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1997-03-04 第140回国会 衆議院 予算委員会第七分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月四日(火曜日)     午前十時開議  出席分科員   主 査 葉梨 信行君       砂田 圭佑君    関谷 勝嗣君       中野 正志君    松永  光君       小池百合子君    二階 俊博君       原口 一博君    丸谷 佳織君       藤木 洋子君    矢島 恒夫君    兼務 吉川 貴盛君 兼務 赤松 正雄君    兼務 遠藤 乙彦君 兼務 白保 台一君    兼務 達増 拓也君 兼務 富田 茂之君    兼務 金田 誠一君 兼務 北沢 清功君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 古賀  誠君         郵 政 大 臣 堀之内久男君  出席政府委員         運輸大臣官房総         務審議官    西村 泰彦君         運輸省運輸政策         局長      相原  力君         運輸省鉄道局長 梅崎  壽君         運輸省自動車交         通局長     荒谷 俊昭君         運輸省海上交通         局長      岩田 貞男君         運輸省港湾局長 木本 英明君         運輸省航空局長 黒野 匡彦君         郵政省電気通信         局長      谷  公士君         郵政省放送行政         局長      楠田 修司君 分科員外出席者         法務省人権擁護         局調査課長   竹田盛之輔君         大蔵省主計局主         計官      南木  通君         運輸大臣官房会         計課長     石川 裕己君         運輸省海上技術         安全局船員部長 土橋 正義君         郵政大臣官房主         計課長     岡田 克行君         労働省労働基準         局賃金時間部労         働時間課長   松井 一實君         労働省職業安定         局業務調整課長 浅野 賢司君         建設省都市局街         路課長     奥野 晴彦君         建設省道路局日         本道路公団・本         州四国連絡橋公         団監理官    小坂 裕男君         自治大臣官房地         域政策室長   山下 貴史君         自治省行政局選         挙部選挙課長  大竹 邦実君         参  考  人         (本州四国連絡 縣  保佑君         橋公団理事)         逓信委員会調査         室長      丸山 一敏君         予算委員会調査         室長      大坪 道信君     ————————————— 分科員の異動 三月四日  辞任         補欠選任   松永  光君     中野 正志君   小池百合子君     丸谷 佳織君   矢島 恒夫君     辻  第一君 同日  辞任         補欠選任   中野 正志君     砂田 圭佑君   丸谷 佳織君     今井  宏君   辻  第一君     藤田 スミ君 同日  辞任         補欠選任   砂田 圭佑君     松永  光君   今井  宏君     原口 一博君   藤田 スミ君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   原口 一博君     小池百合子君   矢島 恒夫君     春名 直章君 同日  辞任         補欠選任   春名 直章君     中島 武敏君 同日  辞任         補欠選任   中島 武敏君     藤木 洋子君 同日  辞任         補欠選任   藤木 洋子君     矢島 恒夫君 同日  第一分科員白保台一君、第二分科員赤松正雄  君、金田誠一君、第三分科員達増拓也君、第五  分科員北沢清功君、第六分科員吉川貴盛君、遠  藤乙彦君及び第八分科員富田茂之君が本分科兼  務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成九年度一般会計予算  平成九年度特別会計予算  平成九年度政府関係機関予算  (運輸省及び郵政省所管)      ————◇—————
  2. 松永光

    松永主査代理 これより予算委員会第七分科会を開会いたします。  主査所用のため、その指名により、私が主査の職務を行います。  平成九年度一般会計予算平成九年度特別会計予算及び平成九年度政府関係機関予算郵政省所管について、政府から説明を聴取いたします。堀之内郵政大臣
  3. 堀之内久男

    堀之内国務大臣 委員皆様には、郵政行政の適切な運営につきまして、平素から格別の御指導をいただき、心から御礼申し上げます。  当省所管会計平成九年度予算案につきまして、御説明申し上げます。  最初に、一般会計予算案でありますが、歳出予定額は八百三十七億円で、平成八年度当初予算額に対し二百六億円の増加となっております。  この予算案における重要施策について御説明申し上げます。  まず、情報通信高度化により、経済構造改革推進してまいりたいと思います。具体的には、これまでの通信放送分野研究開発成果を活用し、先端的技術を導入したマルチメディアモデル構築するマルチメディアパイロットタウン構想先進的情報通信システムモデル都市構築事業等関係省庁と連携して行うとともに、加入者系光ファイバー網整備に対する特別融資制度充実移動通信用鉄塔施設等整備する電気通信格差是正事業の一層の推進を図り、ネットワークインフラ全国的な整備を進めることとしております。  また、情報通信の積極的な活用を促進するための施策を講じることにより、国民生活質的向上地方振興推進してまいります。このため、公共分野におけるアプリケーションの先行整備を図る地域生活情報通信基盤高度化事業充実を図るとともに、高齢者障害者向け通信放送サービス充実や字幕・解説放送番組制作に対する支援を行うこととしております。そして、電波を安心して利用できる環境整備するため、電波監視体制充実強化等も図ることとしております。  さらに、情報通信技術研究開発については、一層その取り組みを強化することとしており、重点的に推進すべき研究開発プロジェクトを早急に実施するとともに、産学官の連携の強化競争的資金拡充等、総合的な研究開発体制整備推進することとしております。  国際面では、グローバルな情報通信社会構築に貢献するため、アジア太平洋地域における情報通信基盤構築のための環境整備放送番組国際共同制作国際放送等を通じて、各国との国際協力国際交流を強力に推進することとしております。  次に、郵政事業特別会計でありますが、歳入歳出予定額は、ともに七兆八千七百九十三億円で、平成八年度当初予算額に対し二千四百六十三億円の増加となっております。なお、収入印紙等印紙に係る業務外収入支出分を除きますと、歳入歳出とも予定額は四兆九千三百十一億円で、平成八年度当初予算額に対し一千二百四十七億円の増加となっております。  郵便貯金特別会計については、一般勘定歳入予定額は十五兆五十一億円で、平成八年度当初予算額に対し一兆一千九百七十八億円の増加となっており、歳出予定額は十兆一千六百十四億円で、平成八年度当初予算額に対し二千二百四億円の増加となっております。  金融自由化対策特別勘定歳入予定額は十一兆七千二百八十四億円で、平成八年度当初予算額に対し四兆九千二百七十三億円の増加となっており、歳出予定額は十一兆七千二百八十一億円で、平成八年度当初予算額に対し四兆九千三百二十三億円の増加となっております。  簡易生命保険特別会計については、歳入予定額は十九兆九千二百四十一億円で、平成八年度当初予算額に対し一千四百十五億円の増加となっており、歳出予定額は十三兆九千二百十九億円で、平成八年度当初予算額に対し四千六百十六億円の増加となっております。  郵政事業における重要施策について御説明申し上げます。  まず、郵便局ネットワークを最大限生かすため、情報通信を活用した二十一世紀郵便局づくりに向け、郵便貯金民間金融機関等のオンラインシステムの相互開放に向けた調査研究郵便貯金磁気カードICカード移行のための実証実験郵便局におけるワンストップ行政サービス実験インターネットを活用した電子郵便局開設等を実施することとしております。  また、地域と連携し介護知識、技能の普及促進等を行うケアタウン構想高齢者に優しい町づくり推進過疎地域における高齢者在宅福祉サービス支援アジア太平洋地域における郵政サービス向上などを通じて、地域社会へ貢献しグローバル化に対応する温かい事業運営推進を図ることとしております。その他、郵便サービス案内センターを設置するなど、郵便サービス改善を図ることとしております。  さらに、健全な事業経営確保と安定的なサービスの提供を図るため、事業運営効率化経営基盤強化推進してまいります。具体的には、新郵便番号制の導入による郵便事業効率化推進することとしており、郵政短時間職員についてもさらに拡大を図ることとしております。また、金融自由化対策資金新規運用額確保簡易保険資金運用手段多様化による資金運用制度改善充実を図ることとしております。なお、情報通信を活用した新たな勤務形態テレワーク試行実施等、変化に対応した新しい就業環境整備も図ることとしております。  以上をもちまして、郵政省所管会計平成九年度予算案の概略につきまして御説明を終わらせていただきます。  御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
  4. 松永光

    松永主査代理 以上をもちまして郵政省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  5. 松永光

    松永主査代理 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましては、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤松正雄君。
  6. 赤松正雄

    赤松(正)分科員 新進党の赤松正雄でございます。  きょうの質問に入ります前に、先週末の衆議院本会議におきまして、郵政大臣それから厚生大臣との間で、郵政事業の例の民営化の問題について、私ども樽床委員質問に対しての答弁があったわけですが、私、先般逓信委員会の場におきまして大臣にいろいろお考えを聞きましたので、大臣のお考えはよくわかっておるわけですけれども、実はあの場面のお二人の発言というのは、非常に看過できない重要なものをはらんでいる。  私は、先般逓信委員会で申し上げたときは、非常におもしろいというような言い方をしたのですけれども、もうおもしろいという段階を通り越している。一つの内閣の中であのように意見が食い違っているということは閣内不統一ではないかという指摘があり、私もそのように思います。私どもの党の中には、政府与党として政策を変更するのか、それともその中で意見の違うどちらかの大臣を更迭するのか、こういう意見さえ出ておりますが、これについて郵政大臣の御感想、お考えをまず冒頭聞かせていただきたいと思います。
  7. 堀之内久男

    堀之内国務大臣 先般の予算委員会における私の発言あるいはまた小泉厚生大臣発言についてお尋ねでございますが、小泉大臣の御発言というのは、大臣のかねての自分の主張を述べられたもの、私どもそういうように受け取っておるわけでございまして、また、我々閣内でこの行政改革財政構造改革について十分な議論をいたしたことはございません。したがって、閣内がどうということではなくて、これは小泉大臣のかねての主張をお聞きしたというように私は考えておるわけであります。  私といたしましては、郵政大臣という責任ある立場といたしましては、もちろん閣僚でありますから、国の財政というものがいかなる状態にあるかということ、これはもう十分承知をいたしておるわけであります。危機的な状況にあるということ、そして今後この財政構造改革内閣の大きな使命であるということも十分承知をいたしております。この点はこれから我々も閣内で十分協議しながら、さらに政府与党とも連絡を密にしてこの財政構造改革は進められるものと認識をいたしておるわけであります。  ただ、郵政事業におきましては、委員も御案内のとおりでありまして、独立採算制のもとに約二万四千六百のネットワークを十分活用しながら、市民の、国民生活に密着した郵政行政として全国津々浦々まであまねく公平なサービスを提供しておるところであります。そして国民皆様からも大変な信頼と高い評価を受けておる、こういうように私は認識をしております。  幸いに、職員の大変な努力によりまして、事業もいわゆる健全経営で、税金の一円の投資もされていない、民間でいえば優良な、立派な企業経営を行っておる、こういうように思っておりますので、現在の経営形態というものは国民の高い支持を受けておる、私はこういうように理解をいたしておるところであります。
  8. 赤松正雄

    赤松(正)分科員 小泉厚生大臣がかねてよりの持論を展開されたということを今おっしゃったわけですけれども、まあ政府の一員じゃない、自民党の一代議士として発言されたならともかく、重要な政府のポストにある方がああいう発言をされた。正直私ども、議場にいましてお二人の発言を聞いていて、歯切れのよさという点では厚生大臣の方に分があったような印象さえ受けました。ぜひとも堀之内大臣、今閣内でそういう議論をしたことはないとおっしゃっておりましたけれども、このテーマは非常に重要なテーマでございますので、閣議においてしっかりとこのことを皆さんで議論をしていただきたい、こんなふうに強く要望を申し上げる次第でございます。  では、本題に入ります。  先般逓信委員会で御質問を申し上げた点に続きまして、きょうは情報通信基盤整備という問題について若干の質問をいたしたいと思います。  先ほど大臣の方から今予算、九年度予算における情報通信基盤整備の問題についても触れておられましたけれども、まず私は冒頭、現在加入者系光ファイバー網整備状況というのは人口カバー率にして一三%程度というふうに聞いております。当初、郵政当局としては二〇〇〇年に二〇%、二〇〇五年で六〇%、そして二〇一〇年には一〇〇%という目標であったというふうに聞いておりますけれども郵政大臣は今日までのいろいろな場において、光ファイバー網の完成の目標を五年ほど前倒ししたいということを関係業界に申し渡された、こんなふうなことを聞いております。そのあたりの背景といいますか、経緯についてお伺いしたいと思います。
  9. 堀之内久男

    堀之内国務大臣 ただいま委員から御指摘ありました光ファイバー網整備についてでありますが、何といっても二十一世紀高度情報通信社会を支えていくためには、やはり光ファイバー網整備急務である、こういうように私は理解しておるところであります。  ただいま先生指摘のように、ちょうど現在一二・九、約一三%の光ファイバー網整備が進んでおります。御指摘のように二〇〇〇年には二〇%、そして二〇〇五年には六〇%、二〇一〇年には一〇〇%というような計画を立てて進めておるところでありますが、幸いに今年度まででも約一年間ぐらい前倒しできるような順調な整備に入っておるわけであります。  そこで、こうした二十一世紀高度情報通信社会考えますときに、何といってもこの光ファイバー網整備急務だ、こういうことから関係業界の方々にも、ぜひとも前倒しできる限り、できれば五年間ぐらい前倒しできるような形で整備を進めてくださいということを要請をいたしたことも事実であります。  私どもといたしましても、低利融資なりあるいは開銀等融資等も積極的に進めて資金の面の御支援を申し上げ、あるいはまた税制面での御支援も申し上げながら、なるべく業界の負担の軽減を図りながらお願いを進めておるところであります。
  10. 赤松正雄

    赤松(正)分科員 今の大臣お話では、できれば五年ぐらい前倒しできないかという、そういうふうな何となく希望的観測を述べられたようなニュアンスとお聞きしました。二〇〇五年というと、九七年ですから十年足らずの間に現状の一三%から一〇〇%に持っていくということは、なかなか大変なことだろうと私は思います。  そういった目標を完遂するため、どのような具体的措置というものを郵政省として施そうとしておられるのか、もう少し具体的な面をお聞かせ願いたいと思います。
  11. 谷公士

    ○谷(公)政府委員 ただいま大臣からも簡単にお触れいただきましたけれども低利融資でございますとか税制上の支援措置というものを講じておりまして、私どももできる限りこういった措置支援をしていきたいというふうに考えております。  具体的にどのような形のものを展開していくかということにつきましては、九年度につきましては今御審議いただいている予算の中にのっているわけでございますけれども、それ以降につきましては、まだ具体的な計画を立てるに至っておりません。
  12. 赤松正雄

    赤松(正)分科員 例えば、先ほど大臣お話にも融資云々とありましたけれども特別融資利子助成、いただいた資料を見ますと、光ファイバー網利子助成平成七年度実績というのが私の手元にあるのですけれども、これを見ますと、第一種電気通信事業者でこの融資の枠を利用された業者が九業者、それからCATVケーブルテレビ関係業者が二業者ということで、金額にして二百九十九億七千四百万という助成対象の額が上がっているわけです。私なんかの考えからいくと、非常に利用者が少ないのかな、政府の意気込みに対しては、これに対して融資助成を受けるという業者が少ないのかなというそういう印象を受けますけれども、このあたりどうでしょう。
  13. 谷公士

    ○谷(公)政府委員 こういった加入者網敷設いたしますのは第一種電気通信事業者、その中でも、御案内のように地域加入者ネットワークにつきましては、ほとんどの部分をNTT敷設しておるわけでございまして、そういう意味で、この事業に当たる事業者の数というものは限られるわけでございます。  今、七年度実績として約三百億弱ということでございましたけれども、今御審議をお願いしております九年度予算につきましては五百十一億円を計上いたしておるところでございます。
  14. 赤松正雄

    赤松(正)分科員 アメリカNII構想、欧州のTEN構想、あるいはまたシンガポールのIT二〇〇〇構想、またマレーシアスーパー・コリドー構想ですか、私も昨年シンガポールマレーシアへ行ってこういった各国情報通信整備状況を見てまいりましたけれども、欧米のいわゆる先進国、またマレーシアシンガポールを初めとするアジア情報通信における先進国といいますか、そういった国々が非常に大きな意欲と力を持ってこの情報通信整備に取り組んでいる、そういう事態を前にして、ぜひ日本情報通信基盤整備ももっと力を入れていっていただきたい、私はそんなふうな思いがします。  そういう中で、今NTTが中心であるので業者が少ないというお話ありましたけれども、いろいろなCATV関係業者で、熱心にこういった光ファイバーあるいはケーブルテレビ普及といったことに真剣に取り組んでいる業者がおります。CATVに関して言いますと、現在日本の場合は、加入者数というのは二百二十一万ほどというふうに聞いております。アメリカが六千百二万。アメリカと比べて、一人当たり人口の差でいくと十三倍ぐらいの差が開いている。CATVも、地域における情報通信基盤整備という観点から見れば非常に重要な役割を果たすものだと私は考えますけれどもCATVの育成、発展、そういう観点における郵政省の基本的な姿勢というものについて聞かせていただきたいと思います。
  15. 楠田修司

    楠田政府委員 先生指摘のように、ケーブルテレビ地域に密着したメディアでございまして、多チャンネル伝送が可能、それから双方向機能を有するということで、地域情報化で非常に必要不可欠な存在と考えております。  近年、このケーブルテレビによる光ファイバー網化ということが進展しております。これによりまして、多チャンネル伝送双方向機能が一層充実してきたということで、ケーブルテレビ電話あるいはインターネット接続などのサービス、いわゆるフルサービスというものが可能になってまいります。こういう意味ケーブルテレビ高度化多様化が図られてきているというふうに思っております。  ちなみに、八年の上期で、もう既に大規模ケーブルテレビが三百四十一万加入になってきておりまして、年々七十万から八十万の増加がここのところ見られているわけであります。また一方で、CSデジタルという衛星放送が出てきたわけですが、そういうものをまたケーブルテレビが再送信するということで、放送面におきましても番組多様化が図られるということで、より一層ケーブルテレビの魅力が出てきているというわけであります。  そういう中で、郵政省としまして、ケーブルテレビというものを地域社会の重要な通信インフラストラクチャーということで発展させていきたいというふうに考えております。現在では、ほとんどの県庁所在地で大規模ケーブルテレビが予定されており、あるいは既にサービスされているという状況になっております。また、将来でありますが、多分二〇一〇年ぐらいになりますと、このケーブルテレビがほぼすべてデジタル化されるということになりますと、チャンネルもより一層ふえ、また世帯普及率もそのころになりますと六〇%ぐらいになるのではないかということで、その将来性に大きく期待しているところでございます。
  16. 赤松正雄

    赤松(正)分科員 CATVの前途に大いに期待を寄せているという話ですけれども、そのCATVケーブル線敷設、あるいは光ファイバー敷設に当たっても同じことが言えると思いますけれども、第一種通信業者としての大手電力産業が、先ほどお話がありましたように全国主要都市、あらゆるところに電柱とかあるいはまた電線、そういった既存施設を持っているわけで、そうした電力業者電力産業といいますか、そういったところが既にそういう施設を持っている。そこで、各地域ごとCATV業者が新たにそこにケーブルテレビ仕事を進めるというふうな形で、いわば電力業者のところに後から割って入るというか、そういう形でケーブルテレビが進出する、発展をしていくということが当然起こってくるわけです。そういった際に既存電柱電線CATV業者が借りざるを得ない、借りて仕事をしていくというケースが多いと思いますけれども、そういったときに、電力業者の方がCATV業者に対してそういったものを貸さない、電柱電線といった既存施設を貸さないというようなケースが一部地域においてあるやに聞いておりますけれども、そういったことがあるかどうか、その事実認識についてお聞かせ願いたいと思います。
  17. 楠田修司

    楠田政府委員 ケーブルテレビ敷設する場合、どうしてもそのケーブル既存電力会社あるいは通信会社電柱を借りなければならないのが現状でございます。そういう中で、一部の電力会社におきまして、自社の通信用光ファイバーを引いておるわけであります。ケーブル事業者にこの光ファイバー利用してもらいたいという意向から、ケーブル事業者に対しましてその利用の働きかけを行っていたという事実はございます。  そういう中でこの電柱の共架の問題が出たのであろうかと思いますが、我々といたしましては、一部のこういう電力会社に対しまして、ケーブルテレビ事業者が自前で線を引きたいということに対しましてやはり共架に協力するように要請をしたところでありまして、その結果、現在では電力会社もその要請に沿った対応を行うこととなっております。  先生の御指摘のような事実があったというふうに承知はしております。
  18. 赤松正雄

    赤松(正)分科員 私が指摘した事実があって、そしてそれに対していわば指導されて、それが改善されたということなんですか。私の出身地域においていろいろなことを調査した結果、今申し上げたように、非常に難しい事態で困っているというケースがありました。  やはり、すべて自由な競争のもとでこのケーブルテレビ事業発展、あるいはまた光ファイバー網整備促進というものも進めなくちゃいけない。先ほど冒頭に指摘しましたような大きな企業が独占的にそういった仕事を支配して、後から参入するCATV事業者が自由な競争になかなか参画できないということであってはならない、いびつな争いを起こしてはならない、そんなふうに思っておるわけでございますけれども、今申されたようなことであるならば私は了とするわけですけれども、もう一遍そのことについて確認をしておきたいと思います。
  19. 楠田修司

    楠田政府委員 先生指摘のようなことで、一部の電力会社において、ケーブルテレビ事業者電柱の共架に協力しないということはあってはならないことでありますので、我々としましては、このケーブルの共架に協力するようにということを要請したわけであります。その結果、現在では電力会社もこの要請に沿った対応を行うことになっておるということでございます。
  20. 赤松正雄

    赤松(正)分科員 わかりました。  次に、問題を変えまして、明石大橋、淡路島と本土を結ぶ明石大橋につきまして、ここ数年架橋工事が進められている中で、電波障害が起こったために非常に地元住民が困っているという事態があります。この予算委員会分科会、昨年度もそういう指摘があったようでありますし、まだそういう指摘を含めて、建設省、本四公団等でいろいろな対応を検討されたようであります。昨年秋までは、原因も特定できないということで、かなり、対応に苦慮をされておったということを聞いておりますけれども、改めまして、そういった今日までの経緯とそれから現状について説明をしていただきたい、そんなふうに思います。
  21. 縣保佑

    ○縣参考人 先生方におかれましては、明石海峡大橋初め当公団の事業につきまして御支援いただきまして、大変ありがとうございます。  早速でございますが、御指摘の明石海峡大橋の建設に伴うテレビ電波障害の関係でございますが、当公団といたしましては、地域皆様に大変御迷惑をおかけしているところでございますが、このことを十分認識しておりまして、機能の原状回復を図ることを基本といたしまして、適切な対応をとることとしております。  このテレビ電波障害につきましては、二種類ございまして、一つは、つり橋の主塔によります電波の遮へい、反射によって発生するものでございます。もう一つは、つり橋の橋げたをつるすハンガーロープがございますが、これが二次アンテナの役割を果たしまして、電波を再放射することによって発生すると思われるものでございまして、いずれも現象といたしましては、いわゆるゴースト画像が発生するものでございます。  このうち、主塔による電波障害につきましては、当公団においてもあらかじめ事前の予測をしておりまして、主塔建設による障害が生じないよう有線テレビ方式により対策を既に講じたところでございます。  一方、ハンガーロープによります電波障害についてですが、この現象が神戸市垂水区、西区を初め明石市、加古川市など五市二町にわたる広範囲に点在しております。こういう現象につきましては、これまで私ども経験したことがございませんでした。したがいまして、事前に予測することもできませんでした。  ということもありまして、昨年の一月から、地元の近畿電気通信監理局やNHK、さらには民放五局、それから地元の兵庫県とともに、明石海峡大橋テレビ電波障害改善対策連絡会を設置いたしまして、いろいろな御指導をいただきました。さらには、各方面の学識経験者などの御意見をいただいて、考えられる対策につきまして種々検討を加えてまいりました。  この結果、昨年末、十二月でございますが、爵公団としては一つの結論を下しました。これは、明石市中心部より西側の地域におきましては周辺電波の増強で対応します。それから、東側の地域では受信局の変更、またはSHF局の新設を対策案としたところでございます。  これに基づきまして、できるだけ多くの方にお知らせすることが大事でございますので、受信者に広報で御連絡を申し上げて、二月の上旬より障害の確認調査を始めたところでございます。  以上でございます。
  22. 赤松正雄

    赤松(正)分科員 今言われたような経緯を経て、今アンケート調査をされているということをお聞きいたしましたけれども、現在のそのアンケートの反応といいますか、返ってきている状況、それから、最終的にその被害を受けている被害者総数、そういったものをどれぐらいと見ておられるのか、その点について。
  23. 縣保佑

    ○縣参考人 まず、被害のエリアでございますが、先ほど申し上げましたように、神戸市から姫路市に至るまで広範囲にわたっておりまして、私ども、これまでの測定調査では相当広いわけでございますが、ポイント調査をしておりまして、その調査の約三割弱ぐらいが北淡垂水局からのもので、何か受信の障害を受けている、こういうような調査がありまして、北淡垂水局の受信のエリアが十八万世帯と言われておりますので、その三割と申しますと、およそ五万戸ぐらいに影響が出ているのではないかと推定しております。  それで、アンケートでございますが、関係者にいろいろな方がいらっしゃると思いますので、約十五万通ほどいろいろなもので、広報やそれから各戸配布で対応しておりまして、現在対応がありましたのは約八千名の方でございます。
  24. 赤松正雄

    赤松(正)分科員 今アンケート対応八千、そして最終的に五万戸ぐらいに影響があるというふうに見ておられるということですが、現時点では、応急措置的に金網が取りつけられていて、電波障害によるテレビが見られないというのはそんなに大きな声になっていないようですけれども、いつまでも金網を取りつけているわけにはいかない。最終的に、先ほどおっしゃったようなSHF方式を中心とする対応でいこうというふうな考えで公団はおられるようですけれども、一部には有線の方式、いわゆるケーブルテレビ方式がいいのじゃないかと指摘をする向きもあったりします。  SHF方式を公団として申請をするということがあった場合、郵政省としてはこれをどういうふうにとらえておられるか、郵政省考え方を聞かせてください。
  25. 楠田修司

    楠田政府委員 今回の障害が予想しないほど相当広範囲にわたって発生しているということを勘案いたしますと、SHF方式による対策は一つの有効な方法であろうというふうに思っております。  本方式の場合は、保守に手数がかからず、経済的でありますけれども、新たなパラボラアンテナが要るということであります。ケーブルテレビの場合ですと、アンテナ等不要でありますが、どちらかといえば加入費等の負担が大きい、こういうことでありますから、最終的には公団の方で、原因者負担の原則で選択されると思います。  それでSHFがもし選択されるならば、我々としましては、それに沿いまして適切に対応したいというふうに思っております。  いずれにいたしましても、地域住民の理解と協力を得てどちらにするか決めていただきたいというふうに考えております。
  26. 赤松正雄

    赤松(正)分科員 郵政省の対応はわかりました。  ただ、公団の方に、縣さんに最後にお聞きしたいのですが、仮にSHF方式で対応する、その結果やはりうまくいかなかった、こういうふうになったらどうされますか。
  27. 縣保佑

    ○縣参考人 先ほど申し上げました対応策が現時点では私ども最善の策だと思っておりますので、これを着実に実行させていただきたいと思っております。  その先のことにつきましては、受信者に支障を生じさせないということを基本といたしまして、適切に対応してまいりたいと思っております。
  28. 赤松正雄

    赤松(正)分科員 夢のかけ橋が実現する一方で、各家庭においてテレビが満足に見られないというような状況があってはならない、こんなふうに思いますので、今申されたような対応をしっかりとお願いをして、私の質問を終わります。
  29. 松永光

    松永主査代理 これにて赤松正雄君の質疑は終了いたしました。  次に、丸谷佳織君。
  30. 丸谷佳織

    丸谷分科員 新進党の丸谷佳織と申します。  きょうが初めての質問でして、大変緊張しておりますし、何かと不手際な点があるかと思いますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。  さて、二十一世紀を目前にしまして、情報社会も大きく今変化のときを迎えていると思います。日本でも、CATV普及ですとか、昨年の六月に開始されました衛星デジタル多チャンネル放送により、新たな情報時代が到来します。  今後、チャンネル数がどの程度までふえていく予定なのか、見通しをまずお聞かせください。
  31. 楠田修司

    楠田政府委員 CSデジタルチャンネル放送は、昨年の十月に始まりまして、六十数チャンネルサービスされております。なお、この間あと三十数チャンネル新たな認定をいたしましたので、間もなく百チャンネルになろうと思います。  そのほか、JスカイBという計画とディレクTVという計画もございます。これはまだ計画段階でありますが、それが入ってまいりますと、二つ合わせますと三百数十チャンネルになろうかと思います。  なお、そのほか、地上波にいたしましても、あるいはBS放送にいたしましても、これがデジタル化ということになりますと、来世紀にはそれぞれかなりの、例えば地上波ですと今の三倍ぐらいのチャンネル数がとれるようになりますし、BSにおきましても、現在四チャンネルでありますけれども、これがデジタル化ということ、この間検討会の報告が出ましたので、もう少しチャンネル数が倍あるいは三倍ぐらいふえるような形になろうかと思っております。
  32. 丸谷佳織

    丸谷分科員 では、三百を超えるチャンネル数という認識でよろしいでしょうか、今のところは。
  33. 楠田修司

    楠田政府委員 近い将来に三百チャンネルの衛星デジタル放送が出てくるというふうに想定しております。
  34. 丸谷佳織

    丸谷分科員 三百を超えるチャンネルから発信される情報量といいますと、本当に想像を超えるものがあるのですけれども、本来マスメディアが果たす役割に、まず正しい情報の提供、そして娯楽の提供、また教育機能などあります。このことは、公共の奉仕という意味で大変重要なことだと思いますが、視聴者が多大な情報から情報を選択する幅が広がり、また同時に視野も広がっていく、その分だけ可能性も広がっていくという利点もあると思います。  先ほどの赤松代議士の質問に対する楠田放送行政局長答弁の中で、CATVの将来性に大変期待を寄せているというお言葉もあったのですけれども、多チャンネル化が社会にもたらす意義、そして並行して考えられます問題点についてどのようにお考えになっているか、お聞かせください。
  35. 楠田修司

    楠田政府委員 多チャンネル化が進みますとどういうメリットがあるかということを申し上げますと、多様な分野、内容の番組による視聴者の多様なニーズの充足ができる。それから、放送の送り手の多様化が進みます。現在では、限られたチャンネルですから、放送できる人というのは非常に少ないわけであります。これからは、多チャンネルになりますと、放送したいといういろいろな分野の方の放送が可能になってまいります。それから、視聴者といいますか、国民の行動選択に対するいろいろな情報の提供ができる。私はこういう分野が好きだ、私はこういう分野が好きだというのは、これから好きな放送が見られるという選択機能が出てまいります。  一方、マイナス面といいますか、問題点と申しますと、非常に多いものでありますから、場合によっては質の低い番組増加するというおそれがございます。あるいは、番組の編集責任に対する認識というものが薄くなるのではないかということがございます。それから、非常にたくさんの放送とか番組が出てまいりますと、視聴者の情報選択能力によるところが多い。十分な選択ができる人とできない人という、情報格差といいますか、そういう問題が出てくるというふうに認識しておるところでございます。
  36. 丸谷佳織

    丸谷分科員 今のお答えの中で、放送の質の低下あるいは責任制度などというふうにおっしゃいましたけれども、最近、放送だけではなく、新聞や雑誌もそうなのですが、情報がふえてくる、また競争がふえることによる報道による人権侵害のおそれについては、どのようにお考えになっていますでしょうか、増加すると思われますでしょうか。
  37. 楠田修司

    楠田政府委員 放送の多チャンネルが進展いたしますと、放送の機会がふえるわけであります。したがいまして、いろいろな送り手が出てまいりますと、場合によっては、信憑性の低い情報を送ったりすることによりまして、人権侵害等の問題が増加するおそれというものはやはりあるものと認識はいたしております。
  38. 丸谷佳織

