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1997-02-13 第140回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月十三日(木曜日)     午前九時開議  出席委員   委員長 深谷 隆司君    理事 小里 貞利君 理事 高橋 一郎君    理事 中川 秀直君 理事 藤井 孝男君    理事 石井  一君 理事 権藤 恒夫君    理事 二階 俊博君 理事 中沢 健次君    理事 穀田 恵二君       相沢 英之君    飯島 忠義君       石川 要三君    臼井日出男君       江藤 隆美君    尾身 幸次君       越智 伊平君    越智 通雄君       大原 一三君    菊池福治郎君       桜井  新君    関谷 勝嗣君       田中 和徳君    田中 昭一君       高鳥  修君    滝   実君       橘 康太郎君    棚橋 泰文君       戸井田 徹君    中野 正志君       中山 正暉君    西川 公也君       能勢 和子君    野中 広務君       葉梨 信行君    松永  光君       村上誠一郎君    村山 達雄君       目片  信君    谷津 義男君       山口 泰明君    愛知 和男君       石田 勝之君    漆原 良夫君       太田 昭宏君    岡田 克也君       北側 一雄君    旭道山和泰君       小池百合子君    田中 慶秋君       中井  洽君    西川 知雄君       平田 米男君    生方 幸夫君       海江田万里君    日野 市朗君       児玉 健次君    佐々木憲昭君       松本 善明君    矢島 恒夫君       上原 康助君    北沢 清功君       岩國 哲人君    堀込 征雄君       新井 将敬君    石破  茂君       土屋 品子君    望月 義夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         法 務 大 臣 松浦  功君         外 務 大 臣 池田 行彦君         大 蔵 大 臣 三塚  博君         文 部 大 臣 小杉  隆君         厚 生 大 臣 小泉純一郎君         農林水産大臣  藤本 孝雄君         通商産業大臣  佐藤 信二君         運 輸 大 臣 古賀  誠君         郵 政 大 臣 堀之内久男君         労 働 大 臣 岡野  裕君         建 設 大 臣 亀井 静香君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     白川 勝彦君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)梶山 静六君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 武藤 嘉文君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      稲垣 実男君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久間 章生君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      麻生 太郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      近岡理一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石井 道子君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 伊藤 公介君  出席政府委員         内閣審議官   及川 耕造君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         局長      秋山  收君         公正取引委員会         委員長     根來 泰周君         公正取引委員会         事務総局審査局         長       矢部丈太郎君         総務庁行政管理         局長      陶山  晧君         防衛庁参事官  山崎隆一郎君         防衛庁長官官房         長       江間 清二君         防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君         防衛庁装備局長 鴇田 勝彦君         防衛施設庁長官 諸冨 増夫君         防衛施設庁総務         部長      伊藤 康成君         防衛施設庁施設         部長      首藤 新悟君         防衛施設庁労務         部長      早矢仕哲夫君         経済企画庁調整         局長      土志田征一君         経済企画庁国民         生活局長    井出 亜夫君         経済企画庁総合         計画局長    坂本 導聰君         科学技術庁長官         官房長     沖村 憲樹君         科学技術庁原子         力安全局長   興  直孝君         科学技術庁原子         力安全局長   池田  要君         環境庁長官官房         長       岡田 康彦君         環境庁企画調整         局長      田中 健次君         環境庁水質保全         局長      渡辺 好明君         沖縄開発庁総務         局長      嘉手川 勇君         沖縄開発庁振興         局長      牧  隆壽君         国土庁大都市圏         整備局長         兼国会等移転審         議会事務局次長 五十嵐健之君         国土庁防災局長 福田 秀文君         法務省刑事局長 原田 明夫君         法務省入国管理         局長      伊集院明夫君         外務大臣官房領         事移住部長   齋藤 正樹君         外務省総合外交         政策局長    川島  裕君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省条約局長 林   暘君         大蔵省主計局長 小村  武君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省関税局長 久保田勇夫君         大蔵省理財局長 伏屋 和彦君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         文部大臣官房長 佐藤 禎一君         文部大臣官房総         務審議官    富岡 賢治君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省教育助成         局長      小林 敬治君         厚生省健康政策         局長      谷  修一君         厚生省保健医療         局長      小林 秀資君         厚生省生活衛生         局長      小野 昭雄君         厚生省薬務局長 丸山 晴男君         厚生省社会・援         護局長     亀田 克彦君         厚生省老人保健         福祉局長    羽毛田信吾君         厚生省保険局長 高木 俊明君         農林水産大臣官         房長      堤  英隆君         農林水産大臣官         房総務審議官  石原  葵君         農林水産省構造         改善局長    山本  徹君         水産庁長官   嶌田 道夫君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       今野 秀洋君         通商産業省産業         政策局長    渡辺  修君         通商産業省環境         立地局長    稲川 泰弘君         中小企業庁長官 石黒 正大君         中小企業庁計画         部長      田島 秀雄君         運輸省運輸政策         局長      相原  力君         運輸省鉄道局長 梅崎  壽君         運輸省海上技術         安全局長    山本  孝君         海上保安庁長官 土坂 泰敏君         郵政大臣官房総         務審議官    高田 昭義君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         労働省職業安定         局高齢障害者         対策部長    坂本 哲也君         労働省職業能力         開発局長    山中 秀樹君         建設大臣官房長 小野 邦久君         建設省建設経済         局長      小鷲  茂君         建設省河川局長 尾田 栄章君         建設省道路局長 佐藤 信彦君         自治大臣官房長 谷合 靖夫君         自治大臣官房総         務審議官    嶋津  昭君         自治省行政局長 松本 英昭君         自治省行政局選         挙部長     牧之内隆久君         自治省財政局長 二橋 正弘君         自治省税務局長 湊  和夫君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      大坪 道信君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十三日  辞任         補欠選任   石川 要三君     棚橋 泰文君   臼井日出男君     田中 昭一君   尾身 幸次君     滝   実君   越智 伊平君     田中 和徳君   越智 通雄君     能勢 和子君   大原 一三君     西川 公也君   菊池福治郎君     戸井田 徹君   桜井  新君     飯島 忠義君   高鳥  修君     中野 正志君   野中 広務君     山口 泰明君   葉梨 信行君     目片  信君   村上誠一郎君     橘 康太郎君   愛野興一郎君     漆原 良夫君   児玉 健次君     矢島 恒夫君   松本 善明君     佐々木憲昭君   岩國 哲人君     堀込 征雄君   新井 将敬君     石破  茂君 同日  辞任         補欠選任   飯島 忠義君     桜井  新君   田中 和徳君     越智 伊平君   田中 昭一君     臼井日出男君   滝   実君     尾身 幸次君   橘 康太郎君     村上誠一郎君   棚橋 泰文君     石川 要三君   戸井田 徹君     菊池福治郎君   中野 正志君     高鳥  修君   西川 公也君     大原 一三君   能勢 和子君     越智 通雄君   目片  信君     葉梨 信行君   山口 泰明君     野中 広務君   漆原 良夫君     旭道山和泰君   佐々木憲昭君     松本 善明君   堀込 征雄君     岩國 哲人君   石破  茂君     望月 義夫君 同日  辞任         補欠選任   旭道山和泰君     愛野興一郎君   望月 義夫君     土屋 品子君 同日  辞任         補欠選任   土屋 品子君     新井 将敬君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成九年度一般会計予算  平成九年度特別会計予算  平成九年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 深谷隆司

    深谷委員長 これより会議を開きます。  平成九年度一般会計予算平成九年度特別会計予算平成九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。児玉健次君。
  3. 児玉健次

    児玉委員 おはようございます。日本共産党児玉健次です。  先日国会に提出された医療保険改定との関係で、きょうは医療機器の問題について御質問をいたします。  本国会のこれまでの本会議代表質問予算委員会質問の中で、日本薬価が諸外国に比べて高く、しかも新薬に偏っているために、医療費に占める割合が高くなっていることが既に明確にされております。これは薬だけの問題ではなく、高額な医療機器専門家医療用具という言葉を使って、その中の高額な画像診断装置などを中心とした医療機器、そして特定保険医療材料についても薬価と全く同様のことが言えます。  国民医療費は、九四年の段階で二十五兆八千億です。皆さんにお配りしているこの資料は、平成八年度の国民生活白書の中からとったものです。その左の図をごらんになってもおわかりのように、「診察・その他」、その下に「検査画像診断費」というのが入っております。検査画像診断が相当な比率を占めていることはこの図からも明らかです。  先ほど言った二十五兆八千億の中でこの分野が占める比率は一五・四%、金額にして約四兆円です。薬剤費が、これはちょっと年次が違いますけれども、約八兆円。合わせて十兆円を大幅に超す、国民医療費全体の四割を占める巨額な部分である。そこのところを私はまず強調いたします。  そして、同じく皆さんにお配りしている、この国民生活白書の中の「国際的に見て価値の高い」これは価格の高いと言った方がいいでしょうが、「日本医療機器」、MRI、これは核磁気共鳴画像診断装置です。CTとあわせて、これまで不可能であった私たちの体の内部の構造について、非常に鮮明な画像を提供いたします。私も毎年検査入院しますが、大変お世話になっております。そのMRI日本で四億三千万円から二億五千万円、アメリカで二億円程度ですね。  そして、PTCAバルーンカテーテルごらんのとおり、ドイツで五ないし六万円、フランスで六ないし九万円、日本では三十万円弱、このように非常に割高になっております。  そして、医療機器関連市場は極端な寡占状況です。MRIについて言えば、ゼネラルエレクトリック横河メディカル、日立メディコ、東芝メディカル、これらの四社で約九〇%を占めています。CTスキャンは、東芝とGE横河メディカル二社で七〇%を占めています。  このような医療機器価格日本において欧米に比して非常に割高である、そして寡占状況が進んでいる、この実態についてまず総理にお伺いしますが、総理はどのようにこの状況を受けとめていらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。総理に聞いているんです。
  4. 丸山晴男

    丸山政府委員 今先生お尋ねMRI機種機器価格でございますけれども、価格の点でございますので事務的にお答えをさせていただきます。  お話の報告は、日本貿易振興会、ジェトロが内外価格差ということで調査をしたものでございますけれども、その調査によりますと、我が国の場合に、輸入した機器、これは国産機器シェアを食いまして年々国内シェアを伸ばしておりますけれども、二億五千万から四億三千万という資料でございますけれども、これは実際には一つケースが二億五千万、もう一つケースが四億三千万というふうになっておるわけでございます。同じ資料にございますアメリカドイツフランスは二億円程度となっておりまして、ここで我が国購入価格が高いのではないかという指摘報告でなされておるわけでございます。  この点につきましては、我が国取引価格につきましては、周辺機器あるいは取りつけ工事費がこの調査の中で含まれておることに対しまして、二億五千万につきましてはこのままでございますけれども、特に四億三千万のケースにつきましては、かなり高い、レベルの高い周辺機器が合わせてこの一括した値段になっているということもございます。その周辺機器価格を除いた値段につきましては、別の医療機関団体調査によりますと一億八千万から二億六千万程度というふうにもなっておりまして、必ずしも日本貿易振興会指摘するような価格差が生じているとの判断を下すのはいかがかというふうにも考えられるわけでございます。
  5. 児玉健次

    児玉委員 委員長、私最初に要望しますが、予算総括審議というのは、九七年度予算を審議する上で非常に重要な場です。なるべく私は、お願いしている総理ないしは大臣に答えていただきたい。そして、今の答弁にしても、この国民生活白書MRI、一・五ステラというふうに特定しています。そして、その機種でどうかということを述べているので、それを広げてしまって答えるやり方というのはフェアでありません。  さて委員長、この医療機器定価ですが、これはまさにあってなきがごとしてす。原価は完全に秘匿されています。MRIは先ほどの一・五ステラ、これは最も強力な部分一つです。関係者から随分いろいろ聞いてみました。そうしたら、定価は文字どおりあってなきがごとし。そもそもその定価の五掛け、三掛け、甚だしい場合は二掛けで販売されている、このように私は聞いています。そこまで引き下げられてもメーカー泰然自若、そこまで引かれてもメーカーの利益は確保されている、こういうふうに私は判断せざるを得ません。  こういった検査画像診断料がどのように定められているのか、そして検査画像診断料が定められた後、それぞれの高額画像診断装置原価ないしは取引価格についてどのような追跡調査がされているのか、そして特定保険材料価格はどのように定められているのか、この三つについて厚生大臣の御答弁を求めます。
  6. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 価格関係の決め方でございますので、私の方から御説明申し上げたいと思  います。  まず、保険導入の対象となっております医療機具医療用具関係でございますけれども、これは平成五年の九月に中医協から建議をいただきまして、これを基本ルールにして今定めておるわけでございます。  そこで、この考え方でありますけれども、検査画像診断点数につきましては、新規検査を定めるという場合でございますが、これは、既存の類似する検査項目点数に準じた点数を用いるということを基本としております。それからまた、新規画像診断でございますけれども、これも、使用する医療機器価格、これがまさに今先生日本は高いのではないかという御指摘でございますけれども、診療報酬設定に当たりましては、やはり市場実勢でそれぞれ医療機関が購入しておりますから、そういった市場実勢価格というものをもとにいたしまして、それからまた、それぞれの医療機器使用頻度というものがございます、こういった使用頻度というものを参考にいたしまして点数設定しているということでございます。  また、これら設定されました点数改定でございますけれども、これは、その後における診療報酬改定の際に、使用頻度あるいは価格、こういったものを調査し考慮いたしまして、それぞれ診療報酬点数の見直しを行ってきておるということでございます。これらの診療報酬点数につきましては、御案内のとおり中医協で御審議いただいておるわけでございまして、この中医協で御審議いただいた点数を告示をするという形で定めておりますが、中医協における審議過程、こういったものにつきましては、適切な情報の提供といいますか透明化、こういったものについてさらに努力をしてまいりたい、このように考えております。
  7. 児玉健次

    児玉委員 今厚生省お答えになった、市場における実勢価格、それとの関係で、公取の委員長がおいでになっていると思います。特定保険医療材料で実際の取引価格市場価格診療報酬における価格設定要因となる、ただいまの答弁でも明らかです。  そこでお尋ねしたいんですが、ことしの一月、公正取引委員会は、医療用エックス線フィルム販売業者に関する審決をお出しになっています。その内容は、福岡県及び長野県所在の各フィルム販売業者四社が、国立大学または国立病院が行うフィルム入札の際に、一、単一銘柄物件フジ○○またはこれと同等のものについては、当該銘柄を扱う業者受注予定者とする。二、複数銘柄物件フジ○○、コニカ○○、コダック○○と二つ以上の銘柄を指定したものについては、最初に記載された銘柄を取り扱う入札業者受注業者としたり、あるいは、入札参加業者間の話し合い受注予定者を決定している。三、受注予定最低価格は、他の医療施設落札価格に相当する価格としている。四、受注予定者以外の者は入札に参加しない、または高い価格入札に参加することにより、受注予定者入札できるよう協力している。そういう話し合いの存在、この点を指摘して、業者間で平成五年以降、福岡では四医療施設について、長野では一国立大学についてフィルムのすべてを受注していたという事実関係指摘されて、独占禁止法第三条による審決を行った。委員長、事実はこれに違いありませんね。
  8. 根來泰周

    根來政府委員 お話しのとおりであります。
  9. 児玉健次

    児玉委員 このような不公正な取引医療用品医療機器価格を不当に高くしています。私が関係者から聴取したところでは、競争入札の際、高額医療機器の性能、機能等が指定されるケースが多い。スペックス、仕様が特定されてしまう。そうなると、どのメーカーのどの機種ということがおのずと浮かび上がってきてしまって、公正取引委員会がことしの一月の審決で言われた単一銘柄物件となってしまって、これでは自由かつ公正な取引競争は行い得ません。  公取委としても、こういった事実について調査を行って、必要な措置をとるべきではないかと思いますが、委員長の御答弁を求めます。
  10. 根來泰周

    根來政府委員 ただいまのような御意見がございますので、私の方といたしましても、昨年から、医療機器といいますか医療材料といいますか、そういうものにつきまして、取引あるいは流通過程等々につきまして、いろいろ実態調査をいたしております。実態調査の結果、御指摘のような法律の趣旨に違反するような取引阻害要因がございますれば、事業者あるいは事業団体に対して、それぞれそういう阻害要因を排除するような要請をするつもりでございます。  また、進んで、その一々の取引につきまして独占禁止法違反があれば、これは申すまでもなく厳正に審査いたしまして、適正な処理をするつもりでございます。
  11. 児玉健次

    児玉委員 これは、国民の期待がそこに集まっていますから、御努力を、私は改めて強く要請したいと思います。  そこで、今の問題に関連してですが、厚生省業務局長諮問機関医療機器政策検討会というのがございます。九二年の六月から九三年一月までさまざまな検討をなさって、平成五年の一月、九三年の一月に中間報告を出されております。これです。その中で、今の問題とも関連するわけですが、このように中間報告は述べていらっしゃる。「医療機器の場合はその価格設定において、特に不透明な点が多いとの指摘がある。生産量の増大に伴うコスト減により生じる差益等は、値引や製造(輸入販売業者の負担する保守管理に係る費用と機器自体価格を明確に分離していくことが必要と考えられる。」  先ほど業務局長は、いわゆる保守管理に関するメンテナンスフィー、それが諸外国に比べて多いということを随分おっしゃった。そこの部分機器自体価格を明確に分離すれば、おのずと原価が浮かび上がってきます。その点について、業務局長の私的な諮問機関ですら既に方向を明らかにしているじゃありませんか。厚生省、どうです。
  12. 丸山晴男

    丸山政府委員 先生お話しの、平成五年一月の医療機器政策検討会の御指摘はお話のとおりでございまして、これを踏まえまして、毎年実態調査を実施しておりますとともに、また、特に内外価格差指摘されておりますペースメーカーなどの六種類の医療機器につきまして、我が国の流通環境についてのヒアリングを含めた詳細な実態調査を進めておるところでございます。  特に、内外価格差といった場合に、いわば輸入価格そのものが高いのか、あるいは我が国の流通慣行に伴って経費がふえるのか、また欧米と比べて医療機関におけるメンテナンス等の経費等の違いによるのかといったような要因も考えられますので、それも含めまして実態調査をしているところでございます。
  13. 児玉健次

    児玉委員 ですから、この中間報告が言っているように、さまざまな流通に伴う慣行、例えばペースメーカーについて言えば、業者が手術室で立ち会って、そして医師のその場におけるさまざまな問い合わせやその他に答える、これなんかはやはり独自な慣行かもしれません。そういったものと切り離して医療機器自体の価格を浮かび上がらせる、それが原価透明化につながっていく、非常に重要な指摘だと思います。  そして、先日来も多少議論になっておりますけれども、昨年三月に明らかにされた日本貿易振興会の対日アクセス実態調査報告書、その中で医療機器を取り上げた部分があります。その十三ページに、非常に重要な指摘がある。「PTCAバルーン・カテーテル、ペースメーカーは、ほぼ一〇〇%外国製品を使っており、それらは生産国における価格と比べて、日本での価格は三倍以上高い(ものによっては五~六倍)といわれている。日本と同様に外国製品を輸入している諸国と比べても、日本価格は高いという。こうした高価格は、外国メーカー日本向けには出荷価格を差別化している可能性があるのではないかとの指摘がある。」  このジェトロの報告書は、何人かの外国日本の研究者、大学の教授その他が白地で自由な討論をしてつくり上げたものだと私は聞いています。その中で、外国メーカー日本に対して出荷価格を差別化している、これは重要な指摘です。  このような差別を許してはならない、こう思うのですが、厚生大臣、いかがでしょう。
  14. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 最近の医療技術のみならず医療機器の進歩発展というのは目覚ましいものがありまして、私自身もその検査等経験がありますけれども、痛みもない、そして苦しみのない中で人体の構造がよくわかる。この医療機器の発展というのは、治療効果を高めると同時に、大変高額なものですから、医療費にも大きく影響してくると思います。今いろいろなお話を聞いておりまして、そのような医療機器価格設定やら流通状況実態を把握することによって、診療費全体にも影響してくる問題だと思います。  今後、医療機器についても、流通実態の把握に努めながら、そして価格設定透明化に向けて積極的に取り組んでいきたいと思います。
  15. 児玉健次

    児玉委員 そのようにやっていただきたいのです。  それで、私は総理に、平成八年十二月の「六分野の経済構造改革」、これとの関係で述べたいのですが、その中でこう言っていますね。「医療・福祉の分野には、社会保険や税金という公費が大規模に投入されている。それだけに、この医療・福祉費については、」まず「国民から見て透明な制度であり、かつ、国民が議論と決定に参加できる制度に改革することが重要である。」国民が議論と決定に参加できる制度に改革することが重要だ。こう述べた上で、先ほどからの議論ですが、「海外の約三倍の値段で納入されている医療機器の存在が指摘されるが、このような内外価格差の是正のためには、流通慣行の見直しとともに、こうした高額販売を可能としている診療報酬を是正する。」こう言っています。  私は、総理に三つの提案をしたいのです。  その第一は、医療機器内外価格差の是正、流通慣行の見直し。今、小泉厚生大臣から積極的な御答弁がありました。第二、医療機器等の原価透明化すること。第三、検査画像診断料の決定プロセス、これらを国民に明らかにして、そしてあわせて先ほどの医療協議会の詳細な議事録の公開。どうもメンバーが長期にわたり定席化している。これらを改めて、それらを総体として進めることでこの医療保険の会計についてかなり大きな影響をもたらす。  この点で、総理、積極的な検討を行っていただきたい。いかがでしょうか。
  16. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 もともと、原案に抜けておりました流通慣行という文字を加えていただきたいというお願いをそのメンバーにしたのは、私自身であります。そして問題意識として、医薬品及び医療用機械器具、この世界の流通慣行というものが非常に問題の多いものだという意識を持っておりましたので、せっかくそこまでの提言をしていただけるなら流通という問題も提起していただきたい、私自身からお願いをいたしました。  そして今、四品目を挙げて、ジェトロの数字等を参照されながら今議員からお話があったわけでありますが、間違いなしにこれは実は我が国の流通慣行とも密接に関係している問題です。当然のことながら今後この流通過程実態を把握してもらわなければなりませんし、診療報酬上、これを生かして適切な対応を必要とするものになります。  また、検査あるいは診断料を含む診療報酬については、これは中医協の議論を経て決定されるわけでありますが、その審議内容については、当然ながら国民に対する適切な情報提供に努めていかなければなりません。  この流通実態の把握につきましては、恐らく関係当局は、我が国の流通慣行に関する実態調査あるいは関係団体からのヒアリング等も予定しておられるものと私は信じております。
  17. 児玉健次

    児玉委員 以上の厚生大臣総理の御答弁が緊急に抜本的に進められましたら、国民医療費の中の相当の部分についての節減が可能になります。  二月十日に医療保険の大幅な改定国会に提出をされております。二兆円の負担増を国民に押しつける、私たちはそのように見ている。とりわけ重要なのは、これが低所得層、高齢者を直撃することです。  厚生省がこの法案との関係でかなり分厚な資料を提出されております。私は、その中で「制度改正による一部負担の変化」、この部分について取り上げてみたいと思います。  同一保険医療機関に一カ月に三・二回通院し、一回につき四種類の薬を六・七日分もらった場合。これは一回について外来五百円、四回で二千円。今厚生省が私たちに出している資料によれば、高齢者の通院は平均三・二回ですから、四回掛け五百円、二千円、これで大体高齢者の通院のほとんどすべてを捕捉することが可能です。そういう意味で、四回という数字は非常に意味が深い。そして一回につき四種類の薬六・七日分。この結果どうなるか。厚生省の試算によっても、現行であれば千二十円で済むものが二千八百八十円、二・八倍になりますね。  それから、低所得層についてどうか。これは老齢福祉年金の受給権を有する市町村民税非課税者等ということになっております。今でいえば、入院の場合三百円、一日。ただし、二カ月で打ち切り。それ以降は医療費が請求されない。当然のことです。高齢者の医療費が無料であった時期の、言ってみれば国民的な合意がここでも一定の反映をしております。  それが今度の改定でどうなるか。三百円が五百円に引き上げられ、しかも、今ある二カ月で以後は請求しないということが無残に打ち切られてしまいますね。高齢者の入院は長期に及ぶことが多い。六カ月の入院ということになれば、現行では一万八千円の負担が九万円に、五倍になってしまう。これでは文字どおり、金の切れ目が命の切れ目ということになってしまう。  こういう医療費改定については、先ほどから議論している、先日来からも議論している薬価医療機器について抜本的なメスを入れることによって、二兆、三兆以上の原資が生み出されることができる。国民の負担増を行わなくて健康保険会計の赤字解消は可能だ。どうでしょう。
  18. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 改定を行わなくても、だれかがどこかで負担しているわけです。医療費の問題につきましては、公費負担、保険料負担、受益者・患者負担、この三者の組み合わせしかない。患者負担を引き上げないとするならば、当然、働く世代なり企業なり、あるいは公費の負担、だれかがどこかで、医療サービスを受けるためには負担しなきゃならないという問題を根に抱えております。  今の御指摘におきましても、高齢者に対しまして、今まで一カ月千二十円を一回五百円にする。しかし、四回までを特例として二千円以上は取らない。確かに、一般の方は入院、千円いただきます。低所得者に対しては、五百円に抑えるということです。  一方で、これは過重と言いますが、同時に若い世代も、今大学新卒で年収約二百七十万円です。その方々は年十八万円の保険料を払っている。もちろん企業と折半でありますから、九万円であります。こういう世代間の公平、公正を考えると、私は、高齢者だからといって、受診一回五百円、一剤十五円、一日、これが本当に過重な負担であろうか。今あらゆる歳出削減、聖域なしで取り組んでいる。今の制度を前提にすると、高齢者はふえる、若い世代は少なくなっていくということを考えると、私は、必ずしも過重な負担と言えないんじゃないか、ぜひとも御理解をいただきたいと思います。
  19. 児玉健次

    児玉委員 私は論議をかみ合わせたいんです。だれかがどこかで負担をしなければならない、と同時に、聖域はないとおっしゃった。そのだれかがどこかで負担しなければならないという呪縛から解かれる必要があります。  すなわち、これまで議論してきたように、世界に比べてみても高過ぎる薬価、とりわけ新薬が五割に及んでいる。ドイツは一割ですね。そこにもし押し戻していくとすれば、二兆、三兆の財源が生まれる、既に議論されているところです。  きょうの、私たちがやっている新たな議論は、その問題は高額の医療機器にも及ぶ。そのことによって、また新たな財源が生まれる。だれかがどこかで負担するのでなく、今の日本の医療構造にメスを入れることによって、だれかがどこかで負担しなくていい、ここが明らかになってきているんですよ。その点を考えるべきだ。  そして、聖域があってはならない。流通機構や内外の価格差、ここを聖域にせずにメスを入れていくことによって、医療保険会計の赤字解消は可能。どうです。
  20. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 今回の医療保険法案を提出することによって、今委員指摘のような構造問題にも当然メスが入れられてしかるべきだ、同時並行して私は進んでいきたいと思います。歓迎します。
  21. 児玉健次

    児玉委員 その点での緊急で抜本的なメスを入れていけば、今度の医療保険改定自身が大幅に見直される可能性を生み出しています。そこを明らかにしてきているのが、今度の通常国会の議論の一つの大きな特徴です。  そして、私はさらに言いたい。今若い人というお話があった。  京都の保険医会がこのほど患者に対してアンケートをなさった。このアンケートは大きな規模ですね。五千八百人の人が回答を寄せています。その中で何が示されているかというと、まず圧倒的な部分がこの改定に反対。その上で、今小泉厚生大臣がお話しになった若い人たち、二十歳代の三割、そして三十歳代の二割以上が、医師にかかることをやめて自分で治すと答えていますね。  こうなると、どういうことになるんでしょう。予防が最高の治療ということが言われています。そのことが困難になって、受診の抑制、受診の中断、結局これは疾病の重症化をもたらして、結果としては医療費負担を高額に押し上げざるを得ない。予防こそ最高の治療というのを今度の医療保険改定は困難にしている。どうでしょう。
  22. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 確かに、予防こそ最良の治療、これは大事なことだと思います。  しかし、医療費が上がったからといって、医療費の増大なりあるいは受診の抑制につながるかというと、今までの趨勢を見ていて必ずしもそうではない。それでは医療費を軽くするかというと、これまた医療費の増大に歯どめがかからない。各国ともに、経済成長以上に医療費の伸びというものをどうやって効率的にしていこうかということに苦心惨たんしている。国民負担の問題も絡んでくる。  そして、経済成長の成果を福祉の充実に振り向けていくために、働く世代なり社会の活力というもののやる気をなくしてはいかぬということで、全体の公的負担を減らしながらどのような福祉国家をつくり上げていくかということに、今、日本も直面しておりますので、この医療費改定もその線に沿って、できるだけ国民の負担を減らしながら効率的で良質な医療をどうやって提供をするかという一つの段階的な法案でありますので、現在の法案を審議しながら、これから将来に向けての構造改革につきましても、委員指摘の問題等を参考にしながら同時並行的に私は進めていきたいと思います。
  23. 児玉健次

    児玉委員 私の時間が切れますから、最後に一言言いますけれども、同時並行的に議論する、まさにそれは必要でしょうね。そして、厚生大臣そして総理が先ほど検討をお約束になった流通過程の問題、内外価格差の問題、そして高額の医療機器原価透明化、これをやっていけば、はっきり今度の健康保険財政の赤字、私たちが伺っているところによれば一兆八百三十億何がし、そこの部分を上回る二兆、三兆の原資が出てくるわけですから、医療保険改定が必要なくなる。その道を私たちはこの後も議論していきたいと思います。  以上で、私の質問を終わります。
  24. 深谷隆司

    深谷委員長 この際、佐々木憲昭君から関連質疑の申し出があります。児玉君の持ち時間の範囲内でこれを許します。佐々木憲昭君。
  25. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日本共産党佐々木憲昭でございます。東海ブロックから選出されまして、予算委員会では初めての質問でございますので、よろしくお願いいたします。  政府は、来年度予算で、消費税の増税、特別減税の打ち切り、そして社会保障、医療費の負担増、合わせて九兆円の負担を国民に求めております。これが戦後最大の負担であることは既に明らかで、本会議日本共産党の不破委員長質問や当委員会の志位書記局長質問でも、この負担が大きく消費を抑え込むことになり、また景気回復にもブレーキをかける。とりわけ、消費税の負担に対する国民の怒りというのは非常に強いものがあります。  私のところにもいろいろな手紙、はがき、要望、こういうものが寄せられておりまして、幾つか紹介しますと、例えばお年寄りの、夫七十五一歳、妻七十一歳の夫婦でありますけれども、「夫婦二人で、一年の年金は九十八万六千円ぐらいです。消費税五%になれば、我々弱者の老人は、今後どうなるか。増税はあくまで反対です。どうか、がんばって下さい。」七十八歳のお年寄りからは「金利が下がり、消費税は五%に上がる。それでは、年金生活の老人には、死ねと言うのも同じです。」お年寄りだけじゃありません。若い方、例えば高校生からも「ただでさえ働けなくて収入のない高校生から消費税をとって、三%でも苦しいというのに、五%にするなんて許せない。」こういう声が大変大きく我々にも寄せられているわけであります。  我が党が全国で消費税に反対する運動の先頭に立っておりますけれども、寄せられた請願署名は八百十万人に既に上っておりまして、まさにごうごうたる非難の声が寄せられているわけであります。  そこで、一昨日の朝日新聞でありますけれども、世論調査の結果が発表されております。この中で、消費税の増税があなたの暮らしに負担になるかという問いに対して、「大きな負担になる」と答えた人は実に七九%に上っております。約八割であります。さらに、特別減税の打ち切りで「暮らしに大きく影響する」という人は五三%。  総理、この世論調査では橋本内閣の支持率というのが出ておりまして、この中では「支持する」という方は四二%で、昨年十二月に比べまして一三ポイントも急速に低下をしております。逆に、「支持しない」という方が一〇ポイント上昇しているという状況であります。国民の怒りが強いのは、これほどの負担増を求めた内閣が橋本内閣以外に以前にはなかったということであります。  別の世論調査を見ますと、この一年間の橋本首相や橋本内閣の実績で評価できないもののトップが、消費税を引き上げたことだ。実に過半数の五一%に上っております。また、橋本内閣に一番やってほしいことということで、景気の回復とともに、消費税の見直しが挙がっております。  ここで総理基本認識をお聞きしたいんですけれども、このような広範な国民の声あるいは世論調査の結果に対して、正面からこたえるというのが政治の務めだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  26. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 政治家として、世論調査の結果、支持率が下がるということが幸せなことでないことは私が申し上げるまでもありません。  そして、私は、昨年の衆議院選の際にも国民の前で、消費税率を引き上げさせていただきたい、二%引き上げさせていただきたい、そのうちの一%は地方の財源であり、同時に、既に先行している所得税減税等の穴を埋め、新たな介護の仕組み等の財源として一%を使わせていただきたいということを国民の前で申し上げ続けてまいりました。その上でなお御賛成を得られない方々がたくさんおられるということは、私自身、なおこの我が国状況というものを知っていただく努力をしていかなければならない。そして、それがいかに必要であるかを、増税を喜ぶ方はありません、しかし御理解がいただけるような努力をしてまいりたいと思います。
  27. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 いろいろ弁明されましたけれども、九兆円の新たな負担というものを、一度決めたらこれはもう絶対動かさない。いわば、私に言わせますと、国民が評価できないものは強行する、やってほしいことにはこたえない、こういう姿勢だと言わざるを得ない。  例えば、先行減税とおっしゃいましたけれども、この不況の中で、どうしても庶民の生活を守るというそういう立場に立てば、当然、これは所得減税を行うのは当たり前のことでありまして、それを打ち切るということになりますと、これはまさに増税になるわけであります。この九兆円、こういう負担増というのが結果的にサラリーマンの家計にも非常に大きく響きまして、例えば、ここに日本総合研究所の調査をしました「国民負担増大の九七年度経済に対する影響」というのがございます。これを見ますと、まさに逆進性というのが非常に鮮明にあらわれております。  例えば、収入の一番低い層の統計で、給与収入が四百万円、この階層では負担率二・五、五百万では二・六、六百から七百万円では二・七、八百万円で二・六。つまり、八百万円以下の収入階層、約九割でありますけれども、この圧倒的多数は、二・五から二・七の大変大きな負担になっております。それ以後、年収がふえるに従いまして低下して、例えば一千万円二・三、一千五百万円で一・七、二千万円で一・五、このようになっております。  つまり、年収が少ないほど負担率は高い。なぜそういうことになるかといいますと、消費税そのものが逆進性を持っている。これは政府もお認めになっている。もう一つは、特別減税というのが年収約八百万円以上が七万円で頭打ちになりますので、廃止ということになりますと、年収八百万円の世帯でも二千万円の世帯でも、両方ともこれは七万円の増税でありまして、率にしますと、年収が高いほど負担率は低い、こういう状況であります。  ですから、このように、現在の九兆円の負担増というのが逆進性を持っているということは、この試算でも非常にはっきりと出ているわけでありますけれども、総理はこの逆進性というのはお認めになりますか。
  28. 麻生太郎

