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1997-01-23 第140回国会 衆議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年一月二十三日(木曜日)     —————————————  議事日程 第三号   平成九年一月二十三日     午後二時開議  一 国務大臣演説に対する質疑(前会の続)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  裁判官訴追委員辞職の件  裁判官訴追委員選挙  裁判官訴追委員予備員順序  検察官適格審査会委員選挙  国土開発幹線自動車道建設審議会委員選挙  国土審議会委員選挙  国務大臣演説に対する質疑  (前会の続)     午後二時三分開議
  2. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御報告することがあります。  永年在職議員として表彰された元議員江崎真澄君は、昨年十二月十一日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。  江崎真澄君に対する弔詞は、議長において昨年十二月二十五日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。     〔総員起立〕  衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰され さき予算委員長議院運営委員長の要職につき またしばしば国務大臣の重任にあたられた正三位勲一等江崎真澄君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます      ————◇—————  裁判官訴追委員辞職の件
  4. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) お諮りいたします。  裁判官訴追委員左藤恵君から、訴追委員を辞職いたしたいとの申し出があります。右申し出を許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 伊藤宗一郎

  6. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) つきましては、裁判官訴追委員選挙を行うのでありますが、この際、あわせて、検察官適格審査会委員国土開発幹線自動車道建設審議会委員及び国土審議会委員選挙を行います。  また、裁判官訴追委員予備員職務を行う順序を改めたいと存じます。
  7. 荒井広幸

    荒井広幸君 各種委員等選挙は、いずれもその手続を省略して、議長において指名され、裁判官訴追委員予備員職務を行う順序は、議長において定められることを望みます。
  8. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 荒井広幸君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。  議長は、裁判官訴追委員中井洽君を指名いたします。  また、裁判官訴追委員予備員職務を行う順序のうち第四順位及び第五順位にひいては、日野市朗君、富田茂之君の順序といたします。  次に、検察官適格審査会委員安倍基雄君を指名いたします。  なお、予備委員村井仁君は安倍基雄君の予備委員といたします。  次に、国土開発幹線自動車道建設審議会委員中島武敏君を指名いたします。  次に、国土審議会委員増田敏男君を指名いたします。      ————◇—————  国務大臣演説に対する質疑  (前会の続)
  10. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより国務大臣演説に対する質疑を継続いたします。神崎武法君。     〔神崎武法君登壇〕
  11. 神崎武法

    神崎武法君 私は、新進党を代表して、橋本総理施政方針演説等政府演説に対して質問をいたします。  昨年十二月十八日ペルー日本大使公邸武装グループに占拠されて以来一カ月を経過した今日、なお多くの方々人質とされ、公邸内に閉じ込められたままとなっております。人質とされた方々並びにその御家族、関係者の皆様の御心労は察するに余りあり、私は、昨日の本会議に対する国会決議を外し、問題の早期解決が図られ、人質となっている方々が一刻も早く全員無事解放されることを心から願うものであります。  ところで、事件発生当初、外務省では現地からの情報が錯綜し、政府対策本部設置されたのは丸一日後でありました。しかも、政府は、武装グループに対する毅然とした基本姿勢を全く示さないまま、ただ人命最優先を繰り返すだけで、世界テロに弱い日本との印象を一層強く与えたことは否めません。  また、今回の事件で、各国から多数の来賓を招き、大使を初め多数の方々を巻き添えにしたことについて、日本政府として一言の謝罪も遺憾の表明もなされませんでした。これは、我が国が再び世界に、自分の国のことしか考えない日本という姿勢を示したものであり、日本外交に大きな汚点を残したのであります。さらに、外務大臣ペルーに派遣した理由も不明確で、突如帰国させたことなど、政府対応は極めて情緒的、場当たり的でありました。  テロ活動について懸念されていたペルーで、こうした大規模な行事が十分な警護なく行われたこと自体も不用意であります。国外とはいえ、これまでのさまざまなテロなどの経験が今回も十分生かされず、危機管理が甚だ不十分であったと言わざるを得ません。  また、日本海沿岸でのロシアタンカーによる重油流出事故により、既に一府六県にわたる深刻な汚染被害が起きております。この事故により被害に遭われた方々にお見舞い申し上げますとともに、各地から救済に駆けつけ、汚濁にまみれながら必死に救済活動に携わっているボランティアの皆さん、自衛隊の皆さんに対し、私は党を代表し、心から感謝申し上げる次第でございます。(拍手)とともに、救済活動に従事中、とうとい生命をささげた三人の方の御冥福を心からお祈り申し上げます。  この事故に関しても、正見のこととはいえ政府認識は極めて甘く、名古屋に一隻しかない外洋を航行できる油回収船出港要請が出たのは二日後、政府としての初めての会議が行われたのは四日後の一月六日、対策本部設置されたのは何と十日であります。一体、その間、各関係大臣総理大臣は何をしていたのかと言いたいのであります。これでは二年前の阪神・淡路大震災の場合の村山内閣の大失態と何ら変わりません。  二つ事件で、日本危機管理体制脆弱性内外に明らかとなりました。政府は、今回の事件責任をどう受けとめ、危機管理体制いかに構築していく方針か、また重油汚染に対する今後の対策及び被害補償等についてどう取り組まれる方針か、橋本総理責任ある答弁をまずもってお伺いいたします。  次に、政治倫理、特に総理政治姿勢についてお伺いいたします。  「民は信なくんば立たず」とは論語の言葉ですが、政治に対する国民の信頼なくして政治は成り立ちません。まして、総理が主張される改革実現には国民の理解と協力が必要不可欠であります。私は、この点において橋本総理政治姿勢に甚だ疑問を抱くものであります。  理由の第一は、来年度予算編成に際し見せた総理態度からであります。  昨年末の予算編成時に見せた自民党議員の、国民税金政権党の私物かとみなすかのような言動及び予算編成の姿は、目に余るものがありました。大型プロジェクト予算選挙の結果を考えて配分するべきだ、自民党議員が多いところに重点的に配分すべきだというように、信じがたい言動が公然と行われたのであります。これに対し、総理は、来年度予算案財政構造改革元年として位置づけることを宣言されながら、全く指導力発揮しなかったのであります。その結果、既得権益の擁護の上に立つ旧来型の予算編成をそのまま放置し、歳出構造改革にはほとんど踏み込んでいないのであります。来年度予算案は、橋本総理の唱える改革いかに口先だけのものであるか明確に示しております。  第二は、厚生族のドンとして長らく君臨してきた、一連厚生省の不祥事に対する橋本総理道義的責任であります。  特に薬害エイズ問題では、厚生省は、非加熱製剤危険性認識しながら、厚生省天下り先であるミドリ十字が在庫を一掃するまで回収命令を控えたのではないかと疑われる事件であります。国民の命より会社の利益を優先するミドリ十字から、総理政治献金を受けていたのであります。また、福祉施設建設をめぐる贈収賄事件関係においても、総理は関連する政治団体からの政治献金を受けていると同時に、逮捕された茶谷元課長補佐さきの総選挙で公認し、総理みずから応援に出かけでおります。  総理、単に政治献金を返却すればそれで済むという問題ではありません。これら一連事件総理みずからが結果として間接的にかかわったという道義的責任は極めて重いのであります。その責任感が希薄であると私には思えてならないのであります。総理道義的責任を感ずるのであれば、総理みずからが率先して疑惑解明陣頭指揮をとると同時に、政官業の癒着を断ち切る、あるいは政治家、官僚の腐敗を防止するため、政治行政倫理法(仮称)を制定するなどの再発防止のための対策を具体的に講ずべきであります。総理決意をお伺いいたします。(拍手)  次は、経済財政運営について伺います。  まず第一は、目下、内外から東京発世界恐慌の引き金として危惧の念で見られております株安円安問題についてであります。  当面する景気の実情は、まさに危機的と言わなければなりません。政府は、平成九年度の経済見通しを実質一・九%と見積もっています。しかし、この数字自体、本来、政府自身が示した経済破綻のケースの成長率一・七五とほとんど変わらない数値であります。民間調査機関の来年度の成長率の予測では、この政府見通しをさらに下回り、ゼロ%台の成長を予測するところも少なくありません。  政府が編成した平成九年度予算案は、景気浮揚を図るどころか、つじつま合わせだけのまことに中途半端な予算で、日本の行く末に大きなマイナス効果を生じる予算となっています。  経済的な側面からいえば、マイナス効果の第一は、消費税率引き上げ特別減税打ち切り、健康保険など社会保障負担増加など、合計九兆円の国民負担増加であります。これは、実に国民所得の二%強に当たります。  第二は、公共投資落ち込みであります。  第三は、消費税増税前の駆け込み需要反動であります。  昨年十月来の新設住宅や乗用車の新車登録台数は、バブル末期の九〇年から九一年以来の高水準に達しています。本年も三月までは、電気製品などやその他の消費財にも駆け込み需要が出ることは必至であります。その反動増税後の四月以降に出て個人消費が大きく落ち込むことは間違いなく、消費のウエートがGDP、国内総生産の約六割に達するだけに、その影響は極めて大きいと言わなければなりません。  私は、平成九年度の上期においては、瞬間風速的にゼロないしはマイナス成長となるのは必至であり、その結果、雇用、企業経営金融機関財政などの構造的な諸問題がこの時期に一斉に噴き出してくることを恐れるものであります。まさに、景気は緩やかに回復しつつあるとの政府の発表とは裏腹に、破局の影が忍びつつあります。  株安円安は、こうした経済の先行きを内外市場見通した結果であり、日本は売りとして、昨年十一月に発足した橋本第二次内閣経済財政運営内容が明らかになるにつれ、それに対する失望のあらわれとして深刻化しております。橋本政権のもとでは、ここ数年の不況からの脱出はもちろん、これから一層の経済破綻を招くのではないか、そうした懸念の具体的なあらわれが最近の株安円安の本質であります。  総理、まず初めに、昨今の株安円安は、市場橋本内閣に突きつけた不信任であると受けとめられていることをどのように認識しているのか、伺いたいのであります。  とりわけ恐ろしいのは、巨額不良債権を抱える金融危機の問題であります。  昨年の通常国会において、住専処理にあれだけ国民の強い批判を浴びながら税金を投入したにもかかわらず、金融機関等不良債権の実態は全く変わっていないところか、いよいよ深刻化しております。四月以降の景気失速を予想して、株価地価がこの三月までのうちにさらに下がれば、決算を目前にした企業金融機関のバランスシートは一層悪化いたします。  また同時に、地価下落の一層の進行や公共投資落ち込みなどによって、建設、不動産の中小企業の倒産がふえる結果、下請に支払い保証をしている大手ゼネコンが窮地に陥る事態を招くことを予想する識者も枚挙にいとまがありません。その場合、当然、株価地価下落で弱っている取引銀行を一層直撃せざるを得ません。国民生活を犠牲にし、銀行救済を主眼とした超低金利政策の長期的な継続にもかかわらず、景気の失速、株価地価下落は、金融危機を改めて顕在化させざるを得ないのであります。  経済に占める心臓、血液としての金融システム重要性重大性は、改めて指摘するまでもありません。こうした景気失速経済破綻危機、また金融不安の中で、どうして総理の言うような金融ビッグバン銀行等の経営に関する早期是正措置実施ができるというのでしょうか。今のままでは、本来必要なビッグバン早期是正措置もいたずらに金融不安を大きくするだけであります。総理金融危機への認識及びそうした危機的な状況の中での金融改革ビッグバン見通しについていかがお考えか、伺いたい。  次に、金融行政改革大蔵省改革について伺います。  政府・与党は、金融検査、監督、企画立案の三部門をどこで切り離すかという機構いじり議論だけに終始し、金融改革中身議論に一歩も踏み込んでおりません。改革考えれば、監督部門廃止してよいのであります。そうなればルール企画立案検査が残り、この二つはいわば表裏の関係にあるのであります。企画立案大蔵省に残る今の与党案では、金融行政財政政策支配下から独立できないという従来の護送船団方式の域を全く出ません。金融政策よりも税収確保が優先する結果、有価証券取引税廃止などによる金融空洞化の防止や、銀行などが償却の促進や赤字決算によって不良債権早期処理を図ろうとしても、事実上実施しにくいという規制的な環境が継続することは明らかであります。  総理日銀法改正案を今国会に提出の御予定のようでありますが、金融行政改革大蔵省改革の焦点として、行政姿勢を、従来の行政指導を中核とした護送船団方式と言われた業者規制型から市場原理に基づくルール型へと抜本的に変えられるのか、また大蔵省に残す企画立案部門は今後どうするおつもりか、明確にしていただきたいのであります。  九年度の上期の経済破綻危機の序曲は、既に述べましたように、昨年末からの株安円安あらわれております。九年度予算政府案の中に、市場改革の意思の欠如と失敗の兆候を見てとったのであります。この平成九年度予算改革にほとんど寄与せず、むしろ九年度上期の景気を失速させて改革を挫折させることを強く危惧するものであります。財政赤字は、財政支出削減増税によらない限り減りません。しかし、この二つを短兵急に実施しようとすれば、景気は悪化し、かえって赤字がふえる結果を招きます。  平成九年度予算財政構造改革元年と称しておりますが、木によって魚を求むるようなもので、中長期的に日本経済を改善しようというねらいは全く見られません。歳出の内容は従来の延長で、新たな構造赤字を生むようなむだの多い旧来型の構成であり、民間支出誘発型へのシフトは全く見られないのであります。歳入の面でも法人課税改正を先送りし、個人に対しては消費税所得税社会保障負担で九兆円の負担増を強いております。そこには、勤労意欲投資意欲を高める税制改正などは一かけらもありません。