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1997-03-03 第140回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会平成九年二月二十五日(火曜日)委員 会において、設置するごとに決した。 二月二十八日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       相沢 英之君    石川 要三君       江藤 隆美君    石井  一君       石田 勝之君    中沢 健次君       穀田 恵二君 二月二十八日  相沢英之君が委員長指名で、主査選任され  た。 ————————————————————— 平成九年三月三日(月曜日)     午前十時開議  出席分科員    主 査 相沢 英之君       石川 要三君    江藤 隆美君       奥山 茂彦君    石井  一君       石田 勝之君    旭道山和泰君       中沢 健次君    穀田 恵二君    兼務 大野 松茂君 兼務 新藤 義孝君    兼務 滝   実君 兼務 吉川 貴盛君    兼務 太田 昭宏君 兼務 大畠 章宏君    兼務 中桐 伸五君 兼務 瀬古由起子君    兼務 平賀 高成君 兼務 中川 智子君    兼務 保坂 展人君 兼務 小坂 憲次君  出席国務大臣         文 部 大 臣 小杉  隆君  出席政府委員         文部大臣官房長 佐藤 禎一君         文部大臣官房総         務審議官    富岡 賢治君         文部省生涯学習         局長      草原 克豪君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省教育助成         局長      小林 敬治君         文部省高等教育         局長      雨宮  忠君         文部省学術国際         局長      林田 英樹君         文部省体育局長 佐々木正峰君         文化庁次長   小野 元之君  分科員外出席者         環境庁自然保護         局計画課長   鹿野 久男君         環境庁自然保護         局国立公園課長 下   均君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部人権難民         課長      貝谷 俊男君         大蔵省主計局主         計官      飯原 一樹君         大蔵省主税局税         制第一課長   伏見 泰治君         文部大臣官房会         計課長     矢野 重典君         自治省財政局交         付税課長    荒木 慶司君         自治省財政局地         方債課長    伊藤祐一郎君         文教委員会調査         室長      岡村  豊君         予算委員会調査         室長      大坪 道信君     ————————————— 分科員の異動 三月三日  辞任         補欠選任   石川 要三君     今村 雅弘君   江藤 隆美君     奥山 茂彦君   石田 勝之君     吉田  治君 同日  辞任         補欠選任   今村 雅弘君     戸井田 徹君   奥山 茂彦君     松本  純君   吉田  治君     旭道山和泰君 同日  辞任         補欠選任   戸井田 徹君     石川 要三君   松本  純君     江藤 隆美君   旭道山和泰君     石田 勝之君 同日  第一分科員吉川貴盛君、小坂憲次君、第二分科  員保坂展人君、第四分科員瀬古由起子君、平賀  高成君、第五分科員大畠章宏君、中川智子君、  第六分科員新藤義孝君、中桐伸五君、第七分科  員大野松茂君、滝実君及び第八分科員太田昭宏  君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成九年度一般会計予算  平成九年度特別会計予算  平成九年度政府関係機関予算  (文部省所管)      ————◇—————
  2. 相沢英之

    相沢主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりました相沢英之でございます。よろしくお願いいたします。  本分科会は、文部省及び自治省所管について審査を行うこととなっております。  なお、両省所管事項説明は、両省審査の冒頭に聴取いたします。  平成九年度一般会計予算平成九年度特別会計予算及び平成九年度政府関係機関予算文部省所管について、政府から説明を聴取いたします。小杉文部大臣
  3. 小杉隆

    小杉国務大臣 平成九年度文部省所管予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  二十一世紀を目前に控え、我が国が、創造的で活力に満ち文化の薫り高い国家として発展していくとともに、国民一人一人が、ゆとりと潤いのある生活を実感し、多様な個性を発揮できる社会を築いていくことが求められております。  このため、平成九年度予算の編成に当たりましては、厳しい財政状況のもとではありますが、中央教育審議会答申等を踏まえた教育改革の積極的な推進を図り、いじめ登校拒否の問題、病原性大腸菌O157薬物乱用対策等喫緊社会的諸課題に取り組むとともに、二十一世紀に向けた科学技術創造立国文化スポーツ立国を目指した基盤をつくり出し、大きな時代の変化に柔軟かつ的確に対応する文教施策を積極的に推進することができる予算確保に努めたところであります。  文部省所管一般会計予算額は、五兆八千百九十七億六千三百万円、国立学校特別会計予算額は、二兆六千八百四十八億三千九百万円となっております。  何とぞよろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。  なお、その具体の内容については、お手元に配付してあります印刷物のとおりでありますが、時間の関係もございますので、主査におかれまして、会議録に掲載されますよう、御配慮をお願い申し上げます。
  4. 相沢英之

    相沢主査 この際、お諮りいたします。  ただいま文部大臣から申し出がありました文部省所管関係予算概要につきましては、その詳細 は説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたしと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 相沢英之

    相沢主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔小杉国務大臣説明を省略した部分〕 その主な内容としては、  一. 人々の生涯にわたる多様な学習活動振興に資するため、通信衛星利用した放送大学の全国化推進、青少年の学校外における体験活動家庭教育充実社会教育施設高度化情報化推進など  二. 一人一人の個性を生かし、豊かな人間性を育てるための初等中等教育充実として、教職員配置改善計画の着実な実施ゆとりの中で「生きる力」の育成を目指した教育内容改善をはじめ、いじめ登校拒否等生徒指導上の諸問題に適切に対応するためのスクールカウンセラー活用調査研究委託事業大幅拡充公立学校施設等の耐震・防災機能充実強化、安全で充実した学校給食実施に向けた病原性大腸菌O−一五七対策事業薬物乱用対策事業等喫緊社会的諸課題への取組みなど  三. 個性豊かな教育研究を展開する私学への助成として、経常費助成をはじめ、私立学校施設近代化高度化のための整備推進する利子助成制度の創設や私立大学学術フロンティア推進事業実施など  四. 高等教育高度化等の要請に応えるための整備充実として、国立大学等における創造的な教育研究推進するための大学院等整備教育研究経費充実など  五. 人類の知的共有財産として社会発展基盤を形成する学術振興として、科学技術基本計画を踏まえたポスト・ドクター等一万人支援計画の着実な推進科学研究費補助金拡充など  六. ゆとりある質の高いスポーツ振興として、国際的な競技力向上を図るための国立スポーツ科学センター建設着手、いわゆるナショナルトレーニングセンターの在り方に関する調査研究実施及び生涯スポーツ振興のためのスポーツタウン推進事業など 七. 新しい文化立国をめざした文化振興として、新国立劇場の本年十月オープン、アーツプラン21など芸術創造活動への支援拡充、美術館・博物館の総合的充実若手芸術家伝統文化後継者等の養成・確保文化財の保存公開活用推進など  八. 教育学術文化スポーツ国際交流協力推進として、留学生交流や昨年の日米首脳会談を踏まえた日米国民交流事業ユネスコ等国際機関を通じた教育協力事業、諸外国との研究者交流共同研究世界的な文化遺産保存修復に関する国際協力、新たな日・韓スポーツ交流事業など  九. 情報化への対応として、情報教育充実、インターネットや衛星通信等を活用した教育の一層の推進文教行政各分野における情報通信ネットワーク環境整備推進など に関する経費であります。  何とぞよろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。     —————————————
  6. 相沢英之

    相沢主査 以上をもちまして文部省所管につきましての説明は終わりました。     —————————————
  7. 相沢英之

    相沢主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましては、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。太田昭宏君。
  8. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 新進党の太田昭宏です。  アマチュアのスポーツ代表的なものはオリンピックであって、昨年も大変な話題を呼んだわけですが、メダルの数などが常に話題になるわけなんです。しかし、日本スポーツ界は、世界強化策に比べまして施設とか制度とかが整っていないという、こういう現状であろうというふうに思います。早急に充実させなければ、世界で勝つということはなかなか難しいと思います。ナショナルトレーニングセンターをつくるとか、あるいは、もっと国も企業もあるいは学校も、スポーツということに力を注いでいくということが非常に大事なことになってくるというふうに思いますし、国際的な選手支援に力を注いでいかなくてはならないと思います。  その中で、東京の北区の西が丘競技場総合体育館等を取り壊して、国立スポーツ科学センター建設されることになりました。ここまで来る間、地域住民方々、また、長い間競技場利用されていた方々との間にいろいろ問題があったりいたしまして、現在も不安な状態が若干あるというふうに聞いております。私自身も、この問題については、文部省方々や北区行政方々、また施設利用されてきた方々との懇談を重ねながら今日まで参りました。地域並びに施設利用者方々を含めて、安心して受け入れられるためにも、何点か質問をして明確にしてまいりたいと思いますし、またあわせて、この施設が今後の日本の大きなスポーツ発展支援ということにつながっていくということを望んでおります。  そこで、まず、この種の施設都市部よりも自然に恵まれた地域につくる方がよいのではないか、設備としてはどうかとか、いろいろ聞いているわけでありますけれども、なぜ西が丘になったのか、その経緯について伺いたい。また、目的を再度明確にしていただきたいと存じます。
  9. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 文部省では、昭和五十六年以来、広く体育スポーツ等に関する研究研修を行う国立総合体育研究研修センター構想検討してきたわけでございますが、我が国競技力向上というものが緊急課題となったことを踏まえまして、昭和六十三年にその構想を再検討をし、競技力向上のためのスポーツ科学研究や、科学的トレーニング方法開発等に重点を置いた国立スポーツ科学センターを設置をすることとし、これまで計画推進してきたところでございます。  建設用地でございますが、当初、旧東京教育大学体育学部跡地、渋谷区の西原でございますが、これを予定しておりましたが、国立スポーツ科学センターは、特殊法人日本体育学校健康センターの一部門とすることとしていることなどから、平成二年の四月に、建設予定地を同センター国立西が丘競技場、北区西が丘でございますが、その敷地の一部としたところでございます。  予算につきましては、平成元年度から設計調査のための経費を計上しており、平成四年度に実施設計を完了後、平成八年度まで施設建設に伴う電波障害対策等事前調査実施してまいりましたが、平成九年度には敷地整備工事及び本体工事着手をする予定でございます。  国立スポーツ科学センター目的でございますが、競技力向上のためのスポーツ科学スポーツ医学研究科学的トレーニング方法開発スポーツ情報の収集、提供等を一体的に行うことにしてございます。
  10. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 今お聞きをしまして、とにかく、先ほどから私も申し上げましたが、この建設目的、あるいは、施設というものがかなり拡充をされていきますと、日本でもこうした施設は初めてのことでもありますし、望まれてきたということもありますから、私は非常に大事な施設になろうというふうに思います。  そこで、施設として世界的にどの程度水準になっているのか、また選手強化の面でどの程度期 待をされるのか、その辺についてお答えを願いたいと思います。
  11. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 国立スポーツ科学センターは、我が国国際競技力向上という課題対応するために、スポーツ医科学研究科学的トレーニング方法開発等を行う、いわば我が国の拠点として設置するものでございます。  そこで、既にスポーツ科学センターナショナルスポーツセンターを設置している国々の状況等も参考としながら、世界的に通用する国内の最高水準のものをつくりたいということで、調査研究協力者会議等において検討を進めてまいったものでございます。  そんなわけで、国立スポーツ科学センターにつきましては、各競技種目個々選手にふさわしいトレーニング内容というのを開発し、それに基づく実践的なトレーニングができるようにするとともに、合宿トレーニングも可能となるようにする、そういったことを通して、トップレベル選手強化が十分に図られるように配慮してまいりたいと考えておるところでございます。
  12. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 そこで、今お話がありましたように、私いろいろ聞きますと、合宿施設が備えられているということなんですけれども、選手が独自のメニューでいろいろやられている、コーチとマンツーマンのようにやられている、それらの選手がほかのコーチあるいはメニューで練習することに対しての不安というようなことをよく聞くわけなんですが、その辺のコーチ、そして選手、そういうものの連携とかいうことは大丈夫なのかということについてお答えをいただきたいと存じます。
  13. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 合宿トレーニング等に供するために、国立スポーツ科学センターでは八十室の宿泊施設を設置する予定でございます。  申すまでもなく、選手あるいは指導者というものは、競技種目選手のそれぞれの特性に応じた、それにふさわしいトレーニングというものが極めて大事でございます。そんなわけで、国立スポーツ科学センターにおきましては、各競技団体選手指導者要望や相談に個々に応じ、最適のトレーニング方法開発提供を行う、あるいはメディカルチェックをする、さらにはさまざまな情報提供する、そういったことを通して個々選手競技力向上、それを通して我が国全体の競技力向上を図ってまいりたいと考えておるところでございます。合宿トレーニング等を行うに当たっても、そのようなことに十分配慮をし、個々に応じた対応ができるようにしてまいりたいと考えておるところでございます。
  14. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 その辺の各競技団体との連携とか、それから、スポーツ医科学総合的研究というのはスポーツ国際的競技力向上に寄与するのが目的というのですが、具体的に、もう少し細かく、どういうふうに詰めて、どういうふうにやられているのか。研究内容とかその辺について、よろしくお願いします。
  15. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 国立スポーツ科学センター競技力向上という所期の目的を達成するためには、センター自体が行う研究開発、これを充実していくことは当然でございます。と同時に、体育系大学もございますし、研究所もございます。また関係スポーツ団体要望もございます。そういった諸施設との緊密な連携協力体制を確立しながら、一体的にスポーツ医科学研究あるいはトレーニング方法開発を行っていくことが極めて大切でございます。  そういう観点を踏まえまして、今後、国立スポーツ科学センターにおいては、具体的な研究内容研究実施方法を詰めてまいるわけでございますが、そのため、先ほど申し上げました関係者から成る協力者会議を設け、検討を進めてまいりたいと考えておるところでございます。  具体的に検討すべき項目といたしましては、例えば競技種目ごと科学的トレーニング方法開発であるとか、メンタルトレーニング研究であるとか、スポーツメディカルチェックの実践的研究等さまざまな課題があろうかと思いますが、これらにつきましても、体育系大学研究所、あるいは関係スポーツ団体等と十分な連絡調整を図りながら決めてまいりたいと考えておるところでございます。
  16. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 それと、例えば、アトランタオリンピック日本選手団本部役員の福田さんという、日本レスリング協会常務理事の方が「暑き夏の熱き闘いアトランタ」というのを出してくださっていまして、いろいろな話を聞いたりしてみますと、この本の中にも書いてあるわけなんですが、日本施設をつくっても、なかなか規律が厳しくて、合宿をしましても、朝六時に起きなさいとか、六時半には全員で起床して体操しなさい、七時には食事である。減量している選手もいるわけです。そんなことで朝から晩まで規律規律規律で、そしてぴしゃっと何時には就寝だというようなことで、とにかく日本施設は使いづらくて困る。最近は、外国選手とも合宿を一緒にするようなこともあったりすると、トラブルが発生したりして、ほとほと官の運営というようなものはもう懲り懲りであるというような声もあるわけなんです。  私は、この辺の問題は、ハードを生かす運営面で使いづらくならないように、これはぜひとも文部大臣、その辺をよく見ていただいて、つくったけれども魂が入っていない、使いづらい、トラブルが発生する、こういうことのないように、ソフト面でのその辺の措置を徹底的によろしくお願いしたい、このように思います。
  17. 小杉隆

    小杉国務大臣 今まで体育局長から、このスポーツ科学センターをつくるまでの経緯とか目的とか、あるいは施設内容とかトレーニングの中身、そういったことがるる御説明がありました。  今御指摘のように、平成九年度から実際に建設着手するわけですが、でき上がった後の利用あるいは運営、そういう面で、とかくお役所的な、非常に規則規則でがんじがらめで余り融通のきかないような運営で、実際に役に立つトレーニングセンターに、科学センターにならないというような懸念がないように、私は、できる限り競技団体の意向というものを最大限に尊重するような、そういう運営方法をやっていかなきゃいけない、まず文部省が余り過度な干渉をしないということが大事だと思っております。
  18. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 そのことはぜひともよろしくお願いしたいし、リーダーシップもまたお願いをしたいと思います。  もう一つ、そういう施設をつくると同時に、やはり今回は地元が随分いろいろ使っていたわけでありまして、サッカー専用のグラウンドと総合体育館などによる屋内外総合スポーツ施設として、ずっと今日までテニスとかプールとかさまざまなことをやってきまして、一般方々にも大変利用されてきたという経緯がございます。  そこで、これを取り壊して新しい施設建設されるということで、利用者の間からは、完成後の施設利用の問題ということで、地域住民の声をよく反映していただきたい、十二年に完成しましてから、値段の問題も含めて、もう利用できないんじゃないかとか、立派な施設だから値段が急に上がってしまうんじゃないか、いろいろな意味での心配事が今出ているわけであります。  そこで、文部省に、この競技場完成後の施設利用についてどのように対応していくかということなんですが、まず、オリンピックの偉い選手というか立派な選手ばかりが使って、合宿が行われたりして締め出されてしまうのではないか、本当に十分使えるのか、こういうような心配があるわけなんです。これらのスポーツ利用者完成後も利用できるのか、そういうことについてそれぞれのスポーツごと説明していただきたい。  例えばプールを使う水泳はどうなるか。テニスはどうなるか。体育館のバレーとかバドミントン、バスケット、卓球、これがちゃんと使えるのか。あるいはトレーニング施設筋力トレーニング等今やっているのですけれども、私も行ったことがありますけれども、そういうことができるのか。それぞれ、簡潔で結構なんですけれども、今 まではこうだったけれども、十二年の完成の後にも使えますよ、こういうことを説明をいただきたいと思います。
  19. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 スポーツ科学センター整備する場合には、スポーツ科学研究成果競技スポーツと生涯スポーツの両面に生かしながら、両者が連携をしてスポーツ振興を図っていくということが重要と考えております。そういう観点から、スポーツ科学センター機能と、地域スポーツセンター機能をあわせ持つ施設として現在構想しているわけでございまして、一般利用への開放につきましては、従来どおり西が丘競技場地域住民利用への開放を考えております。  具体的にはプール、それからバレーボール、卓球、バスケットボールなど体育館、あるいはトレーニング施設は、従来どおり一般利用への開放を行いたいと考えております。また、会議室、喫茶、レストラン、売店に加えラウンジを一般開放したいというのが二点目でございます。それから三点目といたしましては、テニスコートにつきましても、施設建設により三面減少することとなりますが、かわりに夜間照明を設置するなどして利用時間を延長し、従来の利用可能量確保してまいりたいと考えておるところでございます。
  20. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 それはぜひとも強力にお願いしたいし、地元もそういうことで強い要望がありますから、その辺はよく受けてやりたいと思います。これらのスポーツ関係代表、あるいはまた利用者代表等との話し合いということが私は十分行われていく、これまで若干私は欠けていたのかなという感じもしますし、計画段階では仕方がない部分もあったかもしれませんが、ぜひともこういう段階で、一つ一つ建設がどうなっていて、そして十二年完成の後はどうなるかというようなことをぜひとも丁寧に私はやっていただきたいと思います。  話し合いはこれまでどのようにされてきたのか、経緯等について、簡単で結構ですからお話しいただきたいと思います。
  21. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 今回の建設着手に当たりましての住民等への説明について申し上げますと、まず昨年夏に北区議会、板橋区議会に最終的な構想についての説明を行い、御理解をいただいたところでございます。また、現在の西が丘競技場利用者に対しましては、やはり昨年の九月に国立西が丘競技場において利用者説明会実施したところであり、なおテニスプール等各種日別利用者方々に対しましても事前説明等を行ってきたところでございます。これらを通しまして、利用者の御理解をいただいたものと判断をしておるところでございます。
  22. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 その中にスポーツサウナが現在ありまして、私も、聞きますと汗を流したりして、そのスポーツサウナは非常に大事な位置づけになっているということを改めて認識をしたのです。このスポーツサウナが、国立スポーツ科学センターになった場合にどうなるのか。利用者とかあるいは地元の区議会等からも残すようにという強い要望が出されているわけで、私もこれらの住民の声にはしっかり耳を傾けて対応しなくてはいけないと強く訴えたいわけなんです。ぜひともこのスポーツサウナは何らかの形で残して、地元の意向あるいは選手の意向等に沿ってもらいたい、利用者の意向に沿ってもらいたい。  これについて、文部大臣からもぜひとも指導をお願いしたいし対応をお願いしたい、このように思います。
  23. 小杉隆

    小杉国務大臣 私も先日現場を視察してまいりまして、今御指摘のように地域住民あるいはあそこの利用者が非常にスポーツサウナを活用しているという実態を見てまいりました。現在、スポーツ科学センターの設計が既に大体終わっているところでありまして、今本体に直ちにスポーツサウナ施設を含めるということは困難な状況にあります。しかし、今まで西が丘競技場利用された方々あるいは地元議会要望もありますので、私どもは誠実に検討していきたいと思っております。本体に含めることは不可能であっても、平成十二年の施設完成する段階で何とか全体の整備計画の中で検討していきたいというふうに考えております。
  24. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 それはもう、ぜひとも今大臣の答弁のように責任を持っていただきたいし、十二年というとまだ時間がありますから、その間もぜひとも地元にも、そういう方向であるとか、さまざまなことについてお話をいただけるように、説明いただけるようにお願いしたいと思います。  それから、現在の競技場の主催事業もかなりありまして、非常に有効利用されてきているわけなんです。例えば水泳教室に通っている女性がいる。かなりお年寄りの方で水泳教室に通っている方もいらっしゃったりしまして、ある方は先天性の股関節脱臼で、初めて教室に来られたときには一人でふろにも入れないというような、六十ぐらいの方ですが、そういうような状況で自宅のおふろにも入れない。しかし、ここの水泳教室に来まして徐々に歩けるというふうになってきまして、体力もついて手術も受けられるようになってきて、そして背泳ぎとかクロールも泳げるようになった、大変感謝をしているということもあったりします。リハビリを行う人、あるいは五十肩の後遺症に悩んで、腰痛が治ったり、五十肩が治ったり、リューマチが治ったとかいうような方が大変いらっしゃったりして、非常に効果を上げている。喜ばれている。  ところが、主催事業はこれで途絶えてしまうというようなことで、指導員と利用者との間はリハビリ等を中心にしてかなり密接な関係もあったりしまして、さあこれから一体どうなってしまうのだろうというような懸念がこういう方に随分出ております。私たちにも相当この相談があるわけです。そこで、文部省並びに西が丘競技場として、完成までの間、これらの方々が安心して練習できる代替の場所を探してあげてくれないか、こういう声があるわけで、ぜひともこれについてはリーダーシップをとっていただきたい、このように思いますが、いかがですか。
  25. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 御指摘のように、国立西が丘競技場では、主催事業として水泳教室等を実施し、幼児から御婦人あるいは社会人を対象とした各種スポーツ教室を開催しておるところでございますが、このスポーツ教室は、国立スポーツ科学センター建設に伴い休止することとなるわけでございます。  文部省といたしましても、あるいは国立西が丘競技場としても、これら従前のスポーツ教室に参加していた方々スポーツの機会ができるだけ確保されるようにしてまいりたいと考えておるところでございまして、地元自治体に対しまして、体育館プール等、代替の施設や事業への受け入れ等の協力を強く求めますとともに、霞ケ丘の国立競技場あるいは代々木競技場実施するスポーツ教室への受け入れを行うなど、できるだけの配慮をしてまいりたいと考えております。文部省といたしましても、引き続き地元自治体と十分連絡調整をしながら、積極的な対応をしてまいりたいと考えております。
  26. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 地元の北区とか板橋区も受け入れなさいということで相当努力しているのですが、なかなか施設が十分ではないものですからこれができないというようなことで悩んでいる状況もありまして、今答弁にありましたように、私は、例えば直接地方自治体との関係だけでなくて、ここを管理運営している特殊法人日本体育学校健康センター、ここを軸にしたりしまして、近くの板橋区や練馬区や、あるいは埼玉県とかいろいろな連携を図っていく。文部省と地方自治体、国と地方自治体というだけでなくて、またそれも地域をもう少し広げて、ぜひともそういう形でのリーダーシップをとっていただきたい、このように思  いますがどうですか。
  27. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 御指摘の点も踏まえて、引き続き努力してまいりたいと思っております。
  28. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 文部大臣、るるお話をさせていただきましたが、私、これは今非常に大事な分岐点かな。  ある意味では、世界的に通用するようなオリンピック選手を養成する。オリンピックのときだけ、日本は弱くなった、メダルが少ないじゃないかなんというようなことを言うと、選手の方あるいはコーチの方、監督の方は本当に歯ぎしりして、施設がない、ナショナルトレーニングセンターもない、データもそろってない、ビデオで徹底的に相手も研究できない、何とか力を注いでいただきたいのにな、こういうことが一方ではある。ですから、相当これは力を入れたものになる、これは私は突破口にこの施設はなると思います。そういう意味では、ぜひとも先ほど申し上げたようなことに尽力をいただいて、特にソフト面での、使いやすい、そしてレベルも高いというものに仕上げていただくということは非常に大事なんだ。  もう一つ、逆に今度は地元からも、使っているから何とかこれを保持してくれ、この二つを本当に一つにしながら持っていくというのは、なかなかデリケートでもあるし非常に難しいことだとは思いますけれども、ここのところをぜひともリーダーシップをとって、ともに二つが成り立って、そして当初の目的を達成するようなリーダーシップを、ぜひとも文部大臣に発揮していただきたい、最後に念願をいたしたいと思います。
  29. 小杉隆

    小杉国務大臣 このスポーツ科学センター、これはもう長年のスポーツ界の悲願でありました。  御指摘のとおり、ソウル、バルセロナ、アトランタ日本の競技成績は必ずしも国民の期待にこたえ得なかったということから、とにかく科学トレーニングあるいは医学的なトレーニング、そういったことが要請されてきたわけでありまして、このたび平成九年度予算で四十一億円の建設予算が組まれたということは、先日、古橋JOC会長とお会いしたときももう本当に喜んでおられまして、何とか次のシドニーに向けてこれを大いに活用する、本当はしてほしいのですけれども建設期間が四年もかかるものですから間に合わないわけですが、その間も代々木の国立競技場等を中心としてできる限り選手強化に努めてもらいたい、こういうことを申し上げているわけです。  一方で、今までいろいろ地元との経緯もありますので、地元の意向というものも十分尊重してまいりたいと思いますし、その辺のこの二つの兼ね合いをはかるということは非常に難しいことですけれども、私はやはり文部省として、文部大臣として、できる限り本来の競技力向上という目的と、それから地元自治体なり地元の区議会の皆さんの意向を尊重した運営という両面の調和のために全力で取り組んでいきたいと思っておりますので、どうぞ地元の皆様の御協力を今後ともよろしくお願いしたいと思います。  ありがとうございます。
  30. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 終わります。
  31. 相沢英之

    相沢主査 これにて太田昭宏君の質疑は終了いたしました。  次に、滝実君。
  32. 滝実

    ○滝分科員 自由民主党の奈良県第二区選出の滝実でございます。主として選挙区で懸案になっておりますことの幾つかにつきまして、御要望あるいはお尋ねを申し上げさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。  まず、四年制の工科系学部につきまして、これは御要望を申し上げたいと思うのでございます。  と申しますのは、奈良県というのは、工科系学部の存在しない日本全国唯一の県に実は現在なっております。国公立大学あるいは私学を通じて工科系学部がないわけでございます。  もともと十数年来、各県とも工学部の設置について各県なりに努力をいたしてまいりました。と申しますのは、やはり教育というのは、学生、子供にとって教育を受ける機会均等が大事であると同時に、また、地元へのやはり大きな利益になる、こういうこともございまして、十数年来、各県は工学部の設置について努力をいたしてまいりました。  奈良県の場合にも全く同様でございまして、ずっとやってきたと思うのでございますけれども、たまたまその時期が、京都大学あるいは大阪大学の関係者の御要望もございまして、現在、全国でも有数の大学院大学ということに結実をいたしているわけでございますけれども、工学部の設置運動と大学院大学の設置の要望とが重なりまして、結果的には奈良先端科学技術大学院大学という大変ハイレベルのいわば工科系の大学院大学が誕生を見た、こういう経緯がございます。  したがって、それなりに大変レベルの高い工科系のあれでございますから、地元としても全面的にパックアップする、こういうことで来ているわけでございますけれども、学部というのもやはり必要ではないだろうかなという感じがございまして、何とか工科系学部の設置について推進をしたいものだ、こういうような地元の念願があるわけでございます。  こういった点について、文部省御当局におかれましては、こういうような問題についてどうお考えになっているのか、まずそれをお尋ね申し上げたいと思います。
  33. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 科学技術や産業社会発展ということのために、多くの優秀な工科系の人材の養成が必要だということは御指摘のとおりでございます。  私どもといたしまして、国立大学の工科系の学部というものにつきましては、逐次整備を図ってきているところでございまして、来年度におきましても、弘前大学それから香川大学につきまして工科系の学部を創設するということで、予算案として盛り込ませていただいているところでございます。  全体といたしまして、それぞれの県、それぞれ事情がございますので、それぞれの事情に応ずるところはございますけれども、全国的に工科系の人材の養成ということについてこれまでも力を尽くしてまいりましたし、今後とも力を尽くしてまいりたいということでございます。
  34. 滝実

    ○滝分科員 確かに、今のお話のように、平成九年度におきましては、香川あるいは弘前、これに工科系学部を設置するということでたしか予算的には三千八百万でございましたか、事務費が計上されておるように聞いておるわけでございます。できるなれば国立大学が望ましいわけでございますけれども、仮にできなければ、それにかわる私学でも、とにかくやはりこういうような工科系学部のいわば全国均てん化をする、こういう方向でぜひとも今後ともお進めを願いたい、こういうふうに思うわけでございます。  たまたま学生数も減っている時期でございます。また、予算的にも大変厳しい時期でございますから、国公立大学とは申しませんけれども、そういう方向で御努力をお願いいたしますようにこれは御要望をさせていただきます。御答弁といっても、なかなかそれ以上のものは難しい段階だろうと思いますので、御要望だけさせていただきたいと思います。  次に、そのかわりと申してはなんでございますけれども、奈良県には、私の選挙区でございますけれども、大和郡山市に国立の奈良工業高等専門学校、いわゆる高専がございます。  この高専問題というのは、文部省におかれましては、これはもう一つ学校のスタイルとして既に定着をしている、こういうふうなお考えがおありになるだろうと思うのでございます。  もともとの発足は、高等学校三年プラス短期大学二年分のいわば高等学校・短期大学一貫教育という格好で、短大卒よりはもう少しレベルの高い技術教育を施す、こういうことで発足したと思うのでございます。しかし、近年に至りますと、この高専も問題がないわけではない、こういうふうに見受けられるわけでございます。  現在、高専は国公立あるいは私学も含めて、生徒数は年間一万一千人ぐらい入学定員があろうかと思うのでございますけれども、そのうち、毎年二千人ぐらいが大学に編入学をしている状況でございます。したがって、定員の約二割が大学へ編入学している。それから高専の中で専攻科を設けておりますから、専攻科の定員が約四百名ぐらいあると思うのです。したがって、年間約二千四百人ぐらいの高専の学生がいわば専攻科へ回るか学部へ入り直す、こういうようなことだと思うのでございます。  こういった点について、文部省とされましては高専問題については今後どういう格好でこれに臨まれるのか。先ほど申しましたように、既にこの制度制度として定着されている、こういうような観点から今後とも臨まれるのかどうか。その辺のところをお尋ね申し上げたいと思います。
  35. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 高等専門学校につきましては、今御指摘のように中学校卒業者に対して実践的な技術者を養成するという観点から昭和三十年代の後半からスタートいたしまして、昭和四十年代の末までつくってまいってきたわけでございます。現在、工業の分野を中心といたしまして国立で五十四校、公立で五校、私立で三校の計六十二校が設置されておるわけでございます。  現在、高等専門学校の卒業生のいわゆる就職率と申しますか、大変良好でございまして、私どもとしては高等専門学校というのは非常に制度としては定着してきているというように考えておるところでございますし、また、ただいま御指摘の中にもございましたように、高等専門学校を卒業して大学の三年次に編入学をする、あるいは近年専攻科というものを設けてさらに学問を深めるというようなルートもつくったわけでございます。  そのような意味合いにおきまして、高等専門学校制度というのは、数はそう多くはございませんけれども、質的なものとしてはかなり定着してきているなというような感じを持っておるわけでございます。
  36. 滝実

    ○滝分科員 そこで、御意見をお聞かせいただきたいのでございますけれども、現在ある六十二校でございますか、その高専の中で専攻科が逐年設置されてきている状況にあろうかと思うのでございます。奈良の国立高専の場合には早い時期に専攻科が設置されたのでございますけれども、各学校の専攻科の定数を見ますと大体二十人とか十六人とか、こういうような定数になっているかと思います。ところが、これは学校差があると思いますけれども、一学年二十人の専攻科と申しますとやや少ない、こういう感じがあるわけでございます。  もちろん定数をふやしますと教官の数をふやさなきゃいかぬ、こういうようなことで予算的な制約を伴うものですからなかなか難しいのだろうと思うのでございますけれども、しかし学校によりましては定数の範囲内でもう少し定数を、定数と申しますか、教官の現行の定数の中でこの専攻科の学生定数をやりくりしてでも少し広げたい、こういうようなところもあるのではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。  その辺のところは、文部省におかれましては学校の事情によってはそういうようなことの配慮の上で専攻科の学生定数をふやすようなお考えを持ってもらいたい、こういう感じがするのでございますけれども、いかがでしょうか。
  37. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 御指摘の奈良工業高専につきましては、御指摘のようにいち早く専攻科が設けられたわけでございますけれども、現在機械制御工学専攻、電子情報工学専攻、それから化学工学専攻、この三つの専攻科が設けられておるわけでございまして、定員につきましては間口といたしまして二十名ということでございます。これは高専卒業者の進学状況等を勘案しながら設定したものでございますけれども、ちなみに平成八年度の専攻科入学志願者数は四十一名ということでございまして、志願倍率は約二倍ということでございます。  また、他の高等専門学校におきましても、これらの既存の専攻科の設置校の状況等も見ながら、ぜひうちにも、我が高専にも専攻科を設けたいという希望が随分と出てまいっておるわけでございまして、来年度におきましても三校お願いをしているところでございます。現在までのところ、国立高専全体で五十四校ございますけれども、そのうち専攻科が設置されているのはまだ十六校にとどまっておる、こういう状況でございます。これに三校加えますと十九校になるわけでございます。  この定員の増強ということの御指摘、よくわかるわけでございますけれども、私どもといたしましては、基本的には、専攻科をまず設けるというところとの比較におきましては、やはりそちらの方が優先されるべきではなかろうかなというように考えておるところでございまして、定員の増強の問題につきましては将来の検討課題というようなこととして受けとめさせていただきたいというように考えておるところでございます。
  38. 滝実

    ○滝分科員 今の御意見のように、現在ほかの高専の専攻科設置が進められているさなかでございますから、いろいろな事情もございますし、そもそも教官定数をふやすということ自体が大変困難な時代でございますからそれ以上のことは申しませんけれども、現在の教官定数あるいは事務職員の定数の中で専攻科の入学定員をふやせる余地があるならば、少し柔軟、弾力的なお取り扱いをお願いさせていただきたい。これは御要望にさせていただきます。  次に、補助金関係一つ二つ細かい話を申し上げたいと思うのでございます。  現在、文部省の中で社会体育施設あるいは社会教育施設、こういった関係の補助金が数十億単位あるいは百億単位で出ているわけでございますけれども、どちらかというとこの種の補助金は定額補助であったりいたしまして、補助金といえども実際の財源をこれによって相当程度賄うというのはなかなか難しい。こういうようなことがもうずっとこの種の補助金創設以来続いてきているわけでございます。  こういった点について、文部省とされましては今度の平成九年度予算で基本的にこの辺のところの改正をされたのかどうか、その辺をお尋ねさせていただきたいと思います。
  39. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 社会体育施設でございますが、その補助単価につきましては、物価上昇等を勘案しながら適宜単価改定を行ってまいったところでございまして、平成九年度予算でございますが、平成八年に文部省、大蔵省、自治省の三省で合同で水泳プール建設費について実態調査を行いました。それに基づきまして社会体育施設の水泳プールの補助単価を改定することとし、所要額の要求を行って予算計上がなされておるところでございます。  今後とも、物価の動向等を踏まえながら単価の改定について適宜取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。
  40. 滝実

