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1997-03-19 第140回国会 参議院 国民生活・経済に関する調査会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月十九日(水曜日)    午後一時三分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     会 長         鶴岡  洋君     理 事                 小野 清子君                 大島 慶久君                 牛嶋  正君                 笹野 貞子君                 聴濤  弘君     委員                 大野つや子君                 太田 豊秋君                 金田 勝年君                 中島 眞人君                 平田 耕一君                 三浦 一水君                 海野 義孝君                 小林  元君                 林 久美子君                 水島  裕君                 一井 淳治君                 堂本 暁子君                 小山 峰男君     事務局側        第二特別調査室        長        林 五津夫君     参考人        一橋大学経済学        部教授      石  弘光君        上智大学経済学        部教授      山崎 福寿君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国民生活経済に関する調査  (二十一世紀経済社会に対応するための経済  運営在り方に関する件のうち社会資本整備の  在り方財政課題について)  (派遣委員報告)     —————————————
  2. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) ただいまから国民生活経済に関する調査会を開会いたします。  国民生活経済に関する調査を議題とし、二十一世紀経済社会に対応するための経済運営在り方に関する件のうち、社会資本整備在り方財政課題について参考人から意見を聴取いたします。  本日は、お手元配付参考人の名簿のとおり、一橋大学経済学部教授石弘光君及び上智大学経済学部教授山崎福寿君のお二人に御出席をいただき、順次御意見を承ることになっております。  この際、石参考人及び山崎参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本調査会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。  本日は、本調査会が現在調査を進めております二十一世紀経済社会に対応するための経済運営在り方に関する件のうち、社会資本整備在り方財政課題について忌憚のない御意見をお聞かせいただき、調査参考にさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず両参考人からお一人二十分程度ずつ順次御意見をお述べいただきました後、八十分程度委員からの質疑にお答えいただく方法で進めたいと存じます。  質疑につきましては、あらかじめ質疑者を定めず、自由に御質疑をいただきたいと存じます。質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って質疑を行うようお願いいたします。  なお、できるだけ多くの方が質疑をできるよう各委員一回当たりの発言時間を一分程度とさせていただきたいと存じます。  また、時間に制約がありますので、質疑答弁とも簡潔に行っていただくよう重ねてよろしくお願いいたします。  なお、参考人からの意見陳述、各委員からの質疑及びこれに対する答弁とも着席のままで結構でございます。  それでは、最初石参考人からお願いいたします。
  3. 石弘光

    参考人石弘光君) それでは、着席のまま発言をさせていただきます。  お手元に私のと山崎さんの報告メモがついていると思います。似たような項目かなと思ってさっきから眺めておりますが、私はどちらかと申しますと財政学あるいはマクロ経済学の立場から社会資本整備あり方につきまして論点を整理させていただきたいと思います。  事務局を通じまして、実は財政制度審議会議論いたしました財政構造白書、あるいは「財政構造改革条件」等の書物を出しておりますが、その一部を、社会資本整備の章をあらかじめ配付資料として渡すようにお願いしてございましたので、一応お手元に渡ったという前提で議論をさせていただきます。と申しましても、余り細かい数字にわたった議論はこの場ではふさわしくないと思いますので、大きな流れのみにつきまして議論を展開いたしたいと思います。と同時に、私のメモにも幾つ項目が並んでおりまして、これは全部にわたってとても二十分では説明できませんので、一番申し述べたい核心部分をピックアップいたしまして議論を整理させていただきたいと思います。  まず最初に、社会資本整備というのが実際にどうなっているのか、立ちおくれているのか、ほぼある水準に達したのかというそのあたり議論から始めたいと思いますが、これは非常に難しいんですね。例えば、道路一つとりましても、無限に道路に対する需要はあると思います。そういう意味で、国際比較をいたしますとどのシーンをとりましてもまだ日本は低いと思います。つまり、道路整備にいたしましても、上下水の状況につきましても、あるいは都市公園、そういうものをとりましても低いとは思いますが、ただ日本の固有な事情がございます。つまり、山国であり、かなり密集されたところに人口が非常に集まっており、言うなれば他の国と違った意味合いの公共投資、あるいは社会資本整備条件がございまして、かつ歴史的にはかなり立ちおくれた国でございまして、戦後急速にキャッチアップに努めました。  年々、フローで見た公共事業費というのは、御案内のように各国で比べますと断トツに高い、それも減っていないということですね。もう十数年前から各国フローで見た公共投資、この水準はかなり落ちついてまいっておりますが、日本はさまざまな事情がありまして依然として続いております。  そういう意味で、二、三十年さかのぼってみますと、そのフローが積み重なりまして公共投資資本ストックとしてはかなりのものが積み重なってきたと思いますし、それから個々のものにつきましても、国際的に見てまだまだ立ちおくれた面は目立ちますが、ある程度満足のいくところにまで来たのではないか。  私は、結論から申しますと、これまで、きょう再度述べたいと思いますが、道路一つとりましても、特定財源というのは、それを特に優遇するような措置でやってきたもの、そういう聖域的に扱ってきた公共事業、あるいは社会資本整備というものは今一服して、その先のことを眺める反省の、あるいは見直しの時点ではないかと思っております。つまり、従来どおりやれやれどんどんというのではなくて、公共投資基本計画あるいは各道路なり港湾なり漁港なり等々の何カ年計画というような大きな足取りでやってきたやり方も含めまして、私はそろそろ議論を落ちつかせるべきではないかと思っております。  社会経済が非常に変化してきた割に、よく各省庁間の配分比率が変わらぬとかそういうことも言われておりますし、何でもかんでも官がやらなければいけないのか、つまり民でもかなりできる部分があるんじゃないか、あるいは市場メカニズム活用方法も残っているんではないかというような議論もこの際しかと受けとめて、その辺の活用も考えるべきではないかと考えております。  これがいわば序でございまして、私の一番申し上げたいのは、今ある公共事業問題点ではないかと思います。  公共事業には二つ役目がございまして、景気が悪くなりますと、言うなればケインズ政策的に有効需要を促進するために公共事業をやると。過去何年もこの繰り返し景気刺激対策をやってきたという経緯もございます。  もう一つは、橋が必要だというときは、その橋が本来の、その地域住民に役立つような意味での橋が必要なんであって、単に景気刺激のための橋をつくるという視点とは別な、長期的に見た資源配分機能があるわけです。道路をとっても港湾をとっても、あるいは公園設備をとっても、まさにそういう機能がある。  私は、本来、公共事業あるいは社会資本整備というのは、長期資源配分機能というのをより重視すべきではなかろうかと考えております。つまり、ある地域で非常に停滞している、過疎であると。その地域活性化のために公共事業が必要であるといったような意味公共事業費使い方も、日本ではかなりやっております。現にやっております。景気が悪くなったから、言うなれば民間需要が足りないから、政府需要が出るために公共事業をふやすといった景気刺激策にもたびたび使われてまいりました。  しかし、そういう過疎対策なりあるいは景気刺激なりに、資源配分上、本来必要だと思われる公共事業が使われますと、やはりかなりひずみ、歪曲が出てくるのは否めないと思います。短期間で有効需要をつけるためにつくる設備というのは、とかくずさん、あるいは単年度主義も踏まえましてとかく要らないところに事業が起こるということもございますし、何のために橋をつくらなきゃいけないか、道路をつくらなきゃいけないかと、そういう繰り返しになりつつ過疎対策のためにやるといったこともございます。  言うなれば、道路ができてしまったらここで御用済みと。つまり、道路をつくっている過程において雇用対策としてやるんだというような、そういう事情があるわけであります。そういう話がこのところ、さまざまな形で私どもの耳に入ってきまして、それで、私は、日本国土というものを社会的インフラとしての公共事業でしっかり整備するなど、やはり長期的視点に立った資源配分機能がより重視されるべきではないかと、このように考えております。  ということになりますと、当然のこと、今さまざまな角度から言われております省庁間の硬直化した配分などというのは直ってしかるべきであります。確かに四十年前と比べますと、それなりにめり張りがついたような配分比率になっているとは思いますが、ここ数年あるいは十年間ぐらい見ますと、ほとんど省庁間あるいは事業別公共事業配分が変わっていないというのが問題であると。  例えば、農業、非常に批判が強くなっておりますが、農業というのは戦後一貫して、生産物で見ても、あるいは労働者の数で見ても、労働力で見ても一貫して落ちています。ところが、そういう農業に対して、政府が手を伸べるという視点から手厚い保護が特に公共事業を通じて行われている。ウルグアイ・ラウンドがその典型かと思います。そういう形での公共事業使い方というのが果たしていいかというのが今問われているのではないかと、このように考えられます。  そこで、今財政構造改革というのに向けて橋本内閣も走り出しているわけであります。昨日、財政構造改革の五原則が公にされました。これからは恐らく聖域なく歳出削減というのを通じて財政赤字対策財政赤字削減をしていこうということになろうと思いますし、それから、二〇〇五年という財政再建目標も、あるいは財政健全化目標も繰り上げられて二〇〇三年になったんですか、より厳しい歳出削減ということが待ち構えているわけであります。  と同時に、財政赤字を含めた国民負担率も五〇%にしたいというわけでありますから、言うなれば退路を絶って歳出削減をしようと、こういう議論になっています。となりますと、恐らく当面、最初の問題になってくるのが公共事業であることは避けられないと思います。  つまり、高齢化等々がある中で、社会福祉の方ですね、これはどうしても自然増要因というのがあるわけでありまして、こちらの方をむやみやたらに削減対象にする。もちろん削減対象にしなきやいけない面も多々ありますけれども、それに比べると、従来どおりの形できたそういった公共事業は再度見直すべきであろうという声が出るのは当然であり、その辺について、財政構造改革との関係において社会資本整備あり方というのがこれから大きな問題としてクローズアップされてくるのではないかと、このように考えております。  そうなりますと、今までやってきたような形の仕組みでの公共投資、これがこのままいっていいかどうかということについては、大きな曲がり角が来ざるを得ない。と同時に、国と地方の間の資源配分あるいは過疎地帯というような意味での低所得対策用公共投資とか公共事業とか、そういった角度で改めて新しい視点から恐らく見直さざるを得ないだろうと、このように考えられます。  そこで、日本公共投資というのは、ほかの国にない幾つかの特色も備えているわけであります。社会資本整備が高まっている、ある程度まで達成された国においては、当然のこと、その社会資本整備とか公共事業というものに対して重要度相対的ウエートは落ちているわけであります。  財政制度審議会で、私、ここ一年数カ月の間に、七、八カ国回っていろんな実態を調査してきましたが、例えば道路一つとっても、ほぼ舗装率が一〇〇%になり、ハイウエーのネットワークができ上がってしまったような今の先進国というのはそれほど強い要望はない。ところが、日本は、地方に行きますと至るところ道路に対する需要がまだまだ根強いといったような違いがございます。そういう意味からいいますと、日本はこれから、外国国際比較において劣っている面がありつつも、外国にないような形での、諸外国にないような形での整備とそのやり方財源調達をどうしようかというふうに改めていろんな面で問われている、このように思われます。  それで、一つ大きな問題は、公共事業の高コスト体質ということだろうと思います。この高コスト体質というのは、一般的に説明されるのは、例えば道路一つとっても、トンネルがあるとか山があるとか、そもそもが国土自体の形がだだっ広い平野にあるような大陸的な国家と違うんだから高くなってしかるべきだという説明があり、ある程度説得力はあると思いますが、依然として入札において指名入札が支配的であって、一般入札にしてそれがどれだけ変わるかという点につきましても定かでない面もあります。  そういう形があって、諸外国に比べて恐らく二、三割は単価が高いんじゃないかというこの公共事業。特にゼネコン絡みの、言うなれば建設業界との癒着等々が言われている中で、これをどうするかというのがやはり財政課題としても重要である。仮にコストを一割削減できるだけでも、言うなれば財政面に与える影響は非常に大きいわけでありまして、この点をどういうふうにやったらいいかというのが実は大きな問題であるわけであります。それが恐らくこれからのあり方を考えるときに一つの大きな柱にならざるを得ないと考えております。  それから、既存の枠組みのまま、これから今までどおりやり方でいいかといったときに、一番問題になるのは道路特定財源の問題ではないかと私は思います。  御存じのように、たしか昭和二十八年、揮発油税石油ガス税、それからその後自動車重量税ができて、それなりに税制の面からいわば目的税化して、特定財源化して道路をつくるという制度ができ上がって今日に至っているわけであります。  確かに、道路事情が悪いときにはそういう仕組みも必要であり、それがこれまで貢献したことにつきましては評価するのはやぶさかではありませんが、当然のこと、ある時期が来たら見直すべきことではないかと、このように考えております。ガソリン税道路だけで使うという仕組みを持っているのは日本だけでありまして、言うなれば、仮にガソリン税をかけて特定財源化しても、公共交通に対する援助なりなんなりに使っているというのが大体この使い方でありますし、それから日本道路事情を見ても、三、四十年前に比べればさま変わりにやはりその整備水準は上がっていると思います。  そういう意味で、いつまでもこういう道路というものを一つの縛りでガソリン税から直に財源を確保するというようなやり方がいいかどうか。ほかの公共事業から見て道路が特段にすぐれた重要度があるかといえば、これはやはり疑問であろうと、このように考えております。  そういう意味で、これから私は、道路特定財源を見直して、この財源を広く公共事業一般に使うということは考えるべきであるし、それから最近とかく問題になっている旧国鉄の長期債務の問題にもこの道路特定財源というのは十分に活用の余力があるだろうと、このように考えております。  それから、話がまた前に戻りますけれども、恐らく従来どおりやり方でいかぬといったときには、当然のこと構造的に見て優先度をどうつけるかという問題が残ると同時に、従来の財源面無償給付である税金を使うのか、あるいは有償資金である財投を使うのか、はたまた第三セクター的に、言うなれば市場原理を使って将来起こり得る利用者負担によるような形で社会資本整備していくのかと、こういうさまざまな面の問題があり、特に第三のルートというのがこれから幾つか問題になってこようかと思います。  つまり、外国ケースでいいますと、アウトソーシングとかそういう形で官でやらなくて民でやるといったあたり、それを第三セクターと組み合わせるか、完全に民営化するかといういろんな形態はございます。ございますけれども、従来官でやっていたものを、疑いもなく官でやる仕事だと考えていたものを民の力をかりる、あるいは民にすべて任せるといったようなやり方が恐らく今後相対的に重要性を増してくるというふうに考えられます。  例えば、カナダで行政改革が華やかに、華やかというか一生懸命やってそれなりに評価されておりますが、そういう面から見ますとこの市場メカニズム活用というのが運輸関係において一番華やかにきいているわけです。つまり、第三セクターであるとか空港とか道路とか、将来ペイするであるようなものは何も官がやらぬでいいだろうと。将来の収益、利用者に対する負担、これを見込んで、言うなれば今借金してこういう公共事業をやればいいじゃないかという動きが今世界の各地で、全部で起こっているとは言いませんが、そういう財政構造改革を成功させた国ではかなり起こっている。  ただ、日本の場合にそれを直輸入していいかどうかとなると問題はあると思います。例えば、本四架橋を見てもあるいは青函トンネルを見ても、本来だったら料金に乗っけてその建設コストを回収できるようなそういう公共事業ケースであるわけでありますが、ことごとく失敗しているわけです。そういう意味で、それをストレートにというわけにはなかなかいかぬかと思いますけれども、従来あった考え方を改める意味から、その市場メカニズム活用という切り口は重要な問題提起になろうというふうに私は考えております。  よく公共事業の中身で私的な部門に任せていいもの、典型的なものが住宅農業であります。これはある意味で、私的財産の価値を高めるために言うなれば公が手をかしてやるという面があるわけでありまして、そういう意味で官と民の役割分担というときには公共事業の中ではこの二つが非常に大きな問題になってくる、このように考えております。  そういう意味で、市場メカニズム活用といったときに、今言った私的なものと公的な面のちょうど真ん中ぐらいにあって疑いもなく官がいろんな面からサポートしていた社会資本整備について目をつけるといったら、そういう形のタイプの公共事業については当然のことメスを加えるべきであろうと考えております。  片や、高齢化社会になり二十一世紀を迎えるに当たって、借金でもいいから今やっておかなきゃいけないという議論がございますけれども、私は、従来駆け足で来た社会資本整備というものについてもう一度過去を見直し、そして他の経費との絡みもあるでしょう、それから社会資本整備の中の個々経費項目の中の相対的な位置づけあるいは優劣の序列があるでしょう、これがどうも惰性で過去のしがらみで延々と続いてきているような気がして仕方がないし、それがまた事実だと思います。それに対して構造改革という視点から抜本的なメスを加えるべきである。  それは、たまたま財政が逼迫し財政赤字が膨らんだというだけではなくて、言うならば社会資本整備そのもの自体からの性格上やっぱりやるべき時期ではないかと、このように考えております。  与えられた時間がどうもなくなりましたので、あと足りない分は御質問いただきましたときにお答えをいたしたいと思います。  それでは、私の最初発言を終わらせていただきます。
  4. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) ありがとうございました。  以上で石参考人の御意見陳述は終わりました。  次に、山崎参考人にお願いいたします。
  5. 山崎福寿

