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1997-07-08 第140回国会 参議院 決算委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年七月八日(火曜日)    午前十一時開会     ―――――――――――――    委員長異動 六月十八日野沢太三委員長辞任につき、その 補欠として宮崎秀樹君を議院において委員長に  選任した。     ―――――――――――――    委員異動  六月十七日     辞任        補欠選任      松谷蒼一郎君     宮崎 秀樹君      山崎 順子君     白浜 一良君      山下 栄一君     和田 洋子君      小川 勝也君     中尾 則幸君  六月十八日     辞任        補欠選任      白浜 一良君     山崎 順子君      和田 洋子君     山下 栄一君      田  英夫君     谷本  巍君  六月二十三日     辞任         補欠選任      星野 朋市君     猪熊 重二君  七月二日     辞任        補欠選任      塩崎 恭久君     鎌田 要人君      吉川 芳男君     依田 智治君  七月三日     辞任        補欠選任      須藤良太郎君     塩崎 恭久君      中島 眞人君     吉川 芳男君  七月七日     辞任        補欠選任      山下 栄一君     林 久美子君      大脇 雅子君     田  英夫君      緒方 靖夫君     上田耕一郎君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         宮崎 秀樹君     理 事                 鎌田 要人君                 長峯  基君                 野沢 太三君                 猪熊 重二君                 海野 義孝君     委 員                 岩井 國臣君                 海老原義彦君                 大木  浩君                 景山俊太郎君                 清水嘉与子君                 松村 龍二君                 守住 有信君                 依田 智治君                 魚住裕一郎君                 加藤 修一君                 林 久美子君                 益田 洋介君                 山崎 順子君                 朝日 俊弘君                 萱野  茂君                 中尾 則幸君                 谷本  巍君                 田  英夫君                 上田耕一郎君                 椎名 素夫君                 水野 誠一君    国務大臣        外 務 大 臣  池田 行彦君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  久間 章生君    事務局側        常任委員会専門        員        貝田 泰雄君    説明員        内閣法制局長官  大森 政輔君        防衛庁参事官   澤  宏紀君        防衛庁防衛局長  佐藤  謙君        防衛庁運用局長  太田 洋次君        防衛施設庁施設        部長       首藤 新悟君        外務大臣官房長  原口 幸市君        外務省北米局長  高野 紀元君        外務省欧亜局長  浦部 和好君        会計検査院事務        総局第一局長   深田 烝治君        会計検査院事務        総局第二局長   諸田 敏朗君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○平成七年度一般会計歳入歳出決算平成七年度  特別会計歳入歳出決算平成七年度国税収納金  整理資金受払計算書平成七年度政府関係機関  決算書内閣提出) ○平成七年度国有財産増減及び現在額総計算書  (内閣提出) ○平成七年度国有財産無償貸付状況計算書(内  閣提出)     ―――――――――――――
  2. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  議事に先立ちまして、一言あいさつを申し上げます。  去る六月十八日の本会議におきまして、本委員会委員長選任されました宮崎秀樹でございます。  甚だ微力ではございますが、皆様方の御協力と、また御支援を賜りまして、公正、円滑な委員会運営を心がけてまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)  この際、前委員長野沢太三君から発言を求められておりますので、これを許します。野沢太三君。
  3. 野沢太三

    野沢太三君 お許しをいただきまして、一言あいさつを申し上げます。  この一年間、決算委員長として皆様の御協力をいただき、大役を果たすことができました。御協力に改めて感謝申し上げる次第でございます。  委員長として公平、公正な委員会運営を志したつもりでございますが、その実が上がったかどうか、甚だ心もとないわけでございます。何よりも審議日程の確保に大変苦心をいたしましたことを一つ申し上げたいと思いますが、大変各党の御協力あるいは各省庁の御協力をいただきまして、おかげさまで次年度の審議に入る前に平成六年度決算が終了することが一つの成果としてできましたことを大変感謝いたしておる次第でございます。  決算重視の参議院と言われて久しいわけでございますが、この実を上げることは並大抵ではございません。今後とも御協力をいただきまして、結果責任をもって政治の道を正し、また行政にその趣旨を伝えていくという仕事について、ともどもまた働かせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  どうもありがとうございました。(拍手)     ―――――――――――――
  4. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 委員異動について御報告いたします。  去る六月十七日、小川勝也君及び松谷蒼一郎君が委員辞任され、その補欠として中尾則幸君及び私、宮崎秀樹選任されました。  また、六月十八日、田英夫君が委員辞任され、その補欠として谷本観君が選任されました。  また、六月二十三日、星野朋市君が委員辞任され、その補欠として猪熊重二君が選任されました。また、去る二日、塩崎恭久君及び吉川芳男君が委員辞任され、その補欠として鎌田要人君及び依田智治君が選任されました。  また、去る三日、須藤良太郎君及び中島眞人君が委員辞任され、その補欠として塩崎恭久君及び吉川芳男君が選任されました。  また、昨七日、緒方靖夫君、大脇雅子君及び山下栄一君が委員辞任され、その補欠として上田耕一郎君、田英夫君及び林久美子君が選任されました。     ―――――――――――――
  5. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が六名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事鎌田要人君、長峯基君、野沢太三君、猪熊重二君及び海野義孝君を指名いたします。  なお、あと一名の理事につきましては、後日これを指名いたします。
  7. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 平成七年度決算外二件を議題といたします。  本日は、外務省及び防衛庁決算について審査を行います。
  8. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これら決算概要説明及び決算検査概要説明の聴取は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ―――――――――――――
  10. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 依田智治

    依田智治君 自由民主党の依田智治でございます。  きょうは、外交、防衛をめぐる当面の諸問題について御質問をさせていただきたいと思います。  その前に、私のこの問題に関する基本認識を申し上げ、その視点に立って、以下幾つかの当面の問題を質問させていただきたいと考えております。  戦後五十年以上たちまして、日本は、各分野で非常に転換を迫られておる中で、危機管理安全保障防衛、そういう面でも私は相当発想の転換が必要な時期を迎えておると。しかも、この間のサミットでもありましたように、国際的グローバル化というものが非常に進展しておって、日米のみならずあらゆる分野で総合的なアプローチが必要になっているということで、我々としては国の基本というものをしっかりと踏まえつつ積極的に国際協力を推進していく、そういうことによって世界体制をできるだけ貧困や暴力のない自由と民主主義というものに支配される本当に平和な世界をつくっていくということが大変重要じゃないか、そういう感じがしております。  そういう視点に立って、きょうは、まず先般ありましたデンバーサミットとこれをめぐる問題、さらに香港返還がありまして、これにまつわるアジア情勢等の問題、さらに秋口までにまとめますがイドラインとこれに関連する基本的諸問題、さらに、私は自民党の国際テロ対策小委員長としていろいろ勉強したんですが、この前外務省調査報告書を発表しておりますので、それらについての幾つかの基本的諸課題、その他時間がありましたら若干の問題を追加させていただこうと思っております。  そこで、まずサミットでございますが、サミットで実は我が国がイニシアをとってカンボジア和平を、ちょうど橋本さんが行く前にドンパチがあって、これじゃいかぬということで、日本フランス、親しい国が特使を派遣して説得して平和にいくようにということでうまくいってくれるんじゃないか、こう思っていたところ、またこのところ大変な状況が起こっておりますので、そのあたりのこれまでの取り組みの基本姿勢カンボジア情勢の現状というものを外務大臣の方から御報告いただくとありがたいと思います。よろしくお願いします。
  12. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) カンボジアにつきましては、依田委員も今御指摘になりましたように、来年の選挙を控えまして二大勢力である人民党フンシンペック党との間の対立関係がずっと高まってきておりました。そういった中で、先般もプノンペンの郊外で、偶発的と見られるものではございましたけれども、武力衝突があり、犠牲者も出た。  こういうこともあったものですから、何とかそのような不穏な情勢がさらにエスカレートすることを避けて、せっかく国際社会がこれまで努力を傾注して進めてまいったカンボジア和平プロセスでございますし、来年の選挙に向かってきちんと進めなきゃいかぬ、こういった観点から我が国といたしましてサミットにおきまして、各国の首脳の賛同、支持も得ながら特使を出すということで、今川前カンボジア駐箚大使フランス代表とともにカンボジアに送り、そしてラナリット第一首相フンセン第二首相双方に慎重な、また冷静な対応を求め、このプロセスをきちんと進めるようにということを申し入れました。  その結果、両者ともそのような要請にこたえてきちんとやっていくということを確約し、さらに選挙につきましても、日取りを来年の五月二十三日に行うというところまで引き出したわけでございます。  何とかそういった形で進んでいくことを期待しておったわけでございますが、御承知のとおり、去る五日の土曜日にあのようにプノンペンでかなり大規模な武力衝突が起こったわけでございます。  現在の情勢を申しますと、人民党勢力フンセン第二首相勢力が首都を制圧いたしまして、現時点におきまして一応プノンペンは平静な状態に戻って平穏化しておる、こういうふうに見られておりますけれども、なお今後どういうふうな事態が起こるか目が離せないと申しましょうか、予断を許さない、そういう状況でございます。  我が国といたしましては、今回の武力衝突の初期の段階から、土曜日に直ちに現地に駐節しております内藤大使をしてカンボジア責任ある筋に接触を図らせました。ああいった状態でございますので、なかなか簡単には接触できないところがあったわけでございますが、具体的に申しますと、チア・シム国家元首代行であるとかフンセン第二首相等にも連絡がとれまして、事態の早急な鎮静化、そして平和的解決努力を継続するようにということを強く求めたわけでございます。  また他方ラナリット第一首相の方は事前に国外へ出ておりまして、フランスに滞在中でございましたので、松浦駐仏大使をして接触を図らせまして、昨日夕刻、フランス代表と一緒に会いまして、ラナリット第一首相に対しましてもやはり平和的な事態収拾、そして将来に向かっての努力を求めたと、こういうところでございます。  なお、この間、関係各国とも緊密に連絡をとっております。先刻申しましたように、フランスとの間ではうナリット第一首相に対しまして共同して会見しておるわけでございますし、それからASEAN諸国、とりわけ現在のASEAN議長国でございますマレーシア、あるいはフンセン首相との間でかなり太いパイプを持つと言われておりますベトナム等につきましては特に重点的に接触を図りまして、ともに協力しながら事態収拾努力していこうじゃないかということで今せっかく努力中でございます。  それから、なおこの関係で、我が国からカンボジアヘの渡航につきましては、早い段階でまず観光渡航の自粛を求めた次第でございますが、昨日さらにその措置を強化いたしまして、ビジネス等の用務での渡航も自粛していただくように、そういった措置をとったところでございます。  それから、現地で岡島さんとおっしゃる方、これはコンサルタントとしてカンボジア政府との関係仕事プノンペンに駐在しておられたわけでございますが、武力衝突のいわば巻き添えという形で重傷を負われて病院で加療中であられたわけでございますが、残念ながら亡くなられたわけでございます。今、御遺族の方がバンコクまで行っておられますが、現在プノンペンに入れる状況でございませんので、御遺体は、我が国が無償協力でっくりました保健センタープノンペンにございまして、そこの冷凍保存室でお預かりいたしておりまして、可能な状況になり次第、御遺族のもとにと考えておる次第でございます。  それから、そのほかの在留邦人関係でございますが、大使館で掌握しておりますところで三百人弱の方が在留の届けを、登録をしておられます。それから、そのほかに観光カンボジアを訪ねておられる方、現地大使館でいろいろ手を尽くしまして現在までに確認しました方が百四十人ばかりおいでになります。そういった方々につきましても安全を確保しなくちゃなりませんし、またなるべく早く国外へということを考えておりますけれども、ああいった戦闘行為が行われましたものですから、飛行場が現在使用不能の状況になっております。したがいまして、航空路以外の他の手段で国外へ出ていただく、そういった方途につきましても今検討、またいろいろ準備も進めているところでございます。  いずれにいたしましても、まだカンボジアの国内でどういうふうな変化があるのか、それも見きわめなくちゃなりませんし、また関係各国ともよく情報の交換をしながら、せっかくここまで、我が国も大きな関心を持ち、また相当役割も果たしながら進めてまいりましたカンボジア和平が何とか壊れないように、これからも慎重に、しかし積極的に働きかけてまいりたい、こう考えている次第でございます。
  13. 依田智治

    依田智治君 カンボジアにつきましては、我が国の自衛隊もPKO法に基づいて施設部隊を初め行って、大変ないろいろ民間人犠牲者も出たりした中で、何とか今日にこぎつけてきているわけでございます。  ただ、当時ポル・ポト派を残したり、武装解除が必ずしも徹底しなかったというような問題、それから選挙が終わったといえども、首相体制ラナリットフンセンと、第一、第二というような形で必ずしもすっきりした形になっていないというような状況で、私も若干心配しておったのですが、やはりそういう主導権争いというような形で出ておる。  この月末には、ASEANに他のニカ国とともに正式加盟するというスケジュールもありますし、何とかこれを経済的にも自立させていく方向我が国もつい最近相当の額の経済援助決めたと、こういう状況でございまして、このあたりのものが御破算になるような事態になってくると、本当に歴史の歯車を逆転させるようなことになっちゃうわけでございます。  このあたりについての見通しというのか、ASEAN諸国、親しいフランス、それら世界各国と一致結束して、何とかこれが逆方向に行かないように、そしてスケジュールどおりASEAN加盟し、我が国経済援助というものもカンボジアの自立につながるような方向で生かせるような形に持っていってもらわにゃならぬと思うんですが、外務大臣のお考えをお伺いしたい。
  14. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私ども、委員おっしゃるとおり、何とかカンボジアの現在の憂慮される事態解決し、そうして和平プロセスが着実に進むことを心から願っておりますし、そのために積極的に働きかけてまいりたいと思っております。その際に、委員も御指摘になりましたが、ASEANの果たす役割が大きいと思うのでございます。  御承知のとおり、ASEANといたしましてはカンボジア、ラオス、ミャンマーの三カ国を新規加盟させるという方針決定いたしまして、今おっしゃいました今月の下旬に開かれます会合で正式に加盟の運びになっております。そういうこともございますので、このカンボジアの問題についても従来以上にASEANの果たすべき役割も大きくなったし、またASEANとして及ぼし得る影響力も従来より大きくなったと、こういう認識を持っておりました。  そういったことで、例えばデンバーサミットの際にもこのカンボジアの問題もいろいろ議論されたわけでございます。そういった際にも、日本といたしましては、従来以上にASEAN役割は大きくなったということを踏まえながら、この加盟自体ASEANがお決めになることでございますが、その上に立ってカンボジアがより安定するように、そしてまた国際社会の中にもきちんと整合的な形で入ってくるように、ASEAN働きかけを期待すべきだということを主張してきたわけでございます。  それからまた一先般、香港中国返還に際しまして私も現地へ行ってまいりましたけれども、その際、ASEAN外務大臣とも、各国外務大臣とも逐次会談いたしました。そういった場におきまして、今回は主として話題にしましたのは、カンボジアの問題、それからミャンマー、あるいはASEANそのものの話なんかもいたしました。  その中で、特にカンボジア情勢が、一方において、先ほども申しましたが来年の選挙に近づいていくということ、他方において、いわゆるポル・ポト派がもう崩壊の最終段階にあり、これまでポル・ポト派に対抗するという必要上、顕在化あるいは先鋭化が回避されておりましたフンシンペック党人民党との間の対立がさらにエスカレートするおそれもあるので、現にその兆しもあるからASEANしっかりやってくれということを強く求めてきたわけでございます。  それに対しまして、例えば現在ASEAN議長国を務めておりますマレーシアアブドラ外務大臣は、こういう表現で言っておりました。自分たちもそういうことはよく承知しておる、それでASEANとしても、新規にこの三カ国の加盟を求める以上、その三カ国がきちんとした姿で国際社会の中で役割を果たしていく、それは自分たち責任でもあるということで、もう既にいろいろな働きかけをしているということでございました。  具体的には、例えばカンボジアに対してこういう表現を使ったと言っておりました。これまではカンボジア自分一軒の家ということで済んだだろう、しかし、今回ASEANに入るということになれば、一つの家が火事になるということは村全体が火事になる、こういうことなんだと。だから、カンボジアとしてもその辺もよく考えて行動してほしいということをASEAN議長国としても言っておるということを言っておりましたけれども、今後ともそういったASEAN諸国とも緊密に連携をとりながらこの安定にまず努めてまいりたいと思います。  さて、御質問の中でさらにございましたASEANへの三カ国の加盟の問題がどうなるのだろうかという点でございますが、これは基本的にASEAN諸国、現在の七カ国でお決めになることでございますし、今既にその方針は、カンボジアも含めて三カ国の加盟ということは決まっておるわけでございます。この決定に至る過程においてはASEAN内部におきましてもいろいろ意見もあったようでございますけれども、今はそういった決定がございます。  その後、今回の事態変化を踏まえて何らかの変更があるのかあるいはないのか、その点については我が国として意見を申し上げる立場にはございませんので、ASEAN七カ国としてどういうふうにお考えになるか、十日にも外相会談が行われるということでございますので、その辺を注視してまいりたいと考えている次第でございます。  それから、我が国経済協力関係につきましては、先般、一日、二日にいわゆるカンボジアCGを開いて今後の経済協力方向についても方針を打ち出し、我が国としてもブリーチしたところでございますけれども、そういった点につきましても、まずきちんとカンボジアがある程度安定をして、経済協力を受け入れてそれを実行していくような状況が維持されるということが前提でございますから、そういった観点からカンボジア責任ある方面に対しまして、まず現在のそういう事態収拾して安定化への努力を続けるように経済協力を進めていくという観点からも働きかけてまいりたい、こう考える次第でございます。
  15. 依田智治

    依田智治君 ASEAN諸国を初め各国と協調してぜひひとつ安定化方向努力していただきたいと思います。  このデンバーサミット関係してはいろいろ質問したかったんです。国連改革テロ対策対人地雷とあったんですけれども、一つだけ、ロシアが、今度エリツィンさんが相当部分に全面的に参加して協議したと。それで、今後正式メンバーになる方向でもいろいろ話し合いもなされておるわけです。  そこで、ロシア情勢についても、この間ラジオ放送エリツィンさんは経済的にもやっといい方向になりつつあるというようなことを言っておるようですが、しかし反面、軍人等の給料の遅配とかその他いろんな状況もあるようです。この基本になるロシア情勢というのが本当に安定化するかどうかというのは、これからG7がG8という形で本格的に国際協調していく意味で、もう一つ中国があるわけですが、これは後ほど香港返還のところで質問しますが、このあたりに関する外務大臣の御見解をお伺いできたらありがたいと思います。
  16. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、ロシアの現在の安定度あるいはその見通しという点についてでございますけれども、経済の面で申しますと、依然として非常に苦しい状況は続いていると思います。例えば、給与の未払い問題などはまだまだ根本的な解決になっておりませんから。  そういうことはございますけれども、マクロで見てまいりますと、非常に一時高騰を続けておりました物価の方も大分鎮静化してまいりまして、昨年の後半あたりから一〇%ぐらいになったとか、まださらに下になるというような言い方をする方もおいでになります。  それから、GDPといいましょうか、そういう全体のものにつきましても、しばらくいわゆるマイナス成長ということがあったわけでございますが、ここのところようやくそこのところはとまりまして、大体成長率ゼロといいましょうか、そういうところにあり、ロシアの政府としては、ことしはある程度の、数%の成長を見込んでおると。そしてまた、それも決して根拠のないことではないというのが我が国あるいはIMF等の国際機関を通じての見方であろうかと思います。  ただし、それがほうっておいてももう自然の勢いで、自然の力でそういうふうにいくかといいますと、そこまでは言い切れない部分がございますので、なお国際社会全体としてのいろいろな経済面での支援というものもこれは必要であろう、こう考えられております。基本的なIMFグループとの間の政策調整もなされておりますし、それから我が国からも、つい最近でございますが、経済企画庁の審議官の方を一年間ロシア経済省に出向していただきまして、いろいろ先方における経済運営の政策立案なり実行そのものについてもテクニカルな面での協力をしていこうというようなこともしているわけでございます。  それと同時に、そういうふうに物価の動向であるとかマクロの経済がようやく安定を取り戻してきたという段階で今最も必要なことは、ロシアの国内における、あるいは海外からの投資でございますね、そういったものをどうやって進めていくかという点であると。こんなことも考えまして、先般来、ロシア日本との間のいろんな交渉でも投資を促進するような措置が必要だぞということを強調してまいりまして、先般デンバーにおいて行われました日ロの首脳会談におきましても、いわば投資イニシアチブというような、これは投資そのものではなくて、投資を容易にするようなロシアとしてのいろんな環境整備あるいは我が方からのいろんな技術的な面でのあるいは知的な支援、そういったものについての包括的な計画といいましょうかプログラムといいましょうか、そういったことをスタートさせることを合意したと、こんなこともございます。そんなふうに考えております。  それから、政治的な面につきましては、何と申しましてもエリツィン大統領の健康状態、これがどうかということが非常に大きな要素でございますが、現在手術もされましてから徐々に健康状態もよくなっておられるようでございます。そういったことで、御承知のとおり、指導層のある程度の更迭といいましょうか変化もございました。今、エリツィン大統領のもとにチェルノムイルジン首相、それから二人の第一副首相を中心に国内の経済あるいは社会の安定化を図ると同時に、対外的にも国際社会との協調路線をとって進めようとしておられるわけでございますので、我が国も含めまして、国際社会としてもそのようなエリツィン大統領の改革を進めていくという路線を支援していこうということでやっているわけでございます。  そういった意味では、今回のデンバーサミットロシアがいわば正式のメンバーとして、これまでも参加をしておられましたけれども、これまではいわばG7サミットに例外的に参加されるというふうな形になっておったわけですが、今回は、サミット・オブ・ザ・エイトというのが正式の呼び方でございますが、原則としてすべての場面にロシアも参加すると。ただし、金融であるとかあるいは通貨であるとか、あるいはODAの際もそうでございますが、そういったふうなロシアの今の特に経済面での置かれた状況からして参加してもらうにはふさわしくない問題については従来どおり七カ国でやると。しかし、それは例外であるというふうな格好にしたわけでございますが、今回もロシアがそういった形で原則的にこのサミットに参加するという形で行われましたデンバーサミット、非常にいい雰囲気で、また成果も上がったと思います。  今後とも継続してそのような形になるんじゃないかと思いますが、そういった国際社会との協調という中でロシアが今の改革の路線を、リフォームの路線をさらに推進して安定し、国際社会においても建設的な役割を果たされるということを日本としても期待している、そのことがまた日ロ関係そのものの改善なり進展にも資するものと考えている次第でございます。
  17. 依田智治

    依田智治君 ぜひそういう方向でバックアップしながら、国際的協調体制をこれからも強力に進めていただきたいと思います。  このサミットでは、市民の安全とかを脅かす諸問題ということでいろいろ取り上げていますが、一つだけ、これは私の友人から提案されたので防衛庁に。  感染症ですね、感染症というのは厚生省に聞くような問題だと思っているかもしれませんが、一九九五年の統計では、世界の死者の約三分の一、五千二百万のうち千七百万人は感染症であると。これから我が国の国際的な活動ということで、自衛隊のPKOはもちろんですが、国際援助活動、ボランティア等の活動も非常に多い。国立予防衛生研究所というのが感染症研究所となって国としても若干力を入れてきていますが、熱帯医学とかこういう感染症みたいなものは、防衛医大みたいなところにそういう研究センターみたいな、そしてPKOに行く人たちの血清とかそういうのを保存したりいろいろしながらこれからの国際的な対応にも備え、またワクチンとかその他そういう面でもいろいろ国際的にも貢献していく。私は非常にいい考えじゃないかなとちょっと提案されて思ったんですが、このあたりについて、何かお考えがありましたらお願いします。
  18. 澤宏紀

