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1997-09-04 第140回国会 参議院 決算委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年九月四日(木曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  九月三日     辞任        補欠選任      林  芳正君     塩崎 恭久君      阿曽田 清君     小林  元君      高野 博師君     福本 潤一君      山下 栄一君     武田 節子君  九月四日     辞任        補欠選任      中尾 則幸君     久保  亘君      水野 誠一君     堂本 暁子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         宮崎 秀樹君     理 事                 鎌田 要人君                 長峯  基君                 野沢 太三君                 猪熊 重二君                 海野 義孝君                 緒方 靖夫君     委 員                 岩井 國臣君                 大木  浩君                 景山俊太郎君                 上吉原一天君                 松村 龍二君                 守住 有信君                 吉川 芳男君                 加藤 修一君                 小林  元君                 武田 節子君                 福本 潤一君                 益田 洋介君                 朝日 俊弘君                 久保  亘君                 大脇 雅子君                 谷本  巍君                 堂本 暁子君                 山口 哲夫君    国務大臣        大 蔵 大 臣  三塚  博君        国 務 大 臣        (内閣官房長)  梶山 静六君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  武藤 嘉文君         —————        会計検査院長   疋田 周朗君         —————    事務局側        事 務 総 長  黒澤 隆雄君        常任委員会専門        員        貝田 泰雄君    裁判官弾劾裁判所事務局側        事 務 局 長  藤田 教稔君    裁判官訴追委員会事務局側        事 務 局 長  舟橋 定之君    国立国会図書館側        館     長  緒方信一郎君    説明員        内閣官房参事官        兼内閣総理大臣        官房人事課長   洞   駿君        内閣法制局長官  大森 政輔君        人事院総裁    中島 忠能君        人事院事務総局        管理局長     尾木  雄君        内閣総理大臣官        房審議官     安藤 昌弘君        兼内閣審議官        国際平和協力本        部事務局長    茂田  宏君        宮内庁次長    森  幸男君        総務庁人事局長  中川 良一君        総務庁行政管理        局長       河野  昭君        防衛庁運用局長  太田 洋次君        法務省人権擁護        局長       横山 匡輝君        外務大臣官房審        議官       田中  均君        大蔵大臣官房金        融検査部長    原口 恒和君        大蔵大臣官房審        議官       尾原 榮夫君        大蔵省主計局次        長        寺澤 辰麿君        大蔵省理財局長  伏屋 和彦君        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        林野庁長官    高橋  勲君        水産庁長官    嶌田 道夫君        郵政省貯金局長  安岡 裕幸君        自治省行政局公        務員部長     芳山 達郎君        会計検査院事務        総局第一局長   深田 蒸治君        会計検査院事務        総局第二局長   諸田 敏朗君        会計検査院事務        総局第三局長   大和 顕治君        会計検査院事務        総局第四局長   牛嶋 博久君        会計検査院事務        総局第五局長   小川 光吉君    参考人        国民金融公庫総        裁        尾崎  護君        日本開発銀行総        裁        吉野 良彦君        日本輸出入銀行        総裁       保田  博君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○平成七年度一般会計歳入歳出決算平成七年度  特別会計歳入歳出決算平成七年度国税収納金  整理資金受払計算書平成七年度政府関係機関  決算書内閣提出) ○平成七年度国有財産増減及び現在額総計算書  (内閣提出) ○平成七年度国有財産無償貸付状況計算書(内  閣提出)     —————————————
  2. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨三日、阿曽田清君、高野博師君、山下栄一君及び林芳正君が委員辞任され、その補欠として小林元君、福本潤一君、武田節子君及び塩崎恭久君が選任されました。  また、本日、水野誠一君及び中尾則幸君が委員辞任され、その補欠として堂本暁子君及び久保亘君が選任されました。     —————————————
  3. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 平成七年度決算外二件を議題といたします。  本日は、皇室費国会会計検査院内閣総理府本府、大蔵省総務庁国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算について審査を行います。     —————————————
  4. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これら決算概要説明及び決算検査概要説明の聴取は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  速記をとめてください。    〔速記中止
  6. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 速記を起こしてください。     —————————————
  7. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 上吉原一天

    上吉原一天君 昨日、中央省庁再編成のための中間報告行革会議によりまとめられました。この中間報告は、橋本総理武藤総務庁長官水野補佐官等を初めといたしまして、各委員先生方の真夏の集中討議、しかも約三十回にも及ぶような討議を経ましてまとめられたものというふうにお伺いをいたしております。このことについては敬意を表したいというふうに思います。  この委員会で私は多方面にわたります質問をいたす予定でございますけれども武藤長官、この行革会議の関連で退席をされるということでございますので、冒頭にこの中間報告に関しましてあらかじめお尋ねをいたしたいというふうに思います。  行革会議中間報告につきましては、いろんな指摘がなされているわけでございますけれども、特に行政スリム化への取り組みが十分ではないという意見が多いようでございますし、また私も同感でございます。  私は、この議論の手順としましては、官と民、国と地方役割分担を見直す中で、国の担うべき役割権限、業務の輪郭を明確にしまして、その上で省庁再編論議がなされるのが筋であろうというふうに思います。そうして、一言で言えば、官から民への権限見直し規制緩和、国から地方への権限移譲の問題は地方分権というのがキーワードであろうと思うわけでございますけれども、この辺が国民にはっきりと見えないうちに省庁再編の問題が先行しているわけでございまして、なかなか理解がしにくいということだと思うわけでございます。  国、地方を通じます定員管理につきましては後ほど事務局にお伺いをいたしますけれども武藤大臣に今後の中央省庁再編行政スリム化への取り組みにつきましてのお考え、御決意をまずお伺いいたします。
  9. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 今御指摘のとおりでありまして、私ども行政改革というのは、今日の日本のこの肥大化したあるいは硬直化した行政機構、あるいは縦割り行政の弊害がいろいろ指摘を受けております。そういうことを踏まえまして、新しい時代、橋本総理四つの視点をこれからの国家機能として、例えば国の安全であるとか、国を豊かにしなきゃいけないとか、国民生活を守らなきゃいけないとか、教育、文化、こういうものを大切にしていかなきゃいけない、四つ機能に分けておっしゃっておられますが、そういう四つ機能をこれから果たしていく上においてどうあるべきなのか。そのときには、今御指摘のとおり、できるだけ従来と違って規制緩和で民でやれるものは民へ移していこう、あるいは地方でやっていただけるものは地方に移していこ、こういう観点から進めてきております。  そして、その上に立って、今までの役所にとらわれないで、その中でなるべく共通した行政目的を持ったものは一つ役所にしていこうと、こういう形で積み上げをしてまいりますと今のスリムのお話もおわかりがいただけたと思いますけれども、私ども作業をやっておりまして、結果的に、最終的になかなか時間がなくなってまいりまして、中間報告を取りまとめるのは一応八月ということになったものでございますから、その中間報告を取りまとめるまでにそれだけの作業が全部は完成し切れない。そこで、とりあえず総くくり、今申し上げたような形で、なるべく簡素でしかもできるだけ重複しない、できるだけ縦割りにならない、そして行政目的に合ったような形でまず大くくりの役所の形を考えてみようじゃないかということで一府十二省庁考え方を出したわけでございます。  しかし、それは今申し上げたように積み上げではございませんので、一応十一月末が最終報告ということでこれから最終案をまとめるということになっておりますので、それまでの間、今度はその総くくりをした中で、ある程度の事務はこんなような事務だろうというところの概括的なものは一応は私どもまとめましたけれども、それに対して実際突っ込んで、それじゃその仕事をやっていくには、今の役所と比べてこの仕事は要るんだろうか要らないだろうか、今の役所と比べながら、新しい機構の中ではどういう役所機構が必要なのか、どういう事務をどういう機構でやらなきゃいけないのか、これをこれから実はやっていくわけでございます。  ですから、マスコミではどこの役所は焼け太りしたとか全然手がつけられないとか、そうじゃないのでございまして、今百四十幾つ局がありますけれども、局の数は相当減らしていくという考え方でこれから最終報告に向かって作業を進めていきたい。九月から十月、十一月、原則として毎週そういう作業をまだ行革会議は続けていくわけでございますし、そして、政党とりわけ与党の御協力もいただかなきゃなりませんので、そのうちにはまた野党の皆さんにもお願いしなきゃならぬかと思っておりますが、とりあえずは、これから我々はそういう作業を進めながら、与党ともいろいろまたお打ち合わせをして進めていきたい。  現に一つの例を申し上げますと、今のスリム化といいますと、従来は昭和四十三年に総定員法が発足しまして、それ以来今日まで、ことしが第九次の定員削減計画初年度でございますが、その第九次のことしの初年度まで入れますと、たしか二十九万四千ばかり実際は減るわけでございます。ところが、現実に減ってきたのはたしか四万三、四千でございます。そうすると、実際には二十九万減ったよとこう言っているけれども、実際その逆に、また増員計画増員計画と毎年増員を認めてきちゃったものですから、差し引きで言うと実際は四万幾らしか減っていない、こういう状態でございます。  これではいけないので、私ども、もちろん今の生首は切れないということは一つ原則として持っておりますけれども、やっぱりこれからそういう形で出てきてスリムになるときには、今の総定員法見直したりあるいは定員削減計画というものをもう一回見直しさせていただいて、そして、これから一つ計画的に人を減らしていくということは、今まで以上にやっていくということになれば結果的にはいっかは非常に人減らしになる、スリムになる。  一遍に全部首を切るというわけにもいかないということでございますので、その辺は多少時間はかかるかと思いますけれども、今度はその辺まで踏み込んで、結果的には総定員法見直して、そして定員削減計画というのも正直第十次かあるいは第九次の見直しを含めてある程度やっていって、スリム化というのは当然やっていかないと国民理解が得られる行政改革は完成しないというふうに思っておりまして、そのような形で進めていきたい、こう思っておるわけであります。
  10. 上吉原一天

    上吉原一天君 ぜひそのスリム化を目指しまして、小さな政府、効率のいい政府、そして信頼の置ける活力ある政府にするように御努力をお願いしたいというふうに思います。  それでは次に、今日、世界的な課題となっております男女共同参画社会実現への政府取り組み、それから考えについてお伺いをいたしたいと思います。  昭和二十一年、日本国憲法制定のもとに、婦人参政権とともに家族制度教育制度など女性地位向上にとって最も基礎的な分野におきまして法制上の男女平等が実現されたわけでありますけれども、これらは社会民主化推進の機運と調和し、人々の急速な意識改革を推し進めまして、現実にも女性地位向上に大きく貢献をしたことは御高承のとおりでございます。  しかしながら、今日、我々はもはやこのような制度整備による男女平等の環境づくりに依存するのではなくて、男女がともに社会イコールパートナーであることを自然のものとして受けとめまして、行動する男女共同参画社会形成に向けて確実な一歩をしるしていくことが重要であるというふうに思うわけでございます。  また、このような社会実現は、ひとり我が国にとどまらず、地球的規模において生じております環境と開発、貧困と飢餓、平等と平和などの問題を解決していく上においても必要不可欠のものであることが世界共通認識になっているというふうに理解をいたしております。  しかし、現実社会におきましてこれを実現していくためには、国間、地域間、民族間におきまして大きく相違をしております歴史的、文化的、そして社会的個人観を克服することが必要でありまして、なかなか難しい問題であろうというふうに思います。  そこで、今政府が二十一世紀を切り開く新たな価値を創造し、男女がともにより質の高い生活を送ることができる社会形成のための基本であるというふうに認識をしております男女共同参画社会について、政府基本的な考えを順次お伺いいたします。  我が国におきまして男女共同参画社会実現していく上におきまして、さまざまな社会階層、すなわち地域社会職場、学校、そして家庭における価値観相違を克服し、イコールフット認識を深めていくことが最も重要であるというふうに考えます。しかしながら、現実には男女相互人権尊重が阻害されていることが間々ありまして、これが真の意味での男女共同参画を妨げている面が見られるわけでございます。このために、男女共同参画の真の実現のための社会システムをどのように構築していくかが求められておりますけれども、その推進に当たって基本的な課題は何であるというふうに政府認識をしているのかお伺いいたします。
  11. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 総括的なことで私からお答えを申し上げたいと思います。  御承知のように、昨年十二月に男女共同参画推進本部が策定をいたしました男女共同参画二〇〇〇年プランには、男女共同参画実現に向けて政府が取り組むべきさまざまな課題が盛り込まれていることは御承知のとおりであります。  具体的には、政策・方針決定過程への女性参画の拡大を初めとして、今回新たに盛り込まれた課題として、女性に対するあらゆる暴力の根絶、メディアにおける女性人権尊重、生涯を通じた女性健康支援などが取り上げられております。また、男女共同参画審議会において、現在、男女共同参画社会実現を促進するための方策に関する基本的事項について御審議をいただいているところであり、男女共同参画社会実現に向けてこれらの諸課題に適切に対応してまいる、このような基本認識を持っております。
  12. 上吉原一天

    上吉原一天君 政府は、この実現に向けましてこれまでどのように取り組み推進してこられたのか、そしてまた今後どのような方策を実施しようと考えているのか、お伺いをいたします。あわせて、これらに対する予算措置をどの程度講じようとしているのかもお伺いをいたします。
  13. 安藤昌弘

    説明員安藤昌弘君) お答えいたします。  ただいまこの問題に関します政府取り組みとそれから予算措置についてのお尋ねでございます。  まず、男女共同参画施策につきましては、国際的な動向を踏まえつつ数次にわたる国内行動計画を策定し、取り組んできたところでございます。  また、先ほどの長官答弁にございましたように、昨年の十二月には、男女共同参画推進本部におきまして五回目の計画となります男女共同参画二〇〇〇年プラン、これを策定したところでございます。この二〇〇〇年プランには先はどのようにさまざまな施策が盛り込まれておりますが、職業生活家庭地域生活両立支援など、職場家庭地域における男女共同参画実現等々、さまざまな施策につきまして盛り込んでおるところでございます。  このプランに盛り込まれました施策推進のための予算といたしましては、平成九年度にはこれら諸施策積み上げまして六兆三百六十六万円を講じておるところでございます。このうち、男女共同参画室平成九年度予算額は一億三千七百七十二万円となっておるところでございます。  今後、計画期間であります平成十二年度末までに、関係省庁との連携を図りながらこのプランに盛り込まれました施策の着実な実施に努めてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  14. 上吉原一天

    上吉原一天君 この社会実現につきましては、もう述べたところでございますけれども、特に地域社会におきまして形成をされてきました文化的、歴史的阻害要因を克服して男女イコールフット認識を深めていくことが重要な課題というふうに思います。したがって私は、住民に身近な地方公共団体役割が極めて重要になってくるのではないかというふうに思います。  そこで、国としてはこの問題に対する地方公共団体役割をどのように認識し、またどのような役割を期待しているのか、お伺いをいたします。またあわせて、地方交付税などの支援措置などは講ぜられているのかどうか、お伺いをいたします。
  15. 安藤昌弘

    説明員安藤昌弘君) ただいまの地方公共団体との関係でございますけれども、私どもも、先生指摘のとおり、住民に身近な行政を行う地方公共団体におきましてこの男女共同参画社会実現をするということが大変重要であるというふうな考えを持っておりまして、この男女共同参画二〇〇〇年プランにおきましても、国と地方公共団体との連携の強化を打ち出しているところでございます。  今お尋ね地方交付税関係でございますけれども男女共同参画に係る施策につきましては平成五年度から地方交付税措置がなされておりまして、平成九年度は都道府県に対しまして千九百四十万円、市町村に対して二百十五万円の措置が講じられているところでございます。  今後とも、あらゆる機会を通じまして、地域独自性を生かした各地方公共団体における施策推進を支援してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  16. 上吉原一天

    上吉原一天君 地方に対する金額は非常に少ないわけですけれども一つの項目を新設するという努力は評価をしたいと思います。今後ますます充実について努力をお願いしたいということでございます。  最後に、官房長官、御承知でしょうか、かのインドのマハトマ・ガンジーはこう言っておるようでございます。両性は完全に同じ地位に立つものであって、相互に補完する関係にある。一方が一方を否定するというものではないということだそうでございますけれども、私はこれこそが男女共同参画社会思想の根幹をなすものというふうに思います。  このような思想に立脚しました社会実現世界共通課題であるというふうに認識をいたしますけれども、先ほどお伺いをいたしましたが、再度、その実現に向けて官房長官の御決意をお伺いいたします。
  17. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 今引き合いに出されましたマハトマ・ガンジーのいわば男女共同参画社会の理想、確かにそのとおりでありますが、なかなか道が遠いという感じがいたしております。  この男女共同参画社会実現というのは、少子や高齢化あるいは経済活動の成熟、国際化など経済社会環境の急速な変化に対応し、豊かで活力ある社会を目指していく上で、我が国の将来を決定する大きなかぎであるというふうに位置づけ、政府が一体となって取り組むべき最重要課題一つであります。  このような認識のもとに、男女共同参画二〇〇〇年プランに沿った施策を着実に実施し、鋭意努力をしてまいる、それをすることによって展望が開けてまいる、このように考えております。
  18. 上吉原一天

    上吉原一天君 ありがとうございました。  次に、会計検査院法改正につきまして御質問をいたします。  本年の五月三日に現行の会計検査院法が施行されましてから満五十年となったわけでございますが、その前日の当決算委員会におきまして、我が党の松村委員会計検査院法見直しにつきまして基本的かつ幅広い問題を提起されております。また、本年の一月の締めくくり質疑におきまして、当時の野沢決算委員長から橋本総理に対しまして、二院制のもとにおける参議院役割考えると、検査官任命同意に関する衆議院優越規定は速やかに見直す必要があり、削除すべきであるとの発言があり、橋本総理の方から、委員を代表する意見として重く受けとめさせていただくとの御答弁があったところでございます。さらに、この優越規定の問題につきましては、五月の全般的な質疑におきまして中島委員からも梶山官房長官に対しまして質疑があり、総理の御答弁を踏まえた真摯あふれる御答弁をいただいております。  憲法施行五十年を経過し、そのもとにつくられました基本的制度社会経済情勢変化の中で現実にそぐわない点がさまざまな形で出てきており、会計検査院法もその一つではないかというふうに思います。  参議院としては検査官任命同意に関する優越規定の削除を求めているわけですけれども国会行政監視機能を強化する観点から、衆議院側動きとしまして国会法及び会計検査院法等改正が具体化してきておりまして、我々参議院決算委員としましてはその動きに大いなる関心を払わざるを得ません。また、衆議院の方から会計検査院法等改正案が送付されれば、あらゆる観点から慎重な審議が必要ではないかというふうに考えております。  そこで、会計検査院法見直しをめぐる問題につきまして、官房長官、それから法制局長官の御意見をお伺いいたしたいと思います。  まず、法制局長官にお伺いをいたします。  国会法及び会計検査院法改正して、明文でもって各議院または各議院の委員会から会計検査院に対し、特定の事項について検査を要請し、その結果を報告するように求めることができるようにするということは、内閣から独立した憲法上の機関である会計検査院国会との間に新たな関係を創設するものでありまして、その規定の仕方につきましては、憲法上の観点から慎重かつ多角的な検討が必要であるというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  19. 大森政輔

    説明員(大森政輔君) ただいま委員お尋ねの件につきましては、現在衆議院においてそのような検討がなされているやに漏れ聞いてはいます。ただ、事柄は衆議院における立法措置、いわゆる議員立法に関する事柄でございまして、内閣法制局としてその検討状況を正確に把握し得る立場にはございません。したがいまして、私ども内閣法制局といたしましては、お尋ねの件に正面から実質的なお答えを申し上げるということはなし得ない立場であると申し上げざるを得ないわけでございます。  したがいまして、ただいまのお尋ねに対して申し上げることができるのはおよそ次のような限りじゃないかと。すなわち、法制上の問題につきましては、衆議院法制局においてあらゆる観点から慎重かつ多角的な検討が行われているはずであると私ども考えているというお答えで御容赦いただきたいと思います。
  20. 上吉原一天

    上吉原一天君 現時点での御答弁でございますので、やむを得ないというふうに思います。  次に、官房長官の方にお伺いをいたしますが、国会から会計検査院に対しまして特定事項の検査要請の規定を新設する問題については、内閣の立場からもその影響について調査分析をし、その得るところ、それから失うところを十分検討する必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。  また、官房長官のお立場としまして、直接影響を受ける会計検査院から十分に意見を聞くべきであり、その意見を今度は国会側に伝える努力も必要かというふうに思いますが、いかがでしょうか。  あわせまして、会計検査院法改正であるならば、先ほど述べました橋本総理に重く受けとめていただいております検査官任命同意に関する優越規定の問題につきまして早急に検討し、法改正実現すべきであるというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。あわせてお答えを願いたいと思います。
  21. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 前後いたしますが、まず検査官任命同意に関する件でございますが、検査官任命同意に関する優越規定見直しに関して、過般、五月の本委員会で、衆議院にも御研さんを願い、総理の答えた重く受けとめるということを前向きに検討してまいりたいとの趣旨を答弁したところであり、衆参で打ち合わせをしながら対処していくべきものであるが、内閣としても衆議院との連絡を詰めてまいりたい。具体的には、私から衆議院の議院運営委員会に対しこの旨を申し入れをいたしてあります。  なお、御承知かもしれませんが、与党である自由民主党と社民党、新党さきがけは、与党国対の審議会のあり方等に関するプロジェクトチームに対する申し入れの中で、会計検査院については与党三党合意の国会行政監視機能の強化に関する政策要綱を踏まえ、その機能強化を図るため検査のあり方等について自己点検を行うとともに、検査官については民間有識者、女性を含めた幅広い人材の登用を図ることの観点から、検査官の定員、任期、任免及び定年制の見直しについて検討するということが与党間でこのプロジェクトチームに申し入れをされております。  そういうところを踏まえまして、国会会計検査院との関係についても、現在、会計検査院長あるいは担当局長決算委員会に常時出席をするなどして国会との連携を図っているというふうに認識をいたしております。  御質問衆議院で議論されていると聞いている国会からの検査要請の法定などについては、内閣としては言及する立場ではございませんが、基本的には会計検査院の独立性に配慮しつつ時代に即応した会計検査のあり方について衆参両院で十分に御議論をしていただけたらばと考えております。  いずれにしても、内閣としては、今後とも会計検査院国会と緊密な連絡、協調を保ち、適正かつ効率的な行財政の執行のため有効に機能することを期待するものであり、会計検査院機能の維持強化に協力をしてまいりたい、このように考えております。
  22. 上吉原一天

    上吉原一天君 次の問題に移ります。  国会決算委員会会計検査院の有機的連携の重要性についてでございます。  国会決算委員会会計検査院連携につきましては、歴代の会計検査院長から的確な御答弁をいただいておりまして、今さらその重要性につきまして申し上げることはないかと思います。ただ、検査院との連携を強める中で会計検査報告を決算審査に十分反映させ、参議院決算審査をさらに充実したものにしていくことが大切だというふうに思います。  一方、会計検査院は憲法上の独立機関として高い使命が与えられているわけですから、政治に影響されることなく、公正中立の立場で国の財政監督機能を十分に果たしていただきたいと要望をいたしておきます。  国会からの検査要請制度の導入が会計検査の機能に支障を来すということであれば、これは本末転倒でありまして、会計検査院に対する期待がひいきの引き倒しにならないようにしなければならないというふうに思います。  これは私の意見として申し上げたわけでございますけれども会計検査院長の方から何か御所見があればお伺いをいたしておきたいと思います。
  23. 疋田周朗

    会計検査院長(疋田周朗君) ただいま国会決算委員会会計検査院連携の重要性について述べられたわけでございます。  私ども会計検査院といたしましては、広い意味では行政機関に属しているわけでございますけれども内閣から独立した憲法上の機関といたしまして公正中立の立場からその職責を果たしてきているところでございます。  国会、とりわけ決算委員会との連携につきましては、かねてから最も重要な事柄であると受けとめさせていただいているところでございます。本院の指摘国会における決算審査の中で御論議されるということは、予算の適正かつ効率的な執行を期する上で極めて重要であると認識いたしているところでございます。このため、従来から決算委員会を初め国会での御論議には常に留意し、適時適切に会計検査に反映させるよう対応してきたところでございます。今後とも引き続き努力してまいりたいと思います。  それから、最近、両院で本院の果たすべき役割に関し種々の御論議をいただいているところでございますが、会計検査院といたしましてはこれらの御論議の結果を真摯に受けとめ、本院としての意見を申し上げるべきところは十分に申し上げるなどいたしまして、適切に対応してまいりたいと考えております。
  24. 上吉原一天

    上吉原一天君 それでは、会計検査の個々の問題につきましてお伺いをいたしたいと思います。  まず、地方公共団体の監査機関との関係についてでございます。  さきの通常国会におきまして、地方監査制度の改正を主な内容とします地方自治法の一部を改正する法律案が成立をしまして、平成十年の四月以降に監査委員制度の改革や外部監査制度の新設が行われることになっております。  この改正が行われた背景としましては、平成七年以降に各地の地方自治体におきまして相次いで発覚をし社会問題ともなりました官官接待、空出張などの公費の不正支出問題に対しまして、地方の監査制度が十分機能していないという指摘がございまして、自浄作用が強く求められていたわけでございます。そして今、この法律改正を通じまして監査制度の強化を図り、地方公共団体におきます会計経理の改善や適正化などの実現が急務となっていますけれども会計検査院の検査はもとより国の会計経理をその主な対象として実施をされるということは承知をしているわけでございますけれども地方に交付をされている補助金に対する会計検査につきましてどのように考え、あるいは検査を実施しているのか、お伺いをいたします。
  25. 疋田周朗

    会計検査院長(疋田周朗君) 国庫補助金につきましては、国の予算の中で相当な額を占めております。また、これまでの検査におきましても不適切な事態が数多く見受けられておりますことなどから、会計検査院といたしましては、従来から重要な検査対象として位置づけまして重点的に検査を実施しているところでございます。  検査に当たりましては、それぞれの補助事業が法令等に基づき適正に実施されているかという観点はもとより、経済性、効率性の観点、さらには補助事業の効果が発現しているかという有効性の観点など多角的な観点から検査を実施しているところでございます。しかし、補助金の種類は非常に多種多様なものとなっております上に、その件数、金額は非常に膨大かつ多額に上っている状況でございます。  したがいまして、地方公共団体の補助事業の検査に当たりましては、補助金交付額の規模、過去の検査結果などを考慮いたしまして、検査の対象となる都道府県あるいは市町村等の事業主体を抽出して検査を実施する必要があるわけでございまして、このため、毎年、検査に当たりまして検査計画を策定いたしまして、これに基づいた計画的かつ効率的な検査を実施するよう努めているところでございます。
  26. 上吉原一天

