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1997-05-09 第140回国会 衆議院 労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月九日(金曜日)     午前九時三十一分開議 出席委員   委員長 青山  丘君    理事 荒井 広幸君 理事 大野 功統君    理事 佐藤 剛男君 理事 森  英介君    理事 河上 覃雄君 理事 桝屋 敬悟君    理事 金子 満広君       飯島 忠義君    大石 秀政君       河井 克行君    小林 興起君       竹本 直一君    棚橋 泰文君       能勢 和子君    藤波 孝生君       綿貫 民輔君    鍵田 節哉君       塩田  晋君    武山百合子君       西田  猛君    吉田  治君       近藤 昭一君    中桐 伸五君       松本 惟子君    大森  猛君       辻元 清美君    畑 英次郎君  出席国務大臣         労 働 大 臣 岡野  裕君  出席政府委員         労働政務次官  小林 興起君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省労働基準         局長      伊藤 庄平君         労働省婦人局長 太田 芳枝君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         労働省職業能力         開発局長    山中 秀樹君  委員外出席者         大蔵省主税局税         制第一課長   伏見 泰治君         文部省初等中等         教育局職業教育         課長      池田 大祐君         労働委員会調査         室長      中島  勝君     ――――――――――――― 委員の異動 五月九日 辞任          補欠選任   福岡 宗也君     武山百合子君   村山 富市君     辻元 清美君 同日 辞任          補欠選任   武山百合子君     福岡 宗也君   辻元 清美君     村山 富市君     ――――――――――――― 五月九日  労働法制改悪反対等に関する請願木島日出  夫君紹介)(第二四七八号)  同(穀田恵二紹介)(第二四七九号)  労働基準法女子保護規定撤廃反対に関する  請願大森猛紹介)(第二四八〇号)  同(金子満広紹介)(第二四八一号)  同(佐々木陸海紹介)(第二四八二号)  同(中路雅弘紹介)(第二五五七号)  同(中島武敏紹介)(第二五五八号)  男女雇用機会均等法及び労働基準法改正に関す  る請願秋葉忠利紹介)(第二五五五号)  同(畠山健治郎紹介)(第二五五六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月九日  季節労働者雇用と生活安定に関する陳情書外  一件  (第二八九号)  男女雇用機会均等法及び労働基準法改正に関す  る陳情書  (第二九〇号)  実効ある男女雇用平等の法整備に関する陳情書  (第二九一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  雇用分野における男女の均等な機会及び待遇  の確保等のための労働省関係法律整備に関す  る法律案内閣提出第二九号)      ――――◇―――――
  2. 青山丘

    青山委員長 これより会議を開きます。  内閣提出雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。飯島忠義君。
  3. 飯島忠義

    飯島委員 おはようございます。自由民主党の飯島忠義でございます。  ただいま上程になっております雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案関係について、質疑を行います。  御案内のとおり、今、私どもの日本を取り巻く就職環境は大変厳しいものがあります。私自身もこういう立場におりますので、とりわけ、女子大学生からの就職相談というものが大変多いわけでございますけれども、それらも含めてでございますけれども、非常に雇用分野における女性に対する差別というものがあるのではないか、それらを含めてお伺いしてまいりたいと思います。  企業活動グローバル化が進む中で、国際的に見た公正な競争の確保という観点から、雇用労働分野においてもグローバルスタンダードという考え方が重要であります。我が国法制企業活動を阻害するものでないかどうか、改めて検討していく必要があると考えます。  しかし、一方で、ただいま申し上げましたとおり、雇用分野における女性に対する差別は、新聞報道にも見られますように、女子学生の就職差別問題など、依然として根強いものがあると聞いております。男女雇用機会均等法強化は、その意味では時代の要請であると思われます。  そこで、まず、雇用分野における男女均等取り扱いに関する諸外国法制はどのようになっているのか、お伺いをしておきたいと思います。
  4. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  諸外国におきましても、雇用分野における性差別については法律禁止規定を設けております。  例えば、アメリカにおきましては、アメリカ公民権法第七編におきまして、募集採用雇用条件解雇などについての差別禁止されておるところでございます。  イギリスでは、性差別禁止法におきまして、雇用機会の提供、配転、昇進訓練等について差別禁止されております。  フランスでは、労働法典におきまして、採用拒否、配属、配置がえ、昇進職業訓練労働契約の更新の拒否などについて性差別禁止されております。  ドイツ民法におきましては、募集雇用契約の締結、昇進、職務上の指示、解雇等について、これまた性差別禁止されているところでございます。
  5. 飯島忠義

    飯島委員 一九七五年のイギリスにおける性差別禁止法等々を含めてでございますけれども性差別禁止規定することは国際水準とも言えるのですが、そのような中で、今回、募集採用配置昇進について差別禁止する規定とした趣 旨について、改めて伺っておきたいと思います。また、これによって女性雇用にどのような効果を生ずると考えているか、二点について伺っておきます。
  6. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 性差別禁止は、均等法施行後十年が経過したわけでございますが、この間、女性雇用者数は大幅に増加いたしましたし、勤続年数も伸びております。また、職域拡大をしておりまして、女性労働者就業実態は、やはり、募集採用配置昇進について努力義務規定とすることが適当と判断した十年前の現行均等法制定当時と比べまして、大きく変化してきたというふうに考えておるわけでございますが、一方、先生指摘のように、女子学生の就職問題に見られますように、女性が男性と均等な取り扱いを受けていない事例というのも、やはり依然として多く見受けられるところでございます。  今回の改正におきましては、このような状況に適切に対応いたしまして、女性性別により差別されることなくその能力を有効に発揮できる環境整備するという観点から、募集採用配置昇進について女性に対する差別禁止するというような法律強化を行ったところでございます。  この改正によりまして、女性性別により差別されることなく、男女同一労働条件の基盤に立って働くことができることになるというふうに考えておりまして、女性職場進出能力有効発揮が一層促進されるというふうに判断をしております。
  7. 飯島忠義

    飯島委員 禁止規定化でございますけれども禁止規定化企業雇用管理に与える影響というものは大変大きいものがあろうと思います。とりわけ中小零細企業においてはその影響が大だと考えております。中小零細企業が今回の改正に対して雇用管理面において十分な対応ができるのかどうか、行政としても十分な配慮が必要だと思われます。労働省の見解についてはいかがでございますでしょうか。
  8. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  今回の改正は、先生指摘のように、中小企業に、もちろん大企業も含めてですが、企業雇用管理にやはり大きな影響を与えるものであるというふうに考えております。特に中小零細企業につきましては、やはり事前に十分な周知や準備が必要でございまして、法の施行に向けてきめ細かい配慮が必要であるということにつきましては、婦人少年問題審議会議論の中でも指摘をいただいているところでございます。  このため、労働省といたしましては、事業主が法の内容に沿った雇用管理見直しを速やかに行うことができますよう、中小企業団体とか各種業種団体地方公共団体などと十分に連携を図りまして、中小零細企業に対するPRを中心といたしまして、特別啓発活動というものを展開したいというふうに思っておるところでございます。  具体的に申しますと、改正法ができましたら、速やかに法律とか指針、通達の内容をわかりやすく解説いたしましたパンフレットを作成いたしまして地域別、また業種別集団説明会を実施したり、それから事務所訪問をいたしますときなど、あらゆる機会をとらえて周知を図りたいと思います。また、中小零細企業において雇用管理見直しとか就業環境整備が円滑に行われるように、サポートはできるだけやっていきたいというふうに思っております。
  9. 飯島忠義

    飯島委員 中小零細について申し上げれば、人的にそこまでの体制というか、なかなかとりにくい状況下にあろうと思います。そういう面で、啓発活動については十分な努力をお願いしたいと思います。  さて、この法律の中で企業名公表制度、先日も論議になっておりましたけれども差別禁止実効性確保する措置として新設されますところの企業名公表制度でございますけれども社会的制裁としてかなり大きな効果を持つものと思われます。  労働省においては、過去にも内定取り消しを行った企業名公表したところでありますけれども、その際に、これは最終的にそうなったということでやむを得ないところだったと思うのですけれども、結局、公表された企業というものは、経営が苦しくて、やむにやまれず内定というものを取り消した。つまり、悪意のない企業が多かったと思うわけでございます。また、それについての、マスコミも含めた批判というものが大変多かったという話を聞いております。  今般の企業名公表制度も、行政指導効果を高めるものとして有効に活用されることが重要である一方、雇用管理体制の弱い中小零細企業ばかりがその対象となることのないよう、公正な運営がなされることが必要だと考えております。労働省としての方針はいかがでございますか。
  10. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  公表制度でございますが、今回の均等法公表制度は、労働大臣または女性少年室長勧告に従わなかった法違反企業につきまして、法違反の速やかな是正を求めるというための行政指導効果を高めることを目的といたしましてつくったものでございます。  この公表は、先生おっしゃいますようにやはり社会的な制裁措置でもございますので、その前の段階の、労働大臣または女性少年室長の助言、指導勧告、一連のそういうものを含めまして、公正な手続それから基準により実施されるべきということは当然のことであるというふうに考えるわけでございます。今後、この基準手続を定めるわけでございますけれども、定めました手続に従いまして適切な運用を図っていきたいというふうに考えておるところでございます。  また、公表制度を発動することがないようにするということがやはり非常に重要であるというふうに思っておりますので、中小零細企業も含めまして事業主に対しまして、法の内容につきまして十分な周知啓発を図りまして、法違反に当たるような差別的取り扱いが行われることがないように、そちらの方をまずは徹底していきたいというふうに考えておるところでございます。
  11. 飯島忠義

    飯島委員 そういう面で格段の配慮をお願いしたいと思っております。  さて、ポジティブアクションについてでございますけれども、新しい課題への対応としての規定が新設されるわけでございますが、均等法上の差別禁止規定を遵守するだけでは解消できない男女労働者間に事実上生じている格差解消は、実質的な男女均等実現のためには欠かせないものであります。  しかしながら、これに関しては、審議会でも使用者側から、ポジティブアクション必要性を認めつつも、あくまでも自主的に取り組むものであり、行政が関与することや法律上の規定を設けることまでは必要ないとの意見も強かったと聞いております。この規定についても、企業活動を制約するものであってはならないと考えるわけでありますすれども、諸外国ではどのような規定が設けられているのか、伺っておきたいと思います。  また、男女労働者間の事実上の格差是正解消を図るため、新しい規定に基づき、労働省としては今後どのように取り組んでいくのか、伺っておきます。
  12. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 諸外国におけるポジティブアクションでございますが、具体的な取り組みといたしましては、イギリスは、これは全く各企業の任意にゆだねている国でございます。それから、フランスカナダは、一定規模以上の事業主に対しまして、男女労働者雇用状況の分析についての報告を義務づけておるわけでございます。それから、アメリカ、オーストラリア、スウェーデンは、一定事業主に対しましてポジティブアクションに関する計画の策定を義務づけておるわけでございます。そして、フランスにおきましては、ポジティブアクションに関する計画を作成した事業主に対して国の資金援助を行っているというふうに、国によってさまざまな形でポジティブアクションに取り組んでいるわけでございます。  今回の法律ポジティブアクション規定したわけでございますが、労働省といたしましては、 各地域において、経営者団体とか各種業界団体との連携を図りながら、まず、このようなポジティブアクションのそもそも持つ重要性、それからやり方等につきまして、事業主理解を深めるような周知を図っていきたいというふうに思うわけでございます。  例えば、企業トップの方がこういうことをよく理解してくださるということが非常に重要だと思いますので、トップセミナーを開催したり、それから、各地域における業種別使用者会議を開催することなどによりまして、企業ポジティブアクションの具体的な取り組みを援助申し上げていきたいというふうに思っているわけでございます。
  13. 飯島忠義

    飯島委員 大変大事な事業でございますし、その事業運営について御配慮をお願いしておきたいと思います。  さて、女性社会参加というものが進む中で、女性が十分に能力を発揮することができるようにするためには、働きながら安心して子供を産むことができる環境をつくることも重要な課題であります。少子化が叫ばれて久しいわけでございますけれども少子化への対応という観点からも母性保護充実というものは大事な点でございます。その意味で、今回の改正において、妊娠中や出産後の女性労働者健康管理について事業主一定措置を義務づけるなど、母性保護に関する規定強化されたことは高く評価できるところでございます。  今回の規定強化は、産婦人科医などの専門家研究会による検討結果を踏まえたものと聞いておりますけれども、この研究会においては、どのような項目についてどのような検討が行われたのか、伺っておきたいと考えます。
  14. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 先生指摘専門家会議でございますがこれは、男女雇用機会均等法見直し検討していただいておりました婦人少年問題審議会婦人部会におきまして、医学的検討が必要な事項については専門家による検討を速やかに行うべきであるという指摘がなされたことを踏まえまして、産婦人科先生方、合計九名を構成員といたしまして設置したものでございます。  この会議での主要検討項目は三点ございまして、一つは、産前産後休業あり方二つ目が、女性妊娠及び出産に係る機能に有害である業務範囲でございます。それから三つ目が、母性保護範囲というようなことを検討したわけでございます。  具体的に申しますと、一番目の産前産後休業につきましては、内外医学的データもとにいたしまして産前産後休業あり方検討を行ったわけでございます。また、有害業務範囲につきましては、重量物取り扱い業務とか有害物が発散する場所における業務について、内外における近年の状況を踏まえ、これまでの考え方について吟味を行ったわけでございます。さらに、母性保護範囲につきましては、医学的知見状況もとに、妊娠前における母性保護あり方中心検討を行ったわけでございます。  その結果といたしまして、改正法案でお示ししていますように、産前休業につきまして、多胎妊娠の場合ですけれども現行の十週間を十四週に改正する必要があることなどを内容とする報告書をいただいたという次第でございます。
  15. 飯島忠義

    飯島委員 私もその報告書を手元にしているのですけれども武田座長さんほか九名ということで、熱心に審議されての報告を受けてこういうことであろうと思うのですけれども女子保護規定解消についてはいろいろな意見があると私も承知しております。私のところにも、そういう方々からの御意見、要望という形でいただいているわけでございますけれども、そもそも、今回の女子保護規定解消というものはどのような趣旨に基づくのか。基本的な問題なので、確認の意味で再度伺っておきたいと思います。
  16. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 均等法が昭和六十一年に施行されましてから十年余りが経過したわけでございますが、この間、女性職場進出も進みましたし、女性就業に関する意識とか国民一般意識、また企業取り組みというものも大きく変化をしてきたわけでございます。また一方、これまでの労働時間短縮の取り組みによりまして年間の総実労働時間は減少いたしまして、本年四月からは既に週四十時間の労働制が全面的に実施されているわけでございます。また、この間、育児休業介護休業法制化を初めといたしまして、職業生活家庭生活との両立を可能にする条件整備というものも進んできたというふうに考えておるわけでございます。  このような中で、女性に対する時間外・休日労働、深夜業の規制につきましては、女性職域拡大を図り、均等取り扱いを一層進める観点から、労使双方からその撤廃ないし見直しを求める声が多くなってきたというふうに思っております。  このような状況変化にかんがみまして、昨年十二月の婦人少年問題審議会全会一致の建議を踏まえまして、雇用分野における男女均等取り扱い女性職域拡大を図るという観点から、男女雇用機会均等法改正とあわせて女子保護規定解消をすることとしたものでございます。
  17. 飯島忠義

    飯島委員 今の答弁はそれで理解をするわけでございますけれども、寄せられた意見の中には、とりわけ、特に深夜業の規制解消というものが女性労働者の健康に与える影響、これについての懸念というものが少なからずあるように見受けたところでございます。先日の委員会審議でも議論がありましたように、現在の我が国では、企業活動グローバル化に伴い、また国民生活上も生産技術上も、さまざまな分野においてどうしても必要な深夜業があることも事実であろうと思います。  このような状況もとで、男女均等確保女性職域拡大という観点からも深夜業の規制解消は必要と考えるわけでございますけれども、深夜業が女性労働者の健康に与える影響についてどのように認識し、どのような対策が講じられているのか、伺っておきます。
  18. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  深夜業が、昼間の労働に比べまして男女双方健康面影響があるという指摘があること、及び抵抗力の低下しております妊産婦にとって問題があるということは承知しているところでございます。労働省といたしましては、深夜業は生産技術上の必要とか国民生活利便性などの点で不可欠な面もございますので、深夜業に従事する労働者につきましては、その健康や社会生活に対する影響をできるだけ少なくすることが必要であるというふうに考えておるわけでございます。  このため、従来から労働安全衛生法に基づきまして、労働者健康確保妊産婦の深夜業の就業制限など、労働基準法母性保護のための諸規定整備充実をしてきたところでございますし、今般の改正法案におきましても、育児介護休業法改正いたしまして、育児介護を行う必要のある一定範囲男女労働者が請求をした場合には深夜業に従事させてはならないということとする予定をしておるところでございます。  いずれにいたしましても、男女がともにバランスのとれました職業生活家庭生活を送ることができるようにするという対策の推進には引き続き努めてまいりたいと思っております。
  19. 飯島忠義

    飯島委員 外国においても、女子保護規定見直し解消というものが男女平等法整備と並行して進められていると聞いておりますけれども、その経緯についてお示しをいただきたいと思います。
  20. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 諸外国におきましても、男女平等法制整備を行うとともに女子保護規定見直し解消を行っている国は多いわけでございます。  その経緯といたしましては、まず男女平等法制制定が先に行われまして、その後女子保護規定解消が行われた国、これは例といたしましてはイギリスとかフランスとかドイツがございます が、そういうやり方をした国と、それから、女子保護規定解消が先に行われ、その後男女平等法制制定が行われた国、これはカナダスウェーデンなどがございますが、国によって異なっておりますけれども、両方の、男女平等法制整備女子保護規定見直し解消を行っているというような状況でございます。
  21. 飯島忠義

    飯島委員 平等法施行、それから後に女子保護規定撤廃イギリスフランスドイツ、それらはそういうことだと思います。  例えば、イギリスは一九七五年に性差別禁止法保護規定は一九八六年に廃止フランス労働法典で一九八三年が平等法施行廃止規定が一九八七年ですか、それから同様に、EC裁判所による深夜業禁止規定は違憲とされたことを受けて深夜業の合法化を発表したということで、これは一九九一年ですか。ドイツ民法平等法施行が一九八〇年、それで一九九四年には女子保護規定廃止、こういう流れ。あるいは、女子保護規定解消が先に行われた国はカナダスウェーデンとあるわけでございますけれども、このような経緯にかんがみますと、女子保護規定解消もまたグローバルスタンダードであると思います。  このように考えていきますと、今回の法改正というものは、雇用分野における男女均等実現を目指した総合的な内容を持つものと言えるのではないかと考えます。この法改正によって、我が国の働く女性を取り巻く環境は、また一段と改善されると考えております。しかしながら、そのためには、この法改正に伴って、各企業における雇用管理見直しが円滑かつ的確に行われることが重要であろうと考えます。  最後に大臣から、改正法の円滑な施行に向けた決意のほどを伺っておきたいと思います。
  22. 岡野裕

    岡野国務大臣 本法施行されますについては、雇用管理についての徹底的な見直しが必要だ、まことに先生がおっしゃるとおりだと思います。  したがいまして、私どもは、どういうような管理をしていかなければならないかというようなことで、本法内容につきまして一大キャンペーンを実施してまいりたい。パンフレット等も大量に配りてまいりたい、婦人少年室長総動員で、また講習会その他等々というようなことをやり、片方ではこういうことはいけないよ、もしかするとこれは公表するよというようなことで前向きに取り組むと同時に、立派な施策、ポジティブアクション等については表彰をするというような両様の手だても講じまして、ひとつぜひ、男女雇用関係においては平等だということが徹底できますように我々としては頑張ってまいりたい。よろしくまた御支援賜りますよう、お願いをいたします。
  23. 飯島忠義

    飯島委員 時間が参りましたので質問を終えたいと思いますけれども、今、大臣の答弁にもありましたけれども企業名公表制度、これは労働省のかつての何かつらい歴史というものを申し上げるのもどうかと思うのですけれども企業名公表については、中小零細、つまり、そういうやむにやまれすというふうなところが公表されることのないよう、指導についても十分にお進めをいただきたいということを申し上げて、私の質問を終えさせていただきます。
  24. 青山丘

    青山委員長 これにて飯島忠義君の質疑は終了いたしました。  次に、大石秀政君。
  25. 大石秀政

    ○大石委員 引き続き自由民主党の枠内で質問させていただきます大石でございます。  本会議を初めとして先日の委員会でも、この件に関しましては審議が行われているわけでございます。男女間の平等あるいは共同参画社会につきましては、この労働省関係のみならず、例えば総理府ですとか他の省庁でもいろいろと政策が進められておりまして、そういったものの全体像の中でというような意味もあるわけでございますけれども、どちらかというと、雇用あるいは職業を中心にというふうに問題を絞った方がわかりやすいということで、そのような趣旨で本日は質問をさせていただきたいと思います。  まず、私は今三十三歳なわけでございますけれども、世代ということでくくってしまうというのはちょっとどうかと思いますけれどももともと職業について男女間というような意識というものは大変に薄い世代であると思います。また、時代の方もそのような雰囲気の流れになっていると思います。ですから、今回の改正というものは、私は極めて自然なことと考えているわけでございます。  ここで、今一番私ども政治家が考えなければいけないことというのは、特に私は強く感じるわけですけれども女性の仕事に対する責任感あるいはプライドというものが年々非常に強くなってきている、このことは非常に大切に考えなければいけないことであると思っております。また、これから採用される、まあ女子学生ということになると思いますけれども、それまでに、もちろん勉強もそうですけれども、その人生経験の中でそれなりのプライドを持って採用試験等に当たってくる、そういったこともやはり真剣に考えていかなければならないと思っているところでございます。  それで、そういうふうな状況もとで今回の均等法強化というものがあるわけでございますけれども、今回の改正女性の働き方にどのような影響を与えていくと考えているのか、少し確認の意味も含めまして尋ねさせていただきたいと思います。
  26. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  今回の均等法改正は、働く女性たちが性別により差別されることなく、その能力を十分に発揮できる雇用環境整備することを目的としているわけでございます。したがって、本法案が成立いたしました後は、その周知徹底を図りまして、男女の均等な機会待遇確保を真に実効あるものにしていくことによって、女性職域拡大、そして管理職として活躍する女性の増加などが一層促進され、女性が男性の中でその持てる能力を十分に発揮して、まさにプライドを持って生き生きと働けることが当然のようになっていくというように考えているわけでございます。  また、労働省といたしましては、均等対策とあわせまして、職業生活家庭生活との両立支援対策、またパートタイム労働対策も一層充実させていくこととしておるわけでございます。  これらの施策が相まって、女性労働者が、多くの女性たちが多様な生き方を主体的に選択できる社会が実現していくものというふうに考えている次第でございます。
  27. 大石秀政

    ○大石委員 ありがとうございました。  次に移りますけれども、先ほど同僚の飯島委員の方からも質疑があったところでございますけれども女子保護規定解消について御質問をさせていただきます。  先日といいますか以前、私は時短の促進法の方でも質問させていただいたわけでございますけれども、時短のときにはかなりいろいろな経緯というものがあったということを私も認識しておりますし、皆様方も御認識をいただいていたわけでございますけれども、この保護規定解消について段階をどのように踏んでいるかということをちょっとここで整理をさせていただきたいと思います。  女子保護規定労働基準法制定された当時からの規定であるということは承知をしておりますが、一方で、かなり以前からの見直し議論があるということも事実でございます。その一部を緩和しながら現在に至っているわけでございますけれども、これまでの女子保護規定に関する考え方の変遷と規制の緩和の経緯について少しお尋ねをしたいと思います。
  28. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 女性労働者労働条件それから社会的条件が非常に低かった労働基準法制定当初は、女子保護規定は、年少者と同様に弱者である女性を保護するという意味合いが強かったわけでございまして、妊娠出産を保護するための母性保護規定というものとも意識的に明確に区別されていなかったところでございます。  その後、女性労働者就業実態意識変化などによりまして、女子保護規定に関する考え方が見直されたわけでございます。そして、昭和五十三年の労働基準法研究会報告の中におきまして、女子に対する特別措置は、母性機能など男女の生理的機能の差から規制が最小限必要とされるものに限ることとし、それ以外の特別措置については基本的には解消を図るべきであるという報告書が出されたわけでございます。  このような考え方を踏まえまして、昭和五十九年の婦人少年問題審議会の建議、これは現在の均等法をつくったときの建議でございますが、この中で、法のあるべき姿といたしまして、「原則として、企業募集採用から定年・退職・解雇に至る雇用管理における男女差別的取扱いを撤廃し、労働基準法女子保護規定母性保護規定を除き解消することが求められる」という建議をいただいたわけであります。  しかしながら、当時の女性労働者就業実態等をいろいろ考えますと、女子保護規定につきましては一部の緩和になったわけでございます。すなわち、女性の指揮命令者とか専門的業務従事者について深夜業を認めるというような、一部を緩和することにいたしたわけでございます。また、その後、平成六年にも省令改正によりまして、時間外規制の緩和とか女性で深夜業につける範囲拡大を行ってきたということで、少しずつ規制の緩和が段階を追って進んできたのが実態でございます。
  29. 大石秀政

    ○大石委員 私も多少勉強不足のところがあったとは思いますけれども、どうしても、女子保護規定解消というような言葉ですと、何だかいきなり解消というような感じがいたしますけれども、そのようにきちんとした段階を踏んでいるということを改めて認識をしたわけでございます。  また、深夜業等については、例外として規制が解除をされているものもあるわけでございます。これは時間外ですとか休日についても同じでございますけれども、具体的に、どのような職種あるいは業種が例外として規制が解除されているのか、お尋ねしたいと思います。
  30. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 女性の深夜業規制の適用が除外されている業種といたしましては、まず農林水産業がございます。それから、病院、社会福祉施設などの保健衛生業。それから、旅館、飲食店などの接客娯楽業、電話の事業があるわけでございます。  それから、職種で除外されているものといたしましては、航空関係の旅客取り扱い、スチュワーデス及び飛行機の運航管理、管制技術の業務、放送番組や映画の制作の業務、警察、消防、郵便物の区分等の業務、それから、総菜、調理パン、生めんなど、品質が急速に変化しやすい料理品の製造の業務、新聞配達の業務などがございます。  そのほか、タクシー・ハイヤーの運転手、ドライバーにつきましても、労働者の申し出によりまして、労働基準監督署長の承認を受けた場合に限り深夜業が可能となっております。  また、時間外・休日労働の適用除外と同様に、指揮命令者それから医者とか薬剤師、社会保険労務士、システムエンジニア、新聞、放送の記者、デザイナーなどの専門業務従事者についても適用が除外されているところでございます。
  31. 大石秀政

    ○大石委員 どうもありがとうございました。  そういうふうに、この法律だけでなく、全部とはいいませんが、いろいろな法律の中で例外的なものを、徐々に規制の緩和というようなことを行いますと、いろいろと問題も起きてくるわけでございます。  その職種の中では、例えば、どうしてこれが例外で、何でこっちの方が例外でないのかというようなアンバランス感というものがこういった規制緩和については起きやすいというような状況があるわけでございまして、それは今、時代といいますか世の流れが大変速い、特に、いろいろな職業についてもそれは言えることでございまして、その点からも、抜本的にそういったものを見直すという点からしても、今回、全体的に解消をするということは、時期的にも大変に無難、大変に合っているということなのかなというふうに私は認識をするわけでございます。  また、今の例外の職種の方以外でも、深夜業ですとかあるいは時間外、休日に働きたい、そういうことを希望している女性の皆様も少なくないと私は思います。  私は、どちらかというと、法律による規制とは必要最小限にとどめるべきというような政治姿勢を持っております。個人の意思が尊重されるような社会であるべきと考えております。  そういった意味で、今までそういうような一部保護規定があることによって、例えば深夜業につけない、職業選択の自由あるいは昇進等の権利の剥奪といいますか、そういったことが行われているような状態であったのではないかというようなことも言えるわけでございます。  これは今までの日本の世の流れで、今改革をしているわけでございますけれども、職場においてもあるいは学校においても、どちらかというと個人の才能よりも集団の和というようなことが尊重されるような世の中であったように思います。  しかしながら、今、内閣等で進めている改革等もそうですけれども、これからはそうではなくて、もちろん協調ということも必要ですけれども、むしろ個人のその能力を生かすというような雰囲気をつくる、そういったことが政策的に一番大切なことではないかと思っているわけでございます。ですから、例えば学校教育ですと、今までは余りどうかというようなことが多かった飛び級ということも当たると思いますけれども、そういった点で、個人の能力、それが最大限に発揮されるような世の中でなければならないと思っております。  その意味で、今回のこの規制解消するということは女性の職業意識にこたえるものとして必要な法律改正と考えますが、労働省の御見解をお尋ねいたします。
  32. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 女性に対する時間外・休日労働、深夜業の規制につきましては、企業からだけではなくて、女性労働者自身からもその解消を求める声が上がっているところでございます。  今回の改正によりまして、女性性別により差別されることなく、男女同一労働条件の基盤に立って働くことが可能となるものでございまして、女性就業意欲にも十分こたえることができるものと考えておる次第でございます。
  33. 大石秀政

    ○大石委員 ありがとうございます。  できるだけその個人の能力を伸ばすことを妨げるような規制がないような世の中にするためにも、ぜひともこの点も思料をいただいて、政策を遂行していただきたいと思います。  次に、この規定解消に関しては、現在、どちらかというと男性よりも女性の方が家庭責任を負っているというような状況があるのではないか、また、そういう点から解消に慎重であるべきとの主張も見られるわけでございますが、私個人の考え方といたしますと、そういったものを前提にして法による規制を行うということは、むしろ法律をもってそういった固定観念的な状況というものを、枠をはめるといいますか、さらに固定をさせてしまうような心配があると考えるわけでございます。  ですから、現状というような、そういうものももちろんあるわけでございますけれども、むしろ、昨今といいますか今日の状況下においてそういったものを解消すると同時に、男女間の家庭内等での役割のあり方というものをもう一度、これは国民の皆様もそうですけれども、みんな一緒になって考え直して新しい家族像というものも模索していく、そういった雰囲気というものをつくることも大切であると思うわけでございます。  家族のあり方とか、その中においての女性の家庭内のポジショニングということについては、やはりそれぞれの家庭において決められるべきであって、前提としてそういうことがあるからといって法的な規制をするということは私の政治信条からも少し違う方向であるというふうに思って るわけでございます。枠をはめない状態で、女性が家庭責任を負っているような状態にしたいというふうにその家庭が考えれば、これは自由平等社会の中での意思決定ではございますけれども、あえてその前に法律規制がそのようなことを決定してしまうというのは、私はちょっとどうかなというふうに考えているわけでございます。  労働省として、その家族のあり方、特に男女の役割分担についてはどのような考え方を持って政策というものを現在お進めになっているのか、そのような意味も含めてお伺いをしたいと思います。
  34. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 家族のあり方というのは、先生おっしゃいましたように、基本的には多様な考え方を持つ個々人がその価値観によってやはり主体的に選択をしていくものであるというふうに考えるわけでございますが、女性職場進出、少子・高齢化の進展の中で、男女を問わず一家族の一員としての役割を円滑に果たしながら、その能力を有効に発揮して充実した職業生活を営むことができるようにするということは、これは重要な課題であるわけでございます。  男女がともにその職業生活家庭生活との両立を図っていくに当たりましては、伝統的な、男は仕事、女は家庭といったような役割分担意識がやはり障害となっておりまして、これはあらゆる機会を通じまして啓発を行っているところでございます。特に男性につきましては、職場中心意識、ライフスタイルから、職場、地域、家庭でのバランスのとれた生活を実現するための意識啓発というものが不可欠であるというふうに考えている次第でございます。
  35. 大石秀政

    ○大石委員 ありがとうございました。  その中で、特に職業生活家庭生活というものをバランスよく両立させるために労働省としていろいろな対策を講じているというふうにお聞きをしているわけでございますけれども、その点をちょっと具体的にお教えをいただきたいと思います。
  36. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 労働省におきましては、労働時間の短縮を推進しているほか、育児介護休業法に基づきまして育児休業制度の定着、それから介護休業制度の早期導入に向けまして、事業主労働者に対するきめ細かな相談指導の実施をしておりますし、また、育児休業給付、奨励金の支給などによりまして、育児休業介護休業を取得しやすく、また職場復帰じゃすい環境整備に努めております。  また同時に、事業所内託児施設を設置する事業主に対しましては助成金を支給いたしますし、また、育児介護を行う労働者が働き続けやすい環境整備にも努めておるところでございます。また同時に、育児介護等のために退職した者に対しましては、その再就職の支援もしております。  というようなことで、もろもろ、職業生活家庭生活の両立の支援のための対策をしているところでございますが、今後とも、この両立支援対策につきましては一層充実をしてまいりたいというふうに思っております。
  37. 大石秀政

