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1997-06-03 第140回国会 参議院 厚生委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月三日(火曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  六月二日     辞任         補欠選任      水島  裕君     加藤 修一君   出席者は左のとおり。     委員長         上山 和人君     理 事                 尾辻 秀久君                 佐藤 静雄君                 和田 洋子君                 菅野  壽君     委 員                 大島 慶久君                 塩崎 恭久君                 田浦  直君                 中島 眞人君                 長峯  基君                 南野知惠子君                 宮崎 秀樹君                 加藤 修一君                 木暮 山人君                 山本  保君                 渡辺 孝男君                 今井  澄君                 西山登紀子君                 釘宮  磐君    国務大臣        厚 生 大 臣  小泉純一郎君    政府委員        厚生大臣官房総        務審議官     中西 明典君        厚生省健康政策        局長       谷  修一君        厚生省保健医療        局長       小林 秀資君        厚生省生活衛生        局長       小野 昭雄君        厚生省薬務局長  丸山 晴男君        厚生省社会・援        護局長      亀田 克彦君        厚生省老人保健        福祉局長     羽毛田信吾君        厚生省保険局長  高木 俊明君        社会保険庁運営        部長       真野  章君    事務局側        常任委員会専門        員        大貫 延朗君    説明員        会計検査院事務        総局第二局厚生        検査第二課長   河戸 光彦君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 上山和人

    委員長上山和人君) ただいまから厚生委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二日、水島裕君が委員を辞任され、その補欠として加藤修一君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 上山和人

    委員長上山和人君) 健康保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 南野知惠子

    南野知惠子君 おはようございます。自由民主党の南野知惠子でございます。  医療保険法に対する一部の改正案につきましては、いろいろな方から問題点が提起されておりますので、重複をなるべく避けたいというふうに思っております。  まず初めにお尋ねしたいことでございますが、医療不正の監視体制の見直しという件についてお願いしたいんです。  医師看護スタッフ大量水増し報告看護料など診療報酬不正取得が発覚した、これはたまたま大阪のある病院のことでございますが、ここにとどまっていないと思います。数年前から内部告発が再三あったにもかかわらず、行政当局が全くチェックできなかった。こうした不祥事が繰り返して行われておりますが、そういうことがないためにも全国的にスタッフ水増し診療報酬不正請求実態を徹底的に解明していただきたいと思っております。  また、保険医療機関指定取り消しなどがあれば、入院中の患者さんは転院など、路頭に迷うことにもなりかねません。また、そこで働いている真摯な看護スタッフ路頭に迷うということでございますが、このたびの改正に当たりましても、このような不正が後を絶たない現実、これは国民理解してもらいにくいというふうに思うのですが、厚生省の対応はいかがでしょうか、お伺いいたします。
  5. 谷修一

    政府委員谷修一君) 今お触れになりました大阪病院の件につきましては、昨年の暮れから大阪府並びに大阪市が立入調査医療監視を行いました。しかしながら、必ずしもそれだけで実態が把握できなかったということから、そこに働いておられるとされる職員医師並びに看護婦について個別の面接調査あるいは文書による照会等を行いました。なお、この間数回にわたる立ち入りを行っておりますが、厚生省からも担当職員を派遣したところでございます。  その結果、先般、五月二十四日だったと思いますが、中間的な報告として、三つ病院についてそれぞれ数十名単位での職員の不足といいますか、あるいは架空といいますか、そういうことが判明したということでございます。既に私ども大阪府を通じまして、現在入院されている患者さんの転院ということについて地元の病院団体あるいは医師会の協力を得て進めるよう指示をいたしております。  また、現在この三つ病院については医療保険の方での監査ということに着手をしているところでございますが、今お触れになりましたように、医療監視体制、特に職員の数の把握ということにつきましては、こういつたようなことを踏まえまして、ことしの四月に改めて各県に、職員確認ということにつきましては単に現場での確認ということだけじゃなしに、現場での確認の際には例えば給与明細書あるいは社会保険料支払い状況、あるいは勤務台帳等々を調べた上で確認をする、また同一法人の中で医療機関幾つかある場合にはそれぞれの医療機関について同じ日に調査をするといったような指示もいたしているところでございます。  なお、最後の方に申されました現在入院中の患者さんの転院という問題については、先ほど申したようなことで、現在できるだけ大阪府並びに大阪市を通じて転院の促進ということで指導をしているところでございます。  今回の事件というのは、非常にある意味では他に例を見ないような事例だという認識はしておりますが、今後ともそういった不正あるいは架空といったようなことがないように各県を通じて医療監視をしっかりやるように指示をしてまいりたいと考えております。
  6. 南野知惠子

    南野知惠子君 ぜひお願いしたいと思います。国民にわかる医療厚生省でやってほしい、理解される厚生省であってほしいと願っております。  次はこのたびの件でございますけれども、今回の改正案では老人医療費の一部負担定額制となりました。  定額制定率制メリットデメリットについてそれぞれお伺いいたします。
  7. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 老人の一部負担についてのお尋ねでございます。  御案内のとおり、今回の御提案を申し上げております内容では、老人につきましては定額を維持するという考え方に立っておりますけれども、そうした中で受益に応じた負担というような面である種の工夫をしながら今回の御提案を申し上げているわけであります。  先生、今お尋ね定率制あるいは定額制、それぞれについてのメリットデメリットということでございます。  まず、定率制でございますけれども、このメリットとしていえば、やはり受益に応じまして負担が求められるということですから、いわゆる受益に応じた負担公平化という点ではすぐれておる。また、言われておりますように、受益に応じましてその負担がされるということからくるいわゆるコスト意識というようなものが喚起されやすいといったようなことがメリットとして挙げられております。  一方、定額制でございますけれども、これにつきましては、メリットとしていえば、サービス利用がある程度多額に上るという場合にも負担額には一定の歯どめがかかるということで、そういう意味ではその負担のしやすさというような点についてのメリットが言われております。  一方、デメリットということでいえば、その裏返しになるわけでありますけれども定率制につきましてのデメリットサービス利用多額になる場合には負担がそれにつれて大きくなってくるというようなことでございまして、こういつたことを典型的に定率制定額制かというだけではなくて、今回の提案でも定額制をとりながら受益に応じた負担という意味でのある種の工夫をいたしております。例えば定率制をとりましても、今言ったような欠点を補うという意味で、いわゆる高額療養費といった形で定率制をとりつつ余りに過大な負担にならないような配慮というものはその中に組み込むというような仕掛けは当然考えられるわけでございます。  それから、定額制につきましてのデメリットといえば、やはり受益に応じた負担というような点がきかないということになりますから、そういった意味での負担公平化ということについて不十分になりがちであるということですし、そのことの結果としてコスト意識というものが働きにくいというようなことが一般的に言われている両制度メリットデメリットかと思います。  したがいまして、現実制度はそうした間の中でそこらを補い合うような工夫というものをしているというのが現実であろうかというふうに思います。
  8. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございました。  十分御勘案されたいわゆるベストミックスなんだろうというふうに思いますが、今回の改正後の推移をモニターなさるとともに、またもし不都合がある場合には速やかに改善を図るお考えはあるのでしょうか。また、将来的には老人医療費定率制視野に入れて検討する必要があるのではないかと思いますが、大臣の御見解はいかがでございましょうか。
  9. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 制度にはそれぞれ一長一短あると思います。今のお話定額制にしても定率制にしても、どちらにもそれぞれの理由があると思いますが、今後抜本改革を進める上において若い世代高齢者世代、そして給付負担の均衡、さらには介護保険制度との整合性等いろいろ考えまして定率制をとるべきだという意見もあります。いろんな意見を聞きながら、できるだけ説明のしやすい、国民理解が得られるような案を考えていきたい、その中には定率制検討すべきだという意見も十分勘案して今後の総合的な改革案に取り組んでみたいと思います。
  10. 南野知惠子

    南野知惠子君 よろしくお願いしたいところでございます。  今は、少子高齢社会を支えるために、単に所得だけでとらえるのではなく、さらに資産も含めた総合的な観点から世代間及び世代内での給付負担の公平を論じる必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  11. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まさにこれからの時代を考えましたときに、非常に経済の状況というものはこれまでのような高い成長を望めないというような中で、とりわけ少子高齢社会ということでありますから、これまで以上にやはり社会連帯として支えていきます国民保険制度、この運営あるいは制度仕組みにおいては給付負担の公平、それからまた負担面においてもその公平、それからまた世代間における負担給付の公平、こういった点がより一層重要になってまいると思います。  そういった点を踏まえまして、私ども医療保険制度の抜本的な案というものを考える際には十分その辺を反映できるような仕組みというのを考えていきたいというふうに考えております。
  12. 南野知惠子

    南野知惠子君 次の質問でございますが、CNS、多分御存じだと思います。クリニカル・ナース・スペシャリストと呼ぶわけなんですけれども、高度な看護を提供する看護職を病棟を超えて働けるように配置し、患者に対するケアや他の看護婦のコンサルテーションなどを行わせることによって患者の深い満足感在院日数短縮化を図っている病院があると聞いております。  このような配置を今後も促進していく必要があると私は考えるのでございますが、厚生省は現在このような状況をどのように把握しておられるのでしょうか。また、今後どのようにこういう制度を普及していくおつもりがあるのか、お伺いしたいと思います。
  13. 谷修一

    政府委員谷修一君) 今お触れになりましたCNSクリニカル・ナース・スペシャリストというのは、アメリカにおいて大学院修士課程を修了して、かつ専門看護知識を持つ、またその条件としては、今、先生お触れになりましたような、単に高度の専門知識を持っているということだけではなくて、相談とかいろんな幅広い分野に活躍できる能力がある、そういう方を言っているというふうに理解をしております。こういう方を配置することによって在院日数短縮、あるいは退院支援ということが実現をされているという報告があることは承知をしております。  我が国におきましては、まだそういったCNSというものそのものがあるわけではございませんが、既に日本看護協会におきまして専門看護師制度というものが設けられております。看護協会が認定をされましたのはまだ数名でございますけれども、これは今後恐らくふえていくのではないかというふうに考えております。  また、看護職の教育という点につきましては、大学院課程というのが平成三年の五課程から現在は十四課程ということで三倍近い数になってきております。また、現在設置検討されている大学院あるいは看護大学というものもあるというふうに承知をしておりますので、そういう意味看護職におきましても専門的な知識を持った、あるいは高度の技術を持った看護職員が今後ふえてくる、またそれに応じてそういう職員確保ということが重要になってくるというふうに認識をしております。
  14. 南野知惠子

    南野知惠子君 これは昨年九月の「週刊 社会保障」という雑誌でございますが、この記事で紹介されておりました。アメリカにおいては、看護職員配置が多い病院では在院日数が短く、さらに看護婦の比率が高い病院ほど在院日数が短いということが明らかになってきております。日本におきましても同様の研究結果が「厚生科学研究」、これも雑誌ですが、の中からも出始めております。  このように、看護充実平均在院日数を短くし、患者負担を軽減し、さらに医療費抑制効果を持つということについて厚生省はどのように認識しておられるのでしょうか。また、医療構造改革の中にどのようにして看護質向上と適正な職員確保対策を盛り込んでおられるのか、お伺いしたい。
  15. 谷修一

    政府委員谷修一君) 看護婦の質あるいは看護の質を高めるということによって在院日数短縮される、また患者さんの満足度も高まるといったような、またあわせて医療費が削減されるというような調査アメリカで行われているということは承知しています。また、我が国でも、それに倣ってということではございませんが、厚生科学研究におきまして幾つかの病院対象にして現在研究をしていただいております。その結果は、既に一部はまとめられておりますが、恐らく今年度さらに追加的な研究をして全体の研究成果を取りまとめるということになっているというふうに承知しています。  そういう意味で、先ほどの御質問とも関係いたしますが、看護職の質を高めていくということは今後とも引き続きやっていかなきゃいけないというふうに考えておりますし、また、先生承知のとおりでございますが、ことしから新たに養成所のカリキュラムの改正といったようなことをやったところでございます。そういうようなことで、今後とも質の高い看護職養成ということに努めてまいりたいというふうに考えております。  また、現在、今後検討することになっております医療構造改革の中では医療従事者の資質の向上という観点もあわせて検討する必要があるというふうに考えておりますが、先生お触れになりましたような意味でのそれぞれの職種についてどうしていくかということについては今後検討していきたいというふうに考えております。
  16. 南野知惠子

    南野知惠子君 次は精神病院のことなのでございますが、医療構造改革推進する上で、平成八年三月末のデータですが、全国の病床数が三十六万二千床と言われており、また平均在院日数が五百十六・四日、これは「病院」というものに記載されている報告でございますが、そういう精神病院についても大きな構造改革が重要というふうに考えております。  精神病院に関しましては、ベッド数自体が多いというような声もよく耳にいたしますが、厚生省病床適正数というものをどのように考えておられるのでしょうか。また、長期療養をしておられる方々の処遇、そういうものはどのように考えておられるのか、お伺いいたします。
  17. 中西明典

    政府委員中西明典君) 先生御指摘のとおり、我が国におきましては、諸外国と比べて精神障害者平均在院日数がかなり長い、また人口当たり精神病床数が多いという現状であることはまさにそのとおりであるというふうに認識しております。  適正病床数というのはなかなか難しい問題であると思いますが、一年半以上入院しておられる方のうち、院内寛解状態の者を想定いたしますと、大体約三万人近くは社会的入院を余儀なくされておられる方々ではないかというふうに一つの推計はございます。こうした方々を含めて、その他の方々もひとしく社会復帰をできるだけ促進していくということは喫緊の課題だというふうに認識しております。  厚生省といたしましては、御承知のとおり、障害者プランに基づきまして生活訓練施設を初めといたしました精神障害者社会復帰施設整備、これは非常に立ちおくれているところでございますが、障害者プランに基づいて必死になって整備をしていかなければならない、かように認識しております。  それから、長期間入院しておられる精神障害者がなかなか社会復帰にまで結びつかなくとも質の高い療養生活を安心して送ることができるよう、私どもといたしましては本年度から長期入院患者の適切な療養あり方について有識者による検討会を設けて検討していきたいというふうに考えておりまして、この検討結果を待って適切に対応していきたい、かように考えております。
  18. 南野知惠子

    南野知惠子君 精神障害者方たちに対しては、我々看護職もグループホームとか、または労働関係では障害をお持ちの方々の雇用というのも実際力をかしながら展開しているのが現状でございますけれども、我々も検討させていただきつつあるPSW、これについてもその方たちの活躍がうんと望まれてくるところでございますので、そういう視野を広げながらぜひ新しい制度検討もお願いしたいというふうに思っております。  次でございますが、この制度改正在宅医療推進を図り、かかりつけ医の機能を強化するということも一つの大きな話題になっております。これを促進するために、かかりつけ医連携した訪問看護拡充措置も同時に必要であろうと思います。特に、在院日数短縮により医療依存度のより高い患者さんたち在宅に移行するということが予測されますが、このような状態在宅患者に対する訪問看護を初めとした医療チーム体制、そういったものの充実も必要であります。  この点に関しまして、具体的にどのような対策を立てようとしておられるのか、お伺いいたします。
  19. 谷修一

    政府委員谷修一君) 在宅医療推進するという観点から、やはりかかりつけ医一つは積極的な役割を果たす、またみずから中心になって、あるいはまた患者の立場に立って福祉サービスやその他の関連サービス提供者とも連携をして患者生活面における支援を積極的にやっていくということが必要だというふうに考えております。そういう意味で、この訪問看護ステーションかかりつけ医連携をして、あるいはかかりつけ医訪問看護ステーション連携をして在宅医療推進していくということは大変重要だというふうに認識をしております。  現在、訪問看護ステーションは約千七百カ所ぐらい設置をされているというふうに聞いておりますけれども、そのうちの半数近くは医療法人設置をしているというような状況もあるようでございます。そういう意味で、この在宅医療推進するという観点から、かかりつけ医訪問看護ステーション方たちと一緒になって在宅医療推進するということを今後とも進めてまいりたいと考えております。
  20. 南野知惠子

    南野知惠子君 医療、または療養福祉、その三方向からの問題点というのをよりクリアに絞っていきながらぜひお願いしたいと思っております。  医療費抑制のためには長い入院期間短縮して早期退院を促す必要がある、これはもう医療費との絡み合わせで当然のことなんですけれども、この場合、高齢者地域療養できる環境を整える必要があろうかと思います。  看護婦による訪問看護役割は、今後さらにニーズが高まっていき、重要と考えますけれども、この診療報酬上の取り扱いについてどのようになるのか、お伺いしたいと思います。
  21. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 在宅医療高齢者のためにも大変大事であるということにつきましては、先生仰せのとおりでございます。  そういう観点から、老人診療報酬におきましても寝たきりの老人訪問看護指導料というようなものを設けまして、それを改定する都度内容的な充実を図るという中で在宅医療における訪問看護に関する評価充実を図ってまいっております。また、医療機関によります訪問看護に加えまして、先ほどお話の出ました、平成四年でございますけれども老人訪問看護制度というものを創設いたしまして老人訪問看護ステーションによる訪問看護推進ということも図っておりますし、それにつきましてもその報酬等につきまして改善を図ってきておるところでございます。  これから特に介護保険におきましても介護保険給付という形で訪問看護を位置づけることにいたしてございます。そうした中で、今後ともそういった老人訪問看護サービス充実ということにつきましては重要なテーマとして充実に努めてまいりたいというふうに考えております。
  22. 南野知惠子

    南野知惠子君 看護の部分だけが谷間になったり、また抜けたりすることのないように、よろしくお願いしたいと思います。  現在は看護婦栄養指導、または口腔歯牙衛生、歯磨きをどうする、そういうような衛生指導現場で行っているんですけれども、それらについては、栄養指導には栄養士の方または口腔歯牙衛生には歯科衛生士でなければ保険点数が今つかないことになっているわけです。大臣診療報酬抜本改正に言及しておられますが、このような点をどうお考えになるのだろうかなと思っておりますが、訪問看護センターでは直接保険点数対象となっているわけでございます。今後のチーム医療重要性考えますとこのような方向を目指すべきではないかというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  23. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) これからはますますチーム医療重要性が高まってくると思います。看護婦さんの看護サービスは、これはかなり広範多岐にわたっていると思います。それをどういう形で診療報酬評価していくべきなのかというのは、やはり一つ課題であるというふうに思います。  現在は栄養指導の面あるいは口腔衛生指導も含めまして一連の看護サービスという中で評価をされているというふうに考えておりますけれども、今後診療報酬あり方考えていく上においてこの看護サービス評価というものをどういうふうにしていくべきか、これは関係者方々の御意見も伺いながら、適切な評価が行われるように努めてまいりたいというふうに考えております。
  24. 南野知惠子

    南野知惠子君 ぜひ、診療報酬抜本改正に当たりましてはそのことをお忘れなくお願いしたいと思っております。  また、次の件はある自治体での出来事でございますけれども保健婦による地域保健指導を実施した、そういうことによって国保財政改善が見られたという事例がありますが、お聞きになったことはございますでしょうか。
  25. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 保健婦さんの活動というのは、かねてより非常に大事である、とりわけ高齢化社会、それからまた少子化社会の中においてこの役割に期待するところは非常に大きいと思います。  そういった中で、やはりそのことが医療費に対しても適正化なり節減ができるという、こういった報告はいろいろございます。最近におきましても、国保中央会の調査研究あるいは大阪府におけるいろいろな調査研究におきましても、やはり保健婦さんを中心とした保健活動というものを積極的に行っている市町村におきましては医療費の面においても相対的に低くなっているという報告がなされておりますし、私どもとしても保健婦活動というのは今後ますます大切なものであるというふうに考えております。
  26. 南野知惠子

    南野知惠子君 小さな自治体におきましては、やはり保健婦確保が容易でないということをたびたび耳にいたしております。特に、僻地などでは保健婦対策をどうしておられるのかなと思います。  お伺いしたいんですが、構造改革による医療費削減にはやはり看護婦保健婦の活用というものが重要であろうと思いますので、その件、よろしくお返事いただきたいと思っております。
  27. 谷修一

    政府委員谷修一君) 保健婦確保につきましては、ゴールドプランの推進あるいは老人保健事業、それから今回市町村の方に権限が移譲されます母子保健事業といったようなことに対応するために、平成十一年度に市町村保健婦を約二万六千人確保するということで目標を立てております。また、これら保健婦確保ということにつきましては、地方交付税措置といったようなことも講じられてきているところでございます。  今、お話のございました小規模な町村におきます保健婦確保ということにつきましては、都道府県が人材確保計画を定めるということになっておりまして、それに基づいて必要な事業を行う、またさらに国はこれに対しまして財政的あるいは技術的な支援を行うということをいたしておりまして、今後ともそういうようなことによりまして特に町村におきます保健婦さんの確保ということをやっていきたいと考えております。
  28. 南野知惠子

    南野知惠子君 ぜひよろしくお願いしたいと思っております。  次は中医協の問題でございます。  医療と介護の境界線がなくなってきているのが現在でございます。看護婦医療と介護の専門職としてその中心的役割を担うものと期待されており、また我々も自負しているわけでございます。  この件に関しましてはもうたびたび今までも御質問申し上げているんですが、中医協の構成メンバーとなれない理由は直接保険点数対象となっていないからというようなお答えを前にいただいたことがございます。今後の訪問看護ステーション役割の増大というものを考えてみますとき、中医協の診療担当委員看護婦の代表を入れるべきではないかというふうに思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  29. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) この問題はかねてから先生からも何度も御指摘いただいておる問題でございます。  中医協における現在の診療側の委員の構成というのは、先生今御指摘のような形といいますか考え方を基盤にしまして、保険医療の担当者ということで保険医、それから保険薬剤師というふうなことが定められていることから、それぞれその担当者の代表としまして医師、歯科医師、それから薬剤師を代表する委員という形でお願いしているわけでありますけれども、この中医協の委員の構成については各方面からさまざまな御要望なり御意見がございます。そういった問題を踏まえて、これからの中医協というものはどういう方向で行くべきなのか、これは私どもとしても真剣に検討しなきゃいけないというふうに考えております。
  30. 南野知惠子

    南野知惠子君 ぜひ真剣に御検討いただきたいんですが、とりあえず中医協の専門委員の中に専門職として看護婦を入れるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  31. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 専門委員に入れるべきか、あるいは中医協の委員に入れるべきか、いろいろ議論がありますので、今の時代において看護重要性はますます高まっていますし、どちらがいいのか両面から検討した方がいいのじゃないか。中医協委員はだめだ、専門委員ならいいという問題でも私はないと思っています。両面から検討させていただきたいと思います。
  32. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございます。大変力強いお言葉でございます。  なぜ専門委員かと申し上げたのは、社会保険医療協議会の法律における第三条の三の二に、「厚生大臣又は都道府県知事は、それぞれ中央協議会又は地方協議会において専門の事項を審議するため必要があると認めるときは、その都度、各十人以内の専門委員を置くことができる。」ということがあり、現在既に四つのカテゴリーに分かれているんですが、その中で現在二人の方がお入りになっておられる。そのお二人の中のお一人があるところの医療センターの院長先生でおられますので多分ドクターの方ではないかなと、これは私の想像でございます。そうするときに、やはり満遍なく医療を見るときに、それぞれの専門職種を整えておられた方がより適正な審議がおできになるのではないかなと思いますので、今、大臣の力強いお言葉をいただけましたけれども、もう一度大臣の御決意をいただきたいと思います。
  33. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 診療側の委員が八名。医師会、歯科医師会、薬剤師会。なぜ看護婦の代表の方が入っていないのかという点も私なりにこれでいいのかなと、もうちょっと検討する必要があるのじゃないかと。八名がいる中でなぜ除外されているのかその積極的理由を見出す理由がちょっとわからない。そういう面も含めて、中医協の委員がいいのか専門委員がいいのか、今までの経緯を調べて今後どうあるべきか幅広く検討させていただきたい。あえて中医協の委員を外す、だから専門委員という問題でもないだろうと私は思っていますので、両面から考えたいと思います。
  34. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございました。八十万人の看護婦、それにその手を待っている患者方々が公平な医療を望んでいると思いますので、その点、大臣のお言葉を力強く受けとめさせていただきました。ありがとうございます。  次は、政管保険の事業運営安定資金の推移についてでございますが、事業につきましては政管保険の財政状況がよく事業運営安定資金が豊富な時代には積極的な拡充が図られてまいりました。保健予防活動の重要性は今後とも減ることはないと思うのですが、政管保険の財政状況の悪化により事業運営安定資金が枯渇した場合でも保健事業が縮小されることはないと、これは私確信いたしておりますが、いかがでしょうか、お伺いいたします。
  35. 真野章

