運営者
Bitlet
姉妹サービス
kokalog - 国会
yonalog - 47都道府県議会
nisalog - 東京23区議会
serelog - 政令指定都市議会
hokkaidolog - 北海道内市区町村議会
aomorilog - 青森県内市区町村議会
iwatelog - 岩手県内市区町村議会
miyagilog - 宮城県内市区町村議会
akitalog - 秋田県内市区町村議会
yamagatalog - 山形県内市区町村議会
fukushimalog - 福島県内市区町村議会
ibarakilog - 茨城県内市区町村議会
tochigilog - 栃木県内市区町村議会
gunmalog - 群馬県内市区町村議会
saitamalog - 埼玉県内市区町村議会
chibalog - 千葉県内市区町村議会
tokyolog - 東京都内市区町村議会
kanagawalog - 神奈川県内市区町村議会
nigatalog - 新潟県内市区町村議会
toyamalog - 富山県内市区町村議会
ishikawalog - 石川県内市区町村議会
fukuilog - 福井県内市区町村議会
yamanashilog - 山梨県内市区町村議会
naganolog - 長野県内市区町村議会
gifulog - 岐阜県内市区町村議会
sizuokalog - 静岡県内市区町村議会
aichilog - 愛知県内市区町村議会
mielog - 三重県内市区町村議会
shigalog - 滋賀県内市区町村議会
kyotolog - 京都府内市区町村議会
osakalog - 大阪府内市区町村議会
hyogolog - 兵庫県内市区町村議会
naralog - 奈良県内市区町村議会
wakayamalog - 和歌山県内市区町村議会
tottorilog - 鳥取県内市区町村議会
shimanelog - 島根県内市区町村議会
okayamalog - 岡山県内市区町村議会
hiroshimalog - 広島県内市区町村議会
yamaguchilog - 山口県内市区町村議会
tokushimalog - 徳島県内市区町村議会
kagawalog - 香川県内市区町村議会
ehimelog - 愛媛県内市区町村議会
kochilog - 高知県内市区町村議会
fukuokalog - 福岡県内市区町村議会
sagalog - 佐賀県内市区町村議会
nagasakilog - 長崎県内市区町村議会
kumamotolog - 熊本県内市区町村議会
oitalog - 大分県内市区町村議会
miyazakilog - 宮崎県内市区町村議会
kagoshimalog - 鹿児島県内市区町村議会
okinawalog - 沖縄県内市区町村議会
使い方
FAQ
このサイトについて
|
login
×
kokalog - 国会議事録検索
1997-03-03 第140回国会 参議院 国際問題に関する調査会 第4号
公式Web版
会議録情報
0
平成九年三月三日(月曜日) 午後一時二分開会 ――
―――――――――――
委員
の
異動
二月二十四日 辞任
補欠選任
武見
敬三
君
塩崎
恭久
君 ――
―――――――――――
出席者
は左のとおり。 会 長
林田悠紀夫君
理 事 板垣 正君
南野知惠子
君 益田 洋介君
武田邦太郎
君
上田耕一郎
君 委 員 尾辻 秀久君 笠原 潤一君 北岡 秀二君
塩崎
恭久
君 馳 浩君 林 芳正君 山本 一太君 今泉 昭君
魚住裕一郎
君 直嶋 正行君 山崎 力君 大脇 雅子君 齋藤 勁君 菅野 久光君 笠井 亮君 田村 公平君
事務局側
第一
特別調査室
長 入内島 修君
参考人
タマサート大学
プラサート・ 準
教授
チチャイワタ ナポン君
中京大学教授
リム
・ホァシ ン君 ――
―――――――――――
本日の
会議
に付した案件 ○国際問題に関する
調査
(「
アジア太平洋地域
の安定と
日本
の
役割
」の うち、
アジア太平洋地域
の安定と
日本
への
期待
について) ――
―――――――――――
林田悠紀夫
1
○
会長
(
林田悠紀夫君
) ただいまから国際問題に関する
調査会
を開会いたします。
委員
の
異動
について御
報告
いたします。 去る二月二十四日、
武見敬三
君が
委員
を辞任され、その
補欠
として
塩崎恭久
君が選任されました。 ――
―――――――――――
林田悠紀夫
2
○
会長
(
林田悠紀夫君
) 国際問題に関する
調査
を議題といたします。 本日は、本
調査会
の
テーマ
である「
アジア太平洋地域
の安定と
日本
の
役割
」のうち、
アジア太平洋地域
の安定と
日本
への
期待
について二名の
参考人
から御
意見
をお伺いした後、
質疑
を行います。 本日は、
参考人
として、
タマサート大学
準
教授プラサート・チチャイワタナポン
君及び
中京大学教授リム・ホァシン
君に御
出席
をいただいております。 この際、両
参考人
に一言ごあいさつを申し上げます。
参考人
におかれましては、御多用中のところ本
調査会
に御
出席
いただきまして、まことにありがとうございます。 両
参考人
から忌憚のない御
意見
を伺い、今後の
調査
の
参考
にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。 議事の進め方でございますが、初めに
プラサート参考人
、次に
リム参考人
の順序でそれぞれ三十分
程度
御
意見
をお伺いいたします。その後、二時間三十分
程度質疑
を行いますので、御
協力
をよろしくお願い申し上げます。 なお、
意見
、
質疑
及び答弁とも、御発言は着席のままで結構でございます。 それでは、まず
プラサート参考人
から御
意見
をお述べいただきたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
プラサート参考人
。
プラサート・チチャイワタナポン
3
○
参考人
(
プラサート・チチャイワタナポン
君) 本日は、
参考人
としてお招きいただき、
アジア太平洋地域
の安定と
日本
への
期待
という
テーマ
で私の
考え
を表明する機会が与えられましたことに心から感謝を申し上げます。大変光栄に存じます。
日本
は
世界
で最も成熟した
民主主義国
の
一つ
であり、この
国会
はその
象徴
であるように見えます。多分、この
調査会
は、国際問題を
調査
するという点で、今までの
実績
の面においても、この
調査会
のメンバーの構成においても他に例のないものだと思います。お招きいただきましたことを改めて感謝したいと思っております。 さて、ここに御
出席
の皆さんがお気づきのように、
日本
は
天然資源
やエネルギーを十分に持たない、海外との
貿易
に依存している国でありますので、
アジア太平洋
の安定は
日本
にとって最も重要なことであります。それ
ゆえ
に、平和的な
国際環境
、
隣国
の繁栄と安定は
日本
の
生存
にとって非常に重要でありましょう。 こうした
日本
の
生存条件
を頭に置きながら、多くの
日本
の
政策担当者
は、
アジア
の人々、また
アジア
の
政策担当者
が
日本
にどのようなことを
期待
しているかをたびたび聞かれます。
アジア
は広いので、ここで私は
東南アジア
、またその
地域機構
である
ASEAN
、さらに
安全保障
と
日本
の
経済協力
の面に私の話を限定したいと思っております。 また、ここで述べます
意見
は一人の学者としての
考え
であり、また
タイ人
である以上若干のバイアスがかかっているのです。どうかお許しください。
冷戦
の
対立
の構造が崩壊するとともに、
東南アジア
は長い間、
独立戦争
、
ベトナム戦争
、カンボジア問題などを経てようやく平和と安定の時代に入りました。一方、
北東アジア
では今なお
緊張
、または
武力衝突
の
可能性
など諸問題が残っております。
北方領土
、
台湾海峡
、
朝鮮半島
、尖閣諸島、竹島問題などたくさんそのまま残っております。 また、
安全保障
問題は若干形が変わってきました。
一つ
の
シフト
としては、海をめぐる諸問題に転換していることです。もう
一つ
は、
社会的安全保障
の方に転換してきました。麻薬問題、エイズ、テロリズムなど社会的な
安全保障
の面が重視されてきました。
北東アジア
にそのまま残る
緊張
及び
二つ
の
安全保障概念
の
シフト
という
安全保障環境
の変化は、皆様が御存じのとおりだと思いますが、
日本
は
冷戦
が終わっても、
北東アジア
の
緊張
、または
安全保障
の転換、その
シフト
に大きく
影響
を受けている国と私は見ております。それ
ゆえ
に、
日本
にとっては
アメリカ
の軍事的な
プレゼンス
は引き続き重要です。また、
米軍基地
の意義は改めて評価されます。
アメリカ
の
軍事的プレゼンス
及び
在日米軍基地
の
重要性
は
東南アジア
の国々も
認識
しております。しかし、その
重要性
の
認識
はだんだん薄まってきました。この
重要性
の
認識
を忘れてはいけないと
日本
の
指導者
がよく我々にメッセージを伝えてきました。ここで若干のギャップがあるように私は感じます。歴史を振り返ると、
東南アジア
は、この
地域
で
影響
や利害の
拡大
を争った
大国
の間の
争い
から痛々しい
教訓
を得ました。また、
隣国
の間の
紛争
や
対立
という苦い
教訓
も学んできました。 この
二つ
の
教訓
から、一九六七年に
ASEAN
が設立され、その後もさまざまな
努力
や
実績
を重ねてきました。
ASEAN自由貿易地域
、AFTA、
ASEAN地域フォーラム
、
ARF
、
アジア欧州会合
、
ASEM
、
ASEAN
10というビジョンなどはその
努力
、またその
実績
であります。
ASEAN
は多角的、マルチな
アプローチ
や
地域対話
、さらに非軍事的な
アプローチ
を追求していくと私は思います。
ASEAN
は、
大国
間の
覇権争い
、
隣国
間の
対立
を回避することを目標にさらに
努力
していくだろうと思います。
ASEAN
が
日本
に
期待
しているのは何でしょうか。ここで
幾つ
かの点を取り上げて
考え
てみたいと思います。 第一に、あらゆる分野、とりわけ
日本
の
市場
へのアクセスを改善するという点です。
ASEAN
と
ASEAN各国
の
関係
をさらに強化することを
期待
します。 第二に、米国や
欧州
とバイラテラルな交渉をする場合、これは
ASEAN
を不利な
立場
にさせないことを
期待
します。 第三に、
ASEAN
のイニシアチブで始まった
会合
、例えば
ASEAN拡大外相会議
、
ASEAN
・PMC、
ASEAN地域フォーラム
、
ARF
、
アジア欧州会合
、
ASEM
への積極的な
参加
を通して
ASEAN
を支援することを
期待
します。 第四に、
日本
は
ミャンマー
の
軍事政権
に対して
人権状況
を改善するよう外交的な
影響力
を行使することを
期待
します。
日本
は、
ミャンマー
の
指導者たち
と個人的なつながりを持っており、かつては巨額の
経済援助
をしてきました。外の
世界
を見るために、
ミャンマー
から
日本
へ多くの
研修生
を招くことができるのではないでしょうか。また、
研修生
を
東南アジア諸国
に行かせることも
考え
られます。 さて、
ODA
について言いますと、
ASEAN
は
日本
の
経済協力
から徐々に卒業してきました。
幾つ
かの国は
日本
の
円借款
からも卒業させられました。ここで、私は
幾つ
かの点を指摘しておきたいと思っております。 第一に、
南南協力
、特に
第三国研修計画
をより強化することを
期待
します。 第二に、一層の
情報公開
が必要だと思います。
情報公開
は、
国内
外での
理解
と
支持
をもたらしてきました。一層の
努力
はより
理解
と
支持
を得られるだろうと思います。 第三に、
社会開発
、ソーシャルディベロプメントは
経済開発
に劣らず重要な要素だと思います。 このために、
基礎教育
にもっと注意が払われるべきだろうと思います。また、
日本
の
NGO
及び
現地NGO
がもっともっと利用されることを
期待
します。 第四に、シビルソサエティー、
市民社会
の
成長
は、
民主主義
の
発展
や国民の
参加
に大きな貢献をする重要な
要因
です。シビルソサェティーは、
タイ
や
幾つ
かの国の
中心
的な
国家開発
のコンセプトとなってきました。 第五に、被
援助国
は将来
援助国
になるでしょう。それを励まし、支援するのがよいことだと思います。これは
日本
を含むすべての
援助国
にとって重要な
課題
であると思います。
援助哲学
にもなり得ると思います。この
哲学
が採用されますと、
援助
のス
タイ
ルに大きなインパクトを与えると思います。
最後
に、私個人の
意見
を少し述べさせていただきます。 今日、
日本
の
国会
は
二つ
の重要な
法案
を審議中です。
一つ
は
ODA基本法
、もう
一つ
はいわゆる
NPO法
です。
ODA基本法
はこれまで何度か
国会
に提案されました。
NPO法
は現在の
国会
で審議されると聞いております。
日本
の
国会
の尊厳が今シビアに試されているのではないかという気がします。
国会
が成熟した
民主主義
のシンボルであることを示せるかどうか、
二つ
の
法案
は
納税者
の
ODA
に対する
主導権
、そして
参加
への権利に密接にかかわるものであり、これらの
法案
を通すかどうかに
国会
の見識が問われているのではないでしょうか。 以上、簡単ですけれども、どうも御清聴ありがとうこざしました
林田悠紀夫
4
○
会長
(
林田悠紀夫君
) ありがとうございました。 次に、
リム参考人
にお願いいたします。
リム参考人
。
リム・ホァシン
5
○
参考人
(
リム・ホァシン
君) ただいま御紹介賜りました
中京大学
の
リム
と申します。きょうは
参考人
としてお招きいただきまして、心からお礼申し上げます。 私に与えられている
テーマ
は、
アジア太平洋地域
の安定と
日本
への
期待
なんですが、きょう私、いろんな
統計資料
とか
論文
等々を用意させていただいて、諸
先生方
の手元に配られていると思いますが、きょうの限られた時間に詳細な紹介は無理だと思いますので、関心のある方は私の
論文
などを参照していただければ幸いでございます。 私、きょうの
報告
はあくまでも簡単な、
アジア太平洋地域
と
日本
を関連させていただいて、
一つ
のたたき台として議論の材料とさせていただきたいと思います。 私のこれから申し上げます内容は四つに分けられています。まず第一は、
アジア太平洋地域
の安定と
局地経済圏
の
形成
について、二番目は、
アジア太平洋地域
