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1997-03-04 第140回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月四日(火曜日)     午前十時開議 出席分科員   主 査 相沢 英之君       石川 要三君    江藤 隆美君       下村 博文君    山口 泰明君       石井  一君    石田 勝之君       近江巳記夫君    北脇 保之君       中沢 健次君    穀田 恵二君    兼務 田中 和徳君 兼務 今井  宏君    兼務 高木 義明君 兼務 中川 正春君    兼務 丸谷 佳織君 兼務 若松 謙維君    兼務 岩田 順介君 兼務 藤田 スミ君  出席国務大臣         文 部 大 臣 小杉  隆君         自 治 大 臣 白川 勝彦君  出席政府委員         文部大臣官房長 佐藤 禎一君         文部大臣官房総         務審議官    富岡 賢治君         文部省生涯学習         局長      草原 克豪君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省教育助成         局長      小林 敬治君         文部省高等教育         局長      雨宮  忠君         文部省学術国際         局長      林田 英樹君         文部省体育局長 佐々木正峰君         文化庁次長   小野 元之君         自治大臣官房長 谷合 靖夫君         自治省行政局長 松本 英昭君         自治省行政局選         挙部長     牧之内隆久君         自治省財政局長 二橋 正弘君         自治省税務局長 湊  和夫君  分科員外出席者         公正取引委員会         事務総局経済取         引局取引部取引         企画課長    和泉澤 衞君         国土庁地方振興         局総務課過疎対         策室長     今仲 康之君         大蔵省主計局主         計官      加藤 治彦君         大蔵省主計局主         計官      飯原 一樹君         文部大臣官房会         計課長     矢野 重典君         農林水産省畜産         局競馬監督課長 瀧倉  昭君         運輸省鉄道局保         安車両課長   小野山 悟君         建設省道路局国         道課長     城処 求行君         自治大臣官房会         計課長     安藤  明君         参  考  人         (日本中央競馬         会常務理事) 須田  洵君         地方行政委員会         調査室長    黒沢  宥君         文教委員会調査         室長      岡村  豊君         予算委員会調査         室長      大坪 道信君     ————————————— 分科員の異動 三月四日  辞任         補欠選任   江藤 隆美君     下村 博文君   石田 勝之君     近江巳記夫君 同日  辞任         補欠選任   下村 博文君     山口 泰明君   近江巳記夫君     達増 拓也君 同日  辞任         補欠選任   山口 泰明君     江藤 隆美君   達増 拓也君     北脇 保之君 同日  辞任         補欠選任   北脇 保之君     石田 勝之君 同日  第一分科員中川正春君、第二分科員若松謙維  君、第四分科員高木義明君、第六分科員田中和  徳君、岩田順介君、第七分科員今井宏君、丸谷  佳織君及び藤田スミ君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成九年度一般会計予算  平成九年度特別会計予算  平成九年度政府関係機関予算  (文部省及び自治省所管)      ————◇—————
  2. 石井一

    石井(一)主査代理 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  主査が所用のため、その指名により私が主査の職務を行います。  平成九年度一般会計予算平成九年度特別会計予算及び平成九年度政府関係機関予算文部省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。下村博文君。
  3. 下村博文

    下村分科員 自由民主党下村博文でございます。小杉大臣に対しまして、前回文教委員会教育改革について質問させていただきましたが、引き続きこの教育改革の問題について質問させていただきたいというふうに思います。特に、「生きる力」ということについて質問させていただきたいというふうに思っております。  私は、昭和二十九年生まれでございますから、まさに戦後教育を受けてきた当事者の一人でございます。  今からちょうど二十年ぐらい前、アメリカに行ったことがございまして、そのときにプロ野球を見ました。アメリカプロ野球で、始まる前にスタンドの全員が起立をいたしましてアメリカ国歌を歌っているのを見まして、これは正直言ってびっくりいたしました。  私は、戦後教育を受けてきた立場からいえば、正直、特に中学校までの教育の中で、国歌を歌うことあるいは日本国旗に対して、まさにそれが戦前日本を過った象徴であるということを学校の中で陰に陽に教えられていた経験がありましたから、ある意味では、そういう娯楽スポーツのところで国旗を掲揚し国歌を歌うということに対しては非常な違和感をアメリカで感じました。  しかし、それをきっかけとして、改めて日本国歌というものはどういうものなんだろうか、国旗というものはどういうものなんだろうかということを考えていく中で、果たして我々が受けてきた戦後教育というのは一体どういうことなんだったのか、こういうことを期せずして学生時代アメリカに行って考えさせられた、こういう思いがございます。  そういう中で、ことしの四月から中学校教科書改訂をされるということになりました。たまたまこの教科書問題は、特にいわゆる従軍慰安婦問題、これが大きく取り上げられることによりまして、この従軍慰安婦問題だけでなく、この四月から改訂された中学校教科書を、一通り各社の教科書を改めて読んでまいりました。  これは決してタカ派であるとかなんとかいうことでなく、普通の、普通のというのもそれは人によって見方があるという判断もあるかもしれませんが、いわゆる常識的に見て、良識的に見て、果たしてこういう教科書子供たちに教えることが本当に日本にとっていいことなんだろうか、そういう素朴な疑問を感じました。  そういう、ある意味ではまさに戦後教育の申し子とも言える我々の世代が、くしくもそういう共通感を持ちまして、先日、自由民主党の中に、日本の前途と歴史教育考え若手議員の会、こういう会が設立されたわけであります。これは、今申し上げましたように、従軍慰安婦の問題だけでなく、まさにそういう意味ではある面からいえば非常に反目的とも言える、あるいは自虐的とも言える学校歴史教科書そのものを見直そうという中で生まれたことであります。  これはやはり客観的に見まして、マルクス主義史観、そして東京裁判史観、これを融合させた日本国家の否定、伝統文化からの断絶、こういうものが背景にある、こういう中で日本教科書が作成されたのではないかということを考えざるを得ないわけでございます。  これについて、小杉大臣としまして、個人的な見解をお聞きできればありがたいわけですが、小杉大臣見解、これについていかがお考えがございますでしょうか。
  4. 小杉隆

    小杉国務大臣 国旗国家を尊重するということは、当然これは学校教育の中で私たちも心を砕いているところであります。個人的な見解といいますけれども、ここに立った以上はやはり公的な立場になるわけですから、おのずからそういう立場でお話をさせていただきます。  言うまでもなく、今下村委員が主張されたような議論もあることは私も承知しております。ただ、現在の教科書制度というのは検定制度をとっておりまして、一義的には教科書執筆者が書いて、それらの記述について客観的なあるいは学問的な成果やあるいは適切な資料等に照らして不適切な場合があったときには検定において修正を求める、こういう仕組みになっているわけです。  検定をするに当たっては、検定基準というのがありまして、それに照らして、あるいは教育基本法とか学校教育法に規定する目的、あるいは学習指導要領における歴史教育目標などを踏まえながら、専門家から成る教科書審議会検定審議会判断に基づいて検定を行っているということでございます。  今御指摘のように、ことしの春から使用される教科書についても、今申し上げた過程を経て教科書として使用されるものであって、御指摘のような批判は当たらないというふうに認識しております。
  5. 下村博文

    下村分科員 今御答弁いただきましたが、本来、教科書というものは、自分の国に対して、あるいは自分国民自国民に対して否定的にとらえるということでなく、逆に、子供たちに対して勇気とか希望とかロマン歴史を通して教えていくものであるのではないかというふうに思うわけであります。そういう中で、それぞれの国でそれぞれの国の基準に従って教科書が書かれているわけでございます。しかし、特にことしの春からの歴史教科書についてはそれがますます欠けてきているのではないか、こんなふうに思うわけでございます。  今の御答弁の中で、きちんきちんとして理論的な記述によって書かれてきたということですが、それがそれぞれの時代に応じた理論的な記述という名目の中で、逆に本来の、子供たちに対しての勇気とか希望を持てるような、そういう意味での理論的な記述がどんどん欠如しているのではないか、特にことしの四月の教科書を見て考えるわけでございますが、これについてはいかがでしょうか。
  6. 小杉隆

    小杉国務大臣 学校教育において、平和的な国家とか社会形成者として国や郷土を愛する心を育てることは重要であります。今、各教科にしても、あるいは道徳教育などの指導を通じてその推進を図っているところであります。  社会科歴史教育におきましても、小学校では、「我が国歴史伝統を大切にする心情を育てる。」ということを目標としており、また、中学校におきましても、「我が国歴史を、世界の歴史背景に理解させ、それを通して我が国文化伝統の特色を広い視野に立って考えさせるとともに、国民としての自覚を育てる。」こととしているところであります。  ただ、歴史教育におきましては、客観的、学問的な研究成果を踏まえつつ、事実は事実として正しく教えていくことが大切であります。その際、過去の歴史については、必ず光の部分だけではなくて影の部分もあるわけでありまして、私たちはこの影の部分歴史についても、史実に即して教えていくことが必要であると考えております。このことは、決して自分の国や自分国民を否定的にとらえるものではなくて、また歴史を通じて子供たち勇気ロマンを教えていないということにはならないと考えております。歴史教科書はこのような観点を踏まえて作成されるものであり、児童生徒がこれらの教科書で学び、正しい歴史認識を持ってこれからの社会の中でしっかりと生きていくことを期待しているところであります。
  7. 下村博文

    下村分科員 今、教科書に関するいろいろな著書が売れております。その中で、「戦後教科書から消された人々」これは濤川栄太さんという方が書かれたのですが、この中で戦前教科書と戦後の教科書を比較されておりまして、戦前教科書に掲載された多くの偉人が戦後の教科書の中でカットされている、特に孝養、忠義、勤勉、節約、我慢する、そういうふうな部分が戦後の教科書の中で否定されているのではないかというのがこの本の中で書かれております。例えば、よく昔は各小学校の校庭に薪を背負った二宮尊徳像がございましたが、そういう二宮尊徳が消され、あるいは聖徳太子記述というのも大変に少なくなっているということであります。  このことについては、大臣あるいは文部省としてはどのようにお考えになっていますでしょうか。
  8. 辻村哲夫

    辻村政府委員 御指摘の点でございますけれども戦前修身という教科がございました。したがいまして、修身国定教科書によって教えられておりました。その中に、今先生お挙げになりました二宮尊徳等も載せられていたわけでございます。  まず、二宮尊徳についてでございますけれども、現在は道徳教科ということとは違いまして別の領域として教えられております。したがって、教科書ではない。副読本のようなものがございますけれども教科書はございません。そういう意味で、二宮尊徳はそういう意味扱いからは異なった扱いになっております。ただ、道徳を教えます場合に、教科書ではございませんが副読本のようなものがあるわけでございますけれども、そういうものには載せられている例がございます。それから、高等学校倫理あるいは日本史といった教科書にはこの二宮尊徳が取り上げられている例はございます。  それから、聖徳太子につきましては、これは扱いが多くなった、少なくなった、評価はいろいろあろうかと思いますけれども戦前も国史、歴史教科書で扱われておりましたが、戦後の現在におきましても、社会科教科書におきまして聖徳太子につきましてはきちっと取り上げられているというように私どもは理解しているところでございます。
  9. 下村博文

    下村分科員 戦前修身というのがあった。戦後は道徳である。具体的に戦前どの程度修身が行われていたのか、戦後ほどの程度道徳が行われているのか、また、その比較の中で戦後の道徳についてどんなふうに考えられているか、答弁をお願いします。
  10. 辻村哲夫

    辻村政府委員 戦前修身教科の中でも第一の教科として取り上げられておりました。そこに、国定教科書というものがつくられまして、アマテラスオオミカミ以下ずっといろいろな例が載せられまして、一つ一つその教科書に沿って指導されるということでございました。  ただ戦後は、ただいま申し上げましたように基本的に考え方が変わりまして、主権在民ということの中で一人一人の子供たち考える力、あるいは公正、正義倫理観というようなものを一人一人の子供たちに身につけるというような視点に立ちまして、教科としてではなく一つ領域として教えられております。  ただ、時間的には、昭和三十三年以降、道徳という教科が特設されまして、そこで学校教育活動全体で道徳が教えられるわけでございますけれども、その核となるそういった道徳の時間、これは一週間に一遍でございますけれども、そこで道徳を教える、その核として学校活動全体としてこれを扱う、こういうのが実情でございます。    〔石井(一)主査代理退席江藤主査代理着席
  11. 下村博文

    下村分科員 こういうところですから建前の答弁になるのかもしれませんけれども、今お話しのように実質的な効果がどの程度あるのかということを考えますと、今答弁の中で戦後は道徳というのを教科の中で教えるのではなく広く一般的に教えているということを言われておりましたが、具体的にどんなところでどんなふうに教えているのか、あるいはその成果がどんなふうに上がっているのかということを考えますと、今特に教育改革というのがことしになって六番目の改革として出てきたというふうにも思うわけでありますけれども、戦後五十一年の中で、特に登校拒否の問題、いじめの問題、いずれにしてもこれはやはり心の問題に起因する部分があるというふうに思うのですね。  こういう反省に立って、ある意味では文部省の方でも「生きる力」、これをこれから強めていかなければいけないということをこの教育改革の中でも取り上げてきているというふうに思いますが、私は、正当に戦後の中で道徳的な部分学校教育の中で十二分に行われたとは、とても答弁の中で答えられるような現状はないというふうに思います。改めてこれについての認識についてお答え願いたいと思います。
  12. 辻村哲夫

    辻村政府委員 御指摘のとおり、ただいま申し上げましたような形で道徳という時間を一時間特設し、学校全体でやるということでございますが、必ずしも十分に行われているかどうかとなりますといろいろな課題はあろうかと思います。特に進学率の向上というものの中で、いわゆる高学歴志向の中で、知徳体のバランスということが言われるわけでございますが、どちらかというとその中でもいわゆる知育、特にたくさんのことを覚えるということで学校教育がそちらの面にウエートを置き過ぎてきたのではないか、そうした評価によって受験指導等も行われるという一方の反省はあるわけでございます。  そういう意味で、各学校がそれなりの努力はしてきたわけでございますけれども、全体として見た場合に、十分に心の教育と申しましょうか、道徳教育が行われてきたかどうか。これからさらに充実する方向でいろいろ課題を探り、その改善策を探っていかなければいけない、こういうふうに考えております。
  13. 下村博文

    下村分科員 今の答弁はちょっと本末転倒ではないかというふうに思うのですね。つまり、知育徳育体育ということでいえば知育部分が重要視された、そしていわゆる高学歴社会ということでそちらの方が中心になってきたということですが、逆に言えばそういうシステムを文部省の方で考えていなかった。つまり、知育徳育徳育部分ですけれども徳育部分学校教育の中で充実させるという文部省の姿勢がなかったという部分も大きな要因ではないかというふうに思うわけであります。  過去についてどうのこうのということを言っても始まらないわけで、これは文部大臣にお聞きしたいわけでございますけれども前回文教委員会のときにも質問させていただきましたが、教育改革の中でこの「生きる力」ということについて、あるいは知育徳育体育ということで分けたら、この徳育部分について学校教育教科の中にも十二分に導入する。今の答弁であれば、知育徳育体育の中で知育部分が多過ぎた、それによって受験競争が激化したということであるならば、これは国が教育改革の中で徳育をもっと教科の中にも、かつての言葉が悪ければ修身という言葉を変える必要があるかもしれませんけれども、いわゆるそういう心をどう育てていくか。これについては今後逆にシフトしていくことが求められているというふうに思いますが、これについていかがでしょうか。
  14. 小杉隆

    小杉国務大臣 今度の教育改革。プログラムの中でも、私どもは二つの大きな目標を掲げております。一つは、新しい時代に対応できるすぐれた人材を養成する、そしてもう一つの重要な柱は、人間性を育てる、豊かな人間性育成ということを一つの柱にしております。  この中身については、例えば正義感、他人に対する思いやり、自分郷土に対するあるいは伝統文化に対する理解を深める、あるいは倫理観、こういったものをもっともっと教えることによって人間性育成していく、こういうことで現在、週五日制の教科について教育課程審議会審議をしていただいております。  ともすると、道徳教育などはやめてしまえなんという人はいないと思いますけれども、むしろそういう道徳教育、あるいはまた各教科の中でもそうした人間性育成という視点に立った教科が、教育内容というものが私は望ましいと思うわけでありまして、今局長からお答えしたように、従来から道徳教育をやっておりますけれども、必ずしもその時間が十分確保されているとは言いがたい。あるいはまた教科内容についても、何かはかの科目で時間が足りないのを埋め合わせることに使われるとか、そういった事例も間々見受けられます。これは、数年前に文部省として小中学校道徳教育実態調査をやった結果でも判明しております。  したがって、私はそういうことがないように、道徳教育充実はもちろんのこと、また各教科を通じて、先ほど申し上げた豊かな人間性育成する、こうした視点に立ってのこれから教育内容の吟味が行われるべきだと思っております。これを今教育課程審議会でも十分審議していただいておりますし、週五日制の中でどういう教科にしていくのか、そういうことも含めて検討していただいているところでありまして、十分そういったことを配慮して審議が行われるものと考えております。
  15. 下村博文

    下村分科員 先ほどの局長答弁もちょっと十分ではなかったというふうに私はとりましたので、それにも付随して答弁していただきたいのですが、つまり道徳だけで今の勇気とか正義とか協調とか教えているわけではない、それが戦後教育だということを言われましたが、では具体的にどういうところで教えているのかということについては十二分でなかったように私は思いました。  それから、ことしの中学校教科書で、歴史教育の中で、果たしてそれがどんなふうに生かされているのか。今までと違って生かされる部分があったから生かされているのか。あるいはまだ生かされていないとしたら、今後基本的な方向性として、いわゆる道徳的な部分教科としてふやしていくのか。あるいは違う教科の中に中身として、心を育てる、「生きる力」をもっと多くしていくような教育的なものを、いわゆる教科書改訂まで含めて考えていく気持ちがあるかどうか、これについてお聞きしたいと思います。
  16. 辻村哲夫

    辻村政府委員 道徳と全体的な構成は先ほど御説明したとおりでございますが、それぞれ各教科には特性がございます。それぞれの教科教科に応じて、ただいまのような全体としての心の教育ということが図られることを我々は期待しているわけでございます。  前回教育課程審議会答申におきましては、特に国語科教科におきましてどのような国語の教材をどういう観点から選ぶかというときには、今先生指摘になりましたような点が特に留意されて答申を受けたところでございます。したがって、私どもとしては、例えば国語教科におきましてのそういう留意というのは努力したつもりでございます。社会科につきましても、それぞれ歴史、公民、地理とあるわけでございますけれども検定制度のもとでの教科書のつくられ方は先ほど大臣が御説明したとおりでございますが、それを実際の指導においてどのような形で教師たち指導するか。そういうときには、それぞれの教科特性を生かしながら、単にそれを知識として覚えるということではない、そこから一人一人の子供たちの生き方、あり方というようなものに結びつくような指導というものが我々に期待されるわけでございます。  したがいまして、これは単に国語社会の例で申し上げましたが、それ以外の理科の時間でありましても、例えば環境教育というものに留意した指導ということは期待されるわけでございますし、それ以外の音楽や美術や体育や家庭やそれぞれの教科におきまして、単に知識を覚え込むということではない、もう一つ上のと申しましょうか、心の充実というようなものに結びつくような指導を、それぞれの教師に私どもとしては期待をしたいというふうに考えております。
  17. 下村博文

    下村分科員 今の答弁を聞いていますと、学校先生が大変だなというふうに私は率直に思います。それは確かに、それぞれの先生方がそういう視点で英語を教える、音楽を教えるということが必要ですが、その教え方が先生自身がよくわからないというのがある意味で今の教育マイナス部分を出している部分があるわけで、学校先生方に対しても、そもそもその処方せんを、「生きる力」ということはどういうことなのかということを教えていく。  最初に申し上げましたように、我々世代というのは戦後教育世代ですから、戦後教育世代というのは、率直に言ってそういうことが余り教えられないできたという思いを私自身も持っているわけです。そういう我々の世代が今学校先生をしているわけです。その学校先生に対して、それをそれぞれの教科の中で、「生きる力」を子供たちに、音楽の中でどう正義を、どう勇気を、どうロマンを教えるかということを期待されても、これはなかなか大変な部分があるのではないかというふうに思います。  時間がございませんので、ちょっと次の問題に移ります。  前回文教委員会でちょっと提案をさせていただきました教育減税の問題でございます。これは、アメリカのクリントン大統領がことしの教書の中でも取り上げました。我が国におきましても、特に少子化の中で、これから子供たち、なぜ少子化になったというのはいろいろな要因がありますけれども一つにはやはり子供の教育費が大変だ、教育をしていくのが大変だ、こういう部分も一要因としてはあるのではないかというふうに思うわけであります。  これから教育の自由化という流れの中で、また自由化ということは官から民に仕事を移譲するということでいえば、公教育をできるだけ、あるいは国立大学を民間に移すとか、私学に移すとか、同じように公教育を私学の方に、あるいは民間の方にできるだけ移すということで、節税効果にもつながるという部分もあるかというふうに思うわけであります。  一体今、公立の高校あるいは私立の高校で、それぞれ生徒一人当たりどの程度の税金が使われているのかについて、まず基本的なことですが、お聞きしたいと思います。
  18. 富岡賢治

    ○富岡政府委員 直接的にあらわす資料というのは特にございませんけれども、およその推算ということで申し上げますと、文部省が毎年実施しております地方教育費調査によります公立高校に対します教職員の給与費とか施設設備費、こういうものをトータルしまして、国及び地方の支出総額というのを公立高校の在籍者数で除する、こういうやり方をとってみますと、平成六年度の数字でございますが、約九十五万円。一方、私立高校につきましては、私立学校の財務状況調査によります学校法人の収入総額のうちの国、都道府県等からの補助金収入総額を在籍者数で除するというやり方をとりますと、平成六年度約二十七万円、こういう数字になっております。
  19. 下村博文

    下村分科員 公立学校ですと一人当たり税金が九十五万円かかっている、私立高校ですと一人当たり二十七万円かかっているということでありますから、当然いわゆる国家の経営ということを考えれば私学の方が、もちろんその分親が負担しているということになるわけですが、税金が三分の一近くで済むということは、これは財政再建ということの観点から考えると、ここにメスを入れる必要があるのではないかというふうに思うわけであります。同時に、親の負担もあるわけですから、これについては教育減税をすることによって親の負担をなくすということが少子化の中でこれから求められる施策ではないかというふうに思うわけでありますが、この二点について。  一点は、教育の自由化、民営化といいますか、私学にシフトできる部分はしていくということについてどう考えるか。それから二点目については、教育減税、このシフトの中での教育減税、あるいはそれと離れた教育減税でも結構でございますけれども、これについてはどのようにお考えか、お聞きしたいと思います。
  20. 江藤隆美

    江藤主査代理 これは文部大臣。五兆八千億だからな、一般教育費が。教育費五兆八千億、大学で八兆五千億になるのだから、いい提案だからよく答えなさいよ。
  21. 小杉隆

    小杉国務大臣 私立学校は、大学生の約八割、高校の約三割、幼稚園の約八割を担って、重要な比重を占めております。そこで、私学の振興ということは、文部省としても重要な政策ということで今日まで努力をしてまいりました。  ただ、やはり公教育の役割と私学の役割というのはおのずからあるわけでありまして、では、できるだけ私学に任せたらどうかということになりますと、例えば国立大学などは、地方へ行きますともうほとんど国立しかない、私学は大都市ばかりに集中してしまうということがありますし、そういう地域的なバランスということを考えますと、やはり公教育、公立、国立の役割というのは大きい。それから、分野別に見ましても、理数系それから自然科学系というのは国立が非常に高い研究をやっておりますし、私学はどうしても文系、人文、社会科学の方へ偏ってしまう。そういう教育分野の偏りというものをなくすためにも、やはり国公立と私学というのは、おのずからバランスをとっていくということが大事だと思います。  それから二点目ですが、少子化の中で子育てを支援していく。こういうことから、教育費についても、保護者の負担を、できるだけ過大にならないように従来から税制面、予算面でいろいろな措置を講じておりますが、特に税制面では、教育費負担の大きい中高年齢層の負担を軽減するために、十六歳から二十三歳未満の扶養親族に係る扶養控除額を割り増しする特定扶養控除制度が講じられておりまして、現在、所得税で十五万円、住民税で八万円の割り増しとなっているところであります。また、平成九年度予算において、育英奨学事業についても、貸与人員を増員したり、また事業費総額も六・一%増の二千五百三十八億円を計上しているところでありまして、また、幼稚園の就園奨励費の補助につきましても、保育料等の減免単価の改定、こういうようなさまざまな施策をやっておりまして、今後とも私学助成には充実を図っていかなければいけないと思っております。  クリントン大統領の今度の一般教書につきましても、教育の機会均等という観点から提唱したものだと思っておりますが、私どもも、今後とも保護者の教育費負担軽減の見地から、一層努力をしたいと思っております。
  22. 下村博文

    下村分科員 時間がありませんので、これで終わります。大臣におかれましては、いかにこれができないかではなくて、できるところからどう進めるか、そういうことでぜひ着手をしていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  23. 江藤隆美

    江藤主査代理 これにて下村博文君の質疑は終わりました。  次に、近江巳記夫君。
  24. 近江巳記夫

    ○近江分科員 近年、御承知のように技術革新、国際化、情報化、高齢化、少子化、大きな波が来ております。そういう中で産業構造も大変大きな変化を来しておりますし、そういう中で、専門家といいますか、いわゆる知識なり技能なり非常に高度なものが要求されている。そういうスペシャリストをいかに育成をしていくかということは、非常に大事な問題となっております。そういう中で、いわゆる職業高校、専門高校のあり方というものが、これを本当にどのように改革をしていくか、大変大きな関心を集めておるわけでございます。  そういう中で、御承知のように有馬先生を座長としまして、職業教育の活性化方策に関する調査研究会議、これが、平成七年三月八日に出されたわけです。私も、これを拝見いたしまして、非常に的確によくつかんでおられる、またその対処の仕方、方針というものを示されておると非常に感動したわけでございます。  政府といたしまして、この有馬答申を受けられて、どういう感想を持って受けとめられ、またその後どのように実施されておるか、この点につきまして、要点をお答えいただきたいと思います。
  25. 小杉隆

    小杉国務大臣 今御指摘のように、「スペシャリストへの道」というのが平成七年三月に出されました。この中で、特に、従来の職業高校という呼び名を専門高校と改めること、専門高校と産業界、大学及び地域社会との連携強化を図ること、三つ目に、社会の変化に対応した施設設備を充実すること、四番目に、専門高校卒業生を対象とした特別選抜の導入など、そのほかにもまだありますけれども、専門高校から大学への進学をするための方策を図るという提言が行われたところであります。  この報告を踏まえまして、職業高校という呼び名を専門高校と改めることを、平成七年三月に通知を出しました。それから、平成八年度から、専門分野や就職等に関する情報を交換する場として、学校、PTA、地元産業関係者から構成される学校・地域連絡会議の設置や、企業等からの寄附金により運営される地域連携講座の開設等を行う、専門高校などと産業界との連携推進事業を実施しております。さらに、専攻科の拡充を図るとともに、技術革新に対応するために先端的な施設設備を備えた高校テクノセンター、これを東京都に設置しております。それから、平成八年度に全国五大学において専門高校卒業生選抜を実施しております。こういったさまざまな措置を講じてきているところであります。  また、多くの人々に専門学校に対する理解を深めていただくために、専門高校の生徒さんの作品の展示とか学校紹介を行う全国産業教育フェアを平成三年度から実施しております。ちなみに、平成八年度、山形で行われた全国産業教育フェアには、約十七万人の入場者があったと聞いております。今後とも、こうした施策を充実してまいりたいと思っております。
  26. 近江巳記夫

    ○近江分科員 この答申が出されて以降とられたことにつきましての御報告が概略あったわけでございますが、例えば、この職業高校の呼称を専門高校に変更するということでございますが、それぞれ現場等へ行ってみますといまだに職業高校と言っていますし、文部省から資料をいただく中にも職業高校と、これは本当に徹底されていませんね。ですからマスコミの方も、一部は理解されているようですが、いまだにそういう表現でされておる。一度の通達で、この答申を受けたからこうということじゃなくして、やはり、少なくともそういう専門高校という徹底した意識といいますか、なぜそんなふうになったのか、そういうことがおわかりになれば、そこに一段と理解というものが深まってくるわけです。いまだに教育界におきましてもまだ職業教育という言葉がずっと使われておるということ自体、まず意識をはっきりさせるということが大事でございます。  その点、この専門高校という呼称に関しまして、再度私は、どのように政府として取り組まれるかお聞きしたいと思います。
  27. 辻村哲夫

    辻村政府委員 専門高校という名前にしたいと思いましたのは、専門高校がスペシャリストの基礎、基本を培う、そういう性格を明確にしようということでございます。  すなわち、高度の専門的な知識、技術を有する人材、これを私たちスペシャリストというふうに称しているわけでございますが、その基礎、基本を培うそういう場だ、職業教育を行うということにとどまらない、そういう趣旨を明確に出そうということで専門高校という名前にしようということになったわけでございます。  今先生の御指摘では、文部省の関係の資料にも、また私たち自身がつくる資料にもまだ職業高校という名が残っているぞという御指摘でございますれば、私たち自身も、さらにそういう点には十分留意をいたしまして、これまでの農業、工業、商業等の学校というのは、あくまでスペシャリストの基礎、基本を培う学校だということをさらに徹底すべく常に心がけて努力をしていきたいと思います。ですから、これからのさまざまな会議等におきましてはもちろん、公報、出版物等におきましても、きちっと専門高校ということで記述していく、こういう努力をしっかりとしていきたいなというふうに思っております。
  28. 近江巳記夫

    ○近江分科員 局長答弁、そのとおりだと思いますし、大臣は、今局長が御答弁になったわけでございますが、やはり一番トップの大臣自体がその辺の意識改革といいますか、まずそのようなお考えを持って、あらゆるところでそういうことをきちっと周知徹底していただくことが大事じゃないかと思うのです。その点、大臣からも重ねて。
  29. 小杉隆

    小杉国務大臣 確かに、御指摘をいただきました教育改革プログラムでも、「職業教育の改善」などというタイトルがありますように、どうしても、長い間なじんできた職業教育という呼称からまだ脱却し切れていないという面があります。  今局長から答弁いたしましたように、新しい専門高校の呼称を浸透させるように、一層あらゆる努力をしていきたいと考えております。
  30. 近江巳記夫