    ○滝分科員 補助金の問題については二つほど問題があろうかと思うのですね。一つは、ことしの予算を拝見いたしましても、社会教育施設体育施設の補助金はどちらかというとやはり減少傾向にあるわけでございます。したがって、事務的な配慮からいえば、従来のような各地方団体が要望してくる補助金にそれなりに対応するというようなことができにくくなっている。そういう意味では、補助金の重点的な配分と申しますか、そういうような方法をこれは結果としてとらざるを得ない、こういうことだろうと思うのでございます。  そうしますと、これはかなり地方団体によってその辺のところが、何が重点的なものなのかということが不透明という感じは免れないと思うのですね。その辺のところはどういうふうにお考えになっているのでしょうか。
  41. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 御案内のように、現下非常に厳しい財政事情にございます。したがいまして、例えば社会体育施設につきましても、すべての社会体育施設というものを補助対象にするということではなくて、例えば大規模体育館に限ってこれを国庫補助対象とし、その補助内容については充実をする等の工夫をしながら、これまで対応してまいったところでございます。  その基本的な考え方といたしましては、やはり地方公共団体あるいは地域住民要望の強いものに特化をしていくというふうな考え方に立って対応してまいっておるところでございまして、今後ともそのような考え方でできる限り地方自治体の要請にこたえる、厳しい財政事情の中でできるだけの努力はしてまいりたいと考えております。
  42. 滝実

    ○滝分科員 それに関連してのことになろうかと思うのでございますけれども、現在公民館が各地域にかなりの数設置されているわけでございますが、この公民館に限って申しますと、これの設置基準がかなり固定的と申しますか、厳格であろう。  それからもう一つは、公民館の運営管理、これもかなり、最近の施設としては例を見ないほど、従来から限定的、固定的な運営基準でなされている、こういう問題がありますね。最近いろいろな施設がふえている中で、公民館だけが目立つ、こういうことでございます。  具体的に申しますと、特定宗教団体の集会には使わせない、特定の政党がどうも占拠するおそれがあるので政治活動には使わせない、こういうようなことでございます。要するに、宗教活動、政治活動には公民館は使わせない、こういうようなことでございます。  私は、特定のグループが決まったように占拠をする、こういうことはなるべく避けるという意味で現在の基準というのはそれなりの意味があったと思いますし、現在もあると思いますけれども、しかしそれならば、例えば有料でもって使わせるとか、そういうような方法をとってでももう少し柔軟な対応が必要じゃないだろうかなと。  特に申しますのは、公民館というのは、その地域によってほかの施設がない場合には、例えば葬祭、冠婚葬祭と申しますけれどもその葬祭に現在使えないのですね。こういうような基本的な制約がございます。地域のみんなでもって、地方地方では、冠婚葬祭の特に葬祭部分地元が総出でもってお手伝いをする、こういうようなセミパブリックのいわばセレモニーであるにもかかわらず、公民館が使えない、もとをたどれば宗教活動だから、こういうようなことになりかねないわけでございます。仮にそういう問題については有料化をしてでも、やはり使用については柔軟な使用を認めるとか、そういうような配慮があっていいのじゃないだろうかなという感じがするのですけれども、その辺についていかがでしょうか。
  43. 草原克豪

    ○草原政府委員 公民館は、社会教育法の第二十条に定める目的を達成するために、地域住民のための学習機会の提供等を行う社会教育施設として高い公益性を持っているものと認識しております。こうした公益性という公民館の性格からいいまして、公民館の運営に当たっては、社会教育法二十三条によって、営利事業への援助の禁止とか、あるいは特定の政党や宗教に対する支援の禁止といったことが定められているわけでございます。  その運営について、余りにも厳格的過ぎるのではないか、こういう御指摘でございますが、この運営につきましては、社会教育法に基づいて、文部省の告示によって公民館の設置及び運営に関する基準を定めております。この基準といいますのは、公民館の水準を維持向上をするためのいわば努力目標でございまして、設置者である各市町村においては、この基準を参考にしながら、それぞれの実情を踏まえて自主的に設置、運営を行っているというのが現状でございます。  したがって、こういう基準の性格上、この基準によって各公民館における自主的なあるいは柔軟な運営が妨げられているということではないと私ども認識しておりますけれども、しかし、やはり公民館を取り巻くいろいろな情勢も変化しておりますし、地方の自主性を生かす、こういう観点から、こういった基準を含めて公民館に関する関係法令の見直しを図ることは必要だと思っております。  この点につきましては、先般取りまとめました教育改革プログラムの中においても、地方の自主性を生かす観点から、公民館に関する法令の規定を含む社会教育関係法令の見直しについて、「生涯学習議会において検討し、平成九年度中を目途に成案を得る。」ということを盛り込んでおるところでございます。
  44. 滝実

    ○滝分科員 ありがとうございました。ぜひそういう方向で審議が尽くされますことを御期待を申し上げたいと思います。  最後に、埋蔵文化財の担当専門員につきましてお尋ねをさせていただきたいと思うのでございます。  これは、奈良の場合にはかなり埋蔵文化財がありますから、どこの市町村でも専門員を設置をする、こういうようなことで来ておりますけれども、これは今や奈良県だけの問題ではなくて、九州もそうですし、東北もそうですし、関東もそうですし、もう全国的にこの埋蔵文化財の問題は、それぞれの市町村がその職員をどうするか、こういうことであろうかと思うのでございます。  文部省におかれましては、この担当専門員の設置経費について、自治省に働きかけをして交付税措置をするように、こういうようなことで努力をされているように聞いているのでございますけれども、今現在、どういうふうな状況になっているのか、それをお聞かせいただきたいと思うのです。
  45. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 お話ございました埋蔵文化財でございますけれども、地域に根差した、そして将来にきちんとこれを引き継いでいくということは、私ども大変大事なことだと思っておるわけでございます。お話ございました埋蔵文化財をきちんと発掘調査をしてそれを後世に残していくためには、担当をする専門的な職員、こういったものの充実が大変大事なことだと私どもとしても思っておるわけでございます。  この関係につきましては、国の補助制度というのはないわけでございますけれども、自治省に対して、普通交付税の積算の観点から私ども毎年お願いをしております。現時点では、都道府県の例でございますけれども、平成元年度は十一人というのが積算の根拠であったわけでございますけれども、近年かなりふやしていただいておりまして、最近でございますと、平成六年が十九人、七年で二十人、平成八年度は二十一人ということでかなりふやしていただいておるわけでございます。  いずれにいたしましても、私どもとしては、埋蔵文化財の円滑な調査ということを実施できるよう、今後とも努力をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  46. 滝実

    ○滝分科員 ひとつできるだけのルールづくりと申しますか、充実しますように、よろしくお願いしたいと思うのでございます。  しかし、今のお話でございますと、都道府県の場合にはそういう格好でかなり数字的にもきちんとしていると思うのでございますけれども、市町村の分がその辺のところは必ずしも明確じゃございません。うわさによりますと、この辺のところは特別交付税で市町村分は措置するんだ、こういうふうには聞いているのでございますけれども、措置されたものが現実に各個々の市町村で大体何人分ぐらい措置されているのか、これが市町村でよくわからないと言われているわけでございます。自治省の交付税課長、お見えでございますので、こういった点について自治省の方でどういうふうに考えているのか、それをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  47. 荒木慶司

    ○荒木説明員 文化財保護関係の職員の設置につきましては、埋蔵文化財担当の専門職員を含めまして、県分にありましては文化財保護費、それから市町村分につきましては社会教育費の中でそれぞれを措置をしているところであります。  文化財保護関係職員に係る経費の見直しに当たりましては、全国の職員の配置の状況でありますとか、あるいは文部省や地方団体からの要望などを踏まえまして適切な措置に努めてきているところでありまして、近年の改善の状況は、先ほど文部省から説明があったとおりでございます。  また、職員設置経費以外の埋蔵文化財の調査などに要します経費につきましても、埋蔵文化財の発掘件数などに応じまして、特別交付税で措置をしているところであります。  特に、今委員から御指摘ありました市町村につきましては、職員の数等の状況から見まして、現在では社会教育費の中で、包括的な形で措置をしているところでありますが、今後とも、各市町村における職員の配置状況でありますとか、あるいはその調査の動向等をよく文部省あるいは地方団体からお話を伺いまして、適切に対処をしてまいりたいと考えております。
  48. 滝実

    ○滝分科員 ありがとうございました。  しかし、今の御答弁のように、市町村分については、結局何人入っているかというのは必ずしも明確でない、そういうような嫌いがあるわけでございます。これは恐らく、今の御答弁にはございませんでしたけれども、文部省もあるいは自治省の方も、積算基礎はそれぞれ数字を入れているのだろうと思うのでございますけれども、肝心の市町村の教育委員会なり市町村の財政当局が何人ぐらいになっているのかというのがよくわからない、こういうことでございますので、できるだけ早い時期にその辺のところがもう少し明確になるように、少なくとも当該団体には御連絡いただきたいと思うのです。  御意見がございましたら、お願い申し上げます。
  49. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 市町村の埋蔵文化関係の職員の配置状況でございますが、私どもの調査では、平成六年度に三千二百七十四名、それからその前の年度が三千七十六名、その前の平成四年が二千八百三十一名ということで、全体としては、かなり市町村も専門職員の配置あるいは関係職員の配置に努力をしておるということは私どもも把握しておりますので、今後とも適切な指導に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  50. 滝実

    ○滝分科員 ひとつよろしくお願いいたします。  これで終わります。ありがとうございました。
  51. 相沢英之

    相沢主査 これにて滝実君の質疑は終了いたしました。  次に、奥山茂彦君。
  52. 奥山茂彦

    奥山分科員 お世話になります。  私は、京都第三区から今回出てまいりました奥山でございます。私も、地元では地方議員をやりながら、小中学校でPTAをやってきたわけであります。そんなことで、教育問題には大きな関心を持っております。  そういう中で、このたび橋本内閣は第六番目の改革ということで、教育改革を柱にしていきたい、そして子供たちの能力や個性を十分に発揮して、二十一世紀日本を背負うようなそんな子供たちをはぐくんでいきたい、このようなことをおっしゃっておられたわけでありますが、今日の教育をいろいろ考えてみる中において、この間ある教育の講演会の中で、こんな話が出てまいりました。  実は、トヨタ自動車が職員の採用をするに当たって、いろいろと面接で採用官が質問をしたわけであります。そして、その質問の一つに、GNPというのはどういう意味ですか、こういうふうな問いがあったわけであります。最近は余りGNPということを言わないわけなのですけれども、たまたまその質問の趣旨がそういうことであったので、普通の学生は、それについてはもちろん国民総生産ですというふうにほとんどの学生が答えたわけでありますが、ある学生が、このGNPという意味は、頑張れ日本のパルサーや、こんな答えをしたそうであります。そこで、試験官が大変喜んで、実はこんな学生がうちの会社に欲しいんだ、こういうふうな話をしたということを聞いたわけであります。  私の方の小学校で、こんな話がありました。理科の時間に試験がありまして、そして、今ちょうどこの寒い時期であります。朝、氷が張った。この氷が解けると何になりますか、こういうふうな試験が出たわけでありますが、普通の子供は、ほとんどが、もちろん水になるとかあるいはお湯になるとか、こんな答えをしたそうであります。ところが、たった一人の生徒は、氷が解けると春になります、こんな答えを出したわけであります。そして、その担任は、これをペケにしようかどうかということで大変迷われたわけでありますが、相談を受けた校長は、これこそ今、丸にしなさい、二重丸ぐらいつけておきなさい、こんなことを言っておられたわけであります。  現在、今日の教育はいろいろ言われております。過去においても、自由民主党の文教部会あるいはいろいろな部会でもって教育の改革という話が出て、そしてまたそれなりの答申も出されておるわけであります。去年、自由民主党の総合政策研究所というのがあって、ここで一定のレポートが実は出されておるわけであります。  私はその中で、非常におもしろいなと思ったことがあります。これはコラムとして紹介されておったわけでありますが、少し紹介をしてみますと、アメリカの小学生に将来何になりたいかという質問をすると、目を輝かせて回答が返ってくる。フットボールの選手になりたい、あるいは科学者になりたい、大統領になりたい。しかし、同じ質問を日本の小学生にぶつけると、一部の小学生は夢のある回答をするものの、少なからずわからないという答えが返ってくる。中学生に将来どんな職業につきたいかと尋ねると、やはり同じよ  うにわからないという答えがほとんど返ってくる。いろいろな職業を挙げると、面倒くさそうだから、疲れるなどの言葉が返ってくるという。日本は大きな子供的な大学生や高校生がふえているということが現実ではないか、こんなことになつておるわけであります。  もう一つだけ申し上げますと、今の日本教育制度では、初等教育から国語、算数、理科、社会、すべての科目にわたって一つ一つステップを踏んでいかないと上に上がれない仕組みになっております。世界には、エジソン、アインシュタイン、チャーチルその他、少年期にエリートでなかったのに大きく意味のある仕事をした人は無数におります。彼らを日本教育制度に当てはめたら、小学校も卒業できないかもしれない。イギリスのチャーチルは、画家としても食べていけるくらいでありました。また、アカデミー賞受賞女優のキャサリン・ヘプバーンは、映画界きってのインテリであり、博士号を持っているという。日本では、かつてのソニーの大賀会長は芸大出身者である。何か一つのことが得意になれば、他のことを始めてもまたうまくいくような気がする。日本の家庭では、我が子が算数で百点をとってきて家に得意げに帰ってきたときに、親は、それで百点をとつた子は何人いたの、だれとだれが百点とったのと、子供にこういう質問をするのが多いそうであります。いつも他の子供と比較して見ているのであろう、どの親もほとんど同じ方向を日本教育は向いている。こういうふうなまとめ方であるわけであります。  今日の日本教育は、六・三・三制、そして非常に大きな関門である大学受験があるわけであります。いわゆる単線的な内容の平等主義的な、こんな教育がずっと戦後行われてきたように思うわけでありますので、その中から自由に個性と能力をはぐくむような、そんなゆとりがない学生時代をずっと今日の子供たちが送ってきたのでなかろうか、こういうふうに思うわけであります。最近よく言われるわけでありますが、中学校や高校の勉強よりも学習塾の方がおもしろいとか、こんなことを言う子供もおりますし、それから、大学受験まではみんなが一生懸命になって勉強するわけであります。ところが、大学へ入ってしまうと途端に日本の子供たちは学習意欲が半減をしてしまう、こういうふうなことが言われておるわけでありますので、こういった今日までの教育のあり方について文部大臣はどのような見解を持ってこられたのか、あるいはまたどのように変えていこうとされておられるのか、そういった点についてお尋ねをしたいと思います。
  53. 小杉隆

    小杉国務大臣 戦後の学制改革によって、六・三・三・四制という制度のもとで日本人の間にあまねく教育の機会均等が図られたし、また全体として日本の学力水準が上がったということは、評価されていいと思います。  ただ、今御指摘のようなさまざまな弊害も一面ではあります。特に、過度な受験競争ということが子供の個性を非常に害している、こういう御指摘はさまざま指摘されております。  これは、いろいろな要因が複合的に重なっていると思うのですね。まず、社会全体が学歴偏重というような風潮があったということ、それから、いわゆる有名校へ子供を進学させたいという保護者の気持ち、あるいはまた、企業の採用もいわゆるペーパーテスト重視、こういうようなあり方がみんな複雑に絡み合ってそういう弊害が出てきたと思うので、これはやはり、学校教育ももちろんですけれども、社会全体で取り組むべき課題だというふうに受けとめております。
  54. 奥山茂彦

    奥山分科員 今いろいろな議論がなされておるわけであります。そこで、一番基本的なのは、いかにして能力と個性をはぐくんでいくか、こういうことであるわけでありますが、そのためのいろいろな体制づくり、あるいはいろいろな改革をしていかなければならないわけであります。  よく言われる改革のテーマの中で、例えば学校の選択制、これは自由に学校を選択することができるような、そういうふうなシステムをつくってはどうかとか、あるいはまた、いろいろな企業の方々学校を自由につくれるような、そういうふうなシステムをつくってはどうかという提案がなされておるわけであります。それからまた、今はセンター試験がなされておるわけでありますが、これをそれぞれ大学が自由な入試方法でもってもう一度考え直すべきでなかろうかということが一方で言われておる。あるいはまた、単位さえ取得すればよいという、いわゆる単位制ですね、そういうふうなこと。あるいはまたもう一つは、飛び級、これは単位制に絡むことでありますけれども、こういった提案がなされ、入学年齢の弾力化を図るべきでなかろうかという話があります。  こういった提案について、文部省は一体どのようにしてこれを考えていかれるか、取り組んでいかれるか、採用されていかれるのか。
  55. 小杉隆

    小杉国務大臣 今度の教育改革プログラムのねらいというのは、まさに先生の御指摘のようなところにあるわけでありまして、今まではいわば単線型の教育制度でしたけれども、できるだけこれを複線化していこう、そしてできるだけ子供たちの選択が多様にできる、そういう仕組みを考えていこう、こういうことで、特に、例えば個性のある子供を育てるためには単に学校のペーパーテストの成績だけじゃなくて、入試の場合にも多面的な子供の個性を勘案できるような仕組みにしようということで、入学選抜につきましてもできるだけ多様化して、試験の成績だけじゃなくて、日常の学業の行動であるとかボランティア活動とか運動部の活動とかそういうふうに多面的に考えていく、そして評価の尺度もいろいろ多元化していく、こういう努力をしております。  センター試験も、これは一つのそういう多様化のための手段であって、センター試験だけで決めるというのじゃなくて、センター試験もワン・オブ・ゼム、それを一つの参考にして、そしてできるだけそれを前提として、例えば面接をもっとふやすとか、あるいは論文を書かせるとか、学生のそういうペーパーテスト以外の能力も調べるというような一助になればということでやっていることでありまして、今御指摘のように、できるだけ従来の仕組みを多様化、弾力化していこうということを今一生懸命考えているところでございます。
  56. 奥山茂彦

    奥山分科員 今文部大臣がおっしゃったように、今後の教育というのは、いろいろなメニューをずっと出して子供たちに選択をさせ、そしてそれに増して先駆けてやっていかなければならないのは、やはり親の意識の改革をしなければならないと思います。どうしても、今学歴社会と言われる中で、有名大学を目指して、そして大きな会社に入れるというのが今の親の総体的な価値観でなかろうかと思いますので、その辺の親の意識も同時に、これは社会教育を通じて変えていかなければならないかと思います。  それともう一つは、これはもう文部省もいろいろな形で工夫してしてもらっておるわけでありますが、いわゆる社会人を講師として積極的に迎え入れて、そして、現在の教職員というのはどうしても、教育関係の大学を出て試験を受けて、そしてそのまま教員に採用される、いろいろな意味で人生経験というものがほとんどその中では持ち合わせておらない、教育だけの経験しか持ち合わせておらない。そういう中で、今回ボランティア活動も教員採用の一つの条件の中に入れていくことを検討しておられるというふうなことも聞いております。我々もそれは大いに検討をし、採用してもらうべきでなかろうかと思いますが、その辺について。  それから、この間からも小学校の校長先生とも話をしておったのですけれども、今の教育の基本は子供たちに生きる力をつけていくということが非常に大事なことである。言葉としてはこれはもうだれしもがおっしゃるわけなんですけれども、逆に今日の子供たちが生きる力が果たして今の学校教育の中でつけられるのか。もちろん、学力的には高い知識を有し、我々の時代から比べてもはるかに知的な面では高くなっておるように思います。ところが、知識人はたくさんつくっても、知恵者というのですか、いわゆる社会の中で生きていってその知恵を活用できるような、弾力的に生きていけるような、そういうふうな教育は必ずしもなされておらないように思いますので、その辺についてもう一度お尋ねをしたいのです。
  57. 小杉隆

    小杉国務大臣 社会人をできるだけ学校の現場に活用していこうという考え方は、おっしゃるとおり必要だと思います。  そこで、特別非常勤講師というような制度をつくりまして、教員免許を持っていない社会人もできるだけ学校現場へ来て教えていただく、例えば最近のコンピューターの操作の仕方なんというのは、必ずしもすべての先生が生徒に教えられない  という場合には、そういう関係の人に来てもらう、あるいは環境問題について造詣の深い民間の人に来ていただいて話をしていただくとか、そういうふうな形で社会人の活用というのを図っていきたいと思っておりますし、また学校の先生自体も、今言われたように、研修の場でいろいろと環境問題とかボランティアとか福祉、介護の問題にも造詣を深めていただくということで、お互いに学校現場と社会との垣根をできるだけ低くして、できるだけオープンな形で学校教育も改革をしていかなきゃいけない、そう考えております。  それから、最後のところは、「生きる力」は初等中等局長から……。
  58. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 ただいま先生が御指摘の点は大変重要な点でございまして、「生きる力」という言葉で中教審は答申されたわけでございますが、たくさんのことをただ覚えているということではなくて、いかにその知識を使ってみずからの責任と判断で行動していくか、その行動した結果についてはみずから責任をとるかということ、あるいは他への思いやりとか正義感とかというような、そういう心の充実、これは大変重要なことだと思います。  そこで、今教育課程審議会でも、この点、どのような形で学校教育の中で実現していくか、中心的なテーマとして検討いたしておるわけでございますが、一つは、教育内容の精選をして、それで子供たちに、考える、判断させるゆとりを与えるようなそういう教育をやっていくこと、これは一つ重要なことだと思います。  ただ、先ほど先生からもお話がありましたように、そうはいっても入試があって、そんなことをしていたんじゃおっこちてしまうよということでもいけません。そのためには、入試のあり方、入試の選抜のあり方、多元的な、子供一人一人のよさを評価するような評価、それに基づく入試選抜のあり方、こういった全体的な取り組みの中で今先生のおっしゃったようなことを実現させていくように努力する、これが今我々一生懸命努力しているところでございます。
  59. 奥山茂彦

    奥山分科員 先ほど私もボランティアということを申し上げたのですが、私も、あの阪神大震災がありましたときに、やはりリュックサックを提げて神戸へ行きました。そしていろいろなボランティアの活動に参加し、しかもあの活動は、だれだれに何かせいと言われてやるんじゃなくして、みずからが率先してやっていかなきゃならぬし、だから向こうへ行っても、だれに何をしてくれというそんな指示は一切ないわけであります。自分で仕事を探してボランティアをやらなければならない。しかもまた、その現場には非常にたくさんの若者が一生懸命ボランティアの活動をやっておった。あれを見て、私は、まだまだ日本は捨てたものではないな、そんな思いをしながら見ておったのですけれども、こういったボランティア活動というのは、これは特に若者たちの心に非常に大きな影響を与えるわけでありますので、その辺は先生の養成も含めて、ひとつ積極的に取り入れるようにしてもらいたいと思います。  それから、それと少し関連してなんですけれども、今日の子供たちが、体は非常に大きくなったわけであります、足も長くなって非常に格好よくなったわけでありますけれども、ところが、肝心の体力は、この数年ずっと低下しつつあるという現状にあるわけであります。これは学校だけの責任ではないわけでありますが、学校としても、やはりいわゆる健康指導というものも考えてもらわなければならないかと思います。  それから、もう私時間もありませんので一遍に聞いてしまいますと、もう一つは留学生問題でありまして、かつて我が国は、十万人の留学生を迎え入れたいというふうな計画でずっと進められてきたわけでありますが、今もってその半分ぐらいで、しかもこれが最近はじり貧傾向にある、これは日本として国際的な責任を果たす上においても非常に大きな問題ではなかろうかと思います。  その伸びない原因はいろいろあろうかと思います。そういうことも含めて、これからの留学生対策はどのようにされていかれるのか、それもあわせてお尋ねをしたいんです。
  60. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 ボランティア活動は大変重要なことでございます。これにつきましては、現在でも学習指導要領の中に特別活動という領域がございますが、その中で、奉仕等体験活動というような表現になっておりますが、学校の中でもこのボランティア活動の重要性ということに着目した教育活動を展開するというようになってございます。御指摘のように、単に学校の中だけではない、家庭あるいは地域社会との連携の中でさらにこれが進められますような努力をしていきたいと思っております。  それから、体力の問題につきましては、いわゆる子供たち一人一人が、まさに生きていく力、それから、みずから健康を管理するというようなことと同時に、いわゆる体験的なあるいは実践的なそういう力をつけていくということの中の一つの大きな課題だろうと思います。そういう面もこれから十分留意して努めていきたいというふうに思っておる次第でございます。
  61. 林田英樹

    ○林田政府委員 留学生問題につきまして、お答え申し上げます。  先生おっしゃいましたように、昭和五十八年以来、十万人計画に基づきまして努力しておるところでございますけれども、平成八年五月一日現在の調査結果によりますと、前年度より約九百人減の五万二千九百二十一名というのが現状でございます。  原因としましては、いろいろなことが考えられるわけでございますけれども、諸外国におきます高等教育機関の整備が進みまして留学ニーズが変わっておりますとか、近年の不況によります我が国のイメージの問題というようなことがいろいろ考えられるのではないかと思っておるわけでございますけれども、これらに対します対応策の充実を図らなければならないということで、私ども特に、現在、検討会議を設けまして、今後の取り組みについて一層努力をするための方策につきまして御検討いただきまして、取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。
  62. 奥山茂彦

    奥山分科員 今、子供の体力の問題をいろいろ聞かせてもらったんですが、現実に今いろんな運動で、例えば背筋力とか跳躍する力とか、その具体的な体力の数字のトータルを見せてもらったんですけれども、最近は年々低下傾向にあるわけであります。最近いろんな形でもやしっ子ということが言われておるわけでありますので、これは一般的には社会的な傾向かもしれませんけれども、もちろん、基本的には家庭教育に一番問題があると思います。しかし、学校としても、やはりやらなければならない一定の責任があるかと思います。その辺について、具体的にこれからどういうことをされていかれるのか。  それから、最後に留学生の問題、この留学生は、私らの近くにもやはりおります、そして留学生の宿舎も私の近くにあるんですけれども、中国関係の方が非常に多い。その方々の話を聞くと、やはり日本の生活は本当にしんどいということが正直な話でありますし、国費留学生ですとよろしいけれども、私費留学生になるともうとにかく生活が大変だということを言っているわけでありまして、私らも自分らでやれることはということで少しはそのお手伝いをしておるわけなんですけれども、一番の問題は、留学生の生活をどのようにしてあげるか。もちろん、それは自分たちでするのが第一義的でありますけれども、そういうこと。  それともう一つは、留学生がその国へ帰ると今度は反目的になる、日本社会がどっちかというと留学生に対して冷たい、かつてこういうことを言われた時代があったわけであります。最近はさすがにそういう話は余り聞かないとは思いますけれども、留学生が母国へ帰って一体その後どうしているのかというその追跡調査がなされておるのかどうかということも、やはりこれは調べておく必要があるかと思いますし、せっかく日本で学んで帰ったその青年たちが母国でやはりいろんな形で活躍してくれるような、そのような状態であってほしいわけでありますだけに、また将来の日本の国際的な信用にもつながってまいる問題でありますので、そういった面についてどうされておられるのか、あわせてお尋ねしたいと思います。
  63. 小杉隆

    小杉国務大臣 子供の体力の問題と留学生問題についてお話ししたいと思います。  確かに、御指摘のような子供の体力の低下ということを、私たちも同じ認識を持っておりまして、これは学校教育の場でもさまざま、発達段階に応じた子供の運動能力とか体力の向上に努めているところですが、週五日制などが普及しますと、やはり家庭におきましても社会におきましてもできるだけ体を動かす機会をふやすというようなことで、これはやはり家庭、学校社会の三位一体の協力が必要だというふうに思います。最近は子供さんも塾通いで忙しいとか、あるいはファミコンに凝って外で遊ぶことが少なくなったとか、そういういろいろな事情が絡み合っていると思いますが、一層そういう認識を持って私ども努力をしたいと思っております。  それから、私も入閣前は党の留学生対策特別委員長をやっておりまして、今後継者の人にお願いをしておりますし、また、文部省の中に留学生対策の懇談会を設けまして、今有識者でいろいろと検討していただいております。  私は、二つ大きな点があると思います。一つは生活上の問題、そしてもう一つ教育上の問題。  生活は、今おっしゃるように、日本が大変高コスト構造の中で、特に下宿代が高いというようなことで、例えばオーストラリア政府は最近留学生誘致に積極的ですが、日本で生活する半分のコストで生活ができる、こういうことを聞いているわけです。したがって、宿舎の確保、これは私立大学等でも積極的に今つくっておられますけれども、そういうこと。それから、反目的にならないようなこと、これはもうもちろん大事なことでありますから、そういう気持ちで一生懸命やっております。  それから、教育上の問題は、学位が取りにくいとか、日本語を習得するのに一年、二年かかってしまうとか、英語でもう少し勉強できるような教育上の工夫はないかどうか、そういうことも含めて、今、例えば外国語で講義をする講座をどんどんふやしたりしておりますし、また学位もできる限り、従来は理工科系が多かったのですけれども、人文系もなるべく取りやすいようにするという努力もしております。  とにかく、生活上、教育上、さまざまな改革が必要だと思っておりまして、私も先般東南アジアを視察して、いろいろと考えさせられたところでございます。
  64. 奥山茂彦

    奥山分科員 ありがとうございました。また引き続き教育改革で私も意見を述べていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
  65. 相沢英之

    相沢主査 これにて奥山茂彦君の質疑は終了いたしました。  次に、大畠章宏君。
  66. 大畠章宏

    大畠分科員 民主党の大畠章宏でございます。  小杉大臣におかれましては、まさに小杉議員にふさわしいポジションにつかれまして、大いに個性を発揮されながら日本教育改革に取り組んでいただけるものと期待しているところであります。ますますの御活躍を冒頭にお祈り申し上げたいと思います。  ただいまさまざまな観点から御質問等もございましたけれども、私は、三点についてお伺いをしたいと思います。  一ついじめ対策、一つが私学助成、そして三点目が今お話ありました留学生対策でございます。  まず、いじめ問題でありますけれども、きょうの新聞等を見ましても、またいじめについてさまざまな記事が出始めています。中学校一年生のお父さんでありますが、息子さんの実名を公表して、なぜ息子が死んだのか、その原因を知りたいという記事が出ていました。非常に短文で内容がよくわからないということで、学校側が調査をしたのですが、全く解明されていないということで、この自殺前に書かれたメモ、全文は非常に短文であります。「ぼうりょくではないけど、ぼうりょくよりもひさんだつた。かなしかった。ぼくはすべて聞いていた。あの四人にいじめられていた。ぼくは死ぬ」こういう、自殺前に書かれたメモだけです。これをベースに学校当局も努力をしたというのですが、結局よくわからないということで、このままでは息子も死んでも死に切れないということで、お父さんがさらに実態を調べてほしいということを表明されたわけであります。  このいじめ問題は世界各国にあるというのは報道されておりますし、私自身もそういう話を聞いておりますが、日本においてというのは、まあ日本だけが特別な意識を持った民族かどうかは別としても、私自身も日本人の一員として大変悲しい思いをしております。  このいじめの原因、また、こういう自殺の問題に対して、改めて、文部省としてどういう姿勢でこの問題に取り組んでいるのか、それにもかかわらずこういうお父さんの訴えが実際に始まったということに対して、文部省として今どういうふうに考えておられるのか、最初にお伺いしたいと思います。
  67. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 いじめの問題は、これまでにもしばしば大きな社会問題になっておりまして、私たちも大変重大な問題として考えております。特に昨年あるいは一昨年、ただいま先生からも御指摘があったわけでございますけれども、いじめが原因ではないか、今回のその報道はまた別といたしまして、いじめが原因ではないかと思われる自殺があったということで、私ども、人権にかかわる重たい問題だという取り組みをいたしてきておるところでございます。  ただ、いじめの原因ということになりますと、これはなかなか、一つこれといって特定できないもどかしさといいましょうか、難しさがございます。そこで、家庭に対する御協力、御要請、それから地域社会の持っております教育力といったものに対する訴えにあわせて、学校の中での指導のあり方、あるいは教育相談のあり方その他さまざま、人権という視点に立って今取り組んでいるところでございます。  ただいま日本に固有ではないかというお話もあったわけでございますけれども……(大畠分科員「いや、固有とは言っていません」と呼ぶ)いえ、そうではございませんで、昨年、こういった面のシンポジウム等もいたしたわけでございますけれども、そういうことではない、むしろ世界的な広がりの中でこれはあるということで、お互いに研究協議をしたところでございます。したがって、各県ともにこの問題については模索しているわけでございますが、私どもといたしましては、家庭と学校地域社会が一体となって、いじめは人間として絶対に許されない、人権にかかわる重たい問題だという認識に立って取り組みをしなければならないという認識を持っているところでございます。  具体的な取り組みについてはまた後ほど御説明したいと思いますが、基本的な考え方としては以上のとおりでございます。
  68. 大畠章宏

    大畠分科員 この問題をなぜ私が取り上げようとしたのかといいますと、もちろんこのいじめ問題で今も学校に、きょうも学校が開校しておりますけれども、さまざまな子供たちが非常な状況の中で多分学校教育を受けているのだと思うのです。これは私は日本社会の、決して文部省が悪いということではなくて、日本社会の構造のひずみがこういうところにみんなあらわれているのではないかと思うのですね。  これは私の尊敬する司馬遼太郎さんの、教科書に入っている文章なのですが、ちょっとその一部を読んでみたいと思うのですけれども、自然というものを非常に司馬遼太郎さんは大切にされておりまして、人類も人間も自然の一部なのだというような発想のもとに、この人間のすばらしさというものは何かというと、「人間は、助け合って生きているのである。私は、人という文字を見るとき、しばしば感動する。ななめの画がたがいに支え合って、構成されているのである。」こういう内容で、人間というものはお互いに助け合わなければならない、さらに、   助け合うという気持ちや行動のもとのもとは、いたわりという感情である。   他人の痛みを感じることと言ってもいい。   やさしさと言いかえてもいい。  「いたわり」  「他人の痛みを感じること」  「やさしさ」   みな似たような言葉である。   この三つの言葉は、もともと一つの根から出ているのである。   根といっても、本能ではない。だから、私たちは訓練をしてそれを身につけねばならないのである。   その訓練とは、簡単なことである。例えば、友達がころぶ。ああ痛かったろうな、と感じる気持ちを、そのつど自分の中でつくりあげていきさえすればよい。   この根っこの感情が、自己の中でしっかり根づいていけば、他民族へのいたわりという気持ちもわき出てくる。   君たちさえ、そういう自己をつくっていけば、二十一世紀は人類が仲よしで暮らせる時代になるのにちがいない。 こういう話をされていまして、さらに、「自己を確立せよ」というような話、あるいは「自分に厳しく、相手にはやさしく、とも言った。いたわりという言葉も使った。それらを訓練せよ、」とか、そういう話がありまして、こういうことに気をつければ、君たちは「”たのもしい君たち”になっていく」だろうという言葉もあるのですね。  私は、司馬遼太郎さんが、日本の将来にあすはないという言葉を残して昨年の二月亡くなられまして、去年のこの分科会でも取り上げたことがございますが、ここなんだと思うのですね。日本の将来にあすはないという彼の言葉は、こういうことを一生懸命自分で考えてきた、二千年の日本の歴史をずっと振り返りながら、ずっとさかのぼっ てきて、日本人はこうあってほしいという願いはあったのだけれども、どうもその日本人像が揺らいできた、このままでは日本という民族は大変なことになるのじゃないかという危機感だと思うのです。  よく、一年をはかるには麦を植えよ、十年をはかるのには木を植えよ、百年の計を立てるのには人を育てよという中国の故事がありますが、まさに私は、今、日本の再生のためには、この教育改革が最大の課題だと思うのですね。もちろん、橋本総理もこの教育改革というものをうたっておられますが、私は、一番日本が、財政再建もしなければなりません、さまざまなことを改革をしなければならないのですが、当面、ここまでひどくなった日本でありますから、二十年後、三十年後の日本を立て直すための、どうしても教育改革をやっていただかなければならないと思っています。そういうことから、今回、小杉文部大臣が起用されたと私は思っておるのです。  そこで、お伺いしたいと思うのですが、幾つか申し上げたいと思うのです。  その原因問題について、いろいろ考えていらっしゃるというのですが、その一つには、まずカリキュラムがあります。六日で授業を受けるのを五日に短縮した。これは週休二日制ということを導入するという意味ですからそれはいいのですが、六日間で教えようというのを、全くカリキュラムをいじらずに五日に短縮している。そのために、前回も申し上げたけれども、小学校で休み時間が五分しかない。私も小学校時代、やはり十五分くらいありましたよ。授業と授業の間は、駆け回って汗びっしょりになって帰ってきて、はあはあしながらまた授業に入った。五分間しかないと、トイレに行って帰ってきて、それで終わりだ。  文部省の官僚の皆さんは、現場の実態をよくわかっていてこの六日のものを五日に短縮しているのか。まあ皆さんが要求するから六日のものを一日短縮して五日でいい、二日間休みふやしたのだからという、そういう机上の感覚でこの問題を処理していたら、毎日毎日そういう授業を受けている子供たちがいるわけですよ。その積み重ねがこういうものになっているのじゃないかということを、一つ指摘したいと思います。  さらには、部活の問題もございます。私も剣道部出身で、剣道を通じて随分人間形成によかったなと思っていますが、部活が非常に今活発でありまして、土曜も日曜もない。子供たちも大変かもしらぬけれども、先生方もこの部活対策で大変余裕がないんですね。したがって、週休二日とはいいながら、実際上はなかなか休みがとれないというのが実態じゃないですか。  そうすると、子供たちは授業で追いまくられ、土日は部活、そして先生方は、部活もやらなければならないし、六日間の授業を五日間でやらなければならないというので、非常に、子供たちも疲れているし先生も疲れている。こんな中で、今言った二、三十年先の日本の再生のための教育改革というのは、私はできるわけがないと思うのですよ。  もちろん、二〇〇一年に週休二日にするというのは、これはわかるのですが、そんな悠長な話じゃなくて、今すぐ、この六日間のカリキュラムを五日に縮めた問題については、教科書の中身を省くべきじゃないですか。世界競争もいいですよ。世界のランキングで算数で日本が三位とかなんとか、これはトップクラスを走っていて、これは非常にいいのですが、その陰で非常に子供たちが精神的にひずんでいるとしたら、それは文部省の皆さんは鼻高々かもしれませんが、実際にその授業を受けている子供たちが疲労こんぱいしているとしたらば、大変なことだと思うのですね。  したがって、精神的なゆとり、あるいは、先ほどの司馬遼太郎さんの話ではありませんが、転んだときに、ああ痛いだろうなという気持ちを持てるようにするのには、やはり子供たちの心にゆとりがなきゃだめですね。今の教育環境では、こういう司馬さんが求められたような人間形成は私はできないと思うのですよ。そこら辺、どういうふうに改革を、その問題についてまずお伺いしたいと思います。
  69. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 まず、五日制の関係について御説明したいと思うのですが、五日制は、先生御案内のとおり、今、月二回、隔週土曜日お休みというようになっています。ただ、これは確かに、学習指導要領の改正をしないで、実行上やれるところまで月二回やってみよう、五日制をやってみようということでやったわけでございますが、ただ、これは前々回の学習指導要領の改訂のときに、例えば中学校の例で申しますと、三十四こま教育課程をするとなっておりました、それを改訂に当たって精選するということで三十こまにした。したがいまして、従来からしますと、週当たりに直しましても四こまぐらいの余裕は各学校には出ております。  そういう学習指導要領になっておるわけでございますが、その学習指導要領を照らし合わせながら、月二回でも五日制のよさをできるだけ速やかに取り入れていこう、学習指導要領の改訂ということになりますと大変手続が大きくなりますので、やれるところからやっていこうということで、平成四年の九月から始まったのですが、全国数百校の実験校を設けまして、やれるかやれないかと一歩一歩研究しながら、月二回土曜日お休みにするということになってまいりました。それが今までの現状でございます。  ただ、学習指導要領を変えていないということで、学校によってはゆとりがないというようなことがあるかもしれませんが、我々としては、そういう手続をとりながら漸進的に、平成四年からの取り組みでございますから、月二回のお休みにしたということでございます。  ただ、完全五日制、これは今の指導要領ではできないという判断に立ちまして、昨年の八月から教育課程審議会で、完全学校週五日制のための学習内容やいかにということで今検討を始めております。そのときには、ただいま先生御指摘のとおりの内容の精選というものを徹底して行うという形でこれをやっていこうと思っています。  ただ、二〇〇三年ではまどろっこしい、もっと早くということかもしれませんが、昨年の八月にスタートして、二〇〇三年に完全に実施をスタートするということです。その前に準備といたしまして、今教育課程審議会でやっておりますが、今の予定では、この秋に中間まとめをいただき、各界の意見を聞いて、その一年後には正式答申、その後に学習指導要領の改訂、それに合わせて教科書というものも編集するということになりますと、ぎりぎり二〇〇三年度を目途にというのは、相当なスピードアップで取り組んでいるというようなことでございます。  ただ、要は、この中身が完全学校週五日制にふさわしい内容の精選が実現できるかということだと思いますので、それに向けて全力を挙げて取り組みたいというふうに考えております。
  70. 大畠章宏

