢い、例えば集会所とかコミュニティーセンターをつくればいいのではないか。そういうものではなくて、もう少しきめ細かい、だれがどのようにして使うのか、あるいはどのような場面でコミュニティーを育成していくことができるのか、そういったきめ細かい話が必要かと思います。  七番目は、やはり地域防災拠点としての避難公園であるとかそういった街路ネットワークの問題です。これらの都市インフラというのは、残念ながら神戸はもとより全国を見ても、この関東、東京でもそうですが、同じような地震が来たち恐らく大変なことになるというような都市環境が現存しております。そういったところに対して、全部スクラップ・アンド・ビルドで大きな道をつくるという発想じゃなくて、現在の都市の骨格を尊重しながら防災的な観点で再整備する、そしてアメニティーの高い空間として日常的な一般市民利用に供する、こういった街路整備公園整備等が必要ではないかと、こういうことで七つを挙げさせていただきました。  そういった一連の福祉の町づくりという視点を踏まえた復興計画提案があったわけですが、私は、そのレジュメにありますように六つのことを最終的に挙げております。  まず一番目ですが、重複する部分もありますが、人に優しい安全な都市施設をつくるということです。これはどういうことかといいますと、建築物交通施設あるいは道路公園、こういった一連施設につきまして、現在バリアフリーというものがやられております。しかし、これまでのバリアフリー、例えばビルでしたらハートビル法等整備されておりますが、その中身につきまして見てみますと、下肢障害者、すなわち車いす使用者の方を中心とした整備がほとんどです。障害者といっても、目の不自由な視覚障害者、耳の不自由な聴覚障害者あるいは内部障害者、いろんな方がおられます。今後は、技術的な開発の問題もありますが、より広い範囲での障害を持った方への対応を考えた基準整備が必要であるということです。  もう一点は、このバリアフリーデザインにおきまして問題が幾つか発見されております。一例を挙げます。  例えば、道路歩道の上に点字ブロックというのがありますが、あれは目の不自由な方が歩くためのものですが、一方、点字ブロックがあることによって、つえを使った方あるいは車いすの方あるいは高齢者の方が滑ったり、つまずいたりするという問題も起こっております。逆にあの点字ブロックは非常に景観を壊している、色が悪いということで地味な色に変えたりしておりますが、逆に視覚障害の方からは余計わかりにくいというような問題が出ております。  すなわち、一つのことを環境整備社会資本として投資しても、それが一方の方にとっては非常に不合理なことになっているという問題が多々あります。それをよく理解しないで、基準とか条例とかで全国一律にやってしまいますと、これは社会的に大変な資本のむだ遣いだと思います。ということは、よりそういった内容を多くの方に受け入れてもらえるような、すなわちユニバーサルデザインという言葉が最近あるわけですが、すべての人にとってより快適な効果をもたらすような新しい魅力的なデザインを開発する、このことがこれから必要になってくると思います。  そういった意味での、これまでやられてきた条例、規則、要綱、全国で今たくさんの自治体が取り組んでおられる町づくりにつきまして、さらにそういった技術的な支援対策あるいは現在やられている環境に対する本当にいいかどうかという評価ですね、これをやはりユーザーサイドから見た整備の中で考えていくべきじゃないでしょうか。そういうことを思います。  その次に私が言いますのは、安心して住み続けられる住宅の建設ということです。  阪神大震災でも多くの住宅が壊れて、復興の住宅が建てられております。しかし、今、都市の居住者のライフスタイルを見てみますと、必ずしも従来の家族、お父さんがいてお母さんがいて子供がいてというような家族じゃなくて、残念ながら片方の方がお亡くなりになったり、あるいはシングルで頑張っておられる方、ヤングシングル、オールドシングルという方がたくさんおられます。あるいは、仕事の都合でどうしても普通のノーマルな生活タイプが過ごせないという方もたくさんおられます。これからそういった居住者のより多様な姿に対した住宅の供給が要るわけです。  一方で、住宅を財産として取得するという向きや風潮が大変強いように聞いておりますが、やはり住宅は住んでこそ住宅でありまして、その住宅空間としての機能もそれぞれの人の都市生活のいろんな部分を満たすものであるべきです。ということで、より多様な住宅が要るわけです。  現在、被災地の方ではコレクティブハウジングという形で、例えば食事を共同化しまして、それぞれの方が住まう空間と共同で住まう空間を提供する。だから、公営住宅でもグループで申し込むというような形のものを試みにやっております。これからの高齢社会の中では、このコレクティブハウジングのようなものだけじゃなくて、例えば従前からありますようなグループホームとか、いろんなそういった福祉的な配慮、あるいはコミュニティー的な視点に立ったホープ住宅もありますが、そういったものを含めて考えていくべきだろうと思います。そういった意味では公共だけではこの仕事はできませんので、ぜひ民間の優良な事業を支援するような施策あるいは投資をぜひ試みていただきたいなと思います。  それから、三つ目は保健・福祉サービスの充実と医療との連携と書いております。今回一番もろかったのは病院医療施設です。一番頼りにすべき病院があっけなく壊れてしまいました。そして、たくさんの医薬品が不足したとか、そういったお医者さんが不足した、看護婦さんが不足した、いろんなサービスの対応ができませんでした。日常においても、これから高齢者がふえていく中でこういった医療へのニーズは高まっていくと思います。単に治療だけじゃなくて健康的な生活を支援する、地域に安心して住み続けるという意味から保健、福祉、こういった関連のサービス、あるいはそういった施設につきまして充実が必要ではないかと思います。  それから、四つ目は先ほど申しましたような福祉の視点からは地域コミュニティー。要は、住宅に住むというよりは、これからは地域に住むということの視点が必要ではないかと思います。そのためには、これまでどちらかというと福祉の町づくりというのはハードをつくることが多くあったように思いますが、私は、これから地域において行動、すなわちアクションを支援するプログラム、アクションプログラムでより快適な空間をつくるためにサポートするソフトを技術としてつくるような支援技術が要るんじゃないか。そのためには、必要な人材であるとかリーダーであるとか、そういったものに対するいろんな啓発、研修あるいはそういった人たちを受け入れるような総合的な施設あるいは行政、民間のいろんな活動との連携、こういう多岐にわたるプログラムのことが必要になってこようかと思います。  それから、五つ目は身近な情報提供ということです。今日、情報社会とか言われておりますが、テレビとかそういった大きなマスメディアだけじゃなくて、もう少し身近なところで日ごろの生活を改善していくあるいは生活を楽しんでいくというような視点での情報、CATVが昨今いろんな地域でやられておりますが、それにつきましても普及している部分と、いろんな問題があるように聞いております。こういった身近な情報提供体制につきまして、改めて社会資本としてどのような形で投資していくのか。これが今後求められていくと思います。  それから、六つ目は災害に強い防災拠点。先ほど言ったことにつながりますが、今回最も感じたのは仮設住宅のことです。これだけ科学技術が発達した我が国において、あの仮設住宅は惨たんたる非難を浴びました。住宅技術の進んでいる我が国においてどうしてでしょうか。私は一昨年イタリアへこの関係調査に行きましたが、イタリアではそういった防災のヤードに、広域のネットワークの中でストックしているのを見ました。その住宅中身も、日本のようなそういう画一なものじゃなくて、いろんな建築技術を駆使した新しいものが入っておりました。こういったことで、これからは資材のストックということをもう少し開発すべきであり、これを非常時だけのものとしてではなくて日常から一般市民利用に供するような形で計画すると、こういったことも必要じゃないかと思います。  そういったことで以上六つ挙げましたが、私は、さらにこれからの町づくり環境整備の中に必要と思うことを述べさせていただきます。  それは、全国町づくり生活環境整備の中において非常に方法論が一様化してきた。これは工業化技術あるいは工業化された材料、工法を用いることによって、あるいはいろんなアイデアを持ち込むことによって展開されているわけですが、何となくその地域とか場所に応じたらしさみたいなものが全然なくて、住んでいる人にとってもアイデンティティーを感じるようなそういう場面が少なくなっているんじゃないか。例えば、駅前おりたら、どこでも同じような駅前空間があってみたり、金太郎あめのような町づくりがあります。これをやることのメリットもありますが、やはり一方で、場所を生かしたアメニティーを開発すべきじゃないかと思います。  もう一つは、やはり住生活の中にたくさんの地域施設がありますが、現在、これを調べてみますと、ほとんど使われていない施設とか形骸化しているものもたくさんあります。これからライフスタイルの変化に合わせて多くの施設が出てくると思いますが、今までつくられてきたいろんな施設、例えばどこかで大きな体育館ができますと隣の県でもまた大きな屋根つきドームができるとか、同じようなことをやっております。そうじゃなくて、もっと国土全体で見た地域施設計画が、投資が必要じゃないかなと思います。  以上、時間もありませんのでこれぐらいにとどめますが、最後に、レジュメの最後に書いていますことを少し述べたいと思います。  私が今一番感じているのは、こういった福祉の町づくりとかいう中で、二十一世紀は超高齢社会で、例えば消費税が上がるとか、国民が抱いている福祉の領域に関するイメージは非常に暗いです。私がこれまで述べてきた福祉というのは、決して障害者とか高齢者の人のための福祉じゃなくて、すべての人が生活をやっていて幸せを感じる、魅力を感じる、こういった町づくりこそ本当の福祉の町づくりだと思います。  そういった意味で、これからの二十一世紀に我が国が、国際的な関係の中でいろんな難しい問題はたくさんあるわけですが、やはり国民一人一人が地域に愛着を持って、これはすばらしい、これは楽しいなというような場面づくりができるような社会投資をぜひやっていく必要があるんじゃないか。  そういった意味で、先ほど井上参考人からもお話がありましたが、全体的な総合的な視点からの生活空間を構成する、こういった大きなビジョンがこれから求められていくと思いますので、ぜひ先生方にそういった点で頑張っていただきたい。私たちも研究者、教育者としてこれからやっていきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  7. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) ありがとうございました。  以上で田中参考人の御意見陳述は終わりました。  これより両参考人に対する質疑を行います。  先ほども申し上げましたように、質疑時間は八十分程度といたします。質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って質疑を行うようお願いいたします。また、質疑答弁とも簡潔にお願いいたします。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  8. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 新党さきがけの堂本暁子でございます。  きょうはお二人の先生方、大変示唆に富んだお話を伺いましてありがとうございました。  特に、私は比較的環境のことをやっているものですから、環境視点、それから福祉の視点を入れた町づくりということでお話しいただいて大変うれしく思った次第です。  お二人に伺いたいことなんですけれども、京都で十二月にCOP3という気候変動枠組み条約の締約国会議も開かれまして、都市の空気の問題、これは大きな問題になってきていると思います。それで、公園が少ないとかそういうこともございますけれども、やはり自動車の乗り入れ、これがこれからの都市にとっては大変大きな問題だというふうに思っております。  そこで、このような考え方で展開されていらして、特に車と町ということで御意見を伺いたいのが一つでございます。  それから、井上先生に特に申し上げたいことなんですけれども、女性の働きやすいようなとおっしゃってくださって大変うれしゅうございました。その場合に、働きながら子育てができる、これは大変うれしいことなんですけれども、先生とちょっと見解を異にしますのは、駅前保育、これは日本の行政の中でも導入されてきていますけれども、私どもは比較的これはどうかなと思っております。  と申しますのは、やはり働く女性の側からすれば駅前というのは便利なのかもしれませんが、駅前は遊びのスペースもありませんし、それから子育てはやはり地域で行うことが重要で、近所のお子さんたちとお友達になることが重要だという考え方でいいますと、地域に子育てのセンターとしての保育所、そこが機能する、ゼロ歳児の子供を持っている場合には、朝、保育のための子育て時短がとれるというようなことがむしろ大事じゃないかと思うものですから、その点についての御見解を伺いたいということです。  それから、田中先生に、兵庫の地震の後でのことで、なるほどこういうふうにお考えになってということを私も大変感銘を受けました。  それで、総合化あるいは個性化、そして人の息遣いを感じるような空間というような御趣旨だったと思うんですけれども、もう一つ興味を持ちましたのは、地域コミュニティーの、言ってみれば昔の隣組のようなものかなと思うんですが、そういった面をこれから具体的に充実させるためには、行政の指導といってもしようがないわけで、どういうような問題意識を持つことが大事なのか、その点を伺いたいと思いました。よろしくお願い申し上げます。
  9. 井上繁

    参考人井上繁君) 私に対する質問は二つあったように思います。  一つは自動車の都心への乗り入れの問題でございます。これは海外の例なども私かなり見ておりますけれども、いろんなやり方、いろんなケースがあると思います。ですからなかなか一概には言いにくいわけです。全面禁止にした場合に、やはり町の中で事業を営んでおられる方もおられますので、そういう方に支障があってもいけないということが一つあるわけでございます。  例えば、オランダなどでボンネルフという考え方がございますけれども、要するに、住宅街などにおいては車の制限速度を二十キロぐらいに制限をして、道路の真ん中を膨らましておいて自動的にスピードが出ないようにしておくというような、そういうやり方をしているようなところもございます。  それから、例えば東京の武蔵野市でムーバスというのが入っております。これは買い物の足として小型バスで市が民間に委託をして事業としてやっておりますけれども、これは結果的に、ムーバスが住宅街をきめ細かく走っていますのでマイカーに乗らないで済むというような仕組みにもなっております。ですから、これは言ってみればマイカーから大衆輸送機関への乗りかえを誘導するというようなやり方だと思いますし、いろいろございます。  スウェーデンのある都市では、都心の駐車場の料金をやたら高くして周辺は安くしておいて、安いのがいい人は少し健康のためにも歩いてくださいということで、そんなことで選択に任せるというやり方をしているところもございます。手法はいろいろあろうかと思います。  それから二つ目の、駅前保育に関するお話でございました。堂本委員のおっしゃる趣旨は私なりにわかりました。ですから、これもなかなか一概に言えないのかなと。私も実はそういう研究もやっておりまして、コミュニティーが大変大事だということも理解しているつもりでございますけれども、ただ現実の問題として、やはり地域の中でそういう子育てをするようなコミュニティーが十分育っているかというと、現実は必ずしもそうでないような部分もございます。地方都市なんかでは案外そういうことが有効かもしれませんし、ほとんどの人が共稼ぎをしているようなところですと、子供を見るといってもそういう場もないということになるとやっぱり駅前の方が便利ということで、現実にそういうお母さん方の声もございます。私、あるところでちょっと研究会のようなことをやっていたことがあるんです。ですから、ニーズは両方あるんじゃないか。  だから、これも単純に駅前がいい、あるいは地域がいいということだけでなかなかちょっと割り切れないんじゃないかなというのが私の率直な気持ちでございます。
  10. 田中直人

