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1997-05-16 第140回国会 衆議院 労働委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月十六日(金曜日)    午前九時三十分開議 出席委員   委員長 青山  丘君    理事 荒井 広幸君 理事 大野 功統君    理事 佐藤 剛男君 理事 森  英介君    理事 河上 覃雄君 理事 桝屋 敬悟君    理事 岩田 順介君 理事 金子 満広君       飯島 忠義君    大石 秀政君       河井 克行君    栗原 裕康君       小林 興起君    桜田 義孝君       竹本 直一君    棚橋 泰文君       能勢 和子君    藤波 孝生君       一川 保夫君    鍵田 節哉君       塩田  晋君    西田  猛君       山中 燁子君   吉田  治君       近藤 昭一君    中桐 伸五君       松本 惟子君    大森  猛君       平賀 高成君    辻元 清美君       畑 英次郎君  出席国務大臣         労 働 大 臣 岡野  裕君  出席政府委員         労働政務次官  小林 興起君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省労働基準         局長      伊藤 庄平君         労働省婦人局長 太田 芳枝君  委員外出席者         労働委員会調査         局長      中島  勝君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十六日  辞任         補欠選任   粕谷  茂君     栗原 裕康君   河井 克行君     桜田 義孝君   福岡 宗也君     山中 燁子君   大森  猛君     平賀 高成君   村山 富市君     辻元 清美君 同日  辞任         補欠選任   栗原 裕康君     粕谷  茂君   桜田 義孝君     河井 克行君   山中 燁子君    一川 保夫君   平賀 高成君     大森  猛君   辻元 清美君     村山 富市君 同日  辞任         補欠選任   一川 保夫君     福岡 宗也君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  雇用分野における男女均等機会及び待遇  の確保等のための労働省関係法律整備に関す  る法律案内閣提出第二九号)      ――――◇―――――
  2. 青山丘

    青山委員長 これより会議を開きます。  内閣提出雇用分野における男女均等機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河井克行君。
  3. 河井克行

    河井委員 皆さんおはようございます。自由民主党の河井克行です。  きょうは、この委員会にかけられております男女雇用機会均等法改正する法律案につきまして、党を代表して締めくくりの質疑にこうやって臨ませていただく本当に貴重な機会をいただきまして、深く感謝を申し上げたいと思います。  もちろん今回のこの法律改正案には賛成する立場からの質疑をさせていただきます。といいますのは、今回のこの改正は、いわゆる雇用分野における男女均等な取り扱いを一層促進し、同時に女性皆さん方の職域の拡大を図るということでありまして、このような画期的な法律案審議労働委員として参画できましたこと、本当に光栄だというふうに思っております。そしてまた、労働大臣橋本龍太郎総理が一生懸命訴えられていらっしゃいます、日本の国を男女共同参画社会にこれから大きくかじ取りをしていこうということにつきましても、大変大きな前進だというふうに高く評価をさせていただきたいと思います。  と申しますのは、今回のこの法案審議につきまして、私も、いろいろな地域、そしてさまざまな職種に携わっていらっしゃる、実際に働いていらっしゃる女性皆さん方と数多く意見交換をさせていただきましたところ、ほとんどすべての女性から、今回の法律案改正には賛成だというふうに大変力強い評価をいただいたわけであります。  といいますのは、女性だということだけで保護されているというのは、逆に、今の時代差別的だというふうな評価、あるいは法律がようやく時代の流れに追いついた、あるいは労働現場の実態に追いついただけだ。だけと言いますと、せっかくつくっていただいた大臣とか局長さんに失礼ですけれども、一般の労働現場では、至極当然のことだという受けとめ方が多うございました。  また、ある企業で聞いたお話を一つ紹介させていただきますと、せんだっても労使協議の席で、働く女性立場の方の代表者が、真顔で、どうして女の人だけ十時以降働いたらいけないんですかねというふうに使用者の方に質問をした、そして使用者の方は大変困惑したというふうな事例もあえて紹介をさせていただきたいと思います。  また、今は特に就職氷河期だと言われておりますので、これによって女子学生の就職する環境が、もちろん最後自分で一生懸命努力しなければいけないわけですけれども、環境が少しはよくなっていくのじゃないかなというふうに評価させていただきたいと思います。  しかしながら、その一方で、今回、女子保護規定撤廃されるということによりまして、労働が強化されるとか、あるいは、ひいては少子化が進むというふうな議論、見方、考え方が一部にあるのもこれは事実でございますけれども、私は、特に少子化問題というのに自分政治生活をかけてこれからしっかりと一生懸命取り組んでいきたいと思っておりますので、少子化に差しさわるというふうなことを言われますと、自称少子化問題担当大臣としましてはこれはやはりちょっと問題だ、この問題はほっておけないというふうに考えております。  この少子化といわゆる今回の法律改正とは全く違う次元の問題であるというふうに私たち認識をしているわけですけれども、改めまして婦人局長さんにお尋ねをしたいのですけれども、これは要らざる心配だということを全国の働く女性皆さん方に、こういう機会を通じてもう一度お伝えをしていただきたいと思います。お願いいたします。
  4. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  今回の法律改正は、先生おっしゃるとおり、性により差別されることなく、男女同一労働条件の基盤に立って働くことを求めている女性たちの声に十分こたえることができるものだというふうに私たちは考えているところでございます。  なお、しかしながら、働く女性がその能力を十分に発揮できるためには、規制の解消とあわせまして、男女がともにバランスのとれた職業生活家庭生活を送り、働く女性たちが安心して子供を産み、育てることができる環境整備するということが非常に重要であるというふうに思うわけでございます。  このため、労働省では従来から、時間外労働の上限につきましては、三六協定の目安をつくりましてその適正化に努めるなど、労働時間の短縮を推進しているわけでございます。また、労働安全衛生法に基づきまして労働者健康確保の問題とか、それから基準法に基づく妊産婦の時間外労働、深夜業等の制限など、母性保護のための諸規定整備充実をしておるわけでございます。また、今回の改正法案でも、育児介護休業法改正いたしまして、育児介護を行う一定範囲男女労働者が請求した場合は深夜業には従事させてはならないということを予定しているわけでございます。  そういうようなことでいろいろと環境整備を図っているところでございまして、先生おっしゃいますように、少子化との関連でございますが、少子化の原因というのは、これはいろいろ多岐にわたっているものと考えておりまして、女子保護規定撤廃ということとは直接の因果関係はないというふうに考えておるところでございます。
  5. 河井克行

    河井委員 今おっしゃるとおりだと思います。  今回の改正によりまして、例えば双子以上の胎児を妊娠した場合は産前休暇が十週間から十四週間に延長されるというふうな規定も入っておりますし、先ほどの、少し御紹介申し上げました、働く女性立場方々との意見交換の場でも、これだけはわかってほしいと言って、逆に私がそのように皆さんから教えてもらったのは、女性保護葦母性保護とは全く違うのだと。もちろん女性特有のいろいろな肉体的な条件はありますから、例えば重たい物を持ってはいけないとか、そういうものはもちろん重要ですけれども、女性保護母性保護とは違うのだ、これをぜひ強調していただきたい。  そうしませんと、いつまでたっても、女性だというだけで何か安全地帯に逃げ込んでいくというふうな事柄が一部まだ日本女性皆さん方の中に、意識といいましょうか認識にも、率直に申し上げましてまだ色濃く残っているわけでありますので、私は、今回のこの法の改正というのは、そういう意味女性の甘えも取り払ういいチャンスじゃないかなというふうに考えております。  といいますのは、少し私の個人的な話をさせていただきますと、私の母は薬剤師でございまして、私が小学校の一年生のときに、本当に小さな小さな、猫の額どころかネズミの額ぐらいの大きさの薬局を開業いたしました。それから私は小学校、中学校、高等学校時代、夜九時より早く家で家族そろって夕食をいただいた記憶は一度もございません。一度、普通のサラリーマンの家庭に遊びに行ったとき、まだ日が高いうちから、夕方六時ごろからお父さんも入れて食事をしていらっしゃる。何か本当にうらやましいなというか、それまでは自分家庭が普通だと思っておりましたので、ちょっとあの家はおかしいのじゃないかというふうに家に帰って両親に言ったところ、どうもそうじゃない、普通の家は大体夕方になったら食事をするものだというふうな話を聞かしていただいたこともありました。  もちろんそういう形ですから、母も、自分薬局のお金の算段とか支払いの算段とか、それからまた、もちろんいろいろな営業活動もしなくてはいけません、また父の身の回りの世話もやはり必要最小限度はしなくてはいけない、そして私と妹の育児そして教育というのにも一生懸命力を尽くしてくれたというふうに思っております。そして三十数年たちまして、曲がりなりにも私と妹もこのように大きく成長をすることができました。これは本当に、父親ももちろん重要ですけれども、母の力の偉大さということだと思っております。  きょうは能勢委員はまだいらっしゃっていないのですけれども、先日も、能勢先生看護婦の御出身ですけれども、その話をしておりました。社会では、例えば農林業とかそういうふうな自営業の方々の中で、実際、労働時間の拘束があってなきがごときという家が数多くございます。では、そういう家のお子さんは本当に、ちゃんと成長していないのか、みんなが不良に走っているのかというふうなことは言い過ぎだと私は考えておりますので、最後は、そのお父さん、お母さん、特に女性の自覚だと考えておりまして、別にそういうことがどういうふうな家庭をつくっていくかということとは全く関係がない、ひとえにその人個人の問題だと私は考えております。  そういうふうな自分の個人的な思いもございますので、今回のこの法の改正によりまして、本当の意味で、働く女性がもっと日本社会の中で立派な地位を占めて、そしてどんどん活躍をしていってもらいたいというふうに心から念願をさせていただいております。  先ほど冒頭に、今回のこの法律改正には私は基本的に賛成だと申し上げましたけれども、数日間に及ぶいろいろな質疑、そしてまた我が党の委員先生方からの質問、あるいは参考人への質疑などで、若干、もう少し突っ込んでお尋ねを申し上げたいということが二つだけ浮かび上がってまいりましたので、質問をしてみたいと思います。  まず一点目は、今回の改正によりまして、女性の募集・採用、配置・昇進教育訓練のいろいろな部分におきまして差別的な行為があったときは企業名公表制度が設けられることになったわけですけれども、これは一種社会的な制裁だと私は考えております。とするならば、やはりそれに至るまでの助言指導勧告をこれまでよりも適正に運用することが労働省としても必要なことだと厳格に求められてくると考えておりますけれども、その点、局長さん、御見解をぜひ教えていただきたいと思います。
  6. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 行政指導は、助言指導勧告という形で、段階を踏んで実施するものでございますけれども、先生おっしゃいますように、企業名公表は、このような行政指導最終段階であります勧告をしてもそれに従わない事業主に対する社会的制裁措置として創設いたしたものでございます。  そういうことで、これは社会的な措置でもございますので、その前の助言指導勧告を含めまして、公正な基準、手続によって実施されるべきであることは当然のことでございます。今後とも適正な運用を図ってまいりたいと考えております。
  7. 河井克行

    河井委員 重ね重ね申し上げますけれども、これは企業に対する一種社会的制裁の側面が強いというふうに私は思っておりますので、どうか厳格な、そして本当に適正な運用をしていただきますよう、重ねてお願いを申し上げたいと思います。  それともう一点、ポジティブアクションというのが今回設けられたということなんですけれども、この委員会の席でも、いろいろな先生方質問をされまして、大臣とか局長答弁も伺ったのですが、このポジティブアクションというのがなかなかわかりにくうございまして、最初、私の頭が余りいいことないものですから、頭が悪いから理解できないのかなと思ったら、我が党の委員先生方にも聞いたら、いや、わしもようわからぬのじゃとおっしゃる先生方が実は数多くいらっしゃいますので、もう少しわかりやすく、ポジティブアクションとは一体どういうものかということについて教えていただきたいと思います。
  8. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 現在、これまでの企業におきましては、男女の固定的な役割分担意識とか、それから過去の女性使い方男性使い方違い等、そういうものの積み重ねによりまして、例えば、営業職には女性がほとんど配置されていないとか、課長以上の管理職男性が大半を占めているというような差が男女労働者の間に生じているということが多いわけでございます。  このような差は、均等法上の女性労働者に対する差別を禁止した規定を遵守するだけではなかなか解消できないものであるということでございまして、ポジティブアクションというのは、こういうような差の解消を目的といたしまして個々の企業が進める積極的な取り組みのことを指すものでございまして、男女均等機会及び待遇を実質的に確保するためには望ましいものだということでございます。  そして、そのポジティブアクションの具体的な内容としましては、女性労働者が各企業でどのように配置されているかというような状況分析してもらう。そして、その分析に基づいて、今申しましたように、例えば営業職をふやすとかいうようないろいろな改善計画を作成するということ。そして、計画に基づいて実際に具体的な取り組みをしてもらう。また、その実施体制整備というようなことが挙げられるわけでございますが、これすべてをするというわけではなくて、そういうような取り組みはそれぞれの企業に応じていろいろな形が考えられるわけでございます。  例えば、分析をした結果、勤続年数が長い女性たちがたくさんいるのだけれども、管理職になっている女性労働者が極めて少ないというような場合、企業計画をつくっていただいて、三年間で女性管理職二〇%増加というような目標を掲げて、女性管理職候補者を対象とする研修を実施していただくとか、それから、昇進昇格試験の受験を、女性たちに受けなさいよというような形で奨励してもらうとか、それから、昇進昇格基準明確化を行っていくというようなことが考えられるわけでございます。
  9. 河井克行

    河井委員 局長さんの御答弁で少し理解が進んだような気もしないわけじゃないのですけれども、このポジティブアクションというその言葉遣いが、もう少しいい日本語、美しい日本語労働省の衆知を集めてぜひおつくりいただければありがたいなと私は思います。  といいますのは、これは、私の個人的な経験で余計思うのかもしれませんけれども、アメリカでは、いわゆるポジティブアクションとかアファーマティブアクションといいますのは、結果の均等まで踏み込んだ策をいう場合が多いのですね。日本はあくまでもいわゆる機会均等ということですけれども、結果の均等まで踏み込んでいる場合もこのアファーマティブとかポジティブアクションという言葉を使う、現に使っているわけですから、その辺で誤解ということも生まれかねないな、そんなふうに思っております。  いずれにしても、労働省だけじゃなくて、日本政府はもう少しきれいな日本語を、できるだけ翻訳を、そのままばあっと使うのじゃなくて、ちょうど、明治のときに福沢諭吉先生がスピーチを演説というふうに訳したように、女性ならではのしなやかな感性で美しい日本語をぜひお考えいただきたいと思いますと同時に、これ、私たちでもわからないのですから、わかりやすく周知するためにも、ぜひ一段の御努力をお願いいたしたいと私は思います。いかがでございましょう。
  10. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 ポジティブアクション名称につきましては、御指摘を踏まえて、美しい日本語というところまで先生の御期待に沿えるかどうかあれでございますが、さらに検討をしてまいりたいというふうに思っております。  それとあと周知でございますけれども、周知方策につきましては、既に学識経験者によります研究会におきましていろいろと検討をしまして、その結果を、女性労働者能力発揮促進のための企業自主的取り組みガイドラインということでまとめたわけでございます。労働省といたしましては、まとめましたそういうガイドライン、それから、それと一緒にまとめました問題発見のためのワークシートというようなものを活用いたしまして、各企業取り組みを促進していきたいというふうに考えております。その際には、名称も含めまして、よりわかりやすいパンフレットもつくりまして、周知に努めてまいりたいと思っております。
  11. 河井克行

    河井委員 今の点につきましては、各都道府県に設置をされております婦人少年室役割が随分大きいと思いますので、ぜひ指揮の方をしっかりとしていただきたいと思います。  最後に、これからの労働関係法規全般改正の展望について、大臣にもしできましたらお答えを  いただきたいというふうに思っております。  今回の改正は、大変大きな第一歩だというふうに冒頭申し上げましたけれども、私は、富士山の登山で例えましたら、そうはいってもまだてっぺんまでは登っていないというふうに考えておりまして、大分いいところの何合目までかは上がったかもしれませんけれども、まだまだ、日本のこの労働法規をさらに時代の趨勢に合わせて変えていかなければいけない部分があるというふうに考えております。  その点、二つお尋ねをしたいのですけれども、まず一つは、今回のこの改正法案には、いわゆるセクシュアルハラスメントについての配慮規定が初めて日本法律としては明文という形で盛り込まれました。私は、これは大変画期的なことだというふうに考えております。先ほど御紹介しました働く女性皆さん方と話をしておりましても、女性保護規定撤廃だとか差別行為の禁止ということよりも、むしろこのセクハラの条項の方が自分たちにとっては新鮮だ、注目をしたいというふうな意見もたくさんございました。  しかしながら、今回のこのセクハラ配慮規定につきましては、あくまでも男性女性に対して、歓迎されない性的ないろいろな言動によって職場の中でいろいろな不都合を生ぜしめるということでありますので、あくまでも男性女性に対してという一方通行というふうになっております。もちろん、日本社会が長らくいわゆる男尊女卑の慣習といいましょうか雰囲気があったという中で、今回、その一方通行だけの規定が盛り込まれたということは理解できないわけではございませんけれども、やはりこれから女性がどんどん社会の中でも、そしていろいろな企業の中でも昇進をして、女性上司男性部下を使うということが、今でも多いですけれども、今後ますますふえてくるのじゃないかなというふうに思っています。  特に私たち若い世代でいいますと、これはもうはっきり言いまして、同級生ぐらいでは女の人の方がはるかに強くてたくましいのが現状でございますので、今後は、女性上司男性部下に対するセクシュアルハラスメントも、現にもう既に起こっているわけですけれども、その頻度がふえていくのはこれはもう明らかだと思っておりますし、また、男性同士とか女性同士セクハラだってこれから生まれないとも限らないというふうに思っておりますので、この点について、性差別全般についてさらなる改正をするべきじゃないかというふうに私は思っております。  大臣、その点につきまして、まず一点目、御認識をお聞かせいただきたいと思います。
  12. 岡野裕

    岡野国務大臣 セクシュアルハラスメントにつきまして河井先生が言及なさいましたので、ポジティブアクション同様中身が定かでないというおしかりか、こう思っておりましたら、セクシュアルハラスメントの方はどうやら概念が国民に定着をしている、したがっておしかりをいただかないで済んだのかな、ポジティブアクションについてもぜひそういうふうにしてまいりたい、こう思っておりますことをまず一言。  やはり今回の男女雇用機会均等法は、女性男性より劣位に置かれるという差別着目をして、これを払拭しようということだというお話をいたしました。したがいまして、その法律明文セクシュアルハラスメントという片仮名は出てまいりませんけれども、やはりセクシュアルハラスメントにつきましても、今の現状男性によるところの女性に対するセクシュアルハラスメントの方が圧倒的に大きいということに着目をしまして、本法の趣旨に基づいて本件についてのみ環境づくり規定いたしました。  しかし、将来、先生がおっしゃいますように、男性についても女性から行われるであろうところのセクシュアルハラスメント、これはないわけではなく、あるいはふえていく傾向にあるのかも存じません。したがいまして、その節はその節というようなことで、今回は一歩一歩石段を登るという意味合いで、男性からするところの女性に対するセクシュアルハラスメント、これについて規定をいたしました。今後、また運用状況等々、世のさまの移り変わりに従いまして、それに即応する法律をつくってまいるのが国としての役目だ、こう心得ているところであります。
  13. 河井克行

    河井委員 次に、二点目なんですけれども、時間管理あり方についてお尋ねをしたいと思います。  工場労働とそれ以外のステージでは、やはり随分仕事の性質そしてまた雰囲気が違ってきているというふうに私は考えておりまして、工場労働以外の職場においても今の労働基準法というのは、いまだ十九世紀的な女工哀史のああいう世界をずっと引きずってきているというふうに考えておりますけれども、これだけ高度情報化社会になってきまして、そういうふうな製造現場以外のところでも日本経済のいろいろな分野が大きくなっている今、そういうふうな昔の旧態依然たる時間管理、そして労務管理ばかりやっておりますと、二十一世紀の日本経済のあすはないというふうに考えております。  そして、労働大臣就任早々から、今回、七月ごろを目途として中基審の方の審議、これについても対応していきたいというふうにおっしゃっていますし、ぜひそういった新しいあり方労働基準ということをつくっていっていただきたいというふうに思っておりますけれども、あと時間が約四、五分ございますので、最後労働大臣のその辺の今後の労働法制改正についての青写真、見取り図を改めてお聞かせいただきたい。たっぷり時間がございますので、ぜひいろいろと教えていただきたいと思います。お願いいたします。
  14. 岡野裕

    岡野国務大臣 いつも長くてしかられておりますのに温かいお言葉をちょうだいして、ありがとうございます。  やはり、世界そしてその中の日本の産業構造といいますものは、大きく二百年、百年、あるいは最近十年の間にどんどん変わりつつある。かつては、一次産業中心であった。重農主義から、それから今度は二次産業、三次産業というようなことで、全体のそれに従事する働く皆さんの数、これもどんどん推移をいたしております。そういうような状況変化に即応した労働関係法というものを我々は心がけなければ、言いますならば夢物語に終わってしまうということであります。  そういうことで、もう既に労働三法ができましてから、基準法ですら五十年、あと二法については集団的労働関係でありますのでもう一年ぐらい早くから始まっている。しかしながら、労働基準法についての改正というものが余り顕著には、少しずつ行われておりますけれども、行われておらない。しかし、先生がおっしゃいますような情報化というものが大きく広がってきている。一方、働く皆さんの場合にも、高齢・少子化というような言葉があります。  したがいまして、私といたしましては、まず労働基準法規定、これを五十年たった今日の時点において、なおかつ五年、十年を展望しまして、もう一度一つ一つの問題について洗い直していかなければいけないのではないかというようなことで、今、例えて言いますならばブルーカラーの皆さん、これは流れ作業等々でやってまいる、それに労働を提供するのでありますが、ホワイトカラーの皆さんになってまいりますと、サービス業等々におきまして、非常に労働の提供の態様が変わってきている。これをつかまえまして、やはり裁量労働制でありますとか、あるいは、製造業等におきましても変形労働時間制というようなものも積極的に取り入れていかなければいけない、あるいはそれを拡大していかなければならない。  あるいは、労働基準法の骨子となっておりますところの、労働契約は一年を限度とする、先生がおっしゃいました、十九世紀から二十世紀の前半にかけまして女工哀史というお話がございましたが、そういった時代ではやはり長期的にああいう皆さんを拘束する、拘束労働時間もうんと長かったというようなことで、戦後はその弊にかんがみて労働契約は一年というようなことが基本的に条項としてうたわれておりますし、そういう皆さん着目して、皆さんが一緒にお昼御飯を食べ、皆さんが一緒にラジオ体操だかバレーだかをやる、一斉休憩というようなものになっておりますが、今日は、それは随分もう現実離れしているのではないかなと。  それから、超過勤務の形態あたりも、拘束労働時間はうんと長いけれども実労働時間はそれとは違うというような意味合いもあったりいたしますので、超過勤務あるいは休日労働、これらのあり方もいかがなものであろうかというように、思い当たるところがいっぱいございました。  よってもって、私は、中央労働基準審議会の諸先生に、今お話をいたしましたようなこれこれこれらの問題、その他まだございますが、これらをぜひひとつ御審議を賜りたい、でき得べくんば、今年七月末までには、何らかの中間的なお考え方でも結構でありますのでお聞かせを賜りたいというようなことで推移をいたしております。そういうような諸先生の立派な御見解等々が出まするならば、それを踏まえまして、私どもとしては、労働基準法を初めとする法律の見直しというようなこともやってまいろうと思っております。  ちょうど十時に相なりましたので、以上をもって答弁といたします。
  15. 河井克行

    河井委員 大変ありがとうございました。
  16. 青山丘

    青山委員長 これにて河井克行君の質疑は終了いたしました。  次に、山中燁子君
  17. 山中あき子

    山中(燁)委員 新進党の山中燁子でございます。  限られた時間でございますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。  一九八五年の国連婦人の十年のナイロビ会議のときに、私も北海道の代表として出席させていただきました。そのときには、もう本当に、ナイロビ全体が活気に満ちて、これからの来るべき未来へ向けて期待感にあふれておりました。冷戦から雪解けへと展開する世界の潮流を受けて、平和の予感と、それから、女性問題、人権問題を初めとするさまざまな問題への世界的な取り組みがいよいよ可能になる、そういった希望で灼熱の国はほとんどもう熱気でいっぱいでございました。  たしか七月だったと思いますけれども、日本でこの均等法が、とにかく滑り込み、七十四番目ということで、難産の末誕生いたしました。やっとこの会議に間に合ったという思いをしたことを思い出しております。  それから以後、労働省婦人少年室を初め、全国各地でさまざまな努力が重ねられまして、今回の改正には大きな期待があります。しかし、現実に提出されました法律にはまだまだ問題点が非常に多いのではないかというふうに思っております。  御存じのように、国連の人間開発指標の中で、ジェンダーエンパワーメントの測定というのがございますが、それの一位がスウェーデン、二位がノルウェー、フィンランドが三位、デンマークが四位、カナダが五位、日本は二十七位でございます。そのスウェーデンは、一九七五年の時点で男女役割分担を既にきちんと否定しておりまして、そして一九七九年には大規模な改革を行いまして、八〇年には、御存じのように、男女の平等のための均等のオンブズマンも設立しております。  また、同じように、英国も、一九七五年に性差別禁止法というものを制定いたしまして、機会均等委員会を設立しております。  こういった流れで、かなりおくればせながら日本が今均等法改正ということにこぎつけたわけですが、大臣は今回のこの法案に関するその意義と位置づけがおありと思いますので、簡単にお聞かせ願えれば幸いでございます。
  18. 岡野裕

