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1997-05-07 第140回国会 衆議院 労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月七日(水曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 青山  丘君    理事 荒井 広幸君 理事 大野 功統君    理事 佐藤 剛男君 理事 森  英介君    理事 河上 覃雄君 理事 桝屋 敬悟君    理事 岩田 順介君 理事 金子 満広君       飯島 忠義君    大石 秀政君       河井 克行君    小林 興起君       竹本 直一君    棚橋 泰文君       能勢 和子君    藤波 孝生君       綿貫 民輔君    池坊 保子君       一川 保夫君    鍵田 節哉君       塩田  晋君    島   聡君       城島 正光君    吉田  治君       家西  悟君    近藤 昭一君       中桐 伸五君    松本 惟子君       藤木 洋子君    辻元 清美君       畑 英次郎君  出席国務大臣         労 働 大 臣 岡野  裕君  出席政府委員         労働政務次官  小林 興起君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省労働基準         局長      伊藤 庄平君         労働省婦人局長 太田 芳枝君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         労働省職業安定         局高齢障害者         対策部長    坂本 哲也君  委員外出席者         労働委員会調査         室長      中島  勝君     ――――――――――――― 委員の異動 五月七日  辞任         補欠選任   西田  猛君     島   聡君   福岡 宗也君     一川 保夫君   中桐 伸五君     家西  悟君   大森  猛君     藤木 洋子君   村山 富市君     辻元 清美君 同日  辞任         補欠選任   一川 保夫君     福岡 宗也君   島   聡君     城島 正光君   家西  悟君     中桐 伸五君   藤木 洋子君     大森  猛君   辻元 清美君     村山 富市君 同日  辞任         補欠選任   城島 正光君     池坊 保子君 同日  辞任         補欠選任   池坊 保子君     西田  猛君     ――――――――――――― 五月六日  雇用分野における男女の均等な機会及び待遇  の確保等のための労働省関係法律整備に関す  る法律案内閣提出第二九号) 四月二十二日.  実効ある男女雇用機会均等法改正労働時間に  かかわる労基法改正に関する請願石井郁子君  紹介)(第二一二四号)  労基法女子保護規定改悪反対母性保護を前  提とした男女雇用機会均等法改正に関する請  願(石井郁子紹介)(第二一二五号)  男女雇用機会均等法改正に関する請願石井  郁子紹介)(第二一二六号) 労働基準法女子保護規定撤廃反対に関する 請願石井郁子紹介)(第二一二七号) 同(木島日出夫紹介)(第二一九五号) 同(瀬古由起子紹介)(第二一九六号)  同(平賀高成紹介)(第二一九七号)  同(藤田スミ紹介)(第二一九八号)  同(松本善明紹介)(第二一九九号) 同月二十五日  実効ある男女雇用機会均等法改正労働時間に  かかわる労基法改正に関する請願瀬古由起子  君紹介)(第二二八七号)  同(藤田スミ紹介)(第二三六〇号)  労働基準法女子保護規定撤廃反対に関する  請願大森猛紹介)(第二二八八号)  同(藤木洋子紹介)(第二二八九号)  同(古堅実吉紹介)(第二二九〇号)  同(正森成二君紹介)(第二二九一号)  同(矢島恒夫紹介)(第二二九二号)  同(金子満広紹介)(第二三六八号)  同(瀬古由起子紹介)(第二三六九号)  同(藤木洋子紹介)(第二三七〇号)  労働基準法女子保護規定撤廃反対に関する請  願(畠山健治郎紹介)(第二三五九号)  同(濱田健一紹介)(第二四〇四号)  同(保坂展人君紹介)(第二四〇五号)  労基法女子保護規定改悪反対母性保護を前  提とした男女雇用機会均等法改正に関する請  願(石井郁子紹介)(第二三六一号)  労働法制改悪反対等に関する請願大森猛君  紹介)(第二三六二号)  同(金子満広紹介)(第二三六三号)  同(志位和夫紹介)(第二三六四号)  同(中路雅弘紹介)(第二三六五号)  同(不破哲三紹介)(第二三六六号)  同(吉井英勝紹介)(第二三六七号) 労働時間短縮施策に関する請願金子満広君紹 介)(第二四〇三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月二十五日 男女雇用機会均等法の実効ある改正労働基準  法の女子保護規定撤廃反対に関する陳情書外  六件  (第二四五号)  労働法制改悪反対に関する陳情書外一件  (第二四六号)  男女雇用機会均等法を廃止し、労働者の側に  立った施策実行等に関する陳情書  (第二四七  号)  雇用分野における男女差別解消に関する陳情  書  (第二四八号)  全国一律最低賃金制度の確立に関する陳情書外  一件  (第二四九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  雇用分野における男女の均等な機会及び待遇  の確保等のための労働省関係法律整備に関す  る法律案内閣提出第二九号)      ――――◇―――――
  2. 青山丘

    青山委員長 これより会議を開きます。  内閣提出雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。岡野労働大臣。     ―――――――――――――  雇用分野における男女の均等な機会及び待遇   の確保等のための労働省関係法律整備に関   する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 岡野裕

    岡野国務大臣 おはようございます。  ただいま委員長から議題としていただきました雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  男女雇用機会均等法施行されて十年が経過しました。この間、女性雇用者数の大幅な増加勤続年数伸び職域拡大が見られ、女性就業に関する国民一般意識企業取り組みも大きく変化しております。  また、週四十時間労働制の実施などにより、年間実労働時間も着実に減少しており、育児休業制度介護休業制度法制化に代表される職業生活家庭生活の両立を可能にするための条件整備進展しております。  しかしながら、女子学生就職問題に見られますように、雇用分野において女性男性と均等な取り扱いを受けていない事例が依然として見受けられ、近年、企業における女性雇用管理改善足踏み状態にあります。  働く女性が性により差別されることなく、その能力を十分に発揮できる雇用環境整備するとともに、働きながら安心して子供を産むことができる環境をつくることは、働く女性のためだけでなくへ少子高齢化の一層の進展の中で、今後、引き続き我が国経済社会活力を維持していくためにも、極めて重要な課題であります。  政府といたしましては、このような課題に適切に対処するため、一昨年十月より、婦人少年問題審議会において、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保のあり方について御審議をいただいてまいりましたが、昨年十二月、同審議会から全会一致建議をいただきましたので,この建議に沿って法律案を作成し、関係審議会にお諮りをした上、ここに提出申し上げる次第であります。  次に、この法律案内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず第一に、募集採用配置及び昇進について、事業主女性労働者に対して差別することを禁止するとともに、実効性を一層確保するため、公表制度の創設、調停制度改善等を行うこととしております。一あわせて、女性労働者能力発揮の促進に積極的かつ自主的に取り組む事業主に対して、国が援助を行うこととするとともに、事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するため、雇用管理上必要な配慮をしなければならないこととしております。  第二に、女性労働者に係る時間外・休日労働及び深夜業の規制について、女性職域拡大を図り、均等な取り扱いを一層進める観点から、解消することとしております。  第三に、母性保護に関する措置の充実を図ることとし、妊娠中及び出産後の女性労働者健康管理に関する措置事業主に義務づけるとともに、多胎妊娠の場合の産前休業期間を延長することといたしております。  第四に、育児や家族の介護の問題を抱えた一定の範囲の労働者が請求した場合においては、事業主は深夜業をさせてはならないこととする制度を新たに設けることとしております。  第五に、都道府県婦人少年室名称都道府県女性少年室に変更することといたしております。  なお、この法律平成十一年四月一日から施行することとしておりますが、母性保護に関する部分については平成十年四月一日から、都道府県女性少年室への名称変更に関する部分については公布の日から大羽以内の政令で定める日から施行することとしております。  以上、この法律案提案理由及びその内容概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。よろしくお願いを賜ります。
  4. 青山丘

    青山委員長 以上で趣旨説明は終わりました。
  5. 青山丘

    青山委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。一能勢和子君。
  6. 能勢和子

    能勢委員 労働大臣、本日は働く女性の一人として、今回の雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保等に関する法律が早期に成立しますことを願って、質問させていただきます。  私は、この法律は、まさしく女性を一人の人間として認め、平等に働く場のチャンスが与えられ、能力があれば、性差でなく、堂々と女性が進出できるという、私どもの長年の悲願でもありました法律でございます。ぜひその実現を目指したいと考えているわけでございます。  私ごとを少し申し述べさせていただく時間をちょうだいするならば、私は昭和三十七年、看護職になりましてから今日まで三十五年間、母として、妻として、子供を産み、育て、そして職業人として、今の夜勤もしてまいりましたし、仕事を通しての喜びや、苦しみや、そして仕事を通しての生きがい等、たくさん味わうことができました。そのような中で、しかしながら一方において、能力がありながら、結婚によって仕事の場を失われたという有能な友達もたくさん持っています。その人たちは、働きたくても働ける場がございませんでした。夜勤も、能力があって夜勤もできる状態にあっても夜勤もできませんでした。本日は、それゆえに、こうした皆様の代表として今回の質問をさせていただくことは、大変責任の重いお尋ねでもあるわけでございます。  しかしながら、一方で、この法律が正しく理解されていませんためか、あるいは誤って理解しているためかわかりませんけれども、昨日の本会議質問等を聞いておりましても、大変危惧するものでございます。私どものところにもたくさんの要望書等も参っておりますが、今回、そうしたことについても、この質問を通して明確にしておきたいと考えております。  それでは、まず一番に、私が就職しましたのは昭和三十七年、それからおくれますこと二十四年いたしまして、昭和六十一年にこの男女雇用機会均等法施行されました。それから十年余り経過いたしましたが、女性職場進出が著しく進む中で、働く女性を取り巻く環境も大きく変わってまいりました。  そこで、この男女雇用機会均等法施行される前の十年と、施行されてからの十年間に、それぞれ、女性雇用者数男性と比べて随分大幅に増加したものと思います。我々が仕事をしていますとき、女性は本当に少ない職場でございましたが、それらがどのように推移してきたのか、労働省はどのように把握していらっしゃるか、お伺いしたいと思います。  そして、大幅に増加する雇用者数に象徴されますように、働く女性をめぐるさまざまな変化を、今回の法改正に当たってどのように労働省は認識し、評価しているか、お尋ねしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  7. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  働く女性の数でございますが、均等法ができます十年前の昭和五十一年には、女性雇用者数は千二百三万人でございました。これが、均等法施行されました昭和六十一年には千五百八十四万人になりまして、この十年、平成八年には二千八十四万人ということで、雇用者に占める女性の割合は約四割近くになっているわけでございます。  この法律施行されまして、このように女性雇用者数増加もございましたが、同時に、勤続年数伸びとか職域拡大が見られまして、女性就業に関する国民一般意識企業取り組みも大きく変化したというふうに思っておるところでございます。こういうようなことからいろいろとふえてきておるわけでございまして、そういうようなものをもろもろ勘案いたしまして、今回の法の改正に当たりましては、こうした女性職場進出状況を十分踏まえて法律をつくらせていただいたというところでございます。
  8. 能勢和子

    能勢委員 ありがとうございました。  この均等法施行の十年、できる前の十年とできてからの十年、随分この法律の意義が大きいと私も受けとめております。  しかしながら、その一方で、男女の均等な取り扱いについて問題がある事案が依然として見受けられております。殊に、近年厳しい雇用情勢の影響もありまして、企業における女性雇用管理改善は、先ほど大臣もおっしゃいましたけれども足踏み状態にあるようにも受けとめています。その雇用状況がどのような現状にありますか、お答えいただきたいと思います。
  9. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 私ども出先機関であります婦人少年室に寄せられました相談を見ますと、均等法施行当初は、男女別定年制に関するものが多かったわけでございますが、近年の厳しい雇用情勢のもと、やはり女子学生就職に関しまして、会社訪問いたしますと女性採用しないと言われたり、自宅通勤に限るというような不利な募集採用条件が付されるなど、男子学生に比べて均等な機会を与えられていない事案が多発しておりまして、募集採用に関するものが近年著しく増加をしておるわけでございます。また、結婚とか妊娠出産一定の年齢に達したこと等を理由といたしまして、女性のみを対象とした解雇とか退職の強要といった逼迫した事案が見られるところでございます。また、配置昇進に関する事案も近年増加傾向にございます。
  10. 能勢和子

    能勢委員 今、太田局長がおっしゃいましたように、かつての男女雇用機会均等法を見ますと、まだまだ、性の差別禁止が大変弱い部分があった。一部禁止等あるいは努力義務というふうなことがあったわけですけれども、このような現状に対応するため、今回、均等法改正では、どのように法律基本的理念、考え方が示されているのかをお伺いしたいと思います。
  11. 岡野裕

    岡野国務大臣 能勢先生が冒頭お述べになられましたように、人生看護という、働く女性皆様現場体験、そしてその陣頭指揮に当たられた経験を踏まえてのきょうの御質問をいただきますこと、男女雇用機会均等法審議こ当たりましてまことに光栄だ、こう思っております。  さて、本法理念についてお尋ねでありますが、先ほどお話しになりましたように、女性雇用者数は非常に大きく伸びてまいった、職域拡大もかつこれ行われた。しかしながら、太田政府委員が申しましたように、女性就職戦線その他、そういった実態を見ますと、まだまだ各ステージにおいて男性と均等な取り扱いを受けておらないという事例が少なからずあるというようなことにかんがみまして、今回、働く女性が性によって差別されることが断じてなく、その能力を十分に発揮されて、職業生活家庭生活が十分的に両立して相営まれ、かつ母性保護も私どもとしては十分配慮してまいりたいということが本法の言いますれば理念であろうかと存じております。
  12. 能勢和子

    能勢委員 大臣から力強くその理念を聞かせていただきまして、私も納得しているところでございます。  この基本的な理念は、昨年の十二月の婦人少年問題審議会建議におきましても、  働く女性が性別により差別されることなくその能力を十分に発揮できる雇用環境整備するとともに、働きながら安心して子供を産むことができる環境をつくることは、働く女性のためだけでなく、少子高齢化の一層の進展の中で、今後引き続き我が国経済社会活力を維持していくためにも、重要かつ喫緊の課題であると示されたものを受けてこのようなことになったのであろう、大変すばらしい理念であると考えています。  このような基本的な理念のもとで改正法案が提出されているわけですが、改正法案においては、募集採用から定年退職解雇に至るまで、雇用管理の各ステージにおける女性に対する差別禁止や、セクシュアルハラスメントの防止など、新しい課題への積極的な対策が盛り込まれております。  具体的に改正法案がどのような内容になっておりますでしょうか、お教え願いたいと思います。
  13. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  改正法案におきましては、今先生がおっしゃいましたように、企業募集採用配置昇進、これはこれまで努力義務規定でございましたが、これを今回の改正禁止規定とさせていただいておるわけでございます。それから、教育訓練福利厚生定年退職解雇、これはもともと禁止規定でございましたが、それはそのまま継続をいたしております。また同時に、教育訓練につきましては、一部禁止でございましたものを全般的な禁止規定にしておるものでございます。  それから、これまで均等法におきましては、女性のみ募集採用というのはよいという解釈をしておりましたけれども女性のみ、女性優遇をするということは、これは原則として禁止をしようということにしております。  そしてまた、機会均等調停委員会という制度がございますが、この調停委員会につきましても、開催されるには使用者側労働者側の双方の同意が必要であったわけでございますが、これにつきましても、一方申請で調停委員会が開かれるようにいたしております。  それから、制裁措置といいましょうか、労働大臣または婦人少年室長の助言、指導、勧告を受けても差別を直していただけない企業につきましては、企業名を公表するという措置を新しく設けております。  それからまた、新しい課題といたしまして、先生おっしゃいましたポジティブアクションとかセクシュアルハラスメントにつきましても、それぞれ、国による援助それから事業主配慮義務を課しているところでございます。  それと同時に、母性保護という観点から、均等法におきまして、働く女性たちがお医者様に行くとき等々の時間を確保できるような規定を義務化しておるところでございますし、これは基準法でございますけれども多胎妊娠における産前休業期間を延ばしておるところでございます。  と同時に、基準法におきましては、女子の時間外・休日労働、深夜業の規制解消しております。それと対応いたしまして、女性の深夜業を解消するに伴いまして、育児介護休業法の中におきましても、育児または介護を行う労働者が深夜業を行いたくないというときは、その深夜業をみずから申し出て行わなくてもよいというような深夜業の制限の措置も新たに加えさせていただいております。  以上が、今回の改正法案の具体的な内容でございます。
  14. 能勢和子

    能勢委員 ありがとうございました。  私も私なりに調べてみましたけれども、このような改正法案は、国際的に見ても遜色がなく、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保を確固たるものにするという、働く女性の長年の取り組みや思いが込められた法案であると私は理解しております。  また、この法案の作成に当たりまして、婦人少年問題審議会において十分議論がなされ、しかも公労使三者のコンセンサスとして建議が出され、この建議に沿って作成された法律案要綱についても、公労使三者が一致しておおむね妥当とする答申が出されたものであるというふうに、昨年度からの分も読ませていただきましたし、そして今、太田局長が話されましたように、現行法改正案と比べましたときにも、玉虫色からきちっと明確になりました分、この御努力、この内容については本当に高く評価できるものと私は考えております。  そして次に、続けての質問になりますけれども、今回の改正に当たりまして、雇用分野における男女平等が大いに促進されることを働いている多くの女性たちが期待していると考えますけれども、今回の法改正は働いています女性たちにとって具体的にどのような効果をもたらすとお考えでございましょうか、大臣に御答弁いただきたいと思います。
  15. 岡野裕

    岡野国務大臣 先ほど、本法理念、また本法具体的内容についてお話をいたしました。このような具体的な法律内容というものを、使用者側にも、そして働く女性皆さんにも十分自覚をしていただいて、労使といいますか、使用者女性労働者も、加えて男性労働者についてもでありますが、みんなが協力をして、本法の実質的な内容が実現できるということにぜひいたしたいものだ。そうしていただくならば、働く女性皆さん自分能力十分発揮をする、社会皆様からも十分的にそれの評価が行われる、したがって女性として生きがいのある人生母性を十分保障されておりますので、そういった意味合いでそういう豊かな生活というものが保障されるのではないか、ぜひそのために頑張ってまいりたい、こう思っている次第であります。
  16. 能勢和子

    能勢委員 ありがとうございました。ここまでに至って、どなたも納得できる内容であると考えております。  今、私どものところで大変問題になってきておりますのは、女子保護規定解消についていろいろな意見があり、特に深夜業の規制解消につきましては危惧の声が上がっているようでございます。  しかし、現在の我が国では、国民生活上、あるいは生産技術上、あるいは企業活動グローバル化に伴いまして、さまざまな分野において、どうしても必要な深夜業があることは皆様が認めるところであると思います。殊に私たち看護職は、今この問題に至りまして、大変に来ます投書といいますか意見を見まして、夜勤をすれば家庭がだめになる、女性保護はどうかというようなはがきが来るのを見まして、私は驚いておるわけでございます。  今、百万人以上の看護婦たちは、深夜を問わず二十四時間体制で、祝日も祭日もなく、我々国民の健康を守るという面から自分の命と戦いながら、医療の現場では、看護職のみならず厳しい労働を私たち生きがいとして、やりがいとして頑張っているところでございます。これはもうどなたも認めていただける問題ではないかと思っております。もし、看護職員夜勤しませんなどと言ったら、皆さんどうなるのでしょうか。これはもうかつてからやってきたことでございます。  しかしながら、やはり看護婦も一人の人間として、夜勤も二十四時間、三百六十五日するわけではございません。今私ども現場の中では、一カ月に決まった夜勤をローテーションを組みながらこなしていくわけでありますので、どの労働の場におきましても、夜勤夜勤といって三十日丸々働くわけではございませんのを、あたかも全部夜勤するごとく受けとめた質問が出ておりますけれども、これはみんなでしっかりと、女性自身もしっかりと現実を直視して、自分たちの生きる職域確保しなければならないと思っております。  こうした中で、しかも深夜業に対します労働者には、健康管理といいますか健康確保母性保護就業環境についてはそれぞれの面から法制上も整備がなされ、実際にはいろいろな配慮を行っている企業も多いと聞いています。もちろん私も、看護部長として、働きます若い看護婦さん、あるいは子供を持つ看護婦さん、さまざまな看護婦さんたち夜勤を組む中で配慮してまいりました。月に適当な回数、あるいは休みの取り組み等々、現実にやってまいりましたのでよく私もわかっておりますが、その深夜従事者に対しまして、現在どのような法制度があり、また、企業の具体的な配慮状況についてどのように把握していらっしゃるかをお伺いいたします。
  17. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 深夜業は、先生おっしゃいましたように、生産技術上の必要性とかグローバルな市場への対応、あるいは国民生活の利便などから広範な分野で行われておりまして、これにつきましては、労働基準法におきまして割り増し賃金の支払いを使用者に義務づけておりますほか、従来よりへ労働者の健康確保とか母性保護に関する諸規定整備充実に努めてきているところであります。  具体的に申し上げますと、深夜業に従事する男女労働者の健康確保のため、労働安全衛生法におきまして、深夜業務への配置がえをするとき、それから六カ月以内ごとに一回の健康診断を実施しなければならないこととされております。また、健康診断の結果につきまして、医師の意見を勘案いたしまして、必要があると認めるときには、事業主は、就業場所の変更、丁作業の転換、労働時間の短縮などの措置を講じなければならないこととされているところでございます。  またへ母性保護観点からは、労働基準法におきまして、妊産婦が請求した場合には深夜業をさせてはならないということ、そして妊娠中の女性が請求した場合には他の軽易な業務に転換しなければならないことなどが規定されておりますほか、今般、均等法改正いたしまして、妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導または健康診査を受けるために必要な時間の確保や、その指導に基づき勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講ずることを事業主に義務づけるというような強化を図ることとしているところでございます。  さらに、育児介護休業法改正いたしまして、育児や家族の介護を行う一定範囲の男女労働者が請求した場合には、深夜業に従事させてはならないといたしているところでございます。  また、使用者労働者を深夜に労働させた場合には、労働の強度等にかんがみ、二割五分以上の割り増し賃金を支払うことを使用者に義務づけております。これによりまして、間接的な形ではございますけれども深夜業の抑制が図られているものというふうに考えております。  それから、深夜業に従事する者に対する企業の具体的な配慮事項といたしましては、現在深夜業が行われている企業等々からお伺いしたところによれば、労働安全衛生法の遵守はもとよりのことでございますが、それに加えまして、家族の事情などによりまして本人の希望を考慮した勤務表を策定するということとか、勤務の負担を軽減するため、工程の自動化、合理化を進めるということ、寮や送迎バスなどの住宅、通勤手段を提供している、また、ふろ、シャワー設備などの就業環境改善を図っているなど、労働者の希望とか業務の内容等を考慮した配慮がさまざまな面からなされているというふうに理解をしております。
  18. 能勢和子

    能勢委員 そもそも深夜業ということについて考えますときに、女性であるということの理由で働きたいのに働けない、規制が今まであったわけですから。今回は、女性であるという理由で働きたいのに働けないという規制が撤回されたわけですから、それによって女性就業機会を奪っていることから、今度は私たちも、企業に対しましても、きちっと仕事ができるという、一人の人間として自分たちがそれに立ち向かうことができる。多分、企業におきましては、多分といいますか、実際に女子労働は使いにくい労働力、夜勤に使うわけにいかない、いろいろな規制がある、使いにくい労働力として、むしろ均等法取り扱いの言いわけの材料にされておったのではないかと思うわけでございます。  もちろん、私ども看護現場におきましても、三交代ができますね、できないという人とできるという人、同じ条件であれば、やはりできるという人を採用する方が効率がよろしいわけです。すべての条件が同じで、もし夜勤ができるできないだけの二人の看護婦さんがいました場合、夜勤皆さんと同じようにできますという人をやはり採用する。夜勤ができない人では、もう一人、次の人も雇わなければいけないということになるわけですから、これは言い逃れをつくる材料になると思います。  ただいま太田局長にも答弁いただきましたように、さまざまな法的な措置状況あるいは企業配慮の実態を踏まえましたときに、男女均等の確保女性職域拡大を進める観点から、今回の規制解消はまことに時宜を得たものであると評価いたします。そして、私たち女性みずからも、自分職域を狭めることなくきちっと確保するために努力しなければならないと考えておるわけでございます。  さて、ただいまの答弁にもございましたように、深夜業についても、妊産婦が請求した場合には深夜業をさせてはならないとの規定があるわけですけれども、このような妊娠出産に関する保護、いわゆる母性保護は、女性が働き続けるためにも大変重要なことであるということは私も承知いたしております。だから、私どもの病院の中でも、妊娠何カ月で申し出がありましたときには、本人の希望でそれを取り扱いするわけでございます。  母性保護としてどのようなことが現在規定されているのか、そして、今回の改正では母性保護の充実が内容に含まれているということでございますけれども、具体的な内容をぜひお伺いして、ここに御参加の皆様にも御理解をいただきたいと思うわけでございますが、よろしくお願いいたします。
  19. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 女性労働者母性保護につきましてま、現在、労働基準法におきまして、まず産前産後休業というのが決まっておりまして、産前は六週間、これは双子以上の多胎妊娠の場合は十週間でございますが、産前は、単胎の場合は六週間、それから産後は八週間ということで決まっているわけでございます。まずそういう規定がございます。  それから、妊産婦につきましては、危険有害業務への就業制限がございます。そしてまた、先生おっしゃいましたように、妊産婦が請求した場合は、時間外・休日労働、深夜業等の制限がございます。  また、育児時間、これは、生後満一年に満たない生児を育てる女子に対しまして、一日二回、それぞれ、少なくとも三十分間の育児時間を請求できるという規定でございますけれども育児時間についての規定が設けられております。  それから、男女雇用機会均等法におきましては、妊娠中及び出産後の母性健康管理に関し、事業主に対して、母子保健法の規定による保健指導を受けるために必要な時間の確保についての配慮をすること、及び保健指導などに基づく指導事項を守ることができるよりな勤務時間の変更、勤務の軽減などの必要な措置を講ずることを努力義務として課しているわけでございます。  今回の改正法案におきましては、労働基準法規定をしております産前休業を、多胎妊娠につきまして、現在の十週間から十四週間に延長いたしますとともに、今申し上げました均等法母性健康管理に関する規定を全事業主に義務化をいたしまして、母性保護の充実を図っているところでございます。
  20. 能勢和子