    参考人山崎福寿君) 上智大学山崎です。  今、石先生から、大所高所の観点から社会資本整備あり方についてお話があったわけですけれども、私はそれをもう少し焦点を絞って、もうちょっと具体的な生活関連投資あり方と、それからどういう生活関連投資が必要なのかということについての、よくいろいろむだな投資が行われているというふうに言われていますけれども、本当に効率的な投資というのはどういう投資なのかということについての、それを選別するような基準といいますか、市場メカニズムを使ってどういうふうに最も生産性が高いあるいは効率的な投資を選別していくかという問題についての一つの提案をしてみたいと思います。  最初にまず、昨年の十月に、経済審議会行動計画委員会というのがございまして、そこで土地住宅ワーキンググループというのがありまして、そこのメンバーの上智大学岩田先生や東大の西村先生、法政大学の福井先生と私と四人でこの報告書をまとめたんですけれども、土地住宅の問題について考えていく上では、どうしても社会資本整備、特に生活関連投資をどうするかということについて触れないわけにはいかないわけです。  今、石先生がおっしゃいましたように、住宅自体は私的な財なんだから民間部門にゆだねていいだろうというお話がありましたけれども、全くそのとおりで、ただ住宅そのもの、我々は住宅を選ぶときに必ず住環境というものを考えるわけです。例えば、都心まで出てくるのに何分かかるかとか、あるいは道路がどれだけ整備されているかとか、周りに子供を育てるのにいい環境があるかどうかとか、あるいは音楽や美術やなんかを鑑賞するような機会に恵まれているかどうかとか、そういうことを見て我々は立地というかどこに住むかを決める。特にそういう意味で、生活関連投資充実度といいますか、それがどこに行けば魅力的な公共投資があるのかということが我々いつも関心になっているわけです。  そういう意味で、住宅の問題、あるいは我々の衣食住の問題で言えば住の問題が依然として諸外国と比べて非常に貧困な状態にある。それは住宅自体の質が悪いということと同時に、住環境、その周りインフラがうまく整備されていないということがかなり大きな問題になるのではないかというふうに考えております。それは後でお話ししますように、実は土地問題の本質なわけです。  よく言われますように、日本住宅は遠くて高くて狭い、遠高狭という話がありますけれども、毎日往復で三時間かかるという人たちがもう半分以上いるわけです。通勤に三時間以上かける、それも非常に込んだ非人間的な扱いを受けてひどい鉄道で通ってこなきゃいけない、あるいは首都高に乗ればいつも渋滞であると、そういう状態が続いている。そういう通勤地獄というような問題や、それから中央線なんかに乗りますと、ごらんのようにマッチ箱のような家がばあっと並んでいる。非常に醜い土地利用環境をつくっている。  アメリカやヨーロッパに行って都市環境を見てみるとそういうことはほとんどないわけです。非常にきれいな田園地帯都市環境とが確実に分離されている、そういうことがどうして日本でできないのかというのが我々の一番の問題なのではないかと思います。  それから、神戸の地震があったときにおわかりになりましたように、震災に対して非常に弱い、脆弱な都市環境だというのが明らかになったと思います。  例えば、神戸で地震が起こったときにテレビで見ていて、火災がどんどん広がっていくのに手もつけられないで見ているというような、非常に危機感を持った人がたくさんいると思います。そういうことはやっぱり土地利用の問題、ライフラインといいますか、土地利用と非常に密接な関係があるわけです。  それでは、安全で快適な都市というのはどういうものなのかというのにこたえなきゃいけないわけです。そういう町づくりをするためにはどういうような社会資本整備していけばよいのかということで、次に考えなきゃいけない問題が出てくる。  そこで、いろんなことが言われるわけですね。本当にたくさん、例えば、東京の首都圏ではまだまだ道路を広くしなければいけない、あるいは歩道を整備しなければいけない。安全に子供たちが学校に通うのに、ヘルメットをかぶって通うなんというのは非常に異常な事態だという認識が多くの人にあると思いますけれども、それは歩道というか街路といいますか、それの質が非常に悪いということですね。そういう子供たちやお年寄り、それからハンディキャップを負っている人たちが自由に町を歩けるようにするためにはどういう公共資本が必要なのかということが問題になってくるわけです。  そうしますと、これはもう百家争鳴に近いわけで、こっちの方が大切だとか、地方ではもう絶対公共投資が足りないんだからとにかくここに道路をつくってくださいというような、あるいはこっちへ新線をつくってくれというようなことが起こってくる。  それでは、魅力的な公共投資というのはどういうふうにしてはかったらいいのかという問題になってくるわけですね。そこで、市場メカニズムを使ってみたらどうかというのが私の提案です。最近、経済学者の多くの人たちがこの辺について発言しているわけです。  よく、通勤新線ができたりあるいは道路整備される、そうすると周辺の地価が上がるという現象が見られます。それを土地投機だといってマスコミが非難するわけですけれども、これはどういうことかといいますと、新線をつくったりあるいは新しい駅ができてそこが便利になるということです。便利になると土地としての魅力が高まって、要するにそこにたくさんもっと人が住んでもいいというふうに考えるようになる。その結果、土地に対する需要がふえて地価が上がる。これを全部見越して土地投機が起こるわけですね。言ってみれば、情報が流れた段階で、ここら辺にどうも新しい駅ができそうだ、あるいは通勤新線がここを走りそうだということがわかった段階でもう地価が上がり始めるというようなことが、特にここ最近は地価が下がってますけれども、二十数年来、戦後ずっとそういうことが起こってきたわけです。  ですから、例えば地価がたくさん上がるということはどういうことかというと、魅力的な公共サービスがそこで生み出されているからだと。つまり、地価がたくさん上がるということは、たくさんそこに住んでもいいということをみんなが考えている。その結果が高い地価になって反映されてくる。だから、例えば地価で、土地の値段の要因分解といいますけれども、適当にいろんな公共資本の、どの公共資本によって地価が上がったのかということをうまくより分けてやることができれば、どの公共資本から地価が上がったのかということを調べることができる。  そうすると、たくさん地価が上がることは、効率的な公共事業あるいはみんなが欲しがっている公共サービスがそこに追加されたということを意味しているわけですから、そういうデータを使って、あるいは地価の上昇分みたいなものをうまくはかってあげれば、それによって魅力的な公共事業なのかそうでないのかということがわかる。逆に言うと、地価の上がり方が少ない公共事業というのは魅力的でないということです。多少誤解を恐れずに申し上げているんですが、要するに地価を上げることは決していいことではないと思いますけれども、そういうふうに地価自体を一つの基準としてやればいいだろうということですね。  簡単に申しますと、例えば十億円の公共事業をしたときに、費用は十億円ですね、地価が十億円以上上がらないような公共事業はやるべきではないということです。自由に我々が住むところを決めている以上、魅力的なところに人が集まってくるのは当然なわけです。多くの都市においてもいろんな地価の差が出ています。それはさまざまな要因によるところがあると思いますけれども、魅力的な公共サービスが多いところと少ないところではかなり地価の差があると思います。そういう住環境の違いを反映しているわけですから、それをうまく使ってあげて公共事業の選別の基準にしたらどうかというのがきょうの提案の趣旨です。  もう一つは、それだったら公共事業はどれがいいかはわかった、じゃ財源はどこに求めたらいいんだということですけれども、言ってみれば地価の値上がり分というのは地主のものになってしまうわけです。地価の値上がり分というのは言ってみればその人の努力でもたらされたものではないわけです。今言ったように、公共事業あるいは魅力的な公共財、公共サービスが提供されたことによって地価が上昇するということがあるわけですから、言ってみればそういう、ウインドフォール・プロフィットといいますけれども、棚ぼた式に落ちてきた利益については公的に利益を還元する必要がある。それを要するに税制の財源として用いてはどうか。  先ほど申し上げましたように、十億円の公共事業をやったときに地価が十億円以上上がらなきゃいけないわけですから、その分を全部とは言わないまでにしても相当部分吸収して、開発利益の還元といいますけれども、開発利益を吸収して、それを公共事業財源に使ってはいかがか。そのための土地税制としては土地譲渡所得税というのがありますので、譲渡所得税をうまく活用してあげてはどうかということです。最近、譲渡所得税は取引を阻害するのでよくないんだという議論がありますけれども、それはまた土地含み益税という別の税制を使えばうまく凍結効果は防げますので、譲渡所得税を使うということが一つ方法として考えられていいのではないか。  これは、分配上何が公平かということからいえば、公平の観点からも多くの人が認めてくれることではないか。つまり、地価の値上がりというのは地主の努力によってもたらされたものではなくて、多くが公共事業の便益によって引き起こされたものですから、そういうものは地主の手に渡すよりは、地主から吸収してしまった方が公的な意味でも望ましいのではないかというのが分配の公平性という観点からも言えるということです。  最後に、公共事業の問題で、地方でももちろん今のような基準を使って、本当に必要な公共事業というのは地価を高めるような公共事業でなければいけない、それはどこの地域についても応用できることですから、魅力的なそういう選別の基準をきちんと設けることが必要であろうというのが基本的なきょうの私のメッセージです。  具体的に、そういう意味でもう少し都市整備するときに、むしろ地方よりも私は首都圏を射程に置いて議論をしますけれども、都市部でどういうことが必要かというと、きちんとインフラ整備するときの事業としては土地がまず必要になってくるわけです。先ほどの、子供たちやお年寄りが安全に歩ける歩道や道路整備するためにも、今ある建物を集約的に利用する必要がある。  そうすると、今のような低い容積率のもとでというのは土地のオープンスペースを出しにくいわけです。オープンスペースを出すためにはどうしても土地を高度利用しなければいけません。そのためには容積率規制や日影規制という形でのいろんな規制を撤廃して、容積率をどんどん高めて、ちょうどニューヨークのマンハッタンのように山手線の中は高い建物が建つというようなぐあいにしなければいけないのではないかというふうに私は考えております。  要するにその上でオープンスペースができます。つまり、防災上安全で、ライフラインを確保するためにはかなりのオープンスペースを必要とするわけですけれども、そのオープンスペースを拠出する、供給していくためには、今ある土地利用のあり方を変えて、低度利用じゃなくて高度利用して高い建物を建ててそこに多くの人が住む。郊外はもうちょっときれいな田園やのんびりと暮らせるような豊かな町をつくっていくということが必要である。そのためにも、どうしても土地の高度利用というのは欠くことのできない重要なポイントであるというのが私の考えです。  具体的な手段として、容積率規制の緩和や敷地や建物を共同化していくということ、それから神戸の震災のときに問題になりましたけれども、広い道路を確保するということが延焼を防ぐんです。つまり、火災をみんな見ていますと、道路のところでかなり火災がとまっています。あるいは高いビルが建っているところで火災がとまっています。そのためにも、高度利用をぜひして、震災に強い町づくりというのをぜひやらなければいけないのではないかというふうに私は思います。  それから、そのほかにここで今問題になっているのは、そういう共同化を進めるときにかなりいろんな問題が起こるわけですけれども、借地借家法が一つのネックになっているというのが私の認識です。定期借家権の導入とか、それから土地収用という、ごね得ですね、あなたはここをどいてください、セットバックしてください、ここに歩道をつくりますと言うと、そこに住んでいる人たちが必ず嫌だと言います。あるいはみんなでビルを建てかえましょう、あるいはアパートはみんな危ないから、もうこのアパートは古いから、地震があったら今度はみんな死んでしまいますよということがあったときに、建てかえましようと言っても、一人でも反対するとアパートは建てかえられないという法体系になっています。  そういうことはぜひやめて、八割ルール、フランスやヨーロッパの国では、七割とか八割の人たちが賛成したら建物が建てかえられたり、あるいはセットバックをする、つまりそこをどいてもらうというようなことがあります。  ですから、一〇〇%でみんなが合意するなんということは絶対ありませんから、七割あるいは八割の人が合意したらそういうことができるような法体系に改めるべきではないかというのが土地収用の適正化の問題と絡んでどうしても必要なことだと私は思います。  それから、混雑の問題があるわけですけれども、混雑の問題については、これも市場メカニズムを使って混雑税を導入してはどうか。朝晩の通勤ラッシュ時には料金を引き上げて、鉄道や首都高は混んでいる時間は料金を例えば倍にするというようなことが必要なのではないか。そのかわり、昼間のすいている時間はただみたいにする。それによって需要がなだらかにされて、企業に対してもフレックスタイム制を導入するような誘因になると思います。  ですから、多くの人はこれについて混雑税を導入するなんてばかげた議論だというふうな反論がありますけれども、我々の非人間的な扱いを受けるあの混雑した電車を見れば、あながち暴論とは言えないのではないかというふうに考えております。経済学者は混雑税を積極的に導入しろというふうに言っておりますけれども、なかなか皆さんの意見は一致しないようです。  もう一度、混雑税を導入して、その財源は鉄道の拡幅、複々線化とか、あるいは首都高であれば首都高のレーンをもっとふやすというような財源に充てることもできるわけであります。将来的に言えば、それの方がずっと効率的な公共事業の拡充につながるのではないかと考えております。  時間になりましたので、以上で終わります。
  6. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) ありがとうございました。  以上で山崎参考人の御意見陳述は終わりました。  これより両参考人に対する質疑を行います。  先ほども申し上げましたように、質疑時間は八十分程度といたします。質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って質疑を行うようお願いいたします。また、質疑答弁とも、これも重ねて申し上げますが、簡潔によろしくお願いいたします。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  7. 三浦一水

