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1997-03-04 第140回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月四日(火曜日)     午前十時開議 出席分科員   主 査 越智 通雄君       越智 伊平君    河井 克行君       桜井  新君    棚橋 泰文君       石垣 一夫君    岡田 克也君       権藤 恒夫君    鰐淵 俊之君       寺前  巖君    松本 善明君    兼務 田村 憲久君 兼務 西  博義君    兼務 西野  陽君 兼務 石毛 鍈子君    兼務 中島 武敏君 兼務 濱田 健一君    兼務 保坂 展人君 兼務 前田 武志君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小泉純一郎君         労 働 大 臣 岡野  裕君  出席政府委員         厚生大臣官房総         務審議官    中西 明典君         厚生大臣官房審         議官      江利川 毅君         厚生省健康政策         局長      谷  修一君         厚生省生活衛生         局長      小野 昭雄君         厚生省薬務局長 丸山 晴男君         厚生省老人保健         福祉局長    羽毛田信吾君         厚生省保険局長 高木 俊明君         社会保険庁運営         部長      真野  章君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省労政局長 松原 亘子君         労働省労働基準         局長      伊藤 庄平君         労働省婦人局長 太田 芳枝君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         労働省職業安定         局高齢障害者         対策部長    坂本 哲也君  分科員外出席者         警察庁交通局運         転免許課長   松尾 庄一君         法務省矯正局教         育課長     奥平 裕美君         大蔵省主計局主         計官      丹呉 泰健君         文部省体育局学         校健康教育課長 北見 耕一君         厚生大臣官房会         計課長     堤  修三君         厚生大臣官房障         害保健福祉部障         害福祉課長   林  民夫君         通商産業省環境         立地局立地政策         課長      岡田 秀一君         通商産業省環境         立地局リサイク         ル推進課長   大道 正夫君         労働大臣官房会         計課長     中野 秀世君         建設省建設経済         局調査情報課長 土屋 彰男君         建設省建設経済         局建設業課長  中山 啓一君         建設省建設経済         局建設振興課労         働資財対策室長 藤田  博君         消防庁救急救助         課長      小濱 本一君         厚生委員会調査         室長      市川  喬君         労働委員会調査         室長      中島  勝君         予算委員会調査         室長      大坪 道信君     ――――――――――――― 分科員の異動 三月四日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     河井 克行君   岡田 克也君     石垣 一夫君   松本 善明君     古堅 実吉君 同日  辞任         補欠選任   河井 克行君     棚橋 泰文君   石垣 一夫君     高木 義明君   古堅 実吉君     金子 満広君 同日  辞任         補欠選任   棚橋 泰文君     越智 伊平君   高木 義明君     鰐淵 俊之君   金子 満広君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   鰐淵 俊之君     高木 義明君   山原健二郎君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   高木 義明君     岡田 克也君   寺前  巖君     中路 雅弘君 同日  辞任         補欠選任   中路 雅弘君     松本 善明君 同日  第一分科員西博義君、前田武志君、第二分科員  西野陽君、第五分科員石毛鍈子君濱田健一  君、保坂展人君、第七分科員中島武敏君及び第  八分科員田村憲久君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成九年度一般会計予算  平成九年度特別会計予算  平成九年度政府関係機関予算  (厚生省及び労働省所管)      ――――◇―――――
  2. 桜井新

    桜井(新)主査代理 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  主査所用のため、その指名により、私が主査の職務を行います。桜井新でございます。  平成九年度一般会計予算平成九年度特別会計予算及び平成九年度政府関係機関予算厚生省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。  この際、分科員各位に申し上げます。  質疑時間はこれを厳守せられ、議事の進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局に申し上げます。  質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田村憲久君。
  3. 田村憲久

    田村分科員 自由民主党の田村でございます。  本日は、このように質問の機会をいただきましたこと、心より御礼を申し上げます。  私は、公的介護保険に関して幾つか本日御質問をさせていただきたいわけであります。  御承知のとおり、我が国は、他国に類を見ないような形で、現在、超高齢化に向かって進んでいっておるわけであります。ついこの間までは、二〇二五年に四人に一人、六十五歳以上の方々高齢者割合がふえるという話であったわけでありますが、先般の人口問題研究所のまとめた統計によりますと、二〇一五年にはどうも二五%以上に高齢者割合がふえてまいる、そんな形になってきております。いろいろと少子化の問題が言われておるわけでありまして、晩婚だ、いろいろな問題があるわけであります。  今、年金、医療、すべてを含みまして、果たして将来に向けて負担をどうするのだ、そんな議論が出てきておるわけでありますけれども、本来からいいますと、それは以前からわかっておった話でありまして、実は、少子化の問題というのは、これから日本国民、民族、この存亡にかかわる問題になってくるのであろう、そのようにも思っております。  余りこの少子化の問題をしますと本論の方に入れなくなるものですから、公的介護質問をさせていただきたいわけでありますけれども、二〇〇〇年に二百八十万人に要介護者方々がふえるであろう、そういう話がある中で、新ゴールドプランを着実に進めておるわけであります。ただ、実は、この介護の問題というのは、今のお年寄りの方々の問題であると同時に、我々の世代の問題でもあるわけであります。我々の世代、本当に介護を安心して受けられるのか、そういうことを考えますと、やはり早急にこの制度法律として整備をしていかなければならない、私もそう思っておるわけでありまして、日本で長生きしてよかった、日本人でよかった、そう思えるような法律をぜひとも早急に今国会で通していただきたい、通していきたい、そのように思っております。  実は、いろいろと私の地元の方で、アンケートといいますか、質問をいたしました。各市町村、大変注意深くこの公的介護保険の問題を考えておられまして、ほとんどのところから御回答をいただいた、御返事といいますか質問をいただいたわけであります。この中からも幾つかきょうはお聞きをしたいわけであります。  まず一つ目といたしまして、この公的介護保険を導入するに当たりまして、いろいろと事務煩雑が言われております。保険証の発行でありますとか、資格の取得また喪失後の管理、また督促滞納者への対応など、膨大な事務量が発生するおそれがありまして、ある方によりますと、一説では、二千億円ぐらいの経費がかかるのじゃないか、こんなことが言われておるわけでありますけれども、一体、現在どのくらいの経費がかかるというふうに見積もってみえられるのか、また、その経費負担というのは実質どこにかかっていくのか、そういう部分をまずお聞かせいただきますようお願いいたします。
  4. 江利川毅

    江利川政府委員 介護保険制度を導入いたしますと、これは既存老人福祉老人医療関係事務が再編成されることになるわけでございます。新たに介護保険施行に伴う事務というのがありますけれども、一方で、老人福祉措置関係などの事務が減少していくというようなことになります。  現時点で、新制度による事務量あるいは事務経費を正確に見積もるというのは大変難しいわけでありますが、国民健康保険事務、これは一つ保険事務でございますので、それを参考に推計をいたしますと、平成十二年度の実施段階におきます事務経費でございますが、平成七年度価格で約八百億円というふうに見込んでおります。このうち、既存事務改善でカバーできるの塗二百億円ぐらいあるのではないか、新規の追加事務が五百億円程度になるのではないかというふうに思っております。  これの事務経費でございますが、自治体の事務ということになりますので一般財源で見ていただくということになりますが、基本的に、その経費につきましては地方交付税措置が講じられますように自治省と協議をしてまいりたいというふうに思っております。それから、この法制度施行によりまして新たに市町村事務となります要介護認定事務などにつきましては、国費によりまして二分の一の交付金交付するということになっております。  今の数字は現時点における推計でございますので、実施前に実態調査などを行いまして、市町村負担が過重にならないような、そういう努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  5. 田村憲久

    田村分科員 ぜひとも、地方負担のかからないような形で御配慮をいただきたいと思います。  さて、もちろん財源の問題も地方は大変不安に思っておるわけでありますけれども、一方、人材の問題というのもやはり大変不安を抱えておられるわけであります。  介護認定審査会、こういう制度を新しくつくって、そこで介護される方々審査をしようということであるわけでありますけれども、これは、基本的には市町村が設置するというふうになっておるわけであります。いろいろと県に委託をしたり、また、広域でそのような形のものをしていこう、そういうようなことも書かれてあるわけでありますが、しかし、それを推進していくといいますか、いろいろと市町村に対して今から指導していくということも必要なのかな、そうも思うわけであります。  その専門的な人材というもの、なかなかこれは大変、介護認定でありますから一番難しいところでありまして、私は、ここが確保できるかできないかというのが、実はこの公的介護保険の内容といいますか、中におきまして大変重要な意味合いを持ってくるのじゃないのか。後にもこれは関連してくる問題であるわけなんですけれども、その人材というものの確保に関して一体地方に対してどのような指導やまた支援策考えておられるのか、お聞かせいただきたいわけであります。
  6. 江利川毅

    江利川政府委員 要介護認定に係る事務、これは全く新しい事務になるわけであります。そして、これが適切に行われるということは大変重要なことでございます。  現在は、要介護認定する際に訪問調査をして、その人の心身の状況をチェックするというのがありますが、そういうことが適切に行われるように、現在、六十の地域モデル事業をやっておりまして、これを九年度は三百四十七の地域に拡大してやっていこう、そういうことによって、いわゆるモデル事業を通じまして、要介護認定に係る事務というものを実施の現場である市町村等にわかっていただく。そういうことをやりまして、また、そこで出てきたいろいろな問題点もと改善をしながら、まず的確な基準をつくっていく、そしてまた、それが的確に実施されるようにマニュアルをつくって、手引書というのでしょうか、そういうものをつくって、こういう要介護認定が的確に行われるようにやっていきたいというふうに考えております。  それから、それはいわゆる事務の流れでございますが、一方、先生お話専門家お話がございました。  専門家につきましては、基本的に都道府県市町村を支援するというようなことで枠組みが考えられておりまして、一つは、福祉事務所であるとか保健所であるとか、そういうところに専門員がおりますので、そういう専門家を活用していただくというのが一つでございます。  それから、先生お話にもありましたが、小さな規模町村等におきましては、共同で要介護認定関係事務をやっていただく。そうしますと、そのエリアで見ればそれなりの専門家がいらっしゃると思いますので、そういう形で的確にやっていただく。  さらに、特に小さい町村等におきまして、どうしてもうまくいかないという場合には、県に要介護認定事務を委託することができることになっております。これを都道府県に受けていただいて、的確にやっていただく。  こういう形で、この事務が的確に行われるようにしてまいりたいというふうに考えております。
  7. 田村憲久

    田村分科員 この点も、市町村は大変不安に思われておるわけでありまして、そのような部分も含めて、これからいろいろと指導といいますか、このような方法がありますよというような形で、市町村に対していろいろな情報を流していただきますようにお願いもいたしたいわけであります。  さて、次でありますけれども、やはり市町村というのは財政的に大変脆弱なところが多いわけでありまして、よく言われておりますけれども、保険料未納がふえてしまったりとか、また、給付見込みを上回るぐらいいろいろなサービスが生じた場合、生じた赤字に対してどう対応していくのだ、これは市町村に追い抜かされてしまうのではないか、そういう不安感というものを持っておるわけなんです。  財政安定化基金等々でいろいろと対応するということになっておりますけれども、これに関しましても、将来、何らかの事情で赤字が増大化した場合に対しても、果たしてこの財政安定化基金というもので対応ができるのであるか。  また、資金交付とか貸し付けとかをこの財政安定化基金の中でいろいろとしていくというふうになっておるわけであります。貸し付け部分に関しての、これは貸し付けですから、いっか返さなければいけないのであろうと思うのですけれども、市町村返済分、これが大変負担になってくるのではないのかな、そう思うわけであります。  この二点について、どのようにお考えになられておるのか、お聞きいたしたいわけであります。
  8. 江利川毅

    江利川政府委員 介護保険法案におきましては、市町村保険財政を安定化させる、そしてまた、一般会計から繰り入れをしなくて済むようにというようなことで、都道府県財政安定化基金を設置するということになっております。そして、一定の場合に、その基金から資金交付とか貸し付けがあるわけでございます。  まず一つ保険料未納が大きい、あるいは給付見込みを上回った場合の赤字でございますが、給付部分については、本来、半分が公費で、半分が保険料で賄われるわけでございます。その給付が膨らむというような場合には、基本的にはその財政構造割合で後で整理をする、つまり、公費のところは精算段階で補うなり、それから保険料の足らないところは、二号保険料については二号保険料できちんと納めてもらうなり、そういう構造できちんと対応するというのが一つでございます。  それから、未納がありましたような場合でございますが、未納につきましては一号被保険者の場合が基本的に考えられるわけでございますけれども、現在、国保につきまして見ますと、七十歳以上の方々保険料納付実績というのは九九%くらいの実績を持っております。そういう意味で、介護保険高齢者にとっての最大の不安でございますから余り未納は生じないのだろう、交付実績から見ても生じないのだろうと思っておりますが、そういう場合でありましてもなおかつ一部生ずることがある。そういうような場合には、いわゆる徴収努力をやっていって、一定の範囲でありましたら貸し付けをしていくわけでございます。  この貸し付けをされたものについての返済でございますけれども、返済につきましては、返済が生ずる部分というのは一号保険料に係る部分の収入が不足している部分返済の問題になっている。それ以外は、先ほど申し上げましたように、公費のところは公費で、精算でやっていきますし、二号保険料のところも、その規模に応じて二号保険料分が納められますから、徴収の過不足あるいは給付の拡大によっている不足部分というのは一号保険料のところだけに生じてくるわけでございます。  こういうものにつきましては、保険料の設定は三年単位でやることになっておりまして、その三年ごと保険料額を設定しますときに、介護基盤計画もとにどのくらい給付が行われるかということを前提に計算していくわけでありますが、それにその返済相当額を上乗せしてもらう。もともと号保険料で本来払うべき部分であったわけでありますから、そういう意味で、追加で払わなくてはならない部分が出た場合には、三年ごと保険料見直しの場合に、介護基盤量から考えられる本来の保険料にその分、恐らく全体にならすとわずかな額だと思いますが、上乗せしていただいて返済をしていただく。そういうことで市町村一般会計からの返済というのは出てこない、そういう仕組みになっているわけでございます。
  9. 田村憲久

    田村分科員 この部分もやはり市町村はいろいろと心配をされておられる部分でありますので、どうか、このようなことが起こらない、市町村負担がふえないように、いろいろとこれから御配慮をお願いしたいわけであります。未納者方々の分をそのまま保険料に上乗せするという話でありますから、やはり未納者が出ないような形で進めていかなければならないのであろうと思うわけであります。  このように、いろいろな部分、まだまだ問題点等々あるのかなと思うわけでありますけれども、法律が通りますと、いよいよこれは平成十二年にスタートということになるわけであります。スタートの時期というのはかなり混乱するのではないのかな、そのように私は思うわけであります。もろもろの手続、事務、また要介護認定が一度に集中するのかな、要するに、認定審査というのが一度に集中するのかな。また、審査に対する不服というものもこれは当然出てくる。ドイツなんかの例を見ておりますと、かなり出てきておるようでありますけれども、そういう問題もあるわけであります。市町村実施主体でありますから、市町村の、少ない多いは別にしまして、地方公務員の中でこれをやっていかなければいけないわけでありますから、これは大変に仕事量がふえるのではないか、また、煩雑化とともにいろいろな複雑な絡みが出てくるのではないか、そのように思うわけでありますけれども、その実施されるところに焦点を置いた対応、これは厚生省としては一体どのようなことをお考えになられておるのか、お聞かせいただきますようお願いします。
  10. 江利川毅

    江利川政府委員 十二年度の実施の際に、円滑にそれが施行されるということは大変重要なことでございます。それで、先ほどもちょっと申し上げましたが、現在、要介護認定関係事務につきましてはモデル事業をやりまして、来年度予算ではさらにそれを拡大して実施して、市町村にそういう経験を積んでもらうことをまず今の段階からやっていくというふうに考えております。  そして、こういう実績を踏まえまして、事務運営のわかりやすい手引書というのでしょうか、そういうものをつくって、それに従ってやっていけば大丈夫だというようなことをまずやっていきたい。先生からの御指摘の中に、業務が大変複雑なのではないかというお話がありましたが、その複雑な業務をできるだけきちんとやれますように、わかりやすい手引書をつくって一つ一つわかっていただくというのがまず大事ではないか。これはできるだけ早目にやって、施行前にそういうものを配ってわかっていただけるようにするということでございます。  それからまた、この法律に基づきまして、介護保険事業計画基盤整備のための計画というものをつくることになっております。これは新ゴールドプランの次に続く計画として、法律ができましたら十二年度から実施考えているわけでありますが、法案が通りましたら私どもとしては直ちにその策定に係る事務に入っていただいて、事前に準備できるものは準備していただく、そして、施行のときにはそれが新しい法体系もとで円滑に動けるようにしていきたいというふうに思っています。  また、要介護認定事務などにつきましても、施行前にできる事務というのはどのくらいあるだろうか、平成十二年四月一日前にやれる事務というのはどのくらいあるだろうか、これを少し詰めていきまして、できるだけ施行前から準備に入って、十二年四月一日に円滑に新しい制度に移れるようにやってまいりたいというふうに考えております。
  11. 田村憲久

    田村分科員 さて、保険料は大体平均して二千五百円くらいになるのじゃないか、今そんな話であるわけでありますけれども、先ほどから話が出ておりますとおり、未納者滞納者が生じてくる可能性というのは当然あるわけであります。  その中で、悪意で滞納される方々もおられれば、いろいろな生活上の理由で滞納されてこられる方も出てくる、そのときに、未納者方々未納者であるということだけで介護を受けられないというのも問題があろうか、そう思うわけでありますし、かといいまして、実際問題、未納者方々保険料納付しておられる方々と同等に扱われてサービスを受けることができるとなりますと、これは、保険料を払う側からしますと、ばかばかしくて保険料を払わなくなってしまう。  そこら辺、大変難しいところがあるわけでありますけれども、この未納者方々滞納者方々に対してどのような対処法考えておられるのか。これは、今言いました、払っておられる方々も納得がいかなきゃいけないわけでありますから、ひとつお聞かせをいただきたいわけであります。
  12. 江利川毅

    江利川政府委員 基本的には、まず未納滞納が生じないように最善の努力をするということから始まるわけでございます。  今度の介護保険制度におきましては、保険料納付所得に応じて五段階に設定しようと考えておりまして、低所得者でありましても保険料が納めやすいような配慮をしていくということが一つでございます。そしてまた、現に七十歳以上の人は九九%、国保保険料を納めておりますし、高齢者最大の不安が介護だということを考えますと、そういう制度の趣旨をよく説明して、制度運営に協力してもらうように努力をするということでございます。  ただ、そうはいたしましても、一部どうしても未納滞納ということが起こり得るわけでございまして、これにつきましては、まずは督促をするとか納付相談をするとか、そういう行政実務において滞納者未納者と直接話し合って理解を求めていく努力をしていただくということが基本になります。  一方、給付面におきましては、給付を受けるような場合、滞納未納だからといって介護保険制度による給付は行わないというふうには考えておりません。給付は行うのでありますが、ただ、この場合に、未納者につきましては償還払いにする。一たん自分で全額を払ってもらって、その領収書を保険者である市町村のところへ持っていけば、そこでその分給付をしてもらう、そういうような償還払い等の措置を講じまして、そうしますと市町村の窓口に当然来るわけでございますから、またここでよく相談していただいて未納問題を解決してもらう。こんなふうに制度の中では考えているわけでございます。
  13. 田村憲久

    田村分科員 低所得者方々への御配慮という話も今あったわけでありまして、当然それは負担の方、要するに一割自己負担の方へもぜひとも御配慮というものをしていただきたいな。本当に、生活といいますか、世の中の弱者、弱い立場の方々に対する配慮というものが必要になってこようかと思うわけでありまして、社会保障制度、いろいろとお金がかかる、かかると言われておるわけでありますけれども、いろいろなことを考えますと、お金のある方々からはやはり負担としてしっかり取る、本当に困っておられる方々に対しては福祉という一面からその方々をお助けする、お手伝いする、そういうことが必要であろうかと思いますので、その点、どうかよろしくお願いをいたしたいと思います。  さて、新ゴールドプランもとに、介護保険導入時に十分なサービスができるようにということで、今いろいろとこの計画の達成努力を各市町村、国も挙げてでありますけれども、していただいておるわけであります。  今、多分、総論といいますか総枠では、計画どおりいきますよ。ただ、その計画の内容が果たして制度実施されたときに十分であるかどうかという議論は、これはもう少し精査していかなければわからないかもわかりません。いずれにいたしましても、新ゴールドプランの内容に従ってこのままうまく順調に進んでいきますよというようなことを何度か御答弁をいただいたのをお聞きしたわけでありますけれども、ただ、やはり市町村の間ではいろいろな格差が出てくるのであろうと思います。  全体では計画が達成できても、各市町村個々においては、それは充実しておるところもあれば充実していないところもあるかもわからない。普通くらいのところもあるかもわからない。そう思いますと、一定レベルのサービスというものがなかなか受けられない状況が、これは二〇〇〇年、要するに平成十二年当時でありますけれども、起こってくるのじゃないのかな、そういう危機感というものを、これは特に市町村方々、実際問題、自分たちが現状をわかっておるわけでありますから、切実に感じておられるのです。  そこで、このようないろいろな格差が出てくる、サービスに対して格差が出てくることに対して、果たして国として、厚生省としていかなる対応、対策というものを現時点でお考えになられておるのか、お聞かせください。
  14. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 先生お話しのとおり、介護保険制度の円滑な導入のために、介護サービス基盤が着実に整備をされているということは大変大事なことでございます。一定水準の介護基盤整備を進めて、その上で、各自治体においてまたそれぞれの基盤整備をそれぞれの力の入れぐあいで充実をされる、そのことはまたそれでそれぞれの自治体の方針としていいことでございますけれども、やはり全国的にある程度の水準というものを達成していかなければならない。そういう観点から、まずはお話しの新ゴールドプランの全国的な整備ということが大変大事になってまいります。  現状は、全国的に見ますというと、特別養護老人ホームでございますとかホームヘルパーといったようなものを中心にして、総体的に見れば比較的順調に進んでおりますけれども、そういった中でも、全国的にもまだ、ケアハウスでございますとかあるいはデイサービスセンターの関係などは少しおくれぎみというようなこともございます。それに加えまして、むしろ、先生おっしゃったように、地域的な格差の問題というのは、事実、私どもとしても大変苦慮している問題でございます。  これに対しまして、私どもは、今整備がおくれている地域につきまして、予算配賦の面で重点的にやっていく、あるいは都市部における土地問題等を考えまして加算をする、あるいは過疎地域等を中心にいたしまして小規模な施設を認めていくというような形で重点的な整備を図る。それから、在宅サービスを中心にいたしましたいろいろな既存の施策を拡充をしていく。それから、それぞれの地域の実情に応じまして、学校用地でありますとか施設の転用でありますとか、あるいは民間の活力の導入といったような多様な手段を活用いたしまして、できるだけ全国的にある一定水準を保つようなサービス基盤の整備を進めていく。具体的には、新ゴールドプランの達成に向けて努力をしていくということを進めていかなければならないというふうに思っております。  そういう観点から、実は、現時点で各自治体の中で特に整備のおくれているようなところにつきましては、もう一度、そのおくれている理由あるいはそのおくれている対策のネックになっているところ、そういったところをそれぞれ分析いただいて、それを踏まえた上で具体的に年次計画をつくって新ゴールドプランの達成に向けていただくというようなことをきめ細かくやっていかなければならないということで、今そのような方向で進めておるところでございます。  その上で、介護保険法が施行されましても、介護保険の中におきましても、先ほど御答弁申し上げました介護保険事業計画というような形の中でさらに整備を進めていく。そういった中でもまだ在宅サービスなんかで思うように整備が進まないということでございますれば、そこはもう、最後の手段としていえば、在宅サービスについては、給付金につきまして経過的に支給限度額を下げる措置を認めることにしまして、それで段階的に整備を進めながら給付水準を上げていただくというような経過措置も一部に導入をするという形で対応していくということでございます。
  15. 田村憲久

    田村分科員 ありがとうございました。時間がなくなりました。本当は最後に大臣にお聞きをしたかったのですけれども、一言だけお願いいたします。  どの制度も完璧じゃないと思うのです。しかし、かといって、この公的介護保険、後回しにすることはできないわけでありまして、早急にこれを確立しなきゃいけないわけでありますけれども、いろいろな部分で、実施していく中で不備が出てきた場合、これは制度として改革をしていかなきゃいけない。これは当然でありますから、その点に関しましての大臣の御所見だけ、よろしくお願いいたします。
  16. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 もともとこの介護保険法案の作成する過程でさまざまな議論がありました。そういう点も踏まえて、今回の法案の附則に、被保険者の範囲、保険給付の対象者、負担のあり方等について、法施行後、制度全般について検討を加える旨の規定を設けております。ですから、この法案施行後の状況等を勘案しながら、制度の全般にわたって必要な検討を加えていきたいと思っております。
  17. 田村憲久

    田村分科員 どうもありがとうございました。
  18. 桜井新

    桜井(新)主査代理 これにて田村憲久君の質疑は終了いたしました。  次に、石垣一夫君。
  19. 石垣一夫

    石垣分科員 新進党の石垣でございます。  まず最初に、本題に入る前に、きょうの新聞を見ますと、せっかく小泉大臣がお越しなものでございますから、先般の郵政三事業の民営化論についての本会議の御発言に対して、自民党の加藤幹事長の方から、発言の削除をできないか、こういう問い合わせがあった、それに対して小泉大臣は、削除も訂正も謝罪もしない、こういうことがあったという記事が載っておるのですけれども、総理大臣の方からいわゆる閣内不統一というようなことでお話があったのですか。
  20. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 私の発言に対して閣内不統一であるという議論は、総理大臣からも閣僚からも全然出ておりません。
  21. 石垣一夫

    石垣分科員 憲法の六十六条の三項あるいはまた六十八条、これに関連して閣内不統一ということがございますけれども、小泉大臣はかねがねいわゆる郵政三事業の民営化についての確固とした理論を持っておられますね。どういう立場になられても、この発言は終始一貫、政治信条として持ち続けられるお気持ちでございますか。
  22. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 行財政改革のために必要だということで今まで言ってきたことでありますが、今後ともその必要性を国民に理解してもらうようにするよう努力していきたいと思っております。
  23. 石垣一夫

    石垣分科員 ちょっとここで資料を配らせていただきたいのでございます。データであります。  それでは、本題の救急医療についてお伺いいたしたいと思うのです。  厚生省は、平成九年度の中で、救急医療対策費としてどのぐらい予算を提出されました。
  24. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 平成九年度の救急医療対策費といたしましては、約二百六十億でございます。
  25. 石垣一夫

    石垣分科員 これは平成八年度に比べてどのぐらいの伸びでございますか。
  26. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 平成八年度の予算額が二百四十九億一千二百万余でございます。平成九年度予算案の中では、ただいま申しましたように二百六十億六千五百万余でございますので、増減といたしましては、十一億五千二百万余円が増加いたしておりまして、対前年度で四・六%の伸びということでございます。
  27. 石垣一夫

    石垣分科員 非常に財政の厳しい中、厚生省としてもこの救急医療に対しては過分の予算配慮をしておる、このように私は理解するのです。  近年の疾病構造の変化あるいはまた社会環境の変化によって、国民の救急医療に対する期待は非常に高まっております。そこで、国の対策として、この救急医療をどう位置づけておるのか、また、現代の救急医療体制をどう評価しているのか、こういう立場からひとつ答弁願います。
  28. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 先ほどもちょっと予算のことで御説明をさせていただきましたように、厳しい財政事情の中で、救急医療の確保ということで必要な予算の確保に努めているつもりでございます。  救急医療対策というのは、申し上げるまでもなく、やはり国民の命を守るという上で極めて重要な施策であるということで考えております。厚生省では、昭和三十年代の後半に、現在の救急告示病院制度あるいは救急告示診療所制度というものを発足をいたしましたが、その後、患者の受け入れ体制が十分でないといういろいろな批判がございまして、昭和五十二年から、現在の一次、二次、三次の救命救急センターといったような体制の整備、それから、それらを結ぶ救急医療情報システムの整備ということを進めてまいりました。もちろんその間に、消防庁を初めとする関係機関との協力ということも計画的に進めてきたところでございます。現在の時点で、今申し上げましたような一次、二次、三次の救急医療体制というのは、いろいろな御意見はあろうかと思いますが、量的には大体かなり整備をされてきたのじゃないか、地域差はいろいろあると思いますが、というふうに思っています。  ただ、一方、昭和三十年代からやってきた救急告示制度と現在の一次、二次、三次の体制というのが重複をしているようなところもありますし、そういったようなことも含めて、救急医療体制の質を向上させていくということが必要ではないかということで、ことしの二月に、専門家に集まっていただいた検討会を設けまして、消防関係者にも入っていただき、また、主に救急医療の現場でやっておられる方、そういう方たちに入っていただいて、今後の救急医療体制の検討ということを始めたところでございます。
  29. 石垣一夫

    石垣分科員 救急医療体制を整備するに当たっては、搬送体制の整備、救急員の確保あるいはまた救急蘇生法の普及が非常に重要な問題であります。  そこで、搬送体制における救命救急士の普及状況、これは消防庁管轄だと思うのですけれども、さらに救急医学教育の現状、これは文部省に関連すると思うのですけれども、それぞれ答弁をいただきたいと思います。
  30. 小濱本一

    ○小濱説明員 救命士の現状でございますけれども、御案内のように、平成三年に救急救命士法が制定されまして、消防庁といたしまして救命士の養成促進を進めております。この養成のための養成機関といたしまして、各都道府県が共同出資して設立しております救急振興財団の研修所と、一部大都市等に設置されている養成所がございますが、これは合計十二カ所になります。そこで、年間の養成規模が、その十二カ所合わせますと約千二百七十名程度になっております。  救命士の数でございますけれども、昨年秋の国家試験の合格者を含めまして、現在、全国の消防機関には約四千七百名程度の救命士が配置されているということになります。しかしながら、まだ十分な状況とは言えませんので、引き続き消防庁といたしまして救命士の養成促進に努めるつもりでございまして、このため、救急振興財団の養成の枠を平成十年度より年間八百名体制から一千名体制へ二百名増枠することといたしまして、現在、その整備拡張に既に着手しているところでございます。
  31. 北見耕一

    ○北見説明員 学校におきます応急処置の関係でございますが、文部省では、平成三年度から、各都道府県におきまして、中学校及び高等学校の保健体育科の教諭を対象といたしまして心肺蘇生法を含みます応急処置の技能等を習得させるための応急処置研修を実施いたしますとともに、学校安全に関します教師用の指導資料を作成しているところでございます。  それからさらに、日本体育・学校健康センターや各都道府県教育委員会との共催によりまして、関係機関と協力いたしまして、小中高等学校等の教員を対象とした心肺蘇生法の実技講習会でございますとか、あるいは交通安全教育指導者研修会においてそういったものの実技研修を行っているという状況でございます。  文部省といたしましては、今後とも、これらの施策を通じまして応急処置に関します指導の充実を図っていきたいと考えております。  なお、つけ加えますと、従来から、中学校の保健体育科におきましては、人工呼吸法を含みます応急処置について実習を通じて指導してきたところでございますし、また、高等学校の保健体育科におきましても、心肺蘇生法等の応急処置の意義と方法を指導内容に盛り込んでいるところでございます。
  32. 石垣一夫

    石垣分科員 消防庁、救急救命士の将来のあるべき姿、この目標から考え現時点は那辺にあるのか、さらにまた、この目標を達成するにはどのくらいかかるのか、お答え願いたいと思います。
  33. 小濱本一

    ○小濱説明員 目標でございますけれども、我々といたしましては、全救急隊に最低一名の救急救命士を配置したいというふうに考えております。  現状がそういった観点から見てどういう状況なのかといいますと、昨年の七月一日現在でいいますと、救急隊の総数が四千四百余りございまして、救急救命士が配置されている隊がそのうち一千隊余りになっています。率にいたしますと二三・九%ということで、約四分の一という状況でございます。我々が目標といたします、すべての救急隊に最低一名救命士を配置するという目標を達成するためには、今のペースでいきますと、おおむねまだ十年ぐらいかかりそうでございまして、我々としてはできるだけ早く達成したいというふうに考えています。
  34. 石垣一夫

