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1997-03-03 第140回国会 衆議院 予算委員会第六分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会平成九年二月二十五日(火曜日)委員 会において、設置することに決した。 二月二十八日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       尾身 幸次君    高橋 一郎君       野中 広務君    愛野興一郎君       生方 幸夫君    新井 将敬君 二月二十八日  高橋一郎君が委員長指名で、主査選任され  た。 ――――――――――――――――――――― 平成九年三月三日(月曜日)     午前十時一分開議  出席分科員    主 査 高橋 一郎君       尾身 幸次君    下村 博文君       新藤 義孝君    野中 広務君       愛野興一郎君    上田  勇君       倉田 栄喜君    鈴木 淑夫君       生方 幸夫君    新井 将敬君    兼務 飯島 忠義君 兼務 大村 秀章君    兼務 棚橋 泰文君 兼務 北側 一雄君    兼務 坂上 富男君 兼務 穀田 恵二君    兼務 畠山健治郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  佐藤 信二君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      麻生 太郎君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      土志田征一君         経済企画庁総合         計画局長    坂本 導聰君         経済企画庁調査         局長      中名生 隆君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       今野 秀洋君         通商産業省産業         政策局長    渡辺  修君         通商産業省環境         立地局長    稲川 泰弘君         通商産業省機械         情報産業局長  中川 勝弘君         通商産業省生活         産業局長    村田 成二君         工業技術院長  佐藤 壮郎君         資源エネルギー         庁長官     江崎  格君         資源エネルギー         庁公益事業部長 岡本  巖君         中小企業庁長官 石黒 正大君         中小企業庁計画         部長      田島 秀雄君         中小企業庁小規         模企業部長   篠原  徹君  分科員外出席者         公正取引委員会         事務総局経済取         引局取引部消費         者取引課長   山本 和史君         経済企画庁長官         官房会計課長  照井 義則君         経済企画庁国民         生活局消費者行         政第一課長   中城 吉郎君         国土庁大都市圏         整備局総務課長 大堀 一平君         法務省入国管理         局入国在留課長 坂中 英徳君         大蔵省主計局主         計官      松川 忠晴君         大蔵省主計局主         計官      御厨 邦雄君         農林水産省食品         流通局商業課長 林  秀雄君         通商産業大臣官         房会計課長   古田  肇君         消防庁予防課長 東尾  正君         商工委員会調査         室長      安本 皓信君         予算委員会調査         室長      大坪 道信君     ――――――――――――― 分科員の異動 三月三日  辞任         補欠選任   野中 広務君     新藤 義孝君   愛野興一郎君     鈴木 淑夫君   生方 幸夫君     岩田 順介君 同日  辞任         補欠選任   新藤 義孝君     下村 博文君   鈴木 淑夫君     倉田 栄喜君   岩田 順介君     石井 紘基君 同日  辞任         補欠選任   下村 博文君     野中 広務君   倉田 栄喜君     上田  勇君   石井 紘基君     中桐 伸五君 同日  辞任         補欠選任   上田  勇君     愛野興一郎君   中桐 伸五君     生方 幸夫君 同日  第二分科員北側一雄君、坂上富男君、第三分科  員穀田恵二君、第五分科員飯島忠義君、畠山健  治郎君、第七分科員棚橋泰文君及び第八分科員  大村秀章君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成九年度一般会計予算  平成九年度特別会計予算  平成九年度政府関係機関予算  〔総理府経済企画庁)及び通商産業省所管〕      ――――◇―――――
  2. 高橋一郎

    高橋主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりましたので、よろしくお願いをいたします。  本分科会は、総理府所管経済企画庁及び通商産業省所管について審査を行うことになっております。  なお、各省庁所管事項説明は、各省庁審査の冒頭に聴取いたします。  平成九年度一般会計予算平成九年度特別会計予算及び平成九年度政府関係機関予算総理府所管経済企画庁について審査を進めます。  政府から説明を聴取いたします。麻生経済企画庁長官
  3. 麻生太郎

    麻生国務大臣 平成九年度の経済企画庁関係予算及び財政投融資計画につきまして、その概要を御説明申し上げます。  総理府所管一般会計歳出予算のうち経済企画庁予算額は、二百二十六億三千六百万円余であります。  以下、重点事項につきまして、その内容を御説明申し上げます。  第一に、中長期的な安定成長につなげていくための経済構造改革推進に必要な経費として、一億一千万円余を計上しております。  この内訳の主なものは、情報通信関連社会資本体系的整備及び将来展望に関する調査など現行経済計画の着実な推進に必要な経費我が国経済の高コスト構造是正活性化のための分析調査に必要な経費公共料金に係る情報公開のあり方に関する調査など物価行政積極的展開に必要な経費であります。  第二に、適切かつ機動的な経済運営調査研究機能強化に必要な経費として、四億八千四百万円余を計上しております。  この内訳の主なものは、景気判断から見た経済指標の再検討、定点観測システムの構築、サテライト勘定整備など、経済構造変化に対応した調査研究機能強化に必要な経費経済企画庁型LAN整備事業消費生活情報体制整備事業など、ネットワーク化等による情報収集発信機能強化に必要な経費であります。  第三に、国際地域協力等我が国経済国際化へ向けた取り組み強化に必要な経費として、一億八千二百万円余を計上しております。  この内訳の主なものは、APEC地域発展研究交流などアジア太平洋地域協力への取り組み強化に必要な経費、対日投資促進など市場アクセスの一層の改善に必要な経費経済援助組織化のための研究など経済協力推進に必要な経費であります。  第四に、市民活動促進等を通じた豊かで安心できる暮らしの実現に必要な経費として、二十八億四千六百万円余を計上しております。  この内訳の主なものは、ボランティア活動促進のための環境整備に必要な経費国際化に伴う消費者行政費国民生活センター機能強化など経済社会変化に対応した消費者行政積極的展開に必要な経費であります。  また、これらの経費のほか、海外経済協力基金に対する交付金八十六億七千五百万円余を計上しております。  本基金平成九年度の事業規模は九千四百億円を予定しており、このための資金として、一般会計において、前述の交付金のほか出資金三千八百六十五億円が大蔵省に計上されるとともに、財政投融資計画においても、資金運用部資金等からの借入金四千九百三十四億円が予定されております。  以上、平成九年度における経済企画庁関係予算及び財政投融資計画について、その概要を御説明申し上げました。
  4. 高橋一郎

    高橋主査 以上をもちまして経済企画庁についての説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 高橋一郎

    高橋主査 質疑に入るに先立ちまして、分科員各位お願いを申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力お願い申し上げます。  なお、政府当局に申し上げます。  質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。鈴木淑夫君。
  6. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)分科員 新進党の鈴木淑夫でございます。  私、一期生なものですから、分科会というのがどういうものかよくわからないのでありますが、諸先輩の話を聞きますと、ここではそれぞれの省庁所管予算関連してかなり細かい質問をしてもいいということのようでございますが、今企画庁長官の御説明にもありましたように、企画庁予算というのは、日本経済の九七年度の適切な運営とか、あるいは中期的な経済運営とか、さらには経済指標改善等々、いわば天下国家関連したマクロのところが大分多いのでございます。そのせいか、実は私一人しか質問者がいないというので、なるほどやはり調整官庁だから余り細かい質問の種が、具体的な選挙区絡みの質問の種がないためかななどと思っております。  そこで、私もやはり、そういう企画庁の性格にかんがみまして、きょうは細かい予算の話でなくて、経済政策運営について長官の御所見を承りたいと思っております。  あらかじめそちらにお渡ししましたのは四項目あるんですが、最初の平成九年度、九七年度の経済見通しについては、これは恐らく水かけ論みたいなことになってしまう。そうすると、時間が三十二分までしかないということでありますので、これは後回しにさせていただきます。それで、時間があればやるということで、二番目の、もう少し中期の話から入りたいのでございます。  政府の九六年度の成長率実績見通し、それから九七年度の見通し、それぞれ二・五、一・九を前提にしますと、一九九二年度、つまり平成景気が九〇年度で終わって、九一年度は二・九%成長したわけですね。このときは景気後退が始まっていますが、いわばグロースリセッション程度である。二・九%成長。その後、九二年度から非常に深刻になったわけですね。九二、九三、九四の三年間はゼロ%台成長。ようやく回復してきて九五年度、九六年度が二%台成長ですが、政府実績見込みのように、九六年度が二・五、それから九七年度は再び一・九といたしますと、この六年間の成長率というのは、単純に算術平均しちゃうと一・四%になるわけですね。  これは私は、非常に日本経済実力から見て低いなと思っておりますが、政府現時点潜在成長率というのは何%ぐらいだとお考えになっているか。それと、この平均一・四の差が需給ギャップ悪化ということになるわけですが、その関連で伺っているんですが、今潜在成長率、どのくらいだとお考えになっていらっしゃるんですか。
  7. 麻生太郎

    麻生国務大臣 今鈴木委員のおっしゃいましたように、平成四年度から平成九年度まで、これは一・四%になっていますのは御承知のとおりでありますし、今では、平成七年度二・四、八年度、今月いっぱいで出ることになりますが、政府見通しどおり二・五%という成長が見込まれておりますので、一応いわゆる潜在的な成長率が発揮される方向へ進んでおるとは思っております。まず、基本的にそう思っております。  今後ともどうやっていくかというところが、経済構造改革など、その他一連の、高コスト構造是正のための一連改革が今やられておるのですが、そういうものからいきますと、平成八年度からの五カ年間の実質経済成長率が約三%になるであろうと見込んでおるところであります。
  8. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)分科員 私は実力が発揮される方向に動いておるとは思っておりません。だって、来年度はまた一・九に下がってしまうわけですからね。そんなに楽観はしておりませんが、私が伺ったのは潜在成長率はどのくらいかと聞いたのですね。ですから、現時点潜在成長率、何%ですか。
  9. 麻生太郎

    麻生国務大臣 これはちょっといろいろ御意見のあるところなのだと思います。潜在成長率というもの、定義からもいろいろ意見が出るところなのですが、これは委員よく御存じのとおり、利用可能な生産要素というのを最も有効に利用した場合、どれぐらいGDPが成長するかという話なのですけれども、一義的に、基本的には計測することは困難、まずこれが第一だと思っております。  今、特にボーダーレスとかグローバライゼーションとかいう言葉が多く言われておりますように、生産要素が国境を越えていろいろ動くような時代になりましたので、一国に限っての潜在成長率というものを考えることに意味があるかどうかという問題もまたあろうかと思います。しかし、とにかく日本としては、この国の経済の中長期的な成長率を確保していくためにも、潜在的な能力を生かしていくことはもうこれは大変重要な問題であるということで考えておりますのは、もう全くそのとおりでありまして、今、そのためにいわゆる抜本的な経済構造改革が不可欠だということで、平成八年度から十二年度までの実質経済成長率を三・五%に見ておるところなのですが、その中で、まあいろいろな要素がいっぱい、前提条件がいっぱいくっつきますので、そこらのところはなかなか申し上げにくいところで、一概には潜在成長率として幾らかというところがなかなか申し上げられないところだと思っております。
  10. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)分科員 平成八年度から十二年度まで三・五%の実質成長率でいけるだろうという意見は、私は最低少なくともそのくらいいけるだろうという意味では賛成いたします。  私自身、いろいろ推計してみた感じでは、御承知のように、平成景気のときは五%強で九〇年度まで五年間成長したのですね。しかし、もう少し長く、高度成長が終わった後、平成景気の九〇年度まで平均してみると四%ぐらいでありました。ですから、あのころまでは潜在成長率は四%ぐらいだったのだなと私は思うのですね。これはもう意見は分かれない。それはもう数字として出ているのです。その後、九一年度が約三%ですね、二・九%です。その後、九二年度から来年度、九七年度の政府見通しを入れて六年間平均が一・四に下がってしまうのですが、私は、この六年間、九〇年度まで十数年間四%成長で来た経済が、残念ながらちょっと潜在成長率は下がっているだろうなというふうに思います。  理由は二つあって、設備投資はえらい突っ込んでしまったので、設備面から下がっているということ。それからもう一つは、労働力伸びが落ちている、時短が進んでいる、労働制約から下がっていると考えられますね。設備投資伸びが落ちたために潜在成長率が下がっているというのは、これはやはり一時的であって、再び設備投資が、今既に中期循環上昇局面の二年目ですから、この後伸びていけばまた上がってくる。そうすると、中期的に考えるときは、設備制約でなくて労働力面制約から大体その潜在成長率は決まってくるというふうに思うのですね。  そういたしますと、私、ついこの間まで十数年間四%で伸びてきた日本経済、少し労働制約が強まって潜在成長率が下がったとしても、三%ぐらいはあるだろうなというふうに思っているのです。そうしますと、三%の力を持っている経済が六年間一・四しか成長していないということは、毎年一・六%力を余していますね。これは六倍してしまうと約一〇%になってしまうのですね。だから、需給額一〇%悪化したということになるのです。  ただ、そんなことを言っても、私は今九二年度から話を進めていますが、九二年度、あの辺はちょっとインフレギャップがあったじゃないか、まだバブルの余韻が残っていたじゃないか。ですから百歩譲って、仮にあの辺はまだインフレギャップが二、三%あったというふうに考えても、一〇から二、三%を引いた七、八%というのが現時点デフレギャップとして残っているというふうに思うのですね。これだけのデフレギャップを抱えていますから、潜在成長率がたとえ三%でも、長官おっしゃったように、ここから先を見れば三・五ぐらいは軽くいってしまうのだというふうに思います。その意味で、さっき長官おっしゃったのは賛成だと申し上げたのです。  それで、私が心配しておりますのは、このデフレギャップ七、八%というものがもたらす構造的な諸問題を心配しているのですね。  第一は、やはり労働問題だと思います。失業率、御承知のように、今三・三%で横ばいでありますけれども、高齢者は六%台、若年は四%台、かなり深刻でありますし、私は政府見通しとちょっと意見が違って、来年一・九%成長だと、来年度の失業率はちょっと上がるかもしれないなというふうに思っております。ここは意見が分かれるのだと思いますが、とにかく労働問題が一つあると思うのですね。  それからもう一つは、私、地価を心配しています、土地の値段ですね。これだけデフレギャップを残していますと、なかなか地価が下げどまらない。そうなると、今度はそれが不良債権問題に飛び火をしてきまして、どうも不良債権、償却しても償却してもうまく減らないという形になって、現在の金融危機基本的背景をなしておるなというふうに思うのですね。  それからさらに、超低金利が続いているために、年金基金が思ったように運営できない。破綻してしまうぞとか、あるいは金利生活者が困るという議論がございますね。しかし、この超低金利の持続というのも、今七、八%のデフレギャップの存在があるから、とてもじゃないが金利なんか上げられないよということから来ております。  そういうふうに考えますと、このデフレギャップがもたらす構造的なフリクション、特にそれが金融危機とか年金金利生活者不満とか、あるいは失業、特に高齢者若年労働者失業率の高さ、そういったことから社会的、経済的な不満背景となって国民生活を脅かしているのじゃないかということを懸念いたします。  したがって、長官にお伺いしたいのは、もし長官も同じような御認識でしたら、やはりこのデフレギャップを縮小していくということが今非常に大事な戦略的な政策目標じゃないかと思うのですが、どういうふうにお考えでしょうか。
  11. 麻生太郎

    麻生国務大臣 今鈴木委員からの御質問の中に、まずいわゆる労働ギャップのところから話がスタートしまして、三つほど御質問をいただいたのですが、これは私ども一番心配をしておるところで、それはヨーロッパやら何やらに比べれば、確かに完全失業率が、まあ計算の方法も少し違うことも違いますけれども、我が国は明らかに低いのですが、過去に比べれば高いことはもう間違いないところなのです。  最近の数字を見てみますと、有効求人倍率というのが、平成七年に比べて平成八年度はだんだん上がってまいりまして、特に平成八年の暦年では、平成七年の〇・六三から〇・七〇まで上がってきております。特に、この十-十二月では〇・七五まで、さらに〇・〇五上がっておりますので、そういった意味では、有効求人倍率は上がってきた。それから、雇用者数もだんだん、平成七年の〇・五から八年は一・一まで上がってきておりますのが一つ。  もう一つは、その内容なんですが、いわゆる会社都合による首というのですか、解雇、非自発的な離職というのの比率が、平成七年あたりはずっとプラスだったのですが、十-十二月に入ってからだんだん減り始めてきて約二万入減ということになっているのです。九年一月に関して言いますれば、実に十五万人減っております。  逆に、自発的な離職者、今、転職やら何やら含めて自発的な離職者が非常にふえてきておりますので、いろいろな意味で、会社見通しやら自分の給与やらで随分転職が、若者の言葉でトラバーユとかいろいろ言いますけれども、そういったものがふえてきているのは今までとは違った傾向だと思っております。だから、すべてがいいというわけではありませんけれども、基本的にはそこらのところが今までと少し事情が違ってきたなというのが一つであります。  それから、地価の話でありますけれども、これは確かにおっしゃるとおり、景気がよくなったなと思う理由はやはり株価と土地ということだとは、一般的にはそう思っておりますので、地価が何となく底が見えないような感じでどんどんいったような感じ、しかも土地が動かない。ここらのところは非常に大きな問題でありまして、過去に、いろいろな意味からいえば、各金融機関が抱えておりました担保となっております土地というものが、うまくソフトランディングするような目的だったのだとは思いますけれども、そういった目的のためにまあまあと抑えてきたものが、それの政策としては何となく傷を長引かせたような形になっている面というのはいろいろな方々の御指摘にあるとおりなので、これはいろいろな意味で今後の金融の問題に関係してくるところだろうなと思っております。  もう一点、金利の問題につきましては、これはもう間違いなく金利というものは、預貯金でいえば、高齢者として、退職されて夫婦で仮に二千万なら二千万の貯金があったとすれば、平成二年のときでしたら金利が七・九五ぐらいついておりましたので、あのころつけましたら分離課税二〇%引いたとしても月々九万円ぐらいの手取りになっておったと思いますが、今は〇・四ですから、二〇%引いて月一万円ぐらいですから、それはまあ一万円と十万円ぐらいの差が端的に申し上げてあるわけですから、それは随分と影響が出ていること、これは間違いないと思っておるところです。  ただ、逆に金利が下がったおかげで、企業としてはいろいろ、借金体質企業にとりましてはそれが救いになっていることもまた事実で、それが雇用の安定につながっている面もありますので、これはなかなか一概に、先ほどのデフレギャップ点等も含めて、いい面もあればマイナス面もあります。今回の一連改革とか緩和というものの本来の目的は、何となく規制緩和行政改革目的みたいに書かれていますけれども、これは本来は手段でありまして、その手段目的としておるところは国民生活の安定、そのためには雇用の安定が必要になりますので、雇用を安定させるためには高コスト構造是正がされないと企業海外に行ってしまうことになりますので、そういったところを含めて、今後ともここらのところの判断は総合的にやっていかなければいかぬところで、なかなか一概にこれが答えだというものが、これがというのはないのだと思いますけれども、今申し上げたようなことをいろいろ勘案しながら対策をしていかねばならぬと思っております。
  12. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)分科員 七、八%のデフレギャップがもたらしている問題点について、長官も認識しておられるということは今伺っていてわかりました。ただ、そうはいっても、例えば労働市場悪化はややとまって改善の気配もあるよとか、あるいは低金利だって悪いことばかりではない。それはそうですよ、低金利で辛うじて今の景気を支えているのです。そういうことについては、それもわかります。  ただ、一点申しますと、有効求人倍率というのは職業紹介所のところの需給で、これは今日本全体の労働需給のほんの一部分の限界的な需給なんですね。余り指標としてはりライアブルでないと私は思っておりますので、余りあれを引用して基調判断をされない方がいいように思います。  もう時間もなくなってきましたので、ひとつ先へ進めたいのですが、この七、八%のデフレギャップがもたらしている構造的な問題で、今私が触れなかったことがあと二つあるのですね。それは、財政赤字の拡大、それから、うっかりすると、財政赤字の方を縮小すると今度は経常収支の黒字が拡大してしまうよという、ISバランスの中での非常に矛盾した難しい問題というのもデフレギャップが拡大したままではなかなか解決しないのだと思うのですね。  さっき長官おっしゃいましたように、政府中期経済見通し平成八年度から五年間で三%程度の実質成長、ノミナルでは三・五いくわけです。こうすれば恐らく黒字も拡大しないだろうねという絵があそこで描かれている。私もあれをやっているときの経済審議会のメンバーの一人でしたから、あのことはよく存じ上げております。しかし同時に、構造改革を失敗してこの五年間の成長率が一・七五%程度だと、内需の成長寄与度が一・五だよと書いてあるのですね。一・七五成長で内需が一・五ということは外需が拡大する、つまり、一・七五%成長なんということをやると黒字が再拡大だ。これは一種の失敗シナリオとして経済審議会としては政府にお出しして、こうならないようにやりましょうねといったわけであります。  しかし、とりあえず初年度の平成八年度が政府実績見込みで二・五%成長、それから来年一・九%成長ということでありますと、目標としている三%程度よりも、失敗シナリオの一・七五に近いのですね、最初の二年間。これを私は非常に心配をしております。特に、どう見たって、ISバランスから見て七、八%のデフレギャップがあったら、民間投資というのはそうそう対GDP比率上がってくるものじゃないですね。そうすると、残りの貯蓄は財政が吸収してくれるか海外に押しつけてしまうか、二つに一つしか行き場がないわけです。  それで、最近私は、この前の予算委員会でも大蔵省の榊原国金局長と論争するみたいな形になりましたが、季節調整済みの経常収支数字を見ると、明らかに去年の一-三、四-六のところが底で、七-九に拡大し、十-十二にちょっと減ったけれども一-三、四-六よりは高いところにいって、一月以降まだ拡大しそうな気配ですね。というのは、これは財政再建が進み始めたからだと思うのですね。財政赤字が縮小に転じていると思います。そうすると、ISバランス上、民間投資がわっと出てくればいいけれども、まだそれほど勢いかないものだから、どうも財政赤字の縮小を急ぐと経常収支の黒字が拡大してしまう。  新聞を見ますと、きょうの夜サマーズ米国財務副長官が来るようですね。サマーズはこちらに来る前の日米協会の講演で、やはり日本の黒字再拡大を心配しているということをはっきり言っております。それは、経済の専門家ならだれが見たって、ISバランス上、財政赤字の縮小を急ぎ過ぎると経常収支の黒字は拡大してくることは明らかだと思うのですね。そうしますと、今みんな円安を心配していますけれども、一つ間違うと今度は投機が逆方向へ向いて、ぴゅっと円高にすっ飛んでいくという懸念も皆無ではないと思うのですね。  ですから、麻生長官にお尋ねしたいのは、やはり経済企画庁は、経済運営全体をごらんになる、マクロの立場で上手に政府経済政策の調和を図るわけですから、経済企画庁さんがISバランスという観点で全体のバランスを見て政府全体をリードされませんと、財政再建を急げば経常黒字の再拡大だということになってしまうのですね。私は、今明らかに気配が出ていると思います。  ついては、長官にお尋ねしたいのは、来年度の、この四月からの上期は、これはだれが見てもデフレインパクトが加わります。フィスカルドラッグが加わりますね。九兆円の負担増とか公共投資がまだ少し落ちているのじゃないかと私は思います。フィスカルドラッグがある、そういう中で、去年の後半から兆し始めた今の経常収支の黒字の再拡大傾向というのがさらにはっきりしてきてしまう、それがあると思うのですね。どうか、そこのところはひとつ政府部内で、ISバランスから考えたら、民間の投資がしっかりしてきて民間が貯蓄を相当食ってくれるような状態になるのをにらみながら、そこに歩調を合わせて財政再建というものを進めないと、しりは経常収支の黒字拡大に行って、諸外国との調和が乱れ、一つ間違えたら投機筋にやられてびゅっと円高に振れるかもしれないのだということを各閣僚にお話しされて、うまく政策をリードしていただきたいと思うのですが、ISバランス上の問題点について、最後に見解をお聞きしたいと思います。
  13. 麻生太郎

    麻生国務大臣 セービング・マイナス・インベストメント・イコール・エクスポート・マイナス・インポートという一つの公式がございますので、おっしゃるとおりなので、今円安に――何を基準に円安で何が基準で円高か難しいところですけれども、我々試算いたしましたときでも、これは百十三円で試算したものがきょうは百十九円、百二十円になっていると思います。  そういった状況でありますので、それからいきますと、いろいろな意味政府経済見通しと民間の経済見通しとの差は、これは高い低いいろいろあって、野村総研は〇・七ですけれども大和総研では二・二とかいろいろ差はありますが、いずれにいたしましても、外需寄与度というのは、政府のも、いずれもゼロで計算をしていることになっております。それが、今言われましたように、いわゆる円安のおかげとか、先ほど御指摘がありました点が、本当に内需がうまくいかないと、内需で消化した余ったものが外に行くわけですから、それがいかないと一挙に大きなことになってしまうというのは御心配のとおりであります。サマーズに限らず、財務長官を初めみんな、いわゆるウォール街出身の方々から見れば、これは非常に敏感に反応しておられるところだと思いますので、私どもとしては、その点は十分理解できるところでもありますので、今御指摘の点は十分に勘案をいたしまして、政策に反映させていきたいと思っております。  ありがとうございました。
  14. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)分科員 時間になりましたので、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  15. 高橋一郎

    高橋主査 これにて鈴木淑夫君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総理府所管経済企画庁についての質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  16. 高橋一郎

    高橋主査 次に、通商産業省所管について審査を進めます。  政府から説明を聴取いたします。佐藤通商産業大臣
  17. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 平成九年度の通商産業省関係予算及び財政投融資計画について御説明申し上げます。  我が国経済社会が新しい時代に向かう中でさまざまな変革が求められている今日、通商産業省の当面する課題は広範かつ重要であります。  まず、景気の自律的回復軌道への道筋を確実にすることが喫緊の課題であり、そのために、何よりも平成九年度予算の早期成立を図ることが不可欠であります。同時に、私といたしましては、二十一世紀に向けて我が国経済の展望を開いていくことができるよう、通商産業政策推進に陣頭に立って取り組んでまいります。  このような認識のもとで、通商産業省といたしましては、平成九年度の関係予算及び財政投融資計画の作成に当たり、次に申し上げる四つの柱から成る基本方針に沿って政策を展開してまいります。  第一の柱は、経済構造改革推進であります。  産業の空洞化の懸念を初め、我が国の将来に対する危機感が高まっております。今こそ経済社会システムを抜本的に改革していくことが必要であり、政府としては、六つの改革に取り組んでいるところであります。  中でも、経済構造改革については、一刻の猶予も許されない緊急の課題であります。このため、昨年十二月には、関係省庁の協力を得て、経済構造改革の変革と創造のためのプログラムを取りまとめ、これを閣議決定したところでございます。このプログラムにおいては、新規産業の創出、国際的に魅力ある事業環境の整備及び経済活力の維持向上のための公的負担の抑制を重点として抜本的な改革を進めることとしておりますが、当省としては、特に、地域産業空洞化対策、研究開発、情報化を中心に思い切った施策を推進してまいります。  第二の柱は、中小企業対策の推進であります。  我が国経済社会の進歩と発展の基礎となるべき中小企業が、先行きに明るい見通しを持って、構造変化の流れを積極的に乗り切っていくことが重要であります。このため、地域中小企業集積の維持発展に対する支援、新規事業育成や技術開発、情報化対策を含めた経営革新のための支援に努めるとともに、小規模企業への支援、中小流通業の活性化対策を通じ、引き続き中小企業の構造改革推進、経営基盤の安定強化のための対策を切れ目なく講じてまいります。  第三の柱は、環境と共生し、国民生活を重視する経済社会の構築であります。  我が国のみならず、世界経済が持続可能な成長を実現するためには、環境保全、エネルギーセキュリティー、経済成長をバランスよく達成することが不可欠であります。このため、省エネルギーの推進、新エネルギーの導入、原子力の開発利用等により、エネルギーの安定供給確保を図るとともに、地球環境問題への積極的対応を図ってまいります。  第四の柱は、グローバルな経済ネットワーク時代にふさわしい国際的取り組みであります。  アジア太平洋地域との緊密な経済ネットワークの構築に重点を置いて、経済インフラの整備等を推進するとともに、対日市場アクセスの拡大、国際産業交流に対する支援等により、貿易・投資の円滑化を図ってまいります。  以上申し上げたような平成九年度通商産業政策を実施していくため、一般会計は、九千二百二十五億円を計上しております。また、特別会計につきましては、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計七千二百八十九億円、電源開発促進対策特別会計四千六百八十三億円を初め、五つの特別会計にそれぞれ所要の予算額を計上しているところであります。さらに、財政投融資計画につきましては、財政投融資規模ベースで八兆六百十七億円を計上しております。  平成九年度通商産業省関係予算及び財政投融資計画の詳細につきましては、お手元に資料をお配りしてありますが、委員各位のお許しをいただき、説明を省略させていただきたいと存じます。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  18. 高橋一郎

    高橋主査 この際、お諮りいたします。  ただいま佐藤通商産業大臣から申し出がありました通商産業省関係予算重点事項説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 高橋一郎

