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1997-03-18 第140回国会 参議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月十八日(火曜日)    午後二時二分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         寺澤 芳男君     理 事                 須藤良太郎君                 野間  赳君                 高野 博師君                 武田邦太郎君     委 員                 岩崎 純三君                 笠原 潤一君                 武見 敬三君                 成瀬 守重君                 宮澤  弘君                 猪熊 重二君                 長谷川道郎君                 田  英夫君                 萱野  茂君                 立木  洋君                 佐藤 道夫君                 矢田部 理君                 小山 峰男君    国務大臣        外 務 大 臣  池田 行彦君    政府委員        外務大臣官房長  原口 幸市君        外務大臣官房審        議官       西田 芳弘君        外務大臣官房領        事移住部長    齋藤 正樹君        外務省総合外交        政策局長     川島  裕君        外務省総合外交        政策局軍備管        理・科学審議官  河村 武和君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     朝海 和夫君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省北米局長  折田 正樹君        外務省経済局長  野上 義二君        外務省経済協力        局長       畠中  篤君        外務省条約局長  林   暘君    事務局側        常任委員会専門        員        大島 弘輔君    説明員        防衛庁防衛局計        画課長      金澤 博範君        防衛庁防衛局調        査課長      巽  高英君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件アジア太平洋郵便連合憲章追加議定書及び  アジア太平洋郵便連合一般規則締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出) ○千九百七十四年の海上における人命の安全のた  めの国際条約に関する千九百八十八年の議定書  の締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○千九百六十六年の満載喫水線に関する国際条約  の千九百八十八年の議定書締結について承認  を求めるの件(内閣提出)     ―――――――――――――
  2. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  アジア太平洋郵便連合憲章追加議定書及びアジア太平洋郵便連合一般規則締結について承認を求めるの件を議題といたします。  趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 武見敬三

    武見敬三君 当アジア太平洋郵便連合憲章追加議定書及びアジア太平洋郵便連合一般規則締結について承認を求めるの件に関しましては、既に趣旨説明にもありましたとおり、その重要性は極めて重要と認識し得るものと考え、これにまず支持を表明しておきたいと思います。  それでは、一般質問の方に移らせていただきます。  昨年、日中関係が極めて険悪化し、いかに改善をするかということが重要な外交課題になってきていることは御承知のとおりであります。また同時に、こうした日中関係とともに、日台関係をいかに良好に維持発展させるかということも我が国国益上重要な課題であろうと考えるわけであります。  もちろん、我が国のこうした中国及び台湾に対する基本的な外交方針というものは、ことしで二十五周年を迎えました日中の共同声明、そしてさらには来年で二十周年を迎えます日中平和友好条約基本としたものであって、それをきちんと守りながらも、この日中関係というものをこれからいかに改善をしていくのか、そしてまた同時に日台関係実務的な関係をいかに維持発展させていくのかということを両立させて考えることが我が国国益上求められているように思うわけであります。  冷戦下におけるいわゆる親中派あるいは親台派といったような分かれ方で議論をする時代はもはや過ぎ去ったというふうに私は考えております。中台間の関係も対立と協調の入りまじった複雑なものになってきていることは御案内のとおりであります。  こうした諸状況にかんがみて、今申し上げたような我が国立場を生かした対中外交あるいは対台湾外交がいかにできるかという点について、具体的事例を挙げながら御質問をさせていただきたいと思います。  さて、この三月十四日付のAFP通信によりますと、台湾軍事演習海域日本与那国島より十五海里南に設定されていたのが、さらに五十海里南に移動をしたということが報道され、そして台湾国防部スポークスマンがこれを確認したということでございます。  外務省はこうした事実関係を正式にきちんと確認をされておられるのかどうか、まずお伺いしたいと思います。
  4. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 御指摘の十四日の報道につき、外務省としては、交流協会亜東関係協会ルートを通じて直ちに台湾側に事実関係照会しております。同日、台湾側から、正確なことは国防部確認の上回答するというとりあえずの回答を得ました。それから、十四日の夜になって、これまた委員指摘国防部軍事スポークスマンプレスリリースというのが発表されたわけであります。  御指摘のとおり、報道では与那国島から約十五海里、二十七キロメートルの地点から五十海里、九十キロの地点まで移動したとされておりますけれども、具体的な海域については現時点で台湾側はまだ明らかにしておらず、その意味では引き続き照会中という段階でございます。
  5. 武見敬三

    武見敬三君 このAFP報道によりますと、その当局の話は、この海域が豊かな漁場であり、かつまた国際的な航路でもあるということから、不必要な国際紛争を回避するためだということのように報道がなされているようであります。こうした内容がもし事実と確認されるならば、与那国島など我が国領土に居住をし、この海域でも漁業を行い得る立場にある漁民の生活にも当然さまざまに影響をしてくるように思うわけでありますけれども、そうした照会を行われた後にある一定確認がされたときに、いかなる形でこうした事実関係がこの当該諸島漁民に通告されるのでありましょうか。
  6. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) まず、台湾国防部軍事スポークスマン室プレスリリースなどによって入手した訓練区域移動することとしたという情報そのものは、昨十七日に関係機関に対して既に伝達したところでございます。その上で、さきに申し上げました照会を通じて訓練区域の具体的な移動先などが判明した段階で、これは従来のルートに従いまして関係機関を通じて関係漁業者等に遅滞なく通報いたしてまいる所存でございます。
  7. 武見敬三

    武見敬三君 こうした安全保障にかかわるさまざまな隣接諸国、諸地域との問題というものは、いかに正確にそれが把握をされ、関係がある国境近辺我が国国民にきちんと知らされるかということは非常に重要な課題であろうと思うわけであります。  防衛庁にお聞きしたいんですけれども、この当該海域における台湾軍事演習というものはどのような形で、一体どの程度頻度で行われていたのでありましょうか。
  8. 巽高英

    説明員巽高英君) 交流協会亜東関係協会ルートを通じた台湾側からの通報によりますと、近年、台湾与那国島台湾の間に一定海域を設定し射撃訓練を行っているものと承知しております。  この海域設定頻度等につきましては、昨年一年間で合計三十四回の通報があり、昨年の一月から七月におきましては毎月一日から数日、八月から十二月におきましては毎月十数日の頻度合計八十九日間設定されているということでございます。
  9. 武見敬三

    武見敬三君 今のお話によりますと、台湾の方から常に通報事前に来ているようでありますけれども、その通報の仕方というのはどういう仕方が決められているのでありましょうか、防衛庁
  10. 巽高英

    説明員巽高英君) これは、先ほど申し上げましたように、交流協会それから亜東関係協会を通じまして私ども関係機関の方に御連絡が来ているということでございます。
  11. 武見敬三

    武見敬三君 そういうことでありますと、常に交流協会亜東関係協会を通じたルートというものが一つの大きな交渉チャンネルということになるわけでありますが、こうしたさまざまな軍事的な演習であるとか、あるいは軍事力増強等にかかわる諸問題というものは、台湾とは国交がないとはいえ我が国隣接地域であるだけに、我が国にとってもこれは無視ができない、そうした安全保障上の課題ではないかと考えるわけであります。  そこで、防衛庁にお伺いいたしますけれども、こうした台湾演習地域移動等に関しまして、安全保障上、これはどういうふうにまず解釈をしたらいいのか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  12. 巽高英

    説明員巽高英君) 三月十四日に台湾国防部軍事スポークスマン室が発表したニュースリリースによりますと、台湾国防部は、与那国島沖における射撃訓練海域使用については、既にできる限りその使用を避けることとしたと述べております。本件措置につきましては、当該海域は重要な漁場一つであり、かつ国際船舶航行経路であることから、漁業への影響及び無用な国際紛争を避けるため、またその使用頻度も高くないこと、周辺にはほかに射撃訓練使用可能な区域がまだあることを踏まえたものであるということを述べておるところでございます。
  13. 武見敬三

    武見敬三君 まさに外務省がこれからその事実関係確認されることだと思いますけれども、こうした演習海域を南に移動したということの今度は外交的な意味合い、これは領土問題などを抱えている者同士の場合にこうした演習地域というものを係争地点から引き離すということは、自分たち領土に対する主張というものと兼ね合わせてなかなかできないのが通常の外交的な判断ではないかと思うわけでありますが、この点、いかがでございましょうか。
  14. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 台湾側の意図というものについてまだ私どもとして詳しくこれを承知する立場にはないわけでございますが、国防部軍事スポークスマン室プレスリリースということに加えまして、十四日付の中時晩報関連記事では、国防部関係者の証言として、台湾日本との友好関係日本漁民海上の作業の安全のため、既に昨年十月に台湾北西射撃区域を後退させ、区域も縮小させたこと及び日本側の抗議を得て区域変更可能性につき検討したものであるということを報じているという経緯がございます。  今後とも、亜東関係協会交流協会ルートなどを通じまして、いろいろ我々としてその辺の情報というものを入手していきたいと考えております。
  15. 武見敬三

    武見敬三君 非公式ながら台湾側とのこうした安全保障にかかわるさまざまな意見交換を通じて相互の信頼関係を醸成しておくということは、やはり隣国としては非常に重要な安全保障上の課題ではないかというふうに私は考えます。  現実に、ことしになりますと、台湾がF16A、B型戦闘機配備を実際始めるわけでありますし、フランスから輸入するミラージュ型の戦闘機配備も始まる。確かに、台湾海峡を挟む緊張というものがそうした台湾軍備増強というものを促しているという側面はあるわけでありますが、結果として、こうした台湾海峡をめぐる両岸の軍事力増強というのは、北東アジア全体の緊張を増進させて、そして我が国安全保障にもひいては影響を及ぼす好ましくない傾向であることは言うまでもないことであります。  したがって、こうした緊張関係地域枠組みの中でいかに抑制して、より新しい信頼関係につなげていくかということを考えることが我が国外交上必要になってくるものと考えるわけでありますが、この点に関して外務省はどのようなお考えを持っていらっしゃるのでありましょうか。
  16. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) これも抽象的、一般的でございますけれども、かねがね申し上げておりますとおり、台湾近海、あの辺に起こる状況というものは、昨年三月の中国による軍事演習のときもそうでありましたように、例えば民間航空でありますとか漁業とかに影響を及ぼすものでございます。  そういう国際的、地域的な影響という側面から、我が国としては一貫して、中国に対しても台湾に対しましても、台湾問題というものは両岸当事者によって平和裏に解決されるべきものであるという基本的な立場を伝えてきているところでございます。
  17. 武見敬三

    武見敬三君 幸い、外務省及び防衛庁の御努力によって日中間安全保障対話といったようなものは、徐々にではありますけれども進行中である。しかし、実際に台湾のことになりますと、これは非常に中台間の複雑な問題が絡んでくるだけに、我が国としては外交関係もなく、そうした安全保障対話という大きな枠組みの中に組み込むその困難さというものに直面をするわけであります。この点に関しては、非公式な形であるとか、あるいは何らかの方法でこうした台湾安全保障上の問題点等についても我が国として何らかの対応ができるような措置を講ずることが求められるように思うわけであります。  次の質問に移らせていただきます。  一九九四年九月二日が署名日と聞いておりますけれども交流協会亜東関係協会との間で民間航空業務維持に関する取り決めの修正に関する取り決めというものがございまして、そこで台湾側より関西国際空港への就航につき継続協議が申し入れられていると伺っております。  日本側対応は非常に困難であるが留意するという受け方をそのときしていたと聞いておりますが、その後、日台間におけるこうした実務関係維持していく上で重要な案件でありますこうした航空協定等内容についてどの程度交渉が進展しているのか、お伺いいたしたいと思います。
  18. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 今、委員が御指摘になられました九四年の後の経過ということになりますと、昨九六年末に台湾民間航空機関西空港乗り入れにつきまして亜東関係協会から財団法人交流協会に対して希望の表明がなされたと承知いたしております。それを受けて調整が今行われている段階でございます。
  19. 武見敬三

    武見敬三君 この過程で、今、日本アジア航空が関西国際空港台湾との間を週に十四便飛んでいるというふうなことを伺っているわけでありますけれども台湾側からは具体的な航空機会社の指定をして日本側に要請が来ているのでありましょうか。
  20. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) この件につきましては何分現在調整中の段階でございますので、余り個別具体的な内容についてのコメントはできないのでございますけれども台湾がどの航空会社を指定するかということは基本的には台湾が決めるべきことであろうと思います。
  21. 武見敬三

    武見敬三君 ただ、実際のところ、過去の日中航空協定交渉は確かに台湾絡みでいろいろ紛糾をした交渉経緯がございましたけれども、そうした経緯の中で、どの航空機会社を指定するかどうかということも含めて事前中国側とも協議をしているということを伺っておりますけれども、事実でありますか。
  22. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 必要に応じて中国側理解を得ながら取り進めていくということは従来から行ってきております。  すなわち、日台間の航空関係は非政府間の実務関係として私ども維持してきているわけでございます。これは一貫して実務関係として維持してきているわけでございますが、日台間のこうした実務関係をより安定的に円滑に維持していくということも非常に重要であろうと考えます。その観点から、従来から必要に応じ中国理解を得ながら取り進めていくという対応をしてきたところでございます。  いずれにいたしましても、これまでも我が外務省といたしましては、運輸省と協議しながら、実際のニーズに応じた結果が得られるということに主眼を置きまして、台湾機の新たな日本乗り入れ増便ということについて対応を行ってきているところでございます。
  23. 武見敬三

