運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1997-03-04 第140回国会 衆議院 予算委員会第五分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月四日(火曜日)     午前十時開議 出席分科員    主 査 菊池福治郎君       大原 一三君    桜井 郁三君       下地 幹郎君    中山 正暉君       愛知 和男君    遠藤 和良君       木村 太郎君    佐々木洋平君       武山百合子君    二見 伸明君       辻  一彦君    日野 市朗君       北沢 清功君    兼務 並木 正芳君 兼務 福島  豊君    兼務 山中 燁子君 兼務 山元  勉君    兼務 中路 雅弘君 兼務 上原 康助君    兼務 岩國 哲人君  出席国務大臣         農林水産大臣  藤本 孝雄君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石井 道子君  出席政府委員         環境政務次官  鈴木 恒夫君         環境庁長官官房         長       岡田 康彦君         環境庁企画調整         局長      田中 健次君         環境庁企画調整         局中期環境部長 浜中 裕徳君         環境庁自然保護         局長      澤村  宏君         環境庁大気保全         局長      野村  瞭君         環境庁水質保全         局長      渡辺 好明君         農林水産大臣官         房長      堤  英隆君         農林水産省経済         局長      熊澤 英昭君         農林水産省構造         改善局長    山本  徹君         農林水産省農産         園芸局長    高木  賢君         農林水産省畜産         局長      中須 勇雄君         農林水産省食品         流通局長    本田 浩次君         食糧庁長官   高木 勇樹君         水産庁長官   嶌田 道夫君  分科員外出席者         警察庁交通局交         通規制課長   米田  壯君         環境庁長官官房         会計課長    瓦田 栄三君         外務省経済協力         局有償資金協力         課長      佐渡島志郎君         大蔵省主計局主         計官      松川 忠晴君         大蔵省主計局主         計官      三國谷勝範君         厚生省生活衛生         局指導課長   宮島 俊彦君         厚生省生活衛生         局乳肉衛生課長 森田 邦雄君         厚生省生活衛生         局水道環境部環         境整備課長   三本木 徹君         厚生省薬務局安         全課長     植木 明広君         農林水産大臣官         房予算課長   小林 芳雄君         運輸省港湾局計         画課長     川島  毅君         運輸省航空局飛         行場部計画課長 横田 和男君         労働省職業安定         局業務調整課長 浅野 賢司君         自治大臣官房参         事官      門山 泰明君         農林水産委員会         調査室長    黒木 敏郎君         環境委員会調査         室長      鳥越 善弘君         予算委員会調査         室長      大坪 道信君     ――――――――――――― 分科員の異動 三月四日  辞任         補欠選任   中山 正暉君     下地 幹郎君   愛知 和男君     木村 太郎君   日野 市朗君     辻  一彦君   北沢 清功君     濱田 健一君 同日  辞任         補欠選任   下地 幹郎君     桜井 郁三君   木村 太郎君     遠藤 和良君   辻  一彦君     石毛 鍈子君   濱田 健一君     保坂 展人君 同日  辞任         補欠選任   桜井 郁三君     中山 正暉君   遠藤 和良君     佐々木洋平君   石毛 鍈子君     川内 博史君   保坂 展人君     北沢 清功君 同日  辞任         補欠選任   佐々木洋平君     二見 伸明君   川内 博史君     日野 市朗君 同日  辞任         補欠選任   二見 伸明君     武山百合子君 同日  辞任         補欠選任   武山百合子君     愛知 和男君 同日  第一分科員岩國哲人君、第二分科員福島豊君、  山中燁子君上原康助君、第四分科員中路雅  弘君、第八分科員並木正芳君及び山元勉君が本  分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成九年度一般会計予算  平成九年度特別会計予算  平成九年度政府関係機関予算  〔総理府(環境庁)及び農林水産省所管〕      ――――◇―――――
  2. 菊池福治郎

    菊池主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。  平成九年度一般会計予算平成九年度特別会計予算及び平成九年度政府関係機関予算農林水産省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。  この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願い申し上げます。  また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木村太郎君。
  3. 木村太郎

    木村(太)分科員 おはようございます。  菊池先生、そして大臣初め皆様方に感謝を申し上げたいと思います。この機会をいただきまして、本当にありがとうございました。ただいま委員長からお話あったとおり、時間が三十分ということで限られておりますので、私、質問する方からまとめる形で質問させていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。  まず、私は、リンゴについて、今回、質問させていただきたいと思います。  その初めとして、輸入自由化など、農業全体も、国内産地間競争、それに加えて国際競争が続き、農業を取り巻く環境も大変大きな変化の中にあります。例えば、果樹の中でリンゴも例外ではありません。生産面消費面等を含めて、国際競争が進む中でのリンゴの置かれている状況をどのようにとらえているのか、お伺いしたいと思います。  また、アメリカ産、ニュージーランド産、韓国産リンゴ輸入されていますが、数量的にも価格においても、今現在は大きな脅威となっていないとしても、アメリカなどは、日本消費者を意識しての品質改善や「ふじ」を中心とした輸出品種追加をも視野に入れて取り組んでいるようであります。これら三カ国からリンゴ攻勢が今後一層強められてくるものと予想されますが、どのように認識しているのか、まずお伺いいたします。
  4. 高木賢

    高木(賢)政府委員 まず、リンゴ産地間競争国際競争が進む中での生産消費状況はどうかというお尋ねでございますが、まず、生産状況につきましては、栽培面積が大体五万ヘクタール程度ということで、若干、最近、減少傾向は見られますけれども、生産量は大体百万トン程度という水準を維持しているところでございます。優良品種への転換矮化栽培推進などが行われまして、需要量に見合った生産が確保されていると考えております。  一方、リンゴ消費状況でございます。ニュージーランド産あるいはアメリカ産の一部の生鮮リンゴ輸入解禁は行われましたが、国産との品質格差がありまして、輸入量は大幅に減少しております。国産リンゴにつきましては、消費者ニーズに合致した品種への転換などによりまして、需要は比較的堅調に推移しておりまして、一人当たりの年間消費量で見ましても、この数年間、八ないし九キログラムという安定した水準で推移をいたしております。  こうした中で、お尋ねがありましたように、輸入解禁要請各国からございます。基本的には、チチュウカイミバエとかコドリンガなど我が国発生病害虫発生国からの輸入禁止をしているわけでございますが、一方、WTO体制のもとでSPS協定というものがございまして、これらの病害虫侵入を防止できる防除措置輸出国によって確立された場合、これは解禁せざるを得ないわけでございます。  現在、主に三つの方面から御要請があるわけであります。豪州からは、タスマニア州産の「ふじ」種についての解禁要請フランスからは、ゴールデンデリシャス種についての解禁要請、それからアメリカからは、既に解禁されておりますゴールデンデリシャス並びにレッドデリシャスの二品種に加えまして、その他の全品目追加解禁ということが求められている状況にございます。
  5. 木村太郎

    木村(太)分科員 今現在は需給のバランスからいくとちょうどいいというような御答弁でありましたが、ただ、さらにフランスとかオーストラリア等からもその動きがあるということでありますが、実は、そのことを次に聞きたいと思っていたんですが、今現在はアメリカニュージーランド産、そして韓国産リンゴが入ってきている。それ以外に、我が国輸入を求めてきている国は、今の御答弁にあったフランスオーストラリアタスマニア、この二つと考えていいんですか。
  6. 高木賢

    高木(賢)政府委員 もう一つアメリカが、今二品種解禁を認めているわけですが、残りの全品種解禁要請しております。
  7. 木村太郎

    木村(太)分科員 そうしますと、さらなる輸入を迫っている動きのあるその国々植物防疫体制上も踏まえて、手続的にどの程度まで進んでいるのか、そのことをお伺いしたいと思います。  仮に、問題なしとなった場合に、輸入になるわけですが、量的に、あるいはまた品種、あるいはまた時期的に我が国においてどのような影響があると予想しているのか、お尋ねしたいと思います。
  8. 高木賢

    高木(賢)政府委員 各国からの状況でございます。  豪州タスマニア州産の「ふじ」につきましては、コドリンガに対して臭化メチル薫蒸による殺虫技術を開発しておりまして、この技術については、既に我が国専門家により現地でその有効性確認されているところであります。  それから、フランスリンゴについてでありますが、これはチチュウカイミバエコドリンガに対しまして、臭化メチル薫蒸低温処理による殺虫技術が開発されております。これにつきましても、我が国専門家によりまして現地でその有効性確認されております。  もう一つフランスでは火傷病発生しております。フランス側は、火傷病発生していないことを実地調査で担保された園地から生産されたものの輸出は認めろ、こういう提案をしておりまして、現在、その発生しているかしていないか、無発生だということの確認方法につきまして、両国の専門家の間で協議を行っているところでございます。  こういう輸出国防除技術開発の結果を我が国専門家が評価して、現地確認をするということで、コドリンガなどの病害虫侵入が阻止できるということが、輸出国においてその検疫措置が確立された場合には、先ほど申し上げましたが、輸入禁止措置を解除せざるを得ないわけでございまして、その場合、検疫措置がそのとおり実行されれば、我が国病害虫侵入することはないというふうに考えております。  そこで、その場合、輸入された場合どのような影響があり得るかということでございます。お尋ねありましたが、植物検疫上の問題をすべてクリアをいたした、仮に輸入解禁になった場合どうなるかということでございますが、実際に我が国輸入されるリンゴ品質がどうなるか、それからそのときの価格がどうか、輸入量がどうかということは、現時点で予想することは大変難しい状況だと思います。国内生産にどの程度影響があるかということは、大変推しはかることは難しいと思っております。  ただ、あえて申し上げますと、日本リンゴ品質は大変世界的に見て高いレベルにございまして、これと同等に競争できる品質のものを他国で生産するということになりますと、相当の品質管理が必要となると思われます。生産コストが相当かかることが見込まれます上に、輸送費も必要になりますので、仮に輸入される事態になっても、大きな競争力を持つことはないのではないかというふうに思っているところでございます。
  9. 木村太郎

    木村(太)分科員 予想はなかなか難しいということでありますし、また、今の御答弁を聞きますと、フランスオーストラリア産の方では、手続的には現地確認等既に入っているという印象を私今受けました。国内生産者が懸念することは、外国産リンゴ我が国輸入されることによって、未侵入病害虫である、先ほどありました火傷病コドリンガチチュウカイミバエなどが侵入することが最も危惧されております。私は、これら防除技術が完全に確立するまでは、輸入解禁を行わないよう、改めて皆さんにお願いしたいと思います。  我が国輸入を求めている国々防除技術そのもの先ほどもありましたけれども、その技術そのものをどのように農水省としてとらえているのか、ここをお伺いしたいと思っております。  また、仮にこの防除技術面において問題なし、それは輸入解禁ということになりますが、もし万が一国内において、輸入解禁後、未侵入病害虫発生したときは、アメリカニュージーランド産の輸入解禁時から取り上げられてきましたように、国において完全に撲滅するまで努力をいただきたいと思いますし、また損失補償というものもきちんとすべきだということをいま一度確認したいと思います。
  10. 高木賢

    高木(賢)政府委員 各国防除技術は、基本的には臭化メチル薫蒸という殺虫技術基本になっているかと思います。それに加えまして、薫蒸の量とか時間にもよるわけですが、あわせて低温処理ということを加えて殺虫する、フランスなどは低温処理を加えるという殺虫技術をやっておるわけでございます。こういったものは、いずれにいたしましても、我が国専門家自身がきちんと現地にも出向きまして、その技術有効性について確認をするというプロセスを必ず踏むということになっておりますので、防除技術の問題としては、それぞれの専門家クリアを経るということが大事だと思っております。  そこで、さはさりながら、万一、病害虫侵入したらどうなるのか、こういうお尋ねでございますが、これはもう組織的かつ早急に対応して撲滅する、これが基本でございます。こういう場合に備えまして、植物防疫法十七条におきましては、緊急防除制度を設けておりまして、これによって対応するということであります。その際の緊急防除に要する費用は、全額国庫負担で行うということにいたしております。  そうはいっても、入らないということがまず先決の大前提の問題でありますので、コドリンが等が万が一にも侵入することがないように、今後とも的確な植物検疫実施に万全を尽くしてまいる考えでございます。
  11. 木村太郎

    木村(太)分科員 ぜひ今後も、国の責任というものををきちんと持ち続けて対応していただきたいと思います。  次に、先週二十四日、アメリカ通商代表部バシェフスキー代表代行が、日本リンゴ輸入制度は排他的とし、WTO世界貿易機関に提訴する意向を示し、日米政府がきょうから三日間ハワイで開く検疫についての定期専門家会合でもし進展がなければ手続に入るとの報道がありました。  アメリカからは現在、先ほどもありましたが、ゴールデンデリシャスレッドデリシャス品種輸入されています。しかし、アメリカ側は、日本リンゴ検疫制度が不当な非関税障壁で障害となっていると主張し、「ふじ」やグラニースミス、ガーラ、プレーバー二の四品種についても日本が個別に実施する方針薬剤試験簡略化を求めているようでありますが、ハワイで開かれる会合で、アメリカ側は、私が今述べたようなことを主張するものかどうか。また、仮にアメリカ側要求を認めるとしたならば、さきに述べた最も心配する未侵入病害虫国内侵入する危険性が増大することを私は心配いたしますけれども、これについて農林省はどう考えているのか。むしろ、私は、リンゴも含めて農産物輸入増加対応して、検疫官増員など、検疫体制強化というものが常識的な考えだと思いますが、いかがですか。
  12. 高木賢

    高木(賢)政府委員 日米定期協議におきます私どもの考え方でございますが、まず、植物検疫につきまして、我が国輸入禁止されている植物輸入解禁に当たりましては、植物品種ごと殺虫効果確認試験要求をいたしております。  これに対しまして、アメリカは、品種によって殺虫効果に差はない、あるいは仮にあるとしても植物検疫上問題とならない程度のものであるということで、一たん、一つ品目のある品種、つまりリンゴのデリシャスなりの品種について殺虫方法が確立されれば、それ以後は、新たな品種追加に当たっては品種ごと殺虫効果確認試験は必要ないと主張をいたしております。  しかしながら、我が国といたしましては、品種ごと殺虫効果に差があるのではないかと考えておりまして、品種ごと殺虫効果確認試験は引き続き必要である、こう考えております。アメリカに対しましては、この旨協議の場で主張をするということにいたしておるわけでございます。  それから、輸入植物がふえるに伴いまして、植物検疫体制強化が必要になるのではないか、こういうお尋ねでございます。植物検疫につきましては、まず、外国からの有害動植物侵入防止ということで、植物輸入できる海の港並びに空港、これを定めております。その全国各地主要輸入港に植物防疫所の組織を置きまして、植物防疫官を配置をしているということでございます。  御指摘のように、最近、植物輸入の量がふえてまいりましたし、コンテナ化などの輸送技術が発展するということから、植物に付着して、生きたままで侵入する病害虫の種類もふえております。このために、毎年毎年植物防疫官増員を図ってまいりました。その結果、平成九年度の予定でございますが、七百七十九名の植物防疫官になる見込みでございます。一方、人だけではなくて、植物防疫所の施設の整備にも努めまして、植物輸入量的増加質的多様化対応しているわけでございます。  今後も、植物検疫を取り巻く情勢に対応できるように、検疫体制整備には努力してまいりたいと考えております。
  13. 木村太郎

    木村(太)分科員 前段の方では、アメリカサイド我が国考え方出発点からずれがあるような印象がありますので、今答弁あったように、ぜひ我が国主張というものを守り続けていただきたいというふうに思います。また、検疫体制強化にも今後一層努力をお願いしたいと思います。  次に、我が国リンゴ輸出実績というものが、平成七年度では二千四百トンでありました。特に、日本リンゴ品質、味ともすぐれた高級品として高く評価され、贈答用などの需要がある台湾との間で、先般、我が国産リンゴ輸入拡大で合意したと聞いております。  報道によりますと、WTO世界貿易機関に加盟申請している台湾が、我が国との間でリンゴについても対日輸入枠を設けることで合意し、その内容を見ますと、これまでリンゴは青森県だけに与えられていた六百トン枠を、関税率は現行のままで、ことしからは二千トンの全国枠輸入に拡大し、WTO加盟後は枠を撤廃し、日本からの自由化になるとのことでありますが、これについて農水省としてはどう評価しているのか。  さらに、我が国からの輸出量が増加すればマーケットが拡大され、国内生果価格調整にもよく働くと考えられますが、台湾における我が国産リンゴ輸入枠の運用などについて、現在農水省調整中で、まとまり次第、新制度のもと台湾輸入を始めるようであります。各生産自治体に枠の配分を行うかなどは未定で、もしかすると台湾側産地を指定する可能性もあると聞いております。これらについての対応をお伺いします。  いま一つ、対台湾についてはWTOに加盟した時点で枠が撤廃され、自由化となるわけですが、対台湾だけではなくて、我が国産リンゴ輸出拡大等、今後の方針、取り組みをどう考えているのか、お伺いいたします。
  14. 高木賢

    高木(賢)政府委員 台湾WTO加盟に伴う日台交渉の中で、台湾自身は今先生の御指摘のように自由化ということを目指しているわけでございますが、その一つ前の段階といたしまして、国産果実輸出拡大を図るという観点から、リンゴにつきましてWTO加盟前の前倒し枠要求いたしました。お話にありましたように、年間二千トンの輸出枠を確保したわけでございまして、一定の成果をおさめたものと考えております。二千トンの枠は我が国一律の枠として設定するというふうになっておりまして、県ごとの枠は設けないということであります。  それから、そういう自由化に移行する過程での台湾側の枠の設定ということでございまして、枠の管理我が国で行うことは難しいわけでありますので、ナシの枠管理と同様に、台湾側でこの管理は行うということになっているところでございます。  それからさらに、リンゴを含めました国産果実輸出振興につきましては、やはり国内果樹産業の発展を図っていく上で極めて重要と考えております。特に海外の評価も高いものでありますから、これを一層推進していく必要があろうかと思っております。  具体的には、新たな市場の開拓を図るための消費宣伝推進、それから相手国植物検疫上あるいは食品衛生上の条件を満たすための環境整備実施、これをやっていく。さらには、海外市場情報といいますか、消費動向といいますか、そういったものの情報収集をきちんとしていく。こういう対策を講じてまいりたいと考えております。
  15. 木村太郎

    木村(太)分科員 生産地もかなりの努力をしております。先ほどあったように、外国からも輸入しろという攻勢が強められてきているわけでありますが、我が国からむしろ今度は攻めていくという姿勢、先ほど局長さんの答弁では、日本リンゴはすばらしいと答弁にもありましたので、ぜひ国としてもその対応を、今後一層努力をお願いしたいというふうに思います。  次に、国際化リンゴ国際競争の激化、先ほど来質問しながら述べてきましたけれども、今後一層それが予想されるわけですが、生産者サイドに立った場合に、ウルグアイ・ラウンド関連も含めての生産体制強化、いま一つ消費者サイドに立っての安全なリンゴ供給体制について、国の対応をお伺いしたいと思います。  一つとして、生産者サイドのためにりんごわい化栽培等緊急推進対策事業、私たちよく園地若返り事業などと申しますが、こういった事業、あるいは優良種子あるいはまた種苗供給推進事業等があります。さらには防風ネット防霜ファンについての制度事業もありますが、これらの事業の今後の推進についてお伺いします。  いま一つ、万一、外国産リンゴ輸入増大等によって国内産市場価格の低下が見込まれるとき、落葉果実計画出荷促進事業により、国、県、農協があらかじめ造成しております基金を取りまし、農協等調整対策を行うための経費に対して助成を行うこととしておりますが、これらの充実と、また新たな施策を考えているのか、お伺いしたいと思います。  もう一つ農産物国内産地名、外国産については国名を表示することの義務化農水省が今進めておりますけれども、リンゴについては考えているのかどうか、お伺いいたします。
  16. 高木賢

    高木(賢)政府委員 リンゴの矮化など国内対策推進内容、方向でございます。  るる申し上げておりますように、リンゴ大変品質が高く、おいしいというのが国産の特徴でありますので、この特徴を生かしながら低コスト化を一層推進していくという必要があろうかと思います。  したがいまして、国産リンゴ生産対策といたしましては、一般の果樹対策並びにウルグアイ・ラウンド農業合意関連果樹対策によりまして、園地整備矮化栽培、お話のありました種苗対策推進、さらには内部品質の信頼性を確認できる選果施設の整備、さらにはお話のありました計画出荷の促進ということに努めてまいりたいと存じます。  具体的には、農業生産体制強化総合推進対策の一環といたしましてりんごわい化栽培等緊急推進対策事業実施いたしまして、リンゴ矮化栽培への転換、これとあわせて園地の改良や防霜施設の整備を進めてまいりたいと考えております。また、優良種苗供給確保事業によりまして、リンゴの優良な優性台木を利用した優良種苗の安定供給体制の確立を図ってまいりたいと考えております。また、いわば出荷の調整ということでは、中央果実基金に落葉果実計画出荷促進のための基金を積みまして、出荷量の時期的、地域的な集中で価格が異常に低落するおそれがある場合の出荷調整にこれを活用するということで取り組んでまいる考えでございます。  もう一つお尋ねの、リンゴの表示、原産地表示でございます。  これは、JAS法によります品質表示基準制度によりまして現在の青果物の何品種かが義務づけられているわけでございますが、これは、消費生活上重要な地位を占めるもの、また国産品とあわせて相当量の輸入品が市場に出回っているもの、原産地による品質格差の大きいもの、こういう三つの要件のもとにこれを今やっているわけでございます。  リンゴにつきましては、先ほど来お話が出ておりますが、輸入量は極めて少ない、それから、現実実態といたしましては原産地名は表示されているということでありますので、目下のところは国内生産地あるいは原産国の表示を義務づけるというところまでの必要はないと考えておりますが、今後の進展によりまして、あるいは原産地表示がこの要件に照らしても必要と認められる、こういう事態になる場合には、表示の義務化についても検討を行っていきたいと考えております。
  17. 木村太郎

    木村(太)分科員 実は、我が青森県のリンゴの歴史を見ても、明治以来取り組んできておりますが、しかし今、国内だけでなくて、外国産との競争ということで、生産者、地域が一体となって一つの大改革ということで必死に努力しておりますので、既存の制度だけではなくて、状況の変化に対応しての国のバックアップというものを心から強力にお願いしたいというふうに私は思います。  次に、国の農政全体ということを考えれば、全国一律型とよく言われ、批判もあるようであります。これに対して、言葉で言えば、地域重視型へ変えていくべきだというふうに思います。  例えば、主要な果樹においても、その品目別に、リンゴリンゴとして、事業の充実強化をすることも国際化対応する一つの手段だと思います。そのことを皆さんはどういうふうに思っているか。例えばリンゴの場合、先ほどもあったように、わい化栽培等緊急推進対策事業とありますけれども、この事業はミカンも対象になるということです。果樹の中でも、リンゴ事業は、ミカンの事業はというように、せめて主力果樹についてはそういう形での事業制度の整理をすべきではないかなというふうに思います。  さらに、農水省平成七年十二月に策定しました果樹農業振興基本方針の中でも、少なくともリンゴ、ミカンなどの主要な果樹については、果樹別に内容に触れるべきだ。そのデータとか資料の中では果樹名は記載されておりますけれども、内容においても主要なものは果樹別に触れるべきだというふうに思いますが、お伺いしたい。  いま一つ、時間が来ましたので、聞きたいことは、これは大臣にぜひ聞きたいのですが、私は、ミカンについては余り詳しくわかりません。でも、最もおいしい生産地は、生産量はさほど多くないようでありますが、大臣の出身の香川県なのかなというふうにも思っております。またリンゴを見た場合には、私は、日本リンゴは、先ほど局長答弁にもありましたけれども、世界一おいしくまた安全だというふうに思っております。特に青森リンゴはすぐれていると思っております。多分、大臣も同じ御認識かと信じておりますけれども、今後の我が国リンゴ産業の振興のための大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  18. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 青森県は、我が国リンゴ生産量の中で約半分、世界に冠たる品質リンゴをつくっておられるわけでございまして、先ほどからいろいろな委員の御質疑を通じて、我々も、この高品質我が国リンゴをこれからも育成していく、盛んにしていくためにいろいろなことを考えているということにつきましては、先ほどから政府委員から答弁させていただいたわけでございまして、今後、消費拡大策とともに、技術面におきましても強化策を通じまして足腰の強いリンゴを産業として振興していく、そのために力を入れていきたいというふうに考えております。
  19. 高木賢

    高木(賢)政府委員 基本的には今大臣の御答弁のとおりでございますが、冒頭の方に御質問がございました、品目別にもうちょっとはっきりしたらどうかというお尋ねでございます。  緊急にその特定目標を定めてやるような場合には、確かに特定の品目ということでの対策を講ずる必要があるというものが当然あるわけでございまして、それはそれで対応したいと存じますけれども、一般的に申しますれば、やはりいろいろな地域の、冒頭お話がありましたように、自主性に応じた選択ができるように統合メニュー化という補助事業を組んでいるわけでありまして、その中でその産地のそれぞれの選択で選んでいただければというふうに考えております。  また、果樹農業の振興の基本方針も、これもどこで線を引くかということではございますが、品目別に基本的なことを、見通しといいますか方針を定めまして、具体的な振興方針は、実態に応じて機動的、弾力的に対応するという観点から、関連の通達等で定めているところでありまして、要は基本をどう置くかということと弾力的にどうするかということの接点でございまして、その中で線を引いていきたいというふうに考えております。
  20. 木村太郎

    木村(太)分科員 どうもありがとうございました。
  21. 菊池福治郎

    菊池主査 これにて木村太郎君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  22. 上原康助

    上原分科員 どうも、藤本農水大臣初め農水省の皆さん、御苦労さんです。  限られた時間ですので、余り農水大臣お尋ねする機会もないものですから、この分科会をおかりして、少し農業問題をお尋ねさせていただきたいと思います。  今回の予算委員会を通して、農業関係予算についても非常に厳しい御指摘等があったことは御承知のとおりです、公共事業費を含めて。特にWTOとの関係で、いろいろ、大都市圏というか消費者が集中する都市と、あるいは農業生産というのをどうしても必要としている地方都市というか、地方とのこの農業に対する認識の違いというのも私は大変あると思うのですね。  そこで、これからの日本農業の省力化、いろいろやらなければいかない点はたくさんあると思うのですが、農業は国の基本であり、また人口問題、食糧確保等々とあわせて、やはり農水省にはしっかりした農業政策というものを年々新たに確立していくことが必要だと思うのですね。  そういう意味で、今後の新しい農業政策、特にこのウルグアイ予算とのかかわりで、均一化、画一化ということに対する指摘が強い中で、地方の農政のあり方、農業といってもこれは幅は広いわけで、稲作もあり、今お話がありました果樹園芸あり、私の出身地沖縄はサトウキビ等々が基幹作目であります。こういう多種多様にある日本農政、日本農業の実態というものを把握をして、これから希望の持てる農業、農村、中間地を含めて活力を生かしていくには、農水省としてはどうお考えなのか、まず農林大臣基本的な御所見をお聞かせ願いたいと存じます。
  23. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 大変重大な御提起でございまして、農政のこれからの基本的な方針は、私は、端的に申し上げますと、四つに絞られると思ケのです。  一つは、農業を魅力ある産業として確立をしていくということ。それから、生産の面からいたしますと、資源を活用して、生産力を維持強化をして、農産物の供給力の強化を図っていくということ。それから三番目は、消費者皆様方に対しては、良質で安全な食糧を安定的にしかも安い価格で供給していくということ。四番目は、住みやすく活力のある農村地域を建設していくということ。これがこれからの農政の基本でございまして、この基本方針に従っていろいろな施策を、今言われましたように、各地の特徴、特性に従って組み合わせていくべきものだと思っております。  後半のキビの問題につきましては、私も御承知のように沖縄開発庁長官の経験者でございまして、これが沖縄の基幹作物であるということはよく承知をいたしておりまして、この問題についても、価格の面を含めて、これからも、微力でございますけれども、お手伝いをさせていただきたいというふうに思っております。
  24. 上原康助

    上原分科員 確かに、新しい農業政策面でそういった柱を立ててこの二、三年来御努力をしていることを私もある程度承知をしております。  そこで、農業、特に日本農産物というのは必ずしも市場原理だけでいくものではない。だから、消費者生産者の認識の違いとかいろいろ、国会議員を見ても、大都市の皆さんの農業政策に対する、ウルグアイ・ラウンドを含めての六兆百億円に対する批判も厳しいですね。これはこれなりにまたきちっと、不必要な支出はすべきでないと思うんですが、やるべきことはきちっとやらないかないと思うんですね。  そういう意味で、価格支持制度というものも品目によっては必要になってまいりますし、そういったことをぜひ国民にも、もちろん消費者は国民であります、国民全体によく理解ができるように農水省としてはなお御努力を願いたいと存じます。  そこで、今、そういう観点も含めて沖縄の農業状況を見てみますと、基盤整備にしてもあるいは農業用水の確保、かんがいにしましても、いろいろな面で相当のおくれをまだとっているわけですね。そういう状況で、恐らく十年度以降の予算編成においては、厳しく農業構造改善とか基盤整備とかいろいろな面で抑制される傾向になることは間違いないと思うんですね。  そういう意味からすると、どうもこれまでの政府の予算の立て方というものは、北海道から沖縄までも画一化した中でやってきているわけですね、配分にしましても。そういう点は、後進県であるとか特にそういった必要性のあるところについては厚みを持たすとか、目配り、気配りということは私は必要だと思うんですが、具体的なことをお尋ねする前に、そういうことについてはこれから農水省はどういうふうにやっていかれようとするのか、お考えがあれば聞かしていただきたいと思います。
  25. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 私も全く同じ考えを持っておりまして、一般論といたしましては、例えば発展途上県、発展途上区域というものに対しては傾斜配分、またその上に選択的な傾斜配分という考え方基本的には必要であろうかというふうに思っております。  農業関係についてはいろいろ今まで取り組んできたわけでございまして、採択基準であるとか補助率であるとか、また地下ダムの問題も私は記憶に残っておりますけれども、そういうような事業も今までやってきたわけでございまして、これからも沖縄の農業の振興のために格別の努力はさしていただきたいというふうに考えております。
  26. 上原康助

    上原分科員 ぜひひとつそういう面で特段の御配慮をお願いをしておきたいと思います。  そこで、具体的に、やはり沖縄の農業の現状を考えてみました場合に、最近は畜産が非常に伸びて、サトウキビは農業生産額の中では二位の地位をやっと占めているという。野菜が、端境期を含めて非常に上昇気流にありますね。一方、花卉園芸等も近年著しく成長株だと見ていいと思うんですね。これはこれとして、沖縄の亜熱帯性、あるいは、この条件を生かして多角的な農業経営に私は改良、改善、省力化していくことは必要だと思うんです。  しかし、四、五百年の歴史を持つ、基幹作物と言われているサトウキビについては、いろいろハンディーはあります。後継者問題、これはキビ作だけじゃなくして、農業全般の国内問題だと思うんですが、等々いろいろなことを考えても、私はやはり沖縄の農業の横綱的存在というのはキビ作だと思うんですね。ややもすると、もう国際価格を比較しても、相当というか余りこの助成措置が大きいからだという意味で、キビ生産というものは考え直したらと、だんだんほかの作目に切りかえたらという意見がないわけでもありませんが、離島を含めて考えますと、まだまだ農民の数にしても農家戸数にしても、キビ作農家というのが日本の本土でいうと米作農家に匹敵する、この認識はぜひ農水省としても持っていただいて、サトウキビの糖分取引に移行をしていろいろ一時期困難もありましたが、ようやくそういうことにも農家もなれて、なれてというか、生産性を高めながらやろうという意欲にあるやさきでもありますので、ぜひこれからもいろいろな面で配慮をしてもらいたいと思うんですが、このことについてはどのような御方針を持っておられるのか、お聞かせ願いたいと存じます。
  27. 高木賢

    高木(賢)政府委員 御指摘のとおりサトウキビは、沖縄県農業におきまして、面積ベースでいきますと普通畑の約六割、農家数の三分の二を占める基幹作物であるというふうに認識をいたしております。したがいまして、甘味資源特別措置法に基づきまして沖縄県全域をサトウキビ生産振興地域ということに指定しておりまして、各般の対策を講じております。  近年、サトウキビの生産は、お話のありましたように、野菜とか花卉とかに転換するとか農業従事者の高齢化等がございまして若干収穫面積は減少はしておりますけれども、これの振興を図るということは非常に重要だと思っております。特に一番の課題は、品質取引の実施対応した生産性なり品質の向上ということで、特に、十アール当たり百二十九時間というふうに労働時間がかなりかかっております。この農作業の省力化ということが生産振興面での大きなポイントだろうと思っています。  そこで基盤整備推進をしているわけでございますが、あわせて現在重点を置いておりますのが農作業の機械化ということで、沖縄県に適した機械の開発利用の促進を図っているところでございます。また、あわせて、品質向上のための糖分の多い優良品種の供給、こういったものに積極的に取り組んでいるところでありまして、今後とも力を尽くしてまいりたいと考えております。
  28. 上原康助

    上原分科員 そこで、このサトウキビの生産振興を維持発展させていく意味で、今局長おっしゃいますように、一つは、土地基盤整備の促進というものは継続してぜひやっていただきたい。これは農業用水、かんがい用水含めてのことであります、圃場とか。  二点目に、生産条件の整備について。品質の向上、生産性の向上等々。特にバガスを利用しての土地づくりというものも農業団体あるいは農家から強い要望がありますね、こういうことにも配慮してもらいたい。  機械化の問題。私もこれはもう随分取り上げてきましたが、なかなかまだ全県的には行っていませんが、相当政府の御努力もあって進んできていることは間違いないですね。機械化体系の確立ということ。  そして、もう一つ病害虫防除対策ですよ。こういうことも、もっとソフトな面についてもぜひやっていただきたい。  特に私は、これは大臣農水省、皆さんにぜひ御理解いただきたいと思うのですが、試験研究の充実化ということについてもっと考えていただきたいと思うのですね。何で沖縄にサトウキビの試験場がなくして、種子島にあって沖縄にはない。沖縄にも僕はそういうのは必要だと思うのですよね。そういったことをもっと積極的にやらないと、この品質問題であるとか種苗の育成であるとか、高品質の栽培技術というものはやはりそういった公的な試験機関の中から生まれてくると思うので、これもお考えになっていただきたいということ。  農業共済制度の条件整備の問題。  そして最後というか、この問題での最後に、特にこれから、冒頭申し上げた農業予算とかいろいろな助成金の中で、我々が、沖縄側が懸念をしているのは、糖業振興助成金であるとかあるいは含みつ糖価格差補給金であるとか、こういうものにややもすると焦点が当てられて、ますます離島とか、これからキビ作振興を図ろうという中で、こういうところがいろいろな行財政改革等の中でやられますと、私はやはり県の農業というものは成り立たない面がますます来ると思いますので、今私が四、五点挙げたことについては継続的に、従来同様あるいはそれ以上に御配慮を賜りたいと思うのですが、いかがでしょう。
  29. 高木賢

    高木(賢)政府委員 今バガスのお話から始まりまして、各般の御指摘をいただきました。バガスのように既に八年度から予算化をいたしまして対応しているものもありますし、今後の検討課題というふうに思われるものもございますが、いずれにしてもサトウキビの振興ということをきちんと図るという観点から対応してまいりたいと存じます。
  30. 上原康助

    上原分科員 この糖業振興助成金とか含みつ糖保護の問題等はどういうふうにお考えなのですか。試験場の問題は。
  31. 本田浩次

    ○本田政府委員 糖業振興費その他の問題につきましては、いずれにいたしましても沖縄の基幹作物でございますサトウキビ農業の振興のためには、農業生産性の向上と同時に甘蔗糖企業の体質強化を図っていく上で大変重要な点でございます。御指摘を踏まえて積極的に対応していきたいというふうに考えております。
  32. 堤英隆

    ○堤政府委員 試験場の問題、それから農業共済の問題等ございました。  これは、糖分取引とかそういうことも含めての問題であろうかと思います。農業共済の方の糖分取引のお話につきましては、徐々にそういう方向で移行をしているというふうに承知をいたしております。  それから試験場の話につきましても、そういう御要請というものが非常に高いということは承知いたしておりますが、全体的に、サトウキビの生産振興なり、それから亜熱帯地域の農業振興をどういうように図っていくのかという観点の中で今後検討させていただきたいというふうに思っております。
  33. 上原康助

    上原分科員 この種の問題は、ここでやりとりしてすぐ決まることではないという気持ちは私もありますけれども、ぜひ大臣初め皆さんがこういう問題があるということは、おわかり一もちろんわかっていらっしゃると思うのですが。なぜ私がこれを言うかというと、時間がありませんから、今官房長官を座長にやっている沖縄政策協議会の中でもこういうことをもっと農水省が問題提起をしていただいて、積極的に農水省の力を発揮してもらいたい、こういう期待と要望、希望がありますので、その意味で申し上げているのでぜひ御参考にしていただきたいと思います。  そこでもう一つは、これは大蔵委員会でむしろ取り上げるべきことなのですが、沖縄の泡盛産業のことについて、税制面においでしょうちゅう甲、乙類を含めて相当、五カ年で二・四倍にするということで、これは大問題なのですね、本当は。だが、これはWTOとの絡みとか国際的ないろいろな関連がありますので、余りだめだということは主張できない状況にあります。  そういう前提で、私は、沖縄の泡盛生産の原料になる米は、おわかりのようにタイから輸入しておりますね。この価格差が、実際の現地で仕入れる価格と、国の方で、政府で、農水省管理をして泡盛業者の皆さんが受ける価格とは相当開きがあるような感じがするわけです。これも、これまでも何回かその理由とか仕組みについては説明も受けておるわけですが、税制面でどうしてもそうせざるを得ないというならば、国内的に何とか中小規模の泡盛業者の皆さんが生業が成り立つように配慮するということは、私はまた政治の、行政の温かみだと思うのです。そういうことについてぜひ御理解と、何らかの方策を打ち出していただきたいと思うのですが、お考えがあればお聞かせ願いたいと存じます。
  34. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 これまで沖縄の泡盛用のタイ産米の売り渡し価格につきましては、輸入される米の品質国内での市場価格、加工原材料用米穀の価格との整合性を勘案し、これまでも、平成元年、平成六年、引き下げを行ってきたところでございますが、今後、加工原材料用米穀の価格体系を見直す中で、泡盛の現状などを考慮しながら事務局に検討させることといたしたいと思います。
  35. 上原康助