    政府委員(真野章君) 政管健保の事業運営安定資金でございますが、現在の中期財政運営が開始されました平成四年度末におきまして一兆四千九百三十五億ということでございます。現在、改正法をお願いいたしておりますが、平成八年度末におきましては資金が約五千五百億程度というふうに見込んでおります。今後とも、その減少が見込まれているところでございます。  一方、健診事業等の保健事業費でございますが、平成四年度が六百二十七億でございましたが、平成九年度におきましては九百二十四億ということで毎年増額を確保いたしております。  先生御指摘のとおり、保健福祉事業は保険給付と並ぶ重要な柱と考えておりまして、総合的かつ積極的に取り組んでいく必要があると考えておりますし、特に私ども所管をいたしております政管健保の場合にはその加入者が中小企業の被保険者だということでいわゆる健康診査その他の機会に恵まれない方々が多いという、こういう状況にも配慮した取り組みが必要だというふうに考えております。  この保健事業を含めました政管健保の保健福祉事業全体の今後のあり方につきまして、現在、労使、それから医療関係者、その他学識経験者の方々に幅広く御意見をお伺いいたしまして検討いたしております。それらを踏まえまして対処したいというふうに考えております。
  36. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございます。お願い  いたします。  診療報酬改定のたびに薬価基準の引き下げが行われてまいりました。それでも医療費に占める薬剤費の比率が下がらないというのはどういうことなのか、教えていただきたいと思います。
  37. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まさにこれまで診療報酬改定のたびに薬価基準の改定、それは引き下げということが行われてきたわけであります。これは、市場の実勢を調査して、薬価基準がそれに比べて高いということなものですから引き下げられてきたわけであります。にもかかわらず、医療費に占める薬剤比率というのはなかなか我が国は下がらないという状況が見られております。  これは大きくは二つが主な要因だというふうに考えておりまして、専門家の論文等によりましても、一つにはやはり薬剤の使用量というものが我が国の場合に多いということが指摘されております。それからもう一つが、これがいわゆる新薬シフトというふうに呼ばれるものでありますけれども医療機関において処方される医薬品が比較的安価な薬から高価な新薬へシフトする、そういう傾向が見られるということであります。  これらの原因としまして考えられますものは、いろいろありますが、主として薬価基準というのは公定価格を定めている。そうすると、医療機関は卸との間で自由な取引をしているわけでありますが、その薬価基準よりもできるだけ安い価格で買いたいということに当然なるわけでありまして、そうするとそこには薬価差が発生をする。そういった中で、薬価差というものを考えますと、やはり量がふえればその分ふえますし、それからまた高価な薬の方が額としても大きくなるというような問題等々が指摘されているわけであります。  そういったものを解決しなければいけないわけでありますけれども、やはり根本的には薬価差というものに頼った医療の経営というものを是正していく、そのためにはやはり診療報酬の適正な技術料等の評価ということが大事であるというふうに思っております。また、現在の公定価格を定めている薬価基準制度そのものをやはり考え直す必要があるのではないかというふうに考えておりまして、医療保険制度の抜本的な改革の中ではこの薬価基準制度改正というものを私どもとしては考えておるわけでございます。
  38. 南野知惠子

    南野知惠子君 新薬が開発されて治療がスムーズに展開できるということは大変いいことなんですが、新薬の治験を行う際に実際に患者さんに薬を投与して、そしてその状況をずっと二十四時間把握しているのは看護婦であるということでございますが、そういう場合に看護婦が治験段階においてチーム医療の中に参入されているのかどうか、チーム医療の必要性と看護婦役割、これを治験との関連においてお尋ねしたいと思います。
  39. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 治験におきますチーム医療、あるいは看護婦の方の関与のお尋ねでございます。  治験に関しましては、治験を受ける患者さん、被験者の一層の人権保護とデータの質の向上を目的にいたしまして、ことしの四月から医薬品の臨床試験の実施の基準、GCPと言っておりますが、これを改正して施行したところでございます。そこにおきまして医療施設における実施体制整備、また治験の支援をするスタッフの育成というのが大変重要な課題でございます。  欧米諸国の場合には、治験の責任医師の監督のもとでリサーチナースと呼ばれる看護婦の方がさまざまな支援をいたしております。例えば、被験者の選択や説明と同意、投薬中の観察などが計画的に行われていることを確認する、また治験への参加に先立って行われる説明と同意に際して被験者の疑問や不安に適切な助言を与える、また被験者が適切な時期に診察や検査を受けるために日程や時間の調整を行い必要な指示や連絡を行う、また治験依頼者が行うモニタリングに関して連絡調整を行うなど治験の実施に重要な役割を担っておるところでございます。  我が国におきましては、治験につきまして、チーム医療という視点から、また治験の支援体制整備ということから大きな問題でございまして、むしろ現在その体制整備を図るという段階でございますけれども、今後は医師のみならず看護婦、薬剤師の方が協力して治験を支援する体制整備していくことがこの治験実施基準を適正、円滑に実施するために重要であると考えているわけでございます。平成八年度からこの治験実施基準の適正運用推進モデル事業を開始しておりまして、治験の実施を支援する治験支援スタッフの育成等を含めました体制につきましてのモデルを作成するなどによりまして治験の実施体制整備を図ってまいりたいというふうに考えております。
  40. 南野知惠子

    南野知惠子君 薬の改善をより適切に展開していただくためにいろいろなスタッフの御利用ということをぜひお願いしたいと思っております。  さらに、意識改革とか教育という項目についてお尋ねしたいんですが、医療構造改革を進める際に、制度そのものの改革とともに新たな医療提供システムが効率的に機能する、そのためには医療を提供する医療従事者の意識改革、また新たな技術を身につけるための教育、研修、そういうものが必要と考えられますが、そのことに関連しましての方策がありますでしょうか、お伺いいたします。
  41. 谷修一

    政府委員谷修一君) お話しございましたように、やはり医療提供者側の意識改革ということは今後大変重要だというふうに考えております。そういう意味からも、教育あるいは研修を充実していくということは今後とも引き続き重要な課題として考えていかなければいけないというふうに思っております。  既に、お医者さんの場合には、例えば日本医師会あるいは日本医学会が生涯研修という形で取り組みをしておりますし、また看護協会におきましても各種の研修を行っているところでありますが、私ども厚生省としてもこうした取り組みが今後とも充実されるように、また充実されるべきだというふうに考えております。
  42. 南野知惠子

    南野知惠子君 看護婦サイドにおいてもやはり生涯研修というのがまだまだ充実されていない現状でございますので、その件についてはぜひお力をいただきたいというふうにも思っております。  最後に大臣お尋ねしたいんですが、医療構造改革の中で医療を受ける国民自身も賢い受療行動がとれるようにならなければならないと思います。そのためにはさまざまな支援活動が受益者の方からも求められているのですけれども、そのためには情報の開示または看護職による患者教育、そういったものを進めていく必要があると思っております。このような対策に関連しまして、どのような促進支援をなさっていくおつもりなのか、大臣にお伺いしたいと思っております。
  43. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 医療に関してどのように適切な情報を国民に提供していくか、これは今後大変重要なことだと思っていますので、レセプトによる情報提供やカルテの診療情報の活用についてこれから幅広く検討していきますが、医療機関の機能評価結果の情報公開についても積極的に取り組んでいきたいと思います。  また、幾ら制度医療機関が立派なものが整っていても、患者さん自身も日常の生活習慣、これに気をつけていただかない限り健康で長生きできるというのはなかなか難しいと思うのであります。医師指導によく従ってもらうとか、日ごろから生活に心がけるとか、お医者さんがいるから、いい薬があるから暴飲暴食してもいいんだというのじゃ絶対健康にならないわけでありまして、そういう日ごろからの健康に気をつけてもらうという啓発活動も必要ではないかと思っております。
  44. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございました。これで質問を終わります。
  45. 中島眞人

    ○中島眞人君 自由民主党の中島眞人でございます。  今国会に提案されております健康保険法等の一部を改正する法律案、衆議院並びに本院におきましてもこの改正部分につきまして種々同僚議員から質疑がなされてまいりました。今回の改正は、医療保険の財政が非常に逼迫をしている状況の中で、言ってみれば当面の財政の安定を図るために実施されるということだというふうに思います。そういう点で国民負担を求めていくという法律の趣旨になっているわけでありますけれども質疑で明らかになっておりますように、この改正案でいってみても二年間で財政的には破綻が来てしまう。そういう中で、政府が掲げている構造改革、あるいは同時に大臣がしばしば答弁をしておりますように、この法律が制定をされるならば九月といわずに七月、八月の時点で厚生省としては抜本改革を出していくんだという、私はある面ではそこに問題点があり、そしてそのことによって医療保険というこのすばらしい制度を未来につなげていく一つの審議の過程だろうというふうに私は思うのであります。  しかし、昨年十二月、厚生省から出されました健康保険法改正が、私も与党の議員の一員でありますけれども、当初一日十五円だったものが今度四百、七百、千円になってくる、そういうことの中で国民の側から見ると何か不安感が募るだけであって、何となく不信感を助長しているということの印象はぬぐえないのは事実だろうというふうに思うのであります。  そういう中で、今回の健保改正案というのは、ともかく逼迫をした財政を一応立て直して、そしてそれから将来に向かって、高齢社会の中に向かってどうあることが必要なのかという一つの序章である、こんなふうなことを考えながらいるのでありますけれども、各委員から今改正案についてはもう論議が出されておりますので、私は将来に向かっての医療改革という問題、抜本的な医療改革をどういう視点に立って行っていくのかという、そんな視点で大臣並びに政府委員にお聞きをしていきたいと思うのであります。  同時に、私はこの種の問題を取り扱っていく場合に、医療改革の問題をこれからお尋ねするわけでありますけれども、昔、大岡裁きというのがございましたね。ともかく三万一両損というようなのがあるんです。今、国民の皆さん方は何か国民の側だけが負担を受けるのではないのかという不安感が非常に募っております。私がこれから申し上げるのはやっぱり三万一両損なんです。ここもやりました、ここもやりました、だから国民の皆さん方も御負担をいただきたい、こういう形の三万一両損という大岡裁きの言葉を持ち出したわけでありますけれども、そんな観点に立って私は質問をしていきたいと思います。  さて、まず健康保険法の一部改正がなされておると同時に、厚生省介護保険制度の創設を実は提案しておりますね。まだ本院には来ておりません。しかし、介護保険制度における給付医療保険における給付と比較して定型的なサービス、具体的に言えば六つのサービスに対して言うなれば一割負担という原則を導入している。ところが、今回の、先ほど南野先生からお話がありましたように、健保の改正ははっきり言うと一回五百円。何か私は介護においても六つの定型化したサービス医療によってはもっと複雑多岐にわたっている、疾病はいろいろあると思うんです。私は、この考え方というのは厚生省が法律を出しながら整合性がないのではないのかと。私に言わせれば、介護においても六つのサービスに定型化され、それを一割負担の定率だと。ところが、これはどんな疾病であろうと一回五百円、これを四回で打ち切り。何か私は非常に理論的に矛盾をしているのじゃないのかと。まさに医療の木戸銭、入浴料扱い。これでは医療保険問題点が、いわゆる厚生省自身がそういう整合性に欠けている問題をどのように認識をしているのかという点をまず私はお尋ねいたしたい。  そして同時に、将来の医療改革に向かっていく段階の中では、私はやっぱり定率制という方向性を導入していかなければいけないのではないか、こんなふうに思うんですけれども、まずこの辺についての御所見をお伺いしたい。
  46. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 介護保険につきましては、先生御案内のとおり、衆議院を先般修正の上で可決をいただきまして、今、参議院の方に回ってきた段階でございます。  この介護保険法案と今回御提案を申し上げております健康保険法等の一部改正におきます老人保健の一部負担につきましては、当然その整合性というような観点についての御議論というものはありますし、また一方において介護というものの性格と医療というものの性格の違いを論ずる向きももちろんございます。  今回の老人保健の一部負担につきましては、これも定率負担がいいか定額負担がいいか、いろいろ御議論がございました。そうした中で、今回御提案を申し上げました案におきましては、高齢者負担のしやすさという点にも配慮をいたしまして定額負担を維持するということにいたしたわけでありますけれども、その額についてやはりおおむね一割の負担水準をめどにする一つの介護をにらんだことを頭に置きながら、急激な負担増を避けるという観点から御提案を申し上げたような案にいたしたわけでありますけれども、現行制度というものに比べますれば、やはり介護保険制度との整合性という観点からしますと、今申し上げました負担の水準という意味において、また受益に応じた負担という要素をその中に加味するという点において現行制度から比べればやはり介護保険との整合性というものはその分だけ推進が図られたというふうに考えてはおります。  ただ、今後の老人保健制度における一部負担あり方という問題について、今回の御提案がいわば未来永劫この形でいくものかということの御議論につきましては、やはり今後の老人保健制度自体がいわゆる抜本改正の中での大きな柱になっております。そうした中で、将来における一部負担あるいは一部給付水準のあり方というものについてもこれは大きな課題でございまして、その中におきましては当然介護保険制度との整合性ということをもう一度きちっと考える、あるいはいわゆるその負担の公平という観点をどのように考えるか、国民理解という面にどのように考えるかというようなことを十分配慮しながら、やはり具体的な一部負担の水準についても抜本改正の中での検討というものは必要になってくるというふうに考えておるところでございます。
  47. 中島眞人

    ○中島眞人君 あなたは定率制を出している老人介護の当事者だからそういう言い方をすると思うけれども、今、医療関係の方で定額制を出していますよね。抜本改革をねらっていく将来において、介護福祉だって六つの類型に合ったサービス定率制導入を提案している。医療の側だってもっと複雑多岐にわたるんでしょう、病気の治療の大小。そういう点からいって定額制というのは僕は将来的にやっぱり変えていくべきだと。あなたは定率を提案している側だからそれでいいんだけれども、保険局長の方はどうなんですか。
  48. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 今回……
  49. 中島眞人

    ○中島眞人君 いやいや、あなたはいいんだよ、もう説明は。医療の方を言っているんだから、医療抜本改革を言っているんだから、医療の方で保険局長
  50. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 所掌を申し上げると大変恐縮なんですが、今回の提案の中の老人保健制度老人保健福祉局長のところで所掌しているものですから、それで局長が今御答弁しようということでございます。  私の方からも御答弁申し上げますと、まさに先生おっしゃるとおり、医療においては今回の介護保険以上に内容的には複雑多岐にわたっております。  この一部負担というものの趣旨をどう考えるかということでありますけれども、一番大きな目的としましては受益負担の公平というのがございます。そういった中で、この一部負担をどういうやり方でお願いをするかということでありますけれども、若い世代負担が定率負担でありますように、お年寄りについてもやはり定率負担という方向というものを目指すということが整合性のとれた医療保険制度になっていくだろうというふうに私どもも思っております。  ただ、今回の法案提出に当たりまして、各方面からいろんな御意見がございました。そういった中でこのような形で御提案させていただいているわけでありますけれども、やはり今後の医療保険制度考える際にはそういった定率制というもので全体の世代間の負担のバランスをとる。そしてまた一部負担、定率になりますと医療費がふえれば額も大きくなります。そういった中で、やはり所得等に応じた負担の軽減策とか、そういったものも加味しながら無理のない負担というような医療保険制度というのを構築する道というのも一つだろうというふうに考えておりますし、そういった点も考慮に入れながら今私ども医療保険制度の体系のあり方、これをいろいろと検討しているわけでございます。
  51. 中島眞人

    ○中島眞人君 羽毛田局長の答えたいという気持ちもわかりますけれども、私は医療の体系というものの中で保険局長に答弁を求めたわけであります。  そこで、現在でも老人の占める比率一五%、近々三割に達するであろうという時代を迎えるわけですね。そこで、今回出されていることに対してはもう緊急避難的なものだからしょうがない、早くこれを通して、そして次に向かって、将来二度とこういうことの破綻が来ないように厚生省抜本改革を私は希望するということを申し上げているので、同時に大臣が大変強い口調でこの法律ができれば厚生省としても政府の構造改革よりもっと前に抜本的な医療改革を出すんだ、こういうことを言っておるので、そういうものの中での気持ちを私は確かめたい、あるいは申し上げておきたい、そういう意味質問を実はいたしているわけです。  さて、老人医療の問題なんですけれども、まさに公平、平等という原則でスタートをした。そして、お年寄りには全く無料でという当初の発想は音を立てて崩れてきているわけですね。かつていわゆるばらまき福祉の時代に高額所得者に対しても電車の無料券が交付された、あるいは公衆浴場の入浴券がまかれた。今は亡き松下幸之助さんがこれでいいのかと言って大変怒った言葉がございます。  こういう中で、現行老人医療の場合の所得制限制というのはどういうふうに考えていますか。
  52. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 先生お話しのように、高額所得者を高齢者医療の面でどう考えるかという問題でございますけれども、これにつきましては、やはりこの医療保険における負担の公平というものをどのように考えるかということの大きな要素であろうというふうに思います。特に、老人医療費が非常に大きな負担になって、かなりの部分を若人に負担を負わなければならないということを前提に考えますと、高額所得の高齢者方々についてまで、いわば高齢者ということで高い給付水準を保障するという形が本当に負担の公平という観点から検討する必要がないであろうかという点は大きな課題になるというふうに認識をいたしております。  したがいまして、この問題につきましては、一つには現在の老人医療、その大半が若い人たちの現役世代のいわば負担で賄われているというときに、こういった高額所得者の高齢者を含めまして現役世代に比べて手厚い給付を受けるということについて世代間の負担の公平、あるいは国民の納得という面でどう考えるかという点はやはり重要な一つの柱であろうというふうに思います。  一方におきまして、ただ高額所得者はいわゆる保険という側面でいえば高い保険料を払っているということで、これについて給付という面での保険原理といいますか、そういった面でどう考えるか、あるいは高額所得者というものをどういうふうにとらえるかという範囲の問題、さらに言えば実務的な対応の問題、こういった問題がございますからこういった諸点を総合的に考えまして、今度の老人医療抜本改革の中ではいずれにしても高額所得者における老人給付というものについては一つ課題としてどういうふうにするのか、現行制度の見直しをするという観点から取り組んでまいらなければならないというふうに考えております。
  53. 中島眞人

    ○中島眞人君 局長、高額所得の制限導入をするんだ、それだけでいいんです。この方たちは税金も納めているからいかがなものかなんて、そんなことを言わなくて、高額所得のある老人にはやっぱり老人医療の適用という問題を再検討していく、そういう方針だというふうに私は受けとめます。  次に、会計検査院とかあるいは総務庁等で出された老人医療のいわゆる重複診療とか社会的入院等のデータ等を私もいろいろ勉強させてもらったわけでありますけれども介護保険が導入されますと社会保険とか社会的入院等々の問題は解消されていくわけですよね。しかし、重複診療の問題等については一カ月に四十五日分の薬剤を投与したというふうな総務庁からの行政監察の結果も出てきております。  そういうことの中で、介護保険を導入していくことによって老人医療というものが現行よりはスリムになって、そしてあるべき姿に持っていけるのではないかというふうに私は思うのだけれども、その辺の概算、見込みというようなものについてどのように考えているか、お聞きをしたいと思います。
  54. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 介護保険が導入されました場合の老人医療の姿でございます。  介護保険におきましては、まず直接には今現在老人医療費というものの中から賄っております老人保健施設でございますとか、けさほどもお話のございました訪問看護あるいは療養病床群といったような介護関係の費用が介護保険の方に移ってまいります。したがって、老人医療費という面で見れば、その分は老人医療費が減って介護保険の分がふえる、まさにスリムになります。  それにあわせまして、今、先生御指摘にございましたように、今回の介護保険導入によりまして、いわばそれぞれの状態に応じた御高齢者方々が所を得た処遇をされるという意味で、一般病院に長期入院を余儀なくされておられたいわゆる社会的入院と言われる方々を適切な介護保険給付の中に移っていただくということによる全体的な効率化というものが図られるという要素でのいわばスリム化ということが当然期待をされる。そのことについては介護保険だけではなくて、それに伴うもろもろのサービス充実でございますとか医療サイドにおける診療報酬上の配慮でございますとか、いろいろそれなりの努力は要りますけれども、そういった方向をねらっておるわけでございます。  そういったことによりまして、私どものいわば見込みで言いますと、平成十二年度におきまして考えますというと、現行制度のまま過去の医療費の動向で医療費が伸びたという前提に立ちますと、平成十二年度で老人医療費が約十三兆円ぐらいになるであろうと、これは言ってみれば現行制度のままという前提でございます。そうしたときに、今回の介護保険を導入し、そのことの効果によりまして社会的入院というものが減ってくるという要素につきまして、これも四千億円ぐらいがそういうふうになってくるのではないかという見込みを立てております。  したがいまして、十三兆円の中から社会的入院で減ります四千億円と、それから先ほど申し上げましたようにいわば場を移り変わるという要素も全部含めますと、老人医療費という意味では三兆円というものが減る、ないしは移っていくというふうに考えられるというふうに思っております。
  55. 中島眞人

    ○中島眞人君 私は、健保問題を語るときには高齢社会に向かっての老人医療考えなきゃならない、老人医療考えていくときにはこれをスリム化していくために介護保険というものの創設という問題も当然セットで考えていかなければいけない、あるいは重複診療の問題等老人医療の中に大変大きなウエートを占めている問題がありますね、そういう問題とか、あるいはまた先ほど言った高額所得者の老人医療に対する一つあり方の問題、こういう問題を一つ一つ整理していくことによってやっぱり長続きする老人医療というものをつくっておかなければいけない、こんなふうに思うのであります。  そういう中で、年金だけに頼っているお年寄り、このお年寄りの皆さん方が不安のない生活が送れるような医療体系、こんなことを求めながら、老人医療に対する抜本的改革の基本的理念と申しますか、お考え大臣からお聞かせいただきたいと思います。
  56. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 老人保健福祉制度等のあり方についてはいろいろな議論がありまして、経済的弱者でない高齢者もいるのではないか、それ相応の負担を課してしかるべきという御意見もあります。一方には、そうはいっても年金だけで生活している低所得者の方々が多いんだよ、それに対してどう配慮するのかという意見もあります。  私は両方大事だと思っておりますので、今後、高齢者だからといって支えられるだけじゃない、むしろ若い世代高齢者ともにお互い支えながら、支えられながらどのような社会保障制度を築いていくかということが大事でありますので、若い世代高齢者世代がお互い支えつつ、支えられつつ、連帯の精神の中で社会保障制度充実させていきたいという視点に立って給付負担の公平を図っていきたいと。  当然、その中には介護保険制度との整合性も図る必要がありますので、介護保険制度が導入された後の医療保険制度はどうあるべきかという両方をにらみながら抜本的な構造改革案をお示しして、できるだけ国民の合意が得られるような議論を進めていきたいと考えております。
  57. 中島眞人

    ○中島眞人君 次に、私はさっき大岡裁きの三万一両損というお話をしたんですけれども、各委員の中から御論議が出ました薬剤の問題、薬価の問題、これに取り組まずして日本医療体系というものは私はやっぱり蘇生できない、こんなふうに思うんです。しかし、薬価をどうしていくか、こうしていくかというような問題は、率直に言って国民の側から見ると非常にわからないことずくめなんです。  そこで、わからないことずくめの一つの提起として、九五年度に健康保険などの公的医療保険から病院や診療所などに支払われた医薬品の代金が同年度に実際に使われた薬剤の推定額を五千三百億円程度上回っていたことが厚生省の調べで明らかになった、こういう新聞記事を私は見たんです。一千億といっても驚くんですけれども、五千三百億円という額が厚生省の調べの中でわかったと。新聞の論調では、これは医療機関が実際に使っていない薬を請求している可能性があるんだと、あるいは統計上の不備による誤差という説もあると。  しかし、五千三百億円、推定額とこんなにかけ離れている支払い超過額というのはどういうふうに厚生省では受けとめているんですか。
  58. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) この新聞の報道でありますけれども、この五千三百億という数字の性格、受けとめ方、これについて正確に申し上げたいと思うのであります。  事の経緯を申し上げますと、これはことしの三月四日付のある新聞に、一定の計算方法で計算すると差額が出ているという、そういった記事が掲載されたわけでございます。その記事に関連いたしまして、与党の医療保険制度改革協議会から、この新聞で言われているような同様の方法で厚生省としてちょっと計算してみてくれないか、こういうような依頼があったわけでございます。それに当てはめた形で計算してみると五千三百億のギャップが出た、こういうことであります。  したがいまして、これは厚生省で計算して五千三百億の不明が出たというと何かあたかもそれぞれの統計を突合していくと理由のつかないところが五千三百億が出た、こういうふうに見えるのでありますが、しかしこのベースになっております計算方法そのものについて私どもとしては問題があるというふうに考えておるわけであります。  これはどういうことかと申しますと、この新聞で言っておりますさまざまの統計データ、これはそれぞれのデータが調査目的なり趣旨というものをそれぞれ異にしております。それからまた、調査時期とか期間、あるいは調査対象調査方法、これらがそれぞれ異なっておる、そういったそれぞれ趣旨の違うデータを並べ合わせてみた結果がこういうようなことだということでありますから、私どもとして正確に医薬品の生産額と消費額とのギャップが五千三百億ということであるというふうな考え方は持っておりません。  本来、こういうものを調べるということになりますと、やはりすべての医薬品につきましてすべてのそれぞれの流通段階における取引価格の積み上げ、まずこれが必要であります。それからまた、診療報酬請求が行われている薬剤料、あるいは技術料の中に薬剤相当部分について包括化されている、そういった部分というのもございます。それからまた、一定の流通期間、生産されてから消費されるまでの流通期間というのはこれはタイムラグがかなりありますから、そういった意味で、この期間というものも当然考慮した上で一定の幅のある調査期間というものを設定して、そういった中でずっとフォローしていって比較しなければ解明ができるものではないというふうに考えておりまして、本来そういったやり方でこれをやれば正確なものが出てくると思います。  ただ、このような作業というのは実際問題として物理的には非常に難しい。ただ、こういうような五千三百億の報道がなされたものですから、私どもとしてできるだけそういった意味でのフォローができる形で今検証しておりますけれども、そういったようなきちんとした検証のもとにおける金額であればこれはそれなりの意味があると思いますけれども、今の段階ではどうも五千三百億がある意味ではひとり歩きしているような状況がございますので、その点については御理解いただきたいと思います。
  59. 中島眞人