    参考人田中直人君) 私に関しましても二点ほどあったかと思います。  まず、車のことなんですが、実は車は公害問題等非常に厄介な代物なんですが、逆に非常に便利なものです。とりわけ障害者の方、高齢者の方にとりましても、安全な運転さえすればこれは非常に行動能力を発揮します。ということで、これからそういった車のよいところを生かすようにするべきです。ただし、現在の都市空間では非常に問題が多くあります。  まず一点は、現在の商業施設でこういった車のことを考えてちゃんとしっかり駐車場をつくっている施設は少ないです。大規模なものでもキャパが知れていますし、それはどちらかというと車で誘発する、大きな駐車場でより遠くから人を集めるという商業主義に入っているわけですけれども、いわゆる小売店舗とかちつちゃな事業所、こういったところをどうするかということです。  これで私は一つ提案があります。  例えば、日本道路というのは車が走ることを前提につくっておりますが、一方でやはり車が道路にとまることを考えた道づくりも要るんではないか。例えば、駐車場にわざわざ行かなくてもドア・ツー・ドアで行けるような道の構造をこれからは整備できればしていくというような発想で、これはヨーロッパ等の国を見ていますと道路に随分ととめています。こういうふうなことを前提にすれば、多少変わる部分もあるんじゃないか。  それからもう一点は、やはり絶対量が絶対足りないわけですから、これだけ狭い国土の中、都市空間の中でやるとすれば、例えば移動に一番便利な地下にそういった駐車場をどんどんつくる、そのための社会投資をするということが必要になってくるんじゃないかなと思います。  それから、もう一つの方法は、従来の公共輸送機関をより便利で快適で乗りやすいものにする。先ほど武蔵野のムーバスの話がありましたけれども、私も運輸省のお仕事でアメニティータ一ミナルというお仕事あるいは移動制約者の交通体系という研究会に入っておりますが、その中でも議論はあるわけです。例えば、乗りやすいバスをもっと都市部に導入するというようなこととか、あるいは従来の鉄道とかそういったものをやる。  一方、例えば路面電車を見直す、チンチン電車ですね。交通渋滞を招くということで排除されたわけですが、やはりあれは電気で無公害で走りますし、のどかな都市を見るという一つのあれがあります。これを見直すということも一つの手だろうと思います。  もう一つ例を挙げますと、アメリカのシアトルで見たんですが、例えば地下に大きな電気バスを走らせまして、それはダウンタウンのある部分は全部フリーになっている、無料になっているということです。その費用は周辺の商業施設とかビルが出していまして、要はそういうフリーアクセスで都市中心部はだれでも自由に行けるんだという発想を導入されています。  そういったことをモデル的に我が国でも導入する場所があってもいいんじゃないかと、こういうふうに思います。それが一点目です。  それから二点目につきましては、コミュニティーの問題は非常に難しくて、実は地域によって実情が随分と違うと思います。隣組というお話がありましたけれども、やはり今までの生活の中で必然的に顔を合わせたり手をかし合わないとできないシステムが残っていたと私は思うんですが、現在はそれがありません。したがって、どういうことをするかといいますと、従前からそういう共通にするようなものを再発見するということはまず必要かと思います。  簡単に言いますと、例えばお祭りあるいは伝統行事等、これを地域のみんなで何らかの形、最近は小学校のPTAを中心にして何か子供会があったりなんかすることもありますが、やはり地域で何かをするというような仕組みづくり、これが先ほど私が言ったアクションプログラムの一つにもなろうかと思います。  それから二つ目は、やはり地域に必然的に集まってくるような場所をつくるということです。これは何も集会所をつくったりコミュニティーセンターをつくるという発想じゃなくて、必然的にそこへ行けばいわゆる現代版の井戸端会議のできる井戸、そういうものが必要じゃないかと思います。昔は井戸で水をくむということはだれでも毎日やったことで、顔を合わせたわけですが、そういうように顔を合わす場所をつくる。例えば集合住宅、マンションでしたら一緒に顔を合わすような、例えば階段室であるとかエレベーターホールのところにそういうものをつくるとか、それをもっと大きなスケールで言うと地域とか都市レベルで顔を合わす場面をつくる、都市の広場をつくると、こういった仕組みづくりがこれから必要で、それに対する支援とかアイデアの開発が必要になろうかと思います。
  11. 牛嶋正

    牛嶋正君 井上参考人とそれから田中参考人、一題ずつお尋ねしたいと思います。  まず井上参考人ですが、五のところで「社会資本整備する視点」を三つ挙げていただきました。私もこれは大賛成でございます。ただ、この視点に優先順位をつけなければならないという場合も起こり得ると思うんですね。その場合にどれを先に優先されるのかということなんです。  ちょっと例を挙げて私の質問の意図をお聞きいただきたいと思います。  先ほど環境のところで中水道というのを挙げられました。これは、もう塩素による殺菌は要らないんじゃないかとおっしゃいましたけれども、実はここにちょっと問題があるような気がするんですね。  と申しますのは、ことしもひょっとしたらO157というのがまた多量に発生するんじゃないかという危険を私は感じております。これは手を洗いなさいということを言うわけですね。それから、熱を加えなさい。熱には非常に弱いんですけれども、手を洗うときに水道水に塩素が含まれているということが殺菌の条件なんです。ですから、中水道で手を何ぼ洗ってもこれは殺菌にならないので、そうすると三番目の安全の問題と絡んでくるわけです。そうしました場合にどちらを優先するかという問題が出てくるので、それを教えていただきたいということでございます。  それからもう一つ田中参考人ですが、「人にやさしい福祉と安心のまちづくりの提案」、六つ挙げていただきました。これは全部もっともだと思うんですけれども、例えば②の「安心して住み続けられる住宅の建設」ですが、我々の人生は八十年時代を迎えまして非常に長くなりまして、幾つかのライフステージをずっと経ていくわけですが、それぞれのライフステージで体力も気力もそれぞれ違いますから、自分に合った住宅というのは違うんじゃないかと私は思うんです。もしそれをずっと続けるということになりますと、その条件を満たす住宅というのは物すごく高くつくのかなという気がしまして、到底我々では建てられないんじゃないかなというふうに思います。そうしますと、住みかえみたいなものが求められてくる。そうしますと、今度は四番目の「良好な地域コミュニティーの形成」がちょっとまた怪しくなってくるわけです。  それぞれ一つ一つを取り上げてみますと非常にいいんですけれども、これを全体で考えた場合、非常に難しい設計を、デザインを要求されるのかなというふうな気がしておりますけれども、そんなところ、まだほかにも医療システム等についてお聞きしたいんですけれども、時間ですので。
  12. 井上繁

    参考人井上繁君) 今の牛嶋委員の御質問でございますけれども、私の申しました環境、それから人口構造変化への対応、安全、防災という問題は、いずれにしましても二者択一的な問題ではないと基本的に考えておりますので、牛嶋委員のお話しになりました中水道の問題に絞ってお話ししたいと思うんです。  私が申しました中水道というのは、主として便器の洗浄水ですとかあるいは洗車、あるいは庭の水まきとかそういう用途を考えておりまして、実際に手を洗うのは、これは先生おっしゃるように消毒してないとぐあいが悪いですから、やはり上水道で賄うべき分野であろうと、そういうふうに考えております。  以上でございます。
  13. 田中直人

    参考人田中直人君) 確かに、住み続けるということですべてのいろんな身体状況等を勘案して高度な設備を住宅に入れますと、非常に高価なものになります。これは庶民の手が届くはずがない話ですから、非常に問題になるわけです。  私が述べたかったことは、まず一点目は、住宅を個人の所有物としてだけじゃなくて、例えば住みかえということに対応して、後の方が住まれても、そういった身体状況の変化があっても対応できるような準備をしておこうと。例えば、手すりを最初からつけなくても手すりをつけられる壁の補強は最初からやっておこう、あるいはお金を出せば後で別のユニット設備を持ってきて快適なおふろがはめ込めるようにしておこうとか、そういった将来への対応を考えた住宅づくり。よりフレキシブルな融通性のある計画でやっていこうという考え方に立っています。  それから二点目は、住宅コミュニティーの問題で考えますと、やはり地域の中で住むということですから、地域住宅あるいは生活を支援するいろんなサービスがあります。例えばシルバーハウジングというのがありまして、特別養護老人ホームが下にくっついていたりしますが、そういったより多機能な支援体制を組み込めるようなことをこれからやっていこう、住宅住宅、福祉施設は福祉施設じゃなくて、一緒に考えて地域でやる、場合によっては地域のボランティアの人がそういったことをサービスしながら、自分たちの生活のことについても十分考えるし自分たちが実際なったときも勉強になる、こういったような地域と連動した支援体制が要るんじゃないかなと思います。  三つ目は、より適切な住情報ですね。今、住宅情報産業はたくさんありますけれども、もっときめ細かい、今先生がおっしゃったような視点での住情報サービスをもっと制度的に整備する、こういうことが必要かと思います。
  14. 小野清子

    ○小野清子君 自民党の小野清子と申します。きょうはありがとうございました。  最初に、田中先生にお伺いしたいと思います。  阪神・淡路大震災、私も二週間日に参りまして、大変悲惨な状況に驚いて帰ってきました。プライバシーが侵害されるということで、体育館などに皆さんが避難していらっしゃる姿を見て大変だったと思うんですが、片や体育館から出る時期が来ましたら皆さん人恋しくて出たくないというお話もあり、プライバシーの存在もさることながら、人は人の中にあって人間らしさというものを取り戻したと再確認をしたような気もあの記事を見て感じたところでございます。  これからの住宅地のあり方、住宅のつくり方で、一度アメリカに行きましたときに、マンションをつくるとその真ん中にジャクジーがあって体育館があって公園があってということで、非常にコンパクトにつくり、かつ危険ですから入り口はきちんとカードを持っている者しかドアがあかない、こういう形になっているのをもう十数年前に見てびっくりしました。その中におけるプライバシーを確保しながら、先生がさっきおっしゃったような住宅のつくり方というものの見本を見せていただいたような気がするんです。兵庫県でもいっか、下がデパートであり真ん中が市役所であり上に住宅があり体育館があるというのを見せていただいたことがあると思うんですけれども、日本がそういう方向に今向かっているパーセンテージといいますか、そういうものがもしおわかりでしたらぜひ教えていただきたいということが一つでございます。  あと井上先生には、都市部社会資本が大変おくれていると常々思っております、私自身も。大変共感を覚えさせていただいたんですけれども、市民参加でプランを計画する段階からやっていかなければ物事はうまくいかない。計画道路はあるんですけれども、東京の場合なんかでもなかなか整備ができていかない部分があります。その辺が社会資本整備と個の問題、これは市民参加のプログラミングを立てる段階からの相談が悪かったのかどうか、今後これをどうやって解決していったらいいのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  15. 田中直人

    参考人田中直人君) まず、そういったいろんな住宅以外の機能を盛り込んだ新しい開発、これは駅前の再開発でありますとか都市部におけるそういう限定された環境の中で結構最近はたくさんあります。何%かということにつきましてはちょっと定かに、今手元に資料ありませんのでわかりませんが、今後の方向としてはそういう方向が考えられます。  ただし、土地がないから一緒にするという意味じゃなくて、要は複合施設であっても単にひっついているだけで、住宅とそういったほかの機能がうまく連動していない例がたくさん見受けられます。それは、制度上何かを積んでやるということは非常にメリットがあるわけですけれども、より生活者の視点に立った複合の仕方、これに対する必要な助成とか融資をこれから図る必要があろうかと思います。  そして、なおかつ建築物だけじゃなくてその建築物の周りのオープンスペース、屋外空間の広場とかお庭とかそういったことについても要りますし、それから駐車場も要りますので、屋外も含めた整備がこれから必要かと思います。  それから、アメリカの例を先生今おっしゃったわけですが、アメリカの場合我が国と違いまして非常にセキュリティーが悪い状況です。日本の場合、今までの集合住宅、今の複合化のことに関して言いますと、どちらかというとクローズしてつくってきました。かぎ一本で中をクローズしていますが、要は田舎の家というのは外から中の生活がわかる。阪神・淡路大震災でも、淡路島の地区の方はその日のうちに安否確認ができたというのは、どこのおじいさんはどこに寝ているかまで知っていたということがあります。ということは、皮一枚のつくり方でより開かれた構造になっているということが非常に大事で、それが地域に住むという基本要件になろうかと思います。  そういった意味で、先ほどの住宅以外のプールとかいろんなコミュニティー施設地域に開かれた形でやはりつくるべきじゃないか。だから、そこの住宅の所有者だけが使うのじゃなくて、より地域の方が一緒に使えるようなつくり方、これが大事になろうかと思います。
  16. 井上繁

    参考人井上繁君) 社会資本整備する場合の住民参加の問題でございます。  例えば、都市計画道路などはかなり早くから決まっておりまして、専門の地図を見ればそういうことは出ているんですけれども、市民の人は案外そういうことを知らないことが多いですね。それで実際着工ということになって初めてそれを知ってトラブルが起こるというようなことも起こりがちでございまして、行政の方も積極的に日ごろからそういった状況を市民に伝えていくような努力をしていくこと、これがやはり必要だと思います。  それから、これから地方分権ということがますます大事になってまいります。となりますと、自分たちの町をどういうふうにつくるのかということを地域方々が話し合っていくと、そういう仕組みづくりと申しますか、道路町づくりの一環なわけですから、たとえ国道であってもそれを町の中のどこを通すのかということについてやはり多くの住民の理解と協力がなげればできないわけですから、基本となる町づくりのプランをつくる段階において、個別の道路だけではなくて基本となる町づくりのプランをつくる段階から住民の方々と一緒につくっていくというような姿勢が大事ではないかと思っております。  スウェーデンのストックホルムへ参りまして、ある道路をつくる事業のチラシを見てなるほどなと思ったのですけれども、御意見のある方はこちらへどうぞというようなことで、そのチラシに電話番号だけじゃなくて、日本ですと大体その担当の課の名前ぐらいしか入っていませんけれども、それを担当する人の名前が書いてありまして、それでその人の顔写真が、プロフィールの写真が、なかなかすてきな写真でしたけれどもそれが出ていまして、これについて御意見のある方は私に言ってくださいと。市民の人にしてみると、役所というものは非常に大き過ぎて近寄りがたいんですね。しかし、そういう工夫をすることによって、この人なら行ってみようというようなことも場合によってはなるかもしれない。そんなことでおもしろいなと思いました。  以上でございます。
  17. 小山峰男

    ○小山峰男君 太陽党の小山峰男でございます。両先生、どうもありがとうございました。  私は、今もお話がございましたが、地方分権について両先生の御見解をお聞きしたいというふうに思っております。  井上先生につきましては、先ほど総合的な視点が欠けている、あるいは縦割り行政の弊害だとか、あるいは予算配分が大変硬直化していて建設省が七割だ、そういうお話もございました。町づくりというのは、やっぱり地方が主体でつくるという形にならないと両先生がおっしゃったようなすばらしい町はできてこないというふうに思っております。    〔会長退席、理事牛嶋正君着席〕  田中先生も、先ほどそれぞれのらしさがないとか、あるいは金太郎あめの町づくりになってしまっているとかいろいろお話がございましたが、いずれにしても各省が縦割りでその地方に入っていく限りこういう総合的な町づくりはできないというふうに私は思っておりまして、基本的には財源も伴った地方分権が本当に行われて、地方がいわゆる住民参加のもとに町づくりをしていかなければならないというふうに思っているわけでございますが、その辺の御見解について両先生からお願いしたいと思います。
  18. 井上繁

    参考人井上繁君) 小山委員のおっしゃった方向について、私も基本的にそういうふうに考えております。  特に、今の日本縦割り行政の中で、それを地方という視点で見ますと、大変むだが多い。さらに申しますと、地方といいますと都道府県と市町村と両方ございますけれども、私は基礎的自治体である市町村がやはり中心になる必要があろうというふうに基本的に考えております。  ただ、今の市町村の規模等から申しますと、一番小さいところで人口が二百人という村もあるわけでございまして、そういうところではすべてをそこでやってもらうということはなかなか難しいことでございます。ですから、やはり市町村の規模を大きくするような合併であるとか、あるいは広域的に物を考えていくような広域連合というような制度もできましたけれども、そういう広域的な物の考え方。ある施設があればそれを隣接の市町村の方々はみんな一緒に使えばいいわけですから、そういう考え方をもっと広げていく必要があるんではないだろうか、こんなふうに考えております。  以上でございます。
  19. 田中直人

    参考人田中直人君) まず、地域の実情を把握するのにどういう方法がとられているかということで、町づくりの前提となる地域の実情を本当に理解されて計画がなされているかということは非常に問題になります。この場合に、地域計画策定に当たって、ややもすれば地域関係者じゃなくて、東京といいますか、中央の方が地方計画を策定することはたくさんあると思います。別にこれを否定するわけじゃないんですが、より地域の実情をわかっている人、すなわち地域の中でそういった能力のある人に機会を与えるような仕事の発注の仕方とか、そういったことも必要かと思います。  それからもう一つは、やはりいろんな法体系の中で、市町村から県レベルあるいは国レベルというヒエラルキーが余りにも多くて、手続の中で、形骸化した手続といったら失礼な言い方なんですが、非常に事務が時間がかかる、手間がかかることが随分とあります。この辺をもう少し、本当の地域の中の計画であって、より早く合理的、スピーディーに進めるようなやり方とか、あるいはそれに対応した予算の裏づけとかいうことが必要になろうかと思います。  そういう意味で、地域の行政区分のあり方が、現在行われているものが果たして本当に妥当であるかどうか、これがかなり問題になろうかと思います。すべての地域施設、今の建築物にしても何でもそうですが、市町村あたりとか、その行政区をベースにやっているのが随分と多いわけですが、これは生活の実態とほとんど合っていないことがあります。  一例を言いますと、阪神大震災のときに、ある方が言いました。ここが東灘区じゃなくて御影郷だったらもっと早く対応できたのになということをおっしゃっていました。それは、地域コミュニティーというのは、小さ過ぎても大き過ぎてもだめなんですね。だから、今の画一的につくった行政区分の枠だけで考えるんじゃなくて、もう少し大きな枠も必要ですし、もう少し小さな枠も必要ということです。必ずしも全部大きくすることはないです。生活に密着したところは、より小さなコミュニティーが適切かもわかりません。  三つ目は、やはり行政の中で行われていろいろんな情報を伝達するにしても、今の町づくりということに関して言えば、非常に大きなラフな話が多いわけですけれども、本当に地域町づくりをやるとすれば、非常に家族的と言ったら言い過ぎですが、もっと密な情報でやらないと進まないことがあります。ある場合にはそれが切れて強制的に何かをやらされるということで、そこに市民参加と言いながらも、建前だけで何も機能していない部分があろうかと思います。本当の意味の住民参加とか市民参加にするためにも、よりアプローチしやすいような制度の枠組みが必要になろうと思います。
  20. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 本日は大変ありがとうございました。  両先生にお伺いしたいと思います。  井上参考人の先ほどの御発言の中でも三つの視点といって、一つ環境、二は安全、防災、そして参考人の座談会の中の資料を拝見いたしますと、この三つの優先順位は最後の三番目が高齢者障害と、こういうふうに優先順位をつけております。こういうふうになるというのは、日本社会の公共投資というのでしょうか、そのあり方というのは経済的投資効率、投資効果というのでしょうかね、そういう投資の効率云々によって公共投資の検討というのがなされているんですが、私は老人とか障害者の方に投資をしても果たしてこれが効率という形で図れるのかどうかということで非常に疑問に思っている一人です。  そういう意味で、参考人の御意見をお聞きしたいんですが、今あるこの経済的な公共投資に対する投資効率という視点から参考人がおっしゃっています優先順位というのは、そのためにつけたのか、それともそういう投資効率ということに対してどのようにお考えになるかということをお聞きいたしたいというふうに思います。  田中参考人につきましては、この先生のお書きになりました「福祉のまちづくりデザイン」といり大変御労作を拝見させていただきました。神戸の震災については、本当に説得力ある御文章で大変感動いたしました。先ほどの御発言にもありましたし、この中にもありますけれども、先生はノーマライゼーションということを盛んに力説していらっしゃいます。私も大賛成なんですけれども、日本の今の町づくりというのは果たして先生の言われるノーマライゼーションのようなことになっているかどうかというのは私はいささか疑問で、何か今高齢者高齢者で遠いどこかに隔離したような形にある、大体そうだと思うんですね。  ですから、私は、先生のおっしゃるように、高齢者施設は駅の前にあったり繁華街にあったりするという提案には大変賛成なんです。しかし、こういうふうになるまでに一体日本社会はこれからどうあるべきかということの発想の転換をどういうところでどうすべきか、あるいはノーマライゼーションという先生のお考えに対して国民的コンセンサスというのをこれからどのような視点で進めなければいけないのかということをお聞きしたいと思います。
  21. 井上繁

