運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1997-06-03 第140回国会 参議院 外務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月三日(火曜日)    午後一時三十四分開会     —————————————    委員異動  五月二十九日     辞任         補欠選任      海老原義彦君     笠原 潤一君      北岡 秀二君     岩崎 純三君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         寺澤 芳男君     理 事                 須藤良太郎君                 野間  赳君                 高野 博師君                 武田邦太郎君     委 員                 岩崎 純三君                 笠原 潤一君                 武見 敬三君                 成瀬 守重君                 宮澤  弘君                 猪熊 重二君                 田村 秀昭君                 田  英夫君                 萱野  茂君                 立木  洋君                 佐藤 道夫君                 椎名 素夫君                 矢田部 理君                 小山 峰男君    国務大臣        外 務 大 臣  池田 行彦君    政府委員        防衛庁参事官   山崎隆一郎君        防衛庁防衛局長  秋山 昌廣君        外務大臣官房長  原口 幸市君        外務大臣官房審        議官       西田 芳弘君        外務省総合外交        政策局長     川島  裕君        外務省総合外交        政策局軍備管        理・科学審議官  河村 武和君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省欧亜局長  浦部 和好君        外務省中近東ア        フリカ局長    登 誠一郎君        外務省経済局長  野上 義二君        外務省経済協力        局長       畠中  篤君        外務省条約局長  林   暘君    事務局側        常任委員会専門        員        大島 弘輔君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○可塑性爆薬探知のための識別措置に関する条  約の締結について承認を求めるの件(内閣提出  、衆議院送付) ○千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協  定の譲許表第三十八表(日本国譲許表)の修  正及び訂正に関する確認書締結について承認  を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○サービスの貿易に関する一般協定の第四議定書  の締結について承認を求めるの件(内閣提出、  衆議院送付) ○投資の促進及び保護に関する日本国政府と香港  政府との間の協定締結について承認を求める  の件(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る五月二十九日、海老原義彦君及び北岡秀二君が委員を辞任され、その補欠として笠原潤一君及び岩崎純三君が選任されました。     —————————————
  3. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。原口官房長
  4. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) ありがとうございます。  五月二十九日の本委員会佐藤先生より御指摘のあった諸点につきまして、私より青木大使本人に確認いたしましたところ、次のとおりの釈明がございましたので、ここに御報告させていただきます。  自分の本志は、十三日の外務委員会の場で述べさせていただいたとおり、天皇誕生日レセプション主催者として多大の御迷惑をおかけしたことについては弁解は許されないと思っており、また多くの人質の方々に大変な苦痛をもたらしたことについて自分自身責任を痛感しているというものであり、現時点でもかかる気持ちにいささかの変わりもありません。  また、警備の問題についても手抜かりがあり、大変申しわけなく思っており、責任を痛感していることについては委員会の場で申し上げたとおりです。  御指摘テレビでの自分発言がこのような自分の心情と違った形で受け取られたのであれば、これは自分の意図するものでは全くなく、申しわけないと思っております。  以上でございます。     —————————————
  5. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 次に、可塑性爆薬探知のための識別措置に関する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  本件の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 高野博師

    高野博師君 この条約については賛成であります。  それでは、この間外務大臣が訪問されましたロシア関係質問をさせていただきます。  前回の委員会でも外務大臣からの御報告がありましたので、その部分については省略させていただきますが、現在のロシアエリツィン政権安定度についてどういう認識をされているのか。特に、経済の停滞とか麻薬の問題、あるいは治安の問題、貧富の差とか社会問題、さまざまな問題があって混迷しているというような状況だと思うんですが、この辺についてどのように認識をされているのか、簡単で結構でございます。
  7. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) エリツィン大統領は、昨年の選挙でも再選を果たされ、またその後一時体調を崩しておられましたけれども、現在は回復され、執務に専念しておられます。私が先般お目にかかりました際にも、体調にはまず問題がないものと見受けられたところでございます。  また、経済社会状況でございますが、全般として見ますと安定の方向へ向かっているものと見受けられます。インフレもかつての状況に比べればずっとおさまってきておりますし、それから経済成長率も久しぶりにプラスの方向に向かうというふうに見られておるところでございます。そういったことを踏まえまして、社会状況全般には安定の方向に向かっているかと思います。  しかしながら、委員から今御指摘のございました麻薬というような点につきましては、ここのところ犯罪件数も相当程度ふえているようでございますし、そういった点はまだまだ問題は多いと思います。  そうはいいながら、治安状況全般という観点から申しますと、犯罪件数は統計上は五%程度落ちているということでございますので、全体としては社会も安定の方向にたどりつつあると言えるとは思います。しかし、そうは申しましても、なお経済社会の面を含めまして改革、そうしてまた市場経済化を完成するためには、まだまだ乗り越えるべき大きな数多くの試練もあるものと言わざるを得ないと思います。  我が国といたしましても、そういった情勢をよく見ながら、領土問題の解決を図らなくちゃいけない。そのための努力をするのはもとよりでございますけれども、同時にいろいろな面におきましてロシアとの関係も深めてまいる必要があろうかと考えている次第でございます。
  8. 高野博師

    高野博師君 それでは、北方領土問題に関してですが、外務省がつくられたペーパーによりますと、領土問題あるいは平和条約交渉の問題について、外務大臣の方から帰属の問題と環境整備の両方の問題で車の両輪のように同時に努力をしなくてはいけないという考え方を強調されたと、これに対してロシア側からも理解は示されたというようなことが書いてあるんです。報道等によると、会談冒頭エリツィン大統領の方から、まず日ロ協力を進める、あるいは実際的な事項を進めて、その次に領土問題を交渉していくということで両国合意しているという冒頭発言があって、それを受けて外務大臣が車の両輪という発言をされたと、そういう理解をしていたんですが、ペーパーは逆の書き方をされているんですが、どっちが本当なんでしょうか。
  9. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) これは、まずプリマコフ外務大臣と私とのかなり長時間にわたる会談があったわけでございます。これ二回に分けてやりましたけれども、第一回の会議の席上におきまして、領土問題の解決重要性、そのためには環境整備だけではなくて帰属問題そのものを進めていかなくちゃいけないんだということをかなり時間をかけて私の方から強調した、そういったことがあったわけでございます。  そういった背景の上に立ちまして、エリツィン大統領と会見いたしましたとき、確かにエリツィンさんの方が先に話をされましたから、その際に、プリマコフ外相との会談を聞いておられたのでございましょうが、領土問題もあるけれども、まず経済の問題を進めることが必要だということを冒頭でおっしゃったのは事実でございます。しかし、それを受けまして、この問題についてはかねてから両国で話をしておりますように、二つの問題を車の両輪として進めなくちゃいけないということを私から申し上げたということでございます。  なお、先方からの話の中で、まず領土問題以外のことを先に進めるということで両国合意があるという発言先方からあったという今御指摘がございましたけれども、そういうことは、合意という話は先方も言っておりません。  以上が経過でございます。
  10. 高野博師

    高野博師君 このエリツィン大統領発言というのは、領土問題のカードを使って日本から最大限の援助を引き出すという戦略というか戦術があるんではないかというような見方がされていますが、この辺についてはどうお考えでしょうか。
  11. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) その点については、ロシア側東京宣言というものにおきまして領土問題があるということは明確に認めているわけでございます。しかも、四つの島の名称まで出しながら言っているわけでございます。そして、それを解決をしなくちゃいけないということはきちんと両国でそれこそ合意されておるわけでございます。  ただ、それをどういうふうに進めていくかと考えた場合に、やはり環境整備が大切だということをかねてから言っております。それで、その際に日本側からは、例えば昨年の十一月に東京で行いました外相会談におきましても、私の方からこの二つは同時並行的に、車の両輪のように進めなくちゃいけないと言っている。しかし、ロシア側では車の両輪ということは否定しないけれども、それは自転車の車の両輪のように、一方が前へ先に進んで、後をついていくようなことはどうだろうかということを言ったという経緯もございます。それに対して私の方は、いや、それは同時並行的と、こう言っておるわけでございます。  ロシアもやはり国内のいろいろな情勢考えながら領土問題の解決をしなくちゃいけないというのはよく認識しているけれども、それを進めていくためには環境整備努力、その中には経済面での交流の強化というものもあるわけでございましょうけれども、そういったことが大切だなという認識を持っているのは事実でございます。しかし、それは必ずしも領土問題をいわばてこというか道具に使いながら援助を引っ張り出そうというんじゃなくて、そこのところは少し受け取り方が人がいいと言われるかもしれませんけれども、領土問題を解決しなくちゃいけないんだ、そのための条件整備ということでいろんなことをやりたいというのがロシアの言い方でございますし、そこのところはそういうふうに受け取りながら我が方の主張をしていくということじゃないかと思っております。
  12. 高野博師

    高野博師君 それでは、環境整備という観点共同経済活動提案が出されていると思うんですが、この点についてどういうふうに考えておられるでしょうか。
  13. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) いわゆる共同経済活動につきましては、従来も非公式の形で何度かそれらしきものが先方から提起されたこともございますけれども、それが明確な形で出されましたのは昨年の秋に東京で行ったプリマコフ外相と私との間の外相会談の席でございました。そのときに先方は、これはまだロシアとしてきちんと決めたものじゃない、よく検討して固めたものじゃないけれども、いわばテンタティブなものであるけれどもということで共同経済活動ということを言ったわけでございます。  そのときに先方が言いました中身としては、例えば水産とか水産加工とか観光なんというものが対象として考えられるんじゃないかというようなこと、どういう枠組みなりどういう形式かについてははっきり話はございませんでしたけれども、例えばフォークランドでイギリスとアルゼンチンとの間で行われている、あるいは行われようとしているような例もあるというようなことが言われたわけでございます。しかし、いずれにしても先方も詳しいことはまだ具体的な詰めをしたわけじゃないという話でございました。  それで、私どもの方からは、そういった提案でございますから、日本側としてそれに明確に評価のしょうもない、日本側の姿勢を表明のしょうもないけれども、さらに詳細、具体にわたる提案というものが出されるならば、我が方としてもあくまでノンコミッタルベースで検討してみることにはやぶさかではないという返答をしたところでございます。  今回の会談におきましてはそれ以上踏み込んだ話は先方からはございませんでした。むしろ、今行っております北方四島周辺のいわゆる漁業の枠組み交渉、まずそれを進めることが大切だなということを先方も言い、当方もそれは当然のこととして、これはまず片づけなくちゃいけない当面の急務であるということで枠組み交渉を促進していこうということで合意したところでございます。
  14. 高野博師