    岡野国務大臣 ナイロビの世界婦人会議に御出席の趣で、何よりの機会でよろしゅうございました。  私ども日本におきましても、婦人週間、四十九回目を数えております。ということで、ますます充実をした施策を進めてまいりたい、こう思っております。  やはり本法の趣旨、これは、女性が性別によって差別されるということを今回抜本的に、十一年の現行法を踏まえまして改正をしてまいりたい。そういう均衡状態をつくることによりまして、女性の職域が大きく拡大され、女性としての能力を存分に発揮なされ、そしてそれが社会的に正当な評価をされ、生きがいのある女性皆さん職場生活及び家庭生活を両立させよう、よってもって少子・高齢化社会にもさお差そうというような、欲張ったもろもろの考え方を踏んまえまして今回の改正法案をつくりました。
  19. 山中あき子

    山中(燁)委員 大臣のその意気込みが本当に実現しますようにというふうに願っております。  それでは、具体的に少し中身に入らせていただきます。  まず、労基法の改正についてでございますけれども、時間外、それから休日、深夜労働についての女子保護規定撤廃するということで、これは、撤廃するワーキングエンバイロンメント、つまり働く環境が整っているという御認識でいらっしゃいますでしょうか。
  20. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 この均等法ができましてから十年余の間に、労働時間はこの四月から週四十時間ということで、法規制がかなりきちっとなったわけでございますし、また、育児介護休業法等も制定されまして、男女労働者家庭生活職業生活を両立していくというような環境もそろってきたということで、かなりその条件は整ってきたというふうに考えております。
  21. 山中あき子

    山中(燁)委員 かなり整ってきたというお話でございますけれども、撤廃するためには、男女ともに働く環境が望ましい方向に向かうということでなければその意味がないわけで、それが悪化するのではないかという懸念がされるという状況が想定される場合には、非常に慎重に考えなければいけないと思っております。  それで、先日の新聞報道にもありましたように、現実にスイスにおきましても、日本と非常に共通点が多くて、実はスイスというのはヨーロッパの中で労働時間が一番長い国でございますし、女性の平均賃金が男性との格差がありまして、それが六八%、日本よりもまだ格差が大きいくらいの国ではございますけれども、九六年三月に政府が通しました工業、農業、商業における労働に関する連邦法というのの改正の国民投票で、九六年の十二月一日、六七%の反対でそれが覆されたということがございます。  その理由は、スイス・レビューという向こうの雑誌によりますと、国際マーケティングのプレッシャーによって政府が、労働者を確保する、そういう発想から通過させた法案であったということと、それからEU統合を前にして国際的な競争力をつける、そういう意味合いもあった。  しかし、労働は人間の提供する、役に立つ、有用物であるという発想が、人間の側からの発想という点で、労働組合とのいろいろな協議の中の非常に大事な、例えば深夜労働の割り増し賃金の削除、あるいは同意なしに年間六日間の日曜出勤を認める、そういったことを途中で変更した結果、最終的には女性にとって非常に厳しいものになってしまったという現実があります。  こういうようなスイスの例を見まして、現在かなり整ってきているというようなスタンスで本当に大丈夫というふうに労働省としてはお考えでしょうか。
  22. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 大丈夫というふうに考えております。
  23. 山中あき子

    山中(燁)委員 実労働時間というのは、私が申し上げるまでもなく、ドイツが三十八・三、フランスが三十九、カナダが三十・九、オーストラリアが三十九・八、イギリスが四十・一、アメリカが三十七・七というようなことになっておりますし、日本がせっかく目標値として掲げました千八百時間というのがまだ実現されておりませんけれども、今回の女性保護撤廃ということがプラスに働くには、男性女性と同じように、労働にかかる負荷が軽減されていくということが大事でありまして、日本の場合は、先ほど三六協定ということもございましたけれども、日本とアメリカが先進国の中で時間外労働についての上限がない、ほかの国は、まあ英国の場合には不文律でございますけれども、きちっと協定がある。  そういうようなことを見ていきますと、これで本当に保護規定撤廃して、女性にさらに負荷がかかるという状況にならないのかどうか、その辺のところをもう一度、確認でございます、大丈夫とおっしゃるなら大丈夫と言っていただいて結構でございますが、確認させていただきたいと思います。
  24. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 ただいまの先生の御指摘、この保護規定解消をされた後の姿としていわば男女共通の何らかの時間外労働等についての枠組みがなくて大丈夫か、こういう御指摘と理解させていただきましてお答えさせていただきます。  確かに先生御指摘のように、ドイツ、フランスの大陸系の労働法制とアメリカの労働法制との違い、特に時間外労働については大分際立っておるわけでございますが、我が国がそういった中で今後どういう道を選択していくかというのは大いに議論があってしかるべきところであろうというふうに考えております。  ただ、我が国の場合、時間外労働等につきましては、時間外労働をある程度景気の変動の中で増減させることによって雇用調整を行い、雇用の安定の役割を果たしている面、あるいは深夜業等についても、広域的な社会活動等を維持していく上で不可欠な一面もあることも事実でございます。そういった意味で、もし直接的な規制ということになれば、これは慎重な検討が必要であろうと思います。  ただ、いずれにいたしましても、この保護規定解消された後、女性の方ももちろん職場進出が一層進むわけでございます。そういった中で、男女の勤労者とも家庭あるいは地域生活等との調和をどう図りながら能力を発揮していくかという課題、今まで以上に大きい課題になろうかと思いますので、そういった観点も含めまして、現在、中央労働基準審議会の方で時間外労働、休日労働、またそれに関連する深夜業等の問題についてもこれからのあり方について御検討を願っておるところでございます。そういう結果を十分踏まえて対応してまいりたいと思っております。
  25. 山中あき子

    山中(燁)委員 前のどなたかの質問でも出たと思いますけれども、妊娠看護婦の三割が切迫流産、それから四割が正常出産ができないというような統計も出ておりますし、そういう意味で私自身はこれは不十分であるという認識に立っております。今おっしゃいました労働基準法審議会の中で千八百時間というのに近づける努力をしていただいているということですけれども、その実現の見通しについてぜひもう少し詳しく教えていただきたいと思います。
  26. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 千八百時間に向けて私ども努力している、その達成の見込みでございますが、千八百時間を達成する際に幾つか重要な柱がございます。  一つは四十時間制、これを完全に定着させること、それからもう一つが長時間労働、これを削減すること、それから有給休暇の取得の問題、そういったことをあわせまして一つのモデルを考えますと、御指摘の残業の問題につきましては、大体百五十時間をやや下回る程度までいかないとこの千八百時間が達成できない。現実の水準が、平均でございますが、大体百五十時間前後が年間の平均的な残業でございます。私ども、この問題等あわせまして、四十時間制を完全定着させること、有給休暇の取得促進、そういったことをあわせてこの千八百時間に少しでも近づいていく努力を、現在の計画期間の終わりが目標になっておりますので、そこに向けて最大限の努力をいたしてまいりたいと思っております。
  27. 山中あき子

    山中(燁)委員 もう一度お願いといいますか、希望を申し上げますが、この法律を施行するまでにぜひその辺の受け皿をきちんとつくっていただきたい。それを前提として賛成をするというくらいの気持ちで、それができなければこれに対しては私は非常に疑問を感じております。  それから次の質問ですが、続きましてILOの百五十六号条約、その他いろいろありますけれども、こういった国際的な条約に合致して公開して大丈夫な法律ですか。
  28. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 ILO百五十六号条約は日本が批准をしているものでございますので、今回も、特に男女労働者家庭生活職業生活の両立という観点にはかなり配慮をして法律はつくらせていただいたつもりでございます。
  29. 山中あき子

    山中(燁)委員 百七十一号についてはいかがですか。
  30. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 百七十一号条約、夜業条約でございますけれども、これはまだ批准はしておらないわけでございます。いろいろとまだその批准には幾つかの問題点があるものでございます。
  31. 山中あき子

    山中(燁)委員 できるだけ早く批准していただいてそれに合致する基準をつくらないと、二十一世紀に向けて日本がこれから出す法律としては非常に国際的に説得力が乏しいというふうに思います。いつごろまでに百七十一号は批准の見通しでいらっしゃいますか。
  32. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 この点につきましては、今も申し上げましたように、今後幾つか検討をしなければいけない課題がございますので、検討はしていきたいというふうに思っております。
  33. 山中あき子

    山中(燁)委員 検討をいつまで続けられるかわかりませんが、日本の場合に、例えば世界遺産も二十年かかりましたし、先日通りました南極の環境条約も五年、六年かかって、最後の三つになってしまった、そういうような現状もあります。やはり二十一世紀には国際社会の一員、グローバルな世界の一員として進むのであれば、早くその辺を同時進行を進めて、やはりこれが発効するまでにはそこのところもきちっとやっていただきたいというふうに思います。  それでは次の質問に移らせていただきたいと思います。  次は、育児休業などに関する法律の改定についてでございます。  私は、やはり進んだ社会というのは、社会の発展のプロセスの中に参画する権利と機会と責任をそこにいるすべての人がひとしく与えられるということだと思います。そういう意味で、この育児休業に関して、女性が当然すべきであるというような、今の場合は女性差別撤廃するということになっておりますけれども、やはり今申し上げましたように百七十一号の条約を早く締結していただいて、これは男性女性も同じように享受できるというふうにしていただきたいと思っております。  例えば、日本の場合には産前六週間、産後八週間というような基準がございますけれども、申し上げるまでもなく、例えばデンマークの場合には産前四週間、出産時は父親も十四日間の休暇がとれますし、その後二十四週間は、これは無給ですけれども、どちらもとれて、そしてもとの職場に復帰できるという結構長いスパンでございます。また、イギリスの場合には、産前十一週間、出産後は二十九週間、合わせて四十週間、そういった休暇がとれる体制になっておりますし、そのときに、休暇の前に軽い労働にかわっても給料は保障するというような発想になっております。  ですから、その点も含めまして、女性の多くの就労形態がありますので、この辺で一つだけ質問しておきたいのは、パートタイムの人たちが大変に厳しい苦しい労働条件に置かれていますけれども、イギリスの場合にはパートタイムも含めて、雇用形態にかかわらずそういった休暇がとれることになっておりますが、日本の場合はその辺はこれからどういう方向に持っておいきになるか、御意見を伺いたいと思います。
  34. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 育児休業の制度がとれるかということかと存じますけれども、パートタイム労働者においてもそれは取得することができるわけでございます。
  35. 山中あき子

    山中(燁)委員 とれますけれども、その内容的なものというのをもう少し充実させていっていただきたい。今、欧米並みにということはいろいろな状況でできないにしても、日本の場合には、例えば深夜業の制限、今回の改正でも介護その他は一カ月前に連絡をして、そして一人の子供について一回とれるというようなこと、あるいは介護の場合には、六カ月とか三カ月とかというようなことで高齢者の介護が終わるというふうには思えませんので、その辺のところの充実はぜひ図っていただきたいと思います。  それでは次の質問に移らせていただきますが、均等法の改定についてでございます。  その中で、男性女性ともに職業生活を選ぶのか家庭生活を選ぶのか、または両方選ぶのかというような選択が自由にできるという発想からいたしますと、職業生活家庭生活の調和を図るという文言を削除になっておりますけれども、逆に言えば、これは男性女性両方ともにそれを目的としていただきたかったという気持ちがあるのですが、その辺についてはいかがでいらっしゃいますか。
  36. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 家族的責任は、先生がおっしゃるように、男女ともに担うべきものであるわけでございます。ですから、女性労働者についてのみ「職業生活家庭生活との調和を図る」ということを法律の基本的な理念に残して、それで施策を講ずることは、かえって男女役割分担を固定化するという弊害を生ずるおそれがあるというふうに考えたわけでございます。  したがいまして、現行法にあります、女性労働者について「職業生活家庭生活との調和を図る」ということの文言を削除することとしたわけでございます。
  37. 山中あき子

    山中(燁)委員 これは男性女性が平等に享受するというよりも、女性部分差別を少しずつなくしていくという過程の法律であるから、そういう形になったというふうに理解しておりますが、私自身の気持ちとしては、もうその段階を超えて世界は動いているというふうに思いますので、これから両方がどういうふうに享受していくかという次の段階を目指したものも、次の過程で進めていっていただきたいと思います。  具体的にあと少し御質問したいと思いますけれども、間接差別についてほとんど触れていないように見受けられますが、この辺については簡単で結構でございますので、もう一度所見をお聞かせください。
  38. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 いわゆる間接差別につきましては、その定義が明確でないわけでございますけれども、一般的には、男女共通の基準であるにもかかわらず結果的に女性に不利になるものを指していると承知しているわけでございます。  この間接差別につきましては、例えば勤続年数基準とした処遇もこれに当たるというような外国の例もあるわけでございまして、どのようなケースが差別に当たるのかということにつきましては、コンセンサス形成のために、より慎重な議論が必要なのではないかというふうに考えております。
  39. 山中あき子

    山中(燁)委員 その点に関しましては、先ほどの河井先生の御質問にもありましたように、ポジティブアクションということ自体もコンセンサスが得られているのか、どういうふうになっているのか、まだそこがわかりません。  先ほど大臣は、セクシュアルハラスメントについては相当に合意が形成されてきたとおっしゃいますけれども、外してしまうとまた合意を形成するのにおくれてしまうのではないかということもございます。どちらにしても、これほどあいまいであれば、それも私は入れておいていただきたかったと思います。  それで、触れましたので、ポジティブアクションについてもう少し詳しくお聞きしたいと思います。  ポジティブアクションというのは、例えばイギリスの場合には、事前に差別がある場合に、女性のみにあるいは男性のみに対して職業訓練の施設の利用を可能にするとか、あるいは女性または男性のみに対して仕事を行う機会を利用することを奨励するとか、そういうふうに法律にはっきり書いてございます。カナダの場合には、百人以上の労働者雇用する事業主に向けてということで、特定グループヘの雇用上の障害を取り除くとか、あるいは特定グループの労働力の構成を適正にするように計画を出すとか、そういうふうなニュアンスでございますが、スウェーデンになりますと、十人以上の労働者雇用する事業主に対して、毎年、平等を推進している計画を策定して、そして報告をするというふうになっております。  そういうふうに、国によってこれも随分違うわけですから、例えば、十人以上の事業主が、自分がそれをしなければいけないのか、百人以上雇用していたらすればいいのか、こういうことがわからないで、皆さん、実際にそのときになってから考えていく。あるいは、こうではなかったのではないか、こんなはずではなかったのではないかということも起こり得るわけです。  私は実は臓器移植のときにも思ったのですけれども、法案をここで可決しても、その後、現実に審議会や研究会で私たち政治家が携わらずに細かいことが決まってしまって、後から、いやそういうはずではなかったというようなことが起こり得ないように、今後の法案あり方というものに関してはある程度の明確さを持って説明できる段階で提案をしていただけたらというふうに思っております。  それからセクシュアルハラスメントにつきましても、先ほどちょっと逆差別の、アメリカで平成八年ですか、初めて男性が賠償金を受け取りました。そういう事例もございますけれども、やはりこれも御存じのように、多くの場合に北米とヨーロッパでは随分発想が違いまして、アメリカは歓迎されない性的な接近であるとか、カナダもやはり被用者が不快に感じたものということになっていますけれども、スウェーデンの場合には、雇用者は、被用者が雇用者の性的接近を拒絶したことを理由として嫌がらせを行ってはいけないとか、随分スタンスが違います。  これに関しましても、先ほど間接差別の問題はまだコンセンサスが得られていないというふうになっておりますけれども、今そういうセクシュアルハラスメントについても、日本がどういう基準でいくのかということのコンセンサスが得られているのかどうかという点が私は大変疑問でございます。  これも、それぞれ自分の国はどういうふうにということをきちんとアカウンタビリティーがあると、日本においてはこういうことは許されるということがあるわけですが、三菱自動車というのは多分、日本の文化的な背景で男性が何げなく話したりしたことがアメリカの基準によってああいうふうに大きくなった側面も、まあそれだけではないと思いますが、あると思います。  そういうことで、やはりこの辺も、欧米型なのかというような、一括して日本以外の欧米ではというような発想はもう通用しないと思いますから、日本日本としてどういうふうにするかというのは、本当はもっと明確に、法案を通すときに御説明いただきたかったというふうに思いますので、これも今後の課題として、ぜひきちんと、日本はどういうスタンスであるかということを十分討議していただきたいし、でき得れば、そういうことに対してコンセンサスを得る努力あるいは議論する場というものをさまざまな機会に設けていただきたいと思います。その点いかがでしょうか。二つまとめましてお願いいたします。
  40. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 ポジティブアクションにつきましては、まずは企業がいろいろとお考えになって自主的に取り組んでいただくことが重要であろうということで規定をさせていただいたものでございます。  労働省といたしましては、このポジティブアクションの重要性は十分認識しておりますので、各地域におきまして、経営者団体とか業界団体との連携を図りながら、この重要性等々についての理解を深めるようにしていきたい、企業ポジティブアクションに具体的に取り組んでいただけるよう、積極的に援助をしていきたいというふうに考えているわけでございます。  それからセクシュアルハラスメントにつきましては、既に平成五年に研究会から報告書が出まして、これまでも婦人少年室等を中心に、企業向けにPRビデオなどもつくりましていろいろやってきましたものでございます。今回の法案規定いたしましたので、今後指針等をつくらなければいけませんので、労使等を交えました研究会をつくって具体的なものについては深い研究をして、それをもとにパンフレット等もつくってやっていきたいというふうに思っております。
  41. 山中あき子

    山中(燁)委員 そうしますと、これからつくられる指針というものに対しては、具体的にどういう結果になるかということに関しては私どもは途中で関与する機会がございますか。
  42. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 報告等ができましたときには先生方にもぜひお見せしたいと思いますし、御協力もお願いをしたいと思います。
  43. 山中あき子

    山中(燁)委員 通常のルートだとそういうことはほとんどないとは思いますけれども、ポジティブアクションにしましても、それから間接差別撤廃はまだ盛り込まれておりませんけれども、そのこともまた、セクシュアルハラスメントにつきましても、やはり立法の人間と行政の方々と、それからそれを実際に享受していく人たちとがいかに議論をしているか、違う意見はあって全然構わないわけですが、そういうことをするように努力をしていっていただくことが多分意識の醸成にもなっていくと思いますので、その辺はいろいろ工夫をして、ぜひよろしくお願いいたします。  それからその次に、救済措置ですとか紛争の処理ですとか、そういったことに関してでございますけれども、一九九六年ですか、昨年の十月にノルウェーの男女平等のオンブッドさんが参りましたときに、私も北海道で国際シンポジウムのモデレーターをさせていただきました。そのときに、オンブズマン、スウェーデンで発祥したオンブズマンでございますが、このオンブッドという方々役割が非常に効果的であるということは申し上げるまでもないわけですが、その前提になっていますのが、法的にきちんと、例えば勧告であるとか指導であるとかということでなくて、禁止は禁止というふうにきちんと明確な法がない限りは、なかなかその効力を発揮できないという点が一点あると思います。  それで、今ここで出されております法案は、相当の部分、法的にきちんと禁止するというよりも、奨励するとか勧告するとかあるいは指導するということにゆだねる、あるいは話し合いにゆだねるという部分が多いわけですけれども、それできちんと展開していけるのでしょうか。
  44. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 雇用における男女均等な取り扱いに関しましては、いろいろ紛争が起こった場合に何が肝心かというと、やはりその女性労働者がその企業で働き続けられるようにするということが極めて重要であるというふうに思うわけでございます。  ですから、それぞれのお国はそれぞれのお国の慣行とかがいろいろあると思いますけれども、日本の場合ですと、やはり企業の中でまず自主的に解決していただいて、それがだめな場合は婦人少年室の方に来ていただくというようなシステムでございます。  これまでの十年間の経験を見ますと、やはり婦人少年室長の助言で解決している例が非常に多うございますので、私どもは現行のやり方が効果的でないとは全く思っておりませんで、それはかなりの効果を果たしてきているというふうに考えているところでございます。
  45. 山中あき子

    山中(燁)委員 もちろん法で整備すればすべてがうまくいくかというと、そうではございませんけれども、やはり法的な裏づけがないということは、雇われる側と雇う側と現実に対等で話ができるような、そういった契約社会日本はまだなっておりませんので、符に女性の場合、今この職を失ったらあとはパートしかないと思う場合に、やはりいろいろなことを我慢するというのが現状あるわけですから、その辺のところを十分救済できるような、そういった具体的なあり方というのをもう少しきちんと体系立てていただければというふうに私は思います。  それから、雇用の際あるいは配置転換その他の、募集に際してもですけれども、今回大変に進んだと思いますのでこれは大歓迎でございますが、実は、筆記試験をした場合に女性の方がいいけれども、女性が余りにも多くなり過ぎるということで、面接というような手段で男性が入ってしまうということをいろいろなところで、現実に省庁でも聞いたことがございますし、ある大学は、私の大学ではないのですが、名前と顔と全部伏せて採用の検討をいたしましたら、面接に残ったのが全部女性だったというようなこともあります。ですから、法的に担保されたものに対しても、どのようにしてチェックをして救済していくかということ。申し出た者が不利益にならないようにという御配慮をおっしゃっていますので、私は、その辺のところをぜひきちんとした形で、第三者的に解決をしていただく努力をますます進めていただきたい。これはお願いでございます。  その次に、差別ということに関して最後にちょっと考え方を伺いたいのです。  私が今差別と申しますのは、女性差別撤廃するための、あるいはなくするための法律だから、どうしても男性の側の権利というのが今入ってこないということなわけですけれども、このままでいって、将来的にはやはり平等法といいますか、男性女性両方にかかわる労働あるいは雇用に関する法律が必要になるだろうというふうに思うわけですが、その辺の将来的な計画というのはどういうふうになっていますでしょうか。
  46. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 これまでも何回か大臣が御答弁されておりますが、究極的にはやはり性差別禁止というのがあるべき姿であろうと思います。  ただ、先生おっしゃいますように、いつまでかというよりかは、私どもといたしましては、今回提案させていただいております法律を可決していただけますれば、まずそれの定着に全力を挙げていきたいというのが現在の偽らざる決意でございます。
  47. 山中あき子

    山中(燁)委員 それから、第三者的な形で、例えば情報を入手して勧告をして、それで、それに従わなければいけない義務を雇用者側も労働者側もそれぞれ持てるような、そういった第三者的な機関の設立というようなことは今お考えでいらっしゃいましょうか。それとも、そうではなくて、今の体制を強化していく方向でございますか。
  48. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 調停委員会につきましての御質問かと思いますが、調停委員会につきまして、は、一方申請等によって調停委員会の活用をしやすい形に今回させていただいておりますので、そういうことによって第三者機関としての活用が図られるものというふうに思っております。
  49. 山中あき子

    山中(燁)委員 先ほど申し上げましたように、例えば北米型の差別というのは、人種差別とか性差別あるいは年齢の差別、障害者の差別、これはアメリカの基準なんですが、カナダに行きますと、もっと、人種のほかに国籍とか皮膚の色とか宗教とか、その中の一つが性差別である。そういうような国と相対しているということも含めまして、どちらかというと、ヨーロッパは男女平等という方ですけれども、日本は、いろいろな歴史的、文化的な背景から男女平等というヨーロッパ型に近い形で、法的にもそれから社会も進んできているのではないかというふうに私は思うのですけれども、やはりこの差別撤廃ということが平等というふうにお考えでしょうか。
  50. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 女子差別撤廃条約の考え方は、女性に対する差別撤廃することによって男女の平等を推進していくという観点に立っているというふうに理解をしております。
  51. 山中あき子

    山中(燁)委員 カナダのチャーターというのが、一九八二年にしっかりしたものができましてから、かなり女性立場がよくなってきた。それで、国会議員の数も二百九十五人中、九三年の選挙では五十三議席というふうになってまいりましたけれども、それでもまだ問題点が非常にあって、例えばパートタイムの低賃金の問題ですとか、いわゆるピンクカラーゲットーと言われております、女性が主に補助的な業務についているとか、あるいはキャリアがあると今度は、かなりのところまでの昇進は随分するようになりましたけれども、いわゆるグラスシーリング、ガラスの天井ということでトップには行けないということで、そういったカナダにおきましても、いまだ十分なところまではなかなか達していない。世界各国、ほとんどそうだと思います。  ノルウェーのオンブッドさんも、公的なところでは男女差別はかなり解消して、北欧は四〇%ぐらいの女性の登用率になったが、私企業に関してはなかなか難しいということですから、ましてや日本の場合はもっと難しいというふうに思いますが、例えばこれから新聞の求人広告のあり方ですとか、男女が分けて書かれているとか、そういったことに対しても指導していくということ、あるいは喚起していくというような、そういうことも配慮なさっていますでしょうか。
  52. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 募集・採用につきましては、今後禁止規定になるわけでございますので、その辺はきちっとやっていくつもりでございますが、先日、いわゆる情報の会社を集めまして、現在でも均等法にもとるような広告等は載せないでほしいというようなことも依頼をしておりますので、その点につきましてはできるだけやっていきたいというふうに思っております。
  53. 山中あき子