    ○中島眞人君 九五年度の全医療費が二十七兆千六百億円、そのうちの薬剤費が七兆六千億円ですね。しかし、今、局長御答弁なさっておりますけれども、他の工業生産、各種別の工業生産というのは、生産高、販売高というようなものは累計推定額と合うんですよ。薬剤については合わないというところにやっぱり国民の側から見ると不明朗さがあると、わからない。  私は五千三百億円という問題にこだわっているわけじゃない。そういう一つの推定額という金額がどうやってきても合わないというところにやっぱり薬という問題に摩訶不思議のものがまかり通っているということの一例だという点で私は申し上げたんです。と同時に、いわゆる薬価差ということも国民のサイドから見るとこれまた摩訶不思議ですよね。公的なものですよ。その中に薬価差が堂々とまかり通っているということも国民にとってみればこれまた摩訶不思議なことです。ですから、三万一両損じゃなくて三万痛み分けですよ。痛み分けというか、何か猛反省という意味で薬価の問題の一つあり方については抜本改革の中でひとつ考えてほしいと。  そういう点で、ドイツで導入をされている参照価格制度という制度がございますね。言うなれば先発製、後発製の値段が違う。しかし、現行の保険制度は先発で請求しても後発で請求しても同じことが認められている、これはおかしいじゃないのかというのは国民の中にもあるし、さりとてこれを全部一律にしてしまうと問題があるという医療現場にいらっしゃった先生方の御指摘もありました。  そういう国民にひとつわかるような参照価格制度というものを持って、そしてある部分については国民が薬剤に対しては負担をしていくという時代が来たのかな、そしてそのことの糸口は、今回、薬剤について厚生省案は十五円、いわゆる修正案の四百、七百、千円というものが出てきたことは、薬剤に対しても国民負担をいただくんですよという意思のあらわれという形で私は受けとめておるんですけれども、参照価格制度、薬剤の問題と含めてこの辺についての御見解をお聞かせいただきたい。
  60. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まさにこの薬剤の問題というのは非常に重大な問題、重要な問題であるというふうに私ども考えておるわけであります。  とりわけ、この薬価基準というもの、これはいわゆる公定価格を定めておるわけでございます。こういった自由主義経済の中で、しかも医薬品の供給がむしろかなり過剰になっている中で公定価格というものを定めるやり方がいいのかという問題が基本だろうと思います。  こういう公定価格を定めながら、一方で医療機関が購入する薬の方はこれは自由取引でありますから、そこにはどうしても薬価差というものが発生する。これは構造的にそういう仕組みになっておるわけでありまして、そういった中でいろんな問題が起きておる。医療機関にとっても、薬価差というものに依存した経営というものを改めて、きちっとした診療報酬体系というものを構築すべきであるという意見が非常に強うございます。  そういった意味で、やはりこの辺の問題については、公定価格というものを廃止して、そして薬についてもやはり市場の取引の実勢というものを本当に基本にした薬の値段の形成ということを図っていく必要があると。その際に、できるだけ国民にとって安く薬というものは供給されることが望ましいわけでございますから、そういった意味我が国にふさわしいような仕組みというものを考えていかなきゃいけないというふうに思っております。  そういった中で、現在行われているドイツの参照価格制度等については、これはやはり私どもとしては学ぶべき一つの材料であるというふうに考えております。
  61. 中島眞人

    ○中島眞人君 ともかく参照価格制度は学ぶべき一つ制度であると。しかし、一概に言えないにしても、大臣がともかくこの法律ができてすぐにでも抜本改革を出すという形の中にこの薬価への切り込みはあり得ると私は判断をしますけれども、それでよろしいですか。
  62. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 私どもも現在の公定価格を定めている薬価基準制度あり方というものを根本的に見直したいというふうに考えております。ただ、これは診療報酬体系と薬価基準制度というものは一体的に考えていかなきやならないというふうに考えております。
  63. 中島眞人

    ○中島眞人君 さて、三万の一方です。  私は、決算委員会にも所属をしておりますが、平成六年度決算の決議をいたした中に、「医療費について、支払の不適切等に係る指摘が、決算検査報告において、昭和六十一年度以降毎年続いており、それに係る国庫負担額平成六年度までに七十八億円に上っていることは、遺憾である。」。と同時に、今回の医療保険制度に関する合意の五番目の中に「不正請求の摘発と防止」というのがあります。やはり国民の側から見ると、先ほど言ったように、何で国民負担だけがという印象があ一る。国民の御負担もいただかなきやなりません、しかし薬価も切り込んで国民にわかるようにいたします、しかし不正請求という医療現場にある問題についても重大な関心で取り組んでまいりますよということをやっぱり私は考えていかなきゃいかぬと、こんなふうに思うんです。  同時に、与党合意並びに決算委員会の決議事項の中にも出ている不適正な支払いですね、これに対する問題で実は――会計検査院、来ていますか。  会計検査院にまずお聞きをしたいと思うんですけれども平成六年度支払い額九億六千百五十万円、平成七年度になりますと支払い額は六億四千四百九十八万円と減っていますね。そうすると、医療現場はあれですか、会計検査院が六十一年から取り組んだんだけれども、これはいい方向に行っているという見方でいいんですか、金額は減っていますから。  そして同時に、会計検査院のこの医療費の適正であるかなんかの問題は、風評があったり問題を聞いたりというものの中での検査なのか、あるいは全く無作為なのか。そして、データ的にはこの九億六千万円、六億四千四百九十八万円という金額は十一億万枚とも言われているレセプトの中で何枚ぐらいを検査したのか、これは決算委員会でも私言いましたけれども、これについてもう一回、会計検査院からお答えをいただきたいと思います。
  64. 河戸光彦

    説明員(河戸光彦君) 会計検査院では、昭和六十一年度から厚生省医療費の検査を開始しておりまして、検査の観点、検査手法なども創意工夫を行い、多方面から検査を継続してきておりまして、昭和六十一年度から平成七年度までの十年間の指摘額は国庫負担額で合計八十三億一千万余円となっておりまして、この間におけます指摘額は増加したり減少したりしている状況でございます。また、指摘いたしました医療機関数は最近では百余りで推移しておりまして、医療費の不適切な支払い件数が必ずしも減少傾向にあるとは考えておりません。  それから、検査の方法でございますが、私どもの検査は、都道府県におきまして新看護、基準看護、届け出施設等の定時報告書等の資料に基づきまして医療機関医師看護婦、理学療法士等の配置状況を把握するとともに、市町村におきましてレセプトを医療機関単位で点検する方法によって行っております。そして、その結果に基づいて関係都道府県が医療機関に赴いて内容を確認し、必要な措置を講じてもらっているところでございます。  なお、どういった病院を選ぶかということでございますけれども、私ども大きな都道府県については毎年のように伺っております。特に特別な情報があればその医療機関について調査をいたしますけれども、一般的に無作為でその医療機関を選んで検査しております。  以上でございます。
  65. 中島眞人

    ○中島眞人君 十一億万枚のレセプトのうち、宇宙のちりぐらいの検査しかしていないと、しかしこれだけのいわゆる不適正な事実が出ておると、こういうふうに私は決算委員会でも言った覚えがございます。  そこで、そのほか会計検査院は国庫ベースで、今言った平成七年度の場合、三億七千二百八十一万円、これは政管とは違いますよ、労働省関係でも百四十二件、十五億一千二百八万円、国民健康保険では療養給付費補助金の交付で不適正なものが六億五千九百五十七万円、国民健康保険の療養給付負担金の交付で一億五百五万円、国民健康保険の財政調整交付金、市町村に対するものですが、二億九千五百四十二万円、こういうふうなものが会計検査院によって結果として出されているわけですね。こういう問題も国民の目から見ると大変不可解、我々に負担を課しておきながらおかしいんじゃないかという声が来ると思うんです。  これに対することとあわせて、厚生省厚生省みずから、問題が指摘をされたりいろいろな形で目に余る医療機関に対してそれなりの指導と監査をしていますね。その監査の結果が、平成四年度は四十六億一千三百七十六万八千円、平成六年度は二十六億一千五百十八万六千円ですから二十億多いんですよ。これをどのように受けとめておりますか。  特に、大阪の安田病院等々の問題が出ております。私はなぜこの問題を言っているかといいますと、少なくとも会計検査院で指摘をされたこういう金額、同時に指導監査をやった金額が六年度に比べて二十億もふえている、一部のそういう病院等によってまじめに国民の命と健康を守っている医師そのものまでが国民のいわゆる不信頼の対象になりつつあるということを私は強く感じるんです。  ですから、そういう点で厚生省としてはこれに対してどういうふうな対応をしていくのか、これは国民側が一番強く怒りとして感じているものですから、これに対する強い姿勢、今後のあり方お尋ねいたしたいと思います。
  66. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) この不正あるいは不当の問題、これは私ども全く、先生御指摘のとおり、同感でございます。  非常に医療に対する国民の目が厳しい中でこういうものがなかなか絶えないということについては、私どもとしては非常に深刻に受けとめておりますし、制度仕組みの中でこういつたものが解決できないかということを一方で真剣に検討いたしておりますが、やはりそれと同時に診療を担当する医療機関サイドの自覚なりあるいは教育研修なり、こういったものを十分強化し、医師会とも協力しながら進めていかなきやならないというふうに考えております。  ただ、私どもとしては、こういう不正、不当につきましては、これまでもそうでありますけれども、今後さらに一層厳正に対応していかなきゃいけないというふうに考えております。
  67. 中島眞人

    ○中島眞人君 なお、会計検査院、厚生省が直接調べた指導監査、同時に指摘をしておきますと、審査支払い機関、社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会、これは各県で行っておりますけれども、このレセプト点検の不正、不当として指摘されているのは、私のところにあるデータですと、平成元年度が四百七十八億円、平成二年度が五百二十一億円、平成三年度が五百六十億円ある。  こういう膨大な不適正なものをやっぱり思い切った形でやっていかないと、まじめにやっているほとんどの医師国民の皆さん方からいわゆる三時間三分診療という病院とあわせて私は不信感を買っていく原因をつくるものだ、こう思いますので、強くこのことについては抜本改革の中でも、三万一両損じゃありませんけれども、三万一カ所ずつチェック、こういう形で強く期待をしたいと思います。  あわせて、老人医療の問題で総務庁が行政監察結果を平成八年八月二日に出していますね。  今度は羽毛田局長、この中で「老人医療費の構成割合をみると、入院では入院料が六三%と最高、投薬・注射が一四%、入院外では投薬が四二%と最高」、「老人医療受給者三千四百九十五人のうち九百十四人、うち四百六十三人は特別養護老人ホームへの入所待機者」と言われているように、この総務庁から出されている行政監察結果の中でもまだまだ強い指導あり方検討していかなければいけないということを強く私は要請しておきます。  これは、介護保険等を導入することによってこういう問題が一挙に解決をしていくことだろう、私はこんなふうに思いますけれども、この辺は重々ひとつ総務庁から行政監察の結果も出ていることを踏まえて取り組んでいただきたいと思います。  さて、そこで保険局長、このように社会保険財政というのは大変逼迫をしてきているわけですね。その中で、私は時間がありませんからまとめて申し上げますけれども、社会保険庁が経営する社会保険病院あり方、もうぼつぼつ当初の使命は終わったのではないかと。しかし、なくすということじゃありませんけれども、経営のあり方、立地のあり方等についてやっぱり検討する時期が来ているのではないか、このように考えるわけですけれども、その辺の考え方。  同時に、健康保険組合が行っている保養所、ひところ、これまた組合員がいわゆるレクリエーションとかそういう意味で低廉で行けるというような保養所をつくるという時代がありました。社会保険庁の関係だけでも百を超えると思うんです。そういうところでつくられている保養所のあり方、あるいはまた社会保険庁がつくったフイットネス、健康センターがありますけれども、これは一部の地域の人には利便を供するけれども全国の方々に利便を供するものじゃありませんわな。そういう問題から、この問題のあり方について大臣大臣のお得意の分野になると思いますけれども、この際御検討を賜っていかなきゃいけないんじゃなかろうかと。  私は、政府管掌だけじゃございませんけれども、名前は言いませんけれども、某共済組合の決算書をとったんです。そうしたら、保養所関係の決算書のうち十何億円の黒字になっていた。ああ、今どき保養所がよく黒字になるなと思ったら、何と繰入金が四十六億円入っているんです。ですから、実際には保養所会計というのは三十何億円の赤字なんですね。どこから行くかというと、健保組合、共済組合の中から入っているんです。  政府管掌だけにとどまらず、それぞれの健康保険組合に対して、政府だけの問題じゃなくて、抜本改革を強く要請していく、これは文部省にも労働省にもいろいろかかっているだろうと思うんですけれども、もうそんな縦割りの時代じゃなくなってきた、こんなふうに私は思うんです。  社会保険庁、保険局長実態と、そして抜本改革へ示していく医療だけではないあり方の問題について大臣から最後に御所見を聞いて私の質問を終わります。
  68. 真野章

    政府委員(真野章君) 社会保険病院につきまして、私の方からお答えをさせていただきます。  現在、五十四病院ございますが、これは独立採算ということでそれぞれの病院において経営をしていただいております。先生御指摘のとおり、当初の目的からかなりその役割が変革をしてきているんじゃないか、それはもう私どもも十分その認識をいたしておるつもりでございます。  当初、いわば保険あって医療なしという状況でないように、みずから保険者が医療確保するという当時の状況からいたしますと、現在ではかなり民間の医療機関整備は進んでおるわけですから、そういう状況が大きく変化をしているということは私どもも十分認識をいたしておるつもりでございます。  ただ、現在ございます五十四病院のうちまだ六割はいわゆる医療法上の病床不足地域に存在するというようなこともございます。そういうようないろんな状況の変化、それからいわば財政状況制度改正をお願いするような大変厳しい状況にあるというような点を踏まえまして、保険料を出していただいております労使の関係者、それから協力して医療を行っていただきます地域医療担当者、また学識経験者にお入りをいただきまして、いわば保険者病院としての社会保険病院が今後どうあるべきかということにつきまして現在御議論をいただいておるところでございます。
  69. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 健康保険組合等の保養所のあり方でございます。  これは、先ほど先生御指摘のとおり、一時期かなり保養所を建てるというのが盛んだった時代がございますけれども、その当時においてはそれなりに組合員の方々の要望を踏まえてそういうことが行われてきたんだと思いますが、やはり今日、いわゆる健康保険組合のあり方としてこういう保養所というものを持っていくということがいいのかどうか、しかもその利用状況等を考えてみた場合に妥当なのかどうかということについては、やはり時代の流れの中で随分変わってきているだろうというふうに思います。  この保養所等の経営というのは、これは現在の健康保険法の中でも保健福祉事業ということで認められておるわけでありますけれども、そもそも現在の健康保険組合というもののあり方そのものを含めて、こういった面についても見直しを必要とする時代になってきているというふうに考えております。
  70. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今までのお話でもおわかりのように、時代に合わなくなったもの、当初の目的から違ってきたもの、厚生省でもかなりあると思います。私も、先般、年金福祉事業団のあり方、廃止を含めて見直すということでありますが、社会保険庁の仕事でも似たような仕事があるんですね。これから厚生省の仕事は、もうやらなきやならないことはたくさんある、また国民の要望も、あれをやれ、これをやってくれと要望は実に多い、そういう中で必要ない事業もあるのじゃないかと。役所とか役人というのはもう何でも仕事を抱えて、自分の仕事をどんどんふやしていくことに対しては実に積極的だけれども、今までの仕事でこれは本当に必要なのか、一部の人のためになっていないのかと。  これからの視点は、厚生省だけの仕事じゃない、全体の利益、国民全体のために何が必要かということで、むしろやらなくていい仕事を見つけてくれという中の一つとして社会保険庁の仕事も入っていますから、そういう観点から幅広く私は検討してまいりたいと思います。
  71. 木暮山人

    ○木暮山人君 平成会の木暮山人であります。健康保険法の一部を改正する法律案について御質問いたします。  本法律案は、これまで繰り返し指摘されているとおり、抜本改革を先送りして患者負担の増大のみを内容としたものであり、国民の納得は到底得られるものではありません。しかも、与党内から再修正の話が出るに及んでは言語道断と言わざるを得ません。  さて、小泉厚生大臣は衆議院厚生委員会において、その修正内容について、現下の財政事情等から見て問題はあるが、諸般の事情を勘案して、やむを得ないものと考える旨答弁されています。現下の財政事情等の「等」は何を指すのか、また衆議院修正は具体的にどのような問題があるとお考えなのか、さらにやむを得ないと考えるに至った諸般の事情についてお答えいただきたいと思います。  さらに、この答弁の趣旨からすると、小泉厚生大臣は今もって政府案をベストの選択とお考えなのでありましょうか。また、与党内においても再修正を求める声があるようでありますが、これ以上の修正について政府はどういう見解をお持ちなのか、御見解を賜りたいと思っております。
  72. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 諸般の事情やむを得ないと答弁しましたのは、政府原案から比べますと、当初政府原案では三千五百億円程度の削減を考えていましたけれども、これでは負担が重過ぎるということで与党で協議して修正案が出されました。これによりますと、大体千七百億円程度減額されるとなりますと約半分近く減額される、これは保険財政を考えてみまして問題がありますが、国会でお決めになったことでありますのでこれはやむを得ないであろうということでありますが、今後参議院の審議でどのような形になるか、最終的にお決めいただくのはこの厚生委員会なり参議院の院でどう判断するかでございます。私どもとしては政府原案で成立させていただきたかったわけですが、最終的には国民の意思という形で国会があるわけですからその判断には従わざるを得ない。今回の政府原案というのはこれからの構造的な総合的な抜本改革案を踏まえますと第一段階的な案でありますが、これからもどういうふうに修正されるかというのは、私は当院の審議結果にまちたいと思っております。
  73. 木暮山人

    ○木暮山人君 患者負担を引き上げれば当面医療費の伸びは抑制されますが、この効果は長く続きません。そのため、患者負担引き上げによる医療費抑制策は早晩次なる患者負担引き上げを喚起し、尽きるところがありません。この点については、厚生省も昭和五十年代後半以降の医療保険改革の経験を通して十分認識していたはずであります。同僚議員からも指摘されたと思います。  そこで、改めてお伺いいたします。  厚生省は、自己負担引き上げに伴う医療費適正化の中長期的効果についてどのような認識をされておりますか。また、なぜ今再び患者のコスト喚起なのか、その意義についてお伺いしたいと思います。
  74. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 今回の改正患者一部負担の引き上げをお願いしているわけでありますが、今回の医療保険の改革につきましては、これは現在の医療保険制度が財政的に非常に逼迫をしている、そういうような状況の中で当然構造的な抜本改革というものが必要であるという認識に私どもも立っております。しかしながら、現在の財政の安定ということをまず図ることがこれからの抜本改革を進めていく上においても避けて通れないという考え方から、このたびの患者負担等の引き上げをお願いしているわけであります。  この患者の一部負担あり方、これは幾つかの観点がありますけれども、やはり一つには、こういった保険制度の中で受益を受ける者と負担をする者との公平という観点がやはり基調としてあるわけでございます。それからまた、とりわけ高齢化社会、少子社会という中におきまして、世代間の負担の公平ということがこれからは特に重要になってくるというふうに考えております。  今回の改正はそういった視点を踏まえましてお願いをしておりますが、さらに薬剤につきましては、薬剤使用の適正化を図りたいという観点から、このたび従来の一部負担に加えまして薬剤使用についての一部負担というものをお願いしているわけでございます。医療費というのはこれまで毎年非常に高いベースで伸びておりまして、国民経済との調和という点ではかなりのギャップが起きてきたわけでありまして、そういった点で、やはり時間がたちますと医療保険の財政というものが常に厳しくなってくるという、こういう状況というものの繰り返しであったかと思います。  ただ、これまではかなり高い経済の成長というものが望めたというようなことがございましたので、制度の根本的な改革というところまでいかない状況であっても、何とか持ちこたえることができてきたというのが現状じゃないかというふうに思います。しかし、これからまさに新しい二十一世紀の時代、とりわけ高齢化社会、こういった時代の中において医療費というものはかなり高い伸びというものが考えられるわけでありまして、そういった中で経済との調和というものをどういうふうに図った医療保険制度をつくるか、これが最大の課題であり、まさに抜本的な改革というのはそこにあるというふうに理解をしております。  そういった意味で、今回の一部負担の見直しというのは、単に一時的な財政救済というようなことだけではありませんで、先ほど申し上げたような視点を踏まえておりますけれども、将来に向けて制度の安定を図るということを考えた場合には、この患者負担の引き上げがあればそれで十分である、あるいはそれで対応できるかといえば、私はそれは難しかろうというふうに思いますし、そういった意味で、まさに制度の根幹に触れる根本的な改革というものがなければ中長期的な安定は図れないというふうに考えております。
  75. 木暮山人

    ○木暮山人君 それにつきまして一つ関連して質問させていただきたいと思うのでございます。  昭和三十四年にこの国民健康保険法が施行されまして、そのときいろいろ医療費というものが策定されたと思うんです。そのときどういうぐあいにして医療費というものがつくられたか、これについてわかったらちょっと説明していただきたいと思うのでございます。    〔委員長退席、理事菅野壽君着席〕
  76. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 申しわけございませんが、質問の趣旨を取り違えて御答弁すると申しわけございませんのでちょっとお尋ねしたいんですが、国民健康保険ができた当時の医療費でございますか。
  77. 木暮山人

    ○木暮山人君 一番最初の医療費の策定ですね。要するに値段ですよ、簡単に言えば。これをどうやってつけたか。甲表、乙表とかいろいろあると思いますけれども、やはりその中には薬価もあるし技術料もあるし、いろいろあると思うんですね。それを一番最初どういうところで決めたか、どういうぐあいにして決めたか、それをちょっとお伺いしたいと思います。
  78. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) それは広い意味診療報酬なりあるいは薬価基準なりをどういう形で決めたのかということで御理解してよろしゅうございますか。  国民健康保険法が昭和三十四年にできて三十六年から皆保険になったわけでありますが、その前に既に健康保険が施行されておりますから、そういった意味では診療報酬なり薬価基準制度というものもそれに乗っかったと申しますか、それと同じ形で決められてきた、同じものを使ってきたということでありますが、当時はまだ給付率等も随分違いまして、国保も今のような七割給付というような時代でもありませんし、そういった意味での財政の状況というものは大分今とは異なっておると思います。  ただ、マクロ的に例えば医療費というものが経済の中でどれだけのシェアを占めなきゃいけないとか、あるいは薬というものがどのぐらいのポジションにいなければならないとか、そういったようなことよりもむしろ経済成長の中で医療全体のボリューム、いわゆる医療の必要性の拡大に伴ってだんだん伸びてきたということではないかというふうに理解しております。
  79. 木暮山人

    ○木暮山人君 そこでまた関連しまして、例えば二年に一度ずつ医療費は是正されてきたわけですね。その是正されてきた時代、最初の三十六年、七年、八年ぐらいはこれは非常に一生懸命厚生省じゃ改正されたと思うんです。夜も日も継いでやったと思うんです。ところが、こんな面倒くさいこといつまでもやっていられないというような感じで、それで多分今から私が言おうとすることが始まったんじゃないかと思うんです。  その時分、医療費の改定、一番最初に三十四、五年から五年、六年ぐらいは厚生省ではどうやって医療費を改定なさっておったか、ちょっと説明していただけませんでしょうか。
  80. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) ちょっと突然のお尋ねなものですから既存の知識で申し上げることになってまことに申しわけございませんが、やはり当時というのはちょうど経済成長に日本が乗った時代というのが一つ背景としてありますから、そういった中で医療費というものもかなり膨らんできたというふうに思いますし、また医療団体もそういった中で我が国医療の質の向上のために医療費の引き上げ、改定というものを強く要求されてこられた、それを受けながら政府としても、医療関係者にしてみれば十分ということではないと思いますけれども、努力がなされてきたというふうに思います。    〔理事菅野壽君退席、委員長着席〕  ただ、昭和三十六年にいわゆる制限診療が撤廃されまして、昭和三十六年以前は医療保険は制限診療の時代でありましたから、そういった意味では昭和三十六年の制限診療の撤廃を契機にかなり伸びも大きくなってきた、それに対応するために国としても財源的には当時から医療費確保というのは大変な御苦労があったというふうに理解しております。
  81. 木暮山人

    ○木暮山人君 それは理解できるのでございますけれども医療というのは私は医学だと思うんですね。これは間違いなく医学だと思うんです。しかし、国家試験まで受けてせっかく医師になった者が保険医になるとき、ここで保険との約束を締結しなければ治療に携わることができない、そしてなおかつ医療費をちょうだいすることができない、そういう中を越えてきたわけですね。  そんな中でもう一つ考えなきゃだめなのは、もはや厚生省はいろんな世の中の医療界の圧力を受けて、自分でいわゆる正当な医療費評価をすることができなくて、こんなことを言っちゃまずいかもしれないけれども、あなたたちどうぞお好きにしてくれ、大体今年の医療費の上げ幅は何%ですよということが今にまでつながっているんじゃないかと私は思うんですけれども、いかがですか。
  82. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) いろんな経緯についてはむしろ先生の方がお詳しいので私の方から申し上げるよりももう既に御存じだと思いますが、ただ医療費改定に当たりましては、これは毎年予算編成の際に来年度どの程度の医療費改定をするか、医業経営の実態というものを踏まえながら行われてきておりまして、そういった意味では予算という中で幅広く検討され、そしてまたそれが国会で御議論いただいて決められてきたというふうに考えております。
  83. 木暮山人