    上原分科員 ぜひこれは改善措置をやっていただきたいと思うのです。  今事務当局にそういう検討を御指示なさるという大臣の御答弁ですからそれに期待をいたしますが、よくはわかりませんが、泡盛原料米の輸入価格がトン当たり四万から五・五万程度、売り渡し価格が十万か十一万、十万五千くらいでしょうかね。そうしますと、現在でその差額が五、六万もある感じがするわけですよ。ここは余りにも大き過ぎるんじゃないかと思いますので、その点、ぜひ考えていただきたい。もしそれがどうしても不可能というなら、沖縄の泡盛業者が、何か共同でタイから直接買い入れすることの、これも規制緩和という面ではできないこともないんじゃないかと、よくそういう相談も受けたりするし、私も、それができればなおいいんじゃないかと思うのだが、また、そうすると、しょうちゅうをつくるほかの業者もみんなそうなったら困るとか、いろいろ耳にするのですが、その点はいかがでしょう。もし御見解があれば聞かせてください。
  36. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 先ほど大臣が、タイ産米の売り渡し価格考え方を申し上げたわけでございますが、これは、今先生もおっしゃられましたように、ほかの競合するものとの関係がございます。そういった加工原材料用の米の価格体系というものの中で泡盛用の原料の価格が決まっておるわけでございます。  また、泡盛の業者が直接輸入する道を開くというような御提案がございましたが、これは、現在のWTO協定以降、国で、いわゆる国家貿易のもとで米を扱うということになっておりまして、そういう意味で、これは、国で輸入し、加工原材料用についてはいろいろな価格体系の中で決めていく、こういう仕組みになっているところでございまして、御理解をいただきたいと思います。
  37. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 先ほど、事務当局に検討させると申し上げたわけでございますが、その意味を十分御理解いただけておると思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。
  38. 上原康助

    上原分科員 先ほども申し上げましたが、そのことに期待をいたします。ぜひ改善措置をとっていただきたいと思います。藤本大臣、第十六代の沖縄開発庁長官もなさったし、恐らく泡盛の味は相当おわかりであると思いますので、ぜひひとつ、低価格で立派な泡盛がつくれるようにお願いをしておきたいと思います。  あと二、三分ありますから、最後に、ウリミバエの技術の国際貢献問題で、私は前から、これは沖縄にせっかくの技術が、蓄積があるわけだから、もっと国際貢献という面でやったらという提案もし、また、農水省もそういうお考えだということでこれまで聞いておったのですが、田名部農水大臣のときにも、ODA面で積極的に活用していこうという方針だということだったのです。その後、余りこのことについて、沖縄側の提起がないのか、あるいはまた相手国がそれを必要としていないのか、よく事情は知りませんが、この件についてどういう実情なのか、あるいはまた政府としてどのように活用していかれようとするのか、もしお考えがあれば聞かせていただきたいと思います。
  39. 高木賢

    高木(賢)政府委員 ウリミバエの技術につきましては、平成五年に約二十二年の歳月をかけて達成されたということで、世界的にも例を見ないものとして、諸外国からその根絶技術につきまして強い関心が寄せられております。具体的にどう動いているかということでございますが、このウリミバエの被害に悩む東南アジアの国、あるいはチリとかの南米諸国、こういうところから研修生の受け入れについてお申し出がございまして、これまでに二十カ国、延べ四十六名につきましてミバエ根絶技術に関する研修生の受け入れを行いました。この研修生を軸としまして、それぞれの国が防除技術の開発普及ということに取り組んでおられるというふうに伺っております。  例えば、チリにおきましては、平成二年から研修生を中心としたミバエ根絶ということに取り組んでおりまして、かなりの成果を上げているというふうに聞いております。また、研修生が帰国した後、これをほっておくということではなくて、さらにフォローアップという意味で、我が国から専門家を派遣をいたしまして技術的指導を行っているところでございます。このように、ミバエの根絶技術につきましては、関係国からの御要請に応じて、いわば技術移転をしているわけでございますが、着実に関係国に普及しているというふうに考えております。  なお、今後、ミバエに関する諸外国の研修生の受け入れ、あるいはその後の技術的指導についての御要請があれば、積極的に対応してまいりたいと考えております。
  40. 上原康助

    上原分科員 ありがとうございました。時間ですから、終わります。
  41. 菊池福治郎

    菊池主査 これにて上原康助君の質疑は終了いたしました。  次に、遠藤和良君。
  42. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 全国屈指の真珠の産地として知られております愛媛県の宇和海で、今真珠母貝であるアコヤガイの大量死という異常事態が発生しておりまして、現地の報告によりますと、被害総額が百八十三億円に達するのではないか、それで、さらにふえそうな勢いでございまして、最も激しい地域では、売上高が平年の一割以下、こういうような事態も出ている。当地では、真珠がその地域の基幹産業でございますから、それがこうした状態になるということで、真珠業界で働く若者とか女性が職を失いまして、地域経済全体に大きな影響を及ぼしている、こういう状態になっています。  私も、そうした異常事態にかんがみまして、去年の十二月十五日に現地に参りまして、漁業者の皆さん、漁業組合の皆さんのお話を聞きました。それから、真珠のいかだの方にも船で参りまして、実態を見てきまして、いろいろ聞いたわけでございますが、この原因がまだ今特定されていないのですね。原因については、地元の愛媛県の水産試験場は、その最大の原因は真珠の母貝の密殖、たくさん集中的にやる密殖と、不適切な作業形態であるとか、あるいは、それに高水温とえさ不足が加わった複合的な原因であるということを分析しているわけですけれども、それについて地元の漁業者の皆さんは納得していない、こんな状況があります。  その一つの原因が、水産庁が極力使用してはいけませんといって通達を出しているにもかかわらず、いまだに使われているホルマリンの問題ですね。これは、養殖するトラフグのえらにつく虫を駆除するために使っているようなんですけれども、それがこの真珠貝へい死の原因ではないかということをおっしゃる漁民の方もいらっしゃいます。この原因の究明ということが一つの問題であります。  それからもう一点は、今被害を受けている人たちをどういうふうに援助できるか、助けてあげることができるか。あるいは、地域全体の基幹産業でございますから、それをどういうふうに認識をして、これが今後も地域の基幹産業として継続し得るように、どういう協力ができるか、この辺が私は問題点だと思うのです。  去年の十二月十八日、私は、直接橋本総理大臣の方に文書でこの対策について申し入れをさせていただいたわけでございますが、本日は、四国の農水大臣でもございますから、ぜひ積極的な御答弁をお願いしたいと思うわけでございます。最初に、この真珠の異常事態についてどういうふうな御認識を持っていらっしゃるかということを大臣から聞きたいと思います。
  43. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 委員からお話がございました、私も香川の人間でございますし、委員も徳島の方でございまして、お互い四国の問題には特に格別の関心があるわけでございます。愛媛県で大量な真珠の母貝が被害を受けている。しかも、これは地元にとっては大変大きな産業でございますし、また被害額も非常に大きい、今言われたとおりでございまして、かねがね非常に心配をしております。  問題は、今原因の調査をいたしておりますけれども、その結論がまだ出ておりません。今行っております調査は、三月末には結果が出る、こういう状況でございます。その調査の結果を踏まえまして、いろいろな対応、また対策が出される、出すことができるというふうに思っておりますけれども、その点については、愛媛だけじゃなくて、全国的に何カ所か被害を受けているところもあるわけでございますので、非常に重大な問題であるという認識のもとに一生懸命にこれは努力をいたします。  それから、この漁業共済の問題もございまして、こういう機会に共済への加入ということにつきましても、ぜひ皆さんの御理解をいただかなければならぬ問題だというふうに思っておりますし、また、とりあえずこの経営安定のためにいろいろな融資ということもございますから、そういうことも我々としては対応の中の一つの問題として考えておるわけでございます。
  44. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 冒頭に大臣から非常に率直で大切なお話をいただいたわけでございますが、この機会に具体的な話をちょっとお聞きしたいのでございます。  水産庁といたしましては、この愛媛県の被害の実態をどのように見ているのか。それから、原因究明でございますけれども、具体的にどういう研究機関でやっているのか、どういう観点に基づいて研究をやっているのか。今大臣から三月末に結論を得るというお話がありましたが、そうしたものを総合的に、三月末にはきちっとした、はっきりした原因の特定ができるのかどうか、この辺の見通しについてお伺いしたいと思います。
  45. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 まず愛媛県におきます大量死の実態ということでございますけれども、これは昨年の十二月現在で集計したものでございます。愛媛県におきますへい死率は、真珠養殖段階の当年物で五五%、それから母貝養殖段階で五六%と、例年に比べますと二〇から四〇%高い数値となっております。  それから次に、原因の調査でございますが、これにつきましては、現在水産庁において関係の水産研究所を中心に調査を進めているところでございます。これまでの調査を見ますと、先ほど大臣から答弁されましたが、環境面から見た場合には、夏季に高水温が継続した、それから夏場の少雨でありますとか、それから黒潮などの外海水の混入等によりまして、海域の貧栄養化に伴いまして、えさとなる植物プランクトンの量が低下したことなどが、今回の大量へい死の要因となった可能性が高いと思われているわけでございますが、さらに広範なデータの収集に努めながら、引き続き調査検討を行っているということで、これにつきましては三月末、言うなれば平成八年度中に調査の結果を取りまとめたいというふうに考えております。  これは環境面から見た調査でございまして、なお病理面でありますとか、生理面から見た調査につきましては、引き続き今後行っていきたいと考えております。
  46. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 今のお話について二点確認したいんですけれども、一つは、アコヤガイのへい死率のお話があったわけでございます。この率で死んじゃったということになると、被害金額、この算定は、要するに単価を掛けなければいけないわけです。地元で百八十三億円というのは、去年の単価で計算をして百八十三億円という数字が出ているわけですが、ことしは単価が上がっていると思いますね、量が少なくなっていますから。そうすると、その単価を掛けた計算をすると、大体どのぐらいの被害総額、金額ベースですが、になるのかということ。  もう一点は、原因究明でお話がありましたが、広範な検討を視野に置いて原因究明をしていくということですが、その中にホルマリンとの関係、それが入っているのかどうか、この二点、確認します。
  47. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 まず、被害額でございますけれども、これにつきましては、確かに先生おっしゃいますように、単価を掛けて計算することになるんだろうと思います。ただ、この単価につきましても、各地域によりまして品質も異なりますので、一概にその平均単価というのをどのように見るかという難しい問題がございます。そういうことで、あえて乱暴な計算をいたしますと、大体二百億程度じゃなかろうかというふうに推察されるところでございます。それから、先ほどの調査の中で、ホルマリンについて調査が入っているかどうかということでございますが、先ほど申しましたのは、環境面からの調査でございまして、ホルマリンにつきましては、先ほど申しましたように生理面、病理面等を含めまして、現在、調査をこれから行おうとしているところでございます。
  48. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 ホルマリンについての水産庁の認識ですけれども、昭和五十六年ですか、それから平成八年の二回にわたって、水産庁長官通達という形でホルマリンの使用を極力避けるようにということを出しているわけですね。この通達が本当に守られているのかということを確認したことはありますか。
  49. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 この養殖業者におきますホルマリン使用の指導でございますが、今先生言われましたように、五十六年に水産庁の長官通達で出してございます。これにつきましては、食用に供されるおそれのない魚卵でありますとか、稚魚の消毒などにやむを得ず用いるとき以外には使用しないよう指導する、使った場合におきましても、薬剤として使用したものを吸着し、または中和するための措置を講ずるなど、環境への影響が生じないように十分配慮しろという通達でございます。これにつきましては、折に触れまして関係業界に対して指導しているわけでございます。
  50. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 今問題になっているのは、養殖のトラフグに使っているという話ですから、これは食用に供されるものですよね。そうすると、この通達に対して、それが守られていないということになるわけでございますが、これはきちっと守っていただくために出すのが通達だと思うんです。その辺について、今後きちっともう一回例えば通達を出し直すとか、その通達が徹底されるように何かきちっとした、例えばその業者との間で自主規制をきちっと担保できるように監視委員会のようなものを国や自治体が入ってつくるとか、そういうことをしなければ、ただ通達の出しつ放しということになるのではないでしょうか。
  51. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 このホルマリンの使用についてでございますが、今回のこの大量へい死を一つの契機といたしまして、養殖業者の団体でありますところの全国かん水養魚協会、全かん水と言っておりますが、これが昨年の七月十八日に、ホルマリン使用につきまして、ホルマリンは全面使用を禁止するということを決定しております。  なお、水産庁といたしましても、先ほどの通達のさらなる趣旨の徹底を図るべく、再度、昨年の八月二十一日で、趣旨の徹底を図るための通達を行ったところでございます。
  52. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 ですから、業者の方も全面使用しないということをおっしゃっているし、水産庁も使用しないようにと言っているわけですが、実際に使われている、こういう実態が各地から報告されているわけですね。ですから、それをきちっと、そうした自主規制ですね、法律で規制するわけでありませんから自主規制になると思いますが、それがきちっと担保できるようにフォローすることは大変大切なことだと思うのですね。これをきちっとフォローしますということを水産庁はきちっと答弁を願いたいと思いますが。
  53. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 これにつきましては、おっしゃるように、通達の趣旨の徹底を図りますとともに、そのフォローにつきましても今後できるだけしていきたいと思っております。  なお、こういう指導を行うとともに、やはり一番大事なのは、この代替医薬品の開発をしていくことが大事だと思いますので、これにつきましても今後とも努力していきたいというふうに考えております。
  54. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 厚生省に聞きたいのですけれども、トラフグ業者が扱うホルマリンですが、これは、要するに毒劇法ですかに定められた正規の手続がとられなければいけないわけでございますが、それがきちっととられているのかどうかということを調査していると聞いています。ところが、愛媛県については調査していないのですね。それはどういう理由ですか。
  55. 植木明広

    ○植木説明員 お答えしたいと思います。  お尋ねの調査につきましては、近時、トラフグの養殖業者がホルマリンを寄生虫の駆除のために使用するとの実態が明らかになりましたところ、劇物であるホルマリンの取り扱いが適切に行われているかどうかを確認する必要がありますことから、本年の一月八日付で、各都道府県に対しまして、平成八年にホルマリンを使用したことのあるトラフグ養殖業者を対象といたしまして、これらの業者が盗難防止措置をきちっと講じているかどうか、また、貯蔵庫に「劇物」と表示するなど、毒物劇物取締法の規定を遵守しているかどうか、また、これらの業者にホルマリンを販売しました者が毒劇法による販売業の登録を受けているか否かにつきまして、調査を行うように指示したものでございます。  調査に当たりましては、事前に各都道府県に対しましてトラフグ養殖業者の有無やトラフグ養殖業者が過去一年間にホルマリンを使用したことの有無につきまして照会を行っております。その結果、愛媛県につきましては、この事前の照会におきまして、県内に存在するトラフグ養殖業者は六十四でございましたが、いずれの養殖業者につきましても平成八年にはホルマリンを使用していない、そういう報告を得ましたために、この本年一月八日付の毒劇法に基づく本調査の対象とはしなかった、そういうことでございます。
  56. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 任意で調査をしているわけですから、報告がないところに調査はできない、こういう認識だと思うのですね。しかし、実際には、使ったとおっしゃっている方もいらっしゃいますし、あるいは地元の新聞の取材に答えて具体的に使ったことをおっしゃっている人もいるようでございます。報告がないから調査はできないんだということは理屈としてはわかるのですけれども、実際にそうした姿が散見されるわけでございますから、これは、念入りに聞き直すとか、実際にどういうふうに使われているのかということを丁寧にお聞きになった方がいいのではないかと思うのですね。中には、ホルマリンを使うことが許可されていない人が扱っているのではないかというような話もありまして、これになると法律に触れるわけでございますから、そういうところをきれいに、真実の姿と御報告とが少し乖離があるような感じがするものですから、丁寧に調査をしていただきたい、これを強く希望したいのですが、いかがでしょうか。
  57. 植木明広

    ○植木説明員 御指摘のような、トラフグ養殖業者がホルマリンを使用しておるというような情報につきましては、改めて愛媛県に照会をいたしまして、トラフグ養殖業者がホルマリンを取り扱っている実態があるかどうかということを確認をいたしまして、そのような実態がございますれば追加して調査を実施いたしたいというふうに考えております。
  58. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 私の方からも、十分に調査をするように指示をいたします。
  59. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 ホルマリンにかわる新しい医薬品の開発ということを先ほどお述べになったようでございますが、具体的に今年度、予算がついているのかどうか。それから、安全で安価な水産用医薬品という概念になるのでしょうか、これに対して継続して予算措置をとって開発していくと。開発のめどのようなものがはっきりわかっておりましたら、お聞きしたいと思います。
  60. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 ホルマリンにかわります代替医薬品の話でございますが、水産庁といたしましても、ホルマリンを使用しなくてもトラフグのえらにつきます寄生虫、ヘテロボツリウムといいますが、それの駆除ができますように、ホルマリンにかわります医薬品の開発を早急に行うことが非常に大事だと考えておりまして、現在、学識経験者などの意見を聞きながら、既存の動物用の医薬品をこのトラフグの寄生虫の駆除に用いることができないかという調査を進めております。  これにつきましては、現在、八年度の予算をとりまして、日本水産資源保護協会に委託しまして、そこでもってこのヘテロボツリウムの権威者の方に集まっていただきまして、ホルマリン代替品として可能性の高い動物用医薬品の調査でありますとか代替品の有効性の評価でありますとか、それから代替品の安全性の評価でありますとか、各般にわたりまして現在調査しております。  いつごろかという話がございましたが、早ければ九年度内にも代替医薬品についての開発のめどがっくのではないだろうかというふうに考えております。水産庁としても、できるだけこれは支援していきたいと思っております。
  61. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 それから、厚生省にもう一点確認をしたいのですが、養殖トラフグのホルマリンの残留実態の調査をする、これは、食品衛生法に基づく検査ということになるのですが、これを各都道府県に通知したと聞いていますが、これの方は愛媛県もちゃんとやるということですね。
  62. 森田邦雄

    ○森田説明員 御説明いたします。  養殖トラフグのホルマリンの使用実態について調査しておりまして、その結果、十一の自治体が使っていたり、あるいはその疑いがあるということでございまして、その自治体におきまして、現在養殖トラフグのホルムアルデヒドの検査を行っております。二月末までの結果、これは三十四検体やっておりますけれども、その結果では、ホルマリンの使用によると考えられる残留は認められておりません。  また、愛媛県におきましても、使用の実態、これは使っていないということでございますけれども、一応検査を行っております。現在までのところ九検体検査しておりますが、このホルマリンの使用に基づく残留というものは認められておりません。
  63. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 大臣が最初にお触れになりましたけれども、いわゆる被害を受けた真珠養殖業者の方でございますが、この方々に対する救済措置として、いろいろな措置があると思いますけれども、例えば低利とか無利子の経営、生活資金の融資をしてあげるとか、あるいは今たくさん貸付資金をいただいているわけですが、こんな状態ですから返還ができなくなっているのですね、その返還の猶予、先延ばしあるいは利子補給をしてあげるとか、そういうきめ細かなものがありますね。それから、大臣が最初に述べられました共済保険の方も、加入率が非常に低いのですね。これを啓蒙することが大切なのですが、やはりもう少し皆さんが入りやすい保険制度にしていく。  いずれにしても、当地域では基幹産業ですから、こういう異常事態を機に基幹産業がなくなってしまうと大変な社会問題にも発展するわけでございますから、そうした面で、非常に大切な、政治的な取り組みが必要なのではないかと思います。やはり、この問題で一人も路頭に迷うような人が出ないようにする、あるいは実際、地域にもう活気がなくなっているのですね、そういうことがないように責任を持ってやるという大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  64. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 先ほどからいろいろな御意見を承りながら、私も同じ考えでございます。  特に、地元からいたしますと、地元の経済、またそれによって生活をしている方々も多いわけでございますから、今回の被害につきましては、この対策というものは十分な対策をしていかなければならない、できる限りのことをしていかなければならないということがまず基本にございます。  そういう観点からいたしますと、生活安定、経営安定のための資金が円滑に関係者の皆様方に融通されるように、それは系統を通じまして私ども十分に指導してまいりますし、またこれからもそういう方針で取り組んでいきたいと思います。  それから、共済問題は、こういう時期に皆様は恐らくこの共済の必要性を十分御理解いただいておると思いますので、こういう機会に共済制度に加入していただくように十分にお願いしていかなければならぬというふうに思っております。  いずれにいたしましても、被害を受けておられる方々に対しては、農林水産省として十分なことをやらせていただく、こういう考えでおります。
  65. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 ありがとうございました。  最後に、労働省に来ていただいているのですが、離職者対策について、労働省の方も全力を挙げてやっていただいているところでございますが、現況の報告と、今後も本当に路頭に迷う人が出ないようにきちっとした方針で望んでいただく、こういうふうな労働省の見解を述べていただきたいと思います。
  66. 浅野賢司

    ○浅野説明員 御説明いたします。  労働省としましては、真珠養殖業から離職された労働者の方々に対しまして、現在六十三名というふうに把握しておるわけですけれども、公共職業安定所におきまして、雇用保険法に基づく求職者給付を支給しております。現在四十名ございます。また、職業に関する相談とか職業紹介を行いまして、再就職の促進に努めているところでございまして、現在十四名の方が決まっております。  今後とも、特に宇和海を管轄する宇和島公共職業安定所におきまして、離職者の希望職種に応じました求人の開拓や合同選考会を行いまして、離職者の再就職の促進に努めてまいりたいというふうに思っております。
  67. 遠藤和良

    遠藤(和)分科員 大変ありがとうございました。特に、藤本大臣から大変力強い御答弁を賜りまして、ありがとうございました。  できれば、今、国会開会中でございますが、もし閉会になりまして時間がございましたら、一遍現地の方にもお出かけいただいて、皆さんを激励していただければ大変ありがたい、こういう要望を述べまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  68. 菊池福治郎

    菊池主査 これにて遠藤和良君の質疑は終了いたしました。  次に、佐々木洋平君。
  69. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)分科員 新進党の佐々木洋平です。  きょうは、大臣ほか皆さん方に、ちょっと変更しまして、新食糧法について御質問をさせていただきます。  大臣にお伺いしますが、戦後の農政の象徴とも言われます食管制度が抜本的に改正され、新食糧法が施行されましてはや二年を迎えることに相なりました。これは、基本的に言いますと、政府食管から農協食管への移行ということになろうかと思います。  具体的には、米の構造的な過剰を事前に抑えるということも含めて農協主体の生産調整を行うのだということが第一点、二点目は農協による備蓄、調整保管をするのだ、そして米の供給を弾力的、安定的に実施するために自主流通米を中心とした計画流通体制をつくる、これが具体的な方向だと思いますが、いずれも行政主導から農協主導へと移行ということに相なるわけでございますけれども、これによってより効率的な調整機能を目指すという新食糧法のねらいであったろうと思います。  ここでお伺いしますが、大臣、この新食糧法の評価についてお伺いいたします。
  70. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 食糧法の施行以来一年余りが経過したばかりでございまして、この評価を下すことにつきましては、現段階におきましては時期尚早なものがございます。しかし、この間幾つかの評価を私どもはさせていただいておるわけでございまして、その点について申し上げてみたいと思います。  まず第一番目は、新食糧法の一番の目的でございます計画に即した生産調整実施が今できている。それから二番目には、時期的にも地域的にも偏りのない計画的な流通の確保が行われている。それから三番目には、販売業におきまして新規参入の大幅な増加が可能になりまして、そういうことによって流通規制の緩和が実現している。それから四番目には、備蓄、調整保管の適切な運用を通じまして供給過剰分につきましては市場から隔離することが可能になった。こういうことの確定的な評価を下しますにはなお時期尚早でございますけれども、一応我々としてはそういう評価をしておるわけでございます。  今後ともこの新食糧法を、施策を的確に実施をしてまいりまして、その効果を着実に定着させていくことによりまして、食糧法の最大の目的でございます米の需給と価格の安定が図られるように努めてまいる所存でございます。
  71. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)分科員 ただいま大臣から評価は時期尚早という話がございましたけれども、お示しがあったわけです。  実は、昨日の新聞に、岩手県の東和町で九八年度の生産調整を廃止する、そして減反については農家の自主性に任せるというような方針が出されたわけでございます。これは、私から言わせれば、この新食糧法に対する異議ありということではないのかなというふうに受けとめます。  そこで、この東和町の問題については最後にコメントを大臣からいただきたいと思いますが、るるこの新食糧法についての問題点を指摘をしていきたいというふうに思います。  まず、備蓄政策、備蓄制度でございますけれども、実は政府の在庫計画で九六年度は政府米、自主流通米の在庫は二百三十万トンを見込んでおった、しかし実際は二百九十四万トンということで、六十万トンも多くなったわけでございます。  その理由はいろいろあるわけですけれども、自主流通米についてはそれなりの販売ができた。ただ問題は、政府米の売れ行きが大幅に落ち込んだ。計画の百八十万トンが実際は二百五十五万トンと大きく膨れ上がった。中でも、外国産米四十三万トンのうち三十万トンも売れ残った。これが今回の計画流通制度で最大の誤算であったのではないかというふうに思います。  前の食管制度ですと、卸に対して強制売却というものがあって、そういう制度でやっておったのですが、この新食糧法になりますと、卸は実は自由米も含めて自由に仕入れることができるということに相なります。またいろいろと政府米が高いのではないかという声も聞こえるわけでございます。そういうことを考えますときに、新食糧法の下で米価審議会、米価の決定というのはどういう意味をなすものなのか、私は非常にこの辺を不安に感じるわけでございます。  それともう一点、この新制度の備蓄制度は余りにも備蓄の必要性だけを強調されて、その具体的なメカニズムあるいは運営方針というものが全く議論されないままに、一年古米での回転備蓄方式といいますか備蓄方式、それが制度化されたというふうに思われます。毎年このように百五十万トン近い古米が供給されるということになりますと、米市場はもちろんでございますけれども、大変深刻な事態になるのではないかというふうに思われます。  そこで、備蓄米、政府米ですけれども、これをやはり一年ごとに多い部分を一部棚上げし備蓄にする、棚上げ備蓄方式といいますか、そしてその棚上げ備蓄したものについては安く、財政負担となるわけですけれども主食以外のものに払い下げていくということにしなければ、どんどんたまる可能性があると私は思うのです。その辺、御見解をお伺いいたします。
  72. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま何点か御質問があったわけでございますが、一つは米価審議会といいますか、今の食糧法の中での米価決定の意味が一点あったと思います。  これは法律上、政府米の標準売り渡し価格ということでございますが、米穀の需給動向それから家計費並びに物価その他の経済事情を参酌して、消費者の家計を安定させることを旨として米価審議会の意見を聞いて決める、こういうことになっておるわけであります。これは今法律の文言を申し上げたとおり、消費者の家計を安定させるということが一つのねらいでありまして、やはりそういった点でこの標準売り渡し価格は必要なものだと私ども考えております。  ただ、今先生も御指摘のように、主体は自主流通米ということになっている。そちらは価格形成センターで一定の需給動向等を反映して指標価格が決まる、こういうこと。そういったこととの関連を考えなければ、政府米について、備蓄米ですけれども、なかなか売れなくなるのではないか、こういう御指摘かと思います。  そこで、この標準売り渡し価格というのを基準にいたしまして、政府米を実際に販売する際には予定価格を立てます。この予定価格を立てる際に、私どもはこの標準売り渡し価格を基準にはいたしますけれども、実際の自主流通米の価格動向、また需給動向をにらみながら予定価格を決めて、私ども弾力的売却と称しておりますが、実際の段階ではそういう手法も取り入れて売却をしておるということでございます。  また、備蓄の点でございますけれども、この備蓄制度が食糧法に位置づけられた背景は、もう先生御案内のとおりでございまして、平成五年の大不作がございました。これは作況七四という未曾有の大不作でございまして、国内産米による安定供給ができなくなったことから、大量の外国産米の緊急輸入を余儀なくされたところであります。大体二百六十万トンぐらい輸入したわけであります。  こういったことを背景にいたしまして、それまでの備蓄政策といいますか、それについて国民的な議論が巻き起こったわけでございます。要するに備蓄を充実すべきだということでございました。備蓄水準につきましてはいろいろな議論がありましたが、年間消費量の半分、五百万トンぐらいは持っていたらいいのではないかという、今でいえばかなり極端な意見もございましたし、今御指摘の備蓄の方法につきましても、回転備蓄ではなくて棚上げ備蓄だということもございました。  ただ、いろいろな議論を経まして、いろいろな検証もいたしまして、食糧の安定供給のために必要なコストとして、国民的な負担として理解されるのはどの範囲かということで議論がなされたわけでございますが、政府が備蓄の中心となるということ、それから備蓄の水準は百五十万トンプラスマイナス五十万トンということでございまして、百五十万トンプラス五十万トンを超えるというものにつきましては、基本的に生産者団体が調整保管をしていく、市場から隔離する、こういう手法をあわせてとる、こういう仕組みになったわけでございます。  現在の政府の在庫水準は大体二百二十万トンぐらいでございまして、そういった点からは若干厚目の水準になっている。また一方では、調整保管が五十万トン強、これは民間が持つわけですが、持たざるを得ないということになっておりますから、全体としてこれを減らしていかなければならないということは私どももそのとおりだと考えておりますし、特に備蓄米、政府が中心となっている備蓄米がきちんと売却されていくということも必要だと考えておりまして、そのためには、さっき申し上げたような弾力的な売却ということも行っております。  また、今御提案の、棚上げを一部して、それを具体的には恐らくいわゆる援助なりに振り向けたらどうか、そういう御提案だと思いますけれども、実際上、食糧援助につきましても、私どもとして、この備蓄米の活用といいますか、そういう中で、八年度に、いわゆる援助を受けたいという被援助国の要請の取りまとめをいたしまして、十万トン程度を行うということにいたしております。  ただ、この場合、大変問題になりますのは、WTO協定との関係、特に内外無差別の問題、それから、効果的な生産制限措置が行われているかどうかという問題、さらには、食糧援助のFAOの食糧余剰処理原則というのがございます。そういったようなことをよくよく調整をとりながらやらなければならないという国際ルールとの関係がありますし、さらには、今先生も御指摘になったように、大変大きな財政負担が予想されます。国内産米ですとトン当たり約三十万円、外国産米であってもトン当たり十万円というような財政負担、こういったことを兼ね合わせて考えていかなければならないということでございます。
  73. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)分科員 今いろいろ御説明があったわけですが、それに対していろいろ意見もありますけれども、時間の関係で先に進ませていただきます。  次に、生産調整についてお伺いしたいと思うのですが、先ほど岩手県の東和町の問題を指摘いたしましたけれども、まさに、農協主体の生産調整というのは、私は限界に来ているんじゃないかなと。地方自治体も一緒に入っていますけれども、限界があるのではないかなという感じがしてならないわけでございます。確かに全国ベースでは一〇〇%に達したものの、都道府県の中でも十二府県が未達成で、そしてまた、市町村、農家別、さまざまな未達成の状況が示されております。私が特に指摘をしたいのは、その未達成の中で、大規模農家ですね、これから本当に農業でやっていこう、そういう方々と、あとは零細な飯米農家、両極端が未達成になっておる、この現状を非常に私は心配をするわけでございます。  そうしますと、いわゆるペナルティーの問題が出てまいります。これは、内部では大変な深刻な問題になります。地域内でも、そのような生産調整に参加した人、参加しない人、内部でトラブルが起きている。もちろん、農協も自治体もそうなんですが、このペナルティーを科すことによって、逆に大規模農家が計画外流通に行ってしまうんじゃないかなというような、非常に農協自体がこの生産調整に対するジレンマを持っているということは言えるのではないかなというふうに思われます。  また、この農協主体の生産調整の一番の大義名分、これは価格の安定なんですね。価格の維持なんです。ところが、現実に一〇〇%達成しても価格がどんどん下がっておる。そうしますと、市場価格維持といっても、なかなか農家に説得力がないのですね。そこに大きな問題があるわけでございまして、まさに今、各市町村もそうですが、農協も、多分心の中では東和町のような考えを持つている町がたくさんあると思うのですね。この辺をどのように受けとめていくか、非常に問題だ。この辺もお伺いしたいと思います。  また、私は、この生産調整については、基本的には全く減反政策については反対したいと思っておりますが、しかし、現実問題として、この減反を今やめるということはできないと思います。米の過剰を一挙に解消させようということは、非常に社会的にも経済的にも不可能であると思いますので、やはり必要悪として、当分の間は生産調整を続けなければならないと私も思います。しからば、農家の自主性を生かした生産調整というのは果たしてあるのか、どうしたらいいんだろうかと、私もいろいろ農家の皆さん方と話し合う中で問うわけでございますけれども、なかなか出てこない。  理念的、概論的に言えば、一番簡単なのは、そういう不足払い制度と組み合わせて生産調整を行う、財政を伴うわけですけれども、これが一番簡単なわけです。しかし、財政事情等これまたあるわけでございますから、もし、この財政事情がなかなか難しいということになれば、今までいろいろな生産とかあるいは流通奨励金等、いっぱいいろいろなものを出しておりますが、それを一回統合一元化して、そして生産調整の実効担保措置強化にしたらどうか、私はそういうふうに思いますけれども、お伺いいたしたいと思います。
  74. 高木賢