    山中(燁)委員 カナダのサスカチェワンという州なんですが、ここの州法の中で、女性の従業者が深夜労働をした場合に、その後自宅に帰るまで安全に送り届けるためにタクシーチケットを出すということが法律で決まったのです。それで、それに対して、男性の方はそんなに遅くなってもタクシーチケットをもらえないというのは逆差別ではないかという声が上がるのではないかというふうに考えられるわけですけれども、男女の平等というのは、同じことを同じように扱うことが平等であるという考え方は、これはカナダのチャーターの場合ですけれども、伝統的な男女の平等のあり方であって、これからはもうそういう観念ではなくて、実質的にどういうふうに平等を担保していくかということである。  つまり、深夜を過ぎて、日本の場合は安全で、私も十一時とか十二時とか自分で歩いていますからこれは適応しませんけれども、考え方としてお聞きいただきたいのは、深夜歩いていて女性は襲われる危険がある、男性はそういうことが少ないので、女性が安心して働くためには往復の安全も確保するというような発想の法律が既にできているところもあるわけです。  ですから、男性女性が同じ状況になれば平等かというふうな考え方、先ほどの保護規定の問題もございますけれども、果たしてそういう考え方で差別撤廃していけば平等になるのだろうかということではない、それよりももっと実質的に、それぞれが自分の置かれた立場の中で少しでもクオリティー・オブ・ライフを享受できるというような、そういうためにどういう制度が必要かということに思いをいたしますと、今回の法律に幾つか、これは修正ということではなくて、いろいろな形で加味していただいて、現実に実際に運用するときに考えていただきたいという点がございます。  先ほどから申し上げましたように、労働時間の短縮の問題とかあるいは多様な雇用形態の確立、パートタイマーも含めまして同じ時間働いたら同じ費用を払うというのは、もうイギリスはそこまでいっております。パートであるから安いということは通用しないというような時代にもなってきている、その点も一つです。  それからもう一つは、家庭と職業活動の両立というのを容易にするためには男性女性育児にも携わるのだ。ところが、これはちょっと余談になりますが、私、デンマークに行きましたときに、昼間、男性の方が大変乳母車を押していらして、ここは男性女性の区別なく意識が発達しているのだなと思いましたところ、二十四週間の休業で、お給料の安い方が休暇をとって子育てをするという現実で、四分の一が男性がとっているという現実もあります。  ですから、言葉どおりすべてがいくわけではございませんけれども、そういった観点も含めて、男性も子育てに参画するような意識も含めて、それから体制も整えていって、お互いに分かち合って家庭を築いていくということがないと少子化に歯どめをかけられないというふうに私は思っております。  それから、母性保護を含む実質的な平等というのは決して差別でない、この点はしっかり申し上げておきたいと思います。  ともすれば、まだそういうところに至らなければ何でもできそうな気がするのですが、実際に子供を持って育てて、私も切迫流産という経験もございますけれども、仕事とそれから家庭ということ、あるいは子供が健康であるとは限らないわけです。そのほかに、日本の国においては特に老人介護の問題がほかの国々よりも今非常に立ちおくれた状態になっておりますから、それも女性への負担が加重してくる、こういう状況ですので、ぜひ母性保護と、それからその母性保護を含む実質的な不均衡ということが決して不平等ではないということも含めて施策に反映させていただきたいというふうに思います。  それから、百七十一号条約も含めて、できるだけ早く国際基準を批准していただいて、そして国際的に通用する、つまりノルウェーなどは、御存じのように全部国連にこういうふうな法案というふうに出しているわけですけれども、そのときに日本はまだ百七十一号は批准しておりませんので、ですからここの部分は欠落しています、そういうことはこれから余り通用しないのではないかというふうに思いますので、ぜひその辺も含めまして、最後にこの改正案の問題点を補強することも含めて、大臣の御決意をもう一度承れたらと思います。
  54. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生、幾つかの問題をはらんだお話でございますが、やはり私は、今度の法改正は、いわば革命に当たるぐらいの大きな変革を期待した法律案だ、こう思っております。そういう意味合いからいたしますと、これは女性差別を何とか追放をして、男女均等を、職場のみならず家庭生活においても実現をいたしたい。  しかしながら、これについては相当の大きな個々の問題を、先生御指摘のとおりはらんでおります。したがいまして、そういった生起するでありましようところの個別の問題について、法の意義とそれの運用の実態のあり方について私どもはキャンペーンをこれから展開をいたしたい、こう思っております。これは、したがって雇用者あるいは労働者に限りません。女性のみならず男性の協力も得なければならないのみならず、社会全般の意識の支えがあって本法のねらっているところが実現できるか、こういうふうに考えております。  ひとつ、きょう御審議先生方にもぜひ御理解をいただきまして、私どもと一緒に、この法律案が可決成立をいたしました場合には、実際の実態面での実行、徹底を図るという面で御協力をお願いをいたしまして、個々の質問、お答えをしておりますとまだ七、八分かかると思いますので、これによって御勘弁、よろしゅうございますか。
  55. 山中あき子

    山中(燁)委員 どうもありがとうございました。  戦争がないことが平和とは限らないし、差別がないから、では平等か、そういうところに私たちはもう既にいないのであって、もっと男性女性ともに本当に真の豊かさを享受できるためにはどういうふうにしていけばいいかという観点をぜひきちんと盛り込んだ具体的な展開をしていただかなければ、この法律が大変寂しい結果にならないようにということを強く願って質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  56. 青山丘

    青山委員長 これにて山中燁子君質疑は終了いたしました。  次に、河上覃雄君。
  57. 河上覃雄

    ○河上委員 今大臣から最後に御答弁もございましたように、今回の労働基準法女子保護規定撤廃を含めました均等法改正は極めて重要かつ重大な法律改正であろう、こう思います。  考えてみますと、連休明けの五月六日の本会議から、きょうの審議が終わりますとほぼ二十時間を審議に費やすことになるそうでございまして、その意味では大事な法案審議に対して一定の時間を費やしながら議論をさせていただいたな。しかし、まだまだ十分審議の行き届いていないところもございますし、これから私は、なお足りなかった部分等を整理しつつ質問をさせていただきたいと思っております。  その前に、この委員会を通じましての議論を、私なりの整理であえて申し上げてみたいと思います。  一つは、改正される均等法は、女子のみの措置を原則的に禁止いたしましたが、なおも女性に対する差別を禁止する法律にとどまっておるという点、両性法の位置づけになっていないという点、これが明らかになったことでありまして、したがって、その次に、大臣答弁にもありましたように、また婦人局長答弁も今ありましたが、将来、性差別禁止法のような究極的な法整備を図る必要性、これはこの委員会を通じて確認をいたしたことだと思っております。  また、これを実施するに当たりましてさまざまな課題があるわけでありますが、男女労働者職業生活家庭生活の調和を図りながら、均等法の実効性を高めるための両立支援あるいは具体的整備の必要性、さらに具体的に申し上げますと、育児休業あるいは介護休業、保育所の設置、保育時間の延長等々、これらの諸問題、具体的な対応が必要である、これもほぼ確認をできたところでございます。  また、女子保護規定撤廃に伴いまして、女子労働者の残業や深夜労働に対する何らかの措置が必要である、これらの点につきましても、今後具体化を図るとして、これは確認をされていた点であろうとも思っております。  母性保護あるいはセクハラの指針の内容等についての充実、さらに女子保護規定解消に伴う新たな男女共通規制の必要性とその方向、これらにつきましては、この場でもいろいろな議論があった、このようにこれは理解をいたしております。  さらに、我々も不勉強であったことは恥じるわけでありますが、均等法の知識の普及あるいは周知徹底ということが幅広く社会全体に対しても求められなければならないし、実態としてはまだそこまでの段階に至っていないような実感を覚えているわけでございます。  粗っぽく、私なりの整理であると前置きいたしておりましたが、これらをさらに議論を深める意味で、二回の審議を通じまして質問された点は全部省きまして、なおこの視点に立って必要であろうと思われる観点を私の方から御質問いたしたいと思います。簡潔に申し上げさせていただきたいと思いますので、答弁は短くとは申しません、大事ですから。傍聴の方もたくさんいらっしゃっております。傍聴の方々にもわかりやすく、納得できるような御答弁をぜひともいただきたいことをお願い申し上げまして、質問に入りたいと思います。  まず第一点目は募集・採用に係る部分でございますが、現行の均等法では、女子のみ募集は適法、こう解釈をされてまいりました。今回の改正によりましてこれが違法と解釈されるわけでありますが、適法から違法に解釈が変わる根拠について、この根拠は何かということをまず冒頭質問いたします。
  58. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  現行法は女性福祉法の色彩が強いわけでございますが、改正法案は、題名、目的規定を初めといたします第一章の規定におきまして、「男女均等機会及び待遇の確保」を目指すものであることを明確にしておるものでございます。また、第九条を新設しまして、均等の実現に支障とならない女子のみの措置均等法違反にはならないという旨を明らかにしておりますので、これは、逆から見れば、均等の実現に支障となる女子のみの措置均等法違反となるということが法制上も明らかになるようにしたわけでございます。  以上の点から、改正法案におきましては、女性の職域の固定化、男女の職務分離といった弊害が認められます女子のみとか女性優遇の措置は、女性に対する差別として違法であるという解釈に変更をするものでございます。
  59. 河上覃雄

    ○河上委員 採用に入るのですが、労働契約を締結するに伴いまして、採用は雇用関係が発生する、こう私は理解をいたしております。しかし、募集は雇用関係が発生する前段階でございまして、この法律は募集と採用と一くくりにしていつも措置されておりますが、この一くくりにした理由というのは一体何なのでしょうか。また私自身は、その意味におきまして、採用というのは雇用関係が発生しているので差別的取り扱いをしてはならないとセパレーツにした上で位置づけるべきだ、このように考えるのですが、いかがでしょう。
  60. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 採用と申しますのは、募集をした後、それに対する応募を受けつけたり採用のための選考をするなどの労働契約に至ります一連の手続を含んでおるわけでございますので、事業主行為として、これは募集と密接不可分なものであるわけであります。そして、これはいずれも労働契約締結以前の問題でありますので、事業主と応募者は何ら契約関係のない私人間の関係にあるわけでありますから、募集と採用については一条で規定をしているというものでございます。  また、採用につきましては、採用の自由との関係にかんがみますれば、事業主に求めることができますのは均等機会を与えることでございまして、採用することまでは求めないと考えますので、改正法案におきましても、「均等機会を与えなければならない。」というふうな規定をしたところでございます。
  61. 河上覃雄

    ○河上委員 さらに具体的にお伺いしますが、業務遂行上必要不可欠であると認められる男性のみ、または女性のみの配置というものは、差別的取り扱いに当たりますか。
  62. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  芸術、芸能の分野におきます表現の真実性等の要請から一方の性に従事させることが必要である職業、例えばモデルさんとか俳優といったような職業とか、それから、風紀上、宗教上の必要性などから一方の性に従事させることが必要である職業、例えば女子更衣室の係員といったものにつきましては、これは、社会通念上男女異なる取り扱いをする合理的な理由がある場合として適用除外に該当すると考えられますので、女性のみまたは男性のみを配置することも認められるものでございます。  適用除外に該当するか否かにつきましては、業務内容とか社会意識を踏まえまして、今後、婦人少年問題審議会で十分御検討いただいた上で確定をしていきたいというふうに考えております。
  63. 河上覃雄

    ○河上委員 さらに、配置・昇進関係で、転居を伴います配置転換、この場合の女子のみの配慮は、女性能力発揮の抑制あるいは女性家庭責任、この固定化につながってしまうのではないか。ですから、これは差別的取り扱いになるのではないのかと考えますが、この点、御答弁を願います。
  64. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 個々の労働者の家族的責任の状況を考慮するのではなく、単に女性であることというのを理由といたしまして、女性についてのみ転居を伴う配置転換の対象から外すということは、配置に関して女性が排除されているということになりますので、先生おっしゃるように、配置に関する差別的取り扱いに該当いたします。     〔委員長退席、桝屋委員長代理着席〕
  65. 河上覃雄

    ○河上委員 それでは、一定の職務について女性に受験資格を与えないこと、これは差別的取り扱いになるでしょうか。
  66. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 やはり、一定の職務に配置するための受験資格を与えていないということは、これは配置あるいは昇進に関する差別的取り扱いに該当いたします。
  67. 河上覃雄

    ○河上委員 それでは、さらに続けますが、男性は基幹的業務、女性は補助的業務、この割り当ては差別的取り扱いとなりますか。
  68. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 基幹的な業務を内容とします職務への配置に当たって、その対象を男性のみ、男性労働者のみとすること、また、補助的な業務を内容とする職務への配置に当たって、その対象を女性のみ、女性労働者のみとすることは、配置に関する差別的取り扱いに該当いたします。
  69. 河上覃雄

    ○河上委員 それでは、一定の勤続年数、職階を段階的に経なければ女性昇進させない、これは差別的取り扱いになりますか。
  70. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 同様に、昇進に当たって、女性労働者のみに対してその一定の職階を経たことを条件とすることは、やはり昇進に関する差別的取り扱いに該当いたします。
  71. 河上覃雄

    ○河上委員 今、具体的な質問ですから、差別的取り扱いになる。逆の側面や、ある条件を加えると、これが果たして差別的取り扱いになるということをすぐさま断定できるかできないか、この判断というのはやはり非常に難しい側面を持っているわけでありまして、今後、実社会の実例の中では多々いろいろな問題が出てくる。  したがいまして、当然、雇用管理における全ステージにおいて、今後何が差別になるのかならないのかはお決めになることと思いますけれども、かなり難しい作業であろう、こう理解するのです。しかも、慎重でなくてはならないだろうし、しかしきちっとしなくてはならない。さまざまな要件を加味して一つ一つを決定していかなくてはならない、こういうこともあわせて今の質問の中からもうかがえるわけでございますので、一つ一つ精査をさらにさせていただきたいし、また質問を続けさせていただきたいと思います。  福利厚生面で一点だけお伺いしておきます。  現行法では、事業主は、福利厚生のうち、幾つかの点について助成はできます、こうしております。例えば、住宅資金の貸し付け、それから生活資金、教育資金その他の資金の貸し付け、さらに生命保険料など定期的金銭給付、また住宅資金の利子補給など資産形成への金銭給付、そして最後に、社宅など住宅の貸与については女性を理由として男子と差別的取り扱いをしてはならない、こう定めているわけであります。  今申し上げた点しか女性には適用されない、逆に言えばこういうことになるわけでありますが、なぜ一部に限定したのか、この理由についてお答えください。
  72. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  福利厚生の措置につきましては、その範囲が非常に広いわけでございますし、内容も多岐にわたっております。概念としても不明確なものでございますので、労働省令で差別禁止の対象とする範囲を限定しているというものでございます。  なぜ、先生御指摘のものだけを限定したかといいますと、それは供与の条件が明確で、相当程度の経済的価値を有するという観点で省令で定めておるものでございます。
  73. 河上覃雄

    ○河上委員 今の御答弁なのですが、冒頭申し上げましたように、供与の云々、実に難しいのですよ。これを平たく、わかりやすく、だれでもわかるようにぜひともならしてお答えください。そうしますと、ああ、こういう理由なのか、なるほどと思うところもありますが、今のように申されても半分の方はわからないのじゃないか、私もこう思います。私も半分ぐらいわかりません。あいまいだなと思ってしまうのです。これも広がり過ぎてしまって、では何をどう特定したのかということが非常にわかりづらいのです。したがって、極力かみ砕いて、そしゃくして御答弁をぜひともお願いを申し上げたいと思っております。  それから、ポジティブアクションにつきまして一点だけお伺いしておきます。  事業主が「機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善すること」、こうあります。この中の「支障となっている事情」とは何でしょうか。また、もし改善の必要があるならば、この改善のための措置、これについてお答えいただきたい。
  74. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 「支障となっている事情」と申しますのは、男女役割分担意識とか、これまでの企業における雇用管理などが原因となりまして女性労働者の活用が阻害されていることでございます。  そしてまた、改善のための具体的措置といたしましては、例えば、これまで女性営業職には配置していなかったということから、女性に対しまして、新しく営業職にしようではないかというようなことで、女性を対象に営業に関する訓練を実施をするということとか、それから、男性が大部分職場で求人を行う場合に、女性たちの応募を奨励するために、求人情報を男性より女性に多く提供をするというようなことが考えられるわけでございます。
  75. 河上覃雄

    ○河上委員 実はこの支障となる事情というのが一番重要な部分であると私は思います。均等法は、その意味では、差別的取り扱いをしてはならないという骨格を示したものでございますが、なお法律によらない文化であるとか慣習であるとか、この世界の領域に係る問題、なかなか難しい問題が横たわっていると思います。  知らない自然のうちの男女の職務分離であるとか、今お答えにもありましたように、役割分担意識、あるいは性別に対する固定的観念、これらを解消するという作業、これはなかなか法律の世界だけでは完結できないものだろう、こう思うわけであると同時に、また個々の企業にとりましても、さまざまな文化を持ち、慣習という制度を組み立ててきた経緯があるわけでありますから、これとのミスマッチの問題等さまざまあると思いますが、その意味を込めまして、やはり、さらに具体的に規定する部分というのは非常に難しく、かつ実効性を高める上でも大切であろう、こう考えておるわけであります。  ポジティブアクションにつきましてはこの程度にいたしまして、今回の議論の中で特に触れられておりませんでした苦情の自主的解決、あるいは紛争の解決、調停委員会等、公表制度、この部分を若干確認しながら議論を進めさせていただきたいと思います。  まず、苦情の自主的解決でございますが、現在まで苦情処理機関、これはどのぐらい設置されているのでしょうか。もし、これが余り少ないというのならば、なぜ少ないのか、この理由も明確にお答えください。
  76. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 企業内の苦情処理機関の設置状況でございます。  これは均等法に関するものだけではなくて、一般的な苦情処理機関の設置状況でございますが、これは平成六年の調査によりますと、調査対象事業場の二〇・三%において苦情処理機関が設置されているわけでございます。  この二〇・三%が少ないかどうかというのはともかくも、こういうように企業内に苦情処理機関を設置することは、二〇・三というのはやはり一般的とは言えないのではないかと思うわけでございますが、これは上司とか人事担当者がいろいろな苦情の相談を受けるというような、他の相当な手段によって苦情の処理が図られているからではないかというふうに考えております。
  77. 河上覃雄

    ○河上委員 二〇・三%は少ないのですね。これは紛争解決への大事な軸になっているのだという議論は既に委員会でもあったわけでして、むしろ第一義的には、企業内の苦情処理機関等を通じてよく話し合いをしながら解決されることが望ましいのだという指導性をとっていたわけですから、僕は、この苦情処理機関の解釈通達を見まして、ああこれが少ない理由なのかなとも思ったのです。  苦情処理機関の設置について、こう規定されているのですね。「あくまで例示であるので、それ自体の設置を努力義務の対象としたものではない」のだと解釈通達に出ております。また、今申し上げたとおりの実効性を高める観点から、私は、苦情処理機関が何らかの形で必要であろう、こう考えますが、この点につきましては事業主に設置を義務づけるべきじゃないのかと考えます。これに対する見解をお願いいたします。
  78. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 苦情処理機関を一律に法律で義務づけることは、やはり苦情処理の方法を硬直的にするおそれがあると考えるわけでございます。企業内の苦情解決のためにどのような方法をとるかというのは、これはやはり企業の自主性にゆだねることが適当であるというふうに考えております。
  79. 河上覃雄

    ○河上委員 このままでいいというお考えなのですね。  ちょっと、新しく規定されましたセクハラ、これは、この苦情処理機関の対象となりますか。
  80. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 セクシュアルハラスメントにつきましては、改正法の第二十一条第二項におきまして、事業主雇用管理上配慮すべき事項についての指針を定めることにしておりまして、苦情処理機関の設置などのセクシュアルハラスメントに関します女性労働者の苦情を自主的に解決する方法につきましては、この指針の中で検討していきたいというふうに考えております。
  81. 河上覃雄

    ○河上委員 紛争解決の援助の点ですが、改正法は、女性少年室に援助を求めたことを理由として、「解雇その他不利益な取扱い」を禁止いたしております。ここに言う「解雇」、これはわかりますが、この「その他不利益な取扱い」は何を指すのでしょうか。
  82. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 「その他不利益な取扱い」の内容といたしましては、配置転換とか転勤、降格、減給、昇給停止、出勤停止、雇用契約の更新の拒否などが考えられます。
  83. 河上覃雄

    ○河上委員 わかりました。  調停に入りたいと思いますが、均等法施行後の調停の申請、開始、不開始、少ないということだと思います。調停の申請を含めまして、開始が少ない理由について御見解をいただきたい。
  84. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 調停の申請を含めまして、開始が少ない理由といたしましては、調停制度があること自体が企業において自主的な解決を促しているということもあろうと思いますし、また、女性労働者から婦人少年室に対して調停申請があった場合には、あったということ自体で企業内での迅速かつ円満な解決を促進しているという効果もあるものと考えております。また、これまで一方申請の場合は、他の関係当事者の同意を必要としたという制度のあり方が調停申請件数を少なくしていた一因にもなっていると考えております。     〔桝屋委員長代理退席、委員長着席〕
  85. 河上覃雄

    ○河上委員 ちなみに数字を挙げてください。申請、開始、不開始、それぞれ何件ですか。
  86. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 失礼いたしました。  現在までに十二社に勤務いたします女性百四人から調停の申請が行われましたが、そのうち、開始されましたのは一社七件でございまして、開始されなかったものは十一社九十七件となっております。
  87. 河上覃雄

    ○河上委員 それでは、これからちょっと外れますが、ちなみにお伺いしたいのですが、均等法施行後、均等法に関連する裁判はこれまで何件起きましたか。そして、その結果はどうなったのでしょうか。
  88. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  これまでに把握いたしております均等法施行後における男女差別に関する裁判例といたしましては、賃金に関する男女差別のもの、それから昇格に係る男女差別のものについての裁判を中心に十件程度把握しておりまして、これは、地裁レベルでは原告の請求を認める判決が多く下されているというふうに認識をしております。
  89. 河上覃雄

    ○河上委員 調停開始の要件は、女性少年室長が「必要があると認めるとき」と定めています。もう一遍申し上げます、調停開始は女性少年室長が「必要があると認めるとき」と定めています。極めてあいまいなのですね。明確な基準が必要なのじゃないしょうか。  私は、解釈通達、これも見ました。この「必要があると認めるとき」とはどういうときなのか注目をして見たわけですが、「事案の性質等、諸般の事情を考慮し、調停により解決を図ることが紛争の解決のために必要であると判断される場合のことである。」こう書いてあるのですね、解釈通達には。「必要があると認めるとき」よりももっとわからなくなってしまう。解釈通達のさらに解釈通達が必要なのじゃないかという思いすら抱くわけでございまして、今申し上げましたように、この「必要があると認めるとき」というのは極めてあいまいなので、婦人少年室長が責任を持ってきちっとできるような基準が必要なのじゃないのか。  婦人少年室は、都道府県一カ所ずつあるわけですから、四十七つあるわけです。ばらつきがあってはいけないでしょう。こっちでやったら開始になった、こっちでやったら不開始だったなどということが起こってもいけないと思いますし、そういうことが起こらないように今後措置していただけるものとは思いますけれども、邪推すればそういうこと等もありますので、一定の基準というものを明確に定めることがこの点については必要なのではないのか、私はこう考えますが、どうぞ、いかがでしょうか。
  90. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 婦人少年室長が紛争の解決のために必要があるかどうかを判断するに当たりましては、まず女性労働者事業主の間に紛争があるか、それから調停対象事項であるか、それから当該紛争に係る事業主措置が行われた日から一年を経過した紛争でないかなど、調停を行うことが適当であるかどうかを客観的に考慮した上決定をしているところでございます。  調停の開始、不開始の決定を行うに当たりましては、先生御指摘のように婦人少年室によって違いがあるというようなことは、これは全くいけないことでございます、言うまでもないことでございますので、今後ともそのような御批判を受けることがないように、制度の運用には努めていきたいと思っております。
  91. 河上覃雄

    ○河上委員 これはぜひお願いをいたしておきたいと思っております。  具体的にお尋ねしますが、私が申し上げるのもどう受けとめていただくかわからないのですが、だれが見ても明らかに禁止となる差別的取り扱いは調停の対象になるのですか。
  92. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 機会均等調停委員会による調停は、その行為法律に抵触するかどうかを判定するものではなくて、むしろその行為の結果生じた損害の回復について現実的な解決策を示しまして当該紛争を解決しようとするものでございます。したがいまして、その禁止規定に該当する事項に関する紛争でありましても調停の対象になるものでございます。  婦人少年室長は、法の施行のために必要があると認める場合は、行政機関固有の権限として、事業主に対しまして報告を求め、または助言指導もしくは勧告をすることができるとされておりますので、だれが見ても明らかに禁止規定に反する差別的取り扱いにつきましては、むしろ行政指導によって改善を図ってまいりたいと思っております。
  93. 河上覃雄

    ○河上委員 わかりました。  それでは、新しく規定されましたセクハラ、あるいはポジティブアクション、これらは調停の対象となりますか。もしならないとするならば、その理由について御説明ください。
  94. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 セクシュアルハラスメント及びポジティブアクションに関する事案は、均等法上の調停の対象にはならないものでございます。  セクシュアルハラスメントの事案の多くは、やはり個人間のプライバシーにかかわることがありますし、事業主労働者の間の紛争を解決するための調停にはなじみにくいわけでございます。むしろ婦人少年室におきまして、十分なカウンセリングを行い、事案に即した有効な解決方法を探ることが重要であると考えております。  ポジティブアクション取り組みにつきましては、男女労働者の間に事実上生じている格差を解消するために個々の企業が自主的に行うものでございますので、調停を行うことが適当であると考えられる紛争が生ずることはないというふうに考えております。
  95. 河上覃雄

