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1997-05-27 第140回国会 参議院 建設委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月二十七日(火曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  五月二十六日     辞任         補欠選任      小島 慶三君     竹村 泰子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鴻池 祥肇君     理 事                 永田 良雄君                 山崎 正昭君                 市川 一朗君                 緒方 靖夫君     委 員                 井上  孝君                 岩井 國臣君                 坂野 重信君                 橋本 聖子君                 松谷蒼一郎君                 平野 貞夫君                 広中和歌子君                 福本 潤一君                 青木 薪次君                 赤桐  操君                 小川 勝也君                 竹村 泰子君                 奥村 展三君    国務大臣        建 設 大 臣  亀井 静香君    政府委員        国土庁長官官房        水資源部長    振井 茂宏君        建設大臣官房長  小野 邦久君        建設省河川局長  尾田 栄章君    事務局側        常任委員会専門        員        八島 秀雄君    説明員        農林水産省構造        改善局計画部地        域計画課長    武本 俊彦君        農林水産省構造        改善局建設部水        利課長      中島 治郎君        林野庁指導部長  田尾 秀夫君        水産庁研究部漁        場保全課長    櫻井 謙一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○河川法の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) ただいまから建設委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十六日、小島慶三君が委員を辞任され、その補欠として竹村泰子君が選任されました。     —————————————
  3. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) 河川法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明の聴取は既に終了しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 橋本聖子

    橋本聖子君 自民党の橋本聖子でございます。どうぞよろし(お願いいたします。  私が生まれました北海道というのは大変自然環境がすばらしく、広々とした景観やさまざまな野生の生き物がすんでいるすばらしい環境が残されております。特に北海道には緑が多く、清らかな水が流れている川がたくさんありまして、道民にとりまして川というのは身近に接することのできる大変すばらしいものであります。私は緑豊かな川を見るたびにいつも思うんですけれども、こういうすばらしいものを、自然というものを、未来の子供たち北海道の自然豊かな川を残していきたいというふうに思っております。  きょうは河川法改正法律案について御質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。  明治二十九年に旧河川法が制定されましてことして百一年目に当たるそうですけれども河川行政にとって新たな世紀を迎えた節目の年にあるとお伺いしました。今回の河川法改正は、昭和三十九年、これは私が生まれた年なんですけれども、現行の河川法が制定されて以来抜本的な改正だともお聞きしております。  まず最初に、大臣にお伺いいたします。  今回の改正法案意義はどのような点にありますでしょうか。お願いいたします。
  5. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) 河川行政は、当然のことでありますが、治水利水、これをきっちりとやるという、そういうのが基本でありますけれども、しかし美しい山河というのはやはり我々国民にとって共有の財産でもありますし、ある面では心のふるさとといいますか、我々の文化そのものであるとも言えるわけでありまして、我々がそうした治山治水利水をやっていく過程においてもそうした環境をできるだけ守っていこうという、そうした気持ちを憲法とも言うべき形で基本法の中にこのたび盛り込んだというのが一点であります。  もう一つは、やはり建設省のお役人も、これは公務員でありますからその地域住民の人々の立場に立って仕事をしておるわけでありますけれども、常時やはりその地域住民方々の御意見を行政の中に取り込んでいくという、そうした努力というのを今までも精力的にやっておるわけですけれども制度的にそれを取り入れていこうということでありまして、この二点でございます。
  6. 橋本聖子

    橋本聖子君 ありがとうございます。  それでは、具体的に今回の河川法改正案ポイントを教えていただきたいと思います。
  7. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) ただいま大臣の方から御答弁申しましたそういう方向の中で大きく四点考えております。  まず一点目が、河川法の「目的」に、治水利水に加えまして「河川環境整備保全」というものを加えまして、治水利水環境の三本柱で今後河川整備を進めていこうということでございます。  二点目が、従前一つ計画でございました河川基本計画でございます工事実施基本計画二つに分けまして、河川整備基本方針河川整備計画に分けまして、そしてこの河川整備計画につきまして、地方公共団体の長並びに地域住民方々意向反映をする手続制度として組み込むという点でございます。  三点目が、渇水調整のための制度整備でございます。具体には、渇水のおそれがある段階から渇水調整を始められるようにするというところが大きな眼目でございます。  そして四点目が、この環境をある意味では具体化した一つ施策として樹林帯制度というものを創設いたしたいという、この四点が大きな点でございます。  それに加えまして、水質事故対策不法係留対策というような最近の状況を踏まえての施策についてもお願いをいたしているところでございます。
  8. 橋本聖子

    橋本聖子君 ありがとうございます。  今回の改正の第一のポイントは、治水利水に加えて、「河川環境整備保全」を「目的」に追加するということなんですが、これについて数点御質問をさせていただきます。  河川環境というのは、大変初歩的なんですけれども具体的にはどういうところを指すものなんでしょうか。
  9. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 河川環境という言葉を今回の法律案の中ではむき出しの形で使わせていただいておるわけですが、これは環境基本法の中でも「環境保全」ということで、環境という問題を定義することなく使っておるわけであります。そういう意味合いで、先生指摘のとおり大変難しい御質問だというふうに受けとめております。  大きく二つの面があろうかと思っておりまして、一つ自然環境そのもの河川で申しますと水を流す空間とその中を流れる水そのもの、そしてその水の中で、あるいはその空間の中で生息をしている豊かな生態系、そういう客体としての環境という面と、もう一つはそういう自然環境人間との間の関係というものでございまして、生活環境という形でも呼ばれるものでございますが、具体には人間から見て好ましい水と緑の景観、あるいは河川空間が持っております快適性、アメニティーというような言葉で呼ばれたりいたしておりますが、そういう問題。  そして、先ほど大臣の御答弁にもございましたが、我々日本人がもともと河川に対して抱いている風土としての、日本の原風景としての河川、そういういろんなものを含んだ幅広い概念として河川環境というものをとらえておるところでございます。
  10. 橋本聖子

    橋本聖子君 それでは、そういった河川環境整備保全ということで、具体的に河川事業としてどのようなことをお考えなのか、もう一つお聞かせいただきたいと思います。
  11. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 河川環境具体事業としてどういう形で反映をするかという点につきましては、大きく二点あろうかと思っております。  一つは、治水利水と、そういう機能を満足させるためのいろんな事業に際しまして、環境面への配慮配慮と申しますか環境そのもの内部目的化をして取り組むという、そういう治水利水事業を進めるに際しての環境面考えるということ。  二点目は、これは昨年の六月に河川審議会から出されました答申の中でも「川の三百六十五日」を大事にしようということがございます。要するに、洪水あるいは渇水だけの川でなしに、普通のときの川、その川をより使いやすい、より快適性のあるものにしていく、そういう面が二点あろうかと思います。  まず、一点目の面から申しますと、従前、多自然型川づくりと呼んでおりましたそういうものがこの範鷹に入ろうかと思っておりまして、平成二年度からモデル的に行ってまいったわけでございますが、これを平成六年度以降、全面的にそういう多自然型川づくり基本として治水機能を高めていくというようなことを行っております。  それから、二点目の川の三百六十五日という点をどう生かしていくかというのは、これはある意味でこれからの大きなテーマだと受けとめておりますが、河川空間をどう使うか。従前河川環境管理基本計画という形でそういう計画をつくって高水敷利用、これも平常時の利用をしていただいておるわけですが、そういうものをどう進めていくのか。  また、従前舟運、これは舟遊びという江戸時代の古くから連綿と続いている舟遊び的なものと、今の首都圏大阪圏におけるような交通混雑を解消できるようなそういう舟運というような問題も今後あろうかと思っております。  そしてまた、交流の場としての川、心のふるさととしての川、例えば日本橋近辺では日本橋川の再生に向けてのいろんな動き地元から出てきております。そういうものをどう受けとめて川づくりの中に生かしていけるかというようなものもこれからの大きなテーマだというふうに考えております。
  12. 橋本聖子

    橋本聖子君 ありがとうございます。  河川空間というのは、残された最後の自然とは言いませんけれども、本当に都市の中ではもう残された開放空間でありまして、また水辺やさまざまな動植物にあふれる貴重な空間でもあると思います。ただ自然環境保全するということだけでなくて、人が川に触れ合えるように、河川環境を楽しみながら散策などをできるような遊歩道などの整備もしていけばいいのではないかなというふうに思うんです。  私はずっとトレーニングを富士山のふもとの富士五湖地方でやっておりまして、その一つ河口湖では、河川法の一級河川なんですけれども富士山を臨むすばらしい景観で、ワカサギですとかまたマガモの鳥類やタチヤナギ等の植物が生息、繁茂をしているところなんですけれども、非常に自然環境に恵まれておりまして、今河口湖周辺ではウォーキングトレイル事業ということで、例えば河口湖ハーブ館ですとかまた河口湖美術館等環境資源を歩いて回ろうというのが進められているんですけれども、これは一部河口湖河川区域にも活用することとなっております。  このウォーキングトレイルネットワークが全国で今四十八カ所あるんですけれども、一部が自然豊かな河川敷の中にできればもっともっとすばらしいトレイルになると思うんです。河川事業においても道路事業と連携して自然に親しめる遊歩道などの整備をすれば河川環境整備がさらに意味深いすばらしいものになると思うんですが、その点についてお考えをお聞きしたいと思います。
  13. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) ただいま御指摘ウォーキングトレイル事業、全体で四十八カ所あるわけでございますが、このうち河川関係をいたしますところが二十二カ所含まれております。お話しの河口湖につきましても、その一つでございます。  このウォーキングトレイル事業都市郊外部カントリートレイル市街地部タウントレイルということで、それぞれの特色を生かしながら事業を進めるということにいたしておるわけでありますが、こういう事業を進めるに際しまして大事だと思っておりますのは、やはりネットワークを形成して、同じ道を行って帰ってくるというのではなしに、ネットワークを形成できるということが大事だろうと思っておりますし、今お話が出ました美術館とかハーブ館とか、そういういろんな多様性を持った形で楽しめる、ずっと歩くことによっていろんな楽しみがその中で味わえる、そういう形で進めることが非常に大事だというふうに思っております。  私どもも関連をいたします道路事業公園事業あるいは海岸事業等々と一緒になりまして、より質の高いそういうトレイルができますように今後とも努めてまいりたいというふうに考えております。
  14. 橋本聖子

    橋本聖子君 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。  今お答えいただきました中で、河川環境整備保全が進められていけば、例えば貴重な動植物など自然と人とが触れ合う場ですとか、優しいすてきな川、また散策など市民の方が親しめる憩いの場としてつくられていくのではないかというふうに期待をいたしております。  せっかくこのようなすばらしい河川整備が行われていくのであれば、ハード面だけではなくてソフト面といいましょうか、イベント活動ですとか、また広報活動などの施策を積極的に推進して市民河川の距離を近づけるという意味努力していくべきだとも思いますが、そのソフト面についてどう今取り組んでおられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  15. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 先生指摘のとおり、ハード面に加えてソフト面が大変大事だというのは私どもも全く同じ認識でございます。それで、そういうソフト面対応として、これまた大きく二つの面があろうかというふうに受けとめております。  一つは、私ども河川管理者地方公共団体一緒になって行政側主体となって行うソフト面での対応、これが今まで主流であったかというふうに受けとめておりますが、これに加えて、住民の間から市民の間から自発的に出てくるそういう対応、これは行政に対しての反発、反対という形で起こってくる場合もございますし、行政側一緒になって進めようという動き、両様あろうかと思いますが、いずれも河川なり水辺というものを大事にしていこうという意味では同じものだというふうに受けとめております。  それで、まず最初行政サイド主体となって進めてまいりましたものといたしましては、河川愛護月間というのを、これは七月を月間と定めておるわけでございますが、その中でも七月七日、天の川にちなみましてこれを川の日ということで昨年からおくればせながら始めさせていただいていますが、こういう月間の中で、地域住民の方と一緒になりまして河川清掃等、いろんなそういう実際の川の中に入っての活動、あるいは河川への愛護を深める、あるいは認識を深めていただく、そういう活動をやっていただいております。  そしてまた、ダムに関して申しますと、森と湖に親しむ旬間ということで七月の後半部分河川愛護月間の中の後半部分でございますが、特にダム、貯水池についてのいろんな理解を深めていただく、そういうことを行っております。  そして、来月六月は土砂災害防止月間ということで、これはなかなか名前がかたいわけでございますが、内容といたしましては土砂害土砂が持っておるそういう内在的な危険性とともに、森と緑の山を守ることの重要性をこれまたよく地域の方にPRをしていく、広報をしていく、そういう活動をいたしておるところでございます。  このほか、ラブリバー制度ということで、地域団体方たちにいろんな河川愛護活動をやっていただこうということで平成元年から進んでおる事業でございますが、これは先ほど申しました行政主導型と地域からの発想とのある意味では間にある制度ではないかと受けとめておりますが、こういうものをさらに充実していくということとともに、地域からの自発的な活動、これを私ども真摯に受けとめて、そしてそれを実際の川づくりの中に生かしていくということも非常に大事だと  いうふうに思っております。これはある意味では、河川整備計画の策定の中でもそういう運動を取り込むということを今後とも考えていきたいと考えております。
  16. 橋本聖子

    橋本聖子君 ぜひよろしくお願いいたします。河川愛護月間ですか、すばらしいものとなるようにぜひよろしくお願いいたします。  次に、環境に関する質問をさせていただきます。  平成五年に公布されました環境基本法環境憲法というべきものであると思いますが、本国会では環境アセスメント法案について活発な審議が行われているところであります。このように、特に近年になって環境に関する新たな法律が制定されてきておりますが、私は今回の河川法改正はこれらの流れに沿った法律改正として評価したいというふうに思っております。  今回の河川法改正環境基本法環境アセスメント法案とどのような関係にあるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  17. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) まず環境基本法との関係でございますが、環境基本法におきましては環境の恵沢の享受と継承というのが基本理念、ちょっとかたい言葉でございますが、それが基本理念としてうたわれておるわけでございまして、河川行政においてその基本理念を実現していこうというものがまさに今回の目的改正だというふうに受けとめておるところでございます。  そして、環境アセスメント法案との関係で申しますと、環境アセスメントを実施いたす対象事業というのは、河川で申しますとダムとか放水路というそれぞれ個別の事業でございます。そして、それに対しまして、私ども河川法改正の中で、河川整備計画を策定する中で地域意向反映させるという手続を導入いたしておりますが、これは今後二十年から三十年にわたって具体河川整備を進めるに際して、流域全体の事業のありよう、そしてその中にダム堤防等具体整備内容を定めるものでございます。  そういう意味合いで申しますと、まず環境整備計画の中で具体事業が定められまして、そういう個別の事業ダムあるいは放水路等事業熟度が上がって具体化をしてくる、そういう中で環境アセスメント法案にのっとります環境アセスメントを実施していくと、こういうことになると考えております。
  18. 橋本聖子

    橋本聖子君 ありがとうございます。  先ほど今回の改正意義についても質問をさせていただきまして、これに対して河川行政治水利水の二本柱から治水利水環境の三本柱へと転換していくという趣旨のお答えをいただきましたけれども、私としてもその基本法、構成は大変すばらしいものだというふうに思います。ぜひよろしくお願いいたします。  川というのは大変きれいで、人と自然との触れ合いの中で一番近づけるすばらしいものだとも思うんですけれども、その反面、洪水水害によって人命ですとか財産を奪うなど恐ろしい顔も持っております。  先ほど放水路お話も出ましたけれども地元北海道の千歳川での放水路も、地形的に平らな土地が広がっていることもありまして、もう何度も過去には水害に悩まされているところでもあります。今回の目的改正を受けまして、治水利水環境との調和というものをこれからどのように図っていくのかをお聞かせいただきたいと思います。
  19. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 御指摘の点が私どもも大変難しい点だというふうに受けとめております。治水利水環境の三本柱で、そしてこれを一体として整備する。それぞれの機能ができるだけ満足できるように、そういう形の中で事業を進めるということが大事だというふうに受けとめております。決して環境面のみで判断をするということがあってはならないと考えておるところでございます。  ただ、ぎりぎりのところまで、そういう今申した三要素のすべてがそれぞれ成立できるようにぎりぎりのところまで考える。そして、なおかつその上ででもいろんな代替手段がとり得ないか、ミティゲーションというような手法についても現在開発がされておるわけでございますので、そういう代替手段を講じながらできるだけ自然を守るという手段も視野に入れながら、それは最後手段としながら、でき得る限り環境治水環境利水、そういう機能を満足させるように最大限の努力をして、その上で物事を進めていくべきだというふうに考えております。
  20. 橋本聖子

    橋本聖子君 ぜひよろしくお願いいたします。  先ほどダムお話も出ましたけれども、一点だけダムの話を聞かせていただきたいと思います。  環境との調和という点で、我が国では各地のダム計画について環境との関係建設の是非が問われているところがたくさんあるんですけれども、一方、アメリカではダム建設の終わりが宣言されたというようなことが言われております。アメリカ日本では国土上の違い、気候、地形、水に対する考え方なども異なる点がありますので、一概に単純に比べることはできないと思うんですけれどもアメリカダム建設の現在の状況と、もう一つあわせまして、我が国ダム建設についての建設省の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  21. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 先生指摘のとおり、河川状況日本の場合とアメリカの場合、あるいはヨーロッパとは基本的に違いますので、一概に比較するということは大変難しい面がございます。その辺が河川事業に関して、他の公共事業と比べまして外国との比較ということで物を言うのが大変難しい面がございまして、担当しておる我々から見ますと少々割を食っているなと思うときもございますが、アメリカにおきましてもダムは現在三十五、ダムと申しますのは高さ十五メートル以上の構造物でございますが、事業が継続をされております。  よく議論が出ますカリフォルニア州で申しますと、一九八七年から一九九二年にかけまして州全体で大変な渇水に見舞われました。それを受けて一九九四年に最新の長期水需給計画を策定いたしております。その中で、水需要をできるだけ節約的に使っていくということとあわせて水資源開発必要性具体に示されておるところでございます。それを受けた形で一九九六年、昨年でございますが、水の安定供給洪水対策等々のために債券、ボンドを発行する、これは十億ドルでございます。利子を含めて約二十億ドルという額でございますが、そのボンド発行に関しての住民投票が行われて可決をされたということでございまして、カリフォルニア州では一九六〇年以降三十六年間、大規模な水資源開発施設というものの建設がなかったようでございます。今後、州全体の水需要の増に合わせた形で水供給を図っていく、もちろん節水に努めながらでございますが、そういう方向が打ち出されているというふうに受けとめております。  そしてまた、日本アメリカで比べましてダムのつくり方が基本的に違っているように私は思っております。日本では下流部が既に開発をし尽くされているという中でございますので、ダムをつくる適地というのは本当に山の中に限られます。ですから、ダムをつくりましてもなかなか有効な貯水容量を確保できないということがございます。今まで約二千六百個のダムを、これは建設省に限らずいろんなところを合わせてでございますが、つくってまいりましたが、それ全体を合わせてもアメリカフーバーダム一つの半分にしかすぎないということでございます。  そういう意味合いで地形的な要件等々全く違いますので一概に比較はできませんが、アメリカでは一九〇〇年代から水資源開発が進められ、日本の場合は大分おくれて水資源開発に取りかかっております。そういう意味合いでもこれから必要なダムについては地元の御了解を得つつ、自然環境にも十分これを内部目的化しながら対応を図っていきたいと考えております。
  22. 橋本聖子

    橋本聖子君 ありがとうございます。  次に、改正案の二つ目のポイントとしまして、新たな計画制度による地域の意見の反映であるということですが、これは河川法のような公共事業に関する法律では本邦初公開の仕組みであるというふうにお聞きしておりまして、極めて画期的な改正であり、これによって地域の実情に応じた河川整備が進められていくということで、私としても大変うれしく思っております。  ただ、今回の改正案では、河川整備基本方針というものと河川整備計画という二つ計画のうち、住民の意見を聞くとされているのが河川整備計画の方で、河川整備基本方針については河川審議会の意見を聞くことというのだけ示されているのですけれども、これについては地域の意見の聴取について基本方針と整備計画との違いがあるのはなぜなんでしょうか、そこら辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  23. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 従前工事実施基本計画二つに分けて、基本方針と整備計画に分けたという点が今回お願いをいたしております改正点でございます。  これがどういう形でこういうことになったかというところでございますが、まず河川基本方針では、全国的なバランスを見ながらその流域の特性として決まってまいります基本高水、そしてそれをダムと河道でどう配分をするか、こういう計画高水、こういうものをこの基本方針でお決めをいただく。そしてそれを受けた形で河川整備計画をつくる。この河川整備計画では、具体にどこにどういうダムをつくりどこにどういう堤防をつくるかということもひっくるめてこの整備計画の中でお決めをいただくという形になっております。  それで、この中で、従前から基本方針にどうして住民に意見を聞く仕組みを設けないのかという御意見をいただいておるところでございますが、そこがまさに今回の改正一つの仕組みでございまして、全国的な視野から、そしてまた抽象的に技術的、科学的に決まってくる分野と、そして個別具体に目に見えた形て議論できる分野というのを分けたい、分けた上で議論をしていただくというのが大きな改正点でございます。  もちろん、この基本方針を決めるに際しまして、先ほど先生からも御指摘ございましたが、河川審議会の意見をお聞きするということにしております。この場合の河川審議会の意見の聞き方でございますが、これにつきましては、一級水系につきましては、その中でも必要な場合には個別の水系ごとに個別に河川審議会の中に小委員会を設ける等々いたしまして、その中に学識経験者あるいは地方公共団体の長の方に特別委員という形でお入りをいただいてそこで議論をいただくという仕組み、そういう形で物を考える、そういう場づくりをしたいというふうに考えております。  ですから、その中で決められたことを受けた形で具体整備計画が決まっていく。その整備計画についてこれまた地域住民の皆さん方の御意見を反映させていくということでありまして、今回の法改正によりまして地域の皆さん方の御意見が従前以上により的確に正確に反映をされてくるというふうに受けとめております。
  24. 橋本聖子

    橋本聖子君 ありがとうございました。  住民の意見を聞くということはとても重要なことだというふうに思います。きちんと行っていく必要があるというふうに思います。  ですが、一口に河川といっても、北海道の話ばかりで恐縮なんですけれども、例えば石狩川のようなものは大河川からまた小川までその規模は本当にさまざまでありまして、そこで行われる河川事業内容もまちまちなんですけれども河川事業について地域意向地域地域で違うというふうに聞いております。このため、適切な意見聴取が行われるためには地域の実情に応じてしっかりとした方法がとられることが大切であるというふうに思いますけれども河川整備計画についての住民の意見聴取はどのような方法で行っていくのか、お伺いいたします。
  25. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 河川整備計画に関しましての住民の皆さん方の意見の聴取の仕方でございますが、これにつきましては公聴会の開催、説明会の開催、公告・縦覧と意見書の提出、あるいはインターネットによる意見聴取等々いろんな手段を想定いたしております。  そして、御指摘のとおり大は石狩川から小はその町中を流れる小さな川まで、一級、二級合わせて約二千八百の河川、水系があるわけでございますので、それぞれの河川、水系に一番合った形で地域の意見をお聞きするということが一番大事ではないかなというふうに思っております。  そしてまた、住民の意見を計画そのものに反映させるということが大事でございますので、物が決まった上でお示しをするということではなしに、河川整備計画の案の案といいますか、もともとの原案の段階でお示しをいたしまして、関係住民の皆さん方の御意見、学識経験者の御意見をいただいた上で河川整備計画の案を策定いたしまして、その案について地方公共団体の長の御意見をいただいて、その上で河川整備計画を策定する。住民の意見が総意として計画の中に反映をさせられるように、そういう仕組みを考えておるところでございます。
  26. 橋本聖子

    橋本聖子君 河川整備計画に対して地域住民が意見を述べる機会を持つことになるのはとても意義深いものだと思いますし、また先ほどお尋ねしましたようにイベント活動広報活動と並んで地域住民河川に対する愛着や関心を高めていくという効果もあるのではないかというふうに思います。  ですが、単に計画の案を示されただけでは一般の市民がその計画内容が適切なものかどうかという判断をするには非常に難しいところがあるというふうに思いますけれども住民の意見聴取の手続が適正に機能していくためには、住民の皆さんの意見聴取に際して必要な資料ですとかまたデータというものを提供していただければいいなというふうに思うんですけれども、その点についての御見解をお伺いいたします。
  27. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 御指摘のとおり、住民の皆さん方から御意見を聴取するに際して、情報公開というのが大前提になるというふうに私ども考えております。情報公開制度考え方に沿いまして、個人情報等そういう情報は別にいたしまして、でき得る限りすべての情報を公開していくというのが私ども基本的な考え方でございます。  今現在もそういうことで進めておるつもりでございます。
  28. 橋本聖子

    橋本聖子君 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。  次に、樹林帯制度についてお伺いいたします。  改正項目の一つ樹林帯制度の創設がありますけれども、これは河川ダムの周辺に緑の空間がつくられていくというものでありまして、私としましては先ほど質問させていただきましたけれども河川環境に関連するということもありまして本当にすばらしいものだなというふうに思っております。  従来、堤防が完成すれば堤防沿いの樹林というのは不要なものとして伐採されまして、そしてそこが農地ですとかまた宅地にされてきたと思いますけれども、今回の改正によって改めて堤防沿いに樹林を植えようというのは、何か大きな発想の転換というんですか、今回の改正趣旨というのはすばらしいというふうに思うんですけれども、その点についてお伺いしたいというふうに思います。  また、具体的にその計画をされている場所等が今ございましたら、あわせてお聞かせいただきたいというふうに思います。
  29. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 樹林帯制度でございますが、大きく分けまして二つ機能と申しますか、二つのものに分かれるというふうに思っております。  一つは、堤防沿いに整備をいたします樹林帯でございます。従前、河畔林と呼ばれておったものでございます。洪水計画をした規模を超えて起こらないという保障は全くないわけでございます。当然、異常な洪水時にはそういうことが起こるわけであります。そういう場合に被害を最小限にとめる、壊滅的な被害を生じないようにするというのがこれまた大変大事だ、こういうふうに思っております。  そういう意味合いで、昨年の六月の河川審議会の答申でも、越水しても壊れにくい堤防の整備という形で提言をいただいておるわけでございます。そういう一環として、堤防の町側に樹林帯を整備することによりまして、洪水で越水しても堤防の破壊をできるだけ最小限にとめるということにしていきたいというものでございます。また、ダム湖畔林、これはダムの貯水池の水質を守ろうというものでございまして、これも木が持っておる根っこのいろんな機能を使いつつダムの濁水問題等々に資していこうというものでございます。  それで、具体にどういう形で進めるかということで申しますと、堤防に沿った形で行いますいわゆる河畔林としての樹林帯につきましては、今後五年間でおおむね延長五十キロメートル程度を計画的に整備をしたいというふうに考えております。また、ダム湖畔林の方につきましては、現在管理中のダム、これは直轄、公団、補助を合わせまして三百七十ほどございますが、このうち三十ぐらいのダムで実施をしていきたいというふうに考えております。
  30. 橋本聖子