    説明員(澤宏紀君) 多くの感染症が問題になっておりまして、感染症対策は大変重要というふうに思っております。  感染症対策の研究につきましては、国全体の問題として所管官庁において検討すべきものと思うわけでございますけれども、先ほど御質問のございました防衛医科大学校におきましては、現在、感染症関連講座の中でその教育を行っているところでございます。今後は、防衛医科大学校の防衛医学研究センターを含めた研究部門において防衛医学に関連した感染症の研究を行ってまいりたいというふうに思っております。
  19. 依田智治

    依田智治君 ぜひひとつ力を入れて、先進国、アメリカなんかは相当進んでいるようですから、そういうところへ要員を派遣して研究していただくということがこれからの国際化時代に備えての非常に貢献になるのじゃないか、こう思いますので、よろしくお願いします。  時間の関係で、香港返還をめぐるアジア情勢、これ二点だけ質問します。  一つは、一国二制度ということで、いよいよ壮大なる実験が始まっている。中国大陸では、その前に社会主義市場経済という、社会主義というのはどちらかといえば国家の統制という形で国を維持するシステムですが、それに資本主義自由経済、市場経済というのが、まさにこれも大変な、聞くところによれば国営企業等はなかなか苦しい状況になりつつあるというようなことも聞いておるわけです。  そういう点も踏まえて、これから五十年間は保障するという約束になっているということでございますが、そういう維持運営、これを本当にうまくやってもらうことが世界の繁栄にもつながるということで大変重大な問題だと思っていますが、ひとつこれは外務省にお伺いしますが、現在の中国大陸における政治経済情勢の現状と、これから香港、一国二制度というものについてどういう展望を持っておられるのか。うまくいきませんなんとは言わないと思いますが、そこのところあたりをちょっと専門家として御説明いただければありがたい。
  20. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) おっしゃるとおりです。一国二制度というのは世界の歴史でもこれまで前例のない、恐らくないんだと思います、ユニークな枠組みでございまして、これはいわば鄧小平そしてサッチャーという現代の政治の世界でも非常にすぐれた、また先見性もあり決断力もある指導者の間でまず合意がなされ、そのもとで作業をいろいろ進められて、今回、七月一日にいよいよ香港中国返還が成り、一国二制度がこれから五十年間ということでスタートするわけでございます。  さあこれがうまくいくかどうかという点でございますが、これは委員もおっしゃいましたとおり、確かに中国全体としては、市場経済とは申しておりますけれども、その頭に社会主義のつく社会主義市場経済でございます。他方香港経済制度なり社会の制度はどうかと申しますと、これはいわゆる自由主義経済と申しましょうか、あるいは資本主義経済の仕組みの中でも最も純粋型に近いと言ったら言い過ぎかもしれませんけれども、いかにも市場経済らしいいろいろな企業活動その他の自由が保障される。そしてまた、企業活動あるいは個人の経済活動などに伴う、例えば税金の負担なども非常に低いというようなことでございまして、中国の方の全体にございます制度とは、市場経済という同じ名前で呼びましてもやはり質的に随分違うものがあると思います。  であればこそ、一国二制ということで別個の制度としてやろうということでございますが、これが続くかどうかという点につきましては、まず香港自体がどういうふうにこの制度のもとに生きていこうとするかということ、それからその次には中国が一体どういうふうに対応していくか、さらには国際経済社会がどういうふうに見ていくか、この三者から見ていかなくちゃいけないと思います。  香港について言いますと、返還が八〇年代に基本的に合意になりましてから、いろいろな観測あるいは見通しもありまして、その過程においては香港から他へ移られた方々あるいは企業も少なくなかったと思います。しかしながら、現に今香港においでになります六百五十万の人々、また多くの企業というものは、この一国二制のもとで十分自分たちはこれまでの事業活動をやっていける、そしてやっていこうという気持ちで今おいでになるんだと思います。  それから、中国の方はどうかと申しますと、中国も、一国二制というやり方が香港自体にとっていいだけではなくて中国全体にとってもこれが役立つんだ、有利なんだという、そういう立場に立っておられると思います。現に先般、香港で銭其シン外務大臣と私が会談を持ちました中でも、私の方から、今後とも自由で開かれた制度のもとで香港経済的な繁栄が維持されるということは我々国際経済全体としても大切なんだということを申しましたところ、銭其シンさんは、それは絶対間違いありません、というのは中国自身にとってそのことが利益になるのでございますからという、こういう発言がございました。それはそうだと思います。  今、中国が改革・開放路線ということで、社会主義市場経済のもとではございますけれども経済的な繁栄を追求しその中での民生の向上を図っているわけでございますが、これを進めます場合にはどうしても国際経済との関係を深めていく、強化していくということが不可欠でございます。そして、その場合に、香港が従来果たしておった役割というのは非常に強かったわけでございます。そういうことであるならば、中国自身としても、自分たちの今後の発展なり生活の向上を図る上において香港のこれまで果たしてきた役割というものは維持しさらに増進していかなくちゃいけないんだ、こういうふうに考えるというのは理にかなったことだと思います。  現実の動きといたしましても、今回の返還に向かいまして、中国にございますいろいろな企業が香港に次々と進出してきた、あるいはさらに足場を強化してきた、こういうことがございますし、逆に在香港の企業、これは香港資本はもとよりでございますが、例えば香港にございます日本等の企業も、香港における活動と中国の本土といいましょうか、全体における活動とを従来以上に密接に関連づけていこう、そして展開していこうというような動きもあるようでございます。そういったことを考えますと、中国もこの一国二制というものを大切にしながら、香港のこれまでの基本的に自由で開かれた社会等の仕組みを維持した上で、その利益を自国全体としても享受していこうという方向へ進むんじゃないかと思います。  それから、国際社会全体として香港の果たしております貿易、金融を中心とした経済的な役割というものが大切なものであるということはもう申し上げるまでもございません。そして、その点につきましては、我が国あるいは米国あるいはASEAN諸国、イギリスはもとよりでございますが、そのあたり基本的にこれは維持されることを求めながら、それからまた日本のビジネス界なども、いっときいろいろな動きもあったようでございますが、現在、基本的に香港の将来にも、楽観的と言ってはなんでございますけれども、基本的に大丈夫だと、企業活動はきちんと展開できるという見通しのもとにいろいろ活動もし手も打っておられるようでございますので、この一国二制という壮大な実験といえば実験でございますが、今スタートしました時点におきましては見通しは決して暗いものではない、私はこのように考えている次第でございます。
  21. 依田智治

    依田智治君 大陸における社会主義市場経済、その上に一国二制度という、これは大変な私は、外務大臣がそう今口で言われたように簡単にはいかないんじゃないかなという感じで懸念をしておるわけでございますが、ぜひ国際社会としてもこれが何とかひとつ成功するようにあらゆる面からバックアップしていくということが大変重要じゃないかと思っていますので、よろしくお願いしたい。  あと一点。これは、当然中国領土になったわけですから防衛任務は人民解放軍が、新聞とかテレビでもだっと人民解放軍が香港に入城してくるところが出ておりました。防衛だけをやるんで治安は警察がやる、こう言っておりますが、大体、社会主義、共産主義体制の場合には軍が相当警察的任務を兼ねているというような場合が非常に多いので、私は、やはりこの香港というのは自由があってこそあの経済繁栄があるんで、そういう点でぜひともこれは人権とか自由というものが維持されるという体制が持ちこたえられるように何とか願っていかなきゃいかぬと思っています。  あと一つ、これは防衛庁長官にお伺いするんですが、ASEAN諸国等も、中国の人民解放軍が太平洋の出先の方にすっと出張ってきたわけで、さもなくても中国の海洋における権益を拡大する意図というようなものが懸念されている状況の中で、南沙群島とかその他いろいろ領有権を主張している国もいっぱいある。そういう中で、軍事的緊張が高まりASEAN諸国が軍事力を強化するというような方向に行くとすると、我が国の安全という問題にも、シーレーンも抱え、非常に響く問題でございます。このあたり香港の返還に伴う軍事情勢、今後のいろいろの問題につきまして、防衛庁の見解をお伺いできればありがたい。
  22. 佐藤謙

    説明員(佐藤謙君) 香港の返還に伴いますこの地域の軍事情勢に与える影響ということでございます。香港の返還前には香港にはイギリス軍が駐留していたわけでございますけれども、香港返還と相前後いたしましてすべて撤退をし、かわって中国の人民解放軍が駐留をしたということでございます。  ただ、おっしゃいましたように中国が香港に陸海空軍の拠点をそういった意味では保有することになったわけでございますが、その規模につきましてはこの香港地域の防衛に必要な範囲内のものとこういうふうに考えられますので、この香港返還がその周辺地域の安全保障に特段の影響を与えると、こういうふうには私どもは見ていないところでございます。  いずれにいたしましても、今先生お話がございましたように、中国軍につきましてはその軍事力の近代化ということで、中国は現在経済建設ということを当面の重要課題としておりますので、今後も漸進的に進むとは思われますけれども、核戦力あるいは海空軍力の近代化の推進ということ、あるいは海洋におきます活動範囲の拡大、あるいは台湾周辺での軍事演習によります台湾海峡の緊張の高まりなど、その動向には注目をしていく必要があろうか、かように私どもは思っております。
  23. 依田智治

    依田智治君 ぜひそう願いたいものですが、私も先般自民党の安全保障調査会メンバー、中山太郎団長と五人で中国に行ってきました。いろいろ安全保障対話という形で率直な意見交換を各界の人とやってみましたが、やはり情勢認識から始まって非常な隔たりがあるという感じを受けました。そういうことで、我々議員レベルでは遠慮なく言い合って、同じことの繰り返しでも、結局三日間いたんですが、初めから終わりまでどの人と会っても同じことを言うのでこっちも同じことを言って帰ってきた、こういうことでございます。  しかし、それを言うことは非常に大事で、何とか中国が、さっきのロシアの話じゃありませんが、自由と民主主義体制の中に入り込んで、サミットの中にもいろんな形で本当に参加できるような状況に持っていくためには、経済体制も含むいろんな問題の越えるべきハードルがいっぱいあると思うんです。  そういう点で、防衛庁なんかも安全保障対話というのを積極的にやっておりますが、やはりこれからアジア地域にいかにして安全保障環境を、よい環境を構築していくか、まず防大なんかも向こうが希望するならば入って勉強してもらったらどうか。日本防衛政策というのを勉強したら、こんなことをやっているのかとびっくりするんじゃないかと思うぐらいに私はかけ離れている日本防衛政策、全く懸念に及ばないということを知るんじゃないかと思うんです。  そんなことで、これはお尋ねしようと思っていましたが、時間がありませんので次のテーマに移らせていただきます。ガイドライン、これもいろいろ個別項目について聞いていたらそれだけでも相当な時間がかかりますので、これも二点だけ聞かせていただきます。  一つは、この間、デンバーサミットでも関連して日米首脳会談があった。それで、外務大臣もカウンターパートと会談した。やはり、一つ情勢の問題として私は北朝鮮情勢というものをどう見るのかということが非常に大きいと思うんです。それで、きょう、金日成国家主席の喪が明ける三年目だ。これからどうなっていくのか、金正日さんがそういうものを引き継ぐのかどうか、いろいろ取りざたされています。まだもうしばらく先じゃないかとかいろいろあるわけです。一方、構造的にもう土地が疲弊し、食糧不足というような状況、そういう中でなかなか朝鮮和平が進展しない、こういう状況があるわけです。  それで、お尋ねの点は、一つは新聞紙上等でようやく四者会談の予備的会談が合意されたということで、何とか四者会談による和平の道が進展するということが大変重要じゃないか、これの点についての見通しと、あと一つは、少女拉致事件とかいろいろあり、やはり我が国としてはそう簡単に対応できない部分もあるわけでございますが、この食糧援助とかそういう問題に対する現時点での方針、それをお伺いできればありがたい。
  24. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、四者協議の方の見通しいかんという点でございますが、これについては米韓、そして北朝鮮との間でいろいろ折衝が進められてきましたけれども、八月五日に次官クラスあるいは次官補クラスと申しますか、そのレベルで行われるということが今合意に至っております。  私どもも米国あるいは韓国ともいろいろ話を聞いております中で、両国とも今回の会談についてはきちんと行われるだろう、そしてそれを足がかりにしてさらに将来に向かって進めてまいりたいと、こういうふうな見通しを持っているところでございます。  なお、中国もこの四者協議にはきちんと入っていくとこういうことでございますので、私どもといたしましては、まずはその八月五日の会談の様子を見てまいりたいと、こう思っております。  なお、当然我が国はこの四者協議の当事者ではございませんけれども、この北朝鮮の問題、関係も含めまして、朝鮮半島については大きな関心も利害も有するところであり、役割も果たさなくちゃいけないところでございますので、米韓、さらには中国ともいろいろ連絡をとりながら、四者協議あるいはその中での南北対話の進展、そして半島全体の安定のための動きを進めていく上において我が国として果たさなくちゃいけない役割が出てくればそれは果たしてまいりたいと思っている次第でございます。  その関連におきまして、今もう一点御質問のございました食糧援助をどうするかという点でございますが、この点につきましては、私どもも朝鮮半島全体の安定を考える場合に一体どう考えなくちゃいけないのかという問題。それからさらには、食糧不足の問題も単に一時的な問題ではなくて構造的な問題ではないかという観点からするならば、そういった点についてどう考えるか。  これは基本的に、関係といいましょうか、関心を有する諸国ともいろいろ意見の交換なんかしなくちゃいけないと考えておりますが、しかし当面の問題として、たちまちの食糧不足についてどう対応するのか、あるいは国連機関からのアピールも出ているわけでございます。これらについては、私どももそれは一切やらないと言っているわけじゃございません。  しかし、一方におきまして、委員も今御指摘になりました問題も含めまして、我が国といたしまして北朝鮮側に適切なあるいは柔軟な対応を期待したい、求めたい人道にかかわる問題が幾つかございます。そういった問題について何らの進展もないままに、人道的な観点からの食糧支援だから進めるべきだということにつきましては、やはり我が国の国民世論の中にどうしても釈然としないもの、しこりがあるということは否定できないところでございまして、そのあたりをどういうふうに考えていくのか。その二つのことを、直接的にリンクしているわけじゃございませんけれども、やはりそのあたり考えざるを得ないという点がございます。  委員もおっしゃいましたように、きょう七月八日というのが北朝鮮で非常に大きな意味のある日になっております。きょうを契機にしまして一体どういうふうな体制変化があるのかないのかということもそうでございますし、私どもが期待しておりますような日本に対する北朝鮮の姿勢に何らかの変化があるのか、出てくるのかどうか、そういったところもよく見ながら考えてまいりたい、こう考えている次第です。
  25. 依田智治

    依田智治君 北朝鮮につきましては、世界でも三、四位と言われるほどの百万を超える地上軍を持って、それで米が足らないと言って騒いでいるという状況ですから、この軍国主義的体質をいかにして自由と民主主義を基調とする体制へ持っていくか、これは並大抵のことじゃないと思うんです。経済自体の改革・開放路線というもの自体もなかなか取り切らない、中途半端に終わっているというようなことでございますが、KEDOへあれして核疑惑の解消という問題もありますし、我々としては本当に一致結束して、破滅に至らない、ガイドラインはいざ破滅したらどうするかという、北朝鮮だけを問題にしておるわけじゃありませんが、しかし一番近いところではそこのあたりが一番気になるわけですが、しないためにも何とか今後とも国際社会が一致協力して努力していく必要があると考えておるわけでございます。  あとガイドラインにつきましては、個々の項目は時間がありませんので一つ、ガイドライン自体の性格というのは、これは国会で承認するというようなものではない、いわゆるガイドライン、指針。指針に基づく個々のいろんな施策というものが、法律が必要ならばその法律を国会で十分審議していただく、こういう性格のものだと、こう理解しておるわけです。  これから、例えば避難民の誘導とか移送、船舶の臨検とか検査、それから民間空港なり港湾を利用するような場合でもいろいろ法制上の問題も出る、こういろいろ考えますとこのあたりについて、そしてまた一方、橋本総理の指示で危機管理対応ということでいろいろ周辺事態に対する検討もなされておるということでございますので、いわゆる有事に対して備えるということは大変重要なことなので、これは従来からやってきておる自衛隊の行動に関する有事法制と一、二分類、三分類、これとガイドラインなり官邸の方で今研究している危機管理対応の問題等とも多少ダブるところがあるんですが、多少違っている面もあるわけです。  しかし、重要なことは、やはりいろんな措置をとって危機が発生しないように備えるとともに、万が一危機が生じたような場合にはしっかりと法制面を整備しておくということが法治国家の極めて重要な部分だと思いますので、このあたりの法制の整備という問題に関する防衛庁長官の御見解をお伺いしたいと思います。
  26. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 今度ガイドラインの見直しをやりました後、国内でどういう実行態勢を構築していくか、その間においてどういうような法整備が必要か、これらはガイドラインの見直しが成りました後、あるいはまたその最終報告といいますか見直しをするまでの過程において法的課題等を洗いながらやっていくわけでございます。  これは、必ずしもこれまでの有事法制の研究そのものとは一致するわけではございませんけれども、今委員が御指摘になられましたように、我が国が攻撃された場合のいわゆる防衛出動が下令されているときに自衛隊がその任務を円滑に遂行するために現在の法律で十分かどうか、そういう研究を従来から行ってきた問題等につきましても、今度のガイドラインにはやはり第二項目としてその問題があるわけでございますから全く関係がないわけじゃございませんで、やはり関連するわけでございます。  また、総理が指示されました緊急事態対応策につきましても、これまたやはり、これを実施しようとしますと現在の法制度で十分かどうか、この辺の問題があるわけでございまして、これは安保室が中心となっていろいろと検討されておるわけでございます。  したがいまして、こういうような問題等を総合的に判断しながら、またその間におきます国会の御論議等をよく私どももわきまえながら、これらの法的課題に対処していかなければならないと思っております。  ただ、御承知のとおり、そういうような法整備をするかどうか、まさにこれは大きな政治的な判断を要することでもございますし、特に立法府にかかわる問題でございますから、防衛庁としては、自衛隊が活動しやすいように、任務の遂行が円滑にいくようにということで、単なる研究じゃなくて、一日も早い法整備が望ましいと思っておりますけれども、これはやはり防衛庁としての問題だけではなくて、政府としてあるいはまた国会として総合的に判断されるべき問題であろうと思っておるところでございます。
  27. 依田智治

    依田智治君 ガイドラインの研究並びに今総理の指示で安保室等でやっている緊急事態への対応、これを実効あらしめるためには、法律が必要な場合には法律をつくる、これはまた国会等でも審議し、ぜひやっていく問題だと考えております。  一方、従来からやってきた有事法制研究というのも、私、内閣安全保障室長でおったときに第三分類、防衛庁から聞いて研究だけしたけれども、他の省に絡む問題が非常にあるわけですが、それが全然研究されないままになっている。これは立法府の問題ではなくて、むしろ行政府自体でどこの省が中心になってやるか割り振りを決めて、やはりいざという場合にはどういうことが問題になるんだろうかということを考え研究すること自体も進んでいないという状況になっていますから、この点はぜひひとつ、これは秋口までのガイドラインとは別の問題ですが、やはりこの問題について、電波の問題については郵政省中心にとか、国民の避難誘導等の問題は自治省とか警察とかを中心に研究するとか、内閣として割り振りを決めて研究を進めていくということが大変法治国家としては私は重要なことじゃないか、こう思っておりますので、この点は要望を申し上げておきたいと思います。  最後のテーマ、ペルー事件でございます。  外務省、もう本当に大変長い年月御苦労していただき、またこの間、六月中旬には外務省自体の調査委員会報告が出たわけで、私も実は大分何回か、国際テロ対策をやっておったものですから読ませていただきました。  それで、これについて意見があるんですが、まずお考えを聞く前に、外務省としてこれをまとめられて、例えば教訓として三つ挙げるとなったら何を挙げられますか。それをちょっと挙げてみてくれますか。
  28. 原口幸市

    説明員(原口幸市君) 今先生御指摘のとおり、私ども今回の事件が我が国の在外公館で発生したことを真剣に受けとめておりまして、事件の調査委員会を設けて本件の事実関係の究明、政府の対応の総括に加えまして、反省点及び今後の改善点についての分析を行って、その結果を先月、報告書の形に取りまとめて公表したところでございます。  この種の事件の再発防止のための教訓といたしましては、同報告書の提言部分、第三部に当たりますけれども、そこに記しておるところでございますが、まず、一般に国際社会協力してあらゆる形態のテロリズムを防圧するための努力を強化していくことが重要であるというふうに考えております。その上で、在外公館の安全を確保するため、今回の事件の反省に立って、今後取り組むべき具体的な措置を要約いたしますれば、おおむね次の三点になるかというふうに私ども考えております。  第一は、在外公館警備の基本となる情報の収集、分析、評価の体制を在外、本省を含めまして強化していく必要があるということでございます。第二に、警備官制度の強化拡充や現地警備員の増強等によって人的な面での警備体制を強化していくべきことでございます。第三番目には、公館施設の強化や警備機器、装備の拡充等によりまして物的な面でも警備体制の強化を図っていくことでございます。  今後、外務省といたしましては、この報告書のこれらの具体的な提言というものを踏まえまして、着実に警備の強化というものを図ってまいりたい、このように考えている次第でございます。
  29. 依田智治

    依田智治君 どうもありがとうございました。  国際協力、これはデンバーサミットでも橋本さんが提唱されまして、これから強力にやっていこうと。やはりテロリズム、一致結束してノーコンセッションということで、テロに屈しないという姿勢のもとに各国が足並みをそろえてやっていくということが大変重要ですが、外務省の方から資料をもらっていろいろ見てみますと、まだASEAN諸国、アジア諸国の中でもテロに関する基本条約を批准していない国も結構あります。  そんなことで、やはり日本としてもまだ三つばかりいろいろな準備で批准していないのもありますが、積極的に批准して、二〇〇〇年までにはみんな批准するように働きかけようということですから、これはひとつ我が国としても率先して各国働きかけていくという姿勢をお願いしたいと思うわけです。  今、御報告が三点ございましたが、その中で私は、これは以前に外務委員会でもちょっと質問したことがあったんですが、やはり今回のこの報告書の中、それからこの間軍事裁判でも、日本は余り警備を必要ないとは言っていなかったということはありますが、どうも国家情報局みたいなところに専門家が行って情報をとるという姿勢に欠けていたというのがこの報告書の中にも出ておるわけです。  私は、やはり何としても人的な面で、しかもこれは外務省の政務班とかいろいろ苦労しておりますし、各省から協力を得て出向しておる警備官等が努力していますが、やはり高度な情報というのは、もちはもち屋で、情報を担当する警察庁なり内閣情報調査室なり、こういうのを増強した人員を外務省に出向させて、外務省と一体になってあらゆる面から国家的規模の情報を収集し、そしてこれを外務省だけで温めるのでなくて共有して国家的視野に立った判断をしていく、こういう情報体制が重要じゃないかと思います。  そういうことで、この夏の概算、大変厳しい予算状況にありますが、ぜひこのあたりの専門家の配置による国家的視野に立った情報収集・分析体制、これをひとつ確立していただくように、この点に関する外務省の御見解をひとつお願いしたい。
  30. 原口幸市