    武見敬三君 これはもうまさに外務省がずっと御苦労をされてきていることとは思いますけれども日中関係を良好に維持友好関係を発展させる、他方で経済的にも発展をしてきた台湾との実務的な関係維持促進させる、これを両立させる外交的手腕というのはもうすさまじく困難さを伴うものであって、その御苦労というものは察するに余りあるものがあるわけであります。  こうした台湾との実務関係維持に関しましては、既に日中国交正常化のときにその基本についての確認は十分になされているというふうに考えるわけでありまして、実務関係維持に関連して日本側がいかに自主性をきちんと確保しておくかということは、中国に対しても我が国国益考えて非常に重要な基本姿勢になるのではないか、そういう認識を私は持つものであります。この点についての外務省のお考えはいかがでありましょうか。
  24. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 私どもは、先ほども申し上げましたとおり、国交正常化以来一貫して台湾との間の実務関係を発展させるという方針をとっております。  その実務関係の中の航空協定航空関係というものは重要な要素であると思っております。そして、そういうものとして発展させていきたいわけでありますけれども、そのような実務関係というものが長きにわたって安定して円滑な基盤の上に行われるということを確保することはまた非常に重要である。そういうことから、航空交渉航空協定というものがしばしば非常に政治的な側面も持った案件であるということも踏まえて、中国との間の意見交換中国に対する申し入れというものを行ってきている経緯がございます。  今我々といたしましては、台湾機の新たな関西空港への乗り入れ日本への乗り入れ、その増便という実務上のニーズに合った措置確保すべくいろいろな調整を行っているということでございます。
  25. 武見敬三

    武見敬三君 こうした具体的課題をあえてお伺いするのは、まさに日本の多くの国民の方々にもこうした日中関係友好促進実務的な日台関係維持促進を両立させることがいかに難しく、かつしかし努力しなければならないかということをわかっていただきたいということも考えつつ、こうして質問をさせていただいているわけであります。  また、こうした具体的案件を通じまして、中国台湾日本、この三つの点を結ぶ複雑な諸関係というものがさらに浮き彫りになってくるわけであります。外交というのは決して単純なものではございませんから、そうしたことについての国民の御理解を得るということは極めて重要な課題に私はなってきているように思うわけであります。  そこで、もう少しこの航空協定協議に関する御質問を続けさせていただきたいと思いますけれども、当初は台湾側からは長栄航空をこの路線に就航させたいということを言ってきたと聞いているわけでありますが、そうした事実はございましたか。
  26. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 大変恐縮でございますが、これも現在具体的な調整が行われているそのさなかでございますので、個別具体的な内容についてのコメントは差し控えさせていただきたいと存じます。
  27. 武見敬三

    武見敬三君 外務省のお立場だとなかなか難しいとおっしゃるわけでありますけれども、こういう難しさをやはり国民皆さん方理解していただくということがこれからますます私は重要になってくるように思います。特に、昨今の世論調査を見ても中国に対する国民一般理解度と申しますか好感度といったようなものが悪化してきているということが顕著にあらわれてきているわけであります。  しかも、外交政策決定過程に関しましても、やはり政府の他の政策決定過程と同じく、国民はより高い透明性というものを求める傾向が強く出てきているわけでございますから、こうした経緯をある一定程度ではあれ国民皆さんの前に知らしむることによってその経緯理解していただき、実質的にはむしろ日本外交の背景にきちんと支持していただく形ででんと座っていただくことが私には必要であろうというふうに考えるわけであります。そういう意味で、この現在進行中の航空協定協議というものは非常に興味深い実は過程があるように私は理解をしております。  こうした長栄航空台湾側から指定されてきたということを私は伺っているわけでありますが、日本側がその次に中国側事前協議をした段階で、中国側からはかつては拒絶された中華航空を逆指定してきたというような話まであったというふうに聞いているわけであります。こうしたことはまさに日中台三カ国の微妙な関係というものを象徴的に示す過程になってくるだろうと思うわけでありまして、この点についてのやはりある一定透明性確保というものが私は求められるものだろうと思いますが、この透明性確保という点に関して外務省のお考えはいかがでございますか。
  28. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 先ほど具体的な調整内容について今コメントは申し上げにくいということを述べた次第でございますけれども、私たちが第一義的に考えていることは、台湾機の新たな日本乗り入れ増便という実際のニーズに応じた結果が確保されるということでございます。こういうことが重要な基本であるというふうに思っております。すなわち、新しいポイントなりが追加されるということ、そういう形で実務関係上のニーズに見合った対応がなされるということ、この確保が重要だと思っているわけでございます。  他方、そのような乗り入れ増便ということが具体的にどの企業によって実施されるかということについては、私たちはそれは第二義的な問題であろうというふうに思っております。  すなわち、一般論でございますけれども、仮に中国側からこの企業ということを言われても、それは外務省として第一義的にそれを決める話ではございませんし、話し合いが整った段階においては、いかなる企業によって乗り入れ増便を行うかというのは台湾側がお決めになることではないか。基本的には少なくとも台湾側が決めることであろうというふうに考えております。
  29. 武見敬三