    高木(賢)政府委員 生産調整は、改めて申し上げるまでもないとも存じますけれども、需給ギャップが三割あるという状態のもとで、避けて通れない道であろうと思います。食糧法におきましても、米の需給と価格の安定を図るための重要な手段として位置づけられておりまして、その実効性を確保するということは大変重要な課題であると思います。自主的にやって実が上がるといううまい仕掛けがあれば別なんですが、なかなか今日のところそれがない状態でございまして、現在の生産調整対策をそういう観点から進めているわけでございます。  実効確保の点から申し上げますと、幾つかの手段をとっております。一つには、生産調整実施した人に対しまして、面積当たりで助成金を交付する、これはどういうやり方かというと、転作をやれば、より多い助成金が出るという仕組みでございます。それから、生産者団体が実施いたします共補償事業に対して助成をするということをやっております。それから、自主流通米に対しまして計画流通対策費の交付をしておりますが、これは生産調整実施者だけに限っております。また、政府米の買い入れ対象者は、これも生産調整実施者に限っている、こういう措置を講じているところでございます。また、さらに九年度におきましては、地域におきます米需給調整への取り組みを促進するための緊急措置といたしまして、米需給調整特別対策実施することにいたしております。  これらの各種助成金とか措置は、あるものの場合には土地の利用に着目して行われる、ある場合には生産物に着目して行うというように、趣旨とか内容が異なっておりまして、これを統合するとか一元化するというのは難しいわけではありますが、要すれば、生産調整の実効を上げるという点では同じ目的を持った措置でございますので、これらの措置が総合的かつ体系的に活用されて、生産調整の実効性が上がるように対処してまいりたいと考えております。
  75. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)分科員 ちょっと前段の部分の認識についての御答弁がなかったのですが、時間がないですから、次に進めさせていただきます。  次は、政府農協の守備範囲の明確化ということ、言い方がちょっと問題があると思いますけれども、これは、価格変動の防止をすべて農協でやるということは、本当に不可能に近い、無理があると私は思います。それは、価格水準決定というのは市場価格に任せるにしても、やはり変動というものになりますと、非常に難しい問題がある。他の農産物については政府の役割で価格安定帯をつくってやっておる。米はそういう状況になってないわけでございまして、せめて価格変動に対しては、農協がやれる部分あるいは市町村がやれる部分があると思いますが、それを大幅に超える変動というものに対しては、やはり政府の責任で私はやるべきだというふうに思います。少なくとも最低の価格の部分はある程度国の責任でやるべきだ、私はそういうふうに思います。  これを突き詰めますと、前の食管法になってしまうということも考えられます。ですから、その辺は慎重にせざるを得ない部分があります。ただ、その辺を私はきちっとやるべきだと思いますが、いかがでしょうか。簡単に、ひとつ。
  76. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 簡単に申し上げます。  今の米の流通の主体は自主流通米でございまして、これは価格形成センターで主要価格が決まる。ただ、これは、最近では需給緩和傾向ですから下がる傾向ですが、需給動向によっては上がることもあるということであります。  それから、安定帯の御提案がありましたが、そういった農家の自主性、それから市場動向というものを反映させた稲作生産の活性化というのは、私どもどうしても必要だと思います。したがいまして、この価格形成がそういった市場メカニズムを反映して行われるようになって、先生も御案内のとおり、いわゆる良食味の品種、売れる米、扱いやすい米、こういったものにかなり転換をし、また現在でもその変化が激しいわけでございまして、こういった方向はやはりこれからも堅持をしなければなりませんが、経営の安定ということを念頭に置けば、今おっしゃられたようなことが御提案としてあるのだと思いますけれども、政府の買い入れ価格というのは、自主流通米の価格動向もさることながら、生産費、いわゆるコストの動向も反映させて決めておりまして、そういった自主流通米の価格とそれから政府の買い入れ価格、こういったものが一つの目安になって農家が対応しているところであります。  それから、今の自主流通米の価格につきましても、値幅制限がございまして、需給動向が非常に緩和したからといって、暴騰、暴落するようなことにはなっておらない、そういった点も考慮すれば、私どもとしては今の価格形成、政府米の買い入れ価格の決定の仕組み、こういった方向はやはりこれからも堅持すべきではないかと思います。
  77. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)分科員 全く時間がございませんので、項目だけ質問させていただきます。  まず、国境調整の問題についてでございますけれども、いずれ、三年後にWTOの新ラウンドが始まるわけでございますけれども、現行の輸入数量制限でいくのか、あるいは関税化でいくのかということをもう既に報告を出さなければならないのではないか、それによっては大きく米対策も変わってくるだろうと思いますが、これは大臣からお伺いしたいと思います。  それから、先ほど援助について触れられましたので省略しますが、これは世界的な食糧危機という中で、やはり食糧余剰国といいますか、そういう国から農産物を購入、備蓄をする国際機関というものがこれからぜひ必要ではないのかなというふうに思います。そういう意味では、国際備蓄構想なるものもあるのではないかと思いますけれども、大臣からお聞かせ願えればありがたいと思います。  最後に、先ほど申し上げました岩手県東和町の問題についてコメントをいただきたいと思います。  以上で終わります。
  78. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 今三点ございました。一つWTOと、それからもう一つが援助ですね。援助については、これは先ほども申し上げたところでございますが、簡単に申し上げれば、いわゆる国際ルールと、それから財政負担の問題、さらには既存のいわゆる国際機関がございます、そういったものとの関係、こういったことを総合的に考えていかなければならないと思います。ただ、備蓄米の活用方策につきましては、大臣の強い御指示がございまして、九年度の予算で調査研究を行うようにしておるところであります。  それから、WTO協定交渉は、これは六年目の交渉で七年目以降の取り扱いが決まるわけでございますが、その際は、我が国農業状況、そのほか特例措置の継続をすれば代償を払わなければならないということを総合的に勘案して交渉に臨むというふうに考えているところであります。
  79. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 冒頭の東和町の問題、これについて申し上げますが、きのうそのような答申があったことは承知いたしております。しかし、内容を聞いてみますと、農政審議会での賛否は十対十で、議長が最終賛成をしてそれで賛成になった、こういうようなことも聞いておりまして、賛成の方もおれば反対の方もいらっしゃる、こういう内容のようでございます。  それで、生産調整は、これはもう申し上げるまでもなく、米の需給と価格の安定のために非常に大きな役割、重要性を持っておるわけでございまして、我々もこれは進めていかなければならぬと思っておりますが、その場合に、全国的な規模で生産調整を進めなければこれは効果が発揮できないわけでございます。  そういう観点に立ちますと、全国的にこの生産調整をしている市町村は、非常なやりにくい問題を抱えながら米の需給と価格の安定のために生産調整に取り組んでおるという実態がございます。その上、生産調整によって米の価格は安定をしておるわけでございまして、そういう今の状況から見ますと、生産調整には参加をしないで、そしてその生産調整によって安定した価格の恩恵だけは受け取るというような、そういう考え方については、これはいかがなものかなというふうに、生産調整をしていらっしゃる生産農家の方々は思っていらっしゃるのではないかなというふうに思っております。  私ども、この東和町の問題につきましては、まだ具体的にどういうふうに自主的に調整をされるかわかりませんので、そういう点については十分に我々としてもその中身は承りたいし、また、この生産調整が需給関係、価格の安定にとりまして非常に重要な役割を果たしておるということについては、十分に御理解いただくように指導してまいりたいというふうに考えております。
  80. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)分科員 大臣から、WTOの方向だけ。
  81. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 WTOの協定交渉時期の問題でございますが、これは平成十三年以降の取り扱いについて平成十二年に交渉して決定するわけでございますが、それは、この時点におきます我が国農業状況を総合的に検討して行うということでございまして、今、関税化に向かうとかまたそうではないとかいうような予断を持つ、そういう段階ではないというふうに思っております。
  82. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)分科員 どうもありがとうございました。終わります。
  83. 菊池福治郎

    菊池主査 これにて佐々木洋平君の質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  84. 菊池福治郎

    菊池主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。下地幹郎君。
  85. 下地幹郎

    下地分科員 大臣、大変御苦労さまでございます。  きょうは、農業全般のお話と石垣空港のお話を御質問させていただきたいというふうに思っております。  きょうは、大臣に、石垣空港への認識をぜひ深めていただいて、農業が沖縄においても、この石垣の地においても非常に大事な中核的な産業であるというふうな認識をぜひ持っていただきたい。そして、これからの日本農業というものを考える上で今の石垣の例は非常に大事なことではないかなと私は思っておりますので、小さい場所の話でありますけれども、それから全体的な、農業の全般の政策というものを、ぜひ大臣のお考えを教えていただきたいというふうに思うのであります。  私は、農業安保論ということをたまにいろいろなところで訴えておりまして、世界の農産物が安いからとにかく日本にそれを入れなさい、日本農産物はコストが高いからとにかく安いものを入れればいいというふうなことでやる農業は、私の持論としてはなかなか理解できないのでございます。しっかりと農家を守り農地を守る、そういうふうなことをしっかりしておかなければ、安いという観点だけで農産物を入れて、日本の農家が壊滅的な打撃を受けて、海外の農家が日本市場を見て値段を上げてきたときにはもうどうにもなりませんよ。そのときから日本の農家をもう一回育てようといったって、そう簡単なものではないと私は思うのであります。  そういう意味におきましても、価格だけの問題ではなくて、日本全体で農業安保というものも考えながら農業政策を進めていかなければいけないというふうに思うのであります。自衛隊もそうでありますけれども、有事が起こらなければいいのですけれども、絶えず有事というものを想定しながらバランスよく物事を考えていく、それも農業政策の一端としてあるのではないかというふうに私は思っておりますが、まず、その大きいところで大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  86. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 食糧の安全保障の問題につきまして御意見を承りました。その御意見には私も賛成でございまして、農業の国際分業論、昔はございましたけれども、今はほとんど農業についての国際的な分業論というのはございません。これからの基本的な問題としては、食糧の安全保障と自由化の問題をいかに調整していくかということが非常に基本的な課題でございますが、やはり日本の場合には、主な食糧は自分の国でできるだけ自給をしながら、足らないところを備蓄をしたりまた輸入に頼ったり、そういう組み合わせが基本的な考え方としては大事ではないかなと思っております。  中長期で食糧事情を考えてみましても、毎年一億人に近い人口が世界でふえている、現状では八億人もの人が飢餓、食糧・栄養不足に悩んでいる、将来二〇五〇年には百億近い人口になるだろうという推計もあるわけでございまして、そういう人口増に対して果たして食糧の供給が追いつくのかなということもあるし、また、経済力に物を言わせて外国から食糧を買うということがいつまで続くのかな、政治的にも人道的にもなかなかこれは難しいことではないかな。そういうようないろいろなことを考えますと、食糧安保、まさしく言われましたように、できるだけ自分の国で食べるものは自分の国でつくっていく、そういう考え方基本になければならぬというふうに考えております。
  87. 下地幹郎

    下地分科員 ぜひ大臣、この考えを大事にしていかなければいけない、日本農業政策の根本であるというふうに私は考えております。そして、それに絡みながら、石垣の今の空港の問題を私は取り上げさせていただきます。いかに農業が大事かということを考えていかなければいけないと思うのです。  昭和四十七年五月十五日に、石垣に農林省の事務所ができました。干ばつで石垣が相当苦しんだ時期がありまして、職業自体が農業が中心でありますから、もう農業ができない、そういうふうな苦しい中での石垣の百九十一日間の干ばつでありましたから、そういうふうな状況を回避しなければいけないということで、宮良川の土地改良事業が、石垣において昭和四十七年五月に農林省が事務所を開いてスタートいたしました。そして、昭和五十年に採択がされまして、昭和五十二年にこの宮良川の起工式が行われました。そして、起工式が終わりましてから二十年間、造成をしたり完備をしてまいりまして、平成四年十一月五日に国営宮良川の完工式が行われたのです。そのときには大臣のあいさつの言葉もありまして、当時は田名部農林大臣の時代でございましたけれども、とにかくこの地で創造的な新しい石垣の農業がスタートすれば、そういうふうなお話でありました。  そして、二十年間に投下されたお金が八百七十七億円、巨額の国費がこの宮良川に投下をされました。その宮良川で、農産物に四十年間年間六十億円の経済効果を持っていこうというふうなスタートをさせていただきました。そのことを国の大きな政策の中でスタートさせたわけです。  この六十億円というのは物すごく大きなお金でございまして、今の石垣から上がっている農産物の全体の集荷額が四十七億円でありますから、それから考えますと、この宮良川の地区で六十億円を将来は農業の経済効果として上げていこうというのは、大きな意義のある大事な事業だったというふうに私は思っております。そして、これが平成四年に完成いたしまして、これからどんどん石垣の農家の皆さんに貢献をしていく、そういうふうな時期が今来ている最中に、今、宮良牧中の空港案がどんと出てまいりまして、非常に大きな問題を生じているわけです。  局長にお聞きしたいのですけれども、この目的そして金額、私が申し上げました八百七十七億、今現在六百億投下をされておりますけれども、県の補助率からすると全額国が出しているようなものでありますから、その数字には間違いはないでしょうか。そして、四十年間年間六十億円の効果を出していきたいという目的で石垣にこの事業がスタートしたということには間違いないかという確認を、まず一回させていただきたいと思います。
  88. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 先生指摘のとおり、この国営かんがい排水事業宮良川地区の事業の目的は、石垣島の大変な干ばつに見舞われたというような被害を防ぐために開始されたものでございまして、これによって農業経営の安定、向上を図って、石垣島の亜熱帯の特性を生かした農業振興に資することを目的として、昭和五十年に着工し、平成四年度に完了をしたものでございます。  ただいま先生指摘のとおり、この地区の経済効果は、年間農産物の売り上げの増加効果等で見まして六十億円に上るものでございますが、このうち、農産物生産増の効果としては二十四億円、それから労働時間の節減効果、すなわち営農経費の節減効果は四十億円、これに対してダム等の維持管理費を差し引きまして、御指摘のとおり六十億円という経済効果を生んでいるわけでございます。
  89. 下地幹郎

    下地分科員 この六十億円の効果を生もうと計画したこの地に空港の案が出てまいりまして、この地で空港をつくりたいというふうなことになってきたわけでございます。今、調査をさせるさせないで、本当にもめにもめている状況であります。農家は土地を守っていきたい、しかし石垣の観光地のために空港をつくりたい、その論争が本当に、鎖で自分の体を縛って調査をさせない。まるで成田闘争のような形に今エスカレートしていることをぜひ御理解をいただきたいと思うのです。  それで、これだけの効果を生みたいといって国が投下をしたこの地に県が空港をつくりたいといっても、農林省には、転用の件とか、そして今まで投下をした金を返還をさせるという、そういうふうな条項はないのですよね。県がつくるといえば、もうその方向で進まざるを得ない。そういうふうに法律上なっているのですよね。答弁をお願いします。
  90. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 農地の空港への転用の件でございますけれども、一般的に言いまして、国営かんがい排水事業のような農業公共投資を実施した地区につきましては、原則として農地の転用許可はできないこととなっているところでございます。  しかしながら、国あるいは都道府県が農地を転用する場合には、農地転用許可を受けることが不要でございまして、また、公用公共用施設用地とする場合には、農地の転用、これを許可することができるとなっております。したがって、県営の事業である場合あるいは公用公共用施設の場合には、転用が可能となるわけでございます。
  91. 下地幹郎

    下地分科員 もう一つでありますけれども、八百億投下したお金は、農地の転用の八年以内であっても、このお金は県は国に払い戻さなくてもいい、そういうふうな状況になっておりますか。
  92. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 これは、国営かんがい排水事業の特別徴収金に該当するものでございますけれども、土地改良法の規定に基づきまして、工事の完了の公告があった日以後八年を経過するまでの間に農地転用された場合には、これまでに投資した金額を一般的には特別徴収金として徴収することになっております。  しかしながら、土地改良法の施行令の規定に基、つきまして、これは非常にわかりにくい表現になっておりますけれども、厳密を期するためにこうなっております。読み上げさせていただきますと、「当該土地について所有権の移転等を拒むときは土地収用法の規定に基づいて収用されることとなる場合」、この場合においては特別徴収金の規定が適用されないこととなっております。  本地区におきます空港整備に伴う農地転用につきましては、航空法による飛行場または航空保安施設で公共の用に供するものは、土地収用法の規定に基づき収用される事例に該当することになるため、特別徴収金の徴収の対象とはなりません。  しかしながら、その他の施設につきましては、同法による収用の対象とならないものもあり得ると思われることから、具体的な航空施設の整備内容が明確でない現時点では、具体的な特別徴収金の徴収額等を示すことは困難でございます。
  93. 下地幹郎

    下地分科員 今御答弁いただいたように、収用法にかかわると特別徴収金は払わなくていい。収用法にかかわらない場合には特別徴収金はどうなりますか。収用法を用いないでその物事を買い取るという場合には、その返還の金額はどうなるかということをお聞きしたいのですけれども。
  94. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 先ほど答弁申し上げましたように、「所有権の移転等を拒むときは土地収用法の規定に基づいて収用されることとなる場合」というのは、平たく言いますと、土地収用法に該当する事業、施設ということになります。  では、具体的にどういう施設がこれに該当するかということになりますと、単に空港設備ということだけでは厳密でないので、これは航空法にきちんと規定がございまして、例えば、飛行場の施設でございますと、「航空法による飛行場又は航空保安施設で公共の用に供するもの」、これについては特別徴収金の徴収の対象になりませんけれども、航空施設でもいろいろな関連施設等もございます。そういったものはこの対象になるものもあり得るということでございます。
  95. 下地幹郎

    下地分科員 お聞きしておわかりのように、農林省がこのような経済効果をもってこれだけの事業をなしても、新たな公共投資の仕事があったら、今までやってきた仕事を無にしてもそれが優先されるというふうなものが法律上あるのです。そのことをまず明確にしておきたいというふうに思うのです。  そして、もう一つですけれども、石垣の経済効果というふうな話をしておりますけれども、平成六年度の石垣の農産物の総収益額が四十六億円あります。そして、宮良地区では、先ほどのいろいろなダムのものとか営農経費節減効果とか、そういうのを抜きますと、二十三億円を予想しているのです。六十億円の中の二十三億円が、作物の収益が上がったというふうな形になるのです。  石垣全体で四十六億円ですよ。宮良地区で八百億出して二十三億円の、五二%の効果を生もうと。石垣の農業全体の半分なんです、この地区は。それぐらいの大きな、意義のある、ウエートを占めた地域です。そのことの御認識は局長、いかがですか。
  96. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 先生指摘のとおり、石垣市の平成六年度の農業生産額、これは、サトウキビを中心にいたしまして、野菜、葉たばこ、パイナップル、お米、花等、四十六億円でございます。  これに対して、経済効果の内訳は、作物の生産効果として二十三億七千万余でございますし、また労働節減効果が四十億円に上っておりまして、この事業の効果としては立派なものであると思っております。
  97. 下地幹郎

    下地分科員 それで、もう一つでありますけれども、農林省の方でこのように巨額の投下をして、それが他の公共施設やその他の目的のものに転換をした。八百億じゃなくても、二百億でもいいですよ、三百億でもいいですよ、農林省がここに農地をつくって造成をして農業政策を進めようといって、しかし新たに、通産省がこれをつくりたい、運輸省がこれをつくりたいといって転換をした例が今までに行政上あるのかないのか。そのこともお教え願いたいと思います。
  98. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 私ども、国営かんがい排水事業地区につきまして、最近五カ年間調査いたしましたところ、新石垣空港のような大規模な施設、おおむね百ヘクタール以上の施設、これを調査してみましたが、私ども調査した範囲では、公共目的への転用が行われた事例はございません。
  99. 下地幹郎

    下地分科員 それで、もう一つでありますけれども、現在、六十億円のうちの二十三億円を想定しておりますけれども、今ある程度できていて、どれぐらい今二十三億円の中の農産物が上がっておりますか、あの地域から。
  100. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 これは年間の増収効果のことであると思いますけれども……(下地分科員「今現在の実績ですね」と呼ぶ)最近の石垣の生産額といたしましては、平成六年度では、先ほど先生からも御指摘のように、サトウキビ等を中心に四十六億円。これは平成六年度の私ども持っておる数字でございますけれども、四十六億円でございまして、具体的に、この事業による増収効果としては二十三億七千万余でございます。
  101. 下地幹郎

    下地分科員 僕の質問しているのはそうではなくて、二十三億の中で今現実に幾ら上がっているかということを知りたいということなのですけれども。この数字が今明確ではないみたいなのです。  大臣、ずっとお話を聞いていただきまして、今あの地域は石垣全体の農産物の五二%なんです。本当に大事な地域なんです。農林省がやった政策は間違いではないのです。あの地域がしっかりすることによってこれからの石垣の農業というのはどんどん進む、私は、ずっと現場を見ていてそう思うのであります。  そして、ある日突然空港問題が出てきても、農林省は、不愉快な思いです程度の話で、自分たちの事業を守ってくれ、そういうふうな答弁が出てこないのです。法律上だったらいいですよ、もうこれだったら転用はしようがないですよというふうな、まるで自分の事業そのものを否定するような、大田知事さんここでは困りますよと、自分たちはこれだけ国民の税金を投下をして石垣の農業のためにやろうとしているのだから、それをある日突然空港地にされて、法律上はとめることはできないけれども自分たちとしては困るのですよということが全く出てこないのです。その辺に私は疑問を感じるのですよ。  今、新聞紙上でも、社説に出ておりましたけれども、「干拓で農地を造る税金の無駄遣い」なんて書かれて、いろいろ書かれておりますけれども、この石垣の地ではむだ遣いどころではなくて、もう五〇%近くの島の生産を支えている。むだというものはあそこには一つもないのです。そういうふうな自信を持った政策にもかかわらず、なぜそのような弱腰の態度なのか、そのことを私は今農林省にずっとお話をさせていただいている。  そして、私がもうずっと考えているのは、この二十三億円という、上げようとしている、農林省が計画をしているその数字が上がらない。八百七十七億やったけれども、二十三億円農産物を上げようとしても上がらない、効果がもう見据えられない。そのことを大田知事も見据えて、効果が上がる観光産業に回してしまえというふうにお考えになっている。それに、農林省自体も上がらないと思ったから、これはもう黙っていて空港に使った方がいいのではないか、そういうふうな発想に変わったのかどうか。一藤本国務大臣「違いますよ」と呼ぶ一そこの、違うというところをぜひお願いします、大臣
  102. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 私は、昭和六十年当時、沖縄開発庁長官を経験しておりますので、よく沖縄の事情は承知いたしております。八重山地区の開発発展につきましては従来非常に関心を持ってまいりました。  沖縄の振興のためには、本島だけではなくて八重山地区と両方が車の両輪として発展していかなければならぬ、そのためにはジェット化も必要だということを強く主張してきたわけでございますが、この石垣空港については、当初の案で私も賛成をして、そして推進をしておったわけでございますが、今このような状況になってきておるということは非常に残念に思っておる一人であります。  先ほどから委員、いろいろ農業の振興の重要性について、また、税金、多額の国費を投入したことの費用対効果の点について御意見があったわけでございまして、我々としては、空港をつくるということは非常に石垣の発展のために重要であるということは十分認識しておりますけれども、その用地の選定について、我々が長年にわたって取り組んできたかん排事業、特に沖縄の場合には降った雨がすぐ海へ流される、ですから慢性的に水不足、それを解決して農業用地をつくる、こういうことで取り組んだこの事業を簡単に変更していくということについては、農林省としては非常に残念であり、私としては遺憾に思っておるわけでございます。
  103. 下地幹郎

    下地分科員 大臣、本当に、大臣の今の答弁のように、残念で遺憾に思われる大臣の気持ちはよく私も理解できます。  もう一つお伺いしたいのですけれども、僕は国民から出てくる税金は一つだと思うのです。そして、一つ一つの所得税とかいろいろな税金の中で国がバランスよく、農林省はここをやりましょう、運輸省はここをやりましょう、通産省はこれをやりましようといって国土の発展を図っていく、そのために税金は効率よく使われなければいけない、そういうふうに思うのであります。今、こういうふうに農林省が五二%も効果があってやるような、政策的に間違いではない、しっかりと進めなければいけない状況の中に、空港問題が出てきている。農林省と運輸省とそして沖縄県、その三つの政策の一致がなければ僕はだめだと思うのです。  そういうふうな意味で、これだけ予算がついてこれだけ効果が出てきているものに、運輸省が後からその事業を推薦するかのようなことは、私はやるべきではないというふうに思うのです。縦割り行政もあるかもしれませんけれども、しっかりと他の省庁の政策を重視しながら私はやっていかなければいけないと思うのです。  その辺に関して運輸省のお考えを聞かせていただきたいのです。しっかりとした答弁をお願いしたいと思います。
  104. 横田和男

    ○横田説明員 運輸省といたしましては、八重山の航空需要考えますと新石垣空港の整備というのはどうしても必要だ、こういうふうに思っているわけでございますけれども、その整備に当たっては、先生指摘のとおりいろいろな関係者というのもございますので、そういう調整が十分なされてそういう整備をやっていかなければいけない、こういう認識は十分持っております。
  105. 下地幹郎

    下地分科員 運輸省、これだけ農地がよくなっている段階で、あの地をその調査をしよう、選択をしようとする、そういうような県の状況について、選択をするのは県の自由だというふうなことをおっしゃるかもしれませんけれども、そうではなくて、運輸省として中央官庁のきちんとした連携の中でどうお考えなのか、ぜひお願いしたいのですけれども。
  106. 横田和男

    ○横田説明員 先生御存じのとおり、石垣空港の設置管理者というのは沖縄県でございますので、どこに新石垣空港をつくるかという適地の選定の第一義的な責任というのはやはり沖縄県が持っておるわけでございますので、私どもとしては、その沖縄県の選択を踏まえていろいろな検討をしていきたい、こういうふうに思っております。
  107. 下地幹郎

    下地分科員 もう時間がないので最後になりますけれども、今、地方分権だと言われております。そして私は、地方分権の一番悪い意味で出たのがこの石垣空港ではないか。あれは沖縄県がお願いをして農林省にやっていただきました。昭和四十七年。行政は一貫性を持ってやらなければいけません。  そして今、中央官庁の中で、県が主導権を持っているから県が決めてしまえば中央官庁はもう物が言えない、そういうふうなお話であります。農地の転用にしても物が言えないし、沖縄県が空港が無効だと言ったら無効にしなければいけない。私は、そういうふうな形で本当にいいのかどうか、地方の行政と中央の行政がこうやってミスマッチをしている状況の中で、今の行政改革、地方分権という言葉に踊らされて果たしていいのかな、そのことを私は非常に疑問を持つわけでございます。  そういう意味におきましても、一番運輸省にも言っておかなければいけないのは、あの空港は県費でやるわけではない、国の補助で出します。九〇%以上を国民の税金でやっていくわけです。その税金が二重構造になってむだにならないような指導をするというのは、行政手続上当たり前なんです。県が言ったから自分たちはそれを受けとめてやるのではなくて、それは行政の指導をする能力が中央官庁にはあるのです。もっと主導権を持ってしっかりと、石垣の地で、あの地区以外に空港ができないというならそれでいいのですけれども、そうではないということがわかっているならば、私は、もっと中央官庁は物を言いながら指導していく、そして全国の皆さんから集めた税金の効率のよい施行をしていくというふうなことをぜひもっと積極的にやっていただきたいというふうに思っております。  大臣農業問題ぜひ頑張って、石垣の農業を守ってやっていただきたいということを最後にお話ししまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  108. 菊池福治郎

    菊池主査 これにて下地幹郎君の質疑は終了いたしました。  次に、辻一彦君。
  109. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 私は、きょう二つの問題、一つは、さきの運輸委員会でも随分論議したのですが、重油の被害、事故対策について、主として水産関係でお尋ねしたいのと、それからもう一つは、我が国が、外務省、農林省、非常に力を入れてきました中国黒龍江省の三江平原の開発問題、この二点で、若干私の体験等も踏まえながら質問し、また要請をし、期待をしたい、こう思っております。  第一に、今回のナホトカ号の重油事故は、非常に広範にわたって、相当激しい被害も出しております。これを今、現地一帯、自治体では、激甚災害に指定をして十分な対応をしてほしい、こういう願いが非常に強い。これは、私も国会の調査等含めて三回、一週間ほどはほかに現地をずっと激励に回って、郷里でありますので回りましたが、非常にそういう声が強い。それから、現職の大臣も、農林大臣も行って見ていただいている。また、政党の各幹事長、あるいはまた国会も三十数名衆参両院で大挙して視察団を出して、そういう要望を聞き取っていただく、こういう中で、いずれも強い要望があるのであります。  そこで、さきの予算委員会で総理や国土庁長官が、重大な事故であるからこれは災害であるというように、認めるという発言をし、それから災害対策本部の本部長は運輸大臣でありますが、古賀運輸大臣も、災害である、こう認識をしているという発言をしていますが、農林水産大臣としてこれについてどういう認識を持っていらっしゃるか、まずちょっと伺いたいと思います。
  110. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 ちょっと事実関係でございますので。  まず、これまでの国会等で言われておりますのは、いわゆる災害対策基本法における災害かどうかということで議論されたのではなかろうかと思います。  いわゆる激甚災害法でございますが、激甚災害法におきましては、これは公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法、いわゆる負担法と言っておりますが、これに基づく公共土木施設の災害復旧事業でございますとか、それからあと、暫定措置法と言われております農林水産業の共同利用施設の、これも災害復旧事業でございますが、これらの行うことになっております法律の、言うなれば補助率のかさ上げを激甚災害法で決めておりまして、今申しました国庫負担法でございますとかそれから暫定措置法の方は、それぞれの法律におきまして自然災害により損壊した施設の原形への復旧を対象としている、言うなれば自然災害だけを対象としているということでございますので、激甚災害におきましては、今回のようなケースには適用されないというふうになっております。
  111. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 その筋は私もわかるのですが、災害である、こう国会でそれぞれ総理を初め担当閣僚が発言をし、災害であると認定すれば、今度は、この範囲は一府七県、八府県に及んでおるし、被害もかなり激しいわけでありますから、そういう状況考えれば、私は、事故による災害である、このように認定をするならば、この範囲それから被害の大きさ等からして激甚災害に指定し得るものと思うのです。  確かに、自然災害と事故災害の差がある、これはわかりますが、例えば、かつて北陸から東北に豪雪があって、そして初めて激甚災害を発動したときも、数府県に及び、それから被害は当時五十億以上と言ったと思いますが、そういう被害の範囲で、これは山の木が倒れて、それから割ばしを立てたようにみんな折れてしまう、折損する、そういう中で激甚に指定をして対応しておるのです。  であるならば、災害という認定を事故であってもしている以上、その範囲が広範に及び、しかもその被害が大きければ、これを激甚と認めて手当てをするということがあってもいいのではないか、こう思うのですが、これについて大臣の見解も伺いたいと思います。
  112. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 今も申し上げましたように、激甚災害法はそれぞれの法律の言うなれば特例措置を決めているわけでございまして、その根っことなりますそれぞれの法律でもって災害を自然災害に限定しているということでございますから、言うなれば、根っこの法律の適用がない以上それのかさ上げ措置を決めております激甚災害法も適用がないというようなことで、今先生が言われましたようなことは、岩崩れとかがけ崩れというようなことは、これは自然災害でございますので、今回のように原因者がはっきりしている事故とは違うのではないかというふうに考えております。
  113. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 今長官から御説明申し上げましたけれども、この問題は、結論から申し上げますと、法律の解釈で、自然災害か事故災害か、事故災害であるから激甚災の認定ができないというような結論だと思うのですけれども、問題は、災害が非常に深刻で、被害が非常に大きいわけです。ですから、そういう認定は別として、総理の言われていることは、激甚災の認定をしなくてもそれと同じような、それに負けないようなといいますか、そういう対策は十分にとらなければならぬ、こういうふうに言われておるわけでございまして、そういうような整備の仕方といいますか、対応をしてまいっておるつもりでございます。
  114. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 その論議をやると、限られた時間で極めて不十分になりますからここでとめますが、であるならば、激甚災害に指定したと同じように、以上のことを、具体的に農林水産省の水産関係を中心にしてどういう手当てをしているのか、ちょっと簡単にポイントだけ聞かせてください。
  115. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 まず、今回の油流出事故に際しまして、被害漁業者の方々の経営と生活の安定を図るための資金の円滑な融通対策ということがこれは大事でございます。そのために、経営維持安定資金という、金利二・九%でございます、一番低い金利のもの、これを系統を通じまして円滑な融資をするように申し述べているところでもございますし、また県におきましては、県単で無利子の資金を用意しているというようなこともございます。それからさらに、風評被害の防止対策でございますとか、それから現時点におきましては、漁場の再生、保全、これが一番大事でございますので、これにつきまして各種事業の活用によりまして適切に対処していきたいというふうに考えております。
  116. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 せっかく漁場再生の問題にも御答弁がありましたから、それに関連して少しお尋ねしたいと思います。  重油が海岸一帯に襲ってきて、岩場なんかにもべったりくっついて、砂浜に上がってしまう。そうなると、岩ノリのようないそでできるものはもう全滅してしまう。それから、アワビだとかサザエという浅いところにいる貝類もまずだめになってしまう。そういうことしの岩ノリやあるいは貝類、これは恐らく保険の対象として補償されると思いますが、いわゆる岩ノリが再び生えついてくるといいますか、ついてくるには、これはやはり一年とか二年とか、場合によれば何年間か時間がかかると思うのですね。そういう意味で、ことしの補償だけがなされたとしても、何年間か空白になり得る。しかも、その間にどうしても漁場を再生しなくてはならない。それはかなり対策を講じないとこの漁場の再生、水産資源の再生というのはできない。  石川県から私のところの福井県、あの一帯は、今、岩ノリ、それから貝類のこういう非常に大事なときなんですね。それに対する漁場再生策としてどういうことを具体的に考えているのか、ちょっとお尋ねしたい。
  117. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 今先生言われましたように、これから一番大事なのは、漁場再生・保全措置でございます。このために沿岸漁業構造改善事業、いわゆる沿構と言っておりますが、これによりまして、築いそと申しまして、定着性の水産動植物の増産を図るための投石とか、コンクリート面の造成でありますとか、その他耐久資材を用いて行います漁場の改良事業などを言っておりますが、このような沿構によります築いそでありますとか種苗の生産施設などを整備していくということのほかに、これは沿整と言っていまして、沿岸漁場整備開発事業というのもございます。これで、魚礁の設置でございますとか藻場の造成でございますとか、下に油がたまった場合のヘドロのしゅんせつというようないろいろなことがありますので、こういう各種の事業を適切に使いまして、漁場の再生、保全を図っていきたいというふうに考えております。
  118. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 その場合に、一府七県に及んだ被害をいろいろ見ると、石川県と福井県あたりに沿岸漁業の、浅いところの被害は、かなり油が多いだけ集中していると思うのですが、限られた農林省の今の枠組みであるけれども、そういう被害の大きなところに優先的に配分、重点を置いていく、こういう考えはありますか。
  119. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 今申し上げました沿構なり沿整なりの事業につきまして、現在、被害を受けました各県の水産担当の方からいろいろ、どのような事業が必要かということをヒアリングしているところでございます。これを受けまして、これから事業実施していきたいと考えておりますが、当然のことながら、やはり被害を受けたところを中心に、できるだけそういうところの漁場保全が図られるように今後対策をしていきたいというふうに思っております。
  120. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 その次に、各県の方からも強い要請が出ておりますが、漁港の範囲内あるいは漁港につながるところ等で砂浜が随分荒れているのですが、あの一帯の砂浜は、石川県から福井県、若狭湾にかけて、恐らく年間八百万人ぐらいの海水浴のお客さんがあるのじゃないかと思うのですね。だから、今、非常に年齢の高い人も、漁民の皆さんが必死になって油を回収している。もうこれは倒れるまでやっていらっしゃる。  大変なんですが、一つは、この油災害に対して、全部で二十一万人と言われたボランティアの皆さんに出ていただいている、遠方から来た皆さんに働いていただくのに、家にじっとしておれぬというので、高齢の方もやはり出て、一生懸命やっているという面が一つあります。  もう一つは、夏場の海水浴にお客さんがたくさんいらっしゃる。そのときに、仮に油が砂からわき上がってくるとかあるいは海の方から浮遊してくるということになっては、これはイメージの上で大変な打撃を受ける。夏場に恐らく漁村の人は、半分漁業をやりながら、半分は民宿をやっているというような状況でありますから、民宿等あるいは海水浴場の施設等いろいろなものに随分力を入れておる。これが、夏がだめになれば、まさに漁民にとっては、住民にとっては死活問題になる、だからこのときに体を無理しても油を何とかきれいにしておこう、こういう気持ちが、今高齢の方が、倒れる方もありますが、一生懸命やっていらっしゃることじゃないかと思うのです。  これは、建設省、運輸省、水産庁等、分野が皆、エリアによって違うわけですが、漁港に関連のあるところの砂浜、こういうものが油で汚染をされ、それがある程度しみ込んで、なかなか簡単に、ふるいにかけてもそれは全部はやり切れない、どうしても最悪のときには砂を置きかえるといいますか、入れかえる必要があるだろう、こういう声が随分出ておるのですが、こういうことについて、漁港に関連のある範囲であれば、水産庁としてはどういう対応の仕方があるのかお尋ねしたい。
  121. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 先生おっしゃいますように、海岸は、水産庁、建設省、運輸省、四省庁で所管しているわけでございますが、海岸に漂着いたしました油の回収作業が実施されているにもかかわらず、海岸に長期にわたって残留油が堆積するとか、その結果、海岸保全施設への影響があるというような場合には、海岸環境整備事業というのがございますが、これを活用いたしまして、今言われましたようなことを、養浜でありますとかいろいろございますので、そういう事業につきまして具体的に検討してまいりたいというふうに考えております。
  122. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 これは、水産庁、農林水産省のかかわる地域とそれから建設省、運輸省のかかわる地域、ちょっと事情が違うと思うのですが、全体として、そういう所管外の場所に砂浜があり、それがなかなか容易でない、置きかえが要るというような場合には、最終的には、どこにもかかわりがなければ地方公共団体が努力をしなくちゃいけないということになるのですが、そういう場合に、自治省の方で特別交付税等々の、こういう地方財政に対する支援の道をどういうふうに考えているかお尋ねしたい。
  123. 門山泰明

    ○門山説明員 お尋ねの残留油などによります影響を受けました海岸環境の復元などにつきましては、現在、水産庁長官からもお話ございましたように、関係閣僚会議のプロジェクトチームのワーキンググループにおきまして、対応をいろいろ検討しているところでございます。自治省といたしましては、関係省庁と十分に連携をいたしまして、必要な地方財政措置について検討してまいりたいと考えております。
  124. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 全体の時間がありますから進めますが、風評対策というのが先ほども御答弁ありましたが、とにかくテレビや新聞でいろいろな記事が出ると、それによって非常に影響を受けて、油で汚れていない魚も心配があるような、こういう危惧を持つ方があり、それから旅館とか民宿のキャンセルが非常に大きいですね。それから、やはりイメージが下がることにおいて受ける打撃、こういうものが非常に漁村においては大きいのですが、こういう風評対策について、水産庁と、旅館等をいえば厚生省になりますが、ちょっと対応をお伺いしたい。
  125. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 まず、風評対策でございますが、これにつきましては、やはり漁業者の方が当初一番心配されたことでございまして、そういうこともございまして、この事故が発生してすぐでございますが、一月十日付で私ども通達を出しまして、生産段階、流通段階におきまして、油の付着の有無等に関する検査を実施する、そういうことで安全な水産物の安定供給の確保を図る、そういうことによりまして、言うならば買いただきでございますとか取引停止等のいわゆる風評被害が生ずることのないように、関係者への周知徹底に努めているところでございます。  このようなことも踏まえまして、例えば、スーパーとか鮮魚小売店などの流通関係者によります連絡会議を設けまして、そこに適切な情報の提供を行うというようなことで、風評被害の防止ということに現在努めているところでございます。
  126. 宮島俊彦

    ○宮島説明員 旅館の被害の関係、これは予約のキャンセルなどによって出ておりまして、当座、環境衛生金融公庫などで運転資金を融通するというようなことをやっておりますが、これからの観光シーズンに向けてお客さんが回復する、これが大事だということでございますので、厚生省といたしましては、全国の観光協会ですとか、日本旅行業協会などにお願いしまして、北陸観光、こっちの方に一層お客さんが来ていただくように協力を呼びかけて、そういうPR、キャンペーン等を実施し、北陸地方への集客の回復に努めることとしております。
  127. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 ボランティアの皆さんが非常にたくさん来てよくやっていただいたのですが、地元の漁民の皆さんからは、観光してもらうのもボランティア活動だ、こういう言葉が随分あったのです。やはり、観光に出かけてもらうということ、こういうことが漁村にとっては非常に大きなことでありますから、水産庁も、厚生省、各省ともこの風評対策に、これは非常に影響が大きいので、力を入れてもらうようにお願いしたいと思います。  あと私、二、三問、先ほど申し上げた中国の三江平原の開発問題について一言伺いたいと思うのです。  まず、外務省の方から、三江平原の計画について、ごく簡単でいいですから、一言ちょっと報告していただきたい。現状です。
  128. 佐渡島志郎

