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1997-03-18 第140回国会 衆議院 本会議 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月十八日(火曜日)     ————————————— 議事日程 第八号   平成九年三月十八日     午後零時三十分開議  第一 国際観光文化都市整備のための財政上     の措置等に関する法律の一部を改正する     法律案建設委員長提出)  第二 特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時     措置法の一部を改正する法律案建設委     員長提出)  第三 住宅金融公庫法等の一部を改正する法律     案(内閣提出)  第四 放送法第三十七条第二項の規定基づ     き、承認を求めるの件  第五 中東北アフリカ経済協力開発銀行を設     立する協定締結について承認を求める     の件     ————————————— ○本日の会議に付した案件  日程第一 国際観光文化都市整備のための財   政上の措置等に関する法律の一部を改正する   法律案建設委員長提出)  日程第二 特殊土じよう地帯災害防除及び振興   臨時措置法の一部を改正する法律案建設委   員長提出)  日程第三 住宅金融公庫法等の一部を改正する   法律案内閣提出)  日程第四 放送法第三十七条第二項の規定に基   づき、承認を求めるの件  日程第五 中東北アフリカ経済協力開発銀行   を設立する協定締結について承認を求める   の件  中東北アフリカ経済協力開発銀行への加盟に   伴う措置に関する法律案内閣提出)  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に   伴う措置に関する法律及び国際開発協会への   加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正す   る法律案内閣提出)  臓器移植に関する法律案(第百三十九回国   会、中山太郎君外十三名提出)の趣旨説明及   び質疑     午後零時三十三分開議
  2. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第一及び第二は、委員長提出の議案でありますから、委員会審査を省略するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。     —————————————  日程第一 国際観光文化都市整備のための財政上の措置等に関する法律の一部を改正   する法律案建設委員長提出)  日程第二 特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案(建   設委員長提出)  日程第三 住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案内閣提出
  5. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第一、国際観光文化都市整備のための財政上の措置等に関する法律の一部を改正する法律案日程第二、特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案日程第三、住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。  委員長趣旨弁明及び報告を求めます。建設委員長市川雄一君。     —————————————  国際観光文化都市整備のための財政上の措置等に関する法律の一部を改正する法律案  特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案  住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔市川雄一登壇
  6. 市川雄一

    市川雄一君 ただいま議題となりました三法律案について申し上げます。  まず、建設委員長提出の二法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  初めに、国際観光文化都市整備のための財政上の措置等に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法は、国際観光文化都市にふさわしい良好な都市環境形成を図り、あわせて国際文化の交流に寄与することを目的として、昭和五十二年六月、建設委員長提案により十年間の時限法として制定され、昭和六十二年に期限延長が行われて現在に至っているところであります。  法制定以来約二十年にわたって事業実施されてきたことにより、都市公園、下水道、道路等整備水準は着実に向上してまいりましたが、いまだ十分とは言えない現状にあります。  また、近年、我が国国際化がますます進展し、国民生活水準向上と余暇時間の増大が図られる中で、国内外観光客の受け入れの促進利便性向上を図るためには、今後とも施設整備を中心とした観光文化振興対策を強力に実施することが必要であります。  以上の観点から、本案は、所期目的の完全な達成を図るため、現行法有効期限をさらに十年間延長して、平成十九年三月三十一日までとするものであります。  次に、特殊土ょう地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法は、特殊土壌地帯の保全と農業生産力向上を図ることを目的として、昭和二十七年四月、議員立法により五年間の時限法として制定され、以後八度にわたり期限延長のための一部改正が行われて現在に至っているところであります。  今日まで四十五年間にわたる治山治水かんがい排水農道整備などの事業実施により、特殊土壌地帯における災害防除農業振興の両面においで顕著な進歩改善がなされ、地域住民生活向上に多大な貢献をなしてきたところでありますが、同地帯現状は必ずしも満足すべき状態にあるとは言えないのであります。  今なお対策を必要とする地域が数多く残されており、加えて、近年における都市化の進展による災害の態様の変化農業をめぐる国内外情勢変化に対応して、新たに取り組むべき課題も多く生じてきております。これらの課題に対応し、特殊土壌地帯振興を図っていくためには、引き続き強力に事業を推進していく必要があります。  以上の観点から、本案は、所期目的の完全な達成を図るため、現行法有効期限をさらに五年間延長して、平成十四年三月三十一日までとするものであります。  なお、本案成案決定の際に内閣意見を求めましたところ、特に異存はないとの意が表されました。  以上が、二法律案趣旨説明であります。  二法律案は、いずれも昨十七日の建設委員会において全会一致をもって成案と決定し、建設委員会提出法律案と決したものであります。  次に、内閣提出住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案について、建設委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、良質な住宅ストック形成を図るため、従来の住宅金融公庫金利区分を改め、一定の良質な既存住宅の購入及び優良な住宅改良工事について最優遇金利を適用する金利体系に改めるとともに、繰り上げ償還が急増する現下の金融情勢のもとにおいて、住宅金融公庫による安定した住宅資金の融通を確保するため、特別損失金による補給金繰り延べ制度改正を行い、あわせて余裕金運用方法の拡大を図る等、所要措置を講じようとするものであります。  本案は、去る二月二十八日の本会議において趣旨説明が行われた後、同日本委員会に付託され、昨十七日亀井建設大臣から提案理由説明を聴取し、同日質疑を終了、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  7. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより採決に入ります。  まず、日程第一及び第二の両案を一括して採決いたします。  両案を可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも可決いたしました。  次に、日程第三につき採決いたします。  本案委員長報告可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  9. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第四 放送法第三十七条第二項の規定に   基づき、承認を求めるの件
  10. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第四、放送法第三十七条第二項の規定基づき、承認を求めるの件を議題といたします。  委員長報告を求めます。逓信委員長木村義雄君。     —————————————  放送法第三十七条第二項の規定基づき、承認   を求めるの件及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔木村義雄登壇
  11. 木村義雄

    木村義雄君 ただいま議題となりました放送法第三十七条第二項の規定基づき、承認を求めるの件について、逓信委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本件は、日本放送協会平成九年度収支予算事業計画及び資金計画について、国会承認を求めるものであります。  まず、収支予算について申し上げます。  受信料については、消費税率引き上げ等に伴う税負担の転嫁による現行カラー契約月額千三百七十円を千三百九十五円に改める等の改定を行うこととしております。  一般勘定事業収支は、収支ともに六千百九億円であり、また、一般勘定資本収支は、収支ともに七百四十七億円であり、いずれも収支の均衡が図られております。  次に、事業計画について、主なものを申し上げますと、  公正な報道と多様で質の高い放送番組提供に努めること、  ハイビジョン放送拡充強化普及促進及びデジタル放送技術等新しい放送技術研究開発に積極的に取り組むこと、  経営全般にわたり効率的な業務運営を徹底するとともに、受信契約増加受信料の確実な収納に努めること等であります。  本件には、「おおむね適当なものと認める。」との郵政大臣意見が付されております。  本件は、去る三月四日本委員会に付託され、昨十七日堀之内郵政大臣から提案理由説明を聴取し、川口日本放送協会会長から補足説明を聴取した後、質疑を行い、討論採決の結果、賛成多数をもって承認すべきものと議決した次第であります。  なお、本件に対し附帯決議が付されました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  12. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 採決いたします。  本件委員長報告のとおり承認するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  13. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本件委員長報告のとおり承認することに決まりました。      ————◇—————  日程第五 中東北アフリカ経済協力開発銀行設立する協定締結について承認を求めるの件
  14. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第五、中東北アフリカ経済協力開発銀行設立する協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  委員長報告を求めます。外務委員長逢沢一郎君。     —————————————  中東北アフリカ経済協力開発銀行設立する協定締結について承認を求めるの件及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔逢沢一郎登壇
  15. 逢沢一郎

    逢沢一郎君 ただいま議題となりました中東北アフリカ経済協力開発銀行設立する協定につきまして、外務委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  平成三年十月に開催されたマドリード中東和平会議以来進められている中東和平プロセスは、国際社会の支援のもと、中東地域の不安定な情勢改善に大きく寄与してまいりました。  この中東和平プロセスに対する経済面からの下支えを強化するため、平成六年十月の第一回中東北アフリカ経済サミットにおいで、中東北アフリカ開発銀行設立を含めた資金メカニズムについて検討を開始することがその宣言に盛り込まれました。その後、関心を有する国、地域の参加のもとに当該銀行設立するための協定が作成されることとなり、平成七年一月以降、数次にわたる会合を経て、平成八年八月二十八日に本協定が作成されました。  本協定は、中東北アフリカ地域の平和と安定及び開発を強化促進するため、地域的な経済開発及び経済協力促進する機関として中東北アフリカ経済協力開発銀行設立することを目的とするものであり、同銀行設立及び地位、その目的加盟者地位銀行授権資本加盟者株式応募額銀行業務及び経済協力フォーラム設置等について規定しております。  本件は、去る二月二十五日外務委員会に付託され、三月十三日池田外務大臣から提案理由説明を聴取し、昨十七日質疑を終了し、討論の後、引き続き採決を行いました結果、本件は多数をもって承認すべきものと議決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  16. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 採決いたします。  本件委員長報告のとおり承認するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  17. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本件委員長報告のとおり承認することに決まりました。      ————◇—————
  18. 荒井広幸

