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1997-02-28 第140回国会 衆議院 労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月二十八日(金曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 青山  丘君    理事 荒井 広幸君 理事 大野 功統君    理事 佐藤 剛男君 理事 森  英介君    理事 河上 覃雄君 理事 桝屋 敬悟君    理事 岩田 順介君 理事 金子 満広君       飯島 忠義君    大石 秀政君       粕谷  茂君    河井 克行君       小林 興起君    竹本 直一君       棚橋 泰文君    能勢 和子君       綿貫 民輔君    鍵田 節哉君       今田 保典君    塩田  晋君       城島 正光君    西田  猛君       吉田  治君    近藤 昭一君       中桐 伸五君    松本 惟子君       大森  猛君    中川 智子君       吉田 公一君  出席国務大臣         労 働 大 臣 岡野  裕君  出席政府委員         労働政務次官  小林 興起君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省労働基準         局長      伊藤 庄平君         労働省婦人局長 太田 芳枝君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君  委員外出席者         労働委員会調査         室長      中島  勝君     ————————————— 委員の異動 二月二十八日  辞任         補欠選任   塩田  晋君     今田 保典君   福岡 宗也君     城島 正光君   村山 富市君     中川 智子君   畑 英次郎君     吉田 公一君 同日  辞任         補欠選任   今田 保典君     塩田  晋君   城島 正光君     福岡 宗也君   中川 智子君     村山 富市君   吉田 公一君     畑 英次郎君     ————————————— 二月二十八日  労働基準法女子保護規定撤廃中止に関する  請願金子満広紹介)(第三八八号)  労働法制改悪反対等に関する請願金子満広  君紹介)(第四一〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働時間の短縮促進に関する臨時措置法の一  部を改正する法律案内閣提出第一〇号)      ————◇—————
  2. 青山丘

    青山委員長 これより会議を開きます。  内閣提出労働時間の短縮促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大石秀政君。
  3. 大石秀政

    大石委員 自由民主党を代表いたしまして、時短促進法一部改正法案についての質疑を行わさせていただきます。どうも大臣、御苦労さまでございます。  この問題も含めまして、いわゆる時短問題については、ここ近い時期においていろいろ報道等も議論もあったわけです。ただ、この件に関します私の意見といいますか、いろいろ思うことをまず最初に述べさせていただきますけれども、週四十時間という問題に関しましては、いろいろ思惑とかそういうことではなしに純粋な気持ちで、これは最低そういう週四十時間という労働時間というものは、国際的ないわゆる常識的なものとして、国内においても、ほかの面ではいろいろ考え方が違う、例えば階層ですとか主義、あるいは政治でいいますと政党の枠を超えて、いわゆるこのぐらいのことは最低守らなければいけないのではないかという、そういった極めて単純かつ純粋な問題として取り上げるべきであると私は考えているわけでございます。  いろいろな段階を踏んで、来月末をもって一応の猶予期限が切れるわけでございますが、その間いろいろと景気につきましても変動があったり、あるいは政権交代というようなことも行われてきたわけでございます。しかし私は、原則的にそういった経済状況あるいは政治的な状況について配慮というものは必要であるとは思いますけれども、基本的な原則として、やはり時短、週四十時間労働制への移行という大きな流れというものは決して変えてはならないし、変わらないものであると確信をしているわけでございます。  いろいろな御意見をお持ちの方も多いとは思いますけれども、やはりゆとりある生活ということを考えた場合に、先ほど来申し上げているとおり、このぐらいのことは少なくとも守っていこう、労使ともに考えていこうということで、私はこの時短というものを、できるだけ早い時期に確実に現実のものになるような施策をとっていかなければならないと考えているわけでございます。  業種によりまして大変に難しいというような話もあることも認識はしております。しかしながら、そういうものに関しましては、特例といたしまして四十六時間ということで認めているものもございますし、あるいは裁量労働制というもので対処をする、あるいは変形労働時間制というものの弾力的な運用によって、そういった、どうしても仕事特殊性から見て困難なものについては、別途といいますか、別枠としての策を講じて、やはり大筋のものに対しましては、速やかに四十時間への移行というものをやっていくという基本姿勢というものは変えてはならないと思っているわけでございます。  まず、なぜ冒頭にこのようなことを申し上げるかということでございますけれども最初にも申し上げましたが、時短問題について昨今大変な動きがございました。その中でこの改正法というものもあるわけでございますけれども、この法律についての位置づけ、あるいはとらえ方に関しましては、報道等も含めていろいろな見方があるわけでございまして、私といたしましては、この法律というものはあくまでも四十時間労働時短の実現に対しまして前向きなものであるというふうに確信し、また認識をして成立を図らなければならないと考えているわけでございます。  四十八時間から四十六時間、四十六時間から四十四時間、これを実施するに当たりましては、三年、三年というふうにがかったわけでございます。四十四時間から四十時間というものに関しまして、本年度末をもって三年で四十時間ということに実質なるわけでございますけれども、それぞれ労働基準法改正ですとか政令制定等もしながら、段階的に、ある意味中小企業等事業者方々にも配慮してそういった段階も踏んでやってきたという経緯がございます。  また、本改正をされる時短促進法につきましても、さかのぼれば前川レポートとか新前川レポートというものもありましたけれども宮澤内閣当時に生活大国というものをキャッチフレーズにいたしたことがございます。大変に懐かしいような気もするわけでございますけれども、そのときに、やはり仕事だけでなく、人間として生活時間、余暇も含めまして、ある程度の時間を自分裁量で、仕事以外のものとしてゆとりを持って使うというものが打ち出されたわけでございまして、その理念というものを私は大切にしなければならないと思っているわけでございます。  日本人の勤勉さということはよく言われるわけでございますけれども、その日本人勤勉性というものが歴史的にいつからそういうものになったかということについてはいろいろと判断は分かれるわけでございますけれども、これをいわゆる日本人の美徳であるとか文化一つであるとかというふうにとらえる方々もおられます。  私も、高度経済成長のときに日本人のそういったものが十分発揮をされて今日の日本というものがあるということは重々承知し、また敬意を払いますし、そういったものが依然として日本人の根底に流れているということは、決して日本経済そして社会 文化においてマイナスではなく、むしろプラスである、そういった観点でとらえております。  ただ、労働、働くということに対します考え方というものは、随分世代によっても違いますし、私もどちらかといえば国会の方では若いわけでございますけれども、昨今大変に多様化をしてきていることも事実でございます。  時短先進国では、例えば、むしろ余暇を含めて仕事以外の自分生活の時間を楽しむのに必要なお金を得るために働く、そういった考え方が主流の国もございます。日本は、どちらかといいますと仕事に生きがいを感じる、あるいは仕事第一主義というものが、随分砕けてきたとはいえ、そういった国から見ると、やはり、仕事そのもの以外も含めて、社会的にやや仕事を中心にした生活に対する縛りがまだきついような雰囲気があるのも事実だと私は思いますし、そういったものを打ち砕く一番の指針として、やはりこの四十時間というものを現実に一日も早く達成することが必要であると考えるわけでございます。  労働条件等についてもいろいろと違うわけでございますけれども労働時間といりものは、基本的には、人をその時間帯拘束する状態に置くという現象があります。大臣ども予算委員会の総括のときには、ある程度、まあ全時間拘束をされるわけでございますけれども、その中で、やはり自分のやりたいことの裁量というものは限られるわけでございまして、そういった意味で、労働条件の云々にかかわらず、私は、労働時間というものは率直に時間でとらえるべきものであると考えるわけでございます。  そうして、労働時間以外の時間というものを自分の時間、今でいいますと趣味あるいは自己啓発、まあインターネット等も随分盛んになっておりまして、あれもやはりある程度まとまった時間がないと、始められた方にとりましては、ある程度の段階までマスターするのには大変な時間を要するという傾向もありますし、ある程度自分の自由な裁量の中でそういったものもやっていきたいという要望が強い世代というものも今ふえていると私は感じております。  また、昨今、政治離れというものが言われているわけですけれども余り忙しいと、実際に選挙を手伝ったりとか、自分政治活動等仕事以外の時間でそういうことをなさるという方ももちろんおられるでしょうけれども、そういった政治に対する関心を抱く時間というような余裕も、私は余暇がふえることによってふえていくというふうに考えます。  また、家庭ですね。家族との時間の大切さ。これは今、教育の問題等も文部省の方のいろいろなカリキュラムという点からもとらえられる面が多いわけですけれども、やはり、子供を含めた家庭でのそういった教育的な役割というものも無視できないということは、これは事実であると私は思いますし、家庭家族との時間を大切にするということに対しましても、私は時短をすることによって大きな効果があると思うわけでございます。  また、事業者事業主の方の観点から見ましても、今まで猶予措置等もあって段階的に来たということもありますけれども、基本的に四十時間を守らない状態でないとやっていけないような経営というものは、もはや法律的にそういった経営というものはやってはいけない、成り立たないものであるというふうに私は考えるべきであるというふうに認識をしております。  まあいろいろとそれぞれ御努力もなさっているとは思いますけれども、冒頭申し上げましたとおり、ほかの国々ではそう難しいものと考えてはおりませんし、最低このぐらいのことはやっていこうということで、約束をして、段階を踏んできちっとやってきたことでございますので、私は何とかして早急に、現実にこの四十時間というものを実行の段階に移していくような施策をとらないといけないと思っているわけでございます。  そこで、大臣に、一言お願いといいますか、改めて、この時短、週四十時間労働というものの実施に対します大臣決意、そして熱意というものをお示しいただきたいと思います。
  4. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生時短についての御高説を拝聴をしていたわけでございますが、決意をというお話であります。  人間ひとしく二十四時間与えられているわけでありますが、今回のような時短の結果、労働に割く時間というものが少なくなれば、その他に割く時間というものが長くなる。したがいまして、当該本人意思のままに文化教養、娯楽、自己啓発、スポーツ、家族団らん等々に充実をした人生を送れるようになるというようなことが時短の大きな意義ではないか。多年にわたりまして、何とかこの週四十時間を定着させ、千八百労働時間に持ってまいりたいということで努力をしてまいった結果が、御提案申し上げておりますところの今度の時短促進法でございます。  先生のおっしゃることは、大体国民のこの共通認識意識を踏まえたものだ、私はこう存じておりますので、一生懸命、本法律成立をさせていただきまして、その後の運営のよろしきを得てまいりたい、かように存じているところであります。よろしくお願いをいたします。
  5. 大石秀政

    大石委員 現在、大変経済状況が厳しいということで、また、中小企業等については四十時間制の達成状況が大変に低いと見られておるのが一般的な見方でございます。そのときに、事業主を初めとして、この改正法をも含めまして、いろいろな知識的なものについて混乱がないような状態をつくることが大変に大切であると考えておりますけれども、この件についての当局のお考えをお聞きしたいと思います。
  6. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御指摘のございました、週四十時間制を初めとした労働時間短縮中小企業等定着を図っていく段階混乱のないようにという御指摘でございます。私ども中小企業における労働時間短縮のいろいろ難しい面等十分認識いたしておりまして、これまでも段階的に、その都度、理解や援助も申し上げながら進めてきたところでございます。  今般、この四月一日から週四十時間労働制が全面的に実施されるわけでございますが、御指摘ございましたように、ただいままでの実施状況達成状況から見て、なお少なからぬ事業場においてこの四十時間というものの実施が困難な場面も出てくるというふうに予想いたしております。  したがいまして、今回御提案させていただいております時短促進法改正によりまして二年間の指導期間を設けまして、その間、私ども中小企業方々に対しまして懇切丁寧な指導を精力的に、また計画的に進めまして、混乱のない形で週四十時間労働制定着していけるように万全を期していきたいというふうに考えております。
  7. 大石秀政

    大石委員 今回、この改正法指導期間というものを設定されたわけでございます。猶予期間の方は労働基準法で定められていたわけでございますけれども、その点で、今回あえて指導期間というものをこの改正法に設定したことについて御見解をいただきたいと思います。
  8. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 今回御提案させていただいております二年間の指導期間でございますが、この四月一日から実施されます週四十時間労働制、これを前提にしてみますと、ただいままでの中小企業におきます労働時間の実態、それからこの四月から、今まで四十四時間という法定の所定労働時間が四十時間になるわけでございまして、これら時間短縮に当たりまして、中小企業においてまだノウハウ等を持ち合わせておらない事業場、こういったところがたくさん出てくるのではないか。そういった事情を考慮いたしまして、私ども懇切丁寧な指導援助を申し上げながらこの週四十時間制というものを速やかに定着させていく必要がある。そういった意味で、指導に徹して早く定着を図りたいという意味でこの二年間の指導期間を提案させていただいておるところでございます。
  9. 大石秀政

    大石委員 この改正法により指導期間を設けられて、いろいろと四十時間労働制定着に向けた指導及び罰則を後ろに控えつつ、きめ細やかな援助とあわせていろいろな施策が必要と考えますけれども、具体的にどのような措置を講じることになるのか、端的にお答えをいただきたいと思います。
  10. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 この指導期間、ただいま申し上げましたような趣旨で設定しておりますので、一つは、この週四十時間労働制定着のために、中小企業方々が業務の遂行方法といったものを見直していただく、あるいは労働時間制度改善等について具体的なノウハウを提供させていただく、そういったための集団的な指導指導会と申しますか、あるいは説明会、これを計画的に実施し、その後もフォローアップをさせていただくというようなことが一つでございます。  また、労働時間短縮に伴いまして、いろいろな意味でコストがかかるという御指摘がございます。それらを克服するために事業効率化等を図っていただかなければなりませんので、中小企業方々が行う、四十時間制を目指して行います省力化投資あるいは労働時間制度改善等に対しまして、助成措置といたしまして、今回新たなそういった費用助成制度を設ける、これを側面的な援助策として活用してまいりたい、こういうことが二つ目でございます。  それから、中小企業団体の方に、傘下の会員企業に対しまして労働時間の状況がどうなっているか自主点検をしていただいて、その中で、やはり改善をしていかなければいかぬという中小企業の方に対しましては、改善指導団体を通して行っていただく。そういったことのための事業主団体の方へのいわば自主点検事業助成制度、こういうようなものを設けまして、これも全体の四十時間に向けての指導援助策一つの柱として活用させていただく。  そういったことを総合的に、計画的に進めて、この四十時間制を定着させていきたいと思っております。
  11. 大石秀政

    大石委員 そろそろ時間も近づいてまいりました。私といたしましては、冒頭申し上げましたとおり、本改正法の一番の重心といいますか、重きが、くれぐれも罰則の適用の回避ではなくて、現実時短定着化というものに置かれまして、それに資するような労働行政というものが今後ともなされまして、一日も早い真の四十時間というものが達成されますよう再度お願いを申し上げまして、質問とさせていただきます。どうもありがとうございました。
  12. 青山丘

    青山委員長 次に、河井克行君。
  13. 河井克行

    河井委員 自由民主党河井克行です。  昨年の秋の総選挙で初当選させていただきまして、きょうが衆議院で初めての質問でございます。それを労働委員会で、しかも、私が国会議員の中で最も尊敬し、敬愛している政治家であります岡野労働大臣に対してさせていただく機会をいただきましたことを深く感謝申し上げたいと思います。どうかよろしくお願い申し上げます。  本委員会に付託されております議案労働時間の短縮促進に関する議案でございますけれども、私は、これは日本人の生き方、そして大げさに言えば人生観を変え得る大変重要なステップだというふうに高く評価をさせていただいております。  一言で言いましたら、企業人としての日本人から、社会に参画する、そういう意味での社会人としての日本人をつくっていくという意味で、本当に重要なきっかけになっていくのじゃないかというふうに思いますけれども、その中でも特に、休暇をとりやすい環境整備を進めることによりまして、私は、日本の国がこれから直面しようとしております少子化の問題にもこの法案成立は大きく寄与するのじゃないかというふうに考えさせていただいております。  きょうは、その少子化のことにつきまして、少し大臣そして関係皆さん方の御答弁をいただきたいと思います。  一・四二ショックというのが日本じゅうを駆けめぐりまして、日本合計特殊出生率が一・四二だということが発表されました。また、一月には厚生省の方から日本の将来推計人口、今のままでいくと、百年後には総人口が六千万人台へと落ち込んでいってしまう。毎回、この厚生省推計は実際よりも上回っておりますので、私は、実態ははるかに厳しいものになっていく可能性があるというふうに思っておりますけれども、六千万人といいますと、日本国国家として存続することができない、日本民族の存続すら脅かされるぐらいの深刻な事態にこれから百年後なっていくのじゃないかというふうに指摘をされております。  まず、この少子化問題につきまして、大臣、どのような基本的な問題意識をお持ちで日々の行政にお取り組みになっていらっしゃるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  14. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生おっしゃる少子化でありますが、やはり労働人口というものが、今日のような少子化傾向がなお進みます場合には当然減ってまいる。したがって、これは日本経済発展のくびきとなるものであるというふうに受けとめまして、非常に大きな問題だ。労働行政のみではこれ、尽くすことができないわけでありますが、関係省庁と相提携し合いながら、何とか安心して子供さんが産める、安心してこれをはぐくみ、育てられる、そういうような社会環境、その中の労働環境、これをつくってまいりたい、こう存じております。
  15. 河井克行

    河井委員 その中でも、本当に、特に働いている女性が、今大臣おっしゃいましたように、お子さんをたくさん産みやすい環境をつくるという面で、私は、労働省の責任と課題は大変重いものがあるというふうに思っております。  それで、もちろん私は生まれておりませんでしたけれども戦前戦中は、産めよふやせよという国策がありまして、それに対する過度の反動といいましょうか、基本的に性とか家庭の問題だ、これは別に国としてはそう関係ない、少子化問題、確かに問題かもしれないけれども、もっと明確に国家意思として、この少子化対策を一生懸命推進するのだという具体的なことがまだまだ十分ではないのではないかなというふうに私は考えさせていただいております。  大臣、どうなのでしょう。国がどこまで関与できるかという問題もあるのですけれども、私は、もっと積極的にこの問題について、政府を挙げてお取り組みをいただくべきではないかと思いますけれども、その辺の個人的な私見も含めてお答えをいただければありがたいと思います。
  16. 岡野裕

    岡野国務大臣 河井先生の御意見と全く同じようにこの問題を考えているところであります。  これは、労働行政から少子化の問題にスポットを当てますと、先ほどお話をしましたようなことで、女性皆さんが、男子も含んで、家庭生活というものが、十分豊かである、ゆとりがあるというようなものにつくり上げていかなければいけないのではないか。  手法としては、あれこれいろいろあります。きょう御審議を賜っておりますところの勤務時間短縮ということは、先ほど大石委員お話をしましたように、家庭生活の方に時間をたくさん割けられるということに相なります。今までも、例えば労基法等生理休暇から始まりまして、産前産後の休暇、あるいは多胎児についてはその休暇期間を長くする、そうして、育児休業制度の発足。  それから今度、男女雇用機会均等法の中で、あるいは赤ちゃんがおなかにおいでになる女性労働者皆さんに、定期的な健康診断を受けられるように雇用者勤務等々を配慮しなければならない、その医師の診断に基づいて、その指示に従えるような便宜提供もしなければならない。  あるいは、深夜業というようなものを女性に開放をするということに相なりましたが、しかし今お話をしましたような皆さんの場合には、これの軽減を考えていく等々、私どもは、お産みくださいと言うわけにはまいりませんけれども、産みたいという気持ちのある女性の方あるいはその配偶者の方に、我々は環境づくりの面でひとつ御協力をしたいというのが、労働行政からしますところの本件についての構えであります。
  17. 河井克行

    河井委員 今労働省としては環境つくりを行っているというお答えだったのですけれども少子化原因には幾つかあると思います。  大きく分けて二つ原因があると言われていまして、一つは、未婚率が上昇してきているということ、二つ目は、結婚しているカップルの持つ子供の数がふえないということですけれども、この未婚率の上昇ということについて見ますと、私もあと十日ほどで三十四歳の誕生日を迎えさせていただくわけでございますけれども、私もまだシングルで、余り人のことは言えない立場なのですけれども、よくいろいろな先生方から御心配いただくのです。  これは、数字を見ますと、三十代前半の日本の男性の未婚率が今三七・三%ですから、私もそう特殊な方ではないのではないかなというふうに安心をしないわけでもないのですけれども、もっと問題なのは、女性が、二十歳代後半の未婚率が、かつて三割だったのが今五割、三十代前半が、一割から今倍の二割を超えてしまったということがありまして、ただこの未婚率、結婚紹介所を労働省がつくるなんということはなかなか難しいでしょうから、また違う機会にこの未婚率の問題についてはお尋ねしたいと思うのですけれども、あと、子供の数が実際ふえない。  数字を見ますと、本当に子供を持ちたいと思っているカップルが、数字では二・六人持ちたいというのですけれども一実際には二・二人しか持てていない。これは私は、一つ言えることは、日本の男性が余り家のことについて協力的ではないのじゃないかな。私も経験がないからこんな好き勝手を言うわけですけれども、説得力ないのですけれども、そういうふうなことを感じておるのです。  労働省日本じゅう事業所の中で一番その辺男性が協力的な職場だということを、労働省の男性職員の方にいつも私は教えていただくのですが、きょうわざわざ太田婦人局長さんにもお越しをいただいております。婦人局長さんの目から見て、労働省の職場の中は本当に働きやすい環境なのかどうかという点についてひとつ教えていただきたいのと、それから、男性が非協力的に今ならざるを得ない状況現実問題、企業社会ではあるわけですけれども、その辺のことについてのお答えをいただきたいと思います。
  18. 太田芳枝

    ○太田(芳)政府委員 まず最初の御質問労働省でございますけれども、私ども労働省で職をはんでいる女性軍は、ほとんど結婚しております。かつ、子供もいるのが圧倒的多数でございます。そういう意味で、うちの職場は極めて女性たちが家庭仕事を両立しやすい職場であるというふうに認識させていただいております。  それから、男性が子育てに対して非協力的である、またそれが非協力的にならざるを得ない状況ではないかという先生の御指摘でございますが、確かに、産業社会の中でそういう面があると思いますけれども、私どもといたしましては、男女がともに家庭責任を負い、子育てをしながら安心して働くことができるよう、特に、男性につきましては、職場中心の意識、ライフスタイルから、職場、地域、家庭でのバランスのとれたライフスタイルを実現していくこと、これが非常に重要であるというふうに考えておるわけでございます。  このため、男は仕事、女は家庭といった男女の固定的な役割分担意識を直していただくことはもちろんでございますが、それとともに、仕事と育児の両立が容易になるような基盤を整備すること、が重要な課題であるというふうに考えておりまして、労働省といたしましては、職業生活家庭生活との両立を支援するための対策、また、今御審議いただいております労働時間短縮の推進などを積極的に取り組んでいくということにしておるわけでございます。
  19. 河井克行

    河井委員 一つ具体的な数字をお示しいただきたいのですが、いわゆる育児休業制度というのがあります。これは、要するに職場とかいろいろな労働の現場の方から子育てを支援しようという政策だというふうに理解しておりますけれども、これは今どれぐらい消化を、もしできましたら男女別に数字を、消化していらっしゃるパーセンテージ、どれぐらいの人がこれを活用しているのか教えてください。
  20. 太田芳枝

    ○太田(芳)政府委員 育児休業制度でございますが、もう既に制度化しております。  ただ、数字がちょっと古い数字でございますが、子供を産んだ女性たちの約一割が育児休業をとっております。そのうち、とっておるのは、これは育児休業は男性も女性も、父親も母親もどちらでもとれるのでありますが、もう圧倒的に女性でございます。
  21. 河井克行

    河井委員 男性だけの数字はないですか。もしありましたら、お願いします。
  22. 太田芳枝

    ○太田(芳)政府委員 全体、まずは、育児休業取得者が約一割と申しました。これはそのとおりでございますが、そのうち九九・八%が女性でございまして、配偶者がとっておるのは〇・二%ということになっております。これは平成五年の調査でございます。
  23. 河井克行

    河井委員 とったのが一割で、その中の九九・八%が女性ということは、全部でいいますと、男性の〇・〇二%しかこの育児休業制度を使っていないということなんですね。  実は、きょう朝、自民党の党本部で、ちょうどきまうのこの私の質疑に関する勉強会がございまして、有名な大手化粧品会社の人事部長さんと、それから大手のスーパーチェーンの女性の幹部がいらっしゃって、こんなことをおっしゃっていました。育児休業制度を男性社員がとったらすぐわかるんだと。もう社内じゅうにあの人がとった、とったということがすぐうわさとして流れるというぐらいですから、ほとんどこれは活用されていないと思います。今せっかく労働時間の短縮促進していっても、もちろん人生にはいろんなステージがあるわけですから、それぞれのステージで自分の自由時間を活用されることは重要なんですけれども、私はやはり少子化問題ということが一番頭の中にあります。  そういう点からいいますと、どうして男性が育児休業制度を活用できないんでしょうか。もしお答えできる方がいらっしゃいましたら、実体験でも結構でございますので。何となく有形無形の圧力があるとかないとかいう話もございますけれども、その点ちょっと教えていただければと思います。
  24. 太田芳枝

    ○太田(芳)政府委員 私が子供を産みましたときにはまだ育児休業制度なかったものですから、実体験という形では申し上げられませんが、いろいろお聞きいたしました場合に、やはり今先生おっしゃったとおり、企業の中でとったというようなことをいろいろと言われるということはよく聞くところでございます。しかし、新しいことをやるには、まず最初の人がやってみなければだめなのでありまして、そういう勇気のある男性がいろいろな企業さんでふえていっていただくことが私は極めて重要ではないかというふうに思っております。  そして、もちろん一年間とれるわけでございますが、ある程度妻と夫が育児休業をシェアしていただくということが、数を重ねていくことによっておかしなことではなくなる、だんだん普通のことになっていくというような努力をそれぞれが積み重ねていくことも重要ではないかなというふうに思っております。
  25. 河井克行

    河井委員 一番心配なのは、男性が今でもとる割合が、もう〇・〇二%といいましたらほとんど誤差みたいな数字ですけれども、もっと心配なのは、女性も、最近は大変能力のある、そしてしっかりいい仕事をしていこうとどうしても上昇志向になっていきますと、今女性がとっている率すら私は将来伸び悩む、低くなってくる危険性すらあると思います。  実際とった人の話を聞きますと、この育児休業制度というのがちょっと硬直化しているんじゃないか。もっと弾力的に、例えば一日の中で育児休業の時間制度を、一時間とか二時間だけ会社にその日は働くとか、そういうふうに弾力的に私は変えていく必要が実際あるんじゃないかというふうに思うわけですけれどもお答えをもしできましたらいただきたいと思います。
  26. 太田芳枝