    ○三浦一水君 ありがとうございました。  いろいろ御高説を賜ったわけですが、今お話を伺っていて、大都市というのが一つの限界点というのをやっぱり感じなければならないんじゃないか、そんな気がしました。  先般来、公共工事を勉強させていただいていて、大都市で高速道路のわきに防音壁をつくる、あるいは防音効果の高い道路をつくる、あるいはバイパスに重ねてまたバイパスをつくる、あるいは渋滞緩和のためのVICS等に見られるような高度な設備をしていく。そういう何か非常に人口増加に対してイタチごっこの公共事業になっているという側面も、日本公共事業の高コスト化で見落とせない点じゃないんだろうかなと、私なりに素人考えをしているんですが、その辺先生方どう思われますか。一  加えて、いわゆる大都市一つの人口の包容力というんですか、許容量というんですか、その辺をどう見られるのか。あるいは一方で、多極分散ということについてはお二人の先生どのようなお考えをお持ちか、それを聞かせていただきたいと思います。
  8. 石弘光

    参考人石弘光君) じゃ、私の方から最初にお答えをいたします。  今のお話は、施設の整備とか公共事業に直接結びつく面、もちろんあるんですが、直接ではなくて、大都市集中化を社会インフラ整備視点からどう見るかという御指摘だと思います。  確かに、東京、大阪、人口が集中するに応じて社会的インフラはおくれる一方で、後追い的にいろんなことをやっていますよね。それを今後続けるか、それとも何らかの、例えば遷都をするとかあるいは首都圏を移転するとかという形で地方に移すかというような、今それが問われているんだろうと思います。  私も実はここはまたしかとした意見を持ち合わせてはいないんですけれども、多極分散は確かに連邦国家みたいに、ドイツを見ればわかるように、幾つかの似たような都市が連立しているような形の方が多分いいんでしょうけれども、日本はこれまでどうしても東京、大阪、太平洋ベルト圏に人口が集中している。それはそれなり日本の高度成長も支えたし、日本の社会をつくってきたと、こう私は思います。  だから、これまでは確かに後追い的であれ、公共投資を入れてパッチワーク的ではありますけれどもやってきた。これを今後続けていいかということになりますと、私はかなりその点は問題はあろうなと思いますが、ただ国対地方関係でいいますと、都市住民は自分の払った税金はほとんど返ってこない。大体地方に行っているわけですね、たしか社会資本整備も含めまして。その辺の地域間の不公平があるのは事実でございますので、そういう地域間の資源の配分も含めてどうするかというのが大きな問題だと思います。  ただ、首都移転とか遷都を含めてそういう人工的な圧力によって東京の人口を減らすと、それは私は減らないと思うんですね。かえってそういう何か人工都市をつくって、そこでまたインフラを入れてというのが果たして効率的かどうか。山崎さんの言われたように、そこそこで地価が上がって回収できるといったようないいめぐり合わせのところができればいいんですけれども、なかなかそういうふうな机上のプランどおりいかない。そういうことになりますと、何か外圧的に東京の人口を減らすようなやり方というのも、これまた問題ではないか。そういうことになりますと、社会資本整備というものをきっかけにして大都市をもう一回見直そう、あるいは人口をどこか移転させようというのはちょっと無理もあるんじゃないかなというような気がいたしております。  直接お答えになっていないんですけれども、言うなれば、今その辺を多極分散ということもひっかけまして、都市問題どうしようかと。その問題、実は悩ましい問題で、私もお答えが直接出ていないんですけれども、まあこれ以上の人口集中は困るけれども、何か外圧的にやるのも問題じゃないかなという気はいたしております。  以上です。
  9. 山崎福寿