    ○大石委員 ありがとうございました。  その辺で、家庭と職場の両立ということも図られているわけでございますけれども、その点についても少し関係があると思いますけれども、少し少子化についての個人的な意見を述べさせていただきたいと思います。  いろいろと対策等も講じられているわけでございますけれども外国などでもいろいろと少子化対策というものはやっているわけでございます。一時期、スウェーデンの方で大変にうまくいったような財政的な援助を中心とした措置がとられたわけでございます。ちょっと新聞報道等で読んだのでございますけれども、それもやはり国全体の経済、財政状況が厳しくなるにつれて余りうまくいかないということです。  少子化については、どちらかというと今まで財政援助というものを中心にというふうな考えがあったのでございますけれども、私は、自分がいろいろ聞いた知識というものを総合して対策というものを考えた場合、今女性が子供を産まない、あるいは結婚年齢がおくれていると言うとなんですけれども、昔に比べて遅くなっている、これは当然職業をされている方々も含めての場合ですけれども、そういった事情もいろいろと判断しますと、決してこれはその家庭に財政援助をするということでは解決をしない問題であると思っているわけでございます。  特に、長く働いた女性というものは、冒頭申し上げましたとおり、職業に対する大変なプライドというものを持っているし、責任も感じているわけでございます。そういった女性が結婚をし、妊娠した場合、その後、職場復帰をするに当たって、当然いろいろなことを考えるわけでございます。先ほど職場と家庭の両立というようなお話をさせていただきましたけれども、そういった女性の皆様の今の世代の御意見の一番多い点というのは、育児、子育てというものは非常に大変なことだというふうに感じるという意見が大変多いわけです。それは長く働いてきた女性の方ほどそういったことを言われます。  これは何も育児をするということが嫌だとか、それ自体が労働的に大変であるというよりは、育児というものはある意味ではもう丸一日気が抜けないわけでございます。働いていたときに気が抜けるのかというとそうではないと思いますけれども、職場で働くということは、育児をやって初めてわかったけれども育児に比べると、比較的自分の裁量で時間が自由になる、そういったことが多いので、ずっと丸一日育児をやるということは、長く職業に従事をしてきた女性にとって、その一日のサイクルということを考えた場合、非常に精神的にきついというような考えを多く持っている。それを聞いた働く女性というものは、どうしても結婚あるいは出産というものにちゅうちょしていってしまうというような傾向があると思います。  大変に深刻な問題でございますので、これがいいというような方策はないと思いますけれども、できるだけ男性もそういった育児に協力する、あるいは社会的にいえば、やはり保育所といったものを整備して、男女ともども育児についても責任を持って、相互に不公平が生じないような、責任を持ってやるということが一番大切ではないかということを私は述べさせていただきます。  最後にいろいろと申し上げましたけれども、この件に関しまして大臣の御決意やら感想等がございましたら、一言お聞きを申し上げまして、私の質疑を終えさせていただきたいと思います。
  38. 岡野裕

    岡野国務大臣 やはり、家庭生活と職場生活、これは本法あるいは時短促進並びに育児介護休業法等々のもろもろの我々が目指しておりますような姿というものを実現して初めて可能である、こう思っております、  したがいまして、働く女性の皆さんにおかれても、性の差別から完全に解放されるというようなことで、存分に自分の自由で職場を選択し、そこで存分な力量を発揮され、それが社会かち正当に評価されて本当に生きがいを感じ得る、そういう生活を実現されるよう、これが私ども本法改正する趣旨でありますので、よろしく御理解をいただきたいと思います。
  39. 大石秀政

    ○大石委員 どうもありがとうございました。以上をもって終わらせていただきます。
  40. 青山丘

    青山委員長 これにて大石秀政君の質疑は終了いたしました。  次に、鍵田節哉君
  41. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 新進党の鍵田でございます。  本日は、男女雇用機会均等法改正案に対しまして、幾つかの質問をさせていただきたいと思っております。  特に、今回の改正につきましては、努力義務を禁止規定に、また違反者には公表制度などを設けるということで、旧法よりも一歩、二歩前進をするということでございますから、そういう意味では一定の評価をするものでございます。しかし、いろいろな面で、この改正をめぐりまして懸念されるところもございます。また、多くの女性労働 者の皆さんから我々労働委員に対しまして、これらの懸念を払拭するように努力してもらいたい、そういう働きかけがあることも事実でございまして、そういう懸念されるような課題が今後どのように解消されていくのかというようなことにつきましてお尋ねをしたいと思っておる次第でございます。  この質問に入るということが、私がバッターになるということに決まりましたときに、前に読みました一冊の本を思い出しまして、たまたま家へ帰りましたときに本箱をひっくり返しまして、捜してまいったわけでございます。  アルビン・トフラーという著名なアメリカの評論家が「第三の波」という本を出版されまして、十七年前でございますが、その時分に、こういう見方になってきておるのかなということで実は感心したものですから、若干御紹介をしたいと思っております。  第一の波というのは、農業の時代でございます。夫婦が協力をして、そして自宅に近いところで農業を協力してやっていく、そういう家庭の労働と農業の労働とが一緒に行われるという時代。  それから、産業革命によるいわゆる工業化社会といいますか、これが第二の波といっておるわけであります。  現在は第三の波が激しい勢いで押し寄せてきておる、こういうのを称して宇宙化時代であるとか、情報化時代であるとか、電子工学時代であるとか、地球村であるとか、脱産業社会であるとか、こういうふうなことも言われておるわけでありますし、トフラー自身も超産業社会というふうな言い方をしております。そういう中で、男女の役割なりまた家庭のあり方、これも大きく変わってきておる、こういう分析をしておるわけでございます。  その中で、第一の波の時代には、ほとんどが自給自足でございましたから、自分たちの家庭なり、また一つの荘園の中でのグループの中で生産をし、そしてその富を分かち合うというようなことで、他の社会にまで余り広がりがなかったわけでございますから、生産性が低くてもそれはそれなりに自分たちがその範囲内で富を分割する、こういうことで進んだわけでありますから、男女互いに協力をしてやっていける時代があった。  しかし、第二の波の時代になってきますと、農場や家庭から労働の場が工場に移ってまいりました。そして、その工場がそれぞれ分業をすることによって相互の依存度が非常に高まってきた。その中で分業とか調整とか、いろいろな技術が統合されて、そして効率ということを中心にした労働になってきた。そのためには、やはり男性が工場に行って働き、そして女性は家庭を守る、こういう役割分担ができてきて、女性は家庭にあって家事をし、そして子供を教育する、こういう分担ができてきたわけでございます。  その中で、男性は企業戦士として、効率よくそして調和のとれた産業活動ができるようにということで一生懸命働いてきたわけでありますけれども、その間にも、もちろん過労死だとかいろいろな社会問題も出てきたわけであります。  現在の第三の波になってまいりますと、やはりその辺が従来は、私が言ったのじゃなしにトフラーが言ったのですけれども、男性は非常に客観的な労働をする、女性は主観的な労働をする、したがって、産業社会の中ではやはり客観的な物の見方をする人が重宝がられる、主観的な人はどうも工場組織などにはなじまないというような見方をされてきておった傾向がある、その中で、いろいろな差別が起こってきたのではないかと言われておるわけでございます。  そういう中にあって、第三の波の中では、未来の家族ということを言われておるわけでございますけれども、核家族のあり方が大きく変わってきまして、そしてこの核家族に所属します人口というのはアメリカなどでもその十七年前の時点で七%ぐらいしかない、他の人たちはいろいろな形態の家族構成を持ってきておる、こういうことが言われておるわけでございます。ひとり住まいというのが急速にふえてきておりますし、正式な結婚手続をしないで同棲するという人もいるでしょうし、子供を持ちたがらない傾向もあります。また、離婚したり、家庭不和、さらに別居などをしておるという人たちも多くおります。また、片親だけで生活をしておる家族構成を持っておる、こういう家族も大変ふえておるわけでございます。  このように家族形態が多様化しておる社会の中では、産業社会の中でできてきたいろいろな法律、税法、社会福祉政策、学校制度、住宅の基準、こういうものを抜本的に見直さなくてはならない、こういうことを十七年前に既にトフラーは言っておるわけでございます。その中で、やはり女性が陰に陽に差別されておったそういう社会を変えていくためのいろいろな施策をこれから取り入れなくては世の中が大変混乱をしてしまう、こういうことを言われておるわけで、日本でもやはりその傾向がかなり出てきておるように思っております。  特に、離婚率もだんだんふえてまいりましたし、結婚適齢期といいますか、この間吉田議員もクリスマスイブであるとかいろいろ言われておりましたけれども、そういう状態でどんどん結婚年齢も高くなってきておる、こういうふうな状況であります。また、結婚しない人もふえてきておる。こういう状況の中で、いろいろな制度を変えていく。そのために今度の雇用均等法の段階的な改正というようなことも行われてきておるのでありましょうけれども、十七年前のこのトフラーが分析したような世の中が今日本にかなり浸透してきているのじゃないかと私は思うのですが、その辺について、労働省としてはどのようにこれを分析し、そしてまたこれからの施策に生かしていこうとされておるのか。この辺はひとつ大臣の方から御見解を聞かせていただきたいと思います。
  42. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生おっしゃいますアルビン・トフラー、私も読みましたが、本当に昔の話で正確に記憶はいたしておりませんが、やはり第三の波ということになりますと、情報通信分野が非常に革命的な発展をして、これが経済、産業、社会、文化、あらゆる面に大きな影響力をもたらすものであるということだった、こう思います。  先生、その中で労働行政分野について把握をしてというお話でございますが、基本的には、やはり工場というようなものにLANが張りめぐらされるようになる。したがって、そのLANに電子ロボットを直結させることによりまして、従来非常な重労働というようなものが、言いますならばキーを動かすことによってロボットが使えるようになる。  つまり、例えば自動車製造工場でいいますと、ベルコン的なもので車体なら車体がこういうふうに来る、その部品というものを個々に差し込んでいく、だけれどもこの車体をひっくり返す、そして底の方の車輪の裏をどうするかというようなことはとても大きな力を要しまして女性では無理であるというようなのが、やはりキー一本で車体というものが右に転んだり左に転んだり、宙返りをしたりというようなことで、単純労働で仕事が賄えるようになる。それが一つの工場のみに限らず全部地域LANというようなことになりますと、今度は遠くの方から自分の作業というものを、ちょうどその工場なら事業場にいることさながらに仕事ができるようになり、情報等の会話も全部可能になってくる。  そうすると、朝何時に出勤をして夜は何時に帰るという必要がなくなりまして、サテライトオフィスというようなものを駅前に設けまして、歩いて五分というような通勤時間で今までやってきたのと同じような仕事ができる。いやサテライトオフィスはおろか、今度は在宅勤務というようなことまで可能になる。在宅勤務その他の問題は、それぞれ試み的にではありますけれども、もう導入をしている会社は多々ありますし、その前に私がお話をいたしました電子ロボットと会社LANというものを直結するというようなものは、ちょっとごらんになられようと思えば、はい、この工場があるよ、この会社があるよというふうに なってまいりました。  そういう意味合いで、労働行政からいたしますと、第三の波的なものがこれから着々実現をされていくであろう。そういたしますと、簡易的な労働といいますか、要するにムスケルアルバイトの、力を必要としないという意味合いでは、女性の働く皆さんが幅広くそういった産業分野にも進出していくことができるのではないか。私は、非常に楽しい構想だな、ぜひこれらもひとつ産業分野に可及的速やかに取り入れ、拡大をしていただくことを願っている、そんな次第であります。  これに伴うところの、例えば出勤簿の管理その他いろいろ研究課題はございますので、それなりに研究はいたしているところでありますことをつけ加えます。
  43. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 そういうふうな社会であるということはお互い認識を持っているのですがい要はそういう社会の中で女性なり、また新しい家族形態の中でどういう施策をとっていくのかということは、これから雇用問題を扱う我々当事者としてやはり大変大事なことではないか。  そういうことについて、例えば福祉の問題、それから税法の問題、こういうふうなことは、これは確かに担当は違うかもわかりません。労働省課題ではないかもわかりませんけれども、しかし、やはり労働という観点からトータル的に考えていきますと、こういう問題までもっと踏み込んで、一つのトータル的な施策を持ってもらわないといかぬのじゃないか、こういう面から申し上げたわけでございまして、その辺ではまだまだ不満があるわけですが、次に移らせていただきます。  次には、今、規制緩和ということでいろいろな緩和がなされてきつつあるわけでございまして、大変なキャンペーンが起こっておるわけでありますが、特に経営者団体などからは、経済的規制緩和と同時に社会的な規制緩和までかまびすしく言う風潮があるわけでございまして、どうも私たちから見ますと悪乗りをしているのじゃないかという感じがしないわけではございません。特に環境問題とか、労働者の各種の保護規定でありますとか、こういうものは、やはり新しい社会システムを構築していくという意味からもむしろ強化をしなくてはならない部分も多く出てくるのではなかろうかというふうに思います。それらの風潮につきまして、考え方があればひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  44. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 規制緩和は、我が国経済社会を国際的に開かれたものとし、自由な経済社会にしていくことを基本として進めているものだというふうに考えております。雇用分野に関しましても、その規制が個人の自由な選択による働き方や能力発揮の機会を奪うことがないよう、時代の要請に合った内容に見直すことが必要なのではないかというふうに考えておるところでございます。
  45. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 今のところ、その程度の御答弁しかいただけないのかなというふうに思うのですけれども、次の質問に入ります。  一昨日の委員会における同僚議員の質問も踏まえながらお聞きをしたいのでありますけれども現行法は女性差別を防止するということでありますし、改正案につきましては、それを差別禁止をされようとしておるわけでございますけれども女性差別するという立場からの法律というのは、男女が共通の基盤に立って働くということで見ますとまだまだその途中にあるわけでございまして、やはり平等法などが一日も早く制定をされる、こういうことが大切なのではなかろうかというふうに思うわけでございます。  こういう雇用平等法に向けまして、今回まだ改正したところでありますけれども、これらをさらに新しく改正していくという、次の改正に向けての何か目標の年限とか、そういうものを持っておられましたら、ぜひともこれを出していただきたいと思います。
  46. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 法のあるべき究極の姿としては、性差別禁止というのはもう大臣も何度か御答弁されているところでございますけれども性差別禁止法制定には、これに向けましてやはり国民一般意識の形成を図っていくことが非常に重要であり、必要であるというふうに考えるわけでございます。現段階では、改正法案の定着にまず全力を尽くしたいと考えておりまして、先生おっしゃいますように具体的な目標年限の設定というのは難しいのではないかというふうに思っております。
  47. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 ということは、まだ国民の認識が十分、そういう条件が整っておらないというふうに見られているというふうに見ていいわけですか。
  48. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 我が国の現在の実態にかんがみますと、問題になっておりますのは女性に対する差別でございますので、今回の法案も、女性に対する差別禁止するということを目的としているわけでございまして、まず現段階では、この改正法案を全力を挙げて定着させていきたいというふうに考えておるところでございます。
  49. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 そういう性差別禁止法にするという条件はもう十分整ってきておるのではないか、国民的な合意もできてきておるのではないかというふうに私は認識をしておりますので、その辺の目標年次をやはり明確にしていただくということがこういう施策を進めていく上において大変重要だと思うのです。  今までにも、目標年次を明確にしておる法律でも、なかなか見直されないで現状のままで来ておるというような実態も数々あるわけでございますから、そういう面では、やはり一日も早くこの目標年次というものを決めていただく、こういうことが大切なのではないかということで、特に強くお願いをしておきたいと思っております。  それでは、具体的な問題についていろいろとお聞きしたいと思います。  改正法の二条の「基本的理念」の中で、引き続いて母性の尊重が明記されておるわけでございますけれども妊娠を理由とした差別禁止ということが明記をされておりません。妊娠を理由とした不採用でありますとか配置転換、それから昇進などにおいて不利な取り扱いがされないかどうか、こういうようなことについて、労働省としましては、そういう不平等が起こらないようにどのようにしていこうとされておるのか、また、経営者とか人事担当者などに対して、そういう差別にならないような周知徹底、こういうことも必要だと思うのですけれども、その具体的な対応策などについてもお聞かせをいただきたいと思います。  今後、法律において妊娠を理由とした差別禁止を明記することも必要だというふうに思うわけでございますけれども、これらにつきましての見解もお伺いをしたいと思います。
  50. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 現行法におきましても、妊娠を理由といたします退職制度解雇禁止をしているところでございます。この点につきましての周知徹底は今後とも図っていきたいと思いますし、違反企業に対しましては厳正に対処してまいりたいと思っております。  また、妊娠を理由といたします配置転換などは、これは妊娠した女性に対する配慮として行う場合もあるわけでございますし、また、男性との比較が問題となるものではないわけでありますけれども妊娠したということを理由といたしまして配置昇進等について著しく不利な取り扱いをすることは好ましくないというのは、これは当然でございますので、経営者等々にその旨はさらにあらゆる機会をとらえて周知はしていきたいというふうに考えております。
  51. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 ぜひともきめ細かにお願いをしたいと思っております。  それから、改正案の三条の「啓発活動」でございますけれども、「国及び地方公共団体は、」「雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保を妨げている諸要因の解消を図るため一必要な啓発活動を行う」ということになっておりますけれども、この「諸要因」といいますのはどういうことを具体的に今イメージされておるのか、そして、現行法の「女子労働者能力の有効な発揮を妨げている諸要因」という文章との間でどのよう な違いがあるのか、また、個々の要因の解消のために国、地方は具体的にどのような啓発活動を行おうとされておるのか、そういうことについてお伺いをしたいと思います。
  52. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保を妨げている諸要因というものは、主として社会に根差します固定的な性別役割分担意識でございますけれども、それに加えまして、一部女性労働者においても、労働に従事している者としての職業意識が必ずしも十分でないという方も含まれるというふうに考えているところでございます。  また、現行法で言います「女子労働者能力の有効な発揮を妨げている諸要因」と、改正法で言います「雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保を妨げている諸要因」とは同義でございます。  これらの諸要因の解消にどんなことをやっておるかという御質問でございますけれども性別役割分担の解消につきましては、婦人週間等々におきまして全国的にキャンペーンもやらせていただいておりますし、また、女性たちの職業意識の啓発という点につきましては、いろいろな形でセミナー等もやらせていただいて、いろいろな機会にこういう諸要因の解消ということに努力をさせていただいているところでございます。
  53. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 ついででありますから、今お言葉が出ましたので、婦人週間というのは、やはりこれは名前は変わるのですか、いかがですか。
  54. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 一応、婦人という言葉を、婦人局も女性局に今回の法律で変えるという予定にしております。来年の婦人週間、第五十回でございますので、これに向けましてどういたしますか、今後、皆様方の意見も尊重しながらじっくり考えていきたいというふうに思っております。
  55. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 それはぜひとも検討していただきたいと思います。  次に、雇用管理の各ステージの中で、募集とか採用について幾つかお尋ねしたいと思います。  改正法五条に、「事業主は、労働者募集及び採用について、女性に対して男性と均等な機会を与えなければならない。」とされておるわけでございます。現行法の「与えるように努めなければならない。」と比べて前進をしておると評価しておるわけですけれども、ぜひとも定着をさせていただきたいと思っております。  ところが、募集につきましては、「労働者雇用しようとする者が、自ら又は他人をして、労働者となろうとする者に対し、その被用者となることを勧誘すること。」と定義づけられておりますけれども、これに加えて、公共職業安定所または職業紹介事業を行う者への求人の申し込みが含まれると解釈通達及び関連法で理解されておるわけでございます。  職安ではめつたに均等法違反というふうな求人票は出ないと思うのですが、求人雑誌であるとか折り込みのビラとか、そういうようなところでは、故意にか不用意にかわかりませんが、そういう差別が出てくるようなことも起こり得ると思います。これらに対しての指導方法などにつきましてお尋ねしたいと思います。
  56. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 就職情報誌や新聞広告などで男性のみの求人を行うなどの違反を行っているものを把握した場合には、婦人少年室がまず事業主に対して、どうしてそういう広告を出したのかというような事情を聴取いたしまして、法律の適用除外に当たる職種でないという問題のある場合は、助言、指導を行うこととしておりますし、また、実際に行っているところでございます。  また、本省におきましても、ことしの二月に、均等法に沿った求人広告が行われますよう、就職情報の発行企業労働省に集めまして、男女雇用機会均等法の遵守について協力依頼を行ったところでございます。
  57. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 ぜひとも、今後とも引き続いてそういう指導などを徹底していただきたいと思います。  一昨日の委員会でも、婦人局長より、四年制大学の内定状況についての報告をいただきました。内定率が、男子九三・二%、女子が八六・二%というお答えであったと思いますけれども、やはり男女において格差があるわけでございます。結果としてそうなったというふうにも言えなくはないわけでありますけれども、しかし、やはり何らかのそういう差別がある可能性もあるわけでございます。  それらで、巷間よく言われております、会社概要などを請求しましてもなかなか送ってもらえないとか、それから説明会などは男子だけしか案内を送っておらない、女性に送る場合にも何か随分ぎりぎりになってから送ってみたりというようなことも聞いております。大学などは男女共学のところが多いわけでございますから、男性には来ているのに、女性は請求したけれども来ておらないとかいうふうな事例もあるようでございます。こういうことが起こったり、また、会社資料の希望者や就職希望者に対しても、提出を求める文書とか質問項目男女で異なったりする場合もありますし、募集につきましても、女子大のみを排除しておるというふうな、明らかにそういうところには初めから募集案内などは全然行かないということもあるようにも聞いております。  これらの実態をどのように把握され、また解消に向けて努力をされようとしておるのかにつきまして、お答えいただきたいと思います。
  58. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 労働省といたしましては、男女の均等な就職機会確保に向けまして、大学等の就職担当者と密接な連携をとり、会社案内の送付などの問題も含めまして適切な実態把握に努めているところでございます。  それから、私どもの出先機関であります婦人少年室に、ことしは四月から女子学生の特別の就職相談窓口を開設いたしたわけでございますけれども男女異なる取り扱いをしたという御相談の中で、学生さんの方から企業名をはっきりと明らかにしていただいた場合、かつ、そのやり方均等法及び均等法によって定められております指針に照らして問題があったものにつきましては、婦人少年室がその企業に対して実際出向いていって、均等法及び指針に沿った公平な募集採用をやっていただくよう助言、指導を行い、改善をさせているところでございます。  それから、先生指摘の女子大に求人票を出さないというようなケースがあるとするならば、これは女性採用しないという方針のもとに行われることが多いと考えられますので、このような場合には、女性に対する差別に該当し、均等法に違反するものであるというふうに考えるものでございますので、そういう違反企業に対しましては厳正な指導を行っていきたいと考えております。
  59. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 募集につきましてはそういうことで、できるだけ均等に行うということはやっていただけると思うのです。  問題は、採用についてやはり現在格差があるわけで、これは結果格差なのかもわかりませんけれども、そういう格差があるという事実がございます。これの判断というのは非常に難しいところでございますが、この委員会審議の中でもいろいろなチェック方法を考えていきたいというふうな御答弁をいただいておるようでございますけれども、こういう事例につきましてはもちろん違法になるのではないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。例えば、男女別々に採用試験を行うとか、男女で試験内容が異なるとか、面接について男女で異なる質問をするとか、こういうことにつきましてはいかがでしょうか。     〔委員長退席、河上委員長代理着席〕
  60. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 採用時の面接に対して男女別々に行うとか、それから女性と男性に対して違う質問をするということで、例えば女性に対して自宅通勤であるとかそういうようなことを、質問項目男女で異なるということは、やはりこれは採用試験の際に女性に不利な取り扱いになると考えられますので、均等法違反となるというふうに考えるものでございます。
  61. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 また、面接の際にも、やはり同じ質問をしましても、その受けとめる意味男女で著しく異なる場合もあり得るわけでございますし、間接的な差別になるケースもあるわけでございます。これらの具体的なケースにつきまして、やはり労働省としては面接のあり方についてのモデル的な設問というふうなものを提示して経営者団体なりに啓蒙活動が必要だと思うのですけれども、これらにつきましてはいかがでしょうか。  それからまた、女性の面接官などを面接官の中に加えていくというふうなこともあってもいいのではないかというふうに思いますが、あわせてそういう指導強化していくということにならないかどうかということでお願いしたいと思います。
  62. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 募集採用の一連の過程におきまして男女において事実上の差が生じないようにするということが非常に重要であると思います。そのため、企業ポジティブアクションを行っていくことが重要なのではないかと思っております。  このため、労働省では研究会を設けまして、先般、女性労働者能力発揮促進のための企業の自主的取組に関するガイドラインというのをつくって、その中で自主点検のためのワークシートというのをつくりました。  この中に、公平な選考を行うための面接における質問項目を、例えば幾つかの面接項目で一つ二つ御紹介したいと思うのでありますけれども、「面接・選考担当者に対して、女性採用の対象となっていること、又は会社の方針として女性活用を推進していることを徹底していますか。」とか「選考に当たり、面接における質問項目を的確に定め、質問の禁止項目を明示していますか。」とか「結婚の予定、家族や家庭の状況等、職務能力に関係のない事項について質問しないように徹底していますか。」とかいうようなことをワークシートに取りまとめたところでございますので、こういうワークシートを活用して企業取り組みを推進していきたいというふうに思っております。  また、女性の面接官を入れたらどうかというお話でございますが、このワークシートの中にも「面接・選考担当者の中にも女性を登用していますか。」という項目を入れてございまして、先生おっしゃるとおり、やはり女性の面接官を入れて採用するということも非常に重要なことであるというふうに認識をしているところでございます。
  63. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 それでは次に、ちょっと視点を変えまして、本法実効性を高めるために、委員会なりまた本会議でもいろいろ質問をされておりまして、特に、違反者に対しては社名を公表する、こういう制度がこの改正法で新しくできたわけでございますけれども大臣の方からもこの社名を公表するということが非常に大きな実効力を持つのだというお答えもあったわけでございます。  問題は、こういう名前を公表されることを恥とする正常な企業の場合には、確かにそれで実効力はあるのです。しかし、例えば不当労働行為など、これは罰則もあり、そしてポストノーティスなどもあるわけでありますけれども、しかし相変わらず不当労働行為もなくならない、こういうふうな実態にあるわけでして、名前を公表されることぐらいは別に恥とも何とも思わないという特殊な経営者に対して、やはり何らかの措置をとらないといけないのではないか。  正常な労使関係なり、また正常な経営者の、そういう判断能力を持っておられる方については十分これで実効は上がるというふうに思うわけでありますが、異常な経営者もやはり世の中には若干でありますけれどもあるということは事実としてあるわけですから、その上に立って、労組法に言う不当労働行為的な――これはまさに不当労働行為なんです、こういうものに違反するということは。ですから、そういう罰則でありますとかまた公表、さらにはポストノーティスなどのことも含めて、悪質な違反者に対してはそこまでやりますよということがある方が実効力が上がるのではないかというふうに思うわけなんですけれども、それらについていかがでしょう。
  64. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 公表ということはかなり社会的制裁でございますので、やはりこれは恥であるというふうにお考えいただくのが通常であろうと思うわけでございますが、労働省といたしましては、事業主雇用管理の改善を行うよう、もう飽きずに、不断に、粘り強く行政指導を続けてまいりたいというふうに思っております。
  65. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 確かに、先ほども言いましたように、公表されることは恥だと思う経営者には今言われたように実効力はあると思いますが、そうでない人も現実にあるという事実を知っておいていただいて、これから、今回の改正でできなくても、実際に実効が上がるか上がらないかの実証をしながら、その中でこのことも考えていただくということはいかがでしょうか。
  66. 岡野裕