    ○太田(芳)政府委員 育児休業法の中には、育児休業をとってお休みいただいて育児に専念していただくという選択肢のほかに、勤務時間の短縮とかフレックスタイム制度とか、いろいろな形のことをお願いをしております。ですから、同時に、休業をとらないで、育児をしながら働き続けるということも非常に重要であると考えておりますので、私どもといたしましては、短時間勤務制度とかそれからフレックスタイム制度等々の導入が、より育児と絡んで進んでいくということは望ましいことであるというふうに考えております。
  27. 河井克行

    河井委員 まさにこれは岡野労働大臣が就任のごあいさつでおっしゃったことですけれども労働関係の自由化といいましょうか、いわゆる規制緩和、そして裁量労働制の導入などを含めて、もう少し自由でそして闊達なものをやっていかないといけないというふうに私も本当に考えております。  次に、企業の中のことなんですけれども、例えば企業の雇用関係、そしていろんな人事制度の中で、例えば単身赴任の制度とか、それから女性に対する結婚とかそして出産退職、こういうことについて、やはり日本社会ですから何となくあうんの呼吸で子供が産みたくても産めないという、法とかいうことじゃなくて、あうんの呼吸でそういうものが実際問題あるわけですけれども、その点について、労働省として、少子化対策という観点から、もう一度、私は、もっといろんな企業、団体含めて踏み込んだ要請なり指導なり、そういったことをするべきじゃないかというふうに思いますけれども、それについての基本的なお考え方、お尋ねできればと思います。
  28. 太田芳枝

    ○太田(芳)政府委員 均等法では、性によって雇用管理に差をつけてはいけないということをいろいろお願いしているわけでございまして、そういう点で、先生指摘の、例えば妊娠したら退職しなければいけないという慣行があるような企業があるというのがわかった場合には、それなりの指導は婦人少年室でさせていただいているところでございます。  ただ、単身赴任というのも言われましたけれども女性の単身赴任は、これはまた、でき得れば子供が育児にあるときはこれは避けていただいた方が多分よろしいんだと思いますけれども、女だからといって配置転換をしないということはこれまたいかがなものかという点もあるわけでございまして、ちょっと個人的なことを言わせていただきますと、労働省女性たちにも単身赴任をさせるわけでございまして、女性の単身赴任というのは極めてすてきな面もあるということが、私の個人的な体験として申し上げたいと思っております。
  29. 河井克行

    河井委員 先ほどの、いろんな労働関係そして労働法制の弾力化という中で、私は、育児期間の在宅勤務、これは別に育児休業制度とか育児休業時間をわざわざとらなくても、家でお子さんの面倒も見ながら仕事もするというふうな事柄で、私は、せっかく今岡野労働大臣が在任中に、郵政省と労働省がもっと協力をしていただいて、この問題については本当にしっかりとした方針をもっと今以上に示していただきたいというふうに思うのですけれども大臣、先ほどからずっと腕組みされて、答弁の機会がないようでございますので、ちょっと一言、この問題について御決意なりいただければありがたいと思います。
  30. 岡野裕

    岡野国務大臣 河井先生のおっしゃるのは、多分最後の、在宅勤務の普及、これの定着岡野にお聞きになられた、こう思っております。  在宅勤務関係は、もう実験的な段階を終えまして、試行的な段階に相なっております。郵政省、労働省、通産省、こういった皆さんが知恵を持ち合いましてこれの定着を図っていくということでありますので、河井委員におかれましても、いろいろと御助言等々賜ればまことに幸せであります。
  31. 河井克行

    河井委員 それから、少し具体的な話もお尋ねしたいのですけれども、今どのような、労働省として子育てと仕事の場の両立するような支援策を行っていらっしゃるのかということ、もう一度おさらいをする意味で、情報がありましたらお答えをいただきたいと思います。
  32. 太田芳枝

    ○太田(芳)政府委員 労働省におきましては、育児・介護休業法に基づきまして、育児休業制度定着し、円滑に運用されますよう、事業主労働者に対するきめ細かな相談、指導をまずやっております。それから、二つ目といたしまして、育児休業給付、それから職場復帰のための奨励金の支給などによりまして、育児休業を取得しやすく、職場復帰しやすい環境を整備していること。また、三つ目には、従業員にベビーシッターなどの育児費用を補助する事業主に対しまして助成金の支給などを行っておりまして、育児を行う労働者が働き続けやすい環境の整備をやっております。また、育児等のために退職した者に対する再就職の支援など、男女労働者の職業生活家庭生活の両立の支援のための施策として、幾つかのメニュー、今申し上げたようなメニューをそろえてやらせていただいているところでございます。
  33. 河井克行

    河井委員 私が調べただけでも、そして今局長さんから答弁いただいた分も入れて十数本、労働省としていわゆるいろんな家庭の中での育児を助ける施策をつくっていらっしゃる、そして実際に実行していらっしゃるわけですけれども、やはり、要は政治は結果でございまして、結果はどうかというと、残念ながら出生率が全然上がっていないどころか維持すらできていない。今一・四二ですけれども、ある評論家に言わせますと、早晩一・三八まで下がるのではないかなんということを言う人もいるのが今の現状なんです。ぜひこれは、もう本当に大臣お答えをいただかなくちゃいけないんですけれども、エンゼルプランというのが平成六年十二月に策定をされました。これは建設、文部、それから労働、厚生、四省の共同所管なんですね。しかしながら、私は、もうそろそろこのあたりで政府として少子化対策の担当大臣をお決めいただく時期がやってきているのじゃないかなと。  橋本行革は、私たち自由民主党が一生懸命お支えして、この六大改革は必ず数年以内に成功させなくちゃいけないと思っていますけれども、それが済んだ後の世界は、私は最大の日本の内政の問題は少子化問題だというふうに思います。これはもう政治がちゃんと決断して、担当の国務大臣ぐらい設置をするぐらいの本当に気迫を持っていただかないと、なかなか数字が上に上がることは難しいと思いますけれども、ぜひ大臣、総理にも、この少子化対策をもっと本腰を入れてやってくださいということを、大臣のお立場からまたおっしゃっていただければありがたいと思いますが、その辺についてお考えをお示しいただければと思います。
  34. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生おっしゃいました六年十二月のエンゼルプラン、これは、これまたお話のとおり四省庁タイアップというようなことででき上がったものでありますが、失言をいたしますと、橋本内閣総理大臣労働族、社会族だと、こういうふうに新聞等では言われております。そういう意味合いで、このエンゼルプランの実現に当たっては、橋本先生のいろいろな御意向が踏まえられてでき上がっている、こう聞いております。  したがいまして、今日におきましても、総理は本少子化問題についても関心が非常に大きいということだと思いますので、機会があります節等も利用いたしまして、先生の御意向、私の意向を総理にも伝えたい、かように存じております。
  35. 河井克行

    河井委員 もうそろそろ時間が参ろうとしております。  最後に一つだけお尋ねをしたいんですけれども、この少子化問題といいますのは、私はこの十数年来、日本社会労働行政をずっと拝見しておりまして、高齢化社会にどのように対応するかということについては、私はもう随分充足される水準まで高まってきたというふうに思っております。そろそろここら辺で、私は、高齢化に対する対応から少子化への対応へと大きく日本の国がかじ取りを変える時期にやってきていると思います。  これは、私たち国会議員ことっても一面しんどいことでありまして、高齢者の方は投票率が高うございまして、特定のいろいろな票をはっきり言いまして期待できるわけでありますけれども少子化問題、まだ生まれていないお子さんを対象にした問題ですから、これは票がないものですから、なかなか政治家としては難しいわけですけれども、私はあえて言わせていただきます。やはりこのあたりで政治家としてそういう決意をする時期にやってきているというふうに思います。  最後に大臣、そういう観点から、いま一度力強いこの問題についての御決意をいただければ幸いでございます。
  36. 岡野裕

    岡野国務大臣 私は今、高齢化の坂を上りつつあるものですから、やはり高齢一少子化ということで、一体的に施策を進めるべく努力をしてまいりました。  一方、少子化の方は一私、結婚して四十年、いまだに先生と全く同じで子供を持っておりませんものですから、関心がどうしても薄いのかもしれません。この心にむち打ちまして、先生の御意向に沿いまして一生懸命頑張ってまいりたいと思っております。  なお、先ほど、総理は労働族、社会族と申しましたが、労働分野における専門家、社会分野における専門家、こういうふうに御理解をいただいて、族を削除をしていただきたい、こう思いますので、よろしくお願いいたします。
  37. 河井克行

    河井委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
  38. 青山丘

    青山委員長 次に、鍵田節哉君
  39. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 新進党の鍵田でございます。  きょうは、週四十時間制が四月一日からいよいよ実施をされる、こういうことに関連をいたしまして、特に時間短縮の課題について重点的にお尋ねをいたしたいと思っております。  まず冒頭に、岡野大臣には、就任以来、大変労働行政に対しまして御理解をいただく、そういう御発言を拝聴いたしまして、大変敬意を表しておる次第でございます。また、労働省皆さんにも、常日ごろから全国各地で労働行政の円滑化に大変努力をしていただいているということにも敬意を表したいと思っております。  そこで、まず大臣にお尋ねをいたしたいわけでございますけれども労働時間といいますのは、一日の労働時間とか、また今、週の労働時間が課題になっておるわけでありますが、そのほか、月間の労働時間、年間の休日をどうするか、また超過勤務どもどのように管理をしていくのか、そういうことで、年間総労働時間という観点から労働時間を見ていく、いわゆる労働生活全般にわたっての時間短縮、こういうことが大切ではないかというふうに思っておるわけであります。  それらの決定につきましては、その国の勤労観でありますとか、生活文化、さらには国際経済とのかかわり、国の経済力、そういう要素が複合して決まってきておると思います。また、日本の場合には、個々人の技能が中心になって生産をしておった時代から、マスプロダクションとか、また大量生産化の時代に移行してまいりまして、労働の形態も大きく変わってきたわけでありますから、そういう中で労働時間のあり方も大きく変化をしてきたわけでございます。  また、労働というものの見方にしましても、物をつくるという、いわゆる創造するという観点から労働というものを見る場合と、そして、労働は苦汗的なものである、苦しいものであるというふうな見方をするのでは、また労働時間に対しての観念が変わってくるのではなかろうかというふうに思うわけでございます。  また、経済がグローバル化したりボーダーレス化していきますと、やはりその国の文化とか勤労観だけでは律し切れないということも御承知のとおりでございます。日米構造協議や日米欧の貿易摩擦、こういうものの大きな原因となって、ワーカホリックであるとか、働きバチだとかいうふうな批判をされた時期もございましたけれども、これもやはり当然のことだというふうに思っております。もう今や世界でも有数の経済大国ということに日本は置かれておるわけでございまして、そういう中にあって、必ずしも我々が国の経済力に見合ったゆとりや豊かさが実感できない、そういうことになっておりますのも、労働時間との関連が大きいのではなかろうかというふうに思っております。  そういう意味でも、一日も早く、ゆとり、豊かさを実感できる労働生活、こういうものが実現をするためには、千八百時間という目標を達成しなくてはならないのではなかろうか、今回はそのスタート台であるというふうにも思っておるわけでございます。  昭和六十三年の五月に発表されました経済計画でも、世界とともに生きる日本、平成四年までに年間総労働時間を千八百時間にする、こういうことが発表されたわけでございますし、また平成四年には、生活大国五か年計画が発表されまして、平成八年までに千八百時間を達成するということになっておるわけでございますけれども、しかし、この短縮は、残念ながら千八百時間にはまだ遠く達しておらないのが実情でございます。平成七年の経済計画、構造改革のための経済社会計画の中で、年間総労働時間千八百時間の達成、定着のために取り組みを進めるというふうになっておるわけでございます。時間短縮の問題は、この十年来、日本の最大の懸案の課題でございまして、もはやもう待ったなしという状況ではなかろうかと思っております。  そういうことで、大臣から、現在G7の中でも、日本労働時間がどのような位置づけになっておるのかと、また現在の認識なり、さらにはこれからの将来展望について、大臣としての御所見があればお聞かせをいただきたいと思っております。
  40. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生お話しになられました労働観というようなものを拝聴しておりました。  私は、戦後の日本経済の発展、これは我々の先輩のそういった物づくりを中心とするところの労働の結晶が今日を至らしめたものだ、こう思っております。したがいまして、物づくりというものの貴重さ、そしてそれに生きがいを感ずる、そしてまた、そこに身を投ずることによって人格ができる、人間がつくられるというプラスが非常に大きいものだと思っておりますけれども、そういう勤労観は、やはり長く働けばいいということではなくて、短時間の中に存分の意義を持つような労働の提供と喜びを味わっていただくということだと思います。  したがいまして、今日御提案申し上げているところの時短は精力的に進めていかなければならない。当省といたしましては、やはり週四十時間労働制というものの定着と、それから先生、残業がやはり多うございます、これをなるべく削減をしていくという努力と、それから諸外先進国に見る ような年次有給休暇等の完全処理、三本柱を中心にして時短千八百時間を目指してまいりたい。  先生お話しになりました世界的な進み方からしますと、もう三年ぐらい前の数字でありますが、アメリカは二千五時間、製造業であります、日本は千九百九十六時間、イギリスは千八百時間、フランスに至りましては千六百時間台だし、ドイツは千五百時間台だということでありますと、我々はまだ目標が遠くに見えている。何が何でもこれに追いついていかなければならない、こう思って、先ほどお話しをしましたような地道な努力を重ねていこう、こう思っておりますので、よろしくお願いをいたします。
  41. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 今大臣お答えになりましたように、労働時間を短縮していくというのは、所定の労働時間もさることながら、年休の完全取得ということがやはり大きな要素になっていくのではなかろうかというふうに思います。その意味で、今回その一番重要な所定労働時間の短縮となる週四十時間労働制が完全実施されるということは、大変意義深いことだと思います。またこれを混乱なくなし遂げなくてはならないのではなかろうかと思っております。  そこで、今回の週四十時間完全実施に至るまでの経過を振り返ってみますと、昭和六十一年に出された前川レポート日本経済構造改革として、我が国の長時間労働の問題が提起をされました。六十二年に改正された労基法でまず週四十時間労働制が決まりました。しかし、中小企業等に配慮をしまして、平成三年までの三年間は四十六時間、さらには平成六年までの三年間は四十四時間、そしてさらに零細企業に配慮しましての猶予期間などを置きまして、都合十年間という長い歳月を経過をして、そしてようやくこの完全四十時間制に移行することになったわけでございます。この間、時短促進法ども制定をいたしまして、中小企業にもいろいろな配慮をしていただいてまいったわけでございます。  四十時間制は、企業規模の大小を問わず完全に実施されるものでありますから、そのためには十分な中小企業に対する対応がなされなくてはならないと思います。それらの中小企業への諸施策がどのようになっておるのか、お答えをいただきたいと思います。
  42. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 先生指摘ありましたように、この週四十時間制につきましても、十年余、中小企業に配慮しつつ、その理解や協力が深まるように、周知、援助を申し上げながら進めてきたところでございます。  今般、四月一日から全面的に中小企業を含めまして四十時間制が実施されるに当たりまして、とりわけ中小企業の場合、大企業と大きく傾向が違いますのは、中小企業の場合は所定労働時間が長くて残業時間が短いと、大企業とちょうど逆の関係にございますので、そういった意味で、この週四十時間労働制中小企業定着させていくことが全体としての、あるいは御指摘ございました、年間の総実労働時間の短縮にも大きく貢献していくものと考えております。  したがいまして、この四月一日からは、御提案申し上げておりますように、この時短促進法を延長させていただき、さらに、この法律に基づきまして、懇切丁寧な指導を計画的に網羅的に展開しつつ、省力化投資やそういったものに向けました労働時間の改善についての助成制度を新設して、それらを効果的に活用しながら、まずこの四十時間制の中小企業への定着混乱なく進めていきたいと思っております。
  43. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 今お答えをいただいたわけでございますけれども労働基準の改定をする場合には、経営団体からいつも中小企業の存在ということを言われるわけでございます。確かに、日本の場合にはいわゆる経済の二重構造ということがよく言われてきたわけでございまして、私も中小企業の労使関係に長年携わってまいりましたのでそういう構造になっておることはよくわかっておるわけでありますけれども、もう既に十年間も猶予期間を置いて、その間に中小企業の近代化などを図るように、そういうことで私たちも取り組んでまいったわけでありますし、通産や労働省もそういう面で頑張っていただいてきたわけでございます。  では、いつまでもそのまま中小企業が十分な対応ができないということで延ばし延ばし行きますと、いつまでたってもこの時間短縮というのは前へ進まないわけでございまして、やはり中小企業の近代化ということを積極的に進めながら、そしてある時期には思い切って労働時間の短縮をする、そのことがまた中小企業の近代化に拍車をかける、こういうことにもなるのではなかろうかと思っております。  したがいまして、G7などにおきまして、この四十時間制というのがいつごろから出てきて、実施をされておるのか、また労働時間制度というものがどのように実施されておるのかということについて、資料があれば出していただきたいと思います。
  44. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 G7の主な国におきます労働時間制度状況でございますが、諸外国の週四十時間制の状況について見ますと、いずれの国も早い段階から四十時間制が何らかの形で実現をいたしております。アメリカでは、法律に基づきまして、法定労働時間が一週四十時間ということになっておりますし、フランスも同様、法律に基づきまして、一週三十九時間という定めをしているところでございます。  また、法律では直接週四十時間労働制を規定はしていない国もございます。例えばドイツがその例でございますが、これは横断的な労働協約によりまして週三十五時間が一般的となっておりますし、イギリスも同様の形で週四十時間が定められている状況でございます。
  45. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 ドイツなどの協約による時間短縮というのは、経営団体とそして労働組合の産別本部などが協約を結ぶということで、労働組合がある人もない人もこれは適用されるということでありますから、法律よりもむしろ進んでおるというふうに見てもいいのじゃないか。だから、法律はもう改定しないでそのまま放置してあるというふうな認識でいいのではなかろうかと思っております。  そのように、私は、二十年ぐらいにもう既になるのじゃないかと思いますが、もう四十時間制がG7諸国などでは実施をされておる。しかるに日本では、経営者側は、低賃金の国が周辺にも多いとか、また中小企業が多いとかいうふうなことを理由にしてこれらに抵抗するというのですか、いつも反対をしてきておるわけでございます。昭和三十年ぐらいから見ましても、GDPが実質で六倍ぐらいに既になっておる、こういうふうな実態から見ましても、日本の時間は非常に長いわけでございまして、そういう意味では、労働時間全般にわたってこれらの短縮のために頑張っていただきたい。特に、中小企業庁や通産省などと協調しながら、これらの対応策を十分立でていただきたいと思っております。  次に、長時間労働に関連しまして、過労死の問題がよく新聞紙上などをにぎわしました。過去のリセッションのときに雇用に手をつけてしまったというふうな経験から、景気がよくなっても余り人を入れない、そして残業とか休日出勤で賄うというふうなことがあったりしまして、非常に過労死なんかがあったわけでございますけれども、最近余りマスコミでも聞かれなくなったわけでありますが、平成七年、八年と二度にわたりましてこの認定基準の変更がございました。見直しがございました。それらのことも含めまして、過労死の問題が今、現状どうなっておるのかということをお尋ねしたいと思います。
  46. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 業務の過重な負担によりまして脳疾患あるいは心疾患という形であらわれました労災の業務上の問題につきまして、状況を御説明申し上げたいと思います。  この過労死と呼ばれるそういった件数について見ますと、平成六年度までは年間約三十件の件数で推移してきておりました。それで、平成七年に入りまして、御指摘ございましたように、私どもこういった問題についての認定基準を、実情に即して丁寧に見られるように改正をいたしました。そういうこともございまして、七十六件と増加をいたしたところでございます。
  47. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 今回の法案の中で、猶予措置の対象とされていた事業主に対して、最近の経済的な事情の著しい変化にかんがみ、二年間はきめ細かな指導援助などを行うように配慮しなければならない、こうなっておるわけでございますけれども一最近この言葉をめぐりましていろいろな新聞報道などもございます。指導期間だから、違反があったとしてもお目こぼしがあるんじゃなかろうか、翻せられないんじゃなかろうかというふうなことも何かうわさをされておるわけでございまして、この二年間の指導期間につきましては、どのようにこれを運用されていくのか。  今うわさに出ておりますようなそういうことで、マスコミなどの報道の一部によりますと、何か時間賃率も引き下げてもいいんだ、合理的な要件があれば引き下げてもいいんだとか、そういうふうなことも言われておりますし、それから、実質上の猶予延長ではないかというふうなことも言われておるわけでございまして、その指導期間という意味を具体的にひとつお教えをいただきたいと思います。
  48. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 まず、この四月一日から実施いたします週四十時間労働制について申し上げますと、従来適用が猶予されておりました中小企業についても、現行の労働基準法どおりこの四月一日から全面的に週四十時間労働制移行するものでございまして、いわゆる猶予措置の延長といったものではございません。  ただ、私ども調査いたしております、そういうものを通じて把握しております状況から見まして、中小企業の相当数がこの四十時間制までまだ達成していない、こういう状況があることも事実でございます。これらに対して早急に四十時間制を定着させていくという任務を、課題を私ども負うことになるわけでございまして、その際、いわゆる罰則だけを施策としてとらえていくと、いわば点を責めるような形にしかならないわけでございます。  私ども、この二年間に少なくとも膨大な数のある中小企業を含めて週休二日制に相当する四十時間制を一般的な働き方として定着に持っていくためにはそれでは足りないといりふりこ受けとめておりまして、そのために定着に必要な指導援助を積極的に行うという趣旨から、この時短促進法の中に懇切丁寧な指導援助を行うための二年間という指導期間を設けて、それを受けまして新たな助成制度も設けていく、こういう形をとらせていただいたところでございます。  したがいまして、この指導期間におきましても、もし重大、悪質、こういうふうに判断せざるを得ないケースがあれば、当然厳正に対応していくことになるわけでございますし、四十時間労働制にもし乗りおくれた事業場に対しましても、当然再三再四にわたる懇切丁寧な指導あるいはノウハウの提供を申し上げていく、こういうつもりでおります。     〔委員長退席、河上委員長代理着席〕
  49. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 今お答えいただきましたけれども、私たちも何も違反者に罰しろとか罰金を科せとかというふうなことを言っておるわけではございませんで、むしろこの意味がお目こぼしがあるんだというふうな解釈をされていることに問題があると思うのです。ですから、むしろ四十時間制の完全実施に向けて強力に指導するんだ、そういう意味にとらせていただいてよろしいのでしょうか。
  50. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御指摘のとおりでございまして、この指導期間、週四十時間制を日本社会の働き方として一般化するという任務を私ども負ったものとして、精力的に指導を重ねてまいりたいと思っております。
  51. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 それでは、ちょっとそれに関連してお尋ねしたいのですが、最近中小企業団体から「週四十時間労働制への移行に伴う賃金の取扱いについて」という文書が出回っておるようでございますけれども、このことについて御存じでしょうか。また、御存じだとしたら、これはどの団体から出ておるのか、お知らせいただきたい。
  52. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 ただいま御質問ありました件でございますが、日本商工会議所など中小企業関係の四団体から、この四月一日から実施になります週四十時間労働制との関係で、月給者に対する賃金の取り扱いについて問い合わせがございました。これに対しまして,労働省といたしましては、過去、商業などの特例措置対象事業場につきまして五十六年に週の労働時間を五十四時間から四十八時間に短縮した経緯がございますが、その際からとられている考え方に基づきまして、基本的にはこういった賃金、基本給の問題は労使間で話し合いで解決すべきものである、ただ、週四十時間労働制への移行に伴う賃金の改定に当たりまして、そういった労使間で十分話し合いを行っていただいて、時間当たり賃金が減少しないなど労働時間の変更との関係から見て合理性があるものであれば、これは労働基準法上特にそういったものについての問題とする規定はない、こういった回答を従来の考え方に基づいていたしたところでございます。  これらを踏まえまして、私ども承知しているところによれば、こういった各団体から傘下の会員企業に対しまして、まずは週四十時間労働制へこの四月から移行することが必要不可欠だというふうにした上で、これに伴う賃金の取り扱い方について一定の指示の文書が出されたというふうに承知いたしております。
  53. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 今、賃金水準については労使間で話し合いで解決するものだ、そしてそれについて合理性があるものであればよいというようなお答えをしておられるようでありますけれども、この文書で見ますと、割り増し賃金などの計算、時間賃率の出し方につきましては、週四十四時間であったときの時間で賃率を割り戻して、そして週四十時間のときにも適用していいのだというような意味の文章が書いてあります。  私たちは、労使関係に携わってこの時短を進めていくときには、賃金を下げないで時間短縮をする、こういう観点から、四十四時間が四十時間労働制になった場合には、四十時間で割り戻して割り増し賃金などを計算する、このように指導し、事実実施をしてきておるわけでございまして、そういう観点からいたしますと、これは賃率の引き下げになるというふうに一般的にとらえるわけでありますけれども、これが合理的なものだというふうに解釈をされているのでしょうか。
  54. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 賃金の改定等に当たりまして、特に労働時間の短縮と絡んだ場合の問題でございますが、私ども、労使間でまずは十分話し合うべきものであるといりのが大前提でございますが、そういった中で、時間率等が変わらないなど合理性が見られるものについては労働基準法上問題ではない、こう過去から申し上げているわけでございます。  この合理性があるという際の、どういう場合が合理性があるかという点につきましては、まずは時間率が変わらないということが大前提でございます。それから、そういった賃金の改定等が本当に必要やむを得ない範囲で行われていなくてはいかぬだろうと思います。それは、労使の間で十分話し合っていただいてそういったことが決められていくのだろうと思いますが、まずそういった基本的な考え方で、合理性があるかどうかというようなことが判断されていくものと受けとめております。
  55. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 今のお答えなのですけれども、やはり、四十時間労働制になった場合には四十時間で月給から割り戻して割り増し賃金を計算するというのが、法律の精神に照らしても正しいのではなかろうか。特に、労基法の第一条には、この法律で定める基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならないというふうになつ ておるわけでありまして、そのほかにもこの第二条で、労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものであるというふうにも書かれておるわけでございまして、労働組合がないような中小零細企業などでは、この対等性が保てるというふうに思われますでしょうか。  例えば、就業規則などが作成されて基準局に届けられておりますけれども、私たちがよく見るところでは、工場長であるとか、経営側であるということがもう一目瞭然であるというような人が代表として名前を連ねておる就業規則が出ておったり、さらには、就業規則などは同意ではなしに、ただ意見書を出したらいい、同意でなくてもいいという解釈をされておるわけでございまして、到底これでは対等性などというものは担保できないのではなかろうか。そういう環境下にあって、経営団体が今のような文書を広く流布されるということにつきましては、大変問題なのではなかろうかというふうに思うわけですけれども、その辺についてお答えをいただきたいと思います。
  56. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 今御指摘のございます、商工会議所等から出ております文書を拝見いたしますと、まずその最初に、こういった賃金の問題については労使間で決められるべきものであるということを第一に明記した上で、具体的なケース等を例を挙げておるようでございます。そのケースとして挙げている際にも、今までどおり四十四時間、四時間残業になりますが、そういった形でやらざるを得ないケースとか、あるいは逆に生産性のアップが図られて残業なしで済むケース、いろいろなケースを挙げているようでございます。例えば、残業なしで済むようになった場合には時間率もむしろ上げなくてはいけないのではないかというふうな指摘も同時にしているようでございまして、私どもそういったいろいろなケースを想定しておりますので、そういったことから見ても、労使の話し合いというものが大前提にあって、中小企業の置かれた実情に即したこれからの賃金体系というものが、本当にいい形がつくられるということがまず先決だろうというふうに受けとめております。  そういった中で本当に対等な話し合いが保証されるかという御指摘でございます。これは、もし、残業等がどうしても四十時間実施した後当分の間出るようなケース、当然三六協定等がなくてはいけないわけでございますので、これは労働者の過半数を代表する人との協定が組合がない場合でも必要になりますので、そういったものが適正な形でちゃんと行われているかどうかということを見るのが労働基準監督署本来の任務でございますので、そういったこととあわせて、きちんと真に労働者の過半数を代表する方との話し合いが行われているかどうかというのは、私どもも十分留意しながら見てまいりたいと思っております。     〔河上委員長代理退席、委員長着席〕
  57. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 労働者を代表する者という人が先ほど申し上げたようなことがしばしばあるわけでございまして、就業規則の届け出やまた三六協定などの届け出に関して、労働省としてしっかりこれをチェックしていただく、そういうことをぜひともお願いをしておきたい。  そして、例えば時短奨励金などで生産性が向上したというようなケースの場合に、例えば、先ほどの経営団体が出しておるような計算をしておって、生産性が向上したけれども、賃率を上げていくというようなことに関してはどのようなチェックができるのでしょうか。お答えいただきます。
  58. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 これから、膨大な数の中小企業方々に対して計画的に指導援助申し上げていきます。その際には、事業主団体の協力も得て、多数の事業所に参加していただくような説明会等も開催してまいります。そういった際に、もし四十時間制等について立ちおくれているところがあれば、今後どういうふうに進むのかというのも、これは私ども当然いろいろな形でフォローさせていただく、御相談にもあずかるという場面が非常にふえてくるかと思います。  そういった中で、こういった先生指摘のような問題についてもしいろいろな混乱があるとすれば、よく事情をお聞きしながら、私どもなりに指導できるところは十分指導や相談に乗ってまいりたいと思っております。
  59. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 ひとつ、ぜひともしっかりその辺は指導していただきたいと思っております。  それから、それに関連して、変形労働時間のことについても少しお聞きしたいのですけれども、同文書によりますと、何か、あたかも仕事の繁閑だけで簡単に変形労働時間ができるんだというふうに受け取れるような文書になっておると思うのですけれども、それらについて何か見解がございましたら、お聞きをしたいと思います。
  60. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御指摘のございました変形労働時間制でございますが、これにつきましては、平成五年の労働基準法改正の際に、従来の三カ月単位で行っておりました変形労働時間制を、週四十時間労働制実施しやすい環境をつくるために、年間を通じて業務の繁閑を見まして、例えば、ある程度忙しいときに休日がその際は少なくなって、暇な時期に休日がその分ふえるというような形で、年間通して平均して週四十時間が達成できるような形を労使の間で協定を結んでいただいてでき上がれば四十時間制はもちろん達成したことになります、こういう制度をつくったわけでございます。  これは実際、いろいろな、製造業も含めまして、そういった業務の繁閑というのはどうしても年間である程度の定型的な波があるようでございますので、これを効果的に活用していただければ中小企業の方においても四十時間制が実施しやすいのではないかということで、私ども周知に努めておるところでございます。  ただ、御指摘ございましたように、今般、この四月一日に向けて、変形労働時間制を使う際の要件等について一部緩和をいたしておりますが、これは、積雪寒冷地の建設業等についての使い方の緩和が一つと、それから、雨天等によりどうしても休まざるを得なくなった場合にそれを振りかえる際の問題でございますが、これは週一回の休日が確保されるのであれば週を越えてもいい、こういうふうにいたしたところでございます。これはあくまで雨天等の場合によるケースに限られるわけでございます。
  61. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 やはりこの問題も乱用されますと労働条件の低下につながるわけでございまして、今後とも、これらにつきましても、労使の対等性がなかなか守れないというふうな環境下で、労働省の方の指導をしっかりお願いをしたいというふうに思っております。  それから、時間短縮、本格的にこれから千八百時間の達成に向けて取り組んでいくわけでありますけれども、年休の消化ということにつきましては大変重要でございます。  先ほどの経営団体が出しております文書の中でも、西ドイツの例が引用されておりましたけれども、西ドイツなどではもう既に年休が六労働週提供されておりまして、それが一〇〇%消化をされておる。日本の場合にはまだ、初年度が六労働週ですか、そして最高二十日ということでありますけれども、そういう中でまだ取得率が五〇%台ということでございまして、付与日数も大きな格差がありますし、さらにはその消化率においても大きな格差があるわけでございまして、これらについても改善をしていかなくてはならないというふうに思います。  そういうことにも関連をいたしまして、割り増し賃金が非常に日本の場合には低いのではなかろうかというふうに思っております。特に、新規雇用に頼って仕事をこなしていくといたしますと、通常賃金の一・七倍ぐらいの人件費が必要になることは各種の資料からもわかるわけでございますけれども、いまだに通常の割り増し賃金につきましては二割五分、休日出勤でようやく三割五分、こうなっておるわけであります。実際には五割増しの範囲でこれは今後審議会で検討していくということになっておるわけでありますけれども、やはり労働省として、こういう問題について積極的に推進をしていくという姿勢が必要なのではなかろうか、そういう方向でひとつぜひとも出していただきたい。そういうことについて、ひとつ大臣のお考えをお聞きしたいなというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
  62. 岡野裕