    上吉原一天君 地方監査制度の強化という観点から、会計検査院としましては、各地方自治体の監査機関との関係、そしてそれらとの連携、これにつきましてどのように認識をしておるでしょうか。
  27. 疋田周朗

    会計検査院長(疋田周朗君) 地方公共団体の監査委員は、先ほど委員指摘のとおり、地方自治法に基づき住民のために監査活動を行っておられるものでございまして、会計検査院とはその立場、目的を異にしているものでございます。  しかしながら、国の支出を伴う補助事業につきまして、監査が行き届いて適正な執行が確保されているということが非常に望ましいということはもう申すまでもないことでございまして、補助事業の適正化を確保するためには、私どもの会計検査とあわせまして地方公共団体の監査が充実して行われることが重要であり、その意味で両者は相互補完の関係にあるものと考えております。お互いに連携を図って検査、監査活動を続けていくべきものと受けとめております。  このような立場から、会計検査院といたしましては、効率的、効果的な検査、監査に資するため、検査に際しましては監査の実施状況あるいはその結果を聴取することにいたしておりますし、また幾つかの地方公共団体の監査当局とは連絡会を開催いたしまして、それぞれの検査、監査の結果あるいは検査、監査手法などについて情報交換を行ったりしているところでございます。  それからまた、地方公共団体の監査機能の充実向上を支援いたしますために、都道府県などの監査職員を対象とした講習会を開催いたしましたり、あるいは都道府県等が開催します研修会に本院職員を講師として派遣いたしましたり、また要請に応じまして監査事務局職員として会計検査院の職員を出向、派遣したりなどしているところでございます。
  28. 上吉原一天

    上吉原一天君 それでは、先ほど武藤大臣の方に御決意をお伺いいたしましたけれども、公務員の定員について事務当局にお尋ねをいたします。橋本内閣は、変革と創造の旗印のもとに、戦後五十年余にわたりまして我が国の発展を支えてきました経済社会の限界を認識し、これを二十一世紀にふさわしいものに再構築する取り組みを行っております。そして、これを実現するに当たっては、徹底した努力による行政スリム化、これをすることが重要であるとの認識でございます。現実行政スリム化方策はいろいろあろうと思いますけれども、その最大の眼目というのは業務権限のあり方、そしてこれを実際に執行する陣容、すなわち定数のあり方であろうというふうに思います。そこで、定員のあり方についてお伺いをいたします。  まず、現在、各省庁定員管理のあり方はどのようになっているのか。政府は毎年定員削減目標を掲げまして各省庁努力を促しているようでございますけれども、私は、これでは現状を追認することが出発点というふうになってしまうと思います。そうしますと、業務の見直し、それから執行体制の効率化、これは各省庁間でばらつきが出てしまうのではないかというふうに思います。定数削減をきちんと行うためには、事務量と定員の関係などをやはり細かく積み上げた資料が必要不可欠だというふうに考えますけれども、現在のやり方では枠査定にも等しく、言葉が適切かどうかわかりませんけれども、余りにも政治的、機械的なやり方になっているのではないかと危惧するわけですが、いかがでしょうか。
  29. 河野昭

    説明員(河野昭君) 国家公務員の定員管理のあり方につきまして政治的、機械的ではないかという御指摘でございます。  初めに、国家公務員の定員管理考え方について若干御説明させていただきたいと思います。私ども総務庁としましては、国家公務員の定員管理、目的が三つあると思っております。一つは、国家公務員の総定数を縮減することでございます。  それから二つ目には、各省庁それぞれ業務の消長がございます。したがいまして、その業務の消長に応じて各省を通じて定員の再配置をするということでございます。  それから三つ目としましては、各省庁内においてもやはり業務の消長があるわけでございまして、各省庁内部の部局間における定員の再配置をするということでございます。  具体的な手法といたしましては、各省庁におきまして合理化可能な部門から削減を出していただく、これをプールいたしまして、いわばこれを原資としまして行政需要が増大する部門に増員するということでございます。その際の基本的な考え方は、やっぱり削減の方は最大限出していただく、一方、増員の方は真に必要不可欠なところに限定してこれは最小限にする、この差がいわゆる公務員定数総数のネット減ということになるわけでございます。  最近の状況を御説明いたしますと、先ほど大臣は昭和四十二年からと申しましたが、昭和五十六年以来十六年間で見てみますと、削減数が約十五万人、増員数が約十万五千人、ネットで四万五千人の純減でございます。  なお、先生からはその際一律になっているんじゃないかという御指摘でございますが、この間、省庁を通じまして定員の再配置を行っておりまして、例えば農水関係、食糧事務所でありますとか統計事務所の関係が主でございますが、この間三万六千人の削減をしてございます。これは当初の四四%減という非常に大きい数字でございます。片や、例えば外交でございますとか航空安全ですとかあるいは入国管理、国立大学、そういう部門に今ふやしているわけでございます。  私どもといたしましては毎年度大変厳しく対応しているつもりでございましたが、先ほど武藤大臣からもお話がありましたが、最近、大臣からは、今までの審査はちょっと増員が多過ぎるのじゃないか、厳しさが足りないのではないかとおしかりをいただいておるわけでございます。  ただいまも先生お話しになりましたように、行革の第一歩がスリム化ということは私どもも十分承知しておりますので、今後はさらに一層厳しく審査をしてまいりたいと考えております。
  30. 上吉原一天

    上吉原一天君 今までの取り組みについてわかりましたけれども、私は、やはり現行のやり方では余りにも各省の第一次判断を尊重し過ぎる嫌いがあるというふうに思います。もし各省庁の第一次判断を尊重しますと、私は危惧しますのは、業務の繁閑に関係なく、職員の抵抗の少ないところ、やりやすいところ、それから削ってしまうのではないかという思いがあるわけですよ。この辺についていかがなものか、お伺いをいたします。あわせて、そういう意味で、今度は本省と出先機関、これのバランスが本当にとれているのかどうか、この辺はまた総務庁として目配りが行き届くのかどうか、この辺もあわせてお伺いをいたします。
  31. 河野昭

    説明員(河野昭君) 私どもは各省からの要求を受けてこれを審査するわけですが、そういう意味で各省要求段階ではそれは各省のイニシアチブであると思います。ただ、その際にも、例えば十年度の要求に至りましても本当に真に緊急性を要するものということを私どもとしては各省庁にお示ししているということでございます。  また、定員削減計画を立案する際にも、これは決して一律ではございませんで、例えば医師という職は考えてみればほとんど合理化の余地がないわけでございます。それに反しまして一般の事務職の方には高い率を掛けるというようなことで、細かく事務ごと、性格ごとに積算、積み上げているということでございます。  また、本庁内部部局と出先機関の関係ということでございます。  これは定数バランス上は、一般的にはそのバランスというのはございません。例えば、出先機関でも先ほど申しましたような食糧事務所等は大幅に減っておりますし、片や航空保安官署等は大幅にふえているということもあるわけでございます。  いずれにしても、その部署部署の事務の量とその事務の緊要性ということを勘案して判断していると、そういうふうに御理解いただきたいと思います。
  32. 上吉原一天

    上吉原一天君 それでは、なお定数の適正なあり方について御努力をお願いしたいというふうに思います。  次に、地方公務員の定員についてお伺いをいたします。  これは、推移を見ますと全体として増加しておるということでございますけれども、分析してみますと、法的に必置が義務づけられておったり、政令定数で決まっちゃうというようなものがあってやむを得ないものもあろうかとは思いますけれども地方スリム化もやはり求められているわけですが、地方定数のあり方について自治省はどのようにお考えなのか、基本的にお伺いをいたします。
  33. 芳山達郎

    説明員(芳山達郎君) お答えいたします。  平成八年四月一日現在の地方公務員総数でありますが、約三百二十七万人余でございます。その内訳として、国により配置基準等が定められている教育、警察、消防などの特別行政部門が約五一%、それと福祉関係部門が約一五%、また病院、下水道部門などが約二二%となっております。御指摘がありましたように、これらの部門の職員を中心にここ十数年来地方公務員数は増加をしてきておりますが、平成七年、八年は減少しております。  お尋ねのありました地方公務員総数のあり方についてでございますけれども、各地方公共団体が条例によりましてその定数を定めているところでありますが、自治省としても、基本的には、やはり新規の行政需要には原則として職員の配置転換によって対応する、スクラップ・アンド・ビルドの徹底を基本に定員の適正化計画を策定するということを地方団体に要請しております。  あわせて、先般の地方分権推進委員会の勧告にもありましたように、国の関与や必置規制の見直しども引き続き要請してまいりたいというぐあいに考えております。
  34. 上吉原一天

    上吉原一天君 自治省は、毎年地方公共団体の給与の実態調査に当たりまして定員指導を行っておりますけれども、その際の指導の基準として二種類利用しているようです。  一つは定員モデル計算式による係数、それからもう一つは類似団体別係数、いわゆる類団別係数、これのようでございますけれども、定員モデル係数はなかなか学問的で難しいので余り利用されていないようです。  一般には類似団体別係数との比較が基準とされているようでございますけれども、ただ、この類似団体別係数というのは非常に危険なものだと私は思います。これは、あるべき地方公共団体の姿を示すものではないわけでして、現状のあるがままの実態を示すというもので、これを基準に定数のあり方を指導するのは筋が違うのじゃないかというふうに思います。  いろんな規模や態様の団体がありますから一律にはいかないとは思いますけれども、現行のやり方では余りにも現状追認的で、これはみんなで徐々にふやしていけばどんどん数値は上がるわけですからチェックのしようがなくなってしまうのじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  35. 芳山達郎

    説明員(芳山達郎君) 自治省としては、これまで第二次臨調の答申を受けまして、昭和五十六年以来、定員管理の手法の開発に努めてまいりました。また逐年その改定を重ねております。  御指摘がありましたように、一つは定員モデルでありまして、人口や世帯数、面積などの各種指標と職員数との相関関係を団体の規模や態様によりまして団体区分別に策定した方程式、定数モデルでございます。もう一つは、人口と産業構造別に、各団体違いますので、それを百二十二の類型別の類似団体ごとに職員配置数を定めました類似団体別職員数の状況であります。この二つの比較によりまして、当該団体の職員数の比較によって定員管理の適正化が図られるよう情報提供を行っております。  御指摘ありましたが、具体的な分析としては地方団体、定員モデルを使っておりまして、各地方公共団体は、まずもって分析に当たっては、定員モデルにより算出した職員数と実際の職員数との乖離によって分析をしております。また、これとあわせて類団の状況で、類似している団体の現在の職員数の平均数の比較によるのも参考としながら、両々相まって定員管理診断表をつくりまして現状分析を行い各団体の定員適正化計画をつくっておりまして、引き続きそういう指導をしてまいりたいというぐあいに考えております。
  36. 上吉原一天

    上吉原一天君 自治省は、地方交付税の算定に当たりまして、標準団体を設定して、この団体のあるべき行政水準を想定して必要な財政需要額をはじき出すということをやっておりますけれども、この際の標準団体の職員数はどのように組み込まれているんでしょうか。これは地方団体におけるあるべき理論的な職員数と考えていいのかどうか。現状の数値をそのままに採用するのであれば、あるべき行政水準を実現するための財源措置の基準とは矛盾をするというふうに思いますので、お尋ねをしたいわけでございます。
  37. 芳山達郎

    説明員(芳山達郎君) 普通交付税の算定における職員数でございますけれども、現状の数値をそのまま採用するのではなく、標準的な行政水準を維持するために必要な人員を、毎年度策定しております地方財政計画上の職員数に対応しながら、関係費目ごとに標準団体に置きかえて措置をしてございます。  その場合、標準団体における標準的な行政水準を維持するための職員数の設定でありますが、一つは、地方団体が必要とする標準的な職員でありましても、交付税の算定におきましては留保財源で対応することも想定している部分もありまして、その部分の職員数は基準財政需要額上の職員数には反映されていない面もあります。  また一つは、事業費で支弁している職員、いわゆる事業費支弁職員につきましては事業費の中にカウントしておりまして、交付税上の職員数にはカウントされていない。また、投資的経費の現実の事業量は個々の団体ごとに相違があるというようなこともございまして、交付税の基準財政需要額上の職員数そのものを地方公共団体の個別の団体の定員指導にそのまま使うことについては、なかなか難しい面もあろうかというぐあいに考えております。
  38. 上吉原一天

    上吉原一天君 どれだけの職員数で自治体運営を行うかというのは、最終的にはそれぞれの自治体の自主的な判断によるものですから、あるべき定数の基準を見出すことは大変難しいとは思いますけれども、自治省としてなお一層効率的な基準の作成のために努力をすべきではないかというふうに思いますが、どうでしょうか。
  39. 芳山達郎

    説明員(芳山達郎君) 御指摘ありましたように、面積等の地理的条件ないしは人口構造や産業構造もおのおの地方団体異なっておる個別の事情を反映しながらあるべき定数を算出することはなかなか困難な面もございますけれども、先般の地方分権推進委員会の第二次勧告におきましても、新たな視点に立った定員モデルの適時適切な改定を行うということによりましてなお一層定員管理の適正化を推進する旨の勧告がなされております。  自治省としてもこれを受けまして、今年中にはより相関度の高い説明変数を用いた定員モデルの改定などを行うとともに、団体区分も分けまして新たに中核市に係る定員モデルも作成するなど、なお一層定員管理の適正化が図られるよう努めてまいりたいというぐあいに考えております。  また、あわせて住民の皆様の理解協力を一層得られるように、定員の状況等をわかりやすく公表するよう引き続き地方団体にも要請してまいりたいというぐあいに考えております。
  40. 上吉原一天

    上吉原一天君 なお一層の努力をお願いいたします。  次に、特別職国家公務員の任用に係る法的整備の問題についてお伺いをいたします。  このところ新聞、テレビなどマスコミを中心に数日中に実施をされる自民党総裁選挙に関連しまして、総裁選後内閣改造が行われるのではないかとの報道がございます。これがどうなるかは知るところではございませんけれども内閣改造がありますと、それに伴って秘書官、政務次官も新たな任命を受ける人が出てくるわけでございます。  そこで、この発令の辞令を見ますと、秘書官であれば辞令の中に二級に叙する、政務次官であれば一級に叙する、こういうふうに記載がありますけれども、これはいかなる意味を持つものなのでしょうか。聞きなれない言葉なので、その理由と根拠及び意味内容につきまして御説明をお願いしたいと思います。  また、あわせましてこのような辞令はほかにあるのでしょうか。その官職をお教えいただきたい。  もし意味がないのであれば、これは廃止することができるのではないかというふうに思いますけれども、次の内閣改造というわけにはいかないと思いますが、その辺どうでしょうか。お伺いをいたします。
  41. 洞駿

    説明員(洞駿君) お答え申し上げます。  特別職でございます政務次官、それから秘書官には国家公務員法が適用されません。その任免等の身分上の事項等につきましては法律がございまして、国家公務員法の規定が適用せられるまでの官吏の任免等に関する法律というのがございまして、その任免等の身分上の事項等については従前の例によるということになっております。すなわち、これらの職の任免等につきましては、官吏の任免、それから一級、二級、三級といいますポストの格付でございます叙級等について定めました官吏任用叙級令というものが適用されます。また、その任免等の手続につきましては、官吏の任免、叙級、休職、復職その他の官吏の身分上の事項に関する手続に関する政令というものがございまして、それぞれの級別に任免等の手続を行う者が定められているところでございます。また、具体的にどのポストが一級であるとか二級であるとか、その級に該当するかという区分は、親任官及諸官級別令というものがございまして、これによって定められているところでございます。  これらの規定に基づきまして、政務次官につきましては、主任大臣の申し出によりまして内閣が、また秘書官につきましては、主任大臣の申し出によりまして内閣総理大臣がそれぞれ当該職それから一級あるいは二級の発令を行っているところでございます。  同様の発令を行っている官職があるかという御質問でございますけれども内閣におきましては、例えば官房副長官等もこのような発令を行っております。
  42. 上吉原一天

    上吉原一天君 意味がないものなんですか。
  43. 中川良一

    説明員(中川良一君) 一級、二級に叙せられております官職の根拠等につきましては、ただいま御説明があったとおりでございます。この従前の例によるということで取り扱われておりますものにつきましては、現在のところ、内閣官房副長官、政務次官あるいは国務大臣秘書官、宮内庁長官、侍従長等一部の官職に限られておりまして、ほとんどの特別職の国家公務員はいずれの級にも叙せられていないということになっております。これらの発令のあり方につきまして、確かに大変わかりにくいというふうな御議論もあるところでございまして、この辺につきましては、現在公務員制度全般につきまして各方面にわたりましていろいろな議論が展開されておりますが、そういった議論の動向も踏まえつつ、それぞれ所管の関係省庁において検討がなされるべきではないかというふうに私どもとしては考えている次第でございます。
  44. 上吉原一天

    上吉原一天君 今のに関連して、宮内庁の職員、これは過去においてこの叙級制度が直接適用されない官職、例えば東宮大夫、式部官長、女官、東宮侍従などが置かれているわけですけれども、これらの任用の根拠は現行法上あるのでしょうか。また、これらの職員の服務関係、これはどのような法的規制が課されているのか、お伺いをいたします。
  45. 中川良一

    説明員(中川良一君) お答え申し上げます。  特別職の国家公務員の任命及び服務規律につきましては、それぞれの官職の所管省庁におきまして必要に応じまして個別に措置をされているところでございまして、これらを一律に規定いたしました法令は現在のところございません。  なお、個別の法令に任命ないし服務規律の定めのない特別職に関しましては、先ほど御説明の中にありました国家公務員法の規定が適用せられるまでの官吏その他政府職員の任免等に関する法律におきまして、官吏その他政府職員の服務等に関する事項については、その官職について国家公務員法の規定が適用せられるまでの間、法律等をもって別段の定めがされない限り従前の例によるということにされているわけでございます。このことから、そのような特別職については、なお官吏服務紀律及び官吏の任免、叙級、休職、復職その他の官吏の身分上の事項に関する手続に関する政令の規定の例によることとなるものでございます。  ただし、この国家公務員法の規定が適用せられるまでの官吏その他政府職員の任免等に関する法律が施行されました後に新たに設けられました官職につきましては、一般論といたしましては従前の例によることはできないというふうに思料されるわけでございますが、いずれにいたしましても、官吏服務紀律等の勅令あるいは政令というものは現在失効いたしておりまして、総務庁といたしましてこの辺について有権解釈を行い得ないということについては御理解を賜りたいと存じます。
  46. 上吉原一天

    上吉原一天君 今、政府を挙げまして行財政改革に取り組んでおりますし、もう戦後五十年以上もたっているわけですから、古い制度が残っているというのは問題だというふうに思います。機会をとらえて早急に、個別法でもいいです、整備を図っていただきたいということをお願いしておきます。  次に、国家公務員の定年制、それから高齢者雇用についてお尋ねをいたしたいと思います。  定年制というのは、国家公務員にとりましては、その意思にかかわらず公務員関係を強制的に離脱させられることとなる制度でございまして、その身分関係の変動の最重要問題と言っても過言ではないというふうに思います。  したがいまして、本来この定年制のあり方につきましては、我が国が置かれている状況、例えば高齢化社会を迎えての一般国民の労働のあり方、雇用情勢の推移、国民の公務員に対する信頼意識など多方面にわたる検討の中で議論されるべき問題だというふうに考えられます。ところが、最近相次ぎました高級官僚と言われる人たちの倫理的不祥事などによりまして、公務員に対する信頼は著しく失われ、これを契機に公務員の特殊法人への天下りも見直すべきだという指摘も出てきたわけでございます。  このような状況を背景としまして、天下り防止の一方策として公務員の定年制の見直しが叫ばれ、またこれに呼応した動きが見られるわけでございますが、私はやや短絡的な対応ではないかというふうに感じます。この問題は、先ほども申し上げましたようにもっと中長期的に、高齢化の進展が急ですからそんなに時間があるというわけではないと思いますけれども、中長期的に基本的な議論をすべきだということでお伺いをいたします。  まず、現在、一般職の国家公務員につきましては原則六十歳で定年退職をするということが決まっているわけでございますが、この制度が導入されましたのは昭和六十年ということでございます。これは当時どのような理由により、またどのような経緯を経て定年制を導入することにしたのか、そのねらいと背景についてお伺いをいたします。
  47. 中島忠能

    説明員中島忠能君) お尋ねの件につきましては、上吉原先生の方があるいは私よりよく御存じかもわかりませんが、要点を申し上げますと、定年制が導入されました昭和五十年代末の状況というのは、国家公務員の世界におきましても地方公務員の世界におきましてもかなりの高齢者が在職しておりました。このことによりまして、実は当時公務の世界で二つのことが指摘されておったように思います。  一つは、在職しておる高齢職員に対してかなり高額な給与、退職手当が支払われておったということについて各方面からいろいろな批判があったということがあったと思います。もう一つは、退職時期というのが人事管理当局によって把握できないものですから、組織の新陳代謝というのが計画的に行われない、したがって長期的な展望に立った人事管理が行われないという事情があったというふうに思います。  今申し上げました二つの背景というものによって、当時、定年制というものを導入しようじゃないかという議論が出てきたというふうに私は記憶いたしております。
  48. 上吉原一天

    上吉原一天君 現行の定年制の内容でございますけれども原則六十歳定年、例外はあるんでしょうか。また、あるとすればどのような場合に認められるのか、そしてその例外適用の実数はそれぞれの事由ごとにどのようになっておりましょうか。
  49. 尾木雄

    説明員尾木雄君) 定年年齢、原則六十歳というもとで、職務と責任の特殊性等がある者につきましてはこの原則六十歳を外しているということでございます。  このいわゆる特例定年というものにつきましては、国家公務員法上大きく三つのタイプに分けられております。全体として給与法適用職員五十万人のうち一万六千人がこれに該当するということでございます。  具体的に申し上げますと、一つの類型として国立病院等に勤務する医師及び歯科医師ということでございまして、この方々は定年年齢が六十五歳ということにされております。人数としましては約六千二百名。それから、もう一つの形は守衛、用務員等庁務等の業務に従事する方々でございまして、この方々は六十三歳の特例定年、該当者として約二千六百名ということになっております。それから、こういう形では具体的に類型化できませんけれども、職務と責任に特殊性がある、あるいは一般的に考えて欠員の補充が困難であることが考えられるようなそういう特殊な職務につきまして、人事院規則によって六十一歳から六十五歳までの範囲で個別に指定する、そういう三つの類型が国家公務員法上定められております。  具体的に申し上げますと、今のこの三つ目の代表例としましては、在外公館勤務職員等が六十三歳、約三千名がこれに該当します。その他、大学の先生方はこれは教育公務員特例法でそれぞれ定められることになっておりますけれども、国立高等専門学校の教授等につきまして六十三歳、あるいは学長については六十五歳ということで、この方々が約三千八百名いるということでございます。  全体として約一万六千人の人が特例定年に該当しているという状況でございます。
  50. 上吉原一天

    上吉原一天君 民間部門における実態との比較ということも大切だと思います。  現在、民間で定年制を設けている企業の割合はどの程度であるのでしょうか。また、その場合には何歳を定年年齢としているのでしょうか。お伺いいたします。
  51. 尾木雄

    説明員尾木雄君) 本年春実施しました人事院の職種別民間給与実態調査によりますと、ほぼ全事業所で定年制が実施されております。その定年制を実施しておる企業の九割が定年を六十歳としているというところでございまして、ちなみに申しますと、六十一歳以上で決めているところは今年度の段階では六・四%という数字が人事院の調査では出ております。
  52. 上吉原一天

    上吉原一天君 先ごろ人事院が事務次官、各庁長官などの定年年齢を引き上げる特例措置を設けたところでございますけれども、これだけで早期退職慣行の是正が可能となるものではないというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  53. 中島忠能

    説明員中島忠能君) 御指摘事務次官等幹部公務員の定年を六十二歳にするということをスタートさせました。  こういうふうに人事院が考えました背景というのは幾つかございますが、そのうちの二つを申し上げますと、一つは、幹部公務員の営利企業等、特殊法人、公益法人も含めまして、再就職環境というのはかなり厳しくなってきておるという背景が一つあると思います。もう一つは、最近の公務の中の状況を眺めておりますと、私たちの若いころと変わりましてかなり各方面に対する公務組織の手当てというのが時間を要するようになっている。例えて言いますと、政党に対する説明とか国会に対する対応とか、あるいは各種団体に対する対応等についてもかなり手当てを要するようになっている。民主社会が深まれば深まるほど私は当然だと思いますが、こういう背景というものがございます。  この二つの背景を考えまして私たちは、幹部公務員につきましてできるだけ長く公務組織の中で働いていただいた方がいいだろうというふうに考えたわけでございます。  そのためには、例えて言いますと、霞が関の一つの慣行になっておりますけれども、大事における年次主義というものを是正していただくということも必要になろうし、あるいは、先ほど申し上げましたような各種の対応のためにスタッフ職というものを新たにお認めいただくようなことも必要になってくるだろうというふうに思います。そういうことを考えましてこういう制度をスタートさせたわけでございますけれども、各方面の御理解というのが順次深まってきております。  したがいまして、私は、先生が今おっしゃるように、これだけで幹部公務員の在職年数が長くなるのかというお尋ねでございますが、むしろ長くしていかなければならない、そのためにはいろいろな組織が努力をしていかなきゃならないというふうに考えております。
  54. 中川良一

    説明員(中川良一君) 先生指摘のとおり、国家公務員の早期退職慣行の問題につきましては、今回の人事院規則の改正によります事務次官等の特例定年の設定だけで本質的な解決が図られるということではないであろうというふうに思っております。  総務庁といたしましては、ことしの四月に公務員制度調査会を設置いたしまして五月から審議をスタートいたしておりますけれども、この中でも、公務をライフワークとすることができるような人事管理のあり方も含めまして、公務員制度全般の改革課題について幅広く検討をいただくということにいたしております。  さらに、早期退職慣行の是正に関連する意見といたしましては、昨日取りまとめられました行政改革会議中間報告の中でも、定年まで公務部内で勤務できる条件、制度の整備を図ることが必要であるという旨の意見も示されておりまして、公務員制度調査会におきましてもこうした意見も視野に入れながら検討がなされていくものと考えておるところでございます。
  55. 上吉原一天