    石垣分科員 いろいろと難問題があると思うのですけれども、理想とする目標に向かって格段の努力をされることを要望しておきたいと思います。  文部省関係ですが、今、保健体育を通じていろいろやっておると。現場を御存じですか。文部省は一定の通達を流しているけれども、現場はそんな甘いものじゃありません。私もきのう大阪府の全部を調べましたけれども、時間がありませんので詳しくは言いません。私は、これはさらに督励をして、文部省の意思がきちっと最末端まで現場において実施されるよう要望しておきたいと思います。  それから、警察庁にお聞きしたいと思うのです。  平成五年に法律を改正されて、平成六年から免許取得時について心肺蘇生法の講習を行っておる、このように聞いております。これは非常に立派な英断だと私は思うのです。しかし、免許更新時にもこれを行うべきではないのか。これは財政的にも人的にも非常に大変な作業でございますけれども、これをやらなければ、私は本当の蘇生法の徹底には不十分だと考えるわけであります。  たまたま、私、先般、元大阪大学名誉教授の杉本氏、この方は日本の救急医学界のトップを走ってこられた方ですが、この人の本を読んでみますと、アメリカでは四千万人が講習を受けておる、それに対して日本の現在の心肺蘇生法の講習は極めておくれておる。  例えば、きのう大阪府を調べましたら、大阪府は保健所が二十二あるのです。それで、年一回、救急の日に保健所に集まってもらって講習をやっているのですね。この数が千三百五十三人。大阪市を除いた保健所の対象人口は四百五十万です。三千人に一人しか大阪府民は参加していないのです。これが現状なんですね。したがって、アメリカの四千万と比べるとはるかに差がある。  なぜこれを言うかというと、心肺が機能停止したときに最初の四分間が大事だ、ここで蘇生法をやれば蘇生率ははるかに上がっていく。アメリカは二〇%から三〇%の蘇生率を持っているわけです。日本はわずか一%、こういう資料があるのですね。だから、私はあえてこのことを今言っているわけですけれども、免許更新時におけるこの講習についてはどうお考えですか。
  35. 松尾庄一

    ○松尾説明員 先生御指摘のように、平成六年度から、新たに免許を取得する方につきましては、応急救護処置講習を受けていただくということでございます。これは、運転者として交通事故の現場に遭遇する機会が多いということで、運転者の義務と心構えということで身につけていただくということで始めております。それ以来三年余が経過しておりまして、年間約二百万人の方が新規に免許を取得しておりますので、もう現在まで至りますと六百万人強の方がこの応急救護処置講習を受講されたということになります。  ただ、私どもとしても、先生おっしゃるとおり、応急救護処置の知識につきましては全運転免許保有者が身につけるということが望ましいという考えでおりまして、実は更新時講習の場におきましても、「運転者の心構えと義務」という項目の中で説明することとし、また、その際の教本には、負傷者の観察、移動、心肺蘇生法、止血法等について記述して、知識の普及に努めておるところでございます。  ただ、いかんせん二時間以内とされております更新時講習の中で、新規に免許を取る方の応急救護処置講習の内容を加えるということになりますと、更新時における免許保有者の大きな負担ということと、それから、実施機関側の体制の整備ということも考えてまいらなきゃいけない大きな要素であろうと思いますので、当面は、現在の更新時講習において内容を一層充実するとともに、現在、本による教材を使っておりますが、ビデオ等の教材の整備についても検討してまいりたいと考えておる次第でございます。
  36. 石垣一夫

    石垣分科員 今後の検討課題として真剣に取り組むべき問題だ、このように私は問題を提起いたしておきます。  そこで、観点を変えて、救命救急センターの本論に戻って御質問したいと思うのです。  先ほどいろいろと話がございましたけれども、平成三年四月に救急医療体制検討会が「二十一世紀に向けての救急医療体制の充実方策」ということで、十八点にわたっての提言をやられておりますね。これが今後の我が国の救急医療体制の整備に非常に大きな寄与をしたと思うのです。そういうことも踏まえて、現在、二十四時間体制で心筋梗塞、脳卒中、頭部損傷等に対処するための救急医療体制が全国で百三十一カ所運営されておりますね。  本来、救命救急センターの最も重要な使命は、心肺機能の停止状態になった重篤患者を蘇生するために全エネルギーを傾注して治療することに尽きる、このように思います。そのためには、マンパワーの量的、質的な確保は当然であります。と同時に、救命救急センターが、大学の附属病院であろうと、また母体病院を併した形であろうと、検査から手術、すべての治療を行うためには、母体病院の力をかりなくても機能する自己完結型の機能を備えたものでなければならない。いわゆるユニットですね、一つのユニットとしての機能が大事であります。したがって、二十四時間、三百六十五日受け入れ可能、手術可能、直ちに対応できる救命救急センターが理想であります。こうした救命救急センターに対して、現行制度の中でどう評価をされておるのか、お伺いしたいと思います。
  37. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 救命救急センターにつきましては、現在百三十一カ所ということでございます。  この救命救急センターにつきましての国の補助ということに関しましては、今先生お触れになりましたように、二十四時間いつでも患者に対応できる体制を確保するということで、給与費あるいは材料費等の収支差に対して補助を行うということで現在までやってきているわけでございます。救命救急センターが救急医療の中で果たしている役割ということにかんがみまして、今後とも、この補助制度というものを充実していきたいというふうに考えております。
  38. 石垣一夫

    石垣分科員 だから、二十四時間フル活動やっている、こういう理想的な経営をやっている救急センターに対しては一定の評価基準を設けて手厚くこれに対処する、こういう考え方はありませんか。
  39. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 救命救急センターも、もちろん、これは現在の医療制度の中で保険医療機関という位置づけで保険診療をやっていただいておるということでございます。一方、救急医療というものの特殊性といいますか、先ほどお話のありますように二十四時間対応できる体制を整備していくというようなことから、必要な人件費、給与費等に対する補助ということをやっております。  救命救急センター百三十一カ所それぞれの置かれた状況というのはいろいろあろうかと思いますし、また、その地域医療の中での果たす役割、救命救急センターが非常に集中している、集中という言葉はちょっと適切ではないかもしれませんが、非常に多くあるところとそうでもないところによって変わってくるというふうに思っております。  ただ、全体の補助のやり方としては、私ども、現在やっている方法以外に、個々にそれを評価していくというのはなかなか難しいのではないかというふうに考えております。ただ、御承知のように、社会保険の診療報酬におきましては、受け入れ患者の数の実績に応じた点数というものが当然設定されておりますし、この四月から予定をされております診療報酬の改定の中でも一定の引き上げが図られるというふうに理解をしております。
  40. 石垣一夫

    石垣分科員 診療報酬の改定については毎年毎年見直しされている、これは評価いたしたいと思うのです。  そこで、大阪は全国でも救急医療体制が早くから整備されております。今お手元にお配りしましたけれども、非常に集中をいたしております。それぞれ特色がある施設があるのですけれども、その中でも異彩を放っているのが、私の地元の大阪府三島救命救急センターであります。これは大阪府となっていますけれども、高槻市と島本町がいわゆる第三セクターをつくって経営している異色の救命救急センターなんです。これは一九八五年にオープンして、四十一床のベッドで急性心筋梗塞の受け入れが際立っております。このセンター周辺には、お手元に資料をお配りしているように、国立循環器病センター、府立千里救命救急センター、国立大阪大学附属病院、私立大阪医科大学病院、非常に密度の濃い大阪北部にありますけれども、当該センターが扱う急性心筋梗塞の症例件数は年間百五例と際立っております。同時に、入院時に心肺機能が停止しているいわゆるDOAの救助を加えると、年間二百近くがこの三島救命救急センターに受け入れされているわけです。特に夜間・休日の受け入れが多い。  そこで、こうした医療密度の濃い地域での第三次救急医療の体制についてお伺いしたいと思うのですけれども、こうした積極的に事業展開を行っている救命救急センターに対する運営及び設備補助の見直しを考えるべきではないか。特に、先ほど申し上げたようにこのセンターは高槻と島本の一市一町でやっておるのです。ところが、二枚目の資料を見ていただきたいと思うのですけれども、入院患者は他市の患者が五〇%を超えているわけです。お隣の枚方、寝屋川それから茨木、吹田、こういう広域的に非常に評価がされているわけであります。しかし、一市一町ですから非常に財政基盤が弱い。非常に苦労して経営されているわけです。こういうセンターに対して、私は、評価の見直しを含めて運営及び施設面に対する補助制度の見直しを行うべきではないか、このように考えるのですが、どうですか。     〔桜井(新)主査代理退席、主査着席〕
  41. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 救命救急センターにつきましては、各都道府県一カ所というのがまず大前提としてあり、その後、地域の実情に応じて、例えば人口三十万以上の二次医療圏でも設置をしていくといったような形で現在まで来ているわけでございます。したがって、救命救急センターをどういうふうに設置していくかというのは、基本的にはそれぞれの地域、具体的には県単位で考えていただくことだろうというふうに思っております。  先ほどお話のございます補助制度でございますが、現在の救命救急センターに対する補助あるいは救急医療対策全般に対する補助というのは、二十四時間体制での診療体制を確保するということに着目した補助制度でございます。私どもとしては、それぞれの地域の、あるいはそれぞれの救命救急センターのいろいろな実情はあろうかと思いますけれども、その一つ一つに着目をして補助を見直していくというのはなかなか難しいのではないか、ただ、冒頭にも先生からお話がございましたように、救急医療対策というのは非常に大事なことでございますので、必要な予算の確保ということについては今後とも努めてまいりたいというふうに思っております。また、先ほどちょっとお話をさせていただきました今後の救急医療体制のあり方ということの中では、救命救急センターをどういうふうに今後整備をしていくかということも重要な課題だというふうに認識をしております。
  42. 石垣一夫

    石垣分科員 今申し上げたように、大阪府三島救急センターの果たしている役割は極めて大きいと思うのです。救命は、単に人間の命を救うというだけではありません。その人の全人格、全生活に直面してくる問題であります。まさに崩壊しようとする人を救う大きな事業であります。救急医療を充実させるためには、何にもまして情熱ある人、使命感のある人、こういう人が多数あって初めて中身は向上していくのですね。そうした立場から考えると、この三島救命救急センターは、創立者の渡邊先生というのが、亡くなられましたけれども、非常に真摯な方で、まさに「医は算術」と言われる中で「医は仁術」ということを地でいった人であります。こういう立場で活躍しておられる方もおるということを知っていただきたいと思うのです。  そこで、大臣に最後にお伺いしたいと思うのです。我が国の救急医療体制において今後一段の質的な向上を図るためには、大臣としてどういうお考えを持っておられますか、最後にお伺いしたいと思います。
  43. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 お話しのように、救急医療というのは、数分間で生きるか死ぬかが決まってしまうという、そういう重大な役割を担っておりまして、その人的な質を向上するということは大変重要なことだと思っております。また、当事者においても、思いがけない事故で生死が分かれるという影響も、大変大きな問題もはらんでおりますので、この救急医療の重要性というのは幾ら指摘してもし過ぎることはないと思っております丁  今後、教育研修とかあるいは救急医療に関する普及啓発についての検討、そして地域の実情に応じた救急体制の整備について、厚生省としても鋭意努力を続けていきたいと思っております。
  44. 石垣一夫

    石垣分科員 終わります。
  45. 越智通雄

    越智主査 これにて石垣一夫君の質疑は終了いたしました。  次に、西野陽君。
  46. 西野陽

    西野分科員 新進党の西野陽でございます。  大阪ばかりが出てまいりまして申しわけないと思いますが、昨日も旭道山君が御質問申し上げたそうでございますし、今は石垣君でございます。大阪でございます。私も大阪でございます。  小泉大臣は、並みいる多くの政治家の中で、大臣のかねてからの行動あるいは発言、そういうものを拝見させていただきまして、国会議員として第一歩を踏み出しました私どもにとりましては大いに参考にすべし、そういう意味で大臣の政治活動について私どもは大いに勉強していきたい、このように思っておるところでございます。したがって、この分科会質問もとりわけ厚生省関係が非常に多いというように聞いておりますけれども、これは、今、国民の課題が厚生関係に非常に集中しておることも事実でございますし、加えて、大臣のお人柄にしからしめるところがあるのではないかというふうに思っております。  まず、小泉大臣といいますと、平成七年の九月、自民党の総裁選が行われましたときに、私どもから見ていましたら、あれはまあ、失礼でございますが、勝負は決まっておったのではないか。しかしながら、対立候補がないということは国権の最高の立場にお立ちになる方のビジョン、政策というものが見えない、これは大いに対立軸を明確にしてやるべきだということだろうと思いますが、先生が立候補されました。あの決断というもの。  さらには、郵政の民営化の発言等につきましても、過ぐる平成四年十二月十一日、郵政大臣に、官邸に呼び込みがありまして、その後の記者会見で、官業による民業の圧迫は問題だ、こう御発言をされたように記憶をいたしております。当時からそのような英断を持って、今日、今後の政治を考えておられたということ。  さらに、今回厚生大臣に御就任をされました昨年の十一月、あのときは、私どもがマスコミ等で聞く範囲では、固有名詞を挙げてどうかと思いますが、亀井静香さんに厚生大臣の就任がどうも取りざたされておった、亀井さんはこれを固辞した、そして検討の結果、小泉さんに厚生大臣の御指名がかかった。  御就任直後に、例の岡光事件の不祥事が発覚をしてきた。それに対して、大変御苦労をおかけしているな、個人的にはそのように思っておるわけでありますが、大臣の持ち前の決断力と行動力は国民の多くが注視をいたしておるところでございますので、どうぞ、あくまでも視点を国民に置いて、これからの行政万般にわたって先生の持てる力を発揮されんことを冒頭に期待を申し上げておきたいと思います。  それでは、ちょっと質問に入らせていただきたいと思います。  今日、医療保険制度の見直し論とか福祉、年金、介護等々の社会保障、これらは大きな政治課題でありまして、決して避けて通ることはできないというように思っております。ここで大臣に、改めまして、国民皆保険ということについての考え方、理念、そういうものについてまずお尋ねをしたいと思います。
  47. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 国民皆保険制度、これは、国民だれでも病に対する不安、おそれというのはあると思うのであります。健康に大きな関心をだれでも持っておると思うのですが、病になった場合、いつでもどこでも安心して適切な治療を受けられる、これをどうして社会全体で支えていくかということからこの国民皆保険制度が導入されまして、当初は、この保険があったってお医者さんいないじゃないかというような一部の批判もあったと思います。しかし、今やこの皆保険制度実施してみてよかったな、だれでも適切な治療が、それほど大きな負担なしに治療行為を受けられる、医療行為を受けられるということで、私は既に定着していると思っております。  もちろん、改善すべきは多々あると思います。この医療保険が今後安定的に運営されることによって国民の健康が守られるということで、今後とも、この医療保険制度の安定的発展に全力を尽くしていきたいと思っております。
  48. 西野陽

    西野分科員 その保険の中で、市町村国保財政状況につきまして、きょうは時間の関係で絞ってお尋ねをしたいと思うのです。  今、市町村国保財政は非常に厳しい状況にあります。これらに対しまして、国の方がしかるべく財政支援を行っておられるというふうに思っておりますが、その辺につきまして、政府委員の方からお答えをいただきたいと思います。
  49. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 市町村国保の財政は、なかなか厳しいものがございます。  国保制度の仕組みといたしまして、国の方としては、給付費の四割を国庫負担する、これは定率で国庫負担をする。それからさらに、財政調整交付金という形で一割を交付する。合わせまして、国が給付費の五割を負担する、こういうような仕組みでやっております。また、低所得者の場合に、保険料軽減をしましたり、そういった際にこれを補てんしていくということで保険基盤安定制度というのをやっておりますし、また、低所得者が多いというようなことから、市町村一般会計から繰り入れた場合に、これは地方交付税の措置でありますけれども、それに対する地方財政措置ということで国保の財政安定化支援事業、こういうようなものを通じまして財政支援をしておるわけでございます。
  50. 西野陽

    西野分科員 そのような財政支援が、市町村側の財政状況だとか、あるいはいわば保険料の収納率という点によって状況が変わってくるのではないかと思いますが、その辺につきまして、いかがですか。
  51. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 財政調整交付金につきましては、まさに御指摘のとおり、市町村の財政状況等を勘案しまして、また、各市町村における収納率というのは保険者としての努力ということになろうかと思いますが、そういったものも勘案しまして、そして適正な交付を行っておる、こういう格好でございます。
  52. 西野陽

    西野分科員 その保険者努力でありますけれども、私の地元で恐縮でございますが、東大阪市は全般の財政状況も大変厳しいのでございますが、とりわけこの国保財政にも非常に厳しさを持っておるわけで、何か赤字は全国のワーストワンだ、そのように聞いておるのですが、状況はどうでございますか。
  53. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 東大阪市について見てみますと、これまでの状況から見ますと収納率も低いという状況がございました。それからまた付加限度額、いわゆる保険料の付加をする限度額でありますけれども、これも低いというような状況があったわけであります。いわゆる収支差、赤字でありますが、これにつきましてもかなり抱えておりまして、平成四年度が百四十六億というような額でありますし、これが市の努力によりましてだんだん改善が図られてきておりまして、平成六年度で見ますと、これは百十二億円というようなことになってきております。  かつて、平成六年度までの累積赤字額ということで見ますと非常に厳しい状況でありまして、全国で見ますと累積赤字が一番多いというようなことで、財政状況が非常に厳しい市ということでございます。
  54. 西野陽

    西野分科員 その悪い状況の中で、実は、市がみずから取り組んでおるところにつきましては一定の評価をしてあげるべきだというふうに思っておるのです。  それを受けまして、たまたまその時期に、例の岡光さんが保険局長をされておりました平成七年の二月一日に、国保の全国の主管担当者会議というのですか、そういう席で東大阪の例を個別に挙げていただきまして、このような発言があるのです。「市長が率先して、国保保険料滞納世帯を回った。市長さんが三〇世帯を受け持ち、助役さんが三〇世帯を持つ。」「土曜日だろうと、日曜日だろうと、夜だろうと、担当世帯に行っては説得して保険料を集めるという努力を市役所の担当全員が行った。議会を通して応益割を引き上げることに理解を求め、結果としては、」「収納率が相当向上した」、これを見習うべきだ、その場合、範として個別に挙げていただいたのでございますが、逆に節々には、市町村の部課長をこの機会にひとつ洗脳すべきだとか、ちょっと突出した御発言もある。これは非常にいいことなのでございますが、その岡光さんが現在は別のところにお入りになっているのでございまして、これまた大変皮肉なことだろうなというふうに思っております。  このことは御存じでございますか。
  55. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 ここに、私も、ある雑誌で、要旨でありますが、当時の岡光保険局長の説示ということで載っておるものを持っておりまして、これを読ませていただきましたが、先生御指摘のような趣旨のお話をしております。
  56. 西野陽

    西野分科員 要は、市町村はみずから収納率を高めるということ、これはもちろん大切なことだろうと思うのですね。問題は、この収納率を率先して上げるための努力をする。戸別に訪問をす一る。夜といえども昼といえども、昼夜分かたず、こういうことになってくるわけですね。  そこで、またタイムリーなことでございますのであえて指摘したいと思いますが、一昨日のテレビで、また東大阪の健康保険のことが取り上げられて、テレビ放映されたのでございますね。若干これを紹介をしますと、お聞きだと思いますが、大工のKさん、震災のため両腕複雑骨折、八カ月間収入ゼロ。サラリーマン健康保険では休業補償として十八カ月、給料の六割が支給されるが、国民健康保険は全くなく、月額三万八千円の保険料が重くのしかかった。払えないでいたら、市の督促で財産差し押さえの警告が来た。役所にかけ合ったら、御飯食べへんでも保険料払いなさい。この大工さん、月三万八千円の保険料を払って、医者に行こうと思ったら、今度は行く金がない、お医者さんで一部負担金を払うお金がない、こういうことですね。  ここに応能割と応益割というのをとっておられるわけですが、この方は、年間収入でいきますと、二百八十万。応能割で十九万五千百三十円。応益割で、世帯当たりが三万百二十円、一人当たり三万二千七百円掛ける五人の家族でございますから、この二百八十万の年収の大工さんは、締めて三十八万八千七百五十円を健康保険料として納めなければならぬという実態、大変これは厳しいことだなというふうに思います。  さらに、町工場で自動車部品のプレス工業をされている方、奥さんと二人の子供を養っておられるわけであります。東大阪市での国保料は三十五万六千五十円。ところが、道路一本離れて向かい側の大阪市の場合でありますと二十一万四千八百六十五円と、十四万円強安くなる。さらに、東京二十三区に住んでおれば十一万五千五百十円になるという。これは御案内のとおり、応能割と応益割という制度の取り組み方が、こういったいわば弱者に与える問題があるということであります。  さらにもう一点申し上げますなら、わずかな年金を持ってきて、死にかかっているので保険証をくれと言ったけれども、断られた。お金を払わなければだめですよ、保険料ですね、こう役所から言われた。そんなことしたら、お金ないから死んでしまうがなと言ったら、死ぬなら勝手に死にはったらええ、これは私どもの地域の河内弁ですが、こう言われたというのです。  要するに、所得というものには関係なく応益割という問題が大きくウエートを占めてきておる。これは、このテレビの最後に司会の方が、応益の割合をふやすということ、これが自民党の今の政治であるということで結ばれたところがあるわけでございます。こういった実態、私は必ずしもこれがすべてではないと思いますが、弱者が現実におるということ、国民皆保険の冒頭の意義からいたしまして、弱者に対する調整交付金等々で配慮して救済する方策というものはないだろうか。  ただ、つけ加えて申し上げますならば、この報道は、私自身も地元ですからよく知っておりますが、この方々の年間の所得が本当に正当に申告をされておるかどうかということはやや問題があるのではないかというふうに思っておるわけであります。ただ現実に、年間の収入の相当大きなウエートを保険料で支払わなければならぬ、その保険料が払えないために病気になる、あるいは生命を落とすこともあるという実態があるということです。  この保険料の応益割という問題を含めて、小泉大臣に今後の市町村の現行保険料の取り扱いについての考え方をお示しいただければありがたいと思います。
  57. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 私もあの日曜日のテレビを見ておりました。これは何とかしなければならぬなと思ったのも事実です。今後、この応能、応益だけでなくて、国保制度医療全体の構造改革も、こういう保険料を払いたくても払えないという方々に対して配慮する必要があるな、どういう改革がいいか、全体の構造改革の中でこの問題もよく考えて検討していかなければならぬと思いました。  現実の応能とか応益負担の具体的な問題については、保険局長に答弁させたいと思います。
  58. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 国保制度そのものが今やもう全体的な改革が必要な時期になってきておる、これは相当前から言われておるわけであります。  それは一つには、昭和三十六年に国民皆保険ができましたけれども、それから三十年以上たっておるわけであります。その間、国保制度というのは、いわゆる自営業者の方あるいは農民の方あるいは漁民の方、そういった方々が対象ということでできたわけでありますが、産業構造が大きく変わってきておりますし、それからまた、高齢化が非常に進んでおる、特に年金受給者、年金生活者が非常にふえておる、そういった中で、国保の加入者、被保険者というのが当初制度が発足したときと比べますとかなり変わってきております。そういった中で、現在の国保制度構造そのものをずっと維持していくことが適当なのかどうかという問題が問われておるというふうに思っております。  そこで、そういった問題を抱えながら、現在の保険料の取り方については、応益割それから応能負担という格好になっておるわけでありまして、これをどの程度の比率で賦課するのが一番公平なのかということになるわけであります。これまではどちらかというと応能負担割合が多いところが非常に多かったわけでありますけれども、それによるまた弊害といたしまして、中堅所得層がどうしても過重な負担になってくる、そういった一方での不満、不公平感というものがかなり高いわけであります。  そういった中で、厚生省としては、やはりここのところはフィフティー・フィフティーの形が適当であろうということで、これまでそういう方向に向けて、むしろそういうことになりますと、応益負担、いわゆる所得によらない方の応益負担の方を引き上げる格好にならざるを得ないわけでありますが、現在のところ、五〇対五〇を一応標準という格好にいたしまして、そういう格好で取っていただくような形でお願いをしてきております。この辺のところの割合というのは非常に難しい問題がございます。  それから、先ほど先生が御指摘のとおり、各市あるいは東京と大阪とは違う、いろいろそういった比較がなされるわけであります。それらにおいては、一つは応益、応能の負担割合の問題もございますし、それからもう一つは、それぞれ市町村一般会計から別途繰り入れている額の違いによって保険料に差が出てくるというような状況もございます。  いずれにしましても、この辺のところについては、全体の制度の仕組みそのものが今問われている時期に差しかかっているというふうに私どもは認識をしております。
  59. 西野陽

    西野分科員 この問題について、隣接の市町村との差があるということは、道を一本越えたら違うというのはどうも感情的におさまらない問題があります。大臣、どうぞそこらも踏まえて御検討をひとつお願いしたいと思います。  時間がないのでちょっと駆け足で行きたいと思いますが、実は東大阪の方に、いわばこれからの健康づくりということで東大阪健康管理指導センターというものを計画していただいておるのです。これの目的もこの字のとおりだろうというふうに思いますので、時間の関係で飛ばしまして、この施設の進捗状況と、あわせて今後のスケジュール等について簡単にお願いします。
  60. 真野章

    ○真野政府委員 その前に、保健福祉事業につきまして若干御説明させていただきたいと思います。  健康教育その他、被保険者の健康の保持増進のための事業、これは大変重要な事業だというふうに私ども考えておりまして、平成四年に、政府管掌健康保険保健福祉施設事業中期構想検討会というところで御議論をいただきまして、保険給付と並ぶ重要な柱と位置づけて、積極的にそういう健康管理事業をやっていくべきだ、こういう御報告をいただきまして、そして、今、先生御指摘の健康管理指導センターを東大阪に建設を予定いたしております。  平成七年度から用地の取得に着手をいたしておりまして、現在、用地の取得は完了いたしました。平成十年度を目途に、整備に鋭意努力をしていきたいというふうに考えております。
  61. 西野陽

    西野分科員 お示しのとおり平成七年から、いい場所なんです、要は更地になっているのです。毎日、私、そこを通るのですね。周辺の人から、何をやるんだと。わからないのですね、看板も何も上がっていないのです。いや、これは国が健康増進のためにやるのだという説明をするのですが、それでは不十分なんです。何をやるかということをぜひ明示いただきたい。  もう一つは、土地代ですが、私が調べましたのでは、四千七百平米、約千四百坪、当時金額で約三十億、坪当たりにいたしますと二百十万、こういうことになるのです。これの高い安いは別といたしまして、要するに、平成七年から買って、ずっと今日までまだ着手されていないということは、いかに金利が低いといいましても、三十億でございましたら、年間で単純に三千万円の金利は払っているということになるのでございますから、同じやるならひとつ早く、当時から目標を持っておられたのでしょう、目的を持って土地を取得なさったのならば、一日も早く着手されることを期待したいのでございますが、この着手、竣工について、運営主体も含めてお答えください。
  62. 真野章

    ○真野政府委員 用地取得を行っておりまして、先ほど申し上げましたようにやっと完了したという状況でございまして、整備費全体の中での計画的な整備ということでございますので、今申し上げましたように、平成十年度を目途に鋭意整備をしたいということでございます。  それから、完成の暁には、現在の財団法人社会保険健康事業財団がございますので、そこの財団に運営を委託したいというふうに考えております。
  63. 西野陽

    西野分科員 要するに、いい場所でありますと、それだけ多くの国民の皆さんの目にとまるのです。更地で置いてあるのですね。何ができるのだろう、国がやるのだ、いつになったらやるのだと、その地域では国会議員は一人しかおりませんものですから、会うたびに多くの人たちから言われるのです。  言い方をかえたら、当時東大阪というところは、全国的にもある程度そうでしょうけれども、バブルのときはどんどんすごい勢いで土地が上がってしまって、崩壊とともにがたんと落ち込んでおるのですね。当時の一部の不動産屋さんは、このときとばかり買いあさったのです、皆さん。それを、国が同じことをやっているのと違うか、土地が安くなったときに買ったのと違うか、これは悪徳不動産屋と一緒やないかなんというようなことを、悪口をたたく人もおるのですよ。  ですから、少なくとも小泉大臣を擁されました厚生省でございますので、いいことだったら、いろいろな事情があるのでしょうけれども、一日も早く着手をされて、地域にどういう目的のものを計画しているかということぐらいの明示をされて、知らしめる方策もとっていただきますように期待をいたしまして、質問を終わります。
  64. 越智通雄

    越智主査 これにて西野陽君の質疑は終了いたしました。  次に、濱田健一君。
  65. 濱田健一

    濱田(健)分科員 産廃法がもうすぐ法律となって改正されるという段階になっておりますが、御多分に漏れず、私の県でも産業廃棄物の処理について、年明け早々からつい一週間ぐらい前までちょっとしたトラブルがございまして、役所の皆さんにもいろいろとお助けいただいたのですが、県当局の対応の仕方も日によって変わったり、地元の住民の皆さん方は、本当に安心できるものが捨てられるのかという不信感もあったりいたしまして、この三十分間は産廃の問題について質問をさせていただきたいと思います。  毎日のように自分のうちから出る一般の廃棄物と同様に産業廃棄物もどこかで何らかの方法で処理しなければならないということは、現代的な生活をしている私たち日本人はだれでもわかっているわけでございます。しかしながら、この取り組みをやっていく中で、産廃についての住民の不信の高まりというのは一向におさまらない、そして地域紛争が多発しているというこの状況、今回の産廃法の改正で私も見せてもらいました。いろいろな御努力をされているわけなんですが、主な原因というのはどこにあるというふうに大臣はお考えなのか、まずはお聞かせいただきたいと思います。
  66. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 いろいろ原因があると思います。ごみの処理というのは大事だ、しかし、処理に伴ういろいろな弊害、紛争、あるいは嫌なものが近くに来るという、一種、何といいますか、自分の近くでなきゃいいのだけれどもという、そういう感情もあると思います。同時に、本当に不法投棄を取り締まれるかどうかという問題もある。最近は、ごみに対しても、自分では処理し切れないほどいろいろなごみが出てきた。また、実際これを扱う業者に対する信頼性も欠いている。  さまざまな理由があると思いますけれども、この産業廃棄物処理というのは、ただ業者がやるものではなくて自分たちも関係しているのだという、食べることも大事だけれども排せつするのも大事という人間の体と同じように、現代社会、もう避けて通れない課題でありますので、だめだだめだと言っていないで、お互いが被害者であると同時に加害者でもあるという気持ちを持って改善措置を講じていくべきではないかなと私は思っております。
  67. 濱田健一

    濱田(健)分科員 大臣が自分の言葉で、この問題の抱える重要性といいますか、解決するための、非常に難しいという思いを込めてお話しくださったわけですが、私もまさに今大臣がおっしゃったようないろいろな要因というものがあるというふうに思います。やはりリサイクルを含めてできるだけ少なくしていくということが手始めでしょうし、最終的には処理をどこかでしなくてはならないということの重みを国民自身もしっかり感じるということ、そして一番問題になっている不法投棄、これらをどう防止できるのかということが大事になってくるかというふうに思うのです。  廃棄物の処理及び清掃に関する法律の第十五条第三項に、いわゆる産業廃棄物処理施設をつくっていく場合に、産業廃棄物処理施設の許可には「生活環境の保全上必要な条件を付することができる。」というふうに書かれております。実際に捨てる前の施設をつくる段階でも、どこかに必要だとわかっていても、国の法律以上にいろいろな規制をつくって、捨てる場所をなかなかつくれないという状況が発生しているわけですが、この法律の条文の範囲というのはどの程度を想定されておられるのか、局長で結構です。
  68. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 先生御指摘の廃棄物処理法第十五条第三項に基づきまして付すことができます生活環境保全上の必要な条件というものにつきましては、廃棄物処理施設設置の許可の際に、その地域の特性を踏まえまして、必要な生活環境保全上の配慮を行うために設置者に守ってもらうべきことという意味でございます。例えば具体的にはどんなものが挙げられるかということでございますが、処理施設の操業時間でありますとか、それから排水の水質測定の義務づけといったようなこと等、そういったことについて定めることが挙げられるというふうに考えております。
  69. 濱田健一

    濱田(健)分科員 先ほどから何回も言っておりますとおりに、四十七都道府県、国の法律以上の規制といいますか、条例等での施設をつくる場合のガードといいますか、これをやっていけばどこにも捨てる場所はつくれないという状況ができると思うのですね。ただ、今局長が話をされたこともですけれども、ある程度の枠をつくっておかなければ裁判が多発すると私は思うのです。つい最近も判例が出ておりますね。ですから、今回の改正に当たっては、入れられるかどうかわかりませんけれども、この辺もぜひ考慮していただきたいという意味質問をしたところでございます。  次に、今回の鹿児島でのいろいろなトラブルの主原因の一つであろうと思うのですが、安定型の処分場に廃棄される産業廃棄物の中に、安定五品目以外の廃棄物がまざっていた。そういうときに、これは、乾電池一個もだめだとか、木くず一握りもだめだとか、そういうことは言えないと思うのです。許容範囲というのかその辺が、その場所にいたいわゆる環境衛生指導員等々、恣意とまでは言いませんけれども、枠がないものだから、一割ぐらい入っていても構わないとか、いや、一つも入ってはいけないのだとか、そういうことが起きているようなんですけれども、役所としては、その辺の許容範囲というものをどうお考えなんでしょうか。
  70. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 今の御質問のお答えに入ります前に、先ほど先生御指摘のございましたいわゆる生活環境の関係でございますが、改正法の検討の中には、施設を設置しようとする人に事前に生活環境に関しますいわゆるアセスをやっていただくというふうなこと等も検討課題としております。  それから、今御指摘の安定型処分場についての件でございますが、安定型処分場の埋め立てに際しましては、廃プラスチック類、金属くず、ガラス陶磁器くず、それからゴムくず及び建設廃材の合計五種類が処理基準で認められているところでございます。安定型以外のものが混入して処分をされるということは、法律の建前上この処理基準に抵触することになるわけでございます。したがいまして、きちんと分別をして処分するということが必要でございます。  現在、今御指摘のようなことも含めまして、安定型処分場に関する問題といたしましては、そういう混入の問題、混入することによりまして周辺環境を汚染するというふうな例も見られますことから、こういったことを防ぐために、対象品目あるいは搬入管理のあり方等につきまして、基準の強化充実等を図ることにつきまして専門委員会において検討を行っていただいているところでございまして、その結果を踏まえて適切に処理したい、対処したいというふうに考えております。
  71. 濱田健一