    岡野国務大臣 鍵田先生おっしゃいますように、現行の時間外労働の割り増し賃金率、平常労働でありますれば百分の百二十五ということになって非常に長い期間を経過をしてまいりました。  今、私どもはまず時短定着させたいという強い意向を持っております。時短を一斉に当該企業等でやりますと、その直後には相当時間外労働が緊急的に必要性が出てぐるということもありますもので、割り増し率の変更につきまして、すぐにどうだというのはちょっと様子を見ないといけないのではないか、こう思いまして、中央労働基準審議会に、ひとつその他の、例えて言いますならば、先ほどお話しの裁量労働制でありますとか、あるいは一斉休憩時間の付与でありますとか、年次有給休暇全般の問題でありますとか、労働契約の締結期間は一カ年、こうなっているものは今の職場の中でいかがなものであろうかということで、審議を煩わせている真っ最中であります。なるべく早目に、今の割り増し賃金率の問題も含めまして結論を出していただきたい、その結論によりまして労働省としては施策に反映をさせたい、こう思っているところであります。
  63. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 時間短縮促進をしていく、そういう面から超過勤務を少なくする、また休日出勤も少なくする。そういう面から見ますと、割り増し率を引き上げるということは大変重要なんじゃなかろうか。そして、各国、先進国の割り増し率から見ましても、日本の割り増し率は大変低いわけであります。必ずしも国力が日本を上回っておるとか日本と同等であるところが割り増し率も高いということじゃなしに、開発途上国においても高い割り増し率を保持しておるところもあるわけでございますから、そういう面で、やはり日本の国力にふさわしい割り増し率に一日も早くしていただくようにぜひとも努力をしていただきたいと思っております。  そして、年休の付与日数の増加とか取得率の向上、こういうものにつきましては、ひとつ発想の転換をしてぜひともこれらに取り組んでいかなくてはならないのではなかろうか。こういうことで、付与日数の増加とか取得率の増加、こういうものについてどのような施策でこれを進めようとされておるのか、労働省のお考えをお聞きしたいと思います。
  64. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 まず年次有給休暇の付与日数の増加の問題でございますが、これは、先ほど労働大臣から答弁申し上げましたように、現在、労働基準法上のいろいろな問題につきまして、中央労働基準審議会の方で精力的に議論が行われているところでございます。その中の重要な項目として、年次有給休暇のあり方が議論の対象になっております。そういった中で御指摘のような問題につきましても労使の御意見が出されるかと思いますので、そういうものをできるだけ早く取りまとめていただく方向で対処してまいりたいと思っております。  それから、年次有給休暇の取得率の引き上げの問題でございますが、先ほども指摘ございましたように、我が国の勤労者の方の年次有給休暇の取得率はまだ五割台でございます。その取得促進を図ることが全体としての総実労働時間の短縮にもつながってまいるわけでございますので、私ども、平成七年にゆとり休暇推進要綱というものを作成いたしまして、パンフレット等にいたしまして、いろいろな企業、団体等に配布を行っているところでございます。  そういう中でも、年次有給休暇法律に基づきます、計画的に時期を決めて付与できるような制度等についても活用を図ってもらうとか、労使の間でいろいろ話し合っていただいて年次有給休暇がとりやすい職場環境を形成してもらうとか、そういったことを引き続き呼びかけを進めることによりまして、取得促進という効果を上げてまいりたいと思っております。
  65. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 年休の取得に関しまして、私の経験をちょっとお話をしたいと思うのですけれども、実は、西ドイツのEGメタルの皆さんと話し合いをしましたときに、日本は有給休暇というのは権利だというふうに受け取られておるようだ、事実、私たちも今まで休暇権とか休暇請求権とかいうふうな権利という言葉で休暇をよく語ってまいりました。しかしこれはちょっと違うんじゃないか、一般労働者にとってはこれは義務なんだ、せっかくこういう制度法律で決められる、いわゆる国の社会政策として決められておる、それを消化をするのは義務なんだという発想で語られたわけでございまして、私も、ああ、そういう見方があったのかと、何か目からうろこが落ちたような感じがしたわけでございます。  これはまあ、労働者もそういうことを自覚をして、しっかりこの年休の取得率を上げていくということをしなくてはならないと思いますけれども、ぜひとも労働省の方もそういう視点からこれを進めていただければありがたいなというように思っております。  先ほどから家庭論とか少子化の中での男性の役割とかいうふうなことがいろいろ言われたわけでございますけれども、私なんかは、もう今から少子化社会に何とかということで貢献できる年ではなくなってきてはおりますので余り言う資格はないわけでございますけれども、まだやはりおやじではございますので、おやじとしての威厳というのですか、そういうものはしっかり発揮できるような、そういう生活というんですか、労働時間の使い方、いわゆる年間の時間をそのように使っていきたい、こう思っておるわけでありますけれども、高度成長の中で随分父親の権威がなくなってきたというふうに思います。  亭主は丈夫で留守がいいというふうに言われた時期もありましたけれども、最近は何か、亭主は丈夫で留守番がいいというふうになってきておるようでございまして、子供さんから見ますと、何か一番尊敬できない存在だ。母親から、しっかり勉強せぬとお父ちゃんみたいになるで、こういうふうに言われてしまって、とにかく締まりがない。父親参観なんかが学校でありましても必ず母親が行っておるというようなことでございます。  総理府などの調査によりましても、父親が尊敬されるというのは、諸外国から見ましても日本は非常に低いところにあるということが出ておりまして、アメリカでは約八〇%近い人が父親が尊敬できる存在だということで第一位になっておるわけでありますが、日本では三割を切っておる。ドイツなどでも六割以上、これはトップで、頼りになる、これもやはり尊敬するに通じると思うのですけれども、そういう存在になっておるわけでありますけれども、やはり父親復権も果たさなくてはなりませんし、父親を返せ、そういう声も聞こえてきそうでございます。  そういう意味で、時間短縮をすることによって、ゆとり、豊かさ、そして家庭生活も復権できる、そういう労働時間のあり方を求め、ぜひとも労働省皆さんの御奮闘をお願いをし、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  66. 青山丘

    青山委員長 次に、城島正光君。
  67. 城島正光

    城島委員 今最後の方で、鍵田委員の方から労働時間短縮の意義といったようなことについて触れられましたけれども、私の方からは、労働時間の短縮についての全体的な動きというものについてまずお尋ねをしたいなというふうに思っております。  この十年、特に政府も、あの前川レポートを皮切りにと言った方がいいと思いますけれども労働時間短縮についての取り組みを積極的にやろうという動きが出てきたというふうに思います。  ちょうど十年前に前川レポートが出されましたけれども、ちょっと経過を追ってみましても、新前川レポートが昭和六十二年の四月に出ておりまして、この段階で、二〇〇〇年を一つの目標に千八百時間程度を目指すことが必要ではないかということがこの中でうたわれた。  さらに、その翌年の六十三年の五月でありますけれども経済計画、世界とともに生きる日本という中で、この計画期間中、すなわち六十三年度から平成四年度になるわけでありますけれども、この中で、週四十時間労働制の実現を目指して年間の総労働時間を、この期間中でありますから平成四年度になりますけれども、その間に千八百時間程度に向けてできる限り短縮するというのがこの目標である。  その次に、平成四年の六月には、経済計画、生活大国五か年計画ということで、これまた計画期間中に年間総労働時間千八百時間ということを達成することを目標とする、この目標年度が平成八年度ということになっております。  さらに、経済計画、構造改革のための経済社会計画、これは平成七年十二月に策定されたわけでありますけれども、これも年間総労働時間千八百時間の達成、定着を図る、そのための取り組みを進めるということでありました。  十年前からそういう労働時間短縮の流れというのはかなり強くなってきたわけでありますが、率直に申し上げて、この間、達成の目標というのでしょうか、それがかなりずれてきているのではないか、特にこの数年においてはこの短縮へのピッチが弱くというか遅くなってきているのではないかという問題意識を私自身は持っておりますが、全体的に、政府としては目標達成千八百時間ということについてどういう現状認識をお持ちなのか、まずお尋ねしたいというふうに思います。
  68. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 お尋ねのございました年間総労働時間でございますが、前川レポートが出ました当時の六十二年と現時点を比較いたしますと、昭和六十二年の年間の総実労働時間が二千百十一時間でございました。その後、平成八年は千九百十九時間でございまして、その間、約二百時間の減少を見ているところでございますが、なお、現時点で千八百時間という政策目標に対しましては、約百時間程度の開きが見られるところでございます。  こういった状況、私ども、さらに努力すべき大きい課題であるというふうに認識いたしておりまして、御指摘ございましたように、足踏み状態ではなかったかという点につきましては、とりわけ所定労働時間の減少が余り見られなくなっていったことが一つ原因でもございまして、そういった意味で、まずは、御提案させていただいております本時短促進法改正、これを活用いたしまして、中小企業への週四十時間労働制定着を図ること、これを基盤としながら、引き続き年次有給休暇の取得促進、長時間残業の削減等を図りまして、この千八百時間という目標、これの達成に少しでも近づき、定着を図っていけるように努力を重ねてまいりたいと思っております。
  69. 城島正光

    城島委員 今お答えにあったように、ここの特に数年間、所定内労働時間が完全に横ばいになっているということだろうと思います。  これについて、私は、長いスパンで日本労働時間短縮の動向をちょっとチェックをしてみたわけでありますけれども、特にこの三十年ぐらいの中に、一体、労働時間の短縮というのはどういうことによって達成されてきているのかということを見ていますと、どうも、一言で言うと、景気の変動に左右されるということによって労働時間の動向、例えば短縮でいけば、景気がよくなると短縮されていく、そういうことではないか。すなわち、労働力というか労働の需給調整、需給バランスの結果として労働時間が短くなる、あるいは場合によっては横ばいになる、あるいは時々労働時間が長くなる。例えば、それは、特に時間外労働の部分を含めてでありますけれども、ということではないかというふうに思われます。  すなわち、何か労働時間短縮というのが、いい意味でいう構造的あるいは制度的、政策的において労働時間を短縮していこう、そういう流れよりは、今申し上げたように、どちらかというと景気に左右される二次的な要素として、結果として労働時間が短くなっていく、そういうことであったのではないか。  したがって、その基本的な今の流れというのは、確かにこの前川レポート以降、政策的なものの要素は強くなってきてはいますけれども、この数年の横ばいというのは、やはりそういう要素がこの日本の中に依然として残っているということが本質的な問題ではないかなというふうに思っております。  そういう点でもう一度、先ほどの鍵田委員ではありませんが、何のために時短をやっていくのか、時短の本質的なねらいというのは一体どこにあるのかということをもう一度きちっと我々自身、政府はもとより全体として確認をしていく、あるいはそこを共有していくということがないと、目標年次が、景気が悪くなるとなかなか横ばいになって進まないということになってしまうのではないか。もう少し政策的、制度的なものに強力に変えていかないと、目標達成というのは現状から見るとかなり厳しい要素があるのではないかというふうに思っております。  時間短縮の基本的なねらいというのは、前川レポートの中にも触れられているわけでありますけれども、さらに勤労者という視点も入れてみると、時短というのをそういう視点からとらえてみますと、自由時間の拡大ということにとらえることができるのだろうと思います。そういう点でいうと、職業生活によるあるいは仕事そのものの拘束時間と、一人一人のまさしく自由時間のバランスを是正していこう、バランスをよりいい方向へ改善していこうということ、その必要性があるという観点に立ったのが時短への取り組みであったのではないかというふうに思います。  そういう点でいうと、長い間どちらかというと勤労者の生活というのが企業ということの中に、先ほども過労死の問題が出ましたけれども、過度に抱え込まれ過ぎていたのではないか、それは余り好ましいことではないという反省点があったのではないかというふうに思います。そういうことを含めて見ますと、今日的な時短取り組みというのは、できるだけ今よりは多くの自由時間を勤労者が持つということによって、いわゆるゆとりのある生活を築くというような能動的な選択の取り組みではないかというふうに思っておりますし、そのことによって生活の質そのものを充実させていくということがその基本にあるのではないかというふうに思います。  もう一点、特にこの九〇年代に入ってからのいわゆる経済のグローバル化、大競争時代という観点に立っても、ますますこの時短が私は必要になってきているのだろうというふうに思っております。それは、今申し上げましたように、時短をやることによって自由時間をふやす、そのことを通じて、いわゆる生涯学習、そういったことを通しながら自分の職業生活上の知識や技能といったものをさらに蓄積を図るあるいは磨きをかけるということによって、自分労働力としての価値を一気に高めていくというかさらに大きくしていく。そういうことでこの産業構造の変化あるいはグローバル経済における変化に対応した労働力としての自己を磨いていく。あるいは職場がそういう方向へ転換をしていくときに、きちっとその職場の変化に対応できるあるいは職場をかわるということをできるようにするという観点からも、どうしてもこの自由時間というのは拡大が必要ではないか。すなわち、自分労働力としての技能に磨きをかけるという観点からも非常に大事ではないかというふうに思うわけであります。  と同時に、これも先ほど触れておられましたけれども、自由時間の拡大ということは、今申し上げた職業生活の充実ということとともに、家庭生活あるいは市民生活の充実という観点からも極めて重要になってきているというふうに思っております。多くの人たちが、まさしく社会の再生産、日本社会の永続的な再生産の基盤というのは家庭にあるわけですから、その家庭の機能を強化していく、あるいはその役割を見直ししていくという観点からも、家庭生活の充実さらには地域社会改善に努めることができるようにするためにも、今申し上げたような自由時間の拡大が不可欠ではないかというふうに思います。  そういった時短、あるいは今申し上げた時短を通しての自由時間の拡大ということが今極めて重要な課題である、政策的な課題なんだという認識が、私はもっと徹底を図るあるいは共有化される必要がある。それが時短を進める上において一番必須であるという認識を持っているわけでありますけれども、この点について御見解を承りたいというふうに思います。
  70. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生冒頭にお話しになられました、時短促進をする、あるいはその足を引きとめるというのは、これは経済のその時期におけるところの好況、不況というようなものが大きな原因だろう、私も一部同感であります。同時に、時短を進めるのには生産性の向上、これが一番大きな柱になっているのではないか、こう思っております。先生も多分御同感だと思います。その生産性を向上させるために、自己啓発あるいはより付加価値の大きな労働を提供することができるような蓄積を図るためにもこの時短が必要だ、こういうことだと思います。  冒頭大石先生の話のときに同じことを言ったわけでありますが、みんな二十四時間であります。エンゲル係数と同じでありまして、食費に割くところの給料が多ければ多いほど上部構造に割くところの金が少なくなるというようなことと同じような意味合いで、勤務時間が短くなれば自己の自律的な判断によって文化教養自己啓発家族団らん、スポーツ、グルメその他等々に割けるわけであります。そういう意味合いで、時短を大いに進めて心のゆとりのある国民生活が送れるように、同時にまた、世界的な市場の中で日本の産業が立派に発展をし、国として、国民としての豊かな生活が送れるように、これが時短だと思っております。
  71. 城島正光

    城島委員 ぜひそういう観点で、国のこれからのあり方という観点からも、少なくとも目標とした千八百時間達成に向けて、政府を含めた強力なリーダーシップを期待をしたいというふうに思います。  そこで、政府の目標としております千八百時間、なかなかここ数年足踏み状態であるという現状でありますけれども、その千八百時間を構成している所定労働時間、それから年間の所定の休日、それから有給休暇状況、所定外労働時間、これについてのそれぞれの現状と評価についてお伺いしたいというふうに思います。
  72. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御指摘のございました千八百時間という総実労働時間を構成する要素といいますか、そういったものについての現状評価でございます。  まず、一日の所定労働時間、これは各企業労使協約等によりましてかなり幅を持った定め方をされておりますが、昭和六十二年と平成七年とを比較いたしますと、両方とも七時間四十六分という水準で変わってございません。  それから、年間の所定休日につきましては、昭和六十二年は八十・五日でございました。平成七年は二十・五日増加いたしましてちょうど百一日となっております。  それから、年次有給休暇の取得日数でございますが、昭和六十二年が平均七・六日でございました。平成七年には一・九日これより増加いたしまして九・五日となっております。したがいまして、取得率で見ますと六十二年が五〇・二%、平成七年では五五・二%となっております。  それから、所定外労働時間、超過勤務でございますが、昭和六十二年が百七十八時間でございました。この点が平成七年には四十一時間減少して百三十七時間というふうになっております。  こういった状況から、これからさらに労働時間短縮に向けて取り組まなければいかぬ課題というものがいろいろ含まれて、またそこから私どもの課題もうかがわれるわけでございますが、例えば年次有給休暇の取得率の向上等こういったまだ五〇%台にある状況等から見ましても、今後さらに努力を重ねなければならない課題かというふうに受けとめておるところでございます。
  73. 城島正光

    城島委員 今、最後の方に触れられましたけれども、目標達成の課題は、特に所定労働時間をいかに短縮していくか、さらにはなかなか取得率が依然として特に欧米先進国に比べて極めて低いと言われている年次有給休暇の水準を引き上げていくというのは特に大事なことであるというふうに思いますが、具体的にはどういう取り組みを考えられているのか、お尋ねをしたいと思います。
  74. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 ただいま御指摘のありました問題点の一つ所定労働時間の短縮でございますが、これにつきましては昭和六十二年と平成七年の水準が同じだ、この背景には、やはり大企業と逆に、中小企業の場合、所定労働時間が長くて残業時間が短いという構造があるかと思います。  こういったことにかんがみまして、御提案を申し上げているこの時短促進法改正を通じまして、四月一日かち実施される労働基準法の週四十時間労働制定着させていく、そのための指導、あるいは確実に定着させていくための省力化投資労働時間制度改善に対する助成措置の活用、こういったものを精力的に進めてまいりたいと考えております。  また、もう一点の年次有給休暇の取得促進でございますが、やはりとりわけ我が国の職場環境を考えますと、年次有給休暇をとりやすい環境をつくるということが非常に大事かと思っております。  このために私どもゆとり休暇推進要綱というようなものを学識経験者の方等の御意見を伺って作成いたしておりまして、そういったものを関係企業、関係事業主団体等にもパンフレットの形で広めておるわけでございますが、とりわけその中でも、計画的に年次有給休暇を付与していただく、これは労働基準法の定めに従いましてそういった特例が認められておりますので、そういった制度の活用、あるいは労使の方によるこういう年次有給休暇取得のためのスケジュール表の作成など職場におけるとりやすい環境づくり、こういうものを呼びかけてまいりたいというふうに考えております。
  75. 城島正光

    城島委員 相当強力にそういうところを推進していかないと、なかなか現実的には達成が難しい、あるいは前進が難しい課題であろうというふうに思っていますので、そういう点での一層の展開をぜひ要望しておきたいというふうに思います。  次に、現実的にさらに産業間で実は労働時間において大きな差があるのですね。ある面ではかなり労働時間短縮が進んでいる産業と、なかなか進んでない、依然としてかなり長時間労働になっているという産業があるわけであります。特にそういう面でいうと、産業間格差が大きいところでいいますと、運輸通信業あるいは建設業、鉱業といったところについては現状労働時間が長いわけでありますし、製造業の中では、連合等の調査においても、木材木製品、出版印刷というのが比較的長い分野であろうというふうに思います。  この分野についてどういう問題点があるというふうに把握されているのかをまずお尋ねしたいというふうに思います。
  76. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御指摘ございましたように、労働時間の状況、業種によってかなり差があることは事実でございます。運輸通信業、建設業につきましては、中小企業の構成率が高い、あるいは受注産業であるといったようなこと、とりわけ運輸通信業については規制緩和等もございまして、新規参入等競争が激しいことと物流サービスの高度化が求められていることもございまして、他産業と比較して労働時間がかなり長い状況にございます。  また、御指摘ございました製造業の中でも木材木製品、出版印刷等について長い傾向が見られるわけでございますが、これらにつきましても、やはり基本的には生産性の問題が背景にはあるのかというふうに私ども思っております。  とりわけ、こういった建設業、道路貨物運送業あるいはバス事業等を含めました、特に他産業と比べて労働時間が長い状況にある業種、それから 業界が一丸となって労働時間短縮に取り組んでいただくことが効果的と思われる業種、そういった業種につきましては、私ども関係の業種の労使の参加も得まして、業種別労働時間短縮推進事業を推進いたしているところでございます。そういった自主的な取り組みを支援するために、そういった事業の進め方を提示したものを作成いたしておりますので、そういうものを軸にいたしまして関係業界に働きかけてまいりたいというふうに思っております。  また、とりわけ中小企業あるいは受注型の産業におきましては、親企業あるいは発注元の発注方法とか納期、これに影響されてしまうケースも大変多いわけでございますので、適切な納期の設定といった、いわば取引慣行を適正なものにしていただく、こういうことにつきましても関係省庁と協力をしていきたいというふうに思っております。具体的には、例えば貨物自動車運送業につきましては、昨年の十一月に、労働時間短縮を図るために、運輸省と連名で主要な九十七の荷主団体に対しまして労働時間短縮というものに資していただくための適正な発注についての要請を行ったところでございます。  今後もこういったことを中心に、関係省庁との連携を密こしながら、労働時間短縮に向けて効果的な施策を考えてまいりたいと思っております。
  77. 城島正光