    武見敬三君 私自身も別にどこの航空会社の肩を持とうという気持ちは全くないわけでございまして、むしろこうした航空機会社というものを指定するプロセスというものを重視しているわけであります。  このプロセスの中で、今御指摘のような基本的には台湾側が決めることだということがそのまま通れば実はこんなに苦労することはないわけであります。さまざまな外交的な配慮がそこに組み込まれる。場合によっては不必要なほどに組み込まれることによってこの問題を複雑化させているという側面が私はあるように思うわけであります。  私自身日中関係改善というものが我が国外交の中でも極めて優先順位の高い課題であるということは十分に認識をし、そのために努力すべきだということを理解しているつもりではございますが、こうした日台関係についての実務関係をこれからさまざまに律する上においても、我が国がいかに自主的にそれを取り仕切ることができるかということを考えておくこともまた重要だろうというふうに考え、きょうはこういう御質問をさせていただきました。また、安全保障という観点からもこうした台湾の諸状況は無視できないということも含めて御指摘させていただくことで本日の御質問とさせていただきます。  ありがとうございました。
  30. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 平成会長谷川でございます。  冒頭、本日の議題になっておりますアジア太平洋郵便連合憲章の問題についてお伺いをいたします。  我が国は、万国郵便連合、UPUに当然加盟をいたしておるわけでありますが、UPUに加盟をしており、なおかつAPPUを組織しなければならないのか、感じとしては屋上の上に屋を重ねるというような感じがしないでもないわけです。このAPPUは、いただきました資料によりますと、加盟各国が地域に特有な郵便上の問題を検討し、業務の改善、利便の増大を図る、さらにUPUの場で当該地域内の共通の利益を守るために共同歩調を云々という資料をいただきました。  この中で言う地域に特有の問題というのは何であるのか、また地域に共通の利益というのは具体的に何であるのかを御説明いただきたいと思います。
  31. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 万国郵便連合憲章のこの種の地域取り決めを想定しておりまして、限定連合を設立することができるという規定が第八条にございまして、このアジア・太平洋郵便連合のほかにも世界各地に似たような幾つかの地域連合があるところでございます。アジア太平洋地域におきましては、地域の国々の間でさまざまな共通の問題意識あるいは共通の利益があるところでございます。  その例としましては、まさにこのアジア・太平洋郵便連合で扱っていることでございますけれども、各加盟国間の連絡を促進することにより地域の郵便業務の改善を図る、例えば新しい郵便サービスの普及であるとか新しいシステムの導入であるとかいったことを地域レベルで協力しながら実施しているということが一つございます。  二点目としましては、この地域の中には我が国のような先進国もあれば開発途上の国もございます。そこで、技術協力をアジア太平洋地域の中で行うということがありまして、これが言ってみれば第二番目のこの地域連合の特色でございます。  三点目としましては、御指摘のとおりでございますが、万国郵便連合、世界的な機関があるわけでございますが、その中で必要があればアジア太平洋地域が協力し合って、言ってみれば共通の問題提起などをしていくということが想定されておりまして、これがいわば三番目のこの地域連合の存在理由でございます。
  32. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 今お伺いしましたが、アジア太平洋地域に共通の、また特有の問題として、連絡の促進、技術協力、また共通の利益を図るというような御説明であります。特にアジア太平洋特有の問題であるとは少々納得できないわけでありますが、本議定書並びに一般規則それ自体はさほど大きな問題を含んでいる問題ではないと思いますので、関連の質問に移らせていただきます。  まず第一点、北朝鮮問題でございますが、最近報道されております横田めぐみさんの拉致事件についてお伺いいたします。  本件は昭和五十二年に新潟で発生した事件でございます。私は新潟の出身でありまして、当時まさに不可解な、言ってみれば神隠しに遭ったような事件であり、不思議な事件であったわけです。よもや北朝鮮工作員絡みの事件であるというようなことは当時まさに想像もできなかったわけであります。先日のテレビの報道でその後に潜入した工作員が新潟の街角に張られていた捜索ビラを朝鮮に持ち帰ったというような話がありました。私もそのビラは再三目にしております。極めて深刻で悲劇的な事件であると思うわけです。私も十三歳の同じ年の娘がおりまして、もし私が同様の立場になるようなことがあったらまさに半狂乱になるという大変な事件であると思うわけです。  この事件につきまして、捜査当局は鋭意捜査に努力していると先日の予算委員会でお話がありましたが、外務省としてはどのように状況を把握していらっしゃるのか、そして本件につきまして北朝鮮当局と何か接触があるのか、この二点についてお伺いいたします。
  33. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 御指摘の横田めぐみさんが拉致されたか否かということにつきましては、現在までのところいわゆる確認というのはなされていない状況であると承知しておるわけでございます。捜査当局において拉致の可能性を含めて所要の捜査が進められているわけでございますが、外務省としても関係機関と連携しながら関連情報の収集にもちろん努めている次第でございます。  ただ、本件に関する具体的な対応が何であるかということにつきましては、失踪者の安全といった点がございますので答弁は差し控えさせていただきたいと存じますが、今後とも最大限努力を払ってまいりたいと考えます。
  34. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 二番目にお伺いした北朝鮮当局との接触があるかどうかについてお伺いします。
  35. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) まことに恐縮なんでございますが、捜査当局において拉致の可能性も含めて所要の捜査を進めているということと、外務省としても関係機関と連携しながら関連情報の収集に努めている、これからも鋭意努力を尽くしていくと申し上げたことで御推察をいただきたいと存じます。
  36. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 わかりました。  大変難しい問題だというのは十分承知をいたしております。しかし、申し上げましたように、極めて深刻な悲劇的な事件でありますので、今この期に及んでもまだ確認ができていないというのではいささかという感じがいたすわけであります。ぜひひとつ真剣にお取り組みをいただきたいというふうに思います。国民の安全を守るべき政府がその責任を果たしていないということにもしもなれば重大な問題であります。  例えば、米国の国民が同様にフロリダの海岸から拉致されたなんということになれば、恐らくもう大変な米国の反応があると思うわけです。どうかひとつ、難しい問題でありますのでもちろん慎重であることは必要であるわけでありますが、ぜひ真剣にお取り組みをいただきたいと思うわけであります。  次に、日朝交渉が今中断をいたしております。この日朝交渉の中断はこのままにしておいていいはずはありません。この日朝交渉の再開について外務省当局はどのようにお考えでございますか。
  37. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 日朝間の正常化交渉は、御承知のとおり、八回目の交渉で中断しているわけでございますが、当然のこととしまして、私どももこれを再開するためにどういうふうにやったらいいか、その段取り等につきまして北朝鮮と接触はしております。しかしながら、それは具体的にどういうことかということにつきましても従来からずっと御答弁を控えさせていただいておりますのでひとつ御了承いただきたいと思いますが、そのような努力はしております。
  38. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 今の外相の御答弁、それから先ほどの局長の御答弁で推察をしてくれというお話でございます。もう十分、十分というか推察ができないわけではありませんが、秘密裏に恐らく何らかの折衝があるものと推測をいたしておるわけであります。これはなかなか国民の目に触れないところでということもあろうと思うわけでありますが、冒頭申し上げました事件は極めて深刻な問題でございます。重ねて申し上げますが、ぜひ真剣にお取り組みをいただきたい。  実は、きのうの新聞に韓国と朝鮮の航空協議がバンコクでなされているという報道がありました。韓国は北朝鮮と軍事的に対立している。双方が軍事的に対立しておる国でありながら航空交渉を第三国でやるというのは、やっぱりこれは外交であると思うんです。ぜひそういったことで御努力をお願い申し上げたいと思います。  また、重ねての質問でありますが、先ほど申し上げました横田めぐみさんの事件につきまして韓国から日本照会があったという報道がございます。本件は、平成六年に韓国に亡命をした北朝鮮工作員の供述に基づいて発覚をして、昨年、月刊誌に報道されたわけであります。この件について韓国政府から日本政府に対して平成七年に照会があったという報道がございますが、この事実関係はいかがでございますか。
  39. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 韓国の当局と日本の当局との間に具体的にいつ、いかなる折衝が行われたかということについて、これまた大変恐縮でございますが、事柄の性質にかんがみ私どもとして明らかにできないわけでございます。  ただ、先般政府から質問主意書に対して提出させていただきました答弁書の中で、この横田めぐみさんの件については、「御指摘報道」、すなわち委員が今示されました現代コリアの報道でございますけれども、「御指摘報道には、その時点で接したところであり、その内容を踏まえ、今後適切に対処してまいりたい。」というくだりがございます。また恐縮でございますが、今申し上げたところからこの点もお読み取りいただきたいと存じます。
  40. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 先ほどと同じ趣旨の御答弁でありますが、実は私も今この問題で質問をさせていただくというのにはいささかちゅうちょがございました。局長おっしゃるように、本人の身柄の安全にかかわる問題であります。報道が盛んに今なされておるわけでありますが、もちろん万が一こういったことで本人の身柄に危険が及ぶようなことがあればという重大な危惧があるわけです。  先ほど推察というお話がございましたが、どうかひとつこれに関しては、秘密交渉でも秘密折衝でも結構でございますので、ある日突然どこか世界の街角で拉致された人が保護されるというようなことがありますように、そういう秘密に交渉されるというのも外交のプロのわざの一つだと思いますのでお願い申し上げたいと思います。  なお、これは質問ではありませんが、我が国には北朝鮮と極めて友好関係の深い政党があるわけです。こういった政党の皆様方にも御尽力を賜りたいというふうに申し上げたいと思います。  続きまして食糧事情についてでございますが、北朝鮮の食糧事情がどうなっているのか、三月までもたないとか、いや六月に危機だとかというお話がいろいろ報道されているわけであります。  昨日の予算委員会の外相の御答弁で、難しい状況にあるのは確かだが、確たるものはないという御答弁でございます。しかし、テレビでは一日何グラムの配給があるとか何カロリーの配給があるというような報道がなされているわけでありますが、外務省は北朝鮮の食糧事情についてどのように把握をしていらっしゃるのか。
  41. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 北朝鮮の食糧事情につきましていろいろな報道がなされている、その中には計数的なものが入っているのも私ども十分承知はしております。しかし、そういった情報も区々でございまして、いろいろでございまして、なかなかその実態が掌握できないというのが状況でございます。  一、二例を挙げますと、北朝鮮自身が明らかにしている計数としては、水害対策委員会というのが発表したことがございますが、九六年の北朝鮮の穀物生産量は約二百五十万トンであると。そしてまた、昨年末の時点での食糧の在庫量は二十四万トン余りだと、こういうことを明らかにしております。  それからまた、一方韓国の、これは政府筋だと思いますけれども、の推定でございましょうか、それでは九六年の穀物生産量は三百六十九万トン、そして需要量は六百七十七万トン、そして不足量は約二百万トンではないか、こういうふうな推定をしている。さらにまた、これは政府ではございませんけれども、生産量は三百万トン弱で、不足分は百八十万トンぐらいではないか、こういうふうにいろいろ見方が分かれておるところでございます。  また、配給量につきましてもいろんな話がございました。最近ではもう一日百グラムしかないという話もございますし、昨年の段階でございますと、例えば軍人に対しては規定量が、パイロットなんかは八百グラムでしたか、一般の兵士で六百グラムだとか、それがかなりカットされているとか、いろいろな報道がなされておりますけれども、いずれにしても確たるところはわからない、しかし深刻な状況にあるということは否定できない、こういうことでございます。
  42. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 北朝鮮の食糧事情については極めて強い懸念があるという国内の報道がたくさんあるわけでありますが、北朝鮮の食糧事情が日本安全保障に極めて重大にかかわってくるというのは申し上げるまでもないわけであります。なかなか中をのぞけない国であることは確かでありますが、極めて国民の不安の強いところでありますので、極力正確な情報の収集に努め、今いろんな報道がなされておりますけれども、極めて不確かな部分も多いと思います。ぜひひとつ正確な情報国民に提供していただくように御努力をお願い申し上げたいと思います。  続いて、WFPの拠出の問題でありますが、政府は拉致事件等いろんな理由でWFPへの拠出を先送りしたという報道がございました。しかし、WFPについては米国は一千万ドル、韓国は六百万ドルの拠出をするという表明がなされたという報道がございました。もちろん、拉致事件ということは重要な要素ではありますが、この間潜水艦を侵入させられた韓国でさえも六百万ドルを拠出しようということでありますので、WFPへの拠出というのも私は日本は積極的にやらなければならない立場ではないかと思うわけでありますが、この点についてお伺いいたします。
  43. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 私どもはこの拉致の疑惑を直接米支援とリンクしているわけではございません。私どもがいろいろな場で申し上げてまいりましたのは、やはりこういった疑惑がある、あるいは昨日の当委員会でも御指摘がございましたが、例えば日本人妻の問題なんかもある、そういった問題について何らかの解決あるいは解明についての進展も見られないままに人道問題だからといって援助しろということについて我が国国民の中には釈然としないお気持ちがある、それもまた事実であるということを申し上げているわけでございまして、直接リンクしているわけじゃ当然ございません。  それから、さてそれでは食糧支援をどうするかということでございますが、まず基本的に申しまして、我が国と北朝鮮は国交関係がございません、正常化交渉がとんざしておりますから。そういった国との間の例えばバイの援助あるいは経済協力、あるいはマルチの場合であってもかなり大きなものにつきましては一般的には行われないというのが北朝鮮に限らず通常の形でございます。  例外的に行われるというのは、やはり人道的な観点からする緊急的なものということで理由づけができる、そういうことで対応しているということでございまして、一昨年あるいは昨年行われました北朝鮮に対します米の援助もそういった水害であるとかその他の天災による異常な状態である、本当に緊急なものである、これは人道上ほうっておくわけにはいかない、そういうことでしたわけでございます。  現在の北朝鮮の情勢を見ておりますと、先ほどの食糧事情は我々も十分な情勢は把握しておりませんけれども、韓国あるいはWFPを初め、いろいろな国際機関等々とも情報の交換をしております。そういった中でいろいろ推論してまいりますと、これはやはり一時の天変地異に基づく本当に一回限りの緊急の状態というよりは、むしろ食糧生産計画全体あるいは経済運営全体がうまくいかなくて構造的な問題になっているんじゃないかというふうに考えざるを得ない。もし、そういうことになると、これは緊急な、いわばそのとき限りの、その問題に対応するためだけの、しかも人道的な見地からということでは説明し切れないのではないか、むしろ恒常的に協力をしていかなくちゃならない、こういうたぐいのものじゃないか。そうなると、国交関係のない日本としての経済協力の観点からいって、どういうふうに考え、それを我が国国民にどう理解していただくのだろうかということも考えなくちゃいけないということがあるわけでございます。  もちろん、それだけじゃなくて、やはり北朝鮮が食糧の窮迫ということをきっかけにいたしましてさらに困窮の度を深め、そのことが不測の事態を招くということになると、この地域全体、我が国も含めて安全保障観点から一体どう考えなくちゃいけないかということも我々はよく認識しております。その観点からもいろんな考慮もしなくちゃいけないこともよく承知しておりますが、そういったところをどう考えるかということでいろいろ思案しているわけでございます。  もとより、WFPの先般出されたアピールにつきましては、これは形の上では、建前では緊急アピール、人道的な観点からでございますけれども、今言ったようなバックグラウンドがございますから、それとの関係をどう考えるのかということでございます。  なお、御承知のとおり、この問題につきましては国連の人道問題局もミッションをもう送ったのだと思いますけれども、国連もいろいろこれから検討して何らかのアクションをとると思いますし、そういったことも見ながら慎重に検討してまいりたい、こう考えている次第でございます。
  44. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 私が申し上げましたように、WFPへの拠出についてはいろんな問題とは別個に積極的に関与すべきであるというふうな観点で申し上げたつもりでありますが、去る三月十日、予算委員会の外相の御答弁で、人道上疑わしい問題がありながら、全く別の人道上の見地と言われても釈然としない気持ちがあり、慎重に対処するという御答弁があります。私は非常にリスクの多い御判断ではないかなと思ったわけでありますが、今の外相の御答弁でリンクさせないということの御答弁がありました。国民感情としては当然人道上の問題、拉致事件等の人道上の問題がありますので釈然としない気持ちは十分わかるわけでありますが、それとリンクをさせるというのは私は極めて危険な感情ではないかと思うんです。  国際ルールが通用する国であれば私はそれでいいと思うんですが、なかなか国際ルールが通用しにくい相手国であります。北朝鮮の自力回復が今のところほぼ絶望的であり、かつソフトランディングもかなり難しいということであれば、たとえ独裁的であり非人道的であっても、最低限の範囲でこれを支えるのも一つの選択だと思うんです。幾ら隣の家が気に入らないといったってやっぱり隣の家が火事になると大変です。もしも半島有事というようなことになれば、これはもう東アジアでは最大のビッグバンになるわけであります。当然軍事上の問題、それから難民の問題等々で恐らく日本は耐え切れない負担を強いられると思うわけです。  重ねてお伺いいたしますが、三月十日の人道上疑わしい問題がありながら云々という御答弁ではありましたが、もちろん拉致事件というような人道上の問題は追及するが、食糧問題は食糧問題として人道上の問題として対処するという理解でよろしゅうございますか。
  45. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 予算委員会の御答弁を若干敷衍して先ほど御答弁申し上げたつもりでございますが、釈然としない思いが我が国国民の中にある、その事実を無視することができないというのが一つあるわけでございます。しかしながら、だからといって、それと直接にリンケージということを考えるわけではないということでございます。  先ほども言いましたように、安全保障上の関係あるいは国交関係がないということ、それから国連機関としてもいろいろなアクションをまたさらにとろうとしている、そういったこともすべて総合勘案しながらこれから検討していこう、こう思っております。  なお、WFPのアピールは、物量ベースに直しますと総体としてたしか十万トン相当だと思います。そして、北朝鮮の食糧の不足量は、先ほど申しましたように、いろんな見方がございますけれども、いずれにしてもけたは一つ大きなけたになっておるわけでございます。そういったことも勘案しながら、どういうふうに考えるのか、対応していくのか、こういうことだと思います。
  46. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 半島有事の際の難民対策のプランということでお伺いしたいと思うわけであります。  先日、難民対策についてガイドラインとは別枠で日米共同行動を整備するようにという要請が米国からあったという報道がございましたが、この点について御説明をいただきたいと存じます。
  47. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 日米防衛協力のための指針の見直しはことしの秋に終了することを目途に作業を進めているところでございます。  この見直しの作業におきましてはさまざまなケースを念頭に置いて研究、検討が行われているところでございますが、見直し作業というのは特定の国だとか地域を念頭に置いているものではございませんし、委員今御指摘のような朝鮮半島の危機の際の難民対策について別枠の協議をするとか、これについて特別に何かをしようとかいう提案が米側から行われたという事実はございません。
  48. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 先般の新聞にそのような報道がありましたが、今そういう要請は米国側からなかったというお話でございます。しかし、あってもなくても私はやっぱり協議すべきであると思うんです。難民問題がガイドラインの内側か外側かという問題もありますが、しかし私はガイドラインの別枠でこの問題については取り組むという姿勢があってもいいのではないかと思うんです。  今ヨーロッパ諸国はボスニアやチェチェンの問題に対して非常に積極的に取り組みをいたしております。ただでさえ国内で移民問題で苦労している各国は先天的に難民問題に対する恐怖があるわけです。我が国もそのような事態がないことを祈りますが、そのような状態にあっても戸惑うことのないように、やはり一定の準備、備えというものは必要ではないかというふうに考えまして、申し上げましたようなガイドラインの枠外であっても、そういった協議は必要なことではないかというふうに判断をいたしておるわけであります。  次に、中国政策、特に台湾問題についてお伺いをいたします。先ほど武見委員からも質問がありました。実は私の質問通告と相当ダブっておりますので、ダブった部分を取り除きましてお伺いをいたします。  外務省の地図に台湾という島が載っているかどうかわかりませんが、外交上は台湾というのは存在しないということになっております。しかし、日本台湾間の交流は年間百四、五十万の往来がありますし、三百五十億ドル以上の貿易があるわけです。先ほど武見委員もおっしゃいましたように、日台関係というのは東アジア安全保障に極めて重大な影響を持つ関係であるわけです。  これも新聞報道でありますが、先日の新聞報道で、この新聞は先ほど委員部の方にも差し上げましたが、米国における台湾関係法、米国には台湾関係法という法があるのだそうでありますけれども、米国における台湾関係法と同様の法を日本でも制定されたいという台湾の希望があるという報道がなされておりますが、この点についていかがでございましょうか。
  49. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 私ども台湾との間に政府間のコミュニケーションのチャネルは持たないわけでございますが、亜東関係協会交流協会ルートを通じましても、委員が今御指摘になられましたような台湾関係法類似の法律を日本において制定してほしいという要請に接したということは私は承知しておりません。
  50. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 しかし、先ほどお話がありましたように、日台関係というのは東アジアにおける重大な影響を持つ二国間関係であります。一定基本的な方針というものは明確にする必要があるのではないかというふうに私は考えます。  昨年の台湾の総統選挙の際に台湾海峡緊張が高まった際、米国は空母を派遣して、明らかに米国は台湾サイドであるということを明確に表明したわけです。もちろんアメリカの、日本もそうでありますが、中国政策は一つ中国というのが基本的なスタンスであります。しかし、実際面では明らかに二つの中国というものを明確にしておる。極めて私は常識的な判断ではないかと思う。私は、もちろん日本の現在の中国政策は中華人民共和国が基軸であることは間違いございませんが、日本でもそういう台湾に関する方針も明確にしておく必要があるのではないかというふうに思うわけです。  次に、先ほど台湾航空機の関西空港乗り入れについて武見委員の御質問がありました。御答弁は先ほどのとおりであると思うわけでありますが、私はどうもおかしいと思うんです。例えば北京の飛行場に大韓航空が乗り入れをしております。同様に北京には朝鮮民航も乗り入れをしております。しかし、これは恐らく中国では問題になっていないと思うんです。あくまでも航空路の開設というのは国家の主権にかかわる問題であります。国家の重大な主権が他国に干渉されるというのはいささか問題、いささかどころか大変な問題があると思うんです。  先ほど局長の御答弁で、関空の乗り入れについて中国理解を得ながらという御答弁がありました。私は日本の航空路の開設に外国政府理解を得ながらというのはいささか筋が通らない不自然なことではないかと思うんです。もちろん、日中航空協定取り決めはありますが、この点についていかがでございましょうか。
  51. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 台湾との間の航空関係も一九七五年、それから一九九四年、そして今回というふうに日本台湾の間の実務関係の一環である交流の増大ということに見合ってだんだん進展してきているというふうに私たちはとらえております。私たちは、今回の台湾航空会社関西空港乗り入れにつきましても、これを現実の交流のニーズに見合った実務関係の一環として確保していくべきものだと思っております。  ただ、そうした実務関係は、前の御答弁のときにも申し上げましたが、円滑で安定した基盤の上に行われるということが非常に重要であると思っております。そういう安定的で円滑な基盤の上に確保するためには、必要に応じて中国理解を得ながら進むということが従来の日本中国との間の航空関係、それをめぐるやりとりということから大切なことであるというふうに認識して今のような対処をしてまいっておるという事情がございます。
  52. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 申し上げましたように、航空路の開設、設定というようなことは国家の主権にかかわる問題であります。その国家主権が他国政府理解がなければ執行できないというようなことであれば、私は日中航空協定というのは明白な不平等条約であると思うんです。  日中航空協定を見直しするというおつもりはございますかどうか。
  53. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) お言葉ではございますけれども台湾我が国との間の関係というのは、日中の共同声明というものを踏まえまして、あくまで非政府間の実務関係として維持し、あるいはそれを発展させていく、こういうことでやってまいったわけでございます。  そういった中で、先ほど委員自身も御指摘になりましたけれども、貿易も七二年の時点では十五億ドルぐらいであったのが今は四百三十億ドルを超えるというような水準になっておりますし、また人の往来も年間百五十万人というふうなレベルになっている。そういった意味で申しますと、双方の関係者の大変な御努力はもちろんあるわけでございますが、全体として見れば実務関係は、実務交流は順調に発展しているんだと思います。  そういったものを今後とも維持し、安定的に推移させていくという観点から申しますと、航空協定、航空問題のような事柄につきましては、やはり中国理解を得ながら進めていくということが実務交流全体の発展という観点から長期的に見ても望ましいんじゃないかと考えますので、今この事柄の関連において日中航空協定そのものをどうするかということは政府としては考えていないところでございます。
  54. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 時間ですので、終わります。
  55. 田英夫

