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1997-03-17 第140回国会 参議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月十七日(月曜日)    午後二時三分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         寺澤 芳男君     理 事                 須藤良太郎君                 野間  赳君                 高野 博師君                 武田邦太郎君     委 員                 岩崎 純三君                 笠原 潤一君                 宮澤  弘君                 長谷川道郎君                 田  英夫君                 萱野  茂君                 立木  洋君                 佐藤 道夫君                 椎名 素夫君                 矢田部 理君                 小山 峰男君    国務大臣        外 務 大 臣  池田 行彦君    政府委員        警察庁警備局長  杉田 和博君        防衛庁防衛局長  秋山 昌廣君        環境庁企画調整        局地球環境部長  浜中 裕徳君        環境庁自然保護        局長       澤村  宏君        環境庁大気保全        局長       野村  瞭君        外務大臣官房長  原口 幸市君        外務大臣官房審        議官       西田 芳弘君        外務大臣官房領        事移住部長    齋藤 正樹君        外務省総合外交        政策局長     川島  裕君        外務省総合外交        政策局軍備管        理・科学審議官  河村 武和君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     朝海 和夫君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省北米局長  折田 正樹君        外務省経済協力        局長       畠中  篤君        外務省条約局長  林   暘君        文部省学術国際        局長       林田 英樹君    事務局側        常任委員会専門        員        大島 弘輔君    説明員        通商産業省通商        政策局経済協力        部長       日下 一正君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件環境保護に関する南極条約議定書及び環境保護  に関する南極条約議定書附属書Ⅴの締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出)     ―――――――――――――
  2. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  環境保護に関する南極条約議定書及び環境保護に関する南極条約議定書附属書Ⅴの締結について承認を求めるの件を議題といたします。  趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 高野博師

    高野博師君 それでは、環境保護に関する南極条約議定書についてお伺いいたします。  本議定書は、一九九一年の十月四日に採択、署名されたと。なぜ国会提出まで六年間も要したのか、お伺いいたします。
  4. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 政府といたしましては、この議定書及び附属書Ⅴの発効の見通し、ほかの南極条約協議国動向などを念頭に置きながら、議定書及び附属書Ⅴの内容、並びに議定書附属書Ⅴの円滑な実施のための国内法整備について慎重な検討を行ってまいったところでございます。  このたび、議定書及び附属書Ⅴの実施のための法律案作成を踏まえまして、議定書及び附属書Ⅴを締結すべく国会の御承認を求めることにした次第でございます。
  5. 高野博師

    高野博師君 この議定書重要性は十分理解しているんですが、国内的な法の整備とか国内法の準備を含めて、ほかの国の動向を見るために六年間も要するんでしょうか。
  6. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) この条約に関しまして国会の御承認を求めるに当たりましていろいろの点について考慮を払ってきたところでございますが、一つの点は、御指摘のとおり、ほかの国による締結状況を勘案していたという面はあろうかと思います。なぜならば、この議定書及び附属書南極条約協議国すべてが締結した後に発効する、そういう仕組みになってございますものですから、ほかの国もそういう方向に進んでいるだろうということを確認していたという側面も確かにございます。
  7. 高野博師

    高野博師君 例えばグリーンピースが、日本昭和基地での観測等については優等生だ、しかしその日本がなぜこの批准におくれているんだというような話をしておりますが、私は六年間もかかるというのはどうかなと。ほかの国の動向を見ているといいますけれども、三カ国しか残っていないわけで、ほかの先進国、例えばドイツとかフランスとかイタリアとか、これはもうとっくに批准しているわけで、なぜ最後まで見きわめなくてはいけないのか。  これとの関係で、私は、日本の場合には環境というよりもむしろ経済関係条約とか協定とか、そういうものを優先しているという感じがありまして、これは私の個人的な意見ですが、OECD加盟国の中で環境アセスメント法ができていないのは日本だけ。こういう意味で、日本環境先進国と言われたのは八〇年代までで、むしろ今は環境後進国になっているんではないか、私はそういう認識を持っておりますが、大臣、いかがでしょうか。
  8. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 政府委員からも御答弁申し上げましたけれども、これは他国の動きというのをにらんでおったという面もございます。しかし、それにいたしましても、締約国二十六カ国のうち二十三カ国が既にその手続を了しておるわけでございますから、そういった点から委員の御指摘のような御疑問が提起されるのもやむを得ないという面もあろうかと存じます。しかし、それは決して国内的に環境問題を経済にかかわる条約等に比べて劣後させたということじゃございませんで、関係する省庁等とのいろいろな国内法上の問題点等につきましても調整しておった、そんなことがございまして今日に至ったわけでございます。  しかし、八〇年代は環境問題に熱心であったが今やもう後進国というふうな御批判を受けてもやむを得ないと決して我々考えているわけじゃございません。御承知のとおり、例えばことしも京都気候変動枠組み条約の第三回の締約国会議を開くというような環境面でのイニシアチブもとっているわけでございますし、またODAの面におきましても環境案件配慮していくというふうな姿勢を示しているわけでございます。  私どもこれからの地球社会考えてまいります場合に、我が国として一方において活発な経済活動をしている、そのことが環境にも多大の影響を与えるという国柄でもございます。他方におきまして、これまで環境保護の面でもいろいろな経験を有しまたその知見も有している国でございますので、そういった両方の観点からも環境問題に真剣に取り組んでまいりたい、こう存じております。  国会提出が遅いじゃないかというおしかりはおしかりとして受けまして、どうかこの条約重要性にかんがみまして、速やかに御審議を賜らんことをお願い申し上げる次第でございます。
  9. 高野博師

    高野博師君 この議定書説明書の中で、「早期国会承認が求められる理由」というのが書いてあります。これ自体が私はよくわかりません。国会がおくらせているわけでもないのに、なぜ早くしろと言っているのか。むしろ行政の側の方がおくれていたのだと私は思っております。  その中で、(1)の方で「南極環境等の包括的な保護に関する我が国積極的姿勢を示す」ためにもこの批准が必要だと。この「積極的姿勢」とは具体的に何を指しているんでしょうか。
  10. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) この説明書委員指摘の点でございますが、積極的な姿勢を示すということの具体的な意味は、この議定書及び附属書によりまして日本国際法上の義務として南極環境尊重のための幾つかの点を義務として負うことになります。みずからにそういう義務を課すことによって日本南極環境問題について積極的に対応しょうとしているということを示そうと、そういう趣旨でございます。
  11. 高野博師

    高野博師君 今回のこの批准に至るまでのおくれは、むしろ日本が消極的ではないかという姿勢が見えるんではないか。  その次の段で、「我が国南極条約体制において行ってきた積極的貢献を更に推進する」というのが書いてありますが、「積極的貢献」とは具体的に何を言っているんでしょうか。
  12. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) これまで我が国南極条約批准をいたしましたし、その条約協議国の一員として条約上のいろいろな義務も果たしてまいりました。また、この南極条約発効の前から実施していることでございますけれども、観測などの科学的な活動もしておりまして、その内容面、そうした活動につきましては国際的にも評価を受けていると理解しておるところでございますが、今回のこの議定書及び附属書の御承認を得られますれば、そういった調査活動などにつきましても環境面で一層配慮しながら積極的に進めることができる、そういう趣旨でございます。
  13. 高野博師

    高野博師君 余り具体性がないんでよくわかりませんが、その(2)の中で、先ほど私指摘しましたように、三カ国しか残っていないから早く承認をしろという言い方はどうも納得いきません。  そこで、アメリカとロシアはなぜおくれているのか、御説明願いたいと思います。
  14. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 米国の場合は、比較的最近でございますけれども、この議定書関連します国内法の議会による審議を終えまして、大統領もそれに署名し、現在は関連の規則の作成作業に入っている段階承知しております。  ロシアの場合は、現在政府部内で議定書締結に向けて種々の調整を進めているところ、このように承知しているところでございます。
  15. 高野博師

    高野博師君 これまで、署名がされてから今日まで六年間で南極環境が悪化したとか、あるいは生態系に変化があったという具体的なデータはあるんでしょうか。
  16. 澤村宏

    政府委員澤村宏君) 南極地域におきましては、大規模観測基地活動や増大する観光活動環境影響が懸念されておりますために環境保護のための議定書が採択されたものでございますが、これまでのところ南極地域活動に起因して顕著な環境破壊とか環境汚染の問題が発生しているというふうには承知しておりません。
  17. 高野博師

    高野博師君 それでは、南極に関する基本的な点についてお伺いいたします。  まず、今人口は何人いるんでしょうか。あるいは長期滞在者というんでしょうか。
  18. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 南極地域滞在する人々という言い方がよろしいかと思いますが、一つには各国が派遣する南極地域観測隊、これが主なものでございますけれども、通年で南極地域滞在しておる人の数はおよそ一千名でございます。これに加えまして、夏の時期に南極地域観測等の目的で駐在、滞在される人々はおよそ五千名と考えております。これに加えましていわゆる観光客が約一万名ございますものですから、総勢では一万五千名が毎年、常時ではございませんけれども、南極地域訪問滞在しているということでございます。  このうち日本からの訪問滞在でございますが、調査研究関係では「しらせ」であるとか南極観測その他の関係方々でおよそ六十名、砕氷艦しらせ」の乗組員約百八十名、その他調査船調査員乗組員合わせて六十名、つまり観測関係者でおよそ三百名、そのほかオキアミ、調査捕鯨等漁業関係の方、これは海の上を操業しておられるだけでございますけれども、およそ毎年三百名、観光客平成七年のシーズンの場合は四百十一名でございまして、以上合計いたしますと、日本の場合は調査関係者漁業関係者観光の方、合わせて一千人程度と理解しております。
  19. 高野博師

    高野博師君 何名とおっしゃったんですか。
  20. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 一千名。
  21. 高野博師

    高野博師君 そこで、今南極環境保護についての最大の問題は何なんでしょうか。いろいろありますけれども、温暖化の問題とか海洋汚染とか、今緊急に最大の問題は何なんでしょうか。
  22. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 環境との関係での最大の問題は、徐々に南極地域訪問する人がふえております関係もございまして、絶滅に瀕している植物相動物相、あるいは訪問客がふえていることに伴う環境上の影響が年々大きな問題になりつつあるということが課題であろうと理解しております。
  23. 高野博師

    高野博師君 訪問客というのは観光客ですか、主に。
  24. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 観光客は世界じゅう合わせておよそ一万名ですから、十年ほど前に比べますと相当の増加でございます。ただ、観光客のみならず、南極観測隊あるいは調査隊方々も引き続き相当数活動しておられますものですから、そういう活動に伴う廃棄物なり、動物相植物相に対する影響も少しずつは出てきているのかなと考えているところでございます。
  25. 高野博師

    高野博師君 南極地域に入る人の総量規制をするというような動きはあるんでしょうか。
  26. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 総量規制をするということが南極条約協議国会議等で取り上げられているとは承知しておりません。
  27. 高野博師