    荒井広幸君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  内閣提出中東北アフリカ経済協力開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、右両案を一括議題とし、委員長報告を求め、その審議を進められることを望みます。
  19. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 荒井広幸君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。     —————————————  中東北アフリカ経済協力開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案内閣提出)  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出
  21. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 中東北アフリカ経済協力開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。  委員長報告を求めます。大蔵委員長額賀福志郎君。     —————————————  中東北アフリカ経済協力開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案及び同報告書  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔額賀福志郎登壇
  22. 額賀福志郎

    額賀福志郎君 ただいま議題となりました両案につきまして、大蔵委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  初めに、中東北アフリカ経済協力開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案につきまして申し上げます。  本案は、中東北アフリカ経済協力開発銀行、いわゆる中東開発銀行への我が国加盟に伴い、政府が同銀行に対し、約四百六十八億円の範囲内において出資することができること等所要措置を講ずることにいたしております。  次に、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、第一に、国際復興開発銀行、いわゆる世界銀行における我が国出資シェア引き上げに伴い、政府は、同銀行に対し、約三十三億協定ドル範囲内において追加出資することができることにいたしております。  第二に、国際開発協会、いわゆる第二世銀の第十一次増資に伴い、政府は、同協会に対し、約二千三百四億円の範囲内において追加出資することができることにしております。  両案は、去る三月十二日三塚大蔵大臣から提案理由説明を聴取した後、質疑を行い、同日質疑を終局いたしました。次いで、本日両案につきまして順次採決いたしましたところ、いずれも多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、両案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  23. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 両案を一括して採決いたします。  両案の委員長報告はいずれも可決であります。  両案を委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  24. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  臓器移植に関する法律案(第百三十九回国会中山太郎君外十三名提出)の趣旨説明
  25. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) この際、第百三十九回国会中山太郎君外十三名提出臓器移植に関する法律案について、趣旨説明を求めます。提出者中山太郎君。     〔中山太郎登壇
  26. 中山太郎

    中山太郎君 ただいま議題となりました臓器移植に関する法律案について、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  欧米諸国では、既に、脳死をもって人の死とすることが認められ、脳死体からの臓器移植人間愛基づいて日常的な医療として完全に定着しており、年間九千件を超える心臓肝臓移植が行われております。その移植成績も、新しい免疫抑制剤開発などにより年々向上しており、多くの患者がこの医療の恩恵を受けております。  アジア地域でも、一九八九年から一九九五年までの間に、心臓移植については、韓国で四十八例、シンガポールで十四例、タイで七十七例、台湾で九十四例が行われておるのであります。  一方、我が国におきましては、脳死は人の死か、脳死体からの臓器移植は認められるのかについて議論があり、臓器移植以外では助からない多くの患者は、迫りくる死の影におびえつつ、移植を受けることができる日を一日千秋の思いで待ちわびながら、無念の涙をのんで死を待っておられるのが現状であります。ごく一部の方は、移植を受けるためにやむを得ず海外に渡航しておられますが、海外においても多くの患者移植を待っており、外国人である我が国患者に対する門戸も徐々に狭まってきていると聞いております。  こうしたことから、患者やその家族からは、我が国においても脳死体からの心臓肝臓などの臓器移植の道を開いていくことが強く求められておるのであります。  この問題につきましては、日本医師会生命倫理懇談会昭和六十三年一月、死の定義について、従来の心臓死のほかに、脳の不可逆的機能喪失をもって人間個体死と認めてよいとの報告をいたしております。  この報告書においては、  一、脳の死については、厚生省研究班判定基準必要最小限基準として大学病院等倫理委員会において基本的事項を定め、これによって疑義を残さないように、慎重かつ確実に判定を行うべきであること、  二、脳の死による死の判定は、患者本人またはその家族意思を尊重し、その同意を得て行うのが、現状では適当であること、  三、脳の死による死の判定は、それが日本医師会等一般的に認められるとともに、患者側同意を得て、適切な方法で、医師によって確実になされるのであれば、それを社会的及び法的に正当なものと認めてよいと考えられること、  四、脳死判定による死亡時刻としては、初めの脳死判定時と、その後六時間ないしはそれ以上たってからの脳死確認時とが考えられ、死亡診断書死亡時刻はそのいずれによってもよいが、死後の相続の問題に備えて、もう一方の時刻診療録に記録するものとすること、  五、臓器移植は、臓器提供者及び受容者本人、またはそれらの家族が十分な説明を受け、自由な意思承認した場合に、日本移植学会の定める指針に従って行うものとすること。  以上の内容が盛り込まれているところであります。  その後、平成四年一月に、臨時脳死及び臓器移植調査会が、脳死を人の死とすることについてはおおむね社会的に受容され合意されているところであると言ってよいとして、一定の要件のもとに脳死体からの臓器移植を認めることを内容とする答申を提出しておりますことは、皆様御存じのとおりであります。  これを受けて、超党派の生命倫理研究議員連盟各党各会派の代表者から成る脳死及び臓器移植に関する各党協議会の場で検討協議が重ねられ、平成六年四月には、臓器移植に関する法律案が本院に提出されました。  その後、厚生委員会における参考人意見聴取や、いわゆる地方公聴会の開催が名古屋市、仙台市、福岡市の三カ所で行われたものの、必ずしも十分な審議が行われたとは言えない状況でございました。このため、昨年六月には、審議促進し一日も早い法制化の実現を図るとともに、移植医療が広く国民に受け入れられ浸透することを期待し、提出者から修正案提出されましたが、昨年秋の衆議院解散に伴い、残念ながらこの法律案は廃案となるに至りました。  しかしながら、人工臓器開発がいまだ十分でない今日、我が国においても心臓肝臓等移植医療国民の理解を得つつ適正な形で定着させ、人種、国籍を問わず、人道的見地に立って、移植を待つ患者を一日でも早く救済できるようにしていくことは、一刻の猶予も許されない緊急な課題であると考えております。  我が国におきましても、角膜及び腎臓につきましては既に移植が行われており、医療としても定着していることは、皆様も御承知のとおりであります。重度の腎臓障害により人工透析を受けておられる患者は、毎年約一万人ずつ増加をしてきており、現在では約十五万人を超えるに至っているのであります。これらの患者方々は、人生を終えるまで人工透析を毎週受け続けるという大変に不自由な生活を強いられておられますが、腎臓移植を受けた方々は、生活の質が格段に改善され、多くの方々社会復帰を果たされているのであります。  このように、腎臓障害患者方々生活を大きく改善させる腎臓移植でありますが、残念なことに、近年その件数は減少傾向をたどっているのであります。この背景には脳死臓器移植問題の影響があるのではないかと指摘する声もあり、腎臓移植を含めた我が国移植医療全体をさらに推進していくためにも、早期に脳死臓器移植問題の解決を図っていかなければならないものと考えております。  このため、脳死体から臓器摘出できることを明確にするとともに、臓器提供承諾を初めとする臓器移植に関する手続や臓器売買の禁止などを盛り込んだ包括的な臓器移植立法の一日も早い成立がぜひとも必要と考えております。  このような見地に立って、平成六年四月に提出された法律案内容に、昨年六月に提出された修正案内容を加え、臓器移植に関する法律案を再度提出した次第であります。  以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。  まず第一に、この法律は、移植医療の適正な実施に資することを目的とすることとしております。  第二に、臓器提供に関する本人意思は尊重されるべきことや、臓器提供は任意にされたものでなければならないことなどの臓器移植基本的理念を定めております。  第三に、医師は、臓器提供についての承諾がある場合には、移植術に使用するため、脳死体を含む死体から臓器摘出することができることとしております。ここで、脳死体とは、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定された死体をいい、その判定は、一般に認められた医学的知見基づ厚生省令で定めるところにより行うこととしております。  第四に、臓器提供承諾についてでありますが、平成六年四月に提出された法律案では、本人意思が不明の場合においても、遺族書面により承諾しているときには臓器摘出ができることとされておりましたが、この法律案では、この部分を削除し、本人が生前に臓器提供意思書面により表示しており、かつ遺族が拒まない場合または遺族がないときにのみ臓器摘出ができることとしております。ただし、当分の間の経過措置として、角膜及び腎臓については、本人意思が不明の場合で遺族書面により承諾したときには、脳死体以外の死体からの摘出も行うことができることとしております。  第五に、臓器移植に関する記録の作成及び保存の義務並びにその閲覧について定めております。  第六に、臓器売買及び臓器の有償あっせんについては、これを禁止することとしております。  第七に、業として臓器のあっせんをしようとする者は、厚生大臣の許可を受けなければならないこととしております。  第八に、平成六年四月に提出された法律案におきましては、法律の施行後五年をめどとして検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるべき旨が規定されておりましたが、本法律案では、この法律の施行後三カ年をめどとして検討が加えられることとしております。  このほか、必要な罰則規定等を定めるとともに、この法律の制定に伴い、現行の角膜及び腎臓移植に関する法律は廃止することとしております。  なお、この法律の施行期日は、公布の日から起算して三月を経過した日としております。  以上が、この法律案趣旨でございます。  何とぞ、慎重かつ十分御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いを申し上げます。(拍手)      ————◇—————  臓器移植に関する法律案(第百三十九回国会中山太郎君外十三名提出)の趣旨説明に対する質疑
  27. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。小野晋也君。     〔小野晋也君登壇
  28. 小野晋也