    能勢委員 ありがとうございました。  妊娠中や出産後の女性の健康確保は、母子の生命にかかわる極めて重要な問題であります。企業がもしこれを怠ったり、女性自身が無理をして働くことがあってはならないと考えるわけでございます。  母性保護に関する規定については、その履行確保を確実なものにするために、労働省としましてどのような対策を講じておられるのかをお伺いしたいと思います。
  21. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 労働省では、労働基準法規定しております産前産後休業などの母性保護に関する措置につきましては、必要な監督指導を行い、その遵守を図っているところでございます。  また、男女雇用機会均等法に基づきます母性健康管理に関する措置につきましては、母性健康管理指導基準というものを設けまして、事業主に対しまして、日常の相談業務、それからセミナーの実施、講習などを実施しておりますほかに、婦人少年室母性健康管理指導医というお医者様を各室一人ずつ配置いたしまして、母性健康管理に関する専門的な相談を行っているところでございます。  さらに、女性労働者を常時五十人以上雇用いたします事業所につきましては、母性健康管理推進者の選任を勧奨いたしまして、母性健康管理に関する事業所内の自主的な管理体制の整備を図るように指導しているところでございます。
  22. 能勢和子

    能勢委員 ありがとうございました。  今、太田局長からも十分な説明をいただいたわけですが、今日本の国が高齢と少子問題という中で、労働省が今回取り組みましたこの法改正は、働く女性保護を含めて、赤ちゃんを産んで、そして子供を育てながらきちっとした仕事ができると同時に、そしてまた、家庭介護する人がいるときには、申し出によってそのようなことが取り組まれるとか、さまざまな観点から論議されたもので、その内容について評価するわけでございます。これからの二十一世紀を見詰めましたときに、子供の数が減る、老人が多くなる、働く人材の確保という問題についてもこれから大きな問題であろうと思います。  そういう意味で、もう日本じゅうの女性男性も、いろいろな整備を整える中で、きちっと役割分担をしながら仕事をしていくという環境は、これからもますます拡大してくる。私どもも、働いてきた者でございますから、どちらかというと仕事生きがいを持ち、無理して働くということがあったわけでございますけれども、今の御説明によりますと、女性が無理して働くことのないように、いろいろな角度からそれをきちっと抑えているという部分についても安心いたしますし、同時に、こうしたことに対して企業も協力くださり、あるいは企業について監視もし、また、働く側もそうした自覚をきちっと持つということは、どちらかといえば、日本の人口が減って過疎になるのじゃないか、活力が失われるのじゃないかというときに、大いにこの法案が生かされますことを希望いたします。  今の意見にあわせてでございますが、これからは、この改正とあわせて、男女ともバランスのとれた職業生活家庭生活を送ることができるような環境整備が重要であると考えます。今後、労働者は、仕事育児や家族の介護を両立させていかなければいけません。これからの老人の全部がもし施設に入るとすれば、どのホテルもどのホテルも老人ホームにしなければならないほど老人がふえてくるわけですので、できることならば、介護保険ともあわせて、きちっとした、家庭でも見ていける、地域でも見ていけるというネットワークが要るわけですけれども、そうした家族の介護とを両立させるために、どのような方策をどのように充実させていくか、お伺いしたいと思います。
  23. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  少子高齢化進展、それから共働き家庭増加、核家族化などが進む中で、やまり仕事育児介護との両立は、男女労働者が生涯を通じて充実した職業生活を送るために解決していかなければいけない大きな課題であるというふうに考えるわけでございます。  このため、労働省といたしましては、育児休業制度法制化を既にいたしまして、それに対しまして給付金もつけて育児休業制度の定着を図っているところでございますし、介護休業制度法律をつくらせていただきまして、これは平成十一年四月からですけれども、形成権化したわけでございます。そういう育児休業制度の定着とか介護休業制度の早期導入を促進すべく、いろいろな施策をしているところでございます。  例えば、育児休業、介護休業を取得しやすく職場復帰しやすい環境整備をしたいということ、そしてまた、育児介護を行う労働者が働き続けやすい環境整備をすること、そしてまた、育児介護のために一たん退職した者に対しましては再就職の支援をすることなど、労働者職業生活家庭生活の両立を支援する対策を推進しているところでございます。  また、特に平成九年度からは、介護に係る短時間勤務制度措置の導入奨励、また、労働者育児介護サービスの利用料などを支援する事業主に対しまして助成を拡大することを盛り込みました育児介護雇用安定助成金制度を創設したところでございまして、今後とも、さまざまな形での両立支援対策につきましては一層充実を図ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  24. 能勢和子

    能勢委員 ありがとうございました。  ちょっとこれはお尋ねに入れておりませんでしたけれども、現在、働きたいけれども就職できていない状況という数が出ておりますでしょうか。女性の場合、現在勤めたいけれども仕事場がないという、新卒合わせてそういう数はわかっておりますでしょうか。ちょっとこれは挙げてはおりませんでしたけれども……。
  25. 岡野裕

    岡野国務大臣 今の時点で準備できておりませんので、若干時間をいただきました上で、回答は後日改めてということになるかもしれません。よろしく御理解を賜りますように。
  26. 能勢和子

    能勢委員 いや、これは質問に挙げておりません数値とデータでございますので……。  わかりましたか。
  27. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 済みません。十分な数字であるかどうかわかりませんけれども、ことしの平成九年三月一日現在で労働省が調査いたしました大学等の卒業予定者の就職内定状況調査というものがございますが、これによりますと、女性の大学の内定率は八六・二%ということでございます。ちなみに男性が九三・二%で、少し差があるわけでございますが、八六・二%という数字を持っております。
  28. 能勢和子

    能勢委員 ありがとうございました。  と申しますのは、この改正によります均等法がより早く社会の末端までに伝わっていって、皆様の認識の中にぜひともこれを浸透させていかなければいけないと思います。今、国会の中でもいろいろな議論をされますときに、十分な理解ができていないということを私も感じるわけですね。だから、これを島から島へ、山から山へ、仕事の場はあるわけですので、そのあたりにきちっと、労働省のみならず我々の責任においてもこの均等法が正しく理解されるために、今後どのような対策を講じれば皆さんにわかるというふうにお考えなのでしょうか。局長さん、よろしくお願いします。
  29. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  新しい均等法をつくっていただきましたならば、婦人少年室におきまして、あらゆる機会をとらえて、講演会それからPRをしていきたいと思いますし、それから、新しい法律のパンフレットをつくるのはもとよりでございます。そしてまた、都道府県とも協力いたしまして、もう本当に社会の末端に浸透するように、幸い施行平成十一年でございますので時間もございますので、その間を利用いたしまして最大限の努力をしていきたいというふうに思っております。
  30. 能勢和子

    能勢委員 ありがとうございます。  今それを申しましたのは、この席の中でもいろいろな反応があるわけでございますけれども、今回の均等法、特に女子保護規定解消についての反応を多分皆さん強く感じでいらっしゃる。決してこれは働きたくない人を無理やりに持っていって労働せよという法律ではございませんのに、きのうの質問を聞いておりましても、あたかもこの法律が悪のごとくの質問が出てまいります。それは真にこの法律を理解していないための問題であろうと思いますので、私どもも力強く説明してまいりますし、そしてまた、・労働省におかれましても、これについて理解を深めるための努力をしていかなければいけないというふうに考えているわけでございます。この法案は、本当に働く女性の多くの皆さんの期待する声でありますことを労働省の方も認識いただき、ぜひ努力をしていただきたいというふうに思っております。  女性もいよいよ一人前になって、二十一世紀に向かう今日になって、やっときちっとして認められ、男子、女子と関係なく――私は常々、男と女の違いは、子供を産むことができるのとできないの違いだけであって、あとは男だから、女だからという違いはないはずでございます。育児にしても家事にしましても、あるいは働く能力にしましても、まさに男と女、性の違いはないはずでございます。やっと今、ここで日の目を見ようとしているこの法律が、違った形の、誤った理解によってつぶされてはならないというふうに考えているわけでございます。堂々と女性も力が出せる場を確保してまいりたいと思っているわけでございます。最後に、女性がその能力を十分に発揮し、充実した職業生活を送ることができるためには、女性自身の一層の意識向上が重要だと考えています。私自身、仕事を通し、今日まで三十五年間、家庭生活仕事を通しての喜び、幸せあるいは苦労、人間としての機微をぜひとも全国の女性皆さんに味わっていただきたいというふうに思っているわけでございます。もちろん、選ぶのは本人でございますから、どんなふうにでも自由に選べばよろしいわけですけれども、ただ、選ぶチャンスがなかったことについて、今回の法律は非常に保障されたものだと思っています。  しかし、どんなに法律整備されましても、女性自身が、きちっと権利と義務、そして職業を通しての責任を知った上で積極的にチャレンジしていかなければ、法律趣旨は生かすことができません。さらに、労使間のさまざまな取り決めにつきましても、女性が時には労働組合の中で発言力を増し、意思決定のプロセスに参画していくことが重要だと考えます。  私どもも、病院という一つの枠組みではございましたけれども、その中で、まさに逆差別ではございませんが、どういっても、看護職が病院の中で一番多い数でございます。その中での仕事ぶりは、今、国民じゅうに評価していただいておると私は思います。それは、まさしく職業を通しての倫理観といいますか、職業意識、そうした責務を通して、我々が日夜をたがえず一心不乱に命を守るために頑張っている現場皆様も御承知いただいておると思います。祭日も日曜も問わず、どの時間帯でも国民皆様の健康を守るために全身全霊をかけて働いている場面というのは、皆様が一番よく御存じいただいておると承知しております。しかし、看護だけが女性の恥業のすべてではございません。あらゆる分野女性能力を出していくことを私も期待いたします。  そして、どの場面でも、男女の差があつで採用が難しい場面はまずないはずでございます。今回の法改正には、女性が性によって差別されることなく社会で活躍できる条件が十分に含まれております。この新たな均等法を最大限生かし、女性職場で実力をつけていくことが重要であります。  私どももよく、地域で県庁の役職にも女性がどんどん伸びていけばいいなというようなことを言っておりました。そんな中で私たちも自覚しましたことは、男性があれだけ責任を持って仕事をするならば、女性だからといって途中力を抜いてはだめだ、男性と対等にがくがくの議論ができ、そうした力をつけて、そして私たち社会における女性職域伸びる地位もいただきたい。女性が半分であれば、一労働省の半分の役職も女性が入ってもいいのではないか、県庁の半分に女性が入ってもいいではないか、そこにまだ力は及んでおりませんので、自分たちの力も正直まだまだ努力が足らないということを認めておりますけれども、そんな気持ちでもおるわけでございます。  そんな中で、今回の法律で、本当に女性伸び伸びと生きることを喜んでおるわけでございますが、そこで大臣、全国の働く女性大臣からぜひ、元気で頑張れ女性というふうにエールをいただければうれしゅうございますが、いかがでございましょうか。
  31. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生、元始、女性は太陽であったという言葉があります。現時点において顧みて、果たして女性は太陽であり続けているか否か、いささか疑問の余地がないでもない、こう思います。あるいは月のような存在になっているのかな、こうも思いますが、私どもは、やはり本法を御審議いただき可決成立をさせていただきますならば、女性母性保護という一点を除いて男子と全く平等の立場に立つ、差別はいささかも存在をしないということを目がけて努力をしてまいるつもりであります。  そういう中で、今後、働く女性皆さんにおかれましては、家庭生活を十分的に楽しまれ、かつ職場生活においても自分能力を存分に発揮をなされて、人生生きがいがあるというような実際的な感覚をその身に経験をしてくれるといいな、こう思っているわけであります。男性とともども、一緒に我が国の発展に全力投球をしていただきますよう願って、エールになっているかどうかは存じません。看護協会五十年の年に当たりまして、言いますならばその代表であり、代議士にまでなられた能勢先生から立派な御質疑をいただきまして、ありがとうございました。
  32. 能勢和子

    能勢委員 どうも大臣ありがとうございました。  以上をもちまして、私の質問を終わります。
  33. 青山丘

    青山委員長 次に、吉田治君。
  34. 吉田治

    ○吉田(治)委員 男女雇用機会均等法ができて十年のこの年に、修正という形で新しい法律ができるというのは、私の世代、ちょうど私、三十五歳なんですけれども、非常に感慨を持っております。私ども社会へ、大学を出て数年、二、三年のうちですか、もとの法律ができまして、女性の方は、総合職をするの一般職をするのという大きな人生の選択をした世代でございまして、私より後輩の世代というのは、初めからこういう法律があるから、大学もしくは短大を出るときから、総合職にしよう一般職にしようというふうなことを感じておったのですけれども、私たちは、本当に、まさにこの法律によって人生がひょっとしたら変わったのかなという女性の方もおる世代でございますので、今回の法律案におきましては、非常に慎重な審議、十分な審議時間の御配慮を賜っているということもお聞きしておりますが、まさに人の人生を変える法律であるというふうな前提のもとで質問をさせていただきたい。  私どもが大学を出たときには、私自身年かさは若いのですけれども、考え方は私の年の倍ぐらいのおじいさんの考え方とよく家内に言われておるのですけれども、そういう発想からしますと、大学を出たら大体女性はクリスマスだ、二十四歳のうちに結婚するのが一番売れる、二十五になるとちょっとたたき売りが始まる、二十六になったらもうだれも見向きもしない。このごろは、機会均等法ができたおかげかどうかわかりませんが、どうも大みそかと言われておるようでございまして、カウントダウンという形で、二十九、三十、三十一は当たり前、その後はないというふうな。やはり法律というようなものが、徐々にではありますが、この十年間で社会というものを大きく変えたという認識も私は持っております。  さて、この法案をそれぞれ一条ずっと言ったら語弊があるかもしれませんが、具体的に、個別に私は質問をしてまいりたいと思います。  まず最初に、本法家庭責任との関係についてですけれども昭和四十七年に勤労婦人福祉法ができて以来、女性労働者の福祉の増進という考え方、これが必ず法に盛り込まれておりましたけれども、なぜ今回、除去をされたのか。職業生活家庭生活との調和という考え方を外したのはどういうことなのか。ILO百五十六号条約は日本も批准しております。家庭責任というものを明確にうたったこの条約を批准している国が、今回の法改正では家庭責任を果たすことの意味をどのように取り入れているのか、まず御質問させていただきたいと思います。
  35. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  まず最初の質問でございますが、女性労働者の福祉の増進という考え方をなぜ外したかという御質問でございますが、今回の改正におきまして、女性労働者の福祉の増進及び地位の向上を目的規定から削除いたしますのは、法律の中心的内容雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保を図ることとなることに伴うものでございます。ただ、改正後の均等法女性労働者の福祉の増進と地位の向上に資するものであることには変わりがないというふうに思っているわけでございます。  また、女性労働者につきまして職業生活家庭生活の調和を図ることにつきまして、法の目的から削除いたしましたのは、やはり家族的責任というのは男女がともに担うものでございますから、女性労働者についてのみ職業生活家庭生活の調和を図るということを法律基本的理念に残すことは、かえって男女の役割分担を固定化する弊害が生ずるおそれもあるというような考え方に基づくものでございます。  それから、もちろん、労働省といたしましては、職業生活家庭生活の両立という課題につきましては、育児介護休業法に基づき各般の対策を総合的に推進しているところでございまして、これにつきましては、我が国が批准しておりますILO百五十六号条約の趣旨にかなうというように思っております。  今回の法律改正の中には、子を養育する両親がともに深夜業に従事するケースとか、深夜に介護を要する家族の世話をする者がいなくなるケースということが生じ得るということから、育児介護休業法上に育児や家族の介護を行う一定範囲の男女労働者は深夜に従事しないことを請求できるという制度を創設したわけでございまして、繰り返しになりますけれども、これがILO百五十六号条約の趣旨にもかなうというふうに考えておるところでございます。
  36. 吉田治

    ○吉田(治)委員 言われることはよくわかるのですけれども、古いタイプの人間といたしましては、そういう形でかみさんが外へ出ていって、自分も家事をするのかと思うと、正直言ってぞっとする部分はもちろんあるのですけれども、しかしながら、大臣が先ほど最後のところで、女性は太陽か月かという議論をされておりましたけれども、随分強くなられた女性という意味からいいましたら、これを外すということも理解できるのかなとふと思うのですけれども、しかしながら、やはり今の現状、置かれている常識からしますと、この条文というのを外すというのは私自身はいかがかなと非常に強く感じる次第でございます。  これは次の質問にもかかわってくるのですけれども、それであるならば、この法五条から八条において、「女性に対して」、「女性であることを理由として、」と規定をされているわけでありまして、その意味で、本当にさまざまな分野からも要望がありましたが、欧米に見られる男女平等法ではなく、女子のみの差別取り扱い解消した、ある意味で片面性を残した法改正大臣、そういうふうに考えていいのでしょうか。そして、この片面性を残したという理由は、先ほどの局長の答弁からしますとちょっと矛盾をするのではないかなと思うのですけれども、その辺の理由はいかがなんでしょうか。手短にお願いいたします。
  37. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生現行法では女性労働者に対して生活職場との両立というようなことが書いてございますが、この職場生活家庭生活との両立は、ひとり女性労働者のみについてであろうか、育児介護休業法の中にも、男性女性と等しく、こういうふうに相なっております。そういう意味合いで女性労働者についてという言葉を削除した。御趣旨、御理解を賜りたい、こう思っております。  なお、やはり雇用についての性差別禁止法というのが本来の姿だと先生がおっしゃいましたが、私も究極的にはそういうものである、こう思っております。ただ、現行法施行されまして十年、この経緯をいろいろ分析をしてみますと、やはり女性皆さん男性に比べて差別を受けているというような事例が圧倒的に多い、こういう現状にかんがみまして、本法女性を引き上げて男性差別がないようにというような内容法律案を提出申し上げている次第であります。よろしいでしょうか。
  38. 吉田治

    ○吉田(治)委員 それでは、大臣のお考えとしては、これは片面性を残してはいないと考えたらよろしいでしょうか。
  39. 岡野裕

    岡野国務大臣 私は、究極的には片面性があってはならない、こう思っておりますが、今の時点の現状をつまびらかに調査をいたしますと、女性の方が、例えば女子大生の就職の問題についても不利な立場に置かれているという事例が少なからず私のところへ参っております。したがって、女性を引き上げて男性並みにと。行く行く将来は、男性女性に比べて差別を受けてはならないというようなことにするのが究極的なあるべき姿である、こう思ってお吟ます。
  40. 吉田治

    ○吉田(治)委員 きのうの本会議の代表質問で、たしか大臣は、この件に関しまして、私どもの同僚藤員である塩田議員の質問に関して明確にお答えをなさらなかったと思うのですが、究極的には男女平等法が必要だという発想であるならば、これは究極的というか近い将来というか、ひょっとしたら十年先になるかもしれませんが、そのときに男女平等法という形での法改正整備というふうなものも念頭に置いての発言だととらえてよろしいでしょうか。
  41. 岡野裕

    岡野国務大臣 男女雇用機会均等法十年の経験にかんがみて、現時点においては、改正法案が目指す方向というものをひとつぜひこの社会に定着をさせたい。それ以後の問題は、今後の、この改正法案が成立をしたその実行経過を踏まえた上、また考えるべきだ。今はこれを通すこと、これが精いっぱいであり、通ったならば、これを定着させることに全力投球をいたした。
  42. 吉田治

    ○吉田(治)委員 では、大臣の答弁からいたしましたら、法案を通して定着を見た上で、近い将来にでも、またこの法案をできるだけ片面性でないまうな形にしていくというお考えを持っているというふうに理解をさせていただきたいと思います。  さて、そういう中において、補助的、定型的業務など一定職域に固定化するような女性のみを対象とする募集採用措置というのは、女性全体の地位向上を阻害するというようなものと考えていいのか。  また、この場合、女性のみ募集はできなくなるととちえて、例えば女性のパート募集女性のみの派遣募集というものも禁止というふうにこれから措置をされていくのか。現行法女性のみ募集は適法と解釈されておりましたが、これを違法とする解釈変更は本法案改正によって可能なのですか。これは研究会の報告でも出ておりますけれども。しそして最後に、募集 採用に関しましてはへ現在、公共職業安定所で求人情報というものは男子、女子に分けておりますが、この法案成立以後は男性女性別の求人コーナーの設置は行わないと理解してよろしいのでしょうか。  たくさん質問いたしましたけれども、まとめて、それぞれ担当局長から答弁をいただきたいと思います。
  43. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  補助的、定型的業務など一定職域に固定するような、女性のみを対象とする募集女性の地位向上を阻害するものと考えるという御質問でございますが、女性が例えば受付とか細かい手作業に向いているとか、女性には特有の感性とか特性があるというような先入観に基づきまして、補助的、定型的業務など一定の職種、職務につきまして女性のみを募集採用することは、やはり女性職域を限定したり、女性男性仕事の分離、いわゆる職務分離という弊害をもたらすものでございまして、女性全体の地位の向上を阻害するということになると考えておるわけでございます。  そして今度の改正におきまして、このような弊害を取り除くことが男女の均等な機会及び待遇確保していく上で不可欠であるということで考えまして、このような弊害の認められる女性のみの募集に対しては、女性に対する差別として禁止することとしたわけでございます。  したがいまして、パート労働者について女性のみを対象といたしました募集採用を行うこと等は、女性に対する差別として禁止することになるわけでございます。  それから、現行法におきましては、女性のみの募集は適法と解釈をいたしておるわけでございますけれども、今回の法律規定といたしましては、女性職域の固定化、男女の職務分離といった弊害が認められる、女性のみまたは女性優遇措置は、これは女性に対する差別として禁出する、繰り返しになりますが、禁止するとしたところでございます。  改正法案につきましては、女性に対する差別禁止する内容といたしつつも、第一章の規定におきまして、男女の均等な機会及び待遇確保を目指すということを明確にしておりますし、第九条を新設することによりまして、女性のみまたは女性優遇措置均等法違反となるという旨も法制上明らかになるようにしつつ、女性のみ、女性優遇措置につきまして解釈を変更しているというものでございます。  私のところは以上でございます。
  44. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 本法案第五条におきまして、事業主労働者募集採用について、女性に対して男性と均等な機会を与えなければならないというふうにされているところでございます。  したがいまして、本法案施行後につきましては、公共職業安定所におきましても、求人の取り扱いを原則として男女共用とすることを予定いたしております。  これらの求人の展示に当たりましては、利用者の方々の声などを参考といたしまして、求職者の閲覧しやすい展示方法を検討してまいりたいと考えております。
  45. 吉田治

    ○吉田(治)委員 太田局長、一点だけ答弁漏れ。  女性のみの派遣募集禁止になるととらえていいわけですか。
  46. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 失礼いたしました。  派遣労働者についても、女性のみを対象とした募集採用というのは禁止になります。
  47. 吉田治

    ○吉田(治)委員 では、その後に昇進をしていったと。この場合、転勤だとか配置転換だという問題が大きくクローズアップされてくると思うのです。  転居を伴う配置転換について、女性のみの配慮というのは、女性能力の有効発揮を抑制したり、女性家庭責任の多くを負担することの固定化につながるというふうなとらえ方をまずしていいのかどうか。  そして、本改正案では、女性のみを転勤の対象から外すことは禁止されることになるのか。例えば、一番最初に答弁にもございました、女性が実態として家庭責任を負っている場合でも、あるいは本人が転勤の対象から外すことを希望している場合は、外しても差別取り扱いとなるのかどう方一転勤命令を、今申し上げたように家庭理由で拒否した場合、懲戒処分を受けてもやむを得ないと考えるのかどうか。  そして最後に、後ほどの問題にも出てくるのですけれども、コース別人事制度というふうなものは違法なのかどうか。  この辺をまとめてお答えをちょうだいしたいと思います。
  48. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  まず、転居を伴う配置転換についてでございますけれども、個々の労働者の家族的責任の状況を考慮するのではなくて、単に女性であることを理由といたしまして女性についてのみ配置転換について配慮することは、配置転換を希望する女性機会を奪うことにもなりかねないわけでございますし、当該女性能力の有効発揮の観点から問題があるというふうに考えております。  また、女性のみが家族的に麦任を負うという考え方を前提とした雇用管理を行うことは、家族的責任は男女がともに負うべきものということにかんがみれば、家庭における女性の役割についての考え方を固定化するおそれもあるのではないかというふうに考えております。  それから、本改正法案で、女性のみを転勤の対象から外すことが差別取り扱いになるかという御質問でございます。単に女性であることを理由として女性についてのみ転勤の対象から外すことは、やはり配置に関しまして女性が排除されていることになりますので、配置に関する差別取り扱い禁止に違反するものでございます。  なお、男女を問わず、個々の労働者の家族的責任の状況とか、本人が転勤を希望しない旨申し出たことを理由といたしまして他の労働者と異なる取り扱いをすることは、均等法上問題となるものではございません。  それから、転勤命令を拒否した場合、懲戒処分を受けてもやむを得ないと考えるかという御質問でございましたが、家庭理由で転勤命令を拒否した場合につきまして懲戒処分の対象とすることが妥当かどうかにつきましては、やはり、当該労働者の事情だとか転勤命令の必要性だとか転勤に伴う不利益の程度などに照らしまして、個々の具体的なケースに応じて判断されるものであろうというふうに考えるわけでございます。  なお、一般的には、事業主が、転勤を命ずるに当たりましては、個々の労働者の家族的責任の状況に十分に配慮することが望ましいものというふうに考えております。  それから、最後に、コース別の人事制度は違法となるかという御質問でございましたが、コース別の雇用管理制度につきましては、それぞれ、各コースの職務内容とか処遇等が明確に定められまして、各コースが男女ともに開かれているということ、そしてまた、各コース内における配置昇進雇用管理男女公平に実施されている限り、均等法上の問題はないものでございます。  労働省におきましては、このようなコース別雇用管理制度の本来の趣旨に沿った運用が行われますように、「コース別雇用管理の望ましいあり方」というものをつくりまして、指導に努めているところでございます。
  49. 吉田治

    ○吉田(治)委員 転勤命令に関しては、今局長が答弁されたことで個々に判断ということですけれども、そういう判断に不服があった場合の不服申し立て、審判等の手続、審判というのですか、不服申し立て等が、どこかで受けてもらったり、そういうことは何かできるわけですか。
  50. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 これは、配置昇進でございますので、婦人少年室及び調停委員会に調停を申請することができる制度になっております。
  51. 吉田治