    上吉原一天君 最後に、現行法では公務員の勤務条件はいわゆる民間準拠が原則とされておりまして、民間の状態に応じまして公務員の勤務条件が組み立てられているということですけれども、先ほどお話がありました定年制の設定の場合にはなかなか民間の方が思うようにいかない。それに先行する形で公務員に牽引車の役割を期待して実施をされた面もあるというふうに理解をしておったわけでございますけれども、今後も民間部門における高齢者雇用を推進するためにも公務部門が率先して定年年齢の引き上げを行うべきではなかろうかというふうに思います。  この定年年齢の引き上げ問題につきまして研究、検討が行われておるのでしょうか。私は、現在の高齢化社会構造の中では公務員の定年を六十歳から引き上げて六十五歳というふうにすべきだと考えますけれども、どのようにお考えでしょうか。お伺いをいたします。
  56. 中島忠能

    説明員中島忠能君) ただいまの上吉原先生のお説はよくわかります。私たちもそのことをよく心して取りかかっていかなきゃならないというふうに思います。  ただ、先ほど管理局長が申し上げましたように、民間企業における六十一歳以降の定年を設定している企業の割合というのが私たちの調査ではおおむね六%というような状況でございますので、六十一歳以降の定年というものを想定して人事管理制度がいかにあるべきかということを民間企業の方を参考にして設定するというのはかなり難しいというか、かなり危険な状況でございます。  ただ、お説のこともよくわかりますので、六十五歳定年というものを視野に置きながら、これからいろいろな人事管理制度というものを考えていかなきゃならないというふうに思います。ただ、それを公の見解として表明するのは、各種の動向あるいは各種の資料というものをよく踏まえて、そこは慎重に判断してまいりたいというふうに思います。
  57. 中川良一

    説明員(中川良一君) 公務員の定年年齢につきましては、各省庁におきます人事管理や業務の実態でありますとか、さらには民間企業の定年制度の動向等を総合的に勘案いたしまして、今のところ原則六十歳ということで制度ができておるわけでございます。  現在のところ、一律定年制を定めております企業のうち、六十歳以上の定年年齢としているところが労働省の調査によりますと八・二%にすぎないということもございますし、また民間企業におきましては来年度からやっと六十歳定年が義務化されるということでございます。私どもといたしましては、そういったようなことを踏まえれば、今の段階におきましても現行の定年年齢を維持するということが適当なのではないかと考えております。  なお、これとは若干異質の問題かもしれませんけれども、年金の支給開始年齢が引き上げられていきますことに伴いまして、六十歳代前半の公務員の雇用をどうするかということ、これもまた大変大きな問題でございまして、現在、関係省庁間でいろいろ検討を進めておりますが、その際にも私どもといたしましては、公務部門における六十歳代前半の雇用制度については、現行の定年年齢を維持した上で再任用というような方向で現在検討を進めておるところでございます。
  58. 上吉原一天

    上吉原一天君 ほかに予定した質問もあるわけでございますが、時間でございますので終わります。ありがとうございました。
  59. 守住有信

    守住有信君 自民党の守住でございます。  きょうは、大蔵省、専ら理財局の所管につきまして、いろいろ前からの継続のテーマもございますものですから、その後の状況という意味も含めてお尋ねをしたいと思います。  同じ理財局でも、資金運用部の問題の前に、国有財産の管理を理財局は所管しておられますけれども、ちょっともうお帰りになったようですが、ちょうど久保先生が大蔵大臣のときに国有財産の利活用という角度で御指摘を申し上げました。  具体的に言いますと、例えば私の足元の九州郵政局の隣に郵政会館というのがございます。普通財産でございます。そこは商店街のすぐ横でございまして、商店街は駐車場がないためにどんどんシャッターがおりて、郊外に大店舗ができてどんどん疲弊しておるわけです。すぐ横に普通財産の郵政会館があって、土曜、日曜と祝日は休みでございます。職員もいなければお客様も来ない。せっかくの国有財産。それで、あのとき、九州財務局長が市の中小企業振興局に転貸して、市が商店街に転貸する。そして、市の方から管理人をシルバーセンターから派遣する、こういうふうなこともございました。  もう一つは、例の携帯電話がどんどん普及してまいりましたが、大都会というのはビル陰でよく聞こえない。熊本市役所の屋上に、大きなビルでございますが、上通り、下通りの商店街があるがよく聞こえない、ビル陰難聴でございます。市役所の屋上に無償貸与で携帯電話の受発信機をつけて聞こえるようになった。  同じ国有財産、地方公共団体の公有財産が地方にもございますが、それを利活用することによってということで申し上げましたら、当時平成七年でございますか、大蔵省の国有財産一課長が全国の財務局長会議でこういうのをテーマにして、国有財産の利活用ということで、いわゆる財務局長会議でもテーマになりました。  それからまた、自治省の行政局でございますけれども地方公共団体の公有財産の利活用ということで屋上に  いわゆる携帯電話のエリアはどんどん広がっておりますが、聞こえない地域が日本全土多数あるわけでございまして、衛星を使えば、N−STARを使えば端末機が百万円もすると。端末機が百万円もするわけでございますから、普通の声で聞こえるようなエリアを広げる。電磁波騒動というのが起こっておりますけれども、そういうときに、その地域の町村の公営住宅なり役場なりいろいろございますけれども、その屋上に三、四メートルぐらいの受発信機を立てれば、それで住民は聞こえるようになるわけですね。ビル陰と地方、そういうのを自分で実践例をやってまいりました。  ちょっと御報告しておきたいのは、実はこの霞が関かいわいでございまして、国会初め各省庁が並んでおりますし、周りは民間のビルが林立しております。陳情団が東京にお見えになる、連絡する、ビル陰障害で部分部分でよく聞こえぬところがあるわけですね、ビルの陰は、ビル陰障害難聴地域と言いますけれども。  そこで、法務省が実はこの官庁街の真ん中でございまして、私、もう二年近く前になりますが、国有財産一課長が来まして、それから法務省の官房長にも電話しまして、そして法務省の屋上に今度その携帯電話のアンテナ第一号が、この八月三十一日に一本日の塔ができました。あと三本要ります。四社ありますから、一社だけじゃいかぬ。NTTのドコモだけじゃだめだ、セルラーとかいろいろ四社体制ですから、四社を屋上に立てる。法務省が官庁街の真ん中で一番高い、一番効率がいいということで、法務省の官房の施設課ですか、あれが大蔵省から声をかけてもらって、そして法務省の官房長にも私がいろいろやりまして、今度でき上がる。  この官庁街に陳情団がいっぱいお見えで、みんな田舎とかいろんなところと連絡をとらにゃいかぬ。職員も公務員もおりますけれども、周りには民間ビルがいっぱいあります、オフィスが。そういうところで実はここの地域がビル陰障害の盲点でございまして、その場合も、法務省、大蔵省が一緒になって言い出してくれまじて、もう二年近く前でございますが、それでやっとことしの八月三十一日から九月にかけまして、九月、十月とあと三社がそれぞれ立てる、こういう姿が出てまいりましたわけでございます。  そういう意味で、国有財産の管理あるいは公共財産、自治体、その管理運用が非常に地域住民のために役に立つということを具体例で示すことができると、こういうことでございますので、最初に理財局の中の国有財産の方が非常に中央に向かっても自治体に向かってもハッパをかけてくれるからということを、もう具体例が出ておりますから、それをお知らせ申し上げたい。  それで、また先生方地域でもいろいろエリアがあって電波の届かぬところとかビル陰障害とかいろいろあると思います。電波に限らぬ。駐車場問題もそうですよ。商店街は疲弊してきておる。大店舗ばかりだ。そうかといって規制緩和だからこれを阻止するわけにもいかぬ。それなら旧商店街をいかにして再活性化させるか。余り税金なんか使わぬで、地方に出先の国の施設があるわけです、県もあります。土曜、日曜は休みです。駐車場にお客さんも職員もおらぬ。それを地元の自治体がシルバーセンター、今定年の話も出ておりましたけれども、六十歳から六十五歳までの方をシルバーセンターから監視員として地元の市役所が派遣をして管理している、そして利用する。こういう合わせわざでございますな。公と民が合わせわざ、そこの間に入るのが自治省だし、また自治体だし、采配を振るってくれるのが大蔵省であり自治省であると、こういうふうにとらえております。  ちょうど三十一日に法務省の方から私の方に、官房の施設課でございますか、できましたということで報告がありましたものですから、冒頭こういうのも、平成七年度のとき、久保大蔵大臣でございましたけれども、ここでいろいろ言ったことが具体的に一歩一歩広がりつつあるということをまず感謝申し上げたい。そして、ますます三塚大蔵大臣もひとつ部下にハッパをかけて、それからいずれ十八日の日は自治省、自治大臣もお見えですから、そこでも私は強調していきたい。  自分の世界だけではなくて、無線とか駐車場とかせっかくあるんですから、それを活用する。そして、いかに財政再建の中で膨大な駐車場とか地下駐車場とか、補助金とか無利子融資とかやっておるけれども、そういう見えない部分が商店街のすぐ横にもあるんです。国の出先機関の駐車場があります。休みですよ。土曜、日曜こそ零細企業の商店は書き入れどきなんです。そういう思いがありますものですから、具体例がどんどん今広がりつつありますから、ひとつまた大蔵省、自治省、ハッパをかけていただきたい。  これは一方的に申し上げましたが、その次のテーマは資金運用部の問題でございます。  御承知のとおり、資金運用部は郵便貯金資金と厚生年金、国民年金、その他の余裕金もちょっと入っておりますけれども、大きな資金源は郵便貯金資金それから厚年、国年。今後の自主運用、分離運用の問題はさておきまして、既に何十年と政府資金統合運用ということで、簡保は分離しました。あるいは思い出しますと、預金部時代、そして戦時中の統合運用で簡保も統合された。戦後、GHQ時代、これも統合でございましたが、いわゆるサンフランシスコ平和条約発効、昭和二十七年、その直後に簡保積立金は分離と。しかし、そのときに財政投融資計画というなかなか巧妙な網を大蔵省はつくったわけです、財投とそして資金運用部。簡保は別で分離ですけれども、財投の一つの仕組みの中。そこで大事なのが郵便貯金資金でございます。  私は、大衆貯金、それは地域社会の中から集められた、郵便局の外務員その他特定郵便局長が一生懸命になって大衆社会に向かって長い間積み上げてきた貴重なお金でございます。そして長期安定的な資金でございます。これが同じ運用部の計画の中で私が強調したいのは、特に地方公共団体への長期貸し付け、これが最大でございます。特殊法人は見直さにゃいかぬ。ところが、地方公共団体は永久でございますな。しかも、例の資金の融通条件は二十五年ないし三十年。民間の第一地銀等も貸しておりますが、この融通条件は七年かな。社債が七年ですから地方債が七年。それで縁故債、第一地銀あたり指定金融機関に指定されておるところが十年ぐらいでございまして、これが運用の実態だ。  ところが、運用部を所管する大蔵省の理財局を中心に、地方財務局の財務部が具体的に郵貯資金を含めて地方公共団体に貸し付けております。私は熊本県でございます。地方区ですから、県知事や市町村長や議長や市会議員とかいろんな諸君と会います。陳情も受けます。それで、この話をするとえっという顔をするんです。簡易保険積立金は直接借りておるから知っておるけれども、財務局から借りているのはミックスですから、借りる側は全然知識、認識がないんですよ。そして、我々は運用は簡易保険のときからも地方還元と。地方で集めた、地方については田舎だけではございませんよ、東京も含みますよ、大都会も含めた地域地方への還元ということで長期安定資金の供給、これを国民の勤倹貯蓄と同時に一他方のもう一つの存在理由というか生きがいというか、仕事の誇りというか、そういうものでやってきました。ところが、借りる側の県、市町村、議長も議員も、せいぜいぼやっと知っているのは出納長か収入役ぐらいでございまして、市町村長も議員も知らぬわけですな。それは財務局財務部が貸し付けておるから大蔵省のお金だと思っておる。  かつて、私は自分でも経験しましたけれども、独立十年、ちょうどサンフランシスコ平和条約発効十年、運用再開十年、こういうことでえらい大運動をやりまして、一つの例がございました。北海道庁に懸垂幕まで出して、独立十年、運用再開十年、簡保積み立てをやった。道議会の人たちは、反発もありましたけれども、今まで大蔵省から借りておるとばかり思っておったと、簡保積立金をですよ。分離しておる簡保積立金ですらも、大蔵省財務局から借りておったと、こういう地方議員のお話でございまして唖然とした。しかし、それはなぜだと。  そこで以下、きょうは平成七年の決算でございますから、七年の年度末の平成八年三月三十一日現在の熊本県の、九十四ございます市町村、これに対する財務局からの貸付金。当時、九州の財務局長に電話をしまして、数字だけじゃだめですから、県は二十項目ぐらい、市は十項目、町村は五項目ぐらい、具体的な施設をひとつリストにして出してくれということでやりました。ここにございますが、このデータは理財局にも財政局にも、もちろん郵政省にもとっくに渡しておりますけれども、運用部資金の全体の中で郵貯資金は何十%を占めるか、たしか六十数%だと思いますけれども、それで全部掛けてしまえば各県の財務局が貸しておるその数字が出るわけですよ。  手元の実例で申し上げますが、郵便局資金、それで簡保積立金と郵貯資金。熊本県だけで見ますと、簡保資金が三百十四億余、郵貯資金が二千五百三十八億。以下、九十四市町村が個別にずっとございます。まとめていけば、八年の三月末現在の残高、熊本県だけで簡保積立金の方が二千百十八億、郵貯資金の方が五千二百六十三億、合わせまして七千三百八十二億円、これを九州財務局長はちゃんと私には提供してくれた。そこまではよかったんですよ。  ところが、その後、熊本で出てきたんだから、九州全体とか全国とか、地方の財務局からこういうリストをとりなさいといって郵政省にも指示しましたが、貯金局長、その後の模様をひとつ御説明をいただきたい、本当の真実の実態を。お願いします。
  60. 安岡裕幸

    説明員(安岡裕幸君) ただいま先生指摘のように、私どもとしても、郵貯資金が地方に還元されているということにつきまして、地域の皆さんというか預金者の皆さんによくよく知っていただくことは大変重要だなというふうに思っております。そういう観点で、郵政省としても大蔵省の方から地方公共団体別の資金運用部の融資額のデータについていろいろ提供を受けまして、その郵貯の資金分につきましては郵政省独自で分計を行いまして、各郵政局を通じていろいろと周知徹底を図るということで最大限努力をしているところでございます。  今後につきましても、地域の皆さんに、郵貯資金の資金運用部を通じた地方公共団体への融資の実態について、関係省庁協力を得て努力をしていきたいというふうに考えております。
  61. 守住有信

    守住有信君 郵政側はそのように具体的に要望しておるけれども、理財局側は地方の財務局にこのことについて具体的に国有財産と同じように指示されましたか。
  62. 伏屋和彦

    説明員(伏屋和彦君) お答え申し上げます。先ほど来委員が言われましたように、最初の熊本県につきましては、私どもも精いっぱい計算し資料の提出をさせていただいたところでございますが、今後ともに、全国ということになりますとこれは作業も膨大でございます、またいろんな計算の仕方もあるものですから、私どもは、現在内部でもそういうことは検討しておりますが、いろんな形でまた協力もさせていただきたいと思っております。
  63. 守住有信

    守住有信君 膨大ではございますけれども、本省でやる必要はないんだよ。本省は後で集計すればいいんだよ、コンピューターを使って。  地方ですよ、地方の財務局財務部が、こっちの郵政局貯金部、これを、何遍も言っていますよ、だめだって言っているんだよ。熊本県だけ何でおれが言えば出せるのか、このように詳細に。  そうして、地方議会の議長とか、いっぱい議員もおる、市町村長もおる。出納長だけがぼやっと知ってておるぐらいだ、収入役が。みんな住民の代表が地方自治体ですよ。自治省もそのような理念でおるはずだ、自治省はね。地方分権地方自治体、住民国民の前に市町村民であり県民なんですよ。そこのところがまだもたもたしておるから。  大蔵大臣、どうでございますか。おれだけにはこうして出せて、国会議員がわあわあ言わぬと、じゃ個別におれがどなりまくっていかなきゃいかぬ、東北、北海道からざあっと財務局長を。いかなることか。  地方でやらせりゃいい。これも地方ですよ。九州財務局ですよ、これをつくってくれたのは。立派なものですよ。九州の財務局長を褒めてやりたい、国有財産の方もあったけれどもね。いや、立派なやつはおるんですよ。男らしいやつがおる。そして、地方認識住民なんだよ。国民ということは同時に住民なんだよ。  時間も余りありませんけれども、三塚大蔵大臣、前の久保亘が大将のときとえらいあれですよ。いかがですか、最後にもう時間がないから。  本当の地域社会地域振興、その地域にある郵便局、外務員、特定局長、それが絶えず頑張って、それが還元されていっておるわけです。二十五年、三十年ですよ。長期安定資金ですよ。言うなら、金利も違いますよ、銀行から借りておるのと比べると。去年の三月末で財投基準金利、貸出金利が三・〇〇%、民間は三・〇三%、この〇・〇三%が、百億で千億で一兆円でどれだけ住民負担になってきますか、もしこれが民営だと、同じだと、並びましたら。そこのところも、大蔵大臣、自治大臣も今度は自治省のときにやるからね、白川さんにもよう言うとけよ。  こういうことで、目先だけ見て、資金源、長期安定資金、そのために全逓も、労働組合も、全郵政も含めて、こうして生きがいということ、地域に貢献できるという思いを込めて頑張っておるわけでございますから、最後に一言だけよろしくお願いします。
  64. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) 多年の経験、実態調査の上の御提言でございます。  資金運用部資金の約六割を占めておるものでございまして、情報提供等については、熊本また九州財務局だけではなく全国で対応できるよう郵政省また理財局、よく協調、協議をいたしまして、御趣旨に沿って貴重な資金がかくかくしかじか、地方自治体、地域振興、社会資本充実に貢献をいたしておるということを知らしめるよう、今日までもやってきているようでありますが、さらに御提言が詳しくありましたから、さように対応します。
  65. 守住有信

    守住有信君 大至急お願いいたします、財務局長を集めて国有財産のときやったように。
  66. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 午前の審査はこの程度とし、午後零時五十分まで休憩いたします。    午前十一時五十一分休憩      ——————————    午後零時五十分開会
  67. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) ただいまから決算委員会を再開いたしますb  平成七年度決算外二件を議題とし、休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  68. 海野義孝

    ○海野義孝君 平成会の海野義孝であります。  きょうは、我が国の民有林業の問題を中心にしまして、その税制等のことも含めた御質問をしたいと思います。  きょうは、林野庁長官初め、また大蔵大臣には御出席いただきまして大変ありがとうございます。  昨日、この場におきまして、決算委員会で国有林野事業の問題につきましてお二人の方から御質問がありました。私の横にいらっしゃる猪熊先生からも国有林野の特別会計について大変厳しい御質問がありましたけれども、私は実はその話を聞いておりまして、国有林野の問題だけに限ることではないんではないか。我が国のいわゆる森林業といいますか、農業もそうでありますけれども我が国の林業自体がこのままでいった場合に、一般に二十一世紀は国産材の時代であるということを言われておりますけれども、果たしてそうであるかという点について私は大変危惧の念を抱くわけでございます。  実は、先般この夏休み中に私もあちこち地方を回ってまいりましたけれども地方へ行くと、当然のことながら支持者の方々から農林業についてのいろいろな要望等があるわけですけれども、そういったこともお聞きしました。また、私も子供のころは山間地に育ちましたので、そういった点でも当時のいわゆる林業、山持ちの人たち、それから今日の一般勤労者と林家の経営者、こういった方たちとを比較しましても、これからの日本の森林業を担っていく民有の林業、林家の方たちについては、これは当然林野行政においてはそれなりの手厚いいろいろな御処置をとってくださってきている、税制についてもしかりであると、私はこのようには思いますけれども、なおさらに行政の方々には前向きに御努力をしていくということが大事ではないか。  特に、私は長い間金融関係に携わっておりましたけれども、そういった面から見ておりまして、いわゆる二次産業、三次産業については日本は格段の発展をしてきたわけであります。農水省にかかわるあるいは林野にかかわる第一次産業については、これはかなり国際的な競争の中でといいますか、いろいろな意味がありますけれども、大変押しまくられてしまいまして、今日においては、将来を考えたときに日本の第一次産業、きょう私は林業の問題を取り上げますけれども、果たしてこれでいいのかということをここで改めて御質問しておきたい、こういうことで、実はきょうはこの問題一問に絞って六十分をやります。私は素人ですから六十分どころか三十分で質問切れになってしまうかわかりませんけれども、いずれにしても真剣にひとつお答えをいただきたい、このように思う次第でございます。  最初に、これはいささかおどかしてはありませんけれども、ある本にこういうことが書かれておりました。かつて臨調の会長をなさっておられた今は亡き土光敏夫先生がこういったことをおっしゃっているわけであります。これは恐らくこの文章からいいますと十数年前のことだと思うんですけれども、  臨調としては、今が行政部局の合理化、あるいは国鉄とか電電公社の改善を一生懸命にやるべき時期であると思っているけれども、一番究極的な課題は、日本の民族として、三八万平方キロの国土の中の二五万平方キロの森林を、いかにして将来の国民のために継承していくかというシステムを作ることではないか。国鉄や電電公社が滅びても、それに変わる何かが出てきて、国家として困るということはきっとないであろう。しかし、森林が滅びてしまったのでは、日本の国が滅びてしまうのではないか と、こういう警鐘を乱打されているわけです。今日となってこれを再読してみましても、まさに卓見であると私は思うわけであります。  大変前置きが長くなりましたが、そうしたことを踏まえまして、まず林野庁長官に、概略で結構でございますから、今日の我が国の林業の状況、要するに我が国の中での森林資源が、面積とかあるいは蓄積であるとか、そういった面が大体現状どのぐらいあるかというようなあらましを、概略をひとつ簡潔に御説明いただきたいと思います。
  69. 高橋勲

    説明員(高橋勲君) お答えいたします。  お尋ね我が国の森林資源の現状でございますが、平成七年の三月現在で森林の面積は二千五百十五万ヘクタール。これは国土面積の約七割を占めておりまして、これを民有林、国有林別に分けますと、民有林が約七割の千七百三十万ヘクタール、国有林は約三割の七百八十万ヘクタールというふうになっております。  森林の蓄積でございますが、約三十五億立方でありまして、このうち民有林が二十六億立方、国有林が九億立方となっております。現在、蓄積につきましては、戦後造成された約一千万ヘクタールの人工林が伸びつつありますので、これを中心に毎年約七千万立方増加しているところでございます。
  70. 海野義孝

    ○海野義孝君 どうもありがとうございました。  今の林野庁長官のお話ですと、国土の七〇%を森林が占めている。これは恐らく世界的に見ても日本はトップクラスではないか、こう思うわけでありますけれども、そういった中で七〇%を実は民有林が占めている、こういうお話でございます。  昨日の猪熊先生の国有林野特別会計に関しての御質問をちょっとメモさせていただいて聞いておりましたけれども昭和五十年以降赤字に転落しまして、毎年一千億円以上の年度の損失を出しているということでございます。全体の約三割強が森林資源等の販売による分であって、残りは、そういった特別会計の状況が年々悪化してくる中で、借り入れあるいは利払い等々で大変な火の車のような経営状態になってきているということをお聞きしたわけでございます。  そういうことで、これは国有林野と同じようなことがやはり民有林においても起こっているのではないかというように私は思うわけでありますけれども、むしろ民有林が七〇%、国有林が三〇%ということでございますから、そういう点から見ると、国民経済的に見ましても、あるいはまた国有林野についてはこういった特別会計で今日まで言うなれば国営をしてきた、片や民営ということであろうかと思いますけれども。ここに両方に共通して、やはり私は大変な、民有で言いますと林家経営において年々経営がきつくなってきているんじゃないかなというようなことを感じるわけであります。そういったいわゆる林業をめぐる問題点といいますか、そういった経営状態に国有の場合も民有の場合もなってきたということは、昨日も述べられておりましたけれども、幾つかの理由があって今日に至っている、あるとき突然にしてそういうふうになってきたのではない、このように思うんです。  現在の我が国の林業の問題点といいますか、そういった面をマクロ的にひとつ御回答いただければと思うんですけれども、お願いします。
  71. 高橋勲

    説明員(高橋勲君) ただいまのような資源状況でありますけれども先生指摘のように国有林は経営が非常に苦しくなっておる状況でありますし、民有林の方も同じように大変厳しい状況にございます。  木材は昭和三十九年の末までに不足物資ということで完全自由化商品になっておりまして、完全な国際商品でございます。昭和四十五年ぐらいに外材と国産材の比率が外材の方が五〇%を超えまして、それ以降、円高というふうな状況も伴いまして外材輸入は着々とふえまして、平成七年度ぐらいになりますと外材がほとんど八割ぐらいということで、国産材の自給率、これは二割程度に落ち込んでいるわけであります。そういう安い外材が価格をリードしているというふうなことで、非常に林業自体の採算性が低下しておりまして、林業生産活動も停滞しておるわけであります。それに加えて山村の過疎化、そういうことで林業就業者も減少しておりますし、また高齢化の問題もあるわけであります。  ちなみに、採算性について数字で申し上げますと、木材価格は昭和五十五年の杉の立木価格を一〇〇とした場合に、平成八年にはこれが半分以下の四八まで低下しておりまして、逆に林業経営のコストについて見ますと、伐出業の賃金で見た場合に平成八年には一四七に上昇しているわけであります。したがって、林業の採算性は収入は減りコストがかかるということで非常に悪化している状況でございます。
  72. 海野義孝

    ○海野義孝君 民間の企業であればそもそも成り立たないような状況が自由化以後急速に我が国の林業界を襲ってきたということが言えると思うんです。民間の企業であればもう完全に倒産と。昨年、住専の大手各社がまくらを並べて倒産しましたけれども、やはり我が国の国有林野に端的に象徴されているように、今おっしゃったお話ですとこれは民有林家の経営にも適用できる、そういったお話だろうと思います。昭和五十五年から平成八年、この間十六年ですか、一〇〇だったものが四八、片やコストの方は一〇〇から一四七へということですから、まさにそういった商品の値段とそれを売るためのコストとの開きが倍になったということであります。  直接は関係はありませんけれども、こういうような状態に陥るまでに、昭和三十九年の完全自由化以来今日まで三十三年、十年一昔と言いますけれども、三十年以上にわたって、その間いわゆるバブルの発生から崩壊に至るというような大変な激変期もありました。それはそれとしましても、こういう長期の間に、いわゆる国有林野の特別会計の問題ではなくして、林野行政としては具体的にどういうような御措置を今日までとってこられたかという点、ごく代表的なもので結構です。相当のことを今日までおやりになってきていると思いますけれども、その辺のところをちょっとお願いします。
  73. 高橋勲

