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1997-02-21 第140回国会 参議院 科学技術特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月二十一日(金曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  二月二十日     辞任         補欠選任      岩永 浩美君     平田 耕一君      北岡 秀二君     中原  爽君      松村 龍二君     大野つや子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         猪熊 重二君     理 事                 鹿熊 安正君                 吉川 芳男君                 高橋 令則君                 中尾 則幸君     委 員                 海老原義彦君                 大野つや子君                 沓掛 哲男君                 志村 哲良君                 中原  爽君                 平田 耕一君                 二木 秀夫君                 長谷川道郎君                 水島  裕君                 山本 正和君                 川橋 幸子君                 阿部 幸代君                 立木  洋君                 矢田部 理君    国務大臣        国 務 大 臣       (科学技術庁長        官)       近岡理一郎君    政府委員        科学技術政務次        官        岡  利定君        科学技術庁長官        官房長      沖村 憲樹君        科学技術庁長官        官房審議官    興  直孝君        科学技術庁科学        技術政策局長   近藤 隆彦君        科学技術庁科学        技術振興局長   青江  茂君        科学技術庁研究        開発局長     落合 俊雄君        科学技術庁原子        力局長      加藤 康宏君        科学技術庁原子        力安全局長    池田  要君    事務局側        第三特別調査室        長        塩入 武三君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○科学技術振興対策樹立に関する調査  (科学技術振興のための基本施策に関する件)  (平成九年度科学技術庁関係予算に関する件)  (高速増殖原型炉もんじゅ」のナトリウム漏  えい事故に関する件)     ―――――――――――――
  2. 猪熊重二

    委員長猪熊重二君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十日、岩永浩美君、松村龍二君及び北岡秀二君が委員を辞任され、その補欠として平田耕一君、大野つや子君及び中原爽君がそれぞれ選任されました。     ―――――――――――――
  3. 猪熊重二

    委員長猪熊重二君) 科学技術振興対策樹立に関する調査を議題といたします。  まず、近岡科学技術庁長官から科学技術振興のための基本施策についてその所信を聴取いたします。近岡科学技術庁長官
  4. 近岡理一郎