    説明員(原口幸市君) ただいま先生御指摘のとおりの認識を私どもも有しておりまして、片や大変厳しい財政事情でございますけれども、先生方の御支援もいただきまして、できる限り情報収集体制の強化、あるいは警備そのものを担当する警備官というものの増強に努めてまいりたい、このように考えております。
  31. 依田智治

    依田智治君 第二点で申し上げようとしたのは警備官でございます。  警備官イコール情報収集という、小さいところはそれでいいんですが、やはり主要なところには警備を実施する担当と情報の担当というのは別途に配置しておくということが大変重要じゃないか。警備官の増強、警備官についてもできるだけ警備経験のある警察等から配置するということが大変重要じゃないか。  この報告書の中で、私はこの間ペルーの軍事裁判の新聞記事を読んだときにも、これは私と全く同意見のことが書いてあったんですが、今回の場合、日本大使館側にも油断があったというようなことまで言っているんですね。九四年までは、大きなパーティーがある際には、大使館警備官だけでなく政務担当の書記官も当局との打ち合わせに加わり、陸軍の情報部員がボーイ姿でパーティーに潜入したりしていたと。最近はその点が入念さがなくなったなんというようなことが書いてあるんです。  そこで、私はこの報告書を見ても、第七管区司令官、この軍事裁判にかかわった責任者の一人なんですが、それに対する警備要請書というのも、本来警備要請というのは責任者から責任者に出すのが普通なんです。警備官が中将に当たるような人に、よろしく御配慮をお願いしますと書いてあるんですね。これは大使自身がするかどうかは別として、大使館の少なくとも公使が出向いて、そして向こうの責任者にきちっと警備要請をして、打ち合わせて対応していくという姿勢が重要じゃないか。  私はその点をこれはぜひそういうことで、どうも私のひがみかどうか知りませんが、外務省の場合、どちらかというと警備というのはやや警備官に任せておくというような感じがあるんじゃないか。これじゃだめなんで、警備というのは、今回のペルー事件でもわかりますように、一たん起こったら国家的な問題ですから、大使自身まさに自分の問題として対応する、この姿勢が大変重要で、そういう点をお願いする。  あと一つ。今回、これ読んでみますと、ドイツの方のボランティアグループの事務所みたいなところの裏側、人が配置されていなくて、結局そこへ救急車を装ったテロリストが来て、夜間手薄になっているところから入って、爆破して入ってきた。これは、果たして警備していてもそれを防げたかどうかあれですが。  この警備計画というのは、警視庁なんかでもつくるときは、警備一課に重要防護対象担当というのがありまして大変な専門家がいます。麻布は何といっても大使館がいっぱいありますから、所轄警察署でつくった警備計画はそこで点検して、行ってみて、一緒に実査して、これが欠けている、こういう点をもうちょっとやったらいいんじゃないかというような形でやっておるわけでございまして、この点はここにも出ておりますが、外務省と警察庁等が合流して、重要大使館における警備計画、点検、こういうことはぜひ実施する必要があるんじゃないか。これは提言にも出ておりますので、私からもお願いしておきます。  そこで、この問題に関連して二点だけ。外務省、この提言の中に、日本人による警備というのが、アメリカなんかは海兵隊が重要なところは守ったり、ドイツはGSG9がやったりしておる、日本の場合はそういうシステムはないけれども、法制面の問題もあるけれども若干検討を要すると、こういうことになっていますが、現実に外務省、例えば警察官なり、法律上許されるならば自衛官なりが外国の在外公館に増強配置されて警備を実施するということが望ましいと考えておるのかどうか、この点をちょっとお伺いしたいんです。
  32. 原口幸市

    説明員(原口幸市君) 先生御指摘のとおり、欧米主要国におきましては、在外公館の出入り管理あるいは館長の護衛等の護衛任務を直接行うために自国の武装した警備要員を派遣しているケースが多いわけでございますが、果たして我が国がそのような日本側の要員を派遣する可能性あるいは適否というものにつきましてはどうかという問題、私どもも内部でいろいろと検討はしてみたわけでございますが、この問題、さまざまな観点から綿密かつ慎重な検討を加えるべき問題だろうというふうに認識しておりまして、正直申しまして、現時点で外務省としてはっきりしたポジションというものに到達しているという段階にはまだ至っておらないのが現状でございます。
  33. 依田智治

    依田智治君 国内でも機動隊が交代で重要なところへ張りついている。これでも大変に運用が苦しい。それでまた、いざというときは綿密な警備計画で相当な陣容を持ってやらざるを得ない。それが異国の地で、数の限られた自衛隊なり警察官を配置して自国民による警備というのは、私は、ないよりはいいけれどもほとんど効果はないと。やっぱり派遣国自体がやるよりは接受国自体に、さっき言ったような綿密な警備計画のもとに打ち合わせて、責任を持って接受国にしっかりとした警備をやってもらう、こういうことが大変私は重要じゃないかというように基本的には考えておりますので、今後の検討課題だと思います。  あと防衛庁長官各国の場合、やはり警察が特殊部隊を持つ、当たり前ですね。治安的なテロリスト、犯罪テロリストがいた場合に、日常的な事態に対して対応するには警察、それで私ども日本の場合では警視庁とか、今SAT、スペシャル・アソルト・チームというのがつくってありまして、七大府県、二百人くらいは今育成しておる。しかし、警察というのはあくまでも治安警察的に、犯人を制圧して検挙し、裁判を受けさせて罪をあかなわせるという通常の発想でやっておりますから、浅間山荘事件、あのときも五人の犯人は結局全員検挙した。ただ、今度のペルー事件のときにその発想でいったら恐らく人質も相当な犠牲が出、こちらの突入部隊にも相当な犠牲が出ていることがあり得る。そこで、警察自体のこういうSAT自体もこれから欧米諸国等にも学び、高度な技術を身につけていく必要があるということで私どもの国際テロ対策委員会でも提言したんです。  もう一つ、やはりあってはならぬことですが、もし戦闘、戦争、テロが起こった場合に、侵入した部隊が国民を人質にして立てこもると。これはいつばい映画なんか見ていると幾らでもあるんですね。そういうときに、国民を早く救出するというようなことは当然これは軍の仕事であって、各国軍は自分仕事として、軍自体の任務として特殊の部隊を育成する。自衛隊もレンジャー部隊、結構ぱっとやったりいろいろありますが、我が国の場合、私も余り詳しくはありませんが、いや、実はそれ依田君やっているんだよというならありがたいんですが、軍の特殊部隊というものを、これは別に憲法に触れる問題でもあるまいし、やはりいざという場合の備えのために使う。結局どうしても警察では対応できないというときに軍が支援し、サポートして行う。  今度、ペルーの場合は陸海空三軍が実施した。陸軍を中心にやったというように聞いていますが、それは結局警察が本来するんだけれども、警察では、これは十四人も犯人がおり、かつ人質が七十二人もおるという中へ警察的発想で飛び込んでも失敗すること間違いなしということで情勢を見て軍が実施したということで、ぜひ自衛隊自体におけるそういう特殊部隊の育成という問題、これは何も警察にかわってやるんではなくて、自衛隊自体の任務としてそういう訓練をしっかりとやっていくということが私は大変重要じゃないか。それがまたいざというときのバックアップ体制として非常に強力だと、こう思うわけですが、そのあたりに対する防衛庁長官の御見解をお伺いできればありがたいと思います。
  34. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) それぞれの国のいろんな実情等によっていろんな制度はできておるわけでございまして、要するに反政府軍といいますか、そういうような組織がある場合には、それに応じた組織をやはり立法府においてもすかさずつくっておられると思いますけれども、我が国の場合は、御承知のとおり現在治安関係は警察が第一義的に対処しており、それで一応これまで十分対処してきたわけでございます。  しかしながら、自衛隊がその持つ装備あるいはまたこれまでの訓練によって得た経験等を生かして、今おっしゃられたようなそういう事態になったときに、協力を依頼されたりなんかしたときに十分対応できるかどうか。そういうことについては、やはり常日ごろから我が国の安全を考える自衛隊としては考えておかなければならないわけでございますので、これから先もそういうような態度で対処していきたいと思っておるところでございます。  ただ、先ほどからも言いましたように、第一義的にはやはり警察が対応する警察機関の任務と考えておりまして、このような治安維持に第一義的に対応することを任務とする部隊を保有するということは現在のところ考えていないわけでございます。
  35. 依田智治

    依田智治君 やはり第一義的にやるのは警察だと思います。ただ、自衛隊自体としていざ戦闘行動なんかあった場合にそういう特殊救出任務というのは当然あるわけなんで、そういう事態に対応できるものというのは平素備えておき、それがどうしても警察が手に負えない場合のバックアップ体制にはなり得る、こういうことで私は申し上げたわけでございます。  あと時間もうちょっと、一問だけ、東京湾でまた油の流出事故がありました。ナホトカ号の一月二日のときには自衛隊は、出動要請されたけれども、機材が何もないのでドラム缶を半分に切ってひもをつけてしゃくり上げるというような大変な苦労をして災害出動をした。今回の場合も、恐らく周辺の都道府県等から災害出動のお願いがあったんじゃないかと思います。  私は、それで感ずるんですが、やはり総理府の世論調査でも平素自衛隊に災害等で活躍してもらうというのを期待しているのが非常に強いわけですので、ぜひこういう、これからタンカー等が、海に囲まれた日本、そうすると最初オイルフェンスをぱっと張るなんというのは極めて重要な任務で、自衛隊にそういう初期的な装備、災害資機材等は備えておいて、しっかりと海上保安庁等のバックアップもできるということも大変重要じゃないかなと思いますので、このあたりに対しては現在どうなっているのかなというのが一点。  あと一つは、私は、これに限らず平時において自衛隊をもっと有効に活用していくということが大変重要で、特に海洋国家日本の場合には沿岸における、潜水艦が無害でない通航をした場合にP3Cその他でやる、それを自衛隊法八十二条で自衛隊が海保にかわってやってやるというのが今度出ていますが、これは当然なことですが、それ以外でも、もっと海上警備行動、周辺における緊急事態とかその他も考えたり、また密航とかその他いろいろある状態、沿岸警備のための陸上自衛隊の活用。陸上自衛隊等を活用するとすぐ治安出動というようなことで、何か重々しくなっちゃうんですが、もうちょっと私はそういう国民生活に密着し我が国の本当に安全のために必要なそういう自衛隊のもっと平時における活用、そのための法の運用なり整備ということをぜひやっていただく必要があると思いますが、このあたりについて防衛庁長官の御見解をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  36. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 先ほどの油流出の場合は、海上保安庁からの依頼がありましたし、また千葉県からの出動要請がございまして、海上自衛隊並びに陸上自衛隊がそれぞれ参加したわけでございます。ただ、海上自衛隊も油流出の対策を本来の任務としているわけではございませんので、みずからのところでいろんな資機材を持って対応できるというわけじゃございません。むしろ陸上自衛隊なんかは要請を受けまして静岡県の方からオイルフェンス等を運んだというような、そういうこと等もございました。  これらの問題は、オイルの対策を今一応海上保安庁が中心になってやっておるわけでございますけれども、これから先回収船等をつくったりあるいはそれを維持管理したり、どういったふうに日ごろからこういう問題に対処するのか、それはやはり大いに研究、検討をしていかなければならない問題じゃないかと思っております。  それから、今最後に言われました自衛隊の活用については、これは正直言いまして自衛隊の本来の任務というのは、やはり防衛出動であり治安出動でありあるいはまた海上警備行動等、非常に特殊な行動が主たる任務になっておるわけでございます。しかしながら、その持っておる装備、あるいはまた先ほど言いましたようないろんな訓練によって得た経験、こういったものはやはり大いに活躍といいますか活用すべきでございますので、そういう問題については本来各省庁がやるべき任務を自衛隊に対してどういう形で依頼して自衛隊がどう対応できるか、こういうことについてやはりこれから先も研究していくべき課題じゃないか、そういうふうに思っておるところでございます。
  37. 依田智治

    依田智治君 これは各省庁から依頼があってやるというような種類ですが、しかし私はそれより一歩出て、やはり自衛隊が通常の活動の中である程度そういう部分については活用できるような法整備、運用というものも大変重要じゃないのかな、こんな感じを持っていますので、ぜひ十分御研究いただければありがたいと思います。  以上で終わります。
  38. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時二十五分まで休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      ―――――・―――――    午後一時二十六分開会
  39. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成七年度決算外二件を議題とし、外務省及び防衛庁決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  40. 益田洋介

    ○益田洋介君 最初に、これは通告を実はしておりません。ですが、なぜいつも通告を詳細にわたって行う私がしなかったかといいますと、理由は簡単でございまして、インフォメーションが入ってきたのが通告をした後だったものでです。ただし、碩学な外務大臣のことですのでお考えを、所見を表明していただけるものと思います。どういうことかといいますと、これは北朝鮮に関する情報でございまして、四月十七日付のジェーンズ・ディフェンス・ウイークリー、ここにダンカン・レノックスという方がリポートいたしております。  最初の書き出しは、インターメディエート・レンジ・バリスティック・ミサイルの北朝鮮における開発プログラムの現況については不明確な点が多い。一説によれば、プログラムはファイナンシャルまた財政上の問題、それから技術的な問題の二つによっておくれていると言われている。しかし、その一方では、既にオペレーション可能な六十基以上のミサイルが近年まで製造された。こうした点で不明確であるけれども、確かな情報は、北朝鮮がノドン三号の開発を続けており、近々最初のテストフライトが行われる予定だ。ノドン三号は射程距離が二千キロメートル、楽に日本の東海岸まで到達できる。こういった記事を入手したわけです。  それで、今まで私たちの国内における情報では、ノドン一号が十基ほど設置をされたということは聞いておりましたし、しかもノドン一号の射程距離はわずか千キロ。わずか千キロという言い方はないかもしれません。つまり、ノドン三号の開発に成功すれば射程距離は倍になるという計算でございます。去年の十月ごろの情報では、ノドン二号を開発中である、こういう情報は私どもも得ていたわけですが、ノドン三号については、私はきのう初めて情報をこういうことでいただいたわけでございます。  この辺についての見解、最近のノースコリアのミサイル開発に関する外務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  41. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 北朝鮮につきましては全体的に情報がなかなか入手困難であるという状況でございますし、とりわけミサイルの開発についても我々きちんとした正確な情報は入手できているわけではございません。  しかし、そういった中でも、いろいろなニュースソース、またルートを求めまして情報の収集には努めておりますが、ノドンの件につきましては、委員も御指摘になりましたように、これまで射程が大体千キロぐらいのものをさらに改良してその射程を延ばす、そういった開発が行われているんではないかというふうに見られておったわけでございまして、委員も御指摘になりましたけれども、昨年あたりも、それが完成したんじゃないかとか、あるいは発射するための発射装置が存在するんではないかというようなことも含めましていろいろな情報があったことは事実でございます。しかし、今具体的に委員がおっしゃいましたが、ジェーン年鑑においてノドン三号云々という御指摘ございましたけれども、その点については私どもも今こういった情報については入手しておりません。
  42. 益田洋介

    ○益田洋介君 ジェーン年鑑ではなく、ジェーン年鑑と同じ出版社が出しているジェーンズ・ディフェンス・ウイークリー、週刊誌でございます。  この四月十七日に先立つ三月七日、アメリカの研究機関であります中東データ・プロジェクトがリポートを発表している。この報告書によりますと、ロシアはこのほどSS4中距離弾道ミサイルの製造技術と誘導装置部品をイランに売却した。そして、この報告書はさらに、北朝鮮のノドン一号ミサイルをモデルにゼルザ三号という独自の中距離ミサイルの製造をイランは目指してきた。ロシア、イラン、北朝鮮のトライアングルの構造が明らかになっているわけでございます。今回のイランがロシアから輸入したミサイル技術では特に誘導装置がすぐれており、ゼルザ三号の開発に貢献するであろう、こういうふうなリポートが発表されて、米国政府はロシア政府に直ちに抗議の意を伝えたというふうに報道されております。  この点について、どういうお考えでしょうか。外務大臣の所見をお伺いしたい。
  43. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいまの具体的なロシアからイランヘのミサイル技術の移転、あるいはそれと北朝鮮からの技術を組み合わせたイランでの新たなミサイルあるいは既存のミサイルの改良についての進展というものにつきましては、私どもそういったものをまだ確認しているわけじゃございません。  しかし、一般論として申しますと、そういった兵器あるいは武器技術の、とりわけミサイル関連の技術の拡散というものは好ましくないことでございまして、とりわけイランの今の状況というものを考えますと、そのようなことが行われておることは避けられなければならないものと考えている次第でございます。  そういった観点から、ロシアとの対話におきましても、従来から折に触れましてそのようなことの危険性については注意を喚起してきているところでございます。
  44. 益田洋介

    ○益田洋介君 一般論と外務大臣はおっしゃいましたが、私は具体的な事例を示して質問しているわけでございますから、できればもう少し具体的な返答をしていただきたかったと思います。  デンバーではこのような北朝鮮のミサイルの製造ですとかイランとロシア関係、そういったことは話題になったんでしょうか。
  45. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 個別具体的なそういった軍事技術の開発の可能性等々を前提にしながらの議論は、サミットの場でございますからそれはございませんけれども、一般論といいますか、一般的に、やはり世界の中でいろいろ不安定な要素を持っている地域についてどのように国際社会として対応していくべきかという議論はなされまして、そういった中で北朝鮮の動向について、あるいはイランの動向についてもいろいろ話し合われました。  そういった中で、北朝鮮につきましては、これはミサイルではございませんけれども、例の核開発疑惑にかかわるKEDOのプロセス、今、米韓と協力して日本もその一つの主要な役割を担おうとしているわけでございますが、さらにヨーロッパ、EU等も従来以上に今後積極的なかかわりを持つことになりました。そういったプロセスを進めていくことの重要性がコミュニケでもうたわれたわけでございますが、それに至る過程におきまして、核開発との関連において、それの輸送手段であるミサイルの開発の問題についても言及がなされたということがございます。  それからまた、イランの方につきましても、中東地域の安定化を図るという観点から、イランのこれからの動向は重要であるということがいろいろ議論されました。御承知のとおり、先般イランにおいて選挙が行われました。その選挙の結果を踏まえて、これからイランにおきましても従来とは違った新しい動向が出てくる可能性が感ぜられるので、そういったものも注視しながら国際社会として、いわばクリティカルダイアローグと申しましょうか、そういったものを進めていくべきかどうかというような点。  それから、この点につきましては、御承知のとおり、ドイツにおける先般の裁判の結果などもございまして、ヨーロッパ諸国は大使を召還なんという措置をとっておるわけでございますが、そういったことにどういうふうに対応していくべきかというようなことにつきましていろいろ話し合われたところでございます。  ミサイルの問題について、イランとの関連において特に議論が行われたということはございません。
  46. 益田洋介

    ○益田洋介君 それでは、通告をいたしました質問を始めさせていただきます。  まず最初に、外務省にお伺いしたいんですが、残念ながら、今回のガイドライン見直しの第二次経過報告によりますと、いわゆるグレーゾーンがなくなっていない。特にアメリカ側が日本周辺有事で日本協力を期待している分野は、御承知のとおり掃海。これは機雷の除去でございまして、総会屋とは違います。二つ目は米軍への物資の補給・輸送支援。三番目は海上で行方不明になった米兵の捜索・救難、主に海上活動が中心になっているわけでございます。いずれもグレーゾーンが絡んでおって不確定な要素が多いわけでございます。  アメリカの国防省では、実は昨年、ガイドラインの見直しで日本に憲法改正を求めるか否かというテーマをめぐって激論が交わされたというふうに伺っています。例えば、国防総省のOBであるリチャード・アーミテージ元次官補は、いずれ憲法改正は避けられない道筋であろうと述べたのに対して、当時のペリー国防長官は、最終的には憲法自体には手をつけず解釈変更の方法の方が賢明ではないか、こういった議論がアメリカ国内ではなされている。  にもかかわらず、今回の見直しでは、グレーゾーンが白か黒なのか全然はっきりしないままのグレーな色彩で残ってしまった。もしこの辺を明確にしてもらえないと、アメリカ側の言い分としては、有事の作戦計画がつくれない、そうしたことをカート・キャンベル国防次官補代理は五月の連休中に訪米した自民党や我が党の国会議員に対して何度も重ねて強調したと伝えられているんです。この点についてどのような御見解でしょうか。防衛庁長官、お願いいたします。
  47. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 今度の関係で、かなりやれることとやれないことの整理ができたんじゃないかというふうに私は思っているわけでございまして、今キャンベルさんがこう言ったああ言ったと言われますけれども、その後私どものスタッフが会って、これまでの中間取りまとめをまとめますときにもそのような不満等は聞いておりませんので、私は今度の中間取りまとめでかなり前進があったと。しかしながら、我が国国内において、まだ秋までの間にいろいろな法的な問題については詰めていかなければならない問題、憲法上の問題、これは確かにあろうかと思います。  しかしながら、今おっしゃられるように、グレーゾーンがそのまま残ったということではなくて、協力できる分野がどこまでできるかというようなことについてはかなり前進できたんじゃないか、そういうふうに思っております。
  48. 益田洋介

    ○益田洋介君 そのようには思えない、我が国考え方を異にする、グレーゾーンはかなり解消されたと、そういう御意見でありますが、実際ことしの五月に訪米した自民党の瓦力安全保障調査会長、その他大野前国防部会長、こういう方々に具体的にキャンベルさんが意見を言っているわけでございますから、これだけ考え方に差があるということは外交交渉としては大変な事態ではないかと私は懸念するわけでございます。  同時に、今回の問題というのは、内閣法制局が果たして憲法の解釈を決めて本当にいいのだろうか、こういう基本的な問題にまで私はたどり着くと思っております。例えば、自衛隊ではなくて民間タンカーからだったらば米軍に幾らでも給油することができるなんというような、こんな顛末な議論をしている国は僕は世界じゅうにないんじゃないかと思いますよ。いかがでしょうか。
  49. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 先ほどのお話に戻りますけれども、五月にそんな話があったと言われますが、まだそのころは話が煮詰まってなかった点もあろうかと思いますけれども、少なくともガイドラインが中間取りまとめとして発表されまして、それ以来今のような話は伺っていないわけでございますので、現在の中間取りまとめに沿ってそれぞれがまた秋を目指して詰めていくべきところは詰めていく、そうすることによってガイドラインとしての大枠並びに方向性は出てくるんじゃないかと思っておるわけでございます。  なお、今おっしゃられました法制局が憲法の解釈を云々というわけでございますけれども、私ども政府としてはいろんな行動をする場合に憲法並びに法律に基づいて行動しなければならないわけでございます。そのときに政府の法制局がどういう考え方でやるかというのは明らかにしておかなければならないから従来から一つの解釈を出してきているわけでございまして、憲法の最後の判断を内閣の法制局がやるんだということじゃないわけでございますから、私ども政府として行動するときには、内閣の法制局がどういうような考え方でやっているかというものをやはり明らかにしながら行動していかなければならないわけでございますので、立法府の皆様方が内閣法制局の解釈で云々ということまでも私どもは言っているわけじゃございませんので、その辺はひとつ御理解賜りたいと思います。
  50. 益田洋介