    岡野国務大臣 現行均等法、十一年に相なるわけでありますけれども、数字を細かく挙げませんけれども、やはり女性であるがゆえの差別是正というものは、この十年で相番程度定着をしてまいった。そこで、その現状を踏まえて今度の改正案を出しておりますが、この公表制度につきましても、おかげさまで可決成立をさせていただいて、それを実行し、公表等も営んでみて、その間にまた社会的意識の高揚というものがあると思います。今の時点では恬として恥じないということであっても、恥じさせるような社会的な意識ができるのではないか、こう思っておりますが、本法施行して後、また本法の実施状況等々を見て、我々なすべきことがあればやってまいるというのが法の本来の運用の建前だ、こう思っております。
  67. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 それでは、そういう公表されても恥としないという人があらわれてきたときにぜひともよろしくお願いを申し上げたいと思います。  次に、女子保護規定撤廃についてでございます。  一昨日、自民党の能勢和子議員の方から、看護婦さんの立場で女性の深夜業に賛成するという御意見の開陳がございました。看護婦さんという職業柄、私は立派な見識だと思っておりますし、私自身も何回か入院をしたこともございまして、看護婦さんという存在を尊敬のまなざしでいつも見させていただいておるわけでございます。きょうはいらっしゃらないようでございますが……(能勢委員「おります」と呼ぶ)ああ、いらっしゃいますか。済みません、こちらの方ばかり見ておりまして。私は、そういうことで、看護婦ざんという職業を非常に尊敬をして見ており、大変な過酷な環境の中で頑張っていただいているというのはよくわかります。  ただ、やはり看護婦さんというのは、もう初めからそういう意識を持って、使命感を持ってその職業につかれた。そういう方と、一般の女性が、通常、昼働くことを常識としてきた人が、突然深夜業というものが実施される。突然、まあ二年先ということにはなるのでしょうけれども、しかし、深夜業が行われるということにつきましては、やはりなかなか女性の立場から見ると受け入れがたいというふうに言ってもいいのではないか。  私自身も、男女が平等であるということからしますと、やはり最終的には、どういう雇用のステージの中でも男女が同じ条件であるということが必要だと思います。私自身も、海外などでの労働の現場を見まして、女性がもうあらゆる職場で働いておられるというような実態も見させていただいてはおります。したがって、最終的にはそういうことなんでしょうけれども、やはり現状において、実際にそういう環境に今日本が置かれてきておるのかどうか、こういうことで非常に懸念を持たれて、たくさんの人から我々今要請もされておりますし、そういう面では私自身も同じような認識もしておるわけでございます。  まだこの法の施行まで二年間あるわけでございますけれども、やはりこの環境整備状況ども十分見ながら、二年と言わずに、さらにもう少し猶予をしていくということもあってもいいのではなかろうか。週四十時間労働制につきましても十 年から猶予期間を置いて中小企業配慮をしてやってきたわけでありますから、十年とは言いませんけれども、やはり可及的速やかに社会的なそういう合意形成づくり、家庭環境、それから社会福祉、こういうふうな環境も整えながら若干延長をしていく、猶予期間を置いていくというようなことが考えられないのかどうかということについて、お尋ねをしたいと思います。
  68. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 女性に対する時間外労働等の規制につきましては、週四十時間労働制の実施、育児介護休業制度法制化など、職業生活家庭生活の両立を可能にする環境整備状況を踏まえれば、これを解消する条件は整ったのではないかというふうに考えておるわけでございます。  なお、先生おっしゃいますように、法の施行が平成十一年四月を予定しておりますので、まだ時間がございますので、労働省といたしましては、規制解消に伴う必要な就業環境整備につきまして企業取り組みを促進するとともに、労働時間の短縮や職業生活家庭生活の両立支援のための対策にも力を入れて充実に努めてまいりたいというふうに思っております。
  69. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 実は、私自身、昭和三十八年に結婚をいたしまして、共働きをしたのは一年だけでございまして、それからは、ずっと組合運動などをやっておりましたために、家庭も顧みずに出張や徹夜団交やというふうなことでやっておった経験がございます。とにかく家庭については顧みることが少なかった。その罰が当たったのかどうか知りませんが、この年になってから単身赴任をしておって大変苦労はしておるのですが、これは、大臣などの年齢の方も、後ろに座っておられるお二人の局長さんなども、いかがなんでしょうか、本当に、今女性局長が申されたような、家庭のいわゆる家事労働をお互いに分担をしてやるというような環境になっているのでしょうか。介護休業とか育児休業だとか、もう法律制度としてはありますけれども、実際に職場の中で男女が本当にうまく分担をしてやるというふうなことになってきているのかどうか。  二十代ぐらいの若い人などは割合そういうことをやっておると思うのですけれども、四十代、五十代となってきますと、この間吉田議員など、我々は古いタイプの人間だ、こう言われたのですが、そんなことを言われたら、私らはもう化石みたいな存在になってしまいますので、私だけなのかもわかりませんけれども。しかし、その辺についてもう少し、環境が本当に整っているのかどうか。  保育所の問題にしましても、それから学童保育の問題にしましても、ゼロ歳児の保育など全然足らないはずなんですね。そういうふうな実態が本当に整っていると言えるのかどうかについて、もう一度、御見解をお願いしたいと思います。
  70. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 保育所等につきましては、四省庁でエンゼルプラン等もつくり充実に努めておるところでございますし、また労働省といたしましても、事業所内保育所を中心といたしましてそういう保育施設等の充実には努めているところでございます。  先生おっしゃるように、本当に単身赴任というのは大変だというのもわからないわけではないのでありますが、やはり男女がともに家庭責任を負いながら安心して働くという点におきましては、ぜひ、男性方にも、お仕事のみならず、家事につきましてもその能力を発揮してくださるようにお願いをしたいと思っておりますし、ただ、総務庁の調査によりますと、共働きの夫婦につきましても、平日ですと家事をやっている夫の時間が七分ということで非常に短うございます。これは男性の意識とともに妻の方も、夫に少しく家事を手伝ってもらうように男性の意識改革にも努めていくことも重要ではないかなというふうに思っておるところでございます。
  71. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 そういう意味では、局長からお願いします、こう言われたからといって私の生活をころっと変えるというわけにもなかなかいかないわけでございます。やはり時間をかけて啓蒙をし、そしてそういう環境を時間もかけてつくっていくということも大事なのではなかろうかというふうに思うわけなんです。  後ほど、深夜業の問題それから超過勤務の問題も若干議論したいと思うのですが、問題は、今千八百時間という労働時間の大きな年間目標があるわけであります。そういう面からしますと、週四十時間制が施行されるということになりますと、かなりそれが進んできているわけですが、やはり残業規制あり方、男性の目安については三百六十時間というのが残るわけでありますから女性もそれに合わすということになるのでしょうけれども、千人百時間という時間そのものの目安がなかなか守られておらないという実態がないでしょうか。今は経済成長が非常に停滞しておるというふうな面もありますからそれほどの超過勤務はありませんが、これがちょっと景気がよくなってくると、もうむちゃくちゃな残業が行われるというようなことが現実に起こっておるわけでございます。  そういう面では、この目安ができたのが九二年でしたか、それから二年後にはこの目安を見直すというふうなことにもなっておるはずでございますが、まだそのままになっておる。九七年ですから、もう既に五年経過をしておるわけであります。これらにつきまして、一体どのようにとらえておるのか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  72. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 まず、千八百時間というものに向けての状況についてのお尋ねでございますが、現在千九百十二時間、この千八百時間に対応する数字がそういった状況でございます。  今後私ども、この四月一日から実施いたしました週四十時間労働制を完全に定着させていくことをまず一つの軸にいたしまして、お話がございました長時間残業の削減、有給休暇の取得促進といったものをより一層推進いたしまして、この千八百時間というものに向けて努力していかなくてはいけない、こういうふうに考えておるところでございます。  それからもう一つ、そういった長時間労働の削減の中で私ども推進いたしておりますのが、三六協定の上限についての目安を労働大臣の告示により指針として出しまして、それに基づいてそういった適正な超過勤務の管理が行われるように指導しているところでございます。  私ども監督機関の窓口で三六協定の受理に当たりました状況を見ますと、年間単位で見ますと、約九五%の事業所が三百六十時間以内でこの目安の上限時間を決めている、こういった状況にございます。こういった状況、さらに不適正な三六協定が結ばれないように窓口におけるチェック、指導というものを強化いたしまして、適切に対応をしていかなければならないというふうに思っております。  それからもう一点。その点につきましては、現在、中央労働基準審議会の方で、時間外労働、休日労働等のあり方、またそれに関連するものがあれば深夜の勤務につきましても、労働時間管理あり方についての見直しの中の一環として議論がなされているところでございます。そういった議論状況も私ども見守りながら、結果が出ましたら適切に対応をいたしてまいりたいと思っております。
  73. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 ぜひともこれの見直しに向けて積極的な努力をしていただく。そして女性労働時間を長くするというよりも、男性が働き過ぎているわけですから、やはりこれを短くする。千八百時間にするためには、所定労働時間もさることながら、休日の出勤を減らすとか、残業を減らすとか、それから休暇をとりやすくするとか、そういうことをやはり総合的にやらなくてはならぬわけでありますから、ぜひともそれを進めていただきたいというふうに思います。  深夜業のことについて、次にお伺いをしたいのです。  原則的に作業というものは昼間にやる、夜は家 庭での団らんなりまた休息に充てるというのは、何千年か何万年かという人類の歴史の中で大体決まってきておったわけでありますけれども、産業社会の中で技術的にどうしてもこれは深夜業をやらなくてはならないというふうな業務が幾つかあります。鉄鋼にしましても、私の知っておるビニール工場などでも、ビニール製品をつくるようなところは、一たん溶解をして流し出しますと、これはとめますと全部機械の中にそれが固まって詰まってしまうというようなことで連続操業をせざるを得ないというようなことがあるわけでありますし、それからスチュワーデスさんなり、そういう運輸関係なども、看護婦さんもそうであります。そういうところについてはやむを得ないけれども、男子につきましても、できるだけやはり深夜業を抑制していくということが本来のあり方なのではなかろうか。  それから、技術的な問題また社会的なニーズに基づいてやむを得ずやる深夜業については私たちも認めざるを得ないというふうに思いますけれどもただ償却を早めたいとか、他社との競争で深夜業をして少しでも優位に立つのだとかいうような発想、いわゆる経済的な理由によって深夜業を行うというようなことはできるだけ抑制するべきではないかというふうに思うわけでございます。  そういうことで、この深夜業につきましては、高齢者とか育児介護等に配慮をしましな男女を超えた抑制策が必要なのではなかろうかということと、そしてまた、深夜業につきましては希望者のみとする、やむを得ずやる場合といえども希望者のみとするとか、労使の合意形成につきまして、もちろん組合のあるところは労働協約そしてまた労使間の交渉、さらには、労働組合のないところには就業規則でチエックをするとかいうようなこともおっしゃっておられたようであります。  しかし、この前の時短促進法のときにも申しましたけれども就業規則そのものがもう形骸化しておるというふうな一面もあるわけでございまして、九十万事業所ぐらいあるのですか、そういう中で実際にどのぐらいが就業規則を基準局に届けられておるのか、そしてそれがどれだけ本当に実効力があるのか、代表者にしたって、本当に従業員の代表なのかどうかということが十分わからないような状況でございます。それらについてお答えをいただきたいと思います。
  74. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 まず、深夜業につきましての規制の問題でございますが、先生からも御指摘ございましたように、深夜労働につきましては、社会生活の維持など公益上の必要性が高いものから、現在のグローバル化した市場のもとでどうしてもやむを得ないもの、あるいは生産技術上やむを得ないもの等ございまして、これは画一的に直接的な規制ということにはなじまない点についてはぜひ御理解をいただきたいと思っております。  それで、先生お話のございました中で、経済的な理由といいますか、そういう競争上の理由等で深夜勤務に至る場合、例えば長時間の残業がそのままいわゆる十時以降の深夜勤務に至るような場合、そういったケース、いわゆる長時間の残業の抑制と相まっていろいろ抑制されていかなければならない部分というのは確かにあるのではないかと思います。  それで、先ほど申し上げましたように、私ども、現在は三六協定の上限についての目安を出して、その徹底を期しておるところでございますが、さらに現在、中央労働基準審議会の方で、この時間外労働、休日労働あり方、そういったものが、とりわけ均等法施行された後の姿もにらみながら議論を進められておるわけでございまして、そういう結果を見ながら、その部分につきましては対応をしてまいりたいと思っております。  そういったことで、深夜業等のあり方につきましても、画一的な規制になじまない、したがいまして、労使間で労働協約あるいは就業規則の策定等に当たって十分な話し合いが行われることが望ましいわけでございます。  この就業規則につきましては、御指摘ございましたその状況でございますが、労働時間の総合実態調査、過去に行ったものを見ますと、十人以上について義務づけております就業規則の作成義務、これは、例えば三十人未満のところでも九〇%、それを超えますと、大体九六から九九%の割合で策定をされておるわけでございまして、その際に、労働組合がある場合は労働組合、労働組合がない場合も、従業員の過半数を代表する方の意見を聞いて作成することになっております。その辺の手続がきちっと行われますように、私ども、従業員代表者の選定等についても守るべきルールを、通達を出しておりまして、その徹底を期しているところでございます。  今後、労働時間、とりわけ長時間の労働をどう少なくしていくか、抑制していくかということがますます大きな課題になる中で、そういった点につきまして、私ども大いに力を尽くして努力をしてまいりたいと思っております。
  75. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 まだそういう意味ではかなり不満な点もあるのですが、時間も参りましたし、山中局長、今まで待っていただいたのに申しわけございません。  実は、この前の能開の委員会のときに私も発言をさせていただいたのですが、ポリテク短大などにつきまして、女性のこれに対しての入学率がまだ非常に低いという実態があります。男性の三分の一か四分の一ぐらいしか行っておらない。ところが、ここへ入学して卒業しますと大変就職率もいいというようなことにもなっておるわけでありまして、せめて男女半々ぐらいになるように、いろいろな努力をしていただきたいなというふうに思います。  それらにつきまして、一言で結構でございますので、よろしくお願いします。
  76. 山中秀樹

    ○山中政府委員 ただいま御指摘ございました職業能力開発短期大学校の入学者に占める女性の比率でございますが、現在のところ、二二・六%となっております。決して高い状況ではないと思いますが、十年前、昭和六十年の均等法施行直前の入校率を見ますと、六・八%ということで、徐々に上昇してきております。  そういう意味で、先生の御指摘を踏まえて、できるだけ多くの女性がこういう形でやれるよう、努力いたしたいというふうに思っております。
  77. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 では、質問を終わります。ありがとうございました。
  78. 河上覃雄

    ○河上委員長代理 これにて鍵田節哉君質疑は終了いたしました。  次に、武山百合子君。
  79. 武山百合子

    ○武山委員 武山百合子です。  たくさん質問したいと思いますので、早速内容に入らせていただきます。ぜひ、簡単に、わかりやすく答弁していただきたいと思います。  まず、年齢による差別ですけれども、今回の法案とは直接関係がないとは思いますけれども労働に関連する問題としてはとても重要だと私は考えております。年齢による差別についてちょっと質問したいと思います。  今、新聞の求人広告などを見ると、経理、大卒、二十七歳とか、いろいろ年齢が出ているわけです。募集がありますけれども、この採用条件だと、例えばアメリカに留学したり、何らかの理由で、一たん社会へ出てからまた大学へ入り直したりして卒業がおくれた人は応募することさえできないというのが現状なんですね。  また、一般事務三十五歳までというような募集の広告も見かけますけれども、普通に事務を行うのに年齢を三十五歳までというふうに制限してしまうのは納得がいかないのですけれども、ちゃんとしたわけがあるのかどうか、お聞きしたいと思います。
  80. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 募集採用に当たりまして年齢その他の条件をつける場合におきまして、男性と比較して女性に不利な取り扱いをすることは均等法に違反するものでございます。例えば、年齢の上限を設けて募集したり、または採用する場合におきまして、女性が応募することができる年齢を男性に比べて低くするということは女性に対する差別に該当するものでございますので、この ような事案に対しましては指導を徹底してまいりたいというふうに思っております。
  81. 武山百合子

    ○武山委員 指導を徹底してまいりたいということですけれども、今までは、この年齢による差別禁止について何か取り組みをしてきましたでしょうか。
  82. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 均等法上は、男性と比べて女性に不利な年齢にする場合は違反でございますので、その点につきましては均等法上の指導をしてきたところでございます。
  83. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、この問題を担当している部署が、何かないというふうに聞いておりますけれども、あるのでしょうか。
  84. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 直接私の所管にかかわることでございませんが、労働省全体の所管の体制としてお答えさせていただきます。  年齢による差別の問題、ただいま婦人局長からお答え申し上げましたように、女性についてそういった年齢の問題がいろいろな職場への進出等の障害になっているケースにつきましては、もちろん男女機会均等の推進という観点から婦人局で所管いたしますし、一般的に、例えば求人の申し込み等に当たって年齢の上限等を設けているケースにつきまして、これは職業安定局の方でしかるべきセクションにおきまして、そういった場合につきまして、年齢の要件を緩和して就職の難しい高年齢者等の雇い入れを促進していくような求人者指導等、これも通達を発しまして、第一線の各窓口に督励をいたしている。そういった形で、この年齢による問題について取り組んでいるところでございます。
  85. 武山百合子

    ○武山委員 そうしますと、特別な部署はないということですね。  私、お聞きしたかったのは、女性もそうですけれども、男性も女性もという意味で、やはり年齢による差別はない方がよいと私は思っているわけなんです。男とか女とか関係なく、いつでもその職種につきたいときに応募できるという、そういう、まず男女平等、機会均等、そして年齢による差別がないというところを私はちょっと質問しているのです。
  86. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 直接の担当ではございませんけれども、六十歳以上の人たちに対しましては、職業安定所の方でもできるだけ多くの方々に求人を求めるよう努力をさせていただいているところでございまして、できるだけ年齢による差がないような努力というのは、一般的にはしているところでございます。
  87. 武山百合子

    ○武山委員 実は私、去年ノルウェーに行きまして、成田空港からコペンハーゲンまで飛行機で向かいました。私、びっくりしまして、スチュワーデスとパーサーが六十五歳ぐらいのおじいちゃんとおばあちゃんだったのですね。日本でいいますと、おじいちゃんとおばあちゃんといいましても非常に若いおじいちゃんとおばあちゃんもいますので、何しろ六十五歳ぐらいの年齢の方がスチュワーデスとパーサーで、大変びっくりいたしました。  私、アメリカに長いこと生活していたものですから、アメリカを拠点にしていろいろな国に行きましたけれども、五十歳前後の方はよく見かけましたけれども、それ以上の人がいるということにびっくりいたしました。そして、きちっと仕事をしているわけですね。  なおかつ、コペンハーゲンからノルウェーのオスロまで行きましたら、今度、タクシーに乗りました。そこにはやはり六十五歳ぐらいのおばあちゃんが、ベンツのタクシーですけれども、運転していたのですね。  ノルウェーという国は、七十歳定年ということで、たしか一九八〇年代に少子化、高齢化が進んで一挙に女性の社会進出が進んだということで、そういう状況もあるわけで、現実にきちっと働いている状況も見まして、大変日本とは違うという意識を改めて持ちました。二十一世紀の労働省は、国際化、グローバルスタンダードということで、ぜひそういう視点も観点に入れて、いろいろな施策をしていただきたいと思います。  それでは、次に移ります。  労働と教育ということでちょっとお尋ねしたいのですけれども、現在の日本の社会における働くことについての男女間の差別状況やセクハラに関するさまざまな知識について、社会人だけでなく小さいころから、私は欧米を見てまいりまして、小さいころから、生まれたときから教育の中で、労働と教育というのはやはり結びついているであろうと思います。  職業についての男女平等の意識や、職場で今問題になっておりますけれども、セクハラの問題ですね、性的嫌がらせ。これには言葉による暴力それから実際にさわるという二つの問題が大きく取り上げられておりますけれども、こういうことも原則的にといいますか、絶対いけないことなんですね、欧米の社会では。そうしまして、意識を今後社会に広めていくためには、やはり学生のときからの教育はかなり大切なことではないかと私は思いますけれども労働省、その辺はどのようにお考えでしょうか。
  88. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 先生の御指摘の問題は非常に重要な問題だというふうに考えておりますが、労働省といたしましては、就職のときに差別をいろいろされる場合に、やはり子供のころから、中学、高校時代から職業への興味づけということ、職業をどういうふうに考えていくかということをきちっと考えることが非常に重要であろうというふうに考えまして、女子学生や女子生徒たちが自分に納得した職業を的確に選択することができるようにしたいということから、婦人少年室におきましては、女子高校生の意思決定に大きな影響を及ぼす保護者とか学校の指導担当者を対象といたしまして、職業生活を見通して進路決定をすることが必要であることにつきましてセミナー等を実施し、関係者の意識の啓発を図らせていただいているところでございます。     〔河上委員長代理退席、委員長着席〕
  89. 武山百合子

    ○武山委員 ちょっとアメリカのお話をしたいと思いますけれどもアメリカでは小さいころから、人種差別でなくセクハラについても一言も発するべきではないという教育がされているわけなんです。ですから、そういう教育を受けた子供が大人になってセクハラをしなくなり、社会全体としてもセクハラを認めない社会に現実になっているわけですね。  例えば、私の息子が小学校三年生のころだと思いますけれども先生から電話がかかってまいりまして、武山さんのお宅の息子さんがブラックとクラスの生徒の女の子を言った、そういうことは差別なので、お母さん、言わないように注意してください、私も学校で注意しましたと。アメリカの社会では、一言一言、言葉の差別で出てきたときに芽を摘むという社会になっているわけなんですね。  ですから、アメリカがすべていいとは私思いません。よいとは思っておりませんけれども、そういうふうにして、小さいときからの教育の中で一つ一つやはり芽を摘んでいく。しかりつけるというのではなくて、それはいけないことだと説明して、そこで終わりなわけですね。そういう小さいころからの啓蒙というか、教育の中でとか家庭の中でとか、そういう、何というのでしょうか、広い意味で進めていくことが大切であろうと思っております。  それで、現在文部省と労働省では、このことに関して、教育における取り組みを共同で検討したりしているのでしょうか。その辺、文部省と労働省からお聞きしたいと思います。
  90. 池田大祐

    ○池田説明員 お答え申し上げます。  先生お尋ねのように、女性がみずからの能力を発揮して社会のいろいろな分野で活躍をいただくということは非常に大切でございまして、そのために、男女の固定的な役割分担を見直すことは非常に重要なことであるというふうに考えております。  学校教育におきましては、男女の平等と相互の協力というものにつきまして、小学校から中学校、高等学校の各学校段階を通じまして、いろい ろな教科あるいは道徳、特別活動等におきまして、児童生徒の発達段階に応じて適切に指導することにしております。また、高校の家庭科におきましては、男女が協力して家庭生活を築いていくということにつきまして指導をすることになっております。  さらに、学校の進路指導という面で考えてみますと、女性に対する固定観念にとらわれることなく、生徒の能力、適性、興味、関心、将来の進路希望といったものに応じた進路指導を展開するために、みずからの生き方を考えて主体的に進路を選択、決定する能力一態度を身につけることができるよう指導しているところでございます。  今後とも、学校における男女平等教育あるいはそういった趣旨をもっと敷衍していくというふうなことについて、適切な進路指導等に努めてまいりたい、必要に応じて労働省さんとも連携を図ってまいりたいというふうに考えております。
  91. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 労働省婦人局で行いましたのは、重複いたしますので省略させていただきますが、今の課長のお話にもありましたように、文部省さんとは折につけ連携をとっておりまして、今後ともその連携については密接にやっていきたいと思っております。
  92. 武山百合子

    ○武山委員 文部省さんにもう一度お聞きしたいのですけれども、それはいつごろスタートしたのでしょうか。その前まではやはりやっていなかったということなんでしょうか。いつごろ始まったかということをちょっとお聞きしたいと思います。
  93. 池田大祐

    ○池田説明員 お答えを申し上げます。  男女の固定的な役割分担を見直す、あるいは女性に対する固定観念にとらわれることなく、生徒の能力、適性、興味、関心、進路希望等に応じた進路指導を行うというのは従前から行ってございます。  ただ、今申し上げました中の高等学校の家庭科の男女共修という問題につきましては、平成六年度から実施をしておるところでございます。
  94. 武山百合子

    ○武山委員 私は、ちょっとそういう質問の観点じゃなかったのですけれども、やはり教育というのは、男、女という、男に適したもの、女に適したものという教育ではなく、小学校時代はいろいろなスポーツをしたり、それから教科の中でいろいろな興味づけをしたり、多様な興味をつけるところだと思うのですね。ですから、高等学校で女の子がどういうこととか男の子がどういうこととか、それも全部だめとは言いませんけれども、それも必要ですけれども、もっと大きな視点があるのではないかということで実は今お聞きしたのです。  そういう多様なものに接することによって、こんなものをしたい、あんなものをしたいというふうに見えてさましたら、中学校程度である程度そういう見えた部分に多くの時間を割いて、それがスポーツであれ、また音楽であれ、また技術的なことであれ、芸術的なことであれ、そういうものでだんだん興味を絞ってきまして、また高校生ぐらいになりましたら、地域との活動や、また図書館との関係だとか社会との関係だとかでいろいろな、これからボランティアということが授業の中に取り入れられていくようですけれども、そういう中で多様なものに接する、多様な考えに接する、画一的な教育の中では生まれ得ないものをやはり私は期待しております。  そして、大学生になりましたら、ほとんど、ああ私はこんな道に進みたい、僕は将来こんなものになりたいというある程度の姿が見えるような、やはり社会、それから教育、家庭、学校というか、そういう連携が必要であろうということで実はお聞きしたのですけれども、例えば日本の学生は大学卒業後にすぐ社会に出まして働けるかといいますと、私が感じているところですと、例えば秘書を雇いましても、実際に履歴書や面接だけでは、その人がどういうことを考えて、どういうことができて、どういう判断をするかというのはわからないわけですね。そして、三カ月間、試用期間ということで見ますと本当にお茶も入れられない、それから電話の応対もできない、今そういう方が非常に多いということに驚きました。  それだけを挙げてすべてをはかることはできませんけれども、それこそ、家庭でしつけることができていない、それから学校の中で行われていることが身についていない。そして、今社会は、大学生が社会に出たときに必ず社員教育、会社でいえば社員教育、それから公的な機関でいえば研修という期間がありまして、ある程度必ず期間を置いてからじゃないと実際にフルに活動できないというところがやはり学校教育、家庭教育、社会全体の認識、そういう総合的なものから来ているだろうと私は思います。  それで、労働力の質も、やはりそういう面からしますと、そういうものが整っている環境と比べますと、大変質は低いと思います。それに、労働時間も長くなるということだと思いますので、よって労働の質を高めるというような取り組みが必要なのではないかということで今いろいろお聞きしたのですけれども、ぜひそういうグローバルな考え方で、余り小さな各論部分にばかり終始しないで、大きな意味で当たっていただきたいと思います。  それから、次に移りますけれども、次は、救済措置や指針の周知徹底ということでお聞きいたします。  幾らよい法律や指針をつくっても、それを実際に国民が使えなければ意味がないわけですけれども、特に日本は、法律や裁判を日常余り意識しない国民ですから、かなりの広報活動を通じて国民、特に女性法律の決まりや指針などをぜひ教えていただかなければ、一般の人々はこの法律を使いこなせないのではないかと私は思っております。  今労働省は、募集採用配置及び昇進にかかわる禁止規定内容や、法律がちゃんと効果を発揮するようにするための調停などの実効担保の措置や、セクハラを防止するための雇用上必要な配慮についての指針などの国民への周知徹底についてどのような方策をお持ちなのか、ちょっと聞かせていただきたいと思います。パンフレットなどでいろいろPRをしているということですけれども、その辺をちょっとお聞かせください。
  95. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 先生指摘のように、法律ができますれば、その後つくります指針等をあわせまして国民に広く周知徹底することが法律の着実な定着という意味でも非常に重要であるというふうに考えておりますので、まずは経営者団体、各種の業種団体地方公共団体と十分連携をとりまして、特別啓発活動というのを集中的に展開をしたいと思うわけでございます。  具体的には、指針の内容等をわかりやすく解説いたしましたパンフレットを作成いたしまして、地域別業種別集団説明会を実施いたしますほか、婦人少年室の職員が事業所訪問をするときにもそういうパンフレット等を持っていって周知広報を図るというようなこと、あらゆる機会をとらえまして、企業のみならず国民一般に対しましても法律、指針の周知を図りまして、法の遵守が徹底されるように努めてまいりたいというふうに考えております。
  96. 武山百合子

    ○武山委員 ぜひよろしくお願いいたします。  インターネットはお考えでしょうか。
  97. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 労働省でもインターネットを既に開設しておりますので、活用していきたいというふうに思います。
  98. 武山百合子

    ○武山委員 ぜひお願いしたいと思います。  次に、間接差別についてお聞きいたします。  いわゆる間接差別はどのような具体事例があるのか、何を間接差別と考えられているのか、具体的な例をぜひ挙げていただきたいと思います。
  99. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 いわゆる間接差別につきましては、まだ日本ではその定義が明確でないわけでございますけれども、一般的には、男女に共通の基準であるにもかかわらず、結果的に女性が不利になるものを指しているというふうに考えております。  特に世帯主要件につきましていろいろと御指摘 がされているわけでございますが、世帯主要件につきましては、女性が世帯主である場合もあるわけでございまして、これは直ちに女性に対する差別とはならないのではないかというふうに思いますが、しかしながら、実際の運用の面におきまして、女性が世帯主の場合に、夫の所得が幾らあるかというようなことを男性の場合は聞かないのに女性の場合には聞くというような男女異なる取り扱いとなっているような場合も多いわけでございまして、このような場合は女性に対する差別となりますので、指導は徹底してまいりたいというふうに思っております。
  100. 武山百合子

    ○武山委員 世帯主が女性ということですけれども、世帯主が夫婦ということもありますよね。ですから、それはどうなんでしょうか。
  101. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 住民票上は筆頭者が世帯主であると思いますので、私、私事でございますが、単身赴任したときは、東京で夫が世帯主、単身赴任先では私が世帯主という、そういう意味で夫婦ともに世帯主、先生のおっしゃったのはそういうことかなと思いますが、一つの夫婦が一緒の家庭に住んでいれば、やはり住民票上の世帯主というのは一人であるというふうに考えます。
  102. 武山百合子

    ○武山委員 反論するようですけれども、欧米では二人が世帯主というふうに考えておりますけれども、ちょっとそれで議論したくありませんので、次に移ります。  それでは、そのような対応や方策、その間接差別に対する規定がないわけですけれども、今後どのような対応や方策をとっていくのか、中身を聞きたいと思います。
  103. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 この間接差別につきましては、今回の均等法には特別には規定はしていないわけでございますし、勤続年数基準とした処遇もこれに当たるというような外国の例もあるというふうに聞いておりますので、どのようなケースが差別とされるかにつきましては、今後そのコンセンサス形成のために、より慎重な議論が必要であるというふうに考えております。
  104. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、次に移ります。  次は、セクハラについてお尋ねいたします。  この法律では女性に対するセクハラのみ規定していますけれども、私の周りの方は、男性に対するセクハラもあるということを言う人も多いわけなんですね。それで、まず、男性に対するセクハラは考えないのでしょうか、考えているのでしょうか。
  105. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 今回の法律は、女性に対する差別ということで規定いたしておりますので、女性に対するセクハラを対象としておるものでございます。
  106. 武山百合子

    ○武山委員 まさに差別だと思います。  次に進みたいと思いますけれども、私は「女性能力発揮のために」という労働省婦人局から出ていますこのパンフレットを見まして、大変驚きました。「性に関する不快な経験」ということで、四人に一人が経験しているわけですね。このセクハラの問題は避けて通れませんので、質問するのに私も大変悩みました。本当に言いにくいこともありますし、しかし避けて通れない問題だと思いまして、真っ正面からぶつかるということで質問することにいたしましたけれども、私も自分が育ってきた過去を振り返ってきまして、不快な思いをしたことがあります、正直言って。必ずだれもが今まであったと思うのですね、女性であれば。男性も中にはあるかもしれません。  そういう問題で、今まで無意識で生活してきたというのが事実であろうと思います。無意識というのは、意識として不快と感じましても訴えるすべもなく、まあ我慢、我慢というか、私は今まで何となくそういう教育を受けたような、言えない、密室の、閉鎖的な、そういう環境であったと今振り返るのですね。  それで、今まさにセクハラの問題は世界じゅうが問題にしているわけです。この統計で見ますと、四人に一人ということです。これは、統計がどのくらいの人数を対象にして四人に一人か、ちょっと解釈に苦しみますけれども、実際上非常に多いということですね。  それで、ここの中を見まして、対価型と環境型ということで、皆さん大変よく御存じだということで、私は長いこと海外に住んでいたものですから日本の状況を知らないということもありまして、一般的にはほとんど知られているということです。  この中で、やはり「問題解決に向けて」ということですけれども、もう現実に日本の社会で起こっているわけです。今までも起こっていたわけです。今後も起こるということです。私は先ほどこういう問題も教育の中で解決すべきであるということを訴えました。と同時に、今までその教育を受けてなかったというか、初めてこういうふうにクローズアップされて、意識として、特に男性は驚いているのが現状であろうと思います。  例えば、最近質問されたのですけれども、ちょっと用事を頼むので、その状況でぱっと肩をさわった、それもセクハラかと質問されたのですけれども、それもセクハラなんですね、外国の定義からいいますと。相手が不快だなと思ったらセクハラなんですね。こちらは気軽にしましても、相手が不快だなと思えばセクハラということなんです。それで、会話の中で、こちらは普通の言葉を言ったとしましても、相手が不快と思ったら、それはもう性的嫌がらせで不快なんです。  ですから、このセクハラの問題は、基本的にどこもさわってはいけない、性的嫌がらせの言葉を一言も言ってはいけないということなんですね。単純明快なんです、意味は大変深いのですけれども。その単純明快なものをやはり社会が認識しなければいけないというところが大問題だと思います。  先ほど私、アメリカの学校教育の中でブラックという差別語を言ったということで注意されたという話をしましたけれども、もう一言一言、欧米社会では、一般論で私言っているわけですけれども、それが性的嫌がらせか、どういう言葉かというのを小さいころから教えられて育っているわけなんです。ですから、欧米社会では、セクハラに対して、一般論といたしまして、ある程度の階層以上の方はよく認識しております。日本だけがそういう認識がないということでございます。それはやはり認識しなければいけないことだとはっきり私は、長い海外生活の中でお話をしておきたいと思います。  それで、子供たちは、今後の教育の中や、解決方法はいろいろありますけれども、大人の社会が問題なんですね。もう今から意識を変えるというのは大変なことだと思います用意識を改革するということはもう本当に、問題解決に向けて大変なことなんですけれども、それは非常に望み薄のように、もうホープレスですね、望み薄のように感じます。  それは、今までの社会の中で、急にそういうふうに言われても納得いかない部分というのは大変あると思うのです。故意にした場合は別ですけれども、先ほどの、ちょっと物を頼むとき、ぱっと肩をたたいたとかいうような場合は、本当にそういうこともセクハラに入るという、意識を変えるということは非常に大変なことだと思います用意識にあっても行動でぱっと出てしまったりしますと、相手がそうだと思えばそれはセクハラになるわけですから。  ですから、問題解決に向けてどうしたらいいかということが問題だと思いますけれども、やはりその件については日本は非常に罰則が軽いと思います。アメリカで問題になりました三菱のセクハラの問題も、欧米と日本との文化や環境の違いなんですけれども、まさに労働省の婦人局のパンフレットにも出ておりますように、やはりもう訴訟が起こりまして、これがもう普通の状態がアメリカの社会なんですね。ですから、日本は今まで訴訟ができなかったという環境があったと思います。これがやはり現状だということを国民全体が認識しなければいけないということを大変強く私は感じております。  それから、セクハラについてちょっと細かいこ とを聞きたいのですけれども雇用管理上必要な配慮について今後指針で定めるとなっていますけれども、最低限指針に盛り込むべきことは当然決まっていることと思いますけれども、その具体例をお聞かせいただきたいと思います。
  107. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 今後、労使による研究会をつくりまして指針をつくっていくところでございますけれども改正法案におきましては、いわゆる対価型と環境型の両方含む概念を、事業主に対しまして防止のための配慮の義務を定めたわけでございます。具体的にはどういう事例がセクシュアルハラスメントに当たるかということにつきましては、今後、先ほど申しました研究会でより具体的な内容をやっていきたいというふうに思っているところでございます。  今考えております例といたしましては、対価型のセクシュアルハラスメントの例といたしましては、上司からの性的な誘いを受けまして断ったところ、賞与の査定等で最低ランクに評価されるというようなこととか、環境型といたしましては、同僚等から毎日のように性的な言葉をかけられたり性に関するうわさを流されたりして、ストレスのために職場に出られなくなってしまうというような事例が挙げられるのではないかと思いますが、ともあれ、今後、具体的な事例等々につきましては、その研究会でいろいろと議論をしていただいて指針において示すというふうにしたいと思っております。
  108. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、三つお尋ねしたいのですけれども、一つは、企業に苦情処理機関の設置を要求するのかどうか。それから二つ目は、企業管理職に対する講習会の実施は要求するのかどうか。それから、就業規則への明記は義務づけるのかどうか。三つお聞きしたいと思います。
  109. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 それらにつきましても、今後の研究会検討させていただくというふうにしたいと思っております。
  110. 武山百合子