これでは負担増加支出抑制短期的デフレ効果のみで、中長期的な構造改革は全く進まないと断言するものであります。  少なくとも、当面、緊急的な要請として、二兆円の特別減税制度化地価税の凍結、有価証券取引税廃止等実施すべきであります。そうした内容に九年度予算を組み替えるべきことを要求するものですり総理のお考えを伺います。(拍手)  さて、今我が国に求められている改革実現するためには、明確な政策理念のもとに、改革相互整合性を保ち、構造改革の影を経済の回復の光が吸収できるようなマクロ経済的な枠組みを準備しなければなりません。そのための経済運営の戦略と戦術が今最も求められているのであります。我が国改革の中長期的な目標は、政府の役割を外交、治安、福祉などのナショナルミニマムに限定し、それ以外の領域は民間市場経済に任せ、自己責任原則に基づく自主的で自由な選択の機会を広げ、民需主導型の自律的成長実現することであります。そうした目標実現するために、民間市場経済活性化する政策と、政府を効率的で小さくする政策がとられなければなりません。  我々新進党は、昨年十月の総選挙の際に、十八兆円規模減税、二十兆円規模の国、地方を通じた行政改革の断行を中心とした国民との五つの契約を国民の前に掲げました。具体的には、民間市場経済活性化するための規制緩和によるビジネス機会の拡大、公共料金引き下げによる生活コスト産業コスト引き下げ、さらに、政府を効率的で小さくするための行政改革規制緩和であり、そして何よりも可処分所得増加による消費拡大と、そして税の適正化のための大減税実施であります。  御承知のように、英国で一九八六年のビッグバンが成功したのは、それに先立つ七九年からサッチャー首相のもとで所得税法人税大型減税実施し、民間市場経済活性化しておいたからであります。また、米国で早期是正措置がうまく機能しているのも、八〇年代に巨額不良債権を処理し、それが終わった九二年十二月から導入したからであります。  政府が行おうとしているように、民間市場経済活性化不良債権の処理を中途半端にしたままで、経済デフレ化が必至である中、どうして苦痛を伴う金融構造改革実施できるのか、結果は明らかであります。デフレ効果を減殺する措置を講じることなく、マクロ経済支えを欠いて経済財政改革を行おうとしても、それは失敗せざるを得ないのであります。(拍手)  橋本総理の言われる五つ改革実行には、それを支えるべきマクロ的な枠組みが必要不可欠です。総理減税等のマクロ的な支えについて否定的な御見解だと承知いたしておりますが、お考えはそのままか。また、九年度上期などごく近い将来に景気が急速に減退した場合、総理がとられる景気浮揚策は引き続き公共投資に依存するおつもりか。いかがお考えか、総理の明確な答弁を伺いたいのであります。  次は、行政改革についてであります。  行政改革の問題については、昨年末の臨時国会において、我が党は詳細に党の考えを明らかにしつつ橋本総理見解をただしたところでありますので、私は一点だけ総理のお考え決断を伺うものであります。  私は、行政改革を断行するに当たって必要なことは次の三点にあると考えております。  その第一は、言うまでもなく内閣とりわけ橋本総理政治的リーダーシップ発揮であります。  行政改革については、第二臨調以来これまで多くの論議がなされており、第三者機関を活用した積み上げ方式による改革の限界も既に明らかになっております。総理はまた、総理直属機関として行政改革会議設置により再びその愚を繰り返そうとされております。総理行政改革において今必要なことは決断実行であり、そのためのリーダーシップ発揮であります。  例えば、今国会で、行政改革会議中央省庁再編等中間報告実施させ、その実現のための具体的方策を論議することが求められているのであります。行政改革会議中央省庁再編等について中間報告を見送り、論点整理という形でお茶を濁そうとしているやに聞きます。行政改革会議が検討している論点整理はあくまで賛成と反対の両意見を併記するだけで、実質的には何も言っていないのに等しいのであります。  総理は、反対意見があるのを承知中央省庁再編等を進めるのではありませんか。二十一世紀の日本のビジョンを描き、火だるまになって行革しようとするならば、まず国民的な議論を喚起するのが先決であります。そのためには、本年四月をめどに一定の方向性を出した中間報告をすると明言し、国民的な議論を巻き起こすべきであります。(拍手)  第二は、行政改革必要性緊急性から判断し、改革には時間をかけず、例外を認めず、一挙に断行することであります。  行政改革旧来の体制を破壊する行為でもあり、既得権益擁護の立場からの激しい抵抗が必至であります。行政改革は、漸進的に徐々にやると必ずや反対論や例外にせよという主張が噴出し、収拾がつかなくなって、結局は竜頭蛇尾に終わってしまいます。総理はこの行政改革の鉄則を堅持すべきであります。  第三は、行政改革優先順位を明らかにし、順位に従って一気果敢に改革を断行することであります。  私はこの点において、政府は、我が国経済活性化を図るための規制の撤廃、地方分権情報の公開、そして何よりも事業補助金廃止など、今日の財政危機を克服するための歳出構造改革などを最優先すべきであると考えます。  私は、橋本総理行政改革に取り組むに当たって、これら三点について十分留意されることを望むものでありますが、総理見解決意をお伺いいたします。  次に、昨年末、総理が突如として発表された教育改革についてお伺いいたします。  教育改革そのものは、私ども新進党も大賛成であります。しかし、なぜ今という感はぬぐえません。五つ改革どれ一つをとっても、一内閣の手に余るほどの至難の改革というのが大方の受けとめ方であります。しかし、五つ改革がかけ声倒れあるいは改革の先送りに終わりそうなのを糊塗するため、国民の目先を変える人気取りのための教育改革提案であっては、国民にとって甚だ迷惑なのであります。  新進党は、昨年、一昨年の二度にわたる中高一貫教育提言を初め、大学改革案、教員の採用・研修制度改革案いじめ対策や三十人学級、飛び級などの具体的な教育改革案を、政策提言国会論戦などで口を酸っぱくして訴えてきました。にもかかわらず、なぜこれまで一顧だにしなかったのか。教育改革を目指すというのであれば、新進党中高一貫教育の提案などについて率直な釈明があってしかるべきだと思うのであります。  総理教育改革中身をお伺いいたします。  総理は、戦後五十年間の我が国教育政策をどのように評価するのか。現在の教育制度のどのような問題点をいつまでにどのような方向に改革しようとするのか。また、改革手法はどのような手続、手順にするのか。現在の中教審の審議とはどのような関係になるのか。総理には、九年前の中曽根内閣当時の臨教審答申具体化が道半ばとの認識が見られますが、総理直属の第二次臨教審設置をお考えなのか。改革によって、教育基本法学校教育法などの改正もあり得るのか。最低限この程度は明らかにするのが国民に対する責務ではないか考えます。総理の明確な答弁を求めます。  次は、社会保障改革についてお伺いいたします。  私は、来る高齢社会は、国民一人一人のライフスタイルに応じた福祉ニーズ対応し、個人の生き方を最大限に尊重しつつ、その自己実現を支援する幅広い選択肢のある公正な生きがい社会へと改革していかなければならず、そのため、医療、保険、年金、福祉を横断的に抜本的に見直す大構造改革に着手していかなければならないと考えております。  しかし、超高齢社会が眼前に迫り、行政改革と同様、まさに今決断実行に移す段階にまで事態は切迫していることを考えれば、橋本内閣対応は到底改革の名に値するものとは言えません。結局は構造改革はすべて後回しし、消費税だけでなく医療、介護も新たな国民負担増だけを先行させているのであります。  こうした社会保障改革の青写真を示さない橋本内閣態度は、国民の間に広がっている漠然とした将来に対する不安をますますあおるだけであり、まことに無責任であると言わざるを得ません。(拍手総理の言われる社会保障構造改革の具体的な中身はどのようなものであり、いつまでに実行されるおつもりか。その結果、二十一世紀の社会保障はどうなるのか。国民の不安を払拭するために、わかりやすい明確な御答弁をお願いいたします。  医療保険制度改革についてお尋ねいたします。  政府・与党は、医療保険改革について、紆余曲折を経て、被用者本人の負担を二割、老人の外来を一回につき五百円、月四回まで、薬剤についても一種類について一日十五円とするなどの案を今国会に提出するとのことであります。私は、構造改革について先延ばしし、とりあえず三年間の赤字が出ないように国民への負担増で糊塗するだけの小手先の改革は、到底容認できません。  医療の世界にも高コスト構造の原因があり、十分にコスト削減が可能であります。例えば、世界的にも高い薬価、薬価基準制度、重複受診、出来高払い方式、さらには、医療提供体制のあり方、医療情報の公開などであり、これらの改革に本気で取り組めば新たに国民負担増を求めなくても済むという試算もあります。政府改革のメニューだけを示していますが、これまでの経験上、三年間も改革を先送りすれば、結局何もなされず、また負担増をという議論になりかねません。また、政府の構想では三年後には介護保険が施行され、国民はダブルパンチで負担がふえるということも想定されます。  総理、医療保険制度改革については、やはり構造改革から目をそらさず、真っ正面から医療のむだな部分の切り込みに取り組み、その上で国民の負担をお願いすることが筋であると考えますが、総理の御見解を伺います。(拍手)  次は、新しい介護システムについてであります。  新たな介護システムは、老後の生活をだれもが安心して迎えられるように、いつでも、どこでも、だれもが利用できる制度でなければなりません。すなわち、普遍性、権利性、選択性、公平性が重要でありますが。現在国会で論議中の介護保険法案は問題が極めて多いのであります。  例えば普遍性については、政府の保険方式では、保険の性格上、保険料を払えないまたは払わない人は当然給付を受けることはできず、結果として排除の論理が働き、要介護者をすべてカバーすることは不可能であります。権利性についても、政府案では、四十歳から保険料を納めても、脳卒中や初老期痴呆など老化に伴うものでなければ四十歳から六十四歳までは給付を受けられません。それ以前に、若年障害者が初めから給付を受けることができなくなっております。さらには、制度上、要介護認定によって、保険料を納めているにもかかわらず排除されることも考えられます。  ほかにもさまざまな問題がありますが、いずれにしても、医療と密接に関連する介護システムについては、医療保険改革とあわせ、国民議論のもとに慎重に審議すべきであります。また、最近自治体の首長などから異論が出されていることも、なお議論の余地があることをうかがわせます。この点について、先ほど指摘した問題点とあわせて総理見解を伺います。  なお、新進党は、政府案の保険方式ではなく、公の責任を明確にした税方式とし、また将来的には、若年障害者も含め、NPOなど民間活力を十分に生かした制度とするべきであると考えております。  日本の出生率が非常に低下をしてまいりました。一九七三年以降に低下傾向となり、一九九五年には、合計特殊出生率、女性が一生のうちに産む子供数の平均が一・四三人となり、二十一世紀初頭からは労働人口が減少に転ずることになります。この水準は、欧米先進国と比較をしても、イタリアや旧西ドイツに次いで低い水準であります。  労働力の減少は、それに比例した経済規模の縮小をもたらし、高齢化の扶養負担が勤労世代により重くなりますことは言うまでもありません。少子化は、所得水準の低下と国民負担率の上昇という二重の負担を勤労世代に強いる可能性があります。現在の政策対応の仕方によっては、将来の人口構成や経済社会生活に取り返しのつかない結果をもたらす面があります。  フランスの人口問題研究所、クロード・シュネー氏は、問題は女性の権利が守られているかどうかだと述べ、さらに、私の意見では日本政府や経営者が努力しなければ日本の出生率はもっと下がるだろうと警告しています。また、同研究所は、女性の職場進出を不可避的な時代の流れととらえ、家族政策で女性が働きやすい条件をつくることが重要だと位置づけています。  育児休業制度のさらなる充実やフレックスタイム制の導入、児童手当のあり方や保育制度の見直しなど、先進ヨーロッパ諸国に見習うべき点は多くあります。我々政治家は、当面の課題に誤りなきを期すとともに、中期的な課題に対しても同様に対応しなければなりません。総理の御見解を伺います。  最後に、外交、防衛問題について伺います。  橋本総理は、昨年一月の施政方針演説で、自立を基本方針とすると表明されました。しかし、この一年間の橋本外交は、わざわざ周辺国に災いをばらまき、しかも、一貫方針のないままジグザグ外交を続けてきており、率直に言って、自立はおろか国民は大きな不安を感じております。  日米関係と並んで重要な日本外交の柱は、アジア外交であります。中でも、日中関係は極めて重要であります。しかし、第一次橋本内閣では、国交回復以来最悪と言われるほど日中関係は冷え切ったものになりました。その原因は、中国の核実験問題もさることながら、尖閣列島問題を放置し続けた日本の外交姿勢や、自民党内の歴史認識問題、靖国神社公式参拝の選挙公約などに起因していると言わなければなりません。  円借款の再開でどうにか動き始めたものの、本年、日中国交回復二十五周年の大きな節目にもかかわらず、双方で二十一世紀に向けた新しい日中関係を構築しようという盛り上がりが今日も全く感じられないのは、極めて遺憾であります。総理は、今日の日中外交の責任をどう認識しておられるのか、将来の日中関係を今後どう築こうとしているのか、明確にしていただきたいのであります。  次に、沖縄基地問題について伺います。  本年五月には、嘉手納基地を初めとする十二施設、三千人分の土地の強制使用手続が間に合わず、期限切れとなることが確実視されております。仮に県の土地収用委員会に六カ月間の緊急使用手続をしたとしても認められる保証はなく、国による不法占拠状況が生じるおそれが強いのでありますが、政府として新たな法整備を行うのか、今後どういう方針で対処するつもりかについて、総理見解をお伺いいたします。  さらに、焦点の普天間基地の移設については、海上ヘリポート案が示され、キャンプ・シュワブ沖が有力とされておりますが、沖縄県議会を初め地元市町村も県内移設には強く反対しており、地元沖縄の理解を得ることはほとんど不可能な状況にあります。台風銀座の沖縄で、技術的にも未知数な海上ヘリポートを数千億円という巨額の経費をかけ建設する意味が果たしてどれだけあるのか。調査に二年、建設に五年を経て建設しても、朝鮮半島情勢が十年もこのままであるはずはなく、つくったときには無用の長物と化す可能性は大きく、そのときだれがこの巨費を投じた責任をとるのか。実戦部隊ではなく新兵の教育訓練中心の沖縄海兵隊が今後も存在し続けなければならない理由は何なのか。納得のいく説明を願いたいのであります。  沖縄大田知事は、四月にも訪米し、海兵隊の兵力削減を直訴すると報道されておりますが、今後、政府として米側に対し沖縄海兵隊撤去の要求を行う意思があるのか、この際、総理の明確な答弁を求めます。  沖縄基地問題に当たって最も重要なことは、さきの大戦において官民合わせて十数万人もの沖縄県民にとうとい犠牲を強い、終戦後も長く米軍政下に置かれ、強制的に軍用地を提供させ続けられできたこれまでの沖縄県民の多大な労苦に対し、日本政府として、国民を代表して、心からの感謝の意と今後の沖縄県民の幸福と発展に誠意と責任ある姿勢をきちんと示すことであると私は考えるものであります。  「沖縄県民斯ク戦ヘリ、県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」との海軍次官あての最後の大田司令官の電文を忘れてはなりません。これまでの政府姿勢は、初めに基地ありきであり、地元市町村の意向を十分踏まえることなく、技術的、機械的に日米交渉を進めてきたと言っても過言ではありません。県民の心が理解できないで、沖縄基地問題の解決は決してあり得ないことを強く訴え、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