    ○麻生国務大臣 今、消費税並びに特別減税のお話があっておりましたけれども、今回の消費税並びに特別減税の打ち切りによりまして一定の負担を国民に求めることになりますことは、もう先ほど総理からも御説明のあったとおりであります。  ただ、税というのは、昨年度に比べて九兆というお話が出ておりますが、これは前年度対比だけで見るものではありませんで、平成七年度から見ていただくと、その数字で申し上げさせていただければ、ここに私が持っております資料で、今八百万円と言われましたが、七百万円のところの収入で見ますと、いわゆる恒久減税と言われました所得税減税分と今回の消費税のアップ分がほぼ見合った形で、約六万六千、六万七千円というところで、ほぼその分が合っておりますという点も記憶をしていていただいて御議論をいただければと思っております。(佐々木(憲)委員「逆進性はどうですか」と呼ぶ)今のに対しまして、ある程度の逆進性が出てくることは間違いないと思っております。     〔委員長退席、中川(秀)委員長代理着席〕
  29. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 逆進性はお認めになったわけであります。消費税は、このように結局庶民に非常に重くかかってくる。  もう一つの問題は、大企業の負担がどうなるかという問題がございます。  もともと大企業の場合は消費税すべて負担転嫁できますから、消費税がふえてもほとんど痛痒を感じないということでありますが、もう一つの問題は、大企業自身が法人税を負担するわけでありますが、この法人税がこの間どんどん下がってきているというのが実情であります。もともと、消費税の導入というのは法人税の引き下げとセットでありました。このときの法人税率の引き下げ、四二から三七・五に段階的に下げられましたけれども、そのほか配当軽課税率の廃止などありまして、差し引きで平年度一兆二千五百四十億円の減税となっております。したがって、この間、八年間で累計約十兆円の法人税減税が行われたという計算になるわけであります。  他方、消費税の導入で庶民の方は大変な打撃を受ける。要するに、大企業減税のいわば財源づくりのために庶民が犠牲になってきた。庶民の懐から取り上げて大企業の減税に回してきたというのが、この間のまさに税制改革の実態であります。  では、ここでお聞きをしたいわけでありますが、今後の法人税であります。  橋本総理は、参議院本会議で、我が党の立木議員の質問に対しまして、課税ベースを適正化しながら税率を引き下げるという基本的な方向に沿って検討を続けたいとお答えになりました。これは、昨年十一月の法人課税小委員会の報告、この中で、課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる、いわゆる税収中立の立場。つまり、法人税の枠の中で増減収を処理して、他の税つまり消費税などには財源を求めないという、これが昨年十一月の法人課税小委員会の報告であり、かつ橋本総理お答えでありました。  ところが、昨年の総選挙で、自民党は「わが党の公約」、この公約の中で、法人課税のあり方についても見直しを行い税率を下げる、法人所得課税の実質的な負担の軽減を図るというふうに公約されました。これは、大企業向け法人税の負担そのものを引き下げるということであります。これは参議院本会議での総理答弁と随分違うわけでありまして、自民党の税調の林会長はマスコミのインタビューに答えまして、税収中立は必ずしもこだわらない、このように答えています。  こうなりますと、一方では法人税の税収中立、他方で自民党は実質減税、これは一体どちらが本音なのか、ここではっきりお答えをいただきたいと思います。
  30. 三塚博

    ○三塚国務大臣 佐々木さんのお話、質問を聞いていますと、次元がちょっとずれておりまして、聞く人によっては誤解を与えます。  先ほどの経企庁長官の消費税逆進性、それは若干の問題はあるでしょう。しかし、恒久減税によって見合うべきもののベースが、今度上がることによってもおおむね見合うというのもまた一つの計算でありますことをまず申し上げまして、法人税でありますが、党の公約は、あなたは柱だけ言われているように思います。  政府・与党一体という観点から物を申し上げさせていただき、政府の本件に関する責任者として申し上げますと、現在の厳しい財政事情を踏まえるということで法人税減税を行わなければならないということであれば、他の税の引き上げや赤字国債の発行に求めることは適当でないという政府の方針であります。法人税については、税の公正、中立等の基本的視点に立ちまして、我が国の経済構造の変化等の観点を踏まえながら、課税ベースについて適正化の観点から再点検をし、それによって財源が得られるとすれば、財源の範囲内におきまして法人税の基本税率を引き下げて見ていくという考え方で検討をお願いをいたしておるわけであります。そういう点で、一方的に国民負担をふやして、やるということではございません。     〔中川(秀)委員長代理退席、委員長着席〕
  31. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 ただいまのお答えについてでありますが、減税があったのでそれに見合う増税だ、こうおっしゃいました。  減税というのは、現在の不況の中で、国民の生活あるいは経営について、これを何とか立て直さなければならない、そういう意味で、庶民の懐を暖かくするという意味での必要な減税だと思うんですね。したがって、この減税を今打ち切るということは景気の回復にとってマイナスに作用するということになるわけでありまして、所得減税の打ち切りということの持っているマイナス面について私たちは厳しく指摘をしているわけであります。この継続が必要だということです。  それからもう一つは、法人税の問題については当面中立という、実質的な、ほかの税には負担を回さない、こういうお答えでありました。  将来の問題については後で少し質問いたしますけれども、それでは、法人税を引き下げるという議論が自民党の中でもいろいろありますが、この法人税、本当に引き下げなければならないのか、日本の法人税は本当に高いのか、その問題について大臣の認識をお答え願いたいと思います。
  32. 薄井信明

    ○薄井政府委員 法人税の御質問でございます。  一言で法人税とおっしゃいますが、法人に対する所得課税という意味からしますと国税と地方税がございまして、いわばその両方合わせますと法人課税、所得に対する法人課税という次元になるかと思います。その場合、日本の法人課税の税率水準、表面税率を調整したもので考えますと、先進諸国の中ではドイツと並んで高い方であるという認識を持っております。  ただし、法人課税の負担そのものを比較するときには、課税ベースと、それから税率水準と両方考えないといけない。そういう意味では、税率に関しましては今申し上げたとおり高いという認識が共通に持たれておりますが、課税ベースにつきましては、これを容易に計算する、判断することは難しいというふうに私ども思っております。  ただ、いずれも、国際的な流れの中で企業活動が行われるわけですから、そういった点を十分踏まえて議論をするべきだと思っておりまして、一月の二十四日に政府税調、「これからの税制を考える」というものをまとめておりますが、税率と課税ベースの両面について、国際的潮流を踏まえて検討が必要であるという指摘を受けております。
  33. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 要するに、表面税率から見れば日本は高いが、しかし、課税ベースという点からいうと日本は狭い。したがって、国際的に比較する場合には、その両面を検討する必要があるというのが法人課税小委員報告の内容であります。結論として、法人課税の税負担の水準の高低は、高い、低いは容易には判断できないというのが法人課税小委員報告の結論だと思います。つまり、日本の法人税は高いとは言えないということであります。  実際、日本には、欧米に比べましてはるかに多い引当金があります。例えば、アメリカとイギリスには負債性引当金は原則的として認められておりませんが、日本は六種類の引当金がある。二十二種類の準備金があります。そして、これは大企業が特権的に利用しているというのが現在の日本の実情であります。  したがって、税率を単に下げるということではなくて、我々は、この特権的な大企業優遇の仕組みを正すということが本来の税制改革の中心的な課題でなければならない、このように思います。そのことによって、ひいては財政再建にもつながる、この点を繰り返し私たちは要求してまいりました。  さらにつけ加えますと、企業の負担、これは税金だけではありません。国際比較をする場合には社会保障の負担も当然重要な要素でありまして、これを考慮いたしますと、国際的に見て、日本の大企業の負担は一層低くなるわけであります。税調の法人課税小委員会専門委員の神野直彦東大教授が試算をしておりますけれども、社会保障負担を含む企業の税負担の国際比較、これを試算をいたしますと、大体日本はイギリスとほぼ同じでありまして、アメリカドイツフランスよりも著しく負担が軽い、こういう結果が出ているわけであります。  こういう状況でありますから、高くもない法人税を引き下げる、まあ法人の税負担の引き下げ、こういうことになってまいりますと、これはだれが見ても納得できるものではなくて、それが実際に行われるということになっていきますと、これは大問題であります。  例えば、税調の「これからの税制を考える」という中で、こういうことが書かれているのですね。「法人課税の実質的な負担軽減を議論する場合には、その財源をどのように賄うのか」「具体的には、歳出削減で賄うのか、あるいは消費税など他税目の増税によるのが適当かなどを検討しなければなりません。」ここで初めて、法人所得課税の実質負担軽減を行う場合には消費税の増税などという形で、消費税というのが初めて出てきているわけであります。つまり、法人負担、大企業の負担を軽減する、その軽減の財源として庶民から消費税の増税で賄うという可能性に初めて触れているわけであります。  この点についてはマスコミでも、例えば日経は「法人税減税と消費税増税の組み合わせばこれまでタブー視されており、これを破る瀬踏みともとれる。」こういうコメントをしているのですね。朝日新聞では「企業の負担を軽減する目的で、消費税を増税するというのは筋違いだ」こう述べているわけであります。  なぜこのような方向が出てきたかということでありますが、これは、昨年来の経過を見ますと、財界の要望が色濃く反映している。この点について、私は大変重大だというふうに思います。  企業の税負担の軽減の財源として、将来、消費税のさらなる増税をやるつもりがあるのかどうか、消費税の再引き上げというのは絶対にやらない、こう断言できるのか、その点についてお答えを願いたいと思います。
  34. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ただいま常会に税制改正案を提出をいたしております。同時に、経済システム改革、財政構造改革等、これまた所信表明、施政方針演説の中で総理から、財政当局として私から財政演説、経済演説等申し上げて、御審議をいただいておるところでございます。  まず、財政構造改革を断行するためには歳出の削減をしていかなければならない、さらに、赤字からの脱却がなくして健全財政と言われませんものですから、深刻な経済困難が予想されるわけでありますので、これまた赤字国債に頼らない健全体質をと、こういうことで、全力を挙げることといたしております。  二兎を追う者一兎をも得ずというのは世間一般にありますけれども、政治は、危機意識の中に立ちましたときに、全力を挙げてこの二つの目標に向けて進まなければなりません。六改革を確実に前進をすることによりまして生まれ変わった社会経済状況が出てまいるわけでございますから、そこから我が国経済の持続的な発展が進むということになります。  そういう点で、法人税の問題、議員の提案、質疑を聞いておりますと、それは一方的に大企業優先の立場でと、こう決めつけられておりますけれども、私どもは、法人税引き下げの財源を得るということであれば、一つは、選択肢と考えられますのは、赤字公債の発行を引き続き行いながらこれを行う。二つ目には、他の税目の引き上げ、こういうこと。これは国民の理解を得ずして行えるものではございません。そして、歳出の削減、これを五カ年計画をもって達成をしようというので、九年度予算はその原点を踏まえた歳入歳出の予算とさせていただきました。第四の選択肢が、法人税の課税ベースの拡大、適正化、こういうことで、各種法人税税目の見直し、こういうことによって財源を得てやる。  こういうことでありまして、あなたの言われるとおり苛斂誅求なことをやるのではございませんし、大体、民主主義国家で苛斂誅求なんというのはあるはずがありませんで、そういうことをやっておれば、総選挙できちっとしたものは出てこないわけでしょう。
  35. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 聞いていることに全然答えていない。将来の消費税の再引き上げは、税調答申で可能性に言及しているのです。その点についてやるつもりがあるのですか、ないのですかと聞いている。そのことについて全く答えない。九七年度についてはこうですと答えただけであります。まともに答えなさいよ。
  36. 三塚博

    ○三塚国務大臣 あなたもいろいろ論を広げて言いますから、私もわかりいいように申し上げておりまして、消費税の問題についてはただいま提案をしておるわけですから、本件について論議の中で御理解を得ていただきたい。当面、直ちにということは考えません、こう申し上げたわけであります。
  37. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 当面、直ちにはやらないが、将来については否定されなかったわけであります。  つまり、こういう点では、ここに経団連の「税制改正に関する提言」というのがありますが、この中で、法人課税、現在約五割だけれども、これを四割に引き下げるという提言をしているわけであります。つまり、この点で言いますと、現在の法人課税の軽減ということをはっきりと財界は主張し、そして税調の一月の報告でもそういう道をあけてある。  そうなりますと、この要望どおりに一割引き下げるということになりますと、一%で四千億円ですから、一〇%で四兆円の財源ということになるわけですね。それを仮に消費税に転嫁をいたしますと、約二%さらにアップになる。つまり、七%の消費税という可能性をはらんでいる極めて重大な問題であります。  この点では、昨年志位書記局長が明らかにしましたように、大企業減税の財源づくりのために消費税を上げていくということになりますと、二十一世紀は二けた消費税だと。これは税調の加藤会長も、所得税や法人税の税率を半分にするかわりに、消費税の税率を二けたに引き上げることが不可避であると述べて、試算では税率一八%が必要、こういう考えを示したと報道されている。  したがって、今回の消費税増税というのはその突破口を開くものでありまして、絶対にやってはならない、このことを私は強く要望をしておきたいと思います。  次に、この消費税の増税が、中小企業あるいは雇用に対してどのような影響が生まれるかという点であります。  消費税の増税を初めとする九兆円の負担増というのは、中小企業へも大変大きな影響を与えます。  例えば、日本商工会議所、この一月に「早期景気観測」というのを発表いたしました。それを見ますと、各業種組合などにヒアリングをした結果をまとめたものでありますが、全産業で業況が下向きだと回答をしているということであります。その幅も、昨年十二月より七・七ポイントも低下している。景気のキーワード、これは自由回答なんですが、それは「先行き不透明」「採算の悪化」「消費税」、この三つが挙がっている。そして、このようにまとめております。全般的な景況感は、最近の株価の低迷や消費税の引き上げ、特別減税の廃止等の影響で先行き不安感等が強まり、企業マインドの悪化度合いは拡大した、こう指摘しております。  そこで、重要なことは、中小企業には日本の従業員の約七割がそこで働いているわけであります。したがって、中小企業の経営が困難になりますと、当然雇用不安ということにつながっていくわけです。  そこで、基本的な認識をお聞きいたしたいわけですが、中小企業の動向と雇用というのは密接な関係があると思いますが、この点についてどうか。また、雇用の安定のためにも、従業員の七割を占める中小零細企業の経営安定がかぎになると思いますけれども、この点、総理大臣基本的な認識をお尋ねしたいと思います。
  38. 麻生太郎

    ○麻生国務大臣 今、中小企業についての特にお尋ねでありましたけれども、中小企業が過去、いわゆるバブル崩壊の後の状況としては極めて厳しい状況にあったということは、もう委員よく御存じのとおりでありますけれども、最近の状況を見ますと、少なくとも、いわゆる足元はもちろんのことでありますが、景気の先行きの指標を示します設備投資、これは御存じのように何カ月か先によくなると思わなければ設備投資はせぬわけですから、設備投資というものを見ておりますと、中小企業のものがここ数年と違ってプラスに転じております。そういった意味では、中小企業もある程度設備投資をプラスに転じるほど伸びてきておるということであって、バブルのときに大きく設備投資を使えた分を、いわゆる償却するテンポが非常に速くなってきておりますので、設備投資がプラスに転じてきておるということは間違いない事実でありますので、ある程度中小企業につきましてもそういったプラス志向が出てきておるということは確かだろうと思っております。  いずれにいたしましても、こういった問題は今後……(佐々木(憲)委員「雇用との関係」と呼ぶ)  雇用につきましては、これは労働省の問題かと思いますけれども、私どもで言わせていただければ、過去三%台ということで、今現在三・三%ということになっておりまして、来年度もほぼ同じような〇・一ぐらいの違いかと思いますけれども、そこの内容が問題でありまして、今までのように自己都合ではなくて会社都合による退職、いわゆる失業というものの比率が減って、転職に基づきます自己都合の比率がふえてきておるというのは、数字の内容から見ておりますので、その内容につきましても、従来のようないわゆる不況に伴います解雇というような感じでの失業率の比率は減ってきておるというのが実態の数字であります。
  39. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 お尋ねしたことに真っすぐにお答えにならないものですから。  私が聞いたのは、中小企業の経営、これが雇用にも密接に関連をしているがどうかとお聞きをしたわけであります。設備投資は上向いているとおっしゃいましたが、大企業の上向き方と、中小企業の面でいいますと従来の景気回復過程と違いまして、中小企業の上向きというのは非常におくれているというのが実態でありました。これは既に当委員会で志位書記局長も明らかにした点であります。  そこで、次に問題は、構造改革を行えば経済は活性化する、あるいは雇用もそのりちにふえていく、こういうお話がいろいろございます。この点では実態はどうか、あるいは財界がどう考えているか、こういう点で非常に私は心配な面が出ていると思うのです。  例えば、これは二年ほど前ですけれども、日経連の永野前会長がこう述べたことがあります。「従来低生産性の非製造業や非貿易財産業の徹底した効率化を図れば、かなりの雇用の減少が起きる。」これは「数百万~一千数百万人規模になるだろう。現在の日本のGNPは、アメリカ並みの生産性では四千万人の就業者で生産できるとされ、単純計算すれば現在の六千万人の就業者のうち二千万人が余剰となる。」というふうなことをおっしゃったことがあります。  そこで、橋本総理にお伺いをいたします。  総理は、痛みを恐れて改革の歩みを緩めたり、あるいは先延ばしするということなく、強い決意を持って経済構造改革に取り組んでいくとお述べになりました。痛みというお言葉を使われましたけれども、痛みというその内容は、失業あるいは倒産、こういうものを意味しているのかどうか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  40. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 関係閣僚から詳細についての補足をお願いをしようと思いますけれども、当然ながら、規制によって今まで守られていた業種が存在をいたし、その業種を守っていた規制が廃止をされれば、他の部分についてプラスは出ましても、その規制によって守られていた業種は当然苛烈な競争にさらされることになります。あるいは、保護がなくなるという言い方をしてもよろしいかもしれません。これは、いずれにしても痛みを伴う部分であります。  同時に、その産業構造を変え、その中において新たな分野に、昨日来、例えば医療・福祉分野における雇用の増というものが一つの例証として論議の対象になっておりましたけれども、こうした新たな分野における雇用創出というものもその規制緩和の進行の間に出てくるということは、産構審その他においても議論をされていることでありまして、規制によって守られていた業種が、その規制がなくなることにより競争にさらされる、あるいは保護の条件が失われる、そうしたところに痛みが生ずる、同時に、新たな産業が創出をされ、そこに新たな雇用が生ずる、これが従来から申し上げてきている内容であります。
  41. 岡野裕

    ○岡野国務大臣 総理がお話しになりましたように、構造改革、これによりまして、影が今まで当たっていなかった産業が影が当たるようになる。したがって、そこに雇用されている働く皆さん、これは雇用が不安になる。ところが、総理がやっぱりお話しになりましたが、同じように、今度は構造改革によって日が当たる産業が出てくるということであります。したがって、ここでは雇用の需要ができるということでありますので、この雇用難にさらされる産業から日の当たる産業の方に、ごめんなさい、民族移動的に働く皆さんが円滑裏に行けますならば、これで雇用の問題は解決ができるのではないか、これが一本の柱でございます。  そのためには何があったらいいかということでございますが、やはりミスマッチで、自分の希望しているようなところにどうやったら行けるかということが実現できないというような問題が、在来いろいろのケースでございました。  したがいまして、これらを勘案をいたしまして、一つには、職業紹介制度というものをより自由化をしようではないか、あるいは、派遣労働制度というものがございますが、その人材派遣についての自由化というものを図ろうではないかということがこれまた一つの手段であります。  同時にまた、新しいところに行きますのには、ごめんなさい、今までは低次の労働の提供でありましたものがより技能を必要とするということであらないと、その需要を満たして労働が移動をするということにはまいらないというような意味合いで、新しく技能を身につける。武装をすると言うと穏やかでありませんが、新しい職場で働けるような技能を身につけるというような意味合いで、そういった職業能力の開発というようなものを我々はどんどん進めていかなければならぬのではないか。  それから三つ目、中小企業等で新たなそういう技能者を雇用なさる、それにつれまして、その分野で働く皆さんがやはり何人か一緒に雇用ができるということになります場合には、そういった施設を設けます中小企業者に対して施設面の援助をする。あるいは、労働者を雇用をする場合には、その賃金を一部、その企業者が負担ができるように政府の方で手を差し伸べる。これは雇用促進事業団の仕事でありますが、そんなことで今労働省としては対応をいたしてまいり、かつまいろう、こう存じているところでございます。
  42. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今、影になる部分がどんどん広がる面があるが日の当たる面も出てくる、こういうことでありました。しかし、この影の部分というのが大変重要でありまして、この部分をどう支えていくかというのが政治の役割だと思うのですね。  そこで、財界の発言で大変気になるのは、例えば経済同友会の牛尾代表幹事は、失業率は瞬間的には一〇%ぐらいという議論もあった、五%から七%くらいは頭の中に描いている、こういうふうな言い方をしておりまして、これから短期間、数年間は失業がふえる、こういうふうに言っているわけであります。どの程度の失業者が生まれるのか。  そこで、ちょっと通産大臣にもお聞きしたいのですけれども、製造業における雇用の見通し、例えば通産省が実施しました「海外展開戦略に係る企業調査報告」、昨年十一月、この中でどのような見通しを出しておられますか。
  43. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 その前に、今まで発言する機会がなかったのでまず申し上げたいのは、確かに……(佐々木(憲)委員「短くしてください」と呼ぶ)いえ、これはちょっと長くなるかもしれませんが、今佐々木委員の言われたような懸念があることは、実際的に私は否定いたしません。そうなっては大変だということで、この、橋本総理のもとに六つの構造改革、私の方は経済構造改革、このことが本当にできれば、やらなければいけないのですけれども、できれば、これから言うふうなことも杞憂になるだろう、こういうことが前提でございます。  今御質問がございましたのは、海外展開戦略というのが昨年の十一月に発表されたわけでございますが、これはどういうものかというと、今、空洞化、こういうことで言われている、海外に進出している製造業の上位として二百社を対象に、昨年の八月、アンケートを実施して、その八割の企業から有効な回答を得た、こういうことなんですが、そのアンケートでは、各企業の国内雇用の九五年度実績と、我が国経済の構造的問題が現状のまま推移する、現状でいったということで、ここには書いてございませんでしたが、いわゆる為替相場も現状でいったということが前提でございますが、そうした場合の雇用の見通しの調査ということでございます。  そうした場合には、その回答を、企業の雇用の減少率が業種ごとにまとめられたわけですが、そういたしますと、製造業全体の雇用の見通しを試算して、二〇〇〇年の段階で百二十四万人減少する、こういうふうなのが出たわけですが、あくまでも、今申したように現状でいったという場合でございまして、例えば為替の場合では五年後の平均を百円というふうに見込んだ数字でございまして、これはもう委員が御専門でしょうが、円高が続けばこの数字が広がるし、円安というふうに動けばこれは減少する、こういう数字でございます。
  44. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 二〇〇〇年の時点で、現在の為替レート百円、一ドル百円で試算をすると、百二十四万人程度減少すると。二年前の試算では、八年間で六十四万人減少、こういう試算だったわけですから、そういう点では、極めて、より急激な減少という予測を出されているわけであります。  問題は、こういう状況が生まれているにもかかわらず、これに対して、本当に下から支えていく政策を実行されているのかどうかという点であります。  私は、経済構造改革というのは、このまま推進されていくと、先ほど御紹介しました日経連の見解でも明らかなように、ますます競争力のないところがいわば全体として排除されていく、日陰になっていく、そういうことになっていくために、経済構造改革を推進することが逆に失業をふやしていく要因になるのではないか、この点について非常に大きな危惧を持っているわけであります。したがって、私は、政策として、経済構造改革を最優先という姿勢ではなくて、現に今職を失っている方、失いそうな方、こういうところに焦点を当てた政策に全体として切りかえる必要があるということを、ぜひ要求をしたいと思うわけであります。  したがって、この、いわば職を失い、あすの仕事があるかどうか、そういう方にこたえなければならない、この声に正面からこたえる用意があるかどうか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  45. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 大変佐々木委員から的確というか、大事なことが御質問があったと思って答弁に立たさせてもらいました。  それは、今も言われるように、今の構造改革をしないと、まさに二〇〇〇年以降でもって日本民族というか日本というものがこの地球上からなくなるおそれがあるというような危機感から実は、いや、本当なんですよ。そこで、今言われたように急激にこれを進めると、今言われるような影の部分が広がるかもわからないということで、二〇〇一年という時間、その間に環境を整備していこう、そのようなところをできるだけ減らしていこうということなので、この辺を御理解いただきたいと思うのです。  だから、今でも、すぐできた場合にはそれこそ大混乱があるかもわからない。それで、二〇〇一年まで余裕がある。ところが、どうも世間では、二〇〇一年までということなので果たしてやる気があるのだろうかというふうな批判につながっていると思うのですが、それはそこが違うということでございますし、そして、先ほど総理が御答弁をされたように、ややもすると総論賛成、各論反対でございます。  それで、私たち考えた中には、徹底した規制緩和、高コスト構造の解消、この二点に絞るわけですが、その場合に、今言われたように財界の方では、総論は賛成だが、具体的に自分のところの業種、自分のところの企業ということになるとそれはと、こうなるわけで、その辺で私たちが苦慮しているわけでございますが、そういうことで、私たちが一生懸命やるということ以外にはお答えにならないかもしれませんが、よろしく御理解いただきたいと思います。
  46. 麻生太郎

    ○麻生国務大臣 経済構造改革というのは目的ではございません。これは、経済構造改革は手段と思っております。  目的は、はっきり申し上げて国民生活の質的向上、改善であり、そのためには雇用が安定しておかなければならぬ。雇用が安定しておくためには、いわゆる企業におきましては国際競争力の維持向上というものがなければできないのであって、したがって、そういった経済構造改革をすることにより、その他一連の改革をすることによって、いわゆる高コスト構造を引き下げることによって経済の国際競争力を維持するということが達成され、最終的には、また戻ってきますけれども、国民生活の安定すなわち雇用の安定にもつながっていく。経済構造改革は手段であって、目的ではございません。
  47. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 じゃ、具体的にお伺いをしたいと思います。  経済構造改革あるいは規制緩和、これが最も現実的に進んでいるのは大型店を規制する大店法の規制緩和でありました。この間、不況の中で売り上げが伸びない中小零細の商店は大変な状況であります。このため、大型店の規制緩和は中小企業にとっては大変な負担となっているわけであります。巨大スーパーやショッピングセンターが次々と出店ラッシュ、これはもう皆さん方も御承知の点だと思うのですが。そこで、長い間住民に親しまれてきた従来の駅前商店街、こういうところがいわば歯抜けのような状況になって、商店街としては衰退していく、全国でこういう状況が見られるわけです。  そこで、具体的に申しますと、商業統計で、例えば一人から四人の規模の零細商店は、一九九一年から九四年の間、ここで約一一%減少です。十軒に一軒はなくなった。ところが、百人以上のいわば大きな店は二五%増となっているわけであります。小さいところがつぶれ、大きなところがどんどんふえている。これは売り場面積にも見られるわけであります。これは私自身もいろいろ調査もし、あるいは関係者とシンポジウムなども行ってまいりました。  そこで、麻生経済企画庁長官にお伺いしますが、就任の記者会見のときに、「(大店法)をとっぱらったら地方の商店街はなくなる。米国には商店街はないのではないか。何を大事とするかは文化の問題。米国を基準にする改革は疑問だし、危険だ」こういうふうに発言されたと報道されていますけれども、この点はそのとおりですか。
  48. 麻生太郎

    ○麻生国務大臣 御記憶をいただきましてありがとうございました。単純に大店舗法を廃止すれば、地方の商店街で大きな影響が生じることもあろうから、バランスが大事である、こういう発言をしたと思っております。  これは、御存じのように、今市場原理、いわゆる競争原理を導入いたしますと、私どもの方は、おたくと違ってという言い方は変ですが、共産党と違って自由主義に基づきます。統制経済ではありませんので、私どもは自由経済でやっておりますので。それでやりますと、いろいろな副作用というものが出てくるという点につきましては、今御指摘のありましたとおりであります。これは店の単価が高かったりすれば安いところの方にお客が流れていくということであろうかと思っておりまして、そういった意味では、いろいろな意味でそれを副作用と言うんであれば副作用というのが出てくるとは思いますが、ただ、逆に言いますと、それによって物価が下がることになりますので、消費者全体にはいろんな意味での好影響を与えるという点も、また忘れちゃならぬ大事なところだと思っております。  したがいまして、今申し上げましたように、競争の原理によって、そこに、敗者と強者という表現がいいのか勝者と敗者というのかな、そういったものがある程度出てくる、そういったものが活性化をされることによりまして、結果として経済というものが活気を生んでくる。それが今アメリカの景気を上げているものですが、これが一方的に、ただただ行け行けどんどんでやりますと、いろんな弊害が出てくるのであって、そういったものに対策するためには、前から総理が言っておられますように、経済活動の資源配分には市場原理を、経済的弱者には弱者への対策をという政策割り当てを行いながら経済構造改革を進めていくことが肝心であると言われておるんだと思っております。
  49. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今、行け行けどんどんでは、単純ではよくないという意味の御発言がありました。  先ほど日本共産党は自由主義経済ではなく統制経済だ、これはとんでもない認識違いでありまして、私どもの政策をぜひ読んでください。「新日本経済への提言」、まさに現在の資本主義の枠組みの中で、大企業の横暴を抑えながら、いかにして全体として国民経済を発展させていくか、こういう点を提案をしているわけです。つまり、市場経済とまさに計画的な経済を全体として統一した方向を目指していくというのが私たちの見解でありまして、国民の立場からの経済再建政策を出しているのですから、よく勉強していただきたい。  それから、橋本総理は数年前に「政権奪回論」、こういう本を出されましたね。この本の中で、大型店について、駅前に大型スーパーが進出したために、今まであった商店街が軒並み廃業に追い込まれることのないように、うまく機能分担させるための規制が大型店を規制する大店法だ、こうおっしゃいました。「巨大な資本を持つスーパーや百貨店という強者から、魚屋さんや八百屋さんなどの弱者を守ることが、この大店法の眼目なのだ。」「どんな小さな町にも、ささやかであれ駅前から続く明るい商店街のにぎわいがほしいものだ。」「規制緩和の掛け声には、「規制緩和=善」というイメージばかりが先行しているように思えてならない。これはたいへん危険なことだ。」このようにこの本の中で書かれていますけれども、この立場は今でも変わりませんか。
  50. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 町が真っ暗になるというのは、私本当に好きじゃありません。そして、私のふるさとの町を振り返ってみましても、ある程度大型店が出てきた時点では、その結果として、周辺地域からのお客さんの増がありまして、商店街全体が活気を戻した時期がありました。ところが、それを超えて新規出店が続くうちに、いつの間にか商店街にぽつりぽつりとくしの歯が欠けるような状況が生まれてくる、そういう体験をいたしました。  逆にある地方で、それまで目のかたきにしておりました大型店が経営効率化のために閉めた結果として、逆にその地域への集客力が減り、それをどう埋めるかということで混乱が起き、新たな他の系列の大型店に出店要請をしたというような状況も存じております。  それだけに、私は、この大店舗法というものを見直す場合に、我が国の流通が今変化しつつある、そしてモータリゼーションの進展でありますとか消費者の行動パターンが変化している、ニーズの多様化といったものを背景にしながら構造的にも持続的にも変化が続いている、その中で小売業の健全な発展のためにどういう対応が必要なのか、そうした観点からの検討を必要とする、私は現在もそう思っております。
  51. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今大店法について、廃止あるいは……。
  52. 深谷隆司

