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政府委員(
池田要君) この御
説明のために、
報告書に加えまして、全体で七
ページにわたります「
もんじゅ事故の
原因究明に関する
報告書について」という
説明資料を用意させていただきました。
「
もんじゅ」の
事故が起こりましたのは、一昨年の十二月八日でございました。これまでの間に、昨年の五月には
科学技術庁としまして
報告書をまとめてございます。この段階で、
事故の
原因について大筋は解明してございます。
ただ、そのときにはまだ二次系の
冷却系におきまして、全体四十八本の
温度計があるわけでございますけれども、そのうちの一本だけがなぜ
破損に至ったのかといったことについての見きわめがついてございませんでした。
もう一つは、この二次
系ナトリウムの
漏えいによりまして、合計で約七百キロの
ナトリウムが
漏えいして堆積したわけでございますけれども、その際に床の
ライナーの一部、六ミリほどの厚さのところに一ミリほど厚さが減るという結果を生じました。このために、この間の
反応につきましてさらに詳細な
調査をするということにしてございました。
主として、こういった
課題につきましての
調査をこれまでに終了いたしましたので、御
報告する次第でございます。次の
ページ以下に、この
原因究明結果について別紙としてまとめてございます。
この
ナトリウムと
床ライナー等の
化学反応につきましては、五月に
報告書をまとめておりまして、あと六月には
ナトリウムの
漏えい燃焼実験をしてございます。この際には、「
もんじゅ」の
事故では発生いたしませんでした
床ライナーの
破損、穴があくというようなことも認められましたことから、この
原因究明も含めて
検討を行った次第でございます。
次の
ページ以下の
報告書の内容について御
説明させていただきます。
まず、
温度計一本のみが
破損した
原因でございますけれども、
説明資料の
最後から二
ページ目に
参考の一として図を添付してございます。ごらんいただきたいと思います。
もともと五月の
報告書におきまして、
温度計が
破損に至りました根本的な
原因は、
温度計の
さやにつきまして
ナトリウムの
流れによって起こる
振動を回避できなかった、そういう
設計上に
判断ミスがあったということは、既に明らかにしたところでございます。この
振動を回避できなかったために高
サイクル疲労を起こして
破損したということでございますが、今回はなぜ一本だけが
破損したのかということを
調査したところでございます。
破損に影響すると思われますあらゆる
要素を抜き出して
調査をした次第でございます。
その結果、二
ページ目の中段に書いてございますけれども、この
温度計には
センサーが
シースという格好で挿入されてございます。
参考の一にも記してございますけれども、
センサーを厚さ〇・四ミリのステンレスでくるみました非常に細いものでございます。これが、
温度計の
さやの細い
部分では内径が四ミリほどでございますけれども、この
さやに挿入されているということでございますが、
温度計の
さやに
シースの挿入されている
状態によっては
振動の大きさが変わったといったことが明らかになった次第でございます。
すなわち、
シースのちょうど
中間部で曲がって挿入された場合には、
温度計さやの
振動の大きさを抑制する
効果が小さかったといったことが判明いたしました。そのように曲がっている場合には、
ナトリウムの
流れによって
振動するということについての
抑制効果がなかったということでございます。
実際に
実験の結果確かめましたところ、
破損した
温度計の
シースにも、ちょうど細い管の
部分から太い管の
部分にわたります段のついた
部分、これから三・八ミリほど離れたところから、
摺動痕とこの図には書いてございますが、こすられた跡がございました。
実験の結果、このように曲がった
状態で挿入いたしまして
実験をした結果でも、同じような
摺動痕が発生するということも確かめた次第でございます。
以上の事実から、
もともと温度計の
さや自身に
設計の
ミスがございまして、これが
ナトリウムの
流れによって高
サイクル疲労を起こして
破損するということは確かめておったわけでございますけれども、この