    ○木暮山人君 これは通告しないことを質問して失礼な話で申しわけないと思いますが、今度抜本的に改革なさるときにはこれは非常に難しいと思うんです。私は不可能だと思うぐらい難しいと思います。しかし、やはりこれは日本の国の健康保険というものが世界に冠たるものでありますから、これに老人保健も追加して、どこの国もこれをサンプルにするようなシステムをひとつつくっていただきたい。ぜひお願いしたいために嫌みたらたらちょっと言わせてもらったのでございまして、まことに申しわけございませんでした。  次に質問することは、患者負担引き上げは早期受診・早期治療の妨げとなりかねません。先日の委員会において保険局長は、この程度の負担増では適正の診療の抑制は招かないと答弁していますが、二・六倍あるいは二・四倍という急激な負担増にもかかわらず適正な受診抑制を招かないという理論的根拠はどこにあるのか、そこら辺をちょっと説明していただきたいと思います。
  84. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 今回の改正における引き上げ幅、これは従来の医療保険の改革から比べますとかなり大幅なものであるということは私ども十分認識をしております。そういった意味では、急激な負担というものを短期間に求めるということについては、これは国民理解というものを十分求めなければいけないということも当然であるというふうに考えております。  ただ、医療保険制度というものは、これは相扶共済の制度でありますし、そういった場合ではやはりそれぞれが応分の負担をして支えていかなきゃいけない、そういった中で現下の医療の財政状況というのは非常に厳しいものがございます。それを何とか運営の立て直しということを図るということになりますと、この程度の引き上げということをお願いせざるを得なかったわけでありますが、この一部負担というものも絶対的な基準というものがあるわけではありませんから、あくまでもその時々における経済状況、所得状況国民生活水準との兼ね合い、こういったものの中で考えていくべきだろうというふうに思うわけであります。  そういった意味で、我が国医療保険制度によって受けられます医療の質、内容ということを考えますと、いろいろ御意見はございますけれども、やはりかなり高い水準にあるということは世界各国と比較しましても言えるのではないかというふうに思います。そういったものを支える保険制度でありますから、当然それに見合ったそれぞれ適正な負担というものをお願いせざるを得ない、そういった中で一部負担というのは受益負担の公平という観点からお願いしているわけであります。  そこで、今回の改正、これは衆議院の修正後における一部負担状況を見てみますと、いわゆる実効負担率という面で見ますと、平成九年度で二一・五%というふうになっておるわけでございますけれども、現在、健保の被保険者本人が一〇%であり、家族は入院が二〇%、外来が三〇%、それから国保は三〇%というようなこと等々から考えまして平均的にこの程度の負担ということでございますので、これによって適正な受診というのが阻害されることはないのではないかというふうに考えております。  また、老人につきまして見ますと、実効負担率は修正後で八・四%という水準でございます。  そういうことを考えますと、この医療保険制度、皆保険制度というものを維持していくという面においては御理解を賜りたいというふうに考えておりますし、また、今回の制度改正が成立いたしましたら、私どもとしては中長期的に向けて安定した医療保険制度というものを確立するために抜本的な改革案というものを策定していきたいというふうに考えておりますので、幅広く御理解を賜りたいと思います。
  85. 木暮山人

    ○木暮山人君 平成四年改正の健康保険法改正においては、衆議院において、政府管掌健康保険の中期的財政運営状況を勘案し、必要があると認めるときは国庫補助率について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるとの修正がされております。  すなわち、平成四年における国会の意思は、政管健保の財政悪化のときにはまず国庫補助率の復元で対応するというものであり、間違っても保険料率や患者負担のみを先行させるということではなかったはずであります。  政府はこの平成四年の検討規定についてどのように認識しておいでになりますか、お伺いします。
  86. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 平成四年の健康保険法の改正をお願いした際に、いわゆる政管健保の中期的な財政運営というものを制度改正でお願いしたわけであります。  当時の状況は今とは全く違いまして、一兆数千億の実は剰余金を持っておりました。そういった中で、この剰余金を事業運営安定資金という形にいたしまして安定した政管健保の運営を図っていくという、そういう考え方でこの制度改革を行ったわけでございます。しかし、その後急激な経済の変化、いわゆるバブル経済、それからバブルの崩壊というふうな状況の中でこの大きな枠組みというものの維持が非常に難しくなり、今日のような財政状況になってしまったということでございます。  この平成四年の改正の際に、そういった状況の中で、全体の制度のバランスの中で政管健保の国庫補助率、当時は一六・四%でございましたけれども、これを一三%に引き下げさせていただきました。そういった中で、当時政管健保の財政は非常によかったのでありますが、一方、国の財政は当時から非常に厳しい状況がございました。  そういった中で、当時としましてはいわゆるマンパワーの確保ということが非常に大きな問題になっておりまして、とりわけ看護婦さんの強化、看護体制の強化ということが大きな課題でございました。そのためには診療報酬上手厚い対応が必要であるということで、マンパワー対策としての診療報酬改定もその際に行われたわけであります。その際の国庫財源が非常に逼迫をしておったという状況の中で、この政管健保の国庫補助率を引き下げた財源をまさにマンパワー対策としての看護体制の強化に充てさせていただいた、医療保険制度の中で使わせていただいた、こういうような経緯がございます。  その際、国庫補助を引き下げることにつきましてはいろいろと御意見がございました。そこで、国会におきまして先生御指摘のような形の検討規定が置かれたわけでございますけれども、それから今日の状況は非常に大きく変化をいたしまして、政管健保の財政はもとよりでありますが、国の一般歳出の状況というものもさらに悪化をしてしまっているわけでございます。  そういった中で、この国費というものをどう効率的に、合理的に配分をしていくかというのがまさにこれから大きな課題でありますけれども現状の中におきましては医療費に対する国庫負担のウエートというのは非常に大きゅうございます。平成九年度でも七兆円近い国庫負担という状況でございます。また、厚生省予算だけではなくて社会保障全体の予算という面で考えてみましても、この医療費に対する国庫というのは非常に大きいシェアを占めております。  一方、福祉関係につきましては、これは一般財源によらなければ充実ができません。そういった中で、やはりこの福祉充実というものも非常に重要でありまして、その財源のシフトというものを考えてみた場合に、医療保険、とりわけ政管健保の国庫補助率をさらに引き上げて、そして国庫負担というものを医療費の中に入れていくということについてはどうしても限界がございます。  昨年の十一月二十七日に出されました医療保険審議会の建議におきましても、やはりこの医療費、を賄う公費負担につきましては、国や地方の財政構造が非常に悪化している現状ではふやしていくことに限界があるという建議をいただいております。この保険制度をとっております医療保険制度における国庫負担なり公費負担あり方、これは今回の抜本改革検討する上におきましてもその一環として検討していくことにしておりますけれども現状においてはこの国庫負担、政管健保の国庫負担をもとに戻すということは非常に難しい状況にあり、国家財政全体から見ても非常に厳しいということについて御理解を賜りたいと思います。
  87. 木暮山人

    ○木暮山人君 医療保険構造改革の進め方についてお伺いしたいと思います。  振り返ってみますと、私は、平成六年の国民健康保険法、老人保健法改正の際に本会議の代表質問においてその抜本改革を強く求めたところであります。それにもかかわらず、今回、国民健康保険、老人保健の抜本改革がまたしても見送られ、暫定措置にとどまったのはなぜなのですか。  さらに、これまでの長い検討過程において結論が出なかった問題が九月一日までにまとまるという保証、論拠はどこにあるのか、お伺いしたいと思います。
  88. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) それは今回の法案の御審議の中で各党各会派の委員の皆さんからもう抜本的な改革をしなさいという意見が非常に強く、これからの医療制度全般を考えても小手先の手直しては済まないという機運が今日ほど盛り上がったことはないと思うのであります。そういうことから、厚生省としてもそのような多くの委員意見に耳を傾け、逃げることなく責任を持って、厚生省の見識が問われているのではないかということを痛感しております。  そして、与党の医療保険制度改革に対する考え方も基本的な方針が出ておりますので、これからの構造的な改革を考えますと早いにこしたことはない。  そして、審議会というのは、この法案が通りますと新しい審議会が九月一日以降設置されますが、むしろ審議会の御意見を聞いてそれに基づいて案を出すというよりも、この三十数年間、大体の基本的な方向は出そろっているんだから、あとは決断だけじゃないかというような意見もございます。  まずはこの三十数年来の医療保険制度の成り冊立ってきた経緯、そしてこれからの方向を見きわめ、さらには各委員会での審議を見て、厚生省として一つの構造的な案を出して、それを与党の皆さんはどう判断するか、さらにはまた審議会はどう判断するか、まずは今までの考え方を総合的に整理しまして、厚生省として案をできるだけ早い機会に、九月一日までに案を与党がまとめると言っていますから、一週間やそこらでまとめることはまず困難だと思いますので、少なくとも厚生省の案を協議できる時間を、つくるまでの間に余裕を持った期間をつくるためにも厚生省としてはできるだけ早い機会に、できたら七月中に総合的な抜本的な改革案を出して、そして与党の協議あるいは国民の批判を仰ぎたいということを考えておりますので、私は九月一日までの間には必ず厚生省としての案を提示できると思います。
  89. 木暮山人

    ○木暮山人君 どうもありがとうございました。  今回の改正では、医療保険構造改革を進めるため、医療保険構造改革審議会を設けることとしております。一方、与党医療保険制度改革協議会と厚生省は九月一日とされる健保法施行時期までに医療改革プログラムをまとめることとしております。  先般の委員会審議では、これよりなるべく早い段階に厚生省抜本改革案を示すとの大臣の見解が示されておりますが、医療保険審議会に提示する抜本改革案は厚生省案になるのか、それとも与党の医療改革プログラムになるのか、どちらでしょうか。  また、新しい審議会は与党の医療改革プログラムにどこまで拘束されるのか、これについてひとつお伺いしたいと思います。
  90. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 厚生省が案をできるだけ早い機会に、できれば七月中に出したいと思いますが、これは必ずしも一つの案とは限りません。場合によっては複数になる。それを与党の医療制度改革協議会の委員方々がどう判断するか、同じになるのか、違う案を出すのか、あるいは修正するのか。この案に対して九月一日以降設置される審議会がまたどう判断されるのか。厚生省案がそのまま政府案、与党案になるのかどうかというのは出した時点以降じゃないとわかりません。その辺、御理解いただきたいと思います。
  91. 木暮山人

    ○木暮山人君 ありがとうございました。  特に、新審議会のメンバー構成については利害関係者を除くことがこれまでの大臣答弁で示唆されております。この点について再度厚生省の見解をお伺いしたいと思います。  もとより、医療医療保険構造改革関係者の利害関係を超えた調整がなされる必要がありますが、医療現場現実を知らない第三者のみによる審議会が果たして責任ある構造改革をなし遂げることができるでしょうか。  また、今後の歯科医療の果たす役割や歯科医療の特殊性を考えると、新審議会に歯科医療関係者の参画は不可欠であると考えますが、この点について厚生省の見解をお伺いいたします。
  92. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) この法案が成立いたしましたならば、仮称でありますが、医療保険構造改革審議会を発足させたいと考えておるわけであります。この中で抜本改革を御議論いただく部門の委員の人選でございますけれども、これは私どもとしてはそれぞれの利害代表というような形で御参画いただくということではなくて、やはり我が国における将来に向けた医療保険制度というものはどうあるべきなのかというふうな視点で国民的な立場に立ったそういった議論をいただく場にいたしたいということでありますので、私どもそういうような視点から委員の委嘱をお願いしたいというふうに考えております。  もとより、それはこの医療保険制度を御議論いただくわけでありますから、そういった意味で、医療なり医療保険制度なり、あるいは幅広く国民経済を含めまして見識のある方々にお願いをしたいというふうに考えておりますので、関係団体の利益代表というような形ではお願いをするつもりはございませんけれども、今申し上げたような視点からそれぞれ立派な方々に御参画いただいて幅広い御審議をお願いしたい、このように考えております。
  93. 木暮山人

    ○木暮山人君 医療提供体制の見直しについてお伺いしたいと思います。  今後、医療構造改革を進めていく上で医療提供体制の見直しは不可欠でありますが、この問題についても医療機関の機能分担、必要病床数の見直し、医師数の需給見直し等、改革のメニューは出尽くしているのではないかと思います。こうした観点から考えると、現在、介護保険法と一体のものとして参議院に送付されている医療改正案は十分なものと言えるのでしょうか。むしろ撤回し、構造改革にふさわしいものとして再提出すべきではないかと思いますが、御所見をお伺いしたいと思います。  また、小泉厚生大臣医療保険改革法案を明年にも再び提出することに言及しておられますが、これには医療改正案も含められますかどうかについてお伺いしたいと思います。
  94. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 次の抜本的な改革案には当然医療提供体制の改革も含んで提案をさせていただきたいと思っております。
  95. 木暮山人

    ○木暮山人君 どうもありがとうございました。これで終わります。
  96. 上山和人

    委員長上山和人君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時四十分まで休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ―――――・―――――    午後一時四十三分開会
  97. 上山和人

    委員長上山和人君) ただいまから厚生委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、健康保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  98. 加藤修一

    加藤修一君 平成会の加藤修一でございます。  それでは、本法律案について質問をしたいと思います。  今回の健康保険法改正案、平均的なサラリーマンでは約二・五倍、お年寄りでは約三倍の、いわゆる総額で二兆円もの新たな国民負担増をもたらす、そういった意味では国民不在の政策であると私は思います。この改悪案に対し、国民の間に強い怒りの声が渦巻いております。年々一兆円規模で膨らみ続ける医療費医療保険財政を圧迫する状況の中で、いわゆる重要な社会基盤の一つであります医療システムを維持するための医療保険制度改革は長年の懸案であると、それは非常にわかります。しかるに、今回の改正案につきましては、午前中も審議にありましたけれども、いわゆる薬価差益など構造的な問題に何らメスを入れず、財政手当てだけで済まそうとしておるわけでございます。  超高齢化社会に向かう今だからこそ、過重な負担を招かないような効率的な医療福祉のトータルプランを築くことが先決であると私は思います。九月一日までに医療改革プログラムを取りまとめたいということでありますが、そうであるならば、それまでの間は負担増を決めてしまうというような改正案ではなく、まず医療改革を国民の前に提示することが私は政府の責任であると思います。  要はこの改正案というものを撤回すべきであると。私は政府にその考えを伺いたい。よろしくお願いします。
  99. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 手順の違いだと思うんです。どちらを先にするかという考え方には相違があると思いますが、私は、今回の改正案が出てきたからこそ、もうこの一部の患者負担の引き上げ等の手直してはもたないな、本格的な総合的な抜本改革が必要だという声が強く上がってきたんだと思います。  もとより、今、財政状況の逼迫というものが大改革を促している。この医療保険財政に何ら問題がなかったら、このような抜本改革論というのはそんなに盛り上がってこなかったと思うんです。あらゆる改革も、このままではもたないということから、今回の医療保険財政の当面の財政運営考えると、一時的と思われるかもしれませんが、高齢者方々に若干の負担増をお願いするということであります。これがすべてを解決するというどころか、段階的な案であるということは私ども承知しております。今までの御意見、御批判を踏まえながら、今回の案だけではとてももたない、むしろすべてにわたって、医療制度全般にわたって全面的な見直しをせよという声に今後どうやってこたえていくか。むしろ、そのための踏み台に今回の案はなったのではないかということで、今までの決め方の経緯等、また御批判等を反省しながら、この法案が成立し次第、より根本的な案を示して御批判にこたえていかなきやならない。今回の案はその一つの、御批判を受けていますが、構造的な本格的な案をするための促進剤だと受けとめて努力をしたいということで御理解をいただきたいと思います。
  100. 加藤修一

    加藤修一君 今の御答弁の中で、踏み台とかあるいは促進剤という話がございました。医療費アップの理由として薬価差益あるいは出来高払い制度、そういったものが原因として考えられているわけですけれども医療改革プログラムの中で明確にこの二つについて具体的な改革の措置をとるべきであると思いますけれども厚生大臣のその辺の所見についてお伺いしたいと思います。
  101. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) ことしの予算委員会から始まりまして、厚生委員会、衆参の本会議、それぞれの御審議の場におきまして、何とかせよという声が一番強かったのが薬価基準の見直したと思います。これについては、今の算定価格、現行どおりでは今後なかなか本格的な改革は進まないのではないかということで、我々としてはこの薬価基準の見直しについて根本的に見直すという方向で今準備を進めております。  その際には、市場取引の実勢にゆだねるという原則に立って、参照価格制度というものも参考にしながら、日本現状に合うような、そして将来も二十一世紀をにらんだ、時代にたえ得るような改革がないものかということで、薬価基準の見直しを根本的に変えなきゃいかぬということで既に検討を進めております。  また、診療報酬体系につきましても、今までの出来高払い制度を原則として、定額・包括払い方式も若干取り入れておりますけれども定額払い方式も加味すべきじゃないかという意見も踏まえまして、出来高払い制度定額払い制度、それぞれ一長一短ありますけれども、両方の長所を生かすことができないか。出来高払い制度定額払い制度の組み合わせによって両者の長所を生かせるような組み合わせを考え方向改革案をつくってみたいなというふうに考えております。
  102. 加藤修一

    加藤修一君 橋本総理は行財政改革に関して、火だるまになってもやるとか、あるいは聖域はないという話をしております。ただいまの大臣の御答弁を聞いている限りにおいては、積極的にやりたい、抜本的なことをやりたいと、そうおっしゃっているわけですから、本当に実も花もある、結果のあることをきちっと出していただきたいと、そう強く要望しておきたいと思います。  これからの医療改革を考えるときに、いろいろな面があるとは思いますけれども、予防医療、これをいかにその保険制度の中に取り入れていくか、つまり重病になる前に早期発見・早期治療が極めて重要なことだと私は思います。果たして保険法の中で医療費を下げるぐらいの予防医療が取り入れられるかは極めて心もとないという感じもしておりますけれども、この点に関して大胆な予防医療の導入、例えば人間ドックの保険給付化等について政府の見解を伺いたいと思います。
  103. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 現在の医療保険制度の中においては、いわゆる保険給付としての予防医療というようなシステムはとっておりませんけれども、いわゆる保健福祉事業というような形でかなり弾力的な、そしてまたきめ細かい実施というものが確保できるようなシステムをとっております。また、例えば人間ドック等については現にかなり行われておるわけであります。  まさに早期発見・早期治療ということは非常に重要なことでありますが、そのためにいわゆる健診事業等を中心とした予防給付といいますか、そういったものを取り入れるべきかどうか、これはいろんな議論がございますけれども、今後その辺のところを保険給付の範囲ということで十分検討させていただきたいと思っております。一方、現行の制度のままということではなく、現行でとっておりますような保健福祉事業の充実といった考え方もあろうと思いますので、その辺は実効性のある予防事業と申しますか、予防医療と申しますか、そういったものが確保できるようなものを検討していきたいと考えております。
  104. 加藤修一

    加藤修一君 先ほどの質問の中で、私、人間ドックの話をしましたけれども、これについての何らかのお考えはございますか。
  105. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) これはかなり財政的な問題もございますし、また既に広く保健福祉事業の中で現に行われておるというような面もございますし、そういった中で考えてみた場合に、もうちょっと給付に取り入れるかどうかということはよく検討しなければいけないんじゃないかなと思っております。
  106. 加藤修一

    加藤修一君 今の答弁の中で財政の面もあるということで、確かにそうだと思います。  ただ、「医療費の中長期的低減の観点から、予防医療に対する給付は有効とされている。」というふうに「産業構造審議会総合部会基本問題小委員会 中間とりまとめ」、この中にそういう形で書いてございます。「医療費の中長期的低減の観点から、予防医療に対する給付は有効とされている。」と、あるいは「医療費の中長期的な抑制にも資するものと考えられる。」というふうに書いていますけれども、そういった点を踏まえた形で、ちょっとしつこい質問ですけれども、人間ドックについてはどうお考えですか。
  107. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) この予防医療給付としてやるべきかどうか、これはこれまでもいろんな意見がございます。ただ、今の医療保険制度というものはどちらかといいますとむしろ治療的なものを中心に考えておりますが、とりわけ健康づくりを含めた幅広い予防対策といいますか、そういったものが必要になってくるわけでありまして、そういう中で画一的な給付という格好で入れるのがいいのかどうか、その辺のところは十分検討する必要があるだろうというふうに考えております。
  108. 加藤修一

    加藤修一君 じゃ、その点についてよろしくお願いしたいと思います。  予防医療ということを考えていく場合に、もちろん健康診断による早期発見・早期治療、先ほどの答弁の中にもございましたし、さらに将来病気を誘発させるような要因に対して今からどう考えるかということも大事なことだと思います。  例えば、環境汚染が進むことによってそれに伴う病気が発生する可能性も十分考えられるわけですし、大きく考えていきますと、そういったことに対処すること自体もある意味では予防医療の中に入るのではないかなと思っておりますけれども、いわゆる長期的な、将来医療費の増大という要因として、例えば感染症が増加するとか、あるいは地球温暖化によって健康面に悪影響を与えるとか、あるいはオゾン層の破壊の問題によって健康に悪影響を及ぼすとか、こういつたいわゆる長期的な要因についてはどのように厚生省はお考えでしょうか。
  109. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) それは医療保険との関係というお尋ねでございますか。それとも一般的なお尋ねでございますか。
  110. 加藤修一

    加藤修一君 一般的な話ということです。
  111. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) さまざまな環境問題、今、先生御指摘のございましたような問題がございます。これはヒトの健康に影響を与えるのではないかというふうに言われているわけでございますが、具体的にどのぐらいの環境の負荷量がどの程度人間のどういう部分にどういう影響を及ぼすかという確定的なものがはっきりいたしませんと、それを推測するというのは必ずしも容易ではない。  今いろいろ御指摘をされておられます分野の問題というのは、動物等についてある影響が見られるので人間でも問題があるのではないかというふうに言われている問題が結構多いわけでございます。私どもとしましては、そういう確定的な影響というのは、やはり人間の健康に具体的にどのような影響がどの程度出てくるかということをはっきりさせることをしませんと、推測することは大変難しいのではないかと思います。
  112. 加藤修一

    加藤修一君 それは厚生省の統一的な見解と考えてよろしいですか。
  113. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 統一的といいますか、私どもが所管をしております関係の分野におきましてはまだ不確実性のものが多いというお話を申し上げたわけでございます。
  114. 加藤修一

    加藤修一君 まだまだ確定した話でない。要するに、その辺のことについて厚生省の立場で調査検討したということはございますか。
  115. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 個々の環境汚染因子等々につきましては、適宜調査研究をいたしているところでございます。
  116. 加藤修一

    加藤修一君 具体的には、後ほどその辺についてまた質問させていただきたいと思います。  それでは次に、いわゆる健康を阻害するという一つの問題として今非常に大きく取り上げられている問題ですけれども、有害化学物質によるいわゆる環境汚染、これに基づく健康障害、欧米ではエンドクリン問題と言われていますけれども、いろいろな呼び方があるようであります。ホルモン様化学物質問題とかそういう言い方もしているようでありますけれども、これについてお伺いしたいわけですけれども、要するに特定の化学物質が動物の体内で性ホルモンの働きをする、そういったことからがんやいわゆる生殖機能の異常を誘発する問題だというふうに言われております。  きょう皆さんのお手元に配付させていただいた資料がございます。これが五枚あると思いますけれども、GLOBEの世界総会でこういう問題について、エンドクリン問題ということで議論がされたわけです。内分泌撹乱化学物質、こういう物質がいわゆる有害的な化学物質ということですけれども、例えば一ページ目の三番目には、「世界中の科学者は、内分泌撹乱化学物質に関連して生じている、再生能力や免疫機能の破壊、行動上の障害や知能の不足といった、種」、人間も種の一つですけれども、「種全体にわたる影響の可能性を憂慮している。」とか、あるいは「重要な発育段階における微小な量の有毒化学物質への暴露によってもたらされる野生生物への影響、精子数の減少、生殖器官におけるガンの増加や、発育障害による人間の潜在的能力の喪失などといった研究により、警告を発する。」と、GLOBEインターナショナルがそういう認識のもとにこういうことを言っているわけです。  四枚目にその疑惑対象である化学物質が書かれてございます。いわゆる「内分泌機能および生殖機能を撹乱すると報告されている化学物質」と。  最後が新聞の記事でございます。昨年ベストセラーになった「アワ・ストーレン・フューチャー(奪われた未来)」、それが今非常に欧米で物議を醸している、議論が沸騰しているという話ですけれども、その中では、「ある種の化学物質が野生生物や人のホルモンをかく乱し、生殖や発育の異常、がん発生などを引き起こしている可能性を、自然界の奇妙な現象を例に指摘している。」と。例えば、フロリダ州で見つかった交合しない、あるいは巣づくりをしないワシとか、ペニスが小さくなったワニ、あるいはカリフォルニア州では雌同士のつがいのカモメとか、あるいは北海におきましては一万五千頭のアザラシが急激に死んだとか、そういったことがこの「アワ・ストーレン・フューチャー」の中に書かれてございます。  これはレイチェル・カーソンが書いた「沈黙の春」の続編だと言われているぐらいに今相当に議論の種になっている本で、前書きでゴア副大統領がこの本について絶賛しているというところがあるわけですけれども、いわゆる生殖機能まで撹乱させ得る化学物質が存在している、しかもそれが生物界、さらにだんだん人間の方に進んできている可能性があると、そういうふうに言われているわけですけれども、これについてどのように厚生省認識しているかということについてお願いしたいと思います。
  117. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 近年、環境中に微量に存在いたします。ある種の化学物質が、今御指摘のございましたように、ワニやカモメ等の野生動物に対しまして内分泌系を中心に影響を及ぼしているのではないかという報告が欧米諸国を中心になされ、議論を呼んでいることは承知をいたしております。  現時点では、国際的にもそれらの化学物質がヒトの健康にどのような影響を及ぼすかということについてもいろいろな議論がされているところでございますが、まだ未解明なところも多うございまして、今後の調査研究が重要であろうというふうに考えております。
  118. 加藤修一

    加藤修一君 今の件に関連いたしまして、あらゆる種類のプラスチック可塑剤に広く使われているフタル酸エステルというのがありますけれども、これが食品の中に溶け出してしまう、またそのプラスチック容器を電子レンジにかけるとこのフタル酸エステルが溶け出してしまう、こういうことが言われております。これが体内で蓄積されるとエストロゲンという女性ホルモンに似た働きをすることがわかってきつつあると、こういうふうにも言われておりますね。  このプラスチック容器からの化学物質の溶出についてどういう基準になっているか。さらに、こういったホルモン様化学物質に対応した基準の見直しということについては、もちろん確定した結果が出ないとなかなかそれはつくりようがないわけですけれども、その辺の見通しを含めて、基準とその両方についてちょっと御見解をお願いしたいと思います。
  119. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) プラスチック製の食品用容器包装につきましては、食品衛生上の危害の発生を防止するという観点から、食品衛生法第十条第一項に基づきまして、容器包装に用いられるプラスチックの種類ごとに溶出する可能性のある物質の量の限度等、必要な規格基準を定めまして、この規格基準に適合しないものにつきましてはその販売、使用等を禁止しているところでございます。  プラスチック製の容器包装に使用される物質を含めまして、化学物質の性ホルモン様作用につきましては、先ほども申し上げましたように、国の内外におきまして検討が始められたところでございますので、今後、国際的な動向あるいはさまざまな研究結果等も踏まえまして、必要があれば食品衛生上の対策について規格基準を含めまして検討してまいる必要があるというふうに考えております。
  120. 加藤修一