の
経済発展
と
日本
の
役割
について、次は
アジア太平洋地域
の展望と
日本
の対応について、
最後
に
アジア太平洋地域
の安定と
日本
への
期待
について、簡単に紹介させていただきます。 まず第一に、
アジア太平洋地域
の安定と
局地経済圏
の
形成
についてですが、御
承知
のように、今
アジア太平洋地域
においていろんな
地域協力体制
、いわゆる
局地経済圏
が
形成
されつつあります。北から
環日本海経済圏
、それから
華南経済圏
、両
岸経済圏
、
バーツ経済圏
、南に行けば
三角成長地帯
とか、そういうようないろんな
局地経済圏
が
形成
されつつあります。これは、この
地域
の
経済発展
の
象徴
だと思いますが、この
アジア太平洋地域
の安定がなければ、
局地経済圏
の
発展
は困難であると私は
理解
しております。この
局地経済圏
の一層の推進によって、この
地域
がますます安定の方向に向かっていくと私は
期待
しております。 なぜ
アジア太平洋地域
にいろんな
局地経済圏
が
形成
されるかといいますと、これは外部的な
要因
、つまり
外圧
と申しましょうか、それは北米のNAFTA、それから
ヨーロッパ諸国
のEUに触発されて、
一つ
の閉鎖的あるいは閉ざされた
経済協力体
が
形成
されて、じゃ
アジア諸国
をどうするか、どう対応していったらいいかと。したがって、
外圧
によって、この
アジア太平洋地域
において
協力
していかないといけないというような機運が高まってきた結果によって、
経済協力圏
が
形成
されると私は
理解
しております。 内部的に言えば、もちろん戦後五十年間以上
アジア諸国
が
経済発展
をなし遂げてきて、
国際市場
の
開拓
、それから
地域経済
の
協力
を強化していかなければいけない、そういうような需要も出てきて、したがって、いかにこの
地域
において
投資
、
貿易
、
経済援助
を強化していったらいいか。その結果として、この
局地経済圏
が生まれてきたと私は
理解
しております。 私に言わせれば、これから
アジア太平洋地域
は基本的にはさっき申し上げました
幾つ
かの
局地経済圏
の
発展
によって牽引されていく、
発展
していく、二十一
世紀
は
アジア
の
世紀
である、それは間違いないと私は
理解
しております。しかしながら、
アジア太平洋地域
においては
経済発展
の
マイナス要因
も潜んでいるということを否定できないじゃないかと。中長期的に見れば、人口爆発問題とか環境汚染問題とかあるいは資源不足問題などいろいろ議論されていますけれども、そういうような問題のほかに、私はまずこれから、
アジア
の
経済発展
が停滞あるいは失速するその
要因
はどこにあるか、諸
先生方
と一緒に
考え
てみたいと思っております。 まず
考え
られるのは、一次
産品
の
暴落
です。御
承知
のように、ブルネイとか
インドネシア
、
マレーシア諸国
は石油とか
天然資源
の
産出国
ですから、一次
産品
の
暴落
はこれらの国に対する
影響
は非常に大きいと私は
考え
ています。 二番目は、
外債累積
の
悪化
の問題です。御
承知
のように
アジア諸国
、とりわけ
中国
、
インドネシア
、
タイ
、
フィリピン
、
マレーシア諸国
は
日本
から
経済援助
をもらっていますから、
外債
が累積して
円高
になって返済ができなくなってきているんです。最近、幸い円が
暴落
して
アジア諸国
も
日本
に返済した方がよろしいと、そういうような
意見
が出てきたんですけれども、今のところ結構
日本
からの
円借款
で
外債
が累積されているのが
現状
です。 三番目は、
先進工業国
の景気の低迷に
影響
されて、
シンガポール
を初め
アジア諸国
の
経済発展
が失速していることは否定できないと思います。 四番目は、
国家
、
地域
の
紛争
の
悪化
です。御
承知
のように、南沙・西沙群島主権問題とか、それから
中国大陸
と
台湾
の両
岸関係
の
悪化
とか、
朝鮮半島
の問題だとか
北方領土
の問題、尖閣・竹島問題等々が挙げられます。この
国家
、
地域紛争
の
悪化
によって、
アジア各国
の
経済発展
に支障が生ずる
可能性
も否定できないと思います。 五番目は、政治不安定の問題です。これは、詳細に話をするつもりはないですが、民族の
紛争
、あるいは
ミャンマー民主化運動
、
天安門事件
とか
チベット独立運動
、
東ティモール独立運動
、あるいはもっと重要なのは、
政権
の
交代
による
混乱
などによって生ずる政治不安定の問題です。例えばポスト鄧小平です。今の江沢民の
集団指導体制
が成立してこれから
改革
・
開放政策
を本格的に進めていけるかどうか、それも大きな
課題
だと思います。あとは、例えば
インド
の
ガンジー首相
のケースもそうですけれども、朝鮮の
金日成
の
政権移譲
の問題とか、あるいはこれから
インドネシア
のスハルトがだれにいつ
政権
を渡すか。そういうような
政権
の
交代
によって
混乱
が生じるのだったら、やっぱり
経済発展
に
悪影響
を及ぼすという懸念を私は持っています。 六番目は宗教問題です、これは顕著じゃないでしょうけれども。例えば、ヒンズー教とイスラム教の
衝突
、これは
インド
が一番顕著な例だと思います。その次は、
フィリピン南部
の
回教独立運動
とか、さっき申し上げました
東ティモール独立運動
も宗教と絡んできます。 以上述べましたように、六つの
要因
が
アジア太平洋地域
の
経済発展
に
悪影響
を及ぼす
可能性
は非常に大きいと私は
理解
しております。 次は、2の(3)なんですが、
アジア太平洋地域
の
経済発展
の
プラス要因
は何かです。 よく言われていますように、
アジア諸国
の
官僚政府
の
効率性
とか、低廉な
工農業原料
、良質な
労働資源
とか
土地改革
、金融・
為替改革
、あるいは
儒教思想
、つまり
勤勉倹約
とか
教育重視
とか、
人的資源
の
開発
を重視する国が多くて、それは
アジア各国
の
経済発展
に寄与してきたと。これは総じて言えば
プラス要因
と私は
理解
しております。 もっと重要なのは、
アジア諸国
は
ヨーロッパ
、
アメリカ
と比べれば
貯蓄率
が非常に高い、したがって
国内
の
資本形成
も重視されて
投資率
も非常に高い。これは
プラス
の
要因
にもなるし、逆に言えば
マイナス
の
要因
にもなりかねない。つまり、高い
投資率
、高い
貯蓄率
は国の
資本形成
、
国内
の
投資
に非常に
プラス
な
要因
であるんですが、逆に
貯蓄率
が高くて
国内
の
消費
が刺激されない、
消費
が低迷してしまうような
可能性
も出てくるんです。幸い、
アジア各国
、とりわけ
アジアNIES
、韓国、
台湾
、香港、
シンガポール
などは
貯蓄率
が高くて、
国内
の
投資
がうまく展開されて
経済
が
発展
してきた。 と同時に、もう一点強調したいのは、低い
福祉支出
が指摘されております。
アメリカ
、
ヨーロッパ
、北欧のように
福祉国家
になって
国家財政
が圧迫されて
経済発展
が停滞してしまった経験を生かして、
アジア諸国
、とりわけ
シンガポールあたり
は
福祉
の
支出
を抑えて
国内
の
建設
、
インフラ
の
建設
に力を入れて
発展
してきた、そういうふうに私は
理解
しています。 次は、
アジア太平洋地域
においていろんな
局地経済圏
が
形成
され、中長期的に見れば
アジア各国
は順調に、若干失速する時期も出てくるんでしょうが、基本的には順調に
発展
していくと私は
理解
しております。 残念ながら
日本
は、さっき申し上げましたように、いろんな
局地経済圏
に
資本投下
、企業の
進出
がおくれているのが
現状
です。物理的に
日本
は
環日本海経済圏
のほかに直接には領土的につながっていないんですが、それはどうしようもないですけれども、問題は、
アジア太平洋地域
における
局地経済圏
の
建設
に
日本
は基本的には消極的、受け身的、あるいはちゅうちょする
立場
をとって非常に楽観できない
状況
にあるのではないかと私は見ています。 次は、
アジア太平洋地域
の
経済発展
と
日本
の
役割
について
報告
させていただきたいと思います。 これはレジュメの3のところです。 第一は、
アジア太平洋地域
における
経済相互補完関係
についてですけれども、よく言われているように、
アジア太平洋地域
において
三角関係
が
形成
されている、
日本
、
欧米
それから
アジア
と。
アジア
に
日本
は入っていませんけれども、この場合は
NIES
、
ASEAN
、
中国
ですね。 この
三角関係
をどうして強調したいかといいますと、
日本
の対
欧米貿易
は
出超
です。また、対
NIES
、
ASEAN
、
中国
も基本的には
出超
です。今度は逆に、
NIES
、
ASEAN
、
中国
の対
欧米貿易
は
出超
なんですけれども、対
日本貿易
は
入超
です。結果的に言いますと、
NIES
、
ASEAN
、
中国
の対
欧米出超
は対
日本人超
をカバーしていると。つまり、
日本
を除く
アジア諸国
の対
欧米出超
が成立しなければ対
日本貿易
の
入超
は成立しない、そういうような
関係
を
理解
していただきたいんです。 つまり、
アジア諸国
は対
欧米国際市場
を
開拓
して
輸出
を促進してきたことによって
輸出
が伸びてきた、
出超額
は伸びてきた。しかし、
日本
と
NIES
、
ASEAN
、
中国
との
関係
は、後者にとっては不利であると。
日本
は
貿易大国
で、対
欧米
、対
アジア諸国
へも
出超
です。それで
日本経済
は成り立っている、そういうような
相互補完関係
を
理解
していただきたいと思います。 次は、3の(2)のところなんですが、
投資
の
推移
と
日本
の
関係
です。 簡単に言いますと、私が強調したいことは、
日本
は
アジア諸国
を
一つ
の重要な
迂回生産基地
として対
欧米市場
を
開拓
してきた。と同時に、
日本
と
欧米
の
貿易摩擦
を回避するために、八五年以降、
円高
によって対
アジア投資
をふやしてきた。 三番目は、
日本
の対
アジア進出
、対
アジア投資
の
一つ
の重要な
要因
としては、
特恵関税制度
の
適用
です、
GSP
の
適用
です。
日本
から
ヨーロッパ
、
アメリカ
に
輸出
すると、その
GSP
にひっかかっちゃいますが、
アジア諸国
から
輸出
すれば
特恵関税制度
が
適用
されると。そういうようなメリットを享受するために
日本
は
アジア
に本格的な
進出
を展開してきた。 第四点は、
アジア各国
の
市場
の
開拓
です。
NIES
、
ASEAN
、
中国
の
市場
、
地域市場
を
開拓
するために
日本資本
が言うまでもなく
アジア
に
進出
するようになってきた。
最後
に、
労働資源
の確保のために、八六年から九〇年、つまり九一年の
バブル経済
が崩壊するまでに
日本
は本格的な対
アジア投資
を展開してきた、こういうような
推移
を
理解
していただきたいと思います。 ここで
一つ
強調したいことは、
日本
の
アジアNIES
に対する
進出
、それは基本的には
資本集約産業
が展開してきた。しかし、
NIES
は
生産コスト
、賃金が高騰することによって、今度はその
日本
の対
NIES投資
が
NIES
から
ASEAN
へと移動していく。今度は
ASEAN諸国
の
生産コスト
が高騰して、
日本
の対
ASEAN投資
も徐々に
中国
あるいは
ベトナム
ヘ、
ベトナム
は
ASEAN
に入っていますけれども、
ASEAN
から
中国
へと移行していく、基本的にはこういうふうに
理解
していただきたいと思います。
日本
の
資本集約産業
は
NIES
、
労働集約産業
はどんどん
NIES
から
ASEAN
に、これからは
中国
を
中心
に展開していく
可能性
は非常に大きいと思います。 次は
貿易
の
推移
についてですが、さっき申し上げましたように
NIES諸国
は八九年一月から
GSP
が、
特恵関税制度
が撤廃されて、
GSP喪失
によって
日本
はこれから
シンガポール
以外の
ASEAN諸国
に
投資
しなければいけない。しかし、いわゆる準
NIES
の
マレーシア
と
タイ
もこれから
GSP
の資格を喪失していかざるを得ないですね。とすると、
日本
は対
中国投資
をいかに展開して、
GSP
を十分に享受するために対
アジア投資
を強化することによって
欧米市場
を
開拓
していくかが大きな
課題
だと思います。もちろん、
日本
の
アジア進出
は逆
輸入
も促進しなければいけません。これは後ほど少し詳細に述べるんですけれども、対
アジア投資
をふやすことによって内需を
拡大
、
市場
を開放して
アジア
からの
輸入
を促進していく、これも非常に重要な
課題
だと思います。 次は
ODA
の
推移
なんですけれども、基本的には
日本
の対
世界各国
の
援助
は
アジア
が
中心
ですが、
中国
、
インドネシア
、
フィリピン
などが
日本
の
ODA
のレシピエンスとなっています。さっきの
報告
にもありましたように、いろいろ
ODA
の抱えている問題があるんですが、いかに
アジア各国
の
環境保全
のために
日本
の
ODA
が活用されるかが大きな
課題
であると同時に、
インフラ
の
整備
も非常に重要ではないか。とりわけ
中国
は、
改革
・
開放政策
によって
経済発展
がなし遂げられてきたんですけれども、
沿海地帯
のみならず、とりわけ
内陸部
の
インフラ
がほとんど
整備
されていません。つまり、
インフラ
の
整備
は
中国
の
経済発展
と並行して
発展
してきていないので、
日本
はこれからの
ODA援助
で
アジア
、
中国
にしろ
インドネシア
、
マレーシア
、
各国
の産業
インフラ
の
整備
に大いに貢献してもらいたいと思います。 次は五番目、3の(5)なんですが、
アジア太平洋地域
の
成長
と
日本経済
の。パフォーマンスです。
アジア
から見れば
日本
は
アジア太平洋地域
の
経済発展
の牽引車になれるかどうか、
アジア
経済
を引っ張っていく力を持っているかどうか、牽引車としての
役割
、機能を
日本
に果たしてもらいたい。
日本
は果たしてそういうような機能、そういうような
役割
を果たせるかどうかが大きな問題ですね。しかしながら、
バブル経済
が九一年四月に崩壊してから六年二カ月たったんですけれども、
日本
の
国内
の
経済
はまだ低迷しており、
日本経済
のパフォーマンスは近い将来余り
期待
できないと私は悲観的に見ています。したがって、私に言わせると、近い将来、
日本
は
アジア太平洋地域