    城島委員 今答弁されたように、特に労働時間が長い産業は、中小企業ということもありますが、例えば建設、出版印刷というのは受注型産業ですよね。それから運輸なんかにおいても荷主があるわけでありまして、そういう荷主あるいは発注元あたりの理解、協力もないとなかなか進められない。  ですから、この産業において、その産業あるいはその企業の労使も懸命に努力している部分はあるのですけれども、おのずからある一定の限界があって、今申し上げたような発注元あるいは荷主等の理解、協力、さらにはトータルとしての取り組みというのがしたがって必要なわけなので、今お話があったように、特にこういう分野については労働省だけじゃなくて、しかもそういう業界もまたがっているわけなので、運輸省、建設省、通産省といったことも含めた取り組みがないとなかなか現実的には難しいというふうに思うのです。  今そういう取り組みを展開していくということでありましたけれども、もし具体的にそれぞれの所管の官庁で特にこの点について取り組みをされているのであればお尋ねをしたいというふうに思います。
  78. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御指摘のように、労働時間の短縮が立ちおくれている業種こつきまして、それを所管します関係省庁と連携をとっていくことが大変効果的であるというふうに考えております。  例えば貨物運送事業等につきまして、運輸省との間に私ども自動車運転者の労働条件改善等に関する連絡会議を設けておりまして、この場では、輸送の安全確保はもとよりでございますが、自動車運転者の労働時間等の労働条件についてもお互いに情報交換、協力の要請等も行ってきております。そういうものを受けまして、運輸省につきましては、ここのところ週四十時間制の実施というものを控えまして、事業者に対して業界団体等を通じた講演会の開催等をやってもらうというふうな協力もいただいておるところでございます。  それから、先ほど申し上げましたように、昨年の十一月、これは運輸省の自動車交通局長と私の連名で、荷主団体あてに、週四十時間労働制実施に伴う労働時間短縮が図られるよう、急な発注等を排除した計画的、合理的な発注についての配慮ということの要請を行ったり、そういうことの活動を行っているところでございます。  また、建設業についての御指摘もございましたが、建設業につきましても、こういった週四十時間制というものが一般化していくことを受けまして、平成四年度から既に四週八休ということに対応した発注のあり方というものを検討していただいておりまして、いわば公共工事につきましても週休二日制モデル工事、そういったものを実施していただくとか、そういった協力事業を進めさせてきていただいたところでございます。  とりわけ建設業におきましては、今後、技能を持った若い人たちの入職をふやしていく、そういう意味で、魅力ある職場をつくっていかなければいけないということが建設省の大きな関心事でもございまして、そういった意味で、この週四十時間労働制の円滑な移行ということについて、連絡会議等も設けながらさらに協力をしてまいりたいと思っております。  それから、受注産業、さらには中小企業のように、発注元との関係労働時間短縮が困難だというような業種があるわけでございますが、これにつきましても、例えば、労働、通産両省の間で共管しております中小企業労働力確保法に基づきまして、労働時間短縮のためのいろいろな環境整備に対しまして、これを含めた助成制度を活用するとか、あるいは中小企業等基盤強化税制の中にそういった労働時間短縮のための環境整備も対象に含めるなどの事業を進めております。  同時に、中小企業庁の方におきましては、下請企業の振興基準をつくっておりますが、その中に労働時間短縮のための発注方法の改善の必要性をうたっていただいているところでございまして、そういった施策。さらには、中小企業団体、四団体ございますが、私ども、そういったところとこの問題について話し合うための場を設けておりますが、そういった場には中小企業庁もオブザーバーとして参加してもらって労働時間短縮に向けた協議をしている、そういう体制を整えているところでございます。
  79. 城島正光

    城島委員 特に中小企業や今申し上げた産業というのはどうしても、時間短縮は特にそうでありますけれども、ある面でそのしわ寄せみたいなことがその産業に来てしまう、あるいは中小に来る。大手企業が時短をやればやるほど、ある面ではそういったものの受け皿になつている部分もあるわけなので、ぜひそういう点で、一層そういう配慮をされた、全体として時短が進むようなことを推進していっていただきたいというふうに思います。  今説明あったような点については、かなり現実的に時短の成果として結びついているというふうに理解してよろしいのでしょうか。
  80. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 私ども、こういった中小企業庁との緊密な連絡を進めるようになりました一つのきっかけは、労働時間短縮促進法、現在改正法案として御審議願っておるものでございますが、これが制定されまして、これに基づきまして労働時間短縮推進計画を閣議決定させていただいたわけでございます。  そういったものが契機ともなりまして、関係省庁とそういった緊密な連携協力を進めてきておるわけでございますが、例えば、そういったことから見まして、この時短促進法が制定されました平成四年当時、千九百七十二時間という総実労働時間であったものが、その後、平成八年では千九百十九時間というところまで減少をいたしてきております。  そういったことに象徴されるように、各業種につきましても、真剣な取り組みが各末端レベルでも見られ始めてきているというふうに私ども認識をいたしているところでございます。
  81. 城島正光

    城島委員 ぜひそういうことを推進していっていただきたいわけでありますけれども現実に、今回のこの臨時措置法の一部を改正する法律案、こういうところにつながってきた経緯も、背景といいますか、これは、やはり現実論としてはなかなか中小企業等においては週四十時間制に一気に移行するのは難しいという企業がかなり比率があるということが、一つ大きな背景となって出てきているわけですね。  そうすると、最初の問題提起ではありませんけれども、やはりよほど腹を据えてやらないと、目標を立てても現実にひもといてみるとなかなか進んでいない、そこへ対してまた何らかの対応をせざるを得ないというようなことの繰り返しになる可能性もあるわけであります。  今回この改正案が通過した後、恐らく新しい時短推進計画を策定されるということになるのではないかと思いますけれども、こういった現状がなかなか進まないということに対して、この問題を踏まえた中で今後の新しい推進計画をもし立てられるとすれば、どういう視点を中心に置いた計画になるのかをお尋ねしたいというふうに思います。
  82. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御指摘のように、御提案いたしております時短促進法改正法成立させていただきますと、この法律に基づきまして新たな労働時間短縮推進計画を策定いたすことになります。  その際には、やはり現時点での、最新時点での労働時間の動向、労働時間短縮に関します今までの取り組みの成果とそこから出てまいります問題点、こういうものを十分踏まえた新しい計画にいたす所存でございますが、とりわけ、先ほど来御指摘ございましたように、時間短縮の難しい業種で、そこにそれらの業種としての構造的な問題もあるわけでございますので、関係省庁との施策の連携、こういったものも十分念頭に置いた内容にいたしていきたいというふうに思っております。  それで そういった角度から新しい時短推進計画を策定いたしまして、労使を初めとする関係者の方々がこういった問題に自主的に取り組んでいただけるような枠組みというものを考えてまいりたいというふうに思っております。
  83. 城島正光

    城島委員 計画は単なる計画であるというようなことにならないようにしないと、最初に申し上げたような今までの国全体の計画も、結局景気ですとかあるいは経済状況ですとかいうことに最も大きな影響を受けて、計画がずるずる、達成年度もなかなか目標どおりいかない。まして、今からの問題はよほど何かやらないと難しい業種がかなりあるということでありますから、単なる計画ということだけでは、本当にまた計画のための計画に終わりかねないという危惧を持っております。  そういう点で、やはり、現実性というか、本当に実現性が、可能性が、可能性というか、その実現に向けてよほど着実にいきそうだというようなことが感じられるようなものにしていく必要があるし、また、具体的にそういうことが見えるようにしていく必要があるというふうに思います。  それで、そのためこも、これま連合で調査したのがあるわけでありますけれども労働時間の達成について、特にこの場合は労働組合というのがある場合に限定される話でありますけれども労働時間達成の実情を見ますと、労使のこういった時間短縮に向けての検討委員会が設置されているかどうか、さらに、設置された中で労使間の一つの目標が労使間であるのかどうかというようなことが、実は労働時間短縮においてかなり大きな影響を与えているというのがデータとして出ているわけであります。  すなわち、きちっと労使の時間短縮に向けての検討委員会ないしそういう委員会がある、まして、その中で労使間の目標の合意があるといったところについてはかなり実際時間短縮が進んでいる。その逆に、そういう専門委員会みたいなものがない、ないしは、あっても、例えば目標がなかなか労使で合意されていないというところは労働時間の進捗がうまくいっていないという関連性があるわけであります。したがって、いろいろな点で、よほど腹を据えてやらなければいかぬ部分があるわけであります。  同時に、今おっしゃったような国の時間短縮に向けての目標あるいは計画はもとより、産業間、あるいは、組合があるところは当然でありますけれども労働組合がないところにおいても、従業員の意向をきちっと受けるような、ないし、従業員がきちっとそれぞれのレベルにおける計画段階で参加ができる、あるいは参加するということが達成に向けての一つの大きな要素になるのではないかというふうに思っているわけでありまして、その点が今申し上げたように重要な要素だというふうに思っておりますが、その点についての御見解を承って質問を終わりたいというふうに思います。
  84. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生、冒頭、前川リポート以来十年がたったじゃないか、テンポが遅いじゃないか、こういうお話であります。そのぐらいに困難な問題だと私は意識をいたしております。いま一つ、私は、ある企業体で、勤務時間短縮についてずっと労働組合側と団体交渉の衝にあって、かつ実現をしてまいった経験を持っております。それらを踏まえても、先生おっしゃるとおり、その職場において勤務時間短縮が行われるか否か、労使がお互いに知恵を出し合って、生産性も向上する仕方はどうだというようなことを具体的に話し合いながら一つずつ実現をしていく、これがあるべき姿だ、こう思っております。  したがいまして、先ほど来お話しの時短推進計画、これも中央労働基準審議会で、つまり、三者構成の、労働団体も入ったところで御審議をいただいて決まるわけでありますが、全般的には、それぞれの職場における労働団体との話し合い、これも積極的に進められるような、これからの我々の指導でありますとかPRでありますとか周知でありますとかというものをやってまいりたい、こう思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  85. 城島正光

    城島委員 今大臣おっしゃいましたけれども、その言葉を信じたいと思うのですけれども、単に労使の自主的な検討にゆだねるということじゃなくて、そういうことが大事だということについて、ぜひ強力な政府のリーダーシップを要請しておきたい。  そういうのがない限り、なかなか、単に労使、あるいは組合がないところにおいても、従業員の話し合いということにすべてをゆだねると、先ほども申し上げたように、これから本番を迎える難しい業種が多いわけなので、現実的に時短が進むということがなかなか考えづらい要素もありますから、その点についても強力な政府のリーダーシップを要請して、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  86. 青山丘

    青山委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十三分休憩      ————◇—————     午後一時五十分開議
  87. 青山丘

    青山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。今田保典君。
  88. 今田保典

    今田委員 大変御苦労さまでございます。今ほど御紹介いただきましたように、私、新進党の今田保典でございます。  私は、ただいまより質問します内容について、その前段で、私のこれまでの経験を申し上げまして、具体的に後ほど御質問に入らせていただきます。  私は、昨年の十月までは労働組合の委員長をしておりまして、交通産業の組合関係をやっていた関係で、交通産業の労働時間のあり方について、これから具体的に御質問をさせていただきます。  その前段で、私どもも一生懸命これまで取り組んできまして、労働省の大変な御配慮によりまして、育児休業法について制定をされまして、今活用をされておるわけであります。ただこれは、活用はされておりますけれども、まだまだ充実をしなければならない点が数多くあるわけでありまして、この点について、まず最初に御質問をさせていただきたい、このように思っております。  現在、少子化あるいは高齢化、核家族、非常に進んでおります。私の住んでいる山形県内におきましても、四十坪から五十坪近くあるうちを持ちながらも、一緒に住むというケースが非常に少なくなっております。いわゆる核家族化がどんどんと進んでおります。さらに、共稼ぎの方が非常にふえてきております。  そんな中で、何とか生活をしようというようなことで、今一生懸命若者が働きながらやっておるわけでありますけれども、先ほど申し上げましたように、今の育児休業制度をもっと充実してほしいという声が数多く出されておりますので、二点について御質問を申し上げたいと思います。  まず、平成七年四月一日から、一歳未満の子を養育するために、育児休業制度を利用して、雇用保険の被保険者に対しまして、雇用保険から休業前賃金の二五%額を育児休業制度手当として支給される仕組みになっておりますけれども、これは非常に、いかにも金額的に少ないのではないかというふうに思っています。  したがいまして、雇用保険で支給される率があるわけでありますので、この雇用保険並みに支給してもいいのではないかという声が数多くあるわけでありまして、この点について、まず一点御質問を申し上げたいと思います。
  89. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 ただいま先生指摘の育児休業給付についてお答え申し上げます。  この制度が発足いたしまして、先生指摘のように、利用者の方も着実にふえておりまして、平成七年度で見ますと、この給付を受けられた方が約十一万人ほどおられます。金額的には約百二十億円というような実績になっているところでございます。  これにつきまして、ただいま御指摘の金額の問題でございますが、確かに、女性の職場進出の進展、あるいは少子化の急速な進行が見込まれる中で、仕事と育児の両立を支え、働く方々が安心して子供を産み育て、働き続けることができるようにする、こういう観点が非常に重要であるということから、雇用保険制度の枠組みの中で育児休業の給付制度、これが発足しているところでございます。これにつきましては、御承知のように、ほうっておきますと、その方が失業せざるを得ない、育児のために失業する、それを防止する、こういう観点で、雇用保険制度の中の枠組みで行っているわけでございます。  したがいまして、この保険制度の中で、失業した方の保険給付と、それから失業しないで育児休業給付を受けながら雇用を継続する、そういう方の給付とのバランス論というものがございまして、そういう観点からいきますと、失業した場合の方につきましては、大体賃金の七〇%ぐらいで、給付日数が百日でございます。したがって、そういう意味からいきますと、育児休業給付につきましては、大体一年間ということで雇用を継続する。こういうことになると給付期間が三倍になるものですから、そうしますと支給額は三分の一。こんな大まかな計算をいたしますと、大体その給付率が休業前賃金の二五%。こんな積算で制度を運営しているところでございます。  これにつきましての水準について、御指摘のような御議論もあるわけでございますが、現在、私どもとしては、雇用保険制度の運用と、それから育児休業についての政策目的、そういうものを考えながら、この水準で制度が発足している、こういうことでございます。
  90. 今田保典

    今田委員 いずれにしろ、今の若い方々は共稼ぎが非常に多くなっているわけでありますので、これからもひとつ、そういう方々のために、あるいは少子化がさらに進むようなことのないように、いろいろな面で御検討いただければ大変ありがたい、このように思っています。  次に、育児休業で、あるいは介護休業で休まれた。しかし、今世の中は非常に急速に物事が進んでおります。したがいまして、職場復帰する際に、なかなかもとの職場に行ってすぐなじめないという場面が数多く出てくるわけでありまして、そういった労働者に対してのいわゆる職場復帰プログラム、そういったものを金額的に実施するようにということで、各企業側に、事業主に、労働省で御指導をしているようでありますけれども、この活用の状況について、まずお伺いをしたいと思います。
  91. 太田芳枝

    ○太田(芳)政府委員 先生指摘の職場復帰プログラムでございますけれども、これはやはり、労働者が安心して育児休業または介護休業を取得して、スムーズな職場復帰ができるようにということで導入いたしました職場復帰プログラム奨励金でございますが、導入いたしましたのが平成四年度でございます。それ以降着実に実績が伸びてきておりまして、平成七年度の支給件数は二千二百九十三件というふうになっているところでございます。
  92. 今田保典

    今田委員 今、二千二百九十三件の件数があるということでありますけれども、私から言わせれば、いかにも少ない件数ではないかなというふうに思います。したがいまして、まだまだ事業主がそういった理解をしていない面があるのではないかというふうに思います。  そこで、お伺いをしたいのですが、この二千二百九十三件のうち、どういった職業あるいは職場がそういったケースを利用しているのか。その点、おわかりでしたらお伺いをしたいと思います。
  93. 太田芳枝

    ○太田(芳)政府委員 手元に、どんな職場かという具体的な資料を持ち合わせておりませんので今お答えすることができませんが、これは育児休業をとった方がほとんどでございますので女性がほとんどでございます。ということから類推いたしますと、やはり女性の多い職場ということになりますので、女性たちがたくさん働いている産業、企業での活用が進んでいるというふうに思われます。
  94. 今田保典

    今田委員 いずれにしろ、そういう制度があるわけでありますので、各事業主に対しましてこれからも徹底してPR方お願いを申し上げたい、このように思うわけであります。  先ほど私、住まいは山形というふうに申し上げました。山形だけではないのだろうと思いますけれども、特に地方の事業主はそういった点はまだ十分理解をしていないというふうに私は感じます。したがって、私が休業すれば職場に帰れないという思いを強くしている労働者も数多くおるやに聞いております。それはなぜかといいますと、やはり職場環境改善がこういった形でまだきちっとなっていないということもありましてそういう心境になっているのではないかというふうに思うわけでありまして、やはりこれからはこういったものを、せっかく制度ができたわけでありますので、各事業主に対しまして十分に徹底されるようにお願いを申し上げたいというふうに思います。  以上、休業制度についての御質問を終わらせていただきます。  次に、私先ほど申し上げましたように、交通運輸産業に携わってきた関係もありまして、これからは交通運輸産業の労働者の労働時間の問題について御質問をさせていただきます。  一つは、自動車運送事業への平成九年度重点というような考え方で御質問させていただきますけれども、トラック、バス、タクシー、いわゆる自動車運送業の多くの労働者は多く課題を抱えております。特に、規制緩和が今取りざたされておるわけでありまして、そのことによりまして、労働者の労働時間が実質延びているのではないかというふうに言わざるを得ないデータが出ておるわけであります。  具体的に申し上げますと、トラックは、平成六年から七年度にかけて、本来ならば時間短縮の方向に進むべきではないかと思うのですが、実際は一カ月当たり六時間ほど平均的に延びている、こういう状況でございまして、全産業の労働時間から見れば年間で三百時間を超える労働時間の長さがあるわけでありまして、これはいかにも、ほかの産業から見れば長い労働を強いられているというような状況でございます。特に大型貨物運転をされる運転者については、年間で二千六百から七百時間の労働時間をしておられるわけでありまして、いわゆる全産業の平均の、先ほど申し上げましたように、トラックにおかれましては四百時間を超える労働時間を強いられている、こういう状況でございます。さらに、バス関係につきましては、これまた、トラックよりも若干少ないわけでありますけれども、三百時間を超える、全産業の労働者よりも多く働いておる状況でございますし、タクシーにおかれましてもそういう状況である。  こういう状況をかんがみた場合、本当に労働省として時間短縮に向けた指導をやっているのかど うかというふうにお伺いをしたいわけでありますが、そういった状況であるということをお含みの上、いろいろとこれから御質問申し上げ、各事業主に対して御指導をいただければ大変ありがたい、このように思っておるわけであります。いずれにしろ、そういったことで、非常に今運転業務に携わっている方の労働時間は長い、このことを十分認識していただきたい、このように思っておるところであります。そこで、週四十時間制への円滑的な移行について御質問をさせていただきたいわけであります。いよいよことしの四月から週四十時間へ移行するようにこれまで指導してきたわけでありますけれども、先ほど申し上げましたトラック、バス、タクシー関係の企業に対してどんな指導をこれまでやってきたのか、その点についてまず一点御質問をさせていただきます。
  95. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 自動車運送事業関係の今までの労働時間短縮に向けての指導状況でございますが、私ども、こういったトラック、バス、ハイヤー、タクシー等、自動車運送事業関係につきましては、労働時間等につきまして特別の改善基準を関係の労使の方も入っていただいた場で定めまして、労働大臣の告示という形でそれをお示しいたしております。それに基づきまして、私ども、全国の労働基準監督署がそれに沿った形で労働時間管理が行われるように改善指導にまず努めてきたところでございます。  先生から御指摘ございましたように、そういう状況の中でも、やはりトラック産業を初め物流サービス等についていろいろサービスの高度化等が求められている中、大変長時間労働が問題になっていることも私ども認識をいたしております。そこの改善に向けまして、ただいま御審議願っております時短促進法等も活用いたしまして、労働時間を短縮した中小企業事業主に対しまして、省力化投資や新規の雇い入れを応援するということも兼ねまして、労働時間短縮の特別奨励金を支給をいたしてきております。既にトラック産業を含む運輸関係で千八百件を超える利用が進んできているところでございます。  また、労働時間の短縮実施計画を、同業種で複数の事業主の方が共同で時間短縮実施計画を策定して、その傘下の中小企業団体労働時間短縮へ向けて努力するといったような場合に、やはりこれも団体に対しましてそういった際の費用の助成を行っておりまして、全国でこれを利用している団体、百三十五団体に達しておりますが、そのうちの二十一団体がトラック関係で利用していただいているところでございます。  また、バス事業につきましても、やはり長時間労働の問題があること、これは私ども認識しているところでございまして、これにつきましては、バス事業労働時間短縮指針というガイドラインを策定いたしまして、日本バス協会等とも連携をとりながら、傘下の会員の方に説明会等を通じてそのガイドラインの周知等に努めてきているところでございます。  今後とも、こういった施策の一層の活用を図ってまいりたいと思っております。
  96. 今田保典

    今田委員 今ほどお聞かせをいただいたわけでありますけれども、実は過般、労働行政サイドからのこういう発言がありまして、大変問題になりました。二年間は指導期間で未達成事業者への罰則はない、こういう労働行政サイドから業界への発言があったわけですね。そのことによって、業界としては、何も罰則がないんだから何もやらなくてもいいんだなというような考え方で、この二年間、業者は、企業側は、何もやってこないという企業も実際あったやに聞いております。こういう軽率な発言はやめていただきたい。やはり決めた以上は、きちっと業者で短縮なら短縮をやるように、労働省側で十分指導をしていただきたい、このように思っています。  そういった発言があったものについては後ほど訂正はされましたけれども、しかし訂正はされても、そういう考え方でやってきた企業もあるわけでありまして、こういったことはやはり十分お考えの上発言をしていただきたい、このように思っておるわけであります。そこで、今まで二年間の猶予期間を与えてきたわけでありますけれども、さらに二年間を延長するんだということはないのかどうか、お聞きをしたいと思います。
  97. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 週四十時間労働制の問題でございますが、今まで猶予されてきておりました自動車、貨物その他自動車運送事業関係につきましても、この四月一日から労働基準法の規定どおり週四十時間制が実施されるものでございまして、ただいま御指摘のありました猶予の延長といったようなものではございません。御指摘のありましたように、この点について一部新聞報道等で誤解を受けるような報道があったことは事実でございますが、私ども、むしろ週四十時間制をどう定着させていくかというための指導のあり方について論議を地方労働基準審議会等にもお願いしていたところ、そういった趣旨の報道が出たわけでございまして、この四月一日から全面的に実施される週四十時間制を一日も早く定着させていく、むしろそういった観点から、今回時短促進法改正についても御審議をお願いし、懇切丁寧な指導それから援助を精力的に行って、この四十時間制というものを確実に定着させていくように努力をいたしたいというふうに考えております。
  98. 今田保典

    今田委員 ぜひひとつそういうことでお願いをしたいと思います。  次に、労働基準法の見直しについての御提議をいろいろと申し上げたいわけでありますけれども、御案内のように、自動車でもって商売する職場に今女性の方が非常にふえつつあります。ありますが、後ほど労働省から男女均等法の関係について法案として出されるやに聞いておりますが、特にタクシー関係については、女性方々にぜひおいでをいただいて一緒に働いていただきたいというようなことで、全国的に今広まっておるわけでありますが、ただ残念ながら、女性は深夜はできないということもありまして、日中に女性ドライバーをどうしても集中をせざるを得ない、こういうことでありまして、そういった形で今採用している業者が非常にふえてきております。  まことに女性方々にそういった形で働いていただくことは大変結構でもあるし、これからもどんどんとそういった形でやっていただければ大変ありがたいというふうに私自身も思うわけでありますが、ただ残念ながら、先ほど言ったように、女性の方は日中型になっております関係で、男性の方が深夜に追い込まれている、こういう状況が今続いております。したがって職場の中でそういったトラブルがふえてきております。タクシー関係方々から言わせれば、早く男女均等法というものを出していただいて成立をさせていただいて、そして男女とも平等な勤務の中で働けるような環境づくりをしていただきたいというような声が非常に多く出てきております。  そういったことでありますが、しかし、やはり母性保護という面についても考えなければならないわけでありますので、もしそういった場面があるとすれば、母性保護を中心にした法定的なものですね、きっちりと自動車の運転従事者に合ったような考え方をつくっていただいて、そしてより多くの女性方々にこういった職場に入っていただきたいという声が非常に多くあるわけでありまして、この点についてどう労働省の方でお考えなのかお聞かせをいただきたい、このように思います。
  99. 太田芳枝

    ○太田(芳)政府委員 働く女性たちが性別により差別されることなくその能力を十分に発揮できる雇用環境を整備するということは非常に重要な課題であると考えているわけでございます。  そして女性労働者の母性保護につきましては、現行法上、既に労働基準法におきまして産前産後の休業制度、それから妊産婦の請求があった場合の時間外休日、深夜労働の禁止、さらには軽易な業務への転換等についての規定を設けておりまして、その遵守、履行の徹底を図っているところでございます。  また、男女雇用機会均等法におきましては、妊産婦が健康診査を受けるための時間の確保とか、健康診査に基づいてお医者様の指導事項を守ることができるための措置というものを事業主努力義務として現在規定しているわけでございますが、今回提出させていただきました均等法等の改正法案におきましては、その母性保護の一層の充実を図るということからこれらの措置を義務規定にするとともに、労働基準法における多胎妊娠、これは双子以上の妊娠でございますが、それの産前休業を、現在十週間なのでございますけれども、これを十四週に改めることとしたところでございます。  今後とも母性の保護が十分に図られるよう事業主に徹底するとともに、特に法案成立後は改正法の趣旨及び内容の周知を図りまして、円滑な施行に努めてまいりたいと思っております。  それから、先生先ほどおっしゃいました、一つ余分なことかもしれませんが、現在もハイヤー、タクシーの運転手さんに限っては本人が申し出ることによって深夜業をすることができるという規定にはなっております。ただ、これはハイヤーとタクシーだけでございます。
  100. 今田保典