    大畠分科員 小杉大臣の出番でございます。  文部省の指導要領の改訂が大変だというんだけれども、二〇〇三年まで待てなんというのは、それは現場を見てない話ですよ。二〇〇三年といったら、あと六年間もこのまま放置しろということでしょう。それは頭のいい人だったらいいですよ。皆さんみたいに頭がいい人はいいけれども、子供たちは大変なんだ。六日間でやるものを、そんな四こま余裕があるとかでなくて、道徳の時間を削ったり休み時間を削ったり、現場はやっているわけですよ。  そういうことを知らないで、四こまの余裕があるんです、余裕があるからあと二〇〇三年までにはちゃんとやりますからといったって、その間の教育される子供たちの責任は、あなた、持てますか。
  71. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 二〇〇三年といいますのは、私どもとして、教育課程審議会で議論をする、これは六日制を前提にしていた内容を五日間にするということですから、じゃ、どれを教えないことにするか、あるいはどれを上学年に送るか、全体のオーバーホールのような大作業でございまして、それをそう余り拙速にやるわけにはいかないというのが一つ。  それを受けて、今度は指導要領をつくるということ。教科書は民間の出版社が作成いたします、その学習指導要領を見て。それはやはりそんなに短兵急にはできません、新しい内容に成りかわるわけでございますから。それでつくる。それはやはり一年あるいはそのくらいはかかる、どうしても。それを私どもは検定をし、それから各学校、県にこういった教科書ができましたということで、その中から採択をするというふうになりますと、教育課程審議会の審議、学習指導要領の作成、それから教科書の編集、検定、採択、こういう一連の作業はどうしてもございますものですから、時間はかかるということでございます。
  72. 大畠章宏

    大畠分科員 大臣、今非常に文部省らしいきめ細かな御答弁を賜りましたが、そこにやはり政治家が私は入っていくべきだと思うんですよ。  地域で声を上げている、地域で悲鳴を上げている子供たちがいるとすれば、そんな手順があるからこれはしようがないんだと言うわけにはいかないんですよ。私はそこに、私たちがなぜ選挙で、苦しい選挙を戦いながら、地域の声を聞きながら勝ち残ってきたのか。そしてこの国政の場で、もしもそういうものがあるとすれば、それはそうかもしれないけれども、メスを入れよう。生身の子供たちが学校で苦しんでいるとすれば、手順なんというのは私からすれば、文部省の方はそれは手順なんだと言うけれども、手順よりも生身の子供を私は大切にしたいんです。そして、その一方で、こういういじめがなかなかなくならない。そして学校は一生懸命やっているとは言いながら、現実問題なかなか改善されていないんですよ。今おっしゃったように、手順はある、確かに。手順が大切なんですか、人間が大切なのか、どっちなんですか。私は、手順よりも、まず人間を、子供たちを大切にしてあげたい。  そのためには、どんなに考えたって、私もサラリーマンやっていましたけれども、六日間でやる仕事を五日にしなさいと言ったら厳しくなりますよ。残業をやるかどうかしかないんだ、あるいは休み時間を削ってまたやるしかないんだ。そういう実態にあることを考えますと、いろいろそれはそうかもしれませんけれども、文部省自体も、明治以来の教育方針をそろそろ変えなければならない時代に入ったというのは重々わかっているはずなんだ。  私も水戸出身で、「坂の上の雲」は司馬遼太郎さんですが、「桜田門外の変」という本を今読んでいまして、あの当時、三百年の鎖国を終えようとしているときに、アメリカの黒船と遭いました。開国をすると、いわゆるアジアと同じように、軍事力に差がありますから、日本は占領されてしまうだろう、したがって尊皇攘夷だ、絶対に入れちゃいかぬという徳川斉昭の考え方も一つの考えだったんですね。長崎で一戦を交えたら、完全に火力が違いますからバンザイをした。  開国をして、まず最初に始めたのが経済力の立ち上げと軍備力の増強ですよ。そうじゃないと日本は守れないということで、富国強兵策に転じました。そして、その当時、頭のいい方々が集まって、みんなで話したんではなかなからち明かないから、おれたちだけで方針を決めたら、みんな後は国民が従ってくれるような、そういうものでやろうというので、官僚制度ができたんですね。これは、私は今日の日本を築く上で大変正しかったかもしれません。  ここまで来ると、そろそろ私はそうじゃないと思うんですね。地域の実態に即した形で方向転換をしていかなければならない。その第一番目が、私は日本教育方針だと思うんです。したがって、今お話がありましたように、全部をがんじがらめで縛りつけたような、北海道から沖縄までの教育方針をこれまでどおりとっていていいのかどうかです。そして、もう小回りがきかない、現場ではこういうふうな悲痛な叫び声が上がっているにもかかわらず、二〇〇三年まで待てということですよ。  私は、大臣、政治家として、そろそろそうじゃない、やはり現場の声を聞いてきちっとした、手続よりも人間を大切にしようという方針で打ち出すべきだと思うんですが、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  73. 小杉隆

    小杉国務大臣 まさに週五日制をいつ完全実施するかというのが、今度の教育改革プログラムをまとめるに当たっての最大の焦点でした。昨年の七月に出された中教審の第一次答申では、「二十一世紀初頭」こういう漠然とした言い方だったんですが、私は、今回はきちっと時期を明示すべきだ、できるだけ早く、例えば二〇〇一年とか二〇〇〇年とか、そういうところまで前倒しをしてできないのかということで指示をしたんですけれども、私の気持ちとしてはいまだにそういう気持ちを持っておりますけれども、しかし、いろいろ検討する事項がたくさんあります。今二日制やっているから、ただ延長して五日制にすればいいじゃないかという考え方は、毛頭これは当てはまらないわけで、今は本当に無理してやっているわけですね。  しかし、五日制に完全に移行するためには、根底から検討し直さなければいけない。今までの学習指導要領あるいは科目の編成、そういうことも、例えば私のところにも、情操教育大事だから図画とか音楽の時間を削らないでくれ、あるいは情報化時代なんだからコンピューターを教える時間をもっとふやしてくれ、あるいは理数系をもっとふやしてくれ、あるいは英語教育をもっと充実してくれとか、あるいは道徳教育の時間をもっとふやしてくれ、こういうようなさまざまな要求が出されておりまして、じゃ一体これを、どれを選んでどれを削るのか。  確かに、今までの日本教育というのは、欧米に追いつき追い越せ、キャッチアップ型の体制で、理数国英という、そういう基本科目に重点を置いてきたわけですけれども、これからは、やはり家庭で教えるべきもの、社会で学ぶべきもの、そして学校で最低限学ぶもの、そういうものを本当に厳選をして絞り込んでいかなければいけない。その作業が、今大変な作業が続いているわけです。  それともう一つ、私は週五日制になって、受け皿の整備も必要だと思うんですね。五日制になって二日休みになった。子供は家に帰ってごろごろ寝ている、あるいは塾通いに励む、こんなことになってはいけないんで、じゃ週二日休みになった場合に家庭生活がどうあるべきか。家族で一緒に体験をする、社会体験をする、地域とのいろいろな交流のイベントに参加する。あるいは社会においても、父親が土曜日まで就業するというようなことじゃなくて、会社の仕事の内容も変えてもらわなければいけない。そういう、学校だけではなくて、社会や家庭の受け入れ体制も整備していく必要がある。  そういうことをもろもろ考えますと、私は話を聞きますと、指導要領変えて、全部教科書をつくり直してやっていくということになると、どう考えても二〇〇三年ぎりぎりかかってしまう。その辺の御理解をぜひいただきたいと思うわけですが、これはそれを達成する目標としてはかなり厳しい目標なんですね。本当は二〇〇五年ぐらいにしたかったところなんですが、今二〇〇三年というのはぎりぎりの期限であるということをひとつ御理解いただきたいと思います。
  74. 大畠章宏

    大畠分科員 大臣の気持ちはわかりますが、やはり私は、ただ臨時的に、このプログラムについては今の手順を踏んでいるだけでそうなっちゃいますから、例えば都道府県の教育委員会に、六日を五日にするというもので、その足らない分については、どこを省くかというのはもう皆さんのところで責任を持ってやってもらえばそれでいい、当面、そのくらいの地方分権してもいいんじゃないですか。  全部文部省で縛ろうとするから大変なんですよ。皆さんひとりで汗かいているんじゃなくて、現場で何千人、何万人という人が先生をやっていますが、教育委員会だってあるわけですよ、都道府県に。その人だって一生懸命やっているんですよ。だとすれば、私は、きちっとしたのは二〇〇三年にやりますが、当面各都道府県で実態に沿った形でカリキュラムを少し省いてもいい。小杉大臣も経験があると思うんですが、私たちも教科書で、最初は一生懸命やる、だんだん三学期の終わりごろになると時間が足らなくなって、まあここら辺はこういうふうにやっておいてくれと、さっと流すことがありますよね。あるんですよ。ここら辺は何かやったかなと思うことも今ありますよ。  だから、そんな感じで、多少教科書の中でも重要なところと重要じゃないところといろいろありますが、そこら辺は都道府県に任せる、そして余裕を持ったものにしてくれということは、大臣、私は地方分権の一環として、特別措置としてやってもいいと思いますよ。そうじゃないと、二〇〇三年まで、六日間で仕事をするのを五日間でやれというのを必死になってやっているわけですよ。五分間の休み時間で余裕持てますか、大臣。トイレ行って帰ってきて終わりだというんですよ。  だから私は、小杉大臣が登用されたのは、まさにそういうものにメスを、メスというのはあれだけれども、改革をするために大臣になられたんじゃないかと思うんですが、最後、ちょっとその問題で、大臣、御意見を賜りたい。
  75. 小杉隆

    小杉国務大臣 国と地方の役割分担というのは厳然としてあると思うのですね。国の方は、学校の枠組み、例えば六・三・三・四制とか、あるいは、国が義務教育費国庫負担金ということで二分の一は負担しますよというような、そういう枠組みをつくるということと、それから、東京と鹿児島とか沖縄で教育水準が違ってはいけませんし、基礎的な学力水準というものは国である程度の基準を設けざるを得ないと思います。  それ以外の部分については、おっしゃるようにできるだけ地方分権で、地方の創意工夫とかいろいろな努力をするということが望ましいと思うので、今まさに、その根幹の、国のやるべき部分についての検討をやっているところでありまして、今の制度の中でも、ここ数年、できるだけ地域のそういう独自性というものを発揮できるような工夫を凝らしてやってきております。そういうことをひとつ御理解いただきたいと思います。
  76. 大畠章宏

    大畠分科員 文部省の方針を変えるというのは並大抵ではないというのはわかっています。しかし、もうちょっと余裕を持って、柔軟性を持って考えてくださいよ、国民が困っているのですから。文部省のための文部省じゃなくて、まさにそういう国民のための文部省なんですよ。  明治時代、ある一つの方針でやってきて、日本は成功したと思います。皆さんのおかげでここまで学力水準も上がりました。地域的にも社会的にも経済的にも上がってきました。これはもう多としますが、ひずみは早く直してくださいよ。そして、毎日毎日悲鳴を上げている子供たちがいるということも十分考えてやっていただきたいということを要望しておきたいと思います。  ちょっともう時間がなくなっているのですが、私学助成問題についてお伺いしたいと思っています。  保育所と幼稚園とあって、きのうのある新聞によりますと保育所と幼稚園を一緒にするなどという話も聞きましたが、少子化が大変な状況でございまして、やっぱり幼児の教育というのは大変重要だと思うのですね。  そこで、厚生省が保育園で幼稚園が文部省、これもまた、市民のレベルから見るとどうしてそうなっているのかなと思うのが、やっと最近、一緒にしようかという話をし始めたみたいですが、私学が一生懸命幼児教育にかけている、その支援問題について、それも含めてちょっとお伺いしたいと思うのです。
  77. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 幼稚園全体で、園児数の八割ぐらいを私立の幼稚園が占めてございます。したがって、特に就学前の教育の生涯の成長に与える影響というのは大変重たいということにかんがみて、私たちもできる限りの努力をしてきているところでございます。  具体的に申し上げますと、まず、一般的な私学助成の中で、私立幼稚園の設置者に対する助成というのがございます。平成九年度の予算案では百五十六億余でございますが、そういったものがございます。それから、私立幼稚園が施設整備を行う場合等につきましての補助制度がございます。十二億円余でございます。それと、保護者負担の格差是正ということで、幼稚園に就園させます親に対しましての減免措置に対する助成措置、これが平成九年度予算案では百三十七億円余というような予算があるわけでございます。  予算的にはそういったものが主なものでございますが、教育内容面等も含めまして、私立幼稚園の一層の振興のために努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  78. 大畠章宏

    大畠分科員 ありがとうございました。その問題についてもぜひ御努力をお願いしたいと思います。  もう時間ですから、留学生の問題については、過日、二月の二十三日に、留学生センターが消えるという話が、年間一千万余りの運営費がなかなか集まらなくて閉めるという話が出ていました。日本として十万人ぐらいの留学生を集めようという計画がある中で、こういう話は大変残念であります。  後ほど大臣にこの資料を、お手元にあるかもしれませんが、ぜひお読みいただいて、何とか海外の青年に日本の実態を理解していただき、二、三十年後の日本との交流をよくするために、さらに一層御努力をいただくことをお願いしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  79. 相沢英之

    相沢主査 これにて大畠章宏君の質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  80. 相沢英之

    相沢主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  文部省所管について質疑を続行いたします。大野松茂君。
  81. 大野松茂

    大野(松)分科員 自由民主党の大野松茂でございます。  高校教育改革推進を願う立場から、何点かお尋ねをさせていただきます。  昭和二十三年に新制高校として発足いたしました高等学校でございますが、進学意欲の高まり、また高学歴志向を背景といたしまして国民教育機関へと大きく発展を続ける中で、制度発足五十年を間もなく迎えようとしております。今や進学率九六%を超える実態の中にございますが、以来、中途退学者の問題が大きな課題となってきております。  さきに文部省が発表した数字の上でも、平成七年度の全国公私立高校の中退した生徒数は九万八千百七十九人にも上りまして、前年を千八百人上回り、二年連続で増加を示して、生徒全体に占める中退者の割合は二・一%になっているということでございます。せっかく厳しい入試という試練を経て入学の喜びをともにしながら、志半ばにして退学に至りましたことは、まことに残念な事態であると思っております。  これまで、業者テストの追放、脱偏差値を目指した推薦入学制度の導入など入試改革を積極的に進める一方、画一的教育を脱した、生徒が興味や関心に応じて科目やコースなどを選択できるようにしようとする高校改革が、文部省や都道府県教育委員会によって進められてまいりました。高校改革の直接の契機となった第十四期中教審答申、この中にも、高校教育の量的拡大から質的充実を目指すことや、生徒がそれぞれの個性に応じて教育内容を選択できるシステムを目指すなどの方針が示されたと認識をいたしております。  これを受けまして、中でも総合学科、また単位制などの新しいタイプの高等学校が大きな期待を担って推進されております。まず、この設立の現状などにつきましてお示しをいただきたいと思います。
  82. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 ただいま先生からも御指摘がございましたように、高等学校への進学率が九七%に達してございます。したがいまして、そこには興味、関心、進路希望等多様な生徒が就学をいたしております。したがいまして、そこでは、どのように一人一人の子供、生徒に着目してそのよさを伸ばしていくかということが大変大きな課題になっているわけでございます。  そこで、お尋ねの単位制高校あるいは総合学科でございますが、それらはいずれもそうした趣旨をシステムの面から支援していこうということで発足したものでございます。  単位制高校でございますが、これはいわゆる学年制という枠を取り払って、自由な教育課程を展開しようというものでございますが、昭和六十三年度にスタートいたしまして、平成八年度現在四十五校、平成九年度には七十四校というようになる見込みと承知いたしております。  それから、総合学科でございますが、これは平成六年度にスタートいたしました。普通教育と専門教育を選択履修をするということで、それを特色としているわけでございますが、これは——失礼いたしました。先ほどの数は総合学科でございました。単位制高校が平成八年度現在百二十九校、平成九年度には百七十二校になる予定でございます。そして、総合学科につきましては、平成八年度現在四十五校、平成九年度には七十四校、こういうようになる予定でございます。どうも失礼いたしました。
  83. 大野松茂

    大野(松)分科員 生徒が興味や関心を持ってコースを選択する、そして生徒が意欲と希望を持って学ぶ、その意味で、新しいタイプのこの総合学科、単位制高校というのは、高校教育改革の切り札としてその期待は極めて大きいわけでございます。  ただ、さきに発表されました中退者の数字の中で、総合学科の在籍者の二・〇%に当たるところの百一人の中退者が出た、昨年に比べると八十人もふえたということが明らかにされております。生徒の興味、また関心に応じた知識、技能を選択的に習得できることが特色であるだけに、率直に言って大変寂しい思いをしているわけでございます。この実情というのはいかがになっておるか、お示しをいただきたいと思います。
  84. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 一点、形式的な理由の御説明をさせていただきたいと思うのでございますが、調査をいたしましたのは平成六年度、平成七年度でございます。先ほど申し上げましたように、総合学科がスタートいたしましたのは平成六年度でございました。したがいまして、前年度の調査では平成六年度の第一学年の子供が対象でございます。平成七年度は第一学年と第二学年度の両年度が対象でございます。したがいまして、対象にいたしております生徒数の分母が違うという形式的な事情もございます。  そこで、私ども、よりこの総合学科の内容につきまして中途退学の面から分析をしようということで、総合学科の改組前の、専門学科あるいは普通科から総合学科はできているわけでございます、転換してきておりますので、その改組前の専門学科あるいは普通科当時の中退率と、それから総合学科になりました後の中退率の状況というものを比較いたしました。そういたしますと、改組前は中退率は二・五%でございました。改組後の総合学科は一・九%ということでございまして、その面ではこの総合学科に改組、転換したということは中退率の面からいっても成功しているのではないかというふうに思っております。ただ、引き続き一・九%の中退者がいるわけでございますので、これは我々課題として受けとめて研究をしていきたいというふうに思っております。
  85. 大野松茂

    大野(松)分科員 そうした数字の中で、新しく生まれた学科でありますだけに、万全を期しまして、これから円滑にこの学科の運営ができますようにお願いしたいと思うわけでございます。  中教審の第一次答申におきましても、生徒の能力・適性、興味・関心などの多様化の実態を踏まえた生徒の長所、特技を伸ばし、それぞれの個性に応じ、基礎、基本を深めさせることが必要、このように指摘をしております。他の高校や専修学校における単位認定制度の活用などにもこの答申は言及しているわけでございますが、これらを踏まえまして、総合学科、また単位制について積極的に設置を推進すべきものと考えておりますが、見解をお伺いいたします。
  86. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 ただいま御指摘のとおり、単位制高校あるいは総合学科の設立の趣旨と申しますのは、子供たち一人一人のよさを伸ばしていこう、個性を伸ばしていこう、そういう課題にこたえるシステムとして、私たちも大変な期待を寄せているところでございます。  特に総合学科につきましては、ただいま御紹介がございましたように、中央教育審議会でも審議されまして、当面、生徒の教育機会を確保するため、通学範囲には必ず用意されているように整備を進めることが必要であるというようなかなり思い切った提言もなされているところでございます。  私ども、一人一人の生徒の選択を重視する、学ぼうとする意欲を踏まえてこれを酌み取って学習活動を展開していく、これは高等学校段階教育として大変重要なことだと思っておりますので、ひとつこの総合学科を高校教育改革の権威的な存在といたしまして、この整備に努力をしていきたいと思っております。  先ほど申し上げましたように、平成六年度に七校でスタートしたわけでございますけれども、平成九年度には七十四校が予定されるということでございまして、各県も相当な努力をしているのではないか、したがって、我々もその努力を支えていきたいと思っております。  また、単位制高校につきましても、学年という枠を取り払って柔軟な形で教育活動を展開していくということで、これも今後の高校教育のあり方として、私は十分に留意して取り組むべきシステムだというふうに思います。  先ほど御紹介いたしましたように、平成九年度には百七十二校にも整備されているところでございまして、これらにつきましても積極的に支援をしていきたいというふうに思っております。
  87. 大野松茂

    大野(松)分科員 こうした総合学科制の高等学校におきましても、かつての専門高校から発展されたものも数々あるように承っているわけでございますが、この専門学科の高校、かつては農業、工業、商業あるいはまた水産などの高校が各地に設置をされまして、地域の産業の振興発展に貢献した輝かしい歴史と伝統を持ってまいりました。言うなれば、中等教育の先兵としての役割も、それぞれの専門学科を持つ学校は機能してきたわけでございますが、近年、見てまいりますと、地域の要請を受けて学科転換を余儀なくされている状況にもあるわけでございます。  これらの状況の中で、こうした専門学科の高等学校というものが一時期に比べてどのように変化をしておりますのか、お尋ねいたします。
  88. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 専門高校につきましては、やはり時代の進展とかあるいは社会構造の変化というものに対応いたしまして、新しい特色のある学校づくりということで各地域ともに努力をしているところでございます。  例えて申しますと、農業の関係で申しましても、バイオテクノロジーあるいは流通経済に中心を置いた農業の学習というようなものを進める意味で、生物工学科でありますとかあるいは生産流通科というような学科が整備されてきております。それから、工業の関係では、エレクトロニクスに対応いたしました電子機械科といったようなものが整備されておりますし、また、国際化というようなものに対応して、国際経済科でありますとかあるいは国際会計科、また、高齢化に対応いたしまして福祉科というような学科も整備されてきております。  これらは、もちろん特定の地域だけを意識したものではないわけでございますけれども、地域と密接な関係を持ちながら地域の要請にも積極的にこたえるということで、改組、転換すべきは改組、転換をするという形で地域との連携を深めつつ専門教育充実が図られているというふうに思います。こういう傾向は、私は大変結構な傾向なのではないかというふうに思っております。
  89. 大野松茂

    大野(松)分科員 新しい時代に対応する高校像を求めます中で、この学科転換あるいは専門学科の多様な編成が進められておりますことをただいまの御答弁でも理解をしたところでもございますが、中には、新しい学科というものが余りにも多種多彩な学科編成になりましたために、十分な解説でもなければ内容理解し得ないような、そんな感じもするのを幾つか見受けるわけでございますが、多様化ということの意味では極めてありがたい対応であるとは思いますものの、ただ、果たして十五歳の春にそういう新しい名前が、学科名が正確に理解されるのかどうかということが心配されるわけでございます。  正確に進路選択がなされるということが高校で学ぶことの目的にまずしっかりとつながるわけでございますが、あるいは新しい学科の理解が不十分なために、高校の中退であるとかあるいはまた進路変更などの原因になってはしないか、このようにも思うわけでございますが、中学校における進路指導、これにどのような対応をなすっておられるか、お尋ねをいたします。
  90. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 今先生が御指摘の点は大変重要な点でございます。  総合学科につきましても、先ほど普通教育と専門教育をあわせ持った学科だ、そして、生徒一人一人の選択をできるだけ重視してそれを生かすような教育システムだということを申し上げたわけでございますけれども、肝心の中学生たちがそれを十分に理解しなければそれに希望を持つということもないわけでございます。  一般的には、普通科につきましては、おおむねどういうものかということは一般にも知られております、生徒だけではなく保護者にも。しかし、専門高校、職業高校となりますと、普通科に比べると十分な理解が得られていないという面もあるわけでございます。そこで、私ども、いろんな形で正確な教育内容理解をしてもらおうという努力をいたしております。  私どもが、これは各学校が一生懸命取り組んでいるわけでございますけれども、いい例だなと思いますのは、まずは中学生たちに、保護者の方も当然でございますけれども、その学校に来てもらう、高等学校に中学校段階から体験入学をしてもらうということ、実際に目で触れ耳で聞いて、どういう高校に入ったらどういう教育が行われるのかということを実際に確かめるということでございます。  私どもの調査では、平成七年度に、いわゆる専門学科関係では七八%の学校がこの体験入学をやっているということでございまして、私は、これは、中学生たちにその内容理解させるという意味で非常に有効な方法ではないかなと思います。  それから、それ以外にも、各高等学校がその学校教育内容を正確に伝えるようなパンフレットをつくって、各中学校を通して子供たちに渡すというような努力、それから、特定の学校ということではございませんが、進路を選択するということはどういうことなのかというような進路指導の実例を盛り込んだ資料集というようなものをつくるというような努力も一方ではされております。  また、あわせてでございますが、広く職場見学とかあるいは職場体験というようなものを子供たちにもやってもらおうということで、これは国が事業として行っているものもございますし各学校独自にやっているものもございますが、そういったもの、国の段階では全国五十九地域ほどを指定しておりますが、そういったものをする。それから、中学校の先生を対象とした進路指導研修をする。  こういったさまざまな形で、今先生のおっしゃいましたその肝心の教育内容、高等学校へ行ってどういう学習をするのかということについての正確な理解を中学生たちに持ってもらうような努力、こういう形で取り組んでいるという状況でございます。
  91. 大野松茂

    大野(松)分科員 体験入学の制度であるとか、あるいはまたそれをさらに発展させる中で推薦入学の制度も定着をしてきておるわけでございますが、それぞれの中で、やはりこの専門高校の持つ意義というのは一層高まっているようにも思うわけでございます。いつの時代であろうと、やはり技術を身につけるということは大事なことでもありますし、その中で、子供たちが目的意識を持って学ぶということが私は一番大事なことだろうと思うんです。  目的意識を持って学ぶ上では、当然、その前段として、こういうことが学べるんだということが大前提になるわけでございますので、ぜひ、最近の専門学科への進学指導というのを見ておりますと、もう少し方法はないのかと思われることがしばしば実は感ぜられますので、引き続き適正な進路指導をしていただきますようにお願いをいたします。  この専門学科の高校、専門高校の中でも特に農業高等学校は、全国各地に伝統校としての歴史を刻んでまいりましたし、それぞれの地域で大きな地域発展の役割を担ってきた、こう思っております。  それで、地域社会経済環境の変化が進みます中で、農業後継者の激減などから農業高等学校そのものが、言うなれば存亡の危機と申しますか、そういう時期に直面をしているように感じております。作物やあるいはまた家畜を育てる、生物について学ぶ、環境について学ぶ、これらができるのは実は農業高等学校でございまして、言うなれば、これらは地球の将来にとっても大変貴重な、大事なテーマであると思っております。  これからの農業教育、農業高校のあり方、これらについてお伺いをいたします。
  92. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 農業教育の重要性は申すまでもございません。  昭和三十年ごろ、二十万人を数えておりました農業高校の生徒たちでございますが、平成八年度では十二万八千名余、十三万人ということで、数としては減ってきているというのは事実だろうと思います。  ただ、先ほどから申し上げておりますように、それぞれの地域の要請等によって改組、転換を図りながら、よく私は、農業高校は、農業後継者の養成あるいは農業関連産業従事者の育成という点で大きな寄与をしてきているというように思っております。これまでも、各県、各学校が農業教育の重要性という観点に立って最大限の努力をしてきているわけでございますが、私どももそれを支援してまいりたいというふうに思っております。  特に、農業を取り巻く環境というのは、先生に私の方からお話しする以上に先生の方が御存じなわけでございますが、大きく変わってきておりまして、世界的な規模での農業を取り巻く環境が変わってきているということで、文部省でも農業教育の在り方に関する調査研究会議というものを設けまして、農業を取り巻く環境をどのように認識するか、そういった変化の中で農業教育あるいは農業高校というものをどんなふうに改革、改善していくかということで、今、識者の方々に真剣な御検討をいただいているところでございます。  近々その報告もいただけるというふうに承知いたしておりますが、その報告等を受けましてさらに積極的に取り組んでまいりたいと思っておりますが、一点、いわゆる高学歴化の中で、農業高校に学ぶ生徒たちにも、農業高校を完結したものということで考えないで、農業高校を終えた後もいろいろな形で継続教育の機会を子供たちに与える。もちろん大学への進学というようなものにつきましても、推薦入学とか特別選抜とか、積極的にそういうさまざまな方途を大学の方に講じていただいて、農業高校に入っていろいろな形でその後の進路が開けているというような形の努力をしていくことも大事であろうと思っております。  関係の人たちにも積極的に御協力をいただいて、そういう面でもひとつ努力をしていきたいというふうに思っている次第でございます。
  93. 大野松茂

    大野(松)分科員 それぞれ、そこが最後の学校だということではなくして、次なる展望が開けているということも大事な意欲につながるわけでございますので、引き続きお願いしたいと思っております。  また、それに、生涯学習社会教育の分野で、実は社会人の方々が、農業高等学校の中で植物の栽培やあるいは動物の飼育や庭づくりなどについて学びたいという非常に大きな希望がございます。言うなれば、農業高等学校学習の場あるいは学習の機会を求める期待も非常に高まっているわけでございまして、農業高校なるがゆえの実験実習施設やあるいはまた教育力があるわけでございますが、それらを地域開放する新しい役割もあるのではないか、あるいはまた環境教育の拠点としての役割も新たに生まれつつあるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  94. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 そのとおりだと思っております。  よく学校開放ということが言われるわけでございますが、これは単に施設地域の人たちに提供するということだけではなくて、地域の人たちの生涯学習へのニーズに学校がこたえていくということも大変重要な課題だろうというふうに思います。したがって、高等学校は、もちろんそこに学ぶ子供たちのために一生懸命教育指導するということが第一義ではあるわけでございますけれども、地域の人たちの再教育の場と申しましょうか、継続教育の場としての機能も積極的に果たしていってもらいたいものだと思います。  その面では、全日制課程の充実ということもございますが、専攻科というようなところ、本科を終えた子供たちの学ぶ場というようなものも、そういう場としては非常に有効な場だというふうに思いますので、そういう面での整備ということも検討課題になるのではないかというふうに考えております。
  95. 大野松茂

    大野(松)分科員 各地で、生涯学習の関連の中で地域開放ということで大きな成果を上げつつあるものと仄聞しているわけでございますが、それらを誘導していただくことも大事なことであろうと思っております。  最後になりますが、文部大臣にお伺いをさせていただきたいと思っております。  私は、高校改革の切り札として、総合学科制高校に大きな期待をしております。従来は職業教育と普通教育が分離されておりましたが、この総合学科によりまして両者の統合を目指して、どちらの授業も受けられる、また、生徒は自分の個性を、希望する進路に適した科目をみずから選択できる。選択を尊重するためには、一人、二人のクラスもあるいは生まれるかもしれません。  また、講座数をふやしていくためにはまたいろいろな難点もあるだろうと思います。地域の数校が、近い高等学校がお互いに連携し合って、さらにまた地域が持っているいろいろな施設とのネットワーク化などを進めることによって、こうした多様な生徒のニーズにこたえられるのではないか、このようにも思っております。  さまざまな経験を積んだ社会人を講師に招くこともまた、この総合学科制というのは大事な意味を持っていると思っておりまして、さらには、総合学科の高校が目指す方向というのは、いずれは小学校やあるいは中学校でも取り入れていくことを検討すべきではないかとも思うわけでございます。それほどたくさんの可能性を持っていると思っております。  専門高校も新しい時代にふさわしい対応が必要でありますし、従来の学科にとらわれない多様な対策もさらに進めるべきものでございます。また、生涯学習の拠点としての役割も当然生まれてくるものと考えております。高校教育をさらに積極的に進めていく、その取り組みを進めていただくことを願うわけでございますが、高校教育への文部大臣の御決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  96. 小杉隆

    小杉国務大臣 今の時代は、もうほとんどの人が中学だけではなくて高校まで進むという時代になりました。大野委員が高校へ進学されるころはたしか四〇%、私も同じ年代ですけれども、その当時はやはり職業につく人もいたし、また職業高校を選ぶ人もいたわけですが、その後経済社会が大分変わりまして、今、ほとんど一〇〇%近く高校へ進学する、こういうことになりました。  したがって、生徒の適性とか興味とか関心も非常に多岐にわたっておりますし、分化してきていると思います。そういう実態を踏まえながら、一人一人の生徒さんがその個性とかよさを伸ばすという観点に立った高校教育改善充実は、極めて今日的な課題だと思っております。そうした考えに立って、今お取り上げになった総合学科とか単位制高校というもの、新しいタイプの高校を設置して、生徒さんも先ほど局長が答弁したとおりふえてきているわけでございます。  それからカリキュラムにつきましても、できるだけ多様な科目を選ぶことができるというようなこと、さらに、将来のスペシャリストを育てる職業教育の重要性ということもあわせて考えていかなければいけないと思っております。また、一般の高校につきましても、入試選抜のあり方につきまして、できるだけ入試の多様化あるいはその評価の多元化ということが必要だと思っております。  今先生から御指摘のように、非常に示唆に富んだ御意見をいただきまして、私どもも大変参考になりましたが、例えば農業高校などは、ただ単に農作物を耕作するというだけではなくて、これは生きた環境教育であり、また動物の飼育とか植物の栽培とか草木の手入れとか、そういう一つのいわば生涯教育にもつながる教育にもなるわけでございまして、そういった点で、私は、文部省としても、また各都道府県、市町村におきましても、あるいは各学校においても、これからの高等学校教育充実に積極的に取り組んでいただきたい。  要は、一人一人の生徒が学習意欲を持って、ただ親から勧められたから漫然と高校へ行くというのではなくて、みんながそれぞれの目標を持って、そして個性を生かし、創造性を生かせるような、そういう高等学校教育ができるというのがまさに今度の教育改革プログラムの一つの目標でもあると私は思いますので、きょう御提言いただきましたさまざまな貴重なアイデアも参考にさせていただきながら、一層の高等学校教育充実を図ってまいりたいと思います。
  97. 大野松茂