    ○武山委員 ぜひ検討していただきたいと思います。その結果を私は待っておりますので。  それでは面接時のセクハラはこの法案ではどのように救済されるのでしょうか。
  111. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 面接時におきまして女性に対してセクシュアルハラスメントのような質問をされる場合は、これは募集採用禁止規定に違反いたしますので、企業名等がわかれば、企業に対する指導を婦人少年室の方から行っていくことになるわけでございます。
  112. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、次にお聞きいたします。  採用、面接の際にセクハラのような問題を予防する方法としまして、面接官は役職の名前を明らかにするとか、面接記録の保存、女性の面接官を入れるというような方法があると思いますけれども、今後、このような点に関して労働省もしくは企業はどのような取り組みをしていくのか、ちょっとお聞きをしたいと思います。
  113. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 ポジティブアクションのガイドラインの中に、先生が今おっしゃったような規定を入れてございますので、そういう点でチェックをしていきたいというふうに思っております。
  114. 武山百合子

    ○武山委員 先ほど、どなたかの御質問の中で、女性の面接官を入れたらどうかというお話のときに、それは認識しているというふうにお答えになったのですけれども、認識しているだけではだめだと思います。認識しているだけではだめだと思いますので、認識を一歩前進させまして、認識から脱出して、やはりもう一歩進めていただきたいと思います。  それから、望ましい募集採用、面接のあり方のようなものを作成する予定があるのでしょうか。このような方法をとれば、セクハラ面接などは予防されると思いますけれども労働省はこの点、どのように見通しを立てておりますか。
  115. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 ポジティブアクションのガイドライン、ワークシートの中におきまして、男女両方をともに対象とする取り組みの中にいろいろと選考方法を改善するということを決めておるわけでございまして、不採用の場合はその記録を見、分析をするということとか、それから、面接、採用担当者には女性を登用するというようなこと等々で、女性採用拡大につきましては、企業の自主的な取り組みを促していきたいというふうに考えておるところでございます。
  116. 武山百合子

    ○武山委員 今回、セクハラに関しては調停の対象にならないようですけれども、セクハラに対して、この法律はざる法になってしまうのではないかと私は思っております。せめて対価型だけでも禁止すべきではないかと思っておりますけれども
  117. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 均等法というのは、事業主雇用管理上の責任を明らかにする法律でございまして、一般的に、その行為者のいかんを問わず、職場におけるセクシュアルハラスメントを法律において禁止するということは、その性格になじまないというふうに考えるものでございます。  しかしながら、職場におけるセクシュアルハラスメントが許されないものであるということは当然という認識においては、先生と全く変わらないわけでございますので、その旨につきましては、今後とも十分に周知を図ってまいりたいと思っております、
  118. 武山百合子

    ○武山委員 その周知の中身をもうちょっと詳しくお話しください。
  119. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 まずパンフレットをつくらせていただきまして、あらゆる機会を通じましてPR等に努めていきたいというふうに思います。
  120. 武山百合子

    ○武山委員 どのくらい効果を期待しておりますでしょうか。
  121. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 少なくとも、セクシュアルハラスメントという言葉が社会的に通用するようになったわけでございますし、それから、婦人少年室におけるセクシュアルハラスメントに関する相談事例も年間千件を超えるというような形になっている状況でございますので、今回、法律規定をされたことによりまして、いわゆるセクシュアルハラスメントということは本当にやってはいけないことだということが社会一般の常識になっていくというふうに私は確信をしているところでございます。
  122. 武山百合子

    ○武山委員 ちょっとここで罰則のお話を入れたいと思いますけれども、この法案にはいろいろな禁止規定が入っていますが、禁止ということから想像するのは、それを破ったら痛い目に遭う、私の頭の中はそういう概念なのですね、今回、この法案を眺めてみますと、企業禁止を破ったときの罰則は企業名公表だけみたいです。しかも、公表の場や手続内容法律には入っていないわけですね。  罰則というものは、もし罰せられたち、もう二度と違反をする気を起こさせないような厳しいものであるべきだと私は思っております。諸外国では、罰金や強力な司法制度が均等法実効性確保しているところがありますけれども公表するにしても、例えば、一部上場企業は新聞に企業名を大きく書くとか、政府が掲載し、実費を徴収するとか、中小企業については一括掲載するだとか、二度とできないような罰金にするとか、そういうことは考えていただけるのでしょうか。
  123. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 女性労働者に対するその差別是正に当たりましては、その差別された女性労働者がその企業に継続して勤務できるようにするということがやはり非常に重要であるというふうに思うわけでございます。  したがいまして、その事業主に対しまして罰則というような懲罰的な制裁を科すよりも、助言、指導勧告といった行政指導によりまして粘り強く事業主是正を促していくということがむしろ有効であるというふうに考えておるわけでございまして、このような観点から、今回、その勧告に従わない違反企業に対しましては、企業名公表という社会的制裁措置を創設したわけでございます。これによりまして、法違反の速やかな是正を求める行政指導効果は高まるというふうに思うわけでございます。これは新聞発表もしたいと思っておりますので、多分、先生がおっしゃるように、一部上場のような大きな企業さんでした ら、マスコミには大きく取り上げられるのではないかというふうに思っているところでございます。
  124. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、効果を期待したいと思います。  次に移ります。  派遣労働者が派遣先でセクハラを受け、それを訴えたため派遣を打ち切られたらどうなるでしょうか。このような方を救う方法はあるのかどうか、お聞きしたいと思います。
  125. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 現在、その点につきまして検討中でございまして、ここで確たるお答えができないのをおわび申し上げたいと思いますが、検討させていただきたいというふうに思います。
  126. 武山百合子

    ○武山委員 どのくらい検討の期間がかかりますか。
  127. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 新省令をつくるまでには検討をきちっと詰めたいと思います。
  128. 武山百合子

    ○武山委員 私は、どのくらいかかるかという期間を聞いております。
  129. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 新省令は今年中につくりたいと思いますので、今年中までには決めさせていただきたいというふうに思います。
  130. 武山百合子

    ○武山委員 お願いいたします。  それでは、次に移ります。  現在、日本の企業の中で、既にセクハラに対して先進的に取り組んでいる企業があると聞いておりますけれども、そのような企業取り組み労働省はもっと社会にPRすべきじゃないかと思います。労働省の政策のみ押しつけるのではなく、民間が自主的に行った取り組みをPRすることは大切なことだと思いますけれども、この点について、労働省はどのように考えていますか。
  131. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 職場におけるセクシュアルハラスメントにつきましては、それぞれの企業がその防止に取り組むことがやはり重要でございますので、先生おっしゃるように、その各企業の事例等々、その職場におけるセクシュアルハラスメント防止の取り組みの好事例を収集分析しているわけでございまして、そういうような事例集とか、それからポスター、社内通達等々によってもやっておられる企業もあるわけでございますけれども、そういうようなものにつきましては、できるだけ多く事例も集め、そういう事例をPRもしていきたいというふうに思っております。
  132. 武山百合子

    ○武山委員 PRの中身を説明してください。
  133. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 全国にあります婦人少年室を通じまして、いろいろな形で講習会も行いますし、また企業に出かけます事業所訪問もやりますので、そういうときにも一緒に好事例等も御紹介をさせていただきたいというふうに思います。
  134. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、そこはこの辺で終わりたいと思います。ありがとうございます。  それから、先進的な日本の企業の中にはセクハうに対する相談体制整備しているところがあると聞いております。相談体制があってもそのことを従業員が知らなければ全く意味がないのですけれども、このような企業はそのような相談体制があることを従業員に周知徹底しているのでしょうか。
  135. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 具体的な企業の事例についてはつまびらかではございませんが、当然そういうことをしておられる企業、わざわざやっておられる企業であるならば、広くPRはされているものであろうというふうに類推するところでございます。
  136. 武山百合子

    ○武山委員 ぜひ、国の施策として、抜き打ち検査なども行っていただきたいと思いますけれども、そういうことは考えておりますでしょうか。
  137. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 特段そういうことは考えておりません。
  138. 武山百合子

    ○武山委員 ぜひ今後、これは大変大きな問題ですので、いろいろな形で、どのように周知徹底していくのか、状況をやはり調べていただきたいと思います。そういうこともPRの一つになると思いますので、ぜひそのようなこともしていただきたいと思います。  それでは、次に移ります。調停の公表と今後の業務負荷の見直しということでちょっとお聞きしたいと思います。  アメリカの国民は非常に権利意識が高いのですけれども、それを支えている一つの柱は、裁判の内容を広く一般の人々が知りやすい状態になっているからという点もあるのですね。自分の身の上に何が起こったか、それについてどのような裁判が行われるのか、わかっているのとわかっていないのとでは全然違ってくるわけですけれども、今回の法案では、禁止規定がたくさんできましたし、一方からの申請による調停も可能となったわけです。ですから、今後調停の数がふえていくと思いますけれども、このような調停の内容は、いろいろと匿名で公開されておりますけれども企業名まで公開されるのかどうか、一点お聞きしたいと思います。  それから、調停の申請が多く起こるような問題については、具体的にどのような調停が行われたのかインターネット上で公表するのも一つかと思いますけれども、調停の内容の公開に関する労働省のお考えを、公開の方法をお聞かせください。
  139. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 調停制度はその関係当事者の個別具体的な私法上の紛争の解決でございますので、当事者のプライバシーを確保する必要性があることを考えなければいけないと思うわけでございます。  そういう意味では、調停手続そのものについては非公開とすることが適当であるというふうに考えておりますし、また、他のいろいろな法令を見ましても、調停制度におきましてはそういう調停手続等を公開するという事例はないというふうに承知しておるところでございます。
  140. 武山百合子

    ○武山委員 事例はふえていくと私は思いますけれども、今後、調停や相談の数がかなり多くなる可能性があると私は思いますけれども、そのような依頼に迅速に対応できる労働省体制ができ上がっているのかどうか、その辺を、取り組みを聞きたいと思います。
  141. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 調停の一方申請化によりまして、やはり先生指摘のように、今後、婦人少年室への調停申請が増加することが見込まれるわけでございますけれども、これに対応していくために、私どもの第一線機関であります婦人少年室の体制整備は図っていかなければいけないと思っておりますし、実際にも地方機会均等指導官等の増員を図っているところでございます。  現在、政府におきましては、行財政改革という厳しい状況もとではございますけれども、やはり必要な人員体制整備というものにつきましては一生懸命頑張っていきたいと思いますし、また同時に、職員の資質を高めるための研修も充実をしていきたいというふうに思っているところでございます。
  142. 武山百合子

    ○武山委員 先ほどちょっとお聞きしたのですけれども、全国の女性担当の室長がほとんど女性ばかりで、男性が一人だと聞いたのですけれども男女のバランスという意味でやはりバランスが必要だと思いますけれども、それは本当なのでしょうか。女性がほとんどで、男性が一人なのでしょうか。
  143. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 これは室長ではなくて、室全体で一人でございまして、著しくバランスを欠いているという点は、まさに御指摘のとおりでございます。  今後におきましては、私どもの第一線の行政におきましては、男女のバランスの改善には努めていきたいというふうに思っております。
  144. 武山百合子

    ○武山委員 バランスを欠いている点に非常に驚いておりますので、ぜひ行政がお手本を見せるという点で頑張っていただきたいと思います。  それでは、次に移ります。  女子保護規定撤廃……(岡野国務大臣委員長委員長」と呼ぶ)はい。
  145. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生、本当に一人だというので、私もびっくりしてしまったのですけれども、いろいろ聞いていきましたら、これはⅡ種の国家公務員試験合格者をもって充てよう、そのⅡ種合格者の中でこの婦人少年室要員ということで希望 される皆さんが女性ばかりだというような実態でありますので、私はこれから大いにこの婦人少年室というのをPRいたしまして、おれもひとつやりたいという男子の手のたくさん挙がることをひとつ諸先生方も御支援をいただきたい、こう思っております。
  146. 武山百合子

    ○武山委員 ぜひ魅力のある政策をしていただきたいと思います。男女ともに集まると思います。  それでは、次に移ります。女子保護規定撤廃についてちょっとお話ししたいと思います。  深夜業は特に人間の生理リズムを乱し、体に与える影響が大変大きいわけですね。現在でも女性の健康破壊が進んでいるということですけれども女性だけではなく、深夜業というのは、やはりもう常識でだれでもわかっていらっしゃると思いますけれども、短期間でしたら確かに勤まると思いますけれども、長期間になりましたら体に大変な影響を及ぼすと思います。私も学生時代は一晩、二晩ぐらいでしたら徹夜をしましたけれども、もう徹夜などというのはもたなくなりましたので、やはり生理のリズムを乱すという意味で大変健康破壊値値すると思います。  それで、今回、女子保護規定撤廃に当たって、労働省では、深夜労働女性に与える悪影響ということを調査しているのかどうか、ぜひこの実態を聞きたいと思います。
  147. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 深夜業が昼間の労働に比べて男女双方健康面影響があるということはわかっておるわけでございまして、私どもといたしましても、深夜業に従事する労働者につきましては、健康とか社会生活に対する影響をできるだけ少なくすることが必要であるというふうに考えておりまして、いろいろな諸規定整備充実しているところでございます。
  148. 武山百合子

    ○武山委員 実態はわかっていないのでしょうか。実態は何か統計だとかで調べてあるのでしょうか。
  149. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 深夜に従事している女性の割合につきましては調査がございまして、これは平成四年の調査でございますけれども女性労働者の六・二%でございます。なお、男性の場合は一七・七%になっておるわけでございます。  また、平成五年に婦人少年室で実施いたしました事業所訪問調査におきましても、それぞれの事業所において、深夜業が可能な女性労働者のうち実際に深夜業を行った者の月間の回数を調べておりますけれども、全く深夜業を行わなかった、ゼロ回という者が八二%になっておりまして、次いで一カ月に五回から九回行ったという者が六・七%、それから一回かち四回が三・六%になっているというような調査がございます。
  150. 武山百合子

    ○武山委員 私は、今回の女子保護規定撤廃に賛成です。やはり、機会の均等ということでチャンスが男女平等になったわけですから、女子だけ保護するのはよくないと私は思っております。しかし、深夜業に対する実態は労働省もきちっと認識して、長期間は無理であるという、それからはっきりと拒否する自己責任原則、そういうものをやはり周知徹底することが最も大切だと思います。  それから、そうなりますと、話はやはり男女双方労働時間の規制になりますので、機会均等、そして女子保護規定撤廃、それから男女双方労働時間の規制という三点セットが必要であろうと思いますけれども、その点についていかがでしょうか。
  151. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 時間外・休日労働、深夜業等がいろいろ生活面で必要な面があるということについては、これはこれまでもるる申しているわけでございますが、現在、時間外・休日労働あり方につきましては、中央労働基準審議会の方において議論されておるところでございますので、その議論が進むことを期待したいというふうに思っております。
  152. 武山百合子

    ○武山委員 時間が来てしまいました。締めの言葉になりますけれどもイギリスフランスドイツアメリカでは、女性労働大臣が誕生しているわけですね。皆さんも御存じかと思いますけれども、その時代にやはり均等法ができたり、それから性差別禁止法ができたり、それからセクハラに関する規定ができたり、諸外国では女性大臣によって機会均等法制度にかかわっております多くの業績を上げております。日本においても、このような法律制定するならば、ぜひ女性初の労働大臣を誕生させていただきたいと思います。  最後になりましたけれども、これで私の質問を終わりにいたします。ありがとうございました。
  153. 青山丘

    青山委員長 これにて武山百合子君の質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十三分休憩      ――――◇―――――     午後二時二十四分開議
  154. 青山丘

    青山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西田猛君。
  155. 西田猛

    ○西田(猛)委員 新進党の西田猛でございます。  今審議されております、いわゆる男女雇用機会均等法等の法律案につきまして、岡野大臣、その他の御関係の方に御質問をさせていただきたいと思っております。  まず、昭和四十七年に制定されました勤労婦人福祉法という法律がございましたが、これを改題、改正いたしまして、雇用管理に係る事項に関する男女の均等な取り扱いについて、事業主の責務、その取り扱いをめぐる紛争の解決のための措置などを定めたものとしての、いわゆる雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律というものが昭和六十年に制定改正されて、自来十年が経過したわけでございます。  その間、これまでの働く女性の皆様方そして関係の方たちの大変な御努力とそして認識の深まりの積み重ねの上で、今日においては雇用分野における男女差別撤廃は着実に積み重ねられてきている面がある反面、まだまだいまだしという面がぬぐい切れないところもございます。  今回提出されております政府の改正案におきましては一その法律の名称からも「女子労働者の福祉の増進に関する」という文書が消えるなど、これはもう女性労働者の社会進出の増大とその地位の定着をうかがわせる一面があるわけでございます。すなわち、今までのように女性労働者を、言うならば保護していかなければならない、あるいは逆に特別な規定を設けて男性と差別のないようにしていかなければならないというふうな考え方から、性というものにおける区別、差別、そういうものはもう絶対的にだめなんですよということを高らかにうたっていくような法律案であると私どもは考えておりますし、そのようなものに今後、この私たちが今審議しております法律は仕立て上げていかなければならないのではないかなというふうに考えておるわけでございます。  そこでまず冒頭、大臣にお伺いしたいのですが、このように私たちが今取り組んでおります、特に雇用分野でありますけれども男女差別というものが、しかしながらどうしても今まであったという現実があるわけです。男と女の性による差別というものが、特に大臣所管の雇用分野において、なぜ我が国において生じていたのだろうか、それらのところについて、労働行政を所管しておられる大臣の御所見をお伺いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  156. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生、なぜそうなったのだろうかというのは、これはやはりそれぞれの国の長い歴史的な意識というか、意識を芽生えさす環境、土壌というようなものがあって、今日先生がおっしゃる性によるところの差別というものができてきたと思います。  時間が長くなってしまうとしかられるでしょうけれども、例えて言いますならば子供のころ、おじいさんは山へしば刈りに、おばあさんは川へ洗濯にというような、物語の中でもやはり洗濯、う まり家庭におばあちゃんはとどまるのだな、おじいちゃんは外へ出てしば刈りをしたりなんかするのだなと。あるいは古事記だとか日本書紀を考えましても、アマテラスオオミカミという人物が神話として出てきます。スサノオノミコトという男の神様も出てきます。そうして、アマテラスオオミカミは機織りを家でやっていたところが、スサノオノミコトが生きた馬の皮をはいでそれをアマテラスオオミカミにぶん投げた。それでスサノオノミコトは出雲の国に追放されたというような、もう二、三千年前の話からそういった差ができている中で我々の民族というのは今日に至ったというようなことからも、我々が男女雇用の面において均等扱いをしようというのは、私は革命的な大きな仕事で、その仕事を、武山先生いなくなりましたけれども、余の大臣にあらずして岡野裕に仰せつかった、まことに働きがいのあるいいときに労働大臣を仰せつかった、こう思っているわけであります。  答弁になっているのかどうなのかわかりませんが、一応答弁といたします。
  157. 西田猛

    ○西田(猛)委員 まさに岡野大臣が今その職にあられてこの任に当たっておられるということについては、今、大臣もおっしゃったとおり、大変大臣御自身としてもやりがいのあることだとお感じになっておられるでしょうし、私どもといたしましても、ぜひとも岡野大臣に頑張っていただきたいというふうに思っておる次第でございます。  ただ、大臣は、なぜ男女の差というものがあって、男女差別というものがあったのかという点に関して、おじいさんはしば刈りに、おばあさんは洗濯にという話でお答えになられましたので、私は若干違う話を持ち出してみたいなと思っておるのです。  実は、男女差とかあるいは基本的な人権の保障ということにおいて最も先進的と思われているアメリカ合衆国においても、女性が参政権を得たり、あるいは女性がいろいろな社会に進出することが許されるというふうになったのは、実に驚くなかれ、ごく最近のことであるという事実もあるわけでございますね。むしろ、そういう観点からすると、日本の方が制度的な男女差の解消に向けての担保というものは制度としてあったのではないかというふうにすら思われる状況でございます。  例えば、アメリカ合衆国においては、南北戦争の開始時においてすら、各州の――アメリカは御存じのように連邦国家でございますから、連邦法よりも各州の州法がまずは一義的に州民すなわちアメリカ合衆国の国民に適用されるわけですけれども、州の法律は、女性が既婚であっても未婚であっても、投票すること、それから政府の委員会委員となること、政治的な役職につくこと、大学に通うこと、または専門的な職業につくことすら禁止していた。さらに言えば、既婚女性は、裁判において訴えること、あるいは訴えられること、そしてみずからの名前でもって信用の供与を受けること、自分自身の財産を持つこと、不動産を管理すること、契約を締結することすらできなかった。これはもう要するに禁治産者ということだったと思うわけですね。こういうことがあのアメリカ合衆国においてすらつい最近まで行われていた。  ところが、アメリカは、そういう差別に対する戦いのために戦争まで行っているわけですね。これは日本では俗に南北戦争、こう訳されておりますけれども。  実は、私はしばらくの間アメリカで弁護士をしておりまして、アメリカで弁護士をするためには、アメリカの歴史それから文化というものを深くえぐり出さなければいけないわけでございまして、その点、まだまだ勉強足らずでございましたが、勉強したところによると、皆さんも御存じのように、南北戦争というのは、原語はシビル・ウオーというわけですね。要するにこれは市民戦争あるいは革命であったということであります。したがって、ただ現象面的に、北部の州がいわばリベラルで、南部の州が保守的であって、その地域的な戦いがあったから日本では現象面的に南北戦争と呼ばれておりますけれども、要するにこれはもう内乱であったわけです。シビル・ウオーである。その内乱の中で、いろいろな基本的人権、特に性による差別というものの撤廃がかち取られていったという歴史がございます。  そして、この南北戦争、仮に南北戦争と呼びますけれども、これは州の絶対的な権限を制限しようとして戦われて、北軍が勝利することによって、ようやく憲法のいろいろな修正条項がつくられました。それが、いわゆる英語で言うとサーティーンスアメンドメント、修正第十三条であり、フォーティーンスアメンドメント、修正第十四条、そして修正第十五条のいわゆる南北戦争修正条項と呼ばれている三つの修正条項でございます。  特に有名なのはその修正第十四条でございまして、これは、アメリカ合衆国におけるデュープロセスそれから平等、保護に係る規定を置いております。そして、侵すことのできない基本的人権についていろいろと規定をしておるわけでございまして、その中でようやく女性がいろいろな権利を行使することができるというふうになってきたわけでございます。  さらに言うならば、そういう成文化された憲法で規定されているのみならず、御存じのようにアメリカ合衆国はいわゆる判例主義の国でございますから、アメリカ連邦あるいは各州の裁判所がいろいろな不断の努力で、女性の権利そして地位の向上に関する判決を繰り返すことによって今日の姿になった、私たちが現地球上で見ている中で、言うならば最も進んだ形で性による差別がない国になってきたということであります。  したがって、このアメリカの性による差別の歴史そしてそれとの闘いの歴史を若干お話をさせていただきましたのは、我が国でも決して不可能ではないということであります。むしろ我が国においては、明白に、このように一つの性、男性に対してであれ女性に対してであれ、こうしてはいけない、ああいうことはできないのだということを規定している法律あるいは規定は少なかったわけであります。アメリカ法律で書いてあったわけでございますから。  ところが、これは我々新進党が常日ごろ申し述べていることでございますけれども、我が日本における問題点としてより一層根深い問題は、目に見える形で法律に書いてあれば、あるいは目に見える形で制度として差別がそこにあれば、それを明確に改正していくことができるわけですね。ところが、我が国における問題点というのは、法律には書いていない、制度的にはないかもしれない、だけれどもいろいろな形で実質的な差別的取り扱いがある、いろいろな形で実質上の取り扱いの差異があるというところが、我が日本の非常に難しくかつ根本的な問題なのではないかなというふうに私どもは考えております。  したがって、道は決して平たんではございません。しかるがゆえに、天は我らに岡野大臣を与えたのかもしれませんけれども、非常にこの道のりは長い。したがって、私たちは、思うに、法律的な手当てをしていくとともに、国民の一人一人の意識の変革をしていかなければならないのではないかなというふうに考えております。  そのような観点から、大臣にひとつお伺いしたいのですが、今回の法改正において、いわゆる労働基準法上の女子の保護規定廃止するということになっておりますけれども、それでは、女子の保護規定をこれで削除していこうということは、我が国における特に雇用の面の男女の差というものに関して、労働雇用状況女子保護規定がなくてもいいという状況にまで達したのだという御認識なのかどうかについてお伺いしたいと思います。
  158. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生がおっしゃいますように、一片の法律で、先ほどお話をした、二千年だか三千年だか知りませんけれども、そういった土壌、風土が変わるものではないわけで、法律の執行に当たる行政府の者は、当然のことながら、やはり 世の機能をするそういった各機関を総動員をし、一人一人の国民の皆様にそれぞれの応分の働きを願って、全体が男女共同参画型社会をつくろう、雇用面においてはこの均等法が完全に実施されるようにしようということだと思っております。  ここ十年、先生がおっしゃった現行法ができますときと今と比べると、多少数字を持ってまいりましたが、職場に行かれる女子の皆さん、これは当時千六百万人でありましたものが今二千百万ということで、約五百万程度の女子労働者の皆さんがふえている。それから、家庭の主婦の皆さんも四十歳から五十五歳までの皆さんの場合、これはパートを含めてでありますけれども、仕事を持っておられる皆さんが五〇%を超えている、五二%だというような数字が私のところに入っております。  それからまた、十年前全体として労働者の中で女性労働者の数は三六%でありましたものがもう四〇%になってきたというようなことで、現行雇用均等法といいますものも、それだけ大きな力を発揮をしてきたというか、言いますならば皆様の支援等々を得てここまで実績が出てきた。  したがって、この際、竿頭一歩を進めて、今御提案を申し上げているような法律案をつくり、御審議におかけ申しているというようなことだ、こう思いますが、やはり雇用均等だということでありますならば、女性女性であるがゆえに差別を受けるということを排除しようということであるとしますと、やはり、今先生お話しの労基法の超過勤務でありますとか、あるいは休日労働でありますとか深夜労働の軽減あるいは禁止でありますか、これもひとつ払拭をして解除をしたらいかがなものであろうか。  何せ、例えば休日労働等々につきましても、女工哀史といいますような戦前の非常に悲惨なああいう経験にかんがみて、我々は戦後、新しい日本をつくろうじゃないかというようなことでこの法律ができました。できましたが、五十年に相なりました。女性の皆さんの意識も、日本国民全体が女性の方を見られるその意識といいますものも、大きく変わってまいりました。  それぞれの企業なりあるいは工場、作業場の現場なりといいますものも、五十年前と今日とでは、大きな発展といいますか、文化の問題がありますので発展の基準はどこかという問題があると思いますけれども、文明的な意味からすると大きく進歩をしたのではないかというような意味合いで、ほかに育児休業法、介護休業法等々もありますし、時短というようなものもこの間、御可決をいただいたというような客観情勢も有利に作用してきて、家庭生活と職場生活が両立をしていけるような環境になってまいったというような、あれやこれやの要素を考えまして、この機会均等法をつくろう、その中で超過勤務労働等の規制も緩和をするということに踏み切った、こんな次第であります。
  159. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今、大臣の方からお話をいただいたことの中で、確かにいろいろな機が熟してきたので、環境が整ってきたので、この労働基準法上の、今は「女子」となっておりますけれども、その保護規定を削除する程度になってきたのだろう、あるいはそうしていくのだというお話でございました。私は、その方向も一つの方向だと思います。  と申しますのは、例えば各省庁のいろいろな仕事のやり口を見ておりましても、伝統的な規制行政を行っている官庁、具体的な例を挙げて恐縮でございますけれども、例えば運輸省でございますとか、それからかつての郵政省、通産省、岡野大臣は郵政省の御出身ですけれども、そういうところは経済的なあるいは社会的な規制を非常にかけている。そして、社会の現実、世の中の現実がもうこういう事態にまで行ったぞということをようやく認識、認知した上で、そうしたらこの現実に合うように制度を変えていかなければいけないなという変え方をしていくのが、普通のいわば行政官庁のやり方であると思われるわけですね。  端的な例が、今、衆議院の行政改革特別委員会の方にもかかっておりますけれども、明治以来百年の長きにわたって指一本触れることのできなかった大蔵省にようやくこの百二十年の間で初めてメスが入って、そして、金融機関に対する検査監督という分野はもう独立してやらせた方がいいではないか、財政をつかさどっている役所が同じところで金融を見ていたから住専問題を初めとする不良債権問題を生ぜしめたのであって、したがって、じゃ、変えよう。これはまさに、現実がもうこんなに動いて、しかも金融市場、そして証券市場が国際化して自由化しているのに、いまだにいわゆる護送船団方式と呼ばれる行政をもってこの金融機関を規制しているのはもう遅いぞ、じゃ、変えていこうということでようやく動き出したわけでございますね。  ところが、私は、一見地味そうに見えますけれども労働省という役所は時代のフロントランナーであるべきだと思うのです。前衛を走るべきですよ。  それは、労働雇用という非常に人間の実生活、社会生活に密接にかかわった人間の生身の姿そのものでありますから、むしろ世の中をリードする意味で、もうこれからの時代は、特に雇用の面では、労働の面では、男性だからどう、女性だからどう、そういう時代ではありません。性という差はありません。あるのは本人の努力とそして情報をとるその能力の違いだけであって、本人の努力とそして情報量の差によって、男性であろうと女性であろうと関係ないわけです。  労働者は皆、みずからの幸福を追求することができるという時代ができていくべきだと思うのです。そしてまた、そうならなければ、二十一世紀に、本当の大競争時代に、活力のある、そしてまた各個人の家庭においては豊かで楽しい生活を営む日本にはなり得ないのではないかなと私は思っております。  したがって、そういう意味では、今回の法改正はいろいろな意見がございます。まだ時期尚早じゃないかな、もちろんそういう危惧もございます。あるいは逆に、ばりばりとやる女性の方から、あるいは女性の方にばりばりと働いていただきたいと思っておられる企業の方からしたら、労基法上の規制があったから、もう八時になったら帰ってくださいと言わざるを得ない、あるいは仕事をするのであれば、それは超過勤務としてつけることができないから、いわゆるサービス残業になってしまったという状況があった。したがって、こういう規制が緩和されれば、思い切り働いていただけますねという声も他方あったと思います。  いろいろな考え方があって、この問題については、私どもも、いろいろなグループの方から、いろいろな立場の方からさまざまな御意見をちょうだいしておったところでございます。  しかし、私ども新進党は、あるいは私、西田猛も一議員といたしまして思うには、やはりこれからの時代を先取りしていくためには、雇用分野における性の差はもうないということを高らかに宣言して、そしてそれを実施、担保していかなければならないのではないかなというふうに考えております。  したがって、具体的なことをお聞きいたしますけれども、むしろ私は、今回の法改正において、若干、法文上の疑義を生ずる部分があるわけでございます。  これはまた国会改革の中で我々新進党が提唱しようと思っていることでもありますけれども法律案が出たときに、こういう委員会あるいは本会議審議されますが、理論あるいは理念を大臣それから担当者の方と議論することももちろん必要でございます。しかしながら、実際に提出されている法律案の逐条的な審議も国会においてなされていくべきではないかなというふうに私ども考えております。そうすることによって本当に国会の立法府としての職務が全うしていけるのだというふうに考えておりますので、国会の機能強化、国権の最高機関としての立法を充実させていく意味でも、私たちは、政治理念あるいは法律の基本理 念を議論するとともに、具体の条文についてもできるだけ議論を深めていきたいというふうに考えておる次第でございます。  その観点から一つお伺いいたしたいのは、改正されました後の、第二条になりますけれども、そこでは、「基本的理念」としてこのようになることになっております。「この法律においては、女性労働者性別により差別されることなく、かつ、母性を尊重されつつ充実した職業生活を営むことができるようにすることをその基本的理念とする。」これはこれで結構でございます。  ところが、改正後の第一条の「目的」のところでは、「この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのっとり雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保を図るとともに、」と、「ともに、」ということなんですね。「ともに、女性労働者就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする。」ということを言っておられます。したがって、表題からも、先ほども申しましたけれども、「女性労働者の福祉の増進に関する」という部分は削除されておるわけでございます。  であれば、これから雇用分野における男女差は絶対なしたということを高らかにうたう法律に仕立てていくためには、「基本的理念」のところでも、第二条で、「女性労働者性別により差別されることなく、」という表現は改めて、むしろ「この法律においては、労働者が」と。性の差、性差はなしです。「労働者性別により差別されることなく、」ただ、母性に対する尊重は必要でございますから、「かつ、母性を尊重されつつ充実した職業生活を営むことができる」、ここは今までのとおりというふうにしたらいいのではないかというふうに私は考えるわけです。  また同じく、その改正後の「基本的理念」の第二条第二項で、今予定されておりますところは、「事業主並びに国及び地方公共団体は、前項に規定する基本的理念に従って、女性労働者職業生活充実が図られるように努めなければならない。」こう書いておるわけですけれども、そうしたら男性労働者充実を図らなくていいのですかというふうなことにもなりかねませんので、これもまた「女性」は取って、「労働者職業生活充実」を押しなべて推進していくのだということをこの法律は高らかにうたっていくという形にしていくのがいいのではないか、私はそう思うわけでございます。  第三章で、いわゆるセクシュアルハラスメントに関する「女性労働者就業に関して配慮すべき措置」、これは女性というものに対しての特別の措置を講ずるものとして、このままでいいのではあるけれども法律全体の「基本的理念」及び「目的」としては、そういうふうに性差はなしということをうたった方がいいのではないかなというふうに思うのですけれども、これについて、御所見いかがでございましょうか。
  160. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 前にも大臣が、究極的には性差別禁止法を描いているというお答えをされたかと思いますが、現状の我が国の実態にかんがみますと、やはり問題となっているのは女性労働者に対する差別でございますので、今回の改正法案におきましては、やはり女性に対する差別禁止するという規定としたものでございます。  第二条におきましても、この法律女性労働者に着目したものであることにかんがみまして、その基本理念として女性労働者充実した職業生活を営むことができるようにすることを掲げたものでございまして、先生のおっしゃることはよくわかるのでありますが、現状を踏まえて今回のような形にさせていただいたというものでございます。
  161. 西田猛

