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1997-02-20 第140回国会 参議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月二十日(木曜日)    午後一時開会     ―――――――――――――    委員異動  二月十七日     辞任         補欠選任      高野 博師君     渡辺 孝男君  二月十八日     辞任         補欠選任      渡辺 孝男君     高野 博師君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         寺澤 芳男君     理 事                 須藤良太郎君                 野間  赳君                 高野 博師君                 武田邦太郎君     委 員                 岩崎 純三君                 笠原 潤一君                 武見 敬三君                 成瀬 守重君                 宮澤  弘君                 猪熊 重二君                 長谷川道郎君                 田  英夫君                 萱野  茂君                 立木  洋君                 佐藤 道夫君                 椎名 素夫君                 矢田部 理君                 小山 峰男君    国務大臣        外 務 大 臣  池田 行彦君    政府委員        防衛庁参事官   別府 信宏君        防衛庁装備局長  鴇田 勝彦君        防衛施設庁長官  諸冨 増夫君        防衛施設庁総務        部長       伊藤 康成君        防衛施設庁施設        部長       首藤 新悟君        法務省入国管理        局長       伊集院明夫君        外務大臣官房長  原口 幸市君        外務大臣官房領        事移住部長    齋藤 正樹君        外務省総合外交        政策局長     川島  裕君        外務省総合外交        政策局軍備管        理・科学審議官  河村 武和君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     朝海 和夫君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省北米局長  折田 正樹君        外務省欧亜局長  浦部 和好君        外務省経済局長  野上 義二君        外務省条約局長  林   暘君    事務局側        常任委員会専門        員        大島 弘輔君    説明員        警察庁警備局外        事課長      米村 敏朗君        文部省学術国際        局留学生課長   木谷 雅人君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○国際情勢等に関する調査  (鄧小平氏死去後の日中関係に関する件)  (黄長燁北朝鮮労働党書記亡命申請事件に関  する件)  (北朝鮮に対する食糧支援に関する件)  (北朝鮮による日本人拉致疑惑に関する件)  (在ペルー日本国大使公邸占拠人質事件に関  する件)  (在沖縄米軍による劣化ウラン弾誤使用に関す  る件)  (県道一〇四号線越え実弾射撃訓練北海道移  転に関する件)  (沖縄米軍用地継続使用に関する件)  (ナホトカ号による重油流出汚染事故に関す  る件)  (自由権規約に基づく国連報告に関する件)  (外国人留学生十万人受入れ計画に関する件)     ―――――――――――――
  2. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十七日、高野博師君が委員辞任され、その補欠として渡辺孝男君が選任されました。  また、去る十八日、渡辺孝男君が委員辞任され、その補欠として高野博師君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事高野博師君を指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 国際情勢等に関する調査を議題とし、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 野間赳

    野間赳君 日中関係の大功労者であり、改革開放の最大の推進者であられました鄧小平氏が昨夜死去なされました。ここに心より哀悼の意を表しますとともに、鄧小平氏が死去されましたことを悼み、今後の日中情勢日中関係につきまして大臣に一言お伺いをいたしたいと思います。
  7. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 改革開放路線に基づく中国国づくりに大きな役割を果たされ、また日中関係進展のためにも御尽力なされました鄧小平氏が御逝去なさったということに私どもも心から哀悼の意を表する次第でございます。  現時点中国情勢というものをうかがってみますと、北京におきましても格別の大きな変化というものは見られませんし、市民も比較的冷静にこの事態を受けとめておる、こういうことでございます。中国鄧小平氏の推進してこられました改革開放政策に基づく近代化路線というものがきちんと定着しまして、また後継の体制というものもきちんとできております。したがいまして、これからも国民の支持を得ながらこの基本政策が継続されるものと、このように見ているところでございます。  また、日中関係につきましても、やはり日中両国関係両国にとってのみならずアジア太平洋全域にとって大切な関係である、この関係を良好に維持し、さらに進展しなくちゃいけない、こういった認識は、我が国はもとよりでございますけれども中国指導層においても十分に認識されているところでございますので、今後とも日中共同声明並びに日中平和友好条約の精神というものにのっとりまして両国関係進展させていく、こういうことで中国も取り組んでいただけるものと考えておりますし、我々もともに手を携えて、両国関係進展のために尽くされました鄧小平氏の遺志も体しながらやってまいりたい、こう考える次第でございます。
  8. 野間赳

    野間赳君 外務大臣におかれましては、先日、二月十四日からシンガポールにおきましてASEM会議に御出席になられました。昨年の三月、首脳会合が行われまして、一年ぶりということであります。アジア十カ国、欧州十五カ国が出席をした重要な会議であったと存じますが、この会議の持った意義及びその成果など、大臣の御認識をお伺いいたしたいと思います。
  9. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員御指摘のとおり、アジア欧州会合は、昨年三月、バンコクにおきまして第一回の首脳レベル会合を持ったわけでございますが、それ以後初めての閣僚レベル会合が先般シンガポールで行いました外相会合でございました。  これには、加盟いたしておりますアジア側十カ国、ヨーロッパ側十五カ国プラスEU外務大臣が集まりまして議論をしたわけでございますが、昨年の首脳会議後のフォローアップ、いろいろな会議やプロジェクトあるいはプログラムを進めようということが合意されておりますけれども、そういったものをフォローアップいたしまして、それをさらに進展させていこうということが合意されたのが第一点でございます。その中には、例えば我が国が開催いたします経済担当閣僚会議であるとか、あるいは我が国がインドネシアと協力して進めようとしておりますビジネスの関係、特に中小企業役割重点を置いたような会議を進めていこうと、こういったものも含まれておるわけでございますが、そういった各種の計画についてのフォローアップが行われたのが第一点でございます。  それから第二番目には、将来に向かってASEM運営なり役割をどういうふうにしていくかといったことについてもいろいろ議論が交わされました。  これまで参加各国の中でもこのASEM役割について重点をどこに置くかにつきまして必ずしも完全な一致は見られておったとは申せません。経済的な側面を重視したいという国もありましたり、国によっては、いや、政治的な対話が大切だという言い方もあった。とりわけ、政治的な対話をするといたしましても、あらゆる問題を扱うのか、あるいは非常にセンシティブな問題については余り取り上げないようにした方が円満な運営のためにいいんじゃないかとか、いろんな見方があったわけでございますが、そういったことにつきまして今回は本当に率直に議論をいたしました。  そして、日本といたしましては、三つ分野、つまり経済分野政治分野三つ目はその他でございますが、文化であるとか科学技術であるとかへそういった三つ分野をバランスよく推進していくことが必要じゃないかという主張をいたしましておおむね賛同を得られたところでございますし、それから政治対話をどうするかということにつきましては、私も主張いたしましたし多くのメンバーが大体似たような認識になったわけでございますけれども政治対話というものはやはり重要な柱であると。  それから、センシティブ話題、例えば人権の問題であるとかそういった問題についても取り上げないというわけにいかないだろうと。もとより何らかの決定をするとか特定の考え方を押しつけるというのはなんだけれども、そういったセンシティブな課題も逃げずにお互いに話し合って、それぞれの主張がどういつだ背景のもとに出てくるのかといったことの認識を深める、理解を深めるということもお互いにとってそれは大切なことじゃないか、そういったふうなことで将来のASEMあり方についてもそういう意味で随分議論したところでございます。  それと同時に、将来の方向としまして、あり方としまして、今の二十五カ国プラスEUといったメンバーをさらに拡大するのか、あるいは当面拡大はしないで深化するのか、深めていくのか、そういった点についても、これは初めてのことでございますけれども閣僚レベルで随分議論いたしまして、来年ロンドンで開かれます第二回の首脳会合までに高級事務レベルでいろいろ議論を整理していこう、そういうふうな方向が出されたところでございます。  いずれにいたしましても、アジア北米、そしてヨーロッパというこれから経済あるいは政治の面での大きな役割を担う地域、その三つ地域の中でこれまでどちらかといいますとつながりが弱いといいましょうか、希薄であったアジアヨーロッパの間のつながりを強めていく、このASEMの枠組みがいよいよ去年の第一回首脳会談成果を踏まえまして具体的に進んでいく、そういう弾みになったんじゃないのかなと、このように評価している次第でございます。  なお、もう一点申し上げますと、この会合におきまして、ペルー我が国大使公邸占拠事件、この問題につきまして、ASEM参加国全体の意思として、テロに屈せず、そして平和的な手段によって人質全員無事解放を図っていくといったペルー政府日本政府の取り組みに対して支持と連帯を示す議長声明が採択された、こういうこともありました。そういった意味でも意義のある会合だったと考えている次第でございます。
  10. 野間赳

    野間赳君 北朝鮮労働党中央委員会黄書記が去る十二日に韓国亡命を申請した事件でありますが、これまで韓国政府は本人が亡命申請国に出国してから行っておったのでありますが、北京韓国大使館亡命申請がなされた当日の夕刻に行うなど、当初から韓国の敏速な対応が目を引いたと思うのであります。米国政府は、時を置かずいたしまして、亡命申請が国際的な規範と慣行に従って処置されるよう求めると言明をいたしておりますし、十五日には中国政府黄書記韓国亡命意思を確認したと公表いたしておるのであります。  こうした中で、シンガポールにおいて日韓、日中二国間の外相会談がそれぞれ行われたわけでありまして、大変関心を集めておりました。韓国柳外相は、今回の事件については日本にも知恵をいただきたい、こういうふうなことを述べられておりますが、我が国側面的に支援を要請したようにも伝えられておると。こういうことでありますが、政府におかれましては、これに対してどのような形で対応していくのか、外務大臣の所信をお尋ねいたしたいと思います。
  11. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) この問題は対応が大変難しい問題であろうと思います。そういった意味では、今、中国あるいは韓国政府は非常に苦心をしておられるところでございますが、日本といたしましても当然のこととしてこの問題には深い関心を持っておりますし、今後とも関係国と連携をとりながらいろいろ情報も得ていきたい、そしてこの問題がどういうふうに展開していくか注視をしていく、こういう基本的な姿勢でおります。  委員は先ほどこの問題について韓国政府が敏速に対応したというふうな評価をなさいましたが、確かにそういう面もございます。一面におきましては少し早目にこれが表面化し過ぎたという面もございまして、これは盾の裏表かもしれませんけれども、そういう面もございまして、いずれにしてもこれからの対処は大変苦心の要るところだと思います。  シンガポールにおきまして両国外務大臣とそれぞれこの問題もお話しいたしましたけれども事柄の性質上、また大きな関心は持っているとはいえ我が国当事者といいましょうか直接のかかわりがあるという立場ではないということもございまして、どの程度の姿勢でこれに対応するかは配慮の要るところでございました。  そういった中で、まず日中外相会談におきましては、私の方から銭其シン外務大臣に対していろいろ考えを紹介したところでございますが、あの時点では銭其シン外相は、中国としても突然のことで驚いておって、現在事実関係をまず調べている過程にあるんだ、こういうことでございました。基本的には当事者あるいは当事国が冷静に対処することが大切だということを強調しておられました。私の方からも、これはその当事国あるいは関係国が冷静に対処すべきであるという基本的な考え方には全く同感であるが、それと同時に国際的なルールに即して対応されるということも大切じゃないかと申し上げたような次第でございます。その点につきましては、シンガポールにおきましても、中国側のスポークスマンがその後この問題について記者団と話をする中で、国際的なルールにのっとってということも発言しておられた、こういうことがございました。  それから、日韓外相会談の方におきましては、私の方からやはり本件の見通しについて柳宗夏長官にいろいろお伺いしたわけでございます。そして、柳長官の方からは、韓中、韓国中国との話し合いの中でのやりとりを御紹介いただくとともに、韓国としては今後とも冷静にまた静かに、そして忍耐強く取り組んでいきたい、こういうふうにお話があったような次第でございます。  その韓中外相会談の中身、私の口から余りあれこれ申し上げることもなんでございますけれども、基本的に申しますと、韓国側からこの問題を取り上げて話題になったと。そして、韓国立場は御承知のとおりでございますけれども、それに対しまして中国側からはまだこの時点では状況を評価するのに時間が要るということで、そういった応酬があったというようなことでございました。  いずれにいたしましても、我が国といたしましては、先ほども申しましたように、今後とも情報収集に努めるとともに、事態推移を引き続き注視してまいりたいと思っております。  それから、日本の果たすべき役割について、韓国柳長官から知恵があったらというお話があったのは事実でございますけれども、我が方の立場としてどういうふうなことがあり得るのか、それは現在の段階で具体的なことを考えるには至っていない次第でございます。
  12. 野間赳

    野間赳君 今回の亡命事件朝鮮半島における諸問題、特に四者会談、またKEDO問題にどのような影響を及ぼすかということが大変憂慮をされます。先月、KEDO北朝鮮の間で軽水炉着工に必要な残りの二つ議定書に調印がなされた、いよいよ着工段階が近いなということを思わせたのでありますが、十二日の黄書記亡命事件発生をいたしたのであります。十五日には韓国ソウル郊外北朝鮮からの亡命者が銃撃をされる事件発生をしたというようなことで、大変憂慮をされるわけであります。  KEDOボスワース事務局長は、軽水炉供給事業費の概算が四十億ドルから五十億ドル、費用分担については韓国日本両国全額近くを分担するように述べておられます。政府はこの日韓費用分担のことについて具体的にどのように対応をしていかれるのか。今回の亡命事件によって何らかの影響があったのではまた大変であるわけでありますが、そのことについてちょっとお伺いをいたしておきたいと思います。
  13. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私ども、今回の亡命事件KEDOプロセスあるいは四者協議にいかなる影響を与えるか、これは非常に大きな関心を持った、あるいは心配したところでございます。  それで、韓国あるいは米国等々とも連絡をとりながらいろいろ動静を探ってまいったわけでございますけれども、基本的に申しまして、北朝鮮も今回の亡命事件で、四者協議をどうするかという問題、あるいはとりわけKEDOプロセスに対して直接関連づけて、その後特に対応を変えるということはないように見受けられます。この点につきましては柳宗夏長官も、影響があり得ると思ったんだが、意外なことだがその影響はない、基本的に結びつけないというのが北の態度である、こういうことを言っておられました。その後の展開も基本的にはそういうふうになっているんだと思います。そして、米国あるいは韓国立場も、この二つプロセスは今回の亡命事件とは結びつけずに進めていこうというのが基本的な態度でございます。  我が国といたしましてもその点は同じでございます。四者協議につきましては我々も深い関心を持っております。直接的には当事者でございませんけれどもKEDOプロセスについては我々も直接の当事者の一国でございます。そして、これは核疑惑の問題に対する対策という側面もございますし、何としても進めていかなくちゃいけない、こう考えているわけでございまして、これが今回の亡命事件にもかかわらず進めることができるという情勢にあることを我々も評価している、こういったところでございます。  さて、そして具体的にこの資金分担についてどうかと。特に、とりわけ軽水炉の問題についてボスワース事務局長が、四十ないし五十億ドル、しかもそのほとんど全額韓国並び日本でというふうな発言があったと言われるがという点でございますけれども、この問題についての我が国の基本的な姿勢考え方というのはこういうことでございます。  まず、この軽水炉費用については韓国が主要な役割、主要な分担をしていくということ、そして日本の場合もこれは意味のある負担をしていこう、こういう方針で参っております。ただ、現在の段階では総額が一体幾らになるのか、これがまだ非常に不分明な状況でございますので、現在の段階で我が方が意味のある分担といっても、どのくらいのものを持つべきかということについては、その作業を固め得るような段階には至っておりません。これからの全体の動きというものを見ながら検討してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  14. 野間赳

    野間赳君 ペルー問題についてお尋ねをいたします。  昨年末、十二月十七日に発生をいたしました在ペルー日本大使公邸占拠人質事件は、関係各国国際機関の懸命の努力にもかかわりませず、ついに二カ月を超えたのであります。一九七九年十一月に発生をいたしました在イランのアメリカ大使館占拠事件に次いで二番目に長い占拠人質事件となったのであります。七十二名の人質の健康も心配をされる状況になっております。本院では既に全会一致によります本会議決議を行ったところであります。  事件解決に向けて予備的対話が三回行われ、これからの推移期待が寄せられておるのでありますが、MRTAは四百五十八名の仲間の釈放、人質十五名とジャングルへの逃亡、刑務所の待遇改善を要求しているのに対しまして、フジモリ大統領はこれを受け入れる様子はなく、予備的対話もむしろ難航しているのが実態のようであります。  事態は極めて憂慮心配をされる状況であり、予備的対話から本格交渉、そして全面解決へと展開をすることが望まれますが、最近の経過、今後の見通しなどについて御説明をいただきたいと思います。
  15. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) この事件が起こりましてからもう既に二カ月を経過したわけでございますが、依然として多数の方々が人質の状態にとどめ置かれたまま、まだ解決に向かっての確たる展望が開き切っていないということは私どもも本当に心配しておりまして、一日も早く解決に向かっての道が開かれ、そして現実の平和的な解決に結びつくように今後とも努力を傾注してまいりたいと存じます。  それで、この経過、現在の状況でございますが、御承知のとおり、トロントにおいて日本ペルー首脳会談が行われたのが二月一日でございました。それを踏まえましていわゆる予備的な対話が十一日、十四日、十五日と三回行われたのでございますけれども、この三回の対話を通じましても、ペルー政府側MRTA側と具体的な対話の進め方であるとかあるいは取り上げるべきテーマ等についての意見が一致するに至っておりません、そのテーマについての内容、取り上げるべきかどうかについてのですね。  そういったこともございまして、両当事者が了解いたしまして、保証人委員会オブザーバー、我が方の寺田顧問でございますが、これが予備的な対話を継続させるために、またそれを円滑化させるために両当事者に対して提案を行うように、こういうことになっておりまして、現在その作業関係者間で、保証人委員会メンバーあるいはオブザーバーの中で、あるいはそれとペルー政府、あるいはMRTAとの中でいろいろその調整作業が進められているという段階でございます。  事柄の性格上、またいよいよ大事な段階に入っておりますので、具体的な点について十分にお答えできないところは恐縮に存ずる次第でございますけれども、やはり私としては何としましても現在の調整過程を進めていき、そして何とか事件平和的解決人質早期全面解放へ道が開けていくように今後とも強く期待をいたしますし、我が国政府としてもあらゆる努力を傾注してまいりたい、こう考えている次第でございます。
  16. 野間赳

    野間赳君 今回の事件在外公館警備体制の不備を明らかにした面があります。  聞くところによりますと、ペルー大使館及び公邸はかつて爆弾事件があったということもありまして、非常に治安も悪かったことから、その国の脅威に即した警備体制をとっておる、警備対策を強化した、徹底したモデル公館の一つであるということが言われておったのでありますが、簡単にテロリストに侵入を許してしまったということであります。  さきの院の決議におきましても警備体制の強化による事件の再発の防止をうたっておりまして、具体的に今後どのような防止措置を講じていかれるのか。この事件を契機に、平成九年度予算におきまして現地採用警備員要求数を大幅に増員して、平成八年度の予備費におきましても警備対策の強化をする方針であるということを伝え聞いておるわけでありますが、どういうふうなことがなされておるのか。警備体制状況をお聞かせいただきたいと思います。
  17. 原口幸市

    政府委員(原口幸市君) 御承知のとおり、この在ペルー日本大使館につきましては数度にわたって過去にテロリストによる攻撃を受けたこともございますので、私どもとしては、同大使館を世界各地にある我が国在外公館の中でも最も脅威度の高い地にある公館の一つとして位置づけておりまして、人的、物的側面の双方からなし得る範囲内で最大限の警備措置を講じてきた次第でございます。  今般被害に遭いました公邸警備体制につきましては、常時の警備要員を二名配置し、ペルー警察からも警察官四名の配置を受け、さらに施設面では公邸の外周に約五メートルの外壁を設けるとともに、屋外の照明とか監視カメラ等の警備施設をも配備してきたわけでございます。  なお、事件当日につきましては、多数の来客が見込まれたこともございますので、通常の警備に加えましてさらに警察当局から所要の警備官の増員の配置を受ける等の措置も講じてきたところでございまして、それにもかかわらずあのような事件になったことはまことに残念というほかはございません。  他の在外公館に対しましても、予算の許す範囲内において人的、物的な警備対策をとる等、最善の措置を講じております。具体的に申しますと、今までは警備官が全在外公館で百五十名でございますが、来年度の予算要求が認められますと、それに十六名増で全体で百六十五名の体制になりますし、警備担当の現地職員については四名増、それから謝金ベースでございますが、民間の警備会社の警備員三百七十七名増、それから館員の住宅についても犯罪防止策としての警備員というのを二十名増というようなことを考えております。それから、物的な強化の面でもいろいろと新しい措置を講じさせていただいておるところでございます。  しかし、問題は単に物的あるいは人的な警備面だけでは決して十分ではないというのが今回の事件の反省でもございますので、私どもとしましては、今回の事件も踏まえまして、省内に委員会を設置して警備体制全般につきまして見直しを行うとともに、新たな警備体制を構築していく覚悟でございます。
  18. 野間赳