    国務大臣近岡理一郎君) 所信を述べます前に、委員長のお許しを得まして一言ごあいさつを申し上げます。  私は、インフルエンザのため、先月十八日より三週間ほど治療に専念しておりました。その間、皆様方に大変御心配をおかけいたしましたことを深くおわび申し上げます。また、本日、委員長初め各位の御了解を得まして、自席で所信を述べさせていただくことを心からお礼を申し上げます。  第百四十回国会に当たり、私の所信を申し上げます。  尽きることのない知的資源である科学技術は、二十一世紀に向けて、我が国経済構造の改革を実現し、創造性あふれた経済社会をつくっていくための原動力であり、さらに、次代を担う若者たちが夢と希望と高い志を持つことを可能とするものであります。また、科学技術は、人類の共有し得る知的資産を生み出すとともに、地球環境問題、エネルギー資源問題などの地球規模の諸課題解決に資するものであり、世界の平和と繁栄に積極的に貢献し、人類未来への展望を開くものであります。このように、科学技術振興は限りない未来への先行投資であります。  昨年七月、科学技術基本法に基づき、科学技術振興施策を総合的、計画的に推進するための科学技術基本計画が閣議決定されました。今後、我が国は、基本計画に示された研究開発推進基本的方向に即し、率先して未踏科学技術分野へ挑戦し、革新的な科学技術成果を創出していくことが求められております。このため、科学技術基本計画を着実に実行し、科学技術創造立国を目指して、科学技術振興に積極的に取り組んでまいります。  このような認識もと科学技術による国際社会への積極的な貢献をも念頭に置きながら、平成九年度には、以下に申し述べますような柱を中心として総合的に施策展開してまいります。  第一に、経済フロンティア拡大地球規模の諸問題の解決などの社会的、経済的ニーズに対応した未踏科学技術分野への挑戦であります。  とりわけ、未知の要素を多く秘めた脳は人類の大きなフロンティアであり、脳科学研究を総合的に推進することで、各種疾患治療、予防といった医学の向上や、画期的な情報処理・通信システム開発といった情報社会の発展につながる、ことが期待されております。このため、関係省庁との密接な連携もとに、その計画的な推進を図ってまいります。  また、地球温暖化気候変動の解明、予測を目指した地球変動予測に関する研究開発構造物安全性向上させ、環境への負荷を低減することが期待されている新世紀構造材料研究次世代音速機技術研究開発などを推進してまいります。  宇宙開発は、質の高い豊かな生活の実現などに貢献するとともに、将来を担う青少年に夢とロマンを与えるものであり、これに積極的に取り組んでまいります。特に二十一世紀の本格的な宇宙利用時代に向け、多様な需要に柔軟に対応するとともに、輸送コストの低減を目指したHⅡAロケット開発無人宇宙往還技術試験機開発地球観測通信放送などの分野人工衛星開発を進めるほか、本年から組み立てが開始される宇宙ステーション計画を初めとする宇宙環境利用推進します。  海洋科学技術については、本年秋に大型海洋観測研究船「みらい」の運航開始が予定されており、これを活用した海洋観測研究などを積極的に推進してまいります。また、先月発生しましたナホトカ号流出油災害につきましては、深海探査機ドルフィン3Kを用いて沈没した船体の調査を行い、油の漏出状況などの把握を行ったほか、人工衛星からの画像データ活用した重油流出海域状況把握環境影響に関する緊急研究などを進めているところでありますが、引き続き最大限の取り組みを行ってまいります。  第二に、研究者創造性を重視した基礎研究推進と、新しい時代にふさわしい柔軟かつ競争的で開かれた研究開発システム構築及び研究開発基盤整備であります。  基礎研究については、競争的資金拡充中心としてその積極的な推進を図ることとし、国が設定した戦略目標もと大学国立試験研究機関などを広く対象として研究を行う戦略的基礎研究推進事業を強力に推進するほか、科学技術振興調整費などを充実強化してまいります。  さらに、研究者がその創造性を十分発揮できるような研究環境整備するため、研究支援者確保任期つき研究員活用ポストドクターなどの若手研究者への活躍の機会の提供を進めます。また、研究開発基盤整備観点から、生物遺伝子資源研究用材料などの円滑な保存供給体制の確立といった知的基盤整備を図るほか、大型放射光施設整備を進め、本年秋に供用を開始することとしております。研究開発評価については、外部評価を行うなど体制充実を図ることとし、今後、科学技術会議において策定される大綱的指針に沿って厳正な評価実施を図ってまいります。  また、新産業の創出による地域活性化地域住民生活の質の向上に加え、国全体の科学技術水準向上を図るため、各地域における研究開発拠点構築を初めとする地域科学技術振興策を抜本的に強化してまいります。  第三に、安全で豊かな生活を実現するために必要な国民生活に密着した科学技術推進であります。  特に地震国の我が国にとって、地震防災対策は極めて重要な課題であります。