    ○益田洋介君 私は何も憲法解釈の最終の責任者が法制局だと一言も言っていない。それは最高裁であることは間違いないわけであります。しかし、それを行政府が実際に行政に対応するためにどういう解釈をするかというのは行政府の問題。ただし、立法府の私たちが行政府の法制局の見解に抗議を申し立てちゃいけないなんて、そんな言い方はおかしいと思いますよ。  それから、今一番問題になっておりますのは、外務省防衛庁の間で、あるいは内閣法制局三者で行われた協議の中で、一番最後まで解決しなかったのが武器・弾薬の輸送、補給の取り扱いだと。紆余曲折はありましたが、最終的には艦船・航空機などへの補給については「武器・弾薬を除く。」と、こういう表現が盛り込まれているわけでございますが、私は、これはアメリカ軍としては一番何とか日本に解釈を変えてもらいたかった部分じゃないかと思うわけです。これでアメリカ側が納得するというお考えでしょうか。
  51. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) それはアメリカの方からニーズがないという点もあるわけでございまして、これはアメリカが納得するかしないかというよりも、こういうような中間取りまとめで一応今はまとめようという、そういうような方向で行っているわけでございますから、私はその方向でまとまるんじゃないかと思っております。
  52. 益田洋介

    ○益田洋介君 ぜひそのようにうまく取りまとめていただきたいと思うわけでございます。  それから、次に大きな焦点でありました海上自衛隊による機雷除去活動の範囲についてですけれども、これについても「日本領域及び日本周辺公海上」ということで不明確なまま持ち越された形になっているわけでありますが、具体的にはどういうところをお考えでしょうか。
  53. 太田洋次

    説明員(太田洋次君) この点につきましては、日米間で考えておりますことは、周辺事態における運用面における日米間の協力として整理している機雷除去の問題でありますけれども、これは周辺事態我が国の平和と安全に重要な影響を与えるという点から、我が国の平和と安全の確保の観点から行う活動であるというふうに整理してございます。  これが具体的にどういうふうな態様で機雷が敷設されているかということによりまして我が方の対応が異なってくるということは言えます。つまり、機雷の敷設が我が国に対する武力攻撃の一環というふうな形で敷設されておりますれば、これは防衛出動の下令を前提といたしまして、公海上であれ、それから領海の中であれ、当然のことながらこれに対して我が方が機雷の除去ができるということは言えます。
  54. 益田洋介

    ○益田洋介君 この問題につきまして、我が党の政審会長である野田毅議員が次のような意見を述べておりますので、若干引用させていただきます。  後方支援の範囲については、「憲法論議をきちっと踏まえないと、ややこしくなる。自衛権(の行使可能な範囲)を極力、拡大解釈しない代わりに、国連の既になされた決議、新たになされる決議があれば、その枠組みで行動する限り、(どこで後方支援しても)何ら憲法に抵触するものではない。」と思うと。  これについて、どういうお考えでしょうか。
  55. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 先ほどの機雷の関係でおっしゃっておられるのかどうか、また、別の問題で言われたのか、取り違えておるのかもしれませんけれども、機雷の問題で言われているとするならば、そもそも機雷が我が国の周辺にある場合にそれを黙視するわけにはまいらないわけでございます。日本は商船がしょっちゅう出入りしますし、漁船もしょっちゅう航海しているわけでございますから、そういう意味では、我が国に対してそれが敷設されたものであれば七十六条で除去できるし、また、そうでなくて浮遊しているその他の機雷であるならばそれは九十九条でやれるじゃないか、危険物としてやれるじゃないかと、そういうような基本的な考え方で機雷の掃海には当たるべきだと。  ただ、これが他国に対する武力行使としての機雷としてはっきりしている場合に、それを掃海することは憲法九条に抵触することになるから、そういう場合にはできない場合があるというようなことで、私は逆に、日本みたいに四万海に囲まれている国としては、機雷の掃海は原則として大体やらなければ自分の死活にかかわる、そういうふうに理解するならば、非常にこの問題については自明の理といいますか、はっきりしてくるんじゃないかと思うわけでございます。
  56. 益田洋介

    ○益田洋介君 私が伺いたかったのは後方支援の問題だったんです。後方支援の範囲については憲法論議をきちっと踏まえないとという話でございましたが、機雷の話を繰り返し答弁なされました。  また機雷の話に戻りますが、米軍の極東に保有している掃海艇はわずか二隻なのに対して、我が国の海上自衛隊は三十隻持っている。第二次世界大戦中に七千個近い機雷を処理した経験があり、こうした地道な作業は日本人として得意な分野ではないか、そういうふうにも言われております。  領海内における機雷の掃海は、防衛出動が発令された場合のほか、今、長官が引用されました危険物の除去を定めた自衛隊法の九十九条によって、防衛庁長官の命令で出動ができるわけです。しかし、公海上についてはこれまでは機雷の除去は武力行為に当たるんだとしてこられたわけであります。  これについて今回は一歩踏み込んで「日本周辺公海上」という表現で一応歯どめをかけたわけでございます。しかし、戦闘地域への航行の安全確保を念頭に置いたアメリカ側の期待とは大きな開きがあるのではないかというふうに思われますが、この点はいかがでしょうか。
  57. 太田洋次

    説明員(太田洋次君) 先ほど大臣から御説明しましたように、我が国に対する武力攻撃に当たるということでありますれば、防衛出動下令下におきまして、それに対する自衛行動としてそれを除去することができるということを申し上げました。  それから、そうではなくて、例えば機雷が浮遊しておるということで、本来はどういう目的で敷設されたかわかりませんけれども、現在は公海上にあってその敷設した国のコントロールを離れているというような機雷がありますれば、これは、先ほど防衛庁長官も申し上げましたように、九十九条におきます我が国に対する平和と安全の確保の観点からそういうことも掃海できる場合があるということでございます。  委員のその点につきましては、これはちょっと先走ったお答えになるかもしれませんけれども、我が方がこういう掃海の活動をやりました場合に、米軍との共同行動をしている場合に、運用面の協力から見た場合に、米側の艦艇もこの地域を通る場合もあるわけでございますので、それが我が方の掃海活動によって結果として米側もそれに稗益するという事態は当然考えられます。そういう面での協力もあり得るということでございます。
  58. 益田洋介

    ○益田洋介君 それでは次に、船舶検査、臨検について御質問いたします。  これは、外務省防衛庁、そして法制局も協議していた際、法制局が一番嫌っていた事柄であると言われておりますが、経済制裁の実効性を確保するための臨検そのものは違憲ではないけれども、もし実際の停船命令に相手が従わない場合は警告射撃を行う場合もあり得るわけで、法制局は武力による威嚇に当てはまる可能性が高いと、このように言っているわけでございます。この点についてはいかがでしょうか。
  59. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) この問題につきましては、これから先、秋の最終の取りまとめの間にまだいろいろと議論をしていかなければなりませんし、国会等における議論等もまたお聞きしながら我々としては詰めていかなければならないわけでございます。国連の一員でございます我が国として、国連が例えば決議等で経済制裁等を行うときに、我が国としてはやはりそれに従ってその目的達成のために努力をしなければならないわけでございます。そのときに、船舶の検査等をどういう形でどういうような状況でやれるか、これについては、今委員が御指摘になりましたように、まだまだ意見がいろいろとありますので、仮に違憲ではないとしても、全部違憲でないかどうかということになりますと、それもまたいろいろな議論があろうかと思いますから、これはそういう議論を拝聴しながら、慎重に検討していかなければならない問題であると考えております。
  60. 益田洋介

    ○益田洋介君 この問題について我が党の小沢一郎党首が対談をいたしました。月刊誌「潮」八月号に対談の結果が掲載されておりまして、若干引用させていただきます。  戦時下における臨検というのはどういうことだ、これは武力の威嚇と行使ですと。武力行使そのものなんです、前線だろうが後方だろうが。でも、前線というおどろおどろした言葉を使うよりは、後方支援という体裁よく聞こえる言葉を使いたがる人がおります。本当は、戦争というのは兵たん線が一番危ない。どんな強い兵隊がいても、食料も物資もなければ戦闘することはできないだろう。戦争の最大の要請は兵たん線をねらうことである、過去から何度も繰り返し言われてきているように。だから、後方支援なんて全く危なくないような言葉を使うことは、本当は一番危険なことなんだ。日本の輸送船だって第二次世界大戦中全部沈められている。だから、船の臨検、これは僕の結論でいえば、武力での威嚇、武力行使そのものなんだ。国連の平和活動の強制処置として国連が認めたと決定したときならば、それはできる。そうでない限りはしてはならない。領海に入ってきてうろうろしていればこれは別だけれども、公海上ではできない。なぜならば、戦争そのものに参加することになるからだと。こういうふうな意見を述べております。これについてはいかがでしょうか。
  61. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 現在、中間取りまとめに入っております船舶等の検査でございますが、これにつきまして、現時点で我々が今想定しておりますのは、経済制裁の実効性を確保するために船舶の検査を行う、こういうものでございまして、今御指摘のございましたような戦争の、戦闘行為の一環であるというふうなことは、まずこれは想定していないということを申し上げたいと思います。  具体的な例としては、例えば対ユーゴの経済制裁に関連して行われましたように、国連の安保理の決議があって、それに基づいて国連憲章第七章のもとで行われる船舶の検査、こういうものを我々は現時点では想定しておるわけでございます。そういった場合には、国連加盟国は憲章の二十五条に基づきまして、自国の旗を掲げている船にはそのような検査を受ける、検査を受忍する義務がある、こういうことがございます。それが一つ。  それから、現実の問題といたしましても、大体そういった検査を受けます対象の船というのは通常の商船が多いわけでございますし、そういった意味でいわゆる武力を使わなければならなかった例というのは過去の事例においても極めてまれであったということでございますので、決して我々は現実を無視して、後方支援ということで、何か危険性というものを、あるいは武力行使の可能性というものを隠ぺいしようとしているというふうな趣旨の御質疑に聞こえましたけれども、そういう意図は全くない、現実に我々が想定している措置というものが先ほど申しましたような性格のものであるということを申し上げておきたいと思います。
  62. 益田洋介

    ○益田洋介君 今回の見直し作業というのは、実は昨年四月の日米安保共同宣言で、日米両国間の緊密な防衛協力日米同盟関係の中心的要素であると両国首脳が同盟強化を鮮明にしたことから始まったわけでございます。日米安保体制を、日本防衛のためからアジア地域の安全保障機構へと変化させることがねらいであるというふうに言われております。  一方、アメリカ側は、日本はできないことはできないとはっきりさせてほしいと繰り返し言っている。昨年六月の次官級協議を皮切りに、このことは局長クラスによるSDC、日米防衛協力委員会における作業の中でも繰り返し言われてきた。やはりアメリカが最終的に日本に求めているのは、白黒はっきりさせてもらいたい、グレーゾーンをなくしてもらいたい、こういうことだと思うわけでございます。  現在、アメリカは朝鮮半島、台湾海峡などの有事の対処計画から日本を抜いて考えている。なぜかなれば、日本からの協力内容がはっきりしないうちは計画の立てようがないからだ、こういうふうに言われているわけでございまして、これはアーミテージ元国防次官補の発言でございます。やはりグレーゾーンを中心に後方地域支援や自衛隊の運用でどこまで踏み込むことが可能なのか、それを明確にするように要求してきている。  一方でまた、特定の地域は想定していないと言っているこの見直し作業も、朝鮮半島有事を想定シナリオの中心に据えていることは確実だと思われます。アメリカの外交問題評議会の報告書には、朝鮮半島有事への支援が全くできないということになると、日米同盟は一気に崩壊に向かう危険に見舞われる、こういう指摘をされているわけでございます。この点についていかがでしょうか。
  63. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、昨年の日米首脳会談における日米安保共同宣言がありました。そこにおきまして、両国首脳の間で安全保障面での協力をさらに緊密化していこうという合意があった、それを踏まえてこのガイドラインの作業も進められているというのはそのとおりでございます。  しかし、それで別に変質したわけじゃございませんで、従来と同じように、まず日米安保体制というものは、我が国自身の平和を維持していく、安全を維持していくという面で不可欠であるということはいささかも変更ないわけでございます。そうして、また同時に、日米安保体制というものは、我が国だけではなくて、全体として地域の安定にも資するものであったということは従来からあったわけでございますけれども、近津のアジア太平洋地域の情勢変化というものを踏まえますならば、そういった面でのいわば地域の平和と安定の維持のために資するといった役割が重要件を増しているということはあろうかと、こう思います。  それから、さて、米国の方が日米協力において、とりわけこのガイドラインの作業において何を求めておるかという点につきまして、今、米国の元政府当局者であったり、あるいは政府外の評議会の言説を引用しながらいろいろ御論議がございましたけれども、私ども米国と作業を進めている中ではっきりしておりますのは、我が国としましては、もとより憲法は、現行の憲法をきちんと踏まえ、それを前提にするんだと。そうしてまた、例えば集団的自衛権の行使にかかわるもののような基本的な憲法解釈につきましても、これまで我が国政府がとってまいりました解釈というものを踏襲するんだと。そういう前提に立った上で一体どういうふうな協力をなすべきか、またできるかということをいろいろ検討しているわけでございまして、この点は米国政府も全く我々と同じ前提に立ち、またそれで作業を進めようじゃないかということでやってきたわけでございます。その上に立って先般発表いたしました中間取りまとめでございますが、これにつきましては先ほど防衛庁長官からも御答弁ございましたが、米国当局も、これまでの作業を踏まえた中間取りまとめにつきましては、満足といいましょうか、これはそのように評価しているところでございます。  さらに、先般のデンバーサミットの際に行われました日米首脳会談におきましても、クリントン大統領自身の口から、この中間取りまとめについて評価するという話があり、さらに秋の最終的な取りまとめに向かって協力していこうじゃないかということは両国首脳で合意されたところでございますので、私は、今、米国との間でこのガイドラインの取りまとめ作業についてそごがある’か、あるいはその案に不協和音があるというようなことは全く当たらないんだと、こういうふうに考えている次第でございます。
  64. 益田洋介

    ○益田洋介君 それでは、有事法制の論議にここで話題を移したいと思います。  最近になってから、梶山官房長官が自民党の議員、それからまた新進党の議員と話し合いをしていたときに、たまたま、有事立法は私の政治的遺言だと、もうここまで突き詰めて考えていらっしゃる。  我が党も、日本再興基本構想、これはまだ仮称でございますが、そうした政策をまとめたものの中でも、ガイドラインの実効性の担保のためには法整備を一刻も早く実現させなきゃいけない、こういうふうなスタンスをとっているわけでございます。  五月十五日、衆議院の安全保障委員会において参考人質疑が行われ、青山学院大学の阪中友久教授が次のような発言をしております。  防衛出動発令以前の行動を含んだ有事法制の検討が必要だ、そしてさらには、平時の軍事力の伸用、展開には明白な法律上の規定を必要とするんだと、そう言って、日本有事よりもむしろ周辺有事のための法整備の重要性を強調しておりました。私もこの意見には賛成でございます。  六月八日に発表いたしました日米防衛協力ガイドライン見直しの中間取りまとめに関する我が党の談話ということで、野田政審会長が次のような発言をしております。「ガイドラインの見直しを実効あるものとするには、新たな法整備を含む有事体制の整備は不可欠である。したがって、政府は速やかに国会に関連法案を提出すべきである。」。さらに政審会長は、政府・与党は有事関連法案を来年の通常国会に提出する意向だと聞いているが、それでは実際に間に合わなくなる、朝鮮半島情勢もあることなんだから、秋の臨時国会に提出すべきだ、このように主張しております。この点はいかがでしょうか。
  65. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) このガイドラインの見直しを秋までに行うということにしておるわけでございまして、ガイドラインは御承知のとおり大枠並びに方向性というのを決めていくものでございますけれども、その結果でき上がりましたそういうガイドラインが見直しとされましたならば、それを実効性あるものにしていかなければなりません。その過程において、法的課題等どういう問題があるのか、これも洗っていかなきゃならないわけでございますので、先ほど御党の政審会長が言われたそういう意見等も私どももごもっともな意見だというふうに伺っておりますけれども、そういうような法的課題を洗っていく中でどういう問題があるのかどうか、十分検討してやっていかなきゃならない問題だと思います。  秋の臨時国会までにはまだ日にちがありますけれども、秋にガイドラインの見直しを行うわけでございますので、その時点で既に法案を準備して提出するということはなかなか難しいんじゃないかと、そういう感じがいたします。  しかし、いずれにしましても、法的課題は総洗いしまして、必要な実行態勢をつくるためのそういう整備等は必要ならばやらなければならないものと、そういうふうに認識をいたしております。
  66. 益田洋介

    ○益田洋介君 長い間続いた憲法解釈の神学論議はもうこの辺でやめて、具体的な有事法制について早急に詰めなきゃならない、そういう段階に立ち至っているという、そういう認識はお持ちなわけでございますね。
  67. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 今どういうふうな意味でおっしゃられたのかわかりませんけれども、私どもは我が国有事の場合についても有事法制の研究というのを五十三年以来やってまいりまして、五十六年には国会の方へ報告も出しておるわけでございます。  しかしながら、我が国の安全を担当する防衛庁としては、単なる研究ではなくて、それをもう一歩踏み出してきちっと整備すべきであるという、そういう考えを持っておりますけれども、ただ、法整備をするかどうかはやっぱり一つには非常に高度な政治判断を要するわけでございまして、国会の御論議等も十分に踏まえながら、政府ももちろん決断をして、それを受けて最終的には立法府において判断していただくわけでございますので、その辺のことを考えながらこれから先進まなければならない問題だ、そういうふうに認識いたしております。
  68. 益田洋介

    ○益田洋介君 それでは次に、我が国周辺国への配慮というテーマについて質問させていただきます。  五月に自由民主党の山崎拓政調会長が訪中をいたしました。その際、日本政府の説明よりかなり大きく踏み込んだ発言をされている。  どういうことかといいますと、日本の平和と安定に影響を与える事態というガイドラインの想定には中国と台湾の軍事的対立は含まれていない、このように明言されている。中台関係日米が介入する事態を嫌う遅国防相ら中国側要人の懸念を晴らそうとしてあえてこういう発言をされている。  この点について、政府は賛成なさいますか。
  69. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもいわゆる周辺事態と申しますときに、あらかじめ具体的にどの国であるとかどの地域であるとか、こういうことを特定しているわけじゃございません。我が国周辺で起こる事態であって、我が国の安全に重大な影響を与え得るようなそういう事態が起きたときと、そういうふうなことでございますので、いわば事態ということにポイントを置いて考えておるということでございます。  したがいまして、あらかじめ中国であろうとどこの国であろうと、それが入っている入っていない、対象になるならないということを申し上げるのは適当でない、こういうのが政府の立場でございます。
  70. 益田洋介

    ○益田洋介君 特定の地域を限定していない、想定していないというお話ですが、我が国周辺地域という言葉の英語の原語がイン・ザ・エリア・サラウンディング・ジャパンということで、日本が囲まれている区域ということになれば世界じゅうになるわけです。その辺はいかがですか。
  71. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 我が国周辺の地域でございますから、英語で言えば今委員指摘のとおりになるわけでございますけれども、そこで起こる事態、それが我が国の安全に大きな影響を及ぼす、こういう言い方でございますので、周辺地域と言う以上地域概念であることは否定はできませんけれども、しからばどの地域かということを、例えばどこからどこということを外縁的に明白にするということは極めて困難でもあるし、また、先ほども申しましたように事態というものの方に重点を置いて考えるべき概念であるということを考えるならば、事前にそういった地理的な意味での外縁がどこだというふうな規定をするということにはそれほどの意味があるとは言えないという面も御理解賜りたいと思います。
  72. 益田洋介

    ○益田洋介君 余り得心はいっておりませんが、中台紛争、中台問題に戻りたいと思います。  アメリカは、例えば可能性としてはかなりあることだと思いますし、既に昨年三月にもそうした姿勢を、アメリカは台湾海峡にインディペンデンスを直行させるというような行動に出たわけでございますが、アメリカが将来的に中台紛争に介入した場合には日本国内基地から当然米軍機が飛び立つことになるわけであります。そうなれば、それは当然日米安保条約の事前協議の対象になるわけであります。したがって、この際に我が国がイエスと言うかノーと言うかということによって日中間の信頼関係に影響が出てくるのではないかと思います。これも山崎政調会長が訪中した際に述べたことであります。  しかし、これに対し中国側は余り反論しなかったと、政調会長が帰ってきてから記者会見でそう述べています。これについてはどういうお考えですか。
  73. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいまの御質問はいわゆる中台間に紛争が起きた場合にという前提を置いての御質疑でございますけれども、やはり私はそういった仮定の問題にお答えするのは政府として差し控えなくちゃならないと思います。  ついでに、まずお考えいただきたいのは、我が国が中台の関係についてどういうふうな立場をとっているかということ、そうしてまた、今、中台の関係がどういうふうな状況にあるか、それからまた、将来どういうふうな方向に向かい得るかという点を考えてみたいと思うのでございます。  御承知のとおり、我が国は二十五年前に共同声明を出しまして日中との間の国交関係を正常化したわけでございますが、その際、台湾問題についての中国の立場、つまり、まず中国は一つであるということ、そして台湾は中国の一部であるということ、そういった中国の立場というものに我が国として理解をするという、こういうことを明確にしております。そして、自後、台湾と我が国との関係は非政府間の実務的な関係として維持してきたわけでございます。そして、台湾の問題につきましては、両岸の当事者、つまり中国と台湾との間で平和裏に解決されることを期待する、望むという、そういうことが我が国の立場でございます。  そして、さて次に、中国と台湾との関係が現在あるいはこれから将来に向かってどういうふうになるだろうかという点でございますけれども、いろいろなことがございますが、中台ともに今、事を起こそうということはもとよりのこと、この関係が紛糾するということは望んでいないというのが基本だと思います。  そして、御承知のとおり、中国は今回香港を一国二制度という形のもとでいわば統合したといいましょうか返還を受けたわけでございますけれども、将来的には台湾についてもそのような枠組みの中で何とか解決できないかという希望を表明しております。  これに対しまして台湾側は、一国二制度という仕組みで考えるわけにはいかないということで、その点は明確にしておるわけでございますが、しかしながら、中国との関係につきましては、やはり何らかの平和裏の話し合いを通ずる解決というものを求めるという広い意味での立場といいましょうか、姿勢は中国と相通ずるものがあるんだと、こう考えるわけでございます。  そういった情勢でもありますので、早急に事態が展開するとは思いませんが、しかし近い将来において事態が非常に悪化するということも、今申しました中台の双方の基本的な立場というものを考えるならば避けられるんではないかと考える次第でございますし、我が国としても、先ほど申しましたような基本的な立場からいたしまして、時間がかかっても何とか平和裏での両岸の当事者による解決を期待していると、こういうことでございます。  そういうことを考えますならば、冒頭に申しましたとおり、中台の関係が緊張するということを前提にしてあれこれ御論議するということ、そして仮定の問題にお答えするということが政府の立場として適切でないという点はよく御理解いただけるんではないかと考える次第でございます。
  74. 益田洋介

