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1997-04-01 第140回国会 参議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月一日(火曜日)    午後二時開会     —————————————    委員異動  四月一日     辞任         補欠選任      山口 哲夫君     矢田部 理君      小山 峰男君     北澤 俊美君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         寺澤 芳男君     理 事                 須藤良太郎君                 高野 博師君                 武田邦太郎君     委 員                 岩崎 純三君                 笠原 潤一君                 武見 敬三君                 成瀬 守重君                 宮澤  弘君                 猪熊 重二君                 田  英夫君                 萱野  茂君                 立木  洋君                 佐藤 道夫君                 椎名 素夫君                 矢田部 理君                 北澤 俊美君    国務大臣        外 務 大 臣  池田 行彦君    政府委員        防衛庁防衛局長  秋山 昌廣君        防衛庁装備局長  鴇田 勝彦君        外務大臣官房審        議官       西田 芳弘君        外務大臣官房領        事移住部長    齋藤 正樹君        外務省総合外交        政策局軍備管理        ・科学審議官   河村 武和君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     朝海 和夫君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省北米局長  折田 正樹君        外務省中近東ア        フリカ局長    登 誠一郎君        外務省経済協力        局長       畠中  篤君        外務省条約局長  林   暘君    事務局側        常任委員会専門        員        大島 弘輔君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○中東北アフリカ経済協力開発銀行を設立する  協定締結について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、小山峰男君及び山口哲夫君が委員を辞任され、その補欠として北澤俊美君及び矢田部理君が選任されました。
  3. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 次に、中東北アフリカ経済協力開発銀行を設立する協定締結について  承認を求めるの件を議題といたします。  本件の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 高野博師

    高野博師君 それでは、中東北アフリカ経済協力開発銀行を設立する協定に関して何点かお伺いいたします。  先般の大臣趣旨説明によれば、我が国がこの協定締結することは中東和平プロセス経済的側面から支援することに資するものであり、また国際開発金融機関による地域経済開発及び発展のための活動貢献する、そしてさらにはこの地域各国我が国友好関係を増進する見地から有意義であるという説明がありました。  中東和平プロセスにおいては、経済的側面からの援助というのはこれまでも相当我が国は実施してきておりますけれども、対パレスチナあるいは和平関係国への支援はこれまでどの程度やってきたんでしょうか。大まかな数字で結構ですので、お伺いいたします。
  5. 畠中篤

    政府委員畠中篤君) これまでの中東和平当事者でもありますパレスチナ人への援助といたしましては、九三年九月以降現在までに約二億七千万ドル以上の支援を実施しております。そのほか、エジプトジョルダンシリアといったようなところに援助をしておりまして、エジプトにつきましては九五年度では約九十四億円、それからジョルダンにつきましては円借款も含めまして三百二十億円、シリアにつきましては五百億円程度援助を実施しております。
  6. 高野博師

    高野博師君 イスラエルとの経済関係はどうでしょうか。
  7. 登誠一郎

    政府委員登誠一郎君) 近年の中東和平進展背景としまして、我が国イスラエルとの経済関係は順調に進展しております。  貿易で見ますと、昨年度は日本からイスラエルに対して約十一億ドルの輸出を行い、またイスラエルから約十二億ドルの輸入を行っております。  そのほかにも、日本からの進出企業といたしまして、ダイヤモンドであるとか印刷機械印刷技術機械ソフトウエア等の合弁をイスラエル側と行うべく幾つかの本邦の企業イスラエルに進出いたしております。
  8. 高野博師

    高野博師君 我が国経済的支援に対して関係国評価はどういうものでしょうか。それから、友好関係はどうでしょうか。
  9. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいま政府委員から御答弁申し上げましたような我が国からこの地域諸国への経済協力あるいは貿易企業進出等経済関係でございますが、各国とも非常に高く評価してくれておるところでございます。  実は私自身、昨年の八月にこれら諸国を回ってまいりましたけれども、いずれの国におきましても我が国経済協力がその国の国づくりにおいて果たしている役割を高く評価しておりましたし、そしてまた貿易経済関係の一層の進展、とりわけ直接投資に対する期待感が非常に強いことを実感してきたところでございます。  それから、さらにもう一点だけ申しますと、先ほど経済協力局長が申しましたように、パレスチナに対する経済協力は二億七千万ドル程度に上るわけでございますが、これはこの地域の民生に役立ち、ひいては和平プロセス進展に寄与するものとして、アラブ諸国が歓迎しているだけではなくて、イスラエルもその点は日本協力評価するものであるということを申しておったのが非常に印象的でございました。
  10. 高野博師

    高野博師君 経済的側面からの援助に対しては関係国からの高い評価があるということでありますので、それであるならば、我が国がより一層もっと政治的、外交的に中東和平プロセス貢献できる、そういう立場とか時期にあるとは言えないでしょうか。この点、どうでしょうか。政治的な貢献をすることについてはどうお考えでしょうか。
  11. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員指摘のとおりでございまして、我が国は政治的な側面では伝統的には中近東諸国とそれほど深い関係があったわけではございません。しかしながら、逆に言いますと、それだけにいわば中立公平な立場から日本は考えてくれるんじゃないか、そしてまたそういった立場での意見なり助言なりができるんじゃないか、関係国の中でもそういった見方が強うございまして、そういった観点から私どもも政治的な、あるいは和平プロセスを進めるための努力に我々なりに役割を果たしてきているところでございます。  先ほど申しましたが、私自身が昨年参りましたのもその一環でございますし、その後、例えばアラファト議長が昨年の九月に来日されましたし、ことしになりましてはイスラエルレビ外務大臣もこちらに来られたわけでございます。そのほかにもいろいろな国際会議の場等々におきましても我が国我が国なりのいわゆる政治的な役割も果たすように努めておるところでございます。
  12. 高野博師

    高野博師君 ぜひ政治的な役割あるいは政治的なイニシアチブをとる外交を展開していただきたいと思います。  それでは、最近の中東情勢は楽観できないと思うんですが、どのような現状認識をされているんでしょうか。
  13. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御承知のとおり、昨年のイスラエルにおける政権の交代以降、中東和平プロセスは停滞を余儀なくされておったわけでございますが、その後、当事者また関係諸国我が国も含めましていろいろな努力をした結果、そのプロセス動き出し、とりわけパレスチナトラックに関しましてはこの一月にいわゆるヘブロン合意が成立したわけでございます。  そういったことで、こういった動きがさらに加速化することを熱望しておったわけでございますが、御承知のとおり、東エルサレムにおけるイスラエル住宅建設着工というような動き、あるいはテルアビブにおける自爆事件といったようなものが三月に相次ぎまして、今のところ残念ながら状況は悪化していると言わざるを得ないわけでございます。  こうした中でございますので、我々といたしましては、両当事者がともかく冷静に、また抑制したといいましょうか自制した姿勢で状況鎮静化努力することを強く期待しており、また我が国としても国際社会と協調しながらそのような方向働きかけてまいりたい、こう考えている次第でございます。
  14. 高野博師

    高野博師君 最近の情勢和平プロセスがとんざしたのではないかという見方ができるかと思うんですが、先ほど大臣がおっしゃられましたように、ネタニヤフ政権東エルサレムユダヤ人住宅建設着工したということで、アラブ諸国が三十日にアラブ連盟外相会議を開いて、その中でイスラエルとの外交関係凍結するあるいはアラブ・ボイコットの復活とか中東和平多国間協議からの撤退等勧告決議を行ったということで非常に情勢は厳しいのではないかと思うんです。これに対してイスラエルはこの決議を愚かなことだというような非難もしているということがあります。  そこで、こういう厳しい情勢の中で、今回の中東北アフリカ経済協力開発銀行の設立というのは影響を受けないんでしょうか。
  15. 登誠一郎

    政府委員登誠一郎君) 御指摘のとおり、今中東情勢は非常に難しい局面に差しかかっておりますが、もともと中東開発銀行ができました背景は、中東和平当事者交渉側面から支援する、あるいは中東和平交渉が進むような雰囲気をつくるということから生まれたわけでございます。いわゆる多数国間協議から生まれたわけでございます。したがいまして、現在の和平プロセスは、当事者の直接の交渉、さらには日本アメリカヨーロッパ諸国等が入っております多数国間協議、この両方が相まって、お互いに側面から支援しつつ動いていくのが一番望ましいわけでございます。  そういう観点から考えますと、現在のような厳しい情勢におけば、なおさらのこと関係国が一堂に会して中東の将来の経済発展のために努力をする、こういう中東開発銀行役割というのはますます大きくなるというふうに考えておりまして、関係各国ともそれなりの国内的な準備を進めておるという状況でございます。
  16. 高野博師

    高野博師君 今危機的な状況と言えると思うんですが、これに対してアメリカはどのようにこれをとらえて動こうとしているのか。あるいは、フランス等ヨーロッパ諸国中東の今の現状に対してどういうふうにとらえているんでしょうか。
  17. 登誠一郎

    政府委員登誠一郎君) 昨年来、このパレスチナトラックが暗礁に乗り上げそうになったときにはアメリカイスラエルパレスチナ側との間に入っていろいろと仲介努力をしたわけでございますが、今回も、ことしのヘブロン合意アメリカ仲介で実現したわけです。その後に起きました一連のテロ事件その他に直面いたしまして、アメリカは、先週改めてクリントン大統領ロス特別調整官現地に派遣いたしまして、ネタニヤフ首相とも会談し、またアラファト議長とも会談をして両者の溝を狭め、交渉テーブルに再び着くような努力をしている状況でございます。  現在までのところ、本日現在でネタニヤフ首相アラファト議長会談が行われるという情報にまだございませんけれども、アメリカは引き続き粘り強く両者テーブルに着くように努力を行っているわけでございます。  またEUの方も、中東和平担当のモラチノスという大使がおりますけれども、この大使が時期を見て現地に参りまして、アラブ側イスラエル側両方の間を取り持つ努力をしているという状況でございます。
  18. 高野博師

    高野博師君 新入植地建設凍結というのは故ラビン首相パレスチナ側との和解の前提として実施したいわば信頼醸成措置だと言われておったわけですが、この凍結を解除したということは土地と平和の交換という和平の大原則を真っ向から否定するものだと、イスラエル側はこれを破ったと言えるのではないかと思うんです。  アメリカはどちらかというとイスラエル寄り動きをする可能性が高い。これに対してフランスあたりはどちらかといえばアラブ寄り行動をとるのではないかと言われております。  我が国は原油の輸入の八割を中東に依存しているということで、中東の危機は我が国に対しても直接間接に影響を与えることが考えられますので、我が国が独自の政策とか行動を打ち出すことはないんでしょうか。経済的貢献に見合った政治的貢献和平貢献はできないんだろうか。先ほど大臣がおっしゃられましたように、中立公平な立場からの対応というのはできないのかどうか、その辺についてお伺いいたします。
  19. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員指摘のとおり、この地域和平のために汗を流しております各国も、これまでの歴史的な経過の中で、それぞれこの地域の国の中でも関係の深いところ、あるいは相対的に薄いところ、いろいろございまして、ある程度その動きなりその動きの効果が制約される面があるのはそのとおりでございます。  そういった点で、我が国の場合には比較的中立的な立場を維持することができている。それだけに、両当事者に対してといいましょうかすべての関係者に対しまして話しかけられるという利点がございます。もとより、石油資源という観点から考えまして、我が国がこの地域の安定を強く求めなくちゃいかぬという立場がございます。そういうことを踏まえて我々なりに働きかけをしているところでございます。  今具体的にお話しになりました東エルサレム住宅建設の件につきましても、先ほど申しましたレビイスラエル外相がちょうど訪日されました前日にこれが発表されたということがありましたので、私が直接レビ外相に会いまして、この住宅建設というのは和平プロセスに対して非常に大きな障害になりかねない、これはとるべき道ではないということを強く申し入れたところでございます。  それに対して、もとよりイスラエルは自国の立場、例えばこの合意イスラエルの解釈によれば必ずしもこの地域で何もしないということになっていないんだというようなことをいろいろ言っておりましたけれども、私の方からは重ねて、いや、しかしながら現にパレスチナを初めアラブ諸国が一斉に反発している、この一事をもってしてもこれが和平プロセス障害を与える、阻害するものであるということは明らかではないかということで再考を求めたところでございます。  残念ながら、私の話も十分なる説得力を持ち得なかったのでございましょう、着工ということになったわけでございますけれども、そういった着工ということがありました際にも、我が国として重ねてそれは遺憾である、再考をということを伝達しております。現在も在イスラエル渋谷大使イスラエル政府あるいはパレスチナ当局に対しましてもいろいろな働きかけをしているところでございますし、さらに必要に応じ本省からしかるべき者を派遣するということも検討しておるところでございます。
  20. 高野博師