    橋本聖子君 ありがとうございます。  樹林帯制度の創設の趣旨をお尋ねした際にも触れましたけれども、樹林帯というのは洪水被害を最小限に食いとめるというすばらしい役目もあるんです。  先ほどとちょっと話がダブってしまうかと思うんですけれども、緑をふやす樹林帯というのはウォーキングトレイル事業にもまた結びつくのではないかなというふうにも思うんです。そこで緑に親しめるようにすればまた一石二鳥だとも思うんですが、樹林の間に遊歩道整備ども行っていただければと思うんです。そこのところを、重なるかと思うんですけれども、簡単に御意見といいますか、これからどうお考えかお聞かせいただきたいと思います。
  31. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 樹林帯そのものは、先ほど申しましたような治水上あるいは利水上の機能に着目しての事業でございますが、結果として先生指摘のとおり、町の中での非常に貴重な緑の空間になるわけでございます。  お話しのウォーキングトレイル事業等々の中でも、この樹林帯を活用していただくということを私どもも積極的に考えてまいりたいと思っております。
  32. 橋本聖子

    橋本聖子君 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。  次に、河川法改正から少し離れてしまうかもしれないんですけれども、ちょっと北海道の二風谷ダムについてお伺いしたいと思います。  ことしの三月に、二風谷ダムは札幌地方裁判所におきまして判決が出されました。裁判においては、アイヌ民族の文化に対して配慮が足りなかったとして収用裁決が違法とされましたけれども、一方ではダムの公共性は認めて収用裁決の取り消しは認めませんでした。この判決については原告、被告とも控訴しなかったために判決が確定しましたけれども建設省といたしまして、これから二風谷ダム事業を今後どのようになさっていくのかお聞かせいただきたいと思います。
  33. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 二風谷ダムでございますが、これは沙流川の洪水被害の軽減、そして都市用水の供給ということを目的とした多目的ダムでございます。現時点では試験湛水を既に終わりまして、ダムの周辺の環境整備を実施しているほとんど最終段階に差しかかったダムでございます。来年度、平成十年度から管理に移行してダムとしての運用を開始しその効用を発揮するということにいたしております。  もともと沙流川は、北海道では大変珍しく急流河川でございまして、この治水対策の早急な実施ということについては地元からも大変強い要望をいただいておるところでございます。なるべく早くその効用を発揮させたいということで現在考えております。
  34. 橋本聖子

    橋本聖子君 二風谷ダムの判決でも述べられているところですが、ダムを初めとした河川事業を進めていく上で、やはり文化財というものに、地域の文化に十分配慮する必要があるというふうに思います。  今回の河川法改正環境への配慮が盛り込まれておりましたが、地域の文化に配慮した河川事業への考え方、取り組みというのをまた簡単にお聞かせいただきたいと思います。
  35. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 二風谷ダムの訴訟に関しましては、先ほど先生指摘のとおりの形で確定をいたしたわけでございます。  私どもといたしましては、従前からアイヌ文化を大事に運用したいということで、アイヌ文化遺跡の発掘、調査、保存に努めるとともに、二風谷ダム周辺環境整備構想調査委員会というものを昭和五十六年、五十七年に設けて検討いただきました。その成果を生かした形で二風谷ダム文化博物館等のアイヌ文化を生かした地域振興、あるいはチプサンケ、これは船おろしの儀式でございますが、これの代替場所の整備というようなことを行ってまいりました。  ただ、そういう意味合いでできる限りの配慮をしてきたつもりでございますが、判決において評価をいただけなかったということは残念ではありますが、より一層これを契機にして、そういう面に配慮をしていくということの重要性を再認識させられたというふうに受けとめております。  この問題につきましては、北海道におけるアイヌ文化に限らず、それぞれのダムにいたしましても河川環境にいたしましても、それぞれの地域の文化あるいは風土に根づいたそういうところでの事業でございます。そういう文化あるいはそういう風土に十分配慮をし、それを内部目的化をした上で事業を進めるということで、今後ともより一層努めたいというふうに思っております。
  36. 橋本聖子

    橋本聖子君 今ダムについてお聞かせいただきましたので、もう一点だけ千歳川の放水路についてお聞かせいただきたいと思います。  先ほどもお話をさせていただきましたけれども、千歳川流域の治水対策として行われている千歳川放水路については調査が実施されて以降長年経過しておりまして、現在では広く地域の意見を聞く場として話し合いの場を設置するという動きがあるというふうに聞いております。その位置づけや設置の見通しについて。  もう一つは、先ほど話もさせていただきましたけれども、ここは平地といいますか大変広々としたところでありますので、何回も過去には災害が起きておりまして、このまま何も治水対策に手をつけないというのでは地元は大変困ってしまいますので、その点について今後どのような対処をされていくのかもあわせてお聞かせいただきたいと思います。
  37. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) まず、千歳川放水路に関しましての話し合いの場を設ける動きがどうなっているかという点について御説明を申し上げますと、これは先生指摘のとおり、ずっと調査を続けておりながらなかなか方向性が出ないということでございます。平成四年には当時の北海道知事から要望事項が出されました。それに対して平成六年には関係者が入った協議会の場で回答案が示されたわけですが、それでもなおかつ動かないという膠着した状態で現在まで至っております。  御指摘のとおり、現千歳川の流域では毎年のように洪水被害が繰り返されておるわけでありまして、この流域の皆さん方からは千歳川放水路に対して大変強い御要望がございます。ところが、これに対して放水路の排出先でございます海面といいますか、漁協の皆さん方からこの放水路について反対の決議がされる、あるいは自然保護団体から美々川あるいはウトナイ湖を守るという立場から反対が表明をされる、そういう中でまさに膠着状態でして、それを打開すべく北海道庁が主体となられて話し合いの場をつくるということで、現在精力的に調整をされておるわけですが、この話し合いの場すら開けないという状況でございます。  話し合いの場におきましては、現在のこの千歳川放水路計画にこだわることなく、前提条件をなしにした上で千歳川流域の治水対策について関係者の意見交換をしていただく、その上で地域の共通の合意をつくり上げていくということを目的とした場でございます。私どもとしては、この場が一日も早く設けられるようにできる限り協力をしていきたいというふうに思っておりますが、現時点において残念ながらまだ見通しが立っていないというのもこれまた事実でございます。  一方、そういう状況のもとで何もせずに手をこまねいておるのではだめだ、こういうおしかりでございます。まさにそういうふうに私どもも受けとめております。千歳川の河道改修、それから内水排除のためのポンプ場の建設、あるいは漁川ダム建設など千歳川自体のそういう河川改修にあわせまして、千歳川が合流をいたします石狩川の洪水水位を下げる、このために河口からずっと石狩川本川の河道掘削を継続して実施をしておるわけでございます。そしてまた、千歳川流域におきましては、千歳川流域洪水対策整備計画平成八年五月に策定をいたしまして流域内での流出増を抑える、そういう対策も講じてきておるところでございます。  そういう事業も進めてはまいっておりますが、何と申しましてもそういう千歳川に集まってきた水をどこかに吐かない限りこの地域の根本的な治水対策にならないわけでございまして、そういう意味合いでも話し合いの場が一日も早く設立をされ、成果が出るということを、私どもとしてもそれに向けて最大限努力する、それしかないと考えております。
  38. 橋本聖子

    橋本聖子君 ありがとうございました。ぜひよろしくお願いいたします。  最後大臣にお伺いいたします。  今回の法改正を受けまして、治水利水に加えて環境もその目的として河川行政を進めていかれるというのは大変意味深いものだと思います。ですが、最近は財政再建のため公共事業費の削減が言われておりまして、環境という新たな要請を受けて河川事業を進めていくというのはとても大変だと思いますけれども、このあたりについての大臣の御見解とあわせまして御決意のほどを最後にお伺いしたいと思います。
  39. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) 私ども、大変ある意味では悩んでおるといいますか苦しんでおるといいますか、台風とか集中豪雨等を制御するというすべを我々は依然として知らぬわけでありまして、いつ、日本列島のどこをそれが襲ってくるか、これはほとんど予測不可能でございます。  私は前に運輸大臣をしておりましたが、気象庁の今の力をもってしても、予測は直前にはできますけれども、それを長期的に、ここは大丈夫だ、この地域はというそんな自信のある予報ができるわけでもありませんし、ましてやそれを防ぐ、制御する力は今はございません。ゼロでございます。自然に任せるしかないわけでありまして、そういう中で、しかし確実に地勢学的な地球上における日本の地理等から、日本列島を移動させるわけにいかぬわけでありますから、過去の経験則からいっても常に襲ってくる。これから財産もさりながら少なくとも人命を最低どう守るかということ、これが河川行政基本であろうと私は思います。この点をゆるがせにして河川行政なんてあり得ない。これは利水も同じだと。異常渇水が御承知のようにしょっちゅう起きておるわけでありますから、そういうものを解決する。  そのためには、財政再建をやり抜かなければなりませんけれども、しかし人命には何物もかえがたい、またのどの渇きには何物もかえがたいわけであります。そういう意味では、国家財政支出のうち他の分野を削減をする分であって、そういう基本的なものには金を出していくということでなければ私は政は成り立たない、このように思います。  そういう意味で、財政再建、間もなく財政構造改革会議での結論も出されるわけでありますけれども、私は財政経済運営のプロ中のプロが、今のすばらしい状況をおつくりになった方々がお集まりになっての会議でございますから、必ずそうした視点等をきっちりと踏まえてちゃんとした結論をお出しになるだろうと期待をいたしております。  なお、これは予算編成権とも関係あることでありますから、けさの閣議でも私申し上げましたけれども、各閣僚の意見をきちっと御聴取いただきたい。木曜日にやっていただくようでありますけれども、そういう手続の中で決まってまいりますが、いずれにいたしましても五原則で公共事業トータルについては削減をするという方針を出しておるわけであります。そうした中で、私どもとしてはやはり今申し上げました視点をきっちりとにらみながら重点化をしていかなければならない、このように考えております。  その中で、この河川法環境への配慮といいますか、環境を守るという憲法を制定するわけでございますから、ただ単に治水利水をやればいいというわけにもまいらない。しかし、ここが非常に悩ましいところでありまして、といっていつ台風が襲ってくるかもしれない。一日も早くそれを防がなきゃならぬ。とりあえずそのためには、木を植えて、それでせせらぎを残してという、うんとお金のかかる整備をしていきたいんだけれども、予算がぎゅっと削られてくる中には、人命を守るということについてこれを優先せざるを得ないという基本的な面、だから私は悩ましいといいますか苦しいということを言っておるわけでありますが、そのあたりのことを今後の具体的な予算また執行の中でやっていきたい。  ここに各党の方いらっしゃいますが、こんなことは党派とかそんなことは関係ないことでありまして、財政再建をやるというのはこれは当たり前のことでありますけれども、それをどういう形でやることが子々孫々のためを含めて適切なのかということをもっと冷静にやらなきゃいかぬ。公共事業を減らすことが、治山、治水利水の予算を減らすことが財政再建みたいな短絡的な議論が横行していることを私は大変憂えておるわけであります。
  40. 橋本聖子

    橋本聖子君 大変ありがとうございました。ぜひよろしくお願いいたします。  これで質問を終わらせていただきます。
  41. 福本潤一

    ○福本潤一君 平成会の福本でございます。よろしくお願いいたします。  今回、河川法改正ということで、最初の旧河川法が明治二十九年に改正されて百年目に当たり、新河川法が制定されたのが昭和三十九年でございますので、今回この新河川法にかわったときの状況を振り返って考えてみますと、建設省河川管理を一元化するということで、建設省、農水省が省庁を挙げて大反対があった中で建設省が一元管理をしていくという形で進んでいったわけでございます。あの当時、河野建設大臣が、一元管理に反対する農水省の水利課長と、建設省河川課長、その立場に立って議論しているところを急速二人の人事を交代するという大きな動きの中でつくられた河川法でありますが、河川法に入る前に亀井建設大臣、同じように実力大臣でございますので、ひとつ行革の面からお話を伺わせていただきたいと思っています。  自民党に、行政改革の中に、省庁統廃合という中で、十省庁に統廃合するんだということで国土農水省という構想がありました。この中には国土庁、建設省、農水省まで含める。新進党も行政改革ということで省庁統廃合十五省庁案の中には、国土、建設、また北海道開発庁、沖縄開発庁等も含めて国土建設省という言い方をして提案したことがあります。そういう水という行政から見ると、ある意味では国土と建設、農水を一元管理するために、また利水側の考え方から考えても非常に望ましいのではないかなと思いまして、自民党案も大いに私も耳を傾けたいと思っておりますので、この国土農水省見解に関しまして、亀井建設大臣、所感をお伺いさせていただければと思いますのでよろしくお願いします。
  42. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) しょっぱなから大変荷の重い御質問をいただいたわけでありますが、今まさに世紀の大改革であろうと思います。GHQの改革が行われましてから約五十年、制度疲労も起きてきたというのは現実であります。  二十一世紀へ向けて、将来をにらんだ行政機構、権限、そういうものをこの際思い切ってつくり直そうという大作業に今から取りかかるわけでありますが、それについて今いろいろと自由民主党においても、また各党においても、あるいは政府等においてもいろいろな議論がされておるわけであります。今の流れというのは国家機能を類別して、それに従った行政組織をつくり、権限について民にゆだねるものは民にゆだねると、地方にゆだねるものは地方にゆだねるという、そうした権限面等の分配も行いながら新しい行政組織をつくろうという基本的な考え方であろうと思います。  私は、建設省の幹部ともこれは全く意見が一致しておるわけでありますが、建設省を残そうだとか、建設省のいわゆる省益を広げようだとか、そういう感じは私ども以下だれも今持っておりません。いや、きれいごと言うんじゃなくて、笑っておられる方もいらっしゃいますが、むしろ国会議員よりも建設省の役人が生まじめに我が国の将来のあり方を見定めまして、どういう組織のあり方、権限がいいのか、まあ検討しておるところでございまして、私は今確たる構想を持っておるわけじゃございませんが、今、委員指摘のように、やはり縄張りをどうしてもやりたがるのが役人の習性であります。これは権限もそうでありますが、予算あるいは人をふやすことが役人としての実績評価みたいな、そういう雰囲気がないわけではございません、私も役人をしておりましたけれども。そういうことではなしに、非常に広い視野の中で行政考え実行していく、それには私は省庁の統廃合は思い切ってやるべきだと思います。  こうした名前がいいかどうか別といたしまして、もう一つの視点はやはりいわゆる交通関係です。陸海空、私は運輸大臣と今建設大臣をやっておるんでありますが、やはり残念ながら二重投資の状況があると思います。これは農水省との関係もあります。農道あるいは林道と道路との関係、あるいは自治体からいえば空港も欲しい、新幹線も欲しい、高速道路も欲しいという、別におもちゃが欲しいというわけじゃありませんけれども、やはりそうしたことに対して各省庁がそれぞれ対応していくということをやった場合、大変なこれは二重投資が起きていくわけでありますから、そういう面では、そこらも一つの省庁にして、トータルとしてそのトップが内部を調整しながら判断していくという形が私は望ましいのではないかと、このように思います。  そういう意味では、この際思い切って広範囲を一応一つにまとめる、しかしその内部はさらに責任者がそれぞれ執行等についても責任を持つという、そのあたりは工夫が一層必要なんではないか。組織をでかくすれば、その管理という問題もありますし、そういう大きな問題もあろうかと思います。
  43. 福本潤一

    ○福本潤一君 省庁統廃合は、省益にかかわらず大きな二十一世紀の目標に向けてやっていただけるという取り組みの姿勢を披露していただきました。また、ニュージーランド等でも行革で、省庁でもうほとんど一けた台の人数になったような省庁、運輸省系統もありますので、こういうことに関しましてはソフトランディングの必要もあろうかと思いますけれども、積極的な取り組みをお願いしたいと思います。  先ほどの大臣の答弁の中に、民に移すものは民に移す、また地方に移すものは地方に移す。建設省は水関係以外にも道路、交通、先ほどの下水道関係もありますし、さまざまな分野を含んでおるわけでございますが、建設省の公共土木事業の中で民営化できるものはどういう部門を考えておられるか。先ごろ建設大臣は、住都公団の思い切った再編、また取り組みをやるというふうに言っておられましたので、建設省の公共土木事業の中でどういう部門が民営化可能だとお考えなのかをお伺いさせていただければと思います。
  44. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) 私は、基本的にはもう民間が自由競争原理をフルに発揮してやれる分野というのは思い切ってやればいい。ただ、それによっていわば社会的弱者といいますかそういう者、また地域によってそれによって不利益をこうむっていくという、そういうことがないことを見きわめながらやれる分野は私はそれをやっていけばいいと思うわけであります。  建設省の分野にどこがあるかということでありますけれどもダムなんかにしても電力会社が御承知のようにダム建設する場合もあります。そういう意味では民間でやれる場合も私はあると思いますけれども治水、また広い意味渇水対策、また利水という形になるとなかなかこれを民間の手で建設をしてもうけろと言いましても、なかなかそういう状況は出てこない。  道路建設にしても、一部箱根だとか軽井沢に民間が料金をとってやっている道路もありますけれども、御承知のようにこれは採算が全然合わないという実態もあるわけでありまして、ただ国が直接やるよりも民間との中間的な形態として道路公団という形で、これはある意味では工ージェンシー化だと思いますが、道路局が直接やるんではなくて道路公団という形でやらせておるということもあると思います。  下水道等については、これはもう今から超重点の一つですけれども地方との負担をどう分配するかという問題。地方に任せていいんじゃないかという議論もありますが、財政力との関係も御承知のようにあります。それと技術的な問題があります。だから、そういうようなものをどうクリアしながら地方と国が役割分担をしていくのかという、そういうこともあろうかと思います。  また、公園等につきましては地方に任せればいいじゃないかという御議論もありますけれども、しかし我が国の公園行政というのが外国に比べて極めておくれている状況の中で、これも自治体だけに任せることによって全国的にやはりきちっと均衡のとれた形で整備できていけるのかという面もあろうかと思います。  個々に申し上げますと時間があれですけれども、私は思い切って任せるものは任せる。住都公団につきましては、御承知のようにこれはもう思い切って任せるものは任せていく。ただ、長い間に蓄積したノウハウとか、あるいは都市の再開発等については公共インフラの問題等いろいろあります。また、自治体の能力等もありますし、具体的な要請が強いわけでありますから、そういう部門については建設省は住都公団、これは廃止をして新しい形にすればいいと思いますけれども、そういう形でコミットしていくとか、要は国民のため、また国家としてきっちりとした国土形成がなされ、また生命、身体、財産を守っていくという目的が達成されるにはどうしたあり方がいいのかという、そこを外さないで今のような問題を考えていけば自然と私はコンセンサスが生まれてくるんじゃないかな、このように思っております。
  45. 福本潤一

    ○福本潤一君 国民のために思い切った行革、省庁統廃合、また民間移管も取り組んでいきたいというお話だと承らさせていただきました。  と同時に、今、道路公団のお話もありましたけれども、国土庁の所管の公団として水資源開発公団というのがありますが、行革の中でよく水資源開発公団、水系指定した河川を一元管理また開発するという形で発足したものでございますが、この水資源開発公団も統廃合の中の一つになり、行革対象という形でときどき名前が挙がったりします。国土庁自身が今言った省庁統廃合の中で名前が挙がってきたりすることもありますが、国土庁の方にこの水資源開発公団、こういう形で一元管理してかなりの年月がたってきたわけでございますけれども、この水資源開発公団のそういう行革対象だとか民営化だというような話を言われることに関しましてどういうふうにお考えか、国土庁の方に御意見をお伺いしたいと思います。
  46. 振井茂宏

    政府委員(振井茂宏君) 水資源開発公団による水資源開発事業は、治水利水を含めた大規模な多目的ダム、堰、用水路等を建設、管理する事業であります。非常に事業内容が公共的な性格が極めて高く、民間での事業は困難であると考えております。また、ダム等の水資源開発には二十年ないし三十年の超長期間を要しますこと、それから事業資金が膨大なものとなることから、採算性の面から見ても民営化はなじまないと考えております。
  47. 福本潤一

    ○福本潤一君 私自身も水問題というのは、逆に一元管理して、水に関する省庁が一つ独立してあってもいいんじゃないかぐらいに思っております。水資源開発公団は大水系、大都市を控えたところの水系指定を一元管理し、また開発しておりますので、私自身も存続をした上でむしろ水関係のものをそこの中に取り込むような形で、現在、エージェンシー化と先ほど建設大臣が言われましたけれども、そういう中で進めていったらどうだろうかというふうには考えておりますので、その点を一応この機会に述べさせていただくというふうに思いまして発言をさせていただいたところでございます。  今回の河川法改正の問題に入っていきたいと思います。  先ほど橋本委員の方から改正目的ということで河川局長から四つの柱というふうにお答えいただいたところでございますが、この改正の中で、環境保全というものが大きな柱としてまた今回入ってきたということでございます。と同時に、本来河川というのは治水利水という大きな目的、最近環境問題というのが大きな課題となってきて、地球環境問題から地域環境問題まで併存して述べられているようなところがありますので、私としては地球環境問題、地域環境問題、区別して述べないとこれが混乱してくるなという考えも持っておるわけでございます。  その中で最初、本来の河川法ができて利水というものが、平成六年に日本国じゅうを襲う大渇水があったわけでございます。そういたしますと、のど元過ぎれば熱さ忘れるということで、利水という観点から見たときに河川利用がかなり厳しい状況になっている地域がある。江戸時代ですと人口三千万ぐらいで安定的に推移しておりましたので、かなり水に関しましてはのどやかな小川のせせらぎとかいうような感じのものが、今は自然保護団体の人から川に水が流れていないと。ある文書によりますと、川よおまえはそれでも川かというような言い方で表現されるぐらいの川も出てきているということが具体的に起こっております。したがいまして、水利権というのが非常に農業用水以外にも大きな形として農業用水以外の方々から再検討せにゃいかぬのではないかというような話まで出てきておるわけです。  したがいまして、基本的な話ですけれども、土地と水というと基本的な資源でございますけれども具体的に建設省としては水利権という権利と土地の所有権という権利とどういうふうな違いのある権利だというふうに考えておるかを最初基本的な話でお伺いさせていただければと思います。
  48. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 土地の所有権は民法上認められた私権でございますが、水利権と申しますのは公共物、公共用物でございます河川の流水を排他、独占的に使用できる、そういう使用権でございます。そして、河川法上では流水は私権の目的となることができない、こういう定めを置いておるところでございます。そういう意味合いで非常に似た面と違った面と両様あろうかと思っております。  まず類似点という点で申しますと、水利権につきましても物権的な性格を有するということで、土地の所有権もそうでございますが、いずれも他人からの妨害に対してこれを排除、回復、予防することができる、そういう面では土地の所有権、水利権とも同じような面があろうかと思っております。  それに対しまして相違点といたしましては、土地の所有権は当事者の自由意思に基づきまして売買等により取得、処分が可能ということでございますが、水利権につきましては当事者間の自由な売買というようなことはできずに、先ほど申しました公共物である、そういう性格から河川管理者の審査が必要になってくる、そういう点が違うというふうに考えております。
  49. 福本潤一

    ○福本潤一君 類似点と相違点、両方言っていただいたわけでございますが、他人から排除はできるけれども、流水の排他的、独占的に使える権利ということで水利権が設定されておるわけでございますが、河川法の二十三条に許可水利権というのと、八十七条に慣行水利権という二つの権利があります。この二つの権利自体の相違点、類似点をまた言っていただければと思います。
  50. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) ただいま御指摘の慣行水利権でございますが、これは昭和三十九年、現在の河川法に大改正をされました時点におきまして、従前から使われておった水利権というものを、これを慣行的に使われておったということをもって慣行水利権という形で、水利権の一つの態様として認めたものでございます。  現在、この慣行水利権をどのように考えていくのかということが、ある意味では河川の水利用をどうしていくのかという根幹にかかわる問題でございまして、この問題をどう扱うかというのは大変難しい問題だというふうに受けとめております。  従前、農業者がみずから河川を治めみずから水をおつくりになってこられた、そういう中での権利、それを新しい河川秩序の中でどう位置づけ、これをどういう形で将来使っていくのがいいのか、大変大きな問題だというふうに思っております。
  51. 福本潤一

    ○福本潤一君 慣行水利権の場合は、もう河川法ができる以前からの権利として取得してきた農民、日本河川ダム等の工作物をつくらないときの自流量はほとんど農業用水、慣行水利権であったという歴史的背景があるかと思います。  渇水が起こりますと渇水調整協議会、今回の一つの柱であります五十三条の改正というものが具体的に出ておりますけれども河川審議会では渇水調整協議会というものをむしろ法定化して、建設省河川管理者、一級河川におきましては法定化して常設したらどうかという改正案があったように私自身読ませていただいておりますし、当初の建設省案では協議会の法定化という形で私はお伺いさせていただいた。途中からトーンダウンし、まして、これを渇水が予測される段階でつくられる、もしくは事前に、法定化という形ではなくて利水者の調整にゆだねる中で建設省が情報開示するというような形でおさまったということを推移の中で見てまいりました。  このトーンダウンした背景というのは、具体的にどういうことでございましょうか。
  52. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 昨年の十二月に出されました河川審議会からの御提言の中では、渇水調整協議会の法定化ということが打ち出されております。それを私ども受けまして法定化に向けて作業に入ったわけでございますが、そういう動きの中で、全国的に農業者あるいは土地改良区を中心といたしまして法定化に対して強い反対の意見が出されました。  これは、先ほど先生も御指摘されましたように、従前からの、これは河川法以前の江戸時代あるいはそれ以前からのずっと歴史的経過を踏まえた、そういう中で出てきた水への思いが背景にあると思いますが、そういう中での反対として、まず渇水になったときには利水者の間で協議をするんだ、その場に最初から河川管理者が入るということは現在の体系とは違うんだ、今までの水利秩序を大きく変えるものだ、こういう指摘でございました。  それに対しまして、私ども考え方としまして、現在のように上流にダム群ができ、そのダム群を使ってどういう形で水の補給をしていくことによって渇水を最小限に防げるかというそういう視点が非常に大事だということについても説明をいたしましたが、今回におきまして理解を得られることができなかった、こういうことであります。  いずれにいたしましても、利水者の間での理解を得られないままに制度をつくりましても機能をいたさないわけでございますので、これから私ども考え方を十分いろんな場で説明をする中で御理解を深めていただけるよう努力をしたいというふうに思っております。  河川局長通達に基づきまする水調整協議会、これは一級水系では百九のうち六十二水系できております。ただ、二級水系は残念ながら二千七百のうち二十六しかない、こういう状況でございます。  いずれにしましても、渇水時における渇水調整を円滑にする、そのための仕組みをどうすればいいのかということにつきましては、今後とも関係者と十分協議をしながら進めてまいりたいと考えております。
  53. 福本潤一