    ○吉田(治)委員 まさにこの辺が一つ問題だと私は思うのですね。  後ほど、この法改正でその辺のシステムをこれから変えるということですけれども、会社にとったら、子供が産まれたとか子供ができたとかいう女性の方はできたら来てほしくないなというふうな場合に、通うことんでもない無理なところに転勤をさせられるというふうな場合がある。そして、実際上、会社内においては、労働組合がたとえあったにしても、今までそういう例がないからということで、余り積極的に関与を会社との力関係の中でされないという事例があるんですね。それがまさに私たちの世代なんですよ。私たちの世代はそれをされてきたわけですよ、私たちの友達たちはみんな、会社から。  だから、これについて、婦少室、それから調停の改正というのは非常に大事なことですけれども、その辺の取り組みというのをもっとしやすく、やりやすく、そして、それをしたから、後で経営者の方から報復的なことがないような、そういうふうなことになってもらいたいな、そういうふうに私は思う次第であります。  教育訓練ということでいいますと、先ほど一番最初の話で申し上げました募集の場合でしたら、女性のみを対象とする接遇訓練は女性が特定の役割を果たすことを前提とするということで、女性職域の固定化につながるというふうに考えてよいのか。そして、本法案では、女性のみを対象としたこうした接遇訓練は禁止されると今後考えていってよいのかどうか。  そして、もう一つ言えるのは、このごろ、今はやりの情報機器の普及に伴いましてパソコンスクールというふうなものの受講生がふえていますが、こうしたパソコンスクールのインストラクターの育成を女性のみを対象として行う場合は、女性職域のまさに固定化につながるものとして禁止されるというふうに解釈していいのか。  よい片面性と悪い片面性との境界線というものですか、こういうふうなものを、研究会での答申等でも出ておりますけれども、非常に大きな議論があると思うのですけれども、この辺についてどういうふうにお考えなのか、御答弁をちょうだいしたいと思います。
  52. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  女性のみを対象とする接遇訓練でございますが、そういう接遇訓練を実施いたしますことは、先生おっしゃいましたように、一般的には、合理的な理由が認められないものであり、女性職域の固定化をもたらすおそれがあるというふうに考えております。したがいまして、女性のみを対象といたします接遇訓練は、女性に対する差別として禁止されることになるわけでございます。  それから、情報機器の問題でございましたが、一定の職務に従事するための教育訓練につきまして、女性のみを対象として実施することは、やはり一般的には合理的な理由が認められないものでございまして、女性職域の固定化をもたらすおそれがあることでありますので、女性に対する差別として禁止されることになるわけでございます。
  53. 吉田治

    ○吉田(治)委員 続きまして、この片面性の問題で、福利厚生という形でよく話題になりますのは、制服の着用の強制ということなんですけれども、できれば男性社員も、スーツがだんだんぼろくなってくるので自分たちも制服が欲しいなというふうな声もありますし、いや、それまですると強制じゃないかという声もあるのですけれども女性のみに制服着用を強制するということは、女性に対する一種の先入観に基づくものであり、社会通念の固定化につながるものと理解してよいのかどうか。  国際的に、海外、特に欧米などに行きますと、こういう制服を着ているというのは余り見ないのですけれども、本法律案では、こうした女性のみを対象とした制服支給は原則禁止されるというふうに理解をしていいのか。  そして、制服着用を任意とした上で、希望者に、反対に、やはり、私、家から通ってきて、会社の中にいるときは制服の方がいいわ、そうでないと、自分の服だったら自分の服がくたくたになるからというふうな女性の切なる思いもあると思うのですけれども、そういう希望者に制服を支給することは差し支えないのか、お答えを賜りたいと思います。
  54. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 現行の法律禁止しております福利厚生の範囲は、労働省令で規定されているものでございまして、その中に制服の貸与というのは含まれていないわけでございます。したがいまして、現在の省令を前提といたしますれば、制服の貸与については均等法上の問題にはならないわけでございますが、一般的に、今回の改正法案趣旨に照らして考えれば、女性に対してのみ制服を貸与するということは、合理的な理由は認められないのではないかというふうに考えます。  また、制服につきまして、希望者に対して支給するということの場合が多いかと思いますが、これもやはり、考え方といたしましては、支給するならば男女ともに対象とすべきではないかというふうに考えるものでございます。
  55. 吉田治

    ○吉田(治)委員 ちょっと聞き漏らしたんですけれども、では、制服支給は禁止ということにはならないということですね、強制的な部分というのですか、制服着用の強制については。
  56. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 そのとおりでございます。
  57. 吉田治

    ○吉田(治)委員 片面性の問題につきましては、まだ、るる申し上げたいのですけれども、時間の都合もございますので、もう一点、大きな項目といたしましては、今度、労働基準法等にあります女子保護規定というものが廃止されていきます。男性女性、同じように、法の基礎からしましても、家庭も同じように頑張れ、仕事も同じように頑張れ、だから女子保護規定は廃止するよと。  時間外・休日労働などの保護規定がなくなってまいりますと、三六協定の範囲内であるならば、使用者、俗に言う会社、経営者側は女性を自由に働かせることができら、そういうふうにまず理解をさせていただいていいのか。  そして、実際上、この三六協定の届け出状況、監督事業所全体の何割ぐらい、どのようになっているのか一協定の届け出がない事業所への監督というふうなものはどれぐらいの頻度で行っているのか。もしくは、いや、そういうことはしておりませんと言うのか。この二点、お答えをちょうだいしたいと思います。
  58. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 前段の御質問についてお答え申し上げます。  今般、女性の時間外・休日労働規制解消されることに伴いまして、使用者は、女性労働者に対しても男性と同様に、三六協定に定められた延長ずることができる時間などの範囲内において時間外労働を命ずることができます。そして、適法になされた時間外労働の命令につきましては、労働者に正当な理由がない限り、拒否できないと考えておるわけでございます。  この場合、女性に対しましても男性と同様に時間外労働協定の適正化指針が適用されることになるわけでございますが、三六協定の締結に際しましては、労使の十分な話し合いによりまして、個々の業務ごとに時間外労働などが必要とされる具体的な事由を明らかにした上で、適正な時間外労働の上限時間を設定するとが望まれるものであるというふうに考えております。
  59. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 労働基準法三十六条に基づく労使協定の届け出でございますが、まず件数でございます。平成七年度新たに届けられました届け出件数、約八十万件となっております。  またこの労使協定の締結・届け出がない場合には、時間外の労働をさせることがもちろんできないわけでございまして、もしさせていれば労働基準法違反という事態になります。  私ども、第一線の監督機関を通じまして、年間約十七万五千事業場、また相当数の働く方々からの直接の申告といったものをもとにこういった点をチェックいたしておるわけでございます。もしそのチェックする過程で、そういった締結・届け出がないことが発見されれば、直ちに改善指導等、労働基準法違反として必要な処理をいたしておるところでございます。
  60. 吉田治

    ○吉田(治)委員 基準局長の答弁を聞かせていただきながらふと思ったのは、八十万件というのは多分ほとんど社内に労働組合というのがあるのかな、未組織の労働者というのは三六協定という名前すら知らない方も多いのじゃないかな、そういうところで働いている方は何万人いらっしゃるのかなという感じを私は正直言って受けた次第です。  その場合にやはり頼りになるのは、地域の労働基準監督署。しかしながら、今、十七万五千件の事業所を監督という形で回られたというのですけれども、やはり事業をされている人たちの声というのは、こういう声があるんですね。来たら交通違反と一緒だ。町を走っていて、俗に言うネズミ取りというのですか、あれに捕まったようなものだ。ひょっとしたら駐車違反にやられたようなものかもしれない。またこのごろは、勤めている間は言わずに、やめた人が匿名で情報をもたらすというようなことが言われているのですけれども、そういう話を漏れ伝え聞くことについての局長としての感想と、人の面、財政の面あるでしょうけれども、今後、そういうことに対してどういうふうにしようとしているのか、ちょっとその辺、お答えいただければと思います。
  61. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 御指摘のように、先ほど臨検対象事業場、十七万五千事業場と申し上げました。これは、全体の事業場数からすればもちろん一部分になるわけでございます。御指摘のような御意見等も我々認識をいたしているところでございます。  したがいまして、臨検事業場の選定に当たりましては、できるだけ中小零細、そういったところを重点的に回る、そういった工夫をいたしながら、労働基準法が十分履行されることにつながるような臨検監督を心がけているところでございます。  また、四十時間制、この四月一日から実施いたしまして、これを徹底させていくためにも、臨検監督のみでなくて、事業主の団体等とも協力いたしまして、かなり網羅的な集団説明、指導、こういった場を計画的に進めているところでございます。そういった場で、広く網をかぶせた形で、この三六協定との問題についても指導なり点検ができるように私ども心がけてまいりたいというふうに思っております。
  62. 吉田治

    ○吉田(治)委員 そういう監督をもっとしろと言ったらいいのか、頑張れと応援するのか、そういう中で女子保護規定を安易に廃止してしまうというふうなことは、私からすると、ちょっといかがかなということだけを指摘させていただきます。  次の質問ですけれども、昼夜の交代制勤務制度を持っている製造業などでは、深夜業もう解禁という形になりますと、これは仮定の話ですけれども、一律に女性を全員深夜シフトに組み込むことができるのかどうか。  そして、女性については、希望した者に限って深夜業をさせる方式というものは認められていくのかつ可能かどうか。反対に言ったら、特に低学年の小学生がいるという家庭責任で深夜業を、いや、ちょっと私できないのでと拒否するということもそれぞれ認められるのかどうか。深夜時間帯のうち、これは労基法でなくなっていきますので、女性については午前零時までとするといった扱い、つまり、労使間での取り決めをするということは違法になるのかどうか。  この二点、お答えをいただきたいと思います。
  63. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 女性労働者に対します時間外・休日労働、深夜業の規制につきましては、これは女性職域拡大し、男女の均等取り扱いを一層促進するため、均等法改正とあわせて解消するものでございます。  これに伴いまして、事業主労働基準法、労一働安全衛生法、育児介護休業法などに規定されました深夜業に係る規定を遵守しうつ、就業規則を変更し、女性労働者に深夜業をさせることができるようにすることは、経営上の必要性及び変更内容の相当性が認められる限り、当該変更に合理性があり、有効であるというふうに考えております。  しかしながら、このような就業規則の変更に当たりましては、労使間において十分な協議を行うことが望ましいわけでございますし、また、深夜業に就業することに伴う個々の労働者の負担を軽減するための就業環境整備等の措置が講じられることが望ましいと考えます。  また、個々の労働者の健康とか家族的責任の状況理由として他の労働者と異なる取り抜山をすることは、均等法上の問題となるものではないわけでございますが、深夜業を希望しない労働者について就業規則において配慮するということとか、これらの労働者と十分な話し合いをした上文深夜業につかせない旨の労働契約を締結することは有効であるというふうに考えております。  なお、労働者に対し適法になされた深夜業の命令につきましては、労働者に正当な理由がない限り拒否できないものと考えますけれども、いずれにせよ、深夜業を行わせる場合には、育児介護を行う必要のある労働者などに対する配慮も行われるよう、就業規則の変更などに当たりましては、労使の十分な話し合いを期待したいと思いますし、今般の改正趣旨等については徹底してまいりたいというふうに考えております。  それから、深夜時間帯のうち女性についての扱いでございますが、交代制勤務制度採用している場合におきまして、女性労働者一定の深夜時間帯について勤務させないとすることは、これは当該勤務から女性を排除するということになりますので、均等法に違反するものでございます。  また、御指摘のようなケースにおきまして、時間外労働をすることによって労働が深夜に及ぶことになるような場合は、このような労働協約や就業規則の定めが直接に均等法に違反するものではございませんけれども、これを理由といたしまして、募集採用配置昇進などについて男女異なる取り扱いをすることは、合理的な理由がない限り均等法違反になるものでございます。
  64. 吉田治

    ○吉田(治)委員 労使労使間と言われますけれども、まず、女性局長、日本の全事業所の中で労働組合というのは何%組織化されているわけですか。  そして、今問題にしております深夜業というものを免除になった労働者が、例えば配置昇進で異なる扱いを受けることは差別に当たるのかどうか。これは法律規定がないのですね。  二つ目、深夜業の実態というものを数値的にどう把握しているのか。  そして反対に言いますと、今局長は、深夜勤務を正当な理由なくして拒否することはできないということですけれども、例えば企業家側にとったら、先ほどの話じゃございませんけれども、深夜勤務を拒否した女性就業規則違反で処分、つまり、おまえやめろというふうな処分をしたときに違法というふうになるのかどうか。  私は、数字的なものを二つと、そして、この深夜業を女子保護規定から外すことにおいて、ひょっとしたら女性における非常に大きなマイナス点になることについてどう考えているのか、しっかりした答弁をちょうだいしたいと思います。
  65. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 労働組合の組織率は約二・三%程度であるというふうに記憶しておるところでございます。  それから、深夜業を免除になった労働者配置昇進で異なる取り扱いを受けることでございますけれども、深夜業を希望しない旨を本人が申し出た場合につきまして、深夜業に従事している他の労働者と異なる取り扱いを行うことは、女性であることを理由とする取り扱いとは異なることから、均等法上の問題となるものではございません。  一方、女性が一律に深夜勤務から排除されている場合は、配置に関して均等法に違反するものであり、また、残業が深夜に及ぶ場合に、就業規則や労働協約によって一律に女性の深夜残業はさせない旨定めている場合につきましては、これを理由といたしまして、募集採用配置昇進などについて男女異なる取り扱いをすることは、合理的な理由がない限り均等法に違反するものでございます。  それから、深夜勤務を拒否した女性を処分するということが違法となるかということでございますが、就業規則に基づき適法こなされた深夜勤務の命令につきましては、労働者に正当な理由がない限り拒否できないものであるというふうに考えます。したがいまして、当該深夜勤務の命令が業務の必要性に基づくものであり、当該労働者が正当な理由なくこれを拒否した場合には、拒否したことを理由として懲戒免職等の対象とすることも有効となり得るものと考えております。
  66. 吉田治

    ○吉田(治)委員 では、深夜業の実態というのはどれぐらい把握されているわけですか。
  67. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 これは一定期間でございますけれども、実際に深夜勤務をしている女性労働者につきましては、約六・二%程度であるというふうに把握しております。
  68. 吉田治

    ○吉田(治)委員 二三%しか組合がない、その中で深夜業をさせている。深夜業に従事しているのは今六・二%だ。では、予測としては、今後、これはどれだけふえていくというわけですか。  私、いつも国会の質問で申し上げているのは、数値なくして法律は出さない。予測もなしに、ただ単にこうしたらいいだろう、そして逃げ込む先は、いつも審議会で決まりましたと。国会軽視というか、行政の方はそういうふうな逃げ口上ばかりされて、では私たち会議員というのは何のためにいてるのという話になるのですね。ですから、この辺の数字というものをどうとらえてこの法案を出したのか、伸びとしてはどうなっていくのか、その辺のことを出してください。
  69. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 現在、男女合計で一三・九%の者が深夜勤務従事者になっているわけでございますので、これは女性が深夜をできることによって男性とシェアをするというわけでございますので、女性がふえる可能性はございますが、全体としては一三・九%程度で続くものというふうに考えております。
  70. 吉田治

    ○吉田(治)委員 私、局長に指摘しておきたいと思いますが、あれは甘い。何でか。女性の方がやはり若い方、先ほど言いました、今たとえ女性結婚が大みそかと言われながらも、やはり二十代で結婚される。では、企業側にとったら、雇う方にしてみれば、これからメガコンペティションだとかいう時代において、やはり、より安い人を雇いたい。局長御承知のとおり、深夜というのは割り増しもたくさん払わなければいけない、しかし、それでも会社を回す部分もある。――失礼、深夜業だから割り増しじゃない。また、深夜業につける場合には、やはり年いった人、高齢者、高賃金の人はどうも避けたい。できるだけ人を減らしたいという中において、これは確実にふえてくる話ですね。  私の聞いている話では、もう今や、この法律ができるという前提で、女子の例えば組み立てラインの人たちに、おまえ深夜業をやるかというふうな希望をとっているという話も聞いているのですね。そういうふうなことに対してどう対応していくのかということをこの法律が出されるときに考えておかなければならなかったのではないか、私はそういうことを指摘しておきたいと思います。  そして、もう一つ言えることは、例えば正社員の女性が、反対にこの深夜勤務につきたいけれどもつけない、深夜専業に女性パートというふうなものを雇ってそれで事なきを得ようとなった場合、これは法違反にならないか。特にコンビニなどで、防犯上の理由から女性を深夜業につけないというふうなこともあると思います。この辺の違法性というふうなもの、これを見ていてどういうふうにお考えになられるのでしょうか。
  71. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  正社員に関しましては、男性については昼夜の勤務につけているにもかかわらず、女性については、女性であることを理由として深夜勤務につけないこととすることは、女性一定の職務への配置から排除するものでありますので、均等法に違反するわけでございます。また、深夜勤務のパートに女性のみを採用することは、今回の改正におきまして、募集採用に関する女性に対する差別取り扱いに当たり、違反となるわけでございます。  それから、コンビニの問題でございましたが、募集採用配置昇進につきまして男女異なる取り扱いをすることは、社会通念上、男女異なる取り扱いをする合理的な理由がある場合として適用除外に該当しない限り均等法違反となるわけでございます。  この適用除外につきましては、拡大解釈されるべきではなくて、深夜のコンビニで働きたいという女性がいる場合に、単に社会通念上、深夜の店番は危ないと考えるだけでは適用除外にならないというふうに考えております。
  72. 吉田治

    ○吉田(治)委員 そういう中で、労働協約で女性については深夜、休日などについて男性と異なる扱い、先ほどから議論しております回数制限などで女性を有利に扱う片面性という形になると、これは違法というふうに考えてよろしいのでしょうか。
  73. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  労働協約の有効性は、強行法規または公序良俗に反するか否かにより判断されるものと考えるわけでございます。  男女異なる内容を定める労働協約につきましては、直接抵触する強行法規はございませんけれども、かかる労働協約が公序良俗に反するか否かは合理的な理由の有無により判断されるものでございまして、合理的な理由があるか否かは、立法政策の方向とか社会環境状況等を総合的に勘案しつつ、個別具体的な事案に応じて判断されるものと考えるわけでございます。いずれにいたしましても、時間外・休日労働や深夜業につきまして労働協約で定める場合は、改正均等法趣旨にかんがみ、深夜業等を希望する女性労働者に対して、その機会を奪うことにならないようにすることが必要であるというふうに考えます。
  74. 吉田治

    ○吉田(治)委員 先ほどから局長の答弁を聞いていましたらキーワードが出てくるのですね、正当な理由、合理的と。これは個別具体的に、何かそういう正当な理由事例集であるとか、合理的な文言例示集とか、そういうのがあるわけですか。
  75. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 今回の改正に当たっての基本的な考え方は、男女が同一の条件で働ける枠組みをつくることでございまして、働く女性が性により差別されることなく、その能力を十分に発揮できる雇用環境整備することでございます。  このような立法政策の方向にかんがみますれば、男女異なる内容を定める労働協約が公序良俗に反しないとされる合理的な理由というのは限定的に解すべきものと考えているわけでございまして、防犯上の観点とか就業環境整備観点などを総合的に勘案して公序良俗に反しないと判断される場合もあると考えるわけでございます。  いずれこいたしましても、合理的な理由の有無につきましては個別具体的な事案に応じて判断されるものでございますので、現段階において、合理的な理由の有無を具体的に断定することは難しいというふうに考えます。
  76. 吉田治

    ○吉田(治)委員 ちょっと物がわからないので教えてください。では、例えば合理的な理由というのはだれが判断するのですか。
  77. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 裁判所による判断でございます。
  78. 吉田治

    ○吉田(治)委員 そんなとぼけたことを言ってどうするの。何かおかしいことがあって、合理的な理由、正当な理由、何でも裁判所まで持っていけというわけですか。  では、今まで言った質問で、例えば三六協定の中で自由に働かせるかどうか、正当な理由があってできる。今言った深夜勤務を拒否した女性を処分することは違法となるかならないか、正当な理由があればそれは違法とならない。では、すべては裁判所まで持っていって十年戦争、二十年戦争、三十年戦争をやってください、その間に局長、申しわけないですけれども、この世にいてるかどうかわかりませんが、また、ひょっとしたら第二の人生をどこかの特殊法人で楽しまれているかどうか、それは私は存じませんが、しかしながら、そういうふうな法案を出して審議しろと私たちに言うわけですか。  そういう事例だとか判例だとか、では、婦少室だとかそういうふうなのをつくっていくのはどういうことなのか、ちょっと教えてください。
  79. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 いろいろと最終的には裁判所で判断されるわけでございますけれども、新しい法律の方向に沿いまして、婦少室では、労働協約等々が十分に労使の話し合いによってされますように、いろいろとPR等には努めていきたいというふうに思っておるところでございます。
  80. 吉田治

    ○吉田(治)委員 局長、私はあなたをいじめているわけじゃないのです。こういう大事な法案が出てきて、私たちの世代は、一番最初に申し上げました、十年間、この法ができたことによって人生が変わったのです、みんな。それほど、これから十年先、人生を変える法案なんです。だから、例えば正当な理由事例集だとか、どうも話を聞くとそういう、言葉で、本当は時間があったらポジティブアクションの話をしたいのですけれども、まさにこのごろ、霞が関というのですか、そこ出身の大臣には申しわけないのですけれども、話がもう何かややこしくなってくると片仮名に逃げるんですね、ポジティブアクション。私が世の中の人にポジティブアクションができるんですと言ったら、大抵みんな、それ何やという話になるのですね。何か逃げ込むように、大きな言葉、大きな言葉で逃げてしまうというのは私はどうしても解せない。  本来ならば、ここで委員会をとめて、もうちょっと勉強してこいということになるんですけれども、そういうわけにもまいりませんので、あと質問進めたいと思いますけれども、そういう発想というのが、どうも永田町の論理と言われるのと一対になる霞が関の論理なのかな。そういうふうなことを、情報を開示し、オープンにし、こういうふうなことがこうなりますよ、ああなりますよということをもっともっと、今局長はPRすると言われましたけれども、実際上、そのPRの中に入れていく。  やはり、十年間大変な目に遭ったということと同時に、十年間で私たちの世代はいいこともいろいろあったわけなんですね。このことによって、経営者だとか会社の人たちの発想が随分変わった。  私の家内の話をして申しわけないですけれども、大学を出てある会社に勤めた、十数年昔です。そのとき、会社の気まぐれかどうかわかりませんけれどもへ営業だといって出された。出されて、みんなどうしたか。女が来たんか。今、十数年たって、女性の営業マンが、営業マンとは言わないんだな、女性の営業、セールス担当が回っても何にも違和感を持たない、そういうふうになってきたわけですから、女子保護規定とはちょっと話がずれましたけれども、そういうことをよく理解していただかなければ、この法案というものを、それだけ大事なものをちょっと審議してよというわけにはまいらないというふうなことを私は思うわけであります。  さて、話はもとに戻りますけれども、深夜業の規制におきましては、ILO百七十一号条約というふうなものがございます。日本はこれを批准しておりません。批准していない理由は何なのか、そして現在批准している国は何カ国あるのか。これを批准するという指針が出されたと思うのですけれども、今後、批准に向けた作業というのをする予定はあるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  81. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  百七十一号条約を批准している国は、キプロス、チェコ、ドミニカ、リトアニア、ポルトガルの五カ国、これは一九九六年十二月末の数字でございますが、五カ国でございます。  本条約につきましては、夜業に従事する男女労働者の健康を確保し、家族的責任を果たすための措置等を内容とするものでございまして、この条約の制定につきましては日本国政府は賛成したものでございますけれども、中の第一条の(b)という項におきまして、「自己の職務のために、一定の限度を超える相当多くの時間の夜業に従事しなければならない被用者」という言葉がございますが、いわゆる夜業労働者ど、労働基準法等関係法令上保護されている労働者との間で差があるということ、それから第九条におきまして、夜業労働者には適当な社会的な便益を要請しておりますが、具体的にどのような範囲なのか、また我が国は、現行法令で定めるもののほかにどのような措置が必要とされるかなどの点につきまして、国内法制との整合性について検討を要するものと考えておるわけでございます。  現在、批准に向けて具体的な検討を行っているものではございませんが、今後、これらの問題点につきましては検討を進めてまいりたいと思っております。
  82. 吉田治

    ○吉田(治)委員 条約があるから何でも批准するのがいいのかどうか、これは国会を含めて議論をしていく必要があると思います。  しかしながら、この女子保護規定を廃止するということは、男女共通の法的規制がないまま、女性の時間外、休日、深夜労働が野放しになるのではないかという心配があると私は思います。  一方では、局長にばかりして申しわけないのですけれども局長を初めとする、俗にキャリアウーマンというのですか、ばりばり仕事をする人たちにはもう願望なんですね。これがあるから私たち仕事をやはりどこかでやめなあかんしへやめるというのは仕事をその日終えて帰るということ、昇進だとかそういうこともきついんだ。私は、それは一面評価はできると思うのです。  でも、世の中の働いている女性というのは、そういう方というのはほんの一部なんですね。局長、御承知のとおり、東大法学部を出た人ばかりじゃないのです。ほとんどの人たちは、今局長も数字言われました、二三%の労働組合があるところに入っている人ですら、私はひょっとしたら幸福かな。それ以外のところの人たちというのは、果たして国会でこういう審議がされているということを知っているのかな、多分テレビのニュースか新聞を見て、こんなのあるんやな、どうなるんかねということでしかならないと思うのです。  ですから、先ほど基準局長にお話をいただきましたように、監督、臨検という、何とも言えない懐かしい言葉を聞いたのですけれども、臨検というふうなものをして、経営者側にしたら、いや、やはりちゃんとしておかなあかんのよというふうに思わせる必要があると思うのですけれども、やはり企業側の発想、会社の中へ入りますと、経営者は強い、働く人は弱い。  そして、今の経済状況からすると、経済が上り調子だったらやはり経営者も、先ほどたしか大臣の答弁か何か、それから同僚議員の質問の中にあったかもしれませんけれども、経済、上り調子だったら、大事にしなければ、この人逃げられたら困るわ。今ちょっとディクラインというのですか、ちょっと経済が悪くなってまいりますと、おまえおれへんかても次ええのが入ってくる、安うていいのがいっぱいおるんだ。まさに労働市場という、市場性という形になってまいりますと、男女共通の法的規制がないまま女子保護規定が撤廃されるということは、本当に女性の時間外、休日、深夜労働の野放しになるのじゃないかという心配が非常に強い。  この審議会審議の過程でもさまざまな議論があったやに聞いております。できれば、中基審で男女共通の規制が出るまでこの法案施行されないというふうな形にしてもらいたいという切なる希望もありますし、肝心の中基審の議論は、聞くところによると、経営者側は、もうこの問題は終わったんだよ、これは議論しないんだよという議論もあるやに聞いております。  中基審の入り口の段階でそういうようなことになると、先ほど申し上げました、審議会方式というのは果たしていいのかどうか。今の過労死、少子高齢化社会において、果たしてこんな状況でこれから社会がうまくいくのかなという感じが私はするのですけれども、まず局長、野放しになる心配があるのかないのか、自信を持って一きょうはたくさん傍聴の方もおいでです。この方たちは、これから先五年、十年で退職をされる方ではないと思います。終わったらさようならではないと思います。ひょっとしたら、局長が参議院選挙に出られたらまた別ですけれども。しかしながら、どうぞ局長としてのお答えをまず賜りたいと思います。
  83. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  女性労働者に対する時間外・休日労働、深夜業の規制につきましては、繰り返しになりますが、女性職域拡大し、男女の均等取り扱いを一層促進するために解消するものでございます。そういう点から、企業雇用管理におきましても、深夜勤務等を希望する女性労働者について、その機会を奪うことがないようにすることが必要であるというふうに考えるわけであります。  しかしながら、これまで時間外・休日労働や深夜業が規制されていた女性労働者につきまして、新たに時間外・休日労働や深夜業をさせることができるように就業規則や労働協約を変更する場合には、労使間において十分な話し合いを行うことが望ましいと考えるわけでございます。  この場合、時間外労働につきましては、労使が三六協定を締結し、監督署へ届け出ることにより当該協定に定めた範囲で行うことができるものでございますので、その締結に際しましては、個々の業務ごとに時間外労働などが必要とされる具体的事由を明らかにした上で、適正な上限時間を設定することが望まれるわけでございます。  また、三六協定の締結の際に、家族的責任を有するため時間外労働を行うことが難しい者につきましては、当該協定からの除外とか当該協定による一定配慮を行うことも可能でございます。  また、深夜業につきましては、深夜業に就業することに伴う個々の労働者の負担を軽減するための就業環境整備等の措置が講じられることが望まれるというふうに考えております。
  84. 吉田治

