○松本惟子君 私は、民主党を代表して、ただいま
議題となりました
雇用の
分野における
男女の均等な
機会及び
待遇の
確保等のための
労働省関係法律の
整備に関する
法律案につきまして、
内閣総理大臣並びに
関係大臣に
質問をいたします。
本
法案の
内容に入る前に、まず、
男女平等問題に対する基本的考え方について伺っておきたいと思います。
個人の
尊重と
男女平等を基本的人権として保障した日本国憲法が施行されて、五十周年を迎えました。その節目に当たり、昨年、
総理大臣の諮問機関である
男女共同参画
審議会は、「
男女共同参画ビジョン 二十一世紀の新たな価値の創造」と題する答申を行いました。同ビジョンにおいては、
男女共同参画
社会の定義について「
男女が、
社会の対等な構成員として、自らの意思によって
社会のあらゆる
分野における活動に参画する
機会が
確保され、もって
男女が均等に政治的、経済的、
社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき
社会」とされ、
男女平等の概念が積極的にとらえ直されております。
男女共同参画、いわゆるジェンダーイコーリティーは、今日、国際的な流れとなっている
法律上の平等から事実上の平等の
実現を目指したものと言えるでしょう。その意味において、私は、従来の
女性施策にない画期的な
内容を持つものと
評価するものであります。
そこで、
男女共同参画本部長でもある総理並びに
労働大臣に
お尋ねいたします。
男女共同参画ビジョンをどのように受けとめておられるのか。また、私は、
男女共同参画は単に
機会の均等のみを意味するものではないと考えますが、その点についていかがお考えでしょうか。御見解を伺いたいと思います。
次に、本
法案の
内容につき、焦点となっている事項について幾つか
質問いたします。
その
一つは、
法律の
目的、性格についてであります。
男女雇用機会均等法が施行されて十一年が
経過した今日、働く
女性は二千万人を超え、その
職域も、第二次産業かる第三次産業へ、単純、定型的仕事から技術的、専門的
職業へと広がりを見せています。しかし、
雇用の諸
条件における
男女の平等といった
観点からこうした
女性労働者の実態を見たときに、
募集・
採用から定年、退職、解雇に至る
雇用の全ステージにおいて
男女差別があり、その状況は均等法
制定前と基本的に変わっていません。それは、同法が
差別の
規制方法や救済の方法について
実効性を欠いているところに大きな問題があったと考えます。
本
法案では、一部
努力義務
規定となっていたものを
改正して、
雇用の全ステージの
差別を
禁止することとしております。この点については、法
制定当時から、公序にかかわる
差別禁止を
努力義務とすることは憲法秩序の
観点から問題があると指摘されていたところであり、今回
一定の
改善が図られたことは、当然のこととして
評価するところであります。
しかしながら、本
法案は、
女性に対する
差別を
禁止するにとどまり、
男性に対する
差別的
取り扱いは
規制の
対象外に置くという片面的な効果しか有しておりません。欧米諸国と同様に、
男女双方に対する
差別的
取り扱いを
禁止する法制、いわゆる性
差別禁止法の
実現が必要であると考えますが、
労働大臣の見解をお伺いしたいと存じます。
第二は、
労働基準の
男女共通規制についてでございます。
日本人は働き過ぎであるという批判は、二十年ほど前から欧米諸国から出されておりました。こうした批判にこたえるためにも、また、内需中心の経済構造を
実現し、国際的に見て公正な
労働条件を
実現する
観点からも、
労働時間短縮は重要な
課題であり、官民一体となってその
実現に取り組んできた
経過があります。
しかしながら、他方では、働き過ぎによる健康障害が増加して、
過労死が
社会問題化するようになっています。豊かな
社会、少なくとも豊かになろうとした
社会で、
過労死が多くの人々の関心を呼ぶということは尋常な状態とは言えません。
政府は、国際公約である
年間総
労働時間千八百を達成するために、完全週休二日制と年次有給休暇二十日間の完全取得、そして時間外
労働を百五十時間以内とするモデルを示しました。しかしながら、十年を経た今日においてもまだ