    ○福本潤一君 具体的に、現在、河川の自流量の、慣行水利権、農業用水から、もうダム開発した上で初めて水資源を開発できるという状況が差し迫っております。そういう段階におきまして、農水省の方の考えをお伺いしたいのでございますが、渇水調整建設省の方も利水者間での調整にゆだねるという形で今回の法案が落ちついたようでございますけれども、これだけ開発をするのがもう限界期に来ている河川というものの水利権の自流量を持っている農業用水としては、そういう形で落ちついたということに関する所感はどのようにお考えかをお伺いさせていただければと思います。
  54. 武本俊彦

    説明員(武本俊彦君) お答え申し上げます。  農林水産省といたしましては、渇水調整につきましては、利水者間の互譲の精神に基づきました自主的な調整にゆだねることが基本であると考えております。  今回の法改正におきましては、そのような方向改正案とされていること、また河川管理者の情報提供努力を規定しておりますこと、この点につきましては利水者による円滑な渇水調整従前にも増して促進することにつながるものではないかと考えておりまして、今回の法改正については非常に意義ある改正考えるところでございます。
  55. 福本潤一

    ○福本潤一君 先ほどから許可水利権、慣行水利権のお話を伺わせていただいたり、今回の協議会の話を伺わせていただきましたけれども具体的な現場で聞かせていただかないと若干わかりにくいんだなという思いがありますので、利根川という日本第一の流域面積を持っている首都圏を控えている河川、この利根川で実態をお伺いさせていた、だこうと思います。  といいますのは、先日、参議院の代表として、世界で第一番の人口のあるメキシコシティーという二千万の人口を抱えているところへ伺わせていただきました。大統領ともかなり一時間ぐらいの懇談をさせていただいたわけでございますが、二千万の人口を抱えているということで、利水また治水、これは大変なわけでございます。  利水の方におきましては、ほとんど盆地でございますので、そこに二千万が集まっているということで、地下水主流でくみ上げている。そうすると、最近のコンクリート建ての建物でございませんで石づくりの建物ですので、基盤がコンクリートほど深く入っていない分地盤沈下が都市じゆうに進んでおりまして、中には二階が一階になっているようなところまである。その中で二千万の人口の水を全部手当てする。また、排水の方もほとんど、カリブ海を守るために北方二百キロぐらいのところまで汚いまま、処理されないまま持っていって、そこのはもう環境の問題どころじゃないぐらい汚れているという状態で、ぜひとも水資源の問題でもう一度来てもらいたいというような話もあったところでございます。  そうしますと、東京も一千万の人口を抱えて、首都圏全体で言うと三千万の人口を抱えておるわけでございます。昭和三十九年東京オリンピックのとき以来、利根川も首都圏の水を賄うという形になりましたけれども、この利根川の水利権の実態をまず最初に伺わせていただきたいと思いますが、現在、許可水利権、慣行水利権、これらの水利権の実態はどのような状態になっているのかというのをお伺いさせていただければと思います。
  56. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 水利権の実態でございますが、許可水利権、これは発電を除きまして三千六百十六件、最大取水量合計九百八十立方メートル毎秒、こういうことでございます。ちなみに、発電は九十四件、常時の流量として六百八十立方メートル毎秒でございますが、これは発電をしてまた川に戻ってきますので、そういう意味で先ほど外した形で数字を御報告いたしました。  そして、慣行水利権の件数は二千八百十三件でございまして、このうち取水量の届け出があるものは千百二十八件でございます。  なお、先ほど申しました三千六百十六件の許可水利権のうち、かんがいが三千二百一件でございます。水量で申しますと七百九十四立方メートル毎秒でございますので、利根川水系では、先ほど来議論が出ておりますとおり、農業用水利で水がほとんど使われた上に、新たに先ほど申しました上水道、工業のそういう用水が乗ってきているということでございます。
  57. 福本潤一

    ○福本潤一君 確認させてもらいますけれども、要するに九百八十毎秒トンの中の七百九十四毎秒トンが農業用水という意味ですか。含まれているわけですか。
  58. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) そのとおりでございます。
  59. 福本潤一

    ○福本潤一君 そうしますと、九百八十のうちの七百九十四、これは農業用水ということで、広大な農地も潤すだけの水のうちほとんどが農業用水ということになると思います。  毎秒一トンと申しますと大体都市人口では三十万ぐらいの人口を養えるぐらいの量でございますし、水田で言うと再利用しなかったら五百ヘクタールぐらいの水田は賄えるぐらいの流量でございまして、その許可水利権、農業用水の水利権の中で利根川で特に渇水のときによく問題になるのは、豊水水利権とか暫定豊水水利権というのが非常に多い。こういうダム開発できないときに、水が多いとき、都市と水の違うのは、年によって水はたくさんあり過ぎるときと逆に少ないときがあるわけでございますけれども、利根川の暫定豊水水利権の付与の実態も同時にお聞かせいただければと思います。
  60. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 利根川の暫定豊水水利権でございますが、二十八件、最大取水量で申しましてその合計が五十三立方メートル毎秒でございます。このうち水道用水が二十四件、最大取水量で申しまして四十九立方メートル毎秒で全体の九〇%。すなわち利根川の水が農業用水を主体として使い尽くされている、その中で新たに水需要が今発生をしてきている、それに対して上流でのダム開発がなかなか追いつけない。ただ、そうは申しても水を供給しないわけにはいかないということで豊水暫定水利権というものを許可しておるわけでございます。  こういうことが一つの構造となりまして、非常に利水の安全度を下げるという形にならざるを得ないというのが実態でございます。
  61. 福本潤一

    ○福本潤一君 今のは豊水水利権だけですか、暫定豊水水利権だけですか、どちらですか。
  62. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 豊水水利権とか暫定水利権と、こう呼んでおりますが、これはどちらも正確に申しますと暫定豊水水利権でございまして、要するに河川の基準地点での流量がある流量を上回っているときにしかとれない、そういう意味で暫定でありますし、豊水のときにしかとれないというので豊水水利権と呼んだり、両方呼んでおりますが、実態は一緒でございます。
  63. 福本潤一

    ○福本潤一君 実態は一緒とはいえども建設省の中ではダム開発の進捗がおくれているために限定的についている権利ということで暫定と豊水水利権を分けているようでございますけれども、その場合、今言われた四十九トン毎秒、これが暫定豊水水利権の中で都市用水側だというふうにお伺いいたしましたが、この都市用水の中で暫定豊水水利権がかなりの割合で占めているということになります。  今回、法五十三条の二で特例を設けているようでございます。法改正の中の一つの大きな柱で、五十三条の二で具体的に渇水期において特例を設けるということでございますが、この暫定豊水水利権、やはり豊水のときだけ与えた権利として河川管理者としては認知されている権利も同様に特例の中で適用される権利なのかどうか、これをまずお伺いしたいと思います。
  64. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 先ほど先生指摘のとおり、豊水水利権として豊水期だけしかとらない、そういう水利権の態様もあり得ますので、そういう意味では先生がおっしゃられたとおりだと存じます。  それで、豊水暫定水利権をこの五十三条の二の適用でどう考えるかという点でございますが、もともと渇水調整の場におきましては、この豊水暫定水利権もひっくるめて渇水調整を行っております。利根川の実態でもそうでございます。そういう議論の中で、安定した水利権をお持ちの方の間からは当然まず豊水暫定水利権を切るべきだ、こういう議論もございますが、一方豊水暫定水利権によっているものが上水道ということで、市民生活に直結をしておるということでなかなか切れない。そこのいろんな調整が行われるわけでございまして、そういう意味ではまさに豊水暫定水利権についてもひっくるめて渇水調整が行われております。  そういう意味合いで、五十三条の二の適用に際しましても、この豊水暫定水利権をひっくるめて物を考えていくということになろうかと思っております。ただ、受け手と出し手の間において豊水暫定水利権の方が水が余っている状態ならともかく、足りない場合にその権利を別の水系の方に持っていくというような形になれば、その場合にその水系の合意が得られるかどうかというのはこれはいささか問題があろうかというふうに思っております。
  65. 福本潤一

    ○福本潤一君 今の御答弁ですと、特例に適用される権利だというふうにお伺いさせていただきました。  利根川で、自流量以外にダム等で水資源開発して水利権を得たときに付与した権利として豊水で暫定ということになりますと、本来豊水じゃないときには一番真っ先に切り捨てられる権利。この権利が余り過大になってきますと、本来ダム建設計画で十年に一回ぐらいしか今後は渇水が起こらないだろうという形で計画していたにもかかわらず、現実にもう既に利根川は毎年の恒例の行事のように、二年、三年に一回は渇水が起こる。流域が広いですので、とりあえずは取水制限率を地方のように、福岡とか松山のように過大にしなくても何とか乗り越えられているという状態があると思います。  弱い権利にもかかわらず、渇水のときだけは特例を当てはめるという法的な根拠みたいなものは具体的にございますでしょうか。
  66. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) この特例を考えておりますのは、ある水系の水がその水系において余裕がある状態において別の水系で渇水状態になった、その場合のこの水を自分の持っておる水利権の範囲の中でこちらに融通をするということでありますから、この水利権の範囲の中である限り下流に悪影響を及ぼさない、そういうことで水融通に際して手続の簡略化を図る、こういうものでございます。  ですから、水を持っていこうとしておるところの河川の態様によっていろんな考え方があるのではないかというのが先ほど申したところでございまして、こちらの持っていこうとしておる河川において十分に余裕がある、そういう状態においてはそういう場合もあり得ようかと考えております。
  67. 福本潤一

    ○福本潤一君 今の念押しさせていただきますと、その豊水暫定水利権者が、例えば利根川以外に相模川の方からも上水にしろ水利権を持っていたと、そのときに相模川側の方からの水利権で流用するという考え方でよろしいんですか。豊水のときに与えた権利ですので、渇水で特例の状況とはいえ、その同じ利根川がかりの水利権の方では最初にカットされるという考え方というふうにお伺いさせていただいたわけですけれども、それでよろしいのかどうか、確認させていただきます。
  68. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) この五十三条の二の適用は、一応前提としておりますのが関係利水者あるいは関係者の理解を得られるということを前提に成り立っている制度でございますので、その前提が崩れない範囲の中での議論というふうに考えております。
  69. 福本潤一

    ○福本潤一君 ここの時点は異常な渇水の段階だということで、具体的な運用というのはまたほかの面でも触れていきたいと思いますけれども、この五十三条の二が具体的に今回法令として提示されたという背景ですね。河川行政の場合、特に具体例がいろいろ出てきた上で、それを実態的には後追いになるにしても法制度整備するというケースが多いわけでございますが、具体例がどこかございますでしょうか。
  70. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 具体例は、典型的な例として二例ございます。  まず平成八年、近い方から申しまして、平成八年の二月に二級水系興津川から取水をしております清水市上水道が水利使用が困難になりまして、近くの一級水系の富士川から工業用水を取水しているその範囲の中におきまして、静岡県が導水管を接続して水を融通したという事例が一例ございます。  もう一例、これは先ほど先生からも御指摘ございました平成六年の九月の松山、重信川水系の石手川の石手川ダムから取水をしております松山市水道の水利使用が困難になりたと、そういう状況の中で仁淀川水系の割石川の面河ダムを水源とする愛媛県の工業用水を節水して、その分を石手川に導水をして水を融通したと、この事例がこういうことを考えることになったきっかけでございます。
  71. 福本潤一

    ○福本潤一君 具体的に松山の石手川ダム、これが渇水になったときに面河ダムから死に水、堆砂容量から水をとったという例、これも今現在ちょっと利根川をやっておりますので後ほどまた再度質問させていただきます。  農業用水の中の慣行水利権、これを他省庁からも、厚生委員会でもあったようでございますけれども、実態調査をしていかないと、慣行水利権だけに届け出、これがうまく進んでいなかったり、現実の実態調査がわかり切っていない、最大取水量とか期別取水量ぐらいしかわからないというので、水利権は大量に持っているのに、また農地はかなり減反政策で減っているにもかかわらず従前と同じように権利を持っておるではないかという批判もかなり高まっておるようでございますので、農水省に対しまして具体的に実態調査の進捗状態、これはいろいろなところから依頼されておると思いますので、その調査結果も含めてお聞かせいただければと思います。
  72. 武本俊彦

    説明員(武本俊彦君) まず、慣行による農業用水につきましては委員御案内のとおりかと思いますが、地域環境用水あるいは防火用水等としての多面的な機能を持っておりまして、地域の良好な水辺空間保全形成に資するものであります。  このような慣行水利権の実態調査につきましては、慣行による農業用水の利用実態と、それから循環利用の効果を主として解明するために建設省と共同して実施しているところであります。年度別に申し上げますと、平成七年度に三十八地区、平成八年度に五十三地区、その五十三地区のうち平成七年度よりの継続地区が三十六地区、新規が十七地区において調査を実施したところでございます。  この中で、先ほど来議論になっております利根川水系について申し上げますと、平成七年度からの継続地区につきましては五地区を調査しているところでございます。今年度、平成九年度の調査につきましては現在建設省との間で調査地区についての打ち合わせ調整中でございまして、話し合いがつき次第調査を進めてまいる、このような考えでおります。
  73. 福本潤一

    ○福本潤一君 その調査の中身でございますが、先ほど言った最大の取水量とか期別用水量だけの調査で進んでおるのかどうかということも含めてお伺いさせていただきます。  その上で、農業用水の合理化対策事業ということで、農業用水から水利権に剰余があったときに転用するという具体的な事業、対策を行っておりまして、先ほど建設省の方から水利権の定義、また慣行水利権、許可水利権の定義を伺わせていただきましたけれども、この排他的、独占的に権利は授与されるものの、剰余すると返していくような権利であるという類似点、相違点はあるようでございますので、都市用水の転用の実態、これも含めてお伺いさせていただければと思います。
  74. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 農業用水から都市用水への転用の実態について、これは全国の数字でございますので利根川水系に限った数字はちょっと手元にございませんが、昭和四十年度から平成七年度までの間で一級水系で農業用水から都市用水に転用されたものが約三十立法メートル毎秒ございます。このほか約五十立法メートル毎秒が農業用水から減量され河川に戻された、河川の維持流量に充てられたと、こういうことでございます。合計八十立法メートル毎秒がそういう農業の態様の変化に合わせて減量されてきておるところでございます。
  75. 福本潤一

    ○福本潤一君 全国で八十トン毎秒、概算しましても一秒毎トンで大体三十万ということになるとかなり都市用水としては大量に転用されているという面もありますが、具体的に現場へ、福岡なり四国なり瀬戸内沿岸へ行きますと転用が大変進みにくいというのが具体的な例としてはよくお伺いするわけです。この水利権の性格と絡んでくると思いますけれども、合理化対策事業等でこの転用がなぜ進んでいかないのかというのを建設省と農水省それぞれの立場からお伺いさせていただければと思います。
  76. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 私どもが理解をしておるところによりますと、農業の変化によりまして作付面積等に変化がございましても、それが即減量につながらないというのは、農業用水路を通った上でそういう各水田に水が配られるわけでございまして、その際の農業用水路にはどうしても必要な水深を確保する必要がある、こういうことも背景にございまして、単純に農地が減少したからといっても必要水量の減少になかなかつながらないというのが実態だというふうに受けとめております。そしてまた、そういう施設の改善をするということになりますと、農家の方の負担が出てくるという面もございます。  また、先生指摘のとおり、水利権の性格から、水が余ればこれを公のものとして返す、その上で河川の維持流量として、河川の水として河川に清流を復活させていく、そういう形で戻していただく、こういうことでございますので、経済的なインセンティブがなかなか働きにくいという面があろうかと受けとめております。  そういう意味で、なかなか関係者の間での合意形成というのが難しいというふうに私どもは受けとめております。
  77. 中島治郎

    説明員(中島治郎君) 委員指摘の農業用水合理化対策事業は、昭和四十七年に創設いたしましたが、昭和五十五年度に採択して以来新規事業の申請がないのが実態でございます。  そこで、その進まないという理由でございますけれども、先ほど河川局長さんの方から理由もいろいろ申し述べられたとほとんど同じでございますけれども、農水省といたしましても、この事業事業費に係る農家負担が伴う、また既得水利権の一部をどうしても放棄しなければならないというようなことで、農家にいたしましても経済的なインセンティブが、全くないとは言いませんけれども、少ないということから農業者の合意形成が極めて難しいということであろうかと思います。  このため平成九年度に農業用水合理化対策事業を大幅に見直しまして、従来の既存の施設を改修して用水を生み出すという事業にあわせまして、関係農業者の合意形成が容易になるよう水利権を持っております土地改良区に促進費を交付する事業を創設いたしたところでありまして、今後ともこういう事業を通じまして農業用水の転用、合理化にも努めてまいりたいと思っております。
  78. 福本潤一

    ○福本潤一君 具体的に両省から経済的インセンティブということで、経済的な動機がなかなか働きにくいということが挙げられておりましたけれども、もともと公水という立場で、先ほどから土地所有権と違って売買できないということがあったようでございます。そうしますと、経済的インセンティブが働かないのが当たり前の話でございまして、むしろ強制的に水利権として取り上げるという形ではなくて、合理的にうまく水が、例えば必要が減ったときにこれが転用可能なような温かい政策をやっていかないと、これは先ほどの合理化事業が進まなかったように難しい問題になっていくんじゃないかというふうに思います。  といいますのは、日本での水利権の六割程度は農業用水、都市用水は多いようでも二八、七%という中で農業用水が圧倒的に多いわけでございます。もちろん水田農業は日本の柱でございますけれども、そこの転用が具体的にどういうふうにしたら進むのかというのも河川管理者として今後考えていっていただければというふうに考えております。よろしくお願いします。  先ほどやはり出ましたけれども渇水というときの法的整備を今回整えたわけでございますけれども、松山で具体的に他水系から、面河ダムという農業用水、工業用水用のダム、本来太平洋に流れていく、高知県側に流れていく川でございますが、これが松山で史上最大の平成六年の渇水のときに、取水しようというときにもう水利権の話がかなり地元では出ておりました。  愛媛県知事が高知の橋本県知事、橋本首相の弟さんでございますが、お頼みに行った場面が大きく映し出されまして、よろしくお願いしますと言ったら、どうぞどうぞということで、かなりのアピール度があった番組で、エユースで放映されていましたけれども、しばらくたつと無条件にいいことではないという言い方に訂正されたり、ありましたけれども具体的にあのときの水の転用というのは法的にどういうふうに解釈されているのか、これをお伺いさせていただきたいと思います。
  79. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) まさに今、先生指摘の事例が今回五十三条の二を導入しようと考えた一番大きなきっかけでございます。  あの時点におきましては、実態といたしましては、ただいま先生おっしゃいましたとおり、仁淀川での工業用水を節水することによってその水を松山の上水道水源に充てたということでございますが、こういう形になりますと仁淀川水系の水利権処分をどうするか、水利権の変更という事態を生じてまいりました。そういうことがなかなか対応が難しい、法的な側面としては難しいということもございました。石手川水系における農業用水の節水の効果と相まってそういうことがなされたというような整理をしたり、いろいろ苦しい整理をいたしたわけでございます。そういうこともございまして、こういう形でそういう場合に機敏に簡便な方法で水利権の変更手続ができるようにしようというのがまさに今回の改正をお願いしておる背景でございます。  当時は、そういう意味では法的に申しますと大変苦しい形での対応をしたということでございます。
  80. 福本潤一

    ○福本潤一君 私も、あの当時さまざまな番組を見ていましても、今回の措置は橋本県知事の側から無条件にいいことではないというふうに訂正発言があったり、建設省の方から今回の措置は超法規的措置とは言えないというような言い方を、なかなか解釈するのは難しいような状況があったわけでございます。  ただ、それで現実に面河ダムという流域を超えたダムから持っていくためにはかなりの施設費用、パイプラインも含めて導入して松山側へ緊急に導水した。その施設ができたにもかかわらず結果としては四日間、しかも四日間のうち松山の方は死水容量、堆砂容量の部分の何%の水が残っている、要するに本来は水をとれないところの水から取水していたと。地元の方も最初は死水、ついに取水かと。死水を取水だというのを新聞が書きますと、死に水と読まれてこれは大変だといって、言葉最初は残水という言い方に変わり、残水というと何か汚い水のようだからというので最後は底水という名前の変化を建設省の用語とは違う形でマスコミ用語をつくった上で対応したんですが、結局は四日間しかとれなかった。  これが今回こういう形で法改正していくと、この四日間だけでなく、そのときですらまだ死水容量分しかありませんでしたので、とれるようになるのかどうか、ここの確認をさせていただければと思います。
  81. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 今回の法改正でお願いをしておりますのは、そういう水融通をより法的な根拠に基づいてなおかつ手続的により簡易にやれる、そういう制度改正をお願いしているわけでございまして、この制度をどういう形で活用いただくかというのは個々の事例の問題だというふうに思っております。  それぞれの河川の特性、そのときの降雨の状況、今後の降雨の予測、そういう状況を見ながら最適な形で渇水調整がなされるというのが望ましいと申しますか、そういう形でしか対応できないものだというふうに思っております。
  82. 福本潤一

    ○福本潤一君 今回の法改正がそういう異常渇水の状態のときにいろいろなさまざまな形での対応をとっておるわけでございます。地元でも海水の淡水化から始まって、緊急の水、自衛隊による移入とか。  我々子供の時代には、中近東の方ではガソリンより高い水を飲んでいるらしい、驚きだねという話がありましたけれども、現在考えてみましたときに、もう既にPETボトルで一リットル二百円ぐらいの水を買ってきては飲んでいるわけでございますから、ガソリンより高い水を現実には平気で飲むような時代に入ってきているという日本の水環境状況も踏まえて、水需要予測というのがかなり過大に見積もられてきた。例えば一九七五年に予測されていたものが現実には二割程度少ない形で推移してきたということがあります。  これは国土庁に聞こうと思っておったわけでございますが、長くなるといけませんので、とりあえず大臣に。  先ほど言っておられましたけれども環境というものももちろん大事だけれども利水治水、ここらの重要性というのは根本に大いに私も腹を据えている趣旨だったと思います。ただ、これだけ多くの人数がまた地域的に偏在しているという状況の中で渇水対策、そのときはもう深刻だけれども、以後のど元過ぎれば熱さを忘れるという日本の中で具体的にどういう形で取り組んでいかれるか、今回の改正も含めて建設大臣に御所見をお伺いしたいと思います。
  83. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) 利水についても責任を建設省は持っておるわけでありますから、我々が責任を逃れるわけじゃございませんが、やはりそれぞれ地方建設局等も含めて、我々自身もその地域の実態の掌握に努めておるわけでありますけれども、やはり各地方自治体がその地域住民をいろんな意味で守るという観点から、私は責任を持ってそうした御判断をしていただくことが基本的に大事だと思っております。  ただ、その場合も一都道府県ということじゃなくて、もっと広域な形でそうした利水等、水系を場合によっては越えてでもお互いに融通し合うというようなことを含めてのそうしたことが必要であると思います。そのことがむだなダムを逆につくらなくても済むということにもつながっていくと思いますので、都道府県というのはもうちょっと広域な範囲でそうした水に対する対策を考えていくべきで、私ども地方建設局を含めてそうした観点でとらえていきたいというふうに考えております。
  84. 福本潤一

    ○福本潤一君 ダム開発水資源開発も含めて、今後さまざまな形で取り組まれると思いますけれども、特に渇水に関しましては、日本で一番弱いと言われる危機管理という一つの側面から国民の生命、財産が安定的に推移できるように、先ほどから農業用水の質問をさせていただいたのも、ある意味では経済的インセンティブが働かなくても何らかの温かい政策で、動機としてそちらの渇水転用も図れるようなうまい誘導策、これを考え出していただかないと、土地所有権以上に絶対にこれは本来の産業の柱である、畑とは違って水田は水が命でございますので、その命である先祖代々受け継いできた水をどういうふうに転用できるかという方策も考え出していただければということを要望させていただいて、水利の方の話は終わらせていただこうと思います。  今回の、もう一つ治水という、河川では日本で頻繁に大きな治水事業を行っておりまして、我々が利根川を歩いていましても、昔はここまで水が来たんだというので、二階の上の方のところの水位を指し示されまして、いかに被害が大きかったかという事例は数々見るわけでございます。中国やなんかでも一たん洪水が起こると、先ほど利水の方ではフーバーダムの半分しか日本ダム容量はないんだと同じように、一たん洪水が起こると大河川ですので何百万というような、何カ月も水浸しになるというような形で、日本水害被害とはまた違う形で大河川では起こっているという現状があると思います。  そこで、日本具体的な水害訴訟という形で起こった具体的な事例をもとに聞かせていただこうと思いますけれども、私自身も学生時代、大学院でしたが、東京におったときに多摩川の水害が起こりました。テレビでピアノとか家が流れるのを見ながら、具体的に手を打てないままヘリコプターで堰を壊すために爆弾を上に乗っけて壊そうとしたら、堰が頑丈過ぎて壊れないでそのまま家が流されていくという状況がありました。  この結審が最近最高裁で、国の責任であると。要するに、上流で都市開発したとか、その堰の利水者側の問題ではなくて河川管理者の責任であるという形で結審して、建設省も最終的にそれを受け入れたということでございますが、この結果を見て河川管理者としてはどう認識されて、その後の対応をどのようにされているかということを具体的にお伺いしたいと思います。
  85. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 先生指摘のとおり、多摩川水害訴訟につきましては、平成四年の十二月に差し戻し控訴審におきまして確定をいたしたところでございます。この判決におきましては、国の河川管理に瑕疵ありとする判決があったわけでございまして、これを私どもとしても受け入れたところでございます。  この判決の判断のベースにございます考え方として、同種同規模の河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていると認められるかどうかという、その観点から物を見るという、いわゆる大東水害の最高裁判決、その考え方にのっとって判決がされたものというふうに私どもは受けとめて、その上で上告することをしなかったわけであります。  この多摩川水害というのは、御指摘のとおり、川崎市が管理をいたします宿河原堰というものが起因をして水害を引き起こしたということで、そういう水害の原因という意味では必ずしも通常の水害とは違う面があるというふうに思っております。いずれにいたしましても、こういう判決に示された考え方を十分私どもそしゃくをしまして治水のより一層の充実を図っていく、こういうことが大事だというふうに考えております。
  86. 福本潤一