    高野博師君 この共同経済活動提案については、当然のことですが、ロシア側実効支配を認めるようなことに基づいてやるということは当然認められない話なんで、この点については十分慎重に検討すべきではないかなと私は思います。  もう一つ北方領土ロシア軍退役軍人職業訓練あるいは研修等について、何か日本側としてこういう協力をやるようなことを提案されたんでしょうか。
  15. 浦部和好

    政府委員浦部和好君) 委員指摘のように、今般の日ロ外相会談におきまして、極東におけるロシア退役軍人民間への転職に向けた再教育について、及び再教育の際には北方領土からの退役軍人が優先されることということで一応意見の一致を見たところでございます。  我々としましても、軍人さんの民間への転職というための再教育支援ということは領土問題解決のためのやはり環境整備一環というふうに考えておるわけでございます。
  16. 高野博師

    高野博師君 これはODAを使ってやるということでしょうか。
  17. 浦部和好

    政府委員浦部和好君) ODAはそもそもロシアに今出しておりませんので、ODAではございません。
  18. 高野博師

    高野博師君 この問題については、ODAを使うにしても使わないにしても、先方からの要請に基づくということではないんでしょうか。日本側のこれはアイデアでしょうか。
  19. 浦部和好

    政府委員浦部和好君) これはそもそもは日本側アイデアでございますが、日本以外に、先生案内のように、イギリスその他、ドイツも含めてたくさんの国がやっていることでございます。
  20. 高野博師

    高野博師君 この問題については、私は北方領土問題が解決したらば退役軍人の再就職問題について援助してやろうというんであれば筋が通ると思うんですが、どうもその逆だなという私は感じを持っております。日本でそういう援助をしたところで、これはロシア経済全体の問題にもかかわる話で、実際にうまくいくのかどうかという懸念があると思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  21. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 確かに、先生おっししゃるように、このことのみをもって環境整備が格段に進むかと言われると、それはそれだけの大きな効果はあるいは期待できないのかなと思います。  しかしながら、領土問題を解決することについてロシア国内でのいろいろな考えがあるわけでございますけれども、そういったいわばロシアの世論、とりわけ関係する方々気持ちなり考えというものを好ましい方向へ誘導していくという意味である程度効果はあろうと思います。環境整備のほかのいろいろな手法と組み合わせながら、全体としての環境あるいは雰囲気の変化を期待したい、そういったものでございます。
  22. 高野博師

    高野博師君 環境整備という点に関しては私も賛成であります。しかし、一方的にロシアに利用されるというようなことがないように十分注意していただきたいなという感じを持っております。  それからもう一つ、これは防衛庁にお聞きしたいんですが、原子力潜水艦の放置の問題。これはもう相当古くなった原子力潜水艦廃棄の問題で、新聞報道テレビの放映もありまして私見ておりましたけれども、相当深刻な状況になっていると。財政的な問題があって、現在九十隻ぐらいの原子力潜水艦、使えないものが依然として六十隻ぐらいまだ残っていると。しかも、このまま放置されると放射能の汚染のおそれがあるということで報道されているんですが、この点についてはどういう情報を持っておられるでしょうか。
  23. 山崎隆一郎

    政府委員山崎隆一郎君) お答え申し上げます。  先生今御指摘のような新聞報道がございまして、事実関係をちょっと御説明したいと思いますが、御指摘ロシアの老朽化しました退役潜水艦の具体的な管理状況等につきましては残念ながら詳細は明らかでございません。他方米側資料によりますと、九四年末の時点でございますが、太平洋艦隊では五十一隻が使用状況にございませんで、そのうち燃料を搭載したままで退役または使用を停止したものが九十六隻あるというふうに承知しております。  このように、個別の退役原子力潜水艦管理状況の詳細は承知していませんが、我が国といたしましては放射性物質による汚染の源泉となる老朽原子力潜水艦廃棄状況関心を有しておりまして、かかる我が国関心につきましては累次ロシア側に伝えており、引き続き注視してまいりたいと存じます。
  24. 高野博師

    高野博師君 この点については当然軍事機密等の問題もあると思うんですが、日本側で何らかの形で協力というようなことは考えられないんでしょうか。
  25. 山崎隆一郎

    政府委員山崎隆一郎君) 一つ訂正申し上げますが、先ほど申し上げました太平洋艦隊の五十一のうち、退役または使用停止したものを私二十六と申し上げるつもりであるいは別の数字を申し上げたと存じますが、二十六隻に訂正させていただきます。  それから、今、先生指摘のいろいろな情報交換内容につきましては引き続き米側とはしてみたいと存じますが、他方実態につきましては、ロシア状況でもございますので、今申し上げましたように我々としても関心を有しておりますので、通常の外交ルートを通じましてロシア側にも必要に応じて照会することを検討したいと存じます。
  26. 高野博師

    高野博師君 私が質問したのは、退役軍人に対する先ほどの職業訓練等もあるんですが、こういう核の問題というか、この点について何らかの形で協力というのはあり得ないんでしょうかということです。それでは外務省の方に。
  27. 浦部和好

    政府委員浦部和好君) まさに先生指摘のように、日本サイドとしてもこの面でも協力をしておりまして、例えば日ロの間に核兵器廃棄協力委員会というのがございまして、これに出ております資金の一部を利用いたしましてロシア極東における液体放射性廃棄物処理施設の建設に協力をしております。  この施設自体は、将来にわたりまして極東における液体放射性廃棄物海洋投棄を防止するのには十分な施設内容であるというふうに我々は考えております。この施設自身は現在工事中でございまして、これが早期に完成することを我々としては強く期待している、こういう状況でございます。
  28. 高野博師

    高野博師君 それでは、防衛庁にまたもう一つ。  先般、ロジオノフ国防大臣訪日されて、ロシアに戻られて間もなく解任されたということがありましたけれども、この点について、国防軍内部情報についてはどの程度情報を持っておられたのか。それで、すぐやめるような人をなぜ訪日招待をしたのか。それから、この国防大臣が来られたときにいろんな合意ができていると思うんです。この合意は当然生きていると思うんですけれども、国防大臣日米安保あるいはガイドラインについて理解を示すような発言もされていて私も注目はしていたんですが、すぐ解任になってしまったということで、この辺について防衛庁はどうとらえているのか、お伺いいたします。
  29. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 現在、ロシアにおきまして軍の改革というのが一つの大きな課題になっておりまして、軍の改革に絡んで今御質問になっているような問題につきましてもいろいろな状況があった、あるいはそういうことについて我々も情報を集め分析をしていた、そういうことはございます。  しかし一方で、昨年の四月、実は臼井前防衛庁長官防衛庁長官としては歴史上初めてロシアを訪問いたしまして、初の日ロ防衛首脳会談というのをやったわけでございます。当時のグラチョフ国防相に対しまして訪日招請をいたしましたが、その後、このグラチョフ国防相の後を引き継ぎましたロジオノフ国防相に対しましても訪日招請がなされました。そして、数カ月の準備の後、ロジオノフ国防相、前国防相でございますが、訪米の後、その足で訪日をしたということでございます。  このロジオノフ国防相訪日も実はロシア国防相による訪日としては初めてのものでございまして、着実に進展しております日ロ間の対話の一環として行われた日ロ防衛首脳会談におきまして大変率直な意見交換が行われました。このことは日ロ両国信頼関係の増進にとって大変意義深いものであったと考えております。  いろいろな議論がなされましたが、議論をいたしました最後に会談における議事録というものを両大臣で署名いたしましたけれども、この議事録の中に幾つかの項目があるわけですが、当面すぐ日ロ間の防衛交流としてこういうことをやろうということを確認したものが三つございます。一つは、ロシア海軍の艦艇の訪問、これは今月末を予定しております。それから、防衛当局間協議定期化。それから、共同作業グループの設置。実は、これ以外にも検討課題としてたくさんの防衛交流課題がございますが、この三つにつきまして、これはまさに実現をするという方向で動いております。  先般、池田外務大臣が訪ロいたしましたときのプリマコフ外相発言にも、この日ロ間の防衛交流、特にロジオノフ訪日に伴って日ロ防衛首脳会談が行われた内容につきまして、何らこれに影響を与えるものではないという発言があったことを紹介しておきたいと思います。
  30. 高野博師

    高野博師君 軍の改革とか軍内の掌握力エリツィン大統領掌握の度合い、あるいは軍内部権力闘争等いろいろ言われておりますが、解任の真相はどの辺にあると見ておられるんでしょうか。
  31. 山崎隆一郎

    政府委員山崎隆一郎君) 先ほど御質問のとおり、五月二十二日には先生案内のとおりロジオノフ国防相解任されまして、その後任としてセルゲーエフ戦略ロケット軍司令官が新たな国防大臣に任命されましたし、また参謀総長も交代したわけでございます。  これにつきましては、まさにさきの日ロ外相会談におきまして、ロシア側からこれら一連の大事につきましては軍の改革に関連するものであると、そういうことで国内問題であるという旨の説明があったと存じます。したがいまして、防衛庁としましては、ロシア国内問題である以上、これ以上コメントすることは恐縮ながら差し控えたいと思います。
  32. 高野博師

    高野博師君 それでは、ロシアNATO協力合意について二、三お伺いいたします。  NATO東方拡大に関して、NATOが反ソの軍事同盟から欧州の平和維持機構へと性格を変えたとか、いろいろ言われております。ロシアの孤立化というようなとらえ方もされている。あるいは、ニューヨーク・タイムズ等では、この協定については脱社会主義国を二つに分断するものだというような批判もあります。この協力合意についてはどういうとらえ方をされているのか、簡単で結構でございますので、お伺いいたします。
  33. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員指摘のとおり、基本的にはNATOも欧州の安定の枠組みという役割を担ってきているんだと思います。しかし、それが具体的にどういう形になるか、どういうふうに拡大し、新規加盟国がどういう状況に置かれるかということは、当然にロシアあるいは加盟しない国々にとって大きな関心というだけじゃなくて利害もかかわってくる問題でございますから、そういった観点からロシアNATOとの間でいろいろなやりとりをやったんだと思います。その結果、今回御承知のような基本文書の署名に至ったわけでございます。そういった意味では、冷戦後の欧州の安全保障の枠組みというものに現段階での一定のいわば結論というものが出たわけでございますので、基本的には欧州の安定を増すものという位置づけができるんだ、こう考えております。  しかし、これからまた具体的に基本文書に基づいてどういうふうな姿になってくるかという点は我々としても引き続き関心を持って見てまいりたいと思います。NATOの拡大というのは単に欧州だけの安定にかかわる問題ではなくて、世界全体の平和と安定にもいろいろ影響を持ち得るものでございます。
  34. 高野博師