    ○小野晋也君 臓器移植に関する法律案に関し、数点の質問をいたします。  まず第一に、平成六年に当院に提出された同名称、ほぼ同趣旨法律案に対し、今国会提出法律案では、臓器摘出承諾要件について、本人が生前に臓器提供意思書面により表示しており、かつ遺族が拒否しないときに限定するとされています。  この臓器摘出意思確認の問題は、これまでの臓器移植をめぐる長期にわたる議論の中で、脳死の認識をめぐる議論と並び、最も大きな論点となってきた部分でございます。今回の法律案において、極めて限定された要件を付与されたその理由、そしてこの限定に対する医療界の考え方がいかなるものであるかについて、まずお尋ねをいたします。  第二に、この法律は、成立し公布された日より三カ月を経過した日から施行するとされています。  今回、通常国会のこの時期に本格的な議論が始められたことに、これまでの長い月日をかけた議論がいよいよ終着点に向かいつつあることを肌で感じます。提出者を中心にした本問題に対する熱意、医療関係者の強い決意、そして移植待機者に対する幅広い国民的共感、これらの動きを見ておりますと、日本の国においても臓器移植元年とも称すべきときに立ち至ったとの感を強くしているところでございます。  一方、海外に目を転ずれば、既に臓器移植は通常医療行為の一つとなり、肝臓移植では年間五千件以上、心臓移植においても年間三千件以上の実績を上げていると言われています。その中で、日本がいかにこのおくれを取り戻していくかという点が、今後の極めて大事な課題でありましょう。  当法律が施行されましたときに、臓器移植手術を行う上に、医療チームの問題、医療機器類整備の問題、また医療倫理審査体制の問題など、さまざまな課題が生まれてくるのではないかと危惧をいたしますが、これらの整備、取り組みについてのお考えをお尋ねいたします。  第三には、移植をめぐるネットワークづくりの問題であります。  これまで、我が国では脳死体からの臓器移植を行い得ないため、移植によってしか健康を回復し得ない多くの日本人海外に渡り、外国の医療機関で外国人臓器提供を受け、病気を克服してまいりました。その基礎には、臓器移植をめぐる国際的なネットワークの存在がありました。国境を越えて臓器が即時に必要とされる病人のもとへ運ばれ緊急手術が執行される、その様子は時折テレビ等でも紹介されてきたとおりであります。広範なエリアをカバーする、人と情報と高速交通機関による機動的なネットワークシステムは、まさに驚嘆に値するものでありました。  今回、この臓器移植法が成立した暁には、恐らく日本は、アジア地域のこのネットワークのセンター的な機能を期待されることになるでありましょう。これまで日本人がアメリカやヨーロッパ、オーストラリアなどに期待したのと同じような役割が、今度はアジア諸国からこの国に期待されることになると思うのであります。  そこで予見される問題は、日本における外国人患者に対する臓器移植の問題であります。特に、近隣のアジア諸国から日本の高度医療に一縷の望みを託して来日される患者に対して、臓器移植を執行するのか否かという問題が生まれてくるものと思います。この点をどうお考えでございましょうか。  そして、ここで御提案申し上げたいのは、アジア地域を対象とする臓器移植相互協力ネットワークの形成であります。日本の医療技術、医療体制のもと、アジア地域への貢献を果たす上にも、ぜひ日本がイニシアチブをとり、この取り組みを進めていただきたいと念願するものであります。臓器移植の問題について、国際的に広い視野からの深い御検討をしてこられました本案提出者のお考えをお聞かせいただきたいと思います。  最後に、この法案は、臓器移植によってしか命が助かる見込みのない多くの患者の皆さん、その家族の皆さん、そして当問題の推進に力を尽くしてこられた医療関係の皆さん、これら多くの方々の深い祈りの込められた法案であり、その早期成立を心より念ずるものであります。もとより、臓器提供者にとっても重い命の問題をはらむ課題であります。  慎重な審議はもちろんでありますが、決着すべきときは、決然と決することが求められていると思うのであります。YKKの創業者吉田忠雄氏は、難しい経営上の決断についてこんなことを語っています。全員の意見が一致したときには、実はその事業を始めるには既に遅くなってしまっていることが多い。議会人として大きな決断を行うときに、とても示唆に富んだ言葉だと思います。  以上で質問を終わります。(拍手)     〔中山太郎登壇
  29. 中山太郎

    中山太郎君 小野議員のお尋ねにお答えを申し上げます。  まず第一の御質問でありますけれども、臓器提供承諾について、今回の法律案で極めて限定された条件を付与した理由は何かというお尋ねでございます。  従来の法案におきましては、本人の生存中の意思が文書によって明確に記録されていない場合でも、遺族のそんたくによってできるような法律案の条文がございました。これが大きないわゆる社会の疑問を生んだわけでございまして、今回の法律案では、御本人が生存中に、自分が交通事故あるいは墜落死によって脳死状態になったときには自分の臓器臓器移植を待っている人に提供してもよいという文書での記録が残されていることが絶対の条件となっており、さらに、遺族が反対しない場合に限るとしたことでございます。これが第一のお答えであります。  ただし、こういうことをやりますと、この厳しい条件のもとでは、臓器提供の数は当初は極めて少ないものと考えられます。  第二のお尋ねであります。法案成立後、実際に臓器移植実施していく上で、医療チーム、医療機器類、病院における医療倫理審査体制等の課題について、今後どう取り組むかというお尋ねであります。  この法律の施行後の移植医療体制の整備については、非常に厳重なシステムを組むべきことが必要であろうと思っております。移植に関係する各学会により設置された移植関係学会合同委員会の作成した脳死体からの臓器移植実施施設に関する基準においては、移植チームの構成や必要な施設設備などについて規定するほか、移植実施倫理委員会承認が必要であることなどを要件と定めております。  このような基準に従って、必要な体制が整備されている移植施設が移植関係学会合同委員会により特定されているところでありますが、今後、移植実施していく中ではさまざまな課題が生ずるものと考えられますので、いずれにいたしましても、国民の十分な御理解がいただけるような法律整備にしなければならない、このように考えております。  第三のお尋ねであります。第三は、臓器移植についても、日本の医療技術と医療体制を活用して、アジア地域への貢献を果たすことが求められることが起こってくるのではないかというお考えであります。  もちろん、先ほども申し上げましたように、シンガポールとかタイでは既に心臓移植も行われております。あるいは世界の各地でも心臓移植が行われておりますけれども、外国人が日本で移植を受けたいといった場合にどのように対応していくのか。もちろん、アメリカでもヨーロッパでも、日本からたくさん行かれて移植を待っている患者も、自国民優先という一つの基準がアメリカの中には存在をしております。こういうふうな状況の中で、日本における移植外国人患者が希望した場合、これにどう対応するかは、委員会審議を通じて、十分基準を決めていかなければならないと考えております。  また、諸外国の状況を見ますと、北米合衆国及びカナダ全域をカバーして、あらゆる地域で、脳死の発生した場合、これをコンピューターネットワークで全部全米の一カ所に、UNOSという施設でありますけれども、そこへ集中的に連絡が行くようになっておりますし、事前に、移植でしか生きていかれない患者たちのあらゆる生物学的な検査結果も登録をされているのがUNOSであります。  また、EU各国の全体を統合するネットワークがオランダのライデン大学にございます。ここで、全ヨーロッパといいますか、EUの加盟国に住む、移植を待っている患者の状態もすべて把握をされているのが現状でございます。  また、スカンディナビアの国々も、スカンディナビア・トランスプラントシステムがございますし、ニュージーランド、オーストラリアの間には協定がございまして、例えば日本からブリスベーンの肝臓移植のところに患者が参りました場合でも、ニュージーランドとオーストラリアの間ではいわゆる臓器提供し合うという相互の協定がございまして、オーストラリア人とニュージーランド人は、移植を受ける場合には、日本人が受ける場合よりも数百万円のコストの減がございます。  こういうふうな形で各国とも国際的なネットワークを組んでおりますけれども、いずれアジア地域におきましても国際的なネットワークの構成が必要になってまいろうかと考えておりますが、これには、各国の医療機関あるいは大学、政府等の関係におきまして、十分協議をした上で、どのような方法でこのネットワークをつくるかということについても議論が進めていかれる必要があると考えております。(拍手)     —————————————
  30. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 桝屋敬悟君。     〔桝屋敬悟君登壇
  31. 桝屋敬悟

