○緒方靖夫君 私は、
密集市街地における
防災街区の
整備の
促進に関する
法律案に対し、修正の動議を提出いたします。
その内容は、お手元に配付されております案文のとおりです。
これより、その趣旨について御説明申し上げます。
本
法案は、
計画的に
防災街区の
整備を
促進する
地域を
都市計画に定め、建てかえ
事業や居住者の代替
住宅の確保について支援を行い、危険
建築物の
除却や建てかえを
促進するとともに、新たな
地区計画制度を創設して
防災街区の一体的・総合的な
整備を推進しようとするものです。
老朽木造建築物等の建てかえ費用について助成する建てかえ
計画認定
制度は、
関係権利者全員の同意が要件であり、住民の意向の反映や居住者の権利が保障されています。ところが、
除却勧告を受けた延焼等危険
建築物にかかる居住の安定の確保及び
除却に関する
計画については、居住者以外の権利者の同意は要件とされていますが、肝心の居住者については意見を聞くだけとなっています。しかも、居住安定
計画が認定された場合には、家主は正当事由の有無にかかわらず、賃貸契約の更新拒絶、解約が行える
仕組みになっており、居住者は居住安定
計画に同意できない場合でも、それに基づく賃貸契約の更新拒絶等について裁判で争う権利さえ大幅に制限されています。これでは、居住者が長年住みなれた
地域から出ていかざるを得ない事態に追い込まれることが予想されます。第一に、居住安定
計画で支払い可能な家賃の
住宅が提供される保障はないことです。現在居住者が住んでいる
木造賃貸住宅の家賃は一万円から三万円
程度であり、公営
住宅に入居できても大幅に家賃が上がることは確実です。激変緩和措置があるとはいっても予定されているのは五年間だけで、将来にわたって住み続けられる保障はありません。まして、収入が公営
住宅入居基準をわずかでも超える世帯では、支払い可能な家賃の
住宅が提供される保障は全くないのであります。想定されている特定有料
賃貸住宅は、年々五%ずつ家賃が上がる
仕組みであり、住み続けられないことは明白です。
第二に、
制度上は公営
住宅等への入居資格者の特例入居が認められていますが、
地域内に必要な数の公営
住宅等がないことです。代替
住宅は生活環境に著しい変化を及ぼさない
地域内に確保されることになっていますが、その範囲は明確には限定されていません。同一市町村内であればよいということでは近隣の
人間関係は断絶されてしまいます。特に高齢者にとっては、それが命を縮めることにもなりかねません。
第三に、強権手段を背景とした
制度のもとでは、居住者の意向の尊重がおろそかになりやすいことです。居住者の個別の事情を把握し、それに適合した代替
住宅を提供するには多大な労力と財政負担が伴います。多くの自治体にそれだけの
マンパワーと財政力は不足しており、
法律が定める最低基準さえ満たせばよいということになりかねません。住民の信頼を損なえば
事業の円滑な進展も望めません。
第四に、悪質な居住者の追い立ての急増が心配されることです。市町村長による
除却勧告、居住者の同意を要しない居住安定
計画の認定
制度、正当事由条項の適用除外は、居住者に明け渡しを迫る絶好の口実となります。法的知識に乏しい居住者が悪徳業者のえじきにされ、居住安定
計画の認定に至る前に退去させられることが予想されます。
以上述べたとおり、居住者の同意を得ない居住安定
計画の認定とそれに伴う借地借家法の正当事由条項等の適用除外は、居住者がとても同意しがたい代替
住宅の提示をもって住居の明け渡しを強制することになるおそれを否定できません。居住者は危険を知りながら、劣悪であるがゆえに家賃が安い
住宅に住む以外にないのが実情です。住居費の負担が可能で従来の生活
関係を維持できるのであれば、より安全で快適な
住宅への移転に反対する人はいないはずです。こうした人々に同意を得ないまま退去を強制することになる可能性を持つ
制度とするのではなく、居住者の理解と納得のもとに進めることに徹することこそ、
密集市街地の
防災整備を最も
効果的に推進する道です。
これが、本修正案を提案する理由です。
次に、修正案の要旨を御説明いたします。
第一に、居住安定
計画の認定を申請しようとする者は、居住安定
計画について、居住者その他当該延焼等危険
建築物について権利を有する者の同意を得なければならないこととしています。
第二に、認定所有者は、居住安定
計画の変更をしようとするときは、あらかじめ居住者の同意を得なければならないこととしています。
第三に、認定所有者が居住者に対し賃貸借の更新拒絶の通知または解約の申し入れをする場合についても、借地借家法及び旧借家法の正当事由等に関する規定を適用することとしています。
以上が本修正案を提出する理由とその要旨であります。
委員各位の御賛同をお願い申し上げます。