    ○西田(猛)委員 私の質問の方が長くて、お答えは法文を読まれただけであって、大変私も残念だなというふうに思うわけですが、現状を踏まえてこういう形にさせていただいたということです。  ただ、大臣は先ほど、もう労基法上の女子保護規定はなくてもいいという段階にまで来ている、あるいはなくしていくということをおっしゃって、だからなくすのだということになっているのですけれども。ですから、私どもとしては、究極的には、先ほど局長も言われましたが、男女雇用における差別撤廃というふうな形の法律をつくっていかなければならないのではないかなというふうに強く思います。大臣、どうぞ御所見を。
  162. 岡野裕

    岡野国務大臣 大臣秘書官とちょっと打ち合わせをやっておりましたので、婦人局長が何と答えましたか聞いておらなくて大変失礼をいたしました。先生の御意図は、女性が男性との間で差別されて、いずれかと申せば不利な地位にある、したがって女性差別されないようにしようというこの本法改正案であるが、これではだめだ、男性についてもまた女性との間で差別的な扱いを受けないように、男女両性とも差別禁止する性差別禁止法といったような内容のものにしたらいかがであるかという御質問でありましょうか。
  163. 西田猛

    ○西田(猛)委員 そうです。
  164. 岡野裕

    岡野国務大臣 そうすると、婦人局長政府委員が現状からと簡単に申したというおしかりのようでありますが、先ほどお話をいたしました、男女雇用現行法十一年、この経験がございました。その過程の中では、先ほど来問題になっております婦人少年室等々でもろもろの苦情あるいは調停の申請、いや一方的ではだめだから両方でなければだめよというようなことを経験をしてきた中で、やはり女性の皆さんが婦人少年室へ来て、差別を我々は受けたというような話の方が圧倒的に多い。それからまた、この法律案をつくりますのには、婦人少年問題審議会等々の諸先生の御意見をいろいろいただいたその上の建議にのっとっているわけでありますけれども、そういった各先生方審議会におきますところの議論、これまた女性の皆さんが非常に男性と比べて差別を受けたというような声が多うございました。  したがいまして、先生、言いますならば究極的には両性とも全く差別を受けないようにということだと私は思いますが、現時点においてやはり、法律をつくるだけではだめよとさっき申しました。それが社会の皆さんに受け入れられて、みんなが、そうだ、その方向で頑張ろう、こういうふうにならなければ法律意味がありません。だから十年前も、さっきお話をしましたようなことで、禁止規定ではなくて努力義務だということで、現実に一遍に禁止規定にして直ちに企業名公表というようなのではだめだろう。やはり水をかけ、あるいは肥料をやり、早く大きくなれ、大きくなれと。一遍に引っ張ったら抜けてしまうわけでありますので。  そういうような意味合いで、現時点においてはまずこれをやってみる。そしてこれの運用が、何年かかって先生がよしとおっしゃるかわかりませんけれども、その実態を見て、この次は、今度は男性について女性との間の差別についても云々するというようなふうになりますかどうですか。これはひとつ、私どももまず女性差別というものを徹底的に直していこうというつもりでこの法律案はつくった、そんな次第であります。
  165. 西田猛

    ○西田(猛)委員 お答えいただきまして、ありがとうございます。  おっしゃった意味はよくわかります。ただ、こういう形で法律改正をして、新しい法律をつくって、しかし法律をつくっただけでは当然だめでございますから、仏をつくって魂を入れるためにいろいろな措置をとっていかなければならない。  それでは、具体的にどういう措置をとっていこうとしておられるか。今までるるお話はあったと思います。ただ、この改正後の法律にのっとって具体的に労働省ないしいろいろな機関でやっていく措置、プラス、先ほど大臣も言われましたし、私も冒頭申し上げました、意識を変えていくような、そういうキャンペーンといいますか、そういうパブリックリレーションズが私は必要になってくるのだというふうに思っています。  それらの両方の措置についてお伺いしたいのですが、その前に、私どもどうしてこのようなお話をしておるかと申しますと、朝方も大石委員の方から話がありました。むしろ私どもの年代という のは、男女だからどうだという意識というのはもうほとんどないわけですね。男だからどう、女だかちどうという意識というのはもうほとんどないわけでございます。むしろ男性であることによってつらい目に遭ったなということの方が多かったり、男性というのは弱いものだなと思っていることの方が多いわけでございますね。そういう小学校の体験とかいろいろありました。  しかしながら、現実に目を転じてみますと、特に働くという観点の切り口からいけば、どう見ても、国会議員だって男の方が圧倒的に多い、お役所だって労働省を除き男性の方が圧倒的に多いというのは、それじゃなぜなんだろうということなんですね。  だから、私たちの世代の意識というものは非常に育ってきているのだと思うのですけれども、それに対して現実的な制度の担保がどうなされていくのか。  そういう意味では、後でまたお話を伺うと思いますし、今までいろいろと議論も出てきているのだと思いますが、いわゆるポジティブアクションとおっしゃいました。アメリカでは、逆に言えばアファーマティブアクションというのがあって、逆にマイノリティーの方に対してはある一定比率を、例えばアメリカの州立大学、定員が一万人だったら、そのうち一千人は必ずマイノリティーに与えなければいけないとかいうような措置もございました。そういうことまでどんどんしていかなければならないということも反面あるかと思います。  そういうことを踏まえて、片や、労基法上の女性保護規定撤廃する。このことについて大変いろいろ不安をお感じになっておられるグループの方、女性の方がいらっしゃいます。これも現実であります。他方、この男女雇用機会均等法がさらに充実されて、男女の性差による雇用上の差別はなしたということを進めていこうとしておられる。この二つの難しい問題を同時に遂行していかなければならないということの行政的な措置、プラス国民の意識を高めていくような措置の両面についてお伺いしたいと思います。
  166. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 まず今回の法改正に関連した個々の具体的施策についての御質問であろうかと思うわけでご奪いますが、まずは均等確保対策でございますが、これまでも男女の均等な取り扱いに関しまして、女性労働者事業主の間の紛争に関しましては、婦人少年室でいろいろと助言、指導勧告というようなことをやってきたわけでございます。  十四条というのがございまして、これは実際に個別紛争の問題でございますが、この問題につきましては、現行均等法ができたころはやはり男女別定年制が非常に多うございまして、それに対していろいろ改善を企業にお願いをしてきたわけでございますが、最近はやはり経済情勢が非常に厳しいこともございまして、解雇とか退職の強要といったような事案とか、募集採用、それから配置昇進の問題がふえているというような実態がございます。  それから、婦人少年室の方で積極的に出ていく行政指導として、第三十三条が現行均等法規定をされておるわけでございますが、これも最初はいろいろ婦人少年室への御相談とか関係者等からの情報を端緒として行ってきておりましたが、最近はやはり婦人少年室が積極的に企業に出向きまして、企業における雇用管理等々を聴取いたしまして、その中で問題のあるものについて助言、指導勧告を行っているというような状況でございます。この三十三条につきましては、年間三千件を超えるような形での指導を行わせていただいているところでございます。  それから、ポジティブアクションがございますが、ポジティブアクションは、これは企業において現在事実上生じております格差に着目いたしまして、女性能力の発揮について積極的かつ自主的に企業で取り組んでいただこうというものでございますが、労働省におきましては、昨年度、研究会を設けまして、その検討結果を女性労働者能力発揮促進のための企業の自主的取組に関するガイドラインという形でまとめさせていただいたところでございます。  私どもといたしましては、ポジティブアクション重要性とか手法についての事業主理解も深めまして、企業においての取り組みを促して、このガイドラインを活用することを考えているわけでございます。  具体的には、やはり経営者団体とかと一緒に連携を図りまして周知をするということとか、トップセミナー等々をやりまして企業におけるポジティブアクションの具体的な取り組みを援助していきたいというふうに考えておるわけでございます。  それからまた、セクシュアルハラスメントの防止対策につきましても、今後指針で定めるものでございますけれども、いろいろとやっていきたいというふうに考えております。  それから、先生おっしゃいました意識改革のキャンペーンの問題でございますが、これは主として、日本の女性が参政権を得ました四月十日を記念いたしました四月十日から一週間の婦人週間というので、もう約半世紀に近い間、意識改革のキャンペーンをやってきておるわけでございます。最近もポスターをつくったりセミナーを開いたりというようなことを本省もやり、各婦人少年室もやり、また都道府県にもお願いをしてやっているというような形で、意識改革のキャンペーンについてはこれまた一生懸命やらせていただいているところでございますが、これにつきましても今後ともまた力を入れて、やり方はどうするかは別といたしましても、この意識の問題につきましては一生懸命やらせていただきたいというふうに思っているところでございます。
  167. 西田猛

    ○西田(猛)委員 意識の点につきましてはまた後ほど。  ちょっとセクシュアルハラスメントに関してお伺いしたいと思いますが、具体に条文に即して一点お伺いしておきたいと思います。  改正後の法律の二十八条で「適用除外」が定められておりますこの「適用除外」、まあ法文を持っておられない方は余りおわかりにならないと思いますけれども、国家公務員と地方公務員、こういうものがこの法律の対象外に基本的になるというふうに定められておるわけです。適用除外というのは、公務員であってもこれは労働者でございますから、それでは公務員の中ではセクシュアルハラスメントがあってもいいのかというと、そんなことは全然ないわけでございます。男女差があっていいのか、とんでもない話でありますので、その辺の詳しい規定、あるいはどのように現実的な性差の撤廃を担保していけるのかについてお伺いしたいと思います。
  168. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  改正後の均等法の第二章に定める雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保に関する規定につきましては、国家公務員及び地方公務員へはこれは適用が除外をされているわけでございますが、これは公務員に関しましては、国家公務員法第二十七条及び地方公務員法第十三条によります平等取り扱いの原則によって、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保する法的仕組みは確立しているためでございます。  それからまた、第三章のセクシュアルハラスメント及び母性健康管理に関する規定につきましては、これは一般職非現業の国家公務員、それから裁判所の職員、国会職員及び防衛庁職員へはこれは適用を除外しております。  その理由といたしまして、これらの者につきましては、職員の勤務条件に関する事項につきまして法令で定めることとされておりまして、それぞれの法体系を有しておるわけでございますので、このセクシュアルハラスメント及び母性健康管理につきましては、その法体系の中で均等法の趣旨に沿った措置が既に講じられ、または講じられることが予定されているために除外になっているものでございます。
  169. 西田猛

    ○西田(猛)委員 大変申しわけないのですが、 ちょっとその点でお聞きしたいのは、第三章のいわゆる女性労働者就業に関して配慮すべき措置について、一般職の非現業公務員、裁判所職員、国会職員、それからいわゆる自衛隊の隊員ですけれども、これはこの法律施行に合わせてちゃんと措置をされることになるのですね。
  170. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 具体的には、一般職非現業の国家公務員につきましては、人事院において、既に母性健康管理に関する規定が定められています人事院規則につきましては見直しを図るというふうに聞いておりますし、セクシュアルハラスメントに関しましては新たに整備を図るというふうに聞いておるところでございます。  また、裁判所の職員等につきましては、人事院の動向を踏まえて対応を予定しているというふうに聞いております。
  171. 西田猛

    ○西田(猛)委員 防衛庁職員は……。
  172. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 防衛庁も同じでございます。
  173. 西田猛

    ○西田(猛)委員 それでは、大丈夫だということを言明していただいていますので、政府の方として一元的に対応をとっていただかなければならないと思います。  それと、この問題についての最後の点ですけれども、先ほどおっしゃった差別的取り扱い禁止は、国家公務員については国公法の第二十七条、地方公務員については地方公務員法の第十三条でということなんですけれども、そうすると、国家公務員法、地方公務員法が適用にならない特別職は、それぞれどういうふうに認識をしておられますか。
  174. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 特別職の国家公務員及び地方公務員におきましては、法のもとの平等を定めております憲法第十四条の適用によりまして平等取り扱い確保がされているものと承知をしております。
  175. 西田猛

    ○西田(猛)委員 確かに、究極的にはそうなんですよね。だから、つまるところ最終的には憲法第十四条の法のもとの平等というもので全部できるということなんです。であれば、本当を言うと、私たちが今審議しているこの法律も、それでは要らないじゃないかという議論になってくるのですね。  したがって、私は何を言いたいかというと、こういう法律が要らないということを全く言っているのではなくして、特別職国家公務員、特別職地方公務員の方たちについても、しかもその数は決して少なくないわけでございます。ここでつまびらかにすることはできませんけれども、特別職と名のつくのは、何も特別な職じゃないのですね。むしろ非常につらい立場に置かれ得る可能性のある職種の方がいらっしゃるわけでありますから、それらの方たちに光を、スポットを当てた法律措置もやはり考えられていくべきではないかな。これはむしろ労働省の所管ではなくして、総務庁あるいは人事院がやることなんだとは思いますけれども、この委員会の場で、私ども考え方として、政府の方に強くそのことを認識しておいていただきたいということを付言しておきたいと思います。  それから次に、同じく、いろいろな労働者の方がいらっしゃるわけですけれども、特に現実的な差別を受け得る可能性が多いいわゆるパート職員の方たちについてお伺いをしたいと思っております。  特にパート労働に従事しておられる方は大半が、女性の方が多いという現実もございますけれども、そのパート労働において、今回の改正法案そのものは、労働者募集も、採用も、それから配置昇進のすべてについて男女差別禁止しておるということで高く評価をしたいと思うのでありますけれども、今申し上げましたパート労働については、そういうものが実際的に担保し得るのかどうか、なかなか難しい面もあると思います。したがいまして、このパート労働者の地位の向上対策をどのように考えておられるのか。これは代表質問の中でも我が党の労働雇用大臣である塩田晋議員が聞いたかと思いますけれども労働大臣、もう一度この点についてお答えいただければと思います。
  176. 岡野裕

    岡野国務大臣 パートタイムにつきましては、平成五年十二月に、おかげさまでパート労働者の皆さん、これは男女問いませんけれども労働条件を明示する、そして労働条件を安定させるということと、パート労働者の皆さんの雇用管理というようなものについて十分を期するというようなことを骨子といたしまして、法律制定いたしました。そして、これは三年たったらそれ以後見直す必要があるかどうか検討をし、必要あるとするならば見直そうではないか、こういうようなことに相なっておりまして、ちょうど昨年の十二月に満三年が来たわけであります。  したがいまして、今、それの執行状況というようなものを調査をし、かつ吟味をしているということで、まだ結論が出ておりませんけれども、その結論に基づいて、必要のいかんによって対処すべきことがあれば対処をいたそう、こう思っておるところであります。
  177. 西田猛

    ○西田(猛)委員 恐らく対処する必要のあることがたくさんあると思いますので、ぜひそのように措置をとっていっていただきたいというふうに考えております。  また、実はパート雇用と密接に関係する問題でございます。要するに所得の問題でありますが、パート労働をいたしましてある一定の所得が上がれば、その所得を受けた人間が例えば女性であった場合、男性の配偶者の被扶養者になっているにもかかわらず、ある一定の所得があれば被扶養者としての適格を失ってしまって、配偶者、多くの場合男性ですけれども、それの所得の控除がなくなったりとか、いろいろなことがあるわけでございます。  したがって、端的にお聞きしますけれども、パート雇用に関する所得の最低限度というのは、被扶養者としての適格を得るための最低限度額が今当てはめられていると思いますけれども、それを引き上げて、パート労働をより促進するということを考えられるお考えはあるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  178. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 パートタイム労働者の中には、先生おっしゃいました、今、年収百三万円を超えますとみずから就業調整をするという方がおられるということは承知しておるわけでございます。それに対する税制の問題でございますが、いわゆるパート減税につきましては、非課税限度額を拡大いたしましてもパートさんの就業調整の根本的な解決にはならないのではないかということ。それから、就業調整は、税制の問題とともに、夫の会社から夫が配偶者手当を受けられなくなるというような賃金体系のような問題で百三万円くらいでやめてしまうという方も多いと思われるわけでございます。  また、非課税限度額の拡大というのはパートタイム労働者のみに実施することは不可能でございまして、給与所得者全体の非課税限度額の拡大につながりますので膨大な財源が必要になるというようなこと。それから、さらには、パートタイム労働者就業環境整備いたしまして、その能力を十分に発揮していただくことを目的といたします、いわゆるパート労働者も一人前の労働者であるというパートタイム労働法の考え方にそぐわないのではないかというようなことから、私どもといたしましては、パート減税というものについては要望を行うというようなことは考えていないわけでございます。  また、昨年の十二月にできました男女共同参画二〇〇〇年プランにおきましても、税制などについては女性就業を初めとする個人のライフスタイルの選択に対する中立性等の観点から総合的に検討するというような指摘もなされておるところでございます。
  179. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今、婦人局長が言われましたことですけれども、近年、いわゆるパート所得の課税限度額を引き上げた例は、いつ、どの程度の引き上げ額であったか、大蔵省の方からお答えいただきたいと思います。
  180. 伏見泰治

    ○伏見説明員 事実関係でございますので、私の方から御説明させていただきます。  現行、御案内のように、いわゆるパートの方が課税をされる限度でございますけれども、年間百三万円ということになっているわけでございます。これは基礎控除三十八万円に給与所得控除六十五万円、これをいわば足したもの、これを超える収入がありますと、いわば独立した納税者という形で相応の負担をしていただくということになるわけでございます。  最近でございますが、平成六年十一月に抜本的な税制改革が行われました。これは、今申し上げました点というよりは、全体としての税体系についての議論を踏まえまして、所得税につきましては中堅所得者層を中心とした税負担の累増感を緩和するということから、所得税の税率構造の緩和、あるいは人的控除の引き上げ等を行わせていただいたわけでございます。その一環としまして、各種控除が引き上げられているわけでございます。基礎控除あるいは配偶者控除、配偶者特別控除、三十五万円から例えば三十八万円に引き上げられておりますが、結果としましてそのときに、今申し上げました、いわゆるパート収入の非課税限度額でございますが、それが引き上げられたということでございます。平成七年分の所得税から適用されたということでございます。
  181. 西田猛

    ○西田(猛)委員 ただいま大蔵省の税制第一課長からお話がありましたように、税体系の中での一つのアイテムとしてのパート減税の引き上げたったということでありまして、少なくとも、パート労働者の方たちのさらなる労働福祉の向上あるいはパート労働拡大のための措置という観点があったのかなかったのかというところであるわけでございます。  それについては、先ほども婦人局長がおっしゃったように、限度額を引き上げたからといって、さてどうなるのだろうかということは確かにありますので、今後注意深く、いろいろな検討を加えていただきたいと思うのです。  と申しますのは、やはり女性が一番進出しやすい雇用の揚といえばパートというのがまずあるわけでございますから、そこをやはりしっかりと一つの労働市場として組み込んでいくためにも、私たちがぜひこれは考慮をしていかなければいけない部分だと思いますので、どうがひとつお願いをいたしたいと思います。  それから、私の質問の最後に、これは先ほども我が党の武山委員がいろいろとお聞きをいたしましたけれども、セクシュアルハラスメントの問題についてお伺いをしておきたいというふうに思っております。  これは先ほども武山委員が言いましたように、一体何がセクシュアルハラスメントで、何がそうではないのかというのは、決して難しい話ではありません。決して難しい話ではなくて、英語風に言えばエニシングイリテイツですね。とにかく相手が嫌がることはもうだめだ、そういう観点でございます。だから、こちらがこんなことぐらいはと思っても、受け手の方が嫌だなと思ったらそれはもうだめということを、やはり今後とも意識をしていかなければならないのだというふうに思います。  この話になりますと、いや我が日本はその点については寛大過ぎるなとか、この点については日本はまだ意識があれだなという話になりますけれども、そういうことを言っていますと、皆さんよく御存じのように、アメリカ合衆国あるいは欧州に進出した日本系の企業が大変な争訟に巻き込まれてしまうということになってしまいます。これはペルーの問題ではございませんけれども我が国及び我が国民、我が企業の総合的な安全保障という観点からも、ぜひとも国民お一人お一人、それから企業の各人が認識をしておかなければいけない問題だというふうに思います。  何度も申しますが、私など、アメリカの社会と日本の社会とを行ったり来たりしておりますと、どうもその差の激しさに気づきますし、そしてアメリカ社会におけるハラスメント、嫌がらせというか、不快感を感ずるということについての人々の敏感な感じに私どもは感心をするわけでございます。  この点につきまして、ひとつ岡野労働大臣に、今国民の皆さんのこのセクシュアルハラスメントという意識についてどういうふうに考えているのかなという、個人的な見解でも結構でございますし、そしてまた、この大きな問題でありますセクシュアルハラスメントの問題を、特に今回は改正法でわざわざ一章を設けてその抜本的な対策を講ずることとしておるわけでございますから、御所見をお伺いしておきたいと思います。
  182. 岡野裕

    岡野国務大臣 世に、いわゆるセクシュアルハラスメントといいますのは、社会的行為の中でいっぱいあり得るわけですが、私どもは、雇用関係、職場の中におけるセクシュアルハラスメント、これに限定をいたしまして、これも差別の一つでありますので、それがないような職場づくりをしよう。今先生並びに武山先生かちもお話が出ましたが、要するに取り締まるという場合には、取り締まるべきであり、取り締まり得るものでなければ法律等にゆだねるわけにはまいりません。やはり客観的にこの行為はいけない行為である。ところが、受ける人によってこれは感じが悪いからセクシュアルハラスメントだ、この程度ならばまだセクシュアルハラスメントじゃない、限界がはっきりしないような行為を取り締まるということは、もう法理論上無理であります。  先生おっしゃいました豪州とアメリカといいますものと、ヨーロッパのドイツあたり、フランスあたりとは違います。イタリア、スペインに参りますと、ドイツあたりともまた違ってまいります。イタリアは御存じのとおりの国情だとよく言われているわけでありますが、そういう千変万化のものを私どもは取り締まる、そういうことがないようにするというふうにはまいりませんので、私は、一般的に言うところのセクシュアルハラスメントというようなものが、婦人少年室にも苦情ということでいっぱい来るということにかんがみまして、職場においてセクシュアルハラスメントというものを規制しよう。そういうものがなくて女性の皆さんが明るく働けるような、そういう職場にしよう。  じからば、どういうものがセクシュアルハラスメントなのであるかということで、本法を成立いただきましたならば、可及的速やかに研究機関をつくりまして、そこで専門家の皆さんにお越しをいただいて、我が国におきますところの現時点におけるセクシュアルハラスメントというものは、こうこうこうこう、おおむねこういうものだというようなことを国民の皆様にお示しをし、それをいろいろなゼミナールやら何やらやりまして、職場におけるセクシュアルハラスメントの排除に努めて、さっきお話をした楽しく働けるような、そういう環境づくりをいたしたい、こう思っている、そんな次第であります。  非常に難しい問題でありますが、国際的視野から見て、やはり日本もセクシュアルハラスメントというものがいけない行為だということを今般この法律によって示そうというつもりであります。
  183. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今、大臣がおっしゃったように、確かに今回の法改正では、雇用の場における就業に関しての配慮すべき事項でございますけれども、全体的に意識としてこれをなくしていくというふうに進んでいただきたいと思います。  最後になりましたけれども、私は、本当にあらゆる点において男女の差というものがなくなる世の中になればいいなと思っております。私などは、どちらかと言えば、私の配偶者である妻に働いていただいて、私は家にいて家事をした方が楽しいなというふうに思っておるぐらいでございますけれども、ただ一点、女房が政治家になりたいと言ったら、私は反対をしたいなというふうにだけ思っております。  これで私の質問を終わりたいと思います。
  184. 青山丘

    青山委員長 これにて西田猛君の質疑は終了いたしました。  次に、中桐伸五君。     〔委員長退席、河上委員長代理着席〕
  185. 中桐伸五

    ○中桐委員 民主党の中桐伸五でございます。  私は、この機会均等法改正内容の中で、特に女子保護規定撤廃の問題と、それからポジティブアクションの問題について質疑を行いたいというふうに思います。  その前に、冒頭で、今回の法改正につきまして、前回から議論が行われております内容の中に、男女共同参画社会の問題、つまり男女共通に社会の構造改革を行うという問題と、それから女性の地位の男女間の平等でない実態に対してどのようにアクションを起こしていくかという、二つの観点があるだろうというふうに思うわけです。  これまでの議論の中では、性差別禁止法というふうな形でやるべきではないかという議論が一つございますが、この場合には、つまり男女ともに差別の問題を取り扱うという切り口でありますね。ところが、性差別の問題という形で何人かの質問者が質問したところ、いや、まだ今日の段階では女性の地位がそういう男女共通の問題として取り上げるという段階ではなく、特に女性の職場におけるさまざまな男性との間における差別の問題というのを女性のサイドから、女性の権利というか、女性の側から取り上げるということが必要であるというふうに政府側はお答えになってきたのではないかと思います。  ところが一方で、女性労働者の保護については、この法律の体系の中で申しますと、ここの部分だけ、従来の女性の置かれていた男性との関係で、女性の保護という形で規定されている内容について、これは男女共通であるという形で撤廃という形になっている、ここが大変この法律の矛盾しているというか、わかりにくいところだというふうに思います。  つまり、今男性を中心とする職場におきましては、労働時間はまだまだ、四十時間労働制も四月一日から実施されておりますが、罰則適用を猶予するというふうな措置をとらなければいけない状況にある。その中で、時間外労働という問題が大きな問題になっており、労働省も告示を出して、目安時間という規定を出して指導しているという現状であり、しかも、それは三百六十時間という、年間時間外労働の目安の時間を設定しているという現状である。この点、この法律をお出しになりました政府の、先ほどのこの矛盾点をどのようにお考えになるのか、まずお聞きしたい。
  186. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生、想像が入りまして申しわけありません。矛盾点というお言葉でありますが、男女雇用均等で女性女性であるがゆえに差別を受けないような職場づくりをしようということと、それから、労基法上のと言われますと、女性の深夜労働、超勤等の禁止ないしは軽減措置の解放とが矛盾しているという意味でありますか。
  187. 中桐伸五

    ○中桐委員 つまり、男女共通に性差別の問題を取り上げるという形の問題についてはまだ時期が尚早である、早過ぎるという政府の回答であったと思うのですね、この間の質疑に対して。ところが、女性の保護については撤廃する。つまり、女性の地位が現在のさまざまな職場の中においては十分な平等の地位にない、そういう中で、男女共通の規制という形でのアプローチよりも、とりあえず女性の地位の改善を図る、そういうお答えがずっとあったと思うのですね。  ところが、女子保護というのは、言うなれば、前川レポート以来、千八百時間を目指して今労働時間の短縮を図っているわけでありますから、その流れの中でいいますと、千八百時間を達成すれば女性の時間外は今女子保護で規定されている時間外労働百五十時間という範囲におさまるわけです。それを待たないでこの時間外の規制撤廃されるということについてどうなのか。
  188. 岡野裕

    岡野国務大臣 要するに、女性が男性と均等に職場生活が営めるようにしよう、これが本法の趣旨であります。女性については、深夜勤はやってはならない、休日労働もやってはならないということで、女性能力を十分的に発揮することができない羽目に置かれている。したがって、職場で男性と平等に扱われるようになるためには、女性にも、やってはいけないのではなくて、やれるようにしようというような意味合いで均等化を図っておりますので、私どもとしましては、先生のおっしゃるような矛盾というものは感じておりません。
  189. 中桐伸五

    ○中桐委員 それでは、具体的に議論に入りますが、今一番優先的にやらなければいけないのは、時間外労働撤廃をすることなのか、あるいは労働時間短縮を進めることなのか、どっちなんですか。
  190. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 大事なことは、時間外労働撤廃することか、あるいは全体の労働時間短縮かという点のお尋ねかと思いますが、私ども、やはり千八百時間というものに向けて、全体の労働時間の短縮を進めていかなければならないというふうに考えております。そのために、この四月一日から全面的に実施いたしました週四十時間制、これの完全定着をまず急がなければならないというふうに考えております。  もう一つ大事な柱は、やはり時間外労働、これが長時間に及ぶことを直していかなければならない。そういったことのために、私どもかねてから長時間労働の削減のための要綱等を関係事業主にも示し、また、労働大臣の告示に基づきます時間外労働の三六協定につきまして上限を定め、その範囲内におさまるように徹底した指導等をなお一層進めていかなければならないというふうに考えております。  さらには、有給休暇の取得促進というようなこともございます。こういったことを総合的に進めて、千人百時間というものへ近づいていくことが今非常に肝要な時期かというふうに考えております。
  191. 中桐伸五

    ○中桐委員 そうしますと、千八百時間という達成目標というのは、最初の段階、週四十時間労働制、それから時間外の削減という形で千八百労働時間を達成したい、これが優先順位として高いのだというふうに理解していいわけですね。  そうしますと、この際、この法律を、千八百時間を達成すれば百五十時間の範囲に入るわけですから、わざわざ今この時点で百五十時間の女子保護の規制撤廃するということは、優先順位としていえば、女子の機会均等という問題も重要でありますけれども、その点を余り急いでやる必要はないのではないですか。
  192. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生、この世の中、社会というものは、一つの行政だけつかまえましても、大蔵省、通産省、農林省、労働省、厚生省等々、こうございます。その中の優先順位はどれかというのは、なかなか難しゅうございます。金融行政なら金融行政も立派に、通産は通産で立派に、そして労働労働行政で立派にということで、人生の目的が一つだということであれば別でありますが、やはり一国の行政ということになりますと多分野にわたること、先生お笑いのとおりに御存じでありますから、そういう意味合いで、言いますならば、できる限りにおいて均衡のとれた日本国の発展を図りたい。その中で、労働行政といたしましては、男女差別がある、女性が今まで劣位に置かれていた、これではならないのではないか。  今日の時点において、やはり戦後五十年、警察官から始まりまして、つまり婦人警察官、昭和二十年代に弧々の声を上げております。それから、今日、自衛隊も婦人自衛官ができました。防衛庁の巡視艇――もうおわかりのようで、もうやめておけというお話でありますので、以上でおわかりをいただいたことと理解をいたします。
  193. 中桐伸五