    野間赳君 今回の事件では、テレビ朝日の系列の記者が侵入取材をして、一触即発の緊迫をした状況の中で不測の事態を招き、人質の生命に危機が及びかねないという強い批判を浴びたものであります。  その際、記者の個人的判断によるものとの釈明がなされたわけでありますが、その記者が取材用の無線機器を邸内に残し、会社も承知の上でテロ集団側と交信をしていたことが判明をいたしたのであります。ペルー政府日本と国際社会の要請の中でテロ集団と対峙する重大な局面の中でのことであり、外務省はこのことについてどのように掌握をなされておったのか、どんな対応をしたのか、外務省としての見解をお尋ねいたします。
  19. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) テレビ朝日系列の記者がペルー政府の許可を得ずに強行して大使公邸内に入って取材をした、そのこと自体もこれは不測の事態につながる可能性もありましたし、またこの事件解決に向かってのペルー政府努力を著しく阻害するおそれがあることでございまして、極めて遺憾なことであり、その点につきましても、外務省としてもテレビ朝日側に何度も申し入れ、善処を迫ったわけでございます。  さらに、委員御指摘のように、その際にテレビ朝日が邸内に無線機を残してきた、そういうことがその後明らかになった次第でございます。これは実は当初における邸内での強行取材そのものについてのやりとりの中ではテレビ朝日が明らかにしなかったわけでございます。そして、人見記者自身の個人的判断であるということを言っておったわけでございますけれども、その後のあれで、私ども現地でどうも無線機が、機器があるらしいということを察知いたしました。いかなることでそれを察知したかということはちょっと控えさせていただきたいと思うのでございますけれども、そういうことがございましたので、テレビ朝日をまた呼びまして、いろいろただしてまいりました。  最初は言を左右にしてなかなかいわば泥を吐きませんでしたけれども、そのうちに、いや、実はということで、それを残してきたということ、しかもそのことについては人見記者個人の判断ではなくて現地の責任者と連絡の上残してきたんだということ、そしてまたそれを使って、そうたびたびではございませんけれども、二度でございますが、実際に取材活動といいましょうか、その連絡があった、こんなことが明らかになったわけでございますので、これはもうとんでもないことだと。いわば不信行為でもございますし、さらにこのこと自体が現在非常に大切な段階に入っております事件解決への努力を大きく阻害するおそれがありますので、直ちにそういった機器が使えないような状態にするように求めまして、それはそういった対応をテレビ朝日がいたしました。そういったような経過でございます。  また、その後、官房長官あるいは郵政省におかれましてもそれぞれ所要の対処をされたということでございます。
  20. 野間赳

    野間赳君 ロシアのタンカー・ナホトカ号日本海の隠岐島沖、我が国の排他的水域二百海里で沈没をしまして引き起こしました重油流出汚染事故はいまだに大きな被害を沿岸地域にもたらしており、深刻な状況が続いております。  このタンカーは船齢が二十六年ということでありますが、海運局の統計要覧によりますと、オイルタンカーの世界の平均船齢は十七年ということが言われております。そういうことで、相当老齢船であるということがわかるのであります。日本では平均八年ぐらいがタンカーの船齢であるということも言われておるわけでありまして、二十五年以上の船というのは総トン数でいいまして全世界的には三%ぐらいというようなことでありますから、二十六年というのはかなり古い船であるということが言えようかと思うのであります。  この事件につきましてはさまざまな側面が問題として提起をされておりますが、外交上の問題ということになりますと、事故の責任と補償の問題ということになろうかと思います。事故の原因が船主にある場合、あるいは不可抗力による場合、補償のあり方も変わってくるということでありますが、国際法上どのように考えられるのか。ロシアの管理責任者を含めて、それぞれの場合における国際条約の適用の関係、補償の限度などについてお尋ねを申し上げます。
  21. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) この種の場合についての国際的な枠組みでございますが、民事責任条約というのがございまして、過失であればそれに伴う被害について船主が補償する責任が生じます。無過失の場合についても定めてありまして、無過失の場合は約二・六億円、船の大きさによって異なりますけれども、今回のような大きさの船であれば約二・六億円を限度として無過失の責任が船主にかかってくるというのが国際的な枠組みでございます。旗国、船の所属する国の責任としましては、海洋法条約その他によって国はその船の安全性などについて十分な監督をするという責任がございますけれども、今回のような事件の場合の汚濁の防除であるとか補償であるとかということの責任は船主ということになっているところであります。
  22. 野間赳

    野間赳君 流出事故による漁業への影響もさることでありますが、日韓、日中の漁業問題も深刻なものがございます。  昨年の参議院海洋法条約等に関する特別委員会において、寺澤委員長が特別委員長であられたわけでありますが、六月六日の附帯決議におきまして、「国連海洋法条約の趣旨を十分に踏まえて、日韓・日中漁業協定の改定交渉を強力に進め、速やかな締結を期するとともに、交渉経過等に対応して必要な措置を講ずること。」という附帯決議がなされておるわけでありますが、現下の情勢は北海道を初め山陰、九州海域では依然として韓国中国漁船の違反、無謀漁業が野放しの状況であると思います。漁具の被害、資源の枯渇は深刻なものとなっておるわけであります。漁業者は一年以内を目途とした新漁業協定の締結をかたく信じて耐え忍んでまいったわけでありますが、この実情を十分御理解いただき、早期の締結に向けて強くそのことをお願い申し上げたいのであります。  政府はいかにこれに対処しておるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  23. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもといたしましては、国連海洋法条約の締結に伴いまして、中国韓国との間で条約の趣旨にのっとった新しい漁業協定を結ぶべく努力を重ねているところでございます。その際、ただいま委員の御指摘になりました本院における附帯決議の趣旨も十分体しまして、早期の解決に全力を尽くしております。  それで、中国につきましては、北京において一昨日、昨日とまた交渉が持たれたわけでございますが、さらにそれを加速してまいりたい、こう思っております。  韓国につきましても、これまで何度か会合を持ってまいりましたけれども、なかなか相互の主張の懸隔、隔たりが縮まるには至っておりません。しかし、附帯決議にもあらわされておりますように、また昨今、とりわけ関係者あるいは関係地域で何としても早期の解決をという声がございます。そういったことをあらゆる機会に伝達しております。  先般、別府で行われました日韓首脳会談でも、総理からも大統領に直接お話しいただいたところでございますし、また私自身も、ことしになりましてソウルへ一月十五日に参りましての外相会談、それからまた先般シンガポールで行いました外相会談におきましても、そのような我が方の事情というものを十分説明しながらこの協議を加速化するように強く迫ってきたところでございます。それを踏まえまして、先般のシンガポール外相会談において、三月六日、七日の二日間、次回の漁業についての協議を行うことが合意されました。今後とも委員今御指摘のような事情、また趣旨を十分踏まえまして精力的に取り組んでまいりたいと存じます。  なお、その間にもございますいわゆる違法操業の問題につきましても、これが根絶されるように繰り返し適切な対処を求めておりまして、韓国もそれにこたえて取り締まりの強化を図っているところでございます。
  24. 野間赳

    野間赳君 鳥島で起きました劣化ウラン弾誤使用は極めて遺憾な事件であります。沖縄県民と政府との信頼関係の構築を大きく損なう結果となったのではないかと懸念をされます。  その意味で最大の問題は、米政府から我が国への通報が事件発生から一年以上も過ぎておったという事実、また政府から地元沖縄県への連絡も米側の通報から約一カ月も後になってしまったということであります。両国政府が不手際であったことの非難は免れ得ないところであると思うのであります。  この事件につきまして、既にスローコム国防次官など米側からの遺憾の意が表されております一方、一部報道では米国国防省広報担当官が危険が発生しなかったから通報の義務がなかったとの発言を行ったと伝えられておるのであります。この点において我々と米側との認識に大きなずれがあるのではないかと危惧をいたすのであります。強く原因の究明と再発防止主張するべきであると思います。  今回の劣化ウラン弾が誤使用された原因として米側はいかなる説明を行っておるのか、今後の原因究明、再発防止に向けて政府はいかなる姿勢対応するのか、見解をお伺いいたしたいと思います。
  25. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今回明らかになりました劣化ウランを含む徹甲焼夷弾の誤使用の問題、そしてその通報おくれの点については私ども大変遺憾に思っております。  まず、米国から我が方への連絡が一年もおくれたことでございますが、この点につきましては我が方から極めて遺憾である旨の指摘を繰り返しいたしまして、米側からも繰り返しいろいろなレベルで深い遺憾の意を表明されております。  それからまた、私ども外務省がこの事実を米側から知らされたのは一月十六日のたしか夕刻、夜であったと思いますけれども、それから沖縄県への御連絡、それからまた公表に至るまでの期間が三週間を超えるに至ったという点につきましても、お地元の方々への配慮に欠くるところがあった、この点は我々も反省しているような次第でございます。  そして、これからの対応でございますが、まずその原因ということにつきましては、米側の説明ではこの種の弾丸は我が国における訓練には使用されないということに米軍の内規はなっておるわけだけれども、そのことの表示がカタログ等も含めまして十分でなかった、そのために誤使用が起きたんだと、こういう説明を受けております。そして、その点につきましては既に表示の改正を行った、改めたと。そして、従来以上に管理、つまり保管あるいはその出し入れについても厳格に行うような改善をしたということを承知しております。  それから、連絡、通報のおくれをなくす面での改善の措置でございますが、これはもう今回の問題が起こる前に、いろいろこれからこういった事件、事故についての通報、連絡のおくれは問題であるということにつきまして共通の認識があり、それを改善しようという作業を進めておりました。実は私どもこの改善作業を進めていく中で、米側から、話題になっている事件、事故だけではなくて実はこんな問題もあったんですと出てきたのがこの事件が明るみになるきっかけになったわけでございます。そういったことでございますので、今連絡通報システムの改善の作業を加速しておりまして、遅くとも三月末までにきちっと新しいシステムを確立し、それから公表し、また実施に移してまいりたい、こう考えているような次第でございます。  なお、この誤使用が人あるいは環境に与え得べき影響につきましては、米軍がこれまでに独自に行いました調査によってその心配はないという説明は受けておりますけれども、私どもとしてはさらに念を入れるべきであるということで、米軍にさらなる調査を求め、米軍も三月末までにさらなる調査を行うということにしております。また、日本側におきましても独自の調査をしようということで、科学技術庁等関係機関とも御相談し、また沖縄県の御協力もちょうだいして来週早々にも周辺海域での調査を行う、こういうことにしている次第でございます。
  26. 野間赳

    野間赳君 時間が参りました。最後に一言だけ。  本日の報道によりますと、我が国外交の最大の歴史的なモニュメントでありますポーツマス条約ゆかりのウェントワースホテルの保存が決定したようであります。まことに喜ばしいことであると思います。このことは同僚議員であります笠原議員がもう以前からこの委員会を通じてたびたび御発言、御努力をされたものでありまして、日本外交にとって大変意義深いものであると思っております。大臣、ちょっと感想を一言だけお尋ね申し上げます。
  27. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ポーツマス条約ゆかりのホテルでございますウェントワースホテル、これの保存につきましては地元でも保存運動がございました。そして、委員も今御指摘になりましたように、笠原先生にはかねてから大変な御尽瘁を賜っておったわけでございますが、今回幸いにいたしまして地元におきまして保存の方向が決まったようでございます。まことに私ども日本外交に携わる者といたしましても、また日米親善友好の観点からも大変明るいうれしいことだと思っております。  今後このホテルの再建が順調に進むように外務省としても最善の支援をしてまいりたいと存じますし、またこれが成りました暁には、例えば国際セミナーをそのホテルで行うとか、あるいは日本としても必要な展示資料の面で協力するとか、そういうことも考えてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。  笠原先生を初め御尽瘁された方々に重ねて感謝の意を表させていただく次第でございます。ありがとうございました。
  28. 野間赳

    野間赳君 以上で終わります。
  29. 高野博師

    高野博師君 それでは、何点か質問させていただきます。同僚議員が北朝鮮黄書記亡命について何点か質問されましたので、繰り返さないように、別な観点からお聞きしたいと思います。  一つは、前回の委員会で、十二月十二日に北京日本大使館の件が「諸君!」という雑誌に出た中で、五月に北朝鮮の科学者が亡命したという事実があったのを大使館は隠していた、そういう報道があったんですが、前回お願いしましたように直接この専門調査員から事実関係は聞かれたのでしょうか。
  30. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 雑誌「諸君!」に掲載された記事に関連して、私どもの省員が鐸木前専門調査員と会ってお話をいたしております。
  31. 高野博師

    高野博師君 事実関係は明らかになっているんでしょうか。
  32. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) あの記事において提起されているいろいろな点についての事実関係というものは明らかになっております。先方から説明を受けたこともありますし、こちらの側から説明をしたこともございます。
  33. 高野博師

    高野博師君 この件はまた別の機会に質問させていただきます。  北朝鮮の黄長燁書記の亡命事件についてですが、これが朝鮮半島へどのような影響を与えるかということでいろんな報道もされております。万一に備えて有事の対応策等もしておくことは当然必要であろうと思いますし、亡命者の李韓永さんが撃たれて危篤になっているという報道もありまして、在京の韓国大使館近辺の警備等も十分やる必要があるだろうと私は見ております。  それで、黄書記韓国人にあてた書簡の中で北朝鮮の内情についていろいろ明かしておりまして、その中で、国内で毎年数万の餓死者が出ている、食糧援助だけが戦争を防ぐ道だ、それで北が富強になることはないと。それから、賠償金は金正日体制の強化につながる、あるいは核爆弾五発も持っている、ミサイルも持っているというようなことを言っておりますが、この辺のことをどう思われるでしょうか。
  34. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) ただいま委員御指摘の件は、黄書記亡命の動機や北朝鮮の内情などについて記述して、北京在住の韓国人の実業家に託していたと報道されているところのものであろうと思います。  報道されているものの中には二種類ございまして、一つは書簡であり、もう一つは対話録と称するものでございます。それらの報道については私ども承知いたしております。そして、その中に委員が御指摘のような点が触れられているということを把握いたしております。
  35. 高野博師

    高野博師君 黄書記が賠償金云々というようなことも言及しているので、これはどうしてかなと。具体的に賠償金というふうな話は日朝国交回復のときの話ではないかと推測されるんですが、そういうことをもう既に日本側が持ち出しているのかなというような私は印象を持ちました。この辺はどうでしょうか。
  36. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員承知のとおり、日朝間の正常化交渉は八回まで一応持たれたといいましょうか、七回持たれて、八回目が持たれることで折衝が行われたわけでございますけれども、御承知の李恩恵事件をめぐりまして先方が席を立ち、その後ずっと中断したような形になっております。  そういった状態でございますので、正常化の問題についてはまだ具体的な交渉に入れるような状態に至っていない、こういうことでございますので、当然のことといたしまして正常化を図るために金銭面でどうこうということが話し合われたことはございません。
  37. 高野博師

    高野博師君 それでは、食糧援助についてですが、アメリカが一千万ドル援助するということを決定した、それから韓国は三百万ドルぐらいやるだろうと。これらは亡命事件に好影響を与えるとの期待感があるというような報道もされておりますが、我が国は援助しないんでしょうか。
  38. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 食糧援助につきましては世界食糧計画、WFPがアピールを出しまして、これにこたえる形で米国は一千万ドルの拠出の意図を表明いたしました。また、韓国も相当額の、三百万ドルというのは昨年の韓国の拠出額でございますが、今私どもの聞いておるところでは六百万ドルという貢献を行うということをきょうの午前中に発表した、このように承知しております。  そして、さて我が国はどうするかという御質問でございますけれども我が国といたしましても、基本的な認識として北朝鮮の食糧事情が非常に深刻な状態にあるということはよく承知しておりますし、そういったものについて人道的な見地から対応するということは十分検討には値するんだと思っております。現実に、昨年あるいは一昨年、そういった観点から行ってきたところでございます。  しかしながら、今回のWFPのアピールに対して対応するかどうかについては、まだその結論は出しておりません。それは、委員も御承知だと思いますけれども、国連といたしましてはWFPだけじゃなくていろんな機関がこの問題に取り組んでいる。そういったものを全体として調整する機関としては人道問題局、DHAと言っておりますけれども、ここが作業を現に進めている、こんなこともございますので、そういった動き等も注視してまいりたい、こう考えている次第でございます。  ただ、我が方としましては、基本的に先ほど申し上げましたような認識がございますが、他方におきまして我が国北朝鮮との関係等々でいろんな事情がある、そういったことも総合的に勘案するという必要性も排除できない、こう考える次第でございます。
  39. 高野博師

    高野博師君 実は、きのう橋本総理が、米国政府北朝鮮との間に少女拉致事件はあったのか、あるいは李恩恵の問題はあったか、単純に比較するものではないんだと、こういう発言をされておりまして、援助には慎重な姿勢を示したわけですが、それでは一昨年の五十万トンあるいは去年の六百万ドル、どういう基準でもって援助をしたのか。当然人道的観点からということだとは思いますが、それであるならば去年あるいはおととしと今の事情が違うか、そんなに変わっていないはずであります。黄書記は、食糧援助だけが戦争を防ぐ道だと、そういうことも言っておりますので、これは考慮すべきではないかと私は思います。  それから、拉致事件については、それを理由に慎重姿勢を打ち出すのであれば、なぜこれまで援助の際にこの件を取り上げなかったのか、この辺、いかがでしょうか。
  40. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 当然のこととして、食糧の支援の問題は人道的な観点を中心にそれぞれが考えるべきでございますけれども、しかしやはりそのときにほかの要素も勘案するというのは、これは先ほど申しましたように、あり得ることでございます。  昨日の総理の御発言も歩きながらの記者との本当に簡単なやりとりでございますから、それは必ずしも総理のお気持ちを十分にあらわし尽くしておるとは思いませんけれども、しかしいろいろな事情も勘案しなくちゃいかぬというのは私どももそう考えておる次第でございます。  このことは、やはり人道的な観点から検討すべきものであるということ、それからまた朝鮮半島の安定あるいは朝鮮半島全体の改善を図る上において食糧支援の持つ効果というものも我々は十分認識しながら考えはいたします。  しかし、一方においてやはりいろいろな事情がある。例えば、米国立場からするならば、今喫緊の急務である四者協議進展に資するところがあるんじゃないか、あるいはKEDOにもという点も一つの考慮だったかもしれません。私どももそういうことは考えないではございませんけれども、例えば四者協議について申しますと、日本にとっても大きな関心事ではございますけれども米国は直接の当事者であるということに比べますと若干距離があるものだということがございますし、また米国にはございません問題として李恩恵の問題であるとか、あるいは最近明らかになった拉致事件があるというのも事実でございまして、これは文字どおり、これこそ人道的な立場からの問題でございますので、やはりこれも考慮すべき要素の中に入っていないとは申せないと思うのでございます。そういったことで考えてまいりたいと思います。  これまでも同じじゃないか、去年もという御指摘でございますけれども、しかしそういった面でも去年からも実は私ども、具体的には申しませんけれども北朝鮮とも全く接触がないわけじゃございません。そういった細々としたものであっても、接触する際には、我々が解決を求めております李恩恵の問題を初めとする問題あるいは日本人妻の問題等もございますが、こういった問題についても提起しながら先方の姿勢の変化を引き出そうという努力はしているわけでございます。しかしながら、残念ながら昨年から今日までそういった面の変化は見られないところか、さらなる新しい事件も、疑いも明らかになっているという状態にあるということも御理解いただきたいと思います。
  41. 高野博師

    高野博師君 今四者協議等について言及されましたけれども、アメリカはあくまでも人道的観点から援助するんだということを繰り返し強調しております、建前は。  先ほどの総理の件については歩きながらの発言だということでありますけれども、歩きながらであろうが何であろうが、やっぱり総理の発言というのは重いものだと私は思います。  それで、新潟県の女子生徒の拉致事件ですが、北朝鮮による拉致事件の疑惑というか可能性があるというこの件が、報道によれば十件、未遂が二件ぐらいあるということなんですが、実態はどうなっているのか、警察庁の方にお伺いします。国内捜査の現状も含めて。
  42. 米村敏朗

    説明員(米村敏朗君) お答えいたします。  北朝鮮による拉致の疑いのある事件につきましては、これまでに私どもといたしましては少なくとも六件九名、また拉致が未遂であったと思われるものにつきましては一件二名というふうに考えている次第であります。  これらの事件につきましては、現在でもなお新たな関連情報の収集あるいはそれぞれの事件相互の関連性の調査、また関係機関との情報交換、連携をしながら所要の調査を継続しているところでございます。捜査の具体的な中身につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。  以上です。
  43. 高野博師

    高野博師君 これらの件については外務省としては何らかの外交的な措置なり対応をしたんでしょうか。
  44. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 外務省といたしましても関係機関と連携をしながら関連の情報の収集には努めております。ただ、具体的にどういうことをしておるかということについては、何しろ失踪しておられる方の安全に配慮する、これが一番だと思いますので、具体的な御説明は差し控えさせていただきたいと思います。努力はしております。
  45. 高野博師