    参考人山崎福寿君) 大都市の限界という話でしたけれども、基本的に結論から申し上げますと、私も首都移転については反対でして、東京というところは、集積の利益と我々呼んでいますけれども、たくさんの人たちやたくさんの企業が集まって、それぞれ大きな利益を得ているわけですね。そういう便益を我々一切捨ててしまっていいかどうかということなんです。  例えば、大きな都市と小さな都市を比べると、文化的な背景が全然違うということを言われます。大阪の人がよく言うんですけれども、東京と比べるといろんなコンサートやなんかを見ようと思っても、東京では三回も四回もコンサートを開くんだけれども、大阪は一回しかやらない、九州なんかほとんど来ないというような話を聞きます。  つまり、そういうコンサートや文化的な事業を始めたときに東京でないとペイをしない。というのは、一つはみんな東京に集まって、集積の利益を実現しているからなわけですね。ですから、小さい都市にしてしまうと、そういうものが、みんなにとって文化的な公共的なサービス、一種の公共サービスなのかもしれませんけれども、文化的な消費財がほとんどもう消費できなくなってしまう可能性がある。ですから、大都市のそういう便益を殺さずに大都市の持っている弊害だけを除去してあげればいいだろうと。  大都市の持っている弊害とは何かというと、先ほど申し上げましたように、実は混雑の問題なんです。電車が込んだり高速道路が渋滞する、あるいは道路はいつも込んでいる、そういうことが大都市の問題で、それ以外の問題は余りないんじゃないかと思うんです。  ですから、これを経済学で言うと外部性といいますけれども、そういう外部効果をうまく内部化してやるような市場メカニズムを使えというのが、先ほど申し上げました混雑税を導入したらどうですかということなんですね。そうすれば混雑の問題は解消しますから、そういったマイナスの、つまり集積によってみんな人があるところに集まってきてこうむる負の側面ですね、マイナスの側面をうまく緩和してあげて、あるいはなくしてあげて、そして一方で集積に伴って発生する利益だけを我々は享受できればいいのではないかということです。  ですから、我々もよく考えるんですけれども、一極集中によって何がまずいのかということを一度きちんと考えてみる必要があるのではないかという気がいたします。
  10. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 きょうはお忙しい中、本当にどうもありがとうございました。  今の混雑税というのも大変おもしろい発想だと思いながらも、果たしてどういうインセンティブがどこまで継続するのかというあたりが一番問題かなと思いながら伺っておりました。  石先生に伺いたいんですけれども、石油税が道路財源になってこれだけ長いこと続いてきたということについては、かねがね大変違うんではないかと私も思い続けてまいりましたけれども、今、ほかの公共事業あるいは国鉄の債務に使ってはどうかというふうにおっしゃった。  最近、アメリカで知ったことなんですけれども、この間、石油の流出がありました。それと同じようにバルディーズ号の流出があったときに、アメリカのオイルタックスというのはそういった石油の被害を回復するリハビリテーションのために使われたんだそうです。しかもそれも時限的な使い方だったということを聞いて、大変に違うというふうに思って、アメリカから来た人も日本のオイルタックスというのは道路だそうですねと言って大変驚いていたんですけれども、その本質からいうと、私は、目的税というのは日本では石油税がああいう形なものですから、目的税はない方がいいとずっと思ってきました。  しかし、短期的な、それからしかも非常にインセンティブの強い使い方で目的税というのもいいんではないかというふうに思っております。確かに、国鉄の赤字とかそれから林野財政の赤字とかにこれを使ったら本当にいいと今おっしゃったことで思ったんですが、と同時に、例えば福祉の領域ですとか環境の領域ですとか一時的に費用が必要なところにも広げてはどうかと思うんですけれども、先生のお考えをお伺いいたします。
  11. 石弘光

    参考人石弘光君) 大変重要な御指摘だと思います。ただ、目的税という言葉を使い、道路特定財源化すると、やっぱり入ってきたものと出るものの因果関係がないとちょっとまずいんですよね。そういう意味で、世界じゅうで一番是認されがちなのが、揮発油税というので道路をつくる、これは直接にリンクしています。そういう意味で、さっきおっしゃられましたオイルのああいうものに使うのも、まあオイルが汚染源でありますからそれなり意味がある。ただ、一たんリンクをつけてしまいますと、もう昭和二十八年以来延々続いてきて切れない、財源が出てきたから重要度の落ちたものでも使っちゃおうと、この問題が一番困るんですよね。  だから、これがうまく時限的に短期でおさまり、その使途の方で国民的に合意があり重要だというようなところであれば、そのリンクは大いに認められると思うが、一たんつくった後の政治的な難しさを考えると、私はなかなか賛成しがたい。ただ、私は重要度からいうと環境税に使った方がいいと思っているんです、この道路特定財源は。  環境税というのは、御存じのように化石性燃料が汚染源になりますから、その化石性燃料というのはまさに石油であり、そこが源泉でありますので、今後目的税化するんだったら、道路よりは環境保全のための方がはるかに意味がある。ただ、それも繰り返し申し上げませんが、目的税に一たんした後のアフターケアが重要であると、これだけちょっと強調しておきたい。それから、道路は目的税にするには重要度が落ちたというのが私の意見であります。
  12. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 ありがとうございました。
  13. 中島眞人

    ○中島眞人君 お二人の先生にちょっとお聞きしますけれども、地方出身の私は、何かお二人の先生のお話を聞いていると都市だけでよろしいと。私は聞いておりまして、地方はますます寂れていくのかなと、こんな感じもしておるんです。  例えば、地方財政という面から公共工事等をいろいろ見てまいりますと、平成三年をピークに地方税はもうはい上がれないような低迷をしているんですね。同時に地方の産業というのを見ますと、昭和四十年代のころに地方に工業立地がされました。すべてそれは製造業です。そういう中で、ますます地方で産業のいわゆる空洞化が起きる、そして低迷をしていく。そういう中で地方自治体は一生懸命歯ぎしりをしているんですけれども、先が見えない。社会資本整備というものは、まだまだ諸外国に比べればおくれておるんだけれども、急速に伸びてきたからここで一服したらどうかということで一服されたら地方は大変だと私は思うんです。  そういう点で、特定財源の問題でも、ここでいろんな形に、まだ地方にとってみれば、道路整備というようなものを一つの契機にして製造業から流通基地に変えていくというような問題の地方の発想というものをやっていくのには、どうしても道路というものの整備が必要になってくるわけですね。そういう点で、先ほどは都市の混雑、都市環境悪化からくるそういうふうな問題に対して視点が絞られておったんでありますけれども、大体二十万から三十万都市を中核とした地方、四十七都道府県の大都市を除いた県というのは大体平均的に二、三十万の都市を中核としたそういうふうな地域なんですけれども、これらをどういうふうにこれからやっていくのか、こういう点でぜひひとつ都市から地方へちょっと視点を当てた中で目を向けて御意見をいただきたい、こんなふうに思います。
  14. 石弘光

    参考人石弘光君) 私からお答えいたします。  今の御指摘、当然出てくる反論であり御意見だろうと思って、この種の議論もしなきゃいけないと私も思っております。私も財政学をやっておりますので、地方財政で時々地方に行っていろいろ地方の首長さんあたり議論することもございます。過疎地というのも随分訪ねた経験もございます。  御指摘のように、難しいのは社会資本、まあ道路としますと、道路が本当にその地域の振興に役立って、道路として本来の機能を発するような方に使われるという地区と、それから単に道路をつくるという過程において雇用を生むだけで、過疎はいつまでたっても直らない。つまり、もっと過激なことを言いますと、村滅びて道路残るというところもないことはないんですね。そこの仕組みを、仕分けをどうするかというのが一番重要な問題。  これまで景気対策もあり公共投資重点型でやってきましたが、どこでも満遍なく細かくめり張りなくやってきたと思うんですよ。政治的にはもうどうしても自分の、何というか利益誘導型のこともないことはないと思いますので、そこを地域ごとにどういうふうに戦略をつけるかというところがやっぱり大きな問題。  そのときに、私は、市町村合併も含めて、地域地域として独立できるような、そういったスペースを確保するという視点と、この社会資本整備を組み合わせ、それを納得させるだけの証拠といいますかエビデンスといいますか、こういうものをつけて議論しないと、単に満遍なく、当たりさわりなくばらまいているのがこれまでの現状じゃないか、こう思っていますので、これについて何か具体的な手法なり考え方をこれから入れてこないとだめじゃないかなというふうに考えております。
  15. 山崎福寿

    参考人山崎福寿君) 今のお話は全くそのとおりだと思います。  地方をどうするかということですけれども、まず、石先生、先ほどおっしゃいましたけれども、分配政策として地方の人が貧しいんだという発想で話をされる、前提とされていることがどうも皆さん多いようなんですね。地方にも裕福な人はたくさんいるわけです。それから都市にも貧しい人がたくさんいるわけです。ですから、公共事業という形で分配政策、つまり地方へ向けて再分配するというようなやり方だと、都市部の貧しい人の税金で地方の裕福な人を保護することもあり得るわけです。つまり、大都市に住んでいる貧しい人だってたくさんいるわけで、その人たちの税金を使って地方の裕福な人を助けることになりかねないこともあり得るということで、そういうことを気をつけなきゃいけない。  ですから、分配政策は税制を使ってやるべきで、公共事業を使ってやるべきではないというのが私の考えです。ですから、どこに住んでいようが、貧しい人は貧しい、都市でも地方でも貧しいし、その人たちに一定の再分配を施すというのは、みんなが持っている正義の観念とそんなに乖離しないと思うんですね、合致すると思うんですけれども、そういう意味で、公共事業を使って、とにかく田舎は貧しいんだと、とにかく道路はつくればいいんだというような発想についてはちょっと私は抵抗があるんです。  それからもう一つは、地方が低迷しているのをどうしたらいいのかというのは、ぜひ地方分権をして、地方自治体に有能な若い人たちがたくさん戻ってくるような、魅力的な政策が行えるように制度を変えていくことが必要だと思うんです。財源はやらない、権利はやらないというような今のスタンスでは、集権化したようなやり方では地方はいつまでたっても魅力的なものにならないで、若い人たちは東京へ行ってしまうんではないかという気がします。  それから、混雑税をかけることによって、実は東京の規模が縮小して、それで地方に人々が戻っていく。こんな込んでいるところは嫌だと、混雑税を払うぐらいだったら企業は外へ出ていって、もっと魅力的な若い人たち地方から直接雇用した方がいいんだということにもなるかもしれません。そういう意味で、混雑税の効果というのは強調し過ぎることはないと思います。  以上です。
  16. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 本日は、大変有意義なお話ありがとうございました。  実は、石先生の「財政構造改革白書」という御著書の中の公共事業関係のところを読ませていただいた中に大変興味のある文言がありましたので、私はきょうはそれについて御質問させていただきたいと思うんです。  先生はこう述べられているんですね。消費税を負担する一般大衆から公債という金融資産を保有した一部富裕層への所得移転を意味するから、消費税というのは明らかに所得配分上不公平だということですね。ですから、消費税をアップする前にもっと具体的に財政の構造を改革すべきだというお考えに対して非常に私は興味を持ったんです。  そして、きょうのお話の中で、こういうことを改革するためには先生は三つの提案をなされていて、一つは特殊法人の廃止を見直す、あるいは許認可の権限を見直す、そして三つ目に公共事業、社会保障を見直すんだと、こういうふうに見直すべき改造の三点を挙げていらっしゃいますけれども、こういう論旨から言いますと、ことしの、九七年度の日本の予算というものを先生はどのようにとらえられるかということを参考までにお聞きいたしたいというふうに思います。  また、山崎参考人からは、大変興味ある、要するに土地の値上がり率によって公共投資重要性の尺度とすべきだと、これは確かに私もわかりますけれども、その尺度とするのは大体何年をめどにして尺度にするのか。  先ほどの石先生お話からすると、公共投資というのは、そのときばっと集まって、それでもう使われなくなってしまうようなものはよくない、だから長期配分というのがこれから必要だというこの御意見とどう整合性があるのか、その点を両先生にお聞きいたしたいと思います。
  17. 石弘光