  12. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 神崎議員にお答えを申し上げます。  まず、ペルー事件及び重油流出事件を引きながら、危機管理体制の充実を行うべきという御指摘をいただきました。  まさに危機管理体制の強化は内閣の最重要課題でありますし、これまでも阪神・淡路大震災の教訓などを踏まえながら、内閣としてその充実に努めてまいりました。現在、これらの事件につきましては、それぞれ対策本部設置して政府を挙げて取り組んでおりますが、危機管理体制は常に点検、改善をしていくべきものであり、これらの事案を通じ得た教訓を生かしながら、さらに適切な危機管理体制の確立に万全を期してまいります。  ナホトカ号の重油流出事故につきましては、事故発生後、直ちに人命救助を行いますとともに、冬の日本海の荒天下でありますが、タンカーからの流出油の監視、防除や、漂流している船首部の沖合曳航などの作業に海上保安庁を初め全力を挙げて取り組んでまいりました。しかし、結果として、船首部の曳航は成功せず、また流出油の一部が沿岸に漂着して事態拡大したことは残念であり、事態の状況を踏まえ、もう少し早く関係閣僚会議を開催するとか、政府対応に反省すべき点があったことは率直に認めます。政府といたしましては、本件事態の重大さにかんがみ、被害状況の把握、環境に与える影響の調査、賠償問題などの被害対策事故原因の究明や老朽タンカー対策などの再発防止策につき内閣を挙げて全力で取り組んでまいります。  次に、福祉施設建設をめぐる事件などを例にされながら、対策についてのお尋ねがございました。  政府としては、昨年発生いたしました不祥事を厳しく受けとめながら、真に実効の上がる綱紀粛正の方策につき、昨年十二月、事務次官等会議申し合わせを行いました。今後は、この申し合わせに基づき、各省庁において制定された公務員倫理規程の厳格な遵守を図ることなどにより、政府を挙げて綱紀粛正を徹底しながら、国民の信頼を回復するよう努力してまいります。  また、政治献金につきましては、さきの三党政策合意におきまして、政治資金規正法の平成六年改正法附則第九条及び第十条の規定を踏まえ、政治資金のあり方について今後さらに協議を進める旨明記されているところでありますが、各党各会派におかれましても十分御論議をいただきたいと考えております。  次に、最近の株式相場及び為替相場についての御意見がございました。  最近の株式相場は全体として軟調に推移しておりますが、我が国経済状況などのファンダメンタルズは決して悪いものではございません。政府としては、平成八年度補正予算の早期成立並びに平成九年度予算の年度内成立を図り、切れ目のない経済運営に万全を期していくことにより、御指摘のありましたような四−六月期をも含め、私どもは景気の回復に全力を挙げてまいります。同時に、各般の構造改革を着実に実施していくつもりであります。いずれにいたしましても、株式市場の動向については、今後とも重大な関心を持ち、注意深く見守ってまいります。  また、最近の為替市場につきましては、対円のみならず対マルク等につきましても、全面的にドル高方向での動きが見られております。我が国経済にとりましては、為替相場の安定こそが重要でありまして、行き過ぎた円安は、行き過ぎた円高と同様好ましいものではございません。今後の為替相場の動向につきましては十分注意してまいりたいと思います。  次に、金融システムについての御意見がございました。  金融機関は現在不良債権処理に精力的に取り組んでおり、個別金融機関経営状況はそれぞれ違いがありますが、金融機関全体としては不良債権問題を克服することは可能だと考えております。また、金融システム改革を進めるに当たり、システムの安定には細心の注意を払いながら進めていく必要があり、早期是正措置の導入につきましても円滑な運営が図られるよう努めてまいります。  次に、これまでの金融行政に対するさまざまな御批判を真摯に受けとめながら、そのあり方を抜本的に見直し、自己責任原則の徹底と市場規律の十分な発揮を基軸とする透明度の高い行政を行っていくことが重要だと考えております。このような観点に立って、情報開示の促進や早期是正措置ルールの明確化などの必要な措置を講じ、自由であるとともに透明で信頼できる市場を構築してまいりたいと考えております。  次に、金融行政機構改革は、金融行政に対し国民の皆様からいただきました御批判を重く受けとめながら、検査監督といった執行部門総理府直属の、仮の名前でありますが金融検査監督庁が担うことにし、企画立案政策部門大蔵省が分担することが、透明かつ公正な金融行政への転換を図ることに資すると判断したことによるものであります。  財政金融の分離の問題につきましては、我が国行政機構のあり方の根幹にかかわるものであり、行政改革会議において、中央省庁再編問題の一環として大所高所から十分御議論をいただくべき問題だと思っております。  次に、特別減税制度化等について御意見がございました。  例えば、御指摘の特別減税制度化には恒久的な新たな財源が必要でありますが、現在の厳しいこの財政状況を考えればおよそとり得ないと思います。政府としては、九年度予算にあわせて八年度補正予算の円滑な執行に努めるなど適切な経済運営を進めてまいる所存でありまして、自律的回復への基盤が整いつつある我が国経済への信頼を高めるためにも、予算の速やかな成立をお願い申し上げたいと思います。  なお、地価税につきましては、平成八年度税制改正におきまして既に税率を半減する措置を講じており、また、土地税制では、九年度にも固定資産税、登録免許税などについて所要の見直しを行うこととしております。  有価証券取引税につきましては、平成八年度税制改正におきまして税率を軽減する措置を講じてきましたが、さらに、金融システム改革の進展状況などを踏まえながら、株式等譲渡益課税を含む証券税制全体の中で検討したいと考えております。  マクロ経済についての御議論をいただきましたが、最近の動向を見ますと、景気は回復の動きを続けております。そのテンポは緩やかではありますが、設備投資を初め民間需要は堅調さを増しております。九年度につきましても、政府経済見通しでお示しをいたしましたように、消費税の税率の引き上げなどにより年度の前半は景気の足取りは緩やかとなるものの、規制緩和などの経済構造改革実施等と相まって、次第に民間需要を中心とした自律的回復が実現されるとともに、持続的成長への道が開かれるものと考えており、そのためにも早期に補正予算を含め予算案の成立に御協力を願いたい、こう思っております。  また、行政改革の進め方につき御注意をいただきました。  国民が求めるサービスを最小の費用で提供できる行政経済社会の変化に柔軟に対応できる行政をつくり上げることが行政改革の目的であります。そのためにも、官民の役割分担や規制緩和地方分権といった観点から、一切の聖域を設けることなく行政のあり方を総点検するなど、国家の機能を根本的に問い直す必要がございます。そうした考え方に立って、中央省庁の再編につきましても、私が会長を務める行政改革会議におきまして鋭意検討を進め、十一月末までに成案を取りまとめる考えであります。行政改革政治責任で取り組むべきものであることは御指摘のとおりであり、全力を尽くして改革をなし遂げる所存であります。  次に、教育政策についてのお話がございました。  我が国世界的にも高い教育水準を達成できた、これは、政府政策はもとより、教育に対する国民の情熱のたまものだと思います。しかし、平等性や均質性を重視してきたこれまでの教育、これから個々人のそれぞれが多様な能力を伸ばしながら、創造性やチャレンジ精神を重視した教育に変わっていくことが必要だ、そうした意味から教育改革を推進してまいりたいと思います。  その手順につきましては、教育というものがこの国のすべてのシステムの根本をなすものである、基盤をなすものであるという認識のもとに、改革の具体的な課題やスケジュールを立てて取り組むよう文部大臣に指示しておりまして、現在、文部省を中心に関係省庁と連携しながら検討しております。  なお、第二次臨時教育審議会の設置考えておりません。  また、二十一世紀の社会保障の姿についてのお尋ねがございました。  急速な少子・高齢化の進展に伴う国民の需要の変化に適切に対応するとともに、医療、年金、福祉などを通じ、給付と負担の均衡がとれ、かつ経済活動と両立し得る、サービスの選択、民間活力の発揮といった考え方に立って、効率的な安定した社会保障制度を確立していかなければなりません。その第一歩として、介護保険制度の創設及び医療保険制度改革について今国会で御審議をお願いしたいと考えておりまして、引き続き二十一世紀初頭に向けて総合的な医療改革実施するとともに、年金については平成十一年に改革を行うことといたしております。  御指摘のように、二十一世紀に向かって医療保険制度改革を進める上では、医療提供体制及び医療保険制度の両面にわたる改革を総合的かつ段階的に実施する必要がございます。そのため、老人医療制度のあり方や診療報酬体系の見直し、薬剤使用の適正化医療提供体制の見直しなどにつきまして今後早急に着手するなど、本格的な改革に取り組んでまいります。こうした改革を進めてまいりますためにも、現行の医療保険制度の財政の安定を確保していくことが喫緊の課題でありますことから、平成九年度に給付と負担の見直しなどの制度改正実施することといたしております。  次に、介護保険につきまして御意見をいただきました。  介護保険制度の創設は、現行の高齢者介護に係る医療福祉の制度を再編成する、介護を医療保険から切り離すなど、社会保障構造改革の第一歩となるものでありまして、先延ばしの許されるものではありません。そして、この介護保険法案は、関係審議会での審議地方公共団体との協議などの積み重ねの上に取りまとめたものでありまして、その成立に全力を尽くしてまいります。また、本制度におきましては、負担能力に応じて保険料の軽減などを行うこととしております。また、若年障害者につきましては、障害者福祉施策の充実により必要な介護サービスを提供することといたしております。  次に、女性が働きやすい条件整備についてのお尋ねがございました。  少子化の進む中で、働く女性がその能力を十分に発揮できるようにすることは重要な課題であります。そのために、育児休業制度の充実や労働時間の短縮の推進を初めとして、労働者が子育てをしながら安心して働くことができる雇用環境を整備してまいります。また、子供を持つ家庭のさまざまな要請に応じた保育サービスを提供できるよう保育制度の改正を行うとともに、さらに、今後、少子化の対応につき幅広く総合的に検討してまいりたいと考えております。  日中関係につきましては、中国による核実験の実施、尖閣列島をめぐる一連事態等がございましたが、昨年のAPEC会合の際、マニラで行いました日中首脳会談におきまして、日中関係をより発展させていくことで認識が一致をいたしました。日中関係は、両国はもとより、アジア太平洋地域、さらには世界の平和と繁栄のために重要な二国間関係であり、例えばWTOに中国を迎え入れる努力を今後とも一層強めるといった、そうした努力を積み重ねながら、信頼関係に基づく日中関係の一層の発展に努力をしてまいります。  次に、駐留軍用地特措法に基づく使用権原取得手続のお尋ねにつきましては、国と沖縄県との信頼関係のもとに、知事から公告縦覧手続への御協力をいただきました。今後、沖縄県収用委員会における公開審理が開始される予定でありますが、このような状況などを踏まえ、裁決に至る手続が円滑かつ迅速に行われることを期待しているところであります。また、政府としても関係者の協力が得られるよう最大限努力をしてまいるつもりであります。  次に、海兵隊の駐留についての御意見がございました。  政府としては、在日米軍の存在は日米安全保障条約の目的の達成のために不可欠である、また、我が国に駐留する海兵隊につきましても、その有する高い機動力、即応性などを通じ、在日米軍の重要な一翼を担っていると考えておりまして、現時点では海兵隊の削減や撤去を求める考えはございません。  また、普天間飛行場を代替する海上施設について御意見がございました。  同飛行場が返還される今後五年から七年の間の国際情勢の変化について予断をすることは確かに困難でありますが、普天間飛行場の全面返還というものが沖縄県知事以下皆さんの大変強い要望でありました中で、海上施設の建設というのはその全面返還を実現するための必要な措置でありまして、この施設が、沖縄県の方々の負担の軽減という観点からも、ぎりぎりの選択肢としてSACO最終報告において取りまとめられたことを御理解いただきたいと思います。  最後に申し上げますが、沖縄の問題というのは、政府として当然ながら全力を尽くしていく問題でありますから、どうぞ国会におかれましても御協力を心からお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  13. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 不破哲三君。     〔不破哲三君登壇〕
  14. 不破哲三