    ○近江分科員 ちなみに、専門高校卒業生を各科目別に分けていきますと、農業科を出た人は、いわゆる進学とその他の専修学校と合わせまして、二七・七%が進学しているのですね。工業課程を出た人は合わせて二五・四%、商業科を出た人は三四・二%、水産科を出た人は二〇・一%、家庭科を出た人は四〇・九%、看護科は実に八三・二%。このように、専門高校を出た人はこれだけの進学者が現実あるわけです。  しかし、まだまだ、行きたいといっても非常にハンディもあるわけですね。学校が門戸を開いていない、非常にそういう問題があります。時代はまさにスペシャリストが要求されているわけですから、社会へ出たからといっても、企業内で研修を受け、さらにはまた、高度の勉強をしたいということで大学等を目指す意識が大変高まってきているのですね。現状はそれにはこたえていない。どのようにしてそれをスムーズにしてあげるか、そういう配慮が一番大事なのだ。そういう意味におきまして、職業高校からこの専門高校という呼称、きちっと国民の皆さんに意識をしっかり持っていただく、その中で初めて、いろいろなとられる方策というものになるほどなという理解が生まれるのではないかと思うのですね。  ここで、卒業後の多様な進路を確保するため、進学という面一つから見ますと、一つは専攻科の設置ということがございます。それから推薦入試の拡大があります。もう一つは特別選抜の実施であります。そしてまた専修学校との接続。この辺のところは、いかにうまくジョイントしていくかという問題があるのですね。  この専攻科の設置を見ましても、私のいただいた資料では、平成六年度、まだ学校数で百十四校、学科数で百四十七というようなことでございますし、人員もたしか六千八百名くらいと聞いております。こういう状況でしょう。推薦入試の拡大、特別選抜の実施。特別選抜というのは、帰国子女あるいは社会人入学等はかなりの前進があるのですね。ところが、先ほど御答弁ございましたように特別選抜も一部はされておりますが、全体の数から見ますと微々たるものだと私は思うわけでございます。  そういう意味におきまして、特に今申し上げた専攻科の整備についてどう考えられるか、推薦入試の拡大についてはどう考えられるか、特別選抜の実施についてはどうか、それから専修学校との接続についてどう思うか。特に、実施状況等も勘案の上でお答えいただきたいと思います。
  31. 辻村哲夫

    辻村政府委員 私の方から、まず専攻科の関連につきまして御説明をさせていただきたいと思います。  専攻科は、先生御案内のとおり、本科三年間の専門高校を卒業した生徒がさらに詳しく特別の事項を勉強するということで設けられているものでございます。  ただいま先生平成六年度の数字をお挙げになりましたけれども平成七年度について申しますと、専攻科は全国百十五校の専門高校に設けられておりまして、百四十八学科ございます。看護、水産が多いわけでございますけれども、そこに七千四百名の生徒が学んでございます。この専攻科は、ただいま申し上げましたように、本科三年だけでは不十分だと思うような生徒たちがさらに年、二年と勉強をするわけでございまして、これは学習を深める上で大変有効なシステムであろうというふうに私は思います。  同時に、専攻科ということになりますと、地域との関連で、再教育を受けたいと一たん学校を出て現職についた人たちが、これは大学へ行くというケースもあろうかと思いますけれども、身近な地元の専門高校の専攻科に入って、もう一度学習をし直すという場としても大変有効な機関だろうというふうに私は思います。そういう意味で、今後、この専攻科につきましてはさらに拡充を望んでおるところでございます。  ちなみに、そのために、国としましては、平成七年度よりこの専攻科を産業教育施設設備の補助対象にいたしまして、その整備の支援を図るというような努力をしているところでございます。     〔江藤主査代理退席主査着席〕
  32. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 大学入試の際に、専門高校の卒業生にどういう配慮をしておるかというお尋ねでございます。  専門高校卒業生を対象といたしました推薦入学につきましては、八年度におきまして、百四大学百五十六学部が実施しているところでございます。  また、先ほど先生指摘の「スペシャリストへの道」という最終報告が出されましたのが平成七年三月でございますけれども、その報告で、専門高校の卒業生の入試の関連で、さらによく配慮するようにという報告があったわけでございますが、それを得まして、職業教育を主とする学科の卒業生を対象とする専門高校卒業生選抜、従来の帰国子女選抜に並ぶものでございますけれども、それを平成八年度の入学者の選抜実施要項に特記いたしまして、各大学に示したわけでございます。導入初年度であります八年度におきましては、五大学六学部ということでございまして、九年度におきましては十三大学十四学部という予定でございます。  何分にも始めたばかりというようなこともございますので、規模としてはまだ少のうございますけれども、今後とも、御趣旨を体しまして、各大学にこのような配慮方を要請してまいりたい、かように考えているところでございます。
  33. 辻村哲夫

    辻村政府委員 それから、高等学校と専修学校との連携、関連ということでございますが、制度としての編入その他につきましては、これは学校制度の基本にかかわることでございまして、いろいろな研究課題がございます。今後の研究課題にさせていただきたいと思います。  ただ、事実上さまざまな形で連携を図る、技能連携制度というようなものがあるわけでございますけれども、そういった形でそれぞれの学校がそれぞれの機能を生かし合いながら連携を図る、この点ではかなりの実績があるわけでございますけれども、それぞれの特性を生かしながら連携を図っていく、これはこれからも促進されていくべきことだろうというふうに考えております。
  34. 近江巳記夫

    ○近江分科員 今局長から御答弁がございましたように、確かに、平成七年三月の答申でございますから、実際実施するとなれば、平成八年が実質上のスタートじゃないかと思いますね。今年度は二年度ということでございます。徐々にその辺の理解が進み、各大学におきましてもそういう対策をおとりになりつつある、これは前進だと思います。  しかし、これだけ社会がスペシャリストを要求しておる。いかに育成していくか、そういう点から考えていきますと、今理工系離れとも言われておりますし、専門高校卒業生の中から本当にそういうスペシャリストが育っていく可能性は大いにあるわけでございます。それに対して、受け入れが余りにも微々としておると私は思いますね。  大学の数でいきましても、国立大学が九十八校、公立大学が五十三校、私立大学は四百二十五校あるわけでしょう。その中で、専門高校卒業生を対象とする推薦入学実施状況、報告を受けておりますのは、平成八年度では、国立大学では三十六、学部数で七十一、入学者数が七百三十八、公立大学では十四大学、学部数が十六学部、九十九名、私立大学五十四大学、学部数が六十九、三千二百七十九名、こういう報告をいただいておるわけですね。  専門高校から高等専門学校、国立高専なり公立の高等専門学校がございますが、ここに四年編入で、これも相当数行っているわけですね。ここももっとやはり門戸を開かなきゃならぬと思いますね。国立高等専門学校が五十四、公立の高等専門学校が五校、私立が三校ございました。ここに対しても、さらにやはり文部省からそういう要請をしていただき、さらに門戸を開いていただくということは大事かと思います。  それから、短期大学におきましても、国立が三十三校、公立が六十三校、私立が四百九十八校ございます。これは、文部省から御報告いだだいた資料で私は言っているのですよ。  そういう各大学が、どれだけこのことを深く認識しておるか。どれだけ実施されていますかと、事後の報告だけを受けて、ただデータにまとめるようなことであってはならないと思うのですよね。少なくとも積極的に、どうなっているんだ、そして報告をきちっと、いわゆる来年度の計画をとる、そしてまた実際の実施状況はどうであったか、ここ、往復が大事なんですよ。その辺が、文部省の姿勢を見ておりますと、やっておられることはやっておられるけれども、まだ非常に弱いと私は思います。いかがでございましょうか。
  35. 小杉隆

    小杉国務大臣 基本的な考え方だけ私から申し上げたいと思います。  今度の教育改革プログラムの中でも、従来の単線型の教育制度からできるだけ複線型構造にして、子供の適性とかあるいは興味、関心に応じて多様な選択ができるという、そういういわば複線型の教育制度というものを提唱しているわけです。  そこで、今委員、かつて科学技術庁長官としての見識でお述べになったことに私どもも賛成でございまして、やはり資源の少ない日本は、専門的な知識を加えて物づくり、そして付加価値を高めて物をつくる、こういうことの重要性は認識しておりますし、私も、いろいろロボットコンテストなんかも行ったり、それからこの間は工業大学の学長さんが視察をしていきましたけれども、そういった専門教育を受けた人がその後さらに研究したいという意欲に燃えて大学へ入ってくると、非常にいい才能を発揮すると言うのですね。  やはり、実物教育とかあるいは実学を学んだ人がさらに学問的な関心を抱いて、さらにその能力を伸ばしていくということは極めて大切なことだと思いますので、今おっしゃったように、専門高校から高専に入る道ももっと広く、そして短大あるいは四年制の大学、そういうふうな接続がもっとスムーズになるように、やはり大学とか短大とか高専、そういう関係者にも、専門高校、旧の職業高校ですね、専門高校からの学生をもっともっと受け入れる、そういうマインドをひとつ醸成していくことは大切だと思っておりますので、そういう基本的な考え方で私たちも努力したいと思っております。  もし各論があれば……。
  36. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 推薦入学、それから専門高校の卒業生選抜、いずれにいたしましても、受験生の能力、適性等を多面的に評価する観点ということから、御趣旨を体しまして、いろいろな機会に大学等に対しまして要請してまいりたい、かように考えております。
  37. 近江巳記夫

    ○近江分科員 特に、特別選抜、これなども局長から御答弁ございましたように、八年度で五大学六学部、それから九年度で十三大学十四学部。今大学数を申し上げましたように、その数からいきますと、本当にこれは余りにもまだ少ないですね。ですから、さらにこういうことを周知徹底していただいて、大学当局の理解、またその実施をぜひ求めたい、このように思うわけでございます。  今、いみじくも大臣おっしゃいましたように、この専門高校を出た人たち、さらにまた大学に進み、大学院に進む人もあるわけでございますが、非常に優秀な人が非常に多いという、今それに近いような大臣の御答弁もございましたが、私の耳にもそういうことも入っているのですね。この制度を、さらに進学の門戸を開くことによってその人たちの持てる才能というものが開花してくる、非常に今後の日本の将来にとってこれは大きな有益なことだと私は思うのでございます。そういう点で、何といいましても文部当局が先頭を切って、しっかりとその点の実施を拡大できるように努力をしていただきたい、このように思うわけでございます。  それから、あともう一つお聞きしたいのは、いわゆる高校テクノセンターですね。共同利用施設、これをおっしゃっているわけでございますが、答申が出たのが平成七年三月でございますから、そうしますと、一番新しい点、八年、九年となるわけですが、先ほど東京のお話がございましたが、文部省のお考え方としては各都道府県一カ所設置をするということでございますね。そういう点からいきますと、まだこれは東京と、あともう一カ所どこかあるのですか、お答えいただきたいと思いますが。  そういう状況でございますから、実際に、それではあと何年かかるんだということになるのです。その点につきまして、お答えいただきたいと思います。
  38. 辻村哲夫

    辻村政府委員 高校テクノセンターというのも、物的環境の面で大変私ども重視をしているところでございます。  御説明するまでもないわけでございますけれども、専門高校等におきましても、大変高度な情報機器や、あるいは先端の技術装置が必要でございます。そのことによって、教育内容の水準のレベルアップということになるわけでございます。ただ、そうした高度な情報機器あるいは先端的な技術装置といいますものは、大変技術革新の急速な部面でございまして、それぞれの学校にそれぞれ用意するといいましても、価格の点あるいは陳腐化が顕著だという点で、必ずしも合理的とは思われません。  そういうことで、多くの学校が、複数の学校が共通して使う施設としてこのいわゆる高校テクノセンターという構想があるわけでございまして、先ほど大臣からの御答弁にもありましたように、東京都におきまして完成をいたしまして、現在、九年度から沖縄県でこの高校テクノセンターというものの整備が予定されております。  今後どうするか、もっとスピードアップしなければというところでございますが、例えば東京都の場合でも、総額八十億くらいの経費がかかってございます。ということで、経費的な面もございますし、また、大変先端的な技術を扱う部面でございますものですから、そう拙速にこの構想ということもなかなかできない面もございます。  いろいろな面があるわけでございますが、この構想自体、私ども大変必要な、有意義なものと思っておりますので、各県、各県それぞれの専門高校の充実発展という観点から、いろいろと内容面その他、連携協議しながらこの整備促進を図ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。  今、具体的に、いつまでにどうというのはなかなかお答えしづらいわけでございますけれども、気持ちとしてはそういう気持ちで当たってまいりたい、こういうふうに考えております。
  39. 近江巳記夫

    ○近江分科員 御承知のように、科学技術基本法、これは議員立法で、与野党で成立させたわけですね。これに基づいて、科学技術会議において、いわゆる二〇〇〇年まで十七兆円、これは大蔵省も相当抵抗したわけですね。だけれども、今後のいわゆる日本の科学技術立国を創造していくという上において大事であるということで、与野党が合意をいたしまして、これは異例といえば異例ですね、金額十七兆円まで入れたんですよ。そして、今後の基礎研究を初めとして、いわゆる基盤の整備等をやっていきましようと、非常に多彩な分野にわたっていろいろ計画をそこに網羅しておるわけでございますが、非常に大事なことは人材の育成ですよ。  そういうことで、科学技術基本法に基づき、科学技術会議においてレールが引けているわけですから、今局長の御答弁では、非常に、例えば東京都でも八十億かかる、それは一挙にはいきませんよと。それはもう現実の厳しさというのは私わかるのですが、これはやはり、文部省の人材育成にかける熱意というものが、そういう壁をどのように破っていくかということだと私は思うのですよ。  したがって、これだけの技術革新の時代において、陳腐なそういう機器や機材では、それは効果が出ないわけでしょう。少なくとも、そういうところを一番早く整備をすべきだと思うのですね。少なくとも各都道府県といったってそれは大変かもしれませんけれども、やる気であれば不可能なことではないわけですよ。だから、そういう点において、まだ今の御答弁ではいつまでかかるかわからないという感じでございます。  これは、ぜひひとつ大臣を中心にされまして検討していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  40. 小杉隆

    小杉国務大臣 与野党の協力によって科学技術基本法あるいは科学技術基本計画が制定されまして、今度の予算でも、他の予算は非常に低い伸びに抑えられたのですが、科学研究費は大体一〇%以上の伸びを示しておりますし、また学術振興会、これも約八六%増という、大変予算をつけていただいたわけでございます。  この高校のテクノセンターにつきましてもあわせて充実したいところですが、これは各県の財政状況も非常に窮迫しておりまして、東京都などが辛うじて先鞭をつけていただいたわけですが、今局長答弁のように、来年度、平成九年度は沖縄県にも設置しようということで、これから各県のニーズとか財政状況とか、そういうことを踏まえて、これも科学研究費や学術振興会の補助とあわせまして充実を一層図っていきたい。  要は、財政が非常に厳しいというのが最大のネックでございまして、先生の御趣旨はそのとおりだと思いますが、一層努力をさせていただきたいと思います。
  41. 近江巳記夫

    ○近江分科員 もう時間がございませんので、最後に要望だけもう一度しておきますが、高等学校の生徒数、これは平成八年度で四百五十三万九千六百九十四人いるわけですね。その中でこの専門高校、いろいろございますが、百十八万二千八百四十九名、二六%。普通科が七四%。実に百二十万の学生が専門高校にいるわけでしょう。この人たちが本当に進路を、それぞれ希望を持っているのですけれども、現実はいろいろな壁で難しい、能力がありながら阻まれているわけです。  したがいまして、先ほど私がずっと申し上げてまいりましたように、しっかりと、その人たちがまた希望を持って前進できるように、本当に日本の人材、スペシャリストをいかに育成していくか、そういう強いお気持ちを持っていただきまして、さらにこの実施を強力にしていただきますことを特に要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  42. 相沢英之

    ○相沢主査 これにて近江日記夫君の質疑は終了いたしました。  次に、岩田順介君。
  43. 岩田順介

    岩田分科員 おはようございます。民主党の岩田順介であります。  きょうは、公民館の登録免許税のことについて一点はお伺いをしたいと思います。  文部省の管轄で公民館というのが戦後長い間活動を展開しておりますが、五十年の間、さまざまな歴史的な変化、社会状況の変化の中で公民館の活動も極めて重要になっている、とりわけ高齢化社会を迎えた今日、多様な公民館活動が展開をされているという認識が今私はございます。  そこで、お尋ねしたい点は、平成三年の自治法の一部改正によりまして、この公民館というものが地縁団体として、そして今までは個人の名義で不動産などを登記をしておったものが、法人として、地縁団体としての登記ができるということになりましたけれども、これに登録免許税がかかるということについて、私は、これを何とかしていくべきだという観点から質問をさせていただきたいと思います。  まず、具体的なことについてちょっと発言をさせていただきたいと存じます。  私の地元のある市の公民館の役員の方々が「不動産登記に係る登録免許税の減免について」ということを市に御相談なさっているわけです。それに対して、当該市の相談委員の方がこういうふうに回答されております。   平成三年、地方自治法の一部改正により、いわゆる「地縁団体」制度の創設で地域の自治会や町内会等の代表者の個人名義から団体名義での登記の道が開かれた。   この制度を活用すべく市内の既存の某公民館が地縁団体の認可を受け当該公民館の不動産の館長個人名義を団体名義に変更するための登記に着手したところ登録免許税約三十万円を 不動産の価額の千分の二十五でありますが、  課せられることが判明した。全国に相当数存在すると思われる、この種公民館等は、何れも財政基盤が脆弱で細々と運営しているのが実情であり、地縁団体として不動産を登記することは多額の納税を要することから消極的にならざるを得ないものと推察される。   このことは、地縁団体制度創設の趣旨を生かし難く、換言すれば法律の問題点が整備されたことの事由に起因する新たな税の負担に国民は納得せず、税を直接収納する当局に不信感を抱く結果となりかねない。つまり本事案は課税客体の登記目的の本質を見極めれば必然的に課税の矛盾が認識されると思われる。   従って登録免許税法の例えば(1)公益法人等が受ける特定登記の非課税措置(2)税額控除(3)既登記済の不動産の地縁団体への移転登記の場合の税率の特例(4)課税の経過措置等の手当てをすることにより、国税の二重課税を是正し、地縁団体制度を税制面からも補完改善し、法の趣旨を尊重するとともに名実共に機能させることが肝要と痛感したので、関係資料を添えて意見を申し述べます。 関係資料というのは税制のことですけれども、これは私当然の実感だというふうに思います。  まず、公民館のあるべき姿、機能の発揮のために公民館関係者が非常に努力しているという認識を私は持っていますけれども社会教育法に掲げる公民館の位置づけについて、随分この法律がたって、まだ改正された歴史が余りないと思いますけれども、まずそのことについて認識を問いたいと思います。
  44. 草原克豪

    ○草原政府委員 公民館は、社会教育法第二十条に定められた社会教育施設でございまして、法律に規定されておりますように、地域住民のために「実際生活に即する教育、学術及び文化に関する各種の事業を行い、もって住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図り、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与することを目的とする」、こういうふうに位置づけられております。  この目的を達成するために、各種の学級や講座を開設したり、あるいは講演会、集会等の事業を行っております。私ども、こういう公民館というのは、地域の人々の学習活動の拠点として、今後特に生涯学習の推進を図っていく上で重要な役割を果たすものというふうに期待しているわけでございます。
  45. 岩田順介

    岩田分科員 公民館には、公民館というものと類似公民館というものと、その他一文部省も把握できていないような集落の集会所の活動もいわゆる公民館というふうに地域では呼んでいますね。ある意味では混然一体となっているということであります。  今言われたように、生涯教育まで最近は入って活動しているという認識はそのとおりだと思います。また、冒頭申し上げましたように、この高齢化社会に伴って、私が幾つか聞いた範囲においては、例えば独居老人であるとかお年寄りお二人の家庭であるとかというところは、回覧板を回付するだけではなくて、果たして御本人が老人健診に行けるかどうか、がんの検診に行けるかどうかということまでチェックして、交通機関がない、足が不自由だという方々は公民館の皆さんがそれぞれ、ある場合には仕事を半日休んででも自動車を出してやられているというところまでいっている例は少なくないのであります。  したがって、村山首相の時代には我々与党を経験しましたが、与党の税調で私はこの問題を提起したことがあるのですけれども、税調の方々は公民館に税金がかかるということは御存じなかった。一人も御存じなかった。それからまた、各種関係団体から登録免許税を非課税にしろという要望も大蔵省に上がっていないというふうに伺ったわけでありますが、その理由は公益性に乏しいだとか公共性に乏しいだとかいうことが理由のようでありました。  今お答えいただきましたけれども、果たして公益性というのは一体何なのか。公益性、公共性の概念は、今お答えになりましたような活動を前提にして、果たしてこの場合乏しいのかどうなのかということを含めてお伺いをしたいというふうに思います。
  46. 草原克豪

    ○草原政府委員 先生指摘のとおり、いわゆる公民館には多様な内容のものが含まれております。社会教育法の第二十一条によりまして、公民館は原則として市町村が設置するとされているわけでございます。そして、現在約一万七千の公民館が市町村によって設置されております。そのほかにも公民館設置を目的とする民法法人も公民館を設置できるとされております。現在この民法法人立の公民館というのは全国で十五館ございます。  先ほどの登録免許税に関連して申し上げますと、この民法法人立の十五館の公民館は登録免許税の課税対象となっているということでございます。  それから、先ほど地方自治法の改正でお触れになりましたけれども、実はこのほかに公民館と類似の活動を行っているいわゆる類似施設と称するものが全国にたくさんございます。正確な数字は各都道府県においても把握しておりませんけれども、各都道府県の教育委員会が所管するものだけで七百七十七館あるというふうに承知しております。(発言する者あり)ただいま申し上げたのは、教育委員会が所管しているものが七百七十七館、そのほかにも多数あるというふうに伺っております。  この類似施設については、公民館についてはその目的とかあるいは事業、運営方針等について規定されておりますけれども、この類似施設と申しますものは公民館に求められているような要件は特に規定されておりませんで、各設置者の自由な運営に任せられているというものでございます。そして登録免許税に関して申し上げますと、登録免許税の課税対象となっている、こういう現状でございます。
  47. 岩田順介

    岩田分科員 今お隣の先生からもそんな数でないというふうに言われていましたが、正確な数は私がお聞きした限りでもはっきりしませんね。これは少しおかしいですよ。  かつて大蔵省も、今税金を取ろうと積極的になっていますが、かつては納税組合がつくられて、全国の国民から納税義務を履行しようという運動をしたのも公民館なんですよ。それから随分性格が変わってきましたけれども日本における戦後のボランティアの第一号は公民館活動じゃないかというふうに僕は思いますね。  しかし余りにも公共性というのか公益性というのか、市町村がいわゆる公民館がなければ全然行政が遂行できないということで、幾ばくかの助成金や公民館長の行動費を出していますよね。そういったものの分類もできていないのじゃないですか、文部省は。  私はそのことを聞いているわけじゃなくて、あなたがおっしゃったような状況からいけば、極めて高い公共性と公益性を十分に有していて、しかも百円か五百円程度の公民館費で運営している現状からかんがみれば、いわゆる登録免許税というのは不必要じゃないか、取る必要はないのじゃないかということを私は言っているわけですよ。  この公共性がありゃなしや、いわゆる税金の課税対象になるという基準であるべき公共性だとか公益性、これについては文部省はどう思っているかということを私は聞いているのです。
  48. 草原克豪

    ○草原政府委員 公民館は高い公益性を持っているものともちろん認識しております。そして、そういう公民館の公益性という性格からも、例えば公民館の運営に当たっては、社会教育法上、例えば営利事業への援助の禁止とか特定の政党や宗教に対する支援の禁止ということが定められております。これもやはり高い公益性というところに起因するものと思っております。  公民館類似施設でございますけれども、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、公民館に関するような目的あるいは設置者、事業、運営方針等に関する規定は一切ございませんで、どのような活動を行うかということはすべて設置者の任意となっているわけでございます。したがって、制度上は、公民館類似施設というのは公民館のような公益性を当然に備えた施設というふうには言い切れない面があるというふうに考えております。
  49. 岩田順介

    岩田分科員 いや、そうでしょう。それはきちんと一度、どういうことをなさっているのか、類似公民館以外の公民館がどういうふうになっているのか、それが当該地方自治体との関係でどういう活動と行政的補完をなされているのか、一回きちんと整理してください。あなたの答弁ではよくわからないです。  ところで、公益性や公共性というのはお認めになりましたが、いわゆる登録免許税が公民館について非課税の対象にならなかった、課税の対象になったときの議論としては、恐らく文部省と大蔵省は議論があったと思いますが、そのときあなた方は課税をよしとされているのですよ。その理由は一体何ですか。先ほどの御答弁では、これはちょっと頑張って非課税にしようという議論があったというふうに思いたいのですが、いかがでしょう。
  50. 草原克豪

    ○草原政府委員 平成三年の地方自治法改正時のことを指しておられるのかと思いますが、この地方自治法の改正というのは、自治会、町内会等のいわゆる地縁による団体の活動をしやすくするために、市町村長の認可によって地縁団体に新たな権利能力を取得することができるようにしたものということでございまして、特にこれは公民館の登録免許税に係る取り扱いがこの時点で変更されたというものではないというふうに承知しております。
  51. 岩田順介

    岩田分科員 大臣、いかがでしょうか。先ほども申し上げましたように、公民館の種類も類似公民館、その他の公民館、さまざまありますが、これは一概に私は言っているわけじゃなくて、整理をしてもらわなければなりませんけれども、福祉の問題等も含めて本当に幅広い活動をしているという公民館を対象にして申し上げているわけであります。  そういったものをひとつ、全国状況を把握された上でのことなんですけれども、しかるべき活動が展開されているところについては、今後例えば六団体の要求も上がってくるやに思いますけれども、いわゆる登録免許税等の問題も含めて、もっときっちりした位置づけを、税金の問題を含めて文部省としては対処をされるべきではないか。社会での遂行状況に関連をしてきっちりされるべきではないか。とりわけ登録免許税の非課税についてはもっとしっかりした討議を行っていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょう。
  52. 小杉隆

    小杉国務大臣 岩田委員と生涯学習局長とのやりとりを聞いておりまして、私も実態がよくわからないのでここで断定的なことを申し上げることはできないということをまずお断りした上で、確かに公民館、今全国で一万七千館、これは各市町村で設置して、生涯学習観点からもすばらしい活動をしておられるということは認識しておりますし、また、最近、御指摘のような、地縁団体が設置する公民館もふえているということでございます。  私は、まず、やっぱり実態をもっと把握して、公共性、公益性と言われましたけれども、本当にその活動、その辺の実態を私自身もまだよく把握できていないわけなので、そうした実態調査といいますか実態把握に努めた上で、税制当局あるいは市町村等の意見もよく聞きながら対応していかなくちゃいけないかな、こう考えております。  私、正直なところ実態がよくわかりませんので、またいろいろと御教示いただければ、参考にさせていただきたいと思います。
  53. 岩田順介

    岩田分科員 時間がないのでこれだけで終わりたいと思いますが、局長さん、やっぱり実態を調べた上で、努力をされている方々が本当に高齢化社会やこの変貌する社会の中で子供たちをどう見詰めていくかという意味では必要不可欠な存在だと思いますので、もう少し温かい目で公民館を見てくださいよ。今大臣答弁になったように、五年や十年先じゃなくて早速実態調査をしてほしいということと、税制問題についての検討をお願いをして、これで終わりたいと思います。  次に、時間がなくなってしまいましたが、今、朝鮮半島がなかなか厳しい状況にありまして、ですからあえて言うわけでもないのですが、いわゆる在日朝鮮人の民族学校についてお尋ねをしたいと思います。  こういう社会状況の中で、なおかつ白眼視されてはいけないし、するべきではないと思っておりますが、まず、朝鮮人学校というのは二条校ですね、一条ではないですね。学校教育法の一条ではなくて、二条になっている。つまり、特殊学校それから、何というのですか、各種学校に位置づけられておりまして、いわゆる市町村の多少の支援はあるようになりましたが、財政的な困窮の中にあるということ、それから、大学の入学資格が得られないということがありますが、これについてはぜひ門戸を開いていくべきではないかというふうに私は思っております。  それで、一九九五年、文部省はドイツ人学校の大学受験資格をお認めになっておりますが、これからもう既に二年たとうとしておりますけれども、将来、いわゆる二条校に指定されている外国人学校の、ドイツ以外の外国人学校の門戸について御検討があるかどうか、お伺いをしたいと思います。
  54. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 ドイツ人学校につきましてのお尋ねがございました。  平成七年に入学資格を認めたわけでございます。これにつきましては、ドイツ連邦共和国の各州におきまして大学入学資格として認められておりますアビツア資格というものがございまして、それを有する者について入学資格を認めたということでございまして、ドイツ人学校を修了した者について認めたということではございません。  アビツア試験を通った者、そういう試験資格に着目して、それまで国際バカロレア資格というのも従来認めていたわけでございますが、それと同様の文脈でございますが、国際的な通用性があるとか、あるいはその内容や水準が一定の基準により確保されているということが確認できたということでそれを認めた、こういうことでございます。
  55. 岩田順介

    岩田分科員 当時の新聞から読み取れることは、今の御答弁にも含まれているわけでありますけれども、ドイツ本国から文部省に要請があったということは重要なポイントだと思います。  今、試験資格の問題をおっしゃいました。しかし、朝鮮人学校というのはドイツ人の学校よりももっと多いですよね。数も生徒数も多いというふうに私は認識をしております。北朝鮮とはいわゆる国交がないためにということもあろうかと思います。しかし、教育水準の問題は、私はそう低くないのではないかというふうに思っています。この辺、御検討なさったことがあるのかどうなのか。しかも、朝鮮人学校も六・三・三制というのをとっておりまして、カリキュラムも極めて厳密にやっておられるというふうに私はお聞きをしているわけであります。  今局長おっしゃったように、ドイツ人学校のことはわかりました。朝鮮人学校のこと、韓国の方にもございますが、二つ国がありますので難しいことはわかりますけれども、これについての検討をしておられるという事実があるかどうか、全くされていないのか、その辺はどうですか。
  56. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 先生今御指摘のように、各種学校という位置づけのもとになっているわけでございまして、学校制度全体の中で各種学校の卒業者に対してどういう扱いをするかという、学校制度全体の中での基本論にかかわるわけでございまして、従来、各種学校につきましては、自由闊達な教育内容というようなことで、一条校とは別個に扱っておるわけでございまして、一条校との接続ということについては、そういう観点から慎重に構えておるということでございます。  したがいまして、先ほどドイツのアビツア資格云々のことについて私が申し上げましたとおり、ドイツ人学校の卒業者ということに着目したわけではございませんで、試験資格に着目したということを申し上げたわけでございます。したがって、朝鮮人学校の場合と事柄は違うということを申し上げたかったわけでございます。  しからば検討しておるかということでございますけれども、各種学校と一条校との接続という基本的な問題は変わらないわけでございますので、具体的な検討は行っておりません。
  57. 岩田順介

    岩田分科員 もう一つは、レベルの問題というのがあろうと思います。国交の問題があろうと思います。  私はあえてそれは問いません。難しいことはわかっています。しかし、どうなんですか、公立の場合も私立の場合も、最近、教育分野でも議論が広まっていいではないかというふうに、受験資格を与えている学校も多くなっているわけですね。それなのに、文部省だけがかたくなな姿勢というのは、やはり、言えない理由というのか、ここでは明確に言えない理由があるかもしれないけれども、いわゆる門戸を広げていくべき時期ではないか、そういう国際的な流れではないのかということを聞いているが、あなたの御答弁は、ジョイントについて検討は全くしていないということだけれども、その辺、私は心配になるわけであります。やっぱり、レベルが違うのですかね。
  58. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 レベル云々ということではございませんで、各種学校としての位置づけということが、基本的な学校制度上の問題になろうかということでございます。
  59. 岩田順介

    岩田分科員 もう一つは助成の問題ですけれども、私の地元にも初等中等学校がありますが、行ってみますと、いわゆる在日の方々の寄附で学校も建てられ、補修もされているわけですが、雨漏りがして、先生の数も極めて限られているし、先生の給料も二分の一程度だ。助成金がないものですから、親たちもそうでありますけれども、各種寄附を募って雨露をしのいでいるというのが偽らざる実態なのですよね。助成については、今後何か文部省として検討されるというおつもりはありませんか。
  60. 林田英樹