    丸谷分科員 実際、報道による人権侵害で裁判になっている事件は、出版関係も含めますと、平成元年から五年の間に発表された件数だけで五十三件あるのですね。圧倒的にこれは新聞や雑誌というものが多いのですけれども、一方、放送による人権侵害ということになりますと、その放送一網、全国にネットされるという影響力の大きさから考えまして、早急に解決していかなければならない問題の一つだと認識しております。  そこで、放送法で定めています番組審議機関についてお尋ねしたいと思います。  まず、番組審議機関の活動内容、そして構成メンバーとその任期について教えてください。
  39. 楠田修司

    楠田政府委員 番組審議機関と申しますのは、各放送事業者が放送番組の適正化を図るために設置しているものでございまして、法律上は学識経験者をもって充てております。大体年平均十回程度開いております。委員の出席率は七二%ぐらいというふうに我々今、在京のキー局の場合、承知しているわけであります。  任務でございますが、これは法律によりまして、放送事業者の諮問に応じて答申をすること、それから放送事業者に放送番組審議機関としての意見を述べること、こういうふうになっております。しかしながら、残念ながら、この諮問件数、意見件数ともゼロということであります。  これはどういうことかと申しますと、諮問というのは放送会社がしなければならない。これはどういうことを諮問するかといいますと、番組の編集の基本計画あるいは番組基準というものでありますが、番組基準というのは、例えば放送事業者が放送局を開設したときつくりますが、後に全然これを変えないと、諮問しないということになるわけですね。こういうような欠陥がございます。それから、番組の編集基本計画もそう何度も変えるものではない、こういう問題がございます。  それから、意見を述べることというのも、個人個人は意見を述べるのですが、法律上は、この番組審議機関として御意見を申し上げるという形にならないと、それは正式の意見とならないわけでありますから、したがいまして、番組審議機関の中ではいろいろな意見は言うのですけれども、本当の外へ発表する意見というのがないという問題が現在ございます。  そういう中でこの番組審議機関をどのように活性化するかということは、一つの大きな課題というふうには認識しております。
  40. 丸谷佳織

    丸谷分科員 今欠陥を御指摘されたのですけれども、では、この番組審議機関は、実際に広く市民の声が届くシステムではない機関なのでしょうか。また、例えば番組の中で人権が侵害されるようなことがあった場合、その具体的な対処まで話し合う機関なのかどうか、教えてください。
  41. 楠田修司

    楠田政府委員 番組審議機関は、まさに番組審議委員そのものが視聴者の代表という形になっております。だからといって、すべて市民の意見が吸収されるかどうかま別だと思いますけれども、とにかく審議委員というのは視聴者の代表というふうに考えてもいいかと思います。  それで、一方、人権侵害のような問題をこういう番組審議機関で話すのかということになりますと、これはそうではない。要するに、番組について意見を申すのでありまして、番組の問題が人権侵害のような問題に当たれば、そのことについては審議はすることはあると私は思います。ただ、そういう人権侵害に当たる問題を限ってここで問題とするという機関ではございません。広く番組全般を審議する場、こういうふうに御理解いただければと思います。
  42. 丸谷佳織

    丸谷分科員 ではもう一度確認させていただきたいのですが、その放送された番組の内容が、ある特定の人あるいは団体の人権を侵害したような場合、それだけではないにしても、その件について、問題点について話し合う機関であり、具体的な対処まで話し合う機関ではないというふうな認識でよろしいでしょうか。
  43. 楠田修司

    楠田政府委員 お答えになるかどうかわかりませんが、現在、例えば放送法によりますと、こういう人権侵害とかいろいろな問題というのは、放送されたものによる侵害というふうに考えるわけであります。そうしますと、放送されますと、例えばそれが事実に合っていないということがあります、そういう場合は訂正放送制度というのがありまして、それによって放送会社の方へ、これは事実が違っている、その事実の違いによって私は権利を侵害されたという要求をいたしますと、放送事業者が調査いたしまして、それを訂正するか訂正しないかを決めるわけであります。こういう制度がございます。  ただ、この問題そのものは、現在、番組審議会の中でそれを取り上げるとか取り上げないとか、そういうことは決まっておりません。人権侵害の問題は、別途こういう訂正放送をやりましても民事上の措置を妨げないとなっておりますから、本当に人権侵害になりますと、現在では裁判所へ訴える、こういう系統になっております。
  44. 丸谷佳織

    丸谷分科員 では、今おっしゃいました訂正放送についてお伺いしたいと思います。  この訂正放送制度というのは、報道による人権侵害の対処の一つだと思うのですけれども、実際にその実施状況と具体的な事例として一つ挙げていただきたいと思います。
  45. 楠田修司

    楠田政府委員 先ほど申し上げましたように、訂正放送制度は、真実でない事項の放送をしたという理由によって、その放送により権利の侵害を受けた本人またはその直接関係人が、放送のあった日から三カ月以内に訂正放送の請求を当該放送を行った放送事業者に対して行うことができるという制度でございます。放送事業者は、その請求を受けたときは、遅滞なく調査を行いまして、当該放送が真実でないことが判明した場合は、判明した日から二日以内に同等の放送設備により訂正放送をしなければならないというふうになっております。  この訂正放送の実施状況でありますが、数字を申し上げますと、平成元年度から平成九年の一月末までで二十六件の報告を受けているところでございます。平成元年、二年ぐらいは二件とかゼロ件でありましたが、最近の平成八年は実施件数が八件、請求件数が十一件ということで少しふえてきておるということであります。ふえた理由といたしましては、法律改正によりましてこの請求の期間を延ばす、あるいは番組の保留期間といいますか、そういうものを延ばすということも影響があろうかと思います。  何か具体的な例はないかということでありますが、一つ例を申し上げますと、ある放送事業者が、平成八年の五月十日放送の「ニュース・ディス・イブニング」というのがあったのですが、そこでアメリカのサンディエゴの父親と娘の射殺事件というのがありまして、妻のSさんについて後妻と受けとめられるようなコメントをした。その奥様から、これは違いますというふうな要求がありまして、これは直ちに同じ番組で訂正放送をした。これは非常に簡単な例でありますけれども、事実が違っていたということであります。
  46. 丸谷佳織

    丸谷分科員 今のお答えの中で、ここ数年訂正放送の回数もふえているというお話もあったのですけれども、実際に報道による人権侵害、特にテレビの場合は、新聞、雑誌に比べますと事例自体は少ないかもしれないのですが、新聞、雑誌が意識をして読者が読むという視点に比べまして、テレビの場合は一日じゅうつけっ放しにして何気ないうちに情報が入ってくるという人も少なくないと思います。また、多チャンネル化によりまして、視聴率争いの激化、番組はよりセンセーショナルな内容を扱い、またメディアは広告優先主義に走るというおそれもあると思います。  先ほど、民事の方で名誉毀損で裁判を求めるというお答えもありましたけれども、今の法制度の中では実際に裁判自体長い年月がかかりますし、かなりの費用もかかります。また、判決がおりましても、平成元年から五年の間の損害賠償請求事件で払われた慰謝料の平均が約七十五万三千円弱と非常に低額と言わざるを得ない状況になっております。  その中で、現在の番組審議機関あるいは訂正放送制度では、人権が侵害されましても、救済方法にある程度の限界があるように思えてならないのですけれども、今後増加するおそれのある報道による人権侵害の救済策を、放送事業者による自己点検あるいは訂正放送だけで十分とお考えでしょうか、教えてください。
  47. 楠田修司

    楠田政府委員 放送による権利侵害といいますか、人権侵害の問題につきましては、ここ数年非常に関心も高まりまして、国会でも何回か御論議いただいたところでございます。  そういう中で、昨年の十二月に私ども、多チャンネル時代における視聴者と放送に関する懇談会というのがありまして、その中で一つの問題として取り上げていただきました。  そこでありましたのは、いろいろな放送に対して、まず第一義的には人権侵害も含めて放送会社へ、訂正放送も含めて苦情が参るわけであります。しかじ、そこでもなかなからちが明かない、放送事業者も本当に客観的にやってくれるかどうかわからないという不満がございます。そういう不満がありますと、どうしても我慢ができないと民事に行くということですが、これは先生指摘のようになかなかうまくいかない。そうしますと、この間に何か第三者的な意見を聞くようなものが必要なのではないかという御議論がございまして、放送事業者から独立した第三者の意見を聞く、苦情処理、人権侵害も含まれております、そういう苦情処理を行うような機関の必要性というのが提言されております。それは裁判のように裁定力というものは持たないけれども、例えばそこでいただいた意見を放送会社は尊重しなければならないというふうにするというようなことが一つの可能性として出てまいります。ちょうど中間的な存在ということであります。
  48. 丸谷佳織

    丸谷分科員 昨年の九月に発足しました多チャンネル時代における視聴者と放送に関する懇談会、私はこの懇談会にはとても敬意を表しておりますけれども、新聞の記事を読みますと、メディア側の方は第三者機関の設置には反対されている事業者の方が多いと思うのですけれども、人権というとてもとうとい権利を守るためには、やはり未然に人権侵害を防ぐとともに、被害を受けた人を救済するシステムがどうしてもこれから必要になってくると思います。  また、メディアが競争が激しくなるにつれまして視聴率万能主義に傾いていく、その中で自己点検と自己革新をもし徹底して行えないならば、第三者的な機関が必要になってくると思いますが、表現の自由というものも守られなければいけないとうとい権利ですので、このバランスをとりながら、ぜひ今後も人権というとうとい権利を守るために最大限の努力をしていただきたいと思います。  さて、多チャンネル化によりまして、当然コマーシャル、広告の増加というのも考えられるのですが、報道内容だけではなく、メディア自体の広告もセンセーショナリズムの度を増していくというおそれもあるかと思います。現在でもより印象的で刺激的な見出しが、時には広告自体が記事との整合性もないままに電車の中づり広告など、影響力は増幅されているのですが、去る一月二十七日、平田米男議員が予算委員会の中で、昨年の十二月に中づり広告にも名誉毀損の判決が出ました北海道苫小牧市の白山氏の件について取り上げられたことは、人権擁護局はどのように把握されていらっしゃるでしょうか。
  49. 竹田盛之輔

    ○竹田説明員 お答えします。  ただいまの事案につきましては、人権擁護局として正式には承知しておりません。
  50. 丸谷佳織

    丸谷分科員 これは、判決が出たのが昨年の十二月なんです。今までは記事に対する判決で名誉毀損という件はありましたけれども、中づり広告、これは週刊新潮社の中づり広告だったんですが、まず見出しがありきでその後に記事をつけてしまった、そういう悪質な中づりの記事で、著しく白山さんの人権を侵害したという判決がおりまして、こちらは判決百十万円の賠償額が支払われたという一件なんです。これは、テレビだけではなく、中づり広告などコマーシャルの激化による人権侵害の大切な一例だと思いますので、ぜひ御認識いただきたいと思います。  これは交通事故の一件だったんですが、悪質な報道または広告によりまして、交通事故の被害者から一瞬にして殺人犯呼ばわりされて、本当にこれは大変な人権侵害だったんです。人権擁護局としまして、大変な人権侵害だったということも認識していただきたいと思いますが、今後のことをお聞きします。  番組や記事だけではなく、広告などでも人権侵害、報道被害と呼べる事態の発生が予想されるのですが、これは実際に発生していくおそれがあるというふうには認識されているでしょうかどうか、教えてください。
  51. 竹田盛之輔

    ○竹田説明員 報道の内容のほかに、そうした広告あるいは中づり広告等の見出しと申しましょうか内容等によっても、一定の連想等を含めて人権の侵害という事実が発生する可能性はあると思います。
  52. 丸谷佳織

    丸谷分科員 発生されると予想されるであろう人権侵害、報道被害だけではなく、コマーシャル、広告などでの人権侵害に対応して未然に防ぐとともに、救済が必要だと思うのですが、今後どのようにしてこの問題に取り組んでいくおつもりか、お伺いします。
  53. 竹田盛之輔

    ○竹田説明員 お答え申し上げます。  報道の自由というのは、これは憲法の保障する表現の自由の一つでございまして、極めて重要な基本的人権でございますので、公共の福祉に反しない限り最大限尊重されなければならないということでございます。したがいまして、私たちの人権擁護機関といたしましては、報道機関の報道等につきましては、人権侵害にかかわる問題につきましても、公権力による介入であるという批判を受けることのないよう慎重に対応しているところでございます。  そういうところから、まず報道の主体であるところのマスコミの自主規制等によりまして、自主的な取り組みによりまして解決されることが一番望ましいとは思っております。しかしながら、マスコミ等の行き過ぎた報道、今先生指摘の広告、コマーシャルも含めましたこうしたものによりまして個人の名誉あるいはプライバシー等が侵害された場合におきましては、私たち法務省の人権擁護機関といたしましても、これに対応して適切な処理をしておるところでございます。  具体的には、これらの報道機関等に対して、名誉、プライバシー等、個人の人権の尊重ということを十分に理解させ、人権尊重の意識を啓発することによりまして、自発的、自主的に人権侵害の事態を停止させ、あるいは被害の回復を図らせて、また将来再びそのような侵害の事態が発生することのないよう注意を喚起する等、所要の措置を講じているところでありますが、これら報道に伴う人権侵害の事案につきましては、今後も国民の人権を擁護するという立場から積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
  54. 丸谷佳織

    丸谷分科員 今後迎えます多チャンネル化、三百を超えるチャンネル数になるということに加えまして、雑誌記事等の広告もふえてくると思いますし、競争が本当に激しくなる中で、コマーシャル、広告の競争も激しくなってくると思いますので、どうか本当にとうとい権利であります人権について深く考えて、努力をしていただきたいと思います。  ところで、最後にお伺いしますが、財政法二十八条にのっとりまして、次の項目に関する資料を要求いたします。平成九年度郵政省予算電気通信格差是正事業等に必要な経費百億円の詳しい内容を提出していただきたいと思います。主査、お取り計らいのほどよろしくお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  55. 松永光

    松永主査代理 今の丸谷委員からの要求に対して郵政省側、どうですか。
  56. 堀之内久男

    堀之内国務大臣 適切に対応してまいりたいと存じます。
  57. 丸谷佳織

    丸谷分科員 大臣、よろしくお願いいたします。
  58. 楠田修司

    楠田政府委員 大臣の方から申し上げていただいて、私ちょっと失礼いたしました。  適切に対処してまいります。
  59. 丸谷佳織

    丸谷分科員 どうもありがとうございました。
  60. 松永光

    松永主査代理 これにて丸谷佳織君の質疑は終了いたしました。  次に、富田茂之君。
  61. 富田茂之

    富田分科員 新進党の富田茂之でございます。  ただいま丸谷委員の方から放送法に関しまして、訂正放送制度、また番組審議会のあり方、第三者機関等について、御自分のこれまでの経験を踏まえて適切な質問がされておりましたが、私も、放送法改正問題ということで、訂正放送制度、番組審議会のあり方、また第三者機関のあり方ということについて、ちょっと観点を変えて御質問させていただきたいと思います。  二月二十七日の新聞でしたか、放送局の番組審議機関の論議公開を促進するための新規定などを盛り込んだ放送法改正案を提案する方針を郵政省が固めたという報道がございました。この報道のとおり、郵政省の方では放送法改正について何か提案する予定があるのでしょうか。
  62. 楠田修司

    楠田政府委員 先ほどの丸谷先生の御質問にもお答えいたしましたが、放送番組審議機関の機能が十分果たされていない、これを活性化する必要があるということは懇談会の中でも提起されましたし、あるいは前の逓信委員会等でも、国会の附帯決議等でもこれをよく検討するようにという宿題もいただいておるところでございます。  そういう中で何が問題かということを考えますと、放送番組審議会の活動状況が外からなかなか見えないという点が一つございます。それから、中の審議する内容というものが先ほど申し上げましたように固定化されていて、なかなか活性化しないということがございます。  そういう意味で、この活動を活性化するために、審議機関の公開という面が一つの観点、それから、審議事項というものを活性化のために追加するという二点を考えて現在法律改正を含めて検討しているところでございます。
  63. 富田茂之

    富田分科員 平成七年に放送法の一部が改正されました。訂正放送制度についての改正が重要な点だったんですが、その際、逓信委員会でいろいろ審議がされて、訂正放送制度についてなぜ番組審議会を利用しないんだというような質問が各委員からなされておりました。それに対して、当時の放送行政局長の方でこのような答弁をされております。  放送番組審議会の活用を法案の中に入れようとしたけれども入れられなくなったのは事実だが、法案に入れられなかった理由について三点を挙げられております。放送事業者が任命権を持つ放送番組審議会が、番組の公正さを判断するに当たってその公正さを十分確保できるのかという問題が第一点、そして第二点として、事案が真実であるかを見定める専門家でない委員によって真実性の判断ができるのかという問題、第三点として、審議機関の意見に拘束力を持たせることの是非、また持たせる場合の放送番組編集の自由との関係はどうなるのかといった最低三つのことが挙げられる。こういうことについていろいろな意見があるので、今後各方面の意見を聞いて検討をしていきたいというふうに当時の放送行政局長答弁されておりました。  先ほど言われた多チャンネル懇等でこの点についていろいろな意見が出たと思うのですが、今の三つの問題点をどのようにクリアされて、先ほど局長答弁されたように、公開性とか審議事項の追加という点について検討されているのか、差し支えない範囲で教えていただければと思います。
  64. 楠田修司

    楠田政府委員 先生指摘の三点は、現在でも同じ問題を抱えておると思います。例えば、審議機関の意見というものに拘束力を持たせないとなると、では効果があるのか、それから持たせたら言論の自由との関係でどう整理をするのか、これはなかなか難しい問題でございます。  それで、問題をそういう面から見るのではなくて、むしろ現在番組審議会がそういう意味で余り十分な議論をしていないという点に一つはあるだろう。それから、外から見えないと、何をやっているかわからない、外から見えますと、やはり中でも活性化した議論をするだろう、こういう点に視点を当てまして、懇談会でもこの点から改善したらどうだろうかということで、番組審議会のディスクロージャーと、それから議論の活性化のための議題というものをもっとふやしたらどうか、こういうふうになったところでございます。
  65. 富田茂之

    富田分科員 ちょっと議論が戻って恐縮なんですが、平成七年のときの訂正放送制度の改正、これが今回の議論の前提にあると思いますので、その当時改正に至った背景と改正の趣旨を簡単にちょっと教えていただけますか。
  66. 楠田修司

    楠田政府委員 平成七年の法改正でございますが、訂正放送の規定というものは、制定されたのが昭和二十五年のものであります。それに比べまして、当時、平成平成七年は取り巻く環境が非常に変わりました。  例えば、昭和二十五年といいますと、放送といいますとNHKのラジオのみ二チャンネルです。そのころの訂正放送制度でございます。法改正当時では、もうNHK、民放含めまして約二百五十チャンネルと、これは非常に放送のチャンネル数がふえたということ。同時に、放送に対する国民の権利意識の高まりといいますか、こういうものが出てきておりまして、昭和六十年に六件ぐらいでありました権利侵害訴訟、メディアに対する権利侵害訴訟というものが五十七件にふえている。非常にこういう意識の高まりがあります。  それから、番組の保存技術が違います。昔ですと、原稿で残さなければならなかった。これをテープで全部残せるということでありまして、そういう中で、請求期間を延ばす、それから番組の保存期間を延ばす、こういうことによりまして、できる限り訂正放送制度を利用しやすくといいますか、使いやすくすることが結果的には被害者救済の改善を図ることになるだろうということが当時の法律改正の背景でございます。
  67. 富田茂之

    富田分科員 当時、最初は二週間でしたか、改正前は。それだと、例えば無実の罪で逮捕されて留置されている間、留置期間が終わって戻ってくるともう訂正放送の請求ができない。そういうような背景があって期間を延ばすんだ、まずそこからやるんだということで改正がなされたようですけれども、当時もまだこの訂正放送制度については、対象が余りにも限定されていて、プライバシーの侵害とか不公正報道などについて訂正放送の要求ができないというような批判がかなりいろいろな方面からあったと思うのです。そういう当時の批判を踏まえて、今回放送法をもし改正されるというのなら、訂正放送制度についてもある程度批判を踏まえた何か改正についての前向きな検討というのはされていないのでしょうか。
  68. 楠田修司

    楠田政府委員 訂正放送制度といいますと、これは真実でない事項の放送によることを要件としておりまして、プライバシー侵害となりますと、真実の放送をして。プライバシー侵害になることがあるわけであります。そうしますと、真実がかえってプライバシーを侵害するとなりますと、これは放送法の趣旨とは合わない。放送法では、真実の放送をしなければならないとしてあるわけですね。だから、ここはちょっと視点が違うものでありますから、プライバシーの問題は別の法律といいますか分野で解決されるべきものであろうか、こういうふうに議論があったわけであります。
  69. 富田茂之

    富田分科員 プライバシーの点は確かに局長おっしゃるとおりだと思うのですけれども、まだ事実でないことを報道されたというかなりの限定がされていますので、それ以外にちょっと広げる必要があるのじゃないか。  また、先ほど丸谷委員からも指摘がありましたけれども、訂正放送制度は、番組審議会、そして被害者救済のための第三者機関、こういうものをもう少し一体として考えないと、それぞれ別の制度だというふうに考えていると、多チャンネル懇の報告書にもありましたけれども、被害者救済の制度は、苦情処理への対応機関を各マスコミがどういうふうにするか、それをちょっと見てから考えようみたいなそういう意見まで出てきてしまいますので、もう少しこの訂正放送制度についても検討する余地があるのではないかというふうに私は思います。  例えば、最近問題になっております、日本テレビが、警察庁長官狙撃事件の犯人じゃないかといろいろな報道機関に指摘されているような元巡査長の告白ビデオを二日間にわたって放映しました。このビデオ放映に関して、元巡査長はこういう時期に放送をしてほしくなかったというような主張をされているようでありますし、警視庁の方は捜査妨害だということで抗議を申し入れた。また、このビデオの中で共犯者というふうに名指しされた人物が写真入りで出たようなんですが、この方もテレビ局の方にどういう経過でそうなったんだというような抗議をされたようです。  こういう元巡査長や共犯者と名指しされた人物というのは、今の訂正放送制度を前提とすると、訂正放送の請求ができるんでしょうか。その点はどのように考えていらっしゃいますか。
  70. 楠田修司

    楠田政府委員 郵政省としましては、このビデオの内容が真実であるかどうかというのは判断できないわけであります。  一般論で申し上げますが、もし、元巡査長やビデオで共犯者と名指しされた人あるいはその直接関係者が、真実でない事項が放送されたという理由であれば、そしてまたその放送により我々は権利の侵害を受けたということであれば、放送のあった日から三カ月以内に日本テレビに対して訂正または取り消しの放送の請求はできるというふうに考えますが、事実関係についてはちょっと我々は承知できないということでございます。
  71. 富田茂之

    富田分科員 システムとしてはそうなると思うのですけれども、事実がどうだったかはまた別の問題になると思いますが、仮にこの元巡査長や共犯者と名指しされた方が訂正放送の請求をした場合に、今の日本テレビ側の対応ですと、私たちは知る権利にこたえるために放映したんだというふうに言っているわけですから、事実でないことを放映したとしても、とても訂正放送をしないと思うのですね。これは、やはり当事者に訂正放送をするかどうかの判断権が持たされているというところに最大の問題があると思うのですね。先ほど、最初に局長が言われたように、番組審議会の審議事項の追加の中にこういうこともきちんと含めて、当事者の意見だけじゃなくて、もう少し第三者の意見もきちんと聞いていくような制度に本当に改めていっていただきたいなというふうに感じます。  もう一つ例を挙げさせていただくと、先ほど丸谷委員の方からも、名誉毀損で損害賠償が認められる判決が出たという事実の指摘がございましたけれども、例えば、これを一般論こ引き直して、国会の委員会がテレビ中継されて、その委員質問の中で特定人に係る真実でない事項をその委員指摘して、それがそのまま放送された場合、それで指摘された特定人というのは訂正放送の請求が今の制度ではできますか。
  72. 松永光

    松永主査代理 楠田放送行政局長。前段の部分についても答えてください、前段と後段とあったから。
  73. 楠田修司

    楠田政府委員 一般論として申し上げますと、放送事業者が真実でない事項を放送したことによりまして権利の侵害を受けた場合は、その原因となった放送が、たとえ国会の委員会のテレビ中継をしたことでありましても、権利侵害を受けた者からの真実でない事項に係る訂正放送の請求は可能であるというふうに考えております。
  74. 松永光

    松永主査代理 いや、それから前の方のことは。要するに、被害を受けた側が訂正放送の申し入れをした場合において、放送側が、いや我々の方は事実と思っているのだ、こう言った場合には訂正放送はなされないのです。だから、真実であるかどうかの立証はだれがするんだということなんです。これは重大な問題なんです。
  75. 楠田修司

    楠田政府委員 訂正放送を請求しますと、それが事実であるかどうかを判断するのは、おっしゃるとおり放送事業者でございます。そういう中で、放送事業者としては、これは事実である、事実でないということは、みずから請求者に対して言うわけであります。そこで対立が出る場合がございます。これに対しましては、今のところ、そういう場合で対立しますと、これは司法にゆだねざるを得ないということも事実でございます。  そういう中で、先ほど御指摘がありましたように、そういうような問題を一つの苦情ととらえまして、第三者的な苦情処理機関に審議させて勧告を受けるとか見解を出させる、そういうシステムができないかということが一つの大きな課題でございまして、これを現在民放とかNHK等がみずからやろうと。ただ、みずからやろうといいましても、みずからやるのでは信用できないから、できる限り自分たちから離して、独立の、例えば第三者的な人を選んで、その中でやろうという動きがあることは事実でございます。
  76. 富田茂之

    富田分科員 委員長の適切な御指摘、ありがとうございました。感謝いたします。  訂正放送制度についてもう一点お尋ねしますが、この制度の存在自体が余り知られてないのではないかという問題点、これが七年の改正のときにも大分委員会の審議指摘されておりまして、私も弁護士出身ですが、この勉強をするまではちょっとこういうものがあるというのは存じ上げませんでした。弁護士が知らないくらいですから普通の人はまず知らないのではないかなと思うのですが、郵政省の方にお聞きしましたらこういうリーフレットをいただいたのですが、こういうリーフレットを六十万部つくって郵便局とか郵政省関係機関に置かせていただいている。また、ポスターも一万部ぐらい、こういう訂正放送制度がありますよということでやられているということですけれども予算をお聞きしましたら八百万円ちょっとということで、こういうのを継続的にやるのが大事だと思うのですが、余りにも国民全体に周知するというには不足しているのではないか。こういうところには本当に適切に予算をつけるべきだと思うのですね、わけのわからないところに予算をつけないで。この周知徹底方について今後郵政省の方でどのようなことを考えているか、お聞かせ願えればと思います。     〔松永主査代理退席、小池主査代理着席〕
  77. 楠田修司

    楠田政府委員 先生指摘のとおり、これまでは郵政省予算におきまして、郵便局あるいは地方の電気通信監理局、都道府県、市町村等にリーフレット等を配ってまいりました。それから、政府広報のテレビ番組によりまして広報を実施した例もございまして、テレビ東京等二十二局のネットで、「もっと知りたいニッポン」という番組で報道したこともございます。  しかしながら、こういうことだけで訂正放送制度というものの周知が十分図られているかといえば、なかなか難しいことでございまして、今後とも努力したいと思いますし、それから、何といいましても放送事業者がみずから訂正放送制度を持っておるわけでありますから、放送事業者がみずからこれを宣伝するというのが一番いいわけでありますが、ここがなかなか彼らとしてもやっていないという面がありますので、これを何とか督励してまいりたいというふうなことを今考えておるところでございます。
  78. 富田茂之

    富田分科員 先ほど来お話が出ております多チャンネル懇におきまして、放送に対する苦情対応機関について本当にさまざまな意見があったようであります。いろいろな経過を踏まえて、今回の改正ではいわゆる第三者機関というものの設置は見送りになるようだと各マスコミが報道しております。この点について、もう一歩突っ込んで、今後どういうふうに検討していくのか、何か指針がありましたら教えていただきたいと思います。
  79. 楠田修司

    楠田政府委員 第三者機関という考え方の中では、例えば、国が国の予算でもって第三者機関をつくってそこで判定するというのが一つございました。それから、全然こういうのは必要ないという意見もありましたし、放送事業者がみずから自主的に第三者的な人を選んで第三者的なものをつくるというものがございます。それから、そういうものを法律に位置づけたらどうかという意見もございました。  こういう中で、先生の御指摘のいわゆる第三者機関というのは、恐らく国がやるような機関であろうと思います。この点につきましては、日本では放送は、一応番組編集の自由というのは非常に大きく書かれておりまして、そういう中で国がそういうことをやるのがいいのかどうかということにつきましては、懇談会の中でも相当議論がありまして、どちらかというと余り賛成がなかった点でございます。そういう中で、しかしこれは必要であるという議論がありまして、自主的にかつ独立してやる、それを法律にするかしないかということはまた分かれるところでありますが、国が国の予算で、国の権力でやるというのは、できないわけではないのですけれども、今のところそういうのは少数意見だったということであります。
  80. 富田茂之

    富田分科員 今の局長答弁のように、多チャンネル懇の中で、国が国の予算でやるというのはなかなか賛同を得られなかったということでありますが、その背景として、このいわゆる第三者機関の設置が問題になりますと、すぐ行政の介入だとか報道の自由の危機だとか、そういう点ばかりがマスコミの皆さんによって強調されてきた嫌いがあるのではないかなというふうに思います。そのために、先ほど丸谷委員が人権侵害の点から随分質問されておりましたけれども、人権侵害とか被害者救済という観点がどこか後退してしまっているのではないかなという感じがしております。  この多チャンネル懇の報告書が出たときに、日弁連の現在の鬼追会長が会長声明を出しておりまして、こういうふうに言っております。  言論・表現の自由は民主主義の根幹である。他方、報道被害者の救済も極めて重大な課題である。放送事業者が自主的に共同して設置するものなら、放送の自由と被報道者の人権擁護との調和をはかるものとして評価できる。設置することを一律に新たな規制として反対するのは、放送による人権侵害に配慮を欠くといわざるを得ない こういう声明を出しております。この点にも留意する必要があると思いますし、また、多チャンネル懇の座長代理を務めておられた塩野宏、元東京大学の先生ですが、行政法の権威ですけれども、この先生が日経新聞の取材に応じられたのだと思うのですが、「番組で被害を受けたと思う人には裁判の前の駆け込み寺的存在があっていい」、こういうふうに言われております。この指摘は非常に重要だと思うのですね。  先ほど丸谷委員の方からも、裁判はお金もかかるし年数もかかって大変だというような指摘がありましたけれども、それだけではないのですね。裁判に訴えられる人ままだいい。今は、マスコミ各社を相手に仮に裁判するとしたら、マスコミの方は大弁護団を組んできます。被害を受けたという人は、本当に、一人の弁護士を頼めるかどうかという、その中で闘っていくという、全く矛盾したことをやらなければならない。そういうことを考えると、塩野先生指摘しているように、駆け込み寺的存在を国が考えてもいいのではないか、こういう指摘は本当に大事だと思います。  別に郵政省の応援団をするつもりはありませんけれども大臣、こういう指摘を本当にきちんと聞いていただいて、また、塩野先生はこういうことも言っているのですね。「先進各国の放送制度に比べ、日本はかなり特色がある。視聴者の苦情処理・救済制度などを比較すると、日本は不十分。放送界が自主的に努力するのは当然だが、第三者の声は聞くべきだし、情報を開示すべき時期に来ている。」、多チャンネル懇の報告がなされた後の記者の質問に対してこういうコメントをされております。こういう意見にもきちんと耳を傾けて、すぐ行政介入だとか報道規制というふうに流れないように、被害者救済の観点から、やはりそこは郵政省も頑張って、踏ん張っていただいて、もう一歩踏み込んでいただきたいなというふうに思っております。  実は、私が今回の質問をしようと思ったきっかけは、ことしの一月にこういう「メディア・リテラシー」という本が出ました。同志社大学の渡辺武達先生が書かれているのですが、多チャンネル懇の報告書を見ておりましても、このメディアリテラシーという言葉が出てまいりました。先ほど別の委員質問に対して、局長の方で情報をきちんと分析する能力とかそういうのが必要なんだというふうに言われておりましたけれども、このメディアリテラシーというのは、情報を正しく読み解くための知恵というのが言意らしいのです。  この渡辺先生も、こういう第三者機関がどうあるべきかということをこの本の中できちんと提言されておりまして、これまで言われていたのと違う観点からの提言がありましたので、ちょっと紹介をさせていただきたいのですが、渡辺先生は、この本の六十七ページで、  市民によるメディア・アクセスは、視聴者・専門家を中心とし、メディアと政府関係者および専門技術者等をオブザーバーとする「日本マスメディア委員会」を設立し、そこにおいてマスメディアの統一倫理綱領を制定、現在のNHKは「日本公共放送網」とし、委員会の付属施設として、市民がいつでも後から番組を検証できる「日本映像資料館」の設立をする、ということである。  今、国立国会図書館、あそこに行けばいろいろな資料がありますけれども、映像に関しても国立国会図書館のようにきちんとした保存機関をつくって、報道による被害を受けたという人がそこに行けばいつでも自分のことを放映したりされたことを検証できるというような機関をきちんと財政的な裏づけをつけて設置してみたらどうだろう、そこのメンバーなんかは国会の同意を得てきちんとした委員を選んでいく、そういう考え方はどうだということを提言されております。  マスメディアの方にとってそれほど行政からの介入だと受け取られない中立的な立場、本当に純行政、純司法的な立場からこういうことを検討していくべき時期に来ていると思うのですが、そういういろいろな提言、先ほどの日弁連会長声明とか塩野先生のコメントとか今の渡辺先生のこういう提言等を踏まえて、今後の被害者救済の観点からいわゆる第三者機関がどうあるべきかということについて、最後に大臣の御意見をお聞かせ願えればと思います。
  81. 堀之内久男