    高橋主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――    平成九年度通商産業省関係予算及び財政投融資計画説明  平成九年度の通商産業省関係予算及び財政投融資計画について御説明申し上げます。  まず、平成九年度における通商産業省の一般会計要求額は、九千二百五十五億円であり、前年度当初予算額九千百八十八億円に対し、三十七億円の増加となっております。  財政投融資計画は、財政投融資規模ベースで八兆六百十七億円となっております。なお、この中には産業投資特別会計からの出融資三百九十五億円が含まれております。  次に、重点事項別に、予算及び財政投融資計画概要につき御説明申し上げます。  我が国経済社会が新しい時代に向かう中で様々な変革が求められている今日、通商産業省の当面する課題は、広範かつ重要であります。  まず、景気の自律的回復軌道への道筋を確実にすることが喫緊の課題であり、そのために何よりも、平成九年度予算の早期成立を図ることが不可欠であります。同時に、私といたしましては、二十一世紀に向けて我が国経済の展望を開いていくことが出来るよう、通商産業政策推進に、陣頭に立って取り組んでまいります。  このような認識の下に、通商産業省としましては、平成九年度の関係予算及び財政投融資計画の作成に当たり、次に申し上げる四つの柱からなる基本方針に沿って、政策を展開してまいります。  第一の柱は、「経済構造改革推進」であります。  産業の空洞化の懸念をはじめ、我が国の将来に対する危機感が高まっております。今こそ、経済、社会システムを抜本的に改革していくことが必要であり、政府としては、「六つの改革」に取り組んでいるところであります。中でも、経済構造改革については、一刻の猶予も許されない緊急の課題であります。昨年十二月には、関係省庁の協力を得て、「経済構造改革の変革と創造のためのプログラム」をとりまとめ、これを閣議決定したところでございます。このプログラムにおいては、新規産業の創出、国際的に魅力ある事業環境の整備及び経済活力の維持・向上のための公的負担の抑制を重点として、抜本的な改革を進めることとしておりますが、当省としては、特に、「地域産業空洞化対策」、「研究開発」、「情報化」を中心に思い切った施策を推進してまいります。  第一に、近年高まっている地域産業空洞化の懸念に対処するためには、ものづくりの基盤である産業集積や産地などの中小企業の集積を活性化することにより、地域産業の自律的発展を図ることが緊急の課題となっております。このため、「特定産業集積の活性化に関する臨時措置法案」を今国会に提出し、関係省庁との連携の下、総合的な施策を講ずることとしております。  具体的には、これらの集積を活性化するため、研究開発施設・設備、人材育成施設、賃貸工場等の産業インフラ整備として六十億六千八百万円を計上しております。  また、集積内の中小企業の新商品開発、人材育成等に対する支援等に二十億四千七百万円を計上しております。  さらに、関連予算として、地域コンソーシアム研究開発、新規産業創造技術開発支援制度等、地域における研究開発を重点的に助成するため、六十八億五百万円を計上しております。  その他、中小企業対策等の関連予算を含め、「地域産業空洞化対策」全体として総額二百二十五億四千百万円を計上しております。  第二に、「研究開発」の大胆な推進により、新規産業の創出を図っていくことが不可欠であります。このため、新規産業の創造を目指した民間企業研究開発を支援するため、新規産業創造技術開発支援制度の大幅拡充を図り、四十二億四千九百万円を計上しているほか、新たに、国研・大学・企業等からなる地域コンソーシアムが、産学官の連携の下で研究開発を推進するよう、二十億三千六百万円等を計上しております。  また、競争的資金の積極的な導入を図り、バイオ、情報・通信等重要技術分野につき、公募・競争を通して有望なテーマに資金を重点配分する「競争特研」制度を創造いたします。また、脳科学研究、地震調査研究等省際的な研究テーマについて、各省連携して研究開発を行う「各省連携・共同プロジェクト枠」を設ける等、国立研究所における創造的研究開発を進めてまいります。これらについて、七十一億二千三百万円等を計上しております。提案公募型の研究開発を拡充し、「新規産業創造型提案公募」として、四十七億円を計上しております。  第三に、情報化の推進は、経済生産性・効率性の抜本的向上等を通じた経済構造改革の鍵であります。特に、産業分野の情報化は、経済活動の在り方自体を変革しうるものであり、その推進我が国の喫緊の課題となっております。このため、電子商取引の推進に十一億五千七百万円、超高度先端電子技術開発促進制度に三十一億二千万円、先進的情報通信システムモデル都市構築事業に十億円等を計上しております。  第二の柱は、「中小企業対策の推進」であります。  我が国経済社会の進歩と発展の基礎となるべき中小企業が、先行きに明るい見通しを持って、構造変化の流れを積極的に乗り切っていくことが重要であります。このため、地域中小企業集積の維持・発展に対する支援、新規事業育成や技術開発・情報化対策を含めた経営革新のための支援に努めるとともに、小規模企業への支援、中小流通業の活性化対策を通じ、引き続き中小企業の構造改革推進、経営基盤の安定・強化のための対策を切れ目なく講じてまいります。  このため、中小企業対策予算として、通商産業省所管一般会計総額千二百四十七億円を計上しております。  具体的には、さきほど申し上げた、「特定産業集積の活性化に関する臨時措置法案」に関連して、産地等の地域の中小企業集積におけるインフラ整備や、研究開発、人材育成等の支援策に四十一億円を計上しております。  また、経営革新に取り組む中小企業による技術・資金・人材など各種の経営資源確保を支援する「ものづくりネットワーク」の構築を推進してまいるとともに、技術開発支援等に百三億円、情報技術の活用による経営革新に二十五億円を計上しております。  さらに、商工会・商工会議所を通じた小規模企業対策に二百二十六億円、商店街活性化や情報化の推進のための中小小売商業対策に百六十三億円を計上しております。  第三の柱は、「環境と共生し、国民生活を重視する経済社会の構築」であります。  我が国のみならず、世界経済が持続可能な成長を実現するためには、環境保全、エネルギー・セキュリティー、経済成長をバランスよく達成することが不可欠であります。このため、省エネルギーの推進、新エネルギーの導入、原子力の開発・利用等により、エネルギーの安定供給確保を図るとともに、地球環境問題への積極的対応を図ってまいります。  具体的には、新エネルギーの導入を促進するため、太陽光発電の市場自立化のための補助制度を抜本的拡充して百十一億八百万円、新エネルギーの導入を行う事業者への助成制度の創設に十一億二千三百万円を計上するとともに、地域における新エネルギー・省エネルギーの取組に対する支援制度の創設に二十二億四百万円を計上しております。  また、エネルギー安定供給確保のため、国民的合意形成と安全確保を前提とした原子力立地の推進に七百八十一億三千百万円を計上するとともに、石油国家備蓄の着実な推進に三千二百三十億四千五百万円等を計上しております。  さらに、環境問題への対応として、革新的地球環境技術開発等の推進に九十七億六百万円、気候変動枠組条約第三回締約国会議(COP3)への支援等に四億七千六百万円を、リサイクル関連技術開発等の推進に九十四億七千九百万円を、ゼロ・エミッション構想の推進に五億七千百万円を、それぞれ計上しております。  第四の柱は、「グローバルな経済ネットワーク時代にふさわしい国際的取り組み」であります。  アジア太平洋地域との緊密な経済ネットワークの構築に重点を置いて、経済インフラの整備等を推進するとともに、対日市場アクセスの拡大、国際産業交流に対する支援等により、貿易・投資の円滑化を図ってまいります。  具体的には、貿易・投資の自由化・円滑化に資する経済・技術協力推進するためのAPEC拠出金として二億円を計上しております。  また、我が国市場アクセス改善を図るため、輸入促進地域(FAZ)について、ハード面の支援に加え、ソフト面での支援を拡充することとし、関連予算として六億七千万円等を計上しております。  さらに、西暦二千五年における我が国(愛知県)での国際博覧会開催に必要な経費として四千五百万円、リスボン国際博覧会事業への参加のため二億百万円、ハノーバー国際博覧会事業への参加のため二千万円を計上しております。  以上、平成九年度における通商産業省関係の予算及び財政投融資計画について、その概要を御説明申し上げました。     ―――――――――――――
  20. 高橋一郎

    高橋主査 以上をもちまして通商産業省所管についての説明は終わりました。     ―――――――――――――
  21. 高橋一郎

    高橋主査 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。飯島忠義君。
  22. 飯島忠義

    飯島分科員 きょうはこれから十人を超える質問者が予定されております。我が党からも多くの質問者が予定されておりますけれども、その冒頭を飾りまして、私、飯島忠義でございますけれども、佐藤通商産業大臣並びに政府委員に御質問申し上げたいと思います。  何分にも限られた時間でございますから、エネルギー政策一本に絞って、二十五分間の持ち時間を有効に使わせていただきたいと思うわけでございます。  まず、今エネルギー政策の中で、条件的に大変厳しい世界の動きというのがあるわけでございますけれども、とりわけ、その中で世界の人口の爆発と申しますか、御案内のとおり、今地球上の人口が約六十億と言われておりますけれども、人口統計で大変著名な河野稠果先生の推計では、二一五〇年には百十四億人、こういう人口の推計をされているわけでございます。  それで、今から二百年も前の有名なマルサスという方の人口論について、今再考論議が起きております。マルサスの著書でございますけれども、二百年の間世界の学者からは批判をされてきた。中身についてでございますけれども、地球は有限で食糧供給には限界があり、人口は無限に成長できない、食糧生産の限界以前に水資源は枯渇し、環境破壊による人類の破局は近いとするシナリオは、多少誇張はあるとしても、現実多くの人にアピールしているわけでございます。マルサスは科学技術の役割を過小評価したと言われておりますけれども、技術革新も破局を一時的に先延ばしにしたにすぎないとの反論もあります。これまでの大量生産、大量消費のパラダイムの転換が必要であり、新たな予防的妨げの必要性というものをほうふつさせているわけでございます。  さてそこで、いろいろエネルギー政策についての資料を拝読したわけでございますけれども、まず、これは一九九四年の六月、日本における現行長期エネルギー需給見通しという総合エネルギー調査会の策定の原案があるわけでございますけれども、一九九二年、消費については三億六千万キロリットル、供給はといいますと、これは石油換算ベースですけれども五億四千百万トン。これが、平均伸び率でとらえていきますが、例えば二〇〇〇年、一九九二年から二〇〇〇年ということでいきますと八年ですか、消費についてはできるだけ抑えていくという方向でございますから三億八千八百万、二〇一〇年に、これも伸び率を抑えて〇・九%でも四億二千三百万の消費が予測される。  一方、そのための供給はといいますと、逆にそれだけの供給をしなければ日本の産業、民生、運輸含めた動きというものが停滞してしまうということになるのでしょうし、石油、石炭、天然ガス、原子力、水力、地熱、新エネルギーとシェアがありますけれども、これが二〇〇〇年には石油換算で五億八千二百万トン、同様に二〇一〇年には六億三千五百万トン。それらの供給体制をいかにエネルギー政策の方で実現していくかというのは、大変に緊急かつ重要な課題だと理解をしております。  そこで、とりわけその中でもシェアの高い石油については、一九九二年で大体六〇%、五八・二%です。二〇〇〇年にはといいますと、率的に低下はしますけれども、それでも半分を超える五二・九%。二〇一〇年にはといいますと、五〇を切って四七・七%。石炭については、大体一六%で一九九二年、二〇〇〇年、二〇一〇年と横ばい状況でのシェア。天然ガスについても、同様に二%程度の伸長ではございますけれども、これの利用については促進を図る。  水力、地熱、新エネルギー等、この中で問題は、やはり原子力のウエートというものを高めていく必要があるわけでございますけれども、現実、例えば一九九二年における日本の設備出力としては三千四百四十万キロワット。これが二〇〇〇年には四千五百六十万キロワットの設備出力を持たなきゃいかぬ、さらに二〇一〇年には七千五十万キロワット。現実に今五十基ですかの原子力が動いているわけでございますけれども、この二〇一〇年に向けて七千五十万キロワットの設備出力を確保するというのは至難のわざじゃないかと思うわけでございます。  そこで、この目標について、現実に各電力会社、通産も含めて努力はされているわけでございますけれども、達成についての見通し、いかがお考えか、お示しをいただきたいと思います。
  23. 江崎格

    ○江崎政府委員 原子力の目標の達成の見込みでございますけれども、御指摘のように、現在、原子力発電所約五十基、発電の規模で四千二百七十一万キロワットという能力を持っているわけでございますけれども、昨年の三月に通商産業大臣に届け出されました電力の供給計画によりますと、二〇〇五年までに運転開始されるものとしてあと十一基の原子炉、千三百二十七万キロワットというのが計画されております。これらについては相当程度計画が固まりつつあるものというふうに認識をしております。その後、二〇〇六年度以降運転開始が予定されているものも幾つかあるわけでございまして、これらを考慮しますと、今先生が御指摘の石油代替エネルギーの供給目標にございます二〇一〇年で七千五十万キロワットの原子力開発の目標というのは、達成が不可能なものではないというふうに考えております。  ただ、こうした目標の達成は、最近の電源開発に要する期間の長期化というようなことを考えますと容易ではないわけでございますけれども、今先生が御指摘のように、原子力のエネルギーセキュリティーの面における重要性ですとかあるいは環境面における有用性、こういったことを考えますと、省エネルギーとか新エネルギーはもちろんやる必要があるわけでございますけれども、原子力発電につきましても、安全性の確保ですとかあるいは平和利用の堅持ということを大前提にしまして、国民の方々の理解と協力を得ながら今後とも推進する必要がある、このように考えております。
  24. 飯島忠義

    飯島分科員 御答弁いただいたわけでございますけれども、原子力政策に対する国民の信頼回復、これがとりわけ大事ではないか。私としては、それはそれとして大変大きな政策でございますから、国民の理解を深めながら、国民の視点に立った原子力政策推進していく、この辺についてはぜひともさらなるお力をお注ぎいただきたいと思います。  今、答弁の中にもございましたけれども、省エネルギーそれから新エネルギーの開発、これらがまた、ウエートとしては、確かに需要見通しの中におけるパーセンテージとしては低いわけでございます。例えば「原子力発電関係資料」という小冊子をいただいたのですけれども、これの六十二ページを見ますと、一九九二年では全体需給に対するシェアが一・二%、二〇〇〇年では二%、さらに二〇一〇年では三%という予測を立てておられます。  その新しいエネルギーの資料として、これは通商産業省の工業技術院ですか、「ニューサンシャイン計画」という立派なPRパンフレットを出されていますけれども、いろいろな事業、また計画がある。大変結構なことだと思っています。例えば、太陽エネルギーの技術開発であるとか地熱エネルギー、化石燃料の高度利用の石炭エネルギー、燃料電池の発電技術、セラミックガスタービン、あるいは超電導電力応用技術等々いろいろあるわけでございますけれども、その中でとりわけ太陽光、この利用を図っていくのが急務ではないか。  私自身も、これは財団法人の原子力発電技術機構の資料を拝見したんですけれども、一九九七年二月ナンバー九十六、原子力ニューズレター、これによりますと、「太陽光発電は二軒に一軒?二十一世紀のエネルギー利用」こういうテーマで特集が組まれています。  ここでとりわけ重要な点だと思うのですけれども、「総合エネルギー調査会の基本政策委員会は、二〇〇〇年以降の二酸化炭素排出量について、シミュレーションを行っていますが、現行程度の省エネルギー・新エネルギー政策を進めただけでは、原子力発電が「原子力長期計画」通り進んだとしても、二〇三〇年時点での二酸化炭素排出総量は九〇年水準の約一・四倍になります。」以下いろいろ書いてありますけれども、これを、「二〇三〇年時点で、省エネ規模で原油換算五千万キロリットル、新エネ導入規模で同八千万キロリットルを達成するというレベル」だそうです。  これはもう大変な努力が必要になるわけでございます。例えば、住宅の建設戸数、着工戸数の中で見ていけばということなんですけれども、二〇三〇年までに、建てかえ計画も含めてですけれども、年間約七十万戸、屋根のふきかえだけが二十万戸とすると、この九十万戸のうちの二軒に一軒の太陽光利用を図っていかなければいけない、そういう中身でございます。  そこで、時間の制約もございますから御質問申し上げますけれども、無尽蔵な自然エネルギーを利用する太陽光発電システム、これは理想的な発電システムであろうと思います。新エネルギーの代表例として大きな期待が寄せられておりますけれども、一方で、建築物の屋根等の遊休スペースには限りがありますので、長期的に見ても我が国の太陽光発電システムの発電能力はそれほど大き くならないという見方もあるわけでございますけれども、このシステムについての潜在力、そしてまた、政府としての見込みはどのようにお考えか、お願いをしたいと思います。
  25. 江崎格

    ○江崎政府委員 潜在力の試算、大変難しいわけでございますけれども、特に、設置のスペースの問題あるいは経済的な制約あるいは社会的な制約、いろいろございます。こういった前提条件を非常に厳密にやろうとすると大変難しいわけですが、今先生の御指摘の総合エネルギー調査会の基本政策委員会で、非常に単純な仮定を置きまして算定をしたものがございまして、これによりますと、発電の能力では一億七千三百万キロワット、それから、太陽光発電は稼働率が必ずしも高くないものですから、発電量では石油換算にしますと八千五百万キロリットルぐらいという数字が得られております。  ただ、これを実現するとなりますと、大変コストもかかりますし、それからいろいろな規制もありまして、そういった障害もありますし、それから時間的にも非常にかかるということで、これは究極的にこのぐらいのことがいわば物理的に可能性があるということかと思います。  ただ、将来的には非常に主要なエネルギーの供給源の一つになるという可能性も秘めているというふうに認識をしております。
  26. 飯島忠義

    飯島分科員 平成八年度における太陽光発電システムの導入でございますけれども、平成九年度についても施策をさらに充実しているこの予算の資料でございますが、実際に導入したユーザーの評価、それと、平成八年度におけるところの申し込み状況、これについてどうなっているのか、あわせて伺っておきたいと思います。
  27. 江崎格

    ○江崎政府委員 まず、申し込み状況でございますけれども、補助の対象件数として二千件弱を私ども想定したんですけれども、申し込みは平成八年度の場合一万一千件ということで、六倍近い競争率になっております。  それから、導入した方の評価といいますか、意識の変化でございますけれども、実は、導入した人たちを対象にアンケート調査を実施いたしました。それによりますと、一番多かったのは、電気代を節約するようになったというようなことがございますが、そのほか、電気に対する関心が非常に高まったとか、あるいは環境問題に対する関心が高まったというようなことでございまして、私ども、この住宅用の太陽光発電システムのモニター事業、これは、単にこのシステムの普及あるいは低コスト化に役に立つというだけではなくて、国民の省エネルギーの意欲あるいは環境意識の向上に大変有効である、このように考えております。
  28. 飯島忠義

    飯島分科員 ちょっともう一問だけそれに関連して、例えば、平成八年度は千九百戸ですか、千八百戸。平成九年度以降、これから質問をさせていただきますけれども、説明資料によりますと、補助率が変わって助成措置が相当大きくなる、この助成の仕方を変えているように見えるんですけれども、その辺についてはいかがでしょうか。
  29. 江崎格

    ○江崎政府委員 従来は大体二分の一という補助率でやってきたわけでございますけれども、少しずつ価格が下がってきているということもございますので、現在は三十五万円とこの設備との差について二分の一の補助ということですから、概して言えば三分の一ぐらいの補助率に相当するという仕組みでございます。
  30. 飯島忠義

    飯島分科員 三十五万円ですか、三百五十万じゃなくて。
  31. 江崎格

    ○江崎政府委員 一つの設備について、三十五万円と実際に買った価格とのその差について二分の一を補助するという格好でございます。  今先生のおっしゃった三百五十万というのは、全体の設備の価格がかつては一千万とか八百万ぐらいしていたのが、今だんだん下がってまいりまして三百五十万ぐらい、大体家庭用のはそのぐらいの値段になっておりますが、それの三分の一ではなくて、それと三十五万との差についての二分の一補助という格好をとっております。
  32. 飯島忠義

    飯島分科員 先ほども経企庁の質疑でありましたけれども、低金利だ、住宅建設着工も順調に、特に昨年の九月までの駆け込み着工とか、あるいはこの三月まで、いろいろ今のうちに低金利だから家を建てかえようという方々もいらっしゃるわけなので、枠の拡大も含めて、これらの積極的なPRをお願いしておきたいと思います。  次に、これは同じ他のエネルギー源でございますけれども、風力発電とか廃棄物発電、この導入についてということでお願いをしたいんですけれども、風力発電、廃棄物発電による売電事業の試みが活性化してきております。このような動きは、地域振興や新規産業育成の観点から大いに促進すべきでありますけれども、既存の発電方法に比べて経済的に劣っていると言われております。実際に事業として成立することは困難と私は考えております。これらを促進するために、国及び電力会社取り組みを抜本的に強化すべきと考えます。  これは政府系の資料ではないんでしょうけれども、フォトという、毎月各先生方のところにも送られてくると思うんですけれども、二月一日号で特集を組んでいます。これは山形県の月山ですか、町名は山形県の立川町、すばらしい写真があるのですね。自然の中に大きな風力発電の、そういう光景の写ったところなのですけれども、ここでは二基ですか、山形風力発電研究所の誘致に成功した。出力四百キロワットの風車二台による同社の発電目標は、年間で百二十万キロワット時、東北電力に売電し、同社によると、事業として十分採算がとれると強気の発言をしているわけですけれども、しかし率直なところ、私はなかなか難しいと思っているわけでございます。その辺についていかがお考えか、お示しをいただきたいと思います。
  33. 江崎格

    ○江崎政府委員 太陽光以外の風力発電ですとか廃棄物発電の問題でございますけれども、最近、地方公共団体ですとかあるいは民間の事業者によりますこうした風力発電、廃棄物発電による売電事業というものが活発化してきておりまして、大変これは有意義といいますか、好ましいことだというふうに考えております。  政府としても、こうした動きを支援するために、一つは、まず技術開発によって技術面からの支援をするということ、各種の導入の支援策、規制面における緩和といったようなことをやっているわけでございますし、特に風力発電、廃棄物発電による売電事業を行う事業者に対する支援措置ということで、実は今度の国会に、新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法案というものを現在お願いをしているところでございます。  それから、電力会社におきまして、従来から余剰電力購入メニューという仕組みがございまして、これによりまして、風力発電とか廃棄物発電から得られた電気について、既存の発電方法によるよりも、より高い値段で購入をしております。これからもそうした動きをぜひ活発化させていきたいというふうに思っております。  いずれにしましても、当省としては、今後とも官民の密接な協力のもと.に、こうした風力発電、廃棄物発電などの新しいエネルギーの導入の促進を図っていきたい、このように考えております。
  34. 飯島忠義

    飯島分科員 御努力はこれからさらにという感じでございますけれども、実は、大変ショッキングなWWFの通信簿が出ました。これは三月一日、地元の神奈川新聞の記事なのですが、主査、これを委員の皆さんに……。
  35. 高橋一郎

    高橋主査 はい、どうぞ。
  36. 飯島忠義

    飯島分科員 八問用意したのですけれども、もう時間もございませんので、これを最後の質問にさせていただきます。  温暖化対策で大変厳しい評価を日本は得た。不名誉なことでございますけれども、「「省エネ大国」に陰り」、何と日本は先進二十カ国の下から二番目。これは、世界自然保護基金、WWFは二十八日、先進二十カ国の取り組みを三段階で評価した温暖化対策通信簿を発表、「日本は米国に次いで下から二番目の厳しい評価で、二酸化炭素の削減目標など明確な温暖化対策への姿勢を示していないことが原因とみられる。今年十二月に京都市で開かれる気候変動枠組み条約第三回締約国会議(京都会議)のホスト国として早急な対応を迫られそうだ。」こういう新聞記者の評価がなされているわけでございます。  実際、日本の国際社会に対する約束ですよね、一九九〇年ベースを確保していくのだと。そういうことですと、それらも含めて相当な努力をしなければいけないのではないかなと思うので、そこで最後の質問ですけれども、新エネルギー、省エネルギーの推進は、エネルギーセキュリティーの確保及び地球環境問題への対応の観点のみならず、新規産業育成の点でも重要と考えるわけでございます。最後に、新エネルギー、省エネルギーの推進に向けての大臣の決意をお願いしたいと思います。
  37. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 今委員質問のように、エネルギーセキュリティーの確保及び地球環境問題への対応と同時に、新規産業育成という観点からも新エネルギー、省エネルギー、この推進が大変大事なことだと認識しております。このため、昨年十二月に取りまとめました経済構造の変革と創造のためのプログラムにおいても、これを新規成長十五分野の一つと位置づけております。  かかる観点から、停滞傾向にある新エネルギー、省エネルギーの推進を図るため、また、コスト低減等に向けた技術開発、初期の需要創出、経済性向上のための支援策、こういった施策を強力に推進しております。  さらには、新エネルギーに取り組む政府の基本方針として、新エネルギーを導入する事業者への支援措置を盛り込んだ新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法案、これを実は通常国会に提出しておるところでございます。また、各省庁との協力によって、政府を挙げて総合省エネルギー対策を三月末に取りまとめる予定でございます。  いずれにいたしましても、当省といたしましては、今後新エネルギー、省エネルギーの推進のための施策の強化に向けて全力を尽くす所存でございます。
  38. 飯島忠義

    飯島分科員 もう少し時間をいただきたかったのですけれども、いたし方ないのですが、この問題をめぐってはやはり環境庁と通産省との意見調整も必要になりますので、さらなる御努力をお願いして、私の質問を終わります。
  39. 高橋一郎

    高橋主査 これにて飯島忠義君の質疑は終了いたしました。  次に、穀田恵二君。
  40. 穀田恵二

    穀田分科員 私は、日本共産党の穀田恵二です。  きょうは、京都の伝統地場産業の西陣絹織物の問題について質問します。  まず、通産省は絹織物と帯地の輸入動向について新しくつかんでおられると思いますが、海外からの輸入の状況は現在どのようになっているか、お聞きしたいと思います。
  41. 村田成二

    ○村田政府委員 御質問の絹織物関係でございますが、絹織物につきましては、ほぼ毎年同じような水準で安定しておりまして、輸入量トータルで大体二千万平方メートルぐらいという状況でございます。  それから、お尋ねの帯、帯地でございますけれども、絹製の帯につきましては、九六年から輸入統計が組みかえになりまして、新たに別掲されることになりました。結果としまして九五年以前と比較できませんが、九六年単年で申し上げますと、三十七万六千五百本の輸入量となっております。  なお、帯地につきましては、帯のように別掲されておりませんけれども、絹織物のうちの小幅織物で見ますと三百数十万平方メートルということで、これは各年ほぼ同様の水準で推移いたしております。
  42. 穀田恵二

    穀田分科員 今も明らかにされましたが、昨年の輸入量は大体三十七万六千五百本。日本の国内で帯の産地の約七六%を占める西陣の生産量が、帯でいいますと大体二百六十三万本ですから、西陣で生産される帯の一四・三%、また、全国の帯の生産量の一一%に当たる分が輸入されていることになっているわけです。  これは日本の和装産業への非常に重要な影響があると思うのですが、その点での影響をどのように認識しておられますか。
  43. 村田成二

    ○村田政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、見方によりましては、輸入の占めるウエートというのが非常に無視できないウエートになっているわけでございます。ただ、全体として見ますと、特に和装産業は、御案内のように、生活様式が非常に洋風になってきております。それからまた、特に和服をお召しになる高年齢層が徐々に減りつつあるということもございますし、それからまた、いわゆるバブル経済一つの踊り場だったわけでございますが、趨勢的に見ますと、全体としまして、最近、景気の低迷ということで国内需要自体が非常に減ってきているわけでございます。輸入量自体は余りふえていないのですが、そういった全体の国内需要量が減ってきているという中で、やはり我が国の和装産業への影響というものはかなり厳しい状況にあるというふうに認識いたしております。
  44. 穀田恵二

    穀田分科員 今、生活産業局長から、一つは無視できない、なおかつ、確かに生活様式はいろいろ変わったというお話がありましたけれども、問題は、国内需要が減の中で、引き続き輸入量はずっと微増、ないしは、今回の場合帯は新しく統計が出たわけですから、一四%ということになりますと、やはりそれは大きな打撃になるわけですね。  しかも、御承知かと思いますが、西陣や丹後の状況はどうかといいますと、ここ四年間、西陣では織機が約四千八百台以上減っている。それから、帯の生産量でいうならば、ピーク時に比べて五百万本以上は減っています。ついせんだって行われた第十四次西陣調査によりますと、昭和五十年と比較すれば、企業数では六七・二%、織機台数で五八%、従業員数で四六・四%ですから、ほぼ半減という事態なのですね。だから、非常に打撃を受けている。  さらに、今回の第十四次調査の特徴を見ますと、御承知かと思うのですが、今までと違って総出荷額も七百八十一億円減っているという、いわばかつてない事態に直面しているということなんですね。その上に、ちりめんなどは、ピーク時が九百九十六万反で、今では二百二十七万反。特に、今度新しい変化は、中国やベトナムからの輸入の方が国内産より多いという逆転現象まで出てきているという事態になっています。  こうした中で、現地ではどう言っているかというと、後継者も育てなあかんと言われるけれども、機を織っていたのでは生活ができない、娘と息子に後を継げとは言えない。機織りをやめた人の中には、国民年金が二人で十五万円もないのに、そこから四万円ずつ機械のリース代を払わなならぬ人もいる。だから、やめるにやめられぬし、織ってももうからないし、ほんまに去るも地獄、織るも地獄というふうなことまで出てきているのですね。  ついせんだっても、年末でしたけれども、新聞報道にも載っていましたが、忘年会の翌日に会社に出勤したら、工場閉鎖、全員解雇の通知がぱっと張ってあった、こんなことまで実は起こっているのですね。  だから、私、今度の質問のために、ある黒共帯の方にお聞きしましたらば、ちょうど二年前にもこの問題について発言をしたのですが、中国からの黒共帯の輸入が大問題になっています。それ以後、西陣黒共帯分科会では、これを持ってきたのですけれども、自衛策といっては何なんですが、こんな形で西陣のマークを張らざるを得ない、ここにあるこれなのですけれども。今お見せしましたこれですね。こんなふうに、これは西陣が織っているものなんやということで、マークを張って自衛策をとる。さらに、そのための宣伝を独自にするというようなことまで出ているわけですね。そういう方々が言っているのは、原産国表示は最低必要ではないかということを言っておられます。特に、海外生産・逆輸入の規制、原産国表示を義務づけることを強く求めているわけですね。このような声にどうこたえていただけるか。  私は、中小企業、地場産業を育成するのが本来の仕事である通産省が、どんな対策をこの面で打っておられるかということについて、大臣にお聞きしたいと思うのです。
  45. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 今おっしゃるように、和装というのはやはり日本の文化であり、そしてまた西陣、これは伝統産業、伝統工芸だという認識を持っております。  今おっしゃったように、この原産地証明の話というのは、京都府議会などからは、海外生産された帯、帯地について、製織した原産地の表示を義務化することの要望が出ていることは承知しております。  現在、原産国表示そのものを義務づける法律はありませんが、関連のある法律としては、委員も御存じと思いますが、公正取引委員会の所掌する不当景品類及び不当表示防止法がございます。同法において原産地の不当な表示が禁止されております。  同法の運用に関して、帯、帯地について原産国を表示する場合、製造実態に即し、法の適正な運用が図られることが重要と判断しております。この点について、公正取引委員会の運用を注視していきたい、かように思っております。
  46. 穀田恵二

    穀田分科員 今大臣からお話があった点でいいますと、公正取引委員会が所掌するということになりますよね。  そこで、実は、今京都府議会のお話もございましたが、京都市議会も同じように、全会派が一致をして海外生産・逆輸入の規制と原産国の表示の義務づけを求める意見書を採択しております。  今、原産国との関係で公取問題で大臣からお話がありましたけれども、ちょうど同じように、実は現在の総理大臣である橋本通産大臣が、さらにその後をもう少し言っているのですね。  原産国の定義を決めております公正取引委員会事務局長通達というのがございますが、帯及び帯地は衣料品の中で外衣というところに分類されておりまして、その商品の実質的な変更をもたらすような行為というものが縫製となっておりまして、製織、織った方ではなく、織った原産国というのは何ら実は規制の対象になっていないわけであります。   通産省の事務当局としては公正取引委員会に対してこの通達の改正を要望してきておりました。今後とも必要に応じて公正取引委員会と十分相談をしていきたいと述べられておるのですね。  そうしますと、今お話があった前段の方は同じように、つまり、当時通産大臣であった橋本さんが答弁なすった方なので、後半の方、つまり、帯を外衣の中に入れているという区分けはどうもまずいのではないか、そういう問題で公正取引委員会と協議をしたいと思っている、それはどうなのかということを実はちょっと質問したいのです。
  47. 村田成二

    ○村田政府委員 先生御指摘のように、通産省といたしましては、従来から公正取引委員会と原産国表示問題でいろいろ協議を行ってきております。そういった中で、実質的な変更をもたらす行為が何であるかという点についての実態を踏まえました運用を公正取引委員会に検討をお願いしてきているわけでございます。  私どもといたしましては、帯ないし帯地に関しましては、製造実態に即して見た場合に、例えば織る段階が実質的な変更行為であると認められる場合には、その織るという作業を行った地域を原産国として認定することが適当であるというふうに考えておる次第でございまして、そういった観点から、従来から公正取引委員会の法運用に関しましていろいろお願い申し上げ、注視してまいっているところでございます。
  48. 穀田恵二