    高野博師君 米の援助あるいは食糧援助についてはいろんな要素を勘案しながら実施するということですが、それであるならば、人道的観点の食糧援助と言いますけれども日本人の人道はどうなんだ、日本人の人権はどうなっているのかということを強調されて、そしてぜひこの援助に結びつけてもらいたい、そう思います。  それから、米の援助については昨年はWFPを通じて六百万ドル実施したと理解していますが、このWFP、世界食糧計画というのは信頼できる機関でしょうか。一言で結構です。
  46. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) WFPはこれまで北朝鮮に対する食糧支援アピールの発出、実施という面で貢献をしてきた機関だと思いますし、米国政府においてもWFPによる現地調査というものが現時点においては最も信頼性が高い調査であるという認識を持っているというふうに承知いたしております。
  47. 高野博師

    高野博師君 それではお伺いしますけれども日本等が援助した米の大半は軍に優先的に配給されたと、残りは今度は中国国境で一対八の比率でヒエにかわっている、交換された、こういうことをWFPが発表しております。一方、外務省は再三にわたって北朝鮮に対する援助は各地方に、これは北朝鮮側の報告として全国各地に配給されたと、こう答えております。これはどちらが正しいんでしょうか。
  48. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもがこれまでの国会のいろいろな場で御説明を申し上げましたのは、北朝鮮側からあるいは赤十字ルートで寄せられた回答として、このような地域にこのような量が配布されたという連絡、いわば回答でございましょうか、それを受領いたしましたので、それを国会の場で御答弁申し上げたわけでございます。  そして、私どもも現実にその現場をチェックしているわけではございませんので、そこのところはそれが完全に正確であるかどうなのかは確証は得られないわけでございますけれども、一応そういうものがあったということを踏まえて、それを頭から否定するわけにはいかぬということで申し上げた次第でございます。  一方におきまして、WFPの報告の中でもその配布について御指摘のようなこともあったんじゃないかというようなこともございますので、今後とも、仮に我が国がこういった人道的な面からの食糧支援に加わるということがありますならば、透明性の確保、それからそれより以前に本当の意味で人道的な目的に合致したような実施が行われるようにということは求めていかなくちゃいけない、こう考えております。
  49. 高野博師

    高野博師君 私は今までこの委員会で援助した米が北朝鮮の国民の口に入っているのかということを何度も質問いたしました。答弁は入っているという報告だったんですが、WFPのこういう発表がありますので、これはぜひWFPに問い合わせをして確認をしていただきたい、そう思います。
  50. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 今、委員のおっしゃられたWFPの発表というものをちょっとこの場で詳細は承知いたしませんけれども、アピールにこたえて我が方が拠出を行ったWFPやユニセフなどの国連機関は、供与された支援物資の方途について北朝鮮側から単に報告を受けるということではなくて、実際に北朝鮮内において直接モニタリングを実施している、それで相当高い透明性を確保しているというのが一般の認識だろうと思います。  もちろん、北朝鮮のように閉ざされた国でございますから、なかなか完璧にということはいかないのかもしれません。しかし、今般米国がみずからの一千万ドルを拠出する機関としてWFPを選んだ背景というのも、そのモニタリングの能力が現時点においてWFPが高いということ、それによって米国が望むような米の配分、食糧の配分、これが一番現実的によく確保できるということを考えたからだというふうに承知いたしております。
  51. 高野博師

    高野博師君 私は、国民の口に入るのであれば米がヒエにかわってもまあいいと、そう思っているんですが、しかし軍の方に優先的に配給されているという点については日本側の援助のあり方としては問題だろう、そこをちょっと指摘しておきたいと思います。  去年の十二月に日韓議連の関係で私は韓国へ行ってまいりました。向こう側の国会議員との意見の交換の中で私が一番印象に残ったのは、北朝鮮あるいは韓国の問題、朝鮮半島の問題というのはもともとは我々の責任ではないんだ、国際情勢影響によって分断されてこういう結果になっているんだということを強調されたのが印象に残っておりました。これは御参考までに。  それでは、ペルー人質事件についてお伺いいたします。先ほども同僚議員から御質問がありましたので、重複しない点についてお伺いしたいと思います。  大使公邸のレセプションの前のペルーの治安情勢についてはどういう認識をされていたのか、お伺いいたします。
  52. 川島裕

    政府委員(川島裕君) ペルーにおきましては、御承知のとおり、八〇年代に入りまして極左ゲリラのセンデロ・ルミノソ、それから今占拠しておりますMRTA、両方の活動が活発化して大変テロ事件が頻発して治安情勢が大幅に悪化していたわけでございます。  それで、九〇年代に入りましてフジモリ大統領は、テロ組織との妥協は一切行わない、こういう基本方針を打ち出しまして闘いを続けてきたわけでございまして、その結果、九二年が一つの節目かもしれませんけれどもMRTAの首領を捕まえ、それからセンデロ・ルミノソの首領を捕まえて、テロ集団の幹部クラスを相当逮捕して、治安状況はこの辺から改善をし始めたということだと思います。  最近ではフジモリ政権のこのような政策が功を奏してかなり平和と安全が取り戻されつつありましたけれども、依然として残存テロ分子による散発的なテロ行為があったということで、今回のペルー大使公邸占拠事件もかかる状況のもとでの事件発生というふうに認識しております。  ちなみに、テロ件数とか犠牲者数を見ましても、九〇年、この辺はテロ件数でいえば二千件とか犠牲者数三千五百近くとか、大変な数、大変な状況だったということが容易に推察できるわけでございますけれども、九五年ぐらいになりますと犠牲者数も六分の一、五百名そこそことか、改善が見られたということは事実だと思います。
  53. 高野博師

    高野博師君 先ほど指摘がありましたように、平成四年には日本大使館で車爆弾事件があった。それから、後でちょっと述べますが、日本赤軍メンバーペルーにおいてかなり動きがあったという報道もあります。それから、今御指摘のように、テロ件数も激減したと、この数年間で。しかしながら、九六年前半でも国内で月間四十件以上のテロ事件があるわけですね。一昨年はMRTAペルーの国会襲撃を計画していたということも言われていて、これも発覚している。それから、昨年の十一月にはペルー政府に対してMRTAから刑務所の待遇改善をしろというような要求があった。いろんな事情を見れば、客観的に見ても治安情勢が楽観できるものではなかったというふうに私は思います。  そこで、先ほどの大使公邸の当時の警備体制についてはどうだったのか。先ほどのお話だと、警備員二名、ペルーの警察官四名、その他所要の警察、こう言っておりますが、六百名以上の招待客でわずかこれだけの警備というのは余りにもお粗末過ぎると私は思いますが、このパーティーの事前に現地の警察、軍等との治安関係の打ち合わせばやったんでしょうか、大使館は。簡単で結構です。
  54. 川島裕

    政府委員(川島裕君) このレセプションの警備に関しまして、まさに警備を含めてレセプションの企画と申しますか、その辺をやっていた関係者がみんな入っておりますものですから、事実関係を全般的に把握する状況にないわけでございます。  ただ、こういう事件が起こったということを踏まえまして、解決した後で二度とこういうことを起こさないようにするために抜本的に徹底的に事実関係を洗いたいと思っておりますが、現場でその当日どうなっていたかということにつきましては事実関係を十分に把握していないというのが実情でございます。
  55. 高野博師

    高野博師君 途中で出てこられた人もいると思いますが、いずれにしてもMRTA側が、大使公邸の警備は信じられないほど手薄だったというようなことをセルパ自身が言っているわけです。  この種の事件については、中南米では事前の予告というか、あるいは脅迫とか、そういうものがあるんですが、何か事件を暗示するようなことは全くなかったんでしょうか。
  56. 川島裕

    政府委員(川島裕君) 事前の予兆というものはあったとは承知しておりません。
  57. 高野博師

    高野博師君 一九八〇年にコロンビアのドミニカ大使館占拠された事件ですが、これは当初は日本大使館がターゲットになっていた、しかし大使館の警備が厳重なんでドミニカに変えたという情報がありますが、その辺は御存じでしょうか。
  58. 川島裕

    政府委員(川島裕君) ドミニカ大使館のケースはあるいは参考になる点がいろいろあろうかと思いまして、研究をしております。
  59. 高野博師

    高野博師君 それで、そもそも政府要人あるいは外交団、大使館員が集まるナショナルデーのパーティーは犯罪組織にとっては最大のターゲットになっているというのは少なくとも中南米では常識だと思います。当時、大使館として警備体制、また治安情勢に対する認識の甘さ、油断があったんだと言わざるを得ないと思います。先ほど言いましたネストル・セルパが、我々はわざわざ公邸占拠のために救急車を仕立てた、公邸の裏側の道には全く警察官がいなかったので結局救急車は不必要に終わったというようなことを発言しているわけです。MRTA側は、アメリカ大使が帰った後に犯行に及んだ、あるいは人質の中でも、米、英、仏、独、この主要国の要人を早目に解放している。こういう国は特殊部隊等を持っているということもあって、ゲリラ側はこれらの国を敵に回すことを巧妙に回避したんだというような解釈はできるかと思うんです。  先日お会いした韓国の国会議員は、韓国大使館の大使公邸のケースだったらもう既に一週間以内に解決している、そう言っておりました。その中身についてはいろいろ異論があるとは思いますが、日本だから、日本公邸だからねらわれたという要素が多分にあると言わざるを得ないと私は思っております。ゲリラ組織とかテロリストの情報のネットワークというのは一つの国家に劣らないぐらいの情報を持っているわけです。そういうものを含めてこちら側に問題があったんではないかと思います。  そこで、事件発生後、日本政府は直ちに人命尊重ということを叫び、そしてまたテロには屈しないということを主張しております。しかしながら、テロは絶対許さないという非難の言葉がない、毅然たる態度に欠けているんではないかという印象を持っております。  人命尊重というのはもう当然過ぎること、当たり前のことでありまして、まず人命尊重というのはテロリスト側にとってみればお助けくださいというふうに聞こえる。人命第一という言葉は、内々にまず日本政府ペルー政府に対して直ちに強行手段によって救出作戦をとらないでほしい、慎重に対応してほしいということを言うべきで、第一義的にテロリストに向かって言う言葉ではない、私はそう理解しておりますが、この辺はどうお考えでしょうか。
  60. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 日本政府といたしましては、当初からテロリズムに屈してはいけないというこの原則、それと同時に人質の全員無事な解放を目指すと、この二つを何とか実現したい、こういう考え方でこの問題に対応してきたつもりでございます。  そうして、そのことはペルー政府の方針でもあり、それだけではなくて国際社会にも広く支持されている、こういうふうに認識している次第でございまして、私どもはこれからもそういった基本方針に立ってペルー政府と連携して対処してまいる所存でございます。
  61. 高野博師

    高野博師君 日本政府は、MRTAを反政府ゲリラ組織ととらえているのか、それともテロリストととらえているんでしょうか。そこは峻別しているんでしょうか。
  62. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 現実に今ペルー大使公邸で多数の人間を依然として人質の状態で捕らえている、そういった行為を継続中の集団であり、これは言葉をかえて言えばテロリストになると私は認識しております。
  63. 高野博師

    高野博師君 テロリストということで統一されているわけですね、政府としては。
  64. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) さようでございます。
  65. 高野博師

    高野博師君 反政府ゲリラということであれば、これは将来の合法政党化というような可能性もあります。しかし、冷戦が終わった後の反政府ゲリラ、左翼ゲリラというのはもう存在理由を失った、あるいは歴史的な使命が終わった、そう言われているんですが、合法政党化の問題についても国民の一般の支持がなければうまくいかない。これはいろんな例を私は知っておりますけれども政治活動できるのはごくわずかな人間、大半はうまくいかなくて、また一般犯罪に戻っていくというようなケースも見ております。今回はテロリストということであれば妥協の余地は全くないということだと思います。犯罪集団だと。MRTAそのものが誘拐とか強奪を繰り返してきたわけであります。  ところで、これは警察庁にお伺いしますが、MRTA日本赤軍との関係について何らかの情報は持っておられるでしょうか。
  66. 米村敏朗

    説明員(米村敏朗君) 日本赤軍の南米における活動ということでございますけれども、一昨年の三月にルーマニアで発見をし逮捕した日本赤軍メンバーの浴田由紀子、これにつきましてはペルーの偽造旅券を所持しておったということでございます。また、御承知のとおり、昨年の五月にはペルーにおきまして同じく日本赤軍メンバーの吉村和江、この身柄を確保したということでありまして、日本赤軍メンバーが南米に強い関心を有し活動していたということは事実であります。  しかしながら、現時点において警察として、日本赤軍と目下公邸占拠しておりますMRTAとの間に共闘関係があるということにつきましては、これを示す情報は把握をしておりません。
  67. 高野博師

    高野博師君 私は個人的にはMRTA日本赤軍あるいはセンデロ・ルミノソと日本赤軍は多分に関係があったと見ております。  先日も五人の日本赤軍メンバーがレバノンで身柄を拘束されたと言われておりますが、奥平と戸平についてはエクアドルの偽造パスポートを持っていて、去年の一月ですか、日系二世ということでリマ市の在住証明書を受け取ろうとしたというようなことも言われておりまして、先ほど言及されました浴田容疑者とか吉村容疑者とか、若宮政則という容疑者はアンデスの山の中でセンデロ側にだと思うんですが殺されていると。  今回の事件については、これまでのクウェートの日本大使館とかオランダのハーグのフランス大使館、あるいはクアラルンプールのアメリカ大使館占拠のやり方に非常に手口が似ているというのがあります。その中で私が一番注目しているのは、占拠の理由の中でペルーの貧困問題とかあるいは日本経済援助を攻撃しておりまして、日本がフジモリ政権を経済的に支えているということを非難しているのはわかるんですが、いかにも言い方が日本人的な発想というか、日本赤軍的な理論だなという感じを持っております。  私はいろんなゲリラとも実際に会ったことがありまして、彼らは、一般的に言うと中南米のゲリラは日本からの経済援助そのものは歓迎しています。合法政党化した人間からも真っ先に日本大使館に来て援助をしてほしいということを言っておりまして、日本経済援助がおかしいという言い方はほとんどしません。今回のMRTAの場合には、日本政府に対しての攻撃も入っているという点を考えると、日本赤軍との関係がかなり深いんじゃないか、私はそう見ております。  ところで、ペルー日本大使館が去年の十二月十七日からことしの一月七日までビザの発給を停止した。これは日本で手続すればいいということでビザなし入国を認めた。しかし、一月八日にビザ発給を再開し、そして十四日にはまた中止した。今度はビザなし入国は認めない、第三国等でビザを取ってこいということで、なぜこんなに何度も方針が変更したんでしょうか。一貫性がなくて、理由もよくわからない。成田の飛行場では相当混乱した人がたくさんいるというような情報もありますが、この辺、どうでしょうか。
  68. 齋藤正樹

    政府委員(齋藤正樹君) 昨年十二月十七日のこの事件発生によりまして大半の館員が人質として公邸の中に閉じ込められたものですから、やむなく査証業務の発給を停止しました。年末年始の休みの間に態勢を立て直しまして、ことしの一月八日から査証申請の受理業務を再開しました。  ところが、一月十四日の段階から警備上の理由によりまして再び査証申請受理業務を一時停止しておりまして、その間、訪日を希望されるペルー人につきましては日本に来る途中の最寄りの公館で査証の取得をお願いしている次第でございます。その間、マスメディアとかいろんなところを通じまして今度はちゃんと査証を取ってきてくださいという周知徹底を図っております。  他方、その背景に、人道案件とかあるいは緊急に査証が必要な方というような場合には、閉じております業務を内々に開いてもらって査証の申請を受理して発給してきております。
  69. 高野博師

    高野博師君 法務省に伺いますが、ビザなしで日本に渡ってきて入国を許可されなかった、それで退去命令を受けた人が相当いるというんですが、どのぐらいの数があるんでしょうか。
  70. 伊集院明夫

    政府委員伊集院明夫君) 昨年の十二月の事件発生以後、ことしの二月十六日までの間に成田空港及び関西空港に到着したペルー人は千三百十九名おりまして、そのうち査証を所持していなかった者が七百七十五名おります。七百七十五名のうち二百八十一名は上陸を認められておりまして、四百九十四名が上陸を認められていないということでございます。  私ども入管局の取り扱いとしましては、このペルー公邸占拠以後の取り扱いですが、査証を所持せずに来日するペルー人についても査証を持っていないということのみで上陸を拒否するということはしないと。査証を取得していない事情を聴取しまして、査証がなくても他の上陸条件に適合すると認められる者については上陸を許可する、こういう方針で運用しております。
  71. 高野博師

    高野博師君 ビザなし入国を認めたというのは、不法労働者が大量に入ってくる可能性も当然考えられたし、日本赤軍が中南米を相当動いているという情報もあるわけですから非常に危険だと私は思うんですが、そのような判断がどうしてできなかったのかなと。  それから、周知徹底させるといってもなかなか日系人の間でそういう情報を周知徹底するのは難しいと私は思います。したがって、何度も変更するというのは適当でない、そう思います。  法務省が来られているのでもう一つお伺いしたいんですが、入管で手続する窓口に「日本人」と「外国人」と日本語で書いてあって、その下に英語で「ジャパニーズ・パスポート」、それから「フォーリン・パスポート」と書いてあるんですが、これはどういう意味でしょうか。
  72. 伊集院明夫

    政府委員伊集院明夫君) 我が国の空港で出入国審査を実施するために、これを円滑にやるために、一般的に言いますと、空港の審査ブースに日本国籍の者を審査するブースと日本国籍を有しない外国人を審査するブース、これを区分しております。それで、それぞれに、表示としては「日本人」、英語表示では「ジャパニーズ・パスポーツ」と書いてありまして、「外国人」、英語表示では「フォーリン・パスポーツ」、こういう表示をしておりますが、これは……
  73. 高野博師

    高野博師君 それはわかっております。  日本人という概念、外国人という概念とパスポートというのは全然違う話で、日本人であっても外国のパスポートを持っている人がいるわけです。外国人でも日本のパスポートを持っている人がいるわけです。こういう場合にどうするんですか。全然概念が違うのは、これは英訳しているのかどうかわかりませんが、これはおかしいと思うんです。
  74. 伊集院明夫

    政府委員伊集院明夫君) これはなるべく小さいスペースで見えやすくわかりやすくするということで「日本人」と「外国人」と書いてございます。もちろん日本人の定義というのも、日本国籍を持っている者という定義もありますので、外国人というのも、まあいろんな定義はあると思いますけれども日本国籍を持っていない人というのを外国人というふうにも日本語としては解釈し得ると思うんです。  そこで、「外国人」、「日本人」と日本語だけで書いてもわかりにくいので、パスポートで我々は区別しておりますので、英語では「ジャパニーズ・パスポーツ」、「フォーリン・パスポーツ」、こういうふうに……
  75. 高野博師

    高野博師君 ですから、その日本語がおかしくないかと私は言っているんです。日本語と一致していないわけですよ、概念が。ほかの国では居住者とか非居住者、あるいはシチズンかノンシチズンかという分け方をしているはずですが、日本だけ日本人か外国人かという分け方を平気でやっているというのはおかしいんじゃないか。
  76. 伊集院明夫

    政府委員伊集院明夫君) この辺は各国とも出入国審査の方式がそれぞれでございまして、出入国審査の方式に最もふさわしい表示をしているというふうに私どもは考えております。
  77. 高野博師

    高野博師君 日本はふさわしいんですか、それで。
  78. 伊集院明夫

    政府委員伊集院明夫君) 私どもはこれで外国の方に御理解いただけるんじゃないかなと思って今のところそういう表示にしております。
  79. 高野博師

    高野博師君 ですから、外国人でも日本のパスポートを持っている人がいるわけです。帰化すれば日本の国籍を持てるわけです。その人はどっちへ行ったらいいんですか。
  80. 伊集院明夫

    政府委員伊集院明夫君) これは一応の区別でございまして、こちらに来たら審査をしないということでもございませんので。
  81. 高野博師

    高野博師君 だから、私は日本人とか外国人という区別の仕方がいかにも古い日本の差別的な意識が根底にあるような感じを受ける。もっと正確な言葉を使った方がいいと思うんですよ。どうでしょうか、変えるつもりはないんでしょうか。
  82. 伊集院明夫

    政府委員伊集院明夫君) とにかくわかりやすくて見えやすいというようなことが必要なものですから、余り小さい字でごちゃごちゃ書いてもあれなものですから、便宜上こういうふうにしているということで、どちらの列に並んだからといって審査を拒否するということではございません。
  83. 高野博師