    説明員(高橋勲君) 昭和四十年代は、林業として経営の規模を拡大していこうというふうなことの助成を中心にしてまいりました。その後、今申し上げたような状況で外材が主体になってくる、国産材のシェアが減ってくる、国産材の利用もだんだんされなくなってくる。そうなると、間伐材というふうなものも、昔は造林をした後で三十年、四十年ぐらいに間伐を行いまして、その手入れでまた山も公益的な機能も発揮できるという体制になるわけでありますけれども、間伐材の価格も大いに下がってなかなか間伐も実行できないというふうなことで、大きな施策としては間伐の推進というふうなことも林政として実行してまいったわけでございます。  それから、基盤整備ということで林道をつける助成を行いまして生産コストの低減を図る、そういうふうな造林、林道に対する公共事業としての助成策というものも行ってまいったわけであります。しかしながら、今のような状況でだんだん外材に席巻されてまいりまして国産材の伐採もなかなか行われない、そうなると森林の手入れもおろそかになってくる。片や、それを担う林業をやっていく人たちが高齢化し、また林業労働力も減っていく、こういうふうなことで何とかそういう退勢を挽回するというふうな意味で、平成八年でありますけれども、林野三法ということで画期的な国内林業の助成策ということを考えたわけでございます。  これは、先ほど申し上げたように資源自体は山の方で着々と蓄積を増しているわけでありますけれども、残念ながら価格の関係で主伐の方も間伐の方もなかなか思うようにいかない。これは山の方の林業経営基盤をひとつ強化する必要があるだろう。それから、利用する側の川下の方の木材産業を育成する必要があるだろう。そしてまた、その中間にあってそれを担う林業労働力を確保し、林業事業体を育成していく必要があるだろうというふうなことで、平成八年度の百三十六国会におきまして林野三法を成立させていただきまして、これによる林業の育成ということを現在一生懸命やっているところでございます。
  74. 海野義孝

    ○海野義孝君 ただいまの林野三法の件につきましては、後ほどまたその展開の状況等についてお聞きしたいと思います。  現在は、木材価格といいますか立木の値段、こういったものはほぼ下げどまってきているんでしょうか。その辺の今後の見通しについては、恐らく三分の二強が外材に振り回されるというような需給関係というか状況ですから、外材の影響または為替の動向等がかなり響いてくるんじゃないかと思いますけれども、その辺の立木あるいは木材の価格等についてはどういった展望をお持ちでしょうか。
  75. 高橋勲

    説明員(高橋勲君) 御指摘のように木材そのものがまさに自由化商品でありまして、海外の影響をもろに受けて、しかも日本で今使われている木材は総量で年間約一億立方でありますが、その八割が輸入でございますので、産地国の生産状況、あるいは産地国、輸出国におけるその利用状況、そういうものからいろいろ影響を受けまして、価格はこれまでの経験で言いますとやはり一番産地国におけるコスト、需給状況、それから為替、こういうことで変動がなされたわけです。  先ほど申し上げたように、昭和五十五年を一〇〇として平成八年でその半分程度ということでありますので、これ以上下がるとなかなか国内の林業の経営は難しいわけでありますけれども、海外における需給動向、それから生産動向、海外におきましてもいろいろ、片や自然保護でありますとか森林を持続的に経営をしていかなければならないというふうな制約因子も出てきておりますので、従来のようにどんどん価格的に競争力が高いということにはならないというふうに思っておりますので、なかなか見通しは難しいわけでありますが、今の程度で、あとは為替の変動の中で動いていくのではないかなというふうな予想をしております。
  76. 海野義孝

    ○海野義孝君 内外の需給の問題ですけれども、いわゆる外材、これはやはり丸太とかそういったものでなくて、最近は木材というか、製品としての輸入というのが大宗を占めるようになっているんでしょうか。その辺の推移というのは自由化以降どのように変わってきているわけでしょうか。
  77. 高橋勲

    説明員(高橋勲君) 今数字の手持ちはありませんけれども、傾向として申し上げますと、以前は丸太で輸入してきまして日本の国内で製材にしたり合板にしたりということがほとんどだったんですが、最近ここ十年程度ぐらいで大分様相が変わりまして、アメリカ、カナダ等からも丸太の輸入でなくて日本の国内の住宅等に使う製品で輸入太れる比率が高まっております。  それから合板なども、以前は丸太で輸入して夫て日本の国内で合板企業が製品化していたわけでありますけれども、最近はインドネシアとかマレーシア、こういうところで製品化して、それが製品として輸入されてきております。  そういう影響を受けまして、国内の製材産業あるいは合板産業も競争状態が非常に厳しく、従来から比べますと非常にその工場数も減少しているような状況でございます。
  78. 海野義孝

    ○海野義孝君 そういたしますと、山の立木自体の価格というものも大変国際的な競争にさらされて大きく下げてきた。さらには、追い打ちをかけて製品といいますか木材自体の価格も下げてきて、日本のいわゆる林業、これは広義に言いますと加工をされている製材業といったところかと思いますけれども、そういったところも大変経営的にも厳しくなってきている、こういうお話なんです。  要するに、一生懸命合理化はなさっていると思うんですけれども、さっきのお話のように製品とか木材の価格が下がってくる中で一方ではコストがどんどん上がっていくという問題でありますけれども、これは具体的には例えばどういったものでございますか。人件費であるとかいろいろあろうかと思うんですが、その辺のそのコストの増加の主たる要因というのはどういったところにあろのでございましょうか。
  79. 高橋勲

    説明員(高橋勲君) 製材工場とか合板工場はやはり人件費が五割程度ということでそのウエートが高いわけでありますが、そこで海外の製品とどういうふうに競争するかといいますと、国産材をひいている工場は非常に規模的にも小さい工場が多いわけでありまして、そこはやはり規模拡大ということでコストダウンを図るというふうなことになると思います。  また、製品を今までは丸太から角材にするというふうな単純な製品ということで製品化しておったわけでありますけれども、さらにそれをプレカットというふうなことでより高度の加工をし生じて、現地で組み立てをすれば住宅の骨組みができるというふうなことで、いろいろ工夫もしまして付加価値をつけるというふうなことで対応をしているわけであります。  どうも先ほどから厳しい話ばかり申し上げておりますけれども、そういういろいろなアイデアを生かしたり、あるいは国内資源が地元にあるということからの有利性といいますか、そういうものも生かして国産材のよさを十分に発揮できるような体制をつくり、なおかつ規模的にも拡大をして外材にも負けないような製材をやっているというふうな地域あるいは工場もございます。
  80. 海野義孝

    ○海野義孝君 どうもありがとうございました。  ちょっとお聞きしたいのは、要するに山の中から伐採をして、そしてそれを林道を通してふもとといいますか製材工場なりそういったところへ搬送する。いわゆる伐採の問題あるいは間伐、枝切りとか下刈りとかいろいろあるんでしょうけれども、そういうところに携わる方の問題、さっき長官高齢化の問題とかいろいろおっしゃっていましたけれども、やはり高齢化とそういった山間地における過疎化の問題等によって働き手がだんだん減ってきているというようなことが言われるようですけれども、もし何か数字ございましたら、何年かの比較で現在の状況までをちょっと教えていただければと思います。
  81. 高橋勲

    説明員(高橋勲君) 林業の就業者につきましては、これまで山村地域の過疎化ですとか高齢化、それから林業の収益性の低下ということで、昭和三十五年に四十四万人の方がおられましたけれども平成七年には八万六千人ということでありまして、それから五十歳以上の方がその中で七割というふうに高齢化が進行しております。  ただ、平成七年の国勢調査結果を見ますと、林業への新規就業者数が若干若年層の方で微増しているというふうな傾向も見られております。
  82. 海野義孝

    ○海野義孝君 いずれにしましても、この間、昭和三十五年の四十四万人から一昨年では八万六千人と約二〇%の規模にまで減っており、しかも五十歳以上の就労者の方が七〇%ということでございますけれども、このように急激に減ってきた理由としては、片や機械化等もあろうかと思います。  昔、私の子供のころは、山で木を切り倒してそこでも事故が起こる、あるいはその切り倒した木を木馬という木のそりに乗せて林道というか桟橋みたいなものの急斜面をおりてくるときに、それに押しつぶされてしまって重傷を負ったりあるいは亡くなられるというような事故が、私の中学の友達なんかもその一人でありました。  そういった点では、さっきのお話のようにかなり林道の整備とかあるいは機械化によって生産性も上がっているんじゃないかとは思いますけれども、果たしてこれで林業に携わっている人が、生産性の向上はあったとしても、例えば冒頭に申し上げたような二十一世紀は国産材の時代であるというバラ色のような、一千万立方メーターのそういった蓄積、これがまさに伐採期になるんだということでありますけれども、やはり一方ではそういった日常の育林の問題であるとか、いろいろなそういったことに相当な人が必要じゃないかと思うので、果たしてこの人数というのはこれで十分なのか、やむなくこういう状況になっているのか、その辺はいかがでしょうか。
  83. 高橋勲

    説明員(高橋勲君) 御指摘のように、こういうふうに従事者数が減ってまいりましたのは、やはり林業生産活動そのものが減少してきているということなんですが、林道の普及でありますとか高性能林業機械の導入、これによる生産性の向上によって労働者数はそこが均衡を保っているということは言えると思います。  将来的に、これからさらに国産材の生産をふやしていこう、林業生産活動をさらに活発化していこうと、そのことで山村地域の振興ということにもなるわけでありますが、そのためにはやはり林道網の形成、高速高性能機械のさらなる採択というふうなことが必要だと思いますが、従事者数そのものは現状を若干下回っても、年齢者の新規採用というふうなことで生産性の高い機械を使うというふうなことが可能となれば、将来にわたりましても国産材の生産を担当していけるというふうな予測を私どもとしてはしているところでございます。
  84. 海野義孝

    ○海野義孝君 お話はまことに結構なことなんですけれども、そういった林業に携わっている就労者の賃金水準ですね。これは一般というか、どこと比較していいかあれですけれども、例えば国有林野の営林局営林署等で働いている人たち、ちょっと忘れましたけれども、何年か前にそういう就労者の資格というものによって相当賃金が上がったということで、国有林野等に勤めている営林局の人たちに比べると民有林に携わっている人の方はかなり低いのじゃないか。国有林野が今日のように経営が厳しくなった一つの理由は、やはりそういった国有林野に勤めている人たちの賃金をある時期に資格を付与してかなり引き上げたということも大きな理由になっているということを私は何かの本で読んだことがあるんです、これは間違いかどうかわかりませんが。  いずれにしても、国有林野に働いている人たちと民間林家の経営の中で勤めているような、これは言うなれば零細企業とも言えるかもわかりませんけれども、そういった人たちの賃金水準、それと一般的な世間の今の給料水準に比べて低いということが、やっぱり林業に携わっている人がそこから離れるとかそういったことになっているんじゃないかと私は思います。  もう一つは、山林、林業というのはまさに三Kの最たる一つの職業だと思いますけれども、高校を卒業した人たちで林業に携わるような人というのが年間百数十人しかいないというようなことも聞くんですけれども、そういったまさにいろいろな面が重なり合って、一つはやはり林業経営というものが魅力がなくなってきている、あるいはそこに働く人が十分に生活水準を維持できない等々いろいろなことが相まって、私はやっぱり今日のそういう林業就労者が急減していると思います。  ですから、先ほど長官がおっしゃったような、これでも何とかやっていけるんだということは、我慢してそういった中でやっているけれども、次第にそういったところから離れていっているんではないかなというように私は思うわけでありますが、その点について何かお聞かせいただければと思います。
  85. 高橋勲

    説明員(高橋勲君) 確かに、林業労働者の現在の賃金水準と申しますと、民有林の人の賃金水準でありますが、建設業と比べまして、建設業が一万三千六百円という日給でありますが、林業の方が一万一千九百六十二円、建設業に比べても林業が低い、こういう状況でありまして、条件が悪いわけであります。  先ほどちょっと申し上げた林野三法の中で、林業労働力の確保を促進するための林業事業体の雇用管理の改善、それから事業の合理化等を促進する措置というふうな、林業労働力確保法と申しておりますが、その法律では他産業並みの労働条件を目指すということで、それに必要な新規就業者に対する研修でありますとか、林業事業体に対する助成でありますとか、そういうふうなことを講じながら、これから先に向かって林業労働力の確保の政策を講じたいというふうに思っているわけでございます。
  86. 海野義孝

    ○海野義孝君 それでは次に、もう一つマクロ的な視点からお聞きしたいんですが、林家の経営状況について、例えばどのぐらいの面積を保有して、そういった階層別とか年収であるとか、あるいは経費、純所得、こういったものがどのぐらいであるか、その辺のところ、概略で結構ですけれども、最近の傾向的なことをちょっと教えていただければと思います。  例えば、一戸当たりの山林の保有面積がふえてきているとか減ってきているとかいう問題、あるいは経営的にはどのぐらいの水準から成り立っているんであるかというような問題、あるいはそういったところに就労する人たちというのは年間どのぐらい使っているかというようなこととか、おわかりになる範囲で結構ですけれども、教えていただきたいと思います。
  87. 高橋勲

    説明員(高橋勲君) 民有林の経営でございますけれども、いわゆる林家それから会社、社寺、地方公共団体、こういう森林所有者がおられまして、これは全部で二百八十六万の所有者がおるわけでありますが、このうち林家が言うなれば林業経営者ということでありまして、二百八十六万のうちの九割、面積的に言いますと約五割をこの林家が所有しておるわけであります。そして、この林家の所有規模でありますけれども、五ヘクタール以下のものが約九割を占めておりまして、経営規模としては非常に小規模零細な状況でございます。  それから、林業経営の方は先ほどから申し上げておりますような経営状態ということで、販売価格は安い、経営コストは増嵩するというふうなことで採算性が低下しておりまして、年平均所得が、平成三年と平成七年を比べますと、平成七年では三割低下しているということであります。  標準的な林家経営ということで二十ヘクタールから五十ヘクタールの所得を見ますと、平成三年度で六十六万一千円が平成七年度で四十七万七千円、平均的に減少率が二七・八%。あと五十ヘクタール以上とか五百ヘクタールまでとかいろいろな数字がございますが、二十ヘクタールから五百ヘクタールという範囲で全体を平均しますと、平成三年度の林業所得が九十四万一千円で、平成七年度には六十三万二千円とやはり三割減少しているということであります。  林家経営で二十ヘクタール以下という方になりますと、伐採におきましてもいつも伐採しているわけではありませんし、収入につきましても林業所得がいつもあるわけではないということでありまして、今申し上げた二十ヘクタールから五百ヘクタールの林業所得にしましても、そういう規模の林家の平均でありますので、所得としては低い所得になっております。この林家がこの所得だけで生活しているということではございません。
  88. 海野義孝

    ○海野義孝君 ちょっと確認させていただきますけれども、例えば今の二十から五十ヘクタールぐらいの標準の林家で六十六万円ぐらいが四十七万円、これは年間ですか。
  89. 高橋勲

    説明員(高橋勲君) 年間です。
  90. 海野義孝

    ○海野義孝君 ちょっと何か数字が一けた違うんじゃないかと思いましたけれども。  いずれにしても、この収入、これは実質的なネットの分でございますか、要するに経費等を差っ引いた。年間の粗収入というか、そういった中からいろいろなコストを引いてネットの収入がこのぐらいというようなことでよろしいんですか。
  91. 高橋勲

    説明員(高橋勲君) 林業所得でございます。
  92. 海野義孝

    ○海野義孝君 ネットの分ということですね。
  93. 高橋勲

    説明員(高橋勲君) はい。
  94. 海野義孝

    ○海野義孝君 この問題ばかりをやっておりましてもあれですので、税制の問題について少しまたこれからお聞きしたいと思うんです。  ただいまいろいろと長官に教えていただいた状況からいたしましても、国有林野も大変ひどい状態でありますけれども、民有林野についてもこれは大変厳しい。国有林野の場合は、例えば十なら十の収入を上げるために三十を投じるというようなことを、これは本来であればそういうことはやってはならないことでしょうけれども、そのあげくに国民の税金等を使ってこれの穴埋めをしていくということですけれども、林家の場合は借金として残るといっても限界がある。やはり収入が限られている。これは自由化以前に比べれば林家の収入も林家専業であっても相当減ってきていると思うんです。  かつては朝鮮動乱とか所得倍増とか、あのころでしたら住宅の建設も急増しているというような時代でありましたし、大変うけに入っていた時代があったと思いますけれども、今いろいろと御説明をいただいた状況からすると、国有林野の状況が実態をまさにあらわしていると思います。民有林についても、コストのかかる分はかけられないから手抜きをしておくというか、そういった問題は先送りしていくということになるんじゃないか。やはりそういった面には国としても手厚いいろいろな助成が造林にしても育林にしてもおありになるんじゃないかと思います。  税制の問題に入る前に最後に一言。そ ういった民有林野、林業に対してこれまで具体的にどういった、国は例の国有林野の予算というのも相当ありますけれども、民有のそういったものに対しては年間どのぐらい毎年助成されてきているのか、もしその辺できたらお願いします。
  95. 高橋勲

    説明員(高橋勲君) いろいろな予算があるわけでありますけれども、民有林における助成の状況につきまして造林とか林道、先ほど申し上げたようなまさに基盤整備を行う公共事業の予算額でありますが、これを戦後から十年スパンで公共工事における物価上昇率などを勘案した上でお示ししますと、昭和三十年度には約五百五十億円程度、昭和四十年度に一千億、それから五十年度に千三百億、六十年度には千八百億、それから平成七年度、これは昭和七十年度に当たりますが約二千億、このような助成になっております。
  96. 海野義孝

    ○海野義孝君 どうもありがとうございました。  完全な自由化が行われた三十九年度の翌年の四十年度には一千億になったと言うんですが、三十年度が五百五十億円で四十年度が一千億と、十年間で漸増的にふえてきているのかと思いますけれども、十年間で約五百億弱。その後を見ましても、十年間で三百億アップとか五百億とかということでございます。  この問題を国有林野の問題とひっかけてとやかく言うということは問題が多いかと思いますけれども、国有林野等で既に累積債務が三兆五千億、年間一千億円以上の赤字を出しながらこういった債務が累増されている。そういった中で、国有林野と民有林野は車の両輪でありまして、一方で日本の林業を支えている民間部門、こういったところに対するそういう助成というのは、これだけじゃなくほかにいろいろ、これからお聞きする税制面でもいろいろな御処置をされてきているとは思いますけれども、いささかその辺のところが私にはやや理解しにくいというところなのであります。  これは、林野庁長官のお立場では大変その辺のところはお答えしにくいことかと思いますけれども、国の林野行政に携わっているお立場として、国有の面にしても民有にしても両面やっぱり見てこられているわけですから、そういった点で民有、具体的に言うと林家の経営が成り立っていくというような御処置をされていかないと、結局民有林もだんだん滅んでいってしまうんじゃないか。これは三年、五年というような問題じゃありませんけれども、将来的に見てやっぱりそういった点が私は気になるんです。その辺で、民有に対する助成措置という点、もっとこういう面に予算も投じるべきじゃないか。  今、大蔵大臣いらっしゃるんですけれども、いわゆる財政再建だからといって何でもかんでもカットカットということじゃないと私は思うんです。やはり今までの日本の行政の欠点はそういった単年度的なところに問題があったということであります。長期計画はあるけれども、それを単年度でやりながら膨らましていくというやり方、これは日本が右肩上がりの経済拡大の時代は通用しましたけれども、これからでこぼこ道のような日本経済になると、やっぱりそういった点では単年度というよりも長期的なスパンで見ていかなくちゃならぬ。  そういう点でいきますと、きのうの猪熊先生のお話では、国有林野の第一次から第四次に至るそういう長計というものがことごとく絵にかいたもちだった実態というのは、これはさっき長官もおっしゃったようにいろいろな理由はありますけれども、しかし私は三兆五千億円をどうするんだということをきょうはとやかく言っているわけじゃありません。ただ問題は、国有、民有ともに日本のそういった林業を担っていく、日本の一次産業を担っていくという上で、必ず将来、環境問題であるとかいろいろな問題で、日本の林業がコスト増それから製品価格の低迷という中でもしか経営をいいかげんにしていれば必ず先行き問題が起こる。  そういう意味では、やはり国は国有林野だけではなくて、民有林野等に対しても造林の問題あるいは林道の問題等々、あるいは就労者をふやしていくための問題等、まさにこのために昨年林野三法というものが施行されたということだと思いますから、私に言わせれば、いささか遅きに失したなという感じはいたしますけれども、これはやはり即刻進めていっていただきたい。  そういった意味で、今後、そういう民有林野等に対する国の行政として格段の姿勢で臨んでいただきたいと思いますけれども、その点、最後にひとつ林野庁長官の御高見を賜りたいと思います。
  97. 高橋勲

    説明員(高橋勲君) 御指摘のように、国有林につきましては、これまでの独立採算制の会計制度から一般会計を繰り入れしてもらう特別会計制度にし、木材生産中心から国土環境保全中心にしていく、業務の実行体制も民間にお任せして国の方は限定された国土保全、治山事業というふうなものにするということで、平成十年度の概算要求に向けまして、きのう御説明したような方向を出させていただいたわけであります。  民有林につきましても、先生指摘のように今非常に状況が厳しいわけであります。林業をやっておられる方あるいは木材産業をやっておられる方、いろいろとそれぞれ自主的に努力はされておるわけでありますが、やはり最終的には森林の整備いかんにかかわってくるわけでありまして、林業、林産業を育成していく。  私どもは今、林野三法を定着化させるということでそういう行政を行っておりますが、これから先につきましても、実は林政審議会という私どもにいろいろな行政上のアドバイスをしてくれる審議会におきまして、この間出していただいた中間報告では国有林を中心に回答をいただいたわけでありますが、これから年末に向けて、民有林を中心にして今後どういう方向で行うべきか、民有林対策、そして森林、林業、山村対策ということを含めてまた御議論をいただき、アドバイスをいただくということになっております。  私ども林野行政を預かる身といたしましては、やはり国有林、民有林あわせて森林の整備を推進していきたいというふうに思っている次第でございます。
  98. 海野義孝

    ○海野義孝君 どうもありがとうございました。  この年末にかけての民有林分野についての林政審の答申といいますか、それに期待をすると同時に、今後ますます林野庁としての取り組む姿勢を高めていっていただきたいということをお願いして、長官には御質問を終わらせていただきます。次に、時間が大分なくなりましたけれども、林業、いわゆる林家の税金の問題について、私の高校の後輩で、愛知県ですけれども、専業林家をやっている男がいまして、それが実はつい最近手紙をよこしました。  そのためにきょうこの質問をやっているわけじゃありません、全くないんですが、たまたまこれは具体的に現場に携わっている男の考えということで大蔵省主税局に聞いていただきたいと思うんです。  「改めて申し上げるまでもありませんが、日本の林業はいまや絶対的な危機に瀕しております林業専業である吾々が経営を放棄すれば山村の経済は、必ずや崩壊するであろうと信じています治山工事等の公共事業に投入される莫大な国費の何十分の一でも造林や育林の仕事に実際に従事している人たちに回していただければ、長期的視点からみて国費の支出は相当減らすことが可能であろうと思います」と。  また、山林にかかる所得税、相続税等の重圧の問題についてでありますけれども、これは経営の維持を大変厳しくする、むしろ不可能にする徴税のあり方に問題があると彼は言っているわけです。「日本の森林資源と、その保全が確保され、結果的には山林からの相続税の徴集額の何倍もの国富が増大することは明白です税を取り立てる上での公正さは勿論、強調して然るべきでありますが、林業経営の実情を無視し、他の一般の資産と同じ」と。  一カ月ぐらい前に田舎に行ったときに会ったときには、彼が僕にあのバブルのころのことを言っておりましたけれども、株で一日に何千万もうけるとか、とにかく三大都市圏の土地が暴騰する。途中で法律改正になりましたけれども、それで大変うまい汁を吸った連中がいると。ところが、彼が言うのには、山持ちというのは、林地の問題といったって、これは要するに山林を育てるためになくてはならぬ問題ですから、林地なくして山林なしですから、そういう面の問題等を含めて、七十年とか百年で要するに木材が生育するのに、相続税の場合は七十年から百年といえば三代ぐらい代がわりするわけです。だから、そういった面で、外国の制度としてはそういう立木一代一回課税制度というのはたしかイギリスにあったと思いますけれども、そういう制度をとっているところもあるわけです。  そういうことで、「他の一般の資産と同じ基準で徴税しようとする国税御当局の根本的な考え方を改めて」いただきたいと。  さらに、この木材生産の経済性といった以上に森林の有する公益性ということが言われております。これはそのとおりでありますけれども、「その公益的機能に大いに貢献しつつあります林業従事者の後継者の育成もままならぬ現状では「絵にかいたモチ」になりかねません林業を事業として何代にも亘って継続していこうとする経営者に対しては、相続税は農地のケースと同様、事実上課税はゼロにすべきであります」と。  さらには、今回十年ぶりで実現しましたけれども、所得税における山林所得における概算経費率、四五%にアップしましたけれども、しかしこの十年間でようやく五%。今回十年ぶりで認められたということでありまして、これとてもさらに概算経費率をアップしていただかないと、現在の木材価格の水準、あるいは現在のそういった諸コスト、こういった面からいうと、「造林や育林への投資は到底不可能であると」、こういうことであります。  まず、この点についてひとつ大蔵省の主税の力にちょっとお願いします。
  99. 尾原榮夫

    説明員(尾原榮夫君) 山林に対する税制についてお尋ねがございました。  まず、相続税についてのお尋ねがございましたが、立木といいますのは、伐採まで大変長期の保育、管理の手間がかかるという特殊性がございます。そういうことを考慮いたしまして、従来から種々の優遇措置を講じてきているつもりでございます。最近におきましても、先生から今いろいろ御指摘がございましたが、平成三年度には特定森林施業計画の対象となります立木については、延納期間を二十年から四十年にする、あるいは平成五年度には立木の評価の見直しを行うというようなことをやっているわけでございます。  なお、相続税全般について一言申し上げますと、実は税制全般につきまして、昭和六十三年末、平成四年度税制改正、六年度税制改正と、相続税そのものを大幅に減税しているところでございます。このような大幅な減税が行われたことにより、いろいろ指摘されておりました相続税の重税感の問題、山林所有者の事業の承継にも十分資するものになってきているのではないかというふうに考えているところでございます。  なお、先生の方から今年度の概算経費控除率を四五%に引き上げたという御指摘がございましたように、どうも経費の手間がかかっているということに配意いたしまして、平成九年度の改正で概算経費控除率を四〇から四五に上げる、また森林計画特別控除という特別の控除がございますが、この制度につきましてもさらに延長するというような、できる限りの配慮が講じられているというふうに認識しているところでございます。
  100. 海野義孝