    ○林田政府委員 外国学校に対します助成の問題でございますので、私の方からお答えをさせていただきたいと思いますけれども、今高等教育局長の方からお話し申し上げましたように、朝鮮人学校はいずれも各種学校として位置づけをされまして、それぞれの教育内容につきましては法的な規制を受けないというふうな形での位置づけの制度をお使いいただいて運営をいただいているわけでございます。  確かに、おっしゃいましたように、いろいろな御要望がこれまで出されているのは事実でございますけれども、朝鮮人学校の施設設備の老朽化に対応いたしました教育助成を行うことにつきましては、学校教育法の一条校に準じた扱いとすることになるわけでございますけれども、今申しましたような制度の位置づけ上困難であるというふうに私ども考えているところでございます。
  61. 岩田順介

    岩田分科員 時間が参りましたので、問題提起だけに終わると思いますが、大臣、やはり朝鮮問題については、さまざまな角度から議論があったり、抗議があったりしておりますが、残念ですね。  例えば、朝鮮人の方々の在日、在住の傾向を見てみますと、一九〇九年が七百九十人になっていますね。これは植民地政策の前でありまして、恐らく七百九十人というのは留学生が主であったろうというふうに言われております。歴史的にも証明されています。一九一九年になりますと、六千人を超えます。そして圧倒的にふえ始めまして、一九四五年は二百三十六万というふうになっていますね。  このいわゆる傾向は何を物語っているかということは、もうおわかりのとおりですからここでは申し上げませんが、先ほど私も申し上げましたが、いわゆるカリキュラムだとか教育システム、就学前教育、それから六・三・三制、大学前ですね、これはもうきちんとやっていますし、それから納税義務もこれはちゃんとあるわけでして、それから、国際人権規約だとか子どもの権利条約など国際法、国際関係の観点からもかなり日本は進んでいるというふうには言われない状況にあるわけです。  冒頭申し上げましたように、朝鮮半島の情勢というのがありますから、なかなか文部省としても、しかも韓国と朝鮮があるわけでありますけれども、難しいということはわかります。しかし、現地ではコリアとして一緒に行動されているという、生活規範というか、生活状況が広くなりましたよね。そういうことを考えますと、局長が御答弁になったことは、ちょっとやはり時代おくれではないかというふうにやがて外国から指摘をされるかもしれませんね。  僕は、朝鮮だから言っているわけではないのです。もうそろそろ、二条校の状況だとか、公立学校だとか私立学校がやっている教育、あなたがおっしゃる自由な教育活動について、転換について、文部省はもう少し目を開いたらどうかというふうに思うのです。財政支援の問題と将来の、いわゆる大学受験の資格を与えるという問題について強くきょうは要求をしておきますが、大臣に、最後に一言、何か所見をお伺いしたいと思います。
  62. 小杉隆

    小杉国務大臣 これは岩田先生御承知だと思いますけれども、今までの経緯を考えますと、村山内閣のときからこれは今政府が答弁したスタンスでおりまして、これは学校教育制度全体の根幹にかかわる問題でありますので、私たちも慎重にやはり検討すべき課題だろうと思って対処しております。
  63. 岩田順介

    岩田分科員 終わります。
  64. 相沢英之

    ○相沢主査 これにて岩田順介君の質疑は終了いたしました。  次に、藤田スミ君。
  65. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 私は、まず最初に、病原性大腸菌O157問題についてお伺いをしたいと思います。  病原性大腸菌O157による被害は、私の地元堺市だけで六千五百人を超え、全国で合わせて九千人を超える感染者、そして十一人のとうとい人命が奪われました。飲食業者やあるいは野菜の生産者の経営にも深刻な打撃を与え、国民は大きな恐怖に包まれました。  しかし、このような被害は避けられないものであったのかといえば、私はそうではなかったと思うのです。政府がこれまでに適切な手を打っていれば、それは防げたものではなかったか。その点で、政府の責任は極めて重大だと私は思っています。  きょうは、学校給食の問題に絞って、この問題でお伺いをしていきたいと思います。  学校給食のO157による被害が生じないようにする対策は、特別に重視されなければなりません。我が党は、昨年の九月二日に、当時の文部大臣に対しまして、安全な学校給食の実現に関する申し入れを行い、その中で、緊急な対策として三点。一つは、急いで整備が必要な設備の改善に取り組み、そのために自治体に対する助成措置を行うこと。二番目に、衛生管理を徹底するために必要な職員の増員についても緊急に補充措置をとるなど指導すること。そして三つ目に、保健所との連携を強化し、日常的に食材の汚染状況情報の提供や設備、作業改善の指導を受けたり、栄養職員、調理員、学校薬剤師等の研修を充実させるなど衛生管理体制の整備に努めることを要望しました。あわせて、効率性、コスト優先の立場から、安全性と食事内容の豊かさを重視した学校給食行政に転換を図ることを強く申し入れたわけであります。  そのためには、もとより共同調理方式あるいは職員のパート化、民間委託などの推進を求めた一九八五年一月の体育局長通知を廃止し、食材の購入、献立、調理を各学校で行える自校方式に改めるよう指導すること。また、栄養職員の全校配置を進めるとともに、調理員の配置基準について抜本的に見直しを行うこと。調理員にかかわる地方交付税措置も基準改善に応じて拡充をすること。そして三つ目に、安全、衛生面に十分配慮した施設設備の近代化、作業環境の改善を計画的に進めること、これを指摘してきたわけであります。  その点で、私は、まず文部省がこの間どのように対応されてきたのか、これからどうしようと考えていらっしゃるのか、簡潔にお答えを求めたいと思います。
  66. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 文部省では、O157の食中毒というものを踏まえまして、学校給食における衛生管理の改善に関する調査研究協力者会議を設けまして、実際に食中毒が起こった事例等をもとに、食中毒防止の観点から、どのような点に改善、工夫をすべきかということについて検討をし、報告をいただき、それを踏まえて種々の施策を講じております。  具体的には、学校給食施設設備の改善、調現実施上の改善、工夫、給食関係者の意識改革、あるいは学校等における衛生管理体制の確立、行政機関の衛生管理指導体制の整備、これらの点につきまして、都道府県教育委員会等の学校給食主管課長等を集めた会議を開催するとともに、通知の発出等を通して学校給食現場への周知徹底を図ったところでございます。  また、平成九年度予算案におきましては、学校給食施設のドライシステム化など施設面及びエアカーテン、芯温管理調理機等の設備面の改善充実を図るとともに、学校栄養職員、学校給食調理員等に対する研修に要する経費なども計上をしたところでございます。  また、平成八年度補正予算におきましても、例えば冷凍庫の整備等に要する経費も措置をするなど、施設整備面の改善を図ったところでございます。  そのほか、御指摘いただきました保健所等との連携につきましても、厚生省と連携を図りつつ、学校への立入検査等を通してその衛生管理面での充実を図るとともに、さらには、調査研究協力者会議の結果を踏まえて、日常点検の励行等、よりやりやすい形での日々における安全管理の徹底が図られるように工夫をしてまいっておるところでございます。
  67. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 一定の対応をなされたことは当然のことでありますし、これからもなお、それを計画的に進めていってもらいたいと思いますが、私は、問題は、調理員の配置基準の見直しがそこではなされていないという点について指摘をしたいと思うのです。  文部省が、一方で、衛生管理チェックリストということで非常に厳しい衛生管理指針を打ち出されたわけです。そのために現場がどんな状況になっているかということを、きょう私は大臣に、「それぞれの仕事内容」こういう一覧表を資料としてお渡しをしております。  これを見ますと、もう一々申し上げるほど時間がありませんが、八時五分に手洗い、そして塩素消毒、塩素をつくるかまの水洗いということから始まりまして、実に最後、かまの塩素による消毒、そしてその最後にそれをまたお湯でふき取っていくというようなことに至るまで、実に「手洗い・消毒」、「手洗い・消毒」、「手洗い・消毒」ということを重ねながら進めております。それは非常に厳しい労働条件を強いることになっているわけです。もちろん、それでも現場では、安全でおいしい学校給食をということで一生懸命頑張っておりまして、少々の残業があろうとそれをやりくりしてでも衛生管理を徹底させていかなければという使命感でいっぱいにしているわけです。  問題は、これだけの厳しいスケジュールになっておる。これが実はおかずが一品なんですね、一品しかできないんです。だから、二品にしていこうということになると、いよいよもってそのやりくりは大変になります。したがって、本当に安全でおいしく豊かな学校給食を実現させるためには、学校の給食調理員の増員が不可欠であります。  改めて言うまでもありませんが、大臣、調理員の配置基準というのは、今から三十七年前、一九六〇年に定められたものであります。余りにも社会の変化に合わないものではないでしょうか。だから、私は、何もなくてももう見直しをしなければいけないというふうに思っております。しかも、その上にこれだけの衛生管理指針を打ち出している以上、直ちに見直すということが筋ではないか、私は見直しを大臣にこの際求めたいと思います。いかがでしょうか、大臣にお願いいたします。
  68. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 今回の日常点検の考え方について、ちょっとまず補足説明させていただきたいと思います。  学校給食の場合における衛生管理につきましては、従来から、学校環境衛生の基準において示された日常点検票及び定期点検票によって実施をされてきたところでございます。  今回、学校環境衛生の基準の改正に当たりましては、日常点検票、定期点検票として、従来の点検項目に加えまして、例えば学校給食従事者の健康状態のより詳しい点検、あるいは七十五度C、一分以上の十分な加熱、調理中の汚染、非汚染区域の明確な区分けなどを加えて、わかりやすく効率的に点検がしやすいような工夫、改善を図ったところでございます。  したがいまして、この日常点検の考え方といたしましては、点検項目がすべて新たなものではなく、点検作業の調理員にとって極端に過重負担となっている、そういうものではないというふうには認識をいたしておるわけでございます。  他方、昭和三十五年の学校給食調理員数の基準は、学校給食の調理に当たって、少なくともこの程度の人数を配置することが必要であると考えられる人数を示したものであり、現在においても、配置の目安としての妥当性は有しているというふうに考えておりまして、従来から、各地域の実情に応じて学校給食の運営に支障を来さないよう弾力的に運用するよう指導しておるところでございまして、文部省といたしましては、今後とも、衛生管理に十分配慮しながら、豊かで安全な給食が実施されるように努めてまいりたいと考えておるところでございます。     〔主査退席、江藤主査代理着席
  69. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 目安ということはわかっているんです。だけれども、その目安を底上げしなければならないじゃありませんか。そして、これは国際公教育勧告というものですが、学校給食によって科学的基礎に基づく栄養食の手本を示すべきである、大臣、こういうふうに学校給食の果たす役割、国民食生活の向上のための先頭に立つべきだということをその国際公教育勧告は示しています。  一九六〇年から振り返ってこの三十七年間、大臣自身の食生活、考えてみてください、随分変化しているでしょう。そういう変化に対応するためにも、この際、こういうふうに衛生管理指針も出されたわけです、それを実効あるものにしていくためにも、私は今、本当に調理員のこの基準というものを改善するために、そのことが求められているんじゃないかというふうに思うわけです。  時間が限られていますから、大臣にのみ簡潔にお答えを求めたいと思います。
  70. 小杉隆

    小杉国務大臣 学校給食調理員の増員につきましては、やはりこれは各自治体がその地域の状況に応じて判断されるべき問題だと考えております。
  71. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 各判断はわかった上で申し上げているわけでありまして、ぜひ検討を求めておきたいと思います。  限られた時間ですので、次の問題に移ります。  次は、場外馬券売り場の問題についてお伺いをいたします。  大臣にあらかじめ地図と資料をお渡ししておりますので、大変見にくいと思いますが、ごらんをいただければ幸いです。  これは、九一年の四月から八月までのわずか五カ月間に、大阪の場外馬券売り場で少年の補導状況を調査した大阪府警のものであります。たったの五カ月間で六百八十五人の少年が補導されました。そのうちの六四・七%、表に書いておりますが、六四・七%が高校生であるということが報告されています。まさに驚くべき数字であります。さすがに大阪府の教育委員会でも「競馬等ギャンブル及びその他の金銭に絡む問題行動の防止について」という通知文書を出しました。そして、  府警本部の公表のとおり場外馬券を購入して補導された高校生が相当数にのぼっていたことは誠に遺憾であります。   このような誤った利殖行為やギャンブルは、最近の社会的風潮から家庭生活、社会生活の中で、生徒がその影響を受けていることは否めないところであります。   しかしながら、健全な市民として将来を担うべく成長段階にある高校生が、正常な金銭感覚や労働意欲を失う危険性のあるこの種の行動に走ることは看過できないことであります。 ということで、府立学校長に、勤労の意味やあるいは消費生活等についてあらゆる機会に適切な指導を行うよう求めているわけであります。  大臣、これは大阪に限る問題ではありません。全国的に起こっている問題で、特にバブルが崩壊した後、遊休地を抱える不動産関係者からは、場外馬券売り場、場外車券場、場外舟券売り場の誘致合戦が激しくなっておりまして、その進出が全国的に広がってきているわけであります。  教育の場でもギャンブル問題を真正面から取り上げ、ギャンブルの持つ危険性を正確に認識させる、また、未成年が馬券等を購入したりパチンコをしたりすることは禁止されていることを趣旨徹底するべきではないでしょうか。大臣にお伺いいたします。
  72. 小杉隆

    小杉国務大臣 ギャンブルに高校の生徒がかかわるということは、社会的にまだ未成熟な生徒の射幸心をあおる、こういう見地から、それぞれの法律で禁止をされています。競馬法、自転車競技法、小型自動車競走法、モーターボート競走法、こういうところでやっておりますけれども学校教育におきましても、法令の遵守とか社会秩序の維持とか健全な生活観等について、社会科とか道徳とかホームルーム活動を中心に指導しているところであります。  このことに関しては、各都道府県とか各学校においても努力をされておりますが、文部省としても、健全育成観点から、生徒指導関係者が集まる場においてその指導の徹底を図っているところであります。  これは、学校だけではなかなか防ぎ切れないので、家庭教育でも、親が何か子供に使いに行かせるなんというケースもあるようでございますが、そういった家庭教育も重要であり、今後とも学校、家庭、社会が連携して一層の対策を講じていかなければいけない問題だと思っております。
  73. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 農水省に来ていただいていると思いますが、本来、これだけの高校生が馬券を購入してきたということは、あなた方売る方も競馬法違反になるということになるわけであります。改善策をどう考えていらっしゃいますか。
  74. 瀧倉昭

    瀧倉説明員 お答えをいたします。  学生生徒、未成年者の勝馬投票券購入問題につきましては、従来より、日本中央競馬会におきまして、場内、場外、また広報メディアを通じまして、競馬法の趣旨の徹底なり、未成年専従班の固定配置、巡回、各入り口でのチェック、投票窓口での注意の喚起等を行いまして、未成年者等の購入を未然に防ぐように指導してきているところでございまして、そういった措置について、競馬会において各種の措置を講じているものと承知をいたしております。
  75. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 お渡ししました資料の中の、大臣、七というところを見てください。細かく調査の一覧を入れていますが、その七のところをごらんください。「窓口で購入を拒否されたかの状況」ということで、この中では、未成年という理由から購入を拒否されたかの状況では、九〇・六%が何ら注意を受けることなく購入している。  今の御答弁は、もう何年も前から、私はたまたま農林水産委員会に所属しておりますので、こうした問題を取り上げてきて、何年も前から同じことを言っていらっしゃる。だけれども、ちっともその効は奏していないということがこの調査で明らかであります。  そこで、私は非常に大事だと思いますのは、大臣がおっしゃったように学校そして家庭教育、私は本当に大事だと思っていますけれども、環境、これが非常に大事であります。  そこで、具体的にお伺いをいたします。  このややこしい地図、ちょっと恐縮ですが、口で言いますから少し聞いていただいたらいいと思いますが、堺市の玄関口です。まず、中心街になっている堺東駅の駅前に場外馬券売り場の誘致の話が出てきておりまして、大変な問題になっています。この堺東地域は、官庁街ということだけではなく文教地域として、この丸は一キロ範疇ですが、一・二五キロメートルにまで延ばしますと、その圏内には三つの高校、四つの中学校小学校が十校というように存在し、大学や各種専門学校はもとより学習塾も集中している地域であります。  まして、五百メートル圏内、一番小さい丸の中には府立高校が二校あります。私はその一校を卒業しておりますが、府立高校の学校関係者やPTA関係者が大変心配しています。高校の一つ、府立泉陽高校の生徒会やPTAも、建設予定地が通学路にあるため教育環境上好ましくないという意見を表明し、反対をしているわけであります。  大臣は、環境という立場からこういう状況を好ましいと思われますか。
  76. 小杉隆

    小杉国務大臣 学校の施設の整備指針では、学校の新設の場合には周辺環境が教育上ふさわしい環境のところへつくることが望ましい、こういうことで設置者に指導しているところです。もう既に立地されている学校については、直接触れられていないわけですが、これは各関係法令の定めるところによって、いわゆる場外馬券売り場を設置する場合には、競馬法施行規則に係る農水省の告示によって、学校その他の文教施設から適当な距離を有し、文教上著しい支障を来すおそれがないこと、こういう規定があるわけですから、いずれにしても、この場外馬券売り場の設置者と地元の関係者とが十分話し合っていただく以外にないなというふうに考えております。
  77. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 きょうJRAからも出席していただいておりますが、この場外馬券売り場の誘致について、地元の町内会で誘致推進派の前自治会長と反対派の現自治会長との間で裁判闘争にまで発展しました。大変つらいことであります。  これまでの地元関係者とJRAとの話し合いでは、JRAは、裁判の経過を見守り、その結果を見て判断を下したいとしておられるわけですが、実は、ことしの一月六日に大阪地裁堺支部で判決が出されました。場外馬券売り場の建設反対を進めている現在の自治会長の地位が正当なものであることを認め、場外馬券売り場の誘致を進めていた前会長の主張は退けられました。その結果、地元町内会は明確に反対ということでまとまったことになるわけであります。  JRAとして進出の断念を明らかにされたいと思いますが、いかがでしょうか。
  78. 江藤隆美

    江藤主査代理 日本中央競馬会須田常務理事。  それから、さっきの、子供に馬券を売らぬようにするということをはっきりやっておきなさい。
  79. 須田洵

    ○須田参考人 それでは、まず現在の調整状況でございますが、私どもウィンズと申しておりますが、場外馬券売り場でございますが、その設置自体につきましては、のみ行為を防止するとかいろいろな観点から、それはそれなりにやはり必要なことだというふうに考えておりまして取り組んできておりますが、いかんせん難しい問題が非常に多いわけでございまして、なかんずく先生指摘のいわゆる地域調整というものが、やはりきちっと同意がなされているということが、私どもが具体的に進めていく前提になるわけでございまして、そういった意識で堺東の案件につきましても状況を見守っているところでございます。  先生も当然御承知かと思いますけれども、既にこの堺東に係る地域調整に必要な、いわゆる自治会といたしましては瓦町自治会の方につきましては既に同意を得ているというような状況の中で、残るこの花田口町の自治会についての調整を目下誘致者の方で進めている段階である。そうした中で、先生がおっしゃいましたいわゆる自治会費の使用に係る裁判、仮処分につきましてそういうものが出たということについて私ども了知しておりますが、しかしながら、私どもといたしましては今回の仮処分の裁判の結果だけをもって地域調整問題が終了したという認識ではございません。引き続き状況について見守ってまいりたいというふうに考えております。  それから、先ほど委員が最初にお尋ねの高校生等の問題につきましては、御指摘の数字につきましては平成三年の数字でございまして、そういうものを踏まえて、JRAとしましては取り組み体制を抜本的に強化いたしまして各般の取り組みを行っている、そういう状況でございます。
  80. 江藤隆美

    江藤主査代理 決意を新たにして批判を受け入れるようにせにゃいかぬ。
  81. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 委員長に応援をいただきましてありがとうございます。  大体、今ごろ瓦町のことを言い出すのはとんでもないことですよ。それは本当に地元に対して随分失礼ですよ。設置されるところは花田口町の町内会、そしてそこの自治会は明らかにこの馬券売り場を誘致したくないという意思を表明しているのに、あなた方はそれを認めようとしない。そしてとうとう不幸にも、同じ町内会で仲よく暮らしていた、何も問題なかったんです。ところが、この誘致問題があって裁判になって、裁判というようなところまで発展せざるを得ないにらみ合いが出てきた。しかし、裁判は明らかに反対派の新しい町会長が自治会の会長さんだということを認め、そしてそこで誘致反対の決議がなされたということもちゃんと裁判が認め、それであるにもかかわらずどう調整するんですか。こんなでたらめなことはないですよ。  選挙で自民党に多数入って、だけれども自民党の政権が気に入らぬからといってその政権を認めないというのと一緒です。自民党が選挙に敗北して、かわる政権、連立政権ができた。自民党は悔しいからそいつを認めぬと言いましたか。民主主義の世の中はそうじゃないでしょう。私は、あなた方が住民の意思にそんなふうにまじめにこたえようとしないことに大変憤りを感じます。  地元の自治会の了解が得られなかったら撤退やむを得ない、そのことははっきりさせてください。
  82. 須田洵

    ○須田参考人 先ほども申し上げましたように、ウインズの設置に関しましては、やはりそれぞれの地域におきます調整といいますか、それがなされない限りは強引に強行するといいますか、そのようなことはいたさない、そういう方針で進めております。
  83. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 ぜひその花田口の住民の意思を酌み、速やかに計画の撤回を行うよう改めて求めておきたいと思います。  最後になりますが、全国的な教育問題に対する影響というものを今私たちはお互いに考えなければならないと思うのです。そのために、もう一度改めて求めたいと思いますが、農水省の方も文部省と協力して調査に乗り出す、そして文部省の方も積極的にこの問題に取り組んでいただき、子供たちがギャンブルに手を染めないように、そういうふうな立場から調査を求めておきたいと思います。  最後に御答弁を求めるとともに、私はきょうここでは取り上げませんが、大阪市議会の計画・消防委員会はせんだって、大阪市内の北区西天満のやはり馬券売り場の問題ですが、設置反対の請願を全会一致で採択しました。ここではPTAや青少年団体、自治会が、パチンコ店一つない文教、文化歴史地区の西天満地域にそういう馬券売り場は要らない、環境とコミュニティーを破壊しないでほしい、こういうふうに訴えております。私は、こうした環境というものについて、そして住民の町づくりに対する願いというものについてやはりまともにこたえるべきだということを申し上げておきたいと思います。  大臣から最後に、この教育に対する影響についての取り組み、もう一度聞かせていただいて、終わります。
  84. 小杉隆

    小杉国務大臣 先ほど申し上げたとおり、適切に対処してまいりたいと思っております。
  85. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 終わります。
  86. 江藤隆美

    江藤主査代理 これにて藤田スミさんの質疑は終わりました。御苦労さまでした。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時六分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  87. 江藤隆美

    江藤主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  文部省所管について質疑を続行いたします。山口泰明君。
  88. 山口泰明

    山口(泰)分科員 私は、埼玉十区、自由民主党から出ております山口泰明でございます。  清潔、信頼、ぬくもりをモットーに、中小企業のガス会社の専務からいきなり衆議院に昨年当選させていただきました。そういった点で、きのうの第八分科会が初めてこういった場でやらせていただいて、きょうが二日目でございます。また、大物の江藤主査の前、そして大臣の中でも非常にまじめな、私も文教委員会に所属をさせていただきまして、いつも真摯な御答弁で、本当に文部大臣にぴったりな小杉大臣の前でございますので、多少緊張もしておりますし、失礼な面があるかもしれませんけれども、お許しをいただいて、御質問をさせていただきたいと思います。  また、きのうもお願いをしたのですけれども、私は、わかりやすい政治ということで選挙民にも訴えをしてまいりました。五カ月目になりますけれども、いろいろな委員会を拝聴させていただいても、政府委員さんの答弁の中で、肯定しているのか否定しているのか、よく聞かないとわからないような答弁もありますので、できるだけ平易に答えていただければ大変ありがたいと思っております。  まず一問目に、政府は、一月末に教育改革プログラム、自民党の中ではいろいろ御議論ありましたけれども、私はそれなりに評価できるものと思っております。国民の最大関心事は学校週五日制と、その中で高校受験のない中高一貫教育の導入であると私は思っております。事実、私の息子も私立の中高一貫教育に入れさせております。一日も早く全体的に実施をできればしていただきたい。文部大臣は、昨年の十二月に宮崎県の五ケ瀬中・高の視察をされましたが、その感想も踏まえ、教育改革プログラムの実施に当たっての決意をお伺いしたいと思います。
  89. 小杉隆

    小杉国務大臣 今御指摘のように、教育改革プログラムの中では、いわゆるゆとりある教育ということで二〇〇三年を目標に完全五日制を実施しようとしておりますし、また子供の個性、能力をはぐくむということで学校制度複線化構造を進めよう、こういうことで中高一貫教育もその一つの選択肢として導入しよう、こういうことで、今、中教審で六月をめどに審議をいただいているところであります。  私は、文部大臣に就任して早速宮崎県の五ケ瀬中学校・高校を視察をしてまいりましたが、この学校がこのように実現をしたというのは、私は、天の時地の利人の和、この三位一体の結果だと思っております。ちょうどその中高一貫教育を公立の学校に導入すべきではないかという、そういう機運が高まってきていた折でもありますし、またそこの五ケ瀬という場所が、非常に豊かな自然環境に恵まれている。そして住民の方々も、人間と自然との共生、フォレストピアというような考え方でやっていこうということに合意が得られたということ。  そしてさらに、人の和という面では、宮崎県の教育委員会、特に、発案された課長さんを初め関係者の皆さん、そしてそれを受け入れた県知事の英断、こういったものがうまく合って公立学校の中で初めてこうした試みができたと私は評価をしております。  そして、今申し上げたように、中学高校一貫ということで非常に切れ目のない指導ができるということ。豊かな自然の中で、自然体験とかあるいはいろいろな学校外の活動等を通じて豊かな個性をはぐくむ、こういうことで、非常に私はすばらしい指導が行われているというふうに拝見をいたしました。
  90. 山口泰明

    山口(泰)分科員 同様に、もう一つの関心事は、中央教育審議会審議内容でありますが、これまで中央教育審議会審議内容は原則として非公開で行われてきましたけれども、これだけ国民に関心の持たれている内容を非公開にする理由はないのではないか。また、現在文部省に十五の審議会があると聞いておりますけれども、これら十五の審議会審議内容の公開も含め中央教育審議会審議内容を公開するのか。公開するとすればいつごろを目途に考えているのかをお伺いしたいと思います。
  91. 富岡賢治

    ○富岡政府委員 先生御案内のように、審議会の公開につきましては、平成七年の九月の閣議決定の審議会等透明化、見直しという方針がございます。中央教育審議会では、これを踏まえまして、従来非公開という原則で議事要旨のみを公開してきたわけでございますけれども大臣からの御指導もございまして、このたび原則非公開という考え方を改めまして、審議の公開を一層進めるという観点から、本年一月の総会におきまして、新たに議事録による公開ということで決定いたしまして、現在、詳細な議事録の作成、公開を進めてきているところでございます。今後とも、そういう意味では、中央教育審議会審議がさまざまな国民の理解を得ながら進められますよう努めてまいりたいと考えております。
  92. 山口泰明

    山口(泰)分科員 ありがとうございました。  教育は国づくりの基本であるということは言うまでもないことですけれども、特に教育費の高騰には著しい現象があると思います。  その実態は、二月の二十六日の各新聞に掲載されていましたように、家庭に占める教育費が年々増大をしております。東京私大教育連の調査では、昨年関東の私立大学に入学して通う自宅外通学生の受験から同年末までにがかった平均費用は、三百二十五万円であると聞いております。また、私大の白書によれば、小学校から大学までの教育費は、私立で一千万から一千二百万、公立で七百万から八百万ぐらいかかると言われている。  教育費の増大にはさまざまな要因がありますが、文部大臣はこのような教育費の増大する社会に対して率直にどのようなお考えをお持ちか。私も、実は私立にやってこんなにかかるものかなと初めて実感したものですから、よろしくお願いいたします。
  93. 小杉隆

    小杉国務大臣 教育費は年々増加しておりまして、例えば文部省の学生生活調査によりますと、昼間部の大学の学生の一人当たりの学費が、平成四年度の約九十五万円から平成六年度の約百一万円に増加しております。また、子供の学習費調査等によりますと、公立高校生徒一人当たりの授業料等の学校教育費が、平成四年度の約二十九万円から平成六年度三十二万円に増加しているところであります。  教育の機会均等を実現するためには、できる限り保護者の教育費負担が多大とならないように可能な限り配慮することが重要であるというふうに認識しております。
  94. 山口泰明

    山口(泰)分科員 あと税金面をちょっとお聞きしたいのですが、このような現状がさらにエスカレートすれば、高等教育は金持ちだけが教育を受ける権利になりかねないような社会の危惧があるわけですけれども教育を受ける権利は、社会情勢の変化や所得の格差によって阻害されてはならない。だがしかし、現実には、これだけ教育費が増大すれば、いびつな社会環境ができつつあるとも考えられます。こうした教育環境を支える基本的支援策はないのか。  また、現在、奨学金制度や税制、特定扶養控除の制度はありますけれども、この税制としても、わずか学生一人に対して所得税が五十三万円、住民税が四十一万円、合計で九十四万円にすぎないわけですけれども、その辺について、大蔵省の方でもわかればちょっと御答弁いただきたい。     〔江藤主査代理退席、石川主査代理着席〕
  95. 富岡賢治

    ○富岡政府委員 先生御案内のように、今大臣からも御答弁申し上げましたように、教育費については保護者の負担が過大とならないように、文部省といたしましては、先生指摘のように、税制と予算面でそれぞれさまざまな措置を講じて努力しているわけでございます。  今御指摘の特定扶養控除制度につきましても、十六歳以上二十三歳未満の扶養親族に係ります扶養控除額の割り増し制度ということで、これもいろいろな努力を積み重ねてきたわけでございます。  また予算面でも、平成九年度の予算案におきましては、育英奨学事業ということで、貸与人員の増員、貸与月額の増額につきましては事業費総額で六・一%増を計上する。それから、幼稚園の就園奨励費の補助事業の保育料等の減免単価の改定等も行っておりますし、また、お力添えをいただきました私学助成につきましても充実を図っているわけでございます。これにつきまして文部省としても最善の努力を尽くしてまいりたい、今までも努力してきたわけでございますけれどもそう考えておるところでございます。
  96. 山口泰明

    山口(泰)分科員 アメリカのクリントン大統領も、新年、教育減税という大きな目標を掲げましたけれども、大蔵省は、教育減税をすれば税収が減るので今の時代には容易に対応し切れない。私は、こういった現状を抜本的に施策を講じるためには、教育減税法案の創設を文部省に提案したい。無理かどうかわからないんですけれども、そういったものを、教育減税法案の看板を掲げるべきだと思っているんですけれども、この点についてお伺いしたいと思うんです。
  97. 富岡賢治

    ○富岡政府委員 先生の御指摘の内容がまだちょっと私詳しく承知しておりませんけれども、いずれにしても、税制改正ということと、それからやはり財政状況等大変厳しい状況ということも踏まえなくちゃいけませんので、よく私どもとしてはこういう問題は考えていきたいと思っております。
  98. 山口泰明