    参考人井上繁君) 先ほど私が三つ申し上げましたことは、結論から言いますと順不同でございます。何か先に言ったものを重視しているとか、そういうことでは全くございませんので、この点だけはちょっと確認をしておきたいと思います。  それから、笹野理事のお話の中で、投資効率一辺倒ではいけないんではないかと、こういうことでございます。私もそのとおりだと考えております。  今までの日本社会は効率だけで物を考えてきたと、そういうことを反省すべきであるというようなことも新聞等を通じて書いたこともございますし、決して経済性とか効率だけで物事を判断しようとは全く考えておりません。  ただ、先ほど欠落しているというようなことの中で、最後にたしか評価という話を申し上げました。これはある公共事業を税金を使ってやる以上、その効果がどうであったのかどうなのか、そういう評価をすることは大事であるということを強調したかったわけでございます。    〔理事牛嶋正君退席、会長着席〕  高齢者向けの対策が御高齢の方々に喜んでもらって、それが社会的に意味のあるものであればそれはもう十分評価されるべきものであろうというふうに考えております。  以上でございます。
  22. 田中直人

    参考人田中直人君) ノーマライゼーションにつきましては、非常に難しい概念ですが、これは何も片仮名で言わなくても、みんなで同じようにと言えばわかる話だと思っているんですが、国民的なコンセンサスが得られているかどうかということにつきましては、これは残念ながら非常に難しい問題があろうかと思います。一番肝要なのは、国民一人一人が我が身のこととして感じとれるような場面とか意識をまず持っていただくということが大事ではないかと思うんです。  私の学生に最近交通事故を起こした学生がいまして、それで入院したわけですが、松葉づえになって初めてそういう方の気持ちがわかったというようなことを言っておりました。これはやはり今大人たちが議論する世界だけじゃなくて、ノーマライゼーションとかこれからあるべき福祉社会の構築につきましては、小中学校あるいは幼稚園の小さなお子さん、そういった教育の中に人に対する思いやりとかそういったことを入れるようなカリキュラムがあってもいいんじゃないかと思います。もっと言えば、教室で学問するだけじゃなくて、ボランティアで外に行って、それが例えば単位になるとかそういうような制度もどんどんあってもいいんじゃないかということで、もう少し若年層からの社会的なそういった啓発、研修を組むということが一つあろうかと思います。  それからもう一つは、やはり国民的なコンセンサスの中で、経済的な視点からいっても、単にそういった別に隔離して施設に収容するという施設収容型の高齢者対策はいかに高くつくかと、在宅で地域にいてみんなでやっていく方がコスト的にもいいんだというようなことにつきましても試算も出ておりますが、そういった発想での環境整備ですね、これをもっと社会的に皆さんで考える機会をつくるべきだと思っています。  それから三つ目は、具体的な今までとられてきた例えば狭義の意味のバリアフリーデザインですね、こういった中を見ましても実にむだなことをやっているように思うんです。OHPを用意していますから、ちょっとだけ時間をいただきたいんです。(OHP映写)  ここに、例えば目の不自由な方に役に立っているものと役に立っていないものを尋ねた調査をしました。役に立っているものはやはり点字ブロックが多かったわけですが、逆に役に立っていないものを聞きましたら、何と点字案内板とか触地図、よく地図の上にぽつぽつの点字が張ってあるやつがありますね、これは全く役に立っていないそうです。  しかし、どこの自治体でも条例を見ますと、そういうことをやるとみんながわかる、しかも地図だから目の見える人もわかるんだということでノーマライゼーションだというふうにやっているんですが、こういう何百万もかけるような代物もあるぐらい、ブロンズでつくっているところもあるんですが、そういうものが一切役に立っていないということですね。だから、視覚的に不自由のない人の発想で物をつくっている、要は全然ノーマライゼーションされていないんです。そういうことをもっとつぶさに社会的投資として皆さんでもう少し考えていただきたいな、こういうふうに思います、一例ですけれども。
  23. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 ありがとうございました。
  24. 林久美子

    ○林久美子君 両先生、きょうはありがとうございます。  私は、まず井上先生にお伺いいたします。  社会資本整備で現在問題になっているハード面とソフト面というのもありますけれども、国と地方、いずれが整備した方が効率的かまた住民サイドの利益になるかという点でありますけれども、そこで問題になるのが地方財政の問題と自治体の統廃合、そしてまた道州制の問題でありますね。特に地方財源の拡充については、この十年もう一日のごとく言われておりますけれども一向に進んでおりません。これが何が原因でそう進まないのか、これが一点。また、自治体の統廃合や道州制の問題はどのように先生はお考えになっていらっしゃいますか、お聞かせくださいますでしょうか。  そして、田中先生は、私も震災に遭った一人でありまして、神戸出身であるものですから、きょうはこの「福祉のまちづくりデザイン」を読ませていただきまして、本当に夢と希望を与えていただいてとってもうれしく思っております。それでも神戸は復興にまだまだ遠いんですけれども、今回の先生のこれを読ませていただきまして、高齢者や身障者にとって優しいバリアフリーデザインの完備した町づくり、これを目指されておりますけれども、まさに理想的な社会環境であることは間違いないと思うんです。  しかし、これにはしっかりした都市計画と裏づけになる予算の計上、このことが一番重大点で、例えば神戸市にそのようなバリアフリーデザインを完備した場合にはどれぐらいの予算の計上が必要であるということを考えていらっしゃいますか。また、完備するにはいつの時点でその目標ということを考えていらっしゃいますか、お聞かせくださいますでしょうか。どうぞよろしくお願いいたします。
  25. 井上繁

    参考人井上繁君) 質問は二つございました。  一つは、地方への財源を強化する必要があるのだけれども、一体それは何が原因で進まないのかと、こういうことでございます。  結論から言いますと、国家公務員の方が余りにも責任を感じ過ぎているということではないでしょうか。言葉をかえて言えば、みずからの権益を守るということに力を入れ過ぎているということかもしれません。今、地方分権推進委員会で地方分権のいろいろな議論が行われております。それで、昨年の第一次勧告で権限の移譲、特に機関委任事務の廃止とか権限の移譲についてはおおよその決定を見たわけですけれども、問題は権限だけ地方に行ってもそれに必要なお金が来なければ事業はできないわけです。今のさまざまな補助金制度をどうやって洗い直していくのか、これが大変大事なことだと思うんです。  といいますのは、補助金というのは使い道が決まっておりますので、地方で自由に使うことができないという問題がございます。補助金をなるたけなくして地方が自由に使えるような一般財源にどういうふうに切りかえていくのかと、これがやはり大変大事なところだと思います。  最終的には、これはまだいろいろ時間がかかることだと思いますけれども、消費、資産、それから所得ですね、主に税金はこの三つのどれかに入りますけれども、今の税金の体系そのものをやはり改めていく必要がある。地方に重点を置くような税の配分、これは地方分権になれば当然それに伴ってやらなければならないことであるというふうに考えております。  それから、二つ目は自治体の統廃合あるいは道州制についてどう考えるかと、こういうお話でございました。  自治体ですので廃止ということはちょっと余り適当でないように思うんですけれども、統合ということは、先ほど私は合併ということとか広域連合ということを申し上げました。これから地方分権に伴って基礎的自治体の基盤を強化するということは大変大事なところだろうと思っております。  ただし、一つそれにつけ加えますと、何でもかんでもずうたいが大きくなればいいというものでもない。それは先ほど田中参考人がお話しされましたけれども、やはり地域の中にコミュニティーというものが育っていないとぐあいが悪いと思うんです。私はやはり地域の中のコミュニティーが育つということを前提にした上で、現在の日本地方自治体、市町村、大体三千二百ございますけれども、これは余りにも数が多過ぎる。やはり統合をしていくということはかなり緊急にやらなければならないことである。  ただ、地域にはそれぞれ歴史とか長い間のしきたりがございます。ですから、例えば国会議員の先生方とか国の役所が、AとBとCが一緒になった方がいいとかということではなくして、やはり地域住民の中から自主的に一緒になろうというようなことで、自主的な合併であるということがやはり大事であろうと思います。  以上でございます。
  26. 田中直人

    参考人田中直人君) バリアフリーですけれども、御存じのとおり神戸は傾斜地が多いですからバリアフリーは大変なところなんです。  まず予算の面なんですけれども、実際私が、大分前ですが、具体的に神戸市における公共建築でバリアフリーをやるとすれば幾らかかるか調査したことがあります。そのときわかったことを言いますと、まず、新築時において最初からやればさほどお金はかからないということが絶対言えると思います。  問題は既存のものをどうするかということでありまして、既存のところをやる場合においては二つ考え方があると思います。生活環境バリアフリー化にとってどうしても優先的にやるべきもの、生理的な欲求とかどうしても日常の交通で要るところにつきましては一気にやってしまうというのが一つあります。一気にやってしまう型ですね。それから、二つ目は徐々にやる型です。それは何かといいますと、やはり何かあるときについでにやるということ。例えば増改築するときに一緒にやってしまう、道路のつけかえ工事があるときについでに歩道をそういう規格のものに変えてしまうとか、そういう二つがあると思うんです。一気にやってしまう型を増進するためには、まずそういったイベントとか何かの目標の年次を定めるということがあると思います。  ちなみに、ある自治体ではいつも市長選挙の年にそういう完成時を設定しているというのもありますけれども、それは一つの花をつくるということですから、いい意味で活用すれば町が変わるわけですから、それはいいことだと思います。  それから、大きい二つ目としまして、お金を下げるためにどういう手だてがあるか。これは、今我が国で非常に多くの商品が出ております。あるいはそういった方法がありますが、残念ながらそういった建材とか、例えば住宅でしたら九百十のモジュールとメーターモジュールというのがあります。コマーシャルでもありますが、メーターモジュールの方がバリアフリー対応しやすいわけですが、規格はメーターモジュールのものがあっても、建材としてはメーターモジュールのものは出回っていないんです。これにつきまして、行政の方でもう少しそういった福祉対応の建材をやると、そういった材料レベルから商品レベルまで配慮しないとちまたで工事をやるときは安くできないことになります。二枚持ってきて、半分にまた切って足したり、非常に高くつく、手間がかかるということが現状であります。  それともう一つは、今現在の町づくりは条例という形の基準づくりばかりやっておりますが、例えば何とか市、何とか県だったら何とか県で具体的に地域においてバリアフリーをどうするかというめり張りのついた計画書、すなわちバリアフリー地域計画、これをぜひやっていただきたいなと思います。そういう地域バージョンで個別の答えをうまくやりながら、さっき言った二つの方法を組み合わせながらやることが賢明な投資方法ではないかなと思います。
  27. 三重野栄子

    三重野栄子君 社会民主党・護憲連合の三重野栄子でございます。  田中参考人にお伺いいたします。  阪神大震災の経験を踏まえて提案をいただいておりますけれども、先生がごらんになりまして、現在までこの提案に沿いながらどのように進行しているだろうか、もししてないとすればどういうところに問題点があるだろうか、進めるとしたらどうすればいいかということについてお伺いしたい。
  28. 田中直人

    参考人田中直人君) 阪神大震災につきましては、国並びにいろいろな関係者の皆様の御支援がありまして、地方では大変皆さん頑張って、復興の方へも頑張っております。  しかしながら、大方のマスコミ報道でもあるとおり、大部分は復興の兆し、例えば百貨店等も震災前の売り上げに戻ったという報道はあるわけですが、私は仮設住宅の方とかそういった地域のいろんな場面の調査をやっておりますが、残念ながら取り残された方がずっといるということです。そういう方は、恐らく私の予測では亡くなるまでそういったところあるいはそれに近い形のものに依存せざるを得ない状況じゃないかと思います。  それから、一般住宅においても、依然として、行きますと空き地が目立つんですね。建てている人はすぐ建てていますが、建ててない方は建ててない。それは何かといいますと、例えば地区を指定して今復興の計画を進めておりますが、いわゆる白地地区というところがありまして、何も制度上の網がかぶされていないところは本当にほったらかしなんですね。そういうところであっても、地域の人が立ち上がって何とかしようということで町づくり協議会というものをつくってやっております。  残念ながら、気持ちはあっても先立つものがなかなかないんですね。高齢者の人でしたら、今さらお金を出して建てかえて、私はもうやりたくないと、もうええわというような話が多いんです。これに対してなお一層の財政的な支援あるいは必要な関係者の調整をするためのシステム、これをやはりぜひ制度として整備していただきたい。  私は、何も阪神大震災のことだけじゃなくて、昨今も九州ですごく地震が続いております。これからいつ何どき、東京、九州、いろんなところで大地震が起こるかもわかりません。こういったことに備えて、地震が起こってからどうこうじゃなくて、今からこういう場合にはこうするんだという立法をぜひ早急に考えていただきたいなと思います。
  29. 三重野栄子