    堀之内国務大臣 先ほどから先生の貴重な御意見を拝聴いたしておりました。  それで、局長の方から、これまでいろいろと私ども審議会あるいは懇談会等で御議論があったことについて報告やお答えをしてまいったようでありますが、今後、こうした放送の多チャンネル化時代に入りまして、いろいろ問題が起こってくるだろうと存じます。  また、これまでも放送事業者に対するいろいろな苦情もあったことも事実でありますが、昨年、放送事業者としても、今までのいろいろな事件というものを反省して放送倫理綱領というものを、NHKそしてまた民放の関係者の皆さんがお集まりになりましてこの綱領をつくられたわけであります。  そして、それぞれ各社でこの綱領に従って放送の取材あるいは放送のあり方、そういうものについて、恐らくこれを基盤にされてつくられたと思っておりますが、何といっても放送事業者というものがそういう意味でまず第一義的には自覚をしていただこう、そして、大きな社会的な責任、公共性というものを持つわけでありますから、こういう面で、こうした倫理綱領に従った形でまず十分な対応をしていただくことが一番大事だ、こういうように思います。  なおまた、放送というものが、憲法に定められた表現の自由、こういうものとの兼ね合いというのがありますので、放送法においては番組の編集というものの自由が保障されておるわけでありますが、それだからといって、先ほどから御指摘あります人権侵害、こういう問題も見逃すことのできない重大な問題であります。  先ほど、昨年の懇談会で答申がありました第三者機関の苦情処理の機関、これもいろいろ御意見があったようでありますが、大部分は、やはり放送事業者と離れた第三者機関としてまず一つの苦情処理機関を設けるべきだという意見の方が大多数であって、放送事業者は非常にこれには反対をしておるようでありますが、我々としては、今先生の御指摘のような、最終的には裁判となりますが、それ以前の問題として、お互いにこうした放送の自由を守ると同時にまた人権も守っていくこともこれは大事でありますので、そういう面でこういう機関の設置についても今後私どもは十分研究をしていかなければならぬ、こういうように考えておるところであります。  いずれにいたしましても、これから大変な時代になりますので、私どもは、放送がそうした多チャンネル化になりますと放送事業者も非常に数がふえてまいりますから、今後、放送番組の内容あるいは質においても十分検討を進めていく段階だろう、こう思っております。
  82. 富田茂之

    富田分科員 ありがとうございました。  ますますきちんとした検討をして、郵政省ももう少し積極的に動いていただきたいというふうに思っております。  最後になりますが、財政法二十八条にのっとり、次の項目に関する資料を要求いたしたいと思います。  平成九年度予算に基づく郵政省資金運用事業を把握するために、簡易保険福祉事業団、指定単の運用実態の資料を提出していただきたいと思います。  この指定単は、年金福祉事業団の貸借対照表で投資預金に含まれ、これまで運用実態が明確に示されておりません。これでは郵貯にお金を預けた人々に対してアカウンタビリティーを尽くしているとはとても思えません。私も郵貯の預金者でありますので、ぜひとも平成元年にさかのぼって提出してもらいたいと思います。  委員長、お取り計らいをよろしくお願い申し上げます。
  83. 小池百合子

    ○小池主査代理 ただいまの資料要求につきまして、政府の方、いかがでございましょうか。
  84. 堀之内久男

    堀之内国務大臣 適切に対応してまいりたいと存じます。
  85. 富田茂之

    富田分科員 ありがとうございます。終わります。
  86. 小池百合子

    ○小池主査代理 これにて富田茂之さんの質疑は終了いたしました。  次に、達増拓也さん。
  87. 達増拓也

    達増分科員 新進党の達増拓也でございます。  私は、インターネットに関する質問をさせていただきたいと思います。  平成八年度版通信白書は、インターネットの爆発的膨張等により、世界情報通信革命が始まりつつあると指摘しております。また、情報通信高度化により、物理的国土を超えて情報空間をも取り込んだ新しい国土の概念が生まれつつあるとも述べております。  インターネットは大きな可能性を有していると考えますが、政府はここ数年の我が国におけるインターネット利用の急速な普及をどう認識しているか、大臣に伺いたいと思います。  またあわせて、大臣御自身、インターネット利用されているかどうかも伺いたいと思います。
  88. 堀之内久男

    堀之内国務大臣 ただいま御指摘のとおり、我が国におきましてもインターネットが爆発的に普及しておるわけでありまして、今年一月末におきましては、対前年比二・七倍、ホストコンピューター七十三万台、これを利用される人約七百万人、こういうように、これは推計でありますが、いたしておるわけであります。  今後、インターネットマルチメディアに対応した新しい情報ネットワークとしてさらに普及してくることはもう間違いないと思っておりますし、恐らく企業活動あるいはまたあらゆる立場で、政治、行政の立場でも大いに利用されるもの、かように考えております。  私どもはこのような普及を心から期待をいたすわけでありますが、私に利用しておるかということですが、私も大臣に就任するまでほとんどこういう知識はありませんでしたが、今盛んにいろいろと若い人たちに教えていただきまして勉強をいたしておるところであります。
  89. 達増拓也

    達増分科員 ありがとうございました。  大臣指摘のとおり、政治、行政の分野におきましても、インターネットの活用、急速に普及しておりますし、またこれからもどんどん拡大していくと思います。  私も、議員会館の事務所についこの前ISDN回線を引きまして、インターネット利用しやすいように体制を整えて、インターネットですとかあるいはパソコン通信などを通じまして、情報の収集あるいは政治、行政に関心のあるいわゆるネチズン、ネットワークシチズンの略でありますけれども、パソコン通信インターネットを愛好する人たちとの意見交換等もやっております。ちなみに、きょうの質問を準備するに当たりましても、そういったネチズンの方々と意見交換をしながら、インターネットやパソコン通信利用していろいろ意見交換をして、質問の準備をさせていただいたという経緯もございます。  そこで、政治の分野におけるインターネットの活用ということでは、まさにネチズンの間では非常に有名な話なんですが、自治省は、平成八年十月二十八日付の新党さきがけ政調会長あての回答という形で、インターネットのホームページあるいはウエブサイトの開設につきまして、文書図画の頒布に当たるとの解釈を示しております。  同回答文書の該当箇所を引用いたしますと、まず、「パソコンのディスプレーに表示された文字等は、公職選挙法の「文書図画」に当たります。」また、「文書図画を置き、自由に持ち帰らせることを期待するような相手方の行為を伴う方法による場合も「頒布」に当たると解しております。」「不特定又は多数の方の利用を期待してインターネットのホームページを開設することは「頒布」にあたると解しております。」  しかしながら、ホームページというものの性格を考えた場合、これは文書図画を置いて自由に持ち帰らせることを期待するものというよりは、ホームページというくらいですから、自宅に置いてありますノートやアルバムといったものを、自宅に来てもらってそれを閲覧してもらうという性質のものではないかと考えるわけですが、この点、政府の見解を伺いたいと思います。
  90. 大竹邦実

    ○大竹説明員 お答え申し上げます。  公職選挙法におきましては、人の視覚に訴えかけるものにつきましては、これは文書または図画ととらえているわけでございまして、御指摘インターネットによりましてディスプレーに表示される画面につきましても、これは公職選挙法上文書図画に当たると解釈しているところでございます。  それから次に、公職選挙法上、頒布という概念があるわけでございますけれども、この頒布につきましては、不特定または多数人に文書図画を配布することを言うわけでございまして、従来より、ただいま委員指摘ございましたように、文書図画を置きまして自由に持ち帰ることを期待するような相手方の行為を伴う形態、こういったものにつきましても頒布に当たると解釈しているところでございます。  したがいまして、ただいま御指摘ございましたインターネットのホームページの開設につきましても、不特定または多数人の利用を期待して置くわけでございまして、そういったものにおきましては、公職選挙法上はこの頒布の概念に当たるものと解しているところでございます。
  91. 達増拓也

    達増分科員 もう少しホームページというものの性格について明らかにするため質問させていただきたいと思うのですけれども、ホームページというのは、いわゆるインタラクティブ、双方通行可能ということでございますが、インタラクティブなものもありまして、読んだ側がメッセージをそのホームページに書き込んだりできるものもございます。こうしたホームページのインタラクティブ性に加えまして、リンクという技術によりまして、ホームページは無限に開かれた情報交換の場となり得るわけであります。  そういう意味で、ホームページというのは、一方的な情報発信、例えばビラを配るとかいったそういう一方的な情報発信の媒体ではなく、むしろコミュニケーションの場というように理解するのが適当と考えるのですけれども、この点どうでしょうか。
  92. 谷公士

    ○谷(公)政府委員 先生指摘のとおりでございまして、ホームページは情報発信の媒体としてだけではありませんで、情報にアクセスしましたユーザーからの意見等も受け付けるという場合もございまして、インタラクティブ性を有しましたコミュニケーションの場としても機能しているものと認識いたしております。
  93. 達増拓也

    達増分科員 このようなホームページのインタラクティブ性、そしてリンクを使った発展性にかんがみると、再び公職選挙法の解釈の問題に戻るのですけれども、ホームページの開設というのは、選挙事務所等にビラを持っていってもらうために置いていくようなこととは質的に違って、頒布には当たらないのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  94. 大竹邦実

    ○大竹説明員 ホームページに双方向性があることから、頒布に当たらないのではないかという御指摘でございますけれども、文書図画の頒布におけるいろいろな態様におきましては、返事を期待して文書図画を配布するような場合でございますとか、あるいは請求に応じて文書図画を配布する場合などもあるわけでございまして、これもすべて頒布に当たると解釈しているところでございます。  したがいまして、双方向性があることによって頒布に当たらないということはできないものと考えているところでございます。
  95. 達増拓也

    達増分科員 もう少しホームページというものの性質について明らかにするための質問を続けさせていただきたいのですけれども、最近はバーチャルモール、仮想商店街などと訳されておりますけれども、こういうようにインターネットの上に仮想の店舗を出しまして、そこで消費者と販売者との取引の場を設ける例があると聞いております。その場合も、ホームページというのはそういう人と人との出会いの場、そこで取引が行われたり物の売買が行われたりする、そういう場となるわけでありますけれども、ホームページの利用法といたしまして、こういうサービスがあることを政府としてどう認識されているでしょうか。
  96. 谷公士

    ○谷(公)政府委員 御指摘のとおりでございまして、最近、インターネット上に仮想店舗を構築して各種の取引を行いますとか、そういう動きが出てまいりました。いわゆるサイバービジネスでございますけれども、こういったサィバービジネスに取り組む企業が増加いたしてきております。こういう取り組みでございますけれども、消費者と生産者との直接のコミュニケーションの実現等によりまして、これまでの社会経済構造の改革に大きく寄与することになるものと考えております。  他方、こういったサィバービジネスにおきましては、ネットワークを通じて取引を行いますので、取引関係通信が確実かつ効率的に伝達されるということと、通信相手の確認、通信内容の盗聴、改ざんが防止されなければならないといった幾つかの重要な課題がございます。そういう点を解決していかなければならないということで私ども取り組んでいるところでございます。
  97. 達増拓也

    達増分科員 そのように、インターネットのホームページというものは単に情報を一方的に伝えるだけではございませんで、そこで情報の交換、意見交換、さらには商取引、契約といったことも行われるわけでありまして、再びまた公職選挙法の解釈の問題に戻らせていただくのですけれども、文書図画の頒布、あるいはまた掲示ということもあるのですけれども、そのようなものとしてホームページを規制してしまうことによりまして、そういういわば情報の提供、表現といったことのみならず、コミュニケーションそのものでありますとか、政治的にもそういうさまざまな可能性を持った場を規制してしまうことになるのではないかということを私は懸念しているのでありますが、この点いかがでしょうか。
  98. 大竹邦実

    ○大竹説明員 ホームページの利用につきまして、さまざまな形態があり得るということは私ども承知しております。  もとより公職選挙法におきましては、ホームページの利用のすべてを規制の対象としているわけではないわけでございまして、あくまでホームページを開設いたしまして、選挙運動用の文書図画をディスプレーに表示すること、これにつきまして、これを選挙運動のために使用する文書図画の頒布という概念でとらえまして、それのみを規制の対象としているわけでございます。  もちろん、ホームページの利用でございますので、さまざまな利用形態があるわけでございますけれども、公職選挙法では、あくまで選挙運動期間におきますところの選挙運動用文書図画の規制、その面からの規制にとどまっているという状況でございます。  したがいまして、それ以外のさまざまな利用形態があるわけでございますけれども、選挙運動用文書図画の表示にならない限りにおきましては、何ら公職選挙法が関与するものではないというところでございます。
  99. 達増拓也

    達増分科員 政治の分野におけるインターネット利用、ホームページを中心とした利用について、特に選挙との関係で、全く新しい技術を利用した活動といいますか運動でありますから、今後も、政府との議論、あるいは国会の中でもこれは議論をしていって、必要であれば立法措置であるとかそういうものも視野に入れまして、この非常に可能性を有する技術が日本の政治を大きく豊かにしていくようにやっていかなければならないと考えております。  今後、ますます拡大していくことが予想されるインターネットでありますけれども、我が国の通信料金が国際水準よりかなり高いということが、日本国民インターネット利用する、これはサィバースペースに出入りするなどという表現もあるのですけれども、そうしたことにかなり大きい障壁となっているわけであります。  きのうきょう、放送業界におけるオーストラリアの実業家のマードック氏が、せっかく取得したテレビ朝日株を売却したというニュースが報じられております。これは放送の話なのですが、日本国内の体制の古さというものが日本を舞台にした放送業の発展あるいは国際競争を阻害しているところがあるのではないかということが、そのニュースから読み取れると思います。通信の分野でも、やはり同様の問題があると思います。  米国では、既に一日じゅうインターネットに接続しつ放しにできる程度に通信料金が低下しておりまして、クリントン大統領も、先ごろ、国民がもう子供の段階で全員インターネットにアクセスできるようにやっていくということを宣言しております。我が国が本当に世界情報通信革命というものを達成していくためには、通信料金の問題が非常に大きいと思うのですけれども、この点、政府の見通しを伺いたいと思います。
  100. 谷公士

    ○谷(公)政府委員 だれもがインターネット利用しやすくなるためには、料金の低廉化というのは大変重要なことだというふうに認識しております。現在、インターネット市場には数多くの電気通信事業者が参入しておられますので、今後、競争を通じて料金の低廉化が進むものということは期待しております。  それからNTTは、昨年十二月二十五日からオープンコンピューター通信サービス、OCNと言っておりますが、この提供を開始したところでございますけれども、その専用接続タイプの料金は、米国のインターネット利用料と比較いたしましても、遜色のないような水準となっております。  それからまた、一般家庭からインターネットに接続いたします場合には、電話網を介しましたいわゆるダイヤルアップ接続が通常であるわけでございますけれども、この場合には、インターネット利用料のほかに電話料金等の支払いが必要となります。  NTTの電話それからISDNサービスにつきましては、競争の進展に応じまして低廉化が進みますことと、それからインターネット利用しやすい料金メニューといたしまして、ユーザーがあらかじめ指定しました特定番号への通信料金が、深夜、早朝の時間帯に限りましては定額となる月決めの通信料金割引サービスというようなものも導入されてきております。  こういったようなことがいろいろ相まってまいりますことと、それから、全般的には事業者間の公正有効競争を推進するとともに、ネットワークのコスト構造の変化でございますとか全体的な一層の競争の進展に応じまして、料金といたしましても、定額制の料金といったものが普及拡大してくるのではないかという期待をいたしております。これらのことが相まちまして、全体的な料金の低廉化が進むものと期待をしておるところでございます。
  101. 達増拓也

    達増分科員 冒頭引用いたしました通信白書でも、情報通信が経済の構造改革あるいは日本社会の変革をリードしていくであろうという見通しが述べられておりまして、また、政治のあり方についても、やはり情報通信がその変革をリードしていく、そういう大きな可能性があると考えます。それもひとえに通信料金がどれだけ下がるかにかかっているというふうに考えます。  インターネット、パソコン通信等を利用するネチズンの人たちの声を聞いておりましても、やはり一番の悩みが通信料金でありまして、いかに料金を節約するかということに皆さん腐心して、そのための特別なアプリケーションソフトウエアを使ったりですとか、涙ぐましい努力もなされております。  そういった努力をしながら、現在の日本の政治、行政等に関する議論が盛んに行われておりますし、また、日本を草の根の力でよくしていこうということで、例えばボランティア活動においても、阪神・淡路大震災でインターネットやパソコン通信が大活躍いたしました。  今大きな問題になっております日本海原油流出事故の油処理に関しましても、たくさんのすぐれたホームページがつくられておりまして、ボランティアの方々の活動を円滑に進めるよう協力体制をつくっていくように、インターネット、パソコン通信が大きく活躍をしております。  政府におきましても、そうしたインターネットさらにパソコン通信等、情報通信が持っている可能性を認識されて、その発展のため、一層尽力されていただきたいと思います。  さて、最後に伺います。  財政法二十八条このっとり、次の項目に関する資料を要求いたします。  郵便貯金資金運用事業については、年度末の数値を除き、運用資金の詳しい内容を開示していないので、全く実態が明らかになっていない。郵貯の資金運用実態の資料を提示していただきたいと思います。こうしたことが、郵便貯金にお金を預けた人々に対するアカウンタビリティーになるのではないかと思いますので、ぜひ提出してもらいたいと思います。  本件お取り計らいのほどよろしくお願い申し上げ、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  102. 小池百合子

    ○小池主査代理 それでは、ただいまの資料要求につきまして、郵政大臣
  103. 堀之内久男

    堀之内国務大臣 適切に対応してまいりたいと思います。
  104. 達増拓也

    達増分科員 よろしくお願いいたします。
  105. 小池百合子

    ○小池主査代理 これにて達増桁也さんの質疑は終了いたしました。  以上をもちまして郵政省所管についての質疑は終了いたしました。  午後一時三十分から当分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十八分休憩      ————◇—————     午後一時三十分開議
  106. 葉梨信行

    ○葉梨主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  運輸省所管について昨日に引き続き質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中野志君
  107. 中野正志

    中野(正)分科員 自由民主党の中野正志でございます。  運輸大臣に四、五点お伺いをさせていただきたいと思います。  まず第一は、国鉄民営化、JRとしてスタートし、十年を迎えることになるわけでありますけれども、この十年の総括をいかにお考えになられておるかということであります。  実は私、現の三塚大蔵大臣の秘書OBでございまして、当時、日本国有鉄道改革、そばにいながらいろいろ勉強もさせていただきました。国会議員が志を持って改革に邁進をすると、こんなにも違うのかということをまざまざと見せつけれられた思いがいたします。国権の最高機関、立法府にあります国会議員、まさに若手、中堅の皆さんが、もう国鉄はどうしたって改革しなければならない、毎年二兆円近い赤字を生んで経営は破綻だ、これをしっかり民営化させて明確な経営責任のもとで再生させることが即将来の日本国民のためだと行動されて、結果的にああいう分割・民営化の道を歩むということになったわけであります。  ついこの間もお伺いをいたしたのでありますけれども、もし国鉄改革がなければ、恐らくその債務は今日の勘定でいうと五十兆円ぐらいになるのではないだろうか。また、国鉄運賃も大分値上げをして高上がりになっておったのではないだろうか。その一つをとりましただけでも、国鉄民営化十年の総括、私なりに国民の一人として大変成功であった、こう確信をいたしております。  しかし、いまだ国鉄改革の本来の道は半ばだな、そんな思いもいたすわけでありますけれども、古賀大臣の十年の総括をお伺いをいたしたいと思います。
  108. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 まず最初に、十年前のあの国鉄改革、先人の先生方の大変な決断と申しますか、私も国民の一人として、また政治家の一人として大変敬意を表したいというふうに思います。特に先生は、その当事者である三塚先生のもとで国鉄改革の難しさ、また大切さ、重要性というものをじかに見てきていただいた一人でありますだけに、その思いもひとしおのものがあるだろうというふうに思います。  御案内のとおり、旧国鉄の経営の破綻というものの原因は幾つかあろうかと思いますけれども、私が考えますに、まず旧国鉄、経営が全国一元化をしていたということ、同時に、公社の制度でありますだけに責任の所在が明らかでないということは、大きな経営破綻につながった一つの要素ではないかなというふうに私は思っております。  そういう意味で、ただいまも申し上げましたように、先人、先達の先生方の大きな決断によりまして分割・民営化されることによって今日の国鉄の再生の足がかりができているということについては、私も先生の評価と全く同じように高い評価を与えていいのではないか、このように思っている一人でございます。その証左といたしまして、それぞれのJRの生産性も非常に向上しておりますし、何といっても、輸送サービスを通じまして国民皆様方に大変喜んでいただいているということに尽きるのではないかなというふうに思います。  しかしながら、今先生も触れられましたように、完全にこれが純民営化されるという状況にあって、手放しで喜んでばかりではまだないという状況にあることは、私も全く認識を同じくするところであります。これから国鉄の長期債務の本格的な処理にも取りかかっていかなければいけませんし、確かにJR東日本、東海、西日本に比べますと、三島、JR北海道それから九州、四国、そして貨物、こういったところのさらなる民営化の効果を上げていくという点について努力をしていかなければいけない点も残されているわけでございます。そういう点に私といたしましても全力を挙げて取り組むことによって、本当に国鉄改革の成果をさらに国民皆様方とともに喜びを分かち合い、そして上げていくということが大事なことではないか、このように考えているところでございます。
  109. 中野正志

    中野(正)分科員 大臣と共通の評価を持ち得まして大変幸いでございます。  今お触れになられました国鉄清算事業団長期債務処理の基本的考え方についてもお伺いをいたしておきたいと思います。  このごろ、マスコミで、この長期債務処理を本格的に議論しないのは国会議員の怠慢だというような論説も見られますけれども、決してそうではない。私ども自民党は、責任政党として党の中で大分議論を詰めておりますけれども、もちろんまだその議論も中途ではあります。今、御存じでありますように、二十八兆三千億円と見込まれる債務をどう処理するか、国民的な課題でもあり、国民の皆さんから興味を持たれる大きな問題でもあります。  振り返りますと、分割・民営化の際、処理すべき国鉄の長期債務等は三十七兆一千億円である。JRがそのうち十四兆五千億円、発足初年度売り上げ見込みの四・五倍。JRはその時点で大手私鉄の三倍の規模の債務をしょってスタートをいたしたということであります。そして、国鉄清算事業団二十二兆七千億円。国鉄の遊休資産、JR株式を処分することでその一部に充てる。また、残る債務については最終的に国が責任を持って処理する。国とJRとの責任分野は閣議決定もされ、国会審議で明確に区分されたところであります。  JR、この十年間の経営努力で当初見通しを上回る業績を上げられたことは御同慶の至りであります。平成五年JR東日本平成八年JR西日本が上場されまして、合計一兆六千億円の収入を清算事業団にもたらしたことがあります。国鉄時代には国から毎年六千億円の補助金、そして今やJRから毎年二千億円の逆に納税をいただいておりますから、差し引きJRは八千億円の財政貢献をいたしておると理解をいたします。もちろん海外を含めた多くの投資家がJRには存在をいたします。しかし、JR本州三社はいまだ売り上げの三・二倍の債務を負担しているということは厳粛な事実でありますけれども、今日いろいろな議論を私も伺っておりますと、そのことがどうも忘れられた議論が横行いたしておるようであります。  さてそこで、JRに追加負担の形で清算事業団の債務処理にという考え方が一部に示されておるのでありますけれども大臣あるいは運輸省、どうお考えでありましょうか。
  110. 梅崎壽

    ○梅崎政府委員 国鉄の長期債務の処理に関しましては、先生指摘のとおり、昭和六十三年一月の閣議決定におきまして、「最終的に残る債務等について国民に負担を求めざるを得ない」こと、また「事業団の債務等については最終的には国において処理する」ということが決められております。この国鉄長期債務の問題につきましては、清算事業団が持っております土地、株式等の自主財源の売却によって債務の償還に充てていくということでございましたが、現在の状況考えますと、従来のようなスキームでは大幅な債務の縮小というのはもはや期待できない状況でございますので、これにつきましては、できるだけ早くやはり措置をしていかなければならないと考えております。  そこで、今御指摘がございました長期債務の処理に当たりまして、JRについても負担をさらに持たせるべきではないかというような御意見があるのもまた事実でございますが、これに対しましては、またただいま先生も御指摘されましたとおり、国鉄改革時にJRが負担すべきものと、それから清算事業団が負担すべきもの、すなわち国において処理すべきものというのは既に分けておるのであって、既に解決済みではないか、こういう御意見もございますし、それから、民間企業であるJRに対して負担を求めることは一般株主との間でも問題ではないか、こういった御意見があるのも事実でございます。このような御意見に対しましてどう考えるかでございますが、この問題を解決するために基本的に重要なことは、債務が極めて膨大であるということもございますので、国民的な議論を十分に尽くしましてコンセンサスを得ていくというのが不可欠なことであろうと私ども考えております。  今後、この国鉄長期債務の本格的な処理のための具体的処理策の検討に当たりましては、幅広い議論を十分に踏まえました上で、平成九年中に成案を得るべく私どもも最大限の努力を行ってまいりたいと考えております。  具体的な点に関しましては、現在の時点でコメントするのは適切でないと思いますので、差し控えさせていただきたいと思います。
  111. 中野正志

    中野(正)分科員 私は、やはり国鉄改革のときの債務処理の枠組みはしっかり厳守されるべきではないかと考えております。国鉄改革の趣旨に反することは、もうここまで来ればなおさらすべきではない。なおかつ、上場された民間企業でありますから株主に対する責任もありますし、また国際的な信用上からもそれは問題だ。JRに対する追加負担というのは認められるべきではない、ましてJRの経営に政治の介入を許してはならない。私の信念として申し上げておきたいと思います。  なおかつ、一部でありますけれども、JRの運賃にJR利用料の名目で負担をさせたらどうだという考え方もあられるようでありますけれども、もちろんお答えは難しいのでありましょうが、どう考えられますか。
  112. 梅崎壽

    ○梅崎政府委員 ただいま先生指摘のとおり、JRの利用者についても、国鉄改革による利益を受けているということから一定の負担をすべきではないか、このような御意見がございます。これに対しまして、一方では、結局のところ利用者に負担させるというのは運賃という形で負担していただくしかないわけでございますので、そういうことをいたしますと、競争場裏にあります輸送市場の中でJRの競争力が低下して、せっかく民営化しまして健全経営を行いつつあるJRの経営に支障を来すおそれがあるのではないか、こういったような御意見もあるわけでございます。  この点につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますけれども、やはり国民のコンセンサスを得ていくということが大変重要でございますので、私どもとしましては、幅広い議論の中で、この問題をどうしていくか考えていくべきだと思います。先ほどと同様でございますけれども、具体的には、今の段階でコメントするのは差し控えさせていただきたいと思います。
  113. 中野正志

    中野(正)分科員 今お触れになりましたように、実態は運賃値上げという形になるわけであります。伺いますと、JRはここ九年間消費税分を除いては一切運賃値上げはしておらない、それぐらいに必死の努力をしてきたのだ、私はそれは率直に評価したいと思うのであります。今お話にありましたように、よその鉄道機関との競争の問題もある、あるいは対航空との競争の問題もある、そういうことでありますと、やはり私は避けるべきだと。まして今日の時世で、消費税の問題あり、減税なしの問題あり、医療負担の問題あり、あるいは介護保険の問題ありということになりますと、これ以上国民大衆の方々にまた増税感をいささかなりとも持たせるようなことは、私ども自民党という立場からも、また政治という観点からもしてはならない、率直にそう考えております。  そこで、問題は、その清算事業団の債務を速やかに減らすことが急務だと考えるわけであります。それが、逆に言うとまた国鉄の改革目的でありますJRの完全民営化の達成にもつながる、こういうことになるわけであります。平成八年十二月二十五日の閣議で、平成九年度にはJR東海株式の売却、上場を目指す、それからJR東日本、西日本の既上場株式の第二次売却についても早期処分が図られるべしとあります。国鉄清算事業団を通じまして、政府が保有いたしておりますJR東日本株が百五十万株、西日本六十三万株、東海二百二十四万株、これなど株式売却を早急に進めるべきだと思っておりますけれども、いかがでございましょうか。  ちなみに、我が党の国鉄長期債務問題特別委員会でも、同じようなことをうたいまして具体的な進め方を促しておりますけれども考え方についてお伺いをいたしておきたいと思います。
  114. 梅崎壽

    ○梅崎政府委員 JR株式の問題、御指摘のとおり、できるだけ早く売却するということが、JR各社の完全民営化のためにも、また国鉄長期債務の償還を進める上でも必要だと思っております。  残念ながら、今までの状況を見ますと、株式市場が低迷したこと、それからまた一方では、阪神・淡路大震災の影響によりましてJRが予定どおりの利益を上げられなかったこと、こういったような問題がございまして、当初考えたとおり進まなかったのは私どもも大変残念に思っております。  今後のことは、ただいま先生も御指摘されましたけれども、昨年十二月の閣議決定を踏まえまして、九年度におきましては、JR東海株式の売却、上場を目指して、三社の、JR東日本、西日本に引き続きましてJR東海の株式を私ども何としてでも売却、上場を目指したいと考えております。それから、JR東日本と西日本の残りました株式の二次売却につきましても、早期処分が図られますように調整を進めていきたいと考えております。
  115. 中野正志