    ○吉田(治)委員 今局長の、就業環境整備というようなことで、省令で新たに女性を深夜労働につける場合の配慮、例えば通勤であるとか、夜の場合ですから特に安全の問題、そしてやはり休憩室の問題、この辺の省令というものを今後どういうふうに整備するのか。そして二点目、先ほど申しました中基審の議論というのが入り口でとまっているということですけれども、この中基審の現在の議論の段階、議論の始まりというふうなものについてどうなっているのか、そして、今後いつまでに決着ができるのか、いつをめどにしているのか、この点についてお答えをちょうだいしたいと思います。
  85. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 最初の質問にお答えさせていただきます。  就業環境整備につきましては、今後、省令、通達等で決めていきたいというふうに考えております。
  86. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 中央労働基準審議会におきます労働基準法制の見直しの審議状況でございますが、この中央労働基準審議会におきましては、既に私どもからもお願いいたしまして、労働基準法労働時間の管理あるいは労働契約、そういったものに関するルールにつきまして検討テーマを設定し議論をしてほしい、こういうことで、既にそういったテーマにつきまして労使意見がかなり交換され、進んできているところでございます。  今申し上げました検討対象のテーマの中には、時間外労働、休日労働のあり方、あるいはそれに関連する範囲で深夜業の問題もテーマとして取り上げられておるわけでございまして、御指摘ございましたように、入り口段階でとまっているという状況では決してございません。そういった労使意見がほぼ全テーマについて開陳された段階を過ぎておりますので、今後は、労使のかなりの意見の隔たりがある中でさらにどう歩み寄れるか、そういった論議をお願いして、七月いっぱいぐらいをめどに、私ども、こういった問題についての方向性、そういったものを見出してまとめていただきたい、こういうことで審議会の方にもお願いし、そういったことを目標にした審議が今後進められる予定になっております。
  87. 吉田治

    ○吉田(治)委員 検討テーマについては順序とかその辺はもう決まって、では、具体的に議論が始まったととらえていいのか、そして 方向性というのは、七月ちゅうに中基審の中間報告なり結論が出るのか、中間報告等々であるならば、結論はいつなされ、建議というふうなものをいつされる予定なのか、この辺をお答えいただきたいと思います。
  88. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 まず、検討テーマでございますが、先ほど来御指摘のございました時間外労働、休日労働のあり方、またそれに関連する範囲で深夜業の問題等も含みましてテーマが設定され、そのテーマごとに労使意見の開陳が進められてきて、その作業は一応終了した、こういう段階でございます。テーマにつきましての順位でございますが、これは特に順位等を定めることなく、あらかじめ設定されたすべてのテーマについて労使意見の開陳が行われてきたということでございます。  今後、私ども、七月いっぱいに一定の方向を見出して、中間的な報告をいただくべく、労使意見の相違が相当ある部分につきまして、どういうふうに歩み寄れるのか、そういった論議を今後お願いしていきたい、こういうふうに思っております。  したがいまして、一定の方向を見出して取りまとめていただく中間報告は、七月いっぱいを目途に、私ども、精力的に審議会の方とも作業を進めてまいりたいと思っておるところでございます。
  89. 吉田治

    ○吉田(治)委員 もう時間を超えていますけれども、最後に、中間報告じゃなくて、では、いつこれは終わって、結論というのは、めどはいつぐらいですか。
  90. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 七月いっぱいに一定の方向を見出していただいて中間報告をいただくわけでございますが、まずそれをいたしまして、それで、その中には労働基準法改正等に絡む点も指摘されてこようかと思います。そういった問題を含めまして、さらに労働法制等の見地も加えまして、年いっぱいは、どういうふうにまとめていくかという論議がさらにその上に積み重ねられるかと思います。私ども、早ければ年内あるいは来年の当初には、そういった形の議論の成果として、かなり固まったものが審議会からも報告されるということを期待しているところでございます。
  91. 吉田治

    ○吉田(治)委員 そういったふうな中で、大臣、本法案施行せられるまでに、今局長審議会の進捗状況等を述べられましたけれども、時間外、休日、深夜労働に関する男女共通の法的規制の作成の必要性、そしてまたそれを具体化していくという必要があると思うのですが、大臣のこれに対するお考えと今後の取り組みについて、お答えをちょうだいしたいと思います。
  92. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生がおっしゃいます男女共通の規制の問題につきましては、きのうの本会議で総理から、また私からお話を申し上げたとおりであります。  中身を言いますれば、やはり時間外といいあるいは休日労働といいますものは、景気の好不況、それに伴うところの雇用調整というような大きな問題とのかかわり合いがあり、深夜労働につきましては、先生コンビニとおっしゃいましたけれども国民生活の利便あるいは生産技術上、例えば高炉の火は一遍消すと云々というような多様な問題をはらんでいるというような中から、この問題についてはなかなか慎重な検討を要するのであるな。だがしかし、労働省ひとりでこれを差配するわけにまいりませんもので、先ほどから先生の御質問がありますように、中央労働基準審議会において、昨年の暮れ、私はこれに対してお願いを申し、七月いっぱいに結論を得たいというようなことで御審議を煩わしているところであります。  ただ、そこに御審議をいただきますところの問題は多々ございます。裁量労働制の問題あるいは変形労働制の問題、あるいは労働契約期間というものは、今まで女工哀史等々の経験にかんがみて、昭和二十二年以来一年だ、こうなっているが、今の時点で、えっという問題もこれこれあるというような大きな問題点の中で、多数の問題点のある中で、今お話しになっている問題も俎上にのせていただきたいというお願いを申しているところであります。現状、そのように進んでおりますことを御理解を賜りたい。
  93. 吉田治

    ○吉田(治)委員 もう終わりますけれども大臣のきのうの答弁、また今の答弁の中で利便性ということを言われましたけれども、果たして、私たちが利便性ばかりを追い求めていって、いつになったらゆとり、豊かさを感じる国民になれるのかなというふうなことを今強く感じている。  あと、ポジティブアクションについて、また差別禁止の法的効力、間接差別の扱い、セクハラ、特にこれは男性から女性のみならず、ひょっとしたらこれから女性から男性への逆セクハラというのも出てくるのじゃないかということも指摘をさせていただきたかったのですけれども、時間も大分オーバーさせていただきました。この法案審議を通じて、よりよい男女雇用関係と労働関係ができることを祈りまして、私の質問を終わらせていただきます。
  94. 青山丘

    青山委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ――――◇―――――     午後一時二分開議
  95. 青山丘

    青山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。桝屋敬悟君。
  96. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 午前中の同僚吉田議員に続きまして、均等法改正案質疑をさせていただきます。  いずれにしましても、今回のこの十年ぶりの改正、多くの国民が関心を持って見ておりますし、また、本日も多くの傍聴の方もいらしております。我が委員会としては十分な審議をするという方向で我が新進党も頑張ってまいりたい、こんなふうに思っております。  質疑に入ります前に、私自身、質疑をするということで、地元で多くの勤労女性の方と懇談をしてまいりました。いろいろな議論がたくさん出まして、まことにこの問題の難しさを改めて感じさせていただいた次第であります。冒頭ではありますが、結論的には、どうしても、家庭といいますか、企業よりもっと基本的な、家庭における男女のあり方というもの、そこまで行くわけであります。  そういう立場からいきますと、私ごときは、働き過ぎの経験をし、そして、全く家事に携わってこなかった、育児にも携わってこなかった立場でありまして、この質疑をすることに大変後ろめたさを感じながら立っているということも報告をさせていただきながら、入りたいと思います。.最初に、調査室の方からしっかり資料をいただきましたけれども、いつものことながら、やはり多くの国民が関心を持っている重要な課題であるという観点では、私は、一つ資料として漏れておる部分があるのではないかということを申し上げたいと思うのです。  スイスで国民投票が最近あったということでございまして、国会で決定したことが、その後国民投票によりまして、特に女子保護規定の撤廃の問題、これは国民投票でもう一回見直さなければならなかったという事態があるやに伺っております。こういう資料が、その議論の背景とかがないわけでありまして、これは労働省としてどのように把握しておられるのか、いつの時点でこういうことがあったのか、そしてどういう状況であったのか、ぜひ、この委員会にもそういうデータはお出しいただきたいと私は思うのでありますが、スイスの状況をまず最初にお尋ねしたいど思います。
  97. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  スイスで、女性の深夜労働解禁、それから同時に、小売店の日曜営業を許可なしに年間六日まで認めるといりた事項を含む労働法の改正案について、国民投票が行われ否決されたと聞いておりますけれども現行法改正法案内容等につきましては、現在照会中でございます。  いずれにいたしましても、それぞれの国の法制度はその国の経済社会状況とか国民意識などによって異なるものでございますので、我が国におきましては、婦人少年問題審議会を初め関係審議会でいろいろと御議論をし、審議をしていただいた結果へ今回の改正法案を提出するに至ったということでございます。
  98. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 よその国のことだから、我が国我が国状況の中で議論をするということでありましょうが、スイスという国は大変に労働時間の長い国だというふうに聞いておりますし、ある意味では我が国に共通部分もあるでありましょうし、そしてまた、我が国がまさにこの委員会で議論をするときに、取り寄せられるものならそのデータはぜひお示しをいただきたい、このように私は思うわけでありまして、具体的な資料としてはこの委員会に提供はまだ難しいということでありますか。
  99. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 先ほどお答えいたしましたように、今照会中でございますので、間に合えばということでお願いします。
  100. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ぜひ間に合うようにお願いを申し上げたいと思います。  それから、具体的な内容に入りたいと思うのですが、十年たちまして、確かに女子をめぐる就労の環境というのは大きく変わってきたということは私も感じております。それは先ほどの同僚吉田議員の議論でもあったわけでありますが、現場婦人少年室、地元の婦人少年室に私は行ってまいりました。それで、十年たった今の状況がどうなのか、端的な事例を伺ってまいりました。  私の地元の山口県の婦人少年室が昨年の六月-十月、県内の女子大生を対象に就職相談窓口を開設した。そうしましたところ、この六月から十月の間に二百六十二件ぐらいの相談が来ておる。内容は、現行均等法に違反しているものを含めてやはり相当深刻な状況が出てきておる、数というよりもむしろ内容的に大変深刻な事例があるという報告を私はいただきました。  ちなみに、御紹介いたしますと、女子であることを理由として応募の機会が与えられていない事案というものが三五%ぐらいある。あるいは、情報提供が男子に比べて不利に取り扱われている事案が二七・九%、あるいは女子のみ自宅通勤であること等厳しい条件が付されている事案が一〇%ぐらいあるということで、十年たってもやはりまことに厳しい現状があるのではないか。しかも、これは相談があった件数でありますから、恐らく、相談がなくて現実に現場で悩んでおられる数というのはもっともっとあるのだろう、氷山の一角ではないか、こういう気がいたします。  全国の数字、この資料でいただきまして、年々やはり婦人少年室への相談事例というのはふえておるのでありますが、こうした状況というのは労働省でどのように把握されておられるのか、お示しをいただきたいと思います。
  101. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 先生にわざわざ山口婦人少年室に行って見ていただきましたことを心から御礼申し上げたいと思っております。  女子学生就職問題について厳しい状況に直面しているというのは、山口の事例先生今おっしゃったとおり、これは全国的に同じような状況でございます。  世が厳しい条件になりました平成六年から、労働省では、毎年六月から十月まで、婦人少年室女子学生就職問題に関する特別相談窓口を設置いたしまして、募集採用に関しまして、男女の均等な取り扱いについて女子学生からの相談に応じているわけでございます。  相談件数は、先生御指摘のとおり年々増加傾向にあるわけでございまして、平成八年の六月から十月までの間に計一万件を超える相談が寄せられたわけでございます。このうち、男女機会均等法及び指針の規定に関するものが約八千七百件ということで、前年に比べて一割程度増加しております。  相談の主な内容といたしましてま、山口県と同じようなことが多うございますが、例えば、男女不問募集だったので応募に行ったら、女性募集しないから帰ってくれと言われたとか、資料請求したけれども女性には送られてこなかったとか、それから男女別に募集または採用人数に制限を設けたり、女性自宅通勤者に限るなど、女性に厳しい募集採用条件が付されているというようなものが全国的に見られるところでございます。
  102. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 これは後ほど、ポジティブアクションあるいは婦人少年室の行政指導のあり方ということでもう一度議論させていただきたいと思うのですが、この状況というのはまさに氷山の一角でありまして、私も現場に行きまして、女子大生の問題で特にはっきりした男女の差というものを改めて見せていただいたわけでありますが、冷静に考えると、やはり我が国はそうなのかな、十年たっても、均等法十年、今まで運営されてきましたけれども、やはり端的に今の女子大生の就職状況に見ますように、大変に厳しい状況があるということもこれは事実だというふうに感じるわけであります。この事実は事実として受けとめながら、一歩一歩前へ進めるという姿勢が私たちに今求められているのだろう、このように認識をする次第であります。  聞きましたら、中には、今のような均等法違反の事例も含めてでございますが、例えば健康診断書を提出した際にこんなに体重があるのと言われたとか、結婚まで二、三年いてもらうというようなことを言われたとか、まさに、均等法の精神から見ますと本当に怒りを感ずるような声もあったわけであります。  さて、それで、今のは苦情が訴えられたケースでありますが、具体的にこの十年間でどれぐらい女子就業環境が変わってきているかということで比較をいたしますと、労働省女子雇用管理基本調査、このデータがあるようでありますが、依然として女性のみあるいは男性のみの募集の実態というのはあるようでありますし、私は着実に進んでおるのかという理解をしておりましたけれども、実はそうではなくて、四年制大学の事務系あるいは技術系あたりは「いずれの職種・コースとも男女とも募集」という数字は確かにふえておるのでありますが、短大以下になりますと、高卒等につきましては、平成四年と平成七年を比べましても、女性のみの募集の職種、コースというもの、この実態がふえておるというようなこともあるわけでありまして、この辺はどのように労働省として把握しておられるのか、あるいはその原因をどのようにお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
  103. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、女子雇用管理基本調査によって見ますと、四年制大卒では、どの区分でも「いずれの職種・コースとも男女とも募集」が増加しているわけでございますけれども、その他の学歴、募集区分では、「いずれの職種・コースとも男女とも募集」が減少して、一部を除いて「男性のみの募集」が増加しているわけでございます。この調査の中で「男性のみの募集」の理由を調べているわけでございますが、その理由といたしまして、業務に必要な資格、技能を持つ女性がほとんどいないというのが最も多うございまして、その次に「深夜には及ばないが、時間外労働が多い。」それから「労働基準法女性に認められていない深夜業がある。」といった法制上の制約を挙げている企業が多くなっているわけでございます。  こういうことから、女性の応募機会をふやすために、私どもといたしましては、学生が進学時に職業選択を見通した進路決定を行うような啓発を行っております。同時に、女性の職業能力の開発向上や女性職域拡大を可能とする法制の整備を図ることが必要であるというふうに考えているところでございます。
  104. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 今局長の御答弁で、女性の技能技術、そうした特性からして男性のみの募集というものがむしろ逆にふえておる、こういう実態のお話があったわけであります。これは、午前中、吉田議員の方からも話が出ましたけれども男性のみ、あるいは裏を返しますと女性のみの募集という実態、いわゆる性の特性に応じて事業主がいろいろな採用をされるわけでありますので、まことに難しい議論ではありますけれども、片方だけ決めて募集採用するということは、やはり均等法の精神からするとここは改善をしていかなければいかぬ大きな課題であろう、こう思うわけであります。  それで、一つ伺ってみたいのですが、やはり現場事業主からすると、均等法があるから募集だけはちゃんとしましょう、全部均等に試験は受けさせる、情報も全部与えますよ、しかし実態としては、心の中はやはり男性中心でいこう、我が社はそれでいくんだ、こういう事例もあろうかと思うのでありますが、募集と実際の採用、この乖離というものがデータとして出ておるのじゃないか、こういう気がいたしますが、その辺のデータがありましたら、お示しをいただきたいと思います。
  105. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 先ほどの女子雇用管理基本調査によりまして募集及び採用状況を見ますと、いずれの学歴、採用区分におきましても、男女とも募集採用した企業の割合は、男女とも募集した企業の割合より少なく、一方、男性のみを採用した企業の割合は、男性のみを募集した企業の割合より多くなっているわけでございます。「男性のみ採用」の理由をこの調査で見ますと、「どちらかと言えば男性採用したかった」と答える企業が一二・一%と少なく、むしろ「女性に適当な人材がいなかった」というのを挙げる企業が四三・二%、また「女性の応募がなかった」を挙げる企業が三八・三%というふうになっているわけでございます。  また、先ほどの先生のお話にもございましたが、内定状況調査を見ますと、四年制の大卒の男子の内定率は九三・二%、女子の内定率は八六・二%ということで、少し差が見られるというような状況になっております。     〔委員長退席、河上委員長代理着席〕
  106. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 局長、私が伺ったのは、問題になるのは、やはり今の場合は男性のみの募集、こういうことだろうと思うのですが、実際に募集だけではなくて採用になると、僕はより男性のみの採用になっているケースが多いのではないか、こう思っているわけであります。これは今お答えがなかったのだけれども、例えば大卒、それから短大、高専あるいは高校卒を見ましても、実際に募集の実態それから採用の実態を見ると、やはりより差がついているような気がいたします。  それで、先ほど吉田議員の議論でもありましたけれども男性だけを採用するということは、法改正の後の新しい均等法では禁止されているわけですから法律違反という御説明があったかと思うのですが、先ほど私が事例として申し上げました、募集はちゃんとします、平等にします、しかし実際、採用男性だけですと。これは、改正されましたならば、この法律案では禁止になるのかどうか、この辺をお教えいただきたいと思います。
  107. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  均等法は、企業制度、方針におきまして、性別によらず個々の労働者の意欲と能力に応じて均等に取り扱うことを求めている法律でございます。ですから、もともと女性採用しないという方針のもとに、採用するか否かということを、採用決定の最終段階におきまして女性を排除し、男性を中心にした採用をすることは、均等法違反となるものでございます。
  108. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 今局長がおっしゃったように、最初から方針として男性だけというのじゃだめだよと。しかし、結果的には男性だけになった、男性がメーンになったというのは、これは法律上やむを得ないということでございますか。
  109. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 はい。男女ともに募集し、応募の受け付け、それから採用のための選考など、労働契約の締結こ至る一連の採用手続におきまして、女性に対して男性と均等な機会を与えなければいけないわけでございますから、その結果、個々の労働者の意欲、能力を適正に評価した結果、男性が多く採用されるということま均等法に違反するものではないというものでございます。
  110. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 今のところ、大変難しいところだろうという気がいたします。事業主採用権を持っているわけでありますから、どうにでも申し開きも言い繕いもできるわけでありまして、もちろん、最初から男性だけという、こういう法律が論議される時代になれば、堂々と胸を張って、我が社は男性だけでいくぞ、あるいは逆に、女性だけでいくぞということを言われない方もある。しかし、結果的には、結果責任は問わないという話がありましたけれども、本質的にはそういう経営方針を持ちながら、表面的には均等法をクリアする、こういうこともあるのではないかという気がしてなりません。  これはどうでしょうか。実際に、そういう事業主を行政指導するセクションといいますか、あるいは、行政指導というのはどういう形で行われるのか、伺いたいと思います。
  111. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 私ども婦人少年室におきまして、もしも女子労働者から、今みたいな、先生がおっしゃったような事例で、おかしいではないかというような御相談があったといたしますと、事業主から採用方法について詳細に聴取をいたすわけでございます。  そして、それについて、まず、当該企業への男女別の応募者数がどのくらいあったか、そして、最終面接まで残った男女がどのくらいいるか、さらに、男女別の採用実績などをずっと過去にさかのぼって見ることなどによりまして、採用についての男女間の均等取り扱いがどうかということを考えるわけでございます。  その上で、女性の応募者数、最終面接受験者数が毎年相当数いるにもかかわらず採用実績がゼロとか極端に少ない場合は、男女採用試験の成績を問い、選考基準をチェックするなどいたしまして、法違反の有無がないかどうかを判断しているところでございます。
  112. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 そうしますと、そうした指導に当たられるのは、婦人少年室がメーンになるということでよろしいですか。  それで、ちょっと質問の順番を変えたいと思うのですが、私は、婦人少年室に参りまして最初に感じましたのは、ドアをあけまして、きれいな女性の方が全員並んでいまして、なかなか入りづらい感じがいたしました、心臓が小さいわけではありませんが。私がそうでありますから、皆さん、やはり事業主の方も大変にそういう気持ちになるのではないか、こういう気がするのでありますが、婦人少年室の行政体制についてお話をさせていただきたいと思うのであります。  均等法施行以来、婦人少年室は、相当機能が強化されて、運営体制も充実されてきておるという話は伺いました。しかしながら、一つは、やはり婦人少年室のスタッフというのは全部女性ですか、ほとんどは。私が行きましたら、間違いなく全部女性でありまして、女性に囲まれて九十分お話をして私は帰ってきたのでありますが、全国そういう状況でございましょうか。
  113. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 男性職員も、少数ではありますが、おります。
  114. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 少数、どのぐらいいらっしゃるのですか。
  115. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 現時点では一名でございます。(桝屋委員「全国で」と呼ぶ)はい。全国の婦人少年室、二百四十名ほどおりますが、そのうち東京室に一名おります。
  116. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 したがいまして、今の局長のお話では、全国どこへ行っても、私がお伺いしたような婦人少年室があるのだろうというふうに理解をいたしました。  これは、非常勤の職員もたくさんいらっしゃると思うのです。今、二百四十というのは正規職員ですね。非常勤の方を含めてもやはり一名ですか。
  117. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 しっかりと把握しておりませんが、多分そうだと思います。
  118. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 この点は、これから均等法改正になりましたら、今までの努力義務規定から禁止規定になるわけでありますから、行政指導の重要性といいますか、また困難性というのは格段に変わってくるのだろう、このように理解をしております。そういう意味でま、今の体制が十分でないとは申し上げませんが、新しい時代が来るのだから、新しい運営体制、実施体制というのはぜひ求められるのじゃないかという気が私はいたしますが、その辺の将来への、均等法が変わった場合の婦人少年室の体制について、どういう検討をされておられるのか、お伺いしたいと思います。
  119. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 男女雇用機会均等法ができましてから、婦人少年室の人数はふえております。公務員全体が非常に厳しい状況の中で、必ずしも多くではございませんが増加しているということは、それなりに均等法の重要性が評価されているというふうに考えておるところでございまして、この状況は、今回の法律改正させていただければ、なお充実していかなければいけないというふうに考えておるところでございます。
  120. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 これは、法施行に向かって、行政の実施体制としてさらに充実強化をされていくのだろうと思うのですが、しかし、全体として厳しい行政改革の中で、今の体制をすぐにふやすというようなこともなかなか難しいだろうという気がいたします。中国五県を見ましても、多いところで六名、あるいは五名、四名。私の地元も、四名が五名になったのですと言っておられましたけれども、これで全県を指導していくというのは大変に難しいだろうというふうに私は思います。  それで、これは運営体制をふやすということよりも、業務のあり方として、もっとやはり、例えば職業安定サイドのスタッフとの連携とか、何らかのことを考えていく必要があるのじゃないかということが大変に気になりました。  と申しますのは、事務官の方に伺いましても、一生懸命指導しています。行きましたら、はいはいと事業主は言われる。はいはいというのが問題なんですけれども、後でまた行ってみると何にも変わっていないということで、まさに努力義務のこの十年間の実態というのを聞かせていただいたわけでありますが、今後は禁止規定になる、やはり格段に努力をしなければならぬ。  そんな中で、今の婦人少年室のありようも変えていくべきではないか、業務のあり方についてもう少し研究をされるべきではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
  121. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 婦人少年室は、均等法施行機関として助言、指導、勧告というようないろいろな権限が室長には与えられている機関でございますので、禁止規定化が進みますので、今後ともなお一層充実をしていかなければいけないと思っておるわけでございます。  また同時に、現在もさようでございますが、職業安定行政、労働基準行政とはいろいろな形で連携をとって進めておりますが、さらにこの点もより充実を図っていきたいというふうに考えております。
  122. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 局長現場ではどういう声かというと、恐らく、お役所ですから、例えば先ほどの女子大生あたりからの相談なども、安定所に行きますと、これは女性労働の問題なんだから少年室だよということで、簡単に回されると思うのです。やはり縦割り行政といいますか、そういう弊害の中で、何でもかんでも婦人少年室事案が回る。そこでこなせる量というのは やはり限られているだろうと思うのですね。そういう意味では、そこは本気になってこの実施体制は考えていく必要がある、充実について考えていく必要があると私は思います。  具体的な話になりますと、まずは、現行の均等法の中で、婦人少年室がやはり力を出さなければいけない場は、十四条と三十三条の指導あるいは勧告ということだろうと思います。これも資料、相談件数あるいは着手件数、それから指導、勧告のデータをいただいておりますが、どうなんでしょうか。具体的に、十四条というのは余り数字がありません。ほとんどの場合は婦人少年室が、もちろん、権限を委任されている婦人少年室長が、この地域においてまことしまこういう指導をしていこうということで動かれると思うのですけれども、指導対象となるその事業主といいますか、事業所を、最初にどのようにスクリーニングされているのか、私は大変に気になるところなのですが、具体的な実務というのはどのようにされているのでしょうか。
  123. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 先生の御質問は三十三条の指導事案であろうと思いますけれども、三十三条に基づく行政指導につきましてはいろいろな形で発端があるわけでございますが、女性労働者とか労働組合からの相談なども参考にいたしまして、過去に均等法上問題のあった企業さんとか、当該地域において波及効果のできる大きな企業等を選定いたしまして、これらの企業に対し、雇用管理状況について事情聴取いたしますとともに、必要な場合には助言、指導、勧告を行っているということでございます。
  124. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 実態として、例えば相談件数、先ほども話がありましたけれども、全国の婦人少年室平成七年度で一万八千、これは六十三年が九千件ですから、もちろん倍以上になっているということではありますが、十四条と三十三条の違いはあるのでしょうが、三十三条でいきましても平成七年度で相当の件数が上がっておりますが、これはどうなんでしょうか、ほとんどは悩みの声が婦人少年室に上がってきてそれで動き出すということなんでしょうか。あるいは、さっき言われたように、その少年室で方向を決めて、ここの企業を当たれば相当効果があるということで指導に入られるのか。どんな形でおやりになるのか。ほとんどは、苦情が来て、それではやろうかというのが今の婦人少年室の限界ではないかと私は思うのですが、その辺はどうでしょうか。
  125. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 先生御指摘のように、もちろん女性労働者等々からのものによるものもございますけれども、特定の産業の中でいろいろの問題があるというのを新聞や何かがいろいろ書いてあったような場合には、そういう産業を特別に集中的にやるというようなこともやっておりまして、そういう意味で、人数も必ずしも多くございませんので、それぞれの地域においてうまく効果的にやれるように、産業なり地域等々を選んでやっておるところでございます。
  126. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 それで、婦人少年室の業務の中で具体的な指導件数、それから勧告件数の状況について、特に勧告件数についてはほとんど実績がないという話も伺っているのでありますが、そうした状況を御説明いただきたいと思います。
  127. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 十四条に基づいて紛争解決の援助を求められた件数は、平成七年度で三十八件でございます。それから、三十三条の場合は、平成七年度で三千二百四十八件でございます。そのうち、勧告に至ったものでございますけれども、法三十三条の場合、助言、指導、勧告という三段階がございますが、勧告書まで交付したものはこれまで三件にとどまっております。
  128. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 助言、指導、勧告、勧告は三件ですね。指導というのはどのぐらいあるのでしょうか。
  129. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 指導書の交付件数は、法三十三条の場合、百三十七件でございます。
  130. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 累積ですか。
  131. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 六十一年度からの累積でございます。
  132. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 そうしますと、これは具体的な着手件数、助言件数に比べますと、指導件数、勧告件数というのは割合として極めて少ないわけでありまして、この実態というのはこれでいい、こうあるのが今までは自然だったのだ、こういう御説明ですか。これでよかったのかどうなのかということを御説明いただきたいと思います。
  133. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 いろいろ問題が起こりますとまずは助言をするわけでございますけれども、私どもといたしましては、事業主法律の求めるところを理解していただくことが非常に重要であるというふうに思っておりまして、婦人少年室は、均等法の違反の場合は事業主に粘り強く助言を行うわけでございまして、かなり助言によって解決されている事例が多いということをぜひ御理解いただきたいと思います。  また、この指導書、勧告書というのは助言がうまくいかない場合交付をしていくものでございますので、ほとんどの場合は助言によって改善が図られているというふうに考えております。
  134. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 私が一等最初にお話しした女子学生のあの悩みの声というのを聞きますと大変な厳しい実態があるわけでありまして、我が地域の状況もそうなんでありますが、そうした状況からしますと、助言でほとんど解決をしておる、助言でほとんど改善されておるということは私はなかなか難しいのじゃないか。助言で解決をしておるということであればそれで結構なんですが、指導あるいは勧告というのは、ではどういう場合になさるのか。もちろん、助言で解決すればやる必要はないわけでありますが、指導、勧告する必要がなかったがゆえに今までこういう数字になっているんだ、あとは助言でみんな格好はついた、片がついた、こういうふうに理解をしてよろしいですか。
  135. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 かなりの部分が助言で解決をしたというのは事実でございます。ただ、先生おっしゃいますように、雇用における男女の均等取り扱いに一層の促進を図るために積極的に文書による指導を行いたいということで、指導書、勧告書というものにつきましても、平成八年度からはさらに強化して出そうというような方針のもとに行っておるところでございます。
  136. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 先ほど局長がちらっと言われましたけれども婦人少年室の指導というのは、今まではまさに粘り強い助言というのを基本とする。もっと言いますと、指導、勧告というのはよほどのことであって、変な話、やらない。よほどのことがあればやるけれども、まずは粘り強い助言、これをしっかりやっていくのだ、こういうことではなかったのかな、こういう気がするのでありますが、もう一回局長、済みません、お願いします。  それで、指導、勧告をする場合は、どういう事例でしておるのか。例えば婦人少年室の指導、勧告をする場合の、現行でいいですよ、今の取り扱いで、どういう場合には指導、勧告をするのだというような申し合わせといいますか、婦人少年室同士の規定といいますか、内規といいますか、そういうものがあるのだったらお示しをいただきたい。
  137. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 ごめんなさい、最初の御質問は何でございましたでしょうか。済みません。
  138. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 最初は、ですから、指導、勧告がこれほど少ないということは、助言ですべて……
  139. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 はい、わかりました。もちろんおっしゃるとおりでございまして、やはり女子労働者がその企業に長く勤め続ける、気持ちよく勤め続けられるということが非常に重要なことでございますので、できるだけ粘り強い助言を行うことによって解決を図っていきたいということが根本にございまして、助言でずっとやってきたわけでございます。  それから、指導書、勧告書の交付につきまして、一番多いのはやはり男女別定年制事例でございまして、それがまだいろいろ就業規則等々に残っているというような場合に指導書、勧告書を交付している例でございます。
  140. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 いずれにしても、法改正が成った暁には、婦人少年室の業務というのは格段に重要になってくる、私はこういうふうに考えるものでございまして、そういう意味では、私が参りましているじくも事務官が言っておられましたけれども、どれほど指導しても――もちろん、今までの法律の形がそうであったがゆえに有効な助言もできなかったということがあるかもしれませんが、今後はもっと婦人少年室の運営のあり方ということを体制も含めて検討される必要があるだろう、私はこのように考えます。  それで、逆に、法改正の中でポジティブアクションという言葉があるのでありますが、そこへ関係をしてくるのでありますが、先ほど午前中、吉田議員の方からも、ポジティブアクションは横文字で労働省は逃げているのじゃないか、こういう話もありました。そういうことかどうかはあれですが、私は、確かにポジティブアクションという言葉は国民になじみがないだろうというふうに思います。私も最初にこの法案の御説明を聞いたときに、ポジティブアクションというのは一体何だろうかということを考えました。多くの事業主が今回の機会均等法改正、この中でポジティブアクションというのをどのように理解をされるのか、大変に心配をするところであります。  先ほどから出ていますように、今までの女性を取り巻く労働環境就業環境、これは法の性格ももちろん影響しているわけでございますが、大変に難しい状況の中でやってきた。特に、バブル崩壊後の厳しい経済状況の中で、やはり企業は低コスト化をねらっているわけでありますから、どこもそれを、真剣に生き残りを考えているわけでありますから、女性労働を取り巻く状況というのは大変に難しい状況になってきておる。  その中で、今回、大臣のさっきの話ではありませんが、究極の理想ではないけれども、十年後の今日、多くの改正をするわけでありますが、そんな中で極めて大事なのがポジティブアクション、このあり方だろうと私は思うのです。ポジティブアクションという言葉そのものが、国民運動として展開するときに、いかにも大変に理解をしにくい言葉ではないか、これはもう少し労働省に知恵を出していただきたい、国民運動として展開していかなければいかぬときに本当に理解されるだろうか、私はこう思うわけであります。  そこで、ポジティブアクションとは何なのかということをひもときますと、どうも事業主に積極的にやってもらいたいということでありまして、まずは、この機会均等法を十年たって改正するこのときに当たりまして、国の責任といいますか、国は何をするのかということがどうも見えてこない。ポジティブアクションというのは、よく聞きますと、事業主に積極的にやってもらうことだ、こういう整理でありまして、国として、やはり国のポジティブアクションというのが、本当のポジティブアクションというのが必要なのではないか、私はこう思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  141. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  国が行いますポジティブアクションにつきましては、改正後の均等法の第二条第二項に基づきまして、女性労働者職業生活を充実させるという観点から国自身が行う措置の中に該当するものもあるというふうに考えているところでございます。また、固定的な男女の役割分担意識解消するための啓発活動を行うことも、国自身の行うポジティブアクションであると考えております。  こうしたことから、国といたしましても、男女労働者の間に事実上生じている格差を解消するため、ポジティブアクションの観点からの施策を積極的に進めてまいりたいというふうに思っております。
  142. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 局長の答弁はなかなか僕の頭では理解できないのでありますが、私が申し上げたいのは、ポジティブアクション、まあ事業主が一生懸命やるということもさることなんですが、やはり国の役割ということをこの法改正の中でもっと国の方針として出していくべきではないのか。もちろん、男女雇用機会均等対策基本方針なるものもありますし、これが今、第二次基本方針があるようでありますが、あるいは本会議でも話がありました西暦二〇〇〇年に向けての国内行動計画を見ましても、いずれも書きっぷりが、プログラム規定といいますか、理念規定がいっぱいあるわけでありまして、女性の本当の就労の場における平等というものを目指して大きな努力目標というのを数量的に示していくような、やはりそんな国としてのアクションが必要なのではないか、このようにも感じるわけであります。その辺はもう少しお知恵を出していただきたいな、私はこう思うわけでありますが、いかがでありましょうか。
  143. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 ポジティブアクションにつきましては、いろいろと事業主に対して法律でお願いをするわけでございますけれども労働省といたしましても、いろいろ、各種経営団体とかとの連携を図りながらポジティブアクションの重要性というものを広く周知徹底をしていきたいと思うわけでございますし、また、地方公共団体とも連携をとりながら、このポジティブアクションにつきまして効果的に周知が図られるように努めてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  144. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 今局長がいみじくも言われた、法律事業主がポジティブアクションに取り組むことをお願いする、こういう表現をされましたけれども、具体的に、本当に事業主がポジティブアクションに取り組むその要素というのは、法律では期待をしている、期待をしているだけですね、これはぜひやってくれという。その辺はまさに先ほどの指導とか行政指導の範疇になるのだろうと思うのですが、その辺は、法律ではお願いをする、こういう立場でしかないのですか。
  145. 岡野裕