    山口(泰)分科員 それじゃもう一つ。  教育減税法案の提案は文部省にまさる考え方と言うかもしれませんけれども、私は全くできないことを言うつもりはないんですけれども、現に教育減税という言葉はありませんけれども、先ほど言った特定扶養控除という減税制度があるわけでございます。わずかであるが実施されているわけですから、この減税金額、また、この制度を教育減税法案に入れかえて法案を作成すればよいのではないかなと素人考え考えるわけですけれども、新しく減税するというのではなくて、現在の所得減税、住民減税分をまず法制化すればよいのではないかと思いますが、その点について再度お伺いしたいんです。
  99. 富岡賢治

    ○富岡政府委員 御趣旨はよくわかりますが、なかなか状況も難しゅうございますので、御理解願いたいと思っております。
  100. 小杉隆

    小杉国務大臣 御質問の趣旨はよく理解できますが、私どもは、教育費がなるべく過大にならないように、従来からも予算面、税制面でさまざまな努力を積み重ねてまいりました。  で、先ほど審議官からお答えしたとおり、現状ではそういった手だてを講じておりますが、教育減税という法律をつくるかどうかということは別として、今厳しい財政状況の中で、この内閣でも財政構造改革を初めとしていろいろな改革に取り組んでいるさなかでありまして、そういう財政状況、危機的な状況も踏まえまして、私は、法律をつくるつくらないということよりも、実質的に父兄負担が過大にならないような方策をこれからもあらゆる角度から講じていく、財政の許す範囲で一生懸命図っていくということで対処していきたいと思っております。
  101. 山口泰明

    山口(泰)分科員 いろいろありがとうございました。  確かにお金のないというのはよくわかりますけれども、やはり子供は将来に向かっての宝ということで、ほかのいろいろな公共予算とかいろいろあると思いますけれども、子供のというか、未来のための子供の教育についてはなるべく今後も負担を軽減させるよう私も一生懸命やっていきたいと思いますので、ぜひ御協力いただければと思います。  話題を変えまして、養護学校の高等部の訪問教育についてお伺いをしたいと思います。  訪問教育は、養護学校義務制の一環として一九七九年に制定され、今日十八年目を迎えましたが、全国から多数の請願がありましたように、健常児の高校に当たる高等部は、義務教育でないとして制限されてきた経緯がございます。しかし、文部省は来年度から高等部の訪問教育を実施すると言っておりますし、私も、側面ながら高等部の訪問教育について推進してきた一人として大変うれしく思っているわけでございます。  そこで伺いたいことは、具体的に、来年度の予算を含め、どのような実施要綱で取り組むのかをお伺いしたいと思います。
  102. 辻村哲夫

    辻村政府委員 先生御案内のとおり、小中学部までは実施されておりましたが、高等部までは未実施でございました、いわゆる寝たきりの子供たち学校に通うにも肢体不自由等の事情から通えない子供たち、こういう子供たちに養護学校高等部の訪問教育の道を開くということでございます。  これは、高等学校について高等学校標準法という法律がございますが、その法律の中に養護学校高等部につきましてもルールがございます。したがいまして、その高等部の在籍生徒というふうに位置づけをいたしますと、重複障害学級のルールにのっとりまして先生の配置が算定されまして、その算定分につきましては地方交付税でその人件費等が措置される、こういうふうになっているわけでございます。それから、特殊教育関係の設備費につきましても、補助金等が特殊教育学校高等部という形で措置されるようになっております。  したがいまして、基本的には各都道府県の一般財源で、これは国によって地方交付税で措置されているわけでございますが、そういう形で措置をされますので、国におきます財源措置というものは特段必要がないわけでございます。  したがいまして、我々は、各都道府県がその整備をするに当たってきちっと交付税の算定基礎等を踏まえて財政措置をしていただく、こういう形で私ども指導していく、こういうふうになろうかと思っております。
  103. 山口泰明

    山口(泰)分科員 ここに実は、私も感動したというか、そういったお子さんを持つお母さんの文があるので、ちょっと読まさしていただきます。  タイトルが「どんな子にも可能性というダイヤモンドが」   娘は、視力もなく、四肢マヒ、むろん知恵も遅れている。それにおおいかぶさるような発作とその状態の厳しさに、教育にまで考えが及ばず「生きていることがはたしてこの子の幸せなのだろうか」と思った時期もありました。でも娘は十四年、生きぬいてくれて、外からの働きかけとして教育を受けました。得たものは目に見えるだけの小さなものではありませんでした。どのようにたいへんな子どもにも可能性というダイヤモンドがあり、それを掘り当てようと努力してくださる先生の姿に親が頭を垂れて「ああ、そうだったのだ」と何度も感謝しました。そして娘の生きている意味考えることができたのです。また、違った「社会にすばらしい貢献」というタイトルで、   私は娘が弱者であり、かわいそうだから、いろんなことをやってもらって当然だなどとは考えておりません。また世の中で弱者と呼ばれる人達が社会に貢献度が低いのだとも考えておりません。弱いものが一生を通じていつも人のお世話になり、迷惑をかけ続けるという考え方はあまりにも貧しいと思うのです。 まだいろいろ続くのですけれども。こういったのを本当に見ますと、心がじいんと打たれるのです。  で、「特殊教育の改善・充実について」ということで、帝京大学の亀井座長の審議会の報告にもありますように、養護学校の高等部の充実整備と訪問教育にはまだ課題が残されております。  例えば、高等部の整備は進んでいるものの、地域格差があり過ぎたり、通学困難者に対して人員の配置計画はどのようにするとか、教育分野と医療・福祉の分野などの機能分野の調整もこれからの課題であると思います。こうしたミックス型機能制度をどう生かすのか、今後の課題であると思うのですが、この後の取り組みについてお聞きをしたいと思います。
  104. 辻村哲夫

    辻村政府委員 先生指摘のとおりでございまして、高等部につきましては各県の努力によりまして相当に進んではきておりますけれども、まだ差があることは事実でございます。それぞれいろいろな事情があるわけでございますけれども、県によりましては、小中学部があります養護学校には必ず高等部が設置されているという県もございますし、そういう形で高等部の置かれている割合が半数にも満たないというような県もございます。  いろいろな事情があるわけでございますけれども、まず私ども、財源的には交付税措置をされているということを十分各都道府県に伝えまして、高等部の整備、配置につきまして努力をしていただくようにというようにお願いをしたいと思っております。これまでもそういう努力はしてまいりましたが、先ほど先生が御紹介された協力者会議の中にも特記して地域間格差の是正ということが指摘がございますので、改めて各県に指導をし、整備計画の策定とかあるいは見直しというようなことにつきまして促してまいりたいというふうに思っております。それが一つでございます。  それからもう一つ、通学困難者につきましては、ただいま申し上げましたように、訪問教育を高等部にまで拡充するという形で原則対応したいというふうに思っております。学校に来られる子供たちについては学校で、来られない子供たちについては訪問教育で。  ただ、子供たちの中には医療機関で治療中の子供もおります。その他そういう教育機関外の施設にいて病気治療等に専念している子供たちもおりますので、そういうところにも学校の分教室をつくるとかあるいは訪問教育の対象にするとか、いろいろな努力をしていきたいと思いますけれども、何分にも高等部につきましては今回この四月に初めてスタートを切るところでございますので、そのあたり十分我々実情を踏まえながら、高等部の訪問教育整備というものの趣旨が生かされるような、そういう努力を進めていきたいというふうに思っております。
  105. 山口泰明

    山口(泰)分科員 ありがとうございます。  それで、これは埼玉新聞なのですけれども、埼玉県もこの四月から始めまして、いろいろ喜ばしく書いてあるのですが、最後に、これは読んで、聞いていただければ結構なのですけれども、たまたま養護学校先生の話が「重い腰を上げてくれたことを評価したい」とした上で、「卒業年度が一、二年違うだけで訪問教育を受けられない生徒も出てくる。こうした生徒にも枠を広げる努力をしてほしい」こう書いてありますので、その辺も踏まえながら今後進めていただければ大変ありがたいと思うのです。  最後に、教員の高齢化についてちょっと御質問させていただきます。  教員の定数は児童生徒数に基づく学級数で定められておりまして、児童生徒数の急増期であります昭和四十年から五十年代にかけましては教員の大量採用が行われました。その後、児童生徒の激減により教員採用が減少し、教員の高齢化が進んでおります。このまま放置しますと、高齢者の大量増加により学校全体の活力が損なわれたり、児童生徒との年齢差の問題、それによる考え方のギャップ、また、大量退職になるので財政面の大きな負担、また今度はやめた後の大量採用による質的低下、きょうは江藤先生いますけれども教育の根幹をなす理念のない、そういった先生が多くなっても困りますので、そういった学校における教育力の後退の予想についてどうお考えになっておるか、お聞かせを願いたいと思います。
  106. 小林敬治

    ○小林(敬)政府委員 ただいま先生指摘ございましたように、私どもも平均年齢の高齢化という点を心配いたしておりますが、現在、公立小学校の年齢構成を見てみますと、三十代の後半から四十代の先生方の数が最も多くなっておりまして、平均をとってみますと四十・五歳ということになるわけでございます。したがいまして、現時点におきましては、今先生がおっしゃられたようなさまざまな問題というのは直ちに発生するということではないと思います。  ですが、御指摘にもございましたように、最近の数年間、採用数が極めて少なくなっておりまして、このままもし推移をいたしますと、いわば団塊の世代と申しますか、これがだんだんと年齢の上の方に移ってまいりまして、御指摘がございましたようなさまざまな問題が懸念をされるということは私ども考えているところでございます。
  107. 山口泰明

    山口(泰)分科員 民間ですと、例えばそういった五十過ぎた方に少し退職金を多くしたり、勧奨退職等を、当然我々も民間企業であれば考えますけれども、その辺についてもどうお考えになるのか。  特に小学校の場合は特殊の、音楽とか美術ですか、そういうもの以外はほとんど一人の先生が全部教える。入ったばかりの一年生、二年生を五十過ぎの方が教えると今実際に想像しますと、やはり、それは確かに経験でいい部分もありますけれども、私は、メリットとデメリットを考えれば、デメリットの方が多いのではないかなと思いますので、その辺も含めまして再度、勧奨退職を含めて、何かいい方法はないかなということでお考えをお聞きしたいと思います。
  108. 小林敬治

    ○小林(敬)政府委員 この問題につきましては、今都道府県の教育委員会におきましても真剣に検討をしているわけでございますが、お尋ねの中で、例えば高齢の先生方が多くなって小学校子供たちの激しい動きについていけない、特に体育等ですね。そういったことにつきましては、できるだけ人事上そういう事態が起こらないように配慮すべきではありますが、全体の年齢が高くなってまいりますと、なかなかそうも言っていられないというケースも生じようかと思います。  そこで、私どもとしては、現在、専科教員というものを、一学年一学級サイズの学校においては一人、それから三学級規模の小学校につきましては二人から三人配置をいたしております。したがいまして、そういった専科教員とうまく連携をとってそうした問題に対処していっていただきたいということ。  それから、個々の先生方、皆得意な分野がございます。体育の得意な方、それから音楽の得意な方、そういった方が御相談の上でお互いに協力しながら交換したり何かするようなことも考えてください、こういったことでありますとか、さらに地域にいらっしゃる有能な人材を学校に活用していく。そのための制度といたしまして特別非常勤講師というものを既に設けておりますので、これを積極的に活用していただきたい。  それからさらに、これは体育局の方でことしの新規事業として始めたものでございますけれども、部活動を指導してくれる方たちのために運動部活動地域連携促進事業というものを起こしまして、これは特別非常勤講師とは別でございますけれども、地域の方々に学校教育に参加していただくというふうな考え方を持っております。  したがいまして、そういったもろもろのことを考えながら、この高齢化の問題、さらに都道府県の方でも少し勧奨退職年齢を低くしてみたらどうだろうかというふうな声も聞いておりますので、そういった都道府県のさまざまな検討をあわせまして、私どもも適切な対処をしなければならないであろうと思っております。
  109. 小杉隆

    小杉国務大臣 御指摘の問題は、極めて深刻であり、重要な問題だと思っております。  教育改革を進めていくその担い手である教員の年齢構成が、特に人口急増地域の東京周辺とか、あるいは大阪、近畿圏、あるいは中京圏、こういうところではもう少子化でどんどん子供さんが減っていて、新規採用教員がどんどん減っていくということでもう大変な高齢化になってしまって、今御指摘のような、学校活動、活力の低下、そういったことに影響があるわけでございますので、これは本当に、私も、先日教育長さんの代表の方々とお話ししまして、非常に深刻な問題だなということを受けとめさせていただきました。  中長期的な問題でもありますし、今後、いろいろ、教職員定数の配置計画ですね、こういう際にも、都道府県の実情とかあるいはその地域の状況をよく考えて、私ども研究を深めていきたいと思っております。
  110. 山口泰明

    山口(泰)分科員 本当に、大変ありがとうございました。本当に平易に、わかりやすくお答えいただきまして、私も今後、微力でございますが、一生懸命やっていきたいと思っております。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
  111. 石川要三

    ○石川主査代理 これにて山口泰明君の質疑は終了いたしました。  次に、丸谷佳織君。
  112. 丸谷佳織

    丸谷分科員 新進党の丸谷佳織と申します。  私は、昨年の衆院選で初当選させていただいたのですが、それまでは音楽に携わる仕事をしておりまして、その中で、音楽が生活に与えるゆとりですとか、あるいは、自分音楽を演奏することによりまして自己表現の場を見つけている若い世代の姿をたくさん見てまいりました。もちろん、文化音楽だけではなく、工芸ですとか絵画というものもありますし、芸術文化は、プロ、アマ問わずに時間を超えて伝承されて、また、空間を超えて伝播されていくものだと考えております。  二十一世紀を目前にしまして、心豊かな日本をつくっていくために、文化行政の発展を願いながら本日は質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  日本は、よくエコノミックアニマルと呼ばれまして、世界からバッシングされていたのですけれども、ようやくハード面からソフト、あるいは物から心へという時代を迎えつつあり、芸術文化の享受を要望する声は御存じのように高まっています。  文化庁の方でも、平成八年度予算からアーップラン21などの新事業を開始したのを初め、平成九年度も前年度を上回る予算の額を見込んでいらっしゃいますけれども、ただ、国の一般総額に占める文化予算の割合、平成八年度では〇・〇九九八%、約〇・一%です。これは、フランスの約五分の一にすぎないという極めて少ない額で、残念なんですが、なぜこのように低い割合になるとお考えでしょうか。少ない文化予算の原因をどのように考えているか、お聞かせください。
  113. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 私ども文化庁といたしましては、文化予算を充実させたいということが一つ課題でございます。お話にもございましたように、平成八年度、新しいプランといたしましてアーツプラン21ということで、舞台芸術を、創造的なものを積極的に振興していこうという新しい取り組みを始めたところでございます。  お話ございました、諸外国に比較してまだまだ、フランスやイギリス等と比べますと日本文化予算は少ないわけでございますけれども、私どもとしては、この平成九年度予算案でお願いしているものにつきましても、平成八年度が七百五十億、これに対して七十八億増の八百二十八億、約一〇・四%増でお願いしているわけでございまして、もともとの、根っこといいますか、過去の予算がかなり低かったこともございまして、まだまだフランスやイギリスには追いついていないわけでございますけれども、近年、特に一〇%以上の伸びを示しておりまして、私どもとしては、積極的な予算増に、それから文化立国に向けての努力を重ねておるところでございます。
  114. 丸谷佳織

    丸谷分科員 本当に文化庁の御努力のほどはお察しいたしますけれども、先ほどと同じ、繰り返しの質問になるかと思うのですが、我が国文化支援への認識自体が低いと考えていらっしゃいますか。それとも何かはかの原因で、文化予算だけではないのですが、確かに経済的に苦しいことはわかっておりますけれども、以前からなぜ文化にかける予算が低い、その原因はどこにあるか、どのようにお考えか、教えてください。
  115. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 これは過去の経緯でございまして、いろいろな、さまざまな経緯があると思うのでございます。ただ、最近でございますと、例えば、建設省さんが国土建設に文化観点をぜひ取り入れようではないかというようなお考えもございますし、ちょっと前には、いわゆる行政の文化化といったようなことが各地方公共団体で取り組まれている例もあるわけでございます。  いずれにいたしましても、私どもといたしましては、何といいますか、経済的な発展を日本が遂げてくる過程の中で、少しずつ、経済あるいはお金よりも心、心の豊かさが大事だという認識国民の皆さんの中でも高まってきておりますので、そういったことも背景に置きながら、積極的な努力を重ねてきておるところでございます。
  116. 丸谷佳織

    丸谷分科員 本当に、現在、赤字大国日本と言えるかもしれないのですが、文化予算はぎりぎりのところで確保してくださっているかもしれませんが、実際に支援を受けていますアマチュアの団体ですとか個人の芸術家の方にお話を聞きますと、やはりまだまだ支援の額が足りない、もう少し欲しいという声も聞かれます。  とはいいましても、もちろん文化ばかりに予算を割くわけはいきませんで、ほかとのバランスも考えながら予算を獲得していかなければならない。そうした上で、やはり多くの国民を納得させるような文化行政の理念、つまり、なぜ文化が必要なのか、文化行政支援の目的とその意義というのを明確に打ち出していかなければいけないと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  117. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 私どもは、現在、文化立国を目指そうということで取り組んでおるわけでございます。先ほどからお話が出ておりますように、経済大国に日本はなったわけでございますけれども、そういう中で、実は最近バブルがはじけまして少し経済の状況がおかしくなっておるわけでございますけれども、実は、私ども文化庁といたしましては、芸術文化の振興に力を入れていくということは、決して社会や経済の発展と無縁だというふうには考えていないのでございます。  例えば、オペラの劇場が一つできる。この十月に新国立劇場をオープンするわけでございますけれども、そのこと自体、地域の活性化、経済の活性化につながるわけでございますし、オペラを見に行くということで、さまざまな形で、見に来てくださる方がその帰りにフランス料理を食べていただく、あるいは、オペラを見に行くために新しい洋服を買っていただく、さまざまな形で、周辺での経済の活性化にもつながる部分があるわけでございます。  こういったことは、それ以外の各地方での美術館あるいは文化ホール、さまざまなものが置かれているわけでございますけれども、地方での文化活動におきましても同じような例があるわけでございまして、結局、ある程度文化を振興することが、ひいては経済の発展にも社会の活性化にもつながるというふうに私ども考えているところでございます。
  118. 丸谷佳織

    丸谷分科員 今おっしゃいましたように、やはり生活の中に本当に文化が溶け込んでいる、またその文化自体が、文化そのものだけではなく、行政的には、例えば地域的にも、あるいは環境ですとか産業、食文化等々に影響を与えるものですから、本当に国民的な支援を受けるような文化の意義という理念を、ぜひ明確に打ち出して訴えていっていただきたいと思います。  また、文化は、福祉と同様に公共性があるという一面もあるのですけれども、市場の原理に任せてしまえば、例えば今言葉が出ましたけれども、新国立劇場ではオペラなどが演ぜられると思うのですが、オペラの入場料の例を見ますと、やはり競争の原理でだんだん高くなっていくわけですね。いいオペラを見ようとすると、かなりの高額のお金がかかってしまう。そうなると、高い入場料を払える人のみ芸術が享受されるという状況になりまして、ひいては芸術の弱体化が始まってしまうものというふうに思われますので、その面でも文化支援ということは行政的にも欠かせない、そういったこともあわせて訴えていただきたいと思います。  また、芸術家というものは、なかなか生きている時代評価されにくいという歴史があると思うのですけれども、後世に利益をもたらしていくパターンがあると思います。後世の人の利益を今の行政が守るという意味から見て、後世の利益を守るというとうとい使命もこの文化支援にはあると思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  119. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 御指摘いただきましたように、例えば音楽の作品、作曲家をとりましても、現代の作曲家というのは百年、二百年たってから正当に評価される例がかなりあるわけでございます。そういったこともございますので、私ども、各方面にお願いをしておるわけでございますけれども文化立国を目指そうということで、実は今回の、総理から御指示がございました教育改革プログラムの中にも文化の振興の部分がございまして、私どもとしては、文化振興マスタープランをぜひ立てたい、それはまさに、我が国の将来に向けての文化振興の基本的な考え方を明らかにしていきたいというふうに思っているわけでございます。  その意味で、二十一世紀も間近でございますけれども、私どもとしては、今の時点で文化の振興に力を入れてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  120. 丸谷佳織

    丸谷分科員 ありがとうございます。  次に、現在行われています文化支援の実態についてお伺いしたいと思います。  九六年、平成八年からのアーツプラン21は、国際的な芸術交流ですとか、あるいは若手芸術家の養成、またソフト基盤の整備などを支援していらっしゃいますが、その意義と、そして目標をどこに置いているのか。このアーツプラン21について、意義と目標を教えてください。
  121. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 平成八年度から、アーップラン21ということで、これも新しい文化立国を目指す政策の一つでございます。  実は、このアーツプラン21を私ども考えましたのは、我が国の芸術文化の牽引力となりますような、まさにトップクラスのレベルの芸術団体等があるわけでございます、オペラ、オーケストラ、バレエ、演劇等でございますけれども。そういったものの頂点を高めていくということが、全体としての文化のレベルを上げていくことにつながるであろうということで、そういう牽引力となる芸術団体に重点的に支援していこうというのが、一つその柱にあるわけでございます。  それからもう一つは、お話にもございました、国際的な芸術交流を広めていかなければいけないということもございますので、海外でのフェスティバルに参加する、あるいは国際的な芸術交流を積極的に図っていく、こういった点もこのアーツプラン21の一つの柱となっておるわけでございます。  それからもう一つ、私ども文化政策の中で欠かせませんのは、芸術文化振興会があるわけでございますけれども、この中に基金がございます。基金の支援によりまして、いわゆる芸術文化のすそ野を広げていくといいますか、トップクラスだけではなくてアマチュアの方々のレベルを高めていく、地方の芸術文化の水準を高めていく、こういったことにも努力をしていかなければいけないと思っているわけでございます。  そういうことでアーツプラン21を始めておるところでございます。
  122. 丸谷佳織

    丸谷分科員 大変すばらしい意義と目標のあるプランなのですけれども、このアーツプラン21は、名前のとおり21ということですから、九六年から二〇〇〇年までの事業というふうな認識でよろしいでしょうか。確認をさせてください。
  123. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 二十一世紀を目指してアーツプランという趣旨がございますので、二〇〇〇年で打ち切るということではないのでございますけれども、仮にその時点で新しいプランが出てきたといたしましても、この趣旨はさらに拡充していかなければいけないと私どもは思っておりますので、今世紀に限ってやるということではございません。
  124. 丸谷佳織

    丸谷分科員 では、もう一度確認させていただきたいのですが、二〇〇〇年以降もこういったアーツプラン21、名前は変わるかもしれないけれども、こういった支援事業は行っていくおつもりである、同様にお考えということでよろしいですか。
  125. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 私ども、例えばこの平成九年度予算からミュージアムプランということで、美術館、博物館の活性化なり、美術館、博物館を国民の皆さんにもつと楽しんでいただこうというプランも動かしておるわけでございます。そんなこともございますので、何年か先には新しいアイデアも出てくるかもしれませんけれども、基本的に、こういった形での文化の振興方策というものは続けていきたいというふうに考えておるところでございます。
  126. 丸谷佳織

    丸谷分科員 文化の支援というのは、やはり御存じのとおり長い期間がかかるもので、もしかしたら、結果が出てくるのは本当に一世紀かかってしまうものなのかもしれませんので、ぜひ長期的な視野に立った文化支援というのを継続して行っていっていただきたいと思います。  先ほどもおっしゃいましたように、文化庁だけではなく、国土庁ですとかあるいは自治省などが、それぞれ文化に関しては町づくりあるいは村おこしという目的でも取り組んでいます。そして、結果的には、現在千を超える公立文化会館が建てられてきているのですが、その稼働率が平均で五〇%以下、そのうち自主事業の実施率は一〇%以下と、なかなか、地域の文化づくりに役立っているとは決して大きな声では言えない数字が出ているのですね。  これらの公立文化会館の稼働率、自主事業の実施率を文化庁として把握していらっしゃいますでしょうか。また、これらの施設が実のある地域文化振興に役立つような後押し、それぞれ地方自治体が行うのですが、後押しになるようなことは、文化庁としてお考えでしょうか。
  127. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 今お話のございました地方におきます文化会館、近年、各地方でかなり整備が進んでおりまして、私どもの調査によりますと、ちょっと古いのでございますけれども平成五年度で全国で千二百六十一館がございます。  これらの稼働率でございますが、お話ございましたように、一ホール当たりの平均の稼働率が年間で百七十四日ということでございますから、半分くらいでございます。それから、この稼働日数におきます自主公演、その日数の占める割合は約八・七%という数字になってございます。これは時々指摘をされるわけでございますが、文化会館、いわゆる箱物はつくったけれども、そこで演ずる中身がまだまだ十分ではないということが地方でいろいろ言われておるわけでございます。  そのようなこともございますので、私ども文化庁といたしましては、全国の公立文化会館で組織いたします、いわゆる公文協と言っておりますが、全国公立文化施設協会と相談をいたしまして、さまざまな形で、地方のこういった公立の文化会館を支援するプログラムをいろいろ行っておるわけでございます。  一つのものとしては、芸術情報プラザということで、いろいろな芸術家と芸術団体を公立文化会館に結びつける、紹介をする、アドバイスをする、そういった芸術情報プラザというようなものも行っております。それから関係団体と連携をいたしまして、アートフェア、芸術見本市のようなものを開きまして、地方の文化会館の関係者の方々と、例えば劇団の方あるいはオーケストラの方あるいはバレエ、オペラの方々、そういった方々と話し合いをしていただいて、地方におけるそういう芸術文化の公演が行われやすくするシステムを今考えておるところでございます。  それからもう一つは、地域の文化情報について、ネットワークで結びまして、情報システムの整備を進めておりまして、さまざまな形で、箱物はできたけれども中身がもう少したということに対する支援を行っていきたいと思っております。  それからもう一つは、地方の公立の文化施設の関係者といいますか、マネジメントがうまくできるような形での研修のようなものも、さまざまな形で実施をしておるところでございます。
  128. 丸谷佳織

    丸谷分科員 今おっしゃいましたように、今日の社会における文化のニーズを把握して、また芸術家と行政とのパイプ役になるような人材が、専門的な知識を持って行政に携わってアートマネジメントをしていかなければいけないという側面もあると思うのです。せっかく建てた建物でも、建物だけが立派で中身がないという、箱物問題なんという言葉も聞かれるのです。  ことし十月にオープンします新国立劇場の方は決してそうであってほしくないなというふうな強い願いを持っているのですが、心配されます二つの点をお伺いしたいと思います。  まず最初は、最近郷ひろみさんが舞台で肋骨を折るという事件があったのですけれども、劇場での事故が相次いでいます。そこで、劇場での労災について、どのようにお考えか。  そして二つ目は、来年度以降のソフト面での運営費、つまり劇場でどのような演目、出し物をして、どのような人材を育てていくかといったことに対する予算は十分なのか、その見通しについて。  二点、お願いします。
  129. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 新国立劇場は、オペラ、バレエそれから演劇、さまざまな形での舞台芸術の殿堂として、この十月にオープンをする予定でございます。  その中で、一つの問題としては、そこで実演家の方々がさまざまな舞台で活動されるわけでございますけれども、この新しい国立劇場は四面舞台でございまして、舞台装置等も結構大きなものがございますので、御指摘ございました災害の問題についても、私どもは十分考えていかなければいけないと思っておるわけでございます。  ただ、新国立劇場は、こういった芸能実演家を直接雇用するということではございませんで、それぞれのプログラムの中で契約を結んでいくという形になっておるわけでございます。私どもとしては、その契約の中で、万一の場合の災害の補償についてもきちんと保険等で手当てができるような形で行っていかなければいけないということで、現在、新国立劇場を運営いたします運営財団を指導しておるところでございます。  それから第二点目の、演目等の予算の関係でございますが、お話にもございましたように、オペラというのは大変お金がかかるわけでございます。入場料収入も、当然適切な額でいただくということは必要なわけでございますけれども、いずれにしてもお金がかなりかかるということがございまして、本年度予算でも、九年度予算案でございますが、国の予算としては四十二億程度の予算を計上いたしまして管理運営経費は措置をしておるわけでございます。  ただ、公演の経費等につきましては、さまざまな形で、賛助金をいただく、あるいは会員になっていただいて何らかの形で御支援をいただくという、民間からの御支援をお願いする部分がございます。それから、国の予算で直接支援する部分がございます。もう一つは、入場料収入で、適正な額で、国立劇場でございますからそんなに高いお金はいただけないわけでございますけれども、ある程度の収入を図る。その三面から収入に努力をしていくつもりでございまして、新しい国立劇場が国民の皆様の期待にこたえられるような演目ができるように、これからも引き続き努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  130. 丸谷佳織

    丸谷分科員 芸術家の団体の皆さんが今危惧されているのは、新国立劇場のソフト面の運営費に芸術文化振興基金が回されないかどうかということを危惧されている方が多いのですね。といいますのは、本来資金援助を受けるべき芸術団体ですとか、あるいはアマチュア、青少年、女性の文化団体という民間への芸術助成が削減されてしまうのではないか、その分、新国立劇場の方に回されるのではないかというふうに危惧をされていますので、ちょっと気の早い話ではあるのですけれども平成十年四月以降の予算も、ぜひこちらの方に気をつけて組むようにしていただきたい。お願いをしておきます。  文化は後世に引き継がれる財産であるという話は前段でしておりますけれども、同様に、地域差や年齢差なしに平等に享受する権利を国民は有しているというふうにも思います。その件に関しまして、次にお聞きしたいのは、文化庁は著作物の再販制度原則廃止というこの動きについて、どのように考えているか、お聞かせください。
  131. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 お話のございました再販制度につきましては、行政改革観点から、それからもう一つ公正取引委員会観点から、両方の面から、規制緩和等の観点も含めまして  現在こういった再販制度が行われている分野と申しますのは、書籍、CD、新聞等でございます。いずれも文化関係のものであるわけでございます。私どもといたしましては、この再販制度につきましては、新聞等も含めまして、公共性の高いこういった情報については国民のだれでもが全国どこでも同じ価格で容易に入手できるということが、文化の振興という観点からも大切なことであると思っているわけでございます。  著作物の再販制度につきましては、現在さまざまな形で、行革あるいは公正取引委員会等で御検討がされておるわけでございますけれども文化庁の立場といたしましては、例えば世界に誇る新聞の宅配率、毎日毎日全国どこでもきちんと新聞が届けられるという制度が、この再販制度で守られている部分もあるわけでございます。全国どこでも同じ価格で容易に入手できる、そのことが、文化政策、文化の振興の観点からも非常に意義が大きいと私どもは思っておりまして、こういった観点から、公正取引委員会あるいは行革の関係者の方々に御理解を求めて、努力をしておるところでございます。
  132. 丸谷佳織

    丸谷分科員 では、著作物の再販制度が今あることによりまして、ある程度文化の促進というのが守られている、あるいは国民文化を享受する機会が平等になるということが守られているというふうにお考えか、確認をさせてください。
  133. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、私どもとしては、文化振興の観点から、現在の再販制度というものの果たしている役割というのは大変大きいというふうに認識をいたしております。
  134. 丸谷佳織

    丸谷分科員 どうもありがとうございました。  やはり、文化というものは消費するものではなく、行政が守って、育てていかなければいけないという側面もあると思います。  公正取引委員会は、この再販制度問題を検討するために、政府規制等と競争政策に関する研究会にことしの秋までに報告書の方を依頼しています。メンバーは各界の有識者の方でいらっしゃるのですけれども、座長の方が、その著書の中で再販制度の廃止を表明されています。そういうふうに、自分の意見をあらかじめ著書で発表されている方が座長に座られて、公正な判断をする障害にならないというふうにお考えになっているのでしょうか。公正取引委員会にお聞きします。
  135. 和泉澤衞

