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1997-06-06 第140回国会 参議院 厚生委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月六日(金曜日)    午後一時開会     —————————————    委員の異動  六月五日     辞任         補欠選任      朝日 俊弘君     今井  澄君  六月六日     辞任         補欠選任      瀬谷 英行君     菅野  壽君      釘宮  磐君     小山 峰男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         上山 和人君     理 事                 尾辻 秀久君                 佐藤 静雄君                 和田 洋子君     委 員                 大島 慶久君                 塩崎 恭久君                 田浦  直君                 中島 眞人君                 長峯  基君                 南野知惠子君                 宮崎 秀樹君                 木暮 山人君                 水島  裕君                 山本  保君                 渡辺 孝男君                 菅野  壽君                 今井  澄君                 西山登紀子君                 小山 峰男君    事務局側        常任委員会専門        員        大貫 延朗君    公述人        社団法人日本医        師会会長    糸氏 英吉君        医療法人財団河        北総合病院理事        長        河北 博文君        日本労働組合総        連合会生活福祉        局長       桝本  純君        仙台白百合女子        大学人間学部人        間生活学科教授  高木 安雄君        大阪府保険医協        会副理事長    細川 一真君        新日本製鐵健康        保険組合常務理        事        対馬 忠明君        新日本婦人の会        神奈川県本部副        会長       北條 順子君        社団法人日本病        院会常任理事        中野総合病院病        院長       池澤 康郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 上山和人

    委員長上山和人君) ただいまから厚生委員会公聴会を開会いたします。  本日は、健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、お手元の名簿の八名の公述人方々から御意見を伺います。  この際、公述人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。  皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本案審査の参考にいたしたいと存じます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、これより順次御意見を承ります。  まず、糸氏公述人にお願いいたします。
  3. 糸氏英吉

    公述人(糸氏英吉君) 糸氏でございます。よろしくお願いいたします。  私は、日本医師会を代表した形で意見を述べさせていただきます。  まず、今回の改革基本的な理念についてでございますけれども我が国は憲法第二十五条によって、すべての国民が健康で文化的な最低限度生活を営むことが保障されております。したがって、医療保険改革に当たりましては、何よりもこの基本的理念を踏まえながら推進を図るべきだと考えております。  さて、我が国社会保障制度は、国民経済の成長や医療福祉関係者の努力に支えられて、一九六一年の国民保険制度実現年金制度確立等を契機といたしまして質、量ともに著しい充実が図られ、国民健康指標においても世界で最もすぐれた制度として高い評価を受けるに至りました。  しかし、少子・高齢化が急速に進展し労働力人口が激減する中で、社会の活性を引き続き維持発展させるためには、全国民の、殊に高齢者の健康を保障することが国に課された大きな責務でございまして、このニーズにこたえるためには現在の社会保障制度をより安定化するための方策を探求せねばなりません。  こういう視点から、現行制度の分析について述べたいと思います。  二十一世紀に向けての医療改革を考えるときに、現行制度下におけるメリット・デメリットを十分検証して抜本的改革に積極的に取り組まねばならないと思います。  そこで、現行制度評価すべき点として、まず乳幼児死亡率平均寿命では、世界的に実証されているように、医療関連効果我が国制度は極めてすぐれているということが言えると思います。次に、国民保険制度下において公平な医療サービス確保され、貧富の差なく最新の医療サービスを受けることができるということでございます。さらに、患者負担が低額であり、一方、最小の医療費用で最大の医療効果を上げていることであります。また、社会的及び経済的弱者に対しては公的扶助制度がよく整備されていることが指摘されます。  次に、現行制度改革すべき点といたしましては、まず医療情報が不足しているため国民医療へのアクセスが必ずしも適切とは言えない。これが医療効率化を著しく妨げていることが指摘できると思います。また、医療サービス専門化が進む中で、医療機能分担連携が十分でないために包括的医療体制にひずみが生じていることであります。さらにまた、薬剤医療材料価格設定方式が不透明であり、欧米諸国に比べて極めて高い価格を示しております。このことが医療費増大一つの原因となっていることも指摘されると思います。  二十一世紀に向けての医療構造抜本的改革としては、私どもは三つの主軸を中心に進めるべきであると考えております。  まず、高度情報化社会への対応として、医療情報開示促進を図り、患者にわかりやすい医療提供体制実現することであります。次に、診療報酬体系の中で物と技術分離を図り、薬価差依存の解消、長期収載医薬品価格見直しルール化等実現を図ることであります。また、高齢社会への対応として、一般医療老人医療の二極化を目指し、医療提供体制及び医療保険制度双方改革を図ることであります。そのため、老人保健拠出金制度廃止を目指して、長期積立型医療保険制度を具体化することなどを提案いたします。  次に、改革具体的方法について述べたいと思いますが、本日は時間的制約があるため、当面の短期的課題に限って述べたいと思います。  まず、医療提供体制改革について述べます。  第一の課題として、医療情報開示促進を図ることであります。  受療の効率化のために、医療機関の正確で客観的な診療機能情報開示を促進すること、そのために第三者機関による評価機構を進めることもぜひ必要でございます。また、患者のプライバシーを確保しつつレセプト等患者情報開示方法も検討し、さらに医療現場における患者に対する十分な説明理解定着化を促進すべきであります。  課題の第二として、医療機関機能役割分担について述べます。  かかりつけ医機能中心とした在宅医療地域医療の展開を図るため、グループ診療、診診連携保健福祉連携などを促進することであります。また、医療機関機能分担をより明確にし、大病院集中を排除するため大病院一般外来診療の制限もやむを得ないのではないか、かように考えております。また、病院の公私の役割分担を明らかにし、一方、機能別病床数を考慮した地域医療計画策定を行うことであります。また、介護病床との整合性に配慮した老人保健福祉計画策定を行うことも必要であります。  次に、現行医療保険制度の当面の改革について述べます。  まず、老人保健制度見直しとして、具体的に新しく高齢者全員を被保険者とする老人医療保険制度を創設いたしたいと思います。従来とは異なり、高齢者保険料負担し、年金制度との整合性を図ります。各医療保険制度からの拠出金を計画的に廃止し、現役世代保険料の一部をみずからの老後のために積み立て、基金化を図ります。  このような医療見直しを図るために、我々は長期積立型医療保険制度を提案するものであります。  次に、診療報酬体系改革について述べます。  まず第一は、物と技術分離を図ることであります。  技術料適正評価を行い、薬価差依存現行診療報酬体系から速やかに脱却することであります。また、キャピタルコスト評価方式確立し、ドクターフィーとホスピタルフィーの評価を行うことが大切であります。  第二として、医療機能対応した診療報酬体系をつくることであります。  急性期医療慢性期医療一般医療老人医療分極化を図り、それぞれに有効な支払い制度導入を検討することであります。また、かかりつけ医機能評価するとともに、医療機関相互連携及び医療福祉連携を促進する診療報酬体系確立することであります。一方、病院における入院機能中心とした診療報酬体系確立を図りたいと思います。  いずれにいたしましても、これらの当面の課題実現するために、安定した財源確保がぜひ必要であります。すなわち、保険料患者負担公的負担について今後どのような負担率が適切であるか、現在のままでよいのかどうか。各界の速やかな合意形成が望まれるところであり、まさにこのことが今回の改革の核心とさえ言えるかと思います。  最後薬価制度改革について述べます。  当面の課題として、まず現行制度内の改革を優先的に行うべきと考えております。すなわち、長期収載医薬品価格見直しルールを決め、価格の引き下げを行い、医療費節減を図ることが第一に急がれるべきであります。  次に、薬価算定透明化を図るため、第三者による薬価算定機構薬価算定過程の公開を行うことが必要であります。また、薬剤管理コスト適正評価を行い、自由市場機能を活性化するため、R幅を速やかに撤廃することであります。そして、医業経営原資として薬価差に依存している現状の診療報酬体系改革するため、技術料の適切な評価を行うことが望まれます。   また、後発医薬品の薬効、安全性を国が保証し、みずから率先して使用し、その市場を拡大し、医療費節減を図ること。また、消費税は課税とし、償還方式をとること。調剤薬局確保のため、地域によっては院内薬局調剤薬局化等も考えなければなりません。  上記改革でなお不十分な場合は、薬価基準制度そのもの廃止を含む抜本的見直しを検討せざるを得ないかもわかりません。その場合、参照価格制度等導入については、過重な患者負担を課すことになり、適切な医療提供に大きな支障を来すおそれもないとはしないという見地から、慎重に対応すべきものと考えます。  いずれにいたしましても、現在の財政危機の突破口として、思い切った抜本対策が必要であります。  私見ではございますが、そのためには、例えば薬価基準価格の一律一〇%カットあるいは薬剤のみに着目した給付率の四ないし五割負担などを断行してとりあえずの危機を乗り切り、五年程度の期間を置いた後に抜本的構造改革を実施してはどうか、かように考える次第であります。  以上で終わります。
  4. 上山和人

    委員長上山和人君) ありがとうございまし  た。  次に、河北公述人にお願いいたします。
  5. 河北博文

    公述人河北博文君) 河北でございます。  本委員会で御審議をいただいておりますこの審議は、国民あるいは国家にとって大変に重要な審議であるということは認識しております。その中で、私が本日述べさせていただきますのは、この医療保険改革に提案をされた健康保険法一部改正というものに対してということと、それから今後の医療に対しての、これは概念的な話になりますけれども、私の個人的な意見を述べさせていただきたいと思います。  現在の医療においては、医療の主体というものは私は患者さんであるというふうに思っております。医療が発生をするということは、患者さんと特に医師医療人の中でも医師との個人の契約によるものであるということであって、そこには患者さんの権利責任、それから医師の使命というものが私は非常に大切な役割を持っているものだろうというふうに思っております。  その中で、患者さんが一体医療に何を期待しているのかということを考えますと、安心していつでも何でも相談できる医療が身近にあるということだろうと思います。安心してということは、本当に信頼関係が築かれているという医療であって、しかもそこにはきちっとした説明がなされ、自分が納得し同意をすると、自分で選択できる医療であるということ。それから、身近にあるということは、地理的に身近にあるということと同時に、経済的に受けやすいということを含んでいると思っております。  次に、医療人として我々が今の医療あるいは今後の医療期待することというのは、時間的にもっと余裕を持ちたいということであります。余裕を持つということは、診療の中での余裕とともに、勉強する余裕、ゆとりのようなことも含めてでございますけれども、それとともに新しい医療、これは社会的に妥当であると認められた医療導入するということも含んで我々は期待を持つわけでございます。  それからさらに、医療に関連する者として、政府あるいは保険者という立場の方がいらっしゃるわけでありますけれども、この方たち期待をしていることというものは、質の高い医療効率的に提供されるということだろうと思います。  そういった視点から見たときに、今回の医療保険改革審議というものは、本当にそういうものを念頭に入れたものであるかということは、私は甚だ疑問を感じるわけでございます。  そこで、私自身医療保険審議会に籍を置かせていただいておりましたので、その中で感じたことを申し述べさせていただきたいんですけれども、まず大きな審議として、将来をにらんだ議論というものは、例えば我々が責任を持てる範囲で二十一世紀初頭のこれから約三十年後ぐらいを想定した話だろうというふうに思いますが、そのときの社会はどうあってほしいか。自分はどういう社会を望むんだということがまず念頭にあり、その社会の中で医療制度はこうあってほしいということが考えられて、そこから今準備するものは何かというような、未来からの投影という形の審議が私はなされるべきであるというふうに思っております。  ですから、私自身がやはり将来の日本社会を考えたときに、豊かさというものが実感できるような社会をつくる。その中で、豊かさが実感できる社会保障制度あるいは医療制度というものは何だろうかということを考えたときに、責任ある個人ということが前提であるし、さらには尊厳ということが生活の中で必要であると。あるいは国際性ということが、世界標準あるいは国際標準ということも念頭に入れた上での考え方が必要だろうというふうに思っております。  そこで、医療保険審議会での議論が本当に国民に豊かさあるいは夢を与えられる議論であったかということを考えたときに、その審議の中で繰り返されたことは、高齢者医療保険上の位置づけ、あるいは自己負担給付のバランス、さらには薬剤をどうするか、それから医療提供体制をどう変えていくかというようなことであったというふうに記憶をしております。  それで、結論として出てきたものは、患者さんの自己負担がふえる、あるいは保険料率が高くならなければならない、さらには介護保険というものを新たに導入して新たな保険料設定がなされる。それから、消費税が本年の四月に税率が上がったというようなことは、これは直接税的あるいは間接税的にも、本来であれば増税なき財政再建ということを国民期待している中で、患者さんの負担も上がり、さらには保険料率も上がり、保険が新設されると、介護保険でございますけれども。そういうものが本当に夢を与えられるものであったかどうかということは、私は疑問を感じざるを得ないということでございます。  その中で、大きな制度を考えるときには、基本理念ということが極めて大切だと思います。  基本理念とは一体何かというと、現在の医療制度というのは昭和二十年から始まったこの国の再建でありましたけれども、そのときの基本理念貧困からの救済ということであったと思います。今の社会で、これから三十年後を想定して貧困からの救済でいいのかというと、私はそうではなくて、個人責任と選択あるいは尊厳ある生活確保ということが極めて大切であるというふうに思っております。  その中で、先ほど糸氏先生が言われたように、一九六一年に我が国国民保険制度を達成したわけでございますけれども、現在本当に国民保険制度はあるのかというと、私はないと思います。これは保障論保険論がきちっと整理をされていないからであります。  保険というのはリスクマネジメントであって、あるリスクに対して統計と確率論によって保険料設定して、その保険料をみずからが納めるという意思のある人たちが集まって、リスクに対してマネジメントが行われるものが保険である。ところが、税金が三〇%、五〇%投入され、さらには、またほかからの財源が、老人保健拠出金でございますけれども、あるということは、これでは保険ではないんではないかということで、私は応分な負担を含めてこの保障保険を分けるべきだと。特に高齢者の場合には、私は税金範囲で、保障の中で給付をするということがやはり原則ではないかというふうに思っております。  それから、今後我々がやることとして、今までは行政責任制度づくり中心でありましたけれども、その中で患者さんの権利責任というのが出てきて、その間をつなぐものは今後は私は市場形成であるというふうに思います。  医療の中での市場形成で最も大切なことは、公正な競争原理とは何かであります。  営利企業病院経営に参入する。それでは公正な競争とは何か。これは資金調達ということを含めて考えなければいけません。さらには、国公立病院が全く同じ一般医療をしながら多額の、国立病院自治体立病院を含めますと恐らく一兆四、五千億円の年間の支出になりますけれども、それだけの補助金を得て一般診療の中で競争しているということが公正な競争原理であるかどうかということは、極めて私は難しいことだというふうに思います。  ですから、理念と倫理というものを大切にして、かつ公の役割というものをどこに限定するかということを考える。  それから、自己責任として自分の健康は自分で守るということが患者さんが考えなければいけないことである。  私は、小さな子供を持った母親が朝起きたときに、必ず自分子供のそばに行ってまず顔をしっかり見る、おでこに手を当ててゆっくり話をするということが健康の基本ではないかというふうに思っております。  それからさらに、今回の改正案の中で薬剤というものが別扱いをされたということに関して一つ意見を述べさせていただきます。  薬剤というものを例えば特定療養費として考えるのか、あるいは入院食事療養として考えるのかというと、薬剤が占める診療上の位置づけというのは極めて重要であるということは、なぜ薬剤だけ別扱いしなければいけないかということをもう一度我々は考え直す必要があるんではないかというふうに思っております。  薬価基準制度は、私は制度としては非常に問題を多く抱えているというふうに思いますので、これは将来的には基準制度を含めて考え直す必要があるだろうというふうに思います。  最後に、私が今述べたことも含めて、できるだけ多くの方の意見を広くお聞きいただきたいということをお願いいたしまして、おしまいにさせていただきたいと思います。
  6. 上山和人