    深谷委員長 佐々木委員に申し上げます。  割り当て時間は過ぎております。御協力をお願いします。
  53. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 はい、わかりました、終わります。  ぜひ中小商店の営業を守るために御努力をいただきたい、このことを要請して質問を終わります。ありがとうございました。
  54. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて児玉君、佐々木君の質疑は終了いたしました。  次に、岩國哲人君。
  55. 岩國哲人

    岩國委員 太陽党を代表いたしまして質問をさせていただきます。  まず最初に、デノミについてお伺いいたします。  先日もこの委員会において相沢英之委員からも質問がなされましたけれども、私も長年、デノミを断行すべきだという持論でまいっております。特に、橋本総理は行政改革に熱心に取り組んでおられる、その姿勢に大きな期待を抱きながらも、やはり改革と言われる以上は、三年、四年、五年先ではなくて、もっとわかりやすい、しかも短期間に行ってこそ改革ではないかと思います。三年、四年、五年かけるということは、単なるそれは変化である、あるいは変化よりも悪い、変化の後回しということになっては、改革という言葉は使えないと思います。そういったもろもろの行政改革の中で、一般の人にもわかりやすい、そして外国にもわかりやすい改革の一つとして、私はデノミを断行すべきではないかと思います。こうした点について、三塚大蔵大臣の御所見をお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、小里委員長代理着席〕
  56. 三塚博

    ○三塚国務大臣 お答えいたします。  岩國さんお説のとおり、相沢議員からも提言がございましたが、その際も申し上げたのでございますが、デノミは国民各層にわたる幅広い影響を与えることは御案内のとおりでございます。よって、国民の受けとめ方ということが大事でございます。その次に、経済社会環境、実施に伴う技術的な困難等総合的に判断すべき問題であり、ただいま実施する考えはないと相沢議員に申し上げたとおり、岩國議員にも申し上げさせていただきます。  一言付言をいたしますと、国民の受けとめ方でございますが、現在の通貨単位としての円になれ親しんだ戦後世代が国民の約三分の二を占めるに至りました。デノミはそもそもどういうことか、それを実施することの意義は何かという点で、三分の二の国民各位がどういうものであるかという基本的な理解もございません。そういう点を考えますと、実施する考えはない、こう申し上げさせていただくわけであります。
  57. 岩國哲人

    岩國委員 国民の三分の二は理解がない、あるいは関心がないという点は、一つはやはり行政の立場からの広報、PR不足という点もあるのではないかと私は思います。  問題をこのままにほっておいて、一部の識者あるいは経済関係者の意見だけが紹介されるという程度ではなくて、やはり戦後のいろいろな整理の中には、外国にも単位がすぐにわかりやすい、一般の国民も新聞を読んでも、あるいは経済人であってもなかなか日本予算の数字を外国に紹介するというときには、特に、食事中などはすぐにけたを間違えている、聞いている方もけたを間違えて聞いているという経験は大臣もいろいろとされたことだろうと私は思います。日本語で、日本国会の中でさえもけたを読み違えるような方も時々いらっしゃるわけですから、ましてや、これは外国へ行きますと、頭の中で、ナイフやフォークを使いながら日本の数字を外国の人にわかりやすく、また、これだけ日米関係あるいは外国とのいろいろな関係が密接になっているときに、数字でわかってもらうということは非常に大切なことだと思うのです。  これは、コミュニケーションが大切だ、情報化社会だということですけれども、一番大切な情報は数字ではないか、その数字をもっとわかりやすくする、そういう努力を私は、今政府は中心となってやるべき時期に来ていると思います。また、環境的にも、インフレに悪い影響を与えるとかいったような、そういう時期には問題があると思いますけれども、インフレ率は低い。そして、ある程度のコストはかかることはよくわかっておりますけれども、それは逆に内需を喚起することにもまたつながるわけですから、今のような時期にこそ私はデノミを断行すべきだと思います。  また、日本のあのゼロの多い数字、例えば入札価格にしましても何にしても、それだけの紙のスペースを用意しなければいかぬ。もう全国各地で毎日毎日、毎分毎分あのゼロを書き込んだり、あるいはコンピューターがそのゼロを印刷するためのエネルギーあるいはインク、紙のスペース、資源小国と言われる日本が資源節約の観点からも、私は、このデノミということにもっと真剣に政府は取り組むべきではないかと思います。  大蔵省の中でも、あるいは関係官庁の中でも、このデノミに対してどのようなコストがかかっているか、そのような試算、研究がなされていると思いますけれども、その研究の中で、デノミ断行のためにはどれだけのコストがかかるというふうな試算がなされておるのか。また、デノミ断行のために最低必要な期間はどれぐらいと考えておられるのか。このコストと準備期間について、再度御答弁をお願いいたします。
  58. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答え申し上げます。  今委員がデノミのコストの試算をやっているかということでございますが、これは、政府部内におきまして具体的な試算は全く行っておりません。もう一つは、準備期間という話でございますので、したがって、その点についても検討はしていないということでございます。
  59. 岩國哲人

    岩國委員 それぞれにお忙しいことはわかりますけれども、しかしこういった、私にとっては非常に大事な問題だと思っているわけですが、このような試算もあるいは準備期間の研究さえも、あるいは検討さえもされていないということは怠慢ではないでしょうか。私は、その点を指摘したいと思います。  次に、選挙の投票率についてお伺いしたいと思います。  選挙の投票率が、一昨々年の参議院選挙においても四四・七%、昨年の衆議院選挙も六〇%を割りました。そのように次々と国政選挙においても投票率が低下してきておるということは、民主主義にとって大変大きな脅威であると思います。さらに、地方分権、地方の時代と言われながら、知事選挙あるいは市町村長選挙の投票率が一貫して低下してきておる。このように地方住民の間に自分たちの地方自治、あるいは知事、市町村長の選挙についての関心が低下してきているということも、これから大きな問題ではないかと思います。  こうした投票率が低下してきているということについて、自治大臣としていろいろな取り組みをなされているということは私も承知しておりますけれども、自治大臣の所見を以下の点についてお伺いしたいと思います。  まず、五〇%を割り込んでいる選挙、これについては住民の五〇%以上が、選びたくないのか、あるいは関心がないのか、単なる怠惰な傾向なのか。こうした五〇%未満の人しか参加されないような候補者あるいは選挙の仕組みあるいは環境、こういったものについて自治大臣としてどのように認識を持っておられるか、お伺いしたいと思います。
  60. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 岩國委員お答えいたしますが、どういう印象を持っているかと言われても、好ましいとは思いませんが……(岩國委員「どのような取り組みをお考えか」と呼ぶ)はい、投票率が低いということの評価、いろいろ私はあると思います。  マスコミ等がただ言うように、政治不信だから投票率が低いんだ、これが本当に正しいんだろうかなと。まあ我々国会議員についてそれを言われるなら結構でございますが、委員もやっておられた首長選挙その他、そんなに政治不信を来すような不祥事がつながっているんでしょうか。  それよりも私は、地方選挙に、言うならば、俗に言われるように相乗り選挙というのが大変多くなってきているわけで、争いがないわけでございます。争いがない、争点がないのに投票に行けと言う方が、逆の面でいえばかなり無理を言っている側面だってあるんじゃないのかな、こう思いますので、私は、投票率が低いということを、ただそれだけで有権者なり政治のあり方をこうだというふうに決めつけることはできないと存じております。  そして、技術的なことはいろいろ努力をいたしますが、私は、投票率を上げる一番もとは、それぞれの政党やあるいは政治的なグループやあるいは立候補する個々人が、一生懸命政治に対する熱い夢やロマンやあるいは信念を訴えるということが一番の根本なんだろうと思います。もちろん自治省としましては、事務を執行する立場から技術的なところは一生懸命検討いたしますが、技術的なところを変えて投票率が上がってくるというほど簡単な問題ではないと私は常々考えております。
  61. 岩國哲人

    岩國委員 最近の知事選挙においても、三割を下回るような投票率で選ばれた知事が何人もおられます。一般に地方自治を称して、二割自治だとかあるいは三割自治ということはよく言われておりますけれども、それが、いみじくも投票率そのものに三割自治、二割自治が現実の数字となってあらわれているように思います。  例えば、平成五年、宮城県、茨城県あるいは仙台市において、それぞれの知事、市長が関係した談合とかいろんな形によって不正事件が発覚し、そしてそのやり直し選挙が行われました。そのやり直し選挙の結果、宮城県知事選挙の投票率は何%だったのか、茨城県知事選挙の投票率は何%だったのか、仙台市長選挙の投票率は何%だったのか、これを見ても私は危機感を覚えました。  驚いたことには、三九・二%。宮城県知事選挙三九・二%。茨城県知事選挙、これも三九・二%でした。そして、その後行われた仙台市長選挙、これも三九・二%。驚くことに下一けたまでぴったり符合する。投票率までが談今されていると言われても仕方がないぐらいに、三九・二%で三つともそろってしまったんです。  このようなことは、単に住民の無関心ということだけではなくて、やはり選挙制度そのものをもっと変えて、私は、地方自治の時代と言うのであれば、選挙制度、もう少しいろいろな工夫が必要ではないかと思います。  一月にそのような研究会が発足したようでありますけれども、月に一回会合を重ねてということでありますけれども、このような事態ではなくて、もっともっと早く、来年の参議院選挙に間に合うように、準備期間も十分にとって結論を出すことが必要ではないかと思います。  一月に発足したその研究会の最終結論はいつというふうに想定していらっしゃるのか、答弁をお願いいたします。
  62. 牧之内隆久

    ○牧之内政府委員 投票率の向上を図りますために、管理、執行面から投票しやすい環境づくりを進めますために、御指摘のありましたように、自治省の内部に事務的な研究会を一月に発足させたところでございます。大体四月ごろまでかけまして研究会を開きまして、おおむねの結論を得て、その後、法改正等の必要があれば諸準備に入ってまいりたいと考えております。
  63. 岩國哲人

    岩國委員 まず、選挙の変え方にはいろいろとあると思いますけれども、暴論かもしれませんけれども、五〇%を下回る投票率の場合にはやり直しをさせるぐらいの選挙制度の改革が必要ではないかと私は思います。  民主主義というのはすばらしい仕組みだと私たちは思っておりますし、日本の社会にとっても大切な財産であります。その民主主義そのものが低い投票率によってむしばまれている。つまり、政府そのものが五割を下回るような人によってしかサポートされていない。そのような政府は大変寂しいものだと思います。  そうした観点から、民主主義は今二つの病、一つはエイズ。着実に投票率が下がってきている、投票所へ足を運ぼうとしない、自分たちの社会を支えているその民主主義の価値を実感しない人がふえてきているというのは、これは民主主義にとって一つの私はエイズだろうと思います。  一昨年の秋、パリで行われましたOECDの中で、そのような、日本的に言えば行革審のようなものが行われました。私は日本を代表して、その委員の一人として仕事に参画いたしましたけれども、その中でも二十一世紀の政府のサービスのあり方についてという議論が交わされ、七カ国のそれぞれの委員から、そうした、一貫して投票率が下がってきている、政府をサポートしようという意識が低下してきている、これは二十一世紀における最大の政治危機あるいは社会危機ではないかという指摘がなされておりました。そういう観点からも、ぜひこの民主主義の敵と言ってもいい投票率の低下にもっともっと真剣に政府は取り組んでいただきたい。  民主主義のがんと言えるのは、うっかりの一票、無責任な一票が最近はふえてきているという傾向であります。これは何をもって無責任かということは判定しがたいことでありますけれども、そうした思いつきあるいはおもしろがり、うっかりの一票がびっくりの知事を生んでがっかりの一年間、このようなことを言われているところもあります。このようなうっかり、びっくり、がっかりの現象がこれから広がってはならない。それはやはり教育ということも私は大変大切なことだと思っております。  このような民主主義のエイズとがんと闘うために、私は、ぜひともこの選挙制度の改正というのは、単に選挙の投票率を少しばかり上げるということだけではなくて、大きな社会問題、二十一世紀における教育にも、そして民主主義というすばらしい仕組みを守っていくためにも大切な闘いであるという認識を持ってぜひ取り組んでいただきたい、そのように思います。  その取り組み方の一つとして、例えばアメリカで行われているような、二十歳になったら、まあアメリカの場合には十八歳でありますけれども、日本の場合には二十歳、二十歳になったらただで投票権がもらえるという、このあたりも少し見直す必要があるのではないでしょうか。肉体年齢が二十歳になればだれでもかれでもただで投票権がもらえる、ただだから価値がない、そのような印象を持たれてしまいますから、登録制ということも考えるべきではないでしょうか。無料で登録させる、あるいは千円払ってでも登録させる、そのようにまじめに社会に関心を持つ人たちを登録させることによって、より安定し、そしてその人たちだからこそ、より政策に関心を持った人たちに登録させる、このような登録制を実施するお考えはありませんか。
  64. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 直接お答えする前に、先進国の投票率等を見ますと、英国が七〇%台の状況がここのところずっと続いております。フランスの下院選挙も大体七〇%前後、ドイツは大変高くて八〇%台をキープしております。カナダは七〇%台と言って間違いないのじゃないかなと思います。イタリアは大変高くて八〇%を常時超えております。一方、アメリカは四八、五〇%以下が多いわけでございますか、これは委員指摘のとおり、登録をしている人たちの投票率ではなくて、全有権者に対してこれだけの人たちが投票に行っていることであって、登録している人の投票率は九割ということでございます。  いずれにいたしましても、投票率の低下という問題は、本当に民主主義にとって大きな問題であることは事実なので、委員のいろいろ御指摘のような点も踏まえて大胆に問題を考えていくべきときだと思いますが、自治省という立場でやれるのは技術的なところが多いわけでございますので、案を出せと言えば幾らでも出しますが、選挙制度の、今言ったような大胆なことは、政党間、会派間でぜひ詰めていっていただきたいと存じます。
  65. 岩國哲人

    岩國委員 そうした自治省の手に負えぬということであれば、もっと行政改革の一環として位置づける上からも、これから選挙制度あるいは選挙の管理はすべて自治省ではなくて総務庁に移管するとか、あるいは国会直属の独立した機関にそれを担当させるといったようなことも含めて御検討をお願いしたいと思います。  また、こうした投票率を上げる一つの有効な方法として、一部からは既に提案され、国会議員の中にもそのような連盟ができておりますけれども、カードで投票させるということについて、真剣に取り組むべきだと私は思います。  そうした自分の住んでいる村やあるいは町で、ふだん行かない小学校にわざわざ足を運んで、あるいは勤め先に遅刻までしてということを非常に不便に感ずる人が多くなってきたということは御承知のとおりだと思いますけれども、そうしたことを解決する方法として、今は世界各国で四十カ国以上が既に検討を開始し、あるいは既に試行に入り、あるいは既にもう実行している、アメリカの場合。そのようなICカードを使った電子投票に踏み切るべきではないでしょうか。特に、若い人たちが、自分たちの住んでいる地域で、そしてお年寄りの立会人の前で名前を書かされるということについては、うっとうしいという声が聞こえてまいります。  これは自治省によって支援していただいているICカード、これは住民カードでありますけれども、全国で三十以上の市が既にこれを実行しております。自治省が推薦しておられるこのICカード、このようなものを使ってぜひとも投票率アップに、あるいは若い人にも、新宿のステーションビルでもあるいは東京駅の改札口の近辺でも、どこでもだれでも自由な雰囲気で投票しやすい、このような電子投票システムは、現に空理、夢の話ではなくて、外国では実行されていることです。そして、日本だけが、紙を使ったあのような記名式という十九世紀のやり方がそのまま踏襲されてきておる。日本の電子技術の水準あるいは日本の電子製品というのは世界でも群を抜いているときに、それが政治の世界にいまだに活用されていないというのは問題ではないでしょうか。  この電子投票システムについてどのような取り組みを今検討しておられるのか、あるいは全く検討しておられないのか、担当の方の答弁で結構です。
  66. 牧之内隆久

    ○牧之内政府委員 御指摘の電子投票制度につきましては、多額の費用を要しますことやセキュリティー対策など検討すべき多くの問題がございまして、早急な導入は困難だと思っておりますが、有権者の利便性向上の面からも、また選挙の管理、執行の効率化の面からも、将来的には極めて重要な課題であると認識をいたしております。  いろいろお話ございましたが、一口に選挙管理の電子化と申しましてもいろいろな段階がございまして、全国のオンラインによりまして、選挙人名簿の登録の有無を確認をいたしまして、それから、今お話のございましたように、候補者の氏名等が表示された画面に電子ペン等により指示することにより投票を行い、さらには、投票時間終了後直ちに選挙結果がコンピューターにより自動的にオンライン集計される、いわゆる完全な電子投票システムにつきましてはまだ導入をしている国はないと承知をいたしておりまして、最も進んでおりますアメリカでも、この二番目の、候補者の氏名等が表示された画面に電子ペン等により指示をするという、いわゆる電子投票機による投票が行われておる段階であるというふうに承知をいたしております。  どこでも投票ができるというような完全な電子投票システムの導入のためには、ICカードなどによります本人確認が不可欠となりますが、これに関しましては、現在、各種住民サービスの基盤となる住民基本台帳ネットワークシステムの構築に向けまして検討が進められているところでありまして、私どもといたしましては、当面はこのネットワークシステムの導入の進展を見守りつつ、電子投票制度につきましての基礎的な研究を鋭意進めたいと考えております。
  67. 岩國哲人

    岩國委員 進展を見守りつつという程度では、私は生ぬるい、遅過ぎると思います。もっともっと積極的にそれを普及させ、結論を急ぐべきではないかと思います。これは防災対策のためにも、あるいは健康管理のためにも、医療費の管理あるいはコントロールのためにも、いろんなメリットがあることは先日小泉厚生大臣あての質問でも申し上げたとおりでありますけれども、私は、こうした民主主義を守るという点からも、投票率あるいはだれにももっと投票に行かせやすいような制度を考え、そしてそのような方法を考案するのは、役所でありあるいは政治家の役目ではないでしょうか。  例えば、昨年の総選挙において、どれだけのコストがかかったのか、そしてどれだけの人数が動員されたのか、選挙部長の方から御答弁をお願いします。
  68. 牧之内隆久

    ○牧之内政府委員 投票事務の従事者は四十万四千二百七十八人、開票事務の従事者は三十万七千七百九十七人でございます。(岩國委員「コスト」と呼ぶ)昨年の衆議院選挙、執行経費の総額は六百八十三億円でございますが、そのうち投票所経費の総額が百九十八億円、それから開票所の経費が五十四億円でございます。
  69. 岩國哲人

    岩國委員 今のコスト計算の中に地方自治体の数字が入っておりますか。
  70. 牧之内隆久

    ○牧之内政府委員 全額が国庫の委託費でございますので、含まれております。
  71. 岩國哲人

    岩國委員 昨年十二月の委員会での答弁だったと思いますけれども、牧之内選挙部長は、これからは人手の確保が難しくなる、このように答弁しておられます。こうしたことをはっきりと選挙部長として認識しておられながら、なぜ自治省としてはもっともっと、人手の確保が難しい、その上衆議院の選挙制度も複雑になってきた、場合によっては衆参同日選挙が一部ではささやかれている、このような体制に何時間たって開票結果が出てくるのか、その点の自信はあるんですか。自治大臣答弁をお願いします。
  72. 牧之内隆久

    ○牧之内政府委員 投票所の投票立ち会いの管理人なり開票立ち会いの管理人といったような人たちの確保がなかなか困難になっておりますことは、今お話のあったとおりでございます。  開票事務につきましてはいろいろ工夫を凝らしながら、前回の選挙におきましても、市町村から都道府県、それから都道府県から自治省への、比例区選挙につきましては各選管とのオンラインはつくりまして、集計事務の迅速化を図ったところでございます。  ただ、何せ初めての選挙でございましたために、最終的な確定が出ますのは、相当、明け方までかかったというのが実態でございました。
  73. 岩國哲人

    岩國委員 重ねて聞くようですけれども、衆参同日選挙が行われた場合に、大体何時間かかると想定しておられますか。また、衆議院選挙のときに一番遅く当選が確定したのは何時間後であったのか。あるいは、仮にの話ですけれども、衆参同日選挙といったようなことが行われた場合に、最終的な投票の確定は何時間後というふうに想定されますか。
  74. 牧之内隆久

    ○牧之内政府委員 衆議院議員の選挙制度が改革されましてから、新制度に基づきます衆議院の総選挙と、それから参議院の通常選挙が同日に行われた場合にどれほどの時間がかかるかということにつきましては、試算はいたしておりません。  かつて同日選挙が二回ほど行われたわけでございますが、そのときの実態につきましては、ちょっと手元に資料がございませんので、後ほど御報告をさせていただきたいと思います。
  75. 岩國哲人

    岩國委員 現在の衆議院選挙制度、昨年十月に行われました。その中でも、無効票が大変ふえてきておる。また、いわゆる疑問票というものが非常にふえておって、千葉県では、新進党の野田佳彦候補の場合には、提訴しておられるわけですけれども、数百票の疑問票の取り扱いをめぐって当落が逆転する、このような現象さえ起きております。  そうしたことも含めて、私はこうした投票、選挙における危機管理というものについて、危機管理というのは重油対策ばかりではなくて、やはりこうした、いつ、どのような選挙が行われるかわからないという事態に備えて、もう少し私は自治省としては真剣に取り組んで、大体何時間後に当落を決定してみせるのか、それぐらいのきちっとした準備態勢が必要ではないかと思います。  投票率に関しては、最後は要望にとどめますけれども、次に、公共工事にかかわる環境問題についてお尋ねしたいと思います。  二月一日、松江市で、鳥取県、島根県、地元の関係者が集まって中海干拓に関するシンポジウムが開かれました。それぞれ専門的な立場から環境問題に対する非常に大きな懸念が表明され、またこの工事の有用性についても大きな疑問が以前から提起されております。地元の政治家、議員の中にも、そうした立場で一生懸命運動してきた方もあるわけです。  このシンポジウムの壇上で、新進党から共産党に至るまで、六政党が一致して、この中海干拓の問題について、慎重あるいは反対、そのような立場での態度表明が行われております。それぞれ六政党は、政治的信念あるいは政策は異なってはおりますけれども、このような大型公共事業に対して、環境の立場からもこれを阻止していかなければならないという立場での意見表明が行われ、ある意味ではこれは画期的なことではないかと思っております。  中海干拓の問題だけではなくて、全国各地でこのように地元住民の反対署名運動が行われておる、あるいは環境の専門家からそのような意見が出ておる、地元のいろいろな新聞がそうしたことを取り上げ、報道しておる、そのような大型公共工事については、この予算委員会を中心にもっと徹底的に審議していかなければならないと思います。そうでなければ、この予算委員会の空洞化がますます進んでしまうだけである。  先日、建設大臣から、そうした箇所づけあるいは環境問題について、いろいろなデータを提供することについては、それが行き過ぎた場合には行政権の侵害にもなりはしないかというお考えが示されました。決して我々行き過ぎることは考えておりませんけれども、適正な審議権というものをこの予算委員会が確保しなければ、国民に対する我々責任を全うしているということは言えないと思います。  このような観点で、この環境問題にかかわる大型公共事業、これについて環境庁としてはどの程度いわゆる環境のウォッチドッグとしての義務を遂行しておられるか。環境庁長官に、この二、三年の間に、環境庁の立場から他の省庁の大型公共事業に対して環境アセスが必要であるといったようなことを、必ずしも住民運動のお先棒を担ぐという立場ではありませんけれども、独自の立場でそのような見解を出されたことはあると思います。それについて、どのような実績があるかお示しいただきたいと思います。
  76. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 中海干拓事業のことにつきまして御指摘がございましたので、事実関係だけ申し上げてみたいと思います。  この中海干拓事業本庄工区につきましては、昨年の三月に島根県知事が、県議会、地元市町村の同意を得まして、農林水産省に工事の再開の要請をされておられます。地元の知事また市町村長の同意を得たということは、私どもからいえば重く受けとめざるを得ません。  これを受けまして、農林水産省といたしましては、平成九年度より二カ年にわたりまして事業の総合評価を行うための調査を行うことといたしているわけでございまして、この調査はあくまで中立的に行われるものでございまして、本庄工区の取り扱いにつきましては、調査結果によって判断いたすことにいたしております。
  77. 石井一

    石井国務大臣 岩國委員質問お答えさせていただきます。  公共事業を含めました環境に影響を及ぼすおそれのある大型の大規模な事業につきましては、昭和五十九年に閣議決定をいたしました環境影響評価実施要綱に基づきまして、事業者みずから環境影響評価を行い、環境の保全への配慮がされているところでございます。環境庁におきましては、その実施状況の把握に努めるとともに、要綱に基づきました事業の主務省庁の求めに応じて環境の保全の見地から意見を述べているところでございます。  今後の環境影響評価のあり方につきましては、今般、中央環境審議会におきまして答申が取りまとめられまして、総理に提出されたところでございまして、この答申におきましては、環境影響評価の過程で「環境庁長官が必要に応じて主務大臣に対して意見を述べることができるものとすることが適当である。」とされております。環境庁といたしましても、この答申を踏まえまして、今国会に環境影響評価法案を提出する考えでございます。  先ほどの中海干拓事業に対しましては、申し入れにつきまして環境庁から行っているところでございまして、昨年の三月十八日に行っております。その内容につきまして、今、島根県が昨年の六月から一年間の予定で水質影響調査を進めているところでございまして、環境庁といたしましては、この調査が終了した段階で厳格な点検を行いたいと思っております。  また、公共事業によります環境影響に対します具体的な審査体制につきましては、政府委員から答弁をさせていただきます。
  78. 岩國哲人

    岩國委員 時間が迫ってまいりましたので、あと一点、環境庁長官にお伺いいたします。  私は、鈴木永二さんを会長とする臨時行革審の専門委員を務めさせていただきました。その中でも、こうした環境問題に対して環境庁の体制を充実することは必要であるという答申が平成三年十二月になされております。それ以後、その充実は着実に図られたのかどうか。  私は、専門委員の一人として、行政改革というのは、小さくすることも大変大切ですけれども、足りないものは大きくする。例えば外務省と環境庁については、私は、拡充すべきである。外務省の、日本の外交の質が低いということはよく言われますけれども、そうした低さというものは、質が低いのであればせめて量でも補ったらどうか、これは大変暴論でありますけれどもね。何でもかんでもそんなことやるわけにいきませんけれども、しかし、環境庁の場合には、世界的にこれだけ環境問題が重要視され、国民一般の関心も非常に高くなっているときに、この答申を受けてもう五年がたっております。その間に十分な充実はできたというふうに思っておられるかどうか、ごく簡潔にお答え願いたいと思います。
  79. 小里貞利

    ○小里委員長代理 石井環境庁長官。時間が参っております、簡潔にお願いいたします。
  80. 石井一

    石井国務大臣 環境問題につきましては大変重要な課題でございまして、内外の環境問題に対処するためには、環境基本法及び環境基本計画に基づきまして関係省庁が連携、連絡を図りながら、調整を図りながら、総合的に効果的な環境政策を推進する必要があります。  環境庁といたしましても、今後も積極的にリーダーシップを発揮いたしながら、調整機能を十分に発揮して、そして政府一体となった環境行政の推進に全力を傾注する次第でございます。  なお、環境行政の組織の充実を含めまして、今後の行政組織のあり方につきましては行政改革会議において審議されるものと認識をしておりまして、環境庁といたしましても、その会議での議論を踏まえまして、政府全体の取り組みの中で適切に対処する所存でございます。     〔小里委員長代理退席、委員長着席〕
  81. 深谷隆司

    深谷委員長 この際、堀込征雄君から関連質疑の申し出があります。岩國君の持ち時間の範囲内でこれを許します。堀込征雄君。
  82. 堀込征雄

    堀込委員 堀込征雄でございます。  通告といいますか、申し上げた質問の前に、一点明確にただしておきたいわけであります。  きのう北朝鮮の黄書記が日本からの帰途、北京の韓国大使館に亡命をされたという報道があるわけでありますが、南北朝鮮関係に大変な事態になるということも懸念をされているわけでありまして、現状の把握している状況、それから、政府がもし対応方針ございましたら、まず御説明をいただきたいと思います。
  83. 池田行彦

    池田国務大臣 韓国政府から受けました連絡によりますと、十二日の午前十時ごろ、黄長燁朝鮮労働党書記、これが在中国の韓国大使館を訪れて韓国への亡命を要請した由でございます。そしてまた、その際、金徳弘朝鮮労働党中央委員資料研究室副室長も行動をともにしている、このように承知しております。  それから一方、北朝鮮の中央通信は、亡命はあり得ないとして、仮に黄書記が韓国大使館にいるとすれば拉致された以外にはあり得ない、こういうことを言っているところでございます。  我が国としてどうするかという点でございますが、現在韓国政府は、韓国政府自体としていろいろ対応を考えると同時に、中国政府とも協議を行っているものと承知しております。いずれにいたしましても、我が国といたしましては、韓国政府からも連絡を受けておりますけれども、今後ともさらなる情報収集に努めるとともに、韓中両政府の協議も含めて、今後の事態の推移を注目してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  84. 堀込征雄

    堀込委員 それでは、きょうは安全保障問題を中心に論議をしたいのですが、その前にちょっと農水大臣にお伺いをいたします。  補正予算の審議でもいろいろ議論されましたラウンド対策費でありますが、見直すべきだとか、そして現に見直しの検討に入っているというような報道もなされているわけでありますが、事業費ベースで六兆百億円、こういう総額を、約束したものをきちんと守りながら、しかし、なおかつ本当に農家の役に立つような方策が検討されなければならない、こう思うわけでありますが、今その検討、どういう方針でどういう中身で検討されているのか、まずお伺いをしておきます。
  85. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 御指摘のように、ウルグアイ・ラウンド対策というのは、ウルグアイ・ラウンド農業合意に伴いまして受ける我が国農業の影響を最小限度にとどめる、また、新しい国際環境のもとで足腰の強い我が国農業をつくるために必要な事業として政府・与党が責任を持ってつくった、こういう経緯があるわけでございまして、我々としては、この事業をこれからも全力を挙げて推進していくということがまず必要であると考えております。  先般、与党から野党三党に対しまして見直しの回答をいたしたわけでございますが、それは、あくまでもこの対策というものが真に必要な事業として政府・与党が認識しているという、その認識のもとにこの見直しの回答が行われたというふうに私どもも考えているわけでございまして、今後、御指摘ございましたように、内容的に真に必要な事業になるように、この回答の中にもございました、平成十年度以降について検討を進めていく、この検討については今から始めていく、こういうことでございます。
  86. 堀込征雄