の
経済発展
の牽引車としての
役割
は余り
期待
できないんじゃないかと危惧しております。 次に、4の
アジア太平洋地域
の展望と
日本
の対応に移ります。 御
承知
のように、
アジア太平洋地域
は空前の勢いで政治、
経済
、社会、外交、軍事が急激に展開されていると思います。しかしながら、
日本
は
アジア太平洋地域
の急激な展開の対応に戸惑っているように見えるんです。
経済
大国
に見合った
日本
の政治的、外交的、あるいは技術的な姿勢が鮮明に打ち出されていないんじゃないかという側面があるのではないかと。
一つ
の例としては、今、
ASEAN
七カ国なんですけれども、ことし、うまくいけば
ミャンマー
、ラオス、カンボジアが加盟して
ASEAN
十カ国になっていくんでしょうけれども、
日本
と
ASEAN
との
関係
はそれほど緊密ではない。また、
ミャンマー
の
参加
によって、
国内
の民主化運動の問題で
日本
もちゅうちょして、
ヨーロッパ
もそうですけれども、人権問題とか民主化運動問題がいろいろ紛糾して、
日本
の
ミャンマー
に対する姿勢がはっきり打ち出されていないんじゃないかと。そういうような問題を抱えているので、これから
ASEAN
が七カ国から十カ国へ会員数をふやしていく中で、
日本
がどういうような政策をとって、どういうふうに対応すればよいかが大きな
課題
となってくると思います。 次は、4の(2)の不確定
要因
と
日本
の対応です。 これは、レジュメに書いてありますように、
北方領土
問題、尖閣、竹島、チベット独立問題、
中国
の核実験、
天安門事件
、それから
ミャンマー民主化運動
、
東ティモール独立運動
などが挙げられます。 これに対する
一つ
の例としては、
中国
の
天安門事件
について言えば、
ヨーロッパ
、
アメリカ
は直ちに
中国
に対する
経済
制裁を行ったんですけれども、当時の鄧小平さんは、斎藤新日鉄社長だったと思いますが、を通じて当時の海部内閣に頼んで、
中国
の民主化運動を
理解
してもらって、国権、
国家
の権利が重要なのかあるいは学生の権利が重要なのか、社会の安定、
国家
の安定が重要なのかをちゃんと
理解
してもらって、
日本
は
欧米
とやや違った
立場
をとって、
中国
に対する
経済
制裁は行われませんでした。そういうふうに、
天安門事件
についてどういうふうに評価をするかはまた別な問題ですけれども、
日本
は場合によっては独自の外交路線を展開する必要もあるんじゃないかと思います。 4の(3)に移りますけれども、華人
経済
の急
発展
と
日本
の話です。
中国大陸
の
中国
人の人口は十二億五千万ですけれども、それを除いて、
台湾
の二千万、香港の六百万、それから
アジア各国
の二千万以上の華人人口を入れて、
中国大陸
以外の五千万以上の華人が戦後いろんな商業活動に従事して
成長
してきた。 華人資本が強力な華人財閥として
アジア太平洋地域
のみならず
世界
に君臨してきた。もちろん、調べてみれば華人財閥は
日本
企業のよきパートナーとして
成長
してきた、そういうような華人財閥も少なくない。今の
アジアNIES
、
ASEAN
、
中国
への
投資
を見てみますと、華人の
役割
、華人
経済
の
役割
は非常に大きいと、それを
理解
していただきたいのです。 もっと正確に言えば、例えば華人資本の対
中国投資
は非常に
日本
企業の強敵となってきた。
日本
の対中
貿易
、対中
投資
を見てみますと、近年、香港を
中心
とする
NIES
に凌駕されている、これは
アジア各国
の華人資本が非常に速いスピードで対
中国投資
を展開してきたと。もちろん、福建省とか広東省、そういうようなところに
台湾
、香港を
中心
とする華人資本がどんどん
進出
して、
日本
が取り残されているというふうに私は
理解
しています。 4の(4)の
アジア太平洋地域
における
中国
の急浮上と
日本
なんですが、
中国
は一九七八年以来、
改革
・
開放政策
を推進して既に二十年経過してきました。最初の十五年間は鄧小平氏の積極的な指導により展開されたんですが、その後の残りの五年は主に江沢民の指導で開放・
改革
政策が推進されてきたんです。二月十九日に鄧小平さんが亡くなられて、基本的には、
中国
では江沢民を
中心
とする
集団指導体制
が確立されて、これからも
開放政策
、それからいわゆる社会主義
市場
経済
を推進していくに違いないと思います。
中国
はこれからどんどん
発展
していくと見る人が圧倒的に多いです。スタンフォード大学のクルーグマンさんみたいに消極的に
中国
経済
を分析している人もいるんですけれども、
中国
は、資本と労働の総動員によって
経済
が無理やりに
発展
させられてきたというふうに
理解
されているんですが、しかし例えばハーバード大学のボーゲルさんは、これから
中国
の
経済
は二十年から三十年の間に一〇%の高い
成長
率を維持していくんじゃないかと楽観的に分析しているんです。一〇%になるかどうかは知りませんけれども、
中国
は結構高い
成長
率を維持して
経済発展
を進めていくことは間違いないと私は見ています。したがって、中長期的に見れば
中国
は間違いなく
経済
大国
になると私は見ています。
中国
は今、
経済
がおくれていますけれども、しかし、
中国
は既に
日本
よりも
アジア太平洋地域
において政治、軍事、外交の発言力を持っています。
日本
は
経済
大国
ですけれども、しかし外交、政治的な発言力は
中国
とは比較できないと私は見ています。
日本
はどういうふうに対応していけばよいのか、これも非常に大きな
課題
だと思います。
中国
と
アジア諸国
は、
ASEAN
を
中心
に友好
関係
、外交
関係
を樹立して、緊密な
協力
体制を構築してきたのですけれども、それは人権問題、民主化運動問題あるいは
中国
のWTO加盟問題、EAEC問題を見てみますと、
中国
と
アジア諸国
との
関係
は
日本
よりもはるかに緊密であることは否定できないと思います。
最後
になりますけれども、5のところ、
日本
への
期待
なんですけれども、簡単に言いますと、自主外交の確立と推進が重要であると。詳細については後ほど
質疑
応答で議論すればよろしいと思いますが、二番目は、規制緩和と
市場
開放による逆
輸入
の促進です、これは国際
貿易
ですね。御
承知
のように、
日本
と
アジアNIES
、
ASEAN諸国
との
貿易
は基本的には垂直
貿易
なんですけれども、
アジアNIES
諸国、
ASEAN諸国
がどんどん
発展
、
成長
していけば、これから工業製品を
中心
とする
輸出
がふえてくれば
日本
との
貿易
関係
は垂直よりも水平
貿易
の方向へ持っていきたい、そういうような強い
期待
をしています。 三番目は、5の(3)、すそ野産業の育成に
協力
してほしいと。
日本
の中小企業も、結構進んでいる優秀な技術を持って、これから円が高くなれば親会社、大手企業に付随してどんどん
アジア
に
進出
していって、
アジア各国
の中小企業、すそ野産業との
協力
を通じて、技術移転、経営ノウハウの移転によって
アジア各国
のすそ野産業が育成されていくことを私は
期待
しております。 5の(4)ですけれども、
日本
の
援助
です。
日本
政府が
アジア各国
の民生の向上に直結するように展開してほしい。よく
アジア各国
の官僚、政治家が着服するとか、あるいは
日本
の
ODA
は
アジア各国
の国民生活の向上に直結していないんじゃないかと、いろいろ問題がありますが、これから、環境の保全とか
インフラ
の
整備
も重要なんですけれども、いかに
日本
の
経済援助
が
アジア各国
の国民の生活の向上に寄与できるか、それは
課題
として残されます。 以上、かいつまんで
アジア太平洋地域
の
経済発展
を吟味、分析しながら、
日本
は
経済
大国
として軍事力を伴わない政治
大国
、あるいは外交を積極的に展開して
アジア太平洋地域
のいろんな
局地経済圏
の
形成
に寄与して、この
地域
の
経済発展
に積極的な
役割
を果たしてもらいたい、そういうふうに
考え
ております。 以上、かいつまんで申しわけないんですけれども、私の御
報告
とさせていただきます。 御清聴どうもありがとうございました。
林田悠紀夫
6
○
会長
(
林田悠紀夫君
) ありがとうございました。 以上で
参考人
からの
意見
の聴取は終わりました。 これより
質疑
を行います。
質疑
を希望される方は挙手を願い、私の指名を待って
質疑
を行っていただきたいと存じます。 なお、
参考人
には
質疑
に際しましても
日本
語で御発言いただくことになっておりますので、
質疑
を希望される
委員
は要領よく明快に行うようお願い申し上げます。 それでは、
質疑
のある方は挙手をお願いいたします。
山本一太
7
○山本一太君 どうも大変示唆に富んだ御講義、両先生ありがとうございました。簡潔に御質問させていただきたいと思います。 プラサート先生が、
冷戦
後の社会においても
経済協力
の必要性というのは少しも
程度
が下がらない、すなわち
日本
の
ODA
の
重要性
についての趣旨のお話をされたんですけれども、その中で、
最後
に
ODA基本法
のことをおっしゃったと思うんです。この
ODA基本法
は
アジア諸国
から見てどういう
重要性
があるのか、すなわち、
日本
が
ODA
政策を進めていく上でこの基本法をぜひとも
援助
の
哲学
としてつくってほしいと。そういうことについてプラサート先生と
リム
先生、両先生のコメントがあれば言いただきたいと思います。 もう一点は
ASEM
のことでございまして、私はずっと
ASEM
に大変興味を持っているわけなんですけれども、
ASEM
のフォローアップということで、スイスで行われているいわゆる
世界
のリーダーを集めたダボス
会議
というのがあるんです。このダボス
会議
のミニダボス版ということで、たしか一週間後ぐらいに宮崎で、
ASEAN
そして
ヨーロッパ
の
各国
、三、四十カ国の若手の政治、
経済
、文化人、そうしたリーダーを集めてのシンポジウムが行われるというふうにも伺っておるわけでございますけれども、
アジア
地域
協力
体、すなわち
アジア
の
地域
間
協力
、そして
ヨーロッパ
の
地域
間
協力
、この
二つ
はこれからどのように
協力
をしていけるのか。 すなわち、例えば
ASEAN
、
ARF
といった
地域
の枠組みとEU、
ヨーロッパ
はまさにEUの統合に向かって進んでいるわけですけれども、EUとかNATOとか、そういった
アジア
と
ヨーロッパ
との
地域
間の
協力
関係
というものは将来どういう方向に向かっていくのか、あるいはどういう姿であるべきなのかということについて、お二人から簡潔にコメントをいただければと思います。 以上、二点についてお願いいたします。
プラサート・チチャイワタナポン
8
○
参考人
(
プラサート・チチャイワタナポン
君) 山本先生、ありがとうございます。
ODA基本法
がもしできますとすれば、どういうような理念、どういうような内容が望ましいかという御質問だと思います。
一つ
は、
情報公開
を徹底的に行うこと、これはとても重要だと思います。
情報公開
を通じて国民の
理解
、
支持
が得られますし、また被
援助国
の方もその
理解
を深めることができます。今まで外務省の方はかなり
努力
をしてきましたけれども、
円借款
を管理する大蔵省などが非常に門戸をあけていないというような印象を受けました。
情報公開
にさらに
努力
することは、多分行政側がやるんですけれども、しかしその法律ができることによって国民を代表する
国会
が
主導権
をとり、また国民の
参加
権利が認められる、そういうシンボリックな意義を持つという気がします。また、そういう
情報公開
がされますと、図書館、
国会
図書館で国民のどなたでもアクセスできる、そういう国民の
理解
、さらに
支持
が得られるというメリットが
一つ
あります。 もう
一つ
は、
社会開発
の理念、ソーシャルディベロプメントの方の
重要性
をもう少し強調すべきと思います。多くの
開発
途上国は、官僚が腐敗した国もありますし、またその
効率性
が余りよくない国も多くあります。GツーG、政府間の
協力
が十分に国民にメリットを及ぼさないところが多い。そこで、
日本
の
NGO
でも現地のローカル
NGO
でも、そこを使って
社会開発
に力を入れること、これも
一つ
の革命的な意義があるという気がします。
ODA基本法
は、その内容はいろいろ議論をされていくと思いますが、シンボリックな意味があると思っています。行政側がこれを余り歓迎しないのは
理解
できますけれども、しかし、役人の皆さんが、例えば外務省、大蔵省、JICA、OECFの
立場
を離れて個人個人、一人の国民としてそういう
立場
に立ちますと、この
ODA基本法
を大いにサポートするんではないかという気がします。 この
国会
は国民の信頼と
関係
しますけれども、
日本
の
国会
の本
会議
を傍聴したことがありますが、まだ開かれた
国会
という印象は余り感じていません。スウェーデンの
国会
ですと
国会
議員の先生の紹介がなくてもだれでも自由に入れます。そこで
一つ
の感銘を受けたのは、高等学校までにみんなが少なくとも一回は
国会
見学に来てもらおう、そういうスウェーデンの
国会
の目標、その
努力
があって国民とギャップのないような開かれた
国会
、そういうような国民の
支持
が得られないと行政側の説得に引っ張られていきやすいという印象を受けました。
ODA基本法
はこれくらいにしておいて、
ASEM
の方ですけれども、
アジア
と
ヨーロッパ
との
関係
、どういうような形が望ましいかという御質問ですけれども、
一つ
は価値観の問題だと思います。
ヨーロッパ
先進国の方は、人権などをスタンダードが高い普遍的なものだと見ています。しかし、
アジア
の国々の方はおくれていることは事実です。それを認めながら、
ヨーロッパ
の国々の
理解
も得られるような対話が必要だと思います。 例えば
ミャンマー
を一例にしますと、八八年から今日まで十年間、
日本
は
開発
援助
をほぼ凍結してきました。これは、
ミャンマー
にとっては決していいことではありません。少なくとも
ミャンマー
の
研修生
、年に十人、二十人じゃなくて百人、五百人、千人以上
日本
に来てもらおう、いろんな教育の面、
経済
社会開発
などの研修を受けて、また
アジア
の国々をもっといろいろ見ていただいて、外の
世界
を見るチャンスを与えることはミニマムだと思います。
ヨーロッパ
、
欧米
諸国の方は、
ミャンマー
のSLORC
政権
を認めませんから、こういうような対話が
一つ