    加藤修一君 こういういわゆる化学物質が日常の中であちこちに出回っていて、しかもそれが先ほど言いましたようにホルモン様化学物質というふうに言われているものもあると。  それで、今、国際的な動向云々という御答弁がございましたけれども、このホルモン様化学物質について国際機関が動き出していると思います。例えば、UNEPとかILOとかWHO、そういうところの呼びかけでっくられた化学物質の政府間フォーラムであるIFCS、これの第二回会合でこの問題を取り上げているわけです。さらに、OECDで構成しております化学物質安全管理機構間プログラム、IOMC、ここでもホルモン様化学物質についての調査指示しているというところでございます。  ここ二、三年、海外で急速にこういった対策あるいは検討等々を含めて広範に活動が積極的になってきているように思いますけれども、この初について厚生省はどのように把握しておりますか。
  121. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 地球サミットで採択されましたアジェンダ21の化学物質安全対策関係部分を履行いたしますために設立されましたIFCS、化学物質の安全性に関する政府間フォーラムでございますが、そのIFCSにおきましてけいわゆる性ホルモン様化学物質に関しまして、各国際機関が行います調査研究が重複のないように調整を行っているというふうに承知をいたしております。また、OECDにおきましては主にこれらの物質の試験法の開発に関する活動を行っているというふうに承知をいたしております。
  122. 加藤修一

    加藤修一君 この問題については環境庁も研究班を設置しておりますし、そういった中で人体や生態への影響を調べて来年三月には報告をするという予定で、通産省はいち早く昨年来からやっております。ことしの五月だと思いますけれども、その報告を終えていると。当然、ヒトの健康あるいは生命を守る厚生省としてもこういった面についての研究班等に類するものをつくっていると思いますけれども、その辺について教えていただきたい。
  123. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 厚生省におきましては、性ホルモン様化学物質問題の検討を進めますために平成八年度から研究班を組織いたしまして、内分泌系を中心といたします作用の有無、あるいはその強度を調べるための試験方法等について調査研究に取り組んでいるところでございます。
  124. 加藤修一

    加藤修一君 それはいつごろ発足したわけでしょうか、研究会みたいなものは。
  125. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 平成八年の十一月から検討を開始していただいているところでございます。
  126. 加藤修一

    加藤修一君 昨年末ですけれども、OECDの環境健康安全部会、ここでホルモン様化学物質についてのアンケート、これを加盟国二十九カ国に出していると思いますけれども、このアンケートの締め切りがたしかことしの二月十七日だったと思うんですけれども日本の回答が四月三日に届いたということで、二月十七日の締め切りに間に合わなかった、これは大臣御存じじゃないですね。この辺はどういうふうになっていますか。  いわゆる二月十七日までの締め切りがあったにもかかわらず、回答が四月三日までかかってしまったという、その辺の背景を含めて、何らかの理由があるんでしょうか。
  127. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) OECDにおきましては、昨年十二月二十日付で加盟国に対しまして性ホルモン様化学物質についての関心の度合いあるいは規制の現状等についてアンケート調査を実施したところでございますが、我が国はこれに対しまして平成九年の三月十九日付で回答いたしております。  なお、厚生省は通産省とともに一般工業化学物質の観点から回答いたしておりますが、農林水産省は農薬の観点から、環境庁は環境保全の観点から別途回答されたというふうに聞いております。
  128. 加藤修一

    加藤修一君 そうしますと、三通りのものが出ていったという理解でよろしいですか、それぞれに回答をしたということで。
  129. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 他省庁分については、別途回答したという情報しか私どもは得ておりません。厚生省につきましては、今申し上げましたように、通産省と工業化学物質という観点で共同して回答したところでございます。
  130. 加藤修一

    加藤修一君 厚生省はダイオキシンの関係で、このダイオキシンも要するにホルモン様化学物質問題の対象、疑惑になっている化学物質なわけですけれども、ダイオキシンについて、五月二十五日の新聞によりますと、「母乳の汚染度全国調査」という、いわゆる焼却場の影響分析を行っていくという話があります。  それから、六月二日にはさらにそういう焼却場からのダイオキシンだけじゃなくて、要するにさまざまな食べ物に含まれている可能性が十分あり得るということで、いわゆる食品汚染という観点から調査をしょうとしている、汚染の実態や体内の蓄積経路、そういった複数の調査をスタートすることを決めたと伺っていますし、どういう調査内容になるかということを伺いたいということです。
  131. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) ダイオキシンにつきましては、動物実験におきまして強い毒性を示すことが知られておりまして、国民の健康を守るという観点からその対策は重要な課題であるというふうに認識をいたしております。  このため、厚生省におきましては、ごみ焼却施設におきますダイオキシンの排出実態あるいは食品における状況あるいは母乳での濃度等々につきまして調査を行っているところでございますが、人体におきますダイオキシンの汚染状況につきましてはまだ必ずしも十分なデータがそろっているというふうには言えない状況にございますので、今後関係省庁とも相談をしながら実態調査を実施いたしまして、知見の集積に努めることとしております。  なお、調査の項目等につきましては一部新聞報道もされているところでございますが、ただいわゆるダイオキシンの濃度測定というのは、これは先生御存じのように、比較的お金もかかりますし、時間もかかりますし、測定機関も余り多くない等々いろいろ問題がございますので、どういう調査方法でどういう調査項目をやるのが最も効率的で、しかも有用なデータが得られるかという点につきましては、専門家の先生方にお集まりをいただきまして十分御相談をした上で適宜調査を実施に移してまいりたいと考えているところでございます。
  132. 加藤修一

    加藤修一君 これは非常に重要な調査だと思いますね。非常に重要だし、大切な調査で、これはもっともっと早くからやるべきだったというふうに私は思います。  もちろん、今答弁の中にあったように、難しい調査であるということもございますけれども、ただ私が聞いている範囲では、今回の食品汚染に関しての調査については、母乳分析、食品分析、河川の水質分析、その三つの分析を対象にしているというふうに伺っていますけれども、そこはどうでしょうか。ちょっと確認したいんです。
  133. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) これまではダイオキシンに関しましては食品中の濃度、河川あるいは飲用水中の濃度、あるいは大気中の濃度といったようなことがそれぞれ実施をされてきたわけでございます。しかしながら、人間の健康影響との関係を評価いたしますためには、これは急性毒性というよりは慢性の影響というものを十分考慮に入れなければなりませんので、その調査対象あるいは調査期間、どのぐらい追っかければいいかというふうな問題等、十分に研究計画を練った上で実施することが必要だと考えておりますので、過去に行いました調査結果は調査結果として活用しながら、今後どのような形で体系的に進めていくかという点につきましては、早急に専門家の先生の御意見を伺いながら実施に移してまいりたいと考えているところでございます。
  134. 加藤修一

    加藤修一君 従来、この手の我が国のガイドラインとかあるいは規制値を決める段階においては、海外の文献等々を集めて、あるいは海外の規制値等について研究して、それで我が国の規制値を決めていく、あるいはガイドラインを決めていくというようなことが多いのかなという感じが私の印象としてはするわけですけれども、ライフスタイルとが食べ物のあれが全然違うということを考えていくと、やはり我が国独自のデータを十分に整えていくことが必要であろうと。  逆に言うと、そういったデータが不足していると。そういうことからこういった研究調査をずっと長く続けていくことが、やはり将来起こり得る問題について迅速に対処をすべき一つの結果を得る、あるいはそのチャンスが出てくると思いますので、その辺について、先ほどの答弁にございましたように、関連の専門家を含めての検討の中でしっかりとやっていただきたいと強く要望しておきたいと思います。  それで、今ホルモン様化学物質問題の中でたまたまダイオキシンの件につきまして厚生省が取り組んでいることについてお聞きしたわけですけれども、いわゆるエンドクリン問題、私は、今疑惑になっている物質についてはかなり灰色であるという印象を持っているわけですけれども、単に印象だけじゃなくて、いろいろな論文を読んでみますと極めて深刻な状態につながる可能性が大きいと、そういう理解をしております。  今ダイオキシンの関係で調査の話が出ましたけれども、私は、エンドクリン問題に関しても、いわゆるホルモン様化学物質問題に関してもそういった調査をすべきであると。例えば、精子の数を調べるとか、これはさまざまなヨーロッパでやっているケースを考えていきますとやはり減ってきている傾向にある、有意な差があると、そういう調査レポートもございます。ですから、精子の数を調べるとか、あるいは半陰陽とか、さまざまな形で性器が奇形的な形になっていることも多く見受けられるようになってきている。  これは日本の話じゃなくて欧米の話ですけれども、そういった点から考えますと、第二番目としては新生児の性器を調べるとか、最後は死亡者の精巣について調べるとか、そういった意味での具体的に日本人を対象にした、日本に住んでいる方を対象にしたそういった調査があってしかるべきじゃないかと思いますけれども、その点についてどうお考えですか。
  135. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 性ホルモン様の化学物質と言われております物質とヒトの健康影響との因果関係についてでございますが、現段階におきまして私ども把握しております情報では、国際的にも解明されていないという状況にあるというふうに承知をいたしておりまして、そういった状況の中で、ヒトを対象に個々具体的な研究を進めるということにつきましては、必ずしも的確な研究にならない可能性があるのではないかと考えております。  したがいまして、当面は国際的な情報収集に努めますとともに、性ホルモン作用の有無やその強度を調べるための試験方法の確立等の基礎的な部分についての研究が必要であると考えておりまして、厚生省におきましても研究班を組織いたしましてこれらの調査研究に取り組んでいるところでございます。
  136. 加藤修一

    加藤修一君 今の答弁は、私は消極的だなという感じがいたします。  なぜそういう言い方をするかといいますと、昨年の八月にクリントン大統領が食料品質保護法というんでしょうか、そういう法律、それからもう一つは安全飲料水法、修正案ですけれども、その二つの法案に対して署名をしていると。署名した結果、アメリカのEPAは二年以内に農業やそのほかの化学物質でエストロゲン、またはほかの内分泌撹乱作用のある化学物質のスクリーニングプログラムを開発しなければいけない、三年以内にそのプログラムを実行することになったというふうな、非常に手早いそういう問題に対する対処の仕方をしているわけですけれども、これを聞いてどのようにお感じになりますか。
  137. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 御指摘の点は、アメリカの環境保護庁とその具体的なプログラムの中身、背景等については十分連絡をとっておりますので、そういう情報を踏まえて対策をとる必要があれば対処してまいりたいと考えております。
  138. 加藤修一

    加藤修一君 じゃ、同じようにアメリカのケースですけれども、EPA、今言った二年以内と三年以内の話ですけれども、それから米国化学工業協会では二年間で三・二百万ドルをこの調査に対して投入する。あるいはヨーロッパにおいては、ヨーロッパ化学工業連盟協議会が優先的な研究テーマとして取り上げている、スクリーニング手法の開発もすると、あるいはヒト影響に関する疫学調査等が考えられていて、しかもその三年間で七百万ドルを計画していると。あるいは世界の化学業界としては、昨年十月のICCAの総会でありますけれども、エンドクリンのコーディネーティンググループを設置して、要するに各国が協力して対応をとる体制考えておると。  厚生省としては単に国際動向を見るだけということですか。具体的に、例えばさっき私が申し上げました精子の数をとるとか新生児の性器を調べるとか死亡者の精巣を調べるとか、そういったいわゆるライフスタイルが全然違う日本国民の生命、健康を預かっている厚生省として具体的なデータ、バックグラウンドのデータも含めて、そういうことを今からやっておかなくちゃいけないということになりませんか。どうでしょうか。
  139. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) ヒトへの健康に対する影響といいますのは、御指摘のような化学物質だけではございませんで、さまざま多様な因子があるわけでございます。しかしながら、国際的にも注目をされているという状況にかんがみまして、平成八年度の研究におきましては、今御指摘のございましたスクリーニング法の開発の研究も行っておりますし、基礎的な部分につきましては逐次手をつけております。  御指摘のもっと広範囲な調査研究をする必要があるかどうかにつきましては、先ほど申し上げましたように、ヒトの健康との関係がまだ十分わかっていないというふうなこともありますので、世界の研究動向等も踏まえて適切な対処をしてまいりたいと考えております。
  140. 加藤修一

    加藤修一君 ちゃんとわかっていないからこそ逆に調べる価値があるんじゃないですか。違いますか。
  141. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 研究計画を立てますときは当然ある仮説を立ててやる必要があるわけでございまして、いわゆるどういう障害が出るかわからないけれども調査をするというのは私は個人的には非常に難しいと思います。したがいまして、ある程度ターゲットになる組織というものがわかってくればそれにピントを合わせた調査研究は可能になるものというふうに考えております。
  142. 加藤修一

    加藤修一君 じゃ、欧米で具体的にそういった調査に入っていることについては、日本政府としては、とりわけ厚生省としてはまだまだああいう調査を見ている限りにおいては我が国としてはタッチできない段階のレベルのものであると、こういう言い方ですか。
  143. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 先ほど来申し上げておりますように、研究班を設置しておりまして、諸外国の情報等につきましても収集に努め、それらを研究班の先生方に評価をしていただいているところでございますので、そういう結果を踏まえて対処してまいりたいということでございます。
  144. 加藤修一

    加藤修一君 米国のEPAではいわゆるホームページを開設しておりますけれども、現在ある農薬や工業用化学薬品の検査は不十分だとしていると、それがスクリーニングの話になると思うんですけれども、要するにこういった物質による生物の生殖への影響評価試験のガイドラインの改定をEPAが今提案している段階だと思います。  そして、非常に大事なのは、そのホームページの中でこういう表現をしておりました。どういう表現かといいますと、我々はすべての疑問に対する答えが出るまで化学物質の対策をとるのを待つことはしないということなんですね。厚生省の見解とはちょっと違うんですね、この辺は。だから、厚生省ははっきりするまで何も手を打たないという、これはちょっと言い方がきついですけれども、何かあるとまずいから対策を早目に打つという姿勢をやはり一方では僕は持つべきであると。どうですか。
  145. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 何もやっていないというふうに御指摘をいただくのは私どもとしても大変遺憾でございまして、平成八年度から今申しましたように対応をしていく際に、基礎的な部分についてきちっとした技術の確立、標準的な方法というものを確立しておきませんといろいろな諸調査ができないということになるわけでございます。それらにつきましてはきちっとした研究班を設置して対応をしているところでございます。  なお、EPAの件に関しましては今、先生からも御指摘がございました。私、現在の時点で今御指摘のありました情報については十分承知をいたしておりませんが、先ほどお話を申し上げましたように、EPAと具体的な技術的なレベルでの情報交換等を行っておりますので、そういった情報を集積して専門家の御意見も聞いて対処してまいりたいということでございます。
  146. 加藤修一

    加藤修一君 この件に関しましては、日本もやはりデータを早目に蓄積していくことは極めて重要だと思いますし、恐らく厚生省もそういうふうなお考えだと思います。  そういった観点から考えていきますと、今も検討の最中だということですけれども、予算を十分つけて具体的な、先ほどから精子云々と言っておりますけれども、そういう日本に住んでいる人を対象にした調査検討されてやるべきだと思いますし、そういった点から考えますとそれなりの予算が必要なわけですから、十分予算をつけてしっかり今以上にやっていただきたいと思いますけれども厚生大臣の積極的な御答弁をその辺についてお願いしたいと思います。
  147. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 人間も動物の一種ですから、動植物の状況に変化が兆した、異常だと思われる事態が起こったときにやはり敏感に反応は示すべきだと私は思います。  動物の世界で、雌同士がつがいになったり雄同士がつがいになって異常だと。考えてみると、人間の世界も最近そういう事例が、雄雌じゃありませんけれども、同性が結婚したり、あるいはしたいという人たちがふえているわけですね。これは果たして異常なのか、あるいは動物の世界で自然なことなのか、これはどっちなのか、私は専門家の判断にまちたいと思うんですが、こういう生態系の中で動植物の中に化学物質によって異常な事態が起こるということは、必ず私は人間にも起こってくると考えていいと思うんです。  今回のこの性ホルモン様化学物質問題につきましても、厚生省としても研究班を設置しておりますし、国際機関あるいは関係省庁とも連絡をとって、人体をいかに守るかといいますか、国民の健康をいかに守るか。そして、人間というのは食べていかなきゃ生きていけないんですから、当然、動植物を口にするわけです。その日にする物に異常事態が起これば、それを食べれば必ず人間にも影響が起こってくると考えた方がいいという観点から、私はそういう生態系の問題、化学物質の動植物に対する異常な影響については敏感に、神経質と言われるぐらいな研究体制を今後もとっていくべきだと思いまして、いろいろ研究しながら、また関係各国、省庁と連携をとりながら研究調査推進に努めていきたいと考えております。
  148. 加藤修一

    加藤修一君 よろしくお願いしたいと思います。  それでは次に、感染症の問題ということですけれども、いろいろな本を読んでいきますと、二十一世紀は感染症の時代だというふうなことが言われております。ここ数年、国内の伝染病の状況を見ていきますと、やはり傾向としてエイズやO157のような、いわゆる輸入感染症というのが正式な名称かどうかはわかりませんが、ジリオネ菌とか腎症候性出血熱、デング熱等、そういったものが日本に入り込んでくる可能性が十分あり得ると。  もう御存じのように、O157については昨年来大変な状況であったわけですけれども、WHOの勧告によりますと本年も猛威が懸念されていると。この辺について、厚生省認識と有効な対策、さらに今後懸念されるいわゆる輸入感染症についての厚生省認識と取り組みについてお伺いしたいと思います。
  149. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 輸入感染症に関する御質問でございますけれども、国際交流の活発化とか飛行機による大量輸送時代の到来ということによりまして、感染症が地球上のあらゆる地域から、事例はまれでありましても短時間のうちに国内に持ち込まれる可能性が指摘をされているところでございます。特に、我が国では経験したことのない新興感染症や、それから薬剤耐性を備えた再興感染症の侵入、発生、拡大の危険性が危惧されているところと承知をいたしております。このため、新興・再興感染症に係る対策の強化は国民の健康を守るためにも、また危機管理の観点からも重要な課題認識をいたしております。  このため、厚生省におきましては、次期の通常国会に伝染病予防法の改正を目指しまして、現在、公衆衛生審議会伝染病予防部会の中に基本問題検討委員会を設置し、感染症対策全般の見直しのために検討を行っているところでございます。国民の皆様が安心できるような感染症対策の再構築を図ってまいりたいと思っております。  また、法改正を準備しているさなかであっても、国内外の感染症による健康危機管理に適切に対応するためには内外の感染情報を的確、迅速に収集し、その情報を国民の皆さんを初め医療機関等に迅速に提供することが重要だと認識をしております。このため、平成九年度に国立予防衛生研究所から新しく改組された国立感染症研究所の中に感染症情報センターを設置し、日本のみならず海外、各国の感染症に関する情報確保に努めているところでございます。  さらに、新興・再興感染症の診断、治療のための研究を強力に進めることが極めて重要でありますので、厚生科学研究費において、平成八年度は補正を含めて四億四千万のところを平成九年度は新興・再興感染症研究費として十五億を計上いたしまして、必要な研究推進専門家の育成を図っているところでございます。  O157も、先生がおっしゃいましたように、これは一九八二年に初めて世の中に出てきた病気でございますが、日本にとっては外国から入った病気でございまして、これについても一緒にこの伝染病対策として検討しているところでございます。
  150. 上山和人

    委員長上山和人君) 時間が二分過ぎております。
  151. 加藤修一

    加藤修一君 時間が来ましたので、質問ありますけれども、終了いたします。
  152. 菅野壽

    ○菅野壽君 社民党の菅野でございます。  前回に引き続き、健康保険法等の一部を改正する法律案について御質問申し上げます。  まず、先日来問題になっております小児の薬剤負担の問題についてお伺いいたします。  小児の薬剤負担が六割近い重い負担になることについては厚生省も認めておられるところでございます。この点、局長抜本改革のときに見直すというふうにおっしゃっておりました。六歳未満の小児については薬剤の別途負担を廃止すべきではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。厚生大臣の御見解を承りたいと思います。
  153. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今回の改正案につきましては、薬剤にも負担をお願いしているわけでありまして、先般、衆議院を通過する際に修正案が提出されました。その際にも、薬剤については別途負担をルートの中で御議論いただきまして、修正案が出され、今、参議院において御審議いただいているわけでありますが、今後の医療保険財政の運営考えますと、安定的に維持していくためにもぜひともこの薬剤の負担も当面の段階的な改革案としてはやむを得ないものと理解しておりまして、今回この法案をぜひとも成立させていただきまして、その後に総合的な改革案の中で今回御審議いただきまして、いろいろ御意見が出ている御批判も踏まえて抜本的な検討に着手したいと考えております。
  154. 菅野壽

    ○菅野壽君 衆議院の修正では、患者負担医療費の総額を上回る場合には、当該費用の総額を負担の限度とする健康保険法第四十三条ノ八第五項を改めています。この趣旨、理由について御説明を願いたいと思います。
  155. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 政府原案におきましては、法律の四十三条ノ八第五項でございましたが、そこの条文におきまして、今回薬剤に係ります新たな患者負担をお願いしたわけですが、その額が医療給付費の総額を超えないようにするということで、当該患者の薬剤に係る負担額医療給付費の総額とを比べまして、医療給付費を薬剤の負担を超える場合には当該医療給付費を限度とするという規定がございました。  衆議院の修正におきまして、ここの条文の手直しがございました。これは技術的な手直しということでございまして、患者負担の額の算定方法、今申し上げましたような内容につきましては政令でこれを定めることができるという形に修正がなされております。そういった意味では、この法律の四十三条ノ八第五項に相当する規定を改正後は政令で定めるということを考えております。
  156. 菅野壽

    ○菅野壽君 次に、前回に引き続き、財政構造改革の問題に関連してお伺いいたします。  前回、平成十年度厚生省予算について、厚生大臣から、社会保障関係予算は九年度よりマイナスになることはない旨の力強い御発言をいただきましたけれども、しかし八千億に上る当然増に切り込むだけでも大変な問題でございます。  厚生大臣は、平成十年度において当然増を具体的にどこまで切り込むお考えか、また社会保障関係予算の伸び率をどの程度にすべきだとお考えか、承りたいと思います。
  157. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 十年度予算を考えますと、九年度に比べて当然増、いわゆる義務的経費が八千億円ぐらいふえるということが見込まれております。その中で、橋本内閣が財政構造改革の五原則の一つとして、十年度予算は一般政策経費として九年度に比べてマイナス予算を組むというのが大原則になっております。その大原則の中で、私は、閣僚懇談会あるいは財政構造改革会議の企画委員会におきましても、厚生省予算の場合は九年度に比べてマイナス予算に組むのは現実的には困難だということははっきり申し述べております。  そこで、八千億円増の中でどの程度切り込めるかというのは、きょう委員会が終わりましたらば臨時閣議が行われると思います、その中で正式に決まると思いますが、当然八千億円からかなり大幅に切り込めという方針が出ると思っております。その方針が出たからには、大変厳しいと思いますが、その方針に沿ってどういう構造的な改革案が出せるかということに精力的に取り組んでいかなければならない。当然、厚生省予算が前年度よりプラスになりますから、ほかでマイナスにしなきやならない。各省庁が厚生省のプラス分以上のマイナスをしていただかなきゃ十年度は九年度予算に比べてマイナスにできませんから、その方面の御理解をいただきながら、厚生省としては九年度より十年度予算はマイナスにできませんが、当然増八千億円をいかに切り込むかということで全力を傾けて改革案をつくり上げて、各方面、国民理解が得られるような改革案を出さなきゃならないと思います。
  158. 菅野壽

    ○菅野壽君 さらに、先日の財政構造改革会議企画委員報告では、社会保障関係予算の総枠規制の考え方が示されております。  厚生大臣は、社会保障関係予算の伸び率を高齢者数の増以下に抑えるという総枠規制の考え方にどのような御見解を持っておられますか。
  159. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 西暦二〇〇〇年までの三年間を集中改革期間とする財政再建を最優先にする。もう国債発行予算というのは限度がある、増税もできないということの中で、いかに効率的な予算を組むかということで今後進まなきゃいけないと思いますが、その中におきまして厚生省関係予算というのは私は一番伸びる予算だと思います。また、国民の要望も強い。そして、すぐには切れません、法律で決まっておりますし、今まで長年、先輩の方々社会保障制度を構築するに当たり努力をしてきた中で組み立てられたものでありますから、削れといったって一気には無理な面があると思います。  そういう中で、年金にしても医療にしても、今までの社会福祉関係予算におきましても、すべての問題をこのまま維持していくとなりますと、当然いろんなサービスを受ける高齢者が人口構造からいってもふえてまいります。黙っていてもふえていく。そういう中での効率的な案でありますから、どの制度におきましても相当厳しい痛みを伴うのだと私は理解しております。  その痛みを伴う場合、やはり公平で公正なものでなければならない。国民理解を得て、お互いがサービスを受ける立場とそのサービスを支える、負担する立場という両方の観点に立って、できるだけの理解を得られるような案を今後とも継続して考えていかなきやならないと思いまして、当面どれだけ切るということは今の段階では言えませんが、制度全般にわたって来年度、十年度だけじゃない、十年度も十一年度も十二年度も不断の見直しが必要だという観点から改革に当たっていきたいと考えます。
  160. 菅野壽