    大野(松)分科員 大変ありがとうございました。  新しい時代にふさわしい高校像の確立を願いまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  98. 相沢英之

    相沢主査 これにて大野松茂君の質疑は終了いたしました。  次に、小坂憲次君。
  99. 小坂憲次

    小坂分科員 太陽党の小坂憲次でございます。きょうは、お時間をいただきまして、文部省並びに自治省に対して若干質問をさせていただきたいと存じます。  まずもって、文部大臣に御礼を申し上げたいと思うわけであります。私は、冬季オリンピックの開催地であります長野県、そして長野市を中心とする選挙区の選出でありますが、オリンピックの招致、そしてその施設建設、またいろいろな競技の準備等、ようやく余すところ一年という状況になりました。ここまでやってこられましたのは、文部大臣を初め文部省の皆さん、そして関係各省の皆さんの大変な御努力と御協力によるものでありまして、まずもって心から感謝を申し上げます。  文部大臣は大変なスポーツマンでいらっしゃいまして、私どもの地元オリンピック施設の竣工に当たりましてもいらっしゃって、まず朝はジョギング、こういうことで、私もスポーツに対する理解のある大臣という認識を持っております。そんな意味で、スポーツ振興にかける文部大臣としての情熱をお聞きしたいと思っております。  御存じのように、平成四年、体育協会、JOC等の要望がございまして、スポーツ振興のために財政的な基盤を確立しようではないか、こういうことでありまして、国の財政事情等も考えますと、やはり民間の活力といいますか、幅広い資金源を求めてスポーツ振興を図っていくべきだろう、こういう観点から、スポーツ振興くじというものが議論になりました。平成七年には、私も所属しておりますが、スポーツ振興議員連盟が中心になりまして、この法案の作成にまで至ったわけであります。  自他ともにスポーツマンとして認められている大臣に、スポーツ振興やレベルの向上のためにどのような支援策が考えられるか、それからそれに対する財政的な財源の確保についてはどのようにお考えか、まずもってこの点についてお伺いしたいと思います。
  100. 小杉隆

    小杉国務大臣 スポーツ振興くじにつきましては、今御指摘のとおり、平成四年にJOCと体協の方から、何とか制度を創設してほしい、こういう要望をいただいて、小坂委員も私も委員を務めておりますスポーツ振興議員連盟を中心に、何とか実現をさせてほしい、こういうことで運動を続けてきたわけですが、この国会でも何度か俎上に上りかけたのですけれども、最終的には国民全体の合意という点で合意が得られずに、日の目を見ずに今日に至っているということでありまして、これは今後とも国民の合意を得るべく各党におきましてぜひ御協力をいただいてという気持ちで、私どもとしては、これは議員立法という経緯でずっと来ておりますものですから、注意深く見守る立場にあるわけでございます。  ただ、これからのスポーツ振興ということを考えますと、競技スポーツオリンピックとか世界選手権に強い選手を養成するという面もありますし、また生涯スポーツを盛んにしなければいけないという面もあるし、また学校における体育スポーツ充実というような、多岐にわたるスポーツ行政を我々としては抱えているわけで、これには大変膨大な予算がかかるわけです。今文部省体育局の予算だけでも三百数十億で、今競技団体から要望の強いナショナルトレーニングセンターをつくるだけでもうそれだけのお金は費やされてしまうというような状況を考えますと、財源をいかにするかということは非常に大事なことでありまして、今後こうした財源確保については大いに関心を持って対処していきたいと思っております。
  101. 小坂憲次

    小坂分科員 ただいまのお答えの中にナショナルトレーニングセンターというお話もございましたが、そういうトレーニングセンターの必要性についてどうお考えでいらっしゃいますか。
  102. 小杉隆

    小杉国務大臣 私は最近のオリンピックとか世界選手権の状況を見守っておりますが、例えばソウル・オリンピックに備えて韓国が大変立派なナショナルトレーニングセンターをつくった。それから、先日のアトランタオリンピックで好成績を上げたオーストラリア、あるいはヨーロッパの中でもフランスなど、飛躍的に発展した国々を見ますと、みんなそれぞれ国のそうしたナショナルトレーニングセンターを完備しているというのが大きな背景にあったというふうに私は考えます。  そこで、文部省としても、かねてからこのナショナルトレーニングセンター、さらにはスポーツ科学センターということをお願いをしてきたわけですが、今回、平成九年度予算でようやく東京都の北区にある西が丘国立競技場、これをスポーツ科学センターとして四十一億円の予算を計上していただいて、先日もJOCの古橋会長などは大変喜んでおられたわけですけれども、限られた財政状況の中で、私どもはこうしたナショナルトレーニングセンターの実現に向けて一層努力をしていきたいと思っております。
  103. 小坂憲次

    小坂分科員 大変に積極的なお考えをお持ちだということがわかりました。  やはりスポーツ振興には練習をする時間と施設、こういうものの整備がどうしても必要だと思いますし、そのためには財源が必要だ、こういうことだと思っております。このスポーツ振興くじにつきまして、私も議員立法の立場から努力をいたしますが、この財源を確保される折にはそういうものを十分に活用いただいて、文部省としても積極的なスポーツ振興施策を打ち立てていただきたい、そんな意味で、トレーニングセンター充実にもお力をいただきたいと心からお願いを申し上げます。  さて、長野オリンピックの方でございますが、おかげさまで施設充実してまいりました。しかし、運営面でまだまだ課題はあると思っております。ちょっと手元にあります新聞の切り抜きも、これは読売新聞の社説でございますけれども、「「あと一年」の課題」ということで、各組織間の協力体制の整備というものをもっとやっていかなきゃだめだという指摘をしております。すなわち、組織委員会、競技団体地元行政関係、そしてボランティア、また地元の住民も含めて、そういったいろいろな幅広い組織、人たちの相互の協力がなければオリンピックのような大きな事業は成功しないのだというようなことだと思います。  私は、この中でも特に大切なものは、ボランティアの参加意識をどのようにして高揚させていくか。ボランティアといってもいろいろ幅があるわけでありまして、地元から参加するボランティア、あるいは日本の各地から参集をして手伝おうという気持ちを持っていただくボランティア、いろいろな方々が集まるわけであります。その中でも、地元のボランティアの皆さんというのは、それなりに地元であるという意識がありますから、何としてもこの大会を成功させなきゃいかぬ、絶対にこれはやり遂げる、強い意思を持ってボランティアとして参加をされておる。それ以外の地域の皆さんは、それぞれボランティアという崇高な精神を持って、日本が開くオリンピックなんだから何とか成功させようという気持ちで、これまた応援をしてくださっている。しかし、私は、すべての物事はやはり根っこが大切だと思っておりますから、地元のボランティアがもっと盛り上がって、その熱意がほかから来ていただくボランティアに伝染をしていって、全体として大きな盛り上がりを見せるということが必要だと思っております。  最近、プレオリンピック大会、各種の世界大会が地元でも開かれておりますし、オリンピックの競技施設利用して前大会として開催をされておりますが、そこに参加したボランティアの人たちの意見を聞きますと、JOCあるいはNAOCあるいは各スポーツ競技団体、今回の前大会の場合には競技団体の皆さんが中心になって、またNAOCもオリンピック事前準備の観点から積極的にこれに参加をしているわけですが、そういう中でボランティアに参加した人の声は、NAOCのボランティア課の皆さんは大変に理解があって、ボランティアを積極的に活用しよう、そしてボランティアの活用の中から将来のコミュニティーを支えるボランティア精神の育成につなげていきたい、こういう積極的な意思を持って取り組んでいらっしゃるように聞いております。  ただ、残念ながらといいますか、これはやむを得ないことかもしれませんが、いざ現場の方に派遣をされますと、その現場の方を担当される方、運営委員の人たちの一部には、ボランティアでここへ来れてよかったねと、悪い言葉で言えば、ここでボランティアをさせてもらっているのは幸運なんだよというような、そんな感覚がちょっと感じられるような扱いを受けることがある。これをやはり何とかしていかないと、ボランティアの盛り上がりがいま一つ出てこないのじゃないかという危惧をする意見もあるのですね。  大臣は、そういう意味で、環境面でもいろいろな活動に参加されて、ボランティアに対しての認識も深いと思うのですが、ボランティアというものについて、どう考えていらっしゃいますか。
  104. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 まず事務的にお答えをさせていただきますが、長野オリンピック運営を側面から支えるボランティアは、現在約三万六千人が登録をされておるわけでございます。長野オリンピックの大会運営や競技運営のリハーサルのために、御指摘のようにプレ大会が行われたわけでございます。その全体がまだ終了しておりませんが、そんなわけで、正式な報告は受けていないのでございますが、ボランティアに対する中間アンケートを大会組織委員会が行っております。そこへ寄せられた意見によりますと、ボランティアに主体的に仕事をさせてもらえない、あるいは大会組織委員会からボランティアへの情報伝達、連絡が不足しておるとか、あるいは組織委員会とボランティアとの役割分担、責任関係がどうも不明確だ等々の御意見が寄せられておるわけでございます。  オリンピックのような大規模な大会が成功するためには、御指摘のようにボランティアの協力あるいはボランティアを含めた地域住民の一体となった盛り上がりが不可欠でございます。文部省といたしましても、そのボランティアの問題意識というものを踏まえて、大会組織委員会に対しまして必要な指導助言を行ってまいりたいと考えておるところでございましてへ公的な会議の場あるいは私的な連絡調整の中で、御指摘の点を踏まえた対応をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  105. 小杉隆

    小杉国務大臣 長野オリンピックは、日本における冬季オリンピックとしては二十六年ぶり、そして世界的に見ても今世紀最後の冬季オリンピックということで、何とか成功させたいと思っているわけでありまして、これはもう日本スポーツ振興あるいは国際親善にも貢献するわけでございますので、私どもも一生懸命応援をさせていただいておりますが、私も二度にわたって長野に行ってまいりました。エムウェーブの落成式とか、あるいはこの間の世界スピードスケート選手権。  何といっても、あのような大きな大会をやる長野県、長野市にとっては初体験であり、NAOCもいろいろな組織から出てつくっておられるので、いろいろ今の段階では不適切というか、あるいは不手際が目につくかもしれませんが、これはひとつ、試行錯誤という段階だと思いますし、さまざまな問題点を指摘をされているところでありますけれども、私たちは、このオリンピックの円満な運営のために、ぜひ組織委員会を中心に長野県も長野市も、そして特にこれは市民の協力なしにはできないわけでありまして、ボランティアの扱い等についてもまだまだ長野の地域ではふなれな点もあろうかと思うのですが、私としては、やはり温かく見守って、今の段階で一々問題点をあげつらうよりも、むしろ今試行錯誤をやって、一つ一つ学習を積み重ねていただいて、本番の来年には、ぜひ世界でも非常に高い評価が与えられるような立派な大会にしていくために、文部省としてもできる限りの指導助言あるいはお手伝いをさせていただきたい、こう考えている次第です。
  106. 小坂憲次

    小坂分科員 ありがとうございます。  ボランティアは、接遇関係だとかあるいは輸送の企画だとか通訳、いわゆる地元感覚的なものが必要な部分も多いと思うのですね。ですから、そういう人たちがある程度責任を任せられれば、それを請け負った組織といいますか、あるいはボランティアもグループ化されたものもありますから、そういうようなところをうまく使いながらやっていったらいいのではないか。私は決して、今回の大会での不手際等があったとしても、それを責めるつもりはないのでありまして、これをいい意味の勉強の糧として、ぜひとも大会の成功に向けて努力をしていただきたいと思っているわけであります。  例えば通訳一つにしても、私は国際化という話をするときによく言うのですが、言葉というのは、国際親善、国際交流の中での道具の一つでしかない、問題は心なんだ、交流する心が大切なんで、その心を一番大切にしていかなければいかぬ。ボランティアも同じでございまして、やはり外国から来た人たちを接遇したり、あるいは区間の輸送の企画をしたり、通訳をしたりする面で、心を持って接することが大切だ。そういう意味で、ボランティアの心を大切にして、交流の心を育てるような指導助言、そしてまた体育局からも大分出向者が出ておりますので、そういう方たちも通じて啓蒙に御努力をいただきたいと思っております。  さて、次にオリンピック施設についてなんですが、おかげさまで国からの二分の一の助成をいただいて、貴重な税金を使わせていただいて施設完成をいたしております。そして、このオリンピックで活用させていただいて、その後どうするかという話になりますと、先ほどのスポーツ振興くじのところでいただきました大臣の御見解、トレーニングセンターが必要だ、やはりトレーニングがしっかりしていれば国も金メダルをとれるし、そういった意味で国威発揚にもつながっていく。国威発揚というと何か古めかしいあれですけれども、しかし、日本に対する理解を促進するというふうに言いかえればいいと思うのですが、そういうオリンピックの大会での日本選手の活躍というものを国民みんなが期待していると思います。  そんな意味で、日本に唯一の施設であるものは、やはりこれは、競技の基礎人口を育成する、そしてレベルアップする、そういう意味で、せっかく国の援助もいただいてつくったわけですから、この後利用についても、やはり国のトレーニングセンターのような位置づけをして、積極的に、もちろん後利用については地元が第一義的な責任を持ってやるということで閣議了解もいただいていますからあれですけれども、閣議了解も決して金科玉条ではございません、そのときそのときの状況によって新たな閣議了解あるいは新たな考え方というものをとっていくわけでありますから、そういった意味で、まずもって、この施設の中でも、スパイラルと呼ばれているボブスレー、リュージュのコース、これは日本にはなかったわけでございまして、これも環境に配慮をして新たにつくりました、これをやはり維持していきたい、そして日本スポーツ人口を育てたい。また、スピードスケートのリンクにしても、通年で使えるようなリンクというのは日本にはなかったわけでありまして、そういう意味で、このスピードスケートの通年利用ができるエムウェーブ、過日、竣工式においでをいただいたあの施設でありますが、これらはトレーニングセンターとして今後活用することがいいのではないか、こう思っておりますので、まずもって大臣の御見解をいただきたいと思います。
  107. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 御指摘ございましたように、新設した施設をその後どう使うかにつきましては、基本的には設置者である自治体の責任において検討がなされるべきものでございまして、これに対して文部省もできるだけここは相談に乗ってまいりたいと考えておるところでございます。  エムウェーブあるいはスパイラルにつきましては、地元では、冬季は大会の開催や選手の育成のための専用施設、冬季以外は多目的アリーナ等に活用をするというふうに現在のところ検討しておるようでございます。  御指摘のございましたナショナルトレーニングセンターでございますが、文部省では、平成九年度、ナショナルトレーニングセンターのあり方に関する調査研究着手をすることといたしております。この調査研究におきましては、先進国の状況等を踏まえて全体構想検討を行いたいと考えておるわけでございます。したがいまして、ナショナルトレーニングセンターとしてどのような施設を考えていくのか等につきましては、まさに今後の検討課題となっておるわけでございます。  そのような意味におきまして、御指摘いただいた点は御提言として受けとめてまいりますが、現時点では御指摘の点については全く白紙の状況であるというふうに言わざるを得ないところでございます。
  108. 小坂憲次

    小坂分科員 大臣、いかがですか。
  109. 小杉隆

    小杉国務大臣 地元小坂委員のお尋ねであり、その気持ちは十分理解できます。先日も長野市長とお会いしたときに本音を聞かされましたが、誘致するときは、一生懸命、こういう施設をつくって、ああいうこともやる、こういうこともやるといって、そして全責任は地元で負うからと、こういうことで誘致したけれども、オリンピックが終わった後の維持管理費を考えると数十億円かかる、これはもう非常に頭の痛い問題だということで、私もその悩みを聞かせていただきました。  今お尋ねのこのナショナルトレーニングセンターについては、今局長から答弁したように、今度、平成九年度予算の中でこれを検討する、こういうことになっておりまして、夏のオリンピックと違って冬のオリンピックは、地理的な制約がありますし、当然これは雪のある、あるいは寒い地域に限られるわけですから、冬のオリンピック用のナショナルトレーニングセンターというのはおのずから地域的にも限定されると思いますから、私は特に今度の長野オリンピックで設置した施設、そこしかないというようなものは当然これは考慮しなければいけないと思いますし、そういうことを含めて、平成九年度からのナショナルトレーニングセンターの全体構想という中で、十分御意見もそんたくをしながら検討させたいと思っております。  今の段階で、国の方も大変危機的な財政状況でありますので、平成元年に閣議了解された「新設する施設の将来にわたる管理・運営については地元の責任と負担を主体として行われるものとすること。」この項を今外すということは、財政事情から見て、今直ちにこれを覆すということはできないわけでございまして、長野市も招請に当たってはそういうことを十分覚悟の上で招請されたということも事実であります。しかし、さっき申し上げたように、今後のナショナルトレーニングセンター計画の中で十分私はそういうことも含めて考えていきたいと思っております。
  110. 小坂憲次

    小坂分科員 ありがとうございます。大変に積極的な御回答をいただいたと認識をいたしております。閣議了解は私どもも了解しておるわけでありまして、またスポーツ振興くじという話も先ほど申し上げましたけれども、財源的な面は幅広く求めて、そして国の競技人口の育成とレベルアップという点で、ぜひとも前向きに御検討いただきたいと思っております。  また、冬季競技は、アジアではやはり日本が中心にならざるを得ないのですね。今、気候的な問題というふうにおっしゃいましたけれども、ジャマイカの選手がボブスレーに出るという話もあるわけですけれども、アジアの選手がやはりボブスレーの練習をしたいといっても、これは交通費等を考えると日本以外には考えられません。また、スケートもしかりでありまして、スキーもそうであります。  そんな意味で、日本がアジアのリーダーとしていろいろな面でその役割を果たしていく上では、こういったスポーツの面においても、冬季競技においてはアジアのリーダーとして力を発揮していくことがよりよい国際関係をつくる上で前向きな働きをしていくと思っております。そんなアジアのスポーツの中心として、冬季競技の中心として、このオリンピック一つの契機として整備された貴重な施設でありますから、文部大臣にも、本年度がちょうどいろいろ計画を立てる段階でありますから、ぜひとも前向きにお取り組みをいただきたいとお願いを申し上げたいと思います。  さて、これにあわせまして、きょうは自治省もおいででございます。自治省の皆さんに、自治省として支援体制を、後利用の面において、今財政的に大変厳しいということがありました。地元を中心にやっていくという方針でここまでやってまいりましたから、その努力はいたします。そして、建設に際しても、地方債の活用等を図ってやってまいりました。ぜひとも、この後利用においても、自治省の積極的な支援をいただきたいと思っております。お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  111. 伊藤祐一郎

    ○伊藤説明員 お答えいたします。  長野オリンピックにつきましては、その施設整備、市町村が中心となってやっていただいているところであります。オリンピックの終了後におきまして、各市町村、このオリンピック施設の有効利用を図りまして、さらに特色ある地域社会づくりを進めていかれることと思います。私ども、関係の地方公共団体から御相談がありますれば、適切な財政措置を講じてまいりたいと考えております。
  112. 小坂憲次

    小坂分科員 ありがとうございます。ぜひとも、積極的にお願いを申し上げたいと思います。  あわせて、やはり私どもの地域は過疎市町村も多いのでありまして、過疎市町村の支援策につきましても、地方債の有効な活用をさせていただいて、特色ある地域づくりとあわせて行ってまいりますので、この面につきましても自治省のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  113. 伊藤祐一郎

    ○伊藤説明員 今御指摘ございましたように、過疎市町村等々多いわけでありますが、過疎市町村につきましては、御案内のように過疎債でありますとか辺地債でありますとか、それからプロジェクトといたしましても、若者の定住プロジェクト等々いろいろなメニューがございますので、それらを活用しながら適切な対応を図りたいと思います。
  114. 小坂憲次

    小坂分科員 では、よろしくお願いをいたします。  ちょうど時間となりましたので、以上をもって質問を終わりたいと存じます。どうもありがとうございました。
  115. 相沢英之

    相沢主査 これにて小坂憲次君の質疑は終了いたしました。  次に、吉川貴盛君。
  116. 吉川貴盛

    吉川分科員 それでは、三十分という大変貴重な、しかも短い時間をちょうだいいたしましたので、端的に大臣を初め文部省の皆さんに聞いてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。  私は、地元の問題もいろいろとあるわけでありますけれども、それよりも与党という立場で、この予算委員会等々で余り発言の機会がないものですから、きょうは、この間発表されました教育改革プログラムの中身などを中心にいたしながら少し議論を進めさせていただきたいと存じます。  正直申し上げて、この教育改革プログラムの中身を見て、私は非常にがっかりいたしました。我が党の文教部会等々の中でも、これでは教育改革とは言えないというような意見が大半を占めたわけであります。文部大臣を初め文部省の皆さん方も、橋本総理が突如として教育改革を申されたわけでありますから、多少の戸惑いがあったかもしれませんけれども、これからの将来を見詰めた教育改革というものをしっかりとしていかなければならないだろうと私は思っているわけであります。  そういった観点から最初にお聞きしたいと思いますが、きょうは入口の議論で多分終わるだろうと思うのです。それでも私は結構だと思います。中教審から、来年の六月に中高一貫教育に対して結論を出す、こう言われているのですね。この中高一貫教育、これに対して大臣の所見はどうですか。この中高一貫教育は妥当だと思いますか。
  117. 小杉隆

    小杉国務大臣 今までの戦後の教育制度は、六・三・三・四という制度で、いわば単線型の教育制度、これの導入によって、日本国民教育機会の均等というものは大幅に図られたと思いますし、また日本全体の教育水準を高めることにも貢献したと私は思います。しかし反面、余りにも均質性とか平等性に力を入れる余り、子供の選択といいますか、そういう多様性とか柔軟性が失われてきたという側面も否めないと思います。  そこで、もう少し多様性のある教育制度、つまり、国民があるいは子供がもっと選択の幅を広げられるような、いわば複線型の教育制度というものが必要ではないかということで、全部が全部中高一貫教育にするのではなくて、今の六・三・三・四制度の中で、一部、場所によっては中高を一貫してやっていく、そして、三年目ごとに受験競争に巻き込まれるのではなくて、ゆとりのある教育の中でより人間性を育てる、そういう教育の仕組みがあってもいいではないか。そういう考えから、中教審としても中高一貫教育の導入という提言をされたことと理解しております。
  118. 吉川貴盛

    吉川分科員 大臣としてのお言葉を私は求めたのでありますが、時間もありませんからどんどん進んでいきます。  私も、この中高一貫教育に関してはいろいろな考え方がございます。私は、ここで一つ提案をさせていただきますが、一部中高一貫としてということも今申されたわけでありますが、大臣は、今、小中一貫教育をされている学校というのは全国的にどこら辺にあるかというのをお聞きしたことがございますか。何かございますか、そういう知識。
  119. 小杉隆

    小杉国務大臣 具体的には承知しません。
  120. 吉川貴盛

    吉川分科員 ございませんか。そうですが。  では、私が申し上げますが、実は、私が住んでおります、札幌市立福移小中学校というのがございまして、これは私の選挙区であります札幌市東区というところでありますが、ここは札幌の中で特認校という扱いをいたしておりまして、自然に親しむとか、あるいはこの学校はポニーなども飼っております。さらには、園芸とか星の観察ですとか、あるいはコンピューターを導入して小学生と中学生に、興味のある子供たちに教えている、そういう学校が実はあるわけです。一学年二十名です。ですから、小学校は六学年百二十人、中学校は六十人、こういうような定員にしている学校なわけであります。  この学校のすばらしさというのは、まず一つにはいじめがないということなのです。それから、私どもが学校に足を運びますと、必ず生徒は、こんにちはとか、あるいは朝であればおはようございます、そういうあいさつをされる。そういうような教育をしなくても、その学校の伝統的なものとして子供たちがそれを受け継いでいる。私は、これは学校のあるべき姿をあらわしているのではないかと思うのです。札幌市の中にも小中と一貫をしてやっているところはここしかございませんけれども、そういうようなことを考えてみますと、中高ももちろん大切な部分かもしれませんけれども、ある面では、教育の多様性とかそういったことを考えていきますと、小中の一貫教育というものもこれから教育改革プログラムの中に入れていったらいかがか、そんなふうに私は考えるのです。  ぜひ、この学校の実態ですとかそういうことも文部省で調査されて、大臣に御報告をしてあげてください。大臣、いかがですか、小中一貫教育。今私が申し上げたことだけで、大臣が、ではそれをプログラムに載せようかどうかということにはならないかもしれませんが、検討ぐらいさせてください。
  121. 小杉隆

    小杉国務大臣 今度の教育改革プログラムのねらいは、従来の単一の教育制度から、できるだけ多様性、弾力性を導入しよう、こういうのが本来の趣旨でございますから、私は、小学校、中学校が今御指摘のように、北海道で大変少人数でいろいろ、自然あるいは環境あるいは人間としての豊かな素養を身につけさせる教育というのは非常にすばらしいことだと思います。したがって、小学校、中学校連携を進めて教育に当たるということはいいことだと思います。  ただ、今、小学校六年、中学三年ということで義務教育制度を設けているわけでありまして、今の制度を大幅に崩すということでなくて、それぞれの教育委員会なり学校の努力でそうしたさまざまな工夫、創意を生かしてやっていくということは、別に差し支えないと思います。  詳細は、必要があれば初中局長からお答えさせます。
  122. 吉川貴盛

    吉川分科員 詳細はいいのです。初中局長の詳細はいいですから、ぜひそれを検討してみてください。いろいろと実態を調べて、よさというのはたくさんございますから。学校のあるべき姿がそこには凝縮されているような部分もございますので、ぜひ大臣、後で初中局長からそういう実態をお聞きになってください。  次に質問させていただきますが、学校の週五日制、大臣が二〇〇三年ということを言われたわけでありますが、私は率直に、この二〇〇三年では遅いというふうに思っております。確かに、ゆとりですとか教育課程の編成ですとか学習指導要領の改訂とか、そういうのを急がなければならない部分があろうかと思いまするけれども、やろうと思えば二〇〇三年の前に学校週五日制というのはできるのではないかと私は思うのです。  なぜかと申し上げますと、何年前かは数字は忘れてしまいましたけれども、既にモデル校をつくって研究しているのですね。その検討結果を文部省は公表すべきだと私は思うのですよ。最初に、学校週五日制を実施するのに全国にモデル校をつくりました。そして、その後週五日制が実施をされました、月二回。そして、月四回のモデル校を全国的につくっていきました。その結果はどうだったのですか、その成果はどうだったのですか。それをきちっとわきまえながらやろうとすれば、私は二〇〇三年以前に学校週五日制というのは実現できるのではないかと思うのです。いかがですか。
  123. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 若干経緯を御説明させていただきた、いと思います。  今先生がおっしゃいました実験校と申しますのは、現在の学習指導要領を前提にして月一回、さらに月二回実施する、その実験でございました。したがいまして、現行の学習指導要領でぎりぎり二回まではいけるということで、平成七年四月から月二回、隔週実施が進んでおります。  ただ、今回は完全実施ということでございますので、教育課程審議会にかけまして、基本的な教育内容の精選、学習指導要領の制定、教科書の編さん云々ということで、二〇〇三年を目途にということになっているということでございます。
  124. 吉川貴盛

    吉川分科員 ちょっと私、数字を間違いましたけれども、月二回の実施の成果、それはどうだったのですか。ぜひ公表していただきたいと思うのですけれども。それによって、二〇〇三年が妥当だということが出てくるということであれば、これは皆さん納得ですよ。そうでなくて、まあ、とりあえずそれだけお答えください。
  125. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 月二回までの学校五日制、全体としてはいい成果をいただいております。したがって、私どもは、月二回にとどまらず、完全学校五日制を実施するということで今進んでいるわけでございます。  ただ、お父さん、お母さん方の中には、土日を過ごすときのいわば受け皿と申しましょうか、その対応の問題、それから、入試の問題等が改まらないと、土日は塾に行くというようなことになりはしないかという懸念を表明する向きもあるわけでございますが、全体として、学校中心の教育のあり方をスリムにして、家庭、地域社会というものの教育機能を発揮する中で完全学校五日制を目指す、この方向については大方のコンセンサスになっている。そこで、それに向けて今文部省としても努力をしている、こういう状況でございます。
  126. 吉川貴盛

    吉川分科員 それが二〇〇三年ということですか。二〇〇三年を前倒しということにはなりませんか。
  127. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 若干、段取りを申しますと、今、昨年の八月スタートいたしました教育課程審議会で審議をしているわけでございますが、これまで六日を前提にした内容を五日制を前提にする内容に切り込まなければいけない。一方、社会の変化に対応して、むしろ学校で教えるべき内容というのはどうしても肥大化し、専門化する傾向がある。その中で、基礎、基本にいかに内容を絞り込むか、各教科それぞれ精選して絞り込むかということが今最大の課題でございまして、今これに取り組んでいます。これは、やはり余り拙速に結論を出すというわけにはまいりません、基本的な、小中高を通した内容でございますので。  そこで、我々の目途といたしましては、ことしの秋くらいには中間まとめをして、世間の講評、世間からの御意見をいただく。そして、その一年後、来年の秋を目途に正式答申をいただき、直ちに学習指導要領の制定に着手いたしまして、それを受けて教科書の編さん等という段取りになるわけでございまして、そういうふうになりますと、二〇〇三年度を目途にというのがスケジュール的には穏当な、ぎりぎり努力したスケジュールなのではないかというのが我々の理解しているところでございます。
  128. 吉川貴盛

    吉川分科員 この学校週五日制、もう既に二〇〇三年ということを文部大臣は言われておりますから、この場で幾ら議論をしても前倒しなんということは私はならないだろうというふうに思うのですよ。思うのですが、既に地域によりましては、土日の過ごし方、親子のレクリエーションを学校と一緒になってやったり、塾に通わせないで地域が一緒になって社会教育活動をやったりとか、そういった条件整備というのが少しずつ整ってきているわけなんですね。  ですから、入試のあり方といいますか、そういうことももちろん必要なわけでありまするけれども、文部省として積極的に、二〇〇三年導入までのプロセスというか過程を、都道府県教育委員会あるいは市町村教育委員会を通じるなりして、親御さんに対して通知といいましょうか、公表できるような、そういったことをぜひ検討してください。そうでないと世論は喚起できませんよ。私はそう思います。
  129. 小杉隆

    小杉国務大臣 単に今の六日制を前提とした週一回、今度は週二回にしましたけれども、やった、そのシステムの延長線上に完全週五日制はないということをまず御理解いただきたいと思うのです。  やはり今の週五日制というのは、本当に限られた、今までの六日制を前提とした中でぎりぎり努力した結果が週二日休みということになっているわけですが、もしこれが完全に週五日制の授業ということになりますと、今までの教科内容をもう本当に絞り込まなきゃいけない。  最近は、英語教育をやれ、コンピューター教育をやれ、あるいは理数科はもっと力を入れろ、あるいは道徳教育をふやせ、そして情操を育てる音楽や図工を減らしてはいけない、そういったさまざまな要求が出されておりまして、じゃ一体どれを残してどれに絞り込むかという作業だけでもこれは大変な作業でございますし、その間には、今おっしゃるように、いろいろな人たちの意見も聞かなきゃいけない。  そして、指導要領を全部、全面的に書きかえ、教科書も小中高と全部書きかえるということになりますと、これは一大、一つのカリキュラムの編成がえというべきものでありまして、従来、十年に一回ずつやっていたカリキュラム、指導要領の変更とは根本的に違うということで、私も当初は、もっと早くできないのかということで、文部省当局にもできるだけ早くという指示をしたのですが、逆算して考えますと、ぎりぎり、どうしても二〇〇三年以前には難しい。  しかも、今委員が御指摘のように、単に学校の側だけ五日にすればいいんじゃなくて、社会とか家庭の受け入れ体制も整えていかなきゃいかぬわけですね。休みがふえたからといって、ごろごろ寝ていたり塾通いがふえたりなんというのでは、これはもとの趣旨に反するわけですから。私は、やはり家庭教育のあり方あるいは社会が、例えば土曜日には環境教育とか社会奉仕の体験活動とか、そういう家庭、社会の受け入れもその間にきちっと整備していくということが必要だと思うので、私どもはできるだけ今さまざまな工夫を、休日の土曜日の過ごし方について今おっしゃるように努力をされているようですけれども、そういう情報も十分吸収しながらやっていく、こういうことで御理解をいただきたいと思います。
  130. 吉川貴盛

    吉川分科員 次に移りますけれども、私は、地方分権とか地方の時代、こう言われて最近久しいわけでありますが、ある面では、教育もこれから地方の時代をつくっていかなければならないという考えを持つものであります。  その中で、今の学校の週五日制や、あるいは制度的なもの、大学のあり方から高校そして中学、小学校のあり方まで、いろいろと議論をしていかなければならないこともございますが、一つ、今、教育課程、カリキュラムと申しましょうか、その編成権を地方に大幅にゆだねる考えを持たれてはどうかなというふうに思うのですね。  個性のある教育とか、そういうことが言われておりまするけれども、私は、正直なところを申し上げますと、小学校の算数、大臣、今何年生で掛け算を習うか御存じですか。
  131. 小杉隆

    小杉国務大臣 二年生ですか。
  132. 吉川貴盛

    吉川分科員 二年生ぐらいですね。そういうようなことで、二年生のときに小学校の算数で掛け算がわからなければ、もうそれで小学校の算数、中学校の数学も高校の数学もわからなくなってしまうのですね。ということは、小学校一年生で足し算、引き算、ゼロから二十までやるんだそうです。小学校の二年生で掛け算がわからなくなって、そのまま学年進行してしまうと、全く算数や数学がつまらなくなって、その時点で、言葉に語弊があるかもしれませんが、落ちこぼれになってしまうというような形になっているわけなんです。  そこで、私は、個性あるとか、あるいはゆとりですとか、子供たちのことを考えた場合に、教育課程の編成権というものを、これは余りにも北海道から沖縄まで学力の差がついてしまうということは大変なことですから、大枠は文部省、国が定めるとしても、かなりの部分を地方にゆだねる、そういったことで教育にも地方の時代をつくっていく、そういう考えは大臣のお胸にございませんか。
  133. 小杉隆

    小杉国務大臣 おっしゃる趣旨というか気持ちはよくわかるのですが、少し根本にさかのぼって、教育についての国の役割とは何か、地方の役割は何かということを考えますと、やはり明治以来、日本がこれだけ教育が普及してきたというのは、あるいは戦後の教育がこれだけ発展してきたというのは、やはり国が基本的に責任を持って義務教育費国庫負担金、半分を負担する、そしてそういう学校の全体の枠組みを国が責任を持つ、そして、教育内容につきましても、大体このぐらいのことを最低教えなきやいけないというものを設けまして、そういう大枠の枠組みあるいは教育水準の大綱的なものを示しまして、そして各地域とか学校の実態、児童生徒の特性等に応じてそれぞれの地域が創意工夫を発揮していただく、こういう建前になっております。  子供の教育課程につきましては、今、教育課程審議会で鋭意検討を進めているところですが、今までも随分努力をしてきましたが、今後とも一層、地方の特性とか創意工夫が生かせるような、できるだけ国は大綱的な部分にとどめる、こういう姿勢で検討を図っているところでございます。
  134. 吉川貴盛

    吉川分科員 いろいろと議論を進めていきたいのですが、次に移りたいと思います。時間もございません。  専修学校について一つお伺いさせていただきますが、たしか平成七年でしょうか、専修学校を卒業をした学生に専門士という称号が与えられたわけなのですね。これは、職業教育と申しましょうか、いわゆる現代社会の変革する中で社会のニーズにこたえている教育をしている専修学校としては、大いにこれによって力づけられました。そして、そこに学ぶ学生も大変な感激を持って卒業をいたしておるところがございます。  今、私の北海道では、短期大学よりも専門学校の生徒の方がふえてしまったのです。それだけ果たしている役割というのが大きくなったのですね。全国的に見てもそういう傾向があるのではないかと思うのですが、私は、専修学校に対して、少なくとも法人立の学校ぐらいは一条校に認定をして地位向上を図るべきだと思いますが、お考えはいかがでしょうか。
  135. 草原克豪