    今田委員 いずれにしろ、母性保護の面では、やはり自動車の運転従事者まちょっとよその職場と違う観点から物事を考えていただきたいという面も実はあるわけでありまして、この点についてもぜひ御理解の上いろいろとお考えをいただきたい、このように思っております。  さらに、そういったことでありますけれども、ただやはりだれでも生活をするためにお金が欲しいということでありますが、深夜を働き、あるいは残業をしながら働く場面が数多くこれから出てくるわけでありまして、しかし無制限に時間外をやるということは人間の体として無理なわけでありまして、この上限の規制についてもっといろいろと研究をして検討していただければ大変ありがたいと思いますし、賃金の時間外の割り増し率の引き上げについてもいろいろと御検討いただいて、そして改善基準の事項についてきちっと法制化をしていただきたい、このようなことでありますけれども、この点について御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  101. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 時間外労働の問題でございますが、この長時間の残業の削減を図っていくことが総実労働時間の短縮に向けて大変大事な課題であるということを私どもも十分承知しているつもりでございます。  先生からは、時間外労働につきまして、上限規制あるいは割り増し賃金率の引き上げについて御提案をいただきましたが、この時間外労働、確かに長時間残業については削減を図っていかなければならないと思っております。この景気変動に対応してある程度の残業時間を上限にさせるということが雇用調整の機能にもつながっておりまして、そういった意味ではある程度の弾力性を付与していかなければならない、こういった側面もございます。そういったことで、私ども、現在労使協定、三六協定によりましてその上限について労使でいろいろ御設定をいただく、私どもは時間外労働協定の適正化指針によりましてその上限が適正なものになるよう指導していく、そういった仕組みを進めておりまして、そういったシステムが現在かなり定着を見てきているところでございます。  また、割り増し賃金率につきましても、目下、この四月一日から週四十時間制が実施されますと、当面は臨時緊急的に時間外労働がふえる、こういう現象もあらわれるわけでございまして、現段階、そういった意味からも、その割り増し率の引き上げについては慎重な検討を要するのではないかというふうに思っておるところでございます。  ただ、この時間外労働の長時間に及ぶものをできるだけ削減していくという必要性は十分認識しておりますので、現在、中央労働基準審議会でこの労働基準法のいろいろな課題について精力的に審議をお願いしておりますが、その中のテーマの一つとして、時間外労働、休日労働のあり方も取り上げていただいております。私ども、できるだけ速やかに審議会の方で結論を出していただき、その結果を踏まえて適切に対処してまいりたいと思っておるところでございます。
  102. 今田保典

    今田委員 どうもありがとうございました。  次に、重点的に職種ごとの労働時間について御質問をさせていただきますが、まずは私は、大切なことは、こういう実態現実として、現場で一生懸命こういった形で働いているんだということを御理解していただきたいということも含めまして質問をさせていただきたいわけです。  特にトラック産業、先ほども申し上げましたけれども、非常に長時間労働を強いられているということでございます。ほかの産業の平均よりも年間で三百八十から四百時間、労働時間を多く働いておる、さらに年間の賃金の格差もあるわけでありまして、そういった関係で若い方々からはこの職場は敬遠されているという状況でございます。やはり物流の観点から考えれば非常に大事な部分であるわけでありまして、何とか若い方々にも来ていただけるような、いわゆる魅力のある職場にしなければならないという思いをしておるわけであります。  そういった観点から、労働時間の短縮に向けていろいろと助成を、制度としてあるわけでありますけれども、その助成を利用している実態は今どのような状況になっているのか、お伺いをしたいと思います。
  103. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 お答え申し上げます。  その前に、大変失礼をいたしました。先ほどお尋ねのあった件についてもう一つ、現在私どもが自動車運送事業について労働時間を適正なものにするために改善基準を設けて改善指導作業を進めている、その改善基準についての法制化についてお尋ねのあった点についてお答えをあれしまして、大変恐縮でございます。  その点につきましては、確かに昭和六十年当時、私ども、学識者にお願いしています研究会の報告におきましても、法制化の是非を含めてこういった業界の特性に応じた労働時間の規制のあり方を検討すべきである、こういう報告をいただきました。それに沿いまして、中央労働基準審議会で検討をしていただきましたが、当面、労働大臣の告示によって行っていくことが適当である旨の結論をいただきまして、現在、それに沿って、この改善基準に基づく指導作業を進めておるところでございます。  当面、そういったことで法制化に向けてのコンセンサスは得られていない状況でございますが、週四十時間制に対応してこの改善基準についても四月一日から改正をすることにいたしておりますので、今後、そういったことも受けて一層徹底するように私ども努力をしたいと思っております。  それかり、トラック産業の労働時間短縮に向けての私どもの助成等の状況でございますが、トラック産業、このトラック関係団体からは、かなり熱心に労働時間の短縮に取り組んでいただいておるところでございます。御指摘ございましたように、物流サービスにつきまして、いろいろ時間指定あるいは納品の代行業務等非常に複雑な付加価値の高いサービスの展開を余儀なくされている面もありまして、優秀な若い人材を確保するという観点から熱心に取り組んでいただいている実情がございます。  私ども、個別の事業主の方がこの省力化投資あるいは新たな雇い入れ等を行いまして労働時間短縮に結びつけた場合に支給いたします奨励金につきましては、トラック業を含む運輸交通業で現在まで千八百六件の支給を行ってきております。  また、事業主団体の方が労働時間短縮実施計画を策定いたしまして、それに基づいて傘下の事業主が共同で労働時間短縮に取り組んでいく場合に、そういったセミナーとかいろいろ模範的な事業場状況を見たりという費用がかかるわけでございますが、そういった際の費用の助成につきまして、トラック関係団体で全国で二十一団体がこの制度の御利用をいただいているところでございます。  私ども、こういったトラック関係団体とも連携をとりながら、労働時間短縮のための支援をなお一層積極的に進めていく考えでおります。
  104. 今田保典

    今田委員 どうもありがとうございました。  ただ、やはりトラックの運転従事者の短縮をするためには、やはり何といっても荷主の協力を得ないとなかなかできないだろうというふうに私は思っておるわけでありまして、やはり労働省としても、運輸省と十分連携をとってこの点について御指導いただければ大変ありがたい、このように思っております。何といっても荷主の協力というのは、先ほど言ったように非常に大切な部分であります。  私のお聞きするところによれば、荷主の場所に行って物を運ぼうあるいは積もうというような準備をしていたところ、三時間も四時間も待たせられたというケースが今非常に多くなっております。ということは、その荷主の企業の労働者の時間短縮を図ろうということで、内部でその運送業者に、本来ならば荷主がやらなければならない仕事を運輸業者にやらせておるという場面があるのですね。  規制緩和が今非常に進んでいる中で、そういったものを、本来ならば荷主がやらなければならないというものがあっても、仕事が欲しいということもありまして我慢をして働いておるという状況が今非常にふえてきております。それがある以上は、トラックに携わる運転の方は時間の短縮というのはなかなかできないということになるわけでありまして、この件について、やはり労働省と運輸省と十分連携をとっていただいてその改善に向けて努力をしていただきたい、このように思うわけであります。  もしこの件について見解があればお答えをいただいて、なければ、ぜひひとつ対処方をお願い申し上げたいというふうに思います。     〔委員長退席、森(英)委員長代理着席〕
  105. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 このトラックを中心といたしました物流関係の業界におきます労働時間短縮、御指摘のような問題意識でもって関係省庁との連携をとりながら進めていくことが大変重要であるというふうに考えております。  私ども、昨年十一月に運輸省の自動車交通局長と私の連名で、荷主団体あてにこの週四十時間労働制実施に向けて、急なあるいは無理な発注等を排除した計画的、合理的な発注を行うようにという要請を行いまじた。また、運輸省からは、こういったことで業界団体に対しまして、講演会等を通じて労働時間の短縮の必要性、また週四十時間労働制実施の周知も図っていただいておるところでございます。  私ども、運輸省と労働省の間に自動車運転手の労働条件改善等に関する連絡会議を設けておりますので、またそういった場を活用いたしまして、労働時間の短縮に向けてさらなる協議、努力を重ねてまいりたいと思っております。
  106. 今田保典

    今田委員 トラック関係については、先ほども申し上げましたけれども、やはり荷主との関係というものは、トラックを持っている業者から言わせれば非常に大切にしなければならないわけであります。荷主に対して、そんなことはできませんよ、何とか勘弁してくれと言いたい面が非常に多くあるわけですけれども仕事をいただきたいということから我慢をして今やっているわけであります。ぜひひとつその点について御考慮の上、御配慮いただければ大変ありがたい、このように思っています。  次に、バス産業の時短促進についてでございますが、労働省は九三年の十二月にバス事業労働時間短縮指針というものを提示いたしました。時間短縮促進について重要な指針にもかかわらず、業界への周知、指導が徹底されておらなかったのではないかというふうに言わざるを得ない状況に今なっておるわけでありまして、やはり指針というものをつくった以上はその方向に向けてやってもらわなければ大変困るわけであります。その点について、まずこれまで取り組んできたその労働時間指針について、取り組んできた内容について、もし御見解があればお聞かせをいただきたいというふうに思います。
  107. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御指摘のありましたように、バス事業につきましても長時間労働改善していくという観点から、私どもバス事業労働時間短縮指針というものを作成いたしまして、この四十時間に向けてあるいはバス運転手の方の年間総労働時間二千時間以下に向けてという目標を掲げまして、そのために近づくべき具体的な措置につきましてガイドラインを策定いたしたところでございます。  先ほど先生からも実情のお話ございましたが、残念ながらそういった目標どおりに進んでいないことは御指摘のとおりでございます。私どもこの指針につきましては、バス協会の協力も得て傘下会員の方に対します説明会等を通じてその周知を進めているところでございますが、この四月一日から週四十時間制というガイドラインでも掲げていた大きな目標が目の前に迫ってまいりますので、これの定着を図っていくためにもなお一層関係の協会の努力を得て、こういった労働時間の短縮のための指針の趣旨が十分徹底するように努力をいたしたいと思っております。
  108. 今田保典

    今田委員 実態はそういうことだということでぜひひとつ御理解の上、認識の上、これからも御指導いただければ大変ありがたいというふうに思っています。  先ほどもトラック関係でお伺いをしたわけでありますけれども、バス関係についても時短促進法に基づいて支援措置がとられておるわけでありますが、そういう助成制度を活用しているバス関係の協会について、もしおわかりでしたらお知らせをいただきたいというふうに思います。
  109. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 労働時間短縮のために、事業主団体の方が労働時間短縮実施計画を作成して、傘下の事業主ともどもそういったことに向けて努力する場合の助成制度等を設けております。全国で百三十五団体ございまして、バス関係が幾つ入っているかちょっと集計を早急にいたしたいと思いますが、私ども承知している限りでは、例えば福島県のバス協会がそういった取り組みを行っておるという事例等を把握いたしております。ほかのバス協会等につきましても、こういった制度は十分これからも周知いたしまして、その利用なり、それから新たに設けられます四十時間定着のための助成制度につきましても、そういったバス協会等を通じて、傘下の事業主の方に内容等の周知が十分行われるように努力してまいりたいと思っております。
  110. 今田保典

    今田委員 せっかくある制度でございますので、絵にかいたぼたもちにならないように、行政として十分指導監督の徹底を図っていただきたいというふうに思っているところであります。  実は私は、冒頭こ申し上げましたように組合の役員をしておって、いろいろな点について取り組みをさせていただいたのですが、特にバス関係についての、拘束時間を労働時間にどういう形でとらえるかという問題が非常に現場で問題になっております。いわゆる待ち時間を純真な労働時間としてとらえるのか、あるいは企業によっては、あるいは組合によっては、待ち時間の二分の一は労働時間に見ますよ、あるいは三〇%を労働時間に見ますよ、そういうやり方をやってそれぞれ労働協約を結んでいる、そういう実態でございます。  したがって、実際にバス産業の労働時間の把握については、十分にその中身を分析しないとなかなか理解をしにくい場面があります。その点で私は、常日ごろ思っているわけでありますけれども、やはり待ち時間のとらえ方について、この部分については労働時間として見るべきである、この部分についてはある一定の休憩として見てもいいのではないかという、一つ労働省としての見解を持ってもいいのではないかというふうに思っています。そういうことでありますけれども、これはそれぞれの労使関係で歴史的な問題を抱えている関係で一概にはなかなか言えませんけれども、やはりある程度年数をかけて労働省としての見解というものを打ち出して指導していくべきではないのかというふうに思っているわけであります。この点について、急で大変申しわけないのですが、御見解をお聞かせいただければありがたいというように思います。
  111. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 このバス事業を含めまして、先ほど申し上げましたように自動車運送事業関係については、労働時間の適正な姿を実現していくために改善基準を設けて指導に当たっているわけでございます。改善基準では拘束時間、運転時間、休息時間等について一定の基準を定めて指導に当たっているわけでございますので、そういった過程で先生指摘のような実情はまず十分把握させていただきます。先生からも御指摘ありましたように、長年の労使間の積み重ねの中でいろいろな慣行なり、あるいは労働時間のどの部分をどう見ていくかというようなことの慣行が確立されてきている経緯もあるのだろうと思います。その辺は労使間で進められてきたものだけに慎重に対応する必要があろうかと思いますが、まずはそういった実情の把握については、私どもも気を配ってまいりたいと思っております。
  112. 今田保典

    今田委員 そういう実態がある、まことにバス関係の企業というのは、昭和十八年から二十一年に創立あるいは企業が発足したという歴史の非常に長い企業が多いわけでありまして、しかもその企業の労働組合は、ほとんどが昭和二十一年に結成をされて、その間、今日までいろいろとその部分についても長い歴史をかけて、時間をかけて論議をしてきたたぐいのものでございますので、なかなかこうだというものを限定できない状況にあるということは十分承知しておりますけれども、ぜひひとつ、いろいろと御研究をいただいて、御指導いただければ大変ありがたい、このように思っています。  次に、タクシー運転者の長時間の関係についてであります。  トラック、バスに劣らぬタクシーの労働時間について、労働時間は非常に長うございます。これまた全産業の男子平均よりも年間二百五十時間も長いということでございまして、ほとんどが一日十六時間ぎりぎりの拘束時間を利用して、拘束を利用して働いているという状況でございまして、まことに長い職場であります。  その原因は、一つは、オール歩合制をとっている企業が圧倒的に多い。したがって、水揚げが上がらないと自分の給料がもらえない、少なくなる。こういうこともありまして、目いっぱい働くという場面が数多くあります。  さらに、最近ではリース制をとっているタクシー会社が非常にふえてきております。御案内のように、京都のあるタクシー会社は完全にリース制をとって働いておるわけでありますが、そういう状況でございますので、労働時間を短縮するということがなかなかできない、こういう職場環境にあるわけであります。  この点を労働省としてどうとらえておるのかお聞かせをいただきたい、こういうように思います。
  113. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御指摘のように、タクシー運転者の方の賃金制度を過去調査したことがございます。これは昭和五十九年当時になるわけでございますが、その時点でも、歩合給のみという事業場が約一割ございまして、固定給と歩合給を併用しているところが九一%、それからリース制等の利益配分型の賃金制度を採用しているところが一・六%。その後も恐らく、このタクシー業界のいろいろな構造変化の中で、こういった状況先生指摘のような問題、なお出ているのかなというふうに受けとめております。  それで、この賃金制度が走行意欲を極端に刺激する、こういうような賃金制度の場合、やはり労働時間短縮ということの推進の機運をそぐことにもつながるわけでございまして、私ども、先ほど申し上げました自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の中では、極端に走行を刺激する歩合給制度を、非連続的な形である段階から次の段階に急激に歩合の比率が上がるという、私ども累進歩合制度と呼んでおりますが、そういった累進歩合制度は廃止するようにということを定めて、指導に当たっております。また同時に、歩合給と固定給を合わせて通常の賃金の六割以上が保障されるようにという指導も行っているところでございます。  こういった指導と、それから労働時間短縮のための私どもの呼びかけとが相まって、自主的にタクシー運転者の方々労働時間短縮あるいは賃金制度改善等に向かっていくようにいたしたいと思っております。タクシー業界も、大変厳しい状況に置かれていることは承知しておりますが、そういった中でも、こういった基本的な点については積極的に呼びかけを継続してまいりたいと思っております。
  114. 今田保典

    今田委員 今までのお話では、こういったオール歩合というのは本来ならばすべきではないというようなことでありますけれども、いろいろな事情でやむを得ない部分もある、したがって、歩合の度合いをこの程度にというようなお話があったわけであります。しかし、私から言わせれば、以前よりもさらに進んでおるのです、この点については。以前は、一般の企業と同じように、A型、B型というハイヤー独特の賃金制度があるわけでありますが、いわゆるA型賃金の制度をとっておった企業が非常に苦しい経営状態に陥って、そして歩合制あるいはオール歩合制を取り入れたという会社が非常に今ふえてきております。  しかし、そうはいっても、これは働く労働者から言わせればなかなか大変なことでございまして、この点はぜひひとついろいろと研究をしていただきまして、何とか一般の企業並みの賃金体系というものに労働省として指導すべきではないのかなというふうに思っておるところであります。これもまた、バスと同じようにお互いに企業あるいは労働者の間の歴史的なものがあるわけでありまして、なかなか思うようにはいかない面もあろうかと思いますけれども、ぜひひとつ働く側の立場に立っていろいろと御検討いただければ大変ありがたい、このように思っておるところであります。  そこで、タクシーについても、バスと同じように拘束時間が非常に長うございます。その拘束時間のとらえ方について、これまたバスとはまた違う形でとらえている企業あるいは労働者が多いわけでありまして、この点についてどのような把握をしておられるか、お聞きをしたいと思います。
  115. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 先ほど来申し上げております自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の中でも、タクシーにつきましては一つの項目、分野として取り上げまして、拘束時間、休息時間、それから運転時間等について一定の基準を定めておるところでございます。  そういった中で、この労働時間に当たる部分等の扱いにつきましては、各事業場、労使間でいろいろな取り決めなり慣行がつくられておるわけでございまして、これは私どもが現段階で労使間でずっと長年決めてこられたことについて、直ちに、これはこうかというようなことを申し上げる状況にはございませんが、こういった改善基準の徹底を指導する際に、そういった実情は十分第一線の監督署も見ながらしてまいるわけでございますので、私ども、まずはそういった情報の収集は心がけてまいりたいと思っております。
  116. 今田保典

    今田委員 これはタクシー関係についても、時短に向けた時短促進法の助成というものも当然利用されている企業があろうかと思いますけれども、タクシー関係についてはどのような状況でしょうか。聞かせていただきたいと思います。
  117. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 先ほど申し上げました労働時間短縮団体で参加事業主ともども取り組むケースにつきましての費用助成でございますが、七都道府県の協会でそういった事業取り組み、この助成制度を御利用いただいている状況でございます。タクシー関係でございます。
  118. 今田保典

    今田委員 いずれにしろ非常に大変な職場でございますので、これからもひとつタクシー業界に対しまして、労働省でいろいろと御指導いただければ大変ありがたい。ただ、幾ら労働行政側で時短時短というかけ声を出しても、先ほど申し上げましたように、賃金制度がある一定の改善をされなければ、これはなかなか、特にタクシー関係については時短促進できる状況にはないということについてもぜひ御理解の上、いろいろと御指導いただければ大変ありがたい、このように思っているところでございます。  次に、交通産業、交通関係のもので、自動車教習所の事業があります。  この業界に対しての指導について御質問をさせていただきたいわけでありますけれども、これまた非常に年間の労働時間が長く勤務をされておりますし、さらにまた、賃金体系についても特殊な賃金体系をつくって働いておるわけであります。本来ならば適正な勤務・賃金体系というものをきちっと確立しなければならない職場なわけでありますけれども、生徒に対して指導するいわゆる学校でございますので、そういった先生勤務・賃金体系といったものをきっちりと確立をした上で、これから運転免許を取る生徒に対して指導すべきであるというふうに私は認識をしておるわけであります。  ただ、残念ながら、そういったものには今なっていないという状況でございますが、この点についてどのような把握をしておられるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  119. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 ただいま先生から、自動車教習所の労働条件等実態について問題提起を承りました。  私ども、自動車教習所を特に対象といたしましたそういった労働条件等に関する調査、今まで正直、行ってきておりません。ほかの全体の産業のくくりの中に入ってしまっているのが実情でございます。  先生からただいまそういった問題提起がございました。統計的な調査というわけにはまいらないと思います。これから四十時間制の定着等を指導していく際に、こういった自動車教習所等がどういう問題でかかわってくるか、私ども十分留意しながら指導に当たってまいりたいと思っております。
  120. 今田保典

    今田委員 いずれにしろ、自動車教習所も、先ほど申し上げましたように恒常的に労働時間が長いということでありますが、その長い部分については、先ほど言ったように、恒常的な時間外というものがついているわけです。最初から勤務体系の中に。それが問題だと言われる方もおられるわけです。そういった体質をやはりきっちりと改善をしなければだめだというふうに私は思っておるわけであります。  ただ、これについては、労使間だけで努力をして改善するんだということで努力をしても、いろいろと問題がありましてなかなか解決できない状況にあるということも私は認識をしておるわけでありますが、いずれにしろ、そういう状況の中で、労使間で今一生懸命努力をされております。おりますけれども、なかなか改善されないというのが実態であります。  したがいまして、労働行政側として、その業界の実態を十分に把握をしていただいて、改善に向けて業界指導を行っていただきたいというふうに思っておるところでございます。  特に、教習所でございますから、全く自動車に携わっていなかった、ハンドルも握っていなかった、ブレーキもアクセルもわからない人が来て自動車運転を学ぼうとしているわけですから、そういった労働、いわゆる先生という立場の人が過労で、本当に生徒に対して正確な指導教育ができないということであれば社会的な問題に発展するわけでありますので、やはりこの点については十分実態を把握していただいて御指導いただければ大変ありがたい、このように思っているところでありますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。  次に、トラック関係の問題であります過積載と過労運転について、今非常にふえてきております。  先ほど申し上げましたように、規制緩和が進みまして、業者はどうしても荷主との仕事関係で、成立する段階でいろいろと無理な注文を受けざるを得ないという状況に今なっておるわけでありまして、この点については、数年前でありますけれども、衆議院、参議院で、車に対して自重計あるいは運行記録計、そういったものの装着義務化をしなさいということを決議されたわけであります。しかし、あれから五年ほどになりますけれども、全く実現はしていないという状況でございます。  これは運輸省の怠慢だというふうに言わざるを得ないわけでありますけれども、しかし、そうはいっても実態はそういう状況にあるわけでありまして、やはり労働省としてもそういう状況で今トラック関係方々が働いておるんだということを十分認識していただきまして、運輸省との連携を十分とりながら、そこで働いている運転者の健康管理あるいは労働時間の管理、そういったものをきっちりと連携をとりながらやっていただきたいというふうに思うわけでありますが、この点について御見解をお聞かせいただきたいと思います。     〔森(英)委員長代理退席、委員長着席〕
  121. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 トラック業界での過積載あるいは過労運転の防止に向けての労働省、運輸省との連携等についてお尋ねでございます。  労働省におきましても、この過積載、過労運転、これは労働災害の防止という観点からも大変重視いたしておるところでございます。私ども交通労働災害防止のためのガイドラインを平成六年に策定いたしまして、これを中心に労働災害防止のための事業のいわば重点事業として、その周知を図っているところでございます。  その中でも、こういった各事業者の方に、労働時間管理、走行管理、それから安全のための教育、その実施体制、こういったものを細かに、あるべき姿を示したガイドラインでございまして、もちろんその中では、過積載、過労運転の防止のことも大きく取り上げておるところでございます。こういったガイドラインをもとに、私ども本省レベルでも運輸省との間に連絡会議を設置して意見交換を行っておるところでございます。  また、第一線機関でも、労働基準法、道路運送法等について重大な違反の疑いがあった場合には、その事案を相互に通報し合う、相互通報制度の活用も図ってきておるところでございます。  また、最近におきましては、各都道府県の労働基準局レベルで、警察、陸運支局あるいは県、そういったところと協議会をつくりまして、先ほどお話し申し上げました交通労働災害防止のためのガイドライン、これを周知するための協力をし合っておるところでございますので、そういった場も積極的に活用いたしまして、この労働災害にもつながりかねない過積載、過労運転の防止に努めてまいりたいと思っております。
  122. 今田保典

    今田委員 いずれにしろ、先ほど申し上げましたように、規制緩和が非常にトラック関係は進んでおります。  したがいまして、荷主から無理な注文というものが多く出てくる場面がふえてきておるというのは目に見えてわかるわけでありまして、そういった観点から、先ほど言ったように自重計とかあるいは運行記録計とか、そういったものを装着義務化するのだということで衆参の両院で確認されたわけでありますので、やはりこの辺については、労働省として、運輸省等々と連携を十分とっていただいて、これまで以上に積極的な対応を、あるいはそういったものに取り組んでいただきたい、このようにお願いを申し上げて、過積載については質問を終わらせていただきたいと思います。  次に、変形労働時間についてでございますが、「変形労働時間制等の弾力的運用について」、こういうのが労働省で出されております。ただ、この点については、職種によっていろいろ、なかなか一日では切りのつかない職種もあろうということも含めてつくられたのだろうというふうに私は理解をしておるわけであります。  まず一つは、二日にわたって勤務される回数が非常に多いという観点から、タクシー関係に従事される運転者という職場、いわゆる交通関係に携わる運転従事者の件については、タクシーという限定をされておるわけでありますが、実はそうではなく、バスもトラックも変形労働時間を、今いろいろと職場で論じられておるのでございまして、この点についてどのような把握をしていらっしゃるか。もし把握をしておられれば、御説明、御回答いただければ大変ありがたいというふうに思います。
  123. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御指摘のように、今回、タクシーの業務につきましては、変形労働時間制の限度時間につきまして業界の実情に合う形にいたしまして、タクシー業界において、変形労働時間制を活用しながら週四十時間制の実施がしていけるような環境整備を図ったところでございます。  この点は、かねてからタクシー業界労使からそういった問題についてお話を承っていたところでございますが、今御指摘ございましたバスやトラックの問題について、一年の変形労働時間制の活用ということであるのか、あるいは、運転時間について弾力性を増すために、二週間を平均して改善基準で一週当たりの平均を何時間とするか、こういう御議論の部分なのか、これは私ども関係者にもそういった点の変形時間制のとらえ方をよくお尋ねし、話も聞きながら、どういった対応が可能であるのか、これは研究してまいりたいと思っております。
  124. 今田保典