    穀田分科員 そういう意味はわかるのですね。  ただ、問題は、先ほど言いましたように、「十分相談をしていきたい」というふうに、当時、九五年の十月にお答えになっているわけですから、私の質問しているのは、公取と通産省の意見がいろいろと違うのでしょうけれども、どういう交渉をしてどんな結論になったのかということをお聞きしているのです。
  49. 村田成二

    ○村田政府委員 御指摘の実質的変更行為をどう考えるかという点につきましては、従来からいろいろ公取と協議してきているわけでございますけれども、さらに、今後、所管官庁として関係事業者等からもいろいろヒアリングをし、実態を把握いたしまして、その取り扱いについて具体的にどういうふうにしていくのかということを公正取引委員会の方で明らかにしていただくという方向に沿って、私どももできる限りのことをしてまいりたい、こう思っております。  具体的にどうするかという点につきましては、公正取引委員会の方の検討でございますので、公正取引委員会の方からお答え申し上げるのが適切かと思っております。
  50. 穀田恵二

    穀田分科員 それでは公取に聞きますけれども、今、生活産業局長からありましたけれども、こういう話でしたね、織るのが実質的変更行為の中心に認められる場合は、そういうのが適当だと。  ところが、局長も大臣もちょっと聞いてほしいのですけれども、帯というのは織りが大事なんですよ、帯というのは九十数%が織りですよ。帯の場合、縫いが大事だというのはほとんどないのですよ。  つまり、これはどうやって買うと思いますか。これを買うのは、まずこのままで買うのですよ。これは黒共帯ですけれども、これをそのまま買うのですね。そして、買ってから縫うのですよ。だから、商品としての価値というのは、ここを縫ってから価値があるなんということはあり得ないのですよ。帯は織った瞬間から帯なのですよ。わかりますか。そういうものが適当だじゃなくて、帯の場合には、すべての帯が織った瞬間に実質的変更行為がある、ここに肝心なところがあるのだというのが根本なんです。  それでは、公取にそういうことで聞いてみたいと思うのですけれども、公取は今の話の中でどんなふうな結論を出して協議をしているのですか。私が聞きたいのは、今お話のあった、正確に言いますと、不当景品類及び不当表示防止法で、「商品の原産国に関する不当な表示」の原産国の定義に関する運用細則の中に「商品の内容について実質的な変更をもたらす行為」を定めておるわけだけれども、帯の場合の実質的な変更行為は、今私が述べたようなことだと私は思うのですけれども、どこにあるとお考えなのか。  それからもう一つ、限定してお聞きしましょう。二つ目に、西陣織の帯の場合、実質的変更行為はどこにあるのか。どのような判断を持っておられるのか、公正取引委員会にお聞きします。
  51. 山本和史

    ○山本説明員 御説明申し上げます。  景品表示法は、公正な競争を確保し、一般消費者の利益を保護することを目的として、同法第四条第一号及び第二号におきまして、商品または役務の内容や取引条件について、実際のものまたは競争事業者のものよりも著しく優良、有利であると一般消費者に誤認される表示を不当表示と規制しております。また、同条第三号は、商品または役務の取引に関する事項につきまして、一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、公正取引委員会が指定するものを不当表示として規制しております。  原産国の表示に関しましては、公正取引委員会は、昭和四十八年、景品表示法第四条第三号の規定に基づき、商品の原産国に関する不当な表示を告示いたしました。この告示によりまして、一般消費者が原産国について誤認すると認められる表示を不当表示として規制しているところであります。  商品の原産国に関する不当な表示の告示では、「その商品の内容について実質的な変更をもたらす行為が行なわれた国」を原産国とするとしております。また、具体的にどのような行為が実質的変更行為と見られるかにつきましては、商品ごとに多種多様でありますことから、必要に応じて、この告示の運用細則において品目ごとに明らかにしているところでございます。ただ、帯地なり帯については定められておりません。  帯、帯地については、先生御指摘の西陣帯以外のものもあるところでございますが、御指摘の西陣帯につきましては、現在のところ、その製造工程を見る限り、基本的には織り、製織が実質的変更行為であると考えておりますが、さらに関係事業者なり所管省庁から実態を把握し、検討を進めてまいりたいと考えております。
  52. 穀田恵二

    穀田分科員 その定められていないということなんですけれども、私は京都市議会の討論その他を聞いてみますと、調べたのですが、実は、京都の行政の側が公取に聞いたということで答弁しているのです、外衣の中に含まれていると。つまり、定められていないのじゃなくて、あの細則を見る限りにはわからないけれども、「衣料品」という項目の次の段の「外衣」に含まれているので何としようもないと。従来こういう見解をとってきたことは、京都市議会でも行政当局が答弁しているわけですから、これは確かなんですね。  ただし、今、後半にありました重要な製造工程という問題もありましたから、私は、今の答弁というのは、西陣織の場合、実質的変更行為は織りにあるというふうに判断したと理解したいと思うのです。  くれぐれも言いますけれども、もう一回言うのですけれども、いつ言ってもわからないのですけれども、帯を扱っている方々はよく御存じなのですけれども、いろいろな帯が確かにあります。だけれども、先ほどこれは黒共帯と言いましたけれども、例えば名古屋帯という場合、大臣、ここからこう折るのですね、こういうふうに。そして、ここをちょうど縫うわけなんですね。これは何回も言いますけれども、縫うなんというのは後であって、これはこのまま売っているのですよ、こういうふうにして。ほかのいわば共帯の場合は仮縫いをして、それを皆さんにお見せして売るわけなんですね。だから、どの帯を見た場合でも、本来帯というものは織った瞬間が帯であって、縫いというのは後から加わるものだということは常識なんですね。だから、今西陣の場合はと限定してお話ありましたけれども、帯の場合はすべてそうなんだということを私は改めて言っておきたいと思うのです。  だから、今お話ありました運用細則に、現状に合う項目がないわけだから、帯、帯地の項を新たに設けるべきではないか。そして、その中でせめて、原産国の定義に関する運用細則に、西陣織の帯についてはそういう形での分類や明示ができないだろうか、そういう通達やさまざまな努力がないのだろうかということをぜひお聞きしたいと思います。
  53. 山本和史

    ○山本説明員 御説明申し上げます。  帯、帯地につきましては、先生御指摘のとおり、現在、運用細則において定められておりません。帯、帯地については、先生御指摘の西陣帯以外のものもありますことから、今後、その製造の実態等を踏まえまして、帯、帯地一般についての実質的変更行為を明らかにすることについて、その必要性を検討してまいりたいと考えておりますが、御指摘の西陣帯の実質的変更行為をどう考えるかにつきましては、ただいま申し上げましたとおり、今後さらに所管省庁や関係事業者などからの実態の把握に努めた上で、その取り扱いにつきまして何らかの形で明らかにしていくことを検討してまいりたいと考えております。
  54. 穀田恵二

    穀田分科員 わかりました。ぜひ早急にお願いしたいと思うのです。  私は、くれぐれも言いますけれども、帯というのは、帯一般については検討したいとおっしゃいましたけれども、どこへ行っても帯は帯なんですね。これも持ってきたのですが、これは半幅帯というのですね。これは浴衣にする帯なのですね。この織りなのですけれども、これはポリエステルで絹じゃないのですけれども、これだって、別に縫うのが大したあれでなく、織った瞬間にこれはまた帯なのですね。縫うなんていうのはここの端っこをずっと縫うだけであって、まさにこれをやるのが大事か、それともここの織りが大事かというのは――模様もあるわけですね。これはだれが見たってわかるのですね。  だから、どの帯であっても、繰り返しになりますけれども、公取は常に、少しは西陣の問題については御研究いただいて、どうもそうらしいということで御判断いただくという前進を見たわけですが、帯一般も、それは帯なのですよ。  つまり、私は何を言っているかというと、着物の着尺、あれは織る幅が違うのですよ。これは半幅といいまして、これは半分なのですね。これは帯なのですよ。帯は織った瞬間に着尺にはできないのですよ。だから、これはどこを見たって、どこの製造過程を見たって、必ずそういうことが言えると思います。  そこで、先ほど大臣から、原産国表示を義務づける法律がない、こうありました。ここの点をもう少し最後に突っ込んで議論をしたいと考えています。  私は、国際的な流通商品でない、しかも、先ほど大臣から日本の伝統であり文化であるというお話がございましたように、そういう日本の伝統的文化でもあり、地場産業でもある和装品やその中の帯や着物、それを育てる上からも、原産国表示を義務づける法律が必要だと思います。  ここに、公正取引委員会事務局が編集しました「流通取引の公正化と日米構造問題協議」という本を持ってきました。この中に、実は、原産国表示の今後の運用の検討を行っていた原産国表示問題研究会の報告が書かれています。この報告に対して、公正取引委員会はその報告の趣旨を踏まえ原産国表示の見直しを行う、こう書いているのですね。そういう内容のものです。  この中に、実はこんな文言があります。「最近では、我が国を取り巻く経済環境が大きく変化し、同じ商品であっても様々な国で生産されるようになったり、あるいは外国品について国産品と誤認される表示が問題とされる等、原産国表示に関する新たな課題が生じている」と指摘をし、ここから大事なのですけれども、「一般消費者の意識において地域性が重視されている商品について、原産国が表示されていないことにより、一般消費者がその商品の真の原産国を誤認するおそれがある場合も考えられる。このような商品については原産国の表示を義務付けることが必要となる。」と述べているわけです。西陣は、そういう意味でいいますと、ある意味では一つの地域性であり産地です。  さらに、こんなふうにも指摘しているのですね、国の伝統的産品と見られた商品等については特に原産国の表示が必要だと。これは「今後の原産国表示規制の在り方」という結論部分の中でそのことを述べられています。  これは、西陣関係者が、通産大臣が認定する伝統工芸士、約二百八十人いると思いますが、にされているように、西陣が伝統的産品であることは明らかであり、今述べた地域性からも伝統的産業だということからも、そして、この検討委員会が提起をし、将来の方向という規制問題についても出しているわけですから、その義務づけをやるという問題でいえば、やはり公取じゃなくて通産省だと思うのですが、その辺いかがでしょうか。
  55. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 きょうは帯のいい勉強をさせてもらいました。  確かに、先ほど申したように、西陣が今大変苦しい状況にあるということは冒頭に説明がありましたが、一方、今御指摘のように、消費者への情報提供というような立場でいえば、やはりこれは非常に問題があると思うのです。  ところが、一方、新たな規制を講ずることがいいか悪いかとか、あるいはまた、WTO協定が要請する内外無差別原則との整合性、こういうことがありますので、きょうの議論を踏まえて、一体現実問題としてこの対応策として何が可能なのかどうか、こういう点をやはり詰めていく必要があると思います。また、詰めさせていただきたい、かように思います。
  56. 穀田恵二

    穀田分科員 確かにWTOの問題はあるのですが、いずれにしましても、各国もこういう問題で、原産国表示の問題について言うならば、消費者が――特に国際商品と違いますね、この帯だとかは。ネクタイの場合には国際的な流通商品ですから。だから、帯の場合には、日本の国でつくっているのだろうという思い込みで買っているという例が多いわけですね。そういう中に実際は誤認させる現状があるわけですから、そこを何とかしたいという思いであって、そのことによる規制というのは、確かにこの文書にも書いていますように、輸入を阻害するようであってはならないと書いているのですね。私は、結果として売れるか売れないかというのは消費者の判断であって、その消費者の判断前提となっている誤認を避けるという問題で切り込んでいただくということが必要かと思っています。  きょうはそういう議論をさせていただきましたので、お願いをして、時間ですので終わります。
  57. 高橋一郎

    高橋主査 これにて穀田恵二君の質疑は終了いたしました。  次に、新藤義孝君。
  58. 新藤義孝

    新藤分科員 自由民主党の新藤義孝でございます。  きょうは、産業政策にかかわる、特に中小企業の関係についてお尋ねしたい、このように思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。  まず、全体の経済概観でございますが、日銀の金融経済概観によると、我が国景気は穏やかな回復を続けており、民間需要は底がたさを増している、こういうことでございます。そしてまた、ちょうどきのうの日経新聞を見ますと、上場企業は四年連続の増益だ、今期の経常利益も八・九%アップだ、こんなふうに出ております。要するに、経済的な見地からいうと、景気は底がたさで少しずつでも回復しているのだ、こういうことになるわけなのでございます。  それに対して、では本当の地場の、地域で営業活動をされている中小企業の皆さんたちはどうなのか。私は、地元の企業、川口でございますが、大変中小企業の集積の多い町でございます。皆さん方とお話ししている中で、景気がよくなったなという話は一度も聞いたことがないわけでございます。  そういう中で、よく調べますと、大企業の回復に比べて中小企業の回復のテンポというのはまだまだだと。中小企業庁調査によっても、平成八年の七月から九月期以降足踏み状態が続いているという、大企業の回復、日本経済の回復基調に対してこんな状況が出ております。また、製造業の工業生産指数を見ても、平成二年を一〇〇とした場合に、大企業が一〇二、中小企業が九五・二だ。こういうことで、数字を見ていくと、言われている全体の経済の話と中小企業との間には相当な隔たりがあるのではないか、このように思っております。  これについて認識を聞こうかなと思いましたが、しかし、これは大体こういうことなわけでございまして、これを前提にして先に進めたいと思います。  こういうことで、中小企業はまだまだなのだ、何とかしてあげなければいけない、させていただきたい、こういうふうに思っているわけなのですけれども、そういう中で、特に私が今心配しているのは空洞化、これもよく皆さんから御指摘いただきます。空洞化も、やはりちょっと調べますと、設備投資面においても、今回中小企業の先行性というのは失われている。それから、要するに企業マインドでいえば、今までの不況は、どんなに苦しくても頑張っていれば、景気が回復すれば親企業からまた発注が戻ってくる、こういうことだったと思うのですが、今回ばかりは、皆さんからお話を聞いていると、なかなか戻るのは難しいのじゃないか、こういうようなことも聞いております。  これの背景になっているのは、やはり大企業海外進出。これは八五年のプラザ合意以降どんどん進んできておりますが、家電製品の海外生産比率で見ると、八五年から九四年までの十年間で、カラーテレビは三八%から七八%に海外生産が進んだ。ビデオが六・三%から五三%、冷蔵庫が一八%から四四%と、こういうふうにすごい勢いで海外展開が大企業で図られておる。そうすると、初期のころは別にして、もう最近では海外での生産の品質だとか生産体制がしっかり整ってしまってくると、一番最初のころに大企業海外へ出ていって、そして製品調達は国内の下請だとか部品メーカーに発注していたものも、これも含めて海外に行ってしまっているのではないか。そういうことで、企業の収益は上がっているのだけれども、中小企業に仕事の戻りが来ないのじゃないかという心配につながっているのではないか、こういうふうに思うわけなんです。  ここで、ちょっと能書きが長くなって恐縮なんですけれども、私は中小企業ということに対して少し自分なりの定義がございます。大企業に対する中小企業ということではなくて、中小企業というのは、まさに地域産業、地場産業化しているわけでございます。それは、商売だけの問題ではなくて、地域と密接に結びついた企業というものは、これはもう完全にコミュニティーの一部になってしまっている。例えば、町会運営だとかそれからいろいろな行政に協力をしたり、町を運営していく中に本当にすばらしいほどに地場産業の、地域集積をされた産業の皆さん方が、自分たちの仕事だけではなくて、町の問題として産業が集積しているということでございまして、私は、地場産業は地域コミュニティーだ、こういうふうに思っています。ですから、空洞化等々で中小企業の業績が回復しない、元気になってもらわないと町自体も意気消沈していってしまうということになる、私はこのように思っています。ですから、単に産業政策上だけではなくて、我々の地域のコミュニティーの問題としてやはり中小企業の振興というものを強力に考えていくべきだと思っておるわけでございます。  そういった観点から、いわゆる中小企業、我々は地場産業と言います。お国の方では、地域の産業集積、地域集積産業と言うわけでございますが、この問題に対して通産省としてはどういった対策を講じようとしているのか、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  59. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 御指摘のございました大企業海外展開に伴う空洞化によりまして、産業集積、地域のコミュニティーに大変大きな打撃を与えております。  我々、二つの産業集積を念頭に置いて検討を進めてございますが、一つは自動車、家電などの量産型産業、いわば基幹産業を支えてまいりました足元にあります鋳鍛造、メッキ、金型、試作品製造などのいわゆる物づくりの基盤でありますサポーティングインダストリーの集積でございます。いま一つは、産地などの形態で地域経済の自律的発展基盤でありました地域の中小企業の集積でございます。この二つの産業集積を念頭に置きながら空洞化問題を検討しているところでございます。  他方で、先ほど不況を耐えれば発注が戻ってくるかという先生のお話がございましたが、我が国の産業構造、大変大きな変化をいたしてございまして、我が国製造業への需要は、むしろ最終消費財よりも資本財、生産財へと変化をしておりますし、また、大量生産の一般仕様品から小ロット生産の特殊仕様品へ移行することなどの傾向が見えてございまして、資本財、生産財や研究開発、試作を中心とする分野に需要自身が大きく変わりつつあるという認識がございます。このため、我が国地域の産業の空洞化を防止しますためには、この需要構造の変化、産業構造の変化に対応しつつ新たな活力を生み出すことが必要でございまして、そのために、技術水準を上げる、あるいはネットワークの形成を広げる、新分野へ進出をする、こういったことのための基盤整備を通じまして、地域の産業集積の活性化を図ることが不可欠ではないかというふうに考えてございます。  このため、今国会に特定産業集積の活性化に関する臨時措置法案を提出いたしましたところでございまして、この法案によりまして、産業インフラの整備研究開発、人材育成の促進あるいは新たな事業展開への投資促進などを柱といたしまして、地域における取り組みへの体系的な支援を推進したいと考えてございます。特に、建設省の道路整備事業あるいは労働省の雇用・能力開発施策、さらには文部省の教育研究施策など、関係省庁とも密接な連携を図りまして総合的な施策を講じ、その効果を最大限に発揮するよう政策を構築いたしてございます。
  60. 新藤義孝

    新藤分科員 今の特定産業集積の活性化に関する臨時措置法案、これは大変すばらしい法案だと思うのです。  そこで、大臣にお尋ねを申し上げたいと思いますが、私、この中小企業の問題は、これはこれからの政策すべてにかかると思うのですけれども、めり張りをつけた運営をしていく必要がある、このように思うのです。要するに、一律、中小企業なら中小企業という枠ですべての皆さんに等しく渡るようにしようと思うと、これはどうしても最大公約数のものになってしまう。やる気のあるところと、それからそうでないところと、これはやはり差はつけていく必要があるのではないかというふうに思うのです。  先ほどサポーティングインダストリーの問題にちょっと触れていただきましたが、まさに私たちの川口はそういう、素形材の鋳物を中心として、それに関連する機械や木型関係がずっと集積しておるわけですね。こういう町で、自分の町の売り込みをしてもしようがないのですが、国の政策によらずに、川口版ニューディールなどと申しまして、公共施設に自分たちの製品をどんどん使ってくれということで独自にキャラバン隊を組んで何かやったりとか、いろいろなアイデアを自分たちで出しながら地域でやっております。特定産業集積の活性化に関する臨時措置法案、ぜひこれをどんどん進めていただきたいのです。  何か、聞いている話では、地域指定を二十地域ぐらいして進めるのだということなんですが、そこで大臣にぜひ御見解というか御決意のほどを御披瀝いただきたいのは、大変にらみのきく、実力、剛腕大臣でございますから、私は、これの肝心なところは、通産省だけの政策ではなくて、もし事業者が魅力を感じるとするならば、先ほど申しました地域コミュニティー、町の運営の中での話だとするならば、要するに、いろいろな関連施策、よその省庁との連携によって総合的な町づくり事業の中に組み込められるかということだと思うのです。産業関連のインフラの整備、それからいわゆる労働関係の条件整備、こういうものが通産省主導にして強力に総合的なものになったときに、今回の中小企業に関するてこ入れ策が功を奏するのではないかな、私はこう思うのでございますが、ぜひ御決意のほどをお願い申し上げます。
  61. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 新藤さんにお答えいたしますが、今委員のおっしゃるとおりだと思うのです。  ただ、中小企業といっても、いわゆる工業部門と商業部門、これは大分違うと思うのです。今のお話のように、新藤さんの地元川口というと、鋳物の町ということで町ができ上がり、そこにおいて新しい技術が生まれ、まさに政治も経済も鋳物で育ったなというような気がしております。  それで、これから私の方で御審議をお願いする地域産業集積活性化法案、これは今おっしゃるように、俗に言うめり張りをきかしていかなきゃいけない、それから地域の特性をそれぞれ生かしていくということが大変大事だと思うのです。ですから、この中においては、技術開発、販路の拡張、人材育成というのを三本柱として幅広い支援を展開していく、各地域の中小企業がその必要に応じて支援策を組み合わせ、新たな事業の展開に活用していけるよう最大限の工夫をしたものであります。  こうした施策だけではなく、中小企業対策を使いやすいものとし、中小企業の方々のさまざまな悩みや課題に的確にこたえ得るよう、まず窓口機能の強化ということ、そして民間や大学の人材を活用した広範かつきめ細かなアドバイス事業の推進ということ、開発初期段階の技術シーズの助成の対象化ということで、平成九年度の予算においてはこういった施策の充実を図っていきたいと思うわけでございます。  全く委員の御指摘のとおりでございます。
  62. 新藤義孝

    新藤分科員 ありがとうございます。いささか私どもも、町の中で自分で目の当たりにしておりますので、しかし、これは私たちの町だけではないと思いますので、御賛同いただいたと思っておりますが、ぜひ今後ともよろしくお願いを申し上げます。  それから、余り時間がなくなってきましたので、もう少し大臣にお尋ねしたがったのですが、ちょっとこれは、規制緩和のことについてはまた次の機会に回させていただきます。  そして、一つ大事な問題として、空洞化の進行、それから規制緩和、これとあわせて時短問題が大変大きな問題になってくる、このように思っております。  中小企業にとって、単純に操業時間が短くなってよかったなと喜ぶかというと、実態はなかなかそうではないわけでございまして、収入が減ったらどうしようと働いている方は思うし、それから雇っている方は、今までより時間数が減った、少なくなったから、じゃ賃金アップしろよと言われてもこれまた苦しい、こういうところだと思っております。  そういう中で、今回は、いわゆる二年間の指導期間というものを設け、時短促進法の廃止期限を二年延長するんだ、こういうことで法案も出ております。私も、この時短の意義とか、それから国際世論の中で国是になっている、こういうことも含めて重々承知をしておりますけれども、この場合に幾つかの問題が出てくると思われますので、具体的にどう対処するのか、これは中小企業庁にお伺いしたい、このように思っております。  まず、二年間の指導期間において具体的にどういう指導が行われるのか、そして、労働省の関係で中小企業庁としてはどんな役割を果たしていくおつもりなのかということでございます。それから、下請の中小企業が時短を進める場合には親企業の発注のあり方というものが、やはりこれは決めておかなければいけないと思うんですが、親企業さんに関してどういう指導が行われるのか。それから、この週四十時間労働に対する賃金の扱いの問題、これも労使間の問題なんだ、労働省ですよということかもしれませんが、しかし、中小企業庁としてこの部分にどういう御指導をされるおつもりなのか。それから最後に、やみ残業というのがあるわけでございます。いわゆるやみ残業というものが一般人から告発されたときに、仮にそういうことがあったときに、中小企業の経営者が直ちに罰則の適用を受けないような措置が法的に講じられているのかどうか。これはあってならないことなんですが、ただ、実態上時々聞く話でもあるわけでございまして、この辺についてお答えをいただきたいと思います。
  63. 田島秀雄

    ○田島政府委員 労働時間の短縮の問題、私ども、ゆとりと豊かさの実感できる社会といったようなことからも、それから中小企業者の人材の確保という観点からも、大変重要な問題と考えてございます。  ただ、中小企業の皆様方、一生懸命に時間の短縮には取り組んでいただいておるわけでございますけれども、先ほど先生お話ございましたように、今景気の観点からも構造的な対応という観点からも、大変厳しい状況でございますものですから、来年の四月から四十時間制に移行するという場合に、それができるだけ円滑に移行するようにということで、政府によってきめ細かい援助、指導ということを規定する時短法という、これは労働省の法律でございますが、この改正案を今国会に御提案を申し上げておるところでございます。  また、来年度の予算案におきましては、四十時間労働制への移行に取り組む中小企業者の皆様に助成金を創設するということで、いろいろな環境整備というようなことについても御支援を申し上げるということになっておるところでございます。  いずれにいたしましても、引き続き労働省とよく相談をして進めたいと思います。  先ほど先生からお話のございました点につきまして、やや具体的にあれしますと、指導、援助のところは、先ほど申し上げたように、時短法を改正しまして、二年間は指導、援助に徹するということで円滑な施行を図るということでございます。  それから、下請の関係につきましては、下請振興基準というガイドライン、私どもございますが、その中に、例えば、夜遅くに発注をして朝一番で持っていらっしゃいといったようなことはやはり適切ではありませんよといったようなことを盛り込みまして、いろいろな機会、大企業の下請の窓口の担当者等々に対する研修の機会等を通じて周知徹底を図っておるところでございますし、引き続きそういった努力をいたしてまいりたいと思います。  賃金の扱いのお話もございましたけれども、この点につきましては、労働省の御意見にもございますが、時間当たり賃金単価が下回らないというようなことでありますれば、大変いろいろ厳しい状況にございまして生産性も上がっていないという中小企業の対応の一つのやり方として、労働基準法上も認められるのではないかというようなことでございますので、そういった取り扱いをやむを得ない場合はしていただくというようなことを考えておるところでございます。  やみ残業の問題、最後に御指摘ございましたが、当初の二年間につきましてはそういったことも含めて御指導をし、できるだけそういうのが守られる状況を実現するということで対応いたしたいと思います。  いずれにしましても、労働省とよく、私どもも中小企業の実態を御理解いただきながら進めてまいりたい、こういうふうに思ってございます。
  64. 新藤義孝

    新藤分科員 ただいまの問題は、ちょこちょこっとやる問題ではないわけでございまして、一つ一つが非常に重要な問題だろうと思います。  そして、例えば下請発注基準についても、これはこれまでも、時短を除きましても今まで親企業と下請の関係というのは幾つもあったわけですね。だけれども、現実にはなかなかそれが行き届かないというところがあるわけで、あくまで実業の世界の話になってしまいますから、よく注意深く見ながらやっていきたいと思っております。  特に、賃金の扱いの問題は、これは質問ではありませんが、賃金の問題については、ややこしいんですけれども、基本的には労使間の話し合いで解決すべきだ。そして、賃金が合理性があるものであれば、時間当たり賃金が減少しないと、労働時間の変更との関係から見て合理性があるものであれば、労働基準法の適用上問題とならない。うんと難しいんですけれども、要するに、ある範囲までは減っても問題にしないよということかなと思っております。しかし、なかなかこのようにはいかないんじゃないかな、やってみてからの話なんですけれども、これは今後の課題ではないかなというふうに思っております。また、次回、改めてこれはじっくり詰めていきたい、こういうふうに思っております。  そして、最後の御質問をさせていただきますけれども、今まで中小企業をめぐる情勢ということで、空洞化の問題であるとか時短の問題に少し触れさせていただきました。これとあわせて、もう一つ別の観点から、今度は中小企業を支える人材の確保、こういう観点から質問させていただきたいというふうに思います。  特に、中小企業の町工場、こういうところについては、今までの高度経済成長を支えた、そして最先端の技術を保有していた町工場というのはいっぱいあるわけなのです。この特殊技術というのは工場の職人によって引き継がれてきた、こういうふうに思っております。要するに、こういう技術というのは特殊なものですから、中には職人芸のようなものもございます。こういうものも含めて、長い年月をかけて、最先端の機械をもってもなかなか代替できないような技術を持ったところまであるということでございます。  しかし、そういう中で、私のところの町の川口なんかでは特に鋳物に顕著なのだと思うのですけれども、若い人がなかなか入ってこないということでございます。本当の基礎的な素形材ですから、高度経済成長を支えた部分なのだけれども、今いわゆる三K職場ということで若者から敬遠されてしまっている。やる気を出している若い人というのは、結局工場を継ごう、工場をやっていこうと思っている方でございまして、この工場で働いてやろうという気持ちを持った若い人が少ないのではないかな、こういうふうに思うわけでございます。  橋本総理がよくおっしゃる、私はお聞かせいただいているのですが、私たちの国は職人の国家だ、物づくりの国家だ、技術を持った人の手によって国が支えられてきたのだ、こういうふうにおっしゃっております。それでは、この部分を具体的に、特に製造業にかかわる技術者の確保そして育成、これをどうやって図っていくのかということなのです。若い人が入ってきてくれないというのは、社会全体における物づくりの現場に対する評価の低さ、これが反映されているのではないかな、総括させていただくと私はそんなふうに思っております。  これに加えて、やはり工場で働く技術労働者が自分の仕事に誇りを持って、そして子供にこの仕事はぜひ継がせたいのだ、やらせたい、こういうふうに思わせるような気風が今の日本に欠けているのかな。要するにホワイトカラーとか大企業志向、こういうことなのかなというふうに思うのですけれども、気持ちだけではなくて、やはり私は、実際にこういう人たちに誇りが持てるような、そういう社会的なステータスと処遇を、技術を持ったことによって与えられる処遇について、もう少しきちんと形をつくっていく必要があるのではないかな、こういうふうに思うわけであります。  そういう観点から、現在、技術労働者に対してどういう育成策を行っているのか、また、その育成策が社会的なステータスを得られるようなシステムになっているのかどうか、そこのところをまずお伺いしたいと思っております。  それから次に、ドイツのマイスター制度、要するにこれはドイツ固有の技術労働者のシステムなのですが、これについてどんな評価をしているのかということをお聞きしたいと思います。  それから最後に、若手の人材を確保しなければいけない、これはだれもがわかることなのですけれども、このために、やはりすばらしい技術者にきちんと日を当ててあげる、それから待遇を考えてあげる。それとあわせて、そういう人たちが今こんなことをやっているんだということを子供たちに教える必要があるのではないか。これも、教える必要があるのではないかと言うと、いいですねと言うけれども、施策が具体的にないのですよね。だから、こういう部分は特に文部省と協力して、子供たちの中にボランティアの気風を生み出すということと働く喜び、そして技術のすばらしさ、こういうものを子供のときから啓蒙していく、そして触れさすことができる、そういうことをやってみたらどうかな、こういうふうに思うのでございますが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  65. 田島秀雄