    高野博師君 それでは、我が国地球環境に関する基本政策方針は何なのか、お伺いいたします。
  28. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) 地球環境問題につきましては、地球温暖化に代表されますように、地球生態系を損ない、将来の世代の生活産業に大きな影響を及ぼすことが予想されるなど、人類生存基盤に深刻な影響を与える緊急かつ重要な問題であると考えておりまして、これからの私たちのこれに対する取り組みあり方が二十一世紀以降の人類の暮らしや経済活動発展を左右するという意味で、我が国にとって国内的にも国際的にも極めて重要な政策課題となっていると認識しております。  特に、ことしはリオで開催されました地球サミットから五年目に当たりまして、六月には国連で環境問題に関する特別総会が開かれる予定でありますし、また十二月には地球温暖化防止のための気候変動枠組み条約第三回締約国会合我が国京都で開催をされるということでございまして、地球環境問題への取り組みを大きく前進させるべき極めて重要な年であるというふうに認識をしております。  我が国は大規模経済活動を営んでおりますが、そういうことで地球環境に大きなかかわりを持っておりますと同時に、環境保全に関するこれまでのさまざまな経験技術が蓄積されておりまして、こうした経験技術を生かして、我が国といたしましては国際的地位にふさわしい役割を率先して果たしていくとともに、国内においてもこれまでの取り組みを一段と充実強化することによりまして、地球温暖化防止やただいま御審議を賜っております南極地域環境保全など、地球規模環境保全に積極的に取り組んでまいる所存でございます。
  29. 高野博師

    高野博師君 この基本政策あるいは方針を貫いている理念はなんでしょうか。
  30. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) 今日の環境問題は、かつて二十年、三十年前に我が国でそうでありましたように、地域的に発生する問題あるいは特定経済部門活動に原因があるようなことに伴って生じている問題ではなくて、極めて広範な経済部門活動に起因をし、そしてその影響は国境に限定されることなく地球規模で発生している問題であります。  したがって、ただいま申し上げましたとおり、我が国は大規模経済活動を営んでおりまして、資源を海外に依存しておりますと同時に、その活動の結果として地球環境に大きな負荷を与えているという現実がございます。そうしたことにかんがみまして、我が国といたしましては、単に国内環境問題に積極的に取り組むのみならず、やはり地球規模環境問題に対しても積極的に取り組んでいく必要がある、このような基本的な考え方で臨んでいる次第でございます。
  31. 高野博師

    高野博師君 私は、地球環境に関する理念としては、やはり人間の安全保障とかあるいは人類益とか、そういう哲学が必要ではないかなと思っております。  そこで、地球環境問題での国際協力、特にODAの実態はどうなっているでしょうか。
  32. 畠中篤

    政府委員畠中篤君) 我が国ODAを進めますに当たりましてODA大綱を踏まえて実施しておりますけれども、この中でも環境分野を重視して協力していくということをうたっております。また、先ほどもありましたリオサミットでも五年間に環境分野で九千億円から一兆円の協力をしていくという目標を立てましたけれども、これを五年たたず四年で一応達成をしております。  今後ともいろいろな分野での環境問題にODAを有効に使って対応していきたいと思っております。
  33. 高野博師

    高野博師君 ODA大綱あるいはガイドライン環境関係協力をやっていく中で、今回環境アセスメント法国会に出されて、これが通った場合には、JICAとかOECFがやっている援助環境アセスメントガイドライン、これは見直す必要があるんではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  34. 畠中篤

    政府委員畠中篤君) 我が国環境アセスメントとの関係では直接ございませんけれども、JICAそれからOECF援助をしてまいりますときにそれなりのガイドラインというものを持って今実施しております。ただ、国外で行われます援助でございますので、その辺は国内と全く同じと  いうわけにはまいらないかもしれませんけれども、できるだけ環境配慮をしながらODAをしていくし、またODAを通じて環境問題の解決にも努めていく考えでございます。
  35. 高野博師

    高野博師君 地球環境に関しては、将来の日本国家像として環境大国を目指すというような考えも我が党の中にありますが、経済大国ではなくて、これからどういう国を目指すかという中で環境大国というような考え方はどういう認識をされるのか、大臣にお伺いいたします。
  36. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 当然のことといたしまして、これから二十一世紀へ向かっての人類の諸活動考えてみますと、地球環境全体に対する影響といいましょうか、その環境容量が一体どの程度トータルとしてあるのか、それを念頭に置かなくては生活向上あるいはそれを可能にするための経済発展ということも計画し進めていくというのは難しい、そういう時点に我々は立ち至っていると思います。  そういった意味で、これからの国民あるいは地球人類全体としての生活向上を図る上においても環境に対する最大限の配慮というものは欠くことができない、こういうふうに考える次第でございまして、環境への負荷を少なくして持続可能な発展という観点国内的にも大切だということが先ほど環境庁からの答弁にもございましたが、私ども、国内における経済その他の政策の遂行においてもまた国際的な経済協力その他の政策を進める上においても環境問題についてできる限り配慮していく、そういった意味での環境大国という姿勢は大切であると認識している次第でございます。
  37. 高野博師

    高野博師君 今回の議定書は、国内法との関係で、南極地域環境保護に関する法律案が出されると、出されているんでしょうか。これの関係で、この法律案に基づいて環境庁南極地域で行うさまざまな活動等に関して監視したり指導したり監督する、あるいは評価する、そういうことが定められていると思いますが、この基準が各締約国あるいは協議国一律でない場合にはダブルスタンダードになるんではないかという懸念を持っておりますが、この点はいかがでしょうか。
  38. 澤村宏

    政府委員澤村宏君) 南極地域におきます環境に及ぼす影響程度は、活動規模とか内容だけではなしに、活動が行われる場所の状況、それから活動実施時期などに大きく左右されるものでございます。したがいまして、画一的な基準の設定ということは現時点では現実的ではないというふうに考えております。  しかしながら、活動影響がある程度大きなものにつきましては、その活動が認められるか否かの最終判断は、各締約国を初めとする国内外の意見を踏まえまして国際的な水準科学的知見に照らしまして行われることになっておりますので、先生指摘のような事態が生じないよう対処していけるものと考えております。  また、影響が極めて軽微な活動の取り扱いにつきましても個別具体事例ごと判断することとなるわけですが、いずれにいたしましても、これらの環境影響程度判断につきましては、過去の事例あるいは環境保護委員会での検討状況などを踏まえまして国際的にバランスのとれたものとなるように適切に対処してまいりたい、そのように考えております。
  39. 高野博師

    高野博師君 それでは、この議定書に関して最後質問ですが、この議定書によって環境保護委員会が設置されることになると思うんですが、我が国委員会構成国となるつもりはあるんでしょうか。
  40. 澤村宏

    政府委員澤村宏君) 議定書発効いたしました段階におきましては、南極地域におきまして私ども日本政府といたしましても積極的に参加して寄与していきたい、そのように考えております。
  41. 高野博師

    高野博師君 それでは、関連質問をさせてもらいます。  通産省にお伺いいたしますが、ODAの第五次中期目標が九七年末で終わる。これに関して通産省ODAの抜本的な見直し、特に円借款事業についてはアンタイドになっているけれども、日本企業受注率を高めるための基準というか、これの見直しをしているという情報がありますが、これは事実でしょうか。
  42. 日下一正

    説明員日下一正君) お答え申し上げます。  先生承知のように、ODAにつきましては、我が国が五年連続して世界一の水準に達している中で、さまざまな角度からの議論があるところでございます。この時期に、貿易・投資など経済的な視点産業界からの提案、要望、さらには行財政改革という視点なども踏まえながら、産業構造審議会経済協力部会の場でODAあり方に係る考え方を取りまとめていただきたいと考えております。また、取りまとめられた内容につきましては、総理府の対外経済協力審議会で行われる政府全体のODA論議の場に提供してまいりたいと考えております。  新聞報道等で一部特定の事項が指摘されているようでございますが、議論の中身につきましては、これからまさに本格的に議論が始まるところでございますので、今の段階で立ち入ることは不正確かと思いますが、二、三例を挙げますと、限られた予算の中で民間活力を活用して大きな効果を上げること、あるいはアジア地域を初めとする世界の成長センター環境問題を解決しながら持続的成長を行うことを支援していくこと、あるいは相手国のニーズにこたえた使いやすいODAとすることなどが議論されるのではないかと承知しております。  以上でございます。
  43. 高野博師

    高野博師君 私はまさにその特定の部分についてお伺いしているのであります。この新聞報道によれば、国際入札ルール見直しする、応札業者技術水準を重視する、公害防止技術など日本企業が得意とする分野援助比率を高める、そういうことを検討しているという報道がありまして、これは私は国際的な批判を受けるだろうというふうに思っております。日本企業アンタイドで受注できるときはアンタイドにして、しかし日本企業国際競争力が弱まってとれなくなってくればタイドに近いような形にする、こういうやり方は私は決して適当ではないと思います。  というのは、やはり援助ODA相手国に与える経済効果というものを考えれば、できるだけ現地の企業が受注するようにするのが本来の趣旨ではないかと思うんです。援助日本企業を通じてまた日本に戻ってくる、こういうやり方は決して適当ではない。日本企業政府が癒着するような温床をつくる、そしてまたそこに政治家が入ればまさに政官業の癒着の構造をつくるということにつながるので、私はこれは反対いたします。検討中の段階であるとは思いますけれども、そういう考え方通産省が持っているというのは私は反対しておきます。この点について御意見を伺います。
  44. 日下一正

    説明員日下一正君) 新聞報道でございますので、まだ第一回が始まったところでございます。これから先生指摘の点も含めて議論されていくのかと思いますが、基本的な考え方といたしましては、ODAを進めていくためには国民あるいは産業界含めて広くタックスペイヤー、国内的な、国民的な理解を得ながら進めていくものだと考えております。実際に日本企業が受注できたかできなかったかというのは一つの結果、あるいはそれについてまた国内でどういうふうに評価されていくかという一つの要素だろうと思います。  私どもの方の部会、まだこれから議論を始めるところでございますので、中身については差し控えさせていただきます。  以上でございます。
  45. 高野博師

    高野博師君 それでは、橋本総理が先般、一月でしたかASEANを訪問されたときにベトナムにも行かれたと。これまた報道なんですが、首脳会談でベトナム側が戦争責任について言及しないように先方にODA見直しをほのめかしながら根回しをしたというのが出ておりました。この事実関係はどうでしょうか。
  46. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 報ぜられているような事実はございません。
  47. 高野博師