    ○不破哲三君 私は、日本共産党を代表して、橋本総理に質問いたします。  政府がこの国会に提出する予算案は、国民巨額の高負担を要求するものです。四月から予定の消費税増税は五兆円、特別減税廃止分は二兆円で、国民が負担する税金は七兆円もふえます。しかも、政府医療保険の改悪を同時に実施しようとしており、国民負担増は、政府管掌の健康保険で九千六百億円、組合健保、国保一般などで八千数百億円、高齢者の自己負担で最低二千四百億円、合計して二兆円を超えます。合わせて九兆円もの負担増、これは、国民一人当たり七万五千円、四人家族で三十万円もの負担を新たに負わせることであり、許すわけにいかない国民生活への攻撃であります。  これまでにも、増税医療保険の改悪などで国民に新たな負担を要求した政府はありました。しかし、歴代のどの政府をとっても、九兆円あるいはそれに近い負担増を要求した内閣は、橋本内閣以前にはなかったのではありませんか。総理、過去の実績で、国民負担の増加が一年間に一兆円を超える事例があったかどうか、あったとすれば、それは何年度で、年間どれだけの負担増だったか、お答え願いたい。  私が調べたところでは、鈴木内閣時代の一九八一年に約一兆六千五百億円が過去最高の記録でした。こんな歴史を振り返れば、九兆円の負担増という今回の政府の計画がいかに無法な暴挙であるかが浮き彫りになるではありませんか。  さらに、政府消費税増税などをいかなる経済情勢のもとでやろうとしているかが重要であります。九〇年代に入って以降、日本経済が長引く不況に苦しみ、多年にわたる驚くべき例外的な低成長が国際的にも問題になっていることはよく知られているとおりであります。その原因はどこにあるのか。経済企画庁が昨年八月に発行した経済白書は、日本経済はなぜこのように長期にわたって低成長にあえぎ、かつ景気の回復が緩やかであったのかと問題を投げかけた上で、その答えを消費と設備投資という景気牽引力、景気を引っ張る二大主役の立ちおくれに求めています。  消費といえば、その中心は言うまでもなく個人消費支出であります。白書は、その伸び悩みの内容として、実質可処分所得の伸びが緩慢であったことを指摘しています。つまり、所得が伸びないことに加えて、所得から差し引かれる税金や社会保障料などの負担が重大だということです。  白書はまた、設備投資のおくれについても、いつもなら中小企業の設備投資が先行してリード役を果たすのだが、今回はその状況が見られないことを問題にしています。中小企業の状況はそれほど深刻なのです。中小企業は、従業員数では日本全体の約八割、経済活動の規模では五割台から六割台、文字どおり日本経済の主役と言えるだけの比重を持った存在です。それだけに、今日一部に見られる景気回復的な現象が大企業だけに偏って、日本経済支え中小企業が全体としてその外に置かれていることをとりわけ重視する必要があります。  私は、白書のこれらの指摘を読んで、これは現在の不況の問題点についてのなかなか的確な診断だと思いました。総理経済企画庁のこの診断が政府の本気の見方であるなら、なぜその診断に沿った対処をしないのですか。実質個人消費の伸び悩みが問題だと分析する口の下で、年間九兆円もの負担を国民の肩に新たに担わせ、国民の実質所得を低下させることは、政府自身の診断にも逆行する暴挙ではありませんか。これは国民生活を痛めつける悪政であると同時に、日本経済のかじ取りを決定的に誤るものであります。(拍手)  増税中止を求める国民の声は総選挙後もいよいよ高まり、日本共産党国会議員団を通じて国会に寄せられた増税中止の請願署名は七百万を超えました。経済界からも真剣な反対意見が出されています。特に不況に苦しむ中小企業の間では、この声は圧倒的です。東京都信用金庫協会が昨年十二月に行った調査では、都内の中小企業約一万二千社のうち、ことしの景気は悪いと答えた経営者が七七・三%。どんな経営環境の整備を望むかについては、回答の第一位は消費税の軽減で五六・三%、第二位は所得減税による消費需要の充実で三九・七%でした。  総理、あなたが日本経済の現状の打開を本気で考えるのなら、消費税塔税、特別減税中止、医療保険の大幅負担増などの逆立ちの政策を直ちに取りやめ、国民消費購買力の拡大中小企業の振興によって、日本経済国民的な底から活気づける政策にこそ真剣に取り組むべきではありませんか。総理日本経済の現状をどうとらえているかも含めて、明確な答弁を求めるものであります。  消費税増税についても医療保険負担増についても、政府はその理由づけとして財政上の困難を挙げています。しかし、現実にそこにあるのは、国民が納得できない不当な支出、浪費やむだ遣いをそのままにして、そのツケを国民に負担させるという、これまた国民が納得できない不当な理屈ではありませんか。  まず、国の財政の問題です。日本共産党は、財政再建のために抜本的にメスを入れるべき国政上のむだ遣いとして、ゼネコン型の公共事業・軍事費の膨張、大企業に対する特権的な減免税の三つの分野を指摘してきました。これらの浪費を抑えれば、消費税増税なしに財政再建を軌道に乗せることができるし、消費税廃止への展望も開かれできます。ところが、政府は、財政再建のかけ声だけで、この三つの分野には手をつけず、逆に浪費を拡大する方針を打ち出しています。  公共事業の投資規模は国際水準の三倍から四倍という異常なものですが、政府はその言いわけとして下水道などの事業をよく挙げます。しかし、問題はそこにあるのではありません。国民生活とは無縁なゼネコン型の大型事業の中に、あきれるような浪費とむだ遣いが横行していることこそが問題なのです。例えば、五年ごとの計画を立てて進めている港湾整備計画です。その予算は、八〇年代後半の第七次計画が三兆七千億円、九〇年代前半の第八次計画が五兆七千億円、九〇年代後半の第九次計画が七兆五千億円と急膨張しています。ところが、その中身には工事のための工事というべきものが多く、浪費の象徴という実態を各地でさらけ出しています。  一例を挙げれば、国際的な大型港湾として整備した福井港です。ここには国と県が四百八十四億円の資金をつぎ込みましたが、肝心の外航船は月平均二、三隻しか来ず、ふだんは専ら釣り人の漁場、百億円の釣り堀として評判になっているとのこと、その実態はマスコミでも取り上げられて天下周知のことになっています。ほかにも、経済的な見通しも立たないまま巨額の公薬事業費のむだ遣いの対象となっていると見られる港湾は、鳥取港、新潟港、石狩湾新港などなど各地に数多くあります。  二十数年前に日本列島改造計画の一環として着手され、この計画自体が破綻した後もずるずると投資が続けられてきた二つの大規模プロジェクト、苫小牧東部開発やむつ小川原開発も浪費の典型であります。合わせて五千億円を超える資金が投じられましたが、どちらも開発事業としては破綻そのものといった現状ではありませんか。  これらはほんの一例にすぎません。日本の公共事業が同じような浪費の無数の事例に満ち満ちていることは、関係者の間では今や常識となっています。総理、これらの浪費を野放しにしてきたことこそ財政危機をつくり出した最大の原因の一つではありませんか。財政再建を言うなら、公共事業の現状を総点検し、むだ遣いが明白な事業はきっぱりと打ち切ることこそ急務であります。それをやらないで、みずから引き起こした財政危機のツケを増税国民に転嫁し、それをもって財政再建の第一歩だとするなどは、責任ある政府のやるべきことではありません。  もう一つ例を挙げましょう。総理が施政方針演説でその推進を再び強調した首都機能移転事業は超大型の浪費計画であります。  第一に、この事業には合理的な目的が全くありません。当初は東京への一極集中と過密の解消が最大の大義名分としてうたわれましたが、過密の解消に役立たないことが明らかになったら、いつの間にかこの目的が文書から消えてしまいました。この問題の最後の報告書である国会等移転調査会報告では、東京の過密解消ではなく、反対に、国会政府を過密都市東京から脱出させることが目的だと強調されています。  第二に、政府は首都機能移転を行政改革の転機にするなどとも言っています。しかし、実際の事態は、行政の簡素化ではなく、二つ政府建設という異様な方向に向かっています。実際、政府が二〇〇〇年に新首都の建設を開始するという日程を決めながら、同時に、大規模な高度の機能を集中した新首相官邸の建設を同じ二〇〇〇年の完成を目標として進めています。昨年六月、参議院の特別委員会でこの矛盾をつかれたとき、総理は、東京と新首都に二重の施設があってもよいではないかと答えました。二つ政府施設を東京と新首都につくるなど、むだ遣いの最たるもめではありませんか。  第三に、この事業にかかる費用は今の財政事情では考える余地のないほど巨額のものです。国土庁は以前、その費用を十四兆円と試算しましたが、関西財界の代表者で国会等移転調査会の会長を務めた宇野收氏は、昨年二月、参院特別委員会に出席した際、今正確な数字が出ているわけではなく、その費用は二十兆にも二十五兆にもなるかもしれないと答えました。関連する交通機関の整備などの費用を加えれば、この金額がどこまで膨れ上がるか、だれにもわかりません。政府のどの機関も、その費用についての責任ある試算を一度も発表したことがないのです。  総理、幾らあなたの先輩である自民党の前副総裁金丸信氏が手がけた事業だからといっても、目的も定かでない、かつ、史上最大規模で、どれだけ費用がかかるかの試算もされていないこういう超大型プロジェクトについて、今日の財政危機のもと、その強行に突き進むなどは、思慮ある政府なら絶対にやれないはずのことであります。(拍手)  一体、首都機能移転の目的はどこにあるのか、国会だけでなく政府も移転する計画なのか、政府が移転するのだとしたら、なぜ首相官邸の建設工事を中止しないのか、この事業計画の費用を現時点で幾らかかると概算しているのか、その費用をどういう財源で賄おうと考えているのか、少なくとも以上の点について、政府も承認した公式の文書、国会等移転調査会報告の到達点も踏まえて、お答え願いたいのであります。  次に、医療保険の問題です。  私は、昨年十二月の代表質問で、厚生省疑惑と医療保険の関連を取り上げ、健保会計の赤字の一部に疑惑の事業に絡む不当な支出が含まれていること、また製薬会社と厚生行政の癒着が薬価の不当な負担を不当に大きくし健保会計を圧迫している疑惑があることを指摘し、まず国民負担増をというやり方でなく、これらのうみを一掃する努力こそを、政府の最優先の任務だと主張しました。このことは、その後の経過の中でいよいよ重要になっています。  まず、病院寝具協会にかかわる疑惑であります。  十二月の国会の論戦でも、特定の企業を中心にしたグループが、厚生省がつくった制度を足場に病院寝具や病人用の衣類、病衣の独占をはかった上、政界に働きかけて健康保険の加算点数の大幅なつり上げをはかり、不当な利益を得ていたことが問題になりました。このグループは政界工作を主目的に一九七七年に病院寝具政治連盟をつくりましたが、この政治連盟が一九九三年までに政界に行った献金は約四億円にも上ります。  重大なことは、この利権グループの不当利益がすべて医療保険からの支出と結びついていたことであります。寝具、病衣に関する医療保険からの支出は、試算をしてみますと、以前には年に二百億円程度でした。それが、病院寝具政治連盟結成以後は加算点数がウナギ登りにふえた上、このグループによる独占が進んだため年々支出が激増して、九三年には年間九百九十億円と約五倍になりました。その支出の累計は、九〇年代の最初の四年間だけでも三千七百億円を大きく超えます。そのかなりの部分が政界、官界絡みの悪徳商法による不当支出だと推定されます。  総理医療保険にかかわるこういう問題が目の前にあるのに、その真相を明らかにせず、済んだことだと言ってふたをしたまま、赤字だから負担をしてくれと言っても、国民が納得しないのは当たり前ではありませんか。同じような疑惑が厚生・福祉行政のほかの分野にもあるのかどうか、その総点検とあわせて、医療保険に絡む悪徳商法の一掃に強く取り組むことを求めるものであります。目の前にあるゆがみを正さないで、どうして国民本位の行政改革を口にできるでしょうか。  また、あなたは前回、福祉関係団体からの政治献金について、政治資金規正法の手続だけでなく、みずからを政治倫理に照らして戒めるべき問題だとする答弁をされました。これらの団体が不当利益の拡大を目指して政界工作を系統的に行ってきた事実が明らかになった今、総理関係大臣が問題の団体から政治献金を受け取ったり、会長や顧問などの役員になったりしてきたことの是非について、みずからの政治倫理に照らしての見解を伺いたいと思うのであります。  一層重要なものは、薬の価格、薬価の問題であります。  日本では、国民医療費二十七兆円のうち約三割に当たる八兆円が薬剤費で、薬価負担の大きさは国際的にも異常なものとされています。大阪府保険医協会が、この問題で最近大変綿密な調査を行いました。この調査は日本でよく使われている六十二品目を対象にしたもので、それによると、日本の薬価は、ヨーロッパに比べると、ドイツの一・四倍、フランスの二・七倍、イギリスの二・七倍という高さです。なぜこんなに高くなるかの原因についても、国際的にも安定した評価の出ている薬はほぼ世間並みの値段だが、新薬の価格が異常に高いこと、しかも、その新薬の使用比率がドイツの一割に対し日本の五割と飛び抜けて高く、そのことが薬剤費の負担を高めているなどの事情が解明されました。  あわせて、以前と少し成分を変えただけのものが新薬扱いされて高値をつけられていることや、新薬の審査体制が製薬会社中心であるために、薬としての信頼性が危ぶまれるものまでが認可される場合が少なくないなど、重大な問題が提起されています。医療の専門家たちが、系統的な調査をもとに問題を真剣に提起しているのであります。経済企画庁の国民生活白書も、この調査結果を紹介して薬の内外価格差を問題にしています。  総理、国際水準に照らして日本の薬価か高いという事実をあなたはどう認識していますか。医療保険財政的な困難を打開するためにも、国民が安心して薬を利用できる状態をつくるためにも、薬価をめぐる問題点に正面から真剣に取り組むことが今緊急に求められているのではないでしょうか。実際、ごく控え目な計算をしても、薬価が是正されてヨーロッパ並みの水準になったら、薬剤費の国民的な負担が少なくとも二兆円から三兆円は軽くなるという結果が出ます。  薬害エイズの問題では、製薬会社の利益を国民の命の上に置いた厚生行政と製薬業界の癒着が明るみに出ました。医療保険を圧迫している薬の高価格も、結局は同じ癒着の産物であります。国民の批判と怒りの的になっている国民負担増の計画を取り下げ、保製薬業界との不明朗な関係を断ち切って、医療制度をむしばむ害悪の根源に思い切ってメスを入れるべきときです。それをやらないで、いたずらに国民負担増を強行しても、それは一時逃れの方便にしかならず、二〇〇〇年度には政府管掌健康保険財政的な破綻に陥る、このことは、厚生省自身がごく最近発表した試算で確認しているではありませんか。  ここでも、国民の声にこたえる解決策は、国民負担増なしに国民に安心できる医療を提供できるよう、医療保険の浪費的な支出をやめさせる改革に真剣に取り組むことであります。総理見解を求めます。  次に、阪神・淡路大震災対策の問題に進みます。  この一月十七日が大震災の被災二周年の日でした。今なおその被害に苦しんでいる震災被災者の問題を抜きにして、日本国民生活の問題を語ることはできません。  現地からの報告によりますと、被災地では、今なお三万八千世帯、七万人の人々が仮設住宅で三度目の冬を迎えています。現在までに災害公営住宅に入居できたのは一万三百九十世帯、そのうち仮設住宅からの入居者は六千三百八十八世帯にすぎず、兵庫県が設定する仮設住宅解消の時期も先延ばしされて、住民は不安を募らせています。さらに、十万人から十二万人と推定される県外への避難者は居住地に帰るめどを持てないでいます。仮設住宅に住む人の中で、震災で職を失った人は五一・四%、そのうち再就職できたのは臨時、パートを含めてその五割余りにとどまり、再就職の見通しはきわめて厳しいのが現状であります。  また、医療費の本人負担分を免除するという特例措置が九五年末には打ち切られました。兵庫保険医協会の調査では、病院に通っていた国保の患者のうち約四割がこの打ち切りとともに通院をやめたとのことです。被災者の孤独死が昨年十二月末までに約百二十人に上ったということも、こういう状況の中で起きた問題であります。  総理、この日本で、震災の被害を受けた人がこれだけの規模で、人間らしい生活を再建できないまま、またその見通しを持てないまま、苦難の生活を余儀なくされているのです。私は、これら被災者に対する公的支援に直ちに取り組むことは今日の日本政治の最優先の課題だということを改めて強調したいと思います。(拍手)  日本共産党は、生活再建と住宅資金合わせて一千万円を限度とする個人補償の制度の創設を中心に公的支援の方策を具体的に提案していますが、個人補償を中心にした公的支援を早く具体化せよの声は、被災地だけでなく全国的な強い世論となりつつあります。日本は私有財産の国だから個人の生活の再建は個人責任だ、もし政治がこんな無責任な論理で公的支援の道を講じないまま被災者を現状に放置し続けるとしたら、それは国民生活に対する政府責任を放棄するのと同じではありませんか。  