    ○田島政府委員 先生御指摘のとおり、戦後我が国の製造業の成長を支えてきたのは中小企業でございますし、なかんずく、生産の現場で働いてくださっておられる技術者あるいは技能者の皆様方に大きく依存しておるということをよく認識をいたしております。  一方で、御指摘のように、空洞化の進展等々、物づくりの基盤が失われつつあるという懸念もあるところでございます。技術者、技能者については、例えば鋳物工でございますけれども、五十代後半をピークに、年齢が下がるにつれて技能工が少なくなっているといったようなこともございまして、高齢化が進む中で若者の製造業離れ等が進む、今まで培ってきた技術を次の世代に継承することも難しくなっておるというような状況ではないか、こういうふうに思っております。私どもの国の製造業の発展にとって、やはりゆゆしい問題でございます。  技術者、技能者に対する問題、先ほども御議論ございましたけれども、今国会で御提案を申し上げております集積活性化法といったような法律、その他各種の技術開発の施策等々、産業そのものがやはり活性化をする、元気のある形になるといったこと。それから、中小労働力確保法という法律もございますけれども、職場環境を改善をしていくといったような努力、不断の努力というのが大切でございますし、こういったこととあわせて、現在私どもも、これからさらにどういった対応をしていったらいいのかというようなことを調査検討に着手しておるところでございます。  この場合に、物づくりの大切さが理解をされるということ、これが大変大事であるということもよく認識をいたしておりまして、私どももいろいろな有識者、学識経験者等々からの御意見なんかも徴しておりますけれども、そういった中でも、技術に対する社会的評価の問題あるいは物づくりに対する社会的評価の問題が重要だという御指摘も賜っております。  したがいまして、産業界で活躍をされておる立派な技術者や、あるいは熟練の技能者の皆様方の実際のお話を、学生はもちろんのこと、一般の方々、子供さんに至るまで、いろいろなお話をしていただいて、物づくりのすばらしさとか楽しさを理解していただくといったような機会をふやすことも大変重要であると思っておりますし、こういった観点も含めまして、私ども通産省も、局も含めて、いろいろな機会をとらえて、物づくりの大切さについて講演とかシンポジウムとか、そういった努力をいたしておるところでございます。  いずれにいたしましても、先ほど申し上げたように、今勉強に着手したところでございますが、中小企業庁もいろいろな補助金等々もございますので、そういったものを活用しながら、あるいは大学校の制度といったようなものも活用しながら、人材育成に係る施策の充実等々に努力をしてまいりたいと思っております。
  66. 高橋一郎

    高橋主査 これにて新藤義孝君の質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時九分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  67. 高橋一郎

    高橋主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  通商産業省所管について質疑を続行いたします。大村秀章君。
  68. 大村秀章

    大村分科員 自由民主党の大村秀章でございます。  貴重なお時間をいただきまして、この予算委員会分科会質問をさせていただく機会をいただきました。連日の予算委員会の審議で大臣また政府委員の皆さん方大変お疲れのこととは思いますけれども、しばらくの間、明快な御答弁をお願いしたいと思っております。  私は、商店街の振興対策につきましてお伺いをしたいというふうに思っております。  もう既に御案内のように、全国各地域、それぞれの町、村というのもあれですけれども、町々にはそれぞれの地域の特色を生かした商店街があるわけでございます。現在、いろいろな任意のものも合わせますと、大体二万と言われております。その商店街というのは、それぞれの地域でやはり人が一番集まる場所である、そしてまた、いわゆるその地域の顔であるということでございます。  実際に物を買うということでございますと、これは毎日毎日、日々の営みでもあるわけでございますし、また買い物なりショッピング、そういったものは、それ自体が楽しみであり潤いでもあるわけでございます。  そうした観点から、とにかく全国各地で、それぞれの自治体、また個々の商店、商店街、いろいろな商業関係者あわせまして、巻き込んでいろいろな意味での商店街の振興の取り組みということがなされておるわけでございます。  そういう商店街の振興対策につきまして、もちろんそれぞれの地方自治体また商工会議所も中心になってやっておられるわけでありますが、国としてもいろいろな施策を導入してやられておる、そういうことは十分承知しておるわけでございます。アーケードや駐車場対策といったハード事業とあわせて、情報化対策のようなソフト事業といったものもやられておるというふうに承知しております。  そうしたことは大変結構なことでありますが、今商店街自身は、いろいろな意味で曲がり角に来ておる、だんだん個々の商店の数は減ってきておる、商店街自身がだんだん衰退している、そういったところも見られるように思います。そういう意味で、地域の中心でありますし、また顔ともいうべきこうした商店街といったものにつきましての現状認識、そしてまたその活性化方策ということにつきまして、基本的な大臣のお考えをお伺いしたいというふうに思います。
  69. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 大村委員、こうした中小企業、特に商店の振興に大変御熱心だということはよく承知しております。今委員御指摘のように、小売商業者、これはやはり最近の消費者の行動の変化というか、消費者の行動パターンの変化、そしてまたモータリゼーションの進展、大型店の出店等、著しく環境の変化を来しております。こうした中で、平成三年から六年の三カ年で我が国の商店数は約百六十一万店から約百五十万店、こういうふうに減少してまいりました。最近では、中心商店街において、いわゆる空き店舗というのが大変深刻な問題になっております。  こういう状況にかんがみまして、通商産業省としては、従来から、意欲を持ってこうした厳しい経営環境に対応していこうとする商店街、中小小売業者の、魅力ある商店街、商業集積の整備、あるいは共同化や製造業、卸産業とのネットワークづくり、また、個々の商店の魅力アップ等の各般の取り組みに対して、補助だとか高度化無利子融資、低利融資等の支援を実施してまいりました。  さらに、平成九年度の予算案においても、商店街空き店舗対策モデル事業の拡充あるいは商店街活性化モデル事業の創設等、商店街、商業集積活性化のための支援の抜本的な拡充強化を図っております。情報技術の活用による中小小売店の生産性の向上を促進するための各般の助成制度というのもつくっております。こういうことで、中小小売商業対策の一層の充実強化に努めているところでございます。
  70. 大村秀章

    大村分科員 ありがとうございました。  こうした商店街でございます。商店街は、特に活力があるためには、やはりどうしてもにぎやかになっていただかなければいけない、そのためには、やはり人が集まってもらわないとどうしようもないということでございます。全国各地で、人を集めるためのいろいろな事業、工夫をやられておられるわけでございます。  よく、地域にはそれぞれお祭りというのがございます。夏祭りもありますし、秋祭りもある。そういったものと商店街のイベントとを結びつけていったような、そんなことがやはり効果的ではないかというふうにも思っております。私、愛知県の安城というところが地元でございますが、安城では七夕祭りをやっておりまして、それに地元の商店街がタイアップをして集客力、もちろん集客力のアップだけではありませんで、イメージのアップといったことも図っておるところでございます。  こうした地域のお祭り、そしてまた商店街のイベントといったものを結びつけるような試みがそれぞれの地域でやられておられるわけでございまして、そういったものをバックアップする、支援するような、そんな方策が考えられぬものだろうか、こういうことでございます。こうした点についての通産省、政策当局のお考えをお伺いしたいというふうに思っております。
  71. 篠原徹

    ○篠原政府委員 委員から御指摘ございましたとおり、商店街の活性化を図る上におきまして、地域の文化に根差しましたイベントの開催など、商店街の魅力を高める事業を展開することは極めて重要であるというふうに私ども考えております。  かかる視点から、商店街などが行いますイベント事業を支援するために、中小企業庁では、各都道府県が設置いたしております中小商業活性化基金に対しまして財政的な支援をいたしておりまして、現在全国の各県に中小商業活性化基金、総額一千三百六十億円の基金が造成されております。その運用益を活用いたしまして、商店街が行います各種のソフト事業に対しまして支援を行っているところでございます。  これまでの実績を申し上げますと、平成七年度におきましては、全国で千二百六十件のプロジェクトに対しまして、総額約三十二億円の助成が行われております。また、平成二年以降これまでの累計では、合計九千百九十二件のプロジェクトに対しまして、約二百七十二億円の財政的助成が行われております。  委員からお話ございました愛知県安城市で行われております七夕祭りに際しましても、地元の商店街の関連イベントに対しまして、愛知県に設置されておりますこの基金から助成が行われているところでございます。  さらに、平成九年度予算におきましては、地域の特性や伝統文化を生かしました取り組みなどの商店街活性化のためのモデル的な事業をさらに拡充あるいは新設することにいたしております。  今後とも、商店街の活性化のためのソフト支援に万全を期してまいりたいと考えております。
  72. 大村秀章

    大村分科員 こうした、ハード事業はもちろんでありますけれども、やはりソフトの事業が大変重要だと思います。特に、こうした地域のお祭りとタイアップしたようなイベントについて、引き続きといいますか、そういった御支援をぜひお願いしたいというふうに思っております。  そういう意味で、私もいろいろな関係者の方にお話をお聞きしますと、いろいろな取り組みがやられておるのですね。商店街はその地域で中心だ、顔だ、やはり顔をきれいにしなきゃいけないというのがそれぞれの地域での町づくりの大きな眼目でもあるわけでございます。  しかし、その一方で、もう全国的な傾向のようでありますけれども、特に小規模なものが、先ほど大臣も言われましたように、店舗数も減少しておりますし、従業者数も減少しておる、売上高を見ても減少しておる。平成三年からこの三、四年の数字を見ても、これまでの減り方よりもぐっと減り方が大きいというわけでございます。  それはもちろんいろいろな理由があります。これも先ほど大臣言われましたように、消費者のいろいろな嗜好の変化でありますとか、なかなか後継者が見つからないとかいったようなこともあるわけでございます。また、最近ですと、車の駐車場がないことについても客足の点で問題があるといったようなことも言われております。私の地元は特に、車の産地というと変ですけれども、日本でも自動車の保有台数が一番多いのじゃないかと思いますが、そういうところでありまして、そういう意味で、自動車をつくっている地域の町がモータリゼーションに対応できなくて、駐車場が少なくなって郊外の店舗に客をとられていくという皮肉な現象が起きてくるわけでございます。  やはりそういったことに対応していくことがどうしても必要だと思いますが、その理由の中の一つ大きなものとして、最近どんどん進んでおります大型店の立地というものが挙げられるのではないかと思うわけでございます。特に郊外型の大型店が立地をいたしますと、人の流れが大きく変わるということでございます。もちろん、現在規制緩和が大きな政府の眼目といいますか政策の課題になっておるわけでございます。そういう意味で、この大型店の出店をこれから規制をするというのは、正直言って規制を強化するというのはなかなか難しいだろうと思っておりますが、一方で、私は、現場で実際に地域の商店の方々、自治体の方々、商工会の方々、いろいろな方々とお話をして感じますのは、中心市街地なり商店街の活性化、再開発ということで何年も何年も、まあ何年もかかっておるようじゃいけないのかもしれませんが、何年も議論をしてきた、検討してきた、ところがあるとき、ぽんと郊外に大きな店舗ができる、みんなそっちに行ってしまう、結局、採算性がなくなってそういった再開発とか商店街の活性化のいろいろな対策が吹っ飛んでしまうようなことが、時々といいますか見られるわけでございます。  どこということはあれですけれども、例えば私の地元のある市で、商店街の売り場面積を全部足すと二万数千平米ぐらいというような市があるわけでございますけれども、それが二、三年前に、その市の郊外に、その大型店一つで二万五千平米ぐらいのものがどんとできた。それは、その市全体の売り場面積を足して二万数千平米のところに二万五千平米がどんとできれば、もちろんよそからも買い物をするお客さんは来るわけでありますけれども、なかなか厳しいということはだれが見ても明らかではないかと思うわけでございます。だから規制を強化するというのは、なかなか消費者利益との関係で難しい点はあると思いますけれども、正直言って、何か無力感、むなしさというのを感じるのは私だけじゃないと思うわけであります。  規制緩和自体は、新しい産業、新しい雇用を生み出していくということで当然必要なわけでありますけれども、この大型店を規制する大店法、これについて今の状況はどうなのか。それについてはもう平成二年から随時緩和をされてきて、今新規の出店をするためには一年ぐらいの期間があれば大体できてしまうということになっておると聞いております。ですから、そういう意味では、もう新たな出店をすることに対してこの法律自体が障害にはなっていないのじゃないか、私自身はそう思っておるわけでありますけれども、この大店法について、やめちゃえという声から、いやいや、これは地域との調整で必要なんだという声から、いろいろな声があるというふうに聞いております。それについて少しお伺いをしたいわけでございます。  まず、最近の大規模小売店舗、この大店法の対象になります大規模小売店舗の新規の出店状況について、その状況だけお伺いしたいと思います。
  73. 今野秀洋

    ○今野政府委員 最近の大規模小売店舗の新規出店届け出状況でございますけれども、第一種と第二種がございます。この境目は三千平米、政令指定都市におきましては六千平米でございますけれども、これを合わせますと、平成五年度が千四百六件、これが、六年度が千九百二十七件、七年度が二千二百六件ということでふえてきております。八年度はまだ締めくくっておりませんけれども、ほぼ七年度と同様のペースで出店届け出がなされておるところでございます。
  74. 大村秀章

    大村分科員 この三、四年で相当なペースでふえてきておるというのが今お伺いをした数字でもわかるわけでございます。そういう意味で、実質的に規制という感じでは、もうほぼ新たに出ようとされる方々の障害にはなっていないというふうに思うわけでございます。現在の大店法についての規制の緩和の状況と、評価というのは通産省というか政策当局ではなかなか難しい点はあるかと思いますが、その評価についてお伺いをしたいと思っております。  あわせまして、現時点でこの大店法については諸外国からいろいろな要望が寄せられておる、そういったケースでもあるというふうに思っております。特に、もう何年も前からアメリカとの間で実際に通商摩擦の一つのケースにもなっておったというふうにも承知をしております。そういう意味で、この諸外国からの要請というのは現時点でどうなっておるのか。あわせて、国際協議の場所でありますWTOでもいろいろな協議がなされておるということもお伺いをしております。その状況はどうなっているか。  その規制緩和の状況と、現状の評価、そして諸外国がどう言っておるか、WTOはどうなのか、そんな、今のそれをめぐる事情みたいなものを詳細にお伺いできればと思います。
  75. 今野秀洋

    ○今野政府委員 平成二年以来の規制緩和でございますけれども、三段階にわたって行われました。まず、平成二年に、運用適正化措置ということで調整期間に上限が設けられました。当時は一年半という上限が設けられました。さらに閉店時刻の届け出の不要の時間も、当時六時でございましたのを午後七時に改められたわけでございます。その後、平成四年に改正法が施行されまして、そこにおきまして、商調協が廃止されまして大規模小売店舗審議会による調整に一本化されました。また、地方自治体の独自規制の適正化の規定も新設されたわけでございます。なお、この際、調整期限もさらに一年に短縮されております。また、平成六年には、一千平米未満の店舗の出店につきましてこれを原則自由化いたしまして、また閉店時刻、年間休業日数につきましても、届け出不要基準をそれぞれ午後七時から午後八時、四十四日から二十四日へと、そういう緩和がなされておるところでございます。  その結果でございますけれども、先生御指摘のように、まさに流通業を取り巻く環境変化が非常に大きく進展をいたしておりまして、モータリゼーションが進み消費者の行動範囲が大きく拡大し、また休日や深夜の買い物の習慣がふえ、また、単に物を買うだけではなくて、時間を過ごすといいますか、娯楽性の志向の増大、こういったパターンの変化がございます。こういった中で大店法の規制緩和が行われているわけでございますので、この効果、どれがどういう原因と結果にあるかというのは慎重な分析が必要でございますけれども、いずれにいたしましても、その結果、先ほど御説明申し上げましたように、出店数はふえております。  また、商店数につきましては、最初のお話にございましたように、小売店数は減っております。雇用者数につきましても、零細小売店の雇用者数は減っておりますが、全体としては小売業の雇用者数は五・五%、これは平成三年から六年までの三年間でふえてきております。  また、国際化も進展してきておりまして、既に五十店舗以上の店舗を持つ外国企業日本に展開しているといったような状況にあるわけでございます。  次の御質問で、海外、WTOの問題、アメリカからの要請の内容、こういった御質問でございました。  アメリカの要請は、最近時点では昨年十一月に寄せられておりますけれども、その要求の内容は、二〇〇〇年度末までに大店法を撤廃する、それを目指して今から大店法を段階的に縮小していく、こういうことでございまして、一九九七年度には、店舗面積の調整、営業時間、休業日数に関する規制、こういったものを廃止してもらいたいといった要望が来ております。また、EUでございますけれども、EUからは、やはり一九九七年までの大店法の大幅改正の要望が同じく昨年十一月に寄せられているところでございます。  WTOでございますけれども、二つ、WTOで提訴がなされております。  一つはガット上の協議でございまして、これは外国製フィルムの輸入の問題に関連しまして大店法も問題とされているものでございます。これにつきましては、昨年十月にパネルの設置が決定されまして、今年の二月二十日にアメリカから第一回の意見書がWTOの事務局に提出されたところでございます。  これは一言で申しますと、大型店というのは外国製フィルムを取り扱う比率が相対的に高いという仮定のもとで、大型店の出店を抑制している大店法はガット違反だという議論でございます。これにつきましては、私どもはアメリカの主張は全く事実に反すると考えておりまして、現在、アメリカの意見書を子細に検討の上、WTOのルールと手続にのっとり反論をしていく所存でございます。  また、二番目の提訴案件、これはWTOのサービス貿易協定上の提訴案件でございますけれども、これにつきましては昨年の七月と十一月の二回、二国間協議を行いまして、その後、現在までのところ米側から特段の動きは出ておりません。  以上でございます。
  76. 大村秀章

    大村分科員 詳細な御説明ありがとうございました。  今、審議官言われましたように、そういう諸外国との交渉、特にアメリカ、EU等の要求があるわけでございますが、私自身は、ここまで規制が緩和されてきた大店法については、基本的には新たな出店の障害にはなっていないのではないかと思っておりますので、やはり地元の調整を全くなしでやられるというのはいかがなものか。もちろん、それがかつてのように調整期間がエンドレス、エンドレスというのはちょっと語弊がありますけれども、ずっとかかる、コストも大変かかるということではいかぬと思うわけでありますが、今現在は障害ということではないのではないか。  現実問題は、流通関係者、そしてまた海外、特にアメリカからのそういった日本に進出してきた企業の関係者からは、基本的には大店法自体は問題にはなっていないのではないか、障害にはなっていないというような声も聞くわけでございます。どうもアメリカの政府と実際の商売をやられている方の物の認識のギャップがあるのではないかというのが率直なところでございます。  いずれにいたしましても、大店法につきましてはいろいろな御意見があるわけでございますが、国内の多くの商業関係者は大変な関心を持って見ておるわけでございます。やはり商業というのは地場でやっておられる方もたくさんおるわけでございまして、そういった方々との調整、意思疎通といったものが図られていくことがどうしても必要じゃないかというふうに思うわけでございます。  そういう意味では、適切適正な運用が望まれるわけでございまして、今後の取り扱い、まあなかなか今の時点ではどうかというのはあるわけでありますが、今後の大店法の取り扱いにつきまして、大臣の基本的なお考えをお伺いをしたいというふうに思います。
  77. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 御案内のごとく、この大店法の見直しということは、政府規制緩和推進計画というのに、昨年三月に実は載っております。そして昨年の十二月に、橋本内閣の六つの構造改革の中における経済構造改革、それの経済構造の変革と創造のためのプログラムというのを閣議決定いたしましたが、それにも実はこのことが入って、八年度でもって準備に入る、かように実はなっているわけです。  今、大村委員御指摘のように、私もやはり地元のそうした商店街を見ていて、確かに大型店の進出によって、いろいろな今の社会情勢の変化もありますが、町が変わる、町が移るということが一番心配されるわけでございます。これに関して、今、もう既に三回も見直しをしているし、一体どこまでするのだろうかという声が高いことも承知しております。  問題は、私自身は、今の大店法の中で、出店規制という部門とそれから営業規制と、二つに分けられるのではないだろうか。これの利点というならば、やはり町が動くことにより、また進出することによって雇用が新しく生まれるという利点はあると思うのですが、実はその兼ね合いだと思うのです。私は、だからこの問題は、私の省だけでもってする問題ではないのだ、新しい都市計画というものをどういうふうに考えるかということと、それからやはり日本じゅうの地域差があるということだと思うのです。  大村委員のお住まいのところと、私のところ、あるいはまた東京だとか大阪、北海道、すべて条件が違いますので、これはやはりそういうことも考えなきゃいけないだろうというので、いずれにいたしましても、この見直しというものに関しては、消費者の代表の方、あるいは小売業の方々、学識経験者、こういういろいろな関係者の意見を幅広く聞いてから結論を出すべき問題だ、かように考えております。
  78. 大村秀章

    大村分科員 ありがとうございました。ぜひそういった意味でこの取り扱いをしっかりやっていただきまして、やはり地域での中心である商店街の活性化、振興といったことについて、引き続きまして御尽力をお願いしたいと思っております。  まだちょっと時間がありますので、最後に一言申し上げさせていただきたいといいますか、大臣の決意もお伺いしたいわけでございます。  私の地元の愛知県で、先ほどもちょっとお話をさせていただきましたが、このバッジにもありますように、愛知万博の誘致を目指して今いろいろな運動をさせていただいておるところでございます。二〇〇五年の開催を目指しまして、やらせていただいております。  これまで日本は四回万博をやってきたわけでございます。大阪の万博、沖縄海洋博、科学博そしてまた花博、それぞれにその時代、時代のテーマに沿ってやられ、そして大変な成果を上げてきたというふうに思っております。  今回の万博は、二十一世紀の社会を考えた上で、今までの開発一辺倒ということではなくて、環境との共生でありますとか、自然と人との共生、そういったことをテーマに計画をされておられます。地元も、県も市も経済界も市民団体も大変その開催を熱望しておるわけでございまして、ことしの六月十二日のBIE、博覧会国際事務局の総会の投票で開催地が決まるということでございます。  ライバルはカナダのカルガリーでありまして、大変な強敵だというふうに聞いておりますが、どうしてもこれは誘致をかち取らなければならないと思いますので、我々地元も一生懸命頑張りますので、最後に、大臣の所管大臣としての御決意をお聞かせいただきまして、質問を終わらせていただきます。
  79. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 二〇〇五年の国際博覧会ということで、もう既に八年間の長きにわたって、財界、政界、地元一丸となってこれに取り組んで、誘致活動をしていることは御案内のとおりでございます。  今御指摘のように、本博覧会は、人と自然の共生ということを中心に置きまして、二十一世紀の新しい地球のあり方を追求すること、そしてまた、世界の英知を結集する大変意義深いものでございますので、ぜひとも日本の愛知でやりたいというのが政府の基本方針でございます。  今まで、職員を派遣して、BIE加盟国に対してこうした日本の構想というものを説明して、そして協力お願いしているわけでございますが、今、外国からも日本に訪れる要人が随分いらっしゃいますし、また、我々の同僚国会議員も幅広く海外にお出になる方もいらっしゃいます。そういう方を通じて機会あるごとに、こうしたことの誘致に関する、また投票に対するお願いをしているというのが現状でございます。  よろしくお願いします。
  80. 大村秀章

    大村分科員 どうもありがとうございました。
  81. 高橋一郎

    高橋主査 これにて大村秀章君の質疑は終了いたしました。  次に、坂上富男君。
  82. 坂上富男

    坂上分科員 民主党の坂上富男でございます。  佐藤通産大臣におかれては、本当に産業振興のため、ひいては日本経済の発展のために大臣として御尽力をいただいておりますことに深く敬意を表したいと思います。  本日は、特に私の町、新潟県三条市でございますが、三条市と、隣の町燕市にかかわります問題でございまして、この町は、下請の零細企業の大変多い町でございます。私は三条市でございますが、板金金物、板金刃物というように万の種類の刃物があったり金物があったりする。それほどたくさんの種類の家庭用品等の金物類を製造しておるという地域でございまして、したがいまして、大変下請の皆様方がたくさんおられるわけでございます。そういう下請の皆様方の振興策についてひとつ御質問をさせていただきたいと思いまして、本日時間をいただいたわけでございます。  今回、特定産業集積の活性化に関する臨時措置法案がこの間提出をされました。私は、大変結構な法案だと思っておるわけでございます。この前身となりますところの特定中小企業集積の活性化に関する臨時措置法が実施されておったわけでございますが、まず、この実績と評価について通産の方ではどういうふうに評価されておりますか、御答弁をいただきたいと思います。
  83. 田島秀雄

    ○田島政府委員 お答えいたします。  現行の特定中小企業集積の活性化に関する臨時措置法におきましては、平成四年以来、全国で九十四地域の計画が承認をされているところでございます。この地域は、三十八道府県、四百四十一市町村が関係をいたしてございます。  現在、これら各地域におきましては、地域の集積の特性を生かした技術開発でございますとか商品開発でございますとか、積極的に実施をされているというふうに承知をいたしてございます。こういった御努力に対しまして、私ども、予算とか財投あるいは税制等で支援措置を講じておるところでございます。  これらの成果に大いに期待をいたしておりますとともに、特定産業集積の活性化に関する臨時措置法案、今回御提案を申し上げております法律のもとにおきましても、引き続きそれぞれの特定中小企業集積の活性化の円滑な遂行のためにいろんな努力をいたしてまいる所存でございます。
  84. 坂上富男

    坂上分科員 この法案中の基盤的技術産業集積につきましては、全国で二十程度の計画が承認されるということでございますが、それは事実でございましょうか。そこで、全国にどれくらいの候補地となる市町村があるのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  85. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 我が国の産業集積を構成します業種あるいはその規模などの統計データから見る限りでは、基盤的技術産業集積の対象となり得る集積は、全国で約八十程度あるものと認識をいたしてございます。  この中で、この法律が制定されました暁に、都道府県が活性化のための計画を関係市町村と協議の工作成をし、これを国が承認するスキームをとっておりますが、全国的な産地の構成などから見て、今御指摘のありました二十程度の計画が出てくるのではないかと考えてございます。
  86. 坂上富男

    坂上分科員 この都市指定でございますが、例えば私の町に例をとりますと、三条市それから類似の燕市というのが隣り合わせているわけでございますが、こういうものは一つの指定地域として、二つ一緒にできるのでございますか。
  87. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 御指摘のございました三条・燕地域は、洋食器、刃物、金物類製造業のほか、金属プレス、鋳鍛造、粉末冶金、機械部品など、金属加工を中心とした技術を保有する事業者が多く存在をしてございます。  現在までに、特定中小企業集積活性化法、先生御指摘のありました法律の指定に基づいて集積の支援を行ってございますが、今後の対応につきましては、県のお考えにもよりますが、対象地域として候補たり得るものと考えてございます。
  88. 坂上富男

    坂上分科員 大変積極的な御答弁で、ありがとうございます。  そこで、基盤的技術産業集積についての都道府県の活性化計画の承認についての考え方について、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  89. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 法律が制定されました暁には、この法律に基づきまして、国がどのような集積を対象にいかなる方向活性化を図っていくべきかという基本的な考え方を示しました産業政策のメニューともいうべき活性化指針をつくることになってございます。この指針に基づきまして、都道府県が集積の活性化のための計画を市町村と協議の工作成することとなってございます。  詳細につきましては法制定後の告示を行います が、都道府県の活性化計画の承認につきましては、地域の集積の実態、活性化の目標の的確性、実現性、あるいは施設整備事業等の支援事業の有効性、適切性など、計画に記載された中身につきまして検討の上承認をすることになると考えております。
  90. 坂上富男

    坂上分科員 まだ計画がなければ結構でございますが、この法律が成立をしましてから、都道府県の方は計画を大体いつごろまでに出していただくか、そして、それをもとにいたしまして、通産省の方では大体いつごろ指定をしたいというようなお考えなのか、もう少し具体的にわかればお聞かせいただきたいと思います。
  91. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 この法律につきましては、事態の深刻性にかんがみまして極力早期に運用をする考えでございまして、法制定後三カ月以内に施行を考えてございます。また、都道府県の計画は五月、六月程度までにお出しを賜るような仕組みで考えておりまして、遅くとも七月までには新たな承認を行いたいという腹づもりでございます。
  92. 坂上富男

    坂上分科員 大変参考になります。ありがとうございます。大変結構でございますが、そうだといたしますと、法案に関連をいたします予算措置はどういう程度になっておりますか、具体的な内容についてお答えをいただきたいと思います。
  93. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 この法案に基づきまして、産業インフラの整備研究開発、人材育成の促進、あるいは新たな事業展開への投資促進を柱としました体系的な支援を考えてございます。  まず、同法案の適用を受けます集積のみを対象とした予算措置としては八十一億円を計上いたしてございまして、研究開発施設・機器、人材育成施設、それから賃貸工場などの産業インフラ整備、さらには中小企業の新商品・新技術開発、人材育成への支援等を行っていくこととしてございます。  また、地域における研究開発の重点的支援、技術を核とした新たな事業のもととなります特許技術流通促進など、産業集積の活性化のために活用されます関連予算を含めますと、総額で二百二十五億円を計上いたしてございます。
  94. 坂上富男

    坂上分科員 二百二十五億では通産としては足りないぐらいの金額だろうと思うのでございますが、また私たちも協力をさせていただきますので、下請企業振興策についてぜひ格段の御尽力をいただきたい、こう思っておるわけでございます。  さてそこで、この法案の適用を受ける事業者に対する支援措置というのは具体的にはどんなふうになるのでございましょうか。これが一番私たちが聞きたいところでございまして、ずばっとお答えいただければありがたいと思います。
  95. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 都道府県知事によります計画の承認を受けまして、新たな技術開発あるいは新分野への進出を行おうとする事業者に対しましては、一つは、新技術・新商品開発にかかわります研究開発費の助成を行います。また、新たな設備投資を行った場合には、これに対する特別償却制度を用意いたしてございます。また、設備に関しましては、政府金融機関からの低利融資、債務保証など、新たな事業展開を図ろうとする事業者に対する各般の支援措置を用意してございます。
  96. 坂上富男

    坂上分科員 少し具体的に聞きますが、特別償却制度はわかりました。これは税制面で、例えば所得税等に対する減免措置、支援策というのはございますか。
  97. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 設備投資にかかわります税制上の措置は、ただいま申し上げました減価償却等にかかわる措置のみでございまして、所得税等にかかわるものは含めておりません。
  98. 坂上富男

    坂上分科員 さっき御答弁いただいたのでございますが、改めて再度質問させてもらいますが、特定産業集積に該当するものといたしまして、三条市、燕市の周辺地域にはどういうものがあるか、通産の方では御認識はどうでございますか。
  99. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 御指摘の三条・燕地域につきましては、主として金属加工を中心とした技術を保有する事業者が多く存在をいたしてございまして、基盤的技術産業集積が対象といたします二百四十業種強の業種を中心とした集積地域であるというふうに考えてございます。
  100. 坂上富男

    坂上分科員 今お話がありましたとおり、三条・燕地域につきましては、現行の中小企業集積活性化法により計画の承認を受けておりますが、今度新法になりますとどういう取り扱いとなりましょうか。
  101. 田島秀雄

    ○田島政府委員 三条・燕地域を含めまして、現行の中小企業集積活性化法の承認を受けている地域につきましては、新しい法律上自動的に新法に基づく特定中小企業集積として承認を受けたものとみなすという措置を講じることとしておりまして、引き続き集積の活性化を御支援申し上げてまいる所存であります。  また、新しく講じられることになります基盤的技術産業集積にかかわる計画の承認につきまして、都道府県からの申請が前提になるものでございまして、この申請を踏まえて対応してまいりたい、こういうふうに考えてございます。
  102. 坂上富男