    堀込委員 それで、これは政府委員の方の答弁で結構でございますが、事業費ベースで六兆百億円の進捗状況、それから本予算案に提案されているウルグアイ・ラウンド対策費の額をちょっと教えてください。
  87. 堤英隆

    ○堤政府委員 平成八年度の補正予算までの累計につきましては、総事業費ベースで約三兆百億円でございます。国費ベースで約一兆四千五百億円というふうになっております。したがいまして、全体的な進捗率といいますか、五割ということであろうと思います。  それから、平成九年度当初におきましては、公共事業それから非公共事業を合計いたしまして、九百九十三億円の国費でございます。
  88. 堀込征雄

    堀込委員 そこで、これは私は必要であり、かつ、本当に国際競争に立ち行ける農業に役立つ意味で、しっかりと守らなきゃならぬというふうに思っておるわけでありますが、今説明ありましたように、今年度の本予算案で九百九十三億円が計上されておる。従来この予算はほとんどが補正予算で処理をされてきている経過があるわけでありまして、初年度は、国費ベースで五千九百四十四億円のうち五千二百億円が補正だ。二年目が、五千四百八十八億円のうち補正が四千億だ。そして、つい先ごろ補正予算の審議で、実は三千百億円の計上がなされたわけであります。今説明のありました九百九十三億円しか当初予算にのせていないということは、ことしも、あるいは来年度の事業ベースも、ことしの補正予算を想定してのせているんではないか。  私は、やっぱりきちんとウルグアイ・ラウンド対策費というのは当初予算に組むべきではないか、補正予算の論議を見ても非常に批判があったわけでありますから、そういうことを明確にしておくべきではないか、こう思いますが、いかがですか。
  89. 堤英隆

    ○堤政府委員 御案内のように、ウルグアイ・ラウンド対策につきましては、六兆百億円を六年間ということで事業を実行してきております。  内容につきましては、それぞれの地方公共団体の御意見、それから地元の町村あるいはそれぞれの事業実施団体、そういう方々の事業実施の執行状況、ニーズ、そういうものを見ながら、それぞれ当初予算で計上すべきものは計上し、その実行をその年度にわたってやるわけでございます。その過程で、このウルグアイ・ラウンド対策にも盛られておりますように、加速的それから重点的に実施するということになっておりますが、そういう趣旨に沿いまして、年間実施をする過程におきましてそういった事業が加速的、重点的に行われるとなれば、補正を新たに組んでさらに追加的に実施をしていくということがこのウルグアイ・ラウンド対策の全体の趣旨にかなう、そういう考え方から、従来、当初予算とそれから補正予算、それぞれで対応させていただいております。  基本的な考え方といたしまして、当初予算で組むべきものについては極力組んでいくという考え方が基本であるというふうに私ども思っております。その実行状況の中で、さらに補正でそれを追加するという必要があれば、さらに補正で対応していく、こういう考え方でございます。
  90. 堀込征雄

    堀込委員 ちょっと大蔵大臣に伺いたいわけでありますが、今国会始まって補正予算の審議がございまして、その際、野党側から、公共事業、ラウンド対策費あるいは住都公団などの問題が指摘をされました。政府側としては、災害等緊急な対策が必要なため補正予算を提案しているんだ、あるいは、間断なき景気対策のために公共事業を含めて建設公債を発行しても補正予算が必要だ、こういう説明があったし、そういう趣旨で国会も通過をしたわけであります。  それで、そうした経過を踏まえると、大蔵大臣に確認のため伺っておきたいわけでありますが、この本予算案は、ことしじゅう、もし大きな災害があるとか大きな経済変動がない限り、補正予算を組むということを想定した予算ではない、つまり、これは来年三月までの経済運営に自信を持って出した予算案だ、こういうふうに確認させていただいてよろしゅうございますか。
  91. 三塚博

    ○三塚国務大臣 提案を申し上げましたとおり、基本はそのとおりであります。
  92. 堀込征雄

    堀込委員 そうすると、農水大臣、先ほど答弁がありましたが、ウルグアイ・ラウンド対策費、補正予算を大蔵大臣基本的にはやらない、大きな経済変動がない限りやらない、こう言っていて、九百九十三億円しか計上してない、これはやはり来年度の対策費、農家に約束した六兆百億円を処理していく上でそごを来すということになりはしませんか。農水省の方は最初から補正予算を想定しながら九百九十三億円しか計上してない、こういうことになってはいませんか。いかがですか。
  93. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、このウルグアイ・ラウンド対策費というのは、可及的に、できるだけ速やかに六年間でこの対策を実施していく、これが大原則でございまして、毎年毎年この事業費の金額が決められているわけではございません。  平成九年度につきましては当初予算で計上しておりますけれども、その後追加的に事業の実施が可能であるというような事態になりました場合には、それはそのときの問題としていろいろと御検討をお願いしたいということになろうかと思います。
  94. 堀込征雄

    堀込委員 あらかじめ額は決まってないのです、が、しかし、六年間で六兆百億、事業費ベース、これは約束をしたことで決まっているわけですね。そして、過去三年間大部分を補正で処理してきた。しかし、ことしの補正予算審議で、私はむしろ本予算で確保すべきという立場で申し上げているのですが、それぞれ三年度まで補正予算で処理をされてきた。  やはりこれはきちんと本予算で上げておかないと、また補正の審議のときにいろいろな議論になって、これはもう農家側としてもたまらない状況も出るのではないかということを憂えるわけでありまして、そういう意味では、きちんとやはり当初予算にのせるべきではないか。大蔵大臣がもう補正予算は考えていないと言うのですから、来年度の事業は大変なことになるのじゃないですか、このままでは。
  95. 三塚博

    ○三塚国務大臣 基本的に考えておりません、こう申し上げましたね。それで、本予算委員会で、財政構造改革を目指してこれから本格的な、三党を中心に政府も入りまして審議に入ります。平成十年の予算編成の編成方針を、聖域を設けずそこでやるわけであります。そういう中で、国民に対する約束は約束として、厳然とあるものはあるわけですね。その構造改革会議におきまして論議をしてまいり、その辺をどう取り組むかは、結論として六月末には方向性を出したい、こういうことで審議の準備に入っておるわけでありますので、対応してまいりたいと思います。
  96. 堀込征雄

    堀込委員 私は、そういう意味で、この予算案、特にラウンド対策費を見る限り、ことしの補正予算の審議経過を見て今非常に心配をするわけでありまして、農水大臣も、その辺は何か先延ばしをするのではなくて、明確に方針を出して、やはりきちんとした議論をして承認をしてもらうという姿勢をきちっと出しておく必要があるのではないか、こう思いますので、そのことだけ申し上げておきたいと思います。  そこで、安保、防衛問題についてお尋ねをしていきますが、日米防衛協力のための指針、いわゆる日米ガイドライン見直しについて検討が進められております。この予算委員会でも何度か議論をされてきているわけでありますが、この見直しの範囲についてまず確認をさせていただきたいわけであります。  極東有事に関する第三項目だけではなくして、日本有事の第一、第二項目も全面的な検討に入るということが報道されているわけであります。つまり、朝鮮半島の情勢なり極東の情勢が不安定だから、第三項目の日本周辺地域云々のこの検討をすることは私はよくわかるのでありますが、なぜ日本有事の第一項目、第二項目を含めた検討が必要なのか、まずその辺の考え方といいますか、問題意識といいますか、ちょっと説明をいただきたいと思います。
  97. 久間章生

    ○久間国務大臣 御承知のように、前回のガイドライン、これはその二年前の五十一年にできました防衛大綱に沿ってできたものでございますけれども、あの当時から比べますと、冷戦構造が終わりまして、もう様子が変わったわけでございます。したがいまして、一昨年新しい防衛大綱が決まったわけでございますので、それを受けて、これから先の日米の防衛協力のあり方はどうかということをやはりきちっと見直していかなきゃならないというようなことで、一項目、二項目もあわせて全面的に見直すことにしたわけでございます。  特に、今度の新しい防衛大綱には、防衛力の役割として新たに「より安定した安全保障環境の構築への貢献」を位置づけたところでありますけれども、防衛庁としては、現行指針策定時と比較して、平素からかかる分野における日米の協力が重要と考えておりまして、そういう分野、いわゆる一分野についても、第一項目についてもそういう点からもやはりもう一回見直そうということをしているわけでございます。
  98. 堀込征雄

    堀込委員 これも念のためちょっと伺っておきたいわけでありますが、昨年の九月十九日に指針見直しの進捗状況報告というのが出されておりまして、第三項目、これは「極東」という表現が「日本周辺地域」ということにここでなっているわけでありまして、極東と日本周辺地域、何か違いがあるのでしょうか、あるいは変えた意味はあるのでしょうか。念のためちょっと伺っておきたいと思います。
  99. 久間章生

    ○久間国務大臣 従来の防衛大綱でも「極東」というふうになっておりまして、今度の防衛大綱を新しく決めますときの議論の中で、先ほど言いましたように、武力行使はだめでございますけれども、それ以外の分野では極東以外のそういったところへも平和貢献その他いろいろな形で防衛の役割としてあり得るのではないか、そういうようなことが背景にあったのだろうと思いますが、すべていわゆる我が国周辺におけるというようなそういうことで役割の範囲がなっております。  ただ、ここで誤解のないようにお願いしたいのですけれども、安全保障条約はそのままでございますので、だから米軍の行動については従来と一緒でございます。しかしながら、そういう防衛協力のあり方については、日米安保体制というのが日本アメリカだけで、日本あるいはまた極東だけの平和だけではなくて、アジア太平洋全体の平和と安定に貢献しているというそういう背景がありますから、それに基づいて、いわゆる防衛大綱のときにも我が国周辺というようなそういう表現になっておりますから、それに軌を一にして今度も防衛協力のあり方についてはそういう形でやりたい。  ただ誤解のないように、あくまで、今言いましたように日米安保条約、これも従来のとおりでございますし、また憲法の枠内でこれはやるということになっておりますから、そういうことについては従来と変わらないというふうに理解いたしております。
  100. 堀込征雄

    堀込委員 私は、沖縄問題含めてそうなんですが、できるだけ開かれた国民的な議論が行われるべきではないか。できるだけひとつ情報も公開をいただきながら議論されていくべきではないか。何といいますか、戦後の日本の独特の政治構造なんかもございまして、何かそうした議論が密室で行われたとか、あるいは何かはれものにさわるような議論というのが、そういう経過というのがしばしばあったのではないか。平時において、やはり憲法のかかわりを含めて開かれた議論がなされていくべきではないか。  こういうことを要望させていただいた上で、ただいま答弁ございましたように全部の三項目にわたって検討する、こういうことになりますと、例えば平時を想定したACSAだとか、それから日本の有事にかかわる法制とかそういうことも視野に入れて検討なされているのかどうか。つまり、どのような範囲で、どのような領域までこの検討を、日米関係の問題は別にして、それにかかわる国内の問題を含めて検討対象としようとしているのか、説明をいただきたいと思います。
  101. 久間章生

    ○久間国務大臣 従来、中間報告で、今も経過について話があっておりますように、一項目、二項目に相当する分野についてはかなりオープンになってきておるわけでございますけれども、三項目につきまして、いわゆる我が国周辺における有事の場合の対応でございますけれども、これにかかるときのいわゆる協力のあり方について今作業を行っているところでございます。  しかし、今委員がおっしゃられましたように、これはそういう経過についてもやはり諸外国からも誤解を招かないようにしなければなりませんし、また国会だけではなくて国民広く一般に御理解をしていただきながら進めていかなければならないと思いますので、そういう作業の過程の中である程度のまとまりというのが出てきた場合にはできるだけ早くオープンにしていって、そういう議論の中で詰めていきたい、そういうふうに思っているところでございます。日米間でがちがちに決まってしまってこうだという形で出るようなことは避けるべきだ、そういうふうに思っておりますので、できるだけそれを早くしたい、そういうふうに思っているところでございます。
  102. 堀込征雄

    堀込委員 そういう意味で進捗状況報告、五月に第二次報告がされるのではないかなんという報道もちょっとありますけれども、できる限りオープンにしていただいて、国会での議論などをしながら進めていただきたい、こういうことを要望しておきたいと思います。  そこで、これの検討の手法といいますか、やり方でありますが、特に集団的自衛権との抵触の問題がどうしても論点になるわけでありまして、米国との武力行使との一体化という観点から、これはできる、これはできない、これはグレーゾーンなんだというような検討が進められているというふうに聞き及んでおります。  例えば、紛争地域から邦人救出は現行では政府専用機、自衛隊機でできるのだ、しかし戦闘機が護衛する場合はどうなんだ、あるいは外国人を運ぶ場合はどうなんだとか、考えますといろいろなケースが想定をされて検討がされているというふうに思うわけであります。  私が質問したいのは、そういうふうに、そういう手法で一つ一つケースを想定して、これは集団的自衛権に抵触する、これはしないというようなことでガイドラインを詰めていきますと、やはりその時々の情勢の変化で憲法解釈というものが変わる可能性もあるのではないか。そういう意味では、その前段にやはり前提とする憲法解釈、集団的自衛権との関連を特にきちんとしておく必要があるのではないか。  私は特にここで申し上げたいのは、特に国連の集団安全保障措置にかかわる憲法との関連でありまして、武力行使をできる限り避けつつも、国連の集団的安全保障措置にはできるだけ参加していくというような国民合意が一つは必要なのではないか。そういう前提に立って、いろいろな国民の憲法観といいますか、憲法意識といいますか、そういうことをある程度詰めた上でこういう議論を進めるべきではないか。それが一方で行われないと、何かその場主義的、泥縄式になっていってしまうのではないかなという心配をするわけですが、このガイドラインの今私が申し上げた検討の手法といいますか、そのことについてはいかがですか。
  103. 久間章生

    ○久間国務大臣 国連との関係につきましては、これはいろいろ議論があるところかと思います。  しかしながら、私どもは、今度のガイドラインの見直しのときに大前提として頭からかぶさっておりますのは、現在までの憲法解釈の枠内でやる。だから、集団的自衛権の問題にしましても、あるいはまた九条のほかの解釈にしましても、現在までの憲法解釈を変えないという前提にしておりますので、委員の国連との関係においてはやや異にする点も出るかもしれませんけれども、従来の延長線でやるということでございますので、そういうことではぜひ現在のそういう制約の中でやっておるということを御理解していただきたいと思います。
  104. 堀込征雄

    堀込委員 そこで、集団的自衛権も含めて法制局長官にちょっとお尋ねをしたいのですが、何回か議論されてきましたから確認の意味もございますが、国連の集団安全保障措置への参画、これは憲法上どういう制約があるのか。かつてPKO国会のときに、中山外務大臣でしたか、参加はいいが協力はだめだというような答弁もあったわけでありますが、ちょっと見解を聞かせてください。
  105. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 集団的安全保障と憲法との関係について限定して申し上げますと、我が国は憲法の平和主義、国際協調主義の理念を踏まえて現在国連に加盟しております。そして、国連憲章には集団的安全保障の枠組みが定められているということは、ただいま御指摘のとおりでございます。  したがいまして、我が国といたしましては、最高法規である憲法の範囲内におきまして、憲法九十八条第二項の規定に従い国連憲章上の責務を果たしていくということになるわけでございますが、もとより、集団的安全保障措置のうち憲法九条によって禁止されている武力の行使あるいは武力による威嚇に当たる行為については、我が国としてはこれを行うことが許されない、このような見解を従前からとっておりまして、また従前国会の御議論においてもお答えしてきているところでございます。
  106. 堀込征雄

    堀込委員 もう二点だけ法制局長官、確認をさせていただきます。  集団的自衛権の関係でありますが、政府見解としては、国際法上、集団的自衛権を有していることは主権国家である以上当然だ、しかし、九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどめるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することはその範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考える。許されないという政府見解でありますが、これは、つまり違憲だ、禁止されている、こういう解釈でいいかどうかというのが一点であります。  それから、必要最小限度の範囲にとどまるべきである、集団的自衛権ですね。これは私は個別的自衛権でもそういうことだろうというふうに思うわけでありまして、必要最小限の範囲を超えない範囲で集団的自衛権を行使することはいかがでございますか。  ちょっと見解を、その二点にわたってお聞かせをいただきたいと思います。
  107. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 お尋ねのまず第一点の集団的自衛権と憲法との関係につきましては、従前私どもが述べてきております見解はただいま委員が要約されましたところに大体尽きるわけでございまして、集団的自衛権の行使に当たる行為は憲法上許されないというのは違憲であるという、言葉をかえて言えばそのようになろうかと思います。  そしてもう一点、第二点、後者の御質問でございますが、ちょっと御質問の趣旨を受け取りかねているわけでございますが、集団的自衛権の行使について、必要最小限度内のものとそれを超えるものがあるということを私どもが言っているわけでございませんで、要するに我が憲法第九条のもとで許されている実力行動といいますか、武力の行使といいますか、集団的戦闘行動といいますか、そのようなものは我が国を防衛するために必要最小限度の範囲内においてのみ許されるのだ、それを超えるものは許されないのだ。その憲法九条で許される限度について、我が国を防衛するため必要最小限度の線ということで振り分けているわけでございまして、集団的自衛権の概念の中で分けているわけじゃございません。
  108. 堀込征雄

    堀込委員 ありがとうございました。  つまり、今集団的自衛権を認めるべきではないかとか、政府解釈を変えるべきではないかというような議論も一部報道されているわけでありますが、そういう意味では、これはもう違憲であり、だめなのだということがはっきりしたわけでありまして、確認をさせていただきました。  そこで、集団的自衛権、そして個別的自衛権もそうでありますが、これは実際にその戦闘行動といいますか、そういうものが起こってから発動されるものであるわけでありまして、その意味では個別的自衛権も我が国への攻撃があった段階でそれが発動される、こういうふうに解釈をするわけであります。  実際には、戦闘状態に入る前の段階が幾つかあるのではないか。例えば、かつて北朝鮮の核疑惑があったわけで、経済封鎖をどうしようかというふうなことも報道された経過があります。これは、つまり戦闘状態前ですから、個別的自衛権とか集団的自衛権の範疇ではない、こういうふうになるわけでありまして、これに参画する場合は一体どういう制約とかそういうものがあるのかどうか。この参加をする根拠は、集団的自衛権に抵触するかしないかの問題ではなくて、やはり違う理論づけと線引きが私は必要なのではないかと思いますが、どなたか、いかがでしょうか。
  109. 久間章生

    ○久間国務大臣 武力の行使というのは、わかりやすく言えば、ドンパチが始まった場合ということじゃございませんで、やはり海上封鎖等の場合も、これはそれが武力の行使に当たる場合があるわけでございますので、どういう状況で今先生が言っておられるのか、その背景がわかりませんと、これはそれに当たりますと言い切ることもできませんけれども、非常に厳しい解釈もできるのではないかなという気がいたします。どういう状況か、その背景あるいはそのときの状況、そういうのがわかりませんとあれですけれども、武力によって攻撃されていないからといって、海上封鎖をするのは武力の行使に当たらないとはなかなか言えないというような、そういう気がいたします。
  110. 堀込征雄

    堀込委員 つまり、武力行使に至らない前の段階で、さまざまな作戦行動というのはあるわけですよね。これは、集団的自衛権とかなんとかの話ではまだないわけでありまして、ここは、いろいろなデモンストレーション的な行動もあるのでしょうし、集団的自衛権とはちょっと別の世界の話ではないか。したがって、これに対する線引きとか、そういうことはどういう基準でやるかということは明確にしておかなければいけないのじゃないか、こういう意味で私は質問しているのですが、いかがですか。
  111. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 ただいまのお尋ね、個別的自衛権の行使であるにしろ、集団的自衛権の行使であるにしろ、いずれも実力の行使ということが不可欠の要素になっているわけでございます。  多分、委員のお尋ねは、それ自体は武力の行使を行わない活動であっても、ある場合には憲法との関係で問題となる行為があるのではないか。その場合に、いかなる基準によってそれを振り分けるのであるかということで、多分その一体化理論というものについてのお尋ねであろうと思います。  したがいまして、それについて従前お答えしてきているところを申し上げますと、例としてはよく、輸送とか医療とかあるいは補給協力ということが挙げられるわけでございますが、それ自体は直接武力の行使を行わない活動について、それが憲法九条との関係で許されない行為に当たるかどうかということにつきましては、他国による武力の行使、あるいは憲法上の評価としては武力による威嚇でも同じでございますが、武力の行使等と一体となるような行動としてこれを行うかどうかということにより判断すべきであるということを答えてきているわけであります。  このような、いわゆる一体化の理論と申しますのは、仮に、みずからは直接武力の行使をしていないとしても、他の者が行う武力の行使への関与の密接性等から、我が国も武力の行使をしているとの評価を受ける場合を対象とするものでありまして、いわば法的評価に伴う当然の事理を述べるものでございます。  そして問題は、他国による武力の行使と一体となす行為であるかどうか、その判断につきましては大体四つぐらいの考慮事情を述べてきているわけでございまして、委員重々御承知と思いますが、要するに、戦闘活動が行われている、または行われようとしている地点と当該行動がなされる場所との地理的関係、当該行動等の具体的内容、他国の武力の行使の任に当たる者との関係の密接性、協力しようとする相手の活動の現況等の諸般の事情を総合的に勘案して、個々的に判断さるべきものである、そういう見解をとっております。
  112. 堀込征雄

    堀込委員 これからの日本の安全保障政策を決める大事な段階だと思いますので、総理初め、ぜひ、できるだけ情報を公開いただいて、国民的な議論、国会でも議論ができるようにしていただきたいことを要望いたしまして、時間ですので質問を終わります。
  113. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて岩國君、堀込君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  114. 深谷隆司

    深谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上原康助君。
  115. 上原康助

    ○上原委員 この予算委員会総括質疑もいよいよ大詰めに入ろうといたしておりますが、橋本総理を初め各閣僚の皆さん、大変連日御苦労さんです。私は、社会民主党を代表いたしまして、きょう、ある程度時間を確保してありますので、当面する沖縄問題に絞って、後半、別のお尋ねもいたしますが、質問をさせていただきたいと存じます。  そこで、うまくこなせるかどうかもとより自信はありませんが、きょう私がこれからお尋ねするいろいろのことは、沖縄の基地問題初め振興策あるいは県が打ち出しておられる国際都市形成構想、基地アクションプログラム等々の課題に一定の影響を与えるのじゃないかと思っております。私もできるだけ質疑をかみ合うような立場でお尋ねもしたいし、また後ほど申し上げますが、できるだけ土俵は同じくして相撲はとらにやならない面もあるのじゃないのか。手法とか理念とか、沖縄の現状あるいは日本の政治の中に位置づけられている安保とかそういうものの認識の違いは相当あるにしても、問題解決をしていくためには、今、与野党を問わず、どうしなければいかないかという私の所見も含めて少しお尋ねをしたいと思うのです。  まず最初に、どうして沖縄の現状というか沖縄というのがいつも日本の政治の場で問題になるか。鹿児島問題とか北海道問題とか宮崎問題という言葉はないですね。常に沖縄問題という表現でなされている。それだけでも私は、よく振り返ってみなければいかないということがあるんじゃないかと思うのですね。  申し上げるまでもありませんが、琉球という国があったのは御承知のとおりです。小国ではありましたが、長い間、国王が君臨というか、国王をいただく王国である。万国津梁の銘文が琉球の位置づけを見事に刻んでいると私は思うのです。これを意訳すると、琉球国は南海の勝地、すぐれた土地にして、朝鮮のすぐれた文物を集め、中国や日本と密接なかかわりを持った独立国である。その二国間あるいは多国間にあって、わき出る蓬莱の島というふうにかつて琉球王国時代は言われたわけですね。蓬莱圏構想、まことに結構であります。蓬莱とは、東方にあって、仙人が住み、不老不死の島の意味だそうであります。  こういう非常に輝かしいというか、歴史を持つ琉球国であったわけですが、一八五三年のペリー提督の来琉ですね、あるいは一八七九年、明治十二年の琉球処分、廃藩置県、こういう過去を経て琉球は日本に併合されてきたことは御承知のとおりであります。  私がかつて指摘したこともありますが、戦前においても国政に参加する期間というのは三十年沖縄はおくれたのですよね。戦後、御承知のように、二十七年おくれました。そうしますと、開聞以来、明治からこの帝国議会始まって以来、沖縄は実に約五十年も国政から隔離をされてきたという現実の歴史があるわけですね。そういう中で、戦後は二十七年の長きにわたって米軍の占領支配、復帰してこの五月で二十五年になんなんとしても、今冒頭申し上げましたように、基地問題を初めとする沖縄問題というのが国会で絶えず問題にされなければいかないという現実、このことに私は、内閣だけではなくして、政権与党は当然でありますが、国会全体が今認識を新たにして、沖縄の抱えている課題というものを日本国全体の課題としてどう解決していくかという考えというか、方針というか、協力というものが確立されない限りできないと思うのですね。そういう前提でお尋ねをさせていただきたいと存じます。  そこで、これは私の気持ちからも、あるいはこれまでの政治的立場、スタンスからしてもなかなか言いづらいことというか、本意ではないけれども、もし沖縄が独立をするという場合、どういう法的措置が必要なのか、冒頭、法制局長官と、関連して自治大臣に聞いておきたいと思います。
  116. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 ただいまの委員の御指摘にもございましたように、半世紀にもわたる沖縄県民が受けられた痛みを心に重く受けとめまして、現在、内閣を挙げて基地の整理、縮小、統合、あるいは地域の振興に取り組んでおります現状でございまして、お尋ねのような事柄を時間をかけて検討したというようなことがあろうはずはございません。  ただ、あえてお尋ねでございまして、事前に通告を受けましたので、一応純粋に法律上の一般論として若干の見解を申し上げたいと思います。  ただいま御指摘になりました独立という言葉は、法律的に申しますと、我が国の憲法を初めとする法体系が排除される、現在の憲法秩序とは相入れない事態になる。言葉をかえますと、独立というのは一国の主権、領土から離脱するということでございまして、現行憲法はそれに関する規定を設けておりません。したがいまして、言葉をかえますと、そのようなことを想定していない。言葉をかえますと、現行憲法下では適法にそのような行為はできないのではなかろうかというふうに考える次第でございます。
  117. 上原康助

    ○上原委員 まあ、型どおりというか、そうしか法制局長官は言えないでしょうね。  それをなぜ冒頭聞いたかということは、後ほどの質問に関連しますので、これ以上は聞いておくだけにいたしますけれども、しかし、憲法はやはり国民の、もちろん国家主権の問題は第一義かもしれませんが、国民の人権とか生命とか安全とか財産というものを保障し、それを通して国民の福祉向上が図られるということが大事だと思うんです。復帰してもそういう状態にならないとしておるから独立論もあるわけで、政治論として、私は今の法制局長官の御答弁ではいかがかと思うんです。  同時に、もう一つ聞いておきますが、仮に、じゃ沖縄県民が、もうやっぱりこう国策で犠牲にされては困る、主体的立場で自分たちの方向というか、政治とか行政とか沖縄の将来は決めていきたい、そういう面で自主的にこの間の県民投票のように条例をつくってやれば、それは不可能ではないですね。どうですか。
  118. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 ただいま現行憲法のもとでは合法的に独立という行為は不可能ではないかと申しましたのは、ただいま委員お尋ねの、沖縄県におきまして条例等自主立法を行っても、現行憲法下では独立という効果は生じないということであろうと思います。
  119. 上原康助

    ○上原委員 独立運動が大きく盛り上がるかどうかは、きょうの総理初め皆さん答弁いかんかもしれませんから。しかし、私は本当に、私自身も相当思い詰めているんです、実際問題として。いつまで、こういうことでいいのかという感じはしないでもないですね。  そこで、なぜこういう、奇異といえば奇異でしょうが、意外といえば意外でしょうが、話をお尋ねをしたかといいますと、まず、振り返っていただきたいと思うんです。政府の沖縄米軍基地整理縮小努力がどうなされてきたかということを考えてみたいんです。  私は、この質問席に立つたびに思い出すんです。一九七一年、昭和四十六年の十一月十七日に、三時十六分ですよね、今は深谷委員長がお座りのところに櫻内義雄沖縄返還協定特別委員会の委員長がお座りだった。私が核問題でちょっと関連質問をして、大出さんが質問だったので、その直後に強行採決をされた。いまだにその当時の、この返還協定委員会でされた会議録は、記録がないんですよ。記録がない。議場騒然で記録とれなかった。その状況を知っていらっしゃるのは、総理はもちろんそのころからいらっしゃる。梶山官房長官、武藤総務庁長官、藤本大臣もそうでしょうね。閣僚席にお座りの皆さんでもその程度なんです。その程度と言っては失礼ですが、もうほとんどはいらっしゃらない。  そして、もう一つ大事なことは、この返還協定が強行採決をされて、まあ、ほかでも強行採決したものをまた委員会に差し戻して再審議というのはなかなかやらないんですよね、どういう手法をとろうが。だからよくなかったと思う。私たち、当時の社会党と共産党は本会議に出席しませんでした、協定を差し戻せということで。しかし、当時の自民党と公明党、民社党が本会議に入って、いわゆる返還協定を採決をしたんです。  その際に、沖縄の基地の整理縮小についてという決議をなされておるわけですよね。私は、このことについてもかなり、外務委員会なり沖特なり、時々予算委員会でも取り上げて、基地の整理縮小ということを主張をしてまいりました。  これは、昭和四十六年十一月二十四日、本会議会議録です。「非核兵器ならびに沖縄米軍基地縮小に関する決議案」というのがある。この沖縄に関する部分を読んでみますと、「沖縄における米軍基地の整理縮小につきましては、復帰後すみやかに実現できるよう、現在からこの問題に真剣に取り組む方針であります。」こういう決議がなされたのですね。なされた。  これに対して、政府側からも答弁がなされております。失礼、今申し上げたのは当時の佐藤総理答弁なんです。後で佐藤大臣にも聞いてみよう、どう思っているか。  決議は、ちょっと時間がかかりますが、読んでみましょう。この二十四日の本会議で、   沖縄米軍基地の実態は、基地の中に沖縄があるといわれてきましたとおり、密度においては本土の二百数十倍にも達し、機能においても本土のそれとは比べものにならないものがあります。沖縄返還によっても、何ら米軍の機能を損することなく、米軍基地が継続使用されるとの印象を与えていることは、きわめて遺憾であります。   平和で豊かな沖縄県の建設は、本土政府並びに国民に課せられた重大な責務であり、佐藤総理みずから、今国会施政方針演説に明らかにされたところであります。しかし、沖縄の重大関心事は、沖縄の米軍基地を整理縮小し、真に平和な県民生活を約束するための基本的な条件を整えるべきことであります。したがって、米軍基地のすみやかな縮小整理を明確にする措置を講じなければならないのであります。 これが、本会議における基地縮小の決議文の重要なエキスの部分なんですよね。これに対して、先ほど読み上げました佐藤総理大臣国会での答弁があるのですよね。  にもかかわらず、一体何たることですか、今の現状。ここに、歴代内閣を初め国会全体の沖縄問題に対する認識の甘さ、まあ、私がたまに声を大きくして基地問題とか安保、いろいろ取り上げると、上原のやろう、またうるさくなったな、その程度の認識しかなかった。ここが、今日これだけいろいろの課題というものが積み残されて、にっちもさっちもと言ったら言い過ぎかもしれませんが、まだまだ沖縄は復帰してもちっとも米軍基地問題初め変わっていないという、この実態をどう御認識なさるのか。  この基本部分を、もう一度内閣なり政府、特に外務省、わかっていただかないと、私は、幾ら善意を尽くそうとか、あるいは誠意でやっていこうというお気持ちなり努力は多としながらも、難しいのではないかと思うのですが、今まで申し上げたことに対して、総理の御所見があればお聞かせ願いたいと存じます。
  120. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 今、はしなくも議員が述べられましたような混乱の中での採決、その後の本会議、議員から述べられまして、当時の情景を改めて思い起こしております。  そして、その上で、今日なお米軍の施設・区域の約七五%が日本の国土面積のわずか〇・六%しかない沖縄県に集中している。沖縄県の方々に長年にわたり大変な御負担をお願いしてまいりました。そして、その間、その沖縄の皆さんの気持ちというものに、あるときは国会の一員として、またあるときは直接主管閣僚ではなくても閣僚の中にあった者として、また今内閣を率いる立場として、我々の思いが十分でなかったというおしかりは私は甘受いたしたいと思います。  そして、その意味では、国会全員にとりましても、また政府にとりましても、沖縄県の抱える問題の深刻さというものを改めて想起せしめましたものは、一昨年の大変不幸な事件でありました。そして、その後の経緯を一々私は申し上げるつもりはありませんけれども、その中におきまして、私は国会の御指名をいただき内閣を率いることになりました。そして、内閣発足以来私どもは、沖縄の皆さんに大変な負担をかけてきたという思いを皆の共通の意思にしながら、沖縄の問題を国政の最も重要な課題として、米軍施設の区域・施設の問題あるいは沖縄県の抱えておられる経済社会問題、これに対する振興策というものに全力を挙げて取り組んでまいりました。力足らずかもしれませんが、少なくとも真剣に取り組んできたことは私は認めていただきたいと願っております。そして、私どもの続きます限りにおいて今後ともにこの方針を堅持していく、その決意であることはまず申し上げたいと思います。  しかし、同時に一方、アジア太平洋地域におきましては、朝鮮半島における緊張が続いていることを初めとして依然として不安定性、不確実性が存在をしております。そして、そうした中で、日米安全保障条約というものが、日本の安全ばかりではなく、この地域の平和と安定を確保していく上で極めて大切な枠組みであることも御理解がいただけると思うのであります。  同時に、政府としては、日米安保共同宣言で確認をされましたとおりに、国際的な安全保障情勢において起こり得る変化に対応して、両国の必要性を最もよく満たすような防衛政策並びに日本における米軍の兵力構成を含む軍事態勢につきまして、アメリカ政府と緊密かつ積極的に協議を継続していく所存であります。  もとより、安全保障というものは国家の基本的な備えの問題であります。防衛政策や軍事態勢というものを検討するに当たりましては、短期的なあるいは表面的な変化だけではなく、国際情勢の中長期的な趨勢というものをしっかり見きわめていく必要がありますけれども、この地域の安全保障環境が大きく変化することになれば、当然これに最も適切に対応する防衛政策なり軍事態勢について日米が協議をしていくことになります。  私としては、将来この地域の安全保障環境というものがさらに改善をされる、日米両政府として日本の安全やこの地域の平和と安定を確保しながら、同時に沖縄県民の負担を一層軽減するための展望が開けてくることを強く希望いたしますし、そのための努力は傾性してまいりたいと思います。  とりわけ、アジア太平洋地域情勢の安定、改善を図る、そのためには二国間、多国間外交努力を一層強化をしていく、各種の安全保障対話や地域協力の促進を図るなど、あらゆる努力を払ってまいるつもりです。  こうした考え方を基本に持ちながらも、普天間飛行場の返還といった緊急の課題を実現するために、まずSACOの最終報告を着実に実施していくことが必要であると考えており、そのためにも沖縄県、関係市町村を初め関係各位の御理解と御協力を切に願っておるところであります。
  121. 上原康助