    高野博師君 それなら一切そういうのを掲げない方がすっきりしていいんじゃないでしょうか。もう結構です。これは検討してください。これにこだわっていると時間がもったいないので。  先ほどのペルー事件に戻りますが、予備的対話とか保証人委員会の動きがありますので中身についてはこれに触れることは差し控えようと思っております。  しかし、一つ、橋本総理が、オブザーバーの寺田氏が議案の取りまとめに取りかかっているということで日本政府も深く関与することになるがという新聞記者の問いに対して、日本政府というよりも寺田さんがだと、こう答えているんですね。この発言の真意はどの辺にあるのか、これをお伺いしたいと思います。要するに、寺田大使は日本政府としてかかわっているんだと思うんですが、そうじゃないんでしょうか。
  84. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) これも、先ほどの委員の御議論のように、極めて厳格な定義を求められるとあるいは答弁に窮する場面が出るかもしれませんけれども、こういうことだと存じます。  今回のこの事件解決はやはりあくまで当事者、つまり人質をとっているMRTA、それからペルー政府、この間での話し合いで物事が決するんだと思います。しかしながら、それが円滑に進むために、あるいはまた物事が一応の合意に達した後に、その合意が着実に、確実に実施されるために役割を果たすものが必要である、そういった位置づけで保証人委員会というものができているんだと思います。  そして、寺田氏はその保証人委員会オブザーバーという形で参画しているわけでございますが、これは一つは、日本政府がこの交渉の当事者ではないにしてもやはり深いかかわりを持つ、そういう立場にある、そういう意味合いが寺田氏がオブザーバーに入っている点にはあると思います。  しかし、それだけではなくて、やはり寺田氏個人としても、これまでのいろんな経験、また今回のこの事件に対する取り組みの中で個人としてもそういった対話プロセスを円滑化するために役割を果たし得るお力をお持ちである、そういった面にも着目されて、いわば両者の要素を勘案して今オブザーバーとしての役割を果たしていただいているんだと存じます。  総理の言葉もそういったところは余り厳格に詰めてのお話ではないと思います。それは、日本の国はこういうかかわりを持っておるということ、そういったこともあるけれども、それだけではなくて、やはり寺田さん御自身のそういったお力というものも一つの要素になっているんだ、そういう認識をあらわされたんじゃないかと存じます。
  85. 高野博師

    高野博師君 これはいざというときに責任転嫁するんではないかなというふうに私はとれました。個人でやっているということはあり得ない。日本政府を代表して、オブザーバーであればオブザーバーという立場で彼は働いている。個人的に云々ということは全くあり得ないと私は思います。  そこで、日本政府フジモリ大統領を全面的に支援する、こう言っているんですが、フジモリ大統領にある意味でみんな押しつけちゃっている面があるんではないかなという感じを持っておりまして、寺田大使も含めてもっと日本のプレゼンスが前面に出てもいいんじゃないかなという感じを持っております。  時間がないので少し進みますが、今回の問題はもう世界じゅうが注目している。ある意味日本対応とか解決の仕方を見守っているわけで、国際社会での日本の外交がある意味で試されていると私は思っておりまして、解決の仕方によっては在外公館とか在留邦人、日系企業、さらなる危険にさらされる可能性が増大するということも十分あり得ると思います。  先ほどテレビ朝日の件が出ましたが、テレビ朝日はほかの国で同じような事件が起きたときにもやはり問題のある行動を起こしておりまして、これは外務省本省を通じて注意喚起をした経緯があります。取材合戦というか商業主義に流されて、法に触れなければ何をやってもいいということではないと思うんです。一定のルールというのがあると思うんですが、マスコミは人命尊重ということをぜひ守ってもらいたい、そう思っております。  今回の事件というのはある意味では日本が全世界に恥をさらけ出しているという見方もあります。これはもう一刻も早い解決に最大の努力をすべきであろうと思います。あえて私はこれを繰り返しておきたいと思います。  そこで、阪神の大震災あるいはサリン事件、O157、重油の流出事件、そしてペルー人質事件、一連の事件というのは日本政府に危機管理能力がないということをさらけ出した。国民の生命と財産を守れないという、守るという危機管理の能力がないということは国家としてガバナビリティーというか統治能力がないということであろうと思うんです。したがって、政府あるいは国家の体をなしていないということが言えるんではないでしょうか。大臣、どう思われますか。
  86. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 国民の生命財産を守っていくということは国家としての最も大切な機能の、役割の一つである、こう考えております。そういった意味合いにおきまして、海外における事柄であれ、あるいは国内における事柄であれ、そういった政府役割、国の役割、これを十分に果たしていくためにさらなる努力を傾注しなくちゃいけないと、こう考える次第でございます。  ただ、私一点申し上げたいと思いますのは、確かにそういった意味で危機管理について、我々は従来以上に深い関心を持ち、適切な対応をしていかなくてはならないとは考えますけれども、昨今少し危機管理という言葉ばかりが躍りまして、本来の目的とは必ずしもつながらないところでいろんな議論が行われるという傾向もなきにしもあらずと存じますので、本当の意味で大切な危機管理は一体何なのか、十分に外務省としてあるいは政府全体としても考え、対応していかなくちゃいけない、このように心に誓っているところでございます。
  87. 高野博師

    高野博師君 一連の事件日本が自分の国での有事にも対応できない。もしアジア太平洋で何か緊急の事態が起きたときに一体何ができるのか、そういう疑問を持った人も多いんではないかと私は思いまして、将来、安保理の常任理事国というようなことになったときにでも国際の平和と安全を守るということで果たして重要な役割日本は果たせるのかなという私は疑問を持ちました。  ペルーのこの事件も含めまして、日米の同盟関係といいますか日米関係にある意味で影を落としたんではないか、私はそう見ております。ある情報では、アメリカのある高官が今回の事件も含めて日本側の危機管理能力のなさに失望しているということも言っていたそうであります。それから、先般の劣化ウラン弾の誤射事件等もあって日米の信頼関係というか日米関係に傷がついたという見方もあるようですが、大臣はどう思われるでしょうか。
  88. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 事ペルー事件に対する対応につきまして、米国政府は現在のペルー政府の取り組み、そうしてまた日本政府の取り組み、その基本方針なり姿勢なりにつきまして、これを支持し、支援をしてくれておるところでございまして、このことのゆえに日米関係に影を落としているということはない、そのように考えております。  それからまた、劣化ウラン弾の件もございましたけれども、この問題につきましても、私どもは通報のおくれ、体制その他について改善しなくちゃいけないところはあると考えております。これは日本対応が問題であるからアメリカから不信感を持たれるという話ではなくて、日米安保体制をきちんとやっていくためにも、こういうようなことでそごがあっちゃいけない。また、このようなことがあって沖縄県を初め、日米安保体制を支えていく上で重要な役割を果たす区域・施設の存在する地域あるいは米軍の駐留する地域の住民の方々の御理解や御信頼を損なうことがあってはならない。このことは日米共通の関心事でございますので、日米が手を携えてこれからも改善措置を講じていく、そういう種類の課題であろうかと考える次第でございます。
  89. 高野博師

    高野博師君 最後に、このペルー事件の問題について責任の所在というのは一体どこにあるのか。私は二つあると思うんですが、一つはペルー側のやっぱり治安の問題という点がある。それから、日本側には公邸の警備という責任があるんだと思うんです、日本側にあると。そしてまた、世界じゅういろんな国にこの事件で御迷惑をかけたという責任も当然あると思います。責任の所在が明確でないところには危機管理能力の向上というのは望めないと私は思っておりまして、日本の行政というのは責任をとらないということにやはり一番の問題がある。  阪神の大震災、あれも人災的な要素が強いと言われながら、だれも責任をとらなかった。日本の行政というのは集団的無責任体制にある、これがやっぱり私は行政改革の中で最大のポイントになると個人的には思っておりますが、大臣の見解を伺って終わります。
  90. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもは、現在まずこの事件解決人質全員の無事での解放を実現するために全力を傾注している次第でございます。しかし、いずれにいたしましても、なぜこういうふうな事件が起き、こういうふうな状態になったか、それを防ぐ手だてはなかったかということも十分研究いたしまして、将来に向かって再発の防止に努めていくことは当然だと思っております。  そういった中で、将来に向かって改善に努めていく、あるいは委員今御指摘の責任という問題についても考えなくちゃいかぬかもしれませんけれども、とにかく現時点ではまず事件解決を考える次第でございます。
  91. 高野博師

    高野博師君 終わります。
  92. 田英夫

    ○田英夫君 中国鄧小平さんが亡くなりまして、また歴史上の人物が一人亡くなられたということでありますが、まさに世代交代といいましょうか、中国でもいわゆる周恩来世代の残った指導者のお一人が亡くなられたわけです。日本でももちろん世代交代が進んでいるという状況の中で、外交というのは歴史の流れの中で行われるわけでありますから、それをやはり受け継いでいく人がしっかりととらえていかないと、受け継いでいかないといけないなと改めて思っているんです。  例えば、ことしは日中国交回復二十五周年ということで、秋にいろいろ行事が行われるとは思いますけれども、そんな中で、あの田中総理、周恩来首相という話し合いの中で行われたことを日本側で当時現場にいて御存じの方は今や一人もおられなくなったんじゃないでしょうか。会談そのものに出ておられたのは、外務省でいえば当時の高島条約局長政治家はもちろんですが、中国側ではあと当時の姫鵬飛外相、それから張香山さんがおられますが、いずれにしても、そうした当時のことを御存じない方がだんだんこの後を受け継がれていく。  例えば、尖閣列島問題というのも、実は国交回復のときにこれは触れないでおくことにしようということで合意をして、また日中平和友好条約のときもそれが受け継がれてきた。  今度亡くなられた鄧小平さんは、日中平和友好条約発効直後に来日をされて、尖閣列島問題について、中国では釣魚島と言い、日本では尖閣列島と言う、名前からして違う、お互いに考えが違う、この問題をぶつけ合うことは適切ではないだろう、この問題の処理は後世の世代に譲ろうではないかと。後世の人たちの方が今の我々より利口かもしれないという冗談を交えた発言をされたことがあるわけですけれども、こうしたことをやはり知っている知らないということだけでなくて、きちんと受け継いでいないと外交の円滑な推進、進行というのはないんじゃないかなと。そんなことをきょう改めて感じております。  きょうはその問題には触れませんで、劣化ウラン弾のことを、先ほどから同僚委員が取り上げられましたから、別の視点で意見を申し上げたいと思います。  劣化ウラン弾というのは、もう御存じのとおり、ウランを濃縮するときにウラン235と238に分かれる。235の方はまさに核兵器にもなるわけでありますが、238の方は放射能が非常に少ないということの中で、実はそれが劣化ウランであるわけです。それを使って、非常に硬度がかたいということを利用して戦車の鉄板を撃ち抜く弾丸にする。しかも、アメリカのように濃縮ウランをみずからつくっているところではウラン238が大量に生産をされる。その用途ということも含めて、同時に従来使われていた徹甲弾のタングステンに比べると価格が非常に安い、こういうことで使用され始めたと思いますが、国会でも実はもうかなり以前にこのことが取り上げられているという事実があります。  私が申し上げたいのは、この劣化ウラン弾というのは使い方によってはかなり危険な兵器であると。実際、湾岸戦争などでも使われたわけであります。  防衛庁においでいただいておりますが、防衛庁は、自衛隊は今劣化ウラン弾を使っておられますか、装備しておられますか。
  93. 別府信宏

    政府委員(別府信宏君) お答え申し上げます。  劣化ウラン弾について、自衛隊の装備についてでございますけれども、自衛隊はこの弾薬を一切保有しておりません。
  94. 田英夫

    ○田英夫君 先ほど申し上げたとおり、一九八一年、昭和五十六年に私の同僚だった楢崎弥之助氏が衆議院の内閣委員会で当時の大村防衛庁長官あるいは和田装備局長質疑応答をやっている中で明らかになってきているわけですが、なぜ使われないのか。当時、楢崎さんもタングステンの方が高いじゃないかということを言われ、またアメリカ軍と兵器、弾薬の共通性を持たせるということからすれば自衛隊は当然使っていると楢崎さんは思っていたようですが、そうではなかったんですが、これはなぜ使わないのか。
  95. 別府信宏

    政府委員(別府信宏君) 先生も御案内のとおり、この劣化ウランにつきましては、我が国は非常にその材料が入手しがたいこと、またそれによって弾薬メーカーもそういった加工に対する技術を持ち合わせておりません。一方でまた、今お話しのタングステンに関します技術、これは基盤技術を持っておりましたので、それを活用してこの装備化のために研究してきたと、こういうことでございます。
  96. 田英夫

    ○田英夫君 今財政の問題が大変苦しい状況にあるという中で防衛費の問題もしばしば言われるわけですけれども、もちろんそんなに大量のタングステン弾を装備するわけではありませんから、これはやはり常識的に考えますと、劣化ウラン弾というのは使用するやり方によっては、例えば演習で使ったりすれば、その結果として、演習場ならどこでも撃てるという弾ではないと。その危険性の問題というのは原因にはなってはいませんか。
  97. 別府信宏

    政府委員(別府信宏君) 劣化ウラン弾の危険性についての御質問でございますけれども、私ども公刊資料によりまして劣化ウランそのものにつきましては、先生も先ほどおっしゃいましたように、ウラン235の含有量は天然ウランより下回ったウランであるとか、それから非常に比重の高い、約一九ほどの比重を持った重金属であるということだけは承知しておりますけれども、劣化ウラン弾そのものについて、それが放射線等に関する具体的なそういう人体への影響、それについては残念ながら私ども知見を持ち合わせておりません。
  98. 田英夫

    ○田英夫君 自衛隊は持っておられない、使っておられないから実は劣化ウラン弾のことは詳しくは承知しないんだと、それはそのとおりかもしれません。  湾岸戦争のときにこの弾丸のことがかなりいろいろジャーナリズムで取り上げられ、話題になりました。事実、アメリカ軍はイラク軍の戦車攻撃のために使いました。結果としては、戦車が黒焦げになって焼ける、燃える。そういう状況があって、ずっと後になってですが、アメリカで湾岸戦争に参加をした元兵士の中で健康を害する人がかなり出てきたと。これはその劣化ウラン弾の結果ではないか、これも確証がまだ挙がっていないようでありますが、そういう説が出てきておりますね。  この劣化ウラン弾そのものは、弾丸のしんに劣化ウランを入れて、それで貫徹力を強めるわけですが、それが戦車の鉄甲板を突き抜けて中に飛び込んでいって、大体千度ぐらいで、劣化ウランは金属にしては割合低い温度で燃える、その結果として、戦車の中で焼夷弾的な効果を生むと、こういうことが言われております。これは軍事専門家の書いたものなどを読みますと、そういうことが出ております。  その結果、劣化ウランが燃えますと酸化ウランを発生して、それが非常に小さな微粒子になって空気中に浮遊する。そこを歩き回ったりすると、呼吸をして肺の中にその微粒子が入って、放射能は非常に弱いようですけれども、結果としてはそれが肺の中に入ってたまってしまう、外へ出ていかない、非常に小さいために。結果としてそれが原因で体を壊すのではないかと。これも説です、まだ。したがって、私が申し上げたいのは、劣化ウラン弾というのはかなり危険な兵器になり得る可能性を持っていると。  私、先日、アメリカ大使館に行ってデミング臨時代理大使に会い、またシアー安保課長に会いまして抗議をしたわけですけれども、そのときに安保課長は、専門家の立場でかなり勉強しておられるようでしたけれども、アメリカ本土では劣化ウラン弾の発射訓練をする場合には地域を特定して人が近づかないようにして、したがって公表をして場所を知らせて注意をしながら訓練をすると、こういうことになっているそうであります。  また、在日アメリカ軍は、さっき大臣も言われましたように、日本の国内では訓練には使わないということを決めていて、それがマニュアルの中にきちんと書いてなかったために今回の事故が起きてしまったというふうにアメリカ大使館の人は説明をしておりました。そのとおりだろうと思います。つまり、アメリカも劣化ウラン弾というものは取り扱いを注意しないといけない兵器であるということを承知していると。  こういうことで、自衛隊が結果として使っておられないということは幸いだったと思いますけれども、その兵器を鳥島で千五百二十発も日本側に全く知らせずに使う結果になったということで大変問題が大きいと思うわけです。この辺のところをひとつ十分頭に置きながら、ここは外務委員会ですからお願いしたいことは、今度の通常国会でこの外務委員会に出てくる条約の中に過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用の禁止又は制限に関する条約、その議定書二つ出てきて、一つは対人地雷、もう一つは失明をさせるレーザー兵器ということで、今国会中にはここで我々お互いに審議をするわけであります。  調べてみますと、極めて非人道的な兵器であるとか、あるいはプラスチック片のように体内に入った場合に探知することができないというような兵器であるとか、対人地雷の場合も言うまでもなく手足がなくなるというような非常に無残なことが各国で起きているわけでありますが、そういうものを禁止している。その精神からすると、失明をさせるレーザー兵器も同様でありますけれども、そういうことからすると劣化ウラン弾というのもこの条約の対象になり得るんじゃないだろうかと私は思います。  これはなかなか兵器の専門的な知識を必要としますし、防衛庁も使っておられないので詳細なデータを持っていないという状況でありますから、日本政府からこれを提起することはなかなか難しいかもしれませんけれども、条約を持つとまで言わなくても、平和な日本という視点からすれば日本から提起していいんじゃないだろうか、対人地雷のことと比べますとまさにこれもその条約に匹敵するものではないだろうかと思いますので、ひとつ御研究をいただきたい、頭の中にとめていただきたい、こう申し上げたいんですが、大臣、いかがですか。
  99. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 対人地雷あるいは失明をもたらすようなレーザー兵器につきまして、今御指摘のございましたように、人道的な観点からその使用を禁止するというふうな条約、我々もそれを今国会でお諮りしょうと考えている次第でございますが、この劣化ウラン弾を同じような側面から取り上げるかどうかにつきましては、私ども今の段階で必ずしもこれは同じであろうと申し上げるのはちょっと適切じゃないと存じます。  先ほど委員御自身も御説明の中でございましたように、この劣化ウラン弾につきましては基本的には厚い鉄甲板を貫徹する、その能力に着目して使用されているわけでございまして、それが例えばタンクの中へ貫通してそういった武器としての効果を上げるということがございます。  それ以外に、先ほど御指摘のように、訓練等で使っておる。そのために空中に浮遊して、そのことが原因になっていわゆる湾岸戦争で米兵の中にも一部そういった症状が起きたんじゃないかという説といいましょうか、そういう見方が一部あったのは承知しております。正確には政府委員から答弁させますけれども、これまでのアメリカのいろいろな調査研究の中ではその説はアンライクリーでしたか、可能性は極めて低いというような結論になっていると承知しております。  そういうようなことも踏まえるならば、必ずしも今御提起のような条約の締結の動きにつなげるのが妥当かどうか、私が今そうでございますと申し上げるわけにはまいらないわけでございますが、いずれにいたしましても委員がそういうことを御指摘なさったということはよく記憶しておきたいと、こう存ずる次第でございます。
  100. 田英夫

    ○田英夫君 時間がなくなってまいりましたが、北朝鮮の黄長燁書記の亡命の問題を取り上げたかったのですけれども、もう余りありませんから、この問題について若干の意見を申し上げておきたいと思います。  中国努力が非常に大きかったと思いますけれども、いずれにいたしましても当初日本政府を含めて大変心配をされた点はかなりいい方向へ進んでいるのではないかと考えております。朝鮮半島の問題について先ほども同僚委員からもお話が出ましたけれども、私はぜひ外務省を中心に日本政府朝鮮半島に関する正しい情報を集めることにもっともっと努力をしていただきたい。率直に申し上げると、朝鮮半島情報についてはかなり間違った情報も、あるいは意図的に曲げられた情報も乱れ飛んでいる。乱れ飛んでいるという意味は御理解いただけると思います、二つあるわけですから。そういう中で正しいものを選択するということが大変重要になると思います。  中国のことを大変評価しましたが、最近のアメリカ、特に国務省の姿勢は大変変わってきていると思います。私の経験で、実はそう言っては大変失礼ですが、以前アメリカは朝鮮半島、特に北朝鮮について非常にいわば無知であったと言ってもいい状況がありました。それは体験上そういうことを感じましたが、最近は、これも率直に言って日本の外務省よりも国務省の方が豊富に、しかも正しい情報を持っているのではないかと私は見ています。これは残念なことでありまして、過去の歴史といい、あるいは地理的な関係といい、もっともっと正しい情報を知り得る立場にあるわけです。  先ほどからしきりに李恩恵ということが出て、これが実は日朝国交正常化交渉の障害になってきたわけですけれども、この委員会でも過去に申し上げたことがあります。李恩恵というのは田英夫の娘だという情報を意図的に流したことがあるんですね。それはどっちが流すかは御想像に任せますけれども、私のところに日本のマスコミから一斉に電話がかかってきました、その日は。それはソウルから流れてきたわけです。その程度のもので日本と朝鮮民主主義人民共和国との間の非常にまじめな国交正常化の交渉が阻害されるということは私はまことに残念であります。  情報を精査するということをぜひ本当にやっていただきたいということだけお願いをして、終わります。
  101. 萱野茂