    高野博師君 ロシアがこのNATO東方拡大との関係極東の方に軍事的に重点を移すんではないかという見方、これについてはどうお考えでしょうか。
  35. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) これは、先ほど話題になりましたロジオノフ国防大臣訪日の際にも、一九九二年の八月以降今日までに十七万八千人以上の削減があったと、これは極東ロシア軍についてですが、そういう話があったわけでございますし、極東ロシア軍についても基本的にそういった削減の方向は今後も続くんだと、このように考えております。したがいまして、NATOの今度の拡大の結果としてといいましょうか、それとの関連においてロシア軍が東方に拡大するということは必ずしも我々の想定していないところでございます。
  36. 高野博師

    高野博師君 この問題はまた別の機会に質問させていただきたいと思います。  それでは、アフリカの問題でコンゴ民主共和国について二、三お伺いいたします。  これについては日本政府政府承認をするという閣議の了解が出たと聞いております。このコンゴ民主共和国について私が一番懸念しているのは、新しいカビラ大統領のもとで、特にルワンダの難民が相当入り込んでいる、これに対して、もう既に行方不明者あるいは虐殺というような情報もありますが、このルワンダ難民の絶滅計画というのがあるという情報もあります。コンゴ・ザイール解放民主勢力連合、ADFLによる虐殺等がうわさされておりますが、人道問題、人権問題としてこの辺はどうとらえておられるのか。あるいは、日本側はこの新しいコンゴ民主共和国について経済援助等どういうふうにとられておられるのか。簡単で結構です。
  37. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 五月十七日に、コンゴ・ザイール解放民主勢力同盟、ADFLでございますが、これによる新政権、いわゆるコンゴ民主共和国という政権が成立したわけでございます。それを踏まえまして、五月三十日の閣議におきまして私から、岡本臨時代理大使をして早期に新政府と公式に接触せしめ、今後の日本とコンゴ民主共和国との関係の発展に協力していきたい旨通報させる、こういう発言をしたところでございます。これによりまして我が国としていわゆる黙示の承認を新政権に与えた、こういうことでございます。  それで、その際、その際といいましょうか、これまでも非公式の接触を通じましていわゆる新政権に対しまして我が方から三つぐらいのことを申し入れております。一つは、幅広い国民的基盤に立って民主化移行くの取り組みをすること、二つ目には、真の意味での国家建設に取り組むこと、そして三つ目に、委員が今特に御指摘になったところでございますが、人権の尊重並びにコンゴ国内に残っている難民に対する人道上の適切な対応をとることが大切だと、こういうことをずっと言ってきたわけでございます。これからも引き続きそういう対応をしてまいりたいと思います。  なお、この難民の問題につきましては、カビラ議長も国内の難民の惨状についての問題を早期に解決したいという立場を表明しておりますので、そういった立場が現実のものになるようにこれからも働きかけてまいりたいと思っております。  それから、経済協力の点についてでございますけれども、我が国は九一年九月にございました暴動以来原則として援助の実施を見合わせております。その後行われておりますのは研修員の受け入れとかいわゆる草の根無償資金協力というもののみでございます。九六年でいいますと、草の根無償が六件四千四百万円、それから研修員の受け入れが六名という程度でございます。  今後どうするかということでございますけれども、これからの治安状況あるいは民主化のプロセスなどを見ながらどういうふうにしていくか考えていくわけでございますけれども、当面の人道的な緊急援助であるとか民主化に資する支援の可能性というものも状況によっては考えなくちゃいけないのかな、こう思っております。
  38. 高野博師

    高野博師君 一般的に、ODAの政策というのはアジアからアフリカに重点を移すという方針の転換があったと聞いているんですが、アジアで一定の成果をおさめたということもあって、これからアフリカにもっと援助を、特に貧困問題について重点的にやっていくという方針だと理解しています。  実は、五月三十一日の産経新聞で、ワシントンのシンクタンクのケイトー研究所がODAというのは効果がないという報告書を出しているんです。この点はまた別の機会にODAについてお伺いいたしますが、要するに、経済成長とか経済発展、あるいは危機回避という点でODAというのはほとんど効果がない、今までアメリカがやってきたODAをずっと検証してみると、必ずしも経済成長、経済発展の役に立っていない、あるいは危機回避という点ではほとんど効果がないというような報告がされております。  この点について、私は、日本としても一回こういう検証をやってみるべきではないか。経済社会開発に資する、あるいは国際貢献とか、いろんなことなんですが、この点については本当に効果が上がっているのかどうかという点について検証する必要がないのかどうか、大臣にお伺いいたします。
  39. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 一般的に申しまして、ODAはやはり民生の安定なり経済発展に効果はあるものだと考えております。とりわけ我が国経済協力は、アジアの諸国は次々とテークオフを実現してまいりましたけれども、やはりそれには日本経済協力効果があったものと考えている次第でございます。  しかし、そういったことを計量的にも評価すべきではないかという御指摘でございますが、我々はこれまでもある程度行っていますし、これからもきちんと進めていかなくちゃいけないと考えております。  これまで行ったものを一つだけ御報告させていただきますと、外務省としてあるシンクタンクに研究委託いたしまして、計量経済学のモデル分析によって東南アジア諸国のGDPに我が国経済協力が与えた影響というものを分析した例がございます。これによりますと、一九七二年から九一年までの二十年間のODAによって、例えば九一年のインドネシアのGDPは二・八%持ち上げられてきたと。それから、マレーシアの場合は一・八%、タイの場合は五・四%、これは単年度のGDPでございますが、過去二十年間の経済協力で累積したものが九二年単年度のGDPのそれだけの押し上げ効果をもたらしたという分析が得られているところでございます。今後とも、このような形の評価を国別あるいは案件別にも行っていきたいと考えている次第でございます。
  40. 高野博師

    高野博師君 わかりました。  ちょっと時間がないので、北朝鮮の問題について二、三お伺いいたします。  けさほどの情報で、北朝鮮との電話が通じにくくなったというのと、もう一つ中国の国境で中国軍の動きが活発になったという情報があるんです。これは確認されておりませんが、そういう情報はお持ちでしょうか。なければないで結構でございます。
  41. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) そのような情報を現在私承知いたしておりません。
  42. 高野博師

    高野博師君 そうですが。これはけさのあるジャーナリストからの情報でありますので、御参考までに。  それで、四月の上旬に、北朝鮮の貨物船チ・ソン2号ですか、これが宮崎県の日向市で大量の覚せい剤を積んでいたということがありまして、七十キロぐらいの、末端価格にして百億円近い覚せい剤を積んでいたと。これが外貨稼ぎという点で、特に建築資材とか機器の調達のために外貨が必要だということで人民武力部工兵局が国家ぐるみとしてやっていたという疑いが強いんですが、単なる一般犯罪とは違って、国家ぐるみということであれば日本の主権という問題にもかかわる重大な問題だと思うんです。この種のいろんな事件が特に北朝鮮との関係では多過ぎると私は思っております。  ちょっと時間がありませんので、こういう問題も含めて、あるいは少女の拉致事件とか日本人妻の里帰りの問題、食糧援助に関しては特にこういう問題を十分考慮されてやっていると思いますが、この間の新聞情報でも、国連の食糧計画が援助の米を持っていった港で北朝鮮の軍がトラックを持ってきてすぐその場で持っていってしまったというような情報もあります。そういうこともありまして、人道的な観点からの食糧援助という点も、これについては特に軍の関係で十分注意していただきたいなということを思っておりますが、何か御意見ございますか。
  43. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今御指摘のございましたようなもろもろの事柄、私どもも大きな関心を持っております。そしてまた、そういった問題について、事柄によっては解明あるいは解決のために北朝鮮もしかるべき対応をすべきじゃないかということを直接間接に先方に伝えるようにしている次第でございます。また、食糧支援の問題につきまして、今のような問題と直接リンクするわけではございませんけれども、やはりそういったことも十分念頭に置きながら、総合的に検討してまいりたいと思っております。
  44. 高野博師

    高野博師君 最後に一言。  北の化学兵器の問題で、コーエン国防長官が北朝鮮の化学兵器については攻撃能力が高いというような発表もされている。韓国側の情報では、北朝鮮が七、八カ所、年間千トンの化学兵器生産能力を持っている、現在約五千トンを保有していると推定されている、こういう情報もあります。  こういう点も含めて、前々回の委員会でもミサイルのノドン一号の点について取り上げさせてもらいましたけれども、食糧援助についても十分そういう点も配慮していただきたいというふうに思います。  時間ですので、終わります。
  45. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 可塑性爆薬条約ですが、私は賛成ですけれども、二、三伺います。  今この締約国というのは、いただいたのは平成九年の三月現在ということで二十六カ国となっておりますが、そのとおりですか。
  46. 野上義二

    政府委員(野上義二君) 三月以降、米、英、仏等が締約国となっておりますので、現時点では二十九カ国であると理解しております。
  47. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 それで、その三つとも製造国なんですか。
  48. 野上義二

    政府委員(野上義二君) ICAO、国際民間航空機関からの情報では、この三つが製造国という宣言をしたかどうかについては今はっきりしておりません。
  49. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 三つつけ加わって今二十九ですね。このリストにない国でつくっているというようなところはあるんでしょうか。
  50. 野上義二

    政府委員(野上義二君) 現状では、この署各国で今後締約国となる可能性の中でどこがつくっているかつくっていないか、それから署名していない国でどこがつくっているか、それはちょっとわかりかねるわけでございます。
  51. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 締約国と書いてある今までの二十六で、つくっている国つくっていない国というのは区別してありますが、七カ国がつくっていると。カナダ、チェコ、ギリシャ、ノルウェー、スロバキア、スペイン、スイスというようなことになっていますが、そのほかの国は確実につくっていないんでしょうか。
  52. 野上義二

    政府委員(野上義二君) これらの国は締約国となる際に製造国という宣言を行って参加した国でございます。その他の国の実態が本当にないのかどうか、そこはちょっと不明でございますけれども、申告ベースでは先生が今読み上げられたような国が一応製造国として参加しております。
  53. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 今実際につくっていないところでもつくれるようになるというプロセスは簡単なんでしょうか。
  54. 野上義二