    ○佐渡島説明員 委員に御説明申し上げます。  目下のところ、我が国の対中国に関する経済協力でございますけれども、三江平原につきましては、まさに農業関連案件ということでございまして、ただいまのところ、環境案件それから内陸案件と並びまして重点案件の一つということで、私どもの方からも積極的に取り組みたいということをかねてから中国側に申し伝えております。  この関連で、委員御承知のとおり、以前から私ども、技術協力を初めとして各種の協力を三江平原の開発について行ってまいりましたけれども、つい最近の案件につきましては、昨年の暮れでございますけれども、十二月に、円借款、ただいま私ども、第四次円借款ということで中国への資金協力をやっておりますが、その中でも、黒竜江省の三江平原竜頭橋ダム、約三十億円規模の案件でございますが、それといま一つ、黒竜江省の三江平原商品穀物基地、これは約百五十億円、正確に申しますと百四十九億一千万円でございますが、これに円借款を供与するという約束をしたばかりでございます。  今までJICA等を通じましていろいろな調査等をやってきております。したがいまして、今後、中国側からこの三江平原の農業開発につきまして要請が出てまいりました場合には、農水省さんとも御協力を申し上げて、積極的に取り上げていきたいと考えております。
  129. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 三江平原は私も非常に縁があって、というよりも、農林水産省自体は、一九八一年から延べ約百八十名の技術陣を送って、三カ年にわたって日中共同でこの青写真をつくったわけですから、農林省、外務省の支援も非常に大きかったと思います。ところが、当初は中国の、当然でありますが、通信とかエネルギー、運輸、交通という、そういう方向に円借款が使われて、計画はできたもののなかなか内部の農業開発に円借が決まらない、こういう状況がありまして、十五年ですから、現地の皆さんも大分疲れて、半分あきらめたり、半分一生懸命になりながらも、どうかという心配を持っていらっしゃった。  そういう意味で、私も三回、中間激励というような意味で三江平原の現地も訪ねて、平成三年は二回、調査団も一緒に行きましたが、現地を激励しておりました。そして、北京の中国政府に対しても、できるだけ優先度を繰り上げて頑張ってくれ、こういうことをしばしば向こうの水利部や農牧畜部を訪ねて懇談をしたことがありますが、今外務省から報告のとおり、ようやく去年の十二月にこの円借款が決定をし、政府の代表が行って覚書を交換して確認されたという状況にあります。  これは、三十億というとそれほど大きなお金ではないのですが、現地が随分、黒竜江省が力を入れており、七十億程度のダムですが、四・七億トン、約五億トン近く、しかも、ロックフィルでありますから粘土と石で、地元の材料でほとんどやるということで、それほど大きな借款ではないのですが、非常に重要なプログラムになっておると思っております。  そこで、実は私は去年の九月にも、いよいよ円借が内定し、そしてダムの建築場所を一遍見てくれ、こういう御要請があって、現地へ行ってみました。これは、ハルビンからチャムスまで航空機で行って、チャムスというところから四時間ほどジープで入りまして、それから三時間ほど山と高原を越えて現地、ダムの予定地に行った。ここに線を引いてダムをつくると、大体四・数億トン、五億トン近いダムですからかなり大きなものであります。いろいろな計算がありますが、四万二千ヘクタールのかなり広大な面積に、洪水の制御とか干ばつ時のかんがいとそして排水等によって食糧基地のモデルをつくろう、こういう計画になっております。  そういう縁で私も、十五年間、農林水産省もまた外務省も政府として力を入れてきたのでありますから、これがぜひ実現をしてこれから実を結ぶようにしてほしい、こう強く願っておるわけであります。  また、私の小学校の同期生が、四人が満蒙開拓青少年義勇軍に参加し、この典型区、モデル区のある宝清県というところに昔入植を、何十年前ですが、しておりまして、そして最後はソ連に抑留された。シベリアやウクライナにまで抑留をされて、元気で帰ってきたのですが、彼らが、二人ほど亡くなりましたが、私にこう言っておったのです。自分たちは、当時の日本政府の誤った政策で海外に出て大きな犠牲を受けた。そして、元気で帰れたのはまだ幸いだった。今度は、ひとつ日中が友好関係を持ち、平和関係の中で、自分たちが描いたあの農業基地の夢をぜひ友好平和の中で建設してほしい、こういう非常に強い願いを持っておった。  そういうことで、ちょっと私も、ほかから見ると、なぜ三江平原にそれだけ頭を突っ込むかと不思議がられる点もあるのでありますが、そういうような思いがあって、これからひとつぜひ実現させたいと思っておる。  そういう点で、普通は借款が決まると、もうこれで大体あとは向こうに任せて終わりということになりがちなんですが、これから後も本当に実を結ぶようにいろいろな形で支援をひとつ考えていっていただきたい、こう思いますので、その点について、ちょっと大臣に感想といいますか、気持ちを聞かせていただきたいと思います。
  130. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 辻委員が、従来からこの三江平原の農業開発につきまして非常に御熱心に取り組んでおられる、また、数回にわたって現地にも行っておられると承っておりまして、私もそのことにつきましては非常に尊敬もしておりましたけれども、きょういろいろと委員御自身から直の御意見を承りまして、私も委員の思い入れの深さに非常に打たれた次第でございます。  たしか外務省からも説明がございましたように、技術協力とか資金援助とか、今そういう方向で進んでおるわけでございますが、おっしゃるように、それだけで終わるわけにはいかないと思うわけでございまして、これからよく連絡をとり合って、要請を踏まえて、今後私どもも協力するところは大いに協力してまいりたい、かように考えております。
  131. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 では、時間ですからこれで終わります。ありがとうございました。
  132. 菊池福治郎

    菊池主査 これにて辻一彦君の質疑は終了いたしました。  次に、山中燁子さん。
  133. 山中あき子

    山中(燁)分科員 山中燁子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  私も、海と山のあるところで育ちましたので、やはり自然の中で日本の将来を担う子供たちに思い切り育ってほしい、特に今の時代、そういうふうに感じているわけでございまして、農業関連、農政のプランも含めまして御質問させていただきたいと思います。  それで、まず最初に、日本農業の将来像、目指す方向についてということでございますが、平成四年に出されましたいわゆる新農政プランというもの、大体これで五年くらいたちましたけれども、中間の見直しというようなことを今なさる御予定がおありでしょうか。まずそれをお聞きしたいと思います。
  134. 堤英隆

    ○堤政府委員 新農政につきましては、さまざまな農業情勢、農村の変化の中での見直しをしまして、今後の農業、農村のあるべき姿ということを私どもなりに描いたわけでございます。そういう方向に沿いまして着実に施策の推進をしているところでございますが、他方でまた、現在は農業基本法の見直しの話も出ております。  昭和三十六年にできました農業基本法も、三十六年間経過をいたしております。その間、国民の皆様の食生活も大きく変わってきております。それから、農業をめぐる状況、専業農家、兼業農家の例を一つとりましても大きく変わってきております。それから、農村をめぐる状況も、都市と農村の混住化といいますか、そういうことの中での変化も大きゅうございます。それから、新しいガット・ウルグアイ・ラウンド体制という中で、国際化の進展も大きく進んでおります。  そういう中で、農業基本法の見直しということの検討も着手したいと思っておりまして、そういう中におきまして、二十一世紀に通用いたします新しい農村のあり方ということにつきまして、国民各界各層の御意見をいただきながら対応してまいりたいというふうに考えております。
  135. 山中あき子

    山中(燁)分科員 そうしますと、今のお答えで、農業基本法の見直しと同時にこの新農政プランというのも再度検討する余地があるというふうに理解いたしました。  それで、それに伴いまして、私なりにちょっとこの視点について大臣の御見解を伺いたいと思う点が何点かございますので、お願いしたいと思います。  まず、この平成四年の「政策の方向」の中で、農村空間というものを、自然に恵まれている空間というふうな位置づけをしております。このことに関しまして、例えばイギリスの農水省では、忘れがちな視点として、農村部というのも自然を切り開いてつくり上げてきているところである、そういう認識で施策をしているわけですが、その点どういうふうにお考えになりますでしょうか。できれば大臣にお願いいたします。
  136. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 農村空間というのは、私ども、豊かな緑、自然環境に恵まれ、また大事にすべき文化、伝統を保持している地域であると考えておりまして、残念ながら、そういった農村が今、過疎化、高齢化等の悩みを抱えております。このために、農村の活性化対策というのが農業生産の高度化、農業生産の振興と並んで大きな課題であるととらえておりまして、具体的な施策としては、農村が、豊かな自然環境はありますけれども、一方では、例えば排水施設等々、生活水準、生活環境の面で都市に比べて立ちおくれておりますので、生活環境整備、また、雇用の機会が不十分であるということから過疎化、高齢化が進むわけでございますので、農業を中核としながら、二次、三次産業を含めた農村にふさわしい就業機会の確保、拡大に努力しておるところでございます。
  137. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 新農政と新しい農業基本法の見直し、要するにこの問題は、新農政は、平成四年当時、魅力のある農業を確立するという考え方に立ちまして、農業従事者が他産業並みの所得と勤労時間を実現するためには、生産基盤の整備であるとか農業生産性を上げていくためのいろいろな施設をつくっていくとか、そういうことを具体的に考えて、この新農政というものがございます。  それから、新しい農業基本法というのは、それをもっと幅広く見直していこうという考え方でございまして、その中には行政改革の面も入っておりますし、また経済構造改革の面も入っておりますし、それからまた財政再建という面も入っておりますけれども、そういう三つの改革もあります。それから、幾つかの具体的なこれからの農業の柱になるものを今拾い出しまして、そして審議会を平成九年、十年でつくって、そこでいろいろと議論していただいて、その答申を得て、新しい日本農業の進むべき方向を示す基本法をつくっていこう、こういうことでございます。
  138. 山中あき子

    山中(燁)分科員 私がお伺いいたしましたのは、農村地域が自然があふれているからそれを維持しようという方向の政策の場合と、農村地域も開墾をして、そしてそこに、自然というものそのものが薄れているので、それを取り戻すというような政策をもっと重点的にするかどうか、こういう政策の方針が変わってくるところがあるわけでございます。それで、特に日本の場合にはその辺の視点が少し弱いのではないかというふうに私は思いましたので、今るる全体について御説明がございましたけれども、特にその点は一つのポイントではないかというふうに思ったのでございますが、それについてはいかがでいらっしゃいますか。
  139. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 農業が持ちます機能の中で、国土保全とか環境保全とかいう機能は極めて基本的な機能でございまして、今委員言われましたように、自然環境を保全していくということは非常に大事なことであり、また、そういうことを念頭に置いて政策、施策を進めていかなければ自然環境というものは守られない、こういうふうに思っております。
  140. 山中あき子

    山中(燁)分科員 ありがとうございます。  それで、もう一点は、私はいい方向に向いていただきたいという気持ちがあって特に申し上げますけれども、申し上げるまでもなく、穀物自給率も三〇%、それからカロリーベースによりましても四二%という現状で、今の新農政プランの中で、バランスというのは非常に大事だとは思うのですけれども、輸入の食物をきちんと確保していくというようなどころが述べられております。  私は、食糧と今関係ございませんが、エネルギーをどういうふうに自給していくかというのはやはり一国の根幹にかかわることというふうに思っておりますので、輸入品に視野を向けるのも大事ですけれども、バランス的には、もっともっといかに自給率を上げていくか、今のところどんどん下がってきているわけですから、その辺のところにウエートを少し移していくという、そういう二十一世紀を見越してのお考えはおありでしょうか。
  141. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 委員が言われましたエネルギーと食糧、さらに加えますと環境という問題が、二〇二〇年に非常に大きな問題として取り上げられるだろう、こういう説が今有力になってきております。  食糧について申し上げますと、今私ども考えておりますのは、主な食糧はできる限り国内で自給をしていく。それからどうしても、今五百万ヘクタールの農地面積を持っておりますけれども、今輸入をしております食糧を全部国内でつくろうといたしますと、さらに千二百万ヘクタールの農地が要る。こういう現実がございますので、すべてを国内でつくるということは、これは実際問題として難しい。そうすると、一つの選択肢としては、必要な主な食糧は国内でつくり、輸入と備蓄、これをうまく組み合わせていく、これが食糧の安全保障ということになると思います。  したがって、委員が言われますように、この輸入のバランスという問題は非常に大事な問題でございまして、言われるように、主な食糧については自給をしていく、こういう考え方でございます。
  142. 山中あき子

    山中(燁)分科員 ただいま環境に触れてもお言葉がありましたので、それに関連いたしまして、やはり今の新農政プランの中では、例えば温室効果ガスの固定化などのさまざまな技術の開発、それからそういった環境負荷を抑制するエネルギーの開発などということにも触れてございますけれども、もう少し、農村の環境そのものといたしましては、例えばイギリスにおきましては、御存じのように、一九九二年から農林水産省で植林というものを始めております。あるいは、これも御存じと思いますが、ビオトープなども含めまして、ドイツでは自然の生態系を取り戻すという方に大変なお金とそれから人的なものもかけているわけでございますから、そちらの方にもう少し今までのバランスよりもかけていくというお考えはおありでしょうか、どうでしょうか。
  143. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 先生指摘のとおり、農村地域の自然をきちんと守り、また、人間が立派にそれを管理し育てるということは大変重要な課題でございます。  私どもも、農林省の事業の中で、例えば今ビオトープのお話が出ましたけれども、これまでは、農業生産の効率化を図るということから、例えば水路にしても農道にしても、例えば水路では、コンフリート三面張りで最も効率的に水が流れるような水路をつくったわけでございますけれども、これを石組みにしたり、また水草や野草が生えて、そこに水生生物、メダカが育ち、またトンボや蛍が育つような環境の水路を整備する。また、農道や農村のいろいろな生活環境あるいは生産基盤を整備するに当たっても、できるだけ自然を生かした形の事業に重点を置くようにいたしております。
  144. 山中あき子

    山中(燁)分科員 そういうものが整備されますと、多分グリーンツーリズムなどももっと活発化するのだと思いますが、そのプランの中には、グリーンツーリズムを推進するとなっておりますけれども、私がいただいた資料ではグリーンツーリズムについては中間報告しか出ておりませんで、それもキャンペーン的なことであって、総合的にこれをどういうふうに政策、施策の中に反映していくのかというところがもう一歩見えないのでございます。  この中間報告というのは平成四年でございます。その後、これに関して、一方の、新しい方向では、推進すると書いてあるのですが、それ以降、これはどういうふうな扱いになっておりますでしょうか。
  145. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 先生指摘のグリーンツーリズム、これは、平成四年の新政策、また研究会の報告を受けまして、私ども、さまざまな新しい事業の展開を図っているところでございます。  具体的に申し上げますと、これは日本で初めての事業、特にヨーロッパ先進国では大変に普及している事業でございますので、こういったヨーロッパ諸外国の優良事例の調査研究、また各地域における人材の育成、またグリーンツーリズムの都市住民を含めた国民の皆様方への普及等を平成五年度から推進いたしております。  これはいわばソフトの事業でございますけれども、ハードの施設、ハードの事業として、グリーンツーリズムを各地域で円滑に実施できるように、具体的には、都市住民の方が農業を実際に体験してもらうための体験農園の整備とか、農産物の加工、流通施設の整備、あるいは快適ですぐれた景観を持った農村を整備するための各種の事業実施しているところでございます。  また、既に御案内のことかと思いますけれども、平成七年四月には、全会一致による議員立法で、グリーンツーリズムを推進するための法律、これは名前が農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律という法律でございますけれども、議員立法で制定していただいたところでございます。この法律に基づきますと、都道府県に基本方針、また市町村に計画を策定していただいて、さらにグリーンツーリズムのための農林漁業体験民宿業の登録、これは諸外国では一般的でございますが、これを推進させていただいております。  平成九年度予算案におきましても、都市住民の方々への情報提供とかグリーンツーリズムの皆様方の組織化といったようなソフトの事業、またハードな事業を含めて、各種の事業展開を図らせていただいておるところでございます。
  146. 山中あき子

    山中(燁)分科員 そういう施策を、これは中途半端なままで終わっているんだということなのですが、議員立法の方で何とかカバーをしていらっしゃる。それを進めていくのには女性の力を活用するということで、農水省も随分、女性のための施策というのがあるのですが、どうも抜本的に、「諸方針決定の場への女性の参画の促進を図る。」というふうにお書きになっていらっしゃいますが、具体的に、例えば五つの農業団体の連合会の役員などは、この間お聞きしましたところによりますと、まだ女性はゼロということです。  そういう意思決定の場、政策決定の場へ女性を参画させるということはそれぞれの団体の問題だというふうに、私がお聞きして農水省の関係の方はそういうお答えでしたけれども、そうではなくて、やはり国の施策としてエンカレッジするような方策をぜひ具体的に、もっと柱としてお立ていただきたいと思いますが、その辺はいかがでしょうか。
  147. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 御指摘ありましたように、女性は農業就業人口の六割を占めるところまでに来ておるのですが、意思決定の場への参画は残念ながらまだおくれております。  しかしながら、今、いろいろな側面で女性の活躍が目立つようになってまいりました。農業経営者という面から見ますと、経営者として取り組もうとする女性による全国女性農業経営者会議というものがおととしの一月にできました。経営者として農業に取り組むということでございます。  それから、社会的な進出という点では、例えば農業委員会などでは、平成八年には例えば北海道で一人だったものが十七人とか、鹿児島でも一人が三十一人ということで、積極的に立候補して、人から言われるのではなくて立候補して地域社会の意思決定の場へ参画しよう、こういう動きが出てきております。それから、今もお話がありましたが、流通、加工あるいはサービス面でも、女性は着実に担い手として取り組まれております。  こういう動きを背景にいたしまして、これを一層支援しようということで、実は来年度から取り組もうと思っておるわけでございますが、農協の役員とか農業委員への登用などにつきまして地域での具体的な目標をつくってもらいまして、その達成を行政としても支援する、こういうことを推進しようと思っているわけでございます。
  148. 山中あき子

    山中(燁)分科員 今までの話を伺っておりまして、食糧の自給率を上げること、それから農村の空間に対する認識、それから田園の文化を構築してグリーンツーリズムと言われているものを促進していく、あるいは地域の活性化をというその視点が見えてきたように思いますけれども、もう一点、やはりこのプランの中で非常に弱いのではないかと私が思っている部分というのは、ビジネスとしての農業経営者を将来に向かって育成する教育のあり方というのが、例えばデンマークなどに比べてみますと非常に弱いのではないかというふうに思っております。  特に、今までの農業の学校その他は、技術の改善、そういうところにかなり重きを置かれているわけですが、もう少し抜本的な、ビジネスとしての農業の経営者というような発想で、どういう教育をしたらいいかというようなことを、例えばデンマークなどが非常に有名ですけれども、その辺の研究はしていらっしゃると思いますが、どういうふうにお考えですか。
  149. 高木賢

    高木(賢)政府委員 新しい国際環境対応できる、そういった新しい技術革新への対応能力、あるいは、今御指摘のありましたように経営の高度化の必要性に対応できる、こういう人材を養成するということは非常に大事なことだと思っております。  農業者の教育もまさにこういう現在の農業情勢に対応したものにする必要があるということで、基本的な考え方といたしましては、高度の技術能力をつけるということは従来からやってきたわけですが、それに加えまして、経営管理能力を向上させるための必要な能力の習得というのが一つございます。それから、経営の発展段階は人によってさまざまでございますので、生涯教育という中で経営の発展段階に応じた教育ができる、こういうことを推進しているわけでございます。
  150. 山中あき子

    山中(燁)分科員 今のお言葉どおりにカリキュラムがきちっと整備されて、そして修学の機会が確保されるように、私がいただきましたカリキュラムではデンマークと比較してそういうふうにはなっておりませんので、その辺のところをまた改めてぜひ御検討いただきたいと思います。  それで、時間の関係もございますので、そういった方向で考えますと、ウルグアイ・ラウンドの予算の方にちょっと移らせていただきますけれども、ここの予算の配分というのが、どういうふうに見ましても、やはり公共事業または非公共事業の中の農業構造改善事業に大変なウエートがあって、六年間で六兆百億円のうちの四兆四千四百億円というふうになっているわけでございます。  これは、例えば三年前から始まって三年前の価格づけの上で予算を組んでいるとすれば、実際にはその工事価格というのはもっと圧縮、つまり事業を減らさなくても価格が圧縮できるのではないかという議論がそここで出ておりますが、その点については圧縮をしようというふうなお考えはおありでしょうか。
  151. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 今御指摘のウルグアイ・ラウンド対策の公共事業や構造改善の工事費の圧縮でございます。  これについては、一般的に、特に圃場整備等については農家負担、農家の方に負担金が伴いますので、できるだけ工事費は縮減するように、いろいろな工法を工夫したり資材の調達を工夫したりして努力をかねてからしておりますし、また、三月末に向けて、これは閣僚会議の申し合わせもございますので、そういった具体的な工事費の圧縮の指針を出したいと思っておりますが、このウルグアイ・ラウンド対策に盛り込まれました公共事業また構造改善事業につきましては、体質の強い農業生産の実現と、農村地域における都市に比べて立ちおくれた生活環境の改善のための施設の整備に必要不可欠な事業として計上されておるわけでございますので、この額自体は今予定の額で着実に推進しておるところでございまして、これからもそうしていきたいと考えております。
  152. 山中あき子

    山中(燁)分科員 着実に消化されて推進されているという認識自体が議論のあるところでございますけれども、農水省の方が何度も訪れられたという、例えば千葉県のある農家ですと、農水省の補助金の単価百五十万から百八十万円の一反歩の農道をつくり、それから田の整地を行い、排水を行うというのが二十五万円で上がっているという事例もございます。六分の一ということになりますと、ほぼ補正予算は要らなくなってしまうわけでございます。  そういう現実があるということはよくおわかりだと思いますので、六分の一というふうには申し上げなくても、私がなぜ公共事業の方を圧縮できないかと申し上げているかといいますと、先ほど申し上げましたように、やはりもっと農村自体の一つの田園文化というものを総合的につくり上げるという意味で、ハードに偏重している予算を、削ってなくせという議論もあると思います、でも、私は欠けている部分にぜひ入れていただきたい。それが経営者としての農業家を育成することでもあります。  それから、農村景観全体をよくしていくという意味では、もっと細やかに、つまり、細やかに指導なさるのではなくて、日本は北海道から沖縄までたまたま細長いですから、それぞれ気候も風土も植生も違って、すばらしい、異なった農業景観の地域がたくさんあるわけです。それを十分に生かしながらいくという発想で、例えばイギリスのように、イングランドでは二十二、それからイギリス全土、英国全土では四十三の特色ある農村地帯、多分コッズウォルドなど皆さんおいでになったこともおありと思います。  そういうようなもので、例えばここはワイルドフラワーのあふれている地域とか、ここは生け垣でずっとくくられている地域とか、さまざまな形で、最初に申し上げましたのは、そういったように農村もつくり上げる、そういう発想で、ぜひ食糧の自給の問題と同時にそういうふうに予算をシフトしていただきたい。そのことを強く申し上げたいと思います。  それに関しまして、農林水産大臣、最後のコメントをいただければと思います。
  153. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 私と委員とは考え方は余り違わないと思うのですよ。結論から申し上げますと、一つのプロセスの問題だと思います。  今の日本農業が、土地の集積化ができていない、それから大規模化ができていない、生産性を上げてコストダウンを図らなければならぬ、こういうところがまず第一にあるわけでございますので、勢いそういう公共事業中心のラウンド対策になっておるわけですね。ですから、今の日本農業の発達段階といいますか、現状からすると、まずそこから手を加えなければいけないということだと思うのです。  それがだんだんと、今委員が言われましたようなヨーロッパ並みの農業に変わってくれば、そういうことも可能になってくるわけでございまして、それはその状況に応じて農政は内容が見直されていく、そういうことは現実の問題としてあり得るわけでございまして、今は少なくとも大規模化、生産性を上げてコストダウンを図る、また農村地域の環境整備をして都市との格差を縮めていく、そういうところに力点がある、そういうふうに御理解をいただければありがたいと思います。
  154. 山中あき子

    山中(燁)分科員 デンマークは小規模でありながら規模の収益を得るという工夫をしております。必ずしも大規模化しなければ規模の利益を得られないというわけではない、その辺もひとつ視野に入れていただいて、しかも加速度的に環境は変わりつつありますから、一刻も早くあるべき方向へ向けての改革をしていただかなければいけない。その時期が来たらというのでは手おくれになるのではないかというふうに私は思っておりますので、その点を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  155. 菊池福治郎

    菊池主査 これにて山中燁子さんの質疑は終了いたしました。  次に、岩國哲人君。
  156. 岩國哲人

    岩國分科員 太陽党の岩國哲人でございます。本日は、農水大臣、大変お忙しいところ御出席いただきまして、心から感謝申し上げます。きょうは、我が国農業のあり方、そしてその中における干拓事業等について質問させていただきたいと思います。  私は、曾根崎小学校一年生のときに父を亡くし、それから母の里の出雲へ帰されて、小学校二年生のときから、私は長男でしたから、ずっと農業、百姓をやっておりました。高校三年が終わって大学に入るまで、私は毎日毎日、キュウリ、ナスビ、トマト、カボチャ、大根をつくり、芋を植え、麦を植え、麦踏みをし、麦刈りをし、ありとあらゆるものをつくっておりました。私は今でも農業にこだわりを持っております。  出雲市長として、私は出雲市の小学生には農業体験、農業実習を強調しておりました。大きくなったらみんな農業をやりなさいということではなくて、小さいうちから土の中で物をつくる喜び、そして苦労を味わってほしいからです。小さいときから、自分より弱い命がある、その弱い命を守る、そして育てる、その喜びを自分の手と足で握ってほしいからです。  ありとあらゆるものをつくったと言いましたけれども、私は米だけはつくったことはありませんでした。米をつくるのは嫌だったのか、米をつくるのは苦手だったのか、米の自由化を見越しておったのか。そんなことではなくて、私の育った西浜村というところは、米をつくる田んぼがないところだったのです、日本海岸の砂地の村でしたから。ですから米以外のものを私はつくってきました。  そして、市長時代も、私は農業を大切にということを言ってきました。議会でいろいろと質問が出ますけれども、道路とかほかの問題は担当の部長に答弁させましたけれども、農業の問題だけは私は一遍もほかの部長に答弁させたことはありませんでした。一生懸命働いていらっしゃる農家の方が傍聴に来ておられる。一人でも二人でもその姿を見たら、私ば自分の言葉でいつも答えたかったからです。  農水省からもいろいろと御指導いただいてまいりましたけれども、その中でも特に、環境やあるいは農業を大切にする心を小さいときから育てるために、出雲市は樹医制度をつくりました。人が病気をしたらお医者さんがいます。動物が病気をしたら獣医さんがいます。木にも命があります。その命のある木にだけはお医者さんがいない、私は間違いだと思いました。命のあるものすべてにお医者さんがいる。樹木の樹、樹医制度。わずか四百万円でつくった樹医制度、今十人の樹医が出雲市にはいて、そして農水省、林野庁もそれに倣って、今全国に三百人、四百人と樹医制度が広がっていっております。うれしいことであります。  電話一本、庭の木、道端の木、この木は元気がない、この木は病気ではないか、樹医さんが飛んできて無料で診断して、そしてその木は元気になる。たったそれだけのことで木を愛する市民の皆さんの喜びの顔をすぐに間近に見ることができます。たったそれだけのことで、小さな子供にもすぐにわかるのです。木にもお医者さんがいる、木にも僕たちと同じように命がある。木に命があるということを知ってしまった子供は木をいじめなくなるのです。  そういう子は、大人になれば、木を大切に、森を大切に、山を大切に、地球を大切に、自然を大切に、環境環境と朝から晩まで新聞、テレビは言っていますけれども、一番大切な環境教育の原点は、自分たちの身の回りの木にも、緑にも命があるということを小さな子供のうちから教えることではないかと私は思ってまいりました。  そうした環境教育という点でも農業は大きな役割を果たしているし、また、日本農業は守っていかなければならない。必ずしも大規模な、経済性のある、採算のとれる農家だけではなくて、日本農業の強さというのは中山間地の農業にあるのではないかと思います。工夫を凝らし、気候条件に一番合った適材適地適所のそういう農業をやっていくことに、恐らく私は日本の農家の生きがいがあり、喜びがあった、そのように思っております。  そうした環境を守るという点、そして日本の食糧を守るという点からも、これからももっと農業には力を入れていかなければいけない。しかし、力を入れるということはお金をかけるということとは必ずしも一致しないと思います。  とかくお金を使う人は頭を使わない、頭を使わないために金だけをかける、そのような批判が日本の農政にもございます。私も現場でもそのようなことを幾つも見てまいりました。これからは、力を入れるということは、お金をかけるより、もっと工夫をしていくこと。例えば、生産農家と環境農家とをもっときっちり分けてこれからの育成を図っていくということも大切ではないでしょうか。環境問題に対する世間一般一社会一般の関心の高まり、そして国政一般の中にも環境問題はウエートを持ってきた、そのような時代の変化。  それからもう一つは、農業のあり方そのものにもいろいろと時代の変化がやってきております。長い目で見たら食糧は不足する、このような懸念は確かに私はあると思います。しかし、目先は米が余っている。目先の米の余り方、しかし、将来的には食糧は不足するのではないか、このアジア地域において。  そのような問題についても、またいっか機会があれば議論させていただきたいと思いますけれども、きょうはそういう環境問題に対する変化、そして農業のあり方に対する変化、そして農地そのものをふやすのか減らすのか、そして農業の後継者は今現在どうなっているのか、農地に対する需要、そのようなもろもろの変化の中で、三十年前から始められた中海干拓事業等を含めまして、この二月二十八日に総務庁より、大規模な農業基盤整備事業に関する行政監察結果についてという報告がなされました。農水省としてはこの内容をどのように受けとめておられますか。いわゆる大規模農業基盤整備事業というのは、全部で幾つあって、その中の七十七が取り上げられたのか、そして、農水省としてはこの中海干拓事業についてはどのような受けとめ方をしておられるのか、大臣から御所見を伺いたいと思います。
  157. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 結論から申し上げますと、勧告内容を現在検討いたしておりまして、五月三十日までに総務庁長官に回答する、そういう予定で今おります。  内容につきましては、幾つか申し上げますが、干拓事業のうち実施中及び休止中の事業につきましては、環境に十分配慮し、営農などの確実性を確認しながら適切に対処するよう勧告を受けております。それから、干拓事業につきましては、これまでも用途を水田から畑地へ転換するなど、農業情勢に応じて計画を見直すなど適切に対処しております。
  158. 岩國哲人

    岩國分科員 この勧告内容は米作、米以外の目的のためにこうした事業を継続すべきではないかという方向が一つ出ておりますけれども、これはもともと、始められたときは米が不足しておる、米の増産ということを目的に、国政においてそれだけの大きな税金を使うということになった事業であります。それが、目的が大きく転換されるときには、この事業の原点に返って、こうした事業そのものは必要であるかどうかということを見直せという厳しい勧告であるというふうに受けとめるべきだと私は思いますが、いかがですか。
  159. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 その点につきましては、私どもは、この干拓事業によりまして大規模な農地面積を確保するということが、今後の我が国の食糧の自給率の低下傾向に歯どめをかけて、さらに向上していくためには必要なことであるというふうに考えております。  それから、米については、確かに減反をいたしておりますから、米のための面積を確保していくというようなことは、これは必要ないと思いますけれども、一方において、我が国の今の食糧が、非常に自給率が低下してきておるという事実から考えますと、この食糧の自給率の低下傾向に歯どめをかける、そのためには一定農地の確保が必要、ひいてはそれが国民の皆さんに安定した食糧の供給につながる、こういう認識を持っておりますので、この干拓事業について、農地面積を確保していくという面からはこの事業は必要なものだ、そういう認識を持っております。
  160. 岩國哲人

    岩國分科員 一般に食糧の自給率を挙げられるときに、四〇%という統計もあれば八〇%という統計もあり、米だけに関して言えば、自給率は一二〇%。したがって、この中海干拓事業をやることによって自給率の向上に貢献するということであれば、米以外のもので、あるいはどういったものがこの自給率の向上に資すると思われるのか、その点が第一点。  次に、農地の確保、あるいは農地がもっと必要であるという御所見でありますけれども、今の農政にとって、今の日本農業にとって必要なのは、より多くの農地ではなくて、より多くの耕作従事者ではないでしょうか。今不足しているのは農地ではなくて、土地を耕す人が減っている。むしろ農地よりも人が足りない。その現状があるからこそ、耕作放棄地が次々と広がっていき、そして日本の中に農地はあり余っているのが私たちの目の中に入ってくるわけです。したがって、農地を、荒廃地をどんどんつくるために大切な税金を使うのではなくて、むしろ後継者を育成する方向に向かうべきではないでしょうか。  そうした後継者の問題について、私は農協の人たちともいろいろ議論してきましたけれども、私は、後継者不足の最も大きな責任者は農協そのものだったのではないかと思います。大臣日本各地でごらんになったと思います。最も理想的な農業後継者がどこにいるか。農協の事務所の中で、そろばんをはじいたりコンピューターをやったりお金を集めたり、そういうところに理想的な農業後継者は次々と奪われていって、結果的には田んぼや畑から若者が姿を消し、どこにいるか。農協の立派な建物の中で仕事をしている。それが現状ではないかと思います。  もし日本農協が、挙げて二〇%、三〇%、現在の二十代、三十代の職員を田んぼや畑へ返すならば、私はそれこそ大きな農政の転換ではないかと思います。そのときに初めて、土地がもっと必要だ、農地がもっと必要だという声がほうはいとしてその人たちからわき上がってくるのじゃないでしょうか。今は、人手不足をそのままにしておきながら、次々と荒れ果てていく農地のために大切な税金を使っていく。私は間違いだと思います。御所見をお願いします。
  161. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 今、この中心になるいわゆる中核農家の育成は非常に大事な問題でございまして、認定農家は、御承知のように約九万人育ってきております。  私は、これからの日本農業考えますときに、結論からいえば、やる気のある農家とそれか ら優良農地を確保していくということが、これは二つの大きな柱だと思っておりますので、今委員が御指摘の、やる気のある農家を、後継者というふうに置きかえてもいいのですが、それは全く賛成であります。しかし同時に、優良な農地も確保しておるということも、私は同じように大事なことだと思います。  それから、この干拓事業について、米から何にかわるかということでありますが、一般的に申しますと、その地域の営農の指導を十分にしていただいて、そして、例えて言えば、野菜であるとか、またこれからも畜産の飼料を非常につくらなければならぬわけでございますので、そういうことも一つ考え方かなと思うわけでございます。いずれにしても、その地域地域に応じて、米以外の作物については十分に考えて指導していっていただきたいというふうに思っております。
  162. 岩國哲人

    岩國分科員 自給率を上げるためにどういう作物をお考えになっていらっしゃるか。
  163. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 今大臣から御答弁ございましたように、例えば畜産のための牧草、畜産経営の振興のための自給飼料でございます。また、今野菜等も輸入がふえておりますけれども、これは消費の強い、また高品質で新鮮であれば、国内農業振興の可能性は大変大きいわけでございますけれども、そういった野菜等の園芸作物等。また、自給率を上げるためには、大変低い大豆あるいは小麦、こういったものの生産振興も重要な課題でございます。
  164. 岩國哲人

    岩國分科員 大臣から優良農地の必要性、そしてまた優良農家についても触れていただきましたけれども、今局長の方から、そうした中海の場合に自給率を上げていくものとして考えられている候補としては、例えば畜産が挙げられました。  確かに自給率は低いと思います。そこで畜産が大々的に行われるならば、それも確かに数字の上では貢献することになると思います。しかし、この中海周辺の人たちは、この立派な汽水湖をつぶしてまでもそこに畜産団地ができる――畜産については、御承知のように、これはいろいろな、農業の中でも公害が特に最近叫ばれているものであります。農水省として畜産の方向へ指導することが考えられているということであれば、これは地元においてもまた新たな論議の対象に恐らくなってくると思います。  次に、野菜そして大豆等についても触れられましたけれども、野菜についてはそこそこのものができるだろうと思いますが、そういうところで野菜をつくるだけのそのコストはどうなのか、おいしいキャベツでも、それは何倍もの値段になってしまう。あるいは大豆、ああいった風の強いところに、大豆は本当に適地なのかどうか。こうした野菜、大豆、そして畜産について、真剣に検討された結果であるのかどうか、それもお伺いしたいと思います。  次に、優良農地ということでありますけれども、優良農地というのは、今眠っている農地こそ私は優良化すべきものがたくさんあるのではないかと思うのです。そういうものは、小さなコストで大きな成果が期待できるようなことをしないで、大きなコスト、大きなゼネコンのための仕事をつくって、そして優良か優良でないかわからないような農地をつくってしまう。  例えば、神戸市が大々的に海を埋め立てて、そしてその結果、おととしの一月十七日に何が起きたか。見事に自然の報復を受けてしまったではありませんか。この日本海岸においても、同じように造成された干拓地において、そのような自然の報復を受けることを地元住民は大変心配しております。こうした優良農地ということ一つをめぐって、先ほどの御答弁について、もし補っていただく点がありましたら、お願いいたします。
  165. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 今の優良農地につきまして申し上げますけれども、委員も御承知のように、現在の農地面積の五百万ヘクタール、六百万ヘクタールございました農地面積がどんどん減りまして、今五百万ヘクタール、二〇%ほど減ったわけでございます。  一方また、これも御承知のように、今輸入している食糧を全部国内生産するとすれば、その上千二百万ヘクタール農地が要る、こういう現実もございまして、先ほど言われました、眠っている農地を活用することも非常に大事なことでございますけれども、さらに農地を広げていくということも大事な政策であると思っております。  それから、中海の問題で、酪農の問題は、これは飼料をつくっていくということで、あそこに牛を飼うという、そういう計画ではございませんので、その点は御理解いただきたいと思います。
  166. 岩國哲人