    ○福本潤一君 改修済み河川ということで、その中で具体的に洪水が起こる予見可能性があったとか、結果を回避する可能性がそのときの技術水準であったとか等々問われた裁判でございましたけれども河川管理者としての責任が問われるという結論になった。  そうしますと、農水省はあの時点で堰を具体的に持って利水者側として対応しておったようでございますが、その責任は河川管理者として問われている状況でございますけれども、農水省としまして、その堰、具体的に宿河原堰があったその監督官庁として、裁判の結果を受けて所感なりその後対応策として何か具体的な動きがあったか、これをお伺いさせていただきたいと思います。
  87. 中島治郎

    説明員(中島治郎君) 委員指摘の多摩川水害につきましては、特にその災害の原因が農業用河川工作物に起因して発生したものであることを農林水産省といたしましても深く考えるわけでございます。  そのため、今後の対策といたしましても積極的に対策を講ずるという認識を持っておりまして、昭和五十四年に治水上の支障の生じるおそれのある河川の中の農業用の工作物をいろいろ改修したり、そういう事業を、農業用河川工作物応急対策事業という名前でございますけれども、創設いたしまして積極的に対応しているところでございます。
  88. 福本潤一

    ○福本潤一君 裁判官等々に聞きますと、こういう治水裁判では、具体的に技術上の、例えば河川にどれだけ流域があったときにどれだけ流量があるのかというような流出解析の手法までいろいろ勉強させられるんだよということを検事さん等々からも伺ったことがあります。  こういう洪水建設省にとどまらずさまざまな形で河川管理者の御努力があったということを私もよく承知しておるところでございます。これまで河川管理といいますと、野球で言うとちょっとアンパイアのようなところがありまして、まともにいって当たり前、一たん失敗すると全責任を追及される、目立たないことが一番というような形で河川管理者が公共土木事業を通して陰になりやっていただいたというのは認めた上で、ある意味では計画基準というものを立てますと、治水におきましても利水におきましても、必ずある意味では洪水は起こる、また渇水が起こるというのが大前提に工事が行われておるわけでございます。そうしますと、例えばダムをつくったからといって、雨が急にたくさん降ったとか、そういうこともありませんし、河川改修をしたからといって、もうどんな大量の雨、どんな大量の流量であろうと防げるということではありません。  そうしますと、計画の基準のレベルというのが大きく問われてくるんだろうと思いますけれども、この基本高水の計画基準、そういったものに対する決め方、判断の基準というものは、例えば多摩川水害を受けて決定方法が変更になったりしたものかどうかというものを具体的にお伺いしたいと思います。
  89. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 先ほどもお答えいたしましたが、多摩川水害訴訟におきます判決におきましては、大東水害での最高裁の判決の考え方を踏襲してその上で判決がなされた、こういうふうに受けとめております。そういう意味では、大東水害での判決に示されました同種同規模の河川については同じような治水の安全度を備えるべきだという考え方に変更はないものというふうに受けとめております。  そういう中で、基本高水、これは河川ダム等もひっくるめてでございますが、そういう計画を立てる上での一番基本になる外力をどう考えるかということでございます。この外力を決めるに際しましては、同種同規模の川が同じような安全度を備える、その考え方にのっとりまして、それぞれの流域におきます河川の規模、人口、資産等の状況、あるいはそういうものを全国的に見た上でのバランス、洪水被害の状態、そういうものを総合的に勘案した上でそういう基本高水を決めてきておるということでございます。
  90. 福本潤一

    ○福本潤一君 そういう意味では治水行政、今後起こってくる中で、今回大きな判決として国の責任というものが問われたわけでございますので、より一層の河川改修、治水事業をしていかなければいけないということで、私も前回、五カ年計画等々に対しましても賛成させていただいたわけでございます。  そうしますと、治水事業に関する話をこのまま続けていると持ち時間が全部終わりますので、今回の法改正の一番の柱でありました環境整備というところに話を移させていただきたいと思います。  現在、ダム審議会等々もつくられて、各地方建設局、一個ぐらい代表して推進しておったようでございますけれども、かなりのダムがほとんど建設反対というような状況が生まれてきておるようでございます。環境問題だけではなくて、具体的に水没補償、農家、山林、そういうところにとっては水没に耐えられない地域、故郷が分断されるというようなところも含めて反対されるわけでございますけれども、今回出てきました河川整備基本方針というものを具体的につくるということでございます。  河川一体管理ということで、水資源開発公団、水系に関しては大きい河川はやっておりますけれども、それぞれの河川でやっていくということになりますと、河川整備計画に対して反対ということが起こった場合、公共土木事業で反対、推進、どの事業でも起こるわけでございますけれども、どう調整するのか、これを最初にお伺いさせていただきたいと思います。
  91. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) まず、河川整備計画河川整備基本方針との関係がどうか、こういうことだと受けとめるわけでございますが、決まりました基本方針に従って整備計画をいろいろつくっても、その基本方針に沿うような整備計画ができないということになりますと、それに合わせた形、そういうできないということを踏まえた上で基本方針そのもののあり方について見直す必要が出てくると考えております。  ただ、現在ダム事業について申しましても、確かに地元の反対でなかなか動かないダムにつきましてはマスコミ紙上等々でも大きく取り上げられるということもございまして、ダム事業全般がなかなか動かないという印象が世の中にございますが、私どもはそうではなくて、今ダム事業をもっと早く進めろと、こういう声をいろんなところから受けておるのも事実でございます。  そういう中でございますので、基本方針に定められた内容を盛り込むような河川整備計画というものは、このいろんな代替案を検討する中でそういうものが決まってくるもの、決まってくるといいますか、住民の意見、意向反映した計画としてつくられてくるものというふうに思っております。
  92. 福本潤一

    ○福本潤一君 河川整備計画に対しましては、住民の反対の声等々も組み入れるということでございますけれども、その前につくられる河川ごとの河川整備基本方針、この段階でむしろ住民方々は今後の我が地元河川ということで意見を入れたいという要望が強い。  だから、環境アセスメントなり、例えば長良川の河口堰であろうと、農水省の方の今度は中海、諌早干拓の問題であろうと、見直しをする段階になってやれると同時に、その前の基本方針を立てる段階でも意見を申し述べて対応させていただきたいという声がかなり住民の方からも大きくなっていますし、民主党から出てきておる案もそういう形の住民参加のあり方を問う声が大きいように思いますけれども、この基本方針自体にはどの程度かかわれるのかということをお伺いさせていただきたいと思います。
  93. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 基本方針に定めます内容は、あくまでも基本高水流量、例えば一万五千立方メートル毎秒、それをダム等で調整して、計画高水流量としては例えば一万立方メートル毎秒とする、こういう抽象的な概念でございます。これを受けまして、例えば五千立方メートル毎秒をどのダムでどのようにカツトをするかということにつきましては、これは河川整備計画の段階でお決めをいただくということになりますので、先生指摘の何々ダムあるいは長良川河口堰でどういうことをするかということは、すべてこの河川整備計画の中でお決めをいただくということになります。  ですから、そういう意味合いではすべての個々の施設計画について、個々具体住民方々の御意向が総意として反映をしてくると、そういうシステムになると考えております。そしてまた、基本方針で先ほど申しました基本高水流量、計画高水流量というものを決めるに際しましても、これは河川審議会の意見をお聞きするわけですが、その意見の聞き方としまして、重要な水系あるいはそういうことが必要と思われるような水系では、個別に水系ごとに河川審議会の小委員会というのを設けて、それぞれの地域、その河川の専門家にお入りをいただいて、そういう議論をしていただくということを考えております。  そういう意味合いで、こういう二段階に分けて今申したような仕組みで住民方々の御意見をお聞きする、意向を総意として反映をさせていくと、こういうシステムが私どもとしては最適のものと自負をしておるところでございます。
  94. 福本潤一

    ○福本潤一君 河川管理者としてはその基本方針で基本高水を決めて、あとの具体的な計画住民の意見も聞いてという形でお決めになる。現在水系一貫管理という、また水資源開発ということで、水資源開発公団、例えば利根川とか淀川とか、吉野川もそうですけれども、全国で七つぐらいの大河川開発公団にゆだねて開発しているというところですが、その場合はこの基本方針、今回すべての一級河川なり二級河川も加わってこういう基本方針で整備計画をつくるわけでございましょうが、現状はどういうふうな形で今の基本方針、整備計画というのが大河川、水系指定河川ではやられているのか、これをちょっとお伺いさせていただきます。
  95. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 水資源開発基本計画、大水系におきます。そういう計画との整合をどうとっていくかというのは、これにつきましては現在のそういう各水系の水資源開発基本計画いわゆるフルプランにおきましては、個別の事業が相当進捗をして熟度を増してきた段階でそこに掲上し、その上である部分については水資源開発公団が事業を施行する、こういう仕組みでございます。  そういうことから申しますと、河川整備計画の中で具体的に明示をされた今後二十年ないしは三十年間の間に事業を実施する、そういう具体に挙げられたダムの中から水資源開発として必要なもの、そういうものがフルプランの中にも盛り込まれるということになろうかと考えております。
  96. 福本潤一

    ○福本潤一君 水系フルプランという形で従前から公表されておったわけでございますけれども、今後の河川整備基本方針、とりあえず河川審議会の意見は取り入れて、大きな河川管理者の責任も賄えるような形で方針を決める。そうしますと、データの公開というのが非常に大きな問題としてクローズアップしてくるなと。この段階である意味では住民の意見等々は直接的には反映できない形で進んでいくわけでございますので、そういうデータの公開というのはどういう形で進められていくのか、この担保はあるのか、そこをお伺いしたいと思います。
  97. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 河川整備計画をつくります際には、基本方針でどういう形で議論をされどういう形でそれが決まったのかということが大変大事な情報になると考えております。そういうことで、基本方針を策定するに際しまして議論された内容は、これはもうすべて公表をしていくという形で考えております。当然、情報をすべて公開した上で議論をいただくということでなければ本当の議論にならないと考えております。
  98. 福本潤一

    ○福本潤一君 データの公開、現状でもさまざまな流量データ等々、販売しているものも含めて公開しておるわけでございますが、地域住民方々のいろんな御意見を聞きますと、例えばデータをたくさんいただく、長良川の河口堰のときでもデータが山のようにどっさり建設省にありますので積まれる、それをじっくり読んでいく、整合性がある形で整理されている。ただ、そのデータをもとに反論するほどの具体的な力量はないという形で、ある意味では建設省基本的な水資源開発また治水関係、目立たないところで大いに具体的な活動をしているにもかかわらず、それがよく反映されていない。  これは公共土木事業全体に通じるものでございますし、具体的に日本洪水がどの程度減ったのかというようなデータを見せると、現実に事業が役に立っているということもわかりますし、しばらく前の日本全体にはどぶ川のような川がいっぱいあつたのが現実にはかなり改善されているというような現状がわかると思うんです。  これはある意味では広報宣伝、芸能界のように広報宣伝するような場所じゃありませんので市民の人にわかりにくいような状況が続いているんじゃないかという意味で、データの公開の方法ももう少しビジュアルにわかりやすく、例えばこれが基本方針でやったときの二〇二〇年の我が故郷の川ですというような形で公開させていただきますと、もう少し公共土木事業に対する理解が出てくるのではなかろうかと思われますので、その点に関してどういうふうにお考えか聞かせていただければと思います。
  99. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) まさに、今先生指摘の点が、河川整備計画の策定において住民の意見を反映させるという手続をお願いしておる理由の一つでございます。そういう積極的な参加をいただく中で、自分の目の前の川がどうなっていくのかということを具体に議論いただく、そういう中で初めて本当の意味での愛着も認識もわいてくるというふうに思っております。  そういう面で大変私ども期待をいたしておるわけですが、一つ、資料の公開、データの公開という点で私ども常にジレンマを感じますのは、データをそのまま公表いたしますと、膨大なデータで何を言っているのかわからない、こういう御批判を受けますし、それを加工してわかりやすくお示しをいたしたつもりですと、自分の都合のいいようにデータをつくって公表している、こういう御批判も受ける、こういうところがございます。  そういう意味合いで、私どもとしては元資料もすべて公開、そしてなおかつその上でそのデータをできるだけわかりやすく、御指摘のとおりビジュアルにしていろんな検討をいただけるように、そういう形で公表していくということが非常に大事だというふうに思っています。また、そう  いうデータの使いやすさという意味で申しますと、インターネットを活用するということも大変大事だというふうに思っております。現時点では、今まで私ども入手いたしましたデータについては、CD−ROMにROM化してより使いやすくするとか、そういう工夫もいたしておりますが、世の中のいろんなツールの発展、情報ツールの発展に合わせた形で私ども努力していく必要があると考えております。
  100. 福本潤一

    ○福本潤一君 インターネットも画像等も送れるようになっておりますので、大いに展開してやつていただければと思います。と同時に、反対運動もそういう形でインターネットも利用して、私もかなりの資料を集めておりますけれども、進んでおりますので、具体的にそこに住んでいる人たちが自分の地元の川というものを愛せるように、というのは、例えば私などいろいろな世界で聞いていると、今回は環境保全という形で出ていますけれども治水利水、あと親水というか、水に親しむというところまでいかないと、環境保全しておるだけではなかなか川に愛着がわかない。  例えば、相撲取りでも昔は何とか川というのがおったようでございますが、今は何とか海、何とか山とか、そういうのは残っておるけれども、川だけは消え去っておるというぐらい愛着が薄れておるようでございますので、そういう形の情報公開、宣伝を含めて、公共土木事業とはいえ今後進めていっていただければと思います。  先ほどのダム審の関係に戻したいと思いますけれども河川整備計画作成の手続、これが今回の法改正でできる。ダム審というのは、指定した十一河川でしたか、それに関して現状にある。例えば細川内やなんかでは、もう市町村長さんも入ってこないような形で現状は進んでいるということになりますと、現在あるダム審、これは私の思いではだんだんふやしていくのかなと思っておりましたけれども、今回の法改正河川整備計画をつくるということになりますと、その関係具体的にはどういう形で運用されていくのかというのをお伺いさせていただければと思います。
  101. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 河川整備計画では、今後二十年から三十年を見通して、そこに個別のダム事業等も入ってくるわけでありますが、現在試行をいたしておりますダム事業審議委員会、これは個別のそういうダムについて地域の皆さん方の意向をお聞きしよう、こういう仕組みでございまして、大規模公共事業、公共施設の見直しの中での一つ動きとして試行的に行っているものであります。  それで、今御指摘のとおり、平成七年度には十  一のダムについて試行的に入ったわけであります。現在、中間的な報告もあわせていろんな形での動きをいただいております。また、そういう中間答申あるいは最終的な答申等々を尊重する形で個別の事業についても対応を図っておるところでございます。  こういうダム審で行っております内容につきましては、こういう試行を行っておる事業の今後の推移を見た上で、この制度と申しますか、これは法的な制度ではございませんので、この扱いをどうしていくかというのは、今行っておるものに一定のめどがついた段階で判断をしていきたいというふうに思っております。
  102. 福本潤一

    ○福本潤一君 としますと、その十一の河川で大体ダム審の役割は終わり、そして今後は河川整備基本方針、また河川審議会の意見を聞く計画という形で大体の河川は進んでいくというふうに考えてよろしいんでしょうか。
  103. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 河川整備計画では、先ほど申しましたように今後二十年から三十年を見越して計画に盛り込んでいくわけでありますが、ダム審で行っております今の審議、いただいておる審議についてこれをどうするのか。これは相当ダブる面もございましょうし、個別のダムごとに御意見を聞いておるということで言えば別の面もあるわけでして、これをどういうふうにすればいいのかということにつきましては、現在試行しておりますダム審での結論が大体出そろった段階で別途判断をしたいというふうに考えております。
  104. 福本潤一

    ○福本潤一君 そういう従来の機関と今後の機関とのかかわりということでお伺いしておるわけですけれども、そういう意味では推移を見た上でということで今即断はできないというお答えのようでございますが、この十一選定された基準というものはどういう形でダム審が設定されたのか、これをお伺いさせていただきます。
  105. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) これは試行するということでございましたので、私ども地方建設局それぞれがそういう勉強をするという面も考えまして、各地建一つずつ、少なくとも一つずつは対象にするというのをベースにしつつ、非常に長期間にわたって動かない、そういう事業を対象に選定して十一を選んだところでございます。公団ダムについても一つ含まれております。
  106. 福本潤一

    ○福本潤一君 じゃ、その選ばれた理由、また今後の推移ということでございます。  先ほど橋本委員の方からありましたけれども、今後環境アセスメントが出てきたときに、今まで環境アセスメントというのは環境オワスメントという言われ方もして、事前に事業を追認するような形でのアセスメントが大体主流だった。今度変わるかもわからないなという期待もあるわけでございますが、今回の河川法改正で、そのアセスメントを具体的にやる時点、具体的にどの時点でやるようになっていくのか、これをお伺いさせていただきたいと思います。
  107. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 具体にどの時点でアセスメントをするかということにつきましては、今、国会で審議をされております法案が決まりまして、その後どういう事業を対象に行うかという具体の取り扱いが決まる中で決まってこようかと考えております。  河川整備計画との絡みで申しますと、河川整備計画ではその環境アセスメント具体事業で行うずっと前のものから含んで対象にしておりますので、河川整備計画の中で定められたダムの中から熟度が高まってきたもの、具体には実調採択になるのか、その辺はこれからのいろんな議論かと思いますが、そういう段階、より熟度が高まった段階でアセスメント法に基づくアセスメントを実施するというごとになると考えております。
  108. 福本潤一

    ○福本潤一君 まだそういう意味ではよくわからない、その時点になって具体的な作業としてやっていただけるわけだと思いますけれども、現実に一つ計画というものが推進され始めると、途中でストップしたり変更するというのはなかなか公共土木事業の場合難しいという現状があるようでございますので、極力早い時点でそれができるような対応を今後行政指導等々でやっていただければと思います。  余り時間もないようになってまいりましたので、先ほどのダム関係で、ダムの寿命が何十年かというような具体的な話であります。  できてから五十年、六十年たったようなダムも現在出てきていますし、よくマンションがある年月たったときに急に管理問題とか再建問題が大変になる。と同時に、ダム建設するときに堆砂容量というのは具体的には定めて、寿命も定めてつくっておるようでございますけれども、このダムに砂がたまるという大きな問題があると思うんです。実際の寿命より短くいくものもありますし、その容量どおり進むのもあると思いますが、私ども考えますと、信濃川の河川敷におきましても、信濃川の河口部分でかなり上流で砂がたまって流れてこない、それで河口部が後退して浸食するというような大きな問題があるわけです。そうしますと、堰では行われておるようでございますが、砂がたまるのを定期的に排除するような工法でやっていかないと、幾らしゅんせつしたりかなりの費用をかけてやっても自然の流れはもう常時でございますから難しいということがあると思います。  そうしますと、満濃池やなんかでは定期的に、あれも一つの小型のダムでございますけれども、渦巻き流をつくりまして堆砂を排除するとか、ダムで全部せきとめない、こういう形の工法というのを進めていかない限り今後もさまざまなところで堆砂問題が起こってくると思います。  そういう意味では、技術開発をその方面でどの程度建設省は行っておるのか、これをお伺いさせていただきたいと思います。
  109. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) ダムにつきましては堆砂容量は百年分を計画としては見込むということでやっております。すなわちダム利水治水機能を百年たっても確保するということを目標にしてやっておるわけでありますが、中央構造線沿いにございます特に中部地方の川におきましては予測を上回る形で土砂が流入しておるというのも事実でございます。  そういう中で、そのダムヘの堆砂をどういう形で排砂していくか。これは御指摘のようにダムから直接排砂門を設けて出すような方法、バイパスを設ける方法、あるいはダムの上流に貯砂ダムあるいは堆砂ダム、小さなダムをつくってそこから底にたまった砂を定常的に排砂をしてコンクリート骨材に使う、そういう方法等いろんな技術開発を行ってきて個別のダムごとにいろんな手法を通じておるところでございます。  ただ、先生指摘のとおり、流域全体での土砂管理をどうしていくのか。従前のように、砂防にしてもそうでありましたが、すべての土砂をとめるということではなしに、土砂の質、この場合は粒径になろうかと思いますが、下流に悪さをするような大きな土砂はとめ、小さなものは出す、そういうことで考えていきたいと思っております。
  110. 福本潤一

    ○福本潤一君 いろいろ質問させていただきましたけれども、先ほどの建設大臣の御決意、また情報公開の答弁をいただきました。今後河川管理者として、治水利水、今回環境を含めるということでございますので、この改正趣旨に沿って国民の生命、安全を守るという行政を進めていただければというふうに思いまして、そのことを申し上げて私の質問を終わらさせていただきます。
  111. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時四十分休憩      —————・—————    午後一時三十六分開会
  112. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) ただいまから建設委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、河川法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  113. 青木薪次

    ○青木薪次君 青木であります。  今回の改正の最も特徴といたしまして、主眼点といたしましては、河川法の第一条に言う、従来の河川利水治水ということを中心といたしまして運営されてまいりました。特に、河川法はそういう意味で、国土の安全とそして繁栄と開発に役立つんだということを書いてあるわけでありますけれども、今回の改正点として、申し上げましたように河川環境の調整あるいはまた保全という問題が注視されておりますけれども、従来の方向とどういうように具体的に変わるのかという点について、まずお聞きいたしたいと思います。
  114. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 今回、河川法目的に、従前治水利水に加えまして「河川環境整備保全」というのを加えるという改正案をお願いしておるところでございますが、この「河川環境整備保全」を加えていただくことによりまして、従前治水利水と申しますと洪水時あるいは渇水時におきます。そういう異常時、川の三百六十五日ということから申しますと、本当に限られたときの川を対象に今まで事業を実施し管理をしてきたわけでございます。  それに対しまして、昨年六月の河川審議会の答申で「川の三百六十五日」、平常時の川そのものも大事にして河川の管理をしていくべきだ、こういう答申をいただいたわけでありますが、それの具体的な表現として、河川法目的の中に「河川環境整備保全」というのが盛り込まれたものと受けとめております。  そういう中で、従前から河川が持っておりました日本の原風景としての風土あるいは舟運等々、従前ともすれば後回しになってきた、先生指摘のとおり従前治水、特に敗戦後この国土を復興するという中でそこに集中せざるを得なかったわけでありますが、そういう中から大きく環境の問題を内部目的化して進めていくという方向に踏み出したというふうに受けとめております。
  115. 青木薪次

    ○青木薪次君 従来の河川工事実施基本計画というものから発展させたといいますか、それはもうお蔵に入れて、新しく河川整備基本方針とそれから河川整備計画というものを二つの大きな柱として立てたということでありますけれども、この点は具体的にどういうことで基本方針というものが打ち立てられて、それから整備計画に移っていくのか、そのプロセスについてお聞きしたいと思います。
  116. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 従前一本でございました工事実施基本計画を今回、河川整備基本方針整備計画の二本に分けた形で提案をさせていただいているわけであります。  河川整備基本方針におきましては、日本全体のそれぞれの河川のバランス、これは同種同規模の河川は同じような治水の安全度を備えていなければならないという大東判決を受けての基本的な考え方でございまして、そういう考え方に基づきまして、全国的なバランスをとりつつ、そして水系の中では上流から下流まで同じような雨量に対して、上流で集めた水が下流ではんらんをするというようなことになっては困るわけでございますので、上下流整合のとれた形で計画をつくるということが必要になります。  そういう意味合いで、河川整備基本方針におきましては、対象となります外力、基本高水と、そして河道とダムヘの振り分けになります。基本高水と計画高水という二つの量が基本的な量になると考えております。  河川整備計画では、その基本方針を受けまして、個々具体に、ダムをどこにつくるか、堤防をどこにつくるか、そういうことをすべてひっくるめてこの整備計画の中でお決めをいただく、そういうことを考えております。  そして、整備計画を策定するに際しましては、案の案の段階で地元方々の意見を総意としてお聞きする、そしてまた地方公共団体のお考えもお聞きをする、学識経験者の声もお聞きをする、そういう中で案をつくりまして、地方公共団体の御意見をお聞きした上で整備計画をつくる、こういう仕組みを考えておるところでございます。
  117. 青木薪次

    ○青木薪次君 今回初めて住民の意見を聞くという方向になったわけですね。  基本方針の方におきましては、一級河川、二級河川、それぞれ知事や市町村長の意見を聞く。それから、そういうことを聞いた後に今度は整備計画の中で、今局長のおっしゃった三大目標であるところの治水利水環境と、この三つを立てて、その後に基本高水とかをどういうように設定するか。基本高水、いわゆる水量の配分等にかかわる、配分といいますか水量のあんばいに対してどういうようにしていくかというような点について考えられていくわけであります。  先ほどもちょっと話が出ておりましたけれども住民の意見を聞くというのは、大体どの程度聞くようになるのか、その点についてお聞きしたいと思います。
  118. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 基本方針を受けまして、そして個々具体ダムあるいは堤防の維持等々をひっくるめまして、今後二十年ないしは三十年にわたって実施をする事業内容を決めるものが整備計画でございます。この整備計画内容そのものについてすべて住民方々の御意見を聞くということを考えております。そして、その場におきましては、先ほど申しました基本方針がどういう形で策定をされ、その内容がどうなっているかということも当然御説明をした上で整備計画内容について御意見をお聞きする、こういうことでございます。  ここまでしか聞かないとか、そういう境界は一切考えておりません。そういうことで、でき得る限り住民の皆さん方の総意をそういう整備計画の中に反映していく、そういうシステムをつくりたいと考えております。
  119. 青木薪次

    ○青木薪次君 私は、一歩前進していると思いますのは、今局長がおっしゃったように、住民の意見を聞いて、そして住民の意見を反映させて工事に取りかかっていくし、将来のダムの管理とか運営の参考にしていくというような点、そういう点が今回特筆大書された点じゃないかと思うのであります。  そういう意味で、建設省ダム審議会の答申を非常に尊重していらっしゃる。そこで、このもとに今中断とかあるいはまた凍結されたダムがあるんですね。例えば沙流川総合開発関係、いわゆる平取ダム工事の一時凍結とか、小川原湖総合開発で全面淡水化計画の撤回とか、渡良瀬遊水池総合開発関係で、これを今の計画での実施は中断する、矢作川の河口堰、これを本体着工を中断いたしまして追加アセスを実施するというような点については、これらは相当大河川であり、ある意味では期待を持たれていたダムではないかと思うのでありますが、この点についてどういうわけで建設省は決断をしたのかという点についてお聞きしたいと思います。
  120. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) ダム事業審議委員会につきましては、これは地元の御意見をそのままお聞きしよう、こういう仕組みとして平成七年度にスタートしたものでございますが、そのために、透明性を確保するということで審議会の委員の選定は地元の知事さんにお願いをする、そして審議会の運営そのものは審議会の判断にすべてお任せをするということで審議をいただいて、その結果として出された答申あるいは中間答申につきましては、それを最大限に尊重させていただく、そういうことで始めたものでございます。  そして、今先生指摘のとおり、それぞれの事業で中間的な答申等をいただいてきておるところでございますが、いずれにつきましても、私ども事業担当者としてその内容を真摯に受けとめ、事業の一時的な中止等々いただきました内容をそのまま引き継いで実施をしてきていると申しますか、中止をするものについては一時中止をするという形で参っております。  また、小川原湖のように、全面淡水化はしない、ただ水資源開発は必要だと、地元からもそういう強い要望が出ていると、先生指摘のとおりでございますので、そういうものについては小川原湖の開発以外の方法で対応できないかということについて現在検討をいたしておるということでございます。  地元のそういういろんな声を生かしつつ、生かすといいますか、そういう御要望におこたえできるように、その中で審議会からいただいた答申を尊重して実施をしていく、そういうことで進めさせていただいております。
  121. 青木薪次