    高野博師君 済みません、今だれを派遣するとおっしゃいましたか。
  21. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) しかるべき者という言い方をいたしましたけれども、現に現地では渋谷大使努力をしているところでございますが、それに重ねて東京から私の意思を十分に伝える者と申しましょうか、日本政府意見を十分に伝達できるような立場にある者を派遣することを検討しております。
  22. 高野博師

    高野博師君 今,大臣が御説明されたように、先方のレビ外相に対して強い申し入れを行ったと、それがら橋本総理もこの入植地建設については残念に思うと述べたという報道がありますが、この点についてはもっと明確に、もっと強く言えなかったのかという批判があります。  イスラエルの場合は和平の大原則を破ったということもありますので、我が国はもうアメリカと一線を画すような中東和平へのかかわり方があるんではないかなと思っているんですが、しかるべき人を派遣するということを今おっしゃられましたので、ハイレベルのしかるべき人を派遣して、まさに経済的な援助をたくさんやっているということもあって説得力はあるんではないかと私は思いますので、ぜひそういう努力をしていただきたいと思います。  それでは次に、対人地雷禁止に関してお伺いいたします。  対人地雷世界の三十六カ国、地域に約一億一千万個埋設されている、そして毎月二千人以上の住民、これは文民、市民地雷爆発で死傷している、そのうちの二割が十五歳未満の児童とも言われておる。そして、現在二十五万人の負傷者がいると言われております。毎年十万個が除去される間に二百万個が新たに埋設されているということも言われておりまして、住民への被害が深刻化し、人道上の問題として認識されている。また、元紛争地経済再建障害ともなっていると言われております。  私は、兵器というのは本来的にすべて非人道的なものである、しかし対人地雷の場合は紛争後も一般市民負傷を与え続けているという点で問題が大きいと認識しております。先般日本政府主催対人地雷に関する東京会議が開催されたんですが、その成果を簡潔に御説明していただきたいと思います。
  23. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 三月六日と七日に対人地雷に関する東京会議を開催いたしました。この会議には、カンボジア、モザンビークなどの地雷埋設国の方も参加されましたし、国際機関も参加しましたし、主要な地雷除去活動を行っている支援国も参加いたしました。  会議で討議しましたのは、国連などによる地雷除去活動現状問題点、その改善の方法、二番目として地雷探知及び除去技術開発方向性いかん、三番目が地雷犠牲者先ほどお話がございましたが、日に日に多数の犠牲者が出ておりますので、犠牲者に対する支援をどうやって強化していくか、この三つがテーマでございました。結果としまして、参加しました者たちは、地雷による犠牲者を究極的にはゼロにしようではないか、そういう目標を持ってそれぞれ努力しようではないかという一般的な方向性を確認しました。  その上で、そのための方策としては、国連人道局地雷除去活動の取りまとめをしておるわけでございますが、国連その他の国際機関への支援も強化して国際機関の取り組みを強化しようということ、あるいは地雷探知除去技術開発をそれぞれの国がやっておるわけでございますけれども、そういった情報国連に持ち寄って情報の共有といったようなことを促進しようではないかということ、三点目として犠牲者支援について具体的な援助体制の強化をしていこうではないかといった点についておおよその意見の一致が見られたということでございます。
  24. 高野博師

    高野博師君 そこで、我が国政府対人地雷禁止に対する考え方方針政策はいかがなものでしょうか。
  25. 河村武和

    政府委員河村武和君) 我が国といたしましては、世界各地で現実に起こっております地雷被害をなくすためには、実際に対人地雷を無差別的に使用を検討している国を取り込んだ形で全面禁止条約交渉を進めていく必要があるんではないか、このように考えております。
  26. 高野博師

    高野博師君 去年六月のリヨン・サミットで、橋本総理の方から、国連などの地雷除去活動あるいは地雷探知除去技術開発犠牲者支援、これは先ほど東京会議での成果もありますが、こういう国際協力を提唱したと。それから、留保条件つき全面禁止努力を支持する政府決定を発表しています。国連総会決議共同提案国にも入っているわけです。  日本の場合は、全面禁止が実現するまで、暫定的な措置として自己破壊あるいは不活性化型に切りかえる段階的方式を考えている、こう言われております。  そこで、防衛庁にお伺いいたしますが、我が国防衛対人地雷をどう位置づけているんでしょうか。その使用目的、あるいはだれを想定しているのか、あるいはその有効性、また対人地雷必要性についての見解を伺います。
  27. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 御質問は対人地雷我が国防衛上なぜ必要なのかという御趣旨かと思いますけれども、我が国特性として非常に起伏が多い、それから縦に細長い列島であるという意味ではいわゆる縦深性が乏しいといったような地理的特性を有しているわけでございますし、同時に防衛基本理念として専守防衛ということに徹することにしているわけでございます。敵の着上陸侵攻に対しましては可能な限り前方で対処することが必要である、そして対人地雷我が国に着上陸してくる敵の歩兵等侵攻をおくらせるための障害を構成する防御的な兵器として重要かつ有効なものと考えているところでございます。  また、我が国内陸部におきまして持久作戦を行わなければならないという場合には、我が国はその地形の特性を利用して、陣地を構築しつつ火力を重視した防御戦を実施することになるわけでございますけれども、この際、やはり敵の侵攻を遅滞ないし阻止して陣地を防御する手段として対人地雷有用性は高い。このようなことから対人地雷我が国防衛上必要なものという認識をしております。  同時に、国際的な対人地雷について、今まさに先生御指摘のように、一般市民が、特に紛争終了後、無差別に被害を受けるといったような惨状を目の当たりにした国際的な対人地雷禁止活動につきまして、防衛庁といたしましても政府の一員として、昨年六月の自主規制という方針に沿ってこういった国際活動を支持していくという立場にあるわけでございます。
  28. 高野博師

    高野博師君 今地形的な観点から、あるいは敵が来たときに歩兵云々とかいうことを言っておられましたが、海に囲まれた日本でそういう必要があるのかどうか、そもそも敵とはだれを想定して  いるのか、この辺はいかがでしょうか。
  29. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 我が国防衛基本は、日米安保体制を維持すると同時に、適切な防衛力自衛力を持つという考え方でございますが、防衛力基本はいわゆる基盤的防衛力整備ということでございまして、特定脅威を想定いたしまして、その脅威を見積もりまして、それに直接対抗する防衛力を構築するということではございませんで、いわゆる空白をつくるといったようなことを避ける、独立国としての必要最小限度防衛力を持つという考え方でございますので、特定脅威特定の敵国ということを考えて自衛力を整備しているわけではございません。  しかし、防衛庁役割としては、我が国侵略される場合にその侵略を阻止する、侵略された場合に直ちにその侵略を排除するということが目的でございまして、着上陸侵攻というものに対してどう対処するのかということが大きな課題であるわけでございます。
  30. 高野博師

    高野博師君 その点についてはまたお伺いいたします。  専守防衛対人地雷が必要だという考え方世界的な潮流とは相入れないんではないかと私は認識しております。  そこで、自衛隊は現在対人地雷を何個保有しているんでしょうか。
  31. 鴇田勝彦

    政府委員鴇田勝彦君) お尋ねでございます対人地雷保有数につきましては我が国防衛能力にかかわるものでございますので申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  32. 高野博師

    高野博師君 防衛能力にかかわるので公表できない兵器とできる兵器との基準は何かあるんでしょうか。
  33. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 御案内のとおり、防衛大綱では一陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊別編成規模ないし主要な装備品についての数あるいは編成の姿といったものにつきましてはお示ししているわけでございます。  しかしながら、いざ侵略があった場合の、あるいは侵略が想定される場合の我が自衛力に関する継戦能力に関するものにつきましては公表を差し控えさせていただきたいということでございます。
  34. 高野博師

    高野博師君 それでは、平成七年から九年度までの対人地雷のための予算額はそれぞれ幾らだったんでしょうか。
  35. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 七年度、八年度が約六億円、九年度が約七億円でございます。
  36. 高野博師

    高野博師君 九年度は何で一億もふえているんでしょうか。
  37. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) これは、対人地雷につきまして、こういった国際的な活動も踏まえた上で所要額を積み上げた結果、現在約七億円ということになっておるわけでございます。
  38. 高野博師

    高野博師君 そこのところをもう少し説明していただけませんか。
  39. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 過去十年間をとってみましても、毎年ある程度金額はぶれております。所要を積み上げた結果今回は一億程度ふえているわけでございますけれども、それは特段の大きな理由があってふえているわけではございません。
  40. 高野博師

    高野博師君 それは全然説明にならないのです。  報道によれば日本の場合は百万個有していると言われておりまして、自己破壊装置がついていない対人地雷を装置がついたものに今取りかえつつあるということも言われておりますが、これは事実でしょうか。
  41. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 対人地雷につきましては、過去二、三年ベースで見ますと、およそ四種類のものがございます。八〇式対人地雷、六七式対人地雷、散布式対人地雷、指向性散弾地雷と。  そこで、特定通常兵器条約の議定書による決まりに従いまして、自己破壊装置のついていないものについては使用禁止ということ、あるいは使用する場合については特定の条件のもとで使用するということになっております。我が国の場合、昨年六月の自主規制によりまして自己破壊装置のついていないものについては今後取得をしないということでございますので、自己破壊装置のついているものあるいは指向性散弾地雷、先ほどの説明で申し上げますと八〇式あるいは六七式の対人地雷の取得はやめまして、現在散布式対人地雷あるいは指向性散弾地雷を取得するという方向に切りかわっていることでございます。
  42. 高野博師

    高野博師君 衆議院の安保委員会で久間防衛庁長官が答弁されているのは、七億円の予算は装置つきを教育訓練用に調達するためというふうな答弁をされているんですが、これはどういう意味でしょうか。
  43. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 昨年の自主規制におきまして基本的に、国際的な全面禁止に関する合意が達成されるまでの期間、一定の留保条件つきながら以下の措置を講ずるということで、自己破壊装置を有する対人地雷の回収等に必要な措置を適切に進める。あるいは、自己破壊装置を有さない対人地雷の新規取得を計画しない。それから、自己破壊装置を有さない対人地雷特定通常兵器条約改正議定書により使用が認められている場合も含め作戦上は使用しないという方向を出したわけでございます。しかし、これは作戦上使用しないということで、我々は訓練は今でもやっております。訓練をやっている過程で使用をすることはあり得るということを申し上げたわけで、いわば国際的な今の動きでございます一般市民に無差別に被害を与えるような状況になるような作戦に使わないということの裏返しの説明として大臣からそういう説明があったと記憶しております。
  44. 高野博師

    高野博師君 自己破壊装置のついていない地雷は使わないということであれば、これは廃棄しないんでしょうか。
  45. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 先ほど申し上げましたが、我が国防衛上、対人地雷必要性について我々はそこの認識があるわけでございますが、現在の国際的な動きの中で一定の留保条件づきで作戦上使用しないということを明確にしたわけでございます。  その留保条件というのは、我が国侵略されて他にとり得る手段がない場合には議定書の示すルールに従って使用することを検討することについて留保するということでございまして、侵略があって他にとり得る手段がない場合に使う場合があり得るという意味で、自己破壊装置のついていない現在所有している対人地雷についての廃棄については我々としては慎重に考えざるを得ないという立場でございます。
  46. 高野博師

    高野博師君 日本政府としては全面禁止支持の方針をしているのと、現在自衛隊がやっている防衛政策行動というのは私は矛盾しているんではないかと思います。現有の対人地雷を廃棄するとか新たな製造を中止しないと日本が国際的な信用を得られない、あるいは人道上の立場というのは疑われるのではないかと私は思います。  そこで、ドイツとかカナダ等約二十カ国は保有している対人地雷破棄にもう着手していると。しかし、日本は依然としてこれを持っている。新しい型に現有のものを切りかえるのに三百億円以上もかかるとも言われておりまして、この辺の日本政府方針と現実、外務大臣はどのようにお考えでしょうか。
  47. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 現在保有しております自己破壊装置のついていない対人地雷につきまして、これを何とか自己破壊装置づきに切りかえるということを我々考えておりまして、現在切りかえのための研究開発をなるべく早く終えたいと思っておりますが、実施しているところでございます。いずれそれは自己破壊装置のついた対人地雷に切りかえたいということを考えております。  なお、先ほど私申し上げました……
  48. 高野博師