    ○海野義孝君 時間になりましたけれども、益田先生に申しわけないんですが、ちょっと最後の締めに一言だけお許しいただきたいと思います。  税制の問題、御当局では大変御努力をいただいているということは、現在の我が国の林業経営に対してそれなりのやはり評価をしてくださっているということについては多とするところであります。現在、例えば不在村、そういった地主、こういったものがどんどんふえてきているとか、林業に対して、ある面で言うとそれはもう財産だということで、ある程度大きくなったらそれを切って売れば所得になる。こういうようなことで、伐採の裏腹には、やはりそこに育林というか育苗から始まっていくわけですから、当然裏腹にコストもかかっていくという問題であります。  そういう面で、例えば相続税におきましても、森林施業計画の対象となっているような林地についてはさらにまた評価について引き下げるというようなお考えをいただくとか、そういったことをやはり今後も継続しておやりになっていただいて、我が国の民有林野におきましても国有林野の二の舞になる原因の一つが、先ほどの私の同級生が言っていたような、これは私はすべてかどうかわかりませんけれども、でもやはり大変苦しんで経営をしている。自分の子供でさえなかなか後継者にならないんだと、これでは一代ぽっきりでどうなるんだというようなことを嘆いているわけです。  森林というのは永久に続いていく産業でありますし、我が国にとりましても、現在のお米の問題でも私は言いたいことがありましたけれども、全く同じで、そういう一次産業に対して我が国は二次産業、三次産業、ビッグバンだ、それ何だという中で、そういったものが置いてきぼりになっているということに対して大変これは心配なことである。それは次の世代の問題になると思いますが、そういうことも踏まえて、今後主税局におかれましても、こういった林家経営に携わる関係者の税制に対してもさらに継続して前向きに、あるいは国際的な状況等もよく踏まえて、やはり現実に即した税制をおとりになっていくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  101. 益田洋介

    ○益田洋介君 官房長官、お忙しい中、きょうはありがとうございます。もうこういうふうなお立場で官房長官にお話を伺うことも余り長くないのではないかという世間の風評がございますが、きょうは特にお願いしたわけでございます。  日米防衛協力のための指針、ガイドラインの見直しについてでございますが、これは九月末の最終報告を控えて非常に今論議が高まっておりまして、恐らく九月の臨時国会でもメーンのテーマになってくる。今度は予算委員会官房長官にお話を伺おうと思っておりましたが、何か私たちと余り話をしたくないという御意見もございまして、きょうはガイドラインについて若干の御意見伺いたいと思います。  もともとガイドラインというものは、日米両国の姿勢をより強め、そして我が国の安全とアジアの安定といった観点から、そうしたものを確かなものにしよう、確実化しようというところにそのねらいがあったわけでございまして、いわば安全保障の一つの方法論であると私は理解しております。したがいまして、日本の将来をしっかり見据えた論議を私ども国会でこれから進めてまいりたいと、そのように思う一人でございます。  これまで行われてきましたガイドライン論議と申しますのは、周辺事態の協力ということに集中してまいりました。なかんずく、その中でも多くの時間が割かれたのは周辺の概念論議でございまして、周辺とはどこからどこまでか、台湾海峡は含まれるのか。また、官房長官の御発言の含まれるという説への国内外からの反発が多発しているのは御承知のとおりでございます。  社民党などでは、日中平和友好条約の堅持を盛り込んで台湾が周辺の範囲に入らないことを明確にしろと、こういうふうな発言をしているということも漏れ伝え聞きますが、官房長官はどのようにお考えでしょうか。
  102. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) その指針の見直し、ガイドラインの見直しについてはまだ結論を得ているわけではございませんが、私流に考えますと、この第一次のガイドラインというのは当然、日米安保条約に言う第五条を中心にして、いわゆる日本の防衛、安全という面を中心にこのガイドラインというのを見たという経緯があろうかと思います。しかし、それとてはっきりしたものが具体的に今提示をされたというほどのものでもないという気がいたします。  それから、この第二次のガイドラインの見直しは、その五条プラス六条の範囲というか周辺有事というか、日米のその意味での協力体制をどの程度までよく見据えることができるのかどうなのか、その作業が今度のガイドラインの見直しということになろうかと思います。  そういうことで、政府が再三公式に答弁をいたしておりますように、指針の見直し及び新たな指針のもとでの取り決めについては、次の基本的な前提及び考え方であります。  すなわち、第一には、日米安保条約及びその関連取り決めに基づく権利及び義務並びに日米安保等日米同盟関係基本的な枠組みは変更されないこと。  第二に、日本のすべての防衛は、日本の憲法上の制約の範囲内において、専守防衛、非核三原則等の日本の基本的な方針に従って行われるべきこと。  第三に、日米両国のすべての行為は、紛争の平和的解決及び主権、平等を含む国際法の基本原則並びに国連憲章を初めとする関連する国際約束に合致するものであること。  第四に、指針の見直し及び新たな指針のもとでの作業は、いずれもいずれの政府にも立法上、予算上または行政上の措置をとることを義務づけるものではないが、日米両国政府がおのおのの判断に従い、このような努力の結果をそれぞれの具体的な政策や措置に適切な形で反映することが期待をされているわけであります。  指針の見直しに言う周辺事態とは、地理的な概念ではなく、生ずる事態の性質に着目したものであると考えております。  先日の私の発言はこのような政府の立場を踏まえて、周辺事態が発生し得る地域を地理的に限定することは不適切であり、また周辺事態に該当するか否かはあくまでも事態の態様等によるということを述べたものであります。  以上が基本的な考え方であります。
  103. 益田洋介

    ○益田洋介君 基本的に、私は官房長官のおっしゃったことは国是であり、正しいという認識を持っておる人間の一人でございます。  日本の安全のためには、日本とアメリカがどのような協力をしていくのかという取り決めがガイドラインでございます。我が国の安全に重大な影響を及ぼすような他国の紛争は、距離の長い短いにかかわりなく、やはり国防上多大の関心を我々としては払っていかなきゃならない。  地図を見ますればわかるとおり、樺太、北方領土、沿海州、朝鮮半島とともに台湾は我が国領土に最も近接した周辺であるということは火を見るより明らかでございます。  そこで、その周辺地域において火消しに走るアメリカ軍に我が国が何の手助けもできない、私はこういうふうな論理はまかり通らないんじゃないかというふうに思っている一人でございまして、周辺の範囲というのは日本への安全上の影響度で決まるものであって、確かに地理的なもので縛りをかけるとかいった線引き論議は無用であり無意味であるというふうに私は考えているわけでございます。李鵬首相は、官房長官の発言を残念ながら受け入れられない、絶対に受け入れられない、そういうふうに言っているそうでございますが、日米同盟の強化と役割分担我が国の固有の方針でもあると私は思います。一方で、軍事大国の中国を度外視して日本の安全保障というのは成り立たない、そういうふうな論理になると私は思うわけでございます。  本日から橋本総理が訪中をされたわけでございますが、私は日本の立場を十分に説明していただきたいし、外国の意向に左右されて日本の安全保障の方針をぐらつかせるようなことがあってはならないというふうに考えるんですが、官房長官の御所見をお伺いしたい。
  104. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 委員御説のとおりでございまして、総理もその辺を十分に認識し、そのことをきちんと日中の首脳会談で明らかにされるものと私は期待をいたしております。
  105. 益田洋介

    ○益田洋介君 周辺事態に日本が協力する四十項目、ガイドラインの一部ですが、その中には避難民の救助を含めた人道的な活動がございますし、捜索・救難から米軍へのさまざまな形での支援でございます、有事ACSAと言われるようなものも含まれるわけでございますが、私はこれらの四十項目は一々当然のことだというふうに考えるものでございます。これは独立国である我が国の誇りを保ち続けるために私たちが最低限努めなきゃいけない責務であろうというふうに認識をしております。  ただ、現行憲法の範囲内でと官房長官も今おっしゃいましたが、どこまで実行できるかということを実際に検討段階に入った場合に、かなりの部分でグレーゾーンが出てくることは予想されるわけでございます。これから先五十年、百年の計を考えてみますと、やはり集団的自衛権、また憲法改正まで踏み込んで国会で議論すべきである、今回はそのいい機会であると私は思うわけでございますが、御所見を拝聴したいと思います。
  106. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 先ほど申しましたように、やはり憲法のもとにおいて非核三原則その他もろもろの今までの条件を考慮に入れながら、私たちはこの平和で冷静な時期にどの程度のものがその範囲内でできるかということを想定し、そのためのマニュアルをつくることが私は何よりも大切だというふうに理解をいたし、また政府もその方針のもとに行っているわけであります。  本来、日米安保条約というのはまさに片務的なものでありまして、日本を守ってもらうというだけの条約であります、発足は。しかし、今日の日本の国力やその他を見て、完全に片務的なものでその日米安保条約の有効性が保てるのかどうなのかということになりますと、私は若干でも米軍のプレゼンス、そして行動に対して日本が我々の規制する範囲内でどのぐらいの貢献ができるかということを考えに入れることも、またこれは片務ではあるものの、それを有効たらしめるための一つの有効な手段ではないかと思いますので、その辺のところの研究をするのが今度のガイドラインでもあろうかという気もいたします。  冷静に判断をしながら、私たちはこの平和なうちに万一の場合も想定に入れながらもろもろの態勢を整えていくことが肝要だというふうに考えております。
  107. 益田洋介

    ○益田洋介君 かつては片務契約というのが国際国家間には存在したのでありましょうが、近代国家間においては片務契約というのはやはり不自然である、不公正である、あるいは不平等であるというふうに私は考えますし、国力が経済力を初めここまで回復した、進展した日本としましては、やはり双務契約を結んでいくのが本来の姿ではないかと、そのように私は思うわけでございます。  次に、中国、台湾、日本、このトライアングルの中で問題になっております尖閣列島、尖閣諸島について一問質問をさせていただきたいと思います。  もともと、一八九五年に日本は閣議で尖閣諸島は日本の領土であると閣議決定をしたわけでございます。なぜこれが閣議決定でなければならなかったのか、これについて若干調べてみたところ、驚いたことに、領土というのは国家の領域であり、主権であり、広範かつ排他的なものである。しかしながら、領土の範囲及び変更手続については、他国の憲法中にはこれを規定するものがあるが、我が国の現行憲法にはその規定はなくなってしまった。したがって閣議決定したんだと。ところが、一九六八年に国連アジア極東経済委員会の調査で石油資源の埋蔵の可能性が指摘された。その後すぐに中国と台湾が相次いで領有を主張した。自分の国の領土であるということを主張したわけでございます。そして、中国は一九九二年に固有不可分の中国の領土であると明記した領海法を国内において制定した。  この点ついて官房長官はどのようにお考えでしょうか。
  108. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 今委員指摘のそれぞれの国のそれぞれの時期における主張、定かには私持っておりませんが、尖閣諸島が我が国の固有の領土であることは歴史的にもあるいは国際法上も疑いがないところであり、既に現に我が国がこれを有効に支配しているという観点に立って対処をいたしているわけであります。
  109. 益田洋介

    ○益田洋介君 国際法上疑いないということは全くございませんで、先制をされてしまえば、つまり占拠をされてしまえば領土の変更ということが国際法上で認められていることでございます。ですから、我が国の閣議決定は何ら国際法上の意味をなさない、これが現状であると私は認識しております。  沖縄県の石垣市の市議会が昨年の七月、尖閣諸島の占有権の表明に関する意見書というものを可決したそうでございます。しかし、これを受けて台湾や香港の活動家の抗議船が尖閣海域に押し寄せるについては何らの打つ手だてがなかった。海上保安庁の警戒を突破して魚釣島に台湾などから抗議者が上陸したという事実も残っております。私は、もし海上保安庁がこれ以上のことができないんであれば、やはり自衛隊の沿岸監視隊を導入すべきである、そして日本の領土を守らなきゃいけない、そのように思うわけでございますが、官房長官、いかがお考えでしょうか。
  110. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) それぞれの国家が国家の威信をかけてこの尖閣諸島の領有を実効あらしめようとしているというふうには私は理解をいたしておりません。一時期、確かに潜在主権はあったものの、米軍の占領下であったわけでありますから、沖縄の返還協定に基づいて我が国に施政権が返還をされ、その後我が国の主権は厳然とある、そういうことでありますから、それに対して他国の主権が侵そうという場合にはそれなりの対抗措置をとることは可能であり、またそうしなければならないと考えております。
  111. 益田洋介

    ○益田洋介君 次に、大蔵大臣に御質問したいんですが、第一勧業銀行が総会屋グループヘの融資を隠す工作をした九四年の十月から十二月にかけての大蔵省の検査の際、第一勧業銀行から接待を受けていたという事実が判明して、当時の担当検査官二人を大蔵省は戒告処分に二十九日いたしました。同時に、監督責任者として官房長だった小村武事務次官を文書で厳重注意した、こういうことでございます。  戒告を受けたのは、日下部元雄前国税審議官、当時は検査部の管理課長であったわけでございます、と宮川宏一金融検査部金融証券検査官室長、当時は検査部上席金融証券検査官でありました。九四年十一月に第一勧業銀行の幹部と日下部前審議官は一対一で会食した。私がここで発言するのも嫌なようなもろもろの接待が行われたので省略をさせていただきますが、ゴルフ場でも接待を受けた。この際、接待に当たった第一勧業銀行関係者、銀行の役員は商法違反で起訴されている人もいる。検査忌避にも直接関与した役員が含まれている。こういうふうな実態が明らかになりますと、大蔵省の検査の実効性に対する国民の方の不信感も相当強くなるのは事実であろう。  しかし大蔵大臣、この戒告という処分は国家公務員法では最も軽い処分だ。何でこんな軽い処分なんですか。あるいは大蔵大臣は、多少の接待というのは大蔵省の業務を遂行していく上で潤滑油としてやむを得ない、必要なんだ、そういう気持ちがあったからこそ最も軽い処分で始末したんですか。
  112. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) 本件は御指摘のとおりのことで、平成六年十月十一日から十二月九日までの四十日間にわたりました金融検査課長、主任検査官を対象といたしたものでございます。  御指摘にありましたとおり、私は本件について報告を徴しました。検査期間中あるいは検査及び講評の終了から最終検査結果の示達までの間に会食、ゴルフ、融資先企業の工場視察の帰路に車中において缶ビール等の提供を受けたという事実はこのとおりであります。  しかしながら、このような行為は、平成七年五月の綱紀の粛正の保持についての通達制定前の行為ではありますが、当銀行が銀行法等違反等の検査忌避を行っていることを勘案いたしますと、検査に対する社会的信頼を御指摘のとおり著しく損なうものでありました。かかる行為は私も極めて遺憾なことでありまして、七月二十九日に大臣から主任検査官に対する国家公務員法八十二条に基づく懲戒処分を初めとして関係者に対する処分を行ったところでございます。  また、一層の綱紀の厳正な保持に努めることは信頼の回復のためにも極めて大事なことでございますから、今後とも検査の実効性をより向上せしめる、それは綱紀の厳正な保持をもって当たる、こういうことといたしたところでございます。  なお、このような指示を体しまして、昨年十二月に制定されました大蔵省職員倫理規程の趣旨の徹底を図り、かようなことの起きませぬように対処いたしたところであります。
  113. 益田洋介

    ○益田洋介君 今大臣は、九五年の五月に綱紀粛正についての通達を出した、今回明るみに出たこの検査官の接待についてはそれより以前の問題だった、こういうふうな論法はおかしいんじゃないですか。  これは、例えばそんなことを言うのなら、九五年の五月の綱紀粛正の通達の後だって、旧二信組事件で中島義雄当時主計局次長、それから田谷廣明元東京税関長の過剰接待、これが出て、それでこの通達が出たわけでしょう。しかし、その後も銀行局の課長補佐が生命保険会社から携帯電話を無料借用していた事件だとか、涌井洋治さん、当時官房長、脱税事件などで起訴された泉井純一被告、この方も国会に来ていただこうと思っているうちに別荘に行っちゃったわけですけれども、いずれまた来ていただかなきゃいけない。結婚祝いに絵画を贈られた。絵画を返せばいいというものじゃないでしょう。これは通達の後ですよ、この二件は。それで、涌井洋治官房長というのは今は主計局長になっている。全然反省していないじゃないですか、大蔵大臣。これ説明してくださいよ。
  114. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) 涌井官房長の件については先国会でたびたび御質疑をいただきました。その当時申し上げたことは、私自身、状況を聴取いたしたわけでございます。そういう中で、お祝いとして贈られました版画、それを持っておりましたが、適切でないというのでお返しを申し上げたと、こういう事実関係が明確になったのであります。しかし、幹部職員として受け取ることは軽率であったということで、口頭による厳重注意を申し上げたところでございます。  また、前段のことでありますが、通達前のものでありますけれども、かかる信任を害する検査官の行為は極めて遺憾と、こういうことで御説明申し上げましたとおりの処分、懲戒、戒告ということで行ったところでございます。
  115. 益田洋介

    ○益田洋介君 この飲食とかゴルフの検査官への接待についてですが、大蔵省側は過剰接待は受けていないと否定されている。金額については現在調査中だと、官房秘書課の人がそう言っている。調査はいつ終わるのか。調査結果を提出してください。
  116. 原口恒和

    説明員(原口恒和君) 検査期間中いろいろの状況があったのは御指摘のとおりでございます。その点について、当時の担当者その他、もとにさかのぼりまして、あるいは第一勧銀からの調査の報告書等を踏まえて厳重に調査をした結果でございますが、今御指摘のことについては手元に資料を持ち合わせておりませんが、全体として検査の厳正に影響を及ぼすというようなことはなかったというふうに思っております。  ただ、こういうことが今後起こらないということで、検査部としても検査官の倫理の維持については今後一層意を用いてまいりたいと思っております。
  117. 益田洋介

    ○益田洋介君 では、金額についての調査結果は提出していただけますね。お約束いただけますか。
  118. 原口恒和

    説明員(原口恒和君) わかる範囲で御報告したいと思います。
  119. 益田洋介

    ○益田洋介君 終わります。
  120. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 民主党・新緑風会の朝日でございます。  今回、私は、さまざまな観点から問題となっております公共事業のあり方を見直す観点から、とりわけ公共事業関係の長期計画にかかわる事前評価及び事後評価の問題について考えてみたいと思います。  なお、時間があれば公共事業と先般公表されました財政構造改革会議推進との関連についても取り上げてみたいと思っております。  そこで、まず問題の糸口といたしまして、最初に会計検査院お尋ねをしたいと思います。  この問題は、実は昨日の当委員会におきまして松村委員からも御指摘がありましたので、重複を避けて簡潔にお答えいただければと思いますが、会計検査院平成七年度決算報告において漁港整備長期計画に関連する幾つかの整備事業を取り上げて、その実施状況を検査し、その結果に基づいて水産庁に対して改善要求を行っております。  調べてみますと、実はこの漁港整備長期計画については昭和五十八年度の決算報告の中においても是正改善の処置要求が会計検査院の方から示されております。平成七年の分それから昭和五十八年の分あわせまして、どのような観点に基づいて、どのような点について改善要求をされたのかお伺いしたいと思います。
  121. 牛嶋博久

    説明員牛嶋博久君) 漁港整備事業は多額の資金と長期間を要する事業であり、従来から会計検査院では多角的な観点から重点を置いて検査を実施しているところであります。  漁港整備事業により整備されます漁港施設には、防波堤、岸壁、泊地等の基本施設と漁港施設用地等の機能施設があります。先生お尋ね平成七年度の決算検査報告におきましては、このうちの機能施設であります漁港施設用地等が適切に管理、運営されているかという観点から調査を行いました。  調査の結果、漁港施設用地等が長期間にわたり利用計画に沿って利用されていなかったり、占用許可を受けられない者に占用許可を与えている事態などが見受けられました。したがいまして、水産庁に対しまして、漁港施設用地等の利用及び管理を適正に行うことにより事業効果の発現が図られるよう改善の処置を要求したものであります。  二番目の先生お尋ね昭和五十八年度の決算検査報告におきましては、漁港施設のうちの基本施設であります防波堤、岸壁、泊地等の整備事業の計画と実施が適切かという観点から調査を行いました。  調査の結果、漁港整備長期計画の策定に当たりまして、漁港整備とこれに関連します諸施策との間の調整を十分に行わず、さらに見直しも行わないまま事業を実施したため、整備した施設が所期の機能を発揮していない事態や、長期計画策定後において、漁業情勢が変化計画見直しの必要が生じているのにこの見直しを行わなかったり、見直しの結果を事業の実施に反映させなかったりしたため、整備しました施設の利用が著しく低い事態などが見受けられました。したがいまして、この件につきましても水産庁に対しまして、漁港整備事業の計画と実施についてその適正化が図られるよう是正改善の処置を要求したものであります。
  122. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 ありがとうございました。ただいま御説明いただきましたように、この漁港整備長期計画については、その関連整備事業について再度にわたって会計検査院からの処置要求が行われているわけであります。これらの点について水産庁としてはその後どのように受けとめてどのような改善方策を講じてきたのか、またこうした一連の指摘を受けて、今後これらの整備計画そのものについて見直しを行う必要があるのではないかというふうに私は思いますが、この点に関する水産庁としてのお考えをお伺いしたいと思います。
  123. 嶌田道夫

    説明員(嶌田道夫君) 会計検査院の方から今報告ございましたように、昭和五十八年度の検査報告におきましては、漁港整備とこれに関連する諸施策、言うなれば漁協が設置する荷さばき所等でございましたが、これが下物と上物との調整が不十分であるというふうな指摘でございました。このために、指摘されました漁港の利用の適正化を図るべく、より適切な計画の策定並びに事業の実施につきまして漁港管理者を指導したところでございます。  また、平成七年度の会計検査院の検査報告におきましては、漁港施設用地の利用及び管理につきまして、漁港管理者が漁業情勢の変化や漁協経営の悪化等の情勢変化に対応いたしまして用地が利用計画どおりに利用されていないと、この状況を踏まえて漁港施設用地の利用計画の変更を行うべきであるというような指摘を受けたところでございます。このために、適時的確に利用計画の変更を行わせるために所要の通達を出したところでございまして、漁港管理者の指導を強化したところでございます。  計画見直しにつきましては、昭和五十八年度の検査報告を受けた漁港につきましては、既に各事業計画及び漁港施設用地の利用計画見直しを行いまして、その適正化を推進したところでございます。また、平成七年度の検査報告を受けました漁港につきましては、漁港管理者が漁港施設用地の利用計画見直しを現在行っているところでございます。そういうことによりまして、その適正化を現在進めているところでございます。
  124. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 今、この漁港整備長期計画についてお伺いいたしましたのは、この問題だけに限らず、こうした長期計画に基づいて整備された用地とかあるいは建設された施設とか、これらが結果として特定の者にしか利用されていなかったり、あるいは実態としてほとんど活用されていなかったり、つまり国民の負担に見合うだけの価値のある社会資本整備とはなっていないような状況があれば、そうした長期計画についてはちゅうちょすることなく早急に見直しを図るべきではないかというふうに私は考えるからでございます。  今回取り上げさせていただいた漁港整備長期計画にかかわる整備事業についても、会計検査院からの再度の指摘を受けながらも、もちろん今御説明があったように、指摘事項について個別的な改善はそれなりに行われてきているようではありますが、どうも計画そのものあるいは計画全体を見直すというところまでには至っていないと考えざるを得ません。もっとも、そもそも会計検査院指摘自体も計画全体あるいは計画そのものに対する指摘というよりは、計画の中の個別事業に関する事項の指摘にとどまりがちであるというふうに言わざるを得ません。  しかし、私はここで特に強調したいわけですが、そういう個別の事業にかかわるさまざまな問題点の指摘にとどまらず、公共事業関係の各種の長期計画については、計画の全体についてどこかでだれかがきちんとフォローアップをして、その評価結果を次の計画策定作業にフィードバックするそういう仕組みといいますか、ルールづくりがぜひとも必要だろうというふうに思っています。もちろん、それはそれぞれ所管する省庁のレベルもあっていいでしょうし、さらには政府全体のレベルであってもいいと思いますし、あるいはそれぞれの資料を提出していただいて国会でチェックをするという、そういう仕組みもあっていいというふうに思うわけです。  そこで、会計検査院にお伺いしますが、会計検査院として、今後個別の事業の評価にとどまらずに、こうした長期計画全体を視野に入れた会計検査による事後評価について積極的に取り組む必要があるのではないかというふうに私は思いますが、この点についてはぜひ会計検査院長としてのお考えをお伺いしておきたいと思います。
  125. 疋田周朗

    会計検査院長(疋田周朗君) お答え申し上げます。  私ども会計検査院では、公共事業の検査に当たりましては、長期計画に基づいて実施されております大規模事業が計画に沿って進捗しているか、あるいはまた実施された事業は所期の目的を達成し効果を上げているか、こういった有効性の観点からも検査を実施しているところでございます。  これまで、御質問の漁港整備事業を初め、多目的ダム等建設事業、住宅建設事業あるいは土地改良事業など、各種事業の投資効果の問題を数多く取り上げて事態の打開や進展を促す、あるいは事業の見直しを図るよう処置要求や意見表示を行いましたり、特記事項として問題提起を行ってきているところでございます。  もとより、会計検査院の検査の対象は決算と各種の会計経理、すなわち予算や政策の執行過程あるいは執行結果でございまして、執行ということを離れて予算や政策それ自体を取り上げるというようなことは私どもの立場にないわけでございますけれども予算執行後の過程に問題があります場合にはその原因の究明を徹底して行うことによりまして、関連する予算や政策の効果といったことまで取り上げるようにしてきております。  今後とも、長期計画全体を視野に入れまして検査あるいは評価を行うよう鋭意取り組んでまいりたいと考えております。
  126. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 ただいまの御説明で、会計検査院としても積極的に取り組んでいきたいと、こういうお考えでございます。  次に、例えば漁港整備長期計画であるとすれば、それを所管している水産庁として、これはたしか第九次の計画にもう既に入っていると思いますが、そうすると、この第九次の計画に入る前に第八次があったはずであります。この第八次の計画をフォローアップして全体的に事後評価というのを行っていますかどうか。もし行われているとすれば、それはどういう内容のもので、いつどういう形でどこに公表されて、そしてその後に引き続く、つまり八次から九次へ計画の内容にどのように反映されてきたのか、あるいはさせてきたのかという点についてお伺いしたいと思います。
  127. 嶌田道夫