    ○草原政府委員 専修学校は、学校教育法上の目的にもありますように、実践的な職業教育やあるいは専門的な技術教育を行う教育機関として、いわば社会の要請に応じて自由に発展するということが期待されている教育機関でございます。このために、大学、短大、高専などいわゆる一条校と比べましても、設置基準面においても極めて弾力的な扱いがされている、そこに特徴があるわけでございます。  文部省としては、こういう専修学校とそれからいわゆる一条校というのがそれぞれ特色を発揮しながら、全体として多様な高等教育システムを構成していると考えておりまして、全体として社会の要請にこたえるような教育が展開されることが重要であると認識しております。  そういう観点から、専修学校についても、いわゆる一条校と同じ形ではありませんけれども、専修学校としての特色が十分に発揮できるように種々の支援策を講じているところでございます。
  136. 吉川貴盛

    吉川分科員 種々の支援策を講じているというのは、それはわかっているのですよ。ですから、今も局長お認めになられたように、これだけ社会に対して大きな役割を果たしている専修学校なわけですから、一条校になれるように地位向上をさせるような考えはないのか、そこなんですよ。もう一度。
  137. 小杉隆

    小杉国務大臣 専修学校といっても千差万別でして……(吉川分科員「ですから、私は少なくとも法人立と申し上げたのです」と呼ぶ)これは、一条校になりたいということであれば私立学校として申請すればいいわけでありますし、一条校と比べるとやはり、一条校とまではいかないのですけれども、さまざまな財政的な、あるいはいろいろな支援をしているということでございます。
  138. 吉川貴盛

    吉川分科員 それは大臣、私が言ったこととちょっと違うのですよ。まあいいでしょう。  局長、いろいろと検討してください、研究してください。一言でいいです、時間がないですから。
  139. 草原克豪

    ○草原政府委員 先ほどの多少繰り返しになりますけれども、やはり専修学校というのは一条校と違うところにその特色が発揮されているわけでありまして、私どもは、そういう高等教育システムの多様性ということを大事にしていく必要があるというふうに考えております。
  140. 吉川貴盛

    吉川分科員 平行線ですから、また別の機会にお話をさせていただきます。この件については、個人的にでも大臣にお願いに行きますから。  きょうは、学校給食の問題とか、そういうものも少しはお聞きしたがったのですが、最後に、国公立大学における国旗・国歌について少しお話を聞きたいと思います。相当議論を詰めていきたかったわけでありますが、もう時間もなくなりましたので、ごく簡単にお伺いをしながら御指摘も申し上げたいと思うわけであります。  義務教育での国旗・国歌の掲揚率、斉唱率は全国平均でどのぐらいになりますか。それが一つですね。それから、国公立大学ではそれはいかがですか。さらには、三番目に、教員養成の学校である教育大学、全国にございますが、ここでの国旗・国歌の掲揚率、斉唱率はいかがでありますか。
  141. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 公立小中学校の卒業式、入学式におきます国旗・国歌の扱いでございますが、平成六年三月の卒業式それから平成六年四月の入学式につきまして申し上げますと、国旗掲揚につきましては九八%前後、国歌斉唱につきましては八三%から八七%の学校実施しているというふうに承知いたしております。
  142. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 大学関係でございますが、国公立大学一般につきましての調べはございません。  ただ、最後に御指摘の、教員養成大学・学部の入学式、卒業式における取り扱いでございますが、教員養成大学・学部は全部で五十二大学あるわけでございます。これの中には北海道教育大学の分校も一校に数えてございますけれども、国旗の掲揚につきましては三十三大学で実施いたしております。また、国歌の斉唱ということにつきましては、一大学の卒業式で実施しておるということでございます。
  143. 吉川貴盛

    吉川分科員 委員長も今お聞きをしていただきましたように、義務教育は、これは学習指導要領で定めましたから、国の指導がありました。都道府県教育委員会も市町村教育委員会も、これは大変な努力によって、学校現場ともめながら指導してここまで率を上げてきました。あくまでも全国平均でありますから、地方によっては率の低いところもあるわけでありますが、その議論は別にいたしましても、国公立が国旗を掲揚あるいは国歌を斉唱していないという調べが文部省にないということ自体がおかしい。これは調べてください。後ほどで結構であります。  それから、教員養成大学で五十二大学中三十三大学と申しましたね。これは一歩譲って、百歩譲っていいとしても、国歌の斉唱が一大学ということは、これは嘆かわしいのではないですか。  なぜかと申し上げますと、ここの教員養成大学を卒業されて教員に採用された学生は、四月から生徒、子供たちを教えることになるのですよ。その教える学生が、国旗も掲揚していない、国歌も斉唱していない学校を出て、どうやって子供たちに、あなた方文部省が定めた学習指導要領に沿って国歌を教えるのですか、教えられるのですか。そういう問題が私は生じてくると思うのですよ。極めてこれは問題だと私は思うのです。  この件に関して、少なくとも教員養成大学である全国の教育大学に対しましては、卒業式も間近になってきました、さらには四月には入学式もございますから、やはり国旗を掲げてそして国歌を斉唱するぐらいの指導というものを、文部省の直轄の大学でありますから、私はすべきであるというふうに思います。本来であれば、これは大臣の談話でお話をされるとか、あるいはもっと、局長の通達を出すとか、私はそういうことをすべきだという考えを個人的に持っておりますが、きょうはそこまで問いません。  大臣、どうでしょうか。今の数字を聞いて、少なくとも教員を養成する大学に対しましては、卒業式が間近いですから、指導をされてはいかがでしょうか。
  144. 小杉隆

    小杉国務大臣 教員養成大学あるいは学部で、この学生に学習指導要領に盛り込まれている国旗・国歌のことを理解させるということは、極めて重要だと考えております。  今、実態については局長から答弁したとおりであります。そういった実態を踏まえて、私としてもあるいは文部省としても、かねてから各大学に伝えているところでありますが、今後とも機会をとらえて、教員養成大学・学部の関係者に伝えていきたいと考えております。
  145. 吉川貴盛

    吉川分科員 ありがとうございました。
  146. 相沢英之

    相沢主査 これにて吉川貴盛君の質疑は終了いたしました。  次に、瀬古由起子君。
  147. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 日本共産党の瀬古由起子でございます。私は、世界遺産に関連して御質問させていただきます。  まず、白川郷の荻町の問題でございます。岐阜の飛騨白川の荻町集落は、人々がそこに生活することで世界遺産としての価値が認められている重要伝統的建造物群の山村集落でございます。危機に瀕している文化財を何としても守りたいということで、文化庁としては非常に力を入れて、文化財としての自信を持って、白川郷・五箇山の合掌造り集落を推薦したというふうに聞いておりますけれども、いかがですか、文部大臣にまずその経過をお聞きしたいと思います。
  148. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 御指摘ございました白川郷・五箇山の合掌造りの集落でございますけれども、これはもう先生御承知のように、豪雪地帯でございますけれども、そこに発達いたしました大型の合掌造りの建物の集落でございます。我が国におきます。そういった大型の木造住宅集落の典型を示すものだと私どもは考えているわけでございます。  したがって、これについては、文化財保護法に基づきまして、それぞれ伝統的建造物群の保存地区に指定したり、あるいは過去に史跡に指定したりしてそれぞれ保護しておったところでございますけれども、御指摘ございましたように、世界遺産条約に基づく世界遺産として、日本世界に誇るべき文化財だというふうに私どもは認識をしておるところでございます。
  149. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 私は、去る二月二十二日に白川村の役場を初め関係者の皆さんにお話を聞いてまいったわけでございます。危機に瀕していると言われたけれども、何とか合掌造り集落を守りたいということで、白川郷では大変な努力がされております。売らない、貸さない、壊さない、これを合い言葉に、世界遺産条約が国連で議題になる以前の一九七一年には、白川郷荻町集落の自然環境を守る会、これを発足させまして、長年にわたって必死の努力をしてこられました。文化庁の努力で世界遺産として指定されたわけですけれども、逆にそのことで維持することが大変になったという面もございます。  白川は、今述べられましたように日本でも有数の豪雪地帯であり、過疎地域でもございます。人口は約千八百人にすぎないで、また主な産業は農業、林業、観光業。このわずかな人口で合掌造り家屋に生活しながら集落を守る、こういいましても、就職がないとかどうやって生活していったらいいのかとか、後継者の問題も大変深刻になっております。  そこで伺うわけですけれども、実はこの集落には、住民相互の労力提供による結いという営みが継承されております。屋根のふきかえを、他の集落では請負でやっていても、ここは結いという制度でやるわけですね。  大臣、文化庁長官、なぜこれは結いの制度でやるのかといいますと、実はこのふきかえ作業を通じて村じゅうが協力する、助け合うことによって心が一つになる、そして若い人たちがこの技術を引き継いで、力を合わせて頑張ろう、この村を守っていこう、こういう気持ちが生まれるからだと村の関係者の皆さん言っておられます。結いがなくなれば、文化財を、世界遺産を守れなくなるからなのだ、このように言っておられました。  ところが、この結いの制度でやりますと、屋根のふきかえの人件費の補助はないわけですね。請負の場合はあるのですが、結いの場合はございません。それで、事故があっても労災の適用もされないということで、これが今問題になっているわけです。  それで、これでは結いの制度を残したくても残せないというので、ぜひこのふきかえ作業の人的経費、例えば結い文化保存活性化事業とかやり方を考えれば、世界遺産を維持する場合に、合掌造りを維持する場合にこうした保障ができるはずだと思うのです。また、結いの作業による何らかの災害補償、これをぜひ創設してもらいたいというふうに思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  150. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 御指摘ございました白川村での伝統的な結いでございますけれども、これはもう先生御承知のように、相互扶助という形で地域方々が力を合わせて、例えば大きなカヤぶきの屋根を直すということでそれぞれ協力し合っていく、ボランティアといいますか、昔の形でのボランティアだと思いますけれども、そういう非常にすばらしい制度を、恐らくこれは日本においては過去ほかの分野にはいろいろ残っておったものだと思うわけでございますけれども、最近特にこういうものしかもう残っていないということで、御指摘のように結いのような形での相互協力体制といいますか、こういったもので、地域方々地域の誇るべき文化財を守っていくというのは私は大変大事なことだと思うわけでございます。  ただ、先生御指摘ございました、この結いについて補助をするなりあるいは災害補償を考えるべきではないかという御指摘でございますけれども、お話にもございましたように、例えばカヤぶきの屋根をふき直すということをどこかの他の人に依頼をして、それにお金がかかるということでございますと、村あるいは文化庁を通じてそれぞれ補助の制度がございまして、村からこういった修理等につきましては九〇%程度の補助の制度があるわけでございます。  ただ、この結いは、地元方々協力し合う、まさに相互扶助ということでボランティア的にやるという制度なものですから、そこに金銭、修理代を払うという形がないものですから、これに対して補助するというのは今の制度では私ども非常に難しいと思うのでございます。  一方で、もしこういった結いのような制度に補助するということになりますと、せっかく皆様方が、地域の人たちが自分たちで守ろうといったような雰囲気にとって、それがわずかな補助金でそういった制度がまた崩れてしまうおそれもあるわけでございまして、確かに補助金というのは、この結いに対してはそういう制度はないわけでございますけれども、地域の人たちがみんなで協力し合う、このことは文化財保護にとって私どもは大変重要なことだし、これからも残していきたいと考えておるところでございます。
  151. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 何とかこの結いの制度を守ってこうした集落を守りたいということで努力されているわけですが、実際に、御存じだと思うのですが、屋根がすごく急斜面になっておりまして、せめて事故が起きた場合に何らかの対応をしてもらえないか、それは今の制度を活用するなり、もう少し新たな検討も何らかの形でできるのではないかという声が地元から上がっているわけです。文部大臣どうですか、その辺は検討していただけませんか。
  152. 小杉隆

    小杉国務大臣 今までお話伺いましたところで、結いという制度、私はその地域の人たちの連帯感とかあるいは地域愛といいますか、そういうことに非常に敬意を表したいと思います。  ただ、今まで白川郷につきましては、私どもも貴重な文化財として白川郷の合掌造りの集落を重要伝統的建造物群保存地区、五箇山の合掌造り集落を重要伝統的建造物群保存地区及び史跡に選定指定しておりまして、そういう国内法上の保護措置は十分にとられているというふうに考えておりますので、新たに立法措置を講ずることは考えていないということであります。  私は、例えば先日屋久島を見てきたのですけれども、屋久杉という非常に貴重なああいう自然資源に対しまして、今度世界遺産として登録されたわけですが、あのことによって非常に観光も盛んになったりということで、経済的にも自立を図られておりますし、私は世界遺産に登録されたということだけで大変大きな価値のあることだと思っておりまして、そういう中で、私たちは今の法律の中でできる限りの応援をさせていただきたいと思っておりますが、新たな立法措置を今の段階では考えてはいないということをもう一度申し上げたいと思います。
  153. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 災害補償について、いかがですか。
  154. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 災害補償の問題でございますが、これはやはり、例えば、自分の家をある人がもし屋根を直しておられるというときに、仮にけがをされたとします。それは、どこかから雇用関係にあるわけではございませんので、いわゆる労働者災害補償のような制度はないわけでございます。したがって、もしそういうことを、何らかの保障をするということであれば、御自分で保険に加入なさるか、あるいはボランティア保険のようなもので類似の、スポーツ関係等ではあるわけでございますけれども、そういう保険にお入りをいただくということが一つの方法ではないかと思うのでございます。
  155. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 世界遺産、世界に誇る遺産として登録した割には、もう少し今のこの現行法の枠だけではなくて、今後御検討いただきたいと思うのです。  実は、ここの世界遺産は、生活をしながら登録をされている、こういう特異な遺産なんですね。その点もよく御配慮いただきたいというふうに思うのです。  例えば、外側のつくりは一定補助制度がございます。しかし、内装についてはどうかというと、外観を維持しながら中で生活するわけですから、内装の改造というのも随分お金がかかるわけですね。その点での、例えば補助金をそこへ拡大してもらえないか、生活をし続けるためには必要だという切実な声ですよね。  それから、例えば若い方々がそこで住もうと思っても、なかなか、生活をしながら遺産を守るというのには、そこだけで住めない場合もあります。そういう場合に、地区外に共同住宅だとか、車庫も外観上余り、世界遺産に調和する形での車庫の配置だとか、そういうものも必要になってくるわけですね。そういうものについて補助をしてもらえないかとか、それから電柱の埋設なんかも、これも何十億円というお金がかかるんだそうですね。もう村の財政ではとてもやれない。しかし、ぜひ景観を維持するためには電柱を埋設すると。都市部ですとかなり電力会社なんかも負担をしていくわけですが、こういう過疎地域というのはそういうふうにならないのですね。そういう援助をしてもらいたい。  それから、住み続ける上では、例えば相続税の課税の問題、それから土地などの固定資産税の減免ですね、免除、こういうものについても本当に、住み続けるという場合に具体的な施策が、ぜひ配慮願いたいという声があるわけですが、いかがでしょうか。
  156. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 ただいまさまざまな観点からの、助成をもっと広げるべきではないか、あるいは税制上の優遇を認めるべきではないかという御指摘でございます。  実は、私ども、伝統的建造物群の保存地区を文化財保護法で保護しておるわけでございますけれども、具体的な保護のあり方といたしまして、まず一つは、合掌造りの建物につきましては、こういった建物が後世までずっと残るように、それについて直接必要な経費についてはできるだけ補助なりお手伝いをさせていただこうということで、現在さまざまな形で、村が補助し、それに対して国が補助するという制度はあるわけでございます。  例えば、カヤぶき屋根のふきかえに要する経費。どこかの会社に頼まれてふきかえをするというのであれば、それの経費については補助の制度がございます。それから柱や、はりを強化する、あるいは外側の、建造物でございますから外側をきちんと守っていくということが大変大事でございますので、その外側をきれいにする、あるいは補強する、修繕をするというものについては、現在も修理に対して補助の対象になっておるわけでございます。  ただ、御指摘がございました内装材についての経費、あるいは内部での畳や何かをかえるような経費、こういったものは、この伝統的建造物群の保存地区について、私どもの保護の姿勢が建物の外観をきちんと守って後世に伝えていこうというところにあるものですから、内部については、残念ながら今対象になっていないわけでございます。  それから、お話にもございました地区外に移る場合、あるいは車庫等の場合でございますが、現在でも、例えば、伝統的建造物群にふさわしくないようなほかの家が既にあって、それをある程度伝統的建造物群の地区に合わせた形に修理していただく、あるいは外装を整えていただく、そういったものについては私どもも補助をさせていただいておるわけでございます。これはやはり、そういった町並みをきちんと残していこう、町の美しさを保存していこうという観点からそういったことを行っておるわけでございます。  お話にございました電柱等の撤去については、現在のところ、こういう対象になっていないわけでございますけれども、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、白川郷の合掌造りが後世にいい形で残っていく、そのためには住民の方々の御協力もいただかなければいけないわけでございます。さはさりながら、家の中の内装の部分、あるいは地区外に移動するための例えば車庫でございますが、そういったものについては、今の文化財保護法の体系からいきまして補助ができないということはぜひ御理解を賜りたいと思うのでございます。
  157. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 今の文化財保護法の範囲でいいますと、例えば建物を残していくとか外観を維持するという形での適用になると思うのですが、実際には、ここは本当に、今言いましたように生活しながら、自分たちで守りながら、それがある意味では世界遺産として大変重要だという形で認められているわけですね。  そうしますと、やはり今の文化財保護法の枠を超えるといいますか、そういうことも本当に必要じゃないかと私は思うのですね。何もそこに住んでいない、自然だけがある場合じゃないのですね。本当にそこで生活して、電気も使い、子供たちが学校に通い、そういう場所の場合に、私はもっとそれなりに、今までの枠内というのじゃなくて、本当に今後新たな特別立法なりそういう措置も考えていかなければならないのじゃないかというふうに思うのですけれども、その点での文部大臣の今後の御検討をお願いしたいと思います。
  158. 小杉隆

    小杉国務大臣 私も白川郷へ行ってきまして、ほかの文化財と違いまして、今御指摘のように、日常そこで生活をしながら、指定された建物の中あるいは町の中で生活をしながらああいう景観を保っているというのは並々ならぬ御努力だと思います。  従来、文化財というと、観賞用というか、そこへ置いてあって眺めるという感じですが、ここは実際に起居しておられる住まいだけになかなか大変だとは思うのですけれども、世界遺産の登録という制度が始まってまだ日が浅いことでもありますし、ほかの世界遺産に指定された地域の実態というのはまたいろいろさまざまでありますし、私は今の文化財保護法の仕組みの中でできる限りのひとつ保護を研究していきたいと思っておりますので、白川郷の方々には私は本当に敬意を表するのですけれども、財政の状況等もありまして、今直ちにということはできませんで、今後とも今の法体系の中でできる限りの保護策を講じていきたい、こう考えております。
  159. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 世界遺産に登録されても、その維持は地元の努力だけではやはり限界があるので、ぜひ今後とも文部省の、実際に地元で御苦労されている実情に見合った援助をお願いしたいというふうに思います。  二つ目に質問させていただきます。  次は富士山の問題なんですが、富士山は、御存じのように、最も日本で美しい、日本代表する山でもございます。国外にも広く知られた、日本を象徴する山ですね。世界じゅうにその名をとどろかせた葛飾北斎の富嶽三十六景を初め、絵画に歌に、すぐれた文学作品あるいは写真とか信仰の地として、これほど人々の心に深くかかわっている山はないというふうに思います。  現在も、全国で確認される鳥類の半数が生息している。田貫湖及び小田貫湿原には貴重な植物があって、また、世界一と言われるスパイラクル、溶岩水蒸気噴気孔というのがあるわけですね。世界一と言われております。年間二十億トンの雨を吸収すると言われる溶岩層と森林、そこからわき出る名水、柿田川湧水、世界に誇る普遍的価値を有する文化と自然が今日も無数に存在をしているわけです。そして、静岡、山梨の県民はもとより、国民の多くが、すぐれた文化的な景観を持つ富士山をぜひ世界遺産にと願っております。  九三年の十二月にコロンビアで世界遺産委員会総会が開かれておりますが、ここで、文化的景観、こういうものが新たな選定基準として示されております。文化的景観というのは、単に文化遺産か自然遺産かその複合かというものではなくて、信仰や民族の心、生活と深く結びついた地域を風景ごととらえようとするものなのですね。この基準からいきますと、富士山の世界遺産登録の可能性は高まってくるのではないかと私は思っているわけですが、どのような展望を、文部大臣にお聞きしたいと思うのですけれども、いかがですか。
  160. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 技術的な問題がございますので、私の方から答弁させていただきたいと思います。  富士山の世界遺産化でございますが、お話ございましたように、富士山につきましては、自然環境としての側面、それから文化的景観としての側面、両方があると思うのでございます。例えば、お話にもございました富嶽三十六景でございますとか、あるいは万葉集で取り上げられているとか、さまざまな形で富士山が我が国文化一つとして文化的、歴史的な側面というのを持っていることは事実だと思うのでございます。  自然環境の面は環境庁さんの御所管だと思いますけれども、私どもとしては、この世界遺産について、お話ございました、文化的な景観というものが世界遺産の一つのカテゴリーに入ってきたことがございます。お話にもございましたように、一九九三年にニュージーランドのトンガリロ国立公園といったものが、両方の観点、最初の文化的景観としてのものとそれから自然遺産、複合的な遺産ということで登録されておるわけでございます。  お話にもございましたように、この世界遺産に登録するためには、文化遺産であるか、あるいは自然環境、自然遺産であるか、あるいはこの三つ目の文化的景観であるか、どれかのカテゴリーに属さなければいけないというのが一つの条件としてあるわけでございます。さらに、それぞれの遺産が六つのまたカテゴリーで比類のないすばらしいものだということが、それぞれ価値が評価されるということが必要になってくるわけでございます。  私どもといたしましては、この富士山の世界遺産の問題については、既に登録されております世界各国の類似の遺産といったものとの比較も必要だと思います。それから、環境庁等の関係省庁とも協議をしていくことが必要だろうと思うのでございます。そういったことを通じながら慎重に検討していく必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。
  161. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 富士山には自然公園法の規制がございます。しかし、実際にはもう、富士山に行ってみますと、外から見るとなかなか美しいのですが、中へ入りますと大変な状態になっているわけですね。乱開発、それから国有林を含む放置されたままの森林だとか、無計画なスキー場、ゴルフ場の開発だとか、景勝地内に十三メートルを超える違法の高層病院の建設計画だとか、こういうものが次々と、実は世界遺産の条約批准後も、九四年に国会の請願採択が全会一致で行われておりますが、これ以降もどんどん破壊が続いているわけです。実際には、もう富士山は死んでしまう、こういう状態が言われているわけですけれども、私は、やはり開発利用最優先の国のこうした姿勢に大変問題があったのではないかというふうに思っております。  九五年に富士山の国際フォーラムでベルンド・フォンドロステ・ユネスコ世界遺産センターの所長がこういうふうに言っています。富士山の問題は、歴史、文化的価値は高いけれども、保全が不十分で適切な管理がされていないことだ、このように指摘されているわけですね。  環境庁としては、この具体的な保護計画、どのように考えてみえるでしょうか。環境庁にお聞きします。
  162. 下均

    ○下説明員 富士山の問題でございますけれども、環境庁では、富士箱根伊豆国立公園富士山地域につきまして、国立公園の保護規制を強化すべく平成八年七月に公園計画の大幅な見直しを行いまして、五合目以上でございますとかあるいは青木ケ原の樹海などを新たに特別保護地区に指定いたしました。そのほか、特別地域につきましても、保護の必要性に応じまして第一種特別地域から第三種特別地域に区分したところでございます。  また、先生いろいろ御指摘ございました富士山の地域でございますけれども、夏の間に三十万人の人が富士山の山頂に登るというふうな非常に過密な利用がございます。また、特殊で厳しい気象条件がございまして、し尿処理問題あるいはごみ処理問題など、自然環境の保全ですとかあるいは適正利用観点からさまざまな問題が表面化いたしております。  こうした保全対策のためには、地元自治体と協調しながら取り組んでいく必要があると考えておりまして、静岡、山梨両県など関係自治体から成ります富士山地域環境保全対策協議会を設置いたしまして、富士山地域の自然環境の保全ですとか適正利用推進のための対策の検討を行っておるところでございます。  環境庁といたしましては、こうした施策を通じまして、今後とも富士山地域の傑出した風景美を守るために取り組んでまいりたいと思っておると  ころでございます。
  163. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 環境庁としては、関係自治体と協議しながら大いに富士山を守るための保護施策を進めていただきたいと思うのですが、今、富士山を世界遺産に登録するという場合には、環境庁だけにこれは任すわけにはいかない。文化的な景観という場合には、文部省もそれなりにかかわるということがあるわけですね。それは、ばらばらでそれぞれ検討していたのではいけないわけで、そういう意味で、私は、国レベルで、文部省、そして環境庁、そして関係建設省なりいろいろなところが、この富士山の世界遺産の登録にはどうしたらいいのかという、そういう具体的に検討する機関そのものを設置するということが必要ではないかと思っておりますけれども、その点、文部大臣にお聞きしてよろしいですか。
  164. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 御指摘ございましたように、私ども文化庁といたしましても、富士山は我が国代表する景観でございます。私どもの立場から申し上げますと、おおむね五合目以上が文化財保護法に基づく特別名勝に指定されて保護を図っておるところでございます。  この問題につきましては、先生からお話もございましたように、世界遺産にそもそも登録するためには、それぞれ国内法においてきちんとした保護措置がとられておるということが条件になるわけでございます。  そういったことで、私どもとしても、その推薦される地域世界的に顕著な普遍的な価値を持っているかどうか、そのためには学術的な立場あるいは文化的な立場あるいは自然環境としての立場、それぞれあると思うのでございますけれども、お話ございましたように、私どもとしては、環境庁、外務省、それから文化庁等で構成いたします世界遺産条約関係省庁連絡会議を従来から開いておりますので、そういったところで十分協議し、望ましい方向について慎重に検討していく必要があるだろうというふうに考えておるところでございます。
  165. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 今まで御論議された結果、富士山が大変な状態になっているということを私指摘しているわけで、本当に守るにはどうしたらいいかということを本格的に論議ができる新たな機関をぜひ設置していただきたい。  また、今の自然公園法も、このままいったって、どんどん開発がされてきた自然公園法ですし、また文化財保護法も、今の建物だけじゃなくて、景観とかいろいろなものを考えれば、その法的な問題も、一定の限界も持っております。  そういう点で、私は富士山を守るための新たな今日にふさわしい立法措置というものも必要ではないかと思うのですが、その点では文部大臣、いかがでしょうか。新たな立法措置です。これは、ちょっと大臣にぜひその辺の決意を伺いたいと思います。
  166. 小杉隆

    小杉国務大臣 富士山は、我が国代表する景観であり、誇るべき私は財産だと思っております。環境庁は環境庁として、国立公園法とか、あるいは特別区域に指定をしたり、文化庁としても文化財保護法に基づいて特別名勝に指定したりして、それぞれの省庁が一生懸命努力をしております。  世界遺産に登録するということについては、厳しいいろいろな基準もあるようでありますから、まずやはり実態を、すぐれた自然の生態系を守る、こういうことでだれからも後ろ指を指されないような条件整備をした上で申請をするということになろうかと思うので、これは環境庁といわず文化庁といわず、これは外務省ともよく連携をとって、やはり今後のために一層努力をしなければいけないと考えております。
  167. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 では、最後に質問させていただきます。  世界遺産登録をする上で、東富士や北富士にあります自衛隊の演習場、これが今大きな問題になっているのではないかというようにも言われております。実際にはもうどんどん実弾が射撃されていまして、このまま続けていって、果たして世界遺産登録が可能なのかという問題があります。また、沖縄から米軍海兵隊を移転させるという問題がありますから、こんなことになると大変な事態になるわけですね。  そういう意味では、文化を守る、自然を守るということと基地というのは私は一致できない問題があるというように思うのです。富士山から軍事基地をなくして、そして文字どおり世界遺産登録にふさわしい環境づくりをやるべきだというように思いますけれども、最後に、環境庁も言っていただいて、文部大臣もぜひ決意をお願いしたいと思うのです。
  168. 鹿野久男

    ○鹿野説明員 先生今御指摘の、富士山周辺の演習場の問題だと思います。世界遺産に推薦する場合に、これまでも述べたところでございますが、保全に対する何らかの国内法の担保措置が必要だということは述べてきたところでございます。  現実に、演習場の地域は今公園に指定されているわけではございませんので、あそこを含めて推薦するということは現在のところ考えておりません。また、公園の区域に入れるかどうかということは、当然のこととしてそこの自然の質の問題が一番でございますし、それから、ある程度の規制がかかるということを前提とした地元の合意等々が必要になってまいります。
  169. 相沢英之

    相沢主査 文部大臣、簡潔にお願いします。
  170. 小杉隆

    小杉国務大臣 これは、共産党とは我々は安全保障についての政策が違うということが前提でお答えするのですけれども、国の安全を守るというのはやはり非常に重要な国の政策であります。そして一方、自然の景観を守る、文化財としての価値を保全していく、そしてすぐれた自然の生態系を守る、豊かな自然を保存する、これも重要な政策目標でございまして、私たちは、そういう異なった政策目標の中でどうバランスをとっていくかということで日夜苦労しているわけでございますが、そうした考えに立って考えていくべきであって、今環境庁からも答弁がありましたように、それが射撃をやっているから遺産条約に登録ができないということとは直接はつながらないのではないかというふうに考えております。
  171. 瀬古由起子

    ○瀬古分科員 ありがとうございました。
  172. 相沢英之

    相沢主査 これにて瀬古由起子君の質疑は終了いたしました。  次に、中川智子君。
  173. 中川智子

    中川(智)分科員 社会民主党・市民連合の中川智子でございます。  質問に先立ちまして、この間、従軍慰安婦の教科書記述削除問題に関しまして、小杉文部大臣の毅然たる態度に対してたくさんの女性たちがエールを送っているということをまず最初にお伝えいたします。これからも頑張っていただけますように、本当にたくさんの女たちが熱いまなざしを大臣に向けておりますことをお伝えしておきます。  それでは、質問に入ります。  私は、今、大学二年生の息子と高校二年生の娘を持っておりまして、その大学二年生の息子が小学校一年に入りましたときに、ちょうど学校給食が始まって二週間ぐらいのときに、急いで帰ってまいりまして、母さん、母さん、僕は今まで母さんのつくるカレーが世界一おいしいと思っていた、ところがきょうから世界で二番目になったんだよ、ごめんねというふうに息子に謝られまして、それはどうしてかと聞きますと、息子は、きょうから世界一おいしいカレーは学校給食のカレーだ、本当に給食のカレーがおいしかったというふうに言いました。  それで、私はすぐに調理員さんに電話をいたしまして、どうやってつくるのかと聞きましたら、私は宝塚に住んでいるのですけれども、調理員さんが、宝塚の場合はルーから手づくりではないんですよ、ごめんなさいとまず謝られて、西宮とか芦屋とか川西という町があるのですが、そこはルーから手づくりをしている、ところが宝塚の学校給食はハウスバーモントカレーの甘口なんだというふうな感じで、済みません、なるべく手づくりでこれから頑張っていきますねというお話を伺ったのです。  そのときに初めて、自治体によって学校給食が違うんだということを知りました。そしてまた、自治体によって、自己炊飯をしたり、またセンター方式、民間委託、さまざまな形で、学校給食がばらばらで、その自治体の裁量でやっているということをそのときに知りまして、そのときに私は、ああ、とてもおいしくて安全で楽しい給食をつくってくれる町に住んでいる子供は幸せだなと思いましたし、また、ちょっと自転車で数分行きましたところではセンター方式で、一カ所で七千人から一万人の給食をつくっていて、そこではトラックで給食が運ばれてきて、子供たちはつくっている人たちの顔も見えない、姿も見えない、そういうふうな状況があるということを知りました。それで、私は、学校給食というのは子供の命を守ってくれる大切なものだから、親としてやはり関心を持っていかなければいけないということをずっと思い続けて十数年、学校給食にはとても関心を持ってまいりました。  そこで、安全で楽しくおいしい学校給食をつくるためには、一九八五年に文部省が通達としてお出しになった調理員のパート化でありますとかセンター方式への移行、民間委託の推進、このように、子供たちの命に直接かかわる学校給食にお金をかけていかない、行革の中でどんどん切り捨てていく対象にしていくことは決して許すべきことではないと思い続けてまいりましたが、最初に、大臣、子供たちの命をつくる学校給食は、やはり安全でおいしくていいものをとお思いかどうか、お伺いしたいのです。
  174. 小杉隆

    小杉国務大臣 私は、文部大臣に就任直後に、O157対策ということを兼ねまして、共同調理場、給食センター、それから個別調理をやっている学校の給食の現場を視察してまいりました。そのときに私が一番関心を持ったのは、センター方式と個別方式とどちらがいいんだろうかということを伺いました。  それぞれに長所、短所がありまして、センター方式にしますと、食材を一括購入したり、それから、大規模な設備で非常に効率的に調理ができますから施設当たりのコストというのは非常に安上がりだし、それから人件費も、個別の学校に配置するよりもセンター方式で一括してつくった方が当然これも安上がりだ、人件費と施設費だけで個別調理に比べて大体半分のコストで済む、こういうメリットがあるというお話を伺いました。  それから、個別調理の場合には、非常にきめ細かな調理、献立ができる。例えば、学校の行事に合わせて、運動会とかあるいは学芸会とかあるいはお誕生会とか、そういうふうにきめ細かな対応ができるという点で、両者それぞれ長所、短所があるわけなんです。  今、大体普及率は、具体的な数字は後から答えさせますが、半々ぐらいではないかと思っておりますが、昨年、社会問題となったO157というような状況も踏まえて、今後、共同調理方式にするのか、あるいはそれぞれの学校でやるのか、個別調理にするのか、その辺は、各自治体あるいは学校、そういうところの判断も見ながら私ども考えていきたいと思っております。  なお、詳細が必要であれば、お答えさせます。
  175. 中川智子

    中川(智)分科員 詳細は結構でございますが、昨年のO157は、当時の厚生大臣の菅さんがぱくぱくカイワレ食べて、それで何だか、もう終わりとはまいりませんが、そのような形で、今は新聞を騒がすこともなくなりましたけれども、やはり基本的に二度とあのような悲惨なことは起こしてはならない、それは国の責任であると私は強く 思っております。そしてまた、あの問題は、単に何が犯人かということではなくて、今の学校給食のシステムそのものにメスを入れなければ決して再発防止にはつながらないと思っております。  ですから、子供たちの命にお金をかけるのか、かけないのか、本当にそこのところの判断だと思いますし、それはもう厚生省の分野ではなく、文部省の分野だと思っております。ですから、この際、いわゆる学校給食のシステムを見直すことがとても大事だと思いますが、そこのところの御見解を伺いたいと思います。
  176. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 文部省においては、安全で豊かな学校給食実施されるよう、常々配慮してきたところでございます。  そういう観点に立って、学校給食をどのような形で実施をするのか。今大臣から御答弁申し上げました、共同調理方式か単独調理方式がいいのか、あるいは民間委託を行うのかなとにつきましても、基本的には、それぞれの地域において、学校の実態や地域の実情を見ながらそれぞれ学校の設置者が判断すべきことであるというふうにも考えておるわけでございますが、その際、学校給食教育活動の一環として円滑に実施されることを基本とし、質の低下を招くことがないように指導をしておるところでございます。  先般の食中毒事故というのは非常に痛ましい事態でございまして、文部省としてもかかる事故が二度と発生することのないようにさまざまな対応を講じておりまして、その一環として、学校給食における衛生管理の改善に関する調査研究協力者会議というのを設けまして、実際に食中毒が発生した学校の視察あるいは聞き取り調査などを通じて、衛生管理上どのような問題点があったのか、給食実施過程上さらに改善工夫すべき点がないかどうか等について検討をいただいたところでございますが、二学期以降学校給食による食中毒が起こっている、そういう場合に共通して見られる特色、問題点といたしまして、調理過程における二次汚染、食品の不適切な温度管理などによる病原徹底であったことなどが指摘されておるところでございまして、これらにつきまして、さらに文部省として充実をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  177. 中川智子