    岩國分科員 監察結果報告、これは総務庁の方から出たものでございますけれども、これについて、これは農水省の責任ということではありませんけれども、こうした監察結果報告の中に事業可能性、採算性、経済的、技術的な監察だけではなくて、私は、これから農水省も含めて、あらゆる大型公共事業については、地元住民の意見というものはどうであるかということがこういう監察結果報告書に入ってこなければおかしいと思うのです。地元住民の顔がさっぱりあらわれてこないようなこういう監察結果報告書がどれだけの意味を持っているのか。  我々国会議員が予算委員会で審議したいのは、決して、技術的に可能かどうか、経済的に採算がとれるかどうか、そういったようなことだけではなくて、地元の住民がどれだけこれを期待しているのか、喜んでおるのか、あるいは逆に反対があるのか、その反対論の紹介というものがこの中に本当は入ってこなければならないと思います。こうしたことについて、大型公共事業について大変関与度が高い農水省としては、これからはぜひそういった観点からもお取り組みをいただきたいというふうにお願いしたいと思います。  さらに、先ほど、優良農家というお考え、私も、これからの日本農業を支えるためには、やる気のある農家がもっともっとふえてもらいたい。そのためには、今の農政は混乱していると思います。兼業農家あり、専業農家あり、専業農家といっても、中山間農地をやるところと、それから平野の農業をやる平地農業とは、採算性も全く違います。また、大規模農業といいましても、二十五カ所に飛び地をしているようなところでは話にならないわけです。大規模というのは、ただ足せば面積が大きくなるということではなくて、やはりコストがもっと安くできると。  そのためには、生産農家という採算性を重視した農家のグループと、もう一つは、採算性は二の次にして、中山間地の環境を守るためにそこに定住してもらう中山間地農家、私はこれを環境農家という言い方で表現しております。環境農家とそして生産農家、この二つにはっきりと区別した農政を、これからの日本農業には二つある、もうそのような時代が来たのではないかと思います。  今までのようなまぜたような、そういう混合型の農政では農家もやりにくい、採算はとりにくい、そして補助金の出し方も全くこれは意味が違ってくると思いますから、そうした環境農家。そこには所得補償という形でもって定住してもらう、定住してもらってそこの近隣の山林も守ってもらうような環境農家という一つ制度。  もう一つは、生産農家。これは大規模農業。ただし、農地を一つ一つ買っていくのはコストが高いですから、これは市とかあるいは国が公有農地という形で持って、そして農地は適正な値段でリースするなり貸し与える。そのようなやり方で耕有農業、今までの耕作する権利と所有する権利、耕有一致の原則を今こそ大胆に破って、耕有分離の方向をこれから打ち出していくべきではないか。所有権はすべて市または国が持つ、しかし耕作権はやる気のある人たちに二十ヘクタール、三十ヘクタール。そのときに初めて私は、若い世代が目の色を変えて日本農業に取り組んでくれる、また取り組んでほしいということを我々の方からお願いできる環境ができるのではないかと思います。ぜひそういった方向でお考えいただきたいと思います。  次に、方向を少し変えまして、動物愛護について質問をさせていただきたいと思います。  この愛護という言葉がつきますと、これは担当は総理府ということになるようですけれども、最近の新聞でも報じられましたように、犬猫に対する残虐な行為が数多く見られました。一方では、無責任な飼い主による、特にバブル以後、捨て犬、捨て猫の問題があります。また、家畜の飼養についても、環境等多くの問題が指摘されております。  しかし、こうした動物やペットなどに対する行政の側の対応を見ますと、家畜というのは農水省、野生動物は環境庁、ペットは総理府といったように、縦割り行政そのものになっております。さらに、同じ家畜でも、衛生面は厚生省といった区分があり、どの動物についても、愛護という言葉がつくと、それはまたすべてが今度は総理府扱いとなってしまう。動物と人とのかかわりの実情と全く乖離した行政であると言わざるを得ないと思います。こうした問題は、動物の保護及び管理に関する法律についても、地方への業務移管で同様の問題が生じております。家畜もペットも野生動物も、すべて命あるものであって、行政の一元化が必要と考えますが、農水省としてどのように考えておられますか。
  167. 中須勇雄

    ○中須政府委員 ただいま御指摘のとおり、動物に関する行政、特に愛護ということになりますと総理府が中心になっておりまして、もちろん部分的にはそれぞれの省庁、私どもでいえば、例えば獣医師さんというのは私どもの所管というか仕事でございますので、その面でのかかわりがございますし、また、家畜というような問題もございます。それから、例えば犬の狂犬病の検疫は私どもの方が担当しておるという部分がございまして、そういった意味では、関係省庁連携をとりながら動物愛護ということを進めているわけでございます。  率直に申しまして、一つ一つの行政の責任ということに関しては御指摘のとおり縦割りの姿になっておりまして、現在、私どもといたしましては、その中でできる限り横の連携を十分とって行政の実が上がるように努力をしていく、こういうふうな態度で臨んでいるところでございます。
  168. 岩國哲人

    岩國分科員 そこで、やむを得ませんので、厚生省マターかもしれませんけれども、動物の検疫期間について。  例えば、犬や猫を連れて帰ったときに、猫は今そのまますっと入れます。しかし、犬の場合には、成田で二週間検疫所にとどめなければならない。私も、今まで十回以上国境を越えた引っ越しを、ニューヨークからロンドンへ、ロンドンからパリへ、パリからロンドンへ、ロンドンからニューヨークへ、東京へ、またニューヨークへ。そのたびにいつも一緒に暮らしておる犬と別れなければならない。パリの場合あるいはニューヨークの場合には、そのまますっと一緒の飛行機で入っていけますから、家族も大変喜んでおるわけですけれども、例えばロンドンの場合には、日本よりもっと厳しくて、六カ月も。我々、六カ月の間、毎週末になると家族全部で犬のところに面会に行って、ずっと昼間一緒にいてやりました。日本へ連れて帰ったときには、今度は二週間、東京から成田まで何回も何回も面会に行きます。  そうしたことについて、最近は非常に薬とかいろいろな技術も発達しているわけですから、また、ペットを飼う家庭の数も随分ふえております。こうした観点からも、検疫期間ということについては、もっと、アメリカあるいはフランス並みにもう即時そういったことはできるような方向で検討しておられるのかどうか。それは全く不可能なことなのか。  例えば、二年前の阪神大震災があったときに、フランスの犬は、スイスの犬は、あれはどのような待遇を受けたのか。まさか二週間検疫所にとどめられたとは私は思いません。あのフランスの犬やスイスの犬は、いつ到着して、そして何時間後、何日後に活動を開始することを認められたのか、お答えいただきたいと思います。
  169. 中須勇雄

    ○中須政府委員 ただいまお話しの狂犬病という病気は、犬はもちろん、私ども人間にとりましても大変危険な病気でございます。そのウイルスが入ってくると、発症した場合一〇〇%死亡するという大変恐ろしい病気でございまして、これの防疫、我が国は幸い昭和三十一年以降狂犬病は発生しておりません、この清浄な状態を維持していくということは、行政としての重要な使命だろうというふうに思っているわけでございます。そのため、犬につきましては私どもで輸入検疫実施しておる、御指摘のとおりでございます。  ただ、その場合も、相手の国等によりましていろいろ扱いを変えております。現在狂犬病が発生していないいわゆる清浄国から犬を輸入する場合には、健康証明書等相手国政府からの書類が整っている場合は、家畜検疫官が検査をすることによって十二時間でリリースをする、こういうような扱いになっております。  一方、国内で狂犬病が発生している国から我が国に入ってくる場合には、予防注射をしていることの証明書等必要な書類が整っていれば、先生指摘のとおり、十四日間係留をいたしましてそしてリリースをする、かかっていないことを確認した上で輸入を認める、こういうような形をとっているわけでございます。  ただ、この十四日間というのも、先ほどちょっと阪神・淡路大震災のときの例が出ましたが、大変病弱な犬であるとか、あるいは盲導犬であるとかああいう非常時に大変役立ってくださる犬、そういう場合には運用の中で弾力的にそれは扱おうということで、十四日間の係留は必要だけれども、その係留場所を別途指定する。実際に、スイス等から来た犬につきましては、着いた即日から活動を認めておりまして、ただ、その際、家畜防疫官がわきで監視をしたり、いずれにしても、十四日間の係留を検疫所以外のところで認める、こういうような弾力的な取り扱いによって認めたということでございます。  いずれにいたしましても、大変恐ろしい病気でございまして、潜伐期間等を考えると、現在程度検疫措置というのはどうしても必要だというのが私どもの見解でございます。
  170. 岩國哲人

    岩國分科員 質問時間が尽きたようですからこれを最後にしたいと思いますけれども、そうした外国でできていることが日本でなぜできないのか。そういった点についても、行政は最大のサービスという観点からも、家族と一緒に過ごしている犬がそういうときにだけ差別されてしまう、それが子供の心にどれだけ大きな影響を与えるか、そういった気もしますし、教育の上で大切だということは先ほど申し上げましたけれども、動物と一緒に過ごす、それは高齢者にとっても最近外国で非常に大事な治療となっておりますから、ぜひ動物と全く共生できる日本を一日も早く実現していただきたいし、二週間という検疫期間をもっと縮めるべきだと私は思います。  それから、先ほど、役に立っておる犬だから即日でも町へ出せるということですけれども、役に立つ犬は即日から出されて、役に立たない犬は二週間ということでは、これは人権差別というよりも人権差別ではないかと私は思いますので、そのような犬権差別が現にできておるのであったら、いい方にこれからすべての犬を差別してもらいたいということをお願いして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  171. 菊池福治郎

    菊池主査 これにて岩國哲人君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして農林水産省所管についての質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  172. 菊池福治郎

    菊池主査 次に、総理府所管中環境庁について、政府から説明を聴取いたします。石井国務大臣
  173. 石井道子

    ○石井国務大臣 平成九年度環境庁関係予算案について、その概要を御説明申し上げます。  まず、予算の基礎となっております環境政策の基本的な考え方について御説明申し上げます。  今日の環境問題は、地球温暖化に代表されるように、地球の生態系を損ない、将来世代の生活や産業にも大きな影響を及ぼすことが予想されるなど、人類の生存基盤を脅かす問題となりつつあります。これからの私たちの対応のあり方が、二十一世紀以降の人類の暮らしや経済活動の発展を左右するものであり、国内的にも国際的にも極めて重要な政策課題となっております。  これらの環境問題は、通常の事業活動や日常生活一般に起因している部分が多く、その解決のためには一生産消費のパターンやライフスタイルの見直しなど、現在の経済社会システムそのものを持続的な発展が可能なものへと変えていく努力が不可欠です。  特に、我が国は大規模な経済活動を営み、多くの資源を海外に依存するなど、市場を通じて国際社会に密接にかかわりを持つとともに、環境問題に関し多くの経験を有しております。このため、率先して国内対策を講じつつ、環境への負荷の少ない社会の実現に向けた活動が日本や世界で大きな流れとなるよう、国際的にリーダーシップを発揮していくべきと考えます。  環境庁としては、これまで、環境基本法に基づき、環境基本計画の長期的目標である「循環」、「共生」、「参加」、「国際的取組」が実現される社会を目指して、各般の施策を実施してきたところでございます。  私といたしましては、これまでの取り組みを一段と充実強化し、さまざまな分野において、二十一世紀を見通し、環境保全施策を積極的に展開していくことが大切であると考えております。  とりわけ、本年は、ブラジルで開催された地球サミットから五年目に当たります。六月には国連環境特別総会が、また十二月には地球温暖化防止京都会議が開かれるなど、いわば地球環境の年と言うことができます。我が国としても環境問題への取り組みを大きく前進させるべき年です。  地球温暖化問題、廃棄物問題、自然との共生などの問題は、私たちの価値観やライフスタイルと密接に結びついており、一人一人の自主的な取り組みが不可欠です。このため、関係省庁、地方公共団体、事業者、国民等と協力しつつ、あらゆる主体の連携のもと、全体として効果を上げるような仕組みを構築することが重要と考えております。  私は、このような認識のもと、次の施策に重点的に取り組んでまいります。  第一に、地球温暖化防止京都会議を契機として、幅広い国民の参加のもとに地球温暖化防止に向けた取り組みを推進すべく各般の対策実施するなど、地球環境対策の一層の推進を図ります。  第二に、環境影響評価の充実、廃棄物・リサイクル対策など、環境保全型社会システムの実現に向けた取り組みを推進します。  第三に、地域や住民、事業者を主体とした環境保全活動について、国が率先して取り組むとともに、環境教育・環境学習の振興など、各般の活動の支援等を進めます。  第四に、すぐれた自然の保全や復元を一層強化するとともに、自然学習や体験の場の整備を進めるなど、自然との共生を推進します。  第五に、化学物質による人の健康及び生態系への影響を未然に防止するため、環境リスクの科学的な評価と、これに基づくリスク管理など、化学物質による環境リスク対策を総合的に推進します。  第六に、低公害車の普及促進、汚染された地下水の浄化対策など、大気環境対策や水環境対策を積極的に推進します。  第七に、健康被害の予防及び公害健康被害者の救済を着実に実施いたします。  平成九年度総理府所管一般会計歳出予算要求額のうち、以上のような基本的な考え方のもとに計上した環境庁予算要求額は七百九十三億四百万円であり、これを前年度の当初予算額七百五十六億三千六百万円と比較すると、三十六億六千八百万円、四・八%の増額となっております。  予算要求額の主要な項目につきましては、お手元にお配りしてある資料のとおりでありますが、委員各位のお許しを得まして、説明を省略させていただきたいと存じます。  よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
  174. 菊池福治郎

    菊池主査 この際、お諮りいたします。  ただいま石井国務大臣から申し出がありました環境庁関係予算の主要項目の説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔異議なしと呼ぶ者あり〕
  175. 菊池福治郎

    菊池主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔石井国務大臣の説明を省略した部分〕  平成九年度の環境庁関係予算案について、その概要をご説明申し上げます。  平成九年度総理府所管一般会計歳出予算要求額のうち、環境庁予算要求額は七百九十三億四百万円であり、これを前年度の当初予算額七百五十六億三千六百万円と比較すると、三十六億六千八百万円、四・八%の増額となっております。  予算要求額の主要な項目について、ご説明申し上げます。  第一に、環境保全の企画調整等については、本年十二月に京都において開催される気候変動枠組条約第三回締約国会議を契機として幅広い国民の参加の下に地球温暖化防止に向けた取組を推進すべく各般の対策実施するほか、開発途上国の環境問題への取組に対する支援、地球環境戦略研究機関の設立準備等、地球環境問題への取組を積極的に推進するとともに、環境影響評価制度の充実、環境基本計画の推進、化学物質対策強化環境政策の一層の展開を図るべく、これらに必要な経費として四十八億五千万円を計上しております。  第二に、公害による健康被害者の救済等については、水俣病総合対策推進するほか、公害健康被害補償制度の適正かつ円滑な実施を図るとともに、環境保健に関する各種調査・研究を推進することとし、これらに必要な経費として二百十億四千万円を計上しております。  第三に、大気汚染等の防止については、窒素酸化物対策推進のための低公害車普及事業をはじめ、オゾン層保護対策、浮遊粒子状物質対策、有害大気汚染物質対策等を推進することとしております。  また、騒音、振動及び悪臭対策についても、引き続き推進を図ることとし、これらに必要な経費として二十億六千八百万円を計上しております。  第四に、水質汚濁の防止については、汚染された地下水の浄化対策推進するとともに、生活排水対策、海域における富栄養化対策及び水質総量規制、湖沼水質の保全、海洋環境の保全、特定流域の環境保全等の対策推進するための経費として十六億八千百万円を計上しております。  このほか、地盤沈下防止及び廃棄物対策費として二億四千二百万円、土壌汚染防止及び農薬対策費として三億四千七百万円をそれぞれ計上しております。  第五に、環境事業団については、建設譲渡事業、融資事業等を引き続き推進するほか、地球環境保全に取り組む民間団体の活動を支援するための「地球環境基金」事業推進を図ることとし、同事業団の事業に対する助成等に必要な経費として五十七億五千七百万円を計上しております。  第六に、公害監視等設備の整備については、地方公共団体の監視測定体制の整備を助成するために必要な経費として八億二千百万円を計上しております。  第七に、環境保全に関する調査研究のための経費については、総額八十億三千八百万円を計上しております。  この内訳としては、まず、国立試験研究機関等の公害防止等試験研究費として十九億五千三百万円を環境庁において一括計上するとともに、環境基本計画推進調査費として二億五千万円を計上し、環境基本計画を推進するための環境保全対策に関連する各省各庁所管の調査の総合調整を行うほか、環境研究総合推進費として二十八億五千万円を計上し、各省各庁の所管する国立試験研究機関等が行う各種の地球環境保全等に関する調査研究の総合的推進を図ることとしております。  また、公害防止等調査研究費として二十九億八千五百万円を計上し、地球観測衛星に搭載する成層圏オゾンの観測機器の開発、環境汚染による健康影響の解明、その他大気汚染、水質汚濁、自然保護等に関する各種調査研究を進めることとしております。  第八に、自然環境の保全対策及び自然公園等の整備事業について申し上げます。  まず、自然環境の保全対策及び自然公園等の維持管理については、「生物多様性国家戦略」に基づき、各種情報の収集整備をはじめとする生物多様性保全施策を総合的に推進するとともに、国立公園の保護管理強化を図ることとしております。  また、野生生物の保護対策については、絶滅のおそれのある野生動植物の保護対策強化を図るとともに、野生鳥獣の保護・管理に関する調査検討を推進することとしております。  これらに必要な経費として、合わせて二十四億六千五百万円を計上しております。  次に、自然公園等の整備事業については、人と自然との豊かなふれあいを確保するため、我が国を代表するすぐれた自然を有する国立・国定公園において、その保全・復元の事業や自然学習、自然体験の場の整備等を総合的に推進するとともに、身近な自然とのふれあいの場や長距離自然歩道等の整備推進するほか、国民公園の整備を図ることとし、これらの整備に必要な経費として百二十八億七百万円を計上しております。  第九に、環境保全施設の整備については、野生生物保護管理施設等整備、自然共生型地域づくり、生活排水対策重点地域内の水質浄化施設整備、井戸・湧水の復活再生等の事業推進するために必要な経費として二十一億七百万円を計上しております。  第十に、環境庁研究所については、国立環境研究所において、地球環境問題をはじめ環境全般にわたる研究を推進するために必要な経費として七十四億九千二百万円を計上し、国立水俣病総合研究センターにおいて、水俣病発生地域の特性を活かした研究を推進するために必要な経費として六億円を計上し、また、環境庁研究所の施設の整備を図るために必要な経費として二億五千六百万円を計上しております。  以上、平成九年度環境庁関係予算案の概要につきましてご説明申し上げました。  何とぞ、本予算の成立につきましては、格別のご協力を賜りますようお願い申し上げる次第であります。
  176. 菊池福治郎

    菊池主査 以上をもちまして総理府所管中環境庁についての説明は終わりました。
  177. 菊池福治郎

    菊池主査 質疑に入るに先立ちまして、政府当局に申し上げます。  質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。桜井郁三君。
  178. 桜井郁三

    桜井(郁)分科員 私は、神奈川県の藤沢から出ております自由民主党の桜井郁三でございます。  今、環境大臣から環境基本的な問題を幾つかお話しいただき、私も環境の問題はこれから大変重要なものだろうというようなことで、きょう、質問に立たせていただいたわけでありますけれども、今大臣からお話がありましたように、地域的な、あるいは一番身近な環境の問題というのは比較的難しい問題であるなということをつくづく感じました。地球の温暖化だとかあるいはオゾンの破壊だとか大気汚染の問題だとか、何となく環境基本的なもの、精神、そういうようなものが中心になってくるのかな、こんなことを私は今回の質問をするに当たって感じたわけであります。きょうは、私の一番身近な地元の問題を少し御質問をさせていただきたいというふうに思っているわけであります。  私の地元というのは神奈川県の藤沢でございますので、全国的に大変有名な湘南海岸というところがございます。その中心が片瀬・江の島の海岸でありますし、この片瀬・江の島の海岸は、年間約一千百万人もの観光客が訪れ、夏の海水浴シーズンともなりますと、六百万から七百万の人が集まってまいるわけであります。首都圏のリゾート地として、また海洋のレクリエーションの拠点となっているわけであります。そして、江戸時代から弁財天信仰として栄えた観光地となっているわけでありますが、湘南海岸を含めた海は、私たちの豊かな幸を提供してくれるばかりではなく、くつろぎや遊びの場でもあります。  そして、今の日本の海を見てみますと、事情は大変変わりまして、最近は、河川からの土砂の供給が少なくなったり、浜辺はやせ細ったり、自然の砂浜が消滅してしまっているところもあると聞いておるところでございます。都市化や商業化の進展に伴って、海は汚れ、人と海との触れ合いの場がどんどん少なくなってきているのが現実ではないでしょうか。  高度成長とともに首都圏の自然のなぎさが次々と失われる中、自然の海岸線を維持し続けてきた湘南海岸ももはや例外ではありません。都市化が進み、住宅地の拡大などによる緑の減少、モータリゼーションの発達による国道百三十四号線の慢性的な交通渋滞や、生活系排水の流入によって水質汚濁など、湘南海岸のイメージを傷つける事態はますます激しくなっておるわけであります。これを放置し続ければ、居住環境の悪化はもちろん、わずかに残されていた自然の海をも失うことになるわけであります。  また、湘南海岸は生物の宝庫として世界的に有名なところでありますし、一説によれば、湘南の海には約九百種類もの魚がいるとも言われております。これは、暖流だとか寒流だとか、両方の影響を受けていることが大きいと言われておりますが、このような生物の生育あるいは生息地である海岸や砂浜は、人と海との自然の触れ合いの場であります。このような自然、砂浜をどのように確保をしていくのか一お伺いをしたいというふうに思っております。     〔主査退席、中山(正)主査代理着席〕
  179. 石井道子

    ○石井国務大臣 お答え申し上げます。  私も子どものころ、戦前でございますけれども、江の島の海岸に泳ぎに行ったことを何かきのうのことのように思い出しますけれども、今、伺いますところ、大変この海岸も汚れてきているということを伺いまして大変残念に思っております。  この江の島の海岸、湘南海岸に限らず、自然の海岸や砂浜というものは、多様な生物の生息の場を提供するということもありますし、また、自然体験や自然学習の場としても広く活用されている貴重な場所であると認識をしております。環境庁としては、すぐれた自然の風景地を構成する海岸につきましては、国立公園、国定公園に指定をいたしまして、その保全と適切な利用の推進を図っているところでございます。  今後も、関係省庁や地方公共団体とも協力をしながら、自然の海岸や砂浜の保全と適切な利用が図られますように努力を続けていく所存でございます。
  180. 桜井郁三

    桜井(郁)分科員 ありがとうございます。  この湘南海岸は、大変汚れたり、いろいろな活性化のために、昭和六十年から、人と海とのすばらしい触れ合いのために、市民、県民の財産である湘南海岸を守り、慈しみ、育てるために、神奈川及び平塚市、茅ケ崎市、藤沢市と大磯町の三市一町で湘南なぎさプランというようなものをつくりました。そして、藤沢市のそのつくろうとしている予定場所においては、いろいろな国の規制があるわけであります。  例えば、建設省所管の河川区域、海岸保全区域、風致区域あるいは都市公園区域、そして農水省所管の漁業区域、運輸省所管の港湾区域、このように大変大きなものが重複して指定されておるわけでございます。  また、同じようなときに、江の島の島の中の観光地では、経済の後退などでお客さんが少なくなって、相次いで旅館やホテルの廃業などの苦境に陥っておりました。その中で、地域住民が行政の支持を得まして、江の島の持つすぐれた価値を見詰め直し、海や緑、歴史的環境を守り育てながら、島ぐるみ野外博物館プロジェクトということを目指してやったわけであります。  島そのものの活性化のためにも、運輸省の港湾法、農水省の森林法、漁港法、建設省の都市計画法、急傾斜地法、海岸法、文部省の文化財保護法、そして環境庁の鳥獣保護法など、約二十ぐらいの規制や制度があるわけでございます。各行政の調整や手続などのために約二年間、各省庁との話し合いで大分時間がたってしまった、こんなようなことでございます。わたしは、この二年間ぐらい、地元の住民ともっともっと話ができればいい計画ができるのかな、こんなことを考えております。また、これは縦割り行政の弊害ではないかと考えているわけであります。  今求められていることは、限られた海、川のスペースを踏まえ、港湾、漁港、河川といった枠組みの議論ではなく、海と川と陸において何が問題解決のために可能なのか、それぞれの省庁の壁を取り払い、都市の問題、地域の問題として総合的に考えていく制度、仕組みが必要なのではないかと考えるわけでございます。このようなところは全国至るところにあると考えております。湘南の海は、施設、空間整備に限りがあり、海岸保全や環境の保全が一番求められているところでございます。  環境基本法が制定され、環境庁調整機能の充実が求められている現在、このようなケースにおける環境基本法の位置づけ並びに環境庁の果たす役割についてどのようにお考えになっているか、お聞かせいただいたらありがたいというふうに思うわけであります。
  181. 石井道子

    ○石井国務大臣 平成六年十二月に閣議決定をされました環境基本計画におきましては、政府環境保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱が示されております。例えば、沿岸海域については、すぐれた自然の的確な保全を図るとともに、干潟、藻場等の有する環境保全能力の維持を図ること、また、人と海の自然との触れ合いの場として活用することが重要であると明記をされているわけでございます。  それで、環境庁としては、このような環境基本計画の考え方に沿った取り組みが推進されるように努めていかなければならないわけでございます。それぞれの各省庁で、その事業の目的、立場、役割においてそれぞれの法的規制なりルールがあるかとも思うわけでございますが、海岸事業五カ年計画、これが平成八年の十二月に閣議決定をしているわけでございまして、その環境保全上の観点からも必要な調整を行っていくということになっております。  そして、自然と共生する海岸環境の保全と創出を図るため、多様な自然環境の維持・回復、海水・海域の浄化等を推進するというふうになっておりまして、このような考え方に沿って海岸に関する事業推進されるわけでございますし、環境庁といたしましても、環境基本計画に基づいた事業推進のため、その観点に立った必要な調整を行いながら進めていきたいというふうに思っております。
  182. 桜井郁三

    桜井(郁)分科員 ありがとうございました。  今のようなそれぞれ規制があったり制約があったりというようなところをこれから地域において活性化するためにも、ぜひ環境庁が中心となりながら、環境行政は環境庁でやっていくんだというような形で、御決意でやっていただければありがたいのかな、こんなことを思っております。  特に、今、地方分権とかあるいは規制緩和というようなことを言われておりますが、こういうような法律の規制がいっぱいある中で地方分権を幾らやっても、その地方の活力というようなものは生まれないというふうに私は考えるわけでございます。これはお答えは要らないわけでありますけれども、ぜひ環境庁のお力添えによって地方の問題を一本化していただくようお願いを申し上げるところでございます。  それから、江の島の地域の斜面の乱開発や河川の汚れ、海の汚染、緑と景観の破損から海や緑を守ることが、観光地として生き残る道であります。  片瀬・江の島の海岸には境川と引地川の二つの川が流れ込んでおりますし、境川は、二級河川として東京都の町田市、神奈川県の相模原市、大和市、横浜市を通って藤沢市に流れ込んでおります。日本の高度経済成長により、日本各地においても川や海などの水質汚濁が問題になっておりますが、この地も同じように大変問題になっているところでございます。生活雑排水のため、非常に汚れてしまったわけであります。しかし、最近では、下水道の終末処理場が完成し川や海に家庭雑排水が流れなくなりまして、非常に水がきれいになったわけであります。  しかし、現在は、多くの観光客のための飲み物の残りの瓶や缶、あるいは弁当の空箱など、ビニール袋などを所構わず捨てていくので、浜辺だけでなく道路や海の中まで汚れてしまっております。このような海岸や海の環境についてどのように認識しておりますか。  また、観光客のマナーが大変悪くなっております。これは、湘南海岸だけでなく日本各地の観光地における悩みの種ではないかと思うわけであります。人の集まるところはすべて環境が悪化しておりますし、これは日本人の道徳心や公共心が欠如しているのではないかと思うわけであります。  海岸や河川など、私たちを取り巻く生活環境も含めきれいに美しくするためには、小さいころからの環境教育が必要ではないでしょうか。これからの環境教育をどのように考えておられるのか、お伺いをしたいというふうに思っております。よろしくお願いします。
  183. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 日本は三万五千キロという大変長い海岸線を持っております。神奈川県は多分四百キロぐらいだろうと思いますけれども、この海岸線は、自然動植物の生息の場であったり漁業活動の場であったり、あるいは地域住民の生活のアメニティーの場ということで、言ってみれば国民共有の財産でございまして、これを良好な状態で保全をするということは極めて重要だというのが私どもの認識でございます。  海岸の汚れ、とりわけごみにつきましては、今先生指摘ございましたけれども、湘南海岸の調査によりますと、約三割が海岸で放置をされたごみ、そしてあと残りの七割が上流もしくは海から漂着をしたごみというふうなデータも出ております。  こういう実態を踏まえますと、海域の環境保全を図るためには、海岸の利用者一人一人がどういうふうにこれを自覚をしていくかという問題と同時に、川あるいは海、これを上流から下流まで流域一帯としてとらえて、環境保全意識を向上させるということが不可欠でございます。  私ども環境庁も、こういった観点に立ちまして、実は平成九年度の予算要求の中に、特定の流域につきまして流域全体の水環境保全のための調査というふうな経費を計上いたしております。これは、いわば各流域の水利用、川利用、海利用の通信簿というべきものでございまして、この調査結果をもとにいたしまして関係省庁にも提言をしていきたいというふうに考えております。
  184. 田中健次

    ○田中(健)政府委員 お尋ねの中の環境教育の問題でございますけれども、先生おっしゃいますように、現在は大量生産、大量消費それから大量廃棄型の社会でございまして、これを変革するためには、学校、地域あるいは家庭等多様な場における環境教育の推進、とりわけ次世代を担う子供たちの環境に対する理解と関心を深める、これが非常に重要でございます。  こうしたことで、環境庁でも平成七年度から、小中学生を対象に、自主的な環境学習を支援するこどもエコクラブ事業というものを始めております。こうしたことで小さいときからそういう意識を学んでもらう、こういうこともございますし、また、小学校、中学校、高等学校におきます環境教育の指導資料の作成に対して文部省との連携も図っているところでございます。  こういうことで、今後とも文部省や地方公共団体など関係機関との連携協力のもとに環境教育の推進を図っていきたい、こういうふうに思っております。
  185. 桜井郁三

    桜井(郁)分科員 湘南海岸は、日本でも有数の海水浴場でありますし、交通の便が大変よいために、夏ともなりますと六百万から七百万人もの人が集まってまいります。しかし、浜辺に建っている海の家は昔からのよしず張りでありますし、シャワーに使う水道は夏になるといつも新たに埋設していったりしております。トイレも各海の家にはなく、公共トイレの使用となっております。  この公衆トイレそのものも、今では大変数が多くなっておりますが、日曜日ともなりますと、大変人が多いわけですから、混雑をしているわけでございます。  そして、現在は自動車で来るお客様が大変多く、車の中で着がえなどをするために、海の家を使用する人が少なくなってきております。昔の海水浴客は泳ぐことだけでしたが、今の人々は日光浴とかあるいはサーフィン、ボードセーリングなど、時代の最先端を行く海洋レクリエーションが盛んであります。年間約一千百万人が利用されておりますが、平成十二年になりますと、二千万人ぐらいが海を利用されると予想されております。  今環境庁は、快適な海水浴場はどうあるべきかというような検討をしておると聞いておりますが、どのようなものなのか、お知らせいただければありがたいというふうに思うわけであります。
  186. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 海水浴場につきまして、これまでの取り組みと今後の方向ということでお答えをさせていただきたいと思います。  環境庁、従来は水浴場の水質改善を図るという観点から、水質を重点としていろいろな取り組みをしてまいりました。例えば、大腸菌がどうか、油膜がどうか、あるいは透明度がどうかというふうな、そういう水質のポイントにつきまして、例年、シーズン前の五月、六月に一定の評価をしているわけでございます。対象は、五万人以上の利用客がいる三百六十ほどの水浴場でございます。  ただ、水質ということだけではこれからは済まないのではないかというふうに思います。水浴場の快適性につきましては、水質が良好であることはもとよりでありますけれども、景観あるいは周辺環境、利便性、快適性、そういったことについても配慮をする必要があるわけでございます。  こういう視点に立ちまして、現在、専門家から成る懇談会を設置をいたしまして、望ましい水浴場のあり方について検討をお願いしているところでございます。検討結果がまとまり次第、これを踏まえまして、快適な水浴場のためのガイドラインといったものを策定をしていきたいと考えておりますし、これに基づいた指導なり規制を行いたいというふうに考えている次第でございます。
  187. 桜井郁三

    桜井(郁)分科員 ありがとうございました。  これからの環境問題というのは大変重要な問題であると思います。自然環境が回復できないようなまでに破壊されたら、私たちが生きていくのは大変厳しいわけでございます。私たちを取り巻く生活環境をしっかりしていかなければなりません。その点では、環境庁の活躍がますます大事になってくると思いますので、二十一世紀の日本のためにもしっかりと環境行政をお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  188. 中山正暉

    中山(正)主査代理 御苦労さまでした。  これにて桜井郁三君の質疑は終了いたしました。  次に、二見伸明君から質疑要求が出ております。これを許します。二見伸明君。
  189. 二見伸明

    二見分科員 二見でございます。  国家像というのは、よく言われますけれども、文化国家とか科学技術立国とかいろいろな表現があります。私は、一つの切り口として、日本環境大国といいますか、環境立国という大きな切り口があってもいいのではないかというふうに考えております。  きょうは、そういうことを念頭に置きながら酸性雨について若干議論をしたいのですが、実は私は昭和六十年三月九日の衆議院の予算委員会で、当時総理大臣の中曽根さんと酸性雨について若干の議論をいたしました。そのときの私の認識は、酸性雨は先進国の間の問題だという認識をしておりました。もちろん、中国が近代化を進めているので将来は中国が酸性雨の源になるのではないかなということはありましたけれども、当時、私はこれは先進国の間の問題だという認識をしておりました。しかし、その認識は私は今相当甘いな、そうではなくて、むしろ開発途上国も含めた大きな問題だなというふうに考えております。  この酸性雨対策というのは、一つには国内での対策がある。もう一つは、国と国が国境を越えたネットワークを結んで対処するということがある。両方が必要だ。特に大事なのは、国と国が共同で研究し、共同で対処するというシステムが一番大事なのだろうというふうに私は考えております。  そういうような認識で若干御意見を伺いたいのですが、一つは、国内問題としては、大都市圏の風下で酸性雨という現象が起こってきている。例えば日光連山の標高二千メートル前後の山岳地帯で、針葉樹のオオシラビソ、コメツガ、ダケカンバ、これが大量に枯れ死したということがあります。この森林の立ち枯れは南東に面したところ、あるいは南東からの気流の入ってくるところ、そういうところに起こっているわけです。日光から南東をずっとたどっていきますと、これは首都圏なのです。首都圏の大気汚染物質が光化学反応を受けてより毒性の強いものに変質をして、それが日光連山に来て、そして枯れた、こういうふうに言われております。  これは別に日光連山だけではなくて、日本の大都市圏、東京だけではなくて、あるいは名古屋中部圏、近畿大阪圏、その風下の地域でもこういう問題は当然起こってくる問題だろうと私は思いますが、こうした酸性雨についての環境庁の御見解を承りたいと思います。
  190. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 ぴたっとしたお答えにならないかもしれないのでございますけれども、環境庁は昭和五十八年から三次にわたりまして酸性雨に関する総合調査を実施をしてきております。とりわけ日光連山の樹木の立ち枯れにつきましては、環境庁としても非常に重大な関心を持って対処してきているところでございます。  一九九三年に航空からの写真で樹木の衰退率が二五%というふうなデータも出ておりますので、そういった点を踏まえまして、平成五年からは大気、土壌、植生につきまして実態把握ないしは原因究明のための調査を強化をしてやっているというのが現状でございますけれども、これまでの結果からは、必ずしも樹木の衰退は一つの原因ではない、複数の要因が考えられる、例えば風害であったり凍害であったり、あるいは病虫害、さらにはシカの害というふうなものが複合しているということが考えられるという結果も出ておりますけれども、酸性雨が樹木の立ち枯れに及ぼす影響について否定もできません。  したがって、いましばらくお時間をちょうだいいたしまして、多角的な調査を実施をし、雨あるいは大気汚染物質等の状況、さらには樹木の葉の表面に何が付着をしているか、葉の衰退の状況等につきまして一層詳細な調査をいたしまして、関連性を解明していきたいというふうに考えております。
  191. 二見伸明