    坂上分科員 大変突っ込んだ御答弁をいただきましてありがとうございました。この法案については、多分国会において私が初めての質問だろうと思うのでございます。これから商工委員会で具体的にいろいろと応答が行われるのじゃなかろうかと思いますが、ぜひとも皆様方の御努力を期待をいたしたいと思っておるわけでございます。  それで、佐藤通産大臣にこの点についてお聞きをいたします。  本法案を含めまして地域産業の発展に向けた取り組みについて、特に私たちの町は、今言ったような下請企業が本当にたくさんあるわけでございます。したがいまして、決して大企業がありませんものでございまするから、みんなが必死になつて下支えをいたしまして、まさに日本経済、産業を支えている町なんじゃなかろうか、こんなふうにも思っておるわけでございますが、大臣とされまして、これらについて御所見をいただければお願いをいたしたいと思っています。
  103. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 坂上委員にお答えいたしますが、中小企業問題また地域産業の発展に大変御熱心な委員の御質問でございます。  現在、経済活動のグローバル化等を背景とした海外生産の伸展などによって、我が国の産業の空洞化というのが一段と心配される、深刻化しているというのが実情でございます。特に、地域において、経済環境の変化による影響が大きくなっておりまして、地域産業の発展基盤を形成していくことが当該地域のみならず我が国全体の経済発展にとって極めて重要な課題だという認識を持っております。こうした認識のもと、我が国の物づくりと地域経済の基盤である産業集積の活性化を図るために本法案を提出したところでございます。  それで、これからは、本法案の実効ある運用に努めるとともに、規制緩和推進、新規産業創造などの抜本的な経済構造改革を断行することによって、我が国の事業環境の魅力を高め、地域産業の発展が図られるよう各般の施策に取り組んでいく所存でございます。
  104. 坂上富男

    坂上分科員 期待をいたしておりますが、願わくはさらにまた下請企業の発展のためにもつと突っ込んだ法案にしていただきますことも期待をいたしたいと思っておるわけでございます。この法案はこの法案として、私らの立場からいたしまして評価をいたします。特に、私の町などは一日も早くこの指定の受けられることを期待をいたしておる町であることも表明をさせていただいて、この点に対する質問は終わらせていただきます。  次に、法務省もおられますが、通産にもかかわると思いますので、少しお聞きをいただきまして、答弁いただければ答弁をお願いをしたいと思っておるわけでございます。御存じのとおり、外国人研修生に対する技能実習にかかわる問題でございます。  これは、いわば外国の研修生が日本に参られまして、この滞在期間は大体二年間とされまして、そのうちの九カ月前後でございましょうか研修を受けられる。そして、その研修をもとにいたしまして、実習労務といいましょうか、実際に技術習得のための労働に従事をしていただく。合わせまして二年間でございます。  これも今私の町は大変利用させてもらっておるわけでございますし、外国人の技能実習生もお見えになっておるわけでございます。こういう方々が全国でも相当あるのだろうと思うのでございますが、私は、この間この雇用者の方から要請を受けました。ああ、なるほどなと実は思ったわけでございます。  まず、法務省の方で答弁できるでしょうか、この技能実習生の数、大体何人ぐらい来ておられたのか、現在までの数についてお答えください。
  105. 坂中英徳

    ○坂中説明員 お答えいたします。  今まで、平成五年から始まりまして、技能実習を目的として在留資格変更を許可した件数は、合計しまして八千六十八件となっております。
  106. 坂上富男

    坂上分科員 書面によりますと、中国、インドネシアの二国で全体の九割を占めておるそうでございますが、大体そのとおりでございましょうか。
  107. 坂中英徳

    ○坂中説明員 お答えいたします。  先ほど申しました八千六十八件のうち、中国が四千九百四十七件、それからインドネシアが二千百九十九件となっておりまして、両国で九割方を占めております。
  108. 坂上富男

    坂上分科員 さてそこで、私が御指摘を受けましたのは次のような項目でございます。この人たちが実習労務につきますね。実習労務につきますと、日本労働者と同じように雇用保険、俗に言う失業保険ですが、失業保険に入るそうですね。それから、年金保険にも入るそうですね。この二つをお聞きをいたしました。  殊に、労働期間が十五カ月としますと、二年たつとみんな中国に帰ったり、インドネシアにお帰りになるのですよね。日本に再び来ないわけです。したがいまして、この年金は雇い主が半分、労働者が半分納めるそうでございますが、この納めた金を一体どういうふうに、これらの人たちのために保険として利益があるのかとお聞きをいたしましたら1年金制度というのは老齢年金なんですね。二年間日本にいて、老齢年金をもらえるのは六十五歳か六十歳、そういう年金なんですね。こういう点において矛盾があるのですね。もらえない人から年金の保険料を取っているわけです。  そこで、この労働者の皆さんが中国に帰ったら、中国から返還してくださいといって請求書を出すのだそうですね。それでその金が返るというわけですね。これはちょっと私はおかしいのじゃなかろうか、こう実は思っているわけでございます。これはやめたらどうですかとお聞きをしたら、こういうお答えでした、万一就労中に亡くなられた場合は、労災保険もありますけれども、年金保険の中から遺族年金としてお渡しすることができるから、これはこれなりに価値があるのですと。けがをされますと、障害年金として年金保険の中から出すから、それはそれで価値があるというのですね。  それはわかりました。しかし、老齢年金の対象にならないわけでございます。したがって、私は、これはどうも全額日本労働者並みに取るのはいかがかな、こう実は思っているわけでございます。二年たてば返すからいいじゃないかと言うけれども、請求が来れば返すのであって、請求がなければ返さないのですね。雇い主は、この金は全然返還請求権がないのですね。全部労働者に行くというのですね。これなんか一つ問題なんじゃなかろうかなと私は実は思っているわけです。  それからもう一つは、今度は雇用保険ですが、研修生の勤め先がぶつつぶれるようなところで仕事をさせるというのは問題だ。したがって、こういうものについて雇用保険を掛けるというのもいかがかと思います。例があったかと聞いたら、一件あったそうですね。これなんかももう少し何とかすべきものなのじゃなかろうかなと私は実は思うわけでございます。  こういう点、時間がありませんから、簡単に答えてみてください。法務省、労働省と違いますけれども、何か部署が共管だそうだから、きちっと答えて。
  109. 坂中英徳

    ○坂中説明員 今の御指摘の点も踏まえまして、ちょっと関係省庁で検討したいと考えております。
  110. 坂上富男

    坂上分科員 ぜひこれは検討していただかなければならぬ問題だと私は思っておりますので、どうぞ、労働省お見えになりませんけれども、法務省、中心になって御検討ください。  いま一つ私が申し上げたいのは、こういう点なのですよ。一件実例があったそうですが、倒産をした、失業保険をもらった。失業保険を五カ月もらった、五カ月間。失業保険ですから働かないでもらうわけですね。そうしますと、これは技能実習のために働いている人たちなのですね。したがって、何にも技能実習を五カ月間しないでいるわけでございますから、この制度の目的に相反するのじゃなかろうか、五カ月だけ延ばさなければならないのじゃなかろうか、こういう問題もあるのですね。この点はどうお考えですか、どうですか。
  111. 坂中英徳

    ○坂中説明員 お答えします。  技能実習の受け入れ企業等の倒産によりまして技能実習の継続が不可能となった者につきましては、研修生が既に技能実習に移行していることから、当初の技能実習制度の目的が達成されるようにするために、財団法人国際研修協力機構を通じまして、関係機関、受け入れ団体等と協議することとしまして、他の企業におきまして技能実習を継続することが可能となるように配慮することとしております。  新たな受け入れ企業等が見つかった場合には、技能実習先の変更を目的とする在留資格変更許可申請を出していただきまして処理することとしておりますが、技能実習生の在留状況、新たな受け入れ機関に問題がなく、同一職種に係る技能実習の継続を希望する者につきましては、これを認めることとしております。  滞在期間につきましては、研修の活動の期間と合わせて二年以内と規定されていますところ、受け入れ機関等の倒産により実習が受け入れられなかった期間はこの二年間には含めないこととしまして、実質的に二年間の研修、実習を受けて目的が達成されますように在留期間の更新におきまして配慮することとしております。
  112. 坂上富男

    坂上分科員 私も、これは雇用主から、実際にこれを使っておる人から御指摘を受けなければ今のような問題はわからなかったわけでございます。しかも、通産省、これはどこが責任を持ってやっているかというと、どうもどこでも余り責任がなさそうなんだね。中心の省庁がないために、法務省というのは在留認定のための共管なんですね、だから、ここはこうしてください、皆さん頼みますよと各省庁に言うだけの体制というのはどうもないんですね。  そういうものですから、本当に雇用保険をもらった期間は研修をしていないわけであります。普通ならば二年間の研修を延ばさなければ目的を達するわけにはいかないですね。いわば卒業の学修時間が足りないということになるんですね。だから、この研修生というのは労働目的なのか研修が目的なのかといったら、これは実態からいうと大変あいまいなんですね。そういうものでございますから、やはりそういう点をきちっとしなければならぬと思っているのでございますが、大臣、今言ったような問題があることを御認識いただきまして、少し御所感がありましたら、御答弁をいただいて終わります。
  113. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 坂上委員大変よいことを教えていただきました。というか、今の質疑のやりとりを聞いていて、確かに委員のおっしゃるとおりだな、実はこんな気が非常にしております。  そこで、この外国人研修制度、技術実習制度というものについては、技能実習生や受け入れ企業意見あるいは制度の実態等を踏まえて、制度の趣旨が生かされるよう関係省庁、これは実は労働省も法務省も厚生省も関係していると思いますので、よく連携をとりながら的確な運営に努めてまいりたい、かように考えております。
  114. 坂上富男

    坂上分科員 どうもありがとうございました。
  115. 高橋一郎

    高橋主査 これにて坂上富男君の質疑は終了いたしました。  次に、倉田栄喜君。
  116. 倉田栄喜

    倉田分科員 新進党の倉田栄喜です。  私は、先物取引についてお伺いをいたしたいと思います。  平成二年の五月に、商品取引所法が四十年ぶりとも言われた大改正で、昭和五十七年三月の東京金取引所の開設による従来のいわゆる凍結不拡大主義から育成拡大主義、この政策転換を受ける形で、国際的に通用する先物市場づくり、そして委託者保護の強化、この二つを柱として改正をされた、このように理解をいたしております。  そこで、この改正内容、その後の経過等々については説明をいただきましたので、特に健全な先物市場づくり、委託者保護、これが平成二年の法改正から既に七年、どの程度達成しておるか、その認識、今どうお考えになっておられますか。まずこの点からお伺いをしたいと思います。
  117. 今野秀洋

    ○今野政府委員 先生御指摘のように、平成二年五月、商品取引所法が改正されまして、一つは商品先物市場の基盤の整備、もう一つは委託者保護の強化ということで法改正がなされたわけでございます。  委託者保護の強化につきましては、この法改正によりまして自主規制団体が設立され、また委託者財産の分離保管の義務づけ等がなされたわけでございます。  この結果、自主規制団体といたしまして社団法人日本商品取引員協会が設立されまして、自主規制ルールの策定あるいは苦情相談の事業、こういったことをやっているところでございます。  また、委託者財産の分離保管につきましても、一〇〇%の分離保管が現在達成されております。
  118. 倉田栄喜

    倉田分科員 これから国際社会の中で健全な市場づくりというのが果たしてできているのか、委託者保護というのがどの程度実際の商取引の世界の中で実現をされているのか、この視点からお伺いをしたいわけです。  そこで、まず全体として、この平成二年の市場の育成拡大を受けて、現在の先物取引市場における商取引総額、金額として平成二年、そして平成八年、どんなふうに推移をしておりますか。
  119. 今野秀洋

    ○今野政府委員 全国商品取引所連合会の集計によりますと、平成二年の総取引金額は四十二兆六百億円余、平成八年の総取引金額は八十八兆千二百億円余となっております。
  120. 倉田栄喜

    倉田分科員 今八十八兆というお答えでありますけれども、実に大変な金額、もちろんこれは取引総額ですから、実際の証拠金というか委託金額はその十分の一なり、そういう数字になるんだろうと思うのですけれども、八十八兆という実に国家予算以上の大変な金額が動く、こういう世界です。  それで、この先物取引市場の実態は実際どうなっているのか、これをお伺いしたいと思うわけです。  私が先ほど申し上げました委託者保護、この視点から、例えば取引実態について通産省、農水省、きょうは農水省もお見えいただいておりますけれども、それぞれ、先ほど審議官からは委託者保護の制度、施策というのは平成二年からいろいろやってきたのだ、こういうふうな御説明をいただきました。それで、委託者保護というのは、実際委託者の方が守られているというか、あるいは健全な委託者というのか、市場が期待するような委託者が育っているのかどうか、この点については両省はどんなふうに御認識をしておられますか。
  121. 今野秀洋

    ○今野政府委員 まず通産省からお答え申し上げます。  この委託者保護につきましては、自主規制ルール等の整備を行っておるわけでございますけれども、私ども通産省といたしましては、当省に消費者相談室というものが設置されておりまして、そういったところに相談が寄せられます。また、商品取引所法に基づきまして、商品取引員へ立入検査等も行っておるところでございます。
  122. 林秀雄

    ○林説明員 お答えいたします。  農林水産省におきましても、委託者から当省に寄せられました相談の内容でありますとか、それから商品取引員に対する立入検査を通じまして実態を把握いたしているところでございます。
  123. 倉田栄喜

    倉田分科員 実態把握をしている、あるいは苦情相談室等々いろいろ設置をされておられる、そういうことを御説明で私もお聞きをいたしました。その成果として、いわば委託者保護というのは実際図られているのかどうか、この点の問題意識を私は持っているわけであります。  例えば、社団法人日本商品取引員協会というのが改正を受けてつくられた。ここで平成六年三月二日、ビジョン検討委員会の設置を決められ、三部会で取引状況等々いろいろな検討を続けられて、昨年十一月にほぼ検討を終えられた。一部会から三部会まであるわけですけれども、全部がそうかどうかわかりませんが、そういうことでございます。この検討内容について報告は受けておられますか。これは通産省にお伺いいたします。     〔主査退席、尾身主査代理着席〕
  124. 今野秀洋

    ○今野政府委員 お答え申し上げます。  社団法人日本商品取引員協会のビジョン検討委員会についてでございますけれども、御指摘のように部会が三つございます。  第一部会、ここでは商品先物市場の将来予測を中心に行っておりますけれども、これにつきましては平成七年八月に方向がまとまりまして、私ども検討結果の報告を受けております。第二部会は商品取引員の近代化、第三部会では手数料の自由化などの問題について検討が行われているわけでございますけれども、これにつきましては、年度内に第二、第三部会全体の検討結果を取りまとめて報告をしてもらうという予定になっております。
  125. 倉田栄喜

    倉田分科員 報告は受けておられる。恐らく内容、どんな議論が行われたということも御承知をされておられるのだろうと思うのです。  そこで、これは通産、農水両省にお聞きいたしますけれども、この先物取引、いわゆる取引参加者の八割から九割が商品先物に対する不信を抱きつつ取引をやめていく、こういうふうに言われるというふうに聞くのですが、そのように理解しておられますか。
  126. 今野秀洋

    ○今野政府委員 商品先物取引の委託者は約十万人の水準で推移いたしておりますが、他方、毎年新規の委託者が参入していることも事実でございまして、そういう意味では、取引参加者について一定の入れかわりがあるということは事実だろうと考えております。  それぞれの取引参加者がやめる場合の原因と申しますのは、その時々の相場の動向、個々の資金状況などさまざまな理由によるものということではなかろうかと考えております。
  127. 倉田栄喜

    倉田分科員 私が今、八割から九割の方が不信を抱きながらやめていくのではないのかと言うのは、先ほど通産省から御説明いただきましたビジョン委の第二部会の第二回会合、この会合の中身で、前提として旧態依然の従来の営業手法。この従来の営業手法というのは取引の拡大の壁。取引拡大の壁というのがどこにあるのかというと、いわゆる取引参加者の八ないし九割は商品先物に対する不信を抱きつつ取引をやめていく。先ほど十万人とおっしゃったけれども、八万人から九万人が不信を抱きつつ取引をやめていくという問題がある。これは実は大変な問題なのだろう、こう思うのです。  第二部会の第三回会合で、これは十二月五日付の商取ニュースという中に出ている話でありますけれども、これは記者会見の席上でありますが、部会長がこんなことを発言をされておられる。多少長いですが、はしょるとちょっと誤解を生じますので、この商取ニュースに言われていることをそのまま紹介させていただきます。   従来型営業の限界を言う時、それは手法だけの問題ではなく姿勢の問題でもある。これまでは、委託者が主人公であるという視点は全く欠けており、社会常識に沿った営業を行うべきで、それが、〝社会が容認する業〟への脱皮につながる。   顧客的にみて公平な、個人委託者のための営業をすることで、業績が落ち込むわけはないと思う。商取業界はこれまでは日本経済社会と無縁なところで生きてきたと言ってよく、業界がその仲間入りを果たし、将来の繁栄の道を行くのか、これまでどおりの〝裏街道〟を行くのか、引き返せない〝分水嶺〟にいると思う。 こういう記者会見での発言をされておられるわけですね。  これは、第二回会合のときに営業手法の改革という議論があったときに、今までの営業手法をやめてしまえば市場の拡大の前に会社自体が倒産してしまうのではないのか、こういう認識に対して、部会長は、いや、そうではないのだ、こういう御議論をされたのだと思うのです。しかし、社会が容認する業への脱皮につながるのではないのかという問題意識は、現在は、この議論がされているときは、社会が容認する業ではない、そういう営業実態ではない。さらに、いみじくも裏街道、こんな認識をされておられるみたいなのですね。  先ほど八十八兆、そういう取引総額の話がありました。社会ではKKCみたいな、買ったら買うたびにもうかりますよ、こんな膨大な被害額が出る。しかも、十万人のうちの八割から九割が不信を抱いてこの取引をやめていく。どうもこれは今の営業の手法というのか、市場の実態について問題があるのではないのか、私はこう思えて仕方がないわけであります。  このような私が申し上げたことについて、通産省は今どの程度、どんなふうに把握をしておられますか。
  128. 今野秀洋

    ○今野政府委員 先生御指摘の、取引参加者の多くが商品先物に対して不信を抱きつつ取引をやめていくといったことを記述しておる資料を私どもも入手いたしております。これは、第二部会におきまして今後の委託者の保護について真剣な議論を進めるために、このような前提として置いたものというふうに私ども説明を受けておるところでございます。  現在、日本商品取引員協会におきましては、委託者の主体性を尊重する営業への転換ということ、これによって営業の健全化を図るということを目的に協会を挙げて取り組みを行っていると承知いたしておりまして、私どもといたしましても、このような協会の取り組みを支援してまいりたいと考えておるところでございます。
  129. 倉田栄喜

    倉田分科員 これから国際市場の中で、先物市場もある意味では健全な市場として大きな飛躍をしていかなければならない要請もあるのだろうと私も思っております。しかし一方で、今の市場のあり方あるいは委託者保護のあり方が、当事者の方々が社会に容認されない業であるとかあるいは裏街道であるとか、そんな業界の実態で、もし取引参加者の十万人のうちの八万人から九万人がその業界に対する不信を抱きつつやめていくということであるとすれば、これは本当に改革をしていかなければ、きちっとやっていかなければ、単に自己責任の中における取引の損失という問題なのか、あるいはだまされた、損をした、被害者の領域に入ってしまうのか、大変な問題だと私は思っております。  そこで、例えば私が今から申し上げる例が、非常にこれは病理的で、一部の現象なのかもしれませんけれども、あるいはそこにつながる、八割、九割、不信を抱いてやめていく人たちにそのままつながる話かもしれない。「「ゴム先物」で損失七千万」という昨年十二月十三日、これは読売新聞の記事に報道されておるわけですけれども、これは通産省の商務室長の方にも、この取引員に対しては厳重な処分をしてくれという処分の申し立て書が来ていると思いますので、中身については十分御存じだと思うのです。  この先物取引の世界は非常に専門性が要求をされている。しかも、取引の中身等は、一枚が単位が大きいのですね、ゴムだと五千キログラムが一枚だったりしてしまって。しかも八万から九万がどんどん入れかわるとすると、最初に入ってくる人は全くの素人みたいなもの。自主規制の中では、例えばそういう素人に対しては、三カ月間は十分丁寧に手とり足とり教えて、後でトラブルが起こらないようにしてくださいよ、こういうふうにちゃんと書いてはあるのですけれども、被害という形で申し立てておられる方は、例えば一円で百万円もうかりますよ、一千万円預けてくれたら一億円にして返しますよ、こういう話で、しかも、資産はあるかもしれないけれども十分な所得もない方々に、いわゆる営業トークというのかセールストークかということで勧誘を続けている。大体、絶対もうかりますよ、損したら私のところが補償しますよ、あるいは言われたとおりいつでも解約に応じますよ、そういう三ルールみたいなのはあるのだとは思うのだけれども、こういうふうに一つ一つの被害の実例を聞いてみると、どうもそうなっていないのではないのか、こう思えてしようがないわけであります。  平成八年度の国民生活センターのデータバンクで、今現在どの程度苦情相談が来ているのかと取り寄せてみますと、実は利殖商法が四千六百八十三件の相談。この相談内容が全部苦情であるかどうかわからないけれども、利殖商法の四千六百八十三件に対して、国内公設先物取引について五千六百二十二件の相談内容が来ているわけですよ。ですから、まさに国家予算を超えるような八十八兆という非常に大きな取引の額の中で、毎年十万人の参加者のうちの八割から九割が、この取引員協会に対して、先物市場に対して不信を抱いてやめていくという実態があるのだとすれば、これは大変な被害なのじゃないのか。被害という言葉が適切かどうかわかりませんけれども、実は大変な問題なのではないのか。  そうだとすれば、ではどうしたらいいのか。市場づくりというのは、いろいろな合併だとかなんだとか、それは政策先行でできるんだと思うのですね。自主規制とか立派なことが随分、立派というか、まだいろいろ検討されることがあるかもしれませんけれども、それがきちっとその内容どおりになっているのかどうか。私はどうも、八万人から九万人が不信を抱いてやめていくというこの実態を見ると、未経験者、経験のない委託者に対する自主規制というのがどうも守られてないのではないかという気がしてしようがないわけであります。だから、守られていないから、この部会の中でも、社会に容認されない業である、あるいは我々の業界は裏街道である、こういう発言が出るのではないか、こう思うわけです。  この自主規制違反の営業、こういう場合、通産省としては、こういう自主規制違反の営業をやっている商品取引員あるいはそういう会社、それに対してどういうふうにお考えになっておられますか、どういう指導をされておられますか。
  130. 今野秀洋

    ○今野政府委員 社団法人日本商品取引員協会におきましては、自主規制等を定めまして、会員が適切に受託業務を行うよう指導しているところでございますが、仮にそのような乖離が存在しているという事実があれば、これは極めて遺憾なことでございます。  私ども通産省といたしましては、そういう事態が発生しませんように、取引員協会を通じてその遵守を今後とも促していきたいと考えております。  なお、仮にこういったことの中で法令違反の事実があった場合には、通産省としても厳正に対処する所存でございます。
  131. 倉田栄喜

    倉田分科員 大臣、これはぜひちょっと大臣もお考えいただいて、御答弁をいただきたいと思うのです。  通産省さんとしてはもちろん、協会としてもそうだと思うのですよ、自主規制ルールをきちんとつくってあるわけですから。だから、やはりそれに立ってやっていこう、そうでなければこれからまさに健全な市場づくりはできないよという意識のもとでやっておられる。しかし、そういうふうにやっていたとしても、営業の実態がどうなのか。先ほども申し上げましたように、営業手法を改革することについては、一時的に業績が落ち込んで我々は倒産してしまうのではないのかと。だから、いわば従来型の営業が強引な勧誘だとかあるいは自主規制ルールを無視したような内容なのかどうかわかりませんけれども、やはりそういう実態があるのではないのか。そうだとすれば、これを抜本的に是正をする方法を考えなければ、この先物取引業界の将来の発展性はない、こう思うのです。  私は、自主規制がきちんとある、その自主規制に違反するような営業のあり方、あるいは経験のない委託者に対して勧誘をした場合、その損失というのは、登録外務員ですか、あるいは協会なりがやはりきちっと損失補償をしていくんだよ、そこまで徹底的にやらないと、この種の営業というのは改善されていかないのではないのか、こう思うのですが、大臣はこの点についてはどうお考えになりますか。
  132. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 この商品先物市場については、構造改革のプログラムにおいても、市場メカニズムを貫徹させる重要な産業の基盤、かように位置づけております。そしてその整備を図ることとしておりますが、今おっしゃるように、この整備のためにはトラブルの削減及び市場の信頼性の向上、これが最も大事だろうと思います。  トラブルの削減には、委託者が商品先物についての正しい知識を持って取引に参加することが重要だと思います。このため、通産省としては、日本商品取引員協会と連携しつつ、ディスクロージャー、これの実施などしてまいっているところでございます。
  133. 倉田栄喜

    倉田分科員 規制緩和という一つの流れの中ですから、通産省としてあるいは農水省として、この先物取引市場においてどの程度まで行政指導をすべきなのか、あるいはどの程度まで監督をすればいいのかという問題は確かにあるのかもしれません。  しかし、何回も申し上げますけれども、十万人の委託者の中で八割、九割が不信を抱きつつやめていく、そういう現状があるのだとしたら、しかもその協会の方々が、どうもまだ我々のやり方は社会に容認されない業なのではないのか、あるいは裏街道を我々は歩いているのではないのか、こういう認識のもとであるとしたら、これはやはり変えていかないと、これからいろいろと先物市場が拡大されるというお話も聞いております。これをこのままにしていくと、新しい人が取引に参加して損をした、あるいはなけなしの資産を全部担保にとられてしまった、こういう状況がずっと続いていったら、事件になりましたけれども、あのKKC、何回も何回も必ず買うたびごとにもうかりますよと、実に大変な詐欺事件だった。もちろん一線はあるとしても、この延長線上の話ではないのか、こう思えて仕方がないわけですね。  そうだとすれば、やはり私は、健全な市場としては、いろいろ手数料とか何だかんだあるかもしれないけれども、十割の参加者のうち、五割の人が損をしたな、あるいは五割の人がもうかったな、もちろん経費の分は抜かれても、それがまずごく普通の話なんじゃないのか。損をした人も、だいご味を味わった、スリルを味わった、納得する世界がつくられて健全な市場づくりというのができるんではないのかな、こう思うのですね。  だから、その前提として、自主規制に違反するような営業の仕方で勧誘をして、そして経験のない委託者に本当に損失をかけてしまった、これは自己責任の問題もありますので一概に決めつけることは問題だと思いますけれども、やはりそこに手当てがあるべきではないのか、こう思えてしようがないのです。大臣、もう一度、この点いかがお考えになりますか。
  134. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 今倉田委員のおっしゃることも、私も理解できる点が多うございますので、よく関係者と打ち合わせたいと思います。     〔尾身主査代理退席、主査着席〕
  135. 倉田栄喜

    倉田分科員 これは、先物市場が健全な発展をする、国際的に通用する市場になるために、どうしても乗り越えなければならない壁だと私は思うのです。一時的に、従来の営業手法で仮に倒産する会社が出てきたとしても、あるいは、その会社が厳しく責任を問われて営業上成り立っていかない状態があったとしても、これはやはり健全な委託者というか、継続的にこの取引市場に参加をする委託者を育てるためにも、どうしても必要なことだと思っております。  通産省は、アルミ、ガソリンの市場上場等、今後のいわゆる市場品目の拡大を検討しているというふうに伺っております。その市場品目の拡大の方向について最後にお伺いをさせていただいて、そしてさらに、最後にもう一度、大臣、もし通産省が市場品目の拡大ということで先物取引市場の拡大を検討しておられるのであるとすれば、健全な市場そして健全な委託者、これにどう対応していくか、抜本的な施策、対策というのを考えなければならないと私は思うのです。先物市場についてちょっと御説明をいただいた上で、最後に大臣の御所見のほどをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  136. 今野秀洋

    ○今野政府委員 先ほど大臣からお話ございましたように、商品先物市場は重要な産業基盤でございまして、経済構造改革プログラムにおきましても、その整備が非常に大きな柱という位置づけが与えられているところでございます。  そのため、新規上場商品の拡大、その円滑化といったことが大きな柱の一つになるわけでございますけれども、直ちに実現に着手すべき施策としてはアルミニウムがございまして、本年から試験上場を開始する予定でございます。  このプログラムに示された観点に基づきまして、今後とも上場商品の拡大を図ってまいりたいと存じております。
  137. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 御指摘のように、商品取引というのは、先物、それを通じて価格のヘッジというのが非常に重要でございます。そういうことでは、私たちが考えております日本の高コスト構造是正する、大変に役立つわけでございますが、今委員御指摘のように、やはりそれに対する一般の参加者の知識も足りないだろうし、それを勧誘する方の仕方にもやはり問題があるのではないだろうか。そうした教育をどういうふうにするか。それは、先ほど申したように、やはりいろんな情報のディスクロージャー、これを中心として指導していくしかない。そして、健全な市場というもの、また健全な取引状態、こういうものをつくるように指導していきたい、かように考えております。
  138. 倉田栄喜

    倉田分科員 終わります。
  139. 高橋一郎

    高橋主査 これにて倉田栄喜君の質疑は終了いたしました。  次に、北側一雄君。
  140. 北側一雄

    北側分科員 新進党の北側一雄でございます。  それでは、早速質問に入らせていただきたいと思います。  最近、テレビとか新聞等のマスコミで幾度も報道されている件でございますが、それは、観賞魚用の水槽ヒーター、熱帯魚などの水槽がございます、その水槽についているヒーターからの火災が問題となっている事例がマスコミ等で報道がされております。そのきっかけになりましたのは二年前の阪神・淡路大震災でございまして、あの震災のときも数多くの火災があったわけでございますが、その火災の原因を究明していったときに、意外にも、この熱帯魚用の水槽ヒーターからの火災というのが幾つかあったというふうに聞いております。  まず、消防庁、きょういらっしゃっておると思いますが、この阪神・淡路大震災のときに、観賞魚用の水槽ヒーターが発火原因となったという事例がどの程度あったのか、掌握をされておられるならば御答弁をお願いします。
  141. 東尾正

    ○東尾説明員 観賞魚用の水槽ヒーターから出火いたしまして阪神・淡路大震災において火災に至った例がどれぐらいあるのか、こういう御質問でございますが、私どものつかんでおります、平成七年中に全国で発生いたしました観賞魚用の水槽ヒーターによる出火というものは、七十三件でございます。このうち、阪神・淡路大震災関係につきましては相当数あると思いますが、それ以外の原因との関係でまだ特定していないものもございまして、ここで何件というふうに明確にはお答えできませんが、その七十三件のうちのかなりの件数は阪神・淡路大震災関係でございます。
  142. 北側一雄