    ○益田洋介君 外務大臣は仮定を前提とした議論には応じられないということですが、これは仮定じゃないんですね。実際、既に昨年の三月に台湾海峡沖の軍事演習でアメリカは、先ほど私が申し上げたように横須賀を母港とするインディペンデンスを急送した、こういう事実があるわけです。これは我々の記憶にまだまだ生々しいものじゃないかと思います。したがって、私は仮定を前提とした論議を質問したということではない、そのように考えるわけでございます。  それから次に、中間報告の発表後の九日に政府は外務省局長クラスを中国と韓国に急派した。随分中国に気を使った、また韓国に気を使った、過敏に反応する政府だなと私は感心するわけでございます。  今回のガイドラインの見直しというのが、結果としては、日米安保条約が軍事的な色彩を強め、そしてさらには対中政策などでアメリカのアジア政策、戦略への関与を深めることを意味する。ですから、こういった観点からすれば中国が機敏に反応するということは当然かもしれません。  ただ、アメリカにはとかく内向きあるいは欧州方面にのみ視座を据えたような米国議会の問題がありますので、その議会への説明材料として日米安保が実効的に機能することを証明しようとしてアメリカ政府は努力をしている。そして、今回のガイドラインの策定、日本の関連法の整備、半島有事を想定した相互協力計画の作成、そしてその計画に基づく日米共同訓練、こういった一つのコースをたどってくるわけでございます。ですから、日米中トライアングル、この非常に微妙なバランスの中でガイドラインの見直し、それから先ほど申し上げた法整備、相互協力計画の作成等の作業が行われていくわけでございます。  こうした日本の対米後方支援を柱とするガイドラインの見直しは、一部では戦争を準備するものだと、こういった声が周辺諸国からは聞こえてくるわけでございます。中国についてはジョセフ・ナイの有名なナイ・イニシアチブでコンテーンメントでなくエンゲージメントで、封じ込めでなくむしろ関与と拡大政策でいくべきだ、こういうふうな意見も米国政府にはあったわけでございます。この点について外務大臣、どうお考えでしょうか。
  75. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもは昨年の首脳会談における日米安保共同宣言についても、また、それに基づいて現在進められておりますがイドラインの作業につきましても、いわば新しいといいましょうか、冷戦が終えんしてかなりの日時がたちました現在のアジア太平洋地域の状況というものを踏まえまして、やはりこの地域の安定を確保していく上でも日米安保体制というものは非常に大きな役割を果たしておるという、そういう認識に立って、また、それがより実効性を持ち得るようにということで、日米協力のあり方について今ガイドラインをいろいろ見直す作業を進めているわけでございます。  しかし、これは決してどこか特定の国なり特定の地域というものを念頭に置きながらこうやっているものではないということは、政府として繰り返し明らかにしているところでございます。また、そのことが近隣の諸国にもよく正しく理解されて、この地域における日米安保体制の果たす役割について適切な位置づけを近隣諸国にもしてもらい、また、そのことを通じてこの体制がこの地域の安定に果たす役割がさらに高まるということを期待している、こういうことでございます。  そういった意味におきまして、今回のガイドラインの作業は、日本の国内において透明性の高い作業を進めていく必要性があるのは当然でございますが、近隣諸国との関係におきましても、そのプロセスにおいてもいろいろ説明をしながらやっていこうということでいろいろ説明してまいっております。  そういった中で、概して申しますならば、アジアの近隣諸国は、我が国あるいは米国の考えでおります日米安保体制あるいは日米協力のあり方について正確に理解し、そして積極的な評価をしていただいている、こう考えております。  ただ、中国からは、本来、日米安保体制というものは二国間の関係であるから、それがその枠を超えるようなことになったら心配だというふうな気持ちが表明されているのはそのとおりでございますが、その点につきましてはいろいろなレベルで機会あるごとに我々の考えでいるところを御説明し、そしてまた理解を得るように努力している次第でございます。
  76. 益田洋介

    ○益田洋介君 終わります。
  77. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 平成会の魚住裕一郎でございます。益田委員に関連して質問をさせていただきます。  午前中の質問依田委員からも質問がございましたけれども、香港返還ということが七月一日にありました。深夜でございましたけれども、私もテレビでずっとその式典を見ておったんですが、我が国の平和と安定にとって東アジアの安定というのは非常に大事である、その中で香港返還という事態になったわけであります。  イギリス軍がすぽっと抜けて、そして人民解放軍が進駐してくるという中で今後の東アジアにおける軍事バランス、これがどのように変化するというふうに防衛庁として考えてきたのか。これはもうかなり前から返還されるということが約束されておりましたし、ずっと研究をされていたと思いますが、その想定される変化に対して防衛庁としてどのような準備をとっておられるのか、この点についてまずお聞きをしたいと思います。
  78. 佐藤謙

    説明員(佐藤謙君) 午前中の御答弁と重複するところがございますけれども、香港につきまして、返還前イギリス軍が駐留をしておって、それがこの香港返還と相前後して撤退をし、中国の人民解放軍が進駐をしたということでございます。  そういった意味で、確かに中国が香港に陸海空軍の拠点を有することになったわけでございますけれども、その規模等につきましては、私どもの考えではこの香港地域の防衛に必要な範囲内のものと、こういうふうに考えられますことから、この返還に伴いますかような変化というものが、周辺地域の軍事情勢、これに特段の影響を与えることはないのではないか、こんなふうに私どもは見ているところでございます。
  79. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 特段の変化はないというようなお話でございますけれども、ただ、イギリスという西洋社会というか民主主義社会の雄と言うべき国の陸海空があるかないかでポイント的に随分違うと思うんですね。  また、香港は天下の良港というか海洋に打って出るいい場所でございますし、そこに中国の艦船が入るかどうかによってまた大きく変わってくると私自身は思うんですが、いかがですか。
  80. 佐藤謙

    説明員(佐藤謙君) 若干補足させていただきますが、中国の軍事動向と申しましょうか国防力の動静といいましょうか、これにつきましては先生も十分御案内のような近代化の動きであるとか、あるいは海洋権益に対する確保というような考え方であるとか、いろいろ私どもとして注視していかなきゃならないようなそういう動向はもちろん私どもも考えております。中国の国防力というものが今の国家建設、経済建設というものとの関連で考えますと漸進的に進むものであろう、こう考えておりますけれども、こういった中国の動向というものにつきましては引き続き注視をしていくと、こういうことだろうと思います。
  81. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 返還の六月三十日、七月一日に相前後して三陣にわたって解放軍が進駐したという、正確な数字かどうか私わかりませんが、先遣として百五十九名ですか、それから五百、四千というように進駐したというふうに聞いておるんですが、最終的には陸海空を含めて人民解放軍はどの程度の規模になるというふうに考えておるんでしょうか。
  82. 佐藤謙

    説明員(佐藤謙君) 現在、人民解放軍が香港に進駐した規模でございますけれども、いろいろな情報を総合いたしますと四千八百人ぐらいになるのではないかと、こんなふうに思われます。  今後、この四千八百人からどのくらいの規模になるかということにつきましてははっきりしないわけでございますけれども、また、報道におきましてもいろいろな報道がございます。  いずれにいたしましても、これまで香港返還前にイギリスが香港に駐留しておりました規模、これとほぼ同じ程度、例えばイギリス軍は九三年には六千五百人規模を香港に駐留させていたわけでございますけれども、こういった香港の駐留部隊の規模につきましては今後どうなるかというのは不明確でございますけれども、おおむねこういうものと同程度のものと見られますので香港防衛に必要な範囲にとどまるものと、こんなふうに考えられるわけでございます。
  83. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 ただいま、九三年当時ですか、六千五百人規模のイギリス軍というお話でございましたけれども、このイギリス軍のアジアにおける大きな拠点が実はなくなるわけでございますが、防衛庁あるいは外務省としてイギリス軍の極東における展開というものを、香港から撤退したよ、はい、さよならということだけで終わるというふうに考えておられるのか、あるいはもっと違う形でイギリスは考えているのか、その点についての外務省防衛庁、それぞれの分析はいかがでございましょうか。
  84. 佐藤謙

    説明員(佐藤謙君) 香港返還後のイギリス軍のアジア地域における体制でございますけれども、一つは東南アジアのブルネイに陸軍が九百人程度の規模で駐留しております。また、ネパールには陸軍が千二百人規模で駐留しております。それから、インド洋には艦艇二隻等が配備されているというような状況でございまして、これにつきましては香港の返還に伴い特段の変化は見られていない、こんなふうな今現状にございます。
  85. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 先般、テレビを見ておりましたら、イギリスの哨戒機というんですか、AWACSというんですか、背中にでかいレーダーが乗っかった飛行機が日本に飛んできた、あるいはイギリスの艦艇が日本に来たというような映像がテレビで流れておりました。  香港返還に伴って、ああこういう形になっていくのかなというような若干危惧をしたんですが、イギリスの方から日本国内の施設、例えば米軍が使っている施設を貸してくれよと、あるいは自衛隊が使っている施設、さらには民間施設を貸してくれないかというような申し入ればあり得るのか。また、あった場合はどのような対応になるのかということについてお教えいただきたいと思います。
  86. 浦部和好

    説明員(浦部和好君) 御指摘のような申し出をイギリス側から我々は受けたことはございません。また、受けた場合ということで仮定の問題でございますので、これはお答えを差し控えさせていただきます。  たまたま先生御指摘のイギリスの船が最近日本に来たということはございます。それはおっしゃるとおりでございまして、実は御案内のようにイギリスは、マレーシア、シンガポール、それから豪州、ニュージーランドと一緒になりまして、五カ国の防衛共同取り決めというのを持ってございます。それのオーシャンウェーブという大変大きな共同演習がございまして、その一部がこちらの方に親善訪問として回ってきたということが事実でございます。
  87. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 それで、香港につきまして何もなくこのままいわゆる一国二制度がうまく順調に機能して発展していくことを願うわけでございますが、万が一大変な事態というか、反政府勢力が伸びて内乱状態になったとか、そういうような事態が起こった場合、香港は邦人がたくさんおりますし、それから日本の企業もたくさん行っている。そういうことになるんですが、あそこの香港というのは、先ほど来から質問に出ています。辺事態の地域には入るものなんでしょうか、ちょっと教えていただきたいんです。
  88. 高野紀元

    説明員(高野紀元君) 先ほど来御答弁ございますが、中間取りまとめの周辺事態というのは、日本周辺の地域における事態日本の平和と安全に重要な影響を与える場合を言うというふうに考えております。また、かかる事態が生じるそういう場所をあらかじめ特定できるわけでなく、日本周辺地域の外縁を明確に申し上げることは困難なわけでございます。そういうことでございますので、御指摘のような仮定の状況について一概に申し上げることは困難だということでございます。  他方、ある事態が周辺事態に該当するか否かとは別に、海外で緊急事態が発生した場合に、在留邦人の保護のために、退避を含め、政府としてあらゆる手段を活用して可能な限りの対応を行うということはこれまた当然でございます。
  89. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 先ほど依田委員質問の中からもちらっと出たと思うんですが、香港、それから下の方に島がありますね、下の方というか南の方に。南沙、西沙と言うんですか、その方に中国の海軍の基地があって、そこから足を伸ばせば千キロで行くということでございまして、あちらの方で、よく考えてみれば我が国の石油を運ぶ大事な地域でありますけれども、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態が生じかねないと私も思うんですが、この南沙、西沙の地域においては、これは周辺事態というふうなことも考え得るんでしょうか、お願いします。
  90. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほど御答弁申し上げましたけれども、この周辺事態というのは、要するに我が国の安全に重大な影響を及ぼすかどうかということを中心にして、いわば事態を中心にして考えていくべき問題でございまして、あらかじめこの地域はどうだこうだということを申し上げるのはいかがかと存ずる次第でございます。
  91. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 ただいまの外務大臣の御答弁でございますと、重大な事態が生じるのであれば地球の裏側も周辺地域、事態ということになるんでしょうか。
  92. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) これもさきの通常国会で当院の別の委員会で御答弁申し上げたことがあろうかと思いますけれども、あらかじめこの周辺地域の外縁をきちっと確定することは難しい点もございますし、必ずしも大きな意義があるとは思わないという答弁を申し上げると同時に、そうは申しましても、余り遠くまでそういった周辺事態が起きるというふうには想定していないという意味で、そのときには例えば中東だとか中東に近いインド洋でどうかという話がございまして、そういうところで起きる事態は今この作業をしておりますがイドラインの中での周辺事態というふうには考えない、こういう御答弁は申し上げたところでございます。  ただ、そういった地球上の遠いところで起きました事態に対しましても日本政府として何らかの対応をしなくちゃいけない、対処しなくちゃならないということはあり得るのは当然でございまして、それはそのこととしていろいろ考えるとして、このガイドライン作業との関連においての周辺事態ということで申しますと、今おっしゃいました地球の裏側という表現がございましたが、そういうところまでは想定しておりません。
  93. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 では、次の質問に移らせていただきます。  前に新聞に神奈川ミルク・プラントについて載っておりました。今あるものを壊してノースドックの方に建設しようというようなお話だったと思いますけれども、今までこの神奈川ミルク・プラント移設に関してどのぐらいの費用が使われてきたんでしょうか。
  94. 首藤新悟

    説明員(首藤新悟君) 移設のためといたしまして平成六年度に調査費約二千七百万円、それから七年度に、これは八年度へ繰り越しましたが、設計としまして約八千八百万円、合計で約一億一千五百万円がこれまでに使われております。
  95. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 私どもの調査によりますと、韓国にも同じようにミルク・プラントというものがあった、これがもう既に廃止されたというふうに聞いておるのでございますが、これはいつなくなったかおわかりでしょうか。
  96. 首藤新悟

    説明員(首藤新悟君) 韓国の米軍ミルク・プラントは平成八年、昨年の九月三十日に閉鎖されたと承知いたしております。
  97. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 そうしますと、韓国では要らなくなった。それから、非公式というふうに伺っておりますが、もう日本でも必要ないんではないかというようなことも言われておるようでございますが、なぜそういうふうに廃止の方向になってきたのか、その辺は調査されておりますか。
  98. 首藤新悟

    説明員(首藤新悟君) 韓国の米軍ミルク・プラントの閉鎖理由につきましては、もともとこういうミルク・プラントは、米軍人軍属あるいはその家族のために、ミルク、チーズあるいはアイスクリーム等の乳製品を製造するための施設で、いわば生活に不可欠なものでございますけれども、最近に至りましては、冷蔵技術あるいは乳製品自体の製造技術の進歩によりまして相当長期間保存がきくということで、米本国の市販の乳製品を持ってきて、それを置いておいて使うということが可能になったことからこういうミルク・プラントは閉鎖することができるようになったというふうに承知いたしております。
  99. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 今の理由づけというか御答弁は日本国内でも当てはまることですね。
  100. 首藤新悟

    説明員(首藤新悟君) 基本的に同じ性質のものでございますので、当てはまると存じます。  なお、今、先生ちょっとおっしゃいましたように、神奈川ミルク・プラントにつきましても、この閉鎖を検討しているという非公式な連絡が米軍から我が方に来ておりますが、正式にはまだ来ておらないということでございます。その非公式に来た時期は今年の四月でございます。
  101. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 韓国の話は去年の九月の末というお話でございますが、突然廃止になるわけではないわけで、そういう予兆というか事前のシグナルみたいなのがあったんではないかというふうに私は思うんです。それは平成七年かもしれないし六年かもしれない。この点はいかがですか。  全く知らなかったのか、突然十月一日になって廃止になったことを知ったのか。
  102. 首藤新悟

    説明員(首藤新悟君) 韓国ミルク・プラントの閉鎖につきましては、実は神奈川ミルク・プラントの問題を協議していたこの五月に米側から知らされたというものでございますが、我々の承知いたしておる限りでは、米軍は常に全世界のいろいろな機能の点検をしておる、節約を旨としてだと存じますが。そういったことで、以前からいろいろな調査の一環として、このミルク・プラントというものについても効率性の観点から調査した結果、最近に至り韓国ミルク・プラントは閉鎖されたというふうに承知いたしております。  したがいまして、私ども、その平成六年の合同委員会で、横浜ノースドックへ神奈川ミルク・プラントを移設するという条件で、同ミルク・プラント施設返還が合意された時点においてこういったことが既に決まっている、あるいはそういう方向にあるということは当時は承知しておらなかった、つい最近になってこういったことがわかってきたということでございます。
  103. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 でも、それでは余りにも間が抜けた話ではないんですか。  去年の九月の末に廃止になって半年以上、七カ月も八カ月も全く知りませんでしたと。我々の国税、今お話がありましたけれども、合計一億一千五百万もつぎ込んでいるわけですよ。これは私は、もう任務懈怠というか、情報収集活動もやっていなかったんではないかというふうに思わざるを得ないんですが、この点はいかがですか。
  104. 首藤新悟

    説明員(首藤新悟君) 日常、私ども、米側と事務的にいろいろな事務連絡をいたしておりますが、こういった件につきましても、引き続き早期に米側が情報提供してくれるように要請してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  なお、今先生おっしゃいました、既に使いました経費のうち、ノースドック内の地形の測量、地質調査、土質調査、こういったことにつきましては今後有効に活用できるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  105. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 それは確かにアメリカ軍に対して思いやり予算とかいろいろやらなきゃいけないけれども、どちらかというと、我が自衛隊員への思いやりの方をしっかりやりたいなというふうに私は思っておりまして、こんな一億もの何かむだ金を捨てるような、それもきちっと調査すれば済む話でございまして、非常にもったいないなというか、任務懈怠だな、いいかげんだなというふうに私は感じております。これからその辺しっかのやっていただきたいと思います。  続いて、余り時間ありませんけれども、外務省の委託費というのがございます。  これは平成七年度の補助金総覧の中に載っていた項目でございますけれども、外務省としてこの委託費というのは何件ぐらいあり、かつ、総金額はどのぐらいになるんでしょうか。
  106. 原口幸市

    説明員(原口幸市君) お答え申し上げます。  平成七年度におきます外務省所管の委託費は、国際問題知識普及委託費等計七件でございまして、その総額は三十億五千七百四十六万三千円でございました。
  107. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 内容的には、知識普及費ですか、そういうものとか啓発宣伝云々というようなことが目的のようでございますが、会計検査院見えておられますか。――要するに、お金の使い方、物をつくったりしたらちゃんとつくっているのかどうか、うまく活用されているのかどうかというのがポイントになると思うんですが、こういうようなハードではなくしてソフト面における検査というものはどのように行い、またその検査能力をどのように高めているのか、こういう委託が必要かどうかの判断まで含めて御答弁をいただきたいと思います。
  108. 深田烝治

    説明員(深田烝治君) お答え申し上げます。  一般に委託費の検査に当たりましては、委託費の算定は適正か、その経理は適正に行われているか、内容は目的に沿ったものとなっているかなどについて検査をしているところでございます。  委託費の場合、本省で契約しているものとそれから在外公館で契約しているものがございますが、本省で契約しているものにつきましては本省の会計実地検査の際に検査を行っております。また、在外公館で契約しているものにつきましては当該在外公館へ検査に赴いた際にその検査の対象としているところでございます。  それから、ソフト面の検査能力をどういうふうにして向上させているのかというような御質問だと思いますが、その点につきましても、私どもは、私どもの研修所等で研修に励みましてその能力の向上に努めているところでございます。  それから、必要性についてどうかということでございますが、この啓発宣伝関係の事業につきましては具体的にその必要性を判断することはなかなか難しいという面がございますことをひとつ御理解をお願いしたいと思います。  なお、今回の議論を念頭に置きまして今後の調査に当たってまいりたい、このように考えております。
  109. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 終わります。
  110. 中尾則幸

    中尾則幸君 民主党・新緑風会の中尾でございます。  私は、まず外務省の七年度決算に関連して幾つ質問をした後、先ほど来から質疑のございます日米ガイドラインの見直し問題についても触れてみたいと思います。  まず、午前中、依田先生の御質問にもありましたが、在外公館の警備体制及び在留邦人の保護について伺います。  在ペルー大使公邸人質事件を契機に在外公館の警備強化が進められました。それで、緊急措置として平成八年度には二十億七千四百万円の予備費が使われました。資料をいただきましたけれども、この中にエックス線爆弾探知機、これが約六億九千万円、ゲート式金属探知機等々の備えをしたということでございます。また、九年度予算では、在外の警備官を十四名増員、そしてさらには現地採用の警備員を三百七十七名増員するなどの措置がとられております。  そこで伺いますけれども、まず在外公館の警備費は七年度の当初予算と決算においてどのような金額であったのか。また、八年度及び九年度の在外公館の警備費はどの程度増額されておるのか。その内訳を含めてお答え願いたいと思います。
  111. 原口幸市

    説明員(原口幸市君) 平成七年度の在外公館警備対策の予算額は十四・八億円でございまして、決算額も同額でございます。すなわち満額支出をいたしたわけでございます。  それから、平成八年度及び九年度の予算額とその内訳でございますが、まず八年度につきまして、予算額は十五・七億円でございまして、その内訳は人的措置が九・六億円、物的措置が五・七億円、その他〇・四億円となっております。また、九年度におきましては、予算額が若干ふえまして二十四億円でございまして、内訳は人的措置が十七・六億円、物的措置が六・〇億円、その他〇・四億円でございます。  以上に加えまして、先生の方から今御紹介がございましたけれども、平成八年度予備費から在外公館の緊急警備強化に必要な経費として総額二十・七億円の支出を得て、先ほど御紹介いただいたような機器あるいは公館の境界壁の補強といったような措置をとらせていただいたということでございます。
  112. 中尾則幸