    高野博師君 そう言うだろうと思いました。  ODAは外交の重要なてこでありまして大いに利用するべきだと私は思います。ただ、報道に言っているような歴史認識をある意味で封じ込めるような形で使うのは私は筋違いだろうと思います。歴史認識の問題については正面から取り組まないといけない、いずれ出てくると私は思っております。ベトナムに対してはODAを使いながら意見を出させないとか封じ込める。しかし一方で、中国に対してはどうかということで、中国に対してはそういう同じことはやらないとすればこれは一貫性がない。また、北朝鮮に対してはどうかということ。  私は指摘だけにとどめておきますが、ODAの使い方も含めて、大国か小国か、いろんな国に対してもっと一貫性のあるやり方をすべきではないかなと。事実関係そのものがないと言えばそれまでであります。これは正面から出てくるわけがないんで、そういうことを私は指摘しておきたいと思います。  それから、レバノンにおける拘束中の赤軍派メンバーの身柄引き渡しの見通しはいかがでしょうか。
  48. 杉田和博

    政府委員(杉田和博君) 委員指摘のとおり、現時点、レバノンにおいて司法手続が進められておりますので、その手続の推移を見つつ身柄の引き渡しの請求をしてまいりたい、かように考えております。現時点、まだ始まったばかりでありまして、見通しについては差し控えさせていただきます。
  49. 高野博師

    高野博師君 今回、レバノンで赤軍派メンバーの拘束というニュースが報じられて、すぐ外務省が対応されたということについては非常に迅速で適切だったというふうに私は認識をしております。  シリアがレバノンの背景にあるということは報道等も含めていろいろ言われております。シリアはアメリカがテロ支援国家と指定している国の一つでありますが、これに対するODAの実態はどうなっているんでしょうか。
  50. 畠中篤

    政府委員畠中篤君) アメリカがシリアをテロ支援国家としておるということは承知しております。  しかしながら、我が国といたしましては、どういう国にどういつだ援助実施していくかという検討をいたしますときには、やはりODA大綱を踏まえつつ、また経済社会状況、二国間関係、さらには国際情勢等を踏まえまして、我が国独自に総合的な判断を行った上で対応することとしております。  シリアにつきましては、中東地域の平和と安定に寄与するとの観点から、中東和平当事国への支援の一環といたしまして有償、無償、技協の各形態をケース・バイ・ケースで実施しております。
  51. 高野博師

    高野博師君 レバノン、シリアに対して引き渡し協力を強く要請していただきたい、私はそう思います。  もう一つ、警察庁にお伺いいたしますが、北朝鮮との関係で、兵庫県警が、水銀とかフェノール等の毒物あるいは劇物と指定されている物質を大量に密輸していた、その関係者が逮捕されたという報道がありましたけれども、この事実関係はいかがでしょうか。
  52. 杉田和博

    政府委員(杉田和博君) 本件は、大阪の貿易会社が毒劇物取締法上の販売業の登録を受けないで、平成七年十二月から平成八年七月までの間、前後四回にわたりまして毒物である水銀、また劇物であるフェノール、こういうものを神戸港から北朝鮮向けに輸出、販売したというものでありまして、兵庫県警察では、逮捕はいたしておりませんが、会社及び同社社長の自宅を捜索したほか、現時点、社長等から事情聴取をしておる、こういう状況でございます。
  53. 高野博師

    高野博師君 この劇物、毒物の利用目的等については調べているんでしょうか。
  54. 杉田和博

    政府委員(杉田和博君) 現時点、捜査中でございまして、そういうものが最終的にどういうものに利用される等について、現時点、まだ判明をいたしておりません。
  55. 高野博師

    高野博師君 もう一つ、北朝鮮から輸入された魚のハタハタの中に鉛が入っていたという報道もありまして、これはテレビで報道されましたが、この関係は調べているんでしょうか。
  56. 杉田和博

    政府委員(杉田和博君) そのような報道があることについては承知をいたしておりますけれども、警察として捜査をしておるという事実はございません。
  57. 高野博師

    高野博師君 どうして調べないんでしょうか。
  58. 杉田和博

    政府委員(杉田和博君) 現時点、警察として対象にすべき事案であるというふうには考えていないということであります。
  59. 高野博師

    高野博師君 鉛が入った魚を食べれば大変なことになるんで、やっぱり犯罪の一種としての捜査をすべきではないかと私は認識しておりますが、いかがでしょうか。
  60. 杉田和博

    政府委員(杉田和博君) 当然のことながら、警察としてはさまざまな事案について関心を持って情報収集いたしておりますけれども、そういう過程において法律に違反する事実というものが出てくれば具体的に捜査をしていく、こういうことになっておりまして、現時点では捜査の俎上にはのせていない、こういうことでございます。
  61. 高野博師

    高野博師君 国民生活が脅かされる事態も予想されるので、これも慎重に検討していただきたいと思います。  それと、少女拉致事件等も含めて北朝鮮との関係で、捜査当局も含めて、国民、国家の主権が脅かされているような事件も多々あるわけでありますので、この辺も適切に対応していただきたいと思います。  時間が来ましたので、終わります。
  62. 田英夫

    ○田英夫君 冒頭から私ごとで恐縮ですが、実は一九五七年の日本の第一次観測隊の報道担当隊員で南極へ参りましたので、この南極条約及び議定書、こういうものがつくられていく経過の中で若干間接的にも関係いたしましたので、余り御質問という形にならないかと思います。しかし、この条約はまことに今後の、未来と言った方がいいでしょうが、地球上のあり方を示しているような気がいたしまして、こういうものが国際的に締結できたということは大変いいことだと思っております。  若干経験を踏まえて申し上げると、一九五七年という年は、昭和三十二年ですが、国際地球観測年、IGYと言っておりますが、インターナショナルジオフィジカルイヤー、この年に、特に南極大陸が地球物理学的に非常に未知の世界にあるので国際的に協力して研究調査をしよう、こういうことになったときに、まだ戦後十年ちょっとですが、日本はこれに観測隊を送る、参加をしようということになりました。実際には日本を含めて十一カ国が一番最初の地球観測年の年には参加をいたしました。この十一カ国がその後話し合って今の南極条約のもとをつくったという経緯があるわけです。  もう皆さん御存じのとおりですけれども、この南極条約、実際には一九五九年、つまり地球観測年の二年後にワシントンで締結をされたわけですけれども、その意味では参加国十一カ国の間で早くこういうものをまとめ上げたという点は大変よかったことだと思います。  大ざっぱな内容は、一つ南極大陸の平和維持といいますか軍事利用禁止、そういう考え方が一番先に出てきたと思います。これがもちろん今日に至っているわけですが、軍事専門家の間では、南極大陸に大陸間弾道ミサイルを配置すれば大変軍事的には有利な場所にある、地球上どこへでもほぼ等距離で飛ばせるということですが、先手を打ってこれを禁止したということだと思います。  それからもう一つ大きな問題は、南極大陸については領土問題を主張しない、領土として主張しないという結果になるような、つまりそれまでは、例えば今の昭和基地のある付近はノルウェーが発見をした地域であります。沿岸を船で通っただけなんですが、そうしますとノルウェーはその自分たちが発見した地域、海岸から極点までの細長い三角形を領土と主張し、例えばイギリスも古くから南極探検をやっておりましたから、そういう形で領土権を主張してきたわけですが、それを凍結してしまって、この条約によって領土というものは認めない、結果的にそういうことになっている。これも地球上の他の地域に比べて考えると大変画期的なことであり、よくそこまで参加国政府は決断をしたと思います。  そういう平和と領土の二つの問題が中心になって最初はつくられたと理解しております。  その後、環境の問題というのは当初から心配をされてはいましたけれども、条約の中に明快にうたわれていなかったのを、本日審議中の議定書によって、実際に締結されたのは一九九一年ですか、マドリードで締結をされるに至ったというこの辺の時間差ができてしまった。環境問題というのは言われながらもおくれていたと思いますが、これはどういうふうにとらえておられるんですか。
  63. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 委員指摘のとおりでございまして、初めにいろいろな考慮から南極条約内容的にはある意味では画期的なものでございますけれども、そういうものができまして、その南極条約に基づきまして南極条約協議国会議というのがございますが、そこで環境問題についても御指摘のとおり幾つか勧告を出すなど、環境配慮した運用をしてまいりました。  ただ、まさに御指摘の点でございますけれども、今回の議定書附属書はそういった南極条約に基づく運用ということだけではなくて、さらに一歩進めて、きちんとした国際条約上の義務として環境にいろいろな面で、具体的な面で議定書に掲げられてございますけれども、具体的な点で配慮しようということがようやく取り決められたものでございまして、その意味では南極観測、平和的利用といった点をさらに一歩進めて、そういう活動環境に十分配慮して行おうではないか、そういう性格の国際約束であると考えております。
  64. 田英夫

    ○田英夫君 今の環境問題の中に実は鉱物資源の採取の問題も今度の議定書の中に含まれているようですね。これも早くこうした条約の中に入れたことは大変よかったと思います。  というのは、実は私が隊員で行ったとき、残してきた第一次越冬隊が、昭和基地というのは島にあるわけですが、対岸の大陸を踏査したときにウラン鉱を発見したわけです。当時としてはかなり大きく報道されたものですから注目を集めました。ある経済界の人は私に対して、ウラン鉱を発見したということだけれども、日本がまさに割り当てられた地域だから、ここを採掘してウラン鉱を日本のものとして採取することができるのか、こういう御質問を受けたことがあります。当時まだ原子力発電というようなものもなかった時代にそういう一種の先見の明を言われたのでさすがに驚きましたけれども、当時まだこの条約ができてはおりませんから、領土の問題もあいまいのままですから、強引にやれば日本が採掘することができたかもしれないんです。しかし、既にそのとき領土問題は凍結しようという話が出ておりました。  また、南極大陸というのは、御存じのとおり、氷の厚さが厚いところは二千メートルにも達する。したがって、この下の地面に、地下に鉱物資源があるということを探知しても、これを採掘するためには二千メートルの氷の下まで到達しなければならないわけで、採算的に合わないんじゃないですかというお答えをしたことを思い出すんですが、もしこの条約議定書がなければそういうことも起こり得たかもしれない。  これを発見したのは越冬隊の中の地質学者ですが、そういう人たちに聞いてみると、南極大陸は十分ウラン鉱などあり得る地質だということを言っておりました。手つかずの大陸ですから、ここから大量の鉱物資源が出れば当然経済的にはそこに目をつけるということでしょうが、これを規制したということは今度の議定書の中の一つの私は大変大きな意義があると思っております。  それから、環境保護のことで先ほども高野委員から話が出ましたが、南極大陸というのはもともと大変きれいなところだったのが、観測隊を含めて人間がかなり行くようになってから生態系がいささか変わってきている。例えば、私どもが行ったときは最初ですからだれも人間が行ったことのない土地だったわけで、風邪というものを引かないわけですね。風邪のウイルスもおりませんから引いていた人も治ってしまうんですが、これが今はかなりそういう病気もあるようであります。その意味でもきれいな場所として残しておくということは大変よかったと思うんです。  私は、軍事基地に利用しちゃいかぬとか領土権を主張しないとか環境を守るとか、これは三本の柱でしょうが、この南極条約の精神といいますか、これは二十一世紀、今後未来に向けて地球上のあり方という点で一種の理想郷のような感じがしております。もちろん、人間の歴史を考えてみますと、そう容易に、特に領土権を主張しないなどということを南極以外の土地で考えてもなかなか現実的ではないでしょうけれども、軍事利用の問題などはある意味で、特に核兵器のことを考えますと、核兵器を持ってはならない、攻撃してはならない、いわゆる非核地帯条約、トラテロルコとかラロトンガとかできてきております。これは核についての一種の理想郷をその地域の国々が話し合ってつくっているという意味では南極条約の精神をもとにしてという感じがいたします。  そんなことで、これから日本もこの南極条約の精神というものを大きな地球レベルの規模で物を考えていくときにひとつ尊重していったらいいんじゃないだろうか。そういう意味でいうと、南極精神という言い方を私はしているんですが、これを日本も未来の地球あり方考える上で基本にしていただきたい、そんな気持ちさえするんですが、外務大臣、いかがですか。
  65. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員指摘のとおり、この南極条約あるいは今回御審議をちょうだいしております議定書の精神の中で、領土問題につきましては別といたしまして、平和利用あるいは環境保全といった精神はもう既にいろいろな国際的な枠組みの中でも他の地域にも適用されつつあるんだと思います。特に、軍備管理の問題であるとか地球環境保全にかかわるいろんな国際約束なり、そういった全体としての流れを考え、また二十一世紀における持続可能な地球社会をどうやってつくるかという観点から、我が国としてもこの南極条約あるいは議定書に盛り込まれております精神というものを大切にしながら、他の地域に対する取り組みに当たっても十分に念頭に入れて対処してまいりたい、こう考える次第でございます。
  66. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。
  67. 萱野茂