    説明員(嶌田道夫君) 長期計画という場合には二つございまして、一つは今先生の言われました国全体としての長期計画でございますし、またそれに基づきます各都道府県知事が定めます各地域ごとの、漁港ごとの長期計画がございます。後段の方につきましては、先ほど御答弁いたしましたように、これはそのときの情勢に応じましてその計画見直しを既に行ってきているところでございます。  また、今御質問の第九次漁港整備長期計画でございますが、これの作成に当たりましては、その前の八次計画の事後評価、これにつきましては、漁業情勢全体ないしは社会情勢の変化を踏まえまして基本目標のあり方をまず見直すわけでございます。さらに、漁港ごとの調査を毎年実施しておりまして、その漁船数でございますとか陸揚げ量など、漁港ごとの利用状況を把握いたしまして、この利用状況に基づきまして各漁港ごとの施設整備の充足度を調査しております。この調査等をもとに新たな計画を作成するというようなことになっておりまして、第九次の長期計画の策定に当たりましては、以上のような事後評価を行った上で国会承認を得ているわけでございます。  この事後評価を反映いたしまして、第九次の漁港整備長期計画では漁業情勢の変化に伴う新たな要請への対応、これは例えば消費者ニーズに合いました水産物の安定供給でございますとか、環境に配慮した保全施設等いろいろございます。そういうことに対応いたします。  それからさらに、整備する漁港の重点化も図っていく。二百海里体制の中で沿岸漁業等特に振興しなきゃならない漁港等もあるわけでございます。そういう意味では、整備する漁港の重点化を図っているわけでございます。  今後とも、このような漁業情勢の変化の把握に十分努めまして、計画に事後評価を十分反映していくように取り組んでまいりたいと考えております。
  128. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 前の八次計画の事後評価について、国会に御報告をし御承認いただいたというのはいつの時点なのか、ちょっと確認させてください。
  129. 嶌田道夫

    説明員(嶌田道夫君) 漁港整備計画につきましては、これは漁港法に基づきまして農林水産大臣が計画を策定し、閣議決定を経まして国会の承認を得るということになっております。そういう意味で、第九次長期計画をつくりました際には国会承認をいただいているということでございます。
  130. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 念のため、その承認を受けた時点はいつかということをお聞きしているんです。
  131. 嶌田道夫

    説明員(嶌田道夫君) 平成六年でございます。
  132. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 それでは次に、総務庁にお伺いしたいと思います。  改めて申し上げるまでもなく、総務庁行政監察は、行政の制度、運営を評価し改善する機能を担っているというふうに私は理解しております。したがって、当然こうした公共事業関係の長期計画についても、政府としてのトータルな事後評価をきちんと行うべきである、そしてそれをまた次の計画に反映させていく、あるいは反省すべき点があればそれを直していく、こういう機能を持っているべきであるし持っていてほしいというふうに私は思いますが、この点について総務庁長官としてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  133. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 今、漁港整備五カ年計画についてのいろいろ御議論を承っておったのでございますけれども、私ども行政監察業務というのは、おっしゃるとおり行政が円滑に進んでいるかどうかよく監察をし、うまくいっていないところは直させるように勧告をするということになっております。  ところが、残念ながら大きな役所でもございませんので、今お話しのような例えば漁港整備五カ年計画全体がうまくいっているかどうかというようなところまでは正直なところなかなかチェックはできていないと思います。ただ、従来もそういう公共事業の長期計画につきまして個々にいろいろケースを当たりまして、一体これはうまくいっているのかいっていないのかというチェックはいたしております。  しかし、それだけでは私は十分ではないと思いまして、今お話をお聞きしておりまして大変いいアイデアをおっしゃっていただいていると私は承知をいたしまして、今できるだけ行政監察というものをもっと思い切った強化をしなきゃいけない、本当に行政が正しく行われているようなことをするには監察業務というのは非常に重要なものだと、こう私は認識をいたしております。  私も就任いたしましてから大分行政監察のあり方を変えてまいりましたけれども、今後とも行政監察を強化して、本当にそれぞれの各官庁が、せっかく国民からいただいた税金が生かされて、そしてその目的どおりに行われるようにチェックをし勧告をしていくのは当然だと、今後とも努力をしてまいりたい、こう思っております。
  134. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 ただいまの総務庁長官のお答えを初め、会計検査院としても前向きのお考えをお示しいただきました。  幾つかこういう点をお尋ねしましたのは、先ほども申し上げましたように、どうもこれまでの会計検査にしてもあるいは行政監察にしても、割と個別事業についてどうであったこうであったというところはそれなりにしてきておられるわけですけれども、ではトータルとして、五カ年計画全体としてどうだったか、あるいは七カ年計画全体としてどうだったか、それを少なくとも次の計画に移るステップの段階ではきちっと総括をすべきであろう。そういうルールが必ずしも明確にできていなかったし、また今までの制度上の制約もあって必ずしも十分にできてこなかったという点があったと思います。ぜひ、きょう御答弁いただいた趣旨を踏まえて、会計検査院としてもあるいは総務庁としても積極的なお取り組みをお願いしたいというふうに思います。  それでは次に、本年六月三日に閣議決定されました「財政構造改革の推進について」との関連で大蔵省お尋ねしたいと思います。  この「財政構造改革の推進について」は、全般にわたっての記載がされているわけですが、特にこの中で公共事業の実施等に当たっての留意事項ということで次のように記されております。「費用対効果分析の活用による効率的な整備の推進とチェック機能の強化」、こういうふうに項目が挙げられております。  私に言わせれば、これは単なる留意事項ということではなくて、むしろ公共事業を実施するに当たっての必要条件だというふうに思いますが、それはともかくとして、この「費用対効果分析の活用による効率的な整備の推進とチェック機能の強化」という表現だけでは、具体的に何をどういうふうに進めていこうとされているのか、どうもよくわかりません。  今後の予算編成過程等において、公共事業についての費用対効果分析等の評価手法をどのように活用していこうとされているのか。また、チェック機能の強化とは具体的にはどのように実施していくことをお考えになっているのか。もう少しこの点詳しく御説明をいただければと思います。
  135. 寺澤辰麿

    説明員(寺澤辰麿君) お答え申し上げます。  御指摘のように、去る六月三日に閣議決定されました「財政構造改革の推進について」におきましては、各事業の実施等に当たりまして「費用対効果分析の活用による効率的な整備の推進とチェック機能の強化」を挙げております。財政当局といたしましても、公共事業に対する透明性を確保いたしまして国民の信頼を得ていくためにはこれらの点は大変重要であると考えております。  具体的に申し上げますと、こういった観点から、平成九年度予算におきましても事業実施官庁におきまして実施計画段階で、例えば道路事業、流域下水道事業等の新規箇所採択に当たりまして新たな費用対効果分析手法による評価を行ったところでございます。今後、他の事業につきましても費用対効果分析の活用を図るべく予算編成過程において検討してまいりたいと考えております。  また、チェック機能の強化につきましては、採択後の事業についてその後の社会経済情勢変化等を踏まえまして必要な見直しを行うことを検討していくほか、会計検査院等の指摘予算への反映に努めてまいりたいと考えております。
  136. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 今、大蔵省の方からの御説明でいきますと、特に私はチェック機能の強化というところを重視したいわけですが、今のお答えですと、それぞれの所管省庁においてみずからチェックするということと、それから会計検査院等における会計検査ということをチェック機能として想定されているような御答弁なんですが、総務庁行政監察も含めてですか。
  137. 寺澤辰麿

    説明員(寺澤辰麿君) 含めて考えてまいりたいと思います。
  138. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 わかりました。  そこで、今費用対効果分析という手法についてお話がありましたが、この点について再び会計検査院お尋ねいたします。  私もこの費用対効果分析、特に事業をスタートさせる前の段階での、あるいは予算編成段階での個々の事業に関する費用対効果分析、これはぜひとも積極的に取り組むべきである。そして、そういうことを計画をスタートさせる段階にきちっとしておけば、今度はそれに基づいて事後の評価についてもどうだったかということがやりやすくなるという意味で、ぜひ積極的にやっていただきたいというふうに思うんです。  ただ、この費用対効果分析、実はきのうも水野委員からもいろいろ御指摘があって、基本的には同感なんですが、さまざまな問題点なり批判がございます。  例えば、費用対効果分析という手法については、特に支出がどういう便益をもたらすか、国民経済にどのような影響をもたらすかという点を把握することについてはなかなか困難な面があるというような指摘もありますし、もっと率直に言う人は、費用対効果分析という手法はプロジェクト正当化のための手段として導入されたなどという厳しい批判などもあるようであります。  そこで、事業を評価するための手法としてこの費用対効果分析という手法も含めて幾つかの考え方があるだろうし、あるいはその手法を開発する、そしてその活用の仕方について検討する、こういう作業会計検査院の方でもこの間取り組んできておられるというふうに伺っております。ぜひ、これまでの検討状況あるいは現時点においての到達点などをお聞かせいただければと思います。
  139. 疋田周朗

    会計検査院長(疋田周朗君) 事業の業績評価につきましては、その歴史も浅く、技術的に難しい面もございますけれども、これまでの会計検査活動におきまして主に有効性の観点から積極的に取り上げ、それなりに実績も上げてきていると考えております。このような具体的な検査活動と並行いたしまして、事業の業績評価手法の開発のためにさまざまな取り組みを行っているところでございます。  具体的に申し上げますと、昭和六十一年から外部の学識経験者から成る会計検査問題研究会というものを発足させまして、その研究成果を業績検査に関する研究報告書として取りまとめていただいておりますほかに、この報告を受けまして、さらに諸外国の会計検査院における業績検査の制度、手法などにつきまして、外部のシンクタンクも活用しながら引き続き調査研究を続けているところでございます。  それから、このほか業績評価手法の開発のためには、事業や施策の有効性の検査を重要課題一つとして鋭意取り組んでおります欧米各国の会計検査院との情報交換が不可欠でございますので、そのための国際会議等におきましても活発に取り組んでいるところでございます。
  140. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 今、さまざまな形で検討に取り組んでおられるという御報告をいただきました。これは恐らく私は、具体的に活用してみないと研究だけではなかなかわからない面もあるんじゃないかというふうに思います。そういう意味ではぜひ幾つか、例えば今いろいろ話題にされております費用対効果分析という手法を含めて実際にやってみて、五年間なら五年間動かしてみて、それが今度、事後評価から次の事前評価にどうつながるか、こういうローテーションをしていかないとその手法そのものも磨かれていかないのではないかというふうな気がいたします。ぜひ会計検査院におかれても、さまざまな検討を積極的に活用していただくという方向での取り組みをお願いしたいと思いますし、会計検査院の方での検討だけではなくて、ぜひ各省庁もその手法について大いに学んでいただきたいと、こんなふうに思っています。  それでは、せっかく大臣おいでですので、大臣にお伺いしたいと思います。  改めて申し上げるまでもなく、財政構造改革の推進という観点から考えてみましても、今後ますます公共事業は重点化、効率化していくことが求められているというふうに思います。しかし、例えば先ほども引用いたしました六月三日の閣議決定、この中に盛り込まれております内容は、合計すれば十六本にも上る公共事業関係の長期計画について、計画の中身について個別に評価をし十分に吟味することなく計画の期間を延長するというようなことが書かれております。しかし、こういう中身の事業の評価あるいは中身を十分に吟味しないで計画期間を延長するというやり方では、何のことはない、この間、公共事業関連予算の配分のあり方が極めて硬直的であるということが指摘されていた、それを五年から七年へというふうに期間を延長するだけではないかというそしりを免れないというふうに思います。  今こそ国民生活の実質的な向上に向けて大胆に公共事業の重点化を図る。そのためには、これまで申し上げてきましたように、各事業や各種長期計画について適切な事前評価とそれからその後における事後評価をきちんと実施して、その評価結果を通じて政策的なプライオリティーを決定していくという、こういう手法をぜひルール化していく必要があるんではないか、こんなふうに私は考えておりますが、この点に関する大臣の御所見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  141. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) 朝日委員の御指摘、同感であります。六月三日の閣議は、その基本的方針が全体会議の中で確立をされまして、これに対応するということにいたしました。すなわち、公共事業予算については「財政構造改革の推進について」を踏まえまして、経済構造改革関連の社会資本について、物流の効率化対策に資するものを中心として優先的、重点的に整備するほか、引き続き相対的に立ちおくれておる生活関連社会資本への重点化を図ることといたされております。この基本的な考え方は朝日委員指摘の精神にマッチをいたしておると思います。  また、各事業の実施等については、費用対効果分析の活用、そして御指摘のように事業実施後における評価についても検討してまいりたいと考えております。  予算編成過程におきましては、各事業の実施状況及びその効果をも十分踏まえながら、公共事業予算の一層の重点化、効率化を図ってまいりますことは、財政構造改革の基本的な考え方に合致をいたしますので、全力を尽くしてまいるつもりであります。  なお、公共事業各長期計画についてでございますが、それぞれの改定の際に社会経済情勢変化や事業の実施状況及びその効果等を見きわめることは当然でありまして、その視点を大事にしながら適切に対応してまいる所存であります。
  142. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 ありがとうございました。終わります。
  143. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは、男女共同参画室予算権限の拡大及び定員の増加について質問をいたします。  男女共同参画室は、男女共同参画推進本部の直属の機能を担うものとして、施策の総合調整や各省横断的な施策推進及び男女共同参画二〇〇〇年プランの実施遂行のために設置されているわけであります。  各女性団体から平成十年度の予算増額の要望などがたくさん届いておりまして、各国に比べますと我が国予算規模は非常に低いように考えますが、予算についてはどのような変遷があり、現在どのような科目について重点要求をしておられるでしょうか。
  144. 安藤昌弘

    説明員安藤昌弘君) 先生お尋ね男女共同参画室でございますが、同室の平成九年度の予算につきましては約一億三千七百七十二万円となっておるところでございます。  また、具体的な施策につきましても、先生お尋ねのように男女共同参画室の事業といたしましてだけでなしに、各省庁で行われておりますさまざまな事業あるいはそれらを考えながら私どもといたしましても全体的な推進体制の強化に取り組みたいと、このように考えておるところでございます。
  145. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうした機能推進するために、現在、共同参画室の定員は四名というふうに承知しておりますが、出向やパートも含めてもわずか十七、八名ということになるわけですが、例えばカナダなどではその担当機関の人員は百名とか、あるいはニュージーランドでは三十五名とか、そうした女性問題の衝にかかわる人員増はここ飛躍的に伸展しているわけでございますが、この点についてどのようにお考えか。そして、定員増加に関する将来計画など考えておられるでしょうか。
  146. 安藤昌弘

    説明員安藤昌弘君) 推進体制のお尋ねでございますが、私どもも今の私どもの組織だけではなく、具体的に各省でさまざま行われておりますこれを、先生承知のとおり男女共同参画二〇〇〇年プランという形でまとめまして、これらの中で今具体的にさまざまな形で実施をしようとしておるところでございます。  先ほどちょっと申し上げませんでしたけれども男女共同参画室予算といたしましても、具体的にはむしろ連絡調査経費というような形で、全国女性問題リーダー会議の開催でありますとか、あるいは男女共同参画社会づくりの企画推進、あるいはまた国際協力推進経費等々、そのような形で今進めておるところでございます。  また、職員につきましても、先生指摘のとおり、お話がございましたけれども、私どもといたしましても、できるだけそのような形を踏まえながらも具体的な作業に支障のないように強化していかなければならないと、このように考えておるところでございます。
  147. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 このごろ国際的にいわばさまざまな指数でもって国々の発展度合いというものを表示されてきております。  HDI、人間開発指数、ヒューマン・ディベロプメント・インデックスという指数、これは寿命とかあるいは教育水準それから国民所得を用いて算出した基礎的人間能力の指数でありますが、これは日本は世界第三位というふうになっております。  しかるに、このごろジェンダー開発指数、GDIですね、ジェンダー・リレーテッド・ディベロプメント・インデックス、それからGEM、ジェンダー・エンパワーメント・メジャーという指数が取りざたされております。  GDI、ジェンダー開発指数というところによりますと、これは男女間格差をペナルティーとして割り引くことによって算出をしている。言ってみれば、基礎的能力と生活水準と男女格差というものに着目した指数でありますが、これは現在世界何位でありますか、伸展をしておりますか、お尋ねをいたします。
  148. 安藤昌弘

    説明員安藤昌弘君) 先生お尋ねの国連開発計画、UNDPにおける一九九六年の報告書によりますと、最初に先生おっしゃられましたような、まず健康、教育、所得をもとにした人間開発指標では我が国が三位になっておるところでございますが、今もお話がございましたようないわゆる男女の不均衡を加味した指標、GDIになりますと十一位、それから経済・政治専門職への男女参画度合いを示す指標、GEMになりますと三十七位となっておるところでございます。
  149. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 GDI、ジェンダー開発指数が十一位ということは、これは下がっていますね。前は八位ぐらいだったと思うんですが、これは下がっている。ジェンダー・エンパワーメント測定も、これは経済・政治専門職への参加を数値化したものでありまして、これが三十七位ということになりますと、これも前回の二十七位ぐらいからどっと三十七位まで下がってきているわけです。  とりわけGEM、ジェンダー・エンパワーメント測定というのは政策立案者にとりましては取り組まなければならないということを示す数値だと思いまして、このHDI、人間開発指数との距離が大きい国として日本、フランス、ギリシャなどが挙げられている。そういう意味で、より前進が必要なことを示しているというふうに国際的に見て考えられるわけですが、この点について内閣官房長官はいかがお考えか、それからまた総務庁女性問題担当大臣としてはどのようにとらえられているか、お尋ねをいたしたいと思います。
  150. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 私に専門的な知識があるわけじゃございませんので、いろんな言葉を聞いていますと、その中身が実はよくわからないということを率直に認めざるを得ません。  しかし、きょうも東アジア十二カ国の女性問題の国内の指導者たちが、去年に引き続きまして東京に集まっていただいて会議を開いております。それぞれの国が、私たちから見れば相当経済力の劣っている国でありますが、それぞれの意気込みというか、燃えるような、いわば女性の活動分野の拡大ないしは男女平等こそすべての源泉だということを意識しながら目が輝いておるのを拝見いたしまして、今指摘をされたように、日本は必ずしもその意味で十分な活動をしていると言うわけにはまいらないかとも思います。  いずれにしても、この男女共同参画社会というのは、男女社会の対等な構成員としてみずからの意思によって社会のあらゆる分野において活動に参加をする機会が確保され、もって男女が均等に経済的、政治的・社会的及び文化的な利益を享受することができ、かつ責任を負うべき社会だと、このように認識をいたしております。このような社会実現は、特に少子化や高齢化あるいは経済活動の成熟化、国際化などの経済社会環境の急激な変化に対応して豊かで活力ある社会を目指していくという点で我が国の将来を決定するような大きなかぎであり、政府が一体になって取り組むべき最重要課題、このような思いで、私は個々の問題に必ずしも深入りをできるほどの知見と暇がありませんから申しわけないという気持ちでいっぱいでありますが、気持ちだけは何とかしなきゃならないということでいっぱいであります。御了承願いたいと思います。
  151. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) もう事務局並びに官房長官からいろいろ御答弁がございましたので、私は自分の個人的な見解を申し述べさせていただきたいと思います。  確かにおっしゃるとおりで、大変日本は低いところにあるわけでございます。ただ、考えてみますと、戦前の日本というのは全く女性の立場というのは尊重されていなかったのではないだろうか。戦後初めてこの新しい憲法のもとに男女が平等でなければならないということになりまして五十数年たったわけでございますけれども、その間私は日本は努力してきたんじゃなかろうか。  いわんやこのごろ、この男女共同参画社会あるいはいろいろと国連の場を通じてでもこういう問題が大きく取り上げられてまいりましたし、日本でも国際的なそのような背景をバックにしてこの問題が非常に大きく国民のみんなに理解をされるようになってまいりましたので、私は相当これは進みつつあるのではないか。ですから、今後十年たてば相当上の方ヘランクは行くのじゃなかろうかと思うわけでございますが、残念ながら今までのそういう長い歴史の中で、やはり努力してまいりましたけれどもこういう形になっているのではないかというふうに私は感じております。できるだけ早くランクが上がるように我々は努力をしていかなきゃならないと思っております。
  152. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 両大臣の御決意伺いまして、そのHDI、人間開発指数というものでは世界三位のものが、そうした男女差別をマイナスしたり、あるいは女性の参加指数を掛けていくとがくっと地位が下がるということにぜひ御着目いただきまして、女性の政策決定への参加ということをとりわけ重要な施策として遂行していただきたいというふうにお願いをいたします。  男女共同参画二〇〇〇年プランの大きな柱といたしまして、一つ職業生活家庭生活両立支援ということが問題になっております。男性も女性職業生活家庭生活、家族的責任、育児や介護を担いながら一生を豊かに生きていくためには、子供の保育に関する支援が決定的に重要な役割を果たすと思います。  保育五カ年計画が策定されまして、保育所のいわば契約形態というものが一種の規制緩和の中で措置から契約形態へと変更いたしましたが、この点については、三党合意ではこれまでの公的援助というものを減少させないということが確認されたと思いますが、その点、厚生省としては保育所の政策についてどのような前進を図られておりますでしょうか。
  153. 横田吉男

    説明員(横田吉男君) 保育関係予算の十年度概算要求に当たりましては、私ども、財政構造改革の推進という大変厳しい状況のもとではございますが、今年の児童福祉法の改正の趣旨あるいは三党の少子化問題プロジェクトチームにおける御議論等を踏まえまして、緊急保育対策等五カ年事業の経費といたしまして二千五百七十億円、対前年度五・七%増の要求を行うこととしているところでございます。厚生省全体の予算の伸びが約二%ということでございますので、保育関係につきましてはこれを大幅に上回っているということでございます。  今後とも、種々工夫を図りながら緊急保育対策等五カ年事業の着実な推進を図ってまいりたいというふうに考えております。
  154. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 よろしくお願いしたいと思います。  それから、北京の会議でも確認をされましたが、まず女性に対する暴力というものの禁止を大きな施策の最優先課題に挙げるようにと言われております。  家庭内暴力あるいは夫婦間のレイプという問題を法規制する国というものが随分ふえてきております。我が日本ではまだその点につきましては通常の暴力事件よりもむしろ警察の関与も少ないということで、身近な人の暴力から避難する女性の駆け込み寺が、今八カ所か九カ所だと思いますが、日本で各地域にでき始めました。これは民間のボランティアの手が頼りという状況の中で、しかし大きいところでは年間三百人以上が利用するというシェルターが日本で活動を始めました。米国などと比べますと、もう全国で千二百以上の民間シェルターが活躍していて、各地方自治体とかが財源の約七割を担って活動している。それに引きかえ、我が国では自治体の公的補助は三カ所ということになっております。  こうしたシェルターに対する施策というものが、男女共同参画二〇〇〇年プランで暴力の廃止ということを挙げる以上、喫緊の課題だと思うわけですが、厚生省はその点どのような取り組みをされようとしているのか。また、これに対する法務省の取り組みというのは現在ではどうなっているんでしょうか。
  155. 横田吉男

    説明員(横田吉男君) 家庭内の暴力に対する母子の対策でございますけれども、私ども一つは婦人相談員による相談等の対応を行いますとともに、緊急時等の場合における婦人相談所における一時的な保護あるいは婦人保護施設における収容、保護等を行っているところでございます。  また、児童福祉面につきましては、夫の暴力によりまして母と子が家出をしているというような婚姻の実態が失われているような場合におきましては、母子寮等への入所措置をとりまして母子を保護しているところでございます。  また、平成七年度から、母子寮や児童擁護施設等におきまして一定期間母子の保護、養育を行うための子育て支援短期利用事業というのを実施しておりますが、母子が夫の暴力等によりまして一時的な保護が必要になった場合にも、こういった事業を活用いたしましてその保護に努めているところでございます。  民間等におきましても、こういった面でいろんな対応が進められていくということは私どもとしても大変望ましいことと考えておりますし、またこういった私どもの既存の施設も今後とも一層活用を図りまして、こういったケースにつきまして適切な対応を図ってまいりたいと考えております。
  156. 横山匡輝

    説明員(横山匡輝君) 法務省の対策でございますけれども、法務省の人権擁護機関では、従来から女性に対する家庭内暴力を含めた女性への人権問題に対し積極的な啓発広報活動を行っているところでございます。具体的には、「女性地位を高めよう」を強調事項に掲げまして、人権週間を中心に、年間を通じて全国各地でテレビ放映、ラジオ放送、新聞、週刊誌等への関連記事の掲載、さらには講演会、座談会、シンポジウムの開催、あるいは啓発冊子の配布等の啓発広報活動を実施しております。  また、法務局、地方法務局及びその支局において常時開設しております人権相談所におきまして、女性人権問題を含めた各種人権問題に対する相談に応じ、適切な対応、処理を行っているところであります。その際、人権侵害の疑いがある場合には、人権侵犯の事実の有無を確かめるための調査を行い、その結果に基づき、事案に応じた適切と思われる処理を行っているところでございます。
  157. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうした施策推進することを期待しているものでございます。  次は、総務庁規制緩和についてお尋ねをいたしたいと思います。  今年度は規制緩和推進計画三カ年の最終年度に当たります。これにつきまして、総合的に規制緩和が進んだ分野、そして残された分野をどのように把握しておられるのか、お尋ねをいたします。
  158. 河野昭

    説明員(河野昭君) 今先生指摘になりましたように、規制緩和計画は三年計画でございますが、この三月に再改定をいたしまして、当初から累計二千八百二十三事項を閣議決定しております。それで、全体的にはこれは約七割ぐらいが措置済みでございまして、あと三割程度が残っているということでございます。いずれにしましても、十月にはその進捗状況を調査しようと思っておりますので、これについては調査の結果がまとまり次第改めて御報告したいと思います。  今御指摘の、分野ごとに具体的にどういうものが進んでどういうものが残っているかということでございますが、例を挙げて申し上げますと、例えば情報通信分野、ここでは携帯電話の売り切り制の導入、あるいは流通の面では米の流通の規制緩和、金融の面では外為業務の自由化、エネルギー部門では発電部門への参入自由化というようなものが措置済みのものでございます。  なお、今後措置すべきことで主なものを例示として申し上げますと、例えば情報通信分野では、いわゆる公−専−公、公衆通信回線−専用線−公衆線の接続、これは国内は済んでおりますが、今後国際につきましてもこの接続を可能にするようにしていく等、また運輸については全般的に需給調整規制の廃止というのが課題でございます。  また、金融につきましては、二〇〇一年にニューヨーク、ロンドン並みを目指してビッグバンを実現していく、こういうことが大きな課題として残っている分野でございます。
  159. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 先般、「規制緩和推進の現況」として規制緩和白書がまとめられましたが、そこではさまざまな分野における経済効果の定量分析ということが行われております。  この場合に、規制緩和には光もあれば影もあるということで、とりわけ光の部分が物差しではかられそうなんですが、実際は影の部分もあるということで、例えば大店法の場合ですと、大きな店ができて需要が非常に高まったと同時に小売店がつぶれていく。売り上げたけをプラスマイナスして定量分析するという手法、これはやむを得ないのかもしれませんけれども、そういった点でまとめられております。しかし、町並みの衰退とか、あるいは交通の渋滞とか環境の悪化とか、さまざまな影の部分というものについては、定量分析をなさったときにどのような議論があったのでしょうか。
  160. 河野昭