    北側分科員 大臣、そういうことなんですね。ちょっと私もこの事実を知ったときにびっくりしたのですけれども、何であの熱帯魚の水槽から火事になるのと。  今の消防庁のお話では、平成七年だけお話ししていただきましたが、七十三件ある、そのうちかなりの件数が阪神・淡路大震災のときの発火原因となっておるという御答弁ですね。  もう少し調べてみますと、確かにこの平成七年というのは震災がありましたから、その震災を原因として起こっておることが多いんですけれども、そうでない年も結構ございました。要するに、地震を原因としないで水槽ヒーターから発火する、日ごろ使っている日常生活の中でもこれが発火原因になっている例が結構あるんです。  消防庁、お調べになっておられたら御答弁をお願いしたいのですけれども、全国はともかくとして、東京消防庁とか大阪市の消防局とか、東京とか大阪でこの観賞魚用ヒーターにかかわる火災事故、ここ何年間かの火災件数がわかりましたら御答弁をお願いいたします。
  143. 東尾正

    ○東尾説明員 観賞魚用の水槽ヒーターに起因する火災件数でございますが、東京消防庁の例で言いますと、電話で照会いたしましたところ、平成四年から申し上げますと、平成四年三件、平成五年四件、平成六年三件、平成七年十四件、そして平成八年六件というようなことでございます。  神戸市におきましては、ただいま先生御指摘の、とおり、阪神・淡路大震災のところで十数件発生しているという報告を受けております。大阪市につきましては、平成四年から平成八年までに九件ということで報告を受けております。
  144. 北側一雄

    北側分科員 ということでございまして、必ずしも地震に伴うことではないのですね。なぜこの熱帯魚用の水槽ヒーターから出火するのかということなんですけれども、これも消防庁にお聞きしたいと思いますが、なぜこういう熱帯魚用の水槽ヒーターが発火原因となるのか、これは地震の際だけじゃなくて、日常生活上の観点からお答え願いたい。  また、消防庁の方で、地方自治体の方の消防だと思いますが、なぜここから出火するのかということで実験をしたというふうに聞いています。その実験の結果について掌握をされておるならばお答え願います。
  145. 東尾正

    ○東尾説明員 震災によるヒーターの空気中への落下あるいは地上への露出を除きますと、一般には、観賞魚用の水槽ヒーターからの火災と申しますと、その水槽の中の水が何らかの理由で減りましてヒーターの一部が水面から露出しているにもかかわらず電源を切り忘れたということにより出火に至った事例が非常に多いということで、いずれにいたしましても、ヒーターを正常でない状態のもとで通電をしている、このまま放置していることにより出火しているものが多いと聞いております。  次に、実験でございますが、神戸市消防局は、さきの震災にかんがみまして空気中にヒーター部分が落下した場合の実験を行いまして、この実験では、通電した場合のヒーター部分の温度は、そういう状態になってから二分後に最高温度四百四十度Cになることが確認されております。  また、広島市消防局では平成六年に、これは水面上に露出した場合を想定してヒーターの加熱状況について実験を行いましたが、実験では、水位がゼロになりますと、しばらくしてヒーターに接する部分の水槽底部のアクリル樹脂が軟化、溶融し、さらにヒーターが赤熱して、水槽底部に敷いてございますまくらカバーに着炎、発火したというような確認がなされております。
  146. 北側一雄

    北側分科員 大臣、もう少しわかりやすく私の方から言いますと、熱帯魚の場合は当然水温がある程度高くないといけません。そのためにヒーターがございます。それは普通は水の中に入っているんですね、ヒーターは。このヒーターというのは、今おっしゃったように大変熱くなるんですけれども、発熱することによって水の温度を高めていくわけですね。ただ一方、余り熱かったらまずいですから、ある一定温度に保つためにサーモスタットというのがついているんです。このサーモスタットのセンサーがございまして、このセンサーは同じように水の中に入っていまして、大体二十五度ぐらいに設定されているらしいんですけれども、二十五度ぐらいになると自動的にヒーターの方が発熱をしないようになる、こういう装置なんです。  例えば、これは熱帯魚用の水槽ですから洗うことがあるのですね。一たん熱帯魚をほかに出して水槽を洗う。そうすると、洗って、もう乾かすそのときに誤ってプラグをそのまま差しておいたりしたら、これはもう今おっしゃったように、二分間で四百四十度とおっしゃいましたけれども、大変な熱さになるわけですね。それですぐに発火して、ほかの紙とか物が発火してくる、そして火事になるという例があるんです。これは実際あるんです。  経企庁、来ていらっしゃると思いますけれども、国民生活センターでも、この問題はマスコミ等で何度も報道されてきてございまして、この熱帯魚用の水槽ヒーターが発火原因となることを調査をされたのか。掌握をなされていると思います、この内容について御紹介していただきたいと思います。
  147. 中城吉郎

    ○中城説明員 国民生活センターでは、消費生活に関する消費者からの相談に直接対応するとともに、各地の消費生活センターに寄せられた相談、情報を収集しているところでございます。  観賞魚用の水槽関連の事故というものの苦情件数、平成四年度からここ五年間ほどの合計が六十八件でございますが、そのうち発火、火災事故に係る苦情件数というのは、平成四年から平成九年の二月末までに合計十六件ございます。  御質問の製品関連事故につきましては、平成八年に兵庫県が観賞魚用の水槽ヒーターの安全性に関するテストを行いまして、このテスト結果については国民生活センターを通じて全国の消費生活センターにも提供されておりますが、兵庫県の調査によりますと、熱帯魚用ヒーターを空気中で発熱した場合、二分足らずで三百度を超え、三百ワットのヒーターでは五百五十度近くの高温になって、可燃物に接した場合、発火、火災に至る危険性が高いというような報告が出されております。ただ、震災を機に、地震で火災になりにくいといった名目で出されております新しく発売されたタイプでは、一応水槽の転倒などの事態が生じても火災になりにくいということがわかったという調査がされております。
  148. 北側一雄

    北側分科員 そこで、通産省にお聞きをするわけでございますが、この問題は個別の問題ではあるんですけれども、一つのある製品の規制の必要性の問題ではあるんですが、私は、今非常に規制の緩和というのが言われている、一方で、こういう個別事例に遭遇しますと、やはり国民生活の安全のための規制は必要なのではないかというように思えてくる。この規制緩和と、一方安全規制との関係また調整をどう考えていくのかという、私はこれは非常にいい個別事例であると思うのです。  観念的に規制緩和規制緩和と言っているだけではなくて、経済規制は緩和・撤廃、その他の規制は必要最小限とよく言いますけれども、こういう事例を通して見ましたら、経済規制になる部分とそれから安全規制になる部分というのはある意味じゃ表裏の関係にありまして、そんなにうまく調整が、個別の事例でいいますと容易ではないことが多いわけなんですね。  この事例を通してこういうテーマを背景考えながら、ぜひちょっと議論をさせていただきたいのですけれども、観賞魚用の水槽ヒーターというのは電気製品です。ですから電気ストーブと同じような、火災防止のための規制というのは一方で必要になってくるんですね。それで、通産省でも、この熱帯魚用の水槽ヒーターからの火災防止のために安全対策の義務づけというのを、実を言うと、これは後でやりますが、検討されておられたようなんです。私は、安全対策の義務づけがどうも必要なのではないのかなというふうに思っておるのです。  まず、結論からお聞きをしたいと思いますが、通産省は、観賞魚用の水槽ヒーターの火災防止のための安全対策の義務づけについて現在どのようにお考えになっておられるのでしょうか。
  149. 岡本巖

    ○岡本政府委員 観賞魚用のヒーターは、電気用品取締法に基づきます甲種電気用品ということで、私ども安全規制を行ってまいっているところでございます。  先ほど先生のお話にもございました、阪神・淡路大震災の教訓にかんがみまして、エネルギー庁の中に電気設備防災対策検討会というのを設けまして、平成七年十一月に報告を取りまとめた次第でございますが、その中で、観賞魚用のヒーターの安全対策につきまして、追加的な安全対策がなされた製品が、従来のものに加えて新たな選択肢として流通されることが望ましい、そういう報告書を出しまして、あわせて、消費者の方々にも防災意識の向上を含めたいろいろな方策の活用を図るべきという結論をいただいた次第でございます。  その後、実際に、先ほどの経企庁の方の御答弁にもございましたが、外に出して非常に高温に発熱をするという在来のもの等に加えまして、水から出した場合には電気がとまるとか、あるいは一定の温度以上には温度が上がらない、そういう安全対策を施した観賞魚用のヒーターが現在出回るに至っているところでございます。
  150. 北側一雄

    北側分科員 私、直接聞いたのは、対策の義務づけが必要ではないかという御質問をしたわけなんですね。それに対して、今のはまだちょっとそこのお答えがないわけなんですけれども、義務づけの方法としては、電気用品取締法の二十条に基づきまして「通商産業省令で定める技術上の基準」というものを省令で決めます。さらに細則を決めるということになっております。そういうところで規制をする必要がないのかということを私は聞いておるわけでございます。
  151. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 北側委員のおっしゃること、観賞魚用の水槽の件、よくわかりました。  そこで、まず一般論として、先ほど安全規制をどう考えているのかというお話がございました。これは御案内のごとく、平成七年三月に閣議決定された規制緩和推進計画、これにありますように、安全の見地から行われる規制についても、技術の進歩だとか消費者知識の普及あるいは情報提供の活性化などを踏んまえて、本来の政策目的に沿うた必要最小限のものとするよう不断の見直しが求められているところでございますが、そのため、通産省としては、製品事故等の実態を踏まえつつ、安全確保の水準が維持されることを前提として、安全規制について、政府認証品目から自己確認品目への移行等の規制の合理化を図ってまいっております。  そういうことの一方、通産省としては、回収命令等法令に基づく厳格な行政措置をとるとともに、事故情報の迅速な提供を行うことによって、積極的に、事故を未然に、そして再発防止に努めているところでございます。  そういうことで、今の具体的な例といたしましては、必ずしも安全規制というものに関しては、一般の経済規制と別に、何でもかんでも緩和ということではございません。何といっても国民の生命、財産、こういうものにかかわる大事なことに関しては、逆に、やはり物に応じては規制を緩和することもあり得る、こんな実は立場でございます。今のものに関しましては、今のお話のように、新しい製品がある、こういうことでございますので、そうした指導も含めて対処してまいりたい、かように考えております。  失礼しました。今私、規制の緩和と申しましたが、強化の間違いでございます。
  152. 北側一雄

    北側分科員 安全規制の場合は、場合によっては規制強化することもあり得るよという今大臣のお話ですね。一般論としては、私はそれでそのとおりだと思うのですね。  それで、この熱帯魚用の水槽ヒーターの件なのですが、新しい製品が出てきたよというふうに先ほど政府委員の方が御答弁されておられましたが、空気中に出たら電気がとまるとか温度が上がらないとかいう製品が出てきたよとおっしゃったけれども、そういう安全対策、安全装置のついた商品が、ではどれだけ今日本の国内市場に流通しているのかというと、これはまだまだなのじゃないですか。ごくごく一部そういう製品が開発をされてきたということじゃないですか。  大臣、この水槽ヒーターというのは、例えばそのヒーターとサーモスタットの部分だけ安全装置のついた商品に取りかえればいいじゃないかと思われるでしょう。ところが、なかなかそうはいかなくて、これは大体セットになっておるのですよ。水槽からライトから、あと観賞用のいろいろな附属品だとか、ともかくそういうのがセットになっているのですね。こういうセットになっているものを買おうとしたときに、こういう安全装置のついた商品というのが一体どの程度今出回っているのか、その辺掌握されておられますか。
  153. 岡本巖

    ○岡本政府委員 安全対策を施しましたヒーターというのは、七年十一月の私どもの検討会の報告書のころ以降出回ってまいったものでございますので、まだ全体としての数量は余り多くはございません。私ども承知しているところで、数社のメーカーが既にこういう品物をマーケットに出すということになっておりますので、そういうものの普及を期待しているところでございます。
  154. 北側一雄

    北側分科員 まだまだ実際は消費者の手元に容易に届くような状況にはなっておらないのです。そういう安全装置のついたものが開発をされ始めたということでして、まだまだ実際はそういうのはついていないのですよ。従来型の、水面が低くなってきてそこでセンサーが空気中に出てしまったら、一遍に発熱してしまって、今おっしゃったように四百度とか五百度とか、ますます水面が下がってくる、最後は水がなくなってしまう、こういうことになり得る可能性があるわけなのですね。そして、先ほどの例でもお話しのとおり、東京でも、昨年もおととしもこれが発火原因となった火災の実例があるわけでございまして、私は、先ほどの、そういう新しい製品が出てきたから規制が必要ないんだというのはどうなのだろうかなというふうに思うわけなんです。  もう時間がないので、私の方からどんどん言っていきますが、大臣、ぜひここはお聞きを願いたいのですけれども、先ほど政府委員の方もおっしゃいました、あの震災の後に通産省では、この熱帯魚用の水槽ヒーターだけではございません、これも含めて、やはり電気製品の防災対策をもう一遍きちっと検討しなければいかぬぞということで議論を始められました。そして、平成七年十一月に、先ほど御紹介のあった電気設備防災対策検討会というのが分厚い報告を出されまして、その中で、この観賞魚用ヒーターについても、ヒーターが水に接触していない状態では機器が発熱しない等の機構を有する製品が流通することが望ましいというふうに書かれまして、これらの機器の対策の義務づけについては、コストアップが伴う、また国際規格との整合性を図る必要がある、そういうことも留意をしながら検討しましょう、こういうことなんです、報告書では。  その後、この報告書に基づきまして、実を言うと去年の五月か六月ごろには、通産省の方々も入った形で、また業界の方にも指導しながら、先ほどの省令また細則の改正案の原案がほぼ文章としてでき上がっているのですよ。その原案をつくるに至る過程も、事実上は通産省の方が実際入りながら、業界の方々と検討し合ってやっておるわけなんです。一たんでき上がっているのですよ。ところが、去年の十一月の段階で、当面規制については見合わせ、改正については見合わせという経過になっておるのです。  おととしの十一月の報告書以来、通産省も業界の方々と一緒になってどのような規制をつくるのかその内容について検討されて、省令案や細則案についても具体的につくられて、そこまで持っていきながら、なぜ五カ月、半年近くたった去年の十一月にこの改正を見合わせるということになったのか、その辺がよく理解できないわけなんですよ。実際、今言っている商品なんかも出ているかといったら、まだまだ出ていない、こういう実態なんですね。  私は、これは地震だっていつ起きるかわからないわけでして、実際、先ほどの消防庁からのお話からわかるとおり、一昨年なんか全国で七十三件です。大変な数のこれが原因となった火災が起こっているわけです。そういう中で、この安全規制、安全対策の義務づけをどうしてしなかったのか、私には甚だ理解しがたいところがございます。もちろんすぐにやれというのではなくて、つくったものを、まだまだ古いものの在庫があるでしょうから、それがある程度出回るまで施行をもう少し準備期間を置くとか、それはいろいろあったかもしれません。でも、なぜこの規制が現実になされなかったのか、ここが理解しがたいわけでございます。この点いかがですか。
  155. 岡本巖

    ○岡本政府委員 お答え申し上げます。  このヒーターの件について、ヒーターを実際使用して観賞魚を愛好される方々の中で、先生もよく御存じのように、扱いに十分習熟している、そういう方々は、在来のものが非常に安いということで、これは消耗品で一年強でもってしょっちゅう取りかえる、そういう製品なものですから、在来のものをぜひ出しておいてもらいたいという強い御意向がございます。それから、こういうものの扱いになれていない方の場合には、まさに私どもも新しいタイプのものがどんどんふえていくということを強く期待しているところでございます。  もう一つ、これについて基準を見直す場合に私どもが視野に入れなければならない要素としまして、国際規格との関係がございます。電気用品について、IEC、国際電気標準会議で電気用品全般について基準をつくり、その見直しをやっているわけでございますが、私ども、このヒーターを含む電気用品についての基準見直しということで勉強いたしておりますが、IECの規格との整合化ということを視野に入れながら、実は今検討をしているところでございます。
  156. 北側一雄

    北側分科員 時間がなくなってしまいましたので、済みません、大臣、これだけ指摘しておきます。  今、安全基準に関する国際規格の話がありました。大臣も二週後で聞いていただきたいのです。こういう観賞魚用の水槽ヒーターについての国際安全基準というのが具体的にあるのかどうか、一遍聞いていただきたいと思います。  それともう一つ言いたいのは、仮にあったとしても、地震国日本ですよ、ここは。地震国日本とほかの国とは違うわけでして、先ほど大臣が一般論とおっしゃった、安全規制というのは我が国の場合、地震国なわけですから、そのための必要な規制はやっていく必要があるわけでして、国際規格云々というのは必ずしも積極的な論拠にはならないと私は思いますし、また、この商品について海外からの輸入というのはそんなにないと思いますよ。その意味で、この観賞魚用の水槽ヒーターの問題、この規制が必要なのかどうか、これは規制緩和と安全規制の問題の調整、その接点をどこに置くのかという非常にいいモデル例だと私は思いますので、ぜひ大臣にも御関心を持っていただきまして検討をしていただきたいことをお願いいたしまして、私の質問を終わりますが、大臣どうぞ。
  157. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 よく勉強させていただきましたが、私自身、率直に言って、やはり地震になってあらゆることでもって火災の原因は防がなきゃいけないことは重々わかっておりますが、ただ全部が全部、観賞魚用のヒーターでもって火災になるわけじゃない。  一つの例を申し上げますと、石油ストーブ、ああいうようなものは使用が悪いとやはり火災になります。ですから、必ず中の入れかえだとか何かのときには一たん火を消す。同じように、こうした観賞魚用のヒーターをお使いになる人に対する啓蒙運動とか、そうした教育も必要じゃないだろうかと思っておりますが、今おっしゃることは、もう一回よく調査はしてみます。
  158. 北側一雄

    北側分科員 終わります。
  159. 高橋一郎

    高橋主査 これにて北側一雄君の質疑は終了いたしました。  次に、上田勇君。
  160. 上田勇

    上田(勇)分科員 新進党の上田勇でございます。大臣、長時間にわたりまして大変御苦労さまでございます。  きょうは、私の方からは工業立地規制の問題について何点か御質問させていただきます。  近年、製造業の海外移転が増加しておりまして、産業の空洞化というのが大きな問題となっているわけであります。こうした中で、人材、情報、技術、そうしたものが集積している大都市部の工業地帯の持っているポテンシャルを最大限に生かして、既存産業の高度化、近代化あるいは高付加価値化、また新産業の創出を図っていくことは、我が国全体の産業政策の中における重要な課題じゃないかというふうに思います。  ところが、現在、通産省所管の工場立地法であるとか、また国土庁所管のいわゆる工業等制限法等によるいろいろな規制がありますが、これがこうした大都市部の工業地帯の活性化を阻害する要因にもなっているということが各方面から指摘されているわけであります。そこで、これらの工業立地にかかわる規制の妥当性、緩和の可能性等につきまして、何点か質問させていただきたいと思います。  この問題につきましては、これまでも私自身何回か国会で取り上げさせていただいておりまして、とりわけ平成七年度以降、この規制の緩和についてかなり前進が見られたということは評価しているわけでありますが、残念ながら全体として見るときには余り前向きな対応が行われてはいないんじゃないかという気もいたしますので、再度、この場で取り上げさせていただきたいというふうに思います。  まず、工場立地法関係について話をさせていただきますが、大都市圏の工場というのは、これは地方に立地する工場に比べまして地価も高いですし、また敷地面積も限定されているので、そうした条件の中で生産性を高めていくには、土地という資本をいかに有効に利用をしていくかということが重要な要素になってまいります。工場立地法では、全敷地面積に対する生産施設の面積の割合が規制されておりますし、また高い比率の緑地や環境施設の確保が全国一律で義務づけられております。こうした規制が、とりわけ大都市部での土地の有効利用に対して障害となっている事例が多く見られます。  この工場立地法は、周辺地域に対する公害の防止あるいは周辺の環境との調和といったことが目的だというふうに思いますので、こうした一定の規制があるということは、これは必要であるし、やむを得ないことだというふうに考えるのです。  しかし、近年、とりわけ公害防止技術がかなり進歩しておりますし、そういう意味では、生産活動による環境汚染というのは相当軽減されているのが実態ではないかというふうに思います。また、大気汚染であるとか水質汚染、騒音といった問題というのは、これはまた別途法令で規制もされているわけであります。さらに、周辺地域の環境との調和ということについては、これは全国一律に決める問題ではなくて、むしろ地元の自治体が判断するのが一番適切なことではないかというふうに思うわけであります。  こうしたことを考えていきますと、産業や社会の状況が変化することによって、この法律の規制の目的というのが若干妥当性に問題が出てきているのではないかという感じもいたします。この際、この法律によるそういった全国一律の面積規制の廃止も含めました抜本的な法律の内容の見直しが必要というふうに考えますけれども、大臣、ひとつ御所見を伺いたいと思います。
  161. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 この工場立地法は、工場立地が環境の保全を図りつつ適正に行えるようにということで、昭和四十八年でしたか法律ができて、四十九年から施行されたわけで、そして、事業者に対して一定の緑地整備等を求めているものであります。  この法律ができて、確かに工場緑化というものは着実に進展しました。工場の敷地面積に占める緑地の割合は、法施行当時の五・八%から平成七年には一三・九%まで上昇しております。そういうことでは、工場と周辺環境との調和が図られてきたという認識はしております。  こういうことで、この工場立地法の意義だとか重要性は現在も変わっていないと考えますが、委員御指摘のように、やはり経済環境の変化や地方分権の要請を踏まえて規制のあり方について見直しを図る必要があろうか、かように考えております。  そのため、通産省といたしましては、環境立地局に工場立地法研究会というものを設置いたしまして、工場立地法の適切な規制のあり方を検討しているところでございます。今後、この研究会の検討結果等を踏まえて具体的な措置を講ずることとしたいと思っております。
  162. 上田勇

    上田(勇)分科員 ぜひ早急な見直しをお願いいたします。  そこで、具体的な内容についてでありますけれども、これは地元の自治体あるいは産業界の方から私も要請として聞いている内容であります。  当面の措置として、一番支障となっている点あるいは改善してほしい点が、一つは、とりわけ大都市部の、用途区域でいう工業地域や工業専用地域といった一定の範囲内での面積率の設定について緩和してもらえないか、あるいはそこの部分についての判断を自治体に裁量を持たせてもらえないかというような意見。二点目は、一部の地域で認められております緑地の算定の上での共通緑地の考え方、これの適用地域の範囲を拡大することはできないかというような要請があります。こうした点はもっともな考え方であると思うのですが、この辺、通産省はいかがお考えでしょうか。
  163. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 今大臣からお答え申し上げましたように、当局の工場立地法研究会において種々の見直しを進めておるところでございます。  御指摘のございました緑地の問題でございますけれども、最近の工場等のリストラの推進あるいは地方分権の流れなどにかんがみまして、共通緑地の導入あるいは周辺環境の実態に応じたきめ細かな緑地規制について、御指摘の内容を実現の方向で検討を進める必要があるというふうに考えてございます。  ただ、緑地規制のあり方の検討に当たりましては、周辺生活環境の保全に対する効果に加えまして、共通緑地といたしましたところの存続の担保といいますか、恒久性といいますか、永続性と申しますか、そういう点についての技術的な問題が多少残ってございます。こういう点を含めて適切な対応を図るべく研究会で検討を進めておるところでございます。
  164. 上田勇

    上田(勇)分科員 次に、私の地元横浜は、京浜工業地帯という非常に古いまた非常に高度に集積した工業地帯なのですが、この京浜工業地帯を含む首都圏全体には、これは国土庁の法律で、首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律、いわゆる工業等制限法と言われているものですけれども、この規制ももう一つかかっております。この工業等制限法というのは、首都圏における産業や人口の過度の集中を防止するために、工場や大学の新増設を制限している法律なのです。  先ほども述べましたとおり、今国内産業の空洞化というのが深刻な問題となっているときに、大都市部の工業が高度に集積した地域の再編整備活性化といったものが必要であるわけなのですが、しかも、首都圏の既成市街地は確かにかなり集中しておりますし、地方分散ということもわかるのですが、その集中の主要な原因というのが、これはどうも工業が集中していることにあるというふうには私は考えないわけであります。むしろ、この規制によって、現存する企業が新たな事業展開を起こしたり、また産学交流を通じた高技術のベンチャービジネス、ニュービジネスを創出していくことを阻害しているのではないか、そうした面の方が強くなっているというような感じがいたします。  こうしたことを考えますと、この法律も規制の合理性が乏しくなってきているのではないかと考えるわけでありまして、この規制についても抜本的な見直しが必要と考えますけれども、国土庁の方はいかがお考えでしょうか。
  165. 大堀一平

    ○大堀説明員 工業等制限法につきまして御説明申し上げます。  工業等制限法につきましては、ただいま委員が御指摘されましたように、首都圏、近畿圏も同じでございますが、大都市中心部への産業と人口の過度の集中を防止し、あわせまして都市環境の改善を図るというようなことを目的に、一定規模以上の工場の作業場と大学等の教室の新増設を制限しているものでございます。  これも委員が御指摘されましたように、最近産業の空洞化が懸念されまして、これの緩和を求める声が高まっております。しかしながら、一方で、この制限区域の対象外の大都市周辺、さらには地方の皆さん方からは、工場の地方分散を引き続き図ってほしいという声も出されて、この制度の堅持を求める声も根強くございます。  この工業制限法の過去の歴史を振り返ってまいりますと、高度成長期にどんどん集中が加速してまいりましたころには、この工業制限制度は一貫して規制強化の動きがございました。しかしながら、五十年代半ばに入りまして我が国の社会経済構造が変わりまして、それ以後は私どもも一貫して規制緩和の姿勢をとっております。  ごく最近におきましても、産業構造の転換等の要請に対応するために、平成五年には工業専用地域等におきます大企業の近代化促進を図るための経営合理化のための工場増設、さらには中小企業の近代化設備導入等の経営合理化のための工場増設、そういうものを一定条件のもとに認めるという緩和措置を行ったところでございます。  さらに、これは首都圏ではございませんが、阪神・淡路大震災の特例でありますとか、あるいは大学につきましても近々に社会人教育等に関する緩和を行っていこうと思っています。  そういう意味で、私どもとしましては、昨今の経済社会情勢の変化を踏まえまして、この枠組みを維持しつつも、一貫してしっかりと規制緩和方向を向いた対処をしてまいったところでございます。
  166. 上田勇

    上田(勇)分科員 基本的な考えについてはわかったのですが、今むしろ問題になっているのは、既存の企業がある、それはこの制限区域の中にも施設がある一方で、その外にも工場が施設を持っていて、それを再編したりリストラしたりするときにこの法律の規制が障害になっているというようなことがあるわけであります。もちろん、これは先ほど御説明があったように、規制が緩和されて特例もいろいろ認められるわけですが、いろいろと産業界の方々の御意見も伺うと、特例として認められるものもありながら、やはり規制の存在自体が、企業の新規の事業展開、そうしたものに対する障害になっているというのが、これは多くの方が共通して言っていることであります。  もう一つ、工場の規制の問題と同時に、この工業等制限法では、大学の新増設についても、例えば面積が一千五百平米以上の大学や高等専門学校の新増設が禁止されている。これはアメリカの例えばシリコンバレーであるとかマサチューセッツ州のハイテクゾーンの事例でもありますように、高い技術の新しい産業を興していくには、やはり高等教育機関との産学交流の促進が重要な要素になっているわけであります。そういう意味で、大学の進出や拡充を禁止している現行の規制というのは、そういう新しい高い技術の産業を興していく上でも阻害要因になっているのじゃないかという感じがいたします。  もちろん、禁止されているのは教室ということで、研究施設等は認められているのですが、これは国内の研究者の方々にも何名か御意見も伺いましたし、またアメリカにおけるいろいろな調査結果などもありました。そういったことを調べてみますと、ニュービジネス、ベンチャービジネスの創造につながるような高度な科学技術の研究を行っている研究者の多くは、同時にまた大学や大学院で教育にも携わっているというのが多くの事例だということであります。  したがって、研究施設のみを分離して新設を認めたとしても、教室などの教育施設も認めないと、そういう研究者が産業の現場に近いところで研究を進めていくということがなかなか難しいのではないかという感じがいたします。  これは、研究者の方のいろいろな立場の御意見を伺うと、一つには、なかなか実際のビジネスにつながるかどうかわからないもので、教育者として生活を立てていかなくてはいけないということもあるようでありますし、また、特に大学院などの学生と一緒に研究を進めるということが実用化に役立っているというような話も伺うわけであります。そういうことを考えますと、今、大学や高等専門学校が制限施設に含まれているわけでありますが、こうした大学や高等専門学校を集中している地域に仮に持ってきたとしても、それがその地域の人口の過密にどれほど影響するのだろうかということで非常に疑問であります。  そういうことを考えますと、こうした教育施設も制限施設から除外すべきであるというふうに考えますけれども、国土庁の方はいかがでしょうか。
  167. 大堀一平

    ○大堀説明員 大学等の規制緩和につきましての御質問でございますが、大学につきましては、千五百平米以上の教室の新増設を制約しております。確かに、今後日本が新しく未来を切り開いていくためには、そういうニュービジネス、ベンチャービジネスを育成していく必要があり、その相手となる大学の研究機能、教育機能の充実は大変大事だと考えております。  しかしながら、元来、大学等を規制しておりますのは、大学等への入学を機会に地方からどっと若い人が出てくる、地方の方も過疎化につながっていくという社会的な現象も背景にあったわけでございます。さらに、今後、若年層が全体的に減ってまいります。したがいまして、大学等におきましても、今までの大学の学部にさらに新たなものをつけ加えるというのではなくて、大学そのものが変化していく必要があるというような動きになっております。そういうことから、大学につきましてもカリキュラムが大変多様化してまいりまして、従来あった学部を細分化するとか、新しいカリキュラムを設置するにしても古いものは減らしていくとか、そういうような動きがございます。  そういう観点から、そういう教育の実態の変化に対応しまして、これはごく近々でございますが、カリキュラムの変化に対応した教室の新増設に弾力的な対応をすべく、緩和措置を行うべく、今検討しております。  さらに、今後の規制のあり方につきましては、ごく近々に行います緩和措置とは別途、新しい社会経済情勢を踏まえまして、どのような緩和措置を行っていくべきかということは検討してまいりたいと思っております。
  168. 上田勇

    上田(勇)分科員 もう一つ、今度は通産省で、今国会に特定産業集積の活性化に関する臨時措置法案というようなものを提出されております。今まで伺った説明の中で、この法案の対象となっている地域というのは、従来、基幹産業を支えてきた物づくりの基盤となる産業集積や産地とされておりまして、想定されている対象地域の中には、例えば東京の大田区であるとか、川崎、横浜市の臨海部であるとか、この工業等制限法の制限区域になっている地域も含まれているわけでございます。  そうすると、こうした地域の活性化を進めていくということは、これは今の産業政策にとって非常に重要なことであるというふうに私も理解しているのですが、もちろん、今度新しく出る法案の内容が、必ずしも施設の新増設に限るということではないのですが、いずれにしましても、そうした既存の産業が集積している地域の工業の活性化を図っていくという内容であるわけでありますが、その一方でこうした制限的な規制があるというのは、産業政策としての一貫性の問題で非常に疑問を感じるわけであります。また、こうしたさまざまな規制が地域の活性化の阻害要因になっているという声が大きい中で、この産業政策考え方について通産省の方の意見を伺いたいと思います。
  169. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 御指摘をいただきました特定産業集積の活性化に関する臨時措置法案でございますが、これは既存産業集積の活性化目的としたものでございまして、施策の対象となる集積の地域そのものはこれから都道府県がいろいろ計画を立てて範囲を決めることになりますために、今、私自身、どういう地域がなるかということを予見することは大変困難でございますが、ただ、工場等制限法に基づきます工場等制限区域に存する集積を対象とすることを排除するものでは全くございません。  これは、工場等制限法は大都市圏の過密防止を目的としておりますのに対しまして、新たな法案によりますものは、産業空洞化により崩壊の懸念のあります既存の産業集積の活性化目的としたものでございまして、大都市圏の既存産業集積の活性化が大都市圏のさらなる過密をもたらすものではないということから、この二つの法律は形式上でも全く矛盾するものではないというふうに考えてございます。  なお、新たな法案に基づきます承認をされました活性化促進地域が工場等制限区域である場合には、通常と同様に工場等制限法に基づく規制を受けることになります。
  170. 上田勇