    ○萱野茂君 環境保護に関する南極条約議定書批准と、それに伴う国内法整備にかかわっての南極地域環境保護に関する法律案、そしてこれまで日本がかかわってきた南極観測などについて外務省、文部省、環境庁などにお伺いしたいと思います。  南極といいますと、北海道の片隅に生まれ育った私にとってはとても遠いところの話でありますが、敗戦から数年を経た昭和三十一年の冬に南極観測の第一次観測隊が北海道網走市の郊外にある涛沸湖という湖で越冬訓練を行い、昭和三十二年にオングル島に昭和基地がつくられました。樺太圏の話題を含めて日本にとって南極が身近な存在となった時代でありました。私はこのとき、日本が敗戦から立ち直り、ようやく世界に仲間入りするのだと大変感慨を深くしておったことを記憶しております。  最近のニュースでは四十年の観測史で初めて女性の越冬隊員が誕生するとの話題があります。また一方では、地球環境にとって大きな課題であります大気汚染、オゾン層の破壊、温暖化生態系の変化、観光化現象など、地球の生命にかかわるさまざまな現象が現存し、南極に凝縮されております。私は、条約の一日も早い批准国内関連法の整備を期待しつつ、幾つか御質問申し上げたいと存じます。  条約観測活動についてでありますが、先ほども触れましたが、我が国は昭和三十一年から政府の行為として南極観測活動を続けております。この南極観測については、文部大臣を本部長とする推進本部が設置され、年間の予算はおよそ四十億円と伺っております。  そこで、この議定書の八条では南極における活動について新たに環境影響の評価が義務づけられ、また附属書ではこの評価を南極条約協議国会議検討に付し、活動計画の適否の決定、計画案の修正などを行うとしていますが、現在日本が行っている南極観測活動について、この議定書の八条もしくは附属書の三条、四条の制約を受けるような活動があるのかどうか、その辺をまず最初にお伺いしたいと思います。
  68. 澤村宏

    政府委員澤村宏君) 現在準備しております南極地域環境保護に関する法律案の中では、すべての南極地域における活動ということを対象として法が構成されております。
  69. 萱野茂

    ○萱野茂君 次に、観測基地の廃棄物の処理についてでありますが、附属書のⅢでは廃棄物の処分、管理が規定されております。最近のマスコミでは昭和基地廃棄物報道されておりました。四十年間に及ぶ観測活動のもう一つの側面であります廃棄物処理について、その実態はどのようになっているのか、また管理はどうしているのか、さらに処分について今後どのように考えておられるのか、処分の計画などありましたらお伺いしたいと存じます。
  70. 林田英樹

    政府委員(林田英樹君) お答え申し上げます。  南極基地におきます廃棄物の処理の問題でございますけれども、現在南極昭和基地では、夏季、十二月末から翌年の二月中旬に約八十名、それから冬季に越冬隊員三十一名が滞在いたしまして、年間を通じて研究、観測実施しているわけでございます。  いろんな廃棄物が出るわけでございますけれども、そのうち可燃物、燃えるものにつきましては焼却炉で焼却処分いたします。それから、不燃物につきましては分別収集しまして観測船「しらせ」で日本に持ち帰るということで努力をいたしております。なお、し尿、汚水につきましては現在薄めて海洋に排出している状況でございますけれども、現在汚水処理施設を新設しているところでございまして、第四十次の越冬隊、これは明年の平成十年十一月に出発する隊でございますけれども、この隊から運用する予定にいたしております。  また、最近新聞報道もございましたけれども、使用済みの雪上車などの大型廃棄物が現在約五百トン蓄積されている状況にございます。この約五百トンの大型廃棄物につきましては五年計画で持ち帰り処分する予定にいたしております。なお、現在昭和基地からこちらへ帰ってきております「しらせ」でこのうち約二十七トンの大型不燃物を今回持ち帰る予定にいたしております。  以上でございます。
  71. 萱野茂

    ○萱野茂君 次に、環境影響評価についてお伺いしたいと思います。  議定書は、各国政府活動もそうですが、民間の活動も含め、その活動環境に及ぼすことによって包括的な環境影響評価を義務づけ、その包括的な環境評価書については条約協議国会議検討に付すことになっております。さらに、ここに至る間に適当な国内手続が必要としてあり、このために環境庁はこれに必要な法案を今国会に提出していると私は解釈しております。問題は、これまで余りアセスメントの実務にかかわっていない環境庁に包括的アセスメントを実施する蓄積はどのほどあるのでしょうか。  私は素人でありますが、南極生態系は非常に不安定な環境要因の上に成り立っていると聞きます。大変にもろさを持ったものだと思っております。この議定書で言う包括的評価は南極環境を守る上で重要な要素だと思います。  そこで、二点だけ伺っておきますが、一つは、南極の包括的環境影響評価について、精度の高い基礎調査、基礎研究、基礎情報は蓄積されているのでしょうか。いま一つは、環境庁は今度の南極環境保護に関する法律をもってこの包括的環境影響評価を満たすだけの国内手続が可能なのかどうか、またそのような技術的な蓄積をお持ちなのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  72. 澤村宏

    政府委員澤村宏君) まず初めに、南極地域環境に関する基礎的情報についてから申し上げますが、我が国南極観測あるいは諸外国の観測活動を初めといたします各種の調査研究によりまして知見の充実が図られてきているところでありまして、環境庁といたしましてはこれらの科学的知見の活用を図るとともに、必要に応じて学識経験者の意見を求めることなどによりまして適切な運用に努めてまいりたいと考えております。  また 環境影響評価に関する技術的な蓄積の面についてでございますが、国内におきましてもこれまで閣議決定等に基づきます各種の大規模事業に関する環境影響評価の審査や国立公園におきます環境影響の審査等を実施してきているところでございます。また、国際的にも幾つかの国や国際機関で既にガイドラインを策定している例もあります。これらを参考にすることで技術的にも対応できるものと認識しております。  また、先生今御指摘のとおり、南極地域環境の現状につきましては未知の部分もありますし、南極生態系等は非常にもろいものがございます。そのため、環境庁といたしましても、今後ともさらに南極地域環境に関する最新の科学的知見の収集それから把握に努めるとともに、環境影響評価に関する技術的な面につきましても経験を蓄積してまいりたいと思います。  それから、あと一点の国内法で手続を十分満たせるんだろうかというお尋ねでございますが、議定書におきましては、計画されました活動影響が軽微なまたは一時的な影響を上回るおそれがあると判断される場合には包括的な環境評価書を作成することとされております。この包括的環境評価書の案につきましては、すべての締約国に送付し、その意見を求めるほか、南極条約協議国会議における検討を行うこととされております。  これを受けまして、国内法案におきましては、この包括的環境評価の手続を満たすために、南極地域で行われる原則としてすべての活動はあらかじめその計画を申請し、環境庁長官の確認を受けることが必要とされております。この確認申請の際に、活動によります環境影響が軽微でないものにつきましては、まず議定書の包括的環境評価書に相当する内容の図書の提出を求めますとともに、国の内外の最新の知見に照らしまして環境影響程度判断するために国内でこの図書を縦覧し、意見を求めることとしております。  さらに、環境庁長官として、申請者から提出された図書に基づきまして包括的環境評価書を作成し、各締約国政府及び議定書に基づき設置されます環境保護委員会にも送付いたしまして、各締約国意見を求めるとともに、協議国会議での検討に付することとしておるところでございまして、議定書内容を十分に満たす内容になっていると、そのように考えております。
  73. 萱野茂

    ○萱野茂君 次に、南極の監視活動についてお伺いしておきます。  附属書Ⅲの五条で監視が義務づけられております。監視活動南極環境について非常に幅広く、また専門的な監視を求めていると思います。環境庁は今度の法律で必要な職員の南極への派遣、常住措置をとられることと思いますが、この場合、職員の監視の範囲、権限、身分などはどのようにお考えでありましょうか。  例えば、南極という領土外の職員の活動については従前の環境庁職員と同様に司法権などは付与しないのか、するのか、その辺をひとつお伺いしておきたいと思います。
  74. 澤村宏

    政府委員澤村宏君) 国内法実施に当たりまして、現地におきます法律の履行状況の監視、指導等につきましては重要な課題であるというふうに考えております。環境庁といたしましても、職員を現地に派遣することも含め、今後関係省庁とも相談してまいり一たいと考えております。  環境庁が現地に派遣する職員は、国内法の適正な運営を期すという観点からの立入検査、それから違反行為等があった場合には活動の中止、その他の措置命令などの職務を行うこととしているところでございます。  なお、現地の職員が行う立入検査につきましては犯罪捜査を目的とするものではございませんので、あくまで本法の適正な運用を確保する観点から行う、そういう性格のものでございます。
  75. 萱野茂

    ○萱野茂君 いずれにしましても、南極条約趣旨に沿って平和目的のために各国が南極地域に一層の努力を払うのはもちろんでありますが、我が国環境保護に関する南極条約のもとで、我が国が蓄積した科学技術を有効に生かし、地域環境保全に向けての国際貢献に努力されることを心から希望しまして、私の質問を終わります。
  76. 立木洋