    ○河上委員 パート労働者の賃金が同一の職務についております正規の社員よりも低い場合、あえてここではパート労働者女性であるというふうに位置づけておりますが、調停委員会はこれを取り上げることができるでしょうか。
  96. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 先生御指摘の事案につきましては、これは賃金差別の問題でありまして、均等法上の問題ではないわけでございます。それから、女性パート労働者女性の正社員との間の問題でありますので、男女差別の問題ではなくて女性の問題でもありますので、これは調停対象には該当をしないということになります。
  97. 河上覃雄

    ○河上委員 今の御説明はよくわかりました。考え方がよくわかりました。  それでは、差別的取り扱いを受けた場合です。この差別的取り扱いを受けた場合、均等法によって損害賠償請求はできるのでしょうか。その場合、民法七百九条を介して権利が発生すると考えるのか、あるいは均等法によって直接的に請求が可能となると考えるのか、どちらでございましょうか。
  98. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 均等法差別禁止規定違反の行為によって損害を受けた場合には、均等法規定は損害賠償を請求する根拠となるものと考えております。
  99. 河上覃雄

    ○河上委員 直接的に均等法によってできると理解してよろしいですね。  均等法には三つの勧告が出てきます。紛争解決の援助における助言指導勧告勧告、そして改正法の十七条、調停委員会における受諾勧告、そして二十五条、これは大臣ですが、二十五条における勧告、三つ勧告が出てまいります。これは説明していただきたいのですが、この均等法上の三つの勧告、それぞれどんな趣旨なんでしょうか。
  100. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 改正後の法第十二条の勧告は、これは女性労働者事業主の間の個別紛争の迅速かつ円満な解決を援助するという観点から、婦人少年室長が具体的な解決案を提示するものでございます。  これに対しまして法第二十五条の勧告は、事業主均等法に違反していると考えられる場合に、労働大臣または婦人少年室が行う行政指導でございます。  また十七条の勧告は、機会均等調停委員会が調停案の受諾を勧めるというものでございます。
  101. 河上覃雄

    ○河上委員 わかりました。  そこで、今度新たに制裁措置として公表制度ができたわけであります。この公表の効果についてどう考えるのか、御見解をただしたい。
  102. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  企業名公表制度というのは、これは社会的制裁措置でございまして、今回創設をさせていただいたわけでありますが、法違反の速やかな是正を求める行政指導の効果が高まり、法の実効性が確保できるというふうに考えております。
  103. 河上覃雄

    ○河上委員 それでは、この公表に至るまでの手続、そして勧告から公表に要する期間、さらに、公表が公正に実施されるための客観的な基準を設ける必要があると私は考えますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  104. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 公表は、公正な手続、基準により実施されるべきであることは当然のことでございますので、今後、この手続、基準を定め、適切な運用を行っていきたいと思っておるわけでございます。  期間とおっしゃいましたけれども、これは勧告に従わない事業主につきましては、直ちに公表という手段を講ずる場合、また再度勧告を行い、その事業主の違反の是正を促す場合、また事業主の改善状況を経過観察する場合など、やはりケースによってさまざまであろうと思います。ですから、公表に至るまでの期間を一律に規定することは適当でないというふうに考えるわけでございます。  また、その具体的内容でございますけれども、この公表制度の適切な運用を確保する観点から、婦人少年問題審議会において労使に十分な御検討をいただいてから決めてまいりたいと思っております。
  105. 河上覃雄

    ○河上委員 そうしますと、公表制度は行政処分と理解してよろしいですか。その場合、公表された企業が不服申し立てをすることは可能になるでしょうか。
  106. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 今回の改正において創設されました企業名公表は、他の法律に基づきます公表制度と同様に、それ自体によって国民の権利義務を形成したり限定したりするものではございませんので、行政処分には該当いたしません。したがいまして、この公表制度は行政不服審査法上の不服申し立ての対象とはならないものでございます。
  107. 河上覃雄

    ○河上委員 わかりました。  大体均等法部分につきまして以上御質問をいたしまして、次は、基準法関係に何点か質問をさせていただきますが、その前に、育児休業制度あるいは介護休業制度、これらの均等法の施策を実効性を高めて進める上では、周辺の環境整備を含めてさまざまな課題があると思います。  その視点からお伺いしたいわけですが、まず、育児休業制度の普及率、介護休業制度の普及率、これは今、最新の実態でどのようになっておりますでしょうか。平成五年の女子雇用管理基本調査のデータが出ておりますが、平成五年以来もう四年になんなんとするわけでございますので、その間のデータがあればここで御披露してください。
  108. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 平成五年の数字で申し上げますと、育児休業の普及率が、平成五年では五〇・八%、介護休業制度は、同じく平成五年時点では一六・三%でございますが、実は平成八年度において調査をしておりまして、現在集計中でございます。その間は調査をしておりませんので、手持ちの数字としましては平成五年度のものが最新のものでございます。
  109. 河上覃雄

    ○河上委員 本当に、いつごろ出ますか。もう一番新しいのが必要なのですね。  これはまた最後にも触れますが、姿勢の問題として、こういうのは改正均等法を進める上でいろいろと重要なわけですね。重要なのだけれども、もうデータが古いのですよ。だから、これから質問いたしますが、例えば時間外労働の女子の実態であるとか、これ以外の問題もさまざまな実態を的確に把握した上で議論をやりたいのです。しかし、古いのだとどうしようもないのです。だから、万般にわたりまして、本当にやはり、一つ一つこれに関連する部分、こういうものは早く掌握をしてきちっと的確に持っておる、ぜひともこういうふうにお取り組みいただきたいと思うわけでございます。  普及率は非常に低いわけでございます。育児休業が五〇・八、そして介護休業制度一六・三と、介護につきましては、もちろん平成十一年の四月から施行されるわけでありますから今はガイドラインに基づく期間と私も承知をいたしておりますけれども、いずれにいたしましても、育児でも五〇・八%しかないわけでございますね。  この低い理由はどう分析されていますか。また、具体的な措置、どうお取り組みになっているか、まずここを聞いておきたいと思います。
  110. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 育児休業につきましては、既に法律で形成権化されておりますので、企業の中で制度化されていなくても各労働者は取得することができるというわけでございます。それを一言申し上げさせていただきたいと思います。  ただ、現在いろいろな形で育児休業の制度の普及がおくれている中小企業等を中心といたしまして、婦人少年室を中心といたしまして、いろいろな機会をとらえまして、事業主に対して指導援助は行っているところでございます。  また、介護休業制度につきましても、先生御指摘のように、平成十一年四月に法律でとれるようになるわけでございますが、そこまででも、できるだけ多くの企業で導入されるように、事業主に対し指導援助を行っておるところでございます。
  111. 河上覃雄

    ○河上委員 ただいま普及率についてお尋ねしました。今度は取得率を、取得の状況お尋ねします。  育児休業の男女別取得率、これについてお答えください。また、介護休業、これも男女別に、どれだけ取得されているか、お答えください。
  112. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 これまた平成五年の調査で恐縮でございますけれども、育児休業の取得率は、男性が〇・二%、女性が九九・八%でございます。そしてまた、介護休業の取得率の男女比は、男性が二三・一%、女性が七六・九%になっております。
  113. 河上覃雄

    ○河上委員 ほかの質問もいたしたいのですが、ちょっとまだいろいろお尋ねすることがたくさんありまして、実態を聞いておきます。  これに関連いたしまして、一点だけぜひともお伺いしておきたいことがございます。  それは、現在日本は、高齢化社会、すさまじい勢いで進展しているわけでございますが、介護の実態は非常に深刻でございます。今申し上げましたように、平成十一年四月施行に向けて真剣な取り組みをする、このような決意を承りました。改めまして、私も真剣な取り組みを強く要請したいわけであります。  この介護休業の実施に当たりまして、介護休業中の所得保障の点でございますが、現在、所得保障の検討状況はどのように進んでおりますでしょうか、この点お答えをいただきたい。
  114. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  介護休業中の経済的援助につきましては、介護休業制度が義務化されます平成十一年四月までに検討を進め、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとしているわけでございますが、具体的には、現在、中央職業安定審議会におきまして、雇用保険の給付のあり方の見直しの中で御検討をいただいているところでございます。
  115. 河上覃雄

    ○河上委員 検討中で――もう少し中身がありませんかね。まあ、ないというお顔をなさったから、ひとつよろしくお願いを申し上げたいのですが。  女子労働者の時間外労働の実態、これは、今回の改正に当たりましても注目しなければならない点、着目しなければならない点と思います。この実態について、まず御報告をいただきたいのです。
  116. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  平成八年の労働省の毎月勤労統計調査によりますと、時間外及び休日労働から成ります所定外労働時間は、年間で女性は六十九時間となっております。
  117. 河上覃雄

    ○河上委員 知ろうと思えば知れるのですが、あえて一つ一つ数字をここでお答えいただいているのも、皆さんにさらに認識をしていただきたいと思うからでありまして、今後もまた出てきますが、よろしくお願い申し上げたいと思っております。  三六協定に基づいて時間外労働は決定されるわけでありますが、三六協定以外の方法で、使用者が時間外労働を行わせることは可能なのでしょうか。
  118. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 使用者労働者に時間外労働を行わせるためには、労働基準法三十六条に基づく三六協定の締結とその届け出が必要でございますが、それ以外ということになりますと、労働基準法の三十三条による場合があるにすぎないわけでございます。   この労働基準法三十三条は、「災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合」の時間外労働でございまして、これは、事前に許可を受けるか、事後、遅滞なく届け出ること等が要件になっているところでございます。
  119. 河上覃雄

    ○河上委員 それでは、三六協定の法的な位置づけというのはどうなのでしょうか。労働基準法上の刑罰を解除するにすぎない規定なのか、あるいは直接、個々の労働者に対しまして民事上の効果を持つものなのか、この法的性格についてお答えください。
  120. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 この三六協定の法的性格でございますが、この三六協定は、その締結・届け出によりまして、いわば八時間あるいは四十時間というところを超えても労働基準法に違反しないといういわゆる免罰の効果が生じるというふうに理解をしているところでございます。  したがいまして、この三六協定によって労働者に対します民事的な効果といいますか、使用者の命令によって労働者の方が時間外・休日労働を行う、そういう民事上の義務は直接には発生するものではないというふうに理解しております。
  121. 河上覃雄

    ○河上委員 それでは、基準局長、いかなる場合に民事上の効果が発生するのでしょう。
  122. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 民事上の効果につきましては、労働協約、就業規則あるいは個々の労働契約におきまして、三六協定が締結されれば、その定めるところによって使用者労働者に対して時間外労働を命ずることができる旨の定めをすることが必要だというふうに理解をしております。
  123. 河上覃雄

    ○河上委員 三六協定が適法に締結され、その定めるところによって時間外労働をさせることができる旨の定めが就業規則にある場合、労働者は時間外労働命令を拒否することができるのですか。
  124. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 今まで最高裁等の過去の判例におきまして、この就業規則に三六協定の定めるところによって時間外労働をさせることができる旨を定めている場合は、当該就業規則の内容が合理的なものである限り、当該就業規則の適用を受けている労働者は、その定めるところに従って、時間外労働について一定の義務を負っているというふうに理解をいたしているところでございます。  こうしたことから、労働者に対して適法になされた時間外労働の命令につきましては、労働者の方から見ますと、正当な理由がある場合を除きまして応ずる義務が生ずる、こういうふうに考えているところでございます。
  125. 河上覃雄

    ○河上委員 それでは、三六協定を締結しないで使用者が時間外労働を行わせた場合の法的効果というのはどうなるのでしょう。
  126. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 もし三六協定をなしに時間外労働をさせた場合につきましては、法的効果として二つの側面があろうかと思います。  一つは、労働基準法に違反する状態でございますので罰則の適用を受けることがあり得る、こういう刑事上の効果がございます。それから、現実に労働させておるわけでございますから、そういった刑事上の問題とは別に二割五分以上の割り増し賃金の支払いが義務づけられるという効果でございます。  それからもう一点、このような場合において、三六協定がない状態でもし時間外労働の命令があった場合には、労働者の方からはその命令を拒否することができるというふうに解釈いたしております。
  127. 河上覃雄

    ○河上委員 それでは、三六協定の締結状況というのは、現状どのようになっておりますか。
  128. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 三六協定の締結状況でございますが、各年の三六協定の届け出件数を見ますと、平成七年度におきまして届け出のあった件数、これは三六協定の、もちろん新規のものも変更、更新というものもございますが、約八十一万件となっております。
  129. 河上覃雄

    ○河上委員 平成八年労働協約等実態調査結果によりますと、所定外労働時間について何らかの規定があるもの、これが八八・五%。また、労働協約によるものが五十五・三%。その他の文書、これが何だかちょっとわかりませんが、後ほど御説明していただきたいのですが、その他の文書が三三・二%となっております。  今申し上げましたように、その他の文書の中には就業規則のみで定められている場合もあると考えられます。また実際問題として、三六協定がなくとも事実上労働者は弱い立場にあるわけでありますから拒否できない、こう思います。したがって、時間外労働を行わせる際に三六協定を適法に締結させる必要があると考えているわけでありますが、この点はいかがでございましょうか。
  130. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 先生御指摘ございました、調査結果での何らかの規定、その中のその他の文書につきましては、調査上具体的にどういったものかということは必ずしも定かになってまいりません。ただ、先生御指摘ございましたように、三六協定なしに時間外労働等を行わせていることがあるとすれば、これは私どもにとっても大変遺憾な事実だというふうに受けとめております。  三六協定の問題につきましては、各労働基準監督署が定期的に監督指導を行う際の重点項目としてそのチェックを行い、もし違反が認められれば直ちに改善指導を行っているところでございます。  さらに、今回御審議いただいている中でも御指摘ございますように、三六協定を締結する際の時間外労働協定の適正化指針、いわゆる残業時間の上限の目安でございますが、これにつきましてもさらに効果を持って指導に当たれるようにという御指摘がございます。  そういう意味では、まずその前提としてこの三六協定が適切に締結されるように持っていくことがこれから私ども一層力を入れていかなければならないことであろうというふうに受けとめておりますので、そういった、三六協定なしに時間外労働を命ずるというような事態の解消に向けて精いっぱいの努力をさせていただきたいと思っております。
  131. 河上覃雄

    ○河上委員 いろいろな点を指摘させていただきましたが、大臣も既に御案内でございますが、改正均等法の実効性を高めるためには諸課題があるように思います。  今、三六協定等時間外労働の点を中心に議論をしてまいりましたが、三六協定が適法に締結されたといたしましても、今般、女子保護規定撤廃されますと、女性労働者にとっては、これまで禁止をされていました百五十時間を超えた時間外労働が生じることが想定されます。そして職業生活に少なからぬ影響を与えることになるとも考えます。このような女性労働者については何らかの激変緩和を図るための措置というものが必要ではないか、私はこのように考えますが、御見解をいただきたい。
  132. 岡野裕

    岡野国務大臣 お答えを申し上げます前に、一言、河上先生にお断りをいたします。  河上先生労働政務次官も御経験で、非常なうんちくに基づいて私に御質問をいただきました。私は先生との関係で、やはり質問についての回答は、私は二十年の昔、政府委員以来下僚の作文を読み上げたことはございません。やはり血の通った答弁をお顔を拝見しながらすべきだという信念でやってまいりました。しかし、先生のただいまの御質問は、今後の改正法案の解釈並びに今後の適正な運用、それに非常に大きなかかわりを持つということで、労働省といたしましては多数の職員の衆知を集めました答弁をここに持ってまいりましたので、失礼ではございますが、読み上げさせていただきますことをお許しいただきたい、かように存じます。  ちょっと早口になりますが、長文でありますので。  女子保護規定解消は、女性の職域の拡大をもたらす一方、三六協定に基づく時間外労働の上限の目安時間を年間三百六十時間としている現行制度のもとで、使用者が従来禁止されていた百五十時間を超える時間外労働をさせることができるようになることから、家庭責任を有する女性労働者職業生活に少なからぬ影響を与えるケースが生じることになると思われます。  こうしたケースについては、この目安制度の中で、職業生活労働条件の急激な変化を緩和するために何らかの措置検討することが重要であると考えております。  労働省としましては、現在、中央労働基準審議会において行われている時間外・休日労働あり方についての検討に際し、先生御指摘の趣旨を十分説明し、適切な対応策をおまとめいただけるよう、努力をしてまいる所存であります。
  133. 河上覃雄

    ○河上委員 また、今回の均等法改正によりまして、多くの女性社会の広範な分野で活躍することが可能になります。また、実際上そうであることを願っているわけでございます。  同時に、今質問で申し上げましたとおり、女子保護規定撤廃されますと、女性労働者にとりましては、これまで禁止をされていました百五十時間を超える時間外労働が可能になります。私は、この百五十時間を超えた時間外労働の抑制を図ることがこれまた必要である、そのための実効性のある対策をぜひとも講ずる必要があるのではないのか、こう考えますが、この点につきましてもぜひとも御見解をちょうだいいたしたい。
  134. 岡野裕

    岡野国務大臣 同じく失礼をいたします。  時間外・休日労働については、これまで時間外労働協定の適正化指針に基づき恒常的な長時間残業の改善に努め、一定の成果を上げているところでありますが、女子保護規定解消により使用者が従来禁止されていた百五十時間を超える時間外労働をさせることができるようになる中で、今後とも時間外労働の抑制を図るためには、御指摘のように、この適正化指針の実効性を高めることが重要であると考えます。  労働省としては、現在、中央労働基準審議会において行われている時間外・休日労働あり方検討に際し、先生御指摘の趣旨を十分説明し、適正化指針の実効性を高めるための方策について検討いただくことといたしたいと考えております。  以上であります。
  135. 河上覃雄

    ○河上委員 大臣から簡潔な御答弁をちょうだいいたしました。  女性の職域の拡大を図って均等の取り扱いを一層進めます観点から女子保護規定撤廃されます。しかし一方、女性労働者の時間外あるいは深夜労働が大幅に増加することに対する懸念あるいは不安があること、これまで指摘したとおりでございます。そこで、政府の国際公約ともいうべき年間総実労働時間一千八百時間の目標にとって、労働時間の短縮というものは必要不可欠な方策であると私は考えます。今後の方策の見直しや立案は労働時間の短縮というものの視点を十分踏まえたものでなくてはならないと考えておりますし、ましてや、労働時間短縮の視点を欠落させまして、そして逆行につながるようなものであってはならないだろう、このように考えます。  そこで、改めまして、一千八百時間の達成の決意、これについて、これはぜひとも大臣に御答弁をいただきたいと思いますし、均等法についても、一千八百時間達成がもたらす影響とさまざまな現実の課題がございますので、ぜひとも一千八百時間、まだ達成できておりません、政府としての二回の経済運営計画あるいは生活大国、この中で示しましたが、いずれもそれぞれ五年後達成をしないまま現在に至っているわけでございますので、改めまして大臣の決意をこの点についてお聞かせいただきたいと思います。
  136. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生おっしゃいますところの年間千八百労働時間、これはグローバル化された世界市場の中で働く日本として、また世界の先進国等に伍している経済力を持った日本として、何が何でも実現をしなければならない目標値だ、こういうように考えております。  はたまた、この達成は職場の生活とそれから特に家庭生活とが両立をするという意味合いにおきまして、育児介護休業法あるいは本法改正案等々とともに、先般御可決をいただきました時短促進法等々を、総合的に努力の成果をここへ集中しようというような意味合いで、今回改めてひとつ、週四十時間労働制の完全定着、年次有給休暇の完全消化、より多くの消化といいますか、それからまた超過勤務労働時間の可及的な縮減というような三本柱、この成果で我々としては実現をしてまいるべく大きな努力を集中してまいりたい、こう思っているところであります。  なお、先生がおっしゃいました経済計画計画期間、これは、御存じのとおり十二年度末ということを目標といたしておりますので、私どもの千八百労働時間実現というようなものにつきましても、それまでに一生懸命実現方努力をしてまいりたい。  なお、私の答弁の中で、週四十時間労働制といいますものについて御可決をいただきましたという点について、表現を間違っておりましたならば御訂正をいただきたい、こう思っております。
  137. 河上覃雄

    ○河上委員 以上、議論を進めてまいりましたが、深夜労働の点で若干押さえておきたいと思います。  女性労働者の深夜労働の実態でございますが、これはどうなっておりますでしょうか。
  138. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  通常の統計から深夜業に従事する女性労働者の数を正確に把握することは非常に難しいわけでございますが、労働力調査等に基づきまして概数を推計いたしましたところ、約百三十万人が深夜勤務のある女性労働者でございまして、これは全女性労働者の六・二%程度に当たるものでございます。
  139. 河上覃雄

    ○河上委員 この新しい改正法が誕生いたしますと、今後、女性の深夜業が拡大されると思われます。どんな分野、業種に拡大されるとお考えになっていらっしゃいますか。
  140. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 深夜労働は、やはり先ほど大臣申されましたように、グローバルな市場への対応等で不可欠な分野がございますので、規制の解消に伴いまして、このような深夜業を必要とする事業、業務における女性の職域の拡大が予想されるわけでございますが、どのような業種において実際にどういうふうになるかということにつきましては、やはり景気の動向とか仕事の繁閑等の影響があることから、いささか予測は困難であるというふうに思っております。
  141. 河上覃雄

    ○河上委員 女性労働者が新たに深夜業を行う場合、これについて何らかの配慮が必要だと考えております。この配慮の必要性についての御見解をお尋ねいたしたいと思います。
  142. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 これまで女性労働者が配置されていなかったところに新たに女性労働者が配置されまして、実際に深夜業を行う場合におきましては、やはり勤務の負担軽減の措置とか、通勤時の便宜とか、安全を確保するための措置、また福利厚生の充実等を図るための措置など、さまざまな就業環境整備に努めることが望ましいというふうに考えております。  このような新たに女性労働者に深夜業をさせるとき事業主が努めるべき就業環境整備につきましては、法律の成立後、省令、施行通達などにおきまして具体的に明らかにいたしまして、その周知徹底を期したいというふうに考えております。
  143. 河上覃雄

    ○河上委員 あと時間は三十分程度ございますが、ちょっと先ほど落とした部分等もありますので、セクハラ質問を何点かさせていただきたいと思っております。  セクハラに関する部分でございますが、セクハラにつきまして、性的言動という内容は指針で定義されることになっております。指針でどう定義するのか、これは私も極めて注目しておるわけでございますが、こんなことになるというのがわかりましたら、ぜひここで御披露をいただきたいのですが。
  144. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 性的な言動につきましては指針において具体的に定めるものでございますけれども、性的な冗談とかからかいなどの性的な発言、それからヌードポスターなどの掲示など、性的なもので視覚、目に訴えるというようなこと、それから性的関係の強要など性的な行動などをいうものでございます。これらの概念を踏まえまして、繰り返しになりますが、指針において具体的に定める予定にしておるところでございます。
  145. 河上覃雄

    ○河上委員 改正法の二十一条には、セクハラの対象を「雇用する女性労働者」、こう定義されています。「雇用する女性労働者」、まずこの定義に見解をお願いします。説明してください。
  146. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 「雇用する女性労働者」というのは、雇用関係にある女性労働者という意味でございます。
  147. 河上覃雄

    ○河上委員 派遣労働者みたいな立場の方、これはここに言う「雇用する女性労働者」の中に入りますか。
  148. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 これは、派遣元の事業主等におきましては雇用関係があるということでございます。
  149. 河上覃雄

    ○河上委員 それから、ここでセクハラが新しく規定されるわけですが、事業主が講ずる必要な措置事業主はどのような措置を講ずればよいのかというか、必要な措置というのはどういうふうに理解すればよろしいでしょうか。
  150. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 事業主が講ずる必要な配慮の内容でございますけれども、例えば、企業におけるセクシュアルハラスメント防止のための雇用管理上の方針を確立するというようなこと、また従業員に対しましてセクシュアルハラスメントをしてはならないというような研修を実施することなどが考えられるわけでございますが、具体的内容につきましては、公労使から成る研究会を今後設定いたしまして御検討を願う予定にしておるところでございます。
  151. 河上覃雄

    ○河上委員 もう一点、育児介護に伴う深夜業に従事する労働者につきまして、就学前の六歳まで、こう指定されていますね。六歳までと設定した理由というのはどのような理由になりますか。  私は六歳じゃなくてもよろしいのではないか、もっと上でもいいのではないか、こう考えます。むしろ小学校低学年の子供さんたちはもっともっとさらに手のかかる部分もあるのではないかと思いますし、もう少し高くてもよろしいのではないかと考えるものなのですが、六歳と設定した理由について回答を求めたいと思います。
  152. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 深夜業の制限の措置は、女子保護規定解消に伴いまして、現実に父親も母親も深夜業をして深夜に子を養育する者や家族の介護をする者がいなくなるというケースヘの対応といたしまして、この措置が不可欠な労働者に請求権という強い権利を認めるものでございます。  したがいまして、その対象者とか請求できる期間などにつきましては、最低限保障すべき範囲を規定することが適当であると考えまして、育児介護休業法の努力義務となっております「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者」を対象としているわけでございます。ですから、これを上回る部分につきましては労使の話し合いにゆだねることが適当であるというふうに考えております。     〔委員長退席、桝屋委員長代理着席〕
  153. 河上覃雄