このため、阪神・淡路大震災を契機に設置された地震調査研究推進本部方針もと関係省庁連携を図りつつ、地震調査観測網整備活断層調査などの地震に関する観測調査の新たな展開拡充や、国民一般に対する正確かつわかりやすい広報の実施などを総合的に推進し、地震に強い社会をつくってまいります。  また、健康の維持増進生活環境向上などを図るために、がん関連研究ヒトゲノム解析などを総合的に推進してまいります。  第四に、安全確保国民理解大前提としたエネルギー安定確保であります。  エネルギー資源の八割以上を海外からの輸入に依存し、今後ともエネルギー需要の着実な伸びが予想される我が国において、エネルギーを安定的に確保することは極めて重要な課題であります。このため、供給安定性などにすぐれたエネルギー源である原子力研究開発利用を進めるとともに、長期的な観点に立ち、核融合などの未来エネルギー研究開発推進してまいります。  プルトニウムの軽水炉利用、高レベル放射性廃棄物処分対策を初めとするバックエンド対策などの核燃料サイクルについては、先般の原子力委員会決定を踏まえ、政府としても閣議了解により、当面の具体的な施策展開していくための基本的考え方を取りまとめたところであります。これらを踏まえ、安全の確保及び平和利用大前提として、国民皆様理解を得つつ、関係省庁とも連携をとりながら、その着実な推進を図ってまいります。  高速増殖原型炉もんじゅ事故につきましては、科学技術庁において、昨年五月に報告書を公表した後、残された課題検討を行ってまいりましたが、原因究明についての最終的な結論を得るに至りました。今後、安全性総点検を着実に進め、万全の対策を講じることとしております。また、将来の高速増殖炉開発のあり方については、原子力委員会高速増殖炉懇談会において幅広く審議を行っていくこととしております。  今後とも、原子力に対する国民皆様不安感を払拭し、一刻も早く信頼を回復すべく積極的な情報公開及び提供を進めるとともに、政策決定過程国民皆様の声が十分反映されるように努め、国民とともにある原子力を目指してまいります。  さらに、世界的な核不拡散体制強化貢献するため、昨年九月に採択された包括的核実験禁止条約早期発効に向け、関係法案早期国会に提出すべく準備しているところであります。  以上、科学技術に対する私の基本認識を示すとともに、平成九年度における科学技術庁施策概要を申し上げました。  時代は大きく動いております。我が国時代の波にのみ込まれ世界から取り残されていくか、あるいは未来を確かな感覚でとらえ世界をリードするフロントランナーとして躍進していくかは、科学技術振興にかかっていると言っても過言ではありません。  私は、科学技術行政責任者として、科学技術に課せられた重大な使命を全うすべく全力を尽くしてまいります。  委員長を初め委員各位の御指導、御協力を、心よりお願い申し上げます。  ありがとうございました。
  5. 猪熊重二

    委員長猪熊重二君) 次に、平成九年度科学技術庁関係予算について説明を求めます。沖村科学技術庁官房長
  6. 沖村憲樹

    政府委員沖村憲樹君) 平成九年度科学技術庁関係予算概要を御説明申し上げます。  平成九年度一般会計予算において、科学技術庁歳出予算額五千七百十四億一千百万円を計上いたしており、これを前年度当初歳出予算額と比較いたしますと四百二十億八千二百万円、八%の増加となっております。  また、電源開発促進対策特別会計において、科学技術庁分として歳出予算額千五百九十三億七千五百万円を計上するほか、産業投資特別会計から三十七億円の出資を予定いたしております。  以上の各会計を合わせた科学技術庁歳出予算額は七千三百四十四億八千六百万円となり、これを前年度の当初歳出予算額と比較いたしますと四百十六億八千六百万円、六%の増加となっております。  また、国庫債務負担行為限度額として、一般会計千三百六十一億八千九百万円、電源開発促進対策特別会計二百十二億七千四百万円を計上いたしております。  さらに、一般会計予算予算総則において、原子力損害賠償補償契約に関する法律第八条の規定による国の契約限度額を九千五百八十億円とするとともに、動力炉・核燃料開発事業団法規定により、政府が保証する借り入れ等債務限度額を百一億円といたしております。  次に、予算額のうち主要な項目につきまして、その大略を御説明申し上げます。  第一に、社会的、経済的ニーズに対応した未踏科学技術分野へ挑戦するため、三千三百六十六億七千二百万円を計上いたしました。  