    ○上原委員 総理のお気持ちは一応聞いておきましょう。後段の安全保障についてはあれですが。  なかなかそうは物事が運ばれていないというところに懸念される部分があるんですね。国会だけじゃなくして、余りこれにこだわっているわけにもいきませんが、もう一つ、復帰当時、五月十五日の政府声明にも出ているんですよ、政府声明にも。これも、歴史的なことですからちょっと読んでおきましょうね。   沖縄列島は、いにしえから、わが国と東南アジアや中国大陸を結ぶ接点ともいうべき役割を果してまいりました。この周辺において東西の多くの文化が相互に影響しあったのであります。このように重要な位置を占めている沖縄が、今日わが国に復帰したことは、われわれ日本国民の国際的責任と役割をいっそう大きなものとするとともに、わが国の将来に新しい展望を与えるものであります。沖縄を平和の島とし、わが国とアジア大陸、東南アジア、さらにひろく太平洋圏諸国との経済的、文化的交流の新たな舞台とすることこそ、この地に尊い生命を捧げられた多くの方々の霊を慰める道であり、沖縄の祖国復帰を祝うわれわれ国民の誓いでなければならないと信ずるものであります。 これは当時の、五月十五日の政府声明ですよ。これと似たようなものが佐藤総理のあいさつとしても出ている。  それで、こういうことが一体どう消化されてきたかということ。ただ文言だけ美しく飾ってきたというのが、だから沖縄の皆さんというのはなかなか信用もしないし、いつまで同じことを言っているのかということになってしまう。  もう一つ、当時は沖縄はまだ琉球政府ですから、さっき申し上げましたように、昭和四十六年の十一月十七日、屋良朝苗元主席がこの建議書をこしらえて、もう少し沖縄返還協定とか沖縄振興策とか沖縄土地問題に県民の意思を入れてもらいたいという立派な建議書を携えて羽田空港に着いた時期は、もう強行採決なんです、ここで。私は、この建議書も改めて読み直してみました。できたらこれに触れてある点を申し上げてみたいのですが、だから、そういう経過があるということ。  だから、沖縄の皆さんというのは、私を含めて、ただ感情で物を言っているわけじゃない。事実と自分たちの戦前、戦中、戦後虐げられた、この苦難の歴史の上に立って物を言っていること、社会を見ていること、政治を考えること、このことはぜひ御理解いただきたいと思うのですね。  だから、国会でこういう基地の整理縮小をやる、政府声明も出しておる。じゃこの二十五年、復帰して沖縄の基地が一なぜ私は政府の努力の欠如かというと、見てください、皆さん。これを見ればおわかりでしょう、これを見れば。復帰のときには沖縄の米軍基地は二万七千八百ヘクタール、五九%、本土の米軍基地は一万九千六百ヘクタール、四一%。復帰後、整理縮小すべき沖縄のものは整理縮小しないで、関東計画かそういうもので、現在七千九百ヘクタールが日本の米軍基地、沖縄は依然としてこれだけあるから七五%、米軍専用基地。  だから、SACOであと十七年ぐらいかかるのかな、最高。二一%返しますというけれども、これはまだどれ一つめどが立っていないのです、どれ一つ。将来、十年ぐらいかかってもまだここですよ、ここ、沖縄の米軍基地の実態というのは。これがどれだけ成るかはわからない。半分以上まだ沖縄だ。  こういう実情であるということを、ひとつ閣僚の皆さんも議員の方々も、政府の特に頭のいい官僚の皆さんもわかっていただいて基地問題をやってもらわなければいかないという、これが実態なんですよ、実態。  ですから、現在の沖縄はどうなっていると思いますか。こういう状態。どこにこういう国土がありますか。どこにこういう県がありますか。しかも、後ほど言いますが、この制限空域、これは県から強く出されておりますよね、二十九か十五。この周辺の海域も全部使用できないのですよ、沖縄の県や自治体が。こういうことを、自分たちの都道府県であれば、一体その選出議員の皆さんはどうなさるのか。ぜひ御理解をいただきたいと思うのですね。私は今、そういう実態についてわかっていただくだめに申し上げております。  そういう前提に立って、いかに不十分であったかということをぜひ御理解を願いたいと思うのです。  だから、一昨年の、総理もお述べになりましたが、不幸な少女暴行事件があって、知事は土地問題のことについて署名押捺を拒否する、あるいは公告縦覧についても異議を申し立てる、こういうことがあるわけですね。これは当然だと思うのです、私は。  そこで、これも念のためにお尋ねしておきますが、最高裁の判決に対しては一これは福岡高裁那覇支部でも判決が出て、また最高裁大法廷でも審議をされ、結論は出されたわけですが、そのことは、政府にとっては一つの、憲法上、沖縄に適用されている法律というもの、駐留軍特措法とかそういう関連法は違法でない、違憲でないという判決が出たので、留飲をおろしておられるかもしれません。ただしかし、法律論ではそうであったにしても、一体、政治論、国民感情論ではどうでしょうかね。そうですがと納得しませんね、それは。  当時の新聞論調を見ても、「最高裁も沖縄を拒んだ」とか、沖縄の現実を踏まえた判決とは言いがたい、こういうことが言われておるし、歴史の審判にたえ得る判決にしてもらいたいという、切々と訴えた大田知事のあの陳述というか意見というものは、私は国民の心を強く打ったと思うのですね。しかし、判決は残念ながら沖縄県が敗訴でした。  だが、注目すべき点は、この最高裁の裁判官の皆さんが補足意見を出しているということですね。これをちょっと引用しておきます。   沖縄県に我が国における駐留軍の基地が集中しており、それに伴って、演習による事故や駐留軍の軍人軍属による刑法犯罪が多数発生し、航空機騒音が付近住民の生活環境に影響を及ぼし、また、基地の存在は同県の地域振興開発の制約要因となっているにもかかわらず、同県における駐留軍基地の整理縮小が十分な成果を挙げていないなど、原審の認定する同県の実情に照らすならば、駐留軍基地が同県に集中していることにより同県及びその住民に課せられている負担が大きいことが認められる。 こういう補足意見を最高裁でも出していらっしゃるわけよね。その上で、このことについてはやはり政治というか、はっきり統治行為論という表現はしてないが、そういう形で解決すべき問題だということになっている。  ですから、最高裁で判決が下ったから安保条約上も問題ない、憲法上も問題ないというような、そういう認識では私はいかないと思うね、基地問題の解決には。これについてはどういう御所見をお持ちか、総理のお気持ちを聞いておきたいと思います。
  122. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 昨年の八月二十八日、最高裁の大法廷におきまして、職務執行命令裁判請求上告事件につきまして、補足意見があるほか、裁判官全員一致で上告棄却という判決が出されました。  この最高裁における大田知事の意見陳述も、私は拝読をいたしました。また、裁判官の補足意見につきまして御意見がございましたけれども、裁判上のことに対しては、行政の責任者としてコメントを差し控えていくべきであると思います。  ただ、個人の感想ということで申し上げますならば、大田沖縄県知事は、昨年の七月十日、最高裁の大法廷において、守礼の邦と言われた琉球王国の独立の時代から説き起こされ、さきの大戦において沖縄県民、多くの方々が多大な犠牲を払われたこと、現に米軍施設・区域の約七五%が沖縄県に集中していることなどから、さらなる基地の強化、固定化を受け入れることは困難である、また、安保条約が日本にとって重要だと言うのなら、その責任と負担は全国民が引き受けるべきではないか、こうした意見陳述をされました。その心情は、私としても十分理解のできるものでございます。  また、六名の裁判官の補足意見におきまして、沖縄県に駐留軍の基地が集中していることにより、同県及びその住民の負担が大きいことが認められるなどと指摘をされておりますことも、事実に即し理解のできることでございます。  以上、申し上げましたように、さきの大戦におきまして沖縄県民の方々が多大な犠牲を払われた、そして終戦後も長きにわたり米国の施政下に置かれ、本土復帰後も、先ほど議員が図表で示されましたように、米軍の施設・区域の約七五%が今なお沖縄に集中し、これが県の皆さんにとって大変大きな負担になっている。政府としてもこれは痛切に感じているところで、また、認識しているところであります。  こうした認識から、政府としては、その県民の方々が背負ってこられた重荷を国民の全体で分かち合うという姿勢に立ちながら、沖縄に所在する米軍の施設・区域の整理、統合、縮小という問題を最重要課題の一つと位置づけて真剣に取り組んでいるところでありまして、今後ともに地元の皆様の御理解、御協力を得る努力を続けながら全力を尽くしていきたいと考えております。
  123. 上原康助

    ○上原委員 今総理が御引用なされた、大田知事さんが最高裁法廷で述べたこの上告人意見陳述要旨というのを私も持っております。これも、まあ時間があれば本当は全部読んで記述しておった方があるいはいいかと思ったりするんですが、そうもまいりません。  確かに、総理がおっしゃったように、「安保条約が日本にとって、重要だと言うのであれば、その責任と負担は全国民が引き受けるべきではないかと思っています。そうでなければ、それは差別ではないか、法の下の平等に反するのではないかと県民の多くは主張しているのです。」こういう文言がありますね。あります。  同時に、理解していただきたいことは、後ほど大田知事が公告縦覧代行をなさるときに、私のすべてが問われる苦渋な決断であったという、まあ本当に何と理解していいかわからないほど、わかるわけですね、そのお気持ちは。それは僕は後ほど言いますが。  この中に、ぜひ政府も理解をしてもらいたいことは、いろいろ書いてありまして、「駐留軍用地の強制使用に係る立会・署名には応じることはできませんでした。」といろいろ述べておられるんですね。  この決断は、県民から負託を受け、県民の命と暮らしを守る行政の責任者としてやむを得ない選択であったと思います。このことは、安保条約の即時廃棄を求めるものでもなければ、日米の友好関係を損ねようとするものでもありません。   改めて申し上げるまでもなく、立会・署名の拒否によって、基地問題が一朝一夕に解決するとは思っていません。県民は、戦後五十年もの間、基地と隣り合わせの生活を余儀なくされ、その重圧に苦しんできました。その意味では十分に安保条約に協力してきたといっても過言ではありません。 というくだりもあるわけですよね。  ですから、こういう全体の流れ、そこで訴えたいということ、沖縄県知事なり沖縄側の立場、主張というものは、私は、政府とじっくり話し合っていけば、冒頭申し上げたように、手法とかいろんな面で違いはあるにしても、同じ土俵の中で解決する接点というのか、打開策というものはあり得るのじゃないかという気がするわけですね。ぜひそのことを大事にしていただきたいということを申し上げて、これから本論に入りたいと存じます。  そこで、以上の経過があり、なかなかこれは、五十年、二十五年のことを簡単に言うのは難しいんですが、じゃ、懸案となっている重要課題の具体的解決策はどうしていくかということなんだと思うんですね。これも私なりに、ちょっと字が小さいんですが、まとめてみました。  一つには、やはりSACO合意事項をどう解決をしていくかということ。その目玉ともいうべき、一番難航している普天間基地の移転先をどうするのか。  もう一つ、後で聞きますが、五月十四日に期限切れとなる軍用地の継続使用の可能性というものは一体どうするのかということがありますね。  三番目に、官房長官の私的諮問機関と言われた島田懇談会での基地所在市町村の課題をどうするか。その提言をどう具体化するか。その中に基地問題についても触れておられるんですね、解決すべき項目がある。後で言います。米側に要望すべき幾つかの問題がなされている。  そして四点目に、今後の沖縄施策、フリーポート並びに自由貿易地域の実現とか、沖縄本島の六〇%以上を占める北部地域の振興というものをどう図るのか。  こういうことを私はぜひ、国は国としていろいろ検討しておられる面もあると思うのですが、やはりそれを一つ一つクリアしていく、あるいは具体化をしていく上においては、沖縄県が策定をしておられる国際都市形成構想、二〇一五年まで米軍基地をゼロにするゼロにしないということについては、それは意見の分かれる面もあろうかと思うんですが、やはり基地のない平和で豊かな沖縄というこの崇高な目標というか願望というものは、何人も否定していない。したがって、基地アクションプログラムということについても十分考慮を払いつつ、県との協力関係というか意見調整をやって、これらの課題というものを私は実現してもらいたいと思うんです。     〔委員長退席、中川(秀)委員長代理着席〕  そういうことで、ひとつ具体的に、まず、SACOのことは今総理冒頭にも触れられましたが、ほとんど進展をしていないんですよね。普天間の移転先が決まらない。那覇ポートもまだどういう方向になっていくのか。しかも、さっき申し上げましたように、五月十四日の土地の期限切れ問題がある。きのう、おととい以来問題になっているところの劣化ウランの問題等もある。これなんか本当にもうあいた口がふさがらぬ。もってのほか。どう弁解というか、どう説明してもこれは納得いかない。これは後でちょっと触れますけれどもね。  そういう面で、SACOの関連重要事項というものを、これだけ次から次に問題が起きて、交通整理ができない大変困難な状況にあるんですが、この現状を橋本総理初め橋本内閣はどう打開をしていかれようと考えておられるのですか。
  124. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 これは、ちょうど昨年の十二月、基地関連市町村長の皆さんにお話を申し上げたその席上、SACOの合意について私が触れた部分、多少時間をちょうだいして、改めてそこから申し上げたいと思います。  今後は、SACOの合意に基づき、施設の統廃合が進められます。私は、これが基地が返還される喜ばしいニュースという側面だけではないことをよく認識しております。施設の移設先によっては、新たな御苦労をお願いすることが出てくることにもなります。しかし、いかなる施設も、受け入れるところがあって初めて移設できるというのが当然の出発点で、県と市町村の了解を得ることは不可欠です。私としては、地元の強い反対を押し切ってまで移設を強行することがあってはならないと考えております。  こうしたところから、私は普天間の問題等を基地所在市町村長の方々にお話を申し上げました。そして、その気持ちは今日も同じものでありますが、沖縄の方々が背負ってこられた重荷というものを国民で、全体で分かち合うという姿勢に立ちながら、沖縄に所在する米軍の施設・区域の整理、統合、縮小を日米安全保障条約の目的達成との調和を図りながら実現していくことが内閣の最も重要な課題の一つでありますし、今後ともに、普天間飛行場の返還を初めSACO最終報告の内容を的確かつ迅速に実現するように全力を尽くしてまいりたいと考えております。  この過程におきましては、地元の皆様の御理解と御協力を得ることが不可欠であります。そのために引き続き粘り強く努力をしてまいりたいと考えておりますし、まさに基地所在市町村長の方々に初めてお目にかかった席で申し上げたとおり、地元の強い反対を押し切ってまで移設を強行すること、これがあってはならないと考えておることは、もう一度繰り返して申し上げておきたいと存じます。
  125. 上原康助

    ○上原委員 私も、筋論というか、政府がお進めになる考え方、方針としては、そういう手順を踏むことがよいと思うし、また、それしか方法はないんじゃないかという点では認識が一致しているのですね。  しかし、逆に言いますと、では、それができない場合は普天間の移設は不可能ということになりますね。そのときの打開策はどうなさいますか。
  126. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 これも、そのとき基地所在市町村長の方々に訴えたとおりでありますが、私が知事さんから切々と訴えられましたこと、それは、住宅密集地の中にある普天間基地というものが万一何らかの事故を起こしたときどれほど危険なものであるか、そのためにも何とかこの問題を解決してほしいということでありました。  その中から、いろいろな選択肢を私なりに考えました。そして、その中で、日米両政府ともに到達をいたしました結論は、移設可能な海上構造物、言いかえれば海上移設という選択肢だったわけであります。そして、その点にも県内に御異論があること、さまざまな御議論があることは承知をいたしております。そして今日、なおその海上移設のための調査の御協力も得られている状況ではありません。  しかし、先ほど申し上げましたように、移設先を見つけて初めて移設が可能になります。そして陸上に移す、それは同じ危険を伴うものである限りにおいて、用がなくなれば解体することのできる移設可能な構造物としての海上という以外に私は選択肢を持ちませんでした。  何とかそうした点についての、賛成はいただけないまでも御理解はいただきたい、そして調査への御協力はいただきたい、今祈るような思いであります。
  127. 上原康助

    ○上原委員 そこいらのことになりますと若干、見解というか受けとめ方、理解の仕方が相当落差があるんですよね、率直に申し上げて。それは後ほど結論的に申し上げますが、私は、やはり新たな日米のテーブルというものをつくる方向性ということを考えていただかないと、打開は難しいと一思いますよ。それは、理由は後で言います。  そこで、そういうSACOのいろいろなものがあるわけですが、もう一つ、県道一〇四号線を挟んでの実弾砲撃演習にしても、今度の五カ所に移転をする、これは移転じゃなくして移動ですよね、あくまで。現在沖縄の、さっき見せたキャンプ・ハンセンで、ここでやっているわけですね、今。県道一〇四号線挟んで、ここで、このキャンプ・ハンセンで。これは何も海兵隊が沖縄から本土に移るとか移転するとかそういうことではないんですよね。本土の、これは日本地図、これ、矢臼別あるいは大和王城寺原か、こういうところにただ分散をしてやるということだけの話なんですね。  皆さん、考えてください。今までは沖縄一カ所で、キャンプ・ハンセンという一カ所でやっておったのを日本全国にばらまいて、ばらまいてという表現はまあ、日本全国に分散をしてやるというわけだから、ここの受ける痛さと、ずっと沖縄で、復帰後ずっと一カ所でやられておった痛さとは違うんですよね、皆さん。これは先生方もぜひ理解していただきたい。  だから、こういう手法では沖縄の基地の密度は減らないし、量も減らない。その根本をどう打開をしていくかということを考えていただかないと、私は、この問題はますます行き詰まるんじゃないかという心配をしております。  そこで、この県道一〇四号は四月以降はどうなるんですか。念のために聞いておきましょう。
  128. 久間章生

    ○久間国務大臣 今上原委員がおっしゃられましたように、この沖縄でずっとあっておったものを五カ所に分散して、今いみじくも言われましたように移動であるんだから、各地で最大十日なんだから、ぜひ理解していただきたいということで、今ひたすらその関係の自治体の皆さん方にお願いをしておるわけでございます。  しかしながら、温度差はありまして、いろいろと、一歩足を踏み込んでいただけそうな地区、あるいは全く先へ進んでないところ、ございますけれども、何とか平成九年度になりましたらこの五カ所の中で実行できるように今鋭意やっているところでございますので、これらについても、これから先も粘り強く努力して、ぜひ九年度には実施したいと思っているところでございます。
  129. 上原康助

    ○上原委員 実態はそうだということ。あたかも沖縄での米軍演習なり基地の密度等が、今度のSACOの合意事項が進めば大幅に減少されるかという印象をややもすると国民に与えている節があるんですが、私はいつかも申し上げましたが、ちょうど、本土並み、沖縄返ると言って大キャンペーンを張ったのと全く同じなんだ、全く同じ。もうそういうことには、沖縄県民はもうもちろんだまされもしませんし、またか、また同じこと言っているのか、これはもう思想、信条を超えた心境だということは、ぜひ御認識を願いたいと思います。  そこで、よく総理は、国際情勢が変化というか変わっていけば、日本における米軍の規模とか量とか、そういう面の軍事情勢について協議をしていく、こういうことをおっしゃいますよね。僕はそれは当然だと思うんだが、どうも外務大臣の言うことを聞いても、総理がおっしゃることを聞いても、積極的に、日本側から主体的にアメリカにそういう提言をするなり、今私が申し上げたようなこの基地の実態というもの、あるいは経過というものを受けとめて、やろうという気持ちが伝わってこないんですね、残念ながら。そこを何とか打開をしないと、私はこの問題というものはなかなか理解と協力を得られないと思いますよ、総理、橋本さん、お気持ちはわかるけれども。  その意味で、四月にクリントン大統領ともう一度首脳会談なさるという報道もなされておりますけれども、にわかに今持ち出すということはいろいろ問題があるにしても、今日、劣化ウランの問題とか沖縄の県民感情、国内情勢を聞いてみると、やはり新たな手法、新たな何か交渉というか、せめて方向性について、海兵隊を、一挙に一万七千なくすることができないというならば、部分的にも移すことはできないのか。あるいは、本土にだって海兵隊の基地はあるわけなんだよ、これはね。そういう面での再検討というものを真剣に、日米の首脳なりあるいは政府全体として、また国会もそれをバックアップする何らかのアクションを起こすべきだと私は今思っているんです。それはいずれ自民党さんと、もちろん野党の皆さんとも御相談をする機会がなければならないと思うのですがね。  五月十五日を目の前にしている。できれば四月に総理が行かれる前に、政府もそういうお気持ちになる、国会もそういう立場に立って、この現状をどう打開するかという日本国の意思というものを、私は、米国に対しても、内外に明らかにする時期だと思うのですよね。こういう御決意はありませんか、橋本さん。あなたならやろうと思えばできるよ、これ。そう思いますよ、私は。
  130. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 昨年、私がサンタモニカに飛ぶ決心をいたしました後の内外の空気を議員に思い出していただきたいと思うのであります。あのとき、首脳会談において普天間という名前を出すこと自体が多分できないであろうという空気、そしてまた、それはすべきではないという空気もございました。私はその時点において、普天間という名前を出しました。出しました途端に、この問題が何ら前進しなければ責任をとれという声はたくさんいただきましたけれども、それをバックアップしていただく空気というものは必ずしもいただけなかったように思います。議員とか何人かの方は別です。そして、SACOの中で、普天間を対案をもって動かそうということを努力をしていく中で、私は海上移設という方向に、御満足をいただける、いただけないは別にいたしまして、自分なりの努力はいたしてまいりました。  今日、私は必ずしも、議員がお触れになりましたように、このアジア太平洋地域の情勢というものが兵力構成の変更を伴う議論に向いている時期かどうかというならば、議員と異なる問題意識を持っていると申し上げなければなりますまい。しかし、将来において状況が変われば、当然ながらその変化の中で兵力構成、軍事対応の変化が生ずる、そうしたことを確認していくといったことは必要なことであろうと私も思います。
  131. 上原康助

    ○上原委員 その域から一歩も出ないとなりますと、大変難しくなる可能性があるということを申し上げておかざるを得ませんね。  きのうも御指摘がありましたが、沖縄の海兵隊の存在理由というか、いろいろ政府は絶えずそういうことをおっしゃいますけれども、多くの識者は、日本の軍事専門家もそうですが、アメリカだってそうなんですよね。これは、アメリカの国防総省とかあるいは国務省とか、いろいろな主要な要職におられた方々だって問題視しているんですよ。  チェイニー元米国防長官もそうなんです。「日本の米軍駐留への支持が徐々に失われてゆく過程の始まり」。米国防大学の国家戦略研究所、「日米特別行動委員会が、沖縄の人々を包囲しようとしていると受け取られたならば、日本における米軍の駐留は不安定な政治問題でありつづけるにちがいない」。こういういろいろな指摘がありまして、さらに元太平洋海兵艦隊司令官のV・H・クルーラク、「世界は変わった。我々は、物資備蓄のため以外には沖縄を必要としていない」。日米安保の流動化。  ですから、これは、政府は政府の立場があり、いろいろ擁護するでしょう、そういう言い分を。だが、国民とか沖縄の県民だって、こういうことも、英文も読む方もいらっしゃるし、日本文も読むし、自分たちで本を買って研究なさる人もいらっしゃるわけで、皆さんが言うことだけが筋が通っておって、その間沖縄は我慢しなさいと言ったって、そうはいかないというんです、私は。  ですから、今すぐ答弁はできかねるかもしれませんのでこれ以上は申し上げませんが、皆さんがおっしゃるよりは、私は、国際情勢にしても、日米関係のいろいろな専門家というかリーダーの皆さんにしても、やはりここはこの状況ではいかないんじゃないのか、このままほっておくというか、このまま押さえつけておくというか、従来どおりにしておくと、本当に日米安保そのものが御破算になるんじゃないか、心ある人はそう思っていると思うよ、私は。  そのことを懸念するがゆえに、あの劣化ウランなんて何たることですか、あれは。あんなことでは到底それは容認できませんぞ、本当に。もうこういうのは、どうだったというようなことじゃないんだよ、これは、いつまで同じ、再発防止とか情報通報システムをつくるなんて、何回言った。去年の爆弾投棄のときも、あなた、外務大臣が、調べて国会報告すると言っているんだ、私に、答弁で。マニュアルをそのまま見せないにしても、どういうものなのか明らかにすると言ったが、一向にない。問題が起きたらまた同じことを国会で繰り返す。どうにもならないんじゃないですか。  ですから、総理、お気持ちはわからぬわけではありませんが、四月に向けて、我々ももっと努力をしたいと思いますので、この硬直したというか、日米関係の、経済問題を含めて、今円安・ドル高でなかなか、G7を持ったって、一日、二日よくなるかと思うと、もう百二十五円でしょう。大変な状況になると思いますよ、これも。そういう意味で、私はもう一度、沖縄の基地問題を含む日米の新たな二十一世紀に向けた何らかの打開策、対応策というものを考えるべきだ、これは注文をつけておきます。よろしいですね。  そこで、この基地問題との関連で、これはきょうは簡単にお尋ねしておきますが、軍転法、軍転特措法の問題があるんですね。これもすったもんだしました。あの当時、我々が沖縄開発庁や防衛庁、防衛施設庁に行っても、なかなか聞く耳を持たないという立場でしたね、残念ながら。だが、いろいろ連立与党の中あるいはまた自民党さんとの間で努力をする過程で、何とか九五年、平成七年の五月に議員立法で成立をさせました。これにはいろいろな問題点がまだ残っておるのです。  そこで、きょうは簡単にお尋ねしておきますが、私たちは、時期を見てやはりもう少しこれは充実補強せなければいかないという立場にありますので、政府としては、一体この問題についてどういう御認識なのか。でき得るんば、基地問題の解決策の一環として政府みずからもう少し考え一て、法律をつくるとかいうことも考えているのか。議員立法だから国会に任すというならそれでも結構ですが、まず今どういう認識を持っていらっしゃるのか、お聞かせ願いたい。
  132. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 駐留軍用地返還特措法、これはもう今議員がお触れになりましたように、平成七年に議員立法によって成立し、施行された法律でありますし、まずこの法律を適切に執行していくことが我々にとって大切なことだと思います。返還跡地の有効利用というものが沖縄の振興開発の上での重要な課題でありますし、現行の関係法律を最大限活用して促進に努めていきたいという思いであります。  この改正という点につきましては、現時点では具体的に考えているものはございません。しかし、返還跡地の整備に関する制度あるいは手法につきまして、関係省庁及び沖縄県が参加していただいております沖縄政策協議会の「基地跡地の利・転用」プロジェクトで検討していただいているところであります。我々は、この返還跡地の有効利用というものに引き続き精力的に取り組んでまいりますし、適宜適切に対応してまいりたい、そのように思っております。
  133. 上原康助

    ○上原委員 沖縄県にも私はいろいろお尋ねしたり、意見交換はしているのですが、まだ改正してもらいたい成案にこぎつけていないという、いろいろ事務がもう相当煩雑していますから、次から次と本当に大変なんですよ。  少なくとも、当時これを議員立法する過程で非常に苦労したのは、駐留軍用地の計画的返還及び駐留軍用地の総合的、計画的な有効利用の促進というこの理念を、魂を法律にどううたうかということで自民党さんとなかなかかみ合いませんでした。しかし、それから大分親しくなっているのか離れているのかよくわかりませんが、認識は大分近くなる面もあると思うので、こういう理念の問題をどうするかということがありますね、私に言わせれば。  それと、基地内の調査、測量問題に対する国の必要な援助、あっせんということですね。  もう一つ大きな問題になった、今総理お答えの一部にあったのですが、この用地の跡利用をするために、その都度の予算だけでは大変厳しい面があるわけですよね。やはり基金制度というものを設けてやらねばいかぬじゃないかという、跡地利用のための基金制度というものをやってもらいたいということが強く県から出され、これができませんでした。  あるいは、国有財産の無償譲渡もしくは低廉というか低価格の譲渡というものをやるべきだ、こういう条文を打とうとしたんだができませんでした。  さらに、今は一千万円を上限に三年間の補償というものがあるわけですね、跡利用できるまで、地主に対する。こういう期限の問題とかがありますので、少なくとも、議員立法ではあるが、これだけ基地問題が重要視をされている中で、沖縄開発庁なり防衛施設庁なり少し検討してもらって、やる意思があるのかどうか。これは、沖縄開発庁長官、少し影が薄くなっても困るから、あなた、答弁してごらん
  134. 稲垣実男

    ○稲垣国務大臣 上原先生指摘の点につきましては、本法が立法過程においてもろもろの議論があったことはよく承知しておるところでございまして、また、今議員が御指摘のように、地元においても強い要望、改正、そういったことについてよく承知しております。  しかし、同法改正については関係方面とのもろもろの検討が必要であります。そういうことで、慎重な検討が必要ではないかと思いますので、全力を挙げて検討いたしたいと思います。
  135. 上原康助

    ○上原委員 全力を挙げてやってください。  それで、ここはこう理解していいですか。今私が申し上げた点、もちろんそれは丸々そのとおりですとおっしゃらない、政党間の話し合いでもそうならない面もありますからね、物事は。そこは私も理解をした上で申し上げているが、できるだけ立法化するときに条文化できなかったものは復活させるような努力をする、これは県側も大体そういう線に沿っていらっしゃるのではないかと私は思うのですが。要するに、沖縄県から出される改正案なり要望については十分お聞きになって調整をする、そういう立場だというふうに理解していいですね、開発庁、防衛庁。
  136. 久間章生

    ○久間国務大臣 跡地の利用の問題につきましては開発庁でございますけれども、今先生の御指摘の中で、期間の問題でございますけれども、これは現行法で、議員立法でつくられましたのは三年となっているわけでございますが、かなりの議論があったわけでございまして、そしていよいよ八年度からこれが始まるわけでございます。したがいまして、この成果を見た上でいろいろな国民的な合意、そういったこともやはり考えなければなりませんので、その辺を見させていただいた上でこれは研究していかなければならないということで、当庁として、今すぐにこれを期間延長するということは考えていないわけでございます。  ただ、沖縄の地方自治体から非常に要望があるということは十分わきまえております。
  137. 上原康助