    ○中桐委員 いや、全然わからない。優先順位を考えたときに、今、日本の構造改革の中で一番重要な課題労働時間短縮ですよ。その労働時間短縮が、二〇〇〇年という形で、前川レポートから始まって、今進んでいるわけですよ。その二〇〇〇年の一年前の平成十一年四月にこの法律施行される。計画性という点で何か非常に矛盾をしているわけであります。  したがって、私が言いたいことは、優先順位は、労働時間全体の短縮ではないか。所定内労働時間の短縮から始まって時間外労働の短縮に移行 させるこれから二〇〇〇年までの重要な期間ではないか。そのようなときに、女子保護という形で経過してきた百五十時間がくしくも千八百労働時間のうちにおさまるのであれば、何もこれを撤廃する必要はないじゃないですか。どうなんですか。
  194. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 労働時間短縮の問題についてまず御説明させていただきますが、均等法が成立いたしました十年前と現時点を比較いたしまして、この間、総実労働時間は二百時間余の減少を見てきております。そういった状況とあわせまして、介護休業あるいは育児休業等、家庭責任との両立を図るためのいろいろな制度整備されてきている。  そういった状況を踏まえて、今後、女性の方に能力を発揮し、活躍していただく、そういった場を雇用の場でふやしていくために、そういった環境の中ではこの保護規定解消というものにそろそろ踏み切るべきではないか、こういう点を考えての今回の改正でございます。  それで、先生指摘の、それは千八百時間の達成を待ってはどうか、こういう御指摘でございますが、もちろん千八百時間に向けまして私ども精いっぱいの努力をいたしてまいりますが、そういった状況等、先ほど申し上げました全体の労働時間の短縮の進展、さらには四十時間制というようなものが滑り出した、こういった環境の中で女性の方に活躍していただく場をふやしていくことは、現時点においても極めて重要なことではなかろうかというふうに思っておるところでございます。  それからもう一つ、先生指摘の、千八百時間というものが達成されたら残業時間は百五十時間の中におさまるではないか、こういう御指摘でございますが、確かに千八百時間というものを達成していく場合の一つのモデルとして、四十時間制あるいは有給休暇を二十日完全取得すること等を前提として残業時間については百四十七時間程度のものになる、そういうモデルを描いていることは事実でございます。  ただ、これはあくまで勤労者の方々全体が働いている場合の平均値の姿でございまして、いわゆる上限としての残業時間というものとまた違った一つの平均的なモデルを描き出したものでございまして、やはり能力を発揮していく場合に、この百五十時間というのを超えていってもその能力発揮のために必要な場面というのは、やはり女性の方にとっても想定されるのではないかというふうに考えているところでございます。
  195. 中桐伸五

    ○中桐委員 それでは、その話はまた最後にもとに戻るといたしまして、具体的にちょっと事実から議論をしたいと思います。  私が心配するのは、今の労働時間の実態の中でこの女子保護の規定撤廃される、特に、今最初に議論しているのは時間外の労働の問題でありますが、この実態が今の企業の現状の中に急にほうり込まれるわけでありますが、その場合どのようなことが起こるのかということが大変心配なわけであります。  そこで、お伺いしますけれども、今、女性労働者就業実態、その主要な上位三つというか、労働者数の多い業種の実態と、それからその業種の所定内労働時間と時間外労働はどのぐらいになっているのですか。
  196. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  女子労働者が多いものといたしましては、製造業、卸売・小売、飲食業、それからサービス業があろうかと思いますけれども、そこに勤めております労働者の年間の実労働時間でございますが、製造業におきましては――済みません。今手元に男女一緒の数字しかないのでございますけれども、年間の所定内労働時間が、製造業で千八百五時間、卸売・小売業、飲食店で千七百十二時間、それからサービス業で千七百八時間というふうになっております。所定外労働時間は、製造業で百八十二時間、卸売・小売業、飲食店で八十二時間、サービス業で百九時間になっております。
  197. 中桐伸五

    ○中桐委員 労働委員会調査室がつくってくれた資料の中の百七十ページに産業別雇用者数及び雇用者総数に占める女性の割合があります。その中で、労働者数の順番でいいますと、サービス業、それから卸・小売業、飲食店、それから製造業というふうな順になっております。雇用者総数に占める女子の比率で見ますと、サービス業が一番多く、金融・保険業、不動産業がその次で、卸売・小売業、そして製造業と、こういう順番になっているのです。  さて、先ほど報告いただいた時間外及び年間総労働時間というものと、それから実際に連合が調べた労働時間の調査、これは九六年五月の中旬に行った調査でありますが、回収率は約三割。これは通常こういう調査票を回しますと、返ってくるのは三割から五割という程度ですから、常識的範囲にある。四千三百二十六組合から回収している。その組合を通して調べた統計によりますと、政府の統計とは随分違った数字が出ております。  これは、もちろん産業別に全部網羅して調べてはおりませんし、私が調査を担当したわけじゃありませんので、産業別の分類において政府の統計と必ずしも一致するかどうかということは、これはわからない。わからないが、一応業種別の分類というものを見てみますと、先ほど局長は、サービス業は千七百入時間で、時間外は百九時間、こうおっしゃったのですが、この連合の調査によりますと、年間の総労働時間は二千六十六時間になっておりまして、そのうち時間外は百八十・七時間という結果になっております。それから、製造業の中の「金属」というふうに分類をしているこの金属のデータを見てみますと、年間労働時間が二千十六時間、そして時間外が百七十七・四時間。先ほどの製造業の数字から見ても大幅に多いという結果が出ております。  ちなみに、女性労働者が多いと言われておりました卸・小売業、これは必ずしも同じように分類されているかどうかわからないが、「流通・商業」というところを見ますと二千六十七時間で、時間外が百三十三・九時間。これはもちろん男女一緒の労働時間だと思うのですが、そのようになっております。  このように実態が違うというのは、どういうふうに解釈したらよろしいですか。
  198. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 先生から御指摘のありました連合調査のデータでございますが、それと毎月勤労統計との数字の違い。私どもも、連合等とそういった点についても話し合って、情報交換をしているところでございますが、御指摘ありましたように、サービス業というくくりで見ますと、毎月勤労統計調査の方の年間総労働時間が千八百三十五時間、連合調査のものが二千六十六時間、こういう差が出ておるわけでございます。  その原因は、一つは、これは組合を通じて調査しているということかも、常昼、昼に勤める正規の組合員である労働者、この方を対象とした数字を調査いたしておるわけでございます。毎月勤労統計調査の方は、全体の労働者ということで、パートタイムの方も含まれてくる、こういった状況の差が一つございます。  それから、サービス業について申し上げますと、連合の方からお聞きしますと、調査票の中で「サービス・一般」となっておりまして、いわばその他が含まれている形になっております。  そういった産業区分の違い等がございまして御指摘のような違いが出てきているというふうに、私ども、連合ともども理解をし合っているところでございます。
  199. 中桐伸五

    ○中桐委員 わかりました。  そうしますと、男女共同といいますか、男女平等、均等、男女共同参画を目指すということになりますと、これはパート労働というよりも、むしろほぼもう完全に男性と同じように働く、こういう状況をつくっていくということが主要な、もちろんパート労働がだめだということを言っているわけではないので、そういう方向性だと思うのですが、そう考えますと、これは私の不安がそのまま現実になるのではないかというふうに思うのですね。  つまり、時間外労働が、そして年間労働時間が急に長くなる、こういう、これはあくまで推測でありますけれども、この点については推測論議をしてもしようがありませんが、一応労働省、政府の御意見を伺いたい。
  200. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 女子保護規定解消によりまして、これは男女が同じ枠組みでできるということでございますから、先生御懸念のように即女性が男性と同じように深夜になるというものではなくて、ある部分、男性がやられていた部分を女性がシェアするという形になるというふうに考えております。
  201. 中桐伸五

    ○中桐委員 ちょっとよくわからないのです。シェアをする、要するに男性と同じようになるということでございますか。
  202. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 そういう意味ではなくて、枠組みとしては男性と同じようにできるということでございますが、今まで男性がやっていたある部分を女性が分担をするという形になろうかと思うということでございます。
  203. 中桐伸五

    ○中桐委員 いまだによくわからない。要するに、男性がやっていた部分を女性がシェアをするということと労働時間とは関係ない、仕事の内容の話を局長はおっしゃったんじゃないのですか。
  204. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 深夜業をやっていた時間の部分として、女性が今までやっていなかった部分のある部分を男性にかわってやるというふうになるというふうに考えているということでございます。
  205. 中桐伸五

    ○中桐委員 今、深夜業とおっしゃいましたか。いや、時間外という話を今しているのですが。
  206. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 済みません、失礼いたしました。時間外においても同じであろうというふうに思います。
  207. 中桐伸五

    ○中桐委員 ということは、延びるというふうに理解してよろしいのですね。
  208. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 女性のある部分については延びる、そのかわり男性のある部分については減少することもあるというふうに思うわけでございます。
  209. 中桐伸五

    ○中桐委員 そうしますと、そういう一応延びるというおそれがあるということはお認めになったわけですが、それをどのようにして――千八百時間に向かうわけですから、千八百時間、いきなり時間外というのを解放したいわけではないと思うので、政府、労働省も。そうしますと、どのような形でそれを非常に好ましくない事態にならないようにされるのでしょうか。  もし仮にこの法律が通過したといたしますと、どのようなことをおやりになろうと思いますか。
  210. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 時間外労働につきましては、三六協定を結んでいただくわけでございますので、そこにおきまして、それぞれの仕事の必要度とか、それから女性たちのいろいろな状況等を勘案して結んでいただければよろしいというふうに考えるものでございます。
  211. 中桐伸五

    ○中桐委員 三六協定の問題をまた議論していると時間がなくなってしまいますので、これはもう余り議論を深入りしないでおこうと思うのですが、ただ、先ほどから出ておりました、平成四年八月二十八日に出ております労働省の告示で、時間外労働協定の適正化指針というものがございますね。この中で、一年の時間外労働を三百六十時間というふうにされております。これは適用除外もいっぱいありまして、現実に時間外の非常に多い業種はきれいに、見事に外しているのです。実態追認型目標時間設定とも言えるかもしれませんが、しかし、この三百六十時間というのは今後どのようにお扱いになるのか。  つまり、二〇〇〇年あるいはこの法律が通過した場合に施行される平成十一年四月一日まで、このままでいくつもりなのかどうか、そこについてお伺いしたいと思います。
  212. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 この時間外の労働の上限について告示で示しております三百六十でございますが、この点につきましては、既に労働基準審議会の方でも、この目安制度の上限等についてこれからどう考えていくべきかという議論がなされておるところでございます。  ただ、そういった議論がなされておる中で、当面最重要課題として四十時間制を全面実施に入っておったわけでございまして、そういった中で、当面、生産性の向上等でこの従来の四十四から四十への短縮分四時間を吸収できない企業等が残業という形であらわれているのが現時点の中小企業状況でございます。  そういった状況もございまして、今後、私どもこれを定着させていくために、あるいは生産性向上のための支援措置等も講じて、こういった状況を次第に四十時間というものをこなせるような姿へ定着させていくわけでございますが、そういった状況を見ながら、この三百六十というものも審議会でも既に議論として上っておるわけでございます。  それから、もう一つ申し上げさせていただきますと、現在、中央労働基準審議会では、労働時間管理労働契約のルール等幾つかのテーマを挙げましてこの基本的な労働基準法制の見直しにつながる議論をしていただいておるところでございます。そういった中で、この時間外労働、休日労働あり方というのも多々あるテーマの主要テーマの一つとなっております。  この点は、当面そういった四十時間の定着等いろいろ環境面で厳しい課題は抱えておるわけでございますけれども、この時間外労働、休日労働あり方について、もちろん我が国の時間外労働等の状況から見まして、一律的な、また直接的な規制というもの、大変これは慎重でなければいかぬわけですが、全体として、例えば均等法の新しいものが施行になった段階で、家庭との調和というような課題、ますます大きくなる中で一体どう考えていけばいいのか、こういう問題意識も含めてこれから議論が本格化する段階でございますので、私ども、そういった状況をよく見きわめながら今後のそういった問題についての方向を見出していこう、こういう状況でございます。
  213. 中桐伸五

    ○中桐委員 とにかく四十時間労働制ということを強調されておられまして、それはぜひ局長の答弁のようにやっていただきたいのですが、平成九年一月二十七日の中基審、中央労働基準審議会の会長から岡野労働大臣あてに、時間外・休日労働あり方などについて、速やかに検討を行って、可能な限り早期に結論を得ることとするという答申が出ているのですが、先ほど局長の御答弁だと、まだ早急にというところが、いつごろまでに出されるのか。そしてまた、この中基審のスケジュールを見てみますと、時間外・休日労働あり方も含めて、平成九年七月までに中間的な取りまとめを行うということも資料として手に入っているのですが、その点についてもう少し具体的に、どういう中間的取りまとめを予想されているのでしょうか。
  214. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 まず最初に、先生から御指摘ありました中央労働基準審議会労働大臣あての答申でございますが、その答申は、現在御審議願っておりますこの均等法関連法律整備法をその審議会に諮問した際の答申でございます。したがいまして、そこで示されております、この機会均等法については妥当と認める、ただ、時間外労働、休日労働等のあり方は、そのことも念頭に置いて速やかに結論を得るように審議していきましょう、こういう御意見が付されたわけでございまして、その点は私どもも、そういった趣旨とその重みを受けとめなくてはいかぬというふうに考えております。  中央労働基準審議会では、そういうことも含めまして、全体として、先ほどお話し申し上げましたように、労働時間管理のルール、あるいは労働契約法制のルール、そういった点について、裁量労働制あり方、あるいは変形労働時間制、有給休暇等のあり方、あるいは労働契約期間、個別の労働条件の紛争を迅速に処理するシステムはないか、こういったこと、多々テーマを挙げながら議論しておるわけでございますが、そういった経緯がございますので、時間外・休日労働あり方は、そういったほかのテーマと並んで、当然主要 なテーマの一つとして位置づけられて議論が進められてきているところでございます。  したがいまして、これは既に労働大臣からも指示がございまして、昨年中から、この七月いっぱいまでに、そういったほかのテーマ全体でございますが、一定の方向を出していただきたい、それが中間的な取りまとめという先生指摘のあったことでございます。  したがいまして、これから議論を本格化させ、どこまで労使が歩み寄って一つの方向を見出していけるか、精力的な論議をお願いして、この七月いっぱいにそういった取りまとめに向けて努力をしてまいりたいと思っている段階でございます。
  215. 中桐伸五

    ○中桐委員 中間的取りまとめですから結論ではないわけで、今回の法改正が行われた場合の施行を予定されております平成十一年四月一日までに、これははっきりとした結論を得ることができるでしょうか、時間外あるいは年次有給休暇とかについて。そういう点、どうお考えですか。
  216. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 私ども、ただいま先生から御指摘あったような見きわめをしていくためにも、この七月いっぱいには中間的な取りまとめを出していただかなくてはいけないだろうということもございまして、そういったスケジュールでお願いをいたしておるわけでございます。  先ほど申し上げましたように、裁量労働制の今後のあり方、あるいはそのほか大きいテーマが幾つかございます。そういった中の一つに時間外労働等のあり方がございまして、その全体についてこの七月までに中間的な取りまとめがなされてまいりましたら、そういった内容を踏まえまして、私どももこれからの労働基準法制の見直しについてのスケジュール等を固めてまいりたい。労働基準法という非常に重要な法律の世界でございますので、当然そういった労使の方々の意見のほかに法制的な検討の機関というものももちろん必要でございますので、やはりこの中間的取りまとめをできるだけ早く私どもお願いをして、先生指摘のようなスケジュールの見きわめを急ぎたいというふうに考えているところでございます。
  217. 中桐伸五

    ○中桐委員 その場合に、要望しておきたいのですが、聞くところによりますと、経営者側の委員が時間外労働男女共通に規制することについての検討を余りしたくないというふうな意向が表明されているというようなことがあったので、その点については大変危惧をするものであります。これは男女共通の、つまり告示に書かれてある三百六十時間という目安というふうな形よりもさらに実効性の上がる形にするのかどうかも含めて、三百六十時間でほったらかさないで、業種的にさまざまな現実があるということは、大変厳じい状況があるということもわかりますが、男女共通の時間規制というものを、この均等法施行される時点までには何らかの改善を施行していただくことを強くお願いしておきたいと思います。  そういう意味では、審議会を早急に、さらに強めて審議を重ねていくということも大変重要であろうと思いますので、これは大臣に強く要望しておきたいというふうに思います。  さてそこで、もう一つの議論を行いたいのですが一つは、深夜業もこの法改正規制撤廃という形になるわけでありまして、これまでの議論の中で政府側が答弁なさっている深夜業の撤廃の理由といいますか、深夜業についての撤廃及びそれを位置づける考え方として三つ挙げていると思うのです。  一つは、グローバル化というのをお挙げになっている。二つ目に、生産技術上必要な、例えば溶鉱炉の火を一たんとめますと準備にまた大変な時間がかかるということで、そういう生産技術上の必要で深夜業は不可欠。それから、病院の医療サービスの提供、そういったものは国民生活上必要なものであるから、これは不可欠、これはよくわかる。  しかし、今日、東京の地下鉄から上に上がって駅の外に出ますと、その駅の四隅に二十四時間ショップがどんどんできているというふうな状況がある。これは、国民生活上不可欠なサービスというものからすれば、優先順位は極めて低い。そういう二十四時間の小さなショップがどんどんできている。そういったものは全然規制できていない。  そういうふうな状況の中で、国民生活上必要なものといっても、十分吟味をしてそれを検討しなければいけないし、それからグローバル化という点からいいますと、私のところにも、アジアの諸国から、日本の男女均等法の女子保護を撤廃するのはけしからぬ、アジアに悪い影響があるからぜひとめてくれというふうな要請文が英文で参っています。そういう点から考えましても、何かしら、グローバル化が深夜業をすべての分野で必要としているのだなどという、非常に大ざっぱでむちゃくちゃというか、そんな議論をされては大変困るので、その点どのようにお考えなのか、これはどなたでも結構ですが、お答えいただきたい。
  218. 岡野裕

    岡野国務大臣 やはり女性の皆さん、それぞれ自分の志す道がある、それぞれそのための技能というものを身に蓄えられる、そうして、言いますならば生きがいのある一生を送りたいというようなことで、私どもは、こことこことここというようなやり方をしてきましたものを、今言ったようなバラエティーに富む世の中になってまいったのにこたえて、私ども今お話をしましたような解放をいたしました。  だから、例えば駅前のスーパーマーケットは国民の利便上必要だというが、その利便というのは大したものはないよと先生おっしゃいますけれども、このスーパーはもう本当にどんどんふえていくのです。つまり一お客がなければふえないと思うのです。倒れると思います。そういう意味合いでは、国民の利便というものがやはりこの面にはあるなということは御理解いただけると思っております。  そしてへ金融業やあるいは商社、貿易業等々で、先生のところへ英文のもろもろの情報が入りますと同時に、大きな企業から小さな企業まで非常にグローバル化しているという実態は、もうあらゆる印刷物で、先生またお笑いでありますが、おわかりのとおりであります。  私どもは、そういうところに男性は行けるけれども女性は行けないというようなことを言う世の中ではないというような意味合いで、それぞれの女性の皆さんがそれぞれの力量を十分発揮できるように、こういう意図であります。やれなかったものを解放して、どうぞやれるようにしようという意味であります。そのかわり、母性保護というような意味合いでいろいろな手を差し伸べておりますことも、本会議以来きようで三日目に相なりますが、その都度申し上げております。
  219. 中桐伸五

    ○中桐委員 私が申し上げたいのは、そこにいろいろできるからもうそれはいいではないかというふうに考えますと、やはりそれはヨーロッパがやっているような労働時間短縮だとか休日の確保だとか、そういうことができないということです、私が言いたいのは。ですから、それを全部規制すればいい、全部をもう法律で決めて規制すればいいというふうに考えておるわけではないわけでありますけれども、やはり政府い労働省考え方にそこに大きく違いがあるのではないかというふうに思うのですね。  私は、労働形態、雇用形態をグローバル化に切こたえなくていいというふうなことを言っているわけではない。要するに、厳密に、具体的に、ゆとりやそういうものを実現していくという大きな課題の中でグローバル化対応するにはどうしたらいいかとか、そういうことを考えていってもらいたいということが言いたい。  さて、その深夜業の問題について、ILO条約というもの、夜業条約が採択されているわけでありますが、これが日本でまだ批准されていない。この批准されていない理由というのはどこにあるのでしょうか。簡単にお願いします。
  220. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 ILO百七十一号条約、夜業に関する条約でございますけれども、これは、夜業に従事する男女労働者の健康を確保し、家族的責任を果たすための措置ということを内容とす るものでございます。  本条約の内容は、労働基準法その他の関係法令によっておおむね実施されているというふうに考えておりますが、第一条(b)において定義されております「夜業労働者」と労働基準法等関係法令上保護されている「労働者」の間で差異があるということ、それから、条約の第九条において要請されております、「夜業労働者には適当な社会的な便益」というのを与えることになっておりますが、それが具体的にどのような範囲なのか、我が国現行法令で定めるもののほか、どのような措置が必要とされるのかなとの点につきまして、国内法制との整合性について検討を必要とするものというふうに考えているわけでございます。
  221. 中桐伸五

    ○中桐委員 その検討をどこでやられますか。
  222. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  検討は、現時点ではまだ特段進んでおりませんが、できるだけ前向きに検討を進めていくことも必要であろうというふうに思っております。
  223. 中桐伸五

    ○中桐委員 ぜひ前向きに検討してもらいたいのですが、果たしてこれだけで確認できたのかどうかちょっとあれですが、時間がないので、確認できたとしたいと思います。  夜業の中で、先ほど言われたところは私がぜひ実現してもらいたいものと余り抵触しませんので、この条約を批准しなくてもすぐに考慮をいただきたいというふうに思うのです。  といいますのは、夜勤の労働というのは、これはいろいろな議論がもう既に質疑の中でも出されておりました。時間がないから一々やりとりをするのはやめますが、私も労働医学を長いこと研究してきたものですから、夜勤労働というのは非生理的なものであるというふうに一応理解されております。これは、単に生物学的に労働に適さない時間帯であるという意味、生理的といった方がいいですか、というふうな意味だけではなくて、社会の大多数の人が昼働くという状況でございますので、社会的な時間差、つまり、社会的に同じようにコミュニケーションしたり生活を送るということが阻害される。この二つの要因によって、実は、夜勤労働というのはどうしても、生活の質あるいは健康問題、労働負担あるいは労働災害、そういった問題に悪影響を及ぼすということはわかってきておる。  そういう点から、先ほど批准できない理由に挙げられたところは関係ありませんので、労働基準法のところがよくわからなかったのですが、つまり、夜勤労働の場合には、少なくとも日勤と同じかあるいは平均して少ない労働時間にすべきではないかということであります。つまり、夜勤労働者は日勤よりも労働時間を少なくするということをぜひ検討していただきたい。  それから、同じくこれと関連がありますが、超過勤務を日勤よりも極力少なくするということを検討していただきたい。それから、非常に危険な仕事あるいは非常に精神的あるいは肉体的に緊張を伴う仕事の場合には夜勤に適しませんので、そういう仕事の場合には夜勤は日勤よりも相当大きな負担がかかりますので、超過勤務というのを禁止するとか夜勤の連続二勤務を禁止するとか、あるいは、これは非常に難しいところが出てくるかもしれませんが、もう一つ重要なのは、勤務と勤務の間隔を十一時間以上あけるということであります。勤務間隔時間といいますが、これはこの条約の中でも、今の女子保護の問題に関連しての話ですが、重要なところでありますから、これは批准しなくても検討できると思うので、部分的にぜひ早急に検討していただきたいというふうに思いますけれども、どうですか。
  224. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生のお話で、深夜勤務というものは健康上マイナスだという意味での、お医者さんとしてのお話がございました。しかし、お医者さんのところにはどうしても看護婦さんがいないと務まりません。特に外科医等につきましては、非常に看護婦さんの勤務が大変であります。  先生、しかしながら、やはり病院には看護婦さんが必要で、かつ三班交代の夜勤が必要で、超過勤務で夜勤をやらざるを得ぬというような実態にあることを御認識なさっておられると思います。そういうような意味合いで、それぞれの業種で、お医者さんと同じように、うちの看護婦業務というものをそういった夜勤もできるような、深夜業もできるようなものにしてくれといういろいろな働きかけがあったりなんかいたします。  そういうようなよろずの意見を聞きまして、私ども法律なら法律をつくってまいるということでありますが、みずから法律をつくって、これが百点満点のものであるとはいささかも思っておりません。  先生、いろいろ今御要望なさいましたことは、この耳でしかと承りまして、答弁にかえさせていただきます。
  225. 中桐伸五

    ○中桐委員 大ざっぱに議論をすると何も確認できないので、先ほどの中央労働基準審議会ですか、ここで労働時間部会があるというふうに聞いておりますので、そこで、これは女子保護の問題だけではなくて、夜業条約の問題もありますから、ぜひ労働時間部会の中でも検討いただいて、国際的な労働基準というものを検討していただくということを要望しておきたいというふうに思います。  時間がもうほとんどなくなりましたので、最後に、ポジティブアクションの問題ですが、このポジティブアクションというのは、私の理解では、法律で基本的に男女平等ということを決めても、事実上平等が実現できていない、それを解決する、そういうところにウエートがあるというふうに私は理解しております。  それで、そう考えますと、これは法律があるからもうできたというふうにいかない、特に差別構造の問題であるとか、そういった問題については、事実上それが実現できているかどうかというと、なかなかうまくいかないということで工夫されたアクションだというふうに私は理解している。  そうしますと、先ほどの議論でも、全職場を対象にこの法律は枠組みとしてできないというのはわかる。法律の体系から言ってそうだ。そうしますと、これは先ほど国家公務員とか問題になっていましたが、これは地方公務員も同じだと思いますが、ポジティブアクションについては、これは助成措置との関係で民間の事業主しか対象にしないということになっている、そう理解していいとすれば、法律に書いたからといって、これは実現できないところで工夫されているわけだから、国家公務員や地方公務員はどうされるのかということになるのです。  きょうはもう自治省も総務庁も呼んでおりませんので、労働省としては、ポジティブアクションというのはそのような理解を私はしているのですが、それでよろしいかということと、それから、そうであるならば、国家公務員や地方公務員という場合、これは何らかの方針を持って臨まなければいけないと思うのですが、労働省、どうですか。
  226. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 第三章のポジティブアクションにつきましては地方公務員にも適用がございますので、それぞれの自治体で法律の精神に基づいた形のポジティブアクションをしていただけるものというふうに思っております。
  227. 中桐伸五

    ○中桐委員 ポジティブアクションは地方公務員は全部適用なんですか。そう理解していいのですね。
  228. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 済みません。地方公務員には適用がないということでございますので、失礼いたしました。  ただ、やはり法律の精神は、これは地方自治体にも均等法の基本理念というものについてはそれぞれ周知徹底をしていただくということになっておるわけでございますから、それはそれぞれの自治体においてもしかりでございますので、同じようにやっていただけるものというふうに思っております。
  229. 中桐伸五

    ○中桐委員 それではまず、隗より始めよという言葉がありますので、国家公務員の労働省はこのポジティブアクションをやられますか。
  230. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 私が答えるべきかどうかちょっとよくわかりませんが、労働省の場合は、先ほど、私どもの婦人局はかえって女性の方が多いくらいだということで大臣からおしかりを受けているくらい女性が多いわけでございますし、また、労働省職員全体を見ましても、ほかの省庁よりも女性の職員の割合というのは高いというふうに思っております。
  231. 中桐伸五

    ○中桐委員 私、ポジティブアクションというのは女性が多いか少ないかという問題だけにとどまらないと理解しております。非常に広範囲男女の均等なものを、男女共同参画社会というプログラムも大きく関連するアクションだと思いますので、先ほどの説明では納得できないわけで、やはりこれは隗より始めよと労働省に模範を示していただく。つまり、ポジティブアクション法律で書いたからこれができると言うことができない非常に難しい課題だから、事実上の平等のための工夫として導入されているというふうに私は理解しているので、そういう点ではぜひやってもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  232. 岡野裕

    岡野国務大臣 政府委員がお話をいたしました、労働省は、上級職等につきましても非常に女性の数が多うございます。というのは、ポジティブアクションを過去においてやってきた積み重ねが今の現状になっているのだなと、他省庁に比べますと私どもの方が均等扱いがまだいい方だと。しかし、まだまだ足らないと自覚をいたしております。  やはり、これから国民の皆さんに御協力を仰ぐ立場であることも十分腹に据えまして努力をしてまいりたい、こう思っております。
  233. 中桐伸五

    ○中桐委員 努力をされるということは、ポジティブアクションのモデルをまず労働省から示していただくというふうに理解したいと思います。  最後になりまして、先ほど一番最初に議論いたしました男女共通規制という方向にこの法律をもし制定されるとするならば、私は、あるいはその法律に賛成する条件としてと言った方がいいと思いますが、男女共通規制というものに何らかの形で、時間外及び深夜業での問題にしろへそういうものについて空白期間が生じないようにすること  が前提条件だというふうに認識しているわけです。私の時間がなくなりましたから議論はもうやめますが、そういう私の立場をもって強く要望をしておきたいということで私の質疑を終わります。  どうもありがとうございました。
  234. 河上覃雄