の議題となると思います。 今度
ミャンマー
は、ことしの七月に恐らく
ASEAN
に加盟すると予想されます。これもまた問題になります。
ASEAN
は
拡大
外相
会議
があって、そこにEUの代表が
出席
し、
アメリカ
代表も
出席
します。
ヨーロッパ
の方は
ミャンマー
のSLORC
政権
を認めませんから、
ミャンマー
が
ASEAN
に加盟してはやっぱり
ASEM
も困る、こういうようなジレンマに直面します。これをどういうふうにするか。私の
意見
としては、
開発
援助
を人権侵害で凍結するのは真剣に
考え
なければいけない。
ミャンマー
の経験を見て十年間は決してよくはなっていないです。できるだけそこの政府の役人もたくさん、岩倉使節みたいに
世界
を見てもらう、そういうような
努力
が必要ですし、また
ヨーロッパ
の方にも説明する
努力
が必要だと思います。 もう
一つ
は、
ヨーロッパ
の方の工業
発展
は
アジア
の国々よりも百年早くなし遂げてきました。そこで、ポスト産業社会の問題など非常に豊富な経験を持っています。
環境保全
または高齢化社会、豊富な経験を持っているんです。
アジア
の国々は
ヨーロッパ
から学ぶチャンスだと思います。 そこで、いろんな環境基金とか
社会開発
計画などの計画を立て、またファンドをつくってそこで運用していく、これは非常にいいチャンスだと思います。
日本
は恐らくその真ん中にあると思います。
ヨーロッパ
の方にもちょっと近い、
アジア
の方にもちょっと近い、重要なかけ橋の
役割
を果たせるのではないかと思います。
アジア
と
ヨーロッパ
の
会合
、今度
日本
の宮崎で開かれることはとってもいいと思います。三十四カ国の
出席者
、また幅広く政治家、財界人、文化人なども
出席
して、この
ASEM
もぜひ活発化していくことを大きく
期待
します。 以上です。
リム・ホァシン
9
○
参考人
(
リム・ホァシン
君) 第二点について若干補足させていただきたいと思います。
ASEAN
とEUとの
関係
です。それは
ASEM
に
象徴
されているように、非常に緊密になっていきつつあります。EUから見れば、
アジア太平洋地域
、とりわけ
NIES
、
ASEAN
の
市場
それから
投資
を非常に重要視するようになってきた。
ヨーロッパ諸国
は、
日本
の報道ではないですけれども、やっぱり
経済
が非常に低迷しています。失業率について言えば二けたでしょう、ドイツ、フランス、非常に深刻です。EUで貨幣が統一されて、これからいかに
発展
していくか疑問視されているんです。
ヨーロッパ
は非常に困難に直面しているので、いかに
アジア
との交流、
アジア
との
貿易
、
アジア
に対する、とりわけ
ASEAN
に対する
投資
をふやしていったらいいか非常に真剣に
考え
られるようになってきたんです。したがって、
シンガポール
のゴー・チョクトン首相が提案した
ASEAN
とEUとの首脳
会議
にすぐ賛成されて、定期的に行われることになっています。
ASEAN
から見れば、政治的あるいは軍事的に見れば、
アジア太平洋
の真空をだれが埋めるかです。
アメリカ
が
フィリピン
から撤退して、
アジア
の安全と平和をだれが守るか。
ASEAN諸国
が非常に危惧しているのは何かといいますと、
アジア太平洋
に
アメリカ
のかわりに
日本
が出てくることを歓迎しません。かといって
中国
が出てきたらそれもまた反対します。
インド
も警戒されています。あくまでも
アジア太平洋地域
において力のバランスが保たれて、
アジア諸国
は平和的に
経済
建設
を進めていくことが一番望ましいですからね。 では、どうすればいいかです。御
承知
のように、
日本
もそうだったんですけれども、
NIES
、
ASEAN諸国
は
アメリカ
というような大きなマーケットが存在して、
アメリカ
に引っ張られて
成長
してきた。八五年以降、
日本
たたきそれから
アジアNIES
たたきによって
NIES
、
ASEAN諸国
の対米
輸出
が抑制されて激減してきた。
アジア諸国
、とりわけ
NIES
、
ASEAN
はこれから
国際市場
を
開拓
していかなければいけない。EUは閉ざされている。それは困る。したがって、どうしてもEUと定期的な
会議
を行って、EUとの
協力
、提携を強化していかなければいけない。それは
経済
的な配慮であると同時に、
アジア太平洋地域
の真空を配慮して
ヨーロッパ
の力をも入れておく、そういうように総合的に判断して、
ASEAN諸国
を
中心
に
ヨーロッパ諸国
との交流を深めてきたと私は見ています。 問題は、さっきプラサート先生も御指摘されたように、
ASEAN
十カ国が成立すれば、今懸案の
ミャンマー
の問題をいかに解決するか。
ミャンマー
の人権問題民主化運動の問題です。
ヨーロッパ
はやっぱり抵抗していますからね。それを若干互いに譲歩をして、棚上げして、今
ASEAN諸国
はEUを説得して、うまくいくかどうか知りませんけれども、
一つ
象徴
的な出来事としては、最近スハルト・
インドネシア
大統領が
ミャンマー
を訪問した、これは異例の異例ですけれども。つまり
ASEAN諸国
は、
ミャンマー
、それからラオス、カンボジアも加入して
拡大
された
ASEAN
の国際的な地位、発言力を強めていくと。
インドネシア
も自分の問題がありますね、東ティモール問題で。EUもポルトガルなどは非常に批判的で
インドネシア
と紛糾しています。
ASEAN諸国
においては、
ミャンマー
の問題、東ティモールの問題それから人権の問題低賃金労働の問題、いろいろ重要な懸案となっています。これをいかに解決すればよいか、これをうまく解決すれば
ASEAN
とEUとの
関係
が一層促進されていくに違いないと思います。 以上です。
山本一太
10
○山本一太君 ありがとうございました。
直嶋正行
11
○直嶋正行君 両先生、本日はどうもありがとうございます。 私は簡単に二問お尋ねしたいんですが、まず最初に
リム
先生にお伺いしたいんですけれども、先ほど
アジア太平洋地域
の
成長
と
日本経済
の。パフォーマンスというお話の中で、
日本経済
の。パフォーマンスについては悲観的に見ている、
アジア太平洋
における
経済
の牽引車にはならないんではないかというようなコメントがあったように思うんです。これは今、
日本経済
は芳しくないと思うんですが、例えば中長期的に将来を見通してこのような御見解を言われた面もあると思うんですけれども、もう少しこの部分について、どういう理由でそのようにお
考え
になったのか詳しくお聞かせをいただきたい、これが第一問であります。 それから、
二つ
目ですが、これはプラサート先生、
リム
先生お二人の御見解をお伺いしたいんです。 以前にこの
調査
団が
タイ
の方に訪問されましたときのプラサート先生とのやりとりをちょっと読ませていただきました。その中で、プラサート先生は、例えば
ASEAN
の
会議
なんかでも
日本
の外務大臣と
タイ
の外務大臣とは違う言葉、異なる言葉をしゃべっていると。
日本
は口を開けば
アジア太平洋
と、それから
タイ
の方は
ASEAN
、
アジア
、こういう視点だと。だから、そこにずれがあるといいますか、違う言語で会話している、このことは非常によくないという御指摘でありました。 それから、今のお話の中でも、どうも
日本
というのはいわゆる日米と
ASEAN
の間に立って非常に態度があいまいだという、特にこの
ASEAN
の
安全保障
であるとか
経済
の問題に関してこういうコメントがございましたし、
リム
先生の御
報告
の中にも似たような感じがあったと思うんです。 ただ、これはひとつ
日本
の
立場
から今度は申し上げますと、お二人もいみじくも御指摘されましたように、今
ASEAN
地域
よりも
北東アジア
といいますか、これは
朝鮮半島
の問題もありますし、
中国
の両
岸関係
その他いろんな
紛争
要因
といいますか、そういうものがあります。そういう
状況
で
考え
ると、やはり
日本
という
立場
から見ると、日米同盟といいますか、これはやはり最優先せざるを得ない。もちろん、戦後五十年間の
経済
関係
ということも背景にあると思うんですが、最優先をせざるを得ないと思うんです。 その中で、今お二人からいろいろと御指摘のあった
ASEAN
の
経済発展
なんかに寄与していこうとすると、どうしても
ASEAN
の側から見ると中途半端だという
立場
に立たざるを得ない面も私はあるんじゃないかと思うんです。そういう意味でいうと、
日本
は何をやればいいのか。片方に日米
関係
と、こういう重要なものがあって、もう一方で確かに
発展
する
アジア
という大きな
課題
があって、その中で
日本
は何をやればいいのか。 さっきお話のあったような
ODA
だとかそういうものに関して申し上げますと、これは継続
努力
をしなきゃいけないと思うんですが、もっと大きな枠組みでやはり
日本
がアクションを起こしていくというのはなかなか難しいんじゃないかと思うんですが、この点についてもう少しお二人の所感をいただければ大変ありがたいと思うんですけれども。
リム・ホァシン
12
○
参考人
(
リム・ホァシン
君) まず第一点、
日本
は
アジア太平洋地域
の
経済発展
の牽引車になれるかどうかです。私は悲観的です。少なくとも二年間は、技術移転、資本の海外直接
投資
、国際
貿易
、いろんな面において
日本
は
アメリカ
の五〇%ぐらいの牽引車としての
役割
を果たすことしか
期待
できないと見ています。 御
承知
のように、さっきもお話をいたしましたように、
アジア
地域
、
NIES
、
ASEAN諸国
は、大きな
日本
、ああいう大きな
アメリカ
のマーケットがあって、レーガノミックスのように双子の赤字で外国の
輸出
を促進してきたので、
アジアNIES
が
成長
してきた。しかし、財政赤字と
貿易
赤字を抱えている
アメリカ
には、これ以上
日本
、
NIES
、
ASEAN
を牽引していく力がなくなってきているというふうに
理解
しています。
アメリカ
にかわって
日本
はこの
地域
の
経済発展
に、この
地域
の
輸出
を垂直から水平へ大量に吸収する能力、包容力があるかどうかは、それはないと思います。 なぜかといいますと、今、
日本
国内
は大量生産と需要減、価格破壊という表現も出てくるんですけれども
日本
人の必要とするものはほとんどないです。たくさん生産されても
消費
されていないですね、
消費
を促進して
国内
市場
を
拡大
していく力を持っていないですから。これから規制緩和とか
市場
開放を本格的に進めていくことによって
国内
市場
を開放しない限り、逆
輸入
、つまり
アジア各国
から大量に工業製品を
輸入
する条件を持っていないと思います。もしそうだとすれば、
日本
は
アジア太平洋地域
のアブソーバーとしてあるいは牽引車としての
役割
を果たせないじゃないかと、私は悲観的に見ています。 次は、
日本
の外交政策があいまいじゃないかというような御指摘なんですが、おっしゃるとおりです。
アジア
から見れば、
ASEAN
から見れば、日米安保条約のこともあるんでしょうが、
日本
には独立して外交政策を展開することは余り
期待
されていないですね、これは
アジア各国
も問題があると思いますけれども。一方においては、日米安保条約で
アジア太平洋地域
の平和と安全が保たれて
アジア各国
の
経済発展
が可能だと感謝している気持ちもあるんです。他方においては、
日本
と
アメリカ
は同盟国となって極東有事、とりわけ
中国
と韓国が非常に敏感に反応して、これは
アジア太平洋
の平和よりも
日本
が対外的に何か意図があるんじゃないかというふうに見ている国もあるし、戦後、
日本
に対する不信感に包まれて、
日本
と
アメリカ
との軍事
協力
に不信感を持っている点も否定できません。したがって
地域
協力
、軍事じゃなくて他国との
協力
体制をつくってそれに取ってかわった方が、日米安保条約よりも
ASEAN諸国
が推進してきた中立、非同盟政策に積極的に
参加
して、この
地域
における多国間の協議によって
安全保障
を
考え
て、
日本
が積極的に乗り出した方がよろしいのではないかと私は見ています。
プラサート・チチャイワタナポン
13
○
参考人
(
プラサート・チチャイワタナポン
君) 直嶋先生の御質問はうちの
アジア
の国々でもよく議論します。私は
日本
に留学したことがあって、
日本
社会で
アジア
との
関係
はその難しさを実感しました。
一つ
は、日米
関係
の方が非常にウエートが重くて、
北東アジア
には
緊張
や
衝突
の
可能性
のある諸問題などがたくさん残っていて、
冷戦
が崩壊しても
緊張
やいろんな問題がそのまま残っている、それは
理解
します。
安全保障
の面では、
アメリカ
の軍事的な
プレゼンス
、また
在日米軍基地
の
重要性
は改めて必要だとは
理解
できます。しかし、
安全保障
の面だけじゃなくてあらゆる面にわたって
アメリカ
の位置、そのウエートが
アジア
との
関係
よりもずっと大きくて、それが問題だと私は思います。日米
関係
と
日本
と
アジア
の
関係
の
二つ
の柱を立てておいて、その両方とも大事だという
認識
がまず必要だと思います。 日米
関係
の方にウエートを与え過ぎている例はたくさんあります。例えば文化交流の面は、国際交流基金の中に日米センターがあるんですね。また、
ASEAN
文化センターがありました。後ほど
アジア
センターに名前を変えてちょっと改造してきましたが、日米センターの方の予算が非常に大きい。例えば、九四年の日米センターの予算は当時の
ASEAN
文化センターよりも十倍多かった。今日、
ASEAN
文化センターは
アジア
センターに変わってきました。例えばことしの予算を見ても、日米センターの方は二倍多いです。文化交流の面も非常に
アメリカ
の方にウエートが重い。
日本
はちょっと
アメリカ
には弱いということは、我々
アジア
の人々はよく意識します。 これは難しいことですけれども、
日本
の将来は
アジア
にもある、
アジア
の国々の繁栄、安定及び
日本
との友好
関係
が大事だという
認識
はもっともっと再
認識
してほしいという
期待
です。まず、
日本
は
アジア
だ、
日本
は
アジア
の一員だ、ユー・アー・ジャパニーズエイジアン、あくまでも
アジア
だという
認識
です。
アジア
とのつき合いは難しい、その点は
理解
できます。戦争責任を厳しく追求したり、非常に厄介なこと、また
日本
の事情の
理解
も不十分、その点は確かにあります。しかし、これを乗り越えるのは
一つ
のチャレンジです。うまくこのジレンマを乗り越えられた人の中で、故大来佐武郎先生の名前を取り上げたいと思います。 大来佐武郎先生は戦前、青年時代、