    中川(智)分科員 今のお答えを聞いておりますと、各自治体また学校責任者に、どのようなシステムにするかというのをそこで判断してもらうというところがございましたが、これは、教育の一環として学校給食は位置づけられております。冒頭私が申しましたように、そうなるとばらばらになってしまう。本当に、すごく楽しくて安全な学校給食を食べられる子供たちと、そしてその自治体の判断によりますと、ではもう自治体は学校給食になるべくお金をかけないとなりますと非常に悲惨な学校給食の実態があるということを、ぜひとも御認識いただきたいと思います。  それと、システムを、文部省がやはり学校教育の一環としての学校給食はこうあるべきという姿勢を明確にしないと、質の低下を招かないということの基本的なところは何なのか、質の低下を招かないということに対してきっちりと、それはこういうものなんだということを示していかないと、やはり現場だけが混乱し、そしていろいろなところでばらつきが起こるという大きな問題がございます。  ですから、文部省が一九八五年、そしてもう一度、一九九二年でしたか、行革の中で出したことで非常に現場が混乱しておりまして、そしてまた、O157でノイローゼで入院する栄養士さんや調理員さんも出てまいりました。そういう中で、やはりあの合理化を推進するという姿勢を文部省が打ち出したということをもう一度きっちりと見直して、今、二度とあのようなことが起きないために、システムをこのように変えていくという方針をぜひとも出していただきたい。子供たちにとってよりいい形でそれを出していっていただきたいというのは、これは要望お答えは結構ですので、そこのところ。菌の増殖、それから給食調理施設設備の改善が不  また、給食に関してはこれからも文教委員会なんかでも御質問させていただきますので、きょうは、多くの親が、今やはり給食を安心して食べさせられるのかどうか。でも、かといってこれを弁当に切りかえられたら非常に困るわけなんです。ただ、困るというのは大変だからということではなくて、今アンケートをとっていただいたらわかると思うのですけれども、お弁当などに切りかえたときに、どれだけお弁当を持ってこれる子供がいるだろうか。  そしてまた、もっともっと女性が世に出ていって働いていくためには、やはり教育の一環としてずっとこの間しっかりとやってこられた学校給食を、より質の向上充実を図っていくことが文部省の姿勢であって、やはりお弁当論議なんかに逃げていったら埼玉県の庄和町みたいな問題が再び起きると思いますので、安全な学校給食をぜひとも実施していくために、これまでの文部省学校給食に対する姿勢をもう一度根本から考え直していただきたい。そして、よりいい方向に持っていっていただきたいということを基本的な認識として、認識といいますか要望としてお伝えしたいと思います。  そして、今、O157で現場がとても混乱しているのです。それは、文部省が八十二の項目にわたる衛生マニュアルをお出しになりまして、調理場は今、消毒、消毒で大変な状況になっております。調理員さんの手を見せていただきますと、手の皮が一枚もむけてしまって真っ赤になっています。このように、本当に発がん性の疑いのある次亜塩素酸ソーダを消毒にどんどん使っていくという、これに対しての危険性を文部省はどのように認識していらっしゃるのか、お伺いしたいと思っております。
  178. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 御指摘にございましたように、昨年のO157対策の一環として、文部省では、昨年八月でございますけれども、「「学校環境衛生の基準」の一部改訂について」という通知を発出いたしまして、衛生管理チェックリストによる日常点検等の励行をお願いをしておるところでございます。  その中で、調理員の手洗いの件でございますが、手洗いの具体的な方法と逆性石けんによる消毒法については指導しておりますが、次亜塩素酸ナトリウムの使用につきましては触れておらないところでございます。
  179. 中川智子

    中川(智)分科員 そうでしょうか。実際にはですか。では現場の声と随分違いますね。それはもう絶対そうでしょうか。
  180. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 手洗いにつきましては今申し上げたとおりでございますが、例えば調理機械類、食器類等につきましては次亜塩素酸ソーダの使用を義務づけているところでございます。幾つかある消毒方法の一つとして使用を示した上で、五%から一〇%の次亜塩素酸ナトリウムの溶液を二百五十から五百倍に希釈して使用し、消毒後は十分に水洗いをすることなどを指導しているところでございます。  ただ、この次亜塩素酸ナトリウムにつきましては、水道水やプールの水の消毒にも使用されておりますし、厚生省の食品衛生法においても食品添加物として認められているものでございます。そういう意味では、正しい使用法を守れば安全性に問題はないというふうに考えておるところでございます。
  181. 中川智子

    中川(智)分科員 最近は、家庭でもそういうふうな薬品を使った野菜の消毒はしているところはありませんよね。皆さんの御家庭でも普通の流水で十分だと思うのですね。  今、学校給食現場では、普通のニンジンを、まず消毒液で洗いまして、皮をむいてからまた洗って、刻んでからまた洗う、そういう状態で使っております。ですから、もうこれはO157を殺すとかということが目的ではなくて、本当にただ消毒しさえずればいいというマニュアルの中で、非常に現場が敏感というか、それに過剰反応しなければいけないような状態になっておりまして、そして、もう消毒、消毒で、みんな、これでいいの かしら、これがかえって子供たちに怖いわねという声がたくさん聞かれています。  ぜひともそのあたりは、今のこの八十二のマニュアルを、いつまでそれをし続けていくのか。そしてまた、塩素のプールへの使用なども、それはなるべくやめていこうという方針が、またここに来て、消毒さえすれば安全になる、このような事件は、事故は二度と起こらないんだというような方向に流れていっている状況ですね。  現場の声はどれぐらい聞いていらっしゃるのでしょうか。調理員さんたちの声を聞く場というのは文部省として持っていらっしゃるのでしょうか。
  182. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 御指摘のございました生で食べる野菜でございますが、これにつきましては、先ほどの衛生管理チェックリストの中では、「原則として、流水で十分洗浄すればよいが、必要に応じて殺菌する場合には」ということで次亜塩素酸ナトリウムの使用に触れ、そしてさらに「流水で塩素臭がしなくなるまでよくすすぐ」というふうなことを指導しておるところでございます。  このチェックリストにつきましては、先般のO157の食中毒事故というものを踏まえまして、専門家から成る学校給食における衛生管理の改善に関する調査研究協力者会議を設け、その場において検討し、結論を出して、各学校に対し指導しておるところでございます。  この調査研究協力者会議においては、現場の学校栄養士さんやあるいは学校保健の関係者等にも御協力をいただいてまとめをしていただいたものでございまして、それに基づいた対応を現在行っておるところでございます。
  183. 中川智子

    中川(智)分科員 O157のいわゆるリアクションというのが今現場ではかなりひどいので、ぜひとも現場の声を聞いていただいて、調理員さんたちがそれによってどれだけみずからの健康をも心配し、子供たちの健康をも心配しているかという声をぜひとも聞いていただきたいと思います。  それと、ちょっと質問が異なりますけれども、調理員さんの定数というのは三十五年前から一切見直しがなく、依然として三十五年前の人数で子供たちの学校給食をつくっているわけです。  三十五年前というのはちょうど私が中学校ぐらいだったのですけれども、コッペパンと、そしておかずが一つと牛乳、脱脂粉乳なんというのを飲んでおりましたけれども、そういう状態でした。今はかなり学校給食もバラエティーに富んで、おいしいものが出されるようになってきたのですけれども、副菜の数がふえまして、また、いろいろときめ細かな調理を現場の調理員さんはしてくださっているのですが、調理員さんの数が全然ふえていない。  まず最初に、そういうふうな状況をどのように見られるか、また見直す御予定があるのかということが一つ。それは文部省の方にお伺いしたいのです。済みません、時間がないので、もう一つ質問したいので、簡単にお願いします。
  184. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 学校給食に従事する調理員の数につきましては、御指摘のとおり昭和三十五年の通知で示しておるわけでございますが、文部省では、地域の実情に応じて、学校給食運営に支障を来すことがないよう、お示しした基準を弾力的に運用するよう指導しておるところでございます。
  185. 中川智子

    中川(智)分科員 とても重労働ですので、この定数の見直しはぜひとも近い将来検討していただきたいと思います。  次に、栄養士さんのことなのですけれども、栄養職員が今大体三校に一名という形で、私の住んでいる町ではそのように配置されているのですけれども、ここのところ、予算編成の時期になりますと毎年、学校事務職員そして学校栄養職員のいわゆる国庫負担の削減の話が出ます。文部省はこれについては今後も継続するという姿勢をお持ちだと伺っていますが、そうでしょうか。
  186. 小杉隆

    小杉国務大臣 御指摘のとおり、予算委員会等でもこの義務教育費国庫負担制度についての議論がありました。教育も聖域ではない、こういう観点からの縮減を求めるような意見もございました。  しかし、私どもは、義務教育費国庫負担制度というのは戦後一貫して堅持してまいりました教育の機会均等とその水準の維持向上を図るという根幹の問題の重要な制度だという受けとめ方で堅持していきたいと考えておりますし、学校栄養職員は学校の基幹的職員という位置づけとして認識をしております。  今後とも国庫負担について適切な対応をしてまいりたいと考えております。
  187. 中川智子

    中川(智)分科員 本当にありがとうございます。  栄養士さんがしてくださる仕事はとても重要で、そして、子供たちにいわゆる食教育を徹底する、次代を担う子供たちにそこの大事な教育をしてくださる人たちですので、ぜひともこれからも継続して、よろしくお願いしたいと思いますが、毎年たくさんの知り合いの栄養士さんが、東京に行くのよと。大蔵省の方がこれについてかなり消極的な姿勢だというふうに伺っていて心配なのですが、大蔵省の方の御見解も今の文部省と同じでしょうか、お伺いしたいと存じます。
  188. 飯原一樹

    飯原説明員 平成九年度は従来どおり国庫負担を継続することといたしていることは御承知のとおりでございます。  私どもも、学校現場におきまして重要な仕事をなされておるということは十分承知しているつもりでございますが、一般論として財政当局の立場を申し上げれば、義務教育費国庫負担制度につきましては、累次の臨調・行革審答申で指摘されているとおり、趣旨、沿革等を踏まえまして、国と地方の機能分担、費用負担のあり方等を勘案して、引き続き不断の見直しの検討を行っていくべきであるというふうに考えております。
  189. 中川智子

    中川(智)分科員 それは、一般論としてそう、そしてお気持ちはそうではないというのは非常につらいかもしれませんけれども、やはり教壇に立つだけが先生ではないのです。事務職員そして栄養職員が配置されて、学校教育の中に、子供たちにお金をかけるというところです。  ですから、大蔵省がそのような態度をとっていると非常に心配ですし、また、大蔵省がそういうふうにしていかなければいけないというのでしたらば、私も与党でございますので、そこのところはしっかりと方針、意見を述べさせていただきたいと思いますが、毎年そういう危なっかしいことはしていただきたくないと存じます。  もう一度大蔵省、今の繰り返しかもしれませんけれども、ちゃんと大蔵大臣に伝えていただきたいので、もう一度どうぞ。
  190. 飯原一樹

    飯原説明員 現在、政府・与党の財政構造改革会議におきまして、我が国財政の危機的な状況を踏まえ、あらゆる経費について一切の聖域を設けることなく、歳出見直しの具体的方策について検討が行われているところだと承知いたしております。今後、同会議における検討を踏まえまして、文教予算についても幅広く検討が行われるものというふうに考えております。
  191. 中川智子

    中川(智)分科員 よろしくお願いいたします。  それでは、やはり学校給食教育の一環としてこの間ずっとやり続けてきたこと、そしてまた、子供たちの命をつくる大事な大事な食を、命そのものにつながる学校給食をこれからも守っていっていただきたいと思いますし、そのようなたくさんの親の声、そして現場の人たちの声があるということをお伝えしたいと思います。  学校給食に関しては、私も思いも深いものですから、ついつい踏み込んだ質問になってしまいまして申しわけございませんでした。  それでは、O157に関連してもう一つ質問をさせていただきたいのですけれども、あのときにすごく問題になったのは、食材の一括購入が問題になりました。堺市というのは、自校方式は自校方式だったのです。単独校方式でやっていたのですけれども、コストを下げるために大量の食材を一括して購入するというシステムをとっておりました。やはりあれだけの被害、六千名という被害を 拡大せずに済むかもしれなかったのは、この一括購入を見直すというところに大きなポイントがあると思いますが、どのようにお考えでしょうか。
  192. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 食材の一括購入の件でございますが、これにつきましては、保護者負担の軽減を図りつつ、新鮮で良質かつ低廉な学校給食用物資というものを計画的、安定的に供給されるようにしたいということで行われているものと承知をしております。ただ、他方において、食材自体に病原菌が付着している場合には被害が拡大をする、そういう可能性があることもまた事実でございます。  そこで、文部省におきましては、一括購入方式が余り大規模であると品質管理や確実な検収を行う上で支障を来すおそれがある、そういう観点に立ちまして、市町村教育委員会において、地域ブロック別や学校種別等の単位に分けること等により、適正な規模で共同購入が実施されるように指導しているところでございます。  今後とも、引き続き、安全な学校給食実施に、都道府県教育委員会、市町村教育委員会ともども努めてまいりたいと思っております。
  193. 中川智子

    中川(智)分科員 どうもありがとうございました。
  194. 相沢英之

    相沢主査 これにて中川智子君の質疑は終了いたしました。  次に、新藤義孝君。
  195. 新藤義孝

    新藤分科員 自由民主党の新藤義孝でございます。  何点か御質問させていただきたいと思いますが、最初に、小杉大臣、連日御苦労さまでございます。大変な激務の中ですばらしい御努力をいただいていることをまず感謝申し上げるとともに、敬服申し上げたいというふうに存じております。  まず最初に、大臣に基本的な御所見をお尋ねしたいと思っておりますが、このたび、国の五大改革に加えて教育改革が加えられたということでございます。そして、総理の指示で文部省教育改革プログラムというものを取りまとめたということなんでございますが、まず最初に、今回なぜ新たに教育改革が取り上げられたのか、そのあたりの意義というか、必然性、必要性について、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと存じます。
  196. 小杉隆

    小杉国務大臣 御指摘のとおり、総理から新年早々に教育改革プログラムをまとめるようにという指示をいただきまして、一月の二十四日にこれを提出いたしました。今、国として、行政、財政、金融、経済構造、社会保障、そういった分野で五大改革を掲げているわけですけれども、それらの改革のすべての基盤である教育、この教育の改革こそこれと連動してやっていく必要があるんではないか、そういう見地からまとめたものであります。  内容については、また、お尋ねがあればお答えいたします。
  197. 新藤義孝

    新藤分科員 それでは、これは御担当の方で結構なんですが、これまで教育制度改善施策というのは、いろいろな提言、答申が出されてきたということでございます。もう私が言うまでもなく、昭和二十八年を第一回とする中教審、そして臨時教育議会、さらには、昨今の行政改革委員会の中での教育にかかわる部門、それから地方分権推進委員会の中での教育にかかわるところと、それぞれずっと文教関係事項の改善施策というものが出されてきているわけでございます。それから、六十二年八月には、これは今でも続いていると思うのですけれども、文部省教育改革実施本部というのができているわけでございます。ずっと、教育制度改善、改良、これについては営々と御検討をいただいて、そしてまた順次施策としてやってきている。  そうすると、今回の教育改革プログラムの内容で、これまでの中教審や行革委員会やそれから臨教審だとか、そういうもので提言されている以外に、新しい大きな項目というものは何かあるのでしょうか。
  198. 富岡賢治

    ○富岡政府委員 先生御指摘のとおり、教育改革につきましては、臨時教育議会とか、それから幾次にもわたります中央教育審議会、さまざまな御答申をいただいておりますし、また、各政党からもさまざまな教育改革の御提言などをいただいているわけでございます。そういうもの全体を十分現時点で精査しまして、検討しながら、現在とり得る教育改革の方途につきまして、文部省挙げて検討したわけでございます。  その中の内容といたしましては、今までは例えば中高一貫の問題などについては答申等でもさまざま指摘はございましたけれども、今次の教育改革のプログラムでは、これを具体的に、学校制度複線化構造を進めるという観点から中高一貫教育制度の導入の問題とか、それから教育制度の弾力化という観点から特にすぐれた才能を持つ子供に対します大学入学年齢の緩和の問題とか、学校週五日制への積極的な取り組みなどについて、具体的な課題と方針を今回お示ししたということでございます。
  199. 新藤義孝

    新藤分科員 ちょっと回りくどいような言い方で恐縮だったんですけれども、私、これは持論でございます。専門家の皆さんが、それも日夜御担当いただいている方々が一生懸命やっていることは重々承知をしている上で、あえて申し上げたいのでございますが、私は、改革と名のつくもの、また、総理が今回おっしゃっている、やろうとしている、我々がやらなければいけないこと、それはまさに、明治維新、それから第二次大戦後の新しい民主主義社会、これに次ぐ第三の改革だというふうに言われております。すべてのいろいろなシステムや国家のあり方、そういうものを変えましょう、こういうことになっている。  大臣は先ほど、このもろもろの改革を進める、また社会や国を構成しているそのすべてのもとに教育があるのだ、こういうお考えを示されました。私も全く同感でございます。人がすべて運営し、人がつくり上げ、人が行うものですから。  そういう意味で、今回の教育改革が、一体全体、平成の大改革にどうやってつなげていけるのか。改善と改革の、この言葉の遊びになってしまっては困るのですが、大きな違いがあるのではないか。体制を、形を変えなければいけないのではないか。そういうことができないと、今の閉塞感というか、また子供たちにかかわるいじめだとかもろもろの無気力感、こういったものまでを取り除くのは難しいのではないか、こういうふうに私は思っているのです。  それで、北大の山口二郎教授がいいことをおっしゃっていました。これはつい最近の日経新聞のインタビューの中で、「二〇二〇年からの警鐘」ということなのですが、「教育問題も深刻だ。教育改革は民主主義を担う市民をいかにして育てるかという問題ともつながる。今の学校教育社会の現状がこのまま変わらないという前提に立っており、それが社会を固定化してしまう要因になっている。これまで見逃しがちだった教育問題は今後、大きな政策課題になるだろう」、こういうふうにおっしゃっています。  私はこのとおりそうだとは言いませんが、少なくとも体制を変えるということ、もちろん内容が伴わなければ話にならないのですけれども。私が今一番疑問にというかじれったいなと思っているのは、教育改革というと、これからの教育のあり方、哲学、理念、こういうものにどっと行ってしまう方と、それから、どうやったら進めるのだ、いつ進めるのだという方法論がごっちゃになってしまうのですよね。我が党でも、教育ビジョンだとかつくっております。いろいろなことをやっています。教育論ばかりは、私もここでこんなことをお話しさせていただいているように、教育を受けた者ならば、そして子供を持っている者ならば、だれでも持っている、物が言えるのではないかと思うのですね。そこで大事なのは、全員がいいではないかとか満足して納得できる制度というのは、これは無理なのではないか。  江戸の藩校体制、寺子屋から、明治になって学校になったときに、それがいいと思ったというよりも、全然違う人間が、社会の仕組みが変わったのだから、運営体制が変わったのだから、今度はこっちなのだといってつくられたものだと思うのですよね。それから戦後の今の教育制度も、当時はよその国の人まで入って、こういう形でやろうといって変わった。  そうすると、このたびの教育改革が、まさに平成の改革、日本近代史上の三回目の改革をやろうということであるならば、これはもう少し強力な体制をつくることと、それから思い切ったプログラムの内容、今まで提言されてきたものを取りまとめて、その中で具体的に一歩踏み込みましたという、そういう程度で果たしていいのかな、こんな素朴な疑問を私は持っているのです。
  200. 小杉隆

    小杉国務大臣 新藤委員のお気持ちは十分理解できます。  私ども、今日本が直面している状況というのは生易しいものではありません。猛烈な勢いで経済が高度化し、国際化が進み、高齢化社会が進行していく、そして情報化ももちろん進んでおります。そうした中で、日本がこれから二十一世紀、従来のような活力を維持しながら発展していくためにはどうしたらいいのか、そういう視点に立って、五つの改革が提唱された経緯がございます。  私たちは、教育の場においても、やはり新しい時代に即応した教育ということを考えなければいけない。そうなりますと、例えばこれからの経済の高度化、先端産業、独創的な産業を育成しなければいけない。そのためには、もっと独創力のある子供たちを育てなければいけませんし、また学術振興、高度な科学技術教育もやらなければいけない、そういう時代の要請もあります。あるいはまた、情報化に伴うコンピューターとかインターネット、そういった新しい教育のあり方も追求しなければいけませんし、また高齢化社会の中で、介護とかボランティアとか、そういう教育もしていかなければいけない。たくさんの要請があるわけです。国際化にしても、留学生をもっと受け入れなければいけない、あるいは英語教育がいかにあるべきか。そういった新しい時代のさまざまな要請にこたえるために、我々は一体何をやるべきか。  そこで、従来から、御指摘のとおり中教審を初め臨教審、さまざますぐれた提言をされております。これは何もそのときの提言ではなくて、やはり二十一世紀を見据えた、将来のあるべき姿というものを考えた貴重な提言がありました。私どもは、そうした数々の提言なり報告書の中で、実現、改善できるものはどんどん取り入れてまいりました。例えば生涯教育であるとか。しかし、残念ながら国民の合意が得られずに、なかなか実現できなかったような問題もあります。中高一貫教育にしろ、週五日制の問題にしろ、そういう今まで積み残してきたものをこの辺でひとつ何とか実現したいということで、簡単に申しますと、この教育改革プログラムの目標は二つございます。  一つは、そうした新しい時代に対応できる、すぐれた人材を養成するという側面。それからもう一つは、今盛んに言われておりますのは、どうも戦後の教育は知識詰め込み主義ではないか、偏差値教育ではないかという批判も一方にあります。あるいはまた、硬直性とか、均質性ばかりを大事にするではないかという批判もあります。そういうことにこたえて、もう少し個性を持った、また自立心を持った、他に対する思いやりとかあるいは正義感とか道徳心とか、そういった豊かな人間性を育てるという人間教育人間性というものを重視した心の教育、そういう面も大事ではないかということで、この二つの目標を考えました。  そして、その進め方としては、今御指摘がありましたように進める体制をどうするかということですけれども、私たちはできるだけオープンな形で、単に教育関係者とか学校関係者だけではなくて、広く外に目を向けてオープンな形で、経済界もあるいは地域社会もすべて加わった形で、学校外社会との提携ということを最大限に尊重したいと思っております。そういう意味では、近々、教育改革フォーラムというようなことで、各界各層を網羅したような定期的な会合もやっていきたいと私は思っております。  それからもう一つは、余り固定的に考えないで、できるだけ柔軟性とか多様性というものを取り込んでいこうということ。それから、単に提言とかプログラムを提示するだけではなくて、このプログラムを一体いつまでにどうするのかという期限を区切って、スケジュールを示したというところに大きな前進があり、また特色があろうと私は思っております。  しかし、いずれにしても、今度の教育改革プログラムは改革のための第一歩でありまして、今いろいろな御意見をいただきましたけれども、これから国会の各党の意見もお伺いし、また経済界とかその他の広い皆様の御意見も加えながら、充実した教育改革を実行していきたい、私はそういう心境であります。
  201. 新藤義孝

    新藤分科員 強い決意、大臣のお気持ち、お考えは理解をさせていただいたというふうに思っております。  あえて重ねて言わせていただくならば、もろもろの改革、今までの国の転換というものは、外圧で大きく変わってきた。これは総理自身もお認めになっておりますが、大きな力の中で、社会体制の変革の中で行われてきたのが、それが今回はないわけですから、それを自分たちの知性によって切りかえていこうということでございます。いろいろな知性があるわけで、ぶつかり合います。ある時期で、これはもうやるのだ、この形をもっと強力に打ち出す必要があるな。やらなければいけないのは、文部省にやれと言うよりも、国会がしっかりしなければいけないのではないかというふうにも思っております。もちろん文部省の皆さんとどうやったらいいのかということを、もう少し大きな枠組みで、そして強い枠組みをつくるべきではないかな。  今大臣は、全く同じ、わかっているというお考えだと思いますからこれ以上申しませんが、この件については、決して教育の現場で中で教えている人間ではありませんが、いずれにしても、教育改革を進めるということについては大きな関心を持っております。これが、一つこれもできました、従来懸案となっていたのだけれどもようやっとこのことだけはできましたというような程度で進んでいたのでは、これからの次代を担う人間、子供たちを育てる中で、今と大きな差のある子供ができるのかしらという懸念があります。今後も、またぜひそのことについては活動させていただきたいと思っておりますので、きょうはこの辺にさせていただきます。  それから今度は、もう一つ具体的な話で私学助成について、私学振興という観点から何点かお伺いをさせていただきます。  まず、これもまた数字を読み上げていくと時間がなくなってしまいますから、要するに教育を受けている子供たち、学生生徒の中で、大学、短大で八割、高校で三割ですか、幼稚園で約八割、私学に負うところが多いということでございます。そしてしかし、私立と国公立の納付金だとか教育研究条件ということになると、今度は随分大きな差が今出てきているということになっているわけでございます。私立学校の経常費に占める補助金の割合も低下している。私立大学がピーク時二九・五%あった補助率が、平成七年には一二・一%。  これは御存じのことだから、要するに厳しい環境の中で私立学校の果たしている役割の重要性、そしてそういう厳しい状況を認識して、私学振興の取り組みをやはり積極的に行うべきだ、こういうふうに思うのでございますが、特に今年度の予算案において強く取り組んでいただいたところ、そこの部分、どんなふうにお考えなのか、教えていただきたいと思います。
  202. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 平成九年度予算案におきまして、特に取り組んだところというお尋ねでございます。  御案内のように、科学技術基本計画ということで、これは国公私の大学、それから国立の試験研究機関をすべて含んだ計画であるわけでございますが、その中におきまして、私立大学におきましても学術研究振興ということについて大きな役割を期待いたしたいという観点から、私どもといたしまして研究基盤の強化ということで、最先端の研究開発プロジェクトに対する支援を行うハイテク・リサーチ・センター整備事業、これは今年度もあったわけでございますが、これを引き続き実施するということが一点。それから、新規の事柄でございますけれども、新たに私立大学におきます中核的な研究拠点に対する総合的な支援を行うということで、学術フロンティア推進事業というものを創設することといたしまして、合わせまして七十四億円余りを計上しているところでございます。  また、これ以外に私立学校施設につきまして、この近代化高度化推進するということのために、新たに老朽校舎の建てかえ整備事業に対する利子補給制度というものを創設することにいたしまして、そのための予算といたしまして十八億円を計上している。これが来年度に向けての私立大学関係の新しい事柄であろうかということでございます。
  203. 新藤義孝

    新藤分科員 大変厳しい予算の中でいろいろと御苦労いただいて、また、私も当時私学助成担当の主査としていろいろ大蔵省さんにもお伺いいたしましたから、この御努力は評価したいというふうに思っております。  そこで、ちょっとこれは答えづらいのかもしれませんが、文部省教育振興をしていくということと、それから今盛んに言われている財政再建を行う、これをどうリンクさせるかということを一つお尋ねしたいと思っております。  文部省予算、九年度五兆八千百九十八億円余り、これは経常部門が全体の九一・九%ですよね。うち人件費だけで七八%、四兆五千億使われているということになる。橋本総理は、財政再建には聖域を設けずとおっしゃっているわけなのですけれども、質を落とさずに、そしてやらなければいけないことは数限りなく要望が出てくる。そういう中で、今後の財政再建に合わせて、財政構造改革なのかもしれませんが、どこを削っていったらいいのか。それは、私そういうことを考えていく必要はあるのじゃないか。私も含めて、あれもっけろ、これもっけろと言いますけれども、あわせて、やはり入りをはかりて出るを制すじゃないけれども、この原則にのっとったところのどこを削る必要があるんだ、また、考え方なんだということについて、よろしければ大臣。
  204. 小杉隆

    小杉国務大臣 まず申し上げたいのは、教育という仕事は人間がやることでありますので、まさに教育は人なりということで、人件費の占める割合というのはもう宿命的に大きくならざるを得ないのですね。これを削れということは、もう先生を全部解雇しろ、こういうことにもなるわけでございまして、そういうことで、しかも今の義務教育費国庫負担金というのが五兆八千億円の半分にもなるわけです。  これは、戦後の憲法で、教育は国の義務であり、またひとしく国民はそれを受ける権利がある、こういうことで二分の一国庫負担金制度というのができたわけですね。それで東京とか鹿児島、沖縄、北海道、そういう地域差なしに一定の財源的な保障というものが行われた。そのおかげで、この五十年間に日本教育の機会均等は飛躍的に増したし、また教育水準世界の中でも有数の水準になったという原動力になったと思います。  そういう根幹をなす部分でありまして、予算委員会でもこの辺は随分議論が出たのですけれども、じゃ、これを全部地方交付税対象にしてしまえ、こういう議論もあります。しかし、そうなった場合には、当然これは財政事情によって、財政の苦しいところはどんどん切り詰められていく。それでよければ、私どもはそれで結構ですと言うわけです。しかし、やはり戦後の我々の基礎を築いた教育、こういうものを、特に義務教育についてはこの根幹は維持していくのが国策上重要ではないか、そういうことで、しかしだからといって我々は、教育がすべて聖域であるなんということは思っておりません。今の大変危機的な状況にある財政状況の中で、この義務教育費国庫負担金の中身についてもやはり改めるところは改めるということで、旅費であるとか恩給費であるとか、いろいろな面で逐次改善を続けてきたところでございます。  今後も私たちは、聖域は設けない、こういう政府の方針に基づいて、どこを削ったらいいのか、これはもうとにかく削るところはないくらいみんな必要不可欠な予算でありますけれども、そういう中で、あえてやはりそういう姿勢で今臨んでいるところであります。
  205. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 文部省全体の予算の組み立てにつきましては大臣御答弁申し上げたとおりでございますが、私学助成に関して申し上げますと、先ほど申し上げたような種々の新規事項を含めました私学助成拡充策を含めまして、私学助成関係予算の伸びは対前年度で四・四%ということでございます。文部省全体の予算の伸びが一・一%ということでございますので、文部省全体の予算のやりくりの中で、私学助成につきましてはかなりの程度優先度を上げて措置をいたしたというつもりでございます。
  206. 新藤義孝

    新藤分科員 大分時間も少なくなってまいりましたので、本当にさわりだけの質問になってしまって恐縮なのですけれども、そこで私は一つ、提案をというか考えを述べさせていただきたいと思うのです。  今大臣のお話にもありましたように、先ほどは使途別に見て経常部門、人件費が突出するんだ、これは当然、仕方がないのですね。今度は主要事項別に見ると、今お話しの義務教育国庫負担金、これが半分以上、三兆、五一・九%ですね。それであとは国立学校の特別会計に一兆五千億で二六%。だから、残り一兆二千億のうちの私学助成が大体六%ぐらい、私はこんなふうに思っているのです。ここの部分に財政再建だよとぶつけていけば、それはまた、私学にも聖域なしなんだと思うから……。  これは国全体に言えるのですけれども、むだな部分というのは、恐らく、要らないなんというところはほとんどないはずなんですよね、みんなきっちり必然性があってやってきているものなんだから。しかし、じゃ、めり張りをつけるためにどこを削るんだというところで今苦労されているわけなのです。  私は、もう一つ、これからの考え方は、直接、いただいた税金をまた割り振りを考える、その中で国のいろいろな施策、いわば私はサービスと呼んでいますけれども、そういう公的なサービスが行われる中で、何も徴税だけに頼ることはないではないか。いろいろな民間の活力という、自分でこれを手伝いたいよという人は、国や公的なものを通さなくても、自分たちでやりとりをする中で活動できないかしら。要するに、民間活力というのはそこだと思うのです。それを教育分野にでも少し工夫してみたらどうかな、こういうふうに思っております。  要するに、税制面だとか融資面だとか、そういう施策で少し工夫をして民間の資金が入りやすくするような、それによって、今まで公が負担をしていた、公というよりも文部省が負担をしていた予算を振りかえることができれば、また別の展開が図られていくのではないか。これは何も教育だけに限らずに、すべてのいろいろな、福祉にしても医療にしても私は提案させてもらおうと、もちろんその最たるものが行政改革ですからと思っております。  そこで、まず要望が出ていることでなかなか取り上げられないことで、受託研究に対する課税問題ですね。これは要望が出ているのですけれども、今年度も認められなかったわけですよね。この辺について、まずはこういうことからじゃないのかなという気が私はしているのですけれども、文部省の方でのお考えと、それから、わざわざきょうはその観点で、分科会の担当外で大蔵省の方にも聞きたいということでお呼びをいたしておりますけれども、そこのあたり、ちょっと聞かせてもらいたいと思います。
  207. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 今御指摘の、私立大学が外部からの委託を受けて行う場合の受託研究の扱いでございます。  これにつきましては、大学の社会に対する貢献としてだけでなくて、大学自身の活動を活性化する上でも有意義でございますし、また公共性も高いということから、文部省といたしましては、かねてから私学団体からも要望がございますので、これらを踏まえまして、受託研究の非課税化を税制当局にお願いしてきたところでございます。  ただ、平成九年度の税制改正の検討におきましては、医療法人とかあるいは株式会社等が行う場合につきましては課税されているということで、これとの均衡を図る必要があるのではないかということ、それから、学校法人につきましては御案内のように各種の税制上の優遇措置が既に行われているというようなことなどから、受託研究の非課税化は見送られたという経緯がございます。  他方で、受託研究課税の執行面の問題につきましては、税務当局と私学団体との間で種々検討がなされているところでございまして、文部省といたしましては、その状況も踏まえながら今後の対応について検討してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  208. 伏見泰治

    ○伏見説明員 今文部省の方から既に御説明をいただきましたが、十分御案内のことと思いますが、現行税法上の考え方を簡単に御説明させていただきたいと思います。  現行の法人税法上でございますが、私学等学校法人でございますが、税法上は公益法人等という分類になってございます。これは、その活動が公益的な活動を目的としたものであるということで、営利活動を主として行います一般法人とは異なる性格を有しております。それに応じた課税関係を、課税のカテゴリーをつくっているわけでございます。  十分御案内と思いますが、具体的に申し上げますと、一定の事業、他の民間営利法人等も行うような特定の事業を行いました際には課税関係が生じる。これも所得でございますので、単に収入全体に対してもちろん課税するというわけではございませんで、収入から経費を引きました残り、プラスがあれば課税関係が生じる。  それから、特に学校法人の特徴でございますけれども、そうした収益事業部門から公益事業部門、本来の業務、そこへ支出をいたした場合、これは税法上寄附金ということになりますが、その損金の算入限度額でございますけれども、一般の社団、財団の場合には所得金額の二割ということになりますが、学校法人につきましては所得金額の五〇%と年二百万円のいずれか多い金額、ここまでがいわば損金として認められるということになってございます。その上でもさらにいわば所得が残ったという場合に、この税率も、一般の法人が三七・五%の基本税率でございますが、それを二七%の税率で課税をさせていただいているというところでございます。  具体的な非課税の要望、これは当方としても承知をしているところでございますが、今文部省の方からもお話がございましたように、民間の例えば財団法人である研究所とか、あるいは純粋な民間企業であっても、特定のいわば研究を受託をしましてそれが事業活動の一端になっているというようなケースもございますものですから、そことの関係の整理をどうするかといったことがありまして、なかなか難しい問題があるのだろうと思っております。  以上でございます。
  209. 相沢英之

    相沢主査 これにて新藤義孝君の質疑は終了いたしました。  次に、中桐伸五君。
  210. 中桐伸五

    中桐分科員 民主党の中桐伸五でございます。  私は、ボランティア活動を教育の中にどのように位置づけているのか、また、特にその中でも国際的なボランティア活動における今後の促進を図ってまいるに当たってどのような人材養成が必要かという観点について御質問をしていきたいというふうに思います。  まず第一に、我が国におきましては、今日、登校拒否とかあるいはいじめの問題が社会問題となっておりますけれども、このようなときに学習指導要領の中におきまして文部省はボランティア活動を導入したということでございますが、この点については、私も、また後に述べさせていただきますが、意義あることだというふうに思っております。  まず冒頭、文部大臣に、このボランティア活動を学習指導要領の中に導入をされた理由についてお伺いしたいというふうに思います。
  211. 小杉隆

    小杉国務大臣 これからの教育の中では、自分のことばかりではなくて、他人を思いやる心とかあるいは感謝の心、公共のために尽くす心、そういうものを育てることが必要だということで、今度の教育改革プログラムの中でも特にこのボランティア活動ということを強調しております。  従来からも、道徳教育とか特別活動の中で、あるいは高等学校の場合には公民とか家庭あるいは特別活動の中で、学習指導要領の中にきちっと奉仕の行動、奉仕の心、そういう記述をしておりまして、ボランティア精神を涵養するということの重要性は認識をしております。
  212. 中桐伸五

    中桐分科員 公共の活動に奉仕するということが主に話されたというふうに思うのですが、私は、非営利活動あるいはボランティア活動にはそういう公共性ということは当然あると思うのですけれども、しかし、今、最もボランティア活動が盛んな国としてアメリカという国がございますが、御存じのようにアメリカは営利追求社会といいますか自由競争社会といいますか、階層間格差も非常に大きいというふうなことが典型的な社会でもあり、かつまだそういう中でNPOやNGOの活動が、ボランティア活動が非常に盛んに行われているトップレベルの国である。  さてそこで、私は、先ほどの、公共性を強調するということは積極要因として大変重要だと思いますが、しかし同時に、このボランティア活動に参加している方々の心理といいますか意義といいますか、こういったことを考えたときに、私は、やはり一つは、営利社会というものの中で、プロフィット社会の中で、ノンプロフィットの活動がどのように位置づけられるかということを考えた場合に、やはり営利社会の中で人間疎外というものを痛感している人々がアメリカには非常にたくさんいるのではないか。あるいは居場所がない人、そういう人がたくさんいるのではないか。  そういうことから、逆に、ボランティア活動によって、自分が居場所がないといっても、自分がやるべきことがあるのだ、自分も期待されている面があるのだ、要するにそのボランティア活動を通して人間すべて必要とされているのだという自覚を持てる、つまり人間の尊厳を回復することができるというふうに私は思うのでありますが、その点についてはいかがでしょうか。
  213. 小杉隆