    ○桝屋敬悟君 私は、ただいま議題となりました臓器移植に関する法律案について、提出者に質問をいたします。  現在、心臓肝臓などの病気のため、移植でなければ余命幾ばくもない多くの患者さんは、移植を受けられる日が一日も早く来ることを祈っており、医学界の側でも、移植医療実施に向け、さまざまな検討が行われております。  しかしながら、日本では、先ほどから話がありますように、脳死体からの臓器摘出が必要な心臓肝臓移植はいまだに行われておりません。日本人患者さんが外国で移植を受け、日本人医師が外国の医療現場で移植医療の最先端に携わっているというのに、国内では、移植を受けることも移植を行うこともできないのです。三月十四日の毎日新聞にも、心臓病の八歳の少女がカリフォルニア大学での移植を決意したけれども、その費用八千万円が用意できないという切実な記事が載っておりました。私は、こうした状況を何とか打開しなくてはならないと強く感じている次第であります。  既に、平成四年一月に、脳死臨調は、「脳死をもって「人の死」とすることについては概ね社会的に受容され合意されているといってよい」旨を答申しておりますが、それ以来、もう五年余りが経過したにもかかわらず、実際には、脳死体からの臓器移植は全く行われていないのです。  移植が必要な患者の方を救いたいという気持ちはだれしも同じだと思いますが、最初の和田臓手術以来の国民医療に対する不信、さらには実際に移植を行うに当たってのさまざまな議論があるため、国民移植に対して大変に慎重になってしまっているのではないかという気がいたします。このような閉塞的状況を打開し、日本に臓器移植を定着させるためには、医療に携わる方々の真摯な努力にあわせ、臓器移植に関する立法を行うべきであると考えます。  以上が、臓器移植立法に対する私の考え方でありますが、提出者の方は、なぜ移植のために立法が必要と考えるに至ったのか、法案提出に当たっての提出者の基本的認識をまずお尋ねいたします。  この法案について最も議論になる点は、やはり脳死を人の死としている点であろうと思います。私自身は、脳死を人の死と認めてよいと考えておりますが、これに対しては、臓器移植を推進すべきであるという点では共通の認識に立ちながらも、脳死を人の死としない立場をとり、脳死状態からの臓器移植を容認する立法をすべきであるという考え方もあります。私は、脳死は人の死でないとしながら、一方で、生命の維持に欠かせない心臓などの臓器摘出することを認めてしまう考え方が果たして社会に受け入れられるものなのか、甚だ疑問に感じております。提出者の方はこのような考え方についてどうお考えになっているのか、御見解を伺いたいと思います。  次に、脳死の問題と並んで、特に議論がありました、先ほども話が出ましたが、臓器摘出承諾要件についてお尋ねいたします。  昨年秋に衆議院の解散により廃案となった旧法案では、本人書面による臓器提供意思がある場合に加えて、本人意思が不明の場合等には家族承諾臓器摘出することが認められていたのが、今回の法案では、これまでの論議を踏まえて、本人臓器提供意思書面で表示されている場合にのみ臓器摘出が認められることとなっております。  私は、今回の承諾要件の限定により、臓器提供意思を明確に表示していた人以外の人からの臓器摘出のおそれがなくなり、旧法案に対して慎重な姿勢を示していた方々の多くも、今回の法案は受け入れることができるものと考えております。  しかし、同時に、この臓器摘出承諾要件の限定により、臓器提供者の数が極端に減ってしまい、立法の実効性がなくなるのではと危惧されるところであります。したがって、法律が制定された場合、実際に臓器移植が進められるためには、ドナーカードの普及等に関係機関が一層の努力を払うことが重要であり、提出者にも特段の配慮を期待したいところであります。  私としましては、この修正は、法案に対する支持を広げるためにはやむを得ないものであると考え、提出者方々の苦渋の選択に対しまして理解を示すものでありますが、この修正は、移植実施に大きな影響を及ぼしかねない点がありますので、提出者方々には、旧法案から今回の法案に至る修正の趣旨と、修正により臓器提供が激減するおそれがある点についてどうお考えになっているのか、お答えをいただきたいと思います。  次に、移植実施施設の限定についてお尋ねいたします。  どの医療機関でも自由に臓器移植を行うことを認めた場合、移植成績が上がらず、移植医療に対する国民の期待を裏切ることになるおそれがある上、各医療機関が功名争いをしていると国民に受け取られることにもなりかねません。既に移植を行っている諸外国においても、移植の経験を積んだ医療機関ほど移植の成績が高い傾向があると聞いておりますし、医学界においても、既に移植施設を限定する方向で議論が進められていると聞き及んでおります。  そこで、私は、移植技術の向上を図る観点や、国民がより安心できる移植を行うという観点から、移植医療が定着するまでの間、移植実施をする施設を絞り込んで、最高のスタッフが移植を行うようにすることが必要ではないかと考えますが、この点について提出者のお考えはいかがでありましょうか。  終わりに、私は、諸外国で既に定着している移植医療が日本で行われていないのは、日本の医学水準に問題があるからではなく、医療に対する国民の信頼を前提として、国民が納得するような移植医療に係る共通のルールができていないからだと考えます。したがって、この法律案国会においてしっかりと審議して成立を期し、移植に向けられた国民の善意を患者方々のために生かせるようにすることが、今我々に期待されていることなのではないかということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)     〔山口俊一君登壇
  32. 山口俊一

    ○山口俊一君 それでは、桝屋先生の御質問にお答えをさせていただきます。  まず第一点、なぜ移植のために立法が必要と考えるに至ったのか、法案提出に当たっての基本的認識についてのお尋ねでございます。  平成四年、いわゆる脳死臨調は、「脳死をもって「人の死」とすることについては概ね社会的に受容され合意されているといってよい」とした上で、一定の要件のもとに脳死体からの臓器移植を認める答申を取りまとめ、内閣総理大臣に提出をいたしました。しかしながら、その答申後においても、法律などの縛りから、脳死体からの臓器移植実施をされておらない状況が続いておりました。  その結果、我が国におきましては、善意の臓器提供意思にこたえることができないとともに、移植を受けないと助からない患者さんは、外国で移植を受けたごく一部の方を除き、我が国移植を受けることができる日が一日も早く来ることを待ちわびているというふうな状況にございます。  このような現状にかんがみ、脳死体からの臓器移植を含む移植医療が、国民の理解を得つつ、適正な形で実施できるようにするためには、臓器移植について、基本的理念を定め、国や地方公共団体の責務を明らかにするとともに、脳死体を含む死体からの移植術に使用されるための臓器摘出の要件、臓器移植に関する記録の作成及び保存に関する規制、また、臓器売買の禁止、臓器あっせん機関に対する規制等、移植医療に必要な法的な枠組みや諸条件を整備する必要があると考え、本法案を提出いたした次第でございます。  次に、脳死は人の死でないとしながら、脳死状態からの臓器移植を容認する立法をすべきであるとする考え方、いわゆる違法性阻却説についてのお尋ねでありますが、これにつきましては、次のような問題があり、採用できないと考えております。  すなわち、脳死は人の死ではなく、脳死判定を受けた方は生きているという考え方に立ては、その方から生命維持に必須の臓器である心臓肝臓摘出する行為は、当然、殺人罪あるいは承諾殺人罪に当たることになります。これらを許容するような立法は、事柄の重大性にかんがみれば到底受け入れることができないと考えられます。  また、レシピエントの生命を救うためであれば、脳死の状態とはいえ、法的には生きているとされる者から心臓肝臓摘出して、その生命を奪うことも許されるという考え方は、本来平等であるべき生命の価値に軽重をつけることになってしまうと思うわけであります。  さらに、このような考え方をとった場合、医師の立場に立っても、法的に生きているとされる状態の者から臓器摘出を行うことを意味することとなり、医のモラルから見ても到底認められないとの批判があるのも当然であります。  また、脳死を人の死とする立場をとらないとすると、脳死体については、刑事訴訟法上の死体であることを前提にした検視等ができず、必要な捜査が行われる前に臓器摘出が行われて、証拠が散逸し、悪質凶悪犯を見逃すという不正義が発生するおそれも生じます。  以上のような理由から、脳死は人の死ではないが脳死体からの移植は許されるとする考え方をとることは、到底受け入れることができないと考えるものであります。  なお、この考え方につきましては、脳死臨調でも大きな論点として議論が行われましたが、結論的には採用されなかったものであり、また、その後、立法化について検討を行った脳死及び臓器移植に関する各党協議会においても、この考え方について議論がなされましたが、やはりこの考え方の採用は極めて困難との結論に達した経緯があることをつけ加えさせていただきます。ちなみに、御指摘のような考え方に立った立法が諸外国にあるとは聞いておりません。  続きまして、平成六年四月に提出された法案、いわゆる旧法案から今回提出されている法案に至る修正の趣旨と、修正により臓器提供が激減するおそれがある点についての御質問でございます。  これは、先ほど小野先生の方からもお尋ねがございまして、先ほどもお答えを申し上げましたが、いわゆる旧法案におきましては、本人意思が不明の場合にも遺族承諾があれば臓器摘出を認めておりました。しかし、この点につきましては、本人書面による意思表示がある場合に限定をして臓器摘出を認めるべきではないかなど、さまざまな御意見が出されまして、この点が旧法案の審議が進まない理由の一つになったと考えております。こうした経緯を踏まえ、一日も早い臓器移植の開始を望む患者さんの切なる願いにこたえ、国民の理解を得ながら移植医療を推進していくという観点から、このような修正を行う必要があるという結論に至ったものであります。  しかし、一方で、御指摘のとおり、今回の法案では、旧法案に比べて臓器提供者が減ってしまうことは避けられないと私どもも考えるところであります。このため、ドナーカードの普及の必要性は、旧法案に比べても、より大きくなっております。本法案においても、政府は、ドナーカードの普及のための方策について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとされておりますが、私ども提案者といたしましても、より多くの方に意思表示をしていただけるような方法について検討し、政府に要請をしていきたいと考えております。  最後に、移植実施する施設を絞り込むべきではないかというお尋ねでありますが、脳死臨調の答申でも、移植実施施設の特定が、国民移植医療に対する信頼確保の上で重要な意義を持つものと指摘をしております。これを受けて、移植関係学会合同委員会が、移植実施施設に関する基準を定めるとともに、移植実施を予定する施設について、実地調査を含めた十分な検討を行い、心臓移植について八施設、肝臓移植については十施設を特定し、公表したところであります。  同時に、合同委員会では、施設の特定の際に、当面の移植実施につきましては、特定された移植施設のうち特に代表的施設において行うことが望ましいとの点で意見が一致した旨公表しており、提案者といたしましても、移植技術の向上国民の安心感を高める観点から、こうした方針は適切なものと考えております。  以上、お答えを申し上げました。(拍手)     —————————————
  33. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 小沢鋭仁君。     〔小沢鋭仁君登壇
  34. 小沢鋭仁