    中尾則幸君 今、内訳を伺いました。在外公館はいろいろ各国の事情によって違うでしょうけれども、これから警備等しっかり取り組んでいただきたいと思います。  さて、私が質問通告をした後に、カンボジアでまた武力衝突によって在外邦人が巻き込まれた痛ましい死亡事故がございました。在外公館の警備強化と並行しまして、相手国の治安情勢をどう情報収集するのかというのは大変難しいことでありますけれども、大変肝要なことであろうかなと思っております。特にテロに対する情報収集は欠かせないと思われます。  私も、四年前ですか、カンボジアのPKO問題を当委員会質問させていただいたときに、例えばポル・ポト派の動きがっかめない、外務省もなかなかつかめないというのが実際でございまして、当時、私の知り合いの現地ジャーナリスト、ポル・ポト派の幹部と親しいジャーナリストから情報をいただいたと、大変危険であるというようなことも承知してございます。  こうした情報収集について、例えば今回不幸にして亡くなられた方、これは関係者のお話ではこれほど治安が悪化するとは思っていなかったというような発言もございます。在外商社マンあるいは旅行者も含めて、そういう情報収集、情報伝達の方法について、外務大臣はどのようにお考えなのか、所見をお伺いしたいと思います。
  113. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもといたしましては当然のこととして、世界各国在留して仕事をなさいます邦人の方あるいは旅行される方、そういった方々の安全に意を用いなくちゃいけないのは当然でございます。  そういった観点から、各国の治安の情勢等につきましても十分な情報の収集を行い、その上に立って危険な状態になった場合にはなるべく早くそういった危険地域への立ち入りを控えていただくとか、あるいは場合によってはその国への渡航を自粛していただくとか、そういうふうな措置をとってきたところでございますし、それから当然のこととして我が国として、世界各国が安定するということを求めるわけでございますが、そういった観点からもいろいろな情報の収集、それを踏まえての適切な対策には努力してきたところでございます。  今回のカンボジアの問題について申し上げますと、私どももこれまで九一年にできましたパリにおける合意、そしてそれを踏まえまして九三年には国連のもとで我が国も何度か積極的な関与を、参加をしながら選挙が行われたわけでございまして、その上に立って今の政権の枠組みができたわけでございます。  この体制のもとで何とか和平プロセスが進むように、そして来年の選挙が公正に、しかも平穏に行われてさらなるカンボジアの安定が進むようにと祈念して、我が国としても役割を果たすように努力してきたわけでございます。  しかし、そういった過程の中で、一方においていわゆるポル・ポト派というものが壊滅の最後のプロセスになってまいりますと、これまでこれに共同して対応しようということで協力関係が維持されておりましたフンシンペック党人民党との間の確執が表面化してくるという情勢がございました、とりわけ来年の選挙を控えて。そのことがこのカンボジア和平プロセスに与える影響あるいは安定度に与える好ましくない影響を考えまして外務省としてもいろいろ手を打ってきたわけでございます。四月には高村政務次官に行っていただいております。また、デンバーサミットの直前に偶発的な武力衝突が起こりましたときには、いち早くデンバーにおいて橋本総理から発議をしてもらいまして、日仏共同での特使の派遣ということもしたわけでございます。  そういった努力もずっとしてきたわけでございますけれども、また今回のようなかなり大規模な武力衝突が発生したことは大変遺憾なことでございまして、私ども、一日も早くそれが鎮静化するためにということで、今回も初動の段階からいろいろな努力をしております。  フンセン第二首相に対する働きかけあるいは国会議長や副議長に対する働きかけ等々も含めまして、そういうことを行う一方におきまして、治安情報の収集にも努めておるわけでございますけれども、しかし、残念ながらプノンペン市内で起こった戦闘行動、そのいわば巻き添えでございましょうか、弾丸が飛び込みまして不幸にして在留日本人の方が一人お亡くなりになられました。  私どもといたしましては、その後、まず観光渡航の自粛、そして続いて業務を含めた渡航の自粛をという措置をとりましたし、今現地においでになります邦人の方々、観光客も含めますと五百数十名というふうに見積もられておりますけれども、そういった方々を安全な地域へ、そしてできることならば国外への避難ということにつきましていろいろな手法も今検討している、こういうところでございます。  今後とも、全般的に治安対策あるいはそのための情報収集には万全を期してまいりたいと思いますけれども、事は世界全体でございます。そしていろいろな事態が起こる可能性がある。しかし、可能性があるからすべての活動を停止しろというわけにはまいりませんので、万全という言葉で言うのは簡単ではございますけれどもなかなか難しい、困難を伴うという点については御理解を賜りたいと思います。
  114. 中尾則幸

    中尾則幸君 ただいま御説明いただきました事態収拾に向けて、これからASEAN各国との話し合い、外相がリーダーシップを発揮されると思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  この後、実は私は質問通告で、ペルーのあの大使公邸事件の前に、JICAで派遣されました農業技術者三名が平成三年に亡くなった事件についてもお伺いしようと思ったんですが、時間がちょっとありませんので割愛させていただきます。  最後になりますけれども、平成七年、一九九五年の資料をいただきました。海外における邦人の被害についてでございますけれども、平成七年が六千百四十七件、被害に遭った方が六千七百六十四人、十八人が亡くなっている。三年間のこの統計を見ても、かなりの人数がいろいろ亡くなっているということもありまして、こういった邦人保護対策については万全の対策を講じていただきたいとお願い申し上げます。  続いて、日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインについて、何点かかいつまんで御質問申し上げます。  まず一点目ですが、七八年に策定されました現行ガイドラインと今回の中間取りまとめを比べてみますと、日本周辺事態との記述が大変多くなっておるわけです。その理由あるいは背景は何かというふうにまず第一点お伺いしたいんですが、これまでの政府の説明では、わかったようなわからないような説明ばかりなんですが、日本の平和と安全に重要な影響を与えるような日本周辺の事態、そういうことかと、こういうことなんです。  先ほど来から御質疑のありました例えば周辺地域の範囲についても同様でございます。かって、かつてというか、これまでは極東ということで、その極東の範囲はどうかということでフィリピン以北ということで決められておったわけなんですが、今回の日本周辺地域というのは地球の裏側までは入らないということは先ほどの外務大臣の答弁からわかったんですが、そして、ガイドラインの作業においては中東、インド洋を周辺事態とは考えておらないということはわかりました。  しかし、これは新聞報道でも、非常に不明確だ、わかりにくいと。それは周辺事態ですから、ここから線引きするのはそれは無理だということもわかりますが、じゃ最大限、大体どこの範囲かということがなければ、今後の運用について国民は非常に不安を持っている、拡大解釈するんじゃないか。これはマスコミの指摘もそうなんです。例えば中東は含まれない、インド洋も含まれないということなんですが、例えばアメリカの第七艦隊の担当海域というんですか、横須賀を主たる基地としているんですが、これはアフリカ南端の喜望峰からペトロパブロフスクまでというふうに広がっておるわけですよ。  そういった関連でいろいろ考えてみますと、やっぱり最大限ここの範囲を超えないということを示すべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  115. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、極東の範囲については大体おおむねフィリピン以北というふうな、いわばその地理的な範囲がこれまでの政府の答弁で明らかにされているわけでございますが、それと今回の周辺事態との間における周辺地域どはちょっと性格が違うのでございます。  極東といった場合には、日米安保条約に基づいて六条で日本の提供している施設・区域を利用して米軍がいろいろ活動する、そういった範囲がどうなるかという、それとの関係でございますので、ある程度地理的な範囲についても大まかな範囲を確定する、想定することが可能でもあるし、また必要でもあろうと考えるわけでございます。ただ、今回のガイドラインの作業で行っております。辺地域という概念につきましては、そういう地域で起きた事態我が国の安全に重大な影響を与えるという、いわばそういった事態を想定して周辺地域と言っておりますので、具体的な事態が一体どうかということによっていろいろ変化もしますので、あらかじめ外縁を定めるというのは極めて困難でございますし、また決めてみても余り意義はないのかという感じもするわけでございます。  それから一方、ガイドラインで定めております日米協力の態様につきましてもいろんな内容がございます。例えば、自衛隊が現実に機雷の関係でいろいろ行動するなんということもございますが、そういうものではなくて、我が国の自衛隊というものではなくて、それ以外の民間の形での協力なんということもあり得るわけでございましょう。そういったことを考えますと、そういった協力の具体的な態様によってもいろいろ変わってくるんじゃないかなと、こう考えるわけでございます。  しかし、一般的に言って、余り遠いところで起きた事態までを想定するわけではないということで、先ほど来申し上げておりますように、例えば中東地域、あるいはそういう地形でつながっておりますインド洋という地域は、今委員も御指摘になりましたように、米国の第七艦隊の行動する地域ということでいえば確かにその範囲になっておりますけれども、日米協力するガイドラインの作業においてはそういった地域は想定していないということを申し上げているわけです。
  116. 中尾則幸

    中尾則幸君 先ほどのお話で、そう重大ではないというような発言があったんですが、それは私は大臣の本意ではないと思うんです。これは大変重大だから皆さんが聞いておるわけですよ。  例えば、ここで線を引けということじゃないんですが、少なくとも日本政府としてはこのガイドラインの最終報告をまとめるわけですから、日本の政府として例えばこういう地域を考えておりますというような、これを国民に示さない限り、事態の概念だったらまた違うと思うんですよ。これは地域の概念なんです。これはおかしいですよ。事態の概念は出来事なんです。地域は出来事じゃないんです、場所なんです。だから、最大限ここまでを想定しているということを国民の前に示さなかったら、例えば事態が変わればあり得ると言ったら、やっぱり先ほどの質問のように地球の裏側までになっちゃうということなんです。  私は端的に聞きたいんですが、事態が変われば地域の概念も変わるということじゃなくて、そういう姿勢で取り組むのかどうか。今決めろと言いませんから、取り組むのかどうか。国民の皆さんがこれは非常に不安になっているんですが、もう一度それについてお答え願います。
  117. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほども申しましたように、確かに周辺地域でございますので、地域の概念であることは否定いたしませんけれども、しかし、地域を考える場合には、どのような事態が起こるか、その事態に応じて地域も考えるという意味で事態の方が大きな要素であるということを申し上げたわけでございます。そして、やはり事態の態様とか、同じ態様でありましてもその規模がどの程度かということによりまして、そういった事態我が国の安全に与える影響は変化し得るわけでございますから、したがいまして、ここまでだというふうに外縁をあらかじめ確定するということは極めて困難だということを申し上げておるわけでございますので、そこのところは御理解いただきたいと思います。  ただ、一方におきまして、先ほども申しましたように、中東だとかあるいはインド洋ということは想定していないということを申しました。そういうことを申し上げます以上、当然のこととして、それより遠い大西洋とか地中海という地域あるいは海域を想定していないのは当然のことでございます。  ただ、そういったことならば、それじゃどこまでかというのを、外縁を確定しろと言われると、そこは、先ほども申しましたように事態の態様とか規模というものを総合的に勘案して判断するべき性格のものでございますから、そこは極めて難しいということを御理解いただきたい、こういうことでございます。
  118. 中尾則幸

    中尾則幸君 この問題だけで時間を費やすわけにいきませんが、もうちょっと明確に、じゃ中東、インド洋が含まれないというんであれば、もうそろそろ大体わかるはずなんですね、これは地図を見ればわかるはずなんで、ちゃんとそれをきちっとすべきだと私は思いますよ。  次に伺います。またあいまいなんですが、中間取りまとめを見ましたら、「この地域には不安定性と不確実性が依然として存在しており、」、こうあります。具体的に何を指して、あるいは何を想定して不安定性、不確実性と判断しておるのか。  防衛白書にもありましたけれども、かつてソビエトに対する潜在的脅威ということが言われました。私は北海道出身なものですから、十数年前から、例えば矢臼別演習場等々で日米共同訓練、もう盛んに行われました。そのときは仮想敵国をソビエトというふうな形で訓練をされていたように記憶をしております。しかし、その後ソビエトが崩壊した後、この不安定性、不確実性というのは一体何なんだ。朝鮮半島情勢を言うのかな、台湾海峡のことを言うのかな、いろいろありまして、外交上の問題もあろうかと思うんですが、非常にこれはあいまいな表現になっているんです。どうしてこれあいまいにしておるんですか、ひとつ伺いたいんです。
  119. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私ども、かつて冷戦時代には脅威あるいは潜在的脅威というようなことを申し上げたことはございます。しかし、その後世界も大きく変わってまいりました。今どこかの国なり地域なりというものを具体的に想定して、それに対処あるいは対応するということを考えて今のガイドラインの作業等を進めているわけではございません。そういった意味で、私どももどこを想定してという御質問に対しては、具体的にそういうことがあるわけじゃございませんということを申し上げてきたわけでございます。  一方において、不安定性、不確実性というのは一体何かと、こうおっしゃるわけでございますけれども、これは逆にお考えいただけるかど存じます、安定性あるいは確定性というふうに見ていくと。  例えば冷戦終えん後の世界、いろいろな変化がございました。もうこれでいわゆる世界全体を巻き込むような大規模な戦争というものは回避できるのかなという一般的な認識がございました。それにあわせて、さあ、これでもういろんな戦争というものはなくなるんだという希望が持たれたこともございますけれども、その後の現実の世界の歩みというものは、冷戦下におきましては顕在化が避けられておりました民族をめぐる問題、あるいは宗教上の問題、あるいは領土をめぐる問題等々が吹き出しまして、現実にはいろいろな騒動が起きたというのは御承知のとおりでございます。  そういった経験の中で、国際社会としてもいろいろ安定を維持していくための枠組みをきちんきちんとつくっていったわけでございますが、それは国連を中心としてのグローバルな安定化の枠組みの試みもされましたけれども、それは十分にはいっていない。  それから地域的な、リージョナルな問題として、例えばヨーロッパ地域ではNATOについても、いろいろな考え方がございますけれども、かなりの役割は果たしております。しかしながら、我々の国の存在しますアジア太平洋地域では、そのような多国間の枠組みとしてのリージョナルな安定化のシステムがきちんとあるわけじゃない。ARFがあるじゃないかと言われましても、これはせいぜいまだ対話を通じた信頼醸成の段階にとどまっております。そういうことを考えますならば、やはり安定を確保するためには、いわゆる従来の二国間の枠組みもいろいろ活用しながらやっていかなくちゃいけない。そういったことで、日米の安保体制、その中での日米協力の強化も考えておるわけでございます。  そういった意味で、不安定性、不確定性は何かという御質問に対しては、逆にこのアジア太平洋地域は、ヨーロッパとの比較においても安定を確保していく意味の枠組みがしつかりしていませんねというようなこともある、それからまたいろいろな不安定な国があるのも御承知のとおりでございます。
  120. 中尾則幸

    中尾則幸君 だんだん持ち時間がなくなりました。先ほども益田先生の御指摘がありましたけれども、今回の中間ガイドライン、私は理解が乏しいものですから、なかなかうまくできているのか、非常にグレーゾーンが大変多い。どちらでもとれるような表現、だから今私はこの不安定性、不確実性の問題についてお尋ねしたわけです。  具体的にいきます。対米支援について何点か伺います。  先ほども出ていました日米安保条約の便宜供与、第六条の問題です。日本の施設及び区域の提供というか、許されるという条項でございますが、今回の中間取りまとめの中で米軍の活動に対する日本の支援として、補給等を目的に民間港湾・空港の使用が四十項目の検討項目の中に挙げられておりますが、管理者である自治体から協力を得るためには何らかの法的整備が必要になるんじゃないかと思うんですが、これ防衛庁に伺います。
  121. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 先ほどからお答え申し上げておりますとおり、このガイドラインの見直しが行われました後、どういうように実行態勢を確実なものにしていくか、そのために法整備が必要なのかどうか、そういうことについてはこれから先検討していかなければならないものだと思っております。その間において、民間空港あるいは港湾等の使用に当たりまして法律上の問題点はあるのかないのか、そういうことについて詰めていかなきゃならないと思っております。
  122. 中尾則幸

    中尾則幸君 今回の検討項目四十項目の中に、さらに民間港湾・空港における物資の積みおろし作業というふうになっております。民間業者の役務提供についてでございますけれども、これについて法的措置も検討しているのかどうか。防衛庁設置法第六条第十四号では、施設・区域の提供のみならず、駐留軍のために物品及び役務を調達することと定められておるわけですけれども、この関連についてもお伺いしたいと思います。
  123. 佐藤謙

    説明員(佐藤謙君) ただいまの民間によります役務の提供でございますけれども、これにつきまして民間業者の協力を得ることが重要でございますけれども、それに対しまして何らかの法的な措置を用意するのかどうかという点につきまして、現在役務を強制するような措置について防衛庁が検討していると、こういうような事実はございません。  それからもう一つ、今防衛施設庁の業務といたしまして役務の調達というのがございましたけれども、そういった形でいわば間接調達ということももちろんあり得ると思います。
  124. 中尾則幸

    中尾則幸君 ちょっとマイクが途切れて途中聞けなかったんですが、役務の強制提供については検討している事実はないと。新聞報道が間違いだと思って私はあえて取り上げませんが、二十二項目を検討しているやという報道もございました。それについては報道ですからあくまでも報道の範囲内ということですが、今後、役務の提供、強制力を伴う提供について検討される意思はないわけですか。あるのかないのかお伺いします。
  125. 佐藤謙

    説明員(佐藤謙君) 何分にも、このガイドラインの中間報告の内容につきまして法的側面、政策的側面を含めてこれから検討していくわけでございますから、その検討の中でどういう問題点、課題が洗い出されてくるかということでございますので、この段階で確定的なことは申し上げるこができないことは御理解いただきたいと思います。  ただ、この役務提供に対します強制措置という関係からいたしますと、例えばこれまで防衛庁で検討してきておりました有事立法についての研究、これは日本有事の際の自衛隊の行動に係る法制度に何らかの問題点はないかという観点から検討している研究でございますけれども、そういう中で、災害救助法等にあるような実効を担保するための措置ということを検討する必要ありゃなしやと、こういう問題点の指摘というのは行われたわけでございます。ただ、これは日本有事というような事態の場合でございまして、今回の周辺事態ということについてどう考えるかという点については、それとの違いということもあるいは考慮に入れる必要があるのではないかというような観点もあろうかと思います。  いずれにしましても、まだ明確なお答えを申し上げられるような段階ではないと思います。
  126. 中尾則幸

    中尾則幸君 説明を聞いていると、有事立法の研究の中で、日本有事の際、これは昭和五十三年からやっているというふうに聞いていますけれども、今回は周辺事態だと。私はちょっと違うと思うんですよ。これは例えば昭和五十三年から有事法制研究をやっていると先ほどもありました。それと別なんだと。これは大事な問題なんですよ。労務の強制提供というのは、これはいわゆる憲法に定められている個人の基本的な人権あるいは権利の問題にかかわるから言っているわけですよ。そうしたら、検討している事実はない。  私が聞いているのは、今後検討するのか。今後といっても、私はガイドラインの中間報告についてのお話をしているわけです。九月にはもう最終報告をまとめるというんですよ。今検討しているのかどうか。重大な問題を、今検討していないものを九月末までにまとまるわけないと私は思うんですが、それについてはっきり答えてくださいよ。これは一カ月、二カ月でできるものではないと思うんです。
  127. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 九月末までにまとめますのはガイドラインの見直しをまとめるのでありまして、それから先の法整備その他は、実効性あるものにするにはそれから先、踏み込んでいくわけでございます。  ただ、先ほどから言っていますように、そういう将来のことでございますから、今検討していないというふうなことを言っておりますのは、精いっぱいの答弁をしているわけでございまして、委員も御理解いただけると思いますけれども、現在、我が国有事の場合においてすらそういう罰則を伴ったような法律体系になっていないわけですね。そういうことについて、いきなり入ってくることについてはなかなか考えられないけれども、今ここでそういうことは検討しませんと、そういうような答弁はできないわけでございますから、その辺の御理解もしていただきたいと思います。
  128. 中尾則幸

    中尾則幸君 整理します。今検討している事実はない、そして今後検討しないとは言わないと。
  129. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) そうそう。
  130. 中尾則幸

    中尾則幸君 では、検討もあり得るということですね。では、確認。
  131. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 検討をすると言いますと、さもそういう方向に行っているようにとられるので、そういう誤解のないように検討していないということを言ったわけでございます。だから、今後とも検討しないのかと言われれば、検討して、やりませんというの、も検討することでございますから、そこまで含めての検討ならば、検討いたします。
  132. 中尾則幸

    中尾則幸君 だんだんわからなくなりました。
  133. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) いやいや、マスコミは、検討していると言ったら、すぐやっていると言うんだよ。
  134. 中尾則幸

    中尾則幸君 だから私が言ったのは、今後検討しないということではないですねと言ったんですよ。だから、検討することもあり得るんですねと言ったんです。私は何も難しいことを言っているんじゃないですよ、長官。
  135. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) はっきり言いまして、検討するというのは、多分そういうことにはならないであろうと思いながらも、その問題について何ら検討しないで、しないということを結論づけるんじゃなくて、やったあげく法律のバランスからいっても難しいということは結論出すわけですよ。しかし、そういう検討をすると言ったのが立法措置を検討しているというふうに報道されることもあり得るので、だからこういう答弁については役所側としては非常に慎重に言わざるを得ないと、そういうような背景で物を申しているわけでございます。
  136. 中尾則幸

    中尾則幸君 私に何も当たる必要はないんですよ。報道は報道ですよ。  つまり、私は今事実を聞いているんですよ。今は検討していないと、検討している事実はない。だけれども、将来は検討もあり得るのかどうかと聞いているんですよ。ないんならない。だけれども、あり得る場合もあるんですねといって、多分そういうことではないかと思って私は僭越ながらまとめたんですよ。そういうことですね。余りこれやるともう時間がないんです。  内閣法制局にちょっと伺いたいんですが、民間人の労務提供を法で義務規定する場合、さらには罰則規定を設けた場合、これは職業の自由等を保障した憲法と関連してどのような解釈をすればいいか、法制局の見解を伺います。
  137. 大森政輔

    説明員(大森政輔君) ただいま防衛庁長官からの答弁を聞いておりましたところ、そういう役務の提供を罰則つきで担保するような制度は現在検討しておらないということでございますので、仮定の問題につき憲法その他の見解を申し述べることは差し控えさせていただきたいと思います。
  138. 中尾則幸

    中尾則幸君 私は、仮定というような話じゃないんです。これを実際に今後法制化するかどうかというのは今後の問題ですが、これは私は何も新しく出しているわけじゃないんです。四十項目の検討項目の中に出ているわけです。「民間港湾・空港における人員及び物資の積卸しに必要な場所及び保管施設の確保」、あるいは人的提供、人力の提供ということを聞いているわけでございまして、それでお答え願いたいと、一般論としてどうなのかということを内閣法制局に聞いているんです。
  139. 大森政輔

    説明員(大森政輔君) 問題は、そういう役務の提供を協力の一内容として求めるかどうかということではなくて、それを法制的に罰則をつけて担保するような法制を仕組むことが憲法上どうかということだろうと思います。  そういたしますと、そのようなことを検討していないということでございますので、そういう仮定の問題については意見を申し述べることは差し控えたいというのが私のただいま申した見解でございます。
  140. 中尾則幸

    中尾則幸君 お答えいただけないんですから何回も言っても仕方ありません。  続いて、捜索・救難において、米軍の戦闘員についても公海上で捜索・救難できるとあります。これは、武力行使と一体かどうかと、いろいろ通常国会でも質疑がありました。大変判断が難しいと思われます。例えば、戦闘によってアメリカ軍が戦闘地域でそのSOSが打たれた、それでそれの救難に乗り出す、これについては集団的自衛権の行使の範囲に当たるというふうに私は考えるんですが、これは見解はいかがですか。
  141. 太田洋次

    説明員(太田洋次君) 今回の指針の見直しの中では、周辺事態に際しまして、日本の周辺海域において遭難者の捜索・救難活動を行うということを検討しております。この活動につきましては、戦闘地域から一線を画された場所での実施を考えておりまして、またその対象としましては、米軍兵士も含まれるんですが、遭難者一般を念頭に置いております。  なお、救助した兵士を直ちに戦闘地域へ移送するというようなことは想定しておりません。  それから、捜索・救難活動に対しまして憲法上の評価につきましては、活動が行われる具体的な状況だとか行為の態様等に即しまして検討をする必要がございます。これをあらかじめ断定的に述べることはちょっと困難であろうと思いますが、活動の性格、内容を勘案すれば、基本的には憲法上の問題は生じないのではないかというふうに考えております。  いずれにしましても、御指摘のような活動を含めまして、今後想定される具体的活動の詳細等も見きわめまして、今般の中間取りまとめに関する議論も踏まえまして、憲法の許す範囲内でいかなる活動が可能かさらに検討を重ねていきたいと考えております。
  142. 中尾則幸

    中尾則幸君 私が聞いているのは、例えば米軍がある国と交戦状態にある、日本が後方地域支援という形でその捜索・救難に当たると。だけれども、戦闘を実際に行った米兵、戦闘員を例えば捜索・救難することが私は武力行使と一体につながるのではないか、集団的自衛権の行使につながるのではないかと思うんですが、ちょっと内閣法制局の見解をまず聞かせてください。
  143. 大森政輔