総理は施政方針演説で、被災二周年に当たって最大限努力すべき課題の筆頭に、被災地の生活の再建を挙げました。一刻も早く個人補償と公的支援の実現に取り組み、被災地の切実な声にこたえることを強く要求し、総理見解を求めるものであります。  次に、この一月に起きた新たな災害、沈没したロシアのタンカーからの重油流出の問題であります。  事故発生後、各地の海岸で漁業関係者やボランティアを含む多くの方々がひしゃくやバケツあるいは素手で油と闘っている、この様子をテレビで見て胸を痛めなかった方はいないと思います。悪天候下の作業による死者は既に三人に達しました。政府は、日本世界に誇るべき高度な技術を持った技術大国だといつも言っています。その日本で、巨大な規模重油流出事故に素手で立ち向かわなければならないという事態がなぜ起こったのか。被害は既に七つの府県、六十一市町村にも及んで拡大しつつあります。  詳細は今後の論戦に譲り、きょうは最も基本をなす問題点に絞って質問いたします。  第一は、事故発生に対する政府対応の問題です。  事故が発生したのは一月二日の未明でした。しかし、運輸省の油回収船清龍丸に出動要請があったのは一月四日の夜、現地到着は九日早朝だと聞いています。流出重油の回収は四十八時間以内が鉄則だと言いますが、到着のこのおくれのために、到着したときには油は固まって、作業が一段と困難になったと言われています。政府は、九五年十二月に、国際条約に基づく油汚染災害に対応するための緊急時計画を決定していますが、この計画には、事故の発生時にはその初期の段階から迅速かつ効果的な措置をとることが明記されています。なぜ対応がこんなにおくれたのか、政府対応の時間的な経過とともに、なぜおくれたかの事情説明を求めます。  第二に、現在でも政府が、日本が持っているあらゆる装備を生かした万全の体制をとっているとは到底見受けられません。  弱体だとはいっても、油回収船は民間を合わせて全体で百四十五隻、うち沿岸用が五十一隻あるとのことですが、今現地に行っているかその途上にある船はさきの清龍丸を含めて四隻だけです。回収ポンプなどの機材も、石油会社のものを含め相当数が存在しているはずです。なぜ必要な総動員態勢をとらないのですか。  第三は、ロシアに対する対応です。  今回の事故責任がロシア側にあることは明白ですが、ロシア政府がこの問題でどのような見解を持ち、どのように責任をとろうとしているのか、また日本政府がそのロシア政府にどのような対応をしているのかが、国民には見えてきません。私は二十日ロシア大使と会い、船主だけでなくロシア政府責任を負うべきことを指摘し、一連の要望事項を申し入れました。その席で大使は、ロシア政府に道義的な責任があることをはっきり認めましたが、日本政府として、対ロシア政府との関係での事の経過と政府対応について伺いたいのであります。  第四は、この種の事故に備えるふだんからの体制の問題です。  日本世界でも有数の石油輸入国として、日本の港に出入りするタンカーは毎年大変な数に上る上、日本海は老朽化したタンカーによる重油の輸送が特に多いなど、とりわけ危険な状態にあったことは当局者にはわかっていたはずであります。ところが、一たん事故が起こってみると、この種の事故に対する備えが余りにも貧弱なことに国民は驚かされました。油回収船にしても、沖合で活動できる能力を持った大型船は清龍丸ただ一隻。しかも、百四十五隻全体の配備を見ると、清龍丸を含め圧倒的に太平洋側での配備で、問題の日本海側には、秋田、新潟、富山、福井にそれぞれ一隻、合計わずか四隻という状態でした。  阪神大震災のときにも、政府は自衛隊の軍備の増強や近代化には熱心だが、国民の生命と財産を守る上で決定的な地震に対する備えの弱いことが大きな批判の的となりました。今回。重油流出事故に対する備えが決定的に手薄な現状を、シーレーン防衛の名のもとに専ら海上軍事力の増強に熱中してきた政府態度と見比べて、その思いはひときわ深刻なものがあります。一体どのような体制方針でこの種の事故に備えできたのか、現状で十分と判断してきたのか、そして今後の備えをどうするつもりか、伺いたいのであります。  次に、米軍基地の問題です。  今、各地で米軍基地やその訓練に反対する住民の運動が広がっています。日本にいる米軍の主力は、横須賀を母港とする空母機動部隊と沖縄及び山口県岩国に基地を構える海兵隊であって、どちらも海外への遠征を任務とする部隊であります。これらは、その軍事的性格からいって、日本の国土防衛の任務とは無縁の存在で、日米安保条約の廃棄以前でも日本からの撤退を要求して当然の部隊であります。  ところが、政府は、最近、アジア太平洋地域全体に対する日米安保条約の意義を殊さらに強調し、海外への遠征と外国への攻撃を任務とするこれらの部隊にいつまでも基地を提供し続けようとしています。これは、アジア太平洋作戦の前線基地の役割を政府自身があからさまに、また進んで引き受けることでありませんか。極めて危険なことであります。あくまで基地は日本の安全のためだと言うなら、一体この空母機動部隊や海兵隊が日本の国土を防衛する上でどのような具体的任務を担っているのか、具体的に説明してください。  これに関連する問題ですが、今、アメリカの空母が横須賀に寄港するとき、その艦載機が日本各地で夜間離着陸訓練を行うのが当たり前となっています。また、全国二十八都道県、百数十市町村で問題になっている低空飛行訓練も、その大部分が空母艦載機によるものです。これらの訓練は、アメリカ本国でも人口の密集地では絶対にやりません。アメリカの同盟国でこんな訓練を認めている国は日本以外には一つもありません。その爆音は市民生活と両立できるものではないからであります。  政府は、これらの訓練について、母港を提供している以上やむを得ないという態度をとっていますが、横須賀を母港に提供したとき、政府はそんな説明を国会では全くしませんでした。七三年二月の予算委員会で私が質問したとき、当時の外務大臣及び防衛庁長官の答弁は、乗組員の家族を横須賀に居住させるための母港化であって、その他の条件は一切ないというものでした。また、米軍の厚木基地司令官は、離着陸訓練をしないことを地元の自治体との間で繰り返し約束しました。  現在の訓練は、政府国会での言明や米軍の地元との約束をほごにして、首都圏では八二年以来、いわばだまし討ち的に強行されてきたものであります。私は、住民の生活を脅かすこの種の訓練の中止をアメリカ政府及び米軍に要求し、強力な交渉をすることを政府に求めるものであります。もしアメリカ側が母港である以上訓練が当然だという態度をとったら、母港化の取り決めを取り消せば済むではありませんか。  最後に、ペルーで起こった人質事件について質問します。  武装テロリストのこのような行動は、人権と民主主義に敵対する国際的な犯罪行為であって、絶対に許すことのできないものであります。我が党は、この基本的立場に立ちつつ、人命尊重を最優先の課題とし、平和的手段での解決を図るという方針を支持するものです。  この際、日本の側として考える必要があるのは、なぜテロリストにこういう犯行の機会を与えてしまったかという問題です。この点で日本政府の反省を求める声は、ペルーの識者の間からも上がっています。前の国連事務総長だったデクエヤル氏は、一月十五日の記者会見で、フランス、イギリス、アメリカなどの対応とも比較しながら、「率直に言わせてもらえば、日本側にも公邸内の警備が手薄だった責任がある」と語ったとのことです。つまり、多くの重要な人物を招いての大規模なレセプションを無警戒なままになぜ開いたのかという問題であります。  国民の多くにとっては、この事件を通じて、日本の天皇誕生日が対外的には日本のナショナルデーとされ、アメリカの独立記念日に匹敵する大規模なレセプションをこの日に開催するのが世界に配置された在外公館の最大の行事となっていることを知ったことは、大きな驚きでした。  国内では一連の祝日の中の一つにすぎない天皇誕生日が、なぜそのような扱いを受けているのか。私が調べたところでは、これは明治政府の決定に基づくもので、一八九九年、明治三十二年にニューヨークで大規模なレセプションを開いたなどが、在外公館での行事の初期の記録などのことです。要するに、天皇が神聖不可侵の絶対君主とされた時代に決められた行事が、主権者は国民であると明白に宣言された現憲法下の日本で無批判に引き継がれているということにほかなりません。  総理が、さきのデクエヤル氏の率直な忠告にこたえるとともに、外務当局の時代錯誤的な慣習についても、率直な是正の措置をとることを強く要望するものであります。  以上、一連の問題について質問しましたが、私たちは、ことしは国民生活を守ることが政治の最大の課題となる年だと考えています。その立場で、多くの国民皆さんとともに全力を挙げる決意でいることを最後に申し上げて、質問を終わるものであります。(拍手)     〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
  15. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 不破議員に対してお答えを申し上げます。  まず、国民負担の増加についての御質問がございました。  今回の消費税率引き上げによる負担増は、平成六年秋の税制改革全体の中で、個人所得税等の恒久減税の負担減などと一体としてとらえるべきでありまして、九年度のみの税負担の増加ととらえるのは適当ではないと考えます。また、特別減税は単年度の景気対策として実施してきたものでありまして、特別減税実施しないこと自体は税制改革によりまして目指した税制に戻ることになる。これをもって税負担の増減を云々することは適切ではないと思います。  日本経済の現状について申し上げますなら、我が国経済の最近の動向を見ますと、景気は回復の動きを続けております。そのテンポは緩やかであるものの、設備投資を初め民間需要は堅調さを増しております。九年度につきましても、政府経済見通しでお示しをいたしましたように、消費税率の引き上げなどにより年度前半は景気の足取りは緩やかとなりますものの、規制緩和などの経済構造改革実施等と相まちまして、次第に民間需要を中心とした自律的回復が実現されていくとともに、持続的成長への道が開かれていくものと考えております。  また、この日本経済の現状を打破するために幾つかの御提言がございました。  私は、日本経済の現状を打破するために、我が国の活力のある発展を妨げている現在の仕組みを変革する、そして経済社会システムを新たなものに一日も早く切りかえていくことが不可欠だと思います。そうした認識の上に立ちまして、六つの改革内閣として最重要課題として掲げたところでありまして、これらを一体的に推進することによって中長期的な経済発展の基盤が構築をされ、着実な経済成長実現できると考えております。  また、公共事業につきましての御意見をちょうだいいたしました。  公共事業につきましては、各省の枠を超えた連携、建設コストの縮減、費用効果分析の活用などを通じ、今後とも一層効率的かつ効果的な実施に努めていくことといたしております。  なお、建設コストの縮減につきましては、先日、関係閣僚会議を発足させ、今年度末を目途に政府全体の行動指針を策定するよう、私から広範な指示を行ったところであります。  また、大規模な公共事業につきましては、必要に応じて、事業の内容必要性などについて再評価を行うことなどを通じ、社会経済情勢の変化を踏まえた事業とするよう努めていきたいと思います。  次に、首都機能移転について御質問がございました。  首都機能移転は、国会並びにその活動に関連する行政に関する機能及び司法に関する機能のうち、中枢的なものを東京圏以外の地域に移転することによって、東京一極集中の是正、国土の災害対応力の強化といった課題に大きく寄与するとともに、国政全般の改革と深くかかわる大変意義深いものだと考えております。  新官邸の整備につきましては、危機管理などの観点から現行の官邸機能を考えますとき、これは喫緊の課題だと思いますが、首都機能が移転いたしました後におきましても、東京という都市が我が国経済、文化の中に占めるその中心的な役割を考えますとき、また危険分散という視点をも考えますときに、私は活動の拠点としての施設は必要であると考えております。  移転の費用につきましては、国土庁の首都機能移転問題に関する懇談会におきまして、議員が引用されましたとおり、作業仮説として、最大六十万人、面積九千ヘクタール規模において約十四兆円と試算されてあります。その財源につきましては、公共事業で行う部分、民間で行う部分などがあり、現時点では不確定な部分が多過ぎますため、今後、国会等移転審議会における検討の進捗などに応じ議論されるものと考えております。  次に、医療保険に関連し幾つかの御指摘をいただきました。  基準寝具加算あるいは医療用食品加算につきましては、これがつくられました時点において、療養上必要な寝具や食事の提供について一定の水準を確保する、こうした目的を持った制度でありましたが、既にこうした目的がほぼ達成されている状況の中で、廃止や見直しを行ったところであります。診療報酬など医療保険からの支払いにつきましては、良質な医療を効率的に提供する観点から、今後とも常に見直しを行ってまいります。  次に、政治献金についてのお尋ねがございました。  みずから政治家として戒めていかなければならないと考えておりますし、みずからの政治倫理に基づいて、私はこうしたものを返却いたしたということでございます。  また、薬価の国際比較につきましては、各国の医療保険制度あるいは使用実態等が異なりますために、単純な比較はなかなかできにくいと思いますけれども、我が国において諸外国に比べて高い医薬品があることも私も承知をいたしております。これまでも医薬品の価格設定の適正化に努めてきたところでありますが、薬剤使用の適正化、薬剤費の効率化を図る観点から、薬価基準の見直しなど総合的な対策に今後とも取り組んでまいります。  また、国民が負担される保険料によって賄われている医療費が効率的に適正に使われることが重要だ、その御指摘はそのとおりであり、薬剤については、医療費において占める部分が高い等の実態があることから、今申し上げましたとおり、薬価基準の見直しなど総合的な対策に取り組んでまいります。一方、現下の医療保険財政は極めて厳しい状況にあり、その立て直しが喫緊の課題となっておりますことから、平成九年度に給付と負担の見直しなどの制度改正実施することといたしております。  次に、阪神・淡路大震災関連につきまして、政府はこれまでも公営住宅の家賃の大幅引き下げを初めとするさまざまな支援策を講じてまいりました。さらに、個人補償という形ではありませんが、今後、地元自治体が阪神・淡路大震災復興基金の活用によって実施を予定しておられる生活再建支援金の給付などに対し地方財政措置による支援を行うなど、被災者の生活再建策をより一層充実させてまいります。今後とも被災地の一日も早い復興を目指し、最大限の努力を続けてまいります。  次に、ロシアタンカー重油流出事故につきましてのお尋ねがございました。  政府といたしましては、一月二日、この海難が発生いたしまして以来、まず、冬の日本海の荒天下にもかかわらず、海上保安庁の巡視船、航空機により、タンカーの乗組員の人命救助及び行方不明者の捜索に全力を尽くしました。その後、漂流しております船首部の沖合曳航等の作業に取り組みますとともに、流出油の監視、防除にも取り組みましたが、荒天のために残念ながら船首部の曳航は成功いたしませんでした。