    ○青木薪次君 先ほどからいろいろと聞いておったわけでありまするけれども渇水時の対策が大変注目をされております。  その点で、私は静岡県でありますけれども、先ほどの質問を聞いておりまして、静岡県の清水市というところが、先ほど局長答弁にありました水飢饉に興津川の取水が非常に困難だ、水が足りないということから、急遽富士川から農業用の静清庵、すなわち静岡、清水、庵原郡、静清庵畑地かんがい水利事業というものを一時中止いたしました。もっともこれがこの期限に中止になったわけでありますけれども、その富士川の水を、実は日本軽金属が、日軽カンパニーというのがあるわけでありますが、この落ち水といわれるようなものを再びパイプでもって清水市へ持ってくるということが建設省の決断でなされたということで一応危機は回避されたということなのであります。  もう一つ、私の当時記憶に新たなものは、例えば井川ダムというのがあります。それから井川ダムを流れる大井川の水飢饉の問題で異常渇水が生じました。どこもそうでありましたけれども、特にこの河川はまさに河川と名がつく砂漠があるようなもので、まるで水が一滴もない。水を放流しろという住民並びに農業者が、全く地域は保守的なところでありまするけれども、デモまで発生したというようなところで、果てはどういう事態が発生するかということで非常に手に汗を握ったことが実はあるわけであります。  例えば、この利水権者といいますか、中部電力がこの水を発電に使う、それからその放流をする、それからこの地域にあっては、先ほどからありましたように農業用水で水を引く、あるいはまた飲料水さえ事欠くというような事態の中で、中流以下については紙パルプ産業が、相当大きな東海パルプといったようなものがあるということになりまして、利水権者の間において相当やりとりがあったことを覚えております。  例えば、水面に三ミリでも四ミリでもいいから水を流してくれという、こういう切なる要求。こういうときに河川審議会等におきましては、これはやっぱり渇水調整をしなきゃならぬ、いわゆる取水制限も含めてどういうようにこれを配分していくかということは、これは今後においても大きな問題です。  したがって、このときにやはり私は、このことに対する治水の管理者である建設省あるいはまた県の河川課等においては必ずしも目的を達するような調整が行えないし、行うことができなかったというように考えておるし、その点について問題点としてどういうことが言えるだろうかということをお聞きいたしたいと思います。
  122. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) ただいま御指摘の大井川の問題は、これはいわゆる水利用者として節水に入るという渇水調整の問題よりもより大きな問題として、常に河川に水がない、そういう状態の川を今後どうしていくのか、こういうこととしてお聞きをいたしたわけでございます。  確かに、大井川は発電用水あるいは下流の農業用水等々ほとんど水が使い尽くされているという状況でございます。それに加えて御存じのとおりの砂利河川でございますので、少々の水では伏流をしてしまってなかなか川の中を水が流れない、どこに川があるのかわからない、もちろん堤防があるからわかるわけでございますが、見渡す限りの石ころの原っぱが続いている、こういう状況になっております。  そういうのに対してどういう形で対応するのかということを大変大きな問題として、私どもとしても関係省庁と連携をとりつつ、そういう清流を復活、なかなか清流とまでいかないにしても、そういう水面を川の中につくり出すということに向けて連携をとりつつ現在検討を進めるとともに、実施に移せるところについては実施に移してきておるところでございます。  ただ、残念ながら大井川のように大変広いああいう空間においては、少々の水を確保してもなかなか目に見えないということもございますし、発電用水につきましても、これは水力発電から他の火力、原子力に切りかえるということも方法ではございますが、一方水力発電というのはクリーンエネルギーだという性格もございます。そういう中で、河川の水面を確保することと大気汚染の問題とのトレードオフというようないろんな面がございまして、そういう点をどういうふうに解決するのが一番いいのかということを関係省庁一緒になって今検討いたしておるところでございます。  そういう意味で、本当のふるさとの川に水が流れるように、そういう方向に向けて私どもとしても努力を今後とも続けたいと考えております。
  123. 青木薪次

    ○青木薪次君 平成六年の異常渇水のような事態というものは、先ほども質問に出ましたけれども、二、三年に一回はあると決意しなきゃいけないと思っております。  私はこのごろ東京都に住んでおる機会が多いものですから、異常渇水対策といったらやはり取水制限、もうこのことしか考えられないくらいそのことが当局からいろんな提案あるいは発令があるわけでありますけれども、そういうことから利根川上流の北関東といいますか、群馬県を中心としての八ダム、この貯留の現状というものはその時々にやかましいぐらい河川局の開発課に聞いております。  特に、八ダムというと矢木沢ダムとかそのほか渡良瀬遊水池というような関係から、二十三日の時点であれだけ雨が降ったけれども大体八八%だった。それからきのうの段階で九〇%。きのうからきょうにかけて相当降っているわけでありますけれども、どんなふうに貯留状態を認識していらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。
  124. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 現在の利根川上流の八ダムの貯留量につきましては、先ほど先生指摘のとおり、二十三日現在で八八%ということでございます。  それで、残念ながら日本河川におきましてはダムで貯留をしておるからそれだけでもってこの夏本当に大丈夫かと、こう申しますと、そこは必ずしもそうは言えないところが日本の水資源の特性でございます。日本の水資源、水の使い方といたしましては、基本的には川の水をベースにいたしまして、その水が必要量に足りない部分だけをダムから補給する、こういう使い方でございます。  そういうことでございますので、現在八八%、先日の雨でもう少し回復をしておるようでございますが、そういう状況でございます。水がめに水があっても必ずしもことしの夏が大丈夫だということが言えないというのが、今後の降雨状況いかんに左右される、それが日本の水資源の特性だというふうに思っております。  例えばアメリカでございますとカリフォルニア等、そういうところはもともと乾燥地帯でございますので、遠く離れたところに巨大ダムをつくって水をため込んでおいて延々とアクアダクト、水の運搬路を通じて水を持ってくると、こういうことでございますので、ダムに水がある限り大丈夫だと、こう言えるわけですが、残念ながら日本ではそういう川の水と合わせて足りないところだけをダムから補給する、こういう運用でございますので、川の水自体は雨に左右される、そういう状況でございます。ことしの夏についても今後の雨量次第によって左右されるという面が否めないと受けとめております。
  125. 青木薪次

    ○青木薪次君 今の局長のおっしゃるとおりだと私は思いますし、日本は短い区間でしかも急流でありますから、しかも少雨期の現状にあるということから、水がもしなくなったらどうするか。先ほど福本先生の発言にもありましたように、あらゆる面に困難が予想される。国民生活の基本的な問題だと、課題だということと同時に、国土の安定のためにも、安全のためにも私はこの水は基本的な課題だというように思うんであります。  これには建設省で今努力されていらっしゃるところの、例えば樹林帯といったようなものを今日考えられているわけでありますけれども、何としても、水が出ると、雨が降るとどっと海へ流れてしまうという状態をどういうようにして水の涵養を図っていくかということが大きな課題だと思うんでありますが、私はやっぱり木を植える以外にないというように考えております。これが一番大きな基本的な課題だというように考えておりますけれども大臣どういうお考えを持っておられますか。
  126. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) 委員指摘のように、水というのは我々の生活にとって本当に基本的な、食糧も大事でありますが、食糧は何日が食べなくても命はもつと思いますけれども、水はそうはまいりません。また、今都市生活等の現状を見ますと、これをいかに安定的に確保するかということでありますが、これも先ほど来委員指摘のように、建設省としてもありとあらゆる方法を考えるわけでございますけれども、国土がやっぱり保水能力といいますか、それがございませんと、ダムで天然の恵みをためるということにいたしましても、もうちょっと広い範囲での保水機能といいますか、それがダム周辺にございませんと、私は水を安定的に確保することはできない、このように思います。そういう意味では、林野庁を含めて、あるいは民間を含めてそういう山林の保水機能をどう高めていくかということを真剣に考えなければならない。  それで、樹林帯ということをこのたびの構想の中に入れておるわけでございますけれども、今、林野庁と建設省、すぐ一緒になるわけにはまいりませんけれども、将来はそうなるかもしれませんが、現時点においてはやはり省庁間において常に緊密なそうした連携が私は必要である、このように思います。
  127. 青木薪次

    ○青木薪次君 私は今回の河川法改正である樹林帯の関係等について非常に関心を持っておりました。そのときに、例えばダム湖というものがある、そのダム湖を取り巻く保安林がある、保安林が今財政的にも非常に御苦労なさっている。林野庁の努力というもの、私はこの辺は非常に昔から関心があったものですから、長い議員生活の中で何回も何回も、いわゆる日本の森林行政というものを何とか立て直していかなきゃならぬし、推進しなきゃいかぬということで山へも登りました。  その中で私は、今日の林野庁の御努力というものがあったにもかかわらず、単なる行政的な努力だけではいけない構造的なものが出てきたということに着目しなきゃならぬと実は思っているわけであります。  例えて申し上げますならば、日本の材価が非常に安くなっちゃったということから、南洋材がもう六割とか七割とかという単位で日本へどんどん入ってくる、しかも非常に安い。林野庁で、あるいはまた国有林にしても民有林にしても、樹木を伐採いたしまして、そうして中流並びに下流に持ってくる、この運賃だけでいわゆる外材が買えるというような時代に入ってまいりましたから、材を切って、そしてその金で当面の財政運営を賄っていくなんということは当然できないし、仕事をすれば赤字が出る、この現状というものは何としてもこれは解決しなきゃならぬというように実は思うのであります。  私なんか、国産品、特に日本の杉やヒノキは立派でありまして、今、林野庁に終戦後期待いたしましたのは、大都市を中心として地方都市に至るまで、それこそ爆撃やその他によって焦土と化してしまった、これを復興しなければならない。それにはやっぱり木を植えなきゃならぬ。木は大体若いので杉で三十年、それからヒノキでもって大体五十年。今は三十年から四十年、ヒノキで五十年から六十年。もっとも、日本の材を高く評価するためにはもっともっといい材をつくっていかなきゃならぬということで六十年以上というような議論も出ておりますけれども、いずれにしても仕事をすれば赤字になるということは、これはどうともならないと思うのであります。  しかも、林野庁の国有林の関係だけでも私の知っている限り七万人ぐらいおりました。この人が今次幾人になったか、一万七千人を切って一万六千人近くなっているというこの現状について、私は、林野庁の皆さんの物すごい努力、しかも私の方で見ますならば、例えば静岡県でも水窪町とか千頭とかというようなところ、町ぐるみで、我々の町の生命線はこれはもういわゆる森林とともにあるというようなことで、営林署の皆さんと、あるいはまた民有林の皆さんとそれこそ兄弟的なつき合いをやっている。もう至るところで一杯飲もうとしてもすぐ山林の話が出る、営林の話が出るというような状態に実はあるわけであります。  しかも年齢といえば、国有林の関係は五十歳以上になってきたんじゃないかと思っているわけでありますが、そういう現状というものは、私はやっぱり何としてももう国家的な立場でこの問題を考えないと日本の国土がおかしくなる。いわゆるある意味では焦土と化して、バランスを崩したときには、災害は発生するはもうどうともならない。緑はなくなる。しかも、山林がなくなるということについては、これはもう雨が降れば洪水というようなことで、しかも少雨期にはそれこそ干ばつが始まるというような事態になってくると思うのであります。  この点について、私は先ほど申し上げたように、新聞を見ておりますとダムの湖畔林というものがある。その中で林野庁は林野庁としていろんな考え方を持っている、河川局は河川局としてダム湖をしっかり守るために考え方を持っている。その間にいろんな縦割り行政が響いて、それこそお互いに引っ張り合いが生ずるというようなことをよく見ました。しかし、これは非常に残念なことであって、そんな枝葉末節的なことじゃないのであります。  したがって、今も大臣がいみじくも言われましたように、我々と林野庁と一緒になるかもしれぬ、まさにそういうことだと思うんです。そういうことがあっても、単なる環境庁の一部門なんという問題じゃないと思うのであります。国家的な問題だと思います。今日三兆三千億の累積債務を生じました。国鉄の二十八兆一千億という累積債務がありますが、この問題よりも私はさらに深刻だと考えております。そういう点から、亀井建設大臣はかつて運輸大臣当時に、成田の空港に乗り込んで農民を説得して、いろいろこちらの遺憾な点は遺憾だとして謝って、しかも今日の飛行場の問題等についても解決をしたというすばらしい実績を持っていると私は思うんです。  今日も、そういう点でいろんな意見を吐いていらっしゃいますけれども、実力閣僚としてこの問題について閣議においても強力な発言をしてもらって、全体として林野行政河川行政とはこれはもう一体である。しかも、一番の上流については林業がある、中流は農業がある、それから下流は漁業があるというような状態というものを考えたときに、私は河川行政と一体のものであるという観点から縦割り行政を排して、先ほど言いました余りラップしたような行政だと金がかかり過ぎるというようなことを考えつつ、ひとつこの辺で御意見をお伺いしたいと思います。
  128. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) ただいま青木先生お話を聞いておりまして、これなら自社さ連立がっちりいけるのかなというさらに意を強くいたしておるわけでございまして、私は先生のそうした価値観といいますか、お考えに全く同感でございます。  ただ単に建築・土木業のためのいわゆる材料供給をするという森林の役割だけではなくて、そういうものはそのときそのときによって外国の材木が安い場合もあるし高い場合もあるわけであります。先生指摘のように、水と緑を守るという我々のまさに生命線であります。それを守っておる森林に対して、現在三兆を超えるという赤字等もあるようでありますけれども、これは職員の仕事も、国有林を活用してそれでもうけるということよりも水と緑の番人だというように、そういう割り切り方もしてしかるべきではないか、私はそのように考えております。  私は委員の御意見に基本的に全く同感でございますので、国務大臣という立場でも今後努力をさせていただくつもりでございます。
  129. 青木薪次

    ○青木薪次君 林野庁の方、見えていますか、指導部長。  今、林野庁では国有財産という立場で、しかも材を切って、これを売って、そして運営に、国益に当たっている、こういう基本的な方向について私はそういう時代ではない。例えば一本の木を切るにも上の方はもう用がない、根っこも用がない。しかし、私が勉強したところによると四割ぐらいが金になる。しかも、その金はうんと安いというようなことで、ほかに仕事をしているわけじゃございませんから、そういう点から考えてみて、今の基本的な性格についてどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  130. 田尾秀夫

    説明員(田尾秀夫君) 国有林は日本の森林の約三割を占めております。国土面積でも二割という大変膨大な面積を占めておりまして、しかもこれらが日本列島の背骨といいますか脊梁山脈に位置しておりまして、木材生産ばかりじゃなくて、国土保全や水資源の涵養などに大変重要な役割を果たしていると考えております。  先ほど来御指摘のございましたように、国有林は大変厳しい状況にございまして、昭和五十三年以来改善に取り組んでまいりました。かつては八万九千人というピーク時があったわけでありますけれども、今日現在では一万五千ということで、六分の一まで職員を減らしておりますし、また十四局ありました営林局も五つを支局化いたしましたし、かつて三百五十一の営林署があったわけでありますけれども、八十七の営林署を統合整理いたしまして、現在二百六十四ということになってございます。  血のにじむような努力をしているわけでありますけれども、御指摘がございましたように木材は国際商品でございまして、大変安い外材が入ってきておりまして国内の供給率は二割を割っております。木材価格が低迷していることに加えまして伐採量も減少しておりますことから、お話がございましたように今日現在で累積債務は三兆五千億に達している状況でございます。このため、昨年の暮れに閣議決定をされました行革プログラムに基づきまして、今年じゅうには抜本的な改善策を策定することとしております。  現在、林政審議会におきまして幅広く検討をいただいているところでございまして、六月中には中間報告をいただくことにしてございます。林政審議会におきます検討結果を踏まえ、また財政構造改革会議などいろんなところで議論をいただいているところでございますけれども、林政審議会の結論を得た上で今年じゅうには政府一体となった抜本策を策定していきたいと存じております。  いずれにしても、先ほど亀井大臣からお答えいただきましたように、国土の二割を占めます国有林は国民共通の財産であるということで、やっぱり二十一世紀に引き継いでいくことが必要だと思っております。全力を挙げて取り組んでまいりたいと存じます。御支援を賜りますようにお願いいたします。
  131. 青木薪次

    ○青木薪次君 今、私は大臣質問した際に、上流は林業で中流は農業で下流は漁業と言いましたけれども、漁業でも木を植えている。漁師の皆さんが木を植え始めた。これは北海道でも東北でも各地で今行われておりますけれども、その現状について水産庁はどう考えていますか。
  132. 櫻井謙一

    説明員(櫻井謙一君) 先生、今おっしゃられたとおりでございまして、近年非常に森と魚の関係、こういったものに漁業者も関心を高めております。確かに北海道から宮城、それから九州地域とか、漁業関係者が木を植えて魚をふやすというようなことを目的といたしまして植林活動を行っておりますし、また全国各地でこれは行われておるところでございます。  なお、水産庁におきましては、平成六年度から五カ年計画で海の生態系と漁業に関する調査事業といったものを実施しておりまして、森林とこの定置漁業との関係、こういったものにつきまして体系的な調査を行っているところでございます。  今後ともこういった調査の状況を見ながら、漁獲の変動と植生の関連性、こういったものを比較検討し、森の魚つき効果、そういったものにつきまして、より科学的な分析といったものを実施してまいろうと考えておるところでございます。
  133. 青木薪次

    ○青木薪次君 私も漁村へ行って聞いたわけでありますけれども、木を植えているその周りに魚がいっぱい集まってくる、その小さな魚を食べようとしてまた大きな魚も寄ってくるというようなことで、しかも森林の葉が落ちてそこに非常に有機的な体質の土壌ができて、そこに虫が発生したりいろんなものが発生してそれが川に流れる、そしてそれを食べるというようなことだと思うのであります。  上部で山林を切ってしまったところは下の漁業までかれてしまうというような事態というものが今日本の各地で起こっているということは、これは全くそのとおりだと思うんであります。中流の農業用水を何としても確保するという立場に立って、その地帯では一応畑地とか水田とかというものが多いわけでありますけれども、その地域においてはやはり樹林帯といったような関係の中で、林野庁との関係のすみ分けといいますか、そういう点についてはどうなっておりますか。
  134. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 中流部におきます樹林帯が先生指摘いただいているようなそういう大きな機能をどこまで果たせるのか。幅二十メートルぐらいを現在想定しておりますので、必ずしも現時点においては確信を持てないわけでありますが、いずれにいたしましてもそういう水と緑が果たす役割を十分機能として発揮できるように考えていく必要があると受けとめております。  そして、山に木がある、緑があるということは水資源としても大変重要であると受けとめておりますが、先ほど来議論が出ておりますような平成六年の松山のような渇水、八月には降水量二ミリというような状況では山にも全く水がないと、こういう状況になるわけでございます。  そういう日本の非常に変動の大きな降水量の国においてどういう形で水と緑を確保していくのか、これからもそういう生態系の維持の面も十分ひっくるめて考えてまいりたいと思っております。
  135. 青木薪次

    ○青木薪次君 川の上部において林野庁は保安林を強化すればいいじゃないかという主張、建設省は樹林帯ということで、五十メートルですか、そこでいろいろ話し合って折り合ったという話を聞いておりますけれども、樹林帯が緑の非常にすばらしい帯をつくっている、ところが一歩それを離れると、保安林が手が届かないために非常に枯れているとか荒れているとかという事態が起こることはいけないと私は思うんであります。  そういうことについて、林野庁はもうそんな細かなところまで意識過剰になる必要はないと思うんでありますけれども、その点、林野庁はどう考えますか。
  136. 田尾秀夫

    説明員(田尾秀夫君) 先ほど来から話題になっております樹林帯につきましては、河川とかダムの周辺の一定の幅の区域に限って、治水または利水上の目的を達成するために整備されるものと考えております。  私どもの林野庁が推進しております森林行政は、国土の七割を占めております森林全体を整備していくというもう少し大きな観点から整備していくわけでありますので、お話がございましたように、樹林帯と私どもの森林行政とはおのずからその目的は違うものと考えております。  また、お話がございましたように、ダムの上流域等につきましては、森林が持っております水源涵養機能を高度に発揮させるために保安林にも指定しているところでございます。今回の樹林帯につきましてもこれら保安林制度と十分な調整を図っていただいたわけでございます。  いずれにいたしましても、それぞれの役割分担は目的が若干異なりますけれども、森林を整備するという意味におきましては同じ手段、手法を使っていくことになろうかと存じております。河川行政または治水行政といろんな連携を図りながら整備をしていくことが重要だろうと考えております。
  137. 青木薪次

    ○青木薪次君 要するに、木を植えるということが喫緊の急務であるというように私は考えているわけであります。  私も建設委員が長いものですから、かつて十年前に水源税という構想が出されたことがございます。このときは産業界の反対でこれは終わりになったわけでありますけれども、この水源税というのは、例えばいわゆる水一トン当たり一円ということであります。今日本で一年じゅうに使う水は九百億立方メートルというふうに解しているし、その点で一トン一円ということになれば九百億円出るじゃないか。私は今直ちに水源税をつくれとかなんとか言っているんじゃありませんけれども、そういったような構想について、大臣、いかがでございますか。
  138. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) 増税をなんというのは禁句でございますから軽々には申し上げられませんが、全体としての国民負担というあり方から申しますと、やはり水と緑がただというわけではないわけでありまして、もちろんそれの涵養に関する費用は一般財源として処理をすればいいという見地もあろうかと思います。しかし、水と緑を守るという目的意識をやはり強く持った形での財源の確保というのは私はあってしかるべきだと、このように考えています。
  139. 青木薪次

    ○青木薪次君 大体以上をもちまして私は発言を終わりますけれども、何としても日本の国土は緑のダムという構想が出されておりますけれども、木を植えるということの条件をつくりながら、しかも日本の林野行政河川行政共通の目的というのを持っていくと、さっきの大臣認識というものについてもやはりそういう方向でいろいろこれからも政府と国会が一体となって進めていくということが必要であるということを強調いたしまして、私の発言を終わります。
  140. 小川勝也

    ○小川勝也君 民主党・新緑風会の小川勝也でございます。  先日、委員長を初め委員方々と都内を視察させていただきました。余りできない経験でございましょう。隅田川から日本橋川を上りまして、川から見た都市というのを拝見させていただきました。残念ながら日本橋川は大変汚れておりまして、今国会に提出されておりますこの河川法趣旨に沿いますと、もっと環境の面から、ストレスの多い都市住民にもっと安らぎを与えるような日本橋川になればいいなというふうに思わせていただきました。  それで、日本橋川をずっと上っていきますと最後に折り返した地点が兜町でございました。川だけじゃなくて金融業界からもいろんなうわさが流れてきておりました。第一勧業銀行の問題、野村証券の問題しかりでございます。野村証券のVIPの口座の問題なんというのは新聞紙上をにぎわしていると同時に、国民各界各層から大きな興味と関心を呼んでいる問題だと私も思いますので、ここで冒頭、大臣にちょっとお尋ねをしてみたいと思います。  いろいろと閣僚の間でもアンケート調査等あったかと思いますけれども大臣、御家族並びに秘書の関係で野村証券等と取引をされておられる方がいるかどうか、また特別な便宜供与があったかなかったか、お尋ねをしたいと思います。
  141. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) 冒頭から極めて不愉快な御質問をいただいておりますが、亀井静香、株屋風情から便宜を見ていただこうなんていう気持ちは毛頭ございません。一部週刊誌でVIP口座に私の名前が出ておりましたので、ただいま内容証明を送りました後、告訴を確実にこれはいたします。
  142. 小川勝也

    ○小川勝也君 政府高官という文字もちらちらと伺っておるんですけれども建設省内部の方を御調査されたかどうか、それもお伺いしたいと思います。
  143. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) 私の部下にそうした役人の職権をかさに着て不当な利益等を得ようとするようなやからはおりませんので、調査する必要はございません。
  144. 小川勝也

    ○小川勝也君 それが事実であればいいというふうに思わせていただきます。  それともう一つ、今、国の中で大きな問題となっていることに長崎県国営諌早湾の干拓事業がございます。先日、我が党の渡辺衆議院議員から質問主意書が提出されまして、当然これは閣議を通っておりますので、その御回答に賛意を示されたものと受けとめさせていただきますが、もう一度大臣にお尋ねをしてみたいと思います。  この問題は、環境の問題、農業の問題、そして防災の問題大きく三つの問題が内在されている問題だと思います。私が調べたところによりますと、環境に与える影響は物すごく大きい。しかしながら、農地が必要だという計画当時の時世から、年代が変わると同時に、農地、特に水田から畑作に変わりましたけれども、農地の必要性が著しく低下をした。そして当初、防災だ防災だと言っている割には防災の計画が不完全であると、このような三つの問題が指摘されると思うんでありますが、この三つの点を中心に大臣の御感想あるいは御意見を改めてお伺いしたいと思います。
  145. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) 私は逆に委員のお考えをもっと詳しくお聞きしたいという衝動に駆られるわけでございますが、委員会では質問が許されておりませんから、まず私の考え方を申し上げたいと思います。  この諌早湾の埋め立てば、これは農水省が干拓目的でやったことは事実でございます。ただ、その反射的利益として防災上の効果もある、これは私は高潮対策等の面においても確実にあると、このように考えます。  問題は、既に千七百億を超える金が、これは国民の血税であります。これが投下をされて、あと四、五百億になるかわかりませんが、追加をすれば優良な農地ができ上がるという状況にきておるわけであります。そういう中で今後の食糧事情をどう見るかでありますけれども、これは世界的に見れば食糧事情が逼迫をしてくるという危険性はあらゆる人が指摘をしておるわけであります。国土の狭い日本において優良農地をあとわずかで確保できる状況になっておるのに、過去の千七百億をパアにしてしまうということが賢明なことなのか。継続することによって新たな弊害その他が生まれてくるというのであればこれは格別であります。  そうでなければ、やはり国民の血税がつぎ込まれておる、そうした現実に立った場合には、私は予定どおり優良農地をつくるということが国家的利益にかなうものである。その結果、ムツゴロウが何匹死ぬかもしれませんが、ムツゴロウの命よりも国民の将来の幸せ、これを考えるということが政治としてはとるべきことであろうと、私はこのように基本的に考えておるわけであります。  ムツゴロウについては、かば焼きにしてばくばく食っておられる方が反対もしておられるようでございますけれども、私はやはり生態系をできるだけ維持する。たとえそれがメダカ一匹であろうとムツゴロウであろうと、生きとし生けるもの、やはりこの地球上に我々と一緒に生きておるわけでありますから、それをできるだけ大事にして、もちろん人間は勝手に食料なんかにしておるんですけれどもね。だけれども、そうではあってもそういうものを大事にしていくということは私は我々政治の面においても忘れてはならないことだと、このように考えております。
  146. 小川勝也