    ○萱野茂君 まず初めに、沖縄に関する特別行動委員会、SACOの合意についてお伺いをいたします。  沖縄の在日米軍の整理、縮小については、沖縄住民の激しい怒り、厳しい世論があってのこととはいえ、政府はそれなりに努力をされた。その結果については一定の評価をしたいと私は考えております。    〔委員長退席、理事高野博師君着席〕  しかし、極めて遺憾なことでありますが、今回の鳥島での劣化ウランの誤射に対しての日米政府の忌避、SACOの合意の陰で事故をひた隠しに隠し続ける、このようないつまでも変わらない軍事機密優先の構造に強い不信感を感じないわけにはまいりません。  さて、昨年十二月のSACOの合意でありますが、この中で、県道一〇四号線越えの実弾砲の射撃訓練について、これを平成九年度中に本土の五カ所の基地へ移転を決めておりますが、この本土への移転に当たって、移転先の社会環境といいますか移転の条件といいますか、そのことについて移転訓練を行う米軍なり米国政府の側から問題の提起なり条件の提示のようなものはあったのでしょうか。この点をお伺いしておきたいと思います。
  102. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 委員御指摘のように、昨年十二月のSACO最終報告におきまして、「平成九年度中にこの訓練が日本本土の演習場に移転された後に、危機の際に必要な砲兵射撃を除き、県道一〇四号線越え実弾砲兵射撃訓練を取り止める。」と明記されたところでございます。そして、訓練移転先の検討に当たりましては、現在キャンプ・ハンセンで実施している訓練と同質同量の訓練機会を確保するということを前提とすることにつきまして当初から日米間で認識一致がございました。アメリカ側が条件を提示するという形で話し合いが行われたわけではございません。キャンプ・ハンセンと同程度の射程四キロから五キロを確保できることを条件に十の演習場を選び、演習場の面積、機能等専門的、技術的な問題について日米間で総合的に検討を重ね、その結果五つの演習場について分散実施が可能であるという結論を日米間で得たところでございます。    〔理事高野博師君退席、委員長着席〕
  103. 萱野茂

    ○萱野茂君 そこで、このことと関連しまして、実射訓練の本土移転について防衛庁に伺います。  演習の本土移転が合意されたことを受け、防衛施設庁は当該自治体との合意、理解と協力と言っておりますが、この合意のために大変御苦労をされているようであります。  この中で、北海道の矢臼別演習場への移転でありますが、報道ですとか地元の関係者の話を総合しますと、どうもかなり無理な説得を行い、地元の意向をないがしろにしているのではないかと言われております。これもまた非常に残念なことであります。沖縄の問題が今日あるのは、ただひとえに沖縄の住民や自治体をないがしろにし、この五十年間、米軍の基地と不平等な地位協定を沖縄に押しつけてきた結果であることは議論の余地がないと思います。どうも防衛施設庁は南の沖縄の轍を北の北海道で再び踏もうとしているのではないかとの危惧を私は持っているのであります。  そこで、防衛庁に確認を求めておきます。  訓練の本土移転に当たっての地元との協議については、間違っても強引な説得であるとか地元の意向を無視したなどの民主主義をないがしろにするものがあってはいけないと思うのであります。協議に当たっては相互にその立場を尊重し、第二の沖縄を絶対につくらないことが肝要かと思います。明快な御見解をお願いいたします。さらに、地元との合意についてでありますが、関係市町村に加え、当該知事の意向を含めることは当然と思いますが、この点も確認を求めておきたいと思います。
  104. 首藤新悟

    政府委員(首藤新悟君) この件につきましては、先生今お挙げになりました北海道の矢臼別演習場を含めまして、本土の五演習場におきましてこの訓練の分散実施を行いたいというふうに考えているところでございまして、このために私ども、昨年の八月以降、これらの五演習場につきまして、まさに先生今御指摘のとおりに、関係自治体の長でございます知事さんを初めといたしまして市町村長等に御理解と御協力を現在お願いしているというところでございます。この中で、一部自治体からは理解が示されているというところもございますけれども、他方で地元事情が厳しいというところもございます。  いずれにいたしましても、施設庁といたしましては、地元の理解を得ることが最も重要であるというふうに認識しておりまして、引き続き地元関係者に十分説明を行いまして、平成九年度からこの訓練が実施できますように現在全力を挙げて取り組んでいるところでございます。  なお、当然のことではございますが、本訓練の分散実施に係る関係自治体等からの要望事項につきましては私ども誠意を持って対応してまいる所存でございます。
  105. 萱野茂

    ○萱野茂君 政府に対して重ねて強く申し上げておきたいと思います。  昨年十二月のSACOの最終報告では、日米地位協定の運用の改善で「さらに、良き隣人たらんとの米軍の方針の一環として、米軍の部隊.装備品等及び施設に関係する全ての主要な事故につき、日本政府及び適当な地方公共団体の職員に対して適時の通報が確保されるようあらゆる努力が払われる。」として、情報の公開なり事故の通報に対しての米国政府の強い意思が表明されております。  しかし、冒頭申し上げたように、一方で精いっぱい誠意を演出しながら、協議の陰で十二月のフェリー航路への投弾、今回の劣化ウラン砲弾の誤射など、事故をひた隠しに隠し続ける、しかしアメリカの特だね報道で外務省が初めて公表する、このようなことでは、どのような合意があっても国民は基地そのものへの信頼ができないばかりか、ますます不信を募らせるのではないでしょうか。移転に当たっても政府や米軍を信頼できないという不信につながることを申し上げます。まず、信頼の醸成に誠意を持って当たられることを申し上げておきたいと思います。
  106. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 米軍駐留に伴う問題につきましては、米国そして日本政府は、特に地元の関係者を初めといたしまして国民の御理解をちょうだいしていくということが不可欠でございますので、その面では最善の努力をしてまいりたいと存じます。  実は、今回の通報おくれの問題につきましても、委員は、ひた隠しにして、それで米国のメディアに見つかってそれからというふうなことをおっしゃっていましたけれども、そうじゃないのでございます。これはたまたま結果的に時系列的に米国のメディアが先に報道することになりましたのでそういうふうな見方をなさるのかと存じますけれども、我々としましては、文字どおりSACOでも合意いたしました、それぞれの情報を公開し連絡を密にしていこう、そのためのシステムをきちんとつくろうという作業を進めておったと。そういった作業プロセスの中でアメリカ側から、実はこれまでのアメリカの認識では必ずしも日本に連絡しなければならない事柄とは思わなかった、そしてそういうふうな処理をしておったけれども実はこういうものもあるんですよという話が出てきたと。  それで、我々としては、それはやはり連絡、通報の対象に当然しなくちゃいかぬ話じゃないかということで、さてそれは具体的にどういうことなのかということを何度も問いただしたり、あるいは資料を求めたり、そういう作業をしておった一と、こういうことでございまして、これはひた隠しにしようとしたんじゃなくて、むしろ表へ出していく、しかも将来にわたってそういったきちんとした連絡、通報のシステムをつくろうという努力をしておったわけでございます。  ただ、日本もそうでございますけれども、アメリカもメディアはやはりなかなか敏腕でございまして、我々がそういう作業をして、ほぼ、じゃこういうことで御連絡しましょうというプロセスになったところで、どういうルートでございますか、あるメディアがそれを察知して報道してしまったと、こういうことでございますので、どうかそこのところは御信頼賜りたいと思います。  いずれにしても、私ども最善の努力をしてまいります。
  107. 萱野茂

    ○萱野茂君 次に、全く別のことでありますけれども政府の国際人権規約B規約に基づいての国連への報告についてお尋ねをいたします。  かねがね国会の場でも御議論がありましたが、日本に住む我々アイヌ民族がこの規約の二十七条で意味する少数民族であるか否かについての規約上の解釈については今回は触れないことにします。  しかし、いずれにしましても、政府はこの規約の四十条の報告義務に従ってこれまで三回報告をしています。  少し経過を追って申し上げますが、一九八〇年の第一回報告では、この規約に規定する意味での少数民族は我が国に存在しないとしてアイヌ民族の存在そのものへの言及を回避しております。しかし、一九八六年のいわゆる中曽根発言を契機にさまざまな議論を受け、八七年の報告では初めてアイヌの存在に触れ、本条との関係で提起されたアイヌの人々は独自の宗教、言語を保存し、また独自の文化を保持しとして、アイヌが独自の民族であることに言及されております。九一年の第三回の報告では、B規約二十七条との関係で提起されたアイヌの問題について、本条で言う少数民族であるとして差し支えないとして初めてアイヌ民族を少数民族としたのであります。  そこで、昨年の四月一日、官房長官の審議機関でありますウタリ対策あり方に関する有識者懇談会の報告は、政府の審議機関として初めてアイヌ民族を、北海道に限定しながらも、先住していたことは否定できないとし、すなわち先住民族であるとしたのでありますが、今後の国連への報告ではこの有識者懇談会の報告をどのように反映させるのでしょうか。その点、短くお伺いしておきたいと思います。
  108. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 御指摘の報告は、人権規約第四十条に基づきまして五年に一回国連に出す報告でございます。次回が第四回目になるわけでございますが、来月に国連に提出するよう三月をめどとして現在作成中でございます。  そこで、御質問の有識者懇談会に関しましてでございますが、アイヌの人々に関しては、この規約の第二十七条に規定されている権利に関する措置や進歩という関連で、御指摘のウタリ対策あり方に関する有識者懇談会の報告などについて今回の報告書の中で言及しようということを考えております。
  109. 萱野茂

    ○萱野茂君 終わります。
  110. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 きょうはちょっと中国問題をお話ししたいと思ったんですが、高野、田両先生の話を聞いているうちに、予定外の問題ですが、北朝鮮関係、これは今有事に対応するということが盛んに言われておりますけれども、これについて二つの問題があると思います。  一つは、有事を有事にしない、平和裏に事態推移する努力を我々はどこまでやっているか。先ほどの食糧援助の問題もその一つでしょうが、食糧を向こうに送って、おまえたちの困っているのを助けるんだからおれたちの言うことを聞けという気配がちょっとでも向こうに感じられれば、この食糧は死んでしまうわけです。そうじゃなくて、日本の国民は北朝鮮の国民、特に老人とか病人とか女性とか子供らの飢餓あるいは空腹を見ておれない、座視しておれないというので、本当に心からの憂いと真心で向こうに送る。国際的な取り決めがどうあろうと我々はじっとしておれないんだと、そういう気持ちが食糧に込もって向こうに伝わり、向こうの国民が、ああ日本の国民はおれたちのことを心配してくれている、ありがたいうれしいと、こういうことになりませんと食糧は死んでしまうわけですね。  だから、そういうことが一事が万事で、何とか北アジア、東アジアの平和を、相互の親しみあるいは敬意を持ち合う、そういうことで実現しようという姿勢が先行しませんと、有事対応ということは、ややもすると武力によって対応するというふうにウエートが傾きますと、これは非常に悲しい状況と言わざるを得ない。  ただし、そういう危険があれば、それに対してはちゃんと対応しなきゃならぬことは当たり前の話でありますけれども、その場合に、前線で活動するのはアメリカの軍隊で、日本は後方勤務的なことをやる。こういう場合に、どういう事態発生したらアメリカ軍はどういうふうに行動するんだから具体的に日本の側はどういうことを担当すれば目的を達成できる。こういうような具体的なことが、アメリカと日本が対等の統帥関係といいますか作戦関係といいますか、それを十分に打ち合わせた上で、まだほとんど熟していないようでありますけれども、例えば本土の空港とか海港をアメリカ軍が使う場合には、具体的にどういう注文をアメリカがするのか、受ける側はどういうふうに具体的にやるのかというようなことについて、今すぐお返事は要りませんけれども、まず第一は有事を起こさないと。その次は、有事があったら日米対等の協定において日本側が、国民が十分の理解を持って対応できるようなやり方。どうも心配なんですね、先ほどの萱野委員お話を聞いておりましても。だから、それに万全の配慮をしていただきたいというのが私の願いであります。  時間がありませんけれども、いつもながら中国の問題でありますが、中国が将来アメリカと二超大国としてややもすると国際的に対立する勢力となりかねない。むしろその可能性が非常に大きいということになれば、やはり先ほどの論理と同じでありますけれども、この二大勢力が対立しない、そういう国際関係日本努力によって醸成できないか。これはかなり長期の歴史展望の上に立って、先ほどお話ありましたが、的確な情報をキャッチするということの上でなされなきゃならぬと思います。  例えば、核戦力の問題でも、今アメリカが圧倒的に中国をリードした形でしょうけれども中国がアメリカと少なくとも対等の核戦力を持とうと必死になっていることは間違いないと思います。アメリカあるいはフランスあたりが持っているような、核実験をしなくても核兵器はどんどん進歩する、こういうノウハウはまだ恐らく中国は持っておりませんけれども、しかし場合によってはロシアから入手できないとは言えない。そういうようなことを考えに入れて、今のままで推移すれば超二大勢力は核兵器を持って対立する、こういう可能性は十分にあると思うんですね。これが一つです。  それから、そのほか、我々はややもすると現在の中国を見て価値観が違うと、だからアメリカとは我々は価値観を同じぐするが中国とはできないというような感じを持つ人が若干おるようです。私はこれはやはり歴史の展望において十分熟した掘り下げが必要だと。  例えば、鄧小平大先輩はお亡くなりになったわけでありますけれども、近い将来に中国政治指導力を握る可能性のある年配、つまり四十歳から五十歳ぐらいまでの人たちがだんだんと政治勢力の中心に立ちつつある、こういう情報があります。しかも、これらの人たちは欧米的な、圧倒的にアメリカ的な教養を身につけているということになりますと、これは価値観が共通化する一つの重大な要因だと思います。あるいはまた、経済成長が進んで一人当たりGNPが二千ドル以上になれば、そこに中産階級的な階層がだんだんと力を持ってくる。国民全体の教養も高くなる。  そういう意味で、最も歴史の基本的な線において、民主主義の成長する基盤がほとんど必然的に熟成するというようなことを考えますと、アメリカと中国はだんだんと価値観を同じくするということは、中国が価値観においてアメリカナイズされるというのではなくて、人類の世界というものはそもそもそういうものだと。  こういう理解に立って、長期展望に立って、大臣は今後相当長い期間日本をリードするでしょうから、そういう長い視野に立って中国とアメリカは平和裏に提携し得る本質を持っているんだという確信を持つのか持たないかで日本の国際政治に対する態度、特に東アジアに対する態度はかなり違ったものになり得ると思うんですね。  それで、私は何回も申し上げましたけれども、先ほどの北朝鮮に対する愛情なり憂いなりと同じような心を持ってアメリカに対し中国に対し、本当に両国が力を合わせて世界の平和をリードしてくれと。アメリカは現状においてはすべての国から敬愛されていない。ややもすると腕力を使い過ぎるというようなことも、非難よりもむしろ親愛と憂いを持って日本がアメリカを説得し、それに対応する中国もそういう心を持って対応してくれないかということで、願うところは今後三十年ぐらいはお互いに武力発動しない、お互いに不可侵条約を結んで、その間にお互いの安心の上に世界平和に協力するというようなことができれば、これは単なる空論じゃなくて歴史の進展の必然的な方向においてかなり国際的に発現する可能性があるんではないかと。  時間が参りました。これで終わります。お返事はこの次でも結構です。
  111. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、劣化ウランの問題については数少なくない方が質問されましたし、もう大臣も何回も答弁なさっておられるんで、この問題について専門的な点で大臣にお尋ねしょうというのはもう時間がきょうはありません。それで、現実の、今のこの劣化ウラン弾についての大臣の率直な御認識をまず最初にお伺いしたい。  ちょっと述べます。つまり、御承知のように、日本で出している原子炉等規制法についてもあるいはNPTの日本との保障措置協定についても、この劣化ウランは核燃料物資の一つとして規制の対象になりているということはもう大臣は十分御承知のとおりだと思うんです。  それで、先日、アメリカの国防総省が出しておるある軍の文書を読んでみますと、そこにはニュークリアウエポンとラジオロジカルウエポン、つまり核兵器といわゆる放射性物質を含む兵器というふうに区別して書いてある表示もありました。この問題について専門的にきょうどうこうしようというつもりはございません。  それで、ケンタッキー州にある米軍基地の第五特殊部隊核化学生物兵器分遣隊のパット・ポールセンという司令官の話によりますと、劣化ウランのちりその他の汚染による主要な長期的危険は土壌と水質の汚染である、こういうような地域では給食、シャワー、野営は行わないように注意せよというふうな指摘まで出されておりますし、アメリカでは四つの実験場においては信頼性のテストが行われ、そこには例外なく病院や医療施設網が設置されていると。さらに、イギリスの原子力局、BAEAが出している文献を見ますと、湾岸戦争のときに使われた劣化ウラン弾というのは理論的には五十万人の人間を殺すのに十分な量が使われたというふうな表示もありました。  これについて私は一つ一つ論証を挙げてどうこうするつもりはございません。こういう点で、先ほど同僚議員もこの劣化ウラン弾というものがどういう危険性を持っているかというお話もあったので、そういうことを総合されて、この劣化ウラン弾についての現在の率直な大臣の御認識を最初にお尋ねしておきたいと思うんです。
  112. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず最初に、原子炉規制法等におきまして劣化ウランが核燃料物質に特定されているという点については、私もそのようにそこはよく認識しております。ただ、一方において、しからば核兵器かということになりますと、それはそうではない。  御承知のとおり、核兵器というのは核爆発あるいは核融合というものによって核エネルギーを使っているものでございます。そうではない。したがって、むしろこういった規制法の中で核燃料物質になっているのは、この劣化ウランそのものがその状態で非常に危険が高いとは言えないけれども、高度の技術的な処理、中性子をぶつければ劣化ウランはまた核燃料として使えるような状態になる、そういうことに着目していろいろな万全の管理をしていこう、規制をしていこう、そういう趣旨である、こう認識しております。  それから、この危険性でございますけれども、英国の研究所の湾岸戦争についてのコメント等々でございますけれども、私の認識は、劣化ウランそのものによって、放射能としてあるいは重金属である特性からして、すぐに大きな危険が人体なり環境なりに発生するとは言い切れないと思います。しかしながら、これが体内に吸入されたり、大量に、かなりの量が入ればいろんな健康を阻害する要因になり得るということは既に明らかにされていることも承知をしております。  しかしながら、これがしからば今回の鳥島の場所で、誤ってではございますけれども、訓練に使用されたと。そうしたら、そのことがすぐに環境破壊にあるいは人体に対する危険に結びつくかという点については、これはそもそも今一般人が立ち入りのできない地域でございますから、そういった観点からも当面はすぐにはないわけでございますが、それだけでなくて、立ち入りが可能だとしてもすぐにそういった人体に危険が来るということはこれまでのいろんな知見では明らかにされていないということで、しかしながら、私どもはだからいいとは申しておりません。米側での一応の調査に基づく説明では、そういう危険はないという説明を受けておりますけれども、さらなる調査を米側に求め、米側はそれをやろうとしている。だから、我が方、日本といたしましても、沖縄県の御協力も得ながら、来週にも周辺の海域の調査などを進めようと、こう考えている次第でございます。
  113. 立木洋

    ○立木洋君 大臣の御認識としては、ある場合には非常に危険性を持っておる兵器であるということもお考えになっておられると。なぜこのことを聞いたかといいますと、先日の新聞で、私、名前は申しませんけれども、ある閣僚級の方が、劣化ウラン弾の問題についてこれほど大騒ぎするようなものではないというふうなことが新聞の報道に載っていたんですよ。私は名前は申し上げません。大臣は御承知かもしれません。そういうことがあったものですから大臣にまず最初に御認識をお伺いしたわけです。  あとは、折田局長、済みませんが幾つかの事実関係についてだけ確認をしてまいりたいと思うので、イエスかノーかで結構です。説明を詳しくやりますと、もう時間がございませんので、そういう意味でのちょっと質問をさせていただきたいと思うんです。  米側に照合しますと、岩国の基地と嘉手納の基地には劣化ウラン弾を貯蔵しているということをアメリカ側は確認をいたしました。これは私たちが確認したんです。確認しました。それからもう一つは、横須賀においては劣化ウラン弾を使用することの可能な艦船がいわゆる母港として駐留しているということも聞きました。これらの問題については、だから横須賀に劣化ウラン弾が必ずあるというふうに私は申し上げるつもりはありません。  だけど、御承知のように、日本には三沢に弾薬庫があります。それから御承知のように横須賀の浦郷もあります。それから広島、大臣のところに三つの米軍の弾薬庫があるということは、秋月、川上、広、これは御承知だと思います。あるいは、最も重要なところとしては佐世保に補給基地があります、弾薬庫も。あるいは辺野古もあります、沖縄には。こういうところにいわゆる劣化ウラン弾がある可能性があるんではないかというちょっと懸念があるんですけれども、そのことについて何か正確な御認識があればお聞かせいただきたい。
  114. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私ども認識は、日本の一部の区域・施設に劣化ウラン弾が保管されている、そういう認識でございます。ただ、それが特定のどこであるかということは承知しておりません。  また、そういった保管されているものにつきましてはきちんとした厳正な管理が行われるように従来も努めておりましたけれども、しかし今回のような誤使用という事実があったわけでございますので、さらなる厳正な管理について米側も努力をしておる、このように認識しております。
  115. 立木洋