    二見分科員 酸性雨の定義ですけれども、私はウエットもドライも含めた立場で酸性雨の問題を議論しておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  ただ、これは質問通告してなかったのだけれども、先ほど桜井さんの質問を聞きながら、実は私の友達がカンボジアPKOに行きまして、向こうで四人で一軒家を借りたのです。本人は気がっかなかったけれども、二週間ほどして裏のゴルフ場を見たらごみの山だと、PETボトル、インスタントラーメンのカップ。一軒家を借りたときにはごみなんかなかった。ところが、こんなにごみがある。二見さん、日本人はごみを出し過ぎますねと。  私は言ったのです。確かに生活が豊かになつた、便利になった、インスタント食品もはやってきている、それは逆に見ると、ごみの中に食い物が入っているんじゃないかと。そのごみを燃してNOxが出て、大気汚染になり温室化になる、あるいはそれは酸性雨になる。結局、ごみの中に食い物があるんだというふうに思って、この点は我々も考えなきゃいけないし、ライフスタイルも変えなきゃいけないなという議論をしたことを今思い出しているのです。  これは質問通告していないんだけれども、環境庁長官、難しいことじゃなくて、肩ひじを抜いて、御感想いかがですか。
  192. 石井道子

    ○石井国務大臣 日本が経済発展をしまして世界的にも経済大国となりました。その過程で、大量生産、大量消費、大量廃棄ということで、そのような生活のスタイルがかなり固定してしまったという嫌いがあると思います。しかし、現在の状況においては、そのような今までの日本のライフスタイルを変えていかなければならない、そういうときに来ているのではないかと思っておりまして、そういう意味でも、環境に配慮した生活、ライフスタイルのあり方、そして産業活動のあり方、そんなものをすべて見直すときに来ているというふうに感じております。     〔中山(正)主査代理退席、主査着席〕
  193. 二見伸明

    二見分科員 環境庁環境省にしろというのが私の持論なんです。行政改革で省庁を再編成しようとか、いろいろな議論があるときに、この話をするとちょっと違和感を持たれるかもしれないけれども、私は昔、中村正三郎さんが環境庁長官のときに、予算委員会でそういうふうに議論をしたことがある。  環境の問題というのは非常に多方面にわたりますから、各省にわたりますから、環境庁のリーダーシップというものを発揮させる、それからまた、日本環境立国だなということを目に見えるように、わかるようにするためにも、環境庁じゃなくて環境省にすべきだ、これは私の持論です。それはもし時間があったら最後に御感想を承りますけれども、そういう持論を持っているということだけは御承知をいただきたいと思います。  私は、日本にとって最も重要なことは、国内での対策ももちろんやらなきゃならぬ、もう一つはやはり越境汚染だと思うのです。これは一つのある研究ですけれども、一九八六年を基準として二〇〇〇年、二〇一〇年のアジア各国のSOxの放出量の予測が行われた。問題は中国なんです。一九八六年には約一千九百万トンSOxが出た。二〇〇〇年にはそれが三千四百万トン、二〇一〇年には四千九百万トンに急増するという予測数値が出ております。このとおりいくかどうかは別として、相当な排出量になるだろう。あそこは、エネルギー構造はもともと石炭が中心ですからね、この傾向は否定できないだろうというふうに私は思います。それから、中国に続いて、インド、韓国、タイ、インドネシアがやはり高い数値が予想されている。  私は、日本にとって、余り名指ししちゃまずいんだけれども、中国の大気汚染、酸性雨というのは、きちんと把握しておかなければいけないのじゃないかと思います。それで、中国の大気汚染、酸性雨の被害というものを、中国国内に限定して、どのように環境庁としては認識されているか、重慶は大分ひどいという話もありますね。その点どうでしょう。
  194. 野村瞭

    ○野村(瞭)政府委員 中国国内の酸性雨の状況についてでございますが、環境庁がこれまで開催してまいりました国際的な取り組みでございますが、東アジア酸性雨モニタリングネットワークに関する専門家会合というのを開催しております。この中で得ました情報によりますと、中国におきましては、これまでに三回、全国規模の酸性雨の調査を行っているということでございます。  この調査結果によりますと、西南部に当たりますけれども、四川省の重慶市、それからお隣の省になりますけれども貴州省の貴陽市等におきましては、PH四から五の雨が観測されておりまして、ところによっては、農作物が枯れたり、鉄橋などの構築物の表面が腐食されるなどの被害が発生しているということでございます。また、PHの低い地域が、今西南部のことを申し上げたわけでございますけれども、次第に北の方に進んでおるということが明らかになっておるという状況でございます。
  195. 二見伸明

    二見分科員 中国の酸性雨といいますか、大気汚染の日本への影響についてですけれども、例えば、石川県、富山県、新潟県、京都府といった日本海地域では、大陸から吹いてくる北西の季節風が最も強い時期に強い酸性雨が降るようであります。中国の環境汚染と日本の酸性雨の因果関係を断定的に論ずることは、これは危険だと思う。だけれども、そうではないかなと推定されるような情況証拠がないわけではないと私は思います。環境庁としても、過去何回か調査をされているようですけれども、中国の大気汚染、酸性雨との関係は、どのような認識を持たれておりますか。
  196. 野村瞭

    ○野村(瞭)政府委員 今先生から御指摘もあったわけでございますけれども、環境庁では、昭和五十八年から酸性雨のモニタリング調査を実施してきておりまして、これまでの調査結果によりますと、日本海側で、十月から三月の秋から冬にかけてでございますけれども、硫酸イオン濃度が高いということが明らかになっています。これは、御指摘ございましたが、酸性雨の原因物質が季節風に乗って運ばれてきている可能性が示唆されているということだろうかと思います。  そういうことで、東アジアでの地域共同の取り組みが重要ということで、環境庁といたしましては、取り組みの第一歩になるわけでございますけれども、中国を含めました、先ほども触れました東アジア酸性雨モニタリングネットワークの設立を提唱をいたしておりまして、二〇〇〇年を目途にその実現を目指しているという途上にございます。これらの取り組みを通じまして、東アジアの各国間で酸性雨に関する測定データ等を共有いたしますとともに、酸性雨対策に対する共通の認識を醸成をいたしまして、広く東アジア地域における対策推進に結びつけていきたい、そのように考えているところでございます。
  197. 二見伸明

    二見分科員 環境庁が音頭をとりまして、東アジア酸性雨モニタリングネットワークに関する専門家会合というのが過去四回開かれた。私は、これは非常に大事な、地味だけれども大事な会合だと思っております。参加国は、日本のほかに中国、インドネシア、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、ロシア、タイ、ベトナム、計十カ国ですね。特に、私は、中国とロシア、ロシアの場合、極東ロシアが日本に関係しますので、中国とロシアがこの専門家会合に参加されたということの意義は非常に大きいと思っております。  ことしは、二月四日から二月六日、広島で開かれました。ただ、今まだ専門家のレベルでの会合ですね。私は、専門家のレベルでの会合を積み重ねていきながら、できるだけ早い時期にこれを国レベルに上げて、それぞれが政府として共同の対処をしよう、お互いに情報を交換し合いながら共同研究をしようというようなシステムをつくることが大事なのではないかと思っておりますが、環境庁としては、いわゆるこの専門家会合について、今後どのような見通しを持っておられるのか、お示しいただきたいと思います。
  198. 石井道子

    ○石井国務大臣 酸性雨問題というのはやはり地球環境問題を考える上で大変重要な問題の一つであると思っております。  環境庁におきましても、議員おっしゃいますとおり、東アジア地域における酸性雨対策への取り組みの第一歩といたしまして、酸性雨モニタリングネットワークの設立を提唱したわけでございます。そして一九九三年から、関係国からの参加をいただきまして、専門家会合を開催してまいりました。そして先般、広島で第四回の専門家会合が開かれたわけでございまして、西暦二〇〇〇年のネットワーク設立に向けまして、その基本的な内容と今後の具体的な作業スケジュールなどが合意されたところでございます。  環境庁といたしましても、この合意を受けて、ネットワークの実現に向けて一層の努力を傾けていく所存でございます。そして、この専門家会合につきましても、ネットワークの実現に向けた関係国の対話の場として発展をさせていきたいと思っておりますし、さらに政府間の会合の開催に向けて努力をしていきたいというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
  199. 二見伸明

    二見分科員 私も政府レベルでもって対処できるように一日も早くすべきだと思っておりますので、ぜひとも頑張っていただきたいと思います。  それで、一九七〇年ごろ、公害国会があったころは、大気汚染というのは火力発電所とそれから石油コンビナート、ここら辺が主たるものでございまして、一種の地域汚染だったのです。酸性雨の源も大体石油コンビナートや火力発電所が六、七〇%で、自動車による排気ガスというのは寄与度はかなり低かったと思います。その後SOx対策などが行われたために、むしろ今では恐らく自動車の方が寄与度は多いのではないかというふうに思っておりますが、国内の問題としてそういう問題がある。  それを何とかしなければならぬと同時に、もう一つ、国外からの大気汚染が当然あるわけです。その場合、共同で対処するためにも、必要なのはやはりモデルをつくることだろう。平成七年度の環境白書を私見ましたけれども、日本列島はPH四台の、要するにヨーロッパ並みの酸性雨が降り注いでいるのです。これは、そういうPH四台の酸性雨が降り注いでいるから直ちに何か被害が出るというのではない。それは土壌に吸い込まれて、遠い将来か近い将来かには大きな問題になってくる。今は大きな問題になってないというだけで、そのままいけば将来的にはかなり厳しい問題が出てくるのだというふうに思います。  ヨーロッパでは、酸性雨は国境を越える問題として非常に厳しい認識をしています。私は、ロンドンの郊外のエセックスという大学で日本問題の講演を頼まれて行ったときに、日本の安全保障の議論をしたら余り喜ばないで、酸性雨の話をしたらみんな目をこんなにして、いや、日本がヨーロッパの酸性雨の問題にコミットしてくれた、大変ありがたい、ぜひともお願いしたいというような物すごい関心がありました。  ヨーロッパで、RAINSモデルというのですか、リージョナル・アシディフィケーション・インフォメーション・アンド・シミュレーション、これを略してRAINSというのですが、それをつくって、これは科学的にはいろいろ議論はあるみたいですけれども、それなりに一つのモデルをつくって、各国がそれに基づいてやっている。アジアでは、RAINSはアジアにはないわけじゃないけれども、できれば精度の高いものを、各国のコンセンサスを得られるものをつくって、そして対処するということが絶対必要です。  こういうものについて環境庁としては今どういうことをお考えになっているか、お示しいただきたいと思います。
  200. 野村瞭

    ○野村(瞭)政府委員 酸性雨問題の解決のためには地域の関係国が共同して取り組むことが必要不可欠、先生指摘のとおりでございます。  先ほども申し上げましたが、その第一歩として、東アジアの酸性雨モニタリングネットワークの設立に向けまして努力を傾けているところでございますが、今御指摘の酸性雨に関する数値モデルにつきましては、先ごろ行われました第四回の専門家会合におきましても議論が行われたところでございまして、ネットワークとして、この数値モデルについての取り組み指針について検討を開始するということが合意をされております。  環境庁といたしましては、ヨーロッパのRAINSモデル以上の精緻なモデルをこの東アジア地域でつくりたい、そのように考えているところでございます。
  201. 二見伸明

    二見分科員 このモデルは非常に科学的な知見を必要とする。素人から見ると、中立的な立場でできるのじゃないかと思うけれども、実際はやはり国益が絡みますから、その国の政治的な力、国益が、科学という名前をかりながら、真っ向からぶつかるのがこのモデルづくりだろうというふうに思います。これはまさに日本がリーダーシップをとってまとめていくべき大きな課題だなというふうに感じておりますので、ぜひとも頑張っていただきたいと思います。  もう一つ、ヨーロッパでは、土壌を主に考慮したクリティカルロード、これは臨界負荷量というのですか、これを決めています。SとNのクリティカルロードの値を決めている。これは必ずしも科学的に万能といいますか、議論がないわけではない、不十分な点は大分あるようですけれども、そういうものをつくって、一応環境基準というものを考えている。  日本でも、ちょっとそれは行き過ぎであるとかいろいろな議論があると思うけれども、そうしたクリティカルロードというものを検討してもいいのではないか。これはきょう、あしたの問題じゃなくて、十年後、二十年後の日本の問題にもなりますので、そうした負荷量、クリティカルロードを決める必要があるのではないかと思いますけれども、その点の御意見はいかがでしょうか。
  202. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 酸性雨の生態影響を未然に防止するという立場に立ちますと、やはり土壌等の臨界負荷量を明らかにするということは非常に有効であり、重要であろうというふうに思っております。  先生指摘のありましたように、既にヨーロッパを対象とした臨界負荷量の地図、これも策定をされております。アジアについても推定の作業が必要ではないかという声が強まっているところでございます。ただ、この点につきましては、やはりこの負荷量の設定に係る各種のデータ蓄積が必要でございますので、私ども、今後さらに各種知見の収集に努めまして、近い将来を目指して、この検討につなげていきたいというふうに考えております。
  203. 二見伸明

    二見分科員 最後に、酸性雨とはちょっと離れた問題になりますけれども、オゾン層を破壊するフロンのかわりに使われている代替フロンがあります。ハイドロフルオロカーボン、HFC、これについて環境庁は、地球温暖化を促進するとして使用禁止あるいは削減したいという意向を持っているというふうに伺っております。聞くところによると、この温暖化効果というのかな、これは数百倍から数万倍と言われているわけですから、これは簡単に見過ごすわけにはいきません。  ことしの十二月には京都で重要な国際会議がございます。各国はその国際会議に出席するために、四月中にそれぞれの国がレポートを出しますね。日本でもこの京都会議に間に合わせるようにレポートをこれから作成するわけですけれども、私は、政府が提出するレポートの中に、このHFCについて、使用禁止か削減か、これはまさに通産省とか真っ向からぶつかるんですよ。環境の問題をやると、必ず環境庁長官というのはほかの大臣とけんかするのが環境庁の役目だと私は思っているから、何とかそれを四月にレポートの中に入れるように努力してもらいたいということが一つです。  同時に、十二月の国際会議の場でもってHFCを積極的に議題としてもらいたい。そして、削減とかなんとかという数値目標までできればいいけれども、何とかその方向で各国の合意を取りつけられるようにぜひとも頑張ってもらいたいというふうに思っております。  もちろん、この代替フロンは、これは、オゾン層を破壊するから今までのフロンがだめでかわったわけですけれども、いきなり禁止、削減ということになると、まさに代替フロンの代替物がないのにやるといろんな問題が起こりますので、きょう、あした廃止というわけにいかぬし、難しい問題あるだろうと思うけれども、私は、やはり温暖化効果に相当な影響を持つ、これは、使用禁止、あるいは使用する場合も厳重なクローズとか、問題もあると思うし、できれば削減する方向で国内はもとより関係諸国に働きかけてもらいたいと思っておりますので、御見解を最後に承って、終わりにしたいと思います。
  204. 石井道子

    ○石井国務大臣 HFCにつきましては、代替フロンの関係で効果があるということで使われてはまいりましたけれども、しかし、温暖化の影響が非常に大きいということでございまして、現在ある程度、無制限に使用することは避けなければなりません。それで、現在では、必要なところだけ、その分野以外は原則として使用しないことでありますとか、あるいは使用する場合にはクローズドシステムで使用すること、そして、使用後のガスについては、回収とか再利用とか、あるいは回収、破壊を伴う仕組みを早い時期から整備していくことが必要であるということで取り組んでいるところでもございます。  このような基本的な考え方をもとにいたしまして、今後関係省庁との連携を図りながら早急に協議を進めていかなければなりません。そのような協議を通して、具体的な施策の内容とか実施時期など、そういうことについて検討していきたいと思っております。
  205. 二見伸明

    二見分科員 生活の質を維持しながらライフスタイルを変えるということは非常に困難が伴うと思いますけれども、ぜひとも頑張っていただきたいと思います。  以上で終わります。
  206. 菊池福治郎

    菊池主査 これにて二見伸明君の質疑は終了いたしました。  次に、山元勉君。
  207. 山元勉

    山元分科員 民主党の山元でございます。今も少しありましたけれども、オゾン層を破壊するフロンの問題についてお尋ねをしたいわけです。  これは、長年にわたってそれぞれ行政もあるいは事業者もあるいは各自治体も努力をしてきました。しかし、非常におくれているというふうに思います。環境に取り組む先進国としての日本として、今の状況というのは大変私は恥ずかしいといいますか、そういう状態だというふうに思いますし、HFCの問題もありましたけれども、これも、後ほど触れますけれども、この十二月に京都でCOP3をやる。世界が注目している中で、私はやはり、日本はもっともっと積極的な役割を果たすことをしなきゃならぬというふうに思うのですね。  まず、今の環境問題に取り組む行政として、長官の御認識をお伺いをしたいと思います。
  208. 石井道子

    ○石井国務大臣 フロンの問題につきましては、大変重要な課題でございます。  環境庁といたしましても、国民の健康を守るという観点から、フロンの回収、破壊の重要性については十分認識をしておりますし、これまでも、関係十八省庁から成るオゾン層保護対策推進会議において、フロンの回収とか再利用、破壊の促進方策を取りまとめてまいりました。そして、その啓発事業やフロンの破壊モデル事業実施していくなど、取り組みを進めてきたところでございます。  この結果、多くの市町村や都道府県におきまして、フロンの回収に向けた取り組みがかなり進んできたということが見られるわけでございますが、しかし、フロンの回収状況はとても十分とは言えないのでございまして、今後もフロンの回収等の取り組みの一層の促進が必要であると考えておりまして、関係省庁との連携を図っていきたいというふうに思っております。
  209. 山元勉

    山元分科員 確かに、十分おくれているということを御認識をいただいているようですけれども、これは今、十八省庁、取り組みを連携をしながらしているということですが、私は、今までもうあらゆるところで言われた縦割り行政の弊害というのは、やはり克服できていないというふうに思うのですね。これはやはり環境庁がしっかりとしたリーダーシップを発揮していただかないといけない。言葉じりをとらえるわけではありませんけれども、今長官は国民の健康をとおっしゃいましたけれども、フロンを放出した世界で二番目の重大犯人であるわけですから、これは世界の人たちあるいは人類そのものに大きなやはり健康上のあるいは人類存亡上の問題をかけているというふうに認識をしていただいて、積極的に取り組みをお願いしたいわけです。  ちょっと環境庁の方にお尋ねするのですが、回収なり破壊なりの進みぐあいといいますか、現状は、例えば自治体がどうだとか、あるいは車だとかエアコンだとかいろいろありますけれども、どういうふうに今把握していらっしゃるのか、現状についてお伺いをしたいと思います。
  210. 野村瞭

    ○野村(瞭)政府委員 フロンの回収についてでございますけれども、回収率で御説明を申し上げたいと思いますが、平成七年末に環境庁が行った調査におきまして回収量が不明であるとした一部の自治体がございますが、そういうところにつきましては回収が全く行われていなかったと仮定して推計をしたわけでございますが、機器別に分けて申し上げますと、家庭用冷蔵庫につきましては、市町村において粗大ゴミとして処理されているものからのフロンの回収率につきましては約一五%でございまして、それ以外の、家電販売店等によって下取りされたものも含めますと、全体の五%という状況でございます。それから、カーエアコンにつきましては、整備業者等を通じまして回収されておりますが、これが七%。それから、業務用冷凍空調機器につきましては、これも整備業者等を通じてでございますが、約一〇%といった状況にございます。破壊の方の状況でございますが、これは冷媒についてでございますが、現在のところ回収されたものの約一〇%程度ということでございます。  私ども、今の回収の状況につきましては平成七年末の状況でございますけれども、その後の回収の状況を把握する必要があるということで、平成八年末に、都道府県及び政令指定都市に対しまして前と同様の調査を行っているところでございます。現在それを集計中ということでございます。  以上が回収及び破壊の状況ということでございます。
  211. 山元勉

    山元分科員 長官、どうです。世界で二番目の重大犯人だと言いましたけれども、粗大ごみというのは、自治体がやっているわけですから割合に把握しやすいのですね。それでも回収率が一五%という数字でしょう。下取りをする。例えば、私の地元で電器屋さんが自分の商売ほっといてでもという感じで一生懸命になって回収の協力店の承認制度をつくってやっていただいている。一緒になって汗流してやっていただいている。けれども、そういう人があっても、なおかつ五%ですか。これはやはり国民の意識だとか、あるいは事業者というよりも行政の責任をよほど考えてもらわないと、これはどうにもならぬ数字だというふうに思うのですね。  御承知だと思いますけれども、フロンが放出されて、ずっとオゾン層まで到達して壊し出すという長い時間があるわけですね。ですから、そういうことを考えると、本当にヨーロッパの白色系の人たちが今帽子をかぶり、子供、赤ちゃんまでがサングラスをしているという状況がこれからどんどん進行する。北極でも進行してくるということになるわけですから、これは環境庁として寒くなるという感じで急いでもらわぬといかぬだろうと思うのですね。  そういうことで、具体的に少しお尋ねをしたいのですが、今申し上げましたように、粗大ごみだとか、あるいは下取りだとか、車のカーエアコンとかいう、いわゆるよく言われる市場メカニズムの中で回収を何とかしてやっていこうということにはもう限界があるのではないかというふうに思うのです。そこで、環境庁は、今のようなスローテンポではだめだということで、市場メカニズムに頼るということでない方策を立てなければならぬというふうにお考えにはなっていませんか、
  212. 野村瞭

    ○野村(瞭)政府委員 急いだフロン対策をという御趣旨の御質問でございますが、平成七年の六月の、関係省庁から構成されておりますオゾン層保護対策推進会議における取りまとめにおきましては、御指摘もございましたが、カーエアコン及び業務用の冷凍空調機器の冷媒用フロンにつきましては、生産全廃後は回収したフロンの再利用を行わざるを得なくなることから、市場メカニズムの活用によって回収率の急速な向上が期待されてきたということでございます。しかしながら、当初の予想に反しまして、フロンの使用機器の代替化の急速な進展等もございまして、フロンのリサイクルの需要が高まらないといった状況が生まれまして、市場メカニズムの活用だけでは回収率が今以上に向上するということを期待することが困難な状況にあるという認識に立っておるわけでございます。  現在、各地域におきまして、関係者が幅広く参画いたしました協議会、フロンの回収なり破壊に取り組む協議会が多くできつつございまして、これらの指導のもとに、例えば滋賀県でありますとか横浜市におきましてはフロン回収協力制度によるフロンの回収に向けた取り組みが開始されるなどしておりますけれども、こういうさまざまな取り組みが進められつつあるところでございます。  環境庁といたしましては、フロンの回収、破壊につきまして、関係者の理解を得るための支援事業実施しておりますけれども、今後ともこうした各地域におけるさまざまな取り組みが一層進展が図られるように、必要な施策をさらに講じてまいりたい、そのように考えているところでございます。
  213. 山元勉

    山元分科員 私はいつも言葉が悪いのですけれども、やはり先ほど言うた認識に立つと、今の局長のお答えは、どうも他人のふんどしで相撲をとるという感じがして、積極的にそういうことが進んでいくような施策というのが必要なんだろうというふうに思うのです。  そういう意味でいうと、例えば費用負担のあり方について、ああだこうだああだこうだと言って、ちっとも決まっていないでしょう。だから、事業者、あるいは国や自治体、それから消費者、こういうところでどういうふうに費用負担をするんだということをきちっとしないとなかなか進まないと思うのですね。善意で回収をしていく、あるいは理解で回収をしていくということには限界があるということからいうと、費用負担のこともきっちりとしなきゃならぬ。  そのためには、放出を禁止をする。してはならぬことだ。だから、こういうしてはならぬことをする者、あるいはつくった者というものが責任を持つ。そういう費用負担のあり方をきちっと明確にするためにも、放出をきちっと規制をする法改正をしなきゃならぬというふうに私は思うのですよ。  私どもは大分前から、私ども民主党だけじゃなしにずっと各党とも話をして法案を出したいと思っているのですけれども、なかなか各党合意が得られないし、役所でいえば、ここにいらっしゃらないさかい悪口を言うわけではないけれども、通産省の皆さんはなかなか首を振ってくれない、こういうこともあるわけですね。  けれども、環境庁としては、やはりこれはきちっと禁止をして、そしてそれについての、放出する者というのですか、つくった者とか使った者とか、費用負担のあり方についてきっちりと論議を進めないといけない。することができるのは、あるいはしなきゃならぬのは環境庁だというふうに思うのですけれども、どうですか。
  214. 野村瞭

    ○野村(瞭)政府委員 フロン対策のためには、今御指摘いただきましたように費用負担の問題も大きな一つの要素であろうかと思いますが、回収、破壊をだれが責任を持って行うかという責任分担の問題ももう一つあろうかと思います。  先ほども御説明申し上げましたが、私どもといたしましては、対策推進会議の取りまとめに従いまして、啓発事業でありますとかあるいはフロン破壊モデル事業実施などさまざまな取り組みを進めてきたところでございます。この結果、回収率の上では必ずしもまだ今のところ効果を上げたような数字が出ておりませんけれども、多くの市町村におきましてはフロン回収の取り組みが始まっておりまして、平成七年度は約千ぐらいの市町村だったわけですが、現在は約二千以上の市町村が回収に取り組み始めておりますし、また、三分の二の都道府県、政令指定都市におきましてはフロン回収、破壊促進のための協議会が設置されております。そういうことで、先ほども申し上げましたが、さまざまな取り組みが進展しつつあるということでございます。  私どもといたしましては、こうした取り組みの進捗状況も踏まえながら、今後のフロンの回収、破壊の一層の促進方策のあり方につきまして関係省庁と十分検討をいたしまして、その結果を踏まえて実効ある対策をさらに展開をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  215. 山元勉

    山元分科員 一定のところまで行って、例えば今局長が二千余りの自治体がというふうにおっしゃいました。これは平成七年度末でしょう。一年以上前の数値をおっしゃっているわけですね。  ですから、一定のところまで関心を持ってもらった自治体は取り組みを進めてきたけれども、そこのところからは、やはりぎゅっと一〇〇%なってないわけです。三千のところで二千ということですから。ですから、それはやはり法規制が必要なんだろう。  法規制のことでいいますと、先ほどありましたHFCの問題ですけれども、これはやはり温暖化に直接――これも先ほど長官がお言葉で、必要なところはしようがないのや、そこで使うんやったらクローズドでとおっしゃる。私は、思い切ってやはりこれは法的に規制をきちっとすべきだというふうに思うのです。CO、に比べて数百倍も数万倍、一万何千倍もあるようなこういう代替フロンについてきちっと今しないと、これは遠い将来というのですか、近い将来かもわかりませんけれども、大変なことになるということで、やはりきちっとこれも法規制をしないといけない。  今、規制緩和の時代です。けれども、こういうことについてはきちっと、やはり自分たちの子々孫々のこと、あるいは地球環境そのものについて考えると、きちっと厳しく規制をする。そこのところでの出てくる痛みというのはしっかりとやはり負担をする、乗り越えていくということが必要だという行政の姿勢に立たないといけないし、立つのはやはり環境庁だというふうに思うので、この法的規制についてはこれから論議が深まっていくだろうと思いますけれども、ぜひ積極的にお考えをいただきたいというふうに思います。  それから、回収と破壊の問題。先ほど市場メカニズムと言いましたけれども、確かに、各都道府県でつくる協議会だとか、先ほども言いましたけれども、私どもの滋賀で回収の指定の認定制度をつくって、店へしっかりマークを張って一緒になって頑張ってもらっているわけですね。そういうところにはやはり先ほども言いましたように限界があるわけですけれども、しかし、少なくともそれを強力に進めようとすると、そういうところにお願いをしなきゃならぬ部分はたくさんあると思うのですね。ですけれども、ほっておいたのでは、これはふえていきもしないし、どうにもならぬわけです。これは非常にお寒い状況になっているんだろうと思うのです。  回収だ、破壊だ。例えば、これも私の地元のことで、よく言うわけで申しわけないのですけれども、滋賀県に産廃業者があって、そこでフロンの破壊について協力をしてもらっているわけですね。西の方は大阪、京都、奈良、和歌山からずっと行って、北陸へ行って新潟、石川まで行っているわけです。そこからフロンを集めてきて滋賀県でつぶしているわけですね。これは、いかにもこれから一生懸命になってやるんだということには私はならぬと思う。確かに、そういう事業を進めているというふうにお聞きをしていますけれども、今の時点で、石川、新潟から集めてきたのを滋賀へ持ってきて、一産廃業者がやらなきゃならぬ。また、逆に言うと、それほどのものしか集まらぬということになるんだろうと思うのですね。  そういう回収と破壊のシステムを充実していくという方策、急ぐということでの方策は、環境庁はどうお考えになっていらっしゃるのか。
  216. 野村瞭

    ○野村(瞭)政府委員 フロン対策につきましては、回収とともに破壊についても促進を図らなければならないということについては、その重要性、十分認識をしておるつもりでございます。  平成八年の五月にフロン破壊のための処理ガイドラインというものを環境庁で公にいたしましたが、このガイドラインに基づきまして、平成八年度は、北海道、東北、関東というブロック、全体で十ぐらいございますが、ここでフロン破壊モデル事業実施をいたしておるということでございます。九年度の予算案につきましては、さらにこの拡充を盛り込んでおるということでございます。  現在のところ、十カ所程度ということで、モデル事業として実施をしておるわけでございまして、将来的には、そういう破壊する設備が整えば、さらに拡充を図っていくということも考えなければならないというように考えておるわけでございます。  以上でございます。
  217. 山元勉

    山元分科員 いや、だから、拡充のためにどういう支援をするんかということやと思うのですね。各自治体は、うちは知らぬね、うちはほっておくねというところは恐らくないだろうというふうに思います、信用しますよ。そうすると、そういうところにしっかりと支援をする。破壊のための研究も行われているようですし、通産省もやっているようですけれども、いかにもそれは遅いと思うのですね。  例えば、東京で産廃の冷蔵庫が、おととしてすか、七万台ほど回収される。そのための費用というのは四千円かかる。そうすると四、七、二十八、二億八千万円ですか、かかるわけですね一そういうことを国の研究なり国の支援でもっとコストを下げて、もっと広い範囲でその事業が進められるという方策を研究をして、あるいは策を立てて、そういう自治体の協議会だとかあるいは業者の団体とかいうものを支援しなきやどうしても進まないと思うのですよ。  冷蔵庫をとってもらう、四千円処理代が要るんです、上乗せをして処理をしているんだ、そないやったら粗大ごみでぽんと出すわ、こうなってしまうわけでしょう。ですから、そこのところはしっかりとしたそういう施策を持たぬといかぬだろうというふうに思うのです。今、そこのところを私はお尋ねをしている。
  218. 野村瞭

    ○野村(瞭)政府委員 破壊について申し上げれば、まず一つは、都道府県における協議会、先ほど政令指定都市を含めまして三分の二程度と申し上げましたけれども、やはり都道府県、政令指定都市における取り組みを国としても醸成をしていかなければならないということが一つだろうと思います。  それからもう一つは、先ほどもお話しいたしましたが、やはり責任分担それから費用負担のあり方について、基本的には現在はそれぞれの都道府県、政令指定都市における協議会で検討していただくということにしておりますが、私どもとしても関係省庁と協議しながら、やはり必要な助言等は行っていかなければならないというように考えております。
  219. 山元勉

    山元分科員 どうもそのテンポといいますか、不満なんですね。  この間の工業新聞でも、この数値についてはいろいろの見方があるようですけれども、特定フロンで九六年現在の残存量、エアコンだとか冷蔵庫だとか、あるいは業務用の空調機器等に残されている残存フロン、四万四千トンあるというのですね、四万四千トン。  これを回収するのに、先ほど言いましたように、冷蔵庫一台でも四千円回収費用がかかるというのです、破壊も含めてだと思いますが。フロン一キロを破壊するのでも四千円かかる、こう言っているのですが、四万四千トン、膨大なフロンが残っているわけですね。これをやはり積極的に規制をするなり、あるいは回収、破壊の支援をしなければ、四万四千トンがいつの間にやら知らぬけれども二万トンになった、どこかに行ってしもうたということになっていくだろうと私は思うのですね。だから、急がなきゃならぬ、強力でなければならぬ、こういうふうに思うのですよ。  ですから、今の局長のお答えでいうと、これは、例えば群馬にも石井さんという人がいらっしゃって、本当に一生懸命やっていらっしゃる。それは全国それぞれ、例えば兵庫も大変な努力をしている、各県で努力をしているのですが、そういう人たちを私は励まさないと思うのですよ。もう嫌になるんやという声を、弱音と言ったらこれは失礼ですけれども、もうやってもやってもなかなか広がっていかなんだし、例えば電器屋さん、限りがありますよね、これは。  ですから、くどう言いますけれども、ぜひそれは積極的な施策というものを環境庁が、通産省に嫌がられようが怒られようが、旗をしっかりと振ってもらわないかぬと思うのです。それはやはり、環境先進国と言っている日本の責務でもあろうと思いますし、世界で二番目にたくさんのフロンをまき散らした国の責任であろうというふうに思うのです。  ですから、長官にぜひお願いをしておきたいのですが、三日ほど前、新聞を見て愕然とされただろうと思いますが、COP3を前にして通信簿が出てはって、日本が世界で二番目に悪い成績だというのが新聞にでかでかと出ましたね。東京の新聞は余り大きくなかったのですが、京都の新聞は、これは京都で行われるわけですから非常に高  い関心を持っているのですが、でかでかと一面トップで、日本は世界で「下から二番目」「迫られる対応」。「迫られる対応」というのは、これは国民一人一人に迫られるのではなしに、私は、一番環境庁が迫られるというふうに認識をしてほしいわけです。これは二十カ国の調査をして「下から二番目」というのですから、十五番目、十番目へはい上がっていくのはなかなか大変だと思いますよ。けれども、急いでもらわなければいけないというふうに思いますので、ぜひお願いをしたいと思います。  国連の決めている国際オゾン層の保護デーというのですか、九月十六日。あるいは日本で決めている、七月がオゾン層の保護月間だ。おかしな話ですけれども、私は、環境庁の政務次官をさせてもらったことが短い期間ありました。けれども、環境のことについては相当気をつけていたけれども、このオゾン層の月間だとか国連オゾン層の保護デーなどが取り組まれたという覚えもないし、おおと言える記事なりそういうものを見たことがないわけです。  私はやはり、それは国民の皆さんが、あるいは事業者の皆さんが、これは大変なことやということで認識を高めていって、冷蔵庫を下取りに出すときに、フロンの処理費が四千円要るんやて、二千円要るんやてといって、それはしようがないという気持ちになるようなことも一面大事だと思うのです。ですから、そういう事業を援助することとあわせて、国民の皆さんへのアピールというものは、これも環境庁の仕事だというふうに私は思うのです。ぜひ努力をしていただきたい。  ことしも、私はここで言った限りにおいては、七月になったら何が見えるのかな、九月十六日になったら何が見えるのかなと、長官の顔を思い浮かべながら期待していますから、ぜひ、国連が決めている、あるいは日本が決めた――つまらぬ意見を言いますと、やはり普通は国連の国際的な日が九月十六日だとしたら九月を環境月間にするとかオゾン層の保護月間にするとか、七月にあって九月の十六日に国連だというのはおかしな話だと私は思います、法律が悪いのだと思いますが、これはなんですけれども、いずれにしても、そういう機会が二回あるわけですから、ぜひ国民の皆さんに認識の啓発をやって、そして規制があって罰則があってやむを得ぬなというところまでいかないといけないと思うのです。  最後に、そういうことでこれから頑張っていただきたいと思うのですが、長官、その御決意というのはなんですけれども、意見をお伺いしたい。
  220. 石井道子

    ○石井国務大臣 いろいろ貴重な御示唆をいただいたと思っております。環境行政の大変重要なときになっておりますし、特にことしは地球環境の年と位置づけているわけでございまして、オゾン層の問題にいたしましてもまた温暖化の問題にいたしましても、本当にことしこそ真剣に国を挙げて、国民総ぐるみで取り組まなければならない、そういう年であるというふうに思います。  環境の日というのは六月の五日となっておりまして、環境月間が六月というふうになっております。そして、オゾン層保護の日とかいうこともありまして、今も環境庁におきましては、ことしのCOP3を何とか成功させるために日本としてきちんとした実績を上げなければならないということで具体的な作業にも取り組んでいるわけでございまして、このようなことにつきましては、国民に対する啓蒙啓発活動と同時に、具体的な取り組みをぜひできるようにしなければならないと思っております。  フロンの回収、破壊の問題にいたしましても、本当に日本として実効の上がる対策を今から考えて、各省庁との連携を図りながら、効果の上がる対策ということを心がけたいと思っております。どうぞ御指導、御鞭撻をよろしくお願い申し上げます。
  221. 山元勉

    山元分科員 ありがとうございました。
  222. 菊池福治郎

    菊池主査 これにて山元勉君の質疑は終了いたしました。  次に、武山百合子さん。
  223. 武山百合子

    ○武山分科員 予算の分科会、皆さん御苦労さまでございます。私は、きょう、新進党を代表しまして質問させていただきます。  率直な私の意見としまして、一言冒頭に、辛らつな発言ですけれども、お話ししたいと思います。  私は、昨年の選挙で二期目の政治活動を今しておるわけです。教えていただきたいのですけれども、この予算の分科会というのが、まずどういうことを趣旨にしているのか、何となく釈然としない。何でも質問していいということで来たのですけれども、先回の環境委員会の質問の続きをしたいと思いましたが、環境委員会の方で質問するつもりですので、この予算の分科会の趣旨というものをぜひお尋ねしたいと思います。長官と政務次官にお尋ねしたいと思います。
  224. 鈴木恒夫