まず、経済フロンティア拡大地球規模の諸問題の解決に資する研究開発推進といたしまして、脳科学研究省庁の枠を越えて推進するとともに、地球変動予測に関する研究開発、新世紀構造材料、超鉄鋼材料研究次世代音速機技術研究開発推進するため、六百九十六億五千六百万円を計上いたしました。  また、先端的科学技術分野研究開発推進といたしまして、HⅡAロケット開発無人宇宙往還技術試験機HOPE-X)の開発地球観測通信放送等分野人工衛星開発宇宙ステーション計画への参加等を初めとする宇宙開発利用推進に千八百六億円、海洋観測研究開発を初めとする海洋科学技術推進に二百三十五億一千百万円、ビーム高度利用研究を初めとする先導的原子力研究開発に七百七十九億円を計上するとともに、ライフサイエンス、物質・材料系科学技術推進航空技術等研究開発推進することとしております。  第二に、独創的な基礎研究推進と新たな研究開発システム研究開発基盤構築整備を図るため、千四百六十七億三千六百万円を計上いたしました。  まず、競争的資金拡充等による基礎研究推進といたしまして、大学国立試験研究機関等から課題を公募し実施する戦略的基礎研究推進事業に二百四十億円を計上するほか、産学官連携により重要な基礎研究等推進するための科学技術振興調整費に二百四十九億五千万円を計上するとともに、創造科学技術推進制度等の重要な基礎研究推進制度推進することとしております。  次に、創造的な研究開発活動展開のための研究環境整備といたしまして、重点研究支援協力員制度充実等による研究支援者確保任期つき研究員等活用促進ポストドクター博士課程修了者等一万人支援計画推進研究評価体制充実等を図るため、二百七十二億五千万円を計上いたしました。  また、地域における地域科学技術振興といたしまして、地域における中核的研究機関群の形成に資する地域結集型共同研究事業地域研究開発促進拠点支援事業等推進するため、百二十六億八千四百万円を計上いたしました。  さらに、研究開発基盤整備充実を図るため、知的基盤整備に三十四億七千九百万円、大型放射光施設(SPring18)の整備等に百九十二億六千万円、研究開発に関する情報化促進等に百五十八億四千三百万円を計上いたしました。  このほか、国の研究施設整備、人当研究費充実を図るほか、科学技術に関する国民理解増進に努めることとしております。  第三に、安全で豊かな生活を実現するために必要な国民生活に密着した科学技術推進を図るため、四百六十九億七千七百万円を計上いたしました。  これにより、地震調査研究推進本部方針に基づき地震調査観測網整備及び活断層調査推進するとともに、地震防災科学技術研究開発等を進めるなど防災安全対策充実を図るほか、がん関連研究ヒト遺伝子解析等の健康の維持増進食品成分データ整備等生活環境向上等を図ることとしております。  第四に、安全確保国民理解大前提としたエネルギー安定確保のため、三千二百億円を計上いたしました。  まず、原子力安全規制行政充実安全研究推進放射能調査研究充実等原子力安全対策充実強化を図るため、五百七億七千四百万円を計上いたしました。  次に、原子力開発利用に対する国内外の理解増進情報公開を図る観点から、国民各層対象としたきめ細かな情報提供を進めるほか、原子力発電施設立地地域住民等理解信頼増進に資する施策展開するため、二百九十九億四千八百万円を計上いたしました。  また、核不拡散対策充実を図るため、六十七億円を計上いたしました。  さらに、核燃料リサイクル技術開発の着実な展開バックエンド対策抜本的強化を図るため、千三百五十七億九千百万円を計上いたしました。これにより、高レベル放射性廃棄物処分に関する研究開発等強化するほか、使用済み燃料の再処理等についての研究開発等を行うとともに、高速増殖原型炉もんじゅ」の維持管理等を行うこととしております。  このほか、未来エネルギー研究開発推進することとし、国際熱核融合実験炉(ITER)計画への参加等による核融合研究開発推進するとともに、新エネルギー研究開発推進するため、三百二十八億六千三百万円を計上いたしました。  第五に、科学技術による国際社会への貢献を図るため、千七百四十七億三千八百万円を計上いたしました。  まず、宇宙からの地球観測を行うための環境観測技術衛星等研究開発推進大型海洋観測研究船整備を図ること等により、地球環境問題への取り組み強化するとともに、ヒューマン・フロンティアサイエンスプログラム等国際協力プロジェクトに積極的に参加することとしております。  このほか、アジア太平洋諸国、旧ソ連を初めとした国際科学技術協力を進めるため、海外研究機関との共同研究外国人研究者受け入れ等による国際研究交流施策充実を総合的に推進することとしております。  以上、簡単でございますが、平成九年度科学技術庁関係予算につきまして、その大略を御説明申し上げました。