    濱田(健)分科員 今お話があったとおりに、適切に処理ということなんでしょうが、まずは搬入するときに入れさせないということのチェックをどうしていくのか。そこまでやったら産廃処理業者は仕事ができないという声もあるようですが、それが大事でしょう。そして、最終的に処理をしていくときに、またどういうチェックをしていくのかということも大事だと思うのです。  そこで、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の第二十条、ここに「立入検査並びに廃棄物の処理に関する指導の職務を行わせる」、いわゆる先ほど申し上げました環境衛生指導員というものが置かれるようになっているわけですが、この皆さんの権限というのはどの範囲、どういうものがあるのか。
  72. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 環境衛生指導員につきましては、主に廃棄物処理法第十九条第一項に規定されております立入検査を担当することといたしておりまして、産業廃棄物の保管あるいは処分の状況あるいは処理施設の維持管理の状況あるいは帳簿類などの検査を行いますとともに、廃棄物が適正に処理されますように全体的に指導するという役割を担っているわけでございます。そういった、ある意味で専門的な業務を行うという観点から、廃棄物処理法第二十条に基づきまして、環境衛生指導員は、都道府県等の職員でございまして、大学等におきまして医学、薬学、衛生学、工学等の課程を修めて卒業した者等の一定の専門的な知識、資格を有する者のうちから任命されることとなっているところでございます。
  73. 濱田健一

    濱田(健)分科員 なかなかこの指導員の皆さん方の機能は発揮されていないというようなことをお聞きするわけですね。運ばれてきたものを最終的に処分場に持っていった。そこで調べようとしたら入れさせていただけなかった、それも、正当な理由じゃなくて、何かの圧力で入れなかったということ等もあるようでございます。  不法投棄の防止や、こういう立ち入りができないとかということによって、最初に申し上げました、住民の不信をより助長しているという状況については、警察との関係でどういう対応をされておられるのでしょうか。
  74. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 今先生御指摘になられましたような話を私どもも耳にいたします。不法投棄等不適正な処理の防止に迅速かつ的確に対応するということで、その監視体制の強化を図りますためには、警察あるいは行政、さらには処理業界の緊密な連携が特に重要であると考えております。  国レベルにおきましては、警察庁、厚生省及び社団法人全国産業廃棄物連合会の三者で不法処理防止連絡協議会を設けているところでございますし、各都道府県におきましても、都道府県警察あるいは廃棄物部局等で不法処理防止連絡協議会等を設置して、不法投棄の防止に向けたパトロールや街頭指導等、監視強化に努めているところでございます。  全国的に見ましても、例えば警察と連携をいたしましてパトロールをしたり、あるいはスカイパトロールをしたり、あるいはキャンペーンを張ったりというふうなことで行っておりますが、さらに緊密な連携をとりながら、法が適正に執行されますように努力してまいりたいと考えております。
  75. 濱田健一

    濱田(健)分科員 御努力いただいているということは今の御答弁でもわかるわけです。しかしながら、その実はなかなか上がっていないという現実を、私もいろいろなところで見、いろいろなところで聞いているところでございます。  不法投棄の取り締まりや、先ほど申し上げました環境衛生指導員等の権限強化に絡んで、やはりこれからの環境を、国内だけではなく地球規模で一番大事だと言われている、政治のキーワードになっているこの問題をしっかりと整備し守っていくために、ある意味では厳し過ぎるという声もあるのかもしれませんが、司法権をあわせ持つような、例えば廃棄物Gメンとか、そういう仕事に携われる制度というか人的な配置というか、これからの法律改正等に向けて検討できないものかというふうな声が多いのですが、いかがでしょうか。
  76. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 廃棄物行政といたしましては、事業者等に対する指導監督の徹底あるいは改善命令あるいは措置命令等の活用によりまして、適正な処理を確保していくことがまず基本的に最も重要なことと考えているところでございまして、刑事的な取り締まりにつきましては、その専門性から警察との緊密な連携、先ほど申し上げましたようなさまざまな連携を図りつつ対応していくことが望ましいのではないかというふうに考えております。
  77. 濱田健一

    濱田(健)分科員 ということは、今の制度の中で連携強化を図るということで、絶えず廃棄物が捨てられる場所とか住民の皆さん方との意見交換とか、そういうことを含めて十分にこの廃棄物に対する行政の運用というものができるような、そういう新しい人的な仕組みというのは今の段階では考えられないということでしょうか。
  78. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 先生御指摘のございましたような特別な身分というものを現在考えているわけではございません。ただ、私ども仄聞いたしているところによりますと、例えば警察関係のOBの方等に委嘱いたしましてパトロールをしている例、あるいは指導をしている例等、そういった例がかなりございますので、今後ともそういった意味での強化を図っていくという方向で取り組んでまいりたいと考えております。
  79. 濱田健一

    濱田(健)分科員 もう少し前向きな答弁が欲しかったのですが、きょうはそれぐらいにしておきましょう。  とにかく、最初に申し上げましたとおりに、この問題については、産業廃棄物処理をする施設のある市町村、住民への、どこかでどうにかしなくちゃならないのですよ。そしてそれは安定型であったり管理型であったりするけれども、国としてもしっかりとした法整備をしながら、住民の皆さん方の環境も守ります、感情的なものも十分考慮に入れますということを含めて、納得と理解というものが、人間の心の問題が大きく作用するわけですから大事だと思うのですが、これらをこれからどうしていかれるのか。いろいろな改正案を出してそれが通っていったとしても、やはりここが一番大事だと思うのですね。
  80. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 大臣から冒頭答弁がありましたように、これは関係する住民の皆さん、あるいは国民の皆さんの十分な御理解、御協力がないと進められない分野であることはそのとおりでございます。  先生御指摘の現在の廃棄物処理法には、施設の設置許可に当たりまして住民等の意見を反映するための手続が法定化されておりません。そこで、多くの都道府県では要綱等によりまして独自の手続を定めておりますが、その手続自身が法律に基づくものでないということから限界もありまして、またさらには、都道府県ごとに手続が異なるといったこと、あるいは住民同意の取得を求めるといったことから、計画が長期化していることなどの問題が生じているわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、生活環境審議会の答申をいただいておりますので、それに基づきまして、先ほど申し上げました生活環境影響調査の実施でありますとか、調査結果や事業計画等の告示縦覧、関係住民あるいは関係市町村の意見の聴取や許可に当たりまして、地域生活環境の保全について適正な配慮がなされたものであるかどうかということにつきまして科学的な観点から審査をするといったこと等を通じまして、設置手続の明確化を検討しているところでございます。  こういった措置を徹底することによりまして、地元市町村や地元の住民の方々の理解を深めていきたいというふうに考えております。
  81. 濱田健一

    濱田(健)分科員 現在の産廃法では、先ほどから言われております不法投棄が多発して、その回復措置にも不備があるということで、私たち政治家や行政にとっては聞きづらい、ざる法だというような言い方も住民の皆さん方から多くの声として出ているわけでございます。これから先、法を改正していくに当たって、これらのことをどのように措置されていかれる決意なのか、大臣にお伺いして質問を終わりたいと思います。
  82. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 今、住民からざる法だと言われているとのお話がありましたけれども、現在の廃棄物法では、一定以下の処分場に対して規制が欠けているという点もあると思います。こういう不法投棄等の問題にどうした対策が可能なのかということを今生活環境審議会の答申を踏まえまして検討最中でございます。また、いろいろ各党の間で法案が必要ではないかということで今御議論を伺っている最中でもあります。  今後、不法投棄対策等だけでなくて、ごみ全体の減量化をどうやって進めていくか、あるいは処理施設、信頼性とか安全性の向上をどうやって図っていくか。また、未然の防止策、さらには違反に対しての処罰等、総合的にこの問題をとらえまして、単に厚生省だけじゃなくて、関係者が一体となってこのごみ対策に当たっていきたいというふうに考えております。
  83. 濱田健一

    濱田(健)分科員 質問を終わりますと言いましたが、今大臣がいろいろとおっしゃってくださいました、そのとおりだと思うのです。  やはり、住民の皆さん方の理解をどうしていくのかというさっきから出ている部分と、産業廃棄物をつくり、出す、つくって、そしてまたそれを出していく業者の皆さん方の心構えもそうでしょうし、処理業者の皆さん方が不法投棄や手抜きをすることによって金もうけができる、もうけの幅が広がるという、こういういびつな状況をどうなくしていくのか。  これは、取り締まる方法もそうでございますし、罰則もそうでございますし、そこのところをこれからつくっていかれる法律の中には可能な限り盛り込んでいただいて、私たちで十分もんでいく、その時間の保障をしっかりしていくということが必要じゃないのかな。また一年や二年で改正が必要だというようなことにならないようにお願いをしておきたいというふうに思います。  ありがとうございました。
  84. 越智通雄

    越智主査 これにて濱田健一君の質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十七分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  85. 越智伊平

    越智(伊)主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  主査が見えるまで、私が代行いたします。  厚生省所管について質疑を続行いたします。前田武志君。
  86. 前田武志

    前田(武)分科員 私は、主に産業廃棄物等、そういう廃棄物の関係、環境に与える影響であったり不法投棄であったり、今いろいろ問題になっておるわけでございますが、その辺のことについて御質疑を申し上げたいと思います。  もう既に、当分科会、昨日来この問題についてはいろいろな同僚委員の方々が御指摘をされている問題だ、こういうふうに承知をしております。  こういうような、環境立国と言われるような日本において、人間の生活あるいは産業活動に応じて廃棄物が多量に排出される、それを環境に大きな負荷を与えないようにきちっと合理的に処理をしていく、これがまさしく環境立国の一番の基本であろうと思うのですが、現実にはそうはいっていない。豊島の問題であったり御嵩町の問題であったり、国民に心配をさせるような大きな問題も出ているわけです。  例を私の地元にとりましても、奈良県の吉野郡の西吉野村というところがございます。これはカキの名産地でございまして、南朝の後醍醐天皇、後村上天皇の行宮にもなった歴史的にも非常に有名なところであります。吉野の美林地帯といったところでございますが、ここにも御多分に漏れずごみ処理場の産廃の問題が出てきております。大量の産業廃棄物が野積みになって、もちろん許可を得てある施設をつくってやっているわけですが、大量にどんどん運び込まれて、これがまた国営パイロット事業の農業ダムの水源地にも当たっているところでございまして、非常に心配な状況でございます。  また、室生村というのがございまして、これは女人高野室生寺で有名なところでございます。これまた歴史的に非常に古い、また室生寺で知られる風光明媚なところであるのですが、ここにおいても産業廃棄物の投棄問題が地元の環境に対して非常に大きな脅威になってまいりまして、これまた問題になっております。  まずはその辺の二つの例をとりながら、地元で一体どういうふうに今対応をしていただいているのか、この辺、厚生省の方からまずはお聞きいたします。
  87. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 まず、西吉野村の状況でございますが、本事件につきましては、奈良県内の産廃業者が平成五年の二月ごろから平成八年一月にかけまして安定型最終処分場に許可容量を大幅に上回る廃棄物の埋め立てを行ったことにつきまして、住民の側が、廃棄物の崩落や堰堤が崩壊するというふうな危険の防止、あるいは廃棄物の撤去等の措置をとることを求めて紛争中の事案でございます。一方、本件につきましては業者側も、村が処分場拡張計画を了承する約定を締結したにもかかわらず、その後手続を進めなかったとして訴訟中であると聞いております。  この件に関しましては、奈良地裁が業者に対しまして搬入停止の仮処分を決定しておりまして、現在廃棄物の搬入は停止されている状況でございます。また、県公害審査会におきまして調停が行われているところでありまして、奈良県とも十分連絡をとりつつ、適正な指導に努めてまいりたいと考えております。  次に、室生村についてでございますが、約九ヘクタールの地域にミニ処分場を含めまして四事業者計七カ所の処分場が集中しておりまして、地元におきましては地域が処分場だらけになってしまうといった不安が高まっていることは承知をいたしております。  廃棄物処理法の最終処分場の許可対象施設といたしましては、安定型処分場につきましては面積が三千平方メートル、管理型処分場につきましては千平方メートル以上となっておりまして、これを下回っておりますいわゆるミニ処分場につきましては設置の許可が不要となっているわけでございまして、室生村についても、このことが原因の一つとなっていると考えております。  現在、最終処分場のあり方につきましては、生活環境審議会に専門委員会を設けて検討中でございますが、ミニ処分場を含めてすべての最終処分場を許可対象施設にするなど、施設の基準等の見直し、強化を図りまして、住民の皆様の不安の解消に努めてまいりたいと考えているところでございます。     〔越智(伊)主査代理退席、桜井(新)主査代理着席〕
  88. 前田武志

    前田(武)分科員 今、具体的な私の地元の二カ所、西吉野村、室生村、その対応等についてお聞きをしたわけでございますが、全国的にいろいろ問題になっているのが、豊島であったり御嵩町であったり、これは共通して言えることは、ごみが出てくるのは大都市、人口が集中し、そして産業活動が活発な大都市から出てくるわけでございます。こうやって環境悪化で悩んでいるところは、むしろ農山村地帯あるいは離島であるとかいったところになるわけでございまして、この辺にやはり政治の大きな課題があるのではないのかなという感じがいたします。  もう少し申し上げると、私自身いろいろ調べてみますと、もちろん都市近郊だとかそういったところに大量のごみ処理場というのは、なかなか地元の高度の土地利用というような面からいうとなされない、そして、なされる場合であっても、非常に管理をきちっとした、万般心配のないような形になっているケースということになっております。  また、非常に離れた山間奥地ということになってくると、これまた、多分コストの面もございましょうし、保安林であったり林野法であったり、ある意味では自然環境関係の、水源地であったりというようなことで、かなりまた別の面からの制約もある。また、美田地帯なんというのも、もちろん農振法等できちっと管理がされている。意外と、そういう土地利用なんかについて規制の少ない、網が薄いようなところにこういう問題が起きているのではないのかなという感じもするわけであります。  したがって、厚生省にお聞きする問題ではないかもわかりませんが、内閣として、大臣もおられるので、これは後刻最後に総括してお考えをお聞きしたいわけでございますが、そういった意味での日本の土地利用というものについて、私は、やはり環境面からよほど配慮をしたそういう土地利用に関する法制度というもの、各分野別、機能別というものに対して横断的な配慮というものも必要な時代になっているんじゃないのかなというふうにも思うわけであります。  さて、こういった問題意識を踏まえまして、廃棄物の問題というのを解決していこうとすると、これはもちろん地元の、受け入れる市町村地域の環境に対する万全の配慮、そしてその理解あるいは了解というものも必要でございます。そして、許認可を出す県、自治体当局の指導監督というものが必要であります。もちろん、業者そのものが責任を持ってきっちりとやっていくことが必要です。  しかし、考えてみれば、そこには当然ごみを出す産業界なりが、やはりPL法なども言われるぐらいの時代でございますから、環境に負荷を与える、外部不経済を与えるようなそういう経済活動をした場合に、その外部不経済を内部化すると申しますかそれをちゃんと負担していく、あるいは責任を持って最後まで見ていくというような考え方も必要であろう、こういうふうに思うわけでございます。  そういった観点も含めまして、まずは局長に、こういう非常に地域的には弱い立場にある、そういったところにおけるごみ処理のあり方についてのお考えをお聞きしたいと思います。
  89. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 不法投棄等の不適正処理の対策につきましては、まず未然防止が必要でありまして、今日の廃棄物処理法の改正案に罰則の強化でございますとか、廃棄物の移動管理のためのマニフェスト制度を全産業廃棄物に拡大する等の未然防止対策を盛り込みますとともに、警察との連携によります監視パトロール等の監視体制の強化を図ってまいりたいと考えております。  また、未然防止対策の強化とともに、一たん不法投棄が起こった場合につきましては、生活環境保全上支障がないように速やかに原状回復がされることが必要でありまして、生活環境審議会の御答申も踏まえまして具体的な措置を検討しているところでございます。  特に、今先生御指摘になりましたいわゆる都市部につきまして、これは大変処分場が逼迫をしております。そこで、強力に減量化あるいはリサイクルというものの推進を行っていく必要があるわけでございますが、それを行いましてもどうしても最終処分をせざるを得ないごみが発生するわけでございます。私どもとしましては、フェニックス計画の推進等圏域内での適正処理の促進にも努めるべきというふうに考えておりまして、これらの未然防止対策あるいは原状回復対策、あるいは大都市圏におきます処理施設の整備等によりまして、過疎に悩む市町村に産業廃棄物問題のしわ寄せが及ばないように最大限の努力を払ってまいりたいと考えております。
  90. 前田武志

    前田(武)分科員 この監視のあり方なんですが、これなんかも府県によって大分違うようなんですね。非常にこういった面について敏感で、対応策をきちっとやり、処理場のモニタリングなんかもきっちりとやって、その都度問題があれば適宜指導していくというようなことをやっている府県もあれば、なかなかそこまでいかないところもある。  こういったところについては、やはり国において、先進的にあるいはきちっとやっておられるようなケースも掌握しているわけでありますから、府県の指導等もぜひやっていく必要があるんじゃないのかな、こういうふうに思います。その点について、一点お答えを願います。
  91. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 廃棄物処理法に関しましてこれを行政のサイドで点検をし、あるいは指導をし、チェックをするのは、環境衛生指導員でございます。これにつきましては、一定法律上の資格、専門的な知識、技能を有する者を充てることといたしておりますが、今先生が御指摘のような話も私、耳にしたことがございます。  いろいろな方策を検討しなければなりませんが、例えば一例といたしまして、国立公衆衛生院というのがございますが、そういうところでの研修コースにつきましてもっと充実を図る、あるいは今までの研修手法、いわゆる技術的な問題だけでなくて社会的な問題等々そういったものを織り込んだ研修計画をつくる等、これは検討すべき課題が多いというふうに考えておりまして、今私どもの方で具体的にどうすれば充実できるかということについては検討いたしております。
  92. 前田武志

    前田(武)分科員 つい数日前の朝日新聞の社説に、この廃棄物処理法が、今政府当局でこういった問題意識をもとに法改正を考えておられると承知しておりますが、そういったことと関連しての社説が載っておりました。その中に厚生省の調査結果なんかが出ているわけですね。問題を起こしているというのは、むしろやはり不法投棄、もしくはそれに近いようなケースがほとんどであるというふうに、その記事を通じて私も承知をしておるわけなのでございます。  そういった意味においては、監視、フォローというような面におきましては、やはり警察等も含めましてよほどしっかりした体制をしいていかないと、なかなかこの問題というものは難しいんじゃないのかな、こういうふうに思います。その辺については、ぜひこれからのごみ処理行政において的確な指導をしていただきたい、こういうふうに思います。  それからもう一点ですが、この産廃業者の方なんですが、これについても非常に意欲的に、やはり責任を感じて、自分たちが環境を守っていく最先端の業界だというふうにとらえて積極的にやっておられるところもございます。そしてまた、もう全く許可も得ないでやるようなところもある、その辺が非常に雑多なわけですね。  したがって、そういう中で意欲的に取り組めば取り組むほどもちろん環境もよくなるわけだし、そういったところを中心にこのごみ問題というものが解決されていく、向上していく。そういうインセンティブを与えるためにも、この業界に対して厚生省さんが一つの監督権を持っておられると思うんですが、その辺のインセンティブも含めて、業者の指導といいますか、その辺はどういうふうにお考えか。
  93. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 先生御指摘のように、私ども、接しております関係者の方々で非常に熱心に、しかもいろんなトラブルが起きますと非常に危機感を持って対処されていらっしゃるいわゆる処理業者の方もいらっしゃいますし、それから非常に環境について配慮されていらっしゃる業者もいらっしゃることは事実でございます。また一方、残念ながら、今先生御指摘のございましたように、無許可営業をやるとか、それから許可をとっていても不法投棄をやるという業者も現実には存在しているということでございまして、いわゆる廃棄物処理業者の全体のレベルの向上ということが非常に私どもは重要だと考えております。  現在、検討中の廃棄物処理法の改正案におきましては、業者の許可要件の強化を考えておりまして、いわゆる俗称、暴力団新法と言われるようなものに違反をされた方、あるいはいわゆる黒幕規定、黒幕と申しますか法違反を犯していながら実質的に支配力を有する方等につきましては、欠格要件に加えまして許可を与えないというふうな形にする方向で検討をいたしております。  そういうこと等を通じまして、全体としてのレベルを上げていくという方向で施策を進めてまいりたいと考えているところでございます。
  94. 前田武志

    前田(武)分科員 今の局長の御答弁のとおり、ぜひ御指導をいただきたい。そういうことによって業者のレベルもアップしてほしいし、いささかもそういう不法的なものが介入する余地がないような産廃行政というものを徹底していただきたい、こういうふうに要望をしておきます。  実は、先週だったですか、商工委員会で、JIS法、日本工業規格の関係法案改正を審議いたしまして、たしかあさって採決する予定になっております。これは要するに、日本のJISを欧米なんかの国内に持っている工業規格とお互い共通にやっていこう、その仲介を果たすのがISO、国際規約であるわけでございますが、このISOというのが実は環境関係には大きなかかわりを持っております。  ISO14000というんですか、環境関係の国際基準がISOの14000だ、こういうふうに承知をしておりますが、この規格、環境をよくしていくための、あるいは環境を守るための環境基準、産業界において多分これを取得していく、どういうような工業分野であろうとこういうものをきちっとクリアしていくという方向に向かいつつあると思うのですね。したがって当然、その産廃業者の中にもこういうものをきちっと取得しているかどうか、それに適合するかどうかで、廃棄物処理の水準というものが国際的にも環境に負荷を与えないようなものであるというような形になっていくのではないのかな、こういうふうにも思うわけでございます。  この辺については今後の問題ではあろうと思いますが、ごみ処理一つをとりましても、国際的に地球環境と言われるような時代に、既にそこまで来ているわけでございますから、環境立国の日本としましては、その辺のところはよほど積極的に取り組みをしていく必要があると思います。もちろんごみ処理の行政というのは地方自治体に任されているわけではございますが、そういった観点からいうと、先ほど申し上げたように、産業界そのものも、環境に負荷を与える、そういう排出物については最終的にきちっと処理されて、それが安定して、外に害を与えないというところまで責任を持っての産業活動であるべきだと思います。  そういった産業界、そして直接の許認可を与える自治体、そしてその地元、それの全体を指導される厚生省、政府、地球環境といったような観点も含めまして、小泉大臣に最後に御見解をお聞きしたいと思います。
  95. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 今までの御発言を伺っていまして、産業廃棄物をめぐる不法投棄等の問題、もう各地域で大変な紛争を起こし、また地域住民にも御迷惑をかけている。それで、今回の廃棄物問題にどう対処するかということで、今、政府としても、また厚生省としても、新しい改正法案をどうやってつくっていくかということで取り組んでいるところであります。  これは、厚生省だけの問題ではなくて、総合的な対策が必要と考えておりまして、まず、廃棄物の減量化とか、あるいはこれからリサイクル、循環型社会、どうやって資源の再生利用を図っていくか。さらに、今施設の安全性とか信頼性に対する疑念が深まっておりますから、そうした施設の信頼性、安全性の向上。そして、不法投棄した者に対する処罰の強化、あるいは不法投棄させないような予防措置をどうやっていったらいいか。それぞれこれといった決め手はなかなか難しいのですが、ともかく現状ではいかぬ、何らかの措置が必要だということで法案を準備しているわけであります。  今後、国民的な関心を持っていただきまして、各省庁とも連携をとってこの廃棄物処理対策、我々、被害者にもなり得るし加害者にもなり得る、そして、よりよき環境をどうやって保全していくかということに全国民的な関心を持っていただきまして、改正案をまとめてできるだけ早期に国会に提出したいと考えております。
  96. 前田武志

    前田(武)分科員 次に、簡易水道、水道問題に移ります。  大体は山間、山村なんというのが水源地になっておりまして、そういったところにダムをつくって都会の上水道の水資源を供給する、こういうパターンでございます。実は私の墳墓の地も、奈良県の山奥の通称熊野川、十津川の上流にありまして、水没しておりますが、いずれにしろ、この山村が言ってみれば大きな犠牲を払って都会に水を送っておるわけでございます。その山村の生活も、今や生活の中身はやはり都会的、都市的利便性というものがなければ成り立たない時代になっていて、おくればせながら、簡易水道等によって一番の基本である水道を今整備し始めているわけですね。下水の方におきましても、合併処理槽というようなものが山間においても使われるようになっておりますから、当然水道は整備しなければならない。  ところが、水源地であって都会に水を供給していたその山村がいざ簡易水道を整備する時点になると、予算等のこともあってなかなか整備が進まない。そして整備したとしても、都会で蛇口をひねって山から送ってきた水を使っておられる市民の方々の水道負担率に比べて、おくれて水源地で整備した簡易水道の負担をされる村民の負担率の方が実ははるかに高いわけですね。そういうところに矛盾を感じるわけでありまして、しかも、その整備をする山村なんというのは財政力というのが非常に弱いわけでございますから、これまた公共の負担というのも大変でございます。  そんなことに関して、政府としてどういうような特別の手当てを考えておられるのか、今後の積極的な取り組みも含めて、御答弁をお願いします。
  97. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 厚生省といたしましては、過疎地などで行われております小規模な水道施設の整備につきましては、通常は対象としておりません施設の改良に要する費用も補助対象とするなど、一般の水道事業と比べてより手厚い財政支援を行ってきております。  また、御指摘の簡易水道施設の整備につきましては、町村の財政力指数及び管の延長距離によりまして国庫補助率を三段階に分類いたしまして、町村の財政力が弱く水道の布設条件が厳しい地域に対しましては、より手厚い支援を行っているところでございます。  こういったことで、今御指摘のございましたような財政力の弱い町村につきましても水道施設が整備されるような方策を講じてまいりたいと考えております。
  98. 前田武志

    前田(武)分科員 今いただいているこの水が院内の水道の水であるかどうかちょっと知りませんが、いずれにしろ都会の水の水質が非常に悪くなってきた。  例えば、我々、関西で、京阪神地方の水というのは大体淀川が水源でございまして、こちらで飲むお茶というものは、我が大和から出ていって大阪でお茶を飲むともうまずくて飲めないというようなことがありました。随分前になりますが、今の橋本総理が、当時水の高度処理なんかの議員連盟をつくられて、その当時私も一緒になって、とにかく大阪のお茶がおいしくなるようにしっかりやってくれということで大分働きかけたことを覚えておるわけでございます。東京も、多分金町系なんというのは非常に水質が悪かったわけです。  水だけは、一々ボトルで買うなんというのは、この日本の、瑞穂の国において全くみっともない話でございまして、大都会においても蛇口をひねればおいしい水が飲めるというような対策を大いに講じていただきたい。この辺のことについては今どうなっているかお伺いをし、質問を終わります。
  99. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 いわゆる水源の水質汚濁が進行しております水道につきましては、原水の水質保全対策を講ずる必要があるわけでございます。さらに安全で良質な水道水の供給を確保するために、通常の浄水施設では処理できないいわゆる異臭味の原因物質等を取り除きますためのオゾン処理あるいは活性炭処理等によりまして取り除く、いわゆる高度浄水施設を整備することが不可欠でございます。  このため、厚生省といたしましても、高度浄水施設の整備に対する補助制度を設けておりまして、その促進を図っているところでございます。ただいま御指摘のございました淀川水系、あるいは利根川水系の下流部から取水している水道事業を中心にこの事業が活発に進められているところでございまして、この結果、現在四十八施設が稼働中でございまして、二十四施設が建設中でございます。  今後とも、安全で良質な水道水の供給ができますように、その整備の推進に努めてまいる所存でございます。
  100. 前田武志

    前田(武)分科員 あと一分ぐらいありますので、最後になりましたが、生活衛生局関係の行政でございますが、最後に大臣に一つ考えをお聞きしたいのです。  入ってくる水であり、出ていくごみ処理であり、これはもう私は、この地球環境時代において最も人間生活に密着した一番重要な問題であると思います。その辺のことについて、大臣の哲学をお聞きして終わりたいと思います。
  101. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 地球環境保全ということについては、今、それぞれ専門家の間でも議論されているわけでありますが、思いがけないところに影響が及んでくる。海と山とは関係ないように思いますが、とんでもない、今や森林、山が海の環境にどれだけ影響あるかということも明らかになってまいりましたし、ごみと水とは全然縁もゆかりもないと思っていたところが、水源地の汚染等の問題で、これはとんでもない。人間というのは、いろいろ知恵もありますけれども、同時に、人間存在自体が環境を破壊しているという面もあるものですから、この環境問題ごみ問題、水問題、すべて総合的に、やはり人間というのが自然の一部なんだな、常に自分たちの存在がこの環境を汚染していないかということにも意を砕いて、環境保全に各人が、また各省庁が連携して取り組んでいきたい。.今委員が御指摘のように、私も、まさか日本で水がこれほど、水を買うという状況、ガソリンよりも水の方が高いなんというのは、二十年前には私、想像していませんでした。石油の一滴は血の一滴と言われた、その石油より、ガソリンよりも水の方が高くなって、それを多くの国民が買っているという状況、これはとりもなおさず、いかに環境が汚染されているかじゃないか。この点も考えながら、よりよき環境の保全のために、ごみ対策にも真剣に取り組んでいきたいと思っております。
  102. 前田武志

    前田(武)分科員 終わります。
  103. 桜井新

    桜井(新)主査代理 御苦労さまでございました。  これにて前田武志君の質疑は終了いたしました。  次に、鰐淵俊之君。
  104. 鰐淵俊之

    鰐淵分科員 少し風邪を引いておりますので聞きづらいと思いますが、お許しいただきたいと思います。  私、新進党の鰐淵でございます。時間が余りないので、配分といたしまして、前半、説明員の方々お話をいただきまして、最後に大臣から所信をお聞きしたい、このように思っております。  その第一点は、介護保険につきましての質問でございますが、御案内のとおり、介護保険導入は、まさに先進国で例を見ない高齢化社会が進んでおる、そういう日本において、介護の支援体制は必要である、この認識は全く私も同じでございます。したがって、どんな介護の支援体制を組むのか、こういったところにいろいろな議論が存在するのではないか、こう思うわけでございます。  そこで、私は、三点にわたってお聞きしたいのですが、一つは、この介護保険導入によりまして、私ども、長い間地方自治体を預かった者といたしましては、市町村の財政の圧迫にならないのかどうかということでございます。  これは、先ほど来もちょっと質疑ありましたが、国民健康保険が三十余年前導入されまして、市町村に余り負担にならないということで恐らく出発したと思いますが、御案内のとおり、北海道は、主要都市、軒並み国保赤字でございます。私の担当した釧路市も、御多分に漏れず二十数億円の累積赤字、そして一般会計から約六億円を投入するわけであります。そして、しかも国保を現在実行しておりまして不思議に思うことは、地域に住む住民によって負担が違うということですね。なぜ負担が違うかというと、その地方議会によっての力関係、いわゆる最高限度額を取るところもあるし抑えるところもある、それから一般会計からたくさん入れる市もあるし入れられない市もある。  私などは、随分議会で議論しましたが、余り国保会計に一般会計から入れるということは、いわゆる国保の被保険者でない一般の税金を入れるということは、やはりだんだん不公平になっていくのではないか、こういうことから、いわゆる無造作に入れるべきものではないと随分答弁をしてきたわけでございますが、そんなことで、道内の各市におきましても、同じ所得があってもいわゆる負担が違ってくる。ある町に行くと安い、ある町に行くと高い。国民健康保険というのは国民皆保険でどこの町へ行っても負担は同じでなければならないと、私は基本的にそう思うわけでございますが、それが個々に違う、こういうことは非常に問題であろうと思うのでございます。ですから、この介護保険もこういったことになりはしないのかという懸念が一つございます。  例えばどういう懸念かというと、一号被保険者、二号被保険者ございますが、そのうちの一号被保険者は大体三〇、全体の三割ぐらいでしょうか、そのうちのまた一〇数%を実際は市町村徴収する。私どもの国民健康保険は、北海道は恐らく徴収率は九〇%以下です。釧路市などは、何ぼ頑張っても八七か八、もう取れないですね。先ほどお話ございましたが、予告して行きますと、必ずその人はいなくなるのですね。いついつ何時に来てくださいと言って、その約束をした時間に行きますと、いないのですね。  また、確かに二百五十万、三百万で五十万以上払うということは、非常に大きな負担であります。ですから、払う方も大変だということはよくわかるのですが、これは相互扶助という観点から、あるいはまた医療費との比例の問題もございますから、随分私ども、そういうことで理解を求めるわけですが、なかなか払っていただけない。こういった収納率が低いということは、この介護保険にも私は連動してくる、このように思うわけでございますので、まず、市町村財政にこの介護保険というものが将来圧迫になるのではないかという懸念に対して、御説明いただきたいと思うのです。
  105. 江利川毅