アジア
の理念に燃えて、その世代は非常に理想主義者時代の人々で、戦後このジェネレーションの
日本
人が
アジア
との友好
関係
のきずなをつくったんです。議論をするよりもアクションでそういう
アプローチ
をとられてきたわけです。大来佐武郎先生の偉大な遺産は、今日のAPECの基盤となったPECCの仕事をずっとされてきた。
アジア
の人々と一緒に仕事をされる過程でフレンドシップ、友好
関係
が生まれてくる。いろんな計画を立てて一緒に仕事をする、
アジア
のために何かをやろうと。そこで一緒に仕事をしながら友好
関係
が生まれてくる。そこで大来佐武郎先生のジェネレーションの貢献が大きい、また尊敬されています。 結局、
アジア
は
一つ
の大きな柱であるという
認識
、
日本
が
アジア
の一員だという
認識
、そこで何か
アジア
のためにやろうという決意、これは行政側だけじゃなくて、政党の皆さんもできると思います。国の代表者が座られる各政党、自民党から共産党までが
アジア
のために何かをやろう、
一つ
のアクションをとりたいと。奨学金制度にしろスラムの貧しい子供の教育、そこの奨学金、移動図書館の書類の提供など、少し記念になるようなことを各政党もでき、そのアクションを通じて
日本
はその厄介なことを乗り越えられ、また感謝され友好
関係
が生まれてくる。 これはちょっと各政党に対して
一つ
の
期待
ですけれども、ドイツの政党は非常にアクティブで、行政の方とともに政党がいろいろ財団をつくって
一つ
のいいことを残しておきたいと。
日本
ではちょっと顔が見えない。各政党のミッションは、例えば
タイ
のスラムの視察は恐らくしたことがないと思います。何らかの形で
一つ
の貢献を見つけること、そこで
理解
、尊敬が生まれてくると思います。 ちょっと長くなりました。
大脇雅子
14
○大脇雅子君 社会民主党の大脇でございます。 お二人の先生から示唆に富むお話をいただき、心から御礼申し上げます。 プラサート先生は、昨年、
東南アジア諸国
を訪問した国際問題
調査会
のメンバーによる海外派遣議員団に対して次のような発言をなさいました。 我が国の
ODA
大綱の中に、
経済
社会
発展
の恩恵を余り受けていない社会層に重点を向けるということを
経済協力
の理念としてはっきりと入れるべきではないかと。きょうも
市民社会
への貢献で
援助
の
哲学
というものをしっかり持ってほしいと言われました。また、
リム
先生も、環境とか
インフラ
の
整備
ということで、明快な人権のスタンスを持った
ODA
というものが必要だと言われました。 私も
フィリピン
の人たちと話したときに、例えば大きいはしご車よりも小さな町々にポンプ車を、そして、大きな病院よりも各
地域
に小さな診療所をという要望を受けました。
NGO
も支援をしているけれども、
最後
はピープルズオーガニゼーションというんですか、POの自立の支援というものを視野にして、まさにそこに生きる
ODA
をというサジェスチョンを受けたことがございます。それで、具体的にいわゆる
日本
の顔が見える二十一
世紀
の技術
協力
のあるべき姿について、お二人の先生にお尋ねをしたいと思います。 もう
一つ
は、今おっしゃいました日米の安保条約というものと、いわば対等な形で多国間安保の方に軸足を移すべきではないかという御
意見
がありました。 私はやはり、例えばCSCEが果たしているような議員のフォーラムというか
会議
というものが
アジア
にできないかと。そうすれば、いわゆる人権概念とかあるいは
民主主義
とかさまざまな
アジア
の問題に関しても対話のいわゆる基盤
整備
の中で信頼醸成ができていくのではないか。そして、
各国
がその自立と連帯という
考え
方で
アジア
の新しいそうした
関係
というものの構築ができるのではないかというふうに
考え
ているものでございます。 この点について、いわゆる
アジア
版CSCEのような議員レベルにおけるそうした対話の
可能性
というものの構想について御
意見
を、コメントをお尋ねいたしたいと思います。
プラサート・チチャイワタナポン
15
○
参考人
(
プラサート・チチャイワタナポン
君) 大脇先生の御質問、ありがとうございました。 確かに
ODA
理念は、今の
ODA
大綱ができたのは九二年で、その前の
ODA
四原則は九一年の四月だと思います。湾岸戦争の直後に慌ててつくった原則だと思います。今、顧みて五年間たちます。それを見直すことは、大脇先生のおっしゃったことに全く同感です。
世界
の
一つ
の大きな流れですから、これも
日本
の行政家はもう敏感ですから、それを引き受ける
可能性
もあるという気がします。
経済
インフラ
は重要ですけれども、社会
インフラ
の方、
基礎教育
とか、または余り日の当たらない社会層の方、工業化の過程でちょっと犠牲になる社会層の方に重点を置くことはこれは不可能でないと思います。そういうような
努力
も今見られています。 例えば、外務省は三つの
援助
、支援計画を持っています。
日本
の
援助
もローカル
援助
も、これを使って小さな図書館、スラムまたは村の至るところまで、小さいですけれどもこれが非常に喜ばれて感謝をされる。また、人と人とのつながり、
援助
の皆さんがもっとリラックスして周りの人々と人間
関係
ができる。政府と政府ですと、官僚と官僚の方はちょっと態度がかたくて、ガードがかたくて、そこで若干
緊張
があるので、そこのメリットは大きいと思います。全く同感です。 もう
一つ
、CSCEのような構想の
可能性
ですけれども、今
ASEAN
の国々の政府が望んでいるのは多角的、マルチラテラルな
アプローチ
ですね。多国間じゃなくて多角的な
アプローチ
で、
ARF
は北朝鮮を入れますと、これもほぼ
アジア太平洋
のCSCE版だと思います。実は去年七月の
会議
のとき、一番長い時間議論された
テーマ
は北朝鮮問題だと聞きました。
ARF
の場で、
東南アジア
地域
じゃなくて
アジア太平洋地域
全体をカバーする、また人権問題も北朝鮮問題もいろいろ議論されます。
ASEAN
は、こういうような場をつくって、これをだんだん
拡大
していく。多分ことしの
会議
で北朝鮮の代表者が招かれると思います。去年二時間くらい
朝鮮半島
問題を議論した際、北朝鮮の代表者が
出席
しないままでちょっとぐあいが悪かったと思います。
出席
した方がいいと思います。 議員レベルの場の話ですけれども、実は
タイ
の外務大臣は九五年の
ASEAN拡大外相会議
で提案しました。
ASEAN
の
会合
は国民の代表も入れるべきと提案しました。しかし、
シンガポール
、
インドネシア
などから冷たい反応を受けて廃案にしました。去年、もう一回
タイ
の外務大臣が提案しました。国民の代表のような
立場
を持つ人の
参加
も提案しました。今回は若干小
委員
会レベルで議論されていきます。その提案は
ASEAN
だけですね。
ARF
の場でも議員、国民の代表の
出席
、これもこれからまた議論をされていくと思います。
日本
政府がこれをサポートしたかどうかは自信がありませんが、
日本
政府がこれをプッシュすれば、
ASEAN
の
幾つ
かの国も積極的にやりましょうという国が出てくると思います。少なくとも
タイ
政府はもう二回提案してきました。 以上です。
リム・ホァシン
16
○
参考人
(
リム・ホァシン
君) 今、御指摘された
二つ
の点に私も全く同感です。あえてつけ加えさせていただきますと、第一点に、病院よりも地方の農村にクリニックをたくさんつくった方が国民の保健、健康に寄与できる、そういうような
援助
の方がよろしい、それも全く同感です。 近年、DACの対
開発
途上国の政府
援助
も減ってきたんです、景気低迷で。
日本
も
期待
されるような金額の
ODA
を
国会
で配分されていない。にもかかわらず、
日本
の
ODA
は過去五、六年間
世界
の一位を占めているんです。国民一人当たり一万円以上の税金でどうして
開発
途上国の
援助
をしなければいけないか、
日本
の国民一般も不平不満もあろうかと思いますが、
援助
される側から見れば、国民の生活の向上、
経済
の
発展
に寄与できるような
ODA
を歓迎すると。 強調したいことは、今
アジア諸国
において
経済発展
が進んでいるんです。しかしながら、
インフラ
の
整備
が並行して
整備
されていないから、環境汚染問題がいろいろ出てくるんです。これからも
経済発展
と並行するような
インフラ
、産業の
インフラ
の
整備
、それは橋梁、道路、発電所等々、
日本
の
ODA
で
援助
してほしいと。そういうような、
中国
を
中心
に
インドネシア
とか
マレーシア
あたりも
日本
に要請する
立場
あるいはその気持ちを持っていると思います。 問題は、
日本
の
ODA
で、例えば
中国
の三峡ダムとかあるいは
インドネシア
のアサハンプロジェクトとか、ウォノギリダムプロジェクト、それはスラカルタにあるんですけれども。それからボロブドゥール・プランバナン遺跡の
援助
、それもいろいろ批判されていますけれども、環境破壊とかあるいは歴史遺跡の破壊とか等々いろいろ問題が提起されているんですが、
援助
側はフィージビリティースタディー、それが重要です。派遣して
調査
して、歓迎される、感謝される
援助
をいかに展開すればよいか、そういうような
調査
は非常に大切だと思います。 よく昔の話で、マルコス
政権
当時は
援助
を着服される、そういうような事件は幾らでもあるんです。
日本
から見れば、国民の税金で
開発
途上国の
援助
が政治家の財布に入ってしまったら情けないし、
援助
される側から見れば、国民がまた税金を払って借款の返済に追われるんだからいろいろ問題を抱えている。私の言いたいことは単純明快です、
援助
をされる側の国民生活の向上、
経済発展
にいかに寄与できるか、貢献できるか、真剣にフィージビリティースタディーをしてから展開をしてほしい、そういうことです。 二番目も私は全く同感です。
日本
と
アジア
、
日本
と
ASEAN諸国
との交流はやっぱり大切です。
日本
と
ASEAN
、
日本
と
ARF
、民間も財界学者の交流をどんどん展開してもらいたいですね。橋本首相がこれから定期的に
ASEAN
首脳と会談して、互いの
理解
、親善を深めていくことによって
貿易
とか
投資
、そういうようなことは、やっぱり人的交流を通じて展開されていかなければいけないと思います。だから、定期的な人的交流、政府首脳だけじゃなくて、政党あるいは学界、
経済
界、そういうふうな親善交流、人的往来を大いにやってほしいですね。 以上です。
菅野久光
17
○菅野久光君 民主党・新緑風会の菅野でございます。きょうは、お二人の
先生方
のお話を大変興味深くお聞きいたしました。 プラサート先生と
リム
先生のお二人にお伺いいたしたいと思います。
アジア太平洋地域
の国々が二十一
世紀
の平和と繁栄を築いていくためには、
地域
の国々の相互信頼
関係
をより一層強固なものとしていかなければならないというふうに思います。また、そうだと思います。このためには、
リム
先生の話された国境を越えた
局地経済圏
という
地域
協力
を盛んにしていくことと並んで、例えば
中国
から発して
インド
シナ半島の国々を貫流するメコン川流域の総合
開発
など、いわば多国間にまたがる
開発
プロジェクトを進めて、
関係
する諸国民に
開発
の成果をもたらして共通の利益、共通の
安全保障
という意識を高めてもらうことが大切ではないかというふうにも思われます。 このような
局地経済圏
の
形成
、そして
地域
協力
の活発化、多国間の
開発
プロジェクトの推進によって
アジア太平洋
の平和と繁栄に寄与していくという
考え
方についてはどのようにお
考え
になられるか、お二人の先生に御
意見
をいただきたい、このように思います。
プラサート・チチャイワタナポン
18
○
参考人
(
プラサート・チチャイワタナポン
君) 先生の御質問は大変幅広く、
アジア太平洋地域
、また
アジア
の平和と繁栄の要請は何だろうか、
局地経済圏
は確かにその
一つ
だと思います。最大の規模はメコン川
開発
計画です、御指摘のとおり。 このメコン川
開発
の
可能性
はとても大きいです、
アジア
の半分をカバーしますから。これはぜひ実現してほしいと思います。これがうまくいけば、今心配されているエネルギー問題、特に
中国
の
経済発展
でエネルギー不足問題が出てくる。これはいろんな問題にこたえられる重要な計画だと思います。これは、
アジア
開発
銀行が今力を入れているんですけれども、政治的な問題はもうクリアしてきたと思います。残りは
経済
計画担当者の間の話し合いです。そこは比較的やりやすい環境に置かれていると思います。 それとともに、
アジア
地域
の交通、国道、鉄道など、
シンガポール
から北京まで鉄道がいつできるか、これも
一つ
のチャレンジです。東西南北の交通ネットワーク、
ヨーロッパ
の方は
ヨーロッパ
鉄道があって、
アジア
はその点でおくれているんです。この辺の
経済
インフラ
の方も意味がある、これも忘れてはいけないと思います。この点は、二国間じゃなくていろんな国の
協力
、これも
一つ
のチャレンジです。ここで
日本
はリーダーシップを発揮できるんじゃないかと
期待
しますが、ほかの小さい国々、また
中国
はその力は持っていないと思います。
リム・ホァシン
19
○
参考人
(
リム・ホァシン
君) 二十一
世紀
に向けた
局地経済圏
を
中心
とする
地域
的な
経済協力
の強化についての御発言、私は全く同感です。 メコン川
開発
だけじゃなくて、最近
マレーシア
が提唱されて
ASEAN諸国
も賛同して、
シンガポール
から
中国
雲南省まで鉄道をつくることに合意しました。
シンガポール
からKL、ぺナンを経由して
タイ
のバンコク、ホーチミンシティーを北上して
中国
の雲南省、昆明まで共同で
開発
する。確かに五千キロメートルぐらいの鉄道を多国にわたって、
シンガポール
、
マレーシア
、
タイ
、
ベトナム
、
中国
、そういうふうな
地域
共同
開発
プロジェクトは非常に歓迎されています。 共同で
開発
すれば
地域
的な紛糾もなくなるし、戦争も起こらないし、
経済
も
発展
していく。そういうふうに、閉鎖されるのじゃなくて開放された
局地経済圏
の共同
開発
プロジェクトは大いに推進してよいのではないかと、私は全く同感です。 以上です。
林芳正
20
○林芳正君 自由民主党の林でございます。お二人から大変に示唆に富むお話をいただきまして、ありがとうございました。 プラサート先生が、議員団が訪問されたときにいろいろとお話しなさっている中で、民主制度がどの
程度