    三重野栄子君 ありがとうございます。
  30. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 両先生、どうもありがとうございました。  お二方のお話を伺っておりながらつくづく感じたことでございますが、日本には都市計画という発想が乏しかったなということを改めて感じております。したがいまして、都市計画に関する政策というのもおくれてきたということになるかと思います。  ヨーロッパなどにおりますと、例えば緑地にいたしましてもスクェア、例えばロンドンなんかですとスクエア、公園まで行かなくてもスクエアというところで共有の緑の場所がございます。日本の場合はどうしても私の家、私の土地という感じで、公の、共有というふうな発想がなかなか芽生えてこなかったという過去の歴史もあるような気がいたしますけれども、その都市計画という発想、したがってその政策というものがなかなか日本では発展しなかったのはどこに一体起因しているのか。そしてそれをこれからどのようにしていけばいいのかということをお二方にまずお聞きしたいと思います。  例えば、住宅の問題にいたしましても、私はちょっと国際比較をするために、いろいろと各国の総理あるいは政治家のスピーチなどを調べたことがございますけれども、戦後、例えばドイツではアデナウワー、あるいはまたイギリスではアトリー、本当に胸の震えるような感動的な住宅政策に対する、あるいは都市計画に対するスピーチをしております。これは私たち政治家の問題でもあるかと思いますけれども、なぜに日本はそういうことがなかったのか。  それが今現在、やはり道路の幅にいたしましても、自転車道がちゃんと区切られるようなスペースを持つような都市計画をもう既に持っていないと今あるお家を除去して道路をつくるということも、これは非常に難しいわけでございます。非常にそういった基本的な問題が日本には多々あって、社会資本整備のおくれということにもつながっているのではないかなというふうに思いますが、この点に関してのお考えをまずお二方にお聞きします。  それから、井上参考人には、先ほどいわゆる評価の問題をおっしゃいました。これも非常に私も重要なことだというふうに思うんです。予算をつくる場合に、それまでの評価ということに対してのシステムというものがもっときちんとなっていれば、予算上のむだということもかなりこれは省かれていくのではないかというふうに思うわけでございますが、この予算を含めまして評価システムというのをどのような形でこれから日本地方自治体、また国政の上でつくっていけばいいのか、どの辺からこれは手をつけていけばいいのかというお考えがもしおありでしたらお聞きしたいというふうに存じます。  それから、田中参考人には、先ほど阪神大震災の経験を踏まえた上での福祉の町づくりの御提案、本当に私うなずきながら聞かせていただいたのでございますが、その中に連携のシステムということをおっしゃいました。これはとても重要だと思います。今、お年寄りの孤独死というふうなことが仮設住宅の中で大変悲しい事実として報道されているわけでございますが、これもやはり連携のシステムの欠如から来るものではないかというふうにも思います。  それからまた、震災のときでございましたが、病院病院の連携というもののシステムがきちんとできていない、そして、まだ何も震災を受けていないところの病院で、患者を待っているけれども全然来なかったというふうなお話を後で医療機関から私よく耳にしたことがございます。そういう病院病院、これはアメリカなどでは、この病院がいろんな災害でだめになったらその次の病院へ、後方病院へという連携システムがきちっとできているような例を私随分聞いているのですが、この辺について今神戸ではどのような形で手をつけられていらっしゃるのでしょうか。  それからもう一点、先ほどお年寄りあるいは障害を持った方が住みやすい住宅ということで、改築すると非常にお金がかかる、本当にそうだと思うんですが、日本では建築基準法の中に公共の建物にはバリアフリーを入れられておりますけれども、個人の住宅に関してのバリアフリー、これはスウェーデンなどではもう一九七〇年代に建築基準法の中に入れられているわけなんですけれども、日本の場合にはどうしても、公共の場合はそうだけれども、個人の場合はどうもというのが建設省のお答えでございますが、田中参考人はどのようにお考えでいらっしゃいましょうか、よろしくお願いいたします。
  31. 井上繁

    参考人井上繁君) 質問が二つございました。  初めは都市計画に関連した問題でございます。これは私は理由は二つあろうかと思います。一つは、日本では土地の公共性というものの考え方が従来非常に薄かったということがあると思うんです。土地基本法にも、土地は公共財であるということが明記してあるんですけれども、どうも日本においては余りにもこの私権が大事にされ過ぎていたということが基本的にあろうかと思います。  それからもう一つは、政治のリーダーシップに欠けるところがあったということを申し上げざるを得ません。東京駅前、八重洲の前の通りは非常に広いですけれども、あれはやはり当時の後藤新平市長のやっぱり英断だったと思うんです。あるいは名古屋の駅前の通りも随分広いですけれども、割かし政治的なリーダーシップの強いところではそういう後世にたえるようなインフラができている。しかし、全体としては極めてそれが弱いというふうに感じております。  それから二つ目の御質問で、評価システムをどういうふうに考えたらいいのかということでございます。  これは、国の事業でありますと会計検査院とか、地方公共団体の場合ですと監査委員とかあるいは県議会もそういう役を果たしているわけですけれども、会計検査とか監査が、結局予算がそのとおり使われているかどうか、予算どおり使われているかどうか、そういう視点ばかり、つまり会計監査の視点がほとんどなんですね、従来の評価といいますのは。その事業をやったことに伴って本当に想定したとおりの効果が得られたのかどうなのかということについては、だれも見ていないというのが現状でございます。ですから、今の会計検査、監査のやり方を趣旨に沿うように改めるということが第一だと思います。  場合によっては、アメリカの一部の都市などで行われておりますけれども、要するに、役所の人がやれば結局手前みそになりがちですから、民間の人が役所のやっている事業について一定の評価をする委員会などをつくって、その委員は場合によっては選挙で選ぶとか公募をするとかいろいろな方法はあろうかと思いますけれども、そういうことで第三者的なチェックをしていくというのも一つの方法ではないかと考えております。  以上でございます。
  32. 田中直人

    参考人田中直人君) 私の方は三点あったかと思いますが、まず一点は都市計画の問題だと思います。私が理解するに、都市計画というのは、従前は道路をつくることが都市計画のように、インフラ部分だけ目が行っていたんじゃないか、それがまず欠点であろうと思います。  今、都市計画という言葉より最近は町づくりという言葉がよく使われておりますが、この町づくりの中にはやはりいろんな広い問題、多岐にわたる問題が全部入ってくるように思います。それは環境をつくることであると言ってもいいかと思いますが、それは魅力的な環境をつくること、だれにとって魅力的かといいますと、主体はやはり住民であるということだと思います。先ほどの都市計画の方は主体はどちらかというと行政が主体じゃないかと思います。  そういった意味で公共性の公共が、意味が都市計画の場合は行政であって、町づくりの場合は市民ではないか。これからより町づくり的な視点都市計画そのものの制度を変えていくということが、柔軟な発想で変えていくということが必要になってくると思います。そして、必ずしも道路というハードじゃなくてソフトの、先ほど私言いましたが、アクションプログラムというようなものも含めて、ソフトのサービスのシステムを含めた開発がこれから町づくりとして必要になってこようかと思います。それからもう一つは、地域のレベルとしては広域のレベルだけじゃなくて、もっときめ細かなレベルでの都市計画町づくりが必要かと思います。  それから二点目、連携のシステムですけれども、確かに病院病院の連携は大変重要です。阪神大震災の場合は、たまたま神戸市全域の医療計画の中で、旧市街地中心とした医療施設の体系をバックアップするシステムとして西区の医療センターをつくっておりました。御存じのポートアイランドの中央市民病院がだめになりましたので、そのバックアップ機能として西区の病院が大変役に立ちました。これから地域医療体系を考える場合においても、銀行のコンピューターシステム等もそうですが、バックアップシステムという形で、地域に集中させるんじゃなくて、ある主幹的なものは広域に分散させるということも大事になろうかと思います。  あわせて、その中心的な施設にひっついた中小のクリニック、診療所、あるいはもっと地域レベルの薬局店あるいは物販併合の薬品店ですね、こういったものとの地域でのかかわり、これらについての整備が必要かと思います。薬か食品かという時代ですので、こういった医療と保健の関係、これについてもう少し整備が必要かと思います。  それから三つ目ですが、住宅についてバリアフリーがなかなか個人の方ではされていない。現在、条例等では五十戸以上とか一定の規模以上のマンションの公共部分の階段、エレベーター等については配備される方向にあるように思いますし、建設省等で長寿社会のそういった住宅のあり方ということで具体的に出ております。これからは住宅もより公共性の高い社会のストックとして整備されるという発想があろうかと思います。  ちなみに、神戸市においては神戸住宅設計基準という形で、個人の住宅であっても公共、民間を問わずこういった配慮をしてくださいという基準が昨年制定されました。これは非常に果敢な試みですが、逆に言うと、民間から無視されそうな基準なんです。だから、あめとむちがどこまで必要かということですが、最終的にはあくまでそういう一自治体がやる問題でもなくて国全体で、いわゆる住宅法というふうな形でしかるべき基本的生活空間の保障を法的にちゃんと保障してもらう方がいいんじゃないか。そして、地域のレベルに応じたバージョンで地域ごとのそういったきめ細かい住宅対策が講じられる、こういうことを期待しております。
  33. 小林元

    ○小林元君 井上先生、そして田中先生から大変貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。  御承知のように、今といいますか現在、国の財政大変な時期を迎えているわけでございます。財政再建が始まる。しかしそうはいいましても、井上先生も、やはり社会資本はまだまだ必要である、十分ではないというような御意見もございました。それからまた、田中参考人からは福祉の町づくりにもつともっと力を入れていくべきだというようなお話もいただきました。  そういう中で、先ほど小山委員からも御指摘がありましたが、そういう限られた財源の中で、いわゆる国が縦割り行政の中で配分をするというようなことでは地域づくりというのはうまくいかない。ですから、補助金等をやめて地方に財源を移してというようなことがあったと思います。  それはそれとしまして、私もそういう意見でありますけれども、現在の状況の中で福祉の町づくりとかあるいは地域づくりとか、そういう必要なところに必要なお金が行くというようなことについて、こういう時代背景の中でどういうふうにすれば、もう三十年来変わらない各省の縄張りというんですかそういう配分がある中で、例えば福祉の町づくりというのは建設省も関係ある、運輸省も関係ある、ひとり厚生省だけではないわけでございますけれども、なかなかそういう枠の配分が変わらないというふうな状況の中で、二十一世紀を迎えて少子化あるいは高齢化という対応をするのは非常に大変だろうというふうに考えているんです。  両参考人からその辺の、これからどういうことをしていけばそういう大事なところに大事なお金が行く、そういう適正配分が図れる、あるいはお金の問題ばかりではなくて、縄張りといいますか、各省の統廃合というんですか、行革といいますかあるいは地方分権、そういうことを含めて、今これからの社会資本、適正な社会の形成に当たってこれから何をやるべきかというような御意見がありましたらば、それぞれお聞かせをいただきたいと思います。
  34. 井上繁

    参考人井上繁君) 結論から申しますと、国会議員の先生方がしっかりすることだというふうに思っております。  それはどういうことかと申しますと、国会議員の先生方が特定の利益団体の利益を代弁するとかそういうことではなくて、要するに予算をだれが編成するのかという問題に関連してくるんですね。今の仕組みは、ほとんどが官僚主導の中で国の予算が決まっている。もちろん政治的な折衝とか復活とか党段階での調整がいろいろございます。ございますけれども、見ておりまして、結局は大蔵省と各省庁とのやりとりの中で大筋が決まっているというのが現実でございます。  予算の編成権、これを国会議員の方々が名実ともに取り戻す。要するに、国会議員の先生方は選挙民から選挙で選ばれた方々でございます。国の省庁の、役所の人は別に選挙で選ばれたわけでも何でもないわけです。そういう方が国の税金の使い道を決めているということは、基本的におかしいわけなんです。国会議員の先生方があくまでも政治の場において、つまり文字どおりリーダーシップを発揮されるということが、今のこの配分比率を変えるキーポイントであろうと私は考えております。  以上でございます。
  35. 田中直人

    参考人田中直人君) 非常に難しい問題で、私が簡単に申し上げるのは難しいんですけれども、まずどのようにお金を使っているかという明瞭な分析が要るんじゃないかと思うんです。例えば、建築工事でこれだけのお金があって、その予算段階と実際がどういう運用をされているか、いろんな事務経費とかをかぶせていきますが、その辺の配分の仕方を見ますと非常に不明朗な部分が多々あるんじゃないか。  福祉ということで、何となくほんわかとして、そっとしておこうよみたいな話があると思いますが、福祉こそ、これから非常に量的にも財政を要する部分につきましては、もう少し科学的な予算の査定というんですか、そういうものが必要ではないかと思います。  まず、福祉の環境づくりの中でよくやられる方法につきまして、先ほど来言っていますように、本当に効果があるものとそうでないもの、それからさらに必要なものというのがなかなか仕分けされずに基準ひとり歩きで、どんどんそれさえやっておけばいいという行政としての福祉に対する一つの免罪符になっている向きがあろうかと思うんです。そういうものについてはもっと合理的に判断する方がいいんじゃないかと思います。
  36. 大島慶久

    ○大島慶久君 両参考人、きょうは御苦労さまでございました。  まず、井上参考人にお尋ねをいたします。  公園に関して、豊かさをはかる物差しということで、日本公園のスペースの狭さ、お話をいただきました。そのとおりだと思います。それから、安全、防災という観点からも公園の役割というものをお話しになられました。  私的な考え方なんですけれども、日本公園というのは確かにスペースが狭いんです。全国公園を見ておりますと、何か画一的、ちっちゃなところでも遊具を必ずつけなければならない。考えてみますと、狭いスペースはますます利用価値がなくなっているんじゃないかと私は勝手に思っているのでありますけれども、日本社会資本としての公園のあり方というんでしょうか、どんなふうにお考えになっておられるのかをお聞かせいただきたいと思います。  それから、田中参考人には、阪神・淡路大震災、先ほど医療、福祉のお話がございましたけれども、私ども医療に関して今回のあの災害で一番困ったのは、水が使えなかったということが医療がうまく回らなかった最大の原因だったというふうに承知をいたしているのでありますけれども、この際、本当に全国都市のモデルになるような、特に医療関係に対して水回りの心配は一切ないよと言われるような、何かその後の御提言がありましたんでしょうか。お考えがありましたらお聞かせをいただきたい。  以上であります。
  37. 井上繁

    参考人井上繁君) 大島理事の御質問は、公園のあり方という面でございます。  先ほど数字で公園のことを申し上げましたけれども、実際に住民が歩いていける範囲に整備されている公園の割合は、市街地では九四年度の数字ですけれども、五四%なんです、歩いていけるところに公園があるというのが。つまり、大きい公園がどかんと遠くにあっても余り意味がないんです。阪神大震災のときも、結局神戸というのは政令市の中では一人当たり公園面積は一番広いことになっておりますけれども、六甲の山すそとか遠くに多くて市街地の中に少なかったということがやはり一つ大きな問題だったと思います。  そういう中で、公園のあり方、大島理事御指摘のように、今までの日本公園余りにも画一的だったと私も考えております。私の記憶に誤りがなければ、ただ最近、建設省の方も基準の改定で、いわゆる三点セットのようなものがかつてありましたけれども、それが今なくなっているはずでございます。  いずれにいたしましても、特に公園などは、例えば地方自治体がもう地域方々運営から、あるいはどういう施設をつくるかということも地域住民に任せて、それで地域住民で額を寄せ集めて、こういうのをつくってみよう、いやこっちがいいんじゃないかというようなことで議論をするところに一つの意味があるのかなと。  先ほど田中参考人は井戸端会議がなくなったと言いましたけれども、現代の井戸端会議は公園を舞台にして、公園デビューなんていう若いお母さん方の言葉もあるようでございますけれども、今公園というのはコミュニティーという意味においてもやはり大事なんです。ですから、その広場としての公園をどうつくるかというのは、これはもう行政より市民がそこで考えるというような方向が一番いいんじゃないか。多少それは時間がかかるかもしれませんけれども、そんなふうに考えております。  以上でございます。
  38. 田中直人

    参考人田中直人君) ちょっと先に、余談なんですけれども、今公園の話が出ましたけれども、例えば公園でなくてもこういう形で街角につじ広場という形でコミュニティーの核となるようなスポットをつくっていくと。(OHP映写)  例えば、そこにお地蔵さんがあって広場があって、そこで地蔵盆があるとか、あるいはそこにおふろ屋さんがあって、おふろ屋さんのコミュニティーでふろ上がりに涼んでみんなとしゃべるとか、そういうつくり方もあろうかと思いますから、もっと発想を変えて、従来の公園の画一的な基準だけじゃなくてつくり方を変えた方がいいんじゃないかと思います。  私への質問の方はお水の話でした。  お水ですが、医療施設に特に水がなかったということですが、医療施設につきましても直後に調査をいろいろさせていただきましたが、例えば井戸水を施設の中に保持していまして、その井戸水を使ったことによってそういう緊急をしのいだという事例もあります。  井戸水につきましては、工場等の規制で井戸水が規制されておりまして、地盤沈下等でありますが、やはり自然の恵みとしての井戸水を見直すということもあろうかと思います。これは一般家庭においても、井戸水があったために地域の人に対して水が供給されたということもあります。  ただし、井戸水は勝手にどんどんとれるわけじゃなくて、やはり供給しないといけません。それはどこから来るかというと、雨水から来ます。ところが、今の都市構造というのはほとんどがアスファルトとかで舗装されていまして、水は固めて海へ流すということですね。したがって、水が山林でろ過されて、きれいな水が地下の伏流水になって海へ流れるということは、なかなかシステムとしては成立していない。ここでもっと地球環境を、エコロジカルな大きな視点都市における水のあり方を考えた上で、そういう井戸水のしかるべき利用等を併用していくということが賢明かと思います。
  39. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) 以上で両参考人に対する質疑は終了いたしました。  井上参考人及び田中参考人には、お忙しい中、本調査会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。  本日お述べいただきました貴重な御意見は今後の調査参考にさせていただきます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  ありがとうございました。(拍手)  速記をとめてください。    〔速記中止〕
  40. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) 速記を起こしてください。  引き続きまして、交通通信に関する社会資本整備在り方について、東京大学大学院経済学研究科教授金本良嗣君及び大阪学院大学経済学部教授大阪大学名誉教授・同先端科学技術共同研究センター客員教授鬼木甫君のお二人に御出席をいただき、順次御意見を承ることといたします。  この際、金本参考人及び鬼木参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本調査会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。  本日は、本調査会が現在調査を進めております二十一世紀経済社会対応するための経済運営在り方に関する件のうち、交通通信に関する社会資本整備在り方について忌憚のない御意見をお聞かせいただき、調査参考にさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。  議事の進め方でございますが、まず両参考人からお一人二十分程度ずつ順次御意見をお述べいただきました後、八十分程度委員からの質疑にお答えいただく方法で進めたいと存じます。  質疑につきましては、あらかじめ質疑者を定めず、自由に御質疑をいただきたいと存じます。質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って質疑を行うようお願いいたします。  なお、時間に制約がありますので、質疑答弁とも簡潔に行っていただくようよろしくお願いいたします。  また、参考人からの意見陳述、各委員からの質疑及びこれに対する答弁とも着席のままで結構でございます。  それでは、最初に金本参考人からお願いいたします。
  41. 金本良嗣