    説明員(河野昭君) 先生指摘の計量分析といいますのは、一九九〇年度から一九九五年度の間に大体年度平均七・九兆円の需要効果があった、そういう点を御指摘であったと思います。  これは、実はことしの春、経企庁がマクロな分析として実施してまいったものでございますが、まさにこの数量的な効果というものを把握するときにはプラス面、いわゆる数量化できる部門だけを積算したものでございまして、例えば今御指摘の大店舗の進出による町並みが云々というものはいわゆる数量化していない、計量をしていないというふうに聞いております。
  161. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 規制緩和で最も重要なことは、やはり我々の日本の国のモデルをつくって諸外国の失敗に学ぶということが一つありますけれども、どういう社会をつくるかという目標と次の世代への責任と経済政策が一致していくということが一番基本的に重要なのではないかというふうに考えるわけです。規制緩和をすることによって産業の空洞化は回避できるのではないかというふうに考えられているわけですが、海外シフトはなかなかとまらないということもありますし、サービス産業に大きな期待を寄せていてもベンチャービジネスなど我が国ではまだなかなか伸展が見えてこないということがあるわけです。  したがって、規制緩和で一体我が国としてはどんな社会を見通しているのかということが非常に重要だと思いますが、この点について大臣は規制緩和の効果というものをどのようにお考えなのかお尋ねをいたします。
  162. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) やはり私ども、二十一世紀を目指して日本の国というのは国際的に開かれた国によりなっていかなきゃならないということは一つあると思います。それからいま一つは、自由にして公正な経済社会をつくり上げるということがあると思います。  そういう意味においては、個人にそれぞれの自己責任というものをしっかりお持ちいただくことと、もう一つは市場原理を導入していく社会になっていかなきゃならないんではないか。それに伴って規制緩和をそれぞれ進めていく。そうなると、今御指摘のように確かにデメリットの面もございますけれども、それはそれで別にそれに対応する政策を考えていかなきゃならないというふうに私は考えており、規制緩和はやはりそういう方向で緩和をしていく、しかしそれに対して、影の部分に対しては別の対策を考えていく、こういうふうに進めていかなきゃならないんではないかと思っております。
  163. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 確かに、規制緩和というものが必要ではないということではないわけですけれども、その影の部分に対する手当て、例えばニュージーランドなどではインフレの抑制とか政府の財政の均衡化というのは実現したけれども国民の六分の一が貧困層に陥っている。子供のそういう貧困とか若い人の自殺率がふえているというようなことがこのところ言われ始めてきて、規制緩和をしている国もさらに再規制あるいは規制の組みかえということの議論に入っている中で、我が国としては手当ての部分、影の部分を防止していく施策というのが非常に重要だと思うわけですが、この点についてはどういうふうなイメージを持っておられるんでしょうか。
  164. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 例えば、今お話がたまたまございましたけれども、大型店の問題でございます。来年度の予算も含めて今通産省と建設省などが中心となって進めておりますけれども、従来、単に大店法の改正という形で緩和を進めてまいりましたが、先ほどもちょっとお話がありましたが、新たにそういう大型店が進出してくると、今までの商店街とは全く違ったところに大型店がぽかっとできる、そこは交通が逆に渋滞してしまう、そして片っ方の商店街というのが廃れていく。先ほどそういうことで御指摘があったと思うのでございます。  こういうものを今度は町づくりと商店街のあり方というものを一体と考えて、全く別のところに大型店を設けられることは町づくりに反するという形になれば、例えば田んぼの中に大型店の進出するようなことは規制をしていくというような考え方を新しい政策としてとろうとしておるわけでございます。これなどはいわゆる影の部分を十分考えてやろうとしている政策の一つだと私は思っております。
  165. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 時間を超過しております。
  166. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 わかりました。  これから再び推進計画見直しが継続されるわけですから、ぜひその影の部分の手当てというものを十分施策の中に盛り込んでいただいて、日本のこれまで積み上げたそうした社会のきずなというものを大切にしていっていただきたいということを御要望申し上げます。終わります。
  167. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 ガイドラインの見直しに関連して、昨年三月、中国のミサイル演習、米軍の出動などで台湾海峡の緊張が高まった、そういう事態がありました。  これについてお尋ねしたいんですけれども、その際自衛隊としてどんな行動をとられたのか、その点お伺いいたします。
  168. 太田洋次

    説明員(太田洋次君) お答え申し上げます。自衛隊は、常日ごろから我が国周辺におきまして、航空機等によりまして我が国領域、その周辺を行動する航空機、艦船等につきまして常続的な監視を行っているところでございます。  当該演習に際しましても、中国軍の一連の軍事演習の動向については十分注意を払わなければいけないという考え方のもとに、航空自衛隊それから海上自衛隊の航空機等による情報収集態勢を強化しまして、当該演習の詳細について可能な限りの情報把握に努めたところでございます。
  169. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 その際どういう機種を使って情報収集をしたのか、それをお答えください。
  170. 太田洋次

    説明員(太田洋次君) お答え申し上げます。  防衛庁は、航空自衛隊、海上自衛隊がこの種監視をする航空機を保有してございますけれども、この演習に際しまして、それぞれ海上自衛隊、航空自衛隊のどういう機種を具体的に使ったかということについては、事柄の性質上ちょっと答えを差し控えさせていただきたいと思っております。
  171. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 秋山次官がE2Cが出動したと言っていますよ。それからEP3Cも出動しているでしょう。否定されますか。
  172. 太田洋次

    説明員(太田洋次君) 私ども自衛隊はP3CそれからE2C等を保有しておりますけれども、どういう事態に際してどういう情報を収集するために具体的、個別的にどういうことをやっているということを明かすのはちょっと差し支えございますので私そういうふうに申し上げましたけれども、一般論として申し上げれば、そういう航空機、つまり今私が申し上げましたような航空機を保有しているということは申し上げられます。そういう航空機、艦艇を使って情報収集をしたということでございます。
  173. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 そういう航空機を使って情報収集を行った、それを強化したということを認められたと思います。  その際、米軍との関係なんだけれども、通常、協力関係があるわけだから、その際も協力関係が続いたということですね。
  174. 太田洋次

    説明員(太田洋次君) 米軍との情報交換一般につきましては、米国との間に日米安保体制がございまして、平時、有事を問わず、相互に情報交換をするということは当然であるというふうに考えておりますけれども、この演習に際しまして、演習の監視情報等につきまして具体的に情報交換を行っているかどうかという点については、これも事柄の性格上お答えを差し控えさせていただきたいと思っております。
  175. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 国会に対してそういうことを報告しないというのは一体どういう態度なんだ。こういうことが大問題だと思うんですよ。  もう一回答えてください、どうしたか。
  176. 太田洋次

    説明員(太田洋次君) 一般論を申し上げまして、米国との間には日米安保体制を結んでおりますので、平時、有事を問わず、いろんな形での情報交換を行っているということは言えますけれども、具体的にこれに際してどういう情報をやりとりしたかということについてはお答えを差し控えさせていただきたいということでございます。
  177. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 全く国会に対する軽視だと私は思いますよ。こういう問題について国民に明らかにしない、国会に明らかにしない、一体それどうなんですか。  秋山事務次官は七月二十八日に、こういうE2Cを飛ばしたということをはっきり認めていろじゃないですか。そしてその上で、中台危機のような事態はガイドラインでも想定しているとはっきり述べているじゃないですか。  次官が言われたことをそのまま認められないんですか、国会では。
  178. 太田洋次

    説明員(太田洋次君) 私どもの次官がどういろふうにどういう場で答えられたのか、ちょっと私手元に資料がございませんのであれですけれども、具体的にどういう手段を使って、それでもってこういう情報収集したと……
  179. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 はい、結構です。  この問題というのは重大なんですよ。去年の三月に何が起こったか。この問題で今認められたように自衛隊は情報収集態勢を強化したんです、E2C、そしてEP3Cを使ってね。これは電子情報収集機ですからあらゆる飛び交う電波を全部集める、そういう活動をやってアメリカとの間でリアルタイムで情報交換をする、そういうことが実際に起こっているわけですよ。そういうことが行われている。アメリカではそういうことをあけすけにはっきり認めているんですよ。  最近、日本から法律家の代表団がペンタゴンを訪れた。サコダ日本課長は、そこではっきりとそういうことを示唆しながら、周辺地域についても、もう台湾海峡のあの経験があるからと前置きして、周辺地域、日本あるいはアメリカの国益に懸念を与えるという安全保障上の状況があればそれが地域と言うんだ、そう言っているわけですよ。秋山次官が中台危機のようなものがガイドラインで想定されると言っているのと符合するのですよ。  サコダ中佐はこの問題について、まさにそういう考えだからガイドラインの範囲というのは非常に広いんだ、言ってしまえばボーダーレスなんだ、この考えでいけば限りなく広がるんだと言っている。だから、台湾海峡が入るか入らないかなんというのはちゃんちゃらおかしい話だ。朝鮮半島はもちろん入る、台湾海峡ももちろん入る、そう言っているんですよ。そして、しかも彼は、私の言うウイ、我々という意味は日米両国政府を代表しているととっていい、大変おこがましい言い方だけれどもと、そう前置きして述べているのですよ、こういうことを。だから、国会でこういうことを明らかにされないということはもう重大問題ですよ。  官房長官、先ほど地域を述べるのは政府の見解として不適切と言われましたけれども、ガイドラインの周辺有事には中台紛争は含まれるでしょう、当然。
  180. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 私は様態を申し上げているので、地域を言っている問題ではないと申し上げました。
  181. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 テレビではっきりと私は見ましたけれども官房長官は台湾海峡を当然含むと言われているんですね。何で今そういうふうに言われなくなったのか。私は、梶山長官がそういうふうに台湾海峡が入ると言われた、その話は非常に正直な話だと思うんですよ。しかし、今本心そう思っていてもいろんな状況でもって言えない、中国の批判がある、そういうことでしょう。だから、実態を変えずに、事態を変えずに言葉だけ周辺事態、固有名詞で挙げない、限定しない、地理的概念じゃない、そんなこと言ったら始まらないんですよ。  そうしたら、長官、周辺地域から台湾が排除されているとは言えるんですか言えないんですか。もう一回お尋ねします。
  182. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 地域を限定して言っている話ではありません。
  183. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 官房長官がオウムになっちゃった。  私はやっぱり実際何が起きているかというのが問題だと思うんですよ。去年三月のあの台湾海峡をめぐる危機、緊張、その際に起こったことは何か。やはりそれを踏まえて今新しいガイドラインということで打ち出されている、その点で私はこの問題が極めて重大だ、このことをきっぱりと指摘しておきたいと思うんです。  それから、次の問題ですけれども、私は実は独自にアメリカ海軍の公式文書ですけれども、こういうものを手に入れました。三百ページの大部なものですよ。これは皆様にお配りしている資料にもありますけれども、太平洋艦隊諜報センターが太平洋艦隊総司令官のために作成したものです。ポート・ディレクトリーというもので、港湾案内というふうにでも訳しましょうか、これは八〇年代から九一年まで収集された情報を載せているんですね。その最新版です。  ここには、日本の港湾として資料一にある港湾、資料四には英文の港のリストを載せておきましたけれども、リストがあります。全国で二十五カ所の港。文書では日本以外の太平洋地域に沖縄三カ所が含まれておりまして、全部で二十八カ所書かれておりますけれども、そういうものがある。  この情報収集の方法というのは、これまで米艦船が友好親善の名目で入港した際に、その艦長に資料五にあるようなアンケート用紙、それは一部ですけれども、十八ページにも及ぶそういう詳細な調査項目を挙げて、出港までに書き終えるようにと義務づけて、寄港のたびにいつでも使用可能な最新のものに更新する、そういうことをやってきたわけですよ。  それじゃ、どんな情報収集をしているのか。お手元の資料にあります。資料二です。航法情報として、港湾の位置と状態、灯台の位置、水先案内人の調達方法、英語の能力、曳船の能力、ドック、桟橋、停泊場所の良否、水深等々。係留条件と施設として、波止場、桟橋、岸壁の状態、燃料の調達方法、貯蔵施設を持つ会社名、修理施設、能力、作業の質、貯蔵庫、倉庫、港湾労働者の規模、積み荷量、熟練度、クレーン施設、鉄道、ゲージ等々。サービス、兵たん、運営として、はしけの状況、給水、電話通信施設、検疫、医療施設、医者の英語能力等々。対人関係として、上陸の際のクラブ、バー、レストラン、ホテルの状態と値段、非合法薬物の有無、買春等々。その他として、港湾地域の政治、社会経済活動にかかわること、寄港反対運動等々。こういう項目が具体的に五百項目以上挙げられているんです、これを書き込めという形で。  官房長官、この文書を御存じですか。
  184. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 初めて拝見しました。
  185. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 外務省。
  186. 田中均

    説明員(田中均君) 私どももこの資料そのものについては承知いたしておりません。
  187. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 知らないわけですか。知らないなんて言わせませんよ。もう一回答えてください。ここは国会ですよ。
  188. 田中均

    説明員(田中均君) もちろん報道等では承知しておりますし、今この資料をいただいております。  しかしながら、日米安保条約並びに地位協定に基づきまして米国艦船の開港への出入港というのは認められておることでございますし、当然こういうこと、すなわちこのほとんどが公刊の資料にも出てくることでございますけれども、こういう調査をするということ自体が問題であるというふうには私ども考えておりません。
  189. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 問題じゃないと言われたけれども、まず最初に、あなたがこれを知らないと言ったのは大問題ですよ。  これは九四年の六月、国会答弁で時野谷政府委員がこういうふうに述べているんですよ、アメリカの海軍は随時世界の各地の主要港湾の情報収集を行っておるというふうに承知していると。もちろん日本も含めて。それでも知らないというのは職務怠慢かうそをついていることになるんですよ。大問題です、これは。  しかも、アメリカがこういう情報を収集しているということについて問題ないということを、どうしてそんなことを言えるんですか。  例えば、情報収集の中にひどい話があるんです。戦略上の問題から違法行為まで書かれているでしょう、ここに。私は一つ例を挙げたい。買春、こう書かれているんですよ。街頭、バーなどで可能かという調査項目があるんです。多くの港では買春は非合法で、見つけるのは難しい。性的な接触はしばしば性病をもたらすと書かれている。買春は合法とさえ報告されている港もあるんです。ある港では買春は小さなスナックで可能とまで書かれている。  それから、こう言うと思い起こしますよ。米軍人によるあの女性暴行事件の後、こういう事件は後を絶たないけれども、米太平洋司令官がレンタカー程度の代金で女性を手に入れることはできるのにと発言して辞任した、こういうこともあった。  また、麻薬について、幾つもの港でハード、ソフトの麻薬の入手は可能と書かれているんですよ。  こういうことを書かれていて、こういう調査が当然だと言えるんですか。外務省、どうなんですか。
  190. 田中均

    説明員(田中均君) 私ども、個別の記述について承知しているわけではないということでございまして、先ほども申し上げましたように、安保条約上、開港への出入港ということは認められておりますし、その観点から、安全性とかそういうことについて調査をするということ自体が問題だとは私は申し上げていないわけです。
  191. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 今述べたように、日本ではこういう犯罪に当たる買春、麻薬、こうしたことがアメリカの海軍の公式文書に堂々と書かれているんですよ。そして、これが寄港するたびに乗組員にその地域の港について紹介されるんです。  これはまさに犯罪の勧めとでも言うべき文書じゃありませんか。こういう、言ってしまえば、日本の主権が踏みにじられている大変な事態だと私は思うんですよ。  長官、この文書を知らないでは済まされないと思うんだけれども、こういう事態があるということをこのまま放置しておいてよろしいと考えますか、官房長官
  192. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) あることを知らないのが不届きだと言われれば、それは不届きに該当する私は人間かもしれませんが、そこまで私のところに提示を求めるだけの余裕とあれがあるのかどうか。これは残念ながら行政の中の権限の枠を越えるというか、責任を越える問題でもあろうかと思います。  そして、今お示しになった米軍の資料でありますが、一般常識論からいって、日本に駐留をしている米軍がその土地、その港とかそれぞれの基地周辺の様態を知ることは、これは当然用兵上行われなければならない、私は軍としては当然のことであろう。それが日本の国法に触れるかどうかという問題になればまた別であります。  そして、指摘をされたように、麻薬とかその他のことに関して、現実社会的な現実というものを見定めるということも、日本で違法であるかどうかという以前に、軍の構成員の方々の健康やその他を守るために必要とあらば、そういうものは社会的なガイドとしてあることもこれまた社会的な必然であり、我々が外国へ行く場合の観光のガイドブックの中にもそういうものが散見をされるという現実もまたお知りを願いたいと思います。
  193. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 官房長官、聞き間違いだといけないんだけれども、麻薬や買春がそういうもので必要なものと言われたんですか、もう一度。
  194. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 必要なものとは私は申し上げておりません。そういうものが社会現実としてあったとするならば、それは抑止力というか予防するために軍はそれだけのことをすることが当然であろうと、そういう意味で申し上げました。
  195. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 それは重大発言ですよ。  だって官房長官、日本の領土で日本の法律で禁止されているそうしたことについて、社会悪から守るための手だてとしてそれはしようがないじゃないかなんて、そんな議論はめちゃくちゃですよ。  私は警察庁と厚生省に対して資料を求めて、過去五年間にアメリカ兵の薬物犯罪の検挙者数を挙げてもらった。百十九名に上っているんですよ。これは恐らく氷山の一角だと思うけれども、これだけの犯罪者が出ているんです。それに対して、官房長官、本当に正気ですか。本当にいいんですか、そんなことを言って。
  196. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 私は、こういう資料があるとするならば、日本の麻薬取り締まり、あるいは税関、あるいは警察、総力を挙げてこういうものの防圧に努めなきゃならない。かつて私は法務大臣時代に新宿のいわばその地域を視察いたしたことがあります。現実にそういうものがあるという社会的な事実をこれは認めないわけにはいかない、あったということを。それと取り締まりという問題はまた別個な問題で、取り締まりは厳格に行っていかなければならないという私は指示を出した覚えがあるわけです。
  197. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 アメリカの公式文書に日本の国土でこういうことが可能だということが書かれているということが問題だと述べているんですよ。ですから、それについてそれでもしょうがないというんだったら、本当に情けない政治だと私は思います。  それから、もう一つこの問題で重大なのは、友好親善を目的としながら実際には何をやっているかというと、情報収集なんですよ。艦長の第一の目的がそれになっているんだ。だから、各種の地図やデータを集める。さまざまな手引、これも集める。民間港湾がいつでも利用できるような情報を集めろということを至上命令とされているんですよ。しかもそれで重大なのは、こういう内容からいって、倉庫がどうだとか水深がどうだとか、そういうことを含めてあらゆる情報がある。こうした問題については日本の政府協力がない限り到底できない、そういう内容なんですよ。  この調査に防衛施設庁、海上保安庁などの政府機関が協力したということはありますか、外務省。
  198. 田中均

    説明員(田中均君) そういう事実があるというふうに私どもは全く承知しておりません。
  199. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 幾つかあるんですね、実際に報道されているものだけ見ても。例えば横須賀の在日米軍港湾統制部が小樽海上保安部からさまざまな情報を受けたとか書かれているじゃないですか。外務省としてそういうものをきちっと調査する、このことをやっぱり要求しておきたいと思います。  それから、もう一つ重大なこと、これはやっぱり根本問題として日本の主権の問題です。日本のことがあらゆる形で調べられている。官房長官、買春、麻薬だけ私は取り上げたけれども、もっとほかに根本問題がたくさんあるんです。日本の軍事上、戦略上あらゆる重要な問題、そうした安全保障上の問題もアメリカはすべてつかんでいる。そういう事態がこの詳しい報告書の中に全部書かれているわけです。.まずそれを見てから言わなきゃならないでしょう、論評しなきゃいけないでしょう。  ですから官房長官、まずこういう事実について、外務省は実際は持っているんだけれども持っていないと言うから、官房長官のお力で、アメリカに言えばすぐくれますよ、これは情報公開で簡単にとれる文書なんだから。とるときには苦労するけれども。だから、アメリカ政府から手に入れてこれを読んで、そしてどの問題点があるか、そのことをしっかりつかんでいただきたい。そしてしかるべき対応をとっていただきたい。このことを要求したいんですが、官房長官いかがですか。
  200. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 直ちにどの分野をどの程度精査できるかわかりませんが、私も関心のあることですから、これからの政治生活を通じて調べてはみたいと思います。  それから、委員が御指摘の国家主権、国家主権の中において機密性が多いかあるいは透明性が多いかという問題で、諸外国の方々が日本を知ることを拒否するということと主権国家という問題は別な問題であります。そのことだけはお互いにはっきり認識をしながらやりませんと、主権国家イコール鎖国国家だということにはならないと思います。
  201. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 私はそんなことを言っているんじゃなくて、開かれた国というのは当然なんです。ただ、アメリカ海軍が日本の港を、民間港湾をとことん調べ上げる。そして明日、小樽にインディペンデンスが入港するということになっているじゃないですか。こういう事態がさらにいろいろな形で続く。首都東京には今月の二十何日かからブルーリッジが入港するということも外務省から聞きましたよ。日本に今アメリカの艦船がわっといろんな形で入るんです。例えば、きょうもらったもので言っても、揚陸艦のベローウッドが鹿児島に九月二十二から二十五日に入る。駆逐艦ジョン・ポール・ジョーンズが九月八日から十一日に鹿児島にやはり入る。外務省の資料ですよ。  友好を目的としながら何でこんな一遍にいろんな形で入ってくるのか。何で小樽にインディペンデンスが行くのか。これは本当におかしなことなんですよ。そこで、友好のためだ、休養のためだ、そんなことを頭から信じていたら本当にばかげたことになる、大変な事態になる。このことをはっきり申し上げまして、質問を終わります。
  202. 堂本暁子

    堂本暁子君 それでは、官房長官が今お出になりましたので、まず総務庁長官質問させていただきたいと思います。  女性問題担当大臣になられて、さぞ女性の政策については詳しくおなりになったものと期待しているところです。今、大脇議員の質問にもございましたように、GEM、これは女性がどの程度意思決定の場に参画しているかということの順位を決めたもので、国連開発計画、「経済成長と人間開発」、一九九六年版でございますけれども、この中に各国の状況が詳しく書かれています。これは別に女性の問題だけを取り上げているわけではございませんで、経済成長と人間開発、その両者がバランスしていることが真の意味での先進国であるという視点が盛られていると思っております。  この今、大脇議員が指摘したGEMですけれども、これは女性の問題ですが、ここで大事なことは三つ。経済成長と人間開発そして女性地位と申しますか女性の立場、開発、女性開発と日本語では言いませんけれども、ジェンダーの問題がどれだけそれらとバランスしているか。この三者が一つになって私は真に現代的な国という理解が持てるのではないかというふうに思っております。  今、大脇議員が言われました三十七位というところですが、その表の頭の方はほとんど先進国です。ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ニュージーランド、カナダ、ドイツ、オランダ、アメリカ、オーストリアと、ずっと十位まで先進国が並んでいます。それから後、途上国、先進国が入り乱れていますが、十二位はスイス、イタリア、オーストラリア、ベルギー、十八位がイギリスです。しかし、そこから後は全部途上国、南アフリカ、キューバ、ハンガリー、アイルランド、ポルトガル、スペインが入っていますね。それから、中国、コスタリカ、メキシコ、ボツワナ、レソト、コロンビアと続いてまいりまして、その後に三十七番目に日本が出てくる。  この報告書の中に書いてあることで非常に興味が深いことは、ジェンダーの平等、男女が平等であるということは必ずしも高い経済成長とは関係がないというのが国連の分析でございます。  そこのところで先ほど武藤長官がおっしゃられたのは、戦後、戦前に比べると女性地位はよくなったのではないか、憲法で男女の平等が保障されたとおっしゃいましたけれども、私はむしろ状況は遅くといいますか、そういった三者、経済成長、人間の開発、そしてジェンダー、男女の平等というものをバランスよく保っていこうという政策がこの五十年間足りなかったのではないか。例えば、大臣の後ろの席を見ましてもほとんどが男性の役所の方たちです。管理職を比較いたしますと、日本は男性一〇〇に対して女性は九、これは企業その他、地方自治体も全部含めてですけれども、アメリカの場合は男性一〇〇に対して女性が六七です。  この中に「先進国」というところがありまして、日本はもちろん先進国に入りますけれども、「人間開発のバランス・シート」というところがあります。そこの「女性」のところに、これはプラスの方の国、よく進歩した方の国では、「女性はいまや労働力の四〇%以上を占め、行政職や管理職の四分の一を占めている。」と。これがいい方の例です。日本はむしろ悪い方の例なんですが、行政職、管理職はほとんど一%にしかすぎない。  これはやはりそこにそういう、例えば必ずしも私は女性が男性に比べて劣っているとはどうしても思えない。私も企業におりましたときに就職試験をしました。そうすると、特にマスメディアの世界では今や成績では上から三十番ぐらいまでか性が占めてしまったりするわけです。ですから、からくりとしてもっと男性を採用する、そういうことが企業でも行われ、あらゆるところで行われていると思うんです。やはり、この上位にありますノルウェーとかスウェーデンとかいう国は完全に交代制をとって、その成績にかかわらず、あろパーセンテージは女性を採らなければいけない。あるいは、アメリカだったらマイノリティーを採らなきゃいけないというようなことをやっています。  ノルウェーの女性がこう言いました。ですから八十年かかりました。最初に女性をそれだけのパーセンテージ採用したらば、ぐっと下がる。だけれども、それでもそうやって女性社会的に開発していかない限り、一世紀間かかった仕事だと言ったんです。それでブルントラントさんのように世界をリードするような総理大臣を持つ国になったわけだと思います。それにはそれだけのシステムと、それから国としての意志があったと思うんです。  やはり私は、今長官が憲法で男女平等が決められたから、それでその成り行きに任せていたのではやはり三十七位から上に上がらない。その意味で、やはりシステムをこれからの二十一世紀に向けてよくしていかない限り私は少子化はさらに進んでしまうと。なぜならば、豊かに働きながら豊かに子供を産めるような環境もつくられていないということがございます。  そういった意味で、日本の政策は憲法に保障されたからそれでいいというものでは決してないと思いますが、長官はどのようにお考えでしょうか。
  203. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 先ほど申し上げたのは、新しい時代になったからよくなったというよりは、今たまたま外国のお話がございましたように八十年かかってそこまで来たと。日本の場合まだ五十何年しかたっておりません。いわゆる戦前、国連もなかったわけですからこういう統計ボあったのかどうか私は存じませんけれども、多分戦前を比較したらもっとずっと下ではなかったかなと、日本の場合。もしこういう国際的な統計があったとすれば、戦前においては日本は三十七付よりもっと低いところにひょっとしたらあったんじゃないかなと私は思うわけです。  新しい憲法ができてきて、男女平等になって去て、そしてできるだけ女性も進出されてきた。しかし、御指摘のように、それでよくなったというんじゃなくて、少なくとも外国と比べておくれているのはそういうことが一つはあるんじゃないでしょうかということを私は言ったつもりでございます。  しかし、最後に申し上げたように、そうかといって、今それじゃ日本の政策が男女共同参画で十分だとは思っておりませんので、男女共同参面二〇〇〇年プランもありますし、これからはできるだけ努力をしていかなきゃならぬということを最後に私は申し上げたつもりでございます。  ですから、戦後においても、決して私はそういう男女平等になったからいい政策がどんどんと出てきたとは思いませんし、あるいは世の中の経済成長がこうやってどんどん伸びてまいりまして、そして女性もどんどん職場に進出されるようになりましたけれども、戦後においても正直、経済成長がそんなにどんどん出てくるまでは必ずしも女性職場進出というのは少なかったんじゃないかと私は思うんです。  そういうものがやっぱり積み重ねで来ておりますので、急にここでよほどの政策をとってもこのランクが上へ上がることは難しかろうと。しかし、このランクを上げていくために、我々思い切って、男女共同参画二〇〇〇年プランもつくっていただきましたし、これからはそういう形でできるだけの政策をやって、少しでもこのランクを上げていくように努力をしていかなきゃいけないというつもりで私は先ほど申し上げたつもりでございます。
  204. 堂本暁子