    今田委員 私も、実ま、何回も申し上げますけれども、バス関係労働組合の役員もしておった関係で、バス関係労働時間についていろいろ議論してまいりました。その中でいつも問題になるのは、バス関係労働時間というのは、一日を詰めるということは至難のわざでございます、企業側としても労働者側としてもですね。一日の労働時間を詰めるということは至難のわざであります。したがいまして、一週プールあるいは一週通算という言い方もしておりますけれども、一週通算をやって、あるいは二週通算をやって、あるいは一カ月通算をやって、そして一日当たりの労働時間を短縮するのだという制度をとれないものかどうかということで、今いろいろな職場で論じられておるわけであります。  実際、私が担当しておったところについては、具体的に言えば二週プールで時間短縮を進めて、年間千八百時間を割ろうということで努力をさせていただいて、結果として千八百時間を割ってきたんですが、そうでもしないとなかなかできないというのが実態であります。  しかし、そうはいっても、労働者側から言わせれば、一日の労働時間を詰めないでそういった形になるというのは非常に問題があるというような言い方をされる労働者も当然おるわけでありまして、言われることはごもっともでもありますし、そんなことで、非常こ難しい問題であります。  ただ、これから労働時間を、本当に年間の労働時間を詰めるということであれば、やはりそういったものも積極的に、そこで働く労働者の理解を得ながら進めなければ、どうしてもできないという場面が出てくるだろうというふうに思いますので、ぜひ労働省としても研究の上、いい御提示があればいろいろと御指導いただいて、年間の労働時間短縮に向けて御指導いただきたい、このことをお願いを申し上げまして、私の質問時間、終わりましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  125. 青山丘

    青山委員長 次に、中桐伸五君。
  126. 中桐伸五

    ○中桐委員 私は、民主党を代表しまして、労働時間短縮に関する基本的な質問と、その労働時間の短縮の実効性を上げるための幾つかの質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず第一に、労働大臣にお伺いしたいのですが、「財界」二月十一日号誌上におきまして、中西東京商工会議所副会頭が、労働時間の短縮にかかわる非常にゆゆしき発言をしております。中西氏は、規制緩和小委員会委員もしておられるという重要な人でありますが、この中西氏は、要点だけ申しますと、この誌上の発言の中で、  時間外の割り増し賃金によって十数%の実質ベースアップにつながるという労働省案を、 労働省最初の出された案だというふうに思いますが、  二年間は延期という形に持っていけた。これは行動する商工会議所、商工連盟による勝利だと思っています。   これも労働省主導で法律に書き込まれたわけですが、当初、代議士たちも九〇%は労働省側に立って、週四十時間制は見切り発車しなければいけないだろうというのが大方の意見だったと思います。それを商工会議所と通産省、とくに中小企業庁が組んで、昨年一年間で流れを変えたんです。 という発言でございます。  私はここで労働省を責めているのではなくて、きょうは労働省の応援団として発言をさせていただきますが、ここで労働大臣にお伺いしたいのは、この法改正によりまして一週四十時間の二年間の猶予というものは、罰則をつけるという意味での刑事上の問題における猶予であって、民事上における四十時間制移行という点については待ったなしの適用であるのかどうか、労働大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  127. 岡野裕

    岡野国務大臣 労働省といたしましては、この四月一日から、今御審議を賜っておりますところの法律、これを成立をさせていただきますならば、労働基準法どおりの適用を全面的に実施をするという心組みであります。
  128. 中桐伸五

    ○中桐委員 どうもありがとうございました。  それではさらに、しつこいようですが、確認をさせていただきたいのです。  この法案がもし成立したといたしますと、四月一日以降も従前どおり一週四十四時間の所定労働時間制をとっていたとしても、これは労働基準法第十三条の規定、つまり、「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、」「無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。」という規定によって無効となり、従前どおり週四十四時間労働をさせると四時間分は時間外労働になると解釈してよろしいか、労働基準局長の御意見をお伺いいたします。
  129. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御指摘ございましたように、この四月一日からは労働基準法の現行規定どおり週四十時間制が実施されるものでございます。したがいまして、事業主の方にはこの四月一日から四十時間体制をとっていただく。また先生指摘のように、もし四十四時間働かせた場合には、これは民事上の債権としてそこの部分に対する賃金の支払いは当然発生するわけでございまして、それにつきましても四時間分の残業があったという形の民事上の問題が発生するということは、今の基準法の解釈どおりでございます。
  130. 中桐伸五

    ○中桐委員 ありがとうございます。  そうしますと、実は次のような重要な事業主団体指導といいますか、発文がございますので、この点について次に議論をいたしたいというふうに思います。  全国中小企業団体中央会という団体が平成九年の二月七日付で「週四十時間労働制への移行に伴う賃金の取扱いについて」という文書を会員各位にあてて発文いたしております。この発文の中に非常に多くのことが書かれておりますが、私がここで取り上げたい問題は、今回法改正がされた場合の基本給の取り扱いについての例示でございます。これは基本給を計算するときの賃金計算式を一つの例として挙げているということでございます。  この例示によりますと、まずこの賃金計算式によりますと、結論から申しますと、時短の四月一日以前の方が、改正される以前の状態を仮定いたしますと基本給が二十五万の労働者が年間二百四十五日働くいわゆる週四十時間労働制移行した場合、基本給が二十二万六千円になる。つまり労働日数が時短に伴いまして少なくなるために基本給を二十二万六千円でよろしい。  その計算根拠は、労働省が昭和五十六年に通達基発第一一四号でもって、この五十六年の時点での時短の際の通達でございますが、この通達の中には、「新しい労働時間制度への移行に伴い就業規則等に定める賃金額が改定され、それに基づいて賃金が支払われたような場合においては、その賃金額の支払が新しい労働時間制度への移行に伴う労働時間の変更との関係からみて合理性が認められるもの(例えば、時間当たり賃率に減少を伴わないものである等)であれば、」例示として、一番問題になります時間当たり賃率に減少を伴わないものであるならば、「法の適用上問題はないものとして取り扱って差し支えない」という内容が含まれております。  この指導に従えば、先ほど言いましたように、基本給が二十五万円から二十二万六千円に労働日数が減りますのでなるというふうに例示を挙げて指導をしております。  このような措置をとりますと、労働者が減収になるわけであります。減収になりますと労働者はどのような行動に移るかといいますと、多分一つは減収分を補うために時間外労働がふえるわけであります。また、時間外労働がふえるということは、この発文でも月十六時間の時間外という形で給与計算の例を挙げておりますが、そのようになりますと、週四時間、月十六時間の時間外ということになりますと、これは総労働時間も千八百時間に近づくということが難しくなる。つまり、総労働時間の短縮も図れなくなるというふうな結果を引き起こすということになり、時短の実効性が上がらなくなるというふうに考えますが、この点について労働省はどのようにお考えか、労働大臣かあるいは労働基準局長の御意見を伺いたいと思います。
  131. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 まず第一点でございますが、今回中小企業団体中央会、この商工関係団体から出ました地方の傘下企業への通知でございますが、この点につきましては、私ども昭和五十六年の制度的な労働時間短縮の際に、そういった時間短縮との関係から見て時間率を変更しないなど合理的な理由がある場合、しかも労使間で十分な話し合いが行われてそういったことの取り決めがなされていった場合という従来からの解釈を踏まえて、いろいろなケースを挙げているようでございますが、生産性の向上等ができずに四月一日以降も制度的には四十時間になったけれども実質四時間分の残業を含む四十四時間の労働という形になった場合の前提として、今先生指摘になったような例示がなされておるようでございます。  私ども、基本的には、賃金の問題につきましては、第一に労使間で十分話し合って決めていただくことが基本であるというふうに考えております。その上に立ちまして、合理的なものであるかどうかというのが次に問題になるわけでございまして、労働時間短縮に伴って賃金制度、基本給等の問題を言及する場合には、もちろん最低、時間率の賃金率に変更がないことなど、その合理的な理由が求められる、こういう従来からの解釈に沿って私どもも対応してまいりたいと思っているところでございます。
  132. 中桐伸五

    ○中桐委員 まず第一に労使間で話し合う、労使自治ということは十分わかるわけでありますけれども、現在労働組合の組織率は徐々に低下しておりまして、四人に一人というふうな状況になっております。そういう中で労働基準から労使自治にいきなり投げ返されますと、果たしてそこのフィルターがきちんとチェックができるのかどうかという問題があると思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。
  133. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 ただいま御指摘のございましたこの商工関係団体の傘下への指示文書もいろいろなケースを挙げて、例示としてそういったものを提示しているようでございます。したがいまして、やはり各個々の企業レベルにおきましては、個々それぞれ生産性の改善等状況が違うかと思いますので、どうしても労使間で十分に話し合っていただくことがまず前提として必要になりますし、これは不可欠であろうというふうに思っております。  先生指摘のように、労働組合がない場合等についてどうなるのかということでございますが、この労働基準法上、残業等をする場合には、必ず三六協定が必要なわけでございまして、そういった場合に、労働者の過半数を代表する方との協定ということが義務づけられておりますので、そういった方を含め、労使自主的にそういった問題についてきちんと話し合っていくことがまず肝要かと思っております。  つけ加えれば、私ども労働時間短縮を進めるに当たりまして、とりわけ四十時間制を進めるに当たりましては、基本的には、この四十時間短縮に当たりまして、業務遂行方法等も見直され、改善されていくあるいは省力化投資等が行われる、そういったことで効率化、生産性の向上が図られて、そういうコストが吸収されていくことがぜひとも必要だ。  したがいまして、私ども懇切丁寧な指導を申し上げると言っている意味は、そういった点についてのノウハウを提供しつつ、また新たに設けられます。そういった省力化投資等に対する助成制度をかみ合わせながら、円滑に定着が図れるように指導していこうという趣旨のものでございますので、その点は御理解をいただきたいと思っております。
  134. 中桐伸五

    ○中桐委員 ちなみに、三六協定なるものの締結率といいますか、それはおおよそわかりますか、三六協定。  すぐにわからなければ、次の質問に移りながら、全体的にその労使の自治という問題がどのように機能するのかということについてまた後ほど議論をしたいというふうに思います。  先ほど、第一の点は、労使の自治でございましたが、第二の点といたしまして、その合理性という点でございます。  先ほど、時間当たりの賃率が変化しなければ合理性があるというふうに判断をするという通達がございますが、この労働省通達、そういう指導に基づいて、先ほど全国の中小企業団体中央会が例示として、基本給が二十五万円から二十二万六千円になっても合理的であるというふうに判断することに対しまして、国際労働基準というものから見た場合にどのようになるかということについて議論をしたいというふうに思います。  御存じのように、国際労働基準を規定していますILO、国際労働機関、ここが第四十七号条約におきまして、この条約の名前は、労働時間を一週四十時間に短縮することに関する条約というふうになっておりますが、この四十七号条約におきまして、時短と賃金との関係について、まず一つは、生活標準の低下を来さざるべき一週四十時間の原則というものを挙げております。そしてまた、第二点目に、「此の目的を達成するに適当と認めらるる措置を執り又は之を助成すること」を承認することというふうになっております。  さらに、第百十六号の勧告、ILO勧告、労働時間の短縮に関する勧告、その4という項におきましても、「所定の労働時間は、適当なときは、労働時間の短縮が行われた時における労働者の賃金を減少させることなぐこの勧告の前文に示す社会的基準に到達することを目標として漸進的に」徐々にという意味ですが、「漸進的に短縮すべきである。」という内容が規定されておりまして、つまり、週四十時間に伴う賃金の切り下げをすべきではないという旨を明確にしているというふうに理解できると思う。  そうしますと、労働省基発第百十四号は、解釈によっては、いろいろな解釈があるでしょうから、賃金の率を下げてはいけないというその解釈をもって、先ほどのような基本給が二十五万円から二十二万六千円に下がる、そのような結果が起こる、そのような内容である労働省の基発第百十四号というのはILO四十七号条約の趣旨に反しているのではないかというふうに思うのでありますが、その点についての御見解をお聞きしたいと思います。
  135. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 このILOの第四十七号条約、まだ我が国としても慎重な検討を要するということで批准をいたしていない条約でございますが、その中で、生活水準の低下を来さないようにしつつ、一週四十時間制の原則を採用することという定めがあることは承知いたしております。  今回の商工関係団体の指示の文書との関連でございますが、要は、先ほど来先生からも御指摘ございました、労使の間で話し合われ、合理的な形で行われているのかどうかということとの関係があろうかと思いますが、先ほどのその文書をざっと見てまいりますと、例えば、先ほど先生から御指摘いただいた例は、四十時間に制度的にはなった、しかし、実質的に生産性の向上等が図れないために四十四時間の労働がどういう形になった場合に、その時間率を変更しない範囲で、労使間で話し合われた賃金の見直しによって新たな計算が行われる。したがいまして、その場合には、その例でもそうでございますが、賃金全体額としては落ちていない形が実現をいたしておるわけでございます。あとの四時間分は、残業代として割り増し率がついた形で計算されていく形になりますので、賃金全体としては落ちてない形。  それから、この団体を見ますと、生産性の向上が図られて四十時間制が制度的にも実現したし、生産性を上げてコストを吸収して実際に四十時間の労働で済むようになったときは、むしろ賃金率等も上げなくてはいけないのではないかというような考え方も示しておるようでございます。  したがいまして、こういった取り扱いが、この四十七号条約の生活水準の低下を来さないようにしつつ、一週四十時間制の原則を採用するという趣旨に照らして、一体どういうふうに扱われるのか、これは大分吟味が必要かと思いますが、一概にこの趣旨に反するかどうかまで私ども即断をちょっといたしかねる内容ではなかろうかというふうに受けとめております。  ただ、いずれにいたしましても、労働時間の短縮、とりわけ四十時間制の実施が、文字どおりそういった生活水準の低下を招くような形につながらないように労使間で十分話し合っていただいて、各企業の実情に合った形で生産性あるいは効率化等努力もされながら、できるだけそういった形でコストが吸収されていく中で実現していくこと、こういったことを私ども支援していくという立場であることはぜひ御理解をいただきたいと思っております。
  136. 中桐伸五

    ○中桐委員 基準局長から、生活のレベル、標準を低下させないように配慮しながら行政を行っていきたいという御答弁をいただきましたので、その点については大変これから重要なポイントでございますので、鋭意労働行政を進めていっていただきたいというふうに思います。  しかし、私が先ほど申し上げましたように、労働行政としてこのような指導文書が出されてきた。そして、しかも総労働時間千八百労働時間を達成する、そのためこま時間外労働短縮もやらなければいけない。そういうふうな状況の中で、時間外を含めてトータルな賃金は一応ふえる計算になっているからそれなりに評価できるのではないかというふうにちょっと理解をしたわけでありますが、その点については、やはり私といたしましては大変不満でありますが、どのようにお考えでしょうか。
  137. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 ただいまの私の説明は、それを評価するという意味ではなくて、賃金の問題、あくまで基本的に労使で十分に話し合っていただいて決めていただくわけでございます。  ただ、御指摘のございましたILO四十七号条約の定めとのいわば文理的な意味合いで判断するとすれば、そこは生活水準の低下を来さないようにというふうになっておることとの関係で、私ども、商工関係団体が出した文書について、その関係でどうこうという評価をする立場にはちょっと材料がないというふうに申し上げたつもりでございます。
  138. 中桐伸五

    ○中桐委員 それでは、一応生活の標準を下げないように行政として努力するということで確認をさせていただきまして、次にこのILO四十七号条約が批准を、先ほどさまざまなものがあって批准をまだしていないということでありましたが、その批准をしていない理由について御説明いただきたいと思います。
  139. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 これは、条文と我が国の国内法との吟味が十分にまだされていないということもございます。それからもう一つ労働時間短縮というものについて、例えばドイツ等におきまして、かなり先進国として時短が進められてきたわけでございますが、横断的な労働協約を通じて広められる。その際に、いろいろな場面で賃金と労働時間の関係というのは、あるいは選択的な関係であったり、あるいはワークシェアリング等の関係が議論されたり、いろいろな経緯を経てきているようでございます。我が国も、これからさらなる労働時間の短縮等に向けていく場合に、一体どういう道筋をたどるのがいいのかというようなことについて、やはり国内的なコンセンサスも十分に得ていかなくてはいかぬ、そういう段階でございますので、まだこの条約の批准ということに向けてはもう少し慎重な検討を要するだろうと受けとめておるところでございます。  時短のかなり進んでいる国におきましても、そういったことでこの条約を批准している国は現在八カ国でございまして、主要先進国ではオーストラリアが批准をしているわけでございますが、その他の国はまだ批准に至っていないような状況にございます。
  140. 中桐伸五

    ○中桐委員 条約については今後検討を慎重にしていかれるということでございますが、私がいろいろなところでお聞きしているのは、勧告というものについては、これはもう条約を批准しているかどうかということにかかわりなく国際的に有効なものとして考慮するというふうな解釈があるように伺っているのですが、この点についてはいかがでしょうか。
  141. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 勧告につきましても、条約に伴うものでございますので、条約の批准ということがあれば当然その勧告も国内において尊重されていく、こういう仕組みになっておるというふうに理解しております。
  142. 中桐伸五

    ○中桐委員 そのように理解するといたしましたら、これはできるだけ早急に、ILOの第四十七号条約の批准に関する検討を十分早急にやっていただいて、できればこういう基準を国内に導入していただければ、先ほどのような矛盾が発生することがなくなるのではないかというふうに考えますので、その点について強く要請をしたいと思います。  また、一週四十時間を超える労働につきましては、四月一日以降におきましては、三六協定の締結及びその届け出、及びそういったことに関するチェックを労働基準法に照らしてきちんと厳格に適用するように強く要請したいと思いますが、いかがでしょうか。
  143. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御指摘のように、週四十時間制がこの四月から、現行の基準法の規定に従いまして施行されるわけでございます。したがいまして、それを定着させていくためこ、御審議をお願いしていますように、私どもきめ細かな指導援助を申し上げて、その一環といたしまして、関係の業種団体等とも連携をとって、説明会、集団指導等を開催していく。そういう際には、先生指摘になったような手続等も含めて周知を図ってまいるわけでございます。そういったものと、また事業主みずからによる団体を通じてのそういった問題点についての自主点検等も並行して行いながら、そういった徹底を図っていく。そういう期間として、私ども二年間の間に一般化に向けて最大限の努力を重ねていく考えでございます。
  144. 中桐伸五

    ○中桐委員 賃金との関係を今議論しておりますので、それに関連いたしまして、時間外労働に対する割り増し賃金率について議論をしたいというふうに思います。  一般論といたしまして、時短促進する一つの重要な要因の一つに、時間外労働のコスト、これをどのように位置づけるかということがあろうかと思います。もちろんこれは、時間外労働のコストの問題だけで時短促進するというふうに考えているものではございませんが、しかし時短促進する一つの重要な要因、つまり事業主が時間外労働を導入するメリットといいますか、そういうものに重要に関連してくるのが時間外労働のコストであるというふうに考えます。そのコストの問題はそういう意味で重要だと思いますが、最近、一九九六年度にいわゆる連合、日本労働組合総連合会が調査をいたしました労働時間に関する調査をもとに、この時間外労働コストが時間外労働にどのような影響を及ぼしているかという分析をしてみました。  その分析をしたところ、時間外割り増し賃金について回答した組合が九百四十二組合あるわけですが、その中で、二五%の時間外割り増し率の組合数が二百七十一、三〇%の時間外割り増し率であると答えた組合数が四百七十一、そして三五%と答えた組合数が六十四、こういうふうになっております。  この二百七十一、四百七十一、六十四のそれぞれの組合の平均の時間外労働を割り出してみますと、二五%の割り増し率のところで時間外労働の総時間数が二百二十一時間、三〇%のところで時間外労働が平均百七十八時間、そして三五%のところで平均百三十九時間となっておりまして、一般理論がそのまま適用されるという結果が出ております。そこで、やはり割り増し賃金率が高くなるに従って時間外労働が減っているという現実、これはあくまで連合が調査した九百四十二の事業場においての結果でございますが、そういう結果が出ております。  そこでお聞きしたいのですが、今後、時短促進するために、現行の割り増し賃金率について、これをアップする必要があると私は思うのでありますが、どのようにお考えでしょうか。お聞きしたいと思います。労働大臣、いかがでしょうか。
  145. 岡野裕

    岡野国務大臣 連合さんの数字、今初めて伺いました。また改めてその数字の意味する因果関係等々を自分なりに勉強してみたい、こう思っております。  先生の最後のお話労働時間短縮に踏み切る、それではこの際、同時にまた、割り増し賃金率もアップしたらどうであるか、こういう御提案であります。ただ、私は、今回時短に踏み切る、週四十時間労働制というものを全面的に実施するつもりでありますところ、これを受けとめて、先ほどのお話にも出ておりましたが、中小企業の企業主等が、週四十時間でいく、しかしながら、実際には実働四十四時間になってしまった、これにはやはり超過勤務手当を払わなければならない、三六協定も結ばなければならないということに相なると思っております。  そうすると、時短をやった、今までは百分の百二十五出さなくてもよかった、百分の百でよかった、それが百分の百二十五になる、それだけでも大変だと思います。それがこの際一気に、先生のおっしゃる百分の百三十だとか百分の百五十だとかいうことになるのは、これは現下の置かれた中小企業の現状においていかがなものであろうか。先生御注文いただきました一つの課題だ、こうは受けとめたいと思っております。  したがいまして、中央労働基準審議会におきまして、先般、私の方からお願いをいたしました。新しい構造改革の世界におけるところの労働の提供のあり方、その勤務時間管理の問題、あるいは労働契約を締結するルールの問題、これについてひとつ御見解をまとめてほしいとお願いをしたわけでありますが、その中に、年次有給休暇でありますとか時間外労働の問題でありますとか等々入っております。したがいまして、この結論といいますものをなるべく早くお出しいただき、その結論に基づいて労働行政を進めてまいろう、こんなふうな思いであります。
  146. 中桐伸五

    ○中桐委員 前向きに一つの課題として追求されるということで、ぜひお願いしたいと思うのですが、しかし、先ほど私が中小企業団体中央会、ここの中で指摘をさせてもらった、基本給を二十五万なら二十五万に維持して、かつ時間外手当を従来型のウエートから少しウエートをアップすれば、基本給を維持しながら時短の方向へ向かうというインセンティブが起こりやすくなるのではないかと考えますが、その点についていかがでしょうか、労働大臣
  147. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 ただいま御指摘のありました問題、恐らくこう理解させていただきたいと思います。  四十時間制が実施される、もしそこで割り増し率がより高いものになっていたならば、事業主はかなりの努力をしてでも四十時間で抑え込んで、あとの四時間の残業というものをなくすのではなかろうか、そういういわば残業に対する抑止力が働くのではなかろうか、こういう先生の御指摘と受けとめさせていただきまして、お答えさせていただきます。  目下、膨大な数の中小企業に対しまして、この四月一日から四十時間制を実施する際に、いろいろなケースが生じてくるかと思います。かなり経営的に現下の経済情勢も加わって大変な状況にあるところ、あるいは先端的な技術力でかなり勝負をしている中小企業においては、そういった情勢の中で、この四十時間制を効率化なり生産性の向上で吸収していけるところ、いろいろな形のものが出てくるかと思います。  したがいまして、もしこの四十時間制を実施するに当たって、どうしても残業が残るけれども、それを工夫を重ねながらある程度の時間の幅の中で解消していこうとする企業にとっては、かなりこの四十時間制を実施することがかえって難しくなるケースもございまして、先ほど大臣が答弁を申し上げました趣旨も、そういった緊急やむを得ない残業が出てくる過程では、なかなか割り増し率の引き上げを一律に実施していくことは大変難しいのではなかろうかという意味合いだろうと私も考えております。  ただ、いずれにしましても、大臣の答弁でも申し上げましたとおり、中央労働基準審議会でこの問題、前回の労働基準法改正の際の経緯もあり、懸案事項の一つでもございますから、そういった議論の中で労使の見解が取りまとめられるように、私どももできるだけ早い段階でそういうものが得られるようにお願いをしてまいりたいというふうに思っております。
  148. 中桐伸五

    ○中桐委員 先ほどの連合の結果は大変重要な意味を示していると思いますから、この点については、先ほどから労働大臣お答えになって、また労働基準局長お答えになられた、今後の一つの課題として、労働契約のルールに関する検討というところで行われるというふうに確認をさせていただきまして、ぜひこの事実についても十分お受けとめいただき、検討をお願いしたいというふうに思います。  さて、これまでの質問におきましては、労働基準を制定して、それを事業主に守らせるという法体系の問題及びその実効性、及びそれが含んでいる問題点について議論をさせていただいたわけでございます。先ほども労働大臣や基準局長がなかなか現実は厳しいといりことを何回も御発言になっておるわけでございますが、そのような中で、ただ、法律の基準を厳しくしてそれを規制するという方向というもの、これはこれで大変重要でありますけれども、それだけではなくて、もっと自主的な努力、そういったものを促進していくという、これまた非常に重要なことになっているのではないか。特に中小零細事業場においてはこの点の実効性ある取り組みが重要になっているのではないかというふうに私も考えるわけでございます。  そこで、既に時短促進につきましては、助成措置という形で、奨励金という形で今日まで行われてきているわけでございますが、この点につきまして、まず、今日までの時短促進のいわばポジティブアクションといいますか、そういう方向での実際に取り組んできた成果がどのようなものであったのかということ、実情と成果について議論をしたいというふうに思います。  まず、時短促進するための特別奨励金というものがございますが、その奨励金の活用状況とその効果というものについて労働省の方から御報告を受けたいというふうに思います。
  149. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 時短の特別奨励金のまず支給に当たりまして、その支給の要件でございますが、これは、週所定労働時間を四十時間に短縮していくという計画を有する事業場が、三百万以上の省力化投資、これは三十人以下の事業場につきましては百万円というふうに緩和をいたしております、そういう省力化投資を行うか、あるいは、一人以上の常用労働者、またはパートタイマーの方であれば二人以上ということになるわけでございます、ただ、三十人以下の事業場では、パートタイマーの方の場合であっても一人でよろしいわけですが、そういった労働者の新規の雇い入れ、そのどちらかを行うことによりまして週所定労働時間を一時間以上短縮する、あるいは一気に四十時間に持っていく、こういうことをした場合に、短縮した時間数と、その事業の規模といいますか労働者数に応じて支給しているところでございまして、最高が三百七十五万円までの限度を設けておりますが、そういった支給をするものでございます。  今までの申請件数でございますが、平成五年の七月に制度を始めましてから、約二万七千九百五十件の申請が出てきております。とりわけ平成八年に入りましてからは、この計画の認定件数がかなり急激に伸びてきている状況にございます。ただ、猶予措置対象事業者はかなり多いわけでございますので、この制度の対象を受けている事業場の数が、全体の猶予対象になっている中小零細の数の中の比率で申し上げますと、約三万の事業場がこの時短奨励金を活用して週四十時間制等に成功したということになりますが、その割合は、約一・四%かそのくらいになるのかなというふうに考えております。
  150. 中桐伸五