    ○鈴木(恒)政府委員 私は、まだ当選三回でございますので、先生と同じように、国会に通暁しているわけではありませんけれども、より細かな議論をじっくりとさせていただく、そういうディベートの機会、そういうふうに私は認識をいたしております。
  225. 石井道子

    ○石井国務大臣 この分科会というのは衆議院独特のルールでございまして、私は参議院議員ですが、参議院には分科会というのはないのでございます。ですから、予算といいますと大変膨大な量でございますし、各省庁非常に多いわけですから、それぞれに分かれて、そして細かく専門的に議論を交換するということではないかと思っております。  この予算を上げなければならない日にちというものの制限がありますね。ですから、できれば予算は年度内に上げなければならないということが、私は一番重要なことだと思います。ですから、日にちが十分あれば、これはそれなりに時間がとれると思いますけれども、ある程度限りがあるという日数の中でこのような形をとってきているというふうに思います。
  226. 武山百合子

    ○武山分科員 どうもありがとうございました。  せっかくお話を聞いたのですけれども、まだ釈然としないのです。これは私が政治の中で解決していかなければいけない問題であろうと反面思っております。  しかし、この第五分科会が、まず、非常に暗くて、この前とダブルで話すことになりますけれども、テレビ放映も入っていない。そして、今入ってきましたら、私一人か二人ということで、非常に寂しい。日本の冠たる予算を承認するというのに、寂しいこの委員会に本当に初めて私は出席したのですけれども、これでひっそりと上げてしまっていいのかなと、本当に、内心どころか堂々と思っております。こういうのも、今まさにこれから二十一世紀をどのように日本の国が進んでいくのかということも含めて、すべてやはり考えていかなければいけない問題だなと思っておりますので、ぜひ協力して、みんなで、本当にわかりやすい政治というものをつくっていきたいと思います。  それで、私の質問に入ります。  まず、これは警視庁に関することだと思いますけれども、ことしの日本での地球温暖化防止京都会議を盛り上げようということで、実は最近の新聞なんですけれども、東京の環境団体が千台の自転車を利用して、まず国民の、民間からの環境に対する機運を盛り上げようということで、東京都の警視庁の交通課の方ですか、そちらの方に、こういう企画をして、ぜひ千台の自転車を走らせたいということを相談に伺いましたら、いろいろ道路交通法にひっかかって、なかなか話がスムーズにいかなかったということなんですね。  まずその点について、きょう警視庁の交通課の人に来ていただいておると思いますので、ちょっと詳しく聞きたいと思います。
  227. 米田壯

    ○米田説明員 委員御指摘の自転車のデモンストレーションというのは、「アースデイ一九九七イン東京」実行委員会がことしの四月二十日に計画をされている、東京都心をコースとする自転車パレードであると承知しております。  この手の自転車パレードにつきましては、一つは、道路交通法令上、一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態であるということから、警察署長の道路使用許可というものが必要とされているところでございます。それから、東京都におきましては、いわゆる公安条例によりまして、道路で集団行進を行おうとするときということに該当いたしまして、許可手続としては、二本やる必要はなくて、一本でよろしいのですが、東京都公安委員会の許可も得なければならない、こういうことになっております。  それで、この件は、地球温暖化防止のためのデモンストレーションという、公益性が高いものでございます。ただ、一方で交通上の支障というものも生じますので、その地域の交通の状況を踏まえまして、交通の安全と円滑に支障を及ぼさないように十分に調整を図っていただいた上で実施されるべきものであるというふうに承知しております。
  228. 武山百合子

    ○武山分科員 そうしましたら、実施の方向で動いておるということですね。
  229. 米田壯

    ○米田説明員 もう少し具体的に申しますと、このコースは、今計画をお示しいただいているのは、都心の渋谷、銀座、新宿という、日曜日とはいえ、相当に交通量の多い道路であります。それから、自転車がやはり千台というのは、確かに非常に多い台数でございまして、あとは、自動車が隣接の車線を走行するということになりますと、並走するといたしましても、やはり三列ということになりますと、かえって自転車に乗っておられる方がかなり危ないということもありまして、そういうような問題点がございまして、私どもといたしましては、都心の交通に支障を及ぼさないよう、交通の安全と円滑に支障のないような形態で実施していただけるように、警視庁と、それから主催者団体との間で相談をされていると承知しております。
  230. 武山百合子

    ○武山分科員 どうもありがとうございました。私、この環境団体から何か言ってくれと頼まれたわけでもありませんし、国民の目から見て――実は、ちょうどその記事に、ベルリンで二年前に十万台の自転車のデモンストレーションがあったということなんですね。それで、ドイツのブランデンブルク門の周辺を四列で通っている写真をたまたま見かけたものですから。日本の場合、歩行者天国、それから国際マラソンですか、そういうものが現実に行われているわけですね。  それで、先日予算委員会で、私は梶山官房長官に、橋本総理大臣が欠席だったものですから、二十一世紀の国家像をどう政府は描いているんだということをお尋ねしましたら、日本国際化の社会にしたいと。まさに、警視庁も国際化考え方を少しでも入れていただいて、それで、私は、今そのような方向で話し合いが進んでいるということですので、ぜひ、千台なんて、そんな少ない、ちゃちな数の議論じゃなくて、もっと大々的に、やはり今まで官主導であった日本のあらゆるシステムを、やはり草の根の、民間主導の、民活というものをどんどん幅広くとらえて入れていくというような方向に国全体が動いていっていただきたいと思う、その点で質問いたしました。どうぞよろしくお願いします。  その次の質問に移ります。  先日の環境委員会で、私、四万十川のし尿処理施設について補助金を出すのか出さないのかという質問をいたしましたら、厚生省の方から、自治体が行う環境保護のための設備に補助金を出しており、他によいものがあれば、別途申請してくれれば補助するという答弁があったわけなんです。それで、厚生省だけでなく、環境庁としても自治体への補助金を考えていただけないかどうか、その辺をぜひ考えていただきたいと思いまして、質問したいと思います。
  231. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 四万十川の水質がかなり悪化をしてきているというのは、私ども、非常に重大なこととして受けとめております。  そういう状況の中で、この地域は、流域九市町村が、生活排水対策重点地域ということで非常に前向きの取り組みをされているわけでございますので、環境庁事業の中でも、生活排水汚濁水路浄化施設整備事業というのを平成五年から実施をしてきております。かなりの事業費をつぎ込んでおりまして、五億三千万円が九カ所に対して充てられているというのが現状でございます。  こうした生活排水の汚濁水路浄化施設整備事業といったようなことにつきましては活用の余地がございますけれども、直接し尿を処理するということになりますと、私どものメニューにございませんので、これは、先日先生の御指摘、御案内があったのですけれども、そうしたものをこういうふうな生活汚濁水路の浄化のために使えるような工夫ができるかどうか、そういったことで対応がある程度考えられるのではないかなというふうに思っております。
  232. 武山百合子

    ○武山分科員 それでは、共同作業でやれる方法を簡素化していただきたいと思いますけれども、環境庁はいかがでしょうか。共同作業です。
  233. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 ここで確たる御回答はできないのでありますけれども、厚生省と、どういう仕組みが可能であるか、環境庁事業と厚生省の事業が組み合わせが可能なのかどうかということを、今しばらく勉強させていただきたいと思います。
  234. 武山百合子

    ○武山分科員 同様の質問を厚生省にもしたいと思います。
  235. 三本木徹

    ○三本木説明員 先生今御指摘のし尿処理施設でございますけれども、これは、いわゆるバキュームカーでくみ取ったものを衛生的に、あるいは環境上問題なく処理をする、こういうようなための施設でございまして、それに対しまして厚生省として国庫補助をしてきている、こういうものでございます。ちょっと観点が変わるかもしれませんが、いわゆる厚生省における生活排水対策、例えば、家庭から出されます生活雑排水のようなもの、それとあわせてし尿を処理する、そういう技術がございます。私ども厚生省で進めておりますのは、いわゆるそういう処理をするための合併処理浄化槽というものを整備してきております。これも公共事業整備してきております。  そういったことで、補助制度はございますが、もちろん、その事業の効率性あるいは効果というものを上げていく上で、例えば、農業集落排水事業であるとかあるいは下水道整備事業であるとか、あるいは他の公共事業とのいわば連携を進めながら進めていくということも大事なことであろうというふうに考えております。  いずれにいたしましても、これは個々の地方団体が、それぞれ、どういうメニューでやるのがその地域にとってみて最も効率的、妥当であるかというところの判断を優先した上で実施していくのが適当ではないかというふうに考えております。
  236. 武山百合子

    ○武山分科員 国民の目から見ますと、これは厚生省に入るのか、これは環境庁に入るのか、非常に省益が優先して、非常にわかりにくいのですよね。ですから、国民の目から見ますと、共同作業でプロジェクトチームをつくってやっていただきたいというのが国民の願いですね。やはり、省庁というのは一歩リードして、国民の願いをリードしていくのが省庁じゃなかろうかと思いますけれども、ぜひそういう方向でやっていただきたいと思います。  それから、厚生省にもう一つ質問なんですけれども、微生物を使用したごみ処理が今話題になっているのです。いわゆるバクテリアももちろん含まれますけれども、これは非常に地球に優しく環境に優しいということで、画期的なものじゃないかと思うのですけれども、国はどのような方針で、まず、取り入れようとする視点があるのかどうか、それから支援するつもりがあるのかどうか、ちょっとその辺を聞きたいと思います。
  237. 三本木徹

    ○三本木説明員 ごみ処理の進め方というのは、まさに個々の市民の皆様方がごみを出しておりますから、それぞれがどのようにごみの排出段階で抑制していくのかということは大変大事なことだというふうに思っております。その一つの方法として、いわゆるコンポストという実施の方法があるのも私ども承知しております。  厚生省といたしましては、先生指摘技術がどういう技術かはちょっと私承知しかねておりますけれども、生ごみをもとから絶つといいましょうか、なるべく出さないで家庭の中で始末をしていく方向として進めていくことが大事ですので、厚生省としては、そういういわば事業を市町村が支援する場合、市民に対して支援する場合には、その部分について厚生省からごみの減量化、再生利用という補助金がございますが、それを交付するということで側面から支援をしてきております。  ただ、技術についてさまざまな技術が現在開発され、あるいは開発されているというふうにお聞きしておりますけれども、その技術の問題というのは、一つ技術がすべて完全なものであるのかどうかということは、やはり十分検証していく必要はもう一方ではあるのかなというふうに思っております。ただ、御指摘技術がどの技術かちょっと私ども今承知しかねているところでございます。
  238. 武山百合子

    ○武山分科員 今どの技術かというお話がありましたけれども、やはり行政はどういう技術がどこでどのように開発、そして発展段階を迎えているかという情報活動をしていただきたいと思うのです。  それでお話を聞いていると、いちゃもんをつけるわけじゃないですけれども、何となく逃げの構えの姿勢なんですよね。国民がそのように先に、こういうバクテリアを使って油を溶かす処理だとか、四万十川のこの件もそうですよ、あるところが開発したものなんですね。それをやはり一つずつもろに受けていただいて、情報は情報として収集していただいて、それでそういうデータを行政が先に先取りしてすべきものじゃないかと思うのですけれども、その辺ちょっとお聞きしたいと思います。
  239. 三本木徹

    ○三本木説明員 確かに先生指摘のとおり、私ども、さまざまな技術が今どこにあるかというところは常に意識しつつ仕事を進めているところでございます。ただ、御案内のとおり、日本の民間企業の技術開発、さまざまなところでさまざまな工夫をして行っておりますので、なかなか全部を把握するということが困難だというのも御理解いただけるかと思うわけでありますが、いずれにいたしましても、その努力はしていかなければならないと思っております。
  240. 武山百合子

    ○武山分科員 絶対困難なことはありませんので、冠たる厚生省、環境庁ですので、ぜひ情報を収集して、データをとって対処して、国民に対して責任をとっていっていただきたいと思います。  たくさん質問がありますので、次に移ります。  環境アセスメント法について質問したいと思います。今回、環境庁が法制化しようとしているアセスメント法について、まず私、お伺いしたいと思います。地球環境は待ったなしのところまで来ているのですけれども、中身について質問したいと思います。  まず、この制度の理念がきちっと書かれていないというところは大変残念なんです。法制化に当たっては、環境の保全を最優先するという姿勢をきちっと入れるべきだと私は思いますけれども、いかがでしょうか、環境庁長官
  241. 石井道子

    ○石井国務大臣 環境アセスメント制度につきましては、大変長い経緯がございまして、ようやく先日、中央環境審議会から総理に対しまして、答申がまとめられまして提出されました。そして、それによりまして、今度の法律の中にあります、早い段階からの環境影響評価を可能とするということの新たな制度ということで、その基本的な原則が示されたところでございます。  環境庁といたしましても、できるだけ国民の期待にこたえまして、地球温暖化防止京都会議に際して、国際的にも我が国環境保全に取り組む積極的な姿勢を示さなければなりませんので、この審議会の答申を踏まえまして今国会に環境影響評価法案を提出する考えでございます。
  242. 田中健次

    ○田中(健)政府委員 アセスメント法につきましては、先月十日に中央環境審議会から答申をいただきまして、ただいま立法作業中でございます。  アセスメントにつきましては、申すまでもなく、環境汚染を未然に防止をして、総合的な環境の保全を図る上で極めて重要でございます。こうしたことで、先生お尋ねのアセスメント制度の理念等は、新しい法律の目的等でうたわれることになろうかと思います。
  243. 武山百合子

    ○武山分科員 理念は入れていただけるということですので、しっかりと見守りたいと思います。  それでは、もう一度環境庁長官に質問したいと思います。  まず、OECDの加盟国の中で日本だけがアセスメント法がなかったのですけれども、大変おくれて、できるということは本当に画期的で、私も本当に楽しみにしておりますけれども、そこは油断をしてはならないところであって、世界に誇れるアセスメント法にしたいかどうか、まずその気持ちを伺いたいと思います。
  244. 石井道子

    ○石井国務大臣 日本は先進国の中でこの法案づくりが大変おくれてしまいました。ですから、おくれた分だけ大変よいものを、中身を充実したものにしたいと考えております。
  245. 武山百合子

    ○武山分科員 それでは一つお話ししたいのですけれども、アメリカで実際にあったことなんですけれども、計画を実施して、それでその段階でいわゆるアセスメント法で中止になった例で、恐らく御存じだと思います。  実はアメリカで一九三三年、ニューディール政策の一環として、テネシー川にダムを建設し、洪水の防止と河川航水路の改善を目的として、テネシー渓谷開発公社というのをつくって、一九五三年までに三十一のダムを建設したわけですね。  そして、さらにダムの建設を計画した。その後全国環境政策法がアメリカでも制定されました。そして、一部住民が環境に与える影響について工事差しとめ請求をしたわけなんですね。工事差しとめ請求をしたのですけれども、それは実際には連邦地裁で棄却されてしまいました。さらに、連邦控訴裁判所、システムが日本とちょっと違いますが、そこも地裁の判決を支持して棄却したわけなんですね。  ところが一九七三年、その後四十年もたってから、リトルテネシー川にそれまで知られていなかった何か魚、スネールダーターという体長九センチの魚が発見されて、絶滅の危機にある種の保護法というものに基づいて生物学者、環境保護団体、地域住民、それらが地裁に訴訟をまた起こしました。そして、地裁は却下し、連邦控訴裁は地裁判決を破棄して差し戻し、連邦最高裁まで、すなわち日本で言う最高裁ですね、そこまで持ち込んだのですけれども、そこでは操業を許可しなかったのです、この種の保存のためにということで。  それで、まさに似たような例が日本の長良川の河口堰にも言えるわけですけれども、アセスメント法が法案としてできて、このアメリカのような例が、本当に環境を破壊をするということで中止、差しとめというような例が日本考えられた場合、差しとめをしますでしょうか、環境庁長官
  246. 田中健次

    ○田中(健)政府委員 ただいま先生がお話しになられましたアメリカの例でございますが、これは、今ありましたスネールダーダーという魚でございまして、これが問題になりましたのはアセスメント法じゃございませんで、エンデンジャード・スピシーズ・アクト、いわゆる日本で言う種の保存法に相当する、絶滅の危機に瀕する種の保護に関する法律のこれが指定種になったために、リトルテネシー川に建設中のテリコダムの建設が一時中断したということでございまして、結局、このダムは紆余曲折の末に建設をされたというふうに私どもは伺っております。  そこで、お尋ねの件でございますけれども、これは、中央環境審議会の答申にもございますとおり、環境庁長官の意見というのは環境保全の立場から述べるものでございまして、事業実施の可否について直接意見を述べるものではございません。しかしながら、環境所管大臣として、環境保全上重大な支障があるという意見を述べた場合には、その意見は主務大臣において十分尊重されまして、許認可等に際して適切に判断がなされるものと私どもは考えておりまして、その結果として事業が中止することもあり得るというふうに私どもは理解をいたし、認識をいたしております。
  247. 武山百合子

    ○武山分科員 何か私の資料では操業を許可しなかったということですけれども、そちらの資料ですと操業を許可したということですので、これは調べてみます。どうもありがとうございました。  それで、生態系の急速な破壊が進むなら、人類がどこかでまず手痛い復讐を受けるのじゃないかなと思いますけれども、多くの経済活動によって環境破壊が起きたとき、いわゆる台所の論理ですか、よく言われております、その論理に勝つために庭の論理をまず固めることができるかどうか、それについてちょっとお尋ねしたいと思います。
  248. 田中健次

    ○田中(健)政府委員 申しわけございませんが、御質問の趣旨がいま一つ理解できないものですから、再度わかりやすくお願いをいたしたいと思います。
  249. 武山百合子

    ○武山分科員 日本環境破壊が進んでいるということですね。それで、経済活動を主にした、例えばの話ですけれども、家庭の場合、いい台所、快適な台所をつくるために、庭を少なくして快適な台所をつくるということです。そうしますと、庭が、自然が少なくなるわけですね。その台所の論理に勝つために庭の論理を固めることができるかどうかということです。
  250. 田中健次

    ○田中(健)政府委員 私どもは、環境問題、いろいろと経緯をたどって、企業中心の公害問題から都市生活型の公害になってまいりました。あるいはまた、地球環境の問題にまで広がってまいりました。そうしたことで、経済との関係で、持続的発展を可能にするような、そういう環境に負荷の少ない社会をつくっていくということで進んでまいりまして、環境基本法を制定いたし、さらに、それに基づいて環境基本計画をつくってきたわけでございます。その中では、循環それから自然との共生、それから参加、国際的取り組み、こういう幅広いキーワードで、長期的にも短期的にもいろいろと構想を固め、あるいは実施計画をつくってきたわけでございます。  そういうことで、先生の御趣旨も、私どもとしてはそれを踏まえて対応し、また今後も対応していきたいと思っておりますので、そういうことで御理解をいただきたいと思います。
  251. 武山百合子

    ○武山分科員 もっともっと中に突っ込んでお聞きしたいと思ったのですけれども、時間が来てしまいました。この続きはまた環境委員会の方でさせていただきます。どうもありがとうございました。
  252. 菊池福治郎

    菊池主査 これにて武山百合子さんの質疑は終了いたしました。  次に、並木正芳君。
  253. 並木正芳

    並木分科員 委員長のお許しをいただきましたので質問させていただきます。  新進党の並木正芳でございます。お疲れのこととは存じますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。  史上最強の毒物と言われるダイオキシン類対策についてでございますが、これにつきましては、さきの環境委員会でも質問をさせていただきました。前向きな御答弁等もいただいたわけでありますけれども、その中で、残念なことに、百聞は一見にしかずでぜひ大臣に現場に行っていただきたいということでしたが、日程の問題また警備の問題等、なかなか大臣の御視察というのは簡単ではないというような御答弁があったのです。私としましては、国民が非常に不安に駆られているというような問題に関して、ぜひ飛んでいってもらいたい。気持ちは大臣もそうなのかもしれませんけれども、具体的にそうならないことを非常に残念に思うわけです。  そういうことで、実は、ちょうどパネル等がございましたのでお借りをしてまいりました。写真だけではにおいも何もございませんので、わかりにくいこともあるかと思いますけれども、実態がこうであるということで、ぜひごらんをいただければと思います。  これが、所沢、川越、狭山、そして入間郡の大井町、三芳町、こういった地域にまたがるところでございます。大臣のふるさとでもございますのでよく御存じかと思いますけれども、この境界域にあります五百メートルぐらいの範囲の雑木林、いろいろ会社の名前が張ってありますけれども、こうした産業廃棄物の焼却炉が林立しているわけであります。そちらからごらんになっておわかりかと思いますけれども、かつての武蔵野の雑木林は、こうした緑と赤茶けた部分と、かなり塩素被害によって枯れているというような状態が一つはおわかりいただけるかと思います。  また、この写真自体が白くかすんでおります。こうした状態でかなり広範囲に煙が広がっているわけであります。一部分、田園とか住宅も見えるわけですけれども、こうした、たくさん住宅等が建っております、団地等も一部分ありますけれども、そういうところに煙が立ち込めている、こういう状態であります。  これをもう少し拡大しますと、日常的に煙がもくもくと煙突から出続けているというような、こうした状態であります。さらに近づきますと、こうした建築廃材が山積みにされて、これが仕分けされて燃やされているということなんですけれども、これ自体も、建築廃材、新建材等もたくさんまじっております。ですから、こういう建材の中には、接着剤等の有機化合物、有機塩素系化合物ののりとかあるいは防腐剤、防カビ剤、そしてシロアリ駆除剤、こういうものがしみ込んでいるわけでありますし、また、よく見るとわかりますけれども、塩ビ系のビニール類あるいはパイプ等がかなりまじっているわけで、現実にこうした機械で仕分けするのは不可能な状態であります。しかも、野焼き等も行われている。さらには、これも同じようなあれですけれども、こうした周りが赤茶けた状態で煙が出続けているということがおわかりいただけるかと思います。  こういうような状態でありますので、ダイオキシンが発生する条件というのは十二分にあるわけであります。しかも、先日お話し申し上げましたとおり、この周辺の土壌からは五百ピコグラムを超えるダイオキシンが検出されておる。また、この灰の中からは四千ピコグラムというような大変高濃度のダイオキシンも検出されているわけです。  しかもまた、この煙が北風等に乗って、南の方にこういうばいじん等が飛んでいくわけです。そういうふうなところには幼稚園や保育園、また子供たちが遊ぶ公園や子供広場のようなものがたくさんあるわけでございます。こうした中で、住民の皆さん、国民の皆さんの命と暮らしが大変危険にさらされているといった事態であります。そのことをまず大臣によく認識していただきたいと思うわけであります。  日本は今、バブル崩壊後の経済混乱に陥っております。そして、次に日本は何をなすべきか、国際社会の中で何に貢献していくかというようなことで、ことしの十二月には、御案内のとおり地球温暖化についての京都会議も開かれます。こうした中で議長国という役割を果たしていく、つまり、地球環境に対しても貢献をしていくのだ、そういうような姿勢であるわけです。  その日本において、まさにこうしたものが現実にこの時間、今もこういう事態が起きている。しかも、近くに行きますと物すごいにおいがするというようなことでありまして、そういったことを考えますと、これは果たして本当に日本が地球温暖化の会議の議長国になるにふさわしいかというふうな、恥ずかしくなるような事態でもあるわけですけれども、そうしたことにつきまして、まず大臣の御見解をもう一度確かめたいと思います。
  254. 石井道子

    ○石井国務大臣 並木議員の地元ということで大変御熱心に取り組んでいらしておりますが、私も先日、所沢の方に参ります機会がありまして、非公式ではありましたけれども、その近くを通りましていろいろと見てまいりました。大変残念な状態になっておりまして、一日も早くこの問題を解決しなければならないという思いを新たにしたところでございます。  環境庁としても、いろいろと具体的な取り組みにつきましては、先日も申し上げたとおりのことでございますが、環境庁における特別の検討会があります。ここで三月までには報告を受けまして、それに対して具体的な対策をとる計画もありますし、また厚生省との連携の中で廃掃法の改正などとの関連もあります。そのようなことで、できるだけ具体的な取り組みを進めていかなければならないというふうに考えております。
  255. 並木正芳

    並木分科員 とにかく、今ごらんに入れましたように一刻の猶予もならない事態で、本当に国民が助けてくれというふうに叫んでいるわけでございますので、先ほど田中局長の方も、持続的発展可能な開発というような、これはよく言われる言葉ですけれども、そんなことをおっしゃっている間に、持続的発展どころか滅びていってしまうような事態にもなりかねないわけでございますので、ぜひ早急な対応をお願いしたいと思います。  時間もありますので、二、三具体的にお聞きしますけれども、今ごらんいただいたように、非常に集中的にああした産業廃棄物の焼却施設が密集しているわけです。ということになりますと、個別規制だけではとても対応し切れない。アセスメントにおいてもよく問題になるわけですけれども、個別のアセスメントではクリアできるけれども、合わさったときにはこれは例えば二倍になってしまうわけですから、基準をクリアできないということになっていくわけですけれども、そういった点について、総量的規制の方向、そういうものを見出せるのかどうか、その辺についてまずお聞きいたしたいと思います。
  256. 野村瞭

    ○野村(瞭)政府委員 大気汚染防止法におきましては、硫黄酸化物また窒素酸化物につきましては総量規制的な制度はございますけれども、ダイオキシンあるいはダイオキシンを吸着しているばいじんにつきましては、現在のところ、そのような総量的な規制は持っていないわけでございます。  ただ、私どもとしては、産業廃棄物施設それから一般廃棄物施設も含めてでございますけれども、現在、先ほど大臣が申し上げましたようにダイオキシンの排出抑制についての検討会を設けておりまして、その中で、一般廃棄物処理施設だけではなくて産業廃棄物の処理施設につきましても実態調査をいたしておりまして、その結果を踏まえまして、必要であるならば、現在の大気汚染防止法の対象範囲を小規模のものまで含めるとか、あるいは規制基準そのものも、今のところございませんけれども、それも導入するというようなことで考えているところでございます。  総量的な規制という考え一つのお考えかと思いますけれども、まずは私ども、でき得るそのような措置を講じてまいりたい、しかも急いでやらなければならぬというように考えているところでございます。
  257. 並木正芳

    並木分科員 ぜひ産廃の焼却炉の排出規制にダイオキシンも規制項目に加えていただきまして、そのダイオキシン類の排出基準を早急に設定していただきたいと思います。  それと、こういった集中的に炉があってわかりやすいということでこの地域では問題になっているわけですけれども、ばい煙を発生する施設としては、事業所とか病院とか学校とか、こうしたたくさんの小型焼却炉で燃やされるものもあるわけです。この辺についてどの程度実態を調査しているのか。先ほどもお話ししたように、たくさんのダイオキシンを発生するようなものを燃やす可能性がありますので、その辺についても規制の対象に今後加えていくべきじゃないかと思いますけれども、そうした小型焼却炉対策について今どのように取り組んでいらっしゃるか、その点についてお聞きします。
  258. 野村瞭

    ○野村(瞭)政府委員 先ほど一部お答え申し上げたわけでございますが、現在、大防法で対象にならないような小規模施設についても実態を調査いたしておるわけでございますので、その結果を踏まえまして、対象規模の拡大というようなことも、検討会の中で専門的な方々の御議論を踏まえるわけでございますけれども、その結果を踏まえまして、私どもとしても必要な措置を講じてまいりたいというように考えております。
  259. 並木正芳

    並木分科員 ぜひその方向でお願いしたいと思います。  具体的対策のもう一つとして、こうした産廃の業者さんというのは中小零細が大変多いというようなことで、一つは、こうしたものを共同処理するような、そうした大型炉に変えていかせるという方向性もあるかと思います。あるいはばい煙を処理するような電気集じん機だとか、あるいはバグフィルターというのですか、そういったものを設置させていく、こういうふうになりますと、どうしても資金的な問題が出てくるわけでございます。その辺についてもぜひ低利の融資とか利子補給とかあるいは補助金、もちろん、その誘導政策と相伴ってそういう制度をつくっていくということなのですけれども、その辺についても必要かと存じますけれども、その辺についての見解をお聞きしたいと思います。
  260. 野村瞭

    ○野村(瞭)政府委員 小規模な施設については、やはり処理の管理が、実際に設備の面でもまた人的な面でも、やはり大規模なものから比べますと弱い面がありますので、今後地域において、そのような小規模なものより大規模の方向で、これは業者間の問題でございますので強制というわけにはまいりませんけれども、そのような動きを助成できるように、また、御指摘ありましたような公的な助成があるかどうかというようなこともあわせて検討してまいりたいというように考えております。
  261. 並木正芳

    並木分科員 ダイオキシンの問題につきましては、ここで質問して終わるわけではありません。現実に問題は続いているわけでございます。ぜひ早急な対処をお願いしますとともに、私も今後注意深く継続的にこの問題に取り組んでいきたいとも思っております。ありがとうございます。  次に、ナホトカ号、例の重油流出事故でございますけれども、その点について、数点お聞きいたします。  これについては、大変原始的な方法というか大変御苦労な方法で、ひしゃくで油を回収している。あの寒さの中で、ボランティアの皆さんには大変頭の下がる思いで敬服するわけでございますけれども、今回も死亡者まで出ているといった事態であります。過労等による、あるいはもともと心臓病があった方の心不全等の死亡ということなのですけれども、重油の中に危険な物質がないか、その辺についても非常に危惧するわけであります。  その辺について、水島で、あれは七四年ごろでしたか事故がありまして、この回収に当たった漁民の方も、目がちかちかするとか、のどが痛いとかいうことで、その後の調査でも二割ぐらいの人がこうした症状が後遺症として慢性化してしまったというような事実も聞いております。また今回、あれは京都大でしょうか、京都大学の農学部の水産実験所で、この重油を溶かしてヒラメの実験をしたところ、背骨等が曲がった奇形のヒラメが六五%発生したというようなことでもあります。  その辺について非常に心配をしておるわけでございますけれども、ボランティアの方の健康と安全等も考えて、今その重油の化学成分といいますか、そういうものがどの程度明らかになっているのか。ベンゼン類とか、このダイオキシンの質問もしましたけれども、そうしたものが含まれている可能性も大きいと思いますし、あるいはそういう健康診断等を的確に行っているのか、その辺の実態についてお聞きしたいと思います。
  262. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 幾つかお尋ねがございまして、まず重油の成分の問題でございます。これは、私どもも、いろいろな心配がございましたので、早い時期にサンプルをとりまして、国立環境研究所で分析をいたしました。現在までの化学的分析によりますと、通常のC重油の成分で構成をされているという結果を得ております。もともと重油にはいろいろなものが含まれておりますので、その程度のものは含まれた通常の成分である。  ただ、これは凍結しないための特殊なものが入っておりますので、この部分につきまして、かなり心配をいたしまして、ある分析では特殊のものが出たということもございましたので、それに絞って検査もいたしましたが、それもシロということでございました。なお、不凍結剤として何が入っているか、現地に、これはロシアと中国になりますけれども、内容についての照会を再三行っているところでございます。  それから、健康の問題につきましては、私ども、労働省、厚生省と一緒になりまして、一月二十一日の段階で、作業上の注意、特に目と鼻とそれから皮膚、これに対する接触をできるだけ避けるように、皮膚についた重油を灯油や揮発油で落とすことのないようにといった注意を指導いたしました。また、その後、アメリカの海洋大気庁の専門家が参りましたので、そこで、アメリカが行っております指導につきましても、文書にいたしまして、関係府県により一層の指導を行ったところでございます。
  263. 並木正芳

    並木分科員 ボランティアの方の健康と安全、これは、言うまでもなく今後のそうしたボランティアの方に対してのケアとしても大変必要なことだと思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。  今お話に出ましたけれども、凍結防止の薬品がまじっているというようなことなので、今後もまだ重油が、深海に沈んでいるタンカーの方から出てくるという可能性もあるのですけれども、今後、いわゆる海岸等の環境修復ということが必要になってくると思うのです。その点について、御案内のとおり、バイオレメディエーションというのですか、いわゆる微生物を使った環境修復技術、こういうものがあるわけですけれども、これをぜひ積極的に活用されてはいかがかと、私としては積極的な提案をさせていただきたいと思うわけです。  日本の、九五年十二月にできた、緊急時計画というのですが、油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画、長いですけれども、こういう中には生物的な処理というのは含まれていないようなのですけれども、その後、ことしの二月六日にこのナホトカ号に関して見解が出ておりまして、バイオ技術等の利用についても調査研究を推進していくというようなお話であります。  ただ、消極的な感じもするわけですけれども、既に、もう御案内だと思いますけれども、アラスカ湾のエクソン・バルディーズ号事故とか、あるいはメキシコ湾のメガボルグ号の事故とか、あるいは湾岸戦争でも非常に大きな問題になりましたけれども、原油の流出ですね。これに対しても、この生物学的なバイオレメディエーションの手法で取り組んで、環境にもそんなに大きな影響が出ないで有効な成果が得られている。アメリカでは、この辺が、事故の経験を踏まえて、もう実用段階になっているというようなことであります。  今回も、アメリカの方がボランティアでおいでいただいて、香住町ですか、兵庫県ですね、そちらの方では、実験等も行われて、それなりの効果も見出せたというような報道も聞いております。また、日本の堀越教授が、駿河湾で、大変高速で油を食べてしまうというか、分解してしまう細菌を発見されたり、金沢大の教授が、今回の重油の中からこれを分解する細菌を発見した、こういう話も聞いております。  そういうことを考えますと、ぜひもっと積極的にバイオの方法を取り入れていくべきではないかと思うわけですけれども、この取り組みについて、いかがお考えでしょうか。
  264. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 今先生から御紹介ございましたように、アラスカのエクソン・バルディーズ号の際、あるいはメキシコ湾の事故の際に、アラスカの場合には栄養塩が、それからメキシコ湾の場合には栄養塩プラス微生物が散布をされております。そして一定の成果を上げたということも事実でございますけれども、この実情を踏まえまして、実はアメリカの連邦海洋大気局が油濁事故に対するマニュアルをつくっております。  その中で、バイオ技術の使用につきましては、有効性と副次的影響の観点から、一定の条件下で承認を得て限定的に使用すべきものというふうにされております。例えば、気温が十分上がっているか、場所はどうしても物理的な技術では回避できないのか、潮の流れはどうか、対流はどうかといったことを十分調べて行うべきであるというふうに整理をされております。  バイオ技術といいましても、基本的には窒素や燐の栄養塩、すなわち肥料をまくことになります。また、微生物を直接まくということになりますと、海水の富栄養化の原因になることもございますし、また、生態系に影響を与えるという可能性もございますので、十分慎重な対応が私どもは必要だと思っております。そして、一番重要なことは、納得ずくで使用するということでございまして、地元の漁業協同組合あるいは自治体と十分お話し合いをした上で、物理的な技術が不可能な場合にやっていくということであろうというふうに考えております。  なお、そうは申しましても、日本の実情、海外と多少違いますから、私どもの方でも、実験室段階あるいはフィールドでの実験、これをできるだけ集積をいたしまして、夏場に使用するということに多分なろうと思いますので、そういった時期までには知見を高めていきたいというふうに考えております。
  265. 並木正芳

    並木分科員 ぜひ、こうした手法があるわけですから、積極的に取り組んで、そして一日も早く環境修復をなし遂げていただきたいと思います。  そういうことなんですけれども、今お話ししたようなこのダイオキシン類の問題、これについても、きのうも厚生省の方にもお聞きしました。廃棄物の方の処理法は厚生省管轄だということなんですね、またがっていると。また、油の問題等も、もちろんこれは資源エネルギー庁とかそういう通産省関係の機関が取り組んでいるということもありますし、いろいろな分野で行われるということで、非常にまたがった形で事がなされる。しかも、率直に言って、環境庁の方はなかなか権限が振るいにくいというようなことを感じるわけです。  これは大臣に聞いても、むしろそれを望まれて、もっと総理にでも言ってほしいというようなことになるかもしれませんけれども、リストラあるいは行革と言われているわけですけれども、この環境問題に関しては、ここに大先輩、愛知議員さんもおられますけれども、今後、行革というのは単純に考えるべきではないのじゃないかと思うわけです。  先ほどアメリカの話が出たわけですけれども、アメリカでは油とかあるいは有害物質による大規模環境汚染に対する緊急展開のために国家緊急チームというのがつくられているわけですけれども、これにはEPA、いわゆる環境保護局が長になって、そして、日本でいえば通産省のような商務省とか、あるいは海上保安庁に匹敵する沿岸警備隊とか、あるいは海上自衛隊というような国防総省ですね、こういうような十六の組織を加えて、環境保護局が中心になって緊急展開チームをつくっているというようなことです。  アメリカ環境に関して、いわゆる環境安全保障というものに対して熱心である。経済安全保障もそうでございますけれども、こうした国家安全保障戦略の中軸であるわけであります。日本も海洋国家でありますし、加害者になることも考えられますけれども、こうした点で、ぜひ今後さまざまな形で、今の重油の問題についても、あるいはそのバイオレメディエーションをやっていくには微生物バンクだとか微生物研究所だとか、あるいは野生動物にも被害が出ております、こうしたものの救護センター、こういう施設とかも必要になっていきますし、先ほどの廃棄物に関しても、もっと環境庁が責任を持つというような一元化が必要なんじゃないかなというふうに考えるわけです。  したがいまして、環境安全保障ということで、ますます組織充実を図っていくべきじゃないか。アメリカはもうけた違いで、一万八千人もの担当がおりまして、この中でさまざまな形で国際的な問題にも対処しておりますし、毒物の問題とか多彩な問題に対処をしているようになっているわけなんですけれども、日本もぜひそうした中で環境ということで世界に貢献する、そういう方向性を打ち出していただければと思うのです。  最後に大臣にその辺の環境安全保障についての見解をお聞きして、質問時間が来ましたので終わりとさせていただきます。よろしくお願いします。
  266. 石井道子