    ○立木洋君 先ほど同僚議員の方から、一九五九年からの南極条約について、その後の経過等について体験を含めてお話がありました。私は、その後の状況、さまざまな事態がありましたけれども、これらの経過は南極という局地的な問題にかかわらず、科学技術発展、進歩して、そして鉱物資源の開発等々に大きな注目が寄せられる過程の中で、環境生態系をどう保護していくかという問題とのかかわりは非常に大きな問題として議論され、激しい対立が交わされてきたという経過がこの南極の問題をめぐっては存在したと思うんです。この問題すべてについていろいろお尋ねするというのはとても時間がございません。  ことしの十二月に京都で第三回の締約国会議が行われますし、既に数日前にボンでこの準備会議が行われました。温暖化の問題です。  先日、ちょっと文献を読んでおりましたら、こういうふうな指摘がありました。地球温暖化の気温の上昇というのは緯度の高い地域ほど著しい。つまり、南極、北極両極の氷の溶解に伴う海面上昇も心配される。それで、先般南極大陸と島との間で氷で閉ざされていた海峡が氷が解けて海面に姿をあらわした、これは地球温暖化への警告だというふうな指摘をしているような文献も目にしたわけですが、きょうはこの問題、南極におけるこの事態をお尋ねしょうということじゃなくて、こういう問題もあるんだということで、地球温暖化の問題をめぐって若干お尋ねをしておきたいというふうに思います。  一九九二年に御承知気候変動枠組み条約に従って先進国では二〇〇〇年のCO2の排出量を一九九〇年に戻すというふうな方向で勧告がなされた、そういうふうな内容です。もちろん、これは厳格な法的な拘束力を持つものではありませんけれども、そういう目標が定められたというふうに認識をしております。その後、政府で発表されている排出量の状態等のいろいろな報告がございましたが、現在の水準でこの排出量の状態がこの目標から見て大体どのような状態になっているのか、それから二〇〇〇年という場合には大体どのぐらいになりそうなのか、推定で結構ですが、おわかりになりましたらお知らせをいただきたいと思います。
  77. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 温室効果ガスのうち温暖化に対する寄与が最も大きいのは二酸化炭素でございますが、統計によりますと、一九九〇年度の我が国の二酸化炭素排出総量は炭素換算で三億二千万トンでございました。それが一九九四年度、これが最新の数字でございますが、三億四千三百万トンでございます。  二〇〇〇年度につきましては、現在の見通しでは炭素換算で三億三千万トンということでございまして、温室効果ガスのうち最も影響の強い二酸化炭素の排出につきましては、いろいろ努力はしておりますけれども、なかなかはっきりした効果は現在までのところ出てきていないという状況でございます。
  78. 立木洋

    ○立木洋君 結局、九四年の段階では三%前後での上昇、二〇〇〇年では七%前後というふうに大体数値としては押さえられるわけですね、推量は。そういうことでいいわけですか。
  79. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) その数字が何%増になるかという計算は手元にはございませんけれども、総量として数%ふえていることは事実でございます。現在手元にございますのは一人当たりの排出量でございますが、それは五・四%増加という数字がございます。
  80. 立木洋

    ○立木洋君 御承知のように、九三年の五月に当外務委員会で気象変動枠組み条約審議が行われました。私も審議したわけですが、当時の外務大臣は武藤さん。それで、日本政府といたしましては、この地球環境保全ということに対しては先進国の中でもリーダーシップをとっていかなければならない、そういう意味で努力をしてまいりたいという決意が表明されました。  しかし、実際今の状態を聞きますと、なかなか順調に進んでおらずに、若干の問題があるというふうに数字を聞くわけですが、日本のCO2の排出は大体世界の第四位だというふうな数字も見ましたし、世界的な環境保護団体である世界自然保護基金が先月末に発表しました先進国温暖化防止の取り組みぐあいを評価したものも取り寄せて見てみました。それによりますと、CO2の総排出量、それから排出目標の達成見込み、それに対する政府姿勢、そしてもう一つは一人当たりの排出量、この四つの点で評価が出されております。これをいただいて、全部書いてありますが、いいのは緑、中間が黄色、悪いのは赤で表示されてありますが、最高に悪いのはアメリカであります。全部赤であります。そして、日本が二番目に悪いんです。これは一つ一つ説明していると長くなりますから申しません。  ですから、そういう意味では私はCO2の削減に対する取り組み、これまでどこに問題があったのだろうか、そしてそういう点でもっと努力達成するためにはどういうことが必要だったんだろうかというふうなこと等もこの南極の問題を批准する際に改めて考えていただきたい点だということを強調したいわけなんです。  それで、日本が今度の京都会議でどういうふうな態度をおとりになるのか、そういう問題についてのお考えが既に検討されているならば御説明いただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。まだそこまで行っていないんでしょうか。
  81. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 十二月の京都における会議に向けまして、委員も御指摘のボンで会議が先々週ございました。今後なお関係各国とすり合わせていくべき課題は大きいものと考えております。日本としても日本なりの具体的な提案、一部必ずしも具体的でない点もございますけれども、日本としての提案を昨年の末に各国に示しまして、現在日本以外の国からも出ております提案もございますが、日本の提案も含めまして各国の提案について鋭意調整が進められている、そういうことでございまして、引き続き十二月の京都における会議において、効果的でありかつ公平、実行可能な結論が出るように努力してまいりたいと考えております。
  82. 立木洋

    ○立木洋君 ある政府関係者の方からもお聞きしたし、それに類似したことが新聞報道でも実は出されていたんですけれども、日本政府としては総量規制、つまりCO2の総排出量の規制ということと、もう一つは先ほど言われた一人当たりの排出量をどういうふうにするか、選択制にしたらどうかというふうな提案をしたいということをちょっと耳にしたんですけれども、そういうことなんでしょうか。
  83. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) この温室効果ガスの排出の管理の問題につきましては国によってそれぞれ置かれている状況が異なるのではないかと私ども考えております。例えば、地理的に大きな国あるいは小さな国ということもございますけれども、経済構造もいろいろ異なっておりますし、それと密接に関係しておりますエネルギー構造もまた異なっていると思います。  端的に申しまして、国によっては相当省エネルギー努力を進めてきておりますし、その意味では一人当たりということではそう大きくない二酸化炭素排出量の実量があると。ところが、ほかの国では一人当たりはともかくとして、実は高いところもありますけれども、総量としての削減を考えてもいい、あるいは考えた方が実効があるということもあろうかと思いまして、そういった国情の違いを反映させる意味を持ちまして総量規制または一人当たりの制限という考えを打ち出した次第でございます。
  84. 立木洋

    ○立木洋君 国によっての違い等の説明については私は何も否定するつもりはないんです。  しかし、大臣、ちょっと聞いていただきたいんですけれども、総量規制の問題をやった場合とそれから一人当たりでの規制の量を問題にした場合とは非常に大きな違いが出てくるんです。どういうことが出てくるかといいますと、一九九四年の値を基準として一人当たりの削減を目標とする削減対象国は、三十五カ国のうち二十カ国は新たに削減が不必要になるんです。一九九〇年値を基準とした排出削減を同じように一人当たりの削減を目標とするという形で見てみますと、排出削減を必要としない国が二十四カ国にもなるんです。  つまり、人口とのかかわりで、一人当たりの排出ということだけを問題にしますと、それ以上削減しなくてもいいという国がふえるんですよ。そうすると、地球上全体から言うならば、CO2の総量を規制し削減していくという見地から見ると、地球環境保全の点からいうと一人当たりの問題というのは問題があるというふうに考えて、やはり総量を規制していくということをある意味では重視する必要があるんではないか。  どうしてかといいますと、アメリカはもともと総量規制ということを主張していましたけれども、この総量規制にする点については、これに強制力を持たせるというのに最後まで反対しました。日本は強制力を持つような総量規制でもいいという考え方が当初はあったんですけれども、アメリカのそういうような主張のもとでアメリカに同調するというようなことになって、そして総量規制ということについての考え方が若干弱まったんではないかという感じを私は持っている。そして、今度二つの選択制を出して、一人当たりの削減、規制ということになっていくと、世界全体から見ると、地球環境に与える影響というのはやはり好ましくない状態に進んでいかざるを得なくな  るんではないだろうか。  ですから、先進国としてイニシアチブを大いに発揮するということであるならば、私は総量の規制の問題について重視するという観点が必要ではないかというふうに思うんです。日本の場合、CO2の総排出量は世界で第四位です。ところが、国民一人当たりで見ますと二十位から大体三十位ぐらいなんです、排出量の一人当たり。そうしたら非常に数字の上ではよく見えるようになるんです。だけれども、私は、数字の上でよく見えるかどうかということに問題があるんではなくて、根本的にやっぱり地球を守るという点を重視する必要があるんではないかというふうに思うんです。その点を今回のこの南極条約批准するに当たって、十二月に京都締約国の第三回の会議が行われますから、ひとつ十分御検討いただいて、こういう側面でも日本としてのイニシアチブが発揮できるように、武藤大臣もおっしゃったんで、池田大臣にもぜひそのことを強力にお願いを申し上げておきたいと思うんですが、最後大臣の御見解をいただいて、質問を終わります。
  85. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私も、委員おっしゃるように、地球全体としていかに総量を抑制していくか、これが大切なんだと思います。それを達成するために具体的に各国別に総量でいくのか一人当たり等のやり方がいいのか、いろいろあるんだと思います。先ほど政府委員から御答弁申し上げました際に、温暖化防止効果があると同時に公平で実行可能ということを申し上げましたけれども、現在の各国の状況を見ますと、やはりこれまでにどれだけ努力したか、それによっていろいろ違うわけでございます。  これから先さらにカットしていくといった場合には、やはりそういう実行可能性という観点から申しますと総量だけで抑えていくということも無理があるんじゃないのかということで、どっちか選択というようなアイデアも出てきているわけでございますが、しかしそういった選択を認めたからといって、おっしゃるように、それが何かの逃げ道になる、努力をしなくても済むその逃げ道を探すんだということになつちゃいけないと思うのでございます。だから、そこのところはよく考えながら、しかし効果的に削減が進められるような方途を追求してまいりたい、こう考える次第でございます。
  86. 立木洋