    ○中桐委員 これは労働省が調べられたデータ、一九九六年五月に実施されたデータだというふうに思っておりますが、四十四時間制から四十時間に移る対象の適用事業場の全体の約四三・七%、つまり九十三万八千六百カ所の事業場実施が困難と答えているというふうな報告があると思いますが、先ほどの助成の措置という点からいいますと、一四%というのは、全対象事業場に対しての一・四%というふうに理解してよろしいのでしょうか。
  151. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 現在まで猶予措置の対象になっております事業場、約二百十五万ございまして、それに対する比率。
  152. 中桐伸五

    ○中桐委員 先ほどの調査でも、四三・七%が実施困難と答えているという非常に厳しい現実が約一年前にあったということでございますが、そこで、助成措置が行われているということは、これはポジティブアクションとして評価するものでありますが、しかしこれは、時間がありませんので、私が労働省から持ってきていただきましたデータに基づきますと、労働時間短縮実施計画を業種トータルで見ますと、計画を承認した数が百八十九。それからさらに、労働時間短縮においては、先ほどから、労働基準以外の方法というのは労使自治というところにすべてゆだねられてしまうわけでございますが、その労使自治である労働時間短縮推進委員会なるものの設置届け出件数、平成七年末の現在、これはちょっと一年ばかり古いわけですが、これで二百五十二件という数字でございますが、これらの数字は余りにも少ないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  153. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 ただいま、労働時間の短縮の推進に関する臨時措置法、これに、法律に基づいて事業主が企業内でつくれることになっております労働時間短縮推進委員会の数、二百五十二という御指摘でございました。確かに、届け出のあったものは平成七年度末で二百五十二でございますが、これは、企業内に任意に設置して労働時間の短縮等について労使で話し合っていく、そういう場として法律上設置をできるような仕組みにいたしております。したがいまして、任意のものであるということで、労働基準監督署への届け出は義務づけておらないわけでございます。  ただ、個々の労使委員会での決議をもって、例えば時間外の労働の協定等について個々の決議をもって三六協定にかえることができるという特例等がございまして、そういった場合には届け出をしてもらう。したがいまして、そこで三六協定にかわる決議をした場合に届け出があって、その件数を集計すると実は二百五十二ということになるわけでございます。  それでも、先生指摘のように、多くの事業場でこういった形が活用されて、労働時間短縮関係で広範な形で利用されているかという点については、確かに先生指摘のように、まだ至らない点もあろうかと思います。こういった仕組み、この時短促進法で、いわば我が国初めて労働時間短縮というような問題を労使で話し合ってその手段、道筋を決めていきなさいというような道筋を採用したものでございまして、現段階ではいささか不十分な結果になっていることはやむを得ないといいますか、御理解をいただければと思っております。
  154. 中桐伸五

    ○中桐委員 一度、新しい区切りの四月一日が近づいてきておりますので、こういった推進委員会なるものがどのような実情であるのか、三六協定等の関係だけではなくて、実際にこういったポジティブなアプローチをする成果がどのぐらい日本事業場で行われているのかということについて私は非常に知りたいと思いますので、ここで一つ、まず第一の要望は、ぜひ労働省の方に調査をこの際お願いしたいというふうに、実態把握をお願いしたいというふうにまず一つは要望させていただきたいというふうに思います。  それから、調査をしても、これから、非常に少ないという御判断なので、やはりこれは、大変厳しい厳しい、それで、基準は余り上げられない、どうも厳しい、あとは労使自治だという、しかもそれは労使自治になるところは非常に少ないということではちょっと展望が見えませんので、私としては、一つ具体的な提案をさせていただきたいというふうに思います。  それは、時短促進法をこれからさらに有効性あるものにしていくという立場から考えてみますと、労使の代表による時短促進アドバイザー、これは仮の名前でございますが、私が勝手に呼んでおりますが、時短促進アドバイザーという制度を新たに導入してはどうか。行政皆さんが一生懸命行政指導をされるということはもちろんでありますが、それだけではどうも、今まで議論をしてきた実態から考えまして、時短促進が有効に進むんだろうかということを考えてみますと、私としては、労使の代表を入れて、そして、特に時短促進をしなければいけない業種などは特に重点的に早くそういうシステムをつくって、アドバイザーが行政のスタッフと一緒になって政労使の協力関係をつくって時短促進していくというふうな制度をつくったらいかがかというふうに思うのですが、労働大臣か基準局長、どちらでも結構ですが、御意見を伺いたいと思います。
  155. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生のは一つの御提案であると思います。  私どもは、中小企業を対象として二年間にわたって御指導も申し上げ、また御助言も申し上げるというようなことで時短の軟着陸というものを図っているわけであります。その上に立ちまして、労使間で時短について本格的に取り組むというようなことは労使の間でそれぞれの方法があろうか、その方法の中の一つ先生御提案のものもある、こう理解をしたいと思います。
  156. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 ちょっと補足させていただきますが、御指摘のございました労働時間短縮のアドバイザーにつきまして、現在私ども四百八十ほどの団体をこういった労働時間短縮指導を綿密に行う対象として選定いたしておりまして、そこに社会保険労務士の方等をアドバイザーとして活用いたしております。こういった制度先生指摘のような趣旨と合致するかどうか、むしろ合致するような形でうまく活用できればということで、そこは工夫をさせていただきたいと思っております。
  157. 中桐伸五

    ○中桐委員 基準局長にさらにお伺いしたいのですが、社会保険労務士の方の役割も大変重要だと思うのですが、やはり同じ業種で同じ小さい規模での悩みというのは、そこは労使がやはり一番よ く理解できるのではないかというふうに思いますので、社会保険労務士の方ももちろん公益というかそういう人たちの役割として大いに今後も活用していただきたいと思いますが、労使のアドバイザーというものがやはり重要なのではないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  158. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 労使のアドバイザーという形ををういう形で実際まとめていったらいいか。多分私ども事業主団体等をとらえて指導をしていく際に、事業主団体であること、またそこは傘下の事業主、企業に対していろいろ呼びかけを行いながら時短を進めていく、こういう形になろうかと思います。  そこで、あるいは労働組合等の方をお願いするケース、使用者側の経験者をお願いするケース、どういうふうにコーディネートしていくとよろしいのか、そこはこれからの研究課題として私ども考えてみたいと思います。
  159. 中桐伸五

    ○中桐委員 時間がなくなりましたので、最後の質問をして終わりたいと思います。  先ほどの私が提案しました時短促進アドバイザー、こういった制度、あるいは既に導入されております助成制度、そういったことを考えてみますと、これは、法律によって基準を決めてそれを守れというアクションではなくて、むしろポジティブに、前向きに、去年よりことしはより時短を進めましょうよというアクションだというふうに思います。  これをポジティブアクションと呼びますと、例えば雇用機会均等法においてもポジティブアクションということが導入されておりますし、こういうことは既に日本労働行政の中にも部分的には導入をされているということであると思うのですが、こういうアクションを、もっと従来型の労働基準法に基づく基準を設けてそれを守らせる、守らなければ罰則だという最低基準のアクションと、さらに、最低基準を守ればそれでいいというのではなくて、もっともっとポジティブにいこうではないかというふうなこれからの仕組みが必要だというふうに思うのですね。  そういうふうに考えたときに、やはり先ほどの労働時間短縮のアドバイザーの制度であるとか、あるいは将来的には、助成制度どもさらに踏まえて、事業主方々社会的な責任として自分たちの改善計画を文書化して社会に公表する、こういったアクションが重要になってくると思うのですが、この点についての御意見を伺って、私の質問を終わりたいというふうに思います。
  160. 岡野裕

    岡野国務大臣 今までも、中小企業等、ポジティブアクションで、時短を早く実現をするというものにつきましては、基準局長からお話がありましたもろもろの助成制度というものがあろうかと思っております。それぞれの職場、それぞれ環境も異なるという中で、労使が積極的、前向きにこの時短の解決について取り組んでいくことを私どもは大きく期待をいたしております。
  161. 中桐伸五

    ○中桐委員 どうもありがとうございました。質問を終わります。
  162. 青山丘

    青山委員長 次に、金子満広君。
  163. 金子満広

    金子(満)委員 限られた時間でありますから、日本共産党を代表して、幾つかの問題点に絞って端的に質問したいと思います。  改めて言うまでもないことですけれども、週四十時間、年千八百時間というのはもう長い間繰り返し、繰り返し言われてきたことだし、本院においてもいろいろ議論されてきたことだ。この三月三十一日で猶予措置期間も終わる。本来ならば四月一日からもう全面的な四十時間ということになるわけですけれども、なかなかそれができない。時短時短ということを言葉では繰り返すのですけれども実態は先送り、先送りということになっていますが、これを実現していく上で、これまでの経験で一番大きな問題点ほどこにあったのかということを、大臣最初に伺っておきたいと思うのです。
  164. 岡野裕

    岡野国務大臣 これは先生も御存じのとおりだと思います。やはり、時短ということを実現をして、それぞれの心、あるいは生活、これにゆとりができるように、これは万人願わない者はないと思っております。  しかしながら、時短を進捗させるのには、やはり生産力、生産性というものの向上が前提条件としてあって初めてその上に花咲くということだと思っております。その生産性というものが、個々の置かれた企業、企業においてそれぞれ差がある。その中で、我々は、同じように四十時間制に踏み切っていこうではないか、したがって難しいところもあろう、したがってそこには助成もしょう、あるいは指導だとか助言だとかもしようということで、軟着陸ということを考えましたのが私どもの今回の提案であります。よろしくどうぞ。
  165. 金子満広

    金子(満)委員 時短を実現する場合には、大きな事業所、中くらいの事業所、小さな事業所、零細業者、いろいろあると思いますが、時短を実現する上で、今一番問題を抱えてなかなかできないというのは、今言う事業所の中でどの辺にありますか。
  166. 岡野裕

    岡野国務大臣 私は答えて、生産性と言いましたが、先生の御質問はどういう職業分野で難しいかでありますか。失礼します、基準局長をして答えさせます。
  167. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 先生の御質問、例えば規模別、あるいは業種別といったような意味で受けとめさせて……(金子(満)委員「規模別が一番わかりやすいですね」と呼ぶ)わかりました。  週四十時間の達成事業場の割合で見ますと、全体では、大体四〇・三%でございます。  これを今までの猶予対象になっておりました中小企業だけで見ると、これが一気に今度四ポイントほど下がりまして、三六・四%がその達成率、こういうふうになるわけでございます。  これをさらに詳細に見ますと、事業場規模別に見ますと、三百人以上の事業場では達成事業場の割合が九四・四%でございまして、やはりこれが三百人から百人の間になりますと六六%、百人から三十人の間ですと四八・四%、それから三十人以下では三八・七%と達成率が下がってまいるわけでございまして、やはり中小あるいは零細になればなるほどかなり混乱を抱えながらの四十時間に向かう体制であるということが言えるかと思います。
  168. 金子満広

    金子(満)委員 やはり規模別にいうと、中小企業がなかなか四十時間を実現する上でいろいろな困難を持っている。ですから、中小企業に対するいろいろの形での援助、支援、指導というものが必要であることは、もう不可欠の問題だ。これはきのうきよう始まったのではなくて、四十時間、千八百時間が出たときからそこに問題があるということだったと思いますが、きょう午前中から質疑そして労働省側の答弁をいろいろ聞いていると、やはりそういう点でいえば、昔と同じ議論が同じ状況で繰り返されてきているんだということも私は思うわけですね。  そういう中で、五年前、一九九二年四月に、私もこの委員会におりました。時の労働大臣は近藤さんでしたけれども、あのときも、中小企業の問題、それからいろいろ細かい点でいえばたくさんありました。それは、変形から、みなしから、時間外から、割り増しから、休日から、そういう問題いろいろあって、そういう中で、四十時間、千八百時間について、どうしてこれができるか、いろいろ困難はこれこれあるけれどもと言ったのに対して、当時、近藤労働大臣は次のようにはっきり言っているんですね。「少なくとも五年後には千八百時間を達成することは決して不可能じゃないというふうに考えております。」と。今このせりふは使えないんですね、五年たったけれども。  こういう点を考えてみますと、去年のこの労働委員会のところでも、時の労働大臣は永井さんでしたけれども、この問題については、   労働時間の短縮については、平成九年四月からの週四十時間労働制への全面的移行に向け、週四十時間労働制の適用が現在猶予されている中小企業等が円滑に移行できるよう積極的な支援、援助を行うなど、政府目標の年間総労働時間千八百時間の早期実現に全力で取り組んでまいります。 と非常に明確に答えているわけですね。時間が経過すると、トーンがだんだん下がってきて、できませんからさらに二年延長で、こういうことになるんですけれども、私は、そういう中で、本当に中小企業問題についてどうだったかと。  先ほどの質問された委員の中にもありました、これが「財界」という雑誌なんです。これはかなり多くの業者に読まれています。私も、読んだ方がいいよというので借りて読んだわけですけれども、先ほどの委員の方の質問の中にあったよりもっとはっきり言っているところがあるんですね。これは、公になったんですから、ないしょ話でこうやったとか業者仲間でこうやったというのではなくて、天下に公表され、しかも業界の中でよく読まれているやつですね。こう言っているんです。「週四十時間制、」「二年間は延期という形に持っていけた。これは行動する商工会議所、商工連盟による勝利だと思っています。」これは先ほども言われました。その次、「当初、代議士たちも九〇%は労働省側に立って、週四十時間制は見切り発車しなければいけないだろうというのが大方の意見だったと思います。それを商工会議所と通産省、とくに中小企業庁が組んで、昨年一年間で流れを変えたんです。」と非常にはっきり言っていますね。私は知りませんよ、当事者じゃないから。しかし、こうした商工会議所の首脳部の方々は、通産省、そして特に中小企業庁と組んで、一年間努力して労働省に対して二年延長するという形に持っていった、これは我々の勝利だとまで言っているわけです。  ここで、大臣一言言っておかないと、これは黙認したことになりますね。事実はこのように運んでいったというのを多くの業者が見ているわけですから、この点について、一言、こういう事実に対してどうかという点で見解を述べていただきたいと思うのです。
  169. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生、永井大臣お話をここで紹介をされました。永井大臣はちょうど私の前の大臣であります。彼がいわく、平成九年四月一日から、今まで延期されてきていた、猶予をされていた中小企業も含めて、全面的に週四十時間労働制実施をする、こういうふうに今御紹介をなさったようでありますが、そのとおり、この四月一日から週四十時間労働制を全面的に例外なく適用するということに相なった、先ほど来、先生、多分ほかの委員に対しまして私が御答弁申し上げているのをお聞きだと思っております。  なお、この雑誌、私、全然読んでおりません。そういう「財界」という雑誌があると、存在は知っておりますが、中身は見ておりませんが、商工会議所など中小企業団体は、先般、傘下の会員企業に対し、週四十時間労働制への移行が不可欠である旨の指示文書を発出したと聞いております。これは聞いておる、でありますので、もう一遍確かめたいと存じますが、今の時点で先生お答えができるのは、以上のとおりであります。
  170. 金子満広

    金子(満)委員 これは非常にはっきり言っているんですね。とにかく、「商工会議所と通産省、とくに中小企業庁が組んで、昨年一年間で流れを変えたんです。」こういうふうに言って、それで、労働省主導で二年間延期ということがここに出された、我々の勝利だと言っているんですから。今のような答弁だと、何かあったんだなと、私は簡単に見ないんです。  この商工会議所とそれから通産省、中小企業庁が組んでやったというのが本当であれば、これは四十時間達成の妨害なんですよ。妨害をされても、抽象的な、初めて聞いたというだけじゃなくて、こんなにはっきり物を言われているんだから、一言は言っておかないと、見過ごしたと、ああやはり何かあったんだなと思われるのが普通だと思うのです。そういう意味で私は伺っているのです。
  171. 岡野裕

    岡野国務大臣 労働行政につきまして責任者でありますところの労働大臣がはっきり、この四月一日から、私が繰り返すまでもないと思いますけれども、週四十時間労働制を全面的に施行する、こう言っているわけであります。  なお、今私が引用いたしましたように、日本商工会議所など中小企業団体は、傘下の会員企業に対し四十時間労働制への移行が不可欠である旨の指導文書を発出をしたと聞いております。単なるマガジンではない、こう存じます。  先生も御経験だと存じます、私も随分経験いたしております。とかくインタビュー等々で発言をしたことが間違って伝えられるというようなことの御経験をお持ちだ、こう存じておりますが、本件につきましては、日本商工会議所、つまり、先生おっしゃいます東京商工会議所を含む日本商工会議所の方でもこれは十分な打ち合わせをいたして、稲葉会頭にもお話を申し上げている、その結果でございます。
  172. 金子満広

    金子(満)委員 議論してもしようがありません。もう明確に文書になっているのですから、労働大臣は明確にお答えしなかったということだけは確認しておきたいと思います。  そこでちょっと……
  173. 岡野裕

    岡野国務大臣 それは文書ではありませんので。雑誌であります。私が申し上げているのは、ここで明解に平成九年四月一日から全面的に週四十時間労働制を施行いたします。
  174. 金子満広

    金子(満)委員 ということを聞いております。それはわかりました。しかし雑誌にもそういうように出ておりますが、この見解には直接はお答えにならなかったということはわかります。  そこで、次に質問を進めたいと思うのですが、通産省と労働省は、四十時間、千八百時間を実施する上でこれまで協議したことがあるのか、協議の場というのがあるのか、この点伺っておきたいと思います。
  175. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 私ども労働省と通産省の間には、この労働時間の問題に限らず広く雇用対策、そういう産業構造の変化に対応した施策、それから労働時間の問題等々協議していくための両省幹部による連絡会議の場を設けてございます。
  176. 金子満広

    金子(満)委員 いろいろの分野はそうですけれども、特に時短問題について定期協議の場というのはあるのですか。
  177. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 正式の場として設けておることはございません。必要があればその都度協議をすることはもちろんございます。
  178. 金子満広

    金子(満)委員 これは大変大事なことだと思うのですね。四十時間、千八百時間を実施するために一番大きな問題を抱えているのは中小企業の分野、これはもう御承知のとおりだし、指摘されたとおり、私もそう思うのですね。そういう中で、労働省と通産省が定期的に協議の場を持って、担当者がこれを推進していくというのはうんと大事じゃないか。  これは一九九一年、平成三年通産省の告示の中で、御承知の下請中小企業振興法というのがありますが、その中で第三条第一項の規定に基づく振興基準というのがあります。ここには随所に時間短縮の問題が入っているのですね。ですから、振興基準の中で、「下請中小企業が円滑に人材・労働力を確保するために、」もう最初から「労働時間短縮、職場環境改善及び福利厚生施設の整備等魅力ある職場づくりも必要となっている。」こうあつたり、それからまた、「経営基盤の強化及び時短等を図っていくためには、発注方式等の面における親企業の協力が必要である。親企業としても下請中小企業の存在なくしては自らの発展もあり得ない点を認識し、下請中小企業の自助努力に協力していくことが」必要だ、こうあつて、各所に時短の問題が入っているのですね。  ところが、これがなかなか実行されないという点も私はあると思うのですけれども、そういう中で私は、こういう下請企業がいろいろ問題になっているわけですから、そういう点で通産省と労働省とが時短問題でぜひ今後は協力をしていくような定期的な協議の場を持って、どこに問題があるのかをはっきりさせていくような努力をしてほしいと思うのですね。その点どうですか。
  179. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 中小企業を中心とした労働時間の問題で、私どもそれから中小企業庁でよく意思疎通を図りながら、両方のでき得ることを真剣に展開していかなければいかぬことは御指摘のとおりだろうと思っています。  御指摘のございました下請振興基準についても、私どもとの話し合いの中で、例えば下請企業に対する発注者等に対するいろいろな時間短縮に向けての要請、そういった観点も織り込んでおりますし、また両方共管になっております中小企業労働者の確保等に関する法律、これの中でも時間短縮のための、設備、施設等の整備に対する援助等、あるいは、税制面でも共同で協議している。だからこういったことを私ども、政策の必要性がある都度、遠慮なしに両方協議をいたしているわけでございまして、例えば定期的な会議の場だけでそういった政策論議をするということに限らず、随時幅広い観点から協議をしたり、相談をしてまいりたいというふうに思っております。
  180. 金子満広

    金子(満)委員 ぜひそういう点で中小企業の問題についての援助指導、そしてそれを強化していくことが大事だ、これはそのとおりで、ぜひやってほしいと思うのです。そこで、今度の時短促進法でも、附則三条で「きめ細かな指導援助等を行う」、きめ細かなというのはほかの法にもありますけれども、言葉があって実体がないとわからないわけですね。私はそういう点で、こういう用語の中で本当にきめ細かくやるということは、通達を流すということだけではなしに、現地の指導もうんと大事だし、いろいろな形で相談に乗っていくということも大事だと思うのですね。  ところが、それを進めるのには、労働省は地方に労働基準監督署があるわけですから、これは人がうんと足らないんだと思うのですよ。ですから、きめが細かいといっても粗っぽくなってしまうのはしようがないのです。もっとやれ、もっとやれと言えば長時間過密労働なんですよ。もっとやれと言えば過労死にいってしまって、これは労働省は何をしているということになってしまう。私は、行革で要員を減らすという言葉が一般的に言われるけれども、減らすところは減らすべきだ、しかし必要なところはふやさなければならない。四十時間というのは、労働者の権利だけじゃないんです。私は、これは人間としての権利だと思うのです。  だから、そういう点を考えていったとき、ゆとりある生活というのをどの省庁が責任を持って、どういう人が具体的に指導しているのか。私は監督官だと思うのです。それを大臣余り低姿勢じゃなくて堂々と、もっと要員をふやす、人員をふやしていくというのを要求すべきだし、私は国会にも堂々と訴えていいと思うのですよ。ここのところでうじうじしていたら、もう労働強化でひどいことこなっている。  一定の時間、二年過ぎたらやはり四十時間はできなかった、また延長するか。それで本条では四十時間は生きています。外国には四十時間といっても、外国人労働者が来て働くときになったら、何だ四十時間じゃないじゃないか、これは看板に偽りあり、こうなるのですから、要員問題について、大臣、もっと姿勢を高くして私は要求すべきだと思いますが、どうですか。
  181. 岡野裕

    岡野国務大臣 やはり国民がお許しになられるその予算の中で、限られたる要員で万全な仕事を一生懸命していかなければならない。そのために具体的な予算が定員等で決まります場合、まず一番に減らしますのは本省から減らしていくわけです。本省の中の共通部門から減らしていく。その次は中間管理機構、支分部局、これの面のやはり共通部門から減らしていきます。そうして、一番大事なのは第一線の、基準監督署でありますならば監督官であるし、あるいは職業紹介所におりますところの私どもの職員であります。そういうものは極力充実をさせてまいろうということで、行政改革の中の要員の問題、それから私が預かっておりますところの労働行政の、国民に向けてのきめ細かないろいろの御助言あるいは御指導申し上げるというようなもの等をマッチさせる、そういう努力を今後もいたしてまいりたい、こう思っております。     〔委員長退席、河上委員長代理着席〕
  182. 金子満広

    金子(満)委員 遠慮しないで、限られた人員で、そこから来ると、今限られたんじゃだめなんですよ。これを広げない限り、私は労働省のずっと骨を折ってやっておる皆さんは人が足らないというのを知っていると思うのです。なかなか言えないんだと思う。現地へ行ったら、地方ではみんな足らないんですよ。何か土石流といったら、監督署は何をやった。何かあったら何をやった。事が起こって責められるのは労働省なんです。現場はそういうつらいところにいるんですから、僕は大臣もそういう点は、今お答えありましたけれども、堂々と必要な人員は要求してほしいと思うのですね。  同時に、時間がもう迫ってまいりましたが、二十六日、おとといの朝日新聞で「法定労働週四十時間 混乱招いた「指導期間」」という中で、いろいろ指摘された文書が載っているのですけれども、私は、こういう中で、先ほど紹介いたしました「財界」の二月十一日号のあの四十時間の問題で、商工会議所による勝利だと述べている、このことも取り上げていますし、もう一つ非常に大事な問題というのは、「四十時間制への移行を怠る企業があれば、様々の努力で四十時間制を達成した事業主の間から、「正直者がバカを見た」という行政不信が噴き出しかねないだろう。」ということが載っている。  現実にいろいろな困難を乗り越えて四十時間をやった企業というのは、先ほどの数字にもありましたけれども、相当の努力があったと私は思います。正直者がばかを見た、やらないところは何だ、また期間延ばしていろいろの手当てがあるのか、やらなくたっていいんだ、私はこういう考え方は法のもとに平等だという点に真っ向から反していると思うのです。法のもとに平等でなければいかぬ。よく言われることですけれども労働基準法の第一章第一条から、「この法律で定める労働条件の基準は最低のもの」だ、努力目標じゃない、これ以下はだめだ、「最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならない」ということをはっきり言っているのですね。だとしたら、私は、正直者がばかを見たというのが、実際には私ども聞きますよ。あと一カ月で終わるわけです。三月三十一日までに努力して四十時間にしようというのは、あの企業もあの会社もそうなんだというのを私ども相談を受けて知っているのです。そういう人が、ああ、やはり努力してばか見たというようなことのないように、その点をどう今後考えていくか、一言伺っておきたいと思います。
  183. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生、やはり今までに四十時間達成をした中小企業というものもいっぱいあります。そのためにはいろいろ助成措置も講じてきたということでありますが、やり遂げたという喜び、これは雇用主としてあるいま雇用者として、みんなで、おれたちは四十時間になったな、これで人間としてのゆとりのある、あるいは心の豊かさが感じられるような、そういう現実の姿というものが味わえた、この喜びは法律を守り得たということとはまた別の異なった喜びだと思います。  私は、今後も、正直者がばかを見たというような経験がないように、その喜びをともに味わうような手の差し伸べ方をしてまいりたい、こう思っておりますので、ひとつ一緒に御協力をお願いいたします。
  184. 金子満広