    ○河上委員 ちょっと寄り道をいたしましたが、本筋へ戻しますと、先ほど議論いたしてまいりましたように、今回の均等法、そして既に成立いたしております介護休業制度、そしてまた大臣からもお話がございました、今国会で成立を見ました週四十時間制の完全定着を含めて、いずれもその実施が平成十一年の四月であります。あわせまして、これはまだ不確定かもしれませんが、基準法改正も予定されることになるのではないかと思います。  いずれにいたしましても、平成十一年四月までのこの二年間は、変化する労働条件や働き方に新たな対応が求められる重要な期間と位置づけられるのではないかと考えます。実施までの間、時短あるいは時間外労働、深夜労働などのつぶさな実態把握に努めるとともに、さまざまな労働条件整備を具体的に方向を示すべきであろう、私はこのように考えておる次第でございます。  その主要な一点といたしまして、新たな時間外・休日労働、深夜労働男女共通の規制は、均等法改正案の施行日となる平成十一年までに一定の方向を得るとともに、空白が生じないようにすべきであろう、このように考えるわけでございます。この点に対する見解をぜひともお聞かせいただきたい。
  154. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員  御指摘ございました時間外・休日労働等につきましての男女共通の規制、こういう点につきましてのこれからの進め方でございます。  今まで答弁申し上げてまいりましたように、時間外・休日労働あるいは深夜業についての新たな直接的な規制ということについては、いろいろ慎重に検討を要する側面もございます。現在、中央労働基準審議会でこれらをテーマとして議論が進んでおりますので、この七月いっぱいに中間的な取りまとめ等もお願いして、その後のスケジュールというものもその段階で見きわめてまいりたいと思っております。  ただ、先ほど労働大臣からも申し上げました、この女子保護規定解消に対応して、家族的責任を有する女性労働者につきましての目安制度の問題、あるいはこの目安制度の実効性を高めるための方策、これらの検討につきましては、その性格上、平成十一年四月までに実施できるよう、中央労働基準審議会にこの経過等を御説明する中では、十分そういった期日に間に合うようにお願いをし、事務局としての私どもも最善の努力をいたしてまいりたいと思っております。
  155. 河上覃雄

    ○河上委員 今申し上げましたように、二年間、ぜひとも実態把握も含めまして精力的に、本当に実効性が上がり、女性労働者の皆様も含めて全労働者が、本当に均等法改正はよかったなと言われるような状況にやはり持っていかなくてはならないと思っております。  これは、あえて御披露も含めて申し上げておきたいわけでございますが、つい先日の新聞を見ておりまして私もびっくりいたしましたが、九六年十月現在の生産年齢人口が戦後初めて減少した、こう報道されておりました。最大の原因は少子化でございまして、十四歳以下の年少人口が十五年間連続で減少しているわけでございます。  今後、さらにこういう事態が続きますと、ますます生産年齢人口が減少することに伴いまして、一方では高齢者あるいは女性雇用が拡大しませんと、労働力不足になる公算が極めて大きい実態になってしまう。その意味で、生産性の向上が追いつかない場合には経済成長にも影響を与えるのではないかと考えておりますが、少子化が成長の足かせにもなっていること等も指摘されているわけでございまして、非常に私は、これらマクロの立場からもしっかりと労働力というものを見詰め直さなければならないのかな、こういう感想を持っているわけでございます。  いずれにしても、生産年齢人口が減少する中で、労働力確保の選択肢は、女性皆さん方、高齢者の皆さん方、これは厳しい歯どめがかかっておりますが外国人の労働者方々、この活用等が考えられるわけであります。とりわけ、この議論の焦点でございます女性の皆様方の活用という問題は真剣かつ真摯に考えていかなくてはならないと思いますし、そうした現状にありまして、女性労働力率も現在ほぼ五〇%程度ではないかと思いますが、今後の労働力を確保する上から、高齢者の皆様方とともに女性の活用は極めて大きな存在になるのではないかと思っております。  育児介護の充実、結婚や出産後の再就職の環境雇用制度のあり方等、諸整備検討することはその上で極めて重要でございますし、もちろん、短絡的にそれがすぐ進むとは考えません。制度の見直しは、そのまま企業にも負担をもたらすことになるわけでありますので、十分な理解と話し合いが前提になることは承知しておりますけれども、いずれにいたしましても、このような実態になることもございます。  また、近年、勤労者の労働に対する意識の変化も著しいものがあると思いますし、働く価値観そのものが多様化をしているわけであります。調査によれば、仕事を重視するかあるいは家庭を重視するかの問いに対しましても、自分家庭を大事にしたい、こういうのが約六割に及んでいるそうでございますし、出世や昇進に対しましても、男性は、出世を望むと望まないというのが拮抗をいたしている、こういう実態下にあるそうでございまして、大きな変化が個人においてもあるのだなという実感をますます深くするものであるわけでございます。  これらの大きな環境の変化の中で、こうして改正均等法審議をしているわけでございますが、これは、前二回、そして本日の御答弁の中にもございましたように、均等法、今のこれからの改正均等法は、究極の姿ではないと大臣も明言されました。究極の姿は性差別禁止法のようなものだと、本日、婦人局長答弁をされたわけでございますが、その意味で、究極の姿が必要であるならば、それを方向づける上で何らかの見直し条項を本法に規定をするべきではないかという感想も私は持つわけでございます。この点について、御見解を承っておきたいと思います。
  156. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 法のあるべき究極の姿といたしましては、やはり男女双方に対する差別を禁止する性差別禁止法であると認識しておりますが、まずは改正法の円滑な施行に全力を尽くしたいというふうに思います。  また、改正法の施行状況につきましては、その的確な把握に努めまして、必要な検討は行ってまいりたいと思います。
  157. 河上覃雄

    ○河上委員 あと一点、ぜひともお答えいただきたい問題が、基準法第三条と憲法十四条一項の関係の問題でございます。  御承知のとおり、三条は、憲法第十四条一項の性別による差別的取り扱いの禁止を除外しております。その理由は、女性保護するために男性と異なる労働条件基準を設けることを根拠に置いております。しかし、今回の改正に伴い、女子保護規定撤廃されるわけでございまして、つまり、基準法第三条は、性別を除外する根拠を失うということになるのではないかと思います。今後の段階で、基準法第三条に性別という規定をそれならばするべきではないのか、私はこう考えますが、御見解を承りたいと思います。
  158. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 先生から御指摘ございましたように、現在の労働基準法三条では、差別禁止規定がございますが、その中に性別という事項は含んでいないところでございます。  この労働基準法制定当時から五十年たっておるわけでございますが、制度的には、先生御指摘ございましたような女子保護規定、また各企業の人事や雇用管理の中では、やはり働く人たち家庭との、あるいは家族責任、そういったものとの調和を図っていくために、事実上いろいろな形での配慮措置が、人事・雇用管理の中に工夫されていることも事実でございます。  そういった側面、現在確かに変わりつつもあるし、また変わっていかなくてはならない側面も強いわけでございますが、ただ、長い習慣的、文化的な背景の中で、やはり性別とかなり結びついていた側面があって、この規定が罰則を伴う規定であるだけに、何が差別であり何が差別でないか、あるいはポジティブなものがどれでありネガティブなものがどれであるかというようなことを固めていかないと、罪刑法定主義の建前の中では、なかなかこの罰則つきの条項の中で、一条の条文で性別による差別禁止というものを実現していくわけにはいかない状況にあるということは、ぜひ御理解をいただきたいと思っております。  既に、均等法の施行、また今回御審議いただいているこの均等法のさらなる充実等によりまして、そういった側面、次第に人事・雇用管理等の中身が、男女とも本当に能力を発揮し、また男女とも家庭との調和を図っていくためのいろいろな責任を担っていく姿が固まってくるかと思います。  先ほど先生御指摘ございました、究極の姿に通ずるものがあろうかと思いますが、そういった中で、この基準法三条というものも、そういったものを見きわめる中で御議論をお願いしていかなくてはいかぬことになるのではなかろうかというふうに考えておるところでございます。
  159. 河上覃雄

    ○河上委員 これは改めて議論をしたいと思いますが、今答弁の中にもありましたように、何が差別であり何が差別でないかをきちっとしていくということ、これが大切なんだ、これらの積み上げの中でということもありました。くしくもそれは、先ほどからの議論を通じまして、私がずっと指摘をしてきたところであります。  改正法は骨格の部分規定したものでありまして、具体的内容は、今後、審議会における検討あるいは省令等によって詰められることになることと思います。  募集から採用、雇用管理の全ステージにおける、今申し上げましたような一つ一つの、差別あるいは差別に当たらない、あるいはセクハラについてもそうでありますし、公表制度の所定の手続もそうでありますし、国、事業主の責務の点についても今後の詰めでございますし、ある意味では、万般にわたる中身は、これが成立いたしましても今後にゆだねられるわけでございまして、その意味では、その策定に当たって、どうか当労働委員会の審議を十分に踏まえた内容であっていただきたい。また実効性を高める上からも、ぜひとも勤労者の意思を十分に反映し得るものであっていただきたい。この点については、私は強く要請をいたしておきたいと思っております。  そして、ここで審議をした我々自身、私自身にとりましても、今後、これらの措置につきまして最大の関心を払って作業の経過を注視していかなければならないだろう、このようにも思っております。  どなたかの質問にもございました。改正される重要法案審議に携われたことが私にとって後々の意味を持つことになるだろう、こういう思いからも、ぜひともこれらの策定に当たりましては、深くまたじっくりと、いろいろな場面で反映をさせていきたいということを考えている次第でございます。  いろいろと申し上げさせていただきましたけれども、ぜひともこの中身そして実態の把握というものをしっかりやりながら、この二年間、本当によかったと言えるような内容に高めていただきたい。これは私からのお願いでもございますが、今申し上げたことにつきまして御所見があればお伺いして、ちょっと時間前でございますが、十二時も過ぎましたので、お食事をされる方もたくさんいらっしゃるでしょうし、きょうは三十分間のお休みでございますから、早目に閉じさせていただきたいと思います。
  160. 岡野裕

    岡野国務大臣 ただいまの先生の御発言の趣旨を十分踏んまえまして、本法成立の暁におきましては鋭意努力をしてまいりたい。男女共同参画社会の一つの大きな柱が今回の改正案だ、そういう意味合いで、社会意識というようなものを大きく変えていくその先陣を承るというようなつもりで本法案の提出をいたしております。よろしくお願いいたします。
  161. 河上覃雄

    ○河上委員 ありがとうございました。  以上で終わります。
  162. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員長代理 これにて河上覃雄君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ――――◇―――――     午後一時二分開議
  163. 青山丘

    青山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松本惟子君。
  164. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 松本でございます。  質問に入らせていただく前に、一言、お許しをいただきたいことがございます。均等法からちょっと外れる議論でございますけれども、緊急を要する問題がございますので、一つだけ大臣お尋ねをさせていただきたいと思います。  実は、諌早干拓の問題に関することでございますが、私も四月に、現地の視察をする機会がございまして、現地では、もう毎日雨を待っているというような状況がございました。現在、我が党におきましては、渡辺周衆議院議員が諌早干拓事業関係質問主意書を内閣に提出いたしております。同主意書では、冒頭に、生態系維持のために海水を流入することをぜひということを申しております。  大臣は、内閣の一員として、この質問主意書への回答が閣議に付されたとき、海水流入についてどのような見解を述べるおつもりなのでしょうかということでございます。  実は、門扉をおろさないで、一たん海水を入れて生き物の命を助けながら、今後のあり方についてもう少し念入りな審議をしていただきたいというのが趣旨でございます。  仮に、海水流入を拒否するとの回答が農水省からなされる場合には、それに同意なさるおつもりなのかどうか、伺わせていただきたいと思います。
  165. 岡野裕

    岡野国務大臣 諌早干拓問題につきましては、マスコミ等を通じまして、私も問題の那辺にあるかは存じておりますが、まことに先生、恐縮でありますが、本件は労働大臣の所管ではございません。所管外の問題について、先生、閣僚の一員として個人的見解でというお話ですが、ここはすぐれて公の性格を持つ常任委員会でございます。したがいまして、所管外である問題について、個人的意見といえども、私としては回答を遠慮させていただきたい、かように存じます。
  166. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 ありがとうございました。  ここでは公の回答ができないということは承知をいたしております。どうぞ心優しい大臣の御配慮をよろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。  それでは、本題に戻らせていただきますが、均等法関係につきまして幾つか質問をさせていただきます。  まず、ポジティブアクションでございます。  これは今回の法改正に新しく導入をされ、各方面から期待をされているところでございますが、これまでの審議を通じまして、言葉を初めまだまだ浸透が十分ではないなということを感じました。これを既に制度化している国々では、午前中の質疑にもございましたように、実際上、募集・採用そして昇進昇格教育訓練に関して幅広く対象とされ、実施をされているところでございます。とりわけ教育訓練機会についてのポジティブアクションは、どの国においても重要な役割を現在果たしているというふうに私は承知をしております。  それで、今回の改正でこのポジティブアクションが盛り込まれたということ自体は評価をするものでございますけれども、その規定事業主の努力義務にもとどまってもいない、そこまでも至っていない、そのために行政指導さえも行われにくい。午前中の質疑に対する御答弁を伺っておりましても大変物足りないものを感じておりますし、心配もしております。  この間の質疑の中で、労働省として検討をしている行政指導としては、企業向けの総合的なガイドを調整をし、整備をし、それから労使の団体との十分な連携の上周知徹底に努めるとおっしゃられておりましたし、それからまた、トップセミナーとか業種別の労使会議、好事例集の作成などを活用して優良事業の表彰を行ったり、具体的な取り組みへの援助を積極的に行っていくという御答弁がございました。  したがって、確認をさせていただきたいのでございますが、ポジティブアクションは、使用者の責任ももちろん大きいと思いますけれども、やはり企業内で労使が参加をしていく形で実施をしていくことが効果的であるというふうに私は考えております。その点はいかがでございましょうか。
  167. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 ポジティブアクションに取り組む体制といたしましては、例えば労使からも構成される推進委員会の設置など、労使が参加する形での実施体制整備も効果的な方法であると考えております。  いずれにしましても、企業内において、労働者の声を十分反映する形で効果的に取り組みがなされるような体制の整備が望ましいと考えております。
  168. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 それでは、もう一点ポジティブアクションに関して確認をさせていただきます。  労働者意見を十分に反映をしていただくということでございますが、とりわけ、私は女性労働者の声を反映していくということが大切と思います。その点大変難しい面が、企業内においてはまだまだいろいろな物事を決定する場に女性が参画をし得ていないという実情がございます。かなり積極的な労働省の御指導が必要かと思います。  女性の参加、参画についていかがでございましょうか。
  169. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 ポジティブアクションの具体的取り組みを推進していくに当たりましては、労働者、とりわけ女性労働者意見とか要望をよく聞いて、それを的確に反映させていくことが望ましいと考えます。労働省といたしましては、各企業取り組みにおきましてその趣旨が徹底するよう十分周知を行ってまいりたいと思います。
  170. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 よろしくお願いをいたします。  次に、セクシュアルハラスメントでございます。  これも午前中の質疑の中で、特に若い男性女性たちから歓迎をされているというような御発言を私は拝聴いたしました。我が国においては、セクシュアルハラスメントが人間の尊厳や性的自由、働く権利を奪う重大な違法行為であるといった観点からの認識が大変薄いのではないかというふうに思っております。  さきに、アメリカの三菱自動車で起きた事例がございまして、アメリカのEEOCの代表がわざわざ日本にまで乗り込んでこられ、私もその会議に出席をいたしました折にも、こういったところが欠如しているからグローバル化の中でも日本は大変負い目を負わなければいけないのではないかと思いました。企業も、これまでそういった事態を国内でかなり放置をしてきたと思います。責任もとろうとしていなかった。これは、女性たちが勇気を持って法廷闘争をやって、少しずつ道を開いてきて、世論を喚起してきたという側面も見逃せないと思います。  こうした中で、本法案におきまして、セクハラについて、対価型と環境型を含めて、雇用管理上の配慮を事業主に義務づけたことは一歩前進であるというふうに思います。これはもうすぐれて雇用管理、つまり企業の中で起きたことは上司ひいては事業主の責任である、これが世界的な位置づけだと思います。  単なる個人的なことではないということでございますので、そういった位置づけをした上で、そこで確認の質問をさせていただきますけれども、セクシュアルハラスメントに関しては、個別の事案に対する相談が女性少年室にあった場合にはどのように対応していくおつもりなのでしょうか、お答えをいただきたいと思います。
  171. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 職場におけるセクシュアルハラスメントにつきましては、全国の婦人少年室における相談内容を分析いたしまして、カウンセリングの専門家とも相談しました上で、窓口における対応のポイントなどを取りまとめておりまして、各室の対応やケーススタディーに活用して、相談機能の充実を図っているところでございます。  今後はさらに、職員研修やカウンセリングの専門家の活用などを積極的に行いまして、婦人少年室において十分な相談を行えるようにしてまいりたいと思っております。
  172. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 事業主に義務づけたわけでございますから、積極的な取り組みを期待させていただき、さらに続けて確認質問をさせていただきたいと思います。  セクシュアルハラスメントについて、具体的にどのような行為が許されないのか、また、防止のための方針や研修の実施など、事業主が配慮すべき具体的な措置については指針に盛り込まれるということでございました。  事業主の配慮すべき事項として、例えば、従業員に対する研修とか、それから、そういった行為があった場合に、段階的でもいいのですが、現在、就業規則などで懲戒規定があります。どんなことをやってはいけないということを明記されるとともに、やってはいけないことをやった場合には、それぞれの事業所において就業規則がございます。その就業規則の中に、まあ軽いところは訓告から始まるわけですけれども、重いところは解雇まで至っているわけですね。そういった実効担保の方法なども含めまして、できるだけ具体的な措置を盛り込むことがよろしいのではないかと私は考えているわけでございますが、いかがでございましょうか。     〔委員長退席、河上委員長代理着席〕
  173. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 指針につきましては、今後、公労使から成る研究会を開催いたしまして、実態を踏まえつつ、具体的な検討をお願いすることにしているわけでございますが、指針内容につきましては、先生のただいまの御提案の内容も含めまして、国会での御審議を参考として、具体的にどのような行為が許されないか、また防止のための研修の実施など、事業主が配慮すべき具体的な内容について盛り込む方向で検討をしてまいりたいと思っております。
  174. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 さらにセクハラについてお尋ねをいたしますが、指針づくりでございます。指針づくりの体制はもう既に準備をされているのかどうか、もしされているとすれば構成の概要と、その指針はいつ公表されるのか、おわかりであればお答えをいただきたいと思います。
  175. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 研究会につきましては今準備をしておりまして、できるだけ早くきちっとやっていきたいと思っております。  構成は、公労使ということでお願いをしたいと思っております。  それから、いつまでということでございますが、本年度中には必ずつくり上げたいというふうに思っております。
  176. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 法施行に先駆けて、ぜひとも早く公表していただくことをお願いいたします。あわせて、公労使の中には、男女のバランスをぜひとっていただくようにお願いをいたしたいと思います。  それでは、労働大臣に少しく確認のための御質問をさせていただきたいと思います。  私は、本会議の趣旨説明に対する質疑を初めといたしまして、当委員会においても、同僚の議員とともにこれまでさまざまな御質問をさせていただいたところでございます。これらを踏まえまして、ここでぜひとも本案について幾つかの御質問を行いたいと思いますので、大臣、どうぞよろしくお願いをいたします。  まず、一点目でございます。  基本的な方向としては、我が国においても、欧米諸国と同様に男女双方に対する差別的取り扱いを禁止する法制、いわゆる性差別禁止法の実現を目指すべきであると考えておりますが、大臣の御見解を承りたいと思います。
  177. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生、確認を求めるという御前提でございますので、先ほど河上覃雄議員に私が申し上げましたことを、繰り返しませんけれども、それをお含みを賜りたい、こう存じます。  まず、昭和五十九年建議に示された法のあるべき姿や諸外国の法制度に照らせば、男女双方に対する差別を禁止する性差別禁止法が究極の姿であると考えております。  二つ、今般の改正においても、女性のみを対象とする措置は、原則として女性に対する差別として禁止することとしており、実質的に性差別禁止法に近い内容となっているところであります。  三つ、労働省としては、まずは改正法の円滑な施行に全力を尽くすとともに、施行状況の的確な把握に努め、必要な検討を行ってまいりたいと考えております。
  178. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 ありがとうございました。  今回の法改正に続く展望が大臣からお示しいただけた、まずは本法の定着ということにお力を注いでいただくということと承りました。  第二点でございますが、今回の法律ではいわゆる間接差別について触れられておりません。積み残しの課題になっております。  これまでの審議を通じまして、家族手当の支給に見る世帯主条項のもとで、世帯主の判断基準として男女異なる扱いをする場合は、均等法が禁止するところの差別であるということは確認をさせていただきましたけれども、なお、間接差別については、差別的取り扱いの禁止の内容に含める方向で今後とも検討を深めるべきであると私は考えております。労働大臣、いかがお考えでいらっしゃいましょうか。     〔河上委員長代理退席、委員長着席〕
  179. 岡野裕

    岡野国務大臣 お答えをいたします。  間接差別については、どのようなケースが差別となるのかについて、コンセンサス形成のためのより慎重な議論が必要であり、労働省としても、諸外国や判例の動向、事例の収集に努め、引き続き検討を行ってまいりたいと考えております。
  180. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 三点目でございます。  調停制度についてお尋ねをいたします。  今般の改正により、同制度の実効性を確保するための措置として、他方当事者の同意要件の廃止などが盛り込まれておりますが、さらに、迅速かつ簡便な紛争の解決手段としての機能が十分に発揮されるように、行政としても制度の効果的な運用に配慮していくべきではないかと考えます。この点につきましても、私、先般の御質問の中で事例を挙げまして質問をさせていただいたところでございますが、大臣、いかがでしょうか。
  181. 岡野裕

    岡野国務大臣 お答えをいたします。  調停制度については、改正法の趣旨が十分生かされるよう、積極的な活用を図ってまいりたいと考えております。
  182. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 それでは、四点目の質問でございます。  他の委員質疑の中で既に答えられておりますけれども、確認の意味で重ねて御質問をいたしますことをお許しください。  女子保護規定撤廃されると、女性労働者にとっては、これまで禁止されていました百五十時間を超えた時間外労働が可能となります。時間外労働抑制を図ることが必要不可欠であるというふうに私は考えております。また、国際公約ともいうべき年間総実労働でございますが、千八百時間の早期達成を実現することも必要であると思います。  時間外労働抑制のための実効ある対策を講ずべきであると考えておりますけれども、労働大臣の御見解を承りたいと思います。
  183. 岡野裕

    岡野国務大臣 お答えが長くなりますが、多少早口でお話をいたします。  一つ、時間外・休日労働については、これまで時間外労働協定の適正化指針に基づき恒常的な長時間残業の改善に努め、一定の成果を上げているところでありますが、女子保護規定解消により、使用者が従来禁止されていた百五十時間を超える時間外労働をさせることができるようになる中で、今後とも時間外労働の抑制を図るためには、御指摘のように、この適正化指針の実効性を高めることが重要であると考えております。  二つ労働省としては、現在、中央労働基準審議会において行われている時間外・休日労働あり方検討に際し、先生御指摘の趣旨を十分説明し、適正化指針の実効性を高めるための方策について検討いただくことといたしたいと考えております。
  184. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 それでは、第五の質問でございますが、事業主が新たに女性労働者に深夜業をさせようとするときには、業務上または通勤における負担の軽減、そして安全の確保など就業環境整備を図るべきであると思います。行政としても、その内容を具体的に明らかにして、環境整備を促進していくべきであると思いますけれども、大臣の御見解を承りたいと思います。
  185. 岡野裕

    岡野国務大臣 お答えいたします。  事業主が新たに女性労働者に深夜業をさせようとするときは、業務上の負担の軽減、通勤時の安全の確保など就業環境整備に努めるべきであることについて、労働省令で明らかにするとともに、事業主が努めるべき事項についての総合的な指針を定め、啓発指導に努めてまいります。
  186. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 どうぞよろしくお願いをいたします。  それから、質問の第六でございますが、女子保護規定撤廃女性労働者に及ぼす影響の大きさにかんがみますと、今般の改正で、これまで他の委員からもるる述べられてまいりましたけれども、家族的責任を有する労働者の深夜業について免除することになっていますけれども、時間外と休日労働については積み残しのままでございます。こういったことにつきましても適切な対策を講ずるべきと思いますけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。
  187. 岡野裕

    岡野国務大臣 お答えをいたします。  一つ、家族的責任を有する労働者の時間外・休日労働については、事業主に対し、これらの労働者の事情を十分に配慮することが望ましい旨、啓発指導に努めてまいりたいと考えております。  二つ、それとともに、育児介護休業法に基づく、所定外労働をさせない制度の重要性を改めて周知してまいりたいと考えております。
  188. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 続きまして、少子化の問題で、これも午前中から他の委員から懸念をされる表明がございました。  私は、子供を持ちたい者が子供を産み、育てながら働ける環境が大切だ。従来のように、少子化が大変だから産めよ、ふやせよという論理にはくみしないものでございますけれども、少子化と高齢化の進展というのは対のものであるというふうに考えております。  そういったことから、職業生活家庭生活の両立支援対策というものは大変重要でございますので、この一層の充実を図るべきであるというふうに思っております。  その一つとして、配偶者や子供の突発的な事故、そして病気のための休暇である家族看護休暇制度の法制化を図るべきではないかというふうに思っております。大臣の御見解を賜りたいと思います。
  189. 岡野裕