    参考人石弘光君) もう来年度に入るわけでありますけれども、来年度予算というものは構造改革元年と位置づけて、歳出を切り詰めたり、財政赤字を減らしたり等々したという面で、私はある意味で評価し得ると思います。  問題は、元年を次年度以降どうつなげるかというところの、次年度以降の各論の部分にあると思います。ただ、大枠でそこそこ評価できても、個別に見ますと、やはり相変わらず歳出構造というのは硬直的なままであって、どこにめり張りがついたかというあたりになりますと、ちょっとまだ踏み込みが足らぬのかなという感じがいたしております。  そういう意味で、先ほど申し上げましたけれども、財政構造改革五原則というのがきのう橋本首相から公にされたわけでありまして、ああいうものとこの来年度予算がうまくくっついて、そして各歳出についての、言うなれば削減度なりめり張りをつけた形での予算の順位というのが今後つけられないと元年が生きてこないと思います。そういう意味で元年の評価というのはまさに九八年度以降の予算編成にかかってくるし、この八月のシーリングにひとえに、シーリングと今度は言わないかもしれませんけれども、それをどうつくっていくかということにかかってくるんだと思います。  そういう意味で、ある評価をしてもまだまだこの評価というものが本当に生きていくかどうかわからないというのが私の来年度予算に対する率直な感想であります。
  18. 山崎福寿

    参考人山崎福寿君) 今のお話で私の申し上げたことを的確に御理解いただきまして、どうもありがとうございます。  長期的な整合性のお話ですが、我々、土地を買うときに、あるいはどこへ住むかと選ぶときにずっと将来のことまで考えているわけですよね。例えば、きょうやあるいは一年先や二年先だけじゃなくて、もっとずっと先のことまで考えて、この土地に住んでいて将来どれだけ便利になるかとかなんとかということまでみんな考えているわけです。一年や二年ぐらいのタイムスパンじゃないと思うんですね。土地を買う人というのは大体そういうふうにして考える。あるいは転売を目的にして買う人でも将来の転売時点でどのくらい土地が上がっているかということを考えるわけですから、土地という財産、資産はすべてそういう将来にわたる地代といいますか、地代の流れというのを全部織り込んで地価というのは形成されますので、公共事業を評価するときの基準としてはまさに地価というのは最適なものだということなんですね。  つまり、長期にわたってどれだけの魅力的な公共サービスが生まれてくるか。例えば、ある道路をつくったときに、それが将来にわたってどれだけみんなの役に立つかということをみんなが評価してそこで住むか住まないかを決めますから、そこに対する土地需要というものはそういう公共サービスの評価というものを全部織り込んで評価されることになるわけです。  ですから、まさに地価というのはそういう将来のことまで、長期的なことまで視野に入れて評価される。その意味でいえば、公共事業の評価というのはまさに地価を使った方がいいということです。むしろ地代とかという一年一年変わるようなものを使うよりはずっといいということです。
  19. 小野清子

    ○小野清子君 石先生山崎先生、ありがとうございました。御質問は山崎先生の方にさせていただきたいと思います。  公共投資はもういいのではないかという声がよく聞かれるわけでございますし、大都市地方という問題も今話題となったところでございます。東京も一つ地方だと私は認識をさせていただいております。  そんなことで、例えば千代田区の場合には、昼は百万であり、夜は四万であり、過疎と過密が二十四時間の中に両方存在する。あるいは武蔵村山市のように、市でありながら駅がない町があったり、まだまだ公共投資をしなければならないところがたくさんございますし、特に山梨から来る立川の複々線の問題はいまだに手つかずであったり、やはり都市の中でも貧しい部分と、先ほど先生がおっしゃったように地方でも大変豊かな面がある。そういった中におきまして私が感じますことは、大正時代の計画道路が今やっと町の中で形が変わりつつあるんですね。考えてみますと七、八十年かかっているわけです。  こういうことを考えますと、先ほど先生のお話の中で、すべての人の合意を得られないと土地収用がだめだと、これがフランスは七、八割の方でよろしいと。私は以前、アメリカは白地図にすべての計画をばっと入れて、これにはすべての人が従うんだというお話を聞きかじりですけれども聞いたことがあるんです。世界のその辺の様子を、先生の御存じの限りちょっとお教えいただけたらと思います。
  20. 山崎福寿

    参考人山崎福寿君) どうもありがとうございます。  要するに、収用の問題で言いますと、日本は地権者、土地の所有者の権利を一〇〇%認めてしまって、その地権者がだめだと言ったらもう絶対だめ。  それで、三鷹で前ありましたけれども、何十年も道路を広げてここにバスを通そうといっていたのに一軒とか数軒の土地所有者が反対したために何十年もバスが通れない狭い道路だったということがあります。やっとそれができるようになったというのは最近、二、三年前に新聞のニュースになったと思いますけれども、そのように、一たんだれかが一人でも反対すると町が全然変わらない。本当にみんなが必要としている公共サービスが何十年もできないというようなことが起こります。  私も外国のことについてそれほど詳しいわけではないんですけれども、イギリスの例でいきますと、まず住民参加をさせて、住民に自由に議論をさせる。その上で一たん、地域人たちだけじゃなくてアウトサイダー、その地域に潜在的に住むかもしれないような人たち、実際には有識者、学識経験者みたいな人たちを入れて、そこで本当にその事業が必要なのかどうか、つまり道路を広げることが必要なのかどうかというのを十分市民の中で議論してもらう。それで、大体もう十分に議論を尽くした上で、みんなそれでもやろうということになる。つまり、そのときに六割だか七割ルールというのを最後に使うと思うんですけれども、そういう審議にずっと長い時間かけるんですね。一たんそれで決まったら、ゴーサインが出てすぐ収用にかかるというようなことがイギリスの例であると思います。  ですから、日本は、そういう市民参加の議論がなくて、いきなりぽんと収用裁決がおりる。あとはずっとごねて何にもできないというのが普通じゃないかと思うんですね。それで、一軒も実際の収用がかからない、ほとんどかからない、かかったことがないというのが今までの歴史だと思いますけれども、ヨーロッパの国では市民参加という形で十分に議論を尽くして、そして尽くした上であとは文句は言わせないというようになっていると思います。ですから、そこにはかなり民主的なプロセスを経て長い時間を必要とする。ですけれども、最終的にはそれが一番効率的だというふうに私は考えて、そういうものをどんどん採用すべきではないかというふうに考えております。
  21. 小野清子

    ○小野清子君 ありがとうございました。
  22. 牛嶋正

    牛嶋正君 石先生とそれから山崎先生に一問ずつお尋ねしたいと思います。  石先生は、先ほど社会資本整備市場メカニズム活用ということをおっしゃいました。それから二番目の項目では、長期資源配分機能というのを重視しなければならないというお話でした。  これらを考えていきますと、結局公共投資の場合の投資基準というのが問題になるわけですが、我々は、これまで財政学の講義では、社会資本投資基準としてはまず安全性というふうなものを第一に掲げて、それから効率性というものを第二番目に掲げてきました。効率性を議論するときには、先ほど山崎さんも説明されましたように、今用いられておりますのは費用便益分析であります。この場合に非常に問題になりますのは、便益の測定が、必ずしも普通財のように特定の個人にその便益が帰属するということは明確でないわけでありまして、非常に外部性を持っているわけですね。ここの測定のところが問題。しかも、最近では環境に与える負荷の問題も基準の中に入れてこなければならないということになってきております。  このあたりが必ずしも、恐らく人口の密度の高いところで効率的な公共投資がなされるのでしょうけれども、今申しました安全性とかあるいは環境に対する負荷率みたいなものを考えていきますと、そこで地域的なバランスがとれていくのかなというような気がするわけですけれども、この点について、公共投資投資基準をどんなふうに考えていったらいいのか。市場メカニズム活用ということをおっしゃっておりますので、その点をお尋ねしたいと思います。  それから、山崎さんについては、地価がどう決まるのかということが非常に問題だろうと思うんですね。開発利益の還元ということをはっきり打ち出すためには、公共投資がなされて、それによってどれだけの地価が上昇したのかということですね。地価というのは相対売買が多いわけですから、非常にいろんな要素が入ってまいります。自分は今この土地がどうしても欲しいんだというふうな人はかなり高い地価を申し出たりするわけで、そうなりますとその公共投資によってどれだけ地価が上昇したのかというのを非常にはっきりと測定できなければなりません。そのためには地価形成のメカニズムというのをどんなふうに山崎さんはお考えになっているのか、その点教えていただきたいと思います。
  23. 石弘光

    参考人石弘光君) 御指摘のコストベネフィットも含めまして、非常に難しい問題なことはもう牛嶋先生御自身がよくおわかりと思います。  例えば、コストベネフィットがぴしゃっとできれば、本四架橋、三本の橋なんというのは一挙にけりがついて一本で済んだかもしれない。あのときにいろいろ計算を見ましたけれども、どこの橋も我田引水的に一番自分のコストベネフィットが高い、つまり便益が高いという言葉で出せるようなそういう投資基準になってしまいがちなんですね。それで私は、これは観念的に大学の財政学の講義では使いますけれども、実際の世界では余り使えないなとかねがね思っているわけです。  きょう山崎さんのお話を聞いていて、一つの突破口としてベネフィットの尺度を土地の値上がりに求めた、これはある意味で客観的である、今から土地の算定の仕方も御説明があろうかと思いますが。少なくとも、あいまいもことした便益というものを土地の値上がりにひっかけてやると。私は、これは一つの行き方で、これにプラスアルファ、マイナスアルファをくっつけて、言うなれば環境汚染についてはマイナス項目にするとか、別途地域の福祉に役立てばプラスアルファにするとかというようなやり方で使えるならば使うべきだろうと思いますね。  ただ、この問題は、恐らく使うと地方投資はほとんどなくなるだろうと思います。逆に言えば、今地方でやっておって地価の値上がりに役立つような物件というのは何割ぐらいあるかわかりません。ですから、これは恐らく都会型あるいは人口がある程度あるところの物差しで、恐らく地方の方にはまた別な物差しがないと公共投資は行かない。  ただ、私は、所得分配政策、社会政策と公共投資資源配分機能がごっちゃになっているところが今一番まずいと思っているんです。ですから、過疎対策公共投資でやるというよりは、もう過疎対策というのはいつそ所得補償をしてあげた方がずっといいんですね。資源の効率的配分からいうと役に立たないものはつくらない方がいいんだから。  そういう意味で、そういうものまで含めました投資基準というのは難しいなということだけで、今申し上げた市場メカニズム活用としては、土地に媒介させたところが一つ可能かなという感じがしています。これはもう山崎さんの方が御専門でありますから、次にバトンを譲ります。
  24. 山崎福寿