    岡野国務大臣 ポジティブアクションについては、先生おっしゃる、政府ならば政府として各企業主にお願いをするという程度にとどまるのかと。  といいますのは、翻ってきのうの本会議を思い浮かべますと、これはひとつ努力義務ぐらいにしたらどうだというお話がございまして、私はそのとき答えていわくで、ポジティブと言っている以上は、義務を履行せなければならないというような受け身のものではポジティブではない、パッシブになってしまうではないかというようなお答えをした、こう思っております。  やはり、ポジティブアクションということで、ひとつ企業主の皆さんに、積極的に行動に移す。これは外国のポジティブアクションの例であって、日本とは違うわけでありますけれども、やはり、職員の採用、面接試験官でありますか、これに女性の試験官の数をふやすでありますとか、先ほど来先生がおっしゃっておられました、女性の管理者もどんどんふえていくことがいいなということでありますが、その当該会社の中で、将来、何年までの間には全体の管理者の三分の一、これを女性で占めるようにひとつ目標基準というものを定めて鋭意努力をするとか、ポジティブアクションについては、外国の例ではいろいろございます。  日本はいかが相なるかというのはこれからの私どもの勉強課題でありますが、そういった意味合いで、ひとつ積極的に取り組んでいただきたい。そのためには、業種別のセミナーも開く、それから、ポジティブアクションについて鋭意取り組んでおられるというところについては、労働省として表彰制度、これらを活用して、ひとつ実現に向けて積極的に取り組んでまいりたい、こう思っております。  ポジティブアクションの定義は、ポジティブアクションは簡単に言うとポジティブアクションで、ワイシャツとは何だ、ワープロとは何だ、パソコンとは何だ、まあ二十年前だったらパソコンなどというのはわからぬと思うのです。マルチメディアもわからなかったと思うのです。今日、パソコン、ワープロ、あああれだな、マルチメディア、これだなとだんだんわかってまいりました。そういう意味合いで、ポジティブアクションはほかにも、中小企業あたりで労働者諸君をより多く採用する、そのために省力化装置を設けるというようなのも、いわば積極的に雇用者をふやそうという意味でのポジティブアクションに当たるのだ。  先生、短くしろと言ったから、ポジティブアクションが法律に明記されている日本語を読むことは省略いたします。こんなに長いのです。それだから、簡単にという先生の御要請にこたえて、ポジティブアクション、こういうことで御勘弁をいただきたい。
  146. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 大臣の話を聞いておりますと、私の議論も全く整理できなくなるのでありますが、私が申し上げたかったのは、要するに、今回法改正したとしても、確かに禁止規定というのは事業主にとって大きな影響はあると思います。しかし、一等最初から申し上げていますように、我が地域の状況を見ても、罰則があるわけでもありませんし、なかなか簡単にこの状況というのは変わってこない。そんな中で各事業主にポジティブアクションをお願いする。今大臣の方からは、将来はパソコンのようにポジティブアクションというのは多くの方に理解される、こんな話があったのかもしれませんが、ポジティブアクションなんて、事業主に簡単に理解される表現ではないだろう。  先ほどから申し上げていますように、では、国の大きな目標はどうなのかというと、西暦二〇〇〇年国内行動計画や第二次基本方針を見ても、理念がだらだら書いてあるだけでありまして、何を目指すのか、どのぐらいの男女平等の雇用の姿を描いていくのかということはなかなか見えてこないわけでありまして、そういう意味では、ポジティブアクションをしっかり事業主が取り組んでいただくような国の積極的な関与といいますか、努力義務規定も含めてでありますが、取り組みが必要だろう、私はこう思うわけであります。大臣は表彰規定とおっしゃったけれども、国は、ポジティブアクションをしっかり事業主にやってもらうために、今後どういう予算措置をしてどういう対応をされるのか、具体的にお聞きしたいと思います。
  147. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 ポジティブアクションにつきましては、繰り返しになりますけれども大臣も申しましたが、今後トップセミナー等を行いまして、地域の事業主、特にトップの方々に理解を深めていただきたいということとか、業種別使用者会議を開催することによりまして、いわゆるポジティブアクションとは何ぞやということの理解も深めていただくというような具体的な取り組みをしていきたいというふうに思っているところでございます。周知広報につきましては、全力を挙げて取り組んでいきたいというふうに思っております。
  148. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 私が伺いたかったのは、ポジティブアクションに具体的に事業主が取り組むときに国としてどういう支援をするのか、こういうことをお伺いしたがったわけでありますが、トップセミナーをやったりあるいは表彰をやったりということで、これは施行まで若干時間がありますけれども、本当にポジティブアクションなどというのは簡単にできるものじゃないというふうに私は思うわけでありまして、この実効性について格段の取り組みが必要であるということを申し上げておきたいと思います。  さらに、本日はパートタイム労働との関係を議論したかったわけでありますが、時間がなくなりましたので、次回の質疑に譲りたいと思います。  以上で終わります。ありがとうございました。
  149. 河上覃雄

    ○河上委員長代理 次に、塩田晋君。
  150. 塩田晋

    ○塩田委員 昨日、本会議におきまして、岡野労働大臣から私の代表質問に対しまして、全般にわたりまして御答弁がございました。率直かつ誠実にお答えをいただいたものと感謝しておりますが、中身につきましてはなお不満なところがございます。この委員会を通じまして、それらの点についてなお大臣措置をお願いし、尋ねていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  先日の質問の中でも大臣がお答えになりましたけれども男女雇用機会均等法は、今回、募集採用配置昇進すべてにつきまして、努力義務規定から禁止規定になりました。今回の法案によりましても、いわゆる禁止に対しての罰則規定というものがないわけであります。制裁措置としては、大臣もお答えになりましたように、企業名を公表するということでございます。  大臣は、余り罰則を設けて罰金を払えばそれで違反してもいいのだというようなことでは困るからとおっしゃいましたが、この法律は罰則が全然ないわけですけれども、同様なといいますか、身障者雇用促進法におきましては、やはりペナルティーを払うという制度がありますし、また企業名の公表という制裁措置もとられておるわけでございます。また、労働基準法におきましても、特に今回の法案の中に織り込まれております時間外、休日、深夜労働規制撤廃、これにつきまして百五十時間といった六十四条の二の関係、これもなくなるわけでございます。基準法には、御承知のとおり、はっきりとした罰則規定がかなりあるわけでございますが、罰金を払えば幾ら基準法に違反してもいいというようなことではないはずでございます。  この点につきまして、なぜこの法案におきましては、制裁措置企業名の公表のみにとどまって罰則規定がないか、大臣の改めての御答弁をお願いします。
  151. 岡野裕

    岡野国務大臣 御専門の塩田先生でありますので、あえて細かくお話をいたさぬ方がよろしいか、こう存じますが、やはり今度の法律改正によりまして、募集採用から始まりまして定年退職まで全部これは義務だ、差別女性であるがゆえにしてはならない、こういうように相なりました。  したがいまして、これは結局、一つ一つの職場職場におきまして、雇用管理上そういう観念が完全に定着をいたしませんと、そのときだけ差別をすることがなかったとしても、その現象をとらえますよりは、その企業の体質全体を直していかなければこれは本法趣旨に沿うものではないという意味合いで、非常に粘り強く助言もしようではないか、勧告もしようではないか、指導もしようではないかということで臨もう、こう思っております。先生も御承知のとおり、罰金刑というようなもので処分をいたしましても、これは新聞には、いかがでありましょうか、一般国民にとりましては、どこの裁判所でどういうような処分が行われたか、これはつぶさには出てこないのが多かろうと思っております。  しかしながら、こういう違反行為がありますものにつきましては、新聞記者会見をやりまして、そこで全部企業名を配付いたしまして、それで言いますならば公表制度というものの実行に移してまいりたい、私はこう思っております。そうすれば、この雇用機会均等法というものの今日的意義といいますものは、これから我々も大キャンペーンをいたします、先生方もきっとこれについてあちらこちらで演説のネタにしていただけるもの、こう信じて疑いません。  そういうような雰囲気の中で、けしからない差別を行った企業名というものが新聞記者の手に入って、それが新聞の紙面に載るということになりますれば、これは非常に大勢の皆さんから、どこそこの企業はおかしいのだということで公表になったなということで、むしろその企業社会的評価というようなものが下がり、企業の持つ言いますならば粋持といいますかプライドといいますか、そういうものもがた落ちになる。そうして、それらが数年にわたうくあの企業はどうだな、その後直ったかなというようなことで多くの目にさらされる。そうして、当該企業の中におけるところの差別を受けたというような女性職員といいますか労働者といいますかこういう皆さんも、再度のそういう差別があればどんどん婦人少年室等に申し出ていけるという雰囲気ができるのではないか。  長い目で見ますと、そのときに罰金だというよりは、企業名公表の方が本法の徹底のための手段としてはより有効だ、こう思って、あえて公表制度にして、労基法等によるところの罰金刑等々の罰則はとらないということでやってまいろう、こう思っておるわけであります。
  152. 塩田晋

    ○塩田委員 大臣企業名の公表の効果についてお話してございました。これはよくわかります。これをやってもらいたいということは前提なのですけれども、やはり基準法ははっきりと違反した事案については起訴もし、罰則もあり、徹底しているわけです。これとの関連がある法律でございますから、やはり罰則、制裁措置については企業名公表のみならず、そういった他の法律との関連も見まして、これは今後ひとつ検討していただきたい、徹底を図るためにも、制裁措置については罰則を含めて検討していただきたいということを要望いたします。  次の質問でございますが、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツといった欧米諸国におきまして、雇用における男女平等法制はどのような法律の枠組みの中で規定されておりますか。アメリカ、ドイツ等におきましては、連邦法だとか州法のどういった法律の中で、あるいは単独に立法されておるのか、法制についてお伺いいたします。
  153. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 アメリカでは、性別を理由とする差別禁止につきましては、公民権法第七編におきまして、人種、皮膚の色、宗教、出身国を理由とする性別を含めた「雇用における差別禁止」の条項の中に規定されているところでございます。  イギリスでは、性差別禁止法がございまして、雇用分野に限らず、性別を理由とする差別禁止について規定がされているところでございます。  フランスにおきましては、雇用分野における性差別禁止は、これは労働法典の中に「男女の職業平等」という一章が設けられておりまして、その中で規定がございます。  ドイツにおきましては、雇用分野における性差別禁止は、民法に条項を設け、その中に規定されておるわけでございます。
  154. 塩田晋

    ○塩田委員 法制の枠組みはわかりましたが、募集採用配置昇進といった雇用ステージにおける男女差別につきまして、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツではどのように禁止されておりますか、お伺いします。
  155. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 アメリカでは、公民権法第七編の中で、募集採用配置昇進といった雇用の各ステージごとには規定しておりませんで、包括的に差別禁止という規定があるわけでございます。  イギリスの性差別禁止法におきましては、雇用機会の提供に当たっての差別と、昇進、配転、訓練等に関する差別とで規定を分けてそれぞれ禁止をしております。  フランスの労働法典におきましては、採用の拒否、労働契約の更新といった措置と、職業訓練、昇進配置がえなどに関する差別について規定を分けてそれぞれ禁止をしております。  ドイツの民法におきましては、募集に関する差別と、雇用契約の締結、職務上の昇進、職務上の指示、解雇に関する差別ということで規定を分けてそれぞれ禁止をしておるところでございます。
  156. 塩田晋

    ○塩田委員 そのそれぞれの禁止規定に対する罰則等はどうなっていますか。
  157. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  罰則がございますのは、フランスの労働法典のみでございます。
  158. 塩田晋

    ○塩田委員 その他の国、例えばカナダとかオー久トラリア、あるいはスウェーデンといった国はどうなっていますか。
  159. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 カナダ、スウェーデンの法律では罰則はございませんが、オーストラリアの性差別禁止法におきましては、募集広告のみ罰則がつけられております。
  160. 塩田晋

    ○塩田委員 最近の諸外国の法制の推移を見ますと、セクシュアルハラスメント規定がかなりふえてきたように思うのですが、どのように法制化されておりますか、お伺いいたします。
  161. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  セクシュアルハラスメントに関する法制につきましては、アメリカやイギリスでは、成文法によりませんで、判例を中心にセクシュアルハラスメントの法理が形成されておりますが、フランスやドイツにおきましては、九〇年代に入りましてから明文化が図られているところでございます。  すなわち、アメリカにおきまして、先ほど申しましたが、成文法上は、公民権法第七編において、性別を理由とする雇用上の差別禁止されているだけでありますが、同規定を根拠といたしまして判例により法理が形成されまして、こうした法理に基づき、雇用機会均等委員会、すなわちEEOCにおきまして防止のためのガイドラインが設けらねております。  また、イギリスにも明文の規定はございませんが、判例において同様にセクシュアルハラスメントが性差別禁止法の性差別に当たるとの判断がなされているところでございます。  これに対しまして、フランスにおきましては、九二年に、セクシュアルハラスメントのうち、使用者ないし代理人などが権限の乱用などにより行うセクシュアルハラスメントにつきまして、被害者を保護するための規定労働法等に設けられたところでございます。  また、ドイツにおきましても、九四年に、職場におけるセクシュアルハラスメントから就業者を保護する法律が定められまして、事業主保護責任を定めるとともに、職場におけるセクシュアルハラスメントが行われた場合についての被害者の救済とか使用者の講ずるべき措置について規定が設けられているところでございます。
  162. 塩田晋

    ○塩田委員 その他の諸国、すなわちカナダ、オーストラリア、スウェーデン等はいかがでございますか。
  163. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 オーストラリアでございますが、一九八四年に制定されました性差別禁止法におきまして、職場におけるセクシュアルハラスメントは違法と規定をしておりまして、セクシュアルハラスメントが行われた場合について、人権及び平等機会委員会に申し立てを行うことができる規定が設けられております。  カナダでは、一九八八年に労働法を改正いたしまして、使用者に対して、労働者セクシュアルハラスメントの対象とならないことを保証するあらゆる努力を行う義務、セクシュアルハラスメントに関する基本方針の作成義務などを課す規定を設けております。  スウェーデンでは、一九九一年に制定されました男女平等法におきまして、使用者に対し、労働者セクシュアルハラスメントの被害を受けることのないよう努力する旨の規定を設けるとともに、使用者自身のセクシュアルハラスメント禁止しております。
  164. 塩田晋

    ○塩田委員 今回の法案によりまして、働く女性の深夜労働禁止規定が撤廃されます。従来は、労働基準監督官による深夜労働の摘発というのはかなり行われたところでございます。法律が成立すればこれが今後一切なくなるということで、これは重大な変化になるわけであります。  この深夜労働女性のみに禁止しておるのは問題だということで、男女ともに深夜労働禁止規定が同じになるわけでございますが、フランスにおきましては、工場で働く女性の深夜労働禁止する規定について、EC指令に反するという判断がなされたと聞いておりますが、いかがでございますか。
  165. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 一九九一年の七月に、欧州司法裁判所が、女性労働者の深夜業を禁止しているフランスの労働法典を、ECの男女均等待遇指令、これは一九七六年のEC指令でございますが、これに違反するとしたわけでございます。  フランス政府は、この判決を受けまして、女性労働者の深夜業への就業を合法化する旨発表しておりますので、労働法典は事実上空文化しているものというふうに解されております。
  166. 塩田晋