そして、福井県の沿岸に着底し、また流出油の一部も沿岸に漂着いたしております。  こうした状況に対し、海上保安庁は、四日に第八管区海上保安本部、六日に第九管区海上保安本部にそれぞれ現地対策本部設置し、六日から関係省庁連絡会議を開催いたしております。さらに、十日には運輸大臣を本部長とする政府対策本部設置し、二十日には関係閣僚会議を開催し、重油流出に係る総合対策の推進を確認いたしてまいりました。  政府としては、このような体制のもとに関係機関の総力を挙げ、また、地方公共団体、石油業界等関係業界、さらに多くの民間のボランティアの方々の協力をいただきながら、全力を挙げて流出油の防除などに取り組んでまいりましたが、結果として事態拡大したことは残念であり、事態の状況を踏まえもう少し早く関係閣僚会議を開催するとか、政府対応に反省すべき点があったことは率直に認めます。  今後の見通しにつきましては、回収作業が自然条件の影響を受ける、冬の日本海の天候などが予想を上回る厳しいものでありますことから、現時点で見通しを申し上げられる状況にはありませんが、今後とも関係機関の総力を挙げ、油の回収等に努めてまいりたいと存じます。  また、国内の力を総動員すればという御指摘をいただきました。  しかし、冬の日本海の荒天下におきましては、領海内の静穏な海域での活動を中心に考えておりました現在の油回収船あるいは回収ポンプ等では、有効に対応が残念ながらできません。その後、荒天がおさまり油回収が可能となった時点では、浮流油は極めて粘度が高い状態に変性しておりまして、油回収船や回収ポンプなどでは有効に回収ができないために、巡視船艇等により直接回収する方法で総力を挙げて対応しております。御指摘をいただきました総動員といった態勢につきましては、ごもっともでありますけれども、今申し上げたような状況から動員ができませんでした。  次に、本件事故に関連したロシア政府への働きかけにつきましては、事故発生後、累次にわたりまして、外交ルートを通じ、モスクワで第一副首相に対し申しましたのを初めとして、累次にわたりまして、流出した重油による汚染防除に係るロシア側からの協力、事故の徹底した原因究明、再発防止及び補償問題への適切な対応についての申し入れを行ってまいりました。政府としては、今後とも、これらの課題についてロシア側に働きかけを行ってまいります。  また、事故発生時の対応体制について御指摘をいただきました。  これまでは、タンカーなどの船舶交通がふくそうし、また、一たん事故が発生した場合の影響が甚大な海域、こうしたところに重点を置いて必要な対応体制を講じてまいりました。その結果として、東京湾を初め領海内の静穏な海域での活動が中心となっており、今回のように公海上で発生した場合の対応体制がおくれていたことは認めざるを得ません。このため、政府といたしましては、本件事故事態の重大さにかんがみ、このような事態にも対応可能な今後の油防除体制のあり方について総合的に検討し、適切に対処してまいりたいと考えております。  次に、日米安保体制に関する御質問がございました。  政府としては、日米安保体制日本の安全及びアジア太平洋地域における平和と繁栄のために極めて重要であると考えております。また、我が国に寄港する空母等の米軍艦船、我が国に駐留する海兵隊によって、高い機動力、即応性などが確保されており、これらは、日米安保条約の目的達成のために重要な役割を果たしていると考えております。  米軍艦載機につきましては、米軍が訓練を行うことは、練度及び即応態勢の維持向上を図り、日米安保条約の目的を達成するために不可欠であり、政府としてその中止を申し入れることは考えておりませんが、このような訓練による周辺地域への影響をできる限り小さくするために米側との協議などに、より真剣に努力をしてまいっておりまして、艦載機の夜間離発着訓練につきましては、できるだけ多くを硫黄島に移転するなどの措置を講じてまいっております。  次に、在ペルー日本大使公邸占拠事件についてのお尋ねがございました。  本院にも御決議をいただきましたが、政府としては、テロに屈することなく、また人命尊重を第一とし、ペルー政府に全幅の信頼を置きながら、事態の平和的解決と人質の早期完全解放に向けて全力を傾けております。  テロリストに犯行の機会を与えたという御指摘をいただきました。  各国の在外公館がそれぞれの任国におきまして国の祭日にレセプションを開催する、これは国際的な慣行であります。我が国の場合、天皇誕生日を国祭日としてレセプションを開催することは長年定着した慣行でありまして、我が国外交の幅を広げ、諸外国との友好親善関係を増進する貴重かつ有意義な機会考えております。しかし、今回の教訓を踏まえ、在外公館の警備体制につきましては今後一層の強化を図っていこうと考えております。(拍手)     —————————————
  16. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 土井たか子君。     〔議長退席、副議長着席〕     〔土井たか子君登壇〕
  17. 土井たか子

    ○土井たか子君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、橋本内閣総理大臣の施政方針演説に対して質問いたします。  質問を始めるのに先立って、ペルー・リマの日本大使公邸で反体制武装グループによって人質となられている同胞、ペルー、ボリビアの方々の一日も早い解放に向けて、日本政府が一層の努力を傾けることを望みたいと思います。  また、被害が広域化し、深刻化しているロシアタンカー・ナホトカ号からの日本海の重油流出事故についても、待ったなしです。潮の流れの速さとの競争です。これを災害ととらえ、災害救助法の発動も考え、有効な対策が迅速にとられることを望みます。橋本総理も率直にお認めになっているように、政府の初動のおくれの影響が引き続きあるだけに、迅速な対応に全力を尽くされることを望みますと同時に、これが急務です。  救援に駆けつけたボランティアの方々の中に犠牲者が出たことに、胸が痛みます。謹んで哀悼の思いをささげます。  さて、私は、質問の最初に、まず、どのような考え方を基礎にお聞きするのかをはっきりしておきたいと存じます。  私たち社会民主党は、昨年秋の特別国会橋本さんを首相にと投票し、現内閣に対して閣外協力の立場をとることにいたしました。それは、端的に言うならば、どの政党も過半数をとり得なかった状況の中で、村山内閣以来の連立与党でありました自民党を比較第一党に選んだ国民の意思を重く見るとともに、少数となった社会民主党が新しい政権の政策に対して一定の影響方を保ちたいと願ったからであります。(拍手)  本日ここでいたします質問も、当然ながらその立場からのもので、建設的によりよい政策国民のためにつくり上げていくプロセスの一環であると考えております。(拍手与党質問としてお耳ざわりの点がもしあったとしても、その真意を御理解いただけると思います。  行政改革経済構造、金融システム財政、社会保障構造、教育の六つの改革は、橋本内閣にとって命がけで取り組んでもらわなければならない大仕事であります。これは、とりもなおさず将来の日本の国の存亡にかかわる問題であります。  日本財政経済が抱える現在と将来の危機については、橋本さん御自身も、昨年末の予算委員会で「この状況を続ければ破滅しかない」とおっしゃいました。今、通常国会のこの議場におきましても、既に昨日から、各党の代表質問とそれに対する答弁などを通じて、危機回避の努力が真剣に論じられております。社会民主党は、行財政改革が焦眉の急であると考えていることはもちろんです。  当然のことながら、強い大きな政治の力が財政再建の大義をかざして国の中を押し渡っていくとき、それにつぶされて泣く人々があってはなりませんし、施策というものはむしろそうした弱い立場の人々への目配りを大切にすることを出発点にしなければならないと思うのであります。(拍手)  例えば、今回の予算編成に当たって、整備新幹線の問題がクローズアップされました。旧国鉄債務も片づかないうちに、一層の赤字を生むものという批判があり、また地元国会議員や族議員の猛烈な運動がひんしゅくを買いました。それらの批判は根拠のあるものと言えましょう。  しかし、私は、そうしたことと同時に、新幹線ができる陰で、地域住民の日常生活にとって大切な在来線が、本数が減るなどますます利用しにくくなるようではいけないということを指摘したいのであります。新鮮線の建設は、遠距離を忙しく往来するビジネスマンたちにとっての利便性と、比較的近い距離の通学や用足しをする通常の生活者の需要とをバランスさせて考える必要があるのです。  また、公共投資の大どころである道路の建設に対しても、利用価値の低い道路が建設されるという批判がありますが、新しい道路を建設するばかりでなく、車いすでも通行できるように小さな段差も取り払う、また狭い歩道を一層歩きにくくしている電柱をなくし電線を地下に埋める、ますますふえている高齢者の人身事故を防ぐように工夫するなどの道路の質の向上が議論されなければなりません。(拍手)  要は、赤字減らしのために予算をやみくもに削るのではなく、予算の使い道について、前例にとらわれず、国民の真の豊かさのために考え姿勢が必要なのであります。族議員の温床となっている業界団体などと違って、高齢者や子供たちなど援護の少ない分野で犠牲を強いられる人々をいつも気にかけていなければなりません。総理、よろしゅうございますね。  この際、改めて教育改革が重視されたことに期待が集まっています。しかし、いじめが広がっていく中で、十分なサポート体制はまだありません。行政の努力は言うまでもなく、子供たちを支える民間ボランティアの人たちの力を相談現場に生かしていくことを真剣に取り組んでいただきたいのです。  さて、最近、急激に金融破綻、財政の累積赤字を聞いて、人々の間には我が国の悲観論や衰退論がどんどん歩き始めております。なぜこれほど赤字が累積されたかという理由と原因が示されないまま、負担増国民はますます政治離れをしているのではないのでしょうか。  総理国民につらいことをお願いする前に、このような事態に陥ったことを、国民の前に謙虚に、正直に、そして率直に語るべきではないでしょうか。そのことが将来への道を開くことになると思いますが、総理の御存念を聞かせていただきたいのです。国民の信頼を失うのも政治なら、信頼を取り戻すのも政治です。先送りやごまかし、言い逃れは禁物です。  そこで、まず第一に、公開の原則と国民監視の原則について申し上げます。  行財政情報公開はたびたび論議されておりますが、例えば財政硬直化の原因と言われている公共事業について言えば、一般会計だけでも十兆円近くをかけております。もし、予算の添付資料に、数量、単価はもとより、積算の基礎、予定されている場所等が明記されていれば、国会審議のあり方は全然違ってくるのではないでしょうか。これが明らかにされてくれば、会計検査院に対して具体的な検査要請を行うことも実効性を持つことになります。言ってみれば、これが国民監視の原則です。  さらに、九六年度一般会計から二十兆円、特別会計から二十八兆円、計四十八兆円の補助金がどう使われているか、しかもその補助金をめぐって政官の不祥事が絶えないとあっては、これに対して国民が怒らないはずはありません。補助金を廃止してはどうかという声すらありますが、この際、補助金をガラス張りにするためにも、補助金の交付決定に際して、申請団体すべてに集まってもらい、交付額、決定理由などの説明会を公開の場で行うことなど、補助金取り扱いのシステムを大改革すべきではないかと思いますが、総理にこれらをあわせて改める決意がおありになるかどうか、お尋ねいたします。  霞が関からの天下り先である九十二の特殊法人や八十八の認可法人をさらに洗い直してみることが必要です。そして、二年なら二年と期限を定めで、有用な法人については民営化にすることが急務であることは、既にたびたび指摘しております。本気になって真剣に、これは実現に向けての努力こそ肝心と思うのであります。  なお、このように財政運営をめぐる政府の手法や態度を改めることを前提としてへ国会としても予算委員会の運営を改めて、例えば、財政投融資、公共事業、医療保険といった最重要課題別の建設的な徹底集中審議を行うことなどが必要と考えております。  医療保険については、公聴会で国民の幅広い意見を十分に聞き審議に反映させることを与党三党で合意いたしておりますが、患者負担を引き上げるより制度改革が先決という姿勢で徹底的な努力が必要です。総理のこの問題への対応をお伺いいたします。  さらに、どうしても大切なのは、公平公正の原則です。昨年の相次ぐ政官の不祥事を見るにつけ、国民の多くは税金を納める気持ちから遠のいていっております。そして、その税金が不公平であればなおさらであります。  どうしても触れなければならないのは、逆進性の強い消費税についてであります。さき臨時国会では低所得者に初年度の激変緩和措置をとりましたが、これを制度とすることが必要です。さらに、生活必需品への軽減税率の導入など、公平な原則を徹底させる政治姿勢こそが今問われているのではないでしょうか。  ちまたには、ただいまの財政難の中で、五%の消費税の税率をさらに引き上げるのではないかと懸念ずる声すら聞こえてまいります。よもやこの懸念は的中しないでしょうね。総理、明確にしていただきたいのでございます。改革なくして増税なしです。  特に、阪神・淡路大震災の被災地で自立するために苦しんでいる人たちにとっては深刻です。財政難の折であっても、大震災の被災者には自立のための公的支援がぜひ必要です。総理、御努力いただけますね。  平成維新ともいうべき大改革は、政府のみでなく、国会は国権の最高機関として事に当たらなければできることではありません。  まずはっきりさせなければならないことは、政治家と官僚の姿勢の問題です。それは、財政が私的利益のために悪用されることのないよう、政官の腐敗を防止するということです。  かねてより、企業・団体からの政治献金は禁止することを訴えてまいりました。政府・自民党にとっては痛いことであるとは思いますが、昨年の政治資金収支報告を見ましても、企業献金の方は一つも減らないで、政党助成金を上積みしているというのが実態です。改革に本気で取り組もうとする立場から、ここで再度、私たちは国家公務員倫理法の制定や企業・団体献金の禁止について提唱いたします。そればかりではありません。この緊急事態に当たって、議員の歳費を据え置きにすることくらい考えて当然ではありませんか。隗より始めよでございます。  次に、議会の活性化の課題でございます。  今までは、唯一の立法機関である立場を忘れ、霞が関発信の政治が議会でまかり通ってきました。第一回国会から五十年間、政府提出の成立法案は六千五百八十件、それに対して議員提出、衆法の成立法案は九百六十四件、参議院のそれは百五十六件にしかすぎません。行財政改革の諸法は、国民の代表である議員がみずから立法してこそ初めて生きたものになると確信いたします。官からの情報を公開させ、従来と異なり与党も積極的に議員立法すべき時期に差しかかっております。各党とも改革に異論のあろうはずはないと思います。議会で活発な討論デモクラシーを確立しようではありませんか。今日のような事態に立ち至ったことは、我々議会人にも責任がありますが、行政優位の制度は行政側にも大きな責任があります。総理、この点についての御所見を伺います。  国会がその本領を発揮してこそ、初めて国民からの我が国の置かれている立場に理解と協力が得られると信じます。いわば合意の問題です。  