    金子(満)委員 大臣のその言葉は非常にいいのですね。だから私はさっきのものを引用したのです。今の大臣の、達成した感動、喜び、やったという、そういうものとは別に、損したなというのは、商工会議所の中心にいる人が中小企業庁と組んで一年間努力してやった、そうしたらここで二年間は延長するということになったので勝利である、これを書かれたら、おまえばかやったではないか、何やつたねというような言葉になるのです。だから私は、ここのところは労働行政の責任者として大臣が、仮にこういうことがあったとすればそれは間違っていますと言うくらいの見解が欲しかったわけです。そこには言及されなかったけれども、やはり法のもとで平等だといったら全部が四十時間ということで努力をしていかなければならない、こういうことがあるわけです。  外国の例は随所で引かれ、随分一般のマスコミでもまた国会でも議論になっているわけですけれども、もうヨーロッパ千八百時間、これはドイツでもフランスでもイギリスでもそうだ。いや、ドイツはもっと時間が短縮されている。週四十時間のみならず、三十五時間じゃないか。みんな暗記しているくらい演説をやっているのですよ。  そういう点に比べて、日本は生産性は高いとか、あるいは経済大国で世界第二だとかいったら、労働時間の方はずっこけている。こういう点では、きょうの質問最初に自民党の若い委員が、もう四十時間は国際的にも常識だ、これぐらいのことは守らなければならないという発言をされましたよ。私は、そういう点で、守られなくちゃならぬのが守られていない、国際常識が日本では常識として通っていない。こういう点で、ここのところをどう直していくか、改善していくか、そして国際常識に到達するかという点で、最後に大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  185. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生、私は昭和一けたでありますが、失礼をいたします、多分同じぐらいの世代の方ではないかな、こう存じます。  我々は、本件をミュンセンだと考えておりません。ゾルレンだ、こう考えております。それが自民党の先生のおっしゃる、若い方の冒頭の話だ、こういうふうに私は理解をいたしております。やるべき、当為であるということでひとつ頑張りたいと思っております。よろしくお願いいたします。
  186. 金子満広

    金子(満)委員 最後に一言。  四十時間を達成する上で、労働者はみんな望んでいる、国民の多数も望んでいる、しかし経営者の中には望んでいない人もいる、もちろんやっている人もいる。しかし、いろいろあるけれども、この四十時間達成で決定的な力を持っているのは労働省だし、やらなければならない。労働省の責任というのは非常に重いということで、ぜひ四十時間、千八百時間達成のために力を尽くすように要請をして、質問を終わりたいと思います。
  187. 河上覃雄

    ○河上委員長代理 次に、中川智子君。
  188. 中川智子

    中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子でございます。  きょうは、なるべくいろいろなことをともに認識し合って、そして前に進んでいこうという気持ちでこの場に立っております。  大臣にちょっとつかぬことをまずお伺いいたしますが、ぬれ落ち葉ですとかわし族とかいう言葉の意味を御存じでしょうか。
  189. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生最初、ぬれ落ち葉と言われました。それはよくわかりますが、その次、何とおっしゃられましたか。
  190. 中川智子

    中川(智)委員 わし族です。
  191. 岡野裕

    岡野国務大臣 存じません。
  192. 中川智子

    中川(智)委員 両方ともですか。
  193. 岡野裕

    岡野国務大臣 ぬれ落ち葉の方はわかりますが、わし族というのは存じません。
  194. 中川智子

    中川(智)委員 一生懸命働いた男の方が定年を過ぎまして、その後の人生の中で奥さんにびたっと張りつくという表現をぬれ落ち葉といいます。そしてもう一つ、わし族と申しますのが、元気で奥さんが外に出かけていこうとすると、定年過ぎの男性が、わしもわしも、わしも連れていってくれと言って離れてくれないので、とても困る。定年後の男の方の悲哀をいろいろな形で表現した、これは流行語でございます。ちまたでは知らない人はおりません、永田町では余りはやっていないのかもしれませんけれども。  このわし族とぬれ落ち葉に象徴されますように、働き過ぎた男性が燃え尽き症候群になりまして、その後の人生が非常に悲しい、かわいそうなぐらい元気がない。そのような人生をつくってきたのは、やはり時短というものがかなりおくれてきた、この国際的にも恥ずかしいほどおくれている日本状態がそのような男性をつくってきたと思います。  私は、大企業に勤めている夫を持ち、そして私自身は中小企業で、共働きをしたという経験を持っております。その後、専業主婦で家にいて、今どういうわけかこういうところに立っているという、多岐な、数奇な運命をたどってまいりましたので、いろいろな思いを込めて御質問いたします。  今、わし族とかぬれ落ち葉と申しましたけれども、やはり、なぜ男の人が定年の後元気のない人生を送らなければいけないかと申しますと、地域に生きていないのです。いつもいつも会社にとられてしまって、地域に生きられない。ですから、この時短を一日も早く実現していただきたいと思いますのは、ゆとりとかそういうことだけではなくて、やはり家庭の中に父親の姿をしっかり見せていく、そのことが、今さまざまな形で、子供がかわいそうな状況がございますが、やはりそれは父親の姿が見えないことに大きく起因しています。  この時短がしっかりと魂が入り、二年後には胸を張って堂々と、やってよかった、ここまでできたと大臣とともに、そしてこのメンバーとともに喜び合えるのは、それは子供たちのためでもあり、そしていつも待つだけの主婦、家にいる女性たちの長い間待ちこがれていた法律であるということを申し述べさせていただきます。  その上に立って、やはりまだ千八百時間には百時間以上の達成に対しての開きがございます。また、最近はちょっと困ったことにその短縮が足踏みしているという状況があるように聞いておりますけれども、なぜ足踏みしているのでしょうか。そのあたりの原因と思われるようなことをお教えください。
  195. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御指摘のように、年間総労働時間千八百時間に向けて取り組んでまいっておるわけでございますが、現時点、千九百十九時間という最近の数字でございます。  こういった千八百時間を目指すためには、三つ大きな手法、手段がございまして、一つが週四十時間労働制の週休二日制の実現でございます。それから有給休暇の取得促進、それから長時間残業の削減、この三本柱を中心に千八百時間に向かって取り組んできておるわけでございますが、今まで、六十年来、所定労働時間の減少がある程度続いたわけでございますが、平成五年以降中小企業について猶予措置を三年間とっておりましたこともありまして、ここのところ、この所定労働時間の減少が少々とまっているというようなことが一つございます。  この点につきましては、ただいま御審議いただいていますように、来年の四月一日から労働基準法の規定を全面実施して、それに対して懇切丁寧な指導を行うことによりましてその定着を図る、こういうことによって次なる進展が見られるのではないかというふうに期待をいたしておるわけでございます。  それからもう一つは、長時間の残業につきましては、一時に比べると経済の影響もございましてかなり水準は落ちているわけでございますが、有給休暇の取得率が、依然本人が本来とり得る日数に対しまして半分を少々上回る程度ということで、大きな進展が見られない。この辺の、有給休暇の取得の促進がまだ、もう少し足りない、こういったことが重なっているのかというふうに考えております。  それから、先ほど、ことしの四月一日と言うべきところをどうも来年の四月一日と申し上げたようで、その点は修正させていただきたいと思います。
  196. 中川智子

    中川(智)委員 わかりました。  やはり、大企業と中小企業という言葉で一くくりにしましても、中小企業にはかなり未組織の方々がたくさんいらっしゃいます。その未組織の方々へのきめ細かな指導というのは具体的にどのようにされていくのか、お答え願いたいのですが。
  197. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 これから、この四月一日以降週四十時間制を定着させていくためには、中小零細という規模が対象になるわけでございます。御指摘のとおり、労働組合の組織の現状から見ますと、かなり未組織の分野を対象としていくことになろうかと思います。  したがいまして、第一に、実際の中小零細企業の方の業務の遂行方法、あるいはそういう業務展開のシステムといったものをいかに効率化させるかといったノウハウ、あるいは労働時間管理について、例えば、変形労働時間制等もうまく使えれば効果的に週四十時間制に持っていけるのに、なかなかその辺の工夫ができない、そういったノウハウの提供等が一つのかなめになろうかと思います。  それで、私どもそういったことを、事業主団体と提携しながら集団的な説明会等を計画的に、網羅的に開催して、そういったところで呼びかけ、その後もフォローアップさせていただく、こういったことがもう一つ大きな柱になろうかと思います。  それから「未組織の分野だという御指摘でございます。  ただ、これは、多くは業種別の団体あるいは地域の事業主団体等の傘下になっているケースが多いわけでございますので、先ほどの手法とあわせまして、そういった団体の方に自分の傘下の事業主の方の労働時間の状況自主点検していただく、このための助成制度を用意して、そういった団体の方に、個々の傘下の事業主労働時間の短縮に向けていく際の問題点を洗い出していただいて、そういう結果に基づいて指導を丁寧に行っていく、こういうことを行ってまいりたい。そこに、実際にそういうことを通じて四十時間制を定着させていくための実際の工夫を行った場合には、省力化投資やそういったものに対して新たに設ける助成制度を活用していく、こういう組み合わせでこの四十時間制の定着を図っていきたいと思っております。
  198. 中川智子

    中川(智)委員 ただいま、いわゆる変形労働時間制のお話がありましたが、いわゆる規制緩和というのはやはり慎重にしていただきたいし、また、この変形労働時間の弊害というのが一方でかなり深刻になっております。  最初は週休二日ということで、ずっと週休二日が言われてきたわけですが、いつの間にか週四十時間、それから変形時間制もある。その変形労働時間制が、すごく限られた時間の中でかなり厳しい労働をせざるを得ない。そこで過労死なども、統計を見てみますと、やはり普通の働き方ではなくてそのような変形労働時間制の中で起こり得る、そのような危険性も危惧されるわけです。  この規制緩和は慎重にされるべきだと思いますが、変形労働時間制とあわせてちょっと御説明をお願いしたいのですけれども。抽象的な質問でごめんなさい。
  199. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 変形労働時間制にはいろいろなタイプがございます。今、私ども、週四十時間制との関係で活用をしながら、この週四十時間制を、いわば週休二日体制を定着させてほしいと言っておりますのは、一年単位の変形労働時間制でございます。これは、年間を通して業務の繁閑をうまく活用しながら休み等を計画的に配置することによって、年間平均すると週四十時間になっている、こういう形を実現するために、労働基準法上そういう制度化がされているものでございます。  これを使うためには、まず労使間でそういう年間を通しての変形労働時間制でいくということを協定を結んでいただくことになります。それから、ある程度、少なくとも三カ月ごとには、休みそれから始業、終業時間というものを労働者の方にもわかるように特定をしていただくということがもう一つございます。それから、日々労働時間がもし変更する、本来なら、休日をふやすということで、休日をうまくばらまくという形での変形労働時間制でございますが、一日の労働時間をいじる場合でも九時間以上は延ばせない、九時間が限度、それから週では四十八時間が限度という限度時間を設けてございます。  したがいまして、こういった形でいきますと、一日九時間にすれば当然七時間という日もつくらないと平均四十時間になりませんので、そういった形で調整されることと、限度時間も、八時間を一時間超えるだけでございますから、これ自体ではそういった過労死というような問題につながることはもちろんございませんし、むしろ、今までの四十四時間体制が、四十時間、ある程度のばらつきはというか、年間で見ると、時々は三日連続休みというようなところと一日休みというのが業務の繁閑に応じて入ってくるかもしれませんが、実質、年間通して見るとかなりの時間短縮につながっておる、こういう制度でございます。  もちろん、いろいろ、検討に当たりまして、そういったところで働く方々の、例えば女性の方はお子さんを保育所に迎えに行くために使い勝手が悪いというような御指摘もございますので、そういった実情も十分配慮しながら、現在中央労働基準審議会の方でも御議論願っておりますが、そういった角度から、これをより使い勝手のいいものにすると同時に、そういった保護の観点も念頭に置いて議論をお願いしているところでございます。
  200. 中川智子

    中川(智)委員 今、女性ということがございましたが、やはり女性の働き方、そして、今少子化社会の中で、やはりより労働条件が、エンゼルプランの中で、子どもをもうこれ以上産めないという、産みたいけれども、欲しいけれども産めない。ですから、私の周りの友人なんかは一人っ子クラブなんてつくってしまって、一人っ子しかいないという状態がかなりふえていて、非常に危ないなと思っています。私も、厚生委員会が今上で開かれていまして、かけ持ちではたばたしているんですけれども、やはり、働き方の問題と、そして子どもたちをもっと産んで、もっともっと次代を担う子どもたちの笑い声がたくさん聞こえてくる、そのような日本社会にしていくためには、女性にそのような形でいわゆる無理な労働を強いてはならない、男の人はもちろんでございますが、女性の働き方がよくなれば、やはり男性もよくなる。それはお互いに、そこのあたりをよく考えていただきたいと思います。  そして、毎勤統計なんですけれども、これは、パート労働者込みでの統計なのかどうかということをちょっとお伺いしたいのですけれども
  201. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 この千八百時間に対応して私どもが述べております、現時点ですと千九百十九時間という数字は、パート労働者も含まれた数字でございます。
  202. 中川智子

    中川(智)委員 いろいろ御親切なお答え、ありがとうございます。  それでは、次に進ませていただきます。  時間ももうちょっとしかないので、ちょっと焦っているんですけれども、先ほど私、一生懸命原稿を書いてきた中に、大臣がおっしゃった、正直者がばかを見ると、ああ、きょうはこれは受けると思って喜んで来ましたら、たった今それをおっしゃったのでがっかりなんですけれども、やはり、正直者がばかを見るということがあってはならないと思われるのですが、今回の新たな助成措置につきましても、新しい助成金、本当に一生懸命苦労して苦労して時短に取り組んできた企業と、そして新助成金のこれからの中身について、そのバランスというものはどうなっているか、その兼ね合いはうまくいっているのかどうか、そこをお伺いしたいのですけれども
  203. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 先ほども申し上げました、今度新たに設けて、週四十時間労働制定着させるための省力化投資等に対する助成措置でございますが、これは、現在進めております時短奨励金とは違いまして、今度は、猶予対象事業場で、四十時間制の移行にある程度困難を感じているところに対象が絞られできますので、規模、金額の点で、今までのものよりはある程度絞り込みながら設定をさせていただくことにしたいと思っております。
  204. 中川智子

    中川(智)委員 この法案では期間が二年の猶予、何度も何度もここのところを伺っていて、本当にしつこいなと思われるかもしれませんが、ぜひとも、やはりすべての労働者が地域で生きていき、そして、奥さんにぬれ落ち葉とかわし族とか言われながら邪魔にされることのないように、地域に帰ってきっちりと地域で生きていく、そのために生きていく法律であっていただきたいと思いますので、ぜひとも、この二年間がもっと延ばされることは決してないという決意を込めて、大臣の、もう一度この時短への取り組み決意をお伺いいたしたいと思います。     〔河上委員長代理退席、委員長着席〕
  205. 岡野裕

    岡野国務大臣 過去、軟着陸を図るべく、そして真の定着を図るべく、徐々に勤務時間短縮を進めてまいりました。したがいまして、二年間の指導期間があるが、これがないようにお決めを本委員会お願いをいたしたい、こう存じております。
  206. 中川智子

    中川(智)委員 ありがとうございました。
  207. 青山丘

    青山委員長 次に、吉田公一君。
  208. 吉田公一

    吉田(公)委員 まず、週四十時間制ということで、時間短縮をしろ、徹底しろ、そういう質問も多かったし、また、大臣の御答弁も、とにかくそのことについては最大の努力を続けていくという話でございました。  そこで、私が一つ心配をいたしておりますのは、時間短縮をしろ、しろと言って、これは体力のあるところや公務員の人たちはいいけれども、したくてもできないような零細企業があるわけです。そういう側面も考えていかないとこれはどっちにしたってうまくいく話ではないので、そういう零細企業の人たちのためこも、一方的に時短だ、時短だ、こう言って責めることはいかがなものか。私は、第三者的な立場に立って、実はそう思っているんですね。その点は、大臣はいかがでございますか。
  209. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生罰則規定はそのまま生きて、この法律案、ぜひ成立をさせていただきたいと思っております。しかしながら、実際には二年間、指導助言というものを十分に、先ほども冷やかしのお言葉をいただいたわけでありますけれども、本当にきめ細やかに助言を当としてまいりたいということで、無理無理引きずり込むというようなことは考えておりません。
  210. 吉田公一

    吉田(公)委員 やはり、零細企業側の人たちに言わせれば、それはもう社員の人たちには週休二日制にしてあげたい、あげたいんだけれども、しかし、今の企業の体質では、そこまでなかなかいかないんだ、ともにつぶれていってしまうというような考え、あるいは悩みも聞くことがあるわけですね。  だから、一つ私は問題に思っていますのは、日本人は働き過ぎだ、だから、もっともっと時間短縮をして、そして休暇を与えて豊かな生活をしていく、その理念はまことに結構なんだ、私もそれには賛成なんだ。ただ、例えば、労働基準監督署なんかは、自分たちが先に週休二日制にしてしまって、そして報酬も手取りも全然変わらない。そして、今度は管内の零細企業に、あなた方、休め休め、休まなければだめだ、罰則規定もあると言っている。そういうやり方に私は疑問を持っているんです。  その点、どうなんですか。本当は、まず自分たちは週四十四時間制でやっていて、そして、あなた方、休んでください、私たちもいずれ週四十時間制にしますからというのが当たり前の話だ。それを、一番最初国家公務員が休んでしまって、国家公務員が休んだら、今度は地方公務員が休んでしまった。今度は警察、消防、今東京に空き交番がいっぱいあるのはどういうわけだ、週休二日制の結果ですよ。  そういうことを考えて、国民や都民の皆さん方には迷惑をかけません、こう言って週休二日制にしたわけだ。おかしいでしょう、自分たちが先に休んじゃって。それで労働基準監督署の署長が来て偉そうなことを言って、皆さんはこれから我が国が豊かな生活を送るためには労働時間を短縮しなければいけませんなんと言っておいて自分が先に休んじゃっている。そういうことが私は一番問題だと思っている。その点どうなんですか。一体、国家公務員というのは働き過ぎの労働者か。
  211. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 まず一つでございますが、労働基準監督署がこの労働時間短縮を進める、とりわけこれから中小零細企業に対してこの四十時間制を進めていくに当たりましては、先生指摘のような印象を持たれるようなこと決してなく、きめ細かな指導援助を進めていきたい。そういう趣旨で今回この時短促進法におきましても懇切丁寧な指導援助を行う、こういう趣旨を書いていただいて、その線に沿いまして集団的な指導とか、事業主団体の方による自主点検的な事業と私どもが用意する助成金とを組み合わせた形でまず確実な定着を図っていく、こういうことでございますので、先生指摘のような雰囲気が私どもこれから進める中で出ないようには十分留意してまいりたいと思っております。  それから、公務員が先に週休二日をしてという点でございますが、これは直接公務員全体の担当ではございませんのでなかなかお話ししにくいのですが、週休二日制というものが、前川レポート等で指摘されていますようにある程度世界的な一般的な働き方として意識されてきておるわけでございます。そういった中でそういった働き方というものをある程度日本も受け入れていこう、そういうことで公務員その他の分野でもある程度取り入れていこうという形で進んでいったのだろうと思います。  確かに中小零細について事業主方々はそういった趨勢とは別に個々に難しい問題をそれぞれ抱えておられるわけでございまして、今回の週四十時間制の実施はそこに私どもはぶつかっていくわけでございますので、話が繰り返しになりますが、先生指摘のような雰囲気が出ないように十分留意しながら私ども労働時間短縮というものを進めてまいりたいと思っております。
  212. 吉田公一

    吉田(公)委員 要するに私は、零細企業の皆さん方が一生懸命働いて、そしてこの経済状況の厳しい中で何としても努力をして生活しているわけだ。ところが、世界的な趨勢だ、我が国が週四十時間をとらなければまさに世界からおくれていくなんというまるで宇宙みたいな話をして。そうじゃなくて、実際にそうしなければ食べていけない人たちのことをちゃんと考えるべきだ。  だから、そういうことを考えると、自分たちが先に休んでいて、まさに週四十時間制は金科玉条のごとくそういうことを押しつけるなんということは絶対やっちゃいけないことだ。つまり理解をしてもらって、そしてまずその経営状況というものを理解しなければだめですよ。  それはだれだってやりたいですよ。経営者だって労働者の皆さん方に、社員の皆さん方に、週四十時間制なんて時代おくれですよ、週三十時間の時代ですよとだれだって言いたいですわ。だけれども、そこに言えないところに問題があるわけです。我が国の生産の九〇%は中小零細企業じゃないですか。その生産量を見たって、中小零細企業が我が国の産業に占める割合からいったって圧倒的でしょう。だって九〇%だよ。だから体力のあるところはいいんですよ。世界の趨勢です、はい、わかりました。やればいいんです。そうでないところは、世界の趨勢なんていったって、まるで現実とちぐはぐな話をされたってできる話じゃないんです。  だから、このことについてはそういう問題もあるということ。そして問題は、働け働けと言ってやった人にはそれは罰則規定ないよ。だけれども、私はまだ若いんだ、元気なんだ、子供たちの養育費もためなきゃいかぬ、教育費も入学金も払わなくちゃいけないから、あした土曜日半日働きたいんだと言っている人だっていっぱいいるんだからね。しかも今度は日給月給にしなきゃいけないと言って頭を抱えている中小零細企業の経営者もいるんだ。  だから、そういうことも十二分に配慮しながら、つまり公務員の立場の感覚で言ったってだめなんですわ。自分たちが先に休んじゃっているんだから。それで給与が下がりましたか。下がらないでしょう。だから、大臣、そこを私は言うんだよ。でかい国家に保障されている皆さん方と何の保障もないような中小零細企業の皆さん方と雲泥の差があるわけだから、そういうきめの細かい配慮をしながら、やはりこれからの労働時間短縮の問題は慎重に、そして着実に歩んでいかなければ、ただ やれやれなんという話は私は納得がいかない。もう一回ちゃんと……。
  213. 岡野裕

    岡野国務大臣 先生がおっしゃいますように、日本の生産の中で中小企業皆さんが生産してくれるシェアが非常に大きいというお話であります。同じように、大企業に働く労働者の皆さんもおいででありましょう。同時にまた、中小企業に働く労働者の諸君も大勢いるわけであります。  我々労働行政としましては、大企業に働く皆さんは週休二日制あるいは週四十時間制、この恩典に浴するが、中小企業に働いて日本の生産をしょって立つそういう労働者の諸君は置いてけぼりでいいというわけにはまいりません。縁の下の力持ちで一生懸命鉢巻きして頑張ってくれている皆さんにも同じような週四十時間制の実施によっての心のゆとり生活の豊かさ、家族団らん、これを味わっていただきたいな。  しかしながら、経営状況が小さい規模であれば、その辺マイナスのハンデもしょっているだろう。したがいまして、中小企業皆さんの場合には、先ほど来お話が出ましたが、ポジティブアクションというようなことでやっていただける面については助成もしてまいりました。今後も二年間、懇ろなという言い方をしておりますが、御指導も申し上げ、御助言も申し上げ また御助成も申し上げて、みんなで週四十時間の喜びというものを味わいたいものだ。労働行政としてはそういう気持ちだということを先生御理解を賜れば、こう存じます。
  214. 吉田公一

    吉田(公)委員 今大臣が言ったように、体力のあるところはできる。しかし、体力のないところはやりたいと思ってもできない。実はそこが問題なんです。だから、やりたいと思ってもできない人たちのためにどうやっていくかということを考えろ、こう言っているわけです。  そこで、次に、公共職業安定所というのがある。これは戦後まさに失業者が多いときに国が公共職業安定所というのをつくって、できるだけ失業者の救済を図ろう、こういうことで設立したのが公共職業安定所だ。しかし、今日では民間の就職情報誌、就職会社あるいはインターネットの発達によって、もう私は公共職業安定所というのは要らないのじゃないか。  もっともっと、例えば公共職業安定所の職員の皆さん方がどんどん外へ出ていって、おたくには求人はありませんか、おたくには求人はありませんか、外へ出てですよ。そしてどんどんやってくれるならいいんだけれども、そうじゃない。失業者が来るの待っていて、そして求人広告会社から出てきた冊子をどこかへ挟んで、これはいかがでございますか、こっちはどうですか、そういう時代じゃない。  だから、これからの公共職業安定所というのは、もっと行動を起こして、そして積極的にやるのならいいけれども、座って待っている公共職業安定所なんというのはまさに時代おくれだよ。その辺どうなんですか。
  215. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 ただいま先生から厳しい御指摘がございましたが、私ども全くそのとおりだと思っております。  今回の不況期におきましても、これはまず職業紹介をきちんとするためには求人の確保、これができなければ紹介できないわけでございまして、そのためにはやはり公共職業安定所長あるいは幹部が特別求人開拓班のキャップとなって具体的に出かけていって求人についてのお願いをする、こういうことでやってきております。  その点につきましては、出かけていっていろいろお話ししますと、特に中小企業のおやじさんなんかは、そういうことでわざわざ来てくれたのなら私のところもこういうことで何人か求人を出しましょう、そういうようなことが積み重なって求人を確保する。顔がつながりまして親しくなれば、これは電話等でお願いすればやれるということもありますけれども先生おっしゃるように、まず出かけていってそういう求人を確保して、その上で職業紹介をするということでなければ、公共職業安定所の存在意義はないというふうに考えております。  それから一方で、インターネット等も発達していきまして、そういう意味では情報が広範囲になりますから、そういう意味での問題もいろいろあるわけでございます。それはそれで発達していくと思うのですが、ただ一方で、公平な職業紹介という面から見ますと、例えばインターネットなんかを使える人が全部いるかというと、特に中高年の失業者の方はなかなかそうもいかない、あるいは中小零細企業のおやじさんばそうもいかない、そういう問題もございます。  そういう意味では、やはり無料で職業紹介をきちんとする公共職業安定所の機能というものも今後充実をしていかなければならぬ。一方で、民間におきます情報提供機能あるいは職業紹介、そういうものも充実していく。両方相まって、この難しい雇用失業情勢の中での就職問題を解決していかなければならないというふうに考えております。
  216. 吉田公一

    吉田(公)委員 要するに、インターネットや民間就職情報誌や新聞の求人広告と同じようなことをやっていたら、職業安定所なんて要らないと言うのだ。だから、そういう求人広告誌や新聞の求人広告と同じようなことにならないように、もっと積極的にやっていかなければ、戦後と同じような考え方で、来る人だけの相談をしている、そんな職業安定所は要らない、そう思っているわけです。ぜひもっと活動力のある、本当に、失業した人たちのために働く、まさに働く意欲を持たなければいけない、そう思っております。  以上で終わります。
  217. 青山丘

    青山委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十二分散会