    ○小沢鋭仁君 私は、ただいま議題となりました臓器移植に関する法律案についで、提出者に質問いたします。  質問に先立ち、まず、この法案に対する民主党及び私の立場を明らかにさせていただきたいと思います。  この法案の取り扱いについての協議が議運の場で行われた際、民主党としては、当問題は各人の人生観あるいは死生観ともいうべきことにかかわるものであって、他の通常の法案のように努めて合意を取りつけていくような案件と異なり、よって我が党としては、党議拘束をかけるつもりはないし、扱いについても政党ごとの枠でなく、法案について賛同の立場あるいは慎重、反対の立場から党派を超えて行うべき点を要請いたしました。結果、一部の政党は別として、おおよそそのような扱いとなり、我が党からは、基本的に賛同の立場から私が、また慎重かつ新たな提案を行う立場から海江田議員が後に質問に立つことになったわけで、この質問もあくまでも個人の見解として行わせていただく点を申し上げておきたいと思います。  さて、この問題に関しましては、これまで多方面からの議論があったことは御承知のとおりであります。その中で、最大の論点は、何といっても脳死を人の死として認められるかといった点でありましょう。  そこで、脳死とはどのような状態をいうのか、また脳死はどの程度の割合で発生するのかという点について、提出者にお伺いいたします。  脳死をめぐる議論はこれまでもさまざまな場で行われてまいりましたが、残念ながら、いまだ脳死そのものが国民の一部に誤って理解されている、その感がぬぐえません。種々のアンケートを見ても、脳死とは何かを正確に認識している人はごくわずかで、感覚的な判断が多いとの結果が出ております。  一般に、心臓の停止、脳死、呼吸の停止といったプロセスを私たちは死に至るプロセスと受けとめています。それに対し、今日では、人工呼吸器をつけることによって脳幹の機能を代替させ、心臓がまた回り出す状態が生ずるようになりました。私は、この場合でも、脳幹機能が再びもとに戻らないことから人の死と考えるのですが、そうしたプロセスを専門的に、しかしわかりやすく御説明をいただきますようお願いいたします。  さらに、脳死と植物状態とを混同している方が多いように思われますが、両者の違いがわかるよう明確な御説明をお願いいたします。  近年、救急医療の進歩により、従来であれば脳死に至ることが避けられないと考えられていた患者さんでも、一命を取りとめ、中には社会復帰されている方もいらっしゃると聞いており、そのことは大変すばらしいと考えております。特に、最近、脳低温療法という新しい技術が話題になっておりますが、そのことが、脳死からの回復が可能になったかのように一部で受け取られており、私は、このようなことが国民脳死に対する正しい理解を妨げているのではないかと大変心配をしております。提出者におかれましては、この点についても正確なところをお聞かせ願います。  続いて、脳死判定及び脳死を人の死と受け入れることにちゅうちょする方々への配慮という問題についてお尋ねいたします。  私は、先ほど申し上げたとおり、脳死を人の死としてよいと考えており、また、脳死判定判定基準に沿って間違いなく行われるものと考えておりますが、国民の中には、脳死判定が確実に行われるのか不安を持っている方もおられるのではないかと思います。また、いわゆる心臓死においては遺族の方にもわかりやすい兆候があらわれるのに対し、脳死の場合、脳の機能を専門家が厳密に調べで判定が行われることから、遺族の方の中には、患者さんが脳死判定されても死とは容易に受け入れられないという方も恐らくおられるのではないかと考えます。  したがって、私は、脳死が真に国民の間に定着するためには、脳死判定が確実に行われるとともに、脳死を人の死と受け入れることをちゅうちょする方々への配慮が不可欠であると考えております。この点について、提出者の所見をお聞かせ願います。  この問題については、いろいろな立場があって当然であります。臓器提供することについては、肯定される方もいらっしゃれば否定される方もおられるでしょう。しかし、臓器移植を必要とする患者さんがいて、脳死状態になれば臓器提供してもいいと考える善意の人がいて、それを行う医療技術がある今日の我が国においては、倫理観、人生観はさまざまであることを認めつつ、法としてはその選択が適正にできるようにしていくことが重要ではないかと私は考えるのであります。  病床にあって、近づく死におびえながらこの法案の成立を待ち願っている患者家族方々のために、立法を託された私たちは、真剣な議論を重ね、一日でも早く国会としての結論を出す責務があることを、この議場にお集まりのすべての議員の皆さんと確認をし合っておきたいと思います。  そして、患者家族方々に生きる希望を与えてさしあげるこの法案をぜひ成立させていただきたい。そして、そうした際には私自身も可能であればドナーとならせていただくことを申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)     〔矢上雅義君登壇
  35. 矢上雅義

    ○矢上雅義君 小沢議員のお尋ねにお答えします。  まず第一番目の質問ですが、脳死とはどのような状態をいうのかとのお尋ねであります。  脳死とは、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至った状態であり、具体的に言いますと、大脳のみならず、人間の基礎的な生命維持機能をつかさどる脳幹を含めた脳全体の機能が停止しており、かつ、その機能が回復することはないという状態であります。  脳死になると、みずからの力で呼吸することができず、呼吸は人工呼吸器によって保たれた状態になり、これにより心臓はしばらくの間動き続けることはできます。しかしながら、人工呼吸器を 使い、呼吸を保つための努力をしても、心臓を動かし続けることができるのは、通常数日、長くても数週間であると言われております。  なお、脳死は、脳血管障害や頭部の外傷などの原因によって起こり、全死亡者のうち、脳死を経た後、心停止となる者は約一%未満であると推計されております。  一方、植物状態の人は、すべての脳の機能が失われているわけではなく、脳幹の一部の機能は残っており、みずから呼吸することができます。したがって、植物状態のまま何年間も生存できる場合があり、また時にはある程度症状が改善することもあるという点で、脳死とは根本的に異なっております。  次に、第二のお尋ねですが、救急医療の進歩と脳死との関係についてのお尋ねであります。  近年、救急医療は目覚ましく進歩しており、特に御指摘の脳低温療法という新しい技術により、従来であれば死に至っていたであろうと考えられた患者さんが一命を取りとめているという成果が報告されております。これについては、人の命を救う救急医療のすばらしい成果ではないかと考えておりますが、脳死との関係で、既に脳死に至った患者さんを治療する技術であるかのように一部で受けとめられており、私どもはこのことを大変心配しております。  言うまでもなく、脳死判定は、いわゆる竹内基準においても、現在行い得るすべての適切な治療手段をもってしても回復の可能性がない方に行われるとされており、救急医療の現場においても、行い得る治療をもってしても回復の見込みがない患者さんについて脳死判定が行われるものと考えております。  お尋ねの脳低温療法についても、患者脳死に至らないために行われる治療法であって、既に脳死に至った方に対する治療法ではないものと理解しております。  第三のお尋ねですが、脳死国民に受け入れられ定着するためにも、脳死判定が確実に行われることが不可欠ではないかとのお尋ねであります。  脳死が適切な判定方法を用いれば臨床的に確実に判定できるということは、既に内外の医学・医療界における共通認識になっていると聞いております。我が国においても、脳死判定基準とされるいわゆる竹内基準は国際的にも厳格なものであるとの評価が医学界では一般的であり、脳死臨調でも「竹内基準は現在の医学水準からみる限り妥当なものである」との結論に至っております。  また、この竹内基準については、厚生省に設置された臓器提供手続に関するワーキング・グループにおいても検討され、平成六年一月には、「竹内基準は、現時点での医学水準からみる限り妥当である」との結論が得られたと承知しております。  こうしたことから、竹内基準によって判定がなされれば、誤って脳死判定されるようなことはないと考えております。  次に、脳死を人の死と受け入れることをちゅうちょする方々への配慮についてのお尋ねでありますが、この点については、立法化を検討する過程においで議論を重ねてきたところでございます。その結果、脳死判定家族の理解を得て行われることが望ましいことから、実際の脳死判定に当たっては、運用上、脳死判定を終えるまでに、家族に対し、脳死について理解が得られるよう必要な説明を行うこととしております。  また、脳死が人の死ということになれば、脳死判定後は保険の給付が打ち切られ、経済的な面から人工呼吸器の取り外し等を行わざるを得なくなるのではないかとの声にも配慮し、健康保険法等の規定基づ医療の給付に継続して、脳死体への処置がされた場合には、当該処置は健康保険法等に基づ医療給付としてなされたものとみなすこととしております。  以上でございます。(拍手)     —————————————
  36. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 児玉健次君。     〔議長退席、副議長着席〕     〔児玉健次君登壇
  37. 児玉健次