    説明員(大森政輔君) 端的に申し上げますと、ただいまお尋ねのようなケースについては、基本的には武力行使との一体化は生じないのではなかろうかと考えております。
  144. 中尾則幸

    中尾則幸君 今回の後方地域支援については戦闘地域と一線を画される、これは今まで言っているわけです。戦闘地域が入ってくるとこれは集団的自衛権に関するわけです。  しかし、例えばいわゆる救難あるいは捜索を求めている戦闘員というのは戦闘地域で大体起こるわけです。特殊な例を除いて、例えばある戦闘海域で遭難した、二百キロ、三百キロゴムボートで漂流してきた場合には戦闘地域と一線を画されるというふうに私は思うんですが、その戦闘員が捜索・救難を要請するということは大体が戦闘地域そのものでないかと私は思うわけです。だから、人道上は別として、戦闘員を救出、捜索する活動についてはこれは集団的自衛権の行使に当たるんじゃないか、交戦しているわけですから。私、その限定で聞いているんです。いいですか。内閣法制局、もう一回整理して答えてください。
  145. 大森政輔

    説明員(大森政輔君) 戦闘地域において捜索・救難を要する者が生ずるという可能性が高いことは確かに委員指摘のとおりでありますが、中間取りまとめにおきまして検討している協力内容と申しますのは、そういうところでの行為を予定しているのではないというふうに理解しております。  すなわち、戦闘地域から一線を画された場所での捜索・救難を予定しているものでございますので、前提が異なる。戦闘地域における救難は考えておらない。一線を画された地域における救難を考えている。したがって、行おうとする行為は武力行使との一体化は生じないということでございます。
  146. 中尾則幸

    中尾則幸君 時間がなくなりました。こういったいろいろな問題を詰めていかなきゃいけないというふうに私は思っています。つまり、戦闘地域に向かう船が例えば座礁したりしたことだと、端的に言えば。そういう救出、捜索は僕はあり得る、武力行使と一体でないし、集団的自衛権に触れないということだと思うんです。こういったいろいろな問題を詰めていかなきゃいけない。  時間がありません。何よりも有事の際の問題ばかりじゃなくて、外務大臣には大変僭越ですが、日ごろの外交努力の中から安全保障というのは確立するべきだと私は思っていますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。  時間が参りました。これで質問を終わります。ありがとうございました。
  147. 田英夫

    田英夫君 最初に、通告をしておりませんが、カンボジア事態について外務大臣にお尋ねしたいと思います。  私も、私ごとですが、日本カンボジア友好協会の理事長というのをしておりますもので、大変胸を痛めておりますが、一つだけ伺いたいのは、先ほども、私の聞いているのでは大体三百人の在留邦人と百数十人の旅行者というふうに聞いています、四百何十人かだと思いますが。こういう人たちが飛行場が使用不能になっているのでプノンペンから脱出できない。  こういうことに対して、まさにガイドラインの問題で邦人救出というのが一つのテーマになっている折、しかも今回の場合は全く日米防衛協力のためのということではない。そういう状態の中で、むしろ純粋に考え得るのではないかとも思いますから、飛行場が使えるようになったときに邦人救出のために政府専用機なりそういうことを政府としてお考えになっているかどうかを伺いたいんです。
  148. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいま私どもで掌握しておりますのでは、大体三百人前後の方が長期に滞在しておられます。そのほかに、観光旅行等で行かれましてカンボジアの国内にとどまっておられる方が、大使館で掌握しておりますので百数十名、百四十名余りということでございます。そういった方々の安全を確保しなくちゃいかぬ。そして、国外への退去ということで、いろいろな可能性を今探っております。空港が使えるようになった場合に、民間航空でいけるのか、あるいは他国の航空機があるのかということ、それから陸路あるいは河川等を使ってという可能性もございます。そういうこともいろいろ検討しておりますが、そういった中で、今おっしゃいましたような手法というものも一つの可能性として視野に入れていると申しましょうか、あるいはそういうことも排除せずにいろいろ適切な対応をしたい、こう考えている次第でございます。  しかし、仮にそういうことをするとなりますと、これはやはり全体として、その空港あるいはそのほかの地域の安全度がどうだろうかということをまず確認しなくちゃいけませんし、まずカンボジアを初め関係する国々の同意を取りつけ得るかどうかということも含めて検討しなくちゃいけない、こういうふうに考えている次第でございます。
  149. 田英夫

    田英夫君 これはひとつぜひ、こういう事態に対する対応というのを純粋の場面で考える機会ではないかと思います。  関連して意見を申し上げれば、自衛隊機を使うかどうかという問題、あるいは自衛艦を使うかどうか、輸送艦の方です。これはなかなか現実的に時間もかかりますし、現実的ではないかもしれない。ただ、一般の、専門家でない人の意見で、それなら自衛隊の輸送艦を海上保安庁に移管したら、これは自衛隊の出動にならないじゃないかという意見まで言っている人がいますよ。そのくらい皆さん心配しているんだという意味でとらえていただきたいんです。  別の問題ですが、香港の返還について、これは通告をいたしましたが、もう先ほど同僚委員も取り上げられました。一つだけ意見を申し上げると、日本政府の対応は私は大変よかったと思っています。アメリカなど、オルブライト国務長官が中国に対して一つの冷たい態度をあえて意識的にとったと思える行動をしておりますが、これに対して、池田外務大臣初め日本政府が現地にも行かれてとられた態度を私はその意味で評価したいと思います。この辺が非常にこれからの外交で大事なところではないかと思っています。  ついでに、世界でまだいわゆる植民地状態で残っているところはどのくらいあるものかと思って国会図書館で調べてもらいましたら、これは多いんですね。大体小さな島のようなところが多い。マカオは一九九九年に返るわけですが。その他、例えばグアムとかウェークというのも、ウェーク島などは小さい島ですが、マーシャル諸島共和国は返還を要求している。そういうところは、旧植民地というものは返還をするというのが国際社会の原則になっていいんじゃないかなと、こう思っております。  香港の問題はこの程度で、触れません。  ガイドラインの問題はやはり触れざるを得ないんですけれども、いろいろ問題があります。与党三党の訪米団が帰国をされて、非公式の報告を聞きました。先ほどから論議になっている周辺地域というのが与党代表団、アメリカとの間でも大変話題になった。これはやはり国際的にそういう注目の点なんだろうと思って、この点はぜひいい意味で政府の表明を待ちたいと思うんです。  例えば、アメリカでいろんな人に会っているようですが、ブレジンスキー元国家安全保障担当大統領補佐官、有名な人ですが、中国を含めるべきではない、こういうことを代表団に言っております。これに対してアーミテージ元国防次官補は、ブレジンスキー氏の言っていることは間違いだとはっきり名前を挙げて批判している。アメリカの中でも見事に意見対立をしている。こういう点を御紹介しておきたいと思いますが、これはしたがって、私はその議論をするつもりはありませんけれども。  同時に、安保条約で極東ということが明快に規定されているだけに、極東とは無関係にこのエリアは不確定ですよという印象を与えると、第二安保条約というか新安保条約で、安保条約とは関係ないものなのではないか。しかし、「日米防衛協力のための」というのがついている以上は、ガイドライン見直しの内容は安保条約が根底にあるのは当然なんですね。そうすると、安保条約では範囲は極東だということになっているということと今度のは違いますよと言うと、そこの説明は、なかなかこれは一般の何というか専門家でない方でも納得しないと思うんですよ。これは私は納得しないのが当然だと思います。むしろ、極東より拡大するんだということを中国を含めて国際的にも注目しているし、国民の皆さんも安保条約で言う極東より今度のは広いんですよということはなかなか理解しにくいことになるんじゃないでしょうか。この点を、これは意見として両大臣に申し上げておきたいと思います。  私が特にきょう御質問したいのは、台湾の問題なんです。  日本は、一九七二年の日中共同声明で台湾は中国の一部と明快にうたって、それを受けて福田さんが総理のときに結ばれた一九七八年の日中平和友好条約でこれを確認しているということで、これは今も日本政府の中国、台湾に対する基本姿勢として、もう確認するまでもなく間違いなくそうだということになると思います。  これに対してアメリカは、台湾に対する姿勢は全く違う。台湾関係法でこれはむしろ台湾に対して支援をすると、ただ、一定の限定をつけて対中国配慮はしているようでありますけれども、そういう関係にある。したがって、昨年四月の台湾海峡をめぐって緊迫した事態のときにアメリカが航空母艦二隻を出動させた。アメリカ側の言い分からすればこれはこれで一つの根拠があると、アメリカの姿勢であるわけですが、これに対して日本は、日本政府からすればこれは明らかに内政問題、台湾問題というのは内政問題だ、こう言わざるを得ないということになりますと、台湾有事という事態に対してアメリカが軍事行動に出たと、これを後方支援しろ、四十項目の中の適用できるものを適用してくれ、こういうことになると、これは大変な矛盾を生ずることになるんではないでしょうか。  日本がもし台湾に対して、台湾救援のために行っているアメリカの軍事行動に対して日本の自衛隊なり日本政府が支援をするということになると、日中平和友好条約違反ということになるんじゃないでしょうか。この点はいかがですか。
  150. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいま委員も御指摘になりましたように、我が国は、日中共同声明において、またそれを受けました平和友好条約におきまして、台湾との関係については立場を明らかにしているところでございます。中国は一つであり、台湾はその中国の一部であるという中国の立場を理解して、我々としては台湾との関係は非政府間の実務家間の関係として維持するということで来ております。この立場は今後とも変わらないところでございます。  そういう前提でいろいろ物を考えたいと思いますし、それからまた、本日の委員会でも御答弁申し上げましたけれども、現在の台湾をめぐる両岸の当事者の立場、そしてまた、将来の利害からする両者の姿勢の見通しからいたしましても、私どもは、我が国基本的に望んでおります両岸の当事者による話し合いを通ずる平和的解決の道について大きな意味での基礎はあるんじゃないか、ぜひそちらの方へ進んでもらいたいものと考えている次第でございます。  そういったこともございますので、いずれにいたしましても、今仮定の問題についてお答えするのは差し控えさせていただきたいと存じますけれども、一般論として申しますならば、日米の安保条約に基づきまして、いわゆる事前協議があった場合もそうでございますが、今回ガイドラインの際を通じていろいろ日米間の協力の枠組みをつくってまいります。これはガイドラインのさらにその先の具体的な契約で決めることでございましょうけれども、そういったことに基づいて具体的に米国から日本協力を求められました場合には、我が国としては我が国自体の国益というものを踏まえて判断していくと、こういうことになろうかと考える次第でございます。
  151. 田英夫

    田英夫君 この問題は、この委員会でも外務委員会でも外務大臣に申し上げましたが、やはり現在はともかく近い将来に日米中トライアングルという、そういう関係を目指すべきではないかということと通じてくるわけであります。  アメリカの方ではもう日米安保条約中心、そしてちょうどここにアメリカの外交問題評議会、これはいろんな人が入っているわけで、必ずしもタカ派とかハト派を集めているわけではないわけでありますが、最近六月末に発表された日本に対する軍事的な問題といいますか、安全保障上の意見をその中の一つのグループが意見をまとめて発表したと。その中には民主党のハロルド・ブラウン元国防長官、それから共和党のリチャード・アーミテージ元国防次官補、こういう人たちが加わって、ややタカの人たちのと言っていい意見だと思いますが、これはアメリカのそういう意見の人たちの典型的なものという意味で私は注目をして、またこういう意見がアメリカの中にあるんだということを考えながら対応しないといけないという意味で申し上げるんです。  一つは、自衛隊の地域有事対処への参加を拡大すべきだ、こういう意見をこの連中は言っていますね。それから、朝鮮半島有事の際に、米軍を支援するために今度のような四十項目を挙げていませんが、幾つかそれと共通するものを日本はやるべきだと。それから、集団的自衛権の禁止解除は必要である、こういう項目も入っています。ただ、戦闘地帯への参加は必ずしも目指すべきではない、こういっただし書きがついている。  これはアメリカのかなり著名な、そういういわば外交、安全保障の専門家の意見としてまとめたものを発表している中にこういうことが書いてある。こういうことはやっぱり国民の皆さんもぜひ知っていただきながら、同時に政府の方もここは日本の政府とは違いますよということを国民の皆さんに明快に、あるいは周辺諸国に明快に説明をしながら、そこがわかるようにしていかないと大変な誤解を招くおそれがある。アメリカというのはもうみんな一致しているんだとどうしても一般の方は思いますから、そういう意味で考えられてしまうと大変危険な、今やろうとしていることが理解されないというおそれがあると思います。  先ほどの台湾、中国の問題なんというのも、私はそういう意味で問題提起をさせていただいたわけでありますが、今度の与党三党の訪米団の報告を聞きますと、もう朝鮮有事一本に絞っている、そういう印象だ、こういうふうに言った人も、全員ではありませんが、それに加わった人のうちの一人はそういう話をしております。それが事実ならば、そういうことであるならば、アメリカ側がこちらはやはり朝鮮有事にならない方法を日本としてとり得るあらゆる手段をとっていかなければいけない。こういうことで、いろんな情報をきちんと整理するというか仕分けをするというか、特に朝鮮半島をめぐる情報というのは北のことに限らずかなり意識的に曲げられたものが日本にも流れ込んできていることは事実でありまして、その点は私は十分注意をする必要があると思います。  その意味で一つ御紹介すると、つい一週間ほど前、都議会議選挙のさなかでありましたが、東京で約二百人か三百人の集会がありました。それは在日朝鮮・韓国の人たち、かなり著名な学者、文化人といった人たちが集まっているんですが、国籍は北朝鮮籍もあれば韓国籍もある。いわゆる七・四共同声明二十五周年の集会と銘打っているんです。つまり、ちょうど二十五年前の七月四日に自主平和統一というので当時の韓国の朴大統領と北朝鮮の金日成主席が共同声明を出した。その二十五周年を祝うという形で集まっているんですが、この人たちの顔ぶれは実に多彩であります。日本の報道は一行も報道しておりませんけれども、私はその会合に呼ばれていって、日本人は一人でした。すべて朝鮮語、韓国語でやっていたわけです。  私は全くこれは驚きました。こういうことが日本で行われるほど在日の人たちの中ではもはや南北の対立というものは、一方ではもちろんありますよ、しかし相当優秀なトップクラスの学者、文化人という人たちが真剣に、国境を越えといいますか、南北を越えて統一をしようという集会に数百人が集まってくる、こういうことが一方で出てきているということは、朝鮮有事、朝鮮有事ということを海の向こうのアメリカから見ているのとは全く違う、朝鮮民族そのものは全く違うことを考えている人たちもたくさんいるんだということで、御参考になればと思います。  時間がもうそろそろなくなりましたので、きょうはこの程度で終わります。ありがとうございました。
  152. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 日本共産党の上田でございます。時間が二十二分なので、私も簡潔に質問しますが、答弁もひとつ簡潔にお願いします。  やっぱり周辺事態が大きく問題になりましたので、そこから質問します。  クリントン政権のもとでの地域防衛戦略では、二つの大規模地域紛争、一つはイラクによるクウェート、サウジアラビアヘの侵略、もう一つは北朝鮮による韓国への侵略、この二つを挙げています。  万が一、後者の北朝鮮による韓国に対する侵略が起きた場合、これは周辺事態に当たりますか、外務大臣
  153. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今マイクに必ずしもよくお声が乗っておられなかったので、私は十分に聞き取ったかどうか自信ございませんが、御質問の趣旨は、万一北朝鮮が韓国を攻撃するということがあった場合、それは周辺事態になるのかと、そういう御質問でございましたか。  私ども、今ガイドラインの作業を進めている段階におきまして、特定の国なり地域というものを前提にしながら、あるいは想定して作業を進めておるわけではございませんので、今一般的に仮定の問題にいろいろお答えすることは避けたいと思います。  一般論として申しますならば、周辺事態というのは、我が国の周辺地域に起きた事態で、我が国自身の安全なり平和に重要な影響を及ぼすような事態と、そういうふうに考えておるわけでございますので、そういった観点から申しますと、具体的な出来事の内容なり、それから規模がどうなっているかということで判断していくべきことかと存じます。
  154. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 答えを避けられましたけれども、アメリカ国防総省の東アジア戦略にも、アメリカと韓国は北朝鮮による南への侵略を打ち破るだろうと、そう言って、米韓相互防衛条約の条約義務にも言及しています。万一、第二次朝鮮戦争が始まりますと、当然、米韓相互防衛条約も発動されるでしょう。そういう第二次朝鮮戦争が万一始まった際、じゃ日本はどういう態度をとるのか。戦時中立の態度をとるのか、それとも、このガイドライン見直しの中間取りまとめの方向に基づいてアメリカ、韓国を支援するのか、どちらですか。
  155. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほども申しましたように、現在の段階で、具体的に事が起こっていない状態の中で、特定の国あるいは特定の地域の行動というものを仮定いたしまして、その前提の上に立って政府の対応をお答えすることは適切でないと考える次第でございます。  しかし、いずれにいたしましても、我が国の周辺である事態が起きたときに、それが我が国の平和なり安全というものに重大な影響を与えるかどうかということで判断されるべきものでございます。さらに申しますならば、日米安全保障条約上の判断もあろうかと思います。いろんな事態があった場合に、例えば極東の平和を維持するという観点から、米軍が我が国にございます施設・区域を利用して活動するということはあり得るわけでございまして、そういったケースに該当するのかどうかという判断もございましょう。
  156. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ナイ元国防次官補も、朝鮮有事、これが最大の問題だと何度も何度も言っています。ところが、周辺事態の中で最もアメリカが重視しているこの問題についてさえ、仮定の問題だと言ってお答えにならない。  じゃ、それはそういうことにして、全く無責任だということを指摘しておきますけれども、万一、この周辺事態が、我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が生じた場合、二つの形態で日本はアメリカに対する軍事協力をやることになっている。一つは、安保条約第六条に基づく基地の提供です。二つ目は、今度のガイドライン見直しに基づく主に後方地域支援、後方支援。基地の提供ということになりますと、これは、日本は戦時中立の態度ではなくて、出撃地の提供ですから、国際法の本もいっぱい持っていますけれども、これは提供した基地は戦争地域に入ることになりますね。交戦区域、戦争区域に入ることになる。  防衛庁長官にお伺いします。  今度の見直しで、四ページの上の方に、「周辺事態の推移によって日本に対する武力攻撃が差し迫ったものとなるような場合」というのがあります。周辺事態が起きたと、そうすると日本に対する攻撃が差し迫ってくるというわけね。とにかく日本の基地から、例えば沖縄、佐世保、横須賀あるいは横田、出撃するわけですから、こうなりますと、どういうことが起きるか。  これは去年の四月十九日、読売新聞の「日米安保有識者座談会」、宮澤元首相がこう言っている。「有事の際、戦闘機が横田基地から出撃することを認めれば、逆に基地が攻撃を受ける可能性もあります。今後はそれらも踏まえて議論しなくては。」と。  防衛庁長官、どうですか。この周辺事態が進むと日本に対する武力攻撃が差し迫ってくると。宮澤元首相は攻撃を受ける可能性があると。そういうことになりますね。
  157. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 今委員が御指摘されたその文章でございますけれども、我が国が基地の提供をするから差し迫ってくるということではなくて、ここはもう単純に、その周辺事態が起きておって、しかも我が国の平和と安全に影響がある、それだけではなくて我が国に対する武力攻撃がある場合ということを単純に書いたので、そのパラグラフで近くで見てもらえば、あるいは周辺事態と同時に我が国に対する武力攻撃があった場合と、同時にあった場合も想定しているわけでございますから、施設・区域の提供をしたからだんだんと迫ってきて我が国が巻き込まれて戦争になったというような、そういうことでここは書いているわけじゃございませんので、どうかひとつその辺は御理解を賜りたいと思います。
  158. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これはベトナム戦争のときにも問題になった。  宮澤元首相がこう言っている。日本の基地から出撃を認めれば、基地が攻撃を受ける可能性もあると。相手国にしてみれば、日本は出撃基地なんだから、反撃を当然国際法上もやる権利もありますし、実際能力があればやるでしょう。そういう可能性はないと言えますか。
  159. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) この問題は日米安保条約を締結したときに、我が国からの出撃を認め、そこの施設・区域を提供したときにそういう事態が起きる起きない、それはもう全部当然のこととして安保条約が結ばれているわけでございまして、だから施設・区域の提供はそのときにもうされているわけですね。そのときに安保条約というのは国会で承認されて締結されているわけです。その条約を今ここで攻撃されるおそれがあるじゃないかというふうに言われましても、それはもう安保条約上極東の平和と安全のために米軍は出撃できるということを言っておりますから、そのときにもうこれは国会で条約そのものを締結されているわけですから。そのように私どもは理解しております。
  160. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まだ攻撃される可能性もあるということだと、条約を結んだ以上。  今度は、ガイドライン見直しに基づいて周辺事態、つまり日本の周辺で、日本は武力攻撃を受けていないにもかかわらず、アメリカが有事になった場合、日本の自衛隊はこれに基づいて四十項目協力するわけでしょう。そうすると、直接の戦闘行動はしないにしても、補給部隊、警戒監視部隊、医療部隊、武器弾薬の提供はしないんだそうだが、輸送部隊、こういうのをやるわけですよ。まさに交戦国の軍隊なんですよ。戦争が始まって自衛隊員が捕まると国際法上完全な捕虜ですよ。相手国が、いやこれに書いてあるように戦闘地域と一線を画しているとか、武器弾薬の提供じゃなくて輸送だから見逃そうなんということはあり得ないですよ。  そうすると、アジアで、私はさっき第二次朝鮮戦争のことを言ったんだけれども、アメリカが参加した戦闘行為が起きた場合、日本は参戦国になるんですよ、戦時中立の態度はとらぬというのだから。どうですか、防衛庁長官
  161. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) そういう方面からのとり方もあるかもしれませんが、我が国の周辺で事態が起きて、我が国の平和と安全に重要な影響があるときに、米軍が活動していて、日本は巻き込まれたくないから何もしない、そういうことが果たして日米安保条約を結んで日米関係が、日米安保体制をやるときにそういうことが考えられるだろうか。そういうような観点から考えますならば、やっぱりそれ相応の協力はしていくべきじゃないか、そういうふうに思うわけであります。
  162. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 つまり、何もしないんじゃなくて何かするということです、軍事行動を。アメリカの戦争に参加する、参戦するということが今度のガイドラインの最も重大な本質なんですよ。七八年に結ばれたのは、日本に武力攻撃があった場合、日本の自衛隊と米軍はいかに戦うかということを取り決めた心今度は日本に武力攻撃がないわけです。しかし、アメリカがアジアで事を起こしている。何もしないでいいかというと、日本に武力攻撃されていないにもかかわらず、基地は提供する、自衛隊は海外派兵して、直接の戦闘行為以外は兵たん行為その他全部やるんです。参戦国になるんですよ。国際法上極めて明白なんです。そこで、次の問題に移ります。  第一に起きる問題は、日米軍事同盟の双務化です。今まで日米軍事同盟は片務的だ片務的だと言われていました。これを双務的にしようという動きが今度のガイドライン見直し中間取りまとめに書いてあるんです。  資料をお配りしました。これにバイラテラルという、つまり双務的、法律用語で相互に義務を負うという意味です。三十六カ所ある。ところが、日本の訳は全部共同だとか、そういう双務的という言葉を意識的に省いています。双務化は明瞭なんです。  下から四つ目、五つ目に共同作戦計画というのがあります、バイラテラル・ディフェンス・プランニング。これは日本が武力攻撃を受けた場合に共同作戦計画をやるというんだが、バイラテラル・ディフェンス・プランニングと書いてある。この共同作戦計画というのは、七八年に結ばれたガイドラインにも日本語では共同作戦計画とありました。英語の原文を調べました。ジョイント・ディフェンス・プランニング、こういう英語の原文。七八年には、日米共同作戦計画はジョイント・ディフェンス・プランニングだった。今度はハイラテラル・ディフェンス・プランニングと。明らかにアメリカ側は双務的と、日米軍事同盟の双務化に向かっての言葉を使っているんです。しかし、外務省防衛庁は意図的にこのバイラテラル、双務的という言葉を三十六カ所すべてごまかしているんです。  軍事法制の専門家の早稲田大学の水島教授は六月十五日の朝日新聞で、この中のバイラテラル・コーディネーション・メカニズム、これは日本語では日米両国間の調整メカニズムと書いてあるけれども、実質的な統合司令部の意味だと、そうまで言っているんですよ。NATO統合軍みたいな方向にしようという意図が非常にはっきりしていると思います。これは答弁を求めても逃げるでしょうから、日米軍事同盟の双務化が非常に明確だということを申し上げておく。  第二の問題は、これによって集団的自衛権の行使への踏み込みがいよいよ行われているという重大な問題です。  法制局長官にお伺いいたします。  八一年六月三日、衆議院の法務委員会で魚田法制局長官はこう答弁されました。「間接にわが国の安全が害されるようなときにもわが国は自衛権を行使することはできない。」「そういうものは当然集団的自衛権の範囲として行使しなければいけませんから、わが国としてはそういうものは行使できない、」、「運命にかかわりあるというようなことではわが国の個別的自衛権は発動できない。あくまでわが国に対する直接の攻撃がある場合に限る、」、こうはっきり言っているんです。運命にかかわりある、つまり、日本の平和と安全に重要な影響があるなんということで個別的自衛権を発動できないんですよ。それで発動する場合は集団的自衛権なんですよ。法制局、この角田法制局長官の答弁、今でも変更ありませんか。
  163. 大森政輔