    参考人(金本良嗣君) 金本でございます。どうぞよろしくお願いします。  今回は、交通に関する社会資本整備在り方についてということでお話しさせていただくわけですが、交通関係、おもしろい具体的な話については、私、経済学者ですが、我々の方にほとんど意味のある情報が入らないという状況になっております。例えば、整備新幹線のこういうものはよくてこういうものはおかしいんではないか、そういうお話をできる段階にないということを最初にお断りさせていただきます。  したがいまして、これからお話しすることはかなり一般的、抽象的、あるいはそういう個別具体のお話をきちんと議論する前の制度づくりというのが問題だということをお話しさせていただきたいと思います。  ほかの先進国と比較をいたしますと、日本はこういうことに関して非常に特殊な国である、本当に大切な問題をそのものとして議論するための情報が出ていない状況にあるということを最初に申しておきたいと思います。  交通分野については特に非常に難しい問題が多いわけでありまして、それはなぜかというと、非常に政治問題として難しい問題だ、あるいは政治問題として余りに脚光を浴び過ぎるということがあるんだろう、そう思っております。したがいまして、我々が言うところの政府の失敗というものがかなりの程度起きやすい部門になるということかと思います。当然、市場の失敗というのはあるんですが、それに対して何らかの対応をしようということで政府が出ていくと、政府についても失敗をしてしまうという事例が幾つもあるということだと思います。  政府の失敗に関して一番の基本的なことは、基本的には人のお金で自分の利益を得たいということができてしまう可能性がある。国民全体が出した税金を後で自分たちの利益のために分配するという分捕り合戦が起きますと、そこでの整理の仕方というのがなかなか難しい。本来なされるべき社会資本整備のために本当に税金が使われるかというと、なかなか難しい状態になりがちだということかと思います。  昨今、行政改革等いろんな議論がございますが、その本質的なところには、人のお金を自分たちの利益のために使えるという仕組みをうまくコントロールするのは非常に難しいということがあるんだと思っております。  したがいまして、こういう問題を考えるときには、社会資本整備を要求するいろんな利益団体があり、そういう要求をどう整理していくか、あるいはどう抑えていくかということについて、ある程度ワークするような、うまく機能するような仕組みをつくるというのがまず最大の問題だろうと思っております。  それについては、打ち出の小づちのような方策はなくて、それぞれ不完全なもの、いろんなものを組み合わせて使っていくということになろうかと思います。ただ、二つほど基本的なやり方がある。  一つは、ただ乗りをする人をつくらない。経済学者の言葉ではフリーランチというのはないという言葉がありますが、フリーランチをつくると、それを目がけていろんな人が出てくる。いろんな人が出てきますと、どの人がいい人でどういう人が悪い人かということの整理が非常につけにくくなってしまうということだと思います。  したがいまして、自分でお金を出して自分のために何かをする。当然一人だけではできないですから、それをちょっと拡張しますと、自分たちの利益のために自分たちのお金を使う。そういうことがうまくできるような仕組みをつくるということかと思います。  そのためには二つあるということで、一つ地方分権。自分たち地域の利益のために社会資本整備をするときは自分たちの負担で行う、そういうことが一つの整理の仕方だと思います。もう一つは受益者負担の徹底。自分たちのために、自分たちが使うためにつくるものは自分たちが負担する。鉄道ですと、鉄道利用者が鉄道整備コストを負担する。こういう原則を徹底するということがあるんだろうと思います。この二つの側面について、いろいろ議論がございますが、全体の方向としてはそういう方向に向かっているんだと思いますが、まだまだ徹底する必要があるんだろうと思います。それが一つの問題。  もう一つの方向としましては、地方分権にせよ受益者負担にせよ、それだけで全部済まないところがある。例えば、本四架橋のような非常に大きな大プロジェクトですと、地方分権でやれといってもなかなかできない。そういうところは何らかの国の関与が必要だということになるわけです。そういうものについてはもっと違ったチェックのメカニズムが必要だということになるかと思います。  そのためのチェックのメカニズムとしては、我々が言う費用便益分析というのがありまして、プロジェクトの費用とそれから社会的便益を計算する、それを国民に公開する、その情報をもとにプロジェクトを行うべきかあるいは政府支出をするべきかということを決定するということがあると思います。  後者の費用便益分析については、欧米諸国では大抵大きなプロジェクトについては法律で費用便益分析をやらなければいけないという規定がございまして、それが国民に公開されているということがございます。日本では、最近、行政改革委員会の官民分担の小委員会が昨年の十二月に出した報告書でこういうことをするべきだということが出ておりますが、日本では最近になってこういうことが言われておるわけです。欧米諸国では大分前から費用便益分析をして、それをみんなが見ることができるということが常識になっておるということであります。  この二つをいかにうまくやっていくかというのが交通関係社会資本整備について一番重要なことであろうというふうに私は考えております。  あともう少し細かい話に入りますが、まず最初の論点は、交通関係社会資本というのはほとんど利用者がちゃんといる、利用者が自分の利益のために使うというのが基本的な役割だということです。そういう意味では、我々の言うところの公共財ではない。公共財というのは国防とかといったもののように、供給されてしまうとだれでもその便益を受ける。個別の利用者がいて、その利用者がお金を払って利用するというふうな仕組みができないようなものですが、交通に関してはほとんどの利用者が自分の負担で利用できるというふうなタイプのものである。したがいまして、まず最初のアプローチは利用者が料金負担で交通資本整備をやっていくということであるということになります。  個別事例になりますと、我々は外部性と呼んでいますが、利用者以外の人に便益が及ぶということがあり得ます。例えば道路ですと、一番の受益者は道路利用する自動車で、自動車はガソリン税とか軽油引取税といった形でそのコストを負担しているというわけですが、道路の便益はそれだけではなくて、歩行者も使っていますし、あるいは防災上の役割も果たしている。そういうものについては、例えば歩行者から道路を幾ら使ったから幾ら払えというふうなことはほとんど不可能ですから、そこに料金をかけるというようなことは非常に難しい。防災的な機能についても料金をかけるのは難しい、そういう側面については別の仕掛けをつくる必要があるということではあるわけです。  ただ、料金で取れない部分がどの程度の量的な大きさになるかというと、交通部門に関しては大抵の場合はそんなに大きくない。ですから、基本線としては料金で賄うということを考えておけばいいということになります。  ただ、もう一つ問題がございまして、料金で賄えばいいというときに、余りに固定費が大きい、我々の言う規模の経済が大きいものについては最初の建設コストが莫大なものになる、利用者の数はそれほどない、そういう状況では料金だけでカバーすることはできない。料金だけでは採算がとれないんですが、社会的に見れば便益があるというふうなケースがございます。そういうケースについて何らかの補助を出して、建設コストの一部を国が負担したり、地方が負担したりということが行われるということになるわけだと思います。したがいまして、そういう固定費部分の一部に対して補助を与えるということは十分考えられるということになるわけですが、それについてはいろんな仕組みを考える必要があるということになります。  最大のものは、いまさっき申し上げた費用便益分析を行って、本当に補助を出す価値があるのかということをきちんとつかむ必要がある。それのつかみ方については、既に世界的に使われているやり方がございまして、別にそんなに経済学的にも難しい手法でも何でもない。それはどこの国でも最近は使っているということであります。  実は日本でも、表には出さないですが、幾つかの省庁ではそういう計算をしております。そういう計算を表に出して、どのプロジェクトにお金を投じる意味があるのかということを正面から議論し始めると、交通社会資本整備のかなりの問題は解決するんではないかというふうに私は考えております。  時間がございませんので、費用便益分析についてはそれほど長く触れることができませんが、一つだけ重要なのは、費用便益分析は、随分前、三十年ぐらい前にPPBSの形で一度導入が検討されたことがあります。そのときはうまくいかないということで日本では導入されなかったというわけですが、欧米諸国では、PPBS自体は使われなくなってしまったんですが、費用便益分析を行う、その結果を国民に公表するということについては一般的に行われております。  なぜそういう差が出てきたのかということは、多分いろんな意味の政治的な構造の相違なんだろうと思います。欧米諸国は、議会が行政府をコントロールするために法律をつくるということがある意味では有効に機能している。したがって、こういう費用便益分析については議会が行政府をコントロールするために義務づける立法をして、その情報を行政府から出させて議会が審査する、そういうふうな方向で行われたということだろうと思います。日本の場合は、政治的な力学はそういう方向には行かなかったということで、費用便益分析を議会なり国民なり一般に対する情報公開ということでとらえるという方向がなかったというふうに思われます。  次の論点といたしましては、受益者負担を徹底するということがございます。日本では鉄道は民営化されましたが、空港でも港湾でも道路でも非常に大きなプールをつくってどんぶり勘定にするということが非常に多いわけだと思います。これは受益者負担を徹底するということからいうと望ましいことではない。かなりのケースについては分割して受益者負担を徹底することは可能であろうというふうに思います。特に、空港とか港湾のようなポイント、点としての施設についてはそれほど難しくない。実際に、諸外国においても分割されておることが多いですし、民営化されておることも最近は多くなってきているということかと思います。  ただ、これ全部の社会資本整備について分割・民営化ができるかというと必ずしもそうではなくて、ネットワーク性が非常に高い、ネットワークが非常に緊密に入り組んでいるというときには、分割をするのは非常に難しい。  例えば、一般道路についてこれを切り分けて分割して民営化するというのはまず不可能であろうという感じがしております。それについてどういう交通施設を分割・民営化したらいいのかというのは、ある程度大ざつばなことは私たちも言えるんですが、細かい話になると、これについての情報が公開されていないということで、政策提言ができないという状況にあります。空港についても港湾についても、各空港別の収支が明らかにされていない。道路建設についても、本年度の予算という格好でいろんなところをつくっているものの全部のコストはわかりますが、各道路、何年もかけてつくる道路について幾らかかったかというふうな情報はないということになります。そういう意味では、こういう非常に基本的なことを考える際にもベーシックな情報が存在していないと、我々にとっては非常に悩ましい状態になっているわけです。  もう時間がございませんので、あと簡単にお話ししたいと思いますが、もう一つのポイントとしては、地域内部にだけ便益をもたらすようなものは地方分権にすべきだということだと思います。  それについては、日本では補助を欲しいという地方自治体がたくさんいて、霞が関、永田町に陳情にたくさんいらっしゃるというわけですが、これは本来補助の役割からすると変なんですね。補助というのは、地方自治体が自分ではやりたくないものをやらせるために補助を与えるというわけですから、余りに陳情が多いような補助というのは何かおかしい補助だということになると思います。いろんな施設に対する補助率が設定されておりますが、それがどういう基準でどういうふうに設定されているかということについて、もう少しきちんと分析して、制度設計をきちんとやるべきだというふうに思います。  最後に、地方分権に絡んで、地域間の公平のためにある意味では恵まれない地域に投資を多くするという議論がございますが、この議論はそろそろ考え直した方がいいんではないかと思います。貧しい地域にたくさんということですと歯どめがない。そういう貧しい地域にたくさん投資をしたからといってその地域が本当によくなるかというと必ずしもそうではなくて、大抵田舎に行きますとほとんどの人は建設事業に従事して所得を得ている。それは、いつまでもカンフル注射を打っていなければ生きていけない地域をたくさんつくっているということになるわけで、永続的にこういうカンフル注射を受け続けることが日本経済にとって可能かというと、なかなか困難な状況になりつつあるのではないか。したがって、もうそろそろ発想を転換して、地域が自立して生きていけるために何らかの社会資本整備をするんだと。したがって、この場合には公平を確保するためではなくて各地域が自立するための先行投資として社会資本整備を考える、そういう立場から社会資本整備を組み直すという必要があるんだろうと思います。  そういうふうに考えますと、だれがどういう投資をするかを選ぶということになると、先行投資をして、失敗すれば痛みを感じる、成功すれば非常に報酬を受ける、そういう人たちに投資を任せるべきだ、こういう論理からも、地方分権をもう少し徹底するというのは日本社会資本整備にとって必須の課題だろうというふうに思います。  以上でございます。
  42. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) ありがとうございました。  以上で金本参考人の御意見陳述は終わりました。  次に、鬼木参考人にお願いいたします。
  43. 鬼木甫