    ○児玉健次君 私は、日本共産党を代表して、臓器移植に関する法律案について、提案者に質問します。  脳死臓器移植の問題は、医学上、法律上の問題であると同時に、国民的な合意を不可欠のものとする人道的、社会的な問題です。脳死について国民の間でさまざまな意見がある中で、性急な立法化を行うべきではないというのが日本共産党の基本的立場であることを最初に表明しておきます。  この間、法案に、臓器提供に関して、生存中に「意思書面により表示している場合」に限るとの修正案が加えられていますが、そのことで本法案が持っている重大な問題点がなくなるものではありません。  質問の第一は、脳死をもって人の死とすることについてであります。  脳死をもって人の死とすることについては、厚生省の脳死判定基準であるいわゆる竹内基準も、竹内氏自身が「脳死はあくまでも臨床的概念である」とし、「脳死をもって死とするという新しい「死」の概念を提唱しているのではない」(厚生省、脳死に関する研究班・研究報告責 一九八五年度)と明確に述べているように、脳死を人の死として扱うことを提起しているものではありません。脳死臨調の最終答申において、脳死をもって人の死とする多数意見に対して、これに反対する少数意見が併記されたのは周知の事実であります。  この間、衆議院は、一九九五年六月の衆議院厚生委員会での参考人からの意見聴取を初め、幾つかの地域地方公聴会を行いました。そこで開陳された意見はさまざまであり、意見の不一致の中心が脳死をめぐる問題にあったことは明らかです。濱邊祐一参考人からは「脳死イコール人の死ということを法権力によって決定することは何の意味も持たないところか、むしろ多大な困惑と混乱を救急医療現場に持ち込むだけなのだと言わざるを得ません。」との強い指摘がありました。  このような状況で、脳死をもって人の死とすることに国民的な合意があるとは到底言えません。こうした中で法案を性急に立法化するなら、医療の現場はもとより、社会的に混乱を招くだけではありませんか。提案者の明確な答弁を求めるものです。  第二に、脳死を個々のケースで医学的にどこまで厳密かつ公正に判定できるのかという問題です。  現代医学の到達点を含め、重大な疑問を持たざるを得ません。脳死状態を判定する竹内基準にしても、医学者の中で議論があり、大学、病院によって基準が異なっています。また、基準が医学的に定義されたとしても、その公正な判定が保障されるかどうか、国民は不安を持っています。  日本大学板橋病院など救急施設において行われている脳低温療法により、瞳孔反応が三週間も見られていない患者や、聴性脳幹誘発電位が一次的に消失した患者など、三十例中十七例が社会に復帰できたと報告されています。これは、蘇生限界は治療法の進歩によって変わるものであり、絶対的なものでないことを示しています。脳死を人の死とすることにより、本来助かる可能性のある人の生命が奪われることになりはしないかとの危惧が、医療関係者、国民の間から新しく上がっています。提案者の明快な答弁を求めます。  第三は、移植の公平性、公正性をどのように確保するかということについてです。  臓器提供者の圧倒的不足が避けられない中で、臓器受容者の選定が、社会的、経済的に優位な者に優先して行われるのではないかとの国民の不安があります。この不安を解消する具体的対処策について答弁を求めるものです。  最後に、臓器移植に関する法律案については、幾つかの政党で党議拘束を外す動きがあると聞いています。同一の政党の中でさえ多数決で決める法案ではないとしている段階で、どうしてこれを法律にして国民を拘束することができるのか、このことについて提案者の答弁を求めで、私の質問を終わります。(拍手)     〔山口俊一君登壇
  38. 山口俊一

    ○山口俊一君 ただいま御質問をいただきました児玉議員にお答えをさせていただきます。  まず第一点は、脳死をもって人の死とすることに国民的な合意があるとは到底言えず、こうした中で法案を性急に立法化するなら社会的に混乱を招くだけではないかとの御指摘でございます。  脳死をもって人の死とすることにつきましては、脳死臨調の答申におきましても、また近年の各種の世論調査等を見ても、国民脳死についての理解は逐次確実に深まってきておるものと認識をいたしております。  また、性急な立法化は問題との御指摘ですが、国会議員間における脳死臓器移植問題についての検討、議論は、昭和六十三年における脳死臨調設置法案の議員提出を含め、既に十年近くも続けられているところでございます。また、本法案につきましても、脳死臨調答申を受け、さまざまな形での慎重な検討を行った上で提出された旧法律案を、その後の各方面からの御意見を踏まえ、より広い国民の御理解が得られるよう修正をして再提出したものでございまして、決して性急に立法化しようとしているものとは認識をいたしておりません。  続きまして、脳死をどこまで厳密かつ公正に判定できるのかとのお尋ねでございますが、脳死は適切な判定方法を用いますと臨床的に確実に判定できるということは、既に内外の医学・医療界における共通認識になっておると聞いております。我が国におきましても、脳死判定基準とされるいわゆる竹内基準は国際的にも厳格なものであるとの評価が医学界では一般的であり、脳死臨調でも「竹内基準は現在の医学水準からみる限り妥当なものである」との結論に至っております。  また、この竹内基準につきましては、その後、厚生省に設置をされた臓器提供手続に関するワーキング・グループにおきましても検討され、平成六年一月、「竹内基準は、現時点での医学水準からみる限り妥当である」との結論が得られたと承知をいたしております。竹内基準におきましては、先生御承知かもわかりませんが、判定に当たる医師について、「脳死判定に十分な経験を持ち、移植と無関係の医師が少なくとも二人以上で判定する」旨定められているところであります。  以上のようなことから、竹内基準によって判定がなされれば、誤って脳死判定されるようなことはないと考えております。  さらに、本来助かる可能性のある人の命を奪われることになるという危惧についてのお尋ねでもございます。  脳死判定は、先ほど来申し上げましたいわゆる竹内基準におきましても、現在行い得るすべての適切な治療手段をもってしても回復の可能性がない方に行われるとされておりまして、救急医療の現場におきましても、行い得るあらゆる治療をもってしても回復の見込みがない患者さんについて脳死判定が行われるものと考えております。  なお、お尋ねの脳低温療法につきましては、先ほどもお話がございましたが、患者脳死に至らないために行われる治療法でございまして、成果が報告されておるものであり、既に脳死に至った方に対する治療法ではないと理解をいたしております。  さらにお尋ねがございました。  レシピエントの選択が、社会的、経済的に優位な方に優先的に行われるのではないかとの不安についての御質問でございますが、公平かつ適正な移植の推進のためには、臓器移植ネットワークの整備を行うとともに、レシピエント選択の基準を明確に定めることが重要であり、厚生省に設置された日本臓器移植ネットワーク準備委員会におきまして、専ら医学的な見地から、心臓肝臓等についてのレシピエントの選択基準が策定されていると承知をいたしております。  最後に、党議拘束に関するお尋ねでありますが、臓器移植の問題は、お一人お一人の人生観、死生観にも密接にかかわる問題でありますことから、各党各会派におかれましては、党議拘束を外す方向で検討がなされておると承知をいたしております。こうした取り扱いは、まさに臓器移植問題の性格に起因するものであり、国会の場において議員一人一人がみずからの考えに立って議論を行い、その結果、国会の結論として立法化を図っていくことが、移植医療を進めていくためにぜひとも必要であると考えておりますので、御理解をいただきたいと思います。  以上でございます。(拍手)     —————————————
  39. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 秋葉忠利君。     〔秋葉忠利君登壇
  40. 秋葉忠利