    ○河上委員長代理 これにて中桐伸五君の質疑は終了いたしました。  次に、松本惟子君。
  235. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 松本でございます。  私の持ち時間、三十分でございます。質問をさせていただきますが、できるだけ簡潔にお答えをちょうだいできればというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。  質問に入ります前に、審議を伺っておりまして私が感じていることですが、雇用機会均等法は、これまでの議論の中で、将来的には性差別禁止法の方向へということはほぼ確認されたかと思います。今回、努力義務であったところが、女性を対象にしたということにとどまっておりますけれども禁止規定になったということで法律の性格がこれまでとは変わってくるというふうに思います。したがって、その点についてどのような実効性を上げていくのかということでお伺いをさせていただきたい。  それからもう一つは、働き方、それから生活に影響のある労働時間の問題に関してでございますけれども、既存の男性の水準に合わせてどうしても議論が進まざるを得ないということに疑問を持っております。  これまで男性が産業社会の中心になって働いてきたわけですから、その仕組みというのは男性中心にならざるを得なかったかと思います。しかしながら、午前中に武山さんのお話がございました。ノルウェーの例でございます。ここでは、日本でいえば高齢者の方が悠々と働いていらっしゃって、社会がそれを受け入れているという話だったと思います。私は、これから二〇〇〇年に向けての日本というのは{高齢者や妊産婦や、それから障害者や、そして、これまで差別をされていた女性たちが人間として尊重され社会にしっかりと受け入れられていく、そういった方向での論議が進んでいかなければならないと思います。  もう一度言いますと、男性型の社会の仕組みに女性を合わせるのではなく、女性がそこへ入っていくわけですから、もう一度その仕組みを組みかえるという視点から物を考え、政策を立案していくということが大切ではないかと思います。  その点につきまして、四十時間法制、所定内労働はやりとその方向に向かって進んだ。しかしながら、時間外労働でそれを取り返すようなそういうやり方、特に、今まで法律禁止をされていたためにやっていなかった女性に対してそれをまた取り返していくような考え方で政策を展開していくということはどうぞやめていただきたいと思います。  それから深夜労働ですが、これは、前回のときに私資料を請求させていただきまして、ちゃんと資料を届けていただき、御説明も伺いました。ありがとうございました。  しかし、申し上げたいのですが、雇用機会均等法の論議をする一方で、外すのだったらもっとしっかりと調査をし、分析をし、その結果によって外すなら外していただきたかったと思います。いただきたかったと言うのはまだ早いのですけれども審議の最中でありますから。これからの審議いかんによっては、私、本会議でも申し上げましたけれども、これは社会的にも生活の上でも男女ともに影響力が大変大きいですから、十分審議をしていただきたい。場合によっては見直しもということを本会議で申し上げましたので、そのことはどうぞ今でも御留意をいただきたいというふうに思います。深夜につきまして調査をなさったものは、いかにも不十分だというふうに申し上げます。  もう一つお願いをし、質問を後ほどさせていただきますが、既に前回、十一年前に適用除外にされた女性の深夜労働の部分がございますので、そこのところにつきましてもどのように調査をしているのか。その調査の中身につきましては、単にどれぐらいの数がやりているとかやっていないとかそんなものではなくて、既に昔からやっている、例えば看護婦さんその他の職場も含めまして、健康はどうなのか、妊娠出産のときに支障はなかったのか、それから、勤続年数はどうなっているのか、職場環境はどうなのか、それから、既婚者と未婚者と比べたらどんな割合になっているのか等々、総合的な調査がやはり必要ではないかと思いますので、初めにそのことを感想として申し上げさせていただき、後ほどまた質問をさせていただきます。  そこで、質問に入りますが、禁止規定となった法律についての実効担保ですが、本来ならばこれは何度も申し上げましたけれども行政から独立した機関で、三者構成で、そして立証責任は事業主が持っていただいて等々、欧米がやっているようなそういった方向に持っていっていただきたかったけれども、今回は一方申請というところまでは進みました。したがって、そこを実効性あるものにしていくためにどうしていったらいいのかという手続の問題につきましてお伺いをしたいと思います。  まず、この調停については、行政監察報告というのが総務庁から出ております。今回、女性少年室長が当該紛争解決のために必要があると認めるときに機会均等調停委員会、こういうふうになっています。前回も婦人少年室長が必要と認めるときに調停に入るというようなことでしたけれども、今回の法律でも機会均等調停委員会に行わせることができるというふうになっています。したがって、調停の開始に当たって、婦人少年室長の権限にゆだねられているということがあります。  この十一年間に、室長の判断で調停不開始となった件数が七十一件であります。事業主の同意 を得られなかったために調停不開始になった件数が二十二件ということでありますから、それに比べて、室長の判断によって調停に入れなかったという件数がはるかに多いという実態がございます。これは調停の申請があったら、形式的に必要最低限の要件を備えていれば調停を開始するというふうにしていただき、迅速に問題の解決に当たる必要があるというふうに考えます。  前回、この法律を立案する十一年前を思い出してみましても、民法九十条による裁定までに長々とかかり、お金がかかりということだったので、できるだけ早く差別を解決をしようということで立ち上がったわけでございますので、十一年たってもまだこんな状態というのはどうしても納得ができません。その点についてお伺いしたいと思います。迅速な手続をとれるのかどうか。
  236. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  まず最初に、これまで調停がされましたのは一社七件でございます。調停不開始になっておりますものが十一社九十七件でございますが、その中で、事業主に同意を求めたのでありますが、事業主による同意が得られなかったものが委員指摘の二社二十二件でございます。  それ以外のものにつきましては、女性労働者から申請がありまして、婦人少年室長が調停開始のため事業主の同意を得ようとするそのプロセスにおきまして、事業主差別的取り扱い是正をしてくれたということで目的が達成されたものが四社四件ございますし、また、申請事案案件自体が調停対象事項に該当しなかったということで調停の必要がなかったものが五社七十一件ということでございます。  ただ、委員指摘のように、調停の開始、不開始の決定を行うに当たりましては、やはり婦人少年室長が恣意的な判断を行ってはいけないというのは、これはもちろんのことでございますので、今後は、そういうような批判を受けることがないように制度の運用には努めてまいりたいというふうに思っております。
  237. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 どうぞ、今おっしゃられましたように、婦人少年室長の恣意的な、恣意的なというのは適切ではないかと思いますが、判断先行で調停不開始になるような事例がないように御努力をお願いしたいと思います。  続きまして、均等法三十三条に基づく助言、指導勧告についてでございます。どのような場合にそういったことを行うのかという基準が、明らかではないのではないかというふうに思います。  総務庁の行政監察結果によりましても、婦人少年室に対して調査をしているわけでございますけれども対応が非常にさまざまであります。こういった基準が明確になっていないために、あちらの室長さんはこう判断する、こちらの室長さんはこのようなことをやっている、例えばその区分につきまして、事業主対応に応じて判断をしているとか、それから、何回も何回も助言をしたけれども従わなかった場合に指導しているとか、何度も指導をしたけれども従わない場合に勧告をしているとか、それから、事案の内容とか事業主対応に応じた文書指導を行い、勧告についてはその後の措置等々、婦人少年室によってもさまざまな様子がうかがわれます。  禁止規定になった今回の法律に基づく助言、指導勧告までで、この法律是正命令までいきません、残念ながら。したがって、これが実効が上がるようにぜひとも基準を明示をして、中央の方から、こんな場合にはこういうふうにやるのだというようなことをきちんと明らかにして、そして指導勧告に当たっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。     〔河上委員長代理退席、委員長着席〕
  238. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 先生指摘のような方向で前向きに考えていきたいと思います。
  239. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 よろしくお願いをいたします。  続きまして、今のことにも続くわけですが、禁止規定になっております、定年、退職、解雇のところでも口頭による指導を繰り返しているということで、十年経過しても相変わらずなかなか実効が上がっていない面もある。一部前進した面もございますけれども、いまだに口頭によるそういったことを繰り返されているというふうなことが紹介をされております。  均等法で明らかに禁止をされているわけですから、本来ならば、十年たった今ではもうそういったことはありませんというのが当たり前だと思いますけれども、そうなっていない。したがって、ぜひとも、指導が長期化しないように助言、指導勧告に何らかの時間的な枠を設けてほしい。先ほどの基準に基づきまして、何度も繰り返し繰り返しやった上で時間がたってからやるというのではなくて、なるべく早くこのことをできるように基準の中に明記をしていただきたいが、いかがですか。
  240. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 均等法の定着を確実なものにするためには、先生指摘のことは非常に重要な点だと思っております。  実は、平成九年度から、助言、指導勧告の実施方法、実施の時期等につきまして、それぞれ速やかに対応措置を講ずるよう、各婦人少年室長に指示したところでございまして、今後も迅速な指導について留意はしてまいりたいと思っております。
  241. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 続いて、公表制度に移りたいと思います。  公表制度につきましては、社会的な制裁であるということでお答えになっていただきましたので、そういうふうに理解をさせていただきます。  既に他の法律におきまして、こういったケースをとっていますけれども、その実効性はいかがですか。さらに、婦人局長にお伺いをいたしますけれども、これによって、今回の均等法はかなり実効が上がるとお考えになっていらっしゃるのかどうか。
  242. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 公表制度についてのお尋ねでございますが、私ども、障害者雇用促進法におきまして、過去、平成四年に公表を行った実績がございます。結論といたしましては、この公表制度は有効に機能しているというふうな判断をいたしております。  当時、私たまたま担当部長をいたしておりまして、現在、静岡県副知事をやっております坂本由起子、これが担当課長でございまして、断固公表すべしという厳しい課長指導を受けながら踏み切ったことでございます。これにつきましては、やはり法令に基づくきちんとした公平な指導を積み重ね、その上で、なおかつ一定基準に達しないというものについての最終的な手段として公表制度があり公表する、こういうことでございますが、障害者雇用促進法に基づく指導の積み重ねがされておりました段階になっておりましたので、平成四年に公表いたしたわけでございます。  したがいまして、その後は、指導を積み重ね、公表を前提として指導をし、かつ、結果としては公表されるに至らないということで現在まで至っているわけでございます。  雇用率で見ますと、当時、平成元年、二年、三年と一・三二%ということで、横ばいでなかなか進まない、こういう状況があったわけでございますが、その後、雇用率は徐々に高まってまいりまして、現在、一・四七%というところまで来ております。もちろん、公表制度だけでなったとは思っておりませんが、そういう意味では、法令に基づくきちんとした指導をし、指導に従わない場合には最終的には公表する、こういう仕組みで行政を積み重ねるということにつきましては、それ相当の機能について有効性があるというふうに判断いたしております。
  243. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 公表制度は有効であるというふうにお伺いしました。  それでは、もう少しお伺いしたいと思います。  障害者雇用促進法の場合ですけれども、法定雇用率の未達成企業に対する指導として、雇い入れ計画作成を命令し、雇い入れ計画書を提出させ、そして適正実施勧告をし、特別指導期間を経て公表というふうな手続になっていると承知しております。こういった手続の中で、平成七年度で、適 正実施勧告が十六社、公表に至った企業はないわけでございます。ところが、現状では、法定雇用率未達成企業の割合は四九・四%。昭和五十二年以来、減少するのではなく、逆に増加の傾向にあるというふうに思っております。改善を図るために、雇い入れ計画の作成命令とか、それから適正実施勧告基準等について見直すべきではないかと思います。  これは雇用機会均等法にかかわる問題ではありませんけれども、既存のこういった制度がやはり十分に機能し得ていないのではないかと思いますので、申し上げておきたいと思います。  障害者雇用促進法において公表制度が設けられてから実際、公表に至ったのは一回だけということでございまして、公表のための所定め手続内容によってはこの法律のように、事実上、活用されない場合も起こるのではないかと均等法に対して私は心配をしております。これをどのようにしていくのか。できるだけ早く、そして効力を高めるためにもハードルを低くすることが必要であるというふうにお答えになられておりますけれども、もう少し具体的に婦人局長に伺いたいと思います。
  244. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 今回の改正におきまして創設いた七ました公表制度は、労働大臣または女性少年室長勧告に従わない法違反企業につきまして社会的制裁を科すという意味で、公表という社会的制裁を伝家の宝刀として、事業主に対しまして強く法の遵守を求めるものであるわけでございまして、法違反の速やかな是正を求める行政指導効果としては非常に効果を高めることを目的としているものでございますし、また、新設という意味効果があるというふうに思っておるところでございます。
  245. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 今、既にある法律の手法について具体的に私申し上げましたけれども、これでも一件ということですので、ぜひとも具体的に迅速に公表ができるように、随分時間がかかって手続を経て、そしてやるというようなことでは伝家の宝刀にはならない、さびた宝刀になってしまうと思います。したがって、切れ味のいい伝家の宝刀を期待じたいというふうに思っております。  続きまして、法律の中身について二つほど伺っておきたいと思います。  一つは、前回も申し上げましたけれども募集採用のところが調停の対象になっていない。  募集のところにつきましては、雇用契約がまだ結ばれていないからという御説明でございましたけれども、諸外国の例を見ましても、採用のところでは、これが性による差別であるということが判明した場合には制裁が科されていると思います。したがって、今回の法律改正に当たりましても、募集採用というふうに一くくりにしないで、せめて採用のところはきちんと調停の方に持っていけるようにしていただきたいということが一点。  それからもう一つは、禁止規定になっております母性保護に関する問題であります。  妊娠出産基準については明らかになりました。それから、妊娠出産を理由にした解雇禁止というのも法律に入っていますけれども、それ以外の部分がどうしても入らないということです。婚姻上の地位とか、それから妊娠をしている、あるいは妊娠をする予定があるということで、募集採用のときに差別をされる、それから、職場で働いていても、出産休暇に入る前に配置転換を受ける、出産休暇が終わって出てきても、どこの職場に自分が回されるのかわからないといったような事例が職場の中かち今でも後を絶たないと思います。  したがって、法律のいわゆる基本のところにきちんと母性の尊重ということが明記をされているわけですから、妊娠出産、それから婚姻等を理由にした差別募集採用のところからきちんと禁止をするというふうに盛っていただきたいと思いますが、いかがですか。
  246. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 まず、募集採用を調停の対象としなかったことは、募集につきましては、不特定多数の者を対象として行われるものでございますので、個々の女性事業主の間に私法上の紛争が生ずるととはないと考えられるということ。それから、募集及び採用は、労働契約締結以前の問題でございますので、個々の女性事業主の間は、何ら契約関係にはない私人間の関係にあること。また、採用につきましては、調停申請者を実際に採用させるということが、企業が既に採用配置を行った人員に対し及ぼす影響等々にかんがみますと、事実上困難でございます。したがって、両当事者が納得するような調停を行うことが非常に困難であるというようなことから、紛争解決の手段としての調停にはなじまないということを理由としたものでございます。  そして婚姻上や子を有していること等を理由として、女性労働者について、例えば不利益な配置転換を行うということとか昇進をさせないということは、これは女性に対する差別に該当いたしまして、均等法に違反するものでありますので、それなりにきちっと対応していきたいと思いますし、妊娠出産をしたことを理由とする配置転換は、これは男性との比較が問題となるものではございませんけれども、これらを理由として配置昇進等について著しく不利益な取り扱いをすることはやはり好ましくないことでございますので、その旨もきちっと周知はしてまいりたいと思うわけでございます。
  247. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 時間がなくなりましたので、次に進みます。  労使協定との関係について伺います。  仮に、労使協定で、女性に対しては深夜は免除するというような規定を設けた場合、これは基準法違反とならないかもしれないけれども均等法違反となるのではないかと思います。  太田局長は七日の答弁で、それ自体は均等法違反ではないけれども、これによって昇進、昇格等に差が生ずれば差別となり、均等法違反となるという趣旨であったように思います。私は、法の精神からいたしまして、これは事実上のダブルスタンダードになるのじゃないかというふうに考えます。ですから、明確に均等法違反と解するべきではないかと思うのです。  それからまた、仮に、時間外労働についても、男性三百、女性百五十というように異なる時間とした場合に、その労使協定は労基法並びに均等法違反となるのかどうなのか。明快にお答えをいただきたいと思います。  それからさらに、使用者に就業規則の作成、変更の権限が一方的に与えられているからといって、自由に労働者労働条件を不利な方向に変更することは許されないというふうに思います。この点につきまして、最高裁が、新たな就業規則の作成または変更によって労働者の既得権を奪い、不利益な労働条件を一方的に課すことは原則的に許されないが、変更された条項が合理的である限り、個々の労働者において、これを同意しないことを理由としてその適用を拒否することは許されない、こう示しているわけでございます。  その合理性を持つ変更であるかどうかの判断ですけれども、これは慎重にすべきであると思いますが、一部例外を除いて原則禁止となっていた夜業について、これは不利益な変更とならないのかということをお尋ねしたいと思います。  二点についてお答えをいただきたいと思います。
  248. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  労使協定によりまして女性にのみ一律に深夜勤務を免除するということは、当該勤務から女性を排除することになりますので、合理的理由がない限り、配置に関して均等法に違反するということになるというふうに考えます。  それから、時間外労働について、男性三百時間、女性百五十時間というような労使協定は基準法及び均等法違反かという御質問でございますが、労使協定によって時間外労働につきまして男女で異なる取り扱いをすることは、均等法の趣旨に反するものというふうに考えているわけでございます。  それから 使用者の就業規則の作成、変更の不利益変更の件でございますけれども、今回の女性労働者に対する時間外・休日労働、深夜業の規制につきましては、女性職域拡大し、男女の均等な取り扱いを一層促進するため解消するものでございます。  ですから、これに伴いまして、事業主労働基準法、安全衛生法、育児介護休業法等に規定されました深夜業に係る規定を遵守しつつ、就業規則を変更し、女性労働者に深夜業をさせることができるようにすることは、経営上の必要性及び変更内容の相当性が認められる限り、当該変更に合理性があり有効であるというふうに考えるわけでございます。  しかしながら、このような就業規則の変更に当たりましては、労使間において十分な協議を行うことが望ましいわけでございますし、また深夜業に就業することに伴う個々の労働者の負担を軽減するための就業環境整備等につきましては、もろもろの措置が講じられることが望ましいと思っております。  また、個々の労働者の健康や家族的責任の状況を理由といたしまして、他の労働者と異なる取り扱いをすることは、やはり均等法上の問題となるものではありませんから、深夜業を希望しない労働者につきましては就業規則上において配慮することとか、これら労働者と十分な話し合いをした上で、深夜業につかせない旨の労働契約を締結することは有効であるというふうに考えております。
  249. 松本惟子

    ○松本(惟)委員 時間が参りましたので、最後に一言申し上げさせていただきたいと思います。  ただいま質問をいたしました二点については、今後大変重要になってくる問題であるということを申し上げます。  それからもう一つは、女性就業拡大ということと地位の向上と二つあるわけですけれども、十年前の均等法論議のときにも、使用者の方は、女性就業拡大は歓迎です、しかし権利の要求、さらには地位の向上につながっていくことについては大変難色を示されたわけでございます。今回も、時間外労働、深夜労働に準備もなく女性拡大をしていくことは、それによってステップアップをする女性も当然いますけれども、そうでない女性たちもたくさんいる。私は、社会基準というのは一番底辺にいる人たちのところに視点を置きつつ、水準を上げていくということが大切ではなかろうかと思っております。  また、その他につきましては次回に意見を述べさせていただきます。ありがとうございました。
  250. 青山丘

    青山委員長 これにて松本惟子君の質疑は終了いたしました。  次に、金子満広君。
  251. 金子満広

    金子(満)委員 日本共産党の金子です。  限られた時間でありますから、重点的に質問をいたします。  提案されている法律案というのは非常に長い名前で、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案、一言で言うのはとても大変なんです。暗記はできないぐらいですね。  この問題についてはいろいろ議論がされています。初めてこれがオープンになったときに、均等法で何かいいことがあるのかなという気持ちをかなりの層が抱いたと思うのです。マスコミもそうだったと思うのです。しかし、だんだん議論が国民的規模で進み、いろいろな分野で、一体これは、何か解説や説明はあるけれども、何だ、つまるところは、労働基準法で最低の基準として規定され、五十年間持ち続けてきたあの女子保護規定というのを撤廃することか、これをなくすことだ、えらい大変なことだというようになってきたのだと私は思うのです。マスコミもそうなってきました。女性労働者の中での議論はまさにここです。  労働組今いろいろありますけれども労働組合の中でもこの議論が盛んだし、知識人や文化人や法曹界でもこの問題に絞った状況になってきている、これが現実だと思うのです。したがって、私は、女子保護規定撤廃するというこの問題に限定して質問をしたいと思うのです。  労働大臣は、かなりもう年配で、私より少し若いのですけれども、終戦のときにもうかなりの記憶があったと思うのです。あの終戦のとき、どんなことを思ったか。  戦後、憲法が制定され、そして今の労働基準法制定されました。あの戦前の日本の労働運動という点では、ないのですから、労働者がどんな状態に置かれていたか。労働条件について肌でつらさを感じても口に出すことができなかったと思うのです。ここまで出ても言えなかった。もし言ったら、それはアカだと言われた。危険思想だと言われた。国賊だと言われた。労働組合をつくる自由すらなかった。これがまだ五十数年前のことですよ。そして、女性には、きょう参政権の話もありましたが、参政権はなかったのです。男も、選挙権はありました、しかし全部ではありません、所得の少ない人には選挙権はなかったのです。  そういう中で進められていたのは何だろう。大臣からも最初に、あの女工哀史の話も出た。これは確かに日本の女性が戦前戦中味わった苦痛ですよ。男性は戦場に駆り立てられた。これも事実だ。労働強化などというものじゃなかった。これも大臣は御存じだと私は思うのです。これはいろいろ解釈はあっても、歴史の事実だから変わらないのです。  そういう血の出るような苦難の中から憲法が、そして基準法ができた。その基準法の中に女子保護規定が盛り込まれた。あのときの感情を私は思い出しますよ。大臣もそのときを思い出していただいて、この労基法による女子保護規定というものがどんな役割を当時果たし、どのような思いを人々に与えたか。そのときの気持ちを簡単に話していただきたいと思うのです。
  252. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生より私の方が若干年が下でありますので、その労働基準法ができたときの先生が体感をされたような喜びというものは、まだ私、旧制高等学校の学生でございましたので、先生と同じような喜びをともにするという経験はございませんでしたけれども、やはり終戦八月十五日によって日本は大きく変わった、おれは死ななくてもよいということになったということだけは非常に痛感をいたしました。
  253. 金子満広

    金子(満)委員 今の気持ちは大変大事なことだと思うのです。これをぜひ持ち続けていくという立場から、私はいろいろ聞いていきたいと思うのです。  女子保護規定というのは最低の基準なんですね。これ以下はないのです。最低基準というのは、情勢や状況がどのように変化しても守り抜かなければならない。それは行政にも大きな責任があると思うのです、労働省というのは戦時中はなかったのですから。労働省の基本的な任務というのは、労働基準法に決められた最低基準を、労働者はもちろんですけれども使用者側も、政府自身も守っていかなければならぬということだと思うのです。私は、労働省も当然これまでこの女子保護規定を守るという立場をとってきたと思う。  ここに、これは三年前の一九九四年三月十一日付の労働省基準局長と婦人局長の連名の通達があります。これは今の局長さんではありません。前任者であり、そして労働大臣もそのときは大臣ではありません。これは九四年の四月一日から、弁理士と社会保険労務士を女子保護規定から外して、深夜も何もできるということになった年なんですね。それに関連して通達を出したわけなんです。一部を外したけれども、原則はしっかりしていますという内容がここにあります。  その部分だけちょっと読ませていただきますと、この二つを除き、その他も若干あるのですけれども、  その廃止ないし緩和を一定範囲にとどめたのは、我が国においては家事、育児等の家庭責任が女子労働者により重くかかっているという現実を考慮したものであること。 としっかり書いてあるのです。午前中の婦人局長 の話の中にもありましたが、現在夫が家事に参加する時間は七分だというお話がありましたけれども、私はこういう点の指摘は正確だったと思うのです。三年前と今とは変わっていないと思うのですね。  そういう中で、端的に基準局長に伺いたいのですけれども、この考え方は今も生きているのだと私は思いますが、どうでしょう。
  254. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 家事労働等が女性に大分偏っているのではないかという御指摘でございます。  私ども、そういった事実が多分にある側面は、自分自身の経験からも否定はできないかと存じております。ただ、今回の均等法改正で、そういった女性の方の活躍の場がそういうものを通じてさらに広がっていく。そういう中で、勤労者全体がそういったことについていろいろ考え、まだそういうパターンも変わってくる。今そういう時期であろうというふうに思っております。  したがいまして、先ほど来申し上げておりますように、中央労働基準審議会の方でも、時間外労働、休日の労働あり方については、やはりそういった面一的な、直接的な規制ということはなかなか慎重でなくてはいかぬにしても、そういったものをこれからどう考えていくのかということについては、既に議論は始まっているところでございます。
  255. 金子満広

    金子(満)委員 だから、この通達は死んだとは言えないのです。これは言ったら大変なことになりますね。現在の女子保護規定は生きているのですから、死んだとは言えないのです。  ですから、実際はどうかというと、死に体になり始めているのではないですか。そのあかしがこの委員会でも提案され、大臣から説明がありました。その中の一節をちょっと、二行ばかりありますが、読んでみます。今度の法律案の中の大事な一つは、  女性労働者に係る時間外・休日労働及び深夜業  の規制について、女性職域拡大を図り、均  等な取扱いを一層進める観点から、解消するこ  ととしております。いいですか、女子保護規定解消することにしています。なぜか。女性職域拡大を図り、均等な扱いを進めるためだというのがここにある。  ですから、基準法に基づくこの女子保護規定は大事です。先ほど申し上げたとおり、今は我が国においては家事、育児等の家庭責任が女子労働者により重くかかっている。これを守っていけということとこれとはひっくり返しなのです。ひっくり返し、白と黒です。そういう天地の差がここに出てきている。これはもう歴然としているのですね。  しかし、それだけではないと思う。女子保護規定機会均等、男女平等のために妨害であるという表現なのです。解釈はいろいろあっても、そういうふうにとるのです。だから、法曹界でも猛烈な批判、反対が起こってくるのです。重大問題であります。ちょこっとやるようなことではないのです。  そういうようなことを考えたときに、通達とは全く逆の立場を、労働省みずから出しているのですから、いつから変わったのか。その変化した時期をちょっと聞かせてほしいと思うのです。
  256. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  女子保護規定は、女性労働者労働条件、社会的条件が非常に低かった労働基準法制定当初は、年少者と同様に弱者である女性を保護するという意味合いが強く規定をされてきたと思うものでございます。  そういう低かった時代には、それなりの合理的な意義があったというふうに思うわけでございますが、最近の社会経済の状況、それから女性労働者就業実態、職業意識等の大きな変化を踏まえましたときには、女性労働者に対する時間外・休日労働、深夜業の規制につきましては、先生のお言葉の繰り返しになりますけれども、やはり男女職域拡大、それから均等取り扱いを進めるという点から、解消すべき時期に来たというふうに認識をしておるわけでございまして、これは、昭和五十九年の婦人少年問題審議会の建議においても、原則としてはそうあるべきだというふうに言われておりますし、昨年いただきました建議、答申においても、もうそういう時期に来ているということで、婦人少年問題審議会かちの御建議をいただいたものでございます。
  257. 金子満広

    金子(満)委員 婦人局長、私は意地悪して質問するつもりはないのですけれども、違うと思うのです。事実も違うと思う。  例えば、かつてのひどい時期と、女性労働者の立場というのは大きな変化がある。これは、女子保護規定があるこの労働基準法もとで広がってきた職域拡大なんです。労働大臣も、十年この方随分変化があったと言いました。十年この方あったのは、つい三年前まで、通達に言われるように、女子保護規定重要性を強調してきたのです。その中で、ああ、重い労働ではないな、深夜働くことはしなくてもいい、年間を通じて百五十時間以上は、女性にはこの時間外労働、残業は強制されないのだという中で広がってきたことなんです。  それを一面からだけ見るのは正確ではないし、それからもう一つは、婦人少年問題審議会、婦少審の全会一致という意味があると思うのですが、その建議があった。これはたしか去年の十二月ですよね。だから、十二月にあるということは、それ以前に審議はやられておったということです。  いいですか。そうすると、十二月、婦少審の建議に基づいてやりました、そして法律が出ました。ここで何か、婦少審を金科玉条というか、最高の権威のあるところに持ち上げてしまうのです。だめなんです、それは。既に、これはもう私ども資料でいただきましたけれども、去年の三月二十九日に閣議決定で「規制緩和推進計画の改訂について」という分厚い計画公表されているのですよ。  この中で、女子保護規定をどういうように労働省が扱ったか。「労働時間等」という規制緩和のところで、女子の時間外労働、深夜労働規制を外していくというのが規制緩和で、閣議決定ですから、労働大臣岡野さんじゃないですよ、これは前の労働大臣ですから、そのときに決定をしているのですね。そして、この問題を、婦人少年問題審議会審議が必要だというので、去年の三月ですから、そうして提起しているのじゃないですか。自分で提起をしておいて、婦少審が決めて全会一致だからこうです、こんな人に責任をなすりつけるようなことは通らないと思うのです。  だから、そのとき間に合わせて言ってはいかん。そのときそのときで支離滅裂になってしまうのですね。それで、その犠牲を全部こうむるのはだれかといったら、女性労働者であり、日本の労働者であり、そして日本社会全体がこれをかぶるわけです。ですから、一つのものをやるときには十分意見を聞いていかなければならぬ。  何でこんなことになったのか。だれが頼んだのですか。だれが保護規定をやめてくれと言ったのです。これは、この国会の初めのときから随分出ました。そして、その点について私どもは、よく武藤嘉文さん、総務庁長官の言葉を引用させていただきました。これは予算委員会に対する答弁です。  これは二月二十七日、衆議院の予算委員会において、我が党の石井議員が質問したのに対して、武藤さんはこういうふうに言っているのですね。  例えば日経連であるとか経済同友会であるとか、あるいは日本自動車工業会であるとか、あるいは日本鉄鋼連盟であるとか、どちらかというと産業団体中心であったと私は聞いており  ます。こう言っている。そして、六日に本会議でこれが提案され、労働大臣が趣旨を説明しました。  翌朝、ぱっと新聞を見るのです。新聞は何て書いてあるか。これは読売新聞ですね。「変わる女性労働環境」、歓迎一色の経営陣と書いてある。それで証明していますね。経営者は一様に保護撤廃を歓迎している。括弧つきで、これは引用です から、「残業や深夜業の解禁で女性雇用しやすくなり、採用は確実に増えるはず」だ、日本経営者団体連盟の荒川労務法制部長。ちゃんと発言まで出ている。歓迎しているのはこっちなんですね。こうなることを予想している企業はいっぱいあるのですね。  例えば、これは日本経済新聞です。一月の二十九日の夕刊です。この女子保護規定撤廃されればどういうことになるか。「トヨタ自動車は」、次が引用の内容です、これは人事部の話です。「「現行法では夜勤ができない女性採用を控えてきたが、深夜業が解禁されれば女性が使いやすくなり、採用はもっと増えるはず」(人事部)」と書いてある。これは何を意味するか、だれが考えてもすぐわかるのです。  これは、二十四時間のフル稼働の生産ラインに女性を組み込んでいくということなんですよ。これはもう、うんと簡単です。これをやりたいために、随分やってきたと思うのです。それをだんだん受けて労働省が、閣議のメンバーですから、閣議決定で規制緩和の中に女性保護規定内容を入れた。そして、出てくるときにはまるで、厳正中立の婦少審が全会一致です、そこにつけ加えると、労働組合も賛成です、こう言っている。  その労働組合の代表は、言わずとわかっているわけですけれども、連合です。その連合の中の女性労働者が一番いるところのゼンセン同盟が反対を表明しているのじゃないですか。全国の労働組合もたくさん反対をしているのです。  こういう状態を考えたとき、私は思うのです。いろいろのことが言われる。確かに、平等だとか均等だとか同権だとか、何か言えば、差別をなくしてこうだと言うのです。反対する人、だれもいないのですよ。それは真理だからないのです。しかし、それが現実にあるのかといっならないから、なるほどと思うのですね。  ところが、現実と理想とがこんがらがった演説、解説が多いです。ごちゃごちゃになるのです。だんだんそれにつり込まれて誘導されていくとどこへ行くのですか。平等で差別はなくなりますとずっといったら、長時間で過密労働で過労死にまで通ずるような土俵の上に上がってしまうのです。  そういう長時間、過密労働、過労死に通ずるような今の日本の労働条件、男性の労働条件と、そういうところへずっと下げて、女性もどうです、平等ですよ、均等ですよと。私は口が悪いから、言えば本当に地獄で一緒になるようなものだ。地獄の均等みたいになってしまうのだ。そうではなくて、別なことを考えなければならぬ。  説明は幾らもできると私は思うのですけれども、今必要なのは女子保護規定廃止することじゃないのです。その女子保護規定の中で女性職域拡大してきたのです。  確かに女性労働者の数もふえてきた。そういう中で今やることはどうか。あの女子保護の内容はぜいたくかどうかと言うのですよ。あんなところまで保護して、女性にはうんと甘いのだ。私はそうじゃないのだ。今、日本の労働基準法にはっきりと位置づけられている女子保護規定というのは常識なんです。ヨーロッパはそうじゃないですか。例えば時間外、女子保護規定では百五十時間、フランスは百三十時間、男女ともそうじゃないんですか。この間の読売新聞にも大きく出ています。深夜、スウェーデンは原則的に夜中の十二時から朝の五時までは深夜は禁止なんです。特別の仕事をする人は例外であることはもちろんです。  そして、何かというとよく出てくるのは、妊娠出産育児のことについていろいろの手だては講じてあります、そのとおりです。これは確かにあるのです。なかったら大問題だ。それでは育児の点で見ると、就学前は、六歳まではいいのですよ。過ぎたらどうです。これはもう学校の先生の中でも大問題になっているのです。一年生に上がったら留守番するのですか。お父さん、お母さん帰してください。これは当然出るのです。ところがドイツでは十二歳まで、申請すれば男でも女でも平等に法律で与えているじゃないですか。  だからそういう点を考えると、私は、今女子保護規定をなくすのではなくて、最も先進的で進歩的で合理的な世界の常識をまず日本の男女共通の労働時間として制定することが先だ。これをやらなければ、よく大臣の言うゆとりある生活に絶対にならないのです。そして、今の女子保護規定に含まれているような内容基準にして男女同一の共通の労働時間の規制ができれば、おのずから女子保護規定の問題は解決つくのです。悪い方へ水準を合わせるというのは、この際きっぱりと断るべきだ。  これまで戦後ずっと労働大臣幾人もあったけれども、私は最初にお伺いしたように、あの終戦の中で今の労働基準法ができたとき心から喜んだという、それを今この時期に、岡野さんが労働大臣のときにこういう変なものは拒絶した、なくした、そして財界に対しても胸を張ったということが言えるようなことをやったらどうかと思うのです。そのくらいの度胸がなかったら今のこういう危機を救えないのですよ。  だから、私はそういう点で堂々とやるのならいいですけれども、いろいろ言うのだけれども、何だかこれは押しつけるだけの話じゃないか。だとしたら重大問題になると思うのですね。そういう意味で、ちょっとこれは大臣に伺います。
  258. 岡野裕

    岡野国務大臣 金子先生、長年の実践経験の中からのお話として承っておりました。ただ、先生、戦後五十年たちました。基準法は二十二年にできたので、本当に五十年たったということでありますが、日本全体がこの五十年の間にどういうふうに変わってきたかということだと思います。  外国の例もお話しになりました。アメリカという国はやはり十九世紀から二十世紀の半ばまではモンロー主義、これはむしろ政治、外交の面でのモンロー主義でありますが、そういうことでございました。しかし、第一次大戦にアメリカは欧州に出兵をいたしました。これで第一次大戦は、ソ連で大きな革命が起きたことも原因でありますけれども、言いますならば第一次大戦は終わりました。それをきっかけとしてアメリカはモンロー主義を全部やめて、どんどん世界にアメリカ外交ということで出ていくことになりました。国際連盟をつくろうではないか、あるいは国際連合をつくろうではないかというようなことで、アメリカとしての政治方針ががらっと変わりました。  日本も、戦後はまだ産業が、本当に空襲空襲でたたきのめされて何にもできませんでした。しかしながら、一億の国民は食べていかなければならないというようなことで、保護産業行政というものをやってまいりました。その保護産業行政をやっている間はやはり貿易の自由開放というわけにはまいらぬので門戸を閉ざすというようなことをやってまいりました。しかしながら、そのうちにどうやらこうやら日本の産業も、その質においてあるいは価格において、世界のいろいろな国々と相拮抗して売れるようになりました。そうしたら、ガットを中心としてどんどん貿易は自由化すべきであるというようなことに市場は変わってまいりました。  同じように終戦直後の女性というものは、先生も私も同じ話をいたしましたけれども、女工哀史だとか何とか部屋というようなまことにけしからぬ言葉もあったほどの実態でありました。しかし、憲法ができました。刑務所に入れられるというような例外を除いては、憲法の条文で苦役に服することはないというような定めになりました。  そういうような中で女性の皆さんもだんだん育ってまいりました。今日の時点では、なるほど先生のお考えのような方があるかもしれません。しかしながら、例えば私のところなどでも、放送会社に入りたい、新聞社に入りたいという大学生の諸君いっぱいあります。放送に入るということになれば、そんな深夜労働はできないなどというのは邪魔っけであります。幸いにして言論界は、深夜労働も解禁だ、さっきお話が出ました看護婦さんと同じようであります。新聞社も夜勤は嫌だなどと言っていたらスクープはできませんという ようなことであると同じように、あえてそういった深夜労働も、それから超過勤務も休日労働もやろうというような女性の皆さんがどんどん輩出をしてきた。  これは先生と違う考え方の方もおいでになるのだというような意味合いで、私どもは今度ルビコンを渡って、女性としての差別というものを完全に追放しよう、母性だけを保護してまいろうということになりましたので、そうだとすれば、そういった禁止されているがゆえに希望している職業につけないということではいけないのではないか。そこで、職業の選択をすればそういう必然はない分野だってあるわけでありますから、我々としては、女性が男性と同じように自分の希望する職種に、自分のやりたい仕事につける、仕事がやれるというようなことにしようということで、私はあえて男らしくこの法律を提案申し上げた次第であります。  どっちが男だかどっちがだらしがないのかわかりませんけれども、幸いにして与党三党の合意もいただきまして、それで各会派の諸先生に御審議をいただいている次第であります。私どものこういう意思をひとつ御理解を賜りまして、十分慎重な御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げる次第であります。
  259. 金子満広