    高野博師君 ちょっと時間がないので結構です。  私が言っているのは、そういう自衛隊方針というか政策と、日本がとっている国際的な立場での政策とは矛盾しているんじゃないかということを言っているんです。  対人地雷禁止についてはオタワ方式と軍縮会議方式の二つがあるということで、我が方は軍縮会議方式をとっているということなんですが、軍縮会議方式をとっていると条約をつくるのに十年から十五年ぐらいかかるんではないか、その間に相当の犠牲者が出続けるということも指摘されておりまして、対人地雷の惨禍をこれ以上拡大しないための措置としてオタワ方式に変更すべきではないか。日本はこの問題でカナダ等と並んでもっと大きなイニシアチブをとるべきではないかと私は思いますが、大臣はいかがでしょうか。
  49. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 確かに、カナダ政府の主導によるいわゆるオタワプロセスというのは対人地雷全面禁止に向けた政治的なモーメンタムを高めていく上で貴重なものであると考えております。そういった観点から、昨年開かれたオタワでの会合にも我が国は参加してきたところでございます。  しかし同時に、この対人地雷問題の根本的な解決を図ろうといたしますと、やはりなるべく多くの国の合意を得ながら条約を作成していくことが大切であると考えております。そういった観点から申しますと、多数国間の軍縮条約についての交渉はジュネーブの軍縮会議でやる、これが国際的なルールといいましょうか、そういうことになっている。いわば多数国間軍縮条約についての唯一の交渉機関がジュネーブの軍縮会議における条約交渉でございますので、そのジュネーブの交渉を早期に開始する可能性を追求していくということが何よりも一番大切でもあり、また現実的でもあると考えている次第でございます。  そういった意味で、いわばジュネーブにおける取り組みと、それからカナダ政府のイニシアチブが相互補完的なものとして、全体としてこういった機運がさらに進展していくことを期待もし、我が国としても努力してまいりたいと思います。
  50. 高野博師