  7. 猪熊重二

    委員長猪熊重二君) 以上で所信の表明及び予算説明は終わりました。  次に、高速増殖原型炉もんじゅ」のナトリウム漏えい事件に関し、政府から報告を聴取いたします。池田科学技術庁原子力安全局長
  8. 池田要

    政府委員池田要君) この御説明のために、報告書に加えまして、全体で七ページにわたります「もんじゅ事故原因究明に関する報告書について」という説明資料を用意させていただきました。  「もんじゅ」の事故が起こりましたのは、一昨年の十二月八日でございました。これまでの間に、昨年の五月には科学技術庁としまして報告書をまとめてございます。この段階で、事故原因について大筋は解明してございます。  ただ、そのときにはまだ二次系の冷却系におきまして、全体四十八本の温度計があるわけでございますけれども、そのうちの一本だけがなぜ破損に至ったのかといったことについての見きわめがついてございませんでした。  もう一つは、この二次系ナトリウム漏えいによりまして、合計で約七百キロのナトリウム漏えいして堆積したわけでございますけれども、その際に床のライナーの一部、六ミリほどの厚さのところに一ミリほど厚さが減るという結果を生じました。このために、この間の反応につきましてさらに詳細な調査をするということにしてございました。  主として、こういった課題につきましての調査をこれまでに終了いたしましたので、御報告する次第でございます。次のページ以下に、この原因究明結果について別紙としてまとめてございます。  このナトリウム床ライナー等化学反応につきましては、五月に報告書をまとめておりまして、あと六月にはナトリウム漏えい燃焼実験をしてございます。この際には、「もんじゅ」の事故では発生いたしませんでした床ライナー破損、穴があくというようなことも認められましたことから、この原因究明も含めて検討を行った次第でございます。  次のページ以下の報告書の内容について御説明させていただきます。  まず、温度計一本のみが破損した原因でございますけれども、説明資料最後から二ページ目に参考の一として図を添付してございます。ごらんいただきたいと思います。もともと五月の報告書におきまして、温度計破損に至りました根本的な原因は、温度計さやにつきましてナトリウム流れによって起こる振動を回避できなかった、そういう設計上に判断ミスがあったということは、既に明らかにしたところでございます。この振動を回避できなかったために高サイクル疲労を起こして破損したということでございますが、今回はなぜ一本だけが破損したのかということを調査したところでございます。破損に影響すると思われますあらゆる要素を抜き出して調査をした次第でございます。  その結果、二ページ目の中段に書いてございますけれども、この温度計にはセンサーシースという格好で挿入されてございます。参考の一にも記してございますけれども、センサーを厚さ〇・四ミリのステンレスでくるみました非常に細いものでございます。これが、温度計さやの細い部分では内径が四ミリほどでございますけれども、このさやに挿入されているということでございますが、温度計さやシースの挿入されている状態によっては振動の大きさが変わったといったことが明らかになった次第でございます。  すなわち、シースのちょうど中間部で曲がって挿入された場合には、温度計さや振動の大きさを抑制する効果が小さかったといったことが判明いたしました。そのように曲がっている場合には、ナトリウム流れによって振動するということについての抑制効果がなかったということでございます。  実際に実験の結果確かめましたところ、破損した温度計シースにも、ちょうど細い管の部分から太い管の部分にわたります段のついた部分、これから三・八ミリほど離れたところから、摺動痕とこの図には書いてございますが、こすられた跡がございました。実験の結果、このように曲がった状態で挿入いたしまして実験をした結果でも、同じような摺動痕が発生するということも確かめた次第でございます。  以上の事実から、もともと温度計さや自身設計ミスがございまして、これがナトリウム流れによって高サイクル疲労を起こして破損するということは確かめておったわけでございますけれども、このシースの入り方によって、曲がって入った場合には悪い結果が如実に出てしまったということでございます。  