    ○塩田委員 ドイツの連邦憲法裁判所におきまして、女性の深夜業を禁止する規定を違憲と判断したと聞いておりますが、その事情はいかがでございますか。
  167. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 これも、一九九二年にドイツの連邦裁判所が、ドイツの労働時間法における女性の深夜労働、これは二十時から六時までですが、この禁止規定につきまして、男性に比し女性はその体質上深夜業によるダメージをより強く受けるという仮説というものは労働医学的には証明されていない、むしろ深夜労働は基本的にすべての人間に有害であるということ、また、女性は深夜労働によるダメージが強いという調査は、女性が夜間の職業上の任務のほかに家事労働とか育児を追加的に負担しているという二重負担にその原因があって、これは伝統的な男性女性の役割分担によるものであって性による不平等取り扱いを正当化するものではないということで、当該規定を違憲と判示しているところでございます。
  168. 塩田晋

    ○塩田委員 その判示の中におきましても、深夜労働というのま女性のみならず男性にとっても身体の上に悪い影響があるということを判示しておるわけでございます。そういったことを念頭に置きまして、以下質問を続けたいと思います。  この時間外労働あるいは休日・深夜労働ができないようにする一つの方法は、時間外の割り増し賃金率を引き上げることだと思うのです。そこから支払い側の規制になっていく、自制が行われる、こういうことだと思うのですが、欧米諸国におきまして時間外・休日労働、深夜業の割り増し賃金率はどうなっておりますか、各国の例について御説明を願います。
  169. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 欧米諸国におきます時間外・休日労働、深夜業についての割り増し賃金率でございますが、まず深夜業につきましては、特段法令上の定めがない国がほとんどでございます。したがいまして、これから時間外・休日労働の割り増し賃金率について御説明をさせていただきます。  まず、イギリスでございますが、イギリスの場合、労働時間に関する法律上の規定は特に設けられておりませんが、割り増し賃金率につきましては、協約によって、平日の場合五〇%、それから土、日曜につきましては一〇〇%となっている例が多いというふうに伺っております。  ドイツにおきましては、時間外労働について原則的な上限規制が設けられておりますが、割り増し賃金率につきましては労働協約ベースで定められているのがほとんどでございます。平日の場合二五%から五〇%、大体五〇%の例が多いと伺っております。それから、休日労働につきましての割り増し賃金率につきましては、日曜につきましては五〇%から一〇〇%で定められている例が多い、特に祝日の労働になりますと、一〇〇から二〇〇といったような例もあるようでございます。  それで、フランスにおきましても、時間外労働につきましては原則的な上限規制が設けられておりまして、割り増し率につきましても、一週間について八時間までの超過勤務につきましては二五%、八時間を超えますと、そこから五〇%という段階的な割り増し率の定めになっております。また、休日労働についての割り増し率につきましては、労働協約ベースで五〇%とするものが多いようでございます。それで、代償休日を与えたりする例も労働協約ベースではございまして、その辺の定めはさまざまな例が見られるところでございます。  アメリカにつきましては、時間外労働の割り増し率につきましては五〇%というふうに法令上定められております。休日労働に関する規制は設けられておりませんが、労働協約ベースで一〇〇%としている例が多いというふうに伺っております。
  170. 塩田晋

    ○塩田委員 諸外国の、主たる国の状況を御説明いただいたわけでございますが、これは我が国の現行の基準法上の割り増し賃金率と比べましてどのように評価をしておられますか。
  171. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 我が国の割り増し賃金率につきましては、先生御案内のように、平成五年の労働基準法改正によりまして二五%から五〇%までの間で政令で定めるというふうに改正をされまして、平日の残業につきましては二五%でございまして、休日労働については、その際、二五%から引き上げられまして、三五%ということで行っているところでございます。それから、深夜業につきましては二五%の割り増し率がつく、したがいまして、残業と深夜勤務が重なった場合には五〇%になる、こんな定めになっております。
  172. 塩田晋

    ○塩田委員 我が国の場合、欧米諸国と比べまして割り増し賃金率がまだ低いということ、特に先ほど御説明ありました一〇〇%、二〇〇%、そこまでは一遍にいかないとしても、五〇%ぐらいが大体通常のところじゃないかと思うのですけれども、今後、我が国の割り増し賃金率についてどのような方向で措置されようとするか、お考えをお聞きします。
  173. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 平成五年の労働基準法改正の際に、先ほども申し上げましたように、従来、二五%一律であった割り増し率につきまして、二五%から五〇%の間で政令で定める、こういうふうに改正をいたしたところでございます。  それで、今後、その規定に従ってどういう定めをしていくかという点についてのお尋ねかと存じますが、目下、この四月一日から、四十時間制を中小企業含めまして全面的に実施に入りまして、今までの四十四時間というところから四十時間にこれから定着をさせていかなければならない課題を負っているところでございまして、当面、四十四と四十の差の四時間が残業となってなかなか吸収できない状況が多いこと、また、そういった中小企業のほとんどが二五%というところに割り増し率が労働協約あるいは就業規則ベースで定められて、そこへ張りついているという状況もございます。したがいまして、今後、四十時間制の定着と、そういった中小企業を中心とした労使ベースでの割り増し率についての話し合いがある程度進展すること等、そういった状況を見きわめながら、中央労働基準審議会の方におきましても今後どういった対応をとるかについて御議論をお願いしていくことになるというふうに考えております。
  174. 塩田晋

    ○塩田委員 前向きの御答弁でございますので、それに期待したいと思いますが、特に我が国の場合は、中小企業、零細企業が多いというのが特徴でございます。そこにおける労働問題、こういった問題につきましてもなかなか難しい問題がある、労働時間短縮一つとってみても大変な難しい問題があるということは十分承知いたしておりますが、やはりそういう中で、最低賃金制度にいたしましても、非常に難しいと言われながらも、やればこれが一般化し、これを徹底することによりまして公正競争が確保される、また一般労働者生活が、ゆとり、余裕ができるといったことで豊かさを増すわけでもありますし、いろいろな問題はありますけれども、欧米諸国にまだまだ追いついていないという状況の中で、各国の状況を見ながら、ひとつ今後ともそういう方向で強力に取り組んでいただきたいということを要望いたします。  ところで、今回、女子保護規定解消いたしますと、女性の時間外労働が、これはもう時間外労働とか深夜業というのがどんどんふえていくというふうに考えられるのでございますが、今の時間外労働に対する割り増し賃金率、直ちに上がっていくということでもなければ、なおさら一層、例の基準法六十四条の二の百五十時間の規制、これもなくなれば、今までそれで歯どめになっておったのが一斉に取り払われて、男性は三百六十時間、あるいは、実際はもう四百時間を超えているというような実態もあるわけでございますから、それに一斉に近づくのじゃないか。男女同じになるということまいいことでございますけれども女性労働時間が軒並みにふえるということで男女が同じになりていくということになるのではないかつその点についてどのように考えておられるかをお伺いいたします。
  175. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 女性労働者に対します時間外・休日労働、深夜業の規制解消によりまして男女が同一の労働条件の基盤に立って働くことが可能になるわけでございますので、これまで規制されておりました女性についても、時間外・休日労働や深夜業を行うことができるようになるわけでございます。  ただ、時間外労働につきましては、女性についても男性と同様に三六協定の目安指針が適用されることになるわけでございますが、三六協定の締結に際しましては、労使の十分な話し合いによりまして、個々の業務ごとに時間外労働が必要とされる具体的な事由を明らかにいたしました上で、適正な時間外労働の上限時間を設定することが望まれると思います。  また、深夜業につきましては、事業主が、労働基準法労働安全衛生法、育児介護休業法等に規定されました深夜業に係る規定を遵守しつつ、深夜業等に就業することに伴う個々の労働者の負担を軽減するための就業環境整備等の措置を講じることが皇ましいというふうに考えておるところでございます。     〔河上委員長代理退席、委員長着席〕
  176. 塩田晋

    ○塩田委員 このいわゆる三六協定、労働基準法第三十六条の協定でございますが、もちろん、労働組合がしっかりしているところは、労働者の権利を守るために生活を考えて労使の交渉に当たっていくものと思いますので、これはかなり安心できるところでございますが、御承知のとおり、我が国における労働組合の組織率というのは二三%、大部分のところが未組織である。符に中小零細企業におきましては、それがない場合が多い。  そこで、三六協定を結ぶ場合は、労働組合のないところは、御承知のとおり、労働者を代表する者との協定になるわけでありますが、その代表する者というのは、親睦会的なものあるいは急邊つくられたような組織といいますか、あるいは、組織がない場合でも代表者として選ばれるといったことが現実にあると思うのです。そういったところでは十分な歯どめがかからないケースがあると思います。そこに、現行法では、先ほどから言っております労基法第六十四条の二、これで歯どめが、特に女性についてはかかっておるわけです。これが取り払われるわけですから、非常に問題じゃないですか。  私は、この際、男女ともに時間外労働あるいは深夜労働、その他休日労働、これを、六十四条の二の規定にある百五十時間、これにかわる何かの男女とものいわゆる残業の規制をやはり考えないと、一挙にこれを取り払って、男女一緒だからいいのだということにはならないのじゃないか。むしろ、この法律施行されるまでの間に、そういった男女共通の規制というものをきちっと決めて実効性のあるものにしないと、女性労働がどんどんふえていくことのないように歯どめをすることをやはり考えなければならないのではないか、このように思うのですが、これについてどう考えておられますか。
  177. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 まず、この保護規定解消後におきます三六協定との問題についてでございますが、三六協定、労使間の合意によるこの締結がない限り残業ができないというものでございまして、私ども、それを、締結の届け出も義務づけておりますので、届け出を受理する際にチェックができるように、その上限についての目安を労働大臣の告示により定めて、指導しているところでございます。  今度、保護規定解消が行われた後、やはり女性の方にとって、能力の発揮のチャンスが膨らむと同時に、やはり職場進出が進み、家庭責任との調和、そういったことも大きく課題になってくることも事実かと思います。私ども、今まで以上にこの三六協定の受理の際のチェック、また不適正な上限があった場合の再検討の要請等を、これには今まで以上に力を尽くしていかなければいけないだろうというふうに思っております。  また、労働組合のないケースにつきましても御指摘ございましたが、私ども労働組合がない場合に、従業員の過半数を代表する者との協定ということを求めておりますが、この従業員の過半数を代表する者の選定につきましても、民主的に行われるように、間違っても、事業主の指名によって実際上経営サイドにいる者がその代表になったりすることのないように、既に通達も発出いたしまして指導いたしておりますので、そういった点について、なお一層万全を期していくように、これは地方を含めまして努力をさせていただきたいというふうに思っております。  もう一つ御指摘ございました、男女共通の規制という点でございますが、規制ということになりますと、やはり、我が国の残業制度雇用調整機能を有していること等の面がございますので、そういった規制という観点に立ちますと、これは慎重な検討が必要であろうというふうに思っているところでございます。  ただ、今後、冒頭申し上げましたように、この均等法施行後、あるいはこの保護規定解消後におきます労働のあり方というようなものをにらみながら、現在、中央労働基準審議会におきまして、時間外労働、休日労働のあり方につきましても、重要な検討テーマの一つとして、今後の基準法制の見直しの中で、一環として御議論をお願いしているところでございますので、.その結果を待って対応をしてまいりたいといりふうに考えております。
  178. 塩田晋

    ○塩田委員 今、労働基準局長の御答弁、了承するところでございますが、やはり三六協定締結の際における基準監督署でのチェック、これを十分に行っていただきたいと思うのです。  今までの深夜労働についての禁止の監督行政、これがもうなくなるわけですから、必要なくなっていくわけですね。ですから、三六協定のその代表者、労働者の過半数を代表する者の選定につきましても、また、その内容につきましても、今まで以上に厳しくチェックをしていただくということが必要かと思います。  それから、最後に申し上げました男女共通の時間外労働についての規制、これは指導で行うということを基本に言われましたけれども、これはもちろん必要でございますが、やはり指導をする際の根拠、それはやはり法律なり規則なり、基準法の関係で、男性につきましては三百六十時間はこれは規則でしたか、規則であったと思うのですが、そういったガイドライン的なもので指導されるにしても、やはり何らかの法的根拠がないと強力にできないと思いますので、それはひとつぜひとも労働基準審議会、まだ施行までに時間がありますから、その間にぜひとも強力な規制の、あるいは指導の根拠になる法制について十分に検討していただいて、これを実施をしていただきたい、このように要望いたします。
  179. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 この三六協定の時間外労働の上限についての目安は労働大臣の告示で行っておりまして、これに基づき指導を行っておるところでございます。この労働大臣の告示につきまして、さらなる根拠づけについて御指摘ございましたが、先ほど御説明申し上げましたように、目下私ども、この三六協定が、真に労使の話し合いの上限の本当の目安として適正な時間外労働が行われていくための材料になるように徹底させていくことがまず先決かと思っております。御指摘のような点につきましては中央労働基準審議会でどのような御意見が出てくるのか、今後、そういった状況も見きわめてまいりたいと思っております。
  180. 塩田晋

    ○塩田委員 告示を規則に上げるとか、あるいは規則を法制化するとか、いずれにいたしましても、強力な指導についてはバックになる根拠が要ると思うのですね。そういったことを含めて法制的に十分検討していただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  181. 青山丘

    青山委員長 次に、松本惟子君。
  182. 松本惟子

    松本(惟)委員 雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案、大変長い今回の法改正でございます。五つの関連法律がこの中に含まれているということでございます。  私、質問に入る前に、昨日の代表質問の際に大臣がお答えくださいました件につきまして確認をさせていただきたいと思っております。  それはポジティブアクションのことでございまして、先ほどの大臣の御答弁を伺っておりましたらば、自主的に、自発的に、積極的にやるという意味であるということをおっしゃられておりました。私は昨日、このポジティブアクションというのは、一方の性が過去において大きな差別を受けている、それを解消していくためには普通の方法ではなかなか差別解消ができないために、諸外国でも試みられております、過去の差別解消するための積極的な手法であるというふうに考えまして、質問をいたしました。これは努力義務では足りないので、とても実効性が上がりそうもないので――失礼いたしました。企業に対する国の援助だけでは弱いから、せめて行政指導が入るくらいの努力義務こしていただけないかと申しましたところ、大臣は、ポジティブアクションの意味というのは、これは義務だから仕方なくやるというのではなく自発的に行うという意味だ、こうおっしゃられました。ですから、努力義務になじまないというふうに私は受け取ったのですけれども、そうではなかったのでしょうか。なじまないというふうに受け取った方は誤解だったのでしょうか。そこのところをひとつお伺いをしておきたいと思います。
  183. 岡野裕

    岡野国務大臣 雇用均等法十年の経験をしてきたわけでありますが、今回の改正法案の中身は、言いますならば大改革だ、ルビコンを一歩渡るものだ、私はこう心得ております。そういう意味合いで、この法律案といいますものが実現をされ、そうして雇用均等というものが本当に根づくというためにはいろいろな努力をしていかなければならない。  そのために、先ほど桝屋先生からもいろいろお話がございましたが、言いますならば公表制度というようなことで、差別扱いをした、そういうけしからぬ企業については公表をする。塩田先生からは罰則で臨めということでありますが、まず公表するというようなことで、言いますならば後ろから押す。同時に、ポジティブアクションというものを皆さんどうぞおやりください、そうすればこの表彰制度も活用いたしますよということで、今度はポジティブアクションで前から引っ張る。後ろからも押す、前からも引っ張るというようなことで、この法律の精神というようなものを実体化したい。  したがって、後ろの方から押すというので、言いますならば、これは義務違背だから押しているわけですね。だから、ポジティブの方は、また処分だとか義務だとかいいますよりは、うんと勧奨して前から引っ張る。大まかに言いますと、二つの手法でこれの実現をしてまいろう、こう思っている、そんな次第であります。
  184. 松本惟子

    松本(惟)委員 本件につきましては、後ほどまた述べさせていただきたいと思います。  私、今回の均等法改正は、本当に十年、十一年に当たります。十年前、この法律を制定いたすときも審議会委員としてかかわってきた者の一人でございますので、待ち望んでいた法律がようやく本国会にかかったという意味で、期待をしながら質問に立たせていただいております。  それで、均等法部分につきましては、いわばビルドの部分でございますので、これは前向きに、実効性が上がるように進めていくべきであるというふうに考えております。そういった観点から幾つか質問をさせていただきたいというふうに思っております。  まず、昨日もお尋ねをいたしましたけれども、本来ならば、もう先進諸国、すべてにわたって性差別禁止法というものがしっかりとした骨格を持って制定をされているわけでございます。それに比べまして、日本はまだ一歩も二歩もおくれて、ようやく女性に対する差別禁止するという方向に向かったということでございます。これはこれとして評価をいたしますけれども、片面的な規定ということは変わっていないかと思います。あるべき姿は、大臣もお答えくださいましたように、日本も批准をしておりますあらゆる形態の女性に対する差別撤廃に関する条約、つまり国連の条約でございますけれども、この方向に沿って性差別禁止法という方向に持っていくのがあるべき姿だというふうに私は考えております。  今回、この片面規定にとどまらず、少しここを踏み出して、九条では女子のみというところの解消に向かっているのではないかと思いますけれども、この点についてはどうでございましょうか。女性局長、まだ婦人局長ですか、お尋ねをしたいと思います。
  185. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  現行均等法におきましては、女性のみまたは女性優遇措置について均等法の関与するところではないというような解釈をとってきたわけでございますけれど、このことが、女性職域が限定されたり、女性男性仕事が分離してしまうというような弊害が生じてきたと考えておるわけでございます。  そして、このような弊害を取り除くことが男女の均等な機会及び待遇確保していく上で必要不可欠であると考えまして、このような弊害の認められます女性のみまたは女性優遇措置は、女性に対する差別として禁止することとしたわけでございまして、そういう意味で、片面性ということについては、一歩、二歩進ませていただいたというふうに思っております。
  186. 松本惟子

    松本(惟)委員 ちょっと今のところをもう少し確認させていただきたいのですけれども女子のみということによる弊害がこの十年間出てきておりました。弊害だけではなく積極面もあったと思いますけれども、例えば、これも午前中から出ておりましたが、パート女子のみとか一般女子のみとか、こういったことによって女性職域が固定化されて、そしてなかなかステップアップが進まないということがございました。  今回は、この女子のみのあり方について、前向きの女子のみもあれば、そうでない面もあるということが審議会の中で議論をされたと思います。そのいけない面の女子のみというのはどのように今描いていらっしゃるのか、お聞きできればと思います。
  187. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 差別になるというような女子のみといたしましては、例えば一般職について女性のみを対象とした募集採用を行うこととか、秘書、受付、看護婦さん等の、女性が多く就業している職種について女性のみを対象とした募集採用を行うこと、また、パート労働者について女性のみを対象とした募集採用を行うこと、こういうようなことは女性に対する差別で、悪い、よくない女子のみであるというふうに考えております。
  188. 松本惟子

    松本(惟)委員 もう少し伺いたいと思いますが、この均等法施行されまして間もなくだったと思います、沖縄のバスガイドの若年定年制の問題が、この均等法を背景にしながら取り組まれたときのことを思い出しておりますが、最終的には、そのバスガイドという職種は女性だけしか採用していない、そのことのために、結果としては、均等法自体は余り有効ではなかったと思います。高齢者雇用促進法あるいは民法九十条による、いわゆる九十条をよりどころにして解決をされたというふうに理解をしております。今回のこの均等法においては、こういった、この職種については女子が適切であるから女子採用している、したがって、これに対応する男性がいないから裁けないというような事態はほぼ解消するのであろうかということが一つです。  それから、午前中から幾つかの事例が上がっておりましたけれども、もう一つつけ加えさせていただきますと、例えば、化粧品会社などが美容部員を採用して、仕事に当たっております。こういったところにつきましては、これは今、見渡しますと、女性が非常に多いのではないか。非常に多いというよりも、ほぼ女性だけではなかろうかと思いますが、こういったことについても女子のみはいけないというふうに考えておられるのか、これは一つの事例でございますけれども、お答えをいただきたいと思います。  それから、ついでですが、例えば銀行の窓口に行きましても、若い女性がずらっと座っているとか、受付の件は午前中に出ておりましたけれども女性ばかりが、女性が非常に目立つというようなこと等々ございます。こんなことについても今後どのように仕分けをされるのか。
  189. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 募集採用におきましては、女子のみはだめ、基本的には例外を除いてだめということになるわけでございますから、これから、今まで女性が多い職種にも男性が入ってくるということになると思うわけでございます。そういう意味で、委員御心配の最初の点は、だんだん今後なくなっていくというふうに考えておるわけでございます。  それから、化粧品売り場の美容部員に関しましては、これは社会通念上、男女異なる取り扱いをする合理的な理由がある職業としての適用除外に該当するかどうかという点につきましては、その業務内容とか社会意識を踏まえまして、今後、婦人少年問題審議会で十分御議論、御検討をいただいた上で確定をしていきたいというふうに考えておるところでございます。
  190. 松本惟子

    松本(惟)委員 まだ時間がございますので、次の機会にさらにお尋ねをしたいということで、次に移らせていただきます。  今出ました募集採用の件なのでございますけれども、ここのところは、各ステージ禁止になった中でも、書きぶりが違っております。これも、他の方からの御質問、たくさん出ておりましたけれども、重ねて伺いたいと思います。  特に募集のところで、その気がないのに最初から、法に触れるからということで、企業が形だけ募集をする、そして採用はしないというようなケースが今でもございますし、禁止になった段階でもこれは本当に実効が上がるのだろうかと、昨日の本会議での御答弁を伺っておりましても懸念が残ります。  そこで、募集の場合、採用の場合、機会だけを与えるというような書きぶりになっておりますけれども、なぜこのような書きぶりにしたのか、ほかの各ステージとは書き分けたのかというところをもう一度明快にお答えをいただきたいと思います。
  191. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 募集採用につきましては、これは労働契約締結に至るまでの問題でありますので、採用の自由との関係にかんがみれば、事業主に求めることができるのは「均等な機会を与える」ことであって、採用することまでは求めないことから、改正法案におきましても「均等な機会を与えなければならない。」としたわけでございます。
  192. 松本惟子

    松本(惟)委員 今、世界の流れは、世界の流れという言い方をするのがむなしいくらい、我が国ではそのことと一致をしていないところがたくさんあるわけですけれども、世界の流れは、形式的な平等から実質的な平等へ、つま久法律に書かれていることだけではなくて、それが現実にどう生かされているかということに向かって進んでいると思うのですね。  確かに、企業募集をして、まだ採用をしていませんので、そこのところでは雇用管理の責任が生まれていないということは、これは前回の均等法を制定するときにも議論になったわけでございます。私は、募集採用というのは一連の企業の行為であるというふうに思います。したがって、だれを募集し、そしてだれをふるいにかけ、だれを採用したかというのはわかっているわけでございます。したがって、この募集採用を、今まで余り役に立たなかった、ざる法と言われました均等法を前に進めるためには、もう少し前向きに、救済の対象にならないのか。つまり、調停の対象にできないのであろうかというふうに思います。特に採用については、これは名前が特定できているわけですから、どうして調停の対象に入らないのかということを再度お尋ねしたいと思います。  積み上げでこれをやっていくことによって差別をなくしていくというのが前回からの議論でございましたけれども、もう十数年たっておりまして、積み上げでここのところはちっとも変わっていないではないか、禁止規定にはなったけれども、いわば形ばかりではないかと言わせていただきたいと思います。  ここのところ、いかがでしょう。
  193. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 募集採用に係る一連の手続で女性を排除していない場合であっても、女性採用しないという方針のもとに、採用するか否かという採用決定の最終段階におきまして女性を排除することは、明らかに均等法に違反するものでございます。  委員御指摘の募集採用をなぜ調停の対象としなかったかと申しますのは、募集につきましては、不特定多数の者を対象として行われるものでありますので、個々の女性事業主の間に私法上の紛争が生ずることは考えられないということ。そしてまた二つ目には、採用については、調停申請者を実際に採用させることが、企業が既に採用配置を行った人員に対して及ぼす影響にかんがみますと事実上困難でありまして、したがって、両当事者が納得するような調停を行うことが非常に難しいということ。またもう一つ、募集及び採用労働契約締結以前の問題でございますので、個々の女性事業主は何ら契約関係にない私人間の関係にあること等から、紛争解決の手段としての調停にはなじまないということで除いたものでございます。
  194. 松本惟子

    松本(惟)委員 つまり、採用以降について事業主の責任が生ずるということで、それ以前につきましてはこの程度、これ以上のことは求められないということなのでしょうか。
  195. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 調停委員会の対象としなかっただけでございまして、都道府県婦人少年室長が行う紛争解決の援助の対象となる紛争としては含まれるものでございます。ですから、婦人少年室の方で助言、指導、勧告をさせていただくことになるわけでございます。それから、もちろん公表も、もし勧告に従わない場合はさせていただきます。
  196. 松本惟子