    江利川政府委員 介護保険を動かしますときの財源構成でございますが、これはもう御案内のとおりでございますけれども、半分は公費で賄う、公費は、公費の中の半分を国、そして残りを半分ずつ都道府県市町村とで持っていただくということでございます。それから、残りの半分が保険料ということになりますが、この保険料は、六十五歳以上の方の一号保険料と四十歳から六十五歳未満までの方の二号保険料とあるわけでございます。  全国平均で見ますと、一人当たり、二〇〇〇年実施段階で二千五百円程度というふうに見込んでいるわけでありますが、この二号保険料、これは一人当たり同じ額でありますから、人口比で当然この構成が決まるわけでありますけれども、二〇〇〇年における人口比の予測では、大体、保険料の三分の一が六十五歳以上の方、三分の二が四十歳から六十五歳未満の方になります。四十歳から六十五歳未満の方につきましては、医療保険制度に乗っかって取りますので、これは基本的に徴収が可能であろうというふうに思っておるわけであります。  そうすると、公費も入れました全体の財源の中の一七%ぐらいが一号の六十五歳以上の方の保険料ということになります。この保険料をきちんと納めてもらうということを念頭に置きまして、年金制度からの天引きというのを考えているわけでございまして、これが一号被保険者の大体七割くらいになるだろう。残りの三割くらい、全体の財政構造の中では五%ぐらいが市町村みずから徴収していただく部分になるわけでございます。  こういうことでございまして、かなり機械的にというのでしょうか、公費保険料徴収の仕方も、既存制度を使ってできるだけ徴収漏れがないような仕組みを考えているわけでございまして、そういう意味で、その徴収というのはかなり的確にできるのだろうというふうに思っております。  それから、一号被保険者につきましては、国保納付実績を見ますと、これは全国ベースでございまして北海道の数字を見ているわけじゃございませんけれども、全国ベースで見ますと、七十歳以上の方は九九%の方が保険料を納めていただいている。結構高齢者がきちんと納めているようでございます。そういう意味で、一号被保険者保険料納付もきちんと行われるのではないかというふうに期待をしております。  一応構造的にはそういうことで、保険料収入がきちんと確保できるようにというのをまず考えております。  それから、そうはいいましても、なお予想以上に徴収率が下がることがありますし、あるいは、時には給付が膨らむことがございます。こういうことに対応するために、各都道府県ごと財政安定化基金というのを設けていただくことになっております。これによりまして、保険料徴収が、一号被保険者の三割部分になるわけでございますが、ここが努力してもなお未納が少しふえたというような場合には、そこにつきまして一部その基金から交付をするとか、一部貸し付けをするという形になっているわけでございます。  給付がふえたような場合には、基本的には、本来、その財政は公費もそのふえた分全体について半分あるべきでありますし、二号保険料保険料部分の中の三分の二を占めるべきでありますから、そこは後で調整をするという形でやっていくわけでありまして、やはり最後に残る部分は一号被保険者部分。そういう不足分を財政安定化基金から借りましたような場合に、恐らく、先ほど申し上げましたように、一号被保険者保険料納付率が九九%ぐらいで、納入率がそのぐらいであれば、もう不足分というのは小さいものだと思いますけれども、次の保険料を設定するときにその返済分を上乗せしていただいて、それで基金に返していただく、全体的にはそういう構造考えておりますので、市町村一般会計から出ていくようなことはないような形で運営できるようにしてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  106. 鰐淵俊之

    鰐淵分科員 今の説明につきましては、一応厚生省法律を見ましてはぼわかっておるわけですが、懸念として、やはり今言いましたように、これは毎月二千円、三千円と、年間二万数千円。しかし、これは毎年というか、何年かに一遍見直しして上がっていきます。給付もふえていきますから、どうしても上がっていく。こんなことで、低所得の皆さんにはかなり負担になってくるだろう。  それから、安定化基金その他につきましても、これは二分の一見るということですから、二分の一は市町村負担になりますね。ですから、どうしてもそれは地方財政も必ず私は負担になっていく、このように思うわけですね。したがって、ぜひその点では、余り地方財政に負担にならないような、これは与党三党の合意におきましても、市町村における財政面、事務面での支援を強化せい、こういうことになっておりますので、まさにこういったことに留意していただいて実施していかなければ、介護保険というすばらしい保険を仮につくったにいたしましても、そこに欠陥が出てきますと、実行段階で大変支障を来すのではないかと思うのでございます。  そこで、私は、これを実際に移す二〇〇〇年には、施設面、在宅面ということから進めるということですが、これは御案内のとおり、在宅福祉あるいは施設福祉、それから中間的な福祉、中間的な福祉はデイサービスだとかショートステイですとか老健施設とか、そういうことだと思いますが、問題は、私ども、昔からの教育というか、ちょうど六十歳ですから、親が子を思う、子が親を思うというのは、私は人類普遍の倫理だ、そういうぐあいに教え込まれてきましたし、それが本当は一番いいことだと思います。現実に、親も子供や孫と一緒にいれば一番生き生きしていますし、一番いいことなんですね。  ところが、これは現実的に許さない面がある。一つは、居住環境が果たして親の面倒を見られる体制にあるのか。これは在宅福祉といってもなかなか難しい。それから、本当の肉親、例えば娘の親であればこれはさほど影響しませんけれども、大体私どもの年輩でずっと、ここにおられる方もそうだと思いますが、嫁としゅうとめの問題は非常に大きな問題なんですね、これは。  これは大変な問題なんです。自分の親はさほどでもないんですが、私の家内になりますと、他人ですから、寝たままうちにおられると、何ぽ家が広くても、四六時中いて、そこにホームヘルパーさんが週二回来たり、さあおばあちゃんショートステイだから行ってくださいとかいっても、なかなかそれはうまくいかない。この辺は、私どものジェネレーションがかわってきますと、どうも親をそういうぐあいに面倒を見るといいましょうか、愛情を注ぐということが希薄になってきているんですね、今の時代。これが一番私悩むことなんですね。  ですから、この介護保険に言う在宅福祉を充実するということは、確かにそうでありますけれども、なかなかこれはそのようにいかない。したがって、私どもの町で恐縮ですが、今特別養護老人ホーム、二百のベッドがありますが、それがゴールドプランで、道あたりの指導でいくとあと三十しかないというのです、平成十二年まで。ところが、今現実に待機者三百いるんです。どうです。厚生省の示達から切って道が割り振りしたら、釧路というのは二百五十で、新ゴールドプランでそこまでですよ。あと、結局在宅でやろうということになりますね。  しかし、特別養護に入りたい、入らなければならない環境だ。うちの職員が一生懸命調べてみると、待機者が三百いる。これは何かというと、今私が言いましたように、家が少し広くても、お年寄りがそこで生活している、精神面からいって嫁さんにいつもいびられるんならとてもいたくないという方もおるでしょうし、ですから、そういう社会、家族の家庭的な要因といいましょうか、そういういろいろな要因も重なって、なかなか私は在宅というものを難しくしているんだろうと思うんですね。  したがって、この介護保険を実際に実施する二〇〇〇年ですか、平成十二年、今厚生省の方では一〇〇%そういう介護基盤は整うんだとおっしゃっておりますが、私は考えられないわけですね、まず私どもの町の例を一つとっても。ですから、これは各都道府県、各市町村にとってもある程度同じではないか。そういった点はいかがですか。
  107. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 お答えをさせていただきます。  先生、今釧路市の実態を引いてのお尋ねでございましたけれども、私ども、介護保険を進めていく中で、今先生お話ございました家庭の事情等あるということは重々わかりますけれども、やはりまずはお年寄りの幸せということを考えました場合に、そういう状態になっても、できるだけ地域であるいは家庭で暮らしたいというのはだれしもの願いだろうと思います。もちろん施設の方がいいという方がおられたら、それはそれでそういう条件を整えなければなりませんけれども、家庭で支え得るような在宅サービスの体系を整えるということが一方において重要だ、そういう観点から在宅サービスに重点を置いてやっていくという方針をいたしております。  そういった中で、現在新ゴールドプラン、今先生限度に達しておるというお話でございましたけれども、これも基本的には、全国の市町村にまずおつくりをいただいて、一斉に需要調査をし、それからそれに基づいて、おつくりをいただいたその計画をいわば全国に集大成をいたしまして、今新ゴールドプランという形で目標を立てておるものでございます。  この新ゴールドプラン自体につきましても、地域的にまだなかなか整備がされておらないところもございますので、まずはそういう方向を重点に、この新ゴールドプランの着実な達成ということを重点にまず当面は進めていくべきであろうというふうに私ども考えております。  そして、今待機者が非常に多いというお話もございましたけれども、これはそれがストレートにそうだとは申しませんが、例えば、今先生お挙げになった釧路市の例ではございませんけれども、北海道というところで見てみますと、確かに特別養護老人ホームは整備が非常に進んでおります。しかし、在宅サービスでありますホームヘルパーだとか、デイサービスというようなことについては非常に整備がおくれております。また、施設サービス関係でも、老人保健施設なんかは、比較的特養に比べてまだまだという状態にございます。  したがいまして、そういったそれぞれの地域でも、施設整備のそれぞれのサービスの中においてサービスの体系にまだアンバランスがございますし、また、今待機者と言っていただきましたところも、今後、例えば在宅サービスが整うことによって、あるいは施設サービスの特養以外の老人保健施設あるいは療養型病床群という形のものが整うことによって、その待機者がそのままストレートに待機者であるかどうか、そういったところの見直しもしていかなければなりません。  したがって、そういう意味で、当面は新ゴールドプランの推進を第一に考えていきたいと思いますが、しかし、介護保険ができましたときにそれで十分かということになれば、それは、おっしゃるように、介護保険ができますと、サービス水準も上がってまいりますし、それから介護保険自体によりまして経済的な側面の裏打ちができるということによって、需要がまたふえてくるという側面もございますから、私どもも、新ゴールドプランに引き続きまして、新しい介護保険事業計画をつくりまして、これはまたそれぞれ市町村段階からもう一回需要を把握していただくところから始めて新計画をつくっていって、新ゴールドプランから引き続いてまた新しい計画をつくる中で整備を進めていく、そういうことで進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  108. 鰐淵俊之

    鰐淵分科員 私ども、各市町村から積み上げたものが恐らく一〇〇%容認されて新ゴールドプランができたというぐあいにはちょっと考えられないのです。と申しますのは、今言いましたように、私どもが出して、これはどこで調整したのかわかりません。わかりませんが、頭打ちになっているわけなんです。ですから、実際の状況とは乖離しているということです。ですから、この乖離した状況をある程度補正していかなければ、介護保険を導入しても、一番困るのは窓口です、市町村の窓口。実際にやる基礎自治体が、例えばこの介護保険の資格の得喪事務、それから保険証の発行事務、それから今度は認定事務、これは大変だと思います。私は認定の申請書をちょっと見ました。あれを全部詳しく書くというのはとても難しいものだと思います。私はとても書けないです。  ですから、あれを書いて、例えばそれをコンピューターに入れて云々と言っておりますが、やはり人間というのは、確かに事務能力はコンピューターを使うことによってかなりいいと思いますが、特にお年寄りというのはもう一刻を争う場合が多いのです。症状が安定して一カ月も二カ月も同じような状態でいるかというと、きょう倒れて、介護が必要だとなった場合には、一週間でまたころっと変わるのです、状況というのは。ところが、あれは申請を出したら一カ月以内に認定をしてくるということですから、とてもそんな長いスパンでは対応できないのではないかというような感じがするわけです。  しかも、コンピューター処理ということは、今言ったように現実と少し遊離したような判断が出ないとも限らない。そして、やはり保険である以上は保険をかけた方は必ず権利がありますから、なぜこれは拒否されるのだというような不満というものは必ず市町村の窓口に集中するはずです。ですから、そういったことに対しても、なるべくそういうことがないように運用していかなければならないのではないか、このように思っておるわけであります。  そこで、一つまたお聞きしたいわけですけれども、私どもの町でも今ホームヘルパーというのは百三十二名おります、二十万の都市で。ことしは夜間のホームヘルパーもやっております。それから介護支援センターを四カ所つくっております。訪問看護施設も二カ所つくっている。ですから、北海道でもうちの町は進んでいる方です、基準からいって。それでもなおかつそういうようないわゆる待機者を持って、その実態を調べれば、やはりかわいそうだ、何としてもこれは特養に入れてあげなければならないな、こう思うわけです。それを、いや在宅介護だと。先ほど私言いましたように、それは本来そうだと思います。やはり自分の血肉を分けた子供と一緒に生活し、孫と一緒に生活できる、親は一番望んでいると思うのです。ところが、社会的要件でなかなかそれが現実にいかない。これからのジェネレーションの時代になると、ますますそうだと思うのです。  ですから、私は、道徳教育なり人類普遍の倫理というものをもっと学校教育でもきちっと教え込んでいくことが大事だ、そういう精神的土壌や基盤がなければ、保険制度ができれば何でもうまくいくというわけにはいかないと思うのです。そういう基盤の上に立ってこういう高齢化社会に対する対応ということを考えていかなければ、私は、問題がいろいろ発生してくるのではないか、このように思っております。  次は、マンパワーの問題でございますが、市はいいのですが、町村になりますと、特に北海道なんかはお医者さんが町村で一人、二人。そのお医者さんも七十過ぎになって、ちょっと調子が悪くなって入院されると、無医村になってしまうのです。そういうところが、現実に釧路、根室というのは至るところにあるのです。ですから、なかなかこのマンパワーを、訪問看護といっても、これは看護婦さんがいなければ話になりません。その看護婦さんもなかなかいない、そういうような場合にどう対応していくのか。それはいかがですか。
  109. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 先生御指摘になりましたマンパワーの問題、特に過疎地域あるいは先生おっしゃったように北海道のように広大な面積を抱えておられるようなところでのマンパワーの問題というのは、確かに正直、私どもとしてもなかなか対策に苦慮するところでございます。それにつきましても、私どもとして画期的な施策というものがあるわけではございませんで、当然地道な努力を進めていかなければならないということでございます。  そういう意味で、訪問看護婦さんの養成の問題あるいは処遇の問題、それから訪問看護の関係につきましても、まず場所をつくり、それからその訪問看護ステーションの置き方自体をできるだけ弾力的なやり方にするとか、そういった工夫を一方においてやりますと同時に、マンパワーの関係で言えば、特にホームヘルパーさんの関係につきましても過疎地なんかはなかなか難しゅうございますから、こういった問題についてはできるだけ、何もかも公務員でやるという時代ではございませんから、例えば農協で今そういう方面に非常に熱心にお取り組みをいただいておりますから、そういった農協組織との連携のもとにやっていく、あるいはそれ以外のいわゆる非営利の組織ができてきていますので、そういったところとの連携も図るというようなことで、総合的に展開をしていかなければならないというふうに考えております。  そして、そういった過疎地域などにおいてそういう在宅サービスがどういうふうに展開をしていけるかということにつきましては、今申し上げたように非常に地道なところでやっていかざるを得ませんので、これが決め手だというようなところはなかなか難しゅうございます。この九年度でお願いをしている予算の中におきましても、そういった僻地等における在宅サービスの展開につきましてのモデル事業などを行いまして、そこのところでどういう方面に力を入れていけばやれるだろうかということを、走りながらまだそういうことを補強しながらということになりますけれども、そういうことも今お願いをしておる中に盛り込まさせていただいておるということでございます。
  110. 鰐淵俊之

    鰐淵分科員 もう時間がなくなりましたのでこの辺でちょっと集約したいと思いますが、要するに、私の言いたいことは、余り国とか道とか市とか、そういう制約をしないことだと思うのです、規制をしないということ。民間のエネルギーをどんどん活用していく。私どものホームヘルパー百三十何名というのは全部民間の機関に委託しているのです。そしてもう四十代、若い人では三十代、奥さんですね。みんな来て、勉強はよくしますし、介護福祉士の資格も受けますし、これは民間の人なんです。それを厚生省で、後に、やはり正職員でなければならないという通達は絶対出してほしくないのです。  昔、文部省もそうなんですよ。給食は学校の教育の一環だから民間委託まかりならぬ、こういう通達を出して、我々がやろうと思ったことが通達や何かでできない。市町村が自由にやっていこうと思っても手足を縛られてしまうのです。これも同じく、例えばホームヘルパーをやるにも必ず正職員が何人いなければならないとかなんとか言ってしまうと、手足を縛られてしまうのです。自由にやらせていただきたいものだ、こう思うのです。  最後になりましたが、大臣に。  この介護保険制度というのは、諸外国をちょっと私調べましたら、かなり、十年ぐらいかけて研究されて、いろいろ問題点を洗って実行しているというのを伺うわけでございます。日本の場合は、平成六年三月に二十一世紀福祉ビジョンというのが出て、それから後、今日ですから、四、五年でだあっと法案ができてしまった。スピーディーであるということは大変すばらしいことであるけれども、一見そういったエアポケットがないのかということもいろいろ検討しながら、私は保険法案は通るのではないかと思いますが、私個人としてはもう少しじっくり検討を、現場の人たちの意見を聞くような形でもう少し補足することが必要ではないかなという私なりの個人的な考え方はありますが、この法案が通って、実際やっていく場合に、今言ったいろいろな問題点が出ましたら、これはその法案の中できちっと是正をし、また解決をしていくという決意のほどを大臣にひとつ御答弁いただきたいと思います。
  111. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 一方で、時期尚早ではないかという議論のあるのも承知をしておりますが、同時に、もうできるだけ早く導入すべきだという議論も多いわけであります。特に、外国の制度を参考にしながら、実施している状況が外国にあるということはそれだけ現実的な参考になるわけであります。そういう点も参考にしながら、実は、去年の通常国会に早く法案を出せという声が強かったのも事実であります。ところが、去年の国会においては時間的にも制約があった。選挙前だということもあったと思います。提出できなかった。それでは秋の臨時国会に出せという声のあったのも事実であります。しかし、これは臨時国会は解散国会になってしまいました。  そういうことで、むしろ、本来去年の通常国会に出せという声がありましたけれども、それができなかったために、逆に、関係者の意見を聞く機会がふえたと思います、公聴会等を開きまして。そして去年の暮れにようやく国会提出することができたわけでありますが、まだまだ不安のあるのも事実であります。  先ほど委員御指摘のように、今回はこの福祉の分野、介護の分野においても民間活力を導入しようということで、むしろ民間でも本来公共的と言われたこの福祉の分野にも参入できるのだという、今御指摘のとおりのことであります。これを導入することによって、公の部分と民間の部分が競争することによって水準を上げてもらいたいという措置も含んだ法案でありますので、来年実施に移すということでなくて三年後に移すということでございますので、早く法案整備してもらって、この制度ができるだけ順調に進むように各般の制度を進めまして、いざ実施されたならば、実施された段階でまたいろいろな不備な点が出てくると思います。そういうときには実施状況を勘案しながら再度改善措置を講じていくという形で、早期にこの法案の成立を図るよう御理解、御協力をいただきたいと思います。  ありがとうございました。
  112. 鰐淵俊之

    鰐淵分科員 どうもありがとうございました。
  113. 桜井新

    桜井(新)主査代理 これにて鰐淵俊之君の質疑は終了いたしました。  次に、保坂展人君
  114. 保坂展人

    保坂分科員 社会民主党の保坂展人でございます。  本日は、今極めて我が国社会の中で薬物、覚せい剤を初めとしたさまざまな薬物が大人のみならず青少年にも広がっているという現実について、いろいろ伺っていくということでいきたいと思います。  私、先月沖縄に立ち寄る機会がございまして、そちらで沖縄ダルクという、つまり薬物で御自身が中毒、長いこと薬がやめられなかったという方々が、いわゆる自助グループ、みずから薬を一緒に仲間としてつながって断っていくというグループがあるのですが、そちらの方から「薬物依存」という東京弁護士会の人権賞をとられた近藤恒夫さんという方の本を紹介いただきまして、飛行機の中でこれを読んで帰ってきました。  帰ってきたら、これは以前からの知人の方なのですけれども、本当に偶然にお手紙が来ておりました。同じこのダルクという組織についてなのですが、「民間の薬物依存のリハビリ施設で、保健所や公立の病院から紹介されてくる人が三、四割にも達するのに公的援助がなく、昨年から経済的に立ちゆかなくなっています。」これは東京都の振興財団から五百万円強もらっているのが唯一の公的助成だということなのですが、つい先刻、ナイトケアとデイケアをそれぞれ別々に運営しようということで施設をふやしたのですが、これがもらえないと四月までこの運営がおぼつかないということが書いてありました。そして「国は、予防にはお金を出しても、一度でも使ってしまった人にはお金を使わないのですか。予防からリハビリまでトータルして考えて欲しいものです。」というふうに書いてありましたので、すぐ連絡をとってお会いしました。  きょうは、我が国でも非常に深刻な問題でありながらもなかなか対策が進んでいないこの問題を中心に考えていきたいと思うのですけれども、まず我が国のいわゆる薬物事犯というふうに呼ぶのでしょうか、現状は、平成八年度版の警察白書によると、これは平成七年の統計で、覚せい剤事犯について検挙が二万三千三百八十二、あるいはシンナーなどの検挙が一万三百十八人。そしてまた、少年の比率が増加をしているということも出ているのですが、現在の薬物事犯の現状ですね。  そしてもう一点、再犯率といいますか、これは平成七年度版の犯罪白書ですけれども、覚せい剤取締法違反で有罪判決を受けた人の中で前科を有していた人が六一・一%という数字があるのですが、この深刻な状況、現在どうなのかということについて、法務省の方からお答えいただきたいと思います。
  115. 奥平裕美

    ○奥平説明員 お答えいたします。  平成七年の刑務所の新受刑者及び少年院の新収容者について申し上げます。  新受刑者二万一千八百三十八名のうち、麻薬及び向精神薬取締法違反それから覚せい剤取締法違反の者が六千二百七十一名で、比率としては二八  ・七%となっております。  それから、少年院の新収容者ですが、三千八百二十八名のうち、麻薬及び向精神薬取締法違反、覚せい剤取締法違反の者が三百六十九名で、九・六%となっております。  以上でございます。
  116. 保坂展人

    保坂分科員 私は、法務委員会で、先般、短い時間だったのですが、この問題を取り上げさせていただきまして、矯正局長から、この覚せい剤あるいはほかの薬物に依存してしまった人たちは、刑務所の中にいる間あるいは施設の中にいる間は物理的にできないわけですから断つわけですけれども、しかし、そこを出た瞬間にこれはコントロールが及ばないわけで、また同じことを繰り返していくという意味では十分な体制ではない、そして民間のボランティア的な方の協力をいただいて、そういったダルクの話も少し出したのですけれども、協力ということも研究して考えていきたいという御答弁をいただいているのですけれども、私、こういった質問をする際に、もともとジャーナリスト出身ですから、実際に現地に行かなければということで、東京の荒川区にあるダルクというところに早速先週行ってまいりました。  そして、行ってどんな生活をしているのか見てきたわけですけれども、覚せい剤あるいはシンナー、あるいはほかの薬物でかなりひどい依存症状があって、精神病院に何回も入ったりあるいは警察に厄介になったりという過去を持つ方たちが、一日三回ミーティングをされているのですね、朝、午後、夕方と。そして、そのミーティングにお願いして見学をさせていただきました。  実を言うと、非常に感銘をいたしました。つまり、人前でとてもなかなか明かせないようなこと、同じ傷、痛みを持っているがゆえに、自分は例えば進学コースにこれだけ乗ってきて、頑張って、スポーツも万能だったけれども、しかしこのことで薬を使い始めて、そして何回も何回もばかなことをしてきたと。自分はこんなに愚かな過去を持っているのだと。そして、そのことを否定するのではなくて、自分を受けとめていきたいのだというようなことをおっしゃる方がいれば、実は自分はこうだったのだということをもう本当に率直に、そして薬ということが非常に深いところで彼らの人生を変えているわけですから、そこから抜けるに当たって本当にすさまじい苦闘というのですか、そういう率直な話し合い。これが毎日三回といいますと、これはなかなか大変なつながりが生まれるのだなと思いました。  この毎日三回繰り返していくのが三カ月のプログラムと言うそうなのですが、大体入ってきた方の三割から四割の方が終えられるそうです。しかし、半分近い方は結局そのダルクのプログラムの途中でおやめになったりするそうなのですが、しかし、この薬に依存してしまったという人たちが回復していく施設としては、これは極めて大きな役割をしていることだけは間違いないというふうに感じて帰ってきました。  小泉厚生大臣に、大臣として、このような民間の、しかも本当にお金のない中で、教会関係の寄附とか、入っている人たちの御両親とか、そういう方の寄附で本当にぎりぎりで成立している施設なんですが、所管の方、大臣からまず伺いたいと思います。
  117. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 私も、かなり長い間、断酒会の活動の問題について骨を折ってきた一人でありますけれども、断酒会の会合に何回か出て感ずるんですが、あの人たちは、お酒におぼれてしまって弱い面もあったけれども、むしろ、あの好きなお酒を断って今強く立ち上がろうとしている、ある面においては非常に強い人ですね。あれほど好きだったお酒をよく断てるな、断ち切って再生を期している。  お酒とこの薬物というのは程度は違いますが、また被害の度合いも違いますけれども、ある面においては自分の弱さを認めながら、一度おぼれてしまった、それを断ち切ろうと思って懸命の努力をしている。これは強制じゃありませんから、自発的にみずから立ち上がろうとしている人たち。ダルクにしてもそうですね。こういう自助努力をしようということに対して今後何か支援の強化策があればな、こういう問題についてはできるだけ本人たちの立ち直ろうとする意欲を盛り立てるような策が必要ではないかなと思っております。
  118. 保坂展人

    保坂分科員 ぜひ、そういうふうにお願いしたいと思うのですけれども、いろいろ調べておりましたら、こちらの方に厚生科学研究費補助金でつくられたレポート、平成四年から六年にかけて、これは薬物依存者に対する相談・治療・処遇並びにアフターケアのあり方に関する研究班の「総合研究報告書」というのがございます。まとめられているものを読んでみますと、なかなか正確と思われる記述があるわけでございます。  例えばこんなことが書いてあります。「非アルコール性薬物依存者は一般的に、精神科医療の中では敬遠される傾向が強く、従ってその治療体制の整備も遅れている。」先刻行きましたそのダルクでも、その以前からも伝え聞いていたことなんですけれども、確かに精神病院の中で薬物依存の方を受けとめる、治療のために入院していただくということは、大変な労力とエネルギーと体制が要るわけでございますね。そういう中で、入院の希望を出してもなかなか病院の方が受けとめてくれないということがあるそうです。そして、病院から紹介をされてこの民間の施設にやってくるケースもあるということで、このレポートの中にも同様の記載があります。  そして、今大臣が言われたアルコール依存症に関しては、近年になって、東京、川崎、横浜、名古屋など精神障害者共同作業所という形で整備されつつあるということなんですけれども、「アルコール以外の薬物依存者に対しては、その処遇困難性の故か、未だ専門的に受入れ、社会復帰を図る生活保護法上の施設の例はない。現在、薬物依存者に対して行われている生活保護法上の施策は、民間の薬物リハビリテーション施設における入所費用の援助のみ」、これは、恐らく生活保護をもらいながらダルクならダルクという施設に入っているということを指しているかと思うんですけれども、こういった現状指摘があるんですね。  そしてさらに、そのダルクについても触れていまして、東京ダルクには昭和六十一年六月から平成三年十二月まで五年半の間に五百二十八人の薬物依存者が入寮をした。これは完全に共回生活をするわけでございますから、そのうち、三カ月の入寮プログラムを終了した者は四一・九%に当たる。ダルクにおける活動は、ポストホスピタル機能のみならず、プレホスピタル機能も十分に発揮していることが判明をしたというふうにあるんです。  これは、厚生省の方で平成七年の三月一二十一日、つまり丸二年前に出された報告なんですが、これらの指摘を受けてどのようにこの指摘された事柄をお進めになったのかについて、係の方から御返答いただきたいと思います。
  119. 中西明典

    ○中西政府委員 先生御指摘のとおり、薬物依存症者を含めまして精神障害者の社会復帰対策というのは、精神障害者に対する社会的な誤解や偏見が根強いこともこれ相まって、我が国においては取り組みが極めておくれてきたということは間違いのない事実だと考えております。  そうした事実も踏まえまして、精神障害者の保健医療福祉施策を充実するという観点から、障害者全体として、平成七年十二月に障害者プランを策定いたしまして、社会復帰・福祉施策の充実やよりよい精神医療の確保のために、年次計画をもって施策を進めていくという取り組みに着手しておるところでございます。特に、精神医療、社会復帰につきましては、社会復帰対策、先ほど申し上げましたように非常におくれておるという事情がございますので、相当数の目標値を設定して取り組んでおるところでございます。  それからまた、同じ七年度から、障害者本人やその家族等の団体が行う活動、ボランティア団体等の育成を図る地域組織の活動などを支援する事業を新たに都道府県等を通じて開始いたしたところでございます。  なお、先生御指摘の薬物依存症者に対する専門的精神医療あるいは地域における社会復帰のためのシステムのあり方につきましては、平成七年度以降も引き続き厚生科学研究費を活用して研究を継続しておるところでございまして、まだ極めて取り組みがおくれておるということは率直に認めなければならないと思いますが、そうした研究結果も踏まえて、どうした対策が功を奏するのかよく検討していきたいというふうに考えております。
  120. 保坂展人

    保坂分科員 この薬物の問題は、大変な広がりという一例でいいますと、小学生が塾通いを夜遅くまでしていますね。そこの繁華街に若者が立って、ドリンク剤を元気出るよと言って小学生に渡す、ここに入っているという話が実際都心で起きているんですね。これはもちろん、学校現場やあるいはその取り締まりということも連動してやっていくのと同時に、極めて大きな広がりを見せている薬物汚染の中で、少しでも浅い段階、その薬物を使い始めたその入り口の段階でも引き返せるさまざまな仕組みが必要かと思うんです。  もう一度これに戻りますけれども、こちらは二年前に報告がありまして、そして大変おくれていると言っているわけですね。おくれていて、その社会復帰のための公的な仕組みはできていない、あるとすればこの民間のダルクであるというふうに二年前に述べているわけなんです。  厚生省として、それじゃ、レポートを読まれて調査に行かれたとか実情を把握されたという行動は起こされましたでしょうか。いかがでしょうか。
  121. 中西明典

    ○中西政府委員 私自身はお邪魔したことはございませんが、厚生省には麻薬の取締官事務所がございまして、これは別の見地からするものかもしれませんが、ダルクとはいろいろな形でコンタクトをとらせていただいておるというふうに承知しております。
  122. 保坂展人

    保坂分科員 先ほど冒頭に触れたのですが、昨年の十月二十九日の朝日新聞に、民間の薬物リハビリ施設がついに資金ショートでつぶれる寸前だという記事が出ているわけなのですが、そういった今の御答弁を伺うと、こういう記事が出たときにさっと……。  いろいろな知恵があろうかと思うのですが、ダルクの施設設備をやっている方たちは、御自身が薬物依存の体験を持っておられるということで、必ずしも社会システムを熟知しているというわけではないわけでございます。例えば社会福祉法人をつくるとかそういう作業をしていく道のりについて、いろいろな煩雑事務手続あるいは資金的なものもございます。ですから、なるべく簡便に、スピーディーに、こういう施設に意味があるならば、私はあると思っているし、大臣のお答えでも恐らく同様と思うのですけれども、公的な支援の方策あるいは意思、これについてお願いします。
  123. 中西明典

    ○中西政府委員 いわゆるダルクの施設で、構造設備やあるいは職員配置の要件を満たすものであれば、精神保健福祉法に基づきます社会復帰施設としてその運営等に要する費用を補助する仕組みとなっておりまして、現に、茨城ダルクでございますか、まだ現実化していないようでございますけれども、生活訓練施設に地域生活支援センターを附置して、社会復帰施設としてきちっとしたものにしようというような取り組みも心がけられておるというふうに承知しております。そういった形でやっていただければ、要するに施設運営の安定化という意味においては、私どもとしては一番きちっとした姿ではなかろうかというふうに考えております。  ただ、先ほど先生おっしゃいましたように、そこまで持っていくにはいろいろハードルがあるという話もございます。それがどうしても無理だという場合には、要するに小規模作業所という形態がございまして、これは具体的には、おおむね五人以上の利用者に対して原則として週四日以工作業指導やあるいは生活訓練といった活動を実施している、そういった小規模作業所でございますが、それについて、一カ所当たり年間百十万円の運営費を助成しておるところでございます。九年度の予算案におきましても、精神障害者関係の小規模作業所につきましては、助成先をふやしまして、六百八十六カ所を対象として計上しておるところでございます。したがって、こうした道を何とか活用していくことが可能なのではないかというふうに考えております。
  124. 保坂展人