    ○田英夫君 本日議題になっておりますアジア太平洋郵便連合憲章、このいわゆるアジア太平洋という地域はどの範囲なのか。日米安保条約の極東の範囲というのを一時随分議論したことがありますが、これはそんなかた苦しいことではなくて、事実上どういう範囲の国々が参加していると考えたらいいんでしょうか。
  56. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) アジア・太平洋郵便連合の憲章そのものに書いてございますが、この連合への加盟国は万国郵便連合の加盟国であって、「その全領域がアジア、オーストラレイシア、メラネシア、ミクロネシア又はポリネシアに所在するもの」となっております。また、この憲章の適用上、「「アジア」とは、イラン以東のアジア地域」を指すという定義がなされております。
  57. 田英夫

    ○田英夫君 まさにこれは憲章の中にうたってありますから範囲が実は明快なわけですけれども、例えばアメリカは入っていない、ロシアも入っていない。ある意味で当たり前なんですけれども日本人の感覚で一般論としてアジア太平洋と言ったときにアメリカは入るでしょうか。これは外務省、どなたでもいいです。
  58. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) アジア太平洋というのが具体的にどういう地域を含むか、きちっとした確定的な、しかも普遍的に適用されるような定義があるわけじゃないと思います。それぞれの条約であるとか、あるいはそれぞれのフォーラムであるとか、そういったことに応じて範囲は変動し得るものだというふうに考えております。  さて、そういったときに一般的にアメリカがどうかと言われますとなんでございますけれども、例えばアジア太平洋と言ったときに今一番日本の国の中でもぴんときますのは、例えばAPECなんというフォーラムがございますが、これではないかと思います。この場合にはアメリカはもとよりのこととして、アジアの東アジアから東南アジアの諸国、あるいはオセアニアの諸国、そしてアメリカ、カナダ、あるいは中南米の一部の国というのが入っておりますので、広くとらえればアジア太平洋と言った場合にはそのぐらいの地域を包含するんだと思います。  しかし、この郵便連合のように、事柄によりましてはその趣旨あるいは目的に応じて、その中のさらに限定された地域を対象にすることもあるんだというふうに認識しております。
  59. 田英夫

    ○田英夫君 外務大臣が言われたとおりだと私も思っているんです。  そこで、APECはむしろアメリカがかなり積極的に指導的な立場に立ってやっている。これは太平洋ですから、太平洋に面しているということになれば、中南米の国でも既に入っているところもあるわけですから、当然と言えば当然なんです。そうなってくると、場合によっては性格がぼける。APECを一つの例にとってみますと、特にASEANの中のマレーシアのマハティール首相の姿勢などは率直に言ってアメリカを余り歓迎しないというか、EAEC構想というようなものを打ち出して純粋アジア主義みたいな感じのものを出していく。そういう中で、日本政府はやはりAPECという枠組みはいいとお思いですか。
  60. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) おっしゃるとおり、こういった多国間のフォーラム、しかもグローバルなものならともかく、リージョナルなものにつきましては、なかなかそれの性格づけであるとか、あるいはその活動をきちんとやっていく上でどういつだ地域あるいはどういった国々を対象にするかということで苦労することがあるのは否定できません。  APECの歩みを見てまいりましても、それはいろいろなことがあったんだと思います。おととしは大阪で、そして去年はマニラで開きましたが、回を重ねるに従って、やはりアジアという今の世界の成長センター、そしてまたアメリカ大陸もそれに次ぐ大きなバイタリティーを持った地域だと思いますが、そういった中で貿易・投資の自由化を初めとしていろんな経済面の協力関係がその後うまくかみ合ってきたんじゃないのか、これを大切にしなくちゃいけないな、こういうふうに考えている次第でございます。  もとよりその中で、委員も今御指摘になりましたようなEAECをどういうふうに考えるかというような問題も時折出てまいります。この問題につきましても、実はASEAN側の説明は、これはあくまでAPECの中の一つの存在であって、決して太平洋の中に壁をつくるというようなものじゃないんだと、そういう説明がございますし、また当初この構想が出ましたときは、御指摘のように、確かにアメリカ側から反発と申しましょうか、あるいはそれに近い気持ちの表明があったというのは否定できないわけでございます。その後、ASEAN側もただいま申しましたような姿勢を明らかにしてくるということで、アメリカの方も、EAEC構想が提唱された当初に比べますと、今は比較的柔軟な対応といいましょうか姿勢を示しているというふうに考える次第でございます。
  61. 田英夫

    ○田英夫君 APECの活動を考えたときに、これはこれで今の状態でも本当にお互いに理解し合ってやれば非常にいい一つ枠組みだろうと私も思います。  そのときに、一つはアメリカの存在、アメリカの姿勢といいますか、積極的なのはいいですけれども、これが余りにも過度にアメリカの国力をあるいは経済力をという姿勢が見えますと反発を買うし、いけないと思うんです。  もう一つ、キーマンならざるキー国というので言えば中国ではないかと思うんです。中国も、マニラ会議のときの姿勢などは、積極的ではあるけれども排他的ではないという意味のまことにいい姿勢で、従来の中国よりさらに柔軟な姿勢であったんじゃないかなと思います。  つい先日、中国へ社民党代表団で参りまして、江沢民総書記ともかなり長時間話す機会がありましたが、非常にそういう意味中国は柔軟に対外的にやっていくと。例えば、いわゆる南沙諸島などの領土問題というようなことが紛糾するのではないかと心配したんですけれども、この点はむしろ江沢民氏の方から触れまして、お互いに理解し合って非常に今いい方向に進んでいるという発言が出てきました。むしろ、そういう状況を助長していくといいますか、これが一番いいんじゃないかと思います。  つまり、APECの中のあれで言えば、アメリカは過度に自己を主張しない、中国はAPECの枠組みの中で円満に溶け込んでいく、こういう状態になれば一番いいと思うんです。  そういう中でもう一つ、いわば大国と言っていいかどうかわかりませんが、日本の姿勢というのが次に問題になると思います。ASEANの国々などへ行くと非常にこのことを発言します。ですから、注目されていると言っていいかもしれませんが、外務大臣としてはその点はどういうふうにお考えになりますか。
  62. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 委員指摘のとおり、APEC、あるいは政治面で言えば例えばASEAN地域フォーラムだとか、そういうものもございます。そういったアジア太平洋を舞台とするいろいろな多国間の会議に出ておりますと、おっしゃるように、中国の姿勢がここ少し変化してきたかなという感じは確かにございます。  かつては、発言します場合にも、中国自身の利害に直接に関係する問題についてはきちんと発言していくけれども、それ以外の問題については余り見解を述べない、そういうことが多かったわけでございますけれども、最近は、そういった多国間のフォーラム全体のあり方、あるいはそういった問題につきまして積極的に発言していこうという姿勢が見られます。そういった意味からいいますと、アジア太平洋地域における非常に有力な、しかも建設的なパートナーとしての役割を私ども中国に期待しているわけでございますが、そういった方向に進んでおるなということはおっしゃるとおりだと思います。  ただ、具体論になったら違いますよ。今おっしゃいました例えば南沙諸島の話なんかにつきましても、確かにAPEC、ARFの中でそういった問題を関係国で話し合うという場が昨年あたりできたのは事実でございます。しかし、それがまた二国間の具体的な問題になりますとそれぞれ譲れないところがあるというので、そうとんとんといくわけじゃないというのがありますが、大きな流れとしてはそうだと思います。  それからまた、米国についても圧倒的な力を今でもやはり持っていると見ていいんだと思います。しかし、そういったことはある程度自制をしながら、地域全体の、また地域内の国々の協調行動という姿勢で臨むということが望ましいことだと思っております。  もとより、そういった中で日本の果たす役割は大切だと思っております。我々自身アジアの諸国、またアメリカを初め太平洋に面した西半球の諸国とも密接な関係を持っておりますので、情報のかけ橋なんという言い方を昔一時期したことがございますけれども、我々は別にかけ橋とまで考える必要はない。本当にこの地域のインテグラルな、しかも重要な一国としての役割をきちんと果たしていかなくちゃいけない、こう考えております。
  63. 田英夫