    政府委員(野上義二君) 可塑性爆薬、プラスチック爆薬自身の製造は必ずしも簡単ではないし、それからプラスチック爆薬を結合させる結合剤というものについても必ずしもその製造はそれほど簡単ではないということでございます。そういう意味では、両方を結合するというプロセスはかなりの危険も伴いますし、かなりの程度の装置も必要であると言われておりますが、通常言われておりますのは大学の化学の実験装置程度以上の装置が必要であるということでございます。
  55. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 そうすると、それをつくる装置の建屋みたいなものはどのぐらいでかいのかよくわかりませんが、例えばオウム真理教がサリンをやったようなあのぐらいの建物があればできるんでしょうか。
  56. 野上義二

    政府委員(野上義二君) まず、物ですが、可塑性爆薬をどこかから入手し、また結合剤をどこか他の製造国から入手し、それを結合させるということであれば、必ずしも専門的知識はございませんけれども、それほど巨大な施設が必要というふうには理解しておりません。
  57. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 それで、まだまだこのほかにも国として、例えばさっきお話が出たような北朝鮮なんというところもあるし、どうかなというような国が随分たくさん漏れていると思うんですが、こういうところはなかなか締約国になるということも恐らくないんだろうと思うんですけれども、全体としてこの条約というのはどのぐらい有効なものなんでしょうね。
  58. 野上義二

    政府委員(野上義二君) 御承知のように、可塑性爆薬、プラスチック爆薬は非常に探知が難しいということで、これを探知できるようなニトログリコールというような探知剤を混合させるわけですが、そういった意味から従来ほとんど探知が難しかったものが、この条約締結される結果、そういう探知剤を添加することによってより探知が易しくなったという点においては極めて効果があると思います。  それからまた、テロ対策ということで、P8でございますとか国連のテロ対特総とかで多くの国にこの条約に加盟するようにいろいろ慫慂しておりますので、かなり幅広い国が参加すればまた効果が上がると思います。  それから、締約国でない国であって、過去にいろいろ名前が上がったような国の国民が過去のプラスチック爆薬を使ったテロ事件等に関与していると言われるケースがございますけれども、その際も既に締約国となっているような国から原材料等を入手しているというケースがございますので、そういった点ではそういった問題にも効果が出てくるかと思われます。
  59. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 しかし、恐らく大分ストックというのはあるんでしょうね、でき上がったものだけでなしに。そのあたりの見積もりなんというのはどこかにあるんでしょうか。
  60. 野上義二

    政府委員(野上義二君) 世界的には統計はございません。我が国の場合には二十七トン程度のストックがあるということは把握しております。
  61. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 こういうたぐいの条約というのは確かに意味があって、こういうことをやりましょうよと言うと、これはもう反対するわけにもいかないから、そうだそうだということで良心的な国はみんな入るわけですが、非常に少量で使う人の目的からいえば効果のあるようなことはできるものですよね。まあ、あっちこっちから攻めていくという意味ではいいんで、この条約はそれなりの意味が長期的にはあると思う。  これからちょっと離れて、何かこういうことをやれば意味があるのでこういう条約をつくらないかと言って、みんな反対はできないし、しょうがない、何か条文を練り上げるかというのでみんながさつさと働いて、でき上がって、実際は余り効果もないようなものというのが何かこのごろふえてきたんじゃないかという気がするんですね、これから離れて。  ある人が言ったんだけれども、第二次大戦後の大成長産業が幾つかあるけれども、その中の五指に入るものが外交であるというようなことを言った人がいるけれども、何かどうでもいいと、これを言っているわけじゃありませんけれども、何かそういうものが多過ぎて、それで国連あたりがやたらに忙しくて、それで食っているような人間をふやしているという傾向があるんじゃないかという気がしています。  そういうことをきちっとやっていかないと、何かみんな忙しいような顔をして、我々の委員会だって、くずみたいなものばっかり来るとは言いませんけれども、条約が今度は二十何本だとかなんとかといって、世界じゅうでやっているような傾向がないとは言えないと思うんですが、そういうことについて、大臣、どうお考えになりますか。
  62. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 全く同感ですとつい本音が出てしまうおそれがあるのでございますけれども、そう申し上げるわけにもまいりません。  確かに、委員指摘のように、この条約もやはりその持つ効果というものは限定的なものでございましょう。しかしながら、先ほど政府委員からも御答弁申し上げましたように、関係国が努力してなるべく多くの国々が参加するように働きかけていき、これは探知だけでございますけれども、ほかの面からもまた国際的な合意を形成していく。そういったものを組み合わせていくことによって本当の意味での効果が一歩一歩であっても出てくることを期待したいと思います。  しかし、他方におきまして、委員おっしゃるように、最近のいろいろな国際的な動き、条約だけじゃなくて国際機関あるいは会議なんかにおきましてもやはりコストベネフィットといいましょうか、そういったことも少し考えなくちゃいかぬという点があるのは否定できません。  現在、国連を初めとして、あちらこちらの国際機関でもそういった観点からの見直しの機運も出ておりまして、我が国もそういった効率化あるいは実効性というところを強調しながら、本当に有効な国際的な活動が広がっていくように努力しているところでございます。
  63. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 ありがとうございました。結構です。
  64. 小山峰男

    ○小山峰男君 最初に、議題になっております条約に関しまして質問を申し上げたいと思います。  今二十九カ国というお話がございましたが、実際に効力が発生するのは三十五カ国というふうに聞いておりますが、この見通しというか、その辺はいかがでしょうか。
  65. 野上義二

    政府委員(野上義二君) 今、先生指摘のように三十五カ国、そのうちの五カ国以上が製造国であることという条件でございますけれども、が締約国となることによって発効するわけでございますが、今二十九まで来ております。他方、P8のテロ対策会議であるとか本年一月の国連総会等においてできるだけ多くの国に参加を求めておりますので、そういった意味で、今後より多くの国によって早急に本条約締結されるということを我々は期待しているわけでございます。
  66. 小山峰男

    ○小山峰男君 そうすると、その二十九から、日本がやれば三十になるんですが、まだこの国とこの国がやりそうだというような具体的な話はないということなんですか。
  67. 野上義二

    政府委員(野上義二君) 各国の締結のための国内手続の進捗状況については詳細に把握はしておりません。
  68. 小山峰男

    ○小山峰男君 やっぱりそれぞれの国の状況を把握するという努力もしてほしいと思っております。  それから、新たな立法措置とか、そういうものは必要ないというふうな資料をいただいています。日本では一カ所製造して、先ほど二十七トンというようなお話もございましたが、こういうところに対して探知剤を加えるみたいな話というのは、どういう形で実施を確保していくのか。
  69. 野上義二

    政府委員(野上義二君) 我が国におきましては火薬類取締法において火薬類等の取り締まりが行われているわけでございますけれども、今般この条約締結することによって政令等を改正して探知剤の添加を義務づけることとなります。
  70. 小山峰男

    ○小山峰男君 そうすると、立法措置そのものは要らないけれども、政令等は必要だということに理解させていただきます。  それから、現在警察等は保有していないというふうに言われております。自衛隊では保有しているということのようですが、この条約によると十五年以内にそれぞれ廃棄あるいは消費してしまえみたいな話です。自衛隊で現在保有しているものについてはどういう措置をすることにしているのか、その辺、お願いしたいと思います。
  71. 野上義二

    政府委員(野上義二君) この条約締結に伴いまして、防衛庁として現在保有されている探知剤が添加されていない可塑性爆薬については、この条約に基づいて今後十五年以内に消費等の措置、使用してしまうということであると理解しております。
  72. 小山峰男

    ○小山峰男君 消費というか、使ってしまうということと理解していいわけですか。それとも探知剤を加えるようなことをするのかどうか、もう一度ちょっとお願いしたいと思います。
  73. 野上義二

    政府委員(野上義二君) 私どもが防衛庁から伺っておるところでは、今年度予算以降より購入される可塑性爆薬については探知剤の添加されたものを購入されるという方針であると承知しております。
  74. 小山峰男

    ○小山峰男君 現在あるものについてはどうもはっきりしないようですが、特にこうするという方針は現在の時点で持っていないということですか。
  75. 野上義二

    政府委員(野上義二君) 条約上の義務といたしましては十五年間のうちに処理ないしは消費するということになっておりますので、現在防衛庁が持っておられる探知剤の添加されていないものについては規定の期間内に消費されるということ、使ってしまうということになると思います。
  76. 小山峰男

    ○小山峰男君 その使ってしまうというのがよくわからないんですが、例えばどこかへ行って爆発させちゃうとか、そういう意味なんでしょうか。
  77. 野上義二

    政府委員(野上義二君) 防衛庁で所有されている可塑性爆薬については、いろいろな不発弾の処理とか、そういった形に利用されていると理解しておりますけれども、そういった状況がなくて、今後十五年間以内に今持っておられる分量について消費するという状況がなければ探知剤を添加するなり爆発させてしまうということであろうと思います。
  78. 小山峰男

    ○小山峰男君 外務省に聞いてもあれでございますので、これはこの辺にします。  それから、先ほどもお話がございましたが、この条約締結されたからといって必ずしもベストではないと、ベターな方向を追求するんだということだと思いますが、いずれにしましても締結しない国がつくったり、あるいはそれが使われたりする可能性がかなりあるだろうというふうに思っておりまして、空港等におけるチェック体制というのは大変大事だというふうに思っております。そういう意味で、本来なら運輸省の問題かもわかりませんが、空港等におけるチェック体制の強化策、特にプラスチック爆薬への対応というものについて外務省としてどのように把握しているか、お願いしたいと思います。
  79. 野上義二

    政府委員(野上義二君) 先ほども御説明申し上げましたように、プラスチック爆薬については金属探知機とか、そういった装置で検査することがなかなか難しいわけで、爆薬の表面から出てくる若干の蒸気を探知して検査するわけですけれども、今後添加剤が結合されれば蒸気圧が非常に高くなってよりわかりやすい、機械で把握しやすくなるというふうに理解しております。  実際の問題として、そういった機器は、現在私どもが承知しております限りにおいては成田空港においては既に装備されているというふうに理解しております。
  80. 小山峰男