    和泉澤説明員 公正取引委員会でございます。  ただいまお尋ねの点でございますけれども、経緯を省略いたしますけれども公正取引委員会は、平成四年の四月以降、この問題につきまして総合的な検討に着手するということで、一昨年、平成七年七月に、今お尋ねの規制研の再販問題検討小委員会の中間報告書が公表されたところでございます。その公表後、国民各層から非常に幅の広い多数の意見が寄せられたところでございます。  今般、先ほどの再販問題に関する規制研、これを去る二月の二十五日に開催をいたしまして、お尋ねのように、この問題についての検討を開始したところでございます。やはりこの小委員会の中間報告というところに大変多数の意見が寄せられましたので、親元でございます規制研というところに戻しまして、そこで幅広い、総合的な、包括的な検討を行うということでございまして、その関連で、例えば新たなメンバーの方、これはもちろん著作権関係とか、あるいは言論、報道、表現の自由という、関連する分野に造詣の深い学識経験者、有識者の方に御参加をいただいたわけでございます。  お尋ねの点でございますけれども、規制研と申しますのは、これは業界関係者の間で利害調整を図るというものではございませんで、あくまでも行政運営上の会合ということで、学識経験者、有識者の方々に専門的な観点から、客観的かつ公平な、また中立的な立場から御議論をいただくというものでございます。  また、座長の点についてもお尋ねございましたけれども、現存するいわゆる規制研に戻して、そこでメンバーも拡充した上で幅広い検討を行うということで、この問題についての留意を十分払っているつもりでございます。また、座長さんでございますけれども、座長さんとして公平、適切な運営を図るということは当然であるというふうに考えておるところでございます。
  136. 丸谷佳織

    丸谷分科員 この研究会の中には、座長のほかに、実際に、有識者の方で文芸関係の方ですとか新聞関係の方ですとか映画関係の方がいらっしゃいまして、この再販制度に皆さんそれぞれの分野で関係していらっしゃる方なのですが、音楽関係の方が抜け落ちているように思われるのです。もちろん、公正取引委員会というところですから、公正に議論が行われるというふうに思っております。  最後に、この研究会の今後の活動の見通しと、その影響力をお願いします。
  137. 和泉澤衞

    和泉澤説明員 規制研の検討でございますけれども、お尋ねございましたとおり、著作物で再販適用除外が認められている分野、具体的には、書籍、雑誌、新聞、それから音楽用のCDミュージックテープ、レコード盤。三分野で取引実態あるいは流通形態というものはそれぞれ異なりますので、それぞれのごとにまずいろいろな検討を行って、全体的な取りまとめなどを含めまして、秋の半ばあるいは秋の終わりごろまでに報告書をまとめていただければと思っております。  それから、その後、公正取引委員会の方の関係でございますが、来年、平成十年三月末までに、公正取引委員会としてこの問題の取り扱いについての結論を得るという予定にいたしてございます。  ですので、通常の政府の審議会と違いまして、いわゆる行政運営上の会合でございますので、それが何か行政施策そのものを決定づけるというものではございませんで、あくまでも規制研といったところの取りまとめをも参考にしながら、公正取引委員会としての結論を来年三月末までに得る、こういう予定でございます。
  138. 丸谷佳織

    丸谷分科員 実際に関係しています現場の声も十分に聞きながら、正しい結論に導いていただきたいと思います。  芸術文化振興基金の実態と子どもの権利条約に関することもお伺いしたがったんですが、時間が参りましたので、次回にさせていただきます。  本日は、ありがとうございました。
  139. 石川要三

    ○石川主査代理 これにて丸谷佳織君の質疑は終了いたしました。  次に、田中和徳君。
  140. 田中和徳

    田中(和)分科員 自由民主党田中和徳でございます。  日本の命運をかけて取り組んでおります橋本内閣六つの改革の重要な柱の一つ教育改革に寄せる国民の期待はまことに大きいものがあります。教育改革という重責を担い、日々奮闘される小杉文部大臣に心より敬意を表し、激励申し上げますとともに、教育改革推進の立場から、大臣を初め文部省関係者に数点質問させていただきますので、明快な御答弁をお願いを申し上げます。  今後の教育改革への取り組みに関しては、本年一月二十四日に文部省がお取りまとめになられました教育改革プログラムの中でその指針が示されております。一部に姿が見えないなどと実効性を疑う声もありますが、断じてそのようなことはない、このように思っております。文部大臣の不退転の決意と、改革に当たり、いつまでに何を行うのか、優先順位をお伺いをさせていただきます。
  141. 小杉隆

    小杉国務大臣 今御指摘のように、教育改革プログラムを取りまとめたところでありますが、これは再々総理からもお答えのとおり、従来の平等性や均質性を重視した形から、もう少し個々人の多様な能力を伸ばして、創造性やチャレンジ精神を重視した教育に転換していくことが必要であるという認識に立って我が国教育の全体を見直していこうというものでありまして、従来からいろいろと貴重な御提言、例えば臨時教育審議会とか中央教育審議会の数々の答申、あるいはその実施状況を踏まえまして策定したものであります。  具体的には、学校制度の複線化構造、例えば中高一貫教育というようなことで制度の柔軟化とか弾力化を図っていくとともに、教育内容の再構築を図って、ゆとりの中で子供の個性を伸ばすというようなことを目指して、二十一世紀に向けての教育改革というふうに受けとめております。  文部省としては、このプログラムに基づきまして、関係省庁の協力を得つつ、実行ということを第一に考えて全力を挙げて取り組んでいく決意でございます。あくまでもこのプログラムは教育改革の第一歩ということでありまして、これから国民や国会でのさまざまな御議論や御意見を幅広く承りながら教育改革に努めていくということで、これはまず第一の出発点であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  142. 田中和徳

    田中(和)分科員 文部大臣の御答弁を伺って安心しながら、ぜひひとつ、私も非力でありますけれども、ともに頑張らせていただきますので、一層の御尽力をお願いをしたいと思います。  次に、学校教育における国旗掲揚、国歌斉唱と、特にその調査について伺います。  文部省は、平成元年に従来の教育指導要領を改め、「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と義務的な視点を強調いたしました。教育改革プログラムの中でも、「正義感思いやり、創造性、」とあわせて「国際性」を取り上げ、これらを「はぐくみ、生涯にわたりその能力を最大限発揮できるようにする」と述べてあります。また、本文の中では、「多様な文化、多元的な価値観を尊重する国際理解教育を進める。」とも述べてあります。真の国際性を求めるならば、世界の常識である、国旗国歌を大切にするという、一人の日本人として、いや一人の世界人としてごく当たり前の感覚を身につけさせることは極めて大切なことであります。  我が国学校教育における国旗国歌の位置づけは、平成元年より今日まで、そして今日から将来へ向けて、文部省考え方と取り組み姿勢に変化はないと思いますが、大臣の所感をお伺いをさせていただきます。
  143. 小杉隆

    小杉国務大臣 今お話しのように、国際化が進展していく中で、国と国、人と人の交流が飛躍的に拡大をしております。こうした中で、世界のどの国におきましてもそれぞれの国旗国歌が存在しておりますし、自分の国の国旗国歌はもとより、他国の国旗国歌に対する敬意を払うというのは基本的なマナーだと私は思っております。  学校教育における国旗国歌に関する指導は、こうした国際社会の中に生きていくために必要な基礎的、基本的な資質を身につけさせるものとして必要である、こういう考えで臨んでおります。現行の学習指導要領におきましても、社会科において国旗国歌の意義を理解させるとともに、入学式、卒業式などにおいて、その意義を踏まえまして国旗を掲揚し、国歌を斉唱するという指導を行っているところであります。  今後とも、各学校において、現行学習指導要領の趣旨に基づきまして、国旗国歌について適切な取り扱いが行われるよう指導してまいりたいと思います。
  144. 田中和徳

    田中(和)分科員 大臣、御答弁ありがとうございました。文部省の変わらぬ姿勢はよくわかりました。  ところで、国旗国歌論争については、残念ながら、過去長年にわたり文部省と日教組が対立してきた経過があります。しかし、教師の実施義務の考え方については、前村山政権時代にトーンダウンしたとの見方もありますし、昨今、和解の方向に両者があるとも伺っております。日教組との協議については今どのような状況にあるか、お伺いをしたいと存じます。  また、大臣からも国側の一貫した姿勢が示されましたけれども指導要領に基づく実施義務の遵守について、引き続きどのようにただいま現場指導をしておられるのか、確認をしておきたいと思います。
  145. 小林敬治

    ○小林(敬)政府委員 日教組は、先生御案内のように、国旗国歌につきまして、平成六年度の運動方針において、「「君が代」は果たしてきた歴史的役割と歌詞が国民主権の憲法に反することから強く反対する。「日の丸」は」、途中省略いたしますが、「学習指導要領などによって学校教育に強制することに反対する。」というふうに言っておりましたが、平成七年度以降の運動方針においては触れられておりません。それで今日に至っておるわけでございます。  文部省としては、今大臣から御答弁申し上げましたように、国旗国歌につきましては、従前と少しも変わらずに指導してきているところでございます。したがいまして、私どもとしては、この日教組中央の運動方針の変化が、今後各県段階さらに各学校段階へ徐々に定着をしてくることを期待しているわけでございます。  それからもう一つ、この問題について私どもと日教組が協議をする、そして何かを取り決めるという性質のものではないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  146. 田中和徳

    田中(和)分科員 日教組の改善の姿勢も、受け取り方の前進もあるようでございますし、文部省の長年にわたる御努力を多としたいと存じます。  平成六年までの国旗国歌についての調査資料によれば、当初から比較して相当改善されている自治体もあります。問題はその中身ですが、残念ながら、極めて巧妙なというかひどいケースもございます。  私の手元に「THE日の丸報道」というミニコミ誌がありますけれども、これは、ある高校の教職員が卒業式の国旗掲揚の風景を時間を刻みながら描写したものであります。簡単に言えば、国旗掲揚に反対する教職員が管理職を取り囲み、口論のあげく、掲揚すると同時におろしてしまったという内容で、結果として、生徒や父兄、一般の教職員の目には一切触れることはありませんでした。しかるに、教育委員会へは国旗掲揚を行ったと報告されているのであります。そのほかにも、私の手元の専門誌によれば、例えば校長室の机の上にお子様ランチの皿の上に乗せる小さい日の丸を掲げる、校長一人で君が代を斉唱する、早朝に日の丸を掲げ、児童生徒、父兄が登校する前におろすなど、こっけいな、いや日本人として悲しむべき信じがたい事例が幾つも列挙されております。  少数とはいいながらこのような事例があることは、文部省関係者の方々も御承知のことと存じます。毎年行われている調査についてはどこまで把握して指導しておられるのか、お伺いをいたします。  また、平成七年の調査は、方式を変え十年に一度実施している特別活動実施状況調査の中で一緒に行ったとのことでありますが、卒業式、入学式の時期より既に約二年が経過しておりますが、調査の発表はどうなっているのか、お伺いをいたします。  なお、平成六年までの従来の調査の発表は三カ月から四カ月後に出されていたと承知しておりますけれども平成七年度の調査はどう違うのか、御説明をお願いいたします。
  147. 小林敬治

    ○小林(敬)政府委員 先生のお尋ねのうち、御指摘がありました、先生への職務命令違反あるいは信用失墜行為等を処分理由として懲戒処分等が行われておりますので、最近の情勢を申し上げますと、平成五年が三十四名、そのほかに訓告が七十五名、六年が十二名、訓告が三十五名、七年度が九名、訓告三十名と、人数の上では徐々に減ってきております。
  148. 田中和徳

    田中(和)分科員 実は十年に一度の調査ということでの質問をしたんでございますが、その部分は御答弁がありませんでしたので、続けながら——お願いできますか。
  149. 辻村哲夫

    辻村政府委員 先生お尋ねの調査でございますが、平成二年度から毎年実施してまいりました。ただ、それは国旗国歌の掲揚、斉唱に限っての調査でございましたが、平成七年度の調査、平成七年春の調査につきましては、これは、今教育課程審議会審議をいたしておりますが、そのための資料を得るということで、国旗国歌、これは特別活動の一つに位置づけられておるわけでございますが、それのみでなく、特別活動全体としての大変膨大な調査をいたしました。そういうことで、平成八年春、つまり先生お尋ねの平成七年度卒業式、平成八年度入学式というものの調査につきましては、その大きな調査を前年度に行ったということで調査を行っておりません。  それから、ただいまお尋ねの平成七年春に行いました膨大な調査でございますが、今精査をしておりまして、六月前後には何とか集計をできるんではないかというふうに考えております。
  150. 田中和徳

    田中(和)分科員 十年に一度の調査で調査項目も大変多い、報告がおくれたのはそういうことというか、おくれるというよりも、そのぐらい日数がかかるということだと理解をいたしますが、ただいまの答弁では特別活動実施状況調査の報告はことし平成九年の夏に発表されるということでありますから、まあ夏前でございましょうけれども、ぜひひとつ拝見をしてと思っておりますが、八年は従来からの普通の調査ができていないという答弁でございまして、なぜそのようになっているのか、もう一度御答弁を願いたいと思います。
  151. 辻村哲夫

    辻村政府委員 この平成八年度の調査につきましては、ただいま申し上げましたように、国旗国歌の調査をするかしないかということでございますけれども、その前年度に国旗国歌を含めて特別活動全体の調査をいたしました。これは全国の小中高等学校全校悉皆の調査でございます。  その調査の中身といたしましては、単に国旗国歌の掲揚云々という行事のみならず、学級活動、児童会活動、クラブ活動、学校行事の実施状況の全体、それから特別活動全体の指導計画、それから学校指導体制の全体という大変膨大な調査であったわけでございます。そういう大変大きな調査でございましたので、日数的に大変手間がかかるというのが一つ。  それからもう一点は、平成二年度以降毎年度この国旗国歌については調査をしてまいりまして、国旗につきましては小中学校につきまして九八%前後、それから国歌につきましては八三%から八七%ということで、この二、三年は余り数の変動がございません。そういうこともございまして、毎年度調査ということよりも、次の教育課程の改訂に資するための資料を得るという、その特別活動の調査を正確に行うということでこの平成七年につきましては調査を行わなかったということでございます。
  152. 田中和徳

    田中(和)分科員 今答弁を伺って、理解できる部分と、やや理解に苦しむところもあるわけでありますけれども文部省学習指導要領に示された姿勢というものはやはり重いと思うんですね。ましてや国旗国歌に関することであります。そして、大変な御努力をされて今日まで経過があったのは、すべて資料に基づいて、調査に基づいてやはり皆さんが頑張ってこられたからだ、このように私は思っております。やはり総合的な調査を十年に一度されることはもちろん大切なことですし、それによって今後の文部行政というものに取り組んでいかれるというのは結構なことなんですけれども、だからといって八年の調査をしなくてもいいということには私はならない、このようにはっきりと申し上げておかなければならないと思っております。  平成九年は、もう三月ですし四月がやってまいりますが、どうされるのか、確認をしておきます。
  153. 辻村哲夫

    辻村政府委員 ただいま申し上げましたように、大変大きな特別活動全体の実施状況調査を七年春について行いました。これにつきまして今精査を急いでおりますが、夏ごろまでにはということで急いでおりますが、その分析結果を踏まえまして検討をしたい、どのように調査するかということにつきまして検討をさせていただきたいというふうに思っております。
  154. 田中和徳

    田中(和)分科員 ぜひひとつこの点はやっていただきたいと思いますし、これからもやはり継続をして、できる限り、こういう情報化の社会ですし、開示すべきことだと思いますし、全国民に向けてどういう状況であるかということをやはりぜひ文部省としてもはっきりとひとつ発表していただければと思うわけでございます。  それから、次に移らしていただきたいと思いますが、次は、文部省所管学校施設並びに余裕教室の有効活用についてお伺いをさせていただきます。  本格的な少子・高齢社会を迎えて、大胆な行政改革と、それと一体となった抜本的な財政改革が大きな政治課題になっていることは御承知のとおりであります。少子化の問題は、同時に、各学校における遊休施設や余裕教室を発生させております。従来から各関係者の努力により何らかの形で利用されることになった学校施設は、調査によっても明らかになったように、着実に増加しております。今後、施設の余裕はさらに進むと思いますが、各省庁間の壁を乗り越え、行財政改革学校内と外の交流を推進する立場からも、その活用はどのようにあるべきか、基本的なお考え大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。
  155. 小杉隆

    小杉国務大臣 近年、児童生徒の減少によって、都市部を中心に余裕教室を持つ学校が生じてきていることは御指摘のとおりでございます。  この余裕教室を積極的に活用していくことが重要だと考えておりまして、文部省では、平成五年の四月に余裕教室活用指針というものを作成して、余裕教室について学校教育以外にも積極的にその活用を図るように市町村などを指導してきたところでございます。この余裕教室の弾力的な活用を図るために、財産処分の手続というのは非常に厳しかったのですけれども、それをできるだけ簡素化を図りました。例えば平成三年度からは社会教育施設等への転用、あるいは平成七年度からは老人デイサービスセンターや備蓄倉庫等への転用ということで、努力をしてきたところであります。  今後とも、余裕教室の活用について一層の弾力化を検討してまいりたいと考えております。
  156. 田中和徳

    田中(和)分科員 行財政改革に聖域なしの時代を迎え、国民の大切な財産であります余裕学校施設の地域開放は、複合的な活用を実現し、財政支出を節減するという意味で極めて有効であると思います。また、学校教育学校教育をどのように有機的に結びつけるかという面からも利点があると思います。  しかし、真の施設利用を図るための教訓として、私の地元にこのような事例があります。  老人福祉施設であります老人憩いの家と、また子供の社会福祉施設であります子供文化センターを一つ中学校の校区内に一カ所ずつつくるという事業でありますけれども、用地取得、建設費、後年度の管理費負担など大変な出費になります。これらの中学校校区におおむね中学校一校と小学校二、三校がありますが、昨今、児童生徒数は急激な減少傾向にあり、ピーク時に比較してその人数は半分近くまで減っております。一般的な校庭開放と余裕教室の活用はなされているものの、老人憩いの家や子供文化センターとの併設や合築はとうとうできませんでした。  既存の校舎に公民館だとか福祉施設を併設したり、新築校舎にそれらの施設を合築できなければ、抜本的な活国策とはなかなか言えないと思うのであります。やはり長年にわたる省庁間の垣根は全国隅々まで行き届いておりまして、弾力的な活用を図り、実効を上げるためには地方自治体の教育委員会任せでは難しいのではないかな、このように私も思っております。  学校施設に他の施設を組み込むことは児童生徒数が再び増加したときに困るとの意見もあることはよく承知しておりますが、しかし、ここ二、三十年は今の傾向がとりあえず続くのではないかと思います。効果を上げるためには、法的整備も含め、文部省みずから具体的な事例を挙げながら、各省庁と協議の上、指導力を発揮すべきと考えますが、御見解をお尋ねをさせていただきたいと思います。
  157. 小林敬治

    ○小林(敬)政府委員 今大臣が基本的な方針を御説明をされましたけれども、私どもといたしましても、その方針に基づきまして、今後とも必要な関係省庁とも十分話し合いをやってまいりたいと思います。  既に幾つか具体例がございますが、その中で、特に現時点では厚生省と、例えば児童保育の関係あるいは老人福祉の関係、こういったものを中心に協議をしてまいりまして、相談をしてやってきております。今後、またほかの省庁とも、必要が生じましたときには、もちろん喜んで協議に応じたいというふうに思っております。  ただ、その際に、やはりそれぞれ異質の施設が同居をするわけでございます。その場合に、大きく分けて二つございますが、今まで学校として使っていたものの一部が余裕になったので他に使ってもらうというケース、それから今後の話として、土地の有効活用のような観点から一つの敷地の中にあらかじめ複数の目的を異にする施設をつくる場合、こういうふうなことが考えられるわけでございます。  私どもとしては、余裕教室の活用についてはもう既に十分に道が開かれたと思っておりますので、今後、後者の場合、先生指摘のようにいろいろ具体のケースも念頭に置きながら、関係省庁ともできるだけ地方がそういう土地の有効活用等あるいは総合学習の基盤整備といった観点が盛り込めるような配慮をして、努力をしてまいりたいというふうに思います。
  158. 田中和徳

    田中(和)分科員 もう既に実例などもあるようでございまして、大変すばらしいことだと思うのですけれども学校ほど日本じゅうに必ずあるという、しかも広大な用地を所有しておりまして、建物も建っておるわけでございまして、本当に国家的な財産だ、このようにお互いに認識をしておるわけでございます。  ところが、相当文部省も踏み込んで実例をPRをしていただかないと、どうしても現場の教育委員会あるいは学校関係者の皆さんからすれば、やはり一つの革命といいますか、大改革でございますから、しかも公共事業なんかにはめ込んでいくということになりますといろいろな調整にも時間を要するものですから、わかってはいるけれどもなかなか実行に移せない、こういう実情があるわけでございます。  そういうことで、ひとつ本当に、教育改革の不退転の決意を文部大臣が先ほどお示しになったわけでございまして、今も御見解を承ったわけでございますが、わかりやすい意味で、さらにPRと申しますか御指導を全国に向けてやっていただけるかどうか、最後にお尋ねをして、私の質問は終わらせていただきたいと思っております。
  159. 小杉隆

    小杉国務大臣 貴重なお話、ありがとうございました。  学校施設として、あるいは学校施設以外の活用の事例というのはいろいろあるわけですね。例えばコンピューター教室とか多目的教室等、これは学校施設として使いますし、学校以外の施設としては、今社会福祉関係というようなことがありましたけれども、実際に省庁間の壁をできるだけ低くして、そういった事例をいろいろと紹介をして、そしてこういうケースもあるよ、こういう利用の仕方があるよということを周知徹底を図る、こういう御趣旨はまことに私は適切な御指摘だと思いますので、そういう各地の事例集を全国の都道府県なり市町村に配付をして参考にしていただく、こういうことはまことに有益であろうと思いますので、ぜひ努力をしたいと思っております。
  160. 田中和徳

    田中(和)分科員 大臣、また関係者の皆さん、どうもありがとうございました。  大臣、ひとつ御健康に御留意をいただいて、御活躍をいただきたいと思います。ありがとうございました。
  161. 石川要三

    ○石川主査代理 これにて田中和徳君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして文部省所管についての質疑は終了いたしました。     —————————————
  162. 石川要三

    ○石川主査代理 次に、平成九年度一般会計予算平成九年度特別会計予算及び平成九年度政府関係機関予算自治省所管について、政府から説明を聴取いたします。白川自治大臣
  163. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 平成九年度の自治省関係歳入歳出予算につきまして、概要を御説明申し上げます。  一般会計につきましては、歳入は三千万円、歳出は十五兆五千八百六十一億二千二百万円を計上いたしております。  歳出予算額は、前年度の予算額十三兆七千九十五億七千八百万円と比較し、一兆八千七百六十五億四千四百万円の増額となっております。  また、この歳出予算額の組織別の額を申し上げますと、自治本省十五兆五千六百二十五億四千四百万円、消防庁二百三十五億七千八百万円となっております。  以下、主要な事項の説明につきましては、委員各位のお許しを得まして、これを省略させていただきたいと存じます。  よろしくお願い申し上げます。
  164. 石川要三

    ○石川主査代理 この際、お諮りいたします。  ただいま自治大臣から申し出がありました自治省所管関係予算の概要につきましては、その詳細は説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  165. 石川要三

    ○石川主査代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔白川国務大臣の説明を省略した部分〕  以下、この歳出予算額のうち、主な事項につきまして、内容の御説明を申し上げます。  最初に、自治本省につきまして、御説明を申し上げます。  まず、地方交付税交付金財源の繰入れに必要な経費でありますが、十五兆四千八百九億七千五百万円を計上いたしております。  これは、平成九年度の所得税、法人税及び酒税の収入見込額のそれぞれ百分の三十二、消費税の収入見込額の百分の二十九・五並びにたばこ税の収入見込額の百分の二十五に相当する金額の合算額十五兆一千二百九億七千五百万円に平成九年度の加算額三千六百億円を加算した額を交付税及び譲与税配付金特別会計へ繰り入れるためのものであります。  次に、国有提供施設等所在市町村助成交付金に必要な経費でありますが、二百二十三億五千万円を計上いたしております。  これは、いわゆる基地交付金でありまして、米軍及び自衛隊が使用する国有提供施設等の所在する市町村に対し、助成交付金を交付するためのものであります。  次に、施設等所在市町村調整交付金に必要な経費でありますが、五十八億円を計上いたしております。  これは、特定の防衛施設が所在することに伴い税財政上特別の影響を受ける施設等所在市町村に対し、調整交付金を交付するためのものであります。  次に、新産業都市等建設事業債調整分の利子補給に必要な経費として、六億二千三百万円を計上いたしております。  これは、新産業都市、工業整備特別地域等の建設、整備の促進を図るため、建設事業債の特別調整分について利子補給金を交付するためのものであります。  次に、公営企業金融公庫の補給金に必要な経費でありますが、四十一億六千六百万円を計上いたしております。  これは、公営企業金融公庫の上水道事業、下水道事業、工業用水道事業、交通事業、市場事業、電気事業、ガス事業及び駐車場事業に対する貸付利率の引下げに関連し、同公庫に対し補給金を交付するためのものであります。  次に、公営地下高速鉄道事業助成に必要な経費でありますが、五十六億九千八百万円を計上いたしております。  これは、昭和四十七年度から昭和五十七年度までの間において発行された公営地下高速鉄道事業債の支払利子に相当するものとして発行を認めた企業債の利子の一部について、地方公共団体に助成金を交付するためのものであります。  次に、公営交通施設改良モデル事業に必要な経費でありますが、三億円を計上いたしております。  これは、地域の中核的施設である公営交通のターミナル等について、高齢者や身体障害者に配慮した改造をモデル的に行う地方公共団体に対し事業費の一部を補助するために必要な経費であります。  次に、明るい選挙の推進に必要な経費でありますが、二十一億四千三百万円を計上いたしております。  これは、政治改革の趣旨・内容の周知徹底を引き続き行い選挙人の政治意識の高揚を図る等のために必要な経費であります。  次に、政党助成に必要な経費でありますが、三百十六億一千六百万円を計上いたしております。  これは、法人である政党に対し交付する政党交付金等に必要な経費であります。  以上が自治本省についてであります。  次に、消防庁について、御説明申し上げます。  消防防災施設等整備に必要な経費として、二百二億九千六百万円を計上いたしております。  これは、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、災害に強い安全なまちづくりを推進するため、耐震性貯水槽、画像伝送システム、消防団拠点施設、防災無線、緊急消防援助隊関係資機材、ヘリコプター、高規格救急自動車などの諸施設等を地域の実情に応じて重点的に整備するために必要な経費であります。  第二に、特別会計予算につきまして、御説明を申し上げます。  自治省関係の特別会計といたしましては、交付税及び譲与税配付金特別会計があり、交付税及び譲与税配付金勘定と交通安全対策特別交付金勘定があります。  まず、交付税及び譲与税配付金勘定の歳入予定額は、三十三兆九千四百七十二億四千二百万円、歳出予定額は、三十三兆八千百二十八億四千二百万円となっております。  歳入は、「交付税及び譲与税配付金特別会計法」に基づく一般会計からの受入れ見込額、地方道路税の収入見込額、石油ガス税の収入見込額の二分の一に相当する額、航空機燃料税の収入見込額の十三分の二に相当する額、自動車重量税の収入見込額の四分の一に相当する額、特別とん税の収入見込額等を計上いたしております。  歳出は、地方交付税交付金、地方譲与税等譲与金及び借入金の償還財源等の国債整理基金特別会計への繰入れ等に必要な経費であります。  次に、交通安全対策特別交付金勘定の歳入予定額は、九百九十一億二百万円、歳出予定額は、九百十三億八千九百万円となっております。  歳入は、交通反則者納金の収入見込額等を計上いたしております。  歳出は、交通安全対策特別交付金等に必要な経費であります。  以上、平成九年度の自治省関係の一般会計及び特別会計予算の概要を御説明申し上げました。     —————————————
  166. 石川要三

    ○石川主査代理 以上をもちまして自治省所管につきましての説明は終わりました。     —————————————
  167. 石川要三

    ○石川主査代理 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましては、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。若松謙維君
  168. 若松謙維

    若松分科員 新進党の若松謙維でございます。  先日の予算委員会、ありがとうございました。また引き続きよろしくお願いいたします。  最初に、自治省の分科会ということでございますので、まず、埼玉県で今大変な話題となっておりますYOU And I推進計画についてお伺いいたします。  御存じの埼玉県、東京の隣ということで、東京依存から今脱却しようと頑張っております。そういう中で、今、自立性の高い県内の中枢都市圏の育成、これを目指しまして、大変古い話ですけれども昭和五十五年に、大宮市、上尾市、浦和市、与野市、伊奈町、この四市一町の首長によります埼玉中枢都市圏首長会議、これが発足いたしました。それ以来、政令指定都市の実現を目指しまして、それぞれ、大宮とか、その頭文字をとってYOU And Iという計画ができたわけでありまして、現在、このYOU And I計画のコアといたしまして、埼玉新都心計画、これは二兆円プロジェクトの、あの大宮操車場跡地、ここに、いわゆる中央省庁を含めた約二十省庁近くの機能が移転する、そんな計画が今進行中で、かつ、いよいよ、先月でしたけれども、そのシンボル施設となります埼玉アリーナ、これも着工いたしました。  こういう中、今の地方分権、これは大変国政の重要課題となっておりますので、この埼玉県におきますYOU And Iの計画のあり方、また充実、これは非常に重要な一つの政策だと思いますので、国の積極的支援を促す立場から質問をさせていただきます。  まず一点目に、政令指定都市に移行するために必要とされる要件ですけれども、法律上は、単に人口五十万人以上の都市、これだけしか規定しておりませんので、具体的にどのような要件を満たせば政令指定都市に移行できるのか、この点について御答弁いただきたいと思います。
  169. 松本英昭

    ○松本政府委員 政令指定都市の指定要件でございますが、今委員御指摘のように、法律上は、人口五十万以上の市という要件だけしか規定されておらないわけでございます。  この政令指定都市制度は、戦後、特別市制という制度が最初の地方自治法に規定されておりまして、その特別市というのは、今の府県から完全に離れた制度として規定されていたわけでございます。しかし、その指定をめぐりまして、指定をする法律が制定することができなかったという背景等があって、当時は恐らく東京を除く五大都市が想定されていたのだと思うのですけれども、そういうことで、結局、昭和三十一年にその特別市制にかわってこの政令指定都市という制度が制定されたという経緯がございます。  したがいまして、この政令指定都市がそもそも想定しておりました都市というのは、恐らく当時はこの五大都市というようなものを想定していたのではないかと思われるわけでございまして、そういう面から、その後、現在十二政令指定都市ございますが、政令指定都市の指定に当たっては、そういう五大都市に並び得るような可能性のある都市ということを一応念頭に置いて指定作業が行われてきたというのが歴史的な事実ではないかと思っております。したがいまして、その中には、行財政能力とか、そういう体制の問題等も勘案をして政令で指定するというのが、これまでの実態上の取り扱いであったというように私どもも理解しているところでございます。
  170. 若松謙維