実現するに至っておりません。こうした状況をかんがみると、有効な方法として、直接、時間外・休日
労働の上限を法的に
規制することが強く求められているのではないでしょうか。
五十年前、男子の時間外
労働を一年につき百五十時間以内に
規制する、この今日においてさえ画期的なアイデアも、一度はあり得べき選択肢として浮上したことがありました。戦後、労務
基準法の作成を
検討していました労務法制
審議会にそのたたき台として出された当時の厚生省草案がそれであります。同草案は、法的
規制の
あり方として考慮すべき
内容を持っていると私は考えます。
労働時間法制については中央
労働基準審議会の
審議にゆだねられていることを私は十分承知しております。しかし、あえて申し上げるのですが、女子保護
規定の
撤廃と
男女共通規制の
実施に空白期間が生じることがないよう、時間外
労働並びに深夜業等については、
ILO条約の水準に照らし
男女共通の法的
規制を加えるべきだと考えますが、総理並びに
労働大臣の御所見を伺いたいと存じます。
第三は、
家族責任を持つ
男女労働者の保護についてでございます。
子供の数が減り続けて、四、五十年後には六十五歳以上の高齢者が総人口の三割を占めるという将来推計が国立
社会保障・人口問題研究所から発表されました。これまでの予想を上回る超高齢社
会の到来であります。あらゆる
分野で今からさまざまな改革に取り組むべきですが、その
一つに、少子化、出生率の低下への対応があります。
積極的な子育て支援策の成功例の代表は、七〇年代後半から
育児休業制度や保育所の
整備などを進めたスウェーデンだと言われております。
我が国においても、
女性の
社会参加に見合った、
男女がともに子育てに当たれるような時間外や夜間の保育システムの充実、配偶者や子供の突発的事故や病気のための休暇である
家族看護休暇の
法制化等、子育て支援策を充実すべきであると考えます。そこで、この点について
政府はどのように対処されようとしているのか、厚生
大臣並びに
労働大臣に
お尋ねをいたします。
また、本
法案では、小学校就学前の子を養育する
労働者及び
家族を
介護する
労働者が請求することにより、深夜業の免除が認められるものとなっております。これは
労働基準法上の女子保護
規定撤廃を補うものとして設けられる
規定であると考えますが、
家庭責任を持つ
労働者の時間外・休日
労働についての
規制がありません。
ILO条約や諸外国の水準と比べでも、深夜業と同様に免除されてしかるべきかと考えますが、
労働大臣の見解を伺いたいと思います。
第四は、ポジティブアクションについてであります。
本来なら、一方の性に対する優遇
措置を講ずることは性
差別禁止に抵触することとなりますが、一方の性に対するこれまでの事実上の不平等を是正することを
目的としてとられるポジティブアクション、いわゆる暫定的な特別
措置については
差別とみなさないとするのが、今日、国際的な常識となっております。その意味で、今回の法
改正で、
我が国において初めてポジティブアクションに関する
規定が盛り込まれたことについて
評価するものであります。
しかしながら、
事業主の
努力義務にさえなっておらず、そのため行政指導さえも行われにくい結果となることに危惧を抱かざるを得ません。
制度の
実効性を高めるために、せめて
事業主の
努力義務とすることが必要であると考えますが、
労働大臣の見解はいかがでございましょうか。
また、総理を本部長とする
男女共同参画推進本部がさきに取りまとめた
男女共同参画二〇〇〇年プランにおいて、
女性国家公務員の
採用、登用等の促進についてポジティブアクションの取り組みが明記をされました。国の積極的な姿勢を示すものとして
評価をするところですが、絵にかいたもちに終わることなく、民間のモデルとなるように積極的に取り組むべきであると考えますが、
女性問題担当
大臣でもある総務庁長官の御
意見を伺いたいと思います。
最後に、本
法案の行方によっては、今後の
男女の働き方や暮らし方を大きく変えるものとなります。したがって、十分な
審議を尽くした上で、必要な場合には見直しを含めて
検討すべきであると考えますが、いかがでしょうか。
総理並びに
労働大臣の御見解を伺って、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣橋本龍太郎君
登壇〕