    ○田英夫君 もう一つ江沢民総書記の発言の中で、むしろ驚いたのでありますが、朝鮮問題について話している中で、南北朝鮮の平和のためなら中国は何でもしますという発言がありました。もちろん、黄長燁書記の亡命問題で当面大変苦労しているということもありましたけれども、あの問題だけではなくて、話の流れからすると、以前ならば南北両方のという言い方は余りしなかったわけでありますが、今は両方と交流をしているということがもちろんあるからでしょうけれども中国の最高指導者がああいう言い方をしたというのは大変私も驚きましたが、いいことだと思います。  ですから、どうも中国は明らかに国際情勢の中で姿勢を変えつつある。これに比べると北朝鮮は従来からの非常にいわば閉鎖的な姿勢というものを崩していない。中国外交の枢要な地位にある人と今度話しましたときにむしろ言われましたのは、あの民族は大変誇り高い民族だから、その誇りを傷つけるようなことをすると失敗しますねと。私自身もその失敗をしたことがあります。北朝鮮の人に対して過度に要求をしますと必ず拒絶反応が来るという体験がありますので、さっきから朝鮮問題も出ておりますが、北風と太陽の話の例えで言えば、太陽的政策の方がむしろいいのではないかなという感じを持っておりますが、時間が参りましたので、これで終わります。  ありがとうございました。
  64. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 このたびのように郵便連合憲章が一段と高度に整備されますことは、真の世界平和実現への一里塚と考えまして心から賛成であります。  同様に、万国郵便連合の憲章に基づく限定連合は世界のほかの地域にどのように進んでいるのか、お尋ねしたいと思います。
  65. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 万国郵便連合に基づきます限定連合は世界各地域にございます。アジア太平洋のほか、欧州、北米、ラ米、アラブ、中央アフリカ、アフリカ、汎アフリカ、北欧、バルト諸国など合計十三の限定連合が設立されてございます。
  66. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 今インターネットによる個人間の通信が国境を越えて発展して、ある意味では無政府状態の局面をも現出しているようでありますが、場合によっては悪質な犯罪の温床にもなっているようであります。  このように、文明の進歩の結果、法律では必ずしも効果的に制御できない状況が国境を無視した形で展開することはある意味で歴史の必然的現象かもしれませんが、このような時代には法制の整備はもちろん必要でありますけれども、これまでよりもはるかに高い国際モラルが要求されているのではないかという気もいたします。大臣の御所見を伺いたい。
  67. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) いつもながらの委員の哲学的洞察も含めた御質問でございますので、よくそれにお答えできるかどうか自信はございませんけれども、おっしゃるとおり、最近、国際的な交流もあらゆる意味で国境を越えて幅広く、また大変な小回りをもって行われております。特に、情報の面での技術の進歩、それの活用というものを含めてまいりますと、これまでの我々のといいましょうか人間活動のあり方というものを基本から変えていくということも想定されるわけでございますので、そういった時代にふさわしい人間行動のあり方、あるいはモラルといっていいのでございましょうか、そういったものもあわせて構築していくということは大変肝要なことであるというふうに考える次第でございます。
  68. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 そこで、世界平和のために、今のところでは戦争放棄ということが日本国憲法の専売特許みたいになっておりますけれども、周知のように、現代は核兵器時代というこれまでになかった異質の時代に入っております。  戦争抑止と言うけれども、国際的発言権を強化する手段として核兵器を持つということが現在核兵器を持っていない国にとりましてもうつ然たる欲求とならざるを得ない。結局、戦争抑止ということと並んで、現実には戦争をしなくても核装備ということが国際的な発言権を強化するとすれば、これは戦争抑止には必ずしもならないという考え方も成立するわけであります。また、万が一にも核戦争になれば、過去の戦争と違って勝ち負けはない、勝ったら何か利益があるという時代ではなくなっていることは明瞭でありまして、文明の破局を迎えるわけです。これはしばしばこの委員会でも申し上げました。  このような時代に人類が心から安心できる平和を迎えようとするならば、すべての国が戦争放棄する以外に手段がない。日本は太平洋戦争の敗北によりまして憲法を占領軍司令部の手によって強制されたという見方もあるようでありますけれども日本のみならず世界のすべての国が現実に戦争放棄を憲法に明文化すべき時代を今や迎えているとも言えぬことはないと思うんです。日本はこれを声を大にして国際的に訴えると。  当面の問題としては、これもたびたび申し上げましたが、米国と中国、さらにロシアにもこれを訴えて、この三国が世界に先駆けてこの姿勢を明らかにするということがつまり世界平和のキーポイントではないかというふうに思います。  今生きている我々はそれほど意識していないかもしれませんが、後世から見れば、現代の人類は実に容易ならざる歴史段階を通過中であるというふうに思いますので、大臣のお考えはもうよくわかっておりますけれども、一段とこの点の国際的な影響力を十分に発揮していただくようにお願いしたいと思います。  そこで、こういうときになると一国だけの発言権が強くなるのでは本当の平和は得られない。結局、国連の民主主義的な完成が絶対に不可欠だと。安保理常任理事国に今度日本、ドイツと並んで途上国の代表が入るということが今問題になっているように聞きますけれども、こういうことについての近い将来の可能性といいますか、どういうことになりそうなのか、お尋ねいたします。
  69. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) これからの世界において国連の果たす役割というのは確かに重要なものがあると思います。もちろん、一方においてその限界もございます。そういった中で、我が国といたしましても国連の場におきまして常任理事国としての役割を果たす、こういうことに諸国の賛同を得られるならばそのように対応してまいりたいと考えている次第でございます。  御承知のとおり、国連ができまして五十年という時期でございまして、国連のあり方を基本からいろいろ見直そうという動きがございました。そういった中で、我が国といたしましては三つの面の国連改革というものをバランスのとれた形でやっていこう、こういうことを主張してきたわけでございます。  具体的には、一つは財政の改革、いま一つは経済であるとか援助の問題、開発の問題等も含めてそういった経済社会の問題、これから国連がどういう展開をするかという問題、そしていま一つは国連の主要な役割の安全保障を中心的に担当してまいります安全保障理事会の構成、あり方というものを五十年の国連の歴史を振り返って、また新しい時代を展望しながら新時代にふさわしい姿にしていこう、こういうことでやってまいったわけでございます。  各国とも安保理につきましても改革の必要性は認めているわけでございますが、さてそれを具体的にどうするかということになりますと、それぞれの地域あるいは個別の国の利害が非常に絡んでまいりまして、なかなかうまい解決が出てこない。どうも下手をしますと当面の財政問題の改革だけが進みまして、安保理の改革は先送りされるというおそれも出てきた、そういう情勢にございます。  我が国としては、これまでの国連全体を眺めての安保理改革の必要性、そして我が国自身がそこで役割を果たしていこうという希望、そういったものを踏まえまして、何とか安保理の改革もモメンタムを失わないようにということでまた一段とここでそういった働きかけを強化しているところでございます。  先般来日されました新しい米国の国務長官、オルブライト女史ともお会いしましたときに私からも直接そういった点についてお話をいたしましたし、またその後アメリカも、国連の場におきまして、基本的に我が国立場、主張というものも十分理解しながらいろいろな動きをしてくれているところでございます。もとより我が国自体としてもいろいろな働きかけを各国に対してしております。
  70. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 そこで、これもたびたび申し上げた問題でありますけれども、平和という問題と裏腹に、二十一世紀は飢餓の世紀だとアメリカのワールドウォッチが声を大にして訴えておりますけれども、この見解は人類が持っている農業の前途を必ずしも的確にはとらえていない。悲観に過ぎていると思いますけれども、しかし今までと同じようなことをやっている限りにおいてはワールドウォッチの展望は非常に可能性がある。そういう状況のもとで日本の農業の現状はまことに寒心にたえない。  例えば、穀物の自給率は昨年の状況で二七%ぐらいです。二百数十万トンの穀物に換算して輸入した肉類を計算しますと、大体二〇%ぐらいの自給率になるわけです。こういう国は動乱の途上国以外には世界じゅうにまずない状態であります。農業の状態は、農業後継者は農家百二十軒に一人しかいないと、老齢化が進んで耕地が荒れていく、こういう状態はいまだに是正される気配がありません。  大分前の話でありますが、フランスの元大統領のドゴール将軍の有名な言葉に、すぐれた軍人ですぐれた政治家であったこの人が、食糧の独立がなければ民族の独立はないということを言ったのは、やや古典的でありますけれども、今日の日本にとって非常に重大な警告ではないか。  もちろん、一〇〇%自給などということは必ずしも現実的でありませんけれども、今後の国際状況考える上においては穀物八〇%くらいの自給は欲しいし、またやり方によっては可能性がないわけではありません。いざとなればゴルフ場とか牧草畑を利用してバレイショとか麦類をつくる。イギリスなどはもう当然そういうことを計画して、ふだんから国民に周知徹底させております。日本ではそういうことが全くできていない。  これは外務省に殊さら申し上げることじゃなくて、農水委員会で言うことでありますけれども、例えばお米の輸入でミニマムアクセスは六年間に三百四十一万トン以上を強制的に買わされておって、米が余って減反を七十万ヘク以上もやっている日本がそれだけのものをまた買わされている。こういうことが歴史の大きな流れの中で日本の農業は日本の勝手にやれない、こういう状況になっておるわけでありまして、二十一世紀の初めになると必ずこのミニマムアクセスの段階を通り抜けて関税化、自由化、こういう方向にいくことはもう目に見えております。  そういうことになりますと、WTOの問題もありまして、農水省と十分に連携をおとりになって、外務省がむしろ国際的視野は農水省より広いわけでありますから、適正なアドバイスをやっていただいて、この難局を乗り越える計画さえ立てれば、農産物の輸出国からしつこく強制されても、ちょっと待てと、我々はこういう計画で進むから何年後にはどれぐらいの関税化、あるいはどれぐらいすれば自由化も受けて立つということが明瞭に返事できるだけの計画があればそう慌てることはないと思うんです。もちろん、農水省は私どもの言い分はよく承知しておられますけれども、現実にそれが動くということについては非常に不安がございます。  現在の日本の農業というのは、今申しましたように、二次、三次産業に比べて格段に生産性あるいは従事者所得が低いために若い世代が圧倒的に農業外に出ていってしまう、こういう形でありまして、農家としては余儀ない形で兼業をやるわけです。大体農家の八割が第二種兼業。第二種兼業というのは農家ではありません。農家としての所得の九割までが農業以外の仕事の収入でありまして、農業所得は一割しかない。そういう農家をも含めて農業政策をやっているのが現状です。自給率を高めようと思えば、こういう農業に生活をかけていないアマチュア農家に大きなウエートをかけた農政をむしろプロの農業者を育成するという形に前進しませんと前途に希望は全くありません。  論理としては農水省もよく承知しておるのでありまして、それを実現するには大きな土地変革をやらなければなりません。こうなりますと、問題は農水省だけの問題じゃなくて、農地以外の土地の問題についても、この間のバブルによる経済の大混乱も、我々が今や農業以外の局面においても重大な土地変革の歴史的な課題を抱えているということは政治全体の問題でございます。これも今御返事を希望するわけではありませんが、閣議のときなど、国際的な視野から見た農業のあり方あるいは土地問題のあり方について十分前途を的確に見た政治が展開できますように重ねてお願いをいたします。  終わります。
  71. 立木洋

    ○立木洋君 今議題になっておりますこの連合条約それから一般規則等についてはこれまでも何回もお尋ねする機会があったわけであります。今回の場合には、この条約を一般規則に追加して、そして一本化するというものを中心にして若干の訂正が行われるという内容で、内容的には賛成であります。ですから、特に改めてこの機会にこの問題でお尋ねしょうということではなくて、若干別の件でお尋ねをさせていただきたいと思うんです。    〔委員長退席、理事高野博師君着席〕  最近いろいろと問題になっております、きのうも取り上げました環境問題なんですが、米軍の基地の区域・施設内における環境問題がいろいろ新聞で報道されております。いわゆるPCBの問題やカドミウムの問題、そういう有毒物質の検出が問題にされておりますので、きょうはそのことについて少しお尋ねしておきたいと思うんです。  沖縄本島の北部にある米軍海兵隊の偵察部隊の跡地、恩納村の通信所の跡地で、去年の三月に汚水処理槽の汚泥からPCBとカドミウム、水銀など十一種類の有害物質が検出されたという報道がありました。これに対して日本政府は、返還施設の原状回復は日本側の責任だといって日本側がこれの処分や除去を行っているというふうに報道されていました。  私は、これが事実だとすれば、これはちょっとおかしいんじゃないかという気がするんです。日本では、PCBについては、一九七一年に環境基準として土壌や水質から検出されないことということにされましたし、七四年には製造が禁止されております。  そして、米軍との間での地位協定の内容、第三条の三項でも、「施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行なわなければならない。」というふうに規定されておりますし、十六条ではアメリカ側は日本国の法令を尊重するということにされているわけであります。ですから、米軍が日本にある施設・区域日本の国内法に沿って正しく使用しているということであるならば例えば話し合いで日本側が処理するというふうなことがあるかもしれませんが、しかし現実にアメリカ側が事実上適正に使用するという形に反して、こういう大変な有毒物質、十一種類もの有毒、有害物質が出るというふうなことになった責任は当然米側にあるんではないか。だから、米側に処理とそれを除去する責任があるんではないかというふうに考えるんですけれども、この点はどういうふうな事実関係になっているんでしょうか。    〔理事高野博師君退席、委員長着席〕
  72. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 旧恩納通信所の汚水処理槽における汚泥の検査につきましては、委員今御指摘のとおりでございますけれども、防衛施設庁におきまして沖縄県当局とも十分調整の上検査が行われたというふうに承知しております。  その際、必要と認められた検査項目は、委員指摘のように、十一項目ございました。その十一項目のうち、我が国に総理府令というのがございまして、金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める総理府令でございますが、ここに一定の基準値が書いてあるわけでございます。この基準値を超えたのは水銀またはその化合物及びPCBの二項目であったというふうに承知しております。  そして今、委員、米軍につきましては我が国の法令を尊重しつつ公共の安全や国民生活に妥当な考慮を払うべきだということをおっしゃいました。それはまさしくそのとおりでございますが、日米地位協定第四条一というのがございます。そこでは、合衆国は、日本国に施設・区域を返還するときには、「当該施設及び区域をそれらが合衆国軍隊に提供された時の状態に回復し、又はその回復の代りに日本国に補償する義務を負わない。」という規定があるわけでございまして、米側は地位協定上施設・区域の返還に際して原状回復義務または補償義務を負わないということになっておりますところから、施設・区域が返還された後におきましては、個々の地主との原状回復の問題は専ら日本政府すなわち防衛施設庁が当該地主との関係で処理をしているというふうに承知しております。  そして、今この問題の処理につきましてはいろいろ検討がなされておるわけでございますけれども政府部内において適切な処理が行われるまでの間はその保管場所として米軍の施設・区域使用するということについて米側と協議しているというふうに承知しております。
  73. 立木洋