    ○立木洋君 だから、すべての弾薬庫には劣化ウラン弾はないというふうに否定されなかったということだけ私は記憶にとどめておきたいと思います。  それから、次にお聞きしたいのは誤爆ですね、誤射したというこの理由の問題なんですが、先日、外務省の方にお尋ねをしました。そうしたら、結局劣化ウラン弾の表示の問題についてはアメリカにある四カ所の訓練場で使うことになっている弾薬であるということまでは明記してあると。ところがそのあと、これらの訓練場以外の訓練で使ってはならないということが明記されていなかったということのために誤射が生じたんではないだろうかという趣旨の説明を外務省の方からいただきました。  そうすると、今までアメリカの四カ所の訓練場で使うことになっている弾薬であるということまで書いて、それ以外のところでは訓練で使ってはならないということが書いていなかったと、これまでずっと。そうしたら、九五年の十二月に行われる以前にも鳥島で誤射があったんではないか、あるいはそのほかのいわゆる射爆場、つまり射撃の訓練場で誤射が行われた危険性があったんではないかというどうも懸念が残るわけですが、それ以前は誤射が完全になかったというふうに断定できるのかどうか。大臣、結構ですよ、もう。
  116. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今御指摘の二点でございますけれども、その表示の仕方が不十分であったためにこういった誤使用という問題が起きたんだというふうな説明を受けております。第一点でございます。  それから第二点につきましては、ほかに同じような誤使用があったんではないかという点ですが、米側におきましても過去のいろいろな記録、出入りの記録その他をずっと調べ直しまして、その結果、本件以外には誤使用はなかった、こういうふうな説明を私ども受けております。
  117. 立木洋

    ○立木洋君 つまり、この点について岩国基地の司令官であるロバート・S・メルトン大佐は、この事故を知った後に米側は訓練では使わないということを決めたと、こう述べているわけです。この事故を知った後に日本周辺での訓練では使わないということを決めたと。そうすると、この事故を知る以前には日本の周辺地域の訓練場では使ったんではないかというこれまた疑念がわくんですけれども、今の断定は間違いないでしょうか。
  118. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、米側の内規、内部の規則では、訓練は米国本土にある特定の訓練場、そこにおいてのみ行うものである、こういうことに決まっておるわけでございます。これは従来からそうであったわけでございます。ただ、そこの表示の仕方が必ずしも十分ではなかった。それで誤解を招く可能性があった。それで現実にそこは十分な認識のないままに誤使用があったわけでございますね。そういったことであったわけでございます。それで、先ほど申しましたように、過去にさかのぼって記録をチェックした上で他に誤使用がなかったということを米側から説明を受けております。  したがって、今回の事件があって新たに日本における訓練では使わないということを決めたのではなくて、従来から米側では米国の特定の訓練場以外では訓練には使わないと、こういうことであった。それを今回改めて確認し、周知徹底を図った、こういうことでございます。
  119. 立木洋

    ○立木洋君 以前にあったという事実が発見されないように、大臣に一言だけ申し上げておきたいと思います。  それからもう一つは、それでは今回訂正したというのはどういうふうに、いわゆる誤射が発生しないというふうに何をどのように訂正したのか、文章上はどうなっているのか、その訂正した箇所を正確にちょっとお知らせいただきたいんです。
  120. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 今、大臣の御説明がありましたけれども、米軍は、実際に火器に砲弾を装てんする場合には、爆弾そのもののラベルと、それから爆弾のカタログというのがあります。それを照合して、爆弾カタログに禁止事項の記載がないかどうかを確認した上でこれを使用することになっております。  今回の場合、これは劣化ウラン弾で、これは本来使用が許されないものであったわけですが、現場でやっている者がこれが禁止されているものだと気がつかなかったということで装てんしてしまったということなわけです。そこで、本件砲弾は日本の施設・区域において訓練では使用できないのであるということを爆弾のカタログ自身に記載したと、そういうことでございます。
  121. 立木洋

    ○立木洋君 それでは次に、米側の説明の概要をいただきました。この概要の中には、米国政府日本政府に対して、本件事件に係る詳細な情報及び環境調査の報告を提供したということにして、そして米国側の原子力規制委員会、NRCが改善を要するレベルとして決定している値の十分の一よりも結局測定した数値は少なかった、こういう報告書をいただきました。それで、この詳細な情報及び環境調査報告を提供したという文書を提供していただけるならば提供していただきたい。これが一点です。  それから、今お尋ねしたいことは、アメリカ側は土壌の放射能はいわゆるNRC規制値の十分の一程度で問題はないというふうに述べられておりますけれども、それでは大気中のエアゾールを採取して放射能を測定しているはずだと私思うんです。この大気中のエアゾールを採取して測定したのは何月何日のものなのか、そしてその数値が幾らなのか、詳細に報告があるはずですから、お答えいただきたい。
  122. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) まず、報告書でございますが、アームストロング研究所、これは軍に属する研究所でございますが、そこの研究所が沖縄の司令部に出した報告書というのが二つございます。これは両方合わせますと全部で五十ページぐらい、非常に詳細に書いてあるものでございます。  その文書自体は御要望に応じてお出ししたいと思いますし、それから沖縄県側にはこれはお渡ししてございます。ただ、国会などの御議論でこれを翻訳して出せという御要望があるんですが、専門的なものですので、ちょっと私どもの手になかなか負えないような訳がございます。  それから、土壌サンプルについては百以上の土壌のサンプルを無作為に採取いたしましてガンマ線の分析をやってございまして、そこの数字も事細かににその報告書には出ておりますけれども、最大で一グラム当たり三ピコキュリーであったと
  123. 立木洋

    ○立木洋君 土壌ですね。
  124. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) そうでございます。
  125. 立木洋

    ○立木洋君 大気中のエアゾールは。
  126. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 大気中のエアゾールについてはそれほど詳しくは書いてございませんけれども、たしか八人ぐらいだと思いますけれども、島に八人から成る専門家のチームが何回かにわたって入ったわけですが、その際に呼吸域の空気試料が採取されて、結果は空気試料が劣化ウランに汚染された土壌またはちりにさらされた形跡がないことを示していたということでございます。人間自身がそこに入ってやっておるわけでございます。
  127. 立木洋

    ○立木洋君 つまり、調査をした時期によって数値は違うと思うんですよ。時日は一年間経過しているわけですね。では、いつ採取したのかという問題になるわけですし、それからこの問題については人または環境に対する危険はなかったという結論を出しているならば、いつの時期に大気中のエアゾールがどうだったのか、どういうふうに推移したのか、そういう詳細なデータがあって初めてアメリカ側の結論が正当かどうかということが判断できるはずです。そういう数値が出されなくて、結局うのみにして問題がないという結論を出されることでは私はないだろうと思うんです、大臣が先ほど日本側としても調査をしたいというふうにおっしゃっているわけですから。その点はやっぱり完全を期すように私は努力していただきたいということをあえて申し上げたいんです。  それについては科技庁の方に私はお尋ねしました。いまだに米側の調査結果については断片的にしかデータが示されておらず、詳細な状況が不明であるために科技庁としての安全を判断できないと。科技庁のどなたが言われたかは私は申し上げません。そういう返事を科技庁からいただいておるということもあわせて申し述べておきたいと思います。  それから、劣化ウランについてはスターズ・アンド・ストライプス、「星条旗」のことしの二月十二日号によりますと、軍は一九八〇年代から劣化ウラン弾をタングステン弾にかえ製造している。つまり、この劣化ウラン弾を旧式のものとして廃棄していく方向というのが考えられている。それから、劣化ウラン弾についての見直しという問題も今軍内部では問題にされてきているというふうな報道もされております。  アメリカでは、オハイオ州あるいはオクラホマ州では劣化ウランの汚染を引き起こした武器工場が住民の厳しい抗議によって工場は閉鎖しました。そのほか、ネバダ州だとかミシガン州だとかノースカロライナ州というところではこれに関係するところがあって住民の大変な運動が起こっています。こういうふうな状況があるわけですから、私は特にこの点を強くお願いしておきたいと思うんです。  それで、この問題については、河村さん、次の機会にあなたにはまたゆっくり質問させていただきますので、きょうはちょっとそこに座っていただくだけで勘弁していただきたいんです。  これは大臣承知だろうと思いますけれども、国連総会では、先ほど私が申し上げました放射性物質を含む兵器の問題については、一九八一年十二月九日の総会決議三六/八九、ここでは禁止決議が行われています。それから、一九八二年十二月の国連総会の決議においても同じような禁止決議が採択されております。一九九〇年の総会でも放射性物質を含む兵器の禁止がこれまた決議をされております。もちろん、ここには劣化性ウランという表現はございません。劣化性ウランという表現はありませんけれども、いわゆる放射性物質を含む兵器という形で禁止決議がなされておるということを申し上げておきたいと思うんです。  それから、御承知のように、去年の八月、ジュネーブの国連人権委員会の小委員会では、この中には幾つもの問題が大分掲載されていますが、その中の一つに劣化ウランを含む武器の禁止ということも掲載をされております。  こういう問題等がありますので、国際的に大きな問題になり、アメリカの国内でも大きな問題になってきている状況がございますから、日本にあるそういう危険性のある物質についてはやっぱり撤去すべきだし、先ほど同僚議員も申し述べましたように、国連でも取り上げられてきておる状況があるわけですから、この問題についてはひとつ真剣に御検討していただきたい。そして、禁止をするなり、こういう危険な武器については、やはり無益な人体に対する殺傷あるいは苦痛を与えるような武器は禁止しなければならないということが国連のかつての、千九百八十何年でしたかの宣言等からずっとなされてきておりますから、そういうこともあわせてぜひ御検討いただきたい。  きょうは、核兵器そのものではありませんけれども、劣化ウラン弾が問題になっておりますので、この点について最後に私の強い要望を申し述べて、質問を終わらせていただきます。
  128. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 答えさせていただけますか。
  129. 立木洋

    ○立木洋君 どうぞ、結構ですよ。
  130. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、いつの時点で調べたんだというお話がございました。  しかし、肝心なことは、鳥島であれどこであれ、日本では訓練に使ってはいけないわけでございますね。まず、将来に向かってこれを絶対使わない、このことがあり得べき危険の可能性を排除するということで肝心なんだと思います。これを一つ確保してまいりたいと思います。  それから、誤ってではございますが、既に使ってしまったものが危険かどうかという点につきましては、やはり調査した時点で危険があったかどうかというのは一つのポイントだと思います。  それからまた、これからやるときには現在危険があるかどうか、これを見ていくことが肝心だと思うのでございます。過去にさかのぼってどうだったかというのは、これは放射能のことでございますから、どんどん減少していきますし、調べようもございませんし、それは幸いにしてと言うべきでしょうか、少なくとも鳥島で誤使用されたことによって人体なりなんなりに大きな危害が発生したということはございませんでしたから、だからそれはそれでいいんじゃないかと。これから将来に向かってのことだと思います。  それから、第二点でございますけれども、国連のいろいろな総会決議等々のお話がございましたけれども、私どもはこれは劣化ウラン弾を対象に含んでいるものとは認識しておりません。  それからまた、米軍で将来見直しの可能性があるかどうかという点でございますけれども、少なくとも現時点において米軍は装備の一部としてこの劣化ウラン弾を保有しておるということでございますし、そうしてまた、訓練は米本土内の特定な場所でしか行いませんけれども、あり得べき緊急事態に対処する場合にはその使用の可能性も排除しない、こういうことでございますので、私どもはそういったことで対応してまいりたい、こう考える次第でございます。
  131. 立木洋

    ○立木洋君 全く納得できませんけれども、機会は次に譲ります。
  132. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 どうもお疲れさまと言いたいんですけれども、なかなか意気盛んなようですから、私に対してはお手やわらかにお願いしたいと思います。  私は、今問題になっておるペルー日本大使公邸占拠事件に関連して、外務省及び現地大使館の危機管理体制あり方ということについてちょっとお尋ねしたいと思います。簡単に言いますれば、今回の事件はどうして起きたのか、その原因がどこにあるのか、責任の所在はどうなのか、こういうことであります。  現在進行形の事件につきまして、原因がどうだとか責任の所在とかいうことは、日本人はこういう議論の仕方は余り好きじゃない。すべては問題が解決して人質が無事救出されてからいたしましょうというような感じになりかねないわけで、現にマスコミも余りこういう点を取り上げていないわけですけれども、問題が問題で極めて重大だと思いますので、あえて取り上げさせていただきたいと思います。  先ほど同僚議員との質疑の中で、ペルーは極めて治安上危険な国だということで、どうもかねてから意見が一致しているようであります。私もそのとおりだと思います。  ある治安関係者は、ペルーのテロ対策というのはもう単なる犯罪対策ではなくて戦争なんですよということを言っておりました。そのとおりだと思います。軍隊が出動する、ゲリラ側もあらゆる武器を持ち出してくる。バズーカ砲に始まって、地雷だ、いや小型ミサイルだ、機関銃だと。まさしく戦争だろうと思います。  かつて、極左グループ、テロリストグループというのは、イタリアの赤い旅団というのが大変著名でありましたけれども、それから西ドイツでもいろいろと頑張っておりましたが、あれはもう雲散霧消してしまいまして、今残っておるのは不思議なことにこのペルー一国だと言ってもいいぐらいで、マルクス・レーニン主義を標榜して頑張っておる。そういう現状にありまして、八〇年代にはペルーの発表によると一万数千人がテロの犠牲者になっておると。これも公表数字であって、実際は三万人だ、いや五万人だと、それだけの犠牲者が出ておると。  ゲリラのターゲットには日本も含まれておりまして、御案内のとおり東京銀行とか日産自動車とかが襲われておりますし、大使館周辺でも爆弾事件があった。それから、最も著名なのはJICAの農業技術者三名が射殺されたという事件がありまして、最近はやや落ちついてきたのかというふうにも見れますけれども、必ずしもそうではないのではないか。  現に私は、週刊誌を取り上げて大変恐縮ですけれども、ことしの一月あたりの週刊新潮を見てちょっと愕然としたんですけれども、去年の十二月十六日付で週刊新潮の編集部あてに青木大使から年賀状が来たと。十六日といいますと事件発生の一日前なんですね。その年賀状の中身が、ペルーの状態に触れまして、ペルーの失業と貧困はもう最悪だ、フジモリ大統領も限界に来ている、将来に希望はなく人々の忍耐も切れかかっておると。これまさか週刊新潮がうそを書いたわけじゃないと思います。こういう年賀状は恐らく皆さん方にも来ておるんじゃないか、外務省の幹部の方々も見ておられるんじゃないかと思います。要するに、青木大使自身も大変危険な状態にあるということを認識しておられて、これからは私の疑問なんですけれども、なぜあれだけの大規模なパーティーを夜やったのか、こういうことなんです。  青木大使の前任者の西崎さんという方ですか、私はテレビでちょっと同席した際に彼がはっきり申しておりました。前回までは昼、なるべく小規模なことをやっておったのですが、どうして夜やったんでしょうか、私にもわかりませんと、こういうことを言っておりました。  昼というのは気分的にも安心なんですね。せいぜいやってくるのはこそ泥とか空き巣ぐらいでありまして、こんなものは一喝すればみんな逃げていく。ところが、夜になりますと、昔から言葉にあるとおり、夜陰に乗ずるとか暗い夜道とか、ああいう言葉で大変危険な状態がある。人々も警戒するし、また強盗団も夜跳梁ばっこをする、こういうことになるんだろうと思います。そういうことを知っておって、ペルー国内の著名な人たち、数百人ともいいますし、二千人ともいいますし、千二百名ともいいますが、どうも数字ははっきりしないんですけれども、いずれ一人一人がすべてこれ人質候補者と言っていいような枢要な地位にある人たちを集めまして夜ああいうお祭り騒ぎをやらかした。  ああいうことになりますと、夜の警備なんというのはまず不可能だと考えていいと思うんですよ。狭いところに大勢集まってお祭り騒ぎをしている。実際にやみに乗じましてゲリラたちはボーイとかウエイターに化けて武器を運び込んできたんだというふうにも報道されておりますし、多分そうだろうと思います。警備する方も夜なら仕方がないということで大分手抜かりもあったんでしょう。  そこで、問題は、青木大使の方から外務省あてに、今回の天皇誕生日はこういうスケールでこれこれの人をお呼びしまして時刻は何時ごろから始めたいと思いますと報告が来ておるんだろうと思います。それに対して外務省はどういう回答を出したのか。どうぞおやりください、多分安全なんでしょうという回答を出されたのか、いやいや大変危険であるからして十分注意するように、できたら夜は避けるようにと、こういう訓令を出されたのか、その辺のところをちょっとお願いいたしたいと思います。
  133. 川島裕

    政府委員(川島裕君) 警備が非常に重要と申しますか、治安の悪い公館においてこの種の催し物のときにどうするかというマニュアルは出しておりますが、具体的に、昨年十二月十七日ですけれども、天皇誕生日をこういうふうにやるからというような個々の行事については、これは現地の大使館が一番その治安について判断し得る立場にあるという前提に立ちまして、本省の指示を仰ぐという体制にはなっておりません。
  134. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 少しくおかしいと思いますよ。ペルーというのは世界でも一番危険な国だと、こう考えてもいいと思うんですよ。その中の日本大使館というのはまた危険な国の中の危険な場所の一つだろうと、こう思います。そこでやる際に、現地大使館の方から具体的な訓令を仰いでこなかったという場合には、外務省の方から、ことしは一体どういうやり方をするんだ、くれぐれも注意してやってほしいぞ、特に夜は避けなさいよ、人数もできるだけ絞ってというぐらいの注意をするのは当たり前のことじゃないでしょうか、これ。率直に言うと、そのために月給をもらっていると言ってもいいような人たちが何人かおるんでしょうから。そういう注意はなぜしなかったんでしょうか。
  135. 川島裕

    政府委員(川島裕君) 治安についてまさにどういう判断をすべきであったかということは、今後の再発防止という観点、あるいは大変重大に受けとめるべきであると私ども考えております。  関係者が依然人質になっておりますものですから、それが終わってからきちんと実は調査委員会をつくってやろうと思っておりますが、ただ治安についての判断ということからいえば、私どもの印象では、恐らく現地ペルーの治安担当者自身の評価というものがやはり相当治安情勢が好転してまあ大丈夫だという雰囲気があったというふうに思われます。  それで、今の開催のやり方でございますけれども、とれは昼か夜かというのは確かにおっしゃるとおりでございます。昼の方がそれは後から考えれば安全だったのかもしれませんが、例えば九六年、昨年にこのようなナショナルデーを開催した各国ございまして、昼に開催した主要国はカナダ、ドイツで、夜は日本に加えまして例えば米、英、仏、伊、メキシコ、アルゼンチン等がいずれも夜やっております。  それから、人数につきましても、むしろ日本より多い人数を招待している国も相当ございまして、必ずしも日本だけが突出してこういうことをやったということでないことは御理解いただきたいと思います。
  136. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 私は、なぜ本省の方から念には念を入れて、大丈夫なんでしょうかねという指示をしなかったのかということを聞いておるのであって、現地大使の判断が間違っていたことは明らかですからね。  それから、ほかの国の例を出されましたけれども、それも私最初に断りましたが、危険な国での危険な場所、一番危険な場所が日本大使館だと、こう言ってもいいくらいだと思うんです。そこでああいうお祭り騒ぎをやることの率直に言いますとばからしさ、そういうことになぜお気づきにならなかったんだろうかなと、こういう気がしてしようがないわけです。  それから、大変不思議なんですけれども、アメリカ大使、フランス大使、イギリス大使は人質になっていないんですね。あの人たちは逃げたのか来なかったのか、どちらなんでしょうか、ちょっと教えてください。
  137. 川島裕