    高野博師君 時間がないものですから、ODAとの関係をお伺いしたがったんですが、対人地雷を製造しているあるいは輸出している国に対して日本はODAを供与はしていないのかどうか、その辺のチェックはやっているのかどうか。ODAの原則は、ODA大綱によれば大量破壊兵器開発とか武器の輸出入などの動向に十分注意を払うということになっております。これはちょっと時間がないので触れませんが、こういう国にODAの供与をしているところがあるんではないか、あるいはそういう製造している、輸出しているような疑いのある国もあるんではないかと私は思うんですが、この辺のチェックも厳重にしていただきたいというふうに思います。日本自身が非人道的と言われる兵器を製造していながら、こういう国際的なところでいろんな役割を果たすというのは難しいと思います。  そこで、対人地雷禁止をめぐる我が国政府の対応については矛盾とかあいまいな点があると私は見ておりますが、援助大国である我が国が、本当に平和国家あるいは人道国家、人道大国に徹底して、そして国際的な戦略をとるならば、もっともっと人類あるいは世界平和に大きな貢献ができるんではないかと思うんですが、一言大臣に御所見をお伺いして、終わります。
  51. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どももODAを進めていくに当たりましてODA原則にゆだねるところも十分念頭に置きながら対応したいと思います。そういった際に、こういった対人地雷に関する国際的な動き、そうして我が国のそれに対する取り組み方というものも十分踏まえながらやってまいりたいと思います。  御承知のとおり、ODA大綱においても、いろいろなそういった事情も勘案しながら、同時に相手国の経済社会状況あるいはその国との二国間関係等々も含め総合的に判断をした上で対応していくということになっておりまして、そういうことで進めたいと思います。
  52. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 大臣、過日中国においでになりまして、日本アメリカ、中国は今後特段に友好を深めていこう、こういう話し合いをなさり、また日中間では首脳の相互訪問をしようと、こういう約束をなさったわけであります。これは非常に結構なことだと思いますが、実際現地に行かれ、中国の首脳に直接接触なさって、これからは今までとは違って特段に友好を深めていくことができる、そういう実感をお持ちになったでしょうか。その実感をお話し願いたいと思います。
  53. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) もとより、日中間は二千年に及ぶ長い交流の歴史があるわけでございます。そしてまた、いわゆる日中国交回復が成ってからもことしで二十五年を迎えるわけでございます。その間には両国の関係にもいろいろな起伏があったと思います。  そういった中で、率直に申し上げまして、昨年はいろいろな問題が浮上してまいりまして、日中の関係を進める立場にある者は両国ともいろいろ腐心せざるを得ない、そういった局面が少なくなかったわけでございます。しかし、その基礎にあるものは、やはり両国の関係は友好裏に推移させなくちゃいけないという共通の認識があったと思いますが、昨年のいろいろな難しい局面を乗り越えてきた。  それを踏まえまして、今回の私の訪中に際しましては、両国とも友好関係を一層増進していこうという認識、またその意欲が一層深まってきた、高まってきた、こういうふうに考えておりまして、それを踏まえて、先ほどおっしゃいました両国間の首脳レベルの交流についての大枠の合意も成り、また米国も含めた三国間の協調も進めていこうといった認識の一致を見たところでございます。
  54. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 三国は今後三十年はお互いに戦争しないというところまで踏み込んでいただくと最もありがたいと思いますが、将来の問題としてお願いしておきます。  問題の中東・北アフリカでありますけれども、これは世界でも最も平和関係を深めていくことの困難な地帯だと。特にイスラエルの背後には、先ほど高野委員がおっしゃったように、アメリカがいるし、アラブ関係に対してはヨーロッパが控えておって、この間もフランスのシラク大統領が中東を歩いて、悪く言えば物議を醸すようなこともあったわけであります。現地の民族、国同士の平和と並んで、そういう意味での応援する側の先進国間の協調といいますか平和関係といいますか、こういうことについては比較的手あかのついていない日本役割というのは大きなものがあると思うんですが、これについていかがですか。
  55. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御指摘のとおりでございまして、国際社会関係するあるいは関心を有する各国がそれぞれに中東諸国に対して働きかけていくことも大切でございますが、そういった働きかけをするに際しまして、働きかけをする国同士の間でのいろいろな協議、相談というものも重要であると思います。  そういった観点におきまして、私どもも例えばG7における会合であるとか、あるいはそのほか日本と欧米諸国とのそれぞれバイラテラルの協議の場などもございますが、そういった際にもぜひ中東和平の問題を議題に上げまして、これまでも話をしてきたところでございます。また、今回の東エルサレム住宅建設の問題が提起されました後には、国連安保理の場においてもいろいろな議論がございました。現在、私どもも非常任理事国としての役割を果たしておりますので、その場におきましてもいろいろ関係各国と協議をしたところでございます。  そういった協議の場におきまして意見が一致することが、基本的な認識は一致するわけでございますけれども、それを具体的にどういう行動によって進めていくかという点につきましては必ずしも一致しないことがございます。ニュアンスの違うこともございますけれども、極力そういったすり合わせをしながら対応してまいりたいと思います。
  56. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 日本が特にそういうことに注意をして、経済的に支援する側も仲よくするということを特段に努力していただくとありがたいと思います。  特に、中東地域というのは武器のマーケットとして非常に需要の豊かなところらしくて、武器を生産する国にとってもマーケット争奪の対象になる可能性が非常にあるということもあります。どうしても空論に近く聞こえるかもしれませんけれども、国家間、民族間のフリクションを解決する手段としては武力を使わない、あるいは暴力を使わない、こういう一つの約束事といいますか、それがきちっとできるかできないかということは今申しました先進国側の.態度を整える上においても、もちろん現地の民族、国家間の支援につきましても現在の状態から一段抜けた段階に到達する基本的な条件だと思うんですが、こういうことについてお考えはいかがですか。
  57. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもも確かに国際間の武器の移動につきましても極力抑制していくということは大切であると考えております。しかし、一方におきまして、世界全体として見ますと大きな軍縮の流れがあるわけでございます。しかし、そのことは、短期的にはそれぞれのこれまで武器の生産あるいは輸出をしていた国、あるいはその国の中におけるそういったことに携わっております部門、あるいは産業と言ってもよろしゅうございましょうか、そういったところのいろいろな短期的な利害からいたしまして武器を輸出しようといったインセンティブが働きがちだという面もあります。  そういったところをどういうふうにとらえ、どういうふうに調整していくか、難しいところでございますが、我が国としましては、冒頭に申しましたように、極力そういったものを抑制していくべきだという立場から、例えば通常兵器の武器輸出についての登録制度というようなことを我が国が提唱いたしまして実現したということがございます。現在はそういったものをさらにより詳細にしたものにできないかというような努力もしているところでございますが、今後ともいろいろな工夫をしながら、我が国としての努力もしてまいりたいと思います。
  58. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 そういう意味におきましても、日本は今日の世界でもほかの先進国が担い得ない平和的役割を担い得る条件を持っておると思いますので、特段の御努力をお願いしたいと思います。  これは近い将来の可能性として考えてほしいという注文でありますけれども、例えば日本の場合には、日中米の本当の平和関係が確立されるという前提下でありますけれども、日本、中国、韓国、北朝鮮が今日のEUのような、ああいう幾つかの国家が運命共同体とは言えないまでもそれに近い関係を結ぶ方向に前進するということは一つの歴史的なプロジェクトではないかと思いますが、そういう問題は中東・北アフリカにとっては夢のような話かもしれません。しかし、人類の歴史、地球上の動きは明らかに一国単位のナショナリズムの段階を超えて、そういう国境を接近している国同士が国境をだんだん低くし薄くする一つの平和的なまとまり、固まりをつくる方向に歴史は動いておるんだが、中東・北アフリカの国々を率いる指導者たちはこういう問題についてぜひ前向きの姿勢で検討してもらいたいというようなことを言っていただくと大変私などはありがたいんですが、どういうふうにお考えでしょうか。
  59. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 言うまでもなく世界はどんどん狭くなっております。とりわけ経済の面では、グローバリゼーションの進展の中で世界全体でもいわゆる垣根、国境というものはどんどん低くなっていく。そういった中で、またEUを初めとして地域的な統合の動きもあちらこちらで見られるわけでございます。そういった動きは経済面だけにとどまりませんで、政治面にも大きな影響を現に及ぼしていると私は認識しております。確かに、現在の世界は政治面では基本的に国民国家というものを中心にして形成されておりますけれども、その国民国家というもののありようというものもやはり経済を初めとしてあらゆる面で相互の依存関係が進んでいるという状況の中で、ある程度方向づけといいましょうか、制約をされているんだと思います。  したがいまして、すぐれて政治的な面におきましても、相互の依存関係認識して、相互の協調を大切にしながらやっていかなくては国の存立も安全保障も経済的な発展も期待し得ないということは各国の指導者が基本的には認識しておるし、これからいよいよその点を強く認識して対処していかなくちゃいけない、こういう時代に入っている。このことは今御指摘中東地域においても例外ではないと考えます。基本的にはその地域の国々の指導者がそういった認識をどうお持ちになりどう生かしていかれるかでございますけれども、私ども日本としてもその地域の国々に働きかけてまいります場合には、そういったことも踏まえて対応したいと存じます。
  60. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 二つの傾向が時のたつにつれ、あるいは文明の前進につれてどちらにウエートがかかっていくかということは各国の指導者は身にしみて感ずるだろうと思いますので、その間、適切なリーダーシップをお持ちいただくようにお願いします。  それから、これからの経済援助についての一つの大きな問題はやはり交通輸送関係です。小さい国がたくさんある地域でありますし、国家間を結びつける鉄道とか高速自動車道路あるいは情報関係とか、こういうようなことが前進するにつけても、今、大臣との間でお話し合いした傾向が前進するのではないかと思います。  資金を融資する場合にどういうことにこの資金を活用してもらいたい、こういうウエートの置き方とか順序とかということは貸す側は余り注文をつけないものでしょうか。借りる側の主体性において貸していくということでしょうか。
  61. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 基本的には、それぞれの国が自分たちでどういうふうな国づくりを考え、そのために日本を含む国際社会からどういう協力を求めるかをお考えになる、こういうことだと思います。しかしながら、やはり協力をする側からもいろいろ客観的に見て、立場から見て、その国づくりを進める上でどういう手法が重要であるか、またいろいろ努力をしていく中でどの分野に日本あるいは先進国からの協力を充当していくことが最も有効であるかということについては助言もできますし、してよろしいんだと、こう思っております。  最近では、我が国経済協力の進め方につきましても、そういった意味ではいろいろ変化があると思います。かつては要請主義要請主義ということを非常に強く申した時代があったと思います。現在でもその基本は同じかもしれませんけれども、むしろ単に要請を待つというのではなくて、積極的に日本立場からもいろいろ援助受け入れ国の国づくり方向を考え、そして適切な協力をしていこうという流れがだんだん強まってきていると思います。  例えば、技術協力の分野でも、そういったいろいろな経済運営のあり方であるとか国づくりの方策についての方針なりプランの作成について協力していくというようなものも最近ふえておりまして、またそういった技術面での協力成果を踏まえて資金面での協力を行っていくというケースがだんだんふえてきているところでございます。今後一層そういうケースがふえてこようかと存じます。
  62. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 急にはいかぬでしょうけれども、いずれこれらの地域も国民経済は高度成長の道を歩む可能性が多いわけでしょうから、特に日本の経験は、向こうの実情については向こうの方がわかるでしょうけれども、やはり客観的に我々の経験したところは非常に向こうさんの有益な教訓になり得るんじゃないかと思います。  この一月、中国に参りまして農業関係の方と若干話しましたときも、農業について非常に熱心に努力しておられますけれども、高度成長下における農政のあり方については我々はしたたか失敗して非常な教訓を体験したわけです。だから、そういう角度から見ましても、日本の経験は今の中国に非常な役に立つ経験を、他山の石を我々は持っているわけで、そういう意味では中東・北アフリカに対してもいろいろ向こうさんが感謝するだろう提言をなし得るんじゃないかと思うんです。  もう時間がありませんけれども、例えば私などは農業関係者であの地域状況を、行ったことありませんけれどもいろいろ情報で聞くにつけても、水さえあれば農業なり林業なりが飛躍的に伸びる可能性があると思いますね。だから、イスラエルなどは、ごく一部はやっているそうでありますけれども、海水を淡水化して、これを今は規模が小さいから施設園芸的なことに使っているそうでありますけれども、これがもし太陽エネルギーが非常にコストダウンして活用できるというようなことができますと、いずれこれらの国々も経済成長につれて食糧は不足をする。それから、地域を見てもわかるように森林関係の資源が非常に乏しい国でありますので、そういうことについては我々が持っている農業、林業についての着想なり幾らか蓄積した技術なりは相当役に立つのではないかという気がいたします。  人類的な技術でいえば、ルーサー・バーバンクの開発したとげのないサボテンは砂漠地帯で幾らでもできる植物でありますけれども、とげがなくて味がよくて栄養価値が高いというものを目指して大変な品種改良をやった実績があるわけです。私もバーバンクの研究所を訪れたことがありますが、バーバンクの死後は、その技術は必ずしも健康に前進していないようでありますけれども、国際的な農業技術あるいは品種改良の角度から努力することはこれらの国々にとっては特に有益なプラスになる、贈り物になるんではないかというふうに思いますので、例によって、重要な会議のあるときには大臣から、そういう農業、林業についての飛躍的発展が、日本自身にとってもですけれども、これらの国々にとってはもう大変な前進要因をプレゼントすることになるだろうということをお話しいただけるとありがたいと思います。  終わります。
  63. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 私からは、協定問題を離れて、一般の問題について質疑をさせていただきたいと思います。  私が取り上げるのは海外在留邦人に対する選挙権付与の問題でありまして、私が取り上げるのはこれが三回目であります。昨年の二月と十二月に取り上げておりますが、これからもこれが実現するまでは粘り強く取り上げていきたいと考えております。  昨年十二月には、池田外務大臣でありまして、大変積極的な前向きな意欲的な発言を承っております。もう技術的に細かいことをあれこれ、難しいことは万事承知の上なので、そういうことを言ってみても始まらぬ、もはやそういう時期ではない、政治が決断する時期であると、こういう御発言でございました。  念のため、ここに議事録があるのでちょっと大事なことだけ読み上げてみます。難しい難しいと言われているけれどもそんなに難しいことではないのではないか、それは理解できると。郵便投票あるいは在外公館での投票という問題の持つ難しさなり問題点というのは何も日本に限ったことではない、諸外国でも同じであると。それを乗り越えて実施している国がある、政治的に決断すればやれないことはないと。政治の世界における決断、ある程度もう割り切ってしまうということも大事なのではないかと。政治の世界全体としての決断をすれば、あとの細部については行政の世界で対応すべきことであると。私も全く同感でございます。  そこで、これは昨年の十二月十二日の御発言でございますけれども、その後この問題はいかに相なっておるのか、決断がもう既になされておるのかどうかちょっと承りたいと思います。
  64. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、私は基本的には委員が今読み上げられました、昨年御答弁申し上げましたのと同じ考えに立っております。  その後も、ことしになってももう一度御質疑をちょうだいしたんじゃなかったかと思いますけれども、あるいは他の委員であったのかもしれません。その節に申し上げたのは、行政府における検討もさることながら、政治の世界においてやはりこういう問題についての検討を進めるべきではないだろうか。各党におきましてもいろいろな検討がこれまでも行われており、また今政権を担っておりますいわゆる与党三党と言われる中でも何度かこの問題について話し合われたことがあると承知しております。そういった動きも加速化していくことによりましてこの問題を早く解決しなくてはいけないことは、大勢の国民の政治への参加の権利に関するものでございますから、そういうふうに考えております。  そういった面におきまして、私も政治家の一員としてそちらの動きにも努めてまいりたいと存じますし、今行政府の一員という立場では、外務省といたしましては今後も自治省ともよく連絡をとりながら、この早期実現を図る方向努力してまいりたい、こう考える次第でございます。
  65. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 この問題については与党三党の合意ができておるということであります。  その後の与党の作業状況なんですけれども、政党のことを政府にお伺いするのもいかがかという気もいたしますけれども、大臣も与党の一員でありますので、わかっている限りで結構でございますから、現在与党の作業状況がどうなっておるのか、それをちょっと説明していただければと思います。
  66. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 実は与党に選挙制度に関するプロジェクトチームというのがございますが、ここでいろいろな問題を進めておられまして、次回も、三日といいますから明後日でございますか、開催されることになっているようでございます。もとより、ここでは、現行の衆議院あるいは参議院の選挙制度のあり方をどうするかというような問題もございますから、在外邦人の選挙権問題に集中しているわけではございませんけれども、今数項目が挙がっております検討項目の中にはきちんとこの問題も入っておりますので、また私といたしましてもその様子を、この与党での作業のぐあいもよく見ながら、それが進展するように私なりに働きかけてみたいと存じます。
  67. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 野党である新進党もこの問題と取り組んでおって、今国会への提出を目指して頑張っておるということを大分前に新聞記事で私は見た記憶がございます。野党のことをまた政府にお伺いするのはまことにもっていかがかという気もいたしますけれども、情報程度で結構でございますから、野党の新進党がどれくらい頑張っているのかちょっと御説明願えればと。わからなければわからないで結構であります。
  68. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 新進党さんあるいはそれ以外の党におきましてもこの問題を重要な課題として考えておられるということは承知しておりますが、現時点における各党の作業の進捗ぐあいにつきましてはつまびらかにしていないところでございます。
  69. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 実は、この問題について国会の中でかなり消極的な、抵抗があるということを聞いたことがございます。その理由といたしますると、こういうことらしいんです。自分たちは国会議員になるために本当に血みどろの選挙戦を戦ってきた。それに突然何十万票という新しい票がどこからか降ってきたら、これはとてもかなわぬ。一体どうやって選挙運動をすればいいのか、それもよくわからないし、結局のところ金のある者、名前の売れている者が有利になると。そういう自分たちに不利益になるような選挙の改正についてだれが積極的になれるのかと。こういう消極ムードがあって、行政もそれに押し切られて今日までずるずると来てしまったんだと言われておるんですけれども、これはちょっとおかしいわけであります。  金のある者、名前の売れている者が有利だというのは国内の選挙でも全く同じことなんです。それを乗り越えてみんな頑張ってきたわけであります。それを徹底していけば、じゃ金のある者、名前の売れている者の立候補を禁止するのか、こういうことにもなりかねないわけであります。そういう障害を乗り越えて栄冠を獲得する、その喜びもまた一段とあるんじゃないかという気もいたします。  いずれにしろ、この海外在留日本人に対して選挙権を与えない理由には全くならないわけですから、そういうつまらないことを言うのはもうやめていただきまして、各党挙げてこの問題については一致しているわけですから、今国会に当然提出されるのかと私は思っておりましたら、ただいまの大臣説明でも、どうも今国会に提出というところははっきりおっしゃっておられない。これは一体どういうことなのか。いろいろ技術的に難しい問題があるのか、依然としてそれを割り切れていないのか。今国会の提出を目指して頑張るということはこの場で表明をしていただけないのかどうなのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  70. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 現在の選挙制度の中にない、かなり大きな要素を入れることになれば、そのことは個別具体的な選挙に一体どういうふうに影響を及ぼすか、そこのところは当然選挙を受ける立場の人間として考えるということはあって不思議はないんだと思います。しかしながら、委員指摘のとおり、そういった問題は現在の選挙制度の中でもあるんだということでございますから一それはそうだと思います。しかし、それでもやはり新しい要素を、かなり大きな要素を入れるとするならば、その中で極力公正な選挙が担保されるような工夫をどうするかとか、そういうことはいろいろしなくちゃいけない。そういった観点からの議論の詰めというものはまだこれから若干時間がかかろうかと思います。  それからまた、今国会どうかということになりますと、これは国会全体のパースペクティブの中で、政府としては現にお願いしております諸案件をどういうふうに御審議をちょうだいするかということもいろいろ考えなくちゃいかぬと思いますし、また先ほど言いました各党各派の動きというものもどういうことかを見なくちゃいけないと思います。したがいまして、この会期かどうかということは別にいたしまして、私といたしましては極力早期の実現を図ってまいりたい、そのために努力をしたい、こう思います。
  71. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 二、三カ月前に待ちくたびれた海外在住の日本人たちが裁判を起こしたということが出ておりました。そういう気持ちでまじめに考える人はもう考えているんだろう、こういう気がいたします。  しかし、確かに技術的に難しい問題がないとは言えません。例えば選挙人名簿をどうやって確定するのか。これ一つ取り上げてみましてもいろんな考え方があって、もし名簿の登載に漏れたら一体どういうことになるんだとか、いろんな議論があろうかと思いますが、この問題に関する限り、私は海外在住者の全面的な協力を前提にして対応を考えていけばよろしいんだろうと思います。権利ですから、権利の行使には責任もあるわけで、自分から在外公館に出向いて選挙人名簿に登載するとか、それぐらいの協力は当然海外にいる日本人たちもすべきであろうと思います。一人でも漏れたら大変なことになる、日本の役人というのは非常にまじめですからすぐそういう発想にとらわれて、一人も漏らさず名簿に登載する方法はないか、こういうことを言い出したらこの問題はいつまでたっても実現しないわけであります。  それから、選挙運動は一体どこまで認めたらいいんだと。これも割り切り方でして、そんなものは全面禁止してしまえ、こう言ってもいいわけですし、あるいは無料のはがきを何百枚か何千枚か与えてその範囲でやってもらうとか、いろんな考え方があるわけです。選挙違反にしましても、選挙違反をどうやって取り締まるんだ、こういう話にすぐいくわけですけれども、そんなものは放置しておいて構わない。だれが金をかけて海外まで行ってやるやつがいるか、こう割り切ってしまってもいいです。いずれにしろ、金を使ってあるいは違反文書を大量にばらまいて海外で選挙運動をしたりすれば、それは必ずうわさとなって内地に返ってくるわけですし、国内の場合も同じことなんです。毎回の選挙ごとにそういう大々的な違反をした者が大体町のうわさ、地域のうわさになって警察に御用となる、こういうわけですから、余り神経質に考えることもないんだろうと私は思っております。  日本の役人というのは大変優秀で頭がいいものですから、問題を与えると百点満点の答案を書かねばならない、こう思って日夜呻吟して結局答案が書けずして宵を越す、また来年、こういうことになって十年、二十年とこの問題が持ち越されてきているわけです。そんな百点満点の答案などはだれも期待しておりません。五十点でも七十点でも立派なものだろうと思います。  とりあえず、これは大臣もおっしゃっているとおり、政治の決断としてまずやってみようと。そのためにはもう最小限度ぎりぎりの範囲でもいいんじゃないか。選挙の範囲にいたしましても、国の選挙と地方の選挙までとなるとまた難しいんですけれども、地方の選挙などは地域住民に任せておいて、海外に在住する日本人は日本国の進路ということについて、国の選挙について一票を投ずる、こういうふうな割り切り方でもいいんだろうと思います。  そういうふうに細かい点ほどんどん割愛していけばあっという間に法案がまとまらないわけでもないと思いますので、どうかひとつ、まだ今国会は延長の可能性もないわけじゃないものですから大いに頑張っていただいて、できたら今までの宿題の解決という意味で政府提案でこの問題を解決していただくということを真剣に考えていただきたい。所管は、これは共管になるのかどうかわかりませんけれども、自治大臣と十分協議の上、前向きの方向で短期間に、今国会中に解決するというぐらいの気持ちで頑張っていただきたいと思います。どうぞ最後にお願いいたします。
  72. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 国民の大切な権利を保障する、また法律の厳正な運用を大切にされるお立場委員から、さはさりながら、法のもとに流れる精神と申しましょうか、あるいはコモンセンスと言ってもいいのでございましょうか、そういった観点から大局的に政治的に判断しろ、そして早期にこの大切な政治に参加する権利を在留邦人にも認めよという御主張は十分理解できるところでございまして、今後とも私なりに努力してまいりたいと存じます。
  73. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 これで三回目だと思いますが、本当は四回だったでしょうか。しかし、飽きもせずに五回、六回とまた取り上げさせていただきますので、御了解ください。以上です。
  74. 立木洋