    中野(正)分科員 時間がありませんから、私の考え方をずっと申し上げてまいりますので、後で御返事をいただきたいと思います。  やはり大切なことは、長期債務の実態について国民にオープン、まさに情報公開でありますけれども、これが基本姿勢でなければならない。昭和六十二年十月ですか閣議決定で、地価高騰に対処するため土地売却を見合わせた。今その責任を問う声もありますけれども、当時は与野党含めて、土地を売るな売るなということで清算事業団の土地売却にストップをかけた。まさにマスコミ全社そうであったわけであります。しかしまた、大変残念でありますけれども、バブル崩壊後の地価の低迷がありまして、結果的に今のような多額の債務が残っておることも事実でありますから、そういった状況も、国民の皆さんにはしっかり理解していただけるように、オープンにお話を申し上げるということが大事だと思っております。また、ただ反省点としては、株式売却がおくれたということは大変残念だったな、そう思っております。  ちなみに私は、この長期債務の処理の問題について、三つの考え方を実は持っておるのであります。  まず一つ目は、国鉄改革のときの国鉄長期債務等の分担及び処理の考え方で示されたように、最終的に国において処理されるもの、十三兆八千億円、これはもう一般会計につけかえる。物事が行き詰まったときには原点に返れということでありますから、もう原点に返ってそう思います。そして二番目には、今JR各社の二千億円納税分のうち国庫は一千億強だと思いますけれども、それをそのまま長期債務に充当するのはどうか。それから、三つ目でありますけれども、これが大事でございます。実は、目的税であります揮発油税などを廃止して、そのかわり、二酸化炭素税を創設するということはいかがなものであろうか。  私の地元に、河北新報という東北で一番大きい新聞社があります。三月一日、「先進二十カ国の温暖化対策 日本ワースト二」、WWF、これは世界自然保護基金というところでありますが、通信簿発表、明確な姿勢に欠ける我が日本、こういうことでございました。評価は、CO2の排出量。それから二番目は、二〇〇〇年には各国とも総排出量を一九九〇年レベルに戻すとした九二年の約束を守れるかどうか。三番目は、二〇〇〇年以降の対策を急ぐ立場をとっているかどうか。四番目は、一人当たりのCO2排出量。この四項目で評価をしました結果、残念ですが日本は後ろから二番目、こういうことなんであります。実は、ことしの十二月に、気候変動枠組み条約第三回締約国会議が京都市で開催をされます。ホスト国として緊急な取り組みが必要。もちろん、我が党の環境部会も、環境庁も一生懸命の取り組みはいたしております。実は、WWFでは、「現在の各国の提案では、温暖化がもたらす破壊的な影響から地球を守れそうにない。」と結論づけておるのであります。  そういう意味で、すべからくこういった対応策にはお金が問題であります。二酸化炭素を排出するすべてがその税の対象だということでどうなんであろうか。一つには、基本ということになろうかと思いますけれども、もちろん旧来どおり車であります。また、税率軽減の道は当然考えなければなりませんけれども、鉄道あるいは飛行機などの大量輸送機関、電力も対象あるいは法人税減税も前提にしなければならない議論になるであろうと思いますけれども、工場からの排出も含まれるわけであります。そういったすべてを二酸化炭素税ということで負担をいただく。  使い道はどうか。まず一番目ですが、十三兆八千億円を除く国鉄長期債務の処理に一部を使う。暫定的にということで、終われば後は、温暖化あるいは地球環境を守るということの経費に使わせていただくということであります。大義名分を考えるといろいろ難しいのでありますけれども、鉄道はここ何十年かクリーンエネルギーで頑張ってきていただいておりますけれども、残念ですが結果として赤字、国有鉄道の分だけはせめてこれで一部補てんをしていこう。それから、二番目でありますけれども、道路目的税の旧来の趣旨を一部生かした形で、道路整備にも使わせていただいたらいかがか。三番目には、やはり代替エネルギーということもこれありでありますから、新エネルギー政策に活用しなければならない。四番目、申し上げました何よりもCO2がもたらす地球温暖化対策の総合的取り組み、まさに抜本的な取り組みをする費用に充てる。こういうことでありますと、それぞれの比率は別として、一石四鳥の効果になるのではないか。  もちろん、いろいろ考え方がありますから、簡単でないことは承知をいたしておるのでありますけれども、私自身、万機公論に決すべしだと思っておりますから、運輸大臣ののりを越える部分も当然ありましたけれども、政治家として運輸大臣、どうお考えになられますか。お聞かせをいただきたいと思います。
  116. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 最初の、国鉄改革総決算という意味で、国鉄の長期債務の本格的な処理というのが極めて重要であるということは先生指摘のとおりであります。それだけに、今先生政府委員の間で、国鉄の長期債務の処理のあり方につきましていろいろと御論議をいただいているところでございます。先生からは、国鉄の改革に当たっての債務の分担の経過、またその後なぜここまで国鉄の長期債務が累増したかという御指摘からも、さまざまな経過について御意見をいただいたところでございます。  私も、国鉄改革の総決算という意味での国鉄の長期債務の本格的処理が極めて重要であるということは十分承知をいたしております。ただ、この本格的な処理に当たりましては、政府委員からも答弁申し上げておりますように、それに必要とする費用が大変膨大でございます。それだけに、新たな財源・措置等につきましては、国民の幅広い御論議をいただかなければいけないということは当然のことだろうと思います。  同時に、先生も御指摘いただきましたけれども、今ずっと触れていただきました国鉄改革の経緯について、国鉄の債務問題については、もっと国民の皆さん方に明らかにしていく。まず事実をしっかりと理解していただくということは当然のことだろうと思っております。これからの御論議の基礎にすべきだろうと思います。基本になるべきだと思っております。そういう意味で、先生の御提言のとおりに、私も、今後の議論の中で論議を尽くされる中で、どうしてこういう長期債務が累増してきたのか、最初はどうで、どういう分担であったのかということをまず国民に情報をしっかりと開示して理解していただくということから始めたい。  そして、国民のコンセンサスを得る本格的な処理策というものをこれから、昨年暮れ閣議決定させていただきましたスケジュールで、先生にも検討委員会に入っていただいております、いろいろと各方面からの論議を尽くしていただくわけでございますが、その中に、今地球的課題でもあります環境問題、こういう中で、二酸化炭素というものの対応について、これも大変大きな問題として今提起されているわけでございます。新しい目的税というものの中でこの長期債務の本格的処理の財源として考えられないかという御提言、私も真剣に考えてみたいというふうに思います。  いずれにいたしましても、これから本格的な処理策について、与党の中でも検討委員会の中で活発な御論議をいただくわけでございまして、私といたしましても、そうした御論議を踏まえながら本格処理、平成十年度からそれに取りかかるということでございますから、九年中に成案を得るべく全力を挙げて努力をしてまいりたいと思いますので、御支援と御指導を先生にもぜひひとつお願いをしておきたい。御協力のほどを重ねてお願い申し上げる次第です。
  117. 中野正志

    中野(正)分科員 もう、ともども頑張ってまいりましようと、力強く私も連帯の表明をさせていただきたいと思います。  時間がございません。ちょっとだけ、もう一点お伺いをさせていただきたいと思うのであります。  私は、東北の中枢、仙台市であります。仙台港という港を持っておるのでありますけれども、特定重要港湾指定をいただいておりません。これからの東北の発展考えますと、私どもの仙台港が、まさに特定重要港湾に昇格をいたし、相応の成果をもたらすということが大変大事であると認識をいたしておるこのごろでありますけれども、大変幸いに、コンテナの定期航路も三つ開設をされておりますし、貨物の取扱量も大分にふえておりますから、そういう意味では、まさに特定重要港湾、機熟せりと思っておるのでありますけれども、御当局の御見解をこの際お伺いをいたしておきたいと思います。
  118. 葉梨信行

    ○葉梨主査 木本港湾局長。時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。
  119. 木本英明

    ○木本政府委員 仙台港の特定重要港湾化につきましては、今先生おっしゃられましたように、仙台港、着々と国際港湾としての機能を高めつつあります。したがいまして、地元からそういった御要請が出てきた段階で、必要となる要件あるいは将来の国際港湾としての可能性、そして将来の整備計画等々、総合的に検討させていただきまして、適切に対応したいと考えております。
  120. 中野正志

    中野(正)分科員 ありがとうございました。
  121. 葉梨信行

    ○葉梨主査 これにて中野志君質疑は終了いたしました。  次に、遠藤乙彦君。
  122. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)分科員 新進党の遠藤乙彦でございます。  委員長また大臣、事務方の皆さん方におかれましては、大変長時間御苦労さまでございます。  私は、東京は大田区に在住しておる者でございますので、地元の皆様の大変大きな課題でございます羽田空港の沖合展開並びに跡地利用、そして京浜急行の連続立体交差化の問題につきまして質問をしていきたいと思っております。  まず、羽田空港沖合展開並びに跡地利用の問題でございます。  羽田空港は、御承知かと思いますが、戦前は大変小さな空港で、約五十ヘクタールのものでございました。これが戦後、マッカーサー司令部の指示のもとに、四十八時間以内に強制退去ということをさせられまして、一挙に四百五十ヘクタールの大空港になったわけでございます。その後も、住民の方は近隣に移り住んだわけですけれども、いまだに木造密集地域で、道路化率も二十三区平均の半分しかないということで、救急車や消防車もまともに入れないようなところでございまして、何かのときには大変危惧されるわけでございます。また、ジェット化によりまして騒音公害に悩まされてきておりまして、大変な犠牲を強いられてきたわけでございます。ある意味では、沖縄基地問題と似たような状況にあるということもぜひ大臣にも知っていただきたいと思っております。  そういったことを踏まえまして質問を具体的にしてまいりますが、まず、空港跡地の利用計画の点でございます。  羽田空港、今、新C滑走路が三月末にも完成の予定でございまして、今後の運用につきましては、現在、関係自治体と協議中であると聞いておりますけれども、この跡地につきましては、国及び都、区の三者で共同調査をしてきております。これは三者協議と言っております。地元としては、この空港跡地に大きな商業ビルが建ったり、あるいはニューヨークのマンハッタンみたいな形になることはぜひやめてほしい。住民のコンセンサスとしましては、やはり緑地を基本として緑が全体を覆う、また空港と市街地との緩衝地帯となるようなものにしてほしい、その中に公共の建築物があり、あるいはまた民間のものが入ってもそれは結構でしょうけれども、基本的なコンセプトとしては、緑を基調とした空港と市街地との緩衝地帯、こういったコンセプトで強い要望を出しておりまして、地元としても、エアフロントシティー21ということで構想を出しているわけでございます。  そこで、平成六年度から国、東京都、大田区の三者で調査をしてきておりますが、その調査はどこまで進んでいるのか、あるいは今後どのようなスケジュールで、どのような考え方で進めていくのか、いつまでに結論を出すのか、こういった点につきましてまずお伺いをしたいと思います。
  123. 黒野匡彦

    ○黒野政府委員 まずもちまして、大変大田区の皆さんに御協力を賜りながら羽田空港が運営できているということ、改めてお礼を申し上げたいと思っております。  そこで、跡地でございますが、私どもが、今先生がおっしゃった三者といろんな方面から調査というか勉強会をやっておりまして、私どもといたしましては、空港と共生できる施設をどうつくるかという立場でありますし、また大田区民あるいは都の方もほぼ同じお考えではないかと思っております。  ただ、航空局独自の課題といたしまして、空港整備特別会計は、本来借入金を一切入れていないのですが、羽田につきましては、将来回収ができるということで約一兆円強の借入金が今入っております。したがいまして、この土地もその借入金を返す大事な原資になるわけでございまして、今私どもの立場も率直に地元に申し上げ、まさに先生今おっしゃられました緑地化ということを大田区民の方々が大変期待しているということも承知しております。それらを踏まえまして今、鋭意調査を進めている段階でございます。  いつまでかということが、実はちょっと難しい点がございまして、これも先生の方がお詳しいと思いますけれども、この地区には空港関係の公的施設やあるいは民間の工場等がたくさん入っております。それを一つ一つ調べて、それの移転の可能性とかその辺も全部整備いたしませんと、場合によっては空港機能にまた重大な影響があるかもしれないということでございまして、今、鋭意調査検討をしております。もうしばらくちょっとお時間を拝借したいと思っております。
  124. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)分科員 続いて、この跡地利用の問題の前提となります空港跡地の範囲と面積はどうなっているか、これは決まっているのかという点につきまして確認を求めたいと思います。
  125. 黒野匡彦

    ○黒野政府委員 正直に申し上げまして、まだ区域が決まっておりません。その正確な線を引いて、ここからこっちは空港よ、こっちは売却対象の土地よというほどは決まっておりませんが、おおむね二百ヘクタールという大変広い土地になるだろうと思っております。
  126. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)分科員 そこで、この跡地の利用と関連しまして、二月十六日付の日本経済新聞の一面のトップに、「跡地二百ヘクタール、民間に売却 商業地利用が有力」という記事が出ております。これを見て地元の人々はびっくり仰天いたしまして、これは了解が違うじゃないか、運輸省は何を考えているんだという、非常に皆さん感情的になっている面もございまして、まさかそこまで運輸省考えるとは私は思っておりませんけれども、この記事の事実関係につきまして、まずどうなっているのかお聞きしたいと思います。
  127. 黒野匡彦

    ○黒野政府委員 現時点において、その新聞に書いてあるようなことにつきまして、私ども方針を決めているわけではございません。今の調査をきちんとして、さらには、これは国有財産でございますから、それ相応の手続を経なければ結論は出ないわけでございまして、現段階におきまして二百ヘクタールの土地を民間に売却するという方針を決めておりません。
  128. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)分科員 方針は決めていないといっても、これから決めるというのでは困りますので、運輸省が地主だから何でもやってもいい、そういう発想には絶対立ってほしくないわけでございまして、あくまで今までの三者協での精神を尊重して、地元の意向を最大限に尊重するということはぜひ貫いていただきたいと思っておるわけでございます。  そこで、昭和五十六年の確認書というのがございます。これは五十六年八月六日、運輸大臣と都知事の間で交わされたものでございますけれども、跡地利用計画の検討に際しては「地元区の要望を十分配慮する」というふうになっておりまして、跡地利用計画の策定に当たっては、地元の協力に対する配慮及び地域社会との共生という視点からも、ぜひとも地元の要望を取り入れるべきではないかと考えております。また、昨年の十二月に閣議決定をしました第七次空港整備五カ年計画の航空審議会の答申の序論におきましても、「空港整備を具体的に進めるに当たっては、地域社会との共生という視点に立つよう努める必要がある。」というふうにしております。  羽田空港も日本の顔でございます。国内最大の拠点空港でもございます。とともにまた、地域にとってもかけがえのない一つの資産でもございまして、ぜひとも地元の要望にも十分配慮をしていただきたいと思っております。特に、先ほども申し上げましたように、戦争直後の四十八時間強制退去の経験あるいはまたジェット化による生活環境の破壊、またその後、空港建設に対して多大な地元の協力もしてきたこともございますので、ぜひともそういった犠牲と労苦に報いるという姿勢で検討いただきたいと思っております。  そういった意味で、地元の要望を最大限に取り入れた跡地利用計画を策定することは当然やるべきである、こう考えておりますけれども、この点、大臣に対しまして御意見をお聞きしたいと思います。
  129. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 局長の方からも最初にお礼を申していたようでございますが、羽田の空港が今日健全に発展しておりますことは、大田区民の皆様方の大変な御協力によるものでございまして、私からも、御地元の先生にも心からお礼を申し上げたいと思っておりますし、ぜひこれからも地元との共生の中で羽田の空港がさらに多くの国民皆様利用され、そして喜ばれ、発展するということが必要ではなかろうかと思っております。  そこで、先生の、この羽田の跡地の問題でございますけれども、当然この跡地が大変大規模なものであり、また開発を通じてその地域の多くの方々に対する影響は、町づくりの点からいいましても、非常に大なるものがあろうかと思っております。それだけに、何といっても、今申し上げましたように、これからの羽田空港のさらなる発展考えた場合、地域の皆さん方との共生という意味からも、地元の皆様方の声を十分に聞いて反映させていく、そういう計画でなければいけないということは当然のことだと思っております。私も、そういう姿勢で跡地のこれからの取り組みには対処してまいりたい、このように思っております。
  130. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)分科員 古賀大臣の大変理解あるお言葉を聞きまして、大変感銘深く伺った次第でございます。ぜひともその精神に沿って羽田に対する取り組みをお願いをしたいと思っております。また私も、地元の方々には、大臣から大変理解が深いお言葉があったということは必ず伝えていきたいと思っておりますし、我々としても、ぜひ今後の羽田空港の発展のためには全面的に協力することにやぶさかではありませんので、さらに話し合いのもとに進めていきたい、そのように考えていきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思っております。  そこで、ちょっと別の問題になります。  この三月末に新C滑走路が完成予定でございまして、その運用が二十四時間オープンというふうにされております。地元としては、沖合展開をしたとはいえ、二十四時間体制で飛行機が飛ぶとなると、またこれは騒音が大変じゃないかと非常に危惧する声もあるわけでございまして、深夜に航空機が飛んでも騒音は大丈夫かという点につきまして、ぜひ当局の御意見をお聞きしたいと思います。
  131. 黒野匡彦

    ○黒野政府委員 この羽田の沖合展開事業は、そもそものスタートから、従来の空港では周辺の住民の方々に御迷惑をかけ過ぎるということで、沖合に出すという方針を決めて工事を進めてまいったものでございます。新しくできる新C滑走路は、私どもといたしましては、地元の皆さん方に迷惑をかけることは、ゼロと言って余り大見えを切るのもあれでございますが、ほとんどないと確信しております。
  132. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)分科員 今のお言葉がそのとおりであるように私どもは期待をしておりますので、二十四時間化した以降も、地域住民とも十分な協議のもとに、監視体制を強化して、騒音問題のモニターをぜひ続けていっていただきたいと思っておりますので、この点、よろしく要望しておきたいと思っております。  それから、今後十一時以降の便が具体的にいつ設定されるのかという点でございます。私ども、何か夏ごろといったうわさも聞いておるわけでございますが、いずれにせよ、それによってさまざまな、道路の交通量の増大とか騒音問題等もまた考えられるわけでございまして、日常生活に悪影響があってはならないと考えておるわけでございまして、この点につきましても政府側の見解をお聞きしたいと思います。
  133. 黒野匡彦

    ○黒野政府委員 新しい滑走路、新Cなんでございますが、オープンは一応三月二十七日を予定させていただいております。ただ、民間空港で、管制塔を挟んで両側にランウエーがある、しかもそのランウエーをフルに近い状態で使うという例は初めてでございまして、管制官にある程度の慣熟期間が必要だと思っております。そこで、私どもの今の目標といたしましては、七月ぐらいまでは慣熟期間として必要ではないかと思っているところであります。  ダイヤ的には、この四月一日に、朝六時から十一時までの新しいダイヤを設定したいと思っております。さらに、十一時以降はどうするんだという点でございますが、これにつきましては、まだ具体的な計画は出てまいっておりませんが、内々聞きますと、各エアラインとも、この時間帯をいかにうまく使うかということで、いろいろなアイデアを考えているようでございまして、そちらを待ちたいと思っております。  いずれにいたしましても、騒音問題につきましては、引き続き監視体制を続けまして、それによってまた地元の方々と必要ならば打ち合わせをするということもあり得ると思っております。
  134. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)分科員 それでは、羽田空港の問題はこのくらいにしまして、続きまして、この羽田空港へのアクセスとしてその充実が期待されております京浜急行線の連続立体交差事業について、お伺いをしたいと思います。  この連続立体交差化の事業は、地元におきましては二十年来の懸案事項でございます。この京浜急行は、国政上の大動脈であります第二京浜国道とか環状八号線と平面交差のままという現状があるわけでございまして、都市部では極めてまれなまま放置をされております。本当は、人口過剰な地域で、こういった平面交差ということはあってはならないと考えておるわけでございます。こういう状況のために、慢性的な交通渋滞により社会的、経済的に大きな打撃を受けているだけではなく、平面踏切による事故も増大をしておりますし、鉄道による地域分断のため、地域町づくりにも大きな支障となっているわけでございます。  最近、地元の大田区が調査した結果によりますと、ピーク時の遮断時間は何と六十分中五十一分という結果が出ておりまして、これでは大変な迷惑をかけているということは想像にかたくないと思うわけでございますが、ぜひともこういった状況を知っていただきたいと思っております。私も実はすぐ近くに住んでおりますが、なかなか踏切があかないので、たまには国会に遅刻することもあるわけでございまして、被害者の一人でございますが、ぜひともこういった点を改善していただくよう、強く要望したいと思っております。  このため、昨年春ごろから大田区内の自治会の町会を中心にしまして、この連続立体交差事業の早期実現のために署名運動が展開されまして、短期間のうちに十三万五千人以上の署名が集められたと聞いておりまして、これは運輸省並びに建設省にも届けられたと理解をいたしております。また、この連続立体交差化は、単に地域の課題を解決するというだけでなくして、羽田空港への充実したアクセスの確保という非常に広がりを持った話でもありますので、ぜひとも単なる地域問題にとどまらず、より広い国政上の問題としても御認識をいただいて取り組んでいただければと思っているわけでございます。  そこで、質問をさせていただきますが、まずこの連続立体交差事業の国政上の位置づけあるいは認識というものにつきまして、これは建設省からお伺いをしたいと思います。
  135. 奥野晴彦

    ○奥野説明員 御説明申し上げます。  ただいまお話のございました連続立体交差事業でございますが、これは改めて申すまでもありませんけれども、鉄道の一定区間を立体化することによりまして多数の踏切を同時に除却する、それによって踏切での交通渋滞、事故の解消を図るとともに、また分断されております市街地の一体化にも資する事業でございます。  最近では、この事業の実施に合わせまして、駅周辺の市街地の面的な整備を一体的に実施される公共団体が多くなっております。そういったことから道路交通の安全、円滑性の確保はもとより、市街地の活性化にも大きなインパクトのある事業であるというふうに認識をしております。建設省としても、重点的に実施すべき事業として積極的に支援しているところでございます。  御指摘のありました京浜急行蒲田駅付近の連続立体交差事業でございますが、現在、都市計画決定に向けて準備を進めているという段階でありますけれども、完成いたしますと、国道十五号あるいは環状八号線を初めとして、二十八カ所の踏切が除却されるということになっておりまして、事業効果の高い重要な事業であろうというふうに認識しております。
  136. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)分科員 同じ質問でございますが、運輸省にお願いをしたいと思います。
  137. 梅崎壽

    ○梅崎政府委員 連続立体交差化事業につきましては、建設省の方でも意義を述べられましたが、私どもも、踏切におきます事故の防止、それから町づくりといった点から大変重要なものであると考えておりまして、建設省と一体となって進めておるものでございます。  それから、具体的に御指摘の、京浜急行の蒲田駅付近の連続立体交差化事業でございますが、今、地元と京浜急行電鉄の間で計画が進められております。今後、都市計画の決定をどうするか、あるいは都市計画事業の認可はどうするかといった諸手続があると思いますけれども、こういったものが進められましてこの事業が完成いたしますと、先生指摘のとおり、あかずの踏切という問題が解消されて町が分断されるということもなくなるということのほかに、羽田とのアクセスにつきましても、特に横浜方面との関係のアクセスが大変よくなると私どもも評価しているところでございます。  今後とも、この事業が円滑に進むように、私ども事業者を指導してまいりたいと考えております。
  138. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)分科員 さらに、建設省にお伺いをしたいのですが、この連続立体交差事業は、御存じのとおり莫大な事業費がかかるわけでございまして、この京急の問題につきましても二千億円以上と予想されております。しかも、事業効果を早期に発揮させるためには重点的に投資をしなければならない。そこで、最近の財政状況を踏まえ、今後、財源をどのように確保し京急線に投入していくのか、その考え方をお伺いしたいと思います。
  139. 奥野晴彦

    ○奥野説明員 連続立体交差事業は、揮発油税等の道路特定財源を主な原資といたします道路整備特別会計によって実施しております、街路事業と称しておりますが、その事業の一つでございます。  建設省といたしましては、いまだ立ちおくれております街路あるいは道路の整備の促進のために、今後とも、道路特定財源はもとより、一般財源の充実も含めて道路整備全体の財源の確保を図るということがまず大切であろうというふうに考えております。そうした上で、事業効率化あるいは重点化というものを進めていくことにしておりまして、この京急線の事業も含めまして、連続立体交差事業については、その方針のもと、重点的に進めるべき事業の一つというふうに考えておりまして、積極的に取り組む所存でございます。
  140. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)分科員 これと関連しまして、この連続立体交差事業は、都市基盤整備事業の動機づけになるなど、都市の再生に対して極めてインパクトの強い事業でございます。地元でも努力をしておると聞いております。最近では、いきいき都市フロンティア事業という名前がついておるそうでございますが、この連続立体交差事業と整合性をとりながら進めている町づくり事業に対してどういった援助を行っていくのか、この点につきまして建設省にお聞きしたいと思います。
  141. 奥野晴彦

    ○奥野説明員 連続立体交差事業に合わせまして駅周辺等で行いますいろいろな町づくりを一緒にやる、そういった事業を総称していきいき都市フロンティア事業というふうに名称をつけておるわけでございますが、この京浜急行の連続立体交差事業に関連いたしましては、地元の皆さんが中心となられまして、駅前広場整備事業を中心とした駅周辺の町づくりというものを考えておられるというふうに伺っております。  現段階では、都市計画決定に向けて準備中ということでございますが、連続立体交差事業とこうした町づくり事業との連携は、それぞれの事業の効果を高めるという上から非常に重要なものだと考えておりまして、今後、計画が固まってまいりましたら、建設省といたしましてもできる範囲において支援してまいりたい、このように考えております。
  142. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)分科員 この京急線の連続立体化の事業は、大変大きな課題であるとともに強い期待も地元は持っておるわけでございます。最近、この連続立体化の事業の素案説明会が行われました。どれぐらいかかるかということにつきまして、完成まで二十年かかるという説明がありまして、地元の方からええっという声が漏れたわけでございます。そんなにかかるのかということで、何といいますか、皆さん、非常にじれったいという気持ちが強いわけでございまして、なぜもっと工期短縮をしないのかということをよく私ども政治家は 陳情を受けるわけでございまして、この早期完成は重要なことでございますので、工期短縮に向けて国として最大の努力をすると、どのような総合支援をしていくのかということにつきましてお伺いをしたいと思います。
  143. 奥野晴彦

    ○奥野説明員 まず、連続立体交差事業の円滑な推進のためには、事業主体であります東京都のみならず、地元大田区あるいは京浜急行電鉄をあわせた三者の努力はもとよりでございますが、さらに地元の皆様協力というものが不可欠でございます、これは一般論でございますが。建設省といたしましても、こういった関係者の協力のもと、事業の効果が一日も早く発現されるといったことが重要であるという認識に立っております。  しかしながら、連続立体交差事業は、鉄道とか道路の交通を確保しながら、ふくそうした市街地で工事を進めるというのが一般的でありますので、時間がかかる事業であるということも御理解いただきたいと思います。ただし、その中で、全部が完成するまで効果が発揮されないということではなくて、段階的に整備を進めていくというような手法をとる場合もございます。  こうした観点から、今後、都市計画が定められましたら、私どもとしても、東京都とも今後の工程などについてよく相談をいたしまして、事業の効率的、重点的実施に努めてまいりたい、このように考えております。
  144. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)分科員 私の地元も大変高齢化が進んでおりまして、高齢者の方々は、地元が早く見違えるような町に変わることを楽しみにしておるわけでございまして、ぜひ高齢者の方々も喜ばせるような事業推進をお願いしたい、工期短縮をぜひともお願いしたいと強く要望しておきます。  そこで、最後になりますが、この高架化に伴いまして、当然側道の整備等の問題が生ずることは御承知のとおりでございまして、この点でまたいろいろな問題が生じてきていることも事実でございます。ぜひお願いをしたいことは、立ち退き問題等もまた生じてまいりますので、地元へのそういった点での配慮も含めて、関係機関に協議また指導といったことを十分行っていただきたいと思っております。これはもちろん地元の問題でもありますけれども、建設省としてもぜひ影響力を発揮していただいて、最大限地元への配慮をするようにということをぜひ御指導いただきたいと思っております。この点は要望として申し上げておきますので、よろしくお願いしたいと思います。  時間が参りましたので、以上で終わります。大変ありがとうございました。
  145. 葉梨信行

    ○葉梨主査 これにて遠藤乙彦君の質疑は終了いたしました。  次に、金田誠一君。     〔主査退席、関谷主査代理着席〕
  146. 金田誠一

    金田(誠)分科員 大臣、初めて質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。  車検制度の規制緩和というものが行われたわけでございます。その中で、ユーザー車検がかなり急激に伸びているわけでございますけれども、このユーザー車検に当たって、的確な情報が提供されてないのではないか。旧来の規制緩和前の車検、すなわち、車検の前には必ず点検整備が行われて、それによって検査をパスする、これが旧来の車検であったわけです。したがって、車検が上がるということは、二年間は少なくとも安心して車に乗っていられるという状況ができたわけでございますけれども、規制緩和の後のいわゆるユーザー車検なるものは、旧来の車検とは全く概念が違う。点検整備というのが行われないままに陸運事務所の検査のラインだけを通過する。その時点で基準をクリアしていれば検査はパスするわけでございますけれども、実は、事前の点検整備が行われてないために、例えば、ブレーキがすり減っているかもしれない、ゴムのパッキンがもうほとんど傷んでいるかもしれない、一週間の後にはブレーキがきかなくなるかもしれない、それでも検査だけはパスするという状態である。それがいわゆるユーザー車検であるということが、きちんとユーザーの方に知らされない状態の中で規制緩和だけが先行しているのではないか、こういう疑問を持っているわけでございます。そういう立場から順次質問をさせていただきたいと思うわけでございます。  質問に入る前に、大臣にはぜひこれをごらんいただきたいと思うわけでございます。そのチラシを、運輸省の方にもあらかじめ差し上げてはございますけれども、ごらんいただきたいと思うわけでございます。  いわゆるユーザー車検の業者が出しているチラシでございます。全国チェーンになっているようでございます。この場合、「早くて安くて安心車検」「保証付」、こういうことになっているわけでございますけれども運輸省としては、この種ユーザー車検の場合は自己責任で点検整備をしなければならない、それは検査の前後を問わないということになっているわけですが、この種チラシに基づいたユーザー車検の場合、本当にこの自己責任による点検整備が車検の前後になされていると理解しているのかどうか、まずそこからお聞きをしたいと思います。
  147. 荒谷俊昭

    ○荒谷政府委員 お尋ねの点でございますが、現在、点検整備は検査の後でもよろしいというふうに、これは平成七年七月の法律改正で、従前は検査の前に整備を受けるように指導をしておったわけですが、自動車の保守管理というのはユーザーが責任を持って自分でやるべきである、こういうことで、検査の必ずしも前でなくともいい、検査の後に整備をしてもいいというふうにいたしているわけでございまして、こういったことは、私ども、点検整備推進運動といったことを通じましてユーザーの方に十分認識してもらうことにいたしておりますし、また、自動車検査証でございますが、この裏にも検査と点検整備の違いといったものをはっきりと書いて、認識を深めていただくようにいたしているところでございます。
  148. 金田誠一

    金田(誠)分科員 点検整備の運動をやっていますよということでございますが、チラシをごらんになったと思うわけでございますが、「早くて安くて安心車検」「保証付」、このチラシのどこを見ても、自己責任において点検整備をしなければならないんだという記載は一切ないわけでございます。そして、「早くて安くて安心車検」「保証付」、秘書に電話させてみまして、保証とはどういうことなのかと聞かせました。整備をしたという保証ですという話でございました。  この業者、一般的に代行車検業者は、認証工場になっておらない、点検整備ができない業者がほとんど圧倒的だと思うわけでございますけれども、そういう業者が、「早くて安くて安心車検」「保証付」。旧来の、事前に点検整備が行われてその後陸運事務所の検査ラインを通るという車検、整備と検査が一緒になっているいわゆる車検、それはできない業者ですね。  にもかかわらず、チラシを見た限りでは、旧来の車検と全く同じ、それが早くて安くできると、よく言えば誤解を招きかねない、悪く言えば詐欺まがいの状態のチラシが横行しているわけでございますけれども、これについて放置しておいてよろしいのかどうか、そこを聞きたいと思うのです。
  149. 荒谷俊昭

    ○荒谷政府委員 代行車検の広告の中身でございますが、そこに、認証を得ていないのに、分解整備をやります、こういうようなことがもし書かれているとすれば、これは道路運送車両法の違反。そういう行為を認証を得ずして分解整備をやるということは、これは道路運送車両法違反でございますので、こういった違法なものに対しましては、私ども厳正に対処してまいりたい。  ただ、虚偽、誇大な広告表示ではないかと考えられるものにつきましては、すなわち誤解を与えるとかそういったあたりはなかなか微妙な問題がございまして、これにつきましては、私ども、公正取引委員会の方に相談をしてまいりたいというふうに考えてございます。  それで、今先生お尋ねの、また御提示いただきましたそういった広告につきまして、いわゆる「保証付」と書くことにつきましてどのように考えるか、この点について公正取引委員会の方に相談をいたしましたところ、保証の内容が明らかでないので直ちには判断できないけれども、何の保証もしていないのに「保証付」、こういう表示がなされているとすると問題となるおそれがあるという回答をいただいているところでございます。
  150. 金田誠一