以上、私は、大改革についての原則ともいうべき公開、公平公正、合意を申し述べました。  次に、外交、防衛問題について若干の御質問をいたします。  総理は、ことし発足三十周年を祝うASEANを歴訪されました。アジアに目を向けた外交姿勢に敬意を表します。  今さら申すまでもなく、ASEANは急速な経済発展をなし遂げ、それを背景に政治的にもその発言力は国際政治の中で重きをなしつつあり、そのようなASEANの国々の発展と変化を肌で感じ、より緊密な関係を持つことは、アジアの平和と我が国にとって不可欠であります。  歴訪後、総理はシンガポールにおいて政策演説を行われましたが、私は一応それなりの一定の評価をいたします。しかし、その政策演説に表現されていない部分について私なりの疑問が生じておりますので、お尋ねいたします。  アジアの諸国と真の友好関係を構築するためには、過去の歴史認識、特に加害者としての歴史認識が欠如すると、たちまち友好関係にひびが入ります。このことは、今まで心ない発言で外交問題となった事実が如実に物語っております。今回、総理の御発言には、この点をうかがうことができませんでした。思想的にあえて触れられなかったのかとさえ思えてまいります。それは私の危惧であるかどうか、明確に御答弁をお願いいたします。  あわせて、村山前政権が戦後五十年記念事業として打ち出したアジア歴史資料センターの設立は、その実現性が見えてまいりませんが、その後どのような経緯になっているか、お示し願いたいのです。  また、歴代首相が繰り返し強調してこられた軍国主義への反省が姿を消していることであります。総理は、日米安保体制重要性を説き、アジア地域の安定と経済的繁栄の一種の公共財と発言されております。日米安保体制が公共財という耳なれない言葉が、それぞれ勝手に解釈され、ひとり歩きするようなことになれば、国の外交姿勢が問われましょう。この際、御発言の趣旨を国民にわかりやすい言葉で御答弁願いたいのです。  昨年四月、日米防衛協力のための指針を見直すことが合意され、総理とクリントン大統領との共同声明の後、九月、見直しの中間報告が出されました。これに対し中国は、条約の性格が変化したと強く反発し、今日に至っております。また、韓国を初めアジア諸国の中には、我が国の戦前の行動から、軍事大国化の第一歩という警戒感は依然強く残っております。このような中で、今回、我が国は軍事大国にならないと従来歴代首相が述べてこられた言葉をわざわざ省かれた理由はどこにあるのか、御説明を承りたいのでございます。  日米関係我が国外交にとって重要な柱であり、日米安保体制世界の平和と安全にとって必要であることは認識いたしております。しかし、米国とは異なった我が国の平和憲法があり、集団的自衛権の行使は認めておりません。もし、邦人救出、難民対策などに名をかりて、なし崩し的に集団的自衛権の行使を禁じた憲法の解釈を変える、いわゆる解釈改憲を行うようなことがあるとしたら、我が党として当然見過ごすことのできない事態となります。橋本内閣は集団的自衛権について従来の政府見解を変えるべきではないと思いますが、明快な御答弁をお願いいたします。  総理、日米安保体制の維持が両国の利益につながるとお述べになっていますが、基地に関する不均等な負担は沖縄の人々の上に相変わらず重くのしかかっております。昨年十二月、私は沖縄を訪問し、大田知事さんら関係者の声を聞いてまいりました。政府のそれなりの御努力は歩といたしますが、地元では、基地の県内たらい回しとか、新たな琉球処分という声が満ち満ちておりました。日米両国政府は、基地の大幅変更を好まず、現状維持という思惑だけで、経済振興策というあめを用意し、沖縄県民をなだめる手法をとり続けるようなことがあれば、決して沖縄県民は納得しないでしょう。別の見方をするなら、国に対し地方分権のあり方を問われていることでもあります。  総理は、沖縄問題を内閣の最重要問題と位置づけておられます。この際、沖縄県民のさらなる理解を得るためにも、手始めに約一万七千人の海兵隊の一%でも五%でも削減する外交交渉をされるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。苦悩に満ちた沖縄県民に対し、抽象論でなく、総理の口から、沖縄の太陽と青空のような具体的な青写真を沖縄県民に語りかけてもらいたいと思います。  最後に、潜在的核保有国とか準核保有国といったいわれなき言葉が国際社会にはいまだにささやかれております。この際、橋本内閣は、我が国の国是である非核三原則をいかなることがあろうとも遵守され、国際社会で核廃絶への努力を発揮していくことへの決意をお聞かせいただきたいのです。  政治の施策の中には、取り返しのつくこともあれば取り返しのつかないこともございます。事外交、安全保障問題は、一たん始めれば対外的に取り返しがつきません。それだけに国の進路を見誤らせないような御答弁を切に願いまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
  18. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 土井議員にお答えを申し上げます。  冒頭、ペルー日本大使公邸人質事件、また重油流出事故につき激励とともに御注意をいただきました。私ども、今後の対応を含めまして全力を尽くしてまいるつもりであります。  次に、予算編成の中で、お年を召した方々あるいは子供たちなどに配慮した予算編成を心がけるべき、そうした御指摘をいただきました。  御党にも御協力をいただきました平成九年度予算編成に当たりまして、歳出全般について聖域を設けることなしに徹底した洗い直しに取り組み、財政構造改革の第一歩を踏み出した中でありますが、当然、社会経済情勢の変化に即応した財政需要というものに対しましては、財源を重点的、効率的に配分してまいりました。例えば、新ゴールドプランあるいは緊急保育対策などの着実な推進あるいは障害者プラン関連施策の推進、こうした問題を初め、例えばいじめ対策などを含めまして、お年寄りや子供たちを対象とする施策につきましては十分に配慮を払ってきたものと考えております。  御提言をいただきましたいじめの相談に対する民間ボランティアの活用について、私は、これは、いじめを受けている子供たちの不安や悩みを適切に受けとめる相談体制の充実という点で極めて重要な御指摘だと思います。現在でもさまざまな取り組みが見られるところでありますけれども、さらに平成九年度には、地域の実態に応じて、例えば青少年団体のリーダーなど広く地域の方々をボランティアとして活用を図るなど、相談体制の一層の充実に努めてまいりたいと思います。  次に、財政赤字の累増の原因に対するお尋ねがございました。  経済成長が低下傾向にあり、税収の伸びが緩やかなものにとどまっておることから、財政赤字の問題は主要先進国共通の政策課題となっております。我が国財政は、厳しい税収動向の続く中におきまして、バブル崩壊後の景気の下支えなどのため、累次にわたって公債発行を財源とした対策実施したこともありました。さまざまな財政健全化努力にもかかわらず、過去六年間で約八十二兆円も国債残高が累憎いたし、今、欧米諸国に比して最悪と言える状況に悪化いたしております。経済活性化させ、中長期的な経済成長をもたらすためには、できるだけ速やかに健全な財政体質を回復することが極めて重要であり、今後、財政構造改革に全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。  御指摘をいただきました幾点か、例えば予算の添付資料につきましては、予算の添付資料というものは予算につき国会で御審議をいただきますために法令の定めるところに従って予算審議に資するようなもの、こうして提出をさせていただいてまいりました。今後とも、予算内容について御理解のいただけるような資料を努力してまいりたいと思います。  次に、補助金の交付の決定時、説明会を開催するなどガラス張りにする工夫はないか、こうした御指摘をいただきました。  補助金などにつきまして国民の不信を招くことのないように、それぞれの補助金などの実情に応じまして、例えば施設についての交付決定の概況一覧を公表するといった、補助金などの透明性を確保するための必要な措置を講じていきたいと思います。  次に、医療保険制度の改革について御意見をちょうだいいたしました。  公聴会において国民の幅広い意見をいただき、それを国会審議に反映する等、三党でも合意をしております。しかし、二十一世紀に向けて、医療の提供体制及び医療保険制度の両面にわたって、この改革を総合的かつ段階的に私どもは実施していかなければなりません。議員御指摘のとおりに、徹底的な努力が必要であり、制度改革が必要であります。しかし、こうした改革を進めていくためにも、現行の医療保険制度の財政の安定を確保していくことは喫緊の課題でありまして、平成九年度に給付と負担の見直しなどの制度改正実施することとしたわけでございます。  次に、消費税の逆進性に関する御意見をちょうだいいたしました。  消費税は確かに逆進性のある性格ということはそのとおりでありますが、水平的な公平に資するという特色もあるわけであり、所得税などを含む税制全体を見ますと、依然としてかなりの累進性を持っております。消費税による物価上昇の影響というものは物価スライド制により年金額等に反映されるわけでありますから、議員御指摘でありましたが、私どもは、これに加え給付金を恒久化することは適切ではないと考えておりますし、軽減税率につきましては、税率五%というもとでは価格低下の効果に疑問があること等、問題が指摘されておりまして、将来的な課題として慎重に検討されるべきものだと考えております。  また、消費税率のさらなる引き上げについて御質問がありました。今後の消費税率は、行政改革財政構造改革などのいろいろな改革実行していくことによって、現在及び将来の世代の負担の抑制に最大限努力をしていく中で、今後の財政需要の動向や税制全体としての負担のあり方などを踏まえた国民的な議論によって検討していくべき課題だと考えております。  次に、阪神・淡路大震災関連のお尋ねがございました。  議長当時、私も仮設住宅にお供をいたしましたが、政府はこれまでにも公営住宅の家賃の大幅引き下げを初めとするさまざまな支援策を講じてまいりました。さらに、今後、地元の自治体が阪神・淡路大震災復興基金の活用によりまして実施を予定しておられる生活再建支援金の給付などに対しまして地方財政措置による支援を行うなど、被災者の生活再建策をより一層充実させることといたしており、今後とも政府としては被災者の自立を支援するために最大限の努力を重ねてまいります。  また、国家公務員倫理法というものを御提起いただきました。  政府としては、昨年発生した不祥事を厳しく受けとめながら、真に実効の上がる綱紀粛正の方策につき、昨年の十二月、事務次官等会議申し合わせを行いました。この申し合わせに基づいて各省庁において制定されました公務員倫理規程を厳格に遵守することにより、政府を挙げて綱紀粛正を徹底し、信頼を回復すべく努力をしてまいります。  また、企業・団体献金の禁止についてお尋ねをいただきましたが、先般の三党政策合意におきまして、「政治資金規正法付則九条、十条において、法律施行後五年を経過した場合、資金管理団体に対する寄付の禁止、政党・政治資金団体に対する寄付のあり方の見直しを定めていることを踏まえ、」「政治資金のあり方について今後、さらに協議を進める。」旨を明記されたところでありまして、その動向を見守ってまいりたいと考えております。  なお、現内閣におきましても、先内閣に引き続き、閣僚たち全員がその歳費の一割を国庫に返納していることも申し添えたいと存じます。  次に、大改革実行するためには議会の活性化が必要だという御指摘がございました。議長経験者としての御指摘を私は非常に大きく受けとめますし、まさに同感であります。  今私どもが訴えておりますこの一連改革というものは、すべての方々の御理解や御協力、支援を必要とするものでありますし、特に立法府の強い支援が不可欠であり、ぜひよろしくお願いを申し上げたいと存じます。  次に、ASEAN歴訪に関連して幾つかの御質問をいただきました。  まず、シンガポール演説につきまして、過去の歴史認識になぜ触れなかったか、こうした御質問をいただきましたが、ASEAN創設三十周年ということしにおきまして、日本とASEANの間の今後の協力関係に重点を置きましたので、あえて言及はいたしませんでした。しかし、さき村山内閣総理大臣談話にあります過去の歴史に関する認識政府として変えているものではございません。  また、日米安保体制については、これがいずれか特定の国に向けられたものではなく、現在、アジア諸国すべてが恩恵を受けております域内の安定と繁栄を維持するために重要な役割を意味している、そうしたことを私は申しましたし、また各首脳も同様の認識を示しておられました。  次に、アジア歴史資料センターにつきましては、平成七年六月に取りまとめられました有識者会議の提言の趣旨を踏まえながら、センター構想の具体化に向けて所要の調査検討を行っているところでございます。  また、日米防衛協力のための指針の見直しにつきまして、これは、これまで進められてまいりました日米間の防衛協力を基礎としながら、新しい時代におけるより効果的な日米の防衛協力関係を構築することを目的としておりまして、当然のことながら、あくまで日本国憲法の枠内で行うものでありますし、集団的自衛権の行使のように我が国憲法上許されない事項につき従来の政府見解を変更するものではございません。  また、なぜ我が国が軍事大国にならないということを言わなかったか、そのわざわざ省いた理由と言われましたが、わざわざそれを言うまでもなく、私は、ASEANの国々は日本が軍事大国にならないと認識してくれておると思っておりますし、また、この地域の安定と繁栄に引き続き積極的な役割を我が国が果たしていくという立場は、軍事大国にならないことはその当然の前提であると考えております。  次に、海兵隊の駐留についての御意見をいただきました。  しかし、政府としては、在日米軍の存在が日米安保条約の目的達成にとり不可欠でありますし、また、我が国に駐留する海兵隊につきましても、その有する高い機動力や即応性などを通じ、在日米軍の重要な一翼を担っていると考えて、現時点におきましては海兵隊の削減や撤去を求めることは考えておりません。  また、沖縄振興という点について御意見をいただきました。  現在、沖縄政策協議会におきまして、沖縄振興策を具体的に検討していただいております。また、先般、沖縄米軍基地所在市町村懇談会から提言がなされたところでありまして、内閣としてその実現のために最大限の努力をしてまいります。いずれもその推進のため、平成八年度補正予算及び平成九年度予算におきまして所要の手当てを行ってまいりましたが、今後とも、懇談会提言や政策協議会における検討の結果を踏まえて、沖縄の振興に内閣を挙げて取り組んでまいります。  私がこのように沖縄振興に全力を挙げて取り組むと申し上げ続けておりますのは、まさに沖縄の方々が長い間背負ってこられた苦難というものに思いをいたし、二十一世紀を担う沖縄の青少年が夢と希望に燃えることができる、そのような新生沖縄というものを実現させたい、そのような思いからであることを御理解いただきたいと存じます。  なお、最後に非核三原則についてお尋ねがございました。  歴代内閣によって堅持されてきたものであり、政府としては今後ともこれを堅持する考えであります。(拍手)     —————————————