    上田(勇)分科員 今、決して矛盾するものではないという御答弁だったと思うのですけれども、こうした地域で活性化を図っていく中で、当然のことながら施設の近代化や新しい――近代化は育成で大分緩やかに認められておるのですが、新しい事業展開や新しい事業の創出ということになりますと、これは当然、この新しい臨時措置法の方でもそういう方向も含めて地域を活性化していこうということでありますので、施設の新増設に対して規制がある、あるいは、実はその規制はよく見れば規制の対象にはなっていないのかもしれませんが、その地域全体としてそういう新増設を抑制するような規制が存在すること自体がそういう阻害要因になるのではないかというふうに考えるのです。  そういうことだと、今お話の中で、この工業等制限法の対象地域、首都圏、近畿圏両方あるのですが、そうした地域も当然対象になる、新しい臨時措置法の方の対象になるということであるのですけれども、本当に矛盾がないという形で割り切れるのかどうか、甚だ疑問に思うわけであります。  そういう意味で、これは先ほど通産省さんも国土庁さんも工場立地法なり工業等制限法なりの抜本的な見直しについて今後進めていただくという御答弁もいただきましたので、ぜひこうした、とりわけ京浜、阪神といった工業地帯はかなり人口も集中しております、生産の施設も集中している、さらに、そういう意味では、今、近代化、新しい事業展開というのが、これは我が国の産業や経済にとっても非常に重要な要素になっていると思いますので、その辺を十分念頭に入れて、規制のあり方について今後考えていっていただきたいというふうに思うわけであります。  本日取り上げましたこうした問題というのは、実は昨年十二月に公表になりました行政改革委員会の「規制緩和推進に関する意見」の中に取り上げられております。その中でも、今の工場立地法あるいは工業等制限法の規制の妥当性も含めて見直すべきであるという趣旨の意見が述べられているわけでありますが、当然、この行政改革委員会の意見については政府として最大限に尊重していくという立場であるというふうに理解しておりますので、きょうここで取り上げましたこの工業立地規制の課題についても、この行政改革委員会の意見も最大限尊重して、本当に規制の必要性を含めた抜本的な見直しをお願いしたいと思いますが、最後に、この点につきまして、ぜひ大臣の御見解を伺いたいというふうに思います。
  171. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 今、上田委員からの質問を聞いておりまして、今の行政改革委員会の答申を尊重しながらやっていきたい、かように考えております。
  172. 高橋一郎

    高橋主査 これにて上田勇君の質疑は終了いたしました。  次に、畠山健治郎君。
  173. 畠山健治郎

    ○畠山分科員 大変御苦労さまでございます。  最初に大臣からお尋ね申し上げたいと思いますが、中小小売業は大型店の進出や価格破壊の影響で厳しい環境に置かれておりまして、新規事業どころか生活基盤である既存商店街の空洞化も進み、都市機能上からも深刻な問題となっております。低落傾向に歯どめをかけて活性化を図るために、消費者ニーズを的確に把握し、それに即した積極的な事業展開と転換が求められておりますが、中小小売業者は、資金力、人材難から情報収集・活用が不十分で、経営改善が容易に進まない状況にございます。  このため、各県では中小小売業支援センターを設けながら、売れ筋商品や繁盛店情報等の小売業の情報収集、加工、提供をするほか、中小企業診断士等の専門家を指導員として委嘱し、中小小売業者からいろいろの相談に応ずる体制を整備し、さらには、商品陳列、接客等の実務研修の実施などの支援を行っております。  これら支援事業の拡大充実がさらに必要ではないかと考えますが、お伺いをいたしたいと思います。
  174. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 近年、我が国の流通は、消費者ニーズの変化、価格競争の激化、モータリゼーションの進展、郊外への大型店の進出の加速化等を背景にして、構造的、持続的な変化の中にある、こんな認識を持っております。  こうした厳しい経営環境に対して、政府では従来から、意欲ある中小小売業者が円滑に対応できるよう各般の中小小売商業対策を推進してきているところであります。具体的には、大企業との連携、これは御存じのように特定商業集積法でございますが、それを含めた商店街、商業集積の活性化、商品調達、配送等の共同化の推進、あるいは売れ筋情報の提供等による消費者ニーズへの的確な対応の確保、こういうことを図るために、補助だとか高度化無利子融資、低利融資等、各般の支援措置を講じてきております。  さらに、平成九年度の政府予算案においては、情報技術の活用による中小小売店の業務の効率性の向上に対する支援の新設、あるいは空き店舗の有効活用等の商店街活性化のためのソフト面の支援の拡充ということなどを通じて、中小小売商業対策の一層の充実強化を図ることとして、関係予算として総額百六十三億円を計上しております。  今後とも、商店街活性化対策等を強力に推進して、中小小売業者の支援に遺漏なきを期してまいる所存でございます。
  175. 畠山健治郎

    ○畠山分科員 流れといえば流れでありましょうが、規制緩和の中で大店法の規制がますます緩まってきておるわけであります、さっきもちょっと触れましたけれども。ところが今、分権の立場からいたしますと、都市機能上からもいろいろ問題が出てまいりまして、自治体からすると、もうこれ以上放任するわけにいかない、何とかして歯どめをかけなければいけないという自治体独自の判断が一方にある。国からすると、規制緩和でどんどん大店法を緩めなければいけない。自治体からすれば、これは都市機能上大変な問題だ、何とかしなければいけない。相矛盾した動きがあるわけでありますが、このことに対して、通産省としてはどんな御指導をなさっていくつもりでしょうか。
  176. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 今申したように、確かに、時代が変わってきて、そして大型店が地方に進出する、それによって既存の商店街が移動する、こうした現象を起こしているのは事実でございます。  今委員御指摘なのは、いわゆる大店法の見直しを平成九年度、こういうふうなことを政府規制緩和推進計画でもって昨年の三月に決めておるところでございます。  そこで、片一方では確かに規制緩和をしろと言うが、片一方ではやはり地方が困る。しかしもう一つは、町が移ることによって新しい雇用も生まれてくる。こういう利点もあるので、私はやはり、地域地域の特色に合わせてこの問題は決めていかなければいけないだろう。  今、特に委員が御指摘のように、やはり地方の時代、地方分権ということが叫ばれていますと、北海道から沖縄、あらゆる条件が違いますので、そういうことをして、そして、やはり消費者ニーズも変わっていますから、消費者の意向あるいは商店主の意向あるいは学識経験者、そうした関係者を集めての幅広い意見を交換しながら、これから今日の大店法そしてまた地域の活性化を図っていきたい、かように考えております。
  177. 畠山健治郎

    ○畠山分科員 一昨年に制定されました中小企業の創造的事業活動の促進に関する臨時措置法に基づく創造技術研究開発費助成制度に対する期待は大変大きいものがございます。それだけに、希望が多いために十分に対応し切れない状況にあろうと承っております。  この制度に基づくこれまでの助成の実績、来年度予算並びに助成対象数についてお尋ねいたしたいと思います。
  178. 田島秀雄

    ○田島政府委員 お答えを申し上げます。  創造法は、一昨年四月に施行されておりまして、私どもと都道府県とが密接に連携をして、この施行に努力をしてまいりました。本年一月末現在、認定件数が千七百八十三件、こういうふうになってございまして、この法律が、中小企業の創造的事業活動あるいは新規事業開拓の促進に大きな役割を果たしていると思っております。  この法律に基づく支援措置のうち、特に、先生が御指摘くださいました認定企業等への研究開発費補助制度に対する期待が高いことは、私どもも承知をいたしてございます。このため、平成九年度の予算案におきましては、認定企業等への研究開発費補助金につきましては、平成八年度二十一億円という実績でございましたけれども、六億円増額をさせていただきまして二十七億円を計上しておるところでございます。  今後とも、先生の御指摘を踏まえて、本法の円滑な施行には一層努力をしてまいりたいと思っております。
  179. 畠山健治郎

    ○畠山分科員 どうもありがとうございました。  次に、エネルギー供給構造の安定性を欠く現状から、自治体はローカルエネルギーの開発に努力をしていただいております。中でも、地熱エネルギーの開発利用の進展に期待をかけておるのが、特に我が県の現状でございます。  ローカルエネルギーの開発と効率利用の観点から、来年度予算並びに今後の開発利用施策についてお尋ねいたしたいと思います。
  180. 江崎格

    ○江崎政府委員 地熱エネルギーなどのローカルエネルギーでございますけれども、これはエネルギーセキュリティーの観点から、私ども、非常に重要なエネルギー源だというふうに考えています。  特に、今先生御指摘の地熱のエネルギーでございますけれども、これは、いわば純国産で再生可能だ、それから、炭酸ガスを出さないということで、環境上も非常にいいということで、今後ともぜひ開発を促進する必要があるというように考えておりますが、問題は、経済性の向上をさせる必要があるということ、それから、開発のリスクがなかなか高いものですから、それを低減させる必要があるということでございまして、国の施策としては、こうした地熱のエネルギー源に対しての調査費ですとかそれから設備の建設費などに対する補助金といったような施策を通じまして、今開発を促しております。来年度の政府予算案におきましては、百三十三億円というのを計上させていただいております。
  181. 畠山健治郎

    ○畠山分科員 次に、休廃止鉱山の重金属を含む坑廃水の流出による環境汚染対策は緊急を要し、しかも、対策実施地域の拡大によって、事業の終期見通しは困難な現状にあろうかと思います。このため、鉱害防止事業を実施している自治体の財政も悪化の傾向にあるのが現状であろうかと思います。  鉱業及び鉱山保安行政は国の指導監督下にあるもので、鉱山跡地利用も含めた国の長期的かつ総合的な鉱害防止対策が必要であり、これに対する抜本的施策が必要かと思いますが、お伺いをいたします。
  182. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 地方自治体が行います鉱害防止事業に対しまして補助金を交付し、金属鉱業等鉱害対策特別措置法に基づきます基本方針の達成に努めてきたところでございますが、先生御指摘のとおり、平成八年度実績見込みでは、この基本方針より若干低い水準にとどまっております。  鉱害防止事業の推進は、国民の健康の保護及び生活環境の保全の観点から、決しておろそかにできないものであるという認識を持ちまして、今後とも、予算の確保及びその円滑な執行のために最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
  183. 畠山健治郎

    ○畠山分科員 閉山及び製錬所の合理化による鉱山地域の経済的、社会的地盤沈下が起こっておるのは申し上げるまでもございません。  例えば私の秋田県では、一昨年から有用金属リサイクルによる新産業の育成事業を進めております。国でも、有用金属の回収を目的とするリサイクル・マイン・パークモデル事前調査事業を昨年から開始し、本年度からはエネルギー使用合理化鉱山等利用技術開発事業がスタートをしておるのでありますが、こうした施策を踏まえ、県の主体的な鉱山地域活性化を支援するため、鉱山及び製錬所等の技術、施設、人材活用に国は支援措置を講ずるべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
  184. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 現在、休廃止鉱山におきます製錬技術及び製錬施設などを活用しながら、シュレッダーダストなどの廃棄物からエネルギーあるいは有価金属を回収し、廃棄物の適切な処理を行うという技術開発が進められておるところでございまして、通産省といたしましても、御指摘のございましたような補助金を交付してこれを支援しているところでございます。  こうした技術の実用化、事業化に当たりましては、廃棄物問題にも絡むところでございますために、地域住民の理解の促進、あるいは所要廃棄物量の確保のための自治体、シュレッダー業者等の関係者との連携が重要でございます。こうした認識に基づきまして、当該技術の実用化はまさに循環型経済社会の構築のために重要であるという考え方から、この技術開発動向を踏まえつつ、関係者を集めまして相互理解を進めるなどの環境整備に努めてまいるところでございます。
  185. 畠山健治郎

    ○畠山分科員 資源探査は一朝一夕に進むものではないことはよく知られております。そしてまた、多大な労力と財政投下が必要でございます。貴重な金属資源を国内外に発掘、活用することは国の重要な戦略課題であろうかと思います。この点で金属鉱業事業団の果たしておる役割は極めて重要であると考えております。一方では、特殊法人の見直しも行革の大切な視点だということでいろいろと話題になっておりますが、金属鉱業事業団を近視眼的に見て論議をするということは誤りだと思うのです。この点、ぜひ大臣からお尋ねをいたしたいと思います。
  186. 江崎格

    ○江崎政府委員 私から事業の内容等について簡単に御説明いたします。  今資源開発というのは、特に国内はそうなんですが、だんだん奥地化しているとかそれから深部化しているというようなことでございまして、非常に探鉱のリスクが大きくなっているという現状でございます。  こうした状況の中で、今御指摘の金属鉱業事業団でございますけれども、より探査技術を効率をよくするということを目指していろいろな事業をやっております。例えば具体的な例を幾つか申し上げますと、一つは、電磁気を使用しまして物理探査の精度を非常に上げるというようなことですとか、それから、人工衛星で上から地表を観察しまして、鉱物のありそうなところを見当をつけるための調査ですとか、それから、地質調査のデータの分析の能力を非常に高める、こういったようなことをやっておりますけれども、今後もこうした幾つかの事業を通じまして、より探査効率を上げまして探鉱のリスクを減らすようにしたい、このように思っておるところでございます。
  187. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 後段の方の金属鉱業事業団、特殊法人として統廃合云々というお話がございました。  今、御存じのように、特殊法人の見直しというのはまさに政府挙げての取り組み方でございます。私たちの役所の考え方としては、傘下の特殊法人でもって必要なものまた機能しているものは、十分にその役目があるのですから何も対象にする必要がない、かように思っております。今の委員からの御指摘、事業団そのものが大変重要だというような御認識だと思いますので、そのことをよく肝に銘じてこれから対応してまいります。
  188. 畠山健治郎

    ○畠山分科員 私の県、秋田県では、金属鉱業研修技術センターを設けながら、金属鉱業事業団技術研究所と、鉱物資源探査技術の開発と鉱害防止対策の強化業務を連携して行っておるところであります。特に地下資源研究においては、金属鉱業事業団技術研究所と県の金属鉱業研修技術センターとが密接な連携をとりながらやっております。  そこで、現在事業団が行っておる鉱物資源探査技術開発調査の現状と今後の見通しをお尋ねいたしたいと思います。     〔主査退席、生方主査代理着席〕
  189. 江崎格

    ○江崎政府委員 事業団の調査事業でございますけれども、探査技術をより効率化するということで、国内外の探査事業の効率化また民間の探鉱リスクの低減に努めております。  先ほども申し上げましたけれども、調査の中身として、電磁気を利用した物理探査の高精度化ですとか、それから人工衛星による観測データの利用技術とか、あるいは地質調査のデータの解析といったようなことを中心にやっております。  また、先生おっしゃいました、先生のお地元で金属鉱業事業団が小坂の技術研究所というのを持っておりますが、ここでは、秋田県の設置されました秋田県資源技術開発機構といったようなところと連携いたしまして、例えば無電解還元法による金属アモルファスの合成といったようなことについて共同研究を実施している、こういう状況でございます。
  190. 畠山健治郎

    ○畠山分科員 エネルギーの安定的供給基盤の整備、特に地域エネルギーの原材料としての天然ガスの探査は重要な課題と考えます。  第八次国内石油及び可燃性天然ガス資源開発五カ年計画に基づく石油・天然ガス基礎調査の進捗状況並びに今後の見通しについてお尋ねいたします。
  191. 江崎格

    ○江崎政府委員 御指摘の第八次国内石油及び可燃性天然ガス資源開発五カ年計画でございますけれども、これは、平成七年度以来これまで、二つのカテゴリーに分けまして、一つは基礎的な物理探査と、それからもう一つが基礎的な試錐がございます。それぞれ毎年二、三カ所ずつ対象にして、着実に実施してきております。  例えば、秋田県ですと子吉川沖の試錐などを行っております。今後ですけれども、平成九年度には秋田県の鳥海山の北麓における物理探査、それから新潟県の東山での試錐などを計画しておりまして、そのために必要な予算を来年度の予算政府案に計上させていただいております。  今後もエネルギーの安定供給の基盤形成のために調査を着実に実施していきたい、このように思っております。     〔生方主査代理退席、主査着席〕
  192. 畠山健治郎

    ○畠山分科員 通告しておった問題じゃございませんでしたけれども、秋田の小坂町で、鉱山に対する国際的なサミットをやりたい。研修所もあるし、それから海外研修者の受け入れもやっておる。大変興味のある問題で、日本のノウハウが海外にどんどん出ていっているわけですから、ぜひひとつサミットをやりたいというような計画が今進んでおるようであります。大変斬新な考え方だというふうに思っております。県を通しながら御相談を申し上げたいというふうに思っておりますので、その節はぜひひとつ御支援のほどを賜りたいというふうに思っております。いかがなものでしょうか。
  193. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 大変申しわけありませんでした、実は今初めて聞く話でございますから、よく話の内容を聞いていって、そして委員の御要望にこたえられるようにしたい、かように考えております。
  194. 畠山健治郎

    ○畠山分科員 終わります。ありがとうございました。
  195. 高橋一郎

    高橋主査 これにて畠山健治郎君の質疑は終了いたしました。  次に、棚橋泰文君。
  196. 棚橋泰文

    棚橋分科員 自由民主党の棚橋泰文でございます。連日の予算委員会での御審議、大変お疲れさまでございます。私からは、産業政策につきまして幾つかの質問をさせていただきたいと思っております。  我が国の産業、特に製造業の空洞化が言われて久しゅうございますが、短期的に見ましても、今日、景気は回復基調にあるとは言われておりますが、私が地元を回っておる限り、決してそのような楽観できる状態ではなく、まだまだ厳しい状態が続いておるのではないかと思っております。  産業の空洞化は我が国において今深刻な状態にございまして、例えば、主要望品の中で一例を挙げますと、カラーテレビの海外生産比率が現在七八%という非常に厳しい状態にございます。私は、もう一度産業政策を抜本的に見直していかない限り、二十一世紀は失業の問題が我が国の政治の中で一番大きな問題になるのではないかと恐れておる一人でございますが、その観点からも、もう一度、例えば情報産業、あるいは環境に関連する分野、あるいは福祉に関連する分野などの我が国のリーディングインダストリーとなる産業を着実に振興していかなければいけないと思っております。  しかしながら、まずその前提といたしまして、我が国におきましては、いわゆるベンチャー企業が育たないということが言われております。通産省といたしましては、いわゆるエンゼル税制の創設を図られていると聞いておりますが、例えば、平成元年以降、我が国において、事業所の開業率が常に廃業率を下回るというような状況があります。空洞化が進んだと言われる一九八〇年代のアメリカにおいてすら開業率は廃業率を下回るようなことがなかった、にもかかわらず我が国においてこのような状態があるということは、私は深刻な状態ではないかと考えております。  そこで、まず、個別の産業振興政策前提として、いわゆるベンチャー企業がなぜ我が国において育っていないのか、また、これを振興していくにはどのような観点から施策をお進めになるかについて、通産省の見解をお伺いしたいと思っております。特に、通産省におきまして、いわゆるエンゼル税制の創設が今図られておるとはいえ、さらなる規制緩和推進や、あるいは予算、税制上のさらなる優遇措置などを検討し、今後とも講じていかれることが私は大変重要だと思っておりますが、この点についての通産省の見解を伺わせていただきます。
  197. 渡辺修

    ○渡辺(修)政府委員 今先生から、我が国のベンチャー企業の振興についての例示を挙げながら、我が国の空洞化問題についての危惧の念が示されました。私ども、中期的な我が国経済が抱える問題点について、全く認識を一にしておるわけでございます。  そういうこともございまして、通産省におきましては、かねてからベンチャー企業の育成に努力をしてまいったわけでございますが、特にベンチャー企業におきましては、これを育てていくためには幾つかの要素が不可欠でございます。今、先生の御質問にもございましたけれども、リスクマネーの供給が円滑に行われること、あるいは有能な人材の確保を図ること、さらにはベンチャー企業が技術的に新しいものを、イノベーションを行っていくということ、大きく言ってこの三つの、金、人、技術というのが不可欠であるわけでございます。それぞれにつきまして、私どもとしてはいろいろな対策を講じてきたわけでございます。  そういったこともございまして、各種の規制緩和を行って、特にリスクマネーの供給を確保するとか、あるいは人材の移動の円滑化を図るとか、各般の施策を講じたわけでございまして、今お願いしております予算案におきましても、ベンチャーのエンゼル税制創設を今回お願いしておるわけでございますが、御指摘のように、さらに規制緩和を進めることによって、リスクマネーその他が円滑にこのベンチャーの方に行くようにしなければいかぬ、こう考えております。  二、三の例を挙げますと、お金の面でいえば、例えば、資本市場をさらに整備するとともに、各種の年金その他の運用等において弾力化を図っていくことによって、さらに金が行くようにするということも一つの重要な要素だと思っております。あるいは、人材確保の面におきましては、先般、一部のものについてストックオプション制度を導入いたしましたけれども、さらにこれを、運用実績を十分見定めまして、産業全体についてのストックオプションの導入の可能性について、法務省と来年度話し合いに入る、こういうことも考えております。  さらに申し上げますと、ベンチャー企業とエンゼルと呼ばれる投資家との仲を取り持つような、各種の意思の疎通を図るような出会いの場もつくっていきたい。特に、情報化社会でございます。それぞれの地域において、ネットワーク社会において、ベンチャー企業が育つそういった素養というのが十分これから社会に実現してまいると思っておりますので、御指摘の面も含めまして、我々も全力を投じてベンチャー振興に努めてまいりたいと思っております。
  198. 棚橋泰文

    棚橋分科員 どうもありがとうございました。  私の地元、大垣市でも、ソフトピアジャパンを整備して、特にソフトウエアを中心とする情報産業を今後とも振興していく動きがございますが、何といいましても、二十一世紀をリードしていくリーディングインダストリーは、私は情報産業ではないかと考えております。  しかしながら、例えば米国と比べますと、ハードウエアの面でも、まだまだ十分な競争力があるとは必ずしも言いがたい面があるのではないかと思っておりますし、ましてソフトウエアの面においては、これから競争力をつけていかなければ、世界的な競争の中で立ちおくれてしまうのではないかという懸念を抱いております。  一方で、ある数字によると、二〇一〇年には、雇用で一九九五年の約二倍の二百四十五万人の雇用吸収力がある、また市場規模では、同じく一九九五年の三倍の百二十六兆円規模の市場になるのではないかということで、そういう意味では大変夢と希望が持てる産業でございます。何といいましても、まず情報産業を我が国で育てていくことが、来世紀に向けての我が国の産業活性化のキーではないか。また、その観点からするときに、特に地域の中で情報産業を育てていこうという地域については、重点的に支援をしていただくことが大事ではないかと思っております。  そこで、この観点から、通産省が今まで進めていただきました情報産業振興政策にプラスして、今後、より抜本的にあるいは重点的にどのような振興策をおとりになるおつもりか、その点をお伺いいたします。
  199. 中川勝弘

    ○中川(勝)政府委員 お答えいたします。  二十一世紀のいわばリーディングインダストリーとして情報産業が大変重要ではないかという御指摘でございますが、まことに先生の御指摘のとおりでございまして、大変残念なことでございますが、日米を比べますと、アメリカの最近の情報化の進みぐあいに比べまして、日本の状況は大変立ちおくれてきたという実情にございます。  これは、単なる情報産業、いわばハードとソフトの供給をいたします側だけではなくて、この情報化を実際の生産性の向上とかあるいは経営の効率化に使う側、ユーザー産業における情報化のおくれも大変目立ってきておるところでございます。したがいまして、私どもとしては、従来から、この需要側であらゆる局面におきまして情報化が進むようにということで、産業の情報化ということを進めてまいりました。  最近では、電子商取引の推進ということで、平成七年の補正予算をちょうだいいたしまして以来、四十五のプロジェクト、約三百数社に及ぶ企業の参加を得まして、将来の電子商取引の実証実験事業というのをやっておるところでございます。また、あわせて、公的な分野でも情報化を進めて、これもある意味で情報化の大きなマーケットになるわけでございますし、また行政の効率化にも役立つものでございますから、行政の情報化も進めているところでございます。  そうしますと、需要の方が大きくなりますと、当然、ハードを供給しますコンピューターメーカーあるいはソフトを供給するソフトメーカーの方も新しい製品の開発等で頑張らなければいけなくなるわけでございまして、御存じのように、ハードメーカーも大変家電部門では日本も頑張っておりますけれども、最近の技術進歩の速さの中で、なかなかアメリカの状況には追いついていないところがございます。  特に、ソフトについては大変なおくれをとっておりまして、御存じのように、アメリカではマイクロソフトのようなソフト企業がフォーチュンの五百社の中で十社もある。日本は、ソフトメーカーはほとんど大企業にはないということでございます。従来からIPAを初めとしていろいろなソフト開発についての施策を講じてきているところでございますけれども、私ども、このベンチャーの育成ということもあわせ含めまして、なお一層、情報化振興に努力をしていきたいと思っておるところでございます。
  200. 棚橋泰文

    棚橋分科員 ありがとうございました。  それでは次に、福祉に関連する分野について質問をさせていただきます。  二十一世紀は高齢化社会ということが言われてもう久しゅうございますけれども、何といいましても、福祉を受ける側、要介護者の適切なケアという観点からも、そしてまた雇用を生むという意味で、大きな市場を秘めた産業という観点からも、福祉に関連する分野の振興も二重の意味で大変重大であり重要ではないかと私は思っております。  そこで、この観点から、特に福祉用具産業の振興についてお伺いをいたしますが、まず、通産省といたしましては、将来の医療あるいは福祉に関連する産業の市場規模については、どの程度の予測をされていらっしゃるのか。また、その観点からして、どれだけの雇用を吸収する可能性があるというふうにお考えであるかをお伺いいたします。  と同時に、福祉用具産業を今後とも育てていただかなければなりませんが、残念ながら我が国においては、福祉に関連する産業がまだ十分に育っていないのではないかと思っております。そこで、これを阻害する要因は何か、あるいは逆の観点から言うと、今後我が国に福祉用具産業を育てていくに当たって、キーとなる政策は何か、この点も含めて通産省の振興策をお伺いいたします。
  201. 中川勝弘

    ○中川(勝)政府委員 先生御指摘のように、医療、福祉分野も、情報通信の分野と同様に、新規事業として大変成長性のある分野でございます。  平成八年の十二月に「経済構造の変革と創造のためのプログラム」という閣議決定をいたしましたが、私どもがその中で想定をいたしました数字を引用させていただきますと、市場規模は、医療、福祉全体でございますけれども、現状の約三十八兆円が二〇一〇年に九十一兆円と約二・四倍、雇用規模については約三百四十八万人から四百八十万人へと約一・四倍の伸びということで推定をいたしているところでございます。  このように、大変大きな市場規模が予想されるわけでございますが、特に福祉用具産業は、現在、つくっておりますメーカーは大変小さな中小企業でございます。しかも注文生産的でございまして、例えば車いすとか介護用のベッドとかいろいろなものがございますけれども、いわば利用者のニーズを的確に反映した生産体制にはまだ至っていないというのが実情でございます。  したがいまして、まず、この福祉用具の効率的な生産体制を図る体制をつくりたいということで、私ども、一つは安全性を初めとした福祉用具の評価体制を確立をしたいということで予算をとりまして、製品技術センター、これは通産省の附属機関でございますが、こういうところに福祉用具の安全性の評価方法あるいは評価基準等の勉強をしてもらっているところでございます。  またあわせまして、平成五年の十月に、実は福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律というのを厚生省と共管で成立させていただいておりまして、この法律に基づきまして、福祉機器の技術開発の促進を行っているところでございます。私どもの関係のNEDOというのがございますが、福祉器具のいわば技術開発をやっているところでございまして、ここでも、現に大手の自動車部品産業が、例えば水圧を利用した介護者用のリフトをつくったりというような実例が出てきております。できる限り、幅広いいわば供給者を募りながら、利用者の多様なニーズにこたえていく体制づくりをしたいと思っているところでございます。
  202. 棚橋泰文

    棚橋分科員 ありがとうございました。  それでは次に、環境分野に関連する産業の振興施策についてお伺いいたします。  今日、また二十一世紀は自然との共生ないし共存の時代と言われておりますが、かつての公害の時代と違いまして、特定の工場あるいは特定の産業分野における公害の問題から、今日はあらゆる産業分野、さらには我々の市民生活にまで、地球に対する負荷が大きいのではないか、この観点から、我々の市民生活あるいは産業活動そのものを環境の観点から見直すべきではないかという御意見すらございます。  そこで、何よりも環境への負荷の少ない、そしてまた持続可能な経済体制、経済社会を築いていかなければいけないと思っておりますが、この観点からすると、何といってもその受け皿となる環境分野に関連する産業が十分に育っていかなければ、これは絵にかいたもちになるのではないか、私はそう感じております。地球規模的な環境の時代を目前にいたしまして、環境関連産業を振興していくことが今一番重要でございますが、さらに、最前から申し上げております産業振興あるいは雇用の確保という観点からも、この分野はさらなる莫大な可能性を秘めているのではないかと私は思っております。  ある予測数値によると、雇用規模でいいますと、現在、環境関連分野で約六十四万人の方が働いていらっしゃいますが、これを順調に伸ばしていくと、二〇一〇年にはおおよそ二倍以上の百四十万人の方が、また市場規模においても、今日十五兆円が三十七兆円程度に膨らむのではないか、そういう予測もございます。雇用の確保という観点からも、環境関連分野を育てていくことは大変重要な時代が今やってきていると思いますが、この観点から、特に環境関連の産業振興のための通商産業省のこれまでの施策と、今後いかなるお取り組みをなさるのかについて、お伺いいたします。
  203. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 御指摘のございました環境関連産業は、非常にすそ野の広い分野でございまして、環境調和型製品の製造業、廃棄物処理、リサイクル関連の産業、あるいは環境関連の装置をつくる産業、さらには環境の修復、創造を行う産業などを含めた広がりを持ってございます。御指摘のような環境への負荷の少ない持続可能な経済社会を構築する上で極めて重要な役割を持っておりますと同時に、まさに御指摘のございましたように、市場規模、雇用規模ともに成長が大きく期待できる産業分野と認識をいたしてございます。  通産省としましては、この環境関連産業の健全な発展の方向性を提示するということを行ってまいりましたが、社会システムの整備あるいは技術開発、人材育成等々、各般の施策を行ってきたところでございます。  今後とも、効率的かつ効果的な展開のための基盤整備を図りたいと考えてございますが、一例を申し上げますと、新年度の予算といたしまして、地域に対する取り組み強化するという観点から、廃棄物をゼロにすることを目指しますゼロ・エミッション構想を基本構想として位置づけましたエコタウン事業を新たに創設することといたしてございまして、既存の枠にとらわれない先進的な環境調和型産業の育成を、地方振興という観点も含めましてハード、ソフト両面から支援してまいることとしているところでございます。
  204. 棚橋泰文