    若松分科員 今おっしゃった、五大都市を想定というのはわかりやすいと思いますけれども、そうしますと、例えば、一番最近の政令都市化ですと千葉市、ちょっと五大都市の基準にはかなり規模が小さいのかなと思うのですけれども、その点はいかがですか。  それとも、やはり今の状況をかんがみて、やはり情報伝達手段もよくなっていますし、そういった技術発展も含めて、この五大都市以上に、何というのでしょうか、いわゆる緩和されているのでしょうか。そこら辺の判断基準を示していただきたいと思います。
  171. 松本英昭

    ○松本政府委員 その後、政令指定都市が指定がふえてまいりましたときに、いろいろ議論のあったところでございます。そういうことで、一番最近の千葉市の政令指定都市の指定に当たりましても、先ほど私が申し上げましたようなことを念頭に、いろいろと政府部内で検討したことだけは間違いないところでございます。  その際に、確かに、現在千葉市は人口がまだ八十万台なわけでございますけれども、行く行くは恐らく、いろいろな計画を見てみますと、人口は百万ぐらいには達するであろうとか、それから、恐らくいろいろな、都市的な、大都市としての機能を社会的にも備えていくだろうとか、そういうことを勘案をして指定いたしておりまして、やはり基本的には、先発の大都市と同じような都市としての形態と力を備える可能性があるということをもって判断したというのが当時の状況であったと思っております。     〔石川主査代理退席主査着席〕
  172. 若松謙維

    若松分科員 そうしますと、いわゆる将来の発展、例えば合併があって、そして政令都市化ということですけれども、仙台なんかですと、当初、近郊の市を若干合併して、それからさらに最近、泉市でしたっけ、そういう形で、いわゆる成長でしょうか、それが望まれた。  そういうことになりますと、ちょっと、質問が余り具体的だとまたお答えにくいでしょうし、また抽象的だとお答えにくいのでしょうけれども、いわゆる合併して政令都市化する、この間が非常に大事なんですけれども、御存じの、特に埼玉というのは九十二市町村、非常に全国的にも数が多いということで、やはり行政の効率化のために合併が非常に求められている。そういう中で、やはり合併を、幾つかの過程を想定しているわけですけれども、それから政令都市にいく一つの準備期間というのですか、これは基本的にどういったものがポイントになるわけなのですか。
  173. 松本英昭

    ○松本政府委員 合併をして、そのまま政令指定都市になりました北九州市の例もございますので、合併をして、期間を置いてでなければならないというようなことはございません。  したがいまして、合併をした姿が、やはり政令指定都市としての要件、そして先ほどから申し上げておりますような社会的あるいは行政的実態というものを備えているという判断がありますれば、合併をした新しい市が政令指定都市になるということは十分あり得ることでございます。
  174. 若松謙維

    若松分科員 そうしますと、では若干具体的な形で質問させていただきますけれども、従来の政令都市の人口、面積、これの平均値を見ますと、指定時で大体人口百二十万人、そして面積四百六十四平方キロメートル、これが一般の平均だと聞いております。そして、例えば先ほど御紹介いたしましたYOU And Iを想定いたしますと、四市一町が合併した場合には、平成八年十月現在で、人口が約百二十二万、面積は約二百二十九平方キロメートル、これが実態となっておりまして、この規模というのは従来の政令都市の条件をクリアしていると私ども考えておりますけれども、自治省の見解はいかがでしょうか。
  175. 松本英昭

    ○松本政府委員 御指摘のように、現在の平均値は先ほどの御指摘のとおりでございますが、この埼玉県の四市一町のそれぞれの要件も、人口と面積の面でいいますならば、それに遜色のない条件を備えていると言えるのではないかと考えておるところでございます。  具体的な指定に際しましては、先ほどからもお答え申し上げておりますとおり、都道府県から政令指定都市に移ることとなります事務処理、それに対応していける行財政能力があるかとか、あるいは人口、面積以外の諸要素、都市的な要素等も総合的に勘案して、それで判断をしていくべきものと考えているところでございます。
  176. 若松謙維

    若松分科員 備えているというようなお話をいただきました。  これは大臣にお伺いしたいのですけれども、このいわゆるYOU And Iと言われます政令市移行計画、大臣、大宮に来られたことはございますか。ありがとうございます。そして、この政令都市以前に四市一町の合併、これが今地元でかなりホットな議論が行われておりまして、特に先ほどお話ししました埼玉新都心、これが完成しますと、約五万七千人の新しい就業人口が見込まれる、こんな経済的な推測も見られております。そのための住宅確保、これが非常に重要な課題になっておりまして、その住宅確保に上尾とか伊奈町、これが最適な条件を備えているということで、やはり政令指定都市、例えば職、住、学、遊、こういった諸条件を全部備えた自立都市、こういうことも恐らく想定されていると思いますので、その場合には上尾、伊奈も含めた四市一町の圏域、これが一つの政令都市を目指した場合に最適かな、そんな動きが今主流になっております。  そういうことで、今後地方分権を具体的に推進する観点、これもちょうど三年前くらいですか、当時の石井自治大臣が、合併の促進を積極的にやると、初めて自治省が出されました。それから政令都市の具体的な議論は余りなかったのですけれども、いわゆる合併から政令都市に向けて、このYOU And Iも含めて、国はこういう動きに非常に積極的に関心を持っていただき、また注目もしていただき、そして何らかの積極的な支援策もぜひとっていただくべきものではないかと考えますけれども、自治大臣のお考えはいかがでしょうか。
  177. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 今、かつてよりも市町村合併というのが大変熱心に言われるようになりまして、自治省といたしましても、鋭意努力をいたしているところでございます。  今問題提起ざれたこのYOU And Iの構想というのは、普通、市町村合併というのは、三千三百ある、特にこれから地方分権の時代に、町村、しかも数千人しかいない町村で本当に大きな仕事がやっていけるのかというところから出る問題が多いのでございますが、こちらはむしろ首都圏の核の問題の方が大きいのではないかな、こう存じております。  私も、国土政務次官をやらせていただいて以来、首都圏という問題がずっと頭の片隅にあるわけでございます。国土全体の中で東京が一極集中というだけではなくて、関東圏の中でも東京が余りにも一極集中である。そういうところから、埼玉都民なんという言葉も、あるいは千葉都民というような言葉も生まれているわけでございまして、東京の周辺に横浜あり、そして千葉ありという中に、このYOU And Iというような、埼玉県にも一つの大都市の機能を、現在東京が果たしている大きな機能の一つを果たすことができる核ができることは、首都圏の本来のあり方から見ても非常に望ましい姿ではないかと思います。  そんな中で、埼玉県において、埼玉県の発展ということも含めて、また一方では当然そういうことも視野に入れながらこういう努力をされているということに敬意を表しますとともに、自治省としては、またお手伝いできるところがありましたら最大限の御協力をさせていただきたい、こういうふうに考えております。
  178. 若松謙維

    若松分科員 先ほど、積極的かつ最大限の御支援をいただくということをいただき、力強い言葉をいただきました。三月、四月が恐らく、今枠組みの問題で、三市とか四市一町とか、また二市一町とか、そういう議論がありますけれども、いずれにしても、そういう議論をぜひとも自治省として前向きに、政令都市はこれはみんなの思いですので、そういう方向を御認知いただきながら、積極的な御支援を改めてお願いする次第でございます。  続きまして、関連質問という形で質問させていただきたいのです。  この政令指定都市、万が一これが実現した場合に、当然、人、物の交流がさらに一層活発化するということで、例えば地域のモノレール計画とか、やはり経済人が先行していろいろなアイデアを出しております。そういうことで、関連質問といたしましては、先ほどのYOU And Iを中心とします地域の道路並びに鉄道整備についてお伺いさせていただきます。  これは建設省に関係するのですけれども、まず第一に道路整備についてお伺いいたします。  このYOU And Iの圏域をちょうど貫いております幹線道路の国道十七号バイパス、これは大変混雑がひどくて、北上尾付近の実測値は一日当たり交通量が大体五万四千台ということで、これは四車線道路なのですけれども、慢性的な渋滞を起こしております。この十七号バイパスの混雑緩和に貢献をして、なおかつ南北方向の交通機能円滑化に大きく寄与する新しい道路に地元の期待が非常に大きいということで、早くしてくれ、早くしてくれと、私ももう一方回くらい聞いております。そんな状況であります。  でも、やはり進展が見られておりまして、特に上尾道路ですね、いわゆる十七号バイパスの混雑緩和をするための新しい道路、上尾道路、これが平成元年十二月に都市計画決定がなされて以来、いわゆる起点である宮原あたりから桶川の県道川越栗橋線の接するところまでの約八・九キロメートル、これがことしから用地測量に入った。さらに、用地買収にも着手すると聞いております。  まず、この用地買収ですけれども、これは平成九年度から始まるんですか。ちょっと確認させていただけますか。
  179. 城処求行

    城処説明員 御説明を申し上げます。  上尾道路でございますが、御指摘をいただきましたとおり大変重要な道路だということで、私どもも全力を挙げてやっていきたいと考えております。  それで、お話がありましたとおり、この三月から、道路の幅を決める御説明を地元の方にさせていただいております。それを受けまして、順調に進めさせていただけますれば用地買収の方にかかっていけるという見込みで、我々としても全力を挙げて進めていきたいというふうに考えているところでございます。
  180. 若松謙維

    若松分科員 埼玉国体が平成十六年に予定されておりまして、熊谷バイパス、これと、先ほどの起点ですね、ここがなかなか通らないということなのです。特に桶川−鴻巣間、これはまだ事業化されていないのですけれども、改めて、まず、ここについての見込みはいかがなのですか。  といいますのも、こういった道路建設は、これは建設省の方から聞いたのですけれども、南からやると。南にこだわるとなかなか北ができないのですね。ですから、例えばできるところから、やりやすいところからという方法もあると思うのですけれども、それも含めて、桶川−鴻巣間はどうなるか、ちょっとお答えをいただけますか。
  181. 城処求行

    城処説明員 これは先生御承知のとおり、上尾道路は全長が二十キロに及ぶということで、大変大規模な道路であるわけでございます。御指摘もいただきましたが、ただいまは、より交通量も多いというようなことで、南側の約半分、新大宮バイパスの終点付近から、圏央道、これも計画中でございますが、そこに結ぼうということで事業を進めさせていただいているということでございます。  先ほど申し上げましたように、この間につきましてもやっと用地買収で頑張っていきたいという段階でございますので、こういった状況を見ながら、当然北の方も進めていかなくちゃいけないというふうに考えておりますけれども、その辺の進捗状況を見ながら検討をしていくというふうに考えております。
  182. 若松謙維

    若松分科員 もう一つ、これは平成十六年に間に合わしたいということで、建設省の前の事務次官がたしか大宮建設局にいたのじゃないかと思うのですが、前の事務次官がこの計画に大変こだわっているというか力が入っているようでして、ぜひとも平成十六年までに何らかの目安というのでしょうか、そういったものも地元として大変要望が強いのですけれども、それはいかがでしょうか。
  183. 城処求行

    城処説明員 十六年に埼玉国体が開かれるというふうにはお聞きしておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、上尾道路につきましては、大変規模が大きい、また都市部でございますのでなかなか難しい問題も抱えておる中で、もちろん精いっぱいやっていきたいというふうに思っております。  そういうことで、工程上はなかなか厳しいものがあるということでございますが、努力をしてまいりたいと思います。
  184. 若松謙維

    若松分科員 そうしますと、当然予算は限られているわけですから、それぞれ全国的にいろいろと予算をちりばめると思います。そういう中で、埼玉的に考えると、この上尾道路の重要性というのですか、優先順位、ちょっとそういう点からも質問させていただきたいのです。  例えば、ちょうど秩父のトンネルがそろそろ終わるのですよね。そして、とりあえず圏央道も途中までできましたし、そういうことで、いよいよ上尾道路の番かな、そういうことで期待しているのですけれども、具体的に予算規模とか、そんなのはお話しできるのですか。
  185. 城処求行

    城処説明員 九年度の予算につきましては、御承知のとおり、私どもの道路事業につきましてもほぼ前年度同額というようなことで、全体といたしましては作業を進めているところでございます。  個別にどこをどの予算でやるのかというのは、ただいま作業をさせていただいているわけでございますし、また御審議をいただいているところでございますが、今お話ございましたとおり、道路も一遍にはなかなかできませんけれども、順次、重要な順に進めていくということでございますので、それにつきましては、先生の御指摘を体して努力をしてまいりたいと考えております。
  186. 若松謙維

    若松分科員 もう一つ、圏央道もちょうど桶川がジャンクションになる予定をしておりまして、これもかなり重要な、特に首都圏の一環として重要プロジェクトだと思います。そういった観点からも、この圏央道促進、これもぜひ前向きにやっていただきたいと思うのですけれども、その点もあわせてよろしくお願いいたします。  そして、今度は運輸省に質問させていただきます。  JR高崎線、本当はJR東日本ですけれども、民営化なので運輸省に聞くのはどうかなとは思うのですけれども、三十数%株をお持ちだということで、この手法もやむを得ないかなと。できれば全部株を売却して民営化して、そんな観点から、直接JRの担当者への質問がいいのかなとも思っているのですけれども、それは置いておきます。  このJR高崎線、特徴といたしまして中長距離利用者が多いということで、この特性考えますと、山手線みたいに一車両六つのドアとかじゃなくて、いわゆる着席率の向上とか輸送の質的向上、これが一つ求められる点かな。そういう観点から、二階建て車両とか、例えば今東大グループで提案しております新型車両の導入、こういったものを積極的に検討すべきと思いますが、その点いかがでしょうか。
  187. 小野山悟

    ○小野山説明員 JR東日本におきます二階建て車両の運行につきましては、東海道本線におきまして、遠距離着席サービスを提供するという観点から、貨物路線を使いましてオール二階建て車両を運行しているところでございます。高崎線につきましては、別線もなく、混雑緩和と着席サービスの双方を勘案する必要があることから、二階建て電車の導入につきましては、今後の高崎線の利用客の状況を見きわめながら検討していきたいとしております。  また、東京大学生産技術研究所の須田助教授のグループの座席配置の改善案につきましては、混雑率が一〇〇%のときの検討結果でございまして、座席数は増加いたしますけれども、立席面積が減少する結果となっております。  JR東日本におきましては、この検討結果を採用した場合、ラッシュ時間帯においては立席面積が少なくなることによりましてかえって混雑が増加することとなるため、今後さらなる検討が必要であると聞いております。
  188. 若松謙維

    若松分科員 ぜひそういった点も検討していただきたいと同時に、今度は量の向上ということで、今信号機システムをATS−P型に改善する計画が進行中と聞いております。そうしますと、一割ぐらい増発になるのかな。さらに、池袋乗り入れ増発計画もあわせてお答えいただけますか。
  189. 小野山悟

    ○小野山説明員 P型の自動列車停止装置は、列車衝突時の事故を踏まえまして、昭和六十三年十二月開業の京葉線に導入されて以来、東京圏の主要な路線に設備されてきております。  高崎線につきましても、大宮−宮原間が平成五年十月より使用されておりまして、平成九年度には宮原−籠原間に設備する計画とされております。これによりまして同線の混雑区間はP型の自動列車停止装置によりおおむねカバーされることとなります。  また、高崎線の列車の池袋乗り入れにつきましては、昭和六十三年三月から実施しているところでありまして、現在は、一日当たり上下合わせて四十七本の列車を運行しているところでございます。  JR東日本におきましては、高崎線を含む首都圏の混雑緩和対策について、緊急度の高いところから順次投資を行い、対策を講じていっているところでございます。高崎線の池袋乗り入れの増発につきましても、この方針のもとに、利用状況等を勘案しながら対処してまいりたいと考えているとのことでございます。
  190. 若松謙維

    若松分科員 ぜひ、今おっしゃったようなことを改めてJR東日本の方にお伝えください。  そして、もう時間ですので、ちょっと質問というよりも若干の主張なんですけれども、やはりこの高崎線、大宮−宮原間が一番混雑率が高いところでありまして、そのために、当初埼京線を宮原まで持ってくるということで土地買収、約八割ほど買収しているようです。ちょうど五メートルの幅なので、それが転用できるかというと実際できない。それを持っているのがJR東日本ということで、いわゆる資産というのでしょうか。それは、当時の国鉄の民営化の中で当然JRさんも、いわゆる国鉄債務を引き継いだわけですけれども、やはりこういった資産も引き継いでいるわけなんですね。そこら辺が、ただ所有しているというのもちょっと今の時代、理解がしがたいと思います。これにつきましては、また機会がありましたらまたお話をさせていただきたいと思います。  いずれにしても、ぜひともこの高崎線の混雑緩和の御努力、運輸省の方、よろしくお願いいたします。  以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  191. 相沢英之

    ○相沢主査 これにて若松謙維君質疑は終了いたしました。  次に、今井宏君。
  192. 今井宏

    今井分科員 今井宏でございます。大変お疲れのところ大変恐縮でございますけれども、質問を早速させていただきます。  実は、最初の質問は、排水路を何とか地方交付税で見ていただくように制度改正にお力をちょうだいしたい、こういう趣旨で御質問をさせていただく次第でございます。  人間と水とのかかわりというのは一番肝心かなめでございまして、いわゆる水のあるところに文明が開かれてくるわけですし、江戸も大阪もともに、水の都江戸、水の都大阪、こういうふうに言われているわけであります。  実は、私が住んでおります地域も大変低湿地帯でございまして、草加市の例をとらせていただきますと、草加市内に、全域の面積がたった二十七平方キロという小さな面積なんでございますが、そこに、道路延長と同じような数の延長三十四万メートルに及ぶ排水路が張りめぐらされているわけでございます。したがって、水の利によって育った町が、今度は水の不便さ、いわゆる水害に変わってしまったわけでございます。  実はこの排水路でございますけれども、国の制度では公共施設という位置づけがされておらないわけでございます。河川でもなく公共雨水でもなく、要するにただ単なるどぶだよ、こういうことになるわけでして、補助金もつかない、交付税の需要額にも算入されることがない、こういうことになるわけでございますが、そこに生活している私たちにとっては、どぶを改修する、整備をするというのは、やりたい事業じゃなくてどうしてもやらなければならない事業であるわけでございます。  そういった関係でございますので、うちの都市、大体一般会計で五百億程度なんですが、毎年十億、二十億の単位を市単独事業費でつぎ込んでいるわけでございます。  また、その排水路なんでございますが、これを整備するのみならず、今度は維持管理をする、あるいはヘドロのしゅんせつ、こういうことで大変な費用がかかるわけでございます。  私たちも懸命な努力をして、それなりの治水対策効果あるいは環境整備も向上はしてきておるわけでございますが、ぜひ地方交付税制度の中で、低湿地帯の排水路対策経費につきまして基準財政需要額に導入するお考えはいただけないものかと長年要望させていただいているところでございますが、その辺につきまして改めてお聞かせをいただきたいわけであります。
  193. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 ただいまのお尋ねのいろんなタイプの水路の問題は、関係地方団体で大変頭の痛い話でございまして、各地からそういうふうなお話を私ども承っております。  これにつきましては、以前に臨時行政改革審議会が行われました際にもこの問題が取り上げられまして、この答申の中で、その管理の実態を踏まえて、管理の仕組みでございますとか、それから敷地についての権限の帰属のあり方、こういうことについて関係者間で検討、協議をすべきである、あわせて管理費用等についての措置について検討する、こういうふうな答申がございまして、関係省庁間で、それ以前からも相談の場はございましたけれども、この臨時行革審の答申を受けて検討会議をつくって関係省庁間で相談をいたしておりましたけれども、なかなか結論に至っていないというのが実情でございます。  何よりもまず、法的な位置づけでありますとか、その管理責任がどこにあるかということをやはり明確にするということが大切であるということで、私どもは、毎年各省庁に予算の編成に対しまして地方の財政措置についての申し入れを行っております中にもこの問題を取り上げて、認定外の道路、普通河川等のいわゆる法定外公共財産について経費の負担を地方団体に余儀なくされているケースがあるということにかんがみて、法的な位置づけを行い、行政上の管理責任、経費負担等について早急に明確にしてほしいということを申し入れておるようなことでございます。  なかなか簡単に結論出ない話でもございまして苦慮いたしておりますが、まずやはりそういう法制上の位置づけが明確にされ、また、国による財源措置等もやはり考えていただく必要があると思っておりまして、そういうものを踏まえて、地方の財政措置というものもあわせて検討していく課題かなというふうに今考えているところでございます。
  194. 今井宏

    今井分科員 私、中国の友人がいるんですが、書をやっていまして、長江の水は江戸に通ずると書いてきたんですね。いわゆる揚子江の水は江戸に通ずると。水が一緒ですから。実は排水路の水も長江に通ずるわけなんですよね。  法的な位置づけがないということなんですが、なぜ法的位置づけができないのだろうか。また、どうしても法的位置づけができないのであれば、地方自治体の立場に立つ自治省さんとして、例えば何か優秀な職員を使って大臣のリーダーシップで、草加だけの問題じゃなくて、大都市周辺はみんな水に近いところに生活しておりますので、大阪でも寝屋川付近なんか大変だと思うんですよね。持ち出しも大変なことをしていると思うんですが。特交あたりで見られるとか、あるいはほかの制度で何とか交付税あるいは何かの助成措置がとられるとか、そういった知恵がないものなんだろうかと、その二点をちょっとお聞きしたいんでございますが。
  195. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 これはいわゆる、特に水路の場合には現在これは普通河川と言われておりまして河川法の適用を受けないものですから、河川法の観念での法的な位置づけがなかなか難しいということでございます。  それから、形態もさまざまでございまして、今の草加市のようにかなり都市化した中に残っているケースもございますし、それから、九州なんかで私ども時々お話を伺いますのは,農業用の水路がもともとの土地改良区が管理し切れなくなって、それが市町村で管理せざるを得ないというふうなケースがあって、これを何とかいろいろ考えてくれないかというようなお話があったりいたします。  さまざまな形態がございまして、確かに、今の農業用水路の問題につきましては私どもも何とか特別交付税でも検討してくれないかというお話をいただいたことはございますけれども、全般的な問題としては、先ほど申しましたようなやはりそういう法的な位置づけとか権限ということを明らかにするということが大前提だなというふうにはお話を申し上げてきておるところでございます。  もう少し、今おっしゃいましたようなことも含めて私どもも引き続きまた関係省庁とも相談をいたしたいと思います。私どもなりにまた今おっしゃられた趣旨を研究させていただきたいと思います。
  196. 今井宏

    今井分科員 ありがとうございます。  大変な問題、よく承知はしておりますけれども、何せこういう財政逼迫、国も一緒なんですけれども、している状況の中でかなり多額のお金が毎年経常的にかかるものですから、ぜひ何とか前向きにお取り組みをいただきたい、こういうふうに思っております。  次に、過日、御案内のように地方六団体から政府の地方分権推進委員会に対しまして意見書が提出されたところでございます。その意見書では、地方分権を推進していく上に、制度的な課題、これ、全般にわたって地方団体としての意見を取りまとめ、意見書として提出されているわけでございますが、とりわけ税財源問題に関しまして、奨励的な補助金約四兆円を向こう三年間のうちに半減をさせる、四兆円のうち一兆円を地方税に、残り一兆円を地方交付税に、そして地方の一般財源にすべきだ、こういう意見書であるわけでございますけれども、この件に関しまして、六団体の意見書の評価を自治省としてはどのようにお考えになっていらっしゃるのかお聞かせいただきたい、こういうように思うわけです。  次に、この六団体の意見書に沿った形で改革が進められるべきだと私も考えておるわけでございますけれども、この六団体の所見に対しまして自治省さんのお考えをちょうだいしたいと思います。
  197. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 地方六団体から、今委員お挙げになりましたような提言が分権推進委員会に出されております。奨励的補助金が今補助金全体十三兆円のうち四兆円ぐらいございますが、その半分を一般財源に整理した上で振りかえてほしい、こういうお話でございまして、補助金の整理ということが大きな課題である中で、その目標量といいますか、それを総量として設定をされて計画的な整理を促すという地方サイドからの積極的な提言であるというふうに私どもは受けとめております。  この補助金の整理ということは地方分権の推進に当たっても重要な課題でございまして、私どもも、分権委員会との意見の交換の中で、この国庫補助金の整理合理化の内容や規模に応じて地方への税源移譲あるいは地方交付税などの一般財源の拡充という明確な形での財源措置を行っていくことが必要である、重要な課題であるということはまた申し上げておりますし、私どももそういう認識で取り組んでおるところでございます。
  198. 今井宏

    今井分科員 ありがとうございます。  分権推進委員会の方に積極的な取り組みを私たち期待しておりますし、とりわけ自治省さんのフォローアップも期待しているところでございます。漠然とした形で税財源を地方に移譲するんだと言うだけではなくて、具体的に作業を進めていかなければ本当の分権型社会はできない、かように思っておりますので、引き続き大きな期待をしておりますので、お力をおかしいただきたいと思います。  次に、その税財政システムの改革に対しまする考え方につきましてお尋ねを申し上げたい、こういうように思っています。  地方の単独事業と地方債、地方交付税措置との制度上のリンケージが、過日の地行の委員会でも申し上げましたが、すごく強まってきているわけであります。補助金から地方交付税と財源の依存先が変わりつつある中で、市町村においては県の地方課の存在、都道府県にとっては自治省の存在というものが大変むしろ大きくなってきているわけであります。このままのシステムで交付税にどんどん切りかわっていったときに、国と地方との新しい関係が、形を変えて自治省と地方自治体との従属関係につながってしまうおそれはないんだろうか、こういう意味でちょっと気になっているところでございます。  そういう意味でも、地方分権の推進にとってまず何よりも不可欠な地方財源は、地方交付税ではなく地方税であるべきだろう、一般財源ではなくて自主的財源であるべきだろう、こう考えるわけであります。先ほどの六団体の意見書の中でも、地方税の拡充を通じて自主財源の確保を図っていく、こういう趣旨だろうと思いますが、その実現のためにどのように国と地方の税制度の抜本的な見直し、改革をしていくのか、これが分権論議の中でも大切な部門である、部分であると考えているわけでございます。  で、ここで改めて再度、地方税財源問題の抜本的な改革に向けた筋道をどうしていくのか、具体的な中身をどうつくっていくのか、その辺につきまして自治省さんのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  199. 湊和夫

    ○湊政府委員 国、地方の税のあり方についてのお尋ねでございますけれども、先ほど来御論議がございますように、分権推進委員会におきまして、ことしの前半ということでございますが、それを目途に補助金あるいは税財源のあり方について最終的な御答申をいただくということで御論議が進んでいるわけでございます。  で、昨年十二月の二十日にちょうだいいたしました中間の取りまとめにおきましては、この国、地方間の税財源のあり方については、基本的に、まず地方税に関する姿勢としてはこういうことが書いてある。御承知のとおりだと思いますが。   地方税については、基本的に、地方における  歳出規模と地方税収入との乖離をできるだけ縮  小するという観点に立って、課税自主権を尊重  しつつ、その充実確保を図っていくべきであ  る。   その際には、できるだけ税源の偏在性が少な  く、税収の安定性を備えた地方税体系の構築に  配慮すべきである。こういうことを基本に据えておられまして、その背景には、国、地方を通ずる今回の権限あるいは事務の見直し、それから補助金等の整理、こういったものに対応しながら、地方の税財源を全体としてまずどうするかという基本に立って、地方の一般財源の増強を図る際に地方税における役割というものを期待をしておられる、こういうふうに理解をいたしております。  そういう分権推進委員会のこれからの議論の展開を十分私ども踏まえながら、適切な対応に努めてまいりたいというふうに考えております。
  200. 今井宏

    今井分科員 自治省でも研究会を開いていらっしゃるようでございまして、いろいろと自主財源の確保について研究をしていただいているというのも承知はしておるわけでございますが、そういう中で、今お話しの六団体の話でいうと、約一兆円を偏在の少ない消費税とか、あるいは所得税から地方税へ移管していく、こういうことでございますが、どう政策化していったらそれが可能なのかお教えいただきたい、こういうふうに思っています。  あわせて地方交付税でございますが、交付税率も上げていかなければいけない、上げていってほしい、こういう申し入れがあるわけでございますが、これにつきましてはどういう施策で具体的に可能なのか、お教えいただきたいと思っています。
  201. 湊和夫

    ○湊政府委員 六団体の意見にあります一兆円を地方税で、一兆円を交付税で、そういう御主張をされておられます。これは先ほど財政局長からお答え申し上げましたように、六団体としての御意見をまとめられて、税のみでも六団体全体としては必ずしも好ましくない、財政の弱い団体のことを考えればやはり交付税の充実ということもあわせて考えるべきだ、こういう考え方だと思いますけれども、その際の、一兆円をどういう形で地方に対して手当てをしていくかということにつきましては、おっしゃるように、仮に一兆円ということになりますとかなりの規模でございますので、現実にこれを国の税から地方の税に移すのだということになりますと、かなり税目としてはあるいは手法としては限られてくるとは思っております。  ただ、今の段階で消費課税がいいとか所得課税がいいとかいうことをちょっと申し上げられる段階では正直言ってなかろうと思っております。これからの事務配分の見直しとか補助金の整理合理化によって、現実にどういう規模のものを、本当に地方にとって、地方税の充実の中で実現していくかということをもう少し見きわめながら、具体的な対応、あるいは税収、税目のあり方とかいうものについてはこれから検討させていただきたい。  分権推進委員会でも、したがって今までではそういった議論はほとんどされておりませんで、今後、分権に当たっての大枠の詰まりぐあいを踏まえながら、これから個別の問題として詰めていく課題かなというふうに思っております。
  202. 今井宏

    今井分科員 推進委員会に積極的な働きかけと言ったら失礼かもしれませんが、ヒアリングもあるはずですし、半ばには第二次の勧告も出るわけでございますし、自治省としては当然、地方自治体を自主、独立で分権社会をこしらえていくのなら、こういう自主財源をしていかなければいかぬよ、こういう一般財源を確保していかなきゃいけないよと、強い見解を、主張をぜひしていただきたい。強く期待しておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  局長は、かつて私もお世話になりました埼玉県でいろいろと御指導いただきましたので、埼玉県のことはよく承知だと思いますけれども、最後にちょっとその辺を触れさせていただきたいと思っておるわけでございます。  これも平成八年度の地方財政白書を見まして、都道府県の人口一人当たりの歳入総額は、全国平均が三十九万四千円、上位の五つの県の平均値が六十八万五千円、東京都は五十一万八千円、埼玉県は神奈川県に次いで下から二番目で、何と二十三万八千円、こういうことになっておるわけであります。  その中身を見ますと、上位五県の地方税収入は八万三千円、東京都は二十六万九千円、埼玉県はたった八万三千円、こうなっているわけであります。地方交付税収入でございますが、これも上位五県が十九万九千円、当然のことながら東京都は不交付団体でゼロでありますが、埼玉県は二万五千円、こういうふうになっておるわけでございます。  したがって、埼玉県は地方税収においても東京都に大きく水をあけられておりますし、地方交付税収入におきましても上位五県と大きな差があるわけでございまして、全体の財政規模としては全国でも最も低い水準になっているわけでございます。  歳入だけではなくて歳出の面で見ましても、人口一人当たりの投資的支出額を見ますと、上位五県の平均値が二十七万二千円、東京都が十四万三千円、埼玉県はたった六万四千円、これも最も低い水準になっておるわけであります。数値上最下位に位置づけられている神奈川県でございますが、これは横浜、川崎という大きな政令市があるわけでございまして、県の事務事業、財源の多くが政令市に移管されていることから推測いたしますと、埼玉県が財政規模、投資的支出額とも最低の水準にある、このように思うわけでございますし、県下九十二市町村も同様な状況であると思うわけであります。  これからは生産者の視点から生活者の視点へと、そして首都圏で、東京でしっかり東京を稼がせて、勤務し、努力して、そういう人たちが住む場、郊外、いわゆる首都周辺地域で高齢化を迎えるわけでございますので、高齢化を迎えるに当たっての生活関連の社会資本の整備を一定の水準までしていかなければいけないわけでございます。  そういうことを考えてまいりますと、これからの政府の、あるいは国の財政支出のあり方、それから地方の財源配分のあり方、この辺で周辺都市というのは一番ハンディを負っているわけでございます。消費税も、当然のことながら自主財源が多いという、地方税が多く入るということで交付税の少ない周辺都市、しかも税財源の配分のあり方につきましても同じような視点からの配分になっておるわけで、これは抜本的に見直していただかないと、この周辺都市、いわゆる都心で、東京都でしっかり稼いで頑張った人たちが老後を送る、生活する都市の生活関連の社会資本整備ができないわけでございまして、その辺の抜本的な見直しをするべきだと私は考えておるわけです。  そういう認識に対しまして、自治省さんがどういう現状の認識を持って、そしてこれに対する見解をお持ちなのか、お聞きさせていただきます。
  203. 湊和夫