    ○小川勝也君 例えば農地の問題でありますれば、耕作放棄地が膨大な面積日本国にある。あるいはここまでもうお金をかけたから最後までやらなきゃいけないという考え方も、私は賛否両論あると思います。ここまでお金をつぎ込んでも、見直さなきゃいけないときにこれをバックできる勇気というものを、特にこの公共事業の分野では私たちは求められているのではないかなというふうに考えます。この大きな問題を含めて公共事業のあり方が今改めて問われていると思います。  ここで私は四点だけ指摘をしてみたいと思いますが、一つは、大きなプロジヒクトにおいてさえ国会の関与が非常に少ないということであります。そして、今までの高度経済成長時代に比べて住民の関心が著しく高くなった、国民の意識が非常に高くなったという点であります。そしてもう一つは、私が今申し上げたとおり、計画がずっと進んできたからこれは最後までやらなきゃいけないんだという硬直化した考え方が行き過ぎている点であります。そしてもう一つは、今、国会で審議されております環境に対する考え方がより強くなった、いわゆる環境アセスメント法案が今審議されているという点であります。そして、これに追加をすれば、先ほども大臣の答弁にありましたように我が国の財政が非常に危機的な局面にあるということであります。さまざまな点から私は公共事業のあり方というものを見直す時期ではないかというふうに考えております。  当然、国民の生命を守る治山治水事業のすべてを私は中止しろとか、公共事業のすべては悪だと申し上げるつもりはございません。必要な施策だけ、優先度の高い順から最も合理的にむだなくやれるようにすることこそ今の公共事業に求められていると思いますけれども大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  147. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) ちょっとその前に、こだわるようでありますが、私は委員にお教えいただきたいんでありますが、諌早の干拓をここで中止しなかった場合何が失われるかということ、私はぜひ御教示を願いたい。  環境破壊だということでありますが、あの堤防をぶつ壊すわけにはまいりません、はっきり申し上げまして。ムツゴロウ一匹の値段が、千七百で割ってみたら一匹幾らになるかという話でもあろうかと思いますが、私はそういうことで国民の税金を使っていいのか。もちろん減反等で今農地が余っていることは事実でありますけれども、狭い国土にそうしたあと一歩の努力でこれがつくられるということとの利益ですね。ムツゴロウの命とそういうものを比較権衡してどちらを選ぶかというようなことについて私は、ぜひ明快なお答えを、お答えというのは失礼、私が質問をしておるわけじゃございませんので、御教示をお願いしたいと思います。  それと公共事業建設省は今まで不要なものについてまで、ただ予算を消化したいとか、省として予算を獲得したいとかいうようなことで事業をやってきたとは私は思いません。やはり建設省もそうした国土の保全を含めて、あるいは交通の基盤の整備等含めて、皆さん方と同じように真剣にやはり取り組んできておると思います。そういう意味で、ああこれは不要不急なものがあるといって、皆さん方が幾ら目を凝らされましても、見た目では不要かもしれませんけれども、よく御説明すれば、ああなるほどとおわかりいただくような事業が多いと、このように私は自信を持っております。  ただ、やはり人間のやることでありますから、また組織でありますから、何もそこまでやらなくてもというような、また気候状況も変わってまいりますし、社会経済的な条件も変わってまいります。そういう中で、そのときは必要だと思って着手をしたけれども、五年たち十年たってみると、やはりこれはこの際撤退をした方がいいという状況も出てくる。こういう場合は諌早湾の場合とは違って、私どもは過去に少々投下しておっても、さらに継ぎ足して前に進む利益とそれによって失われるものとを考慮した場合、失われるものが多い、むしろそれはむだだと判断をした場合はきっちりと撤退をする。その過程の中で、ダムについて言えばダム審の方々の御意見等も参考にしながらやっておるわけでございまして、私も着任いたして以来四つのダムを中止させる処置をとりましたけれども、そういう意味状況が変わってくる中で弾力的に私は思い切って判断をしていく、そうして喫緊の課題に集中的に取り組んでいくということは絶対に必要であると思います。  長くなりますので、あと簡単にいたしますが、もう一つ環境との関係でございます。北海道も広大な荒野、すばらしい自然環境に恵まれておるわけでありますけれども、こちらの本土から時たま観光に行く人はそのままの自然を残してもらいたい、このように思うはずであります。しかし、北海道で現に厳しい自然と闘いながら生活をしておられる方々の生活の問題、また安全の問題、そういうものを考えた場合はそうした自然に手を加えざるを得ないという場合が起きてくるわけでありまして、そのあたりを我々としては地元方々の御意見も十分聞きながら、そういうものに対してこう対応していこうというのが我々の姿勢でございますので、そのように御理解をいただきたいと思います。
  148. 小川勝也

    ○小川勝也君 御高説ありがとうございました。  諌早湾の問題については別なところでまたお話をさせていただこうと思っております。  いろいろとこちらからの御質問もまだまだあるわけでございますが、先ほど私の部下にそんなやつはいないと、これは昔の我が国の武士道精神で言うと非常に美しいわけでございます。先ほどの問題は野村証券との関係でございますので、それはよしといたしましょう。  しかしながら、私は行政の責任者としての亀井建設大臣のお立場からすれば、すべての行政の監督をする立場からすると、その言動には問題があると言わざるを得ません。議院内閣制のもと国会から行政の方に行っているわけでございますので、やはり国民を代表して建設行政をリードするという点から、私は厳しく建設省とあるいはそこで働く方とそして建設省事業をチェックすべきだと思います。  そういう点からいきますと、例えば住宅都市整備公団の改革は実行する、それも前倒しして早くやりたいなどというこの大臣のリーダーシップには心から敬意を表しますし、私が以前に質問させていただきました道路公団のいろいろなからくりはおかしいんじゃないかというふうに大臣にお尋ね申し上げましたところ、一言私もおかしいと思うと、こういうふうに御説明をいただきました。  その流れから脈絡としてとらえていただければありがたいわけでございますが、河川行政のさまざまな分野、先ほど来問題になっておりますように国民の税金をたくさん使って事業をする分野であります。あるいは建設省だけではなく、さまざまな特殊法人やいろいろな関係会社が半ば固定的な地位を占めている分野もございます。河川行政あるいは河川局の関係、大きくとらえまして、大臣の目からとらえてここはちょっとおかしいんじゃないかという点があったり、ここはちょっと見直すべきだと考えておられる点がありましたらお教え願いたいと思います。
  149. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) お答えいたします。  河川行政についての私が建設大臣に就任をする前から考えておったこと、また就任をいたしまして責任者という立場での河川行政を見直すといいますか、そうした立場から申し上げますと、私は治水という問題にいたしましてもあるいは利水という問題にいたしましても、総合的にその目的を達する手段を広範な選択肢の中で検討をしていかなければならない、こういうことを痛感といいますか、そうじゃないと言っておるわけじゃございませんけれども、必要なんではないかな、このように思います。  そういう意味では、ダムをつくることによって治水目的が達するわけでありますけれども、しかし一方では大勢の方が生まれ故郷を去らなければならない。私の家も実は長い間ダムの予定地になっておったわけでございまして、そういう面ではそれにかわるものとして、例えば下流の河川改修という形で洪水防止の目的が達せられるのかどうかというようなことを、ダムをつくればうまくいっちゃうということじゃなくて、幅広い選択肢の中でそういう問題を考えるべきであろうと思いますし、利水の点も私はそうだと思います。  それから、我々は自然との闘いをやっておるわけでありますから、気候条件、いろいろなものがどんどん変わってまいります。そういう中で、未来の気候条件を我々は予測をするわけにいかぬわけでありますから、渇水問題にいたしましても、そういう状況になってから水が足りないというのではなくて、ある程度最悪のことまで予測をしてそういう問題に対して前もって対応していく。利水の面からは必要に迫られてというんじゃなくて、基本的な飲み水とかそういうような問題については事前に対応していくということもまた必要なんではないか。  それと、もう一つ言わせていただきますと、このたびまさに河川局長以下、環境問題を中に取り入れたわけでありますが、どちらかといいますと私の郷土なんかでもそうでありますが、堤防の改修という形になりますと、だだっとコンクリートを積み上げて味もそっけもない大きな堤防をつくり上げて、はいこれで終わりという感じが強かったわけでございます。これはやはり美しい山河を全くぶつ壊してしまうわけでありますので、そのあたりこのたびの法律改正の中にもございますけれども、そうした美しい山河を守りながら事業を進めていくという配慮がやはり必要だと、このように感じております。
  150. 小川勝也

    ○小川勝也君 御答弁ありがとうございました。  私が聞きたい点が少し御答弁から抜けておりましたので、私の方から言わせていただこうと思いますが、どの事業をするかというときに、国民と将来あるいは未来を見据えたときに最も必要なものから必ずしも順番に行われているシステムではないのではないかという危惧を持っております。  それは先ほどいみじくも大臣が、我が建設一家は建設省を守るために云々という言葉がございました。この建設省一家というのが私はすごい問題じゃないかなと思います。あるいは最近読んだ本の中に「日本国の研究」などという本がございまして、これは建設省だけではないかもしれませんけれども建設省からどこの公団に行く、そしてそこの方々は次はどこの会社に行く、そして随意契約でどこの会社が仕事をとるなどという問題もさまざまあるやに聞いております。  これはうわさの域でございますので申しわけございませんけれども、例えば先ほどの諌早湾の干拓は農水省の干拓技術者の方々がこの仕事をしたいからだという逆の理屈が働いたといううわさもございますし、また建設省の中には日本のトップの技術者の方がたくさんおられるわけでございますから、さまざまなところからいわゆる優先順位をねじ曲げたり、本当に必要な箇所からということではない要件から公共事業に使われているんではないかなというような危惧がございます。  ですので、大臣からも半分御答弁いただきましたように、本当に必要なものから、この財政状況をかんがみながら、そしてむだのない、そして最小限の経費で最終的な目的を達するという行政の仕組みをつくっていただけたらありがたいと思っております。  次は、ちょっと哲学的な話になってしまいますけれども、私は気が小さいものですから、今のような建設省があるいは大臣がお進めいただくようなダムをつくったり、あるいは河川に堤防を張ったり、あるいは流れている川を逆の方に向けてみたり木を切ってみたりと。僕はこの自然というものに人間は逆らってはいけないのではないかという根本的な考え方を持っています。  例えば、人類史上あるいは文化人類学のことはよくわかりませんけれども、私たちはまずどこかで生活をするというときに水のあるところで生活をする、そしてその流れてくる川の水の分だけしか人々はそこで生活できない、あるいはおのずから洪水が起きるような地形は住むに適さないとしてそこを選ばなかった。しかしながら、人口の増加とともに私ども人類はいろんな知恵を得て川と共存する、あるいは川や自然にいろんなことでお願いをしながら川が流れているのをとめさせていた、だいたりしている。  僕は、自然に対する畏敬の念というのを忘れてはいけないのではないか。この科学技術に支えられた文明社会というのも人類の歴史からするとそんなに長くはない。亀井建設大臣が政界を引退されるまでということで事業を進められるのならばいいかもしれないけれども、私たちが責任を負うのはそこまでじゃないと思うんですね。例えば、二百年後や五百年後や千年後のこの地球や日本がどうなっているかといったときに、川は全部コンクリート張り、そして流量が少ない、そして自分たち人間の都合で、ここに人がたくさん集まったからこっちに全部水を持ってくるなどということが最終的にいつまでも可能なのかということに非常に疑問を持っております。  大物の亀井大臣からその辺のことを御指導いただけたらなと思いますので、一言よろしくお願いいたします。
  151. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) いや、大物でもありませんが、今、人間と自然との関係についての基本的なお話をされました。  私は、委員基本的なお考えに反対するものではありません。この地球という小さな惑星に我々は住み着いておる、しかもその惑星の過去何十万年の長い歴史の中のほんの今一瞬のうちの一瞬張りついて生きさせていただいていると言った方がいいかもしれません。そういう存在でありますから、そうした宇宙なり自然と我々が正面から戦ったって勝てるわけではございません。地震や洪水等にいたしましても、太古の昔から大陸ができたり消えたり、そういう地殻変動まで起きているこの地球でありますから、そういう中で我々が生を全うしていく、しかも少しでも幸せに生を全うしていく、委員がおっしゃるように我々はそうした関係にあることを基本に置いてすべてを考えなければならない。  しかし、そうした中で自然のなすままに我々が身をゆだねておいた場合、人類は生きていけないという現実があるわけであります。太古の昔は黄河にしてもナイルにいたしましても、自然の川の流れがその土地を豊かにし、それを耕し生きていくということで幸せであったわけでありますけれども、では今、川を自然の流れのままにしておいたらどういうことになるかというと、これは大変な大洪水で人類が死滅するわけであります。そこで、川の流れを変える、確保するということも起きてくる。  これはある意味では自然に対する挑戦という面があるかもしれませんけれども、そういうことはやはりやらざるを得ないということでありまして、そういう中でできるだけ、そういう意味では生物との共生を含めて、自然との共生を含めて我々としてはぎりぎりの努力をする。しかし、やはり大事なのは、つかの間の人生かもしれませんけれども、みんなそれぞれがこの小さな惑星の上で少しでも幸せに住み続けることであろうと私は思います。
  152. 小川勝也

    ○小川勝也君 大筋において同じ考えであることを聞きまして安心いたしました。  しかしながら、現状では自然を屈服させるのではない、自然とともに生きながら私たちも少しずつ幸せを自然からいただいてくる、こういううまい方法がなかなかこの河川行政の中では見つかっていないのではないかなというふうに思います。  河川局長ならば何とかしてくれるんじゃないかなというふうな私は期待があるわけでございますが、今以上に自然を大切にする、自然に畏敬の念を抱く、そして自然と共生をしていく、そういう川の治め方、これからどんな展望をお持ちか、最後に一言お伺いをしたいと思います。
  153. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 最後大臣でなしに私で失礼でございますが、先ほど大臣が答弁をされましたその大きな流れと申しますか、そういう考え方をいかに具体にこの日本の上に河川の場として実現していくのか、そういう技術的な問題、そして制度的な問題を十分自分の問題としてこれからも対処していきたいと存じます。
  154. 小川勝也

    ○小川勝也君 終わります。
  155. 竹村泰子

    竹村泰子君 河川法審議に入ります前にちょっとお伺いしたいと思いますが、先ほど小川議員の方から諌早の問題が出されまして、大臣のお答えも聞いておりましたけれども、私どもはムツゴロウと人間とどっちが大事だというようなそういう矮小化した議論はやめていただきたいと思うんです。干潟を失うということがどういうことなのかということで、私どもは果たしてこれは必要な干拓事業であったのかということで考えているわけでございます。  建設関係でちょっとお伺いしたいと思いますのは、本明川という川が諌早湾にあるわけですけれども、この河川整備の目標、いつから整備が始まって完成はいつなんだろうか、進捗状況はどうなんだろうかということをちょっと教えていただきたいと思います。
  156. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 本明川につきましては、昭和三十二年七月にいわゆる諌早の大水害を受けたところでございまして、これを契機といたしまして、昭和三十三年七月に直轄河川に編入をして直轄改修工事に着手したところでございます。当時は旧河川法でございますので、一級、二級という差はなしに直轄工事ということで着手をいたしております。  そして、その後、この諌早大水害を契機としての工事でございますので、そういう洪水を対象にしつつ、本明川本川の改修工事を主体に進めてまいっておりまして、現在のところ堤防がほぼ概成をいたしたというところでございます。  ただ、まだ河道の掘削を実施する必要がございまして、そしてまた上流に本明川ダムというものを計画いたしておるわけでございますが、このダムができ上がるということをもちまして、やっとその昭和三十二年七月の洪水対応できる、そういう河川になるというふうに考えております。  この本明川の治水対策といたしましては、今私が御説明を申し上げました上流からの水、本明川の上流に降りました水が集まってはんらんを起こすというものと、下流といいますか海からの高潮による被害、これが相まって大水害になったところでございます。
  157. 竹村泰子

    竹村泰子君 今も続行中で改修されているわけですね。この本明川の河川改修事業、これは建設省直轄の事業ですが、この完成のみでは洪水防止、災害防止にはならなかったんですか、調整池というものをつくっておられるわけですけれども
  158. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 先ほども申しましたが、三十二年七月の洪水、この原因は二つございます。一つは海からの高潮による被害、そしてもう一つは上流に降った雨のはんらんによる被害、この二つがあるわけでございまして、建設省といたしましては上流からの雨を防ぐといいますか、上流に降った雨をはんらんさせることなく河道に流し込んで海まで持っていく、そして上流ではダム洪水調節をする、そういう治水計画考えておるところでございます。  これに対して、海からのはんらん、いわゆる高潮をどう防御するかというのは別途必要な対策として出てまいります。通常、河川の工事として、高潮対策は下流部の堤防のかさ上げをするということが必要になるわけでございますが、この諌早湾本明川におきましては、先ほど来議論が出ております河口の締め切り堤防によりまして高潮をとめるということでございますので、そういう工事がなされることによりまして結果的に本明川の高潮対策が必要なくなる。要するに上流からの雨を安全に海に流す、そういう仕事が必要になるということでございます。
  159. 竹村泰子

    竹村泰子君 大臣、先ほどお答えがありましたけれども、私どもは決して堤防を壊してしまえとかそういうことを言っているのではなくて、今とりあえずできることは、排水門をあけて、そして生き物だち、さっき私がムツゴロウか人間かという矮小化した議論じゃないと申し上げましたけれども日本最大の干潟でありますから、三千五百ヘクタール、これをなくしてしまうということは、生態系はもちろん、生態系に影響があるということは人間にも影響があるということでして、それから渡り鳥の重要なポイントでありました、渡り鳥条約というのもございますけれども。  そういうことからもう非常に大きな影響があちこちにあるものでして、私どもはせめてきちんと話し合いができるまで、そして生態系への影響とかいろいろなこと、これなら大丈夫かなというふうな決着がつくまで、せめて週に一回でもいい、十日に一回でもいい、その排水門をあけられないかという質問を出しておりました。  これが今の小川議員の質問の中にも入っていたんですが、ちょっとこれが間に合いませんで、今届きましたところによりますと、渡辺周君の質問に対しまして、「北部排水門及び南部排水門の運用は、農林水産大臣が定めた「国営諌早湾干拓事業調整池排水門工事中管理規程」」という管理規程に基づいている、だから農水大臣が責任を持っておられるわけですけれども、その実際の作業は「九州農政局諌早湾干拓事務所長が行っている。」、「この操作方法を変更するためには、工事中管理規程を変更する必要がある。」とありまして、「その内容を変更する権限を有するのは、農林水産大臣である。」、「この場合、本明川の河川管理者である建設大臣の権限の委任を受けた九州地方建設局長と協議することが必要である。」というお答えが返ってきているんですね。  これは今手に入った回答でありますので質問通告も何もできませんで大変失礼ですが、大臣、こういうことを農水大臣から協議する必要がある、ぜひ排水門の操作について協議してほしいという申し入れがあったらお受けになるでしょうかどうでしょうか。——大臣に聞いております。
  160. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 事実関係だけ先に私の方から御説明を申し上げたいと思います。  現在は諌早湾の干拓事業の工事実施期間中でございまして、諌早湾が締め切られる、そしてその条件として調整池の効果を持たすために所要の水位を確保して調整能力を確保しているところでございます。  それで、そういう操作ルール、そういうことで操作がされている限り本明川への治水の悪影響はないということを……
  161. 竹村泰子

    竹村泰子君 そういうことを聞いているんじゃないです。
  162. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) はい。  そうしているわけでございまして、その上で、もし変更されるときにはそういう機能が維持されているかどうかということを私どもとしてチェックをする、そういう意味合いで私どもが協議を受ける、そういうことになっている。  事実関係の御説明でございます。
  163. 竹村泰子

    竹村泰子君 私たち短い時間しか持っておりませんので、そういう役人答弁は要らないんです。私は大臣にそういう話があったらお受けになりますかと聞いているんです。あなたの答弁は要りません。
  164. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) それは、規程上の問題と実際私がそういう協議を受けるかどうかということとは全く別の問題であると私は思います。農水大臣が私と協議をするという意思を持っておられるとかそういう御決定をされたということは私は全然聞いておりませんから、一切聞いておりませんから、私が仮定の問題についてお答えをするわけにはまいりません。
  165. 竹村泰子

    竹村泰子君 これは仮定じゃないですよね、閣議を通っていますよね、質問書と答弁ですから。  ですから、お受けになるかどうかというのは仮定かもしれないけれども、お受けになる気持ちがありますかとお聞きしているんです。
  166. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) ですから、これも仮定の問題に属することでございますから、私がそういう協議には応じますなんということを今僭越に申し上げるわけにはまいりません。
  167. 竹村泰子

    竹村泰子君 今それ以上聞いてもいい答弁が出てくると思いませんので……
  168. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) はい、出ません。
  169. 竹村泰子

    竹村泰子君 あっさり言われますが、まあ次の機会に譲ります。  先ほどから私、質疑を朝からずっと聞いておりまして、特に先ほど青木議員が本当にたくさんのことを教えてくださいましたけれども、私も十年くらい前まで魚つけ林なんという言葉を愚かにも知りませんでした。それで魚つけ林て何ですかと聞いた記憶があるんですが、そういうことに日本行政関係者も、これは北海道お話がさっきありましたが、漁協の婦人部が始めたんですね。それ以来森は海の恋人とかそういった言葉が広く知られるようになりまして、大切な視点を私たちは取り戻したというふうに思っております。緑のダムという言葉もありますし、水源税のこともあるでしょう。大変貴重なたくさんのことを聞いて私も思いを同じくして同感同感と思っていたんです。  これもさっき青木先生の御質問に出ておりましたけれども、実は私どもも、これは衆議院でも多分この河川法審議で出ておりますが、大井川に行ってまいりました。河川法案を私どもも出しましたので幾つかの川を見に行ったんです。  このときに、先ほどお答えにもございましたけれども、本当に悲しくなるような川の姿でありました。たった一本の川に十八ものダムがつくられていて、そして河原砂漠がずっと続いている、日本一の暴れ川と言われた、越すに越されぬ大井川と言われた川に全然水がないということで。この水がないということは電力ダム群で、この流域の住民たち、川根町、中川根、本川根町では無水地帯が広がっているということですね。当然ダムがあると川が砂を運んでこないから砂浜も著しく減少している。砂浜がなくなっているということはどういうことかといいますと、海の魚の産卵の場、生活の場が失われている。河川法審議するに当たりまして、私たちはやっぱり森、川、海というこの生命体のつながり、これを考えなくちゃいけない。大きな問題点であるというふうに思うんです。  御存じと思いますが、大井川の河口部はシラスウナギの有名な産地で養鰻業者がたくさん生計を立てていました。しかし、上流からの川の水もない、砂浜もないということで、もうシラスウナギが激減して絶滅寸前というところまで行っている。ウナギのかば焼きの業者はシラスがどんぶり一杯百二十万円というようなことで、とてももうやっていけないというようなことになっている。中流域では、大井川の中流域の人口はさっき言った川根三町に集中しているんですけれども、川には水が全くない。昔子供たちが飛び込んだり泳いだりして遊んだ川には水がほとんどない。そういうことで、先ほど局長の答弁でしたか、ふるさとの川を再現したいといういい答弁がありましたけれども、ではどうするつもりなんだということを後ほどお聞きしたいと思います。  ここの三町の住民たちも水を返せ川を返せ運動というか、そもそもが河川維持用水の取水あるいは洪水対策ということであれしたんですけれども、この中川根地区では特に堆砂によって川床が上がってしまった。だから、暴れ川当時でさえなかった洪水が、浸水が起きている、こういうことに住民たちは怒っておりました。昔ですらなかったような浸水が起きている。洪水はなくしてくれ、何とかしてくれと昔から言っていたけれども、こんなにまで川をからからに干上がらせてくれとはだれも言わなかったというような住民たちの意見も聞いてまいりました。  さっきいろいろとお答えになっておりましたけれども環境保全ということを言っていらっしゃるんだが、遅きに失した感もあるのではないかという気もします。具体的に、しかも緊急に一体どのような対策をとろうとしておられるのか、お聞かせください。大臣、どうぞ。
  170. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) 竹村先生の御質問でございますから、局長のあれを私が奪いましてお答えを申し上げます。  本当に私は難しい御質問ばかり連続して出ておると思います。  あの流域に住んでおられる方々の、この山河は何だという思いはよくわかります。本当によく痛いほどわかります。しかし、一方では洪水のそうした被害に遭いたくないというお気持ちもある。また、ここは発電に使っていますからそれは洪水関係ないじゃないかということがあるかもしれませんが、しかし電気のない生活はやっぱりしたくないということであります。では火力発電といいますと、今度は公害の問題があります。また原子力発電ということになってきますと、いや、原子力発電は結構だというあれもあります。  そういう意味で、すべてが満足できて、しかも人口が非常にふえ続けたという、間もなく今度は減っていくかもしれませんけれども、そういう状況の中で、問題は先ほどから何回も申し上げますけれども、そういうことであるけれども少しでも自然を守ろう、あるいは復活させようという、そういうぎりぎりの努力を結局はするしかないということでありまして、あの大井川を上から下まできれいに昔のような川にしてくれと言われましても、建設省にそんな力は私はないと思います。いかに住民の方が言われましても、これは無理ですね。ただ、さらにこれ以上環境が悪化しないように、また全部が河原になってしまったんなら、堤防を含めて、そのあたりを別な形で緑化をしていくとか、桜堤をつくっていくとか、何か別な知恵で少しでもそういう自然環境をよくしていくという努力をせざるを得ないのではないか、このように私は思います。
  171. 竹村泰子