    小杉国務大臣 おっしゃることは同感であります。すべて金銭万能の社会とか、あるいは利益追求社会の中で、私はいろいろ疎外する部分があったと思います。青少年の教育についても、相当私は悪影響を及ぼしたところがあると思います。  しかし、私は、時代は少しずつ変わってきていると思いますし、一昨年のあの阪神・淡路の大震災や今回のナホトカの油流出事故を見ましても、日本人の若者の行動は私は大いに評価するものがあろうかと思っております。  そういう、社会のために、公共のために尽くす心、あるいは環境保全活動とかあるいは社会福祉の活動とかあるいは青少年を育成する活動とか、そういうことに非常な生きがいを感じ、そして自己の充足感を味わうということは非常に貴重なことだと思いますし、今の社会の風潮から考えまして、そういう気持ちとかボランティア活動というものを大いにエンカレッジといいますか勇気づけていく、そういうことは私は日本社会としても当然考えなければいけませんし、まだそういうことが非常に貴重な、価値のあることだということを国民みんなが認識をする、そういう意識改革とか教育というものが重要であろうというふうに考 えております。
  214. 中桐伸五

    中桐分科員 そういうふうに考えますと、これからのボランティア活動に関する教育を、今後どのような形、どこの場で、つまりどういう現場でという意味でございますけれども、学習指導要領の中に取り込まれた教育を進めてまいるおつもりなのか。簡単で結構ですから。
  215. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 ボランティア活動の趣旨、その重要性、大臣がお答えしたとおりでございます。  ただ、このボランティア活動と申しますものを学校教育の中でどのように充実し、展開していくかというのは、実は大変難しい問題でございます。現在、現行の学習指導要領には、道徳のところと、それから特別活動という教科と並んであります領域、その中の奉仕的行事として入っております。したがって、これを全体としてさらに充実していくために、教育活動全体の中のどこにどう位置づけて、どのように評価をしていくかということは、まさに研究検討課題が大変多いわけでございます。  ただ、必要性は十分に認識されている。そこで、現在、教育課程審議会の中で、これは完全五日制を目指した内容の議論というのが中心でございますが、その中で、家庭や地域社会との関連も検討しながら、教育活動全体の中でどのようにしていくか、今教育課程審議会の中で鋭意検討されているところでございまして、それを踏まえて対応していきたいというふうに考えております。
  216. 小杉隆

    小杉国務大臣 学校教育の場でのボランティア教育というのは今初中局長が答弁したとおりでありますが、私は、それにとどまらず、例えば教員養成、教員の研修のカリキュラムの中にも導入していく、それから、地域におけるボランティア活動への参加をもっと積極的に働きかけていくとか、あるいはボランティア活動に関する情報、こういうのは、参加したいと思ってもなかなか情報がないという人がいっぱいおります。そういう情報提供とか、そういう各般にわたるボランティア活動の推進に力を尽くしていきたいと思っております。
  217. 中桐伸五

    中桐分科員 やはりそこでぜひ確認をしておいていただきたいのが、道徳というふうな形で、あるいは、例えば文部省学習指導要領の中には、みずからが職業人になる前の職業観の形成や進路の選択決定であるとか、あるいは働くことや創造することの喜びの体得とか、いろいろなものが挙げられておりますが、これらはやはり、先ほど私が一番最初にお伺いした質問にお答えしていただいた後に述べた、ボランティア活動というのは人間の尊厳を回復する意義があるという点において考えますと、自己実現と幸せとかいう、わずかに何かこの辺にそういうものが感ずることができるのでありますが、やはりちょっとこれはプロフィット社会の中の枠の中でのどうもボランティア活動の位置づけというふうに指導要領の内容がなっておるものですから、その点について、もう少し積極的に、具体的に、先ほど大臣がおっしゃられましたように、具体的にNGOとかボランティア活動をやっている人たちのもっと内発的な活動の動機だとかそういったものと触れ合っていくというか、学校教育の中でそういったことを考えていく必要があると思うのですが、いかがですか。
  218. 小杉隆

    小杉国務大臣 先ほども申し上げたように、やはりそういう他を思いやる心とか、あるいは公共のために働くとか、そういうことによって自己の充足感を満たし、また生きがいを見出していくということは大事なことでありますので、あらゆる場を通じて、学校教育あるいは社会教育家庭教育の中でも、そういう気持ちがみんなの間に醸成されるような、そういう社会をつくっていくのが大切かと思います。  今まさに日本におきましてもNGO活動が相当活発になっておりますし、今、NPO法案なんというものも国会で議論されているということで、私はこれは一つの新しい時代への胎動だというふうに受けとめて、こういう勢いをますます促進することが大切だと考えております。
  219. 中桐伸五

    中桐分科員 先ほどのお答えで、人間の尊厳を回復するというふうな、内発的な、自発的なエネルギーというものも含んで、教育課程であるとかあるいは教職員の養成の中にそういったものをぜひ盛り込んでいっていただきたいということをお願いしたいと思います。  時間がありませんので、次に、国際的なボランティア活動に関しての人材、コーディネーターといいますか、NPOであるとかあるいはボランティアが国際活動を、これからどんどん高まっていくと思うのですが、そういった人たちがある意味では非常に未知の社会あるいは世界の中で活動をしていくということは、大変な意義のあることと同時に、新しいいろいろな問題を発生させてくるだろうというふうに思う。  その中で、私が今住んでおります岡山には、AMDAという、アジア医師連絡会議という、一九八四年八月から設立されましく国際医療救援活動を目的として発足した組織がございまして、今その活動対象国というのは、アジアはもちろんですが、アフリカ、ヨーロッパ、南米にまで及んでおりまして、非常に積極的に海外の人道的医療活動とさらに地域医療保健活動などを行っている。また、国内でも、在日外国人の医療電話相談というのを東京とか大阪でも開いてやっているという非常にアクティブな団体でございまして、私どもは教えられることが多いわけであります。  このAMDAが、今国際大学の設立構想なるものをまとめておりまして、これは文部省の方にも資料として提出さしていただいておりますが、さてここで、AMDAが一番痛切に感じていることを少し議論さしていただいて、今後の国際的なボランティア活動の促進を図っていく上での議論にしたいというふうに思います。  このAMDAが、一番今国際貢献活動において不足しているという点といたしまして、ボランティアの方はいらっしゃる、NPO団体もあるんですが、そのような人たちが外国で活動、活躍をする際に、そこでの政府であるとか社会の中で有効に安心して活動できるような環境をつくるためには、どうしてもコーディネーター、組織プロといいますか、そういった人たちをコーディネートするそういう人が要るということが強く言われておるわけでありますが、その点について文部大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  220. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 私ども、AMDAから非公式的にいただいている資料等を読ませていただいております。  今先生御指摘のように、国際的な貢献活動という側面に関しまして、特にAMDAは医療部面でやっているわけでございますけれども、それらの緊急医療救援活動自体を直接行うという人材だけではございませんで、民俗文化とかあるいは生活環境の異なる国々の間でさまざまな国際的活動を行う場合に必要不可欠となってくるというコーディネーターとして必要な条件をお考えになっているわけでございまして、語学力、交渉力、その活動のために必要な専門知識、こういうようなことを強調されておられるわけでございまして、そういうような認識の上に立って、新しい国際協力学部というような構想をお考えになっておられるというように承知しておるところでございます。
  221. 中桐伸五

    中桐分科員 このような国際貢献活動における組織運営のプロフェッショナルといいますか、そういった人たちの養成は急務であるというふうにお考えですか。どうですか。
  222. 小杉隆

    小杉国務大臣 単に医療活動に参加するボランティアを養成するだけではなくて、そういう人たちを組織的にコーディネートする、そういう人材の養成ということは文部省としても重要であると認識しております。  で、そのような観点から最近大学の学部とか学科とか大学院が整備されてきております。文部省としては、今委員が御指摘のように、岡山で具体的にそういう動きがあるというふうに承知しておりますが、もしそういった大学の設置構想があれば、私どもは具体的に相談に乗り、内容を伺った上で適切に対応してまいりたいと思います。
  223. 中桐伸五

    中桐分科員 非常に前向きの答弁、大変これからの国際貢献活動は期待できると思うんですが、さてそこで、もう少し、AMDAだけにとどまりませんで、国際貢献活動を行うに当たっての日本の中、日本から国際貢献活動を行うということの意義について少し議論をしてみたいというふうに思うんです。  これはAMDAの代表の菅波という人が常々言っていることでありますけれども、まずそういう専門的な人材養成機関の必要性ということを考える前に、基本的に日本のボランティア活動というものがどのような意義があるかということでございます。  まず第一に、これまで日本のボランティア活動というのは、どちらかというと経済発展をした国としてどうしてもしなければいけない、そういう義務感に基づいてやっておる。ところが、ヨーロッパであるとかあるいは北欧の国々であるとかそういったところの人たちのボランティアのエネルギーというのは、基本的に、価値観といいますか、そういうものは使命感、つまり、こういうことを私どもはもうやらなきゃいけない国になったからやるんではなくて、やはり自分たちがこういう活動をやる必要がある、つまりポジティブに考えているということをよく言う。  そういうことを考えてみますと、日本では、日本の国際貢献活動というものが国際的に見て非常に意義があるというのは、我が国は憲法九条という平和というものだった国でありまして、そういうことから言いますと、そういうことを国際的に憲法で鮮明にしている我が日本が国際的にそういうボランティア活動をやるというのについては、非常に大きな使命感を持って活動できる根拠があるというふうに思うんですが、いかがでしょうか。     〔主査退席、石川主査代理着席〕
  224. 小杉隆

    小杉国務大臣 日本は、憲法の制約によって軍事的な国際貢献は制約されているわけであります。冷戦後、今世界で一番問題となっておりますのは、人口問題、食糧問題、環境問題、エネルギー問題、そういうグローバルなイシュー、問題でございます。  で、そういった面で私は日本が国際貢献できる分野というのは非常に大きいと思います。そういう気持ちで私どもは、私自身も実際に環境問題ではそういうボランティアの活動もやっておりますし、また、他の分野で皆さん方が、医療、福祉、そういった面で貢献をされている姿は大変頼もしく思っておりますし、日本はただODAでお金だけをばらまくというんじゃなくて、本当にそういう具体的な実践活動を通じて顔の見える日本を私は世界にアピールしていくべきだ、こう考えております。
  225. 中桐伸五

    中桐分科員 全く同感であります。  実は、世界の国際的なボランティアを強く求めている国々の皆さんの希望といいますか願いというのは、やはり安定ということが大変重要ではないか。別の言葉で言いますと、きょうの家族の生活あるいはあしたの家族の希望というふうなことに尽きるというふうに言えると思うんですが、そういう安定を妨げる要因の三大要因というのが、戦争であり、災害であり、貧困であるということだと思うんです。  そういう意味から私は、憲法九条を持つ日本は、そういう意味で、最大の安定阻害要因である戦争という点からいっても、義務感という受け身的な形ではなくて、日本の誇れるそういう憲法を持っているそういう日本人が、もっとポジティブに使命感を持って世界に出ていってやるということが大変意義があることじゃないかというふうに思うので、ぜひ、そういう点からこれからの教育におけるボランティア活動の支援をやっていただきたいというふうに思います。  さてさらに、まあこれは非常にたくさんの経験の中でAMDAが到達した、ある一定の今日の段階における人材養成機関における必要なカリキュラムといいますか、そういったものについて少し御報告をして議論を少ししたいというふうに思うんです。  国際貢献活動というふうになりますと、やはり、今ある幾つかの大学あるいは大学院の養成講座にはどうも欠けているところがある。それは、まず第一に国際法、国際法といっても戦時法規を含む国際法ということが大変重要である。例えば、非常に戦争状態になっているようなところに出かけていくときに、捕虜になるにはどういうふうなことをすれば捕虜になれるのか、要するに身の危険を感じたときに。そういったことをちゃんと体験を含めてきちんとカリキュラムの中に組み込まなきゃいけないというようなことが第一点。  それから第二点に宗教という非常に大きな問題がある。比較宗教学というようなものが非常に重要である。これはもう欠かせないというふうなこと。あるいは社会学、つまり社会の原理あるいは原則が日本と違う、そういう国に行くわけですから、そういうものがどうしても必要である。  そしてさらに、組織運営においてコーディネートするためには国際機関あるいは国連の機関、そういったものに対する熟知が必要である。さらに、比較経済学、比較政治学など。そして、実際にコミュニケーションできるために言語あるいは情報通信機器の習熟、そういったもの。そして、リージョナルスタディーといいますか、その地域地域の各論的なものが必要ではないかというふうなことが挙げられてあるのですけれども、そういう観点から見て、今日ある人材養成機関をどのようにお考えでしょうか。
  226. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 現在国際開発援助に関します学部なりあるいは大学院の設置状況にも絡むわけでございますが、現在主として大学院中心でございまして、政策科学でありますとかあるいは国際経済法学でありますとか国際開発でありますとかという名前を冠しました研究科が六大学に設置されておるわけでございます。また、学部レベルにおきましても、若干の大学におきまして、ややそれに類似の分野も教育研究をしておるという実態がございます。  それぞれの研究科におきます教育研究の具体的内容はつまびらかにしておらないわけでございますが、いずれにいたしましても多かれ少なかれ国際開発援助という目的に役立てるような教育研究の中身が行われているかと思うわけでございますが、先生今御指摘のような目的が現在既存の大学において一〇〇%実施されているかどうか、これは定かでございません。  また、現実にそれらの大学院等が設置された時期もここ近年でございまして、それらの研究科等を出た学生がどういうところで活躍していくのかということは、むしろこれからの累積と申しますか、積み重ねというものがやはり必要になってくるのではなかろうかというように考えているわけでございます。
  227. 中桐伸五

    中桐分科員 ごく最近のことだということはわかるのですが、既にそういうことを提案している、積極的にやってきている、経験を積んだNPOがありますので、ぜひそのNPOの教訓を文部省としても生かしていただきたいというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  228. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 先ほど大臣の御答弁にございましたように、具体の大学、学部の設置ということになりますと、先生今御指摘のような大きな大学、学部の目的というものがございまして、その目的に即してどういう教育課程を組むかということ、それからそれぞれの教育課程に応じた教員組織というような事柄が具体的に必要になってくるわけでございまして、それらの御構想につきましての具体的な詰めを伺った上で検討いたしてまいりたい、こういうように考えておるところでございます。
  229. 中桐伸五

    中桐分科員 それはよくわかったのですが、積極的なそういう人材養成機関の設立計画というものについてはいかがですか。
  230. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 まだ個別具体の問題についてどうこうという時期ではなかろうと思うわけでございますが、一般論でございますが、現在御案内のように十八歳人口が減少しつつある中で、学部設置ということにつきましては原則的には抑制的に扱ってきておるわけでございます。ただし、社会的な要請の上でどうしてもこういう分野の人材が必要だという場合につきましては、大学設置審の取り扱いといたしましても例外的な扱いをしているということがございます。具体の御相談を伺った上で検討してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  231. 中桐伸五

    中桐分科員 そうしますと、既に文部大臣の方からお答えいただいたように思いますが、AMDAのようなものが今国際大学というものの設立の構想を持っているということでございますので、こういった設立構想について文部省としては支援をする意思がおありなのかどうか最後にお聞きして、終わりたいと思います。
  232. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 先ほど読ませていただいた資料があるということを申し上げたわけでございますが、実は直接にAMDAの関係方々から伺ったことはないわけでございまして、それらの資料をまだ読んでいるという段階でございます。今後AMDAの関係方々から直接の御相談がありましたら、できるだけ積極的に御相談に乗りたい、かように考えておるところでございます。
  233. 中桐伸五

    中桐分科員 どうもありがとうございました。  では、私の質問はこれで終わりたいと思います。
  234. 石川要三

    石川主査代理 これにて中桐伸五君の質疑は終了いたしました。  次に、平賀高成君。
  235. 平賀高成

    平賀分科員 日本共産党の平賀高成です。私は、定時制高校について質問をいたします。  文部省の発表でも、小中学校ではいじめによる登校拒否の生徒は年々ふえ続けております。また、高校における中途退学者は、九万八千名を超えて十万人に迫ろうとしております。こうした生徒の教育をどのように保障していくのか、文部省としても真剣に考えなくてはならない問題だと思います。  私は先日、定時制高校に通っている生徒から、率直な話を伺いました。自分は小学校二年の時にいじめに遭って中学にもまともに行かなかったけれども、しかしちゃんと通える学校が定時制高校です、このように率直な話を伺いました。定時制高校は、働きながら学ぶ生徒はもちろん、小中学校で不登校を経験した生徒や、高校を中途で退学した生徒など、多様な生徒を受け入れております。こうした生徒たちに教育の機会を保障する上でも、定時制高校は大変大きな役割を果たしていると思います。この定時制高校の果たしている役割について文部大臣はどのように認識をされているのか、まずこの点について最初に伺いたいと思います。
  236. 小杉隆

    小杉国務大臣 定時制高校は、戦後の昭和二十三年に制度が発足してから、働きながら学ぶ多くの青少年に高等学校教育を受ける機会を保障してまいりました。その重要な役割は認識をしております。今御指摘のように、最近はそういった働く学生のみならず、全日制高校を中退した人とか、かつて高等学校教育を受ける機会のなかった人たちにも多様な勉強の機会を与えているということで、定時制が一面ではそういう一つの機能も果たしているというふうに理解しております。
  237. 平賀高成

    平賀分科員 大変大きな役割を果たしている学校だという認識だと思います。ところが、今、定時制高校が大変な事態になっています。地域の実情を無視した統廃合が強行されまして、大変大きな問題になっています。  例えば、静岡市では市内に五校しかない定時制高校のうち、八十名近い生徒が学んでいる静岡商業高等学校がこの四月から募集停止になり、三年後には廃止をされようとしています。この定時制高校は、静岡市の西に位置する学校ですが、もしここが廃止になった場合、生徒は安倍川を渡って静岡中央高校まで行かなくてはなりません。男子でも自転車で五十分かかると言われています。女子では一時間を超えると言っています。授業開始が午後の五時半ですから、五時に仕事が終わって急いで行っても、とても間に合うような状況ではありません。働きながら学ぶ生徒にとって、学校が近くにあるからこそ通えるのであって、一時間も離れた高校ではとても無理だと思います。  しかも、静岡中央高校の定時制は単位制の高校で、九七年度の普通学科の募集定員二百十六名に対し、応募者が四百五名です。倍率は一・八八倍です。昨年が一・九五倍でした。募集停止が行われる静岡商業の定時制に来る生徒が入れる保証はないわけです。  静岡商業の場合は、昨年の四月二十四日に県から校長に対して募集の停止が伝えられました。そのときに、職員には黙っていてほしいと言われました。その後、十月二十二日に突然校長から職員に、九七年度から募集停止が知らされるわけです。正式に父母や生徒が知ったのは、十一月の十八日と十九日のマスコミ発表であります。  このように、募集停止決定の直前まで教師や生徒に知らされておりません。突然に知らされた教職員は、その余りの性急な県の教育委員会のやり方に対して、驚きや怒りなど、その場は大変な混乱だったといいます。既に静岡商業定時制に進路を決めていた生徒にとっては、私は、裏切られた思いだと思うのです。私は、この実態を関係者から聞き、本当に驚きました。  文部大臣に伺いたいと思いますが、このように一方的に、強引なやり方で定時制の募集の停止、廃止が行われている実態があるということを御存じでしょうか。
  238. 小杉隆

    小杉国務大臣 そういう具体的な事実については詳細は承知しておりませんので、必要があれば初中局長からお答えさせます。
  239. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 個別の学校の設置、廃止につきましては、ただいま御指摘の点も含めまして、文部省としては承知をしておりませんでした。
  240. 平賀高成

    平賀分科員 これは静岡だけではなくて、全国的にいいましても、大阪だとか京都だとか、いろいろなところでこのような定時制高校の統廃合が今強行されているのですね。ですから、ぜひこの実態についてよくつかんでいただきたいと思いますし、関係者の意見もよく把握して、関係者自身が本当に納得できるような対応をぜひ私は指導していただきたいと思います。
  241. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 個々学校をどのように設置し、どのように廃止するかということはそれぞれの設置者の御判断であるわけでございますが、高等学校、定時制高等学校というものが地域の子供たちの教育に与える影響というのは大変大きいものがございます。  したがいまして、先生も御案内だと思いますけれども、私どもも昭和六十年に協力者会議等を設けまして、今後の指針のようなものを検討していただいております。その中でも、高等学校の設置のあり方につきましては、地域の実情あるいは学校の実態等に十分配慮して、それぞれの地域ごとに改善の基本的な方向をつくって対応していくべしということで、その趣旨を踏まえて我々も指導してきておるわけでございまして、今回こうした御指摘の点も含めまして、我々も対応していきたいというふうに思います。
  242. 平賀高成

    平賀分科員 もう少し言いたいと思います。  静岡中央高校の定時制は単位制です。履修率は七五%で、四分の一の高校生が途中でやめていってしまうわけです。やむなく統廃合する場合でも、私は、今お話がありましたように、地域の実情というものを十分考えなければならないと思います。  文部省は、各都道府県教育委員会の教育長に対して、これは今お話があったことだと思うのですが、「高等学校定時制通信制教育検討会議の報告について」、これは八七年の十二月二十一日にそういう通知を出して、定時制の適正配置、規模の確保についての考え方を示しておられます。  適正配置、規模の確保、これはつまり、統廃合を行う場合、この通知では「地域の実情も十分加味し、生徒の就学の機会の確保にも十分配慮」する、こういうことになっています。これが文部省の正式な方針だと思いますが、それでいいでしょうか。
  243. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 地域の実情や学校の実態等に十分配慮して、地域ごとに改善の基本方向を打ち出して、それをもとに対応していく、これは協力者会議の基本的な考え方でございますし、それに沿って我々も各都道府県教育委員会を指導している、そのとおりでございます。
  244. 平賀高成

    平賀分科員 では、今私が言いましたように、地域の実情を十分加味して、生徒の学習の機会もきちっと十分尊重するということで理解していいわけですね。  それでは、静岡や京都や大阪で起きている実態は、文部省の考え方である、今お話がありましたが、「地域の実情も十分加味し、生徒の就学の機会の確保にも十分配慮」する、こういう方針のもととは食い違った、かけ離れた実態にあります。実際のやり方は、県や府の教育委員会が一方的に強行しているのです。ですから、父母や生徒、教職員、地域方々から強い批判が現に出ております。  静岡商業の定時制を守る会が呼びかけた募集停止に反対する署名は、わずか一カ月の中で二万一千七百五十八人にも上っています。これは静岡市だけではありません。京都市では、三校で六百名を超える生徒が通う定時制が募集を停止し、残っている定時制に無理やり振り分けることにしております。大阪でも、六校が既に募集停止されましたが、非民主的な教育行政への批判が高まり、統廃合に反対する署名は実に二十四万五千三百五十八人にもなっています。  文部省は、こうした父母や生徒、教職員、地域方々の批判に耳を傾けて、定時制の統廃合のあり方を見直すべきだと私は思います。少なくとも「地域の実情も十分加味し、生徒の就学の機会の確保にも十分配慮」するというその立場から、統廃合を決める前に関係者と十分話し合うことが私は重要だと思います。  文部大臣に私は伺いたいのですが、こういう実態を把握してぜひ改善していただきたいと思うのですが、この点についていかがでしょうか。
  245. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 先ほどから繰り返し申し上げておりますように、各都道府県が設置、廃止につきましては判断をする、そのときには地域の実情や学校の実態に十分配慮して、そしてもちろん子供たちの立場というものも配慮してやる、この基本で対応しているということは申し上げておるとおりでございますが、一方、余りにも小規模になった場合のまたマイナスの問題もあるわけでございます。そのことも、先ほど御紹介いたしました協力者会議におきましてはきちっと指摘されているところでございまして、そういった規模の問題あるいは通学の問題、その他もろもろ、各地域の実情、学校の実態等を踏まえて、各県としてきちっとした対応をするということだろうと思います。  先はどのようなお話を聞いておりますと、かなり強引にというような御指摘があったわけでございますが、私どもも、個々学校がどのような形で設置され統合されるかということにつきましては、これはもう各都道府県に御判断をゆだねなければならないわけでございまして、逐一承知していないわけでございますが、先生からの御質問もあるということで、私どもも京都、大阪、静岡等に聞いたわけでございますが、その際には、各県は各県なりにそれぞれ工夫をしながら、プラスの面、マイナスの面を全体として配慮しながらこの問題に対応している、こういうふうに承知をいたしております。
  246. 小杉隆

    小杉国務大臣 基本的には、高等学校の設置とか廃止の問題はそれぞれの都道府県の判断によるものであります。今、初中局長から答弁したことに尽きるわけでございますが、なお現場の状況等もよく聴取したいと思っております。
  247. 平賀高成

    平賀分科員 基本的には設置者である都道府県が判断することだというふうに言われるのですが、確かにそういうふうなことを私もいろいろこの間言われてきたわけです。しかし、どう考えても、この県のやり方というのは、関係者も含めて、本当に性急なやり方で、納得できるものでは断じてないと私は言いたいと思うのですね。  それで、少なくとも文部省として、これは、高等学校の定時制教育及び通信教育振興法というのがあると思います。その三条に、国の任務として地方公共団体に対して指導助言をしなければならないということで、各地方自治体がさまざまな対策を打つことに積極的に指導と助言を与えるべきだ、こういうふうな法律があります。今各地で起きているそういう実態というのは、定時制高校の統廃合の問題について、これは関係者事前に十分話し合いが持たれることは、私はもう最低限必要だと思うのです。それで、そういう教育行政に、私は、そういう法律条項からいいましても積極的にやるべきだと思うのですが、この点についてはどうなんでしょうか。
  248. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 学校が円満に運営されるためには、学校関係者の共通理解と同時に、そこの学校に子供を送り出している保護者たちの気持ち、あるいは子供たち自身、これらが、完全に全員が同じというのはなかなか難しいかもわかりませんが、それぞれがお互いに、やろうとすることについての理解をし合うということは大切なことだというふうに思います。
  249. 平賀高成

    平賀分科員 一般的にはそういうことだと思うのですが、ただ、例えば、静岡の静岡商業の定時制の問題でいいましても、時間的なそういう経過からいっても、例えば校長に口どめしている問題とか、まさに決定の一月ぐらい前に突然発表というふうな状況を見ましても、これが果たして関係者と十分話し合いの、合意のもとにやられたことだとは言えないと思うのですが、こういうやり方自身についての判断というか、見解というのはどうなんですか。
  250. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 この学校の統廃合、当該県につきましてそういった形でやられたかも含めまして、ただいま初めてお聞きしたような次第でございます。もし、そのとおりということで、余りにも性急に、一方的だということであれば、これは必ずしも、と思います。そういったものも含めて、先生の御指摘でございますから、どういうやりとりであったのか一度聞いてみたいというふうに思います。
  251. 平賀高成

    平賀分科員 ぜひ積極的にお願いしたいと思います。  私は、定時制高校の果たしている役割を今こそ大いに発揮することが求められていると思います。各地でやられている強引な統廃合ではなくて、生徒と教師がじっくり向き合う教育をつくることが私は必要だと思います。そのためにも、学級定員を四十人からせめて三十名以下に引き下げるべきだと思います。特に、現場の定時制高校の先生の皆さんからは、少なくとも、教育現場の実態から、一学級二十名以下にしてほしい、こういうふうな問題が、いろいろ要望が出されているのですが、この点についてはいかがでしょうか。
  252. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 学級編制と教職員定数の改善につきましては、現在、第五次の高等学校の教職員定数改善計画が進められているところでございまして、現在これを云々ということはなかなか難しいというふうに言わざるを得ないと思います。既に計画として進捗いたしておりますので、その計画を途中で云々ということはなかなか難しいことだというふうにお答えさせていただきたいと思います。
  253. 平賀高成

    平賀分科員 これは計画が進んでいるということで、この定数の見直しなんかについてはどういうふうに検討がされているのですか。
  254. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 これは、一定の年度を限りまして定数計画を発足させます。そして、それを円滑に実施していくということで、毎年度漸進的に進めまして、完成年度に完成させる、こういうやり方になっているわけでございます。したがいまして、計画をスタートさせる時点で完成後の状態というものを見通して、それに向けて毎年度少しずつ改善をしていくというやり方でやっておりまして、その計画のスタート時点において、完成後の学級編制はどうあるべきか、教職員定数はどういう配置基準であるべきかということをセットして計画をスタートさせておりますので、その計画の途中であるということでございます。
  255. 平賀高成

    平賀分科員 定数との関係でいいますと、これは今の四十人学級でもまだ目が行き届かないんだというのが実態だと思いますので、ぜひこの点については要望を積極的に受けとめていただきたいと要望しておきたいと思います。  次に、定時制・通信制高校の国の補助削減について伺いたいと思います。  文部省は、定時制・通信制高校の教科書や夜食費に対する国庫補助をほんのわずか削減するために、学校に膨大な事務的負担を強いています。ある二千名規模の通信制高校では、一人一人に郵便で制度改正の案内を送ったり、電話などで個別に問い合わせをしたりして、補助を受けられる者と受けられない者に振り分ける事務をしています。これが膨大な量になっています。  補助削減によって、愛知県では、事務連絡で、ハローワークに提出した求職票、不採用通知の写し、これは二社以上です、三カ月ごとの就労相談記録の添付、さらに障害者の場合については、障害者手帳の写しや、かつ医師の診断書の書類まで出させることになっています。これは本当に、見方によっては嫌がらせではないかというような見方もできると思うのですが、私は、愛知県のやり方や文部省のこういう押しつけに対しては、やり過ぎだ、改善をぜひするべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  256. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 まず、二点から先生に御説明させていただきたいと思いますが、一つは、従来、夜間定時制に通っております子供たちに対しましては、その子供が職についていようといまいと、給食費あるいは夜食費を無償で提供するということでございました。しかし、定時制教育の実態の変化につれまして、必ずしも勤労青少年のための高等学校教育確保ということではない、実態の多様化と申しましょうか、そういう状況が出てまいりました。  そういう中で、平成二年に会計検査院から、補助事業の対象となっている生徒の多数が勤労青少年に該当しないという実態がある、これについては、この補助金の目的が勤労青少年に高等学校教育確保するためだという趣旨からいってどうだろうというような改善意見が出されたところでございます。そういった改善意見も念頭に置きながら、時代の変化に対応した定時制教育のあり方ということで、専門家による検討会議を設けまして検討した結果、有職生徒たち、しかし、それを厳密に運用しないで、例えばアルバイトですとか、あるいは事情によって職につけない人ですとか、あるいは病気のために職につけない人とか、できるだけ緩やかに対象を考える。しかし、一方、全く職につこうとする気持ちもないし、あるいは職についていないという子供たちについては、これは全日制その他に通っている子供たちとの均衡からいって遠慮をしていただこう、こういうことで制度が始まりました。それが、まずその制度の趣旨でございます。  そこで、その対象に該当するかどうかということで、今先生からのお尋ねでございますが、私どもとしては、趣旨はそういう趣旨でございますが、できるだけこれに事務的な負担がかからないということは当然のことでございまして、各県、各学校にその工夫はお願いしているわけでございますが、ただ、この制度平成七年度からスタートしまして、一年生は全員が職を持っていようといまいと対象になっておりますので、実質的には、平成八年度の二年生から、つまり、昨年二年生になった子供たちにこの問題が起こってきたわけでございます。  したがいまして、私ども、まさにそういった補助制度ができまして、これでやっと一年を経過しようとするときでございますので、この一年を振り返りました事務の状況等も幾つか聞いて、そして今先生の御指摘のようなものも含めまして、改善する余地があるかどうか十分に検討してみたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  257. 平賀高成

    平賀分科員 一年やってみて、実際どういうふうな実情になっているのか、これをよく検討して改善を図りたいというふうに理解をいたします。  これも愛知県の例なのですが、中学校時代に不登校であった生徒が定時制に入学をしまして、国の補助を受けようということで、今お話があったように原則として有職者が対象と言われて、職安に求職を申し込むわけです。ところが、この生徒は、翌日から働かなければならないというプレッシャーでまた逆に登校しなくなってしまった。せっかく不登校から立ち上がって定時制に通うようになった生徒を、逆にこういうふうな、いわば余りにも厳しい対応によって不登校にしてしまう、全く矛盾した事態を生んでいるのですね。  こうした行き過ぎたやり方は即刻改善しなければならないと私は思うのですが、これも今の一年間やってきた中で、改善する方向で見直すというふうなことでいいのでしょうか。
  258. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 補助の運用の問題でございます。したがって、今の具体の件が、具体的にどういったやりとりの中でそのようになってしまったのか、そういったものを含めて、これから、一年たったところで各県からもいろいろな実情の情報を寄せられることだと思いますし、我々も機会があれば、各県に各学校の様子等を聞くというような努力をして、対応をしていきたいなというふうに思っております。
  259. 平賀高成

    平賀分科員 今の事例が、愛知県なのですが、愛知県の届け出の申請のマニュアルを見ましても、非常に事細かく規制をしていますね。私は、ぜひ愛知県の場合については調査をしていただきたいと思います。  それで、この問題では現場の教職員から、事務量が非常にふえて生徒へ目を向ける時間がなくなる、こういうふうな嘆きが寄せられています。定時制の生徒に書類を出させる事務量というのが、例えば、一言言って翌日すぐ持ってくるというようなことだったらいいのですけれども、いろいろな状況の生徒がおりますので、一言ではなかなか徹底できないのです。ですから、これは本当に大変な仕事になっているのが実態なのです。重ね重ねの指導が必要なのです。  政府も一貫して事務の簡素化ということを追求されていると思うのです。ですから、学校長や現場の事務職員や教職員の皆さんの事務量を軽減するという、簡素化をぜひやっていただきたいと思うのですが、この点についてはどうでしょうか。
  260. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 この補助金というのは、公費で、無償で教科書あるいは給食あるいはその他もろもろの経費を負担するということでございますので、ずさんにこれを行うということは我々やれないことでございます。ただ、それが一方で、余りにも煩瑣で学校の事務量を著しく負担させるということであれば、何らかの工夫をしなければいけないということだろうと思います。  我々もいろいろな努力をしておりまして、例えば、一年生に入った子供にいきなりこれを適用して、有職かそうでないかというようなことであれば、入学当初大変混乱するだろうというようなことを考えまして、一年生はもうとにかくフリーパスで対象にする、こういった基準を適用するのは二年生からであるというのも、そういった趣旨の一つでございます。二年生ということでございますので、生徒たちは一年間の高等学校生活をしておるわけでございますので、その趣旨等については生徒たちも努力をしてもらいたいというふうには思います。  ただ、この制度が発足して非常に浅いということもございまして、いろいろな誤解等があるかもしれません。そういうものも我々十分聞き取らなければいけないと思いますが、要は、この趣旨を端的にそごなく行うということでございますので、それに向けて、いろいろな情報を寄せ合って検討するという努力をしてみたいというふうに思っております。
  261. 平賀高成

    平賀分科員 一年生はフリーパスだというふうに言われました。そういうことができるのでしたら、事務量の軽減とかいろいろありますけれども、最終的に指導していけばそういうふうになると思うのです。ですから、その辺はやはり大胆に対応していただきたいということをぜひ要望しておきたいと思います。  それから、定時制、通信制の教科書、夜食に関する補助制度の問題で一つ確認したいことがあるのですが、教科書の方は年度の途中でさかのぼって補助を出すということがやられていると思うのですが、例えば夜間の給食代については、私たちの調べたところによりますと、年度当初にさかのぼって補助を出すというふうなことをやっていない県があるのですが、これはちゃんとさかのぼってできるという制度でいいのですね、こういう理解で。
  262. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 教科書も夜食給食も同じようなルールで適用いたしておりますので、そのように御理解いただいて構いません。
  263. 平賀高成