    参考人山崎福寿君) 牛嶋先生から、今、地価はどういうふうに決まるのかというお話ですけれども、まず私が申し上げましたように、公共事業の便益を評価するときに地価の値上がりを使ってはどうかということですけれども、その意味でいえば地価のデータをもっと整備する必要があるわけですね。  アメリカで実際に使っている例は、たくさんのこういう地価データを使いまして、サンフランシスコの地震があったときに高速道路を復旧する。高速道路を直すのにかなりのスピードで直したんですけれども、そのときにこういうふうな契約をつけていたんですね。インセンティブコントラクトと言うんですけれども、契約期間よりも一日短く、早く復旧した場合には、建設会社に対して何方ドルの追加的な支払いをしますと。その基準にしたのがこの地価のデータなんですね。  どういうふうなことかというと、一日でも早く道路が復旧しますとたくさんの利用者がいる。トラックや何かが自由に走れる。それによって得た便益がどれだけかということが地価やその他のデータを使って求められているわけです。ですから、一日当たりそのフリーウエーを使って市民生活の上でどれだけの利益があるかということがわかっているわけです。ですから、その金額を建設会社に戻してあげるんですね、ペイバックしてあげる。  一日でも早くすれば一日でもより早く我々は市民生活をエンジョイすることができるようになるわけですから、その意味でそこによって得た利益分、最高限そこまでは建設会社に一日でも早くつくってもらった方がいいわけです。ですから、そういうインセンティブ契約をつくってやったおかげで、サンフランシスコの地震のときにすごいスピードで高速道路が復旧したということがあります。  ですから、アメリカのそういうマイクロデータと言いますけれども、地価についてのマイクロデータがたくさん整備されていて、公共事業によってどれだけの便益があるかということがよくはかられている。たくさんの研究の蓄積があります。我々も、今牛嶋先生おっしゃられたように、日本の地価データをもっとたくさん整備して、それを用いてどの公共事業がどういう、あるいはどういう公共事業が魅力的なのかということについてもうちょっときちんとお話しできるような研究の基礎を早く築きたいというふうに考えております。
  25. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 石先生に二問質問いたしたいと思います。  一つは、今の日本公共事業やり方というのは、必要に応じて毎年これこれのものが必要なのでこれこれだけ年額幾ら必要だ、公共事業費がというのじゃなくて、いわば総額方式でもって、ごく簡単に言えば約五十兆のお金だとか毎年つけられる。それがついた上でいわゆる箇所づけというふうなことが行われていく。そんなような方式で行われているのが現在の状況です。  先ほどからも出ていましたそういうやり方でもってその公共事業全体というものを圧縮していくと、先ほどから出ていたいわゆる農村地域、過疎地域などというようなものもともかく全体として圧縮されてしまうということになれば、いつまでたっても過疎地域は過疎地域だ、そっちの方は発展しない、そういう結果が出てくるように思うんです。やはりこういった点がことしは必要なんだ、来年は必要なんだ、だからこういうふうに公共事業費をことしはこうするんだという方式に改めていく必要があるんじゃないか。総額ありきという形のものではなくて、必要に応じてという、そういうふうに考えるんですが、いかがなものかということが一つの私の質問です。  それからもう一つは、公共事業費を考える場合に、私は今の財政危機との関係でいいまして、財政危機の関係というよりも財政の中の問題として考えますと、公共事業費というのは、実は公共事業費として掲載される額に私は国債の利払い費というものをプラスする必要があるんじゃないかという気がしているんです。  それは、公共事業というのが主として国債に依存してやられているわけですから、赤字国債の場合と違って建設国債の場合のことでありますけれども、それでやっているわけですから、当然国債にも公共事業を考える場合にはその利払いというものをプラスしたときに真実のというか、実際の公共事業費というのが出てくるんじゃないかというふうに考えているんですが、いかがかなということが石先生への御質問です。  山崎先生には一つだけ。先ほどの混雑緩和の策ですね。混雑税とかという大変おもしろい発想だと思うんですが、国際的にそういう実例というのがあるのか。あったとしたらどんな効果を生んでいるのかという点について御説明いただければと思います。  以上です。
  26. 石弘光

    参考人石弘光君) 第一点からお答えいたします。  確かに、今の予算の決め方というのは、大蔵省を中心として財政当局が総枠をつくって、それを中央官庁の補助金のルート、その他のルートもございますが、それで各地方に割り振る、あるいは箇所づけというふうな形で主要官庁から行くという形。それに対して、地方の方から一応ニーズを探って下から積み上げたらいいんじゃないかと、まさに私はそのとおりだと思いますが、形の上では地方の首長さんがしょっちゅう中央官庁にやってくるように、一応地方のニーズを訴えつつ、形の上ではそうなっているんだと思うんですよね。ただ、それが実態的な面に反映されていないというところが今の御指摘だろうと思います。  ですから、過疎をどうやってこれから立ち直せるかというとき、過疎といったっていっぱいあるんだと思いますね。幾らやったって過疎は過疎のままだということと、何か一つ力を中央から与えてやれば立ち直れる過疎もあるかもしれないし、現に立ち直った過疎もある。そういう過去の事例を幾つか調べつつ、下から積み上げているときに恐らく有望な過疎といいますか、今後立ち直れそうな過疎というあたりを特に優先度をつけたような、下からの積み上げというのを恐らく自治体の査定で生かせるようなメカニズムができればなとは思いますが、あらゆる公共事業対象を下からというのは今の単年度的な予算編成では難しい。ただ、御指摘は非常に重要だろうと思います。  それから、今の公共事業費プラス国債利払いというのは、これも一つの考え方だろうと思うんですね。というのは、公共事業、例えば橋をつくる、道路をつくるというのは、仮に金目の問題としてある年にどんとできたとして、それは十年、二十年物的なサービスを生むわけですね。物的な資産からサービスを生むわけですね。それを恐らく建設国債の利払いという形ではかったらという御指摘だろうと思います。だから、ある物的資産をつくって、後から生まれてくるサービスを国債利払いではかって、それを物的に使ったときの建設コストなどの公共事業費と足せと、こういう御指摘であると思いますので、これは一つのお考えであろう、このように思います。  以上です。
  27. 山崎福寿

    参考人山崎福寿君) 混雑税の適用例というお話でしたけれども、シンガポールで実際に何回か、私の知っている限り何カ国かで混雑税の例がありまして、自動車が都市に入るときに料金を取られるというようなことが実際に適用されています。それから、オランダでやはり時間別の料金制というのを採用しているという話を聞いたことがあります。  技術的には今の電子技術を使うと簡単にできるということです。我々は定期を電車に乗るときに入れますけれども、あのときに時間別に記録されていて、ラッシュアワーのときは高い料金が付加されるというようなことが簡単にできるそうです。それから、高速道路でも今料金所でとまらないで料金徴収システムというのを技術開発していますけれども、あれはもう実際に応用できるわけで、何時から何時までの間にここを通過したということだけで、全然とまらずにあとはクレジットカードから自動的に引き落とされるというようなことはできますので、もうあとは技術的な問題は何も残っていなくて、混雑税はみんながやるかやらないかということだけだそうです。
  28. 林久美子

    ○林久美子君 石先生、そして山崎先生、きょうはありがとうございます。  まず、石先生に一点だけお伺いいたします。  先生の参考資料を読ませていただきまして、財政悪化と財政硬直化の現在ではありますけれども、さらに近い将来は巨額の債務残高と経済成長率の低下は欧米各国以上に財政悪化をもたらす。そのために財政構造面での改革を進めるとともに、この行政改革による経費削減や社会保障、公共事業の思い切った歳出削減を実現していく必要があるとおっしゃっております。また、この財政赤字や一般政府債務残高の規模を一国の経済力で負担できるレベルまで抑えなければならないと言っていらっしゃいますけれども、お聞きしたい部分はこの後半の部分で、財政赤字や一般政府債務残高の規模を一国の経済力で負担できるレベルというのはどのくらいだと思われるんでしょうか、具体的に教えていただけますでしょうか。  そして、山崎先生には、私も阪神・淡路大震災に遭った被災者の一人でありますけれども、この被害集合住宅における再建があるというのは、補修というのと再建というものの二つの住民サイドの結論がなかなか出ないという問題があります。この二重ローンの資金の問題があるためなかなか結論が出ないと思われるんです。  ちなみに、今現在、この二月末で再建と補修が迫られている件数は百七十二件ありまして、今現在この百五件については再建の方向で進んでおります、また五十三件については補修の方向で。基本的にはほぼ決まりつつあるんですけれども、残りのこの十三件についてはまだ一向に決まっておりません。あと一件は非再建であるということなんですね。  こうした現実を目の当たりにしますと、分譲集合住宅、マンションに入居されている方々は、一度大惨事に見舞われますと二重ローンや補修費の負担でその重荷が非常に大変です。資金のめどが立たない方もいらっしゃいます。  そこで、先生にお尋ねしたいんですけれども、集合住宅に住むための条件あるいは制度に何か欠けているものがあるのではないかという気がするんです。その点、先生はどう思われますか、お願いいたします。
  29. 石弘光

    参考人石弘光君) 借金がかさんでいきますと長期債務が高まる、今御指摘のとおりでありまして、大体ざっといって五百兆ぐらいもう国と地方を合わせてたまっちゃったわけですね。それで、これだけ大変だというと、全部返さなきゃいけないかと、こう思いがちですし、返した方がいいとは思いますが、これはどだい不可能なんですね。  そこで、恐らく一つの指標は、GDPという国内総生産の中で何割ぐらい許容できるかなという、これも理論的には難しいんですけれども、腰だめ的な数字から申し上げますと、今、EUがヨーロッパ連合をつくろうといったときの加盟条件が六〇%なんですね。六〇%になればEUに入れてやるよということで、ヨーロッパ諸国は必死になってこれに向けて頑張っているわけですね。  日本は、今、これが九〇%になっちゃったんですね。恐らく一〇〇に近づいているわけです。この一〇〇を超えているのが実はイタリアなんですけれども、そうなるとイタリアと日本だけ一〇〇を超えてしまう。つまり、GDP以上に債務残高が高まるということは大変な話でありまして、そういう意味で、従来四〇%ぐらいだったんですね、一九八〇年代ぐらいは。それが約倍以上になってしまったこの割合を少なくとも六割にしたい。六割になれば何とかなるのかなという気もしておりまして、そういうすごく大ざっぱな目標が立って、国の力に応じて借金を抱える。どこの家計でもそこそこの力があれば借金を抱えても倒れないわけですね。それが私は六〇%以下の数字を目指すべきだと思っています。  もう一つは、年々の予算編成のときに重要なことは、経常支出をタックス、税収で賄えるというのが重要な条件でありまして、これは別な言葉で申しますと、元利支払いの国債費の範囲で新規国債、新発債と元利払いが一致していれば、それは逆に言えば経常支出は全部税金で賄えるという範囲でありますから、そういうのをプライマリーデットと言っておりますが、言うなればそこの範囲に何か毎年毎年抑えていけばいいんじゃないかと、一応理論的な指標はあるんです。  ですから、根雪のごとくあるような借金はとてもじゃありませんけれども今後全部返せないだろう。だから、国が伸びていくに応じて相対的な割合を減らしていくというスタンスしかないだろう。それが恐らく六〇%以下だろうというのが一番のわかりいい指標になると思います。
  30. 山崎福寿