    竹村泰子君 先ほどちらっと言いましたが、私ども河川法改正案を衆議院に提出いたしました、否決されましたけれども。参議院でもお出しするつもりだったのですが、ちょっと手続が間に合わなくて今回は断念をしたわけであります。  今、大臣が大井川の上から下まできれいにもとのとおりにしろと言われても無理だと、それはそのとおりだと思います。何十年もかけてやってきたことをにわかに回復しろと言われても、幾ら亀井大臣でも無理だと思いますけれども、できることがあるんですね。  民主党は間もなく公共事業コントロール法案を提出いたします。これはそもそもの考え方が、この委員会でも、ここにおります私たちの仲間の小川議員が三月の建設委員会でこの公共事業治山治水緊急措置法の審議のときに、十七兆五千億が二十四兆円になったということで、その内容をはっきりさせてほしいということだったんですけれども、その中身は杳としてわからないんですね、私たちもわからないし国民にもわからない。ただ、二十四兆円もの事業が本当に必要なのかどうなのか、これはきちんとどこかでチェックをする必要があるのじゃないだろうか。国会がその役割を果たさなければいけないのではないだろうかということで、私たちは本当に必要な公共事業、どこにどのようなダムをつくるのか、あるいは財源はどこに求めるか、こういったことについてやはり公共事業の改革はきちんと国会で審議をする必要があるだろう。これは各党そういうふうに、恐らく自民党さんでも考えていらっしゃるんじゃないかと思います、全部ではないとしても。  それで、ここに先ほどお話が出ておりました、これを後で亀井大臣にプレゼントしようと思います。これは局長はもうお読みだと思いますから上げませんけれども、私どもが出した「アメリカはなぜダム開発をやめたのか」ということで、さっき局長は、アメリカ日本自然環境が違うといろいろおっしゃっておりました。しかし、アメリカでもこれはもう大変な抵抗に遭ったわけでして、その中でもちろん必要なダムもいっぱいある、公共事業も必要なものはいっぱいある。私たちは全部ダムをつぶせ、公共事業をやめろと言っているんではなくて、それが必要なのかどうなの  かきちんとどこかでチェックしたい。  そして、アメリカがこれをなぜやめたのかといいますと、やっぱり私たちの仲間がアメリカにも行って、実際に見て、そして聞いて、帰ってきてこの本を出したわけですけれども、やはりどんどんアメリカダムをつくっていったわけです。今日本では大変な数のダムがつくられ、また計画中でもあるわけですけれども、そういう中でダムがどんな弊害を起こしてきたかということを考え、しかも流域の住民たち、それから下流の住民たちが非常に生命の危険を、人間のつくったものは必ずいっかは壊れますから、そういうことで生命の危険を感じて、やはりこれ以上のダムは必要ないんじゃないかということでとめたわけです。  そういう中で、私ども公共事業コントロール法案を今国会に提出をしよう。私たちが幾ら大きな声で叫んでもダム開発や大規模林道あるいはさまざまな公共事業、これはもう本当に恐竜の前の小さなアリ一匹のようになかなか声が届かない、意見も聞いてもらえない、そういう住民たちの声がだんだん大きくなってきているというふうに思いまして、必要のない公共事業にこれ以上の血税を使うのはいかがなものかということから、こういうコントロール法案を出そうとしております。  もちろん、その内容もまだごらんいただいていないと思いますので、御感想を聞いても無理だと思いますけれども、この河川法審議と非常に関係があります、ダムとか川の管理とか。そういったことで非常に関係がありますので、そのような動きについて全く受け入れられないよと、とんでもない話だよとおっしゃるのか、あるいはいやそういうこともやっぱり必要だと思っているよとおっしゃるのか、ちょっと大臣の御感想を聞かせてください。
  172. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) とんでもない法律だというふうに私は感じております、もし出されるとすれば。私はやはり我が国憲法が求めておる政治と行政のお互いの相互牽制、役割分担、そういうこともやはり議会におかれましても十分お考えをされる必要があるんではないかと思います。  先ほど治水五計の問題をおっしゃいましたけれども、これにつきましても私ども治水五計をつくる権限を議会において承認をいただいたわけです。これはまさに民主的手続です。  では、中身についてまでこの建設委員会において御審議具体的にいただくということが今の時点で権限を与えられるその前提としてそういうことまで求められるということは、私はこれは立法府としての越権であると思います。やはり行政権は、そうした授権をいただいた中で河川審議会の、現在御検討いただいておりますけれども、そこでの御意見もいただきながら行政権の責任において中身をつくっていくわけでございます。  もちろん、そのつくっていく過程の中で当委員会等においても十分委員の皆さん方からの御審議、御批判等をいただく。最終的には、これは御承知のように予算は単年度主義でございますから、単年度の予算につきましては御承認をいただくという経過をたどるわけでございますので、行政権の具体的なそのやるべき責務まで立法府がおやりになろうというのは、私はある意味ではおせっかいな話だと思います。
  173. 竹村泰子

    竹村泰子君 おせっかいですか。
  174. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) いや、本当に私はそう思いますよ。
  175. 竹村泰子

    竹村泰子君 どうしてですか。
  176. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) 今の我が国憲法の予定しておりますのは、御承知のように国民から選ばれた議員が議院内閣制という形で大臣を務めるわけでございまして、何も天皇陛下から私は任命されるわけじゃありません。私はそういう民主的手続の中で今のそうした建設行政について責任を持つ立場におるわけでございますから、それが責任を持って治水五計なら治水五計の中身をつくり上げていく。そうして、それはまた各単年度主義でございますから、予算の中身において立法府において御審議をいただくという手続を経るわけでございますから、私はそれぞれがそれぞれの憲法の予定しておる役割をきっちりと果たしていくということが大事である、このように思います。  もちろん、私が申し上げておりますことは、常に行政府が立法府からのいろんな御批判なり御指導をいただくということを否定しておるわけではないということも御理解を賜りたいと思います。
  177. 竹村泰子

    竹村泰子君 大臣のお言葉ですが、それは私は納得できません。これはすべて税金なんですね。税金の使い道です。イギリスの国会の始まりが税金の使い道であったということはみんなよく知っていることでありますけれども、私たちの給料も税金からいただいております。  それでは、税金の使い道を国民が知りたいと。二十四兆ということは、前の五カ年計画から優に八兆円近ぐがぽんと上がっちゃうわけです。何でだと、何でなんだろうとこれは。どうして、何に必要なのということはだれしも知りたいんじゃないでしょうか。  そういう意味で、アメリカなどではこういうことをやっているんです。またアメリカとは違うと言われるかもしれませんけれども治山治水あるいはエネルギー問題いろんなことで先輩と言ってもいいかと思いますけれどもアメリカなどではダムや堤防の工事名がどこどこのダムときちんと法律に書かれるんです。そして毎年法律を書き直すんです。そういうことで大統領の命令もあります、諮問委員会もあります。  私どもの国会がきちんとこういったことができ、そして決算で、果たしてそれがよかったんだろうか、このダムは幾ら使ってここまで事業が進んだけれどもこれは妥当なのだろうか、国民からいただいている税金、これでいいのだろうかということが決算委員会できちんと調査ができれば、それなら私は何も言いません。(「やっているんだって」と呼ぶ者あり)いや、それはやればいいんですが、出てこないんですよ資料が、出てこないんです。(「出ているよ」と呼ぶ者あり)いや、そうじゃないです。建設委員会でこれはどのダムに幾ら使うんですかと聞いても、建設省は資料を出してこないんです。一つ一つの工事、事業については出してこないんです。(「出しています」と呼ぶ者あり)出しますか。(「ダムは出しています」と呼ぶ者あり)いや、ダムは出しているかもしれないけれども、この二十四兆円の内訳を知りたいと議員が言っても出してこないんです。なぜ出さないんですか。
  178. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) ただいまお話しの治水五カ年計画内容につきましては、先般、緊急措置法の成立を図っていただきましたので、それを受けまして、現在、鋭意作成をしておるところでございます。  この作成におきましては、河川審議会の意見を聞いた上で作成をするということになっております。そして、その上で閣議決定をいただくということでございます。そういう過程を一つ一つ誠実に踏んでいきたいと思っておりますし、またその内容につきましては、それぞれの河川でどういう形で使えるかというようなところまで今回については何とか詰められないかという、そういうことも検討をいたしておるところでございます。
  179. 竹村泰子

    竹村泰子君 検討をしておられるかもしれないけれども、現在のところは出てないんです、内訳がね。ですから、国民はもちろん知る権利があるんだけれども、税金をすごく取られているんですから、私たちも取られていますけれども、知る権利があるのではないかなと私は言っているわけです。  今、非常にダムに関してあるいはいろいろな川の管理に対して、住民を初め人々が本当にこれでよかったんだろうかと、どうやったらもっと環境を大事にしていい国にできるだろうかということを皆さんが現状を目の前にしながら悩んでおられる。  先ほどからいろいろなお話がきょうはございますけれども、私も建設省も変わってきたと思います。このような法案をお出しになるんですから、非常に変わってこられた。それはもう十分認めております。しかし、やっぱり遅きに失したのではないかという点も随分あるし、それからもっと公開しなきゃいけない。私どもの法案は今回残念ながら断念しておりますけれども住民参加、情報公開、環境保護ということにもっともっと配慮しなければならないということと、公開性をやはり大事にしていただきたいというふうに思うんです。  もう時間が過ぎています。ごめんなさい。ですから、きょうはやめなければなりませんが、さっきから亀井大臣にお褒めの言葉も随分出ておりますけれども、決断をしていただくべきところはしていただいて、この美しい国土を子供や孫たちの代に残していきたいと強く思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。  終わります。
  180. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 今回の河川法改正案は、河川環境整備保全という、河川の総合的管理、保全、そのことを内容一つとして位置づけて、河川整備計画制度については従来非常に乏しかった関係住民の意見を反映する、そういう点で改善であると考えております。  改正案について、これまでの治水利水環境を加えて三本柱で今の河川管理をより総合的に展開される、これが趣旨であると私は理解するわけです。その点で、言うまでもなく大臣が繰り返し言われておりますように、生命、身体、財産を守る、その使命を達成しなければならない、これは当然です。これに環境を加えてもこうした任務を、河川管理者としての責任、仕事をいささかも軽減するのではない。このことは明快だと思うんですね。  しかし、大臣環境保全について衆議院でこう言われていますね。フナやハヤも大事だが、人間の命はもっと大事と、そう述べられております。これだと、治水環境を対立的にとらえているというふうにも聞こえてしまう、そう思います。ハヤやフナのために人間の命は犠牲にしてもいいなんということをだれも主張していないわけです。こうした説明は、法案の趣旨からいっても不正確であり、また河川環境の問題を矮小化するんじゃないかと私は率直にそう思うんです。  建設省は自然との共生を図りつつ治水の効果を上げるという、より総合的な管理、保全を今回法改正をもって提起したと理解しておりますけれども、その点いかがですか。大臣にお伺いいたします。
  181. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) いろいろおしかりもいただいておるわけでありますけれども、私どもは何度も当委員会でも申し上げておりますように、とにかく今まで自然環境を別に壊したくて壊したわけでもありませんけれども治水利水目的を達する過程の中でそれに関する配慮がやはり足らなかったという反省を踏まえておるわけであります。  今後は、これはある面では金のかかる話でもありますけれども、ただ単なる治水利水目的を達するだけではなくて、子や孫から、ああこれはいい川だなと、そうしたことをやっぱり実感をしてくれるような河川を残していきたいというのが目的でありますし、我々が子供のときにハエやフナと遊ぶといいますか、共生といいますか、しておったことは不可能かもしれませんけれども、ひょっとすれば可能になるかもしれない。そういうことを我々としては追い求めながらこの河川行政をやっていこうということでございます。  私の例え方が悪いとおっしゃるかもしれませんけれども、やはりこの治水利水という視点を外して河川行政は成り立たないという点をぜひひとつ御理解を賜りたいという意味で言っておるわけでございます。
  182. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 大臣は先ほど水と緑を守る、それが我々の生命線だと言われた。やはりこれは大事な点だと思うんです。ですから、その基本点と今の環境の位置づけの問題、やっぱりそのことをしっかり踏まえていただく、このことは非常に大事だと思います。  昨年六月に河川審議会の答申が出されました。この中でも生態系人間の生存の基盤として位置づけて、その長期の安定を重要な課題としております。河川環境保全は、自然の正常な水環境を保ち河川や流域の生態系保全するということであって、それ自体が人間の生存条件を守るということだと思うんです。それが今回の法改正の提起の意味だというふうに理解するわけですけれども、その点重ねてお伺いいたします。
  183. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) 先ほどどなたかの御質問にもお答えいたしましたけれども、我々人間だけが生きておるわけじゃないわけでして、自然あるいは生物が同じこの地球上に一緒生息をし、植物だって一緒に生きておると私は思います。そういうことを抜きにして我々が営みをやっていった場合、必ず大変な逆襲を受けるということは私は必至、だと思います。  しかし、さはさりながらそうした自然と闘わなければならない。例えば川は恵みの川、母なる川ですけれども、それが手のつけられないヒステリーな女にばっと急に変わる。女性に変わる場合もあり得るということを言っておるわけでありまして、いや、川を女性に例えたらという意味で言っているんですよ。母なる優しい恵みの川がそういうことに変わる場合もあるわけですから、それに対して我々がどういう対応をするかということです。  そういう面のことを、それはだめだということになっちゃいますと我々は共生をできなくなっちゃうということになりますから、そういう意味での対応をするということを言っておるわけです。  なお、今の私の話の中で女と言ったのは訂正いたします。女性であります。
  184. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 先に訂正していただいてよかった。私、言おうと思ったんです。  都会に住む人間がたまにレジャーで地方に出かけて、自然があった方がいいと。大臣は衆議院でもそういうことを言われているんですけれども、私はこういう言い方も環境との関係で言うとやはり問題の矮小化だということを痛感するんです。やっぱり第一義的にそこに住む、そして生活している人々にとってその生存条件を守る、よくする、そこに意味があるということだと思いますので、その点を述べておきたいと思うんです。  環境保全建設省の位置づけからしても、治水利水について従来の算定やスタンス、これを絶対的なものにしてその枠内で、あるいはその基本をやりつつその過程でその残りの部分環境配慮するということでは済まされないものだと思うんです。  先ほど大臣が非常にいいことを言われた。環境への配慮という憲法をつくる、これがこの法案の精神だと言われましたが、そうですね。そうすると、河川の人工的な改変というのはどれだけ必要なものかということになってくると思うんです。その前提にされてきた利水治水の目標が過大ではないのか、あるいは別の方策はないのか等々、いろんな検討課題が出てくると思います。  大臣は衆議院で非常にまたいいことを言われているんです。私はこういうように見たんですけれども、私どもも、神様がやるわけじゃございませんから、反省点は多々あるわけでございますが、そういう反省を生かしながらきちっとした建設行政を進めていきたいと。私はこれは正論だと思います。そしてまた反省の気持ち、これがやはり非常に大事だと思うんです。  そうすると、環境への負荷を最小限にとどめるための方策、今大臣が言われたようなその立場で、そしてまた従来の経過に余りとらわれずに、やはり追求すべきものは追求すべきものとしていくという、そういうスタンスがこの法案からも出てくるのではないかと思いますけれども、その点いかがですか。
  185. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) 簡単に申し上げますと、今までも建設省は必死になってそういう考え方のもとでやったと思います。治水利水目的を達するためにそれもやらにゃいかぬわけだけれども自然環境をできるだけ破壊しない、生物との共生を含めてその被害を少しでも最小限にやって目的を達する方法はないかということを私は今までもやっておったと思いますけれども、今後もっと真剣に考えていくべきだと、このように思います。
  186. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 大規模なダム河川の循環を遮断して上下流の生態系を分断するという点で、自然の摂理にも川のそもそもの本質にも本来矛盾するものだと思うんです。治山治水法案の際にも質問したことですけれども、これまで全国で二千六百以上のダムがつくられていて現在も五百余り建設中とのことです。適地は次第に少なくなり、社会資本の形成ストック、財産として後世に残るものもどんどん少なくなる、そういう極めて資産価値の乏しいものに現在なりつつあるわけです。  そうすると、現在の財政危機の深刻な折、巨額な投資をして自然環境を大きく変えるダムをどういう規模でつくっていくのか、このままつくり続けることが妥当なのかどうか、そういう問題にもなってくると思うんです。私はそういう提起をしたんですけれども河川局長は効率の低下ということについては事実としてそれはお認めになったと思うんです。私は、何ももうダムは一切つくってはならない、そういうことを主張するつもりは全くありません。しかし、なるべくダムはつくらない、必要という場合でも最小限の規模にとどめていく、そういうことが今求められていると思うんです。  そういう方向の転換、あるいはそれへのアプローチ、そういったことがこういう法案の機会にあるのかどうか、その点、考えられていることについてお聞きしたいと思います。
  187. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) 政策的なことでございますから私がお答えをいたします。答えたくてしようがないようですけれども、私に要らぬことを答えられたら困るということがあるかもしれません。  私は先ほどの答弁でも申し上げましたけれども治水利水目的を達する上において何が自然環境をできるだけ、できるだけですよ、できるだけ破壊しない方法なのか、それを常に念頭に置いてやるべきだということを言っておるわけでございまして、そういう意味で、ダムをつくっちゃうと洪水対策でこれが万全だということですぐダムに飛びつくというんじゃなくて、先ほど言いましたように、生まれ故郷を離れにゃいかぬという精神的苦痛も含めて自然環境も破壊される。そうであれば、下流の堤防等の改修等においてそれは補完できないか、ダムをつくらないでそういうことによって目的は達せられないかというようなことを含めて、今までもそれをやっていると思いますけれども、そういう検討が私は大事だということを言っておるわけであります。  ただ、どうしてもダムをつくらなければ目的が達せられないという場合があるわけでありますから、その場合には委員も御指摘のように不必要なものをつくる必要はございませんので、必要最小限度の自然環境配慮したダム建設していく、地域住民方々の合意の形成を求めていくということであろうと思います。
  188. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 これまでどうだったかということですね。私の見るところを述べますと、例えば治水安全度が高ければ高いほどいい、利水容量も多ければ多いほどいい、そういう概念のもとにかなり大きな規模のものをどうしてもつくる傾向があったと思うんです。  衆議院で中島武敏議員がウオータープラン二〇〇〇を取り上げて、一九九三年の都市用水の使用実績が三百二十四億トンに対して二〇〇〇年の需要見通しが四百三十億トン、七年間で百六億トン、年当たり十五億トンになりますけれども、ふえる見通しになっているということを明らかにしました。一九九三年以前の七年間の増加は十八億トンなんです。一年当たり二・六億トン。実際の増加の六倍の見通しをこれから先立ててきたというごとになるわけです。  その点で、この計画が直接各河川の水資源計画開発計画に連動するものではないわけですけれども、しかしそれにしても余りにもこの目標値が高過ぎる。計画が高過ぎる。こういう姿勢が結局は過大な水資源開発計画の背景になっているということはこれは否定できないと思うんです。ですから私は、一つはこの数値、計画についてやはり再検討する。そして引き下げを率先して提起すべきではないか。これがやはり環境を守るということにもつながってくるんではないかと思いますが、いかがですか。
  189. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 我が国治水の安全度は、大きな川ですら最大二百年に一回ぐらいの洪水を対象に考えております。それに対して、例えばオランダの高潮堤防は一万年に一回の高潮に対してすら安全にしようということで進めてきておられます。  そういう意味で、日本洪水の安全度というのは、私は決して高過ぎるということはないと思っておりますし、また利水の安全度も、我が国では十年に一回ぐらいの渇水が来ても何とか節水なくいけるようにしたい。そういうものを目標にして水の計画をつくっておりますが、残念ながらこれも例えば首都圏では先ほど来も議論がございましたが、暫定の豊水水利権というものが大体都市用水の四割ぐらいもあるという状況でございます。決してそういう安全度、低過ぎるぐらいの安全度に対してすらそういう水資源の確保が追いついていないというのが現状でございまして、何とか当面の目標をなるべく早く確保したい、こう考えております。  そしてもう一点、ダムサイト自体もこれは大変貴重な資源でございます。先生指摘のとおり、適当なダムサイトというのはっくればつくるほどなくなってくるわけでございまして、そういう意味ではダムサイトも非常に貴重な資源と考えダムをつくっていく必要があるというふうに思っております。  もちろん必要がないダムをつくるつもりは全くございませんし、現時点におきましても、自分たちの町の利水の安全度を上げる、あるいは洪水の安全度を上げるために早くダムをつくれ、もっと早く完成させろという強い要望をいただいておる、それに対してなかなか対応できずに苦慮しておるというのも現状でございます。
  190. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 実際、水需要の見通しが過大だという問題については、いろんなところで問題が起きていると思うんです。  例えば長良川河口堰の場合、かつて三重県が毎秒当たりニトンの水を返上する、あるいは徳山ダムで名古屋市が三トンの水を返上するという現実があるわけです。ですから、やっぱりこういうところをきちっと見ていただきたいと思います。  実は私、先日、岡山県の苫田ダムを調査いたしました。水道用には日量四十万トンの計画。ところが、岡山県広域水道企業団の計画では、苫田ダムを含む五つの水源施設から取水が四十九万トン余りなんです。それでいて第一期の事業計画計画給水量というのは二十万トンなんです。計画の半分なんです。ですから、二期計画はもう必要ない、もう当面水は余っている、現地ではそういう声が出ているのに、しかし水の利水のためにということでダムをつくろうとする、そういう矛盾もあるわけです。  そういう現実を考えていくと、やはり必要に見合った形で、そして過大な計画はその際検討するということで、局長が今言われたようなケースもあると思います。しかし、同時にそうじゃないケースもあるわけで、そういうところでは大胆に見直していく。  先ほど大臣がいいことを言われました。撤退した方がいい場合も出てくる。やっぱりそういう精神で決めたものはあくまで固守してやり続けるというんじゃなくて、やめるときにはやめるのを決断が早いほどむだが少ないわけですから、そういう精神でやっていただきたいと思います。
  191. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 水需要の将来見通しというのは、ある意味で大変難しい面がございます。例えば少家族化が進めば進むほど一人当たりの水利用量はふえる、そういう傾向もございますし、そういう社会構造の変化をどう見るかという議論もございます。  そういう中でそれぞれの地方公共団体が自分たちの町としてはこういう形で水資源を確保したいんだというその負担意欲、負担をすることを前提にお考えになられ、その上にダムに参加をされておるわけでございまして、そういうものは私どもとして重く受けとめて対応していく、これは基本だというふうに思っております。  もちろんむだなダムをつくるというようなことはあり得ないわけでございまして、先ほど大臣の御答弁にもございましたとおり、今年度につきましては四つのダムを休止、中止するということもやっておるわけでございまして、社会情勢の変化に対応して大胆に見直していくというのは大臣から常に指示を受けておるところでございます。
  192. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 ダム建設計画する、しかしそれが必要なくなるという意見が出てくると目的をくるくる変えていくという、そういうことも実際に起こるわけです。  例えば長良川河口堰の問題で言うと、当初は中京工業地帯の工業用水確保、これが最大の目標だったわけです。ところが、それが必要なくなるということがわかると塩害対策ということが正面に出てくる。そういう形でつくるために何といいますか、目的を変えてもとにかくつくるということを一貫させるという、やっぱりそういうやり方というのは目立つと思うんです。  例えば苫田ダムでも最初は農業用水が主な目的であった。今は治水が前面に出ているということです。ですから、こういうことを考えていくと、抜本的に見直していく、このことがやっぱり非常に大事だと思うんです。そのことを指摘しておきたいと思うんです。  今のことに関連して先ほど諌早湾の問題について出ましたけれども、これは所管が農水省なものですから、ここで質問することは余りできませんけれども一つだけお聞きしておきたいことがあるんです。  それはこの諌早についても事業目的最初は干拓で農業用地ということでした。ところが、今は防災対策ということが正面に出ている。こういうことで目的が変わってきているということの一つの例だと思いますけれども、防災なら河川や海岸を所管する建設省も当然かかわってくるわけです。  ところで、諌早干拓事業に関しては、農水省の委託を受けた諌早湾防災対策検討委員会、そういうところが出した諌早湾防災対策検討委員会中間報告書というものがあるわけです。これは中を見ますと、結論として実施している三千五百五十ヘクタールの規模では安全性に対して問題がある等々防災上幾つかの問題がある、あるいは警告、それが書かれているわけです。私はこういう文書というのは非常に大事だと思うんです。日付は昭和五十八年十二月です。ところが、諌早市はこの報告書は受け取っていない、聞いていない、要旨のみを受け取っているというふうに述べているんです。  ところで、建設省はこの報告書を農水省から受け取っておられるかどうか、お尋ねいたします。
  193. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 今、先生指摘の報告書は直接見たわけではございませんのであれでございますが、私どもはそういう報告書を受け取ってはおりません。
  194. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 大臣にお伺いしますけれども、そのとおりですね。大臣はごらんになりましたか。
  195. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) 見たことはありません。
  196. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 結構です。この問題はここでやってもちょっと始まらない。農水大臣のいるところでやります。  政府の防災対策のあり方という点で一点だけ申し上げますけれども、やっぱりこれは大きな問題だと思うんです。所管は農水省ということなんだけれども、しかし肝心の建設省に対してはこういう重要な文書については報告されていない。聞くと、あそこを国で所管しているのは建設省、農水省、運輸省となるわけだけれども、そして三省で協議していろいろ協力してやっていますという答えが返ってくるんだけれども、あの地域で防災対策の問題について詳しい検討を行われたというのは結局これ一つだけなんです。  建設省にお聞きしましたけれども、あそこで本明川についていろいろやられているのは聞きましたけれども、あの地域についての防災対策というのは詳しいものはやっていないという御返事でした。そうすると、結局あの地域の防災対策、これは前面に出ているわけですけれども、その問題に対してだれが責任を持つのかということになるわけです。私はその点でこの問題にも縦割り行政の非常に大きな弊害があらわれているということを痛感する次第なんです。ですから、このことを一つ述べて、また同時に、情報公開の問題としてもこの問題はやはり重要な問題だということを指摘しておきたいと思うんです。  次に、改正のもう一つポイントであります河川整備計画について、住民の意見を一定程度反映するようにしたことは改善だと思うんですけれども、しかしその基本高水流量やダム・河道への配分、あるいは計画高水流量などを決定する基本方針については依然として従来のシステムを残しているということになると思うんです。これではどの程度の規模のダム群をつくるのかということが国民や住民の意見を聞かないままで決められることになってしまうという問題点が残るのではないかという危惧を持つんです。  これについて、河川局長は、全国的な視野に立って水系全体を見て上から下までそごのないバランスのとれた計画をつくるためだ、抽象的な概念であって科学的、技術的に決めるためだという説明をされていますでしょう。しかし、私はこのことをもってしても、地元住民の意見を聞くだけで決めるわけにいかないということはそれは理由だと思いますけれども、だからといって住民の意見を聞く必要はないということにはならないと思うんです。ですから、この点をお尋ねいたします。
  197. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 確かに、方針の中では地元住民の方の意見をお聞きするということにはしておりません。  しかしながら、その方針で決められたダムと河道の配分、これはダム群といいますか、どこにどういうダムをつくるかということでなしに、それぞれの流域の特性として決まってくる量でありますから、そのダム具体にどこにどう張りつけるかということはすべて河川整備計画の中で決めます。ですから、それぞれのダムをどこへどうつくるかは住民の皆さん方の一番の関心事でございます。あるいはどこにどういう堤防をつくるかということも河川整備計画の中で決めるわけでございます。しかも、その意見をお聞きするのは案の案の段階でお聞きをして、それを十分踏まえて案を作成した上でさらに地方公共団体の長の意見を聞く、こういう仕組みでございますから、そういう意味合いでは地元の意見が十分総意として反映される、そういうシステムとして機能する、こう考えております。
  198. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 結局、ダム群の骨格になるのは基本方針なわけです。ですから、そこのところで意見を聞くということが非常に大事だと思うんですね。少なくとも学識経験者の意見を聞かない手はないと思うんです。
  199. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 学識経験者の意見につきましては、河川審議会の意見を聞くことにしておりますので、そういうダム群を持つような水系については河川審議会の中に個別にそれぞれの川単位の小委員会をつくる等、そういう方策を講ずることによって十分お聞きをしていきたい、こういうふうに考えております。
  200. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 先ほども言いましたけれども、今全国で問題になっているのは過大な計画です。それをどういうふうに適切にするのかということは結局基本方針にかかわるわけです。  そうすると結局、どのように治水利水計画を適切な目標にしていくのかということは基本方針にかかわる問題なんです。ですから、この基本方針の策定の段階で意見を聞くということが非常に大事で、それを具体化する整備計画の段階でいろいろ聞く、これはもちろんないよりはあった方が重要だし、うんとこれは重要だと思います。しかし、なぜ基本方針のところでこれをやらないのか、これが最大の疑問だと思うんです。その点、どうしてやらないのか。
  201. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) 結局、今私聞いておりまして、住民の意見をどの程度聞いていくかということに尽きると思うんです。我々としては整備計画の中できちっと聞いていく。基本計画については専門的また全国的なレベルの判断等がございますから、河川審議会の学識経験者の方々の意見を聞いて決めるということですから、そこまで決めたらいかぬという形になりますと、極論すれば直接民主主義でいかなければならぬ。そこは建設省の役人も自分のために、個人の利益のためにやっておるわけじゃありませんから、そこらはやはり行政を御信頼いただくということもまた必要ではないかなと思います。
  202. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 私は、今の大臣の答弁を聞きながら、建設省も国民を信頼することが大事ではないかということを痛感するんです。国民あるいは関係地域住民は全体のバランスのとれた考え方ができない、局地のことしかわからない、自分たちのエゴしか言わないんじゃないかという前提に立つと、それはおかしなことになってくると思うんです。  私は、学識経験者も含めて国民の適切な判断を求める、そしてその上で全国的な視野に立っている、一貫していろんなことに対応できる建設省がいろんなことでいろんな意見を聞きながら判断していく、そういう仕組みができると思うんです。ですから、一貫してそういう仕事を行うということと住民あるいは学識経験者やそういう方々から意見を聞くということは矛盾しないと思うんです、ですから、私はこれまでの河川法に基づく工事でいろんなトラブルが起きてきたその原因の部分が今のところに凝縮されているのではないかということを痛感するものですから、その点を指摘しておきたいと思うんです。  それで、時間がありませんので最後大臣にお尋ねしたいんですけれども、今回の改正は、先ほどから申し上げておりますように改善であることは間違いありません。それにもかかわらず、従来の河川法の問題点、ちょうど今述べたところですけれども、それがやはりそのまま残されているな、そういうことを感じざるを得ないんです。しかし同時に、河川整備基本方針についても国民的な理解なしには進まない。これは大臣が先ごろ言われているように、そのとおりだと思うんです。  そうすると、政府原案のもとでも法の運用次第によっては広く国民の意見を求め、議論を深め、理解と納得で決めていくという、整備計画でそういう仕掛けがつくられているということにもあらわれていると思いますけれども、そういう方向になっていかざるを得ない、それは可能だと思うんです。  そういった点で、政府としても、そしてまた建設省としても、そういう方向と精神でこれからの建設行政を進めていただきたいと希望するわけですけれども、その点を最後大臣に伺っておきたいと思います。
  203. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) 私ども地域住民方々の御意見、御意思、感情、そういうことも含めまして、建設行政はそういうことを基本にしてやっていかなければ、これははっきり言いまして現実的に前へ進みません。そういうことでありますから、後になって聞けばいいかといいますと、後になって混乱するなら先に聞いておいた方がいいんです。簡単な話なんです。どうせ地域住民方々の同意というのがなければ前へ進めぬわけでありますから。  そういう面で、おっしゃるように運用面その他において、市町村長、知事という公的機関の方だけじゃなくて、耳を長くして目を開いて十分御意見を聞きながら進めていくということはお約束をいたします。
  204. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 終わります。
  205. 奥村展三