    ○湊政府委員 できるだけ地方税でその団体の歳入を賄うことが望ましいことはもちろんでございます。それから三千三百団体ございますけれども、できる限り普遍的にそういう状況が生じることがもちろん望ましいことは申すまでもございませんけれども、率直なところ、経済力の格差の大きさがどうしても、いろいろな工夫をして、税目あるいは各税目の徴収の仕組み、例えて申しますと、住民税で申しますと均等割という制度は非常に偏在性の少ない形の税徴収になりますし、また住民税の所得割でも、国税に比べますと累進度を極めて低くして実質三段階による徴収を行うということも、全国的な偏在是正に資するという観点では所得課税の仕組みとして有意な仕組みだというふうに考えております。いろいろな形で、税目の構成あるいは各税目の徴収の仕組み、こういったものを工夫しながら現在の制度も組み立てられてきておるというふうに承知をいたしております。  今お話がありまして、県、市町村でその辺の仕組みは多少異なるわけでございますけれども、例えば都市について申し上げますと、現在の都市の税構造はほとんどが二つの税目で構成されている。一つが住民税でございますし、それからもう一つは固定資産税と都市計画税を合わせた形で、この両税を含めますと恐らく九六、七%ぐらいを占めているわけでございます。  特にこの中の住民税の所得割というのは、例えば東京と埼玉の県南都市は確かに生活圏域として一体化しておりまして、勤務は東京で、そして居住を埼玉でという方々はたくさん県南にいらっしゃいますが、逆に東京の目から見ると、東京で稼いだ所得が埼玉の方に移転されている、要するに住民税という形で埼玉の皆さんの方に東京都で稼いだものが皆入っているではないか、こういう議論も一方ではございます。今の仕組みは、ある意味では、大都市あるいは都市にとって税の構造としては伸張性もあるし安定性もある市町村税の仕組みになっているのではないか、基本的な税の仕組みとしては私はそういう認識を持っております。  確かに大都市周辺の都市の人口の急増の問題でございますとか、おくれた公共施設整備に係る財政需要はたくさんある。こういう実態は実態として確かにあるわけでございますけれども、税の構造あるいは税収の規模、こういったものを見ますと、まだ、例えば埼玉の県南都市は、全国的なレベルに比べますと、かなりレベルの高い実は税収入構造にもなっております。県南にはかなり不交付団体もございますし、財政力指数で見ましても、〇・九を超えるようなかなり高い団体もかなりいらっしゃいます。  全体として、交付税も含めて、そういった都市の財政需要が的確に反映されているかどうかということとあわせて、この税構造の問題は検討されるべき問題ではないかなというふうに思っております。全体として、また、県と市町村の税源の割り振りの問題等も都市の税源充実の際にはあるわけでございますが、近年では、だんだんに市町村側の税収ウエートの方が高まるという形で推移をいたしているのは御承知のとおりかというふうに思っております。  今後とも、御指摘のような問題点は当然念頭に置いて、安定した、普遍性のある税の構築に私どもとしても努力していかなければならないと思っておりますが、もっと、実は、過疎地域とかを含めた、地方と東京との税の均衡、こういった議論も大きな課題としてございますので、その点はひとつ御理解を賜りたいと思います。
  204. 今井宏

    今井分科員 時間になりましたのでおしまいにしますけれども局長、そのような御説明をしていただくのも一理あるのは私もよく承知はしておるのですけれども、御案内のように、都市の環境とか住みやすさにおける指標というと、埼玉県とか神奈川はいつも最下位なんですね。すると両知事が、いや、とんでもない、埼玉じゃないよ、こういうとり方すればこういうふうに言えるんだと一生懸命言いわけじみて言っていますが、非常に惨めなんですよ。  それで、実態は、私は、都市の中心都市と、それから地方がそれなりの豊かさがあって、その周辺都市がグリーンゾーンじゃなくてグレーゾーンに実態としてなってしまっているということは否めない事実かと思うのですね。そういう意味では、この配分の方式につきまして、ぜひ積極的なお取り組みを心から期待しまして、本日の質問をこれで終了させていただきます。  ありがとうございました。
  205. 相沢英之

    ○相沢主査 これにて今井宏君の質疑は終了いたしました。  次に、中川正春君。
  206. 中川正春

    中川(正)分科員 御苦労さまでございます。三重県の二区の出身ですが、中川です。  私も、これまで県会議員をしてまいりました。地方自治体の中でいろいろな議論を繰り返すうちに、やはり地方分権に対する思い、それから、住民のそれぞれ意識というのが非常に今大きく変わってきておる、その中で自立を求めていく、そういう流れに即して、どうしてもそれを国のレベルで実現をしていくということが、この国を改めて活性化をしていくその基本であろう、そんな信念にも似たような気持ちに駆られまして国政に挑戦をさせていただいた、そういうことでございます。財政問題を中心にして、あるいは地方分権を中心にしてこれまでいろいろ議論があったように伺っておりますので、私も、余り重ならないように、かつ、現在の状態というのを象徴しておるような話題を特に選びまして質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず、実は、私も県会をしておるときには、過疎地域を抱えた、そういう農村部でやっておりました。三重県の南の方なんですが、松阪を中心にしたところです。今度お国がえになりまして、立候補したところは北の方で、名古屋に近いところで、鈴鹿市とか四日市市とかという工業地帯を抱えた地域で挑戦をしまして、それだけに、本当にいい勉強をさせていただいたように思っております。その県議会のころの過疎地域、それをここでひとつ、改めて国として、あるいは我々新しいシステムをつくり出していくその第一段階にある、いわゆる行政改革の第一段階にある今の状況の中で、一遍見直していく必要があるんじゃないかなという気がしております。  それは、地方分権とか自立とか、あるいはそれぞれ、先ほどのお話にも出ていましたように、税財源というものを国が一括してということよりも、徴税権を地方に与えながらの本当の自立を求めていく、これは、自治省自体のお考えあるいは思いということだろうと思うのです。それを信じながら応援をしていきたいと思うのですが、そういうことがあるだけに、これを進めれば進めるほど、実は過疎地域にとっては、あるいは、これまで経済的に本当に公共事業とかあるいは国の施策に頼らざるを得なかった地域については、逆に非常に厳しい状況が生まれてくる、こういうことであろうかと思うのです。  それだけに、もう一度、これまでの過疎対策というものが本当に効果があったんだろうか、どれほどの評価をしていけばいいんだろうか、そこのところをまずはお尋ねをさせていただきたいと思います。これは国土庁ですか。
  207. 今仲康之

    ○今仲説明員 過疎対策につきましては、昭和四十五年度以来、現在で三つ目の法律になりますけれども、最初が、人口の急減な減少に対処するということで、過疎地域対策緊急措置法で十年間取り組みまして、その後、昭和五十五年度から、人口が著しく減少した地域の振興を図るために、過疎地域振興特別措置法でやはり十年間取り組んでおりまして、現在は、平成二年度以来、過疎地域活性化特別措置法で取り組んでおるところでございます。総合的な対応を図っていくということで、産業の振興ですとか交通通信体系の整備、生活環境の整備、高齢者福祉その他の福祉の増進、医療の確保、教育文化の振興、集落の整備等につきまして、市町村、都道府県がそれぞれ過疎地域の活性化計画をつくりまして、国も一定支援をするという形で取り組んできているところでございます。  これまでの過疎対策の実施によりまして、例えば、水道の普及率でございますとか小中学校の危険校舎面積比率とかといったものは相当な改善を示してきておるものと思っておりますけれども、市町村道の改良率や舗装率につきましては、なお過疎地域以外の地域との差がございますし、改善されてきてはいますものの、まだ差があるという状況でございますし、医療施設の確保でございますとか下水処理施設の整備といったことにつきましては、なお、この過疎地域の特性から考えまして、困難性とかおくれが生じておるという状況でございます。さらに、過疎地域の産業ですとか就労の場の確保ということで見てみますと、農林業の不振あるいは工業等の立地の困難といったことから、全体として見ますと厳しい状況にあるものというふうに私ども認識をいたしております。  ただ、人口の動態で見てみますと、昭和四十年ころには一〇%を超えるような人口減少が続いておりましたけれども平成二年から七年の五年間の人口減少率で見ますと四・七%程度ということで、人口減少は小さくなってきておるという状況でございます。
  208. 中川正春

    中川(正)分科員 いろいろな評価ができるだろうと思うのですが、社会的なインフラというのは、精いっぱいいろいろな施策で整ってきたというのは、これは実感として地域としてもわかるわけであります。しかし、具体的には人口流出はとまらなかった。とまらなくて、今の状況は、もう底まで行った、底打ちをしながら、なぜこれ以上減らないのかといったら、出ていく若い人たちそのものがもういないんだ、こういうことが現実なんだろう、こういうふうに思っております。  そういう中で、社会的なインフラだけじゃなくて、基本的には、民間の活力、特に、資金的にどういうふうにそれを工夫しながら導入していって、民間部門の活力を上げていくような施策に切りかえていくか、これが基本的にはポイントになっていくのだろうというふうに私は思っております。  そんな中で、一つ二つ具体的に確認をさせていただきたいことがあるのですが、自治省の方では、総合的な過疎対策の中で、特に過疎債というものをその中に入れ込んで実施をしていただいておるわけであります。一つは、この過疎債というものに対する自治省の評価、これを聞かせていただきたいのと、それからもう一つは、この過疎債は将来、そのうちの七割なり、高いのには九割ぐらいのもあるのですか、とにかく交付税で補てんをしていきますよ、後で返しますよ、こういうコミットを国としてしているということが前提であるわけでありますが、こういうもの、これは一度、過疎債だけではなくてほかの施策の中で自治省がやっているものは相当目立つのですけれども、トータルとしてどれぐらいのものになっているのか、その中で過疎債はどれほどコミットがあるのか、この大枠をまずは聞かせていただきたいというふうに思います。
  209. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 過疎地域の活性化のために過疎債というのは大変重要な機能を果たしておりまして、関係千二百団体余り、それぞれ地域の過疎活性化計画をつくっていただきまして、それに基づいていろいろな事業をそれぞれ工夫を凝らして実施していただく上で、この過疎債の活用が大きな効用を果たしてきたというふうに考えております。  平成九年度におきましても、過疎債は対前年度三・八%増ということで地方債計画において確保いたしておりまして、これは過疎地域の施策を積極的に支援していく上で重要な役割を果たしているというふうに考えております。  なお、今どのくらい今後の償還が、交付税で七割を算入することになっておりますので、どういう状態になるかというお話でございますが、これは交付税で地方債の元利償還を見るというものはさまざまなものがございまして、今委員がお挙げになりましたのは、過疎債でありますとか、あるいはいわゆるふるさとづくりのような地方の単独事業を恐らく念頭に置いてお話しになっているのではないかと思います。  そういう意味合いで申しますと、平成八年度の基準財政需要額、これは全体の需要額というのは四十二兆円余りございまして、まずそういう中で、いわゆる地域づくりでありますとかあるいはふるさとづくりといったような単独で地域総合整備事業債を充てておりますようなものの元利償還、そういうとらえ方をいたしますと、これは過疎のものは除きましてでございますが、〇・九%程度、その四十二兆八千億余りの〇・九%程度でございます。それから、そのほかに過疎対策事業債の分といたしましては〇・五%、金額にいたしまして二千億弱というのが元利償還で基準財政需要額に算入されておる金額でございます。
  210. 中川正春

    中川(正)分科員 財政再建論議が続いていくわけでありますが、言い方をかえれば、これは地方債にはあらわれてきておるとしても、いずれにしたって国がコミットしたいわゆる国の借金であることには違いないのだろうというふうに思うのです。  これが、最近では保険制度だとかあるいは特殊法人等々への利子補給だとかというものが滞って、なかなか計画どおりにいきませんよ、これぐらいのことになってきておるわけでありますが、こういうことについて、それぞれ当該自治体としては非常に疑心暗鬼になってきておる部分があります。特に、考えようによっては、こんなものは数字の魔術みたいなもので、地方交付税の算定基準の中でちょこちょこと変えれば、元が取れるというか、どこかへ消えてしまったような形になって、借金は借金で変わりないではないか、もうちょっとはっきりしためり張りのついたような、だれにもわかるような、そういうやりくりができないのか、こういう意識があるわけなのであります。  そういうことについて、自治省の中ではどういう議論があるのか、そういう問題意識、特に持っていただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  211. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 今委員がおっしゃいましたような地方債の元利償還を将来の地方交付税で算入していくというものは、いろいろなタイプがございまして、たまたま先ほど私が申しましたのは、そのうちの、単独事業で特に地方団体の方で地域づくりということで活用されているもの、それから過疎債、二つ申し上げました。もちろん、そのほかにも、減税がありましたときの補てんをするための減税補てん債でありますとか、景気対策で年度の中途で事業が追加されますいわゆる補正予算、これに伴います公共事業の追加に対する、これは年度の中途でありますから、お金がないということで地方債を当該年度は発行して、後年度元利償還を織り込んでいくという、そういったようなものでございまして、私どもはこれが国が地方にしている借金というふうな理解はいたしておりません。特に公共事業系統のものですと、単年度で財源手当てをすることよりも多年度にわたって、いわばその年度は地方債で、とりあえずというか、その年度の財源を手当てしておいて、償還ベースで多年度にわたって財源手当てをするという、いわゆる財源措置の一つの形態であるというふうに考えておりまして、要は過去に出しましたいろいろなタイプのそういうものが、地方財政全体の中できちんと財源が確保されるかどうかということが大事であろうと思います。  私どもは、これは毎年度、地方財政対策を講じます際に、その前提として地方財政計画の骨格をつくっていきますけれども、その際には過去出しました地方債のそれぞれの毎年の公債費、元利償還の額でありますけれども、それを歳出の項目として見込み、もちろんそのほかにはいろいろな歳出がございますが、そういう歳出を全体見込んだ上で、片方で税を初めとして地方の歳入を見込み、その収支の過不足を見て毎年の財源措置をいたしております。その結果で地方交付税の毎年の全体の額を決めているということでありますから、そういう過去の地方債の額を織り込んで交付税のいわば総額が毎年度決まっていくというふうに御理解をいただきたいと思います。  いわばあるものの中でそれを押し込んで元利償還を算入しているというものではないわけでありまして、そこのところはぜひとも御理解をいただきたいと思います。
  212. 中川正春

    中川(正)分科員 やはりこういうシステムというのは単純でわかりやすいというのが鉄則だと思うのですよね。これは、ばっと、もらう方が聞いたときには、ああ、後でもらえるのだったらいいだろうということなのですけれども、それでも心のどこかに、これはごまかしじゃないのかなと。それは大蔵省に対してのやりくりの中でということもそれはあるのかもしれないですけれども。  そういうごまかしというのはこの部分だけではなくて、あらゆる分野でやはり制度化をされてきて、その制度化の中で健全な財政というのが崩されてきているという、そういう現実も一度この際改めてみる、そういう必要性が出てきているように思うのです。そんな中で、改めてこの過疎地域のあり方、あるいはいわゆる所得配分のあり方というのを議論をしていく、そこに戻さないとひとつだめではないか、こういう気持ちでおります。そういうすっきりした方向へぜひ持っていっていただきたい、これは要望としてとどめておきたいと思います。  その流れの中でもう一つあるのが、市町村合併の課題だろうというふうに思っております。これは、端的に言いまして、最近の自治省の積極姿勢というのは非常に評価をさせていただいておりますが、これでは足らない、このままではなかなか促進をしていかない、こういうことももう一方で言えるように思っております。  その中の一つの要因として、現実にこんなことがあるのですね。それぞれの町村合併を中心に持っていっている、その中心になる核都市というのは、市町村合併に対してかなり積極的な姿勢を持っております。どちらかというとその周辺で、特に町村、過疎地域の町村も含めてなのですが、この周辺の町村が、大きいところへ向いてくっついていくということに対してさまざまな意味での抵抗がある、こういうことであります。  その抵抗の一つに、こうした過疎債を含めて、それぞれの町村単位で枠づけをされている。過疎指定というのは、これはもうその枠づけの中の町村単位の一番最たるものでありますが、それ以外にでも、過疎指定してなくても今の補助事業の枠組みあたりは、一つの町村単位で、例えば箱物が一つ、あるいは道路改良事業が三本とか、こういう前提の中で、過去の積み重ねでずっと流れてきているということを皆よく知っているわけなのですよね。それをよく知っているだけに、それが一つの核都市へ向いて合併をしたときに非常に大きな心理的な妨げになっている。合併をすることによって、私たちが持っていた一つの枠というのが崩されてしまって、逆に前よりも、くっつくということが不利な状況になっていくのではなかろうかというこの意識が、ただ町村長が首になるということだけじゃなくて、この意識が住民の中にもやはり働いている、こういうことだと思うのです。  そこに対する一つの工夫がないと、具体的に説得をしていく、あるいはそれでしっかりメリットが出てくるのだ、こういうことにはならないのだろうと思うのですが、そこについてどういう認識を持っておられるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  213. 松本英昭

    ○松本政府委員 先生今御指摘のとおり、従来とかく市町村単位のワンセット主義、我々はワンセット主義とこう呼んでいるのですけれども、ワンセット主義の志向がございまして、それに対して私どもは、広域圏施策として共同でやりなさいとか、あるいは機能分担してやりなさいという指導でしてきたわけでございます。現実に今までの、特に高度成長期等においては、それぞれの市町村がそれぞれワンセットでいろいろなものを持ちたいという、それは事実であり、そういう傾向があったと思います。それが恐らく合併をすれば、そういうことはなくなるのではないだろうかというようなことで合併の一つの、合併を敬遠すると言った方がいいと思いますが、敬遠するような要因になっていたことは否定できないと私ども考えております。  ただ、これからのことを考えてみますと、そういう市町村単位のワンセット主義というのは、これはとてもこれから厳しい財政状況で、いずれにしてももうやっていけないわけでございまして、そういうことを考えてみますと、やはり広域的な単位で行政の仕組みというものを考えていかなきゃならないのだろう。したがって、今までのような同じ感覚では、それぞれの市町村自身がもう成り立っていかないような時代が来ているというように私どもは思っております。  また、これからは今までのように新しいものを整備していくということよりも、今まで整備してきました施設とかあるいは社会資本をいかに有効に活用するかという、そういう面も非常に重要になってくると思います。先日、あるところで町づくりより町使いへの発想転換をしなければいかぬというような話を聞きましたけれども、そういうことを考えてみますと、これからこれまでの社会資本整備を有効に使うというためにも、やはり合併をして一つの単位になって、その単位で物を考えていくということが非常に重要になりますので、そういう意味からも合併というものが必要になってくるだろうと私ども考えているところです。
  214. 中川正春

    中川(正)分科員 今のところは精神論というか、それを言い続けてきて現在に来たわけですよね。だから具体的に、現在のシステムがそれこそワンセット主義と言われるのであれば、ではそれを具体的に広域に持っていくための、今の奨励策だけじゃなくて、あるいは誘導策だけじゃなくて、根本的なシステムを変えていくというところまで乗り出していかないとこれは説得力を持たないということ、これはもう言うまでもなく感じておられることだろうというふうに思うのです。それについて、自治省なりの構想あるいは考えがあれば聞かせていただきたい。まだないのだということであれば、そういうことで結構です。それが一つ。  それから、時間が迫ってきましたので、はしょって、急いで全部ひっくるめてやりますが、もう一つ、資金面でこれは基本的に考えていかなければならぬところがあるかと思うのです。  核都市の魅力なのですね。これは今規制緩和も含めて、郊外型ショッピングセンター等々周辺に立ち並ぶ、あるいは土地利用のあり方、これに一つの限界があるために、ドーナツ化現象を起こして団地がどんどん外へ行っている。そういう中で何が起こっているかというと、その核都市になる都市としての魅力というのが、駅前商店街の寂れ方を象徴的なものとして、非常に問われてきております。このままでは、地方都市というのは本当に魅力のない、平たんな閑散としたものになっていってしまう、こういう現実があるわけなのです。  それをつぶさに見ていくと、一体どんなことが起こってきているかといいますと、例えば大型のショッピングセンターがディベロッパーを中に介在しながら出ていく形で、ではだれがそれに対して財政的な供給をしているかというと、開発銀行なのですよね。開発銀行というのは、財投でそれぞれ各地域から郵便貯金なり保険なりという形で持ってきた政府資金が、その中の割り当てということを、政府が介在をしながら、そうした新しいいわゆるディベロッパーへ向いて大きく、大規模に流れ込んでいるというものが片方にあって、もう片方で、それはそれに対して非常に戦々恐々として、もう息子は後を継がないのじゃないかというふうなことを前提にしながら商売をしている商店主の人たちが、駅前をどうしていこうかといって、今集まって考えているわけです。それに対して通産省は何をしているかといったら、ちょっとお祭りやりなさいよ、イベントやりなさいよ、ちょっとここへ向いてコミュニティーセンターつくりなさいよ、その程度の施策しか入ってきてないということなのです。  こういう資金の流れの矛盾、そして大きく言えば、私たちが精神論では言っているのでありますが、実質面のそうした大きな資金の流れ、使い方というものに対してのコミットというものがなされてない。この矛盾というのが、今この国を大きくゆがめておるわけであります。こういうものに対してしっかりメスを入れていかないと、幾ら精神論で戦ってみても、地方はやはりどうしても魅力は出てこないということが現実だろうと思うのです。規制緩和が叫ばれ、そして地方分権が叫ばれ、もう一つ大きな活力というときに、ぜひ自治省としてもその分野へ向いてしっかりコミットをしていって、特に財投の使い方を地方で工夫できないかというような議論がぜひ欲しいのですよね。これはもうもう一つの予算ですから、国が全部引っ張っていって大蔵省の管轄の中で配分するのじゃなくて、我々でやりますよというその分野というのが、やはり主張があるべきだろうというふうに思うのですが、これは大臣、ひとつこの部分についてはお答えをいただきたいと思います。
  215. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 中川委員のお話をいろいろ聞きました。私の選挙区も過疎市町村がいっぱいあるところでございまして、二十何年間この問題を考えてまいりました。  そこで、結論から申しますと、なぜ地方の時代なのか。今、財投のあり方ということを言われましたけれども日本の中央官僚、中央政府、極めて優秀なようである。優秀なものをつくってきたけれども、決して万能ではなかったということの反省の上に立って、やはりそれぞれの地域の運命はそれぞれの地域がつくり出していくしかない。そのために地方に本当の権限を与えましようということ。財投だけではなくて、国と地方との税源の配分の問題。それから地方税、まだ話は具体的に詰まっていませんが、本当に地方にすべての、その地域の未来を開発するだけの、逆に、権限、自由を与えずして未来は切り開けないわけですから、それを今やろうということで、六つの改革の中でも、我々はそれと一緒になってやろうとしているわけでございます。  百三十年間、中央集権ということでやってきた。メリットはいっぱい出てまいりましたが、デメリットというのは、強いて言えば、今度は、かつては非常に生き生きとしていた地方が、一定の地域では明らかにその活力をなくしている、前途に明るさが見えないというところに来たわけでございますので、そこで今、我々としては、地方分権をしなければならない、そして日本のあらゆるシステムを変えていこうということで橋本総理のもとで頑張っているわけでございまして、直ちに結論を今ここで私申し上げることはできませんが、この数年の間に、そういうことについて、トータルの仕組みをつくっていく中で、それぞれの地域のあすが開けていくような仕組みをつくっていこうということでございますので、どうか御理解を賜りたいと思います。
  216. 相沢英之

    ○相沢主査 これにて中川正春君の質疑は終了いたしました。  次に、北脇保之君。
  217. 北脇保之

    北脇分科員 新進党の北脇保之でございます。  私は、昨年十月の総選挙で初めて当選をさせていただきました。きょうは、ただいまの同僚の中川委員に続きまして、市町村の合併についてお尋ねをしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  まず、地方分権についてでございますが、地方分権ということについては、国民の間ではまだまだその意義、十分な理解が進んでいると言えないのかなという感じがいたします。しかし、国会、政府、そうした政策検討の場においては一地方分権の必要性、かなりの合意ができてきているように思います。  私なりに、地方分権、合意ができつつあるその要因はどういうところにあるかと考えてみますと、一つは、戦後五十年、何といっても世の中が大変成熟してきた、このことにあると思います。戦後、日本の国を、本当に、廃墟の中から、基本的なサービスが十分行き届いた、そういう国、社会にしていこうということで一つの中央集権的な仕組みのもとで一生懸命やってきたわけでございますが、それが一定のレベルに到達したということで、これからは、やはり身近な問題は身近なところで、自分たち考えでやっていこうじゃないか、こういう社会の成熟に伴う国民の意識の変化が生まれてきている。それはまだ政策的な形で国民に十分意識されているところまでいってはいないかもしれませんが、そういったことが背景になってこの政策論議での地方分権ということが盛んになってきている、これが一つの要因であると思います。  そしてもう一つは、何といっても行政改革だと思います。日本の国の仕組みがいろいろな意味で行き詰まってきている。特に、五百兆円を超えるような国、地方を合わせた借金を抱えるというようなことになってまいりましたので、これを何とか、国、地方を通ずる行政構造をもっと簡素で効率的なものにしなければいけない。国と地方で同じ行政分野を担当していることによる重複ということもありますし、よく例に引かれる、国の補助金を獲得するために地方から大挙して陳情に出てくるとか、そういった非効率な部分もございます。そういったことを何とか変えていく、そのことが一番の行政改革の決め手になってくる、効率的な政府をつくることにつながる、そして国民の負担を軽減して活発な社会をつくっていく、そういうことにつながる、こういったことで地方分権を進めよう、こんな合意ができつつあるのじゃないか、そんなふうに思います。  そうしたときに、私はやはり、地方分権を進める上で、市町村の規模を適正化していく、言いかえれば合併を進めるということがどうしても大事になってくる、そんなふうに思います。それはどうしてかというと、よく言われることでございますが、やはり地方分権の一番の受け皿、基本的な受け皿は市町村である。日本の国は都道府県と市町村の二層性ということで明治以来やってきておりますけれども、地方分権を進めていく上でどこを基本的な受け皿として考えていくかといった場合に、私は究極の受け皿はやはり市町村であるというふうに思います。  これは、シャウプ勧告の中で、基礎的な自治体としての市町村の重視ということはもう本当に五十年近く前に打ち出されていることでございますし、また、昨今のヨーロッパにおける地方分権の推進の基本的な考え方の中でも、まず、基礎的な自治体で行える事務はその基礎的な自治体で行い、それができないものは次の広域的な団体でやる、そして、さらにそれで対処できないものは国が担当する、こんなふうな基本原則で事務の配分を考えていこう、こんな動きもあるやに聞いております。そういうことを考えても、やはり地方分権の受け皿として市町村の充実を図っていかなければならない。  しかるに、現状を見るとどうかといいますと、これはもう自治省の方で十分把握されていることですので数字的なことは余り申し上げる必要はないと思いますけれども、市で見ても、三万人未満の市が六十七、それから三万人以上五万人未満までのところで累計で見ると二百二十二ということで、全体の市数六百六十八、これは平成八年九月段階のものですが、その中の三三・二%が五万人未満というところにとどまっている。こういう点で、市町村は地方分権の受け皿として、現状は十分でないということが一つあると思います。  それともう一つは、実態の面で見ても、私どもの生活圏と市町村の行政圏が非常に不一致になってきてしまっている。市町村の合併というのは、ちょうど昭和の大合併と言われる三十年前後の合併でほぼ今の形になっておりますけれども、四十年前の国の状況と今とを比べてみますと、自動車の数にしたって、当時は四十万台だりたのが、今は六千五百万台もある。また、都市への人口の集中率を見ても、当時は四〇%だったのが、今はもう八〇%になっている。そんなふうに現状も変わってきている。そうすると、その辺を解消するためにも合併の推進が必要ではないか、こんなふうに思います。  そこで、私のきょうの質問の基本的なポイントというのは、このように合併の必要性というのは大きい、それに対して、現在の合併特例法を基本とする合併の推進施策、これが十分ではないのではないか、この点でございます。この推進策が不十分であれば、何年たっても合併が進捗しない。確かに、今新聞でいろいろ報道されている件数はたくさんあります。しかし、それが必ずしも実るとは限りませんから。  一方で、今進められている地方分権、そしてそこでの受け皿としての市町村の充実強化の要請、これと比べたときに、今の施策はミスマッチじゃないか、今の施策のままでは十年たっても二十年たっても今の三千二百三十二という市町村数、それは確かに十とか二十とかという、そういう単位では減っていくこともあるかもしれませんが、これがドラスチックに市町村数が減って、大きな固まりで、基礎的な、文字どおり基礎的な自治体としての市町村が誕生していくということが果たして保障されているかどうか、ここのところが私の質問の主眼でございます。  なぜそういう疑問を持つかといいますと、後でもう少し個別に分けてお尋ねいたしますが、一つは、今の合併特例法の考え方は、あくまでも地域の自主性を前提としている。市町村の自主性をあくまでも損なわない。確かに、住民による発議の制度とか、そういう新しい地域でのイニシアチブを尊重しよう、そういう仕組みはあります。しかし、それはあくまでも地域の自主性の尊重の中での話ですので、これを本当に頑固に守っていくということで、今申し上げたような一つの地方分権の受け皿整備のスピードの要請に対して果たしてこたえられるかということが一つでございます。  そして、もう一つの私の疑問のポイントは、今の合併特例法にはいろいろな措置が盛り込まれております。例えば、財源措置であるとか、また市町村議員の特例、そういった形で、合併後不利益とか支障が生じないようにという、そういった配慮はあると思います。しかし、もう一つ、私が合併推進策として必要ではないかと思うのは、合併をして新しいもう少し大きな団体になることによってこれまで持てなかった権限を持てるようにしていく、そういう形で合併が市町村の権限の拡大につながる、そういうような要素を盛り込んでいくことも必要なのではないかというふうに思います。  これについてはもう少し細かく後で御質問したいと思いますが、以上、そういう私なりの意見を持っているということを踏まえて、自治省の方から、現在の合併特例法、それに基づく政府の合併推進施策の基本的な考え方をお答えいただきたいと思います。
  218. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 総論の部分、ちょっと私がお答えをさせていただこうと思っております。  最近、市町村合併という話が国会で少なくとも昔に比べたならば格段と多くなってきたということは事実だろうと思います。私は、全体の流れは知っておりますけれども地方行政委員会というのを、あるいは予算委員会等も細かく知っているわけではないので、自治省の諸君に聞きまして、昨年の臨時国会、そしてこの通常国会、随分合併の話を多くの委員の先生方から聞いたのだけれども、いつもこうだったのかねと言ったら、いや、それはもうけた違いに多いです、こう言われました。ですから、合併を何らかの意味で促進をしていかなければならないということは、明らかに私は最近高まっている、いいことだと思うわけでございます。  ただ、この合併をすべしという意見の中に、大きく申し上げてまず二つの流れがあるような気がいたします。というのは、国の統治の機構のあり方として、あるいは金の使い方として、とにかく三千三百もあったら非効率だし、好ましくない、したがってもう適当な規模で合併する以外にないのだという、こういう効率論から、そして一種の統治機構が今のように三千三百もあるというのはよろしくないのだ、こういうような議論が、国会だけでなくてほかでもなされているような気がいたします。もう一つは、地方自治を真剣に願う方々が、地方分権のことを一方で強く言いながら、そこで受け皿として、今三千三百もある市町村というので大丈夫なのか、こういうのが一方では出てこられるような、二つのことがあるような気がいたします。  どちらも間違いだとは言いませんけれども、私は、地方分権にしろあるいは市町村合併にしろ、地方自治という立場でいうならば、市町村合併が地方自治の進展につながるのでなければ、少なくとも地方自治という立場から議論するときにいかがなものかな、こう思うわけでございます。  大きければいろいろな意味でいいかもわかりません。ただ、例えば三百三十万余いる横浜市、日本で一番大きな市でございますけれども、では、これが地方自治体の基礎的な、地方公共団体の中で一番大きいのでこれが一番いいと言えるのでしょうか。私は、三百三十万近くあったならば、今度は、自治体に所属しているという、一つのコミュニティーに所属しているという、それはどうしても持てないので区というものを今持っているわけでございますが、その区というのが、例えば今町村が果たしているようなほどコミュニティーとしての役割を果たしているだろうか。こういうことを見ますと、大きい市があればそれでいいというものではない、こう思うわけでございます。  したがいまして、市町村合併をせよとおっしゃることは結構なのでございますが、自分はどういう立場で何をし遂げるために市町村合併したらいいのじゃないのかなという基本的な立場が明確にならぬと、市町村合併すべしという中にも、ある面では地方自治を場合によったら阻害してしまうような市町村合併をやれと言っている人も実はあるような気がするわけでございます。  そして一方では、本当の、真の地方自治ということを進展させるためには、やはり住民から見てちゃんとその期待にこたえられるような役割を果たしていかなければならない。それにしては例えば数千の村、町でできるのだろうか。これはある面では、本当に地方自治を進展させるという立場から心配しての御意見というものは、これはまた地方自治という立場から真剣に受けとめなければならぬと思うわけでございます。  みんなして市町村合併ということを言うわけでございますが、いろいろな立場から、そして真のねらいは別のところにあっていろいろな議論がなされますので、この市町村合併を論ずるときに、一体何が私は理想と考えるかということをそれぞれ明示し、そしてそれぞれの市町村にも、このためにだから合併する必要があるのではないでしょうか、こう言わないといかぬような気がいたします。  ちょっと、地方自治の専門である委員がこの市町村合併のことをあえて言われましたので、私はずぶの素人なんでございますが、四カ月間、この問題をいろいろな人から、いろいろな角度で言われる中で、率直に言って、市町村合併を言うからいいというものでもないし、市町村合併を言わないから悪いものではない。要するに、実はいろいろな立場、あるいは地方自治の進展ということを必ずしも十分配慮しない市町村合併論もあるのだという、その危険性も指摘して今お話をさせていただいた次第でございます。  特に、最後に触れられた、正直申し上げて、最近では、自治省がなす地方交付税があるから小さいところが困らないで合併を阻害しているのではないかなんといって責められてもいるわけでございますよ。しかし、つい前までは、そういう過疎市町村、やれやれとさんざん言われてきたのも自治省であるわけでございまして、日本人というのは熱しやすく冷めやすく、あるとき昔やったことを忘れて、今は全然平気でそういうことを言うことも含めて、冷静に、そして歴史的経過を踏まえてこのことを議論しなければいけないのでございますが、最後に言われた、一定の規模を持ったところにはこういう権限が与えられるという、やはり小さいところにペナルティーを与えるというのは私はとるべきではないと思います。それはまた自由主義の発想ではないと思います。ただ、市町村合併を促進するためには、これだけのスケールをつくったらこういうことができるようになりますよ、そうしたならばもっと皆様方の地域の未来を自力で切り開くことができるのではないですかという、そういうメリットシステムの方をとらせていただきたいな、こう僕は思っております。  なお、特例法その他の立法の経過、そしてこれがどういうものになっているかは、必要ならば事務方から答弁させていただきます。
  219. 北脇保之