    ○立木洋君 中東・北アフリカ経済協力開銀の設立の問題について検討する場合、中東情勢がどういう経緯を経てきているのか、それが今の段階になって中東情勢というのはどうなっているのか、これを正確にしかも確実に把握することと私は無関係ではないというふうに思うんです。同僚議員もその点について質問なさいましたが、私もまず最初に中東情勢の問題に関連して若干のお尋ねをしていきたいと思うんです。  御承知のように、中東和平の問題というのはイスラエルパレスチナ問題の解決なくしては解決があり得ないということが長期にわたって言われました。そして、御承知のように、結局侵略者であるイラクがパレスチナ問題を口実にしてクウェートに侵略するというふうな形で湾岸戦争が起こった。こういう経過の中で、イスラエルパレスチナ問題を解決するということが非常に重要だということの国際的な世論が一層高まってきたと思うんです。  アメリカもこの問題についてイニシアチブを発揮する努力をするという方向が生まれましたし、御承知のように、一九九一年の十月には中東和平会議が開かれ、その後、九三年の九月にはワシントンでイスラエルとPLO双方の首脳が暫定自治取り決めについての原則的な宣言というのが調印されました。その前後の経過の中で比較的肯定的な歩みがあったと思うんです。この歩みをどういうふうにごらんになっているのかということが一つです。  それからもう一つは、そういう肯定的な歩みがありながら、現在の段階になって、新しくイスラエルで生まれた政権のもとで東エルサレムのいわゆる入植地への住宅建設ということが強行される。そして一これから双方の対立が極めて激しくなる。そして、御承知のように、先ほどお話がありましたように、アラブ連盟外相会議ではアラブ・ボイコットの復活あるいは関係凍結、さらには中東やアジアなどのイスラム教国でつくっているイスラム諸国会議機構でも同様の関係凍結等々の問題が出てきて、非常に厳しい状況になってきていると思うんです。そこまである程度肯定的に見られる動きがありながら、なぜ現在そういう状況になったのかという問題もあるだろうと思うんです。  だから、今までの湾岸戦争後の一定の肯定的な動きをどう評価するのか。同時に、そういう動きがありながら、今そういう危機的な事態に直面したのは、なぜそうなったのかという問題について日本政府はどのように評価されているのか。その経過と現時点での評価についてお尋ねしたいと思うんです。
  75. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員指摘のとおり、九一年のマドリード会議に始まりまして、九三年のパレスチナトラックについての原則宣言、それから九六年でございましたか、暫定自治政府が成立いたしました。そういうふうにずっとパレスチナトラックは進んできたわけでございます。またジョルダントラックにおいても和平条約の締結ということもあったわけでございます。  委員は肯定的な動きとおっしゃいましたけれども、そういった流れの底にありますものは、中東は何次にもわたって中東戦争というのがございましたし紛争の絶えないところでございましたが、そういった苦しい日々、また苦い経験を踏まえて、やはりどうしてもお互いこの地域和平を実現しなくてはいけないんだ、そういう認識が共通なものとして生まれた、これがあるんだと思います。そういった中からいわゆる領土と平和との交換という大きな原則が生まれてきて、そしてこれまで進んできたんだと思います。それはそれなりの成果を生んできたと思います。  ただ、それを具体的にいよいよ実行するという段階になりますと、言葉の上での平和と領土との交換というのは、それぞれアラブ側あるいはイスラエルの人間の住んでいる、住まっている土地を現実にこれまで敵対していたあるいは対峙していた側に渡して他へ移るという具体的な作業が出てまいりますので、そういったところで、各国政府立場あるいは考えもさることながら、そのもとにある国民一人一人の利害なり気持ちというものが政治過程にも大きな影響を及ぼしてきた。その一つが昨年のイスラエルの総選挙におけるあのような結果でもあり、そしてその後のいろんな動きでもあるんじゃないかと私は思います。  しかしながら、今でもイスラエル政府基本的に領土と平和との交換という原則以外に和平を進める道はないんだと、このことはよく認識しているはずでございますので、そこのところを大切にしながら国際社会としても粘り強く働きかけてまいらなくちゃいけない、こう思っております。
  76. 立木洋

    ○立木洋君 私が先ほど肯定的な前進といいますか、そういうふうに評価したのは、例えば一九九三年にイスラエルの国会において、御承知のように、テロ防止法が廃止されました。つまり、パレスチナとの接触を禁止した法案が廃止されたわけです。さらには、今お話がございましたように、パレスチナの自治政府が選出されて、PLOが勝利して、限定的ではあっても一定の自治的な政府が進行するという状況もありました。  さらにまた、パレスチナ民族憲章の中では長年問題になってきたイスラエル抹殺論をなくして新しい憲章をつくろうということも確認されましたし、あるいはイスラエルの労働党がそれまで選挙で持っていたパレスチナ独立国家樹立反対の規定を削除しました。そして、イスラエルパレスチナ人民を支配しないという新しい文書の採択をした。  こう見できますと、今おっしゃったように、和平と領土の交換といいますか、これは私は原則的宣言の中ではその規定は明確になっていないと思うんです。つまり、こういう状態が進んでいっても、これまで国連でも再々議論になりましたし、いろいろ問題になったけれども、一定の占領地からの限定的な、制限的な撤退はありました。しかし、全占領地からの撤退ということが問題になっていた。  それからもう一つは、パレスチナ人の民族自決権の承認という問題については確認されていないんですね。それから、抹殺論というのは問題なくなりましたけれども、テロそのものがなくなるかどうかという問題については、依然としてアラファトは裏切ったんではないかというような声がPLOの組織の一部の中で残っているというふうな問題等々が双方で絡み合っている。  だから、本当の問題は全占領地からの撤退、そしてパレスチナ人の民族自決権の承認と完全なテロの一掃、こういう方向により一歩努力することが私は重要じゃないかというふうに思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。それがやっぱり最大の障害になっているんじゃないかと思うんですが、そこまで行っていない。
  77. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 理想を言えば委員おっしゃるとおりかもしれません。しかし、中東和平というのは現実にどう対処していくかという大変難しい課題でございますので、一歩一歩着実に進めていかなくちゃいけない。そういう難しいプロセスの中で、現実的対応と同時に目標といいましょうか、あるいは理想と言ってもいいかもしれませんが、そういうものをつくらなくちゃいけない。しかし、その目標というのは余り遠い目標であってはいけない。大変難しいけれども、真剣に取り組むならば実現できると見られるような目標でなくちゃいけない。そういったところで出てきたのが平和と領土の交換という考え方だと思うのでございます。  それをさらに具体化していく場合に、平和と領土の交換の原則の意味するものは何かというときに、委員がおっしゃったような全面的な撤退であるとか民族自決権の真っ正面からの承認、そうしてそれを高く掲げるといったことが今和平プロセス進展させる上においてプラスなのかどうなのかという考慮もいろいろ働いているんではないのかなと、こんな気がいたします。
  78. 立木洋

    ○立木洋君 私よく見てきたんですけれども、湾岸戦争の後、国際的な世論が高まって、イスラエルパレスチナ問題に対して和平的な促進を進めようとする考え方からアメリカも関与の戦略として動きました。しかし、湾岸戦争の後、中東における米軍の軍事的なプレゼンスというのは相当強まっておるというのが一方でありました。そして、パレスチナの民族自決権の承認独立国家を認めるということについてはアメリカは明言していないんです。  それで、先ほど来問題になりました今度の御承知のあの入植地に対する住宅建設、これについても国際的な厳しい批判がありますけれども、アメリカは二回にわたって安保理で拒否権の発動を行ったというふうな事態もあった。だから、私はこの問題でもやはり限界を感じるという点の一つがそこにあるんではないかという気がするんです。  それで、話を先に進めさせていただきますと、こういう動きの中で、御承知のように、一九九四年、九五年、九六年、三回にわたって中東・北アフリカ経済サミット最後はサミットというのではなくなって会議になりました。新しいネタニヤフ政権が生まれてから会議という形になりましたけれども、最後のカイロでの会議をどのように評価されているのか。  つまり、最初の会議から中東北アフリカ経済協力開発銀行の設立問題が勧告され、それが実際に促進されるという形で先ほど申し上げたような事態の進行の中でそういう問題が出されてきましたけれども、三回目の会議というのは私は非常に変わった形をとったというふうに感じているんです。一九九六年十一月に開催された第三回会議で変わった形をとっているというふうに思うんですが、このカイロでの会議をどのように評価されているんでしょうか。
  79. 登誠一郎

    政府委員登誠一郎君) 昨年十一月のカイロで開かれました会議は、まさに先生御指摘のとおり、サミットという名前はつけずに中東・北アフリカ経済会議ということで、地道な地域経済開発に諸外国の政府及び民間がいかに貢献できるかということを中心の議題として行われたわけでございます。  その直前にヘブロン問題でなかなか物事が大いに動かないということもございまして、主催国エジプトのムバラク大統領も大変な焦燥感を持っていたことは事実でございます。一時はこの会議の開催延期というような話も出たわけでございますけれども、最終的にはムバラク大統領も決断いたしまして会議を開きました。その結果、参加者は前回よりもさらに上回って四千人という多数の人数が参加いたしました。アメリカのクリストファー長官を初め、各国から要人も参加いたしております。日本からも外務審議官を団長にする代表団が参加いたしまして、日本の民間の方々も含めて五十名の代表が参加しまして、こういう会議を通じて地域における合弁事業の一層の活性化を初めとする幾つかの地域的なプロジェクトについて大変有益な意見交換が行われたというふうに私どもは理解しております。
  80. 立木洋

    ○立木洋君 ちょっと私の認識は違うんです。イスラエルネタニヤフ政権が昨年の五月に誕生して、それから進められた状況をつぶさに見てみますと、パレスチナ自治政府に対する経済的な封鎖というのが徐々に進行しました。登局長さんも全く知らないわけではないだろうと私は思うんですが、この経済封鎖によってガザ地区というのは六〇%の失業者が出たんです、失業率六〇%。大変なことになりました。  ですから、昨年十一月、カイロで開かれた中東・北アフリカ経済会議でもイスラエルの態度に対する強い批判が出たんですね。そして、エジプトのムバラク大統領でさえもこのようなイスラエル政府行動について、それは新しい種類のアパルトヘイトを押しつけるものじゃないかという批判さえ出てきた。こういうことが暴力的な衝突まで引き起こすというふうな事態になったということで、この問題、そういう新しい政権が出てからの第三回会議の変化に非常に私は注目したんです。  そこで、お尋ねしたいんですけれども、一九九三年に原則宣言が調印されたときに、御承知のように、イスラエルとヨルダンが将来を目途とした共通課題を調印しました。そのときにアメリカがそれに加わって、イスラエル、ヨルダン、アメリカ三カ国経済委員会というのが設立されました。この目的は一体何だったんでしょうか。経済協力を進めようとするときにこの三カ国だけが経済委員会を設立したというのは、どういう意味でこういう三カ国の経済委員会を設立したんでしょうか。
  81. 登誠一郎

    政府委員登誠一郎君) パレスチナ問題の解決に当たりましては、一番中心はもちろんパレスチナ人でございますけれども、やっぱり当事国はイスラエル、それからヨルダンでございます。したがいまして、このヨルダンの立場というのは中東和平を今後進めていく上で大変重要であると。  つまり、今問題になっておりますヨルダン川の西側、西岸地域というのはもともとヨルダン領であったわけでございます。それを一九六七年の戦争でイスラエルが占領して今日に至っているわけでございますけれども、将来この地にパレスチナ人の民族自決を表現するような何らかの形の自治体ができるということを関係者が想定しているわけでございます。  したがいまして、このヨルダン川の西岸地域発展につきましてはイスラエルとヨルダンがやはり協力しなくては、将来どういう形になるにしましても、安定した経済開発は進まないというのがアメリカを中心とした関係国認識でございまして、そういう観点から先生今御指摘のような委員会が設立されたんだというふうに認識しております。
  82. 立木洋

    ○立木洋君 これはアメリカが相当なイニシアチブをとっているんです。  域内加盟者というのがここにあります。域内加盟者の中に湾岸国というのは一つも入っていないんです。何で湾岸諸国は入らないのか。それから、ECの中でもイギリスだとかドイツなんかは入っていないんですね。何で入らないのか。
  83. 畠中篤

    政府委員畠中篤君) サウジアラビア等の湾岸国は、本銀行の設立交渉におきまして、中東・北アフリカ地域に対する何らかの資金メカニズムの必要性については理解を示しておりましたものの、こういった国は既に独自の支援手段を有しておりますこと等の理由から、この新たな地域開発銀行の設立には慎重な態度をとって現在のところ加盟予定者に含まれておりません。しかしながら、出資シェアの二四・五%分は未配分と今されておりまして、湾岸諸国が将来参加を希望した場合には対応できる余地を残しているのが現在の状況でございます。
  84. 立木洋