    ○奥村展三君 一番最後になりますと、もうほとんどお聞きになっておりますし、重なって質問をするところがあると思いますが、お許しをいただきたいと思います。  平成六年の一月だったでしょうか、建設省の中でいろいろ議論をされまして環境政策大綱をおつくりになったようであります。これは、環境をいかに建設行政の中に取り入れていくかということで、内部の目的化をされたものとして私は高く評価をしているところでもございますし、今後の建設行政にとって大変これはもう言をまたないところでございます。  そうした中で、先ほどもお話が出ておりましたように、従来の河川行政から何かはのぼのとしたような感じの施策をどんどん推し進めていこうということで今回の改正案になったのではないかなということで感じておるところでございます。そうした中におきまして、特に治水治山、これとやはり河川行政というのがもう密接不可分の関係であろうと思います。  そういうようなことを考えますときに、先ほど来いろいろ大臣も御答弁していただいておりますが、総合的なこの取り組みについてもう一度お聞かせをいただけたらというように思います。
  206. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) 委員指摘のように、私どもといたしましては、治山、治山は農林省の分野とも重なるわけでありますが、治水利水とそうした環境面への配慮といいますか、もっと積極的に申し上げますと、美しい山河を河川行政で守る、配慮するという消極的な立場じゃなくて、美しい山河を河川行政の中で守るというような、そういうつもりで「環境」を加えておるわけでございまして、そういうことで進んでまいりたいと思っております。
  207. 奥村展三

    ○奥村展三君 確かに、美しい山河を守るというお言葉をいただきましたが、「誰か故郷を想わざる」という歌がありますが、あの中に「幼なじみのあの山この川」という文言があるんですが、やはりこのような心に残るふるさとを思うときに、小川とか、この川という象徴できるようなそういう川であってほしいし、環境であってほしいと私は思います。  今、大臣がいみじくも美しい山河ということを例えてお話しいただきました。大変意義のある、そういうことでぜひ大臣を中心に今後も河川行政を推し進めていただきたいというように思います。  局長にお伺いしたいんですが、私もこの法案を勉強させていただきながら、いろいろ自分ながらイメージをあれしておったんですが、どうも全体像が私自身が見えにくいといいますか、この「河川環境整備保全」というのが加えられたそうしたときに、全体像のイメージは一体どんなものかなというように自分自身で考えて編み出していこうと思ったんですが、なかなか難しいんですが、局長はどういうようにお考えですか。
  208. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 確かに、今回、「河川環境整備保全」という言葉河川法の「目的」の中にお入れをいただきたいということで改正案をお願いしておるところでございます。  その具体のイメージということで申しますと、今現在進めております個別の治水機能を上げる、より安全にするための事業、あるいは利水の安全性を上げるための事業、そういう事業自身を実施する中で、先ほど先生から御指摘いただきました環境大綱の中で、環境内部目的化するという、その言葉具体に具現化していく、多自然型川づくりとか、いわゆる生態系保全を図りつつそういう機能を上げるということが一つございます。  それからもう一つは、これはまだはっきり具体の姿としてなかなか見えてこないんですが、昨年の六月の河川審議会の答申で示されました、川の三百六十五日を大事にする、こういう考え方。これは、今まで河川法目的治水利水しかないということは、三百六十五日の川の中の一日か二日しかある意味では相手にしていないということでありますが、そうでなしに、ほかの三百六十三日、そういう日にちを、そういうところを大事にする。そのための施策としてどういうことが出てくるかというのは、ある意味でこれから私ども自身も取り組んでいくべきテーマだと思っております。  具体的には、例えば日本橋が何かで魚河岸とかそういう河岸を復活していこう、そういうことを起爆剤にして町づくりをしていこうと。これはまさに川を三百六十五日使えるように変えていこうと、こういう地域方たちの運動だと受けとめておるわけですが、そういうものを治水機能をさらに確保しながらどうやっていくかというのも一つテーマだと思っています。  また、舟運の問題、これも首都圏で確かに道路あるいは鉄道によるそういう混雑解消というのは大変大事なテーマでございますが、そういう水路自身の利用ということも、ニューヨークではそういう河川、運河を使っての通勤が非常にはやりになっているというような報道もございましたが、そういう方向一つ大きなテーマではないかなと思っております。  そういうことを今後具体により詳細に詰めるという意味合いで、河川審議会の方にそういう今後のテーマにつきましてもこれから審議をお願いするべくただいま準備をいたしておるところでございます。
  209. 奥村展三

    ○奥村展三君 人間があるいはまた生物が生きていく上には、河川イコール水でありますが、欠かすことができない。三百六十五日、ぜひ河川を思いながらいろんな施策を進めていただくことをお願いしておきたいと思います。  そこで、今いろいろと御答弁いただきましたように、「河川環境」を加えられた意義、これはもう本当にあると思いますし、この中でずっと見てみますと、今回の目的改正によりまして具体的な河川管理がどう変わっていくのか、ちょっと書かれていないので、この点についてどのようにお考えになっておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  210. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 具体河川管理におきましては、従前から治水上の安全確保、特に洪水先生御承知のとおり数十年に一回しか起こらない、そういう事象でございますが一そういう事象が起こったときに万一にも失敗があれば、その長年の間何のために管理しておったかわからない、こういうことになるわけで、どうしても治水上の安全確保ということで、一般の住民の皆さん方からごらんになりますと、そこまでなぜ厳しく管理をするのか、河川管理者の横暴ではないかという御批判もいただいておるのは十分承知をいたしておるところでございます。  ただ、今申しましたそういう治水上の要請、その側面は、これはもういつの時点になっても変わらないと思ってはおりますが、そういう中で、先ほど来お話が出ております川の三百六十五日を大事にする、それをどう調和を図っていくかというところが大きなテーマではないかなと思っております。  そういう中で、河川の中でのいろんな許可条件等々、そういう問題についても今後広い河川管理のあり方全般の見直しの中で物を考えていきたいと思っております。
  211. 奥村展三

    ○奥村展三君 ぜひ今局長から御答弁いただきましたように、河川管理を幅広くひとつ進めていただくことをお願いいたしたいと思います。  ちょっとこれは地元のことで恐縮でございますが、私の地元には一級河川の野洲川というのが琵琶湖に注いでおりますが、ここに石部頭首工というのがございまして、これは昭和四十年代利水目的といたしまして頭首工が建築されたわけであります。最近、局長さんも御承知かと思いますが、野洲川の中流部、いろいろ改修をいただいておるわけですが、昭和二十八年のあの大災害のときにいろんな被害が出ました。そういうこと等もございまして、野洲川の中流部の改修をしていただいているんですが、この頭首工が今現在農水省の所管になっております。そんなことで、河川改修等をやっていただこうと現在我々も地元の要望を聞きながら進めておるんですが、いや建設省が管理庁どうだとか、あるいは建設省に話しますと、いやこれは農水省のものですからさわれませんとかいうようなことで、大変いろんなことを醸し出しておるんです。  特に現在は固定堰になっておりまして、これを可動堰に農水省はしていきたいというようなことで推し進めていただくようになっておるんですけれども、こういう状況考えますときに、これは半ば要望になるかもわかりませんが、ぜひ前向きにとらまえていただきたいなというように思っております。  と同時に、名神高速道路の野洲川と交差しているところまでは直轄河川になっておりますが、それより上流は指定区域になっております。そんなことで、河川改修等いろいろ計画をしていただいているようでございますが、もしも現時点で見通し等についてお考えいただいておるようでございましたら、御答弁いただけたらと思います。
  212. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 野洲川につきましては、先生指摘のとおり、二十八年、三十四年、四十年と繰り返して大きな水害を受けました。昭和四十年から野洲川放水路建設事業ということで、南流と北流に分かれて、真ん中に一本放水路を抜いたところでございますが、昭和五十四年に概成をいたしまして、その後中流部の事業にかかっておるという現状でございます。  そういう中で、御指摘の石部頭首工でございますが、これの改築につきましては地元から大変強い要望をいただいておることは、私ども十分承知をいたしております。この施設を管理されておる施設管理者の方と現在その改築のあり方について協議をさせていただいておるところでございます。この頭首工自体が洪水流下の支障になっておるということも事実でございますので、そういう中でこの固定堰をどういう形で改修するのがいいのか、施設管理者の方とも十分詰めてまいりたいというふうに思っております。  それから、今お話がございました直轄管理区間の延長の議論につきましても、地元から大変強い御要望をいただいているのは私どもとしても十分承知をいたしておりますが、どうも現在事業費がなかなか確保できない中でそういう問題をどう考えていくべきか大変苦慮をしておるところでございまして、これからのいろんな情勢も勘案しながら、地元の御要望にこたえるべくこれからも努力をしてまいりたいと思っております。
  213. 奥村展三

    ○奥村展三君 大変身近なことになって申しわけございませんでした。どうぞよろしくお願いをいたしたいと思います。  その次にお尋ねをいたしたいんですが、いろいろ先ほど来も質問をなされておりましたが、樹林帯を河川管理システムとして取り組んで整備をしていくということになっておるわけでございます。この目的あるいは期待というのは非常にあると思うんですが、関係省庁とこの樹林帯等いろいろ河川管理のシステム等を整備していく段階におきまして連携はどのようにお考えになっておるのか、まずお伺いいたしたいと思います。
  214. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) 樹林帯を含めた河川法改正を今回お願いするに際しましても、林野庁さんと樹林帯、河畔林、湖畔林をどういう形で整備していくのがいいのかというところが一番議論のもとでございます。本当に徹夜に近い議論をずっと繰り返してきたわけでございますが、そういう中でお互いの問題意識、お互いの業務分担といいますか、それぞれの仕事の分担が非常に明確になってきたというふうに受けとめております。  特に、ダム上流の森林をどう守るかというのは、これはまさにダム湖の水質問題と直接絡む話でございまして、今回私ども考えております樹林帯では幅五十メートルでございまして、大体湖水面からつけかえ道路の間の、そういうところの森林化を図るというのが大きなテーマでございますが、そこだけでは必ずしも十分でございませんので、上流端までひっくるめた全体の森林をいかに確保していくかという、これはまさに林野庁さんと一緒になってやらないとやれないテーマだと、こう思っております。そういうことで、林野庁さんと一緒になってこの問題を考えていくということで、いろんなレベルで今協議を既に進めておるところでございます。
  215. 奥村展三

    ○奥村展三君 いろいろ難しい問題もあったようですし、今後もまだまだ調整をしながら推し進めていただくことで、ぜひ精力的に御努力をお願いいたしたいと思います。  ちょっと樹林帯とも離れるかもわかりませんが、御承知かと思いますが、環境面で滋賀県では琵琶湖におけるところのヨシ条例というのをつくっております。おかげさまで、四半世紀にわたります、約二十五年に及ぶ琵琶湖総合開発事業を推し進めていただき、本年の三月三十一日をもってほとんど終えたわけでございます。今日まで御協力また御努力をいただいた方々にお礼を申し上げておきたいと思います。  今後は琵琶湖の総合保全、総合的な保全というのが大きな課題になっているところでございます。国土庁を中心に建設省あるいは農水省が連携をとっていただきながら、湖沼の水質保全対策行動計画というようなものもおつくりをいただきまして推し進めていただくようになっておるわけでございますが、今後ともぜひこの行動計画のもとによろしくお願いをいたしたいと思います。  そうした中に、実は県民みずからも参画をしながらやっていこうということで、平成四年三月三十日に、私も当時は県会議員をしておりまして、このヨシ条例をつくるのにいろんな議論を進めてまいりました。植えた方がいい、あるいはそんな植栽してもすぐ枯れてしまうんではないか、どれだけの生態系に影響があるかというような議論をしながら、平成四年にこの条例ができました。そして、その年の六月二十日に同じ県議会で施行条例もつくったわけであります。  そうしたときに、我々もみずからが勉強しようということで、私はドイツへ行ってライン川、ボーデン湖等をずっと視察してまいりました。現場を見てなるほどという感を受けましたし、特にライン川、あの周辺に河川の研究所をきちっとおつくりになって、そこでヨシ群落、ヨシの育成、生態系とのかかわり、自然と人間との共生等の研究をずっとなされているところがあります。  そういうようなことを思いましたときに、ぜひ今回の河川法改正によって河川を本当に自然の姿のような雰囲気にしていこうということも根本にあるわけであります。このヨシ条例、決して押しつける意味じゃないんですが、こういうようなことを滋賀県自身が琵琶湖を持っておる下流府県のことを考えながらやっていこうということで、これは県の責務あるいは市町村の責務、そして県民一人一人の責務ということに分けまして、全部責務条例になっております。  県外の方がもしも何かでそこにおつくりになったり、県民以外の方ですが、おつくりになってやられても、県は予算の範囲内で補助をしていこうというような予算措置もしておりますし、もちろん県内のいろんなところでそういう予算を組んで琵琶湖を守りながらヨシ条例をつくって生息をさせて、水の涵養なりいろんな環境を守っていこう、また景観をあれしていこうということなんです。  これは滋賀県の場合は特別保全区域といって何メーターか決めまして、そこにヨシの群落をつくって保護をしていこうというようにやっているわけです。これは今の河川法からいって難しいかもわかりませんが、私はやはり河川を改修されて、コンクリ張りじゃなくて、そういう自然体系にされる。その中にある意味では保全区域をつくって、ぜひヨシを植えてくださいよ、こういうようにしてはどうですかというような何か指針になるようなものをぜひおつくりになったらどうかなと思うんですが、いかがでしょうか。
  216. 尾田栄章

    政府委員尾田栄章君) ただいま御指摘いただきましたようなそういう点もひっくるめて、これから私どもも積極的に水質の問題、景観の問題に取り組んでまいりたいと思います。
  217. 奥村展三

    ○奥村展三君 ぜひ今申し上げたことなどを含めてお考えをいただき、冒頭にも申し上げましたように、何か昔のふるさとの小川がよみがえってくるような施策にこの改正案がぜひ推し進められることを希望いたしまして質問を終えさせていただきます。ありがとうございました。
  218. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。  本案の修正について小川勝也君及び緒方靖夫君から発言を求められておりますので、この際、順次これを許します。小川勝也君。
  219. 小川勝也

    ○小川勝也君 私は、民主党・新緑風会を代表して、河川法の一部を改正する法律案に対する修正案についてその提案理由を説明いたします。  初めに、河川行政に対して国民の関心が高まっており、河川を中心とした自然環境保全し、住民の意見を河川行政反映させる必要性が増しています。そのためには、情報公開を含めた住民参加型の河川行政が求められております。  確かに、政府案は環境保全重要性指摘しており、その点では改善の余地が見られます。河川整備には、計画を策定段階での環境保全を加味して、より質の高い河川行政を目指すべきです。しかしながら、政府案は大きく二つの点で問題を内包しております。  第一に、河川整備基本方針策定に当たり、住民の意見が十分に反映される制度になっておりません。  第二に、情報公開規定が不十分であります。これでは、新たな河川整備計画自体が、本来政府が目指す開かれた行政に反するおそれがあります。また、現在の日本で水のない川の多いことには心底恐ろしいものを感じています。国民一人一人が水を大切にすることによって、本来の川の流れを取り戻すことも必要なのではないかと考えます。  そこで、次の修正案を提出するものであります。  第一に、河川についてのさまざまな情報を速やかに国民に公表する。  第二に、河川整備基本方針を策定するに当たり、十分な情報を公開し、関係都道府県知事及び市町村長の意見を求める。河川審議会が公聴会を開催しなければならないこととし、公述人は資料請求ができることとする。  第三に、河川整備計画を定めるに際し、河川管理者はその案を公告し縦覧し、関係市町村の住民は意見書を提出することができる。意見書は河川審議会に提出しなければならない。また、河川審議会及び関係都道府県知事並びに関係市町村長の意見を聞いて河川整備計画を定める。河川審議会は、住民の意見を聴取するための公聴会を開くものとしております。  第四に、河川審議会の会議を公開し、会議録及び関係資料の公開を義務づけております。また、都道府県審議会の設置が義務づけられております。  第五に、河川整備基本方針は少なくとも十年ごとの見直しを、河川整備計画は少なくとも五年ごとの見直しを行う。  第六に、水利使用者に対して、水利使用合理化指針に従って節水の努力義務を課し、河川の負担をできる限り抑えることとしております。  以上、委員各位の御理解と御賛同をお願いし、提案理由趣旨説明を終わらせていただきます。
  220. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) 次に、緒方靖夫君。
  221. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 私は、河川法の一部を改正する法律案に対し、修正の動議を提出いたします。その内容はお手元に配付されております案文のとおりです。  これより、その趣旨について御説明申し上げます。  政府案は、河川管理の目的河川環境整備保全を位置づけ、河川整備計画の策定に住民の意見を反映するための措置を設けるなど、現行の河川法よりも前進的な内容を持っています。しかし、河川整備計画の前提となる目標を決める河川整備基本方針については、従来どおり河川審議会の意見を聞くだけで河川管理者が定めることとしており、また河川整備計画住民の意見を反映する方策も不徹底なものです。これでは、洪水流量や水需要の過大な見通しに基づくダムヘの依存は改められず、結局はむだな投資と巨大構造物による環境破壊が引き続き進行することが予想されます。  したがって、河川ダムの管理についての情報を広く公開し、河川整備基本方針の策定についても国民の意見を反映させるための措置をとる必要があります。  これが本修正案を提出する理由です。  次に、修正案の要旨を御説明いたします。  第一に、河川管理者は、河川の水位、流量等の河川に関する記録、ダムの貯水量や放流量等のダムに関する記録を作成し、公表しなければならないこととしております。  第二に、河川整備基本方針を策定しようとするときは、あらかじめ基本方針の案及び関係資料を公表し、河川審議会並びに関係都道府県知事、市町村長の意見を聞いて河川整備基本方針を定めることとしております。また、河川審議会は公聴会を開催し、そこで述べられた意見を尊重するよう努めることとしております。  第三に、河川整備計画の案を作成しようとするときは、公聴会の開催等住民の意見を反映させる措置を講ずるとともに、案を縦覧に付し、関係住民が意見書を提出できることとしております。河川整備計画は、河川審議会並びに関係都道府県知事、市町村長の意見を聞いて決定することとし、住民の意見書を河川審議会に提出しなければならないこととしております。  これらの手続は、河川整備基本方針河川整備計画を変更する場合についても準用することとしております。  第四に、河川整備基本方針及び河川整備計画は、一定期間ごとに河川審議会の意見を聞いて見直すこととし、その場合も河川審議会は公聴会を開催し、そこで述べられた意見を尊重するように努めることとしております。  第五に、河川審議会の会議は部会も含めて公開し、会議録や資料を公表することとしております。また、公述人が申し出た場合など、河川審議会が必要と認めるときは、関係行政機関の長に対し資料の提出、意見の開陳、説明などを求めることができることとしております。  また、二級河川に関し調査審議するため、都道府県河川審議会を置くこととし、河川審議会に関する規定を準用することとしております。  以上が本修正案を提出する理由とその要旨であります。  委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  222. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) これより原案並びに両修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  223. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 私は、日本共産党を代表して、河川法の一部を改正する法律案及び民主党提出の修正案に反対の討論を行います。  今日、これまでの河川管理について、過剰な水需要見通しや不透明な洪水流量算定に基づく不要・過大なダム放水路計画、社会経済情勢の変化をも省みない当初計画への固執、洪水の流下を最優先して河川自然環境を破壊する河川改修、計画段階からの大手ゼネコンとの癒着、河川情報を独占し国民の批判に耳を傾けない秘密主義・官僚主義など、国民のための公共事業のあり方としても国民世論から厳しい批判の声が高まっています。自然環境保全が地球規模で重大な課題となり、また国・地方の財政危機が深刻化している現在、このような河川管理のあり方は抜本的に改められなければなりません。  河川は、水が流れ、物質が循環し、生物が生存し、上下流に行き来するのがその本来の姿です。河川における生態系保全し、水その他の物質の正常な循環を維持することは人間の生存の基盤でもあります。大規模なダムは、この循環を遮断するものであり、流れをとめて水を停滞させる点でも、また上下流の生態系を分断する点でも河川の本来の姿と矛盾するものです。  住民の生命、財産を災害から守ることが河川管理の重大な責務であることは言うまでもありませんが、今後の河川管理は、可能な限りダムなどの人工構造物建設は避け、どうしても必要な場合でも必要最小限の規模とし、河川本来の姿を守ることを基本にしなければなりません。そのためには、水需要見通しや洪水規模についても再検討することが必要です。  河川管理のあり方を根本的に転換するためには、これまでのように河川管理を建設省だけにゆだねるのではなく、広く情報を公開し、河川管理の方針、計画について国民の批判を仰ぎ、その意見を反映する民主的な運営を行うことが強く求められています。  政府案は、その方向での一定の改善ではありますが、極めて不十分です。特に、基本高水流量やそのダム・河道への配分、計画高水流量など、河川整備基本を定める河川整備基本方針の策定について、国民の声を反映する道を閉ざしていることは、河川事業の最大の問題点であり、認めがたいものです。これでは、洪水流量や水需要の過大な見通しに基づく河川整備基本的な枠組みは温存され、浪費や環境破壊が是正されないことは明らかです。  以上が本案に反対する理由です。日本共産党の修正案は、こうした問題点を是正するものであると確信しております。  今回の修正案については、民主党から共同提出の提案があり、案の作成まで進みましたが、最後になって同党の都合で共同提出が中止となりました。こうした経緯にかんがみ、民主党提出の修正案に反対であることを述べ、討論を終わります。
  224. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  まず、小川君提出の修正案の採決を行います。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  225. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) 少数と認めます。よって、小川君提出の修正案は否決されました。  次に、緒方君提出の修正案の採決を行います。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  226. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) 少数と認めます。よって、緒方君提出の修正案は否決されました。  それでは次に、原案全部の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  227. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、建設大臣から発言を求められておりますので、これを許します。亀井建設大臣
  228. 亀井静香

    国務大臣亀井静香君) 河川法の一部を改正する法律案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま可決されましたことを深く感謝申し上げます。  審議中における委員各位の御高見につきましては、今後、その趣旨を生かすよう努めてまいる所存でございます。  ここに、委員長初め委員各位の御指導、御協力に対し、深く感謝の意を表し、ごあいさつといたします。どうもありがとうございました。
  229. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) なお、本案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  230. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十一二分散会      —————・—————