次に、ナトリウム漏えい燃焼実験でございますけれども、都合この実験については二回行っております。一回目は所期の成果を得られませんでしたけれども、しかるべく知見を得た次第でございます。二回目の燃焼実験につきましては、「もんじゅ」と比較をいたしますために、最後参考の二といたしまして、この実験の結果判明いたしました事実を図示してございます。  「もんじゅ」の事故におきましては、漏えいいたしましたナトリウムは直ちに空気中で反応いたしました。空気反応いたしまして燃えながら床のライナー上に落ちて堆積したわけでございます。この際に、堆積いたしましたナトリウム酸化物、これにつきましてはその上にさらに酸化ナトリウムが堆積するということが続いたわけでございますから、周りの空気からはある程度遮断された中で、床のライナーの鉄との間に鉄と酸化ナトリウム酸化物をつくるといったような反応が起こったと。これはナトリウム・鉄複合酸化物型の腐食が進んだということでございまして、この結果、これは実験によりましても一時間当たり〇・二ミリから〇・三ミリの腐食が生ずると。「もんじゅ」の場合には三時間余りの漏えいが続いたわけでございますから、結果的には全体で一ミリほどの減肉という結果になったといったことも説明がついた次第でございます。  実験におきましては、実際にはライナーに損傷する、穴をあけるといったことを経験したわけでございますけれども、この場合は図で右側のラインをごらんいただきますと、この設備におきましては「もんじゅ」の施設とは違いまして、コンクリートで囲いました比較的小さな空間で実験を行った次第でございます。そのために、「もんじゅ」と同量のナトリウム漏えいさせました結果、コンクリート壁の温度が上昇いたしまして、コンクリートから多量の水分が放出されるという結果になりました。  その結果、生成いたしましたナトリウム酸化物が多くの水によって水酸化ナトリウム、いわゆる苛性ソーダになったわけでございます。これが床ライナー上に液体としてたまりました。この上にさらにナトリウム酸化物となって落下して燃えるといった現象が続いたわけでございます。その結果、溶融しております水酸化ナトリウム、それに酸化ナトリウムが加わりました溶融体が、鉄と反応したわけでございます。この中にライナーの鉄がイオンとなって溶け出すという反応が続いたわけでございます。  これを溶融塩型腐食と呼んでおりますが、これは腐食試験を行いました結果でも、この反応が起こりますと、「もんじゅ」とは違いまして百度ほど高い八百度から八百五十度Cという温度状態で、一時間当たりニミリから三ミリぐらいの腐食が進むということも確かめました。都合三時間余り続きました結果では、合計いたしますと六ミリを超えるような腐食が進んだわけでございますし、穴があいたという結果が十分解明できたという次第でございます。  このほか、今回の新しい報告書には、破損して流れました温度計さやが回収されたわけでございますけれども、その間にほかの施設に影響を与えていないかどうか、これも健全性には影響を与えていないことを確認した次第でございます。  また、一次系につきましては、二次系とは違った形の温度計が使われておりますけれども、これにつきましてもナトリウム流れによる振動発生の可能性はないということを確認してございます。  このような結果をもちまして、昨日の段階で報告書を公表させていただきました。原子力安全委員会にも報告をさせていただいた次第でございます。  昨年の秋に、この原因究明と並行いたしまして、既に科学技術庁におきましては「もんじゅ」の安全性総点検を始めてございます。今後は、この原因究明の過程で得られました新たな知見を踏まえまして、安全性総点検に取り組んでまいりたいと存じております。  また、この間に原子力安全委員会からは、二次系ナトリウム漏えいに関する安全評価を行うべしといった指摘をいただいております。今回実験で経験しましたようなことが「もんじゅ」で起こる可能性があるのかないのかといったようなことにつきましても、安全評価の過程で見きわめたいと考えております。このような検討を引き続き進めることとしてございます。  御説明は以上にさせていただきます。
  9. 猪熊重二

    委員長猪熊重二君) 以上で報告の聴取は終わりました。  本日はこれにて散会いたします。    午前十時三十一分散会