    棚橋分科員 ありがとうございました。  今まで個別の産業分野におきます振興施策についてお伺いをいたしましたが、やはり経済全般の観点から、産業全般の観点から、特に経済活動のグローバル化、さらにはボーダーレス化、そしてまた世界の中での競争の激化の中で、もう一度産業の空洞化に対する抜本的な施策を考えてまいらなければいけないのではないかと私は認識しております。  昨今は主要産業における海外生産比率が引き続き上昇しておりまして、研究開発投資についても、国内の投資が戦後初めて減少に転じるというような大変厳しい状態にございます。産業の空洞化をこのまま放置すると、今後五年間で約百二十四万人の雇用が失われるということが今言われておりますが、その観点からも、企業海外進出を一定の限度でとめて、やはり製造業を中心とした、物づくりを中心とした我が国国内での産業振興を図ることによって雇用を確保するという、地道な努力が今一番必要とされているのではないかと思っております。  大変私的な認識でございますが、私は、今日の産業の空洞化の一つの遠因に、やはりバブルの時代に、官民挙げて地道な形での研究開発努力に少し怠りがあったのではないかと個人的には思っております。  これらの観点も含めて、今、先進国中我が国の法人税の実効税率は最も高いと言われておりますので、この点のあり方についての抜本的な検討も含めて、製造業が国内で物づくりをやっていける体制をもう一度整備し直すことが必要ではないかと思っております。この点についての通商産業省の産業政策についてお伺いいたします。
  205. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 おっしゃるとおりでございます。  先ほどから委員のお話を聞きながら思っていたのですが、今言われるように、日本が非常に産業の空洞化をしてきたという原因は、やはり高度の情報通信社会、こういうものが形成されて世界が一体化してきた、もう一つは、少子・高齢化社会で非常に活力がなくなってくるということで、実は政府挙げて経済構造改革、こういうものに取り組んでいるわけでございます。  そこで、空洞化でもってただ出ていくだけで指をくわえていたのではいけないというときに、やはり新しい事業をつくらなければいけない。先ほどから御指摘のように、十五分野に分けて新しい産業の創出を図っているわけでございます。  今申したように、高度情報化社会の到来ということは、逆に言えば、日本が外国に対して世界の一体化の中でおくれている部門がこれから大いに伸びる、こういうことで、情報産業あるいは福祉機器あるいは環境、こういうようなところは御指摘のとおりだと思うのです。  そこで、やはり何といっても物づくりというものが大事だという考え方、これは変わりがございませんし、今世間の風潮として、物をつくるよりかはサービス部門、いわゆる第三次産業という方が何か格好いい。そっちの方に人が流れる。若い人自身が一次産業、二次産業を捨て、三次産業に行く、これが一番問題だろうと私たちは考えているのです。そういうことで、物づくりを支えてきていた、何といっても地域の産業集積における中小企業を初めとする人たちに対する援助というもの、これをやはりこれからやっていかなければいけないというのは御指摘のとおりでございます。  そのためには、事業者が行う新製品の開発や新分野への進出など、こうした新たな事業展開を支援していくことはもちろんでございますし、こうした認識のもとに、今国会に特定産業集積の活性化に関する臨時措置法案、これを提出してございます。この法案の柱というのは言うまでもなく産業インフラの整備であり、研究開発、人材育成の促進、新たな事業展開への投資促進、こういうことでございますので、これによって、地域における産業集積活性化に向けた取り組みを総合的に体系的に支援していく、こんな考え方でございます。
  206. 渡辺修

    ○渡辺(修)政府委員 経済構造改革及び物づくりに関する基本的な我々の施策については、今大臣も御答弁申し上げたとおりでございますが、法人税についての先生の御質問がございましたので、その点を一点事務的に補足させていただきたいと思います。  御案内のように、今世界では大変な産業立地競争が行われておるわけでございまして、我が国土を魅力ある事業環境にするために、高コスト構造是正、その他あらゆる経済構造改革に邁進しておるわけでございます。そういう視点から考えますと、税制というのは、政府の手の届く範囲内で魅力ある事業環境をつくり、国際的な水準に合わせて我が国の事業環境をどう整えるかという非常に大きな要素でございます。  そういう意味で、法人税につきましては、一九八〇年時点におきましては、我が国は約五〇%ぐらいの実効税率でございまして、むしろアメリカ、イギリス、フランス、ドイツというのが日本よりも高い実効税率だったのでございますが、それから十五年の間に、諸外国はどんどん税率を下げまして、事業環境を整えるということになりました。フランスあるいはイギリスというのは三〇%台でございますし、ドイツがやや日本と近うございますけれども、日本は引き続き四九・数%という状況でございまして、むしろ先進国の中では日本が一番法人税の水準が高い、こういうのが今の状況でございます。  そういうことも考えまして、先般来、私どもとしては、政府の手の届く範囲内で魅力ある事業環境をつくろうということで、法人税の諸外国並みの、これに十分比肩し得るぐらいの実質的な引き下げ、さらには連結納税制度の導入、こういったことが魅力ある事業環境のために不可欠ではないか、こういう考え方を産業構造審議会の御答申でもいただきまして、それをもとに税務当局と現在政府部内で意見交換をしておるところでございます。  そういうことで、税については公平、中立、簡素という非常に重要なそれぞれの命題がございますけれども、こういう経済環境下においては、経済への活力を与えるという新たな視点も入れまして、国際的に十分比肩し得るような、そういう水準に持っていきたいと努力してまいる所存でございます。
  207. 棚橋泰文

    棚橋分科員 どうもありがとうございました。  最後に、一番重要な中小企業対策、特に地場の、地域の中小企業振興政策について大臣のお考えをお伺いしたいと思っております。  ただいま景気は回復基調にあるというふうに言われておりますけれども、率直に申しまして、私が地元を回っている限り、決してそのような楽観できる状態ではないと認識しております。今までの循環型の景気変動の中で、大企業がよくなれば中小企業もよくなったという時代から、構造的な要因によって厳しい経済状態が続く中で、大企業がよくなっても中小企業はよくならない、特に、地域、地場の中小企業はなかなか厳しい状態にあるというのが私の認識でございます。  私の地元岐阜県でいいますと、例えば繊維産業等が今大変厳しい風の中での闘いを余儀なくされておりまして、一方で地域の中小企業が倒れることになれば、単にその企業あるいはそこで働く方々の問題だけではなくて、地域の灯が消えてしまうようになることは御承知のとおりでございます。  そこで、この厳しい経済情勢の中で、地域の活性化の観点からも、中小企業対策を初めとする抜本的な政策が必要だと考えておりますが、大臣はいかがお考えでしょうか。
  208. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 日本経済は非常に緩やかながら回復の兆しがある、これはおっしゃるとおりでございます。ただ、大企業と中小企業、あるいはまた中小企業の中でも工業と商業、そしてまた非常に地域的な差がある、これが今の実態だろう、こう思っております。  そこで、やはり何といっても、今御指摘のように、中小企業というのは地元の、地域の雇用や生活に大きな役割を果たしているという認識も持たなければいけません。また、先ほど申したように、やはり地域においては、今の岐阜県における繊維もそうですが、技術や技能の集積、そういうものが非常に地域の自立的発展の基盤であるということだと私は思います。  そこで、今のような製造業の方に対する支えというものは、やはりこれから物づくりに力を入れるということによって、また法律の施行によってやってまいりますが、片一方では、商店、いわゆる小売商業者の問題は、最近のモータリゼーション、そして何といっても消費者のニーズの変化、こういうものを的確に構えていかないと処理できないだろう。片一方では、大店法、こういうものの進出によって町が移動する。そういうことですから、これはやはりその地域、地域に対するきめ細かい対応というものをしていかなければいけないだろう。  御指摘のように、やはり東京において一つの法律で一つの施策でもって全国統一というわけにはいかないだろう、実はかように考えております。  そういうわけで、今申したように、工業の方に関しては特定産業集積活性化法案であり、そしてやはり新しい若い人たちを育てるという意味では中小企業創造活動促進法、そういうものの一部改正によってエンゼル税制を導入していく、こういうことを今考えているわけでございます。
  209. 棚橋泰文

    棚橋分科員 これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  210. 高橋一郎

    高橋主査 これにて棚橋泰文君の質疑は終了いたしました。  次に、下村博文君。
  211. 下村博文

    下村分科員 きょう最後の質問ということでございます。大臣におかれては一日大変にお疲れさまでした。自由民主党の下村博文でございます。  今、棚橋議員から中小企業の振興策についてお話がございましたが、私は、その中でもさらに、商店街あるいは中小零細小売業、この問題に絞って、これから佐藤大臣また通産省中小企業庁に対してお聞きしたいというふうに思います。  それというのも、特に商店街は、佐藤大臣の選挙区でもそうだと思いますが、今、大変に壊滅的なダメージの中で空き店舗もふえておりますし、また、大店法等の規制緩和の中で、あるいは二代目の育成等がなかなかままならず、厳しい状態に置かれているところが多いわけでございます。  しかし、この商店街というのは単に物を売ったり買ったりする場所だけでなく、まさに商店街の方々の力によって地域のコミュニティーをつくり、あるいは文化をつくっていく。そういう意味では大変に付加価値の高い、商店街そのものがその地域を支える原動力にもなっているわけであります。  私の選挙区は板橋区でございまして、きょうは地元の板橋の商店街の会長さん方が来られておりますが、この商店街の活性化ということは、既にそれぞれのお店の自助努力あるいはそれぞれの地域の商店街の努力を超えまして、極めて行政的な視点でこの活性化をとらえていかないと、日本全体が衰退化してしまうのではないか。沈滞化してしまう。  そういう意味では、これから商店街について通産省あるいは中小企業庁がどのような施策をするか。これは、単に中小零細企業、商店街そのものだけでなく、日本の文化、伝統にまで影響してくるような大変重要な施策であるというふうに思います。  そういう中で、平成九年度はこの施策に対して百六十三億の予算を計上し、対前年度比は七%を超える積極的な予算を計上していただいております。しかし、全国三千三百ある地方自治体で振り分ければ、一自治体に対してこの商店街等の活性振興策トータルでも五百万程度ということですから、大変に不十分であるというふうに思うわけでございます。  この商店街の現状について現在どのように認識をされているか、まずお聞きしたいと思います。
  212. 篠原徹

    ○篠原政府委員 お答えいたします。  我が国の中小小売商業者は、消費者行動の変化、モータリゼーションの進展あるいは大型店の出店増等、著しい環境変化に直面いたしております。最近ではいわゆる空き店舗問題も深刻化いたしておりまして、極めて厳しい状況にあるというふうに私どもも認識いたしております。  平成六年の商業統計によりますと、全国の商店数は平成三年から六年までの三年間で約十一万店舗減少いたしておりまして、平成六年時点では約百五十万店舗でございます。特に従業者数一から四名の零細小売店は、店舗数、従業者数とも一割を超える大幅な減少となっております。  また、深刻化いたしております商店街の空き店舗問題については、最近の調査によりますと、商店街の平均空き店舗数は五店、全国の商店街の約三分の一以上で空き店舗比率が一割を超えているという状況でございます。
  213. 下村博文

    下村分科員 景気は緩やかに回復傾向にあるということでありますが、商店街における景況感、昭和四十五年度の統計におきましては、繁栄しているというところが四〇%、停滞及び衰退しているというのが六〇%ございました。ところが、平成七年度になりますと、繁栄しているという商店街はわずか三%、停滞及び衰退しているという商店街が九七%。ほとんどの商店街が衰退化傾向に向かっているわけであります。  この中で、国の諸制度を活用して都道府県が商店街の助成を行う、あるいは都道府県あるいは区市町村がそれぞれ商店街に助成策を行うということがされているわけでございますが、実際に私の選挙区の板橋区もそうでありますけれども、国の制度が非常にいろいろな制限があるという中で、十二分に地域の商店街の活性化に向けた支援策ができてないという問題がございます。  この問題については、今後、地方分権と連動する形で、助成制度があるにしても、国がそれぞれの地域の実情をよく把握した都道府県あるいは区市町村等に権限を移譲して、それぞれの商店街がさらに実情に応じた助成策、施策が図られるようにすべきではないかというふうに考えますが、これについていかがでしょうか。
  214. 篠原徹

    ○篠原政府委員 商店街の活性化の成功事例を見てみますと、ヨーロッパのアーケードを模しました大規模なアーケードを整備いたしまして集客力を大幅に向上させたもの、あるいは地元名物の夜祭りにちなみましてナイトバザールを毎月開催いたしまして多くの人出を集めている事例など、商店街活性化の方策は多種多様でございます。  かかる状況にかんがみまして、助成制度の整備に当たりましては、都道府県が各商店街のニーズに合ったような支援策を講ずることができますように、種々の商店街活性化のための取り組みに応じました支援制度を整備いたしております。また、個々の助成制度の内容につきましても、さまざまなメニューの中から現地の商店街の皆様方のニーズに応じましたように都道府県で選択できるように配慮しているところでございます。  例えば商店街の基盤整備を支援いたします商業基盤施設整備事業につきましては、アーケード、駐車場、カラー舗装、コミュニティーホールなど、商店街の活性化に資するさまざまな施設を助成対象にいたしておりまして、都道府県が個々の商店街のニーズ等に応じまして適当な施設の整備を支援することが可能となっております。  また、ソフト面の取り組みについて申し上げますと、例えば平成九年度予算案におきましては、高齢者等への宅配サービス、あるいは仮想商店街、バーチャルモールでございますけれども、こうした構築など、商店街活性化のためのさまざまな取り組みにつきまして、都道府県の選択に応じまして助成を行う商店街活性化モデル事業を創設することにいたしております。また、空き店舗対策あるいはパーク、アンド・ライド等の駐車場対策等につきましても、種々の活性化事業に即しまして支援体制を整備しているところでございます。今後とも、個々の商店街の実情に応じました適切な支援を行うことができますように、十分配慮してまいりたいというふうに存じます。
  215. 下村博文

    下村分科員 これについて、地方分権との絡みの中で、この権限の移譲をどのように今後考えていくか、改めてお聞きをしたいというふうに思います。次の質問関連してで結構であります。  それというのも、この商店街の活性化というのは、もちろん基本的には自助努力の部分があるかというふうに思うわけでありますが、しかし、そもそも商店街の衰退化というのは、一九九〇年から始まりました日米構造協議の中で、大店法の規制緩和、それがずっと一連の施策として、あるいはことしあたり廃止に向かって進むという、ある意味では日本とアメリカの経済構造協議の中で出てきた問題であるわけでもあります。  そういう意味では極めて政策的なことでありますから、日本という国があるいは通産省が、この問題について商店街のそれぞれの自助努力を期待するだけでなく、これから活性化させるための極めて先進的な政策を同時につくっていかなければ、今以上に、二十一世紀になって大変な社会問題になる。それは、商店街が衰退化するということだけでなく、日本の文化、地域のコミュニティーも崩壊してしまうことになる、そういうことになりかねないのではないか、こんなふうに考えるわけでありまして、そういう意味での積極的な施策をお願いするわけであります。  それと関連して、先ほどの答弁と、それからさらに、今の国の制度を活用しますと、例えば未組織な商店街あるいは小規模な商店街は支援が事実上は得られない、こういうことがございます。  ちなみに、私の選挙区の板橋区は商店街が百十三ございますが、この中で、組織的に振興組合になっているところが六十九、加入率は六一%でございますから、四〇%の未加入の商店街はこのような支援が得られないということであります。もちろん、得られるような努力をするということも必要でありますが、先ほどのような観点から、地方分権と連動して、それぞれの、もっと小さなあるいは未組織な商店街も支援が得られるような、活性策が図られるような、そのような対応を今後考えていく必要があるのではないかというふうに思いますが、あわせて答弁をお願いします。
  216. 篠原徹

    ○篠原政府委員 まず、最初にお尋ねの地方分権との関係でございます。  現在、私ども中小企業庁が実施しております中小小売商業に対します助成制度でございますけれども、この制度は、基本的には都道府県の事業を国として支援するというスキームになっておりまして、私どもの助成は商工団体あるいは商店街に直接入るということではございませんで、都道府県に補助をするというスキームで実施しているものでございます。いずれにいたしましても、地方分権の流れの中で、今後とも私どもは、都道府県が運営、活用しやすい制度となるように、引き続きまして十分配慮してまいりたいというふうに思っております。  第二番目のお尋ねは、未組織な商店街あるいは小規模な商店街にも支援をというお尋ねでございます。  元来、大規模な設備投資を伴います事業につきましては、補助額による支援も多額に上ります。また、資金の管理や執行の確実性を十分に担保することが必要でございます。このために、商店街のアーケード、駐車場等の基盤整備を支援いたします商業基盤施設整備事業等の大規模な事業につきましては、助成対象を法人格のある商店街に限定しているところでございます。  しかしながら、中小小売商業対策を推進するに当たりましては、少しでも多くの意欲ある事業者の方々に制度を御利用いただけるよう配慮することが、御指摘のとおり極めて重要と考えております。かかる観点から、各都道府県にございます中小商業活性化基金によります各種工ベントに対する助成、あるいは輸入品フェアに対する助成、あるいは空き店舗対策等のモデル事業に対する助成、あるいは業務革新ネットワーク事業等々、こういった事業につきましては、法人格のない商店街等についても広く助成対象として認めているところでございます。  今後とも、法人格のない商店街も含めまして、意欲ある中小小売商業者の方々の活性化のための努力を積極的に支援してまいる所存でございます。
  217. 下村博文

    下村分科員 今部長がお答えになったことは、形としてはそうかもしれませんが、実際のところは、都道府県が責任を持つということであっても、条件的に通産省の枠の中でしないとなかなか独自の施策はできないというところの実質的な部分で、これは都道府県の方へ聞くことでございますので、その辺の柔軟性ということについては十二分に対応していただきたいというふうに思います。  それから、今は前向きな答弁がございましたが、あわせて、このことについて今後どんなふうに検討していただけるか、お聞きしたいと思います。  それというのも、一商店街の活性化ということは、ある意味では限りがございます。私の選挙区の板橋には旧中山道、中山道の中でも旧中山道がございまして、この旧中山道沿線に商店街が連なっております。九の商店街がございます。一店一店の商店街でなく、旧中山道全体を活性化させる、九つの商店街全体を活性化させるということが、ある意味では地域おこしあるいは町おこし運動にもつながるのではないかというふうに思うわけであります。  先ほど申し上げましたように、商店街は同時にその地域のコミュニティーや文化を支えている方々の集まりでもあるわけですから、商店街という枠を超えて地域全体が連動するような施策をするということが、町おこし運動と兼ねてこれから求められていくことではないかと思いますが、例えばこのような場合、今後どのようなことで活性化考えていくのが一番適切にできるかどうかについてお聞きしたいと思います。
  218. 篠原徹

    ○篠原政府委員 委員御指摘のとおり、モータリゼーションの進展等によりまして、ただいま現在では、消費者の行動が著しく広がってきております。この結果、従来は競争相手でございました近隣の商店や商店街が互いに結束いたしまして、他の地域に負けない魅力のある商店街、商業集積づくりに努めることが極めて重要となっておるというふうに私どもも認識いたしております。かかる観点から、私どもといたしましては、ソフト、ハード両面におきまして、近隣の商店街が集まって行う事業に対しまして種々の支援制度を整備いたしております。  例えばハード面におきます事業でございますけれども、例えば、近隣の複数の商店街が集まりまして商店街振興組合連合会あるいは事業協同組合を組織いたしましてアーケード、駐車場等を整備する場合には、商業基盤等施設整備補助金あるいは高度化無利子融資の支援が受けられるような体制になっております。  また、ソフト面におきましても、複数の商店街が相携わりまして事業を実施する場合、種々の支援措置が対象として整備されております。例えば、各都道府県に設置されております中小商業活性化基金によりまして、近隣商店街等々が合同でエベントを行う、あるいは合同のビジョンをつくるといったことも支援の対象にいたしております。  このほか、複数の地域の商店街が集まりまして共通の商店街カードを導入する際の実験事業を支援いたします広域カード推進モデル事業も実施しているところでございます。  さらに、平成九年度予算におきましては、空き店舗対策あるいは駐車場対策を含めまして、商店街活性化のための先進的な取り組みモデル事業を強力に支援いたすことといたしておりまして、これらの事業につきましては、いずれも地域の商工会議所あるいは商工会を活用しまして、域内の複数商店街を含みます面的、全体的な活性化事業も支援し得るというふうになっております。  今後とも、御指摘の点を踏まえまして、商店街が面的あるいは全体的に活性化し得るような施策を推進してまいりたいというふうに存じております。
  219. 下村博文

    下村分科員 これは大臣にお聞きしたいのですが、今のお話の中で、それぞれの商店街についていろいろな施策を通産省としても積極的に考えられているということはわかりましたが、ただ、この総額が百六十三億円、これは私の視点から申し上げれば、今後の日本経済構造のあり方、二十一世紀に向けて日本が活力を持ってどうこれから経済的に発展をしていくかということを考えますと、やはり商店街というのは大変に重要なキーポイントにもなるかというふうに思います。  そういう意味では、それぞれの空き店舗対策であるとかあるいは商店街の駐車場対策とか、いろいろな細かいことについては今御答弁をいただきましたが、全体的に経済政策として商店街について今後どう取り組むか、通産省はどう取り組むかということは、これからの大きな日本の流れの中での大変重要な問題になってくるかというふうに思います。  そういう意味で、特に中小小売業の対策について拡充強化する、この延長線上で予算をふやしていくということでなく、本質的に、ある意味では日本の文化とか伝統を支える、コミュニティーを支える、そういうふうな点からも新たな視点で積極的に考える必要があるのではないかというふうに思いますが、御所見を伺います。
  220. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 下村委員御指摘のとおりだと思います。  と申し上げるのは、今のお地元のお話、中山道の話が出てきました。江戸時代、大体宿場というところが街道筋に栄えてまいりました。そして、明治以降、鉄道が引かれて、駅前において商店街が発展してくる。それが、戦後、モータリゼーションの急速な発展ということで大分変わってまいりましたが、そういうふうに、その土地その土地にはほかの地域にはわからないような、商店街に対する郷愁というかいろいろな歴史、そうした背景があると思うのです。  しかし、今申したように時代が変わってまいったのですから、これから町づくり、町おこしという場合も、従来どおりの融資をしてみたり、あるいは空き店舗に対してソフト面の充実、あるいはまた駐車場、そうした面も必要ですが、私は、同時に、地域によっては新しい商店街、すなわち町ができる地域も出てくると思うのです。ですから、これは通産省だけではなく関連省庁、すなわち具体的に言うと建設省だとかそして地方自治体、こういうものとよく連携し、その地域地域の特性に合うような町づくり、商店街づくりをしていかなければいけないというのが基本的な考え方であります。  あとは細かいことと申しては恐縮ですけれども、具体的にはいろいろございましたが、先ほどの御指摘は、平成九年度で百六十三億じゃ少ないというような御指摘だと思いますが、そのとおりでございますので、私たちも頑張りますが、何とぞ御支援のほどよろしくお願いしたいと思います。
  221. 下村博文

    下村分科員 これはぜひ、大臣におかれましてはこれから自由民主党の中でもさらに発言力を増すお立場で御活躍をされる方だと思いますので、お願いを申し上げたいわけでございます。  それは、通産省という枠の中で本質的にこの問題をどの程度解決できるのかどうかということについて若干の危惧がございます。それというのも、先ほどの答弁の中で、例えば九つの商店街を連動させて、旧中山道沿いのところを活性化させるためには統一して、例えば振興組合をトータルしてつくらなくちゃいけないとか、あるいは町おこしのための第三セクター的な会社をつくらなければいけないとか、何らかの助成を受ける、援助を受ける、融資を受けるということになると、枠組みをつくるということが必要になる場合が多々ございます。それはそれで当然そういうふうなことが、お金の問題でありますから必要な部分はあるかもしれません。  ただ、商店街というのは、そもそも、それぞれの、個々のお店の店主のある意味では自由な経営によって成り立っている。それが、面的に、強制的にここを一つ会社組織としてやっていくということについては、普通の会社のような組織形態をすぐつくって何かを実現し、実行していくということについては、大変な努力が必要でありますし、また今までそのような努力をしないで済んでいたわけですから、いわゆるまとめ上げて、一つの目標に向かっていかに町おこしをしていくかということは、これは実際に地域にとっては大変な努力ですし、なかなかそれが実現できない。  それが実現できないということを役所的な視点で見ると、自助努力が足らない、あるいは地域の、それぞれのコミュニティーの、あるいは商店街同士の、あるいはそれぞれの、個々の商店街の努力が足らない、こういうことで一言で言われるような簡単なことではない。これについては大変難しい部分がある。そういう意味で、やはり行政指導といいますか、国が商店街の活性化についてはどう取り組むかということを明確に、ある意味では先導して、それぞれの都道府県や区市町村について明示をして、それに向かってやりやすいような活動をしていくというふうな一歩二歩踏み込んだ活性化対策が必要ではないかと思うわけでございます。  そういう意味で、今申し上げましたように、この中小小売商店対策として百六十三億を例えば倍にすれば解決するということでもなくて、もっと本質的な部分で、ある意味では日本の地域をどんなふうに考えていくかということについて、これは行政改革と相反する部分があるわけですけれども、逆にこの部分については通産省等が先頭に立って町おこし運動をうまく働きかけていくことが必要ではないかというふうに思いますが、重ねての御質問になりますけれども、お願いいたします。
  222. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 今下村委員のおっしゃることも実はわかりますが、その反面、役所に対する過度の期待というもの、これはいかがなものだろうか、こう思うのです。  と申し上げるのは、今おっしゃるように、商店街の振興ということは、歴史と伝統、いろいろなことでもって、一軒一軒の商店主の方が、その時に合う、その場所に合う、いろいろなことでもって実は御商売をされていると思うのです。そこに、今申したように、何といっても買い手、消費者のニーズ、こういうものが非常に多面化した、こういうところがあります。そういうときに、あくまでもやはり商売振興、その主役は商店主であり商店街の皆様方だ。  それが振興できるような一つのアイデア的なもの、これをかすのが中小企業庁、役所の立場であり、それによってこれでいこうということになれば、それに対する予算というもの、これを持ってきて支援するということでありまして、そういうことで、先ほど申したように、全国それぞれ、いろいろな背景でもって地域性がある、かように申し上げたわけでございます。
  223. 下村博文

    下村分科員 私が質問をさせていただいたのは、それというのも、大店法について今後どんなふうに通産省としても考えるかということについて連動するのではないかというふうに思うわけでございます。  それというのも、昨年の十二月十七日の閣議決定、これは経済構造の変革と創造のためのプログラムということで、大店法については、規制緩和推進計画の中で九年度中に制度の見直しを行うことが閣議決定された、既に八年度中に制度の見直しに向け準備に着手をしているということであります。この大店法というのは、最初に申し上げましたように、そもそも日米構造協議の中でアメリカ側から出されてきたことであります。  これについては、実は調べてみれば、アメリカでも、特に東海岸等では、住民が反対したりあるいは地方議会で決議すれば大店舗の出店は不可能に近い。アメリカでも特に東海岸というのは歴史と伝統があって、非常に住みやすい環境を大切にする。こういう州では、アメリカあるいは世界でも一番の小売業、ウォルマートでも、反対があって出店できない、こういうところもあるわけでございます。一方で、アメリカの中でもフロンティア的な、ある意味では新しいところ、西海岸の方は、こちらの方はもともと古い商店街というのはございませんから、これが比較的行くということで、実はアメリカでもそういう部分があるわけでございます。  一方、日本というのは、アメリカの十倍以上、ある意味では営々と続く伝統の中で、文化の中で、それぞれの地域が活性化してきたというところがあるわけでございますから、アメリカの感覚で日本のすべての地域にこれが緩和としてなった場合には、これはアメリカでも想像できないような日本の文化の崩壊が、伝統の崩壊が出てくるのではないか。  そういう意味でも、この大店法の観点、これがストップできなければ、緩和についてこれが行く方向はもう仕方がないということであれば、それにかわる、日本のある意味では伝統を守る、あるいは文化を守る、そのために商店街をどう活性化させるかという別の施策が、対症療法的なものではなくて根本療法として求められているのではないかというふうに思うわけでございますが、これについて御所見を伺います。
  224. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 今おっしゃるように、この大店法というのは、昨年三月の政府規制緩和推進計画、ここでもって平成九年度中に見直す、こうなったわけです。  御存じのように、今まで大店法という法律は三回にわたって改正をしております。実は私も就任して、この見直しというのは一体何を指すのか、それは言うまでもなく出店の規制なのか、それとも営業規制なのか。営業規制というのは、何を店屋で売るとか、あるいは営業日数、時間の問題ですね。そういうことなんです。  そこで、今御指摘のように、昨年の十二月に決めました経済構造の変革と創造のためのプログラム、あれにも実はこの辺を載っけたということなんです。今言ったようなことでもって、一体何を見直すのかということで、先ほどから申しているように、やはり地域地域の差があるだろう、こう思っているのです。  確かに御指摘のように、私自身も感ずるのは、今すべて、これだけではなく、あらゆる面でアメリカに学んでいく面が多うございますが、日本の歴史的な生い立ちからいくと、ヨーロッパの方が勉強する、まねすることが多いのではないだろうかと私は思っているのです。  そこで、おっしゃるように、大型店舗というのは、アメリカでは非常に広大な土地背景にして新しい町づくりに貢献していますが、ヨーロッパの場合、フランスなんかの場合には、地域指定というか、ここはつくってはいけないよとかそういうことになっている、そしてその進出を抑える、こんなこともあるようでございますので、その点も研究して、結論から言うと、まず消費者、それから小売業者の方あるいは学識経験者、そういう関係者の意見というものを幅広く聞いて判断していかなければいけない問題だな、こう実は思っているのです。  今言われるように、見直しというのだから、一体限りなく廃止の方に近づくかというと、そうでも今のところの空気はないようでございまして、その辺も含めて検討してみたい。  ただ、言えることは、繰り返して申し上げるように、東京、東京の中でも場所により、あるいはそれとやはり地方都市、それで地方都市においても都市と郡部、みんな格差があるだろうと思うのです。そういうことで、最近の例としては新宿、これは高橋委員のところでございますが、その新宿では大きなデパートができて、大変町が変わった。今までどうかと思っていたが、進出していったデパートもあるいはその辺の商店も同じように非常に客が多くなったということも聞くし、そういうこともきめ細かく研究していきたいと思っています。
  225. 高橋一郎

    高橋主査 これにて下村博文君の質疑は終了いたしました。  次回は、明四日午前十時から開会し、通商産業省所管について審査することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四分散会