    委員長上山和人君) ありがとうございました。  次に、桝本公述人にお願いいたします。
  7. 桝本純

    公述人桝本純君) 桝本でございます。  本日は、私ども意見を述べる機会を与えていただいてありがとうございました。委員長を初め、当委員会の各位に冒頭お礼申し上げたいと思います。  さて、以下与えられた時間の制約の中で、まず今回の法案について、それから議論されている医療改革について、大きく二点にわたって私どもの見解を述べたいと思います。  御案内のとおり、医療をめぐりましては大変多くの関係者がおり、さまざまな利害関係相互に対立をしている面がありますけれども、私がこれから述べる意見というのは、日常的に言えば毎月の賃金から決して安いとは言えない保険料を徴収されている被保険者それからいざ病気となったらばお医者様にお世話になる患者、こういう立場からのものであるということをあらかじめ申し上げておきたいと思います。  さて、今国会に提出されている医療関係法案でございますが、私どもはこれを見まして大変深い疑念に最初からとらわれました。  内容は、患者本人中心にした負担引き上げ以外にはありません。なぜ、こんな負担を我々は引き受けなければならないのだろうか。我が国医療が他国と比べて効率がいいとか悪いとかいろいろな議論がございますが、あの負担引き上げが提案された理由というのは、厚生省の推計によれば年間一兆円を超える国民医療費の膨張ということであります。そして、その総額年間二十七兆円ぐらいになっている。大体その三分の一ぐらいはお薬代ということになっている。  なぜ、年間一兆円ずつも我が国医療費はふえるんだろう。そして、なぜ総額二十七兆円もの医療費がかかっているんだろう。  これがぜひ必要なものであるということが納得できるのであれば、その負担内容についてはまた受けとめ方があるわけですが、しかしそういった内容について十分な説明があったとはとても思えません。他方では老人福祉に関する汚職事件があり、それから近い例ではエイズに代表される薬禍事件があり、我が国医療行政に対する国民的な不信というのは極めて広範に現在存在しております。  我々は、別に負担がふえることを一般的に嫌だと言っているわけではありません。  確かに、高齢者がふえてくる、高齢者ハイリスク人たちですから、それに伴って全体の医療費がふえる、これは一つの事実でありましょう。それからまた、医療高度化に伴ってコストがかかる、これも理解できるところであります。それから、現在の医療サービスが決して十分でないとすれば、あるいはまた我々労働組合関係者も含めて医療に携わる人たちの処遇が十分でないとすれば、こういったものの改善に対しても費用がかかっていく、これまた十分に理解のできるところであります。  しかし、今回の法案に盛られている負担というのは、こういった内容についての十分納得ができる正当かつ合理的な根拠から導き出されたものか、決してそうではないと。むしろ、二十数年前から言われてきたところの三K赤字一つであった我が国医療の恒常的な赤字体質に対して何らの具体的な改革も含まないまま、患者中心にした費用負担の増加だけがここに提出されていることについて、我々は極めて強い不満を持ってまいりました。  それに対して私どもは、昨年来、制度改革こそ先行されるべきであり、制度改革の前には一切の負担増を凍結すべきである、このように主張してまいりました。そして、改革の方向が具体的に明らかにされ、その改革された医療を支えるために必要な負担のあり方について合意をする必要がある、このように主張してまいりました。  衆議院を通過した今回の法案に関して、そのような議論にもかかわらず、まず負担先行という中身でこれが出されてきたことについて、内心大変強く憤っておるところであります。  個々の中身について申し上げるつもりは余りないのですが、今回出されているさまざまな負担増の中でも、特にたちが悪いと言うと品が悪くて申しわけないんですが、特に性質の悪いのは薬剤に名をかりた追加負担だというふうに思います。  あれは薬剤費の一部負担のように巷間言われておりますが、法案内容を見れば決してそうではありません。薬を出すということを理由にした追加の医療費負担であります。それが何より証拠には、それの上限については必要な薬剤費が上限なのではなく、当人にかかわる医療費全体からあらかじめ本人負担になっている一割とか二割とか三割とかというものを差し引いた残りの額全部が限度だと言われている。つまり、これは薬剤費の一部負担ではなく、薬剤費に名をかりた追加負担であるというふうに申し上げざるを得ないところであります。  したがって、こうした内容については、我々はこれは本来凍結をされ、その間の医療費の膨張に関しては別個対策がとられるべきであると考えてまいりました。しかし、今回出された法案は恒久措置として負担増を図ろうとしている。これは本来、臨時立法ないしは時限立法で扱われるべきものであります。当委員会の今後の審議に当たりましては、ぜひその点を御勘案いただいた審議がされますように強くお願い申し上げたいと思います。  さて、要求されております現在の改革の問題について、私ども素人でございますが、ごくかいつまんだ意見を別途ペーパーで用意してございますので、それを御参照いただきながら、簡単に私どもの考え方を御報告したいと思います。  今後の医療制度改革に関して、大きく言って三つの点があると思います。  一つ医療提供体制改革の問題、もう一つ診療報酬とそれから薬価制度見直しの問題、三番目には審議会用語で申しますところの高齢者の位置づけという問題でございます。  一番目と二番目に関しては、既にお二人のドクターの先生からお話がございました。特に大きく変わるところはないかと思いますので省略をさせていただきますが、後ほど御質問をいただいて補足させていただきたいと思います。  特に、高齢者の位置づけにつきましては、これは与党の基本方針という合意内容で抜本改革の最大の課題と言われているところでございます。  これについては、私の提出させていただいておりますペーパーの最後の紙に絵をつけてございます。日本医師会を初め各方面から提案されている内容とは違いまして、特定の年齢で、七十ないしは七十五歳以上の高齢者を別集団とするという各方面からの提案とは違いまして、私どもは、サラリーマンであった人は終生サラリーマン保険集団の中にとどまる、こういう考え方でこの案をつくってございます。  この考え方につきましては、ようやく各方面からいろいろと御質問もいただき、お問い合わせについては可能な限り御説明してきたところでありますが、かつてはもともとこのようなものだったと認識しております。  すなわち、年金制度がまだ充実していなくて退職後の所得と呼ぶものがなかった時期には、サラリーマンのOBは被扶養者として被用者保険の中にとどまってまいりました。しかし、年金制度が充実すると同時に本人の所得というものがはっきりとするようになり、それと同時に被扶養者である資格を失い、そしてその場合にはみずから被保険者とならなければいけませんが、そこの場合には市町村国保しかなかった。この結果として、市町村国保は高齢者を次から次へと抱え込むという矛盾に逢着してきたわけでありますし、それに伴って七十歳以上の高齢者について、これを老人保健制度という枠組みのもとに新しく位置づけたのはいいのですけれども、そのための財政負担というものは現役の保険集団を極めて強く圧迫しておるところであります。  これについて私どもは、たとえ医療保険が壊れても高齢者は厳然として存在するのでありましてこの高齢者方々自身が一個の独立した尊厳ある人間として、現役労働者と同じ、差別なく被保険者として扱われるシステムを全体で構築してまいりたい、このように考えております。詳細につきましては、後ほどお問い合わせをいただきましたらば追加的に補足をさせていただきます。  最後に、長期的に見た場合の医療費の抑制というものは、一番基本的なことは国民の健康であろうと思います。  病気になってもお医者さんに行かれないのでは困りますが、健康であるためにお医者さんに行く必要がない。このようになれば必然的に国民医療費は抑えられてくるわけでありますし、また少数の患者に対して同じだけの医療資源があれば、それはより手厚い医療提供されるはずであります。  その意味で考えますと、日本人の寿命が延びているということは一つの共通の話題でありますが、その中で本当に元気で働けるような年齢、つまりいうところの健康寿命というのはむしろかえって短くなっているという報告さえあるところであります。これは我が国社会全体が病んでいることの一つの反映かもしれません。  今後、二十一世紀の活力ある高齢化社会というのは、より多くの人たちが元気に健やかに過ごせる、こういう時間がなるべく長くなる、このことが非常に大きなテーマだと思っております。これは高齢者になってから解決できるものではなく、二十代、三十代、四十代のうちから健康な生活をしなければいけないだろうと。そのために、私ども労働組合としてできることは取り組んでまいるつもりでございますが、医療関係者、行政の担当者を初め、この目的に向かってぜひ集中的な御努力をお願いしたい。  特に、複数の行政機関でこのことに名をかりた政策が重複的に行われている事態については早急に改められるべきであろう。この点を最後に強調して終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  8. 上山和人

    委員長上山和人君) ありがとうございました。  次に、高木公述人にお願いいたします。
  9. 高木安雄

    公述人(高木安雄君) 高木でございます。  まず、このような機会を与えていただきました委員の先生方に厚くお礼申し上げたいと思います。  私は、二十五年間、厚生行政初め社会保障を眺めてきた研究者の一人として、本日は個人的に発言させていただきたいと思います。  まず、今回の健康保険法改正に関する私の基本的なスタンスを述べさせていただきますと、私は、厚生省から提案されました今回の法案に関しては賛成の立場を持っております。それはどのようなことで賛成しているかという理由を三つ述べさせていただきます。さまざまな個々の問題につきましては、時間の関係上省かせていただきます。  今回のこのような改革がなぜ必要かということについて、第一点は、戦後五十年たちました我が国医療保険制度社会経済、すべてのところでさまざまなひずみを持っておりますけれども、そういう点からも、医療保険も大きなひずみを抱えて今日まで来ているということでございます。  第二点は、当初制度ができましたときの人口構成と今日の人口構成、それから将来の人口構成が非常に大きく変わっている。  第三点は、我が国の経済状態が非常に低成長経済へ移行しておりまして、このような中で国民保険制度を維持する検討をしなければいけないということでございます。  先ほど憲法第二十五条、生存権の話が出ましたけれども、一九五〇年に社会保障制度審議会の勧告が出ております。国は健康で文化的な最低限度生活保障する、これは制度審の勧告にも載っているわけでありますけれども、その後ろに、「このような生活保障責任は国家にある。国家がこういう責任をとる以上は、他方国民もまたこれに応じ、社会連帯の精神に立って、それぞれの能力に応じてこの制度の維持と運用に必要な社会的義務を果たさなければならない。」と、実は制度審の勧告の一番最初の後段にこれが書いてあるんですね。  これにつきましては、どうしてこのような部分を我々がないがしろにできたかといいますと、まさに高度経済成長のおかげでありまして、ある意味では、国民保険というのは高度経済成長の中でうまく今日まで運営できてきたわけであります。そういう点から申しますと、これからの低成長経済に即応した制度の大幅な見直しは私は必至であると思っております。  幾つかのポイントについて発言させていただきますと、今回の改革の大きなポイントであります患者負担見直しに関しては、二つの観点から私は意見を述べさせていただきたいと思います。  一つは、制度をつくったときの病気の種類と今日の保険給付が対象とする病気の種類が大きく変わっている。簡単に言いますと、急性期疾患から慢性期疾患へ大きく保険が対象とする疾患が変わっている。急性期疾患から慢性期疾患に変わったことは、多分保険給付の設計のあり方も変えざるを得ない。  どういうことかといいますと、例えば糖尿病とか高血圧、ある意味では生活習慣病と言われておりますけれども生活習慣に起因する疾患に対して保険給付はどう適切な給付設計をしていくべきか。そういう点では、かつての急性期の疾患とはおのずと異なった設計を考えるべきだと私は思っております。今回は本人の負担割合を二割にする、それから薬剤負担が出ているわけでありますけれども、そういうことからいいますと、もっともっとこれについては検討していかなければいけないと思っております。  もう一点は、先ほど来出ております高齢者負担のあり方であります。これについては私はこのように考えております。  昭和四十八年、老人医療費無料化が始まりましたが、この歴史を引きずって老人保健制度を生み、今日までこの議論を続けておるわけですけれども効率的でかつ質のいい老人に対する医療提供はどうあるべきか。私は、老人医療費無料化の歴史があるとはいえ、それ相応の応分の負担というのは、当然行われてしかるべきだと思っております。  このような議論をしていきますと、それでは適正な医療が守れないじゃないか、こういう議論がよく行われます。しかし、適正な医療医療ニーズを無視した負担ではないかという議論がよく行われますけれども、じゃ必要な医療のレベルを決めるのは果たしてだれなのか。政府なのか、医者なのか、患者なのか。これは、これからの大きな問題に私はなってくると思います。負担をただにして、すべて政府が決めて、それが果たして患者のために効率的で良質な医療提供の方法と言えるのか。  これから私たちが考えるべきことは、患者の代弁者は本当にお医者さんなのか、政府なのか、それとも先生方なのか。こういう原則的な議論をやっていきませんと、医療情報開示、さまざまな日本医療保険がこれまで取り組んでこなかった課題をこれからやっていくわけですけれども、そのときに果たしてだれが医療のサービスの中心となってその判断をすべきか。お医者さんにはどこまでできるのか、政府がかわってどこまでできるのか、こういう議論を私はしていく必要があると思っております。  もう一点強調させていただきますと、日本医療保険というものは税金に多く依存して今日までやってきました。これは、私は戦後おくれて出発した我が国医療保険制度の特徴だと思っておりますが、これ以上税金をつぎ込めないという、さまざまな財政再建とか行われているわけですけれども医療にしても社会保障にしても、政府を通じてどこまで行うのか、個人の財産でどこまで行うのか。北欧とかヨーロッパ、国民負担が七五とか六〇とか、そういう国があるわけです。日本はまだ四〇%程度だと思いましたけれども、政府を通じてやった方がいいのか、それとも個人を通じてこのような福祉の向上を実現した方がいいのか。これは大きな国家的な決断だと思うんです。そういう点では、私は今回の医療保険改革というのはさまざまな問題提起を含んでおりますが、基本的にはこの方向で先生方に最終的な議論をいただきたいと思っております。  最後に一点だけ、薬に関して述べさせていただきたいと思います。  医療保険審議会の答申それから老人保健福祉審議会の答申と、さまざまなこの薬剤負担に関しては議論が行われております。  これについては、私も正直言いますと、どのような負担がいいのかわかっておりません。これは先進国の例を見ましても、薬剤に対するさまざまな改革を行っておりますが、どの国も共通の悩みを抱えている。それはなぜかといいますと、医療提供者も医療を受ける患者側も、薬剤に対する依存というか信頼というのはやっぱり大きい。そこにさまざまな制度改革を持ち込んでも、そう簡単にはそれは断ち切れないと思っております。  この間の国会の御議論を見ましても、薬剤に関してはさまざまな御意見がありまして検討を続けているわけですけれども、これに関してはもっと長期的に考えませんと、最終的な薬剤負担のあり方とか薬剤抑制のあり方というのは、私は結論は出ないのではないかと。研究者としてはまだまだ不十分ですけれども、この薬剤負担に関してはこのような意見を持っていることを申し添えまして、私の意見とさせていただきます。  ありがとうございました。
  10. 上山和人