各国
で確立されているか、こういうお話をされておられました。その中で、
ASEAN
、
アジア
地域
では
日本
と
インド
と
タイ
という国を挙げておられますけれども、この民主的なプルーラリズム、みずからの支配している方といいますか、与党と違ったイデオロギーを持った政党や主義主張を許容するデモクラシーといいますか、民主的プルーラリズムがまだなかなか
アジア
全域にはないというようなお話でございました。
安全保障
を
考え
る上で、
民主主義国
家同士の戦争というものはなかなか起こり得ないんだというような
考え
方があるわけでございます。
アジア太平洋地域
というと怒られるかもしれませんが、
アジア
地域
で同じレベルで
民主主義
が成熟してくるということは、私は
一つ
重要な観点だと思っております。どういつだ歴史的背景や理由によって今そのような結果になっておるのかなということを
考え
ておりまして、
一つ
は統合のシンボルといいますか、権力に対抗した権威ですね、オーソリティーみたいなものとして。
タイ
は立憲君主
国家
だったと、
日本
と近いところがあるわけでありまして、例えば軍部のようなものに対するカウンターパワーとしてそういうものがあったのではないかなという気がいたしております。 それからもう
一つ
は、これはある学者の先生がおっしゃっていたことなんですが、旧宗主国がイギリスであった場合とほかの国であった場合、差が出る。それは、イギリスは例えば
インド
なら
インド
の方を自分の国に呼んで教育をさせて、軍部ではない知的なエリート層ということを
形成
しておった。その方々が独立されてから軍部ではない
指導者
層になって、通常ではミドルクラスというのが発生する前はそういうエリート層が出てくるのはなかなか難しいわけでありますけれども、そういう
投資
を植民地時代にしておったということで、イギリスが旧宗主国であった場合は例外的に
経済発展
の早い段階で
民主主義
が根づいた、こんなような分析があるんです。 要するに、
民主主義
がどうやって熟してくるかということが、将来的なこの
地域
の
安全保障
に大変大きな意味を持っておると私は思っております。今の
インド
や
タイ
といったところ以外の国でそういうことが、歴史の
発展
として、また
経済発展
に伴ってどういう形で今から起きてくるのか、また起きてこないのか。
開発
独裁や、
中国
が今、社会主義でありながら
市場
経済
ということをやっておる体制の中で、今後どういうお見通しをお持ちになっておるのかをお二人の
先生方
からお聞かせ願えればと思います。
プラサート・チチャイワタナポン
21
○
参考人
(
プラサート・チチャイワタナポン
君) とても難しい御質問です。林先生も
アジア
の国々を見てこられたと思いますが、おっしゃるとおり、イギリス植民地時代はまず官僚エリートをつくって、独立してからこういう官僚エリートが軍をつくるんですね、
シンガポール
の場合も
マレーシア
の場合も。こういうパターンは旧イギリス植民地では
アジア
においてもアフリカにおいても同じです。まず官僚エリートをつくって、その国が独立してからこういう官僚エリートが今度は軍をつくる。そこが
シンガポール
の場合は典型的で、軍の歴史がとても浅い。 このパターンと違って、
タイ
の方は軍の支配時代は非常に長い。軍のカリスマのある人は王様になる、端的に言えば。そこで、
タイ
の場合は非常に苦しく、
民主主義
発展
の道は血が流れる、何回も何回も。九二年五月にクーデターが起こって軍が発砲した。つい四、五年前のまだフレッシュな思いが残っています。 そこで、林先生の御関心は、いかにしてシビルソサエティーが
成長
し、そこで
民主主義
発展
が可能になるか、その見通しはどうだろうかと。
冷戦
崩壊で、多くの今までの独裁政治体制はいわゆるトランジショナルデモクラシーに入っています。トランジショナルデモクラシーはどういうような政治かというと、議会制
民主主義
、また
民主主義
制度、インスティチューションはあるんですけれども、国民はまだそういう
民主主義
メカニズムを信頼していないという定義です。 こういうトランジショナルデモクラシーは、韓国はもう乗り越えたと思います。
タイ
は乗り越えつつあります。形としては
民主主義
体制がそろっていますけれども、問題は、国民が政党を信頼しない、政治家を信頼しない、これがネックだと思いますが、韓国の次は
タイ
だと思います。 トランジショナルデモクラシーから次にシュアデモクラシーに移っていきますけれども、シュアデモクラシーのポイントは、やっぱり
民主主義
インスティチューションなどがそろっていて、また国民が信頼する。これはとても難しいです。うちの国の
タイ
ですと、今難しく、乗り越えようとするんですけれども、非常にネックとなっていて、軍の
影響力
が低下しても国民がまだ政党、選挙、憲法を信頼しない。 去年十一月に
タイ
で総選挙がありました。当時学んだ
教訓
は、いわゆる第一党現象です。第一党になればその党首は総理大臣です。だから、幾らお金を使っても議員をできるだけたくさん集め、選挙運動にお金を使う、票の買収などまで。それでやっと第一党になる。いわゆる第一党現象、これは
タイ
は典型的です。 歴史を見ても、一九二五年以後、
日本
もそういう歴史があったようです。普通選挙権が与えられて有権者が急にふえて。大正デモクラシー時代は第一党になれれば総理大臣と。原敬以後です。そこも同じで、非常に政党が腐敗して、第一党になろうと。同じパターンですけれども。 これを乗り越えるのはやっぱり政治
改革
です。政治
改革
をやるために、今
タイ
は、まさにその時代、その時期です。国民の要求がすごくあるんです。前の
タイ
の
政権
の対応は、じゃ憲法の見直しと。結局、政治
改革
が可能、憲法
改革
をやろうと決意しました。新しく憲法策定草案
委員
会がことし一月からスタートしました。
タイ
の憲法はいろんなことを細かく書きますから、それを変えれば、例えば選挙制度、政治資金管理などが全部そこに書いてありますから。八カ月以内でこれを完了する予定です。 先月、タィの
一つ
の団体が東京にやってきました。九三年、細川
政権
時代にできた四つの政治
改革
法の結果はどうですかと、去年十月に総選挙があって。皆さんが自治省、また自民党本部、慶応大学の堀江
教授
などと会った。 それで、受けた印象としては、
日本
のモデルは、まだ政治
改革
は終わっていないという印象です。しかし、この第一党現象をなくするために、フランスとドイツのようないろいろなチェックメカニズムをたくさんつくろうと。これは、
日本
の場合は細川
政権
時代はやらなかった仕事で、フランスとドイツのような行政裁判、憲法裁判、会計裁判、オンブズマンのいろんなメカニズムをつくろうと。これでトランジショナルデモクラシーを超えられるかが
一つ
示されています。 今月には大きなセミナーが開かれます。フランス、ドイツ、イスラエル、
日本
、この
各国
の代表が招かれて徹底的な政治
改革
セミナーをやる。
日本
からは自治省の推薦で慶応大学の堀江先生が
出席
されるかもしれません。 ちょっと話が長くなりました。
リム・ホァシン
22
○
参考人
(
リム・ホァシン
君)
民主主義
の問題ですね。
民主主義
と
経済発展
は両立できるか、これは非常に難しい問題ですね。 まず、
開発
途上国にとっては、
国家
社会の権利を優先的に考慮します。成熟した国、
先進工業国
は個人の権利を尊重します。そういうような
民主主義
、個人の権利、自由主義に対する
理解
のギャップが大きいと思いますね。 今、いろんな国際
会議
で
中国
、
インドネシア
、
マレーシア
、
シンガポール
は歩調を合わせて人権問題を棚上げしていますね。
ヨーロッパ
との会談、
アメリカ
との会談で、
民主主義
とか人権問題、それを議題にしないでほしいとか、あるいはそれを簡単に議論する、そういうような姿勢を崩さないです。これは非常に難しい問題です。
開発
途上国にとっては
経済発展
優先ですから、ある
程度
の
開発
独裁は認められます。 今、不思議な現象は何かといいますと、香港、
台湾
、韓国、
シンガポール
は
経済発展
するにつれて
民主主義
が高揚してきます。本当は、
経済発展
をすればみんなおなかいっぱいで、おいしいものを食べて不平不満も消えてしまうんでしょうけれども、しかしながら
NIES諸国
で政府に対する批判、
民主主義
運動が高揚してきた。
中国
は
改革
・開放をやって八九年六月四日に
天安門事件
が発生したんです。 これをどういうふうに解釈すればよいかは、簡単に言いますと、やっぱり
経済
が
発展
するにつれて中間階層が生まれてきて、自分の
意見
を国策、政策に反映されたい、そういうような声が高まってきます。それを尊重すれば
国家
社会の不安につながると、
開発
途上国、とりわけ
中国
、
インドネシア
、
マレーシア
、
シンガポール
は見ていますからね。 これは、個人の権利を尊重するかどうかですね。
アメリカ
では同性愛は認められています。法律でそれを保障しているところもあるんですけれども、しかし
開発
途上国、
アジア諸国
、
シンガポール
、
マレーシア
から見ればそれはとんでもないことです。それは社会の倫理に反するので、認めないと。だから人権も同じです。よく
先進工業国
は、人権問題で
開発
途上国の低賃金労働者のことを、
マレーシア
、
インドネシア
を批判しています。圧力をかけています、改善しなさいと、そういうような不当な低賃金労働者を利用してと。 最近、例えばマハティール首相は、白人はみんないい技術を持っているし資本もあるから生産性が高くていい製品をつくっている、我々は大した技術もなければ資本もないから、低賃金労働者を利用しないとおまえたちと競争できないじゃないかと。とんでもない話だといって、ざっくばらんにそういうふうに突き返したんですけれども。 だから、私が今言いたいことは、
欧米
と
アジア各国
の
民主主義
運動、人権問題に対する見方は違います。どっちが正しいかは皆さんにお任せしますけれども、
開発
途上国から見れば
経済発展
優先ですから、
開発
独裁はある
程度
認めざるを得ない。しかし、
先進工業国
、成熟した国から見ればそれは人権の抑圧だ、そういうふうに
理解
されているんです。 当分は、
中国
の
天安門事件
もそうですけれども、東ティモールあるいは
ミャンマー
の民主化運動についてもあと三年、五年は紛糾が続くのじゃないかと私は見ています。 以上です。
益田洋介
23
○益田洋介君 お二人の先生、本日は大変にありがとうございます。 まず最初に、プラサート先生に御質問申し上げたいと思います。 本年一月に橋本総理が
ASEAN
を歴訪したときに、モンデール元駐日
アメリカ
大使の発案を受けまして、
日本
も
ASEAN
の非公式首脳
会議
ぐらいに、
日本
の首脳、総理大臣が定期的に
出席
するようにさせてもらえないかという提案をいたしまして、基本的に反対をされる国はなかったというふうに伺っています。これは
一つ
には、モンデール元駐日
アメリカ
大使が、
日本
を
ASEAN
に恒常的に
参加
させることによって、
アメリカ
もその輪の中に組み込まれていくと。これは、日米
安全保障
体制の一環として
アメリカ
が
日本
を取り込むのであれば、
アメリカ
の
影響力
が
ASEAN諸国
にも当然のことながら及んでいくであろうという意図があったと思うのでございます。私は、さらに加えて、この非公式首脳
会議
に
中国
及び韓国の首脳も
出席
してしかるべきじゃないかというふうな
意見
を持っておりますが、先生の御
意見
をお伺いしたいと思います。 そして、そういうふうな国が集まるということになりますと、結局これはマハティール・
マレーシア
首相が提案しておりますEAECと同じような形態をとることになるわけです。ですから、機能的にはマハティール首相のEAECが実現するという
可能性
も出てくるわけでございます。 一方で、ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官は、こうしたマハティール首相のEAECに対する動きに対しては批判的でございまして、むしろ
日本
をEAECをサポートする勢力から排除すべきであるというふうな提案をマハティール首相にしていると。私は、基本的にはヘンリー・キッシンジャーの提案よりはモンデール元駐日大使の提案の方が正しいのではないかというふうに
考え
ておりますが、この点についてプラサート先生の御
意見
を伺いたい。 加えて、さらに
日本
が積極的に平和的構築戦略をとるかとらないかが、これから
ASEAN諸国
とのつながりを深めていけるかどうかということにかかっているんだと。具体的には、
日本
、
中国
あるいは
ASEAN諸国
、加えて南北朝鮮の青年たちの交流を活発にすべきだという御
意見
をプラサート先生は述べていらっしゃいますが、具体的にはどのようなことを念頭に置かれているのか、お話を伺いたいと思います。 次に、
リム
先生に御質問させていただきたいんですが、私がいただいた資料の中で「
アジア
「四極」
経済
」、ダイヤモンド社の九五年七月号に先生が発表された
論文
の中で非常に興味の深い部分がございます。ページ数で言うと、
調査会
で用意していただいた資料の十七ページ、そこに
アジア
の平面図があります、
ASEAN諸国
、
日本
を含めた。いろいろな産業とか
経済
、国際交易というような枠組みから
環日本海経済圏
、東シナ海
経済
圏その他がありますが、左の下の方に北方の
成長
三角地帯と、このように先生がお名づけになったのかわかりませんが、
タイ
、
マレーシア
、
インドネシア
などを結ぶ国際リゾート基地計画ということが述べられていますが、もう少し具体的にこのリゾート基地計画というのはどういうことなのか、御開陳を願えればと思っております。 それから
最後
に、このテキストの中の二十八ページの最初から六行日あたりから、「EAECは
ASEAN
にとって、APECよりも
経済
的現実性を持っているように見える。」、このように
意見
をお述べでございますが、これはどういった根拠に基づいての御発言なのか、御所見をお伺いしたい、このように思います。
プラサート・チチャイワタナポン
24
○
参考人
(
プラサート・チチャイワタナポン
君) 益田先生の
二つ
の御質問に答えます。 私もモンデール大使の御
意見
の方に近いです。 今回、橋本首相の
東南アジア
訪問の際のいわゆる
日本
と
ASEAN
のサミットレベルの場の御提案、これは非常にいいことと思います。また、
タイ
ミング的にも非常にいいと思います。恐らくこういうような形になると思います。要するに、7
プラス
1サミット、
ASEAN
の七カ国と
日本