    ○立木洋君 済みません、一言だけ。  さっき申し上げましたように、御答弁いただいたのに私は反対しているわけではございません。そういうそれぞれの国の状況があるということも認めながらも総量規制を重視していただきたいということを強調したので、誤解のないようにひとつお願いします。
  87. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 私からは南極をはるか離れた北の国の問題を取り上げさせていただきたいと思うんです。  北朝鮮の問題、特に食糧問題を中心としてお尋ねしたいと思います。  私は、日本政府が北朝鮮の治安状況、特にその根っこになっておる食糧の自給問題についてどういうふうに分析し、現状認識をしているのか、日本政府の見解をお教え願いたいと思うわけであります。  北朝鮮の問題につきましてはマスコミでもさまざまな報道がなされておりまして、いろんなコメントが述べられております。もう間もなく崩壊するんだという意見もあれば、いやしばらくは大丈夫だろう、いやいや永久に大丈夫だろう、いろんな考えが出ておりますけれども、大体はもう破局にそろそろ近づきつつあると。その引き金になるのは食糧問題で、既に餓死者が出ておる、この三月が越せるかどうかわからないし、五月には食糧が引き金になって大変な問題、場合によっては北朝鮮の崩壊と。その場合には数万人か数十万人かの難民があふれてくるだろう、こういうことも言われております。  昨年の八月か九月、経団連のセミナーが軽井沢で開かれたと思うんですけれども、その際に、政府を代表する立場の梶山官房長官がこの問題を取り上げまして、間もなく北朝鮮は崩壊するだろうと。そうなれば何万、何十万という難民が日本にも押し寄せてくる、ただの難民かと思うときにあらず、武器を持った難民もその中にはまじって、偽装難民でしょうか、それが上陸してくると。そうすると、日本の北の組織、総連のことだろうと思いますけれども、これが呼応して立ち上がると。南の組織も我々も負けてはおられるかということで立ち上がる、日本国内が内戦状態にもなりかねない、自衛隊はそういうことにはとても対処できない、大変なことになるという発言をされたことが新聞に大きく出されておりました。  戦車や飛行機まで、ミサイルまで持ち込んでくる難民を果たして難民と言えるのかどうかわかりません。一体そんなことが考えられるのかどうかわかりませんけれども、梶山長官のおっしゃりたかったのは、だからこそ日米安保が必要だし、また北朝鮮に対しても崩壊を食いとめるために必要な食糧援助もすべきであろうと、こういうことだったんだろうと思います。  彼はこの発言を撤回いたしましたけれども、編言汗のごとしと。綸言、偉い人が一回言ったらそれは撤回できないわけですから、こういう言葉をちょっと援用させていただくが、これは極端な例です。そうでない人は、そんなことはない、大丈夫だ、金正日を中心として当分は持ちこたえていくだろう、こういうことを言っている人もいます。じゃ食糧援助をしなくてもいいのかというと、いや食糧援助はちょっとやっぱり必要かなと、こういうことで、我々とすれば一体どういう説を信じたらいいのかよくわからない。  どうかひとつ政府の公式見解、こういう席で述べられるのかどうかわかりませんけれども、国民に対する、国民に向けて報告をするという形で、北朝鮮の現状をどういうふうに認識しておるのか、ちょっとそれを説明していただきたいと思います。
  88. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもは北朝鮮の現状につきましては非常に困窮した状態にあると思います。とりわけ経済の面におきまして、食糧、エネルギー等は大変困窮した状態にあると思います。これにつきましては、一昨年、昨年の異常天候に基づく洪水等々の被害が大きな原因だということが言われ、また昨年、一昨年あたり我が国が食糧支援をいたしましたときも、そういったことを勘案しながら緊急のそして人道的な見地から行ったわけでございます。  現在どう見ているかと申しますと、確かにそういった自然の要因もあるとは思いますけれども、しかし基本的にやはり食糧生産と申しましょうか、あるいは食糧の自給の計画と申しましょうか、それが天災等がなかったとしてもきちんと需要を賄うような姿になっていない。そういった意味では経済運営あるいは経済政策そのものの構造的な問題があるんだというふうに私は見ております。  ただ、それの不足が一体どの程度なのか、いろんな見方がございます。WFP等では年間の需要が三百三十万のうち百万トン以上、百数十万トン不足だとか、こう言われているようでございますけれども、そこのところは私どもも確たる数字はこれと申し上げられるようなものを持っているわけではございません。しかし、非常に困窮しているのは事実だと、こう見ております。  それじゃ、本当に食糧の需給逼迫が原因になって間もなく破局を迎えるのかどうかという点につきましては、私どももまたいろんな見方があるんだと思います。今日でもWFP等の人道的援助、これは量的にそんなに大きなものじゃございませんけれども、国によっては数十万トン規模の食糧の供給を行っているというところもあるやに伝えられております。これから端境期に向かっていきますけれども、国際的にもいろんな動きがございますので、すぐにこれが破局に直結するとは思いませんけれども、大変難しい状況であるのは事実だと思っております。  ただ、一方におきまして、政治的な面で言いますと、最近の黄書記の亡命に見られますように、非常にこれも問題含みではございますが、かといって現在の体制がすぐにも政治的な指導力をあるいはコントロールする力を失うかといいますと、どうもそこまでの兆候も見られない。むしろ、七月ぐらいには金正日書記が国家を指導する最高の政治家だということをタイトルの面でも明確にしていくんじゃないかといった観測も行われているわけでございますので、そういったことで我々は、非常な困難を抱えながらもまだしばらくはこの体制のもとであの国は運営されていくのかなと、こう見ております。  それで、例えば我が国としてこの食糧の問題にどう対応するかでございますが、我々といたしましては、もとよりあの国が非常に大きな困難、それが先ほど委員指摘されましたような大変な危機的な状況につながるということがございましては、やはりこの地域全体の安定といいましょうか我が国安全保障観点からも問題なしといたしませんので、そういったことは避けなくちゃいけない。そのための国際的ないろんな動きがあるならば、我が国もそれを無視するわけにはいかないという感じは持っております。  しかし、一方において、御承知のように、人道的な観点から我々は北朝鮮に対していろいろ対応しておかなくちゃいけない問題もあること、疑惑等もあることは御承知のとおりでございますので、そういったことに関する国民の世論というものも見ながらいろいろ考えてまいりたいと思っております。  ただ一点、そういったいろいろの問題がありながら、現在の北朝鮮が国際社会に対していろいろ、窓を開いていくとまでは申しませんが、かかわりを若干強めていこうというふうな姿勢が見られる。例えば、四者協議の事前説明への対応ぶりであるとかKEDOのプロセスへの対応ぶりとか、そういったことも我々見逃さずにこれからの動きを注視してまいりたい、こう考えております。
  89. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 新聞報道によりますと、アメリカ、韓国は既に食糧援助を決めて、日本にも同調を求めてきているということが報道されておりました。それは本当かどうかわかりません。しかし、アメリカ、韓国、アメリカの場合には人工衛星、軍事衛星を飛ばしたり、あるいはCIAという特殊な情報組織があったりして適切な情報を集めておるんでしょう。韓国は韓国でまた亡命者からいろんな情報を聞いたりしている。しかし、それに従う必要もないわけでして、我が国我が国独自の判断で食糧援助をする必要があるのかどうか。  その前提として、肝心かなめの北朝鮮から食糧支援の要請が来ているのかどうか、その点はいかがでございましょうか。
  90. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、支援の要請があるかどうかという点でございますが、現在までに北朝鮮から直接の要請というのは当然ないわけでございますけれども、国連機関、特に世界食糧計画が先般人道的見地からの支援のアピールを出した、それは我が国にも向けられておるということでございます。  それから、米国あるいは韓国はこのアピールに応じて支援することを決定したわけでございます。日本といたしましても、先ほど申しましたように、基本的にこの地域の安定ということを考えました場合には米韓等と同じような認識、同じような対応が大きな意味では必要だと思うのでございますが、しかし個別具体論にどう対応するかという場合には当然それぞれの国の独自の立場、事情というものも勘案しなくちゃいけない、こう考える次第でございます。  そういった観点から言いますと、日本の場合には先ほど申しました人道的な観点からの処理されなくちゃいけない問題も抱えておる。それにかかわる国民の世論がどうなのかということも考えなくちゃいけませんし、また我が国と北朝鮮の間の正常化の交渉がとんざしたままになっておりますから、そちらの方に何らの進展の兆しもないままに米韓と全く同一の歩調をとるかどうかということはいろいろ考えてみなくちゃいけない、こう考えております。そういったところは米韓も日本の置かれた事情というものは理解しているものと承知しております。
  91. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 肝心の当事国から要請がないのに支援をする、支援に踏み切るというのもおかしな話だろうと思うんです。どうか助けてくださいと、じゃ助けてやろうかという話が世の中の筋道だろうと思います。その際に、韓国は韓国としての情報収集、アメリカはアメリカとしてのいろんな情報収集、我が国もまた必要な調査をした上で踏み切るべきであろう、こう思うわけです。  例えて言えば、公式の調査団を派遣する。食糧問題に限定してもいいと思いますが、本当に食糧に困っているのかどうか。前回送った米などは何か軍事面だけに回された、こういう言われ方もしておりますし、それが本当なのかどうなのか、もう少し自由な立場で公正に調べてくる。調査団を受け入れることができないということならば、もうこれは遺憾ながら援助もできないということになりましょう。  何しろ我が国は亡命者を受け入れていないわけですから、いろんな情報収集が韓国やアメリカからは劣っていることは間違いないわけで、国民の税金を使って援助を行う、そのためにはやっぱり必要な調査、調査団を派遣して見せてもらう、可能な限り。それぐらいの要請はすべきだろうし、また北朝鮮が本当にそういう悲惨な状況にあるとすれば調査団ぐらいは受け入れるのはまた当然でしょうし、これを援助の条件にするのは何らおかしいことではない、こういう気がいたしますけれども、その点、いかがでしょうか。
  92. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 現在行われているのは先ほど申しました国連機関からの援助要請でございまして、その関係では、例えばWFPは北朝鮮に現地事務所を持っていろいろな情勢の掌握に努めております。それから、国連人道問題局というのも、今月のうちだと思いますけれども小規模の調査ミッションを出して、またそれを踏まえてアピールを出すかどうか検討すると承知しております。そういうふうに国際機関を通ずるものにつきましては一応そういった調査があるということを御理解賜りたいと思います。それからなお、WFPの関係では、昨年、これまでに行われた援助が適切に行われているかどうか調査団を出しましたが、その調査団には我が国からも参加したということもございます。  それと同時に、北朝鮮のいろんな情勢につきましては米国、韓国などは緊密に情報の交換、意見の交換をしておりますし、そのほか我々として、国交はないわけでございますけれども、情勢の把握あるいは情報の収集にはそれなりの努力はしておりますし、してまいりたい、そう考えております。
  93. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 我が国と北朝鮮の間にはこの前問題になりました拉致問題がありまして、そう簡単にはなかなか踏み込めないこともあるわけですけれども、この拉致については北朝鮮が公式に認めることは絶対ないと思いますから、こういうことは条件になかなかしにくいんだろうと思います。  この前私ちょっとお尋ねしたんですが、日本人妻の問題千八百人が三十年ほど前に北朝鮮に渡っていったと。その後一体どうなっておるのか。これは氏名まですっかり把握されておるわけでありますから、千八百人中の何人が現在生存しておるのか、生活状況はどうなっておるのか、また日本に一時的なりとも帰国する意思があるのかないのか、帰国する意思があるとすればそれについて北朝鮮側が一体どれぐらいの配慮をするつもりがあるのか、こういうことは当然に援助の条件としてもいいと思うんです。当然のことだろうという考えがしております。その点、いかがでございましょうか。
  94. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) いわゆる日本人妻の問題につきましては、委員も御承知だと存じますが、これは八回まで行われました正常化交渉の中で何度も我々は提起をいたしました。そして、そういった中で、一時期は北朝鮮側も若干それに対応する兆しを見せたこともあったわけでございますけれども、結論的に申しますと、交渉が途絶える直前の時期には非常にかたい姿勢に返っておったということでございます。  しかし、当然のこととして、私どもはこの問題に人道的な観点からもきちんと対処してまいらなくちゃいけませんし、北朝鮮としてもこの問題は対処できない事柄であるとは思いませんので、今なかなか交渉のしにくい状況ではございますけれども、きちんと求めるところは求めてまいりたい、こう思っている次第でございます。
  95. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 終わります。
  96. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 南極については私は賛成でございます。  きょうは、お許しを得て、いわゆる従軍慰安婦問題の平成五年八月四日の内閣官房長官談話についてちょっとお伺いをしたいと思っております。  この談話がいわば発端になって、その後基金というようなものが設立されたり、あるいは教科書での慰安婦問題の記述が、ほとんど全部の教科書に相当どぎつい表現で取り上げられたりというようなこともあります。それからもう一つは、これはもっと大事なことかもしれませんが、とにかく政府がこういったわけなので、その後の日本政府の態度といいますか、これはいわば事実上拘束されて、これからもずっと拘束され続けるんじゃないかと思うんです。この官房長官談話というものについて、私だけがわからないというのでなしに、多くの国民がどうもよくわからないところがあると思うわけです。  これを読みますと、とにかく慰安婦を募集して、そのときに「甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。」と書いてあるんです。しかし、これは最近出てきたことだけでなしに、本当に日本政府による強制というのがあったかないかという話があるのか。あるいは、相当強制的にこういうときには大体連れていくわけで、そのほかのところに「総じて本人たちの意思に反して行われた。」と書いてある。これは当たり前の話で、大喜びで行く人はほとんどいるはずがないので、そういう意思に反して行われたというのはそのとおりだと思うんですが、ここに国が関与したかしないかというのは相当大きな我々にとっての問題だろうと思うわけです。  新聞報道でこれは不正確かもしれませんが、最近は石原元官房副長官がインタビューで、強制連行という事実があったかどうか随分探したけれども、日本側のデータにはそれを裏づけるものはないと。あるいは外政審議室長も、強制連行を組織的に行った公的記録は見つかっていないということなので、それではなぜこの官房長官談話のようになったかということになると、これも新聞報道ですからよくわかりませんが、総合的に判断してこういうことになったということを言っておられるようなんですね。  調査をなさったわけで、一つの事実は、もしこの報道が事実とすれば、そういうような記録は一切見つからなかった、こういうことが一つある。そうすると、総合的にというと、これが一つだとすると、これも調べあれも調べ、さらにこれも調べたというようないろんなことがあって総合ということになりますね。ほかの要素というのは、私の知る限りでは、十六人か何かの慰安婦をやらされたとおっしゃった方々の証言があるということ以外には私もわからないし、国民にもそれ以外何を調べたのかなというのはわかっていないと思うんですが、総合の、こっちの文書などを十分に調べていなかったという以外にどういうことがあったんでしょうか。
  97. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 今の御指摘の中にもございましたように、政府発見資料の中には軍や官憲による慰安婦の強制連行を直接示すような記述は見出せなかったと。他方、政府として調査に当たって各種の証言集における記述、それから韓国における証言聴取、こういうこともその対象といたしまして、これらを総合的に判断した結果、「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。」という談話につながったということでございます。
  98. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 「官憲等」というのはどういう意味でしょうか。これは主に証言によるものだろうと思うんですが、官憲もおった、こういうわけでしょうね。  時々悪いのがいて、日本なんかでもあるんですが、警察ですがなんといって黒い手帳か何かちらっと見せて、これは確かに警察なんだと思って誤認をするというようなことは、しばしばでもないけれどもよく起こることがあるんですが、そういうようなことというのではなしに、疑いなしに官憲がこれに加担したということなんでしょうか。
  99. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 慰安婦の募集に関する官憲などの加担ということがあるわけですが、軍や警察の関与には、不統制な募集がかえって社会問題を惹起する、それを防止するためではなかったのかという議論もあり、またそういう観点があったことが明らかになっております。したがって、そういう角度のものも含めた軍や官憲といったものの関与ということがあったと。  そして、政府発見資料に加えて各種の証言集、これは印刷物になっているものでございましょうが、これとか、韓国における現実の人からの証言聴取、こういったことを行った結果、総合的に、軍や官憲が直接これに加担したこともあった、これというのは甘言、強圧によるなど本人の意思に反して集めたという事例でございますが、それに加担したこともあったということが明らかになったという認識に到達したと承知しております。
  100. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 これとは違うというか、似たようなところがありますけれども、戦争中に捕虜虐待とか残虐行為というようなことがあって裁判にかかった人たちがいますね。B級、C級の裁判というのがあって処刑された人たちもいるんですが、この人たちは、一部には無実の罪というのもあったかもしれないけれども、裁判の結果そういう行為があった、これはけしからぬということで処罰をされたわけです。この場合、明らかにこれは官憲だったわけです。捕虜収容所の所長だったりしますが、しかしそのときの官憲というのは、官憲の身分を持った何のだれそれがけしからぬ行為に及んだということで罰せられたということですよね。  そういうものと、この官憲とは同じレベルなのか。あるいは、今簡単に軍や官憲がとか軍や警察がとおっしゃったけれども、軍人の一人がやった、警官の一人がやったというのと、軍、警察が加担したというのとは違うと思うんです。そこのところはどうなんでしょうか。
  101. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) この慰安婦の件につきましては、自由に業者に任せておきますといろいろな意味での社会問題が病気といったものも含めて発生する、そういうことから日本の軍、警察が不統制な募集というものを統制するためにいわば関与してきたという前提があるんだろうと思います。  そうした中において、いろいろな形で甘言、強圧により本人の意思に反して慰安婦の人を集めたという事例が数多くあって、その多くに軍あるいは官憲が関与したと。おっしゃられるような意味で関与したということであるかどうかは別なんでございますが、しかし少なくともそういう甘言、強圧によって本人の意思に反して集めたという事例の中に官憲などが直接加担したということが証言集や証言聴取、さらに政府発見資料をあわせ読んだ場合に明らかにあるということではなかったかと思います。
  102. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 どうもまだよくわからないですね、これ。そうすると、強制連行を組織的に行った記録はないという話とはどうなるんですか、かかわりま。
  103. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 政府発見の資料の中には軍や官憲による慰安婦の強制連行を直接示すような記述は見出し得なかったということが第一点でございます。  第二点として、調査に当たって、今回各種の証言集の記述や韓国における証言聴取といったことも行った。これらをひっくるめて全体として判断した結果今申し上げましたようなことがあったと、こういう結論に至ったものでございます。
  104. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 これもさらに報道で、不確かなことで申しわけないんですが、しかし証言の裏はとらなかったというような話があるんですが、そこのところはどうなっているんでしょうか。
  105. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 証言の裏ということなんでございますが、証言集それから現実の証言ということを申し上げましたけれども、聞き取り調査を行った中には元慰安婦以外の関係者からの聞き取りというものも入っているわけでございます。したがって、言葉の問題で、証言の裏とかなんとかということが、直接的な因果関係をどういうふうに処理されたかということとは別に、証言集、証言聴取ということに当たっては、先ほど委員指摘された十六人の人による証言のみということではなくて、その他の関係者、韓国人でない関係者も含めて広く当たったということと理解しております。
  106. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 私がこんなことを聞きますのは、このことをほっておけというようなことじゃなくて、非常に不幸なことが起こったことは確かなんですが、やっぱり国の名誉ということはここで十分考えておかなきゃいけないんじゃないか。そこのところが何かあいまいもことしておりまして、日本の一般の国民もよくわからない。それで、いい意図かもしれませんけれども、基金というのをつくって、ある目標で、このぐらいお金を集めてやろうやということで始めたけれども惨たんたるあれですね。これはやっぱりみんなわからないからなんです。きょうはもう時間がありませんからこれでやめますが、確かに今おっしゃったことは承りましたが、もう少し私の方も考えまして、また聞く必要があると思いましたらお聞きしたいと思います。  これで終わります。
  107. 矢田部理