    金田(誠)分科員 さらに加えて、こういう保証書まで発行しているわけですね。これも差し上げてございますけれども、車検、保証書、発行年月日、何年何月何日ということで、保証書なるものを発行している。そしてそこには「必要最小限の整備で、車検を通しています。上記の日常点検は、必ず行なって下さい。」という文面でございます。  必要最小限の整備で車検を通しているということは、これは整備をしているということではないですか。しかしこの業者はそのような資格を持っておらない。この一般にばらまくチラシには、分解整備をしていますとは書いていません。書いていませんが、「保証付」、「車検」という言葉で「保証付」、その業者に依頼をすればこのような保証書がついてくる。ここまで手の込んだことをやっておられるわけですね。  私が問題にしたいのは、代行車検がだめだ、禁止をしろと言うつもりはございません。代行車検の中身が何なのかということをはっきりユーザーに認識させられるようにしなければ、これまで見せられたユーザーは、旧来の車検と同じだ、点検整備してもらっている、こう思うわけですよ。  本来、代行車検で検査をお願いして、自己責任で点検整備をする、そういう道もあってもいいのでしょう。しかし、それはそういうものなんだ、自分が買おうとしているサービスの内容は検査のみであって、点検整備は自己責任なんだ、自分でやってもいいし認証工場でやってもいいんだという内容が、情報がきちんと開示されて、その上で判断をし、選択をする、これが自己責任でないでしょうか。その自己責任をする上で、よく言えば紛らわしい、悪く言えば意図的で詐欺まがいのものが非常に横行しているときに、ユーザーが自己責任をきちんと果たせる状況になっているかどうか。  非常に表現も微妙で、直ちにこれをもって道路運送車両法違反という立件は難しいかもしれない。難しいかもしれないけれども、非常に誤解を招きやすい。普通の人であれば車検だと思ってしまう。そういう事実があって、なおかつ役所の規制から自己責任体制に移行するという状況の中にあって、運輸省は手をこまねいているというか、見て見ないふりをしているというか、何の対策もとっていないという事実があるわけです。私は、それを以前から指摘をして対策を求めているわけでございますけれども、私の言っていることに無理があるでしょうか、いかがなものでしょう。
  151. 荒谷俊昭

    ○荒谷政府委員 先生のおっしゃっていることは大変ごもっともだと理解をいたしておりまして、私どももいろいろな機会を通じて検査と点検整備の違い、検査というのはある一時点での保安基準適合性を証明するものであって、検査に合格したからといって今後二年、三年、その車が安全に運転できるということでは必ずしもない、定期的な点検整備あるいは必要に応じての分解整備、そしてまた分解整備をやる場合には、これはきちっと資格のある指定工場なりあるいは認証工場でやらなければだめですよ、そしてまた、自分でやった場合には、これはまた国の検査場に持っていって検査を受けなければなりませんよ、こういったことをいろいろな機会を通じて周知をしているつもりでございますし、昨年来先生からの御指摘もございまして、ことしに入りまして、雑誌であったと思いますが、その辺の理解を深めるように広告も出させていただいたところでございます。
  152. 金田誠一

    金田(誠)分科員 その広告も拝見をしましたけれども、非常にわかりにくい。代行車検というのが何であるのか、それは検査のみである、したがって整備点検は自己責任でやらなければならないということが明確にうたわれてないですね。非常に細かい字で、肝心のところはわかりにくい表現になっている。本当にやる気があるのかどうなのか、私は、非常に不審に実は思っているところでございます。  それはそれとして、お聞かせいただきたいと思うわけでございますが、こういうチラシを配り、あるいはこういう保証書をもらう、こういう代行車検業者が、数としては平成七年七月から百二十万八千件の代行車検での検査を通過した件数があるというふうに聞きました。前整備は百十万四千件、前検査は十万四千件だそうでございますけれども、これはどうでしょう。運輸省、こういう代行車検を使う場合、この百二十万八千件という方々が、自己の責任において事前なり事後なりに法で決められた点検整備をしていると思っているのですか。
  153. 荒谷俊昭

    ○荒谷政府委員 私どもの調査によりますと、ユーザーの七割の方々は点検整備の重要性というか、自分でやらなければならないということを理解をしていただいておりますけれども、三割の方は必ずしも理解が十分でない。こういうこともございまして、このユーザー車検で持ち込んできた車について、これは検査の不合格率が高いわけでございますので、そういう不合格になった人には、はがきを出して、点検整備の必要性、重要性について改めての注意喚起を図っているということでございます。
  154. 金田誠一

    金田(誠)分科員 この保証書、愛車チェックシートつきの保証書がなぜ私の手元にあるかといいますと、この代行業者に持っていった方が保証書をもらった。しかし、数日後に車の様子がおかしくなった。これはおかしいではないかということで、認証を受けた整備工場にいらした。そして、初めて代行車検の何たるかということを理解された。こういう保証書までもらっているのですよということで、そこに保証書の存在というものが初めてわかった。そこから私はこれをちょうだいした。ここまでやっているのです、これを運輸省は見て見ないふりか、何ら手を打とうとしないのですということをおっしゃって、私のところにおいでになったわけですね。  こういう状態があるにもかかわらず、七割の方は自分で整備をしているんだ、工場でやるような整備を自分でできるんだ、百二十万の方の七割がそうおっしゃいますか。
  155. 荒谷俊昭

    ○荒谷政府委員 私のお答えの仕方が少しますかったのかもしれませんが、ユーザーの七割の方は点検整備の必要性、重要性を理解していただいているということでございます。そういう意味で申し上げたわけでございます。
  156. 金田誠一

    金田(誠)分科員 恐らく、車検だと思って持っていくわけです、保証書をもらうわけですから。なおかつ自分で、工具も必要なわけですし、手間暇もかかる、そういうことをやっているとは私は到底考えにくいと思うわけです。その辺のところ、実際どうなのか。確かに自己責任でやってもいいよということになったわけですけれども、本当にそれがやられているのかどうか。そして、代行業者、代行車検というものが、点検整備はしていないんだ、自己責任でやらなければならないんだということを理解をしてやっているものなのかどうか。ぜひしかるべく調査もしていただきたいなと思うわけでございまして、これについてはお願い申し上げたいと思うわけでございます。
  157. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 先生の御指摘について政府委員の方から答弁をいたしているところでございますが、まず肝心なことは、自動車の検査、整備制度ということをユーザーの人たちが本当に正しく理解する広報活動というものが、本当にユーザーの方々に満遍なく行き届くような活動ができているかどうか、その点、まず私の方でもしっかりと把握をしていかなければいかぬというふうに思っております。  あわせて、この車検代行という仕事の中身についての正しい理解というのも得ていただいているかどうかということもチェックの必要があろうと思っております。また、チラシだとか保証書というのも実際私も見させていただきましたけれども、こういうものがまことしやかに流れていって、そしてユーザーの方々が違った理解を得ている、そういう原因になっているとすると、これは大変大きな問題だと思っております。  安全確保、それから公害の防止、こういう大きな役割を車検というものは果たしているわけでございますから、その趣旨にかんがみても、こういった実態というものをもう少し事務当局等にしっかりした把握をさせることによって、私自身厳正な対処をさせていただきたい、このように思っておりますので、ぜひひとつ御理解いただきたいと思います。
  158. 金田誠一

    金田(誠)分科員 どうも積極的な御答弁をいただきまして、ありがとうございます。  そこで、二つ提案がございます。一つは、この種チラシ、これに、これは検査なんですと。車検という言葉自体、旧来の社会通念上、常識からいって整備と検査がセットになっているものだ、これが車検ですよ。しかし、法律用語ではないのですね、車検というのは。検査という言葉が法律用語です。したがって、この種業者には、検査のみの業者には検査という言葉を使用させる、検査なんですから。車検という慣用語は、整備と検査がセットになって車検なんですよ。非常に紛らわしい、よく言えば。悪く言えば詐欺まがいということになるわけですから。検査なら検査なんだ、それでもいいのですよ。それをやめろと言っているわけではないのです。それを選ぶのもユーザーの自己責任なのだということをはっきりさせていただきたい。したがって、検査を代行した場合には、点検整備というのは自己責任で必要なのだということがわかるような広告をしなければ、虚偽の広告に当たるのではないですか。その指導を徹底していただきたいということが一つです。  それともう一つは、先ほど局長の御答弁にありました不合格者にはがきを出しているということですが、合格者にはなぜ出さないのですか。合格しても整備が要るわけでしょう。そこに置きましたけれども、その部品も、すり減ったものでも検査は通ろうと思えば通るわけです。しかし、点検整備は必要なんですよ、検査が通っても。検査が通っても不合格でなくても、ユーザー車検で来た方には、点検整備は自己責任で必要ですよ、前後を問わず必要ですよというはがきを出していただきたいと思うのです。そうでなければ、御本人は車検だと思っているわけですから。ほとんどこのチラシと保証書、こういう状態ですから、この二つの提案について、ぜひひとつ前向きにお答えいただきたいと思うのです。
  159. 荒谷俊昭

    ○荒谷政府委員 第一点目の、車検という言葉を使わせないようにということでございますけれども先生おっしゃいますように、確かに私ども、今までは定期点検整備を確実に励行していただくために、車検の前に整備をしてください。車検は法律で義務づけられていますから必ず受けなければいけない。その前にやってください。こういう指導をすることによって、定期点検整備が確実に履行されるということで、そういう実態をつくってきた。したがって、車検という言葉に整備も含まれるという形でずっと推移をしてきた。これは事実でございます。  しかしながら、平成七年の七月に、私ども、法律を改正をさせていただきまして、車検と、いわゆる点検整備とは別物ですよということをはっきりとさせたわけでございます。ただ、この辺の理解をユーザーの方々にしっかりしていただくための努力がもし不足だということであるならば、さらにこの点については力を入れてまいりたいというふうに考えてございますが、世間の人に車検という言葉を使うなと言うのは、なかなかいかなる手段で……(金田(誠)分科員「そこはいいのだけれども、検査だけの場合は検査でしょう」と呼ぶ)はい。そういうことの御指摘よくわかりますので、これは検査だけなのか、整備も含んでいるのか、その辺がよくわかるようにいろいろと指導方を検討してまいりたいというふうに考えてございます。  それから、ブレーキがすり減っている。それでも検査は検査として通ってしまうわけでございます。といいますのは、自動車の検査というのは、目視あるいは検査機器、テスターでもってチェックをいたしまして、その機能がその時点で発揮されていれば合格ということになるわけでございます。先ほど私申し上げましたように、しかし、その時点では合格だけれどもあと何カ月使えるかわからない、こういうこともあり得るわけでありまして、そういった意味で、検査は合格しても整備はきちっと受けてくださいよという広報活動を一生懸命やっていきたい。  御提案の、ユーザー車検の人にはすべてはがきを出して注意喚起をしたらどうかということでございますが、先ほども申し上げたかと思いますけれども、あるいは申し上げていないかもしれませんが、ユーザー車検の場合には、やはり三分の一ぐらいが検査不合格になってございまして、その不合格の人には通知を出してございます。合格した人にも出すとなりますと、あと二倍出さなければいけない。あて名書きその他、大変恐縮でございますが、少ない要員で仕事をしているということもございまして、なかなかそこまで手が回らないというのが現状でございまして、別途の手段で検査と点検整備の違いといったものをよく理解をしていただくように、私ども努力をさせていただきたいと思っております。
  160. 金田誠一

    金田(誠)分科員 ユーザー車検不合格になりましても、不合格でございましたと言って持って帰るわけではないのですよ。そこでちょこちょこっと調整してまた通してしまうわけです。結果的に合格になるわけですよ。そういうものには、はがきを出していないのではないですか。ですから、はがきを出している数というのはほとんど少ないのではないですか。その辺のところを、時間がないですから答弁は要りませんけれども、そういうことであってはだめだと思うのです。  ユーザー車検で持ってきた方は、自己責任で点検整備をしなければならない。これははっきりしているわけですよ。こういうことで御存じないわけですから、そのはっきりしていることを念のためにお伝えをする。こういうチラシや保証書でやられているわけですから、これについては忙しいとか忙しくないの問題ではない。生命にかかわる問題ですから。  今回また、例えば金融機関も護送船団体制から自己責任体制に移行するという大きなテーマがございますでしょう。その場合、どこの金融機関がどういう状態であるか、預金した預金が返ってこないかもしれない、その前提として金融機関の情報開示ということが大きな問題として、この規制緩和とセットになって組み込まれて議論がされているわけでしょう。  それと同じに自動車の安全も、自己責任の場合は、この業者は何をやるのだということがきちっと知らされていなければ自己責任も負えない。そして、結果的には第三者にも大変な迷惑をかけることにもなりかねないのだ、命にかかわる問題ですから。銀行は金で済みますけれどもこれは命ですから。  私は、ユーザー車検がだめだと言っておるわけではない。中身が何なのかをきちんと知らせる。それが規制緩和とセットであるべきだという視点をきちんと踏まえて、はがきの問題についても申し上げましたけれども、ぜひひとつ御検討いただきたいなと思うわけです。これについて、最終的に総括的に大臣の御決意を賜れればありがたいと思います。  あわせて、これで終わりますが、時間がなくて恐縮ですが、この保証書なるものは少なくとも違法だというぐらいの御答弁局長、いただけませんでしょうか。
  161. 荒谷俊昭

    ○荒谷政府委員 そのチラシといいますか広告で、簡単な整備で云々、こう書かれていると思いますが、そこに掲げられている項目からいたしますと、それはいわゆる分解整備を指しているわけではない。分解整備の認証を得ていない事業者がやった場合には道路運送車両法違反になりますが、分解整備に当たらない整備の場合には、なかなか法律違反というわけにはまいらないというふうに考えてございます。
  162. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 先生もお触れになりましたけれども、まさにこの制度というのは人の生命にかかわる問題であります。安全それから環境の問題、そういうことを考えますと、極めて重要な分野だと思っておりますが、同時に、これからの行政改革経済構造改革という中で、規制緩和という一つの大きなテーマに向かって進めていかなければいけないということも御理解をいただいているところでございます。先生にも御理解をいただいております。  それだけに、今お話しいただいているようなきめ細かなユーザーに対する配慮と申しますか、失敗のないことを、どう我々が情報を開示していくのか。そういう問題について、非常に細心な注意、気配りというものが求められているだろうと思います。  先生の御指摘いただいた点を十分踏まえまして、今後のこの問題のあり方について適切にひとつ対処していきたいと思っておりますので、この上とも御指導をよろしくお願いしておきます。
  163. 金田誠一

    金田(誠)分科員 ありがとうございました。  このチラシなり保証書なりがこのまま見過ごされてはならない。ぜひひとつ対策を検討していただきたいということを重ねて要望いたしまして、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  164. 関谷勝嗣

    ○関谷主査代理 これにて金田誠一君の質疑は終了いたしました。  次に、砂田圭佑君。
  165. 砂田圭佑

    砂田分科員 自由民主党の砂田圭佑でございます。  私は、内航海運の規制緩和に限って質問をさせていただきます。  私は、規制緩和が日本経済の活性化をもたらすという目的に反対をするものでは決してありません。しかしながら、規制緩和は、これまでの日本の経済のシステムに大きな変革をもたらすものであります。確固たる理念と目的を持って取りかからなければ、改革どころか混乱をもたらす結果になるのではないかと思うものでございます。特に、規制緩和という創業がもたらす副作用、そのことを大変心配をするものでございます。私は決して、古いシステムをそのままに継続しようという保守の立場をとるものではございません。長い時間の中で培われた伝統や秩序を十分に生かしながら、時代に即応した新しいシステムを構築することこそ、規制緩和を実行していく上で忘れてはならない本来の目的であると考えるものであります。  私は、昭和三十年の半ばごろ、船を一杯だけ、一隻だけ持つという、いわゆる一杯船主でありました。そのころの内航海運の実情は、三ちゃん船主といいますか、お父ちゃんが船長でお母ちゃんが機関長というような形態で、そしてその日の油代と米代が出ればいい、寝泊まりは船で、いわゆる船主船長という船がたくさんこの内航にはありました。  したがって、運賃の設定も、米代と油代が対償でありますから、それほど企業という形でもありませんから、我々が荷主と契約をする六割ぐらいの運賃で荷物を運んだものでございます。したがって運賃市場は極めて乱れた状況の中で、荷物のとり合いが横行したものであります。  一方で、船腹は、銀行と造船所が連携をいたしまして、わずかな自己資本で船を建造することができました。したがって、ちょっとした地方のお金持ちは銀行にそそのかされて船を幾らでもつくるという状況でありますから、大変な船腹過剰の状況であります。  一方、積み荷の方は少数の大きな荷主、大企業によって供給されていましたから、その大きな荷主の強大な力に支配をされて、自由な市場原理が取り入れられて市場経済がというような状況にはほど遠い、そういう市場でありました。私も、低廉な運賃と船員費の高騰によって、ついにこの事業から撤退を余儀なくされたわけであります。  ところが、昭和三十九年、内航二法が制定をされて、その後、船腹調整事業が始まるとともに業界はその安定の度合いを大変深めてまいりました。内航業界の自主調整として、船腹量が過剰にならないように、また船舶の近代化を図るためのスクラップ・アンド・ビルド方式によって船舶の建造調整を実施し、内航海運業者の経済的な地位の向上と経営の安定が図られてきたわけであります。  そして現在では、多量の船腹過剰の状況の中で、しかも業界には自由に参入することができる、そしてまた運賃の自由を守りながら国内貨物の四五%近いシェアを占めて、国内の事業国民生活に必要な物流の安定輸送に大変貢献をしているものでございます。また、その運賃面においても、一般に外航船と比べて高いというようなイメージがありますけれども、実際には、内航海運で運んだ原料によってできた製品の中に占める内航運賃の割合というのは、まことに少ない、安いものでございます。このことは運輸省の調査によってもはっきり証明をされているところでございます。  しかも、内航海運業界は、六千社という中小企業者の集まりであり、それで構成されていて、そのうちの七三%が資本金が一億円以下であるという、まことに弱い体質の企業の集まりであります。特に、船腹調整事業の解消がうわさをされただけで銀行を大変刺激をして、担保をもっとふやせというような要求をされたりして、業界に既に混乱が始まっているのが内航海運の現状であります。  大臣にお伺いいたしますが、このような状況の中で、船腹調整事業が廃止されようという中で、規制緩和についてどのような基本的な理念をお持ちになっているか、お伺いをいたします。
  166. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 先生は、この内航海運の業界については、日ごろから専門的な知識も持っておりますし、また経験も踏まえて大変お詳しいわけでございまして、そういう観点から、今、内航海運業界現状についていろいろと御意見を拝聴させていただいたところでございます。  規制緩和についての私の基本的な考え方をお尋ねでございますけれども、御承知のとおり、まさにこの需給調整というものは運輸行政の根幹をなしてきたものであります。これを、原則この規制を廃止するということでございますから、いわば政策の大転換をこれから行おうとしているわけでございます。人流、物流、それぞれの分野でそれぞれの業界の方々に御理解もいただかなければいけませんし、また、これから必死になって、目標期限は切っておりますけれども、その期限の範囲内で私どもとしては最大限の努力をしていかなきゃいかぬという課題を、責務もまた負わされているわけでございます。それは、一方では今日の運輸、交通の市場が成熟期に入っているという観点から考えられることでもありましょうし、今日の行政改革経済構造改革というものが極めて近々の課題になっているという観点からも考えていかなければいけない問題だと思っております。  しかし、いずれにいたしましても、自由競争が促進されることによって事業者の方々の活性化それから効率化が図られる、一方では、それを利用される多くの利用者の方々の運輸サービスに対するニーズというものが多様化してくる、運賃に対する低減が図られる、そういう光の分野も確かにありましょう。そしてまたそれが求められている時代でもあります。  しかしながら、一方、今先生がおっしゃっているように、影の分野と申しますか、それに伴ってのさまざまな解決していかなければいけない条件、環境整備をどうやっていくのかということも私たちは忘れてはならないと思っております。むしろその分野をどう手当てしていくのか、どう整備していくのかということの方が、難しくもあり、また大切な分野ではないかな、そういうことを踏まえながら、これから個々の分野においてそれぞれ運政審に諮問もいたしましょうし、答申をいただいた上で、環境整備、そういったことを十分踏まえて適切に対処していくという方向づけ、このことが極めて大事なことではないか、そういう認識でこれを取り扱っていきたい、取り組んでいきたい、こういう決意でございます。
  167. 砂田圭佑

    砂田分科員 大変ありがとうございます。連日お疲れの運輸大臣に御丁重なお話を伺いまして、御答弁いただいてありがとうございます。  前段申し上げましたように、私は決して規制緩和あるいは自由な経済競争によって経済が活性化していくことに後ろ向きでいるわけではありません。ただ、その副作用としての大臣おっしゃる影の部分について、この業界にもたくさんの方々がいらっしゃるわけで、何としてもその部分について常に目配りをしていていただきたいという思いでお伺いをいたしました。  そして、この内航海運が、長い歴史の中で、この日本の国に対していろいろな形で貢献をしてまいりました。そのことを少し御理解をいただきたいと思いましてお話を申し上げるわけでございますけれども、まず社会的な面では、あるいは国家への貢献という面では、何と申しましても、海上運送法で決められて、危機管理の場合に救助のための航行をすることを運輸大臣が命じられるという大きな条項があります。そのことは、運輸大臣の御命令があれば、いつでも受けて立つ状況業界としてはいるわけであります。  少し象徴的なことになりますけれども、ここ十年の間にいろいろ貢献した実情を申し上げれば、例えば八年ぐらい前の湾岸戦争のときに、日本の内航の近海の船が、それまで外国船員を乗せていたそういうのをみんなおろして、日本船員に乗りかえて、そして湾岸戦争の後方支援を行った。その会社の社長さんが運輸大臣の表彰を受けたことをもっても明らかだと思いますけれども、そういう形で湾岸戦争でも随分努力をされた。  先般の阪神・淡路の大震災では、和歌山から消防団員と消防車を丸々船に乗せて神戸へ送っていただき、私は神戸の出身でありますから、神戸の消火活動にお力をいただいたことも、大変ありがたいことだったというふうに感謝をしているわけでございます。  また、沖縄の問題が生じますと、少しでも沖縄県に何かの形で協力をというような思いで、沖縄の水産学校の卒業生をすべて一〇〇%雇用をするということも既に実行されているところであります。沖縄で今計画中のジェットフォイルのノウハウを、神戸の市役所と港湾局と結んでいろいろ知恵をかすというようなことも始めておられます。  先般のナホトカ号の重油の流出事故でも、早速に六隻のオイルタンカーを現地に派遣をし、油になじんでいる船員で重油の回収作業に当たったという実績もございます。  最も近い話題では、中国、ベトナムから日本に流入してくる難民の公海上での監視、怪しい船があれば海上保安庁に通報する、既にその実績も上がっているように伺っておりますけれども、そういう面でも社会的、国家的に貢献をされていることも事実であります。  これらのことは、やはり業界が経済的にも社会的にも安定をしていることがそういうことを可能にしているという面があります。これから先こういう役割を依然として内航海運業界に持っていただくためにも、この業界が安定的であることが望ましいのは国家から見ても同じ思いではないかという気がするわけでございます。  このような社会的、経済的な役割を果たす内航海運について、運輸省ではどのようにこの内航海運を位置づけ、あるいは御認識をいただいておりますか、お伺いをいたします。
  168. 岩田貞男

    ○岩田(貞)政府委員 先生が今お話しになられましたように、内航海運業界が、単なる輸送だけではなくて、さまざまな分野で私どもに御協力いただいていることにつきまして、大変感謝いたしているところでございます。  それもそうなんですが、もう一つは、本来の業務であります輸送分野におきましても大変な役割を果たしているということで御説明をさせていただきますと、内航海運は、国内貨物輸送量の約四三%、これは重厚長大が我が国の主要な産業だったころには五〇%以上を占めておったのですが、現在でも四三%のシェアを持って、国内物流の大動脈として、我が国の経済や国民生活に極めて重要な役割を果たしていると私ども認識しております。  中でも、ガソリン、灯油等の石油製品やセメントの輸送量の約九割は実は内航海運が担当しているわけでございまして、タンクローリーの自動車を時々見ますけれども、それは海からサービスステーションまでの短い区間を輸送しているわけでございまして、トータルで見ると九割ぐらいは石油製品は内航海運で運ばれているということでございます。それから、セメントも同様でございます。  さらに、鉄鋼関係につきましても、七割以上はトンキロベースで内航海運が担当しておりまして、産業用の基礎資材の輸送については、それ以外にもございますが、大半が内航海運によって担われているということでございます。  さらに、今先生がおっしゃいましたように、一定のカルテルのもとで安定的な輸送を担ってきたということで、いかなるときでも余り跛行がなくお客様というか輸送のニーズにこたえてきたということでございまして、そういう意味では、我が国の産業の発展を陰で実質上支えてきたのだと私どもは思っています。  一方で、実は製品輸送の方でございます。例えば繊維製品ですとかあるいは機械ですとか、こういったたぐいがあるわけでございまして、この方面ですと、内航の場合は、繊維ですと一%とか、機械ですと二割ぐらいでございまして、ややトラックにその主役が行っているわけでございます。そんなことではございますが、これからの地球環境問題とか道路交通の混雑問題などに対応いたしまして、長距離幹線の物流をトラックからより効率的な大量輸送機関であります海運などにシフトさせるという、私ども、いわゆるモーダルシフトといっていますが、その主要な受け皿として今後内航海運の役割が大きく期待されるのではないかと承知いたしております。
  169. 砂田圭佑

    砂田分科員 ありがとうございます。  局長の御認識のとおり、国の周りを海に囲まれた我が国にとっては、内航海運は国家にとっても重要な存在であります。その内航海運業界が、脆弱な体質を、唯一自主規制の船腹調整事業によって身を守ってきたわけでありますけれども、規制緩和の流れに従って、船腹調整事業も解消に向かって動き始めているわけでございます。もっとも、ヨーロッパ、EUではオールド・フォー・ニューという規制によって船腹調整制度を導入しておりますし、また中国でも、背景に多少の違いはありますようですけれども、船腹量を調整する措置が公的にとられている話もせんだって伺いました。  日本の場合、船腹調整事業を廃止した場合にどんなメリットがこの業界にあるか、先ほどの経済の自由な競争の中での活性化ということもありますけれども、もう少し具体的に、内航海運業界にとってどんなメリットが起こり得るのか、あるいはどんなデメリットが想定をされるのか、そこのところをお伺いをしたいと思います。お願いをいたします。
  170. 岩田貞男

    ○岩田(貞)政府委員 船腹調整事業の解消の問題につきましては、先生案内のとおりでございますが、実は、平成六年の七月から約一年間にわたって、もちろん内航海運組合の方々もメンバーとして御参加いただきまして、それから学識経験者、私どもも入りまして、あるいは荷主さんの代表者も入りまして、海運造船合理化審議会の場におきまして真剣な論議がなされ、平成七年の六月に計画的な解消ということで答申がなされたわけでございます。さらに、平成七年の十二月の行政改革委員会の意見におきましても、この解消することによるメリット、あるいは今、解消に伴って逆にデメリットというか、血が出るという、産みの苦しみの方も議論がされたわけでございます。  それを御紹介をさせていただきますと、その解消することのメリットとして、意欲的な関係者の事業規模の拡大や新規参入が制限されるため、内航海運事業の活性化に船腹調整事業は支障になっているというようなことが一つとして挙げられてございます。それからまた、同様に、調整事業への過度な依存体質によりまして、経営基盤強化に向けた構造改善が進まない、それぞれの事業者規模が大きくならないということが一つの例として挙げられると思いますが、そのような要因になっている等々の問題点が指摘されておるわけでございます。  それでは、計画的解消をしていくときにどういう問題があるかといえば、これもいろいろなことが書いてございますが、代表的な事例を申し上げますと、船腹調整事業という一つのカルテルがあるものですから、船腹に引き当て権が生じている、これが、引き当て権が担保になって銀行からの融通がなされているということ。そういう意味では、この計画的解消をすると、そういう融通の点が欠落してしまうものですから、これから新たに船をつくるという方がおられる場合は資金的に非常に問題が起こるということでございます。さらに、これはすべての制度が改正するときにそういう問題が起こるわけでございますが、特に、小さな専業的な方には少し痛みが生ずるというようなことが指摘されております。  こういったことにつきましては、我々としても、我々としてもというか、既にこの答申の中にいろいろな環境整備を進めるべきであるというようなことがなされておりまして、今国会に御審議をお願いをしております内航海運組合による債務保証制度ということも一つの計画的解消の条件として掲げられているところでございます。
  171. 砂田圭佑

    砂田分科員 私も最初に申し上げましたとおり、私は、まだ内航二法も何もない、ただ船をつくって許可さえもらえれば運航できるという、全く自由な競争の中で内航海運に身を置いた経験から申し上げれば、自由になればなるほど、少数の大きな荷主の力、優越的な地位の乱用がますます横行する、私の経験では、まずそこから始まるだろうということは火を見るよりも明らかではないかという思いがして、身の縮むような、かつての同業者の皆さんの思いが伝わってくるわけであります。  日本の国は決して政治家のものでも官僚のものでもなくて、日本はあくまでも日本人一人一人の国でありますから、日本国民生活の安定を図ることこそ、政治、行政の本来の目的であります。内航で生活する人三十五万人の、この人たちの生活が逼迫したりすることのないように我々は常に考えなければならない。  今も少し局長さんからお話を伺いましたけれども、この船腹調整事業の解消によって内航海運業界に混乱が予想される部分というのがやはりあると思います。私は、きょうは特にこの副作用の部分について申し上げているのでそういう言い方になりますけれども、そういう混乱が予想される。確かにメリットもどこか遠いところで存在しているけれども、しかし、反面、そういう混乱も予想される。そういうことについて、どんなふうな対応をお考えになっているか、あるいは少し具体的な策をお持ちかどうか、お伺いをしたいと思います。
  172. 岩田貞男

    ○岩田(貞)政府委員 長年やってまいりました船腹調整事業を一定の計画的な配慮のもとに解消していくわけでございまして、今先生のおっしゃったような、大変な副作用という御発言がございましたけれども、その中には副作用があることも確かでございます。私どもとしては、これを直ちにやめるということではなくて、少なくとも一定の期間環境整備をしようということが前提になっているわけでございます。  その環境整備の中では、自己資本の充実ですとか、あるいは、これはグループ化とか協業化をお願いをすることが中心になると思いますが、企業の集約化をしていく。それから、ただいま申し上げましたような引き当て権がなくなっていくわけなので、担保措置としての債務保証制度の実施をするとか、あるいは、今先生がまさにおっしゃいましたような、いろいろな荷主さんがおられるわけですが、巨大な荷主さんと小さな海運会社が対等の立場で運賃その他の交渉ができるようなことをする必要があるわけなので、荷主さんの優越的地位の乱用を防止するための歯どめの措置として何かすばらしい制度がないかとか、いろいろなことを検討し、それを実施しながら、内航海運における船腹調整が整然と、かつ円滑に、計画的に解消がなされるように、そういうように努力していきたいと思っております。
  173. 砂田圭佑

    砂田分科員 ありがとうございます。  債務保証一つをとっても、業界が安定すればこそその基金の拠出もできるというものでありますので、そのこと一つとっても、業界にとっては大変重い荷物で、ちょっとした痛み、短期的な痛みだけではなくかなりの痛みを伴う、時には重症に陥る、そんな状況が横たわっているかと推察できるわけでございます。運輸省の適切な御指導をお願いを申し上げておく次第でございます。  いずれにいたしましても、この業界生活のよりどころとしている三十五万人の人たちが不幸にならないような万全の対応をお願いを申し上げます。  そして、この業界が自力で自主的にこれからの環境整備を行っていくために、昨年、平成八年の三月の閣議決定に沿った五年をめどにした環境整備、そういう緩やかな具体策を、解消策を図っていくことが人に優しい策ではないかということを申し上げて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  174. 関谷勝嗣