    金子(満)委員 いろいろ演説を聞きましたが、日本はどう変わったかという点で言えば、国際的にだれでも知っているのですね。世界で長時間労働の国はどこだろうと言ったら日本とみんな言います。これはヨーロッパへ行っても間違いないです、私も何回行ってもそうなんだから。そしてカローシと日本語で言えば全部通るのです。これは大臣、行ってみればわかるのです。職場の労働者のところに行ったって、カローシという日本語をちゃんとそれぞれの国の言葉の中で言ってくれますから、前後は違いますけれども。こういうようになっている。  よく三六協定の話があります。三百六十時間だ、こういう目安がある。外国へ行って話しても全然通じないのです。目安というのは何ですか、こう言うのです。法的に規制がありますかと言ったら、ないのです、努力目標です。やらなかったらどうするのですか、何にもありません。こういうことじゃないですか。目安といったら江戸時代の目安箱ですね罰則なんかありはしないのです。だから、青天井になっているということはもうこれは世界でもだんだん知ってきているのですね。  言われるように、確かに、女性労働者も徹夜で深夜も働くことができる、職域拡大したのだ、それはそうなるでしょう。言葉でなるのです。  しかし、今度は逆の面から見ると、使用者、事業主はどう見るか、すべての労働者というのはもう時間外も深夜も業務命令でやらせることができると。女性労働者の方は拒否権はありません。それは、法的に保障されていないというのは、七日の委員会大臣基準局長の方からも出ておるわけです。法的にはないのです。業務命令だけは通るのです。拒否したらどうなるかというのは皆さん御存じのとおりです。だとしたら、職域はこれでどんどん拡大するという一部分はあるのです。しかし、多くのところは、耐えられなければそこから下がる以外にない、パートに行く以外にないのです。これはもう多くの識者が指摘しているのですね。私は、それほどにこの女性労働時間、労働条件というのは大事だ、一時的なものではない、人生そのものにかかわる。  だから、七日のこの委員会で、他の委員の質問に対して、婦人局長も、スイスの問題で照会中だというお話がありました。私は、スイスが非常に重大な問題の提起だと思いました。日本共産党は赤旗の記者を派遣いたしました。そして全部取材いたしましたよ。あのスイスで、女子の深夜の問題を解禁するという決議を国会がやったのは三月ですよ。大問題になった。決まったからこれでいいよ、そんなこと全然言いませんよ。そして、国民投票にこれをかけたじゃありませんか。そして、国民投票にかけた結果、否決された。それほどのでかい問題なんです。  ですから、三年前までは、基準法に言われている女子保護規定は大事だから守っていきなさい。三年たったらけろっと変わって、これが障害で、これで男女の均等は破れますから解消します。いや、それはどこから出てきたかといえば、婦少審の全会一致です。尋ねてみたら半年以上前に閣議決定しているじゃないですか。これが手のうちなんです。スイスのやり方とまるで逆じゃないですか。しかも、皆さんの一人一人の生活ならいいですよ、失敗はそれで済むのだから。しかし、日本の全女性を対象にしてこれがあるのです。だれかが正義の声を上げなかったら、みんなおじぎしていたら大変なことになると思うのです。  だから、皆さん、そういう意味では、この請願、陳情がどんどん多くなってきているけれども、もう今は、均等法でこうなっている、そういう方向は余りないのですね。もうこの瞬間に来たら、国会はすぐもう結論出して、採決してすぐ参議院に送って、今国会中に仕上げて、そんなこと言ったら、新聞ではないけれども、喜ぶのはそれはもう財界であり、経営陣からは万歳だ、よくやってくれたという声は出ると思うのです。  しかし、私は、そういう点を、あのスイスなどの例も、労働省はもっとこういう問題については、行かなくたってわかるのですから、大使館もあるのだもの。スイスはおくれた国じゃないのですよ、科学や技術や教育の点でも進んだ国になっているのじゃないですか、電話ですぐわかるのですよ。だから、この間照会したといえば、これは意地悪で言うわけじゃない、なければいいですけれども、きょうあったら。スイスが、そのくらい女子労働者の深夜の勤務というものが深刻な問題だと、きょうあしたじゃなくて、未来にかかわる問題だと言っているのですから、私は、そういう点について見なければならぬ。私どもはそれを全部検討して、私どもの新聞の赤旗にも出しました。「小さな国の大きな決断」だ。「欧州一労働時間の長い国で」こういうことをやった。「生活破壊はもうたくさんだ」。労働組合も教会もスポーツ団体も一緒にみんな反対をしたと。  言えば、皆さんの方から出てくるのはわかっているのです。国によって事情が違うというのです。それはそのとおりだ。歴史が違う、そのとおりなんです。しかし、女子労働者労働条件については違うとは言わないのです。同じなんだ。だから、変なところに理由をつけて、ああだこうだ言ったのでは、私はとんでもないことだと思う。  若干長くなるけれども、もう一つ私は紹介したいと思うのです。  日本弁護士連合会が反対を声明したのは御存じのとおりです。全国の弁護士会もそうです。東京の弁護士会や大阪の弁護士会も、千葉の弁護士会もみんな反対を表明している。ここに第二東京弁護士会の会長の鈴木誠さんの会長声明がある。読んでいたら私は繰り返して読みたくなった。   法案は、労基法上の女性に関する時間外・休日労働、深夜労働規制の全面的撤廃内容としているが、当会はこれに賛成できない。   当会は、両性の平等を実現するため尽力してきた。両性の平等は、男女がともに仕事と家庭とを両立させ、家庭における責任を果たすことを一つの目的とするものである。したがって、長時間・深夜にわたる労働のため、仕事と家庭とを両立させることが困難な現在の男性の労働条件に、女性労働条件を合わせることは不適当というほかない。   ヨーロッパでは、男女ともに時間外労働、深夜労働規制を定める国が多く、たとえばドイツでは男女とも原則として一日の最長労働時間を十時間、時間外労働日数を年間六十日間、また、深夜の労働時間の制限などの規制を設けている。  これは飛び抜けてやっていることじゃないのですね。これは日本でやれといったらできると思う。経済大国だと言われるくらいですから、力もあるのです。やる決断をだれがするかだ。経営者はこれに絶対反対しますよ。反対運動をどんどん やると思うのです。しかし、労働条件についてはヨーロッパの方が進んでいることは、日本の労働基準法をつくるときに諸外国の例を取り入れてやっているのだから。日本の例を取り入れたというのはまだないと思うのですね。  私は、そういう意味で、もう日本の労働条件、こういうものを外国に輸出するようなことのないようにしたい。私の前に質問した民主党の方の中にもありました、アジア諸国が日本のこの労基法の改悪について懸念を持っている、英文の手紙だと。私のところにも来ました。うんと来ましたよ。日本の企業が進出をする、工場誘致した国は、その進出のために団地を提供する、そこで仕事をしたときに、採用してもらうためには、今までは自分の国の労働法規を適用してやってもらったが、今度は遠慮しますというのでそれを引いてしまう、日本の労働法規でやられます、今度は夜中まで働かせます、そして時間外については割り増し金が低くなります、みんな書いてあるのです、それ。そういうことを現実に言っているわけだ。  だから、私は、本当に国際貢献をするのだったら、これをこのように変えるのではなくて、現状を維持すると同時に、男女共通のそれこそゆとりある生活ができるような労働時間の規制を法的にやること、法整備することが先決だ、順序が逆さまだと思うのですよ。中基審でいろいろやると言っているけれども、やっているのだったら、そっちをやってからこっちを決めればいいのです。そうでないから食い逃げされてしまうのです。喜ぶのは女性労働者ではなくて、そういうことになるわけですから、この点も、これは大臣に聞くのが一番いいと思いますけれども、日本の問題だけじゃない、国際問題にまでなってきているのだから。その点どうですか。
  260. 岡野裕

    岡野国務大臣 日本の生産拠点が外国へ出ていく、そこでもって成功するのにはやはり郷に入っては郷に従えというようなことで、その企業のやりぶりというのは、例えばボランティア、日本にはそういった考え方の土台がなかったが、外国へ行くと、一般企業は、ボランティアというものがあって初めて社会的評価ができて、そこに地盤をつくることができる。したがって、盛田さんではありませんけれども、そういった意味合いで、外国へ行ったら外国の周りに倣わなければだめです。これは、日本に来たのだから、日本はこういう制度だからそこの国もそうせよというわけにはまいりません。池田外務大臣が答弁をされましたけれども、そこの国の法律に従って、企業は、生産活動なら生産活動をやる、それから、法律以外に、その風土の中で慕われるような、その中で育つような、そういう営みをやらなければなりません。  深夜業ができる、超過勤務ができるというようなことでありますが、やはり経営者は、労働者雇用者の諸君と一体になって初めてその企業も栄えるわけであります。深夜労働ばかり連続的にやっているようなところで、どうして、雇用者の諸君が一緒に仕事をやろうという気になりますか。私は、女性のために門戸を開こうという意味合いでこの法律案を提案したわけでありますけれども、深夜業ができるようになったから、深夜業だ深夜業だ、そんな工場はつぶれるでしょう。  そういうことで、お互いに、女性の今までの差別というものを解放するということに力点を置いて、ひとつこの法律案というものを御審議を賜りたい。
  261. 金子満広

    金子(満)委員 いろいろ話を伺うわけですけれども女性の問題だけではないのですね。これは、大臣局長の方からもお話があるからわかっているのですけれども、深夜労働というのは女性の健康だけではない、男性も同じだということは言われているのです。だから、諸外国では男女共通の時間規制をするわけです。いかに日本が勤勉だといっても、徹夜して健康になったなどという人は絶対にいないのですから。これははっきりしているのです。  だとしたら、男女とも規制をどうするかという、そこでルールをつくらなかったらだめなんですね。夜中でも働くようになるから今度は職域が広がりましたよと女性に向かって言ったら、いいですねなどと言う人はいないのですよ。今だって、働きたい人は、その職種によってはちゃんと道はあいているのだから。それを全部に広げようとするのは、女性労働者の要求ではないのです。これは使用者側の要求だ。いかに話し合いといっても、そこのところがつかないことはもう歴然としているのですからね。  そういう意味で、どうか、大臣のよく言う言葉で、何回もあるから私は記憶しているのですけれども、豊かさを実感しながら働ける勤労者生活の実現というのは、大臣、随分使っている言葉ですよ。これをするために労使の話し合いがつくのだったらこんな簡単なことはないのです。だから、法律的に最低の基準を決めるという意味で、女子保護規定撤廃ではなくて、男女共通の労働時間規制をやることが先決だ。これをやれば、その水準に今の女子保護を入れれば問題は自動的に解決がつくのですから、このことを最後に発言をし、そしてまた、この続きは、あとまだ審議が後日ありますから、やらせていただきます。  以上です。
  262. 青山丘

    青山委員長 これにて金子満広君の質疑は終了いたしました。  次に、辻元清美君。
  263. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党・市民連合の辻元清美と申します。  また、きょう私が一番最後の質問者になりますが、今から三十分です。  私は、働く女性で一番身近な女性はうちの母でした。うちの母は、一九三八年、昭和十三年に生まれています。小さいときから、ずっと働き続けてきた母のもとで私は育ちました。  どういう状況で働いていたかという話を一番最初にしたいと思うのですが、父は小さな店を経営しておったのですね。洋服屋をやっていました。それで、第一次石油危機とかありまして、何回も店がつぶれました。そのたびに母はパートに行くわけです。これは、よく、共働きの家といったら、両方ともサラリーマンの家、会社に働きに行く夫婦のイメージを持たれる方も多いと思うのですが、うちみたいな場合は、店をしておったわけです。そしたら、父は朝から晩まで、とにかく夜遅くまで、在庫の確認やなんやかやしなければ競争にというか、近所にもいっぱい店がありますから、やっていけないわけなんですね。商店というのは非常に不安定ですから、石油危機が来たらつぶれるわなんやらあるわけです。そうすると、母もそれを補強するために働いていたわけなんです。お店も、人を雇えたらよろしいですけれども、ちっちゃな店というのは一人でやっているわけですね。ですから、父親が分担で店をしている場合、子供の面倒というのはほとんど見られない。そういう家は今でもあると思うのです。  母は幾つか保険会社で働いたりとか工場に行ったりとかして、そういういろいろな事態が起こるたびに家計を支えるために働いてきました。私はそういう母親を見ながら、働く女性として毎を非常に誇りに思っていた一方、子供のときにつらかったのです。それはなぜかというと、ずっと小学校六年、中学三年、今も働いていますけれども、まず御飯を一緒に食べられないというのはすごくつらかったのですね。それはどういうことかといえば、私は小さいとき、学校帰りに近所の飲食店に自分の晩御飯を注文して帰るのですね。出前が来て弟と二人で食べていたというような、そういう体験も随分持ちました。  そういう意味で、女性が働くということは、働く母を誇りに思い、自分も働く女性になりたいと思いながら、子供のときは随分やはりつらくて、時々母親が早く帰れて御飯をつくってもらえるのは、唯一の楽しみというか、すごくうれしかった。そういう母によく聞くわけですね。残業もあるし、もっとはよう帰られへんのか。そしたら、いや、はよう帰ってきたいねんけど、自分だけちょっと残業していうのを断ったら、仕事やめさ せられるかもしれぬし、何か、やっぱりみんなやっているわけやから、自分一人いうのがどうも言いづらいというような話も随分聞きました。  それは、そこで勇気を持って、いや、こういう権利があるからこうしようというふうに言わないと、女性の地位といいますか、権利が拡大していかないということは私もよく理解しているのですけれども、そういう実態というか、そういう中で育ってきたということを最初に申し上げまして、そういう経験から、今回の法改正が――今私が申し上げたような事例というのは、二十年ぐらい前だからといって、今二十年たったから減ったかというと、そんな激減はしていないと思います。  先ほど大臣がおっしゃったように、例えば新聞社で働きたいとか、どこどこの会社の専門職でばりばり働きたい。私もそのタイプですから、ばりばり、大臣と私は多分平等に働いていると思うのですね。そういう意味で、そういう人がふえてきたという現状もあるのですが、今申し上げたようなタイプの働き方の女性が半分に減ったとか、三分の一に急に日本で減ったかといったら、そうではないように私は現状を認識しているのです。  そういうもとで、幾つか御質問させていただきたいと思います。  まず大臣にですけれども、今回の均等法改正の出発点は、一九八四年に婦人少年問題審議会の建議、これを踏まえて、そこを出発点にして今回に至っているというふうに聞いているのですが、この状況認識はこれで正しいのでしょうか。まずそこからお聞きしたいと思います。
  264. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生のおっしゃるとおり、この建議に端を発して今日に至りました。
  265. 辻元清美

    辻元委員 そうしましたら、ちょっとこの建議について幾つか吟味させていただきたいと思います。  この建議、こういうくだりがあります。   女子労働者就業実態・職業意識我が国雇用慣行、労働時間をはじめとした労働条件労働環境、女子が家事・育児等のいわゆる家庭責任を負っている状況、女子の就業家庭生活との両立を可能にするための条件整備の現状、女子の就業に関する社会的意識等の我が国の社会、経済の現状を十分踏まえたものとすることが必要である。というふうにその中には載っております。  この中に出てきます一つ一つのことについて質問させていただきたいと思うのです。  まず、この中で、女子労働者就業の実態を踏まえるということが書いてあるのですけれども、特に女性にはパート労働者が多いと言われておりますが、この理由はどういうふうに労働省の方では分析されているのか伺いたいと思います。
  266. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 パート労働者は最近増加傾向にあるわけでございますけれども、調査をいたしますと、まずは女性たちの方から、時間帯が短いので働きやすいのでパートで働きたいというような御意見が一番多くなっております。
  267. 辻元清美

    辻元委員 わかりました。  次に、こういうくだりもあるのですが、女子が家事、育児等のいわゆる家庭責任を負っている現状を十分考慮するというようなこともあります。この中には、午前中の質疑でしたか、先ほどの方もおっしゃいましたけれども、男性が家事を負う時間のデータでは七分というのを聞いて、私、もうちょっとふえているのかなと思ったのですが、びっくりしましたけれども、この現状というのは、状況というのは非常に厳しい。女性にとっても厳しい状況にあるもとでの法改正であるということを確認できるでしょうか、いかがでしょうか。
  268. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 先ほど申しました七分というのは、総務庁の社会生活基本調査でございまして、平成三年の数字でございます。かなり時間がたっておりますので、最近の若い方々の状況から見ると、もう少しふえているのではないかと思いますが、だからといって非常に著しくふえているとは想像できないと思っております。
  269. 辻元清美

    辻元委員 ということは、やはり現状では女性に対する負担は非常に多いという認識で間違いはないかと思うのです。  先ほどパート労働者がふえているという御発言がございましたけれども、時間がある程度自由に使えるというところでふえているという御答弁であったし、私も同じような認識なのですが、その理由の中には、やはり子供に対して十分な配慮をしたいとか、それから介護を分担しなければいけない、そのためにはある程度自由に時間がとれる、もしくは申し出られるような、そういうふうな環境で働きたいというそのあらわれではないか、この実態と重ね合わせて考えると、私はそのように思うのです。  そういう中で、さらにまた建議の中の文言にこういうのがございます。「女子の就業家庭生活との両立を可能にするための条件整備」、ここのところをよく考えながら法改正をしていこうではないかという姿勢がこの建議にはあらわれていると思うのです。  そこで、今回の改正案について具体的に幾つか、では、この条件整備という点で不十分さはないのかどうかという点を御質問させていただきたいと思います。  まず、育児または家族介護を行う労働者の深夜業の制限ということで、小学校就学前の子供を有している女性労働者という話があります。先ほどの方も質問されましたけれども、私、自分の経験もそうなのですが、小学校前といったらすごく小さい。小学校に入って一年、二年、三年ぐらいまではなかなか自分で自分のことはできないしというふうに、子供を育てたことがある方、もしくは御自分の子供時代を思い出していただきましたらそういうふうに思われる方が多いのではないかと思うのですが、この六歳というのはどういう根拠で決められたのか。ただ就学前だからとか、いや、何となく皆が納得するからとか、そういうのではなくて、何かやはり法律で決めていくということは客観的な根拠、合理的な根拠があって数字を出されていると私は理解するのですが、この根拠をお示しください。
  270. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 今回の深夜業の解消に伴いまして、育児介護休業法の中で、六歳までの子がある、これは男女労働者でございますが、深夜業を請求権としてしないことができるということにしたわけでございますが、実は育児休業法自体が六歳までの子供に対しましてはいろいろな努力義務を課しているという、そういう法体系のもとにございますので、今回、育児介護休業法改正という形でありますので、六歳までとさせていただいたわけでございます。
  271. 辻元清美

    辻元委員 そうしましたら、今回見直すに当たって、何か改めて統計をとるとか、さらに再調査をして、この際それが妥当かどうかということを見直されたとか、そういうことはないのでしょうか、改めてやられることは。
  272. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 同一の法体系のもとでございますので、やはりそういうことなんでございますけれども、通常、子供が学齢に達するころには育児負担が相当程度軽減されるというふうに考えられるわけでございまして、育児休業制度等に係る事業主努力義務の対象となるのも、そういう学齢に達する――まあいろいろ考え方があろうかと思いますけれども、学齢に達するころには育児負担というのは相当程度軽減されるということで、小学校就学の始期に達するまでの子ということで整理をさせていただいております。
  273. 辻元清美

    辻元委員 私は、ここのところは十二歳までというふうにした方がいいのではないかということを、ここで主張させていただきたいと思います。  それと、さらにあと何点か、この条件整備ということで伺いたいのですが、もう一つ、育児介護を担う男女労働者について、深夜労働に対する免除ということがございますけれども、時間外・休日労働にも私は適用させた方がいいのではないかというふうに思うのですが、これはどういう理由で適用外というふうになったか、その理由はいかがでしょうか。
  274. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 時間外・休日労働につきま しては三六協定が結ばれることになっておりますので、そこにおいて配慮していただくことが可能なわけでございます。
  275. 辻元清美

    辻元委員 それから、あと二つ具体的なことをちょっと伺いたいと思うのですけれども、時間外労働で、正当で合理的な残業といいますか、してほしいという使用者側の要求があった場合は、これは拒否できないというふうな御答弁が一昨日もあったかと思うのです。例えば、私、ちょっとこれはなかなかぴんとこないのですが、当日、残業で残ってくれないかとかというのは現場では結構よくあるのですが、そういうケースの場合は正当な理由になるのでしょうか、どうなんでしょう。
  276. 岡野裕

    岡野国務大臣 やはり、そういった細かなところは労働契約等で労使が話し合って、超過勤務命令だとか休日労働だとか、いつまでに申し込むのだとかいうのを決めているのがやり方としては一番ふさわしいか、こう思っております。
  277. 辻元清美

    辻元委員 ということは、労働省の方では、その合理的な理由というところは、こういうのは合理的でこういうのは合理的ではない、合理的ではないというケースについての何かガイドラインとか、そういうものはお持ちなんでしょうか。
  278. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 どのようなケースが正当な理由に該当するのかということにつきましては、今後事例を収集整理いたしまして、事業主に対して必要な啓発指導には努めていきたいと思っております。
  279. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、今後というのは、どのぐらいの時間帯を通常は今後というふうになるのでしょうか。
  280. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 これは、法律を可決成立させていただきますれば、もうできるだけ速やかにということでございますので、当然、年内程度を考えております。
  281. 辻元清美

    辻元委員 細かいことなんですけれども、もう一点、ちょっと伺いたい点があります。  この請求の場合なんですけれども育児または家族介護を行う労働者の深夜業について申し上げているわけなんですが、一カ月以上六カ月以内の期間については開始の日及び終了の日を明らかにして、開始の日の一カ月前までにしなければいけないというような規定があるのです。この際、この理解は、一カ月以上六カ月以内になっているのですが、更新というか、こういう者を抱えて、例えば急に介護する者が出た、その前に六カ月ぐらいと思っていたけれども、更新というのはできるのでしょうか。
  282. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 相当事由が継続する限り更新できます。
  283. 辻元清美

    辻元委員 はい、それは確認させていただきました。  さて、もう一度建議の方に戻るのですけれども、もう一つこれについてお伺いしたいのですが、最初の方に、「労働時間をはじめとした労働条件労働環境」、女子の労働環境という文言がございます。こういう現状を十分踏まえてという建議でございますので、労働時間についてちょっと伺いたいのですが、私がいただいたデータに総実労働時間というのがございます。  これは直近の五年間をいただきましたら、男性は五年前が二千六十六、その後二千十一、二千三、二千十二、二千十七と、二千前後で推移しているデータをいただいております。それから女性の方は、一千八百二、これは五年前です。四年前が一千七百三十八、それから一千七百三十、一千七百二十六、一千七百三十八と、一千七百から八百を推移しているようなんです。やはり先ほどから、働く時間を短く、時短について労働省としても全力で取り組みたいというような積極的な姿勢を私は皆さんの御答弁の中からは感じるのですが、この五年間を見てみても余り変わっていないのですね。  ですから、果たしてやってこられた御努力がこの成果に結びついているというふうに御判断されているのかどうか、その点、率直な御意見をちょっと伺いたいのですが、いかがでしょうか。
  284. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 労働時間は、特に所定内につきましては、着実に減少しているのではないかというふうに思うわけでございます。特にことしの四月からは週四十時間制も施行されたことでございますし、所定内労働時間は着実に減少を見ていると言ってよろしいと思います。所定外労働時間は、これは景気の変動によっていろいろ、景気がいいとやはり時間外労働というのはふえますので、ある程度景気の変動によって動くものでございますので、そのトータルが景気とも絡み合ってまいりますけれども、少なくともトータルで見ても、まあ先生は少ないとおっしゃいますけれども、二千六十六時間から二千十七時間、女性の場合ですと千八百二時間から千七百三十八時間ということで、着実に減ってきていると私どもは考えているところでございます。
  285. 辻元清美

    辻元委員 今、所定外労働時間というお話も出たのですが、そうしますと、昨年のデータですと、所定外労働時間は男性は何時間ぐらいで、女性は何時間ぐらいだったのでしょうか。
  286. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 平成八年の平均値でございますが、所定外労働時間、男性が百人十七時間、女性が六十八時間となっております。
  287. 辻元清美

    辻元委員 百八十七と六十八ということで、三、六、十八ですから、約三倍弱ぐらいのこれは開きが時間で見るとあるわけなんですね。これのまた理由はなぜなんだろうという分析はいかがでしょうか。
  288. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 幾つかの、それぞれがどのような業種に勤めているか、どのような職種に勤めているかという、そういう勤務の状況にもよると思いますけれども、また時間外労働規制女性の枠というのも影響しているのではないかというふうに思います。
  289. 辻元清美

    辻元委員 今、所定外労働時間について伺いました。  そうしましたら、休日労働なんですけれども、休日労働は大体、男女別でわかれば一番いいのですが、男子が平均どれぐらい、女子はどれぐらいしているというふうに把握されているのでしょうか。
  290. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 男女別の数字はないのでありますが、休日労働がない労働者の割合が八八%でございまして、休日労働ありという労働者が一二%になっております。
  291. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、男女別は今ないということなんですが、今までちょっと、建議の中の方針といいますか、出発点から、そしてそこに書いてある文言は抽象的ですので、どういうふうにそれを現状認識をされ、分析されて今日の改正案ということに至られたかということを、自分で疑問に思うところを伺いました。  今伺っていたのですけれども、実際に、休日労働男女の平均値のデータもないというふうにおっしゃったのです。それで、実際に、休日労働やそれから時間外労働についての今回の改正案による変化女性には出てくるわけなんですよね。私はやはり、先ほどの時間外労働の数字を見ても六十八時間と百八十七時間で、職域の制限があったという理由だけではなくて、やはりその前に見ましたさまざまな、女性のまだまだこれから乗り越えていかなければいけない、男女ともで乗り越えていかなければいけない厳しい現状、それがこの時間の差につながっているように思うのは私だけではないと思うのです。  そういう中で、今回のこの現状を顧みるに、女子保護規定解消、これに当たっては、この差、三倍ぐらいあるわけですから、ここにぼおんといきなり行ってしまうというのは、ちょっとそれに対する、弊害に対する配慮、ここのところをちゃんとやっていかないと、問題がこの後どんどん出てきても、せっかく改正していいかと思って皆でつくったのに問題だけが出てきたというふうになってもいかがなものかと思います。ここのところの何らかの対応、セーフティーネットと申しましょうか、そういうものを、これがもしも成立して法を執行するならば、それまでに検討していかれる、もしくはそういう事態を全く予想していないと私は思わないのですが、そういうおつもりは あるのか、もしくは何か考えていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思うのですけれども
  292. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 これまで時間外労働や休日労働、深夜業が規制されておりました女性労働者が新たに時間外・休日労働、深夜業ができるように就業規則や労働協約を変更することになるわけですけれども、そういう場合には、まずは労使間において十分な話し合いが行われることが望ましいと考えるわけでございます。  この場合、時間外労働につきましては、三六協定締結のときに、家族的責任を有するため時間外労働を行うことが難しい人につきましては一定配慮を行うことも可能でありますし、また深夜業につきましては、やはり深夜業に就業することに伴ういろいろな労働者の負担を軽減するための就業環境整備というような措置を講ずるよう努力することが望まれるわけでございます。  私どもといたしましては、このような事項につきまして労使に周知が徹底しますよう、啓発、指導あり方については十分工夫をしてまいりたいというふうに思っております。
  293. 辻元清美

    辻元委員 法律を変えるということは、変化対応できる、もしくはその変化を積極的に喜ぶ方があるという、先ほどからの大臣の御答弁もありましたけれども、それはもちろん理解できるのですね。しかし、対応できない人に対しての措置をどこまでとるかということもあわせて十分考えていかなければいけないと思うのです。審議はもう一日ございますので、その点につきましてはまた次の審議の折にさらに幾つか御質問もしくは意見を述べさせていただきたいと思うのです。門戸を開き、弊害をなくする、そういうことを考えていくのが私たちの仕事であるというふうに思います。  あと数分ありますので、おとといちょっと質問させていただきましたセクシュアルハラスメントについて、一点だけ追加で質問させていただきたいと思うのです。  七日の質疑のときに、私は、セクシュアルハラスメントの中のセクハラ面接ということについて御質問させていただきました。その中で、セクハラ面接は均等法違反であるという御発言を太田局長だと思うのですが、されているかと思うのですけれども、これは、面接というのは入り口でありまして、この間の答弁ですと、もしもされたからといって行っても、調停という枠組みには入らない。そうすると、均等法違反というふうな解釈であるならば、こういう事例が結構ふえてきているというか多いのですね、その場合には、では具体的にどういう対処ができるのかということをお聞きしたいと思うのです。
  294. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 婦人少年室長に助言、指導勧告という権限がございますので、そういう女性労働者が、セクハラ面接を受けて、婦人少年室に御相談いただければ、企業名がわかれば、そしてまた、それが本当に均等法違反の事例に該当するということになれば、婦人少年室長の方から助言をいたしますし、もし直していただけなければ、指導勧告という形でさせていただくという  システムになっております。
  295. 辻元清美

    辻元委員 今、最後に指導勧告、ということは、調停などの場合も、勧告を守らなかったところは企業名公表などがあるというふうに聞いて  いるのですが、この場合もそうなるのでしょうか。
  296. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 企業名公表禁止規定の部分だけでございますので、セクハラ面接の場合は、助言、指導勧告まででございます。
  297. 辻元清美

    辻元委員 わかりました。  あと、きょう午前中の御答弁だったかと思うのですが、セクシュアルハラスメントについての研究会を設置して、どういう事例がそれに当たるのか、もしくはどういうふうにしていけばいいのかというようなことをその研究会で十分吟味したいというふうに大臣がおっしゃったかと思うのですけれども、この研究会はもう発足しているのでしょうか。
  298. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 済みません。ちょっと訂正をさせていただきます。  セクハラも、募集採用の部分でございますので、企業名公表もあり得ます。失礼いたしました。
  299. 岡野裕

    岡野国務大臣 本法は、再来年の四月から実施ということになっております。そして、セクハラというのは、概念が非常に不明確でありますと、いたずらに事件が多くなりますもので、これははっきりさせなければならない。それを決めるのを早目にして、十分な周知の期間をとって、十一年の四月に実施というようなつもりでおります。いつから研究会を発足させるか、メンバーはどうするか、まだ事務的に決まっておりませんけれども、通していただきましたなら、可及的速やかに……。
  300. 辻元清美

    辻元委員 質疑時間が終わりましたので、これで終わりたいと思うのですが、傍聴の方は女性が多いのですけれども委員の方は男性が多いということで、それがプラスに働くように、この均等法改正というのは、私、本会議でも申し上げたのですが、女性だけの法律ではなくて、本当に、いい方向に行けば、女性が生き生き働くということは男性も生き生き働くという、一緒に働いていく社会をつくっていく第一歩になると思いますので、あと残された審議時間、十分な検討をさらにさせていただきたいと思います。  これで私の質問は終わります。皆さん、御苦労さまでした、
  301. 青山丘

    青山委員長 これにて辻元清美君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る十四日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十四分散会