    ○立木洋君 先ほども申し上げたイスラエル東エルサレム入植地に住宅を建設するという動きが出てきたときに、先ほど申し上げたような国際会議が開かれてイスラエルの態度に対する批判がなされた。そして、関係凍結あるいはボイコットを行うというふうな状況を復活させるということになったときに、既に域内加盟国であるモロッコだとかチュニジア等に影響を与えるんじゃないかという報道さえ出されております。  そうすると、この問題は、ただ単に加盟しないで、いわゆる地域的な、限定された地域での開発が重視されたから三つの国の委員会が発足したんだなんと言われますけれども、中東・北アフリカ経済会議中東地域の改造計画のあり方と結びついているわけです。  特に、域外のアメリカ政府はこの地域アメリカ企業の一大市場にするということを明確に目指していたんです。これはもう既にアメリカの商務省が発表している文書の中でも、ブラウン長官は、標的とする地域にビジネスや経済開発を引き込んで、アメリカ企業にとっての機会を創出するために民間企業や外国政府協力するんだと言って、一九九五年十月、アンマンで第二回中東・北アフリカ経済サミットが開かれる直前の九月に、中東六カ国駐在のアメリカ大使アメリカ企業中東への投資を促進するために全米各地を回ったんですね。その際に開かれたセミナーのテーマでは防衛産業、軍事販売とその相殺という問題まで含まれているという内容のものなんです。実態はアメリカ企業がしゃにむに利益を追求するということがこの商務省の文書の中でもはっきりされている。  そういうことに基づいて東地中海諸国の大規模インフラ事業がこの改造計画で検討されて、イスラエルのインフラストラクチャーの整備及びイスラエルやヨルダンへの五本の高速道路の建設、それからハイファー港やアシュケロン港、アシュドッド港の処理能力を拡大すると。こうして東地中海の湾岸に欧州の物資を陸揚げして、東西横断の高速道を使って陸送が容易になっている。中東と域外との人と金と物の流れが根本的に変わる可能性がある。  これは、アメリカが中心になった形でイスラエルやヨルダンと協力して、そういう形で進めようとする。そういう改造計画なるものが進められてきた。だから、湾岸諸国あるいはまたECの一部の国々の中ではイスラエル中東地域の経済支配をやるんではないか、これはアメリカが強力にバックアップしてアメリカ中東支配を進めるものではないかという危惧の念と懸念が生じたから域内の加盟国も参加しないし、HCも慎重な態度をとるというふうな事態があったんじゃないですか。  こういう改造計画とのかかわりで見るならば、そういうふうな指摘も納得できるんではないかと思いますけれども、大臣、あるいは局長でも結構ですが、もし御感想があれば述べていただきたいと思います。
  85. 登誠一郎

    政府委員登誠一郎君) 中東地域開発のためには民間企業の果たす役割というのは大変重大だということは先ほど大臣からも政府委員からも御答弁させていただいたとおりでございます。今回のカイロの経済会議におきましても、そういう観点から関係国は積極的に参加いたしたわけでございます。  その中で、アメリカの戦略がどうであるかということは、私ども普段勉強はいたしておりますけれども、今回の中東開発銀行を設立することがアメリカの戦略ということではなくて、やはりアメリカも持てる民間の力を活用して中東開発協力しようと七先ほどの中東経済開発協力しようということであろうと思いますし、私ども日本政府といたしましてもかねてから中東和平関係国からの要請を受けておりまして、日本の民間企業からの投資の増大というのが中東開発の最も重要なかぎであるというような要請も受けております。  そういう観点から日本も積極的に参加しているわけでございまして、アメリカの戦略云々ということとはちょっと話が違うんではないかというふうに考えております。
  86. 立木洋

    ○立木洋君 私は憶測だとか推定で物を申しているんじゃないんですよ。事実的に、入植地住宅建設するということが原則宣言に反するわけですから、そうしたら二回にわたって安保理で拒否権を発動するなんということはしないで、そういうことはやめなさい、そしてもっと平和的に進める方向に行くべきではないか、経済封鎖的な措置をとってガザ地区に六〇%も失業率が出るような状態はやめなさいと。エジプトの大統領でさえこれは第二のアパルトヘイトじゃないかなんと言われるような、非難を受けるようなことをやっぱりアメリカ自身もよく考えて、そういうふうなことをやったら本当の和平が進まぬじゃないか、よく考えるべきではないかというふうな指摘があっても私はしかるべきだと。  しかし、そうではなくて、御承知のように、私は今度のこの文書をいろいろ読ませていただきましたけれども、さまざまな内容があるんです。時間があれですから全部言うことはできないかもしれませんけれども、パレスチナの自治というのはイスラエルの同意を必要とする制約を持っているんです。そして、果物、野菜の輸出もイスラエルの業者を通してしか外国に輸出できないんです。それから、電気、水もイスラエルの手に握られている。これも大きな障害になっております。  特に、新しい政権ができてから、湾岸諸国もかつての戦争で経済的な不安は極めて拡大し、失業、住宅、医療などの問題というのは非常に多いんです。だから、本当に和平を求めながら、経済的にこれらの地域を全体的に引き上げていくというふうなことにならないと、やっぱり幾つかの国が懸念を持つ。今まで中東地域の不安定の要因というのは多大にあったわけですから、そうならないように、本当に公正正大に、明確な内容を持った対応ということがなければいろいろな不安が出てくるというのは明確なんですよ。ですから、アメリカ中東進国策ではないだろうかというふうな懸念を持ったりしている。  例えば、この協定の内容、第十条等に出されている金融業務の問題についても、「市場指向型経済並びに民間及び企業家の自発的活動を着実に推進すること。」は確かにそうだと思うんです。民間の場合は、この地域に経済的な基盤を持って一定の利益を上げていくということになるならば、多国籍企業がどう動くかということがやっぱり問題になる。企業家の自発的な活動を着実に推進することだということで市場指向型経済という特定の内容というものを前提にしている。  だから、こういう点で言うならば、つまり中東和平を経済的に下支えしていくという建前とは裏腹に、和平推進を口実にして外国資本に有利な経済環境の整備を強行しようとする懸念さえこれらの地域では生まれてくる。これがやっぱり湾岸諸国が域内の加盟国として参加しない大きな障害の一つになっているんじゃないか。だから、こういう民活路線というものであっても、そこの地域で公平な経済の発展のために資するような形にやっぱりやるべきではないだろうか。  それから、全部取り上げてあれすることはできませんけれども、第八条、経済協力フォーラムをつくるわけですけれども、経済協力フォーラムの一番最後のところに「銀行の他の機関に対していかなる権限も有しない。」と。権限を持たないんです、この中でつくられている経済フォーラムというのは。  さらにまた、三十一条では、各加盟国の投票権数は「当該加盟者の応募済株式数に等しいものとする。」と。ここで言っている数字を挙げてみますと、アメリカの投票権も応募株式に基づくということになるならば二二%を占めるんですね。日本が占めるのが九・五%です。だから、相当の力を持った銀行運営というのがアメリカの力で想定されていくというふうな運営の内容になっているわけです。これらの諸問題を見てみますと、この問題点は非常に大きな問題点が存在している。  ですから、先ほども申し上げましたように、この問題については十分なやっぱり精査をしないと、偏った形で、中東における今の複雑な状態を正しい方向に前進させるんではなくて、中東和平にある意味では反するようなことが起こり、あるいは経済が疲弊化している状態がますます困難な状態になっていくというふうな事態さえこういう運営の中では起こりかねない。こういう点を私は最後に指摘しておきたいと思うんですけれども、最後に大臣の御所見をちょっとお願いしておきたいと思います。
  87. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、私どもは中東和平プロセスそのものを、今非常に難しい状態でありますけれども、何とか進展させなくちゃいけない、これは当然でございます。その中にありまして、委員の御指摘の中にありましたガザ地域が、例えば西岸地域との往来が難しくなっているとか、あるいは物資の移動は非常に困難になっておって物価の騰貴をいたしているとか、そういった状況を緩和するようにイスラエルに対しても私自身働きかけてまいりました。経過的にもそういうことをやりながら、和平プロセスそのものを進めていかなくちゃなりません。  それと同時に、今回御審議をお願いしておりますようなこの地域を対象にする経済面からの多国間の協力というものもやはり大切なんだ、こう思っておるわけでございます。  そして、これは基本的には民間セクターの発展を大切にしようということでございますが、それは決して委員が疑っておられるような多国籍企業の利益を図るものであるとか米国のビジネスの戦略にのっとるものだということじゃございませんで、あくまで中東地域の国々がみずから民間部門の成長を通じて民生の安定、さらに発展を図っていこうという努力支援していこうという観点から進めているわけでございますので、どうかそこのところは御理解を賜りたいなと思います。  それからまた、これの決定がその出資に応じてという形になっているが、これは米国の支配を認めるものじゃないかというふうな御指摘もございましたけれども、御承知のとおり、ほかにも地域経済開発を図るためのいろいろな国際的な金融機関がございます、例が。そういったところでも拠出に応じた投票権というふうな仕組みをとっているところもあるわけでございまして、決してそのことがどこか一国の、大口拠出国あるいは出資国の意のままにその活動がなされるということにはつながっていないということも申し上げておきたいと思います。  いずれにいたしましても、これがすべてではなく、中東地域の安定を図っていく上でこの銀行も役割を果たしていくんだ、その一端を担っていくんだ、そういうふうに御理解賜りたいと思います。
  88. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 この銀行のお話で、これに関連して今の中東和平プロセス現状というようなことについてまず伺おうと思っておりましたが、さっきは高野委員、それから立木委員、お二人から非常に詳しく御質問があり、そしてまたそちらからも答弁がありましたので、そこらあたりはもう割愛をいたします。  非常に簡単な質問になりますが、このごろ、冷戦が終わって、政治、経済の中で経済の方がはるかにウエートがそこらじゆうでふえてきたというふうなことを言う向きもありますが、依然として政治が重要な役割を担っているという地域は、特に中東というのはそういうところだろうと思うんです。  この銀行の協定というのは昨年のことですが、流れからいえば九一年のマドリードから始まった流れの上に乗っている。前文の第二パラグラフのところでも、「和平プロセスにおいてとられる勇気ある政治的な措置が経済的及び社会的な開発の分野における断固たる行動によって支援されなければならない」と。どっちが先かといえば、英語で言えばカレジアス・ポリティカル・ステップス、こういう話になるんでしょうね。それが一つの前提で、そういう流れで進んできておるんで、そいつを経済的に助けようと。それの一つの努力としてこの銀行の設立という位置づけだろうと思うんです。  先ほどからのお話にもありましたように、ここのところへ来て足踏みというか、むしろ危なくなっている要素がある。勇気ある政治的行動というのが逆向きの勇気みたいな事態も時々出てきているというのが現状だと思うんです。そうなりますと、本当に勇気ある政治的なステップというものが大変怪しくなっているところで、この前文の第二パラグラフというのは九一年からの流れの中で結構結構と言っていたところから少し外れかけているんじゃないかという気がするんですが、いかがでしょうか。
  89. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員の御指摘のところは私もよくわかるわけでございまして、確かに民生の安定を図り一そしてその地域に住まう方々の生活を安定させ、向上させていくためには政治、経済両面での努力が必要であろうと思います。  しかし、当面、中東におきましては九一年のマドリード会議以来進んでまいりました和平プロセスをいかに進展させていくかというのが中心でございまして、それに資するものとして、あるいはそれを補完するものとして、補強するものとして経済的な努力もいろいろしていかなくちゃいけないんだ、これが基本であろうかと存じます。  そういった中で、肝心な政治面での努力が停滞あるいは後退しているんじゃないかという御指摘でございます。我々もそこのところは、とりわけここしばらくの動向というものは非常に心配しておりまして、何とか和平プロセスにきちんとまず復帰して、これを進展させていくように国際社会全体として努力をしなくちゃいけない、こう考えているわけでございます。  しかし、決して悲観もしておりません。先ほど来の御審議の中でも私も申し上げましたし、また委員の方々の中からも御指摘もございましたけれども、やはりこの地域の安定を実現するためにはもう和平プロセスを進めるしかないんだ、戦争による解決というのは何度も試みてもう絶対これはだめなんだということは両者が、あるいはすべての当事者認識していると思うのでございます。その基本認識というものを大事にしながら、和平プロセス進展に我々も力をかしてまいりたい、こう考えている次第でございます。
  90. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 そのとおりだと思うんです。ただ、ここのところは、読みかえれば、また再び前進的な方向に向かっての積極的な政治的なステップがとられるように、決して後ずさりして後ろ向きにずるずると落ちないようにするためにもこういうことをやろうというようなことに、この意義が最近になって随分変わってきているんじゃないかと私は思うんです。  そうすると、いい方向に向かっている、しかしさまざまな経済的な困難がそこらじゆうにある、だからそれを促進するためにも経済で力を入れていこう、銀行もつくろうという話とちょっと違って、正しい方向に政治が進むようなことをエンカレッジするためにも、あるいはもっと消極的に言えば後ずさりしてずるずると後ろ向きに落っこちないようにするためにもこういうことをやろうということならばそれなりに意義があることだと私は思うんです。  ですから、それはそれでいいんですが、しかし最初に申しましたように、この地域では政治も経済も両面が必要だとおっしゃいましたけれども、むしろやっぱり政治がきちっと進まないとなかなかうまくいかない。ですから、こういうことも大事だけれども、より大事なことはもう一度マドリード以来の流れにどうやって戻していくかということに関係者全体が政治的な面で力を入れるということがまず第一条件だろうと思うんです。  そういう意味で、ぜひ我が国としても、余りあそこらあたりは土地カンがないとかなんとかいうようなことを考えずに、これはあの地域だけの問題じゃなくて世界じゅうの問題、先進国も含んだ話で、先ほど質問もありましたように、確かにヨーロッパの主要国が様子を眺めていたりするのは気になりますけれども、そういうこと全体に目を配りながら、もう一度この第二パラグラフにあるような勇気ある政治的ステップがとられるような状態にどうやって戻していくかということを積極的に考え、関与していただくことが大事だと思っておりますが、御感想を伺って質問を終わります。
  91. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私も同感でございます。実は、この銀行の設立の話が決まったのはカイロにおける会議でございますけれども、これを主宰したのはエジプトのムバラク大統領でございます。  実は、昨年八月、私はムバラク大統領とお目にかかりましたときにこの話題を出したのでございますが、その時点では非常に消極的とでもいいましょうか、どうなのかなという感じをムバラクさんは持っておられました。というのは、御承知のとおり、五月の選挙でイスラエル政権の交代があった。そして、和平プロセスがやはり停滞していた段階でございますので、まずそちらが先じゃないかということを言われたわけでございます。私はその時点で、和平プロセスを進めることが非常に大切でございます、だからこそこれまで余り大きな役割も果たせなかった日本もこうやって来ているのでございますと申し上げたわけでございます。しかし同時に、このような和平プロセスが少し停滞ぎみであるときだけに経済面からの支援努力もきちんとやる必要があるんじゃないですかとさんざん申し上げたわけでございます。  その後、いろいろな経過もございまして、ムバラク大統領はカイロの会議を主宰していただき、こういった銀行の設立に向かっての合意も成ったわけでございます。その後順調に進むかと見えた和平プロセスが今また非常に難しい局面に差しかかっておりますけれども、私は現在の局面でも、こういう局面であるからこそこういった経済面からの努力も必要であるということを強調したいと存じます。  それと同時に、一番肝心なのは、委員指摘のとおり、政治的な側面、勇気ある政治的ステップを、今停滞しているあるいは後退していると見られるものを旧に復し、まず軌道に復し、そしてさらに前進させていくために全力を挙げてまいらなくちゃいけない、こういうふうに考え、我が国としてもそれなりの努力を展開しているところでございます。
  92. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 ぜひよろしくお願いいたします。
  93. 矢田部理