    ○関谷主査代理 これにて砂田圭佑君の質疑は終了いたしました。  次に、吉川貴盛君。
  175. 吉川貴盛

    吉川分科員 お時間をちょうだいをいたしましたので質問をさせていただきたいと思いますが、古賀大臣におかれましては、重油流出事故やあるいは連日の予算委員会等々で大変お疲れのことだろうと思います。  大臣は私の大学の先輩でありまして、我が大学の校風は先輩をおもんばかれというものもございますので、大臣にはごく一問程度でお伺いをさせていただきたいと思いますので、どうぞ後はゆっくりお休みをいただきたいと思います。  私も北海道でありますので、特に暮れの整備新幹線のことにつきましては一生懸命声を大にして活動させていただいたところでありますが、御承知のように、新幹線は東京オリンピックのときに開通をいたしまして、そのときに、よく覚えているのでありますが、「ひかりは西へ、西へ」という言葉がございました。子供の歌にもなったところでありますが、私も小さな子供にその歌を歌ってあげたことがございます。童謡、歌といいますか、その一部でありますけれども。  私が初めて新幹線に乗りましたのは高校二年生のときでありまして、昭和四十一年か二年のときであります。東京から京都まで、こだま号でしょうか、実にすばらしい乗り物だなということを今でも実感として覚えておりまして、田舎から出てきた私にとりましては、大変なカルチャーショックを覚えたことがございます。  前置きはこれまでにいたしまして、整備新幹線についていろいろとお伺いをいたしますが、二月二十八日付で、北海道知事を初めとして鹿児島県知事まで、青森、岩手、東京、埼玉、群馬、長野、新潟、富山、石川、福井、京都、大阪、福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島、この十八都道府県の期成同盟会が緊急のアピールを行いました。  これは、大臣あるいは運輸省、鉄道局長のところにも届いているのだろうと思うわけでありますが、これを読みますと、この新幹線というのは、生き生きとした日本を築くためにも、必要不可欠な国家的。プロジェクトだと思っています。広域的経済圏を形成したくても、近い割りには交流ができない、圏域が拡がらないというのが未着工区間地域の共通の悩みでもあり,「地方の時代」を築いていくためにも整備新幹線の建設促進は私たちの切実な願いであります。   新幹線の建設によって、これまでも大きな有効需要が創出され、その経済波及効果は多方面に及び、 云々と書いてございます。残念なことに整備新幹線には、平成九年度予算においても、年間公共事業費の僅か〇・三%しか投入されていないのが実態であります。 ここがこのアピールのある面では重要な部分なのかなという感じもいたしますが、たくさんの夢が託されている整備新幹線の建設促進を心から願い、ここに強く要望するものであります。 十八都道府県の切実なる願いがこの緊急アピールによって出ているものと私は思います。  基本スキームを新しく昨年策定をされたわけでありますが、これを一々きょうは申し上げません。五つの柱から成っているところであります。  私は、この整備新幹線について、予算化をされ、このたびの予算委員会等々で議論をされている中で大変残念に思うことは、きょうはマスコミの方もいらっしゃるのだと思うのでありますが、例えばこのマスコミさん、さんはっけなくてもいいんでしょうか、あるいはいろいろな関係者から採算性のみが取りざたされておりまして、本来の効果や果たすべき役割が完全に私は無視をされているのではないかというような気がいたします。  現在の営業中の新幹線は、これは大臣も御承知のように、地元負担なしでありました。これからの新幹線は、地元も負担を覚悟してこの整備を図っていこうということでありまして、地域エゴと見られている点に関しましては、大変残念なことであります。さらに、この整備新幹線は、採算性が厳しくて第二の国鉄になるのではないのかというようなことも言われ、そして行財政改革に逆行しているという強い意見もあるようであります。さらには、私はこれは本末転倒だと思うのでありますが、株安ですとか円安、さっぱり改革が進まない代表にこの整備新幹線のせいだと言われているのは、私は本当に根も葉もないこじつけだ、こう勝手に理解をさせていただいております。  新しいこの基本スキームをよく読むと、私は、今言われているような御批判等々は全く当てはまらない、この基本スキームなるものを皆さんはよく理解をされていないのかなという感じさえするわけであります。  そういった前提と申しましょうか、感じを持つものでありますから、そういった観点に立ちながら幾つかお伺いをさせていただきたいと思います。  最初に、大臣に一つだけお伺いをさせていただきますが、この整備新幹線の計画沿線人口は約四千万人に達していると言われております。一方、中央の圏域では新幹線も高速道路も他地域に先駆けて整備をされておりまして、中央と地方の格差は広がる一方だと言われているわけであります。  申し上げるまでもなく、二十一世紀に向けた全国高速交通体系の根幹として、あるいはまた国土の均衡ある発展を図る上で、私はこの整備新幹線の建設は不可欠なものだと考えておるのです。その辺につきまして、大臣整備新幹線に対する基本的なお考えを伺わせていただきたいなと思います。
  176. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 先生から整備新幹線について大変エールを送っていただいて、私も心強く思っております。  先生指摘のとおり、我が国が国土の均衡ある発展、真の豊かさを実感できる生活、こういうことを言われてもう久しくなるわけでございます。私は、この整備新幹線は、国土の均衡ある発展という観点から考えたら、今言われております二十一世紀に向かっての高速交通体系の形成という意味では一番適した輸送機関であるというふうに思っております。  常に幾つかの点を挙げられているわけでございますが、まず、後輩である先生ですから、甘えて言わせていただくわけではございませんが、先生みたいに大変体重の重い国民にとりましても大量の輸送ができるという、そういう意味でも私は輸送機関として極めて貴重なものがあろうと思いますし、正確性、安全性それから環境の面、またエネルギーの観点から考えても、二十一世紀の高速大量輸送機関として、私は最も適しているというふうに思います。  また同時に、沿線四千万人というお話がありましたけれども、まさに地域の活性化にとりましても、この整備新幹線に期待される分野というのは非常に大きいわけでございます。何よりも今、四千万人の国民皆様方の新幹線に寄せる熱い期待というものがあるわけでございます。  政治はやはりそうした期待にこたえていくということが大事なことでありましょうし、二十一世紀の高速交通体系というのは、我が国の国土の均衡ある発展だけではなくて、物流、人流の円滑な交流という意味からも、子供さんやお孫さんたちにこの施設を残していくということも今政治家としての我々がやらなければいけない責務であるという観点から考えましても、この整備新幹線というものを新しいスキームの中で着実に一つずつ推進をしていくということは大変重要なことだということを私自身認識しながら、先生の御支援をいただきながら、適切にそして前向きに対処していきたい、整備に向かって努力をしていきたいということを申し上げさせていただきたいと思います。
  177. 吉川貴盛

    吉川分科員 大臣から大変力強い御答弁をちょうだいをいたしまして、意を強くしている限りであります。  今度は事務的な部分でありますから、鉄道局長さんにちょっとお伺いしたいのですが、いろいろな批判があるという中で、整備新幹線、採算性が乏しいといいますか、こういう論調が多く見られるわけであります。特に、先ほども申し上げましたが、地元も負担を覚悟してまでこの建設の決意を固めているにもかかわらず、地域のエゴじゃないかとかなんとかということは、これはまさしく四千万人の方々も耐えられないことなんでありますね。このことについて、どのように鉄道局は認識をされていますか。  それからもう一つ、今後政府与党で設置される検討委員会のメンバーあるいはスケジュール等が今もし明らかになるのであれば、そのことをお伺いをさせていただきたいと思います。いかがでしょうか。
  178. 梅崎壽

    ○梅崎政府委員 何点かお尋ねでございますが、まず最初に収支採算性の問題でございます。収支採算性、あるいは収支改善効果と言いかえても差し支えないと思いますが、これを私ども実務的にどうやっていくかということでございますけれども、まずそれから御説明させていただきたいと思います。  私ども、収支改善効果は、新幹線を建設しまして並行在来線を経営分離した場合の新幹線の収支それから関連線区の収支、これを合計したものから、新幹線が建設されない場合の並行在来線の収支と関連線区の収支、これの合計したもの、この差し引きで、新幹線を建設した場合にどれだけの収支改善効果があるかというのを検討していくということにしております。これは、今の三線五区間も同様でございます。  先生も御指摘ございましたが、マスコミ等の論調におきまして、この収支採算性の見通しに関しましては、今の三線五区間でもとっておりますこのようなやり方につきまして、必ずしも十分に承知をされなくて言っておられるように私どももちょっと見受けられる点もございまして、この点につきましては、よく御理解を賜っていきたいと思っております。いずれにいたしましても、この収支採算性の問題といいますのは未着工区間の整備を進める場合の基本条件の重要な一つでございますので、政府与党の検討委員会におきまして十分検討をしていくという問題でございます。  それから、地元のエゴではないかというような点について、どのように認識をしておるかというようなお尋ねでございますけれども整備新幹線は、先ほど大臣お答えしましたとおり、我が国の高速交通体系の形成上極めて重要かつ有益なものであると私ども認識いたしております。このようなものでございますので、この整備新幹線の整備の方式に関しましては、長年にわたり検討が進められてきたところでございますけれども、今回成案を得られました財源スキームにおきましては、地域も、従前の自主的な判断に基づく奨励的な補助から、法律上の負担として、義務的な負担としてその資金を提供するということまで踏み切ったものでございます。  このような観点からいたしますと、この整備新幹線の整備に関しまして、地域のエゴというような批判をされることは、私ども運輸省といたしましては当を得ていないのではないか、このように考えているところでございます。  それから、検討委員会のメンバーあるいはスケジュールというような御質問でございましたが、これは大臣からも予算委員会等におきまして既に御答弁申し上げておりますが、この未着工区間の問題、新規着工区間の問題に取り組むためには、新しい財源スキームが成立することが前提でございます。このためには、九年度の予算が成立し、あるいは関連の法律改正がなされるということが必要でございます。したがいまして、この政府与党の検討委員会につきましても、このような状況を踏まえながら、今後政府部内あるいは与党の間で調整を行ってまいりたいと思っております。  なお、スケジュールにつきましても、これは政府与党の検討委員会におきまして今後詰めるべき問題でございます。
  179. 吉川貴盛

    吉川分科員 懇切丁寧に鉄道局長さんからの御答弁をいただきましたが、今後のスケジュールにつきましては、予算が通過をしませんとこれは何とも言えない部分があろうかと思いますが、できれば一日も早くこの検討委員会をぜひ設置をしていただきたい。大臣にもお願いをしておきたいと思います。  最後は、これは整備新幹線に対して要望になりますが、ぜひ早期着工を望む国民の声を厳粛に受けとめていただいて、全力で取り組んでいただきたいなと思います。特に北海道新幹線は、この新幹線のフル規格に合わせて青函トンネルを整備しておりますので、早期着工を特に御要望させていただきたいと思います。  それから、続きまして、質問といいましょうか、要望になるかもしれませんが、せっかく黒野航空局長さんにもおいでをいただきましたので、一つだけ、御意見があれば御意見を申し述べていただきたいと思います。  第七次空港整備五カ年計画の中で、札幌飛行場、私どもは通称丘珠空港と呼んでいるわけであります。私の地元なわけでありますが、ジェット化をということで地元の自治体が一生懸命進めていたわけでありますが、近くまで市街地になってしまいまして数万人の方が住んでいる、騒音や、あるいはジェット機に対するいろいろな住民の思いもございまして、残念なことこジェット化というものを断念をいたしました。それは去年の出来事でございます。  現在就航いたしておりますANKという会社がYS11という機種を今使っているのでありますけれども、このYS11にかわる新機種と申しましょうか、後継機種の絞り込みを今やっております。後継機種の選定とあわせて、地元の北海道やあるいは札幌市もこの施設計画の検討に入るところでありまして、平成九年度におきましては、北海道は、滑走路の延長あるいは就航率向上のための計器による着陸誘導装置等々の整備を図っていこう、そして空港整備計画案をつくり、地元に説明し、住民の理解を得ながら事業化を図っていこう、こういうことであります。  この五カ年計画の中に、大変ありがたいことに、「地方空港及び離島空港」という部分で、「札幌飛行場等の空港の整備について調査検討し、必要に応じその整備を図る。」と入れていただいたところでありまして、これは地元あるいは自治体にとりましても大変心強い限りでございます。  そこで、実際には、地元がどのような整備計画をつくるかによって、運輸省としての支援体制というものが決まってくるのだろうと思うわけです。そこで、私は要望として、この事業化の折には特段の御配慮をぜひお願いをしたいと思いますので、よろしくお願いをいたしたいなと思います。これは要望です。局長、何か御意見がありましたら言っていただければと思います。なければ結構です。
  180. 黒野匡彦

    ○黒野政府委員 実は、丘珠の整備につきまして、かなり早い時期から北海道さん、それから札幌市の方々と相談をしました。それで私どもも、YSが交代しますと、ジェット化するというのを比較的全国的にやってきておるのですが、あの周りを見ますと、市街化区域がかなり迫っておりまして、ここでもしジェット化を進めるとすると、最悪の場合、何年たってもできないという可能性もある。  皆さん方は、YSの交代イコールジェット機、こういう直結したお考えをお持ちの方が多いのですが、まだ世界には優秀なプロペラ機もあるわけでございまして、ほかのプロペラ機を選ぶという手もありますよ、あえて言えば、その方が結果としていいのではないでしょうか。といいますのは、丘珠は北海道の航空の拠点としてこれからも維持していくわけでございまして、あの中で、ジェットで飛んでもプロペラ機で飛んでも所要時間は余り変わらないわけでございますので、地域住民の方々の騒音に対する反対が当然大きく起こるということを前提で御判断された方がいいですよ、こういうアドバイスをさせていただきました。その結果、市、道ともにプロペラ機の方を選ぼうというふうになったと聞いております。  私ども、丘珠は防衛庁さんにお借りしている空港でございますが、まさに先生おっしゃいましたように、航空関係の誘導機器が余り民間用には整備されておりませんものですから、まさに今御指摘のような整備につきまして、こちらも全力を挙げたいと思っております。
  181. 吉川貴盛

    吉川分科員 終わります。大臣、どうもありがとうございました。
  182. 関谷勝嗣

    ○関谷主査代理 これにて吉川貴盛君の質疑は終了いたしました。  次に、原口一博君。
  183. 原口一博

    原口分科員 新進党の原口一博でございます。  郷土の大先輩であります古賀運輸大臣、至誠通天という言葉があります。誠を尽くせば天はそれを見ているのだ。大臣、さまざまな難局を、そして、新しい二十一世紀の高速交通体系を大臣のお力によって開いていただきますように、この御就任に当たり心からお喜びを申し上げ、そして質問に入らせていただきたいというふうに思います。  質問の要点は二点であります。主に、高速交通体系の整備についてでございますが、まず、国際空港の整備について、大臣の基本的な考え方をお尋ねしたいというふうに思います。  二十一世紀に向けて、大競争の時代が始まろうといたしています。通信については、今市場規模が六千億ドル、これが二〇〇〇年には一兆二千億ドルまでになります。また、橋本総理が表明されましたように、金融の世界においても、ビッグバンが起こり、大変な競争の時代に入ります。国際空港、国際貨物、国際旅客の世界においても、大競争の時代に入るというふうに思います。  まず、政府委員の方にお尋ねをしたいのですが、今の旅客の状況、国内線、国際線、そしてその需要の伸びをどのようにとらえておられるのか、お尋ねをしたいというふうに思います。
  184. 黒野匡彦

    ○黒野政府委員 今先生指摘のとおり、幸い航空の需要は非常に強く伸びております。  まず世界的なことをちょっと申し上げますと、ICAOあるいは民間団体であります機関とかその辺が、世界的な航空需要がこれからどうなるかということをかなり真剣に予測を立てております。いずれもかなり高い比率を彼らは想定しております。例えて申しますと、ボーイングという会社がございます。この会社の予測によりますと、二〇〇〇年から二〇一〇年にかけては毎年五%で世界の需要は伸びますよ、こんなかなり強い数字が出ております。  私どもは、今の七次空港整備計画をつくるときに我々なりの予測を立てておりまして、一九九五年から二〇〇〇年にかけては四・一%ぐらいの伸びがあります。さらに、国際の方はそれよりも強くて六・二%の伸びがあります。こういう数字をベースに空港整備考えておりまして、人数だけ申し上げますと、二〇〇〇年の国内旅客の数が九千二百万人、それから国際線の方は五千五百万人、そんな数字を想定させていただいております。
  185. 原口一博

    原口分科員 その中でも、今お話しになりましたように、過去二十年間、世界経済の平均成長率というのは三%台、アジア地域は年率八%で成長をいたしています。東アジアの市場規模というのは、四兆四百億ドルをもう超えている。日本の一・六倍、アメリカの約七割の水準まで成長をいたしています。その中で私たちは、アジアと結ぶさまざまな国際空港の必要性、そのことを強く感じるわけであります。  今旅客の推移をお話しになりましたが、その推移の中身を見てみますと、いわゆる二眼レフ構造と申しますか、関西圏、そして羽田、成田を中心とした関東圏、この二つに旅客、貨物が集中しているのが現状だというふうに思います。私は、これを国土の均衡ある発展のために日本の各地に分散をしていかなければいけない、その観点から幾つか御質問をしていきたいというふうに思います。  その中で、私は、近隣アジア諸国における大規模国際空港がどういうふうに整備されるのかということでちょっと調べてみましたが、運輸省はどのような認識をお持ちなのか、お答えいただきたいというふうに思います。
  186. 黒野匡彦

    ○黒野政府委員 アジア各国におきましては、今精力的に空港整備を進めております。  例を申し上げますと、韓国の仁川では、二〇〇〇年の供用開始を目指しまして三千七百五十メートルの滑走路二本を建設中であります。特に大きいのは、シンガポールでは面積が千六百ヘクタールの中に四千メートルの滑走路を二本供用するというような形で、今先生がおっしゃいましたアジアにおける国際航空需要あるいは国内航空需要の伸びをそれぞれ受け入れるべく、各国とも努力をしているということかと思っております。
  187. 原口一博

    原口分科員 おっしゃるように、韓国の仁川、巨大な空港が今二〇〇〇年を開港の予定としてつくられています。シンガポールのチャンギ国際空港もそうでありますし、クアラルンプールにも大きな空港ができています。そして、上海、香港それからバンコク、これまで入れると巨大な空港がアジアに出現をする。しかも、それは二〇〇〇年の前後に出現をしてくるということであります。  私は、この中で、今のままの整備状況でいくと、日本は大空港時代の大陸の日陰になってしまうのじゃないか、そういう危惧さえ感じるような現状であります。  では、今の空港整備をどのようになさっているのか。その財源の内訳を見ておりますと、その約七九・五%がいわゆる利用者負担、そして一般財源は一三%でございます。他のアジア各国アジアだけではございません、欧米もそうでありますが、国の威信をかけた国際ハブ空港をたくさん建設している中で、我が国の空港整備現状利用者負担によっている、それが現状ではないかと  いうふうに思います。  そして、世界の主要各国の国際線の着陸料の比較を見ておりますと、これは一律には言えませんが、成田がボーイング747140〇型で約九十四万八千円、関西が九十万八千五百円なのに対して、ロンドンのヒースローは七万七千八百七十五円、あるいはパリは四十一万、そしてニューヨークのジョン・F・ケネディ空港は三十二万、いわゆる着陸料にこんな差が出ております。  私たちは今こそ、今国会の中では財政改革そして財政再建が花盛りでありますが、私は運輸大臣にぜひお願いをしたいのは、二十一世紀に向かってスクラップ・アンド・ビルドをしていかなければいけない、畳まなければいけない予算があるのとともに、二十一世紀の成長点としてもっともっとふやさなければいけない予算がある、その予算はまさにこの国際空港の整備予算であるというふうに思いますが、運輸大臣の御所見をお伺いしたいというふうに思います。
  188. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 先生から御指摘いただいているように、まさに二十一世紀は国際社会が到来してくるわけであります。そういった中で、我が国も国際社会の中にあって安定した成長をなし遂げていくということは極めて重要なことだろうと思います。とりわけ、今先生も御指摘いただいているように、東南アジア諸国におきましては、国際ハブ空港の整備各国とも大変なスピードで今推進をされているわけであります。我が国におきましても、昨年の暮れに閣議決定させていただきました第七次空港整備五カ年計画、これにおきましては、大都市圏の拠点空港の整備を最優先に進めていく、それには、新東京国際空港、関空、そういった第二期工事を着実に進めていくということを基本にさせていただいているのは先生も御承知のとおりでございます。  しかしながら、今御指摘いただきましたように、それぞれの国との比較の中で、財源問題等を含めて、これから国際社会が二十一世紀初頭には確実にやってくるという状況の中で、これで本当に交流の基盤になる空港整備が、とりわけ国際ハブ空港の整備というものが間に合うのかどうか、極めて真剣に考えていかなければいけない課題だと思っております。財源の問題、公共事業全般の中でのシェアの問題等、総合的に私も検討する時期に来ているという認識で、前向きな検討を考えてみたいと思っております。
  189. 原口一博

    原口分科員 大臣の前向きな御答弁、ありがとうございます。  各空港の総工費を滑走路千メートルで割ったキロ当たり単価というのを出してみました。その中で、関空の場合は一キロ当たり四千百六十六億円、広島空港は安くできていますね、二百八十四億円、アメリカ・デンバーの国際空港は百七十八億円。これから、この限られた財源、今大臣がおっしゃったように財源をふやしていただくのとともに、これからつくる国際空港の要件は、都市圏に今度の七次空整は重点が置かれていますが、一方で、均衡ある国土の発展を目指して地方で、安くしかも早くできる、そういう国際空港を目指すべきだというふうに思います。  成田空港における国際線のジャンボ機の着陸、どういうふうになっているかというと、最短のときは約二分間隔で、そして飛行機と飛行機の間が三マイルしか離れていない、そういうような超過密の中に飛んできている。私はこれを分散させなければいけないというふうに思うわけでございますが、御所見をお伺いしたいというふうに思います。局長、よろしくお願いいたします。
  190. 黒野匡彦

    ○黒野政府委員 御指摘のとおり、日本の空港は大変高い空港でございまして、コストの削減にはこれからも努力をしていかなければいけませんし、また、空整特会全体としては重点化という方向を目指すべきだと思っております。現在の第七次空港整備五カ年計画におきましても、従来よりも地方の空港につきましてはやや絞りぎみで、それにかわって大都市周辺の基幹空港、これに重点的に予算を充てよう、こういうことでやっております。  ただ、何といいましても日本全体が欧米あるいはアジアに比べまして高い物価水準、人件費の水準にございますから、限界はあろうかと思いますが、私ども整備に全力を挙げたいと思っております。  さらにまた今先生指摘の、地方の方に少し分散したらどうか、こういうお話かと思いますが、私どもやはり日本という国土から考えますと、いわゆる超大型の空港をどこかに一カ所つくってそこにみんな、国内線も集めるという方式は、日本ではなかなか難しいと思っております。それは、一つはスペース的に、例えば今羽田が千ヘクタールでございますけれども、世界的には、国際空港になりますとやはり二千ぐらいの規模になるわけですね。そうすると、羽田の倍のスペースを我が国で一体どこで新たに設けることができるかというと、これはどうしても悲観的な結論しかないわけでありまして、したがいまして、我が国におきましては今の成田、平行滑走路ができた後の成田、さらには第二期工事ができた後の関西、この程度の空港を必要に応じまして幾つかつくる、それによってまとめて我が国をめぐる国際航空需要に対応する、こういうことではないかと思っております。
  191. 原口一博

    原口分科員 今の基本的なお考えは私もよくわかります。大都市圏でという七次空整までの考え方を私はどうのこうの申し上げているわけではありません。今の飛躍的に拡大する需要に追いつくためには、関空や、あるいは今計画に頭出しをされている中部国際空港、それから羽田の沖合展開、これは必要なことであります。  しかしその一方で、国家的な視野でもっと、さまざまな七次空整、六次空整、五次空整という五カ年計画ではなくてむしろロングスパン、そして世界の全体の需要を見た、私は今のままの空港の整備をやっていても、いわゆる仁川にできる大きな空港、この受け皿には勝てないし、それからチャンギにも勝っていけない。とすれば、もう一つの別の視点が必要なのではないか。それは、確かに狭い国土でありますが、その中でもやはり、コストの安さでもう一つ空港をつくっていく、そういう視点が要るのではないか。  そしてこれからの国際空港は言うまでもなく二十四時間。私たちはシンガポールから九州に帰ってくるときに、夜中の一時にシンガポールを出なければ日本にタッチダウンはできない、こういう空港はもう時代おくれの空港なのではないだろうか。そして滑走路が一本しかない。世界の国際空港の中で滑走路が一本しかない空港は三つしかない。それは関空であり、成田であり、そして啓徳であります。啓徳空港も成田も関空も今度御努力によって変わりますけれども、それと別に、私は、北海道や九州やさまざまなところに国際ハブ空港をつくる、そういう視点が必要なのではないか。  今の予算のあり方についても、大臣から前向きの答弁をいただきましたからこれはこれでよしといたしますが、私はここに思い切った重点配分をすべきだというふうに思います。  今の基本的な立場から、九州国際空港についても幾つかお尋ねをしたいというふうに思います。  この実現に向けた九州地方知事会、九州・山口経済連合会の取り組み、及びワイズマンコミッティーの一応の結果が出ています。この結果が出る前には、九州の中で国際空港の最適地は大臣のおひざ元であります大牟田でありました。そして二番目の最適地は私の地元であります佐賀でありました。飛行機が非常に安全におりられる、そして有明海の干拓地、沖合展開も非常に安価なコストでしかも早くできるということでありましたが、今回どういうわけか、福岡の津屋崎沖というのが出ています。この結果をどのように受けとめておられるのか、お尋ねをしたいというふうに思います。
  192. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 九州は私の地元でもあるわけでございますが、九州のそれぞれの各界各層の中で、今先生もお触れになりましたけれども、例えば九州知事会だとか九州・山口経済連、こういった各界の中で九州の国際ハブ空港、御論議をいただいていることは承知いたしております。しかし、現段階では、具体的な津屋崎だとか有明海というお話が出ましたけれども、九州のどの地区にというところまで論議の中で集約をされてきているというところまでは行っていないというふうに私自身は認識をいたしております。  しかし、今政府委員との御論議も踏まえ、また先生の、それぞれのこれからの国際ハブ空港の拠点と申しますか、東京圏、関西圏それから中部圏、そして東南アジアとの窓口としてはやはり何といっても九州に、将来を見据えた場合、国際ハブ空港の必要性、重要性というその熱い思いというのは、私も、地元出身ということだけではなくて、日本全体を見詰めた中で、一つの大きな拠点であるという視野に立ってこれから考えていく分野だろうというふうに思っております。
  193. 原口一博

    原口分科員 ありがとうございます。  候補地の絞り込みはまだなされていないという基本的な観点で、私たちは国策として——私たちは、福岡から東京に来るよりも上海に行った方が近い、アジアのいわゆる玄関としての九州の位置があるわけでございます。そして、その中の空港整備、国際空港を整備するとすれば、ぜひこれは視野の中に強く入れていただきたいのは、町を動かすということであります。東京圏に一極集中が進んでいる。九州においても、博多に一極集中が進んでしまっている。これを分散させる、そのことこそが内需拡大のキーワードになるというふうに思います。この七次空整以降の運輸省のお取り組みについて、再度お尋ねをしたいというふうに思います。
  194. 黒野匡彦

    ○黒野政府委員 実は、七次の計画の中にも、若干今の先生の御指摘に対応する表現が入っておりまして、御存じとは思いますが、念のため読ませていただきますと、「地域において多様化し、着実に増大すると見込まれる国際航空需要の動向等への対応について調査検討を行う。」こうなっております。したがいまして、私どもの立場として、今九州をどうしたいということは具体的には申し上げられませんが、国全体として、これからの国際航空需要の伸びを見ながら、空港整備は当然考えていかなければいけないテーマだと思っております。
  195. 原口一博

    原口分科員 私は、財源とそして計画についてももっとロングスパンで、古賀運輸大臣のときから日本の航空政策が変わったんだというようなものをぜひ打ち出していただきたいというふうに思います。  さて、時間があとわずかでございますので、整備新幹線について、幾つかの点を確認させていただきたいというふうに思います。  私は、自由競争で強い人間が勝ち残るだけだったら、政治は要らないというふうに思います。本来でしたら、全国各地に新幹線網が張りめぐらされていかなければいけなかった。しかし、それがさまざまな理由でストップをしているわけであります。  先ほども議論の中にあっていましたが、政府与党の検討委員会はいつごろ設置される予定なのか。この整備新幹線、これからどのような、基本的なスキームは出していただきましたが、そのことについてまずお尋ねをしたいというふうに思います。
  196. 梅崎壽

    ○梅崎政府委員 政府与党の検討委員会でございますが、これは新規着工区間の問題に取り組むものでございますので、この問題に取り組むためには新しい財源スキームが成立することが前提でございまして、このためには九年度の予算が成立し、関連の法律改正がなされるということが必要だと考えております。  したがいまして、このような状況、国会におきます関連の予算あるいは法律案の審議状況を踏まえながら、今後この検討委員会の設置の時期につきましては、政府部内、それから与党との間で調整してまいりたいと考えております。
  197. 原口一博

    原口分科員 私は野党でございますから、その中には入らないのかもわかりませんが、私たちや地元にとっての悲願であります。それはコスト・アンド・ベネフィットがございます。さまざまな地元負担を無視して、そして財源の問題も無視してつくってくださいということを申し上げておるわけではありません。しかし、国土の均衡ある発展というのを常に言い続けてきた私たちとしては、ぜひこのことに前向きに取り組んでいただきたいというふうに思うわけでございます。  その際、整備区間の中で「その他の区間」とされている例えば九州新幹線長崎ルートについては、具体的にはどのようなことが検討されるのでしょうか。そして、何か具体的に着工される見込みがあるのでしょうか。あの選挙のときには随分いろいろなことが言われたわけでありますが、総選挙の中での公約というのがどのように守られていくのか、そのことについてお尋ねをしたいというふうに思います。
  198. 梅崎壽

    ○梅崎政府委員 昨年十二月の政府与党の合意におきましては、具体的な線区の部分に関しまして申し上げますと、合意事項の第三項でございますけれども、「今後の整備に当たっては、与党三党の申し入れ(別紙)に基づき、以下により決定することとする。」こうなっております。この「別紙」では、九州新幹線に関しましては、工事実施計画の認可申請であるとか県境のトンネル難工事推進事業であるとか、あるいは長崎駅の駅部の調査を行う、こういうような内容になっております。  したがいまして、今後政府与党の検討委員会におきましては、この「別紙」の事項に基づきまして、これをどうするかというのを検討してまいることになります。具体的にこれをどうするかは、その検討委員会で今後審議検討されるべき事項でございます。
  199. 原口一博

    原口分科員 私たちは、その検討委員会というのも一つの大きなものなんでしょうけれども、やはり国会の場というものをきっちり大事にしていただきたいというふうに思うわけでございます。  また、九州新幹線鹿児島ルートについては、船小屋−新八代間が新規着工区間というふうにされています。しかし、博多−船小屋間というのはそれには入っていないわけでありますが、博多−船小屋間は着工するのか、それとも従来のルートでもってやってくるのか、その辺について基本的なお考えをお尋ねしたいというふうに思います。
  200. 梅崎壽

    ○梅崎政府委員 鹿児島ルートにつきましては、現在も八代と西鹿児島の間で工事中でございますが、これは新幹線鉄道規格新線、私ども、いわゆるスーパー方式、こう言っておりますけれども、この方式で現在工事を進めております。このたび政府与党の合意によりまして、新規着工区間として、先ほど申し上げました「別紙」の中に位置づけられました鹿児島ルートの船小屋−新八代間、これにつきましても、新幹線鉄道規格新線、八代−西鹿児島の間と同じ規格でやるということで位置づけられております。したがいまして、考え方といたしましては現在の三線五区間の工事の場合と同様でございますけれども、博多からは在来線を活用するということでございます。
  201. 原口一博

    原口分科員 基本的に在来線を活用ということで、そうすると、地元負担というのはその間については発生しないわけですね。新たな線をつくることはないわけですから、博多−船小屋間の自治体については、新たな負担は発生しないと考えてよろしいのですか。
  202. 梅崎壽