    ○立木洋君 折田さんがそうおっしゃるだろうと知っていましたよ。だけど、この問題については、国際的には有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約というのがあることを折田さんは御承知だろうと思うんです。この問題については、いずれの国も、自国の領域において、また外国においてもですが、その主権を尊重して、有害廃棄物が環境上適正でない方法で処理、使用されないように禁止されています。  この問題の条約を平成四年の十二月七日にこの外務委員会でやったんですよ。私は、この委員会でその質問をやったんです。そのときの外務大臣は渡辺さんでした。審議官が野村さんです。私がこの問題を質問したら、野村審議官がこう言いました。アメリカでもこれは議論になっておりますが、いずれにいたしましても、「在日米軍の廃棄物が環境上適正に処理されるべきというのはこれは当然でございます。したがいまして、この点については日米地位協定のもとで適正な処理が確保されるべきものである」というふうに答えられた。それで、大臣いかがでしょうかと言ったら、渡辺大臣は、条約上日本人の健康を守るということを念頭に置いて実務的にこの問題は適切に解決されるべきだ、そういうふうにしなければならないと言って野村審議官の答弁を肯定されたんです。  バーゼル条約はアメリカも調印しているんです、批准については問題がありますけれども。そうすると、国際的に違反している、これを政府が現に認めていた、その認めていたことを、今度日本が買って出てやって、条約上、地位協定の別項があるんだからそれによって日本側が肩がわりして処理をしてやるんだというふうなことはいささかアメリカに対しての思いやりも思い過ぎではないでしょうか。大臣、いかがですか。渡辺さんはそう言って答えたんですよ。
  74. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 確かに、地位協定上も、公共の安全に配慮しなくちゃいけない、あるいは我が国の法令も尊重しなくちゃいけない、そういうことは当然のこととしてあるわけでございます。したがいまして、米軍のいろんな活動あるいは行動もそのような配慮をしながら行われなくちゃいけないということは言えるんだと思います。  ただ、一般的に、そういったいわば注意義務をよく承知しながら行動しておって、しかし結果として何らかの問題が生じたときに、具体的にそれにどう対応するかという点については、先ほど政府委員から答弁いたしました地位協定の四条があるわけでございまして、これはやはり我が国政府の責任において対処すべきものかと考える次第でございます。
  75. 立木洋

    ○立木洋君 ところが、去る二月二十一日、沖縄米海兵隊のキャンプ瑞慶覧の排水管から猛毒のPCBが我が国の基準値の七万倍近い濃度で検出されました。これについては、米側と交渉して、米側が自国にそれを持ち帰って、そして自国で処理するということになったじゃないですか。この問題は米側が処理することになって、去年三月に発見された恩納通信所の問題は日本側で処理してやる。これはバーゼル条約の見地から見てもおかしいんですよ。  アメリカにこういうあれが出ております。海外の施設のための環境法ということで、アメリカの軍の法律の中で解説の文書が出されております。これは一九九五年十月十八日です。一九九五年十月十八日、国防総省は同省のすべての在外施設及び設備の包括的環境補修方針を発表した。それによりますと、施設もしくは設備内外で国防総省の諸作戦によって引き起こされた汚染の除去について規定しており、汚染が明白に健康及び安全に差し迫った重大な危険を及ぼす際には速やかに汚染除去行動をとることを義務づけている。そして、健康や安全を確保するために国際的な合意によって求められている一切の除去を行うことが米側に認められている。米側の法律でもそうなっているんです。  そして、現にことしの二月二十一日に検出された瑞慶覧では米側が責任を持ってやる。当時これは大分やり合いがあったそうですよ。新聞報道によりますと、それは人体に影響がない程度のものだとアメリカ側が主張した。しかし、日本側としては、いやそうではないと。この問題については、こういう問題が今後とも問題になるということで瑞慶覧の、御承知の北谷町の町長あるいは町議会、あそこの協議会の方々、それから県、施設庁の方々等々が行ってよく交渉して、米側がそれを責任を持って処理するというふうなことになったんです。  こういう経過から見ても、今後いろいろな米軍の基地、施設で問題になる環境保全の問題については、今申し上げましたように、PCB以外にも有毒な物質等があるということは今後問題にならないとも限らないわけですから、こういう問題についてはやっぱりきちっと米側に交渉して処置をしてもらうという態度を明確にしておくことが私は必要だと思います。そういうふうな態度をとらなければ、先ほど申し上げましたように、いわゆるバーゼル条約に反することになりますし、地位協定の精神からいっても、日本側がちゃんと主権の立場を主張してきちっと対処してもらうというふうにすべきが私は当然のことだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
  76. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 二月に起こりました瑞慶覧のPCBの件につきましては、これは文字どおり我が国から提供施設として提供し現に米軍が使用中の施設・区域において起こった事柄でございます。そして、その際には、先ほどからございますように、地位協定上も公共の安全への配慮、あるいは日本国の法令の尊重というようなこともあるわけでございますから、米軍の責任において対処していったということでございます。  しかし、恩納の通信所の件につきましては返還された施設でございまして、そのものにつきましては、先ほども政府委員が答弁いたしましたように、四条に具体的な規定があるわけでございまして、先ほども私御答弁申し上げましたけれども、もとより、提供中に米軍が使用するときに、それは一般的に注意義務ということはあるんだと思いますけれども、そういうことで注意しながら使用していた、しかし返還された後にチェックしたところ結果的に何らかの対処が必要だということになりますならば、これは四条の規定に基づいて我が国の責任において対処すべきものだと考える次第でございます。
  77. 立木洋

    ○立木洋君 池田さん、一九七三年に環境庁が入って実地調査をしているんですよ、この場所を。そのときに問題にされているんです。そして、いろいろな問題が起こっている。有毒物質があるじゃないか、これについては米側として万全の対策をとるようにしてほしいと要求をしているんです。一九七三年です。だから、その時点で米側がそれについての処理槽をつくったんですよ。そこの処理槽で起こっているんです。だから、この問題は返還されてから問題になったんではないんです。返還する前に問題が起こって、既に発見して環境庁から問題提起があった。処理槽をつくった米軍の施設の中で起こったんです。  だから、私は、その問題については、今後返還の問題等がいろいろ問題になる場合、それが返還後だからとか返還前だからということではなくて、そういう施設をきちっと環境庁が調査した結果、それを要求して改善した後で米側がつくった槽の中で起こっているということになるならば、これはだれが考えたって米側がつくった施設の中で起こっているものですから、槽の中で起こっているものですから、この問題については米側がやっぱり責任をとるべきだというふうに私は思うんです。これが私の大臣に対するお答えです。  そういう経過を考えてみますと、一九七三年の場合には環境庁がきちっと米軍の海兵隊の基地を初め各地の基地、米軍の基地、施設・区域については環境基準に基づいて調査をやっているんです。最近は、その後一回もやっておりません。確かに、日米合同委員会の中で環境部会ができて、そこでいろいろ議論されているということはありますけれども、しかし重要な点についてはやはり日本側も責任を持って、国民の生命、安全、健康等、安全を保障するという立場から、日本側としても環境庁の検査に積極的に参加するような方法も講じて日本人の生命や安全についても努力するように、私は検査を米軍の基地についても行うべきである。一九七三年までやっているんですから。  ですから、その検査を実施するということと、そういう問題、今の経過を振り返ってみても、恩納通信所に起こった問題、有毒物質の問題については米側に責任があるということは明白ですから、それについても米側ときちっと交渉して、米側の責任で改善するというふうなことを特に要求しておきたいと思うんです。  九一年にアメリカの会計検査院で発表された報告によりますと、世界で問題になった十の基地すべてで国防総省はアメリカが環境保護法を遵守していないという報告書が出ているんです。これは例を挙げたら非常に多いから私は挙げませんが、その中の筆頭に挙げられているのが日本です。  そういうことを考えますと、やっぱり基地における環境保全の問題というのは非常に重要ですから、環境に対する調査の方法をどういうふうにしたらいいのか、それから米側が責任を持てるように地位協定の立場に立ってきっちりとした交渉を求めるべきだということを私は最後に大臣に要求しておきたいんですが、池田大臣、いかがでしょうか。
  78. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 今、委員指摘のように、七三年でございますか、文字どおり環境庁のチェックがあり、それを踏まえて米側としても貯水槽と申しましょうか浄化槽と申しましょうか、そういったものを設置した。それなりに公共の安全なり環境の観点からの配慮をしたんだと思います。ただ、それが結果として今回返還された後チェックしたときには十分でなかったということでございますから、そういった意味では先ほど申しましたような一般的なそういう義務を全く無視しておった、怠っていたということにはならないのではないか。私はこのケースについては四条によって対応してしかるべきだと考える次第でございます。  それから、いま一点ございました日本側も入って環境面のチェックをすべきでないかという点につきましてはケース・バイ・ケースでございまして、先ほど御指摘のございました瑞慶覧のPCBの問題などにつきましても日本側あるいは沖縄県、そして地元の方々にもお入りいただいていろいろやりましたけれども、今後とも環境面でのいろいろ配慮をしていく上で適切に対応してまいりたいと思います。
  79. 立木洋

    ○立木洋君 一言だけ済みません。今後とも必要な場合にはやはり米軍の施設・区域内においてきちっと環境問題についても検査をするということがあり得るんだという立場日本政府としては、完全に日本側は検査も環境調査もしないということではなくて、そういうことはあり得るということだけは確認してよろしいでしょうか。
  80. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) そういうふうに日本側から検査を受けなくちゃいけないような事態が起きないように、まず米側において十分に配慮していくということを求めていくということでございます。
  81. 立木洋