    北脇分科員 今、大変本質的な御答弁をいただきましたので、時間の関係もありまして、ちょっと事務方の方からの御答弁は結構でございます。  今大臣がおっしゃったことは大変大事なことだと思います。私も決してやみくもな合併がいいと言っているわけではなくて、大臣がおっしゃられたように、合併を進めるにしても地方自治の進展につながるものでなければならない、その点は私も全く同様に思います。  ただ、私の考えは、地方自治の進展を図るという場合にも、自治体という枠組みをどうつくっていくかというのは一つの政策に基づく制度である。それは、確かに明治の市制、町村制からずっと歴史的経過を経ていますから、もうほとんど空気のようになっているというそういう部分はありますけれども、市制、町村制をつくったと言うならば、そのときはそのときの一つの政策であり制度であった。だから、私は、今の時点においても一つの箱として、その中で市町村が、また、そこの住民が非常に福祉が向上してかつ自治を享受できるようなそういうふうな形での箱をつくっていくことができるならば、それを一つの制度なり政策論なりとして議論していくことは決してむだなことではないし、また間違ったことでもない、そんなふうに思っております。  そこで、今大臣がおっしゃられた最後の点、一定規模の団体に一定の権限を与えていく、私も決してペナルティー論という意味で言ったのでなくて、メリット論の意味で私は申し上げました。いろいろな調査会などでもペナルティー論というのも出ているやにもお聞きしますけれども、やはりそうではなくて、むしろ現行の市町村が持っていない権限をもっと多くしていくという意味のメリットで、かつインセンティブとしてのそうした拡大を考えていったらどうかと、こういうことでございます。  そのことでもう少し申し上げますと、やはり一つ検討の価値があると思うのは、今、中核市制度というものがございます。これについては、人口三十万人以上とかそういった要件があり、かつこれは、政令指定都市に認められた権限の範囲内でその中の一部をまた中核市に移譲すると、こういうことでございますので、この中核市の制度をどうやって充実していくか、権限をどう強化していくか、これはこれでもう一つ独立した課題であると思います。  ですから、私の提案というのは、一方で中核市制度というものをもっと拡充する、その権限をもっと十分なものにしていく。私も、地元の浜松市の関係の方に伺いますと、やはり都市計画の事務、それから農地の転用の許可を中心とする農地法の事務、これについて、中核市になってもほとんど  都市計画については政令市にあるものは来ているにしても、国にあるものでもっと自分たちの市に持ってきたいものがたくさんある。農地法に関してはもう政令市ですら余り来ていない。だからそれも、自分たちの中核市、浜松市は中核市であることを申し添えますが、そこへ持ってきてほしい、そういう声が非常に強いものですから、一方でそういう中核市の充実を図りながら、もう一方で中核市になるための要件をもう少し緩和して、例えば中核性の要件というようなことで昼夜間人口比率が一〇〇を超えるとか、もう一つは面積要件とか、そういった要件がありますけれども、そこら辺をもう少し緩和ないし撤廃などして、先ほど申し上げた、市町村が合併してある程度規模が大きくなればメリットが得られるんだという、その意味のインセンティブとしてこの中核市制度の概念をもう少し変えて合併推進の一つの手段として活用したらどうか、これが私の提案でございますので、これについても自治省のお考えをお聞かせいただければと思います。
  220. 松本英昭

    ○松本政府委員 中核市の制度に関しまして、一つは中核市に与えられている権限の中身充実ということと、それから要件の緩和と二つございましたが、中核市につきましては、確かに、政令指定都市に与えられている権限のほとんどと申してもいいぐらいの権限が既に与えられているわけです。ただ、委員も御指摘のように、都市計画とか農地転用の面で、都市計画の決定にかかわりますところとそれから農地の行政については全く市町村におりていないわけですが、そういう点で確かに権限上の問題があります。  ただ、都市計画に関しましては、今度地方分権推進委員会の第一次指針勧告の中で、できるだけ都市計画決定に関する権限を市町村におろしていくという方向が出されておりますし、政令指定都市はできるだけ都道府県と同じような扱いにしたいというような方向もあるようでございますが、いずれにしましても、これは今からいろいろとさらに詰めていく話になろうかと思います。  農地転用は、これは確かに政令指定都市自身がおりておらない権限でございまして、なかなかいろいろと国家的な観点から必要だというような議論もあるようでございますので、現実には難しい話もいろいろあろうかと思います。  いずれにしましても、こういう二つの事務にかかわらず、できるだけ中核市に権限をおろしていくという物の考え方、これ自身は私どもも大賛成でございまして、既に先日私も、地方分権推進委員会の方で、中核市という名前は取り上げて挙げておりませんが、規模の大きな市にはより権限をおろすにふさわしいものがあればひとつぜひ分権推進委員会の方でも御検討いただきたいということを申し上げたところであります。  要件の問題は、ただいま御指摘のような人口、面積、昼夜間人口比というような要件がございますが、これらにつきましては、まだ中核市の指定が昨年から始まったところでございまして、現在、ことしの四月でようやく十七という数になるところでございます。該当の市は二十八あるわけですが、これらの動向等も踏まえながら、必要ならば権限の移譲とも関連づけながら考えていく必要があろうかな、こういうふうに考えているところでございます。
  221. 北脇保之

    北脇分科員 ただいまの御答弁で、権限の移譲についても、また要件の問題についても、それを関連させつつ検討していくということでございましたので、ぜひそれはお願いをしたいと思います。特に、権限のことについてはもう地方分権推進委員会でも勧告が出ているわけでございますので、私が直接地元で見聞きしているそういう要望ということもあるのは事実でございますから、そういったことも踏まえてぜひとも推進をお願いしたいと思います。  そして、もう一つこの合併の推進についての私の提案でございますが、それは、県の合併についての関与のあり方ということでございます。  今の合併の推進の特例法では、都道府県は市町村に対して助言とか情報提供、さらには市町村の求めに応じて必要な調整をするということでございます。他方、自治法の方の八条の二に、市町村の規模が適正でない場合に規模を適正化する勧告をするという制度もございます。しかし、この自治法の方は大変例外的な強力な措置でございますのでこれはさておいて、合併の推進という範疇の中でもう少し都道府県の関与を強めてはどうかという提案でございます。  というのは、昭和の大合併のときも、行政指導的な性格のものではあっても、県が市町村に対してかなりの働きかけをしたということは事実だと思います。そんな意味で、市町村の合併協議会ができるというところまで行かない場合でも、都道府県が適当かつ必要と認める場合に市町村を一つのテーブルに着けるようなそういう措置、そうしたことの根拠をこの合併特例法の中に設けていくとか、そういった形でもう少し県が関与していったらどうかと、こんなことをちょっと御提案させていただきたいと思いますので、御見解があれば承りたいと思います。
  222. 松本英昭

    ○松本政府委員 御指摘のように、市町村の合併に対しては、県の取り組みというのが非常に重要であろうかと思っております。  現在全国を見渡してみますと、都道府県のいわゆる市町村の合併に対する取り組みのいろいろな温度差があることは事実でございますが、全体的に見ますと、最近は都道府県も非常に前向きに対応しようという姿勢を見せてきているところがふえてきているように思います。例えば、独自のPR活動をしたり、あるいは先ほど御指摘になりましたように制度上の協議会でなくても事実上の協議会というものを進めたり、そういうこともやっておられます。それからまた、現在合併特例法で新しく制度化されました都道府県自体の合併市町村に対する財政措置というようなものを活用して合併を進めるとか、そういうことも多々あるようでございます。したがいまして、そういう都道府県の取り組みというものを一層積極的にしていただけるように、これからもいろいろな機会を通じて私ども前向きに対応してまいりたいというように考えているところでございます。
  223. 北脇保之

    北脇分科員 本日の質疑では、自治大臣からも大変本質的な御答弁もございましたし、今、市町村の数などいろいろ取りざたする、そういう議論もありますけれども、そういう数を言っても、では具体的にどんな手段でやるのかということになると、まだまだ議論は入り口で不十分だと思います。そういう意味でこれからもこうした議論を深めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  きょうはどうもありがとうございました。
  224. 相沢英之

    ○相沢主査 これにて北脇保之君の質疑は終了いたしました。  次に、高木義明君。
  225. 高木義明

    高木分科員 新進党の高木義明でございます。  自治大臣には大変お疲れでございますが、私は、主としてこの機会に、船員の洋上投票についてお尋ねをしてまいりたいと思います。  その前に、若干確認の事項がございます。一月の二十七日の予算委員会におきまして、山本有二議員の質問に対し、友部某より新進党岩手県連に対し百万円の献金がなされたと自治省選挙部長より答弁がございました。しかし、実は平成八年の十二月十七日、新進党岩手県連より友部某の方へ返却されており、ここに領収証のコピーを私は持っておるわけでございます。  そこで、選挙部長さんに確認をいたしますが、返却されたという事実をあなたは承知しておられるのか。自治省にも説明したということでございますが、どうでしょう。つまり、新進党の岩手県連に献金がなされたということだけをあなたは予算委員会答弁をし、返却がなされたという事実を明確にされていないのでございます。新進党岩手県連及び関係者の名誉を回復できるようにしていただきたいと私は思います。したがって、牧之内選挙部長見解をお尋ねしたいと思います。
  226. 牧之内隆久

    ○牧之内政府委員 ただいまのお話では、昨年の十二月十七日ですかに返却をされたというお話でございますが、昨年の政治資金の収支報告はことしの三月三十一日までに提出をしていただくということになっておりますので、収支報告上ただいまのお話を確認することはできないわけでございます。  ただ、お話にございましたように、先般新進党の岩手県連の方が私どものところへ参られまして、今御指摘のありました領収証持参の上、今後の政治資金収支報告上の処理をどうすればいいのかということで御相談に見えたことは事実でございます。
  227. 高木義明

    高木分科員 選挙部長答弁は了承いたしました。この件については明らかに返却されたと認識をしてよろしいわけですね。
  228. 牧之内隆久

    ○牧之内政府委員 ただいま御答弁申し上げましたことで御理解をいただきたいと思います。
  229. 高木義明

    高木分科員 では、私の本日の質問といたしております洋上投票について、今からお尋ねをしてまいります。  私が言うまでもございませんが、国民の最も重要な公民権の行使である投票は、すべての有権者にやはり公平に機会を与えるという、そういう理想に向かっていくべきであります。それは同時に、民主国家の基本であると私は思うのであります。そういう観点に立って、まず船員の状況についてでございますが、ここに全日本海員組合が平成七年、一九九五年に組合員を対象に実施したアンケートの結果が出ております。船員の乗船中の選挙投票に関する実態調査でございまして、次のようになっております。  平成五年七月の衆議院選挙の場合、乗船中であった方々で投票したという人は二〇・一%、投票しなかったという人が七九・九%。下船中であった方々で投票したという人は八一・二%、投票しなかったという人は一八・八%。ちなみに、一般有権者の投票率は六七・三%でございます。平成四年の参議院選挙につきましても、乗船中の者で投票した人は一八・三%、投票せずという人が八一・七%。下船中であった方々は、投票した人は七五・四%、投票しなかった人は二四・六%。一般有権者の投票率は五〇・七%でございます。  この結果を見てもわかりますように、船員の方々は下船中は大変高い投票率で、いわゆる選挙に参加をしよう、中央の政治に自分たちの意思を反映させたいという気持ちはかなり高い。しかし、乗船中は低投票率ですから、結局今の不在者投票制度が実際に機能しなかった、私はそのように断言できるのではないかというふうに思います。  私が言うまでもありませんが、現在の船員の不在者投票制度というのは三つの形がありまして、もちろんこれはいずれも船員の方々の選挙人名簿登録証明書、これが必要でありまして、各人の現住所の選挙管理委員会に申請し交付を受けなければなりません。そういう前提の上で、一つは指定港における不在者投票制度。すなわち、選挙期間中に船舶が指定港に停泊中、本人が直接その港の選挙管理委員会に行って、名簿登録証明書と船員手帳と宣誓書を提出し投票用紙の交付を申請し、その場で投票する制度、これが一つ。二つ目は、船内における不在者投票制度。これは本人が直接選挙管理委員会に行けない場合、船長または代理人が選挙管理委員会必要書類名を提出して投票用紙の交付を受け、船内で一括投票して、船長はそれぞれの船員の属する投票管理者へ郵送する、こういう制度が二つ目。  三つ目は、指定船舶における不在者投票制度でありまして、指定船舶というのは、公職選挙法の施行令第五十九条「船員は、遠洋区域を航行区域とする船舶その他これに準ずる船舶で自治省令で定めるもの(以下「指定船舶」)」ということであります。この指定船舶における不在者投票制度は、選挙公示前に出港をして、選挙期間中に日本国内に入港できない外航船あるいは遠洋漁船は、船長または代理人が選挙管理委員会から投票用紙の交付を受けて、公示後船内投票する、そして投票後、船長は最も早く入港した港でそれぞれの船員が属する投票管理者に郵送する制度、こういうことがあっておるわけであります。  例えば、一つの例を考えてみますと、今衆議院選挙はかなり選挙日程が少なくなりましたが、十二日、参議院選挙は十七日、こうなっております。コンテナ船、これはかなり速力の速い近代化船でありますが、東京からサンフランシスコまでは大体九日から十日かかる、こういうことのようであります。  例えば、出港をするまでは告示があれば不在者投票できるわけでありますが、出航後二日後に公示になった場合を考えてみますと、すぐに船内で投票を行って、一番最寄りの港サンフランシスコに着くまでは七日から八日かかる。サンフランシスコに着いてすぐに郵便で送付をする。すなわち、サンフランシスコから例えば東京国際郵便局まで郵送するわけであります。これは三日かかる。そしてその後、各人の選挙人名簿登録地選挙管理委員会に送る。これが二日から三日ぐらいかかる。そうしますと十一日から十四日の日程がかかるのです。しかし、もう衆議院選挙はそういうものを締め切っておりますから、したにしてもこれは無効投票、投票にならない。そういう一つの事例もあるわけであります。遠洋漁業になりますと、海の上が仕事場ですから、全くそういうケースであります。  したがって、初めにも申し上げましたように、最も重要な公民権の行使、投票ということを洋上で働く方々にも、それは数からいえば限られておるかもしれないけれども、この機会を何らかの意味において確保してあげるということは、私は政治の一つの大きな任務だと思うのです。  そういうところで、現状についてどのように認識をされておるのか、この点についてまずお伺いをしたい。
  230. 牧之内隆久

    ○牧之内政府委員 船員の方々につきましては、その就業形態が特別でありますことから、ただいまお話ございましたように、一般の不在者投票制度に加えまして三つの特別な不在者投票制度を設けているところでございますが、航海日数が長い船舶につきましては、委員御指摘のように、なかなか現在の制度でも投票がしにくいという問題があることは十分承知をいたしておるところでございます。  これまでも関係者の皆様方からたびたび洋上投票の実現等につきまして御要請をいただいておりまして、私どももいろいろと検討をいたしているところでございますが、投票用紙の公給主義でありますとかあるいは白書主義、あるいは投票の秘密の保持、そういった公選法の諸原則に触れる問題が多々ございまして、なかなか具体的な解決の方策が見出せない状況でございます。
  231. 高木義明

    高木分科員 これは全日本海員組合、あるいは家庭を守っておられる海友婦人会、またつい先日は宮城県としても、自治大臣に対して何とかこういう機会を確保してほしいという要望があっております。  私も、何回か国会の中でこの問題を取り上げて抜本的な改革を訴えておりますが、残念ながら今日現在、投票の秘密とかあるいは不正投票とか、こういうできない理由を挙げて問題は一歩も進んでいない。しかし、本当にこれでいいのか。そういう意味で、例えば、検討、検討と言わないでこの辺で殻を破るぐらいの、ひとつ自治大臣も非常にこの点については積極的な姿勢をとっていただいて、何らかの方法を考えていただきたい。  例えば、洋上においてファクスによる投票を実施すればどうかという案もございます。船長が不在者投票の管理者として行われる今の船内投票制度があるわけでありますから、本人の確認とか不正の防止、さらには秘密の保持についても今日の技術、ファクスを工夫することによってそれらはクリアになるのではないか、なる、そういうことを私は考えておりますが、この点についていかがお考えでしょう。
  232. 牧之内隆久

    ○牧之内政府委員 ファクスによりまして投票用紙の請求を行い、また、書いた投票用紙をファクスによって送るという方法はどうかというような御提案もいただいておりまして、私どもも検討をいたしたところでございますが、基本的には、ファクスはコピーでございますし、まただれでも送れるという性格のものでございますので、本人確認が果たしてちゃんとできるのか、あるいはだれでも見られますので、投票の秘密というものが守れるのかというような基本的な問題につきましてなかなか難点がございまして、今日に至っているところでございます。  ただ、先般は、シールを張ってだれでも見られないようにするようなファクスというものも開発をされているというようなお話もございました。私ども、まだその実態をよくわかりませんが、そういう点も勉強しながら、重要な参政権の問題でございますので、いろいろな角度から真剣に検討してまいりたいと考えております。
  233. 高木義明

    高木分科員 例えばお役所に納める公金についても、そういうシステムだって、今金融システムの一つとして私の身の回りにも見当たりますし、秘密の保持というのは、私は今のノウハウからいえばできない問題ではないと思っております。  また、投票開票技術革新を急げとか、あるいは近代的な電子投票システム、投票率を向上させるためにいろいろな御意見が各界から出ております。この点についても、船員の洋上投票に目を当てるべきだと私は思っておるわけです。この点について何か御検討されましたか。
  234. 牧之内隆久

    ○牧之内政府委員 投票率の向上でありますとか、あるいは選挙事務の管理の効率化といったような観点から、電子投票制度の御提案というものもいろいろな方からなされているわけでございます。私どもも、将来的にはその実現に向かって検討しなければならない重要な問題だというふうに認識をいたしておりますが、現段階におきましては、経費の問題とかあるいは個人的な情報の秘密の問題とか、いろいろな点からまだ難点があるという理解に立っているところでございます。  特に電子投票制度等が有効なのは、だれでもどこでも投票できるというようなシステムができれば、投票率向上への期待等が非常に大きいと思うわけでございますが、そのためには、全国の市町村が通信ネットワークで結ばれまして、そして選挙人名簿のデータベースが完成をいたしまして、ICカード等によってどこでも本人確認ができるようなシステムが組めれば、それが可能になるわけです。  幸いと申しますか、今、住民基本台帳ネットワークシステムというものを構築しようということで検討が進んでおりますので、その動向を見ながら、この電子投票制度等につきましても研究を重ねてまいりたいと考えております。
  235. 高木義明

    高木分科員 ここで、いわゆる代理投票ということについてなんですが、例えば病院の場合、院長が不在者投票管理者として病院内で不在者投票や代理投票が行われております。現状。この際の本人確認あるいは不正の防止、秘密保持は確実になされておる、私はそのように認識をいたしております。特に代理投票という、秘密の保持ということについてはこれは厳粛なことでございますが、その例を引いても、船の中の船長さんの職務権限というのは、船員法の中でも非常に厳格なものとして位置づけられておるわけであります。その船長さんも病院の院長さんも、私は同じレベルであろう。だから、これらの投票行動については、新しいファクスあるいは電子投票制度等と組み合わせていけば、これまでずっとこれが先送りされてきた、これまた検討、検討といって逃れていくと、いつまでたってもこういう問題は解決しない、私はそのように思うわけです。  今日の技術はかなり進歩しております。しかし、今御答弁でも一部ちょっと聞かれますが、そういうことをすると法改正をしなければならぬとか、あるいは今の選挙管理委員会の体制の整備が必要であって、金もかかる、一部の船員さんのためにそういう特例を設けることが他の有権者との公平性から考えて難しいという議論がひょっとしてあるならば、私は、それは本末転倒であります。金がかかろうが体制整備しなければならぬ、それは一つの特殊な事情として、これは国民の合意を私は得られることだろうと思っております。この点について、大臣の御認識をひとつお伺いしておきたいと思います。
  236. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 私自身は、宮城県の関係者の方々から、この船上投票についての熱心な陳情をいただきました。いろいろと、大切な選挙権の行使ということでありますので、今度はまた逆に厳格に秘密が守られなければならないという、また一方では要請もあるわけでございまして、ちょうどそのはざまの中で選挙部長は苦労しているところなのかなと思いますけれども。  例えば、一例を挙げますと、私もよくわからないのでございますが、ファクスによる投票というようなことをして、ああ、そういうこともあるのかな、そして、技術的にはできると思います。ところが、例えば自分の当該市町村ということになりますと、ある町としましょうか、そこには船員が仮に一人しかいないということで、そしてファクスによる投票がなされたとしたならば、結果としては、投票用紙は別でございますから、不在者投票なら最終的には封筒から抜いて、その不在者投票者がだれに入れたかわからないわけでございますが、例えば、何と書いてあるかわからないというファクスの用紙であっても、その用紙で出たものである以上、あ、だれはだれに入れたかというのがそれ自体でわかるわけでございます。  ただ、その場合は、きょうもちょっと選挙部長とも話したのですが、本人は、例えば自分の町には船員が一人しかいない、そして、私が何と書いたということが仮にわかってもいいから、しかし自分の参政権を行使したいということであるならば、だれに投票したかというのはこれは厳格に守られなければならないんだけれども、本人がみずからその秘密が明らかになるということが、本人が納得しているのならば、どうだろうか、考えようはないのかなというようなことを含めましたが、直ちに彼はイエスというところまでいきませんでした。  こういうものは、本人が納得すれば投票の秘密は開示されるということでもこれはいけないわけでございまして、決して、委員が言われるように難癖をつけて延ばそうというのじゃありません。やはり極めて大事な問題でございますから、どうしてもクリアできない問題等をどうやったらクリアできるのか、これまた関係者の方からも知恵を絞っていただきまして、できるものならば実施してまいりたい、こういう立場で今後とも鋭意研究したいと思いますので、また関係者の皆さんから率直な、いろいろな御提言も賜りたい、こう私はきょう事務当局には指示をしておいた次第でございます。
  237. 高木義明

    高木分科員 ところで、この問題と深くかかわり合いがあるのですが、在外邦人にも国政選挙の投票を可能にするための法律案が過去、昭和五十九年に提出されております。その後、衆議院の解散等によって廃案になっておる経過もございます。しかし、今国会にこの法案について提出を検討しておる、こういう動きも聞き及ぶわけでありますが、在外邦人の投票の確保ということももちろん大切でございます。だから、私はこの検討、議論の中に、当然にして船員の洋上投票のことも含まれてしかるべきだと思うのですが、その検討のあり方、状況について、どうなっておるのでしょうか。
  238. 牧之内隆久

    ○牧之内政府委員 在外邦人の投票権の問題につきましては、御指摘ありましたように五十九年に政府提案を行いましたが、廃案になりました。平成六年の八月以来、自民党、社民党、さきがけの三党の政治改革協議会の中でこの問題が検討課題として取り上げられまして、種々検討の結果、基本的な一応の線を出していただきました。  その中で、投票方式につきましては、五十九年の政府提案は公館投票、いわゆる公館に出向いて投票するということでございましたが、その後在外邦人の数も非常にふえてまいりまして、公館投票だけではなかなか対応できないということで、公館投票と郵便投票を併用するということでどうかという線を出していただきました。  それを踏まえまして、私どもは、どこが公館投票が可能か、どこが郵便投票しなければいけないか、そしてまた郵便投票と公館投票の組み合わせをどう考えるべきかといったような点につきまして、現在、外務省等の関係省庁と検討、協議を鋭意進めているところでございます。
  239. 高木義明

    高木分科員 現行の公職選挙法では、公正な投票を確保するために、一人一票主義、投票所での投票、投票用紙の公給主義、投票白書主義などの原則がございます。一方、憲法の精神は主権在民でございまして、参政権というものは基本的人権の一つであります。したがって、船員の投票は、さらにひとつその実現方について積極的な実行を図る、これが私は必要であろう、このように思いますし、現行の枠にとらわれては、これはまたずっとそれが宙ぶらりんの形になってしまう、ぽっかり穴があいて、これでは私はいけないと思っております。  したがって、憲法十五条に掲げる秘密の保持、これがクリアできるならば、今大臣が言われましたように、本人の確認があったり、そういうことも一つの条件かもしれません、あらゆる条件をひとつ、これまでの検討を無にしてはいけませんから、今からまた改めて検討するのではなくて、ぜひこの問題が実現できるように、永年の課題についてここでひとつ、大臣一つの大きな実績を残すという意味ではいい機会だと私は思うのですよ。  したがって、改めて大臣の決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  240. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 私は、こういう問題は、海外の投票を含めて、いかにしてやれるかということをまず考えなければいかぬと思うわけでございますが、しかし一方では、さっき言ったとおり、どうしても侵すことができない選挙の大原則をこれまた超えることができないということがございます。  ですから、委員が冒頭触れた三つの方法を、大変やりにくくても何とかすれば投票できるのでしょうが、最後に触れられた、さあ出発した、そして公示になった、そして着いた港からどういう形で送ってももう間に合わないというケースはどうしたらいいのかなというようなことについては、もうそういう方法しかない。まだそういう方法が、かつては不可能であったわけでございますが、今は可能になったわけでございますので、そういう場合にどういう手がとれるのか。  ただ、その場合どうしても、例えば御本人の投票の秘密というところが一部、一〇〇%守られないという点はあるかもしれないけれども、もし御本人がその点を納得したということであるならば、ぎりぎり憲法上は許されるのか、法律上は許されるのかというあたりの決断を、最後はひとつしなければいかぬと思います。  ただ、いずれにしましても、難癖をつけてやらないというのではなくて、どうしたらやれるのだろうか、そういう関係者の方からも大いにいろいろと知恵を出していただいて、そして私たちも一緒になって考えさせていただいて、不在者投票と一〇〇%同じ効果は、最後の場合、どうしても一〇〇%同じにはならぬと思います。例えば九五%は一緒でも、最後の五%はどうしても埋められない溝はあるかもしれないけれども、それがあるからといって参政権の行使ができないということになったら、その方の本来の要望を一見、守っているようでも、こたえていることにならないのですから、ひとつ大いに考えさせていただいて、みんなで知恵を絞りながら、現実の問題としてはこれしかないではないかというところで合意ができれば、私はそれをやることに全くやぶさかではありませんし、むしろ積極的に進めてまいりたい、こういう立場で事務当局を指導してまいりたいと思っております。
  241. 高木義明

    高木分科員 ありがとうございました。終わります。
  242. 相沢英之

    ○相沢主査 これにて高木義明君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして自治省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午後五時三分散会