    ○菅野壽君 この総枠規制に対して国民の間からは、十年度から年金の物価スライドがなくなるのではないだろうか、また年金額がカットされるのではないだろうか、予算を超えた部分は全額自己負担になるのではないだろうかなどの不安が広がっております。  構造改革に伴う効率化により伸びの抑制を図ろうというのが我々の意図でありますが、これが誤解されている向きもあります。この点について改めて大臣の御見解を承りたいと思います。
  161. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 年金改革に当たりましては、若干一部の報道でひとり歩きしている面があると思います。  というのは、何歳から支給するかという、二〇二二年に六十五歳支給を開始して今の給付を維持するか、保険料負担給付を維持するために上げていくかという既定路線と、物価スライド等あるいは賃金スライド等いろいろな条件を変えることによって動いていきますから、私としては年金におきましても公的年金をどのように安定的に運営される制度を維持していくかという観点から考えていきたい。  その際に、いかに予算を削減しなきやならないからといって、今まで決められた約束事を急に破ることはできない。やはり国民理解を得ながらといいますと、来年度予算ですぐ変えるということは私としてはとらない方がいいと。むしろ平成十一年の財政再計算期にいろいろな検討材料を提供して、将来どのような改革をすべきか、その平成十一年の財政再計算時に大きな改革案をまとめることができるような案を今から、ことしじゅうから提供していくべきじゃないかと。  その際には、年金を何歳から支給開始したらいいのか、そして給付を現在程度に維持すべきか、あるいは給付水準をもう少し下げた方がいいのか、保険料負担はどの程度にすべきか、公費はどの程度投入すべきか、そういう点を、一つの案しかないということではなくて複数の案、複数の選択肢を提供して、最終的に政府案としてまとめる際には、各方面からの御意見を伺いながら、国民ができるだけ年金制度が安定的に維持されるような安心感を得られるようなよりよき制度に持っていけるような案をつくっていきたいなと、そのための準備をことしから始めていきたいというふうに考えております。
  162. 菅野壽

    ○菅野壽君 当然増さえ大きく切り込むということになれば、新ゴールドプラン、それからエンゼルプラン、障害者プラン等について必要な予算が確保できないのではないかという懸念もございますが、保健福祉三プランについての予算の確保、目標達成への御決意を承りたいと思います。
  163. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 厳しい財政状況のもとで構造改革はどうしてもしていかなきやなりませんが、厚生省として社会保障制度充実させていくということと財政再建を果たしていく、さらには根本的な構造改革に取り組んでいくということを両立させるようなことを必死に考えなきゃいけないと思っております。  その際に、同じ公費を導入するによっても、民間の活力を導入することやあるいは規制緩和によってサービス水準を向上させる方法は私は幾つかあると思っております。限られた予算でありますが、いずれにしても多くの国民福祉国家の充実を期待しておりますから、その期待と財政再建、これを何とか両立させるように、今後懸命の努力をしていきたいと思っております。
  164. 菅野壽

    ○菅野壽君 老人医療費の一部負担の改定に関連してお伺いしたいと思います。  老人保健制度における制度改正の影響額は、衆議院修正によってどのようになったのでしょうか。公費、医療保険制度ごとの拠出金及び一部負担の影響額についてそれぞれ平成九年度、十年度、十一年度の数字をお伺いしたいと思います。
  165. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) お答えを申し上げます。  今回の衆議院修正によりまして、平成九年度におきます老人保健制度の財政影響は、九月実施でございますが、現行制度の場合に比べまして、老人保健制度におきますまず公費、これが六百六十億円の減でございます。いずれも現行に対する比でございます。それから、拠出金が千八百二十億円の減、それから一部負担金千三百億円の増でございます。この拠出金の減のうちでこれをそれぞれ制度ごとに見てまいりますと、政管健保の場合は四百八十億円の減、健保組合の場合は四百億円の減、国保の場合は八百億円の減というふうになってございます。  同様に、平成十年度でございますが、これは満年度になってまいりまずけれども、現行制度と比べまして、老人保健制度における公費で千八百七十億円の減、拠出金で四千二百億円の減、一部負担金で三千百十億円の増を見込んでおります。各制度の拠出金への影響額は、政管健保千百九十億円の減、健保組合九百四十億円の減、国保千七百三十億円の減となっております。  また、平成十一年度でございますが、老人保健制度におきます公費が二千二百四十億円の減、拠出金が四千九百九十億円の減、一部負担金が三千八百四十億円の増を見込んでおりまして、各制度ごとの拠出金への影響は、政管健保で千三百九十億円の減、健保組合で千百億円の減、国保で二千百十億円の減というふうに見込んでおります。
  166. 菅野壽

    ○菅野壽君 前回の同僚議員の質問に関連して一点、御質問を申し上げます。  先日は、入院、外来を含めた老人の実効負担率について答弁がありました。  入院に係る実効負担率は平成九年度、十年度、十一年度にどのように変化するのでしょうか、お示しいただきたいと思います。
  167. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 今回の改正、衆議院におきます修正を含めまして申し上げますと、入院の実効負担率は平成九年度七・九%、これが平成十年度八・三%、平成十一年度八・五%というふうに変化をしてまいるものというふうに見込んでおります。
  168. 菅野壽

    ○菅野壽君 次に、平成十二年度以降の老人一部負担あり方についてお伺いいたします。  先日の委員会では、入院に係る衆議院修正の理由について、外来や介護保険との整合性、激変緩和を挙げられておられましたが、逆に見ますと、今回の衆議院修正は平成十二年度以降は定率一割負担を導入することへの布石ともとれますが、この点について明確にお答えを願います。
  169. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 衆議院におきます入院一部負担の修正につきましては、先般、提案者の御説明もございましたように、政府案におきましてはもともと外来と入院負担とに少しアンバランスがあるんじゃないかという御指摘があったこと、それから社会的入院の是正でございますとか、あるいは介護保険制度との整合性といった点に配慮をいたしますとあのような修正をした方がいいのではないかということから修正をされたというふうに御説明もございましたし、私どももそのようなこととして理解をいたしておる次第でございます。  今後の老人保健制度あり方につきまして、繰り返しございますように、抜本改革案を早急にお示しをすべく検討を行っておりまして、その際における入院一部負担の水準というものもその中の重要課題として検討しなければなりません。その際には、介護保険制度との整合性にも十分配慮いたしながら、医療保険制度におきます高齢者に対する医療給付あり方をどのように考えていくかという観点から十分検討してまいりたいというふうに思っております。
  170. 菅野壽

    ○菅野壽君 同時に、低所得者への配慮についてでございますが、今後の検討課題であるが、現時点では現行の低所得者の範囲の拡大等は考えていない旨の御答弁がありましたけれども、では老人の自己負担がどのような水準になった時点で低所得者へのさらなる配慮、拡大を行うべきかをお考えか、その時期をお示しください。
  171. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 今回の改正案をお願いしております中におきます老人保健の一部負担につきましては御説明申し上げたとおりでございますけれども老人医療におきます低所得者特例の対象あるいはその内容をどういうふうに決めていくかということにつきましては、そもそも一般的な給付内容なり負担水準あるいは高齢者の経済的な能力といったことの状況に応じまして、給付に応じました負担の公平でありますとか、あるいは世代間の負担の公平というような観点から、保険制度というものの中でどこまでをどのように配慮をしていくかという問題に帰着をすると思います。  したがいまして、今、先生お話のございましたような高齢者の自己負担がどの程度の水準になったら低所得者へのさらなる配慮になるかということでございますけれども、これを一義的にこのぐらいになったらこうということを申し上げることはなかなか難しいわけでありますが、いずれにいたしましても老人保健制度抜本改革の中におきまして老人給付水準をどう設定するか、そういったこと等との関連も踏まえまして低所得者に対する配慮の内容、その対象なりを抜本改正の中におきましても詰めて検討してまいりたいというふうに考えております。
  172. 菅野壽

    ○菅野壽君 次に、老人保健制度抜本改革について伺いたいと思います。  四月の与党方針では、別建ての高齢者医療制度の創設と退職後も継続加入する方法の二つが示されました。この両方式のメリットデメリットを教えてください。
  173. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 先生、今御指摘ございましたように、今後の老人医療制度をどのようにするかということにつきましては、与党の協議会においてお取りまとめをいただきました基本方針におきましても、別建ての高齢者医療制度の創設あるいは退職後も継続加入する方法、こういったものを視野に入れながら根本的に見直していくべきであるという方針をお示しいただいたところでございます。  この二つにつきまして、それぞれのメリットデメリットということでございますが、このうち独立に別建てでやるという方式につきましては、高齢者自身のこの制度上の位置づけが明確になる、つまり高齢者もこの医療保険制度の受け手であると同時にこれを支えていくという医療保険制度における高齢者自身の位置づけが明確になるといったような点、あるいは高齢者と若年の方々との間の心身の特性の違い、お年寄りの場合の健康上あるいは医療上の特性といったようなものについて別建てにすることによって配慮をしていく、こういった考え方などの点はやはりこの別建て方式というものについての一つの明確なと申しますか、ある種のメリットと申しますか、そういった参考にすべき点であろうというふうに思います。  一方、制度を組み立てていきます場合には、やはりそういうふうに独立、別建てにいたしましても、高齢者自身の保険料というものをその中に組み込んでいくにいたしましても、やはりそれだけでは賄い切れません。当然、お年寄りの医療費は非常に若人に比べて高うございますから、賄い切れないとなればどういう形でであれ現役世代、若人世代からの支援と申しますか、助け合いと申しますか、そういった要素というものは必要になってくる、それをどういう形で仕組むかという点、現在の拠出金制度についてのいろいろな問題点も挙げられておるさなかでございますからそういった点、あるいはこの制度の保険者をどうするかといったような点につきましてやはり課題として残ってくるのではないか、こういった点を詰めていく必要があるであろうというふうに思います。  それから、退職後も継続加入する被用者OBは被用者グループで見ていくというような考え方に立ったものでございますけれども、これは支えるということがどうしても必要になった場合にどういうグループとして見たのが一番納得が得やすいかという観点からするならば、職歴による一体感というようなものを重視するというのがこの考え方の一つの特徴ではないかと思いますし、そのことはそれなりのやはり説得性というものがあるのだろうというふうに思います。  ただ、一方におきまして雇用が非常に流動化をしてまいります。雇用自体が一カ所でなくなるということで流動化をしてまいりますと、退職後の各医療保険の加入資格というものをどこに置いてとらえるかというようなこと、それから産業構造が変化をしてまいります中でどうしても国民健康保険というものが中高齢者を多く抱えるということになりますが、こういった形でいわば被用者OBグループがすぽんと抜けた形で職域で構成をしましたら、そこにさらに残った国民健康保険というものの保険制度としてのあり方というものについて、それが自律的に運営ができるかどうか、こういつたことを含めた検討が必要になるといったような課題と申しますか、問題点というようなものが残ってまいるであろうというふうに思います。  いずれにしても、この制度ならもう万々歳で即大丈夫というわけにはなかなかまいりません。それぞれに一長一短がございますけれども、それぞれの長所を生かしながらどう短所を克服していくかということで先ほど来申し上げております抜本改革の中で成案を得ていかなければならない、あるいはそれぞれの案を示す中で、どちらをお選びいただきますかということをお示しする中で判断を仰いでいかなければいけない、こういう問題だろうというふうに思います。
  174. 菅野壽

    ○菅野壽君 また、それぞれの制度について、高齢者の保険料水準、給付水準はどの程度が妥当であるとお考えでしょうか。また、若い世代からの支援を求める場合の仕組みゃ比率、公費負担あり方についてどのような御見解をお持ちか、お伺いしたいと思います。
  175. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 今、先生から御指摘のありました諸点は、まさに先ほど来申し上げております老人保健制度抜本改革あるいは医療保険制度全体の抜本改革の中におきまして具体的に詰めていかなければならない、そういった大きな点であろうというふうに思います。  したがいまして、まさにこれから詰めていかなければならない点でございますけれども、しかしいずれの案をとるにいたしましても、高齢者の保険料水準あるいは給付水準につきましては高齢者の経済能力、あるいは高齢者、現役世代それぞれの負担というものを、全体を見る中で、高齢者につきましても社会保障をみずから支えていただく、そういった存在として応分の御負担をお願いするという考え方に立って検討をしていかなければならないであろうというふうに思います。  その際に、具体的にどのような負担をしていただくかということになりますときには、大きな物差しの一つはやはり世代間の負担の公平というものをどう考えていくかということであろうと思います。  それから、拠出金というお話がございました。若年者からの支援仕組み、比率あるいは公費負担というものにつきましても全体の財源構成を、先ほどの高齢者の自助努力というものをまず置きながら、その置いた上でなお社会連帯考え方に立ってどう負担をし合うか、支え合っていくかという考え方に立ちまして、その全体のバランスということを検討してまいるということになろうかと思います。  そうした中で、現実的な配慮としてそれぞれの負担の限界なり、あるいは公費という面で言えば、現下の財政状況の中でどのように公費を得ていかれるかというような現実的な配慮というものもそこに必要になってまいると思いますが、いずれにしても、そういった点を含めまして、まさに今回の抜本改革の大きな課題、なかなか難しい課題でございますけれども、ここのところをきちっとするというのは一つの今回の改革の中での大事な点だろうというふうに考えております。
  176. 菅野壽

    ○菅野壽君 最後に、さらに審議会意見書などでは、この二つの方式のほかに、「医療保険制度を全国民対象とするものへと統合し、その中に高齢者を位置付ける。」という第三の案が提案されていますが、この案は一体どのような案でしょうか。  また、そもそも医療保険の一元化、一本化は長年の課題になっているはずであります。政府が夏に示す抜本改革案においてこの問題の方向が示されるのかについてお伺いしたいと思います。  あわせて、この問題について厚生大臣の御所見を賜って質問を終わりたいと思います。
  177. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 医療保険制度における高齢者の位置づけ、そして保険制度の体系のあり方については与党の医療保険制度改革協議会の基本方針や関係審議会の提案等でも出ているところであります。今後、抜本改革案を策定する中で今までの御意見も踏まえながら一つ方向を出していかなきゃいかぬなと考えております。  その際には、今後、医療保険制度についてどのような形で全国民を通じた給付負担、この公平化を図るかという観点から改革案をまとめて、そして最も効率的で適切な制度は何か、全国民のためにどういう制度がいいかという点に最重点を置いて、今までの意見を十分洗い直して、何とか国民の批判に耐え得るような改革案を早急にまとめてみたいと思っております。
  178. 菅野壽

    ○菅野壽君 終わります。
  179. 今井澄

    ○今井澄君 二十七日、二十九日に続いて三回目の質疑をさせていただきたいと思います。  これまでは主に薬剤費の問題、薬価の問題、それから支払い制度、出来高払い制の問題等についてやってまいりましたが、本日は高齢者の経済状況、特に高齢者の低所得者への配慮の問題について質疑を行いたいと思います。  その前に、今、菅野先生からもいろいろ質疑があった中で出てきたことでありますが、私どもは衆議院段階で今回のもともとの政府案について少なくとも抜本改革につながるような方向にすべきであるということでいろいろ御意見を申し上げて、その中で健康保険本人を二割負担にするならば家族も三割負担から二割負担に引き下げる方向とか、それから老人負担を一割という方向に近づけていくとするならば小児についても同じように今の外来三割負担ではなく一割負担に近づけていくというふうな方向提案しましたし、また保険料の徴収についても月給からだけではなくボーナスからも徴収するという方向で、月給の保険料率を上げるよりはボーナスの保険料率が今非常に低いわけですからそっちを上げていかなければ不公平だというふうなことを提案しましたが、なかなか入れられないままに来ております。  前回の質疑の中で、今、菅野先生提案されたように、小児については特に薬剤の実効負担率が五九%と非常に高くなるわけですから、六歳未満の薬剤費は無料にすべきであるということも御提案いたしました。  なお、前回の答弁の中で明らかになってきたことで、現在の政府案あるいは修正案について大変おかしな点も出てきたと思います。それは実効負担率、外来の場合は老人が従来の四・四%から八・九%、倍に上がるということですね、それから若人の場合は二八・八%が二二・二%に上がる。一方、入院を見てみますと、老人はこれまでの六・六%が七・九%ということで、外来は二倍に実効負担率が上がるのに、老人入院については六・六から七・九と外来よりも実効負担率がむしろ低くなるんですよね。  これは、先ほど老人保健福祉局長も言われましたように、今、医療費のむだがどこにあるかということで、老人医療費にむだがある、老人の外来でお薬が出過ぎている。と同時に、社会的入院、いろいろな条件はあるでしょうけれども老人入院し過ぎであるということが問題になっているのに、外来は倍に上がるのに入院の方は外来よりも低く抑えられている、上がり方が大変少ない、このこと自身にも私は今の修正案の非常に大きな問題点があると思います。かといって、単に上げろという意味を言っているんじゃないんです。  そこで問題は、低所得者への配慮に入る前に、今も議論になっておりました高齢者には一体どのぐらいの負担をしていただくのがいいのか、この議論をきちっとやることが実は抜本改革につながると思うんですね。今度の案が国民に評判が大変悪いのは当然だと思いますね。それは、さっき中島先生の方から三万一両損といいますか、みんなそれぞれに痛みを感じながらやるならわかるけれども、国の方はほかにむだ遣いをしておきながら国費は全然出さない、それで自己負担だけ上げる、これは非常に問題だと思いますね。それから、抜本改革方向がはっきり見えないままに自己負担だけ上げる、これも問題だろうと思いますし、もう一つは二倍、三倍と急激に上がることも大変これは問題だろうと思いますね。  しかし、その最後の問題については、私はやっぱり本当に国民皆保険を守るために医療保険財政を健全化する、そのためにむだをなくし抜本改革をやるという場合には、今、菅野先生からも言われましたように、これから老人はどう位置づけたらいいのか、負担はどうあるべきかという議論をきちっとやらなきやならないと思うんです。だから、二倍、三倍にふえるということだけを取り上げて私は負担の問題を論ずるべきではないと思うんです。  さはさりながら、消費税が二%上がるわ、特別減税はなくなるわ、その上に医療費まで上がればこれは大変なことですから激変緩和ということが必要だろうと思うんですよね。そういう意味では、急激に上げることには反対ですが、ただ私は冷静に議論をすべきである、二倍、三倍に上がるから感情的にこれはひどいというだけではなく、老人に一体どういうふうに負担していただくのが適当かということを論ずるべきだと思うんです。  それで、私どもは昨年十一月の医療保険審議会の建議というものを基本的には支持いたします。定率制負担ということであって、老人をすぐ一割にするのがいいかどうかは別として、やっぱり定率で一割に近づけていくという方向でいくべきだろうというふうに思いますし、薬も今度のような変な案ではなくて、薬代は診察代と別にして三割なら三割というふうにした方がやっぱりすっきりする、それは一貫してそう思ってはおります。しかし、激変緩和とかいろいろなことがありますので、現在の案をまるっきりだめだというふうに否定するつもりはありません。  その医療保険審議会の建議の中でこう書いてありますね。「人口高齢化への適切な対応」、「高齢者の置かれた経済状況の変化等を踏まえ、」云々、「老人保健制度」云々があって、「老人医療の費用負担仕組みを見直す。」ということ。それで、「高齢者の一部負担については、世代間の公平の観点から、」「現役世代負担と均衡を図る方向で見直す。」。ただし、「その際、低所得の高齢者については適切な配慮が必要である。」ということだと思います。  きょう、資料を配らせていただきましたが、この資料は参議院の厚生委員会調査室及び衆議院の厚生委員会調査室等につくっていただいた資料の中からコピーをしてきたものであります。確かに、一ページ目の上の①、「世帯主の年齢階級別にみた一世帯当たり・世帯人員一人当たり平均可処分所得金額」を見ますと、特に可処分所得を見ますと年齢層で余り違いがないんですね。五十代で少し高くなっておりますが、むしろ二十九歳以下あるいは三十代なんて非常に可処分所得が低い。それに比べれば六十五歳以上あるいは七十歳以上の可処分所得の方が一人当たりで高いという現実が出ているということですね。  それからまた、めくっていただきますと、上の⑤、「世帯主の年齢階級別貯蓄」を見ますと、七十歳以上というのは最近のデータで二千三百万ぐらいの平均貯蓄を持っておられる。それに比べて三十歳未満の方たちは四百万ぐらいの貯蓄しかないという、こういうこと。それで、きょうの資料にはありませんが、資産という面では高齢になるほど資産がある、持ち家比率は七十を超えると九〇%を超えるとかいうことですね。  そういう意味から見ますと、私は、確かにかつてお年寄りは貧乏だった、お年寄りはかわいそうという時代とは明らかに違ってきていると思います。年金も成熟化して、最近年金をもらい始める方は二十万とか二十一万とかもらうようになっている。そうすると、特に今は若い人たちが減る、若い人たちは子育てだとか家のローンだとか、いろんなことで大変な負担考えると、お年寄りはただがいいとか、今のような五%前後がいいとは言っていられないと思いますので、順次激変緩和をしながら上げていく方がいいと思います。  しかし問題は、これ平均値で出ているんですよね。これはたしか厚生省国民生活基礎調査というのをやられているわけで、これは全国の三万三千人ぐらいの方を調べているんですかね、三万三千人ぐらい調べておる。これは無作為抽出ですから、そうしますと当然人口の比例でやりますから、この三万三千人の調査対象者のうちの約一割は東京ということになるわけですね。  私ども地方で見ていますと、この平均値というのはなかなか信じられないわけですよ。お年寄りがみんな二千百五十万も二千三百万も貯金を持っているという現実は、私は長野の田舎ですけれども、なかなかそういう現実は違うなと思うんですね。例えば東京で、私も東京に親戚がありますが、バブルで土地が上がって、それを売ったとかいろいろなことをして貯金をふやした人が現に私の身内にもいます。そういうことを考えると、平均値で物を言うのはどうかということなんですね。  貯蓄なんかを調べてみても分布が随分違うんですね。お年寄りはかなり高額の貯蓄を、五〇%が一千八百万円以上でしたかね、だから確かに貯蓄を持っている人もたくさんいるんですが、四百万円以下の人もかなり多いということを考えると、真に手を差し伸べるべき人はどこにいるかということを見なきゃならない。例えば、八十五歳以上の女性のひとり暮らしなんというのは、これはもう老齢福祉年金ですね。三万幾らしかもらってなくて、自分の持ち家もない。借家だって、お年寄りに一人で住まわせておくと火事で心配だからというので余りアパートも貸してくれないということで住むところにも事欠くような、そういうふうな非常に大変な方もいる。それを押しなべてお年寄りは金持ちだと言ってはいけないだろうと思います。  それで、資料の②、これも厚生省資料ですが、見てみますと、可処分所得が大体各年齢層同じだとは言いまずけれども、やっぱりこの山はずれてくるんですよね。特に年間の可処分所得五十万円以下、あるいは五十万円から百万円のところを見ますと、やっぱり七十歳以上の人が多くなっている。ここのところを注目して、高齢者の低所得のところに手を差し伸べなければならないだろうと思います。  それからまた、お年寄りの場合には、若い人と同じ可処分所得があったりあるいは同じ貯蓄を持っていても、若い人と決定的に違うのは将来の問題ですね。将来に対して希望、頑張って何年後にはよくなるという希望がないから不安だということもあるし、病気が多いということもあるし、その病気が慢性疾患だという若者と違う点もあるのでそこも考慮しないと、一概にお年寄りはこうやって若者と同じようになったから負担はそのままでいいということにはならないと思うんですね。当然、医療保険審議会も若者の負担は二割、だけれども老人はとりあえず一割というところの差ぐらいは考えているんだろうと思います。  そこで、高齢者の場合、一人当たりの可処分所得が幾ら以下を低所得者として医療費の自己負担についても、その他いろいろについても考慮すべきと厚生省考えておりますか。
  180. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 老人医療費の側面で低所得というものをどのような考え方に立っていわばその対策対象にすべきかというお尋ねでございますけれども、大変難しいお尋ねでございます。  そもそも低所得の方々に対してどういう対策を打つかということの、その対策の必要性というところを論じますというと、そもそもお年寄りの一般的な給付の水準というものをどこに置いていくか、それからそのことは若人との負担給付の均衡においてどのように考えていくか、そういったこととの相関を考えなければなりません。  したがいまして、現在私ども定額でお願いをしております今回の改正案における低所得対策とおのずとまた、先生今、定率にすべきだというお話ございましたけれども、定率で、それもどういう水準で定率で一般的にするか、つまりお年寄りについては若人の負担給付との関係においてどの程度の負担水準にするかというようなこととの関係において、低所得者に対する配慮をどう決めるかということになると思いますので、それを決めますのは言ってみれば全体として老人保健制度をどう仕組むかという中で考えていかなければならないであろうというふうに思います。  しかし、定量的なことを抜きにして定性的にいえば、やはり今、先生御指摘になりましたように、確かに分布あるいは平均的に見ればもう若人の方々と遜色のない状態になっているという現実が一方においてございますので、そういう意味からいけばお年寄りにも応分の負担を願うということは給付の面においても、あるいは保険料負担の面においても必要だと思いますけれども、一方において、確かに低所得の方々の分布が比較的多いというのは先生のグラフでもお示しをいただきましたところですから、例えば今後の給付水準をどう決めるかいかんによりましては低所得者対策というものを現在よりももう少し手厚くしなければならないというようなことも当然あろうと思います。そういったことを含めて、今後抜本改革の中で検討してまいるということにいたさなければならないというふうに思います。
  181. 今井澄