    ○立木洋君 起こっていると認めているんですよ、アメリカ側が。どうもすれ違っていかぬな。次の機会にします。
  82. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 私からも条約を離れて一般問題を取り上げたいと思います。一般問題というのは政治亡命者の取り扱い、もっと端的に言うと政治亡命者の受け入れ問題、こう言ってもいいかと思います。  北朝鮮の黄書記が亡命してからきようで三十四日たっているんだそうであります。黄書記はいずれ第三国を経由して韓国に赴くであろうと言われておりまして、それはそれで結構なんであります。この亡命が起きた直後一週間ぐらいしたころでございましょうか、私は朝日新聞を見ていてちょっとおやっと思った記事があったので、その話をさせていただきたいと思います。  そのころ外務大臣はシンガポールを訪問しておるんだそうでありまして、随行の外務省のさる高官が現地シンガポールで日本から同行した記者と会食をしながら述懐した言葉、しみじみと語っていたというふうなたしか記事になっておりましたが、この亡命が日本で起きなくてよかったなと言っておられたということなんです。高官の名前は出ておりませんが、状況からしてこれは本当にあった話だろうと思われるわけであります。  私、この記事を読んで、ちょっとどうかな、腰が引けているんじゃないかな、後ろ向きの外交ではないのかな、こういう気がしたわけであります。何で日本で亡命してくれなかったんだろうか、亡命してもらえれば彼を通じていろいろ北朝鮮の状況も聴取することができたであろうし、あるいは対北の外交あるいは南とのいろんな交渉についても外交カードとして利用できる、そういうしたたかさがあってもいいんじゃないかな、こういう気がするわけです。  確かに、日本で亡命するということになりますれば、北朝鮮は日本政府が拉致した、誘拐したと言うかもしれません。韓国政府はすぐにでも身柄を引き渡してほしいと言って、南と北との間に挟まってどうしていいかわからないうろうろ醜態を満天下にさらすということにもなりかねない。やっぱり日本では亡命問題が起きなくてよかったのかなと、こういうのが本心かと思うわけであります。  黄書記が日本に十日余り滞在して、東京、京都、松本と回遊して、何か朝鮮総連のガードが非常にかたかった、なかなか亡命の機会がなかったんだと言われておりますけれども日本は法治国家ですからどこかたくさん人のいるところで大声を上げれば幾らでもガードしてくれるわけで、まさかそういうことで生命、身体に危険があるとはゆめ考えられません。やっぱり黄書記とすれば日本が本当に受け入れてくれるのかどうか一抹の不安があったんじゃないか、こういう気もするわけであります。北京で彼は何かちょっと百貨店に行ってくると言って外出してそのまま韓国大使館に駆け込んだというんですから、北側のガードというのも実は大したことはなかったんじゃないか、こういう気もしておるわけであります。  よく考えてみますと、去年の五月、ジュネーブで開かれた国際展示会に派遣された北朝鮮の公式代表団の一人が、若い科学者ですけれども、北京の日本大使館に駆け込んできて亡命を求めた。これに対して、日本側が受け入れるのか受け入れないのか何かあいまいもことして、最終的には断って、彼は別ルートで韓国に亡命するに至ったということもありまして、そういうこともまた黄書記の脳裏にあって、日本で亡命して本当に受け入れてくれるんだろうかどうだろうかという一抹の不安もあってああいう行動になったのかな、こういう気もしておるわけであります。  考えてみますると、日本は政治亡命者に対しては大変に冷たい世界でも珍しい国だろうと思うんです。政治的に迫害を受けているあるいは受けるおそれのある者を受け入れるというのは今日では万国共通の世界法の理論だと言ってもおかしくないわけであります。その根底にはやはり人道主義、ヒューマニズムがあるんだろうと思います。  政治亡命者を政治的に利用する、利用しない、それは受け入れた国の勝手でありますけれども、そういうこととは切り離して、迫害を受けている者を受け入れるというのは今日的な目で考えれば当たり前のことだろうと思います。そういう目で考えますと、戦前に中国革命を考えていた若い獅子たち、孫文初め何人かの亡命者を日本政府は受け入れていたわけであって、旧憲法下の帝国政府の方が今の政府よりも毅然としていたのかなと、これ皮肉ですけれども、そういう見方もないわけではないのでありまして、やっぱりもっと真剣に政治亡命者の受け入れというのを考えてもいいんじゃないか。  先ほども言いましたけれども、これを利用する、利用しないは政府の勝手、外務省の勝手でありますけれども、まさしく人道の観点から亡命者の受け入れについてもう一歩踏み込んだ考えがあっていいんじゃないか。これ基本的には政府方針でもありまするから、外務委員会でいいのかどうかわかりませんが、政府考えというのはやっぱり本会議とか予算委員会できちっと総理を通してお伺いしたいという気もいたしますけれども、とりあえずといっては大変失礼でございますけれども、外務大臣からこの場で承っておきたいと思うわけであります。
  83. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 黄書記の亡命との関連でお答えするとなると非常に難しいわけでございます。あくまで一般論として申し上げたいと存じます。  利用するかどうか、したたかさが足りないんじゃないかという点につきましてはいろいろあると思います。報道された発言をした人間もいろいろな観点から事柄を考え、いろいろな思いがあったんだと思います。そういった中の一つの局面が言葉になったのか、あるいは言葉になったのを聞いた方がト書きを加えたのか、いろいろなことがあると思います。いずれにいたしましても、そういったしたたかさ云々というところは、仮にそういうことを考えるとしても、表立って私どもはこう考えております、こういうふうにやりたいと思いますと申し上げる筋合いのものじゃないと思うわけでございます。  それから、そういったことは抜きにして、一般論としてでございますが、政治亡命についてどう考えるかということでございます。これは委員ももう御承知のとおりでございますが、我が国として政治亡命者について完全に扉を閉めておるとか、それを極力排除していこうという気持ちばかりでいるわけじゃございません。我が国に亡命を希望する外国人がございました場合には、政治的な迫害の申し立てが十分に根拠があるかどうかという観点からまず検討し、その根拠があると見られましたときには、委員指摘の人道的な観点、そしてまた我が国自身国益といいましょうか利益、そういったものとの調和というものを考えながら在留を認めることもあるわけでございます。これまでにも現にあったと存じます。  そうなりました場合には、法律に定められました所定の手続により在留を許可していく、これが我が国方針であるというふうに御理解賜ってよろしいかと存じます。
  84. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 この問題を考える場合に原則と例外があるんです。原則的に受け入れる。政治亡命に名をかりて日本に難民的な者が入り込んでくるのを防ぐ、それは例外としての扱いで結構だろうと思いますが、原則として受け入れる。  あるいは原則として受け入れない、昨年五月の北京大使館での問題などは原則的に受け入れないという姿勢が現地大使館にもしみ渡っていたんじゃないか、こういう気がしてならないわけです。後で、なぜこんなものを受け入れたんだと、それで大騒ぎになって日本政府が迷惑しているじゃないかと。北と南に挟まれてどうしていいかわからないと。そういうことを考えると、現地大使館は消極的な姿勢で事に対応しょうとするからああいうケースが起きてきて、世界から日本を眺めてみると、あの国は政治亡命者を原則として受け入れないんだなという目で見られているんだろうと思います。  どうかひとつ、この新しい時代に備えて、池田大臣の時期で結構でございますから、原則と例外を思い切って逆転させるぐらいの気持ちがあってよかろうと思います。受け入れてしまって、もしこれが隠れた政治亡命者、本当の政治亡命者ではないとわかれば、その時点でまた対応考えればいいわけですから、とりあえずは政治亡命を名乗る者があれば受け入れるという方向で考えていくということでいいんじゃないかなという気がしておるんですけれども、その点、いかがでしょうか。
  85. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) これもあくまで一般論としてお答えさせていただきたいと存じますけれども、先ほど私が御答弁申し上げましたのは日本の国内において政治亡命を申し立てた場合にどう対応するかという問題でございます。  今提起されました問題は、そうではなくて第三国で、例えば我が国の公館にそういった申し立てをする者があるときにどう対応するかということでございまして、これはもう文字どおり釈迦に説法でございますけれども、そういった場合は国内での亡今申し立てとはちょっと違った我が国の法律の枠組みになっていると存じます。  しかし、そういったことではございますけれども、そういった第三国で政治亡命を希望した者に対しましても、その当該国で受け入れが認められる場合には、本人の希望を尊重しながら、人道的な見地から好意的な配慮を用いる、こういうことも従来もあったわけでございます。そういったことで、現在の枠組みの中でもやはり人道的な観点というものをよく考えながら対処してまいりたいと思います。
  86. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 釈迦に説法かどうか知りませんけれども、理屈を言わせてもらえるならば、在外公館というのは我が国の主権が及ぶ日本領土と同じことですから、そこで区別して考えるのはおかしいと思うんです。  しかも、その国の、例えば北京大使館に中国人が来たという場合と、第三国人、今のような北朝鮮の人とかあるいはアメリカ人が来たとか、これは類型が違うんだろうと思うんです。第三国人が北京大使館にあらわれた場合には日本国内での亡命と同じように考えて私は一向おかしくないと思うんです。例えば、中国人の場合でしたら次から次と歯どめがなくなってくる、これはもう問題であるという考えはわからぬでもないんです。第三国人が亡命を求めてきた場合には日本国内の亡命と理屈の上でも全く同じだと私思うんですけれども、一体どこがどう違うんでしょうか。余り理屈の議論になるのは好ましくないんですけれども
  87. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 私も委員と法律論争をするだけの自信は全くございません。在外公館は確かに外交施設であるということで格別の地位を認められているのは事実でございますけれども、しかしいわゆる主権が我が国の主権下にあるかどうかということになりますと、それは国際条約上も非常に疑問のあるところじゃないかと存じます。
  88. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 一言だけ。ヒューマニズムというのは主権を超えるんですよね、今日。余り主権、主権というのはなじまないという考えがいたします。これはこれで結構でございます。  この前、三月に対人地雷の禁止に関する東京会議が開かれて、大変成功裏に地雷の全面禁止に向けて橋頭塗を、一歩二歩を踏み出したというような評価をしておるようであります。  それはそれで結構なんですけれども、その傍ら、今参議院で審議中の今年度の予算案に七億円の地雷予算が計上してあるということなんで、私ちょっと細かにまだ見ていないんですけれども、そうなんでございましょうか。
  89. 金澤博範

    説明員(金澤博範君) ただいま国会に御審議いただいております九年度予算案には、御指摘のとおり、七億円の対人地雷調達経費が含まれております。
  90. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 七億円がありますれば何個ぐらいの地雷がつくれるんでしょうか。
  91. 金澤博範

    説明員(金澤博範君) お答えいたします。  地雷の保有数ないし調達数というものにつきましては、我が国の防衛能力にかかわるというものであるため、従来よりその公表は差し控えさせていただいておりまして、毎年度の予算額のみを御審議いただいているわけでございます。  九年度予算におきまして七億の対人地雷調達経費が含まれておりますが、これをもって具体的に何発の地雷を調達するかということにつきましても、その理由で公表を差し控えさせていただきたいと思います。
  92. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 そんなものは別に秘密でも何でもないと思うんです。大体十万個とか二十万個とか、それぐらいのことは教えていただいてもいいんじゃないかなという気がいたします。  いずれにしろ、この地雷を予算に計上することについては外務省事前に打ち合わせをしておるのかどうか、その点、いかがですか。
  93. 金澤博範

    説明員(金澤博範君) 外務省とは具体的な打ち合わせというものはいたしておりません。
  94. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 外務省にお尋ねいたしますけれども、右手で地雷禁止を高らかにうたいとげて、左手で地雷製造に関する予算を結局政府として追認する。自己矛盾をお感じになりませんか。
  95. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) まず、先般東京で開かれました地雷に関するシンポジウムでしたかセミナーは、地雷の禁止そのものではなくて、地雷除去技術の開発であるとか地雷で負傷された方のリハビリ等をテーマとするものでございました。  それはそれといたしまして、我が国といたしまして地雷の禁止に向かって努力していこうということは昨年のリヨン・サミットにおきましても総理から明らかにしたところでございます。  そうした我が国の地雷に関する姿勢、方針と、今の防衛庁の予算と矛盾があるじゃないかという御指摘でございますけれども、地雷の全面的禁止に向かっての国際的な努力に我々も参画していこうということにつきましては実は防衛庁とも協議いたしました。そして、確かに現時点においては防衛庁は地雷を持っているけれども、私の理解しているところではたしか自己破壊装置つきのものをこれからは調達していくんだということでございまして、今の地雷禁止の動きと整合性はとれているというふうに理解しております。
  96. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 地雷の被害者を救済するとか除去のことについて話し合う、これは大前提としていずれ地雷は全面禁止しょうということがあるからそういう議論が行われるわけでありまして、地雷は使い放題だと、その被害者の救済をこうしようと、そんな枝葉末節な議論をしても余り意味がないと思うのであります。  やっぱり禁止に向けて踏み出すということならば、我が国としてもそういうことを国際会議で主張している以上は、予算についても計上するのはやめようというぐらいの政治決断があってもいいという気がいたします。これは御答弁は結構でございます。  時間でございますので、これで終わります。
  97. 小山峰男

    ○小山峰男君 私はきょうの議題になっております条約につきましては賛成でございます。  一般質問として、特にODAの関係で御質問を申し上げたいと思います。  一九九二年の地球サミット以来、我が国も環境分野に対するODAを積極的に進めてきたわけでございます。当時、五年間で一兆円というようなことをめどに進めてきたようでございますが、前倒しで四年間でできたということでございまして、これはよしとするわけでございますが、九六年度の実績見込みあるいは九七年度の予算についてはどのくらいあるのかということをお尋ねしたいと思います。
  98. 畠中篤

    政府委員(畠中篤君) 環境の面でのODAにつきましては、先生御指摘のとおり、我が国の経済協力の重点分野の一つといたしましてリオのサミットで表明いたしました目標も一年前倒しで達成できました。ODA大綱にもそういう環境配慮あるいは環境分野の重視ということを盛ってございますが、九六年の実績につきましては現在見積もりをきちんととれておりません。おりませんが、申し上げたように、年々環境分野での経済協力をふやすために案件発掘から人材育成、いろんな面で努力をしてきておりますので、それの積み重ねとして傾向的には次第に実績はふえてきております。  ただし、最後のおさまりがどうなるかと申しますのは、実は円借款という供与の規模が非常に大きなものがございます。百億とか何十億ということでコミットしてまいりますので、そういったものが年度内に幾つ入るかということで技術協力の積み上げとか無償の積み上げと合わせますので、最終的には年によって少しでこぼこが出てまいることがございます。  それから、九七年度の予算でございますけれども、ODAの予算はセクター別に予算を組んでおりませんで、有償資金協力、無償資金協力、技術協力といったような援助の形態別に予算を組んでおります。その中でそれぞれの形態についての被援助国側からの要請といいますか、こちら側と話をしながらプロジェクトを決めてまいりますときに、できるだけ環境案件を拾うようにこちら側からも働きかけて努力してまいりまして、最終的には技術協力なら技術協力の中で、あるいは有償、無償の予算の中で処理をしてまいることになっておりますので、あらかじめ予算に幾らという掲示はしておりません。
  99. 小山峰男