    委員長上山和人君) ありがとうございました。  次に、細川公述人にお願いいたします。
  11. 細川一真

    公述人(細川一真君) 細川でございます。  私は、大阪市の平野区で内科医院を開業いたしております。同時に、大阪府保険医協会の副理事長をいたしておりまして、医薬品問題検討委員会の座長を兼ねております。今回の健康保険法等の一部改正案につきまして、現場の臨床医の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。  今回の改正案は、年間二兆円もの患者国民負担をふやそうというかってない大改革でございます。これにより、患者の窓口負担は二倍以上、患者さんによっては四倍近くはね上がる場合もございます。  私の配付資料にございますように、熊本の保険医協会が千六百六十五人の患者さんに緊急にアンケートをとりました。そこでは、四割が受診回数を減らすと回答しております。また、七割が健保本人の二割負担、老人、薬剤負担増に反対をいたしております。そのほかのアンケートの結果を見ましても、ほぼ共通した結果が見られます。このような改革案は、現場の医師といたしましては納得ができない改革案でございます。  さらに、今回の改正案は、衆議院での成立直後から再修正が取りざたされておりました。さまざまな不合理と矛盾が各方面から指摘されていた、いわば私たちにとりましては欠陥法案というふうに言ってもいいと思います。  修正案につきましての審議は、これまで短時間しかなされませんでした。どの程度の受診抑制効果があるかなど、その影響は十分明らかにされているとは言えません。このような問題点をあいまいにしたままで法案を成立させてしまうことは、国会の責任放棄ではないかというふうにさえ思われるのであります。  現場の医師立場から申しますと、医療費効率的運用という点で最も大切なことは早期発見と早期治療でございます。患者への経済的負担を課すことによって、すなわち受診抑制によって医療費の抑制を図るということは真の医療費効率化に逆行するものと言わざるを得ないと思います。  さて、今回の法案の問題点を具体的に指摘させていただきますと、最大の問題点は薬剤の二重負担でございます。  現在、この薬剤負担について、六歳未満の小児を除外することや負担金額の上限を薬価基準による薬剤総額とすることなどが再修正の案として検討されているというふうに伝えられますが、薬剤負担の矛盾はそれだけではありません。衆議院での修正で、投与日数にかかわりなく、投与回数ごとに負担設定がなされたことによりまして、投与日数の短い場合は負担割合が非常に高くなります。配付資料にございますように、これは小児だけに限ったことではございません。  昨年十二月の医療保険審議会の建議書では、薬剤負担は三ないし五割としております。しかも、直ちに建議書の提起した定率負担とするのには急激な負担増になるということで定額負担とされたということでございます。それにもかかわらず、たとえ上限を設定しても三ないし五割を超える過重負担が起きることになります。  薬剤負担の矛盾はこの過重負担の問題だけではありません。症状が安定したために服用回数を減らした結果、逆に負担がふえるケースもございます。症状が変化して、一銘柄を追加しただけで負担が一気にゼロから千円になるというふうな場合もございます。  医療機関立場から最も懸念いたしますのは、窓口事務の煩雑化でございます。  一日分の薬価合計が二百五円以下でございましても、服用方法や回数が異なれば二種類とカウントしなければなりません。また、上限が設定された場合は、薬剤費の定率負担と定額負担の合計を計算して薬剤費の総額と比較した上で患者負担の額を決めることになります。その上、このような不合理な負担額となった場合には、その理由を患者さんに説明しなければなりません。医師患者信頼関係を損ねることにもなりかねない場合があります。  このような不合理や矛盾が起きるのは、今回の薬剤負担設定薬剤処方の実態を無視して、薬の使用抑制と財政対策の観点だけで行われていることによるものだと私は考えます。そもそも薬を処方するのが医師でございますから、患者さんにペナルティーを科すこと自体が全く不合理なことであります。したがって、薬剤の二重負担そのものの撤回を強く希望いたします。  次に、薬価の問題について意見を申し述べます。  私たちが行いました薬価の国際比較調査の結果につきましては、九六年度版の国民生活白書でも取り上げられました。また、多くの先生方に国会質問でも取り上げていただきました。そして、橋本総理大臣も小泉厚生大臣も、日本の高薬価の是正と審査・承認の透明化を約束なさったことは先生方御承知のとおりと思います。  私たちの調査では、一九九四年度の薬価基準収載の医薬品で流通上位百六品目を取り上げました。そのうち各国と比較ができました六十二品目について調べてみますと、我が国の薬価はイギリスに対して二・六六倍、フランスに対しては二・六五倍、ドイツに対しては一・三九倍、アメリカに対しては一・一四倍でございました。しかも、承認後の年数の少ない新しい薬ほど高い傾向がございました。八六年以降に承認された薬、私たちは九年新薬と呼んでおりますが、これはそれぞれ三・一七倍、三・五九倍、一・六九倍、一・六六倍でございました。特に、一九九四年度の承認薬三十七品目中十三品目について調べてみますと、実に対英四・一二倍、対仏四・〇二倍、対独二・三二倍、対米一・五七倍というふうに高い倍率になりました。  私たちと共同して薬価問題に取り組んだ医薬品・治療研究会というのがございますが、この会が九四年に承認されました三十七品目について、メーカーから資料を取り寄せまして詳細な分析をして総合的に評価をいたしました。その結果は、「有用性あり」というのは八つ、「わずかに有用性あり」が八つ、「目新しくない」というのが十二、「無用・危険・不可・禁止」というのが七品目もございました。新しく承認される薬の中には、有用性に乏しく問題のある薬も多く含まれていること、それらに諸外国と比べて異常に高い薬価がつけられていることがわかったのでございます。  これら新薬や問題のある医薬品の有用性を見直して、諸外国に比べて薬価を、例えばフランス並みに是正するとかドイツ並みに新薬の使用を抑制するとかいたしますと、薬剤費のむだを省いて二ないし三兆円の医療費の節約ができることも試算で出てまいりました。このことは薬害の防止にもつながり、国民の健康にとっても必要なことだと思うわけでございます。  私たちは一九九六年の五月に、当時の菅厚生大臣に業務行政の改善について陳情いたしました。そのときに具体案を出してくださいというふうな要望を受けまして、「医薬品の有用性評価、薬害防止、高薬価是正のための提案」を、保団連と私たちの協会と医薬品・治療研究会の連名で厚生大臣に提出をいたしまして、マスコミにも公表いたしました。その要約は本日の資料にお配りいたしておりますので省かせていただきますが、決して実行不可能な対策ではないと思っております。  今、直接薬価を下げる手段をとらないで、今後の薬価制度のあり方として、薬価基準を廃止し自由価格制にするということや、あるいは参照価格制の導入などが有力な選択肢として取り上げられております。これは私たちの経験からいたしますと、率直に言って問題のすりかえと思うわけでございます。  今、我が国薬剤費を抑制して、同時に安全で有効な薬剤の適正使用を実現するためには、まず第一に厚生省が新薬や問題薬の有用性を世界的な評価基準で評価し直すこと、もう一つ世界的に価値の確立した薬剤と比較して国際価格水準で価格を決定し直すこと、この二点に取り組むべきであると考えます。このこともぜひ国会で御検討いただくようお願い申し上げます。  不合理な医薬品の本質的問題を改善することなく、不合理で過重な負担患者国民に押しつけることは絶対に避けていただきたいというのが私たちの率直な感想でございます。  諸先生の賢明な御判断を期待して、私の意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  12. 上山和人

    委員長上山和人君) ありがとうございました。  次に、対馬公述人にお願いいたします。
  13. 対馬忠明

    公述人(対馬忠明君) 対馬でございます。  健康保険組合の第一線、現場の立場から意見を述べる機会を与えていただいたことに対し、厚く御礼申し上げます。  健康保険組合のよって立つ基盤は企業でありますので、まず初めに新日鉄を含む日本鉄鋼業の現況を申し上げたいと思います。  世界経済は国際的規模での市場競争が一段と激しさを増してまいりまして、いわゆる大競争、企業が国を選ぶ時代となってまいりました。我が国におきましても、市場競争が一段と激化して価格破壊といった状況が現実のものとなってきております。  鉄鋼は基礎素材であり、また国際商品であるだけに、こうした経済全体の変化の影響をより端的な形で受けておりまして、企業、産業として存立し得るかどうかはひとえに市場の中でどれだけ競争力を持ち得るかにかかっているのであります。  数次にわたる身を切るようなコスト削減努力に加え、円高の行き過ぎ是正もあり、我が国鉄鋼業は急速に競争力、収益力を回復しつつあります。大規模装置産業であるだけに、鉄は大競争時代の中でここ日本の地に腰を据え、世界一級の競争力を確保して、将来にわたる存続、発展を期しているのであります。  こうしたぎりぎりのコスト競争力が問われているわけですけれども、健康保険、年金こういった社会保険料負担は年々増大しており、経営者としても重大な関心を寄せております。  配付させていただいております資料の二をごらんになっていただきたいんですけれども、新日鉄の社会保険料の事業主負担でございますが、ここ七年間で四万四千円から六万五千円、年平均では三千円上昇しております。一方、ベースアップ額はここ四年間の累計で三千円、年平均七百五十円でございます。片や三千円、片や年七百五十円、この一事をもってしても経営にとっていかに重圧となり、コスト競争力の足かせになっているかおわかり願えるのではないでしょうか。  次に、当組合の財政状況について、鉄鋼など他の組合の状況を含めて申し上げたいと思います。資料の三をごらんになっていただきたいのですけれども、当組合は平成六年度に赤字に転じて以降、連続して赤字決算を余儀なくされております。この間、職員の合理化、海・山の家のすべての廃止、付加給付の縮小、廃止など、聖域なしのあらゆる収支改善努力を行って年間六億円強の削減を行いました。  しかしながら、資料四の右側のところに数字が書いてございますように、老人保健拠出金が六十五億あります。この老人保健拠出金の前には焼け石に水の状態であります。平成九年度は十八億円の赤字予算ですけれども、既に法改正実施が五月から九月にずれ込んでおりますので、足元では二十四億円の赤字になっております。  先ほど申し上げましたように、鉄鋼経営の現状からすれば負担増を認める環境にはないわけですけれども、当組合としては、万やむを得ず最後の手段である保険料率改定をお願いせざるを得ない状況にあります。まして、仮に法改正がないというような事態が起こりますと、赤字額は三士一億円もの巨額なものになりまして、来年半ばには任意積立金も底をつきまして法定準備金にも手をつける、こういったまさしく財政崩壊そのものになりかねません。  鉄鋼大手健保におきましても、ほぼ同様の財政状況にございます。  資料の五をごらんになっていただきたいのですけれども、大手五社健保の平均、これは備考欄に書いてございますが、料率は千分の八十八でございまして、政管健保の八十二を六ポイントも上回っております。しかしながら、老人保健拠出金が多い、平均年齢が高い、扶養家族が多い、こういつたことから、九年度予算はすべての組合が赤字となっております。また、自動車、造船、重電といった金属大手健保の料率も軒並み政管健保を上回っている状態にありまして、国際競争の第一線に立つ企業の組合運営が極めて厳しい状況にあることを御理解願いたいというふうに思います。  この財政悪化の主たる原因は、御案内のとおり医療費、とりわけ老人医療費の増嵩でございます。  老人医療費は拠出金という形で課せられできますが、保険料収入の三十数%、三分の一以上にも及ぶ金額が私ども組合の手の届かないところで決まっていく。こういうことでは、責任ある自主的な組合運営はなしがたいと言わざるを得ないのであります。  現行の老人保健制度は、老人医療費実績を五千有余の保険者に割り当てる実績しりぬぐい方式とも言うべきもので、だれが運営に責任を持つのか不明確であります。これを克服し、責任ある体制とするには、独立した高齢者医療保険制度の創設が必要であります。この制度によりまして、運営責任を持つ保険者が明確になり、高齢者も主役としての位置づけがはっきりし、若年者との役割分担、世代間負担の公平性議論も透明になってまいります。  健康保険組合連合会が昨年、高齢の長期入院者について実態調査いたしましたが、患者の病名数がレセプト一件当たり実に九・六、十病名に近いものであること、病名がふえればふえるほど請求金額がふえること、それから在宅介護が可能と思われる人が約三割あるということなどがわかりました。  ここでは論点を絞るために、社会入院などの問題はひとまずおきまして、診療報酬体系、出来高払いの問題を考えてみたいと思います。  私ども保険者としては、各病院ごとの診療実績を把握し組合員に必要な情報を提供して、ひいては医療費の削減に結びつけていきたいということでございますが、そのネックの一つが出来高払いを中心にした複雑な診療報酬体系であります。どういう病気でどこの病院に何人の組合員が通っているか。レセプトを集計しているだけでは、先ほど申し上げたとおり肝心の主な病名すらわかりかねる、こういった実態になっております。  出来高払いの弊害につきましては多くの識者が指摘しておられるところですけれども、今申し上げた視点からも、簡明で合理的な新しい報酬体系をつくるべきだというふうに考えます。  薬価基準、薬価差益、薬剤といった問題ですが、これにつきましては多くの問題指摘がなされているところでございます。  患者コスト意識に訴えて是正を図ることも必要な方策ではございますけれども、現実の診療の場では、医師の指示に異論を唱えることは難しいということは多くの組合員から聞く言葉であります。  諸外国の例も参考にして、薬剤提供のあるべき姿、具体的姿を早急にまとめ上げ、直ちに実行に移すべきと考えます。薬剤費が医療費の三割を占めて欧米諸国の二、三倍にも達するということは、だれが見ても異常な事態ではないでしょうか。  現在審議されている修正案は、老人医療費や薬剤の定率負担が織り込まれていないなど不十分な点はありますけれども、今申し上げました構造改革につながる第一歩でもありますし、また当面する財政危機を乗り切る必要最小限の措置でもあります。十分審議を尽くされた上での速やかなる可決成立を切望する次第でございます。  主として新日鉄健保組合の立場から意見を申し上げましたけれども、力点の差異はありますが、これは千八百有余の健康保険組合の総意でもあります。  日夜にわたる先生方の御努力に重ねてのお願いで恐縮でございますけれども法案の速やかな改正実施をぜひよろしくお願い申し上げるとともに、抜本的構造改革にも御尽力いただきまして、来るべき二十一世紀に向けて磐石の国民保険体制を構築されることを切にお願いいたしまして、陳述を終わります。  ありがとうございました。
  14. 上山和人