    政府委員(川島裕君) 事実関係を把握しておりません。いなかったことは事実でございます。  ただ、アメリカは出席して帰ったということでございますけれども、あとについては事実関係を把握してございません。
  138. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 肝心かなめのフジモリ大統領はどういうことで来なかったんでしょうか、ちょっと外交儀礼上考えられないんですけれども。普通ならちょっとでも顔を出して、はいと言って帰っていくわけですけれども、なぜ来られなかったのか。多分危ないと思ったんじゃないでしょうか、彼は彼なりに。どうでしょうか、その点は。池田さん、大臣は行かれてフジモリさんから聞かれなかったですか、そういう大事なことは。
  139. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 推測で物を言うのは適切ではないかもしれませんけれども、一般の慣行から申しますと、こういったナショナルデーの行事に一国の元首が出席されるということはむしろ例外に属するんじゃないかと存じます。また、日本において開かれました場合、元首とかなんとかじゃないですが、例えば首相がどうするか、あるいは外務大臣がどうするかということでございますけれども、私も原則として出席しない、そういうふうにしております。  そういった意味では、ペルーの場合、少なくとも外務大臣初め複数の閣僚方が来られたということはむしろ異例の方に属するんじゃないかと存じます。したがって、フジモリ大統領出席されなかったということが何か特別な意味があるというふうには言えないんじゃないかと存じます。
  140. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 一般的に元首が来ないというのはよくわかりますけれども日本国とペルーとの関係、特にフジモリさんがああいう方だということから見ますると、来なかったのは私は大変不思議だなと思っておりまして、その点の事実関係はぜひとも確認していただきたいな、こういう気がしてしようがないんですよ。それは後の問題にいたします。  それから、これは今月号の文芸春秋、また雑誌を持ち出すようで恐縮でありますけれどもMRTAヨーロッパ代表という者があるジャーナリストのインタビューに答えておるわけです。ああいう状況下で仮に襲わなければこんなばかはいない、だれでもが襲うだろう、そういう大見えを切っておりまして、特にペルーというのは最貧国、貧しい国だと、そういう中で何百万ドルも使ってああいうパーティーをやることはとても耐えられないんだということを言っておりました。どこまで本当かどうかわかりません。  それから、事件直後に朝日新聞に投書が出ておりまして、これもごらんになられたと思いますけれども、同じような投書でありまして、さる御婦人の方で、ペルーというのは大変貧しい国だ、そういうところでああいう大がかりなパーティーをやるのは一体どういうものなんだろうか、天皇陛下もお喜びになられないんじゃないだろうか、もし耳に入っておれば、おやめなさい、特にペルーの場合特殊な事情もありまするからそうおっしゃられたのじゃないだろうかという投書が出ておりまして、なるほど一面では正しい、そうかなという気もいたしました。  来年もまた再来年もナショナルデー、同じようなことが行われるのでありましょうけれども、やはり日本は今大変な借金国、何百兆円という借金を抱えて、我々は金持ちだと言って威張っておれないような状況下ですから、そういうところでのああいうナショナルデーのやり方についても外務省としてよくよく考えていただければと、こういう思いがいたします。いかがでしょうか。
  141. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 新聞、雑誌等の報道については、一々信感性なりなんなりについてコメントするのは必ずしも適切ではないと存じますけれども、一点申し上げますならば、MRTA欧州代表と称する人物でございますが、いろんな機会にいろんな発言をしておりますけれども、必ずしもその事態なり事実なりを正確に把握しているか、掌握しているかどうか頭をかしげさせるケースが少なくないということだけは申し上げたいと存じます。  それから、我々といたしましても、結果としてこのような事件が起きたわけでございますから、今後将来に向かって当然このような行事のあり方については細心の注意を持って臨まなくちゃならないと思いますし、そのあり方についてもう既に洗い直しもしているところでございます。  ただ、一つだけ御理解をちょうだいいたしたいと思いますのは、やはり外交活動を展開していく上におきまして、その国のいろいろな分野の方々にいろんな形で接触を持つということは非常に重要でございます。それで、また各国ともいわゆるナショナルデーと目されるような日につきましてはこのような公邸での催しをするというのがもうずっと昔からの慣行でございますし、またそれだけの役割も果たしていたと思いますので、我々はそのことも大切にしながら、一方において今回の事件の反省に立って安全面のさらなる配慮をしながら臨んでまいりたいと存ずる次第でございます。
  142. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 もう一つの疑問ですけれどもペルーのような危険な国にある在外公館について専門の情報官が一体いたんだろうか、いなかったんだろうか。何か警察庁出身の警備担当者というのは一人か二人いたようですけれども、これはしょせんはガードマンでありまして、本当の意味での情報官ではないわけです。専門の情報官があれば、ペルー当局の情報機関と密接な連絡をとってペルー国内の情報の収集に努める、あるいはアメリカのCIAと連絡をとるとか、そういう意味でいろんな情報を集めてくるとか、それを根拠にいたしまして今回は開催は見合わせるとか、あるいは昼やった方がよろしいかと思うとか、人数を絞ったらどうでしょうか、そういう進言は専門的見地から幾らでもできるわけであります。  私はちょっと情報機関に在籍したことがあるわけでありまして、日本の外務省、日本人はすべてそうなんですけれども、スパイ的な役割はどうも好まない。我々は平和な国だからスパイなんかは要らないんだという発想がありまして、在外公館に出向している情報官というものはほとんどいないわけです。  しかし、これからはこういうことでいいんだろうか。今も挙げましたけれどもペルー大使館などにはやはり専門の情報官がおって、ペルー国内の情報をつぶさに集めて分析してそれを上司に上げていく、こういうことがあっていいんじゃないか。今現在ロシアが一体どういうことになるのか、あるいは東ヨーロッパで大変な混乱が起きているとか、我々は新聞で見る程度でありまして、大変だなと思っておる。外務省は外務省で独自な情報を集めておるのかもしれませんけれども、やはり専門の情報官の養成ということを考えられたらどうだろうか。  今回のペルー大使公邸占拠事件にかんがみまして、特にそういう情報官、情報組織の育成ということにつきましては痛感いたすわけであります。最後にこの点について大臣の御所見を例えればと思います。
  143. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今回の事件の反省も踏まえまして、今御指摘のような情報能力の充実ということについてはいろいろ考えてまいりたいと存じます。  ただ、今回のケースで申しますと、ペルー情報関係あるいは治安取り締まりの関係の責任ある立場にある方が大勢御出席になっておられたということでございまして、ペルー政府のそういった機関と連絡が不足したがゆえに対応が間違ったとは必ずしも言えない面があろうかと存じます。
  144. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 ちょっとお言葉を返すようですけれども、しょせんは南米の情報機関なんですよ、あれは。当然だと思いますよ、ああいうのんびりした、あれじゃいけないということを私言おうとしているわけですから、どうか誤解のないように。  終わります。
  145. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 北朝鮮への援助について伺おうと思っておりましたが、先ほど高野委員その他から非常に詳しい質問があって、もう余りつけ加えることがないので、非常に素朴な感じをちょっと申し上げたいと思うわけです。  またWFPから援助しようということで、アメリカも韓国も出そうということを決めたということのようですが、日本もつき合わなきゃいかぬのかという話ですね。しかし、考えてみると三年がかりなわけでしょう。人道という言葉があって、これはもう緊急なんだと、とにかく飢え死にしている人たちが現にいるんだからというような話で緊急と言われた。それから収穫がうまくいかなかった、これは特殊、例外的なことなんだからというようなことでやってきたわけですね。  しかし、それが三年も続いて、また緊急、例外、特殊、こういうことになると、何となしに我が国の特例公債みたいな話で、これは構造的な問題なんじゃないかという気がするわけなんです。一般国民から見て、素朴に考えまして本当にわからない。みんな飢えておる、少ししが食べられないのでおなかがすいていると言うけれども、どうも大変にタフな外交をやるような外交官なんというのは実にちゃんと物を食っているような顔をして出てくるし、あるいは我々のホープである田村選手を投げ飛ばすというような人は決しておなかがすいているとも思えない。こういうことを全部あれして、これをほっておくと五万人飢え死にだとかという話というのは本当にわからない話なんです。  それと、三年たつんですか、指導者が交代してから。その間でまた調べてみると、その前からもそのようですが、あの人は一言も公衆の面前で演説したことはない。何を考えているかわからないという人に誕生日になると全国民が大騒ぎをしてお祝いをするとか花をささげるとか、花をつくれるんだったら食い物をつくったらどうだというようなことを言う人もおります。  わからないんですが、あそこで非常に食べ物が足りないという話が出てきたのは指導者が交代してからの話で、その前には、金日成さんの時代には日本に米くれというような話は一切なかったですな。その前は一体どうなっていたんでしょうね。ちゃんと食糧をつくっていたのか、あるいはよそからもらってきて構造的には依然としてそういうことであったのか、そこらあたりおわかりになりますか。
  146. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私ども北朝鮮の事情についてはよくわからないということが非常に多うございます。しかし、いずれにいたしましても、委員今素朴な疑問というふうにおっしゃいましたけれども、おっしゃるような点は確かに私どももたとえ人道的な観点からといえども支援を開始するとするならば承知しておきたい点でございます。  特に、おっしゃいました三年にもわたってこうなっている、これはもう既に例外的な事態ではなくて構造的な問題ではないか、その点について私どももそのように考えているところでございます。確かに、一昨年も大変な異常気象で不作であった、去年もそうであった、こう言われますけれども、しかしやはりそれならそれでまた対応の仕方もあるだろう。特に圃場の、田畑の復旧の作業もはかばかしく進んでいる気配もないということになりますと、やはりそういったところにおいてこの問題を真剣に解決しようとする努力が不足しているのか、あるいはそれが効果をあらわしていないのか、こういう問題ではあろうかという気がいたします。  さてそれで、三年以前前に、あるいは金日成時代にはどうなっておったのかということでございますが、これも私も今つまびらかにいたしませんけれども、要するに一つは国内の生産が現在ほどの破局的な状態に至っていなかった、それが一つあると思います。それからまた、他国からのいろいろな輸入なりあるいは支援というのもあったんだと思います。例えば、現在中国から食糧あるいはエネルギーの面においてもある程度の支援といいましょうか、そういうものがあるようでございますけれども、かつてはそういったものが現在よりはもう少し大きな規模で行われておったというふうに理解をしております。
  147. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 それで、百二十万人ですか、軍隊がたくさんいますでしょう。軍隊というのはやっぱり一番元気なやつを引っ張っていってやるわけですから働き手をとっちゃうんですね。昔の日本もそうでしたが、農村の青年なんというのは一番うまく仕立て上げれば強い兵隊さんになる。それで、あそこの耕地の面積、可耕地の面積、そこに適当な人手を入れれば、そんなに毎年毎年何万人飢え死にだって、これもまたよくわからないけれども、ということにはならないんじゃないか。軍隊というのは大体国を守るためにいるのに、国を食いつぶしているみたいなところがありますでしょう。それで、せめて何かやるんだったら軍隊のレベルを落とすとか、そのぐらいのことはやってもらいながらでないとちょっと納得がいかないような気がするんです。  とっても危険なことをやるかもしれない国だから、とにかくガラスの器を落とさないようにというようなことでやるというのだったらそれでいいけれども、これはもう人道なんという問題じゃなくて、戦略、戦術の問題だと思うんです。それで割り切ってやるならともかくですが、特例、特別、例外、特殊の人道援助だという話はそろそろおしまいにしてもらいたいと私は思うんです。それならそれでまた話のしょうはある。  今度、どうなんでしょうか、アメリカも韓国もというんでこっちも自動的につき合うというようなことになるんでしょうか。
  148. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) この援助は確かに人道的な側面もございます、現実に飢えておるわけでございますから。しかしながら、それならそれで、まずみずから努力をすべきじゃないか、なすべき努力もしていないじゃないかというような点については私も委員と全く同じような認識を持っておるわけでございます。  それから、いま一つ、さはさりながら本当に北朝鮮が今あらゆる面で困窮しておって、そして国内が現在の体制で抑えきれなくなって大変な混乱状態になるというようなこと、あるいは暴発なんということがもし万が一ありますと、それはこの地域の安定にとりましては大変大きな影響を与え得るわけでございますから、そういったことも避けなくちやいけないのだろうと。できるならば、ハードじゃない形で、ソフトとは言えないかもしれませんが、なるべくソフトに近い形で国際社会にランディングできるようなことが望まれるわけでございます。そういったことを実現するといった観点からやはり食糧の問題も考えなくちゃいかぬという側面もあると私は思っております。  米韓なども単純に、純粋に人道の面だけからやっているわけじゃない。いろんな今申しましたようなことも念頭に置き、当面の問題としては四者協議であるとかKEDOプロセスなんかに対する影響、あしき影響を排除しながら促進剤になるようなことも期待する。いろんな要素を入れながら、ただ形の上では国連機関であるWFPの人道上の観点からのアピールであるから、それに応じていく、したがって形の上では人道面を表に出してやっているんだと、こういうふうに私は考えております。  日本としても、そういったいろいろな要素、それから日本は特に北朝鮮との関係で抱えているいろいろな問題もあるわけでございます。そういったものもいろいろコンシダレーションズの一つとして総合的に勘案していきながら、この問題に対処してまいりたいと思います。  委員が御指摘になりましたような観点はやはり日本の国民の中でも随分あるんだろうと思います。一方で人道面だからともかくやれという御主張、そういったものをバックアップする世論もございましょうが、一方でさはさりながらという部分もあるんだと思います。そういった日本の国民の中のいろいろなお考えの方々にも御理解をちょうだいしながら、やはりこの問題をどうするか決めなくちゃいけないと思いますので、私どもも今やらないとも申しませんし、また必ずいっかはやるんですとも申しません。そういったことも世論の動きをよく見ながら、また具体的にいろいろ日本として考えなくちゃいけない問題について何らかの進展の可能性が出てき得るのかどうか、そういったところも見ながらやってまいりたいと存ずる次第でございます。  先ほど、武田議員の方からは、これはもう純粋に人道の面から、ほかの要素を入れるのほかえってマイナスだよという御指摘もございましたけれども、私は若干人が悪いのでございましょうか、ほかの要素も考慮しながら考えてまいりたいと思っている次第でございます。
  149. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 それで、現実的に言えば、要するにあそこがいきなり崩壊しないようにするためには、やっぱり食い物をやれ、食糧をやれというような話ならば、例えば今度十万トン上げようなんというのはけちな話で、昔私は中小企業を創業したんですが、不景気になると何か政府関係金融機関にすごい融資額を設定したとかなんとかいうんですね。ところが、下にいると滴も垂れてこないという感じだったのを思い出します。  今食糧を運び込んで配るといえば軍隊しかいないんですね、結局。そうすると、本当に善意と愛情を北朝鮮の国民みんなが感じるためには、軍隊が食うだけ食って、それから倉庫もいっぱいにしてもう入り切らない、しょうがないからもう皆配ってしまえというぐらいやらないといけないというのが私は現実だと思うんです。  だから、そこらあたりを何となしに人道とかなんとかで当面何とかかんとかつなごうという話じゃなしに、これは日本だけじゃありませんが、そこに対する扱いというのはもう少しみんなでもう一度考え直した方がいいんじゃないかと私は思っております。全くこれは素朴な感情でありますので、その他にもいろいろな御決定の要素はありましょうけれども、ぜひ慎重に扱っていただきたいということをお願いしておきます。  さて、それで時間が余っちゃったので、ちょっと予定もございませんが、お答えも要りませんけれども、一つ大変気になることがあります。  きのう鄧小平さんが亡くなって、さっき田先生からも、前の時代の人が死んでしまってこれから先ということを考えていかなきゃいけないというのは、そのとおりだと。  最近何かで見たんですが、中国で若い層に世論調査みたいなものをやった。それで、日本という言葉を聞いたら何を連想するかといったら、八〇%以上の人は南京大虐殺と言ったというんですね。そうすると、先ほど指導者はこれから若い人に交代していくと言われましたが、一体どうなるのかなと。例えば、経済開放政策を助けると国民のGNPが上がって、それでだんだん意識が改革されて民主主義になる。民主主義になった投票者の八〇%が日本といったら南京大虐殺だと思っているような民主国というのは決して怖くないことはないと思うんです、私は。こういうことはよっぽど考えておかないと、これから二十年、三十年たって一体どうするか。  そこで、思うんですが、歴史の問題があります。年じゅう我々日本人は大体歴史を直視しないとかいうことを盛んに言われる。しかし、考えてみると、例えば日露戦争というのは明治三十七、八年で、それから約四十年でこの前の戦争が終わりでしょう。それから五十年以上たっている。ちょうどあの戦争が終わったのは私が中学三年でした。日露戦争と聞くとやっぱり昔話なんですな、完全に。今の人たちはアメリカと戦争をやったのかどうか知らないというのが本当にいて、やったんだよと言ったら、どっちが勝ったんですかというのもいるというんですね、日本では。日本人は、特に忘れっぽいというかもしれないけれども、その程度のことだろうと思うんです、普通の人間なら。  しかし、日本といえば今何を連想するかといったら南京大虐殺というのは、これはせっせとそういう教育をしているからに違いないと私は思います。それ以外に八割の若者がそんなことを言うわけがない。しかも、一九四五年に戦争は終わりましたけれども、南京大虐殺なるものは昭和十二年ですから、それよりまだ八年前でしょう。大体生まれていないか、おやじ、おふくろも生まれていないというようなことなんです。こっちに対してはそういう教科書問題その他でいろいろ言われながら、向こうはそういうふうに根づくような教育をしていると、私はもう疑いなしにそうだと思います。フェアじゃないじゃないかと私は思うんです。これをほっておくとあと二十年ぐらいたったら相当恐ろしい話になりかねない。こういうことはぜひ頭に入れておいていただきたいと思います。  御感想を言っていただかなくて結構です。これで終わります。
  150. 矢田部理

    ○矢田部理君 施設庁長官になろうかと思いますが、五月十四日に沖縄の米軍基地の一部が使用期限切れになるということをにらんでいろんな政府サイドの動きがあるわけでありますが、これはどんなふうに今なっているのでしょうか。  土地収用委員会の審理が始まって、これから本格的に双方から意見や主張を聞いて仕切りを始めるというときに、期限内に結論が出なきゃ特別の立法をつくるとか、特措法を改定して何が何でもその土地を強制的に使うんだという姿勢などがちらちら見え始めているのですが、その辺の経過や最近の対応についてまず伺っておきたいと思います。
  151. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) お答えいたします。  ただいま収用委員会の方に私ども起業者として審理をお願いしておりまして、二十一日に第一回の公開審理が決められております。それから、二回目の公開審理が三月十二日に決められているところでございます。私どもとしては、五月十四日の期限までに何とか間に合うように裁決をお願いしたいということでかねがね委員会の方には私どもの希望は申し述べさせていただいているところでございます。  そういう点を踏まえまして、明日以降審理が委員会の方で整々と行われて、何とか間に合うような形で私ども裁決をいただけないかということで、あした以降の審理に全力を尽くさせていただきたい、こういうふうに考えているところでございます。
  152. 矢田部理

    ○矢田部理君 ということが公式的な立場だと思うんです。  一方で、従来の経過などに徴してみても、それから関係者も多数ということなどもあって、とても期限内に結論を得ることは難しかろうということも言われておる中で、政府としては、一つは緊急使用の申し立てをしようというような流れがあったようですが、最近はそれも取りやめて、場合によっては三月のしかるべき時期に特別措置法の改定を提案するというようなことも報道されているのですが、そういうことは全く考えていないということでいいんですか。
  153. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 報道等でいろんな御意見が出ておるのは私ども承知しておりますが、先ほど来申し上げておりますように、私どもは起業者として収用委員会の方に期限内に間に合うように裁決をあくまでもお願いしておる立場でございまして、その第一回目の審理がまだ始まっていない段階でそういうことを申し上げるというか、報道が出ること自体もちょっと不本意なような状況でございまして、あくまでも私どもとしては、期限内に間に合うように収用委員会の方々のそういう適正な御判断というんですか、適切な御判断、そういうものをあくまでもお願いしておるという段階でございまして、いろんな報道に対しまして、そういうことが現段階政府レベルといいますか、そういうことで私どもも御指示を受けてそういうことを進めておると。そういうことはございません。
  154. 矢田部理

    ○矢田部理君 新聞が見込み記事や推測記事で書いているんじゃなくて、官邸サイドからしかるべき発言などもあって、それを裏打ちにして出しているので、建前論だけで必ずしも私どもそうですがというわけにはいきにくいのです。  私が申し上げたいのは、もともと新しい憲法ができた後、軍事基地のための土地収用はできないというのが基本的な考え方なんですよ。旧土地収用法では、収用できる対象としてその筆頭に挙げておったのが、国防その他軍事に関する事業が土地収用法の筆頭に挙げられておったのを、新しい土地収用法ではそれは外された。それが戦後の土地収用の歴史なわけですが、米軍の基地についてだけ特例措置を設けて収用が可能だと。しかも、手続も非常に安易にしているというようなことから、いろんな議論が憲法上も含めてあるわけです。  その土地収用法のもとで収用委員会も作業を始めているのに、その結論が間に合わなければ土俵を変えるんだというのは法治主義とか法の制度論からいっていかがなものかというふうに私は実は思っておりまして、そういうふうなことは法治国家としては絶対にやってはならない。盗人たけだけしいというか、自分が負けそうになったら土俵を変えるなどというやり方は断じてあってはならないということだけ特に申し上げておきたいと思います。いかがですか。
  155. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 現在、防衛用の施設といいますと、自衛隊が使用しております土地と米軍に提供しておる土地と二つございます。したがいまして、自衛隊はあくまでも現在の土地収用法の適用を受けるわけでございます。  しかしながら、米軍に対しましては、安保条約及び地位協定に基づきまして、政府としては米軍に対して施設・区域を提供し、なおかつ円滑かつ安定的に提供する義務を負っておるわけでございまして、こういう条約上の義務を果たすために現在駐留軍用地特別措置法というのができておるわけでございまして、私どもはこの法律の定める手続に基づいて今適正な手続をとらさせていただいておる、こういう状況でございますので、その点、ぜひ御理解を賜りたいと思います。
  156. 矢田部理