    岡野国務大臣 お答えをいたします。  一つ、突発的な病気の子供等の看護を行うための休暇である看護休暇制度については、仕事と家庭との両立を支援していく上での検討課題であると考えております。  二つ、このため、平成八年度女子雇用管理基本調査において、看護休暇制度の導入状況につき調査しているところであり、実態の把握に努め、検討を進めてまいりたいと考えております。
  190. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 月単位、何カ月単位という介護休業制度の使い方とは別に、これは単発的、断続的な家族のための休暇でございますので、どうぞ前向きな検討を期待させていただきたいというふうに思います。  続きまして、母性健康管理でございます。  この点につきましては、私の意見をさきの委員会でるる述べさせていただきましたので繰り返しませんけれども、今般の改正により、母性健康管理について義務化されることになりました。これは一歩前進であるというふうに考えております。  これに伴って、対策の強化を図らなければならない。これまで必ずしも十分であったというふうには思っておりません。したがって、その対策の強化がぜひ必要というふうに思っておりますけれども、いかがでございましょうか。
  191. 岡野裕

    岡野国務大臣 お答えいたします。  一つ、母性の健康管理に係る措置の義務化に伴い、今後、省令や指針の策定に当たっては、事業主が適切かつ有効な措置を実施できるよう、特に配意してまいります。  二つ、また、実効性確保の観点から、母性健康管理指導医及び母性健康管理スタッフの活動の強化、産業医及び地域産業保健センターとの連携等により、企業における母性健康管理体制の強化のための施策を総合的に講じてまいります。  以上であります。
  192. 松本惟子

    ○松本(惟)委員  ありがとうございました。  岡野労働大臣からの御答弁をいただきました。  それでは、御確認いただきましたことに対する行政サイドからの今後の前向きな御努力を切にお願いをしておきたいというふうに思います。  次に、幾つかの点についてさらに質問をさせていただきますが、女子保護規定の廃止に伴う対策につきまして、余り具体的ではありませんけれども、今後、中央労働基準審議会の中で、今国会の審議を踏まえて御検討をされていくということであります。  私は、これまで婦人少年問題審議会にも加わらせていただいたことがございますけれども、例えば、婦人少年問題審議会の私どもの労働側の委員は全部女性であって、それから年少の方は全部男性であるとか、性による偏りがまだまだ審議会の中には見られます。とりわけ中基審におきましては、女性の数が大変少ない。女性労働者の問題だけではありませんのでこれは一概に言えないところもありますけれども、やはり男女同一の枠組みで、今後、法施行までに空白期間を置かないような方向での御議論を私たちは期待するわけでございます。  その中央労働基準審議会の構成が、男女の比、どのようになっているのかお聞かせをいただければと思います。
  193. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 中央労働基準審議会は、公労使の三者構成、各七名の方ずつで構成しておりまして、女性の数は、公益委員にお二人入っていただいているところでございます。
  194. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 公益に二名だけで労使に女性がいないということは、私もかつて労働組合にいた者として、責任の一端を感じます。一生懸命頑張ってもなかなかそこが進まないということを痛感しておりますが、いずれにしてもこれからの時代というのは、女性だけという問題よりも、男女という形で議論を進めていく課題がますますふえてくるというふうに思っております。  そういった点から、労働省婦人局としては、各委員会につきまして、女性意見ができるだけ具体的に反映をするような取り組みをどのようになさっているか.さらに審議会への女性の参画の促進についてどのように御努力をなさっているか、この場でお聞かせをいただければ幸いと思います。
  195. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 政府の各種審議会におきます女性委員の割合につきましては、政府が決定をいたしました計画の中で二〇%を目標にしているところでございまして、婦人局といたしましても、労働省の中で秘書課とも相談し、できるだけ多く女性委員が登用されるように各局に働きかけをさせていただいているところでございます。
  196. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 働き方についての基準を決める主幹的な審議会の一つが中央労働基準審議会であるというふうに思います。私はここで、男女同一の枠組みで、さらには家庭と仕事の両立が図れるような形での労働基準審議が広く深くこれから行われていくためにも、直接にそういった重荷を負っている女性意見が反映をされることが不可欠であるというふうに考えております。  今後の審議に当たって、中基審の中には現状女性が少ないわけですが、何か工夫をされるおつもりがあるのでしょうか。お聞かせをいただければと思います。
  197. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生がおっしゃいますような、かつうちの太田政府委員が申し上げますような現状でありますことは、私は、男女雇用均等法の精神からしてまだ現状そこに至っておらないなということを痛感いたしております。  ただ、先生も御存じのとおり、やはり労働側を代表する委員先生方は、労働側の先生の方に推薦をお願いいたしております。使用者側につきましては、やはり使用者側の方の皆さんにお願いをいたしております。にもかかわらず女性の方の御推薦がないものをつかまえまして、それではぐあいが悪い、却下であるというふうにまでは社会情勢が熟しておりません。やはり、社会意識全般が私どもが考えておりますような、男女雇用に限りません、均等だというものが定着をして初めて推薦が女子についてもより多く期待ができるのではないかというような意味合いにおきまして、私どももいろいろそういった精神鼓吹をいたしますが、諸先生におかれましても、ひとつぜひ周知その他御努力を賜りたい、かように存じます。
  198. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 ありがとうございました。  私どもみずからの努力も含めまして、女性の参画を今後図って、そしてバランスのとれた構成の中で議論が進められるように頑張らなければいけないな、大臣からの厳しい御指摘、私の方にもいささかこたえておりますので、頑張りたいというふうに思っております。これは、審議会だけではなく、政治の中でもやはり男女の構成比、同じことが言えるかというふうに思っております。  次にお尋ねをいたしますが、国際的な関係で、やはり日本は先進国でございますので、ILOの批准の問題があると思います。  既に百号条約というのは随分前に批准をされておりまして、男女の賃金格差がなかなか平均的に縮まっていないということがILOの総会のたびに指摘されているところでございますが、そのことについて労働省としては、どこに問題があり、今後どのようにこれを考えていこうとなさっているのか、どうぞお聞かせをいただければと思います。
  199. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 日本は長期雇用システムをとっておりますので、やはり長くその企業に勤続をすると賃金が上がっていくというのがこれまでの一般的な企業の姿であったというふうに思うわけでございます。そういう意味で、女性労働者男性労働者の間における勤続年数の違いというようなものが大きな差の要因であろうかと思いますが、そのほかにも、いろいろな業種とか職種とか学歴とかさまざまなものが賃金格差の複合的な要因になっているというふうに考えておるところでございます。
  200. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 今回の雇用機会均等法男女の賃金の格差を縮めるために効力を発揮できることを一つは期待をしています。  それから、もう一つは、パート・派遣労働者などがふえていて、そこには大変多くの女性労働者がかかわっている。構成比を見ましても、女性がパート労働で働く比率が高いというふうに思っております。こういったパート労働の問題について、労働省は今後どのような対策をお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  201. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 パートにつきましては、その雇用管理が適正に行われますようにこれまでも指導等に努めてきたところでありますけれども、パート労働法が施行されまして三年を経過いたしまして、見直しという規定もございますので、昨年から専門家による研究会を設けまして、今、パート労働のいろいろな問題点について検討をいただいておるところでございます。その結果をまって対処をしてまいりたいというふうに考えております。
  202. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 大変慎重なお答えでございまして、今検討しています、そしてその結果をまって対処をしていきたいというふうにおっしゃられました。  私は、これからの雇用情勢を見ますと、労働力の流動化がいや応なく進んでいく、いかざるを得ない。その中において、これも午前中に出ておりましたけれども、同じ仕事をしていても、身分の違いによって処遇が平等になっていない、賃率などが平等扱いを受けていないということがございます。これは、日本的な雇用慣行、そしてそれぞれの企業がお持ちになっている制度によって生まれてくる結果であろうというふうに思いますが、社会的公正という立場から、前向きに公平、公正、平等な指針というか物差しを今後はつくっていくこと、これはグローバル化の立場からも不可避的であるというふうに思っておりますから、ぜひとも前向きな対応をお願いしたいと思います。  続いて質問をいたしますが、ILOの関係、これは既に歴代の大臣答弁にも示されているというふうに伺っていますけれども、最低でも一年に一つはILOの批准を行っていきたいということを表明しておられます。この点については何か具体的なプログラムを今お持ちなのでしょうか。
  203. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 ILO条約につきましては、批准できるものは批准をしたいという方針は持っているわけでございますけれども、今現在、特に婦人局関係において、特段、次の国会にどうこうという計画は持っていないところでございます。
  204. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 国際の関係でございますけれども、特に国内法にかかわる婦人行政との関係で伺わせていただきたいと思います。  母性保護関係ですが、これはもうILOには二つほどかかわる条約がございますが、日本はまだどちらも批准していません。一方は、百十二号だったでしょうか、社会保障の関係だったと思います。間違っていたらどうぞ訂正をお願いしたいと思いますが、ここでは母性保護は留保をして批准をしておりますね。それからもう一つ、母性保護という関係の条約がございますが、ここももう少しで届くところをそのままになっております。ぜひ批准の方向で頑張ってほしいと思うのですが、どこが欠如をしているから批准ができないのかということをお聞かせいただければと思います。
  205. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 先生御指摘のは百三号の母性保護に関する条約であろうかと思いますけれども、ここにつきましては、妊娠及び分娩に起因する疾病について追加休暇を与えなければならないという規定がございますが、これは労働基準法の中には規定がございません。  また、育児時間の取り扱いにつきましては、労働時間として計算し、かつ報酬を与えるという規定に条約はなっておるわけでございますが、これも労働基準法の中には規定がないなど、幾つかまだやはりいろいろと検討しなければならないことがあるわけで、批准ができない状況になっているわけでございます。
  206. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 少子化が叫ばれる折から、やはり働く場での母性保護というのは大変大切だと思います。これまで母性保護関係しましては、厚生省と労働省にまたがっての施策がございました。そして一方では、厚生省関係の主流となっておりましたのは、最近までいわゆる家庭にいる主婦を中心とした母子保健対策であったと思います。つい最近になりまして、専業主婦とそれから共働き家族が逆転をしてくるという段階の中で、後追いながらこれはやはり働く家族の問題として厚生省もやらなければいけないということで、保育所それから学童保育、母性保護のいわゆる出産休暇にかかわる所得保障の問題等々、前向きにそれこそ検討が始められているところでございますが、私は、もっともっと労働省と厚生省がタイアップをして、今後の母性保護あるいは働く家族のための施策を充実していただきたいというふうに思っております。  今お答えになられました幾つかの母性保護に欠如をしている問題を補足しながら、ILOの条約の批准に向けて努力をしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。     〔委員長退席、河上委員長代理着席〕
  207. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 ILOの条約の批准につきましては、一般的にはできるだけ批准を進めるべきものと考えますが、いろいろと問題点もありますので、幾つかの条約については、問題点等については検討はさせていただきたいというふうに思います。
  208. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 ぜひとも法施行後検討されるべき項目の中に入れていただきたいというふうにお願いをいたします。労働省が今後均等法法制に基づいて具体的な施策について図られると思いますので、お願いをしておきたいというふうに思います。  続きまして、深夜労働の問題に関してでございます。  私は、先般この委員会の中で、深夜の解禁が大変女性、並びに女性だけではなく従来からやられている男性の健康の問題もございますけれども、それに及ぼす影響を懸念いたしました。ILOの百七十一号条約の審議のときにも、女性がここに参入をするということで女性の問題としても論議をされましたけれども、従来から、いわゆる先発としてやっている男性の夜業についても、健康上、そして家庭生活上、社会生活上これは有害なものであるというふうな前提のもとにさまざまな規制をしていこうということでILOの基準がつくられました。  私は、ILOの基準をつくる会議にも出席をさせていただいたわけでございますが、もう何年か経過をしているわけでございます。今回たまたま男女がともにということで、これまでどのような御議論が中基審の中で深夜に関して行われていたのかということを十分に把握をしておりませんけれども、これから積極的に審議をしていただかなければならない課題の一つになったと思っております。  その点について、これまでの深夜業に対する中基審における取り組み状況検討状況について伺わせていただければと思いますし、なお、今後についての御所見は大臣から賜りましたけれども、基準局長からの、具体的な今後の展開について何かございましたらお聞かせをいただけないかと思います。
  209. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 深夜業につきましての今までの関係審議会における取り組みでございますが、一つは、労働基準法研究会、これは学識者の方の集まりでございまして、御指摘の中央労働基準審議会にもまとめた結果を報告しておりますが、過去、とういった中央労働基準審議会の場から製造業を中心にそういった深夜業、特にシフト編成等による交代制の現場において何らかの指針を検討してみてはどうか、こういう御提言をいただいた経緯がございます。  ただ、当時は製造業を中心として考えられておったわけでございますが、その後、グローバル化の進展等に伴いまして、いろいろな部門でいろいろな形の深夜に及ぶ勤務形態というものが出てきておりまして、実際、そういった実態をよく見きわめながらでないとこの深夜業についての全体的な指針の策定等が大変難しい、そういう情勢も一方あらわれてきておりまして、現在、そういった問題について具体的な指針の策定には至っていない状況が一つございます。  中央労働基準審議会の方は、そういったことも受けまして、現在、この千八百時間に向けて労働時間短縮問題各般の施策を審議検討している中で、やはり時間外・休日労働、これをまず長時間のものを削減していく、その関連で深夜に及ぶそういった長時間労働等、あるいはその場合の環境問題等についてこれから労働基準法制のあり方の中で議論してはどうかという提起が労働委員からも出されてきておるところでございます。今後、具体的にどういった観点から、あるいは具体的にどういう方向を持って議論されるか、これからの段階でございますけれども、私ども、そういった深夜業をめぐる議論につきましても注意深く見守りながら、私どもとしてどのような対応ができるか、十分見きわめてまいりたいと思っております。
  210. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 深夜業は新しい場面に変わったわけでございます。男女がともにという形になる、私は、まだ必ずしも条件が十分整っているとは思いませんけれども、そういった方向に向けて前向きの対応をお願いしたい、それで、指針はできるだけ早く議論に入っていただき、よい結果が出るように御努力を期待しておきたいというふうに思います。  さらに、深夜業につきましては、女子保護規定撤廃する前の段階で十分な調査がされ、分析をされ、そして準備が整ったということを、それこそ審議会の中でコンセンサスをとって、そして世に問うというのが筋道ではなかったのかというふうに思いますけれども、この点について、私、前々回でしたでしょうか、これまでお持ちになっている調査資料をいただきたいということで、ちょうだいをいたし、拝見させていただきました。それを見ましても、準備は十分ではないというふうに考えております。  今後この点について、婦人局の方になりますか、それとも基準局の方になるのでしょうか、お願いがございます。  一つは、ずっと昔から深夜業に携わっていた女性の方の調査をしていただきたい。妊娠・出産の異常はほかと比べてどうなのか、勤続年数は大丈夫なのか、健康状態は大丈夫なのかということでございます。  それから、十一年前に、均等法によって適用除外にされましたところが大分ございます。そこに働く女性労働者のこの十一年間の状態はどうなっているのか、深夜に働く労働者の状態はどうなっているのか、数だけではなく内容についても調査をお願いしたいと思いますけれども,約束していただけますでしょうか。
  211. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 今回の均等法をつくるに当たりまして、十年前に深夜が解禁された女性労働者たちがどういう状況になっていたかということにつきましては、婦人局といたしましては、先生不十分との御指摘でございましたけれども、その就業の実態や意識については、かなり調査もし、それから労働組合や業界団体を通じた状況把握、さらには婦人少年問題審議会婦人部会の中間取りまとめに対する意見等を通じて把握に努めてきたわけでございます。  その結果として今回の法律改正案をつくらせていただいたわけでございますので、私どもとしては、それなりに問題点は把握をしてきたというふうに考えておりますので、その点は御理解をいただきたいと思います。
  212. 松本惟子

    ○松本(惟)委員  時間がそろそろ参りましたので、最後に一言申し上げさせていただきたいと思います。  今回の審議の中で、これまで俎上に上らなかった働き方について男女同一の枠組みへ持っていくという方向での審議が国会の場で初めて行われたということにつきましては、私はまあよかったというふうに思いますけれども、実質的にどういう姿に持っていくかということを考えるときに、大変大きな懸念をしております。今でも懸念をしております。  それはやはり、従来からの、家庭を妻に任せ、あるいは出産という機能を持たない、企業にとっては非常に効率のよい労働者としての元気な男性をベースにして日本のシステムというのはつくられています。徐々にこれは変わりつつあるというふうに思っております。人間に優しいシステムに変わりつつあるという方向の兆しは見えますけれども、なかなかそこまで行き着いていません。  私は、男女がともに家庭と仕事の両立を図りつつ働き続けていくためには、これは組みかえていかなければならない。つまり、仕事の場での働き方、家庭あり方男女家庭責任に対する役割の見直し、分担の仕方を含めて見直していかなければいけないという大きな課題を含んでいると思います。  女性のいわゆる雇用の場への参加というのは、もうとどめることはできないと思うのですね。先進国を見ましても、好不況によって大きなしわ寄せを受けるのはまだまだ女性の方が大きいという実情はありましても、それでも、全体的に見れば、女性雇用への参加というのは進む一方であるというふうに思います。  そうしたときに、やはり生活の質を落とさない、つまりもう本当に歯を食いしばって働きバチのように頑張り続ける働き方に女性がともに参入するという、ちょっと極端な言い方をきょうはさせていただいておりますことをお許しくださいますようにお願いしたいと思いますが、そういう方向ではなく、やはり人間らしく男女がともに働いていくという観点からシステムを見直していかなければいけないと思います。  そうするときに、一つは、子供や介護の問題については、労働条件としてだけではなく、これは厚生省にかかわることが多いと思いますけれども、環境条件がまだまだ不十分と思います。産休明けから預かってもらう保育所、小さい子供を預かってもらう保育所がまだ不十分ですし、それから、働き方に見合うような保育所の運営もなされていないなどなどございまして、ここの充実が必要かというふうに思いますから、ここにつきましては、どうぞ厚生省と労働省がしっかりとタイアップをされまして制度の促進を図っていただきますようにお願いをしたいと思います。  それから、労働時間につきましては、重ね重ね申し上げましたように、女子保護規定撤廃と、それから新しい枠組みが拘束力を持って実現するという、この空白期間がないように、ぜひとも行政サイドからの御努力をお願いしておきたいと思います。これがなければ、女性はやはり、百五十時間から、現在の目安、何の担保もない三百六十時間の方向で働かなければいけない、そうでなければ、要するに、同じに働けないハンディキャップを持つ労働者として雇用の場での差別的な取り扱いが、賃金その他処遇の問題に関してはね返ってまいります。  真に男女平等を実現していくとするならば、こういった基盤となっています労働時間の問題、深夜労働あり方についての再検討というのは不可欠であると思います。  どうぞ、法の施行とこの関係に空白が生じないようにお願いをして、私の質問を終わりにさせていただきたいと思います。
  213. 河上覃雄

    ○河上委員長代理 これにて松本惟子君の質疑は終了いたしました。  次に、金子満広君。
  214. 金子満広

    ○金子(満)委員 三十分という限定された質疑の時間でありますから、女子保護規定撤廃の問題に絞って質問をしたいと思います。  今、国会の外では、女子保護規定撤廃はやめてくれという声が全国的に急激に広がってきていることは、国会に対する請願の事実を見ても明らかだと思います。今も私は自分の部屋へ行って見てまいりましたけれども、お母さんになっても元気で働き続けることができるように女子保護規定撤廃はやめてください、こういう若い女性からの真剣な訴えがたくさん届いておりました。  そういうことを前提にして、これまでずっと審議を続けてきたわけです。おとといは参考人方々からの意見も聞きました。短い審議、そしてまた参考人意見を聴取する中でも、女子保護規定撤廃がどんなに重大な問題か、それはひとり女性に関するだけではなくて、我が国の労働者、国民、そして社会全体に対して大きな問題であるということが非常にはっきりしてきたと思うのですね。  おとといの参考人意見を聞く中で、この撤廃がいかに財界の一貫した願いであったかということが端的にあらわれました。それは、参考人の日経連の荒川氏は、その発言の中で、女子保護規定撤廃することは日経連が早くから求めてきたことであると非常に率直に歓迎の立場を言明されたわけです。  そういう中でこれと非常に対照的であったのは、全労連の笹沼女性部長の発言でした。笹沼氏は、女子保護規定に反対という立場を最初に明確にしながら、次のように述べています。今必要なのは、女子保護規定撤廃ではなくて男女共通の労働基準の法制化だ、このように指摘をされました。その中で次のような意見が述べられました。ヨーロッパ諸国では時間外や深夜労働の規制が当たり前、日本でも男性の規制こそ必要なのに女性の規制まで取り払ったらどうなるか、人たるに値する労働条件、これは男女共通のという意味です、最低基準こそ今確立すべきだ、こういうように立場を述べられました。  また、参考人で連合事務局長の鷲尾氏は、法案は大筋の点で評価できるけれどもと主張しながら、他方では、既に確保できている既得権益が今退歩するのではとの懸念があると述べられました。  また、弁護士である参考人の中島通子氏は、男女とも共通の労働時間規制が行われなかったらどうするか大変不安だ、こういうようにも指摘をしています。  そこで、まず大臣に最初に伺いたいのですが、改めて念を押しておきたいのです。政府として男女共通の労働基準労働時間を法的に規制するということが必要だと思いますが、それをやる意思が今あるかどうか。最初に伺っておきたいと思うのです。
  215. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生のところにはこの規制撤廃は非常に不安であるというお声がいっぱい集まっている、こういうお話でございました。  実は、本法改正案を提出する前に、これは婦人少年問題審議会あるいは中基審議会等々で、この問題、非常に議論がいろいろ闘わされた。その結果、建議という積極的な意思表明の形で、私どもは人見会長から、この雇用促進のための男女雇用機会均等法、ぜひやるべきであるというお話をいただきました。したがって、いろいろな意見があると存じますが、今まで女性女性であるがゆえに、新しい職場につきたいと思っていたが労働基準法上の先生お話しの三つの規制があるがゆえにそこに就職ができなかったというようなことを、ぜひ今度は解放をして自由に職業の選択が可能になるべく本法を提案いたしました。  加えて、その法規制をやるか否かという先生お話でありますが、これはもう何度もこの場でお話をいたしました。超過勤務というのは景気の好不況に伴うところの雇用の調整機能を持っているというようなことがございますし、また、やはり夜間においても休日においても仕事をしなければならないというような生産技術上の問題、国民の要請の問題、生活利便というような考え方からいたしまして、男女共通の法的規制ということを今考えてはおりませんことを答弁といたします。
  216. 金子満広

    ○金子(満)委員 法的規制を考えていないということであれば、これは重大な問題なんですね。女子保護規定はなくしていく、あとは野放しだ、これはもう雇用関係労働条件もルールのないところへ入ってしまうということですね。ですから、多くの方々がとにもかくにも、今大臣も言われましたけれども、これを提出する前にはいろいろ議論があった。いろいろ議論はあったけれどもそれはこっちにおいて、まず保護規定をなくせということだけを先行させたというのは事実の経過からはっきりしていると私は思うのです。労働大臣個人も法的規制をやる意思はないと言うのですから、これは中基審検討してもらうよりなお後退をしているわけですね。  そこで、婦人局長にお伺いしたいと思うのです。  これは確かに大きな問題で、たくさんの方々がこのままではという不安をいっぱい持っていることは事実なんですね。そして、法的規制というのは当然やらなければならないことだと私は考えるわけです。  これは念のために伺うのですけれども、年間千八百時間というのは、閣議決定してもう十年以上もたつ。国際的にも常識だ。日本で千八百時間になるためには時間外、つまり残業の時間をうんと減らさなければならないと思うけれども、千八百時間に到達するためには時間外をどの辺まで減らせばいいというふうにお考えですか。基準局長でも結構です。
  217. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 いろいろなパターンでの千八百時間への近づき方はあろうかと存じますが、過去につくりまして広報等に活用しているモデルで一つ申し上げれば、これは時間外労働だけでは決まりませんで、まず週休二日制が完全に定着していること、それから年次有給休暇が完全に取得されていること、それから時間外労働、長時間労働がかなり改善されること等々が必要でございます。  そういった幾つかの複合的なことを前提にして申し上げれば、時間外労働につきましては年平均で大体百四十七時間程度、この辺のことが達成されないと千八百時間ぴたりまでは行かない、こういうモデルになっております。
  218. 金子満広