    参考人山崎福寿君) 神戸の問題ですけれども、私も一番深刻な問題だと思っております。分譲マンション、先ほどの高度利用ということと関連しているんですけれども、分譲住宅、例えばマンションが地震で壊れてしまった。いい方法はみんなが考え出しているわけですね。例えば、二重債務にならないように、全部建てかえてしまって前よりも倍の高さのマンションを建てると。今住んでいる人たちがそっくりそのまま住めて、さらにほかに分譲できるようなスペース、高い部屋をたくさんつくる。そうすると、そこを売って、上の部分なり下の部分のあいているところをほかの人たちに売って債務を返す、借金を返すと。そういう方法がすごくいいアイデアであるわけですけれども、例えばそれを昔の平屋の人たちにも応用して新しい家を建てましようということがすごくいいアイデアだと思うのですけれども、それをさっき言いました八割ルールなり七割ルールというのがだめで、一人の人が、ある人が分譲マンションなんか嫌だと、私は一戸建てじゃないと住むの嫌なんだというおばあさんが一人いると、もうそれは立ち行かなくなるということがあります。  ですから、そういう人たち意見をきちんと聞いた上で、やっぱり七割八割の人たちが賛成したらそれでゴーサインを出す、そしてみんなで少しずつ負担をするというような権利調整といいますか、まず利益を受ける人と不利益を受ける人とを確定して、それらの人たちの権利をうまく調整するようなメカニズムが今の分譲マンションのやり方にはないんだと思うんですね。  ですから、これから東京でも地震がなくても建てかえ時期に来るマンションがたくさんあります。そのときに、私はいいです、私は死ぬまでここで建てかえなんか必要ありませんという人が一人でもいれば、建てかえは進行しないことになります。そして、その結果非常に危ない老朽化した住宅に住み続けるということで、みんなが不利益を受けるということになりますので、そういう分譲マンションの建てかえについての法整備、特に最終時点でだれがどれだけの負担をしてどういう形で建てかえをするのかというのを、スムーズにいくような法体系の整備というのがぜひ必要なのではないかというふうに考えております。これは地震だけの問題じゃなくて、建てかえ時にこれから東京や首都圏にあるマンションが必ず直面する問題だと思います。早急に考える必要があるのではないかと思います。
  31. 林久美子

    ○林久美子君 ありがとうございました。
  32. 平田耕一

    ○平田耕一君 総額論なんですけれども、先ほど石先生のおっしゃった経常経費は予算内で賄うべきだということに加えて、私は、予算の中から確実に低コスト構造にならなきゃならない、経済を安定拡大化していかなきゃならないという前提でもって、運輸運送機器事業、それから輸送用燃料とか、防災効果とか地域振興効果とかを確実に今現在で計算できる、そこから上がっている税収も予算の中から公共投資に回さないと、建設国債の利払いと償還だけではなかなか積極的な国土づくりという形になっていかないんじゃないかなというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。
  33. 石弘光

    参考人石弘光君) 御趣旨を的確につかまえているかどうかわからないのですが、今おっしゃった流通コスト等々をちゃんと公共事業費の中で見ないと……
  34. 平田耕一

    ○平田耕一君 ごめんなさい。済みません。
  35. 石弘光

    参考人石弘光君) どういうふうに理解したらいいかよくわかりませんが……
  36. 平田耕一

    ○平田耕一君 要するに、国の形としてそういう利便性をどんどん追求していく国土にならにやいかぬということなんですね、私が申し上げたいのは。そのために、それで便益をこうむる事業というものは、例えば企業が幾つかあると思うんです。自動車を走らせる、自動車をつくる会社、燃料会社、それらの直接税、間接税ですね、そういうものも含めて財源化を特定するんじゃなくて、その総額として確実に計算できるものだけはっかまえて予算の中から経常経費全部じゃなくて、それもマイナスして経常経費にするべきだ。そうしないと、建設国債の償還と利払いだけで積極的な国づくりはでき上がらないんじゃないかというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。それが国づくりじゃないかなと思うんですけれども。
  37. 石弘光

    参考人石弘光君) 逆に言えば、今の流通コストが非常に高いとかさまざまな運輸面でボトルネックがあるとか、これが恐らく国土形成に非常に問題になっているんですね。そういう意味で逆に言って、コストを下げるためにインフラ整備して、例えば道路をよくするとか港湾をよくするとか、橋をつくって流通コストあるいは交通コストを安くしょうなんというようなことまで加味してこの議論をやらなきゃいけないという御指摘ですね。それを予算面でどう見るかと。  確かに、そういった面恐らく御指摘のとおりの必要な点だと思いますが、さてそれを今の予算の枠の中でどれだけ消化できるかとなるといささかちょっと自信がないんですけれども、そういう面も入れた上での配慮というのがこれから日本の高コスト体質を、まさに規制緩和も含めて高コスト体質を是正すべきだというときに、恐らく予算面からの措置として重要だという御指摘はよくわかりますが、具体的にそれをどういうふうな形で年々の予算に入れていったらいいかとなると、今初めてお聞きしたことなので、ちょっと宿題にさせていただきます。
  38. 海野義孝

    ○海野義孝君 石先生に教えていただきたいと思うんです。  昨日の財政構造改革会議で、さっきおっしゃったような五つのルールを決めたというかなり踏み込んだ、橋本総理もまさに退路を断った思い切った財政再建を目指していらっしゃるということで、大変な御努力だと思いますけれども、実は私は、平成九年度の予算編成におきましてもやはり踏み込みがいま一つ足らなかったとか、そういったことを感じます。  つまり、平成十年度においては一般歳出をゼロにするということでございますね。そういうようになっていきますと、今の公共投資基本計画、これ従来の四百三十兆から六百兆円になった。これの見直しの問題とかいろいろと考えた場合に、表向きの予算の問題以上に、実際に背後にある大変な財政難という問題が今後の我が国のいわゆる公共事業財源という面で相当深刻な問題になってくるんじゃないかというように私は思うんです。  先般、ここでやはり私がお伺いしたときにお答えがなかったんですけれども、これは政府委員の方ですが、例えば四百三十兆円とかあるいは六百兆円というものはいわゆる一般予算の中の、例えばこの平成九年度でいいますと公共事業費が九兆円ぐらいとかそういった問題ではなくて、その背後には特殊法人の問題であるとか、今四年続きの赤字を抱えている地方財政の問題であるとか、そういったものを総合的に見て四十兆円とかあるいは五十兆円というような、年間のそういった財源手当てが必要だという問題になってきますので、実際に一般予算で言っているような生易しい問題ではないということであります。  そういう面で、先生は基本的にいわゆる歳出をカットして財政再建に立ち向かうべきだということをおっしゃっているわけですけれども、その辺を広く、例えばこの公共投資の基本計画というのは当然見直していくことになるでしょうけれども、それを含めて一体これから、かなり私はそういう面での公共事業というのは、相当なプライオリティーを決めてシビアな対応をしていくという面と、もう一つは、二割とか三割の民間に比べてのコスト高を大幅に削減していくといったことを含めて、今後のそういった財政再建の中での、公共投資の話は先ほど中島先生からも話があったけれども、これは当然必要なことで、何かその辺の問題がはしょられるような面が片やあるように私は思いますので、その面を含めて、公共投資重要性を踏まえた上で、財政再建という中で今後の二十一世紀に向かってのそういった、いわゆる公共事業をどういうように展望なり努力をされていくか。審議会の委員のお立場でひとつ御意見をお聞きしたいと思います。
  39. 石弘光

    参考人石弘光君) 非常に重要な御指摘だと思います。  そこで、今後どうやっていくかという私なりの勝手な展望でありますが、一応一般会計だけではなくて、国と地方を合わせて財政健全化目標をつくり、それから国民負担率といったように社会保険料負担まで入れた形で支出面の方のターゲットを示した、今、橋本さんがやられているのは。  そういう意味である程度整合性がとれたことをおっしゃって、手段としてはあのメッセージ、五原則のメッセージは歳出カットでやるよということなんだろうと思います、主たる要因は。そのときに、恐らく聖域なくと言われていますように、公共事業社会福祉あるいは文教等々すべて聖域なくやるということで一般会計ゼロにするというような話になったときに、私は一番見直しの対象になるのは、社会福祉でも文教でもODA等々でもなく、やっぱり公共事業に来るんだろうと思いますね。  そのときに二つあって、一つは六百三十兆の公共投資基本計画をどうするか。私は、これ自体の減額が恐らくこれからの対象になり、これはある意味のターゲットになりますから、幾らにも自由自在になるわけですね。それから、各省庁が持っている十カ年計画みたいな個別の道路計画なり港湾計画も見直すということになってこようかと思います。  そこで、恐らく問題になるのは、公共投資が足らぬ、重要だとお考えの立場の方と、私みたいに、もう一服してもいいじゃないかと。一服という意味は、ほかの経費と横並び的でいいじゃないか、景気調整に余り使わなくていいじゃないか、使うべきでないんじゃないかという立場のせめぎ合いが恐らく政治の世界でさまざまな形で起こってくるんだろうと思います。  したがって、財源等々を考える前に、恐らく社会資本整備をどこまでやるか。例えば、高速道路を一万何千キロ必要だというんではなくて、もっと下げてもいいじゃないかというあたりが具体的な一つのターゲットの設定になりますから、そういうことの議論も踏まえまして、そこで二つの立場からの議論があり、好むと好まざるにかかわらず公共投資の見直しということがやはりこの構造改革の目玉になる。そういう意味では、まだ重要だとおっしゃる方々は不満がかなり残るんじゃないかと、こう思っているんです。  これお答えになってないと思いますが、私は、それに積極的に乗る人とやむを得ず乗る人とあると思いますが、財政構造改革はそこで行かざるを得ないんだろうというふうに私自身は考えております。
  40. 小山峰男

    ○小山峰男君 どうもほかの委員会に出ていまして失礼しました。  石先生お話をお伺いしたいんですが、公共投資、削らざるを得ないというのは十分わかるわけでございますが、この配分の仕方というのは、一極集中の排除というか国土の均衡ある発展という意味で、減った公共投資もそういう形で配分をすべきだというふうに私は思っておりますが、その辺のお考え方はいかがでしょうか。
  41. 石弘光