    委員長上山和人君) ありがとうございました。  次に、北條公述人にお願いいたします。
  15. 北條順子

    公述人(北條順子君) ただいま御紹介いただきました新日本婦人の会の北條でございます。本日は、一般公募の中より御推薦いただきましたことを大変光栄に思っております。  私は、主婦の立場から、健康保険法の一部を改正する法律案について、反対の立場意見を申し述べます。    〔委員長退席、理事尾辻秀久君着席〕  私ごとで恐縮でございますが、夫は一九四五年、昭和二十年九月、終戦一カ月後に学校を卒業、それから四十九年間、二転三転はいたしましたが、ずっと働き続けてまいりました。そして、健康保険、厚生年金、各種の税金もきちんと納めてまいり、今は年金で暮らしております。会社勤務中は大変健康に恵まれ、一度も入院はしたこともなく、ごくたまに風邪や歯科にかかるぐらいでございましたが、六十五歳を過ぎるころより高血圧症と心臓の薬などを服用するようになり、七十二歳の今では五種類の薬を常用しております。  これを今度の政府案と修正案で計算してみますと、政府案では、通院月四回で二千円、薬代十五円掛ける五種類掛ける二十八日分で二千百円、合計四千百円で現行の約四倍、修正案では、通院月四回で二千円、薬代五種類ですから七百円掛ける四回で二千八百円、合計四千八百円で現行の約四・七倍にもなり、途端に家計を直撃いたします。これに時々歯科や耳鼻科にかかることもあり、それぞれに通院、薬代と加算されますと、安心して医療を受けることはとてもできなくなります。  特に、私の周りには、ひとり暮らしや、年金が少なく子供たちと同居している高齢者がたくさんいらっしゃいます。毎日お医者に通って伸ばしたり温めたりする腰痛やひざの痛みなどは、自然と自分で抑制して、三度のところを一度にしてしまうのではないでしょうか。恐ろしいのは、風邪程度を我慢して医者にかからず、肺炎になってから入院するようでは、医療費はかえって何倍にもなるのではないでしょうか。これはもう高齢者いじめの何物でもありません。  それでも、都会に住んでいる私などは歩いていける範囲でお医者にかかれますが、農山村で現金収入も少なく、国民年金だけで生活している高齢者は大勢いらっしゃると思います。町のお医者さんに行くにも一日がかりでバス、電車に乗っていかなければならないところでは、医療費のほかに交通費が大変な出費です。  このような国民一人一人にかかわる大事な問題は、全国何カ所もで公聴会を開き、子育て中の若いお母さんたち意見も聞いていただきたいと思っています。    〔理事尾辻秀久君退席、委員長着席〕  ところで、私の友人の夫は現在六十二歳、この一月に胃がんの全摘出手術を受け、今は自宅療養中ですが、三カ月置きに抗がん剤の注射を二本ずつ打たなければならず、今は健保本人で一割負担ですが、この三月の医療費は三万二千九百七十八円だったそうです。このまま法案が通ったら本人二割負担になり、それにプラス薬代ではとても支払えないので、抗がん剤はやめにしてもらおうと夫婦で話をしていると言っておりました。  本人の二割負担は、聞くところによりますと健康保険始まって以来二度目の大改悪で、一度目は昭和十八年に戦費調達のため二割にされたときだそうです。世界からは経済大国だと言われている日本で、国民の健康を守るために二兆円の財源はきっとあるはずです。日本の薬代が欧米に比べて非常に高いことは、橋本総理もお認めになったとのことです。まず法案を通すことが先ではなしに、薬価の見直しやむだの見直しこそ優先させるべきだと思います。  私の住んでおります神奈川でも、二月四日に横浜関内ホールいっぱいに千百二十五人が集まり、医療保険制度改悪阻止神奈川県実行委員会が結成されました。そこには県の医師会、歯科医師会、病院協会などからメッセージが寄せられ、県看護婦協会は参加されるなど、大変幅広い層の方々が結集されました。その後、改悪反対の運動の輪は職業や立場の違いを超えて県内に広がり、八百五十四団体三千四百七十七名の方々の協力でジャンボビラ三十万枚をつくり、駅前や街頭で署名行動も行ってまいりましたが、まだまだ国民の中には知らされておらず、このようなことで法案が通ってしまうことに大変疑問を感じております。  最後に、私ども日本婦人の会が発行しております週刊紙「新婦人しんぶん」六月五日号の声欄に載っております杉本きぬ江さんの一文を御紹介して、終わりたいと思います。「年金生活なので国民健康保険など公的なものからガス、水道、電気、電話、火災保険などの支払いに追われ、消費税五%、それに医療費が二倍以上になったらと思うと心配です。お先真っ暗とはこの事ですね。簡単な掃除ぐらいなら出来るかと仕事をさがしても、七十歳過ぎてはありません。」というものです。  戦後の復興期から高度成長期へと日本社会を支えてきた高齢者が、お先真っ暗にならないように十分の御審議をよろしくお願いいたします。終わります。
  16. 上山和人

    委員長上山和人君) ありがとうございました。  次に、池澤公述人にお願いいたします。
  17. 池澤康郎

    公述人(池澤康郎君) 池澤でございます。  本日、公述人として意見を述べる機会を与えてくださったことに心から感謝申し上げます。というのは、日本国民医療費のうち約六割五分を担当する病院医療を代表する者が、中央社会保険医療協議会を初めとする重要な医療問題の審議会等の多くに参加しておらず、病院医療に関してさまざまな問題を病院団体の代表者として述べる機会がなかったからであります。  本日は、健康保険法等の一部改正に関する件でありますので、これはしきりに議論されている医療保険制度の抜本改革の第一歩たり得るかどうかについて思うことを申し述べます。  まず、急増しつつある高齢者人口と医療技術及び看護技術の発展、高度化によって、我が国医療費、また特に老人医療費がふえるのは当然であり、そうでなければならないという前提を確認しなければなりません。  最近マスコミなどで、医療費が不必要に増大しているといったぐいの意見を間々見聞きしますが、不見識も甚だしい。そもそも、一人の人命は地球より重いなどと総理大臣が公言する国で、医療費がかかり過ぎるなどの意見が何ゆえに憶面もなく言えるのか。医師性悪説でもとらない限り、余分な薬を与え、余計な治療をしているという話にはなりません。こういつたことになりますと私は、新約聖書の中の、「人を測る量りにて己も測られん」という言葉を思い出します。日本で言えば、卑俗なことわざとしてはげすの勘ぐりというのがございますが、そのようなものだというふうに思います。  とにかく、医療費は今後もふえるし、それは当然であるということを大前提として、特に老人医療コストはより急速にふえるが、これも当然であるという考え方を基盤として、その上で現在生じている問題の具体的解決を探ることであります。今回の健康保険法の一部改正が抜本改革の第一歩となるかどうかは、この前提に依拠するかどうかで弁別できるでしょう。  医療の現場、特に病院医療の現場にいる者の立場から、私は老人保健法においても一部負担はやむを得ないことであり、それは定率であるべきだと考えます。その考えのもとに、今回の健康保険法の一部を改正する法律案について、厚生委員会の方から送られてきました資料に沿って、順を追って、意見を述べたいと思います。  一般的な問題としては、初めに述べられました糸氏公述人及び河北公述人の御意見に私も賛成でございます。その上で、具体的な問題に絞って意見を述べます。  第一に、外来の薬にかかる一部負担についてはゼロ円、四百円といったたぐいの負担の仕方、また頓服、外用薬についても一種類につき幾らというような負担の仕方というのをやめて、このように薬代を別には取らずに、今までのと同様に全体の医療費の中に含めて被保険者本人、その家族、また老人保健法適用者についての定率の一部負担の中に含めること。例えば、一般サラリーマンの場合には二割負担の中に含めるということであります。  その理由でありますが、第一は、薬剤価格はかつて昭和十年代ごろ、第二次世界大戦の始まる前ごろまででございますけれども、そのころは何の薬でも一週間五十銭というのが八、九年間続いたことがございます。昔は薬の種類が非常に少なくて、価格差も非常に少ない。しかも、健康保険が行き渡っていないといったころの話でございます。しかし、今や平成九年四月の薬価収載の薬は一万一千九百七十四剤ありますけれども、そのうち内服薬としては六千七百九十六剤あります。その六千七百九十六剤の薬の内服薬の薬価の高低には著しい差がございます。  例えば、抗がん剤の副作用を抑えるための内服薬ゾフラン、一日一ないし二錠内服するわけでございますが、これは一錠二千百七十九円二十銭ということであります。これに対して心臓の薬ジゴキシン、これは〇・二五ミリグラム錠でありまして一日二分の一ないし一錠でございますが、これは一錠九円九十銭。健胃散であるKM散というのがありまして、これは一日三から三・九グラム内服でございますが、これは一グラム六円五十銭ということでございます。  すべての内服薬の薬価は、このように大きな幅の中に分布しております。したがって、各人がもらう薬の価格にはこのように大きな差が生まれます。  それを無視して、その薬剤の種類数にだけ着目して、ただであるとか四百円とかその他の差をつけるということでは、各人のもらう薬の価格負担率に著しい差が出ます。これは負担の平等感を欠きます。加えて、一回当たりの投与日数を全く考慮しないから、薬剤自己負担の比率はさらに差がついてまいります。このような弊害は定率負担によってしが解消できません。  また、我々はかつて平成元年に消費税の問題で病院側としては非常に苦い思いをいたしました。それは、十分に情報を開示されないまま、医療は課税しない、そのかわり保険制度の上に〇・七六%上乗せすればすべて解決するというようなことだったわけであります。事実は全く違いました。  今度は、患者に対してその薬の値段というようなものについて一切知らせずに、そのかわりにこのような形で薬剤費を取るということは、情報開示を目指す社会の方向に反するものではないかというふうに思うわけでございます。  第二に、最近の薬剤は効果の高いものが少なくありません。したがって、軽々しく減らすことはできずに、患者の必要に応じて投与されております。患者自身の判断で減らすわけにはいかず、また、医師患者の経済的負担を第一に考えて薬剤数を減らすということは好ましいことではございません。こういった方向は、国民の健康を守る政策を推進する者のとるべきことではないというふうに思うわけでございます。  第三に、我が国医療費の中で薬剤費の比率が高いのは、技術料が相対的に低く抑えられて薬価が高いことに主要な原因があるわけであります。  平成八年度の医薬品業種上位五十社の所得額表にその結果が示されています。すなわち、武田薬品の千百六十億三千万円を筆頭にして、上位五十社の所得は一兆十四億円を超えております。従業員一人当たりの所得でも他の企業と比べて群を抜いております。すなわち、通産省産業政策局が平成七年度の我が国の資本金十億円以上の上場企業千六百四十社について分析したところによれば、従業員一人当たりの経常利益は、全産業部門で二百二十九万七千円、製造業では二百二十九万二千円、ところがこれに対して、医薬品製造業ではその約三倍の六百五十四万七千円です。  こういつたことを抑える方策の一つは、品質のすぐれた後発医薬品を低廉な価格提供できるよう誘導する政策を強力に進めることでしょう。自分がかかる疾病によって負担額がこうも違うかと自覚を促す定率負担も有意義でありましょう。しかし、薬価全体を大幅に引き下げて、例えば上位五十社の所得総額を半分にできれば五千億円が浮くわけであります。  細かな問題のようにも見えますが、医療情報担当者、MRと言われているものが諸外国に比べて十倍以上多い日本において、それを半分に減らせば三千億円ぐらいは浮くだろう。そのほかの冗費も節約すれば、一兆円ぐらいは簡単に減らすことができるというふうに思います。  薬剤費以外の診療材料費についても、輸入したものはその生産国での価格より平均して三倍近く高く、これが医療費を高くしている一因でもありますが、ここでは問題の指摘にとどめます。  第二に、政府管掌健康保険保険料率を千分の八十五とすることには賛成であります。ただし、これには以下の条件をつけます。  その一つは、近い将来に多くの健保組合の保険料率を統一し、他方、医療費の一部負担還元金や家族療養付加金の払い戻し基準をできるだけ引き上げて、将来保険者団体を統一するための素地をつくることであります。  既に、毎日新聞等で報道されているので詳しくは述べませんが、厚生省は、一カ月の保険本人への払い戻しあるいは家族への払い戻し、その基準一カ月三千円を直して二万円にするようにという指導をしておりますが、実に約千八百の健保組合のうち七割が払い戻しを行っており、これはその四割、すなわち全体の二八%ぐらいが払い戻しの基準を三千円としているからであります。組合健保の収支決算が赤字であるといっても、この異常な払い戻しをなくしたらどうなるかということが示されなくてはにわかに信じるわけにはまいりません。  第三に、老人保健法にかかわる入院一部負担金の額を一日千円、千百円、千二百円とどんどん年度別に上げていくということにつきましては、額としてはうなずける点もありますけれども、先ほど申しましたように老人の自己負担額は、入院、外来を薬を通じて定率として全体をまとめて一割とする。ただし、現行の六万三千六百円よりもはるかに低い額を自己負担の最高限度額とするということであります。このようにしてやれば、老人に対する自己負担の額の過重さというのは大きく減ると思うわけであります。  将来、人口のうち三人に一人は高齢者になるということが予想される場合、高齢者もまた応分の負担が必要であります。無料として出発した老人保健法は誤った予測に基づいておったというふうに言わなければなりません。これを定額で少しずつなし崩しにするのではなくて、定率負担として大胆に修正する方向を出すべきであると思います。  以上でございます。
  18. 上山和人

    委員長上山和人君) ありがとうございました。  以上で公述人各位の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  19. 大島慶久

    ○大島慶久君 自由民主党の大島慶久でございます。  本日は、公述人の皆様方におかれましては、大変お忙しいところを御出席いただき、それぞれのお立場から貴重な御意見を聞かせていただくことができまして、大変ありがとうございました。  持ち時間十五分でございます。限られた時間での質問でございますので、まず糸氏公述人と池澤公述人に絞って二問質問いたします。一問に対して恐らく三分弱のお時間しか説明がいただけないかと思います。既に、多岐にわたっていろいろと御意見をちょうだいいたしましたが、残念ながらきょう初めてこういつた資料をいただきましたので頭の整理ができておりません。この場において、できるだけ修飾語は結構でございますから、極めてダイジェストにまとめて以下質問をいたします問いに簡単、明瞭に重点的にお答えをいただきたいと思います。  今回の健康保険法改正により、完全な医療制度だとかあるいは医療保険制度が構築されるということは、私ども、この委員会審議経過を見てとても不可能だということは実感として味わっております。きょうの公述人それぞれの御意見にもありました、極めて近い将来抜本改革ということで、並行して取り扱っていかなければならない大変難しい問題を抱えておりますので、私は、国民医療の担い手、医療の現場の責任者として、あえて糸氏公述人と池澤公述人にお聞きをするわけでございます。  今回の健保法の改正の意義、お聞きしていると、余り芳しくないというような気持ちがよく伝わるのでありますけれども、さりとて全くこれは無意味な改正をするわけではございません。それなりの効果もあろうかと思いますので、その効果。そして、これは抜本改革につながっていくだろうと想定できますけれども、将来にかかわる問題点を抱えていると思います。  以上の三点にわたって、それぞれの公述人から同じ質問でお答えをいただきたいと思います。
  20. 糸氏英吉