    松本(惟)委員 納得したわけではありませんが、次に移らせていただきます。  次は、前後いたしますけれども、「目的」の中に母性保護の問題について触れられております。妊娠中及び出産後の健康の確保を図る措置の推進というふうになっておりまして、二十二条にこのことが具体化されております。  現行の均等法以前には、基準法ができましたのが昭和二十二年でしたでしょうか、そのころの女性労働者の実態というのは、結婚子供を産み育てながら働くという人がまだ少なかった。それで、高度成長の中で出産仕事の両立ということが課題になる中で、昭和四十七年、勤労婦人福祉法において、企業努力義務ということで母性健康管理の指針がつくられた。私ども職場の中から、実態に合わない基準法ということでさまざまな取り組みをしてまいりました。  例えば、出産休暇までの間に妊娠障害を経験します。これは個人差があるわけですけれども、そういった女性労働者の救済措置が何もないということなどなど、ございます。それから、職場では、小さなお話ですけれども子供を産むためのエネルギーを、三度の食事では足りませんので、職場で補食をする時間だとか、出産後の哺乳の時間だとか、こういったものが全く保障されていない。  健康な母体が健康な体を生み出していくためには、もっと労働協約を推進していかなければいけないということで、障害休暇の協定化を図ったり産前産後休暇の延長をしたりというようなことをやってまいりました。出産休暇は別にいたしまして、その他のさまざまな妊娠中の保護につきましては、努力義務という形で取り入れられたものの、日本の労働者の中こま組織されていない人たちが大変多いわけでございます。特に女性は現在で一七%を切っているのじゃないかと思うわけです。そういった人たちは、幾ら労使協定を結べとか労使協議で前進させてほしいとか言っても、そういう手だてがないわけでございます。やはりよりどころとなるのは、最低基準であります法律でしかございません。  したがって、母性保護に関することは、少子化という折から、そしてやはり高齢化社会に向けての対応をもっと図らなければならないという側面、そしてなお、現在では、働き続ける、つまり夫も妻も働いておる家族の方が、そうでない家族を上回っているという状況からも、労働における母性保護というのは具体的に必要と私は思っています。  そういう観点から、今回、もう一歩進んで企業の義務というふうにされた点は評価いたしますけれども、やはりこれは基準法上の問題ではなかろうか、労働基準法の中に体系化する方がいいというふうに私は考えております。なぜならば、これは日本の法律にしても保険制度にしても、あっちを見たりこっちを見たりしないと大変わかりにくい。散らばっています。したがって、ここのところは労働基準法の中に体系化しておさめる方がいいと思っています。この点についてはどうかということを一点。  それから、あわせて、母性に対する健康管理の件は安全衛生対策の一環としてきちんと位置づけるべきだというのが私の持論でございます。これは母性保護推進責任者を選任してやった方がいいという方針もございますけれども、それはあくまでもサポート的なものでありまして、基本となるのは衛生管理者ですか、そこのところでしっかりと包み込んでいただいて、女性労働権と一体のものだという立場から、全体の中で包括して組み込んで考えていき、具体的な展開をしていただきたいと思います。  この二つについてお尋ねいたします。
  197. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 妊娠中の保健指導及び健康診査を受けるための時間の確保等々につきましては、事業主女性労働者に対して講ずるべき最低限の措置に係る事項であるというふうに思っております。  しかし、現段階におきまして、これらの規定は、配慮についての努力義務ないし措置を講ずることについての努力義務にとどまっておりまして、その実施割合も、例えば通院休暇を設けている企業の割合を見ますと二二・七%ということで、極めて低い水準にあるわけでございます。  こういうような状況を前提といたしますと、これらの措置を罰則を伴う労働基準法に挿入することは、実効性が上がらない上、混乱を招くだけでありまして、妥当ではないのではないかというふうに考えるわけであります。  したがいまして、まず規定の義務化を図ることによりましてこれらの措置の徹底を図るとともに、あわせて、企業内における母性健康管理体制の強化を図るなど実効性を裏づける措置を講ずることが先決であるというふうに考えるわけでございます。  それから、母性保護に関しましては、各種法律でいろいろとやっているわけでございますが、前のときにも申し上げましたけれども、現在、女性労働者を五十人以上雇用する事業所につきましては、母性健康管理推進者の選任を勧奨いたしまして、母性健康管理に関する事業所内の体制の整備を図るように指導しているところでありますが、この点につきましては、産業医との連携につきましても十分連携を密にしてやっていきたいというふうに思っておるところでございます。
  198. 松本惟子

    松本(惟)委員 つまり、前者の場合には、さらに実態の水準を高めて、そしてコンセンサスを図れるような方向に持っていけば、将来的には基準法の中に入れられるものもあるというふうに理解をさせていただきたい、それでよろしいのか。  それからもう一つの件ですけれども、改めてお伺いしたいのは、母性、つまり、出産休暇を使用したことによる不利益取り扱いがいまだにあるというふうに思います。これは、労働基準法では出勤扱いとなっておりますけれども、その他の不利益取り扱いについてはいまだにコンセンサスがとれていないと思いますが、その辺の審議状況はどうだったのでしょうか。伺いたいと思います。
  199. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 最初の、母性保護の充実につきましては、先ほども申し上げましたように、まず企業内において実効性確保するという形をやっていきたいというふうに思っているわけでございます。  それから、二つ目の御質問でありました、母性保護に関する権利を行使した場合の不利益取り扱いでございますけれども先生御指摘のように、均等法におきまして、産前産後休業を理由とする解雇禁止されておりますし、基準法におきましては、先生御指摘のように、年次有給休暇の取得要件である出勤率の算定に当たっては、産前産後休業を出勤とみなす取り扱いとなっているところでございますが、女性労働者が、産前産後休業とか、その他の、深夜業の免除等々を受けたことを理由としていろいろな昇格、昇進の延伸等々、そういうようなことを事業主が行うことにつきまして、いかなる行為をどの程度まで不利益取り扱いとして禁止するかということにつきましては、コンセンサスがまだ得られていない状況でございます。  なお、母性保護に関する権利を行使したことを理由といたしまして、配置昇進などにつきまして著しく不利益な取り扱いをすることは好ましくありませんのはそのとおりでございますので、その旨は周知していきたいというふうに思っております。
  200. 松本惟子

    松本(惟)委員 コンセンサスが得られればというところに期待をさせていただきたいというふうに思います。  続いて、間接差別の問題についてお尋ねをいたします。  間接差別というのは、それ自体が差別的な意図を含まない、中立的な、あるいは公正な制度とか基準であったとしても、結果としてその適用が性別に大変な不均衡を生じさせているというような場合がございまして、これは違法な差別となり得るという概念を意味するというふうに理解をしております。既に欧米では、こういったものをやはり法律の中にしっかりと組み込んで、差別であるというふうにしているところがあります。  特に日本では、世帯主条項を例に挙げますと、これは制度的に見れば差別ではないわけです。ところが、結果として女性に大変不利益をもたらしているようなケースもございます。男性には聞かないことを、女性が勇気を持って、私は世帯主になりたいと申し出た場合に、いろいろなことを聞く。例えば、あなたの夫はどこに勤めているのか、就業証明や給与証明を持ってこいというようなことを言われるというようなケースがございます。  これは一つの例ですけれども、こんなことで、結果的にやはり不利益をこうむるようなこういった間接差別について、今回の法改正では期待をしていたわけです。何らかのことが触れられるであろうと思っておりましたけれども法律の中にはお見受けすることができません。したがって、どうして規定されなかったのかということについても伺わせていただきたいと思います。
  201. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 いわゆる間接差別につきましては、いろいろなケースがありまして、まだまだ、コンセンサス形成のためにはより慎重な議論が必要であるというふうに考えておるところでございます。  先生御指摘の世帯主要件につきましては、女性が世帯主である場合もございますし、直ちに女性に対する差別となるわけではないわけでございます。しかしながら、実際の運用の面で、女性が世帯主の場合には、夫の所得がどの程度あるかというような、先生御指摘のような、男女異なる取り扱いとなっている場合もあるわけでございまして、このような場合は女性に対する差別となることから、指導は徹底していきたいというふうに考えております。
  202. 松本惟子

    松本(惟)委員 次に、今回の法律で、その法律の実効を上げるために、懸案でありました一方申請、つまり、これまでは両方が申請をしないと調停に入れないというものが、一方申請でもよくなった。それから、不利益な取り扱い、つまり、申請をしたことによって不利益扱いを受けることを禁止したという点については、大変心強く思っております。しかしながら、より実効性のあるものにするためには、やはり婦人少年室から切り離した独立の機関として、直接調停申請が受けられて、そして、そこで審査がされて是正命令が出せる、行政によって是正命令が出せるというところまで行くのが最もいいというふうに私は考えておりました。これにつきましては、大臣からのお話、るるございましたけれども、やはり、さらに実効性を高めていくためには、このような独立した機関が必要ではないかと考えております。  と申しますのは、この十年間にたった一件しか調停にかかっていない。それ以外につきましては、たくさんの案件が上がってきたようでございますが、中には善処をされたというものも含まれているものの、余りにも、法律があるのに、この法によって調停がなされてない、世の中に明らかになって解決がされていないというケースがございます。したがって、やはり婦人少年室がふるい分けをして、そして、もうぎりぎりのところで調停に持っていくというようなことが繰り返されるようでは困ると思うのですね。したがって、切り離して、独立した機関によってもうちょっと強制力を持った実効担保の方法を求めたいと思うのですが、いかがですか。
  203. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 新しい行政機関の、すなわち、例えば国家行政組織法上の第三条機関の設置というようなことは、昨今の行政改革の流れの中では事実上困難であるというふうに考えられるわけであります。ということもありまして、改正法案におきまして、一方申請の場合の他方当事者の同意を要しないとしたわけでございまして、これによりまして、個別紛争の迅速簡便な解決を図る手段としての調停制度が有効に機能し、法の実効性を実質的に高めることができるというふうに考えておるところでございます。
  204. 松本惟子

    松本(惟)委員 きょうは要望にとどめておきたいと思います。  さらに、公表制度の件につきまして、これはお答えは不要でございますけれども、公表するに至る段階的な手続が大変私は気になります。それから、この公表制度ども法律の枠組み、拘束力がしっかりしていないと、余り意味がないのじゃないかというふうに考えております。この公表制度を本当に効果あるものにして、世の中に制裁の一つとして、要するに、法律を守らなかった者の制裁措置の一つとして明らかにしていくためには、幾つも幾つも段階を通り過ぎて、本当に奥の細道で、先が見えないようなところでということでは困るのですね。これまで、障害者雇用促進法の事例を見ましても,その他を見ましても、余りたくさんこういった事例が見受けられません。障害者の場合には一件というふうに伺っていますが、その他の法律、二、三ございますけれども、まだそういう事例が上がっていないということを考えますと、本当にこれは実効があるのかなというふうに思いますので、手続について今後審議をされる際にはできるだけ効力のあるような方向で審議をし、結論を出していただくように注文をつけさせていただきたいと思います。  それから、ポジティブアクションについてでございますが、これはもう繰り返し先ほどから議論をされておりました。私は、この点につきましても今回触れられたことについては評価をいたします。しかし、この前提というのは、やはり性差別禁止法、つまりアメリカ、カナダ、ヨーロッパでとられているこの手法というのは、性差別禁止法があって、そして法律がきちんとした骨格を持っていて初めてそれを補うための手段といいますか、方法として取り入れられているというふうに思っています。今回の雇用機会均等法、前進は評価いたしますけれども、まだまだ不足の部分があると思います。  したがって、私は、この積極政策について、これもお答えは要りませんので意見だけ述べさせていただきますが、少なくともやはり事業主に対する努力義務ぐらいは持ち上げていただきたい。そこまでは持っていっていただきたいと思います。そうしないと実効が上がらない。つまり、お勧めをして、ではやりましようという企業だけに国が幾つかの要件を設けて援助をなさるということです。これは大変弱いと思いますし、おくれている日本の男女平等を進めていくためにはやはり事足りないというふうに思っておりますので、きょうは第一回目ですから要望させていただきたいというふうに思います。  それから、セクシュアルハラスメントの件につきましても調停の対象から除外されております。ここのところについても、せめて調停の対象に入るような措置を講ずべきであるというふうに思っております。これも意見にとどめさせていただきたいというふうに思います。  次に、均等法の制定への期待とあわせて、一方では大変心配をされている女子保護規定母性保護を除く女子保護規定の撤廃の件について触れさせていただきたいと思います。  女性労働者がふえていまして、そして職域もかなり広がりを見せています。したがって、女性意見も一つではないというふうに私は認識をしております。しかしながら、やはりゆとりを持って働き続けていく、特に母性を持つ女性というのは出産をし、育児をし、この育児から先は男女がともにということがもうルール化されましたけれど、も、そういった立場にあるわけであります。四十時間法制が施行されまして、これが九七年にはほぼ行き渡るであろうというふうに思っております。そうでなければならないと思っています。この点については時短という点で成果だと思います。さまざまな問題がございましたし、まだ内包されている問題もありますけれども、前向きに進んだ、ようやく進んだというふうに思っております。  ところが、一方で青天井、しかも行政指導のいわゆる基準である三百六十という基準に合わせて撤廃すれば、女性もそこで働かなければいけないということで、いわゆるトータルのマスで見ますと労働時間短縮になったのだろうかと思わざるを得ません。ですから、今まで深夜労働、時間外労働を百五十で切られていたところを撤廃して、もっといわゆる面積を大きくするということによる企業側のメリットというのはあるでしょう。それから、女性職域をふやし、地位の向上を図るという目的も一部は達成されるかもしれません。しかし、一般の多くの女性労働者というのはまだまだそういった状況の中にはないというふうに思います。  そしてまた、先ほども申しましたけれども、未組織労働者が年々ふえています。これは好ましいことではありません。努力をして組織化を図っていかなければならないわけですけれども、やはりそれに追つつかなくて、実態としてはふえている。まして女性の組織率というのは下がってきています。  女性労働者はふえたふえたと言われますけれども、ふえているのはパートや派遣労働者でふえている。中断再就職女性たちは、やはり就業形態がフルタイマーの正規というような形ではないところで多くが働かざるを得ない状況にあっております。  したがって、私は、この時間外規制のあり方について本会議でも申し上げましたけれども、昔々のお話もあのときに申し上げました。労働基準法制定の前に男子を百五十にするという話が日本でもあった。それがなぜかふるいにかけられて、結果的には女性労働者のみになっていた。それがずっと今まで続いてきたわけでございます。  したがって、千八百時間のプログラムについても、御紹介をさせていただきましたように、政府みずからが、こうしてこうしてこうすれば千八百時間が達成されるから、二〇〇〇年までには、少なくとも二〇〇〇年を少し超えても、そこへ向けてその実現を図るのが国際公約であろうというふうに思います。  それからもう一つは、日本の外側からも規制緩和の波でコストの安い製品がどんどん入ってくるというような状況の中で、大変な局面にも立たされています。余り日本にはなじみがないわけですけれども、将来的には労働者が、ヨーロッパでもやっているように、ワークシェアリングということで、仕事を分け合って生きていかなければならないというような事態も出てくるであろうと思います。  そういった観点から見ましても、担保をとって、つまり中央労働基準審議会でこれは優先課題として審議をする、一定の方向を導き出すというような構えがあって女子保護規定を外すべきであったと思います。私は、これは行政の責任を問いたいというふうに思うわけです。中央労働基準審議会のいきさつを先ほどからお伺いをしておりましても、ちっとも先が見えないと思います。ですから、一方では均等法をビルドした、一方では足場の、つまり建築でいえば土台のところをぬかるみにしてしまうというようなことでは、真の男女平等、そして女性の地位の向上、そして男女がともにゆとりのある働き方、ゆとりのある暮らしをしていくことができなくなるのではないかと思います。  ですから、深夜につきましては後ほどまた伺いますが、時間外労働のあり方について、この点を伺いたいと思います。なぜ一方の方である程度の取っかかりをつかまないで、いきなり外して、これから審議ですというふうになってしまったのか。
  205. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 婦人少年問題審議会では、女性労働者に対する時間外・休日労働、深夜業の規制につきましては、女性職域拡大を図り、男女の均等取り扱いを一層進める観点から改正をすることとしたものでございます。これは、もう松本先生御承知のとおり、昭和五十九年の均等法ができたときの建議においても、既に深夜業等の規制とそれから均等法の充実ということはコンセンサスとして書かれているというふうに理解をしておるものでございます。
  206. 松本惟子

    松本(惟)委員 ただいまの御答弁ですが、かつてこれは外すというような方向で審議をするというようになっていたとおっしゃいますけれども男女平等、男女同一の枠組みについて将来的にはきっちりやっていくという、かつて合意をしたその件につきましては私は異議を挟むものではありません。母性保護を除いて、やはりできるだけ早い時期に男女が同じ立場に立って働くという環境を整えていくことはいいことだし、そうしなければならないと思います。そして、これは理論的にも間違ってはいないと思うのですね。  ですけれどもお尋ねをしているのは、それを外すときにどの程度のことを、対応する審議会との間でいわば約束があったのか。先ほどからのお話では、まだなかった、これからというふうに受けとめざるを得ないと思うのですね。これは要望として強く申し上げておきたいと思います。つまり、二年先に均等法施行されたときに、男女同一の枠組みができないで、そして今ある男性並みの働き方を女性がすべて強いられるということになることを懸念して、このことを申し上げたいと思います。  続いて、深夜労働の件についてでございます。  この深夜労働につきましても、午前中、能勢さんの方から、看護婦さんの大変な御努力、御苦労を伺わせていただくことができました。看護婦さんだけではなくて、かつて、電話の交換手だとか、そのほかの業務にも均等法施行によって適用除外されている人たちがたくさんいると思います。例えばタクシーの運転手も前回外されましたが、これは申請によるというふうになっていますね、強制力はないと思います。申請によって深夜労働に携われる。それからお弁当ですね、朝早く起きてお弁当をつくったり、生ものを扱っている、つまり、腐りやすいものを早く処理をしなければいけないというような労働者のところは、六時間以内というふうに限って今働いているということでございます。こういったところも含めて、今回、適用除外になれば深夜労働をせざるを得ないというような状況になっていくわけであります。このことについてもやはり条件整備が不十分であるというふうに思います。  私は、ILOの百七十一号条約、夜業条約の審査のときに、日本の代表としてあの場に参加をさせていただいた者の一人でございます。国際基準をつくる場でしたから、大変な議論がありました。ここで問題になったのは、昨日も出ていましたが、グローバル化の問題が一つ、それから生産技術上の問題で不可欠であるといった職種、職域もある、それから生活上、公的なサービスその他に携わる方々についても必要であるというようなことは合意をされましたけれども、野放しに深夜労働を広げていくということについては、やはり人間にとって自然体ではない、深夜というのは家庭生活上、健康上、そして社会生活上というのが加わっていたと思いますけれども、これは非常に不自然な働き方なので規制をしなければならない、深夜に対する規制をしなければならないということで、職場環境労働条件について、要件がたくさんついています。  そのときに、特に女性労働者の立場から問題になりましたのは、やはりコストの安い労働力として、低賃金で働いている。このまま深夜を解禁してしまうということになれば、安い労働力として女性が深夜こ働かざるを得ない。特にヨーロッパの場合には先任権制度などがありますので、不利な立場に立つということで、大変な議論がございました。  私は、女性が、家庭仕事の両立が困難になって、深夜労働もせざるを得ないようなことであるならば、やめて別の働き方というふうになっていく、これは本当に、選択によってなることなら別にいいわけですけれども、そうではなくて、やむなくそうせざるを得ないというようなことになることを懸念しています。ですから、この点につきましても、条件を明らかにした上で、均等法とのにらみ合わせということにするのが一番いい選び方だったのではないかと思いますけれども、先も見えないままやってしまっているということを問いたいと思います。  あわせて、長くなって申しわけないのですが、労働省は深夜労働の実態をどの程度調査をされていらっしゃるのでしょうか。先ほど局長の御答弁がございましたけれども、もう少し立ち入ってお話をいただきたいと思います。
  207. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 私どもにおきましては、深夜業に従事する女性労働者の実態等につきましては、事業所訪問とか意識調査、業界団体等からのヒアリングを通じまして状況把握に努めているところでございます。  具体的には、全国の婦人少年室におきまして、事業所訪問調査によりまして、その実態を調査いたしております。それから、昨年七月に出されました婦人少年問題審議会の中間的取りまとめに対する意見、要望等もお聞きいたしているところでございます。また、実際に深夜業が行われております企業及び業界団体から、深夜業を行うに当たって配慮している事項等についてヒアリング調査等を行ったわけでございます。
  208. 松本惟子

    松本(惟)委員 次回で結構ですけれども、その実態調査の資料をいただきたいと思いますので、お願いをしておきたいと思います。  最後の質問でございますけれども家庭仕事の両立のために、女子保護規定撤廃を補うものとして、深夜労働だけについて、申し出によって免除をするということがうたわれております。しかし、時間外労働については、大臣御答弁のように、現行法の中で、育児休業、介護休業の中で短時間勤務制度があるからそれを充当したらいかがかと言われましたが、私は不十分であるというふうに思います。この点についてお尋ねをしたいと思います。  それから、これは私の考え方ですけれども、今回は女子保護規定を外したためこ、それを補うものとしてILOの百五十六号条約による規定をここに一部盛り込んだということですけれども、私は基本的には、やはり男性を含む両性の労働基準を引き上げるということが望ましいと思います。でなければ、家庭責任を持つ者と持たない者との間の格差が、労働条件の中で特に賃金にはね返ってきます。そういったことで、基本的な労働条件の引き上げという点で、時間外労働それから深夜労働の今回の取り扱いについては、今の時点ではまだ納得ができないということを申し上げさせていただきたいと思います。  最後ですけれども労働組合のあるところに働く労働者は、労使協議によって労働条件を引き上げていくという手だてを持っています。しかしながら、そうでない労働者がふえている昨今、そしてまた労働力の流動化が進む中女そのことがさらに促進されることがないようにと願ってはいるわけですけれども、未組織労働者に対する社会的な責任、これは企業を含めて、企業社会的責任もあるのではないか。これ以下で働かせてはいけないという最低の労働基準を定めていかなければならないと思いますけれども、最近の状況を見ておりますと、経済は非常に進んだけれども、経済的なもの、物質的な面は進みましたけれども、こういった人間の生き方、働き方に関する部分では、どんどんと足場がすくわれて弱くなってきている、人間らしい働き方がしにくい社会になってきているのではないかというふうに懸念をいたします。そういったことを申し上げまして、質問を終わりたいというふうに思います。
  209. 青山丘

    青山委員長 次に、藤木洋子君。
  210. 藤木洋子

    藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。  今回の法案審議に先立ちまして、既に、当委員会におきましても、また衆参の予算委員会におきましても、この法案にかかわって各党の委員皆さんが取り上げてこられました。その議論の中心は、労基法女子保護規定の撤廃で予想される問題が殊のほか大きいことであったと思います。  マスコミ報道も、当初は、均等法改正がどこまで達成されるかというところに焦点を当てておりましたけれども、最近では、女子保護規定撤廃で深夜、時間外・休日労働が解禁されることで働く女性の負担は一体どうなるのか、特に子育てと両立させながら働く母親や子供たちへの影響、少子化現象等々、女子保護規定を撤廃して果たして大丈夫なのか、国民的議論が必要だ、こういう論調も出てきております。今こそ、当委員会におきましても、こうした世論にこたえまして徹底した議論が必要であろうと思っております。  少子化現象については、既に社会問題として数々論じられているところでございますけれども、厚生省は、出生率の低下によりまして二〇五〇年、このときになりますと二割減の一億人になる、さらにその後も人口は減少し続けると予測をしております。ことし一月に厚生省が出しました「少子化の動向と背景」では、その影響といたしまして、一、経済活力の低下、二、社会保障負担の増大、三、労働力供給の制約、四、子供社会性の低欠こういったことなどを挙げているわけです。これは、女子保護規定撤廃を考慮していない予測でございます。最近では、女子保護規定の撤廃が少子化を加速させるのではないか、こういう指摘が出ているわけですね。  そこで、今回の法案提出に先立ちまして、婦人少年問題審議会ではこうした議論や検討を行ったのでしょうか。どうですか、行いましたか。
  211. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  婦人少年問題審議会における審議におきましては、均等法施行後十年間の女性労働女性就業実態の変化とか、週四十時間労働制の実施、育児介護休業制度法制化など、職業生活家庭生活の両立を可能にする条件整備進展状況について検証を行った上で、女性に対する時間外・休日労働、深夜業等の規制については解消すべき時期に来ているとの認識で一致を見たところでございます。  なお、規制解消によって少子化が加速されるのではないかというような意見は出されなかったものと承知しておりますけれども妊娠中及び出産後の女性労働者に対する保護、すなわち母性保護の重要性については、審議の中でも明らかにされたところでございます。  婦人少年問題審議会建議におきましては、少子高齢化の一層の進展の中で、女性に対する差別禁止するとともに、働きながら安心して子供を産むことができる環境をつくること、これが非常に重要かつ喫緊の課題であるとの認識が示されておりますし、女性労働者妊娠中及び出産後における健康の保持について一層の配慮をしていくことが必要であるとされたところでございまして、本法案におきましても、母性保護に関する規定の充実を図っているところでございます。
  212. 藤木洋子

    藤木委員 国民やマスコミが、女子保護規定の撤廃が少子化を加速させるのではないか、こう懸念じているときに、このような少子化問題について審議会で何一つ意見が出なかった。これは、まことに不思議と言わなければなりません。ところが一方、政府でも厚生省でも、少子化問題を極めて軍視をして、国民的な議論の展開を取り上げております。それを、まともに検討もせずに法案を提出した。そのことを伺いましただけでも、これは大問題でございます。重大な瑕疵があるということをまず申し上げておかないわけにはまいりません。  このように、社会への影響につきましてまともに検討もなければ、提出されたこの労働基準法女子保護規定撤廃は、女性が正規労働者として働き続けることを極めて難しくするものであることもまた指摘したいと思います。とりわけへ家庭子供たちへの深刻な影響が懸念される重大な法案でございます。  まず、何よりも大きな問題は、現在、女子保護規定によって原則禁止されている夜十時から翌朝五時までの深夜労働をすべての女性労働者に野放しにするという問題です。岡野大臣は、昨日、本会議の御答弁で、深夜業を女子もしなければならないのではない、させてはならないのができるようになった、こう言われました。これだけ伺いますと、やりたくなければやらなくても済むかのように聞こえるのですよ。そこで、深夜業はとてもできないあるいはやりたくない、こういう女性たちは、法律上拒否する権利があるのでしょうか。いかがでしょうか。これは大臣に伺います。法律で拒否する権利が保障されているのですか。
  213. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生、お話の冒頭、少子社会にさお差さなければならない今日、この法律が通ることによってかえってそれの足を引っ張るものだというお話がございましたので、その点についてもちよりと触れさせていただきます。  やはり、一つの法律少子社会というものから脱却をする、女性皆さんが赤ちゃんを産むのを雰囲気づくりするというのは無理であります。したがって、我々は、時短でありますとか育児介護休業法でありますとか今回の男女雇用機会均等法、幾つも幾つもの法律で、やはり職場生活というものと家庭生活というものとが両立できる、その調和が図れるというようなことを志しているということをまず一点だけお話をいたしておきます。  それからまた、深夜業の女性労働者皆さんに対する解放の問題でありますが、私どもといたしましては、深夜業が禁止をされている、したがって男女雇用機会の均等というものが図れないというような批判もこれ大きな声であるという現実を踏まえまして、今回、男女雇用機会を均等化する、女性であるがゆえの差別というものを撤廃するという意味合いで本法を準備をいたした、そんな次第であります。  それから、労働基準法あるいは育児介護休業法等々で、深夜業を事業主としてお願いができないという場合もこれあることを申し上げておきます。
  214. 藤木洋子

