○斉藤鉄夫君 私は、
新進党を代表して、ただいま
議題となりました
包括的核実験禁止条約並びに
核原料物質等規制法の一部を改正する
法律案につきまして、
総理並びに
関係大臣に
質問をいたします。
すべての核実験を禁止する
包括的核実験禁止条約によって、サタンともいうべき核爆発のない世界を実現するところまで来ました。唯一の被爆国として、次に目指すは核兵器のない世界であります。
本条約が採択された国連総会で、多くの国が本条約の論理的根拠の
一つとして挙げたのが、昨年七月の国際司法裁判所、ICJによる「核兵器の使用・威嚇は一般的には国際法、特に人道法に反する」とした勧告
意見でした。このICJの勧告が、これからの核軍縮の新たな論拠となりつつあります。大変残念なことに、
我が国は、この国際司法裁判所に対する
意見陳述で、核兵器の使用・威嚇は国際法違反と明確に論述しませんでした。核兵器の使用・威嚇は国際法違反かどうかという点についての橋本
総理のお
考えをお伺いいたします。
また、
包括的核実験禁止条約が作成されたことの意義及び評価について、昨年九月二十四日、ニューヨークの国連本部においてみずから署名された橋本
総理の
見解をお伺いいたします。
次に、潜在核兵器国であり、条約の発効要件となる批准書寄託国でもあるインドが、本条約への署名拒否の方針を明確にしたことは、東西冷戦終結後の懸案である核拡散防止体制の強化に重大な不透明要素を残したことになります。
インドは、軍縮
会議、国連総会においても一貫して条約の採択に反対しており、ゴーシ・インド大使は「インドはこの不平等条約に今も今後も決して署名しないことを宣言する。インドの批准が発効条件となっている条項が条約にある限り、条約の発効はない」と述べております。インドが本条約を不平等条約とする
理由として、インド
国民には、中国より最初の核実験が十年おくれただけで自国の核が非合法化されたNPT体制へのふんまんがあるとの
見解があります。
このように、インドの本条約に対する姿勢には、一時的な感情によるものではないものが感じられ、インドの賛成を得るのは容易ではないと思われますが、本条約の発効の見通しと、発効に向けた外交努力の具体的な
内容について、外務大臣にお伺いいたします。
次に、発展途上国の核兵器開発の可能性についてお伺いします。
核実験を行わないで核兵器開発をすることは、弾道弾や巡航ミサイルに搭載するような近代的小型弾頭については困難であると言われております。しかし、半世紀前、広島、長崎で使用された、火薬の力でウランやプルトニウムを圧搾して核爆発を起こす爆縮型原爆なら、発展途上国の技術でも核実験なしで開発可能であり、
包括的核実験禁止条約はこのような爆縮型原爆の開発抑制には無力ではないかとも言われております。本条約によって発展途上国の核拡散防止は可能であるのか、外務大臣の
見解をお伺いいたします。
次に、本条約では禁止の
対象になっていない未臨界実験についてお伺いします。
未臨界実験とは、プルトニウムやウランが連鎖反応を起こし始める、いわゆる臨界に達する直前で反応をストップさせる
研究方法です。実際に爆発は起きないわけです。豊富な核実験データを保有する国にとっては、最後まで反応させて爆発を起こした場合と同様の実験
効果があると言われております。
米国では、十年
計画で、総額四百億ドルかけて核兵器性能維持管理
計画、いわゆる核スチュワードシップ
計画が予定されています。これは、最新ハイテク実験装置による未臨界実験、そして過去の核データを総合してコンピューターシミュレーションを行い、核実験をしたのと同様の知見を得るというものであります。
米国の
説明は、この
計画及び未臨界実験はあくまでも既に存在している核弾頭の安全性と信頼性を確認するものなどのことです。しかしながら、将来、圧倒的なデータを持っている米国が、ひそかに核実験抜きの新核兵器開発を進めるおそれは否定できないと懸念する声が上がっています。未臨界実験も禁止しなかったことが新核兵器開発を許してしまうことになるのではと懸念する声にどのような
見解を持つのか、また米国の核スチュワードシップ
計画をどのように評価しているのか、橋本
総理にお伺いします。
次に、本条約は、
目的の達成を
確保するための検証
制度について
規定しております。すなわち、国際監視
制度、現地査察並びに信頼醸成についての
措置であります。国際監視
制度は、世界中に地震波、放射性核種、水中波、微気圧振動の監視施設等を置くことによって構成されております。
我が国にも各施設が
設置されることになっております。これらの情報によって核爆発であるか否かを
判断し、現地視察することになるのでありますが、この監視網でどの程度の核実験を探知することができるのか、また核実験の抑止がこの検証
制度によって全うできるのか、お伺いいたします。
次に、カットオフ条約についてお伺いします。
カットオフ条約とは、核兵器の材料となる高濃縮ウラン、そして高純度プルトニウムの製造そのものを禁止するという画期的なものであります。
包括的核実験禁止条約の作成を求める決議が国連総会で採択された同じ日の
平成五年十二月十六日、カットオフ条約の作成を提唱する決議も採択されております。
包括的核実験禁止条約が核物質の出口を禁止する条約であるとすれば、このカットオフ条約は入り口を規制するものであると言え、核軍縮そして核拡散防止の重要なステップとなります。カットオフ条約に対する
我が国の
基本姿勢と早期成立に向けた努力についてお伺いします。
さて、この
包括的核実験禁止条約は、国内法的には
核原料物質等規制法の改正を必要とします。
そこで、最後に科学技術庁長官にお伺いします。
原子力発電の使用済み核燃料の再処理によってプルトニウムが生産されます。このプルトニウムを高速増殖炉で燃やし、エネルギーを得ると同時に燃やした以上のプルトニウムを得る、いわゆるプルトニウムサイクルを確立するというのが
我が国の原子力政策の
基本でした。ところが、「もんじゅ」の事故によって高速増殖炉のめどが立たなくなりました。そこで、このプルトニウムを現在の軽水炉で燃やす、いわゆるプルサーマル
計画が出てきたわけですが、これも動燃の相次ぐ不祥事によって原子力に対する不信感が増大し、すぐに実施できる
状況にありません。
こうなりますと、プルトニウムはたまる一方で、プルトニウム余剰が生じてまいります。この余剰はすなわち
日本の核兵器開発の意図であると誤解する国も出てまいります。科学技術庁長官に、このプルトニウム余剰の見通しをお伺いします。
また、二酸化炭素排出抑制という環境上の要請もあり、徹底した省エネと新エネルギーの開発を行ったとしても、やはりエネルギーの主要部分を原子力発電そしてプルトニウムリサイクルに頼らなければならないのが
我が国の現状です。
原子力を取り巻く八方ふさがりの
状況の中で、どのようにエネルギー政策を立ち上げていかれるのか、その
基本的姿勢をお伺いし、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣橋本龍太郎君
登壇〕