シースの入り方によって、曲がって入った場合には悪い結果が如実に出てしまったということでございます。
次に、
ナトリウム漏えい燃焼実験でございますけれども、都合この
実験については二回行っております。一回目は所期の
成果を得られませんでしたけれども、しかるべく知見を得た次第でございます。二回目の
燃焼実験につきましては、「
もんじゅ」と比較をいたしますために、
最後に
参考の二といたしまして、この
実験の結果判明いたしました事実を図示してございます。
「
もんじゅ」の
事故におきましては、
漏えいいたしました
ナトリウムは直ちに
空気中で
反応いたしました。
空気と
反応いたしまして燃えながら床の
ライナー上に落ちて堆積したわけでございます。この際に、堆積いたしました
ナトリウムの
酸化物、これにつきましてはその上にさらに
酸化ナトリウムが堆積するということが続いたわけでございますから、周りの
空気からはある程度遮断された中で、床の
ライナーの鉄との間に鉄と
酸化ナトリウムが
酸化物をつくるといったような
反応が起こったと。これは
ナトリウム・鉄複合
酸化物型の腐食が進んだということでございまして、この結果、これは
実験によりましても一時間当たり〇・二ミリから〇・三ミリの腐食が生ずると。「
もんじゅ」の場合には三時間余りの
漏えいが続いたわけでございますから、結果的には全体で一ミリほどの減肉という結果になったといったことも
説明がついた次第でございます。
実験におきましては、実際には
ライナーに損傷する、穴をあけるといったことを経験したわけでございますけれども、この場合は図で右側のラインをごらんいただきますと、この設備におきましては「
もんじゅ」の施設とは違いまして、コンクリートで囲いました比較的小さな空間で
実験を行った次第でございます。そのために、「
もんじゅ」と同量の
ナトリウムを
漏えいさせました結果、コンクリート壁の
温度が上昇いたしまして、コンクリートから多量の水分が放出されるという結果になりました。
その結果、生成いたしました
ナトリウム酸化物が多くの水によって水
酸化ナトリウム、いわゆる苛性ソーダになったわけでございます。これが
床ライナー上に液体としてたまりました。この上にさらに
ナトリウムが
酸化物となって落下して燃えるといった現象が続いたわけでございます。その結果、溶融しております水
酸化ナトリウム、それに
酸化ナトリウムが加わりました溶融体が、鉄と
反応したわけでございます。この中に
ライナーの鉄がイオンとなって溶け出すという
反応が続いたわけでございます。
これを溶融塩型腐食と呼んでおりますが、これは腐食試験を行いました結果でも、この
反応が起こりますと、「
もんじゅ」とは違いまして百度ほど高い八百度から八百五十度Cという
温度の
状態で、一時間当たりニミリから三ミリぐらいの腐食が進むということも確かめました。都合三時間余り続きました結果では、合計いたしますと六ミリを超えるような腐食が進んだわけでございますし、穴があいたという結果が十分解明できたという次第でございます。
このほか、今回の新しい
報告書には、
破損して
流れました
温度計さやが回収されたわけでございますけれども、その間にほかの施設に影響を与えていないかどうか、これも健全性には影響を与えていないことを確認した次第でございます。
また、一次系につきましては、二次系とは違った形の
温度計が使われておりますけれども、これにつきましても
ナトリウムの
流れによる
振動発生の可能性はないということを確認してございます。
このような結果をもちまして、昨日の段階で
報告書を公表させていただきました。
原子力安全
委員会にも
報告をさせていただいた次第でございます。
昨年の秋に、この
原因究明と並行いたしまして、既に
科学技術庁におきましては「
もんじゅ」の
安全性総点検を始めてございます。今後は、この
原因究明の過程で得られました新たな知見を踏まえまして、
安全性総点検に取り組んでまいりたいと存じております。
また、この間に
原子力安全
委員会からは、二次
系ナトリウムの
漏えいに関する安全
評価を行うべしといった指摘をいただいております。今回
実験で経験しましたようなことが「
もんじゅ」で起こる可能性があるのかないのかといったようなことにつきましても、安全
評価の過程で見きわめたいと考えております。このような
検討を引き続き進めることとしてございます。
御
説明は以上にさせていただきます。