    保坂分科員 確かに、今御答弁にあるように、結城ダルクですか、こちらの方では援護寮として、そして神奈川県では横浜ダルクが作業所として、あるいは東京でもダルク女性ハウスがグループホームとして、それぞれの形の援助というか公的支援を受けているようなのです。  ただ、縦割り行政の弊害といいますか、例えば、東京ダルクがある荒川区にお願いに行きますと、荒川区民は何人いらっしゃいますかということになるわけです。ところが、この種の薬物依存の人たちが脱出をしていくという場合には、地元にいてはいけないわけです。つまり、昔ながらの、例えばシンナー仲間あるいは薬の仲間と離れるということが共同でいるということの趣旨であるわけですから、逆にそこに区民がいてはいけないわけです。  そういう趣旨で、もっと柔軟に、これは行政も、先ほどのこちらの報告の中にもあります、窓口が、例えば取り締まりの窓口もある、あるいは覚せい剤予防ということで教育の面でもある、そして厚生省の中にもあるということを統括して、今後汚染がますます広がるだろうという中で、窓口を統括していくということをぜひお願いしたいと思うのです。  そして、私の周辺にも高校生とかあるいは大学生の若者も大変多いのですけれども、彼らはやはり真剣に見ます。ビデオで、自分がこんなひどい体験をしながらそこから抜け出してきたのだというドキュメンタリーを見せたのですけれども、本当に真剣に見ます。ですから、学校とかあるいは場合によっては少年院や刑務所の中でも、依存をしたその生活で本当に大変な生きるか死ぬかの道を歩いた人たちが、今仲間とともにこうやって薬を断っているのだという話を、なるべく青少年やあるいは現在の依存者に届けていくとともに、そういった施設に公的な手を差し伸べていくということを、重ねて小泉厚生大臣に、お願いする形で、御答弁いただきたいと思います。
  125. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 薬物依存症の深刻さについては、政府としても真剣に考えなければいかぬということで、ことしの一月、総理大臣を本部長にしてこの対策本部を設置したわけです。  今お話を伺っていまして、全国の断酒連盟とは違うけれども、あのような組織というのがなぜできないのかなと率直に思いました。当然、人数においても違うでしょう。また、被害の程度の大きさ、深刻さも違うでしょう。いろいろ違いがあると思うのですが、同じ薬物におぼれたという点については似ている面があるわけです。そして、それから立ち直ろうとしている点も似ているわけです。  お酒と薬物は違うよと言う方がおりますけれども、考えてみればお酒の方だって似た人が集まってきてしまえば、おい、ちょっと飲もうよなんと言ったらおしまいになってしまうわけですから、その人たちが現に集まって、あれだけ酒を断って元気に立ち直っているわけです。  だから、そういう点も含めて、ああいう全国的な組織ができて、それが活発に活動してかなりの人が立ち直っているということから見れば、ダルクも、全国断酒会みたいな動きを参考にできるのではないかということを、逆に私はお伺いしたいぐらいなのです。  そういう点も含めて、この問題は、もう青少年にも及んで、将来の日本にも大きく影響してきますから、できるだけ多くの方が薬物依存症の危険性を察知して、この問題に関心を持っていただきまして、全く無垢な人たちがこの薬物依存症にかからないように、また、かかった人においても立ち直ることができるのだというような啓蒙活動、支援活動というものをつくっていく必要があるな、そういうふうに考えております。
  126. 保坂展人

    保坂分科員 大変誠実なお答え、ありがとうございました。  私も、本で読みました。そして、いろいろ外でお会いすることもしました。しかし、その現場に行って、ここで寝起きしてこういうミーティングをやってそして薬を断っていくのかという現場に立って、やはり現場の、そこで十年重ねられてきた薬物を断つというその行為の大きさというのに改めて頭が下がる思いでした。  小泉厚生大臣も、激務の中と思いますが、ぜひこのダルクの場に一度足を向けていただいて、薬物依存を経過した人たちの、そこで苦闘しながら脱出しようという人たちの生の声を聞いていただいて、そして、各省庁縦割りではなくて、今この時期に、この薬物に対する一大キャンペーンを起こしていく先頭に立っていただきたいと思います。  一言お願いして、終わります。
  127. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 機会をつくって、将来、ダルクにも実際足を運んで、現場の声も聞いてみたいなと思っております。
  128. 保坂展人

    保坂分科員 どうもありがとうございました。これにて終わります。
  129. 桜井新

    桜井(新)主査代理 御苦労さまでした。  これにて保坂展人君質疑は終了いたしました。  次に、西博義君。
  130. 西博義

    ○西分科員 新進党の西博義でございます。  本日は、最近マスコミ等でも大変問題になっております産業廃棄物の処理問題について、大臣並びに関係者の皆さんに御質問を申し上げたいと思います。  戦後、我が国は急速な経済発展を遂げてまいりましたが、その中で、大量生産また大量消費という社会様式が定着したように思われます。もとより資源のない我が国は、原料を輸入することによって、それを加工し、製品を製造して、またそれを輸出する、こういう中で経済大国と言われるまでになってきたわけでございますが、その過程において必然的に生じてくるこの産業廃棄物の処理の問題、これは国土の環境を保全するという観点からしても大変重要であり、また、長期的な観点に立った施策が必要だと思われます。  私たちが二十一世紀に向けて安心して住める環境を維持し、また、豊かな社会を支える健全な産業活動も持続していく、こういう方向性をつくっていくために、産業廃棄物をめぐる問題を国全体の課題として取り組んでいかなければならない、こう思うわけでございます。  そこで、今、産業廃棄物については、最終処分場の用地の確保をめぐって各地に地域紛争が起こっており、平成八年までの十年間で二百二十一件の紛争があった、そのうち九十四件がいまだなお紛争が継続中である、こう言われております。この紛争の背景として見過ごせないのは地元住民の根強い不信感である、産業廃棄物処理場に対する不信感があるように思われてなりません。  もう一方、この産業廃棄物の広域移動性といいますか、遠距離に運んでそちらで処分するという側面も見逃すことはできないわけでございます。  例えば、東京都の産業廃棄物処理計画というのがあるのですが、平成四年度の下水汚泥を除いた都内の中間処理率といいますのは五六%、約四〇%がよそで処理をしている、また、都内の最終処分率はわずか二一%である、つまり八〇%が最終処分場を外に求めているという実態が出てまいります。先ごろも、首都圏から鹿児島へ持っていった産業廃棄物が拒否されてまたこちらの方に船で戻ってきた、こういう事件もございました。そういうふうにして、民間の企業や処理業者、地方自治体の努力だけでは解決が非常に難しい事態が次々と起こっているわけでございます。  廃棄物処理法を見てみますと、国の責務として、情報の収集、技術開発の推進、自治体の財政支援、こういうことが書かれております。しかし、今後は、この国民の中にある不信感を取り除きながら、排出者責任がより徹底されるような国の積極的な関与が求められているのではないか。そういう意味で、私は、国が産業廃棄物処理基本計画をみずから策定して廃棄物の処理の目標を明示するなど、国の産業廃棄物の処理の全体像また目標などをつくっていく、また、そのことによって、廃棄物の排出を抑制したり、または再生したり、リサイクルをしたりということに対する促進をみずから行っていく、こういう必要があるのではないか、こう思います。そこで、大臣に初めに、産業廃棄物処理基本計画を国としてつくることについてぜひリーダーシップをとっていただきたいことをお願いして、まず質問させていただきます。
  131. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 産業廃棄物の問題については、生活環境保全上、大変な大きな問題になっているというのは御承知のとおりでございます。  現在、この産廃の処理については、排出事業者の処理責任のもと都道府県が産廃処理計画を策定し、区域内の産業廃棄物が適正に処理されるよう指導を行っておりますけれども、厚生省は、この指導に当たって、今後、適正な情報提供とか助言を行うのは当然なんですが、今国会においても、関係者が一丸となってごみの減量化とかあるいは再生使用、リサイクル循環型社会をつくろうという、こういう全体的なごみ減量化とリサイクル社会についてどういう方策がいいかということを関係方面に今議論をお願いしておりまして、与党内でもその議論が今進んでいるところであります。  そして、これは厚生省だけの問題では片づきません。各地の実情を見ても、幾ら法的措置を行っても不法投棄というものは後を絶たない。実際、だれの責任なのかわからないし、責任のある者が回復措置をとることができない、いろいろな問題が出てきます。そういう点も含めまして、関係省庁が一体となって、この生活環境を保全しよう、ごみを減量化しようという、これに国民的な関心を持っていただいて、何とか今の状態を改善できるような法案準備に入れるように、今全力をもって取り組んでいるところでありますので、御理解をお願いしたいと思います。
  132. 西博義

    ○西分科員 ただいま大臣からも御答弁がありましたように、厚生省だけではなく関係各省庁が協力しながら、こういうお話がございました。例えば建設廃材なんかも産業廃棄物の一つなんですが、その点については建設省の方でまた十分取り組みをされている、こういうふうにお聞きしておりますし、工場内の製造過程における廃棄物はまた通産省の関連で努力もされているというふうにもお聞きしております。きょうはお呼びしておりますので、建設省と通産省のそれぞれの取り組みについて簡潔にお願いをしたいと思います。
  133. 中山啓一

    ○中山説明員 建設省におきます産業廃棄物対策への取り組みでございますが、建設省は、発注者であるとともに建設業者の監督をするという両方の立場をあわせ持っておりますので、そういう観点からいろいろ政策をとってきております。最近では、平成六年に、各地方地域ごとに、官と民が協力しまして今後の廃棄物対策の取り組みを具体的な目標を掲げてやっていこうということで、リサイクルプラン21という行動計画を策定したところでございます。  これは三本柱として、現場内での発生量の抑制をするということ、それから、リサイクルを促進して再利用を図るということ、三つ目には、適正な最終的な処理をするというふうな基本のもとに、具体的には西暦二〇〇〇年までに建設廃棄物を半減させるということを目標といたしまして、発生量は約一〇%抑制する、それからリサイクル率は、平成二年度約四〇%でございますが、これを八〇%まで拡大するということを目標といたしまして、いろいろな施策をとってきているところでございます。  なお、昨年秋には、これをさらに再確認して進めるために、建設省と建設業界が共同して建設リサイクル推進懇談会というものを設置いたしまして、これは厚生省関係の方にもお入りいただいていろいろ議論をしまして、建設業者、発注者が各自の責任を徹底するとともに、関係する者が相互に協力することにより取り組みを進めていこう、こういうことをこの懇談会で取りまとめております。今後、これらのプランや提言等を踏まえまして、より一層の建設副産物、建設廃棄物対策を推進してまいりたいというふうに考えております。
  134. 大道正夫

    ○大道説明員 通産省といたしましては、まず、産業廃棄物の排出事業者の中で特に製造業等を所管している、あるいはリサイクルを担当しているということで、この産業廃棄物問題については重要な課題だというふうに認識をしております。  そういった観点から、産業構造審議会というのがございまして、その中に廃棄物処理・再資源化部会というのがございますけれども、平成二年の十二月に業種別に産業廃棄物処理・再資源化ガイドラインというのを策定いたしまして、現在、その後いろいろ見直しをしておりますけれども、二十業種につきまして、発生する廃棄物等の用途拡大とか、それから減量化、リサイクルを進めるための設備の導入とか、そういったことについてガイドラインがあるわけですので、それを毎年、進捗状況のフォローアップをする、あるいは必要に応じて見直しをするということをやってきております。  また、同じ審議会の部会の中で、昨年の六月に企画小委員会というのを設けまして産業廃棄物問題について御議論いただきまして、本年の一月二十四日に取りまとめをいただいたところでございますけれども、その中で、例えばリサイクルとか減量化に関する数値目標をつくるというようなことで、一層の減量化、リサイクルを進めよう、あるいは排出事業者の適正処理に向けた取り組みの強化をしよう、そういったことについて御指摘をいただいておりまして、今後、その御報告を踏まえまして、産業廃棄物問題について対応に積極的に取り組んでいきたい、こういうふうに考えております。
  135. 西博義

    ○西分科員 厚生大臣、それぞれの省庁から御報告いただきましたけれども、私は、もともと厚生省主導で、今回の改正に向けての流れの中から、建設省は建設省なりに二〇〇一年には半減する、こういう大きな目標を持って動いていただいているし、また通産省も、今はまだだと思いますが、今後、数値目標を掲げて減量に取り組む、こういう流れが出てきているのじゃないかと思うのです。  そんな中で、先ほど申し上げました、ごみそのものの広域性と、一方では各業界それぞれの分野において積極的に減量化、リサイクルへ向けて動いているというこの側面からして、依然として、都道府県がこの基本計画に基づいて受け皿を考え、将来を考えるというのはどうしても無理があるのではないかな。厚生省がここまで積極的にこの産業廃棄物の対応をお考えいただけるのであれば、それらを統括した、一つの国としての方向性を出していただいて、そのもとに進んでいくというのが全体の流れとして一番いいのではないかな。  産業廃棄物の問題、これからもずっと日本の産業とともに続いていく長期的な問題、重要な問題だと思います。そういう意味で、先ほど一度、大臣にお伺いをいたしましたが、そのことも兼ねて少し御意見があれば御発言いただければありがたいのですが。
  136. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 このごみ、廃棄物の問題は、人間が生きている限り永遠に続いていく問題であります。と同時に、今、厚生省が主導的にというお話でありますけれども、厚生省だけの問題じゃなくて、各省庁どこの所管だということでなくて、関係ある省庁のみならず、全国民がこれは関心を持たなければならない問題です。  同時に、今、地方分権という話も広く行われております。地域においても実情が違います。果たして、そういう地域に任せろという声の中に、現在都道府県が主体的にやっている状況をまた国が取り上げていいのかという問題もあります。  その点も含めながら、ともかくこのごみの問題は、全省庁が一丸となって取り組まなければいかぬ。地域と国、全国民がかかわっている問題だという意識を持って、全体の取り組みを図っていかなければならぬなと思っております。
  137. 西博義

    ○西分科員 私の提案とは若干異なる色彩ではございましたが、いずれにしても、全省庁、全国民がという積極的な御意見をちょうだいして感謝をいたしております。  それでは、具体的なことにまいりたいと思います。  まず初めに、最終処分場のあり方の件でございます。  この最終処分場の新規立地、これは数、面積ともに減少傾向にあると言われております。このままの状態で推移すれば、現在の処分量を一定だというふうに考えますと二〇一〇年ごろにはもう残っている容量がなくなってしまう、こういう推計もあり、日本の産業活動の危機が訪れるという見方さえある状況でございます。新規立地を阻む最大の要因というのは、これは不法投棄や違法処理等の横行による国民の廃棄物処理に対する深刻な不信感にあるというふうに私は考えております。廃棄物処理場というのは、住民にとっては、し尿処理場、火葬場、いろいろ各自治体にございますが、同様に迷惑施設の一つというふうにとらえられている面があるのではないかというふうに思います。  今回予定されている廃棄物処理法改正案の中には、廃棄物施設に関する信頼性と安全性の向上を図るために種々の施策が講じられていることは存じております。例えば、ミニ処分場を今度許可制にする、水処理施設などの廃棄物施設の基準を強化する、アセスメントを実施する、住民の意見を聴取する、さらには、最終処分場の埋め立て終了後の維持管理費を積立制度を導入してうまくやっていく、罰則を強化するとか、いろいろ新しい施策が盛り込まれようとしております。  私は、信頼回復をねらった今回の法律改正は基本的に賛成でございます。しかし、残念ながら、私は、これだけでは新規立地が大幅に推進するというふうには必ずしも思えないわけでございます。なぜならば、本当に信頼を回復するためには、やはり国の役割を明確にして、関係住民が安心して、この誘致ができるようにする必要があるのではないかというふうに思います。そういう意味で、国として用地のあっせんなど廃棄物処理場の設置に関与する、また、廃棄物の搬入の管理など監視体制に関与するとか、例えばのことでございますが、そういう形で、住民が安心して、この廃棄物の処理の運営をできるようにするということが必要だと考えております。  またさらに、この産廃施設というのが、先ほど申し上げましたように、ある意味では迷惑施設という考えがどうしてもある現在では、やはり関係住民に対する例えば税制上の優遇措置だとか、そういうインセンティブを与えてでも設置をさせていただく、また、設置を促進していくという必要があるのではないかということも考えております。  なお、地元の同意手続についても、いつまでもということではなくて、ある程度の期限を区切って手続をしていただくということについても、どうしても長引きますと業者の方があきらめてしまった、こんなこともありますので、そのことにつきましても御答弁をお願いしたいと思います。     〔桜井(新)主査代理退席、主査着席〕
  138. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 三点あろうかと思います。  まず、施設の設置、監視等についての国の関与についてどう考えるかという御質問でございます。  そもそも、先生御承知のように、産業廃棄物につきましては排出事業者による処理が原則とされておりまして、産業廃棄物の処理施設の整備につきましても民間による整備が原則と考えております。しかしながら、適切な処理施設の整備を推進いたしますためには、信頼性の高い公共的部門が関与して施設整備を進めることも有効というふうに考えております。  こうした観点から、平成三年の廃棄物処理法改正におきまして、都道府県知事が第三セクター方式で施設を設置する廃棄物処理センター制度を創設し、公共関与によります施設整備の促進を図っているところでありますし、また、公共活動によって生じる産業廃棄物の処理や、あるいは環境影響評価調査費用等に対する財政支援を行っているところでございます。  さらに、平成四年には、産業廃棄物特定施設整備法が制定されまして、民間事業者が行う一定の施設に対しまして債務保証等の財政支援を行う制度を創設したところでございます。  また、産業廃棄物処理施設への立入検査などの監視につきましては、都道府県等が実施しておりますけれども、国としましても、適切な基準整備、立入計画策定指導等の支援を行いますとともに、不法投棄についての先駆的な監視などに対する補助金を交付するなどの支援を行っております。  今後とも、これらの制度を活用して支援策を講じてまいりたいと思っております。  第二点目の、税制上の優遇策を図るべきではないかということでございます。  大臣からも御答弁申し上げましたように、施設の信頼性、安全性の向上等を目的といたしまして、生活環境審議会の答申をもとに、施設の設置許可手続の明確化あるいは維持管理に係る規制の見直し等を検討しているところでございます。こうした設置手続の明確化や基準の強化によりまして、地域生活環境の保全に適正に配慮した施設が設置されることが重要でありまして、個々の地元住民に税制上の優遇措置を講じることはなじまないのではないかというふうに考えております。  それから、同意手続についてのお尋ねでございます。  現在の廃棄物処理法には、施設の設置の許可に当たりまして住民等の意見を反映するための手続がないことから、多くの都道府県では要綱等におきまして独自の手続を定めております。その中でも特に住民の同意を求めているところが多いわけでございますが、この場合、一部でも反対があれば施設の設置が不可能になるといったようなことも想定されるわけでございます。  現在、生活環境審議会の答申を踏まえまして検討を進めております廃棄物処理法の改正案におきましては、このような住民同意にかわりまして、期間を定めて生活環境保全上の観点から住民や市町村の意見を聴取する等の手続を盛り込むとともに、これらの意見を踏まえまして、専門家の意見を聞いて科学的に判断する仕組みを導入することを検討しておりまして、こういった方途によりまして、要綱等に基づく手続の問題点の解消を図ってまいりたいと考えております。
  139. 西博義

    ○西分科員 もう一つ大きな変更点があるのですが、実は今回の法律改正において、すべての産業廃棄物処理、すなわち、廃棄物の排出から運搬、中間処理、最終処分まで、移動管理システムが適用されるということになりました。そのために、平成九年度にもそのシステムづくりのための予算が計上された、こういうことが言われております。マニフェスト制度の適用をすべての産業廃棄物に行う、これは画期的なことであり、私は大変評価をしております。  そこで、このシステムが完璧に機能する、あらゆる産業廃棄物に関して機能していくということが今後の産業廃棄物行政の最も大事な点だ、こう考えておりますが、このシステムの定着を今後どう図っていくのかということについて、具体策があれば教えていただきたいと思います。
  140. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 御指摘のマニフェスト制度につきましては、平成三年の廃棄物処理法の改正におきまして、特別管理産業廃棄物に限って義務づけられたものでございますが、当時の制度の成熟状況等にかんがみまして、マニフェストを交付しなかった者等に対する罰則等は設けられておりません。  その後、マニフェスト制度につきましては、今申しました特別管理産業廃棄物以外の廃棄物につきましても、建設廃棄物を中心といたしまして行政指導により実施をされておりまして、既に産業廃棄物の委託量の約六割程度まで普及している状況にございます。  現在検討を行っております廃棄物処理法の改正におきましては、すべての産業廃棄物にマニフェストの適用範囲を拡大することとしておりますが、今申しましたような状況であれば、周知を十分図れば定着するものと考えております。
  141. 西博義

    ○西分科員 今お話がありましたように、特別管理産業廃棄物につきましては、今もう既に行われており、これは限定された物質ですから比較的きちっと対応できているのではないかと思います。お伺いしましたところ、種類、数量等が入っており、この種類の中には、例えば化学物質でございますとその物質名も実質上は入っている。ですから、処理についてもかなり安全に、的確にできるのではないかというふうに思っております。  私は長年、工業高専で化学の教師をやっておりまして、そんな立場から今回のことを考えてみますと、このマニフェストが産業廃棄物全般に適用されることになりますと、いわゆる分離が困難な液体混合物の分野でございますが、例えば汚泥、廃酸、廃液、廃アルカリ、こんなところでございましょうか、十九品目の中でそんな四品目あたりの成分表示、せっかくマニフェストができるわけでございますから、明らかにしていただくことによって、さらに効率的、的確な処理ができるのではないかというふうに考えております。この際、この四種類については成分を明示するように義務づけるべきである、こう思われますが、検討をお願いしたいと思います。  これは、排出業者責任の原則がずっとこの産業廃棄物の法律全体に言われておるわけですが、単に費用を負担して処理を依頼することでもって十分だ、こういうことではなくて、廃棄の最終段階まで責任を持つという意味からも具体的な名前も入れて出していただく、こういうことをぜひともお願いしたい。これが趣旨にかなうことではないかというふうに考えておりますが、その点についての御答弁をお願いします。
  142. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 まず、産業廃棄物の排出事業者が処理業者に処理を委託する際には、あらかじめ処理業者との間で廃棄物の種類、量、処分方法等について記載した契約書を取り交わすことが法律上義務づけられております。また、マニフェストには、実際に廃棄物を引き渡す際に、個別の廃棄物の処理状況等を把握、確認するために必要となる情報を記載するとなっておりまして、御指摘のございました特別管理産業廃棄物については、例えば水銀に係る汚泥等のある程度の記載がなされることになっております。  なお、この点につきましては、産業廃棄物対策全般を御検討いただきました産業廃棄物専門委員会報告におきまして、廃棄物の内容や適正な処理方法を明らかにした上で委託することが必要というふうに指摘をされておりまして、現在、その具体的な細かい基準等につきましては専門委員会において検討を開始したところでございまして、先生の御指摘も踏まえまして、委託基準の強化方策を図ってまいりたいと考えております。
  143. 西博義

    ○西分科員 もう余り時間がございませんので、最後に一つだけお伺いをして終わりたいと思います。原状回復の方法のことでございます。  各地で不法投棄が、また処理業者が途中で倒産をする、こういうようなことがあり、トラブルが発生して、それが当事者の責任で回復できない処分場が見受けられます。この不法投棄問題においては、原状回復の費用をだれが負担するのかという非常に難しい問題が存在するわけでございますが、この大前提としてこれから考えていかなければならないことは、まず、不法投棄の再発を徹底的に防止する、ここから始めなければ、一方では明朗なシステムができたとしても、安易に原状回復をしてもらえるという側面だけが強調されることによって、今後、逆にその原状回復をだれか第三者がしてくれるというそのことを当てにした違法な投棄がまたふえるという悪循環が起こる可能性があるわけでございます。  不法投棄の問題は、いわば今までの政府の施策の甘さといいますか、今回、それに対応する改正案がかなりはっきりした形で出てきたことに私も本当に賛同するわけでございますが、今までの甘さの結果だとも言えるのではないかというふうに思います。したがって、今後の不法投棄を完全に、完全にとはいかないかもしれませんが、徹底して防止するという前提の上に立って、現在発生してしまったこの問題については、排出業者等民間業者の支援をいただくことも結構だと思いますが、やはりもう言っていく先がないという今の状況の中では、国や自治体が責任を持って原状回復を図るべきだ、こう私は思うわけでございます。そして、今後は絶対に不法投棄を許さない体制づくりを行うように強く申し上げまして、最後に御答弁をいただき、質問を終わらせていただきます。
  144. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 私ども、先生御指摘のとおり、不法投棄を絶対に許さないという体制づくりをつくらなければいけないというふうに思っております。産業廃棄物問題というのは、先生も冒頭御指摘ございましたように、住民の不安感あるいは不信感というふうなものに根差していることも一つの原因でございまして、これらを払拭することが非常に重要だと私どもも認識をいたしております。  そこで、生活環境審議会の答申に基づきまして、罰則の大幅な強化、あるいは不適正に処理された場合の措置命令の拡大、あるいは処理業者の許可要件の強化等を含みます廃棄物処理法改正案の準備を進めているところでございますし、さらに、警察等との連携を密にいたしまして不法投棄を防止するというふうな方策を講じてまいりたい、諸般の方策を講じてこの不法投棄を根絶するという方向で対処してまいりたいと考えております。
  145. 西博義

    ○西分科員 御活躍を期待しております。  以上で終わります。
  146. 越智通雄

    越智主査 これにて西博義君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして厚生省所管についての質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  147. 越智通雄

    越智主査 次に、労働省所管について政府から説明を聴取いたします。岡野労働大臣。
  148. 岡野裕

    ○岡野国務大臣 労働大臣の岡野裕でございます。  平成九年度労働省所管一般会計及び特別会計予算につきまして、その概要を説明申し上げます。  労働省所管一般会計は五千二十五億円で、これを前年度予算額と比較いたしますと四十六億円の増額となっております。  次に、労働保険特別会計について、各勘定ごとに歳入歳出予算額を申し上げます。  まず、労災勘定の歳入予算額は二兆千五百四十二億円で、これを前年度予算額と比較いたしますと三百四十七億円の増額となっております。また、歳出予算額は一兆四千五百四十九億円で、これを前年度予算額と比較いたしますと百六十三億円の増額となっております。  次に、雇用勘定につきましては、歳入予算額、歳出予算額とも三兆二千六百六十六億円で、これを前年度予算額と比較いたしますと六十七億円の増額となっております。  徴収勘定につきましては、歳入予算額、歳出予算額とも三兆六千三百六億円で、これを前年度予算額と比較いたしますと四百十九億円の増額となっております。  石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計の石炭勘定のうち労働省所管分の歳出予算額は百四十三億円で、これを前年度予算額と比較いたしますと十九億円の減額となっております。  平成九年度の労働省関係予算につきましては、経済社会の変革期において安心して働ける雇用能力開発対策の展開、豊かさを実感しながら働ける勤労者生活の実現、多様な個性や能力を発揮できる環境の整備障害者対策及び阪神・淡路大震災関連対策等の推進、国際社会への積極的貢献など労働行政の重要課題に的確に対応していくための予算措置に十分配慮しつつ、財源の重点配分に努め、必要な予算を計上したところでございます。  以下、その主要な内容について概略を御説明申し上げるべきところでございますが、先生方各位のお手元に資料を配付してございますので、お許しをいただき、説明を省略させていただきたいと存じます。  何とぞ、格別の御協力を賜りますようよろしくお願いを申し上げます。
  149. 越智通雄

    越智主査 この際、お諮りいたします。  労働省所管関係予算の重点項目については、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  150. 越智通雄

    越智主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔岡野国務大臣の説明を省略した部分〕  以下、その主要な内容について、概略を御説明申し上げます。  第一は、経済社会の変革期において安心して働ける雇用・能力開発対策の展開に必要な経費であります。  産業・雇用の空洞化に対応するため、製造業関係の事業所が集積しており、経済の国際化等により、雇用状況が悪化し、又は悪化するおそれのある地域を対象に、労働者の技能を活用した新事業展開による雇用創出を支援することとしております。  また、企画・開発能力、応用力等を有する高度で多様な人材を育成するため、職業能力開発短期大学校の大学校化等公共職業訓練の高度化の推進や、個人主導による職業能力開発の推進等を行うとともに、地域ぐるみでの自主的・総合的な技能人材育成・継承の取り組みへの支援、ホワイトカラーの能力開発の推進等を図ることとしております。  さらに、高齢者が六十五歳まで現役として働くことができる社会を実現するため、国民的コンセンサスの形成や企業の具体的な取り組みを促進するとともに、シルバー人材センター事業の積極的な展開等により多様な形態による雇用・就業機会の確保を促進することとしております。  また、転職志向等の高まり等に対応した失業なき労働移動を支援するため、人材銀行を拠点とした、ホワイトカラーの県境を越えた広域的な需給調整機能の強化等を図ることとしております。  さらに、厳しい就職環境におかれた新卒者等に対する就職支援対策を推進するため、学生の適性に合った就職を促進するための情報提供体制の整備を行うとともに、就学中に実際の職業を体験できるインターンシップ制度について検討することとしております。  そのほか、若年層を中心に雇用失業情勢が極めて厳しい状況が続いている沖縄県において、地域関係者が一体となって、自然、伝統文化等の地域資源や地域特性を活用した若年者のための雇用開発事業に対し支援を行うこととしております。  これらに要する経費として二兆五千三百五十八億円を計上いたしております。  第二は、豊かさを実感しながら働ける勤労者生活の実現に必要な経費であります。  時短促進法の活用による週四十時間労働制の定着及び労働時間短縮の促進を図るとともに、「過労死」の予防の徹底等を目指した労働者の健康確保対策の充実、死亡災害の大幅な減少を図るための労働災害防止対策の強化、安全衛生分野における科学技術研究等を推進することとしております。  また、業務上疾病等の複雑困難事案の迅速処理のための体制整備を図るとともに、不幸にも被災した労働者の方々に対し、介護施策の充実を図ることとしております。  さらに、労働市場の変化に対応した労働条件を改善するために、労働条件に係る紛争の防止・解決に関する相談体制等の整備を図ることとしております。  また、勤労者福祉対策を推進するため、職住近接の実現に向けて情報通信機器を活用したテレワークについての推進方策の検討を行うこととしております。  このほか、中小企業の魅力ある職場づくりを支援することとしております。  これらに要する経費として一兆三千九十七億円を計上いたしております。  第三は、多様な個性や能力を発揮できる環境の整備に必要な経費であります。  雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るため、女子労働者の能力発揮促進のための企業の自主的取組の促進、職場におけるセクシュアル・ハラスメント防止のための対策を行うこととしております。  また、パートタイム労働対策の総合的な推進を図るため、短時間労働者の雇用改善等に対する支援を行うこととしております。  さらに、職業生活と家庭生活との両立を支援するため、育児・介護を行う労働者の雇用の安定に資する措置実施する事業主に対する支援を行うこととしております。  これらに要する経費として二百八十三億円を計上いたしております。  第四は、障害者対策及び阪神・淡路大震災関連対策等の推進に必要な経費であります。  精神薄弱者・精神障害者等障害の種類に応じた雇用対策を推進するため、精神薄弱者等の雇用実態等を踏まえた雇用率制度の見直しを行うとともに、職業リハビリテーションの充実・強化、障害者の能力開発対策の推進を図ることとしております。  また、阪神・淡路大震災関連対策につきましては、被災地については業種のいかんを問わず支給している雇用調整助成金の特例措置等について、引き続き実施することとしております。  さらに、特別な配慮を必要とする人々に対する職業生活の援助のため、援助対象者に応じ、それぞれきめ細かな対策を引き続き推進することとしております。  これらに要する経費として七百十二億円を計上いたしております。  第五は、国際社会への積極的貢献に必要な経費であります。  若年者や高齢者等の雇用問題に関する国際会議の日本開催や国際機関を通じた積極的な労働外交を展開するとともに、国際社会の変化に対応した国際協力等の展開を図るため、APEC域内の人材養成活動に対する支援を行うほか、安全衛生技術協力、海外進出企業に対する支援、調査研究等を総合的に実施するための「国際安全衛生センター」を東京都に設置することとしております。  また、外国人求職者に対する職業紹介を充実する等外国人労働者問題への適切な対応を行うこととしております。  これらに要する経費として百五十二億円を計上いたしております。  第六は、行政推進体制の整備等に必要な経費であります。  経済社会の変化に伴う行政需要に的確に対応していくため、行政体制等の一層の整備を図っていくこととしております。  以上、平成九年度労働省所管一般会計及び特別会計の予算について概略を申し上げました。  何とぞ、格別の御協力を賜りますようお願い申し上げます。     ―――――――――――――
  151. 越智通雄

    越智主査 以上をもちまして労働省所管についての説明は終わりました。     ―――――――――――――
  152. 越智通雄

    越智主査 質疑に入るに先立ちまして、政府当局に申し上げます。  質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。   これより質疑に入ります。寺前巖君。
  153. 寺前巖