    参考人(鬼木甫君) 大阪学院大学の鬼木でございます。  本日は、私は、通信に関する社会資本整備のあり方ということで意見を申し上げたいと思います。  通信に関しましては非常に多くの問題があり、またいろいろ異なった意見がありまして、私きょうここで申し上げますのは個人の意見でございます。必ずしも専門家の多数意見であるとも限っておりません。  きょうのお話は全体を三つほどの柱に分けてお話ししたいと思います。第一に通信インフラ整備のあり方ということで、第二に光ファイバー網あるいは広帯域アクセス手段の建設の問題に関して、そして第三に電波資源、テレビやそれから移動体通信、携帯電話に使う電波の扱い方に関して意見を申し上げたいと思います。(OHP映写)  それから、OHPを使いますが、このOHPの中身はすべてお手元に資料としてお渡ししていただいていると思います。  まず第一の柱、通信インフラ整備のあり方でございますが、通信の部門は御承知のようにほぼ民営化されております。基本的な方針としては少なくとも民営化されておりまして、民間企業の競争によって生活の充実、あるいは経済発展のために競争を通じて進歩が実現されるという建前になっております。しかしながら、元来、御承知のように、例えば通信の電話に関しましては現在のNTTはかつては日本電信電話公社であった、その公社の前は電気通信省あるいは逓信省であったという事情もございまして、まだ国全体からの規制とか関与とかいうものもたくさん残っております。したがって、通信の分野での問題というのは、一方では競争を進めたいのでいろいろ措置をとる、他方では古くからの習慣とか法律とかあるいは制度とか人間の関係とかいうものが残っておりまして、それと競争とをどう解決していくかという点が非常に大きな問題になっているわけです。しかし、全体の流れとしては、国全体の計画経済的な運営からだんだん民営化の市場パワー、市場競争を利用する方向に動いております。  一つ私がここで申し上げたいことは、お手元に資料があると思いますが、少し細かな図があります、ちょっとこの図は見ていただけないかと思います。通信、放送も入れておりますけれども、たくさんの設備とかサービスとかいうものがあります。我々、例えば通信の電話を使いますときは受話器を上げて話をして向こうに通じるというわけですが、それが実現するためには御承知のように電話線が必要である、交換機が必要である、あるいはいろいろなその背後にコンピューターのようなものも必要である。そのたくさんのものを一応ここの表に書いてありますので、後ほど御興味のある場合は詳しくごらんいただくとよろしいかと思います。  通信の世界は非常に複雑なものでわかりにくいんですが、わかりやすいほかのものに例えてみますと、例えば次の紙ですけれども、図2と書いてあるのに、食べ物のパン、食料のパンは小麦粉からつくる、小麦粉は小麦からつくるという形で原料から製品につくられるという関係があります。それから例えば、我々住んでいる住宅に関しましては、土地があってその上に家が建っていて家の中に家具があって、全体あわせて住宅サービスというものが生まれている。今お見せいたしましたこの通信と放送のごたごたしたたくさんのものも基本的には今のパンとか住宅とかいうものと同じような仕組みでつくられております。ここで社会資本と申しておりますのはこの中の下の三つ、伝送媒体と基盤設備と共有資源・特権スペースというところは通常社会資本通信の分野での社会資本と言われているものに当たります。例えば、電話線を通す地下のトンネルであるとか、あるいはそこに通っている光ファイバーであるとか、あるいは移動通信の場合には電波であるとか、衛星通信や放送の場合には衛星であるとかいうものがそれに当たります。  こういう非常にたくさんな要因がかかわっておりますので、この中に競争を入れてくる。新しい業者が出てくればどんどん参入をさせる、値段をつけたければ自由につけさせる、あるいは新しいサービスが出てくればそれも自由に提供させる。そういう競争を通じて進歩が実現されているわけで、新しいものが次々と出てきて我々の生活を豊かにし、かつ産業を発展させているわけでありますけれども、その場合に、全く野放しにできない事情が幾つかございます。  一つ一つ挙げられませんので詳細は省略いたしますが、政府が何らかの形で関与しなければならない。例えば、電波に関しましては、これは公共の資源でございますから、何かの方式で政府が、だれだれは移動電話のために電波を使ってよろしいよ、どの放送局はどの電波を使ってよろしいよというぐあいに関与する必要が入ってまいります。  ほかにもいろいろ理由がありますが、したがって、たくさんのものの中にどういうぐあいに政府が入っていくかということが一番大事でありまして、無方針に全部政府が入るのは社会主義でありまして、うまくいかないことはもう既に実験済みであります。したがって、最も効果がある形で政府が関与する必要がある。  ここで私が強調したいのは、この図にありますように横型に、帯状というんでしょうか、上下の区別でなるべく関与した方がよいということを強調したいと思います。なかなかそれは難しいんですけれども、最近一つ上下の関与が実現し始めている例があります。それは皆様御存じの衛星放送です。  この図で言えば右側のところですけれども、現在BS1、BS2、それからハイビジョンとWOWOW、四つのチャンネルでBS3という衛星が今あります。そこから四チャンネルの放送がおりていますが、その衛星がもうすぐ寿命が尽きますので、今BS3ですが、BS4がことしにたしか上がります。そのBS4は先発機と後発機と二つありまして、先発機の方は、最初に上がる方は現在のBS3と全く同じ形で放送いたします。しかし、技術の進歩でもう一つ上げられるようになりました。ほぼ同じ場所で、アンテナも同じで全く同じ設備で、今までの方式ですとあと四チャンネル上がるわけです。  それをどう扱うかということで郵政省で最近審議が行われまして、いろいろ議論がありましたけれども、これまでの放送局の方は、NHKも民放も現在の放送の組織を全くそのまま衛星放送にも適用して、いわば地上の放送をそっくりそのままコピーする形で新しい衛星放送を行うべきであるという主張を行いました。私もそのメンバーに入って議論をしておりましたが、結論としましてはその方式はとらないと。  経過としては、上下分離あるいは機能分離と申しておりますが、放送に際しまして衛星を保有して電波を送るだけの事業者、受託放送業者と言いますけれども、その仕事と、それから今度は、番組をつくって受託放送業者の方に頼んで放送してもらう委託業者と分けるという形で現在ほぼ大体の方針が決まっている様子です。これは非常に競争を推進する方策で、衛星をどこに上げるとか、電波をどういうぐあいに使うとかいうことは国の関与を必要とします。しかし、どういう番組を流すとかいうその番組の方は、なるべくいい番組をつくって、おもしろい番組とか役に立つ番組をつくる事業者に入ってもらって競争させる方が一般の国民のためになるわけですね。放送内容も充実するわけです。  現在の地上放送のやり方では、これは縦割りですから、一つの民放の局が放送設備を所有して電波を出して、しかも番組も自分のところでつくって出す。非常にいい番組をつくる新しい事業者が外に出てきてもなかなか入りにくいという事情があります。この上下に分ける形でやりますと、日本であろうと外国であろうと、とにかく視聴者が好む、視聴者が必要となるような番組が自由に入れる、少なくとも入りやすくなるということで、競争促進の非常に大きな一つのステップだと考えております。この方針が決まるまでいろいろ紆余曲折があったようで、郵政省の中でも意見が割れたようですけれども、結論はそういうぐあいになるということで、私は非常にいい方向だと思っております。  こういう形で、インフラ規制のあり方としまして政府がどうしても入っていかなければならないときに、きちんとフィールドを区分して、そしてどのような理由でどこに入っていかなければならないかということを明らかにする。それもなるべく機能別に上下分離の形で入るべきだというのが私の第一の意見であります。  次に第二のトピックに進みますが、光ファイバー網の整備。最近、新聞紙上等で盛んに議論されておりますので皆様お聞きになっていると思いますが、広帯域アクセス手段とも言っております。  お手元レジュメに従って話を進めますけれども、私は、この光ファイバー網というのは将来の国民情報基盤の第一のものだと、第二が電波なんですが、第一のものだというぐあいに考えております。  その理由は、光ファイバー網を整備いたしますと、現在の電話のもう一つ上の通信手段ができる。それよりはるかにグレードの高いものができる。在来線に比べれば新幹線ですね。古いプロペラ型あるいは小型のジェット機に比べればジャンボジェットに当たるような形で、とにかくスケールが格段に上等になる通信手段ができる。  具体的には、電話は音声だけですから、耳だけを使って我々は電話で通信しているわけですが、この光ファイバーを使った通信というのは目と耳を使った非常に豊かな通信ができるわけです。ラジオを聞くのとテレビを見るのとはわかりやすさが大違いですけれども、我々が、生活のためにしても、仕事のためにしても、文化のためにしても、あらゆることに関して、それから家族のきずなを確かめるためでも、声だけ聞いて他人とコミュニケートするのと、それから実際に顔を見ながら、表情を見ながら、ああ、ちょっと顔色悪そうだ、元気がよさそうだ、一体どうしたのという形でコミュニケートするのとは大違いであります。  早い話が、きょうここで私は発表させていただくために大阪から実は出向いてまいったのでありますけれども、こういう手段がもし進めば、全国各地から参議院の調査会のメンバーの方が光ファイバーを使って片っ端から意見を聞くということもできるわけで、距離の制限とか、場合によったら外国からでもできるわけでありまして、そういう制限がとれます。とにかく、ビジネスにしても生活にしても非常に豊かに、能率がよくなり、かつ内容が充実することはまず間違いないだろうということで、国民情報基盤の第一ということになります。  現在、流行語になっておりますマルチメディアの中身も、主としてこの光ファイバーを使って通信することを前提にしています。それから、非常に成長盛んなインターネットにしても、現在は、お使いになった方も多いかと思いますが、一つのキーを押してなかなかアメリカの画面が出てこない、待ち時間が多いと。コーヒーでも飲んでいると、やっとぽかっと出てくるというぐあいに、非常にいらいらというのか能率が悪い状態になっていますが、この光ファイバーを設置すれば、それもボタンを押せばさっと出てくる、また押せばさっと出てくるというぐあいに、問題がなくなるわけです。  そういう意味で、必要に関してはほぼ同意されていると思いますが、もう一つその点を強調いたしますと、お手元の図5と書いてあるグラフですが、今、金本参考人交通のことについてお話しになったんですが、これは日本人が一日に何分ぐらい移動に時間を使っていますかというグラフです。上の濃い線が十五歳以上の男性で、下の点線が女性の方です。一九五五年ですから、今から約四十年ちょっと前から始まりまして、当時男性の方で言いますと三十二分ぐらい一日に使っていたわけです。これはビジネスで使った時間は入れませんで、ただし出勤とか通学とかは入れています。ビジネスで出張したという時間は残念ながらデータがないので入れられないんですが、ビジネス以外のデータに関しましては調査がありますので入れています。  四十年前に一日三十分使っていたのが、ずっと右側にほぼ直線状に増加しまして、少しまだデータが古いんですが、八九年、今から七、八年前には既に一時間を超しまして七十分近く、六十八分ぐらい、一日に二倍の時間を移動に使っているわけです。これはどういうことかといいますと、要するに人と会う必要があると。いろんな理由で人と会わないと仕事にならない、生活がやっていけないということで、そのために大事な時間を割いてとにかく動く必要があるということで、先ほどの光ファイバーがテレビ電話ということで実現いたしますと、それによって移動の時間を非常に節約することができる、今まで会えなかった人にもテレビ電話で会うことができるということで、プラスの面が多いだろうというぐあいに考えます。  光ファイバー設置の一番大きな問題はお金の面でありまして、これも電話と大体同じであります。細かいところは省略して、後ほどもし御質問があれば申し上げますが、最初に非常にお金がかかります。赤字が五年か十年か続く、それからどんどん黒字になるということで、赤字の期間が非常に長いんです。それで建設が進みません。特に、競争市場になりますと、損をしたら株主が文句を言うわけですから、経営者としてはどうしても保守的にならざるを得ない。損をするような投資、少なくとも四、五年も赤字が何千億円も出てくるような投資はなかなかできないということで進みが遅いという嫌いがあります。  アメリカの場合も、これはNII、ナショナル・インフォメーション・インフラストラクチャー、国民情報基盤、情報ハイウエーということで、クリントン・ゴア政権が五年前に最初に選出されたときにこれを言いました。それで、その最初の話のときは政府がやるということになっておりましたが、アメリカの電話会社が非常に反対いたしまして、政府がやるのはけしからぬ、民間にやらせろということで民間事業になったわけです。  しかし、この最初の赤字という問題がありますので、なかなかアメリカの方も建設は進んでいない。これは、私は日本ではできれば政府の後押しで建設を進めるべき数少ないケースの一つだと思います。  具体的には、ちょうど現在の電話がつくられたときと同じように、政府保障という形で事業者のお金を借りたものを保障して、大丈夫だよという形で進めるのが一番よろしいかと思います。また、詳細に関しては後ほど機会がありましたら申し上げます。  それから、第三番目の問題に進みますが、電波の問題です、電波資源。  これは、放送に関しましては、もちろん電波を使って我々は日常情報を獲得しているわけです。もう一つ移動電話、携帯電話が最近非常に伸びてまいりまして、日常どこでも使っているのを見るような時代になりました。将来、恐らく携帯電話の方はもっと進みまして、生活のあらゆるところで、もう我々の生活している身の回りで電波をあらゆる形で使い始めるというぐあいに私は思っております。  それで、「国民情報基盤の第二」と書いてありますが、電波の使い方は、現在は非常に日本はおくれております。おくれているというのは、こういう中身になっているからです。  つまり、政府が電波を一応手に持っている。その使用権を、事業者に使ってよろしいという形で免許で与えています。その免許料というのが、名目的に少しお金がありますが、実際の電波資源という経済価値に比べますと、何十分の一あるいは何百分の一、もっと少ないかもしれません。何百億円も何千億円もかかるものが、五万円とか三十万円とかいう料金で使われているわけで、いわば公共の資源を無料で使っているという形になっております。この無料というのが、一見いいようで、例えば携帯電話の値段なんかも安くできるというふうに思いますけれども、実は経済の専門の方から申し上げますと、これほど高くつくものはない。  その理由は、以下のようなことです。  無料にしますと、事業者が免許を受けたときに、そこに既得権益ができます。ただで使えるほどいいことはないわけです。電波を無料で使わせるのは、ちょうど銀座の表通りの土地を、国有の土地が仮にあるとしまして、どこかのデパートに何百平米の土地を無料で使わせるというようなものです。そこに建物が建ち、既得権ができて、そうすると次に免許の更新のときになっても一挙にそれを取るわけにいきません。それで、ずっと無料の形が続いていきます。そうしますと、今度は、現在の技術よりももっとよい技術を考え出した別の企業が出てきても、入ることができません。つまり、壁がつくられるわけです。無料で使わせるというのは、そういう新規参入に対する壁をつくるという意味で、競争を阻害し、長い間には非常に進歩をおくらせます。  現在、私残念に思っているのは、ちょうどその既得権益を続々とつくっているような状態にあるんですね、携帯電話は。それは何とかして早くやめるべきで、電波のような公共資源は、ちょうど土地を使わせるときにオークション、入札をさせるように電波も入札をさせるべきであろうというぐあいに考えています。この点は外国ではほぼ認識されておりまして、先進国の中で電波のオークションに手をつけていないのは日本とフランスだけという状態になっています。中進国でも、ギリシャ、メキシコ、インド、たくさんの国が既に電波のオークションを実験し始めておりまして、日本にこのニュースが余り入ってきておりません。それは御推察いただけると思いますが、マスコミ、新聞にしても、新聞とテレビは近い関係にあります。現在の放送局は電波を無料で使っていますから、既に既得権益を持っている状態にありまして、なかなか外国での電波のオークションの傾向というのを日本にニュースとして入れにくいのではないかと私は考えております。この点は、国民全体の利益という点からぜひ検討を進めるべき点だと考えております。  ちょっと時間が超過いたしましたが、以上で私の説明を終わらせていただきます。
  44. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) ありがとうございました。  以上で鬼木参考人の御意見陳述は終わりました。  これより両参考人に対する質疑を行います。  先ほども申し上げましたように、質疑時間は八十分程度といたします。質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って質疑を行うようお願いいたします。また、質疑答弁とも簡潔にお願いいたします。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  45. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 大変興味のあるお話ですけれども、私などは専門外ですので、本当におもしろい割にはわからないところがいっぱいありました。  そこで、最初に金本参考人にお尋ねしますが、先ほどの予算配分に対する受益者負担と、受ける人がお金を出すというこの原則は本当によくわかりました。そういう論法からしますと、凍結されておりました整備新幹線がこのたびの予算予算化されることになりました。これはいろいろの問題がありまして、非常に大きな問題だったんですが、先生のおっしゃる費用便益分析というこの視点からしますと、整備新幹線が大変大きな予算ですけれどもついたということに対してどのようなお考えか、お聞かせいただきたいというふうに思います。  鬼木参考人につきましては、非常に興味がありましたけれども、大変なんだなというふうに思いました。  それで、先生の論文を一生懸命読んだんですけれども、ほとんど理解困難でお手上げたったんです。一つこれはおもしろいなと思ったのは、先生がおっしゃっている上下分離会計、これが競争原理を導入するということで、今御説明を聞くと、やや、ああそうかというふうにはわかったんですけれども、アメリカの情報ハイウエーということでこれが例に使われているんですけれども、この上下分離会計という制度は、競争にメリットがあるといいましても、要するにインフラとそれ以外に使う会計とを分離するというふうなとり方でよろしいんでしょうか。もう一度そこのところを具体的にお聞かせいただきたいというふうに思います。
  46. 金本良嗣

    参考人(金本良嗣君) 整備新幹線に関しての御質問でございますが、まず費用便益分析については、整備新幹線の前の段階で行われたように聞いております。余りそれほどきちんとしたものではないようでありますが、随分昔に一度行われて、その場合は日本ではまれな例ですが、一般に公開されたということを聞いております。  その当時の状況は、まだ上越新幹線が決まる前で、上越新幹線とそれから北陸新幹線を比較してみると、北陸新幹線の方が便益費用の比率が高いというふうな状況であったかと聞いております。その後は私の知る限りまともな費用便益分析は全く行われていないというふうに思います。  費用便益分析に似たもので、地域への開発効果整備新幹線をつくると地域所得がどれぐらい上がるかというふうな計量分析は何度も行われております。ただ、これは普通世界で使われている費用便益分析ではございませんで、そういうアプローチは理論的には間違っているというわけではないんですが、実際にやると非常に誤差が大きいと言われております。通常使われております費用便益分析というのは、乗客数、交通需要を推定してそれをベースに積み上げるというかなり原始的な方法なんですが、それが一般的に使われていて、そちらの方が信頼性がはるかに高いというふうに言われております。そういう通常欧米で行われているような費用便益分析は行われていないということでありますので、どのルートのどの路線が国民的な便益が高いのかということについては残念ながら申し上げられないということであります。  もう一つ、受益者負担に関しましては、今回のスキームで若干の前進があったんではないかと思います。私もきっちりと調べているわけじゃないですが、地域の負担が一五%から三〇%に上がったように聞いております。この比率が上がったということは、地域として以前よりはもっと真っ当な意思決定というか陳情活動ができるようになったのではないか、余りめちゃくちゃひどい投資が行われなくなるんではないかというふうに思っております。  私は、きちんと分析したわけではありませんが、もう少し地域負担を高くする必要があるんではないかというふうに思います。半分ぐらいにしておけば、地域として本当に必要なものについては頑張ってつくる、そうじゃない、人の金を当てにするものはもういいというふうに言うんではないかと思っております。
  47. 鬼木甫