    ○小山峰男君 それでは、違う質問に移りたいと思います。  実は、けさの新聞で「ODA、族議員なくバッサリ 一〇%削減方針」というような記事が載っていまして、まさにODAというのは族議員というか、いわゆる受益の人たちが国内にいないという意味も含めて非常に切りやすい面だろうというふうに思うわけでございます。  先ほどの質問ODAの使い方についてもいろいろ問題があるわけでございます。しかし、宮澤内閣のときに七百億ドルから七百五十億ドルのいわゆる還流計画というようなものがオープンにされて、国際的にもある程度認知されている中で、一番切りやすいところをただ率だけではっさり削減するというような形の今回の財政構造改革というのはおかしいのではないか。やっぱり中身で勝負しなければいけないのではないかというふうに思っております。また、日本の慣習というか伝統的なものとしては、自分が食べなくてもお客さんにはごちそうを出すというのが旧来からの日本の伝統だというふうに思っておりまして、私はこういうものを財政構造改革だといって一律に切るというのは国際信義上も大変問題があるというふうに思っているわけです。  外務大臣もかなり皮肉を飛ばしたというふうにここでは書いておるわけですが、我々は野党でございますので、こういう形じゃなくて、政府・与党にもう少し国際問題に理解を持った形の財政構造改革にしてほしいというふうに思っておるわけです。そういう意味で、こういうやり方あるいは外交上の問題等について外務大臣の見解をお願いしたいと思います。
  81. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今回の財政構造改革に伴いまして、歳出すべてについて聖域なく見直して抑制を図っていこうという努力をされているわけでございますけれども、経費ごとの扱いがどうなるかということはまだ決まっておりませんで、きょうの夕刻ぐらいに財政構造改革会議あるいは臨時の閣議等を開いて明らかにされる、こういうふうに理解しております。しかし、ODAにつきましてもやはり抑制はしていかなくちゃいけないという方向で作業が進んでいるのは御指摘のとおりでございます。  しかしながら、今一部の報道を引用しながらおっしゃいましたけれども、やりやすいからあるいはいわゆる族議員がいないから中身を見ずにぱっと切ってしまったとか、あるいは国際的なことを考えずにやったというわけでは決してございませんし、私の言葉が一部報道で引用されて、皮肉を飛ばしたと言われましたけれども、私は何も皮肉を言っているわけではございませんで、本気で言っているわけでございます。  確かに、こういうときでございますから抑制はしなくちゃいけないけれども、抑制はしたけれども、やはりODAというものを通ずる日本の国際的な役割は維持できるようにいろいろ工夫をしていかなくちゃいけないと思っております。そういった意味では文字どおり中身に入ってくるわけでございまして、具体的に抑制するにしても、ODAの中のどのようなものを抑えれば影響が少なくて済むかということもいろいろ考えていかなくちゃいけない。皮肉を飛ばしたと言われた私の言葉もそういうことを意味しているわけでございます。  例えて申しますと、有償の協力、例えばOECFを通じます円借款というのは、財源としては一般会計からの出資、そして財投の資金、さらには回収金というものが充てられるわけでございますけれども、一般会計からの出資というものが抑えられたとしても、回収金の回収努力、あるいは財投からの充当によって量的なものはある程度確保する道もあるんじゃないか、こう思うわけでございます。  それから、もとよりそのほかの無償援助等や技術協力等につきましても一層の効率化を図っていく。必ずしも適切な使用法じゃないという指摘もあるわけでございますが、そういうことによる節減も可能なわけでございますので、我々としては節減の努力は行っていくけれども、ありとあらゆる工夫をいたしまして国際的な役割、いや、それは国際的な役割じゃない、我々自身の存立にもかかわる問題でございますから、そういった好ましからざる影響が大きくあらわれないようにあらゆる努力をしてまいりたいと考える次第でございます。
  82. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 時間でございます。
  83. 小山峰男

    ○小山峰男君 一言だけ。  外務大臣、大変苦しい立場もわかりますが、外務委員会としても外務省を応援する形で、ぜひやっていただきたいと私からもお願いを申し上げて、質問を終わらせていただきます。
  84. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。——別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  可塑性爆薬探知のための識別措置に関する条約締結について承認を求めるの件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  85. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  87. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 次に、千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定譲許表第三十八表(日本国譲許表)の修正及び訂正に関する確認書締結について承認を求めるの件及びサービスの貿易に関する一般協定の第四議定書締結について承認を求めるの件、以上二件を便宜一括して議題といたします。  両件の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  88. 萱野茂

    ○萱野茂君 明治の初めにそれぞれの藩が廃止されて何々県というふうに県が設置され、それに伴い本州から大勢の日本の人たちが北海道に渡って開拓を始めたのは明治時代以降のことであります。そのころ、私たちアイヌはまだ生活のほとんどを狩猟とか漁労に依存し、農耕文化の恩恵を知らずに暮らしていました。  津軽海峡を隔てた北海道において、明治の初期にあってもアイヌがいまだ農耕を知らずに暮らしていたわけは幾つかあります。それは、北海道がいまだ開発の手から遠く、シカやクマ、サケ、マスなど、山や川などの豊富な自然、豊富な資源に恵まれ、農耕を知らずとも容易に主食を手に入れることができたことであります。  もう一つの背景には、松前藩が二百年にわたってアイヌに農耕の禁止を押しつけてきたことにあります。このころ稲作が普及していなかった北海道においては、松前藩が幕府から認められていた石高は北海道のニシンやサケなどの豊かな漁業資源とこれらの交易によるものであります。この漁場の経営に当たる松前藩は、アイヌをただ同然の労働力として徴用するため、アイヌから一切の農耕の手段を奪いました。アイヌたちが主食の一部として既に普及していたヒエやアワ、キビの耕作も禁じられたのであります。本州にあっては縄文から弥生と農耕文化の歴史をたどるのに対し、北海道のアイヌたちはこのように明治の時代まで農耕文化を受け入れることなく過ごしてきたのであります。  明治の中期に入って旧土人保護法を制定した日本政府は、一方でアイヌから狩猟や漁労を奪うかわり、農耕を全く知らないアイヌに突然農耕を押しつけてきたのであります。このとき既に北海道の土地の多くは本州から渡ってきた人たちのものとなっており、アイヌに与えられた土地の大半は湿地であったり傾斜地であるなど農耕には余り適さない山間地でありました。  そんなことで、私たちアイヌが農業という生産手段を手にしてからまだほんの七、八十年、二世代になるかならないかの歴史しかありません。私も先代からわずかばかりの土地を引き継ぎ、農業を生業の一部として数十年を過ごしてきたわけであります。しかし、そのわずかな土地を明治政府がアイヌから収奪し、それに今度は農業をやれといって付与した土地は、再び政府がダムをつくるといって私から没収し、今は二風谷ダムの底へ沈んでしまったわけであります。  私のような新参者のアイヌの農家が、ガット、関税貿易一般協定という言葉を初めて知ったのは日本が戦争に負けてからずっと後、昭和三十年代のことであります。しかも、私はこのガットなるものは日本の農業や私たち農家の生活を守ってくれる制度なのだとまじめに考えていたものであります。農産物の輸入の割り当て量を決めるとか関税率を決めることは政府が農家を保護するための政策の一つと思っていたのであります。  しかし、昭和三十年代後半に入りますと、日本経済は戦後復興を遂げ、経済成長の時代を迎えるわけですが、その時期を待っていたかのようにアメリカの食糧戦略、アメリカの農産物の輸出攻勢が本格化したのであります。世界の食糧国としてのアメリカは、その市場を日本に求め、ガットへの圧力をかけ始めたわけであります。政府は、自由化の時代に対応し、国際競争に勝てる農業として、選択的拡大と称して専業農家の育成を柱にした農業基本法を制定したのであります。しかし、ガットの農業分野の交渉が持たれるたびに自由化が進められ、私たちの身の回りからはさまざまな農作物が姿を消していきました。特に、競争力に乏しい原料供給型の農作物はどんどん姿を消し、その結果、穀物自給は急速に低下したのであります。山間地の農家にとってガットとは怖いものであり、ようやくガットなるものが自由貿易体制の国際的枠組みをつくる制度であったことに気づいたわけであります。  米を初めとする農業への圧力はウルグアイ・ラウンドでさらに強化され、日本の農業は崩壊の危機に瀕しているのであります。農水省もさまざまな施策を講じつつありますが、農家の所得向上に反映しない施策は農家を農業にとどめることができず、将来に展望のない農業なのであります。日本の農業は、結局、世界経済の浮沈、国際収支の動向、国内経済成長の谷間で犠牲を強いられてきた数十年であったのではとの感がいたします。  今、世界の動向はあらゆる分野にわたって規制緩和、自由貿易体制へと移行しており、それは新たな貿易秩序へ向けたものであります。ガット体制に変わり、権限や機能が大幅に強化され、世界貿易機関はその枠組みの象徴であるとされています。この世界貿易機関の役割と機能は経済に関する国際機関としてはかつてない機能を有するものと考えられ、この運用は世界の貿易秩序形成そのものになるものでありますが、それだけに、資源を持つ国とか市場を専有する国、技術を専有する国など、特定の大国のために利することなく運用されることがより公平な市場原理、市場競争に向けての国際秩序を確立する道であると思います。  また一方、国内においても、この運用に当たって、特定な地域や産業に一方的な犠牲を負わすことのない国内施策が必要であるのは当然であります。  今、この機関には中国、ロシアなど、さまざまな国が加盟の途上にあります。ガットがアメリカの市場支配を優先して運用されてきたのに対し、この世界貿易機関に将来どのような役割を期待するのか、そして日本はどのような役割を担うのか。単に大国と歩調を合わせるだけでなく、途上国や中小国、おのおのの国益やおのおのの国が置かれている立場に配慮しながら、自由貿易体制における公平な世界市場を形成させていくことが日本に課せられた役割と思いますが、政府の見解を伺っておきたいと思います。
  89. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今、委員からお話のございました点、私どももよくわかるところでございます。  しかしながら、全体として見ました場合に、やはり自由貿易の進展というものが世界経済全体の発展をもたらし、そして人類全体の民生の向上に資するものであるというところは委員もお認めいただけると思います。また、我が国にとりましても、全体として見ればそういうことであろうと思います。  しかし、そういった中で、経済構造なり貿易構造なりにいろいろ変化がもたらされると。そういった変化の過程をスムーズに行っていく、そして特に変化のあしき影響がどこか特定のところに集中的にしわ寄せされることのないように、また、しわがどうしても寄ってくる場合にはそれが緩和されるようにいろいろ配慮していかなくちゃいけないということは、国内の施策においてもあるいは世界全体の自由貿易体制を発展させていくプロセスにおいても必要なことであろうかと存じます。  そういった観点からこのWTOのあり方というものを見てまいりますと、全体として多角的な自由貿易体制の発展を図るという大きな建前があるわけでございますが、その中でも開発途上国に対しましては、その発展段階に応じて協定の適用に関して特別の配慮をしているというような規定もございます。また、意思決定に当たりましては、何も経済的に大きな存在である国あるいはいわゆる大国がすべてを決めるんではなくて、原則としてコンセンサス方式でいくんだと。コンセンサス方式にどうしてもよりがたい場合には加盟国一国がそれぞれ一票を持って決定していくんだと、そういうふうな配慮をされているわけでございますので、委員がおっしゃるような御心配の点もよく考えながらWTOの運営がなされるように我が国としてもこれからも適切に対応してまいりたいと思います。
  90. 萱野茂