    寺前分科員 このごろ、大きな企業へ行きますと、パート労働者はもちろんのこと、派遣労働者というのが随分おります。労働委員会で大臣の所信が述べられておりましたが、大臣は、一人一人が豊かさを実感しながら安心して働ける社会を目指して全力を挙げていく所存だということを言っておられました中に、女性が男性と均等な取り扱いを受けていない事実がある、だから見直しをしなければならないという問題とか、あるいはパートタイム労働を魅力ある良好な就業形態として確立するために努力をしなければならないという旨の所信をお述べになっておりました。それだけに、私は、この機会に、パート労働なり派遣労働なりの問題についてお聞きをしたいと思います。  まず、職安局長にお聞きしたいのですが、パート労働者の差別問題について尋ねる前に、製造ラインへの労働者派遣は、法の対象業務ではなく、違法であるというふうに理解をしているのですが、それでよろしゅうございますか。
  154. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 ただいまの点でございますが、労働者派遣事業が行える業務につきましては、御指摘のとおり、労働者派遣法に基づき政令で定められておりまして、製造ラインにおきます業務はこの中には含まれておりません。先般創設されました育児休業等取得者の業務につきましては、これは労働者派遣事業の特例として実施される場合がございますが、それ以外につきましては許されないものとなっております。
  155. 寺前巖

    寺前分科員 ところで、実は私、お正月のことなんですが、電気機器メーカーのトップである、売上高が年間四兆四千億、九五年三月の統計を見たってそう出ております、国際的大企業の松下電器産業株式会社の門真の労働者の皆さん方と懇談する機会がありました。その懇談の中で出てきた話を聞いておりますと、この派遣労働について違法行為でないだろうかなという感じを受けましたので、日本を代表するようなこういう大手企業の中でそんなことをやられた日には、労働省は何のためにあるのだということが言われることになるだけに、私は、ちょっと調べてみる必要があるのじゃないだろうかなということを感じました。  そこで、歴史的に松下の労働者問題が国会でどういうふうに問題になってきたか、議事録を調べてみました。一九八一年には衆議院の予算委員会で四ツ谷議員が、一九八九年には参議院の社会労働委員会で沓脱タケ子議員が、パートタイム労働者の改善を求めて質問をやっています。パートタイム労働者が、パートという名前で身分的に差別をされ、労働条件が低いというようなことは改善していかなければならないとか、あるいは、調査し、必要あれば積極的な指導をしたいと当時の労働省の局長さんはお述べになっておりました。  ところが、いまだにそこの労働者がこの改善の方向にないじゃないかという問題を私は気にしたわけです。松下電器工場で派遣労働者が正社員やパート社員と一緒に製造ラインで働いているという訴えがあったから気になるのです。  どういうことかといいますと、アビオシステムというのがあるのですね、航空機の旅客用の音響映像システム。松下電器の中で現在成果を上げている一つの分野だそうです。この分野の製造ルートに、工場では、現場で、いろいろな派遣労働者がコンベアシステムの上なりあるいはそうでない分野にもおって、それで指揮を受けて仕事をしている。二百名前後のうち約半分が派遣労働者だろうというふうに言われているのです。  作業服はみんなと同じ服なんですが、バッジが違うのですね。バッジをよく見ると、株式会社テクノ・サービス、株式会社日本ケイテム、株式会社フジプロセス、株式会社アルファホープス、エイブルスタッフ、そういうのがずっと出てくるわけです。これらの会社は、新聞折り込み広告で、AV製品の組み立てや検査、時給九百三十五円から千百三十五円以上などという求人募集が、折り込みでだっとこの近くの町には配られているわけなんです。だから明らかに、さっき局長さんがおっしゃったように、これだけ大量の人を、いろいろな会社の派遣労働者を入れているということは、私は、これは知らなかったでは済まない問題じゃないだろうか。  コンベアラインに並んで、電気ドライバーでビスを締めるとか、部品の取りつけなどの流れ作業をしているということを、その集まった集会で聞かされました。拡大鏡を使って部品のできぐあいをチェックし、次の工程に運ぶ仕事や完成品を包装する作業なども、派遣社員が松下の社員と一緒になってやっているのです。派遣社員に仕事の指示をする班長は松下の社員です。  会社が違うと賃金も少しずつ違うのです。安い会社の人の、何で同じラインの仕事をしているのに給料が違うという不満もそこの集まりで出ました。ボーナスが出る会社と出ない会社があります。同じ松下の中で仕事の忙しいところに回され、あちこちの職場に行っているという人もいます。仕事が暇になってやめさせられたが、忙しくなると派遣会社から電話がかかってきて、また働くことになったという人もあります。会社の健康保険がないので国民健康保険に入っているという人もあります。  雑多の労働者が雑多な会社を通じて、そして松下の服装をさせられて同じような指揮のもとに運営させられている。私は、派遣労働法というのが、派遣労働者というのが特別に認められたら急速にこうやってさらに悪化の道を労働者保護の面においてとり行われていっていると気になって仕方がない。こういう事実がトップメーカーで行われているのです。  まさか知らぬというわけにはいかぬと思うのですが、今までにそういう訴えがあったのでしょうか、あるいは今までに気づかれたのでしょうか、あるいはこういう問題について調査しなければならぬなというふうに思っておられるのでしょうか、見解をお聞きしたいと思います。
  156. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 ただいま先生御指摘の松下電器産業の件につきましては、私ども、率直に言って、承知しておりません。  先ほどもお答え申し上げましたように、労働者派遣として認められるケース、あるいは派遣ではないけれども請負という形で実施されているケース、それはあり得るわけでございますが、そのいずれにいたしましても、労働者派遣であるとすれば、製造ラインへの労働者派遣は一般的には認められていないということは明確でございますし、これが請負として行われているかどうか、これは実態を踏まえなければわからないわけでございます。  いずれにいたしましても、ただいま御指摘ございましたので、この点につきましては調査してみたいと思います。
  157. 寺前巖

    寺前分科員 そこで、今例を挙げたのは、私はアビオシステムというところの分野について指摘をしましたが、この分野だけではなくして、電子部品、情報機器、電子楽器などいろいろな職場でこういうことが公然と行われている。  私は、トップメーカーであるだけに、こんなことをやられておった日にはたまらないので、こういうふうな労働をするのだったら、ちゃんと正社員としてまともに、これだけの大会社だから堂々と直接雇ったらいいものをと強く感ずるものですから、今局長さんは実態を調査するというふうにおっしゃいましたので、実態を調査されて、そして指導の方向も、ちゃんと正社員に雇用できるようなそういうシステムを、大臣のさきのお話じゃございませんが、豊かさを感ずる人生を送らすことができるように会社の指導をやってほしいものだということを、まず第一点、要望しておきたいと私は思うのです。  そこで、第二番目の問題です。  これも松下の労働者の中で聞かされた話です。ここには定時社員という制度があるのですね。正社員と定時社員、どこが違うのだと聞いてみましたら、労働時間が一日七時間、正社員と比べて四十五分だけ短いパート労働者なんだと。定時社員として位置づけられて、正社員と一緒に生産の現場で働かされている。契約期間は一年だけれども、更新を続けてきており、平均勤続年数は十六年、長い人は二十七年にもなる。私、直接会って、ほう、こんなことがなされているのだなと改めて感じました。  この間、松下電器は、海外への生産移転を進め、八五年に三万六千人だった海外雇用者数が九六年には十三万五千人になっている。こうした中で、八一年以降、新規の定時社員の採用はなくなりました。九〇年の二千九百人から九三年には二千人、現在では全社従業員八万六千人中千名前後と、人数は減ってきている。  ところで、定時社員が退職する際には慰労金が支払われる制度になっているが、その最高額というのは十年以上勤めた人で六十万円となっている。十五年、二十年、二十五年勤めても六十万で変わらない。この金額は九〇年以来七年間上がっていない。正社員の退職金はどうなっているか。例えば五十五歳以上で勤続二十五年の場合、退職時の賃金水準が月三十万円としても約千二百万円である。月収との比較で見ても、この場合の正社員は月収の四十カ月分であるのに対して定時社員は月収の約四カ月分にとどまっており、十分の一という格差になる。  正社員とパート社員との間のこれだけの格差に合理性があるのだろうか。私は、こういう問題についてどういう指導をやっておられるのか、お聞きしたいと思うのです。
  158. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 パートタイマーの方の賃金あるいは退職金につきましては、私ども、平成五年にパートタイム労働指針を策定いたしまして指導いたしております。  その中で、短時間労働者の賃金、賞与、退職金については、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように努めてほしい、こういうことをうたっているところでございます。この内容は、パートタイム労働者につきまして、通常の労働者と比較した場合に賃金、退職金などで差が出る場合が見られるわけでございますが、それは、職務の内容あるいは能力あるいは配置転換とか転勤等の有無、そういったさまざまな要素を考慮いたしまして、総合的な観点から適正なものとなるように努めてほしいということを規定しているものというふうに考えております。  それで、私ども、こういった指針を使いまして、使用者団体等に対しまして集団指導時、あるいは事業場に対しまして監督指導に赴いた際にそういった内容の周知徹底を図るなど、いろいろな機会をとらえて指導に当たっているところでございます。
  159. 寺前巖

    寺前分科員 指導をやってくれてはるのやったら、こんな、片っ方が千二百万円からもらえるのに片っ方は六十万円でずっとここ数年来続いてきているという、四十五分勤めが違っただけでこういう扱いになるというのは、私はちょっと解せないのです。大企業ともあろうものが、そこでやはり見本になるような労働行政が生きてこないと、そんな指針は死んだことと同じことになると私は思うのです。  それで、聞いてみました、定時社員の人は一体どんな仕事をしているのだ。さっきから労働形態の話をおっしゃったから。社員同様、コンベヤー作業の最終の修正・点検作業を行ったり、材料調達、供給、管理作業にも従事するなど、補助的な仕事ではない。松下の女子社員の平均勤続年数は十・二年だが、定時社員は十六年、熟練して仕事を任されていることも多い。会社に言われれば残業や休日出勤も行い、八〇年代に合理化でそれまでの仕事がなくなったときは、五カ月間、片道約二時間をかけて奈良県の工場まで応援勤務にも行っている。  コンベヤー作業は秒単位の過密労働で顔も上げられない忙しさ、せめて一秒でも機械がとめられたらと思いながら、必死でコンベヤーのスピードに追いついて働いてきた。昭和四十二年から四十八年ごろ、会社が非常に忙しいときにロボットみたいに働いてきた。十五年以上、長い人では二十五年以上も正社員と同じように一生懸命働いて松下を支えてきたのに、やめるときにもらう慰労金がわずか六十万円、これでは余りにも少ないではないかということで、せめて年収分の二百五十万円をと改善を求めている。このように正社員と変わらない仕事をしている労働者がパートというだけで差別されていてよいのだろうか、こういう訴えが出されました。  いろいろな話を私聞かされまして、本当に頭が上げられなかった。それでも寺前さん、あなた労働委員を何年かやってきたのにこんなことも知らなかったのかと。私、二十何年国会におって、本当に詰められた思いをしましたですよ。  先ほどから指針の話が出ているだけに、私はやはり、きちっとこういう大手の分野の問題について実態を調査して、そしてこういうものを改善するように、局長さん、やってもらわないかぬのと違うかと思うのですが、いかがですか。
  160. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 賃金、退職金、すぐれて労働条件の中でも労使の方に基本的に話し合いながら適正なものとなるよう決定していただくものでございますが、とりわけこのパートタイム労働者の方につきましては、労使の方がそういった労働条件の決定に当たって一つのガイドラインとなるように、就業の実態あるいは通常の労働者との均衡を考慮して適正なものとなるように努めてほしい、私どもこういうことを申し上げておるわけでございます。  ただいま御指摘ございましたケース、もちろんこの賃金を決定するに当たりましては、先ほども申し上げましたように、職務の内容あるいは能力、あるいはそのほか配置転換とか転勤とかについて引き受ける、その辺の有無、そういったいろいろな総合的な要素を考慮して決まってくるわけでございますので、先生御指摘の点につきまして、一概に今私どもどうこうというふうに評価を申し上げるわけにはまいらぬと思います。もし必要があれば、実情把握のために現地の機関にそういった実情を聞いてみることは努めてみたいと思っております。
  161. 寺前巖

    寺前分科員 それで気になりまして、松下電器だけではなくして、大阪にあるシャープ株式会社とか、あるいは守口にある三洋電機というところも、関係する労働者にそういう実態はないのかなと思って聞いてみました。あるのですね。  十年以上勤続の場合の退職金がやはり六十万円となっているのです。引き上げが求められている。会社のために二十年、二十五年と働いてきた人たちの苦労が報われるように、関係者からよく聞き取って抜本的な改善をしてほしいな、私もそう思いましたので、今局長さん、そういうような事情を、よく実態を見るとおっしゃいましたから、ぜひ聞き取ってもらって、改善のために、松下だけではなくして、私が聞いてみたら、その近辺のそういう大手の企業、みんな同じことを言うので、これをぜひお願いしたいというふうに思うのです。  次に行きます。それは、退職金だけではなくして、賃金の面でも考えさせられるのです。  松下の定時社員の日給が七千八百六十円、時給換算で千百二十二円です。同じ仕事をしている勤続十五年、三十一歳の女性正社員Aさんの毎月の基準内賃金が約二十三万円、時給換算で千四百八十五円で、時給に換算すると、定時社員の賃金は正社員の七五%の水準にしかなっていないという賃金上の問題もあるのです。  現在、パート労働法の見直しが始まっているけれども、通常の労働者との均衡、バランスなどということを言っているけれども、実際上は、見ると、こういうふうに明らかに七五%という、同じラインの仕事をしておってもなっているのだから、これはおかしな話だ。  ILOのパートタイム労働に関する条約にも、パートタイムで働いている理由のみによって、時間、生産高または出来高に比例して計算される基本賃金がフルタイム労働者より低くならないような措置をとるということを書いているわけですから、せっかくつくったところのパート労働法というのが本当に効果的な役割を果たすように、差をつくらないようにさせていただくということが重要なのじゃないだろうか。私、改めて感じました。  だから、見直しの検討に入る以上は、この問題についてきちんとパート労働者が権利を発揮することができるように見直しをやってくれますか、課題として検討してくれますか、お聞きしたいと思います。
  162. 太田芳枝

    ○太田(芳)政府委員 先生御指摘のように、パート労働法におきましては、法「施行後三年を経過した場合において、この法律の規定の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」こととされておるわけでございまして、昨年十二月にその三年を経過いたしました。  現在、私どもといたしましては、昨年十月より、学識経験者より成りますパートタイム労働に係る調査研究会というものを発足させまして、法施行後の状況を中心といたしまして、パートタイム労働者総合実態調査の結果の分析、またパートタイム労働に係る問題点を整理、検討しているところでございます。  この研究会での結果につきましては、本年夏ごろをめどに報告書をまとめたいと思っておりますが、見直しにつきましては、この研究会での検討結果を踏まえまして、さらに審議会等で御議論いただきたいというふうに考えております。
  163. 寺前巖

    寺前分科員 今の問題を検討の課題に入れてくれますか。
  164. 太田芳枝

    ○太田(芳)政府委員 先生御指摘の課題というのは、ILOパートタイム労働条約の第五条の点かと存じますが、この条約は、先生先ほど読まれましたように、パートタイム労働者が比較可能なフルタイム労働者に与えられる保護と同一または同等の保護を受けることを確保するための措置について規定をしているわけでございまして、この第五条と国内法との整合性を考えます場合に、幾つかの問題点があるかというふうに思うわけでございます。  その大きな問題点として、まず、この条約は、主として職種とか職務分担とか格付別賃金制度が形成されております企業横断的な、言ってみれば西欧型の労働市場を念頭に置いてつくられておるわけでございます。第五条において述べております「比較可能なフルタイム労働者」と申しますのは、これは第一条に規定がございますが、同一の事業所の労働者のみならず同一企業内の労働者、さらには企業を超えた同一部門で雇用されている労働者まで対象を広げておりまして、同一事業所内の通常の労働者との均衡を図ろうという国内法の視点とはいささか視点が異になっているということがまず第一点ございます。  それから、前述のような比較可能なフルタイム労働者の概念を基本に、パートタイム労働者が比較可能なフルタイム労働者より低い基本賃金を受けることがないことを保障するための国内法令及び慣行に適する措置をとるとされているわけでございますが、この点につきましては、先ほど基準局長の説明にもございましたように、賃金制度のあり方等々にも大きくかかわってくる問題でございますので、非常に大きな問題であるという認識をしているわけでございます。
  165. 寺前巖

    寺前分科員 問題があると認識しているだけでは困るので、やはり、時間差が四十五分あるだけで、長年勤めておってこんなに差がつくというようなことはおかしいなとか、一時間当たりの賃金がこれだけ差があるというのはおかしいな。僕はやはり、これは労働基準法の基本問題だろうと思うので、これはぜひとも見直しを検討してほしいと思います。  最後に、もう時間がありませんので、定年制の問題はパートの場合はどういうふうに見るのだろうかという問題があります。  シャープの会社では、労働組合との協約で、五十五歳未満の者に限り定時準社員の契約は更新することがあるとなっている。正社員の定年は六十歳であり、定時準社員は五十五歳までで雇いどめとするということになってきているのですが、これはちょっとおかしいのじゃないだろうか。六十歳まで働ける人は全部働いてもらいましょう。いよいよ法が生きてくる段階を、来年ですか、迎えようとしているときであるだけに、このパートの労働者だって適切に六十歳まで働けるように指導してもらう必要があるのじゃないだろうか。  私は、この定年制の問題でも差別があるように思うのですが、こういう分野についてどういうふうにお考えになっているのか、お聞きをしたいと思います。
  166. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 ただいまの点でございますが、平成六年に改正されました高齢法第四条の規定、これはあくまで「定年の定めをする場合」でございます。そのことから、この条文によって規制されますのは年齢の到達を理由とする労働契約の終了でございまして、年齢の到達を終了事由としない有期雇用契約の形態をとる限り、これは基本的には別の問題というふうに考えております。  ただし、改正後の高齢法第四条の趣旨は、少なくとも六十歳程度までは雇用を保障する、雇用を継続してほしい、こういう趣旨でございますから、これまで六十歳定年制の定着を推進してきたという経緯から考えまして、六十歳定年の義務化の趣旨に反するような運用が見られる場合については、行政としても一定対応が必要になるのではないかというふうに考えております。
  167. 寺前巖

    寺前分科員 時間が来ましたので、せっかく大臣のお顔を見せてもらっておるのですから、大臣から所見を一言お聞きしたいと思います。
  168. 岡野裕

    ○岡野国務大臣 これは寺前先生と私、きっと同じだと思うのでありますけれども、今、パートタイマーの労働者の雇用者の数、非常にふえつつあります。つまり、これから雇用者の中におけるパートの皆さんの占めるシェアというのが大きくなっていくと思うのです。したがって、日本の経済に占めますところのこういった短時間労働者の、いいますならば働くパーセント、これもふえていくのじゃないか。特に高齢者の皆さんでありますとか、あるいは女性の皆さんでありますとかいうような意味合いで、こういう職場をぜひひとつ、そういう皆さんにも働きがいのある職場にしていこうという意味合いで平成五年にこのパートタイムの法律というものをつくりました。  今、太田局長からも今後の見通しについて、調査研究会を設けて勉強しようということに相なっておるということであります。先生は、県境一つ向こうの門真の松下その他、実際に先生の目で、あるいは耳でごらんになった、きょうは非常に貴重な参考の資料を私は聞かせていただいた、こう思っております。将来におきますところの短時間労働者の雇用の促進、あるいはその充実のために、一つの見聞というようなことで活用させていただければ、こう思っておる次第であります。
  169. 寺前巖

    寺前分科員 どうもありがとうございました。
  170. 越智通雄

    越智主査 これにて寺前巖君の質疑は終了いたしました。  次に、中島武敏君。
  171. 中島武敏

    中島(武)分科員 建設業退職金制度は、建設現場を移りかわる建設労働者を対象にし、各工事現場の事業主がその労働者の勤務日数分の証紙を共済手帳に張ることによって退職金を計算し、建設業界で働かなくなったときに退職金が支給される制度であります。退職金金額は、十年の勤務換算で約百万円、二十年で約三百万円、最高の三十七年で約千三十万円となっています。この制度が正しく運用されるならば、建設労働者の福祉の向上に大変役立つものだ、こういうふうに考えまして、この制度をより充実するためにきょう質問をいたしたいと思っております。  最初に、建設省おいででしょうか、建設省に伺います。  公共工事の場合は掛金相当額が発注単価の中に含まれているとされておりますが、一九九五年度において国の発注機関、特殊法人、それから都道府県市町村、第三セクターが発注した建設工事について、発注金額及びその予定価格に算入されている建退共の掛金相当額は幾らになりましょうか。
  172. 土屋彰男

    ○土屋説明員 お答えいたします。  公共工事の着工総額の部分でございますけれども、公共工事着工統計年度報における平成七年度の公共工事着工総額は十九兆二千百六十四億円となっております。ただし、本統計は抽出調査であることなどのため、着工ベースにおける全体をカバーしているものではございません。
  173. 中島武敏

    中島(武)分科員 この中に含まれている建退共の掛金相当額はわかりませんか。
  174. 藤田博

    ○藤田説明員 公共工事の発注におきましては、中に現場管理費という項目がございまして、その中の福利費の中に建設業退職金共済制度に係る経費も計上されておりますが、これにつきましては、積算の中身でございますし、かつそれぞれの実態に合わせて行っているものですから、その全体的な額というのは建設省でも把握しておりません。
  175. 中島武敏

    中島(武)分科員 この点については、共済組合が発行しております手引によりますと、土木で千分の三・五、建築また設備で千分の二・五、これを目安とするということが書かれておりますので、大体その辺かなということを私どもは思っているわけです。  そこで、この建退共の問題については、私たち日本共産党は一貫して調査しているのです。その中で、非常に重大なことが明らかになってきました。これから京都市、東京都それから滋賀県の具体的な例をお示しいたしますので、ぜひひとつ答弁をいただきたいと思います。  まず最初に、京都市の工事です。京都市の九四年の発注工事である京都市南区の下水処理施設、鳥羽処理場ですが、ここの拡張工事で、工事を請け負った大林組が建設業退職金共済制度の掛金収納書を偽造し、そのコピーを提出しておった。これは、本当は原本を提出しなければいかぬのです。コピーを提出している。その後も、この大林組は、一九九四年に京都市からJVで受注した中川トンネル工事、それから九五年に受注した七瀬川改修工事、これは伏見区ですけれども、同じく収納書を偽造していたことが日本共産党の市議会議員団の調査によって明らかになりました。それで、京都市はこれを認めたのです。同時に、大林組もこれを認めた。そして、大林組に対して二度にわたって厳重注意処分に京都市はしておるわけなんです。  労働省に伺いたいと思います。  共済を所管する労働省として、この事実は知っておられますか。また、京都市に対してどのような指導をされましたか。また、二度も同じような公文書の偽造という犯罪的行為を行い、注意処分でよいのか。そしてさらに、全国的にもこのような事実はないか、いろいろ調査をされましたか。以上、お聞きいたします。
  176. 松原亘子

    ○松原政府委員 今御指摘の、京都市の例でございますけれども、先生がおっしゃいましたとおりのことは私どもも承知をいたしております。市におきまして、またこれも先生おっしゃいましたとおり、指導し処分がなされたということも承知いたしているところでございます。  また、この建退共事業が全国で適正に実施されているかどうかということについて、私ども、全国的な調査を行ったということはございませんけれども、この制度実施主体は、建設業・清酒製造業・林業退職金共済組合でございますが、この組合とかその他関係機関と連携いたしまして、加入の促進、履行確保というのに常日ごろ努めているところでございます。  また、これらの組合ですとか特退組合と連携を図りまして、毎年十月をこの建退共の加入促進月間というふうにいたしておりますけれども、証紙の確実な貼付を初めといたしまして、制度の履行確保につきまして、建設業界に対しても指導を行っているというところでございます。
  177. 中島武敏

    中島(武)分科員 私は、共済組合との連携は大事だと思うのですけれども、そして、そことだけじゃなくて、労働省としても、この問題は非常に重要な問題ですから直接調査をしていただきたいと思っておりますが、幾つか、私さっき言ったように事例がありますので、その方を先に述べます。  次に申し上げたいのは、建設関係労働組合首都圏共闘会議という組織があります。ここが昨年の五月に、これは東京都の場合ですが、東京都の公共工事現場における退職金共済制度の履行状況を調査しました。その結果、驚くべきずさんな状況が判明したのです。  第一に申したいことは何かというと、請負金額に見合った共済証紙がきちんと購入されていないということなんです。調査した十三の現場のうち、証紙購入率はこれだけだというふうに答えた現場は七つあるのです。ほかの現場は答えない。七つ答えたところはどうかというと、その証紙を購入したという率ですけれども、これは〇・五六%、八・三一%、三八・六六%、八・三一%、六・七八%、〇・〇八%、六・五八%という驚くべき実態が明らかになってきたんです。最も多く購入している現場でも、今言いましたように三八・六六%。つまり、購入すべき金額の、購入すべき金額はどうかという問題については、土木の場合でしたら、さっき申し上げたように一応千分の三・五、こういうふうに目安をつけて計算をしているわけですけれども、何とその四割弱しか、一番多いところでさえ四割弱しか購入していない、こういう事実がわかってきたのです。  東京港臨海道路城南島側沈埋トンネル建設工事というのがあります。これは大成建設を親として八社JVです。ここの大成建設ではどうかというと、このJVでは、請負金額が百三億円で、購入すべき証紙代が三千六百万円になるのに、工事半ばで何とわずか二十万二千円しか購入していないのです。本当は、今言ったように三千六百万円、これだけ購入しなければいかぬ。ところが、二十万二千円しか購入してない。それで、調査団に対して何と言っているかというと、これもひどいことを言うんですね。言っていることは、この残った分は会社の利益になっているのじゃないかと思う、こういうことを公然と言うのですよ。それはもうむちゃくちゃなんだね。こういう驚くべき実態なんです。  それから、共済手帳に証紙の貼付、これの実績も非常にひどいものなんです。これは鹿島建設を親とするところの六社JVの現場を調べましたら、働いた人は延べ三万二千四百人の労働者を雇用しているわけですけれども、たった七千五百枚の証紙しか張ってないのですよ。ひどい実態なんです。  それで、調査しました十三の現場の請負金額の総合計は幾らかというと、これは千五百三十八億一千百万円、証紙購入額は本来五億三千八百万円と計算されるわけですが、実際の購入額はわずか三千二百万円、わずか三千二百万円ですよ。残りの五億円はどこへ行っちゃったのか。元請の懐へ入っちゃったのじゃないかということが、実際にはそういう憶測が飛び交っている。これは不思議じゃないと思う。  こういう事実、一つや二つじゃないのですよ。だから、私は、これは強力な指導をしなければならないと思うのですけれども、労働省並びに建設省のお答えをいただきたいと思います。
  178. 松原亘子

    ○松原政府委員 今御指摘の事案につきましては、私どもは、調査が行われたということは承知をいたしておりますけれども、詳細については把握を現段階ではしておらないところでございます。今後、建退共ですとか、東京都などとも連携をとりまして、実態の把握に努めたいというふうに考えているところでございます。
  179. 藤田博

    ○藤田説明員 建設省としましては、本制度の重大さにかんがみまして、従来より、建設業界に対しまして、本制度の普及、それから貼付、あるいは標識の掲示、もちろん証紙の確実な購入につきまして、指導を重ねてきたところでございます。  直轄工事におきましては、同じような指導をしますとともに、実際に受注した際には、掛金収納書の提出等も指導してきたところでございます。また、他の発注機関に対しましても同じような要請を行ってきたところでございますが、御指摘の点もございますので、今後とも、労働省並びに建退共ともよく連携をとりまして、証紙の確実な購入、貼付、あるいは冒頭ございました本制度の適用対象現場という旨の標識の掲示等の徹底につきまして、さらに業界を指導してまいりたいというふうに考えております。
  180. 中島武敏

    中島(武)分科員 この問題をめぐる第二の問題点について言いたいと思うのです。  元請企業によって建退共制度の周知徹底が十分になされているかどうかという問題なんです。現場を調べてみると、これも驚くべき状態だということを申し上げたい。  それはどうなっているかというと、共済契約者の工事現場、ここには「建設業退職金共済制度適用事業主工事現場」、こういうシールを張ることになっている。まあシールと申しますのは標識ですけれども、見やすいところに掲示しなきゃいかぬ、こうなっているのですよ。ところが、調査しました十三の現場のうち五カ所には標識、シールが一枚も掲示されていないのです。それから、加入促進のポスター、これはどうかといったら、どの現場にも張られていないのです。これが実態なんですね。これが実態なんだ。  先ほどから、指導しているというお答えはいただいているし、指導していきたい、調査もしたいというようなことも言われているのですけれども、私は、実態はこうなんだというところに今の行政の指導の問題があるのじゃないかということを痛感せざるを得ないわけであります。  建設省の通達で、一九九四年六月三十日付、何を言っているかというと、「公共工事、民間工事を問わず、原則として、加入者が期間を定めて雇用する建設労働者すべてについて共済掛金の納付(退職金共済証紙の購入、退職金共済手帳への貼付及び消印)を行う義務がある」こういう通達を出しているのです。今申し上げたように、実態はこの通達の趣旨内容から非常に大きく離れている。  私は、これをチェックするためには、発注機関が、加入・履行証明書それから掛金収納書、これを提出させることが効果的だと思うのですけれども、ちゃんと提出させているかどうかということをお調べになったことがありますか。これは建設省、労働省、両方に伺いましょうか。
  181. 藤田博

    ○藤田説明員 先ほどお答え申し上げましたが、建設省におきましては、当省の直轄工事におきましては、そのような指導なり、受注に対する義務づけを行っております。また、これは発注でございますので、私ども、他の公共機関につきましてこれを指導するという形はとれませんものですから、各公共発注機関に対しましても、私どもの取り扱い等を含めまして、同じような取り扱いを御要請申し上げているというふうな状況でございます。
  182. 松原亘子

    ○松原政府委員 今御指摘の点につきましては、私ども、建退共が調査をした結果がございます。平成七年度の状況でございますけれども、今御指摘の発注者用掛金収納書につきましては、発注者が都道府県の場合には、その都道府県は一〇〇%提出を求めているという結果が得られております。ただ、発注者が市町村の場合には、約半分の市町村がその提出を求めているという結果が、建退共の調査の結果でございます。
  183. 中島武敏

    中島(武)分科員 これは「建設業に関する行政監察結果報告書」、平成六年三月、総務庁行政監察局、こういうものなんですけれども、これを見ますと、この中に「建設業退職金共済組合への加入状況」というのがあります。これの中で明らかにされておりますが、これは抽出検査なんですけれども、全員未加入、一部未加入、これを合わせますと六二・五%、加入しているのは三七・五%、こういう数字が出されております。  これは民間を含めての数字かなという気はするのですけれども、私は、こんなに建設業者の加入が少ないとするならば、これは大変問題じゃないかという気がするのですね。これについても労働省の積極的な指導を望みたいのですけれども、いかがでしょうか。これは建設省も同じです。
  184. 藤田博

    ○藤田説明員 本制度の加入状況でございますが、共済契約者、事業者で約十四万五千、被共済者が二百万余りという状況でございまして、これはあくまで建退共の全体の数字でございますが、建設業就業者の中の現場労働者のうちでは、大体お二人に一人弱ぐらいの割合かなというふうに思われます。  ただ、本制度につきましては、建設労働者の福利の向上にとりまして極めて重要な制度でございますので、私どもとしましては、引き続き建設業界に、この制度の普及につきまして、さらに指導あるいは周知徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。
  185. 中島武敏

    中島(武)分科員 では、滋賀県の場合を申し上げたいと思うのです。  これは、現在工事中の県発注の十四の公共工事を、日本共産党の地域新聞であります滋賀民報というのがありますが、ここが調べたのです。これもまたびっくりするような状況が明らかになってきたのです。  それを申しますと、掛金収納書を提出していない工事が約半分の六工事に及んでおります。起シ又川砂防工事、これは請負会社は日本国土開発なんですが、本来は三百七十一万円の収納額がなければならないのですけれども、収納額はゼロである。琵琶湖の管渠工事、西松建設、四百十万円なければならないのですけれども、これも同じくゼロであります。それから、同じく琵琶湖の管渠工事、東洋建設、四百七十万円なければならないのですが、これもゼロ。同じく西武建設、四百七十七万円なければならないところが、ゼロ。同じく鴻池、五百七十三万円、これもゼロ。同じく大林組・コクドJV、六百四十三万円、これも全くゼロなんですね。もう片っ端からゼロなんです。もうひどい状態なんです。  これは労働省の方では指導されておられますか。
  186. 松原亘子

    ○松原政府委員 今御指摘の、滋賀民報に記載されました件につきまして、私どももこの情報によりまして今先生が御指摘されたようなことを知った次第でございまして、具体的な把握はまだいたしておりません。
  187. 中島武敏