    堂本暁子君 女性の労働の場への進出はもう大変多うございまして、四〇%は女性で、むしろ私は安い賃金で働いているのが日本の女性だと思うし、この経済成長を支えたのは女性だということはいろいろ言われているところです、パートで働いていて。  むしろ、このGEMといいますのはそうではなくて、意思決定の場への女性参画を比較した数字なんです。ですから、国会もそうです。それから管理職もそうです。それから大学に至ってはもっとそうです。そういった教授会というところに果たして何人女性がいるか。そういったところに積極的に起用して、意思決定の場に女性の視点を入れていくということが非常に少ないという意味でございまして、労働界、労働の中ではむしろ日本はもう本当によそと比較してより多いぐらいです。  きのう発表されました行政改革会議中間報告、ここにございますが、私はここで評価させていただきたいと思いますのは、内閣府、これがこれから最終的に実現すればの話ですが、総務庁長官、責任を持っていらっしゃいますけれども内閣府と名づけられた機関に経済政策や科学技術政策と並んで男女共同参画が位置づけられております。これはまさに、三十七位からせめて十位以内までに日本の女性が入ることによって、日本の国自体がそういった経済成長、人間開発、女性だけははるかに途上国よりおくれているというような状況からバランスをとるような形に直していく、直していくと申しますか前進させるための一つの発想かというふうにすら思いました。  よりこの体制を強化していくことが大事ではないかと思いますけれども、これは総務庁長官官房長官のお二人に御所見を伺いたいと存じます。
  205. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 行政改革会議で議論いたしておりますときも、今御指摘がございましたが、私どもは、堂本先生を初め女性議員の方々からもそういうお話もございましたし、会議においては猪口委員から非常に強い御要望もございまして、とにかく総理の直属の機関で男女共同参画問題というのは取り上げるべきだと、こういうことで我々は結論を出したわけでございます。当然そういう姿になった以上は、今御指摘のような方向でどんどん政策も具体的にそこで取り上げていき、そうなってくれば、今御指摘ございましたが、十番になるのか何番になるのかよくわかりませんけれども、私は結果的には二十一世紀のなるべく早い時期にこの三十七位が十位以内にきっとなるに違いないのではないかというふうに考えております。
  206. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 観点が違うかもしれませんが、今、堂本委員がおっしゃられるように、男女共同参画二〇〇〇年プラン、これができたのでありますから、これに向かって一踏ん張りすることがまず大事でありますが、我々今第一段階というか、この高度経済成長がやはり女性職場進出を促したことは間違いがございません。  しかし、その質においてこれからどうかという問題があるわけでありますが、量が充足をされれば必ずその量の、質を高めるためにそのトップに同性の方がいないとその質を高めることができないという、これからは私たちはその障害というか、そういうものを乗り越えて初めて男女共同参画社会が生まれるわけでありますし、特に少子化の社会になりますと、これは強引というか本気にやらなければ日本の効率的な社会をつくり上げることはできないわけでありますから、その問題に関しては私はそれほど悲観をいたしておりません。むしろ、これからそういう時代が好むと否とにかかわらず来るのではないのかなという気がいたします。
  207. 堂本暁子

    堂本暁子君 ありがとうございました。  先日、全国の女性たちが総理大臣に署名を何千人かの方がなさって、ぜひともこの男女共同参画二〇〇〇年プランを実行するためにその参画室の予算権限を拡大してほしい、定員もふやしてほしい、それはるるもう大脇さんが言われたので、私はぜひそのことを実現していただきたい。私たちだけが申し上げているのではなくて、私たちの後ろには北海道から沖縄までの女性たちの署名もございますということを一言申し上げたいと思います。  同時に、テレビでも「ふたりっ子」が大変はやりましたけれども、お二人仲よく女性大臣を、お一人よりお二人の方が強かったのかもしれませんが、分け持ってここまでずっと進めてきてくださいました。女性問題担当大臣は本当に女性たちの悲願でございました。二十年ぐらいかかってやっと内閣官房長官が兼務してくださいまして、ちょうど四年たちます。  官房長官がその男女共同参画社会に向けての所管大臣として尽力してくださっている。そして、内閣官房に一本化していただけるということで、ぜひ内閣官房長官に一本化するということ、担当大臣を前にして失礼なんですけれども、これは今後どのようなお考えでいらっしゃるか、伺いとうございます。
  208. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 新しい行政改革機構の中でのお話だと思いますので、私の方から行革会議で今議論していることを申し上げさせていただきたいと思います。  今度もし国会で、これは法律もいろいろございますから、法律が成立してからのことでございますけれども、今の私ども考え方実現するといたしました場合でございますが、それは内閣総理大臣の直轄の役所というのは内閣府ということになるわけでございます。直接の責任者が総理大臣であるというのは内閣府でございます。それで、内閣全体の機能強化としてもちろん官邸の強化もございます。  と同時に、もう一つは総務省という役所を設けようということも御承知のとおりでございますが、総務省はそこに所管の大臣がおるわけでございまして、内閣府は官房長官が兼務していただきますが、その責任者を総理大臣と、こういうことになっておるわけでございます。所掌事務官房長官にお願いする。ということは、いかに内閣府というのが今度の行政機構の中で一番重要視されておるかということはこれで御理解がいただけると思います。  その内閣府に男女共同参画審議会といいますか会議、まだどういう名称になるかわかりませんけれども、ちょうどマクロ経済政策あるいは予算基本方針、こういうものを決めようという経済財政諮問会議、これも仮称でございますが、そういうところに並べて男女共同参画についての審議会を、そこに会議を常設するということは、私ども男女共同参画については十分配慮をした行政機構考えたつもりでございます。その辺を御理解いただければと思います。
  209. 堂本暁子

    堂本暁子君 官房長官男女共同参画推進本部の、総理大臣が本部長で副本部長が官房長官でいらっしゃると思いますけれども、いろいろ実際に携わってこられて、そして今大変前向きな御答弁をいただきましたが、これからどういうことを一番実現しなければいけないと今お考えでしょうか。
  210. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 今、武藤長官がお答えをされましたように、私は男女共同参画室を所管し、なおかつ総理武藤総務庁長官女性問題担当というのは、これから行革をやる中でこの女性問題というのをどう位置づけるかということを頭の真ん中に置かせるために恐らく私と二つに分けたものだと。そのテーマは極めてうまく機能いたしましたし、これは与党三党というよりも全党挙げての大変女性パワーが強かったということが今日の答申のおおよそおぼろげに見えるものになってきたかと思います。  そういう形が整ったわけでありますから、もちろん今は男性優位の社会でありましょうから、男性が積極的に女性職場向上というか質の向上に努力をしなければなりませんが、後、ある時点が来れば自転作用でそれがみずから伸びていくという力になってもらわなければならないなという気がいたします。  いずれにしても、個人対個人の男女はお互いに愛すべき間柄でありますが、オール男性とオール女性というのは絶えず闘わなきゃならない宿今も持っているわけでありますから、必ずしも、私の家庭なんかは女権が既に優位に立って、あらゆる命令系統は女性から発せられておるというのを見るとこれで果たしてよかったのかな、私の親の時代あるいはじいさんの時代から見れば私の権益ははるかに小さくなったということを考え合わせれば、いかに、やはりさっきの指標だけでない分野の強さというものが女性にはあるなという気がいたします。  いずれにしても、近代的な女性の強さをつくり上げていかねばならないと考えております。
  211. 堂本暁子

    堂本暁子君 男性と女性は対立する関係ではございませんで、ですから男女共同参画というわけでございまして、男性と女性がそれぞれ、それでも男性と女性は同じではない、別に子供を産むということだけではなくて、違っています。だからこそいいんだと思うんですけれども。であればこそ、やはり両方が社会を支えるんだとすれば、家庭であろうが職場であろうが地域であろうが、両性の視点が政策に反映される、会社だろうが政治の場だろうが、そういう形のこれからは男女の仲よくやっていくシステムをつくっていただく。  最後に、伺いそびれておりますけれども、やはり女性に対しての暴力が非常に多うございます。日本だけではございません。世界的にも大変女性がいろんな形、性的にもあるいはいろいろな虐待を受けるというようなことが多うございまして、今、与党では児童の買春とそれから虐待を禁止する法律というのを用意しておりますけれども、最後に、こういった女性に対しての暴力はぜひ、ほかに担当する省庁がないものですから、男女共同参画室でも積極的に取り上げていただきたいということをお願いし、お答えいただければ大変幸いです。
  212. 安藤昌弘

    説明員安藤昌弘君) ただいま先生の方から女性に対する暴力の問題がございました。私どもといたしましても、女性基本人権の享受を妨げ、自由を制約するものであると同時に、男女共同参画社会実現を根底から揺るがしかねない重大な問題である、このように認識しておるところでございます。  総理府といたしましても、本年新たに設置されました男女共同参画審議会におきまして、去る六月に総理大臣から女性に対する暴力に関する事項についての諮問がなされました。この女性に対する暴力についての部会をこの審議会で設けられたところでございまして、今後その対策につきまして御審議いただくわけでございますが、この審議会の御論議を踏まえながら関係省庁との連携を図り、今後の対策を検討してもらいたい、このように考えておるところでございます。
  213. 堂本暁子

    堂本暁子君 ありがとうございました。
  214. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 まず、人事院勧告についてお尋ねをいたします。  ことし、人事院の方では今年度の公務員の給与は一・〇二%上げなさい、こういう勧告が出されております。当然これは完全実施されるものと思っておりますけれども、閣議決定されてしかるべき時期はもうとうに過ぎているんではないかと思うんですが、間違いなく完全実施されるんでしょうね。
  215. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 委員指摘のとおり、人事院勧告制度は国家公務員の労働基本権制約の代償措置をなすものであり、政府としては同制度を尊重するとの基本方針に立って対処をしておりますし、現在までもそういたしておることは御承知のとおりであります。  他方、財政構造改革等の関連では、先般六月三日の閣議決定で「財政構造改革の推進について」において、この財政構造改革の「集中改革期間中、適切な措置を講ずることにより、総人件費を極力抑制する。」こととされており、この点についてどういう配慮をするか、これからの検討事項ではないかと思います。  この双方の要請を踏まえて、今後、給与関係閣僚会議、さらには与党間の協議において、人事院勧告制度の尊重基本姿勢のもとに、極めて厳しい財政事情を初めとする国政全般との関連等について十分論議を尽くし、検討する必要があり、現段階において今後のスケジュールにつき、もうとうになされてしかるべきではないかと言われますが、そういう検討事項が若干ございますので、今その確たる日時を申し上げることはできない状況にあります。
  216. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 財政状態の問題を引き合いに出して今検討しているというお話ですけれども予算は大方組まれております。それともう一つ、財政面から公務員の給与を検討しなければならないというのは、これは全く筋違いだと私は思います。公務員が赤字をつくったわけじゃないわけです。本来、バブル期にむしろ今までの借金をまず返しておくのが政府としての当然のやり方だったと思うんですけれども、そういうことを行わないでどんどんバブル期に公共事業をふやしていく。そのツケが今公務員に来るというのであれば、これは全然話が違うと思います、スト権を剥奪した代償として出されているわけですから。そういうことを考えたら、当然これは行うということをやっぱり早くに閣議決定するべきだと私は思うんです。給与関係閣僚会議の座長として、ぜひひとつそういう決意をしていただけませんでしょうか。
  217. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) これから協議を調えてまいりたいと思います。  ただ、委員指摘のように、バブルは公務員の責任ではない、もちろん一般公務員の責任ではありませんが、我々も特殊公務員の一人でございます。内閣を構成するのは行政官であります。そして、その行政積み上げ方式のもとででき上がった政策を遂行して不幸にしてあのバブル経済があり、そのために財政が硬直化をした。その背景を全く公務員に関係がないということには私はイコールという意味で帰納はしない。そういう意味で若干の、特に管理職にある者の私は責任というものは、前回のいわば給与関係閣僚会議においても強く、当時社会党の方々も閣内に入っていた時代でありますが、お互いに議論を闘わせたといろ現実もあることを御理解願いたいと思います。
  218. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 私は、自治体の経験から申しますと、自治体で赤字になったときは、仮にそういうことをやる場合でも特別職だけは我慢します。それは、政策の決定を行い、それを議会にかけてやってくるわけですから、当然特別職というのはそれなりの政策責任があるので、財政が苦しくなればやっぱり我慢せざるを得ない。  ですから、今官房長官がおっしゃったように、我々もその責任はあるとおっしゃるように、大臣だけはこれは我慢しても結構だと思うんです。しかし、それをこういう政策でやれといって命令されて受ける方ですからね。そのとおりやらなければ、これは大変な処罰を受けるわけですから、その公務員に対して全然給与は上げないということになったら、何のために人事院があるのかわからなくなるのではないですか。それならスト権を返した方がいいと思いますよ。スト権をこの際返しますというなら私もこれは話はまた別だと、そう思いますけれども、できますか、そういうことを。
  219. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 冒頭申し上げましたように、同制度を尊重するという基本方針に変わりはないし、今までもそうやって行ってまいったということは前提条件として申し上げておりますが、この財政再建の集中期間中の「適切な措置」というものは何を意味するか、これはなかなか私自身にもよくわかりませんが、与党間でも詰められ、そして閣議においても、「総人件費を極力抑制する。」というのは、この兼ね合いとどうするかという問題を全く視野に入れないで進めるということはいかがなものかという、断定的に申し上げているわけではありません。昨年もそういうものの検討を経ながら完全実施をいたしておりますということを申し上げたわけであります。
  220. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 今までも赤字財政の苦しい中でも、公務員の賃金だけはこれはやっぱり人事院勧告との関係でやらざるを得ないということで閣議決定をしてきたと私は思うんです。それをやらないということになると、公務員自体のやっぱり意欲にさえ私は関係してくると思いますよ。後ほどスト権の問題に触れたいと思いますけれども、私は、やっぱりそういうことからいえば、これは文句なく直ちに閣議決定をしてもらわなければならないと思います。ぜひひとつそのことを強くお願いしておきたいと思います。  時間の関係もあるのでちょっと先に進めさせてもらいたいと思いますけれども、公務員制度調査会の問題に触れたいと思います。これは総務庁長官の方です。  G7の国で公務員にスト権を与えていないというのは日本だけです、これは。それで、このスト権の問題についてはILOで一九六五年、昭和四十年の九月ですが、ILO対日調査調停委員会、通称ドライヤー委員会と言っておりましたけれども、ここからILOの理事会を通じて次のような具体的な事項の実施を勧告したというふうに言われております。その次の項の第一が、日本政府が官公労働者のストライキを区別なく全面一律に禁止している政策を批判する、そして現在の全面一律禁止の政策を改めるように勧告をすると。ILOから日本の公務員にスト権を与えないのはこれはやっぱりおかしいということで勧告が実は出されているわけです。  こういうものに基づきまして、我が国におきましても、国会で三回請願が採択されております。九十一国会、百二国会、百四国会と三回、国会として採択をしているわけです。しかし、依然としてスト権が与えられていないということは、これは国際的に見てもやっぱり非常に日本政府のとっている態度はまずいだろうし、国会の意思も無視しているということからいってもこれは非常に大きな問題が私はあると、そんなふうに思います。  そういうことをちょっと踏まえて次の質問に入りたいと思うわけですけれども、五月十九日に、国家公務員制度のあり方を全般的に見直すために首相の諮問機関であります公務員制度調査会を発足させて、これまで三回会議を開いております。これからいよいよ本格的な論議に入るようでございますけれども、公務員制度のあり方、すなわち公務員の人事管理システム、それから労働条件について議論をする場合には、公務員に労働三権を与えるかどうかということがやっぱり一番問題になると思うんです。このことでいわゆる公務員制度のすべてが決まると言っても決して過言ではない、私はこう思っております。  けさの新聞を見ますと、行政改革会議のきのうの決定の中で、公務員制度について、公務員制度調査会に対し、基本的な課題と検討の方向を提示する、その中に、中央人事行政機関は労働基本権のあり方を含めて検討するという、労働基本権、当然これはスト権も入ったものだと思います。これを検討するということになっておりますけれども、公務員制度調査会でスト権の問題も含めて労働三権のあり方を検討するというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  221. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 私の方からは、今御指摘のとおりで、抽象的な表現で実は諮問を総理大臣からお願いしているわけでございまして、調査会でどういう御議論をこれから具体的にされていくかというのは、私どもまだこれからお願いをする段階で、そこまで至っておりません。  来週八日でございますけれども、八日に、我々が行政改革会議で、一応こういう方向でお願いしたいと、公務員制度全般にわたっていろいろの面で、内閣機能強化との関連もございますし、いろいろお願いしたいと思っておりますが、私の方からその中で労働基本権だけを取り上げてお願いするというような形になるのかどうか、私としては全般的なお話ということになるのではないかと思っております。あとは公務員制度調査会の中でそういう問題も踏まえて御議論いただくということは、それはあり得るというふうに私は思っております。
  222. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 これまでの三回の会議の中でも、今私が申し上げたような労働基本権の問題について若干の意見が出たというふうにも聞いております。したがって、会議の皆さんも相当関心を持っている問題だというふうに私は思っております。  先ほども申しましたように、労働三権という問題を議論しないでほかの問題を、公務員制度全冊の問題を論議しても、私はやっぱりますいと思いますので、それが基本になると思いますから、そうなりますと、まだこれから内容について検討するというお話のようでございましたから、なお結構だと思いますので、ぜひ私はこの問題をきちっと提示していただきたいものだなと思っております。  その背景についてもう二つほど問題があるんですけれども、ILOの百五号条約というのがあります。これは強制労働の廃止に関する条約でして、これはG5では日本のみが批准をしていない、あとは全部先進国は批准をしているわけです。  それで、この中でたしか第一条の中に、ストライキに参加したことに対して制裁を加えるということは条約違反であるということが書かれております。いわゆるストライキに参加したことに対して国が制裁を加えるあるいは企業が制裁を加えるということは、これは禁止されているわけです。日本では、公務員がストライキに参加すると、国家公務員法九十八条で禁止規定がありますから、当然制裁を受けるわけです。そうすると、この百五号条約にも実は触れるわけですね、今の日本の制度は。たまたま百五号条約は日本は批准していないわけですけれども。そういうことを考えると、当然批准をしなければならないものだと思うんですが、どういうわけか、これも国際的な面から見たら、日本は批准していないで批判の的になっていると思うんです。  ですから、こんな国際的な面から見ましても、これはせっかく公務員制度調査会で公務員制度全般について議論をするわけですから、当然この問題についてもやっぱり触れていただきたい国際的な背景があるだろうと思います。それが一つです。  もう一つは、国内的な問題として、行政改革会議は独立行政法人、いわゆるエージェンシーの職員を新しいタイプの国家公務員とする方針を決めたというふうに言われております。エージェンシーの人たちについては、新たな公務員という考え方で進んでいきたいという方針を固めたというふうに聞いております。  具体的に言いますと、それは人事院勧告の対象から外すということです。そして、業績に応じて給与を支給しようということです。もう一つは、したがってスト権も与えようということです。ですから、エージェンシーの対象となる職員の人たちは、スト権を今度は与える、人事院勧告の対象にしない、そういうことを行政改革会議の中でもう既に決めているというふうに、決めていないのであればそういう方向が出てきているんでしょうね、恐らく。そういうふうに言われております。  そこで、もしそうだとすれば、このエージェンシーに参加する職員のやっていることと、国家公務員の中あるいは地方公務員の中で同じような仕事をやっている人というのがたくさんいるわけですから、そうすると、公務員とエージェンシーの方に行った職員との間で労働条件について全く違うということになると、これまた大変おかしなことになると思うんです。  ですから、私は、やっぱりこのエージェンシーとの関係の中でも、労働基本権、公務員の労働三権、スト権の問題等について、当然これは今議論する最大のチャンスだというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。
  223. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 新聞報道ではいろいろ言っておりますけれども、私ども行政改革会議では、まだそのエージェンシーというものにつきまして、なかなか時間もございませんでしたので、突っ込んだ議論はいたしておりません。  でございますから、例えばエージェンシーというものができた場合、そこの職員の身分がどうかとか、それには労働基本権を与えるのか、あるいは今御指摘のような新たな国家公務員なのか、別の国家公務員というようなものができるのか、そんなような議論は全くまだいたしておりません。  これから十一月の最終報告に向けまして、このエージェンシーの問題も含めて行政改革会議で引き続き審議を続けていくことになっておりますので、今御指摘の点は、多分新聞報道でそういうことがなされているのは私も承知いたしておりますが、これは正確な報道ではございませんので、よろしくお願いをいたします。
  224. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 いずれにいたしましても、前段申し上げた国際的な面からいきまして、日本の国はどうも先進国から見ても労働問題についてはやっぱり恥ずかしいような問題というのが幾つかあると思います。その最たるものが、ILOの方から勧告されている公務員に対するスト権の禁止だと思いますから、せっかくの機会でございますので、政府の方として、せっかく公務員制度調査会をつくられたわけですから、そういったところに対してぜひひとつこの問題について検討されるよう、提示していただくように強くお願いをしておきたいと思っております。  次に、PKOの問題に移ります。  中東ゴラン高原に展開する国連兵力引き離し監視軍、いわゆるUNDOFですけれども、四月十五日から総合演習が行われておりまして、自衛隊もそれに参加をいたしております。PKOで他国軍との共同演習に参加をするのは、私は初めてではないかなと思いますけれども、そうでしょうか。
  225. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) UNDOFにおいては共同訓練に参加しておるということでございます。
  226. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 初めてじゃないですか。
  227. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) これは多分初めてだと思います。
  228. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 初めてこのUNDOFで自衛隊が共同訓練に参加をしたようであります。  それで、UNDOFの演習というのは半年に一回行われております。カナダ、オーストリア軍などと、これはほとんど全員が参加をしているようです。  昨年の秋の演習は、UNDOFに危険が次第に迫るという想定のもとに、兵士たちはヘルメットや防弾チョッキを着用して、またけが人の救出、毒ガス攻撃に備えての防毒マスクの装着、小銃の射撃訓練をしております。自衛隊が加わった今回の演習も、大体今申し上げたような内容であります。  そこで、総合演習というのは、PKO協力法が想定していない事態を前提としていることは大変問題ではないか、私はそういうふうに思います。それで、七四年に始まったUNDOFというのは、歩兵が緩衝地帯に駐留するPKFそのものだというふうに私は思います。日本はPKFには参加できないはずだと思うんですけれども、この問題についてどうお考えでしょうか。
  229. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) 日本の自衛隊がUNDOFに出ているわけですけれども、日本の自衛隊がやっている業務というのは輸送業務、後方支援業務をやっております。実は、PKF本体業務というのはオーストリアの部隊とポーランドの部隊でやっております。日本の参加に関しましては、法律上PKFには本体業務に参加しない、できないという仕組みになっておりますので、PKF業務はやっていないということでございます。
  230. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 そうすると、PKFに関係する業務には参加できないので参加していないわけですね。そうすると、PKFを想定した各国との訓練に参加すること自体やはり問題があるのではないでしょうか。
  231. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) 日本が参加している共同訓練ですけれども、もちろん射撃訓練等も入りますが、それは日本の国際平和協力法上の「武器の使用」というのがございますけれども、その枠内での参加であるというふうに考えております。
  232. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 これは、実際にこの演習に参加したカナダの人が自分たちの通信の中で明らかにしているわけです。今申し上げたようなこういう内容について訓練をしている、日本軍もそれについて参加をしているということを明らかにしているわけですから、もしそうだとするならば非常に問題がある訓練です。  その事実について直ちに調査をしていただきたいし、こういうことで自衛隊の任務をなし崩し的に拡大をしていってPKFにつながるようなやり方は私は非常に問題があるというふうに思いますので、直ちに訓練への参加を中止させるようにしていただきたい、こう思います。
  233. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) 今、委員指摘のカナダの部隊との訓練の話ですけれども、これは訓練というよりは、実はUNDOFの前の司令官、コステルス司令官の送別の会合がありまして、そこでカナダ部隊と一緒にライフルを撃ったということでございます。これは、儀礼的なそういうライフルを撃つようなことというのはUNDOFで行われておりまして、UNDOFに参加している日本部隊として他の国との協調という観点からこういう行事に参加することについては問題はないというふうに考えております。
  234. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 時間ですから、多く申し上げませんけれども、そういうことであれば直ちに事実を調査してください。その上で、また質疑をやりましょう。そのことを要求しておきます。
  235. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後四時三十八分散会      ——————————