    ○金子(満)委員 大変重大な指摘だったと思うのですね。百四十七時間というのは、今女子保護規定でやっている百五十時間よりちょっと下がっているわけです。ところが実際には、残業、時間外は延ばす、夜中働くこともいいです、こういう格好になり、休日の問題についても今度は法規定でなくすわけですからね。そういうことをやると、歴史に逆行している、千八百時間にどんどん遠くなるような措置をしている。ここで大臣が言われるように法的規制もやらないというようなことであったら、大変なことになると私は思うのです。  そこで、おとといの参考人方々意見の中から日経連の荒川氏の発言をもう一度思い出すわけですけれども、.何と言っているか。荒川氏は、女子保護規定撤廃は早い方がいい、早く成立をさせてくれ、これは要求としてちゃんと述べているのです。同時に、労働時間の男女の規制については、新たな法規制には反対である、全然遠慮していないのですね。ずばり言っているのです。そういうふうに言明しているのですけれども、新たな法規制には反対だということと、さっき労働大臣が言った、考えていませんということは完全に符合するのですね。いい悪いは別として、これは偶然の一致ではなくて、何か必然性がそこにある。こういう点を考えると、今財界の方は、何とかして保護規定はなくすが新しい法規制はやらせない、ここでうまくやれれば、結果は食い逃げになると思うのです。  これはどちらさんでもいいですから、婦人局長でも基準局長でも答えてくれませんか。     〔河上委員長代理退席、委員長着席〕
  219. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 まず、先ほど労働大臣の方からも男女共通の法規制についての考え方をお話し申し上げたところでございますが、男女共通の法的規制という言葉につきまして、先生どういった規制内容を前提にしてお話しになっているのか、これは私ども定かには承知していないわけでございます。  ただ、これは想像させていただくので、もし外れていれば恐縮でございますが、先生は諸外国においては法的規制が常識だ、こういうふうにおっしゃられていますので、ドイツ、フランスのようなことをお考えになっているのか、あるいは逆にアメリカ、イギリスのようなパターンの間のことを考えておられるのか。  もし、そういった中でドイツ、フランスのようにかなり強い法的規制ということを考えているのであれば、我が国の超過勤務制度が持つ雇用調整機能等々の関係で、それを損なうことになれば、一方では景気の変動に対してレイオフ等をやっていかなければ、生産活動、経済活動がもたないという面が出てくるので、その辺は慎重に考える必要がある、こういう立場から申し上げているわけでございます。  やはりこういった問題につきまして、私ども中央労働基準審議会でいろいろ検討をお願いしておりますけれども、法的規制、男女共通規制とかそういったことについてどういったことをイメージして議論が進むのか、まずそのイメージについて共有しておかないと議論がなかなか難しいのではなかろうかというふうに考えているところでございます。
  220. 金子満広

    ○金子(満)委員 男女共通の規制という問題は、あれこれではなくてこれだというのは、大まかなことはもうみんな理解しているのですよ。ですから、荒川参考人がどういう形で言ったか聞いてみなければわからぬというような意味ではなくて、一方では、法的に保護していたものを法的になくしてしまうわけです。それで、片方は、新しく法的に規制をしたらといったら、それはやらないと。  確かに国際的にはいろいろあります。いろいろあるけれども、合理的な、そしてより多くの議論を重ねて到達した、それは後で申し上げますけれども、フランスとかドイツとかスウェーデンとか、こういう例はあります。しかし、そういう中で、悪い方へ悪い方へ引っ張っていってそっちの例に倣ったら、今度は諸外国は日本のような労働基準でやったらどうかというようなことを言ってくる人も出てくると思うのです。  そういう意味で、今いずれにしても日本の財界が新しい法的規制を望んでいない、ヨーロッパのようなことを望んでいないということは明らかなんですね。  そこで、いずれにしても、労基法で五十年間維持してきた女子保護規定、その中での時間外とか休日とか深夜労働の問題については、これがなくなるわけですね。したがって女性というのは、妊娠・出産以外は全部男並みになるわけです。そういうことにならざるを得ない。ですから、深夜作業も時間外も、とにかく一切の規制はなくなる。そうすると、現在の男性労働条件均等になるということ、これは機械的でなくて実際そうだと思いますが、婦人局長どうですか。
  221. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 枠組みとして、男女同一の枠組みになるものでございます。
  222. 金子満広

    ○金子(満)委員 そのとおりなんですね。ですから、公のところで言うときには、平等です、均等です、同権ですと、大きい声で言うわけです。どこで均等になるのですかといったら、長時間で過密労働で国際的にもカローシに通ずる道だな、ここでの均等かというのは、一皮むくとそこへ来るわけです。だから、みんな懸念をして、何とかそこを男女とも法的に規制してくれというのは、私は当然のことだと思うのです。  さてそういう中で、今度は一切そういう制限がなくなった、どんなことが起こるだろう。これは一つの例にもなるわけですが、それを拒否できないというのはこれまでの審議で明らかであります。  そこで、女性職場進出がどんどん広がっている、これは御承知のとおりなんですね。今の女子保護規定がある中で女性の職域が広がってきたことは歴史の事実なんです。そういう中で、今後それがなくなった場合どうするか。  これは私も請願を受けて何回も言われていることなんですけれども、トラックの運輸労働者で組織されている全日本運輸一般労働組合というのがありますが、そこの女性部の代表から、保護規定撤廃にはどうしても反対だ、頑張ってほしいということを言われました。  その中で指摘されているのは、最近女性のドライバーの進出が非常に多くなってきている、その中で、女性ドライバーの六割が二十代、勤続三年以下が六割、そしてパートのドライバーも非常に多くなってきている。ところが、こういう中で今度保護規定が廃止されるとどんどん使い捨てになっていくのじゃないかという懸念が表明をされているわけですね。  ところで、今度保護規定撤廃をされるということになりますと、現在、女性ドライバーも深夜労働が全部やれるようになるという解釈がありますが、やらせることができるようになると。  御存じの方もあると思いますが、長距離トラックの運転台の後ろに車内ベッドというのがついていますね。あれは休憩、仮眠のために利用するのだということでありますけれども、休息期間、休息というものはどういうものかというので、私も労働省からいろいろの資料をとって見させていただきました。それによると、休息という点について申し上げれば、「休息期間 勤務と次の勤務の間の時間で、睡眠時間を含む勤労者の生活時間として、労働者にとって全く自由な時間をいいます。」ですから、職場から、仕事から離れるということは当然のことであるのですね。こういうあれをしているわけです。  深夜労働が解禁されるということを前提にしてかどうかは知りませんけれども、既に三月の段階で、全日本トラック協会の会長さんは労働省基準局長さんにいろいろの点について照会をしているのですね。運転台の後ろの車内ベッドでの休息について問い合わせをしているのです。  どういうことかというと、そのベッドで休息するのだから、その場合には例えばパーキングエリアやドライブインで休んでもいいのではないか、こういう点はどうかという問い合わせをしたのに対して、今度は労働基準局の局長ではなくて部長さんが「貴見のとおり取り扱って差し支えない。」という回答をことしの三月十一日にやっているわけなんです。  さあここで、今度は女性ドライバーも深夜の運転ができるようになる。休息というときになると、パーキングエリアやそういうところへ入っていれば、そこで寝ていいということになりますね。そうすると、職場から離れられないのです、職場が動いているのですから。こういう状態になってくるのですね。  それでも結構ですという労働省の部長さんの回答なんだけれども、ドライブインで休息期間をとっていたらどうなりますか。トイレへ行く、真っ暗やみだ。何かあったとする。そのときに、これは休息期間ですから、労働災害になるのかならないのか、これまで問題になる。こういうことを考えないでOKを出してしまっているのです。  ですから、労働組合やそこの女性部が反対するのは当然だと思う。こういう乱暴なことはやるべきでない。石橋をたたいて渡るくらい慎重にしないと、人権の問題になるのですね。そういうことが起こりますが、この点はどうですか。
  223. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 御指摘のトラックの運転手の方につきましては、かねてより長時間労働等の問題があるということを指摘されておりまして、この点につきましては、私ども特別に、トラックの運転者の方々等の労働時間の改善のための基準を策定いたしまして、告示いたしまして、それに基づき指導をいたしてきておるわけです。  その中では、拘束時間、休息時間等々過酷にならないように、一つの基準を私ども設定いたしまして労使を指導し、これは監督官が監督しつつ指導に当たるというかなり厳し目の監督指導基準として用いておるわけでございます。この点は、もう既に長年にわたってこれを使ってきておりまして、特段、今回の改正の問題と関連する問題ではございません。  ただその中で、御指摘ございましたように、休息時間にどういう時間を算入するか、例えばトラックの車両内のベッドで休息する時間が休息時間に当たるかどうか、こういった点の問い合わせがあって答えていることは事実でございます。  そういった、労働時間の中でどういう部分を休息時間として見るかという改善基準上の定義でございますので、使用者の拘束を受けない時間でその処分が労働者の自由にゆだねられている時間、これはもちろん休息時間として見ていくこと、そういった観点から、駐車スペースまた荷物の点検等の任務が外されている時間、こういう時間を休息時間としてよろしい、こういう回答が出ておるわけでございます。  これはあくまで、運転時間の改善基準上の扱いでございまして、休息する場所が快適なものあるいは清潔なものでなくてはならないということとはまた別の問題でございまして、それ自体、いいところで、快適なところで十分休息をとっていただくような、そういった施策の観点から、そういった点については我々が労使に指導したり、労使で話し合ってもらうことはぜひとも必要だというふうに思っております。
  224. 金子満広

    ○金子(満)委員 これは、労使の話し合いの前の問題なんですね。だから、使用者側から、女子保護規定撤廃されるということをちゃんと見通して、その前にやってきているわけですね。長い慣例でも何でもないので、そういう点でいえば、これは労働省のパンフでも指摘しているように、全く自由な時間にさせなければならないのだ。当たり前のことでいえば、別に宿舎を設けなければならないのです。車の中で寝るなどということはおおよそ考えられない。全く自由だなどということにならないわけですから。  私は、今後ともほかの職場にも、職種にもこういう点が出てくるだろうと思うので、この点は厳しく指摘をしておきたいし、そういう点はなくすようにやってほしい、こういうように思うわけです。  さてそこで、諸外国の問題がいろいろ出ておりますけれども、御承知のように、女性に対する法的な保護の問題、それは男女共通の保護としてやれる点でこれはよく使われておりますし、労働省の資料にもあるわけですけれども、例えば深夜労働については、スウェーデンでは特別な場合を除いて原則的に禁止。それから時間外労働については、フランスは男女とも年間百三十時間。これは、今ある女子保護規定の百五十時間よりも男女とも短いわけです。ドイツでは一日十時間。年間を通じて時間外で働いてもらうことができるのは六十日。これで計算しますと、年間百二十時間ということになるわけですね。今度は休日出勤については、ドイツでは原則的に休日労働は禁止だ。育児は、子供さんが十二歳まで男女とも深夜はやらなくてもいい。これはよく言われているように、申請をすれば昼間の仕事に回さなければならぬということになっているわけですね。  なぜ日本でこういうものができないのか。これは、一言でどなたか答えてもらいたいと思います。
  225. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 先生御指摘ございました諸外国の例、主としてヨーロッパの大陸系の労働法制をお引きになられて出されておるわけでございますが、イギリス、アメリカ、そういった部分労働法制がかなり違うわけでございまして、私ども日本の超過勤務制度の前提といいますのは、私どもの気持ちとして、長い超過勤務がいいと申しておるわけではございませんで、むしろ今まで一生懸命削減に努めてきておるわけでございます。  先生御指摘になられた大陸系の労働法制の場合、むしろ、超過勤務を前提にしない雇用システム、あるいはそういった生産活動が前提にあるわけでございまして、そういったところと、景気の変動によって雇用量を調整しなくてはいかぬ場合に、レイオフ等ではなくて労働時間で調整して、できるだけ解雇等もなくしていく、そういった柔軟な雇用システムを採用している日本の場合と同一に論じていいかどうか。  これは審議会等でも、これからの時間外労働あり方として大いに御議論があってしかるべきだろうし、ぜひしていただいて、これからの時間外労働等のあり方の方向をいろいろ出していただきたいというふうに考えておるところでございます。
  226. 金子満広

    ○金子(満)委員 先ほど申し上げたのですけれども、外国の例が出ると、イギリス、アメリカをすぐ出してくるのですよ。こういうような、日本より悪い状況に合わせようとするわけです。進歩的で合理的なところが、長い二百年に及ぶいろいろの運動の経過の中でヨーロッパでは確立しているのですね。そこに何で接近しようとしないのか。低いところで一緒にやろうみたいなことになるわけです。  今局長の言われる、確かに景気、好況の場合、不況の場合、そういうものがあるので、労働時間で調整をするというのはだれの立場かということなんです。こういう点も考えていけば、好況不況にかかわらず、労働者の生活そして生活水準、家庭生活、国民生活というのがあるわけですから、そういう点で最低のものをというのは最初から私どもが主張しているわけですけれども、外国でできて日本でできないというのは、確かにいろいろの事情はある、歴史もある。しかし、最大の違いというのは、政府の政策とやる気があるかないか、この違いが一番でかい違いだと私は思うのですね。やる気があればそういう方向が出るわけですけれども、大臣、その点どうですか。
  227. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生、やはり一国の法制といいますのは法体系ということがございまして、あちらやらこちらの法制をかきまぜて一つの法律体系をつくりますと、矛盾がいっぱい出てまいります。戦後、我が労働基準法は、やはり三十六条協定というものを根拠にして休日、超過勤務を決めた。これは、戦前はドイツ法制、フランス法制でありましたものが、労働基準法等はアメリカ法制を入れたというような意味合いで首尾が一貫をしている。  そういうことで、悪い例ばかりを持ってくるということでありますが、先生先生なりに例を持ってこられて、我々は我々なりに例を持ってきて、首尾は一貫をしているということでございます。  それからもう一つ。今までの規制されたそういう法体系の中で女性皆さんの職域はどんどん伸びてきたというお話でございますが、実は、やはり看護婦さんは三班交代で深夜勤も必要であるというようなことで、看護婦さんの働き場というものはできてきた。あるいは放送にしろ新聞にせよ、やはり深夜にスクープをするという必要がある。したがって、深夜労働もできるということで女性皆さんもどんどん新聞記者になり、放送の、何といいましたか、アナウンサー、そういうことで、今までの法制の中で深夜を解放するということで、女性の職域が広がってきたということであります。  もう自衛隊の話もいたしません。警察官の話もいたしません。そういう意味合いで、今後もこの規制の緩和によって、できなかったものができるようになるということで職域を大きく伸ばしていこう、これが本旨でございますことを御理解いただきたい。
  228. 金子満広

    ○金子(満)委員 時間が来たようですから、最後に短く申し上げます。  大臣はそう言うけれども、看護婦さんは労働基準法ができたときから深夜から除外されているのですよ。それから放送だの、これはみんな除外されているのです。そういうことを今持ち出しても、それは当たらないのです。特に法的には、それはいろいろの法体系というのはあるけれども、日本では五十年間も法体系の中に保護規定が入っていたのだから、これをなくしたらどうなるか、だれでもわかるわけです。それをする場合に、男女の共通の労働条件労働時間の共通規制を外国の例に倣ってやるというのは、これは常識なんですから。そういう点は繰り返し明らかにしておきたいと思います。  時間が参りましたが、審議の時間が非常に少なくて、私は残念だと思うのですね。時計を見ながらやるのじゃなくて、伸び伸びとやるような条件がなければ本当の審議はできない。スイスでは、何と皆さん、国会が決議したのを国民が否決するまでに九カ月間も論議しているのだから。これを四日間で上げるなどというのはやはり民主的ではないという気持ちもします。  いずれにしても、この女子保護規定撤廃ということは反対だという声は大きいし、私はその方が、撤廃反対の方が時代の流れだし、国民的な常識だと思います。そういうことで、私も撤廃反対という立場で今後とも努力していくことを最後に申し上げて、質問を終わります。  以上です。
  229. 青山丘

    青山委員長 これにて金子満広君の質疑は終了いたしました。  次に、辻元清美君。
  230. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党・市民連合の辻元清美です。  私は、きょうはまず、再三この場でも確認してきたことにつきまして、まずその現状確認から行いたいと思います。  家族的責任の比重が女性に重くかかっている現状というのは、ここで私も何回も確認してまいりました。そして、今回の法改正によって女性労働者状況が変化する、これは何人も認めるところなんですけれども、どのように変化するか、ここが問題だと思うのです。私は、激変する可能性は、十分あるのではないかというふうに考えております。普通の変化ではなく、激というのがつくのは急に変わってしまうという意味ですが、ですからその激変緩和措置、これが政策で打ち出されることが大事ではないかという点についてまず御質問したいと思います。  それで、前回も触れました、この場で何回も七分という数字が出てまいりました。これは男性の家事、男性が家事に従事される時間ということで一日に平均七分という時間がよく出てきましたので、それでは、女性は共働きの家庭で一日何時間やっているのかなと思って調べてみますと、女性は二時間三十四分、そして男性が七分、こういう現状になっております。それで、労働時間は、調べてみますと、この場合の統計では、女性は七時間四分、男性は八時間三十八分。労働時間、余り変わらないのですね。そういう中で、やはりかなり女性に負担がかかっているなというふうに私も再確認したような次第なんです。  そして、これは本日の新聞なんですけれども、家事の値段は年二百七十六万円、こういう記事が出ております。これは経企庁が試算した専業主婦の平均、要するにお金に換算されない仕事をお金に換算したらどれだけになるか、そういう女性労働についての換算の統計が昨日出されたという記事です。これによりますと、全部で、年間ですと九十八兆八千五百八十億円、何とGDPの二一・六%に当たる、こういう統計も出ております。こういうことから、女性の家族的責任が多いということは、ここでもう一度確認できるのではないかと思います。  そういう中で、今回のこの法改正についてなんですけれども、今まで社民党では雇用における男女差別をなくそうということはずっと訴えてきましたし、男女平等社会を実現するために全力で取り組みたいという決意で進んでまいりました。しかし、今回、労基法の女子のみ保護規定解消される時点で、男女共通のより質の高い労働条件基準が設定されていなければならないわけなんですけれども、設定されたとしても質が低かったり、もしくは設定が時間的に間に合わなかった場合、この場合は緊急避難的措置として、先ほど私、激変という言葉を使いましたけれども、激変緩和措置がぜひとも必要なのではないか。そういうこともにらみながら政策を進めていかないと、後でさまざまな問題が出てきても困りますので、ぜひそういうイニシアチブをとっていただきたいと思うのですね。これは単に性的差異に基づく措置ではなくて、現に家族的責任を負っている女性労働者に対する当面の配慮ということで、そういう措置、激変緩和措置についてぜひ検討していただきたいと思うのですが、労働省の御見解はいかがでしょうか。
  231. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 今先生から御指摘ありましたように、家庭責任を有する女性労働者の方が、今まで百五十時間ということに抑えられていたこともございまして、この新しい制度のもとで職業生活に少なからぬ影響を生ずることがあるわけでございます。  それで、こうしたケースにつきまして、現在の目安制度の中で、職業生活労働条件の急激な変化を緩和するために何らかの措置検討することは重要でないかというふうに考えております。先ほど、労働大臣の方からもそういったことについて考え方が表明されたところでございますが、そういったことを受けまして、現在中央労働基準審議会において行われております時間外・休日労働あり方検討に際しまして、先生御指摘の趣旨を十分説明し、適切な対応策をおまとめいただけるようにお願いをしてまいりたいというふうに考えております。
  232. 辻元清美

    辻元委員 前向きな御答弁と受けとめさせていただきました。  さて、その激変緩和措置を講ずる場合、どの程度の期間を想定されているかということをちょっと重ねてお伺いしたいのですが。
  233. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 先生からも御指摘ありましたように、今回の制度改正によって急激な職業生活上の変化が出ることを避ける、いわば急激な変化を緩和していくための措置ということでございますので、ある意味では経過措置ということで考えていただく、そういったことで審議会の方でも御議論を願うことにいたしたいと思っております。  したがいまして、その期間等につきましても、審議会の方で具体的な論議がこれから行われますけれども、あくまでそういった、いわば激変緩和のための経過措置ということを踏まえた妥当な期間が検討対象になるだろうと思っております。
  234. 辻元清美

    辻元委員 今局長言葉で経過措置という言葉がございましたけれども、私の方では、男女共通のより質の高い労働基準を求めていく間の経過措置であるというふうに受けとめさせていただきました。  さて、幾つか細かい点について確認させていただきます。  前回の質疑の中でも、パート労働者のことについて私は伺いました。太田局長の御答弁の中で、女子のパート労働者の数は増加傾向にあるというふうに伺っております。そこで、この育児または家族介護を行う労働者の「深夜業の制限」の項でこういうのがございます。雇用期間一年未満の労働者は対象外とされている。そうしますと、パート労働者などの有期雇用者、パートの場合は一年とか、契約で働きますので、有期雇用者が間断なく契約を更新することによって結果的に一年以上雇用されている場合はこの対象外とされてしまうのかどうか、ここを確認させていただきたいのですが、いかがでしょうか。
  235. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  期間の定めのある労働者につきましても、今先生御指摘のように、継続して雇用されまして在籍期間が一年を超える場合につきましては、これは深夜業の制限の権利は認められることになるわけでございます。
  236. 辻元清美

    辻元委員 はい、わかりました。  さて、深夜業について引き続き御質問したいのですけれども、先ほどからも、深夜業について環境整備が議題に上がっております。その中には、就業環境整備、細かくいえば、夜働きますので、仮眠室とかそれから警備とか、それから勤務の便利性といいますか、送迎バスとか、細かい話になるかと思うのですが、その中で、就学後の児童も含めた子供への配慮ということで、最近社会問題にもなっています不登校児や、それから障害者を抱えているお母さんですね、それでも働かざるを得ないという方はたくさんいらっしゃるかと思うのです。こういう女性への配慮も含めて、その環境整備というふうに考えていただきたいと思うのですが、労働省の御見解はいかがでしょうか。
  237. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 新たに女性労働者に深夜業をさせるときには、就業環境整備に関しまして事業主が努めるべき具体的な事項につきましては、法律の成立後、総合的指針を定めまして、それに基づきまして啓発指導を行ってまいりたいと考えております。  御指摘の視点につきましては、指針の策定の中で検討させていただきたいと思います。
  238. 辻元清美

    辻元委員 次は、時間外労働、休日労働の制限についてお伺いします。  前々日ですか、おとといですね、参考人質疑の中で、私は日経連の荒川参考人にこういう質問をしました。雇用者が労働者に時間外労働を命ずる際の正当で合理的な理由とは、だれにとっての正当で合理的な理由なんですか、荒川さんはどうお考えですかと伺いましたら、荒川さんは、それはもう雇用者にとってだというふうに胸を張ってお答えになったのですが、労働省の御見解はいかがなんでしょうか。この理由ですね。
  239. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 正当な理由というのは、これは客観的に合理的な理由をいうものだと思いますから、結局のところ、使用者にとりましても労働者にとりましても納得できるような理由をいうものであるというふうに考えます。
  240. 辻元清美

    辻元委員 それを聞いて安心いたしました。  さて、もう時間がなくなってまいりましたが、実際に、女性男性も共通のより質の高い労働条件基準の設定へと組みかえていくというのは、これはもう皆さん共通の認識になってきていると思うのです。その道筋ですね、どのような形でやるのかというところが議論されてきたと思うのですが、女性だけではなくて、男性家庭的、家族的責任といいますか、それを果たすということは人生豊かになることですし、かつ、女性もたくさんの場で仕事の門戸を開いていくということは重要なことであると思います。そういう中で、このような女性男性も働きやすく、家庭的責任も十分果たせる社会の実現に向けて、労働大臣のイニシアチブは大変重要であるというふうに考えております。  もうすぐ二十一世紀なんですね。これは二年後の施行ということなんですが、三年後に二十一世紀になって、そのとき私はちょうど四十歳になるのですけれども、働き盛りなんですよ、大臣。そのときに、子供はまだおりませんが、子供もできて、いいパートナーも見つけて、働きやすい、そういう社会にぜひなりたいなというので、これは他人事ではなく、自分の問題として審議しておりました。  そこで、このような社会実現に向けて、大臣の御努力の決意をしっかりと答えていただければと思うのですが。
  241. 岡野裕

    岡野国務大臣 おかげさまで、私は大臣就任以来これで七カ月でございますが、さきに時短促進法を可決をいただきました。これで千八百時間に向けて一歩大きく前進をした、こう思っております。  それから、今度、この男女雇用機会均等法改正案を実現するべく、私としては一生懸命努めております。その中には、育児介護休業法の一部改正といいますような、男性女性、いずれも職場生活と家庭生活が両立をするということを願っての法律案をも含んでいるわけであります。  ひとつぜひ可決成立させていただきまして、先生がおっしゃいますような、先生を含み、日本男女両性が楽しい生きがいのある生活が送れるようにいたしたい、こう思っておりますので、よろしく御協力をお願いいたします。
  242. 辻元清美

    辻元委員 努力していただくという御回答だというふうに思いました。  かつ、先ほど、家事労働男女の差という、二時間三十四分と、それからたった七分ということを、私、三回の質問で取り上げております。これは、もちろん職場環境労働条件による理由ということもございますが、やはり男性意識が大切だと思うのです。この委員会男性が多いです、委員も。何分やっているのかちょっと平均をとってみたいなという気も、この議員というのは忙しい仕事ですけれども、そういう気持ちでこの審議に臨んでまいりました。  ですから、ぜひこの委員皆さんからまず、平等社会を実現する一歩として具体的なお取り組みをしていただくことを訴えまして、私の質問時間、終了いたしましたので、終わりたいと思います。
  243. 青山丘