、もう
一つ
の7
プラス
1、
ASEAN
七カ国と
中国
の
指導者
、もう
一つ
の7
プラス
1、三つがあって
最後
に7
プラス
3も一緒に実現されるんじゃないかと予想します。 恐らく、
ASEAN
の国々の希望と
日本
のアイデアは調整できると思います。まず、7
プラス
1サミットをやって、
ASEAN
と
中国
で7
プラス
1、
ASEAN
と韓国の
指導者
で7
プラス
1、もし向こうの御希望があれば、
最後
にア
プラス
3のサミットレベル、これはEAECにはならないと思います。これはあくまでも
指導者
間の緊密な人間
関係
をつくる非常にリラックスな場で、議論する場は外相レベルでも十分だと思います。また、シニアオフィシャルレベルでも十分です。トップレベルはただ飲んでリラックスして、またいい場所を選んで、そういう緊密な
関係
をつくる。 もう
一つ
の御質問、平和戦略、青年交流の活発化ということですけれども、私は
アメリカ
の
アメリカ
ン・フィールド・サービス、AFS交換留学生として
アメリカ
で一年家族と生活し、高等学校三年生として留学しました。その一年の間に得た
アメリカ
社会の
理解
などが非常によかったと思います。
日本
はそこまでやる自信はまだないですね。青年の船、これも約一カ月か二カ月
程度
で、もう
一つ
の二十一
世紀
青年の友好計画、これも一カ月、二カ月で、もっと長い期間で家族、学校と、そこまでまだいっていない。本当に平和友好
関係
をつくるには青年時代からスタートしなければいけないと思います。 私が夢見ている
一つ
は、
アジア
の国々はたくさん川があって、川から文明が生まれてくる。
タイ
にはメナム川があって、カンボジアにはメコン川、ラオスもメコン川、
ベトナム
もメコン川ですね。
アジア
の国々の文明は川から生まれる。その川を平和の
象徴
として、平和のシンボルとして、また
アジア
の文明のシンボルとして川を使うと。橋本首相の提案を生かしていただければ、こういうようなサミットレベル、川で
指導者
が船に乗って昼食会また夕食会、また青年レベルでもいいですね。海じゃなくて、
日本
の
東南アジア
青年の船は海を渡るんですが、川を使う、そこにもつとシンボル的な意味がある。それが頭にあります。 当時、林田先生の議員団の皆さんと話した際、おいしい中華料理を食べながら話しましたので、十分に説明ができなかったんです。中華料理をいつも持ってきましたね。おいしくておいしくて、皆さんから質問がどんどん来ましたが、十分に答えられなかった。当時はちょっと議事録にするのは気がつかなかったので、後で読んでびっくりしました。 以上です。
リム・ホァシン
25
○
参考人
(
リム・ホァシン
君) まず第一点は、
タイ
、
マレーシア
、
インドネシア
によって構成されている北方の
成長
三角地帯についてですが、これは、もちろん
シンガポール
、マレLシア、
インドネシア
によって構成されている
成長
の三角地帯と本質的には、あるいは次元が全く違うと思います。
成長
の三角地帯は、まず
経済
の比較優位性を大いに活用して、
シンガポール
政府がバックアップして、
マレーシア
政府それから
インドネシア
大統領も積極的に
支持
して推進してきたので成果を上げているんです。 それに触発されて、じゃ北方でも同じような
経済
成長
地帯をつくろうじゃないかと。最初は学者同士が議論して出されたんですが、マハティール首相も賛成の意を表明して、
タイ
も
インドネシア
政府も賛成するようになったんです。しかし、基本的には、
マレーシア
のペナンは華人社会ですけれども、
インドネシア
のメダンも華人人口が非常に多いんですが、リゾート基地ですから、
タイ
のプーケットと同じように。したがって、北方の
成長
三角地帯は、基本的には国際リゾート基地として
発展
していく、
地域
間の交流、
経済
交流を進めていくしかできないんじゃないか。大規模な
投資
とか製造業の誘致なんか、そういうような計画はないと思います。また、そういうような方向へ持っていくことは不可能だと思います。基本的には、人的交流、
経済
交流、リゾート
開発
にとどまるんじゃないかと。今、本格的に推進されてはいないんですけれども、これからどういうふうに展開されていくか注目に値するんですが、これが第一点です。 第二点は、御指摘がございました二十八ページの「EAECは
ASEAN
にとって、APECよりも
経済
的現実性を持っている」、それをどういうふうに解釈するかというような問題なんです。APECは
アメリカ
も入ってきますが、今回のEAECは
アメリカ
を排除するんですね、いいかどうかは政治家が議論するんですけれども、ニュージーランドとかオーストラリアも排除されているので。以上述べた国々が入ってきて余り広過ぎるとまとまりにくい。 ただ、そういうふうに
理解
して、地理的に見れば、
NIES
、
ASEAN
、
中国
、
日本
、韓国あたりが入るとまとまりやすい。現に、
NIES
の域内
貿易
投資
、
ASEAN
の域内
貿易
投資
、それから
NIES
、
ASEAN
対
中国
との交流が深まってきたんだから、HAECはこういうような土台に立って
経済
交流を進めていくためには現実性に富んでいるんじゃないかというふうに私は
理解
しています。
上田耕一郎
26
○
上田耕一郎
君
日本
共産党の上田でございます。お二人の
参考人
、ありがとうございました。 まず第一に、日米安保条約の問題についてお二人の
参考人
にお伺いしたいんです。 日米安保共同宣言が昨年結ばれて、それに基づいて今、日米防衛
協力
のための指針、ガイドラインの見直しが進んでいます。これは、
アジア太平洋地域
で緊急事態が起きた場合の新しい日米の防衛
協力
の基本を決めるもので、例えば
朝鮮半島
で何か起きますと、自衛隊が機雷の封鎖をやるのかどうか、あるいは米軍に対して武器、弾薬の輸送を自衛隊が行う等々、そういう
日本
の領土以外の
アジア太平洋地域
での新しい軍事行動という問題が生まれるわけです。 〔
会長
退席、理事板垣正君着席〕 実はこの問題昨年お伺いしたときに私、プラサートさんにお伺いしまして、このいただいた資料の六ページに出ていますが、プラサートさんは、「
アメリカ
を助けるための活動、いろんな説明や説得がどれくらい
理解
を得られるか、新しい
課題
です」と言われたんですけれども、その後、進行しております。それで、こういう
アジア太平洋地域
における新しい日米の軍事
協力
、本格的な共同作戦までいきませんけれども、かなりそれに近いところまで検討をされて、グレーゾーンと言われているんですけれども、こういう問題をどうお
考え
になるか。
リム参考人
は、先ほど非同盟の問題についても触れられました。私ども
日本
共産党は、安保条約をやめて、
アメリカ
とは新しい平和友好条約を結んで独立国になる。それで、
ASEAN諸国
が目指している非同盟の方向に
日本
も
参加
していくことが
アジア諸国
の
経済発展
、それから情勢の安定に一番役立つんじゃないかというふうに思っているんですけれども、そういうガイドライン問題、それから非同盟問題についてお二人から御
意見
をお伺いしたいと思います。 二番目は、
リム参考人
に
中国
問題についてお伺いしたいと思います。先ほど、
中国
の
経済発展
は華僑財閥、この
投資
によるところが非常に多いということを言われて、しかし今後、
経済
成長
一〇%、これは可能だろうというふうに言われました。 いただいた
参考
資料の本の中で、
参考
書として東工大の渡辺利夫
教授
の本を挙げておられますけれども、この渡辺
教授
が、中央公論の九六年十一月号に「虚妄の
中国
経済
大国
論」というのを書きまして、これはなかなか反響を呼びました。この中で、華人資本の
投資
によって
中国
経済
は
発展
しているんだということは
リム
先生の先ほどのお話と全く同じですけれども、渡辺
教授
は、
中国
が超
経済
大国
だというのは誤れる通説だ、
中国
はまだ統一的
国内
市場
を持っていない、
中国
の
国内
市場
というのは広大な国土に分散する無数の、多分に自給的な小規模
市場
の集計にすぎないと、こういう本質論を言いまして、
最後
には
リム
さんの言われた
局地経済圏
を非常に重視されているんです。結局、
中国
は、
局地経済圏
のダイナミズムを
内陸部
において相互に結び合わせることによって、国民的統一
市場
の
形成
をねらうというのが一番早い
経済
近代化のシナリオだと思うと、そういう見通しなんです。 だから、
中国
が東
アジア
に
影響
しているんじゃなくて、東
アジア
から
中国
が
影響
されているんだという議論になるんです。
中国
経済
の見通しについて、渡辺
教授
の言われるこういう分析、私どもよくわからないんですけれども、どうごらんになっておられるのか、お聞きしたいと思います。 それで、三つ目は、お二人にお伺いしたいのは、やっぱり
アメリカ
の多国籍企業の
アジア
経済
との
関係
の問題です。渡辺利夫
教授
は、
日本
も東
アジア
の中に溶けていっちゃう、
中国
も東
アジア
化だと言われているんですけれども、そうすると、やっぱり
大国
としては、
アメリカ
の今後の
アジア
における
役割
、これが非常に大きな問題になるんじゃないかと思うんです。 二月十二日にこの
調査会
で、日経の
アジア
部長の長谷川潔
参考人
が見えられて、そのときも話されたし、それからいただいた資料でも言っているんですけれども、日経は、
中国
経済
を調べるために特派員がうんと行って調べたというんです。結論は、とにかく
アメリカ
の
中国
に対する産業レベルの
進出
は物すごいと。
中国
では、産業レベルで
アメリカ
に完全に席巻されている、それで政治的にも
経済
的にも
アメリカ
と
中国
は戦略的提携
関係
にあるというのが具体的な特派員の
調査
からの結論、だと言うんです。 それから、APEC問題でも、八九年に緩やかな協議体としてできたものを九三年のシアトル
会議
、九四年のボゴール宣言で近代化、機構化して、二〇二〇年までに
発展
途上国は
貿易
・
投資
の自由化という目標を決めました。去年のマニラ
会議
では通信技術協定の締結を首脳宣言に書き込ませて
アメリカ
じゅうが大喜びしたと。
中国
、
東南アジア
、
インド
その他で多国籍企業の
進出
が非常にすごいということが言われているんです。 今後、クリントン
政権
の非常に積極的なそういう対外通商政策のもとで、特に
アジア
を重視しておりますので、非常に
東南アジア
で自立的な循環
関係
が生まれて、実質的な
発展
はすばらしくなっているんだけれども、今後
アメリカ
との
関係
、これがどういう
影響
を
東南アジア
経済
に及ぼしていくだろうかということについて、お二人から御
意見
をいただければありがたいと思います。 以上、三つです。
プラサート・チチャイワタナポン
27
○
参考人
(
プラサート・チチャイワタナポン
君)
会長
先生、ありがとうございました。上田先生は質問するのに随分勉強してこられましたね。 ガイドラインの見直し、ことしの秋にできる予定ですけれども、その集団的自衛権は秋までは多分結論が出ないのじゃないかという気がします。あいまいな文章でガイドラインに書いてあると、またいろいろ解釈が要る、そういうようなシナリオを
考え
ています。 例えば、この集団的自衛権が盛り込まれますと
東南アジア
の国々はどう受けとめるかというと、今は、国連のPKOの枠組みの中での自衛隊の海外派遣は
東南アジア
の国々の中で
理解
を得られていると思います。今度、もう
一つ
のフレームワーク、安保のフレームワークに基づいて自衛隊の海外派遣、また
アメリカ
の安保の枠組みの中での活動に
日本
の自衛隊が支援する、
東南アジア
地域
ではこういうようなことはまだ準備が整っていない、また関心が薄いです。 〔理事板垣正君退席、
会長
着席〕
東南アジア
地域
は今脅威が存在していない。南沙諸島は若干管理できる、脅威がない、その
衝突
の
可能性
もない。そこで
アメリカ
の軍事的な
プレゼンス
の
認識
は薄まってきました。そこで、こういうガイドラインの見直しで集団的自衛権の話になりますと、できるだけ
東南アジア
地域
内から離れて、それが
東南アジア
地域
ではまだ説明などはされていませんから、多分その反応は消極的だと見ています。
北東アジア
の
安全保障
の場合は、
東南アジア
の国々の
政策担当者
から見て、
米軍基地
、また日米安保条約はまだとても重要で、それを
支持
していると私は見ています。そこで集団的自衛権まで
発展
するのは
中国
の反発は大きいと思います。きょうは
中国
、また韓国の
参考人
がいませんが、向こうの反応は恐らくショックに近い、態度は多分シビアだと思います。 次に、上田先生の御質問の非同盟の方ですけれども、
ASEAN
の国は、まず
ASEAN
がイニシアチブをとったいろんな
会合
、いろんな場、いろんなメカニズム、それを軸にしてやっていきたいです。
ARF
とか
ASEM
とか
ASEAN拡大外相会議
とか、また今度サミットレベルとか、こういうメカニズムを
中心
にしてやっていきたい。 非同盟国の場の方はもう
一つ
あります。
インドネシア
のスハルト大統領が議長となっていますけれども、そこもキープしたい。非同盟国の方は、いろんな遠い国々、アフリカなどとリーチすることができます、遠いところと。そこで顔を合わせてつき合いをする。この
二つ
のいわゆるツートラック
アプローチ
、
二つ
のトラックで
アプローチ
していく、こういうような姿勢です。
ASEAN
がイニシアチブをとったいろんな場、メカニズムの方を重視します。 上田先生の
最後
の御質問の
アメリカ
の多国籍企業、これは確かにグローバラィゼーション時代、国境のない時代に入って、物の自由な流れ、サービスも商品も資本も、またエンターテイメントも価値観もやっぱり
アメリカ
の
影響
が大きくなると思います。 そこで、
ASEAN
の国々が
一つ
注意しているのは価値観の方です。グローバライゼーションによって
アメリカ
ナイゼーションが入ってくる。価値観とか情報の支配とか、それを警戒しています。
経済
の面は大体歓迎すると私は見ています。要するに、
アメリカ
の
経済
的な
プレゼンス
は
ASEAN
の国々の
政策担当者
がそれを希望します。グローバライゼーション時代は
アメリカ
ナイゼーションの
影響
が大きい。これは
一つ
の重要な点だと思います。 十分に上田先生に答えられなくて申しわけありません。
リム・ホァシン
28
○
参考人
(
リム・ホァシン
君) 私も提起された問題を簡潔に具体的に答えることは非常に困難だと思いますが、でも一応私個人の
意見