    ○萱野茂君 うちの村も、その昔四十戸からあった農家が、ダムで土地が消えていった分は別としても、今農家としてやっているのはたった一軒しかないんです。ということは、米をつくっても麦をつくっても豆をつくっても全くだめだと。農協そのものは農家の上に、この言い方はいいか悪いかわかりませんが、あぐらをかいて、本当に農民のために農協はなっているかどうか、それは国の指導が間違った指導の仕方をしたから農家が次々つぶれたのではないか、そんなことを心から危惧している者の一人であります。  そういう意味で、よその国との食糧の貿易機構というのは、国の指導いかんによっては農家が生きる道につながるのではないかと考えていますので、その点をぜひひとつよろしく御配慮をお願いしたいと思います。  終わります。
  91. 立木洋

    ○立木洋君 第四議定書の問題に関連して質問いたします。  基本電気通信分野の交渉がマラケシュ協定合意に至るまでの間合意されなかったわけです。その合意されなかった最も基本的な、つまり障害になったのは一体どういうことだったのかということが一つ。それから、一九九八年の一月一日からこれが発効されるということで合意されたわけですけれども、その障害になった問題点が根本的に解決されたのかどうなのか。その二点、まず最初にお伺いいたします。
  92. 野上義二

    政府委員(野上義二君) 今、先生指摘のように、基本電気通信サービス交渉は本来でありますればマラケシュまでということだったわけですが、マラケシュ合意の時点においては実は電気通信の中の付加価値サービス、電子メールですとかファックスですとか、その辺については合意できたわけでございます。しかし、いわゆる電話とかテレックス、ここで問題になっております基本電気通信につきましては各国の基本的なインフラであって、ウルグアイ・ラウンド終結時においては各国の電気通信における独占的な形態がまだ残っていたというようなこともあって、自由化がこの時点では合意できなかったということでございます。一番大きな点は、多くの国において基本電気通信事業というのが独占等の形態をとっていたために各国が自由化約束を行い得なかったということであると思っております。  第二点の、合意された取り決めでまだ残っている問題という点でございますが、今度の再度延長されて妥結した交渉におきましても、やはり中心は各国の基本電気通信分野における何らかの形での外資規制の問題でございまして、日本の場合にはKDD、NTTに対する外資規制、米国につきましては無線局に対する外資規制、さらには欧州諸国における政府保有株といったような形態を通じての外資の参入規制、こういったようなものが、従来に比べれば大幅に自由化されてはおりますけれども、依然としてまだ一部残っております。
  93. 立木洋

    ○立木洋君 主な点については確かにそういうことだろうと思うんですけれども、途上国としては、このサービス産業の部門での幼稚な状態があるから先進国自身に逃げられてしまうんじゃないかというような意見もあったように聞いております。それから、アメリカの大統領選挙の前のいろいろな政策的な変動に振り回されたというふうな指摘さえ郵政省の文書には書いてあります。いろいろな問題があったんだろうと思うんです。  ただ、この「日本国の特定の約束に係る表」の中を見てもあれなんですが、日本の場合には、KDDやNTTの外資の規制などについては外国資本の直接あるいは間接的な参加の割合は五分の一未満でなければならないという外資規制がありますけれども、その他すべての規制は撤廃しているわけです。  ところが、逆にアメリカの場合は事実上すべての事業者に対して二〇%を上限とする外資規制が行われている。アメリカにおける電気通信事業者というのは無線局も使用するから、無線局に対する外国規制というのは事実上ほとんどの電気通信事業者に対して外資規制を行うのと同じ効果が働くことになっているということなんですね。そうすると、アメリカの場合にはすべての事業者に対して二〇%を上限とする外資規制を行っているということになるならば、アメリカが一方的に有利で、不平等な協定内容というふうなことになるんではないかという疑問があるんですが、この点はいかがでしょうか。
  94. 野上義二

    政府委員(野上義二君) 今、先生指摘のように、米国の電気通信事業者、無線局のライセンスを保有する者に対しては二〇%の直接外資規制がかかります。しかし、アメリカは今度の交渉におきまして、間接につきましては一〇〇%自由化しております。他方我が国につきましてはKDD、NTTとも二〇%、これは直接、間接を含め二〇%の規制でございますので、特にアメリカのみが極めて外資の規制が厳しく残っているということでは必ずしもないかと思います。
  95. 立木洋

    ○立木洋君 間接は除いたとして、事実上二〇%の外資規制をやっている。無線局を使っているところにおいてはすべて同じ効果を持つようになるわけですから、やっぱり一定の不平等性というのはどうしても残っているというふうに私は指摘せざるを得ないんです。  若干の問題を述べていきますが、今度の話し合いの中でいろいろな問題が出されてきましたけれども、例えばアメリカが相互主義的な、それから事前審査を伴ういわゆる参入審査制度というのを持ち出してきました。ところが、これに対しては日本だとかECなんかが非常に強く反発した。そうすると、アメリカは今度はそれにかわって世界各国の発展の程度に応じて三つのグループに分けて、それぞれの国を対象とする国際計算料金が一定期間後に達成すべき水準を決めて、これを事業者参入の条件とするというベンチマーク規制案を公表してきたわけです。これに対しても日本側やECの側がこれについてはやはり最恵国待遇に反するんじゃないか、いわゆるサービス貿易協定の第二条にありますけれども、これに反するんじゃないかという問題を出しましたし、途上国でもこれでは国際計算料金収入を激減させるものだというような懸念を表明して、これに対しても意見を述べたと。しかし、アメリカはこれは事後審査制度だと、だから最恵国待遇には合致しているんだということを主張して、あくまでもそれを突っぱねているわけです。  こういうような交渉内容から見ると、アメリカが一方的に措置を改善されることがないままにこの協定合意したというふうなことは、やっぱりどうしても問題点を将来に残しておる、そういうふうな懸念があるんですけれども、これはいかがでしょうか。
  96. 野上義二

    政府委員(野上義二君) 今、先生の方から二点御指摘がありまして、第一点は事前審査制度、ECOテストといっておりますけれども、この取り決めにつきましては今般アメリカは最恵国待遇の留保をしておりませんので、この取り決めは米国について発効する際には、米国のECOテストというものは最恵国待遇違反になり、これが維持される場合にはWTOの紛争処理手続によって仮に問題が起こった場合には我々は問題が提起できるということで、そういった意味でこの取り決めを発効することによって米国のECOテスト等が今後使えなくなるということでございます。  第二点のベンチマークでございますが、実はこのベンチマーク制度、今アメリカ国内でいろいろ議論しておりまして、まだ決まったわけではございません。この背景には、御承知のように、国際通話料金というのは出す側と受ける側で特定の比率に応じて折半されているわけですけれども、これが実際に非常に多くの場合に途上国に対して過重な支払いになっているという問題がございまして、そういった点から、やはりアメリカはそういった今の国際計算料金制度自身に問題があるんではないかということを言っているわけでございます。  しかしながら、制度を変えることについては、途上国が非常に受け取り超になっておりますので、途上国を中心に反対がございまして、そういった点で何かそれにかわるものとして発展段階に応じた三段階のグループに分けてベンチマークを導入しようということをアメリカは今国内的に検討しているわけでございます。  しかし、これがどういうふうに運用されるかについてはまだわかりません。仮に、実際にこれが導入されて最恵国待遇違反に当たるような場合については、同じくWTOの手続に従って我々はそれに対して異議を申し立てるということは可能になると思います。
  97. 立木洋

    ○立木洋君 そのWTOの紛争解決手続によって問題点は解決されていくというふうな問題だとか、あるいは計算上の問題で途上国に意見がある、やっぱり問題点は残されていると私は思うんです。だから、もっとやっぱり時間をかけて、きちっとした形にして締結していくということが必要ではなかったんだろうか、私は批判的な見地というのはどうしても残るんですね。  問題は、このWTOのそもそもの問題が検討されたときに私たちは言いましたが、現にアメリカはウルグアイ・ラウンドなどの多国間交渉では自由化を強引に進めると。ところが、一方ではWTOの協定よりも国内法がアメリカとしては優先するというふうな立場をとって、国内的には保護主義的な法案を強化するというふうな態度をとってきた。この点はWTOの問題のときに私たちは強く指摘した点でした。  現に、実際にアメリカがWTOを利用できる場合には積極的に利用して、アメリカ企業のシェアが低いのは参入障害があるなどと称して、貿易摩擦の解消のためにWTOの原則に反するスーパー三〇一条など一方的な報復措置をちらつかせるというふうな態度さえとってきたわけですね。そして、二国間交渉で迫るというふうな形でアメリカはみずからの経済的な利益を押しつけるというふうな態度をとってきたという点も現実に起こっていたわけです。  現に、今般、その後の問題の状況を見てみても、例えば自動車部品の問題でも一方的な措置をアメリカがとるというふうなことになっていますし、日本がWTOに提訴したけれども、結局は二国間の協議でアメリカの主張を受け入れているじゃないですか。WTOで紛争解決になっていないんですよ。また、九六年のフィルムの問題でもアメリカは今度は提訴して、三〇一条などで結局は二国間でアメリカの主張を受け入れるというふうな格好になっているじゃないですか。何ぼWTOに提訴したって問題解決がきちっとした形でなるというふうな保証はないんですよ。アメリカのそういう強引なやり方に問題が残されておるという状況がありながら、急いでこんな議定書を結んでしまうというふうなことは私はどうしても納得できない。  政府は、今度の第四議定書については、当然これは不平等なものだなんというようなことは先ほど来局長もおっしゃらなかった。問題はないと。問題が起こればWTOに提訴して、そして紛争解決の処理でやっていけると。現に紛争解決できないという事態が起こっているから私は主張しているわけであります。そういう問題でもきちっと守れるような状況、今度の協定締結した場合にもアメリカの横暴を抑えることができるんだと、WTOに提訴してきちっとした問題解決できるんだと、そういう保証がないから私は主張しているんです。そういう問題点をやっぱりきちっと解決するということに基づいて第四議定書締結すべきではなかったんでしょうか。大臣、どうです。
  98. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員の御指摘もわからないではございません。確かに、今回の交渉を通じましても、米国も今御指摘のようないろいろ問題点を、あるいは問題になりかねない点を残しているのは事実でございます。それは米国だけじゃなくて、先ほど局長からも答弁申し上げましたけれども、我が国あるいはカナダあるいは欧州諸国も、形は違いますけれども、いろいろな留保と申しましょうか、そういったものを残しているわけでございます。お互いそういったことを残しながらも、ともかく基本電気通信についてこういった国際的な合意ができたと。そして、六十九カ国でしたか、今それだけの国が加盟したということは、やはりこの分野での自由貿易を進めるという意味で大きな一歩であるという意義はあると思うのでございます。そういった意味で、私どもは、ともかく米国についても今回の合意に参加して自由化約束の義務を引き受ける、こういうことで我々はまず第一歩としてこれを進めていこうと考えている次第でございます。  なお、委員の御指摘の中で、せっかくWTOに入ったけれども、WTOの解決の手続じゃなくて、結局二国間で話し合って物事を決着しているじゃないかという御指摘がございました。これは委員も特に御承知のことでございますが、WTOもWTO自体としてのいろいろな紛争解決の手続は持っておりますけれども、その中でもまず二国間でいろいろ話し合って解決を図るべきだということも言っているわけでございまして、そのことをもってWTOの手続が活用されていないということではないんだと思います。
  99. 立木洋