    ○今井澄君 今後の話ということですが、しかし今後のこととはいっても、例えばこの四月に消費税が上がったときに臨時福祉給付金とか臨時介護福祉金というので特別低所得者対策ということでやっているわけですよね。その中では、これは高齢者だけではありませんけれども、例えば福祉年金等の受給者は一人当たり一万円とか、児童手当、生活保護、それから社会福祉の施設入所者、原爆の被爆者手当の受給者に対しては一人当たり一万円出しているわけですね。それから、臨時介護福祉金ということで低所得の六十五歳以上の在宅寝たきり老人三十三万人に一人当たり三万円というものをとりあえず出しているわけですね。そういう意味では、やっぱり何かここへ考えられないかと思うんです。  その前に、現在の老人医療について、低所得者対策というものについてはどういうものがあるのか。医療費、それから食事療養費、一応それをちょっと確認しておきたいと思います。簡潔にお願いします。
  182. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 現在の老人保健制度におきまするいわゆる低所得対策といいますと、次の二つが主なるものでございます。  一つは、入院時の一部負担金につきまして、御案内のとおり、市町村民税の非課税世帯などに属しまする老齢福祉年金の受給者に該当いたしますと七百十円の一部負担が三百円ということに、これは現行でございますけれども、減額をされる、そして二月限度になっているというのが一つございます。  それから、入院時の食費の標準負担額につきましては、市町村民税非課税世帯などに属します場合に一日七百六十円の一般の食事代の負担が一日六百五十円ということで、それも三月目以降は五百円という形に減額をされるという形になっておりますし、さらにこれらの世帯に属します高齢者が先ほどの老齢福祉年金の受給者であります場合には食事代の負担がさらに一旦二百円の負担に軽減をされる。  この二つの部面においていわゆる低所得者対策と申し上げられるものをやっておるところでございます。
  183. 今井澄

    ○今井澄君 今御説明がありましたが、例えば食事代ですと七百六十円が六百五十円に減額される対象者が十六万三千人、それがさらに五百円に減額される対象者が四万六千人、それから老齢福祉年金等の人は三百円になるわけですが、それが三万五千人、それから入院時の一部負担金の七百十円の三百円の減額も対象者が三万五千人、これ合わせても三十万かそこらなんです。  そこで、もう一方、住民税非課税世帯という場合に、調べてみますと、七十歳以上のひとり暮らしで住民税非課税の限度というのは収入が年間百七十四万円なんですね。老夫婦二人で住んでいる場合にはそれが二百二十六万円ということなんです。そうしますと、先ほどお配りした資料の二枚目の③、「世帯類型別にみた所得金額」で見ていただきますと、今の百七十四万円とか二百二十六万円以下というのを見ますと高齢世帯で約半分、二百万円から二百五十万円、真ん中よりちょっと左の欄を見ていただくと、累積百分率で五一・八%というんですね。高齢世帯の半分は二百五十万以下なんですよね。そうすると、どう見たって、その下のランクの百五十万円で見たって三〇%、高齢世帯の三〇%は言ってみればさっきの住民税非課税世帯になっちゃうわけですね。  現在の低所得者対策でやっている人たちが十六万幾ら、四万幾ら、これ全部足したって三十万ぐらい。そうすると、全然これは救われていない人が現在の制度ではいるということじゃないでしょうかね。例えば、よく聞くのは、生活保護なんかもなかなか受けない方がいる、お勧めしても受けない方がいると。生活保護でも、新聞にも出ましたけれども、もらった保護費で一枚の干物を二日か三日に分けて食べて、それで貯金をしたと、その貯金がいけないというので取り上げられたとか、いろんな話が出ています。  確かに、お年寄りたちが非常に将来のことを心配してそういうことをやっているわけなんですが、この今の制度ではかなり漏れている人たち、本当に真に手を差し伸べるべき人たちで漏れている人がいるということがあるんじゃないでしょうかね。どうでしょうか。
  184. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 現在の低所得者対策として実施をいたしておりますものは、これは申請主義でございますから、客観的にそういう形で証明をするものを添えて申請をしていただければ、これを拒否するとかそういった性格のものではございません。確かに制度の周知をどう図っていくかという問題はあろうと思います。その点は今後ともよくしなければならないと思いますが、そういう点はあろうと思います。  それから、当然のことながらこの世帯類型別に見たあれというのは、言ってみれば現にお元気な方も含めた類型でございましょうから、このお受けになっている認定対象方々というのはそれなりに必要性に応じての認定でございましょうから、そういう意味からいえば病んでいる方ということになるかと思いますが、そういった差もあろうかと思いますけれども、いずれにしても、しかし制度のその対象になる方々は申請すれば御本人の希望があればちゃんと受けられるようにということは、私どもの方も今までもそういう方針でまいったつもりでございますし、今後もそういうことで制度の周知等には努めてまいらなければならないというふうに思います。
  185. 今井澄

    ○今井澄君 これは無年金障害者の問題で質疑をしたときも、無年金の障害者が一体何人いるかわからないという話だし、今度のことでも例えば生活保護を受けて当然なのに生活保護を受けていないお年寄りは何人いるのかと聞いたら、申請主義だから数字はわかりませんということなんですね。  私はやっぱりそれでは済まないだろうと思うんですね。これからお年寄りにも応分の負担を求めるという以上は、応分の負担がなかなかできないという人のことを考えなければ、そこまで考えないと本当にセーフティーネットとしての意味が十分発揮できないということから非常に今後こういう課題が大きくなってくるんじゃないかと思います。  それで、例えば西山委員が前回質問されたときに、御夫婦で二万幾らと三万幾らと年金をもらっている額が合わせて六万に足りるか足りないかという場合に、おじいさんかおばあさん、どっちかが一人入院しちゃったらどうするんだという質問をされたときに、厚生大臣は、最高の五万二千八百円を払うとしても、二万七千三百円と三万八百円ですね、五万八千百円の年金を受けているから払えると。  もし、この人がこれだけの年金で家庭菜園でもつくりながら二人で細々と暮らしている姿で片一方が入院したらどうなるかと。確かに五万二千八百円というのは高い負担ですから、こういう方になると減額されるかもしれません。入院した人はいいんですよね。大体そこで見てもらえるからいいんですけれども、残された一人の方はそのお金を持っていかれちゃったら、二人で今までかつかつで生活していたのに生活できなくなるんですよね。やっぱりここのところはもう少しいろいろな手当てを考えなければいけないと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  186. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 年金との関係でお話がございました。  そもそも年金というものが一つにはどういったお年寄りの需要を満たすものであるかということでございますけれども、年金の水準、老後生活のすべてを賄うという考え方ではございませんで、やはり老後生活の基礎的部分を賄うという観点から定められておるということでございます。  一方、老人保健におきます患者負担というのは、年金に他の収入を加えましたものを含めた高齢者負担能力というようなことを勘案しながら、一方において医療保険制度における負担給付の公平、あるいは支える者、支えられる者との負担の公平、こういつたことを考えてその給付水準なり負担水準というものを決めておるということでございます。  そうした中で、現行制度、今回御提案をしております中でいえば、やはりその大半を若人に仰いでおる老人負担が、一方において今回の負担においては、先ほども先生お挙げになりましたように、若人においては二一・八%の実効負担率に対して、総体でも老人は八・四%の負担率であるという一般的な水準におけるそれなりの配慮と申しますか、そういったことで給付水準を設定していると。そういう一般的な給付水準下における低所得者対策をどうするかということで考えれば、現在のようなやり方というのが一つの線ではないかなというふうに思いますし、そのことはやはり今度の給付水準をどう決めるか、あるいは若人との負担関係をどう決めるかということの中で今後もそういう意味では考えていかなければならない。その際にはお年寄りの生活実態というものをやはりしっかり押さえて考えていかなければならないということになろうと思います。
  187. 今井澄

    ○今井澄君 お配りした資料の最後のページの下、⑦ですけれども、公的年金、恩給の総所得に占める割合が一〇〇%の世帯、つまり年金や恩給だけで暮らしている高齢世帯が五〇%、半分いるんですよね。しかも、その年金の分布がどうなっているかというのをいろいろ調べてみますと、きょうは資料を持ってきませんでしたけれども、年金をもらっているのは大体年間平均で百二十万かそこらですか、というふうな話。百何十万かになっていますけれども、分布を見てみると四、五十万という人が非常に多いんですね。  そういうことを考えますと、特に私はこれは動いているという見方をしたらいいと思うんです。八十歳あるいは八十五歳以上で特に女性、こういう人たちは本当にあれなんですね、いわゆる家庭の主婦としてやってきて年金受給権も何もない、家もないというふうな人たち、そういう人たちのこととか――今はいいですよ、定年でやめた男の人たちは結構年金もらえますから。うちの親なんかを見ていても、まあこれで十分じゃないかというふうに思いますよ。十分じゃないかというのはおかしいけれども、使うことも余りないんですからね。それはそれで、十分というのは言い過ぎかもしれないけれども、やっぱりそういう本当の低所得者のところに光が当たらないといけないだろうと思います。  それで、ついでにちょっと貯金のことをお話ししたいと思いますが、貯金が多い多いと言うんですが、結局何のために貯金をしているかというのを聞くと、やっぱり万一の場合というのが多いわけで、万一の場合というのは病気とかけがとか寝たきりとかいうことのようです。それで、もう一つは貯蓄率、八十歳を超えてもなお自分の可処分所得の三二%を貯蓄しているんですね。何のためにかというと、老後のためにと言うんです。八十歳のお年寄りが老後のために自分の可処分所得の平均して三二%を貯蓄しているという現実がある。取り崩したくないと。ここが非常に実は日本福祉の貧困さのゆえだと思うんですね。  やっぱりきちっと老後は安心だという体制を築かない限りお年寄りはどんどん貯金をする。そして、その貯金をしたのをどうするかというと、できれば残してやりたいというのが六二・六%。日本というか東洋はダイナスティーモデルといいますか、王朝モデル、結局子孫に何かを残すということでやっている。こういうふうな老人の意識も問題かもしれませんけれども、お金を持っていないと安心できないという、やはりそういう状況を変えていかなければいけないと思います。  そういう意味では、財政が今非常に厳しいことはわかりますし、財政再建、構造改革も必要ですけれども、何かその宣伝が行き過ぎちゃって、年金ももらえなくなるかもしれないぞ、医療も自己負担がふえてめったに受けられなくなるかもしれないぞというのはむしろ逆効果で、そのためにお年寄りは乏しい中で貯金を貯めて、そして自己負担が上がると医者にかかる回数を減らして、結果は病気を重くしてかえって本人も不幸、医療費もふえるという、こういう悪循環に陥っているのではないかと思うんですね。  そこで、もう時間がありませんので厚生大臣に最後にお聞きしたいんですが、安心して暮らせる社会の構築のために今何をすべきなのか。確かに私は一方で平均的にはお年寄りから一割近くの御負担をいただくような方向に若者との比率でいけばいくこと自身には反対ではないんですけれど.も、どういうふうに環境を整えていくかということも含めて貯金の問題、社会保障の問題、それから低所得者対策、本当に困った場合には絶対に、言ってきたら何かしてあげるよという申請主義ではなくて、かゆいところに手の届くような、本当の困った人への手の差し伸べ方等について不十分だと思うんですが、御所見を伺いたいと思います。
  188. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今後、年金にしても医療にしても介護にしても、特定の人が恩恵を受けるということでなくて、すべての人がこの給付を受ける、そして同時にすべての人がその給付を支えていくという観点から制度改革が必要だと思いますが、その中でも特に留意しなきやならないのは真に手を差し伸べるべきところにどのような保障的な措置を講ずるかと。高齢者に対しては、高額所得者に対しては応分の負担をしていただきますが、そういう中におきましてもどうしても負担できない方々に対してどのような措置を講ずるか、これは私は大変重要な制度改革の視点だと思います。  その中で給付負担の均衡、そして高齢者につきましても、高齢者は経済的に弱者ばかりではないという視点も考えながら、どの程度まで若い世代負担に応じてくれるか、その中で給付はどうあるべきか、そして公費はどの程度投入すべきかという点はすべての制度に共通して考えなきゃならない改革の視点だと思いますので、その点をよく踏まえながら総合的な改革に取り組んでいきたいと思います。
  189. 今井澄

    ○今井澄君 時間が来ましたので終わりますが、私が今回この質問をするに当たって実は前からいろいろ調べていたんですが、データがないんですよね。平均値のデータはあるんですけれども、本当にこの人たちはどうなっているんだろうと調べると、こぼれ落ちるところがどうしてもないんですね。厚生省としては、むしろやっぱり社会福祉を担当する省であれば、実際に四万円しか年金をもらってない人は一体どういう生活をしているのかということをきちっと調べてやる必要があると思うので、データの整備をお願いしたいと思います。  以上です。
  190. 西山登紀子

    西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。  私は、二十三日の代表質問以来、この法案の質問、きょうで四回目でございますけれども、政府原案と、修正という名のもとに改悪をされてきたと私たちは思っておりますが、改悪修正案についての問題点について質問をしてまいりました。  この中で政府も、それから与党も大変矛盾を深めていると思いますね。というのは、衆議院で成立を急ぐ余り修正案を一日で、朝出して夕方採決をしてきた、その直後に与党の内部でも再修正が必要だということを社民党さんが言われる、そしてまた参議院に来てもう再修正はいたしませんと言明されたにもかかわらず、また最近の報道では再修正の協議をしている、そういう方向だというようなことが報道されております。  結局、どうしてそういうことになるのかといいますと、私はやはりこの赤字の最も主要な原因であります高過ぎる薬価の問題、高薬価、それから国庫負担を削減してきたというこの問題にメスを入れないで国民にただ負担を押しつける、しかも倍以上の負担を、急激な負担を押しつけるという、そういうところにそもそもこの政府原案も、それから改悪修正案ももともとそういうところに大きな矛盾を抱えているのだということをまず最初に申し上げたいと思います。  ですから、この矛盾の解決という点につきまして、やはり本法案は撤回する以外ないのじゃないかというふうに思います。  そして、きょうは特に受診抑制の問題について質問をいたします。  八四年に健保本人一割負担が導入されたときに、その受診抑制がどのように働いたかということです。八四年の十月一日にその一割負担の導入が施行されたわけですけれども、その結果を踏まえて八五年の三月二十六日の社会保険審議会提出の資料が出ているわけです。この資料を見ておりますと、対前年同月比というのが出ているわけですけれども、政管健保の場合、受診率ですけれども、十月に実施されて十一月、本人はマイナス八・九%減っております。特に私が問題にしたいのは、本人が今まで無料であったのが一割負担になりました、ですから本人の受診率がぐっと減ったということも非常に重要ですけれども、それに連動して家族の受診率も減っているということなんです。受診率ですけれども、十月に〇・三%、十一月二・二%、十二月に三・八%、対前年同月比で受診率が減っているという結果が出ているわけです。  被用者保険の医療費の伸びも本人と家族を含めまして減っております。十月二・一%、十一月が五・六、十二月が七・〇という形でやはり受診抑制の影響というのがこの資料からも出ていると思うんですが、このような影響があったということはお認めになりますか。    〔委員長退席、理事菅野壽君着席〕
  191. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 今御指摘の、昭和六十年三月二十六日の社会保険審議会に資料が提出されておりますが、それを見ますと、被用者本人の一割自己負担が導入されました昭和五十九年の十月、これを挟んだ状況で見てみますと、政管健保本人の受診率について対前年同月比で、入院入院外含めまして四%ないし九%程度低下をしておるということが示されております。  それからまた、昭和五十九年十月前後のそれぞれ一年間における政管健保本人の受診率を見ますと、対前年同月比で入院外が八・三%、入院が八・九%という格好で低下をいたしております。  この内容を見てみますと、地域的には受診率の高かった中国……
  192. 西山登紀子

    西山登紀子君 イエス・ノーだけでいいです、時間がないですから。
  193. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) というデータが出されております。
  194. 西山登紀子

    西山登紀子君 そういう受診抑制が八四年にはあったということなんです。  それでは、今回の改悪で国民負担がふえる、その中で受診抑制が大変懸念されるわけですけれども、政府案では、資料をいただきますと、五月実施で八千四百億円の受診抑制を見込んでいらっしゃるわけですけれども、今回の修正案ではどれほどの受診抑制を見込んでいらっしゃいますか。    〔理事菅野詳君退席、委員長着席〕
  195. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 今回の修正後の状況で申し上げますと、一部負担をお願いしたことに伴いまして波及的な効果として医療費が下がるという状況があるわけでありますが、それが修正後は四千百億円、平成九年九月施行ということで見込んでおります。
  196. 西山登紀子

    西山登紀子君 そういう四千百億円という受診抑制分をこれはもう織り込み済みであります。受診抑制ということは、病院に行きたくても行けない、こういう状況であります。  それで、その八四年のときも大変な受診抑制というのは家族にまで広がったわけですけれども、今回は消費税も五%も上がっている、しかも負担が倍以上、場合によっては四倍以上にもなるというような薬剤の二重取りということも含めてこれは非常に大きな受診抑制が私は大変心配です。  そして、いろんなアンケートが出ているわけですけれども、いろんな調査をやっていらっしゃいます。  これは京都の保険医協会、保団連の会が調査をやりまして、私も予算委員会で紹介をさせていただいた分ですけれども、二倍以上に医療費が上がった場合にはどうするかという設問に対して、受診を減らすと言われた方が五八・二%、約六割が受診を減らすというふうに答えていらっしゃるわけです。そのほかにもいろんなデータが出ているわけです。例えば東京の民医連、民主医療機関連合会ですけれども、外来の中断患者調査をやられたんですね。中断して来なくなった。どうしたのかなということでいろいろ調査をしてみますと、いろいろな形でやっぱり受診抑制が起こっている、しかも若い世代が非常に受診抑制、手控えるというようなことをやっている、やろうとしているというような、もう既に精神的に負担がふえるんだぞということで、そういう心配が受診抑制の行動に走らせているというような大変ショッキングな調査の結果もあります。  また、民間の調査会社のやっている調査も、この五月十二日から二十日に行われた調査ども紹介をされているわけですけれども、今回のこの国民負担増によりまして深刻な受診抑制が起こらないと、このように断言できますか。既に起こっているんじゃないですか。
  197. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 今回の医療保険制度改正につきましては、現在の医療保険制度が非常に厳しい財政状況にある、大幅な赤字基調になっておるということがあるわけでありまして、そういった中でこの国民保険制度というものを維持していくためには財政の安定ということがまず図られなきやならないということでこのたびの負担増をお願いしているわけであります。これはある意味では緊急避難的な形になるわけでありますが、医療保険制度、それぞれ相扶共済制度という形でありますし、そういった中で受益負担ということについての御負担をお願いせざるを得ないということであります。  こういった中で、この一部負担というものをどう考えるかということになるわけでありますけれども国民生活水準の向上等々に照らして考えてみた場合に、またこれからの高齢社会ということの中で世代間の負担というようなことを考えてみた場合に、やはりこの程度の御負担をお願いせざるを得ないということでございます。そういった中で、私どもとしましては必要な受診というものが阻害されないような配慮をいたしておりまずけれども状況というものを国民の皆さん方にも御理解いただきまして、今回の一部負担ということにつきまして私どもとしては何とか御理解を賜りたいというふうに思っております。  ただ、このような改正我が国医療保険制度が将来に向けて中長期的に安定した形でいけるかということになりますと、私どもとしましてもこれは抜本的な構造的な改革をやらなければならないというふうに考えておりますので、今回の措置というものについて御理解を賜りたいというふうに考えております。
  198. 西山登紀子

    西山登紀子君 大変苦しい御答弁だと思います。四千百億円の受診抑制があるというふうに政府もこれは織り込み済みだということでありますから、当然受診抑制というのは見通していらっしゃるわけですよね。  そこで、大臣にお伺いしたいわけですけれども、この改悪案、国民負担というのは、本当に精神的に今からもう国民の皆さんの中に負担感を押しつけているということで、きょう私これ持ってきましたのは、これは前回も御紹介しましたけれども、部屋に届いているファクスですけれども、さらにふえて今千六百件を数えています。毎日百件ほどファクスが入ってくるわけですけれども、その中で私はどうしても紹介したいのがあります。  二十一歳、岐阜県の女の人、若い女性なんですけれども、「消費税だけじゃなく、医療保険まで国民負担にしないで。今、足をヤケドして毎日ガーゼ交換してもらっています。今の倍も毎日払うと、私の給料では、パンクしてしまうのです。そうなると、痛くてもガマンして、病院へ行かず、一生ヤケドのあとも残ったままでいる事になるんです。」と。「結婚して子供産むと医療費かかりすぎちゃうと思うから、結婚しても子供いらないよオ。」と。若い人が今からこういう悲壮な気持ちを持たざるを得ないという、こういう法案です。もう一つ、子供を持つお母さんからですけれども、「子どもがカゼをひいて耳鼻科へ行くと、診察で約千五百円、薬で約千五百円、ひとり当り約三千円かかり、一度にふたり連れて行くと六千円程になりました。お給料前などは、通院するのに、勇気がいります。お薬も、一種類で済む事等、皆無に等しい状態なので、九月以降は、一体、どれ位の診察料になるのかと思うと恐ろしくて、病院へも行けません。」、こういうファクスが入っているわけです。  大臣にお伺いいたしますけれども、先ほど必要な診療が抑制されないようにいろいろやってみたいというように局長の答弁がありましたけれども、本当に深刻な受診抑制が起こらないと断言ができるでしょうか。大臣の御所見をお伺いいたします。
  199. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 逆に言いますと、今の制度を放置しておきますと、そうするとますます公費を投入するか、若い方々の、保険料を払いながらむしろ病院に行かない方々負担をどう考えるかという点もこれから解決する上で検討しなきやならない。  高齢者の皆さんに対して、今まで一月千二十円払えば何回行ってもただだという中で、ある程度御負担をいただこうということで今回一回五百円にしたわけでありますが、それも四回までを限度としているということを考えますと、中にはそれは費用がただの方がいいと、ただなら何回も行けるんだけれども費用を取られれば行かないという方もおられると思いますけれども、私はこの程度の、一回五百円、そして四回を限度という、月二千円限度という中で、本当に自分の健康を考えた場合、二千円が惜しいから受診を抑制するかというのと自分の健康のためにこの費用を払うかという選択に陥った場合、私は、多くの人はこの月二千円の負担でも、一回五百円、そして五回以上はただだという形で御負担いただくというのはそんなに無理な、過重な負担ではないと思うのであります。  これからもある程度病院に行く必要のない方も行っているのではないかという批判にもこたえなきやならない、同時に本当に必要な人は受診抑制のないような配慮もしなきやならない、この両方の要望にどうやってこたえていくかというのがこれからの医療改革で大変大事な視点でありまして、私は、今回程度の負担というのは、お互いが給付を受けるけれども、その給付を支える、負担をしている立場の人のことも考えよう、お互いが支えながらも支えられているんだという、そういう連帯の中で社会保障医療保険制度の安定運営考えるならば、この程度の負担ならば国民は御理解をしていただけるのではないか。そして、今後とも永続的に安定的に運営されるような医療制度全般の改革に本格的に取り組んでいくことによって国民保険制度の安定的な発展を考えていくべきではないか、そういうふうに私は考えております。
  200. 西山登紀子

    西山登紀子君 大臣に申し上げたいんですけれども、私が今読み上げましたこのお母さんの例も、それから二十一歳の若い女性の例も、これは本当に普通の、当たり前の家庭なり若者がこういうふうにファクスをわざわざ送ってきているわけですね。決してごくまれな特定の、何か特別な条件のあるような人では私はないと思います。  ですから、大臣はそういうふうにおっしゃいまずけれども、この医療保険の赤字の根本の原因であります高過ぎる薬価、それから国民はきちっと税金を納めているんですから国庫負担をちゃんともとの率に戻しなさいという、この二つをきちっとやれば今回のような、こういうたくさんのファクスをこの国会に国民の皆さんが心配して出すような、そんな改悪を私はしないで済むんだと、そのことをむしろ申し上げたいと思うんです。  受診抑制がどれほどの弊害を生むかということですけれども、歯医者さんの例をとって次に進みたいと思います。この間の受診抑制、八四年のときも特に歯科医療というのは大変な受診抑制が極めて鋭く起こった診療科でございます。  先ほどの同じ資料で厚生省にお伺いしますけれども、八三年を一〇〇としたときに八四年が九二、八五年が八七というふうに歯科の診療件数が減っているんですけれども、このような傾向があったことは事実ですか。
  201. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 昭和五十九年の十月から一カ年における政管健保の本人の受診率を見ますと、対前年同月比で入院が八・九%、入院外が八・三%、歯科が九・九%というふうに減っております。  これらの数字をどう見るかでありますが、全体的にはそれぞれそんなに大きな違いはないのではないかというふうにも考えられます。  なお、昭和六十年前後の医療機関数の伸び率というものを見てみますと、病院の伸び率が大体一%ないし二%ぐらいでありました。一般の診療所はおおむね横ばいということでありましたが、歯科は三%ないし四%ということでかなり医療機関数が伸びております。そういった中で、一医療機関当たりの受診件数というのはやはり歯科の減り方は大きくなっておるわけでありまして、そういった影響も反映しているだろうというふうに思っております。
  202. 西山登紀子

    西山登紀子君 これは中医協の実態調査でありますけれども、本人負担が導入されまして以降、八三年を一〇〇とした場合に歯科の診療件数というのはがたんと減っているんですけれども、その減った分がごく最近になっても回復されていない。例えば九三年でもまだ八八、こういうふうに非常に長期にその影響が続いている、こういうことは確認できますか。
  203. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 近年の歯科医療機関の一医療機関当たりの患者数、これは減少している傾向がございます。ただ、これは先ほども申し上げましたが、歯科医療機関数そのものが伸びているということも一つの要因ではないかというふうに思っておるわけであります。
  204. 西山登紀子

    西山登紀子君 私は、特に八四年の一割自己負担の受診抑制の影響というのが歯科のような場合に非常に長期に影響するんだなということでこの資料を見ております。  東京都歯科医師会の会長さん、西村誠先生がこういうことを言っていらっしゃるんですね。やはり今回の健保本人の負担を一割から二割に引き上げるというようなことは一番大事な早期診療に大きな打撃を与えることになるから私は猛反対だというようなことをおっしゃっています。それから、福島県歯科医師会の会長さんもこういう談話を寄せていらっしゃるんです。食べることは生きることだと言われるように、口の健康は体全体の健康の基本になる、八十歳で自分の歯を二十本持つことを目標にしてきた八〇二〇運動、この八〇二〇運動が今度のような保険の改悪によって夢のまた夢のようになってしまう、こういうことを非常に懸念するというような談話を私たちの新聞に寄せてくださっているわけです。今回の医療保険の、私たちは改悪だと思いますけれども、この方向というのは厚生省自身が進めているこの予防保健政策にもむしろ逆行するんじゃないかと思うんですね。  厚生省が重点的に進めてこられた八〇二〇運動というのがありますけれども、その内容を簡単に説明してください。
  205. 谷修一