    ○秋葉忠利君 ただいま議題になりました臓器移植に関する法律案に対して、慎重論の立場から、基本的な何点かについて質問いたします。  まず最初に、人間の生死にかかわる問題をたったの五分で論じるという本会議の設定は、余りにも乱暴だと思います。後世から不明のそしりを受けても、説得力のある言いわけはできないのではないでしょうか。一言感想を述べさせていただきます。  さて、核兵器やクローン人間といった技術の出現で明らかになった真理の一つは、技術的には可能であっても、人間社会として使ってはならない種類の技術があるということだと思います。つまり、技術的な可能性とは違う次元で、その技術を使うべきかどうかの議論をしなくてはならないのです。人類が技術の奴隷にならないためには、どうしても必要な手続だと思います。残念ながら、臓器移植それ自体に関しては、このレベルでの議論が十分行われてきたとは言えません。  私は、この際、臓器移植の是非についての国民的な議論を興すべきだと考えます。角膜の移植ならいいけれども、脳あるいは人によっては心臓移植がだめなのはなぜなのか、どこで一線を画するべきなのか、その理由は何なのか等についで、納得のいく議論がなされてしかるべきだと考えますが、この点について提案者の考えをお聞かせいただきたいと思います。  次に、臓器移植を実行する前提として、欧米社会ではインフォームド・コンセントが当然のこととされております。患者は、自分の体について、どんな可能性があるのか、あるいはないのかについてを得心のいくまで医師から説明を受けた上で、みずからの体についての決定を行います。  残念なことに、厚生省の準備した医療法の改正案には、このインフォームド・コンセントが医師の義務としてではなく、努力すべき事項としてしか盛り込まれておりません。その理由として厚生省が挙げているのは、インフォームド・コンセントは日本社会になじまない、あるいは現時点の日本社会ではインフォームド・コンセントをすべての医師に要求するだけの環境が整っていないということであります。提案者は、日本社会においてこのインフォームド・コンセントがどの程度定着しているとお考えなのでしょうか。  第三に、仮に心臓移植法律的に可能になったとして、心臓移植のためによりよい状態に保っておく移植のための医療と、一秒でも生きる可能性を引き延ばす治療のための医療とでは、同じ患者に対してでも相矛盾する処置をしなくてはなりません。すなわち、これまた欧米社会には定着しているコンフリクト・オブ・インタレスト、日本語に訳すと利害関係の衝突が存在いたします。  この両者の利害関係をだれがどのように調整するのかは大問題のはずですが、日本社会では、このコンフリクト・オブ・インタレストの概念の重要性がほとんど理解されていないのが現状です。事実、これまでの国会での議論では、救急医療移植医療とは相反するものではないと、問題そのものの存在さえ認められておりません。提案者として、本当に相反するものではないと考えているのか、再確認をしたいと思います。  第四に、仮に脳死状態からの臓器移植が可能になったとしても、幾つかの条件をつける必要があるのではないかと愚考いたします。  例えば、これまで脳死を認めなかった日本の医療が画期的な技術を創造しております。世界から脚光を浴びている脳低体温療法ですが、この治療を医師に義務づけること、並びに治療者とは距離を置いた立場で脳死の治療を監視する脳死治療オンブズマン制度を導入すること、あるいは脳死状態にある患者の人権を保障するために市民が参加する人権監視委員会等を設置すべきだと私は考えておりますが、この点について提案者の御意見を伺いたいと思います。  最後に、私たちは、ベターな選択肢として、脳死を人の死とは認めない立場で、さらに、この場で私が提起いたしました問題にも配慮した移植法案を準備しております。多くの同僚議員の皆さんに、少しでもべターな法案への賛同をお願いいたしまして、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。(拍手)     〔五島正規君登壇
  41. 五島正規

    ○五島正規君 秋葉議員から五点にわたって御質問がございました。それについてお答えしたいと思います。  まず第一に、臓器移植にかかわる技術的な側面とは違う次元の議論が必要ではないかとのお尋ねでございます。  まさに、この問題はこうした考えのもとで長く議論されてきたと考えております。臓器移植につきましては、移植医療の技術的側面のみでなく、人間の死生観や倫理観、その他幅広い観点からの検討が必要な分野であり、医療関係者のみならず、国民各界各層の非常に広範な議論が必要であると認識いたしております。このため、脳死臨調におきましても、幅広い分野からの参加を得て二年間にわたって論議を重ね、答申がまとめられてまいったことは御案内のとおりでございます。その後も数々の世論調査が行われるなど、さまざまな形でこの問題が取り上げられてきたところでございます。  さらに、旧法提案以来、国会におきましても、参考人意見聴取や全国三カ所でのいわゆる地方公聴会の開催など、広く国民意見を聞くべく努力がなされてきたと承知いたしております。  また、我が国においてインフォームド・コンセントがどのように定着しているかとの御質問でございますが、いわゆるインフォームド・コンセントの考え方は、近年、医療関係者に大変普及しつつございますが、残念ながら、我が国医療全体において必ずしも十分に浸透しているとは言えない状況と認識いたしております。しかしながら、移植医療の分野におきましては、インフォームド・コンセントの実践が特に重要であると考えており、これまでの腎臓移植においても、レシピエントやドナー家族に対し十分な説明が行われるよう努力されてきたと承知いたしております。  さらに、現在も救急医療移植医療とは相反するものではないと考えているのかとのお尋ねでございます。  救急医療は、大変な進歩の中で、先ほどの御意見の中にもございましたが、間違いなく蘇生限界点を大きく広げ、その中で医学の勝利というものに向かって大きく貢献していると考えています。しかしながら、残念ながら、救急救命医療の敗北としての脳死というものは、現実に起こってくるわけでございます。したがって、この両者が相反するものでないということは当然でないかというふうに考えております。  救急医療は、医師の持てる知識と技能及び医療資源を最大限に利用して、生命の危険にある救急患者の命を救うことを目的とするものであり、救急医療に従事している医師にとって、このことは医の倫理の上からも当然のことであると考えています。  また、臓器移植は、救急医が全力を尽くして救命医療活動を行った後に、その敗北として、不幸にも治療の努力が実らず、脳死に至ってしまった場合にのみ初めて考えられるものであると認識いたしております。したがって、臓器移植を急ぐ余り、患者に対する必要な治療がなおざりにされたりするようなことがあってならないことは言うまでもございません。  なお、こうした問題に対する懸念もございまして、そうした世論に対する配慮もございまして、脳死判定は、移植にかかわらない二人以上の医者によって行われるとともに、摘出された臓器を公平公正に配分するシステムとして臓器移植ネットワークを構築することとしているわけでございます。  また、脳死からの臓器移植実施する場合、脳低温療法を義務づけるべきではないかとのお尋ねでございます。  まず、誤解のないように申し上げたいことは、脳低温療法は、大変大きな医学の進歩でございますが、患者脳死に至らないために行われる治療方法であって、既に脳死に至った方に対する治療方法ではございません。  我々提案者といたしましても、従来であれば死に至ったであろうと考えられる患者さんがこの治療法により一命を取りとめているという報告がなされていることについては、医学のすばらしい成果というふうに考えております。脳低温療法の実施については、患者を診療している医者が、患者の病状などに応じて個別に判断すべきものと考えており、これを一律に義務づけるということは適当ではないというふうに考えております。  また、脳死治療オンブズマン制度並びに人権監視委員会を設置すべきではないかとのお尋ねでございますが、公平公正な移植実施を確保するためには、第三者により事後的に移植事例の評価及び審査が行われることが重要であると考えております。この事後的な審査のあり方につきましては、脳死臨調の答申や厚生省の臓器移植ネットワークのあり方検討会の中間報告におきましても、臓器移植ネットワークを整備した上で、当該ネットワーク内に独立かつ公正な審査委員会を設けるという方向が示されており、法案成立後、このような方向で審査体制などの整備が行われるべきものと考えております。  最後に、脳死を人の死とは認めない立場での立法についてのお尋ねでございます。  まず最初に、一体、臓器移植、そうした技術の応用をどこに適用するか、その線は何かという御質問もございました。  まさに過渡的な技術であるこの臓器移植をどの線で適用するか、それは、この技術の導入によって生ある者が差別を受けるということがあってはならない、すなわち、臓器提供者がお亡くなりになる、生という状態を去られた状態においてのみこれを実施し得る、それが一つの大きな基本的な線である、そのように私は考えております。  その点につきましては他の答弁者からも答弁なされておられますが、脳死は人の死ではないが脳死体からの移植を許されるという考え方は、生きている方から生命維持に必要な心臓などを摘出することを許容するものであるなど大変問題がある、そういう意味において到底受け入れることはできないものと考えております。(拍手)     —————————————
  42. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 海江田万里君。     〔海江田万里君登壇
  43. 海江田万里