    公述人(糸氏英吉君) 今回の健保法改正の意義でございますけれども、先ほど河北さんもおっしゃいましたように、当初国民保険制度ができた社会的な背景と、それから五十年近くになった今日と社会的な背景が全く変わってきたということでございます。  そして、特に特徴的なのは、保険原理と保障原理というのが全く我が国では混然といいますか非常に交錯した状態であった。これの整理ということがなしには、これから二十一世紀の少子・高齢化社会は乗り切れないだろう。そういう意味で、バブル経済崩壊後の経済の不況の中で、財政がもたないということでたまたま今回見直しが出てきたわけでございますけれども、私は、介護保険の創立というものは医療保険改革の第一歩だというふうに考えておりますし、これを契機に二十一世紀を、高齢社会を乗り切るための方策は何としてでもやらなくちゃいけない。  毎年といいますか二年に一回の診療報酬改定においても決してままならない状態を我々はいつもいらいらした状態で今まで迎えてきておりますが、今後、我々が安心して国民にいい医療提供するためには、やはり今の制度の中で正すべき点は正さなくちゃいけないというふうに考えております。  そういう意味で、今回、今までいろいろ議論されたことを集約しいろいろな意見をまとめた上で、国民合意を得て思い切った改革をやらなくちゃいけない。しかし、きょうかあすにというわけにはまいりませんが、私、最後に申しましたように二、三荒っぽい外科手術も必要だろうというふうに思います。それによって三年か五年の時間を稼いで、その後に抜本改正を調整してランディングをやっていくという方法が一番いいのではないかなというふうに個人的に考えておるところでございます。  以上でございます。
  21. 池澤康郎

    公述人(池澤康郎君) 私は、今度のこの健康保険法の一部改正につきましては、先ほどの意見の陳述の中でも述べましたけれども、結論としては、これが抜本改革への第一歩となり得るという可能性を十分持っていると思うわけであります。  このうち、特に薬品についての効果でありますけれども、薬品についてこのような形をとる、私は、これに対してはむしろ定率でやれということを申し上げたわけであります。一律、老人の場合には一割それからいわゆる健康保険の場合には二割という、その中で全部賄えということを申し上げたわけであります。  しかし、例えばこのようにして薬価を政府側の原案のように、提案されている改正案のように行ったとしても、実際にはいわゆる薬剤費の抑制効果というものは実はそんなには起こらないのではないかというふうに私は見ております。  したがいまして、多分これを行うことによって、今後三年間の間にかなり大きな問題点がそれぞれ幾つかの分野にわたって出てくるだろう。そこで、改めて抜本改革への一つの方向づけというものがむしろ明瞭に出るんじゃないかというふうに思っております。  以上です。
  22. 大島慶久

    ○大島慶久君 ありがとうございました。  では、二問目に移らせていただきます。  今回の健保法の改正は、先ほど皆様方からお聞きいたしておりましても、いわゆる国民負担の重さ、そういったことに対する懸念が我々の厚生委員会でも一貫して論じられております。  これは保険加入者の負担、そしてまた先ほどお聞かせいただいたように、事業主のサイドの負担ももちろんかかわりがございますけれども、これは余りよく報道がされないような気がいたすのであります。  そういった負担もさることながら、医療提供者側の負担というものも、例えば公述人のお話の中にもありましたけれども、いわゆる今回の改正が、ややもすれば医療抑制につながってしまうんじゃないか、こういう観点からのお話も伺いました。そういう分野も私は多く含まれていると思います。  そこで、こういう質問をいたすわけでございますけれども、やはり同じ医療提供者でも、私が二人の公述人にお伺いいたしましたのは、医師会を背景といたします医療体系の皆様方、そして病院というかかわりで、入院患者を主体として患者さんを診ていただく病院関係のお二人を選ばせていただいたわけでございます。  そういった医療現場負担というものをどういうふうに感じ取られているのかということにかかわりまして、診療報酬体系、これは抜本改革の中で必ずメスを入れていかなければならない大きな課題であることは私どもも承知いたしておりますので、診療報酬体系にかかわる御感想。そして、薬価のことは今それぞれの皆さん方からお聞かせをいただきましたので、大体統一的な考え方がよく理解できております。  もう一点、老人医療のあり方、これをお二人の公述人にお聞かせいただきまして私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  23. 糸氏英吉

    公述人(糸氏英吉君) 私は、今回の改革でやはり中心的な課題は、今の医療財源の入り口のところ、これは現在最大の収入は保険料でございます。その次は国庫負担公的負担それからあとは患者負担、こうなっておるわけです。これが大体今のところ、大まかなところで約六対三対一というような形になっておりますけれども、この負担率の組み合わせというのは、今後、高齢社会の中で適切かどうかということを、これはあらゆる階層の方々がひとつ先生方と相談しながら適切な負担をやっていく、これがまずしっかりしないと動きがとれないと私は思うんです。  と申しますのは、国に財源があって、いつでもそこらのバッファー的、緩衝的な役割をできるのならいいですけれども、もし国の財政が、現在のような状態が仮に今後かなり続くとすれば、やはり国そのものがこれだけしかできないということをまずはっきりしていただかなくちゃいけない。それならば患者負担はこれにしましょうとか、あるいは保険者負担はこれにしましょうとかいうことをやっていかないと、これから高齢社会の中で、医療財源というのを減らす努力をしろとおっしゃっても、それは努力はいたしますけれども限度がございます。結果的に国民が劣悪な医療提供に甘んじるんだったら、それはまあ幾らでもできまずけれども、それは国民も望まないところですし、我々としては、医師の良心としてもそんなことは絶対できないと。私たちは、今までどちらかといえば、やはりこれは医療機関のかなりの犠牲というものがあって今日まで何とか持ちこたえてきたというふうに思っております。  そういう意味で、医療提供者が財政的な脅威というものを感じないで、安心して医療に専念できる環境をつくっていただくということが一番望ましいわけで、そのためには、まず国負担あるいは保険料負担あるいは患者負担がどういう組み合わせが一番適切かということを決めないことにはなかなか問題は先へ進まないんじゃないかというふうに考えておりますし、今回の抜本改革の最大のねらいもそこにあるんではないかというふうに私は思っております。  かつてのように、五割は患者負担し五割が保険その他で見るというような制度に戻すのか、あるいは現行のもっと軽い負担でいくのか。そこらのところが決まってこないことには、患者負担の問題にいたしましても保険料の問題にしても、なかなか解決しないということですので、これは国民的な合意がなしにはなかなかできないかなりポリティカルな問題も含んでおります。これは全国民の知恵を絞って、これを今回こそ決めていただかなくちゃいけないというふうに思っております。  診療報酬体系につきましては、これは今後とも、今の制度そのものがいろいろの矛盾もございますから直していかなくちゃいけませんけれども、私は、先ほども申しましたように、これから医療費のふえる部分というのははっきり言って老人の部分なんです。これを第一に解決するために介護保険制度というものをつくったと。私は、本来の目的はやっぱりそこにあると思うんですよ  ね。  介護保険制度によって、二〇%ないし二五%程度財源的なリストラを老人医療においてできる。あと残った部分の、今度は老人医療をどうするかということが今後非常にふえてくる部分ですね。一般的な医療については、私はそうふえないだろうと、横ばいかその程度だろうと思いますが、今後ふえてくるこの老人医療というのは、制度を抜本的に改革して財政再建をやらないことには、今のままでは早晩倒壊するのは目に見えております。先ほど申しましたように、我々としてもいろいろ長期積立保険制度というものはどうだろうというようなことも考えておるわけでございます。これは完全にできたわけじゃございませんが、現在いろいろ詰めておるところでございます。  以上です。
  24. 池澤康郎

    公述人(池澤康郎君) まず負担のことでございますけれども、私もまた糸氏公述人と同じように、公的なものの負担の割合それから私的な負担の割合ということについてはこれからさまざまな変動はあるだろうと思うし、またそうでなければならないと思うわけでございます。  しかし、それが税金であれ、あるいは保険料率として取られる保険金であれ、あるいは個人負担であれ、最終的には働いている人たちの、あるいは一般の住民の方から全部出ている。もとはそこが出発点なわけですね。もとは税金であれ、あるいは保険に対する掛金であれ、自分の分であれ、自分の支払ったものであれ、全部自分が出しているものがどういうふうにして税金の方から回って入ってくるかというようなことだと思います。  例えば、消費税をこれからだんだん上げていくと、今二%アップさらにこれから将来一〇%へという方向でいくとして、しかしそれが医療福祉の方に回されるということが前提であるとしても、結局はやはり税金という形をたどって医療の方に還元されてきたというだけの話で、最終的には自分負担した額が回り回って来ているという点では同じであると。したがって、それがどのようにしてどのような割合でというのは、あくまでもそのときの政治的な判断、政治的な方針上の問題として決められていく問題だろうというふうに思うわけでございます。  一方、これを行う病院の側のこういった問題についての負担ということについてでございますけれども、私は、実は先日、救急業務の連絡協議会というのがございまして、そこで消防隊の隊長の人の話を聞きました。  そうしましたら、火事の現場に行くと、二十代の消防士は余り経験がないから、大体危険度がフィフティー・フィフティーだとすると飛び込んでいかない、しかし三十代の消防隊員は、フィフティー・フィフティーの状態だと、つまりうまくいけば助かるということがありますと、中に人がいれば平気で勇敢に飛び込んでいっちゃうと。したがって、現場の隊長の主要な任務は、いかにして飛び込んでいく隊員たちを飛び込んでいかないように抑えることにあるという話を聞きまして、びっくりしたわけですね。  私たちは、いかに医療の現場にあっても、それほど自分の命をかけてまでというような医療をやっている者は、正直言ってそうはいません。その意味では、消防隊員に私どもは劣るなという印象を持ちました。  しかし、それでも我々は、この患者の命が助かるならば、たとえ病院経営としては損になっても、助かるならば全力を挙げて医療を行うということで、コストを無視した医療というのをしばしば強力に進めております。そのような意味では、一般企業とはかなり違った性格のものを持ちます。あくまでも、現場の医療を行っている者の大半は、ほとんどはそういう姿勢でやっているんだと。したがって、今後もそういった病院負担というものはふえ続けるだろうということは御理解願いたいというふうに思うわけであります。  また、最後になりますけれども老人医療につきましては、都内の病院の幾つかで調べましたところが、平均して七十歳以上の老人は、入院費が一カ月に約十万円、一般の人よりも多うございます。それが現実でございまして、今後ますますその額はふえるだろうと思っております。  以上でございます。
  25. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 公述人の皆さん、本日は本当に貴重な御意見を拝聴させていただきまして、まことにありがとうございました。  今回のこの法案審議に当たりまして一番問題になっているのは、やはり抜本改革が先送りされて、そして国民負担がまず先行しているということが一番国民の怒りを買っているんではないか、そのように考えるわけであります。その点では、抜本改革をしなければならないということはみんなよくわかっているわけであります。しかしその案が、骨格が余り見えないうちに国民負担が先行してしまうということに対して、国民は怒りを覚えているわけであります。  このようなやり方に関しまして、河北公述人はどのようにお考えでありましょうか。
  26. 河北博文

    公述人河北博文君) 先ほどもお話しさせていただきましたように、私は医療保険審議会におりまして、その審議会のあり方も、継続して抜本的な議論をするんではなくて、都合のいいときにだけこの審議会が開催されたということに極めて大きな疑問を感じました。ですから、今後のこの抜本的な改正を前提とした議論を着実にしていただきたいということはお願いをするつもりでございました。  それで、今回のこの法律改正に関しましても、抜本的な改正を前提としたものであれば、改正をしないよりはした方がいいだろうというふうに私は思いますけれども、ただ、抜本的な姿が見えないということには私は大きな疑問を感じます。  それから、今回のこの法案に関しましても、私は大変生意気なようなんですけれども、法律制度というものは三つの原則があるだろうと思うんです。一つはフェア、公正である。それから、第二番目はリーズナブルであるということ、これは適正であるということ。第三番目は簡素化、シンプルであるということだろうと思います。それにどうも合わないのではないかというような気がします。  それから、これは先生方にお願いでございますけれども、いかに国民合意を形成するかというところがどうも抜けていたような気がいたします。
  27. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 今回の法案で一番問題が多いというのは、薬剤費の別途負担の問題であります。この別途負担が本当に薬剤費の削減になるのかということに対しまして、非常に医療の現場からも疑問が提示されているということであります。  このような別途負担のあり方というものは患者に対する二重の負担だということで、公述人の方でもこれを肯定される方というのは余りいないんじゃないかと思うんですけれども先ほど糸公述人の方からはこの点に関しまして見解が示されておりませんでした。日本医師会としてはどのような見解でございましょうか、お答えいただきたいと思います。
  28. 糸氏英吉

    公述人(糸氏英吉君) 私も、この薬剤負担は今回の改正で最も恥すべき改悪だというふうに思っております。日本医師会は最初から、これは真っ向から反対でございます。  なぜならば、薬剤負担というのは二割、三割、定率のところで負担は取っているわけでございます。それになおかつこれを加えるということは、全くリーズナブルではございません。ですから反対です。もし取るんだったらまた別個の方で、足りなければ二割を二割五分にしたらよろしいんですよね。もちろん、私どもはその方が正しいと思うんですよね。ところが、こういうように別途負担するという、こういうやり方は全くおかしいということが第一点。  もう一つおかしいのは、やはりこの薬剤負担をかけたときに、これを薬の使い過ぎ、種類が多いから余計負担してくれという、いわゆる過剰使用に対するペナルティーの性格を持っているわけです。ところが、患者自分で薬を処方するわけじゃございません。むしろ、かけるんだったら医者にかけたらどうだと私は言いたい。そういう過剰な使い方をする医者をバッシングすべきだと、私は常々そういう意見でございます。それを受け手である患者に、おまえ、余計もらったから金を出せというのは、全くこんなばかげた話をやるというのはおかしい。  結局、最後まで我々は反対したんですが、とにかく金が足りないから何とかしてくれということでそういうことになったんでしょうけれども、しかし、これは本当に私は恥すべき改革だというふうに思っております。
  29. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 先ほど細川公述人の方から、この薬剤費別途負担その他、今回の法改正が行われることになりますと、非常に医療現場では窓口で患者さんにいろいろ説明をしなければならないとか、また薬剤費の計算が複雑であるとか、さまざまな混乱が起こるのではないかというふうな御意見が出されましたけれども、実際このような今回の改正が行われましても、医療保険制度の、特に政管健保の財政効果に関しましては二年程度しかもたないということでありまして、また次に何らかの改正がどんどん続いていくということになると思うんですね。そういう意味では、非常に医療現場ないし国民患者さんにとってかなりの負担がかかるんではないかというふうに感じております。  医療現場負担といいますか、これそのものは国民の健康を守るためには何にも益にならないわけであります。ただ単に事務負担がふえるだけでありまして非常に問題が大きいと思うんですが、この医療現場の事務負担の増加は本当に無視できるほどの小さなものであるのかどうか。さらに、これが何回も繰り返されるということは非常に問題であると私は思うんです。  医療の事務負担に関しまして、河北公述人の方から御意見を聴取したいと思います。
  30. 河北博文