    参考人(鬼木甫君) 上下分離に関してお答えいたします。  アメリカの情報ハイウエーに関しましては、上下分離は必ずしも行われておりません。上下分離はむしろアメリカでは余り実施されていなくて、先ほど申し上げました、衛星放送に関しまして番組作成とそれ以外とを上下分離しているというのは日本の特色でございます。アメリカでは、衛星放送は非常に盛んになりつつありますけれども、衛星を上げる主体が番組を管理しておりまして、上下分離になっておりません。したがいまして、ここは私は、通信分野で、あるいは放送分野で数少ない、日本がアメリカよりも進んだ制度を少しつくり始めているということだと思います。  日本通信衛星で上下分離が始まりましたのは、いわば偶然的な理由の所産でございまして、最初、通信衛星というのが放送衛星と別に上がりました。それは文字どおり通信のための衛星で、放送用には使っていなかったんです。受けるアンテナもこんな大きな、直径五メートルも十メートルもあるようなアンテナが最初は必要だったんですが、技術が進みまして小さなアンテナでも、個人でも安いアンテナで、数万円程度のアンテナで通信が受けられるようになりました。  そうしますと、その通信衛星は、最初は通信に使っていたんですが、放送にも使えるんじゃないかということが実際問題として出てまいりまして、通信衛星を放送に使うという可能性が出て、それで通信衛星を使って放送事業者が入っていったわけです。そのときに放送事業者としては、既に通信事業者が入っておりましたので番組だけの形で入らざるを得なかった。そういう形で郵政省は許さざるを得なかったといういわば偶然的な所産からできた制度ですが、それを今度は放送衛星の方に適用して上下分離を行った。それは進んだやり方であるというのが私のポイントであります。(OHP映写)  上下分離一般に関しましては、現在、通信の分野では、ここに線を引いておきましたが、一種事業者、二種事業者という形で分かれています。しかし、これはアナログ通信時代の非常に古い分け方でありまして、もう少し将来は上下を分けた、例えばこの赤い線とか点線で引いたようなところで特色を持たせて、この赤い実線の上ではどんどん競争をやってもらう、こういう公共的なスペースのところは政府が管理するという形で、競争を行わせる自由な分野とそれから厳しい管理のもとに置く分野とをなるべく分けてやった方がよろしい。  なかなか大変だなという御感想でしたが、確かにこれを行うのは大変でございます。例えば、NTTを上部会社と下部会社に分けるというのも大変なことでございますけれども、まずやれることは、必ずしも組織体を分けなくても、会計分離といいますが、それぞれでどれだけお金がかかったかということを明らかにするように制度を整えるだけでも非常に大きな意味があります。  先ほど金本参考人が、交通に関してどれだけ費用がかかったかという情報が出てこない、空港別のデータさえも出ていないという御指摘でしたが、電話の方でもそれは同じであります。あるいは通信、放送の方でも同じであります。  したがいまして、例えばアメリカのやり方をもしここで適用するとすれば、法律、規則を制定いたしまして、そのお仕事はこの国会のお仕事だと私は思いますけれども、通信事業者はそれぞれのサービスの生産段階にかかった原価を明らかにして現状を毎年一度報告するべしと。報告を必要とするという規則あるいは法律をつくればよろしいわけであります。そうしますと、それぞれでどの程度のコストで行われているということがわかりますから、先ほど申しましたように、新しい事業者が外側にいて、例えばこの段階で自分の方はもっと安くいいものが提供できるとなると、ほかの方とは別にこの段階でどんどん参入ができるというプラスの面がございます。  通信の面では交通よりも上下分離は進んでおりませんで、例えて言いますれば、現在の電話事業というのは道路公団とヤマト運輸が一体になって仕事をしているという状況に当たります。もし道路公団とヤマト運輸が一緒になったら現在よりもよかったか悪かったか。恐らく結果は悪くなったと思うんです。ヤマト運輸があれだけどんどん伸びて安い宅配便を全国に普及させたというのは、もしそれが道路公団と一緒に結びついてやっていたのであればなかなかできなかったのではないかと考えます。
  48. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 ありがとうございました。
  49. 牛嶋正

    牛嶋正君 平成会の牛嶋です。  金本参考人とそれから鬼木参考人に一問ずつお尋ねしたいと思います。  我が国におきましても、これから社会資本整備をしていくためには、先生がおっしゃいますように費用便益分析を導入せざるを得ないと思うんです。  なぜ日本でこれまで費用便益分析が活用されなかったのかということですが、幾つか理由はあると思います。  一つは、私は費用便益分析の有効性というのは代替案をつくるということにあるんじゃないかと思うんです。それは、アメリカでこの分析が開発されたときに最初に適用されたのはダム建設です。いろいろな箇所にどれぐらいの規模のダムをつくるか。それぞれについて費用便益分析をして、比較をして、最も効率的なものを選んでいく。ですから、代替案をつくるというところに費用便益分析のメリットがある。日本はそれはやらないで、この事業をやるということをもう決めちゃって、それがどれだけの効果があるか、費用がかかるかというふうなことですから、費用便益分析が全然意味をなさなかったということだろうと思うんです。それは言いかえますと、投資の仕方というものが、最初からそういう科学的な分析を導入しようという意図がなかったということだろうと思うんです。  それから、先生は費用便益分析が有効であるためには情報公開ということをおっしゃいました。でも、私は費用便益分析の基本になりますベネフィットの計算に当たりまして、これは事業主体が計算したら意味がないと思うんです。それは予測ですから幾らでも理由をつけてそこを膨らませることはできると思うんです。ですから、そういう計算したものを幾ら情報公開したって意味がないわけであります。私は、できれば第三者がベネフィットの計算等々をしていくということが必要ではないかというふうに思います。  それからもう一つは、やはり今環境問題などが出てきておりますので、ベネフィット計算ではマイナスのベネフィットも考慮していかなければならないんではないか。その点のちょっと御説明がなかったものですから、その点についてもお聞きしたいと思います。  それから、鬼木参考人ですが、非常に全国的な規模でのお話が多かったと思うんです。でも、これから高齢社会を迎えますと、やはり地域高齢者の介護をしていかなければならない、あるいは医療サービスを提供していかなければならない。ある意味では地域高齢者を支援していく、支えていく一つの主役を演じなきゃいけないと思う。そのときに、情報ネットワークというような言葉をよく私たちは使うわけですけれども、そういったものを整備していくということになりますと、その地域でのそういった通信に関するインフラ整備というふうなものが必要かと思います。  お聞きしたいのは、その場合に光ファイバーのようなものが使えるのかどうか、そしてまた、それにかかる費用というふうなものをどういうふうに分担していけばいいのか、そのあたりのお考えがございましたらお聞きしたいと思います。
  50. 金本良嗣

    参考人(金本良嗣君) 牛嶋先生の御本を学生時代に勉強させていただいて、こういう場で大変光栄に思っております。  最初の代替案に関しては、基本的には牛嶋先生のおっしゃるとおりだと思いますが、もうちょっと私は裏があるというふうに思っております。  なぜ代替案が出てこないかというと、行政府が代替案を検討していないわけではない。検討した結果一本にまとめたものを出して、これをのむかのまないかという形でいろんな人に選択を迫る。これが実は戦略上行政府にとっては自分の思うことを実現するためにベストの戦略だということだったんだろうと思います。  ただ、状況は随分変わりつつあって、こういう格好で一本当してきてつくろうとしますと、用地買収とか環境問題等々で住民の反対が多くてつくれなくなるような現象がかなり出てきております。したがって、今行政府の側もかなりの方々は最初から代替案を提示して、情報公開をして、それでいろいろ議論した上でまとめていくというふうな方向に転換しつつあると、その始まりの時期ではないかと思います。いろんな意味でそれを後押しするような制度をつくったら、余り抵抗なく受け入れられるような状況になっているんではないかというふうに思います。  第二の、だれが便益評価あるいは便益の推定を行うかということについてはなかなか難しい面がございまして、第三者で果たしていいものができるかどうかということについては異論もあるんではないかと思います。やはり実際の事業をやっている人たちが一番お金も人もあるし、やる気もあるということで、第三者にやらせる仕組みが本当にうまくいくかどうかというのはなかなか難しいところだと思います。  ただ、諸外国でもこういう問題は実はいっぱい出てきていて、特にアメリカのような国ですと、いろんな人がかなり勝手なことをやるということで、非常に大きな便益の過大推定をして社会問題化している例があります。典型的な例は大都市の地下鉄等の都市鉄道なんですが、これについてはかなり過大な事業推定を出して、便益が費用を上回ると言ったんですが、結果としては、乗客が少なくて、費用も何倍にもなったというふうなことがありました。  その結果、またいろんな仕組みができつつあるようでありまして、そういう事実がもう過去積み重ねられてきておりますから、自分たちのつくったそういう便益の推定値に何らかの格好で信頼を担保するようなことをしないと、事業者としては受け入れてもらえない。  したがいまして、最近では、最終的な報告書を出す前に、いろんなかなり権威のある第三者、大学の先生とかほかの政府機関の方々とかを入れてかなり詳細に内容をチェックさせて、それについて意見書を出させて、それを含めて公開するというふうな格好にしているケースがふえてきているようです。どういう制度がうまくいくのかというのはなかなか難しいところですが、いろんな対応が考えられるということだと思います。  もう一つは、費用便益分析というのは、鉄道なのか航空なのか道路なのかというふうな性格の違うものを比較するのはなかなか難しい面がございまして、一番有効に機能するのは、いろんな道路があるところでどの道路がいいのか、整備新幹線でいろんな路線があるときにどの路線がいいのかと、こういうものを比較するのに一番有効なわけです。  そういう意味では、使い方を注意すれば、ある程度同質的なものを並べて、それについて同時に結果を出すというような格好にすればかなりの程度使えるんではないかと思います。ドイツ等では、例えば交通機関全体について一斉に費用便益分析をして並べて、その結果を使ってどういう投資をするかというのを決めておりますが、そういうふうな相対的な比較というふうな使い方が一番有効なんではないかというふうに思っております。  あと、マイナスの環境面の問題ですが、これも非常に重要な問題でありまして、日本ではまだ取り組みがおくれているところだと思います。  これについて特に一つ申し上げたいのは、環境アセスメントについて、日本では経済的な評価、被害の大きさの経済的な評価というのは全くやられていません。やられるような法律になっていないというわけですが、アメリカでは環境評価の一環として、その環境被害の大きさがどれぐらいかというふうな評価も行う。環境被害を防ぐためにいろんな手を打つ、いろんな手を打ったことの費用とそれから便益の関係を出すということが組み込まれております。  そういうことを組み込むというのは、多分これから非常に重要な課題になるんではないかというふうに思います。  以上でございます。
  51. 鬼木甫

    参考人(鬼木甫君) 御質問は、光ファイバー広帯域の通信網が例えば医療サービスを供給するために地域で展開できないか、それからもう一つは、その費用に関する面をもう少し説明しろということでございました。  地域面での発展の可能性は、一般的には十分にあると思います。実際、我が国でも岡山県が岡山県の情報ハイウエーの計画を進めておりますし、富山県でもそのような計画が進んでいるやに聞いております。私は残念ながらまだ実際に行って見たことはありません。  しかしながら、医療サービスが光ファイバーで十分供給されるようになって、私が寝たきりになるころまでには、カメラがあって、ちょっとぐあいが悪ければ、どの薬を飲んだらいいよとかいう形の説明がすぐ医師から飛んでくる、あるいは毎日一回は私の状態をチェックしてくれていると。子供が来なくてもひとりで安心して寝ていられるというような状態になれば大変よろしいかと思います。  しかし、これはやはり費用面が伴います。建設の費用というのが非常に大きゅうございますので、すぐに現在の日本の状態で、地方、都道府県及び市町村の財政規模でこれを建設するというのはなかなか大変かなと思います。しかし、財政の地方分権あるいは地方主権が進んで、税金の大部分は自分たちの住んでいる市町村や都道府県に行く、そこでしかるべく使うということになりますればまた別でございます。したがって、現在の日本の財政のあり方を前提にしますれば、建設を促進するのはやはり中央政府の役割ではなかろうかと私は考えております。(OHP映写)  といいますのは、大きな原因は、このようなネットワークの建設は、日本全体にばらけてつくられ始めていくわけです。ちょっと図がありませんが、これはお手元レジュメと同じものです。例えば、東京の中央区に何カ所、千代田区に何カ所、世田谷区、目黒区に何カ所とかいうぐあいにぽつんぽつんと光ファイバーを使う需要が出てきまして、最初はそれをまとめて商売をしないといけない。光ファイバーの線も長いし、一人当たりあるいは一需要者当たりのコストが非常に高いものにつきます。長い時間がたちますとだんだんネットワークが桐密になっていきまして、単価が落ちるし、サービスもよくなるし、技術進歩も進むし、大量生産の利益も実現されるということで安くなっていきますが、最初は大変なことであるわけです。  その大変なことをやるためには、やはりなるべく大きな規模から資金を集中するほかはないのでありまして、したがって自治体レベルで個々に分かれてやるよりは全体まとめてやった方が進み方が速いということが言えます。  実際、最初に非常にお金がかかるというケースは、お手元に図がありますが、電電公社の電話建設のときのデータを持ってきております。これは、電電公社の全体の資産、ゼロから八〇%までありますが、そのうち何%が借金、固定負債であったかという比率を示すグラフです。この最初のところの非常に勾配の急なところは初期ですから余り参考にならないんですが、やはり四十何年か前、一九五五、六年ごろは約三五%かそのぐらいが借金であとは自己資本であったわけです。  そのころから日本の電話の建設が始まりまして、猛烈な勢いで電電公社は皆さんから借金をして、つまり電電債券ですね、加入するときに一時的に購入し、電電債券をたくさん発行しまして、借金が八〇%に近いところまで行きました。これが大体石油ショックのころ、二十何年か前ですがそこが最高の比率で、それからずっと現在まで落下の一途をたどっておりまして、つまり最初は非常に多くの借金を重ねてつくらざるを得ない。なぜそうかというと、お金がかかり収入は低いのです。  しかし、一たんつくられてそれをどんどん国民レベルで使い始めると、もう黒字がどさどさと入ってくる。したがって、現在のNTTは、こう言うのはNTTさんには申しわけないんですが、いわば日銭が続々と入る大変ハッピーな身分でございます。そういうぐあいには会計情報は発表いたしませんで、いや、減価償却がたくさんかかりますというぐあいにたくさん出ているんですけれども、実際は日銭が入り過ぎて困ると。  このお金をどう運用したらよろしいか。今までは交換機を、少し専門的になりますが、デジタル化するということでたくさんのお金を使ってきました。これが四国を最後にして昨年度終わりましたので、ことしからお金をどう使っていいかわからぬという状態にあります。それをNTTは、マルチメディアの発展ということで使おうということで盛んに投資をし始めているわけです。  その投資と、私の建設を進めるべきだという意見とは方角としては合っておりますので、私別に反対ではありませんが、ここで申し上げていますポイントは、大きな、特に通信ネットワークは最初の十年から十五年が大変であって、後は楽過ぎるということであります。  したがって、この特性をのみ込んだ政策が必要でありまして、光ファイバーの建設でも最初の十年をサポートしないといけない。これをサポートしないとなかなか進まない。いずれはできるでしょうけれども、三十年、四十年かかる。しかし、うまくサポートすると、日本が戦後急速に電話網をつくったように、これは世界一のスピードでありますけれども、世帯でいえば、終戦後の一%の普及率から現在ほぼ一〇〇%の普及率になっているわけです。約十五、六年でつくりましたわけです。そういうことをもう一度光ファイバーでやるべきではなかろうかというのが私のポイントであります。  金額にしますと、これもお手元レジュメにあると思いますが、多目に見まして十五年間でつくるとしますと三十から四十兆円。といいますとちょっと見当がつきにくいんですが、一年で、かつ一人当たりで割りますと一万八千円ぐらいです。四人家族でこれを負担するとしますと毎月六千円ぐらいになります。六千円をただで出せというのではなくて、六千円に相当する分だけ投資をしないといけない。したがって、人件費とかも入れますと月間一万円ぐらいの支出になると思います、四人家族で。つまり、あちこち移動したり、交通費などに支払っている、ほかの人に会う仕事の一部をこの光ファイバーでやるのに月間一万円ぐらい使う。それがもし実現できれば大体これはペイする事業です。  しかし、もちろん失敗するかもしれません。レジュメにも書いておきましたが、失敗するというのはつまりこういうことです。光ファイバーは引いてみたけれどもみんな余り使いたがらない、家の中のプライバシーがカメラで出てくるのほかなわぬ、やっぱりうちは電話だけで結構だという家がもし日本人の大部分であったとしますと普及いたしません。それが果たして普及するか普及しないかは正直に言ってわかりませんが、私は、時間の不足という点から見まして、まず間違いなく個人としては普及すると思います。株を買うとすれば私はかなりのリスクを冒してその仕事をする会社の株を自分でも買うと思います。  しかし、やっぱりこれは一種のベンチャービジネスであります。いわば国家規模のベンチャービジネスでありまして、失敗の可能性もあります。もし国が全体として投資をやり始めて、あるいは投資を保証して、コミットし始めて、仮に失敗であったとして、失敗であるということがわかるまでにはやっぱり三、四年はかかると思います。三、四年やってみますと、やっぱりこれはだめだということが実際の普及状況を通じてわかりますから、それまでどのぐらいかかるかというのは、多分、一人当たり年間二万円ということから見まして、四、五万円一人当たりで失敗の場合に負担する覚悟をすれば、というのは結構大きい額でありますけれども、しかし便益は何十万円、何百万円となりますからもっと大きいんですけれども、失敗の場合にこれだけ負担する覚悟で乗り出せばできるんではないか。  この失敗の負担を受け入れる、失敗の場合のリスクを受け入れなければ、これは日本には非常に時間がかかって、何十年かかかってやっと少しずつできていく。外国にどんどんできていって、じゃ日本もやらなきやといことでやっていくという形でゆっくりできるのではないかと思います。つまり外国に実験してもらうということです。  電話の場合にはアメリカが実験してくれたわけです。日本は非常に後進国で、もう何も心配要らない、電話を引けばみんな使うということが自明でしたから急速に建設できたんですが、光ファイバーは少しそれとは違う面がございます。  以上です。
  52. 小野清子