を述べさせていただきます。 第一点は、日米安保条約についての評価なんですけれども、基本的に私も同感ですが、長期的な目で見れば、日米平和友好条約の締結、
アジア各国
との連帯を強めて、非同盟、中立、非核、そういうような
地域
の構築に
日本
が積極的に乗り出してほしいというふうに
考え
ています。
アジア各国
から見ても、日米安保条約に対する評価はさまざまです。これは、恐らく
日本
国内
の延長線じゃないかなと思うんです。
日本
の政党もいろいろ違う
意見
を持っているし、また、政党間だけじゃなくて政党内も
意見
が分裂して、評価すると否定するような
立場
になってしまうような政党もあるし、非常に何十年も議論されて、どういうふうに評価するかは非常に難しいですね。
アジア各国
から見れば、愛と憎、両極端だと思いますけれども、一方においては、
アジア太平洋
のパワーバランス、力の均衡を保ってほしいですね。
日本
が出てきても困るし、
中国
、
インド
が出てきても困る。だから、
アメリカ
が平和を守って、
経済発展
を進めていく、それが一番理想的ですね。 問題は、
日本
が入ってきまずから、
日本
が巻き込まれたら困ると。三〇年代の不幸な経験があるし、安保条約を
支持
する人にとっても、
日本
に対する非常に警戒心を持っていますから。だから、
日本
は三〇年代に
アジア
に
進出
して失敗しちゃったんですが、戦後、平和的な方法で
経済
進出
して成功したというふうに評価されます。これからやっぱり戦後の方式で
経済協力
、
経済
進出
でもって
アジア諸国
との
協力
を強化してほしい、そういうふうに
考え
ています。 第二点は、
中国
の
経済発展
に、華人資本、華人
投資
がどういうふうに評価されたらよいか。まず、過大評価しては困りますね。特に、
アジア各国
、
マレーシア
の華人人口は六百万、人口の三五%
程度
です。
インドネシア
の華人人口もそのぐらいです。しかし、
インドネシア
の人口は一億八千万ですから、華人人口は三・五%
程度
です。
シンガポール
も華人社会なんですけれども、華人の人口は七五%で、
ベトナム
も百万ぐらいでしょう、
フィリピン
もそのぐらいですから。
アジア各国
はやっぱり民族間の融合の
立場
を
考え
て、余り華人の対
中国投資
を過大評価したりすることは禁物です。やっぱり民族間の反発、種族的な問題が発生してきまずからね。 かといって華人の
中国
に対する
投資
を全く無視することもできませんから、要は、華人のいろんな言語、文化等々、
中国
に対する
投資
を積極的に推進してきたんですが、基本的にはサービス産業、リゾート
開発
とか住宅とかホテルの
建設
とか、そういう分野の
投資
が圧倒的に多かったんです。最近は、もちろん発電所とか道路、高速道路、橋梁なんかの
協力
、
進出
も顕著になってきたんですけれども、基本的にはまだそんなに過大評価する必要はないのではないか。また、
中国
経済
圏、中華
経済
圏、中華帝国
経済
圏等々いろんな表現があるんですけれども、
中国
もそれを歓迎しないし、また
アジア各国
の華人もそれを警戒するし、余り大々的に宣伝することはやっぱり控えています。 そういうことで、
中国
はあと二十年たったら
経済
大国
になることは間違いないですね、戦争とか内乱がなければ。ボーゲルさんは、楽観的に一〇%の
成長
をこれから二、三十年維持していくと。まあ一〇%じゃなくても、
中国
は十二億五千万の
大国
ですから、八%を維持していっても、あと二十年たてば
経済
大国
になることはだれも疑うことはないと思います。 第三点は、
局地経済圏
の話がなされましたが、
中国
が内陸と沿海の格差を縮めることは、これから二十年、三十年たっても解決できませんね、非常に大きいから。
中国
の香港化、とりあえず福建省の
台湾
化、広東省の香港化、
中国大陸
の香港・
台湾
化ですね。これから香港が
中国
に返還されます、七月一日に。返還されて、社会主義制度の導入まで、まず
投資
貿易
から
考え
れば、香港は非常に重要な
役割
を果たしていますから、
中国
は一国二制度を宣言しているんですが、宣言しなくても香港の資本主義体制維持、それは変わらないと思います。 香港はこれから深セン、広東省を
中心
に伸びていって、その委託加工生産、広東省だけでもう二、三百万の労働者を雇っているし、これからどんどん内陸へ浸透していく
可能性
もあると思います。
中国
の社会主義
経済
への
市場
経済
の導入
中国
の特色のある社会主義国の
建設
は前途多難だと思います。これから内陸へいかに
投資
融資して内陸の貧困をいかに解決していくか、
国内
の
経済協力
、
経済
の波及効果をいかに
拡大
していくかが大きな
課題
だと思います。
最後
ですが、
アメリカ
多国籍企業の
アジア
における
影響
の見通しなんですが、これは
アジア
だけじゃなくて、
アメリカ
はやっぱり自由主義
世界
の一番大きな国です。やや脱線なんですけれども、円の
暴落
、急騰急落を
日本
政府首脳が幾らサポートしても変化は起きないです。 最近、円は八五年直前は二百四十円だったんですけれども、G5以降高騰して、九五年になると一ドル八十円になったんです。最近、また
暴落
して百二十円
程度
になっていますけれども、
暴落
暴騰、急落急騰、これは困ると。しかし、
日本
政府が幾ら発言してもそれをとどめることはできません。しかし、
アメリカ
政府首脳のだれか高官が発言すれば、すぐ円が下がったり上がったりしますけれども、それは端的に
アメリカ
の政府の
影響
は非常に大きいです。したがいまして、
アジア
においては
日本
よりも
アメリカ
の多国籍企業の
影響
が非常に大きいと思います。 だから、
アメリカ
の景気がよくなれば、最近、クリントン
政権
が四年間担当して
経済
が回復してよくなってきたんですけれども、
アジア諸国
もそれに引っ張られてよくなってきつつあるんです。 そういうふうに
アメリカ
の
アジア太平洋地域
における軍事、政治、外交のみならず
経済
方面の
影響力
が非常に大きい、それを無視することはできないと思います。 以上です。
山崎力
29
○山崎力君 時間もありませんので、簡単に両先生にお伺いしたいと思います。
一つ
は、いろいろな議論はあるんですが、結論として、軍事力を伴わずに
経済
的ではなくて政治的な面で発言力を持つということが可能かどうかという点が一点でございます。 そしてもう
一つ
の点は、中長期に見て大陸
中国
がいわゆる南沙諸島の問題でそこへ
進出
してくる
可能性
が一番の問題点であろうと思います。これはエネルギー問題と絡んでということです。そして、対応策として、その辺のところの軍事的なことは余り
アジア
の方々は
考え
ていないというか、緊急
課題
でないというような先生のお話もありましたが、今
世界
的に見て一番兵器の売れている国は
アジア諸国
です。一番軍備強化しているのは
アジア諸国
です。そういった背景を見ると、
経済
力が出てくれば、そこにその国なりの重要度が増してくる、
衝突
が起きる
可能性
が出てくるということも意識しての行動ではないかというふうに私は思っております。 ということは、長期的に見ると、
東南アジア諸国
と言われているところでも
北東アジア
と同様に
経済
的な利害
衝突
による
紛争
が起きてくる、そのときの仲裁の
役割
を果たせるのはやはり
アメリカ
ではないかというのが私の中長期的な
考え
方なんですが、そこのところに
アメリカ
に要請されて
日本
が出ていくという不幸なことがないように願っているんですが、その辺のところの
現状
認識
を両先生からお聞かせ願いたいと思います。
プラサート・チチャイワタナポン
30
○
参考人
(
プラサート・チチャイワタナポン
君) 先生ありがとうございました。山崎先生の御質問は三つ四つありました。 まず、軍備増強の問題ですけれども、おっしゃるとおり
アジア
地域
は武器の最大の
市場
であり、これは間違いないと思います。アフリカ、ラテン
アメリカ
など、向こうの
経済発展
はおくれていますから、この
地域
のマーケットはとても大きい。 しかし、この
地域
において国防費の増加率を見ますと、その増加率の低下も事実です。うちの
タイ
の国は、最近の
課題
とされました空母の調達はスペインから、またF18戦闘機、また潜水艦を
タイ
の海軍が欲しい、こういうような懸念がいろいろあるんですけれども、しかし防衛予算を見てもその増加率がだんだん減ってきたことは見逃してはいけないと思います。 例えば、うちの
タイ
の国の場合は、防衛予算の増加率を見ますと、九二年は二〇%、九三年は一〇%、半分低下しました。九四年は一三%、また九五年は一〇%、これはドルで換算する場合です。
タイ
のバーツで換算する場合はもっと低いです。九二年は二〇%、九三年は八%、九四年は一五%、それで九五年は七%に減ったわけです。 国の一般会計予算の方は増加率がもっと高い。 これは明確です。潜水艦の購入は、
タイ
の海軍が欲しいですけれども、やっぱりなかなか閣議決定はできなかった。海軍はもうプッシュをやめたと聞きました。新しいF18の購入も凍結されました。空母の調達は予定より一年おくらせました。 こういう動きで、
タイ
だけじゃなくてほかの
東南アジア
の国々を見ても、GDPに占める防衛予算はそんなに高くないです。例えば、
タイ
の場合は九四年に二・七%です。GDP、
国内
総生産に占める防衛費は二・七%です。
インドネシア
の方はもっと低い一・五%、
フィリピン
は一・四%。 やっぱり
日本
の防衛予算は金額がとても大きいと我々は見ています。
日本
の海軍は
世界
ランキングでも非常に強力で、潜水艦も十六隻あって、P3Cも百機持っています。大変能力の高い武器を
日本
は持っている。 私は、余り悲観的には見ていないです。
衝突
という
可能性
、それを管理する体制はできています。
ASEAN
のメカニズムを通じて、
アメリカ
の軍事的な
プレゼンス
がなくても、
ASEAN
の中でそれを管理することができると自信を持っています。南沙諸島の方も、最近の動きを見て
中国
もその話し合いの場に応じました。これもいい方向になっていく、だろうと思います。 米軍の基地の
役割
は、やっぱり
北東アジア
の方には非常に存在理由はあります。
東南アジア
地域
内は、我々は余り
認識
していない。カンボジア
紛争
時代、
ベトナム
は大量の軍隊をカンボジアに、約十八個師団でカンボジアを占領したとき、そのとき
タイ
とカンボジア国境に
ベトナム
軍の師団がたくさん集中しました。こういうような危機に直面するとき、
アメリカ
は何も我々にこたえてくれませんでした。
米軍基地
のメリットは
地域
内にはだんだん減ってきたことが我々の
認識
です。やっぱり
北東アジア
だと思いますね。 以上です。
リム・ホァシン
31
○
参考人
(
リム・ホァシン
君) 簡単に。 まず第一点は、軍事力を伴わない政治力、外交力の強化は可能かどうか。結論的に言いますとそれは可能です。また、そういうふうな方向へ持っていかなければ大変厄介なことになると思いますね。 歴史的に見れば、大英帝国とかポルトガルとかスペインとか、
アメリカ
もそうだったんですけれども、政治力、外交力を強化するために軍事力でもって君臨した。しかし、結果的に言いますと、みんな失敗しちゃったんですね。
大国
の興亡、
大国
の盛衰を見てみますと、そういうような軍事力を背景に
世界
に君臨する国はみんな失敗ですからね。だから、
日本
はどういうふうに
経済
大国
にふさわしい外交、政治、発言力を強化していくか。 それは皆さん
先生方
の責任だと思います。
シンガポール
の人口は三百万人です。淡路島の面積で、東京の人口の三分の一以下でしょうが、
シンガポール
の国際的な外交上の発言力は無視できないと思います。スイスだってそういうふうに評価してもいいと思います。だから、別に
シンガポール
とかスイスとかは、外国を侵略したり派兵したりするような行動をとらない。そうだとすれば、軍事力を伴わない政治、外交、
経済
大国
になることは可能です。それが理想的だと思います。 それが第一点です。 第二点は、西沙・南沙群島の石油、ガスの利権に
中国
が介入する、戦争あるいは紛糾が起こるんじゃないかというような御質問なんですけれども、この点について私は楽観的です。戦争は起こらないと思います。 なぜかといいますと、西沙・南沙群島は、
フィリピン
、
マレーシア
、ブルネイ、
ベトナム
、当然
タイ
とか
台湾
とかが絡んでくるんですけれども、主権を主張するんですが、
中国
も最初は二国協定、二
国会
談にしか臨まなかったんです。例えば
フィリピン
とか、あるいは二国で解決する。つい最近は態度が軟化して、態度が変わってきたんです。
中国
と関連諸国との多国間会談にも臨むと、態度が軟化してきたんです。やわらかくなってきたんです。
中国
はやっぱり
アジア
、
世界
に見せなければいけません。
中国
は武力で、
大国
の姿勢で
アジア各国
の小さい国に圧力をかけて西沙・南沙問題を解決する姿勢を見せていないから、だからまずこの
地域
の戦争は起こらないんじゃないかなと私は見ています。
最後
に、
アジア各国
の軍事費の
支出
が増加してきた、いざとなると
アメリカ
が介入して問題解決に乗り出すんじゃないか。そういうような
可能性
がないことはないですね、否定できません。 しかしながら、私の言いたいことは、
経済発展
をなし遂げてきたでしょう。一人当たりの国民所得もふえてきたし、当然軍事費の
支出
もふえてきます。その最大の責任はロシアと
アメリカ
です。
冷戦
構造が崩壊してどんどん
開発
途上国に武器を売却しているんだから、その責任は基本的にロシアと
アメリカ
にあるんじゃないかなと思うんです。 しかしながら、幸い
ASEAN諸国
は、一枚岩とは言えないですけれども、多少疑心暗鬼もあるんですけれども、しかし定期的に首脳の会談、交流はありますから、互いに不信感はあるんでしょうけれども、
経済
権益のために戦争を起こす
可能性
は非常に低いと私は見ています。 以上です。
林田悠紀夫
32
○
会長
(
林田悠紀夫君
) ありがとうございました。 まだまだ
質疑
もあろうかと存じますが、予定した時間が参りましたので、
参考人
に対する
質疑
はこの
程度
とさせていただきます。
プラサート参考人
及び
リム参考人
に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、大変お忙しい中、長時間御
出席
をいただき、貴重な御
意見
を賜りましてまことにありがとうございました。本
調査会
を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時三十八分散会