    ○上原委員 何かたくさん答弁したらだんだん後退していくから、もう総理お一人にしよう。  はい、立場はわかりました。だが、そういうことは真剣におやりになっていただかないと、すべて物事は関連しますので。  では、次に進めたいと思います。  私は、当面の最重要懸案事項は、五月十四日に期限切れとなる米軍用地の扱いをどうするかということだと思うのですね。これは本当に深刻な問題ですよ。これまでほかの党の先生方からもお尋ねがあったのですが、なかなかそうかなと思うような御答弁はないのですが、どうなさるつもりですか。可能性があるのですか、法的権原を取得をして継続使用するような。
  138. 久間章生

    ○久間国務大臣 委員が一番よく御承知であられるわけでございますけれども、今とにかく収用委員会の方で審理をしていただいて、二十一日に公開審理があるわけでございまして、私どもとしては、とにかくその御審議をできるだけ適切に迅速にやっていただくということでお願いしているわけでございます。  先般、報道等を通じて委員長さんの会見があっておりましたけれども、委員会におかれてもできるだけ努力はしてみるというようなことをおっしゃっていただいておりましたので、そういうことにも期待をかげながら、ひたすら迅速に適正に、早く裁決がなされることを願っておるという、それを今お願いしておるところでございます。
  139. 上原康助

    ○上原委員 今のところ二十一日が近づきつつありますから、できるだけ、期待という、まあ祈るようなお気持ちはわかりますけれども。  そこで、総理はこの問題、一体どうなさるのですか。これは嘉手納空軍基地が入っていますよね、普天間基地が入っていますよね、あるいは伊江島、その他ありますよね。今問題になっている読谷のいわゆる象のおり、楚辺通信所を入れると十三施設になる。私は、今政府がやっているようなこの期待感では厳しいのじゃないかと思うのですが、万一法的権原が取得できない状態が生じた場合に及ぼす影響、私は、そう簡単なことではない、外交問題にももちろん発展するし、沖縄と政府との関係とか国内政治に及ぼす影響も極めてこれは大きいと思いますよ。何かいい、あれですか、県側と話がついて悠々としていらっしゃるのですか。
  140. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 県側と話がついているかどうか、県がどういう姿勢をとっておられるかは、議員もよく御承知のことと存じます。  昨年、県との信頼関係の中で知事から公告縦覧手続への御協力までいただくことができました。そして、まさに二月二十一日から収用委員会の公開審理が始まる。従来の実績を見ました場合に、今後の収用委員会の日程が大変厳しいものであることは十分認識しておるつもりであります。  しかし、これから作業を始めていただこうという時点におきまして、私は、その日程の厳しさということは十分承知をした上でありますけれども、こうした現在の状況、あるいは使用期限までの権原取得というものの必要性を踏まえて、裁決に至る手続を円滑、迅速に行っていただくことをまた期待も申し上げておりますし、関係者の協力が得られるよう最大限の努力をしていきたい、本日申し上げることは以上であります。  また県には、知事さんが御上京になりましたような機会にお目にかかれれば、私は、ほかの問題も含め、知事さんとはじっくりお話をさせていただきたい、そう願っておることも事実であります。
  141. 上原康助

    ○上原委員 さっき私は悠々と言ったが、あれは取り消しますので。そういう御心境ではないと思いますので、ちょっとそこは私の本意ではありませんから。  そこで、これは私たちもどういう方策があるかまだわかりませんけれども、解決のポイントは、私なりに例えば思うと、どうすれば五月十五日以降も嘉手納空軍基地を含むこの施設、土地所有者三千八十四人だと、一月現在ですか、法的空白を生ぜしめない継続使用をできる方途を講ずるかということだと思うのですね。これはあらゆる知恵を出してやってやらにゃいかない点だと思いますよ、本当に。  そこで、この土地所有者の総数三千八十四人の、いわゆる本来の地主さんというのは百十六人。一坪共有地主が二千九百六十八人。その内訳は、沖縄県が千五百十七人、本土が、本土各県におられる皆さんが千四百五十一人のようですね。楚辺のお一人入れて三千八十四人になっている。  問題は、なぜこういう一坪共有地主がこんなにたくさん、いわゆる本来の契約拒否地主を支援というか、この基地の整理縮小、あるいは安保の重圧から脱却していきたい、基地のない沖縄にしたいという、それぞれの考えなり立場が強くてこういう展開になったと思うのですが、問題はやはり、先ほど来私が歴史的に示しているように、余りにも、政府の基地の整理縮小とか沖縄の基地の問題に対するこれまでのやり方に対してこういう抵抗闘争が生まれたと私は思うのですよ。民主主義社会ですから、これを圧殺するとか、権力や法律で抑えつければいいということじゃないですね。そういうことについても、ぜひもう少し配慮する必要があるんじゃないかと思うのですね。  もしこの法的権原が取得できないとどういう問題点が予想されるかというと、楚辺通信所もそうでしたし、お一人でもあれだけの混乱、混乱というか、立ち入りをめぐって大変な状況が出た。だから、土地所有者の基地立ち入り要求をめぐって、現地で相当の混乱が予想されますよ、これは。ですから、三千人以上も対象にしているということなど考えますと、しかも、嘉手納空軍基地の滑走路であるとか普天間であるとかなると、なおさらこれはいろいろ問題が出てくると思うのですね。  もう一つ、あの楚辺の状況を見てみても、これは私は、沖縄の皆さんもいろいろお考えになる面もあると思うのですが、客観的、現実的に見て返還不可能な土地を使用権原なしに継続使用せざるを得ない状態となれば、日米関係に及ぼす影響も大きいと思うのですよ、正直申し上げて。こういうことに本当に、総理なり、防衛庁長官なり、まあ、外務大臣がそこまでできるか、ちょっともうなんだが、外務大臣も真剣になって沖縄県ともアメリカ側とも話し合ってみないと、僕はこの問題の突破はできないと思いますよ。  そういうようなことをお考えになっていただいて、もう一つ、私は、これは冒頭に申し上げましたように、共通の土俵で議論をしないとなかなか物事の解決は難しいと思うのですが、沖縄の県民の皆さんにしても、あるいは契約拒否をやっている皆さん、あるいは多くのこの基地に不満を持っている皆さんにしても、日米安保条約であるとかあるいはこの地位協定というものを、今すぐ全面的になくしなさい、即時撤去しなさいという立場で基地問題が必ずしもうまく解決するとは、多くの皆さんが思っていらっしゃらないのじゃないかと思うのですね。そのことに、もう少し政府が真剣に考えていただいたらどうですか。そこを本当に、それこそもう火だるまというか血みどろになってやらないと、私は、この事態というものは乗り越えられないと思いますよ。そういうことをあえて私の立場から申し上げておきたいと思うのです。  そこで、じゃどうするかということがなかなか思い浮かばないんですが、私はやはり、これまでもいろいろ新聞紙上などで出ておりますが、国が強権的に発動するとかあるいは新たな立法をつくるというような手法はとるべきでないと思いますね、最低限。  ですから、まず知事等の権限を現行どおりのことを考えてみる、あるいは市町村長の権限等についても現行どおりとする。収用委員会の審理、土地所有者等の意見陳述等についても、その民主的権利というか主張というものは最大限に認めていく。そういう中で可能な法整備というものがあるのかどうか。ここをいろいろお考えになっていただければ、あるいはこの当面する期限切れ問題についての打開策というのか、十分な理解は得られないにしても、少なくとも沖縄県なり関係者の方々が黙認するとか、やむを得ないというのか、先ほど来言う基地の整理縮小とかいろいろなことについて総合判断して、やはりここは国の誠意というか政策の方向性、明るさというものがもし見えるとすれば接点というものが出てくるのじゃないのか、私はそう思ったりするんですが、今申し上げたようなことについて総理の御見解があれば聞かせておいていただきたいと思います。
  142. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は実は、沖縄県に所在しております施設及び区域の中の一部の土地について、国との賃貸借契約を拒否しておられる土地所有者の中に二通りの考え方の方があると思っています。  いわゆる在来の地主の方々、これはまさに先祖伝来の土地を守り抜く、あるいは自分の土地は自分で使いたい、またあるいは反戦平和という御自分の心の中のものからこれを拒否する、そういう考え方の方々があるということが一つ。  それから、契約拒否運動の拡大を図るといった活動をしておられるいわゆる一坪共有地主の方々、これはいろいろなお考えもありましょうけれども、こうした在来地主の方々に対する共感を持って行動しておられる方が大半じゃないかと思います。  それぞれのお考えがあって拒否をしておられるということだと思いますけれども、他方、我々としては、日米安全保障条約の目的を達成していくために我が国に駐留する米軍に施設及び区域を円滑かつ安定的に提供する、これは我々の条約上の責務でありますし、このためにやむを得ず駐留軍用地特措法に基づく使用権原の取得手続を進めているんだということについては、ぜひ御理解をいただきたいと思うのであります。  そして、議員みずからが、いいアイデアが自分もなかなか出てこないと仰せられましたけれども、私もそのいいアイデアといったものを持ち合わせているわけではありません。しかし、我々に五月十四日という一つのタイムリミットがあること、これは事実でありますし、そして二月二十一日から収用委員会は動くと言っていただいているわけでありますから、この与える影響というものを十分御勘案をいただきながら、一日も早い権原取得に向けての手続を進めていただくように、そしてそのために政府として払うべき努力があれば、御指示をいただけば我々はどんな努力でもいたすつもりでありますので、ぜひ御協力を賜りたいものだと心から願っております。
  143. 上原康助

    ○上原委員 きょうは私の少し勉強したことを申し上げましたが、それが参考になるのか、あるいはまたそのことが理解していただけるのか自信はありませんが、どう考えてもやっぱり、混乱が起きないような政治的な良識が発揮できることを、私は、政府も各党派もあるいは沖縄県もやらにゃいかぬのじゃないのか、こういう気持ちだということを申し上げておきたいと思います。  そこで、これとの関連で、やっぱり、二千九百名余りも、三千名近くもいわゆる一坪共有地主というのがふえたということは、さっきも言ったが、今まで政府のこの基地問題に対する高圧的な態度がなかったとは言えませんよ、これ。私も随分いろんな経験しましたけれども、大変だった、それは本当に。そういう意味で、時代は変化している。問題は解決しなきゃいかぬ。やっぱり誠意を持って当たれば、私はおのずと道は開けていくと思う。その意味で、一坪共有地主の経済的損失とか、余りにも高飛車に権力行使をしているというような態度は、防衛施設庁であろうが外務省であろうが、政府は見せていただきたくない。  できるだけここは、民主主義というのはコストもかかるし時間もかかるんだ、そういうことで、この一坪共有地主の補償問題であるとか対応の仕方については再検討していただけるというか、やっぱり配慮した方がいいなと思う点もあると思いますので、その点についてもお考えになってもらいたいんですが、これはどなたが答弁するかね。
  144. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 お答えします。  現在、先生今御指摘のいわゆる一坪地主あるいは契約拒否地主の方々に対しまして、私ども、適正な補償のもとに収用をさしていただいているわけでございまして、駐留軍用地特措法に基づきまして、収用委員会の裁決に従った補償をさしていただいているということでございます。  したがいまして、私ども、収用委員会の裁決というのが適正に行われておるという前提のもとに補償をさしていただいているということでございますが、先生の御意見、あるいはいろんな地主の方々の御意見等も踏まえながら、今後適切に対応してまいりたい、このように考えております。
  145. 上原康助

    ○上原委員 まあそれは、こういう場ですから、そういう御答弁しかというか、そういう御答弁が来るのは私もわからぬわけではありませんが、しかし、それは契約地主の皆さんの立場も、もちろんこれはもう圧倒的に多いわけですから、政府からすると何だという気持ちも、あるいは持つ方もいるかもしらぬ。だが、そうはいったって、一坪共有地主が拒否しているからこれだけ、ウチナーグチでナンジクンジと言うんだが、難行苦行しておられるわけでしょう、皆さん。それが民主主義のコストなんですよ、ある意味では。だから、そのことについては、契約者の皆さんに対しては謝礼金とかいろいろやったわけでしょう。そこまでやれとは言わないけれども、もう少しは考えていただかないといかぬ面もあるということを注文つけておく、この点については。いいですね。  次に、振興策に移りたいと思います。  そこで、沖縄全体の振興策と、いま一つは、島田懇談会で、いわゆる駐留軍用地所在市町村への問題があるわけですが、総理と大田知事の会談、あれは去年の九月の十日ですか。ここで総理は、基地問題の解決に内閣を挙げて取り組んでいく、日米地位協定見直しと改善に努力する、米軍の兵力構成を含む軍事態勢について米国政府と継続して協議する、政府に沖縄政策協議会を設置をし、自由貿易地域拡大など沖縄の産業、貿易振興に努める、当面五十億円の特別調整費用を予算計上する等が約束されて、これが今具体的に進もうとしているわけですよね。  そういう中で、まず何としても、これは今までのように、沖縄特別措置法があるとか、高補助率であったというだけで問題解決しなかったわけだ。それはそれなりに評価はできるにしても、やはり箱物だけじゃなくして、産業を起こす、雇用を拡大をしていく、物をつくる、そういう形に構造改革せにゃいかないわけですよ、これこそまさに。だから、そういう意味で、私は、自由貿易港、自由貿易地域のことというのは不可欠のやるべきことだと思う、やらにゃいかないことだと思うのですよね。  この間、官房長官、さすがにこの遠大な構想を言っていただきましたが、何かそのことについても、早くも政府部内でいろいろブレーキがかかっているとかいうのですが、少なくとも制度とか法律というようなことの枠を乗り越えてここはやっていただかないと、本当にもう基地問題にしても、産業、経済問題にしてもうまくいかないと思うのですが、改めて総理なり官房長官の御見解を聞かしていただきたいと思います。
  146. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 まず、沖縄懇談会の提言につきましては、これは昨年十一月二十二日、閣議後の閣僚懇談会の席上で、私の方から、関係大臣も沖縄懇談会の提言を重く受けとめるとともに、実現のため最大限の努力をしてもらいたいという指示をいたしました。また、十二月四日の沖縄訪問時の米軍基地所在市町村長との懇談会、この席上でも、平成九年度予算の編成については、基地所在市町村に対し、今後五年から七年の間に数百億円から一千億円の事業費を要するとの懇談会島田座長が言われたことを、閣議においてしっかり受けとめてまいりますということを申し上げました。この懇談会の種々の提言、これは政府全体で受けとめて最大限の努力をしております。  平成九年度予算の中にも、懇談会提言を実現するための初年度予算として、提言に例示のありました五つのプロジェクトの調査費などを計上いたしております。また、市町村のプロジェクトを円滑に実施するために、提言に盛られました市町村のプロジェクトに関する政府の窓口及び関係省庁によるプロジェクト実現に向けた連絡調整の場を設けております。  また、沖縄の振興策という点で、議員から自由貿易港あるいは自由貿易地域について御発言がありました。これは現在、大田知事御自身もメンバーであります沖縄政策協議会において具体的に検討いたしております。自由貿易港あるいは自由貿易地域につきましては、今後のかかり方の検討ということで、今沖縄開発庁を中心に関係省庁、沖縄県が作業を進めております。  今後とも協議会での検討を深めると同時に、県から具体的な構想が提示されることになりましたなら、協議会などの場においてこれは真剣に検討させていただきます。     〔中川(秀)委員長代理退席、委員長着席〕
  147. 上原康助

    ○上原委員 県から近々構想なり提言が出ると思いますのでね。  私がなぜ自由貿易地域の問題、自由貿易港にこだわるかといいますと、ある方から私にこういう本が贈られました。「日本の改革は沖縄から」、これは「沖縄フリーポートへの提案」ということになっているのですよね。これは官房長官にも私お上げしたが、まあお読みになったかどうか知らぬけれども一ありがとうございます。さすがです。元々育ちが余りよくないものだから。  この中に、百六十二ページ、「政府の機敏な対応が大きく影響する」。さらに、まあいろいろありますよね、政府の官僚に任せておっては実現しないとか。これはぜひ大蔵大臣も通産大臣も、千五百円しかしませんからお買いになっていただきたいと思うのです。  だんだん時間がなくなってくるので、劣化ウランを聞かないといかぬのでむずむずしているのだが、沖縄の地位というのは、皆さんは軍事基地の戦略上一番地政学的にいいと言うのだが、冒頭に言ったように、かつて大琉球交易時代をつくったのはこういうところなんですよね。アジア全体に三千キロ以内には全部ある、マニラも北京も東京、ソウル。だから、私は本当に琉球王国をつくろうかと思っている、ちょっともう遅いけれども。大田知事を、新琉球王国にして、私が何になるかわかりませんが、本当に夢じゃないのですよ。笑い事じゃないのですよ、これは。こういう状況にあるということ。余り沖縄をいじめたらいけません、みんな小さいからといって。針は飲み込むことはできませんよ、小さくても針先は。  それと、沖縄をフリーポートにしたら、この本に書いてあるから、これは著作権の問題があるかもしらぬが、僕は借用している。沖縄をフリーポートにして、ヨーロッパにもアジア地域にも、もちろんアメリカにも、アメリカは大きかろうがやはり相手にしてやろう。日本国にもこういうふうにできるんですよ、フリーポートにすれば。  そこで、この問題については、まず官房長官から、この間の蓬莱経済圏の夢は簡単にまたできませんとは言いませんね。これは今総理お答えあったのですが、県からの要望等を入れて推進していただけますね。
  148. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 昨年来、総理の命を受けて、具体的に法律的な権利関係がどう、義務関係がどうなるかわかりませんが、沖縄担当を命ぜられて私なりに、ちょうどこの委員会で去年の三月から四月にかけて、いわば知花さんの問題があったわけであります。まさにあの三月三十一日を過ぎて、ただ一人とはいえ、とにかく失権状態、権原のない状態が直ちに違法とは言いがたいという継続性を理由に、私たちはそのまま使用をいたしているわけでありますけれども、大変これは苦痛を伴う問題であります。  まさに法治国、民主的な国家であります。こういう状態が今後さらに継続し、多発をすることはどんなことがあっても避けなければならない。この思いからこの一年間、総理の命を受けて沖縄の問題にだんだんのめり込んでまいったというか、初めは権利関係をどうすればいいかという勉強もさることながら、今上原委員が言われたように、SACOの問題、それからもう一つはそれを受けて普天間の問題をどう処理をするか、そしてもう一つは沖縄の振興がどこに至るか、全力を尽くして総理とともに、信頼の回復が第一番であろう、そういう思いでやってまいりました。確かに、日暮れて道遠しという感じはいたしますが、これから五月に向けて、私たちは全力の真心を尽くして何とか権原を持った形で良好な基地環境をつくり上げたい、それが一つの方式であります。  それから、ああいった、今総理から具体的な今々の問題はありますけれども、長い間の沖縄の歴史やあるいは地政学的なところから見て、今先生、私に本を下さいましたけれども、その前も、ある先輩からこの構想を聞かされました。そして、今沖縄がなぜこのアジア太平洋地域のかなめとして存在をするか。その裏腹にあるものは、私は、自由貿易構想があっていいはずではないか。そういう目で見ますと、果たして今政体の違う中国やあるいは台湾やその他にどういうアプローチの仕方ができるか、また、政治家がやっていいものかどうか、こういう問題はありましょうけれども、しかし、沖縄が沖縄として自立をし、いや、日本のために大きな力をいたせる立場にあるということを考えるならば、三年、五年、十年かけてもこの構想を生かすことが私たちに与えられた責任でもあるし、また夢でもあるわけであります。  それに向けて努力をすることは、私は単なる、今大蔵省に頼んで何とかこの自由貿易構想をつくれ、あるいはどの程度のものができるかと言うけれども、同じ国内の状態を考えますと、沖縄だけの特異なものが果たしてできるのかどうなのか、沖縄でしかできないものがあるとするならば何なのか、こういうのを考えれば、私は、三年、五年先生言うと大変嫌がられるかもしれませんが、三年、五年はあっという間に過ぎてしまいます。私たちがこの世にいなくなっても、次なる時代に残さなければならない使命を持つわけであります。  こういうものと短期の、今々の問題と両方組み合わせながら一生懸命やっているんですが、能力がありませんから、そううまくはまいりません。しかし、知恵をかりながら、誠意を尽くしながら、そういう問題に取り組んでまいりたい、このように考えます。
  149. 上原康助

    ○上原委員 ぜひ実現するように、強く御要望申し上げておきます。もちろん、私たちも協力いたします。  そこで、もう時間もかなりせっぱ詰まりましたので、全体の振興策の中でも北部振興ということと、今三年、五年かけてもやらにゃいかぬと、私は、これはもう政治的課題だと思うんです。一言ずつ、総理から北部振興のことについてお答えいただいて、大蔵大臣と通産大臣、この自由貿易港の問題について、一緒にやりますというお答えでいいですから、ひとつそれぞれ御答弁しておいてください。
  150. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 沖縄本島北部につきましては、いろいろな集積の進んでおります中南部に比して、過疎化の進展など困難な状況があることを承知をいたしております。これまでも交通網の整備でありますとか、あるいは農林水産業の振興あるいは観光リゾート地の整備、教育施設、保健医療対策など生活環境の整備など、北部の振興に努めてきたところですが、今後ともに沖縄県と協力しながら、沖縄における重要な地域として発展するように、各種の振興施策の検討に誠心誠意当たりたい、そのように考えております。
  151. 三塚博

    ○三塚国務大臣 先ほど来、沖縄の心を、苦悩を、嘆きをミスター沖縄である上原さん、じゅんじゅんと説かれました。内閣委員会で御一緒でありましたから、そのとき、十年、沖縄の苦悩を聞かせていただきました。  ただいま総理からのお話、官房長官、大番頭として本件の取りまとめ役です。大蔵省にお願いするなんていう謙虚なことを言っておりましたが、お国のため、沖縄県民の苦悩を取り払い、一体となって、この国の繁栄と安全のために、大蔵大臣、政治家としてやってくれと命令を受けております。フリーポート、私の及ぶ限り、全力を尽くします。
  152. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 きょうは上原さんの方からいろいろと今まで沖縄が抱えている問題、切々と訴えられました。私も、橋本総理を初めとして全閣僚、そしてこの中の委員の皆様と同じように胸を打たれたわけでございます。実は私には私なりの思いがございますが、これを披露いたしますと時間が長くなるので割愛いたします。  要は、今おっしゃったように、沖縄の将来に向かって、自由貿易港、どうだということでございますが、その前段として、私はやはり沖縄の自立的発展し得るシステムをつくっていく必要があろう。というのは、余りにも製造業の比率が低い県でございますので、まずこの辺から始めていき、そして中期的にはやはりそうした自由貿易港。要は、どこでつくったものをどこに運ぶか、どこから持ってくるか、こういうことでございますから、その点に留意しながら、誠心誠意この問題に取り組んでいきたいと思います。
  153. 上原康助

    ○上原委員 特に通産あるいは農林も関連するかもしれませんが、きょうはもう時間がありませんので、また一般質問等でやりたい。  そこで、きのうから劣化ウラン問題、これはもうあいた口がふさがらぬというか、私は、総理、こういうことはあってはならないと思うんですね、本当に。大事な時期だけに、一体アメリカはもう何を考えているのか、本当に憤激にたえません。  そこで、いろいろきのうからやりとりがありました。情報や資料検討するために県への通報が遅れた、あるいは去年の爆弾投棄事件の場合もそうだったんだが、情報通信システムというか情報提供システムが確立されていないからということでしたが、少なくとも、なぜこういう誤射とか事件、事故が起きたのかという全貌と、アメリカ側が環境影響調査をしたという資料皆さん取り寄せたというんですから、そのことについてはもう既に入手していらっしゃると思うんで、国会に公開してもらわにゃ困る。公開してもらわにゃ困る。その上でないと、これは我々合点がいかない。  一事が万事、もしこれマスコミがかぎつけて公表されなければ、恐らくやみからやみに葬っていったであろう。けしからぬですよ、これは。そのことについてはどなたがお約束しますかね。僕は、その上でまたこれは議論したい。総理でもいいし、外務大臣でもいいし、簡単にお答えいただきたい。情報公開。
  154. 池田行彦

    池田国務大臣 私ども、米側からいろいろ入手いたしました情報につきましては、できる限り今の御指摘にこたえまして、提出できるようにしてまいりたい、こう思います。
  155. 上原康助

    ○上原委員 これはぜひ公開をしてもらわぬと、これはアメリカにとってもよくない。もう少し毅然たる態度で、やはり外務省にしても、政府というのは国民の立場というものを一番大事にして、その上、国益を考えながら外交するのが、私は外交の使命だと思うんですよ。そうなっていますかね、本当に。そこいらになると、大分違う。  それでもう一つ、ちょっと雇用問題でお聞きしたがったんですね。沖縄の産業振興を含めて、雇用の問題が一番大事なんですね。  そこで、雇用促進事業団を何かリストラするということですが、総務長官に聞くと長くなりますので、いずれまた行革問題でいろいろお尋ねをするとして、労働大臣、これからの沖縄の雇用対策について一体どういうお考えでやろうとしているのか、少し見解があればお聞かせいただきたいと思います。
  156. 岡野裕

    ○岡野国務大臣 上原先生がお相手でありますので、結論からお話をいたします。  やはり雇用は、産業、通商行政との裏腹になるわけであります。先ほど通産大臣から、沖縄の産業振興はこうだというお話がありました。それを実現をさせることによって、私どもは雇用の状況を図ってまいりたい。  今まで、えてして沖縄県には水力がないとか、電力供給が不十分だとかいうようなことを言っておりましたが、そんなことを言っておったら始まらぬので、したがいまして、私どもは本土でひとつ雇用口を設けようということで、いろいろ情報等々を提供し、あるいは本土にお越しをいただいた沖縄県民の青少年諸君の寮の完備等々をやってまいりました。ある程度の効果ができました。  しかしながら、人間でありますので、やはりふるさとにあって仕事をしたい、これが県民の皆さんの本当の心ではないかな。したがいまして、中南部一帯に新しい雇用の振興を図れ、沖縄県知事からも御要望がありますが、まず三十歳未満の若手の労働者、この諸君の雇用を確保しよう。そのために、自然資源である海を利用してのダイバーだとか、あるいはヨットによるところの各離島の周航でありますとか、あるいは沖縄にとれるもろもろの亜熱帯の植物、これを利用して健康食品をつくるとかいうような、その地に立脚をした産業を起こして雇用を開拓をする。そのためには、やはり中小企業者等に対しても手を差し伸べていかなければなりません。.  したがって、労働者をより多く雇用したという者に対する助成金、あるいは新たな施設を設けた場合の助成金、そして先生の御地元にもございますが、北谷あるいは沖縄市にありますところの職業開発の訓練校があります。これを大学校にせよという県の御当局のお話もありますが、今その面で予算も法制も準備をその基盤づくりのためにいたしております。ひとつぜひ大所高所から御助言等々も賜りまして、この新しい我々の施策が実るように先生にもお願いを申し上げたい、こう思っております。  念のためでありますが、最後にお話をした施策は雇用促進事業団の仕事であります。  以上であります。
  157. 上原康助

    ○上原委員 もう時間になりましたので、その話をするとまたあれですので終わりますが、公共事業のことで建設大臣にもお尋ねしたい点があったのです。  実は、補正予算のときに資料の開示をやっていただくということを総理もお約束してくださったのですが、社民党が要求してある資料をお出しできないという返事が来ていますが、これは納得がいきかねる面がありますので、もう少し御審査をしていただきたい。一言大臣の、ちょっと済みません。
  158. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 補正に関するあれでございますか。(上原委員「本予算」と呼ぶ)本予算、これはもうできる限り、もちろんお届けいたします。
  159. 上原康助

    ○上原委員 ありがとうございました。
  160. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて上原君の質疑は終了いたしました。  次に、石破茂君。
  161. 石破茂

    石破委員 本日はお時間をいただきまして、第一にナホトカ号のお話、第二に、重複をするかと思いますが、沖縄の問題、第三にガイドラインの問題、三点お尋ねをいたしたいと思っております。  先々週のことであったと思いますが、衆参両院合同でナホトカ号の現場へ行ってまいりました。御報告総理にもいたしたことでございます。  日本海側特有の天気でありますが、晴れたと思ったら吹雪になって、大変な状況でありました。ボランティアの方々は出れませんで、ただただ自衛官の皆様方が、本当に風雪の中で胸まで水につかりながら懸命の作業を続けておられました。  そのときに現地の案内をしていただいた方々、漁協の役員さんもおられましたし、町議会の皆様方もいらっしゃいましたが、その方々が、一体この国の危機管理というのはどうなっているんだ、この国は一体どういう国なんだということを本当に悲痛に叫ばれた言葉が私は耳朶に残って離れないのであります。  何も牽強付会的な議論をするつもりは私はございませんが、恐らくあの場面を見て、阪神大震災、その記憶がダブつた人は少なくないのではないかというふうに思っております。  総理初め政府が誠心誠意対応されたということは私も十分認めるものでありますし、その御労苦に対しては大変敬意を表するものでございますが、何点かお尋ねをいたしたいと思います。  まず第一点。現地の要望としては、この窓口を一本化してくれということが非常に多うございました。いろいろな被害が出ている、しかしながらそれは、漁業は漁業、観光は観光、公共工事は公共工事、そういうふうにばらばらでは仕方がない、どれが優先する債権であり、どれが劣後する債権であるのか、その点について一本化をしてもらいたいという話がある。しかしながら、それは原告団を一本化するとかそういうような道をとらない限り、なかなか言うはやすく行うことはかたいのではないかというふうに思っておりますが、その点についてどうであろうかということ。  そして、報道されておることでありますが、例の仮設道路、四十五億円かかった。しかし、この金は一体だれが払ってくれるんだ。使えるのか使えないのか、恐らく使わないままぶつ壊しちゃうんじゃないか。そうすると、一体発注者はだれであり、だれがそのお金を払うのかということであります。災害と認定をいたしましても個人補償まではいかないのは、これは当然のことであります。新規の立法が必要でありますけれども、そういうようなものに対してどのような対応をお考えであるかということが第二点です。  まとめて申しますが、第三点。今日本海に沈んでおります船尾の部分、これに対してはどういうような対応をするべきであるかということであります。  最後にお尋ねをいたしたいのは、二点ほどございます。一つは、このような老朽タンカーというものが日本では使われないが、あちらこちらを走っておる。特に日本海を多く航行しておる。そのことに対して日本政府としてはどうするかということであります。  以上、御答弁をいただきたいと存じます。
  162. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 何点か御質問がございましたので、できるだけ漏れないように、順序を追って御答弁を申し上げたいと思っております。  まず、油濁損害に対する補償の窓口の一本化の問題でございます。  これは、先生から御指摘をいただきまして、私も実は同じことを考えました。何とかこういうことができないのかなということを考えてみました。しかしながら、御承知のとおり、この補償につきましては、基本的には船主と被害者の民事上の問題でございます。と申しますと、国も一被害者ということになるわけでございます。そういたしますと、他の損害賠償者の方と民事上は同じ立場になってくる。そうなりますと、利益関係が相対するような事態が出てくるということも考えられるのではないか、これはちょっとまずいのではないかなという気がいたします。  それから、もう一方、支払い側からいたしますと、いろいろ審査するのにはそれぞれの賠償の請求ごとに審査をやるという作業になっているということもこれあり、また具体的に、実際その損害賠償の手続に入っているという被害者の方もあるわけでございますので、今の段階ではなかなか窓口をまとめていくということは困難なのかなというのが結論でございます。  円滑な賠償、補償に対する国としての引き続いての努力、ロシア側に対する努力というのは全力を挙げていくということは当然であろうし、基金に対する損害賠償請求に対する手続の問題、調整の問題、そういった窓口、相談所というものは、十分ひとつ被害者の方々の御要望にこたえることのできるように聞いていくということには努力をしていきたいというふうに思っております。  それから二番目は、老朽タンカーの規制の問題でございますけれども、先生も御案内だと思うのでございますが、実は海洋法に関する国際連合条約の第十七条でございますが、「すべての国の船舶は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、この条約に従うことを条件として、領海において無害通航権を有する。」こうなっているわけでございまして、現行では、領海内を無害航行する船舶に対して我が国が規制をするということはできないわけでございます。  しかしながら、これだけの大きな事故を考えてみますと、じゃ、どういうことができるのかと。外務省とも御相談を申し上げて、御協力をいただくわけでございますが、国際海事機関等を通じまして、旗国、特に自分の国の船舶について、それぞれの国の責任において検査を徹底させていただくような要望を続けていく。また、同時に、寄港いたしました老朽タンカーについて、我が国において検査の徹底を強化していく、こういったことを私どもは充実をさせていくということが必要ではなかろうか、このように思っているところでございます。  それから三点目は、船尾部の、沈没いたしている本体の問題でございます。これは御承知のとおり、つい先般、深海観測の何とか3Kという極めて性能の高い観測装置で調べました結果、やはり湧出油が認められている状況でございます。  これは、極めて専門的な、技術的な問題でありますが、私といたしましては、明日、学識経験者から成る、船尾部、沈没した本体、そして本当にどの部分からあの湧出が行われているのか等、もっと徹底的にひとつ調査をした上で、どういう対応があるのか。今、航空機それから海上保安庁の巡視船等で、二十四時間体制で実は監視をいたしております。幸いなことに、油そのものは先端においては拡散霧消しているわけでございますけれども、これの本格処理というものについての研究をひとつやっていただこうという調査機関を設置させていただきたいというふうに思っているところでございます。  なお、船首部の施設建設に伴う費用でございますが、これは、海上保安庁の長官から海上災害防止センターに指示してあの工事を行っていただいたわけでございます。当然、基金の方に費用として請求をさせていただきたい、このように思っております。
  163. 石破茂