    矢田部理君 既にさきの質問で触れている点も多いわけでありますが、今中東和平プロセスは崩壊の危機に直面している。楽観的な見方というよりも私は深刻に受けとめなきゃならぬと思うのでありますが、その原因をつくったのは、申し上げるまでもなく、イスラエル東エルサレム地区における入植地住宅建設がポイントであります。その自制を求める、中止を求める決議国連の安保理の総会で議論されました。総会は、アメリカの反対にもかかわらず、三月十三日に撤回決議といいますか建設中止の決議が通過をいたしまして、反対をしたのはアメリカイスラエルだけ、国際社会はなべて中止を求めるということになったのであります。  申し上げるまでもなく、国連総会は国際社会の全体的な意思の表明ではありますが、必ずしも実効性を伴わないということから安保理の決議が重視されてしかるべきものであります。安保理では、三月七日と三月二十一日の二回にわたって同趣旨決議案が出されましたのに、アメリカが拒否権を発動して、これを阻止したという経過がございます。  イスラエルの態度も非難されてしかるべきでありますが、拒否権を発動してまでアメリカがそれをバックアップするというやり方も非難されてしかるべきだと思いますが、政府としてはこれについてどのようにお考えでしょうか。
  94. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、今和平プロセスは崩壊の危機にさらされているという御指摘ございましたが、私どもはこれを崩壊させてはならない、こう思っております。何としても和平プロセスをきちんと守り、前進させなくちゃいけない。また、関係各国の、もとより当事者が中心でございますが、国際社会努力も相まって和平プロセスを守り、進めていくことは可能であると考えております。  さて、そういった中で、東エルサレムにおけるイスラエル住宅建設の話が今非常に大きな阻害要因となりておるわけでございますが、これについては米国もこれは認められない、こういう態度は鮮明にしております。ただ、それを実効ある方法で進めていくといいましょうか、イスラエル再考させ、断念させていくためにはどうやったらいいかということで我が国を含む他の諸国考え方が突き合っている、こういうことだと存じます。  そういったことでございますので、私どもといたしましては、その根本でございます住宅着工問題そのものについてイスラエルが何とか再考するような方向に持っていくために努力もしたいし、そういったプロセスで、過程の中で米国にも必要な働きかけはしてまいる所存でございます。
  95. 矢田部理

    矢田部理君 イスラエルの行為が国際社会にとって大変非難されるべき中身であることは当然であるし、それを撤回すべく最大限の努力を払うというのもまた当然でありますが、それをバックアップするアメリカの拒否権というものがどうしたってやっぱりガンになっている、もう一つの大きなポイントになっているというふうに思うのです。やっぱりアメリカにもう少し物をきちっと言うと。アメリカ国際社会の中心になってこの問題の解決に当たるべきだ、そういう立場からいえば拒否権などを二回にわたって発動するというのは今どき何事かということを言っていいのではないでしょうか。
  96. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 国連の場におきましては私どもも日本の考えを主張しておりますし、また米国に対しても日本の考えは申しておるところでございます。そして、これは日本だけじゃない、ほかの国もそういうことはしております。  しかし、そういったことも十分踏まえながら、なお米国は国連の場におきまして、安保理あるいは総会の場におきまして決議には賛成できないという立場をとったわけでございます。しかし、先ほども申しましたけれども、それは決して米国がイスラエル東エルサレムにおける住宅の建設をよしとする、そしてそれをバックアップするということではない。米国も住宅建設ということは望ましくない、それはすぐやめさせなくちゃいけないという基本は同じなのでございます。ただ、それを実効あらしめるためにどうするのかと。私どもはやはり決議ということも大切であるということでやりましたけれども、米国は、決議をすることによって本当にイスラエルがそれを断念するんだろうか、あるいはもっとほかの働きかけ方があるんじゃないか、そういう考慮が働いたんだと思います。  そして、これは何も私は米国の立場を代弁するわけじゃございませんけれども、そういった米国のやり方にも全く根拠がないわけではない。単に決議をする、そして追い詰めていくということで果たしてイスラエルに断念させることができるだろうか。米国が日本やほかの国とは違う立場、違う行動をとりながらも、しかしイスラエルに対して説得をしていく。御承知のとおり、影響力も強いわけでございますから、そのことも肝心だというふうに考えることもそれはそれなりの根拠はなしとしない、こう思います。
  97. 矢田部理

    矢田部理君 余りその議論だけしたくはありませんが、常識的に考えて、国際社会のすべての国がアメリカと当事国のイスラエルを除いてやめるべきだ、中止すべきだという決議に賛成している。安保理もそうです。やっぱり実効性を持たせるのは安保理決議が、最初はとりあえず中止勧告であっても、それにどうしても応じなければ次の手段もあるわけですから、そういう力による考え方も少し持ちながら、もちろんそれは交渉事で、平和裏に解決することを私たちは基本的に思っておりますが、実効性を持たせるのは安保理決議しかないんです、今の国際社会は。それをアメリカ立場もあると理解できるようなニュアンスで日本政府が臨んでいるのはいかがかと思います。  それはそれとしく私は、国連の一番の問題点は戦勝五大国に拒否権を与えた、国際社会の総意が必ずしも生かされない事態がしばしばある。国連の民主的改革ということがしばしば言われるわけですが、この拒否権について外務大臣はどうお考えになりますか。
  98. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、実効性を持たせるためにも安保理の決議をするべきである、米国は拒否権を使うべきではなかった、こうおっしゃるわけでございますけれども、それも一つの考え方だと思います。  しかし、米国の立場に立てば、安保理の決議をしたからといって、それがすなわち実効性につながるわけではない。むしろ、二国間のいろいろな太いパイプもイスラエルとの間にあるわけでございますから、そのパイプを通じての働きかけというものは実効性につながるんじゃないか。現にロス特使を派遣しておるわけでございますし、そういうふうに考えたということもあり得るかと思います。しかし、その問題はおくと言われましたから私はここでおきます。  さて、一般論として国連の安保理の拒否権をどう考えるかという点でございますが、これにつきましては国連に先行する国際連盟のいろんな経験もあったと思います。国際連盟が世界の平和を維持していく上において期待された役割を十分に果たすことができずにああいった第二次大戦というものが避けられなかったと。いろんな要因はございますけれども、そういったことも踏まえまして、やはりこういった国際的なフォーラムにおいて単に多数決で物事を決めればそれで事は済むんじゃないという経験も踏まえて、現実問題として世界を動かしていく上で大きな影響力を持つ幾つかの国に拒否権を持たすというのが国際連合をつくったときの考え方だと思うのでございます。
  99. 矢田部理

    矢田部理君 歴史はわかっている。今どう思うか。
  100. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) そして、国際連合ができましてからもう既に半世紀を超える年月が経過したわけでございますし、その中で世界情勢も大きく変わり、また世界の国々の間の相対的な力関係も変化してきたのは事実でございます。しかしながら、今の時点に立っても、やはり今常任理事国になっている国々の考え、あるいは意見というもの、行動というものが世界の政治に、世界の経済も含めてでございますが、大きな影響力を持つということは否定できないと思います。だから、あながち拒否権があるのはけしからぬと決めつけるわけにもいかないと思います。  しかしながら、一方においてこの拒否権をどういうふうに使うかという点については拒否権を持っている常任理事国もいろいろ考えていただいてしかるべきではないのかなと、今日の世界情勢の中でいろいろお考えいただければいいんじゃないのかなと。  それ以上申し上げることがいいかどうかは存じませんけれども、あえて申し上げますと、国連加盟国の中の多数の国の考えは右の方を向いているけれども、しかし世界に大きな影響力を持ち、それだけ世界のあり方について大きな責任感も感じている国の立場からして、やはりここは右にすべきではない、左にすべきだという判断がある。そういったことで、世界全体のためにということからの拒否権というものはあり得るかもしれませんけれども、そうではなくて、たまたま拒否権を持っている国一国の利害のみに立脚して拒否権を行使するという点については極めて慎重であるということが期待される、こんなことじゃないかと思います。
  101. 矢田部理

    矢田部理君 国連改革とか拒否権の扱い、もう少し本格的にいずれ議論しなきゃならぬと思うんですが、やっぱり今度の事例が一つ典型的な問題点を提起していると思うんですね。国連総会が全体の意思として建設を中止すべきだと言っておりますのに、イスラエルは当事国ですから賛成しないでしょうけれども、安保理はアメリカの拒否権で実効性ある決議ができない、あるいはまた実効性ある決議の前段の対応ができないということになると、国際社会の意思と違った方向がとられるような結果にもなりかねない。こういう状況があったのでは民主的な国連改革にとっては非常にマイナス要因になるし、今度の問題の解決に当たっても阻害要因にすらなっているというふうに私は思いますが、その議論だけしていると時間がなくなりますので、次に進みます。  そういう中で、とりわけイスラエルがせっかく和平プロセスに政治会談その他で乗ってきたのに、先般のネタニヤフ政権ができてから後、今度の住宅建設の問題などもあってパレスチナ自治政府との政治会談も中断をすると。今度の事態に対してアラブ連盟は関係正常化を凍結するという態度に出るというような状況になりますと、言ってみれば和平プロセス進展がない中で開発銀行をつくるということになるわけでありまして、これでは開発銀行自身が機能しないことになりはしませんか。
  102. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 確かに現在和平プロセス全体が非常に難しい局面にあることはそのとおりでございます。停滞というか、場合によっては少し後退しているという見方もゆえなしとしないと私は思います。  しかしながら、先ほど来申し上げておりますけれども、大きな流れとして和平プロセスを進める以外にこの地域の安定を導く道があるのかといいますと、それはないんだと、これしかないんだという基本認識イスラエル政府も依然として持っているんだと思います。アラブ諸国もそうでございます。そこのところを大事にしまして、何とか和平プロセスをうまく旧に復し、そしてさらに進展させていくというために努力をしていくと。それを進めていく上において、この銀行の役割も含めまして、経済面からのいろいろな努力も必要なんだと、こう考えるわけでございます。  そういった意味では、今和平プロセスそのものが難渋しているときではあるが、いや、そういうときであるからこそ、それに一定の役割を果たすであろうこの銀行の設立もぜひ進めなくちゃいけない、こう考えております。
  103. 矢田部理