    参考人石弘光君) たしか平成六年だと思います。財政制度審議会でABC基準というのをつくりまして、伸ばすべきもの、このままでいいもの、減らすべきものという大まかな物差しをつくったときに、生活関連がやはり伸ばすべきものの対象になり、それから農村あるいは一般道路も含めてでしょうか、あるいは港湾も含めてでしょうか、もうそろそろいいんじゃないかというC基準に入ったのが、結果として地方に対してダメージを与えるような、そういう仕分けになったのを記憶しております。  いずれにいたしましても、これから従来型のごとく全部が伸びるわけではございませんので、かなりめり張りをつけた形の公共投資、パイが限られた中で、パイが減る中でさらに減るもの、減り方が少ないものという形での優先度の順位の熾烈な争いをしなければいけないと思います。  そのとき私は、上下水道を初め生活関連の方に重点を置いて産業基盤整備なり、言うならば従来型の国土形成等々については、若干ウエートが落ちたというのはやむを得ないのかなと、このように考えております。  そういう意味で、これまたある種の価値判断であって、地方から見ると非常に都市重点型になっちゃうという点もあるかもしれませんが、地方にも当然のこと生活関連というのがかかってくるわけであります。  そういう意味で、私は、従来型の生活関連によりウエートを置いた、これからのめり張りのついた重点配分というのは今後一つの行き方であろうというふうに考えております。
  42. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) 以上で両参考人に対する質疑は終了いたしました。  石参考人及び山崎参考人には、お忙しい中、本調査会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。  本日お述べいただきました貴重な御意見は今後の調査参考にさせていただきます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  ありがとうございました。(拍手)     —————————————
  43. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) 次に、先般本調査会が行いました委員派遣につき、派遣委員報告を聴取いたします。大島慶久君。
  44. 大島慶久

    ○大島慶久君 委員派遣の報告を申し上げます。少し長うございますけれども、御辛抱いただきたいと思います。  去る二月十七日から十九日までの三日間にわたって、鶴岡会長、小野理事、牛嶋理事、日下部理事、笹野理事、聴濤理事、片山委員、小林委員、朝日委員、小山委員と私、大島の十一名は、広島県及び愛媛県に出向き、社会資本整備、社会保障等国民生活経済に関する諸問題の実情について調査をしてまいりました。  以下、調査の概要を申し上げます。  まず、広島県について報告をいたします。  同県は、瀬戸内海国立公園など豊富な自然に恵まれており、気候は山間部と沿岸部の差が大きいものの全体として温暖であります。また、平成七年の人口は約二百八十八万二千人で、老年人口比率は一五・八%と、全国平均を上回って高齢化が進んでおります。  同県では、平成七年に長期総合計画「ひろしま・新たなる躍進へのプログラム」を策定し、日本で一番住みやすい生活県を目指して、保健、医療、福祉の充実、魅力ある生活圏づくり、交流基盤の整備等の各種施策が行われております。  次に、社会資本整備についてであります。  まず、同県の機能を中国・四国地方全域に波及させる交通ネットワークを整備するため、中国横断自動車道尾道−松江線の整備及び広島西空港を核としたコミューター航空ネットワークの構築を図っているとのことであります。また、国際ゲートウエー機能強化のため、広島港外貿埠頭の整備や広島空港の滑走路三千メートル化を行っているとのことでありました。  また、社会保障については、少子・高齢化の急速な進展に対応し、平成五年に全国に先駆けて福祉事務所と保健所を統合するとともに、七年には地域の実情に即した保健、医療、福祉サービス事業や在宅サービスの模範的モデル事業を支援するためトータルケア推進交付金制度を創設し、さらに昨年は病児デイケア、ホリデー保育助成等を行う「ひろしまこども夢財団」を設置するなど、積極的な取り組みが行われております。  今後の課題として、同県の財政状況は、平成九年度には県債発行残高が一般会計歳入予算額とほぼ同額の約一兆円となることが予想されることから、広島都市圏の高速道路網の整備などのビッグプロジェクト、少子化対策や過疎化、高齢化が深刻な中山間地域対策への抜本的な取り組みなど事業の重点化を図りつつ、県債発行額の抑制や県単独の公共事業の減額など、財政再建へ向けた取り組みが必要であるとのことであります。  次に、広島県での視察についてでございます。  まず、広島空港についてであります。同空港は、国の第五次及び第六次の空港整備五カ年計画に組み込まれ、約七百十億円の建設費と約七年の工期を要し、平成五年十月に開港いたしました。現在、国内線が十路線週百四十四便、国際線が六路線週二十四便就航しており、平成七年度の利用者数はそれぞれ三百十二万人と二十五万人となっているとのことであります。また、第七次空港整備五カ年計画の中で、現在の二千五百メートルの滑走路を三千メートルに延長することとされており、平成十三年三月の完成後は海外諸都市との交流がより活発化するものと期待されるとのことでした。  また、広島空港周辺は、空港支援都市「臨空タウン」として、住宅団地、オフィス用地、工業団地やゴルフ場、公園などのスポーツ・リゾート施設の整備を行っております。  次に、公立みつぎ総合病院及び御調町保健福祉センターであります。同病院は、広島県東南部の御調町にあり、同町や隣接の尾道市など診療圏域人口約七万人の中核的総合病院であります。  同病院では、昭和四十年代の高齢化の進展や家庭内介護力の低下とともに在宅寝たきり老人が増加したことを受けて、それまでの待つ医療から出前医療に転換し、寝たきりゼロ作戦を展開したとのことであります。  その後、五十九年に同町の機構改革を行い、保健・福祉の担当部門を保健福祉センターに移管し、同センターを核とした地域包括ケアシステムを構築したとのことであります。  現在、同センターでは、医師、保健婦、栄養士、理学療法士、ソーシャルワーカー等から成る地域ケア会議を毎週開催し、要介護者の身体の状況に応じたサービスの内容やケアチームの編成を検討して、ケアプランの作成を行い、地域住民のさまざまなニーズにこたえているとのことであります。  また、これら訪問看護・介護、訪問リハビリ等に関する資料はケア登録台帳に記録され、日々の訪問内容はケア記録データ表に記載し、保健婦、ホームヘルパーなどが活用できるよう、記録の一元化が図られておりました。このケアシステムの構築により、同町では在宅寝たきり老人が約三分の一に減少したとのことでありました。  次に、ひろしま西風新都は、広島市が計画主体となって進めている都市づくりで、広島市北西部に位置する約四千五百七十ヘクタールの丘陵地に住宅、企業、学校、公園など、都市生活に必要な住み、働き、学び、憩うの四つの機能がバランスよく配置された人口十万大規模の総合自立都市を目指しております。  平成七年三月から入居が開始された集合住宅群「A・CITY」には現在四百六世帯が入居しておりますが、ここは平成六年に行われた広島アジア競技大会の選手村として利用されたとのことであります。  また、新都開発に当たっては、広島市が幹線道路や新交通システムなどの都市基盤施設の整備を行い、民間開発事業者が都市基盤施設の整備によって増進する開発利益の約五割を市に還元するという全国的にも珍しい開発利益の公共還元が行われておりました。  次に、愛媛県について報告いたします。  同県は、寡雨・温暖な瀬戸内気候で、北側には瀬戸内海、南側には四国山地や四国カルストが広がり、全体として山地が多く、林野面積が県土の七一%、可住面積が二九%となっております。また、平成七年の人口は約百五十万七千人で、昭和六十年以降減少傾向にあります。一方、高齢化は進み、老年人口比率は、昭和六十年の一二・九%から平成七年は一八・五%と全国平均よりかなり高率となっております。  同県では、平成七年に策定した「新・プラン二十一」を指針として、生活優先、文化重視の潤いと活力のある愛媛づくりを目指して、安心な暮らしを支える保健、医療、福祉の充実、快適で美しい生活環境の創造、地域特性を生かした圏域整備の推進等の各種施策が行われております。  次に、社会資本整備についてであります。  現在、建設が進められております本州四国連絡道路西瀬戸自動車道、尾道−今治ルートは平成十年度に完成の予定でありますが、このルートには瀬戸内海横断自転車道が併設されており、他の本州四国連絡道路とは異なる特色のあるものとなっているとのことでありました。  また、同県は、平成六年七月から四カ月にわたる渇水の経験から、水資源対策を積極的に推進しており、現在二つのダムを建設中とのことであります。  このほか、同県では、今治−小松自動車道の整備、中四国地域連携軸構想の推進及び瀬戸内中央部市圏の形成を目指すとともに、参加創造型の美術館として県民の美術活動の振興を図る拠点となる中核美術館を建設することとしております。  次に、社会保障については、健康づくりについて適切な助言を行える人材を登録するヘルスアドバイザーバンクを設置し、地域における健康学習の充実に努めるとともに、保健、医療、福祉が連携した総合的なケアシステムの確立を図ることとしております。  また、次代を担う子供たちの健全育成を図るため、子供たちが遊びや交流を通じてさまざまな生活体験や学習活動ができる総合的な拠点施設として、「えひめこどもの城(仮称)」を建設することとしております。  今後の主な課題としては、新しい国土軸として、東海から紀伊半島、四国を経て九州に至る太平洋新国土軸構想の推進があります。今春にも策定が完了する新しい全国総合開発計画に太平洋新国土軸の必要性が明記されるよう要望していくとのことでありました。  次に、愛媛県での視察先について申し上げます。  まず、愛媛国際貿易センター「アイテムえひめ」は、平成四年に制定された輸入の促進及び対内投資事業の円滑化に関する臨時措置法による全国第一号の指定を受けた愛媛FAZ(輸入促進地域)構想のシンボル施設で、平成八年三月にオープンいたしております。同センターは、見本市会場、輸入品常設展示場、物産観光センターなど、産業交流機能を集約した施設で、これまで国際見本市や各種展示会が開催されております。  私どもが視察しました十八日には、国から輸入促進地域の拡大と貿易型産業の集積を図るため特定集積地区を設けることなどを内容とする愛媛FAZの変更計画が承認されたとのことであります。この変更計画の承認により、地域国際化のモデルとして、今後さらに同県の積極的な取り組みが行われるとのことであります。  次に、愛媛県生涯学習センターは、県民の生涯学習に対する期待と関心の高まりにこたえるとともに、県民の生涯学習を推進する施設として、平成三年四月に開館しております。  同センターは、パソコン演習室、研修室、演劇レッスン室などを備えた本館、県民メモリアルホール及び県民小劇場で構成されており、年間入館者数は約九万人とのことであります。今後、県民の一層の利用促進を図るため、市内から施設までの交通アクセスの整備を図る必要があるとのことでした。  また、同センターでは、生涯学習に関する情報提供及び学習相談、生涯学習指導者の養成などを行っており、生涯学習情報は公民館など県内九十五カ所に設置された端末機で利用できるようになっているとのことでありました。  最後に、愛媛県花き総合指導センターを視察いたしました。同センターは、花卉農業の振興と花と緑に包まれた生活環境づくりを推進することを目的とし、花卉の生産から消費にわたる総合指導機関として平成四年四月に開所されました。  同県の花卉の耕作面積は三百八十四ヘクタール、年間生産額は約四十五億円で、毎年一億円ずつ伸びており、その主な市場は中国・四国地方であるとのことであります。  また、県内の花卉生産農家は約二千戸で、うち一割が花卉専業農家とのことでありました。しかし、農業を受け継ぐ者が年々減少しており、後継者の育成が大きな課題となっているとのことでした。  終わりに、今回の派遣に当たりましては、広島県、愛媛県並びに関係各方面の皆様から多大な御協力をいただきましたことに対し、厚く御礼申し上げまして、報告を終わります。  以上であります。
  45. 鶴岡洋

    会長鶴岡洋君) 以上で派遣委員報告は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時八分散会