    ○矢田部理君 質問をする前に委員長に申し上げたいわけですが、またここで言うのが適切かどうか私も考えておったんですが、同じ日、同じ時刻に常任委員会と特別委員会を同時に開くという運営の仕方は議会制度のあり方としていかがなものであろうかというふうに思います。二十年以上私は国会におりますが、初めてのケース。科学技術特別委員会に私は所属しています。きょうは本会議終了後から向こうに出ておりますが、これはやっぱり議会における審議権の存否にかかわる問題でして、ただ質問時間だけやりくりすればいいという性質のものではないと思います。これでは何が参議院改革だとも言いたいわけであります。  その程度にしますが、十分今後の委員会の設営といいますか、きょうはどちらかといえば特別委員会の日なんです、曜日からいえば。定例日でもないわけです。その点で格別の御配慮を煩わしたいというふうに思いますので、冒頭申し上げます。
  108. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 承っておきます。
  109. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、余り勉強しないまま出かけてきて、きょうはお聞きをすることが中心でありますが、南極条約協議国会議というのはどんな集まりなんでしょうか。
  110. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 南極条約に加盟している国の中から二十六カ国が集まりまして南極条約にかかわるいろいろな問題について協議しているということでございますが、その中で例えば日本協議国一つでございます。
  111. 矢田部理

    ○矢田部理君 その協議国が中心になってまとめた議定書ということだと思うんですが、二十六カ国のうち既に批准をしている国は何カ国ですか。
  112. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 既に二十三カ国が締結手続を終えていると承知しています。
  113. 矢田部理

    ○矢田部理君 せっかくこれまでいろんな議論をしてきておりながら日本が大幅におくれてしまった、二十三カ国も既に承認というか批准をしておりますのに。おくれた理由と、あと残った国がアメリカとロシアと聞いておりますが、その見通しなどについて伺いたいと思います。
  114. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 確かに、日本は二十四番目になりそうな状況ではございますが、特におくれたかどうかということに関しましては、これまで日本が何をしてきたか申し上げますと、この条約、この議定書附属書はそもそも二十六カ国全部が締結しないと発効しないことになっています。こうした構造であることも踏まえまして、ほかの国が締結に向けて進んでいるかどうかを見ていたという事情が一面ではございます。  具体的には、例えば昨年の段階締約国が四カ国ふえたということがございますが、そういうこともあるので急いで御承認をいただきたいと考えたことが一つございます。もう一つの点は、この議定書附属書にかかわるいろいろな義務について国内法で担保しなければいけませんものですから、国内法との調整に若干の時間を要したということでございます。  日本以外の未締約国、アメリカの場合は議会でこの議定書附属書実施のための国内法が可決されておりまして、現在実施のための規則を検討中の段階でございます。残りのロシアの場合は政府の内部でいろいろな調整が現在進められているところと承知をしております。
  115. 矢田部理