    公述人河北博文君) 現在の社会保険診療報酬体系というのは昭和三十三年につくられたものでございますけれども、今のこの診療報酬の請求業務にかかわる本というのは厚さがこのぐらいございます。こんな本を見ながら我々は日常の業務の中で請求をし、患者さんにその料金をお払いいただくということを医師側の業務として行っておりますけれども、さらにまた現在の診療報酬体系から分けた薬の支払いを別に事務的に作業を行わなければいけないということは、大変な負担でございます。
  31. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 ありがとうございます。  医療現場では、患者さんにいろんな治療をする場合にインフォームド・コンセントということが非常に重要視されております。患者さんに医療提供側がお話をして、そして患者さんが納得をした上で医療提供が行われる。あくまでも、説明して同意を得て、納得して治療を受けていただくというのが一番の基本であるというふうに感じるわけです。  今回の国会での審議では、この修正案に関しましては提案されてその日のうちに採決がされてしまったということで、衆議院におきましての話ですが、国民がわからないところでそういう医療制度が変わっていくということは非常に国民の不信を増大するものではないかというふうに感じます。  これまでもここ数年来、医療不信といいますかいろいろな事件がありまして、こういうものをきちんと払拭するためには、医療保険制度改正に当たりましても国民の声を十分に聞いて納得をしていただくということが大切ではないかと思うんですが、国民の声を十分に聞かずにこのような改正が行われる、進んでしまうということに対しましてどのように考えておられるかということで、河北公述人並びに糸氏公述人に御意見をお伺いしたいと思います。
  32. 河北博文

    公述人河北博文君) 医療保険制度というものは、病気になった患者さんだけのものではなくて、健康な状態にある人たちも含めた制度であるというふうに私は認識しております。  ですから、私は、健康な状態にある人たちももっとこういった制度に関心を持つ責任がある。その責任を持った上で、通常物事が何か起こったときにだけ対応するのではなくて、やはり日常の生活の中でこういつた制度にもっと責任を持った国民議論に参加をすべきだというふうに思っております。  ただ、適正な審議過程を持つということもこれは当然のことでございますから、できるだけ多くの方たちの御意見を伺っていただきたいとは思いますけれども、また時期もあるだろうと。ですから、余り審議が長くなってもいけませんので適切な時刻設定をして、それまでに議論を重ねて、最終的には、やはり我々は民主主義でございますから、できるだけマジョリティーの意見をとっていくということ、これはマイノリティーの人たち立場も考えた上でのそういった決定がなされるということは非常に大切なことであるというふうに思います。
  33. 糸氏英吉

    公述人(糸氏英吉君) こういうこれから先の時代を規定するいろいろな法案ができるわけでございますけれども、私は、やはり特に医療にかかわる、こういう国民にとって非常に切実な問題についてはもっともっと国民の声を聞いて、そして決定すべきであるというふうにもちろん考えております。  我々日本医師会としても、こういう問題については早くから全国の組織を動員しましていろいろな働きかけをやっております。これはやはり永田町の先生方も各選挙区があるわけでございますので、ぜひ後援会組織あるいはそういったもので皆さんに積極的にこういう問題について関心を持っていただき、もちろん声を聞いておられると思いますけれども、どうも現場に行ってみますと、中央で何か動いているけれども、下は全く関係ない。例えば、介護保険の問題でも医療保険の問題でも何かよそごとのような何といいますか、無関心さが見られるのは非常に残念でございます。このPRの方法も、やはり我が国、この日本社会というのは、もう一つ一般の声を聞き上げるというか、くみ上げるテクニックというものに欠けている点があるんじゃないか。  これは我々自身の反省も込めて、今後とも国会でもより多くの意見を、特に下から沸き上がってくる意見をどうしたらとれるかということについてぜひ御努力いただきたい、かように思っております。
  34. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 やはり、今後の抜本改革におきましては、これからいろいろな国民の声を聞きながら論議を進めていかなければならないと思うんです。  河北公述人にもう一度お伺いしたいんですけれども公述人医療の質を高めつつ、効率化を図ることによって抜本改革が行われるべきであるというふうに述べられたのではないかと思うんです。そういう効率化を図ることによって医療費の抑制にもつながってくるんではないかというふうに考えますが、そのような観点から抜本改革を目指すに当たって、一番重要視すべきキーポイントについて先生はどのように考えられますか。その点につきましてお教えいただければ幸いです。
  35. 河北博文

    公述人河北博文君) 私は、政府並びに地方自治体の役割は一体何であるかということを議論し、それを最小限にとどめるべきであるということ、それから医療提供体制においては、医療あるいは診療の標準化を進めるということが極めて大切であるというふうに思います。  それから、医療を受ける方たち権利だけを主張するのではなくて、自分たち医療の中での信頼関係を創造していく上での責任をどうとるかということをぜひお考えいただきたいと思います。
  36. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 終わります。
  37. 菅野壽

    菅野壽君 きょうは仙台それから大阪から、このお天気の悪いときに御足労いただきましてありがとうございました。  私は、これからちょっとお伺いしたいんですが、公述人の皆様方からいろんな陳述をいただきましたけれども、薬価負担の問題について皆様方が取り上げていらっしゃいます。  この薬価負担についてでございますが、衆議院で一部修正されてまいりました。この衆議院の一部修正と、それから政府案と、この両案について評価がございましたらひとつお聞かせ願いたい。皆様に一言だけお願いしたいと思います。
  38. 糸氏英吉

    公述人(糸氏英吉君) 多少は、政府原案から修正案に至るまでゼロ区分ができたということ、あるいは二百五円ルールができたというようなこと等につきましては評価しております。
  39. 河北博文

    公述人河北博文君) 私は両方に納得できません。ですから、私は薬価制度だけ別に取り扱うのではなくて、診療報酬体系の中に戻して、それで一律の負担の中に戻すということが私の意見でございます。
  40. 桝本純

    公述人桝本純君) いずれも薬剤費の一部負担ではなくて、薬剤に名をかりた追加負担という性格については変わりのないところと思っております。反対です。
  41. 高木安雄

    公述人(高木安雄君) 今、公述人の方から話がありましたが、どうして薬剤に着目して負担をつくったかというのを私なりに説明させていただきますと、日本診療報酬体系の話が出ましたけれども、すごい投薬と注射に偏った資源配分が行われている、それであえて薬剤負担をつくったと私は理解しているんです。そういう点では、全体の医療費を本則の中で応分の負担をするのが私は筋だと思います。  衆議院の修正についてもお聞きですのでお答えしますけれども、私は定率でいくべきだと思っています。
  42. 細川一真

    公述人(細川一真君) どちらも反対でございます。ただ、衆議院で修正されて参議院へ回ってきた案の方が、より矛盾を拡大したという点で反対でございます。
  43. 対馬忠明

    公述人(対馬忠明君) 私は審議会で審議された建議案、つまり定率方式が一番よろしいんじゃないかというふうに思っております。
  44. 北條順子

    公述人(北條順子君) 私は、もうこの法案自体に反対でございますが、政府案、修正案とも何かむちゃくちゃだと思います。
  45. 池澤康郎

    公述人(池澤康郎君) 私は、薬というものの性格について十分御理解いただいた上での政策提案でないような気がします。  つまり、入院患者については除いて、外来患者だけについてやるというような薬の問題については、そういうことがどうして考え方として出てくるんだろうと。どちらも共通して一律に定率化されたものの中に、医療費の中にまとめて含まれるべき性質のものであって、入院、外来の別はないというふうに考えます。
  46. 菅野壽

    菅野壽君 実は、この委員会で小児の薬剤負担が過重ではないかという論議が出ておるんですが、この点について糸氏公述人とそれから河北公述人にお伺いします。
  47. 糸氏英吉

    公述人(糸氏英吉君) 小児の場合は、老人とか一般の方とは違いまして短期的な投薬が非常に多いという、長期的投薬は比較的少ないという面から見まして、特に修正案は合わないということは確かだろうというふうに思っております。
  48. 河北博文

    公述人河北博文君) 二つ述べさせていただきます。  第一番目は、今の糸氏公述人と同じ点でございます。それから第二番目は、医療保険改革の中で少子・高齢化と言われる社会対応して、私は子供たちが健全に育つ社会というものに対応した子供の政策がとられるべきであるというふうに思います。
  49. 菅野壽

    菅野壽君 薬価基準見直しの具体的方策及び老人医療制度のあり方について、糸氏公述人河北公述人、それから桝本公述人と高木公述人にそれぞれお伺いします。
  50. 糸氏英吉

    公述人(糸氏英吉君) 老人保健制度の問題は、私は、本来は現在の介護保険とこれからの老人保健制度は一体的であるべきだというふうに思っております。  財源的にも、少なくとも老人保健制度をこれから変えていくとすれば、これは言いづらいことですけれども、やはり老人の方にもある程度保険料負担はしていただくということと、できたらその拠出金廃止して、そして残りは消費税なりあるいは国の税金国民全部で支え合うという姿勢から税で見るという考え方は、これは介護保険財源構想とほとんど一緒でございます。  ただ、将来的に考えますと、これからの我が国の経済状況は、私、専門家でございませんし、わかりませんけれども、もし今のような経済状態が続けば、これはとてもじゃない国が持ち切れないだろうと。また、将来ふえる分に対しては対応し切れないだろうということを考えますと、やはり自分が年をとったときのためにある程度蓄えていくという一つの考え方で、今後仮に拠出金廃止しますと、その拠出金の部分については将来にストックしてプール化していくというやり方が、ある程度は現実的な方法ではないかなというふうに考えております。そういう意味でのシミュレーションを今研究しているというところでございます。
  51. 河北博文

    公述人河北博文君) 保険の定義からまいりますと、高齢者の健康状態というものはその定義に合わない。保険は偶然性に対しての相互扶助でございますから、そういう意味では、私は高齢者を別の保障制度保障すべきであると。ただ、これは無責任に公費負担だけふやすということではない。ということは、給付にはある程度の制限はかけるべきであるだろうというふうに思います。ただ、その中で高齢者の応分の負担ということは当然であるというふうに思います。  さらに、選択性の社会保険制度というものが別途あって、そこに高齢者が入るか入らないか選択できる、かつ高齢者の所得、これは年金を含めて、それから日本医師会が提案されている積立保険制度あるいは不動産を含めたストックの流動化、そういったものを利用した制度ができるんではないかというふうに思っております。
  52. 桝本純

    公述人桝本純君) 先ほども要点だけ申し述べましたが、私どもの案は日本医師会が御提案の内容と真っ向からというわけでもないですが、与党で合意された基本方針の中で二つ併記された片方の方の案でございます。  非常に新奇なことを言っているように一部で受け取られているようでございますが、私どもは、むしろこれはかってあったように国民健康保険は自営業者の方々のためのもの、そして被用者保険はいわゆるサラリーマンのためのもの、年金の水準が一定の領域に達して退職者の人たちも所得を持っている、つまり扶養家族ではなくなった独立した被保険者である、こういう状態を前提にして、この制度のすみ分けをもう一度はっきりさせるべきだ、こういう考え方でございます。  先日のこの委員会で、老人保健福祉局長に対して同様の質問がされたようでございますが、その中での御質問に当たられた先生とそれから回答された老人保健福祉局長、両方のお話、簡単なメモですが拝見いたしました。雇用の流動化という事態に対して合わないのではないか、こういう御疑念があったようでございますが、その点についてちょっと補足させていただきます。  雇用の流動化というのは二つあります。一つはサラリーマンが会社をかわるという意味での流動化です。それからもう一つは、サラリーマンになったり自営業者になったりするという流動化です。  前者の問題につきましては、私どもの案は現役時代どこの会社にいたかに関係なく、サラリーマンであった者は終生サラリーマン保険にとどまる、こういうことでございますので、これは全く問題ございません。  それから、いわゆる脱サラ等のことが御念頭にあるんだと思いますが、脱サラというのは近年極めて不可能になってまいりました。むしろ、自営業者でやっていけなくなってサラリーマンになる方の方がどちらかといえば多い。こういう状況でございまして、被用者年金というのがかつて二十年間の被保険者期間で受給資格が発生したわけでございまして、それと同じように、いずれかの被用者保険に現役時代二十年なら二十年以上通算していたということでこれは被用者保険の方のOBに入ると、ここの目安さえきちんとすれば全く紛れがないだろう、こういうふうに考えております。  なお、本人負担に関しては、これは現役も退職者も同率の負担をすべきだし、その場合には保険料は年金をベースに払っていただく、こういうことになると思います。少なくとも、現在のように道一つ隔てただけで膨大な保険料の差があるというような国民健康保険のあり方そのものを抜本的に見直すこととあわせて、このような制度改革が必要だと考えています。  以上です。
  53. 高木安雄

    公述人(高木安雄君) 老人医療制度を新しくどうするかという御質問だと思いますので、お答えします。  私は、老人保健制度をどのように改革するかはまだはっきりした個人的な結論を持っておりません。ただ、重要なことは述べさせていただきたいと思いますが、どうして医療ばかり考えなきゃいけないのだ、ヘルスもあるじゃないか、福祉もあるじゃないか。さまざまな財・サービスがある中で、老人医療費無料化を先行させた結果、医療に偏重した老人サービスが私は日本では行われてしまったという反省を持っております。ですから、老人に対する総合的なサービス、政府によるサービス、社会保障によるサービスを考える場合、医療だけを考えても意味がない。  ただいま桝本公述人の方から年金を財源にしたお話が出ましたけれども、多分年金なり住宅なり総合的な人生の一番最後福祉の向上ということを考えるときに、私は医療だけを議論しても意味がないのではないかと思っております。それは老人医療費無料化という昭和四十八年の歴史的なものがまだ我々の足を引っ張っておりますけれども、次に検討するのであれば、そういう広い視点から考えないと、地域的な格差とか医療の問題とかについても、医療だけを議論しても私は満足は得られないのではないかと思っております。  以上です。
  54. 菅野壽

    菅野壽君 一言お伺いします。  今、高木先生から医療偏重のあれではだめだというお話がございました。そこで、桝本先生からいただいている資料の中で、「健康増進事業の拡充と「健康寿命」」というのがございますが、ちょっと一言つけ加えてほしいと思います。
  55. 桝本純