    ○矢田部理君 あなたに安保条約の講義をいただく予定はありませんので、その程度で結構でありますが、やっぱり憲法体制ということを基本的に考えないと、安保安保といってそれを先行させるのはよろしくないというふうに思っております。あとは答弁は要りません。  それで、次のテーマですが、先ほどから出ております劣化ウラン弾の問題です。劣化ウランというのはどんな毒性を持ち、どんな病気の原因になっているかというのは、劣化ウラン弾ではなくて劣化ウランそのものの性質については外務省はどんなふうに受けとめておられるでしょうか。
  157. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 米側から説明を受けているところによりますと、劣化ウランは鉛と同様に重金属としての毒性を有するが、その毒性は鉛よりも低く、また劣化ウランから放出される放射線、これはアルファ線でございますが、これは空気中を約五センチ進んだだけで消滅するようなものであり、また個々の劣化ウラン弾から発出される放射線のレベルは初期のカラーテレビの幾つかの種類から発出された放射線のレベルよりも低いと。それで、吸い込んだり飲み込んだりしなければ人体に与える影響もない旨の説明を受けているところでございます。
  158. 矢田部理

    ○矢田部理君 アメリカの説明をあなたはうのみにしているわけですか。  私の理解では、専門的な辞書などにもいろいろ出てきているわけですが、非常に有毒であって、白血病とか肺がん、骨髄がんなどの原因物質であるというふうに辞典などにも記載をされているわけですが、そういう理解、勉強は外務省としてはまだしていないわけですか。
  159. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 今のはアメリカ側の説明でございますが、科学技術庁からも話を聞いております。  一般的に劣化ウランの放射能の含有量は天然の海水一トン当たりが含むウラン三グラムよりも低い濃度であると。それから、たとえこれが微粒子になったとしても遠くに飛散することは考えにくくて、直ちに人体に摂取されることは考えにくいと。それから、仮に劣化ウランを体内に取り込んだ場合、体内における化学的な状態によるため評価は難しい点があるものの、溶解しにくい状態で体内にとどまった場合、摂取量によってはアルファ線による内部被曝が問題になると。なお、溶解しやすい状態で体内で取り込まれた場合、摂取量によっては化学的な毒性による腎臓や肝臓への障害を考慮する必要があるというふうに聞いております。
  160. 矢田部理

    ○矢田部理君 科学技術庁の方が幾らか問題認識があろうと思いますが、劣化ウランの量がどのぐらい今度の誤射で飛び散っているか、あるいは滞留しているかというようなことを考えるに当たって、まず千五百二十発誤射されたと言われているわけですね。これに含まれる劣化ウランの量はどのぐらいと推計されていますか。
  161. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 私の記憶によりますと、一つの劣化ウラン弾に含まれる劣化ウランの量は百四十七グラムだと思います。それで、千五百発を撃ちまして、そのうち回収された分がありますから、それを差っ引いた分で単純に掛け算しますと、全体で二百キロぐらいではないかと思います。
  162. 矢田部理

    ○矢田部理君 私の試算によっても二百キログラム以上の劣化ウランが落とされた劣化ウラン弾の中には量的に入っていると。  その劣化ウランでありますが、これの半減期はどのぐらいと考えますか。専門家に聞くと、四十五億年というんですね。地球がもっかもたないかぐらいまで半減期がかかるという天文学的な数字なんです。そういう量のものが、四十五億年も半減期を持つものがあの鳥島周辺にあるということをまず認識として持っていただく必要があると思いますね、第一に。  それから、その被害があるのかどうかということについてはこれからの調査検討も必要かもしれませんけれども、どうもアメリカからの報告では人体及び環境に対する影響はないという先ほどの話につながる連絡があったそうでありますが、湾岸戦争で使われたときにも米兵に対する影響は極めて少ないという報告をペンタゴンに上げているわけです。  ところが実態は、例えば「ネーション」というアメリカの科学誌がありますが、ここの調査報告によりますと、大変な病気が帰還した米兵の中に広がっていると。しかも、少数ではなくて数百人から数千人に及ぶと。これは科学的な調査をした結果の報告書がここにもありまして、それを読んでみまするとこうなっているんですね。歯が悪くなり、疲労感、記憶欠如、鼻血、下痢などが次々にあらわれてきたと。さらには、血便、歯茎の出血、発疹及びまぶたや鼻、舌のただれなどが生じてきているということで、原爆で被爆した症状と同じような症状が湾岸に行った米兵の間に広がってきていると。ただごとではないという報告が一方でなされているわけです。  それから、先ほども指摘がありましたが、イラクの南部では白血病その他原因不明の病気が異常なまでに広がっているという報告が、イラクからはもちろんでありますが、だけではなくて、それはイギリスやオーストリアなどからも既に指摘が出されておるわけでありまして、状況は余り楽観視しているわけにはいかないというふうに私は思っているのでありますが、外務省としてはいかがでしょうか。
  163. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 今、委員が指摘された湾岸戦争に参加した米兵にいろんな症状が出ているということでございますが、いわゆる湾岸戦争症候群と称する病気でございますが、これについてアメリカの大統領の諮問委員会が調査をいたしまして最終報告というのを出しているわけでございます。  劣化ウランもその一つの要素ではないかということで劣化ウランの研究もされておりますけれども、そのほかいろんな要因があって、例えばストレスによるもの、その他いろいろあって、そこで劣化ウランもその一つの可能性として議論がなされていて、その結論部分ではイット・イズ・アンライクリーということで、湾岸戦争症候群の原因であるという可能性は低いというふうに述べていると承知しております。
  164. 矢田部理

    ○矢田部理君 アメリカの軍レベルというかペンタゴンサイドは非常にこれを過少に見よう、影響を少なく見ようという傾向があるのでありますが、そうでない指摘があり、現に病気がふえておるということについても十分に考慮して今後の調査その他に当たっていただきたいというのが私のまず第一のポイントであります。  二番目に、こんな物騒なものを日本国内に備蓄している、アメリカ軍が持ち込んでいるということについて私は大変遺憾に思います。したがって、第一には、鳥島で誤爆した砲弾、まだ大部分が残っておるわけでありますから、この全部の撤去、回収をやっぱり求めるというのがまず第一であります。同時にまた日本に、先ほども指摘がありましたが、嘉手納とか岩国などにもこの種の爆弾が備蓄されている、砲弾が運び込まれているという状況を考えてみますると、これが日本有事の際には使われる可能性、危険性を持っているわけでありますから、そういうものを国内で使用されたりしたらたまったものではないというふうにも思いますので、直ちにアメリカに撤去をしてもらうという態度日本政府としてとるべきではないかというふうに考えておりますが、いかがでしょうか。
  165. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、劣化ウランの危険性についてはいろいろな御指摘もございましたけれども、私どもは先ほど北米局長から御答弁申し上げたような認識を持っております。なお、さらにいろいろ研究はしてみたいと思っております。また、現在鳥島にまだ残っておりますウラン回収については米軍としてもさらに努力をしようとしているところでございます。  それから、我が国の提供施設・区域の一部にこの劣化ウラン弾が存在するということは、私どももそういうことだと承知しております。ただ、今後我が国における訓練には使用しないと。今回はそれが誤って使われたわけでございますけれども、将来にわたってこういった誤使用は起きないように万全の措置を米側に求めておりますし、アメリカもそういったことで対応しようとしているところでございます。  さて、日本に保管されていること自体がけしからぬから、これの撤去を求めよという点でございますけれども、私どもはやはり、日米安保条約に基づいて米国我が国あるいは極東地域の安全なり平和を維持するためにいろいろ対応していかなくちゃいけない、対処していかなくちゃいけない、そのために米軍としていろいろな装備なりこういう弾薬なりを我が国に備蓄しているということの必要性は認めざるを得ない、こう考えております。  そういった我が国あるいは極東地域において緊急の事態発生いたしました場合に、米軍は条約上の役割、責務を果たしていくためにいろいろ対応する、その際にこの劣化ウラン弾を使用する必要性が生ずるということはあり得るということでございます。そこのところは私どもとしては御理解をいただきたいと存ずる次第でございます。
  166. 矢田部理

    ○矢田部理君 これで終わりますが、訓練のときの使用は困る、しかし実戦のときの使用は肯定する、こんな矛盾した態度はありますか。アメリカ軍だって今度の鳥島の誤爆、健康上も環境上も大した影響はないと言っておりますが、外でやつちゃいかぬと。アメリカ国内だけで訓練に使う、それはやっぱり問題があるからそういう態度なり規則を決めているわけでしょう。  これから日本でも平時には使わせない、訓練のときにはそういうものは使わせないと。それを有事のときには使うことを肯定するような発言を外務大臣がするというのは私は穏やかでないというふうに思っておりますので、そういう答弁はやっぱり納得できません。  私の気持ちとしては、単に訓練時に使う使わないだけではなくて、日本にあることがわかっているのでありますから、これはやっぱり戻してもらう。少くともそういう兵器については廃止の方向で国際的にも努力をしていくということが日本政府態度であってほしいということを特に申し上げておきたいと思います。  時間が来ましたので、答弁は要りません。
  167. 小山峰男

    ○小山峰男君 最後でございますので、できるだけ簡潔に質問させていただきます。  最初に、今話題になっております劣化ウランの関係でございますが、私はちょっと角度を変えて、これが報道されたときに新聞等では、いわゆる官邸と外務省で泥仕合というようなことが伝わったわけでございます。官房長官は外務省は鈍感だと、それから外務省としては指示がなかったというようなことをお互いに言い合っているということでございまして、私はこの問題は大変大きな意味があるだろうというふうに思っております。情報管理あるいは危機管理という問題についてもう少し日本政府としてぴしっとしておかないと、いろんな問題でこういうような形になるとすれば今後とも非常に問題だと。  アメリカから一年というような形で大変情報がおくれたという問題が一つ。それから今度国内へ来て一カ月おくれたと。しかも、外務省と官房でこういうような形で泥仕合をしているというようなことになれば本当に日本の将来が心配なわけでございまして、こういう点、実際にはどうだったのかということと、今後どういうふうに改善していったらいいか、外務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  168. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいまの御質問の中で三つ側面があると思います。一つは米国から我が国への連絡、通報のあり方二つ目が我が国政府から沖縄県への御連絡なり公表という面、それから三つ目政府部内における連絡あるいは協調体制の問題、こういうことだと思います。  最後の面から申し上げますと、私はこの問題に限らずあらゆる問題について政府は一体となって必要な協議を行い、そして対応すべきものと考えておりまして、新聞の報道はいろいろあったかもしれませんけれども、少なくとも私どもといたしましてはこれまでのあり方、運び方に反省すべき点があるならばそれは改めていく、こういうことで対応してまいりたいと思います。政府部内のどこがどうというのは、こういう対応をする体制なりなんなりの改善に資するためにという観点からは検討はしなくちゃいけないかもしれませんけれども、そのことをあれこれ政府部内でやり合うということは生産的ではないと考えておりまして、私はそのようなことはあれこれ申し上げるつもりはございません。  それから、米側から我が方に対する連絡が一年余りおくれたという点については大変遺憾なことだと考えておりまして、その点は現在では米側も深く遺憾とする、そして今後は改めてまいりたい、こう言っているところでございます。  ただ、こういったことが発生した原因といたしましては、きょうの委員会でも随分ございましたけれども、そもそもこういった誤使用が起きたのは表示の問題を中心とする管理に問題点がある、これを改善するということが一つでございます。それから、連絡、通報の関係で申しますと、米側の当初の認識では、これはいわゆる典型的な事故というものとは少し性格が違うものでございますから必ずしも日本に通報しなくてはならないものではないという認識があったようでございます、当初は。しかし、それではいけない、やはり通報すべき問題ではないかという認識を持って、全体としての連絡通報体制システムの改善の作業の中で米側から言ってきたものでございまして、将来に向かってシステムそのものを改めてまいりたいと考えております。  それから、政府から沖縄県に対する連絡がおくれた点について、これも私はお地元に対する配慮が十分ではなかった、この点は反省しております。ただ、そういうことが起こった理由としては、これも御説明申し上げておりますけれども、私ども、それは一体どういう実態なのか、どういうことで起こったのかということを少しでも具体的に掌握した上で御連絡も申し上げ、また公表もしたいということで、繰り返しいろいろな情報収集なり米側からの回答を求めておった、それゆえに時間を要したということでございます。それにしても三週間を超えたというのは、日米ともに幾らレッドテープのお役所仕事とはいえ、この事柄の重大性、また微妙さというものに対する認識が不十分であったなと、こう考えております。今後は改めてまいりたいと思います。
  169. 小山峰男

    ○小山峰男君 この沖縄問題も含めてやっぱり信頼関係というのが大変大事だと、そのためには情報公開というのが完全になされることが大事なので、大臣国務大臣でございますので、ぜひこのことを契機として日本情報管理、危機管理について改善を図ってほしいというふうに思っております。  次に、北朝鮮による日本人女子中学生拉致疑惑についてお尋ねをしたいと思いますが、この問題についてはきょうも出ましたし、既に衆議院の予算委員会等でもいろいろお話が出ておるわけでございます。橋本総理は、「捜査当局において所要の捜査が厳重に進められていると思っております。」と述べているし、「また、関係機関におきましても、関連情報の収集に努めておるところでございまして、今後ともこうした努力を続けてまいりたい、」というふうに答弁をしております。  また、政府から質問に対する答弁書も出ておりまして、いろいろの情報政府でもつかんでいるということでございます。この女子中学生拉致疑惑というような問題について、いつごろ日本政府というか外務省なりがそういう情報を得たのか、どういう形で得たのかというようなことをお聞きしたいと思います。
  170. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 大変恐縮でございますが、委員今御指摘の答弁書にあるとおりでございまして、この件、「お尋ねの事項については、御指摘の失腺者の安全に配慮する等の観点から、外国政府との間のやりとりの有無を含め、答弁は差し控えたい。」とある次に、「なお、本件については、御指摘の報道」、これは現代コリアの報道でございますけれども、「その時点で接したところであり、その内容を踏まえ、今後適切に対処してまいりたい。」と記述してございます。これがその経過をあらわすところと受けとめていただきたいと存じます。
  171. 小山峰男

    ○小山峰男君 この問題は極めて外交上の問題を含んでいるというふうに思っていますし、また当然慎重な取り扱いが大事だというふうに思うわけでございますが、事やっぱり日本国民の人権に関する問題でもあるわけでございまして、大変重要な問題を含んでいるというふうに思っております。  現在、北朝鮮とは国交がないわけでございますが、先ほど大臣も全く接触の機会がないわけではないというふうに答弁をされているわけでございまして、私たちが承知していない部分である程度接触がなされている面もあろうかというふうに思うわけでございます。そういう状況の中で、ぜひ政府が本格的に本気になってこの問題に対処してもらう必要がある、やっぱり日本政府努力にかかっているというふうに私は思っております。そういう意味では、ぜひ真偽を明らかにするように御努力をいただきたいというふうに思うわけでございます。  それで、橋本総理の答弁のように「進められていると思っております。」というようなことでは国民の皆さんはこの問題については納得しない。一生懸命努力しているけれどもなかなかというぐらいのことを本来言うべきだというふうに思っております。その辺、外務大臣、どうでしょうか。
  172. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもも、この事件あるいは類似の事件につきましては御家族初め関係者の方々の御心痛というのは本当に痛いほどわかるわけでございまして、できる限りの解明に努め、そしてできることならば事件解決につなげてまいりたい、こういう思いは非常に強いものがございます。そういった立場から、捜査当局でもそうでございましょう。また、我々外務省といたしましても、非常に難しい情勢ではございますが、それは御理解いただけると思います。そういう状況ではございますが、でき得る努力はしておりますし、これからも続けてまいりたい、こう考えている次第でございます。
  173. 小山峰男

    ○小山峰男君 いろいろお考え方があるわけでございますが、食糧援助につきましてもやっぱりそういう相互理解の上に国民が納得する形で行われることが必要だと、私はそう思っておりまして、どちらも事人道上の問題といえば大変な人道上の問題であるわけでして、一方通行の人道上の問題というのはやっぱりおかしいというふうに思っておりますので、ぜひ御努力いただきたいと思います。  それから、少し角度を変えまして、同僚の議員の皆さんからも先ほどいろいろお話ございましたが、日本のことについて外国で最近大変評価が下がっているのではないかという話がございます。例のアメリカの大統領の一般教書でも日本のことが触れられなかったと。それについては逆に日本との関係は非常によくいっているんだという話も出ているわけでございます。  これはこれとして、先ごろ文部省の発表しました外国人留学生の数が最近減ってきているという記事があるわけでございまして、これ十万人計画というのに基づいて現在留学生の受け入れをやっているわけでございます。私は、知日派というか、日本をよく理解してくれる人がそれぞれの国に大勢おられることが将来の日本のためにも大変大事だというふうに思っております。この問題はいろいろの隘路というか、そういう問題があってという話もあるわけでございますが、少なくとも十万人計画が一日も早く達成されるような努力をやっぱりしていく必要があろうというふうに思っております。  まず、外務大臣、こういうことを将来的にもやる必要があるのかどうかというようなお考え方、それから今いろいろ隘路等については言っております。生活費が高いだとか不景気でアルバイトがないだとか、あるいは本国にそれぞれ大学等ができたというような問題もあるようでございますが、そういう隘路を解決するためにどういう方策をこれからとっていく必要があるのか、その辺についてお聞きしたいと思います。
  174. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 日本に対する国際的な理解を深めていただくというためにいろんな意味での人的な交流は大切でございますが、そういった中でも、日本に多くの国々の若い方々に留学していただくということは非常に大きな柱である、こう考えております。それは対日理解という観点からそうでございますし、それだけでなくて、やはり日本でそうやって学ばれた方々がそれぞれの国の将来のために力を尽くされるという意味からもこれは大切なことだと考える次第でございます。  そして、我々といたしましても留学生交流の推進のために文部省等とも連携をしましてこれまで努力してきたところでございます。いっときは十万人計画も順調に推移しているから、これはもう必ず達成されるんじゃないかといった明るい見通しが得られたこともございますけれども、近年、今御指摘のようないろいろな障害といいましょうか難題もございまして、なかなかこの達成が容易でないという状態になっている。我々としては何とかこの大切な課題を達成できるように努力をしてまいりたいと思います。  したがって、いろいろな難しい問題があるという点もなかなか進捗しないことのエクスキューズに使うんじゃなくて、この課題を達成するためにはいかにして困難を克服すればいいかという観点からいろいろ進めてまいりたいと存ずる次第でございます。  大きな意味では、日本での外国の方々の生活される条件、環境をどうするかという点もあるわけでございますが、それ以外にも、例えば国費留学生の海外における募集や選考のあり方に改善すべき点はないかとか、あるいはまた日本に留学された方々がお帰りになった後いろいろ御活躍される、そういった場合に我が国として何かそれが円滑にいくためにお手伝いする点がないか等々、そういったきめ細かい点についても配慮をしてまいりたいと考えている次第でございます。
  175. 小山峰男

    ○小山峰男君 文部省の問題でもあるわけですが、ぜひ外務省も一緒になってお願いをしたいと思います。  それから、今の留学生で、一たん国へ帰られた若手の研究者というような人たちを再度半年なり一年なり日本の研究機関等で受け入れて研究の場を提供するというようなことも大変大事だというふうに思うわけでございますが、こういうような制度が現在あるのかどうか、文部省の方から聞きたいと思うんです。
  176. 木谷雅人

    説明員(木谷雅人君) 我が国の大学等で学んだ留学生がその成果を生かして帰国後も教育研究を継続し、活躍できるように援助することは極めて重要なことであると考えておりまして、文部省としては、帰国留学生に専門誌あるいは学会誌等を送付するなど、いわゆるアフターケア施策というものを推進しております。  御指摘の元日本留学生を我が国に再招聘するというような事業につきましては、帰国外国人留学生短期研修制度というものを設けておりまして、元日本留学生で母国において教育、学術、行政の分野で活躍している者を我が国の大学に三カ月程度招聘をいたしまして、その大学の教官と共同研究をしてもらうというような事業を実施いたしております。
  177. 小山峰男

    ○小山峰男君 それをもう少し充実するような形でぜひお願いをしたいと思います。  先ほどもちょっとお話がございましたが、中国で若手の四十代、五十代の指導者が出てきていると。それで、その人たちはほとんど欧米、特にアメリカ等へ留学をした人が多いということが言われておりますので、日本もやはりそういう意味の交流をぜひ進めてもらいたいと要望申し上げまして、終わります。
  178. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時十六分散会