    石破委員 外務大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  これは報道ですから、私はじかに確認をしたわけではございません。この事故が起こりまして、アメリカの方から機材提供の申し出というものはございましたでしょうか。  なぜそのようなことをお尋ねするかと申しますと、阪神大震災が起こりましたときに、当時の村山総理に対しましてクリントン大統領から、在日米軍でできることがあればいかなることにも対応する、そのような申し出があったやに承っております。それに対して、毛布の提供というものを申し出たということでありますが、私は、あの場合には、本当にもっと有効な在日米軍へのお願いの仕方があったのではないかというふうに思われてなりません。それは、アレルギーというようなものを取り払って、本当に生命を救うためには何をすべきかという判断が優先をするものというふうに考えております。  今回の事件につきまして、米国から何らかのそのような申し出があったかどうか、承りたいと存じます。
  164. 池田行彦

    池田国務大臣 政府ベースでは、ございませんでした。今委員、報道と言われましたけれども、私もその報道を見た記憶がございますが、それは、たしか民間ベースで何かそういったお話があったけれども、こちらのニーズに必ずしも合わないということで実行には至らなかった、そういうケースではなかったかと存じております。  それから、一つ申しますならば、先方から申し出があったというよりも、当方から何かをしたかという点でございますけれども、これは運輸省ともいろいろ連絡をとりながら、外務省といたしまして、こういった油濁事故に対する経験のある国、あるいはいろいろな資材、設備等を持っている可能性のある国に対して、いろいろそういった向こうからの協力の可能性について照会をした、こういうことがございます。  たしか二十カ国余り照会いたしましたが、当然のことながらその中には米国も含まれております。そして、米国の持っている機材、資材等についての情報はそろいましたけれども、具体的に今回の事故に対応するについて、米国のそういった資材を応援を頼むには至らなかった、具体的にそういった協力を求めたのはシンガポールと韓国であった、このように実は承知しております。
  165. 石破茂

    石破委員 時間の制約上、次の話へ行かせていただきたいと思います。  上原委員あるいは堀込委員質問と重複をする点があろうかと思いますが、観点を変えてできるだけ質問をさせていただきたいと思いますので、御了承をいただきたいと思います。  五月十四日に本当に間に合うのかということであります。過去の例からすれば、現状においてはほぼそれは絶望に近いのではないかというふうに判断をせざるを得ない。よほど急げばということでありますけれども、今まで一年以上かかった例もあるわけであります。いよいよ間に合わない、しからば特別立法だ、法律の改正だということで本当にいいのだろうか。今のところは、間に合うように最大限の努力をするし、そのように期待をしておるという表明しかできないのかもしれませんが、現状で今の土地収用委員会の状況をどのように把握され、そして本当に間に合うかどうかについてどのような御認識をお持ちでいらっしゃいますか。
  166. 久間章生

    ○久間国務大臣 先ほども上原委員の御質問お答えいたしましたように、大変厳しい状況にあるのは委員の御指摘のとおりでございます。  しかしながら、沖縄県との信頼関係に立って縦覧公告をやってもらった、そういう経緯もございまして、そういう流れの中で、とにかくできるだけ早く、迅速にやってもらうということを今お願いをしているというところでございます。
  167. 石破茂

    石破委員 恐らくそのような御答弁がぎりぎりかと思いますが、しからば観点を変えます。  土地収用委員会の持っておる権限とは何ですか。
  168. 久間章生

    ○久間国務大臣 土地収用委員会は、事業者が、この場合では国なら国でございますけれども、起業者が申請したものを、事業認定はもうそこでやっているわけでございますから、それを受けて、その内容が、申請の手続に瑕疵があるかどうか、その辺をまず最初の段階でチェックすると思いますけれども、それが出てまいりましたら、対価が適正であるかとか面積が正確であるかとか、そういうことをいろいろやっていくわけでございまして、収用委員会の仕事として事業認定の妥当性はできないというのが土地収用法の大体の解説になっております。
  169. 石破茂

    石破委員 ただいま大臣お答えのとおり、結局せんじ詰めれば、価格が適正であるか、賃貸料が適正であるかということ、そしてその期間はどうであるか。かつて十年が五年に変わったことがございますけれども、せんじ詰めればその二点であろうというふうに私は理解をするわけでございます。  だとするならば、本当に急ぎに急いだ場合には間に合うということも、私は可能性としてはあり得ることであろう。しかしながら、本当にその時点で、米軍に貸与することが適正であるとかないとか、そのような判断をする権限はないというふうな理解で私はよろしいのだろうと思っております。  私もこの沖縄の問題は関心がございまして、当然、日本国民であればだれも持っておることでございます。昨年は規制緩和の委員長として行ってまいりまして、いろいろな御要望も承ってまいりました。おととしは環境委員会で見てまいりました。  私は、南部戦跡というものを見まして、大げさな言葉で言えば、自分の人生観が変わるような大変なショックを受けて帰ってまいりました。そして、先ほど上原委員が御指摘になったような、私はかねがね不思議だったのですけれども、なぜ沖縄戦であんなに民間人が巻き添えになって死んでしまったのかということが強い疑問でございました。日本というのはそういうことをしない国だ、何があっても民間人を巻き添えにみずからすることはない国だというふうに理解をいたしておりましたが、なぜ沖縄で無事の民があのように死んでいかねばならなかったか。その内容は差し控えますが、あるものを見て私は大変な衝撃を受けましたし、同時に、ひめゆり部隊のいろいろな証言もお聞きし、その本も買い求め、自分の子供たちにも常にそのお話をしておる人間でございます。  私は、沖縄はお気の毒である、日本は安全であってもらいたい、しかしながら私のところに基地は来るのは嫌ですよ、そのような話は成り立たないのだろうと思っている。本当に日本国民全体でそのことを負わねばならないし、もし本土が分担できるものであれば、それは本土が分担をするのが当然であろうと思っておりますが、同時に、先ほど独立論もございましたけれども、沖縄でなくてはならないものというのもあるのではないかということであります。沖縄でなくてはならないものというのもあるとするならば、その痛みを本土全体でいかに負うかということも、また政府として全国民に訴えねばならないことであるというふうに考えております。その点について、どのようにお考えでいらっしゃいましょうか。沖縄でなくてはならないというものがあるかどうか。  そして、整理縮小というふうによく言われます。本当に沖縄県全体の米軍面積というのは縮小されるのでしょうか。縮小されずに、それは場所が移るだけであるということであれば、上原委員指摘のように、なかなか御納得は得にくいことであろうというふうに思っておりますが、その点、いかがですか。
  170. 久間章生

    ○久間国務大臣 今委員は沖縄でなければならないものと言われましたけれども、これは全く白地なところに何かをつくったり持ってくる場合でございますと、そういう議論もできるわけでございますけれども、それだけではなくて、現在あるという前提に立ってそれをどう考えるかというところにまた難しさも実はあるわけでございまして、その辺についてもひとつ御理解いただきたいと思います。  それともう一点は縮小でございますけれども、これは基地を確かに移設したりなんかしますけれども、面積的にもやはり減ることはかなり減るわけでございまして、ただ機能的にどうしても残さざるを得ないというようなことから、機能を残して、日米安保条約の目的達成との関係から、それはそのまま機能的には残しながら施設を統合して、あるいは縮小するという形であのようなSACOの最終報告を出させていただいたわけでございますから、その点についてもひとつ、面積も減るということは間違いないわけでございますので、御理解していただきたいと思います。
  171. 石破茂

    石破委員 ある程度は減るだろうと思いますが、どれだけ減るかという問題でございます。  このたびの総理の御決断というのは、今までいろいろなことが言われていたが、それは、たとえお金がかかっても、その分はやっていくんだということに大きな意味があるだろうと思っているのですね。つまり、今あるものだからというお話ではなくて、ある意味、お金で解決ができるものであればみんなで負担を分担し合っていこうよというお話も含んでおるのだろうと思います。  しかしながら、ひとつ考えてみますに、スービックの基地がなくなった、そして香港が返還になる、いろいろな事情がございます。そのようないろいろな前提もございまして、どうしても沖縄に地政学上、戦略上これはなくてはならないものであるということは明確にしていかねばならぬのではないですか。なぜ沖縄なのかということはきちんと明確にしていかねばいかぬことではありませんか。
  172. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、今議員が述べてこられたものを全く否定するつもりはありません。同時に、防衛庁長官から、現実に存在するというところから考えていただきたいと申し上げたことも、事実として御理解をいただきたいと存じます。  その上で、米軍の展開というものの中で、スービックを例に挙げられ、正確に申し上げるならスービック及びクラークフィールド、すなわちフィリピンからの撤退という状況一つ生まれた。また本年七月には、恐らく今世紀最大の返還ということが言えるでありましょう、香港の中国への返還が行われます。そうした状況を例示に挙げられましたが、もう一つ、私からそうしたケースでつけ加えさせていただくとするなら、朝鮮半島情勢の不安定、また不確実性、不透明性、どういう言い方でもよろしいと思いますけれども、朝鮮半島情勢というものも判断の中に加えていただきたい、そのように思います。
  173. 石破茂

    石破委員 今総理からお答えをいただきました朝鮮情勢でございます。  私は、冷戦が終わったということは一体どういう意味を持つものであるかということを、もう一度考え直してみなければいけないことではないかと思うのです。冷戦が終わったから世界が平和になったとか、冷戦が終わったからアジアが平和になったとか、私はそのような認識を持っておる者ではございません。かえって、地域紛争というものは頻発をするようになったということは明らかな事実であるというふうに思っております。  非常に俗な言い方をすれば、今までアメリカとソ連というお巡りさんが世界じゅうに二人いたようなものです。しかしながら、その一方が消失をしてしまう。少なくとも、今までのような抑えはきかなくなってくる。そうすると、それだけでも不安定なことになるのではないかというふうに私は思ってまいりました。冷戦が終わったからこそ、今安全保障というものを正面から考えねばならないし、そうであらばこそ、そのことを正面から国民に問いかけねばならない、そういうときが来たのだろうと思っております。  そういうときに、たまたま北朝鮮の書記の亡命事件ということが起こったわけでありますけれども、私は、アジアにおいてはさらに不安定であるというふうな認識を持たざるを得ないというふうに思っております。  一つは、隣のうちに蔵が建つと腹が立つなんて話がありますが、とにかく、経済格差がこれだけ国によって違う地域というのはほかにどうも見当たりそうにない。そしてまた、宗教、これの対立というものも依然としてあるのがアジアが一番顕著であるというふうに思っております。領土の問題というのも、南沙群島の例を引くまでもなく、アジアにおいては大変な問題であります。かてて加えまして、アジアの経済成長というものが非常に高いレベルにある。経済成長やりますと、結局は軍備増強ということが、理論的に裏づけられるわけではありませんが、そういうことが惹起されておるというふうに認識をすべきではないかと思っております。  今までお金がなくて兵器が買えなかったが、経済成長によっていわゆる先端兵器というものが買えるようになった。そして、ロシアが武器のバーゲンセールをやっておる。中東もオイル価格の安定によってこれ以上の軍拡は無理である。そうであれば兵器を買わない、その分がアジアに流れ込むというようなこともあるのでありましょう。  もう一つは、これは申し上げると差しさわりがあるのかもしれませんが、依然として独裁国家が存在をするということだと思います。独裁国家の一つの特徴というのは、恐らくその国には世論というものがないであろうということだと私は思います。書記の亡命事件につきましても、恐らく北朝鮮では、韓国によって拉致されたという報道が朝な夕なになされておることだろうと思います。私も北鮮という国は一度行ってまいりました。いい悪いは別です。独裁国家というものには世論がない。暴発をするものを世論によってとめることができない。それがアジアには厳として存在をしておるということであります。  したがって、アジアにおける情勢は冷戦終了後なお不安定なままであるというふうに認識をしておりますが、総理の御見解を承りたいと存じます。
  174. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 まず第一前提として置かれた、世界に二人のお巡りさんがいた、それが一人になっちゃった、そして、そのお巡りさん自身のところにもいろいろな問題が出てきている。これらは私、非常にうまく形容された、大変失礼な言い方でありますけれども、と思います。  その上で、私は、アジア太平洋地域になお不安定な要因が多数あると思っております。しかし、それはもともと内在していた、あるいは顕在化していたが、我々が必ずしも気がつかなかった、あるいは我が国が必ずしも関心を持たなかった。問題は今までもあったのだと思うのです。そしてそれが、それだけアジア太平洋地域全体の発展の中において、全体の成長が進む中に、逆に問題が顕在化してきた、これは私も議員の御指摘のとおりであろうと思います。  そして、そういう意味では、私はアジア太平洋地域において、日米安保体制というものによって米軍のプレゼンスをこの地域に確保しておくことの必要性、その役割の大きさというものは極めて高いものがあると思います。  同時に、私は同じように、日米と同じようにという意味ですが、日中、米中という関係を安定させていく必要が非常に大きいと思っておりますし、ARFのような枠組みの中で、例えば中国を建設的なパートナーとして国際社会により一層迎え入れていくためにも、多国間の安全保障の枠組みの中で、より積極的に情報開示を迫っていくといった努力も必要になるであろう。同時に、我々もまた、日米防衛協力についてのガイドライン、こうしたものについての透明性を確保することによって、余計な疑心暗鬼を呼ばないように国際社会に対してする責任もある、そのように思います。
  175. 石破茂

    石破委員 アジアにおける信頼醸成システムというものは、本当に構築可能なものであろうかということを私は思っておるのであります。できれば大変に結構なことでございますが、現実を直視してみますと、これは、ヨーロッパにおけるOSCEのようなものがアジアにおいてできればいいし、できるために我が国も最大限の努力をするべきだというふうには思っております。しかしながら、アジアの国を見ますと、どの国とどの国の間に争いがあって、どの国とどの国がどうなっておるのか、敵の敵は味方だみたいな話がありまして、三角関係、四角関係、さっぱりわからない、非常に難しいということはあるだろうと思います。我が国もその構築に向けて最大限の努力はしなければいけないが、しかし、総理の御主張はこういうことではありませんか。  それと並行して、同時に、日米安全保障条約というのは、今まで五条の方を重点に置いて考えてきた。しかしこれから先は、同時に書いてある六条、これへ向けて、これがきちんと機能するように、信頼醸成システムと言っても何と言ってもいいですが、それの構築とともに、日米同盟というものは六条の問題も中心にこれから国民の理解を得ていかねばならない、そういう御認識だと思いますが、いかがですか。
  176. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 中心にといいますと、何か条約上の比重が急に変化するような感じがします。今までも、私は、五条、六条ともに我々にとって大切な条文であったと思います。ただ、その中で、一般的な関心というものが五条に集中していた、そういう事実は私もそのとおりだと思います。その意味では、六条をも含めてバランスのとれた、条約を遵守するそうした姿勢が必要だ、私はそう思います。どちらかに比重が傾いているということではないと思うのです。
  177. 石破茂

    石破委員 そこで、先ほど来お話が出ておりますが、ガイドラインの見直しについて、関連することでありますのでお話をさせていただきたいと存じます。  私は、五条と並んで、中心と言ったのは言い方が間違いでした、訂正をいたします、六条の問題も同時に国民に向けて提起をしていかねばならない問題であるというふうに思います。それで、このガイドラインの見直しということをやっていかねばならない、それが透明性の高い過程を経なければいけない、そのとおりだと思っております。  そこでお尋ねをいたしますが、このガイドラインの見直しに臨まれる基本的なスタンスとは何であるかということ、これをもう一度念のため確認をいたしたいと思います。
  178. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 これは、今までも申し上げてきましたことなので、正確に紙を見ながら申し上げておきたいと思います。  日米防衛協力のための指針の見直し、これは、これまで進められてきた日米間の防衛協力を基礎として、新しい時代におけるより効果的な防衛協力関係を構築するために行っているものであります。現在、防衛協力小委員会のもとで見直しの作業が進められているところでありまして、昨年九月の日米安全保障協議委員会において発表されました進捗状況報告に示されましたとおり、この作業を本年の秋に終了することを目途に進めてまいりたい。目下作業を進めておるところであります。
  179. 石破茂

    石破委員 集団的自衛権の話に私は触れざるを得ないと思っております。  つまり、今までの憲法の解釈を変えないという御答弁がるるなされてまいりました。私が理解をしておりますところでは、政府の姿勢としては、憲法解釈は変えない、そして、いわゆる個別的自衛権と集団的自衛権の間のいわゆるグレーゾーンというものを埋めていくという作業によって、このガイドラインを見直すというふうに理解をしておりますが、それで間違いございませんか。
  180. 池田行彦

    池田国務大臣 今回のガイドラインの作業におきましても、当然のことながら我が国の憲法の枠内でございますし、また、ただいま御指摘もございましたが、集団的自衛権に関する憲法解釈等、これは変えない、そういった前提で進んでいるものでございます。  そういった中で、それじゃグレーゾーンを埋めるのかという御質問でございますが、必ずしもそうとばかりも申せません。  御承知のとおり、ガイドラインは三項から成っておりまして、平素からやるべき協力と、それからいわゆる日本有事のと、それからまた周辺地域、こう三つに分かれているわけでございますが、さきの第一項、第二項についても、これはさきの大綱ができたとき、昭和五十三年でしたかね、それ以来ですから、かなり国際情勢、とりわけ日本周辺の安保環境は変わっております。そういったことを踏まえまして、これまでもある程度ガイドラインあったけれども、それを新しい情勢に合わせて見直す、こういう部分があるわけでございます。  それから第三項目、我が国周辺地域にかかわるガイドラインにつきましては、従来の作業は必ずしも十分進んでおりませんでした。そういった意味ではグレーゾーンと言っていいのか、形容の仕方はいろいろありましょうが、全体的な整備はなされていなかった、手当てがしていないところがかなりあったというのは、これは否定できないところでございます。そういったところにつきまして、今回の作業ではいろいろ我が国としてあるいは日米協力して出すべきことはどういうことがあるかということを、作業を進め、検討を進めていこう、こういうことでございます。
  181. 石破茂

    石破委員 例えば、その役務提供協定、ACSA、これは平時において適用するということですね。このような関係というのはほかにあるんでしょうか。例えばアメリカと韓国が結んでおるようなもの、そういうような提供協定の中に、平時に限ってなどというものが本当にあるんだろうか。おかしな例えかもしれませんが、消防車を訓練のときには使うが火事のときには使わないと言っているのとどこが違うのか、私には理解ができないのです。これをなぜ平時に限るかということについて、お教えをいただきたい。  何で私がこんなことを申し上げているかといいますと、これは選挙のときにも申し上げたことです、公の場で申し上げたことです、逃げも隠れもいたしません。私は、集団的自衛権というものは日本国は保有し、使える、しかし、使う使わないがまさしく政策判断であるというふうに思っております。それは私の一つの考え方でありますが。  そういうようなことに立ってこれから質問したいと思っておるのでありますけれども、お尋ねいたします。平時に限られた理由、そしてそれがどのような役を果たすものであるか。つまり、今までよりはましなんですよ。不時着扱いにするとか食糧の残ったものを出したことにするとか、そういう荒唐無稽なことから離脱できるという点では評価はします。しかし、平時に限るというふうにしたことで、本当にそれは意味をなすものです一か。
  182. 池田行彦

    池田国務大臣 まず最初に、委員が前提にされました集団的自衛権の点でございますが、これは国連憲章上といいましょうか、あるいは国際法上は、当然のこととして、我が国は個別的自衛権も集団的自衛権も有しているわけでございます。しかし、日本国憲法、とりわけ九条の解釈からいたしまして、集団的自衛権というのは必要最小限度を超えるものとして認められない、こういうことになっていることをまず申し上げておきます。  そして、いわゆるACSA、日米間で締結されました物品役務の相互提供協定でございますが、これはおっしゃるとおり、いわゆる有事を対象にしておりません。これは厳密に言いますと、有事、平時といった角度から決めたものじゃございません。対象を日米の共同訓練、そしてPKO業務、それから人道上の国際的支援業務、こういうふうにしているわけでございますから、そうしていわゆる有事、平時という定義は法律上は必ずしもないわけでございますけれども、これを一般的にいわゆる戦闘活動が行われている状態ということに考えるならば、いわゆる有事には先般締結しました協定は適用されないと言っていいかと思いますけれども、そういった意味では、他の国の間で結ばれている協定に比較するならば、やはり若干特色のあるといいましょうか、ユニークなものかもしれません。一般的には、いわゆる有事も対象とした協定が普通でございますから。  しかし、それはやはり、日本の自衛隊のあり方あるいは日米協力のあり方というものをいろいろ念頭に置きながら、いろいろこれまでの日米間の協力の経験も踏まえてきて、いろんな検討の結果、先ほど言いました共同訓練等の三つの分野に限定してやろうとしたわけでございます。  そして、やはりその共同訓練というのは、例えば、いわゆる日本有事が起きたときに日米間で共同対処していくための、そのためのいろんな、何といいましょうか、経験も積み、腕も磨いていくという効果があるわけでございますから、訓練というものもそれだけの意味があるというのは当然でございます。PKOなり人道上の国際救援活動についての意味があるというのは、御高承のとおりでございます。そういうことでございます。  それから、もう一点ございましたですね。  ガイドラインの検討なとを含めて将来どうなのかという点ですが、それは検討を経た上で、一体どういうことが必要か、またいろいろ考え、場合によってはまたそれも国会にも御相談するということは、その可能性はあるということだと思います。
  183. 石破茂

    石破委員 これは法制局長官にお尋ねした方がいいかもしれません。  今外務大臣お答えになったようなことだろうと私は理解をしておりますが、それでは、日本国は集団的自衛権を、主権国家である以上、保有しております。日本国憲法上、集団的自衛権を保有しておりますか。
  184. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 先ほど委員は御自分の立場を、国際法上保有し、行使はできるけれども、するかしないかは政策問題であるという基本的な見解を述べられたわけでございますが、私どもは、国際法上は保有している、しかしながら憲法九条のもとではそれを行使することができないということをるる申し上げてきているわけでございます。
  185. 石破茂

    石破委員 私がお尋ねをしておるのは、日本国憲法上保有しているかしていないかという点です。保有しているかしていないかをお答えください。
  186. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 その点も過去に何度かお尋ねがあった問題ではございますが、要するに、憲法九条のもとで行使することが絶対に認められておらない集団的自衛権というものについて、憲法上保有が認められているかどうかということを論ずることがそもそも意味がないじゃないかということを述べているわけでございます。  そこで、過去の法制局の元長官答弁の言葉遣いといたしましては、例えば昭和五十六年六月三日の衆議院法務委員会におきます当時の角田政府委員の言葉を引用いたしますと、「結局集団的自衛権は憲法によって行使することができないわけでございますから、それは国内法上は持っていないと言っても結論的には同じだと思います。」こういう説明をしてきていることもございます。
  187. 石破茂

    石破委員 このお話はそういう答弁だろうと思いますよ。しかしながら、だとすれば、保有はしておるが行使はできないなどという概念が、特に自衛権についてそのような概念を持っておる国が世界の中にはかにどこかありますか。
  188. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 世界的に全く同様の法制があるかどうかについては、私はそこまで十分に調べ尽くしているわけでございませんが、要するに、今述べましたような結論になりますのは、憲法九条が、戦争、武力による威嚇、武力の行使は永久にこれを放棄するという規定を設けている憲法を我が国が持っておるということの結果でございます。したがいまして、それをもっておかしいと考えるのか、おかしくないと考えるのかは、憲法九条を肯定するのかしないのかという結論によろうかと思います。
  189. 石破茂

    石破委員 私は憲法九条を否定なんかしていませんよ。九条を否定なんかしていません。そういう言い方は私は余り納得できない。九条を否定しておるつもりは私は全くございません。  憲法上持っているのか持っていないのかということについてもお答えができない、いただけない。そのことは余り議論する意味がない、そのような話で本当にいいのでしょうか。世界で百八十数カ国ありますが、このような妙ちきりんな解釈をしている国は世界じゅうどこにもない。あるけれども使えない権利というものは権利の名に値しない、私はそのように思っているのです。  それで、変えようと思えば、今大臣席からお話がありますが、改正をするしかないのだろうかということです。改正をするしかないのかどうか。私は、それは改正をする必要がないというふうに思っております。かつての法制局答弁の中に、もし解釈を変えようと思えばそれは憲法改正が必要であるというような答弁がございました。確かに私もそれを存じております。  だとするならば、一体、国会における議論とは何か、議会制民主主義とは何か、総理大臣の解散権とは何かということになろうかと思います。今まででも変わってきたわけですね。つまり自衛権、個別的自衛権そのものもないんだというような解釈でした。最初は、間違いないはずです、吉田総理はそのようにお答えになっておられます。それから、戦力に至らざる自衛力は合憲であるというふうに変わりました。明らかに政府解釈は変わっていますね。変わっていませんか。  だとするならば、政府解釈はそこで大きく百八十度転換しているわけですから、そのときに憲法改正の必要があったというふうな論理的帰結になろうかと思いますが、いかがですか。
  190. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 まず、憲法解釈の変更はあり得るのかということについてお答えいたしたいと思いますが、委員御承知のとおり、憲法を初め法令の解釈と申しますのは、当該法令の文言とか趣旨に即しつつ、立案者の意図をも考慮して、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性をも保つことにも留意して、論理的に確定するという作業でございます。  政府の憲法解釈につきましても、このような考え方に基づきまして、それぞれ論理的な追求の結果として今まで国会等の席においても申し上げてきたとおりでございまして、一般論として申し上げますと、政府がこのような考え方を離れて、必要に応じて自由にこれを変更するということは不可能でございます。特に、憲法九条に関する現行の政府の解釈、これは憲法の基本理念である平和主義という国の基本的あり方にかかわるものでございまして、長年にわたる議論の積み重ねを経て確定され、定着しているものであると私どもは信じております。  したがいまして、政府がその政策のために従前の憲法解釈を基本的に変更するということは不可能であると私も考えておりまして、先ほど言及されましたかつての法制局関係者の見解も、そのような見解に基づくものであると思います。  そして、先ほど、過去に憲法解釈が変わってきているじゃないかということで自衛権に関する論議の経過を御指摘になりましたけれども、多分当時の吉田総理の自衛権に関する一連の国会答弁というものを取り上げられて、それが憲法解釈の変更を含んでいるのじゃないかという御指摘であろうと思います。  この点も今まで何度か御質問を受け、また答弁がなされているわけでございますけれども、吉田総理の昭和二十一年七月四日の答弁、そして二十六年十月十八日の答弁というようなものを概観いたしますと、吉田総理の当時述べようとされた真意というのは、自衛権を憲法は否定しているというものではなかったというものでありまして、憲法九条は自衛権は放棄していないし、外国からの急迫不正の侵害があったときは、これを排除して、我が国土、国民を守るための必要最小限の武力行使は許されるという現在の政府の解釈と矛盾する説明がなされてきたものとは理解していないわけでございます。その説明ぶりの言葉は若干の変遷がございますけれども、底に流るる基本的な考え方というものに憲法解釈の変更を伴うような変更はないというのが私どもの考えでございます。
  191. 石破茂

    石破委員 私はそのような考えには全然納得ができません。国際情勢がどんなに変わろうとも、それによって解釈がどのようにつじつまが合わなくなろうとも、それは憲法改正によるのほかないということであれば、国会における議論というのは一体何であるかというふうに私は思わざるを得ない。  しかし、今いろいろおっしゃいましたが、何をどのようにおっしゃいましても、吉田総理のお考えは、どう読んでも明らかに変わっています。それは、国際情勢が変わった、朝鮮戦争が起こった、そういうことに起因をするものでありまして、それは解釈を当然変更するべきものというふうに判断をなさったのでしょう。私は、そのときに憲法改正をすべきであったというふうに思っています。常識に合うように、きちんと手続にのっとってやっていれば、こんなにアクロバットみたいなことを、ずっと苦しいことを続けなくてもよかったのだろうというふうに思えてなりません。いかがですか。
  192. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 それはちょっと、私、法制局長官にお尋ねになるのには無理があると思うのです。法制局の責任は、私が申し上げるまでもなく、法律の解釈、違憲性、こうしたものをチェックする。当然のことながら、その職分に応じて長官答弁を申し上げております。  私も、その歴史的な流れの中で、当時独立をかち得ていくプロセスの中で、非常に当時の先輩方が苦労をされて、そして国民全体の空気との間でぎりぎりの道を模索してこられた、その努力を否定するつもりはありません。同時に、多少とも、子供でありましたけれども、その時代を覚えておる人間として、議員が今お述べになりましたように、あそこで憲法を改正すべきであったと一言で言い切る勇気は私には到底ありません。その上で、今法制局長官として、私はぎりぎりの御答弁を申し上げておると存じます。
  193. 石破茂