    中島(武)分科員 今までずっと具体例に基づいていろいろお伺いをしてまいりました。今の滋賀の点についてもぜひ調査してもらって、指導していただきたいということを申し上げておきます。  ずっと明らかになってきておりますことは、さっきもお話があったかな、共済事業本部の資料によりましても、加入・履行証明書それから掛金収納書、これの提出状況では、加入・履行証明書は六割ですか、それから掛金収納書で四割弱ぐらいなんです。私は、これを改める必要がある。どうするかという問題なんですよ、問題は。  そこで、随分強力な指導が必要だと私は思いますが、具体的なことをちょっと提案したいのです。  一つは、現場労働者数、手帳の必要な労働者数、手帳所持者数、それから貼付枚数が幾らか、何枚貼付したか、こういうことを三カ月に一度報告させるというふうにしたらどうでしょうか。このことがきちんとやられれば、移りかわって、現場をしょっちゅうかわっているこの建設業関係の労働者の福祉にとっては非常にいいことなんですよ。三十七年で一千万円、これはいいですよ。だから、本当に労働者の福祉を考えたら、いろいろ調査だけではなくて、現場はどうなっているか、それをどう改善するかという点で、ぜひ一つこんなことも御提案申し上げたいと思うのだけれども、どうでしょうか。
  188. 松原亘子

    ○松原政府委員 先ほどのお答えとダブるのではございますが、この証紙の着実な貼付等制度の履行確保に関してましては、毎年十月、加入促進月間を設けて強力な指導をいたしているわけでございますが、退職金共済組合等と十分連携をとりまして、今後とも建設業界に対しまして指導を行いたいというふうに考えておりますし、また、都道府県等発注官庁に対しましても、労働省といたしましても、引き続き掛金収納書の提出等が徹底されるように改めて要請するということもいたしたいというふうに考えているところでございます。
  189. 中島武敏

    中島(武)分科員 建設省にこれはぜひやっていただきたいと思うことなんですけれども、元請による請負金額に見合った証紙の一括購入をきちんとやる。そして、一括購入したのを一大変重層下請のところですけれども、それを全部下までちゃんと届ける。それで労働者がちゃんと貼付を求める、また、貼付をするということをきちっとやれるように、そこまでずっと徹底する。徹底する一番の大もとは、やはり何といっても元請が全部一括購入する、これが大事ではないかなと思うのです。どうですか。
  190. 藤田博

    ○藤田説明員 制度上はそれぞれの業者が購入することにはなっておるのでございますが、実態としましては、現在でも、委託等によりまして元請が一括購入する事例もあるやに伺っております。  ただ、具体的にどのような方法がいいか、先生の御指摘もいただきまして、建退共、建設業退職金共済組合とも御相談いたしまして、ひとつ検討してまいりたいというふうに思っております。
  191. 中島武敏

    中島(武)分科員 ちょっと違うことを、時間がだんだん迫りつつありますので伺いたいと思うのです。  昨年末に政府が閣議決定しました行政改革プログラム、この中へ、一九九八年四月一日をめどに建設業・清酒製造業・林業退職金共済組合と中小企業退職金共済事業団の統合ということが出されておりますが、この統合によって、給付内容の後退あるいは制度改悪ということになったら大変だと思うのです。いや、そんなことはありません、かえってちゃんと充実してまいります、こういうお答えをいただきたいのですけれども、この点はいかがでございますか。
  192. 松原亘子

    ○松原政府委員 中小企業退職金共済事業団と建設業・清酒製造業・林業退職金共済組合の統合に当たりましては、私どもは、それぞれの制度の対象労働者が異なるわけでございますが、そういった制度の違いなどを踏まえまして、統合後においても、それぞれの制度の適正な運営が確保されるように配慮をするということにいたしております。  したがいまして、統合がされたということのみをもって今おっしゃられるようなことが行われるということはないということで御理解をいただきたいと思います。
  193. 中島武敏

    中島(武)分科員 私、聞き漏らしたかどうか、会計は、要するに中小企業の方は大変な赤字でしょう。それから、建設業の方はうんと黒字なんじゃないですか。だから、会計を全部一緒にしてしまうとえらいこと起きるなと、これが心配なんですよ。そこを、いや、そうじやありません、ちゃんと会計は別々にするのです、組織は統合しても会計は別々です、こういうふうにはっきり言っていただかないと、労働者の不安は、これは建設業の側からは消えません。御答弁を。
  194. 松原亘子

    ○松原政府委員 ちょっと言葉足らずだったかもしれませんけれども、おっしゃいますように、それぞれの制度はその制度の中で運営されるということでございますので、今のような御心配はないということでございます。
  195. 中島武敏

    中島(武)分科員 最後に私、大臣にぜひと思っていることがあります。  それは何かというと、今ずっと具体的な事実を挙げて、答弁も局長の方からもいただいたのですけれども、結局、私は、この問題がいつまでたっても解決しない一番大きな原因は何かというと、調査をされるという場合、局長は何回も言っていらっしゃるのですけれども、共済組合と連携をとるとか、あるいは建設省と連携をとるとか、こういうふうにおっしゃるのです。それは決して悪いことじゃありません。  だけれども、そういう建退共と連携するというだけじゃなくて、やはり現場を、現場は今申し上げたような中身なんですよ。だから、ここへみずから足を踏み込んで調べてみる。それで、何が問題なのかということを建設省としても直接調べて、そして、この建退共の制度を実効あるものにしなければいかぬのじゃないか。せっかく所管していらっしゃる、これは労働省ですから、この労働省がやはり労働者の福祉のために腰を上げていただきたい。  局長はああいうふうに答弁なさったけれども、大臣は、いや、わかった、こういうふうに言っていただくことを私は期待をして、大臣の決意を聞きたいと思うのです。
  196. 岡野裕

    ○岡野国務大臣 結局、先生、我々は、この建設業、清酒製造業あるいは林業、そこに働く労働者の皆さんの労働提供、これの態様が一般とは非常に異なるというようなことで、そういった皆さんの福祉を、そういった皆さんのしあわせのためにこういう制度を設けているわけです。  ところが、先生が細かくごらんになって、なおお話を伺いますと、どこかでしんが抜けておるという御指摘であります。せっかくつくった制度がというようなことで、労働者の皆さんのための福祉に役立たぬということではまことに残念であります。  そういう意味合いで、今後も適切な運用を我々は心がけるべきだ、その手法はひとつ我々内部で、関係のところもと言うと先生またしかりますが、関係のところともよろず鳩首懇談をしながら進めてまいろう、こう思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  197. 越智通雄

    越智主査 これにて中島武敏君の質疑は終了いたしました。  次に、石毛鍈子君
  198. 石毛えい子

    石毛分科員 民主党の石毛でございます。  本日は、水戸市で、旧アカス紙器、これは知的障害をお持ちの方が段ボールを加工している会社でございますが、そこで、障害者雇用に関連する助成金を詐取した事件について質問をいたしたいと思います。  私どもも、この事件について独自に調査を進めてきておりますけれども、調査を進めれば進めるほど、障害者雇用促進政策を悪用した悪質な事件であるという認識を深くしております。同じような事件は、滋賀あるいは和歌山でも発覚しておりまして、こうした知的障害をお持ちの方の雇用に関する問題というのは全国各地で起きているものと思われます。こうした事態を未然に防ぐことが大切だと思いますし、今回生じておりますアカス事件から何を教訓として酌み取り、そしてまた、障害を持つ方が当たり前の権利として安心して働ける雇用の場をどのようにつくり出すかが大変大切な課題として問われていると思います。  旧アカス紙器で生じております出来事は、今刑事、民事ともに法廷で争われていることでございますので、本日は、労働行政が果たすべき役割という観点から質問をさせていただきたいと存じます。  まず最初に、旧アカス紙器で働いていた知的障害者の方の証言では、一九九五年四月には水戸職業安定所、労働基準監督署に申し出をしております。申し出の内容は、障害者の方の証言では、休日労働ですとか時間外労働あるいは深夜労働あるいは賃金台帳の偽造などについて申し出をしております。一九九五年四月には職安はもう知っていたというふうに思いますが、その段階では取り上げてもらえなかったというような疑いがございます。知っておりながら取り合わなかったという疑いがございます。労働法規に違反する可能性のある申告を労働基準監督署や職業安定所は見逃していた疑いがあるのではないかというふうに考えられます。九五年といいますと、既に九三年には障害者の個人としての尊厳を重んじるということを理念に掲げました障害者基本法が制定されております、その後のことであります。  まず、労働大臣にお尋ねしたいと思いますけれども、このような事件が起こっており、そして当事者からの、障害を持つ方からの申し出に労働基準監督署や職業安定所はきちっと対応しなかったのではないかということに関しまして、どのような感想をお持ちでしょうか。まず最初に大臣にお伺いしたいと思います。
  199. 岡野裕

    ○岡野国務大臣 身体に障害を持たれる皆さんあるいは知的障害をお持ちになられる皆さんが、当今非常に大勢職場を得られて、そこで自分で能力を十分発揮し、楽しい方向での人生を歩まれる、非常に私はうれしいことだと思っております。  先生、数多くの事例があるとおっしゃいましたが、一つでも二つでもこういうような暗い案件があることによりまして、世の中の皆さんが、そういった障害をお持ちになられる皆さんと一緒に働くという企業についてある方向の眼でもって見る可能性が強いということになりますこと、まことに慨嘆これきわまりない限りだ、こう思っております。  したがって、私どもは、私どもの傘下の第一線の職員がそれぞれのそういった企業を回りましてもろもろの相談にあずかるというような中で、こういうことがないようにという努力をいたしております。あるいは、地域ぐるみで関係の省庁ともタイアップをいたしまして、全体がうまく進むようにという配慮もしているのでありますが、もし先生がおっしゃるように、ちゃんと安定所に見えたにもかかわらず、私どものとる手が、手段が遅かったということであるとするならば、まことに申しわけないことだ、これからもぜひそういうことがないように、第一線の皆さんを我々としては指揮し、あるいは監督をし、指導をしていきたいものだ、こう思っております。
  200. 石毛えい子

    石毛分科員 今、大臣から御感想をお伺いさせていただきましたけれども、ぜひ、職業安定所ほか労働行政が、今お聞かせいただきました大局的な見地で充実した仕事ができますようにということを、まず最初に申し上げたいと思います。  具体的な質問の内容に入ってまいりますけれども、アカス紙器には特定求職者雇用開発助成金が支給されておりますけれども、この支給は何年から始まっておりますでしょうか。それから、各年度ごとに支給対象者が何人おり、年度ごとの支給金額は幾らになりますでしょうか。それを明らかにしてください。
  201. 坂本哲也

    ○坂本(哲)政府委員 アカス紙器に対します特定求職者雇用開発助成金の支給の状況ということでございますけれども、平成六年度、平成七年度に支給対象となっておりますのは十九名、この十九名につきましての特定求職者雇用開発助成金の総額は約八百四十八万三千円ということでございました。この助成金につきましては、御案内のとおり、不正受給の事実が認められましたので支給決定の取り消しを行って、既に返還をいただいたというところでございます。
  202. 石毛えい子

    石毛分科員 今お答えをいただきましたのは、平成六年度、平成七年度、つまり九四年度、九五年度ということになりますでしょうか、そういうお答えをいただいたと思いますけれども、アカス紙器に対します助成金は九三年度以前にも支給されていたのではないでしょうか。アカス紙器は九〇年にスタートをしておりますけれども、今お話がございましたように、職業安定所は九四年以降について被害届を出しているのですね。被害届は九四年度ですから、九四年三月まで、つまり九三年度までに不正受給をしているという疑いは持たなかったのでしょうか、アカス紙器は九〇年からスタートしておりますが。
  203. 坂本哲也

    ○坂本(哲)政府委員 このアカス紙器に対します特定求職者雇用開発助成金の不正受給の関係でございますけれども、九四年三月以前の分についてということでございますが、私ども安定所の方で、その後、九四年三月以前のものにつきましても、可能な限りさかのぼって調査を行いました。調査を行いましたのは一昨年、平成七年十一月から十二月にかけてでございますけれども、事業所を訪問いたしまして、助成金の申請関係書類とこのアカス紙器が保管をいたしております各種会計帳簿等、そういったものの照合を行いまして、厳正に確認を行ったわけでございますけれども、特に不正受給ということには至っておらないわけでございます。  今後とも、知的障害者を多数雇用する事業所、そういったところから特定求職者雇用開発助成金の支給申請があった場合には、必要に応じて実際に事業所に出向いて調査をする、こういったことを行うなどによりまして事犯の再発防止に努めてまいりたいと考えております。
  204. 石毛えい子

    石毛分科員 それでは、今、さかのぼって調査をされたということでございますけれども、お渡ししてあると思いますけれども、私どもの手元に、アカス紙器で働いておられた知的障害をお持ちの方の給料支払明細書がございます。この給料支払明細書を見ますと、確かに、平成六年、九四年四月の支給額は、基本給等々合計で四万七千幾らということでございますけれども、その前、つまり平成六年、九四年二月、三月につきましても支給額が四万九千八百八円、こうした給料支払明細書がございます。この方は雇用保険料も三月についても二月についても納めておりますので、助成金適用労働者として採用されていた方だというふうに思います。  六年四月以降については不正受給があり、この一人の当事者の方が、同じ給料明細書をもらっていながら、それ以前、三月までは不正受給がなかったということは言えるのでしょうか。ぜひ再調査をしていただきたいと思いますし、それから、アカスに対する助成金支給実績を明らかにしていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  205. 坂本哲也

    ○坂本(哲)政府委員 先生から御提示いただいております給料支払明細書は、平成六年の二月分から四月分ということでございますけれども、この給料支払明細書につきましては、実は、特定求職者雇用開発助成金の支給といいますのは、六カ月、半年分をまとめて申請をするということになっておりまして、平成六年度の支給分の対象期間としてこの平成六年の二月、三月というのは実は含まれておるわけでございまして、そういった意味では、既に水戸の安定所におきまして調査、確認をし返還を求めたその対象に入っておるものでございます。  ただ、先生の御指摘を踏まえまして、これ以前のこういった給料明細書の存在確認、こういったものも含めまして、再調査についても検討してまいりたいと考えております。
  206. 石毛えい子

    石毛分科員 今のお答えをいただきましたのは、六年度分を支給する範囲の中に、前年度分もまとめて六カ月分でカウントしているので、二月、三月についても含まれているはずで、不正受給ではないというお答えが一つですね。それからもう一点は、ですけれども再調査はしましょうというお答えをいただいたという解釈でよろしいですね。それでは、ぜひお願いいたします。  重ねてもう一点調査をお願いしたいと思いますけれども、この方の四万九千八百八円ないしは四月の四万七千五百四十四円という支給額は、当時の茨城県の最低賃金に違反していると思います。一日四千六百二十九円ですから、出勤日数等々も、二十一日掛け合わせますとこの金額よりは高くなるはずでございますので、最賃法違反ということも考えられますから、あわせて再調査をお願いするということでよろしゅうございますでしょうか。  それからもう一点、再調査をしていただくということなのですけれども、もう一つ、アカス紙器に対して助成金の支給実績全体が九〇年以降どのようにされていたかということもあわせて明らかにしていただきたいと存じますので、よろしいでしょうか。
  207. 坂本哲也

    ○坂本(哲)政府委員 このアカス紙器の最低賃金法との関係につきましては、担当部局の方でそういった対応をするように私の方からも話をつないでおきたいと思います。  それからまた、このアカス紙器のそれぞれ過去の特定求職者雇用開発助成金の支給金額ということでございますが、こういった個別の事業主にかかわる情報ということで、職業安定法上の守秘義務もございまして、これまでも明らかにすることについては差し控えさせていただいておるところでございます。
  208. 石毛えい子

    石毛分科員 私は、その御答弁にはいささか妥当性を欠くところがあるのではないかと、大変率直な表現で恐縮ですが、思っております。と申しますのは、職業安定法の第五十一条「秘密の厳守」に基づいて今の御答弁をいただいたかと存じますけれども、この文章、時間がありませんから省略いたしますけれども、「労働者又は雇用主の個人的な情報は、」ということでございまして、雇用主の個人的な情報です。アカス紙器の赤須社長ないしはその企業の情報というのは、私は個人的な情報ではないというふうに理解をしております。そしてまた、これにはただし書きがございまして、「職業安定主管局長の指示に基づいて公表する場合は、この限りでない。」というふうにございます。  そこで、大変恐縮でございますが、労働大臣、この点をめぐりまして、ぜひ御所見を伺わせていただければと存じますけれども、いかがでございましょうか。
  209. 岡野裕

    ○岡野国務大臣 先生おっしゃいました個々の法令につきまして、私はつぶさな勉強をいたしておりません。  顧みまして、先生の御意図がどのくらい当省限りで実現が可能か検討をさせていただきたい、かように思っております。
  210. 石毛えい子

    石毛分科員 アカス紙器の実情が明らかになるような方向で御検討いただきますように、ぜひ御要望をさせていただきたいと存じます。  それでは、次の質問に移ります。  アカス紙器に働いておられた知的障害の方に対する就職後の指導の問題ですけれども、雇用促進法八条の二では、障害者に対して就職後の助言指導、それから八条の三では、事業主に対して助言指導を行うというふうにございます。実際にアカス紙器に対しまして助言指導を行われたのでしょうか。行われたとすれば、どのような指導が何回程度行われたのでしょうか。お願いいたします。
  211. 坂本哲也

    ○坂本(哲)政府委員 御指摘のとおり、公共職業安定所におきましては、障害者雇用促進法第八条の二の規定に基づきまして、従来から就職後の職場適応指導実施しておるところでございます。  この職場適応指導でございますけれども、障害者に対して職場に適応するために必要な相談、助言指導を行うということでございますし、また、事業主に対して雇用管理のための助言指導といったものを行うことにしているわけでございます。  このアカス紙器に対しまして、従来から事業所訪問による職場適応指導実施してまいりました。そして、障害者本人に対しまして相談を行ってまいりました。また、事業主からも障害者の仕事内容あるいは作業態度、生活面での順応性、こういったものについて聴取をしてきたところでございますけれども、その際には問題を発見するに至らなかったということでございます。  こういった状況を踏まえまして、今後、事業所訪問による職場適応指導実施するに際しましては、障害者と直接面接する機会をこれまで以上に多く設けるといったようなことによりまして、より徹底した相談、指導援助を行ってまいりたい、そしてこういった事件の再発防止に努めてまいりたいと考えております。
  212. 石毛えい子

    石毛分科員 御答弁は、指導はしたけれども、障害のある方に面接しても、そこでさまざまに行われている休日労働ですとかあるいは強制労働の実態というようなことはつかめなかった、こういう内容でございますか、再確認させていただきたいと存じます。
  213. 坂本哲也

    ○坂本(哲)政府委員 アカス紙器の職場適応指導でございますけれども、私ども、記録では、昭和六十二年以来十四回にわたって訪問指導を行っておるということでございます。専ら本人の作業面、生活面の順応性の確認ですとか作業状況を事業主から聴取する、こういったことが中心でございましたので、特段の問題の把握に至らなかったということでございます。
  214. 石毛えい子

    石毛分科員 時間がありませんので、もう一点だけ、この件に関しまして単刀直入にお尋ねします。  雇用促進給付調査官も訪問しておられますでしょうか。
  215. 坂本哲也

    ○坂本(哲)政府委員 雇用促進給付調査官が直接この事業所を訪問したことはございません。
  216. 石毛えい子

    石毛分科員 それでは、この件に関しましては事実の確認ということで、次に進みたいと思います。  もう一点。この法律関係の中では、労働条件などの職場生活について指導する障害者職業生活指導制度というのがございますけれども、アカス紙器の場合、指導員はどなただったのでしょうか。
  217. 坂本哲也

    ○坂本(哲)政府委員 障害者職業生活相談員と思いますが、このアカス紙器の場合の職業生活相談員は、社長の赤須正夫氏みずからが選任をされておるということでございまして、問題を起こしていた本人が選任されていたということで、極めて遺憾なことと認識をいたしております。
  218. 石毛えい子

    石毛分科員 それでは、この赤須正夫生活相談員は解任された、解任という表現でいいのかどうかよくわかりませんけれども、解任されたのでしょうか。されたとすれば、いつされておりますでしょうか。
  219. 坂本哲也

    ○坂本(哲)政府委員 この職業生活相談員は、それぞれの企業で自主的に選任していただくものでございますので、行政の方で解任をするといったような行為はこの件についてはないと思っております。  このアカス紙器の職業生活相談員は、平成八年の十一月に交代をいたしておりまして、かわりの方が選任をされておるという報告が出ております。
  220. 石毛えい子

    石毛分科員 九五年十一月といいますのは、労基署に告発されています。告発というか、申し立てに出ていったその後ということで、この解任については時期的には、解任という表現が用語上としていいのかどうかわかりませんけれども、適切であったというふうに判断してよろしいというふうに伺わせていただきます。今の年次の関係でそう理解させていただきます。  先ほどの就職後の指導ということともかかわりますけれども、本人の作業面での順応性ですとか、あるいは生活習慣、態度というようなところに主に面接の重点が置かれたというふうに申されました。  少し私の考え方を含めて申し述べさせていただきたいと思いますけれども、特定求職者雇用開発助成金制度の趣旨でございますけれども、発行されております支給要領というのを拝見いたしますと、助成金の支給終了後も相当期間雇用する労働者として雇い入れるという、そうした趣旨が書かれております。その趣旨は、言いかえれば、知的障害をお持ちの方の職場定着を目的とした雇い入れ制度であるというふうに理解してよろしいかと思います。  そういうふうに理解をしてまいりますと、実際に就職した後の仕事のなれぐあいですとか、あるいはどういうふうにやっていくとか、あるいは賃金、労働条件等々に問題を感じた場合、その問題をどのように自分が考え、解決していくのか等々さまざまなことに関しまして、先ほどいただきましたお答えよりはより広く指導の内容といいますか、定着の内容を実践していく必要があるのではないかというふうに私は考えます。  そこで、お尋ねしたいというふうに思いますのは、実際、先ほどアカス紙器に対しまして十四回の指導がなされたというふうに伺いましたけれども、もう一方で、雇用促進給付調査官だったでしょうか、その方は一回も訪問できなかったというふうにお答えいただいております。私は、行政と同時に、採用された知的障害をお持ちの方自身が、自分の仕事の内容あるいは賃金や労働条件やその他さまざまな事柄に関しまして、自分が感じた問題をどこかにだれかに相談していけるように、雇用開発助成金を含めまして、だれだれさん、あなたにはこういうことが権利として保障されているのですよ、ですから何か問題があったら相談したらいいですよということを御本人にきちっと説明するということが必要なのではないかと思います。  知的障害をお持ちの方、とりわけこの制度で就職をする知的障害の方は療育手帳の認定を受けている方でいらっしゃるわけですから、人権の侵害が起こりやすい方、そしてまた自分の権利について、自分にかかわる事柄について発言しにくい状況にある方でいらっしゃるわけですから、そのことに関しましてきちっと情報を開示する。  例えば開発助成金がどのぐらいあなたには支給されていますというような情報を開示し、そしてきちっと説明をする。そのことによって、知的障害をお持ちの方も、何か疑問に思ったら、あるいは何か尋ねたかったら、あるいはおかしいと思ったら、このことなんだということが見られるようなものがあったり、あるいはそれをもとにして相談に行けたりというようなことができるようなシステムに、もっとこの制度の内容を豊富にしていくといいますか、深めていくという必要があろうかと思いますけれども、そのことについてはどのようにお考えでしょうか。
  221. 坂本哲也

    ○坂本(哲)政府委員 知的障害者につきましては、御指摘のとおり、職業紹介あるいはその後の定着指導の中できめ細かな対応を図っていく、また特定求職者雇用開発助成金等の不正受給防止のための調査活動における対象労働者等からの事情聴取ですとか、事業所に対する職場適応指導の強化、こういったことを図っていかなければならぬというふうに私どもも考えておるところでございます。既に先般、職場適応指導の重点的な取り組みについて、全国会議で指示もいたしたところでございます。  今後とも適切な労働条件が確保されるように努力をしてまいりたいと思っているわけでございますけれども、これからの対応一つの方策といたしまして、職場適応指導の一層の強化を図るためにも、各公共職業安定所単位で、福祉機関も含めた形で社会復帰連絡会議といったようなものも設置をされておりますので、そういったものの充実強化といったようなものにも取り組んでまいりたいと考えております。
  222. 石毛えい子

    石毛分科員 もう時間が終わりになってまいりましたけれども、今私が質問をさせていただきましたポイントは、行政機関のみの、行政機関の対応はとても大事だと思います。連絡会議をつくることも、方向性として私は賛成をさせていただきますけれども、大事なのは、行政機関のみではなくて、何かがあったら本人が言っていけるように本人にきちっと情報が開示されること。  そしてもう一つ、新しく主張といいますか、御検討いただきたい点をつけ加えさせていただきますと、その主張を申し述べるようにできることと同時に、そのことを行政だけではなくて第三者機関にも相談に行けるようなシステムをつくること、つまり相談のシステムを豊富化していくことが大事だというふうに私は思っているわけです。  時間がありませんのでちょっと説明が不十分ですけれども、ぜひ本人への情報の開示と、それから何かがあったらあなたは発言できますよというような、その情報の提供をきちっとしていただかないと、行政のみの連絡ではやはり漏れること、落ちていくことがたくさんあると思いますので、その点を要望いたしまして、時間も参りましたので終わりたいと思います。
  223. 越智通雄

    越智主査 これにて石毛鍈子さんの質疑は終了いたしました。  次に、河井克行君。
  224. 河井克行

    河井分科員 自由民主党の河井克行です。  先週の労働委員会での質問に続きまして、こうしてまた、大臣にいろいろな見解、そしてお考え質問させていただくいい機会をいただきまして、本当に心から感謝を申し上げます。  前回は少子化の問題を質問させていただきまして、子供の数が急速に減ってきているという問題を質問させていただきました。余り私が質問しても説得力がないというふうに後でいろいろな先生方から言われたわけですけれども、大臣ですらこれからしっかり体にむち打ってこの少子化問題の対策に頑張っていきたいという極めて明快なお答えをいただきましたので、私もこれからは自分のいい人を早く見つけて、体を使って頑張っていかなくちゃいけないなというふうに感じさせていただきました。  少子化問題といいますのは、中長期の日本の将来に対する自分なりの心配といいましょうか、危機感の気持ちから質問をさせていただいたわけでございますけれども、きょうは、もっと手前に起こってくるであろう近未来の日本の労働関係についての危惧について質問をさせていただきたいと思います。それは、特に地域における空洞化の問題、そして雇用の情勢についてであります。  まず初めに、一問目ですけれども、雇用情勢の現状認識について労働大臣のお考えを伺いたいと思うのですけれども、完全失業率も依然高い水準が続いております。平成八年の平均で三・四%ということです。これは、二十年前の一九七七年当時は二・〇%でした。かなり当時と比べて高い数字、ずっと以前は完全雇用というふうなことを言われていたわけですけれども、随分高い水準が続いてきております。  経済界の一部には、平成八年度の第三・四半期、かなり経済の状況がよくなってきた、上向いてきたというふうな認識もあるようですけれども、完全失業率の数字自体はほとんど変わっていない、高どまりの傾向がずっと継続をしているわけでありまして、若干その辺で、数字と実際の地域の雇用情勢に関する空気、雰囲気、私はかなり違うのじゃないかなというふうに思いますけれども、その点、現在の雇用情勢についての大臣の基本的なお考え方を教えていただきたいと思います。
  225. 岡野裕

    ○岡野国務大臣 先生おっしゃいましたような完全失業率でありますが、昨年の十一月、十二月ぐらいで三・三という数字になりました。したがって、年度全体を通ずれば三・三ではないかと私は思っていたのでありますが、結論は三・四ということでありましたので若干落胆をしましたが、いや、そうか、それならばますます我々は意気込みを強くして、これを三・三に、三・二に、三・一にしていかなければならない、こういうふうに思った、そんな次第でありました。  幸いにして、有効求人倍率は、七年七月あたりは〇・六一ぐらいでありましたものが、昨今は〇・七六倍ぐらいに好転をしているというような実態に相なっております。  特に、完全失業率を見る場合に、先生、きめ細かな云々というお話があったようでありますので、実際には、解雇をされてそれで失業になっているという方よりは、今までちゃんと職場を持っていた、しかしながら、もっとよりよい職場というものがないだろうかというような意味で、失業者の方にそういった皆さんが数字の中に含まれてしまう。あるいは、お子様がないというお話河井先生にはなんでありますが、お子様がどうやら母親から離れても大丈夫というような状態に育った、それじゃ、ゆとりの出た家庭の主婦が、私もひとつどこかいい就職先ないかということで手を挙げられますと、これは直ちに失業率というようなものになっているというような意味で、いろいろな解釈ができると思います。  しかし、そういった甘えた考えではなくて、実質的にこの有効求人倍率を引き上げるというような努力をし、完全失業率を減らしてまいりたい、こう思っているところであります。
  226. 河井克行

    河井分科員 それで、ことし以降の完全失業率あるいは有効求人倍率の展望についてお伺いをしたいのですけれども、私は、これからの景気の動向ということは、もちろん懸念材料、これは判断する材料の一つだと思うのですが、もう一つ考えておりますのが、やはりこれから私たち自由民主党は、橋本総理を一生懸命応援して支えて、六大改革を必ず成功させなくちゃいけないと思っていますけれども、これはいずれも痛みを伴う事柄でありまして、行政改革しかり、金融改革しかりです。  私は、例えば行政改革でしたら、公務員の方の職場の問題、失業の問題も含めて、それから、金融・証券の大改革では、いろいろとこれから職場の中で厳しい雇用調整も行われてくる可能性が大だというふうに思っています。  そうだからといって、この改革にしり込みをしてはいけないわけですけれども、もう一つの不安材料として、これから私たちがやっていこうとしている大改革がどのようにこの雇用情勢に影響を与えていくのか。もし、大臣のお考え等がございましたら、お聞かせをいただきたいと思います。
  227. 岡野裕

    ○岡野国務大臣 経済構造改革といいますか、産業構造改革といいますか、これはひとつ規制緩和を大幅にやろうということで、全体の活性化を図ろうということですね。  あるいは、産業の空洞化という言葉がありますが、これはイコール雇用の空洞化というようなことでありますので、これについても適切な手法をもって対処していかなければならない。その場合に、共通して言えますのは、やはり規制が今まであった、その規制によって保護されている産業分野があった、その規制が取っ払われる、どうしてもその傘の下にあった産業は、不景気になっていくというか、衰退になるということで、そこに雇用された労働者の諸君からするならば、これは雇用調整という大きな問題が出てくるわけです。  ただ、しかしながら、規制が緩和をされることによって、規制が取っ払われることによって、新たな雇用の機会といいますか、新たな産業を起こしていく、そういう可能性が開けるという分野も産業分野の中にはある。そうすると、日が陰ってくる産業に働く諸君を、新たな規制緩和によって日が当たってくる産業に、言いますならば、労働者諸君を移動させるということが円滑であらなければ雇用問題は解決をしない。  そうだとしますならば、今までの議論をもってしては新たな分野では雇用が不可能だというようなことをにらみまして、私どもは、新しい、付加価値の高い、そういう技能を身につけていただく職能訓練、これを充実させなければならない。それによって、言いますならば、技能を身につけた皆さんが新しいジャンルの産業に、ベンチャー企業等々に乗り込んでいく、そしてそこの土地に、ベンチャー企業、中小企業等々が発展をするということになりますれば、その地域も非常に日が当たってくるというようなことで、あれやこれやの手法があるな、こう思っております。  まだいろいろございますが、一応の回答ということでお話をいたしました。
  228. 河井克行

    河井分科員 今大臣の方から、経済構造改革、つまり徹底的な規制緩和を中心として新しい職場と雇用をふやしていきたいということをおっしゃつていただいたわけですけれども、本当は、改革を進めていけば全部日本の将来バラ色だというふうな事柄ばかりまた私たちも含めて言っておりますと、そのバラ色に行くちょっと手前はかなり厳しい。みんながひとしく辛抱しなくちゃいけない数年間が私はあるというふうに思っておりますので、そこを、苦しい、辛抱する時期をどうやって乗り切るかということが、労働大臣と労働省の力の発揮のしどころじゃないかな。これはもう労働省しか、労働大臣しか、そういった点では、この雇用調整の厳しさということについて現実に力を持っておできになる役所はほかにないというふうに思っていますので、ぜひしっかり頑張っていただきたいと思います。  今、経済構造改革の話を少しされたのですけれども、行政改革あるいは特殊法人の整理統合等もいろいろと今報道されておりますが、これは中央の問題だけでなくて、地方の公務員も随分数が最近はふえてきているという指摘もあります。  この行政改革の断行に伴って、公務員の方の再教育というのもなかなか難しいと思うのですけれども、職能訓練というのもちょっと難しいかなとも思うのですが、行政改革の負の面について、労働大臣としてどのような御認識をお持ちでしょうか。
  229. 岡野裕

    ○岡野国務大臣 中央省庁で行政分野で働く公務員約八十三万、それから地方公務員、同じ意味において計数をはじきますと約三百二十八万、この中で、今まで五%云々ということで、累次にわたる削減計画実施してまいりました。しかしながら、これから急角度で、二〇%ないし三〇%、行革によるところの公務員の職場からそういう皆さんが去っていくということになりますと、これは新規の採用者を採用控えするというような今までのような削減の仕方では無理だと思います。大体百万台の新たな失業者が出現をするという意味で、私は、労働省各局長全部を集めて、公務員あるいはその外郭団体である特殊法人等にあるいは出現するかもしれないところの雇用対策、これをどうするか、ひとつ抜本的に検討するように命令してありますが、まだ先生お話ができるような結果が出ておりません。
  230. 河井克行