    青山委員長 これにて辻元清美君の質疑は終了いたしました。  次にへ畑英次郎君。
  244. 畑英次郎

    ○畑委員 岡野労働大臣を初め、政府側の皆さん、大変御苦労さんでございます。最後質問でございますので、しばらくおつき合いをお願い申し上げたいと思います。  今度のこの均等法改正問題につきましては、各委員からも、なおまた岡野大臣からも御指摘が、ございましたとおり、私は、やはり戦後の労働行政の中における一つの大きな画期的な法改正であるというように受けとめさせていただいておるわけでございますし、岡野大臣の在任中のすばらしい実績の要素を踏まえた今回の改正ではないかなというように評価をさせていただいておるわけでございます。  さはさりながら、やはりこういった法改正に当たりましては、いろいろ懸念材料、懸念項目のあることもこれまた事実でございますし、あるいはその法案そのものが、文言その他におきましては、あるいはまた取り組みの姿勢、方向性等につきましては、立派なものを踏まえ、その努力目標が明示されておるわけでございますが、この日本社会といいますものは、やはり本音と建前というものが人間社会の一つの大きなベースに横たわっておることもこれまた否定のできない、そこに、ある意味におきましては人間味といいますか、人間性といいますものが生かされておる面もこれまたあろうかというように私は考えるわけでございます。  職域におきましても、やはりこれは正しくはないというようなことが感じられながら、それをすぐ訴えるというようなことに直結するという従来の雰囲気ではない、あるいはまた結婚、妊娠・出産、そういう事態に、いわゆるおめでたい事態に遭遇しても、やはり職場環境の中では、もうこの人はおやめになるのではないかなという期待をお持ちになる向きも残念ながらあることもこれまた事実ではないかなというように考えるわけでございます。  最近は小中学校のいじめ問題等々が大きな社会問題になっておるわけでございますが、職域におきましても、職場におきましても、そういうものが残念ながら一掃されていない今日の実態にあるわけでございますので、今回のこの法改正の成立を見ましても、それなりのいわゆる日本的な土地柄、実情、こういうものを踏まえたこの法改正に伴う対応といいますものが労働省側に大きく期待をされておるのではないかなというように私は考えるわけでございますが、この辺についての大臣のお考えをお聞かせいただければ幸いと思います。
  245. 岡野裕

    岡野国務大臣 本改正法案を含め、やはり法律といいますものは、あるいは制度といいますものは、その国の風土、これに足を十分踏まえておらなければ空文に終わるというような意味合いで、ひとつぜひ本法が具体的に実施をされるような、そういう努力を労働省としても全力投球でしてまいりたい、かように思っておりますことを答弁といたします。
  246. 畑英次郎

    ○畑委員 岡野大臣にしてはちょっと簡単な答弁で、私はいささか肩透かしを食ったような気もいたしておりますけれども、やはりこういったような意味合いのものにおきましては、家庭の中でも、あるいはまた地域社会におきましても、先ほど御指摘を申し上げましたような懸念材料、残念ながら、長い間のいわゆるしがらみといいますか、いろいろなものがそこに横たわっておる。  私は、自分のいささか足らざる点を反省しながら、今回のこの審議を通しまして感じましたことは、やはり社会通念として、家庭の中におきましても、地域社会におきましても、やはり男女性差別はないということが常識だ、そういうような日常生活の取り組みが展開されておるというような、地域社会家庭の中の雰囲気といいますものが同時並行的に、あるいは先行してでき上がっていないと、この法の改正の趣旨が生かされないのではないかなというようなことをも実は私は感じておるような次第でございますから、これは大臣の方のやりとりの中で話が既に出ておったわけでございますが、やはりこういった問題が広く教育分野におきましても日常生活分野におきましても常識化する、あるいはより一層厚みを持った理解の構築にそれぞれの、これは行政全般が力を入れていくことが大切ではないかなということをあえて重ねて私は御指摘を申し上げておく次第でございます。  そういう中にございまして、先ほど来のやりとりの中で一つちょっと気になりますことは、今回のこの女子保護規定解消ということに伴いまして、やはり男女共通の一つの時間外規制といいますものをつくるべきだということがかなり幅広い声として上がっておりますことは御案内のとおりでございます。  あるいはまた、日弁連等々におきましても、男女共通の時間外規制というようなものがなされるという前提、あるいは保障というような言葉をお使いになる方もあるわけでございますが、そういうものがあって初めてこの解消というものがあり得るのではないかなというようなことが従来強く言われておったところであるわけでございます。先日の連合の鷲尾事務局長参考人としての発言の中にも、そういったことが強く懸念材料として指摘をされながら意見開陳があったわけでございますが、先ほどのやりとりの中におきましては、いわゆる男女共通の規制は行わないと大臣のお立場で明言をされたわけでございますが、ちょっと奇異の感を抱いたわけでございます。  と申し上げますのは、橋本総理におかれましても、あるいはまた岡野労働大臣におかれましても、衆議院の本会議で各党の代表質問に対する答弁の中にございましては、先ほど来お話がございましたとおり、景気の繁閑の問題があり、あるいは雇用調整の問題、あるいはまた生産技術上の必要性等々の問題のことを念頭に置いた場合には慎重に検討しなければならないというのが総理のあるいは労働大臣の本会議場における答弁ではなかったかなというように私は記憶をいたしておるわけでございます。  私のような立場にございましては、いささかこの問題は余り明らかに、しかも中基審でもって審議中の問題をやる意思はないと明確に否定されたのではないかなという懸念を、あるいは私の早合点かもしれませんが、この辺について大臣にもら一度、何らかの規制はやるんですよ、そういう余地はあるんですよというお気持ちが先ほどの労働基準局長の補足答弁の中で含まれておるのかなというように善意には解釈をしますけれども、これは全くよくよく考える余地はない、法規制の余地はないというような意味合いのものかどうか、この辺、ひとつ確認の意味も込めましてお尋ねをする次第でございます。
  247. 岡野裕

    岡野国務大臣 先ほどは共産党の金子先生から、率直な今の考えを述べろ、こういうお話でございました。中基審に七月の末までかかって時間外労働、休日労働等、ひとり御審議を賜りたい、こう言っているのでありますが、これは結論が出るのは七月末であります。今の時点でここで即答をというお話でございましたので、今の時点では、中基審にお願いをしているのに大臣が一方的に、勝手に話してしまう、結論を出してしまうというわけにはまいりませんので、先ほどの答弁に相なりました。本件につきましては、松本惟子議員の確認答弁を求めるという答弁に私がお話をるるいたしておきましたことを、多分、畑先生もお聞きだと思いますので、改めてもう一遍読み上げますことを節約してよろしゅうございますか。(畑委員「結構です」と呼ぶ)そういう次第であります。
  248. 畑英次郎

    ○畑委員 私は、岡野大臣が書いたものを読むというのは、極めてふさわしくない……(岡野国務大臣「私も生まれて初めてであります」と呼ぶ)と思います。私も、先ほど顔を出しましたときに、大臣としてはこれは何かきょうばいささか違った要素があったのかな、あるいは前の晩に気分悪いことでもあったのかなという心配をしながら拝聴をいたしておったわけでございますが、やはり今大臣がおっしゃるとおり、これは中央労働基準審議会でございますか、そういうところに今諮問をしていらっしゃる、そういうさなかでございますから、出てきた答申によりましては、十分それを踏まえてというのは、これは当然お互い常識的な対応ではないかなというふうに考えますし、いささか質問のペースに巻き込まれた要素もあったのかなというふうにも私は考えるわけでございます。  何としてもこれは、先ほど来御指摘ありましたような百五十時間の問題等々、あるいはまた労基法の改正と合わせまして均等法改正のスタート時点を一緒にしてもらいたい、これは労働界の方々の強い希望でもあるわけでございますし、私どもも、一つの激変緩和というような意味合いの中におきましても、そういうような取り扱いはやっていくべきではないかなというように考えますので、この点につきましては、さらにひとつ前向きに大臣の、労働省側のお取り組みを賜りたいなというふうに考えます。  私は、自分の短い閣僚経験からいいましても、審議会の審議そのものも大切にはしなければなりませんけれども、やはり担当大臣の、役所の方々の意向といいますものは、それなりに、自然発生的にそこに文言となり姿形となってあらわれる、こういうことでございますから、今申し上げましたように、やはり男女共通する時間外規制等の問題につきましては、前向きにぜひともこれはお願いを申し上げたいなというように考えるわけでございます。  最後に、こういった問題につきましては、私自身九州の出身でございますから、先ほどもちょっと申し上げましたが、まだまだ足らざる点が多いわけで、認識の不足の点が多いわけでございますが、そういう中にございましては、労働省におかれましても、私は、率先して男女雇用均等という意味合いでは数字でもって、姿でもって、形をもって率先垂範をされなければならない。そういう意味で、これは失礼ではございますが、労働省は、管理職男女比率というのはどのぐらいになるものでしょうか。
  249. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 つまびらかな数字は持っておりませんが、本省の課長クラスでかなりおりますので、一割以上にはなろうかと思っております。
  250. 畑英次郎

    ○畑委員 御指摘がございましたように、私は、やはりそういうことを考えますと、まずは労働省におかれまして、フィフティー・フィフティーというわけにはまいりませんでしょうけれども、さような意味合いでの率先垂範という姿形をぜひお示しを賜りたい。  あるいはまた、この均等法の精神の推進のためには、各労働組合あるいは経済団体等々にもそれなりの一つの呼びかけといいますものはこれから当然行っていかなければならない、こういうように考えるわけでございますが、私ども政党人におきましても、本来は各政党それぞれが女性議員の方々をそれ相応の比率をもってあらゆる法案審議等々に取り組む、そういうことが必要な今回の問題提起の内容として、政治家も、きょうのこの委員方々もそういうような意味合いでの受けとめをしていかなくてはならぬのではないかなというふうに考えます。  実は、先日この話をいたしましたときに、我が党内におきましては政党助成交付金の話が出まして、政党に対する助成交付金――女性交付金、女性がいない政党には助成をしないというぐらいの気持ちをやはり政治家が持たなければならないということになりますと、天に向かってつばきをするのかなというようにも思いますが、それは冗談を抜きまして、お互いがそういうような意味合いでの常識というものをだんだん培っていかなければならないという決意の一端を申し上げて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  251. 青山丘

    青山委員長 これにて畑英次郎君の質疑は終了いたしました。  以上で本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  252. 青山丘

    青山委員長 この際、本案に対し、金子満広君外一名から、日本共産党提案による修正案が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。金子満広君。     ―――――――――――――  雇用分野における男女均等機会及び待遇   の確保等のための労働省関係法律整備に関   する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  253. 金子満広

    ○金子(満)委員 私は、日本共産党を代表して、雇用分野における男女均等機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案に対する修正案について、その趣旨を説明いたします。  言うまでもなく、政府提出の原案は、男女雇用における機会均等を前面に掲げておりますが、その最大の問題点は、戦後五十年にわたって、人たるに値する最低基準として労働基準法に定められてきたいわゆる女子保護規定、女子の時間外・休日及び深夜労働に対する規制を全面的に撤廃することであります。  本委員会で何度も問題になったように、女子保護規定撤廃し、女性の時間外・休日及び深夜労働を野放しにすることは、日本の長時間・過密労働の中に女性を組み込むことであり、それが女性の健康破壊をもたらすだけでなく、子供の教育への悪影響、少子化の加速など重大な社会問題を生み出すことは明らかであります。このような改悪は直ちに中止すべきであります。  本修正案は、このような見地から、女子保護規定撤廃を行わず、雇用均等法をより実効あるものに改善する方向で作成したものであります。  主な具体的修正点は以下のとおりであります。  まず第一は、労働基準法女子保護規定、すなわち時間外・休日労働の制限及び深夜労働の禁止規定撤廃は行わないこととしております。また、やむを得ず深夜業を行う場合でも、月間所定労働日の三分の一以内とする、産前の休業期間を現行六週間から八週間に延長するなど、女性労働条件をより改善することとしております。  第二は、雇用均等法をより実効あるものにするために、女性少年室を労働基準監督署単位に設置し、体制を抜本的に強化することにしております。また、女性少年室長のもとに、公労使三者構成の男女平等推進委員会を設置し、迅速できめ細かいあっせん、調停を行うとともに、必要な場合には女性少年室長に勧告できるようにしております。  第三に、育児または家族介護を行う労働者の深夜業の制限について、政府案が小学校就学の始期までとしているのを、中学校就学の始期に達するまでとするなどの拡充を行っております。  以上が本修正案の趣旨であります。  この修正案こそ、人たるに値する生活、豊かさを実感しながら働ける勤労者生活の最低基準を保障するものであり、女性労働者はもちろん、国民多数の願いにこたえるものであります。これが国際常識にも合致するものであることは言うまでもありません。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いし、提案の説明といたします。  以上です。
  254. 青山丘

    青山委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。  この際、本案に対する金子満広君外一名提出の修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。岡野労働大臣
  255. 岡野裕

    岡野国務大臣 ただいまの修正案につきましては、政府としては反対でございます。     ―――――――――――――
  256. 青山丘

    青山委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。森英介君。
  257. 森英介

    ○森(英)委員 私は、自由民主党を代表して、内閣提出のいわゆる男女雇用機会均等法等の改正案に対しまして賛成、また、日本共産党から提出された修正案に対し反対の立場から討論を行います。  働く女性が性により差別されることなく、その能力を十分に発揮できる雇用環境整備するとともに、働きながら安心して子供を産むことができる環境をつくることは、働く女性のためだけでなく、少子・高齢化の一層の進展の中で、今後、引き続き我が国経済社会の活力を維持していくためにも極めて重要な課題であります。  政府案は、こうした課題に適切に対処し、男女雇用機会均等法に関し、募集・採用、配置・昇進から定年、退職、解雇に至る雇用管理の各分野について女性に対する差別を禁止するとともに、法の実効性を高めるため、企業名公表制度の創設、調停制度の改善等、均等法ができた当初から課題と言われてきたことに対して著しく改善が図られております。  また、ポジティブアクションの促進、セクシュァルハラスメントの防止といった新しい課題に対する対応も盛り込まれており、国際的水準から見ても高く評価される内容になっていると確信をしているところでございます。  さらに、女性が働きながら安心して子供を産むことができるよう、母性保護に関する措置も充実が図られております。  女性労働者に対する時間外・休日労働及び深夜業の規制については、女性労働者の就業実態、意識等が大きく変化し、労働者健康確保母性保護職業生活家庭生活の両立に関する諸施策も充実している今日、女性の職域の拡大、男女均等取り扱いの確保の観点から、規制を解消することとしたことは妥当なものであると考えます。  今回の法改正により、女性が性別により差別されることなく、男女同一労働条件の基盤に立って働くことが可能となります。今回の改正は、二十一世紀に向けて、女性男性があらゆる分野に対等なパートナーとして積極的に参画する社会を実現していくため、まさに時宜を得たものであると考えます。  なお、日本共産党から提出された修正案につきましては、これまで述べたことと全く認識を異にしておりますので、反対であります。  最後に、女性能力を十分に発揮できるようにするためにも、男女がともに健康でバランスのとれた職業生活家庭生活を送ることができるような環境整備が必要であります。政府がこの問題にさらなる努力をされることを期待いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)
  258. 青山丘

    青山委員長 次に、鍵田節哉君
  259. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 私は、新進党を代表して、男女雇用機会均等法改正案の採決に当たり、改正法案賛成日本共産党提出の修正案に反対の立場から討論をいたします。  改正法案に対する賛成の第一にして最大の理由は、雇用における男女差別法律をもって禁止されたことであります。  現行の男女雇用機会均等法においては、募集・採用、配置・昇進について男女の間で差別的な取り扱いを行わないことを努力義務としておりますが、改正法案においては差別的な取り扱いを禁止しております。この改正点は、女性がさまざまな職業に進出してその能力を生かす機会の平等を法的に保障する点において有効なものであり、これを契機に女性の職業上の地位の一層の向上が期待できるとともに、男女の真の平等の実現への大きな一歩でもあるとして高く評価するものであります。  賛成の理由の第二は、企業におけるポジティブアクションヘの国の支援策が定められたことであります。これにより、企業内における真の男女雇用平等の達成を加速することが可能となるだけでなく、男女平等に至る過程を推進するポジティブアクション一般の認知及び普及を促進することになると考えます。  賛成の理由の第三は、いわゆるセクシュアルハラスメントに対する事業主の配慮義務が定められたことであります。これにより、職場における性的な嫌がらせが抑止されるだけでなく、広く社会一般におけるセクハラを防止するための第一歩となることが期待できます。その他、紛争調停制度の改善、違反企業名公表措置という制裁の制度化、母性健康管理の義務化なども現行制度を前進させるものであり、賛成の理由であります。  なお、男女雇用機会の完全な平等を法定することに伴い、労働基準法上の女子の時間外、休日、深夜の労働に対する保護撤廃することとしておりますが、男女の職業上の平等達成のための前提であるとともに、女性の幅広い業種、職種への就業の道を開くこと、さらに、育児介護休業法において深夜業に対する拒否の請求権が創設されたことなどを基本としつつ、改正法案審議の中で男女共通規制への足がかりが確認できたことを踏まえて、この点についても賛成することといたしました。  今回の改正均等法の新たな十年の出発点になることを期待しております。  なお、日本共産党提出の修正案は、我が党の賛成の趣旨に反し、現実性に欠けるものであるので、反対いたします。  以上で、私の討論を終わります。(拍手)
  260. 青山丘

    青山委員長 次に、近藤昭一君。
  261. 近藤昭一

    ○近藤委員 私は、民主党を代表し、政府提出の雇用分野における男女均等機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案につきまして、これに賛成し、日本共産党提出の修正案に反対の立場で討論を行います。  政府案では、一部努力義務となっていた規定改正して、募集・採用から定年、退職、解雇に至る雇用の各ステージの差別を禁止することとしており、また、調停制度における実効性を確保するために他方申請の同意要件が廃止されることとなっております。さらに、我が国において初めてポジティブアクションに関する規定が盛り込まれ、いわゆるセクシュアルハラスメントについても事業主の配慮義務として規定されたことについては、我々は評価しております。  しかしながら、男女双方に対する差別的取り扱いを禁止する性差別禁止法となっていないこと、また、いわゆる間接差別の禁止が明記されていないことなど、実質的な男女平等実現のためにはさらに一層の厳正な運用と法整備が求められていると私どもは考えております。  また、政府案では、時間外、休日、深夜業に係る女子保護規定撤廃されることとなっておりますが、それにかわる措置が講じられておりません。  男女がともに職業生活家庭生活の両立が可能であるような労働条件を実現し、国際公約でもあります年間総実労働千八百時間の早期実現のためにも、労働時間等について何らかの規制が必要であることを、この際、強調しておきます。我々ももちろんそのために引き続き努力いたしますことを申し添えさせていただきまして、賛成討論を終わります。  ありがとうございました。(拍手)
  262. 青山丘

    青山委員長 次に、大森猛君。
  263. 大森猛

    大森委員 私は、日本共産党を代表して、雇用分野における男女均等機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案に対する我が党の修正案に賛成政府原案に対する反対の討論を行います。  反対の最大の理由は、本委員会審議でも焦点となった労働基準法から女子保護規定、すなわち女性に対する時間外・休日労働の制限及び深夜労働の禁止規定を全面的に撤廃していることであります。  そもそもこの女子保護規定は、戦前の過酷で劣悪な労働を繰り返さないために、戦後、勤労権をうたった憲法に基づき、労働者に人たるに値する生活を保障するための最低基準として盛り込まれ、以来五十年にわたって維持されてきたものであります。それを撤廃することは、この最低基準すら取り払うばかりか、労働時間を法的に規制する世界の流れにも逆行するものであり、断じて認められるものではありません。  今、日本労働者現状からいえば、男性の異常な長時間過密労働の規制こそが求められているのであり、カローシという日本語がそのまま世界で通用するような事態のままで女子保護規定撤廃すれば、女性は長時間の過酷な労働に追い込まれ、雇用機会均等どころか、まさに過酷労働均等となってしまうのであります。  女子保護規定撤廃されれば、女性の深夜労働を拒否できなくなることも大臣答弁で明らかになり、女性労働者の健康破壊をさらに深刻にすることは明白であります。また、時間外労働や深夜労働に耐えられない多くの女性労働者は、パートや派遣という不安定雇用に追い込まれるでしょう。これが労働者全体の賃金、労働条件の全体的な切り下げを招くことは必至であります。家庭生活の崩壊を招くことも重大で、法案では、深夜業の免除申請ができるのは小学校就学前までであります。父親、母親とも深夜業につき、小学校低学年の子供に深夜一人で留守番させるようなことが許されてはなりません。  今必要なことは、女子保護規定撤廃を急ぐことではなく、法案賛成派を含む多くの質疑者、参考人からも強調された男女共通規制をこそ制定することであります。女子保護規定撤廃は、日本社会全体に重大な影響を与え、将来にわたって大きな禍根を残すものであります。  反対の第二の理由は、均等法については、女性差別禁止に違反した場合の罰則規定がなく、制裁措置も不十分であり、行政命令や救済機関の設置がないこと、また、脱法的な女性差別の禁止規定もないなど、極めて実効性に乏しいことであります。  本法案に日弁連を初め多くの労組、市民団体、また連合内部からも多くの反対の声が上がり、その声が幅広い国民各層にますます広がってきているのは当然であります。  そうした中で、我が党の徹底審議の要求にもかかわらず、わずか四日間の審議で採決を行うことに断固反対を表明するものであります。  人間らしく働き、雇用における真の男女平等を実現するために、引き続き女子保護規定撤廃反対、実効性ある均等法の実現を目指して奮闘する決意を表明して、討論を終わります。(拍手)
  264. 青山丘

    青山委員長 次に、辻元清美君。
  265. 辻元清美

    辻元委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、男女雇用機会均等法等の整備法案について、改正案賛成日本共産党提出の修正案反対の立場から討論いたします。  社民党は、これまで、雇用における男女差別をなくし、男女平等社会を実現するため、全力で取り組んできました。  今般の男女雇用機会均等法改正案に当たって、労働基準法規定する時間外・休日労働、深夜業の制限、禁止に関する女子のみ保護規定解消が伴うことに対し、多くの問題点が指摘されていますが、今改正法案には、雇用の全ステージ、全段階における女性差別の禁止及びポジティブアクション事業主セクシュアルハラスメントの防止措置男女雇用機会均等法違反に対する勧告企業名公表の実効性の確保などが明記されており、その前進面を軽視して、女子のみ保護規定撤廃に伴って生じる課題のみを切り離して論じ、解消を批判することは、前向きと言えないと判断したからです。  私たちが従来より主張、提案してきたのは、女子のみの保護規定男女共通のより質の高い労働条件基準の設定へと組みかえるということです。この視点に立ち、また、門戸を広げ、弊害をなくすという観点から、現実に家族的責任をより多く負っている女性に対する配慮としての激変緩和措置の必要性をこれまでの質疑の中でも重ねて訴えてまいりました。  本来的目標である男女ともにゆとりを持って働け、かつ仕事だけでなく育児介護にも取り組める労働条件の実現のため、今回の法改正を第一歩として、前向きな、そしてきめ細やかな措置がとられていくことを強く要望して、改正案賛成いたします。(拍手)
  266. 青山丘

    青山委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  267. 青山丘

    青山委員長 これより採決に入ります。  雇用分野における男女均等機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案及びこれに対する金子満広君外一名提出の修正案について採決いたします。  まず、金子満広君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  268. 青山丘

    青山委員長 起立少数。よって、本修正案は否決いたしました。  次に、原案について採決いたします。  原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  269. 青山丘

    青山委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  270. 青山丘

    青山委員長 この際、本案に対し、大野功統君外四名から、自由民主党、新進党、民主党、社会民主党・市民連合及び太陽党の五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。桝屋敬悟君。
  271. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 私は、自由民主党、新進党、民主党、社会民主党・市民連合及び太陽党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     雇用分野における男女均等機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について適切な措置を講ずべきである。  一 男女双方に対する差別を禁止するいわゆる「性差別禁止法」の実現を目指すこと。また、いわゆる「間接差別」については、何が差別的取扱いであるかについて引き続き検討すること。  二 中央労働基準審議会における時間外・休日労働の在り方についての検討に際しては、女子保護規定解消により、家庭責任を有する女性労働者が被ることとなる職業生活労働条件の急激な変化を緩和するための適切な措置について、労使の意見を十分に尊重しつつ、検討が行われるように努めること。  三 家族的責任を有する男女労働者の時間外・休日労働については、その事情を配慮するよう事業主に対し指導等の措置を講ずること。  四 時間外労働の抑制について労使の認識を高めるよう努めつつ、中央労働基準審議会における時間外・休日労働の在り方についての検討に際しては、時間外労働協定の適正化指針の実効性を高めるための方策等について、労使の意見を十分尊重しつつ、検討が行われるように努めること。  五 国際公約ともいうべき年間総実労働千八百時間の早期達成に向けて、関係省庁間の連携・協力を一層強化し、政府が一体となって労働時間短縮対策を総合的に推進すること。  六 事業主が新たに女性労働者に深夜業をさせようとする場合は、労使間で十分な協議を行うとともに、深夜業に就業することに伴う個々の労働者の負担を軽減するための就業環境整備に努めるよう指導を強化すること。  七 法の実効性を高めるために、「助言指導勧告」について明確な基準を定めるとともに、調停制度については、法の趣旨が十分活かされるよう積極的な活用を図ること。  八 ポジティヴ・アクションの促進のための対策やセクシュアル・ハラスメント規定の実効確保に向けた行政指導を強化すること。  九 労働基準法の趣旨にのっとり、男女の賃金格差をもたらしている原因を分析し、速やかな改善方法の検討を行うこと。  十 少子・高齢化の進展を踏まえ、看護休暇など職業生活家庭生活の両立支援対策を充実強化すること。  十一 均等法の円滑な施行を図るため、都道府県女性少年室の充実強化を図ること。  十二 政府は、この法律の施行後適当な時期に、この法律の施行状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  272. 青山丘

    青山委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。大野功統君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  273. 青山丘

    青山委員長 起立多数。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。岡野労働大臣
  274. 岡野裕

    岡野国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力いたしてまいる所存でございます。     ―――――――――――――
  275. 青山丘

    青山委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  276. 青山丘

    青山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  277. 青山丘

    青山委員長 次回は、来る二十三日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十五分散会      ――――◇―――――