    政府委員谷修一君) 八〇二〇運動は、八十歳になっても二十本の自分の歯を持つということを目的にした運動でございまして、お年寄りになっても自分の歯で食生活を楽しむということが重要だ、そういう考え方に基づいております。  具体的な運動の内容としては、市町村段階あるいは都道府県段階でやります普及啓発運動、あるいは運動実践指導者の養成、あるいは地域住民に対する予防事業、そういうようなことを内容としております。
  206. 西山登紀子

    西山登紀子君 早期発見・早期治療の効果がどうかということを検証するには大変時間がかかる課題でもあると思うんですが、この八〇二〇運動を八四年からやっているところがあります。兵庫県の南光町、人口五千人ほどの小さな町でありますけれども厚生省の八〇二〇運動の一つのモデルにもなっているところでもあります。私はここの町長さんからも、それから担当の歯医者さんからも直接お話を伺ってまいりました。この南光町の事業の実態というのは「南光町保健福祉計画」というパンフレットにまとめられているわけですけれども、なかなか私は示唆に富んだものがあるというふうに思います。  ここでは、特に歯科の予防事業というのはむしろ子供が生まれる前から、妊婦さんの歯科保健指導というところがら始めているんですね。妊婦教室、受講率は一〇〇%、歯科衛生士が実施をしている。それから、子供が生まれて一歳六カ月、それから三歳児、それから保育所、小学校、こういうふうにずっと町立の保健センターで予防事業をやっているということです。それから、もちろん成人の場合も町ぐるみで歯科健診を実施していると。そして、早く見つけて早くお医者さんにかかっていただくというようなことをやっているわけですね。  こういう事業について、厚生省はもちろん御存じだと思いますけれども、数々のこうした自治体の努力、重要ではないでしょうか。どうですか。
  207. 谷修一

    政府委員谷修一君) 具体的に今お話しになった南光町につきましては、昭和五十八年に町が歯科保健センターを設置して、その当時厚生省からも施設整備あるいは設備整備についての補助金を出しておりますが、その後平成四年から六年までの三年間、歯周疾患予防モデル事業ということで全国で十四市町村を対象にしたモデル事業をやりましたが、その中の一つとして南光町で事業が行われているというふうに承知をしております。
  208. 西山登紀子

    西山登紀子君 時間が迫ってきましたので結論を急ぎますけれども、南光町で行われているこの歯科の予防事業ですね。歯科の医療費を減らすということを目的に始めたわけではないんですけれども、結果として見てみると早期に受診をする率というのはむしろふえている、一件当たりの診療日数は減っている。全体に占める歯科医療の割合というのは、五十八年から平成七年の間を見てみますと、ずっと比率が一四%から七%に下がっているというような結果が出ているそうです。  大臣にお伺いいたしますけれども、こういう早く予防をして、初期に治療をしていただくということが結果としては医療費が少なく済んでいるというような事実、南光町という小さな町のきめ細かな歯科医療、予防保健対策であるわけですけれども、これは研究をしてみる意義があるのではないでしょうか。ちょっと質問を急ぎましたけれども大臣にお伺いしたいと思います。
  209. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今お話を伺った南光町の歯科保健対策は、私は大変いいことだと思います。妊婦に対して歯科保健対策をやる、これは私はぜひとも歯科保健だけじゃなくて、妊婦の皆さんには子供の健康ということに対しても妊娠中から十分な食生活、休養、運動、そして歯科保健対策をしていただきたい。  南光町の例というのは、できたら全国に私は広げていただきたい。そして健康に対する投資というほど私は大事なことはないと思うんです。健康にまさる財産、宝はないと言われるように、幼いときから健康に投資する。そのためには一割か二割は負担していただく、将来のために。私はそういう気持ちがない限り、全体で支えていくという社会保障制度の構築はあり得ないんじゃないかと。健康に対する投資は惜しむなという意味において南光町の例というのは大変いい例でありますので、全国にぜひとも勧めていただいて、お互い予防は治療にまさるという観念を今から、若いうちから、子供のうちからぜひとも考えていただきまして、長生きするんだったら元気でという啓発活動に全員が取り組んでいきたい、そういうふうに考えております。
  210. 西山登紀子

    西山登紀子君 最後に一問だけ。  大臣は、非常に最後の結論だけを自分のいいようにゆがめられたというふうに思いますけれども、南光町では学童が必要な歯科治療を受けるために自己負担額を軽減しようというふうなことを既に政策に盛り込んでいるし、今回の医療費負担になるということになって歯医者さんに通えなくなるということに大変懸念が広がっている、むしろ関係者は大変懸念をしていらっしゃるということであって、大臣が南光町の事業を大変評価されてむしろ全国的に広げようということは、これは私は大変懸命な御判断だと思いますけれども、そこから先ですね。歯医者さんになかなかかかれないということになりますと、この八〇二〇運動の到達がやっぱり危ぶまれるということで、二十一世紀の将来を考えましても、今回の医療保険の改悪というのをやはり撤回すべきだということを申し上げまして質問を終わらせていただきます。
  211. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 先日に引き続いて、老人医療費の一部負担問題についてまずお伺いをしたいと思います。  私は、今回の改正点で特に薬剤費の部分、また入院負担、通院負担、これが定額で計算をされたということが非常にわかりにくくしたということを前回御指摘させていただきました。あくまで私は定率、これを導入するということが一番わかりやすい形だろうというふうに思います。その定率の際に、きょうも随分と議論になっておりましたけれども、やはりさまざまな要件を加味した軽減策、これが必要であろうというふうに思うわけでありまして、これは、低所得者の問題についてはまた後ほど触れますが、きょうの議論の中でも随分あったというふうに思います。こういうことをこれからの抜本改革の中でぜひ反映をしていっていただきたいというふうに思っております。  先日、私は老人医療費負担についてはやはり地域によっても格差が非常にあるんだというお話をさせていただきました。私は大分の例を引き合いに出したわけですけれども、田舎の方に行きますと、かかりつけ医にかかるにも十キロとかそんな距離を通わなきゃならないという地域もあるわけですね。自動車を自分で運転をして行けるような人は全く問題がないんですけれども対象になる方はほとんどそういう状況ではない。ですから、私が聞いた話では、大体一回通院するのにタクシー代が往復で二千円ぐらいかかるんだというようなことも言われました。  私は、いわゆる医療機関へのフリーアクセスという問題についても、これは保障していかなければならないというふうに思うのであります。こういった見地からのアクセスの費用等も含めた配慮が必要ではないかと思うんですけれども、その点についてはどうでしょうか。
  212. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 医療機関へのアクセスのための費用をどう考えていくかという点でございます。確かに、医療機関にかかるためにその足をどうするかということは患者さんにとっては大変大事な要素であろうと思います。特に高齢者の場合はそういう要素はあると思いますけれども、しからばそれを医療保険の中でどこまで見るかということになりますと、やはりそこは医療の本体部分ということをまずきちっと見なければならないということからいえば、劣後と言ってはあれですけれども、見る順序としては下がるのかなということで、現在、御案内のとおり、現行制度におきましても、負傷しましたとか、あるいは病気になりましたというときに動くのが困難だというような患者さんが医師指示によりまして一時的、緊急的な必要があって送られる、いわゆる移送と言っておりますが、移送される場合には移送費という形で保険が見るということになっております。  また、離島などで非常に重篤な疾病にかかられたということで緊急にあれしなきやならないんですけれども、付近の医療施設では必要な医療ができないというときに最寄りの医療機関に移送された場合には移送費を支給するというような、いわば非常に緊急性の高いものについては医療保険の中でやられております。  しかし、通常の病気での通院ということにつきましては、これも確かに見れば見ただけいいではないかという御議論はあろうかと思いますけれども、やはりこれは老人保健制度を支えております各医療保険制度におきましてもそういった一般的な移送費までを支給対象にするということにはなっておりませんので、これを直ちに老人保健制度に取り入れるということについてはなかなか難しい問題はあると思います。  いずれにしても、そもそも老人保健制度あるいは医療保険制度でどこまでのニーズを見ていくかということについての今後の検討、そこもひっきょうするに、最終的には負担するそれぞれにおける納得と申しますか、どこまでを納得的に負担していただき、ここまでの給付を受けようじゃないかという合意が成り立つかということになるだろうと思いますが、そういう意味のことからいえば一般的な移送費まではなかなか難しいのかなと、現段階ではそういう感じがいたします。なお、今後のあれの中でどういう給付なりをすべきかということで検討してまいりたいというふうに思います。
  213. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 これはいろんな場合を想定してその一つ一つに対して対応するというのは非常に難しい問題だとは思うんですけれども、しかし現実に私どもそういう現状を知るにつけ、薬剤費がふえた、通院一回五百円ふえて月額二千円ふえた、それ以上に交通費というのが非常に重い負担になっているということもある意味ではこれは念頭に入れておいていただかなければいけないのではないかということをこの際指摘させていただきたいと思います。  私は、高額所得者の高齢者に対して負担を求めていくということに異議を唱えるつもりはありません。今回の議論の中でも高齢者のいわゆる高額所得者に対する給付制限というものが議論にもなっておりますし、私はこのこと自体は、ある意味では若者だけに負担を課していくということに限界が来ているというふうな中で、この流れというのは至極当然のことだろうというふうに思うわけです。  そこで、私は定率制を導入していくことによってより公平な負担をお願いし、しかもコスト意識も持っていただけるということからしたときに、どうしても低所得者に対しての配慮という、これは先ほど今井委員からも随分詳しく質問が出ていました。私は、これは何としてでもこの抜本改革の中で考えていっていただきたい。  また、これをやらなければ本当に、最近私が聞くのは、年寄りは早う死ねということかというようなことを言われることもあるわけで、いやそうじゃないんだ、これからは年寄りも一緒になって支えていかないと、若い人たちだけに負担を求めてもそれは大変なことになる。そのことについては理解を示す方がふえてきていまずけれども、それだけに低所得者に対する配慮というものが大事なんだろうと思います。  そこでお伺いしたいんですが、現在、入院一部負担等の軽減対象となっている低所得者の範囲、それから実数、それから受給対象者に占める割合、今後の見通し、この点についてちょっとお聞かせください。
  214. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 現在の老人入院の一部負担の軽減対象になっております方につきましては、老齢福祉年金の受給者でありまして、その方の属する世帯の主たる生計維持者が市町村民税が非課税である等の要件になっております。この対象は、平成七年の三月末で現実には三万五千人ということでございますから老人医療受給対象者の約〇・三%という率になっております。  そして、これは老齢福祉年金自体がその性格上年々減少いたしております。つまり、年金の受給資格要件を沿革的に受けられなかった方が福祉年金対象になっておりますから、それは年々減ってまいります。そういう意味からいえば、老齢福祉年金の受給者は年々減少しておる、それに従いまして減ってくるということでございますから、例えば十二年度ということで考えますと三分の一ぐらいに減ってくるであろうというふうに思います。そういう意味では、現在の老人の一部負担の軽減対象方々は数字的には減ってくるということになります。
  215. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 今の答弁の中にもありましたように、老齢福祉年金の受給者が平成九年は二十九万人、千二百万人にも達する老人医療受給者の二・五%にすぎないわけであります。しかも、この老齢福祉年金受給者というのは、今もお話がありましたように、年々これは減少してくるわけで、西暦二〇〇五年には三万人になるというふうに見込まれているわけですね。  したがって、これから高齢者への負担は増加するわけでありまして、私はそういう意味での低所得者の適用対象というものは今のままでいけば年々減少していくわけでありまして、現行の低所得者の範囲を見直していくべきではないのかと。その点についてはいかがですか。
  216. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 先ほどもお尋ねがございましたけれども、現在の今回御提案を申し上げております一部負担につきましては、もともとの根っこのところ、一般の老人負担率が若人と比べましても、先ほども申しましたように、実効負担率で申せば若人が二一・八%に対しまして老人が八・四%ということで半分以下の水準ということにとどめているというところから出発をしまして、したがって一般的にそういう配慮がされている中でのことでございますから現在の低所得者対策ということの延長線上で今回御提案申し上げておるわけであります。  今後、抜本改正の中で一般の老人方々の所得水準等を考えてどのように給付水準そのものを設定するか、その中で先生が今お話しのありましたように例えば定率というようなものを考えるというようなことの中で考えますと、その中では低所得者対策をどう考えるかということは現行制度そのままであっていいということには当然ならないと思いますので、そういったことを総体的に検討してまいらなければならないというふうに考えております。
  217. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 ぜひその点については、この委員会の審議の中でも多くの委員の皆さんからの指摘もありますので、検討をしていただきたいというふうに思います。  次に、老人保健制度の見直しについてお伺いをしたいと思いますが、この点については老人保健福祉審議会の意見書で「全高齢者対象とした独立の保険制度を創設する。」、二つ目として「高齢退職者等が被用者保険制度国民健康保険制度それぞれに継続加入するとともに、高齢者の加入率等の違いに着目した制度間の財政調整を実施する。」、三つ目として「医療保険制度を全国民対象とするものへと統合し、その中に高齢者を位置付ける。」、四点目として「現行老人保健制度の基本的枠組みは維持しつつ、必要な見直しを実施する。」、以上、四つの方策が提示をされております。  これについて、もう時間がありませんので簡単で結構ですから、それぞれの制度の長所、短所、問題点についてお聞かせください。
  218. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 時間のあれもございますので、それじゃはしょりまして、この四つの提案につきましての今考えられる制度上の課題、あるいは長所、短所といったことを御説明させていただきます。  まず、独立の保険制度でございます。これにつきましては、高齢者御自身を制度的に位置づける、制度の支え手としてもきちっと位置づけるという点において今後の社会保障あり方としては一つ方向を示すものとして十分評価できると思います。それから、高齢者を独立にするということは、一面、やはり高齢者方々の心身の特性というものを配慮して、おのずと若人と同じ制度の中ではなくて、そういった心身の特性に配慮をした制度をつくっていくというものだと思います。こういった点はやはり参考にする重要な点だろうと思います。一方、どうしてもお年寄りだけでお年寄りの費用を支えるというのは、どういう保険についてもこれはやはり無理だろうと思います。そうしますと、現役世代負担支援を仰がなければなりません。したがって、そういった支援、あるいはこれ支援と申して悪ければ相互扶助、社会連帯、あるいは世代間扶養と言ってもよろしいかもしれませんが、そういったことでの支援というものをどういうふうに仕組んでいくか。現行制度、現行の拠出金制度について非常に問題がいろいろ議論されているところから考えますと、そこをどう仕組むかというのが今後の課題かなと。それから、保険者をどうするかといったようなことを検討しなければならない。  それから、退職後も継続加入するといういわば突き抜けの方式でありますけれども、これは老人医療を支えるのにどういう集団で支えるのが一番納得的かという考え方の一つとして、使用者は被用者のOBまで一緒にという職歴による一体感というものを重視すれば一つの説得性がある考え方ではあると思います。ただ、雇用の流動化の中で、そういった転々する、転々はしなくても二カ所にお勤めになるというような人たちの退職後というものをどういうふうに考えていくのか、あるいはそういった形で被用者グループがいわば抜けた後の国民健康保険制度をどういうふうに考えていくのかといった点が克服すべき課題になってくるであろうというふうに思います。  それから、三番目の全国民対象にしまして医療保険制度を一本にしてその中で老人も全部一本の中で考えていけばいいじゃないかという案でございますけれども、これは一番すっきりすると言えばすっきりするんですけれども、すっきりするだけになかなか現実の難しさというものも一番難しい点が多いだろうと思います。そういう統合ということ自体についてずっと長く言われ続けてきたいろんな問題点というもの、例えば自営業グループと被用者グループにおける所得把握の相違とか、あるいは保険者をどうするかとか、そういった面での難しさというものは残ってまいるというふうに思います。  それから、現行制度を維持しながら必要な見直しを行っていったらどうかということにつきましては、制度を一番混乱なくと申しますか、現に動いている制度の手直しという、そういう意味でのやりやすさという点はあると思いますけれども、ただ現行制度そのもののいわば根幹になります拠出金の制度や何かについて、そもそも出し手といわば使い手とが別々で保険料を負担する人が出すところまでちゃんとコントロールができないとか、あるいはそれぞれ保険集団で一方でやりながら共同事業という形にしますがゆえに自分のところにいる人のために給付を出していると観念しにくいようなお年寄り、よそのお年寄りのために今だんだんふえてまいりまして三割も負担をしなきやならないというようなことはなかなか納得しがたいとか、そういったいろんな基本的な問題が出ておりますので、そこらあたりのところを考えますとなかなか現行制度そのままの手直しというのも現行制度のいわば問題点に対する回答というものが見出しにくいのかなといったようなところがつらいところだろうと思います。  そういったことから、与党の協議会におきましては、最初に申し上げました二つの案あたりを視野に置いて検討していくという基本線が出ておりますので、そこらあたりをにらんで検討することになろうかと思います。
  219. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 今、いわゆる老人保健制度の見直しというものがいかに大変かということを改めて認識をしたわけでありますし、またその困難性というものが大変な状況にある、これを八月いっぱいで決めるわけですからこれは本当に大変なことだと思います。  老人医療費を独立させるということが第一番目にありましたけれども、現在、老人保健では介護部分についてが五割、それ以外の部分には三割の公費が入っているわけですね。この五割部分については介護保険に移行するということが想定されるわけですけれども、いわゆる老人保健制度における公費の性格、意義、これについてお聞かせください。
  220. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 現在の老人保健制度における公費の状況は、今、先生お話しのとおりでございます。  これは、一つには若干沿革的な問題が確かにございます。  老人保健制度が創設をされます以前に、医療保険の自己負担部分を公費で見ていた時代がございます。そのときに、そういった老人医療費支給制度ということで、いわば保険制度に乗っけた形で公費をやっていたときにその公費でやっていた部分というものをある意味からいうと引きずっている部分は確かにございますけれども、今回のいわば今の各医療保険制度の共同事業としてやっている老人保健制度におきましても、やはりそれぞれの保険制度において支えていただく、いわば拠出金という形でお願いをするそれぞれの医療保険制度運営の安定ということをも考え、また老人保健制度自体を安定的に運営していくという、そういう観点からの公費という意義が一つあろうかと思います。  それからもう一つは、老人方々の心身の特性ということを考え、いわゆるヘルス事業、保健事業も含めて老人に特有の給付をしております。つまり、通常の医療保険制度にはない配慮を給付の面あるいは老人保健事業の面でやっております。  こういった点については、達観してアバウトな言い方を申し上げれば、いわば福祉的要素として入れている部分があるというようなことをも配慮して現在の公費負担が入っているということの両面であろうというふうに思います。
  221. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 そこで、今の議論を前提にして大臣にお伺いしたいんですが、私は、税方式、老人医療制度を新たにつくるとするならば税の投入ということが極めて重要になってくると思うんです。  この税方式ということについては、大臣、どういうふうに御認識をなさいますか。
  222. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今の制度でも何らかの税が入っていますから、公費が入っています。それだけ切り離してやるということではなくて、医療保険制度全般を見直さないとこれから抜本改革、総合的改革にならない。老人保健制度だけ切り離してやるということではなくて、すべての、この三十数年来の国民保険制度をどうやって改革するかという視点で取り組んでいきたい。  そして今、どういう理由かわかりませんが、やはり保険方式を基本としたいと。その中で公費をどのぐらい投入するか、保険料の負担はどのぐらいか、そして利用者の負担はどのぐらいかという、給付負担の公平を図るという形で改革、改善策に着手していきたいというふうに考えます。
  223. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 もう時間がありませんから議論はまた後日に譲りますが、私は、いわゆる保険制度とよく言われるけれども、ある意味では保険もやっぱり税と同じだと思うんですね。直接税ですよ。これは国民負担率の中にいわゆる社会保障負担というのも入っているように、これは税だと思うので、それの方がよりすっきりするのではないのか。例えば、その老人の部分に使う部分については目的税化する、そういうことのコンセンサスが得られるのではないかということを私は言いたかったわけであります。  次に、保険集団の現状課題についてお伺いをしたいと思うんです。  老人医療保険制度の見直しにおいても医療保険全体の保険集団のあり方を避けて通ることはできないというふうに思うわけであります。  実はここにある新聞の「あえぐ健保」という連載がありまして、その中にある万年筆の健保組合の話が出ているんです。  そこには、  「保険料を上げても焼け石に水です。解散するしかありません」。岩田省一常務理事の提案に、清水博久理事長も「仕方ない」とうなずいた。   同社の健保は現在八・三%の保険料引き上げを見送り、財政再建の道を断念した。厚生省が認めれば、積立金を使い切った時点で解散し、中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険に移行する方針だ。国が管理する政管健保なら事務局を置く必要もなく、経費を削減できる。 こういうことが書かれております。  私は、そういう意味で、先ほどから拠出金の問題もありましたけれども、非常に健保組合が今厳しい状況にあると思うんですね。このことについてどういうふうに認識していますか。
  224. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 政管健保だけではありませんで、健保組合もかなり厳しい状況にございます。ただ、この健保組合も設立当初はやはりそれぞれ政管健保に比較して小集団でのメリットというものを考えて設立されたと思います。しかし、医療保険制度はそれぞれ保険料で成り立っておりますから、そういった意味で、バックとなって基盤となっております企業業績なり産業の盛衰というものに非常に大きく影響を受けます。  そういう中で、私どもとしては、もう財政が非常に厳しくなってにっちもさっちもいかなくなってから解散ということじゃなくて、やはりある程度見通しを立てた段階で解散すべきものは解散していくということが、今の政管健保を基盤とし、その中で組合というものを認めている制度あり方だろうというふうに思っております。
  225. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 老人医療費の見直しに伴っては、医療保険制度全体の保険集団のあり方の見直しと各制度を通じた給付負担公平化を行う必要があるというふうに考えておりますけれども、この点について大臣はどういうふうに御認識をしておりますか。
  226. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 当然、今後の抜本改革の中には保険集団を見直すということも必要でありますので、これからの産業構造も変わるでしょう、社会経済状況も大きく変わってきましたので、お互いが支え合っていく中でどういう制度が効率的で適切かということを考えると、今の保険者集団の規模がそのままでいいのかという点も考えなきゃなりませんので、その保険集団のあり方も含めて抜本的な検討をする中で考えていきたいと思います。
  227. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 保険集団のあり方の見直しの中でもう一点、国保制度抜本改革というのが極めて重要になってくると思うんです。  国保については構造的な問題はかねてから指摘をされながら、暫定に次ぐ暫定措置で抜本改革を先送りにしてきたというふうに思います。もうこれ以上は先延ばしすることは許されないというふうに思うわけですが、二〇〇〇年を目途に介護保険の導入、さらには老人医療制度の見直し、これと軌を一にして国保の抜本改革を行うということについて、これは大臣確認してようございましょうか。
  228. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 国保の制度も当然国民保険制度を支える制度として大変重要なものですし、ほかの制度に属していない者が国保制度に入ってくる、そうすると必然的に負担能力のある者がほかの保険集団をつくって、残された者は高齢者と低所得者だけになったら国保はもちませんから、その点も考えて今後国保制度あり方、それは全体の中で私は考えていかなきやならぬと思っております。
  229. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 最後に、いわゆる介護保険制度制度設計の際に、市町村から介護保険が第二の国保になるというような強い反対の意見が示されたことは御承知のとおりでありますが、この点については介護保険制度では財政調整等のさまざまな手法によって財政安定化のための措置がとられて衆議院を通過したわけですね。逆に、そこまで言われた国保というのは一体何だったのかというふうに私は問うてみたいわけです。  むしろ介護保険の論議を契機として介護保険でとられたようなさまざまな手法を活用することによって国保本体の構造を改革して基盤の安定化を図るべきではないかというふうに思うんですけれども、その点をお聞きして、さらにあわせて国保の財政単位、国庫補助率のあり方、この点について厚生省の見解をお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  230. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 国保制度というのは、これが国民皆保険の決め手になったわけでありまして、昭和三十六年からこれが施行され、そしてまさに我が国国民皆保険というのは実現されたわけであります。  そのころは国保制度というのは自営業者なり、あるいは農民とか漁民とか、そういったいわゆる産業で働いている方を対象にできたということでありますけれども、その後我が国の産業構造が非常に変化をしてきた、そういった中で就業構造も非常に変化をしてきた。そうしますと、国民健康保険ができて皆保険が達成されてから既に三十年以上たつわけでありまして、その間、やはり国保というのは、当初は自営業者とか農民とかそういう方を対象とした保険制度ということで説明できたわけでありますが、現在はむしろ被用者保険に入れない方たち国民健康保険に入っているというふうにとらえるべきだろうというふうに思っております。そういった意味で、まさに都市化の問題等も絡みますけれども国民健康保険を支える基盤というものが大きく変わったということではないかというふうに思います。そういった意味で、今回の保険者集団というものを考える上において、やはりこの国民健康保険のあり方、これをどういうふうにするかということは一番大きな課題一つだろうというふうに思っております。  これはやはり新しい考え方等を導入しながら考えていくべきだろうというふうに思っておりまして、従来の国保の財政単位なりあるいは国庫負担あり方というものにこだわらず、これからの新しい時代を踏まえた、あるいは高齢化あるいは消費社会、あるいは年金受給者が非常にふえていく、そういう社会を踏まえた国民健康保険制度にすべきである。またこれは老人保健制度と非常に密接に絡むと思いますから、老人保健制度あり方連携をとりながらこの制度というものを考えていくべきだろうというふうに考えております。  ただ、現在、国保については給付費の二分の一の国庫負担が入っております。この国庫負担あり方、あるいは入れ方、これらについてはさらに検討させていただいて、そして安定した制度、それからまた全国を通じた負担給付の公平な制度というものを目指したい、このように考えております。
  231. 上山和人

    委員長上山和人君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時四十分散会      ―――――・―――――