    藤木委員 大臣質問していることにお答えをいただきたいのです。法的に保障されているのか、断る権利があるのかどうかということについてお伺いをしているのですが、随分長々おっしゃいましたが、このことについてなぜお答えにならないのですか。
  215. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生、野放しに深夜勤をというお話でありますので、そうではない、こういう場合こういう場合は深夜勤をさせてはならないとか、あるいは、そういった深夜勤を拒むという請求権がこれあるという返事をいたしました。
  216. 藤木洋子

    藤木委員 それは違います。それは法律で定められた権利ではないのですね。ないということですね。法律では拒否する権利が定められていないのではないですか。
  217. 岡野裕

    岡野国務大臣 労働基準法に基づく請求権にせよ、それから育児介護休業法に基づく、深夜業ができないというのも、いずれも私が今申しました法律に基づくものであります。
  218. 藤木洋子

    藤木委員 それはごく一部の限られた女性のための施策であります。それをもってしてすべての女性を救うことができるかのような言い方は、全くごまかしとしか言いようがございません。育児介護責任のない女性だって、深夜労働にたえられない人たち、いるじゃありませんか。法律上、深夜労働を拒否する権利はあるのですか。イエスかノーか、端的にお答えください。
  219. 岡野裕

    岡野国務大臣 男女雇用均等法というものの精神は、女性であるがゆえの差別といりものをやめようということででき上がっている案であります。したがいまして、女性であるがゆえに深夜業を今お話をしたような規定以外の理由をもって断るというわけにはまいらない、これが均等だということであると存じます。
  220. 藤木洋子

    藤木委員 要するに、使用者就業規則で深夜労働を決めたら労働者はこれを拒否することができない、そういうことではないでしょうか。それとも、深夜労働を拒否できる、そういう法律上の権利があるのですか。男女ともにいかがですか。
  221. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 事業主が、労働基準法労働安全衛生法、育児介護休業法等に規定されました深夜業に係る規定を遵守しつつ女性労働者に新たに深夜業をさせることができるように就業規則を変更することは、経営上の必要性及び変更内容の相当性が認められる限り合理性があり有効であると考えるわけであります。このような就業規則のもとで労働者に対して適法になされた深夜勤務の命令につきましては、労働者に正当な理由がない場合には拒否できないと考えます。  なお、深夜業につきましては、労働基準法に、母性保護観点から妊産婦について深夜業免除の請求権を定めているところでありますし、また、今般、育児介護休業法改正して、育児介護を行う一定範囲の男女労働者が請求した場合には深夜業に従事させてはならないこととする予定をしておるところでございます。
  222. 藤木洋子

    藤木委員 それでは、就業規則で女性労働者に深夜労働をしなくてもよい、こういうことを取り決めた場合はしなくても済むでしょうか。
  223. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 女性労働者だけに決めた場合でも、特別に均等法等々には違反はしないと思いますが、それによって募集採用配置昇進等に差が出てくれば均等法違反になるわけでございます。
  224. 岡野裕

    岡野国務大臣 労働協約をもって女性であるがゆえに一般的に深夜業はできないという定めは雇用均等法にもとる、こう考えております。
  225. 藤木洋子

    藤木委員 では、結局、労基法上の権利を失うだけではなくて男女雇用機会均等法でも違反になるわけですから、深夜労働を強制するということではありませんか。  それでは、労基法上、就業規則というのは、いかがでしょう、労働組合の同意が必要とされていますか、どうですか。
  226. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 就業規則の制定に当たりましては、労働組合がある場合は当該労働組合、労働組合がない場合はその従業員の過半数を代表する者の意見を聞かなければならない、こういう定めになっております。したがいまして、労働組合あるいは従業員を代表する者と十分話し合って、その意見を聴取しながら就業規則を策定することが望ましいわけでございますし、先生御指摘のように、労働組合がある場合であれば、就業規則という形を超えて、さらには団体交渉、労働協約の締結といった事態もあり鳴るかと存じます。
  227. 藤木洋子

    藤木委員 就業規則につきまして労働組合の意見を聞かなければならない、これはたしかそうなっております。しかし、同意は必要ございませんね。しかも、残業や休日労働のように労使協定事項でもないわけです。結局、深夜業をやりたくなくても拒否できないではありませんか。女子保護規定を撤廃すれば女性は拒否する権利を失うのです。しかも今、男性の深夜労働には、時間規制もございませんし、インターバルを何時間とらなければならない、こういった規制も全くございません。もっとも、それ自体が世界の常識から見れば全く異常事態ではあります。  大臣、伺いますが、結局女性もそれと同じ扱いにするということでございますね。男性と同じ扱いにするということですね。
  228. 岡野裕

    岡野国務大臣 本法趣旨は、女性に特有に持たれているところの母性保護、これを除きましては、男性女性雇用について均等に扱う、これが本法改正案趣旨であります。
  229. 藤木洋子

    藤木委員 そうしますと、労働基準法の第一条では、労働条件は、人たるに値する生活を保障する最低基準を定めたものである、そして、その基準を下回ってはならない、このように明記されております。ですから、今、使用者女子保護規定の基準こ違反をしたらどうされます。あなた方の部下が取り締まることになっているわけです。罰則もある基準です。その最低の基準を労働省みずからが今下回ろうということではないのでしょうか。やってはならない、やるなと使用者に課していることを国みずからがやろうとすることを許せるでしょうか。大臣、いかがですか。
  230. 岡野裕

    岡野国務大臣 本法法律でございます。したがいまして、労働基準法の第一条にもとる法律というものを提案をしているわけではございません。
  231. 藤木洋子

    藤木委員 今回の法案では、深夜労働については、育児介護責任のある労働者については免除申請が一定認められております。しかし、時間外、休日につきましては全く何の規制もございません。女子保護規定の廃止によりまして、一週六時間、年間百五十時間などの残業規制が撤廃されますと、夕方五時半から夜十時までという、女性労働者にとって一番多忙な家事、育児の時間帯の規制が取り払われてしまいます。子供にとってもこの時間は、唯一家事にいそしむ母親の姿に接することのできる大切な時間帯でもあるはずです。今でしたら女子保護規定で年間百五十時間の残業規制がありますから何とか働き続けてこられました。その法的規制を取り払うということになるのではありませんか。大臣、いかがですか。
  232. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生のお言葉によりますと、女性はこの時間帯は家事等のため、育児のため極めて必要な時間だ、こういうお話がございました。本法趣旨としますところは、やはり育児介護休業法等にも見られますように、家事は女性の専担である、育児女性の専担であるというような考え方を払拭しようではないかというようなことに精神がありますことを御理解賜りたい、かように存じます。
  233. 藤木洋子

    藤木委員 とんでもありません。今の社会的な現状をお踏まえになっていらっしゃらないのでしょうか。こういうことをされますと、女性は正規の労働者としてはとても働き続けることができなくなってしまいます。  これまで、大臣局長も繰り返し、こういった法的な規制が撤廃されるとしても、女子保護規定の撤廃は協定があるから大丈夫だというふうに答弁もしてこられました。それで本当に歯どめになるのかということを伺いたいと思います。  三六協定について伺いますが、科学技術庁の特殊法人である動燃の三六協定について御存じでしょうか。労働省の三六協定の指導の目安時間は、一カ月四十五時間、三カ月百二十時間ということですけれども、動燃は、一カ月八十時間、三カ月で二百時間です。大臣、協定を結んでもこれほどの長時間なんです。同じ科学技術庁の特殊法人、科学技術振興事業団は、二つの事業所の合併でつくられました。その一つ、新技術事業団が協定を結んだのはいつだったでしょうか。
  234. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 この科学技術振興事業団の三六協定についてのお尋ねでございますが、この事業団、たしか川口市に所在するかと存じます。今、埼玉県の川口労働基準監督署の方でその辺の事情を調べさせているところでございます。
  235. 藤木洋子

    藤木委員 私はこれを連休前からお願いしているのです。途中に連休が入ったとはいいますけれども、どうしてすぐにお調べになっておわかりにならないのですか。協定を結んだのは去年の七月一日です。それまでの間は協定も結んでいなかったのです。  私が申し上げたいのは、政府の特殊法人でさえ三六協定というのはこんな状態だということです。異常な長時間の協定。さらに、新技術事業団の場合は、昨年の七月までは協定も結ばずに残業をさせていました。三六協定は何ら法的な規制ではございませんし、単なる指導の目安でしかないのです。  それとも、労働省は、今後、労働基準監督署は目安を超える協定については一切受理しない、受け取らないと約束していただけますか。どうでしょうか。
  236. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 先ほどの科学技術振興事業団の件でございますが、先ほど調査していると申し上げましたのは、この三六協定は、改定され、あるいは新規に締結された場合に出てくるものでございまして、かなり以前のものがないかどうか、さかのぼって書類等を調べていく必要がある、こういう事情に基づくものでございます。  もう一つお尋ねのございました、三六協定につきまして、上限の目安時間を超えるものについて受理しないということが今後やれるのかという御指摘でございます。  今後、この保護規定解消等に伴い、女性の方の能力発揮のチャンスが膨らむと同時に、働く際の家庭責任との調和、こういったことも大きな課題になってくるかと思います。我々、三六協定の受理に際して、この目安制度をしっかりとした指針として運用していかなければならないというふうに肝に銘じているところでございまして、そういった際に、もし、上限、目安を著しく超えたり不適正なものがあれば、再検討の要請等をしっかりとやっていく、こういった気持ちでおるところでございます。
  237. 藤木洋子

    藤木委員 それは今までもやっていらしたことでしょう。これからなさるのですか。今までもやっていらしたじゃありませんか。私は、一切それを受理しないと約束していただきたい、こう申し上げたのです。できますか。
  238. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 もちろん、今までもそういった点を十分配慮しながらやってきたわけでございますが、今後、女性の方の職場進出が進む中で、家庭との調和、こういったことが課題になる以上、さらに徹底した再検討の要請等についてしっかりとした対応をしていかなければならないというふうに肝に銘じているところでございます。  ただ、先生御指摘のように、それを制度的に受理しない、したがって企業の方は直ちに超過勤務等が一切できなくなる、こういう姿は想定いたしておりません。
  239. 藤木洋子

    藤木委員 結局、協定の体裁が整っていましたら受理しなければならないということに決まっているわけですよ。だから受理しないという約束はおできにならない、これでは何の制約にもなりません。やはり基準は、協定ではなくて、法的に担保しなければだめなんです。  これは労働省の九五年の資料でございますけれども、これを拝見いたしますと、年間残業時間の目安時間である三百六十時間を超える届け出をしている企業は五・土%、約四万六百件に上うております。中には年間残業時間が八百時間などという協定を結んでいる事業所もございます。労使が協定を結んだ場合、女子保護規定を撤廃すれば、結局、女性労働者は年間百五十時間を超える残業を拒否する法律的な権利を失うことになりますね。大臣、そうですね。
  240. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 適法に締結された三六協定のもとでは、労働者になされた時間外労働等の命令につきましては、労働者に正当な理由がない限り、拒否できないと考えております。
  241. 藤木洋子

    藤木委員 いろいろ言われますけれども、問題は、長時間残業を拒否する法的権利を失うということなのです。今の年間百五十時間という女子保護規定が撤廃されてしまいますと、労使で長時間の協定を結んだ場合、女性労働者がそれを拒否する法的権利は全くないのです。大臣、そうですね。法的権利は保障されませんよね。
  242. 岡野裕

    岡野国務大臣 太田政府委員が申し上げたとおりであります。
  243. 藤木洋子

    藤木委員 ですから、協定があるから大丈夫などとはとても言えないわけです。結局、男性並みの長時間労働を拒否できなくなる、このことだけははっきりいたしました。  その上、日経連は三六協定の届け出制の廃止まで規制緩和の要望に挙げているのじゃないですか。財界は、三六協定まで撤廃せよ、こう言っているわけです。どうするおつもりですか。  労働基準法三十六条を改正して、男女ともに長時間労働規制し、せめて、今女性に行っている年間百五十時間の残業規制をする、どのように約束してはいただけませんでしょうか。
  244. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 この三六協定は一年間の上限を三百六十時間としているところでございますが、この三百六十時間を下回る労使協定を結んでいるところが九四・八%、約九五%でございまして、現段階でもかなりの割合がこの三百六十時間以内で決めている。  私どもは、先ほど申し上げましたように、今後、これを超えるようなケースにつきまして再検討の要請等をしっかりと行うことによりまして、この三六協定の意義というものは十分発揮されていくもの、またそうしなければならないものと考えておるところでございます。  それと、もう一つお尋ねがございました、三六協定の締結、その届け出について、これを廃止してはどうかという要望があるということでございますが、そういった要望が規制緩和の中で出されていることは承知しておりますが、私どもはそういった考えは持っておりません。
  245. 藤木洋子

    藤木委員 私は、百五十時間に改めるという措置をおとりになる御決意はないのかということを伺ったわけでございますが、どうですか。
  246. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 この三六協定につきまして、私どもがしつかりとした運用をすることによりまして、十分その機能を果たすように持っていくわけでございます。  先生御指摘のように、仮に男女含めて百五十時間とした場合に、一週当たり平均約三時間の残業時間でございます。そういった中で生産活動あるいは経済活動を行っていった際に、受注がふえる、ある程度注文が多い時期には人をふやさざるを得ない。それから、リセッションの時期、あるいは受注が減る時期があれば、残業がそうやって固定されている以上、ふえた人を減らさざるを得ない。いわば、日本は、今まで雇用というものを非常に大事にして、この残業というものを通じて雇用調整をしていただいて雇用の安定というものを実現してまいったわけでございますが、そういった面について重大な影響が出ることも考慮しなければならない。  非常に多角的な見地から検討すべき課題でございまして、御指摘のように直ちに百五十時間ということについては、いかがかというふうに思っております。
  247. 藤木洋子

    藤木委員 財界の三六協定を撤廃せよという要望を知らないわけではない、しかしそれをやるつもりはないというふうにお考えならば、三十六条の改正、これを勇断を持って行っていただきたいというふうに思います。  もう時間もございませんが、昨日の本会議質問のときに総理からも、また大臣からもお答えがございました、婦少審は全会一致でこれを決めたということを盛んに言われるわけですけれども、婦少審に参加していました労働側の代表が同意しているからすべての労働者意見を代表しているとは決して言えないと思うのですね。その代表を出している連合傘下のゼンセン同盟でさえ懸念を表明して、同意してはいないわけですから、そのことをごらんいただいても明らかだというふうに思うわけです。  ですから、同法案提案理由の中に、同審議会から全会一致建議があったので、その建議に沿って法律案をつくったと述べていますけれども、婦少審を絶対視していることの誤りについて私は指摘したいと思います。それならば、そこまで絶対視するならば、国会の審議とは一体何のためにやるのか、また、労働省の固有の責任を婦少審に肩がわりさせて果たしてよいのか、こういうことが問題になってくると思います。  今必要なことは、男女共通の労働時間の規制を行うことであり、諸外国でやっていること、これを日本でも進めていくことです。せめて、今女性に行っている年間百五十時間の残業規制を行うことを私は強く求め、女子保護規定撤廃の労基法改悪は断じて認めることができないということを表明させていただき、法案の撤回を求めて、質問を終わらせていただきます。
  248. 青山丘

    青山委員長 次に、辻元清美君。
  249. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党・市民連合の辻元清美です。  昨日も代表質問をさせていただきました。私は、一番最後の質問者ということで、きょう皆さん質疑を聞いておりまして、さらにわからない点、疑問に思う点について伺いたいと思います。  この均等法ができた折、十年前は私は学生だったのですね。そのときは、まだ働く身ではなかったのですけれども非常にうれしかったのです。今度自分が働くようになってみて、ただやはり均等法はできたものの微速前進といいますか、女性雇用機会が均等であるのかどうかとか、それから働きに行ってみたらセクハラとかそういういろいろなものを、ここにいる女性の方であればだれでも体験されたことがあるのではないかと思うのですが、いろいろな障害も体験してきました。そういう中で、今回の改正が実りのあるもの、絵にかいたもちにならないように、具体的なことを幾つかお聞きしたいと思うのです。  まず一番最初に、今回、均等法の見直しを行う中で、審議会で議論の中間的なまとめを公表されました。その中に、国民各層からの数多くの意見を聞いたとありまして、ファクス等で二万八百八十八件の意見審議会の方にも届いていたというふうに承っております。その中で、聞いてみたいことがあるのですが、女性にとって困っていること、不当に扱われたという訴えとか意見で、どういうことが具体的に多かったというふうに把握されているのでしょうか。
  250. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 今回の見直しの中で、中間取りまとめに対して寄せられた意見の中で最も多かったものは、男女雇用機会均等法について強化を求めるものが大多数を占めたところであります。  具体的に申しますと、やはり均等取り扱いの促進に関しましては、募集採用配置昇進の全ステージにおける差別取り扱いを包括的に禁止してほしいという意見が最も多かったわけでございます。そのほかには、女性が少ない職種への登用など、女性の積極的な活用を促進するためのポジティブアクションを導入してほしいという御意見、それから、女子のみ募集などを法に反しないとする現行の取り扱い解消して、男女の平等の法的な枠組みを整備してくれといった意見が多く見られたわけでございます。  また、そのほかには、法の実効性を高める方策といたしまして企業名の公表などの制裁措置を設けるべきであるということとか、調停を一方申請にすべきであるというような意見が見られました。女子保護規定につきましては、一定の条件のもとに解消を認めるものが最も多かったわけでございます。
  251. 辻元清美

    辻元委員 今、多かった意見の中にポジティブアクションの話がありました。ちょっとここから、きのう私は代表質問でも質問したのですけれども、ポジティブアクションとセクシュアルハラスメント、それから調停の三点について、順次具体的に聞いていきたいと思います。  ポジティブアクションについて、先ほどから大臣も御答弁いただいているのですが、どうもはっきりイメージがつかめないのですね。ここでこんなに聞いていても、一体何をするのかなというふうに思いまして、この法律を見てみますと、ポジティブアクションは二十条ですね。ちょっと簡単に申し上げますと、  事業主雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保の支障となっている事情を改善することを目的とする次に掲げる措置を講じ、又は講じようとする場合には、当該事業主に対し、相談その他の援助を行うということで、四項目ございます。  「その雇用する女性労働者配置その他雇用に関する状況の分析」、それから、前をちょっと略しまして、「男女の均等な機会及び待遇確保の支障となっている事情を改善するに当たって必要となる措置に関する計画の作成」、これも手伝おうではないか。それから「措置の実施」、それと「必要な体制の整備」、こういうことを事業主がやる際に積極的に相談や援助をしていこうということなんですが、これは具体的に言えばどういうことをなさろうとしているのか。  というのは、ここは非常に大事なところだと思うのです。企業は、ある意味で、ほっておいたらやらないのではないかというふうな心配が私はあるのです。というのは、それはポジティブだから自主性に任せるという御答弁も何回も伺ったわけなんですけれども、ここには「相談その他の援助を行う」という文字もございますので、具体的にどういうことをなさろうというイメージで今回このポジティブアクションを入れられたのか、お聞かせください。
  252. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 ポジティブアクションは、企業女性労働者男性労働者と比べてどのような現状にあるかということを分析していただきまして、そして男女労働者の間に事実上生じている差に着目して、その差を解消するためにいろいろな措置、計画をつくっていただくものでございます。  例えば、現状を分析していただくわけでございますが、その企業さんの女性雇用管理の各ステージにおいてどういうような状況にあるかとか、職場環境がどうだとか、職場風土がどうだとかというようなことを分析していただいて、問題を発見していただく。そして、その問題の中から、その企業にとって、例えば女性採用拡大しようとか、女性職域拡大しようとか、女性管理職を増加しようとかいうような取り組みの目標をつくっていただきまして、その目標に向けて、先ほど来言っていますように、いろいろ研修をしたり、それから企業の中でのコンセンサスづくりをしたりということをやっていただくわけでございます。それに対しまして‘国が相談とか助言とか情報提供等を行いたいということを考えているものでございます。
  253. 辻元清美

    辻元委員 今お答えいただいたわけなんですが、それはやりたいと思う事業主だけということですよね。そこが問題だと思うのです。政策として打ち出していくときに、やはりここのところをもっと強化していくという積極的な、ポジティブなポジティブアクションがあってもいいのではないかと思うのです。  それで質問したいのですが、それは要するにあくまでも自主的な判断ですから、どこもしなくても、しなさいというふうに指導したりするおつもりがあるのかないのか。それから、報告はどうなっているのかということなんです。今おっしゃったように、例えば計画を立てているかどうか、それからそれに対して研修をしているかどうか。それに対して助言などをされるということなんですが、では、それはこういうふうになりました、ああいうふうになりましたというフォローアップはどうなっているのでしょうか。
  254. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 ポジティブアクションにつきましては、まずは事業主が取り組むことを促進していくことが重要であるということから、先ほど来申し上げておりますが、いろいろとポジティブアクションの重要性とか手法につきましてトップセミナーとか業種別使用者会議を開催いたしまして、企業のポジティブアクションの具体的取り組みを国としては積極的に援助していくということにしているわけでございます。  また、労働省といたしましても、こういう各企業取り組みにつきましては積極的に収集をいたしまして、これを参考にいたしまして好事例集を作成し、企業の具体的な取り組みをさらに促進していきたいというふうに考えているところでございます。(辻元委員「報告は」と呼ぶ 報告は、特段、規定は考えておりません。
  255. 辻元清美

    辻元委員 ということは、先ほど何か表彰をなさるとかいうお話もあって、報告がなくてどうやって表彰するのかなと私はちょっと思ったのです。ここのところ、またあさってもありますし、後ほどの委員会でももう少し詳しく聞いていきたいと思うのですが、今回のポイントになるのではないかと思いますので、私はかなり強化した政策を打ち出すべきだと思うのですね。  それから、セクシュアルハラスメントについても伺いたいと思うのですが、今回、このセクハラの防止が入ったということは評価できるのではないかというふうに思います。ところが、実際には罰則規定もありませんし、予防措置もないわけなんです。  そういう中で、カウンセリング等によってそういう相談を受けていこうということなんですが、そういう際に、専門知識や経験を有する相談機能の充実というのがこれから大事になってくるのだと思うのですが、現場ではこのことに対してどういうふうにお考えなんでしょうか。
  256. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 職場におけるセクシュアルハラスメントに関する相談は、婦人少年室において年々増加しておりまして、平成七年度で千件近くになっているところでございます。その内容につきましては、深刻、悪質なものも多いですし、また、相談者のプライバシーに触れるものも多いようでございます。  そういう意味で、先生御指摘のように、カウンセリング等の専門知識とか経験を有する相談機能の充実が必要になっているというふうに認識をしておるわけでございます。このため、労働省におきましても、全国のセクシュアルハラスメントに係る相談内容を分析いたしまして、カウンセリングの専門家とも御相談をしつつ、窓口におきます対応のポイントなどを整理いたしまして、各室の対応とかケーススタディーに活用いたしまして、相談機能の充実を図っているところであります  今後は、さらに婦人少年室の相談機能を高めるために職員研修のあり方とかカウンセリングの専門家の活用等についても積極的に考えていきたいと思っております。
  257. 辻元清美

    辻元委員 セクシュアルハラスメントの中の一つでセクハラ面接というのを御存じでしょうか。  募集採用というのが今回もちょっと基準が低くなっているわけなのですけれども、その際に、今問題になっているのは、職を探している女性たちに対するそういう事件、事態も多数報告があると聞いているのですけれども労働省ではこのことについてどのようにお考えで取り組んでいらっしゃるのでしょうか。
  258. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 採用のときに女性に対してのみいわゆるセクハラ質問をするということがあるということは存じております。そういう採用試験の際の女性に不利な取り扱いをすることは、今後、均等法違反になると考えられますので、厳正な指導を行っていきたいというふうに考えておるところでございます。  なお、改正法案では、事業主に対しまして、その雇用する女性労働者に対するセクシニアルハラスメントの防止について雇用管理上の配慮義務規定しているわけでございますが、この規定に基づいて事業主が人事担当者に対する研修などセクシュアルハラスメントの防止のための措置を積極的に講じていくことが、採用時におけるセクシュアルハラスメント防止にも資するものであるというふうに考えております。
  259. 辻元清美

    辻元委員 今、均等法の違反という言葉がありましたので、確認させていただきます、そういう場合に。  それから、最後に調停について伺いたいと思うのです。  今回、一方の要求で、当事者の申請によって調停が開始されるという点は評価される点ではないかと思うのですが、これをではどのように行っていくのかというところ、ここが大事だと思うのですね、絵にかいたもちになっても困りますので。  ですから伺いたいのですが、今までの調停の開始をめぐっては、不開始とされた事例のうち、婦人少年室長の裁量の行使で不開始とされている例も多々あります。実際に、内部通達で裁量権の行使は制約的にという指示が出たという話も聞いておるのですけれども、これを開始するか不開始にするかの基準について、調停を行うか行わないかの基準については、裁量というよりはあくまで形式的判断にゆだねるべきだというふうに考えるわけなんですが、この調停についてどのような基準で行おうとしているのか、お答えください。
  260. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 調停を開始するに当たりましては、婦人少年室長が開始、不開始を判断するわけでございますけれども、調停対象事項に係る紛争が存在すること、すなわち、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇に関する事業主一定措置に関しまして、女性労働者事業主の間で主張が一致せず対立している状態が存在しているということ、そしてまた、調停により解決を図ることが紛争の解決のために必要であることの二点を満たすということが必要であるというふうにしているところでございます。  さらに、婦人少年室長が紛争の解決のため必要があるか否かを判断するに当たりましては、現在は、申請が当該紛争に係る事業主措置が行われた日から一年を経過した紛争に係るものであること、それから、申請が当該申請に係る紛争以外の事項についての集団的な労使紛争を有利に導くことを目的としたものであること等、調停に付することが適当であると認められないケースに当てはまるか否か、あるいは、企業内における自主的解決の努力が行われているか否かをいろいろと考慮の上、決定をすることにしているわけでありまして、以上、いろいろ考慮した結果調停が必要がないと明らかに認められる場合を除けば、原則として調停を行う必要があるというふうに考えているものでございます。
  261. 辻元清美

    辻元委員 ちょっと、今お聞きしたのですけれども、どういうときに調停になるのかということが具体的にイメージがなかなかわいてこないのですが、実際にまだあと数日このことについては審議いたしますので、もう少し具体的な事例については後ほど質問させていただきたいと思います。  時間が来ましたので、私の質問はこれで終わります。     ―――――――――――――
  262. 青山丘

    青山委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、来る十四日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  263. 青山丘

    青山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、参考人の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  264. 青山丘

    青山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、来る九日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十七分散会      ――――◇―――――