    ○海江田万里君 私は、脳死を人の死としない臓器移植法をめざす議員の会の一人として質問をします。  今回のこの提案をされております法律案の一番の問題は、やはり脳死を人の死とするかどうかということだろうと思います。  先ほど来たびたび発せられております、例えば脳死体という言葉、私は正直申し上げまして、この法案が準備されて、それを私も質問しなければいけないんで勉強するまで、この脳死体という言葉を知りませんでした。広辞苑を見たって書いてありませんよ、これは。この一番初めに出てくるのは、実は脳死臨調の中で脳死体という言葉が出てくるんですけれども、この法案を進めようとする人たちは、脳死体はまさに死体であるというところからスタートをしているんですね。私は、脳死体死体ではない、脳死状態にある体だ、そういうふうに理解するんですね。まずやはりそこのところから一だってそうでしょう。さっきも話が出ましたけれども、人工の呼吸器をつけていれば心臓が動くんですよ。見ている限り、生きている人と違わないんですよ。顔の肌の色つやもいいんですね。だから、当然のことながら、やはりそこにいる肉親は、まだ生きている人だと思って看病をするわけですよ。それが人間の情なんですよ。  随分国会でも議論をされています。厚生委員会で、柳田邦男さんという方が議論しております。私は厚生委員ではありませんでしたから、これを聞いていません。直接お聞きになった方もいらっしゃると思うけれども、実にいいことを言っています。  彼は、御自分の御次男がずっと神経症を思っていて、そして自分で命を絶ったんですね。その方が病院にかつぎ込まれて、五日目にお医者さんから第一回の脳死状態の宣告を受けた。だけれども、まだまだそのまま呼吸器をつけていた。六日目に第二回目の脳死判定を受けた。  そこで、柳田さんは、何とかこの自分の息子を世の中のために役立てたいということで、腎臓移植の可能性がないか調べてみた。ただ、本人に確認をしなければいけないけれども、本人は答えられないから、日記などを見て調べてみたんですよ。  そうしたら、その日記の中にそういう意思が書いてあったから、それならば腎臓提供しましょうということで、それで昇圧剤をやめてもらった。心臓の圧力を高める昇圧剤の点滴をやめてもらった。やめてもらったら、そこから、この御次男はまただんだん元気がよくなって心臓が動き出して、それで、むしろ健康状態よりもいいような状況がさらに三日も続いたというんですね。この三日の間に、その脳死状態にある御子息に向かって話しかけをしたわけですよ。言葉は発しないけれども、会話ができたという。会話が成立をした。脳は死んでいるけれども、体は死んでいないんですよ。こういう状況があるわけですよ。  それから、自民党の方々に。橋本総理が何と言っておられるか、参議院の予算委員会で。私は 実はいまだに臓器移植法について自分の意見を決めかねていますということをおっしゃっているんですよ。本当に脳死を人の死としていいのかどうなのか、私自身の中でどうしても答えが出ないということを言っているんですよ。  それから、橋本総理はお母様のところへいつも行っている、お母様が口がきける状態かどうかわかりませんけれども。だけれども、そこにいで何分か、忙しい中を行ってそこでやはり会話をやっているんですよ。やはりそれが人間の情というものではないですか。その脳死を死と判定することによって、そういう人間の情を断ち切ってしまうことになりはしないだろうか。私は、そのことに大変危惧を持っているんです。  先ほど来、脳死は人の死でないということを言って、それで、臓器移植に何とか道を開く方法はないだろうかというお尋ねをしておりますけれども、返ってきているお答えというのは、実は、平成六年の第百三十一国会で、やはり本会議でこのように議論をやって、そのとき言った答えと同じなんですよ。後で調べでみてください。その当時の会議録と全く同じなんです。  この脳死を人の死でないとしながらも——脳死を人の死としないことによって、そういう人間人間とのつながりができでくるんですよ、そうすることによって。だけれども、やはり片一方で臓器移植を待っていらっしゃる患者さんがいるから、その人たちのためには何とか道を開いていかなければいけない。  ですから、質問になりますけれども、そういうように脳死を人の死と認めなくたって、私は十分できると思う。いいですか。法律に定めた医師の正当業務行為というのがあるんですよ。おなかを切ったりするときには、その正当業務行為で許されるわけですよ。そういうことを利用してできないものなのか。  それからもう一つだけ、具体的になりますけれども、先ほどお答えがありました脳死体になってからの処置、まさに「処置」という言葉を使っているわけですけれども、この処置についても当分の間は医療の給付としてみなされたものとするということで、医療保険の方はそれでいいかもしれませんけれども、医療給付でない、損害保険の交通事故などのときの治療費の給付の対象にはこれはならないのでしょうか、どうなんでしょうか。そういうところにも広げるつもりがあるのかどうなのかということ、やはりそのことについても考えていただきたい。  それから、どうぞ皆さん方、私たち脳死を人の死としない臓器移植法をめざす議員の会は、近いうちに、脳死を人の死としないで、それで臓器移植法に道を開く法案を提案いたしますから、どうかどちらがいいかよく比べていただいて、そして判断をしていただきたいということでございます。  ありがとうございました。(拍手)     〔矢上雅義君登壇
  44. 矢上雅義

    ○矢上雅義君 海江田議員にお答えいたします。  脳死を人の死と認めるか否かということで、人間の情、それをどういうふうに考えるかという質問でございましたが、臓器患者さんたちに提供したいという提供者の気持ちも人の情でございますし、また、病におびえている患者さんたちの気持ちを大事にするのもまた人の情でございます。また、ここにおられる国会議員の皆様賛成、反対、いろいろな考えの方がおられますが、しかし、国政の場で堂々と真剣に議論をしようとすることで、この場に提案するということも、またそれを受けて立たれるということも、人の情でございます。そういう立場に立って答弁させていただきます。  まず第一の質問でございますが、脳死を人の死としなければ臓器移植はできないかとのお尋ねでありますが、これは先ほど以来、桝屋議員の質問にもありましたものと同趣旨でございます。(発言する者あり)簡潔にという声も飛んでおりますが、法律上の解釈でございますので、丁寧に一言一句間違いなく述べさせていただきますので、おつき合いをお願いいたします。  まず、この法案は、脳死臨調の答申においても、「概ね社会的に受容され合意されているといってよいものと思われる。」とされた、脳死をもって人の死とする考え方に基づいたものであります。脳死を人の死としなくても臓器移植は可能ではないかという考え方には次のような問題があり、採用できないと考えております。  すなわち、脳死は人の死ではなく、脳死判定を受けた方は生きているという考え方に立ては、その方から生命維持に必須の臓器である心臓肝臓摘出する行為は、当然、殺人罪あるいは承諾殺人罪に当たることになります。これらを許容するような立法は、事柄の重大性にかんがみれば到底受け入れることはできないと考えられます。  また、レシピエントの命を救うためであれば、脳死の状態とはいえ法的には生きているとされている者から心臓肝臓摘出して、その命を奪うことも許されるという考え方は、本来平等である命の価値に軽重をつけることとなるわけであり、認めるわけにはいきません。  さらに、このような考え方をとった場合、医師の立場に立ては、法的に生きているとされる状態の者から臓器摘出を行うことを意味することとなり、医のモラルから見て到底認められないとの批判も当然であります。  また、脳死を人の死とする立場をとらないとすると、脳死体については刑事訴訟法上の死体であることを前提とした検視等ができず、必要な捜査が行われる前に臓器摘出が行われて、証拠が散逸し、悪質凶悪犯を見逃すという不正義が発生するおそれも生じます。  以上のような理由から、脳死は人の死ではないが脳死体からの移植は許されるとする考え方をとることは、到底受け入れることができないと考えるものであります。  なお、この考え方については、脳死臨調でも大きな論点として議論が行われましたが、結論的には採用されなかったものであり、また、その後、立法化について検討を行った脳死及び臓器移植に関する各党協議会においても、この考え方について議論がなされましたが、やはりこの考え方の採用は極めて困難との結論に達した経緯があることを報告させていただきます。  続きまして、第二の質問でございます。  脳死体への処置が損害保険の治療費の給付の対象にならないということについてのお尋ねでございます。  御指摘の「当分の間、医療の給付としてされたものとみなす」という規定は、脳死判定後の処置について、この費用を全額遺族の負担とすることは、経済的な事情などからいや応なく人工呼吸器を外さざるを得ない状況に遺族を追い込んでしまうおそれがあることなどから、脳死を人の死と認めることにちゅうちょする方への配慮と臓器提供の任意性を確保するために置いたものであります。したがいまして、健康保険法、国民健康保険法を初めとする医療の給付を行う法律による給付に継続して、脳死体への処置が行われた場合、引き続き給付がなされることとなります。  ところで、医療費を対象とする民間の損害保険につきましては、通常、被保険者が死亡したときは保険が終了するものとされております。やはり、先ほど海江田議員が質疑された問題は大変大きな問題を含んでおります。しかしながら、この民間の損害保険があくまでも民間であるということから、被保険者となられる方の需要に応じて商品が開発されるということが前提となっております。私ども提案者といたしましても、民間の損害保険につきましてもこの健康保険の特例措置趣旨を踏まえた取り扱いがなされますことを期待すると同時に、全力で要請していく覚悟でございますので、国会議員の皆様方のこの点におきます協力をよろしくお願いいたします。  以上でございます。(拍手
  45. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  46. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。     午後二時二十六分散会      ————◇—————