    ○小野清子君 両先生、ありがとうございます。  金本先生の方から一言お願いしたいと思います。  十二月には環境会議が日本でございまして、CO2の削減、一九九〇年の、それ以上ふやさないようにということで、大変大きな負担を日本は、負担といいますか、悪い方の成績を上げておりますので、何とか車を減らさなきゃならない。  東京の場合などは、環状八号線ではエイトライナーとか、それから環状七号線の下にはメトロセブンというふうに、環状線の下を通って大量に人を輸送する、そういう計画があるんですけれども、先生御存じなのかどうか。また、これの今後の費用便益分析というんですか、こういう観点からどういうふうに評価をされるのかお伺いをしたい、これが一点でございます。必要に迫られてそういうものがつくられる場合と、存在することにおいて利用者がそれに応じてCO2を減らしていく場合と両方考えられると思います。これが一つでございます。  鬼木先生の方には、今いろいろお話を伺わせていただいて、私も先ファイバーの問題は二十年ほど前にもうお話は伺ったんですけれども、あの細い一本の、何というんですか、プラスチックのようなものが、おっしゃるような有効利用するということがどうも頭の中で理解できなくて、しかし新しい時代が来るというそれだけはわかるんです。  テレビ会議のお話を最初になさいましたけれども、テレビ会議がやはり相当前にもう実験が行われました、東京と大阪の間ですね。最初の実験のころに私もその会場に行ったりして見たことがあるんですけれども、まずはカメラワークが悪いからなかなかうまくいかないとか、それから全体の姿が見えないとか、それから費用が高いとか、それから話をしている人以外の人の表情が見えないから会議全体の雰囲気がわからないとか、いろんな理由がありまして、余りその後伸びなかった時期があるんですけれども、最近はこれはずっと上がってきたのかどうか。  そしてまた、今後、新幹線で向こうに行くよりは、福岡なり大阪なりそれから北海道なりと、こういうものを通してテレビ会議がふえていく可能性があるものかどうかという可能性に関する点と、設備に対する投資が、最初つくったころと現状ではどれくらい差があるのか。あるいはそういう施設整備の拠点が置かれるようになってきたのかどうか、その辺、もしおわかりでしたら教えていただきたいと思います。
  53. 金本良嗣

    参考人(金本良嗣君) 温暖化の問題は非常に重要な問題で、これについてどういう取り組みをする必要があるかということは、私自身きちんと考えているわけではありませんが、非常に重要な課題であると思っております。ただ、環状七号の下に何かをつくるといったものでありますとか、あるいは公共交通機関をお金をかけてつくるとかということがベストの政策かというと、かなり疑問があるんだと思います。  特に、自動車を使う、あるいはこれはトラックも含めてですが、これを使う理由はいろんな理由がございまして、基本的には乗りかえ等々が必要ないドア・ツー・ドアで行けるという非常に大きな利便性がある。この利便性は無視できない。無理やり途中、公共交通機関を使わせるというのは、国民個人個人にとって非常に大きな負担になるわけで、一つは、なかなか公共交通機関をつくっても使ってもらえないという状況が出てくるわけだと思います。  特に、アメリカ、ヨーロッパでは、実際になかなか使ってもらえないので、非常に巨額のお金をかけて使ってもらうようにしている。特にヨーロッパの公共交通機関、非常に運賃が安くていいと言われておりますが、それは補助金漬けで安くしているということになっていまして、大抵の場合、建設がずっと昔に済んだものが多くて、運行の運営コストだけしかかかっていないことが多いんですが、それもカバーできなくて、その半分以上を補助している。それだけ補助をしてもなかなか車から移ってくれない。したがって、CO2の車からの排出量に関していえば、基本的には日本の方が優等生だろうということだと思います。  そういう状態があるときに、どういう政策を組み合わせればいいのかということはケース・バイ・ケースの問題で、東京のような非常に密度の高いところですと、ある程度公共交通機関を整備するというのが効果はあるかと思いますが、人口三十万、五十万といった町に無理やり公共交通機関をつくっても、だれも使わないというふうな状況になりかねない。したがいまして、代替的な公共交通機関を整備する方策と加えて、自動車単体についての技術進歩を促すとか、そういったいろんなタイプの政策が必要だろうと思います。  自動車関係に関していえば、特に必要なのは、炭素税のような、石油資源、ガソリンとか軽油等を使ったときに費用負担をもう少し求めるというふうな方向を考えるのが一番直接的な、あるいは真っ当な方策ではないかというふうに考えております。
  54. 鬼木甫

    参考人(鬼木甫君) テレビ会議の件に関してお答えいたします。  確かにテレビ会議、初期のころは言葉に比して余り伸びない、値段も高くかかるということで普及しないでいましたが、十年たった今日は、相当の大企業がもうテレビ会議を使っております。全国の各支店からお金と時間を使って人を呼び集めて、東京で二時間会議して、それでまた帰るというむだは莫大なものでありまして、これを少々能率が悪くともテレビ会議で即時的にやれるというのは非常な便益でありまして、最近伸びております。  問題は、二つあると思います。  一つは、テレビ会議というと、連想は普通のテレビでありまして、あの程度の画面で大体いいのではないか、あのぐらいの画面が出てくれば普通の会議の役に立つのではないかと最初思っておった節があります。  しかし、実は我々がこうやって、ここ、きょうの場もそうでありますが、顔色を見ながら、声色を聞きながら、それから周辺にいる人々の居眠りしかかっているか、目がぱっちり開いているかということも横目で見ながらお互いに話をしてコミュニケーションをするというのは相当濃密な多次元的なコミュニケーションでありまして、普通のテレビ程度の画面ではなかなかそこまで伝わらないわけです。  そういうことがだんだんわかってきまして、画面をもう少し精密にしないといけない、それからカメラワークにしても、やっぱり人間の目で見るのになるべく近いような、角度にしても、それからズームアップの程度にしても、やらなければいけないとか、いろんなことがわかってきまして、少しずつメーカーが改善して現在に至っているわけです。他方、コストの方も大量生産で少しずつ下がってきて、現在はどんどん普及している状況にあります。  これが個人レベルでテレビ会議あるいはテレビ面談というんでしょうか、例えばセールスマンが北海道に出張するかわりにこちらでいろいろ商品の説明をするとか、四国にある機械がうまく動かないから、エンジニアが向こうに行って調整するかわりにこっちで機械の図を見ながらそこをそうやればいいよというぐあいに教えるとかいうのまで、どこまでいくかというのはやっぱり経験を重ねないとなかなか発展しないわけであります。  もう一つはコストであります。  コストはやはりかなり高いので、また同じことを申しますけれども、最初にある程度公的なサポートがあって大きなスケールで出発するのと、細々と民間でやりながら、本当に富士のすそ野をゆっくり上るようになだらかな坂を上るのとでは、随分その発展のスピードが違ってくるだろうということです。  それから、最初に光ファイバー、プラスチックとおっしゃいましたが、ガラスの線でございます。ガラスが細くなるとくねくね曲がりまして、スキーのグラスファイバーなんかも曲がります。
  55. 小野清子

    ○小野清子君 ありがとうございました。
  56. 小山峰男

    ○小山峰男君 金本先生にちょっとお伺いしたいんですが、このレジュメの六番の「先行投資」の部分でございますが、先生は、地域開発のための先行投資に一本化すべきだということと、それから国レベルでは行うべきではないというふうに言われているわけでございますが、イメージが、先行投資対象の部分がちょっとわからないのでお聞きしたいと思います。  例えば本四架橋だとか、あるいは高速道、あるいは新幹線というようなものも、この先行投資と言われているものの対象に入るのかどうか、具体的なちょっとイメージを含めてお願いしたいと思います。
  57. 金本良嗣

    参考人(金本良嗣君) 空港とか新幹線といったものはこの先行投資の一部だろうと思います。本四架橋のようにたくさんの県にまたがるようなものをどういうふうに扱うかというのはなかなか難しいところがありますが、かなりの部分は、ある種の連合体ができれば、こういう地域開発として扱うことができるんではないかと思います。  その際重要なのは、空港をつくるのか整備新幹線にするのか、あるいは両方やるのか、そういう判断をだれがどういうふうに行うかということでありまして、高速道路は建設省、整備新幹線は運輸省というふうな格好でばらばらに行っていたんでは、コストに対応して余り有効ではないケースが多くなる。それを、お金はこれだけあるところで、何をどういうふうに選んでどういうタイミングでつくっていくかということを地域で考えるようになれば、もう少し先行投資としての実が上がるんではないか、そういうふうな考え方であります。
  58. 小山峰男

    ○小山峰男君 もう一度いいですか。  そうすると、例えば本四なんかはむしろ先行投資的な面が少ない。それから新幹線なんかは、具体論として、例えば各県をまたがって随分長距離を走るということになるわけですが、こういうものも各県ごとの判断みたいな形がかなり入らないとというふうに考えて、むしろ先行投資の対象部分もかなりあるというふうにお考えなんでしょうか。
  59. 金本良嗣

    参考人(金本良嗣君) おっしゃるとおりでありまして、それぞれの地方自治体が自分たちにとって、新幹線は線がつながっていますから、途中の人がだめだというとできなくなるという面はございますが、それぞれの地域の人が自分たちにとってのメリットがどれぐらいあるかということを考えてまずプランをつくるべきと。そこで、途中の人がだめだと言って周りの人が欲しいと言ったときにどうするかということになって、初めてもう少し広がったデシジョンメーキングが行われるというふうなたぐいのことではないかというふうに思うんです。
  60. 小林元

    ○小林元君 鬼木先生にお伺いします。  アメリカでのNIIというんですか、情報ハイウエー構想は建設がややおくれているというようなことでございます。先ほどのお話によりますと、国がというよりは民間の業者がやる、市場原理でやるというような方向へいったことがあるのかどうか。世の中が何か情報社会で、インターネットが猛烈に普及しているような印象があるわけでございますけれども、その辺でなぜこうおくれているのか。  先ほどの先生のお話によりますと、長い目で見れば十分やっていけるんだ、絶対大丈夫だと、こういうようなお話もあったんですけれども、その辺のことについてひとつお伺いしたい。  それからもう一点は、先ほどお話がありました電話加入権でしょうか、電話債券は現在のNTT、五兆円か六兆円かわかりませんけれども、相当あると思うんです。これは返済をしない債券というか、加入権という形になっていると思うんです。その辺を、何というんですか、そういう資金が足りない、三、四十兆円かかると。そういう方向に、有利な投資であればうまく国民が参加するような債券というのか、何かそういう形での資金を集めて、日本版ハイウエー構想を実現するのはどうかというようなことを考えてみたんですが、いかがでしょうか。
  61. 鬼木甫

    参考人(鬼木甫君) まず、アメリカのNII建設に関する事情ですが、おくれているというのは私の判断でございます。その意味は、アメリカの方でおくれているというのは、もっとうまくやればアメリカの力であればどんどん早くいけるはずのところを、本当は国家的な力がある程度加われば早く進めるものを、民間事業者の意見を優先させているので早く進めるはずであるところのものが早く進んでいないという私の評価でございます。これは人によって評価は違うかもしれません。  その経過は、先ほどちょっと申し上げましたけれども、クリントン・ゴア政権が最初に選出されたときに、それをサポートした一つの陣営が情報通信業界でありました。特に、ゴア副大統領が情報通信をプロモートする、発展させなければいけないという政策を掲げましたので、例えばマイクロソフトだとかコンピューター分野とか、通信分野が一斉に資金面でも政治運動面でもクリントン、ゴアを支持しまして、それで最初の選挙にクリントン大統領が選出されたと。それだけで選出されたかどうか私は知りませんが、一つの要因になったと考えております。  それで、情報ハイウェーのアイデアは、ゴア副大統領は選挙の期間に出しております。しかし、余り具体的な細かいことは言わずに、とにかくアメリカに情報ハイウェーをつくるということで選挙に出して、業界のサポートを受けて当選して、いざどうやってつくるかということを具体的に話し始めたときに、ゴア副大統領はお父さんのゴア・シニアの方がアメリカの高速道路網をつくりましたので、それと同じように政府のイニシアチブでつくるというつもりで最初提案したそうです。  それに対して、今度は電話会社を主とする通信事業者の方が猛然と反対して、いやいや政府がやるべきではない、それは民間でやるべきだと強硬に押し切りまして、ゴア副大統領は最初の意見を引っ込めて、民間主導型というぐあいに旗色を変えまして現在に至っております。  私は、それはゴア副大統領の本意ではなかったのではないかと今でも思っておりますが、しかし何せ選挙のサポーターでありましたから、言うことを聞かないわけにはいかないということで行っている。その結果、つまり、アメリカの電話会社も非常に大きな赤字を最初に出すようなものを続々とつくるわけにはいきませんので、最初思ったほどは情報ハイウェーは進んでいない。  他方、もちろんインターネットは普及していますが、これはハイウェーのインターネットではありません。実際の電話線とそれに近いぐらいのものを使ったインターネットで、したがってスピードとか性能とかは大分落ちております。  それから、テレビ電話はまだ無理です。小さな画面でコンピューターの画面の片隅にやっと顔が見える、目鼻だちまでわかりませんで目鼻の存在ぐらいがわかる程度のテレビ電話はできておりますけれども、それでもやっぱり顔が見えるぐらいのところで、実際に会って話をするのとは大違いなわけです。ですから、そんなには本来のテレビ電話あるいはビデオ電話になるほどの威力はないわけです。  それやこれやで、アメリカの方ではちょっと足踏みの感じがございます。それで、私は日本はアメリカをここで追い抜くべきときではないかというぐあいに考えておるわけです。  それから、もう一つの御質問で、電話債券、加入権の件ですが、まず電話債券、皆様昔を思い出していただきたいんですが、電話債券にたしか十三、四万円加入するときに払っていて、それとは別に七万何千円かを加入料として一時金として払っております。別であります。  加入料の方は、全部NTTの中にたまっております。これ、たしか名前が帳簿の中で何とかついていますが、特別積立金か何か、そういう形で加入権に当たるものが積んであるわけです。  私、これも個人の意見ですが、当然その加入権に当たるものは電電公社が民営化されるときに、昔払ったんだから電話の加入者には株の一つも渡すべきだったと考えておりますけれども、それをやらないで、つまり電話の加入者は全く払ったまま加入権だけをもらって現在に至っているのが実情です。  金額にしますと、その加入権が恐らく二、三兆円ぐらい積もっているんじゃないでしょうか。電電公社も、それから今のNTTも、加入権は加入権でありますから、何というんでしょうか、どんどん人件費に使ってしまうわけにはいかないわけで、それはちゃんと帳簿の中には残っておるわけです。(OHP映写)  つまり、積立金のような形で、利益として、先ほどのグラフでいいますとこっちの方ですね。ここが借金で残っている分で、電信電話債券の残りがここにあるわけです。この残りの資産のところが加入権、それから利益の積み立てで本当の内部留保になっているわけです。  ですから、現在のNTTは、いわば超優良会社でありまして、全財産のうちほとんど全部は持っておる。あと二〇%かそこらだけが借金にすぎない。他人資本はほとんどないという非常にいい会社であります。したがって、こういう背景があったからこそ、民営化されたときに一時的に株が非常に人気を得て、それはいろいろ事情がありますけれども、現在はちょっと下がっておりますが、そういうこともありましたわけです。  これは、いわば事後的に見た電気通信ネットワークの建設の財政収支のパターンです。光ファイバーの方も、大体これと同じように最初苦しい借金の時代が続いて、後でどんどんもうける、もうけていったらもう返すことなどは目じゃないと。  私は、NTTは、これは返そうと思えばとうの昔に返せたと思います。これだけ残しているのは、むしろ私はこれは邪推かもしれませんが、全部返すとNTTは余りよ過ぎるのではないかという評判が起きると困る、少しぐらいの借金は残しておけよというので、借りかえ借りかえで返さないでいっているのではないかというふうに推測しております。少なくともNTTの内部でそういうふうに考える人はいるのではないかと思います。  以上です。
  62. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) 以上で両参考人に対する質疑は終了いたしました。  金本参考人及び鬼木参考人には、お忙しい中、本調査会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。  本日お述べいただきました貴重な御意見は今後の調査参考にさせていただきます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十一分散会