    ○梅崎政府委員 地元の負担の問題といたしましては、まず県と市町村の問題がございますけれども、基本的な考え方といたしましては関係の府県ということでございます。その際に、それはそれぞれの内部での御検討の結果ということになりますけれども関係の市町村にさらに地元負担の一部を求めることは現在の三線五区間でもやっておりますし、それから、これから行います新規着工区間でも同様の問題があろうかと思います。それは地元の決め方の問題だと思います。  ところで、その際に一般的によく言われますことは、駅が設置される場合には地元の市町村にも多大な受益があるということで、一部負担を求めていくということは一般的に考えられることではないかと考えております。
  203. 原口一博

    原口分科員 これから整備新幹線がつくられるところは財源的にも非常に厳しいところですね。やはりその辺の措置考えていただきたい。特に、地方で経営を分離するのだ、第三セクターとするのだというのは極めて困難な見通しであって、仮にその並行在来線について、いろいろな並行在来線があるのでしょうが、第三セクターの経営とするときには、JRの鉄道事業用の資産の無償譲渡などの政府の特段な支援が必要だというふうに思いますが、経営分離に当たってそういう特段の支援をお考えなのかどうか、その辺についての運輸省のお考えをお尋ねをしたいというふうに思います。
  204. 梅崎壽

    ○梅崎政府委員 並行在来線のJRからの経営分離後の代替交通機関の維持の問題でございますけれども、これは基本的には私ども地域の力で維持していただきたいと考えておりますが、その際に支障を生ずることがないように、運輸省といたしましても、関係者間で十分協議を行っていただきまして、適切に対処することが必要と考えております。  今、具体的に無償譲渡というお話がございましたが、この点につきましては、北陸新幹線で既にこの問題につきまして一つの解決策は見られておりますけれども、やはりJRは資産価値を有するものを無償で譲渡することはできないという立場でございまして、この点につきましては、種々議論はございましたけれども、地元の御協力をいただきまして有償で譲渡するということにしております。  それから、国としてはどうするかということでございますけれども、第三セクターの鉄道事業の経営の安定に資するために固定資産につきまして軽減措置を講ずるとか、そういったような措置を今回導入することにいたしました。また、JRに対しましては、要員派遣であるとか運行面での協力であるとか、必要な協力をするように指導するということにいたしております。
  205. 原口一博

    原口分科員 最後に、運輸大臣に御所見をお伺いしたいと思います。  この高速交通体系の中で一番大事な省は運輸省だというふうに思います。特に、先ほどお話をしました国際空港について、特段の財源を確保して頑張っていただきたいというふうに思うわけでございますが、御所見を最後にお伺いして、質問を終わりたいというふうに思います。
  206. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 先生からも御指摘いただきましたように、二十一世紀、まさに国際社会が到来してくるわけでありますが、その中で空港という問題は、まさに国際ハブ空港という、交流の基盤としての役割をしっかり果たすためにもその整備を促進していく。また一方では、同じことが言えますけれども経済構造改革の高コスト是正という意味でハブ港湾、こういった整備も極めて喫緊の課題でございます。  また、地元の大変な熱意のあります、国土の均衡ある発展という意味からの整備新幹線の問題、まさに高速交通体系を形成していく意味で、運輸省の所管するこれらの施設整備というのは二十一世紀に極めて重要な役割を果たす施設だという認識のもとに、今後の予算措置、財源確保等含めて総合的に積極的な取り組みを果たしてまいりたいと思っておりますので、先生の御指導、御支援も心からお願いを申し上げたいと思います。
  207. 原口一博

    原口分科員 どうもありがとうございます。終わります。
  208. 関谷勝嗣

    ○関谷主査代理 これにて原口一博君の質疑は終了いたしました。  次に、白保台一君。
  209. 白保台一

    白保分科員 白保台一でございます。きょうは、主として空の安全、航空行政の問題についてお伺いをしていきたい、こう思います。  私は沖縄県でございまして、御存じのように那覇空港、嘉手納空軍基地が近くにありますし、あるいは米軍の訓練空域が至るところに設定をされておるというようなこともありまして、管制官の皆さんでつくる組合が、時たま航空黒書などというものを出して、那覇空港は危険な空港であるというようなことがよく新聞に載ったりなどいたします。このことについて運輸省は御存じでしょうか。
  210. 黒野匡彦

    ○黒野政府委員 航空黒書があるということは私も知っておりますし、仕事の参考のため読ませていただいております。
  211. 白保台一

    白保分科員 その内容については御存じですか。
  212. 黒野匡彦

    ○黒野政府委員 いろいろなことが書いてあるものですからなかなか具体的に申し上げにくいのですが、特に、今御指摘の那覇につきましては、管制を嘉手納と一緒にやっている、そこのところの連絡等に問題があるのではないか、こんなような御指摘もあったと思っております。
  213. 白保台一

    白保分科員 航空交通管制の問題で聞きたいと思いますが、今の沖縄の航空交通管制はどのような形になっておりますか。
  214. 黒野匡彦

    ○黒野政府委員 沖縄と申しましても、広いものですから、那覇、嘉手納中心のお話をさせていただきますと、管制業務というのは大きく分けて三つになります。これはもう先生御存じかもしれませんけれども、念のため。  一番上が航空路管制、要するに、航空路で安全に飛行機を飛ばすという仕事があります。これにつきましては、我々、那覇FIRと呼んでおりますが、那覇にございます私どものセンターがこれを完全に管理いたしております。それから、飛行場におりる直前、飛行場から大体半径五マイル、この間につきましては、飛行場管制業務と申しまして、これは飛行場の方で管制しております。したがって、これも民側、私どもがやっております。  問題は、その中間でございまして、航空路からおりて飛行場に五マイルまで近づいてくる間、これは進入管制業務と申しておりますが、これにつきましては、今米軍の嘉手納の飛行場の方で一元的に処理している、こういう状況でございます。
  215. 白保台一

    白保分科員 よく嘉手納RAPCON、こういうふうに言われるわけですね。今の進入管制の問題について申し上げますと、御存じのように、島嶼圏というのは海とか空が日常使われる、沖縄本島のような陸上だけではなくて、島々が多いわけですから。そういたしますと、海とか空というのは日常生活に欠くことのできない生活道路、私どもはこういう受けとめ方をしています。  私などは、那覇市を中心に、宮古島を中心とした宮古郡だとか石垣島を中心とした八重山郡だとか、一番南の端は与那国島、台湾のすぐそばまで、こういったところと関係しているわけですけれども、そういったところというのは海と空が非常に重要になってきます。  そういう意味では、空の安全というのは極めて重要な、生活にかかわりのある問題ですけれども、進入管制の問題で、領土、領空、領海は主権国家が当然みずから排他的に行使できる、そういう地域であるにもかかわらず、こういう進入管制が行われておる。こういう面で、私どもは、極めて不思議だな、なぜそういうような形になるのだろうかと、素朴に思うわけです。  この問題については、どのような形で解決していくのか、どこまで続くのか、こういった問題が残ると思うのです。この辺はいかがですか。
  216. 黒野匡彦

    ○黒野政府委員 沖縄の進入管制業務につきまして、今米側にやってもらっているのですが、正確な表現はちょっと別にいたしまして、かつてこれを決めたときに、日本側の管制能力といいましょうか、そこがまだ不十分であるから、その間米軍がやりますよ、こういう経緯で進入管制業務を嘉手納の方で今やっているわけです。  それに対しまして私どもは、もう我々でも十分できます、ですから私どもの方に返してもらうべきであるということにつきまして、日米合同委員会の中に民間航空分科委員会というのがありますが、そこでたびたびそういう議題を提案していろいろやりとりしておりますが、米軍としては今の段階ではお返しできない、こういうことで今日に至っているということでございます。
  217. 白保台一

    白保分科員 四十七年五月、「沖縄における航空交通管制」、こういうものが日米合同委員会において合意された。その中の五番目に、「単一の施設によって進入管制を行なう必要があるので日本政府がこれら飛行場のレーダー進入管制業務を行なうまで暫定的に米国政府が那覇空港の進入管制業務を実施するものとする。」この部分だと思うのです。  そこで大臣、先ほど局長答弁にもありましたように、日本の管制官の管制業務が劣っている、みんな米軍なんかよりも力が低い、こんなふうには私は思っていないのです。これほど高度に発達して、航空行政も円滑に行われている状況の中で、暫定的に行うといって四十七年五月に取り決めしたものが、もはや二十五年です。沖縄が米軍の占領下にあったのは二十七年です。もうそれに匹敵するぐらいの日時を経た今、暫定的にといって今日までこういう状況にある。  先ほども申し上げましたように、こちらは主権国家ですから、主権国家としては、領土、領海、領空に排他的な力を持っているわけです。そういう中で、暫定的にと、復帰時点の四十七年五月ですから、二十五年前からこういう状況にあります。  このことについて、大臣、どのように受けとめられておりますか。
  218. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 今政府委員の方からも答弁を申し上げておりますけれども運輸省といたしましては、今先生に御指摘いただいたような点も踏まえまして、引き続き、米側に粘り強く要請をしていくという方針で臨んでまいりたいと思っております。
  219. 白保台一

    白保分科員 この航空交通管制、今大臣から答弁をいただきましたので、ぜひ粘り強くやっていただきたいのです。  先ほども申し上げましたように、一つの問題は、管制業務が劣っている、私はこういうふうには受けとめていない、だから早急に、主権国家としてこちらが主導的にやるべきである。これはここにも書いてあるように、単一の施設によって行われることが大事だというふうに出ていますから、当然そうだと思うのです。もう一つは、空そのものが、主権国家ですから、どこのものかといえば日本のものであり、県民のものであり、国民のものである。  そういう二つの観点からいうならば、これは合同委員会等で毎回御努力をなさっておられると思いますが、ぜひ今後も叫び続けて、要求し続けてやっていただきたい。  実務を担当されていますから、ぜひ一言決意を。
  220. 黒野匡彦

    ○黒野政府委員 先生指摘のとおり、私どもの管制能力は、米軍といいましょうか、そこに決して劣るものとは思っておりません。したがいまして、今大臣からもお話し申し上げたとおり、粘り強く返還を求めたいと思っております。
  221. 白保台一

    白保分科員 それから、那覇空港の問題についてお聞きしたいと思いますが、空港そのものの問題についてお聞きしたいと思います。  実は、よく那覇空港で事故が起きたりします。那覇空港は、御存じのように、四十七年の十一月でしょうか、航空局長と防衛局長が那覇飛行場の使用に関する協定を結びまして、一部共同で使用するということになっております。その共同で使用する内容、どういうふうな協定の内容になっておるのか、資料をお願いしたのですが、間に合いませんでしたので、ここでお聞きしたいと思います。
  222. 黒野匡彦

    ○黒野政府委員 実は四十七年の返還のときに、この那覇空港をどうするかということは、私、航空局で直接担当いたしまして、今の線引き等もやった一人でございます。  当時は、那覇空港を民間空港として返すというのがいわば沖縄の復帰の一つの目玉であったわけでございまして、私ども、なるべくその民間空港側の面積を広くとろうということで、防衛庁と極めて厳しい折衝をしております。  先生御存じかと思いますが、滑走路があって、あれは何側になりましょうか、自衛隊の宿舎というか設備がありますが、その中で那覇市に近い方につきましては、比較的広く民側が獲得しておりますが、それより先に行きますと、もう自衛隊のエリアが迫っているということがございますし、さらに、海の側には、あれはナイキでしょうか、そういう自衛隊の施設がある。こういう、一般空港としては変則的な状態にあると思っております。
  223. 白保台一

    白保分科員 そこで、共同で使用している中で、この十年間におけるところの那覇空港の滑走路を閉鎖した事例ということで、運輸省の皆さん方から資料をいただきました。F4が着陸の際に左タイヤパンクによって滑走路を逸脱したとか、あるいはブレーキ系統の故障でバリアを使用して停止をしたとか、こういったいろいろな事故があります。  最近はもう、前とは違ってそれほど大きな事故にはなっておりませんが、前には、スクランブルから帰ってきたものが着陸に失敗して乗員一人を死亡させるとか、こういったこともよくあって、その間空港を閉鎖するというようなことがたびたびこれまで行われてきたわけですね。  問題は、島嶼圏ですから、先ほどから申し上げているように、空の交通というのが、島々で一つになっている離島県にとっては極めて大きな交通の要衝ですし、そういう面では、この共同使用というのはいつまでもというわけにはいかないだろう。  一方で、観光立県として、毎年順調に入域観光客がふえています。国内だけじゃありません。国外からも、台湾や韓国あるいは香港、そして東アジアのところから、大変着実に入域観光客がふえていく状況の中で、これは復帰時点からよく言われていることですが、沖合展開をして自衛隊と民間は分離すべきだ、こういうことが強く言われています。これは安全の確保という観点からいって、自衛隊と民間は分離すべきだ、そしてどちらかを沖合展開すべきだ、こういうことがたびたび言われ、また運輸省にも経済団体等から要請もあったと思います。そのことについて、どのように受けとめられているのか。
  224. 黒野匡彦

    ○黒野政府委員 実は、逆に防衛庁が管理されている空港を民間が使っている、使わせていただいているといいましょうか、そういう空港も数カ所ございまして、自衛隊と一緒にいると危険であるということはなかなか断言は難しいと思っております。  同じ資料かと思いますが、お手元にありますように、タイヤのパンク等によって滑走路を閉鎖するというようなことがございます。この辺は大変不便でございまして、私も、こういうときには直ちに防衛庁の方に抗議をしたりしております。  仮に、那覇空港が今のままではもう能力いっぱいだ、あるいは近い将来にいっぱいになるというときには別につくるというのが合理的だと思いますが、今のままで、自衛隊と一緒にいるから、危険だから大那覇空港の構想推進しようではないかということになりますと、逆に、我々が防衛庁からお借りしている空港についてどう考えるのだという問題にまで発展するおそれがあるわけでございます。  それはそれといたしまして、この大那覇空港構想というのは、当時からあった、沖縄にとって一つの夢というか大きな目標というか、そういうものであることは私どももよく承知しておりまして、これからの需要の動向に対応しながら考えていかなければいけない問題かと思っております。
  225. 白保台一

    白保分科員 航空局長のお立場はよくわかります。わかりますが、使用頻度の問題だとか回数の問題だとか、パンク状態になっているとか、こういう状況になったら、これは自衛隊と一緒になんかやっていられないですよ、突然飛び出したりなんかするわけですから。そういうことを申し上げているのではなくて、私どもは初めから、事故が起きてはならないというのが基本ですから、自衛隊が使用するのと民間が使用するのと使用の仕方が違うのですよ。ですから、そういう面では、今、国際化、ハブ化ということも言われている状況の中で、これは一緒に同居してやっているのは無理があるのではないか。  通常の使用回数だとか頻度とか、そういった問題からいったならば、まさに局長がおっしゃったとおりだと思います。しかし、これまでもたびたび事故を起こしたり、それによって観光客に迷惑をかけたりしている。それから、島々の人たちの生活道路です、足です。こちらの大都会で考えているような状況じゃないのです。飛行機を使って生活している、こういう人たちが島々では多いわけです。そういう面では、これはあなたの考えているような形ではいけないのじゃないか、そういうことを申し上げているのです。  ですから、そういう面では、私は、今後の問題として、これは自衛隊と共用は極めて無理がある、こういうふうに強く申し上げておきたい、こう思います。  もう一点、那覇空港に関係する問題ですが、もう既に皆さんも御存じだと思いますけれども、おかげさまで新しいターミナルビルの建設が始まって、非常に急ピッチで進んでおる。我々も毎週行き来するわけですけれども、そのたびごとに、管理棟や、そしてまたそれについてくるところの道路、こういったものができ始めているところを見ながら行き来しております。  そういう中で、最近沖縄の地元紙に、那覇空港の立体駐車場の建設問題をめぐって那覇市と運輸省が「緑化めぐり対立乱気流」などという、こういう記事が出ているわけですね。このことについては、那覇市の方は、もっと緑が欲しい、駐車場には緑をうんとふやすべきだ、こういうふうに言って、景観条例を盾にとって申し入れをしているようでありますし、一方運輸省は、景観条例の対象外だ、こういうことでもって退けておるというようなことが大きく報道されておるわけです。  御存じのように、沖縄は戦災で緑を全部なくしてしまって、その後やっと回復をしていっている状況です。同時に、私自身は、環境問題を県会議員当時からずっとやってまいりましたし、それから緑化を進めてきた、そういうのが政治的スタンスの一つであります。当然、駐車場といえども大いに緑をふやすべきだ。  御存じのように、今でも那覇空港へおり立つと、真夏などは、出てきたら目の前の駐車場に緑がありません。出てくるまではクーラーで冷房がきいていますから涼しいのですけれども、外へ出た途端にむっとする、すごい熱気で嫌な感じがする、こういうことがあります。したがって、これから新しいターミナルをつくっていこうとする中では、当然緑がふえていく、当初からふやしていく、こういう形をとることが妥当だろう、こう思っておりますので、この「緑化めぐり対立乱気流」という、このいきさつはどういうことでこういうことになったのか、その辺についてお聞きしたいと思います。
  226. 黒野匡彦

    ○黒野政府委員 詳しいいきさつは私も実は承知しておりませんが、先生からこういう御質問をいただくということで急遽調べまして、ビル側がどういう考えでいるかということにつきまして確認をさせていただきました。それによりますと、駐車場の各階の周囲に緑化ゾーンを設ける、あるいはターミナルビルの出発階からの眺望を確保するために駐車場全体の高さを三階にとめるとか、それなりに努力はしてきています、こういう報告を受けております。  ただ、それが今先生の御指摘の条例にまだ違反しているということならば、それはそれで、また私どもとして指導はしなければいけないと思っております。
  227. 白保台一

    白保分科員 非常にすばらしい前向きな答弁をいただいていいな、こう思っております。  実は、那覇市は、これは国内全体総じて考えても、御存じのように、沖縄県という位置は、全総計画の中でも、あるいは今の振興開発計画の中でも、東アジアに展開していくところの日本の一番南の玄関口、こういうふうに位置づけられています。  そういった意味で、那覇市自体も、県都でありますから、亜熱帯庭園都市、こういう位置づけで亜熱帯の庭園都市にしていこうということで進めているわけですね。したがって、すべての人たちが、先ほども申し上げましたように、島である以上はその那覇空港に集まってくるわけです。そこからスタートしていく、入ってくる、こういう状況ですから、今局長おっしゃるように、前向きに庭園都市に協力をしていただいて、それらしいものをつくり上げていただきたい。  北から南まで非常に長い日本の国ですから、北海道と沖縄が同じというわけにはいかない。新聞などを見ていますと、ターミナルをつくって、そしてまた駐車場をつくる、そういったものには一定の規格があるやに見受けられる節もあります。そうではなくして、これからそれぞれの地域がそれぞれ特色あるものを生かしていかなければならないわけでありまして、そういう面では、当然その辺のことについては考えて対応をしていただきたい、こういうことを強く申し上げておきたいと思います。  もう一つお聞きしたいのですが、これは先般、沖縄北方特別委員会でも、説明員の皆さんに来ていただいてお聞きしました。実は、今それぞれの地域が周辺の外国との国際交流を始めているわけであります。そういった中で、私ども一番南の方の石垣市は台湾と非常に古くから関係があります。私も石垣島で育ちましたが、戦前から、台湾から石垣島に来られる人たちが数多くおりまして、復帰の際に帰化をされた人たちもいっぱいおります。  その人たちが、まだ台湾に親がいたり、兄弟がいたり、親戚がいたりということで、台湾と石垣島との交流というものは極めて大きいものがあるわけです。今、船では常に、物資を運んだり、人が行き来をしたりやっております。石垣島にいる台湾出身の方々が台湾へ行こうとする場合には、那覇まで来て、那覇空港から台湾の飛行機に乗って台湾へ行く、こういうような状況にあるわけです。  先般、石垣市の市長が経済団体の皆さん方と一緒になって台湾へ行きまして、台湾側でも非常にこういった要望が強いものですから、石垣−台北間の空路を開設するという動きがだんだんに強くなってきています。  そういった面で、これを進めていくにはどうしたらいいですかということで、せんだって質問をしたわけでありますが、このことについて、ある新聞などは、運輸省を通さずに直接交渉をやっているのではないかということで、航空局がおかんむりだというような報道がされたりしているようでございますけれども、それはそれとして、地域間交流が今強く始まっているわけですから、そういう面で、これをどういうふうな段取りで進めていった方がいいのか。  そしてまた、その先に、台北という問題ですから極めて政治的にも難しいものもありますけれども運輸省はこの辺のことについてどのように受けとめておられるのか。お聞きしたいと思います。
  228. 黒野匡彦

    ○黒野政府委員 台湾との間にはこれ以外もいろいろ問題がございまして、基本的には、お互いの輸送需要をふやそうではないかという方向で議論をさせていただいております。もちろん、正確に申し上げますと、国交がないものですから、日本側は交流協会、台湾側は亜東関係協会、その間での合意事項をつくった上で、乗り入れが実現するということになるわけでございます。  それで、今先生指摘の石垣−台北間でございますが、私ども、できるだけこれは実現すべき路線ではないかと思っております。これは、石垣の発展のためにも、あるいは沖縄全体の発展のためにも意味のある路線だと思っておりまして、これは、台湾側の事情、あるいは我が国側ですと、CIQの設備とかいろいろな問題がございます。そういう問題を一歩一歩乗り越えて、何とか実現はしたいなと私は思っております。
  229. 白保台一

    白保分科員 最後になりますが、大臣、これは大臣に所見を伺いたいと思います。  実は、最近、新規参入といいますか新規航空会社、これは私ども沖縄でも、財界人が集まって検討をして、非常に乗り気でやっているような状況なのですね。航空運賃の問題に絡んで、日本は諸外国に比べれば航空運賃は高い、こういうふうによく言われるわけですが、そういう中で、新規の会社が今多く名乗りを上げているわけです。  そういった会社が名乗りを上げて設立されて、新しい路線を獲得していく。そういう場合に、恐らく航空運賃の競争というのが出てくるだろう。もし出てこなかったら、これは運輸省が抑えているのではないかと、またいろいろな批判が出てくると思いますが、こういう新しい航空会社の設立と競争、こういったものを前にして、このような状況というのをどういうふうに受けとめられておるのか。新規会社に対してどのように受けとめられ、競争に対してどのように受けとめられているか。それについて大臣の所見をお伺いいたします。
  230. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 今日の社会経済状況考えてみますと、さまざまな分野の中で自由な競争を促進していくということは、私は、ある意味では当然のことだと思っております。この航空業界の中でも、私は原則的に、今後新しい企業が参入することによって適正な競争を促していくということは、極めて重要なことだと思っております。  ただ、航空行政の基本は何といっても安全でございます。そういう観点から、やはり我が国の安全基準というものをしっかりとクリアさせていただいて、そうした中で新しい企業が育成されていくということについては、私は、極めて前向きな姿勢で対応させていただきたいということを基本にさせていただいております。
  231. 白保台一

    白保分科員 時間が来ましたので終わりますが、非常に大事な答弁でございまして、安全審査というものは厳重にやってください。同時に、航空運賃は自由競争をぜひ促進していただきたい。このことを要望して、終わります。
  232. 関谷勝嗣

    ○関谷主査代理 これにて白保台一君の質疑は終了いたしました。  次に、藤木洋子君。
  233. 藤木洋子

    藤木分科員 藤木洋子でございます。  いよいよ来年の四月から明石海峡大橋の供用開始となります。それに伴いまして、五十五の航路のうち、廃止を検討しているものが二航路、減船検討が四航路、減便、小型化などの検討が十四航路になっています。現行の運航形態を維持しながら減便、小型化を検討する航路は十二航路で、航路を守る上で極めて厳しいものがございます。  洲本商工会議所の上村博会頭は、新年号の洲本商工会議所所報の中で、次のように語っておられます。「淡路島にとりましては、来春開通予定の明石海峡大橋工事も順調に進んでおり、開通後の島内の生活、文化、特に経済上の諸問題、特にほとんどが中小零細である商工業者に深刻な問題があります」、つまり「当初は橋に対する期待は大変大きなものがあったが、供用開始が近づくに従って不安が増大している」と言うのです。  淡路の地元資本よりはるかに大きな商業資本が進出して、島の商工業をのみ込んでしまうのではないかという不安が増大しているわけです。住民の多くは、橋げたの町になる、もうどうにもならない、通過点の町になる、島であってこそ多くの人が来るなどの不安を高めているのが率直な現実の姿でございます。  明石海峡大橋の供用開始に伴いまして、航路の縮小だとか減船減便で多くの離職対象者が予定されているわけです。基本方針によりますと、旅客事業に対する影響をできるだけ少なくし、利用者の利便性が守られ、従業者の雇用の安定が図られなければならないとされております。この基本的な考え方からまいりまして、今の淡路島民あるいは経済界の不安を大臣はどのようにお考えになっていらっしゃるか、お伺いをさせていただきとうございます。
  234. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 先生から、このたびの明石海峡大橋の開通によるさまざまな問題点を御指摘いただきました。  これだけの大きなプロジェクトが完成いたしまして開通するということになりますと、淡路島の交通の利便というものは、確かに飛躍的に向上してくるだろうと思っております。また、そのことによって、この島があらゆる面で大きく発展するということにも、この大橋の役割というものは大変大きなものがあるだろうというふうに思います。しかし一方では、今さまざまな御指摘をいただきましたけれども、航路の減便だとか廃止だとか、また京阪神の大資本の進出等ということを心配される方々があるということも、私自身もよく理解できるところでございます。  今も基本的な考え方を述べられましたけれども運輸省といたしましては、旅客船につきましては、効果的な事業の再編によりまして、可能な限り航路の維持に努めるということは当然のことだと思っておりますし、バス路線につきましても適切な路線網の整備によりまして、明石海峡大橋開通に伴います利便の向上が、さらに地域の方々に最大限に発揮できるように努めてまいりたいというふうに思っております。  また、大資本の進出の問題でございますけれども、我が省の所管するものといたしましては、観光だとかレクリエーション事業の振興というのは運輸省の所管に係るものでございます。淡路島の発展生活レベルの向上にこれらの振興を通じまして寄与させていただきたい、このように考えております。
  235. 藤木洋子

    藤木分科員 地方自治体もそれぞれ対応に工夫を凝らしてきたところでございます。洲本市では、海産物を売り出すフィッシャーマンズワーフあるいはバスターミナル、そして幹線道路をつくるなどの構想を持っておりますし、東浦町でも淡路島公園構想、そして淡路町ではクアハウスをつくり雇用を確保することを考えているようであります。  これまでも、航路そのものを守るためにこれらの自治体は多くの負担をしてきているのですね。例えば洲本市では、国の補助事業などでターミナルビル建設に十四億円使ってまいりましたし、港湾整備には二十億円、周辺整備事業には百億円と、実に多くのお金をつぎ込んでまいりました。  私たち日本共産党は、そのような投資はむだ遣いだと批判してまいりました。航路の再編で港の使用が激減したり閉鎖されたのでは、こうしたお金がまさに全くのむだ遣いになってしまうわけです。その上、津名町では通勤通学の補助金も出して、これまで航路そのものを守る努力をしてまいりました。こうした努力がこれからも生きるようにすべきではないかと思うのですが、これらの点について運輸省はどのようにお考えでございましょうか。
  236. 岩田貞男

    ○岩田(貞)政府委員 今のお尋ねにつきましてお答えをします。  今、大臣からもお話しさせていただきましたけれども、今後も旅客船航路につきましては非常に効率的な再編を行いまして、事業の採算の範囲内で可能な限りの事業の維持に努めまして、利用者の利便を確保いたしたいというところでございます。  ただ、そういう大変創意工夫を凝らしていろいろ維持したとしましても、橋の開通によりどうしても需要が激減したという港も出てくるかもしれないことは事実でございます。そういう施設につきまして、これをどうするかということでございますが、これは、まず地元自治体の創意工夫、どうやったら既にある施設を有効利用できるかということでございますが、その創意工夫をもとにした御意向を踏まえまして、いろいろな観光船の基地としての港とかいうことで、港としての、他の利用も含めまして有効利用が図られますように私どもとしても努力していきたいと思っておりますし、関係の向きに海上交通局としても働きかけていきたいと思っております。
  237. 藤木洋子

    藤木分科員 十二分の御支援をお願いしたいと思います。  さて、具体的な雇用問題に入りますけれども本州四国連絡橋の建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法に基づく離職者援護措置のあらましの中で、本州四国連絡橋公団は、早急な転職の対策が必要としております。しかし現実はどうか。企業からのアンケートによりますと、総勢一千三百名の離職対象者がいるということになっております。この中で、特に兵庫県の労働者が一千二百名、そのうち淡路島から各企業に従事している人の中で七百名離職対象者があるわけです。これらの労働者の雇用に責任を果たさなければなりません。  淡路島で七百名という大量の離職者が出た場合、従来の枠ややり方で再雇用の道がつくれるのかどうか、運輸省としてこの問題にどのように取り組まれているのでしょうか、お聞かせください。
  238. 土橋正義

    ○土橋説明員 お尋ねの点にお答え申し上げます。  明石大橋の架橋完成に伴いまして、兵庫県地区を中心に相当数の離職者が発生するということは、私どもも十分に認識しておるところでございまして、中でも私ども船員部としては、離職を余儀なくされる船員の方々の雇用の安定の問題に一番大きな責務を負っておるところでございますが、この問題につきましては、先生案内のとおり、本四特別措置法あるいは本四連絡橋の建設に伴う旅客船問題等に関する対策の基本方針、こういったものを踏まえまして、地方に現在設けてあります旅客船問題現地連絡対策協議会の場で、関係者で議論をしていただいておるところでございます。  航路再編成計画によってもどうしても航路を維持できない、したがって廃業を余儀なくされる事業者が出てくる、それに伴って離職を余儀なくされる従業員の方々につきましては、例えば架橋の関連の事業に職場をあっせんするとか、あるいは観光事業、あるいは道路運送事業、そういった場での新しい職場の開拓、こういうものを図っていくことにしておりますし、さらに、私どもの機関でございます船員の職業安定所あるいは労働省所管の公共職業安定所などを通じまして離職者の再就職のあっせん、こういったものに全力を挙げてまいりたいというふうに考えておるところでございます。  また、職業転換を円滑に行うためには、離職される方々につきまして、新しい職業に適した訓練、技能訓練と申しておりますが、技能訓練を充実する必要があるというふうに考えておるところでございまして、そのための制度も用意しておるところでございます。  いずれにいたしましても、先ほど申し上げました現地の連絡対策協議会の場で、関係自治体あるいは関係機関の協力を得ながら、これらの対策を講じることによりまして離職者の雇用の安定に遺漏なきを期したい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  239. 藤木洋子

    藤木分科員 今の御答弁は、運輸省や本四公団や関係自治体などがつくっている本州四国連絡橋旅客船問題神戸・鳴門ルート拡大連絡協議会、その中につくられている雇用対策小委員会でのお話ではなかろうかというふうに思うわけですね。  随分いろいろなメニューがあるように今お話をされたのですけれども、私は、旅客船、フェリー会社など十七社で本四海峡バス株式会社がつくられるということも伺っております。これは、会社の採用枠は当初二百名というふうに伺っていたのですけれども、実際調べてみますと、バスは六十一台で、運転手は百二十六名あればよい、本社は十九名あればよい、大阪、徳島、洲本、大磯の事業所、四つありますけれども、ここで二十一名で結構だ、合計でも百六十六名にしかならない、こういう状況になっているわけですね。  だから、これ以外に運輸省関係でどのようなものがあるかと思って伺っていたのですが、数については何もおっしゃらなかったわけでして、その程度で雇用に対する責任が果たして果たせるのか、それで果たして一千三百名の離職対象者の雇用が確保されると考えていらっしゃるのか、こんなことではとても労働者の権利を守ることができないのではないかというふうに思うわけです。  続いて、Dルートのときには全体の二三%を公団が採用しておりました。今回は、今の計画で、公団がAルートで百五十名程度の職員を採用する、こう言っているわけですけれども、これでは焼け石に水と言わなければならないと思うのですね。この程度ではとても公団の責任を果たしたとは言えないのではないかというふうに思うわけです。ですから、さらにこの百五十名よりも採用の枠を広げる必要があると考えるのですけれども、その可能性はいかがか。建設省としてはどのような指導をされて、具体的に広げさせるように努めていらっしゃるのか。これは建設省にお伺いをさせていただきたいと思います。
  240. 小坂裕男