    公述人桝本純君) 要するに、健康で元気で働ける時間は延びず、健康ではなくなってから亡くなるまでの期間だけが延びているというのが日本の今の長寿化という内容であるとしたら余りにも寂しい話ではないかと。むしろ、健康寿命の方を長引かせるということが本人の人間的な尊厳にとっても、また日本社会の活力にとっても、そしてまた医療保険財政にとっても極めて根幹的なものではないかと、このことを強調したいわけであります。そのことからいえば、治療に偏重した医療ではなく、むしろ健康を守り健康をつくるということにより力点を置いた医療サービス提供されてしかるべきだ、このように考えます。  そしてまた、このことは単に医療機関だけの責任ではなく、例えば私ども労働組合であれば、労働が過重にならないように労働時間の短縮を実現する等々といった努力が、これは労使関係の中でございますが、必要になってくるでありましょう。  特に、かかりつけ医といいますか日常的にお世話になる身近なお医者様たちについては、ぜひとも健康相談、健康指導、こういった面での役割を果たしていただきますようにお願いしたいし、またそのようなお仕事がお仕事としてきちっと評価されるようなシステムが整備されるべきだろうというふうに考えています。
  56. 菅野壽

    菅野壽君 ありがとうございました。終わります。
  57. 今井澄

    今井澄君 公述人の皆様方、本日はどうも御苦労さまです。大変貴重な御意見を伺わせていただきました。  現在、私ども審議しておりますこの健康保険法等改正案、大変国民的な評判はよくないし、きょうもいろいろ御批判をいただきました。それは確かに自己負担だけふえて本当の抜本改革の姿がなかなか見えないということだろうと思いますが、しかし、それはそれなりに、私ども抜本改革の方向については衆議院でもやり参議院でもやってきているんですが、まことに残念なことに、マスコミはこういうのを報道してくれないんですよね。それですから、また逆に皆様方にもぜひ私ども議論もお伝えいただきたいと思うんですが、その際に、自己負担の問題なんですけれども、抜本改革を今後鋭意進めるということの中でも、私は自己負担の一定の増加というのはやむを得ないのではないかと思っているんです。  先ほど高木公述人の方からお話がありましたが、私も五年前まで医者をやっておりまして、かって老人医療の無料化、すべての医療は無料になるのが理想だと思っていたわけでありますが、先ほど高木公述人の御指摘にもあったように、老人医療の無料化というのは非常な弊害をもたらしたわけですし、今日の医療費の財政悪化の原因の一つをつくったわけですね。その点を反省しなければならないと私は今思っておりますが、先ほど糸公述人の方から、いずれにしても医療費財源をどうするのかということを決めてくれというお話があったと思います。要するに、医療費財源は公費、国費と地方の費用それから保険料自己負担と、この保険料と公費と自己負担が先ほど六対三対一、ほぼそんな割合というふうなお話がありました。  そこで、自己負担の比率というのはどのぐらいが現時点で適当だと考えておられるか、あるいは将来の方向はどうかということについて桝本公述人、高木公述人それから対馬公述人、三人にちょっとお伺いをしたいと思います。糸氏公述人は、これはむしろこれからの課題だとお話しになったと思いますが、よろしくお願いいたします。
  58. 桝本純

    公述人桝本純君) この保険料と公費負担そして自己負担、これのバランスそのものが重要だということは我々もつとに強調してまいったところであります。  ただ、このバランスという場合に、現在見せられている動きは、むしろこのバランスを悪い方向へ変えようとしているのではないか。例えば今回の改悪案、あえて改悪案と申し上げますが、この中で公費負担の適切な増加は全く盛り込まれていないばかりか、既に支払われているべきものの支払いがおくれている分についての措置も入っておりません。専ら引き上げられているのは患者自己負担であり、そして一部が保険料負担ということになります。  ということは、これは公費の負担比率を引き下げて病気になったときの本人の負担引き上げる、現在提出されている内容はせんじ詰めて言えばそういうことになるのではないか。これは明らかに間違った方向へのバランスシフトであるというふうに考えております。少なくとも、当面する問題については現在のバランスを大きく崩さないようにということがとりあえず出発点で議論されるべきだと思います。
  59. 高木安雄

    公述人(高木安雄君) 非常にお答えにくい質問だと思うんです。日本国民保険をとっておりますので、個々の患者にとっての負担の話と全体で国民保険としての負担の話、その調整だと思っております。  現在、国民医療費全体で見ますと、一二%ぐらいの負担率だと思いますが、私は、二割ぐらいまでは全体で、マクロで行ってもいいのではないかと思っております。  そのときに重要なことは、個人負担と全体、国民保険としての負担という議論は常に乖離しているんです。この辺をいろんな負担の仕組み、例えば高額療養費を使う、薬について着目する、給食について着目する、いろんな組み合わせだと思いますので、これからもっと検討していかなきゃいけない問題だと思っております。
  60. 対馬忠明

    公述人(対馬忠明君) 健保連で皆さんの医療についての不満ということで調査しますと、一番大きい不満は、御存じのとおり非常に待たされると、次いで診療内容を余り教えてくれないということでございまして、医療費が高いという人は十数番目なんですね。ほとんど出てこない。そういうような現状なんです。  我々健保組合の立場から言いますと、医療費で非常に苦労しているけれども、現実の患者さん一人一人は医療費が高くて困っているという声は非常に少ない。それがいざこういった場になりますと、改悪だというような話もちょっと一部ありましたけれども、皆さんやっぱり取られるのは嫌なんですね。それで反対、それはよくわかるんですけれども、一方ではそういった事実もあるということもひとつ先生方、頭の隅に入れていただければ大変よろしいんじゃないかなというふうに思います。  それで負担ですけれども、今足元で、今回自己負担二割ということですが、これは老人負担を含めて二割、そして特に低所得者の方とかそういった方については、もちろんそれなりの負担軽減制度、これは設けなくちゃなりませんけれども、二割ということではないかなというふうに思います。  それから、将来的に言いますと、やはり保険でございますので、これが四割、五割ということになりますと、保険料を納めてさらに実際かかったときに四割、五割かということがありますので、私としてはやはり三割ぐらいが限度なのではないかな、こういうふうに思っております。
  61. 今井澄

    今井澄君 前回のこの健保法の改正、昭和五十九年ごろの論議では、老人を除いて二割負担ということがほぼ何か世論的には一致していたように思います。したがって、例えば国保の三割負担というのは引き上げるべきだというふうなことだったと思いますが、今情勢は変わってきたのかもしれません。  そこで、老人の負担について引き続きちょっとお尋ねしたいと思うんですが、実は私ども審議の中でこういう数字が厚生省から明らかにされました。  薬剤費も含めてですが、老人の外来の現在の負担率は四・四%、それが今回の修正案ですけれども、八・九%になると。一方入院は、現在の老人の自己負担比率が六・六%、それが今回の修正案は一日千円ということですが、これで七・九%。それが千百円、千二百円となると八%台に上がっていくわけであります。こういうことを含めて、特に老人の負担は、もう一つ医療保険審議会の昨年十一月の建議では、老人一割ということが出ているわけです。  今度の自己負担中心とする改正案は、確かに先ほど申し上げましたように非常に評判が悪い。その理由はいろいろあるわけでありまずけれども、しかし外来にしても一割までは行っていないわけです。老人が、低所得者は別としまして、一割程度負担すること、今回の修正案ではその一割も行っていないし、入院は特に八%にも達していないということについて大変御反対も多いわけですが、例えば桝本公述人それから細川公述人、ちょっとお二人に、それでもやっぱりこの負担というのは好ましくないかどうかお尋ねしたいんですけれども
  62. 桝本純

    公述人桝本純君) 先ほど申し上げましたように、改革の前に現行制度のままで増加していく費用の膨張、これを穴埋めするという性質の負担であることに私たちは反対しているのであって、負担の増加について一般的に、出す物はべろも出したくないなどと申し上げたことは一度もございません。  将来の負担のあり方につきまして、私どもは、高齢者方々につきましても現状の構造の中で見れば定率の負担をお願いするのが筋目としては妥当かなというふうに考えております。  私どもの、現在の老人保健制度廃止してそれにかわって導入することを提案している制度は、当然のことながらそれを想定しております。その想定している、現在まで念頭に置いてきたのは、現役も高齢者も一割ということでございます。  高齢者の一割についてはいろいろな理由がございますが、何よりもまずありますのは、老人保健制度負担割合が一割ということになっております。これで医療とのこの負担が合わないという場合に、介護保険というのは医療という分野から介護という分野に移すというテーマで、実際その方がコストが安いはずですが、コストの安い方に移った方が自己負担が高いなどというのは完全に制度的な矛盾ではないでしょうか。そのことを念頭に置いておりましたし、それからもう一つは、現役は現在までの一割を守ってほしい。これは二割払えないという意味ではありません。  二割の問題について付言いたしますと、先生御指摘のように、前回の五十九年の改正のときに健康保険の本則が八割になりました。その場合に念頭に置かれていたのは、現在扶養家族三割それから市町村国保の御本人も三割、これらを含めて将来における八割統一ということを念頭に置いた改正でございました。これをほかのグループは放置しておいて被用者本人だけ八割に上げてしまう、こういった内容については全く場当たり主義だというふうにしか申し上げようがない。  以上でございます。
  63. 細川一真

    公述人(細川一真君) 老人の収入がどれぐらいあるかということにつきましてはいろんな資料がございますけれども、私たちが最近利用しましたのは、例えば大阪の生命保険会社が最近、都市における老人家庭の収入を計算したものによりますと、二十万円以下が約半数ございました。老人というのは、資産は持っていてもそれがすぐ現金にならない。ですから、使える現金は非常に少ないのが現状でございますから、老人の負担を重くするということについては、なるべく慎重な配慮をしていただきたいと思います。  それからもう一つ国民医療費をどれぐらいにするかということについての国民合意が、今はまだなされていないわけですね。  例えば、GDPに対する国民医療費の割合を欧米諸国といろいろ比較した数字がございますが、日本高齢化欧米諸国よりも若干低うございますけれども、まだはるかに低い値を示している。ですから、国民合意で大体GDPの何%ぐらいを医療費に使うのかというあたりを、やはり国会を中心にして合意していただいて、その中で老人のところにどれぐらいの負担を求めるかということを決めていく必要があるだろう。ただ漠然と、何%負担したらいいかというのは非常に難しい御質問だと思います。
  64. 今井澄

    今井澄君 もう時間がないのでやめます。どうもありがとうございました。
  65. 西山登紀子

    西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。  きょうは、公述人の皆さんにはお忙しいところ貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。ただ、時間の関係ですべての皆さんにお聞きすることができませんので、どうかお許しをいただきたいと思います。  私たちは、今回の改正につきましては、医療保険財政のいわゆる赤字の主要な原因、私は二つあると考えておりますが、高過ぎる薬価の問題それから国庫負担を削減してつくった赤字、この二つの問題にメスを入れないで国民負担だけを押しつける、こういう点で非常に道理のないものだというふうに考えているわけです。その点で、実は大阪保険医協会の調査というのは私たちも質問にたびたび取り上げさせていただきました。国際的に見て高過ぎる薬価、特に新薬シフト、このことにメスを入れるならば二、三兆円浮くんじゃないかということで論議を進めてまいりましたが、その根拠となる非常に科学的で専門的な資料をいただいたというふうに思っております。  そこで、細川先生にお伺いをしたいわけですけれども、先生がお述べいただいたことにつけ加えましてさらにお述べいただけることがございましたらば、その点をお伺いいたしたいと思います。
  66. 細川一真

    公述人(細川一真君) 私の資料の三ページを御参照いただきたいと思うんですが、薬価が高いと申しましてもすべての薬について一律に高いということではございません。私たちは、六十二品目の国際比較をいたしました薬価につきまして四つのグループに分けました。  一つは、効果の確立した旧薬であります。もう一つは、抗生物質と抗菌剤であります。この二つは国際的に見ても決して高くはないわけであります。  それから、三つ目の薬としては、問題になる薬があります。  これはそこの資料にございますように、時間の関係で一つだけ御説明いたしますが、ターフェナジンという薬があります。商品名はトリルダンということで売っておりますけれども、これは抗ヒスタミン剤でございます。イギリスに比べて十一倍高いわけであります。イギリスあるいはフランス、ドイツでは抗ヒスタミン剤として位置づけて売っております。ところが日本の場合は、抗ヒスタミン剤の効果のほかにアレルギー抑制剤という新しい効果をつけ加えて値段を高くしているわけであります。こういうところに問題があるだろうと。  それから、その次にdの新薬というのがございます。イントロンAというインターフェロンがございます。これはやはり諸外国に比べて明らかに高いわけであります。インターフェロンというのはもともと抗がん剤として発売されました。その後、C型肝炎、慢性肝炎に効くとして、効果、効能の範囲を拡大したわけであります。抗がん剤として認可したときは、非常に流通量が少ないだろうということで高い値段がつけられているわけですが、それがその後そのまま残っているということであります。  ですから、私たちが問題にしたいのは、Cの問題薬とdの新薬を洗っていただいて、ここに手を入れていただければ相当量の医療保険財政の節約ができるのじゃないだろうかということを提案しているわけでございます。  それからもう一つは、じゃ、どこに問題があるか、今どこを改良すればいいんだという問題になるわけですが、新薬の審査の過程と、それから価格のつけ方に問題があるだろうと。しかも、その情報は一切公開されておりませんから、私たちはチェックができないわけでございます。ですから、そこに手を入れていかないと高薬価の問題は解決できないだろうというふうに考えております。  薬害HIVの問題なんかからも考えますと、お役人が製薬会社に天下りされる、製薬会社は政党や政治家に献金をされる。そういう問題も含めて、やはり構造的な問題が薬価を決める場合にも働いているのではないだろうかというふうに疑うわけでございます。この辺は全くフェアにやっていただく必要があるだろうと、そういうことを感じました。
  67. 西山登紀子

    西山登紀子君 ありがとうございました。  先生の陳述の中で、新薬の薬価が高いということとあわせまして安全性の問題に触れていらっしゃるわけです。  実は私、昨日のこの厚生委員会の質疑の中で、この医薬品・治療研究会が行いました九四年の承認新薬の分析の結果について、非常にこれは問題があるというふうな評価をされていることにつきまして質問で取り上げたわけです。それに関しまして厚生省の業務局長は、有用性がないということの評価だけれども、私どもとしましては、逐一について確認しましてそのような御指摘は適当ではないと理解をしているというような御答弁を昨日いただいたばかりでございますが、これにつきまして先生のお考えをお伺いしたいと思います。
  68. 細川一真