    説明員(大森政輔君) ただいま委員が引用されましたものは、確かに五十六年六月三日の衆議院法務委員会において、稲葉委員に対し当時の角田法制局長官が答えた、大体その旨答えていることは間違いないようでございます。
  164. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 今は、あなたの見解は。
  165. 大森政輔

    説明員(大森政輔君) そして現在もその考え方に変更がございませんし、正しいことを答えたものであるということはこの場で確認いたしたいと思います。
  166. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ですから、政府は、アメリカとの武力行動と一体かどうかというようなことで、いやグレーゾーンだとか、集団的自衛権は入るかどうかを言っているけれども、そうじゃないんですよ。日本が武力攻撃を受けたときにのみこれまでの政府の解釈も個別的自衛権を発動できるんですよ。日本の運命にかかわるとかなんとか言って出ていくことは集団的自衛権なんです。それは許されないと言っているんです。  もう一つ言っておきます。  林法制局長官、これは五九年三月十七日、「米軍がよそに出て行くことを応援するということは、いわゆる米軍の一環として米軍に協力して、これを応援するということは、日本の憲法あるいは自衛隊法からできないことだ、かように考えております。」。  それから、三月十九日の参議院予算委員会、「極東の平和と安全のために出動する米軍と一体をなすような行動をして補給業務をすることは、これは憲法上違法ではないかと思います。」と。つまり、日本が武力攻撃されていないのに、アジア太平洋地域あるいは日本周辺で米軍が動き出した。米軍、アメリカ有事です。それに対して補給をすることも憲法違反だと言っているんですよ。  それから、これはもう盛んに政府がお使いになります工藤法制局長官の、これは九〇年十月二十九日の答弁がありますね。ここにも、「前線へ武器弾薬を供給するようなこと、輸送するようなこと、」、これは問題があると言うんですよ。  今度、四十項目の中で武器弾薬の提供は物資から外したけれども、輸送は全部いいということになっているんですよ。これは、大変私はあいまいだと思っている工藤長官の答弁でも輸送は憲法違反だと言っている。極めて明白じゃないですか。今度のガイドライン見直しの中間取りまとめ、ここに書いてあることはすべて完全な憲法違反なんですよ。アメリカの戦争に参加するということは参戦するということですよ。日本は憲法九条で交戦権を放棄しているんですから。参戦するということは交戦権を発動するということですよ。憲法九条の全面放棄だと言わざるを得ません。  外務大臣、いかがですか、この憲法違反の集団的自衛権、その前に長官どうぞ。
  167. 大森政輔

    説明員(大森政輔君) ただいま角田長官の答弁のほかに林元長官あるいは工藤長官の答弁を一部分のみ不正確に引用されたために誤解が生じようかと思います。  一々申し上げませんが、その両長官の申し上げたことは、輸送一般、補給一般について、それが憲法九条に違反するというようなことを端的に申し上げたことは一切ございません。ある一定所与の限定を加えまして、いわゆる一体化論に照らし、他国の軍隊の武力の行使と一体化するような場合には、それは憲法上認められないということをるる答弁したものでございまして、答弁を引用する場合にはもう少し正確に引用していただきたいと思います。  それと、今回のガイドラインの見直し検討におきまして取り上げられている我が国協力検討項目、これは周辺事態におきまして、武力の行使に当たらない範囲内において我が国がどのような協力を行うことができるかという問題でございまして、我が国の行動が武力の行使に当たらないということを前提とするものであり、委員指摘のような集団的自衛権の行使に直ちになるというものではないということを御理解いただきたいと思います。
  168. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 もう時間が来たので、一言長官に言っておきたいのは、工藤長官は、「我が国が武力の行使をしてはならない、」「あるいは武力による威嚇まで含めても結構でございますが、」と言っているんですよ。武力行使するかどうか、しなければいいというんじゃないんですよ。憲法は第九条で、武力による威嚇または武力行使、これを全部いかぬとなっているんだから、武力による威嚇もいけないんですよ、これは工藤長官はそこまで言っているんだから。大森長官、ここもちゃんと気をつけて、よく見て言ってください。  池田外相、これでもう時間が来ますけれども、憲法九条による交戦権の放棄、これを完全に無視して、アメリカの行う戦争に、日本が武力攻撃されていないにもかかわらず、個別的自衛権の発動ではなくて集団的自衛権に踏み込んで交戦権を行使して参戦する、こういうことを直ちに中止していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  169. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今ガイドラインの作業で協力を検討している項目は、先ほど法制局長官からも御答弁がございましたように、我が国による武力の行使に、あるいは威嚇を含めても結構でございます、それに当たらない範囲内でどういうふうな協力ができるかを検討しているわけでございまして、これは決して集団的自衛権の行使に至る問題でもないし、ましてや憲法九条に違反するものではさらさらございません。委員はそのような武力の行使に至らないような協力行動をしも米軍による戦闘活動への参加であるという、無理やりそれを関連づけて、そして日本の参戦になるんだから憲法九条違反だとおっしゃいましたけれども、そもそもその前提になるところが違っておるということでございます。  政府が今やっておりますことは、憲法をしっかり守りながら、そして集団的自衛権の行使にもわならない範囲内で、我が国の平和や安全に大きな影響を与えます事態に対して、米軍の活動に対して日本としてどのような協力ができるかを検討しようとするものでございます。
  170. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 時間です。
  171. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 もう終わりますが、時間がなくて意を尽くせませんけれども、大体本質は明らかになったと思うんですよ。つまり、アメリカの行う戦争に日本が憲法をじゅうりんして自動的に参戦を迫られる、そういう仕組みをつくるのが今度のガイドライン見直しなんです。この危険な違憲行為の作業をすべて即時中止することを要求して、質問を終わります。
  172. 水野誠一

    ○水野誠一君 私は、いろいろ今までも質問が出ておりますカンボジア情勢については、もう既に大臣からもかなり意を尽くした御答弁をいただいておりますので、これは割愛させていただきたいと思います。また、ガイドラインの問題というのはもう既にいろいろ皆さんから質問が出ております。私も今与党の中でガイドラインの論議に加わっているというようなことで、これもきょうは私の質問からは外させていただき、かわりに国連常任理事国入りの問題について質問をさせていただきたいと思います。  これはガイドラインの議論にも非常に関連してくる部分でありますが、我が国が国連安保理事会に常任理事国として入るかどうかという問題が今いろいろ議論をされているわけであります。国連内では九三年より自己改革、いわゆる国連改革の試みが続いているわけでありますが、安全保障理事会に関する改革というのは現在どの程度まで議論が深まってきているのか、また争点はどういった点で、いつごろこれは決着するというふうにお考えになっているのか、こういった点についてお尋ねをしたいと思います。  また、議論の争点でもあります拒否権について、これは非常に多くの議論もあると思いますが、我が国においては、国連においていかなる主張をこの拒否権の問題についてしているのか。また、日本理事国に名乗りを上げるということについては拒否権つきということを想定されているのかどうか。あるいは改選なし、任期無期限という今の仕組みについてはどうお考えなのか。非常に盛りだくさんの質問で恐縮なんですが、その辺についてのお考えを例えればというふうに思います。
  173. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 国連におきましては、創設以来五十年たった、そういった節目を迎えまして、やはり加盟国も随分ふえておりますし、世界情勢も大きく変わっております。それに適合したような組織なり機能を果たせるような姿にしなくちゃいけないんじゃないかということで、国連改革の動きが数年来進んできたところでございます。  その中の柱は大体三本ございまして、一つは国連の主要な任務である安全保障の面での中心的な機関である安全保障理事会の組織をどうするかという点、それから二つ目には国連の財政面、これをどういうふうに改革していくのかという点、それから三つ目には経済社会といいましょうか、開発の問題等そちらの方での仕事のやり方をどういうふうに改めていくか、この三つがございます。日本といたしましては、その三つがバランスのとれた形で進められるべきだということを主張しておりまして、とりわけ安保理の改革につきましては、加盟国の賛同が得られるならば我が国も常任理事国として役割を果たしてまいりたい、こういうことを明白にしておるわけでございます。  そして、改革の動きないしめどでございますが、安保理の改革の面につきましては加盟国のほとんどすべてが改革の必要性そのものは認めるのでございますけれども、それならばどういうふうな改革にするかということになりますと、いろいろな利害が絡んでなかなか進行しないような状態になっております。昨年は結論を得られずに終わったわけでございますが、ことしこそはということでいろいろな努力が傾注されております。そういった中で、安保理常任理事国の動き、それから我が国も含めた安保理で役割を果たしたいと考えている国の動きに加えまして、新たにことしから事務総長になりましたアナン氏も積極的なイニシアチブを示しておりますし、それからラザリ総会議長もいろいろな提案をしている、こういうことでございまして、今そのための作業部会がございますが、それが一たん中断したのがまた動き出すというような段階に来ております。  それじゃ、見通しが明るいのかといいますと、なかなかそうも言い切れないところもございます。  まず現在、常任理事国五それから非常任理事国十で構成されておりますが、我が国は常任、非常任双方の数を拡大するということによってやるべきではないかという立場でございます。これが多くの国の意見でございますが、中には非常任理事国だけの増加でやれというような主張のところもございます。  それで、そういった中でラザリ議長あたりの提案は、常任理事国を今五ありますのをさらに五つぐらいふやす、その中には日本、ドイツぐらいが入り、さらにアジア地域それからアフリカ地域、それから中南米地域の代表一つずつ加える形でどうかという提案になっております。米国あたりもそこまでは大体似ているんですけれども、さあ、その非常任理事国をどれだけふやすべきかということにつきまして、ラザリ議長案の方はそれにさらに数カ国を含めまして二十四とか五とかそんな総数にしようということでございますが、米国の方は全体として二十一でなくちゃならないということになりますと、非常任理事国があと一カ国というぐらいのことになるわけでございます。  そういったところでございまして、これからどういうことになりますか非常に難しいわけでございますけれども、先ほど申しましたような日独については何となくもっともだなと。しかし、地域代表といった場合に、例えばアジアで今度加えるとき一体どの国にするのか、アフリカではどこなのかということになりますと、それぞれの利害も絡んでなかなかコンセンサスができません。そういった意味で、そこはローテートしたらどうかなんというアイデアも出ておるわけでございますけれども、そういったものの組み合わせにおいてこれからどういうふうになっていくか。  これを決めるためには、安保理でまず決めなくちゃいかぬ。そのためには、まず常任理事国五カ国の全部が賛成しなくちゃいけませんし、それから総会で三分の二の賛成をとらなくちゃいかぬというようなことになっておるわけでございます。  それから、拒否権の問題についてお話がございましたけれども、これにつきましては当然のことながら、現在の常任理事国五カ国は拒否権は当然維持されなくちゃいけない、こういう姿勢でございます。  それで、我が国もそうでございますが、多くの国も新しく常任理事国を拡大する場合に、拒否権つきの常任理事国と拒否権なしの常任理事国というのができるというのは、これは理屈としてもおかしいんじゃないのかということを言っておるわけでございます。しかし他方におきまして、やはり拒否権というもののあり方について疑問視する声も少なくございません。そういったことを考えると、何らかそこについて制限をするべきじゃないかという声も無視するわけにはいかぬという事情がございます。  それを、最終的な結論を得るときに考えることでございますけれども、いろいろ言われておる中では、例えば拒否権はあるけれどもその行使については非常に慎重にやっていったらどうだろうかと。単純に自国だけの利害に絡んで使うというのは抑えて、国連あるいは国際社会全体の利害という立場からの判断で行使さるべきものではないかというような考えもあるというようなことでございまして、今改革しなくちゃいかぬという必要性はずっと共通の認識になっておりますが、具体論で非常なそれぞれの国の利害が絡んでおりますので、果たして早急に結論が得られるものかどうか、まだ確たる見通しは得られるに至っておりませんけれども、我が国といたしましては、関係各国とも連携をとりながら、また、総会議長あるいは事務総長等ともいろいろな意見の交換をしながら、何とか安保理改革も含めて国連の三つの改革を早急に進めていきたい。その中で我が国も常任理事国としての役割を果たす、こういうことになるように努力をしてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  174. 水野誠一

    ○水野誠一君 私たちは、比較的常任理事国入りについては国連改革が先だろうという慎重な姿勢を持ってきているわけでありますが、これは九五年の代表質問のときに時の外務大臣が、立候補表明ではなくて、これは内外の議論並びに国民的合意形成の出発点なんだというような答弁をされています。  これは私は大変重要な点だと思うんですが、こういった国民的合意形成のための議論というものが二年前から現在にかけて果たしてどれくらい国内でされてきたというふうにお考えになっていらっしゃるのか。そしてまた、我が国の意思決定の機はまさに熟してきた、こういうふうにごらんになるのか。それは、特に先ほど御質問申し上げました国連内の改革作業の進展、あるいはそのタイムリミットということとの整合性という視点もあると思いますが、どういうふうに大臣はお考えなのか、お伺いします。
  175. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもも、まず国連におきまして加盟国の賛同、支持を得るということが大切でございますけれども、その前にやはり国内におきましても国民の合意形成が大切である、それはそのように考え、これまでも努力してきたつもりでございます。  例えば、施政方針演説におきましても、ことしは橋本総理、極めて明確に常任理事国としての責任を果たしたいということを打ち出しておるのは御承知のとおりでございます。そして、外務省としても、国会における御審議もそうでございますし、いろんな機会にその必要性について対内的にも話をしてきたつもりでございます。  その効果ばかりではございませんけれども、例えば総理府の世論調査を見てまいりましても、昨年とことしの調査結果を見てみますと、昨年は常任理事国入りにつきまして賛成が六〇・七%、反対が一五・七%、これでもかなり理解があったわけでございますけれども、それがことしは賛成が六四・六%と四ポイントぐらいの増、逆に反対は一三・〇%で二・七%減っておる、こういうふうに国民の皆様方の御理解が次第に広がっている、このように承知している次第でございます。  また、早い段階で国民の皆様方の中で、日本のあり方、とりわけ憲法との関係で、果たして国連の常任理事国になった場合にどうなんだろうかという点での疑問が提起されたところでございました。その点につきましては、国連の加盟国も、我が国の憲法、そして我が国国際社会での身の処し方は十分理解した上で、日本のこのような進み方でも常任理事国としての役割を果たせるし、さらにぜひ果たしてほしいという声が国連内でも広がってきているというふうに我々は理解している次第でございます。
  176. 水野誠一

    ○水野誠一君 もう一つ関連して伺いたいと思うんですが、我が国が常任理事国になった場合、果たしてそれは何を目指すのかという非常に根本的な問題であります。  これは、私は大国の権利として常任理事国になるのではなくて、第二次世界大戦における戦争責任またはそれを通じての貴重な反省と、それから反面、被爆という悲惨な体験を通しての責任意識、こういうものを持って常任理事国となるということが非常に重要ではないかと思うわけでありますが、なることにより生ずる新たな責任というものがどういうものかという議論は大いになさらなければいけないというふうに思っております。  アジア諸国の様子を見ますと、日本の常任理事国入りを支持しつつも他の常任理事国と同じ役割を求めるというような、マレーシアのマハティール首相のこういったお考えなんかもあるわけでありますが、そういった国々は我が国が負えない責任を求めてくるという懸念はないのかということも心配になるところであります。  我が国が常任理事国入りという意思決定をするに当たって、あらかじめその点を明らかにしておく必要があるのではないかというふうに思うんですが、その点についてお考えを伺わせていただければと思います。
  177. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもは決して日本は大国であるから当然のこととして常任理事国入りをしなくちゃいけないと考えているわけではございません。  しかしながら、現実問題といたしまして、我が国はいろいろな国際活動をしておりまして、国連の場においても、また、国連以外の場におきましても、世界全体の安定あるいは平和の問題につきましていろいろ発言をしてまいりましたし、いろいろな役割も果たしてまいりました。そういったことについて理解が得られ、安保理の常任理事国としての役割を果たしてまいりたい、こう考えている次第でございます。  そして、現にこれまでも安保理の非常任理事国に何度も選ばれまして役割を果たしてきた、現在も果たしておりますけれども、そういったことも各国の評価につながってくるんだというふうに考えております。  私は、必ずしも委員おっしゃいましたように、過去の第二次大戦の戦争責任との関連で、あるいは被爆の経験との関連においてのみとはおっしゃいませんでしたけれども、そこに重点を置いて安保理で役割をということがいいのかどうなのかはよく考えてみなくちゃいけないと思いますが、私どものこれまで歩んできました歴史の中にそういうことがあったということは厳然たる事実であり、また、そういうことも踏まえながら、我が国の今日における国際社会のありようというものが規定されているその要素の一つであるということは、そのとおりだと思います。  いずれにいたしましても、そういったことで、全体として世界の平和、安定に対する役割日本が果たす力があるんだ、またその意欲があるんだということを評価してもらいながら入っていきたいと考える次第でございます。  最後に、我が国が負えないような責任を求められるんじゃないかという、そういう声があるという御指摘がございました。  その点については、恐らくおっしゃっておられるのは、国連憲章の第七章に基づくいろいろな措置、その中でも特に国連軍が形成された場合とか、あるいは軍事参謀委員会の場合にどうかというような点についての関連かと存ずる次第でございますが、そういった点につきましては、先ほどの御答弁で申し上げましたけれども、現実にこれまで国連軍がつくられたこともございませんし、近い将来を見ましてもそういうことは余り想定されないということでもございますし、それから仮にそういうことがあったといたしましても、我が国の憲法なりなんなりのあり方はこういうものだということを各国が理解しながら我が国に常任理事国としての役割を求める、あるいは認めるということであれば、そこに特に問題が生じてくるとは考えなくてもいいんではないかと思う次第でございます。
  178. 水野誠一

    ○水野誠一君 いずれにしても、この常任理事国入りについては、国内の慎重な合意形成そして海外での理解形成、その両面から十分慎重に行動をしていくべきだというふうに思いますので、ひとつよろしくお願いをしたいと思います。  次に、もう時間がないものですから、一問だけODAについて伺いたいと思うんですが、今平成十年度の予算ではODAの絶対額の削減が決定しているという中で、その円借款について、融資規模を維持しつつ同時に一般財源枠の削減を実現する方策ということで、現在も毎年三千億程度の積み残しが生じています財投つまり財政投融資からの融資枠を活用するという考え方があるようであります。  現在、財政構造改革において政府・与党内において財投のあり方も含めた検討が叫ばれているところでもありますし、単に財政支出削減の数値目標をクリアするために、その穴埋めとして財投を使うというのでは財政構造改革の本旨に反するものではないか、そんな気もするわけであります。また、これではODAの財源をかえるだけの結果になってしまうということで、現在問われておりますODAの量から質への転換という趣旨にもどうも合致しないのではないかということを懸念するんですが、その点についてお考えを伺わせていただきます。
  179. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 来年度は一般会計からのODAの支出につきましては一〇%以上の削減ということで政府としての方針が定められ、また、けさの閣議におきましても、そのことを前提にして具体的にさらに合理化、効率化をどうやって図っていくかという点についても総理あるいは大蔵大臣からの発言があったところでございます。  私どももそういうことも踏まえて対処したいと思っておりますが、今おっしゃいました円借款につきましては、私どもは円借款もODA全体の中で従来も重要な役割を果たしてきたと思います。そういった意味で、質から量への転換だと申しましても、例えば技術協力だとか無償が質的にすぐれたものであり、円借款は質的に劣ったものだ、だからカットしろというふうには考えておりません。これも大切にしなくちゃいけないと思っております。  しかしながら、いろんな観点があるわけでございまして、ただ、円借款でやっておりました経済協力につきましては、場合によっては円借款でなくても、ODA以外の手法で、例えば輸銀の借款であるとか、それ以外の民間の借款であるとか、あるいは資本市場における起債等を通じた協力であるとか、そういったことで対応できるものもあるんじゃないかというのも一つあります。  それから、円借款そのものの規模は余り落とさないでも一般会計からの出資なり交付金はカットできるんじゃないかということを我々も検討しています、委員もおっしゃっておるようなことでございますが。その際にも、すぐに財投で代替すろというのではなくて、円借款の歴史もかなりになりましたから、最近は回収金が大分出てくるようになっておりますから、それでどの程度泳げるかということも一つ検討課題になろうと思っております。  それから、その先にまた財投ということも考えなくちゃいけないのでございますが、財投も一般会計と並んで縮減していかなくちゃいけないというのは、これは私どももよく承知しております。ただ、財投をふやせということじゃなくて、これまでの実績を見ておりますと、財投計画の中で予定したものであっても、OECFの方で使わないで済ませているのがかなりございます。だから、そこを考えますと、決して財投をふやしていくんじゃなくて、そのあたりをどういうふうに考えるかということで、いろいろ検討の余地はあろうかと考えている次第でございます。  いずれにいたしましても、厳しい財政事情の中ではございますが、ODA全体としては極力その事業規模は維持しながら、その中でも質的な面を重視して、世界各国の評価も得られるような、また、我が国といたしましても外交手段という面もございますけれども、国際的な役割を果たすという面からもきちんとしたその運用に心がけてまいりたい、こう考える次第でございます。
  180. 水野誠一

    ○水野誠一君 終わります。
  181. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 他に御発言もないようですから、外務省及び防衛庁決算の審査はこの程度といたします。次回の委員会は明九日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十六分散会      ―――――・―――――