    矢田部理君 今度の開発銀行の目的和平プロセスの下支えだと、経済的な支援だというわけですね。ただ、本体が言ってみれば壊れかかっている、非常に危機に直面しているのに、それを支えるということが空に浮いてしまうんではないかというふうにすら私は感じるわけです。  特に、パレスチナの場合には宣戦布告に等しいと、イスラエルの今回のやり方が。ということで非常に事態は深刻になっていると私は受けとめているし、場合によっては銃撃戦でもあるとか大きな衝突でも起こると大変な事態に発展する危険性すら感じられるわけです。  そういう中において、日本政府努力として、さっきの特使を政府として派遣されるということは、それはそれで私は結構だと思うんですが、どのクラスの人をどの時期に派遣することを今予定し、作業をしているんでしょうか。
  104. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、もう一度申し上げますが、確かに今和平プロセスは大変難しい局面にはございますけれども、私は決してそれは崩壊に瀕しているとか、そういった状態ではないと思います。必ず当事者そして国際社会努力によってこの和平プロセスを動かし進めていくことは可能だと思っております。そういった意味で、下支え役である銀行の役割も大切だと考える次第でございます。そうして、そういった努力日本も果たし得る、担い得る役割を果たしてまいりたいと思っているわけでございます。  先ほども申し上げましたけれども、現に在イスラエル大使イスラエル政府に対して、またパレスチナに対しても熱心に働きかけを行っております。そして、さらに東京からも、外務省から派遣したいと考えておりますけれども、これはどういう資格とかどういう立場ということは申し上げませんけれども、十分に我が国政府和平を願う意思を伝え、そうしてまた説得力を持ち、働きかけていくことができる人物を近々派遣したいと考えているところでございます。
  105. 矢田部理

    矢田部理君 四月初旬にも、あるいは近々というのは今週中にもという趣旨でしょうか。
  106. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) そういうこともあると思います。
  107. 矢田部理

    矢田部理君 そういうふうに伺っておきます。  そこで、和平プロセス支援するということになりますと、イスラエルのやっていることは和平プロセス違反なんですね、反する行為なんですよ。この開発銀行ができてくるということになると、当然和平プロセスを下支えするとか支援するという目的に違反する行為をイスラエルはとっているわけですから、イスラエルにはそういう行為をとる限りはこの開発銀行の融資その他の支援はしないと、イスラエル企業にはお金を出さないということがあってしかるべきだと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  108. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私ども、今のイスラエルのとっている行動、とりわけ住宅建設の問題については大変遺憾なことであり、これは再考し断念してもらいたい、こういうことで働きかけているところでございます。  ただ、それが、これまでになされました合意に違反しているかどうかという点につきましては、イスラエルは実は合意の中にこういうことは含まれていないと言っているわけでございまして、いわゆる法律的な解釈からいきましてどうだこうだということになりますと、そこのところはなかなか難しい面があるわけでございます。  しかし、少なくとも実態において和平プロセスを阻害しているということは明々白々でございますから、だからいわゆる形の上での合意に違反しているかどうかという形式論ではなくて、実質論を表に出しながらイスラエルに断念を、再考を今迫っている、こういうことをしているわけでございます。  さて、イスラエルの態度が改まらない限り、この銀行ができてもイスラエル関係企業には融資あるいは出資をするなという御主張でございますが、私どもはまずその前にイスラエルに一日も早く再考をするように働きかけてまいりたいと考える次第でございます。そして、銀行が設立された暁にはすべての加盟国がこの銀行の果たし得る機能を十分に活用できるような状態が具体化している、そういう前途あることを期待しているところでございます。
  109. 矢田部理

    矢田部理君 いろいろ各論的な議論があるわけですが、先ほども出ておりましたように、開発銀行の中で予定される地域の中で産油国もあるわけですが、これはもうほとんど参加していない。ヨーロッパのイギリスとかフランスは後でまたいろいろ動きがあるようですが、などなどの主要な国が参加をしていない。これはどういうことですか。  そして、もう一言二言言えば、アメリカ日本が中心になって、出資の割合などを見ると三〇%以上にもなるという状況は少しく不自然な感じがしないではないのですが、やっぱり少しおかしいと思いませんか。
  110. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもといたしましてはなるべく多数の国がこれに参加してくれることを期待しているところでございますけれども、現時点におきましてはいろいろな考えがあるんでございましょう、それぞれの国々に。特に、政治プロセスの方が十分に今進展していないという状況の中でどうかという点については、先ほど申しましたこの銀行の設立を決めましたカイロの会議の主催国であるエジプトですら一時はどうだろうかといろいろお考えになったところでございますから、他の国にもいろいろあるんだと思います。  しかし、基本的な考えについては認めている国が大多数だと思いますので、今後とも事態の推移を見ながら、また各国それぞれによくお考えいただきまして加盟をしていただくように我々は期待しておりますし、またそういった国を受け入れられるような規定、条約になっているところでございます。
  111. 矢田部理

    矢田部理君 時間がないから、一つ一つやりたいのですが、イギリスとかフランスなども含めてですが、どうもヨーロッパの主要国は利子を取ってお金を貸すというやり方よりも、無償援助をさらに伸ばすべきだという考え方がある。もちろん、財政的にも厳しいというようなことも背景にはあるやにも聞いております。利子を取ってお金を貸す、何%になるかはこれから決めることで、七%ぐらいが言われているわけであります。一ということになると、どちらかといえばイスラエルだとかエジプトなどの方にお金が流れていく。本来の目的の重要な一つであるパレスチナの復興、これはなかなか金利を払ってまでお金を借りる余裕は必ずしもないように私は思います。ということよりも、そういう方向にお金が流れていくのではないかという危惧すら指摘をされているわけでありますが、この辺はどうお考えでしょうか。
  112. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) この地域の経済的な安定なり発展を図るためにいろいろな経済協力の手法があると思います。二国間、多国間、そして無償、有償、それはいろいろな形で進めていく必要があろうと思うのでございます。  そういった中で、やはりこの銀行が企図しておりますように民間部門での支援をしていくと。これもあくまで受け入れ国の方が自主的に民間部門での経済活動を通じて発展をしていこう、そういったみずからの決定をした場合に協力していくわけでございますが、そういったものも一つ大切なものだと考えております。  今パレスチナの話をなさいましたけれども、パレスチナももとより今苦しい状態にございますので、いろんな面での経済協力を求めている。我が国も既に累計では二億七千万ドルからの無償の協力をしているわけでございますが、実はパレスチナからは、どうでしょうか、我々に有償の協力もしてもらえないかという話をアラファトさんからも私は受けておることもございます。しかし、今のあの国の状態なりなんなりを考えまして私どもは無償で対応しているわけでございますが、欧州諸国の中には有償で対応しているところもある。たしか欧州開発銀行がローンも提供していると承知しておりますし、そういったいろいろな組み合わせで対応していくんだと思います。
  113. 矢田部理

    矢田部理君 各条ごとに少しいろいろ議論をしたい点があるのでありますが、私はそういう立場からいえば、利率を一律ではなくて、七%ぐらいがこれから議論されると言われておりますが、パレスチナなどには低利の融資をするという、地域によって利率を変えるような工夫もしてしかるべきだと思います。  それからもう一つは、協定の六条に特別基金財源というのがありますね。これは融資というよりも、むしろ緩い条件で、贈与なども含めて提供するという資金の活用などもそういう地域には積極的にやるべきだというようなことを考えているんですが、その点はいかがでしょうか。
  114. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほど申しましたように、全体として有償、無償、そしてまた多国間それから二国間、いろんな形での協力の組み合わせで進めるべきものだと思いますけれども、例えば世銀グループでもIDAなどは低利の非常にソフトな形での有償の資金協力をする機関でございます。それからまた、リージョナルなもの、地域的な国際金融機関におきましても、アジア開銀なんかにおきましても通常のローンのほかに特別の基金を設けてソフトなものを貸している、こういうこともございます。そういったこともいろいろ考えられるのではないか。  だから、この開発銀行は今御審議いただいているような形でまいりますけれども、国際的な仕組みとしてはいろいろなものもございますから、そういったものの組み合わせによって対応していくことは可能であろうかと思います。
  115. 矢田部理

    矢田部理君 時間がないからまとめに入らざるを得ないのですが、この協定を見ますと、確かに世銀などがやってきた構造調整融資、いろいろ内政に注文をつけると、経済のありよう、あり方に注文をつけて融資をするというやり方を排除しているという点では世銀のよりはいいというふうに私は評価をするのですが、それにしても前段の方に経済協力フォーラムというのが置かれて、ここでいろんな政策的な意見の表明などが行われるようになる可能性がある。特に、マクロ経済政策とか部門別政策、規制政策を促進すべしという中身になっているものですから、構造調整融資は排除したのでありますが、やっぱりそういう考え方が動く可能性を排除できないというのが一つ。  それからもう一つは、先ほども指摘をしておりますように、出資比率がアメリカが二一%、日本が九・五%ということになると、三〇%を超えるんですね。ヨーロッパがほとんど参加をしない、それから域内の産油国も見合わせているということになると、日米中心の金融システムが大きく比重を占める、動くということになる。ということになると、そこに問題性を感じざるを得ないところもあるのですが、その点についてはいかがお考えでしょうか。
  116. 畠中篤

    政府委員畠中篤君) 本銀行は構造調整的な支援をしないということになっておりますけれども、構造調整的な支援と申しますのは、通常、国際収支悪化等のそういった構造的な問題を抱える途上国に対しまして国際収支安定の回復、維持に必要なプログラムや政策支援するために資金が必要とされる時期に一括して支出されることが特色であります。この銀行は、先ほどから御説明しておりますように、民間部門の育成を主目的として、プロジェクトベースで進捗状況に応じて資金が支出されるということを主たる目的として出しておりますので、そういう構造調整をしないということになっております。  また、経済協力フォーラムとの関係で申し上げますと、本銀行の運営等にかかわります意思決定機関といたしましては総務会及び理事会がきちんとされておりますので意思決定はそこでされますけれども、この経済協力フォーラムは域内加盟者が自由な立場から討議、対話を行うことによって地域的な経済協力を促進することを目的として設置するものでありまして、銀行そのものとは若干違う性格を持っておりまして、理事会と経済協力フォーラムとの間では相互の活動に関する情報交換をするということで協力していくということになっております。
  117. 矢田部理

    矢田部理君 一言意見を申し上げますが、和平プロセスが深刻な危機に私は直面しておると思うんですが、これをこのまま終わらせてはいけないので、アメリカに対してもイスラエルに対しても日本政府としてそれを本来の軌道に乗せるように全力を尽くしていただきたいのが一つ。  それから、この協定に賛成するかどうか大変私ども悩んだのでありますが、幾つかの注文を申し上げました。運営に当たっては十分に心して当たっていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
  118. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  119. 立木洋

    ○立木洋君 私は、日本共産党を代表して、中東北アフリカ経済協力開発銀行を設立する協定に反対の討論を行います。  本協定は、市場指向型経済並びに民間及び企業家の自発的活動を着実に推進する域内加盟者に対して金融業務を実施することができるとしていますが、これは市場指向型経済という特定の経済制度を金融の条件にするものであり、その国がみずからの意思によってどのような経済制度を選択するかというみずからの権利を侵害するものであります。  国連総会が一九七四年に採択した諸国家の経済権利義務憲章は、いかなる国家も、どのような形であれ外部からの干渉、強制及び脅迫を受けることなく、その国の意思に従い、その政治的、社会的及び文化的のみならず経済的体制を選択する主権的かつ不可譲の権利を有するとして、国連憲章に規定された民族自決権の内容をさらに発展的に示していることからも明らかであります。  この点に関しては、アメリカの商務省が発表した文書の中でブラウン長官は、中東に対する経済外交の内容に関連し、アメリカ企業にとっての機会を創出するためにと明記されているように、アメリカ企業の利益の追求であるということが明白であります。このような見え透いた経済、国益追求のために、同銀行設立協定の予定加盟国には、中東ではサウジアラビアなどペルシャ湾岸諸国や、ヨーロッパではドイツ、イギリス等ECの諸国が含まれていません。このようなことを見ても事態は明らかであります。  さらに,企業家の自発的活動を推進するという約束は、各国が多国籍企業を規制、抑制する権利を奪い、その国の経済主権をも侵害するおそれがあるのであります。一九七四年に採択した新国際経済秩序の樹立に関する宣言は、多国籍企業の規制の権利を、多国籍企業が受け入れ国の完全な主権のもとに活動するため、受け入れの国民経済の利益となる措置をとることによる多国籍企業の規制及び監視を明確にしていることでも明らかであります。  以上の主な理由によって、私は本協定に反対するものであります。
  120. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  中東北アフリカ経済協力開発銀行を設立する協定締結について承認を求めるの件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  121. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、本件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十六分散会