    石破委員 それはそうだろうと思います。ぎりぎりの御答弁だろうと思いますが、私はこのことの議論はもっと国会において深まるべきものだろうというふうに思えてなりません。それは、二大政党と言われます自由民主党、新進党の中にあっても、これは合憲だとする考え方と違憲だとする考え方が混在をしております。したがって、国会においてそういう議論には恐らくならないのだろう。それを言ってしまえば党が割れてしまうとか、政権がなくなってしまうとか、いろいろなことがあるだろうと思いますが、そのことをどうするのかなということをやはり真剣に論じなければいけない。  私は、正当防衛の要件というのは何なのだろうかということを考えてみなければいけない。そして国内法において、他人のためにする防衛というものもなぜ国内法において認められているのか、その場合の保護法益とは何であるのか、それを全世界に広げた場合にどういうことになるのだろうかということを考えてみますと、正当防衛に当たるか当たらないかというのは、それは、相手方の侵害とこちらが加える反撃との比較考量の問題なのだろう。それは、相手がどれぐらいの武力を持っておるか、こっちがそれに対してどのような手法で応戦をするかというあくまで比較考量の問題であって、憲法論の問題ではないだろうというふうに私は理解をしております。御答弁は要りません。このことは何年も何年も繰り返してきたことでございます。そして、これから先も恐らく何年もかかるのかもしれない。  ただ、ガイドラインを見直すときにどうするのかというときに、その議論を避けて通って、これは違うかもしれません、これも御答弁は要りません。ただ巷間言われておるのは、個別的自衛権というものの範囲をだんだんだんだん広げていくのだという考え方は、私はいかがなものなのかなというふうに思っております。集団的自衛権というものと個別的自衛権というものは、ある意味で区別された概念だというふうに思っています。自分のために守るのか、それとも自分に密接に関係のある他国のためにやるのか、その点が一番のメルクマールなのであって、近いか遠いかとか、その態様がどうであるかということは、個別的自衛権、集団的自衛権を峻別するメルクマールたり得ないというふうに私は信じておるのであります。余りにアクロバットみたいなことをやっていると、おかしなことになりはしないだろうか。  そして、憲法問題に触れるのはタブーなのかもしれませんが、世論調査の結果を皆様方も御存じだろうと思います。憲法改正というのに、ある調査によれば、国民の五割以上がそういう必要もあるだろうというふうに答えております。総理がいみじくも御答弁になったように、私は昭和三十二年の生まれですから、そのころのことを存じません。しかし現在、昭和三十年以降のいわゆる戦無派、まさしく戦無派、これが国民の過半数を超えておる状況であります。だとすれば、今まで日本国憲法というものがどのように生まれ、どのように解釈されということを本当に正面からやっていかなければ、大変なことになってしまうのではないかという認識を私は持つものでございます。  沖縄の話にひっかけて申しますと、よく反戦地主とかいうことが言われます。それは確かにそれなりの主義、信条でなさっておられることでありましょう。しかし、沖縄において同時に大変な犠牲を払っておられるのは、契約地主だと私は思っている。その土地を提供し、何も使えないで国からお金をもらって、国全体のために尽くしておる。そういう人たちの意向というものも、私ども日本内地に住む者はきちんと理解をして、この問題に当たっていかねばならないのではないかなというふうに私は思っております。  最後に、国民投票法というお話を少しさせていただきたいと思います。  憲法九十六条に改正の手続が定めてございます。小泉大臣がおっしゃっておられますように、それは改正によらねばならないという考え方もあります。国会の定める選挙、特別の国民投票、この際に国民投票ができる。これは承認というふうに理解をいたしております。  しかし、今この国に国民投票法という法律はございません。これは立法府の責任であるということを承知した上で申し上げますが、やはり国民投票法というものをつくらねば、ましてや憲法改正というふうに非常に難しいことであるならば、その分母は何なんだろうか、過半数の分母は有効投票総数なのか、投票総数なのか、無効票が多かった場合にはどうするか。一昨年の参議院の選挙のように投票率四四%なんてことになれば、二二%の人が賛成すれば憲法なんて改正できるのかい。それはだれが考えてもおかしなことでありましょう。そういうような手続をきちんと定めた国民投票法というものがなければ、九十六条というのは形骸化をしてしまうのではないかというふうに私は思われます。  憲法を改正しなければだめだというお話がありました。私はそうは思いませんが、私は、総理大臣がきちんとした、きちんとしたといいますか、それなりの解釈をお出しになり、解散・総選挙によって国民の意思を問う、それも一つの形態だろうというふうに思っております。総理の解散権というのはそこまで含むというふうに理解をいたしておりますが、この議論はまたいたすことにして、国民投票法というものをきちんとつくらなければ、九十六条に定められた国民の権利というものは担保されないのではないかというふうに技術的に伺っておるのであります。いかがでしょうか。
  194. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 その国民投票法以前に、一点、議員に対してお礼を申し上げたいと思います。  沖縄県についてのさまざまな問題提起がきょうまでなされてまいりました。しかし、大部分の地権者の方々、民公有土地の所有者の方々、すなわち円満に賃貸借契約に応じてくださっている方の権利という立場からの御論議は、今議員がお触れをいただくまでございませんでした。私どもとしては、こうした方々のお気持ちを無にしないためにも、収用委員会の手続をできるだけ急いでいただきたい。そして、使用権原なしといった不幸な状態を一部のところで惹起しないようにと願っておる次第でありまして、この点にお触れをいただきましたことは改めてお礼を申し上げます。  そこで、憲法改正のためのということから始まりました国民投票制度、これを定める法律というものは、今まで国会発議に至るような憲法改正の具体的な動きがなかった、恐らくそういうこともあったからでありましょう、現在まで制定されておらないわけであります。今後そのような動きが出てまいりました場合には、速やかに法律の制定を行えるように、政府としても当然のことながらそうした事態においては適切に対応する必要があろうと思います。
  195. 石破茂

    石破委員 時間が参りました。終わりますが、こういうような問題、私は政治改革ということでいろいろこだわってまいりましたが、こういう基本的なお話を国民主権に基づいて本当に国民に提起し、問うていかねばならない、それが戦後五十年、二十一世紀を迎える、党派を問わず今の時代を生きる者の責任ではないか、かように思いまして質問をいたしました。御無礼の段がありましたらお許しをいただきたいと思います。  以上で終わります。
  196. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて石破君の質疑は終了いたしました。  次に、望月義夫君。
  197. 望月義夫

    望月委員 同じく21世紀の望月義夫でございます。  私は、新人といたしまして、自民党候補を打ち破って出てまいりました。にもかかわらず、首班指名には橋本総理、あなたに投票いたしました。それは、私が選挙公約に掲げた行財政改革を行うのにふさわしい人物と判断したからであります。なぜなら、総理は、中曽根内閣時代の自民党行財政調査会長としてらつ腕を振るわれ、いわゆる族議員と呼ばれる人々の圧力に屈することなく三公社の民営化を推し進め、その後、運輸大臣として国鉄改革関連法案を通されたという実績がおありになるからであります。  ところが、私がこちらに出てまいりまして五カ月を経過しても先が見えてこない。行財政改革の基礎を築いた土光会長が六十一年の第一次行革審の最終報告で、今ここで行財政改革をあきらめるならば、これまでの努力は水泡に帰し、行財政は再び肥大化の道をたどり、ようやくほの見えてきた明るい希望も消え去るでありましょう、私はこのことが心配でならないのですと言明しております。  そこで、まず総理にお伺いしたいと思いますが、地味で、およそ政治家が敬遠する行財政改革に本当に真剣に取り組むつもりである、行財政改革に取り組む姿勢についてお伺いしたいと思います。
  198. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、既に行政改革委員会が作業を開始され、それとは別に地方分権推進委員会が地方分権の論議を開始され、また国会等移転調査会が答申を出されたという状況の中で総理という座に選ばれることになりました。そして、いろいろな思いを持ちながら、今この行政改革というテーマに取り組んでおります。  そして、今第二次臨時行政調査会にもお触れをいただきましたけれども、当時は国鉄を初めとする三公社、この民営化是か非かといった非常に大きなわかりやすいテーマがございましたが、今我々が取り組まなければならないのは、国の規制をできるだけ緩和し、あるいは撤廃し、一方では、機関委任事務を初めとした国から地方への業務の移しかえを進め、より以上官から民への仕事の切り離しを行い、中央の行政をスリム化しながら、同時にそれにふさわしい行政の仕組みをつくっていく、一つ一つが非常に地味な、しかし大事な仕事の組み合わせであります。  今いろいろな御批判をいただいていることも承知をしておりますけれども、一つでも逆に取り落としをしあるいは組み損なえば、このはめ絵細工のような仕事というものは成立をいたしません。私は、一つ一つを地味に、しかし確実に仕上げていきたい、しかもその期間をできるだけ短く完了していきたい、そのような思いでおります。
  199. 望月義夫

    望月委員 次に、行革をしなくてはならない提言がなされました昭和五十六年三月の第二臨調時における国債残高と、十三年後、平成六年、行革委員会が発足した時点での国債残高はどのように推移をしているのか、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  200. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えさせていただきます。  今委員が御質問されました第二次臨時行政調査会が発足いたしましたのは、まさに御指摘のように、昭和五十六年三月でございまして、その直後の年度末に当たります五十五年度末の国債残高は七十兆五千九十八億円でございます。いま一つの御質問の、行政改革委員会が発足いたしました平成六年十二月でございますが、この直後に当たります年度末の平成六年度末における国債残高は二百六兆六千四十六億円でございます。
  201. 望月義夫

    望月委員 第二臨調のときですら国じゅうが大騒ぎをして、土光会長の号令のもとに真剣に行革が始まったわけでございます。それなのに、平成六年には三倍の二百六兆円になってしまったのです。  総理は火だるまになってやると言明しておりますけれども、これはもう並大抵のことではございません。総理が責任感の強い方であるのはわかるし、また、人任せでは行革は進まない、リーダ丁シップをとるんだと考えているのは重々承知をしておりますが、行政改革本部長、財政構造改革会議議長、行政改革会議会長等、総理が直接その任に、代表となっておられる役が余りにも多過ぎるわけでございまして、各界各層、世論も含め、土光会長のときもそうでございますが、一緒になって国民皆さんと行革を進めなくては、いかに指導者が旗を振ってもでき得ない。総理が余り抱え込まない方がよいのではないか。行革委員会に一切の権限を与えてはどうだろうか。国民の側に積極的な参画を得るのには、第二臨調がそうでありますように、むしろ行革委員会に国民の意見を集中させ、それに対処し、政官が責任を負って処理をする、こういった考え方があるのではないかと思いますが、総理はこのことについてどうお考えか、お伺いしたいと思います。
  202. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 幾つかの点にお触れをいただきましたけれども、行政改革推進本部、これは全閣僚で構成するものでありますから、当然総理大臣が本部長というのは不思議な形ではないと思うのです。  そして、行政改革会議を、私が会長をすることの是非、これは私自身にも思い迷うところはありました。ただ、先ほども申し上げましたように、国会が法律をもっておつくりになっている行政改革委員会、同じように国会が法律をもっておつくりになっている地方分権推進委員会、そして既に任務を終了し、次の作業に入っておられますけれども、国会等移転調査会、これも法律をもってつくられたものでありました。それぞれが並列した状況で、限定された部分についての責任を負っておられたわけであります。  これを束ねなければ、何らかの形で束ねていかなければ全体が進まない。そうした中で実は行政改革会議という仕組みを構想し、そこに行政改革委員会の会長、地方分権推進委員会の会長、それぞれにお入りをいただき、作業をそこで結びつけるという方法を考えました。  力足らずでありますけれども、そういうやり方でないと、並立をし、しかも終点の違うそれぞれの審議会の一体的な運用に効率的な仕組みが考えられなかった。率直に申し上げて、そうした中から今の体系を考えた次第であります。
  203. 望月義夫

    望月委員 総理の行革に対する熱い熱い気持ちはよくわかりましたけれども、私も、選挙公約に行革を掲げて戦い抜いてまいりました。国民に負託されました以上、精いっぱい努力し、協力を惜しみません。このことにつきましては、総理の言葉を承りましたので、注意深く見守ってまいりたい、このように思います。  次に、行財政改革絡みで、整備新幹線についてお伺いしたいと思いますけれども、昨年末の整備新幹線の取り扱いについては、政府・与党の検討委員会において検討することとなっておりますが、検討するということは、着工を目途に置いて話し合いを進めていると思われます。今予算中に、新規着工区間の整備のためとして百億円を別途確保、計上しております。全体予算から見れば少ないとはいえ、着工が決まれば毎年工事額がふえ続けるわけであります。  行財政改革の中にあって、総理は、例外は認めないと常日ごろおっしゃっておりますけれども、公共事業費を圧縮するということが総理の考え方と思いますが、その考え方からすると、現時点では、この整備新幹線は果たして適当なものかどうなのか。  我々21世紀の会派は、慎重に論議を重ねてまいりましたけれども、行革が推進し、経済立て直しができるまでは凍結すべきであるという意見が大変多うございました。また、現在私たち政策協議を行っている太陽党の皆さんも、所属議員の半数近くが整備新幹線関係議員にもかかわらず、国家国民のために我慢を重ね、五年間の凍結策を打ち出したと聞いております。  みんながみんな、おれのところは例外と言ったら、行革は当然のことながら進みません。総理の考えをお聞かせ願いたいと思います。
  204. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 整備新幹線につきましては、さまざまな御意見がございます。何といっても、国土の均衡ある発展、また沿線の活性化、そして沿線の二千数百万という方々の熱い期待、そういう中で、整備新幹線の新規着工区間につきましては、先生もお触れいただきましたけれども、昨年暮れの十二月の政府・与党の合意に基づきまして、整備区間につきましては、収支の採算性の見通し、JRの貸付料等の負担の問題、並行在来線の経営分離によります地方公共団体との同意の問題、JRの同意の問題等基本的な条件を確認いたしまして、そして適切に対処していく、こういう基本的な姿勢でまいりたいと思っております。
  205. 望月義夫

    望月委員 この問題につきましては、国民全体のためと申しますか、次の若い世代に重い負担を残さない、そういう慎重な検討をお願いしておきたいと思います。  次に、国鉄問題でございますけれども、昨年の十二月二十五日に、国鉄長期債務等の本格的処理及び平成九年度において講ずる措置について閣議決定が行われましたけれども、国鉄清算事業団が発足して既に十年が経過しております。あたかも国鉄改革は国民から見ても成功したと思われておりますが、まさに国鉄改革の成功のかぎを握っているのはこの問題であります。  そこで運輸省にお伺いいたしますけれども、事業団発足時の債務残高及び現在の債務残高をお伺いしたいと思います。
  206. 梅崎壽

    ○梅崎政府委員 昭和六十二年四月の国鉄改革時に、国鉄清算事業団が国鉄等から引き継ぎました長期債務等は約二十五兆五千億円でございました。  これに対しまして現在までの状況でございますが、これまでの九年間の土地、株式などの資産売却などの収入がこの間の金利と年金等の負担に満たなかった、こういう事情から、平成八年度首には約二十七兆六千億円に増加いたしております。  なお、平成九年度首におきましては、今年度の資産処分収入額がまだ確定できる段階にございませんけれども、予定どおり収入が確保できたといたしましても、鉄道共済年金の厚生年金への統合に伴います移換金債務約八千億円が発生いたしますので、約二十八兆三千億円に増加する見込みでございます。
  207. 望月義夫

    望月委員 当然問題になっているわけでありますので、債務残高がふえているのは当たり前だと思われますし大変厳しいものがありますが、先般来マスコミで報道されますように、バブル時期までに土地の処分を完了していれば債務処理が順調に進んでいたであろうと思われますが、それを言うと今さらということになってしまいますが、総務庁の行政監察も、事業団用地については、他の国有地とは異なり債務償還の主たる原資となっていることから、早期の処分が緊急課題と指摘をしております。現在のような処分の仕方をしてきたことは国民本位の処分ではなかったと結果的に言えるのではないでしょうか。  そこで、清算事業団による土地、株式の現在までの処分状況及び今後の見通しについて、時間がございませんので、運輸省に手短にお伺いしたいと思います。
  208. 梅崎壽

    ○梅崎政府委員 清算事業団、昭和六十二年度に発足いたしまして、平成七年度までの間に約五千八百ヘクタールの土地を売却いたしまして、総額約四兆六千億円の売却収入を上げてきております。不動産の市況が大変厳しい中、運輸省と清算事業団におきましては最大限の努力をしてきたつもりでございます。
  209. 望月義夫

    望月委員 聞けば聞くほど大問題であると痛感するわけでございますけれども、清算事業団が保有する資産を処分し得たとしても、最終的には、当然のことながら国民に負担を求めざるを得ないわけであります。しかし、事業団発足時には国民負担は十三・八兆円だったと思うわけでございますけれども、最終的に国民に負担を求めなくてはならない債務は現在幾らと見込まれているのか、運輸省にお伺いしたいと思います。
  210. 梅崎壽

    ○梅崎政府委員 国鉄清算事業団の持っております長期債務でございますが、先ほどお答え申し上げましたとおり、平成九年度首には約二十八兆三千億円になる見込みでございます。  一方、これに対しまして清算事業団の持っておる資産でございますけれども、土地、JR株式の売却等によります平成九年度以降の収入額につきましては、今後の地価動向あるいは株式の市況等に影響されるものでありますから、その見込み額を具体的に明らかにすることは困難ではございますけれども、現時点における仮定の計算では、おおむね六ないし七兆円にとどまる見通しでございます。  したがいまして、資産処分終了後に最終的に残ります債務は、具体的に今お示しすることは困難でございますけれども、二十兆円を超えることになると見込まれております。
  211. 望月義夫

    望月委員 いずれにいたしましても、国民負担額は大幅にふえているわけで、駒沢大学の近藤先生調査をちょっと私たち見たのですけれども、現段階で二十二兆円ぐらいですね。約九兆円ふえている。この十年間を振り返って、清算事業団の職員がたゆまない努力を惜しみなくしているのはわかりますけれども、捨て石のごとく扱われた事業団は結果的に見て失敗だったのかどうなのか、運輸大臣にお聞かせ願いたいと思います。
  212. 古賀誠

    ○古賀国務大臣 先生指摘いただきましたように、国鉄のこの長期債務、国鉄改革の総仕上げとして大変重大な課題だというふうに思っております。  なお、この本格処理の着手は、先生も御指摘いただいたように、昨年十二月の閣議決定におきまして、平成十年度から着手させていただき、平成九年度中に本格的な処理についての成案を得るということに決めさせていただいているところでございます。  いろいろ今政府委員の方から御答弁申し上げましたけれども、さまざまな考え方、見方はあろうかと思いますけれども、私は、国民のコンセンサスを得る本格的な債務の処理を行うことに全力を尽くすことによって何としても成功に導きたい、こういう気持ちでおります。
  213. 望月義夫

    望月委員 実は私も、議員として私自身も責任があると思うのでこの質問をしているわけでございまして、政府の皆さんだけの責任をやみくもに追及しているわけではありません。  そこで、大蔵大臣にお伺いしたいのですけれども、平成九年度において事業団の借り入れ見込み額に相当する額の有利子債務を無利子化するとうたわれておりますが、これは単なる止血剤にすぎないのは大臣もよくわかっていらっしゃると思いますけれども、そこで、国民の負担を軽減するのに、例えば資金運用部からの借り入れについて、皆さんよく言われることなんですけれども、低利の借りかえはできないか。財投の資金が国鉄債務の六五・四%を占めており、しかも借入金利が平均五・三五%と、現在の超低金利の時代では考えられない利率になっております。住宅ローン、国民が借りている住宅ローンにつきましても、今どんどん金利が下がっておりますので、早く高い金利のお金を返して安い金利に切りかえたい、これは普通の国民の考え方であります。  例えば私たち調べたところでは、高速道路公団は借金を三十年で返せないから今度は四十年に延ばしたと伺っておりますけれども、国の側は借りかえは認められる、ところが国民負担になる国鉄債務の借りかえを認めないというのはちょっとバランス感覚に欠けているのではないかな、こう私は思うわけなんですけれども、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  214. 三塚博

    ○三塚国務大臣 国鉄清算事業団、今運輸大臣言われますとおり十年度で決算をしたい、こういうことになっておるわけです。財投からの借り入れば、御案内のとおり、貸付金利と預託金利を同一としておるということなんですね。ですから、借りかえをするということになりますと、その金利差はやはり政府が負担をする、こういうことになります。形は資金運用部にそのコストをツケ回すという格好になりますが、最終的には政府全体であります。ここに資金運用部、財投資金の問題があります。  ですから、できるだけ低利の資金を供給するためにということで貸付金利と預託金利を同一にして利ざやを取らず、長期、固定の貸し付けを行いながら収支が相償うようにしてまいる、一般会計でなかなか大変な事業について財投資金を拠出しながら政策目的を達成してきました、こういうことでありますので、御理解をいただきます。  また、仮にこのようなコストの転嫁を受け入れることとすれば、それぞれの事業に係る国民負担の実態が不透明となりましたり、情報開示の点から問題があります。こういうことであります。
  215. 望月義夫

    望月委員 質問が最後になってしまいましたけれども、この清算事業団の問題は、二十一世紀を目指した新しい国づくりに避けて通れないことだと私は思います。一たん計画したものは万難を排して成功させよう、これは土光会長のお言葉でございます。総理の決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  216. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 先ほど来申し上げてまいりましたように、一つ一つはある意味では非常に骨の折れる地味なテーマばかりでありますけれども、どれ一つ置き去りにすることができません。でき得る限りの努力をしてまいりますので、どうぞ御協力を心からお願いを申し上げます。
  217. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて望月君の質疑は終了いたしました。  次に、土屋品子さん。
  218. 土屋品子

    土屋委員 私は、このたび埼玉十三区から当選し、会派21世紀に所属しております土屋品子でございます。  私は、議員になる前に、NHKの予算委員会の模様を見ておりましたが、何回ぐらい当選すればあの場所に立てるのかなと思って見ておりました。きょう、こうして予算委員会の総括の場において質問の機会を与えていただいたことに対しまして、深谷委員長並びに各党の委員の皆様、そして橋本総理、各閣僚の皆さんに感謝申し上げます。  さて、本日の私の持ち時間は二十分でございます。教育問題を中心に質問させていただきたいと思います。  今回、橋本総理が六つの改革の中に教育を含めていただいたことに対しまして、大変な期待を持っております。  私は、選挙中、教育改革を訴えてまいりました。また、子供を持つ多くの女性から、教育改革を実現してほしいという声を聞きました。世界に例を見ないほど速いスピードで高齢化社会が進んでいる日本。十年後、二十年後を考えたときに、新しい時代の変化と社会に適応できる人材を育成することこそが最重要課題であると考えています。時代のニーズに対応した社会性のある教育という観点から学校教育を見詰め、新しい取り組みについて具体的に提案し、質問したいと思います。  まず第一の質問は、環境教育のカリキュラムへの導入について、橋本総理並びに小杉文部大臣石井環境庁長官にお伺いいたします。  私の選挙区がありますところの岩槻市というところに、東北自動車道のインターがございます。その入り口付近は、いつ行ってもぽい捨ての空き缶やごみが散乱し、地区のボランティアの人たちが定期的に拾っても、またすぐ山になってしまいます。  先日、隣り合わせた車の中から缶が投げ捨てられました。一緒にいた子供が、お父さん、そんなことしちゃいけないよと言って父親に注意をしている姿を見て、とても驚きました。と同時に、大人を教育するよりも子供を教育した方がよいという感じもしました。以前、小学生の子供を持つお母さんと話す機会があり、学校の中で環境教育が行われていることを聞いていましたが、この一件から、少しずつ成果が上がっていることを身をもって体験いたしました。  環境教育については、平成九年度予算に、文部省予算で約六千八百万円の環境教育推進事業費が、また、環境庁予算約一億円が計上されております。内容としては、文部省は、環境データの観測・活用事業、環境教育担当者の講習、GLOBE計画などの事業、環境庁は、こどもエコクラブなどの事業が盛り込まれています。  現状では、小中学校において教科ごとに横断的に環境教育が行われ始めているようです。しかし、オゾン層の破壊、地球の温暖化、大気汚染など、地球環境が危機に直面している今後のことを考えますと、もっと思い切った環境教育が必要ではないかと思います。例えば、算数や国語の授業のように、環境という教科を小学校や中学校に新設してはどうでしょうか。  数年前、イギリスにあるサットン環境センターを訪問したことがあります。このセンターは、風力発電の仕組みや太陽エネルギー、分別ごみの仕方、生ごみから有機肥料をつくるとか、生態系保護の庭やリサイクルの仕組みなどを屋外の施設で学べるようになっています。施設の運営は、市の職員とボランティアグループによって運営されています。このセンターは、まさに子供たちが楽しみながら学べる体験型の環境センターと言えると思います。  このように、環境という科目を新設するに当たっては、学校教育もさることながら、地域そして家庭での体験を交えた実践的な教育の一体化も必要です。もちろん、それに伴う環境専門の教師の育成も急務です。思い切った提案だとは思いますが、いかがでしょうか。
  219. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私、一点ちょっとどうも議員と違うかなと思いましたのは、私は、ごみを捨てるやつは、これは環境教育というよりむしろ大人に対する社会教育の方が問題だ、これは率直にそう思いました。  ただ、私は本当に、環境問題というものを教育の中で取り上げていく重要性は、議員が指摘をされたのと同じような感じを持ちます。もともと、大量生産、大量消費、大量廃棄という社会、つい先ごろまで我々の社会でありました。しかし、そこから我々は、二度のオイルショックをくぐり抜け、省資源、省エネルギーというものに、またリサイクル型の社会というものに今転換しようとしているさなかであります。そうした状況の中でありますから、環境教育というものは当然非常に大事なことでありますし、私は、議員も御指摘になりましたように、今までも学校教育のさまざまな場面でこれは取り上げられてきたと思いますし、これからも一層充実を期待します。  ただ、現時点でそれでは環境という科目を正式に義務教育課程の中に設けて対応できるか、専門の職員が配置できるか。私は、そうなりますと、今までの教員養成の課程の中でそうした教科を想定した教員養成をしていないというところから見まして、実は、教科構成のあり方あるいはその担当教員の資格、養成といったもので検討するべき課題が結構多いような気がします。しかし、方向は、私は議員の御指摘はそのままだと思います。
  220. 小杉隆

    ○小杉国務大臣 環境教育の重要性については土屋委員の御指摘のとおりであり、また、基本的な考え方は今総理からお話があったとおりであります。  私は、文部大臣として、具体的な今御指摘の点についてのみお答えしたいと思います。  教育のカリキュラムに環境問題を取り入れたのは平成四年からでございまして、小中高それぞれ、社会科と理科を中心に今教えております。  それから、環境科の問題につきましては、今、学校週五日制という方向へ向かっておりますだけに、科目をどう絞っていくかということで、環境科を設けるというのはなかなか難しい面があります。ただ、中教審なんかでも総合的な学習の時間というのを提唱しておりまして、そういう時間を活用してできるだけ環境教育ができればと思っております。  それから、教員養成、これもできるだけ教員養成のカリキュラムに環境問題を取り入れるようにしておりますし、それから各種の研修がありますね、そこにできるだけ環境問題に触れるような、そういう研修をやっていきたい。  それから、私が今進めたいと思っておりますのは、学校の現場で、例えばソーラーシステムを導入するとか、あるいは給食でもし生ごみが余ったら学校菜園に利用するとか、そういう生きた体験学習も必要かと思います。  以上でございます。
  221. 石井一

    石井国務大臣 土屋委員の初質問に対してお答えさせていただきます。  環境問題に対しましては、国民の間で、また市民の間で大変関心が高まっております。現在、大気とか水質の汚染の問題が深刻でもありますし、また地球温暖化の問題、さらにオゾン層の破壊などの関係で地球環境に対する関心も非常に高まってまいりました。そして環境問題というのは、やはり人間の命と暮らしを守るために大変重要な問題であると私も受けとめております。  そして、これからは、環境への負荷の少ない持続的発展の可能な社会をつくるということが求められているわけでございまして、そのためにやはり地道な取り組みが必要でございます。それは、学校においても地域においても、また家庭においても多様な取り組みが必要になってまいりますので、そのための教育の問題は、特に子供たちに対して必要であろうということでございまして、そのために、環境庁におきましては、小学生、中学生に対しまして自主的な環境学習を支援するこどもエコクラブ事業を初めといたしまして、地域において自主的な体験の積み重ねによる環境学習を推進しております。現在、二千九百クラブがございまして、四万四千人の方がこどもエコクラブとして参加をしているところでございます。  また、小学校、中学校、高等学校におきまして環境教育の指導資料を今作成をしておりまして、そのための協力をいたしております。  さらに、アジア太平洋地域における環境教育の方向性を議論するための国際会議の共同開催なども、文部省と一緒に連携を図って行っているところでございます。  これからも、自然との触れ合いの体験などを通じて、自然に対する感性や環境を大切に思う心を子供のうちから育てるということを重視して、環境教育の推進に努力をしてまいりたいと思っております。
  222. 土屋品子

    土屋委員 どうもありがとうございました。  時間がないのでちょっと早口でしゃべらせていただきますけれども、次の質問に移らせていただきます。  次に、高齢化時代の教育のあり方について、橋本総理、小杉文部大臣、小泉厚生大臣にお伺いいたしたいと思います。  少子・高齢時代に向けて、介護保険法を初めとした社会保障改革を進めています。すばらしい制度ができたとしましても、それを十分に生かす環境づくりが重要です。特に、介護保険法の制定に当たっては、福祉や介護サービスを行う人材の養成というのが重要と考えられています。  例えば、新ゴールドプランの進行状況によりますと、ホームヘルパーの目標数はほぼ順調に推移しているようですが、さらに一層の充実を図るためには、学校教育の中にホームヘルパーの養成を取り入れてみるのも一案かと思います。高校教育の中に選択制でホームヘルパー三級資格取得のカリキュラムを導入すれば、よりすそ野が広がり、また高齢化に対する若者の意識の向上にも役立ちます。  よく言われるように、今の教育には思いやりや社会性などが欠けていると言われますが、いざそれを教育現場に取り入れようとすると、なかなか妙案がないのが実情です。全国五十八の高等学校に福祉に関する学科があり、介護福祉士の受験資格が取れるようになりましたが、さらにすそ野を広げていくためには、比較的簡単に取得できるホームヘルパーの講習や実習を全国の高校に取り入れてはいかがでしょうか。教育現場に福祉のカリキュラムを導入することについてはいかがお考えでしょうか。
  223. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 教育の中に福祉という視点を取り入れるということは考えたことがありましたが、そのホームヘルパーを養成すること、それ自体を教育と組み合わせろというお考えは、私は、初めて伺った意見ですけれども、非常におもしろい視点であり、可能性のあるものだと思います。文部省、また厚生省、それぞれの立場から検討させていただく価値のある御提案だ、そのように感じました。
  224. 小杉隆

    ○小杉国務大臣 結論だけ申します。  今福祉科という科もありますし、また、普通科でも福祉コースというのがあって、五十時間の講習を受ければ三級の資格が取れることになっております。  今後とも、ますます福祉に関する教育を広めてまいりたいと思っております。
  225. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 興味深い、いい提案だと思います。厚生省としても、協力できることがあればしていきたいと思っております。
  226. 土屋品子

    土屋委員 どうもありがとうございました。  次に、教員の採用と教員の資質の向上について小杉文部大臣にお伺いいたします。  かつて私は非常勤講師として高校で教えた経験があります。そのときに、教師の採用のあり方について思うところがありました。採用試験合格後、学校に配属になると、校内の研修及び外部の教育関係者による研修が行われ、その段階で教育者としての意識が植えつけられてしまいます。今、教員のあり方が問われている中で、採用直後の研修を現場の教師にゆだねるということは、何ら教師の改革にはならないのではないでしょうか。むしろ、採用試験合格後、一定期間企業で働いたり福祉関係でボランティアの体験をしたり、いろいろな角度から社会経験を積むことが大切です。そうすることで幅広い感覚を持った教師が生まれるのではないでしょうか。ますます多様化している現状において、実際の教育現場に対応できる経験豊かな教員が必要なのです。私は、非常勤講師として学校の外からの目で先生たちと接したために、このようなことを強く感じました。  教師の資格を持っていなくても、芸術や感性に関する面で特別非常勤講師として学校教育に携わる人がふえているようですが、さらにこのような先生の採用を拡大していくことにより、外からの人的交流が先生と生徒によい影響を与えると思います。  この二点について御見解をお願いいたします。
  227. 小杉隆

    ○小杉国務大臣 大変いい御指摘をいただきました。教員の研修は、初任者研修から経験者の研修と、長期、短期、たくさんあります。それで、今、例えば初任者研修を一年間やっておりますが、一応学校現場に配属して、その合間に外へ出ていく、こういうことをやっておりますが、例えばもう職場につけないで、一年間みっちり全部社会へ出しちゃったらどうかという御意見もありますが、これは今ちょっと慎重に検討しているところでございまして、いずれにしても、教員が学校内だけじゃなくて幅広く社会的視野を広める、こういうことで重要だろうと思っております。鋭意検討してまいります。  それからもう一つは、教員養成のカリキュラムでしたか。(土屋委員「特別非常勤講師」と呼ぶ)今、教育改革プログラムでも学校外との提携ということを強調しておりまして、例えば、社会に出てコンピューターの操作の仕方、学校の先生でまだわからない先生いっぱいいるんですね。そういうところを、例えばコンピューター会社の職員に来てもらって特別研修をやってもらうとか、そういう学校外との連携というものをもっと濃くしていきたいと思っております。
  228. 土屋品子

    土屋委員 最後になりましたけれども、ちょっと時間がありますので小泉厚生大臣にお伺いいたします。  五月に医療保険改革を実施したいというお考えのようですが、やっと先ほど、あす厚生委員会が開かれることが決まったそうです。厚生委員の一人といたしまして、厚生委員会が開かれないことに危惧をしておりました。予算関連法案である以上、予算成立前に何らかの議論があってしかるべきではないでしょうか。大蔵委員会などは夜間に開かれていることもあるようですので、厚生委員会でも緊急を要するときには開いていただき、徹底的審議の場をつくっていただくよう、ぜひ前向きに御検討いただきたいと思います。  小泉厚生大臣も激務でございまして大変とは思いますが、よろしくお願いしたいと思います。
  229. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 私は、朝でも昼でも夜でもいいんですけれども、これは厚生委員長を初め委員の方々の御協力にまっしかないわけであります。ぜひとも、御協力があり、命令があればいつでもどこでも出ていきますので、早速審議をお願いしたいと思います。
  230. 土屋品子

    土屋委員 最後になりますが、八日間の長きにわたり、深谷委員長また橋本総理初め閣僚の皆さんには、大変お疲れさまでございました。  これにて質問を終わらせていただきます。
  231. 深谷隆司

    深谷委員長 これにて土屋さんの質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総括質疑は終了いたしました。  次回は、明十四日午前九時より委員会を開会し、一般質疑に入ります。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十一分散会