    河井分科員 今、大臣の方から率直な、数字も含めてお答えをいただいたわけですけれども、私は、これが恐らく行政改革を進める過程において阻害要因の、幾つかあると思いますけれども、一つに必ず浮かび上がってくるだろうというふうに思っておりますので、ぜひしっかりとした、そして前向きな調査研究をしていっていただきたいと思います。  次に、具体的に地域の雇用の状況と対策についてお尋ねをしたいわけですけれども、私の出身そして選挙区は広島です。自動車産業を中心として、製造業の集積が戦前からずっと続いてきた、日本でもそういう面では伝統的な集積地の一つだというふうに思っておりますけれども、はっきり言いまして、最近余りいい話を聞きません、製造業につきまして。  といいますのも、企業にとっては、どこの地域に工場を持ったらいいかという時代ではなくて、どこの国のどういった地域に持ったらいいのか、もう日本の国内だけでの判断ではなくて、世界じゅうのグローバルな戦略の中で、たまたまそこに立地をしましたよ、たまたま最適な、企業が生存して発展できる環境がそこに整備されているから進出しただけのことですよと、大変はっきりしたといいましょうか、クールないろいろな認識を最近伺うことがふえてきたわけです。  そういう、企業、経済のグローバル化が進展をすればするほど、逆に、そうはいっても私たちは違う国にこれから脱出することはできないわけでありまして、その地域で一生涯これから生活を送っていかなければいけないわけですけれども、そういう製造業が特に集積している地域で今産業の空洞化が進んできている、それが雇用の面に影響をこれからするのではないかという指摘があります。  一方では、いや、それはほかの産業セクターが吸収するからそこまで行かないだろうという議論もあるわけですけれども、大臣として、特に製造業を中心とした産業の空洞化が地域の雇用にどのような影響を現時点で与えているか、現状認識についてお尋ねをしたいと思います。
  231. 岡野裕

    ○岡野国務大臣 先生おっしゃいますようなグローバルな競争市場の中で、それぞれ製造業が、例えば相手先の労賃、人件費、高い低い、それからその国の税制、これがいかがであるか、あるいはまた規制の緩和がどのぐらい進んでいるか等々を勘案されて、海外に生産拠点を設けた方がいいというようなことで出ていく。これは、投資の自由、あるいは輸入の自由化等々で安価な商品がそのまま輸入されて日本国民の家庭の生活者に手に入るということでありますならば、これはむしろ歓迎すべきことで、悲観するだけのことではない、こうは思います、海外生産比率が約一〇%にもう日本においてもなっているということでありますので。  しかしながら、そのお地元ならお地元、呉一円がそうだと思いますけれども、製造業が集積している。ところが、その中心になる工場の幾つかが海外に移ったといいます場合には、その移っていった中核になるところの工場の周りには、そこに製品を納めていた中小企業等々いっぱいあるわけです。中小企業があるということは、そこに働いている労働者諸君がいる。その労働者諸君には、出ていった生産拠点が立派であればあるほど、その労働者諸君も立派な技能なり技術なりを持っていたということだと思います。ところが、海外に出ていった、したがって納入先というものがなくなったという場合に、我々はどうしようかということであります。  つまり、産業の空洞化イコール雇用の空洞化ということでありますので、通産省とタイアップをしながらいろいろ施策を進めているわけでありますが、今申し上げたような製造業の集積をしているような地域については、ちょうど呉でありますけれども、呉でやすりの研磨について非常に立派な能力、技能を持っている、そういう中小企業があります。ところが、その研磨の技術を発揮できるような製品の納入先がなくなってしまったというようなことで、一般のICなどをつくる場合の研磨の、非常に規模の大きい、コンクリートの研磨などの機械をつくる技術にそのまま応用する。  あるいは、写真機の下請をしていた金型の工場がある。それは、写真機でありますので、中に空気、光が入ったならば全部フィルムが感光してしまいます。そのカメラ工場が海外へ行った。したがって、そういった外気が全然入ってこないというようなことを目的とした金型をつくるものを、今度は点滴の、上の方からつるしますが、あの点滴、合成樹脂でつくる。これにはやはり外気が入ったのでは薬品が酸化をする等々の危険があります。しかし、ちょうどカメラをつくった、絶対外気が入ってこない、外光が入ってこない、今度の点滴のその器具も、外気が全然入らないというようなところに利用をして新しい医療機器をつくる。  つまり、かつての技能を新しいジャンルの産業に生かすというようなことで、呉でありますとか、前者は呉、後者は大田区でありますが、そういった中小企業があるわけです。そういう技能をこれからも活用をし、あるいは技能をそのまま伝授をしていくというようなことで、そのまた技能開発のための職能訓練をやるとか、いろいろの手を絡み合わせて、産業の空洞化イコール雇用の空洞化対策をやってまいりたい。ちょっと長過ぎますが、そんな話でありました。
  232. 河井克行

    河井分科員 今大臣からかなり詳細な、そしてまた具体的な事例も含めて教えていただきまして、ありがとうございました。  それから、今通産とも協力をしながらということをおっしゃられたわけです。おととしの三月ですけれども、まだ今の総理が通産大臣時代、広島に講演にお越しをいただいたときも、やはり日本は製造業そして物づくりを絶対大事にしなくてはいけないということを繰り返しおっしゃっていらっしゃったのが大変印象的だったのですけれども、ことしの一月二十日の総理大臣の施政方針演説の中にも、物づくりを支える地域における技術や技能の集積をしっかり守り育てることは重要な課題でありますという趣旨のスピーチがございまして、そしてまた、通産と労働省が緊密にしっかり連絡をとっていきなさいということも昨年の八月に当時の両大臣に指示をされたということも伺っております。  そういう中で新法が提出をされるのだというふうに思いますけれども、地域の空洞化対策として、今労働大臣がおっしゃったような新しい法体系も含めて、私としては非常に効果的だというふうに高く評価をさせていただいているわけです。  先ほどから言っておりますように、私の地元広島もそういった空洞化現象が最近になって大変大きく発生をしておりまして、ほかの地域と比べても全く遜色がないぐらい、余りこんなことで威張ってもしようがないのですけれども、空洞化がだんだん顕著にあらわれてきているというふうに思います。ぜひとも地域指定をしていただきたいというふうに思っておりますけれども、どのような具体的な要件が必要なのか、そしてまた、この法によってどういうふうな施策がこれから実施をしていただけるのかという点について教えていただきたいと思います。
  233. 坂本哲也

    ○坂本(哲)政府委員 今回の法律に基づいて対策の対象となります地域の指定の考え方でございますけれども、一つには、先ほど大臣お話し申し上げましたように、高度の技能、こういったものを持っておられる労働者が雇用されている製造業等の事業所が集積している地域というのが一つの要素になりますし、またもう一つの要素としては、経済上の理由によって雇用状況が悪化している、あるいはまた悪化するおそれのある地域、こういったところを指定をする、そしてその地域の雇用創出を促進するということになるわけでございます。  具体的にどのような地域を指定するかにつきましては、今後検討してまいることになりますけれども、産業政策と雇用政策とが相まって、効果的に施策が講じられることが重要であるというふうに考えております。したがいまして、基本的には、通産省が今国会に提出いたしております特定産業集積の活性化に関する臨時措置法案、この法案に基づきます集積活性化促進地域とできる限り同一の地域を指定することとしたいというふうに考えておるところでございます。  また、この地域指定を受けますと、その地域に対する施策といたしましては、一つは、新事業展開に必要な人材の受け入れと、また労働環境の改善、そういったものに対する支援措置がございますし、もう一つは、その地域における技能の育成あるいは発展のための人材育成に対する支援、こういったものをてこにしながら、地域関係者の取り組みを促して、幅広い支援措置を講じていきたいというふうに考えているところでございます。
  234. 河井克行

    河井分科員 ちょっと具体のことを質問したいのですけれども、大体全国で何カ所ぐらいで、これがいつごろお決めいただけるのか、もし情報がありましたら教えていただきたいと思います。
  235. 坂本哲也

    ○坂本(哲)政府委員 今後検討してまいるわけでございますけれども、大体地域としては十カ所前後かなというような目途でございます。  時期は、法律成立後速やかにということで検討を進めてまいりたいと思っております。
  236. 河井克行

    河井分科員 十カ所といいますと、大体一ブロック1カ所ずっとしまして、中国地方は広島県しか申請する予定はほかにないというふうにいろいろとちまたの方では仄聞をしておりますので、ぜひしっかりまたお願いをいたしたいなというふうに思っております。  それから、先ほど答弁の中で、通産省と力を合わせということをおっしゃっていただいたんですけれども、きょう通産省の方もお越しをいただいていると思います。この特定産業集積の活性化に関する臨時措置法案について今質問をさせていただいているわけですけれども、広島も、先ほどから言っておりますように、製造業の集積地域ということで、今本当にしんどい状態が続いてきております。  通産省として、どのような地域に対して認識をお持ちなのか、そしてまた、今後のこの新法の適用も含めてどういう展望をお持ちなのか、教えていただきたいと思います。
  237. 岡田秀一

    岡田説明員 お答え申し上げます。  通産省といたしましても、最近の、特に製造業を中心といたしました産業において、生産拠点をどんどん海外に移転する、この結果国内の産業の空洞化がどんどん進んでいるという状態につきまして、大変な懸念を持っておりまして、そのような認識のもとに、今般特定産業集積の活性化に関する臨時措置法案を国会に提出させていただいている次第でございます。  問題意識といたしましては、労働省の方でお持ちの問題意識と非常に似通っておりまして、日本の物づくりを支える基盤的な産業の集積、ここにおきまして、労働省さんの方では、そこで働いている技能を持っておられる技能者の対策をお打ちになるということでございますけれども、私どもといたしましては、その産業集積を構成している、まさに産業の技術の高度化を国として支援をしようということで法案をつくっております。  具体的にどのような地域を指定していくのか、指定と申しますか、むしろ承認という形になりますけれども、ということは、法案がまだ審議中でございますので、法案が成立次第、至急にその法律の運用方針を固めてまいりたいと思いますけれども、基本的には製造業の、物づくりの基盤となっているような集積で、空洞化の影響を受けているところに対しまして、労働省さんとできる限り地域を共通にする方向で対策を打っていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
  238. 河井克行

    河井分科員 ずっと長時間の審議で、大臣も少しお疲れのようでございますので、少し数分早目に切り上げさせていただこうと思います。  最後に一つ。今ずっと答弁を伺っておりますと、要するに、労働省、労働大臣が指定するというふうにおっしゃっていただければ、通産もついていくというふうな趣旨の答弁だったように私は解釈をさせていただいたわけですけれども、大臣、ぜひ広島をお願いいたしたいというふうに思っておりまして、何か一言お言葉を最後にいただきまして、終わらせていただきたいと思います。
  239. 岡野裕

    ○岡野国務大臣 通産省と密接な連携を保ちまして、しかるべく配慮してまいりたいと思います。
  240. 越智通雄

    越智主査 これにて河井克行君の質疑は終了いたしました。  次に、棚橋泰文君。
  241. 棚橋泰文

    棚橋分科員 自由民主党の棚橋泰文でございます。  連日の予算委員会での御審議、大変お疲れさまでございます。  私からは、特に産業の空洞化に伴う雇用の問題について、まず幾つか御質問をさせていただきたいと思っております。  御承知のように、産業・雇用の空洞化ということが言われて久しくなってまいりましたが、また昨年は、戦後類を見ない最悪の失業率を私どもが経験いたしましたことは記憶に新しいところでございます。さらに、少子化高齢化という時代の大きな転換点の中で、私は、例えばこれは個人的な所見でございますが、今まで我が国の長所とされていた、また、労働者にとっても会社側にとっても、安定的な雇用関係を生んでいた終身雇用制の問題まで含めて大きな転換が余儀なくされざるを得ないような、そういう荒波が二十一世紀にはやってくるのではないかと思っております。  そして、その中で、額に汗して働く人間が必ずチャンスが得られるという雇用の確保こそが、二十一世紀特に前半の政治の私は大きな課題ではないかと確信しておりますが、その観点から、まず労働省といたしまして、二十一世紀の我が国の雇用の状態がどういう形になっているか、その点の予測についてお教えいただければと思っております。
  242. 坂本哲也

    ○坂本(哲)政府委員 大変難しい問題提起でございますけれども、これから二十一世紀に向けまして、我が国の労働市場がどういった姿になっていくのか、これを労働力の需要、供給双方から見てみますと、まず労働力需要の方を見てみますと、御案内のとおりの国際化あるいは情報化、こういったものが急速に進展していく中で、産業構造、これは大きく変化をしていくわけでございますし、また、お触れになりました少子・高齢化の進展、これは、労働力需要の面では、例えば介護サービス需要がふえてくるといったような形でいろいろな変化をもたらしてくる要素になるわけでございます。  また、労働力供給の面から見ますと、高齢化の一層の進展は、高齢労働力の増加、逆に若い方、特に新規学卒者がこれからますます減少に向かっていくということがございますし、女性の職場進出がさらに一層進展していくであろう。また、労働者の意識の面でも、これまで以上に自己実現といったものを重視するといったような形での変化が進んでいく、こういったことが予想されるのではないかと思っておるわけでございます。  こういった需給両面の変化に適切に対応していかなければ、我が国の経済活力自体がなくなってしまう、失われてしまう、それがまた失業の増大につながっていくことが大変懸念をされるわけでございます。  そういった中で、今後私どもとして目指していかなければならないのは、国際社会の中で我が国の経済活力が維持されるように、その際に必要となるような人材の育成、その確保、そういったものがちゃんとできるような社会をつくっていかなければいかぬだろう、また、年齢とか性、そういったものにかかわりなく、意欲と能力を有する方が安心して働けるような社会、こういったものをつくっていくということが大変重要であろうというふうに考えておるところでございます。
  243. 棚橋泰文

    棚橋分科員 ありがとうございました。  それでは、特にそれらの前提を踏まえた上での二十一世紀の雇用を確保するための具体的な方策についてお伺いしたいと思っております。  私が地元を回っておりましても、特に中小企業を中心に、地域地場の産業の中では、大変雇用に不安を抱いていらっしゃる労働者の方も多いような認識をしておりますが、何といいましても、我が国の、特に労働市場も含めた構造変化が進んでいく上で、失業の発生を防いで、また雇用の安定を図るということは、単に労働側だけではなくて国全体の安定の観点からも大変重要な意義のあることである、今まで以上にその意義を増してくるのではないかと思っております。  そこで、雇用の確保のために、御省といたしまして今後どのような方策をおとりになるおつもりであるかを概括的にお教えください。
  244. 坂本哲也

    ○坂本(哲)政府委員 ただいま御指摘ございましたように、労働市場が需給両面にわたっていろいろな変化に直面をしているわけでございますけれども、こうした中で、失業の発生を防ぐ、そして労働者の雇用の安定を図っていくということの重要性はますます高まってまいるわけでございまして、今後の社会経済の安定のためにも極めて重要であるというふうに私どもも認識をいたしておるわけでございます。  そういった見地に立ちまして、労働省といたしましては、一つは、新しい雇用の機会の創出、いろいろな産業構造の変化を通じての雇用の創出と、また、産業構造の変化の過程で労働移動がこれまで以上に余儀なくされるケースがふえてくるわけでございますけれども、その際には、失業を経ない形で労働移動ができるような、そういった支援措置が大変重要になってくるだろうと思っております。また、それの前提といたしまして、自己啓発を含めて職業能力開発のための施策、この充実強化というものにも取り組んでいかなきゃならないと思っております。  また、これとあわせまして、若年者、高齢者、女性、そういった労働者の属性に応じたきめ細かな雇用対策の推進、これも大変重要な課題であるというふうに考えておるわけでございまして、今後、経済社会の変革期において雇用の安定を図っていくための雇用対策というものを、機動的に、また強力に実施していかなきゃならないというふうに考えておるところでございます。
  245. 棚橋泰文

    棚橋分科員 ありがとうございました。  ただいまのお答えにもございましたけれども、特に来世紀になりますと、私は、産業の盛衰も大変激しくなってまいると思いますし、また企業間競争もより以上に激化してくるのではないかと思っております。そうなりますと、当然のことながら、働く方の立場からすると、産業間あるいは同じ産業の中でも企業間の移動が今日よりも激しくなってまいるような気がいたしますが、その中で、労働者が今のうちから自己啓発できるような機会を与えていただくことが大事ではないかということは、今のお答えにもあったような気がいたします。  ただ、自己啓発といいましても、一言で言うと簡単でございますが、やはり、働きながらしかも何らかの資格や能力を取得するということは、これは、言うはやすし、しかし現実に働いている側からすると大変難しい、厳しいことではないかと思います。彼らにそのインセンティブを与える、また、働く人間が、働きながらも一定の資格や一定の能力を取得するためには、企業や国の援助が不可欠ではないかと私は思っております。このことが産業の活性化にもつながると同時に、また雇用の確保の観点からも、産業間あるいは企業間の移動の中で、スムーズに、雇用のミスマッチがない形で失業を防ぐことができるのではないかと思っております。  そこで、その観点から、労働省といたしましてどのような支援策を今お考えであるか、お考えのものがございましたら教えてください。
  246. 坂本哲也

    ○坂本(哲)政府委員 ただいま御指摘のように、現在直面しております産業構造の変化の過程で、労働者が失業を経ることなく他の産業あるいは他の企業へと円滑に移動できるような支援措置、これは大変重要であるという認識の上に立ちまして、現在、一つは、業種雇用安定法に基づきまして、雇用調整を余儀なくされている業種を特定雇用調整業種という形で指定をいたしまして、その業種から、出向ですとかあるいは再就職あっせん、こういった形で労働者を受け入れた事業主や、あるいはその労働移動の前あるいはその後において教育訓練を行う事業主に対して助成金を支給する、こういった支援を行っておるところでございます。  また、御指摘ございましたように、能力開発の支援措置でございますけれども、労働者がみずからの職業生涯というものを早い段階から考えて自主的な能力開発を行うことの重要性というのは、今後ますます高まってまいるわけでございます。そういったことから、一つは、教育訓練のための長期休暇制度の導入ですとか、あるいはまた情報の提供、こういったことを行うことを促進するために、これらの措置を行う事業主を支援する助成制度の創設、こういったものを行ってまいりたい、こういったものを通じて施策のさらなる充実を図ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。  今後とも、産業構造の変化に適切に対応しながら、万全を期してまいりたいと思っております。
  247. 棚橋泰文

    棚橋分科員 ありがとうございました。  今までは、特に産業の空洞化に伴う失業の問題について御質問をさせていただきましたが、この後高齢化あるいは少子化に伴って労働関係がどうなるかにつきまして、また労働省の施策について、二、三御質問をさせていただきます。  高齢化時代を目前にして、二十一世紀は日本史上類を見ない高齢化社会に突入するということを毎日のようにマスコミは取り上げておりますけれども、二十一世紀初頭には、勤労者から考えると、二人で一人の六十五歳以上の方を支えるという大変厳しい時代がやってくるのではないかと私は思っております。  その中で、例えば六十歳を過ぎたら定年でリタイアをする、そういう社会構造のままでは、年をとられた方も御苦労されるし、何よりも勤労者世代負担に耐え切れなくなるのではないか。そう考えると、高齢者も最低限六十五歳まで働けるというような、そういう労使関係を、労働関係を築いていかなければならないと思いますが、この点につきましては、やはり国の、労働省の積極的なバックアップなしてはなかなか難しいのではないかと思っております。  そこで、少なくとも六十五歳の方までが現役で働けるような、そういう労使関係あるいは社会を築くための労働大臣のお考えをお伺いしたいと思っております。
  248. 岡野裕

    ○岡野国務大臣 先生おっしゃいますように、現下、不景気で自分の雇用が維持できるかどうかという心配、あるいは長期的には、産業構造の変革に基づいて何とか雇用が確保できるかということ、先生、冒頭半分はそういったお話でありましたが、全体的に、生産労働人口を考えると、これからは少子・高齢化のマイナス面というものをどうやって克服するかということだと思います。その意味では、先生おっしゃった六十歳定年制、これは来年から義務化するわけでありますが、もう竿頭一歩を進めて、六十五歳までは現役だというような意識で働けるような、そういう社会というものをつくっていきたいものだな。  そういう意味合いで、先ほども時間制の労働提供というようなものを大きく取り上げて、便宜供与等々も考えていかなければいけないということだと思いますし、同時に、男女雇用均等法というようなもので、女性の皆さんが、パートタイマーでも結構でありますが、やはり職場に出ていっていただく、あるいは身体障害を持つ皆さんもそうだというようなことで、総合的な生産労働人口というものを何とか維持をする。そうして、少なくとも質が立派であれば量を補えるものではないかという意味合いでの職の供与、その間に、職業紹介制度というようなものも民間に開放するとか、あるいはシルバーセンターというようなものを活用するとか、大きい施策からきめ細かな施策まで、総体的にこれを駆使して新たな世界に対してまいりたい、これが労働省の考えているところであります。
  249. 棚橋泰文

    棚橋分科員 ありがとうございました。  今の大臣のお話の中に少子化お話もございまして、少子化については私も余り大きな口はたたけないのでございますけれども、やはり少子化対策というのも労使関係の中で今後とも考えていかなければならないのではないかと思っております。  特に女性の立場からすると、一方で、社会へ進出して男性と同等に、それ以上に一生懸命やりたいというお気持ちがあって、このお気持ちを少しでも生かすような、また、男性と均等に働けるような社会を築き上げることは国の当然の責務でございますが、と同時に、家庭生活も同じように両立できる、こういう社会あるいはこういう国づくりができれば、少子化の問題に対する一つのかぎになるのではないかと思っております。  労働省を初めとして国の政策の中で、男女の、特に雇用の問題に対する、均等化に対する今までの御努力に大変敬意を表するものでございますが、残念ながら、まだ我が国の社会の中で一〇〇%それが達成しているとは言いがたいものがある。  そこで、厚生省の役割も少子化については大きいものがございますけれども、やはり労働省の役割も少子化対策については非常に大きいものではないか。その観点から、労働政策の面で少子化対策について今後どのようにお考えになるかをお聞かせ願えればありがたいと思っております。
  250. 太田芳枝

    ○太田(芳)政府委員 先生御指摘のように、少子・高齢化が進む中で、やはり労働者が生涯を通じまして充実した職業生活を営むためには、男性のみならず女性労働者がともに仕事と育児とを両立させつつその経験とか能力を生かす環境を整備していくということは、これは本当に重要な課題であるというふうに考えておるわけでございます。  このため、労働省におきましては、既に育児・介護休業法をつくっていただいたところでございまして、育児休業制度につきましては、これは既に形成権化しておりますが、この育児休業制度が企業に定着をし、かつ円滑に運用されるよう、事業主や労働者に対するきめ細かな相談、指導をしておりますし、また、育児休業をとった方に対しましては育児休業給付というのも雇用保険制度の方から出させていただいております。  それから、いろいろな奨励金を支給することによりまして、育児休業を取得しやすく、また、かつ、育児休業をとった方々が職場復帰をしやすい環境もつくっていきたいというようなこともやっております。  さらに、従業員にベビーシッターのような育児費用を補助する事業主に対しましては助成金の支給をいたしまして、育児を行う労働者が働き続けやすいという環境をつくるということも、これも努力をしているところでございます。  さらに、育児の間は一たん退職をするけれども、また育児が終わったら労働市場に参入したい、これまた重要な選択であると思いますので、そういう方々にとっては再就職をしやすい支援をしていくというような形で、男女労働者がともに職業生活と家庭生活を両立することができるようにできる限りの支援をするための対策ということをやらせていただいているところでございます。
  251. 棚橋泰文

    棚橋分科員 ありがとうございました。  今のお答えにありました、特に女性の社会進出との関係一つ質問をさせていただきたいと思います。  男女が特に雇用の場において、お互いが持てる能力を平等に機会均等の中で発揮して、女性も男性と同じように社会に進出すべきであるということが当然のことはもちろんでございますけれども、一方で、女子保護規定が女性の社会進出において足かせになっているのではないかという声もございます。これは女性の立場からしかわからないことでございますし、いろいろな御意見はあるのではないかと思いますが、現在の社会状況あるいは労使の関係を見てきたときに、男女の差異、女性と男性の差異に着目しながらも原則として平等な取り扱いをすることが女性の社会進出にとっては私はプラスになると今考えておりますが、その点につきまして、労働省といたしましてはどのようにお考えか、労働大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  252. 岡野裕

    ○岡野国務大臣 男女雇用機会均等法が施行されまして十年余になりました。一般的な職場の中におけるところの管理あるいはその社会的な意識の問題、これも十年前とは随分変わってきたではないかというようなことで、今まで努力義務でありましたものから、今度は義務化をする、これが今話題にも出ております男女雇用機会均等法でございます。  そういう意味合いで、募集・採用あるいは配置・昇進、これを全く男女均等に扱おうということでありますと、お話に出ました、労働基準法上の深夜労働、休日労働、時間外労働、これの規制も撤廃をして、今までやれなかった時間外労働もやるということで、御自分の能力を存分に発揮できるのではないかというようなことを関係審議会で積極的に評価をしまして、建議の形で男女雇用機会均等法をつくろう、その反面、今までの規制というものを緩和をしようというのが、新しく御審議を賜りたいこの法律の趣旨であります。  そういう意味合いで、前向きに、女性の職域、これを範囲を広げていこうということに意義がありますこと、先生と同志でございますが、また御理解をいただきたいと思います。
  253. 棚橋泰文

    棚橋分科員 ありがとうございました。  最後に幾つか、特に大競争時代においてハンディキャップを負っていらっしゃる方の雇用等について少し質問をさせていただきたいと思っております。  今、マスコミ、新聞等を読むと、大競争時代ということが毎日のように書かれておりまして、企業間あるいは産業間の競争の激化によって、世界的にボーダーレスの中で、グローバル化の中で戦いを進めていく、そういう企業の立場からすると、どうしても効率性をより以上に追求し、効率的な企業経営をしていかなければならないことは、私は間違いないと思います。  しかしながら、その競争が、例えば生まれながらにして心身にハンディキャップを負っていらっしゃる方、あるいは何らかの事情で自分の能力を発揮できない方、そういう大変失礼な言い方をすると弱者と呼ばれる方々の切り捨てにつながるのであれば、私はこれは正しい道ではないのではないかと思っております。やはり、政治の原点というのは、生まれながらにして例えばハンディキャップを負っていらっしゃる方々が必ず平等の機会の中でやっていけるような、そういう社会を築き上げることにあるのではないかと思っております。  そこで、心身に特に障害を負っていらっしゃる方、その中でも特に知的障害を負っていらっしゃる方の雇用を確保する観点からお伺いいたしたいのは、労働省といたしまして、特に心身障害者の方あるいは知的障害者の方の雇用の確保には、今までも十分にいろいろと御議論いただき、また施策として進めていただいたと私は理解しておりますが、今後競争が激化する中で、大競争時代の中で、より以上にこの方々の立場というものに配慮していただく必要があると思っています。  そこで、この点について労働省の御見解をお伺いいたします。
  254. 坂本哲也

    ○坂本(哲)政府委員 私どもといたしましては、先生御指摘のとおり、障害を持っておられる方々が健常者とともに生き生きと働けるような社会の実現を目指すということを基本に据えまして、これまでも障害者の雇用対策に積極的に取り組んでまいったところでございます。その中でも精神薄弱者及び知的障害者につきましては、これまでも雇用の場の確保を推進するために職業リハビリテーションの充実等を図ってきたところでございます。  また、現在の法律制度上、雇用率制度の適用につきましては、法定雇用率の算定の基礎には身体障害者のみで、知的障害者は算定の基礎に入っていないのですけれども、実際に各企業で知的障害者を雇い入れた場合には、その会社の実雇用率の算定に当たっては身体障害者と同じようにカウントできるといったような措置が昭和六十三年以来講じられておりまして、こういったものを通じまして最近知的障害者の雇用の割合というのは大変大きく伸びを見せておるところでございます。  しかし、これからもまだまだ知的障害者を含めた障害者の雇用の一層の促進を図ってまいらなければならぬということで、法定雇用率の設定に当たりましては、精神薄弱者を身体障害者と同じような形で雇用率の算定の基礎に算入する、つまり、これまでは身体障害者雇用率と言っておりましたけれども、これを障害者雇用率という制度に改める、こういったことを柱といたしまして、さらに、障害者雇用支援センターといった、福祉的就労から一般雇用へ移行するそのつなぎをする、そういうセンターの要件を緩和をするなどしまして、今後、雇用支援センターを全国各地に展開をしてまいりたい、こういったことを内容とします障害者雇用促進法の改正案を今通常国会に提出をすることにいたしておるわけでございます。  また、具体的な施策の面におきましても、知的障害者につきましては、実際の職場、事業所での職業経験といいますか、職場体験をするということが大変大事な一般雇用の場へのステップになってまいりますので、事業所を活用した新たな職業リハビリテーション事業というものも来年度新たに実施をしてまいりたいと考えておるわけでございます。  今後とも、精神薄弱者を初めとした障害者の雇用促進に全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。
  255. 棚橋泰文

    棚橋分科員 ありがとうございました。  特にハンディキャップを負っていらっしゃる知的障害者の方に少しでも多くの雇用の機会が、健常者の方と平等なチャンスがあるような、そういう社会づくりのためにぜひお力添えをいただければと思います。  そこで、この点に関連いたしまして、厚生省に一少し御質問をさせていただきます。  特に知的障害者の方の今後の雇用を考える観点からもまた、福祉的に配慮されたそういう働く場、活動の場というのの確保が私は大変大事ではないかと思っております。私が地元を回っておりますと、地元にいわゆる小規模作業所がございまして、やはりその作業所の経営者の方々などは、これからの作業所の運営の安定化というものに対して大変不安を持っております。  そこで、いわゆる授産施設あるいは小規模作業所の今後の運営の安定化を図ることが、知的障害者の方の将来の雇用の確保、あるいは安心のためにも不可欠ではないかと思っておりますが、この点について、いかがお考えでしょうか。
  256. 林民夫

    ○林説明員 お答え申し上げます。  御指摘のございましたように、福祉的な配慮がされた働く場、あるいは活動の場というものが確保されるということが、知的障害者、その他の障害を持つ方々が社会の構成員といたしまして地域の中でともに生活を送れるという観点から極めて重要なことであるというふうに厚生省としても認識をしておるところでございます。  厚生省といたしましては、平成七年の十二月に策定をされました障害者プランに基づきまして、授産施設でございますとか、あるいはお話のございました小規模作業所の運営の安定化等に努めておるところでございます。  例えて申しますと、授産施設につきましては、平成九年度予算におきましても、例えば精神薄弱者の通所授産施設につきまして、二千七百人分の整備を図るというようなことを計上をいたしておるところでございます。  また、小規模作業所につきましては、運営の安定化ということが極めて重要なことであると考えておりまして、例えば授産施設のいわば支所として位置づけるということでございますとか、あるいは市町村事業として展開をしておりますデイサービス事業の実施主体になっていただくというようなことを含めまして、運営の安定化、あわせて、今助成措置もございますけれども、その箇所数の増等、今後とも努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  257. 棚橋泰文

    棚橋分科員 どうもありがとうございました。  最後にもう一つ質問をさせていただきます。  知的障害者のお子様をお持ちの親御さんとお話をしておりますと、こういう不安の声をよく伺います。自分たちが健在のうちはいいけれども、自分たちが死んだ後にこの子は一体だれが見てくれるのだろうか。今、年老いた親御さんの面倒すら見てくれないお子さんが多い中で、自分たちが死んだときには、知的障害を負っている子供を兄弟が見てくれるというのはなかなか難しい、だから、高齢化時代を迎えるに当たりまして、知的障害を負った方々、その御両親が亡くなったときに、どこか国の施設で面倒を見てくれると安心できるのだがという声がございます。  現下の財政状況を考えると、特に施設整備ということに関しては大変厳しく受けとめなければいけないとは思っておりますけれども、やはり高齢化社会を迎えて、特に今までにないこういう知的障害者の方の両親の悩みもございますので、この点について厚生省に今後御配慮いただければと思いますが、御意見を伺いたいと思います。
  258. 林民夫

    ○林説明員 御指摘のように、障害者、特に知的障害者の方の老後の生活ということを考えますと、在宅サービスとあわせまして、どうしても施設というものは必要であるというふうに考えております。私ども、在宅サービスの充実、あるいは通所型のいろんな施設の充実を図ってまいりますとともに、特に知的障害者の入所施設につきましては、精神薄弱者更生施設と呼んでおりますけれども、その増を図るというようなことも努力をいたしておるところでございます。来年度予算案におきましても、千九百人分余の整備を図っていくという予定にいたしておるところでございます。
  259. 棚橋泰文

    棚橋分科員 どうもありがとうございました。  長時間の御審議、どうもありがとうございました。これで私の質問を終わらせていただきます。
  260. 越智通雄

    越智主査 これにて棚橋泰文君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして労働省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午後五時三十五分散会