    ○立木洋君 なかなかうまい形で話をそらしたみたいな感じを受けたんです。  この問題はそういう自動車の部品の問題だとかフィルムの問題だけではないんですよ。現にこの協定が結ばれて、その後で電気通信分野の問題でアメリカが反する行動をとっているんですよ。大臣、御承知でしょう。九六年にKDDのアメリカの子会社がアメリカの連邦通信委員会に国際専用線再販サービスの認証申請を行いました。これは日本だったらわずか十五日間で終了するんですよ。これが認証まで四百日以上かかっている。  さらに、ことしに入ってNTTとKDDの子会社が認証申請をしたのについては、アメリカ商務省や国務省は本申請については通信政策上の懸念があるということで認証を留保しているんです。そして、その際に相手側が出してきた条件というのは何か。第一に、NTTとKDDの外資規制を撤廃せよ、二番目には、九月に期限切れとなるNTTの調達取り決めを延長せよ、この二条件を出してきた。日本側がそれに対してはちょっとおかしいんじゃないかという意見を出して、そして速やかな認証を求めるという書簡を三月十四日に送っています。五月二十二日には書簡でWTOの基本電気通信交渉の精神に従ってアメリカの参入手続の透明化を求めるということまで日本としてはやったんですね。しかし、この問題については、合意した内容に基づいて参入の条件を認めるという認証申請が依然として放置したままの状態になっているじゃないですか。  これは現に事態が起こって後、その手続に基づいて日本側がやっているにもかかわらずこういう態度をとってきているということは、今後、このような第四議定書合意に基づいて平等な貿易関係、サービスの提供の関係が事実上行われるのかどうかという点についてはどうしてもやっぱり疑問を挟まざるを得ないんです。以前の問題じゃなくて、今日協定が行われた後までこういう事態が起こっている。  このようなアメリカの態度は極めて不当ですし、私は、こういうことでこのWTOの協定、とりわけサービス貿易に関する議定書内容が確実に保証されていく、それぞれの最恵国待遇を認めてやっていくということにはならないんじゃないかという懸念をどうしても持ち続けざるを得ないんです。  この問題について、今回このような状況が現に起こっているという状態にあるにもかかわらず、どうして議定書締結を急ぐのかという問題もあわせて指摘しておきたいんですが、いかがでしょうか。
  100. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもも、委員から今御指摘がございました認証申請に対して、外資規制の問題あるいは調達の問題を絡めて、これを長期間にわたり留保というか放置している米当局のやり方は承服できないということで、繰り返し早急な認証を求めているところでございます。  そういった努力努力として続けながら、現在御審議をいただいております議定書の方につきましては、これは先ほども申しましたように、ともかくアメリカもこういった土俵の中にまず囲い込んでいって適正な取り組みを促していくということが妥当なのではないかと判断している次第でございます。
  101. 立木洋

    ○立木洋君 池田外務大臣がおっしゃったような形で、アメリカに不当な形での譲歩をするようなことがなくて解決されるとおっしゃるならば、それを私は見守りたいと思います。本当にそれが続くのかどうか。今までの経過を見てきてなかなかそうはならない。やっぱりアメリカの圧力に屈伏するんじゃないかという懸念があるのです。  私は、何もアメリカが悪いからとかいうふうな意味合いではなくて、やっぱり世界の貿易のあり方というのは本当に公正で平等でなければならない。一方が一方の圧力に屈するような状態では本当の公正な世界の経済を確立していくことができないんだという点を私は主張したいためにこのことをとりわけ強調したいわけです。  それから、この議定書によって、今度は日本の電気通信市場の全面開放は多国籍企業である巨大な電気通信事業者が日本市場にどんどん入ってくるということにもなるでしょう。また、それらの事業者の間でも巨大な競争が起こるというふうな可能性も無視できないと思うんです。また、現在審議中のNTTの分割の問題についても、巨大な国内市場をほぼ独占する形になっている世界一の電気通信事業者であるNTTですが、その独占する国内市場の事業をもとにして国際電気通信事業への進出をさらに可能にしていくだろうと思うわけです。  こういうような状態で日本の今のNTTのあれを見てみますと、この間、民営化の後、いわゆる電話局と言われる地方の営業所、千六百あった営業所は百六十になったですね、統括、統合、廃止されて。そして、基本料金の値上げが行われたし、一〇四の有料化なども問題になってきた。赤字や採算性などを理由にしてサービスの低下や公共性のある分野の切り捨てが進んできたんではないかというふうな問題にも我々は黙っておるわけにはいかないと思うんです。  この第四議定書による自由化がもたらす競争の激化はこれから一層拍車をもたらすのではないだろうかというふうに思います。ですから、国民サービスの低下や電気通信事業の全面自由化による通信主権の喪失さえある論文によっては指摘をされております。ですから、こういうアメリカの不平等な、いわゆる横暴性を残したままの議定書締結は行うべきではなかったというふうに改めて強調しておきたいと思うんです。  最後に一言、今同僚議員の方からお話があったWTOの問題で、農業の問題です。この問題については先ほどもわからないわけではないというふうな趣旨のことをおっしゃいました。昨年、イタリアのローマで国連食糧農業機関の会議が開かれました。御承知の食糧サミットです。このサミットの中では、アメリカなんかは貿易自由化論を積極的に主張しました。だけれども、これに同調したのは少数の国です。今国際的な食糧不足という状態が大変な事態になっているというふうなことがありまして、多くの国々の代表者は今日のWTOのもとでの農業に関するさまざまの矛盾を指摘して、食糧、農業問題で各国の主権の尊重を訴えるという討論が非常に活発に行われたというふうな状況を報告の文書で見ております。  今、日本の場合には食糧自給率というのは三七%ですから、やっぱり日本では食糧を自給できることが、さらに増産することが可能な条件にあるわけですし、国際稲研究所の文書によりますと二〇二五年までに米は七〇%の増産が世界的に必要だという数値さえ出されております。そういう問題を考えるならば、今中国でも米を大量に輸入するというふうな状態が出てきていますし、フィリピンや北朝鮮なんかも米の援助を求めるというふうな状況もあります。米の消費量に対する期末在庫量は一九九一年には年末に一六・二%だったものが九五年には一一・六%になって、わずか四十二日分しか在庫がない。FAOの安全基準でいえば一四%から一五%が基準だというふうに言われているわけですから、食糧問題というのも解決しなければならない重要な課題だということを改めて強調しておきたいと思うんです。  この点についても日本が積極的な対応をとって、今までのようなミニマムアクセスなどに基づいて食糧の、米の自由化をする、そういうふうな問題についても再検討をよくして、やっぱり将来的にWTOで検討し直すということも必要ではないかというふうに考えるんです。  ですから、先ほどの基本的な通信企業の問題における全面開放がどういう影響をもたらすのか、それと同時にこのWTOの食糧問題について今後日本としてはどういう政策をとっておいでになる予定なのか、その二点について最後に大臣の見解をいただいて、私の質問を終わります。
  102. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御指摘のように、昨年のFAOの世界食糧サミットにおきましては、農林水産業の持続的な推進であるとかあるいは貿易政策等を通じましてすべての人にとっての食糧安全保障の達成を目指すと、こういうことが提唱されたわけでございます。  また、一方におきまして、御承知のとおり、WTOの農業協定におきましても、これは我が国が主張したところでございますけれども、食糧安全保障を含んだ非貿易的な関心事項に配慮すべきであるという規定が盛り込まれておりますので、基本的に六年目から農業貿易改革過程の継続のための交渉が持たれるわけでございますけれども、そこでも今申しましたような非貿易関心事項は考慮に入れるべきこととされております。そういったことの中で、食糧をめぐるいろいろな問題についても適正に我が国の立場というものが反映されるようにしてまいりたいなと考えております。  しかしながら、全体としてWTOの協定というものは多角的自由貿易体制を強化していくというものでございまして、我が国にとりましても重要なものでございますので、それは大切にしていきたいと思っております。  それからいま一つは、先ほどもう既にお答えしたところじゃないかと……
  103. 立木洋

    ○立木洋君 全面開放の問題です。電気通信市場の全面開放がもたらす影響についてです。
  104. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) その点につきましては、確かに電気通信事業、とりわけ基本電気通信の分野での自由化がどんどん進んでまいりますと、従来にも増して激しい競争状態が出てくるんだと思います。もちろん、そういった中で企業も従来以上のいろんな経営努力も強いられると思うのでございます。しかし、全体として見れば、やはりそういったことを通じて国民生活なり国民のいろんな諸活動における利便というものは格段に増していくんだと思います。とりわけ電気通信という分野の性格というものを考えてみるならば、自由化を進めていくということは基本的には正しい道だと思っております。  しかし、そういった中で、御懸念のございましたようなサービスの低下であるとか、あるいは我が国としての大切な通信分野での地位が維持できないというような状況に陥らないようにいろいろ配慮はしていかなくちゃいかぬものだと思っております。
  105. 小山峰男