    平賀分科員 最後になりますが、いろいろな事情がありながらも学ぼうとしている人たちを積極的に支援するというのは国の施策としても当然のことだと思います。今の定時制には、いじめなどで不登校になった生徒や全日制高校からの中途退学者、障害者など、全日制では受け入れられない生徒の多くが通っています。いじめや不登校の問題に対応する上でも、定時制に通う生徒や父母の立場に立った、血の通った施策をすべきであり、今行われている定時制の統廃合は私は見直すべきだと思います。重ねて、そうするべきだと思います。  私は最近、定時制に子弟を通わせている父兄とちょっと懇談をしたことがあるのですが、一つだけお話をいたしますと、学校で何をやっているのか話を聞いたら、足し算をやっていると言うのです。一体何で高校に行って足し算なのかと言いましたら、足し算もわからないような、九九もできないような、字もよく読めないような、そういう子供たちが定時制に通っているのです。そういう生徒たちに対して、本当にわかるところから授業をやらなければいけないということで先生たちの奮闘があるわけなのですが、その定時制に通っている生徒は一体何と言っているかといいますと、初めは定時制に通って恥ずかしいと思った、ところが今までこんなに自分たちの言うことを聞いてくれる先生はいなかった、私は定時制に通って本当にうれしく思っている、誇りに思っているというふうなことを定時制に通っている生徒が言っているのです。親も、一番上の息子が定時制に行って、下の息子も定時制に行かせたいと思ったというふうな意見を言っているのです。  ですから、教育の機会均等の原則や学ぶ権利を守っているこういう定時制に対して、統廃合ではなくて、やはりもっと実態に合った援助をするべきだと私は思うのですが、定時制に対する考え方について文部大臣の見解を最後にお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思うのです。よろしくお願いいたします。
  264. 小杉隆

    小杉国務大臣 御意見として承っておきます。
  265. 平賀高成

    平賀分科員 以上で終わります。
  266. 石川要三

    石川主査代理 これにて平賀高成君の質疑は終了いたしました。  次に、保坂展人君
  267. 保坂展人

    保坂分科員 私は、ちょうど丸四年前に、衆議院の外務委員会で子どもの権利条約が審議をされていたときに、参考のための意見を子供の状況を伝えるという役割でこちらに参ったことがあります。そこを思い起こして、この子どもの権利条約が批准をされてちょうど三年が経過したという視点に立って、この三年間を検証する意味で幾つかお尋ねをしていきたいと思います。  去年の五月三十日付で日本政府は児童の権利に関する条約第一回報告という、政府報告ですが、こちらの方を国連の子どもの権利委員会の方に提出をされました。これは条約の第四十四条で定められている、いわゆる報告義務ということを期限どおりに遵守されたということで評価をいたしたいと思います。  そして、この報告がだれのために、そして何のために出されたのかということをちょっと突き詰めて考えてみたいと思うのですけれども、国連子どもの権利委員会では、この条約を批准した各方面の国々の報告を実に微細に検討して、そしてこれに対して国連子どもの権利委員会としての総括所見を、例えば日本政府のこの報告であれば、日本の方にもう一度打ち返す、そして日本政府は、その権利委員会の見解を受けとめて、子供の状況の改善をさらに図っていくという性格でこの政府報告があるわけなのです。そして、私の知人が、この国連子どもの権利委員会、ジュネーブで開かれていますけれども、ほぼすべてを傍聴しておるわけなのですが、そこで繰り返されている議論で、つまり、よいところだけを報告するのではなくて、だめなところも自己批判的に、ここはうまくいっていないということをなるべく率直に各国出していただきたいというのが、この委員会が求めている報告のようなのです。  それに当たっては、各国とも、市民団体、民間団体、いわゆるNGOとの対話あるいは協議あるいは議論というものを重ねながら報告をつくられているようなのです。この政府報告の作成に当たって、NGOとの対話というのは行われたことがあるというふうに聞いているのですが、その行われた結果をこの報告のいずこに反映されているのか、例えば何ページ目のどこは反映されているのだということで、外務省の方からまずお答えいただきたいと思うのです。
  268. 貝谷俊男

    ○貝谷説明員 御質問の点でございますけれども、児童の権利条約の趣旨に従いまして児童の権利の尊重を一層促進していくというためには、政府のみならず、社会全体が一体となって取り組んでいくことが必要であり、この条約の実施に向けた民間のさまざまな活動についても、その重要性は十分に認識しているところでございます。このような観点から、民間団体との対話は重要であると考えておりまして、報告書の作成に当たりましても、種々の機会を通じまして、多くの民間団体から参考として御意見を拝聴してきております。  ただ、個別具体的な点につきましての報告書の記載ぶりにつきましては、各省庁の御担当ということ、またその御判断にもよるところでございますので、それぞれの省庁にお任せをしているというところでございます。
  269. 保坂展人

    保坂分科員 この報告なのですけれども、条約の四十四条の六項で、この報告を「自国において公衆が広く利用できるようにする。」という規定があるわけなのですね。としますならば、これは外務省にお尋ねしたいのですが、何部印刷をされて、残部は何部あるのか。そして、例えば政府の刊行物として一般に頒布をするとか、あるいはホームページで情報開示するとか、そういうおつもりは現在あるのかないのか、この辺をお答えいただきたいと思います。
  270. 貝谷俊男

    ○貝谷説明員 お答え申し上げます。  この報告書につきましては、日本語版といたしまして三千部を印刷していただきました。その後、先生方でございますとか、あるいは関係の民間団体等に要望に応じて配付をさせていただいておりまして、ほぼ三千部すべて、残部が多少ございますけれども、ほとんど配付を終わったという状況でございます。
  271. 保坂展人

    保坂分科員 後半の質問にお答えになっていないのですが、刊行物として頒布されたり、ホームページでというところはいかがですか。
  272. 貝谷俊男

    ○貝谷説明員 現在までのところ、特に検討はしてきておりません。今後、先生の御意見も踏まえまして、検討させていただきたいと思います。
  273. 保坂展人

    保坂分科員 それでは、その報告の内容の方に入らせていただきたいと思うのです。  各省庁が各分野でこの報告をつくられたというふうにお聞きいたしましたので、とりわけ子供の人権にかかわるところで、私が四年前に、衆議院の外務委員会での討議の参考のためにということで出した意見の中でも、例えば体罰ということについては、これは子供の人権侵害ということでかなり大きな問題ではないかというふうに思うわけなのです。  例えば権利条約の批准について、批准した後、体罰が学校現場から、一挙になくならないまでも漸次減っているということを望みたいわけなのですが、文部省が発表されている、いわゆる体罰で処分をされた教員の数ということでいうと、逆にふえているということがあるのではないかと思うのです。例えば一九九四年、平成六年ですと三百十五人、平成七年、九五年ですと四百三十六人。それ以前からも比べていきますと、グラフでいうとちょっと上がっているのではないかというふうに思うのですが、こちらの政府報告を見ますと、体罰の項目で、二百二十七のところに、一九九四年、九五年における体罰事件の件数は、八十九件と百十一件という数字で挙がっているのですね。  これは恐らく、法務省の人権擁護機関が処理をした体罰事件の件数ではないかと思うのですが、これは先ほど申し上げたように、つまり我が国にとって問題であるということも包み隠さず、率直に報告するという意味では、文部省が発表されているこちらの数字をも入れるべきではなかったのかと思うのですが、その点、いかがでしょうか。
  274. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 政府としてということでこういう数字になっておるわけでございます。今保坂先生が御指摘にされました点は、訓告その他のいわゆる懲戒処分以外の部分も入ってございまして、そういう数字になってございます。  そういうことで、どういう数字にするかというような全体の調整の中で、こういう数字が使われたものというふうに我々は理解しておりますが、だからといって、体罰が安易に考えられていいということでは毛頭ないわけでございまして、我々はむしろ、先ほど先生が御指摘にされたような数字を使って、都道府県の教育委員会の担当者等には厳しく指導しているということでございます。
  275. 保坂展人

    保坂分科員 大変残念なことなのですが、今回の質問に先立って、朝日新聞のデータベースで、条約批准から体罰がどのくらいあったのかということをちょっと調べさせていただいたのです。そして、全部見出しを読み上げながら御見解を伺おうかと思ったのですが、読んでいるだけで私の持ち時間はすべて終わってしまうくらいあるのですね。  例えば一例を言いますと、北九州で九三年十二月に、連帯責任で五十八人丸刈りにされた。禁止の髪型をとがめた体罰ということなのです。それから、例えば「体罰で目に後遺症 八百万円支払いで和解」、これは茨城県ですね。あるいは中学二年の生徒が四十三歳の男性教師に体罰を加えられ、左目の網膜剥離などで入院をしたとか、ずっとこうやっていくと切りがないのです。  例えば最近でも、ちょうど一年前になりますけれども、山梨県の町立の小学校の先生が、給食を食べなかったという理由で、五年生の生徒に半年にわたって体罰を加えていた。そしてストレスが原因で拒食症になって、登校拒否を続けている。あるいは別の子供は、その教員に針刺しを投げつけられて、相次ぐ暴力で頭部変形打撲を負ったなどという記事が相当あるのですね。  それで、私がジャーナリストとして取材して、どうしても忘れ得ない事件というのは、実はちょうど二年前、一九九五年七月に起きた、これは私立学校ですが、近畿大学附属女子高校という学校で、その当時二年生だった陣内知美さんという女の子が、やはり注意をされて、殴られて、そして残念なことに亡くなってしまうという痛ましい事件が起きました。この事件について、もちろん体罰であるということについて、これほど重大な結果が政府報告に載っていないのはおかしいと思うのです。  ただ、問題は、そういう表面でありませんで、実はもっと怖いと思いますのは、一般の父母の中に、あるいは地域の中に、体罰肯定の風潮が色濃くあるという事実なのです。  なぜかといいますと、実はこの第一報を電話コメントで新聞社から聞いて、当時ジャーナリストでしたから、私が答えたのは、これは日常的に体罰がある学校じゃないかという一点と、もう一点は、この地域でその先生の減刑嘆願運動というものが起きてくる、そしてそれが大きな広がりを見せるようであるとすると、この体罰の根はなかなか絶てないのではないかというコメントを出したのですが、実は、この学校がある飯塚市の人口をはるかに超える七万人余りの署名が集まるのですね。  そして一方で、被害者の遺族のもとにいわゆる心ない嫌がらせの電話が相次ぐ。そして、電話番号を何回も変えるけれども、電話が深夜にかかってきてしまう。それから、注文もしていないものが届いてしまうとか、そういうような嫌がらせ、そしてうわさ。その父母に対して、あるいはその亡くなった少女に対して、うんと悪い子だったのだといううわさが走るわけです。  こういう現状を、小杉文部大臣に伺いたいのですけれども、やはり体罰はいけないという建前は我が国学校教育法でも明確に定義されていると思うのですが、一般の先生の意識あるいは場合によっては父母の意識の中に、まだまだがつんと殴ってくださいよという意識があるのだろうというふうに思うのですね。この点について、いかがお考えかということを伺いたいと思います。
  276. 小杉隆

    小杉国務大臣 冒頭からお話がありましたが、児童の権利に関する条約が批准されてから、文部省としてもいろいろその趣旨の徹底を図ってきたところですが、特に児童生徒の基本的人権というものを大事にして一人一人が大切に育てられる、そういう教育が行われるように、条約の趣旨を踏まえてさらに徹底していきたいと思っております。  学校教育法では体罰を禁止しているわけでありまして、私たちは、保護者の考え方なり地域の考え方なり、そういう体罰はいけないということをさらに周知徹底するよう努力をしていきたいと思います。
  277. 保坂展人

    保坂分科員 これは愉快な話題ではないのですけれども、実際に当事者にとってはもっと愉快ではないので、あえて触れなければいけないと思うのは、いわゆるわいせつ行為、先生による生徒に対するセクハラというのが、これまたふえているのですね、権利条約批准後。これがちょうど一九八六年から大体十年で、二・四倍に増加をしている。  一々具体例は挙げませんけれども、ここの点を、例えば政府報告に関して、子どもの権利条約の三十四条に性的搾取及び性的虐待という項目があるのですが、これを加えて入れるべきではなかったのかと思うのですが、いかがでしょうか。
  278. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 このいわゆるセクハラ問題の重要性を看過したつもりでは毛頭ないわけでございますけれども、この権利条約の規定に基づきます報告全体との整合性、その他をいろいろ考慮してこういう表現になっておりますが、ただいまの点は大変重要な点でございまして、意見として十分に承らせていただきたいというふうに思います。
  279. 保坂展人

    保坂分科員 子どもの権利条約の批准によって、日本学校現場が大きく変わった点というのは一点挙げられると思うのですけれども、それは、いわゆる髪型、中学生の丸刈りが極めて速い、かなりのスピードで減少したということが言えると思うのです。県によっては、九割丸刈りだったところがもうほとんど丸刈りではなくなったというところもあるのですけれども、これは小杉文部大臣個人として、スポーツ、野球をやっている少年が丸刈りにするというのはいいのですね、そうじゃなくて、校則で丸刈りということについて所感をいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  280. 小杉隆

    小杉国務大臣 私は、学生時代スポーツをやっていましたから、もうとにかく長髪よりは短い方が便利だということでやっておりましたけれども、各運動部はみんなそうだと思いますが。  校則は各学校の責任において決めるべきものであって、文部省が直接これに関与するということは差し控えておりますけれども、しかし校則については、時代の進展とか地域の状況とか保護者の考え方とか、そういうことを踏まえてやはり適切になる必要があると思いますから、私どもはそういった観点に立って指導助言、必要ならばしていきたい、こう考えています。
  281. 保坂展人

    保坂分科員 これは以前の赤松文部大臣が個人として、全員が丸刈りなのは私はちょっとどうかなと思うというようなことを御発言されたら、それが日本全国各地にわっと走ったのですね。小杉大臣としてはいかがでしょうか、好き嫌いということで言うと。難しいですか。
  282. 小杉隆

    小杉国務大臣 これは、それぞれの学校なりそれぞれの地域で適切に指導していただくというのが妥当かなというふうに思います。何もこちらから校則について、一々あれこれ言うのは控えていかなくてはいけないと思っております。
  283. 保坂展人

    保坂分科員 率直な御感想をいただきたかったのですが。確かに、校則を文部省がああしろこうしろと言うことは、そこを私は求めているわけではないのですけれども。  一方で一九九四年、今から三年前ですか、ちょうど批准直後の新聞記事に、福岡県の中学で、私は丸刈りになりたくないという少年が会議室で隔離指導、いわゆる隔離授業を受けていたというケースがございます。それから、私が直接熊本県で会った少女は、これまた丸刈りの問題と違いますが、いわゆる標準服がほとんどの学校であるわけで、その標準服を自分は着用したくないという意思表示があったわけなのですが、その女の子が校長室あるいは会議室で隔離授業という形で、一般の生徒と触れ合わないようにというような指導を受け、休み時間も全部会わないようにずらされてしまったのですね。その結果、十三歳のその少女は胸が詰まる思いで学校に行けなくなるということで、結局その学校には、入学はしたのですけれども通い続けることはできなくなったというケースがあるのです。  いわゆる校則一般文部省が指導するということではなくて、例えば丸刈りが校則として決まっている学校で、自分は疑問を持つという生徒が出てきたときの生徒の人権と学校の指導の絡み合いというか、その辺について、小杉大臣にちょっと伺いたいと思います。
  284. 小杉隆

    小杉国務大臣 集団生活を行っていく場合には一定のルールは必要だと思いますし、それぞれの学校が校則をつくっているというのは、これは当然だと思うのですけれども、ただその校則の内容が児童の権利とか人権を損なうようなことであれば、これは当然、指導助言ということは必要だと思います。  ただ、基本的にはやはりそれぞれの学校の判断に任せられていることでありますし、私は今度の教育改革プログラムでも、できる限りそれぞれの自治体なり学校の創意工夫とか自主性とか、そういうことを尊重したいと思っておりますから、ぜひその点は各学校において適切な判断をしてほしい。少なくとも、いやしくも子供の人権を阻害するような校則だけは避けてもらいたい、こう思います。
  285. 保坂展人

    保坂分科員 私はジャーナリスト時代に、子どもの権利条約がどのぐらい子供に知られているかということについて、例えばテレビ番組などで複数、調査を番組と一緒にやったことがあるのです。これは批准直後でしたけれども、例えば五百人ぐらいの中学生に聞くと、名前を聞いたことがあるというのが三、四十人、そしてきちっと説明できるというのが十人余りというデータだったのですね。  これは、その後、例えば教科書に子どもの権利条約が登場したり、いろいろあると思いますけれども、女子差別撤廃条約もそうですけれども、この条約を女性が知ってこそ意味があるわけです。子どもの権利条約の中には、やはりこれは子供にきちっと伝えていきたい、そして子供がそれを理解して、人権侵害がないようにありたいというところが多々あるわけです。  条約の周知徹底というところで、やはり学校が果たす役割は多いと思うのですが、現在、例えば子供の何割ぐらいにこの条約が浸透しているかなんというデータがありましたら教えていただきたい。また、条約の周知徹底について、現在のプログラム、これからの行動計画というものがあるのかどうか、これを伺いたいと思うのですが、お願いいたします。
  286. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 残念ながら、全国の子供のどれだけがというデータは私ども持ち合わせておりません。ただ、この権利条約の趣旨というものが子供たち自身にも十分に伝わっていくということは大切なことだと思います。  ただ、文部省という立場からいたしますと、やはり県の教育委員会を通し、教師を通して学校に伝わり、そこから子供たちに伝わるということでございまして、私たちが直接子供に接するということは立場上もないわけでございます。したがって、我々はいかに対教師あるいは対教育委員会等に対する啓発活動を充実していくかということでございます。  それについては逐一は時間をとりますので申し上げませんが、私どもが主催いたしますさまざまな会議研修会、公聴会等では時間を割いてこういったものの趣旨を徹底するということ、それから、文部省が持っておりますさまざまな広報誌がございますが、そういうところにも随時これを載せて趣旨の徹底を図るといったものが、我々明確に持っております対応でございます。それ以外にも、いろいろなチャンスがございますれば活用していきたいというふうに思います。
  287. 保坂展人

    保坂分科員 私は、東北の宮城県仙台市というところの生まれなのです。そして、そこの地元の新聞で河北新報という新聞があります。ちょうど一年前の今ごろに、中学二年生の子供が投書をしたのです。その投書というのが、こんな投書でした。  要するに、北国ですから、ガスファンヒーターのストーブが自分の席の隣、真横にあると。僕は、毎日あおられて、体が熱くなって、ほてって頭がぼうっとなってもう苦しいと。このスイッチをもう切りたいのだけれども、切ったら僕はクラスじゅうの子供たちからいじめ殺されてしまうだろうと書いてあるんですね。そして、我慢している。それで、先生と言って、先生に、暑いんですと言ったら、先生は、我慢しなさいというふうにおっしゃった。彼はやはり耐えられないので、もう一人の先生に言ったら、あなたがそこを我慢し切れずにのいたら、今度ほかの子がそこに座ったときに、その子がつらいのよというふうに言われた。そうかなと思って、また彼はあきらめずにもう一回言うのですね。男性の先生に今度聞いたら、いじめられて無理して学校に来ていることないんじゃないか、登校拒否をしたらどうかというふうに言われたのだけれども、どうも納得がいかぬので、僕はどうしたらいいでしょうかと。これは、仙台の新聞で大反響だったのですね。  これは、校則の問題とかとちょっと違うのですけれども、いわゆる子供観の問題だと思うのですね。条約の第三条に、子供最善の利益という項目があるのですけれども、これはちょっと文部大臣の御感想をいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  288. 小杉隆

    小杉国務大臣 今の事例の場合は、先生がやはり適切な場所に移動するとか、もう少し何か工夫があったんじゃないかなと思います。子供の側に立って考えるという、そういう姿勢は必要かと思います。
  289. 保坂展人

    保坂分科員 というようなことを、議員になります前は、こういう国会とか政府の外側で、ジャーナリズムであったりあるいは民間団体であったりあるいは小さなお母さんたちの会であったりというところで耳にすることが大変多うございました。そういう非常に細かい、子供にとっては非常に大きな問題ですけれども、どうも小さな問題かなと一見思えるようなものでも、真剣にこれを検討して、この政府レポートの中にきちっと血肉化させていただきたいと思うのです。  これは、国連子どもの権利委員会で実質的な我が国の報告の審査が始まるのは、ことしはまだ始まらないんじゃないかというふうに言われています、来年以降になるだろうと。としますならば今からでも遅くないので、いわゆる民間団体とのもう少し建設的な対話というか、今みたいなことをつぶさに検討しながら一緒につくり上げていくという作業を民間団体の方は求めているようなのですが、文部省の方はいかがでしょうか。
  290. 林田英樹

    ○林田政府委員 これは、今回初めて報告書を出すわけでございます。子どもの権利条約の手続というものもこれからいろいろ進展するわけでございましょうし、国連の手続においてどんな議論が出るか、私どもまだ聞いたわけではございません。今後、政府として、どんな報告が必要かについては、国連とのやりとりなどを通じながらいろいろ考えていきたいと思います。
  291. 保坂展人

    保坂分科員 今度、子ども国会というのが開かれるというふうに聞いております。大変楽しみなんですけれども、その子供たちにこの政府報告を、このまま渡してもちょっと読みにくいと思いますので、子供語で翻訳をしてお渡しするというようなことをお考えにならないでしょうか。
  292. 小杉隆

    小杉国務大臣 この子ども国会の企画は参議院が今立てて検討しているようでありますので、委員の御指摘のようなアイデアもお伝えをして、そして検討していただくように私の方からもお話ししたいと思っております。
  293. 保坂展人

    保坂分科員 条約の三年を検証するという趣旨で御質問させていただきましたけれども、例えば文部省が出されている教育改革プログラムの中でも、新しい時代に即応して、今までの常識ももう一回組みかえてみるという内容が含まれていると思います。例えば、養護施設に宿泊ボランティアで高校生が行くという企画を立てたときに、校則で外泊は禁止だから行けないなんという問題も出てきているのですね。だから、こういうのは、やはり子供がボランティアも含めてもう少し自由に伸び伸びと活動できるようにということで、もう一回そういった学校の日常の見直しを含めてお願いしたいのと、子どもの権利条約、この中身を子供たちにもつと広く伝えていく努力をぜひお願いしたい。  そして、政府報告の方の内容を、これは第一次報告ですから、民間の声もしっかり聞きながら建設的対話でつくっていくと国際社会の中でも高い評価を受けるのではないかというふうに思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  これで終わります。
  294. 石川要三

    石川主査代理 これにて保坂展人君質疑は終了いたしました。  次に、旭道山和泰君。
  295. 旭道山和泰

    ○旭道山分科員 新進党の旭道山和泰と申します。ふなれですが、小杉大臣、議長、横綱に胸をかりるつもりで頑張りますので、よろしくお願いします。  さて、今回の質問は、約十六年にわたって相撲の世界で感じたことを通して、子供の体力などについて質問させていただきます。  相撲をとる場合、実際に土俵で対戦する前の取り組みが発表されたときから勝負は始まります。どんな攻め方をしてくるかを読むのは当然ですが、常に対戦相手の動きや筋肉、顔色、肌の色つやなどを分析し、土俵のわずかな仕切りの間に相手の健康状態や動きを読み取るわけです。重要なことは力や分析力ではなく、心と健康です。心と健康がベストでなければ相手を読むことはできません。  私は、未来ある子供たちの現状を見るにつけ、体力と健康という問題にもっと重点を置いた政策が必要でないかと思います。多くのスポーツを実践された大臣は、スポーツの大切さを最も理解されており、子供たちの未来についても真剣に考えてくれると思っています。  そこで、今回の質問は、子供の体力などについて幾つかの質問をさせていただきます。  さて、これからの社会を支えていくのは今の子供たちであり、子供たちをどのように育てていくかは最も重要な問題であるかと思います。その基本となるのは、よく言われるように知徳体、バランスのとれた子供たちを育てていくことであると私は考えています。  しかし、現実には受験戦争などのため、親や子供の関心は勉強の方に注がれ、体を鍛えることが二の次三の次にされていると感じています。相撲の新弟子検査や今まで部屋の力士を長年にわたって見てきた経験から、最近の子供たちは、確かに体は大きくなっているが体力は落ちてきているように感じます。学歴社会の中で体力より勉強が重視されている今、学校教育における体育のあり方について改めて見直す必要性を強く感じています。それは、何事にも体力が基本だからです。  また、いわゆる部活動についても行き詰まっていると思います。これでは、子供の将来、ひいては社会の将来にとっても大きな問題だと思います。同時に、これは我が国スポーツ振興を図る上に最も基本な問題であると思います。  そこで、体力低下の実態がどうなっているか。また、こうした状況にどのように対応するのか。大臣の御答弁をよろしくお願いします。
  296. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 まず、私の方から、子供の体力低下の実態について御説明させていただきます。  子供の体力、運動能力については、文部省において毎年、体力・運動能力調査を実施しておるわけでございますが、十歳から十八歳までのすべての年齢段階のほとんどの調査項目で低下傾向が見られるわけでございます。  例えば、中学二年生の男子で申しますと、昭和六十年度と平成七年度の調査結果を比較しますと、五十メートル走で見ますと、昭和六十年度が七秒九でございます。それに対しまして、平成七年度は七・九五秒というふうな数値になってございますし、同じく走り幅跳びについて見ますと、三メートル八十四から三メーター七十八に低下をするというふうな状況にございます。  その原因といたしましては、生活が便利になってきた等、社会の変化による運動の機会の減少等さまざまな要因が考えられるわけでございますが、学校体育あるいは部活動等につきましても、現下の状況を踏まえて、今後とも適切な対応をしていくことが必要であると考えております。
  297. 旭道山和泰

    ○旭道山分科員 私もバレーをやっていまして、バレーから相撲に入りまして、百メートルの記録を持っていまして、それで五十メートルが六秒二で走っていました。だから、その数字を見たらよくわかります。  また、行きます。  子供たちがスポーツを楽しみ、健康な体をつくっていくようにするためには、まず学校体育や部活が重要だと思います。しかし、現実には、いわゆる五教科の方を重視されていると思います。こうした傾向を改めていくのは、学校教育の中で、体育や部活はもちろんですが、音楽や美術などからでも得られるものも大切だと思います。こうした教科をもっと積極的に評価していく必要性があると思いますが、どう思われますか。よろしくお願いします。
  298. 小杉隆

    小杉国務大臣 先ほど旭道山委員から御指摘のとおり、やはり学校教育においては、知育、体育、徳育、これのバランスが必要だという認識でやつておりますし、また中教審のさきの答申でも、子供たちの生きる力というものを育てるには、単に知識だけではなくて、いろいろな困難に打ちかっていく体力、そういうことの重要性を指摘しているところでございます。そこで、今、一番成長、発展段階にある子供の教育については、やはり今まで知育に傾きがちであった教育を、できるだけ体を鍛える、そういう体育の時間の充実とかあるいは部活動の活発化など、そういう政策をこれからも積極的に推進していかなければいけないと思っております。
  299. 旭道山和泰

    ○旭道山分科員 よろしくお願いします。  また、学校だけでなく、地域において子供たちが気軽に楽しめる環境をつくってやることが重要であると思います。ここにおられる多くの方は、子供のころ、普通の空き地でいろいろ遊びや友達とスポーツをした経験をお持ちだと思います。今は立派な運動施設こそ充実してきましたが、本当に地域の中で子供たちが気軽に遊べ、スポーツに親しめる環境を、その経験を持っている我々がつくっていかなければならないと思います。  さらに、スポーツ指導者不足という状況もあり、参加するスポーツではなく見るスポーツへと関心が移っているように思います。相撲の場合、特にその傾向があります。  確かに、現在でもいろいろな少年スポーツクラブがありますが、こうしたクラブのような形ではなく、もっと好きなときに下手でも気軽にスポーツができるよう、自由に使える場所があるとよいではないでしょうか。その一つとして学校開放をもっと進めるべきだと思いますが、どうでしょうか。よろしくお願いします。
  300. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 子供たちを初めとして、地域住民が身近な場でスポーツに親しむということが極めて御指摘のように大切でございます。その意味におきまして、学校体育施設開放推進することは極めて大きな意義を持つというふうに考えておるところでございます。  そこで、文部省におきましては、子供を含めた地域住民スポーツ活動の場として学校体育施設を有効に活用するため、市町村が実施する小中高等学校等の学校体育施設開放事業において、管理指導員の配置に要する経費の補助や、夜間照明施設、クラブハウス等の整備事業に要する助成を行っております。と同時に、文部省といたしましても、都道府県教育委員会を通じまして、市町村に対して、学校体育施設開放の積極的な推進を指導しているところでございます。  その際には、この学校開放自体がやはり住民のニーズにこたえる形で行われなければならない。そうでなければ身近な場でのスポーツに取り組むことがなかなかできないわけでございますので、地域の実情等に合わせて、地域住民の要請に最も効果的にこたえ得るような形となるようにあわせて指導しているところでございます。  現下の開放状況を申し上げますと、おおむね運動場が約八二%、体育館が八五%の開放となってございます。今後とも、御指摘の学校体育施設の一層の開放に努めてまいりたいと考えておるところでございます。  それともう一点、ちょっとつけ加えさせていただきますと、従来から、文部省におきましては、総合型地域スポーツクラブの育成モデル事業というのをやはり生涯スポーツの一環として実施をしておりますが、平成九年度におきましては、新規の事業として、スポーツタウンの推進事業を進めたいと考えておるところでございます。この事業におきましては、市町村を挙げて住民のニーズに応じたスポーツ活動の振興に取り組む事業について、一定の助成を行いたいと考えておるわけでございます。  今後とも、地域に所在する学校あるいは地域、職場のスポーツ施設、こういったものを有効に活用をし、機能的にそれらの連携を図りながら、子供を含めた住民のスポーツニーズに的確に対応できるように、文部省としても関係機関と協力しつつ努力してまいりたいと考えておるところでございます。
  301. 旭道山和泰

    ○旭道山分科員 八五%、本当にわかります。また、一〇〇%近くまで行ってもらえるように、本当にお願いします。  子供たちがスポーツに親しむようになるきっかけは、一つとして、プロ野球、Jリーグ、大相撲などのプロスポーツや、オリンピックなどの一流プレーヤーの強い選手にあこがれるといったのは大きな意味を持っていると思います。相撲でも野球でも、強い力士や選手が出てくると活気が出てくるものです。  最近、オリンピックなどで成績が振るわないと言われていますが、これは日本スポーツ振興の上で問題であり、スポーツ振興のためには、もっと国際舞台に出て、国際的に強くなることが大事かと思います。私も今まで外国巡業に何度も参加してきましたが、こうした交流を通じて、日本への理解が深まっていくように実感しました。  相撲に限らず、スポーツは言葉の壁や習慣の違いを超えて通じるものがあり、海外とのスポーツ交流は非常に重要なことだと思います。スポーツ振興国際交流についての考えをお聞かせください。よろしくお願いします。
  302. 小杉隆

    小杉国務大臣 プロスポーツの重要性というのは、今御指摘のとおりでございます。  今お尋ねのスポーツ国際交流ということですが、これはもう確かに日本スポーツの普及向上あるいは発展に寄与するものであることは間違いないと思いますし、また、諸外国との友好親善とか相互理解にも役立つと思っております。  文部省では、従来から、日本オリンピック委員会、つまりJOCとか体協の行う、選手とか指導者の海外への派遣とか招聘事業に補助を行ってまいりましたし、また、オリンピック等の国際競技大会の開催にも支援をしてまいりました。サッカーについては二〇〇二年日韓共催ということで、両国の友好親善をさらに図るために、平成九年度から新たに日韓スポーツ交流事業というものを行おうとしておりますが、今後とも、スポーツを通じた国際交流を積極的に進めていきたいと考えております。
  303. 旭道山和泰

    ○旭道山分科員 さて、最近の高校中退のことを話をさせていただきます。  高校中退の問題はよく聞きます。教育に対する期待はますます大きなものとなっており、高等学校への進学率は九七%に達しています。中学校卒業生のほとんどが高校へ進学するということから、高校側でもいろいろな学校づくりに取り組んでいると聞いています。高等学校の、義務教育ではありませんが、生徒にとって学びがいのある学校づくりを進めるのは国の文教政策として極めて重要であるかと考えています。  そこで、先日文部省から発表された平成七年度の高校中途退学者の状況について、その結果と、それをどのように受けとめるかをお聞きいたします。よろしくお願いします。
  304. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 まず、調査結果の概要について私の方からお話をさせていただきたいと思います。  先生既に御案内のとおりでございますが、平成七年度の公立、私立高等学校の中途退学者数は、正確に申し上げますと九万八千百七十九人ということで、前年度に比べまして千七百七十八人増加をいたしました。これを率で見ますと、在籍者数のうちの二・一%が中退をしたということでございます。傾向としましては、この十万人前後の中退を見るというのは変わっておりませんが、細かく見ますと、前年度、前々年度と少しずつ漸減の傾向がございます。これは私たち、大きな教育課題だというふうに受けとめております。  で、もう少しこの中退の要因を見てみますと、どうして中退するのかという中身を見てみますと、一番多いのは学校をやめて就職等をするということでございますが、就職等の等の中には別の学校へ通いたいというような子供もいます。それが一つ大きい数で、十万人弱の中退者のうちの四万人を超える子供たちがそういう理由で中退をいたしております。その次に多いのが、学校生活とか学業に適応できないということでやめていく子供たちでございますが、こうした子供たちが二万八千人余ございます。  主なものといたしましてはこうした理由でございまして、こうした理由、この二つで七万人くらいになっているわけでございます。十万人のうち、こういう理由でやめている子供たちが多いということでございます。  で、私たち、なかなか分析は難しいところはございますが、この中退の理由はこういうことでございますが、二年生でやめるあるいは三年生でやめるよりも、一年生に入ったところで中途退学をしてしまうというところは中学校段階でのどの高校に進むかという進路指導の問題、あるいは中学校から高校へ進んできた子供をどう受け入れるかというそういう中学校、高校それぞれに、教育上の課題として受けとめていかなければいけない課題があるんではないかな、こんなふうに思っております。  あといろいろな課題がございますが、大きな課題としてはそういう問題でございまして、いずれにしろ、十万を数える子供たちがせっかく高校へ進みながら中途退学をしてしまうということは大変残念なことでございまして、我々としては重く受けとめていきたいというふうに思っております。
  305. 旭道山和泰

    ○旭道山分科員 今お聞きしたことで、そういう途中でやめた方、また学校へ復帰したい方というのはやはりいると思いますので、その受け皿を、また、寛大な大きな心で受け入れるように要望をお願いします。  それと、高校中退の背景にはいろいろ問題があると思いますが、中退の理由は子供によって異なり、学校教育における対応の難しさもあると思います。しかし私は、基本的に生徒の立場に立った対応が必要だと思います。  いずれにしても、全国で、先ほど言われたとおり、約十万人を上回る高校の中途退学があるということは見過ごすことのできない重要な教育課題だと思います。高校中途退学に関する悩みの相談も最近では非常に深刻な内容になってきており、その対応の仕方も問われています。文部省としてはこのような実態に対しどのように取り組んでいるかお聞きし、答弁をよろしくお願いします。
  306. 小杉隆

    小杉国務大臣 御承知のとおり、中途退学が十万人にも達しているということは非常に重大な私は問題だと思っております。で、今初中局長から、その中途退学、約十万人に近い退学者の中の主な理由は、進路変更、そして、学校生活や学業に不適応、適応できない、こういうことでございます。  今、高校進学率が九七%、ほとんどの人が高校へ行くということになって、あるいは社会の風潮が、せめて高校だけでも卒業させたいという、子供さんは行きたくないのに無理やり行かされるなんというケースもあるし、自分の志望というものをはっきり見定めないままに入学試験を受けて入ってしまう、こういうようなことがありますので、まず私は、こういう実態を踏まえまして、中学校において進路指導、あなたはどういうことをこれから勉強したいのか、どういう学校へ行きたいと思うのか、そういうところの指導というものを徹底して行っていくということがまず一つあると思います。  それから、学業不適応、学校の授業についていけないというようなことがありますので、小中高等学校を通じてわかる授業を実現していく、ただもう進んでいる子を標準にどんどん進んでいくんではなくて、やはり先生がわからない子供も教えていくというそういうわかる授業の徹底ということも必要だと思います。  それから、高等学校がただもう画一的であって何も特色がないというのでは困るんで、高等学校教育というものがもっと個性化して、多様化して、魅力のある高校にしていくということとか、それから高校入試の選抜のやり方についても、ペーパーテストだけではなくて、スポーツをやってきたとかあるいは社会奉仕活動をやってきたとか、そういう多面的な評価をもっと取り入れるというような入試の改善ということも必要かと思います。  いずれにしても、このふえる中退者をできるだけ減らして、本当に子供たちが学べる高等学校実現のために、興味を持って、そして張り合いを持って学校へ行けるようなそういう学校をつくるために一生懸命努力したいと思っております。
  307. 旭道山和泰

    ○旭道山分科員 済みません、もう最後ですけれども、小杉大臣もスポーツをやっている人間としていろいろと体を鍛えてわかると思いますが、仕事というところですけれども、朝から晩までこのいすに座っていて大変だと思いますけれども、季節の変わり目、体を気をつけて風邪を引かないでください。頑張ってください。  どうもありがとうございました。
  308. 石川要三

    石川主査代理 これにて旭道山和泰君の質疑は終了いたしました。  次回は、明四日午前十時から開会し、文部省所管及び自治省所管について審査を行うことといたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十九分散会