    ○小山峰男君 いただいた環境ODAの資料を見ますと、居住環境改善だとか防災というような面が大変シェアが大きいというふうに思っておりますが、こういうことでいいのかどうかというような問題、また中国の公害問題等も世上大変問題にされているわけでございます。またさらに、現在の財政の危機の中で、このODAの予算についても総額の切り込みというような問題も当然出てくるわけでございまして、その辺につきまして、今後の方針について、大臣、いかがでしょうか。
  100. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 我が国のODAのあり方につきましてはいろいろな意見が最近国会においてもあるいは国民の中においても出てきているのはよく承知しております。そういった中で、今委員も御指摘になりましたが、一つはこれだけ財政が逼迫した状況にある中で、幾ら国際貢献とはいえODAだけが聖域としてどんどんふえていくというのはどうかという意見、とりわけ各国がいわゆる援助疲れという状況を見せる中で、我が国がこれまでも着実にODAを伸ばしてまいりましたので、ここ五年間ぐらい量においては世界一になっているじゃないか、ぼつぼつこのあたりで見直してもいいんじゃないかという意見があるのはよく承知しております。  しかしながら、私どもは、やはり日本という国の国際社会でのあり方、そして国際社会に一体何が我々は貢献できるかということも考えなくちゃいけないと思っておるところでございます。  確かに、量的に世界一だと言われますけれども、これを例えばGNP比で見ますと、日本の場合は九五年ベースでたしか〇・二八でございます。米国はたしか〇・一でございますけれども、例えばフランスは〇・四台、それからカナダは〇・五台だと思いますし、ドイツ、イギリス等も我が国よりは上位にランクされているということ、つまりGNPでございますから自分たちがつくり出した富の中でどれだけを国際的なそういったODAとして提供しておるかという観点からいいますと、必ずしも日本だけが飛び抜けて大きなODAを供与しているとは言えない、こういうことは言えるかと思うのでございます。  それからまた、アメリカなんかは確かに〇・一ではございますけれども、世界の安定なり繁栄というものを考えた場合には、ODA以外にもいろいろな取り組み、寄与あるいは貢献があると思うのでございます。国際公共財の一つと言ってもいい安全保障という面で、やはり今アメリカは全体として見れば大きな役割を果たしておると思います。それからまた、経済の面に限ってみましても、米国のマーケット、あれだけ巨大なマーケットが、いろいろなことはございますけれども、総合的に見ればやはり世界で最も開かれた市場、しかも大きな市場である。そういったことで、開発途上の国々にもそういった便益といいましょうか利益を供与していることもあると思うのでございます。  そういった観点から見ますと、我が国は確かにODAは量では大きいかもしれないけれども、先ほど言ったように、GNP比では必ずしもそんなに胸を張れたものじゃない。それから、安全保障の面で申しますと、最近PKOその他の貢献はしておりますけれども、全体として見るとどうかというところがある。それから市場の関係でも、今規制緩和をどんどん進めてはおりますけれども、果たして本当にLDCの目から見て日本のマーケットは非常に開かれたものでありマーケットアクセスが容易であると言えるかどうかということも考えていかなくちゃいかぬ。そういうこともいろいろ考えながらこれからのODAのあり方を考えてまいらなくちゃいけない、こう思っております。  もとより、財政の状態も大変でございますから、私どもこれを聖域とは考えておりません。そういった意味で、現在本院で御審議いただいております来年度予算におきましてもその伸び率は過去最低の二・一%にとどまっておるわけでございます。円相場の変化、今年度、八年度の予算は一ドル九十七円で算定されているわけでございますから、そういうことを考えれば二・一%の増というのは実質はドルベースで見ればどうなるかというのは御理解いただけると思います。  そういうふうに財政の状態も十分考えながら、しかしながらODAは我が国が国際社会に存立していくために大切な意義を有するものであるということも考え、これからも対処してまいりたい。そして、そのためにもむだを省き、一層効率的、効果的なODA予算の執行に当たってまいりたい、こう考えている次第でございます。
  101. 小山峰男

    ○小山峰男君 そういう中で、やっぱり効率性というのをかなり追求しないといけないというふうに思っておりますが、現在ODAの予算というのは幾つの省に予算化されているか、その辺はどうですか。
  102. 畠中篤

    政府委員(畠中篤君) ODAの予算をたくさん持っているところ、小さいところございますけれども、省庁の数といたしましては十九省庁ございます。
  103. 小山峰男

    ○小山峰男君 実施機関としては幾つぐらい、どういう形で実施されているか、その辺はどうですか。
  104. 畠中篤

    政府委員(畠中篤君) ODAの実施機関は主に二つございまして、円借款を実施しております海外経済協力基金、OECFと申しておりますが、それと技術協力を主管しておりますJICA、国際協力事業団、これが大きな二つでございます。そのほかに、小さなといいますか、漁業財団とかいろいろなODAに勘定される技術協力をするところがございますけれども、二つのメーン実施機関をもって実施しております。
  105. 小山峰男

    ○小山峰男君 そうすると、予算は大きい小さいはあるとしても、一応十九省にまたがっていると。それから実施機関は、今のお話で、主なものは二つだけれども、小さいのも含めるとかなりあるというようなことで、ODAそのものについてもかなり予算が縦割りになっているとか、あるいは実施が複雑化しているという問題は現時点でも相当含んでいるというふうに思うわけでございます。  また、技術援助として技術者の派遣等についてもOB活用が多いというようなことも言われておりますが、いただいた資料の中で、「二国間及び多国間援助を通じる環境分野における協力実績」の「二国間技術協力」で、具体的に一九九五年で専門家派遣五百八十五人、その下の三百五十五人、この内訳というのはわかりますか。どういう前歴を持った人が行っているかどうか。
  106. 畠中篤

    政府委員(畠中篤君) 今御指摘の環境ODA分野に出しております個別専門家は一九九五年度で三百五十五人、それからいわゆる個別ではございませんけれども、プロジェクト方式の技術協力で出ております専門家は五百八十五人という数字でございます。これの官庁関係者それから民間部門の仕分けはちょっと今すぐにはできませんが、一般論といたしまして、環境のみならず全体の専門家の数のうちの官庁関係者と民間関係者の仕分けは大体半分半分ぐらいでございます。
  107. 小山峰男

    ○小山峰男君 そうすると、三百五十五人とか五百八十五人については今すぐ仕分けができない、ただ感じとしてはおおむね半々ぐらいということですか。  それから、技術協力なり援助なりの場合に、その事業をやるとかやらないとか、そういう発掘あるいは選定権限というのはどういう形で決まっていくのかというのはどうなっているんでしょうか。
  108. 畠中篤

    政府委員(畠中篤君) 被援助国との関係で申しますと、いろいろなチャネルで政策対話と申しますか、日本側と、供与側とそれから受ける側の援助のための協議を行いまして、それを踏まえた上で最終的に被援助国側から要請の形で日本にこういうものをしてもらいたいというのが上がってまいります。無償資金協力のそういう形で上がってまいりましたものは、外務省がその国の経済の状況あるいは我が国の援助政策を踏まえまして、内容によっては関係省庁とも相談してまいりますけれども、どういうものを今年度実施するかということを決めてまいります。  それから、技術協力につきましては同じように年に一度要請を受けるわけでございますけれども、技術協力の場合には外務省では実施できませんので、それぞれの分野の省庁にこういう要請がある、それについて専門家を派遣できるか、あるいは研修生を受け入れられるかといったような協議をずっといたしまして、それをそろえて先方に回答して実施するということでございます。  円借款につきましては、要請を受けました段階で、外務省、大蔵省、通産省、経企庁でその内容を吟味いたしまして、そしてどの案件を採択するかということを決めておるわけでございます。
  109. 小山峰男

    ○小山峰男君 報道等によりますと、日本の援助は金額では世界一だ、それから援助体制というか人的な配置等についてはまた貧弱なことが世界一だというふうに言われておりますが、外務省としてその辺をどういうふうに感じているか。
  110. 畠中篤

    政府委員(畠中篤君) 私ども我が国のODAが抱えております一番最大の課題は、実施体制と申しますか、人員、関係者をできるだけふやすということが必要だと思っております。  援助の形態によりまして手間のかかりぐあいが随分違いますので、一概に各国の人数と援助量を比較することは適当でないかもしれませんけれども、例えば日本の場合には円借款という大きな、一回で百億とか百五十億といってコミットしていく借款のスキームを持っておりますけれども、多くの欧米の国は技術協力と無償資金協力でございますので、そういう意味では人間が、手間がかかると申しますか、スタッフが多いこともございますけれども一般論として比べますと、日本の場合には、例えばドイツとかフランスといったようなところと比べますと、スタッフの数とODAの量を比較いたしますと大体二分の一ぐらいのスタッフで実施しているような現状でございます。これをできるだけ充実させ、援助体制を充実させていくことが質のいい援助をしていける一つ課題だと思っております。
  111. 小山峰男

    ○小山峰男君 時間がありませんのであれですが、やっぱりこういう経済状態になってくると額のふえない中でいかに有効にこのODAを活用していくかというのは大変な課題だというふうに思っております。  今の十九省にまたがっているような予算の組み方とか、あるいは実施機関が幾つもに分かれているとか、それから人的な配置が大変少ないとかというような問題もあるわけでして、私はできれば外務省なりでこのODA対策を一本化するぐらいの行革をやっぱりやるべきだと。本来国がやることはぴしっと人間をふやしてもやるようなことを考えないと、本当に日本外交的にも孤立してしまうんではないかなというふうに思っております。ぜひ大臣、今行革が大いに騒がれているわけでございますが、減らすばかりが能じゃなくて、外交なんというのはもっと人間もふやしたり金もふやしたりしてもいい部門だというふうに思いますので、頑張っていただきたいと思います。  最後に大臣の決意と申しますか、考え方をお願いします。
  112. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 最初にODAの全体像、今どういう姿になっているか、それからこれからどういうふうに考えていくかを申し上げました。  したがいまして、今御質問のこれから実施体制をどうするかという点からお答えさせていただきたいと存じますけれども、確かにこういった状況になればなるほど援助の効率的な実施というようなことが従来にも増して求められると思います。それにふさわしいように援助の実施機関にいたしましても、あるいは予算のつけ方、運用の仕方につきましても、従来のあり方をよく検討いたしまして適切な姿にしてまいりたい、こう考える次第でございます。
  113. 小山峰男

    ○小山峰男君 終わります。
  114. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。――別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  アジア太平洋郵便連合憲章追加議定書及びアジア太平洋郵便連合一般規則締結について承認を求めるの件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  115. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  117. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 次に、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約に関する千九百八十八年の議定書締結について承認を求めるの件及び千九百六十六年の満載喫水線に関する国際条約の千九百八十八年め議定書締結について承認を求めるの件、以上二件を便宜一括して議題といたします。  政府から順次趣旨説明を聴取いたします。池田外務大臣。
  118. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) ただいま議題となりました千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約に関する千九百八十八年の議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この議定書は、昭和六十三年十一月に国際海事機関の主催によりロンドンで開催された国際会議において作成されたものであります。  この議定書は、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約における船舶の検査の間隔及び各種の証書の有効期間に係る規定を整理し、他の関係条約における船舶の検査の間隔及び証書の有効期間に係る規定と調和させることを目的とするものであります。  我が国がこの議定書締結することは、船舶の所有者の負担を軽減するとともに、航海の安全確保のための国際協力を一層推進する見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百六十六年の満載喫水線に関する国際条約の千九百八十八年の議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この議定書は、昭和六十三年十一月に国際海事機関の主催によりロンドンで開催された国際会議において作成されたものであります。  この議定書は、千九百六十六年の満載喫水線に関する国際条約における船舶の検査の間隔及び証書の有効期間に係る規定を他の関係条約における船舶の検査の間隔及び証書の有効期間に係る規定と調和させること並びに同条約に定める船舶の積載限度に係る技術要件を改善することを目的とするものであります。  我が国がこの議定書締結することは、船舶の所有者の負担を軽減するとともに、航海の安全確保のための国際協力を一層推進する見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  以上二件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
  119. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 以上で両件の趣旨説明の聴取は終わりました。  両件の質疑は後日に譲ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十二分散会      ―――――・―――――