    ○小坂説明員 今先生指摘いただきました、本四事業の中で架橋に伴います離職対策というのは極めて重要な問題である、このように建設省といたしましては認識しております。したがいまして、本四特措法のその枠を踏まえまして、その中で国の機関、関係地方公共団体あるいは本四公団、事業者、海員組合等と十分話し合い、検討を進めているところでございます。  御指摘のございました百五十名程度という数字につきましては、まだ具体的に固まっているわけではございませんが、これが固まっていきます中で、今申し上げましたような精神に従いまして、できるだけ大きい数字になるもの、こう考えております。
  241. 藤木洋子

    藤木分科員 それは固定したものではなくて、ぜひ大幅に広げていただくということを心から御要望申し上げたいと思います。  さらに重大なことは、連絡協議会で雇用問題を検討しているとはいっているものの、実際は、各自治体から紹介されるものは、ごくごく一部を除いて、ほとんどは各自治体の一般採用を紹介するものにしかなっていないという点なんです。これでは、ここに働く多くの労働者は今後の見通しを持てないのは当然だと思うわけですね。  例えば兵庫県です。兵庫県関係団体職員を特別枠で採用すると言っておりますが、その枠は、震災被災者も含めまして、実数でわずか二十六名だけでございます。既に、本州四国連絡橋の建設に伴う離職者対策について、運輸省、建設省は、大阪、兵庫、和歌山、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知の各県知事と大阪、神戸の各市長にあてて、運輸省海上交通局長運輸省海上技術安全局長、建設省道路局長の三者の連名で、文書で要請をしていらっしゃいます。けれども、最も多くの離職者を出す兵庫県でこの二十六名という程度の特別枠では、ほかの自治体の協力が果たして得られるのでしょうか。私は、とてもそんなことはあり得ないと考えます。  例えば、自治体が本四架橋供用に伴って自治体関連の外郭団体や関連会社をつくって、そして離職者の再雇用に活用する場合、これに対して財政措置などを含めた手当てをしていただくことは可能なのかどうなのか、その辺のお答えをちょうだいしたいと思います。
  242. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 御指摘いただいておりますように、連絡橋の供用に伴いまして離職を余儀なくされる方々の雇用の問題というのは、非常に重要な問題だろうと認識いたしております。  今それぞれ政府委員の方からも答弁を申し上げておりますが、藤木先生みずからも難しさについてもお触れいただいているようでございますけれども、私といたしましては、運輸省、建設省、関連する私どもは当然ですが、これは、よほど政府一体となって雇用の確保こま当たっていきませんと雇用対策というものは果たし得ないのではないか、こういう認識政府一体となって取り組んでまいりたいと思っております。
  243. 藤木洋子

    藤木分科員 大臣に非常に積極的な御答弁をいただきましたので、自治省の方もぜひ奮発をして御答弁に立っていただきたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
  244. 山下貴史

    ○山下説明員 お答えを申し上げます。  今御指摘ございました本四架橋に伴います一般旅客定期航路事業等からのいわゆる離職者の再就職問題につきましては、これは関係地方公共団体にとりましても関係の深い問題でございまして、本四特措法の定めにもございますように、地方公共団体は、国の施策協力をして、再就職の確保について、その施策推進に努めなければいけない、こういう立場にあるわけでございます。  現在、その関係地方公共団体、今兵庫県の内容については先生から御案内があったわけでございますが、兵庫県以外の関係地方公共団体におきましても、例えば内部に関係する委員会を設けて関係機関と連絡を密にするなど、鋭意その具体的な再就職のための対策づくりに当たっているというふうに私ども伺っているところでございまして、自治省といたしましても、引き続き関係地方公共団体と連絡を密にいたしまして、必要な対応を図ってまいりたいというふうに思います。  それからまた、この再就職問題、再就職の場の確保に関連いたしまして、それぞれ地方公共団体が、地域振興施策推進する、そういう考えをお持ちになるという場合におきまして、国に具体的に要望等が上がってまいりますれば、具体的によく事情を伺わせていただいて、必要な支援を行っていきたい、こういうふうに自治省としては考えているところでございます。
  245. 藤木洋子

    藤木分科員 ということは、その財政措置などの支援をしていただくというふうに理解をさせていただいてよろしゅうございますか。
  246. 山下貴史

    ○山下説明員 関連いたします。その地域づくり施策、そういうことに関しまして、中身次第でございますけれども財政的な支援も含めて検討はいたすつもりでございます。
  247. 藤木洋子

    藤木分科員 ぜひそれは積極的に御支援をいただきたいと思います。  しかし、それ以外の御答弁は、大臣の御決意に比べますと、八カ月前と余り変わっていないことを私は非常に残念に思うわけです。  実は、八カ月前と申しますのは、日本共産党の緒方参議院議員が委員会で質問をしておりますが、このときの御答弁も、鋭意努力をして、一生懸命その関係する部局を網羅した連絡体制を整備してやっていくんだというお答えだったわけですね。ですから、八カ月もたってその進展がないということは、余りにも悲しい事態ではないかということを私は申し上げたいと思うわけです。これではとても離職する労働者も報われないということを指摘させていただかなければなりません。  次に、私はさきにも申しましたけれども、この離職対象者というのは政府政策によってつくられたものですから、当然、政府が再雇用の責任を果たすべきだと思うわけです。  瀬戸大橋のときは、政府はその責任を果たさないまま多くの労働者を路頭に迷わせております。この間の調査によりましても、Dルート、五つの橋の開通によりまして、一千百四十八名の離職者が出ました。そのうち公団関係で就職できた人は二百六十四名で、二三%にすぎません。自治体などに就職した人は百二十三名、一〇・七%です。七百六十一名、つまり六六・三%もの人たちは、自己就職、自営業、年金生活という結果になっているわけです。大半の人たちが、自己就職など自助努力を求められているのではないでしょうか。瀬戸大橋のときには、それでもまだ海から海への転職も可能でございました。さらに、雇用情勢の面でも、現在は新卒者の就職でさえままならない深刻なときです。  これまで、運輸省、建設省、自治省とお話を伺ってまいりましたけれども、従来の枠を突破させるような御答弁がございませんでした。総数で一千三百名もいらっしゃるわけです。従来どおりのやり方で、この離職対象者の再雇用が可能だとお考えなのでしょうか。離職対象者の最後の一人が再就職できるまで、各省庁も責任を免れるものでないことを私は強く訴えます。  大臣、さきにも非常に御決意をお述べになられましたけれども、どうかすべての省庁に対して積極的な支援をお訴えくださいますように、もう一度ここでお話をお聞かせいただきたいと思います。
  248. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 さっきも御答弁申し上げましたけれども、非常に生易しいことではないと思っております。極めて厳しい経済状況でもございますし、難しい問題もございます。また、離職された方々一人一人の人生設計というものもございましょう。そういうことを踏まえまして、私は、要は政府一体となった熱意だと思っております。ともかく真剣に政府一体となって取り組むよう、私もその先頭に立たせていただきます。
  249. 藤木洋子

    藤木分科員 難しいからこそ、本当に熱意を込めてお取り組みをいただきたいと思います。  特にその上で重要と考えられることといたしまして、離職対象者の再就職を容易にするために、先ほどもお話ございましたけれども、離職前の職業訓練の促進が必要になってまいります。一千三百名のうち一千名が対象と聞いておりますけれども、全員の面倒を果たして運輸省が見てくれるのか。その際、休みをとってしかその職業訓練ができないというのは改善する必要があると思うのですね。その辺いかがか、お尋ねをしたいと思います。事業主に対しても労働者に対しても特別の支援措置が必要と考えますが、運輸省、いかがでございましょうか。
  250. 土橋正義

    ○土橋説明員 お答え申し上げます。  離職船員が相当数に上ることが見込まれておりますために、その雇用の場の確保に私ども最大限の努力を払ってきておるところでございます。航路再編成計画を策定いたしまして、もう一度航路を再編成いたしまして、何とか海上の職場を維持していこう、そのための雇用の場を維持していこうというのが第一段階としてございます。これでもなおかつ事業を廃止せざるを得ない、あるいは縮小せざるを得ない、それに伴って離職を余儀なくされる従業者の方々が出てこられる、こういう方々につきましては、先ほども申し上げましたように、本四公団あるいは関係自治体のできるだけの御協力をいただきながら再就職の場をあっせんする、あるいは、それでも難しい場合には、公共職業安定所あるいは船員の職業安定所を活用しながら再就職のあっせんをしていく。  ただ、先生指摘のとおり、現在の雇用情勢は海の上も陸の上も大変厳しゅうございます。全力を挙げて取り組まなければなかなか——特に、船員でもう一度海上の職場を選びたいと言われる方々に、お望みの海上の再就職の場を提供できないこともあり得るかもしれないというふうな、大変厳しい状況ではなかろうかというふうに感じておる次第でございまして、そういう方々に対しましては、やむを得ず陸上の職場への転職を図っていただく必要がある。  ただ、陸上の職場に転職を図るためには技能訓練がどうしても必要になってくるということで、この問題につきましては、この一、二年、先ほど先生が触れられました雇用対策小委員会というのが現地に設けられておりますが、その場で、あるいは中央での連絡協議会の場で、いろいろ議論をさせていただきまして、一つは、船員さんが今働いておられるわけですが、今働いている状態で新しい陸上の職場に転職するために技能をつけたい、そういう場合に、その技能訓練費について助成を出していこう、あるいは、今働いておられる船員さんが訓練所に入りますと、その期間、船主さんは別の船員さんを雇ってこなければ船の運航に支障が生じるわけですが、そういった賃金の一部についても助成をしていこうというふうなことで鋭意検討してまいりました。  実は、これは厚生省社会保険庁の所管でございますが、船員保険特会から補助をいただくことになりまして、私どもの所管団体でございます船員福利雇用センターの場でこういったニーズにこたえていこうということで、新しく制度を整えたところでございまして、こういう制度も活用しながら、現職でいながら新しい技能を身につけていくというふうな対策についても鋭意取り組んでまいりたいというふうに思っております。     〔関谷主査代理退席、主査着席〕
  251. 藤木洋子

    藤木分科員 必要とされるすべての方たちにその制度が適用されますように、お願いをしたいと思います。  次に、この法の枠外にある、先ほどもお話が出ていたのですが、地上勤務労働者の問題で、労働省の役割が大切になるわけですけれども、約三百名と言われる地上勤務の労働者を救済するために必要なことは、特定不況業種に指定をいたしまして、その方で救済するという方法が検討されているというふうに伺っているのですが、いかがで一しょうか。これを一つお答えいただきたい。  さらに、労働省の仕事の中心は、労働者を助けるという大事な役割があるわけですけれども、これまでにない取り組みとして、建設省、運輸省、自治省に、一般的な協力要請ではなくて、自治体や業界に対する影響力が行使できるような、そういう役割を果たしていただくわけにはいかないか。  その点、二つお答えをいただきたいと思います。
  252. 浅野賢司

    ○浅野説明員 御説明申し上げます。  労働省としましては、これまで本四特別措置法に基づきまして、陸上勤務を希望する方々に対しましては、求職手帳を発給し、きめ細かな職業指導を行うとともに、雇用保険の延長給付や職業転換給付金の活用、職業訓練の実施など、再就職のための特別施策を講じてきたところでございます。  なお、先生が御指摘の最初の問題でございますけれども、一般旅客定期航路事業について、業種雇用安定法に基づく特定不況業種への指定につきましては、業種全体の動向を見きわめつつ、関係省庁とも相談しながら検討してまいりたいというふうに思っております。  また、二点目の問題につきましては、明石海峡大橋の建設に伴いまして離職者が発生した場合に、早期再就職を図ることは、先ほど来言われていますとおり最重要であると考えております。このような観点から、現在も、本州四国連絡橋旅客船問題連絡協議会におきまして、関係省庁と連携を図りつつ取り組んでいるところでございまして、今後とも、関係省庁に対しまして、労働省として必要なお願いをしてまいりたいというふうに考えております。
  253. 藤木洋子

    藤木分科員 時間が参りましたからこれで終わりますけれども、今のそれぞれのお答えを伺っていまして、政府が、淡路、四国住民の長年の夢をかなえるものだという大キャンペーンで批判的世論を封じ込めながらこの事業は実は進められてきたのですね。私たち日本共産党は、この計画が発表されて以来、一九八六年の着工後も一貫して問題点を指摘し批判してきました。批判するだけではなくて、着工を中止すべきだ、計画を凍結することが大事だということも求めてきたところです。これらの指摘が的を射ていたのではないかということが今日の状況で明らかになっていると思うわけです。  その結果、来年四月に供用開始になって、確かに橋が通れば便利になるでしょう。しかし、航路が廃止縮小、減船減便されて、多くの働く人たちが路頭に迷うというような事態を迎えることはとんでもないことであります。それでは、この橋の恩恵を受けたのはだれか。結局、ゼネコンだけではなかったでしょうか。  今後、離職者に対する雇用と救済、淡路島の各自治体に対する支援に全力を挙げてくださることを心から強調させていただいて、質問を終わらせていただきます。
  254. 葉梨信行

    ○葉梨主査 これにて藤木洋子君の質疑は終了いたしました。  次に、北沢清功君。
  255. 北沢清功

    北沢分科員 きょうの分科会のしんがりを仰せつかりました社民党の北沢清功でございます。きょうは、運輸省、労働省の皆さん、遅くまで大変御苦労さまです。  私は今この場で藤木委員質問を聞いておりまして、運輸省の中でも、いわゆる、何といいますか、国鉄清算事業団等のそれぞれの任を終えられましての雇用問題でございまして、私は、タクシーにはよく実は乗るのですが、今の景気はどうですかとか、最近特に規制緩和等においていろいろの改革がされているがどうですかという意見を相当大勢の運転手さんから聞きまして、いわゆる民間の皆さんの声を聞く機会を得たというふうに思っております。  特に、私は、きょうの質問の中で、規制緩和が中心なのですけれども、首相の言われる自由経済市場主義といいますか、それから規制緩和ということがいわゆる政治改革の大きな課題であるというふうに言われております。確かに、規制を緩和すべき点は、いわゆる手続だとか、いろいろな形で当然改革をしなければいけない点が非常に多いわけでありますが、今も、雇用問題というのは非常に厳しいということは御答弁にもございました。特に経団連は、先ごろの報告の中で、いわゆる日本の規制緩和からくる職を失う方は九百四十三万だというふうに意見が述べられておりますね。  そういうことを見るときに、事業を終えた本四ももちろんですが、新たに発生する雇用というものがどういう中身を持っているか。学者や一部の経済人、財界が主ですが、その他マスコミの中でも、そういうことが大きな問題として、かつての政治改革と同じように、問題の本質を取り違えてされているという面もあるけれども、しかし、その中で当然考慮をしていかなければならない点が非常に私はあると思いますね。  だから、私どもの党は、一体だれのための規制緩和かということ。東京からの発信でなくて地方からの発信もあっていいんじゃないか、そういうものは地方からは全然ございません。まさに中央からの発信のみが規制緩和でございますから、そういう面でこれから重要な問題になってくるのではないか。  そして、アメリカの航空法の、一九七八年ですか、その大失敗がございますね、自由化をしたときの。そういうこともよく参考にしながら、ひとつ慎重に、かつ末端の皆さんの声を含めながら進めていっていただきたいということをまずもってお願いしておきます。私どもは、そのことについては注意深く見守ってまいりたいというふうに決意を申し上げておきたいと思います。  それでは、早速入らせていただきますが、昨年の十二月、行政改革委員会の報告にタクシーの規制緩和政策が盛り込まれまして、行革委の規制緩和小委員会の報告が示されました。すぐ運輸省は、タクシー規制緩和にかかわる行政方針を示して、現在その具体化を進めていると聞いておりますが、このように、即運輸省の方針が出されたことの経緯といいますか、まずその点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  256. 荒谷俊昭

    ○荒谷政府委員 お答えいたします。  我が国におきます交通運輸市場が成熟段階に達しつつあるという現状認識と、そしてまた行政改革あるいは経済構造改革が焦眉の急とされている現在の状況にかんがみまして、今後は自由競争の促進によって、交通運輸の分野におきましても経済活動の一層の効率化、活性化を図ることが求められている、こういった基本的な考え方に立ったものでございますけれども先生おっしゃいましたように、昨年の十二月に、行政改革委員会の方から、これはタクシーだけではございませんで、国内航空、バス、タクシー等につきまして需給調整規制廃止の意見が提出されました。  運輸省といたしましても、この意見を踏まえまして、タクシーを含め人流、物流全般にわたりまして、これまで運輸行政の根幹をなしてきた、そしてまたそれなりの意義、効果もありましたこの需給調整規制につきまして、状況の変化も踏まえて、今後は、原則として目標期限を定めてこれを廃止するという決定をさせていただいた次第でございます。
  257. 北沢清功

    北沢分科員 行政改革委員会の報告によりますと、将来需給調整を廃止し、運賃も上限価格制に移行することを求めておりますが、運輸省も基本的にはこれを認めているわけです。行革委の提言や運輸省の行政判断のみで、これが確立した方針としてひとり歩きする危険性があるのではないかと思われます。行革委に寄せられた多くの意見書の中でも、タクシーに関するものは、圧倒的にタクシーの事業規制は必要であるというものだったと報道されています。  私は、運転手さんやサービスを受ける利用者の声を十分反映させる努力をすべきだと考えておるわけでありますが、そういう点についてはどうなのか、見解をお伺いいたしたいと思います。
  258. 荒谷俊昭

    ○荒谷政府委員 行政改革委員会では、昨年の十二月五日に小委員会の報告がまとめられたわけでございますが、実はそれに先立って、昨年の春からいろいろと御審議がなされてきております。  その審議に当たりましては、運輸省だけではなくて、関係事業者あるいは労働組合からも意見を聞くとともに、利用者代表等も入れました公開ディスカッションも行われてきたわけでございまして、行政改革委員会のこの意見というのは、こういった審議を通じて出されたものというふうに私ども理解をいたしております。そして、運輸省といたしましても、その審議の過程を通じて、関係者のいろいろな御意見は承っているところでございます。  それから、上限価格制のことにお触れいただきましたけれども、私ども、この需給調整を将来廃止した場合の価格規制のあり方につきましては、これからもろもろの問題、課題を検討していく中であわせて検討してまいりたい、このように考えてございます。
  259. 北沢清功

    北沢分科員 今の御答弁で、それぞれ意見を聞かれたということでありますが、なかなかこのことは、労働組合までというふうに言われたけれども、連合の首脳の方は別として、やはり末端では非常に危機感を持っているということ。  それから、特に私も先ほど申し上げましたように、タクシーに乗ってみて、景気はどうですかという点は大変な不況である、自分でやる自家用タクシーなどという方も、このままでいけば私どもはやめざるを得ないんじゃないか、運転手の皆さんも、もうくたくたになって、しかも全然合わぬようになってきたからこの業界はやめざるを得ないんじゃないか、そういう声が、私が聞きますと、ほとんど実ははね返ってきます。  そういう意味で、一つには、運賃について、ゾーン制への四月からの移行を決めているわけでありますが、これは道路運送法の運賃認可の定めに矛盾することがないかどうかということを聞きたいと思います。  私もよく知っていますが、一昨年来の、運輸省が参画をしてのタクシーの運賃研究会というのがございました。ゾーン制運賃を将来のあり方の選択肢の一つとして挙げているはずですが、こうした制度を入れるに当たって、関係者のコンセンサスを得る努力が行われたかどうかということについてお聞かせをいただきたいと思います。  また、今後も協議の場を設けていくべきだと考えますが、いかがでしょうか。検討の余地はおありでしょうか、どうですか。
  260. 荒谷俊昭

    ○荒谷政府委員 昨年の四月に、タクシー運賃制度研究会の報告書がまとめられたわけでございますが、これをまとめるに当たりましては、事業者、労働組合、利用者代表等の関係者からの御意見を聞きながらまとめたということでございまして、この中では三つの案が提示されてございます。現在の総括原価方式を修正して、それに運賃料金のより一層の多様化を加えていくという案が第一番目。そして第二番目は、今先生おっしゃいましたゾーン制、それの変形でありますところのフォーク制。そして第三番目が、上限価格制でございました。  確かに、事業者あるいは労働組合の方から、第一番目の総括原価方式の修正、このこと自体についての御異論はなかったかと思いますけれども、運賃料金の多様化というのは、運賃料金の多様化によって利用者がどこまで選択ができるのか疑わしいということで、かえって混乱するのではないかという意見があったように記憶をいたしております。  それから、第二番目のゾーン制あるいはフォーク制につきましては、特段の評価というものが報告書の中ではまとめられておりません。  それから、第三番目の上限価格制につきましては、激しい運賃競争が起こった場合に、必要な良質の労働力の確保というものがそれで果たしてできるのかどうか。もしできないとすれば、著しくサービスが低下をして、かえって利用者に迷惑をかけるのではないか、こういった意見があったわけでございます。  私ども行政改革委員会の方からは、数年後の需給調整の廃止までの間においてもできる限りの規制緩和を行うべきである、こういう指摘もございますし、また、それに先立って昨年の三月の規制緩和推進計画でも、運賃料金の弾力化ということも言われておりましたので、運賃制度研究会で出された三つの案の中の真ん中の第二案でありますゾーン制をとることにいたした次第でございます。  将来、これが上限価格制に行くのかどうかということにつきましては、先ほども答弁させていただきましたが、これは将来の検討課題でございます。そして、その検討の過程におきましては、十分に関係者の御意見も承って検討を進めてまいりたい、このように考えてございます。
  261. 北沢清功

    北沢分科員 また、私は、ゾーン制運賃への移行ですが、これは通達では、当面現行運賃に消費税を転嫁した運賃をゾーンの上限とするということになるわけですが、現行運賃水準がゾーン上限として固定されてしまうではないかという心配もございます。  また、ゾーン制運賃を前提とした前回の運賃改定時の標準原価に基づく運賃の中で、やはり運輸省の原価査定の根拠ですね、そしてその中に労働条件等に関する査定の原価が織り込まれているわけでありますが、労働条件の水準を引き下げることにつながりはしないかというふうに心配をされるわけです。この点についてはどう考えるか、御答弁を煩わせたいと思います。
  262. 荒谷俊昭

    ○荒谷政府委員 ゾーン運賃制を採用した場合に、九年度から、私ども、現在の運賃よりも一〇%下を下限といたしまして、その範囲内であれば自動的に認めていく、そしてまた、その下限を下回る運賃につきましても、これは個別的に審査をさせていただいて、妥当なものであれば認可をする、こういうことで考えてございます。  運賃が下がった場合に労働条件にどういう変化が出てくるのか、こういうお尋ねかと思いますけれども、現在の実態を見てみますと、二重あるいは三重運賃という運賃の多様化がかなり進んできておりまして、ざっと見ますと、大体上下一〇%の中に入ってございます。  そして、中には収支比率が一〇〇を切っている事業者もありますけれども、一〇〇を超えている事業者もいるということで、どの程度の運賃水準にしたら必ず赤字になるとかということでも必ずしもない。むしろ、運賃面でいろいろと工夫を凝らすことによって、それが増収の結果になる、需要の増を呼び込んで経営的にプラスになるということも場合によってはあるのかなというふうに感じているところでございます。
  263. 北沢清功

    北沢分科員 次に、需給の問題を聞きたいのですが、先ほど申し上げたとおり、タクシー業界実績から見て、年々不況の中で大変な状況だというふうに私は思っています。バブルのころよりこの五年間で十数%実は下がっていますね。労働省の推計ですが、調査によりますと、私の地元の長野県のタクシー労働者の年収は三百八十万です。全部の産業の男子の平均に比べて百三十万円も低いのですね。逆に労働時間は、年間に三百時間も実は長く働いている実態でございます。  そういう中で、運輸省はこの実態を把握しているかどうかということ、そしてそれらの改善策等がおありでしまうか、お尋ねをいたしたいと思います。
  264. 荒谷俊昭

    ○荒谷政府委員 私どもも、タクシー運転者の労働時間それから賃金につきましては、労働省の方で毎年調査を行って、これを五月に公表いたしておりますので、この報告書によりまして大体のものを把握をしてございます。確かに、一般的に申し上げて、タクシーの場合には、全般的に労働時間が長くて給与が低いということは、仰せのとおりでございます。ただ、最近のタクシー運賃の改定は、改定理由が労働条件の改善ということでなされておりますので、その点につきましては、私どももちゃんとそんなふうになっているのかどうかということもフォローいたしております。  ちなみに、これは一つの例でございますが、東京の特別区の運賃改定によりましてその後労働条件がどう変わったかということでございますけれども、運賃改定によりまして、営業収入は四・七%ふえましたが、乗務員の一人当たりの月間平均賃金はむしろこれを上回って五%ふえた。これは改定前の一年と改定後の一年との比較でございますが、一応そういう数字も把握をしているところでございます。
  265. 北沢清功

    北沢分科員 もともと低いわけですからあれですが、地方は実はもっと深刻なのですね。これは、都市の中心部は別として、そういうことも含めてひとつお考えをいただきたい。  それから、需給の中ではいわゆる増車の件もございますが、この点は時間がないので私は質問を申し上げませんが、いわゆる過剰地域というのは、実は私どもの方には諏訪とか四都市ばかり今でもあるのですね。適正な形で増車を一〇%、そこまでは認めるということになると、そこら辺も矛盾が出てくるわけですね、それ以上にまだあれですから。だから、全国的なその一〇%という問題の中で、そういう矛盾もございますから、そこら辺はどういう根拠かということも私はお聞きしたがったのですが、あえてきょうはあれしませんけれども、そういう点もよく考慮していただきたいと思います。  時間がございませんので、次に、労働省にお尋ねをしたいと思います。  今言われたような労働実態に基づいて、労働時間当たりの賃金が減少しなければ、いわゆる基本給は規制緩和によって引き下げられても問題ないというふうな考え方があるというふうに実はお聞きしているのですが、これは、中小企業の労働者に与える影響は極めて深刻であります。月給制を前提としておると思いますけれども、引き下げを容認するということは、私は、少なくとも労働省としてはとるべきではない。  それから、時短の問題もそうですが、中小企業の実態に十分配慮した、時短に伴って賃金を下げることのないように指導をしていただきたいと思いますので、その点はいかがでしょうか。
  266. 松井一實

    ○松井説明員 お答えさせていただきます。  賃金と労働時間の関係についての労働省の基本的な考え方は、労働時間の短縮を円滑に進めるためには、まずもって生産あるいは所得の低下が生じることのないように、生産性の向上を図っていただくことが重要ということを基本に据えておりますが、基本的に賃金そのものの扱いというのは、いわゆる労使自治の原則と申しますか、あくまで労使間で十分話し合っていただくという性格のものと考えております。したがいまして、従来よりこの考え方に沿った対応をしてきておるところであります。  例えば、具体的には昭和五十六年当時、過去、商業などのいわゆる特例措置対象事業場を中心にしまして所定労働時間を短縮した場面がございまして、その場面でもこの考え方、すなわち労使で話し合いの上、時間当たりの賃金が減少しない等、労働時間の変更との関係から見て合理性があると認められる賃金の見直しであれば、労働基準法としての適用上問題がないというぎりぎりの考え方を示した場面がございました。  実は今回につきましても、この四月から基準法で四十時間施行ということになります。その関係で、実は中小企業の四団体の方から、この場合における賃金と労働時間の関係をどう考えるか、こういう御質問がございましたので、今までの考え方を踏まえまして、同様の回答をさせていただいておるところであります。  中小企業の団体は、この回答を踏まえまして、会員各位に自分たちの対応方法を、四十時間にする際には、十分生産性の向上を図りながら、生産性が上がれば当然賃金配分も高めるといった事例も織りまぜながら、周知していただいているというふうに了知しております。  いずれにしましても、労働省としましては、この四十時間制への移行に伴う賃金の取り扱いについては、労使で十分に話し合って解決していただければというふうに考えておりますので、よろしくお願いします。
  267. 北沢清功

    北沢分科員 もう一点だけお尋ねしたいことがございます。  私の地元の問題ですからちょっとお聞きをしたいのですが、私ども長野県の冬季オリンピックがあと十カ月に迫っております。先ごろのアトランタではその移送が大混乱をして非常に不評を買ったわけですが、そういう面で、世界的にも大勢の方がお見えになるし、観客、選手等がございますので、そこら辺の公共輸送というものについては十分にひとつ協議を進めていっていただきたいと思います。  それからもう一つ、実は土石流のため、昨年の土石流とその前に二度、二面の大災害がございまして、もう二年近く大糸線は分断をされて、不通でございます。これは、北陸との交通路や、その地域のオリンピックも含めての問題がございまして、これらの復旧については地元から相当強い要望がございまして、ぜひひとつ万難を排して努力をして、ぜひJR西等に働きかけをしていただいて、オリンピック開催までに開通をしていただきたいということでございますが、この点についての情報等がございましたら、運輸省にお尋ねをいたしたいと思います。
  268. 荒谷俊昭

    ○荒谷政府委員 おっしゃいますように、観客、選手あるいは報道関係、大変たくさんの方がお集まりになるということで、この輸送問題は大変大事な問題であるというふうに私ども考えてございます。  現在、地元の新潟運輸局そして長野陸運支局におきまして、大会組織委員会等の関係者と連携を図りながら、具体的な輸送体制につきまして鋭意検討を進めているところでございます。例えば、バスがかなり重要な役割を占めると私は思っておりますけれども、バスにつきましては、地元のバス事業者が中心となりまして協議会を設置してございます。そして、その中で具体的な検討を行っているという状況でございます。  現在プレオリンピックが開催されておりますので、この輸送状況も十分に参考にしながら、いろいろと関係者の協力を得まして、オリンピック輸送に支障が生ずることのないように努めてまいりたい、このように考えてございます。
  269. 梅崎壽

    ○梅崎政府委員 JRの大糸線の復旧工事でございますが、これは、ただいま先生指摘のとおり、早期復旧につきまして、地元の大変強い熱意がございまして、先生の御指導も受けながらやってきたわけでございますが、当初より、長野オリンピック開幕までに復旧開通するということを念頭に置きまして進めております。  現在の状況を申し上げますと、昨年十二月の蒲原沢の土石流災害が起こりましたので、この災害の救出、復旧のための交通規制であるとか、あるいは作業規制によります間接的な影響を受けまして、当初の計画に比べますと、若干のおくれが生じている状況でございます。  このような状況でございまして、今の段階では、まだ開通の時期を確定するのが難しい状況でございますけれども関係の自治体あるいはJR西日本におきましては、オリンピックの開幕までに間に合うように、最善の努力を行っているという状況でございます。
  270. 北沢清功

    北沢分科員 オリンピックについて御検討中だということですが、バスもさることながら、あの道路状況では、やはり鉄道の輸送というのは非常に大事だと思います。そこら辺は、相当多発して、往復できるようなこともひとつ考慮していただいて、格別なる対策を立てていただきたい。大糸線については、よろしくお願いをいたしたいと思います。  そのほかに、きょうの予定には、いわゆる日本海沿岸の観光の振興について、実はこの間私も集中審議質問をしましたが、抜けておりまして、実際大変なことですから、その面については融資や振興策も含めて取り組んでおられると思いますが、あそこは、阪神の大震災、それからO157の被害、そして今回の災害で、二年の間に大変なダメージを受けておりますので、そういう点も特に考慮されまして、格別な発展策を続けていただきたい。  そのためには、やはりJR西との優遇的な切符ですか、そういうものを含めて取り組んで、振興を図っていただきたいということを特にお願いしておきたいと思います。  以上で終わります。御苦労さまです。
  271. 葉梨信行

    ○葉梨主査 これにて北沢清功君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして運輸省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の熱心な御審議と格別の御協力によりまして、本日ここに本分科会の議事がすべて終了することになりました。心から感謝申し上げます。  これにて散会いたします。     午後六時一分散会