    公述人(細川一真君) 業務局長の、有用性はないとの評価ですけれども、私どもといたしましては、その逐一について確認しましてというふうにおっしゃっているんですが、どなたがどういうところで逐一に確認されたかということが問題だろうというふうに私は思います。  といいますのは、私たちが共同研究をしております医薬品・治療研究会と申しますのは、これは大体中堅の専門家、臨床薬理であるとかあるいは薬剤疫学の医師の専門家あるいは薬剤師さんあたりが、非常に良心的な方々ですが、この方々が医薬品の適正使用を推進しましょうという目的で情報誌を出しているわけです。そういう団体でございます。これは国際的にもいろいろ連携を持っていらっしゃいまして、国際的な評価には非常に詳しい団体、しかも非常に実力のあるグループでして、日本では恐らくファーストクラスの医薬品専門グループであろうというふうに私は評価しております。  医薬品の分析・評価と申しますのは、普通の医師ではなかなかできません。これは相当高度の知識を持った専門性の高い医師薬剤師が、この問題に集団で取り組まないとなかなか難しい問題でございます。そういう意味で、医薬品・治療研究会のグループがメーカーからいろんな資料を取り寄せまして、それを集団で討議をしながら評価をしているわけですけれども、私たちは、この作業に全幅の信頼を寄せているわけであります。ですから、業務局長がおっしゃるように、どこでどういうふうにして確認したかということが明らかになりませんと、この業務局長の御答弁というのは、私は信用しかねるわけでございます。  数年前にソリブジン事件というのがございました。これは中央薬事審議会を通ったソリブジンという薬が副作用を起こして、死亡者が何人も出て問題になった事件でございます。そういう意味では、中央薬事審議会の審議が万全ではなかったということをはしなくも露呈した事件であります。この辺も含めて洗い直しをしていきませんと、医薬品の有用性の評価については、そういうことがあったとかなかったとかいう結論は難しいだろうと。  ですから、私は、この問題については全国民に対してやはりフェアでなければいけない。そういう意味で、これは公開で堂々と議論なさればいいというふうに思っております。
  69. 西山登紀子

    西山登紀子君 政官財の癒着の問題につきましては、昨年当委員会でも薬害エイズの問題で非常に熱心に論議をしたところでございますので、私もぜひ公開論争でそういう問題について厚生省の責任を明らかにしていただきたいというふうに思っております。  さらに、北條さんにお伺いしたいんですけれども、きょうは女性の公述人はお一人なわけですが、私は実は、今度の改正案で非常に心配しておりますのは、先ほどもお話がありましたけれども、受診回数が頻繁になります小児の診療で非常に受診抑制が起こったり、治療の中断が起こったりするんじゃないかと大変心配しております。北條さんの方にそういうお声が寄せられておりましたら、御紹介をいただきたいと思います。
  70. 北條順子

    公述人(北條順子君) 私の近くにお住まいの、お子さんが三人いらっしゃるお母さんの場合を申し上げます。  一番小さいお子さんが三年生ですけれども、アトピーとぜんそくで病院通いが絶えません。その方の場合、平常二週間置きに五種類のアトピー対策のお薬を常用しておりますけれども、そのほかに、急にぜんそくが出ますと、もう夜中でもタクシーを呼んで病院に駆けつけなければならず、そういうときにはタクシー代が三千円ぐらいと治療費が三千円ぐらい。それに吸入器などを入れますと、給料前でも一万円だけは常時置いておかなければいけないとお母さんが言っておられます。こういう病気はもう待ったなしですから、治療の抑制とかそういうことではなく、本当に治療代が高くなったからといってとめておくわけにいかないわけです。この医療の改悪は絶対やめてほしいとお母さんが言っておられました。  それに小児科ですと、先ほども出ておりましたが、最初は二日ぐらいお薬を下さいますよね。そして様子を見て、またその次にお薬をかえていくというのが普通ですから、何回か病院に行くわけですけれども、修正案では病院に行く回数がふえればふえるほど親の負担が加算されます。ですので、本当にこういうことは反対でございます。  私ども、この医療の問題だけじゃなくてトータルで生活を見ていくものですから、今少子家庭と言っておられますけれども社会的に子供が育てやすいような社会にしていただかないと、教育費もそれから食費にも消費税がかかってきますし、本当に子供を育てにくくしているんではないでしょうか。そういうところもトータルに御検討いただきたいというふうに思います。
  71. 西山登紀子

    西山登紀子君 最後に、日本医師会の糸氏先生にお伺いをしたいと思います。  先ほど先生が、薬の別途負担というのは恥すべき改革だというふうにおっしゃられました。これは私も、同じように問題視しておりまして質問もさせていただいております。この薬の別途負担というのは、実は重ねもち、二重負担だということはもちろん厚生省も認めているわけですが、その二重負担の部分が非常に大きくなって薬の払い過ぎが起こるということについては、制度に内在する矛盾だということも局長の答弁で認めておられるわけです。  先ほど恥すべき改革だとおっしゃいましたけれども、私は、お医者さんの先生方がそういうふうにおっしゃるということで大変不安に思っております。実際、医療の現場でこういうことがもし強行されたら何が起こるでしょうか。
  72. 糸氏英吉

    公述人(糸氏英吉君) 一番憂えることは、医師患者信頼関係の喪失でございます。  やはり、こういうことを患者さんに一々説明しなくちゃいけないわけですから、隣の人が余計薬をもらって負担なしで、逆にこっちは二種類しかもらっていないのに負担があるということが現実に起こってまいります。そうした場合に、患者さんにそれを適切に説明していかなくちゃいけない。そういう事務量のふえることもあるし、またそのことによって、ここの診療所あるいは病院は計算が間違っているんじゃないかというような不信感も起こりますし、またそういうごたごたのために待ち時間も一方では膨大なものになっていくと。今でさえ三時間待ちの三分というようなことが起こっているんです。恐らくこの制度ができれは、皆さんもっと待っていただかなくちゃいけないというふうなことが起こってくる可能性もあります。  そういういろいろの面もさることながら、やはりこういう恥すべき制度は、時限立法で早々になくすることに先生方ぜひ御努力願いたいというふうに私は思っています。そのための抜本改革についての協力は幾らでも私たちは惜しみなくやりますけれども、やはり国民の犠牲を強いるような、あるいは国民医師との信頼関係をぶち壊すようなこういう悪い制度は早々に改めてほしい。そのための抜本改正というものをやりながら、できるだけ早い間にこういう矛盾の制度というものはなくするような形に、できれば時限立法的な、いつまでというようなことを設けていただいた方がむしろいいんじゃないかなというふうにさえ思っておるわけでございます。
  73. 小山峰男

    小山峰男君 太陽党の小山峰男でございます。  皆様方には大変お忙しいところをきょうはありがとうございます。それぞれの先生方からいろいろの御質問があったわけでございますが、若干私も、ダブるかもわかりませんが質問をさせていただきたいと思います。  基本的に法律の改正というようなものにつきましては、やはり抜本改正というものを目指してその一歩というような形で行われるのがしかるべきだと。少なくとも、少し先取りをするというような形で改正が行われなければならないというふうに思っておるわけでございます。  政府の言い方ではございませんが、今医療保険の財政が大変苦しい中で、緊急避難的に改正をせざるを得ないというような理屈をつけているわけでございます。例えば、その理屈もやむを得ないというふうに是認をした場合に、先ほど医療費につきまして、特に薬の問題につきまして定率で将来的にいくべきだというお話をいただいた高木先生、対馬先生それから池澤先生に、将来の方向として定率でいくべきだということにつきまして、もう一度ちょっとお答えいただきたいと思います。
  74. 高木安雄

    公述人(高木安雄君) 定率がどうして必要かということにつきましては、まず全体のコストがわかる。それと資源節約的な行動を誘発する負担のかけ方を考えますと、これからの高齢化社会財源制約が非常に大きくなるときに、できれば資源節約的に患者さんもお医者さんもサービス交換をするような方法として、私は定率でいくべきだと思っております。
  75. 対馬忠明

    公述人(対馬忠明君) 今回薬ということは、結局、医療提供側のこともありますけれども患者さんの方が結果的に多くの薬は使わなくなるんじゃないかということで、患者さんの意識に訴えていくという面が非常に強いんだろう、こう思うんです。  そうしたときに、今高木先生も言われましたけれども、本人のコスト意識、そこが明確にならないと、薬を過剰に使っていくということには余り効き目がないんじゃないかなというのが一点。あともう一点、一点十五円にしても二、三種類四百円云々ということにしましても、非常にわかりにくいと思うんです。その二つから、私はやっぱり本来定率制が望ましいんじゃないかと、こう思うんです。  ただ、私ども立場としては、この薬の問題があるのでこの法案に反対だということではなくて、いろんな問題はありますけれども、ぜひ今回御努力いただいてお通しいただきたいというのが私ども立場でございます。
  76. 池澤康郎

    公述人(池澤康郎君) 先ほど河北公述人がおっしゃいましたけれども日本の今の保険制度というのは、保険制度なのかそれとも保障制度なのか、その辺が混然一体となって混ざり合っているという部分があるわけです。しかし、いずれにしても、出来高払いでもってやっていくというシステムが今までのやり方の主要な点だったわけです。  そういった中では、病院医療者側もそれから患者の側も、どの程度が一体十分なコストなのか、適切なコストなのかということについての判断がまだ確立していない。したがって、最近になって包括医療がいろいろな成人の急性疾患なんかについても検討されるようになっておりますけれども、そういうスタンダードが将来できていくというその礎になるんじゃないかという意味におきましても、この医療費について十分相互に意識できるような意味で、定率負担ということで薬も含めるということが大切だろうと。  と申しますのは、入院の治療の場合に、特に内科の治療というのは主として薬による治療なわけです、治療行為というのは。それを外来と入院とでもって区別するという考えが、そもそも不合理であるというふうに思うからです。  以上です。
  77. 小山峰男

    小山峰男君 糸氏先生にお聞きしたいわけですが、先ほどもこの改革、大変恥すべきようなお話があったわけでございまして、期限をつけて改正をすべきであるというお話でございます。  確かに、政府案に対しまして改正案がまた何か複雑になってしまった。あるいは十年では千円、それから十一年では千百円、十二年では千二百円というような、もう十二年の分まで含めてしまった修正案になっているというようなことで、大変修正案そのものについても問題があるというふうに思っております。少なくとも、緊急避難でやるなら期限をつける時限立法にして、政府・与党も全面改正、抜本改正に向けて八月末までに方向づけをするというようなお話もあるわけでして、そういう意味では、それを待って抜本的な改正をしていくべきだというふうに思っております。  それで糸氏先生、どんな形のものに方向づけていくのがいいかということにつきまして御意見がありましたら、よろしくお願いしたいと思います。
  78. 糸氏英吉

    公述人(糸氏英吉君) ちょっとお尋ねしますけれども、何をどういう形にというのは……。
  79. 小山峰男

    小山峰男君 この医療保険につきまして、いろいろの部分で方向が言われたりしておるわけでして、この抜本改正に向けてどういうような方向づけをすべきか、そういうことでございます。
  80. 糸氏英吉

    公述人(糸氏英吉君) いずれにいたしましても、制度が将来どう変わろうとも、これからの情報化社会の中で国民医療保健福祉というものに望むものは何かといえば、やはりよりよい医療自分も受けたい、貧富の差なく皆さん受けたいという希望が第一であろう。それと、そういう医療を何の障害もなしに、今の国民保険制度のようにアクセスが余り妨げられない医療の日常化と申しますか、そういうアクセスのよさと医療の質、この二つはやはりこれからますます国民のニーズとしては高まってくるだろうと。  それに対して、今の制度がどうこれから対応していくかということがやっぱり問題です。その対応のベースになるのは、やはり何といってもそれを賄う財源でございます。  そこで、私も先ほど申しましたように、医療提供する体制あるいは医療保険制度診療報酬体系あるいは薬の問題、いろいろ大きな問題はございますけれども、これらをやはり総合的に駆使しながら体制の変換を図っていかなくちゃいけないだろう。かといって、これはことしの九月までにすぐにばっぱっとできるものではとてもございません。  したがって、とりあえずは何に重点を置いて財源を生み出すかということをまず図った上で、少なくともその財源的なベースの上で三年なりあるいは五年かかるかもわかりませんが、できるだけ早く、三年なら三年というリミットをつけてその間に新しい方向をつけていく、ランディングしていくという方向を何とか見つけなくちゃ、その方法を皆さんで考えていただかなくちゃいけないんじゃないかというふうに思っております。  先ほど、私、乱暴なことを申しましたが、これは決して日本医師会意見ではございませんけれども、私個人意見として先ほど最終的に申しましたように、例えば思い切って薬価を一律一〇%カットするというようなことをすれば約八千億浮くわけですね。こういうようなことをある程度思い切ってやるとか、あるいは薬剤の部分だけについてある程度給付というものを二割を三割にするとかいうような方法でもして、当面抜本改革実現するまでの間、三年間なら三年間の間何とか今の医療費財源確保していかないと、昨今の財政構造改革が言っていますように、自然増すら五千五百億をもっと抑えると言っているわけですね。  そうしますと、来年度の診療報酬改定なんて全くお先真っ暗ですよね。医療従事者のベースアップなんてとてもじゃない、できないわけです。こういうことでは、我々もとてもやっていけない。生々しいどろどろした話でございますけれども、現実にこの財源を何とかバランスをとっていかなくては抜本改革実現しないということでございますので、その点先生方の格別の御理解を賜って、国民が安心してよい医療を受けられるようにひとつお願いしたいというふうに考えております。
  81. 小山峰男

    小山峰男君 対馬先生にお願いしますが、本日の公述人の中で、この改正案の早期成立をということをおっしゃっておられるわけでございますが、その辺の考え方について簡単にお願いしたいと思います。
  82. 対馬忠明

    公述人(対馬忠明君) 早期成立ということでございますけれども、今回抜本改革が余り含まれていないということが確かに言われておりますけれども一つ二つやっぱり足がかりになるものが入っているんじゃないかと私は思うんですね。  一つは、やはり薬の問題に手がついたということが一点。  もう一つは、若い人と老人の負担割合、まだまだ不十分ですけれども、老人が八・数%ぐらい負担するようになってきたということは、構造改革の方向に沿っているんじゃないかなというふうに思うのが一つでございます。  それからもう一点は、いかなる構造改革をやっても今回の改正案程度のものは絶対的に必要である。その中に包含されてくるということではないのかなということでございますので、今回ぜひやっていただきたいということが一点あります。  それからもう一点は、やはり先ほど来申し上げている財政状況の問題でございます。これはただ単に政府管掌保険の問題だけではなくて、先ほど来申し上げていますように鉄鋼、造船、重機、そういった世界との競争の第一線に立っている私ども健保組合、これはいずれも大赤字になっているわけでございます。これらを放置しておきますと、料率がどんどん上がっていきまして、これがまたまさしく世界一高い賃金と言われていますけれども、それに輪をかけて社会保険負担、こうなってまいりますので、もうきょうあす待てない、直ちにやっていただきたい、こういう状況にあるわけでございます。
  83. 小山峰男

    小山峰男君 どうもそれぞれありがとうございました。終わります。
  84. 上山和人

    委員長上山和人君) これにて公述人に対する質疑は終わりました。  この際、公述人方々に一言お礼を申し上げます。  皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。拝聴いたしました御意見は、本委員会の審査に十分反映してまいりたいと存じます。委員会を代表いたしまして心から厚く御礼を申し上げます。  これをもって公聴会を散会いたします。    午後三時五十七分散会