    ○小山峰男君 今回のこの二つ条約につきましては、基本的には自由貿易促進の趣旨からいって望ましいものであろうというふうに思っております。今回の措置によって、日本の場合、国際的に見て撤廃の状況というのはどんな位置に置かれているのか、その辺についてお願いしたいと思います。
  106. 野上義二

    政府委員(野上義二君) 御承知のように、ITA、情報技術合意につきましては、原則として二〇〇〇年までに情報技術製品について関税を撤廃するということになっておりまして、国際的には均等に下げていくという合意ができております。  どういつだ形で関税を撤廃するか、スケジュールと言っておりますけれども、これは国によって異なってまいるわけでございます。実は、日本の場合には、この協定の対象のほとんどの品目について既にウルグアイ・ラウンドにおいて関税ゼロを合意しております。そういった意味で、九九年の一月までに関税撤廃をするということをウルグアイ・ラウンドで日本合意しておりますので、九七年、九八年、九九年の三回にかけて関税を下げてゼロに持っていくということでございます。  ほかの国につきましては、日本のように九九年一月までに関税撤廃を既にウルグアイ・ラウンドで約束しているところは三回でやるようなところもございますけれども、二〇〇〇年までに撤廃するというときには四段階に分けたり、そういったような形で下げているところもございます。  医薬品につきましては、みんな一回で下げるということを合意しております。
  107. 小山峰男

    ○小山峰男君 このサービス貿易に関する部分でございますが、これも主要な貿易国であるというような点から考えると当然のことかというふうに思うわけでございます。NTTとKDDについては、外国資本の参加割合は五分の一未満とか、あるいは内国民待遇に係る制限として、取締役とか監査役は日本国籍を有しなければならないというふうに規定をされているわけですが、このような制限を加えた理由はどういうことかということをお聞きしたいと思います。
  108. 野上義二

    政府委員(野上義二君) 先ほど他の委員からも御質問ありましたけれども、今回の交渉においては、我が国以外の主要国につきましても一定の外資規制、米国の場合の無線局ライセンスに対する二〇%の外資規制とか欧州の政府保有株というような形で一定の外資規制を残しているところがございます。こういった各国がそれなりに少しずつまだいろいろな規制を残しているわけでございますので、そういったような各国の自由化約束とのバランスをとるという意味でNTT及びKDDについても外資規制及び役員等の国籍要件を維持するということにしているわけでございます。
  109. 小山峰男

    ○小山峰男君 現在、例の分割というような問題が出ておりますが、それが成立するかどうかは別としまして、もし分割された場合にもこのような制限措置が継続されていくのかどうか、その時点でこういうものが撤廃されるのかどうか、その辺についてはどうなんでしょうか。
  110. 野上義二

    政府委員(野上義二君) 今国会に提出されております日本電信電話株式会社法の一部を改正する法律案におきましては、現在の日本電信電話株式会社を持ち株会社としての日本電信電話株式会社、それから東日本電電、西日本電電、それから長距離会社、この四つに分離、再編成されるというふうに理解をしております。  私どもがこの交渉をまとめた時代におきましては、こういった原則は決まっておりましたけれども、法案という形ではまだ出ておりませんでした。そういった意味におきまして、私どもは今の再編成された四社全体を対象として約束したわけでございます。その過程におきまして、私どもは外資規制につきましては直接、間接を含め五分の一未満、それから役員の日本国籍という点を合意しているわけでございまして、仮にこれが再編成されましても、全体としてそれが残るというふうに理解しております。  言いかえますと、持ち株会社が東日本、西日本等を所有するわけで、そういった点につきましてその五分の一未満を、外資規制を五分の一でかけておりますので、そういう意味で我々の今度の取り決めの合意とは内容的にそごはないというふうに理解しているわけでございます。長距離会社につきましてはその対象となっておりませんので、将来的には変更があるかないかという問題はあるかと思います。
  111. 小山峰男

    ○小山峰男君 それでは、その問題はその程度にしまして、最近の新聞でゴラン高原におけるPKO要員射殺というような記事が出ていたわけでございます。オーストリアのPKO要員二人がパトロール中に何者かに銃撃され、死亡したと伝えられておるわけですが、この事実関係はいかがでしょうか。
  112. 川島裕

    政府委員(川島裕君) お答え申し上げます。  現地時間で五月三十日の昼ごろに、兵力引き離し地帯のシリア側の境界線付近でオーストリア歩兵部隊兵士二名が射殺体で見つかったということでございます。この両名、徒歩でパトロール任務についていたわけですけれども、帰ってこなくなったので探しに行って射殺死体が見つかったということのようでございます。現在、UNDOF部隊とシリア当局両方で共同で調査中でございます。国連の本部の方で、これはまだよくわからないけれども、この事件は恐らく政治的なものではなくて犯罪、クリミナルのもののようであるという推測をとりあえず言っておりますけれども、調査が進んでいるということでございます。  UNDOFは一九七四年にスタートして以来、実は殺されたというのはこれが初めてでございまして、比較的平穏なミッションと申しますか部隊だったわけでございます。その意味では衝撃というものはございますし、そこはまずは調査の結果を見るということであろうと思っております。
  113. 小山峰男

    ○小山峰男君 私も昨年の一月にパレスチナの選挙監視というようなことで参議院から派遣させていただいたわけでございまして、この地区も見てきましたが、見た限りでは大変安全地帯かなという印象を持って帰ってきたわけでございます。  今お話がございましたように、今回の事件の詳細はまだ必ずしもはっきりしていないわけでございますが、今まで大変安全だというふうに言われていたところでこのような事件が起こるということについて、PKO活動そのものが大変心配になる可能性があるんじゃないかというふうに思うんですが、現時点における政府というか外務省の見解はいかがでしょうか。
  114. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) UNDOFには現在自衛隊から四十五人が後方支援の関係で派遣されておるわけでございますけれども、先ほど政府委員からも御答弁申し上げましたように、全体として見ますと、UNDOFが活動しています地域は他のPKO活動の行われている地域に比較いたしましても比較的平穏に推移してきたわけでございます。  今回、このようなまことに残念な事件あるいは事故が起きたわけでございますけれども、その詳細あるいはその背景というものはまだ十分わからないところでございます。しかし、今の時点で我が国として、このことが、この事件が起こったからこれまでの参加していた自衛隊員をどうするかこうするかということを検討するような段階というか、そういう状況にはないと考える次第でございます。  UNDOF全体としてもそうでございますし、派遣されている自衛隊員としても、従来以上の注意を持って、情報の面でもあるいはいろいろな活動の面でも安全に万全の注意を払いながら活動を継続してもらう、こう考えております。
  115. 小山峰男

    ○小山峰男君 いろんな情報を収集するなりしながら、やっぱり派遣された皆さんの安全というのを最大限御努力いただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。
  116. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  117. 立木洋

    ○立木洋君 私は、日本共産党を代表して、提案されているWTO関連二案について反対の立場で討論をいたします。  確認書に反対する第一は、アメリカの情報技術製品の対日輸出が拡大することにより日本の大企業も影響を受けますが、そのしわ寄せが下請企業に向けられることが懸念されるからであります。第二に、逆輸入製品の関税が撤廃されることや完全撤廃諸国への輸出が増大することに伴って情報関係日本企業の海外移転に拍車がかかることを懸念するからであります。  次に、サービス貿易協定の第四議定書に反対する第一の理由は、日本はNTTとKDDを除いて外資規制を撤廃するのに対し、アメリカは、日本の郵政省も認めているように、事実上すべての電気事業者に対し外資規制を維持するなど、アメリカに一方的に有利なものになっているからであります。しかも、議定書締結後にアメリカはみずからも認めた合意を無視し、我が国に対して制裁をちらつかせながらNTTとKDDの外資規制の撤廃を要求することさえ行っています。  こうした交渉の結果について、日本の郵政省の官房国際部の幹部の方の論文では、「一度は崩壊さえ覚悟した基本電気通信交渉は、凍結という形で救われはしたものの、大統領選を控えた米国国内の政治情勢およびそれに強大な影響力を持つ産業界の圧力で交渉が振り回されたことに一片の空しさを覚えた交渉担当者も少なからずいたことも事実である。」「電気通信交渉がこのような結果となった今、世界初の国際自由貿易体制の番人との鳴り物入りで設立されたWTOの信頼性に疑問が呈されるばかりか、多角的貿易体制そのものの維持を危ぶむ声も聞かれている。」との指摘もあることも述べておきたいと思います。  この第四議定書が、アメリカの要求に沿って電気通信の自由化を進める一方、アメリカの横暴には全く無力なものになっているからであります。また、議定書の批准に伴う競争の激化によって、採算のとれない公共性の高いサービスの切り捨てなど国民への電気通信サービスの低下をもたらす懸念も依然として残るからであります。  以上をもって反対討論を終わります。
  118. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  まず、千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定譲許表第三十八表(日本国譲許表)の修正及び訂正に関する確認書締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  119. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、サービスの貿易に関する一般協定の第四議定書締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  120. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、両件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  121. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  122. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 次に、投資の促進及び保護に関する日本国政府と香港政府との間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。池田外務大臣
  123. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいま議題となりました投資の促進及び保護に関する日本国政府と香港政府との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、香港との間で投資の促進及び保護に関する協定締結するため、香港側との間で平成六年以来順次交渉を重ねました結果、平成九年五月十五日に東京において、先方ツァン財政長官との間でこの協定に署名を行った次第であります。  この協定は、投資の許可及び投資の許可に関連する事項について最恵国待遇を相互に与えているほか、投資財産、収益及び投資に関連する事業活動等に関する内国民待遇及び最恵国待遇、収用等の措置のとられた場合及び敵対行為の発生等により損害を受けた場合の補償等の措置、送金等の自由、投資紛争解決のための手続等について定めております。この協定は、基本的に我が国が従来締結した投資保護協定の例に沿った規定ぶりを採用しております。なお、この協定は、香港の中国への返還後中国に承継され、日本国政府と香港特別行政区政府との間の協定として効力を有していくこととなり、日中投資保護協定は香港に関して適用されません。  この協定締結によって我が国の対香港投資に関し、香港の中国への返還後もその適切な保護を図ることが可能となるとともに、返還後の我が国の対香港投資に係る環境が安定的に維持されていくことを通じて、日本国と香港との間の投資の一層の増加及び経済交流の一層の増進が図られ、香港が返還後も現在の繁栄と安定を引き続き維持していくことに資することとなることが期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
  124. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 以上で本件の趣旨説明の聴取は終わりました。  本件の質疑は後日に譲ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十二分散会      —————・—————