    ○矢田部理君 平成三年ですか、つくられたのが。ですから、相当大幅なおくれといえばおくれなんですが、全体が批准をしないと発効しないということになると、ロシアの見込みはどうなんですか。いつごろどんなふうになるんですか。
  116. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) ロシア状況については必ずしもよくわからないところがございます。ただ、私どもの希望としましては、ロシアも一刻も早く国内手続を終えてもらいたいと考えております。
  117. 矢田部理

    ○矢田部理君 私が心配しますのは、南極条約というのがつくられて、南極が軍事目的に利用されたり環境が壊されたり、資源がいろいろ勝手に採掘されたりすることを防ぐ意味で大事な条約だと思いますし、また一連の議定書だと思うんです。もともとの考え方でありますが、やっぱり日本としてはこういうものは率先して批准をし、推進力になるべきだと私は思います。  この議定書策定に当たって一つ議論になったのが鉱物資源活動といいますか、南極の地下にというか氷の下でしょうか、眠っているであろう鉱物を勝手に各国が採掘したり自己のものとして獲得をしたりすることを抑える、開発をとめようということで、聞くところによるとフランスなどは鉱物資源活動を永久に禁止しょうという考え方が基本にある。それに対してアメリカとかイギリスは開発を全部させない、しないというのは困るということで長いこと議論があったというのですが、その後の議論の経過はどうだったのか、日本はそれに対してどういう態度をとられたのかを次に伺います。
  118. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 南極には相当程度資源が賦存しているのではないかと言われておりまして、委員指摘のとおり、その扱いについて国際的に若干の議論がございましたが、そういった議論の結果、今回御提出しております議定書及び附属書によれば、科学的調査の場合は別でございますけれども、鉱物資源の開発は禁止するということでおおむね国際社会の意見が一致したということでございます。  日本としましても、かつては鉱物資源について若干の潜在的な関心を有していた時期もございましたけれども、南極という特別な地域にかんがみまして、まさに今回の議定書にも規定されているように、鉱物資源の開発は禁止されるべきものと考えている次第でございます。
  119. 矢田部理

    ○矢田部理君 あと十年ということで妥協し、とりあえずお互いに合意に達したわけでございますが、もう一つ南極がいろいろ荒れてきている、観光なども最近盛んになってきているわけです。廃棄物というようなものもいろいろあそこに投棄されたりしていることに対する規制をしようとか、動植物について勝手にとったり、また犬などを連れ込んだりしちやならぬということなどもあるわけですが、それらについて観光のためのガイドラインがかつてできましたね。この位置づけと日本の対応をお伺いしたい。
  120. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 確かに、近年観光目的で南極地域訪問する人がふえております。日本の場合は、一番最近の南極が夏であるシーズン、昨年の今ごろに終わる時期でございますが、およそ四百十一名が観光目的のために南極を訪れております。  そこで、今回の議定書では、そうした観光目的の訪問も含めまして、南極における活動を行う前にしかるべき環境影響評価を行いましょう、行わなければいけないということになっておるわけでございまして、日本政府としてもみずからの日本人の観光につきましてそのような策を講じてまいる所存でございます。同時に、この議定書にうたわれておりますところの査察という制度を活用しまして、必要に応じほかの国の観光もどうであるか観察し、この協定に基づきまして必要とあれば締約国の注意を喚起するといったことを考えているわけでございます。
  121. 矢田部理

    ○矢田部理君 ガイドライン環境を守るための、生態系保護するためのかなり具体的な中身が盛られているのですが、ちょっと最後に触れられましたけれども、実効性の確保について何か国内法考えておられるし、現に準備されておるわけですが、これはどんなふうに考えているんですか。
  122. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 南極地域に対しまして日本は、御承知かと思いますけれども、領土的主張ではなくて属人主義的な管轄権を主張しているわけでございます。したがいまして、日本国籍を持つ者あるいは日本に住んでいる外国人の観光の扱いが主として今回の議定書によって影響されるわけでございますが、おっしゃるとおり、南極日本政府当局の者が常に、広いところでもございますし、常駐していてすべて監察しているというわけにもまいりません。したがいまして、その面での実効性は完璧とは申せないかと思いますけれども、事前の環境評価書を提出してもらうといったことによってなるべく実効を上げていきたいと考えている次第でございます。  なお、別途御議論いただいております国内法によれば、動植物をみだりに採取したり、その他この附属書の規定に反するような行為をした場合に  ついては罰則が設けられてございます。
  123. 矢田部理

    ○矢田部理君 それを企画した旅行業者とか引率していく団体の責任者とかに対する法的規制というのは何か考えていますか。
  124. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 御質問の点はこの条約実施に伴いますところの国内法の具体的な運用のことでございますので、私ども有権的にお答えする立場にはございませんけれども、一般論として申し上げれば、個々の日本人の観光客直接なのか、あるいは引率者、旅行業者を通じまして環境評価書を事前に提出してもらう、そういうことになろうかと考えております。
  125. 矢田部理

    ○矢田部理君 最後になりますが、準備されている国内法に向けた対応における基本的な柱といいますか、問題点について一応説明をいただいて、私の質問を終わります。
  126. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 国内法環境庁でございますが、関係省庁と協議の上取りまとめたわけでございますが、それに当たってはそれなりの苦労あるいは問題点もあったと聞いております。  例えば、南極日本の固有の領土というわけではございません。独特の属人主義に基づく法の適用関係がございます。あるいは、南極と申しましても南極の陸地の部分、氷棚の部分、公海上の部分と扱いの違いがございます。扱いの違いはございますけれども、陸地あるいは氷棚で調査研究活動あるいは観光活動などを行って、引き続き公海部分を通り抜けないともと来たところに戻れませんものですから、そういった場合の公海上の例えば海洋汚染の扱いなどについて、独特のと申しますか、南極の特別の状態を勘案した新しい規則を考えなければいけなかったという問題がございます。
  127. 矢田部理

    ○矢田部理君 最後になりますが、主権のある地域でもなければ日本だけで仕切れる場所でもありませんだけに、国内法をつくってもなかなか実効性の確保という点では苦労もあれば問題もあるわけです。各国にやっぱりこの南極は大事な残された大きな自然として守っていくということで、これからの外交努力を一層尽くされるように期待をして、質問を終わります。
  128. 小山峰男

    ○小山峰男君 この条約につきましては賛成でございますが、ただいまもお話がございましたように、もっと積極的な対応をしてほしかったということを申し上げておきたいと思います。  一点だけ質問をさせていただきますが、今もちょっとお話がございましたが、南極における活動というのは、今の観光、さらに取材活動だとか民間の探検隊だとかあるいは標本を採取するというようなこともたくさんあるわけでございますが、これらの行為をする場合には環境庁なりへ、環境影響評価というか、そういう形で届けるというシステムになっているわけでしょうか、この条約上の義務として。その辺、外務省からお願いします。
  129. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 条約上の義務としてはこれこれのことはしてはならないという立て方になってございます。それで、条約上はそれを担保するといいましょうか、実施するためにはそれぞれの国内法でしかるべき措置を講じるようにと、そういうつくり方になってございまして、それを踏まえて環境庁の方で国内法を準備されたというふうに理解しております。
  130. 小山峰男

    ○小山峰男君 先ほどそれぞれの行為について環境影響評価をしてというお話があったんですが、そういうことでいいわけでしょうか。
  131. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) この議定書上の義務として、南極地域におけるさまざまな活動については事前に環境影響評価をするようにということが義務づけられております。
  132. 小山峰男

    ○小山峰男君 大体のお話はそれぞれ前段の委員さんたちがお聞きになりましたので、私は在外公館の警備強化について外務省にお聞きをしたいと思います。  ペルーの大使公邸の占拠事件というような形の中で、在外公館の警備強化というのは大変大きな課題になってきたというふうに思っております。外務省では、物的なエックス線の爆弾探知器だとか、こういうものについて平成八年度の予備費から二十億ほど支出したというふうに聞いております。また、現地で採用する警備員については、当初、平成九年度の予算要求で七人だったのを、この機会にということで一気に三百七十七人の要求へとふやして十二億ほどの予算を平成九年度で盛っているというふうにお聞きしておりますが、私はこういう問題、大変大きな課題でございますので、当然物的整備の予備費からの支出とあわせて、人的な支出も補正予算なりあるいは予備費から出すとかいうぐらいの対応を当然すべきだったというふうに思っているわけでございます。そうしなかった理由、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  133. 原口幸市

    政府委員(原口幸市君) 先生指摘のとおり、テロ事件もございましたので、在外公館の警備強化を物的側面においてのみならず人的側面においても緊急に強化すべきということは御指摘のとおりであると私どもも認識している次第でございます。  しかしながら、警備要員につきましては、その仕事の性質上、適当な要員の選定、配備にある程度の時間を要するものでございます。かつ、将来にわたって継続的に予算手当てが必要なこと等を考慮した場合に、これはやはり予備費にはなじまないという判断に私ども立ち至ったわけでございます。  もう一つ、それでは補正予算という考え方もあり得たわけでございますけれども、現実には手続的にどうしても間に合わない、困難だということもございましたものですから、先ほど先生指摘になったように、物的な方は予備費で二十億何がしかのお金をいただいて相当な手当てはいたしましたけれども、人的な側面については、急速当初の規模を拡大して、例えば現地の警備について三百七十七名増、それから本省から送っている警備員について十六名増というようなことで平成九年度の当初予算で手当てをさせていただいた、そういう経緯がございます。
  134. 小山峰男

    ○小山峰男君 いずれにしましても、在外公館に勤務している皆さんとか、そういう人たちの不安というのは相当大きいというふうに思いまして、私はこういう問題については一日も早くやっぱり予算化するなりなんなりすべきだというふうに思っております。  そういう意味で、今後の対応も含めて、できるだけ早急にこういうものは整備していくというふうに今後対応をしていただきたいと思っております。  それから、委員長にお願いしたいわけでございますが、あしたの委員会で、ODA環境関係の例の四年間で約一兆円というようなお話がございますが、この部分についてどういう国にどういうものがということで概要の資料を提出していただきたいと思いますが、委員長、よろしくお取り計らいをいただきたいと思います。
  135. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 早速理事会で検討いたします。
  136. 小山峰男

    ○小山峰男君 それでは時間もあれでございますので、私の質問は以上で終わらせていただきます。
  137. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  138. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 速記を起こしてください。  他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。――別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  環境保護に関する南極条約議定書及び環境保護に関する南極条約議定書附属書Ⅴの締結について承認を求めるの件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  139. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  140. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十五分散会      ―――――・―――――