    ○石井国務大臣 ただいまアメリカ環境保護庁との比較で申されましたけれども、アメリカの場合には、大変事業の範囲、所掌する範囲が違います。廃棄物問題あるいは上下水道、放射能汚染対策、有害化学物質、すべていろいろ、農薬の問題も扱っているというふうなことで、事業をしているという点では職員の数も大変多いということが言えると思います。日本環境庁の場合には、調整官庁ということで、事業部分が大変少ないわけです。当然予算も少ないわけでございまして、メンバーも職員も少ないという形でございます。  しかし、現在のように環境問題がこれだけ重要性を増してきているということ、そしてナホトカ号による重油流出事故などにもよりまして、さまざまな取り組みがされてまいりましたが、このナホトカ号につきましては、運輸大臣対策本部長となりまして、全省庁、また閣僚挙げて取り組んでいる体制をとっているわけでございますけれども、環境庁がこれからも企画調整機能を十分に発揮していく一つの方向もあるわけでございます。このような日本における環境行政組織も含めて、今後の行政組織のあり方につきましては、今、行革の会議がありまして、それで審議をされております。検討されております。  ですから、そのようなことで、今後さまざまな、日本におけるすべての行政組織の見直しということは考えられていくと思いますけれども、いずれにいたしましても、二十一世紀を目指して、そして人類の生存基盤も左右しかねない大変重要な環境行政でございますから、国政運営の中でも最も重要な柱としてこの環境行政を位置づけていきたいと思っております。
  267. 並木正芳

    並木分科員 そうした問題も今後ともまたお聞きさせていただきますけれども、ありがとうございました。  終わります。
  268. 菊池福治郎

    菊池主査 これにて並木正芳君の質疑は終了いたしました。  次に、中路雅弘君。
  269. 中路雅弘

    中路分科員 私は、きょうは、東京湾の干潟であります三番瀬の保全の問題について御質問したいと思います。  高度成長期の一九六〇年代の後半から、東京湾は急速に埋め立てられまして、今はほとんど人工海岸です。その中で一割ぐらい残されておるのが、東京湾の一番奥の方にあります千葉県の市川市と船橋市の沖合に広がる千二百ヘクタールの干潟。私は昨年も船で現地を見させていただきましたけれども、三番瀬は東京湾全体の水質の浄化にも非常に大きな役割を果たしていますし、生息する生物の種類が大変多い。三百四十種類以上とも言われています。特に、野鳥のえさ場ですね、渡り鳥の生息地、お話を聞きましたら、日本に来るスズガモの三十八万羽のうち三分の一ぐらいはここを生息地にしている、渡来してきているという話も聞きました。船で回りまして、ごちそうになったのですが、アサリも非常においしいアサリですね。ノリなどの漁業にとっても欠かせない存在です。  最初に、この三番瀬の環境上の価値についてどのように認識されているか、一言お聞きしたいと思います。
  270. 田中健次

    ○田中(健)政府委員 三番瀬、これは東京湾に残された貴重な浅場でございます。  今先生からお話がございましたが、一つは、アサリやカニなど、生息する生物の種類数、量ともに、東京湾のほかの海域に比べて非常に豊かでございまして、このために野鳥にとっても格好のえさ場になっております。また、魚類の産卵あるいは成長の場になるなど、多様な生物の生息環境として重要な意味を持っております。  また、三番瀬に生息いたします貝や魚、養殖されますノリなどは、海水中の有機物であるプランクトンをえさや栄養として大量に取り込みまして、潮の干満とともに入り込んでくる東京湾の海水を常に浄化する自然の浄化装置の機能も果たしております。  さらにまた、三番瀬には東京湾の自然や風景が比較的多く残されておりまして、多くの人々が訪れて、潮干狩りや釣り、散策、バードウォッチングを楽しむなど、東京湾本来の自然と身近に触れ合える数少ない場所であるというふうに認識をいたしております。
  271. 中路雅弘

    中路分科員 今、三番瀬が環境上も大変貴重な存在だということをお話しになりましたけれども、千葉県がここに、港湾、道路などの建設で、市川二期、これは建設省ですけれども、京葉港の二期土地造成計画を進めているわけです。それで、三番瀬の約三分の二、七百四十ヘクタールがこれで埋め立てられるという計画なんですね。  九二年、港湾審議会が千葉県のこの埋立計画を検討して承認する際に、環境庁が三番瀬について意見を付しておられます。今お話があったように、東京湾に残された貴重な浅瀬であり、東京湾の生物の生息や水質浄化に大きな役割を果たしているものと考えられ、埋め立て等の開発によってその価値が大きく減ずることのないように慎重な配慮が必要だという、埋立計画が環境に及ぼす影響について詳細な調査検討を求めたわけです。そして、埋め立ての必要性について十分な吟味の上、実施計画を策すると意見をつけられました。その意見に基づいて今調査が行われていますけれども、この調査は、一言で、簡単でいいのですが、今どこまで進んでいますか。
  272. 田中健次

    ○田中(健)政府委員 千葉県におきまして、私どもの意見を踏まえまして、千葉県環境会議というのをつくっていろいろ調査をしてきておりますが、そこからの平成七年の指摘で、現在五項目について補足調査が実施をされておるというふうに承知をいたしております。  第一点が、三番瀬に依存する主要な生物の生活史を通じた生息状況の把握、二番目が、鳥類の生息地及びその周辺の利用状況の調査、三番目が、水質浄化機能を把握するための物質循環モデル等の基礎調査、四番目が、夏場に周辺海域で出現する青潮の調査、それから五番目が、以上の四点を踏まえた上で、事業実施に伴い、水質や浅海域の機能の変化を定量的に予測、評価をする、こういう五つの項目について調査が実施をされております。  その中で、物質の循環モデル等の基礎調査と青潮調査の二項目については調査を終えておるということでございますけれども、生物の生活史の調査と、それから鳥類の生息地、その周辺の利用状況の調査についてはことしの十二月ごろまで調査を継続するというのが指摘をされまして、これを受けて、現在千葉県でいろいろと調査を継続しておる、こういうふうに承知をしております。
  273. 中路雅弘

    中路分科員 去年の八月に中間報告が発表されています。これを見ますと、今お話しのようにことしいっぱい調査を延長するということも書かれてあるのですが、この中間発表でもこういう文書がありますね。五十四種類の魚類や七十六種類の鳥類など多種多様な生物が確認され、生物密度はかなり濃い、水の浄化などに役割を果たしているということを中間発表で述べていまして、引き続いて今年いっぱい補足調査を続けるということも確認されているわけです。千葉県の方もこの補足調査の中間発表については委員会の見解を尊重したいということを表明されています。  この今年いっぱい継続されている補足調査というのは、学者によりますと、少なくとも二、三年は本当はかけなきゃいけないという意見も出ていますけれども、この見通しはいかがですか。
  274. 田中健次

    ○田中(健)政府委員 先ほど申し上げましたように、鳥類の生息地と、それから生物の生活史、これをことしの十二月ごろまでやりまして、さらにその後、これらの結果を踏まえて、事業実施に伴う水質や浅海域の機能の変化、それから生態系の変化について定量的に予測、評価が行われるということでございます。それがどの程度かかるか、ちょっと詳しくは承知をいたしておりませんが、私どもとしてはその調査結果を見守っておる、こういう状況でございます。
  275. 中路雅弘

    中路分科員 これは環境庁の水質保全局の出された文書で読んだのですが、東京湾の水域環境懇談会が出しました報告ですね、九〇年十月に出されました。この中にも書かれているのですが、東京湾については開発を目的とした埋め立てを今後は抑止していくんだということがこの中でも書かれているのですね。基本的には東京湾の開発というのは今後抑止が基本だということを述べています。また、担当している運輸省の港湾法を見ますと、これは省令ですけれども、第三条で、港湾及びその周辺の自然環境及び生活環境に及ぼす影響、漁業に及ぼす影響等を考慮して、港湾の建設等については適切なものにしなければならないというふうに、環境の問題を十分考えた上でやらなきゃいけないと運輸省の省令でも言われているわけです。  今の、まだ中間発表ですけれども、この補足調査の中間発表を見ても、綿密に調査を行っていけば、なおさら三番瀬の生態系を残すことが大変重要だということが出てくると私は思うのです。県の方も委員会の見解を尊重したいと表明しているわけですから、調査の結果に基づいて、三番瀬の問題について、この計画についても含めて、もう少し踏み込んだ見解を出す必要が出てきているのではないかと私は思うのですが、これはまだ中間発表の段階ですけれども、環境庁としてのお考えもお聞きしたいと思います。
  276. 田中健次

    ○田中(健)政府委員 今後のことでございますけれども、ただいまお話に出ております補足調査の結果等を踏まえまして、生態系の保全を含めた適正な環境影響評価がなされるというふうに私どもは認識をしております。今後、事業が進んでまいりますと、公有水面埋立法に基づきまして環境庁長官の意見が求められる、こういうことになりますが、その際には、これまでの経緯等も踏まえまして、十分な審査を行いまして、環境保全の観点から適切に対処をしていきたい、こういう所存でございます。
  277. 中路雅弘

    中路分科員 市川の方は建設省なんですかね、道路は。港湾の方は運輸省なんですね。もちろん、その所管のところの計画を環境庁がストレートにやめろというのは、ちょっと所管外で言えないでしょうけれども、しかし、環境保全の立場から、この問題について、既に一応計画としては了承されているんだけれども、これだけの補足調査もやらなければいけないというところまで来ているわけですから、その結果によって、やはりこの計画そのものについても抜本的な見直しをするとか、そういう点での意見の表明が私は省庁間でも必要ではないかと思うのですけれども、環境庁長官、その点いかがですか、お考え
  278. 石井道子

    ○石井国務大臣 三番瀬の問題につきましては、東京湾に残された大変貴重な浅瀬でございまして、東京湾の生物の生息や水質の浄化にも大変大きな役割を果たしております。その適切な保全については、今後も慎重な配慮が必要であると考えております。  前環境庁長官の岩垂長官が、大変その問題についても関心を持たれましていろいろと発言もされたというふうに伺っているわけでございますが、これからもそのような趣旨を生かして、そして埋立地の開発が行われる場合には環境上の価値が損なわれないように配慮していかなければならないと思っております。
  279. 中路雅弘

    中路分科員 別の角度から、私、この問題、もう一言お話ししたいのですが、この埋立計画が立てられたのはバブルの時期なのですね。いわゆる開発、開発という時期ですから、港も四万トン級の船が利用できる国際港をつくるという計画なんです。  調べましたら、今既にあるこの近隣の埠頭に昨年入港した三万トン級以上の船でも十三隻なんですね。四万トン級以上の船の寄港は全国でも年間百三十隻ぐらいですから、これの埋め立てをやりますと、費用の点でも、九三年の試算ですけれども、埋立費用の概算が、京葉二期で二千二百億円、市川二期で六千五百億円で、合計して八千七百億円かかる。その後の経費アップを見ますと、予測で二〇%増として、埋立費用だけで一兆円を超えるわけです。都市基盤の整備を三千から五千億円と見ますと、総額で一兆五千億円前後になる。この一兆五千億というのは、千葉県の県の全体の年間予算を上回るわけです。  今、国会でも、御存じのように、バブル時期の公共投資、大型な公共投資の問題について、あり方がいろいろ論議されているところです。私は、そういう点でも、一度計画として立てたんだからということだけではなくて、今問題になっている公共投資のむだを削減するという観点からも、これは国政上の一つの重要な問題ではないか、財政から見てもこの埋立計画は再検討が必要ではないかというふうに思うわけです。埋め立ての必要性を含めて、この港湾計画について、やはり検討し直す必要がある時期に来ていると思います。  計画の中には、例えば流域下水の終末処理場をつくるとか、住民にとって必要なものもあります。しかし、これはやはりその地域を見ますと、利用の価値もありますから、そういうものだけについてはまたここへ移せばいいとか、いろいろ検討できるわけです。きょうは運輸省が直接所管ではないのですけれども、そういう点からも、運輸省としても、改めてこの計画について千葉とともに一度検討をしていただく必要があるのではないかと思うのですが、いかがですか。
  280. 川島毅

    ○川島説明員 御指摘のとおり、東京湾の三番瀬におきます運輸省が所管しておりますのは京葉港二期の方の計画でございますが、この計画は、外房ターミナルと内房ターミナル、こういう港湾関係の物流施設とあわせまして、緑地、人工海浜、都市再開発のための用地、それから交通機能用地等を計画しているものがございます。  先ほどから御議論がありましたとおり、この計画は、平成四年三月に港湾管理者である千葉県から提出されまして、港湾審議会の議を経て運輸大臣が承認をしたところでございます。その際、三番瀬が東京湾に残された貴重な浅瀬であることから、計画の実施に当たっては環境の保全に十分配慮されたいとの意見を付したところでございます。  これを受けまして、千葉県は、三番瀬埋立案件の審議を環境会議に依頼し、三番瀬の生態系に関する補足調査を進めておられます。千葉県は、こうした環境面での検討結果を踏まえて当該港湾計画の実施に向けての判断をしてまいりたいとしております。運輸省としては、基本的にはそういう状況でございますので、港湾管理者の検討状況を見守りたいと考えてございます。  それからもう一点、御指摘のありました効率的、効果的な公共事業実施の観点からということでございますが、運輸省としましても、当然の責務といたしまして、効率的、効果的な公共事業実施を図っていく必要があると考えております。事業の採択に当たりましては、需要の動向、それから事業の緊急性などを十分勘案して採択を行うということにしております。  三番瀬の埋め立てにつきましても、環境への影響等についての千葉県の検討結果とともに、効率的、効果的公共事業実施の観点から適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
  281. 中路雅弘

    中路分科員 今二つの点からお話ししたいのですが、一つ環境の観点から、この三番瀬の自然を保全していくという、これに影響を与えないという観点から検討してほしいというのと、計画そのものが、やはりバブルの時期の計画ですし、今の国会で大きい問題になっているこの公共投資のあり方の問題あるいは国の財政の問題、こういう観点からも、あわせて十分な検討、見直しが必要だということを強く要求しておきたいと思うんです。  もう一つ、この三番瀬については、多くの自然保護団体や地元の漁民の皆さんあるいは市民団体が、最近、埋め立ての問題について、東京湾の自然を守れということで、三番瀬を守る全国的な署名ネットワークというのを始められています。お話を聞きましたら、もう既に六万から、全国からいろいろ関係者の署名も集められていると言われているのです。  谷津干潟、これは三番瀬からほんの近くにあるんですね、習志野ですから二、三キロのところだと思いますけれども。一九九三年にこの谷津干潟がラムサール条約の登録地に決定をされました。現地でもお話を聞いたんですが、この谷津干潟と三番瀬というのは、野鳥も行き交いしているんですね、これは一体のものとして考えなければいけないというのが多くの皆さんの話であります。  国の保護は、ここは指定はまだしていませんけれども、やはり今後、この三番瀬と谷津干潟を一体として、釧路で開かれましたラムサール条約の会議で出て、この後、谷津干潟が指定地として登録されたんですが、三番瀬についてもそういう方向でひとつ検討をしていただきたいと思いますけれども、これはいかがですか。
  282. 澤村宏

    ○澤村政府委員 ラムサール条約に基づきます湿地の登録に当たりましては、水鳥類の生息する国際的に重要な湿地であって、国設鳥獣保護区特別保護地区等の地域指定により将来にわたり自然環境の保全が図られている場所であり、地元の自治体等が登録への賛意を表明したところについて登録する、そういう方針でこれまでやってきているわけでございます。  この三番瀬につきましては、ただいまいろいろお話ございましたが、シギ・チドリ類やカモ類の飛来地として重要な湿地であると認識しているところでございます。しかしながら、現在、埋立計画があるということ、そして登録に対する地元の合意も十分とは言えず、また、国内法による湿地保全の担保措置も整っていないというような状況にございまして、登録湿地として指定する段階には至っていない、そういうふうに考えております。
  283. 中路雅弘

    中路分科員 ラムサール条約を見ますと、この精神というのが、国内の保護規定がまだないからというお話ですけれども、逆に指定地として登録するということによってそこの保護の問題が一層促進されるという関係にもあるのではないかと思うのです。ラムサール条約というのは、まだそういう精神ではないかと思うのです。ただ、国内でまだ保護規定がないからというのではなくて、逆に指定地として登録することによってそこの保護の問題を一層国内的にも体制もはっきりさせるということにもなるのですが、いかがですか。
  284. 澤村宏

    ○澤村政府委員 三番瀬の状況につきましては、これまでの議論のとおりでございます。そういう状況の中で環境庁といたしましては、今後のそうした推移を見守っていきたい、そのように考えております。
  285. 中路雅弘

    中路分科員 さっきのお話のときに環境庁長官からありましたけれども、前の岩垂環境庁長官も、この三番瀬については現地に視察にも何度か行っておられる。それで、たしか現地のシンポジウムに、あいさつだけだけれども参加をされたというお話も聞いています。  環境庁としても、これまでもこの問題、ここは非常に貴重な干潟だということの認識はずっと持っておられるわけですし、私と旧選挙区では一緒だったものですから、先日ちょっと電車で行き会いましたら、三番瀬の問題は自分もあと残っているんだ、何とかあれを残したいという話を私にもしていました。引き継がれた環境庁長官なので、ちょっと前長官のまだ気になっている問題ですから、この保全の問題について力を入れてやってほしいということをもう一度最後にお願いしたいと思うのですが、いかがですか。
  286. 石井道子

    ○石井国務大臣 議員の御意見も十分に拝聴させていただき、また前岩垂長官の御意向も体して取り組んでいきたいと思っております。
  287. 中路雅弘

    中路分科員 では終わります。
  288. 菊池福治郎

    菊池主査 これにて中路雅弘君の質疑は終了いたしました。  次に、福島豊君。
  289. 福島豊

    福島分科員 新進党の福島豊でございます。  大臣、長時間にわたりまして大変に御苦労さまでございます。私で終わりでございますので、よろしくお願いいたします。  先日、クローン羊、そしてクローン猿が成功した、できたという報道がございました。しばらく前までは哺乳類でクローンをつくるということは非常に難しいのではないか、そういうふうにも考えられておりましたけれども、そこまで今の遺伝子操作の技術が到達したということなのだろうというふうに思います。大変急速に遺伝子操作の技術は進歩いたしております。この遺伝子操作の技術というのは、例えば医学の領域であれば非常に効き目のある医薬品をつくり出す技術ともなっておりますが、一面大変な危険もはらんでいるということを我々は認識をしなければならないのだというふうに思います。  環境庁のこの分科会で遺伝子のお話をお聞かせいただきますのはちょっと場所が違うのではないかというふうな感もあるかもしれませんけれども、私は、環境という概念の中には遺伝的な環境ということも当然入るのだというふうに最近は考えております。  この地球上では、長年にわたる進化の中で多様な生物が生まれてまいりました。その多様な生物の本質というのは、多様な遺伝子ということでもございます。この多様な生物、生態系というものを守っていくということは、その遺伝的環境もまた守っていくことであるというふうに私は思っております。そういう意味では、遺伝子の操作の技術、この進歩というものについて十分に我々は注意を払っていかなければいけないし、そしてまた、それは環境庁一つの新しい責務であるというふうに私は考えております。  そういう意味で、この遺伝子の組み換え農産物環境にどういう影響を与える可能性があるのかということについて、環境庁としての最初の認識をお聞きしたいというふうに思っております。
  290. 田中健次

    ○田中(健)政府委員 お話のございました組み換えDNA技術等のいわゆるバイオテクノロジーにつきましては、国内外で開発が進められておりまして実用化されておりますけれども、自然界に存在しない生物によりまして生態系に対する予期しない悪影響が生じるのではないかという懸念があることは承知をいたしております。  このため、我が国におきましては、関係省庁の指針に基づき、例えば遺伝子組み換え農作物を栽培する場合には、組み換えられた農作物が雑草化する性質あるいは有毒物質を生み出す性質などの意図しない性質が付与されていないかどうか、組み込まれた除草剤耐性等の特性が組み換え農作物からの花粉の飛散等によって周辺の植物に移行しないか等について評価が行われている、こういうふうに承知をいたしております。
  291. 福島豊

    福島分科員 関係省庁の指針があるということでございますけれども、一面そのお話は環境庁は直接にはタッチしませんよというような響きも持って私は承りました。むしろそうではなくて、私はやはり環境庁のもっと積極的な姿勢というのが大事なのではないかというふうに思っております。  例えば、こんな警告があります。学者からの警告でございますが、米国オレゴン州立大学のエレイン・インガム准教授がこういうことを言っております。遺伝子操作によって農業廃棄物を肥料に変え、燃料のエタノールを生産するようにした微生物が、植物の成長に不可欠な、根に寄生じている細菌を殺し、小麦を枯れ死させることを確かめた。これも有用な微生物をつくろうというふうに考えているときには予期されなかったことなのだというふうに思います。  実際に有用な微生物を例えば遺伝子操作でつくる、そしてまた有用な農作物を遺伝子操作でつくるという意味で、私はこれはビジネスだというふうに思います。ということは、そのビジネスの利益をやはり上げるという使命が当然そのチャレンジしている主体にはあるわけでございまして、そうなると常に出てきますのは、少々の不都合なことは隠してしまうのではないかというようなことなんです。  本日この分科会では農水省の方もおられますが、こういうことを言いますと大変恐縮でございますけれども、つくる側の論理だけに任せていたらだめなんだ。そうではなくてそこから離れた公平な立場で、むしろ環境を守るという立場で、今その遺伝子技術が新たな、そしてまた予期しなかった有害な影響環境に与える可能性がないかどうか、これを環境庁はしっかりと見詰めているんだ、そして監視しているんだ、そういう姿勢が大切なのではないかというふうに私は思っているんです。  ですから、先ほど指針に基づいてというお話がございましたけれども、環境庁としてどういう体制があってどういう監視の仕方をしているのかという観点の御答弁を実はいただきたかったのですけれども、その点につきましてはいかがでございますか。
  292. 田中健次

    ○田中(健)政府委員 いわゆるバイオテクノロジーにつきましては、先生お話が出ておりますように環境保全型の技術としての可能性もございます。その一方で、生態系への影響のおそれを完全には否定できない側面もございます。  そういうことで、環境庁としては、環境保全型の技術ということでうまくいけば農薬の削減にもなるし、それからまた耐塩性とか耐乾性を持った植物の開発によって砂漠化の防止等にも資する、こういうこともございますし、また廃棄物処理への堆肥化等にも利用ができます。あるいはまた、医薬品等の製造に係るエネルギーの削減ということで、これは地球温暖化防止にもつながってくる。  こういう環境保全型の技術としての可能性もございますが、一方、技術的に不確かな面がございます。導入遺伝子が意図した性質以外の性質も支配しているのではないか。あるいは、意図していない位置に遺伝子が挿入されまして、意図しない改変を起こしているのではないか。あるいはまた、生態系への影響に未解明な面もございます。実験圃場でのデータからあらゆる場所で安全であると言えるのかどうか。あるいはまた、生態系は相互にバランスをとっておりまして、すべての影響を推しはかることは不可能ではないか。  こういうことで、プラス・マイナスございまして、私ども環境庁といたしましても、こういう認識のもとに、バイオテクノロジーによる環境への影響を未然に防止をするという観点から、まだ取り組みが足りないということでございますけれども、今後とも、関連情報の収集に努めるほか、必要に応じまして関係省庁に意見を申し述べていきたいというふうに思っております。  さらに申し上げますと、遺伝子操作生物を野外利用する場合、これは環境への影響を特に検討する必要がありますが、現在のところ、こうした利用を行っているのは農作物だけだと思います。したがいまして、私どもといたしましても、遺伝子組み換えの農作物の安全性評価といたしまして、農林水産省指針に基づきます農林水産大臣の安全性確認の審査が行われておりますけれども、農林水産省の専門委員会に、環境庁を代表いたしまして国立環境研究所の副所長が参加をいたしまして、環境保全上の観点から必要な意見を述べている、こういうこともやっておりますけれども、今後ともいろいろと考えていきたいと思います。
  293. 福島豊

    福島分科員 その審査の過程で環境庁の代表の方が入っておられるということで安心もいたした次第でございますが、その審査の中で、あくまで環境を守るという観点から、一人だけ入っていると大変心細いこともあるのかなという気がしないでもありませんけれども、しっかりとした対応をしていただきたい、そのようにお願いをさせていただきます。  続きまして、時間もありませんので二番目の問いに移らせていただきます。  二番目の御質問は、タンカー事故に際しての環境庁の体制ということでございます。  アメリカのEPAではエマージェンシーレスポンスチームというのが設置をされているというふうにお聞きをいたしました。実際にその油流出災害に対して環境庁がどのように対応したのか。野生動物の保護等さまざまに御活躍をされたということは、さまざまな資料を環境庁からちょうだいしまして拝見をいたしました。しかし、私が感じますのは、アメリカで、EPAで特定のチームをつくって緊急の場合にぱっと対応ができるような形になっている、それは非常に大切なことなのではないかなというふうに思うのです。一定の経験を積んだチームというものをつくって環境庁の中に設置をしておくということが必要なのではないかというような思いがいたします。  この点につきまして、緊急事態にどう対応するのか、環境庁のあり方というものにつきまして御説明をいただきたいと思います。
  294. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 御案内のとおり、平成七年の十二月に閣議決定をされました国家的緊急時計画がございます。これで、各省庁、関係するところはそれぞれ任務を分担し、役割を分担し、情報交換をするということになっております。  この事故が発生するまでの間、環境庁といたしましても、こういった油濁事故に弱い海岸のマップづくりであるとか、あるいは海鳥の救出のマニュアルづくりであるとか、そういったところはやってまいりまして、今回、事故が起きましたけれども、その際にも、作成途上の海鳥の救出マニュアルを各県にお配りをしたところでございます。  今回の事故に際しましては、運輸大臣を長とする災害対策本部がございますし、また関係閣僚会議もございます。そのそれぞれに、私どもは初期の段階から参加をいたしまして、私どもがいろいろな形で収集をいたしました情報、例えばアラスカ・アンカレジあるいはシアトルと連絡をとりまして、そこでの過去の蓄積をインターネットやエクスプレスや、あるいは向こうの担当官にお見えいただいてディスカッションする、その結果をこの本部なり各府県に情報として流すというふうなことも実際に行ってきております。  アメリカの二万一千人の環境保護庁の体制、さらに今は三百人のレスポンスチームというのと日本とはちょっと実情を異にしておりますけれども、体制としてはそういうふうなことで臨んでおりますし、現在、関係閣僚会議のもとで各種のワーキングチームがございますけれども、そこで、今後の応急体制をどう整備するかということも重要な課題として検討中でございます。
  295. 福島豊

    福島分科員 どうも私はこのタンカー事故についての政府対応答弁を聞いておりますと、例えば、計画もちゃんとありますよ、それから、連絡会議も開きましたと、何といいますか一通りの御答弁をできるような道具立てはあるわけでございますが、今いみじくもおっしゃられましたように、その中身はどうなのだ、アメリカの体制と比べてどうなのだという話になりますと、やはり日本の体制はすごく貧弱ではないかという思いがいたします。そういう意味では、環境庁のサイズということも当然ありますし、マンパワーの問題もありますし、いろいろと制限があるかと思うのです。しかし、その中身をどう充実させているのかということにつきまして、私は努力をいただきたいというふうに感じております。  そしてまた、先日、国立環境研究所が環境調査につきましての中間報告を出されました。ただ、現時点では、大気または水質について大きな影響はないというふうに拝見させていただきましたが、一面、こういう指摘がございます。  これは日経新聞の三月三日の社説でございますけれども、  今回の事故が沿岸地域や日本海の自然環境、生態系にどんな影響を与えたか、どんな経過で生態系が回復するかなどに関する長期的な調査研究の必要性も忘れてはならない。 この緊急調査で大丈夫でしたというだけではなくて、長期的にどういう影響を与えていくのか、それをやはり調べていただきたい。そしてまた、その調査がなぜ必要かというと、  今回のような大規模な油汚染が自然界に何を引き起こすのか、十分なデータが蓄積されていない。研究室規模での研究では実際の生態系を再現することはできない。 アメリカのエクソン・バルディーズ号が座礁した事故におきましては、大変強力なその後のフォローアップの調査がされたというふうに伺っております。この点につきましても、環境庁は今後どのように取り組んでいかれるおつもりであるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  296. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 御指摘のとおり、今回の流出事故が極めて大規模かつ広範囲ということで、重大な影響が生じるおそれがあるということは認識をしております。  御指摘がございました国立環境研究所の調査報告というのは、とりあえずの第一段階のものでございまして、私ども、これをもって終了とは考えておりません。本格的な環境影響調査は三月末までにまずやる。それから、その後も、一定期間を置きまして、六カ月、一年、二年というふうな段階を踏んで継続的にやっていきたいと思っております。  先生御紹介ありましたように、アメリカのエクソン・バルデイーズのケースでは、八九年に事故が起きて以来、二〇〇五年までモニタリングを続けるというふうなことでもございます。また、今回まだ船尾部分に一万キロリットルの油を積んで沈んでいる部分があるわけでございます。そうしたことも考慮に入れまして、十六分野の専門家にお集まりいただいて検討しておりますので、そこの御意見を十分伺った上で、今後のモニタリングのやり方、期間、そういうものを定め、さらにはそこで得た知見を、環境の修復に向けて関係するところに提案をしていきたいというふうに考えております。
  297. 福島豊

    福島分科員 ぜひしっかりとした取り組みをお願いしたいと思います。  先ほどアメリカのEPAのお話をいたしましたが、アメリカの流出油対策の一環としましては、さまざまな研究を実際行っているというふうに伺いました。油濁の環境への影響調査ということで、予知モデルをつくったりとか、それから損害評価でありますとか、ある意味では基礎的な部分での非常にすそ野の広い研究をアメリカでは行っているようでございます。国立環境研究所という大変充実した施設もございますので、そうした基礎的な研究につきましても積極的に取り組んでいっていただきたいと私は願っておりますが、この点につきましての御見解をお聞きしたいと思います。
  298. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 必ずしも十分な知見の蓄積がなかったということにつきましては、御指摘のとおりでございます。  今回、大変手痛い勉強ではございますけれども、こうした事故があり、いろいろな対応が図られており、また対策が検討されているわけでございますので、これを貴重な経験にいたしまして、今後のいろいろな場面に生かしていくということで私どもは検討を深めたいと思っております。  先ほども御紹介いたしましたけれども、各分野の専門家にお集まりをいただいております。ここにおきまして、御指摘がございましたようなモデルの問題、あるいはそのための基礎データの収集、そういったところにも努めてまいりたいと考えております。
  299. 福島豊

    福島分科員 今後の対応をしっかりと見詰めさせていただきたいと思います。  そして、最後になりますが、私の地元は大阪でございますが、大阪市には鶴見緑地というのがございます。花博が行われたところでございますが、かつてはごみの山でございましたが、それがきれいな、大阪にもこんな緑の多いところがあるのかというきれいな緑地に変わっております。  その鶴見緑地に、平成四年にUNEP国際環境技術センターというものが設置をされました。これは、大阪市と滋賀県と二施設設置されたわけでございますが、大阪施設では、大都市の総合的な環境管理技術というものを研究しておるということになっております。  私も地元でございますから一度お伺いしたことがございますけれども、その折に感じましたことは、この国連の施設がせっかく大阪にある、それをどういうふうに日本環境対策という中で生かしていくのかということが大切なのではないかなというふうに感じた次第でございますが、まず初めに、同施設の活動の現況につきましてお聞かせいただきたいと思います。
  300. 浜中裕徳

    ○浜中政府委員 お答えを申し上げます。  先生お地元のUNEP国際環境技術センターでございますけれども、これはそもそもの目的が、御案内のとおり、開発途上国などへの環境保全の観点から適正な技術の移転を進めるということを目的にして、UNEPの一機関として我が国に設置をされたものでございまして、このように、環境保全の観点から適正な技術をいかに効果的に移転をしていくか、技術を所有する者とそれから利用を希望する者との間の取り持ちを積極的に行おうというものでございます。  具体的には、環境保全技術に関するいろいろなデータの整備、それから情報の提供、インターネットなどを通じてもやっております。それから、研修やワークショップを開催する、いろいろな技術分野についてのそういったことも行っておりますほか、中国あるいはポーランドの都市を例に挙げましてデモンストレーションプロジェクトなどを支援をしているところでございます。  これらを通じて、技術移転のための国際協力の促進でございますとか、あるいは開発途上国などにおける人々の能力の向上を図っているというのが現状でございます。
  301. 福島豊

    福島分科員 今、非常に多面的な技術の移転ということにつきまして活動しておられるとお聞きいたしましたが、せっかく日本に国連の施設があるわけでございまして、環境庁としましても、これは今UNEPが運営また管理をいたしておるわけでございますが、さまざまな形で連携をとってこの活動を支援していくということが非常に重要なのではないかというふうに思いますが、その点につきましての御見解はいかがでしょうか。
  302. 浜中裕徳

    ○浜中政府委員 お答え申し上げます。  先生おっしゃいますとおり、せっかく我が国に設置をされたものでございます。我が国といたしましても、まず設置をされました平成三年度以降、外務省からUNEP信託基金としてセンターの支援経費を拠出をしております。平成八年度の場合は二百五十万ドルを拠出をしておりますが、環境庁といたしましても、やはりこのセンターは大変重要な役割を果たすべきであると考えておりまして、その発展のために支援に努めているところでございます。  具体的には、現在、UNEP国際環境技術センターとの共同調査事業という形で、八年度の調査費は一千七百八十万余りでございますけれども、これによりまして、このUNEPセンターの環境保全技術に関する情報の収集、整備、あるいはインターネット等を通じた発信への協力を行っている。  例えば、先生先ほど我が国の経験を生かした協力が大事だということをおっしゃいましたけれども、おっしゃるとおりでございまして、我が国のさまざまな経験、技術というものを生かしていきたいということで、日本環境技術データの収集、入力といったようなことも行っておりますし、先進国の環境技術データの収集システムを構築をする、そして途上国にこれらを提供するための拠点づくりをどう進めるか、こういったようなことも含めまして、現在センターとともに調査検討を行っているところでございます。  今後とも、私どもといたしましては、外務省や地元大阪府、市などとも協力をいたしまして、このセンターの円滑な活動が遂行されるように、一層の支援に努めてまいりたい、このように考えている次第でございます。
  303. 福島豊

    福島分科員 もう時間もありませんので、残り一問にさせていただきたいと思っております。  環境というのは、日本が国際貢献をするやはり最大のテーマなのではないかというふうに私は常々思っております。  また、先日、地球環境戦略研究機関というものを設置するということもお聞きをいたしました。これも、日本が世界の中において環境をどう守っていくのかということで、戦略的なものを提示していかなきゃいけない。そのためには、こうしたシンクタンクをつくって充実させていくということは極めて重要だというふうに思っております。  今後の国際協力の中で、日本がいかなる働きをなすべきなのか。そしてまた、私、地元のことばかりで恐縮でございますが、先ほどのUNEPにつきましても、ネットワークの中に加えていただいて、しっかりと支援をしていただきたいという思いでいっぱいでございますけれども、そうした国際的な取り組みにつきましての環境庁長官の御決意をお聞かせいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  304. 田中健次

    ○田中(健)政府委員 地球環境戦略研究機関でございますけれども、これは、一昨年の一月に総理の私的諮問機関でございます二十一世紀地球環境懇話会から、持続可能な開発のための国際的、学際的な政策研究機関を日本に設置すべし、こういう提言をいただきまして、私どもとしては、有識者から成る懇談会を設置して、その内容について検討してきたところでございまして、昨年の四月に報告がなされたところでございます。  この機関は、国家間あるいは社会セクター間の利害を超えました立場で、新たな地球文明の基本的な枠組みづくりの提案あるいは革新的な政策手段の開発、それからアジア太平洋地域を主としてターゲットにしまして環境対策の戦略づくり等の研究や提案を行う、こういうものでございまして、実はこの機関につきましては、全国の二十六カ所から誘致要望がございまして、選定委員会におきまして、去る一月に神奈川県の湘南国際村に設置することが決まったわけでございます。  環境庁といたしましては、ただいま御審議をいただいております九年度予算案におきまして、この機関の設立準備に要します経費を要求をいたしておりまして、これを活用しまして、九年度は、内外の関係の機関と調整をいたしまして、戦略研究機関の国際的な設立規約を採択をする、そのほかに、この機関での研究計画をつくったり、あるいは研究スタッフの確保等を行うことといたしております。九年度は準備財団で準備を進めて、十年度には、国際的な設立規約に基づく日本の民法法人として、神奈川県の湘南国際村に設置をしたい、こういう予定で考えております。
  305. 石井道子

    ○石井国務大臣 地球環境問題に対します重要性、また関心の高まり、最近は大変大きなものがございます。日本も、公害対策先進国として、また最近は環境立国としても生きていくべきではないかという御意見も承っているところでございまして、それだけ日本としての役割、これは途上国も含めまして、地球規模での環境対策への取り組みについては、十分にリーダーシップをとって臨んでいくべきであろうというふうに思っております。  その点で、今局長からもお話がありましたように、地球環境戦略研究機関も設置が決まったところでございまして、このような機関も生かし、そしてまた、UNEPの国際環境技術センターとの連携も十分にとりながら、その効果を上げていきたいと思っております。
  306. 福島豊

    福島分科員 どうも長時間にわたりましてありがとうございました。
  307. 菊池福治郎

    菊池主査 これにて福島豊君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総理府所管中環境庁についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  分科員各位の御協力により、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午後六時三十一分散会