  19. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 羽田孜君。     〔羽田孜君登壇〕
  20. 羽田孜

    ○羽田孜君 第百四十回通常国会に当たり、太陽党を代表して、橋本総理に対し質問と提言をさせていただきます。  まず、ペルー日本大使公邸人質事件について申し上げます。  事件発生以来一カ月が過ぎましたが、いまだに解決のめどは立っておりません。日本人を含め人質として公邸に残っていると十人以上の方たちは肉体的にも精神的にも限界に来ており、また御家族の御心労も察するに余りあります。人質になられた方、今現在も人質となっておられる方及びその御家族に対し、心からのお見舞いを申し上げます。また、フジモリ大統領初めペルー政府の皆様方に心から感謝を申し上げたいと思います。  さて、日本政府は、テロに対する断固とした姿勢を堅持しつつ、人質の全員解放に向け、さらなる努力を重ねていただきたい、このことを申し上げます。  この十七日は、阪神・淡路大震災から丸二年がたちました。一昨年のオウム事件、昨年のO157、長野県小谷村の土石流災害、被害拡大しつつある日本海沖の重油流出事故、こうした事件の発生で、国民はこの国の危機への対応に大きな不安を抱いております。事件が起きるたびに危機管理体制の不備が露呈しているのが現状です。情報収集、即応体制、省庁の垣根を越えた総合的な対策の整備など、いずれも極めて不十分であります。  何よりも、我々自身の危機に対する危機意識の欠如が問題ではなかったでしょうか。私は、この問題は、国民の理解を得ながら、政治行政が一体となって真剣に取り組むべきテーマだと考えます。総理決意を伺います。  私たち太陽党は、改革への志、切迫した危機に今こそ行動をすべきとの思いを同じくする者によって結党いたしました。結党宣言でも述べているように、私たちは、対立と政争の政治に決別し、対話と実行政治を目指したいと思います。  現在の政治の欠陥は、個別利益、特定の権力、組織、団体の利害を優先していることです。国家の全体利益、新たな時代へのビジョンを描けないまま、政治は完全に閉塞状況に陥り、その結果、社会全体が未来に対する展望を失いつつあります。私たちの使命は、こうした時代にあって、多様化した国民要請にこたえるとともに、直面する内外の重要課題を先送りすることなく、未来を切り開くためのさまざまな改革を一刻も早く断行し、政治の復権を実現していくことであります。  私たちは、国内において、自立と創造性が生かされる自由と自己責任を基本とした社会を目指し、また、真の平和と人々がひとしく幸せに暮らせる差別なき世界実現のため、大いなる和の精神と共生の理念に基づく地球社会創造に向け、国民とともに行動してまいりたいと考えます。国民から遊離した今の政治の閉塞状況を打破し、新たな時代への進路を確立するためには、個々の政党の垣根を越え、徹底した対話の中から一致した目標を求め、未来を開くための改革実行に結びつけることであると信じます。  高度情報通信社会の進展により、国境なき時代が訪れつつあります。私たちは、百三十年前の明治維新、五十年前の敗戦のときを上回る第三の開国に直面しているとの認識に立ち、新しい国づくりに挑戦していく決意であります。私たちは、理想を追求しつつ、しかし理想主義に陥ることのない責任ある政治実行していきます。  ここで、総理の施政方針演説についての感想を申し上げます。  総理は、最重要課題である財政改革について、平成九年度を財政構造改革元年と位置づけ、予算編成をしたと述べられましたが、予算案からは、この言葉とは裏腹に、日本の置かれた危機的状況を克服しようとする意欲が伝わってきません。また、「変革と創造の実現のために、困難を乗り越えるリーダーシップ発揮することは政治の使命」と強調されました。総理御自身のやらねばの思いは感じられますが、あなたを支える母体からはその意思と意欲が響いてこないのであります。予算編成をめぐっての総理御自身のリーダーシップも見られませんでした。言葉だけが先行し、今このときにも必要な改革が先送りされるならば、日本は破局に向かって進むことになります。今直ちに着手できる改革から速やかに実行するべきだと考えます。  次に、主な改革の争点について述べさせていただきます。  まず第一は、政治改革であります。  皆さん、我々が相次ぐ政界汚職や不祥事と政治の停滞の反省に立ち取り組んできた政治改革は、今どうなっているのでしょうか。政治改革の第一歩としてなし遂げた衆議院の選挙制度改革後、初めての総選挙実施されました。その後、一部の人々から、政治改革は失敗であった、小選挙区は改めるべきなどの発言が聞かれます。  しかし、我々が議論し目指してきたものは、疲労を来した日本の社会システム全体の改革の推進役としての政治改革であったはずであります。そのため、衆議院の選挙制度改革を入り口として、参議院改革国会改革を進め、あわせてそれを全うするための地方分権を確立し、政治家はもとより有権者の意識改革を含めた抜本的な政治システムの改革を目指したのではなかったでしょうか。この達成なくして二十一世紀への日本改革は進まないとの熱い思いがあったはずであります。  我々は、今その入り口に立ったばかりであります。ここで後ろを振り返り、戸惑ってはならないのです。私は、この機会に改めて、次なみ改革に向かって我々が歩みを進めることを訴えたいと思います。  まず、その姿勢を示すために、次期総選挙からの衆議院の定数百名削減と、重複立候補制度の廃止を含めた見直しを提言したいと思います。選挙権の十八歳への引き下げ、海外在住日本人に対する選挙権の付与も議論のときは過ぎており、直ちに実現すべきことを提言いたします。各党の皆さんの協力を求めますとともに、自民党総裁でもある総理見解を伺わせていただきます。  第二は、地方分権であります。  県知事、市町村長が年に十数回も上京するさまは、まるで江戸時代の参勤交代と同じではないかとの指摘があるように、私は、行政改革のかなめもこの地方分権にあると考えます。地方分権が進むことで真の行政改革実現し、その結果、日本が変わるのであります。  中央と地方の役割分担を明確にし、国は、外交、防衛、司法及び財政経済計画などの基本政策に専念し、住民に身近な部分は権限、財源ともに地方へ移譲すべきであります。これが実現することによって、数合わせによる省庁統廃合とは違う真の行政改革が進むと信じます。同時に、地方分権支えるべき住民の力を育て、これを健全に受けとめる基礎自治体の機能強化が必要です。あわせて、NPO活動を活発化させるための施策も積極的に講ずるべきであります。そうすることにより、各地域住民の意思が生かされ、バラエティーに富んだ地域が生まれるのです。  以上の権限、財源、人間の三ゲンセットの地方移譲があってこそ、地方自治が確立し、それが全体として日本の活力再生のかぎになると信じます。この問題について、総理見解を伺います。  地方分権、行財政改革を行う上で必要になってくるのは、徹底した情報公開であります。情報公開が徹底するならば、全国の自治体や省庁関連の諸機関で次々に明るみに出ている公金の不正支出は起こり得なかったはずであります。薬害エイズも防げたかもしれません。情報公開により、予算の使い方や透明性のある行政政治が見えてくるはずです。また、財政再建に不可欠な国民的論議の基礎となる財政決算情報の開示、政府から直接間接を問わず資金を受け入れている公益法人の実態等も情報公開すべきであると思います。  情報公開は、時代の要請であります。総理決断により中央省庁の大胆な情報公開が実現されるならば、あらゆる分野の情報公開も急速に進展するはずであります。総理の具体的な決意をお聞かせください。  さらに、改革の重要な柱の一つに教育改革があります。初等中等教育における教育現場での深刻な現状、受験競争の激化の中での子供たちの萎縮、没個性化、国際化や情報化への立ちおくれ、高等教育における新たな時代への対応の不足等は、教育に対する過度な規制にその大きな要因があると考えます。教育改革の推進に当たっては、思い切った見直しからスタートすべきだと考えますが、総理見解を伺わせていただきます。  次に、補正予算及び平成九年度予算案に関連して伺います。  総理は、さきにも申し上げましたように、ことしを財政構造改革元年と位置づけられています。また、施政方針演説を初め、機会あるごとに改革を唱え、決意表明を繰り返しておられますが、両予算を見る限り、その内容は反改革そのものです。特に九年度予算財政再建なき増税路線以外の何物でもありません。(拍手)  消費税増税特別減税廃止医療費の引き上げなどによって国民に大きな負担を強いながら、いわゆる族議員の求めるまま既得権擁護のための公共事業配分を続けるなど、歳出削減の努力はほとんど見られません。民間の建造物はバブル時代の半値とも言われますが、公共建築物の算定はどうなっているのでしょうか。整備新幹線や農業予算についても、その目標と効果が明確でなく、国民からも象徴的なものとして批判にさらされてしまいました。  歳出削減をすべて平成十年度に先送りするという姿勢こそ、まさに改革路線に逆行するものであります。総理はこの予算で本当に財政再建が進むとお考えおのか、お伺いいたします。  また、国民が今最も切実に望んでいる景気対策に関しても、予算案税制改正等からは何も伝わってきません。土地の流動化促進のための土地税制や株式市場活性化のための有価証券取引税廃止など、すべて先送りです。予算案発表を機に株価が急落し円相場が下落したことを見ても、国の内外政府経済政策に不信任を突きつけたことは明らかであります。  かつて世界最強の通貨だったドルが七〇年代から八〇年代にかけて暴落したのは、財政赤字が大きく膨らんだからでありました。しかし、今の日本財政赤字は当時のアメリカよりさらに大きいのです。対応を誤ったならば、日本経済は崩壊すると私どもは憂えなければなりません。米国は減税によって若返り、日本は今増税によって老化を早めようとしています。なぜ、ここで法人税あるいは所得税を含む、やる気を起こす減税実施し、日本経済活性化を図ろうとしないのでしょうか。総理見解を伺いたい。(拍手)  ここで一つ提案をさせていただきます。  本国会は、大きな転機に立つ我が国の進路を方向づける極めて重要な意味を持っておりますが、国会改革の観点からも、まず、予算委員会その他各委員会は、今日の危機を乗り越え、国民本位の政策実現に向けた徹底的な審議改革へ踏み出すための真剣な議論に専念すべきであります、さらに重要なことは、その審議の成果を政策に反映させることであり、特に与党は謙虚に議論に耳を傾け、勇気を持って予算修正等にも応ずるべきであります。そのことこそ国政の中心である国会の権威を高めることであると信じます。  日本は今、歴史的な転換期を迎えております。この国は、歴史、文化、伝統等に培われたすぐれた財産を今なお持っています。しかし、戦後五十年を経過し、今日までの繁栄を築き上げてきた諸制度があらゆる部分で疲労を来していることも事実であります。この疲労を取り去り、二十一世紀に向け日本が再び自信を取り戻し、たくましい歩みを開始するためには、今ここで思い切った改革をなし遂げることが不可欠です。それを実行したとき、日本は、質の高い国、希望の太陽が輝く国家として再生できると信じます。  私たち政治に携わる者自身が、今こそ、いかなる批判、非難も覚悟して、タブーをなくして国家の全体改革に取り組むべきときが来ていると確信しております。総理にありましても、そうした使命、危機に直面している我が国の現状を十分に認識され、真の改革に今この時点からでも取り組まれることを希望いたして、終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
  21. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 羽田議員にお答えを申し上げます。  冒頭、ペルー人質問題につき御激励をいただきました。全力を尽くして、ペルー政府を信頼しながら、事態の解決に努力をしてまいります。  次に、政治行政が一体となって危機管理体制の整備を行うべきという御意見をいただきました。  危機管理体制というものにつき、内閣の最重要課題として、これまでも阪神・淡路大震災等の教訓を踏まえながら、その強化に努めてまいりました。今回のペルー事件あるいは重油流出事件につきましても、対策本部関係閣僚会議設置して政府を挙げて取り組んでおるところでありますが、例えばこの重油流出事故につきましても、公海上における事故というものを想定しておらなかった、現在の日本海のような荒天時における事故というものを想定していなかったという点が、今問題となっております。こうした事案を通じて得ました教訓を生かしながら、さらに政府として、即応体制、総合的な対策の整備など、適切な危機管理体制の確立に全力を尽くしてまいります。  また、着手できる改革から着手しろ、そうした御指摘もちょうだいをいたしました。  次に、政治改革について御意見をいただきましたが、まず、衆議院議員の選挙制度につきましては、先般の与党三党の政策合意におきましても、「議員定数の削減を前提にし、民意がより良く国政に反映されるよう、早急に選挙制度見直しを開始する。」とされているところでありまして、自由民主党におきましてもその検討に着手したところであります。  次に、御提言のありました選挙権の年齢引き下げ、この点につきましては、民法上の成人年齢、さらに刑事法での取り扱いなど、他の法律体系全般との関連も十分考えながら検討しなければならないと思います。  また、在外選挙につきましては、これまでの与党政治改革協議会における協議の経過を踏まえながら、選挙の公正確保、適正かつ円滑な執行という観点から検討を進め、その実現に努力してまいりたいと思います。  いずれにいたしましても、これらの問題につきましては、各党各会派でも十分御論議をいただきまして、その結果を踏まえ適切に対処していきたいと考えております。  次に、権限、財源、人間の三ゲンセットという言い方で、地方分権の推進について御意見をいただきました。  御意見のとおり、地方自治を確立しながら個性豊かな地域というものをつくっていく、そうした努力を進めてまいりますためには、国と地方の役割分担のあり方に即して、国から地方への権限移譲を進めていく中で、補助金などの整理合理化あるいは地方税財源の充実強化を行うとともに、これを確保し、同時に、地域を担っていく人材の育成確保、住民官治の充実を図っていく、御指摘のとおりであると思います。  次に、情報公開は、国民に開かれた信頼される行政実現するために重要な課題でありまして、その推進については、行政改革委員会の意見を最大限尊重し、平成九年度内に所要の法律案の国会提出を図る、そうした行革プログラムに沿って、今日もなお、できるだけ早い機会に法案を国会に提出できるようにと立案当局を督励いたしております。  また、教育改革について御指摘をいただきました。  教育改革というものが当然のことながら国のシステムの基盤を変えていく、この教育制度改革とか弾力化というものがうまくいくかどうかということが極めて大きな意義を持つことは、御指摘のとおりです。そうした中で、規制という点からこれをとらえ、規制の見直しという視点から教育改革考える、この視点は重要な切り口の一つ、そのようにその御意見をちょうだいさせていただきたいと思います。  次に、平成九年度予算について御意見をいただきました。  医療保険制度の改革を初めとする各般の制度改革実現に努めてきた結果、一般歳出の伸び率一・五%、これは九年度物価上昇率見通しを下回り、実質伸びゼロという予算になっております。また、四兆三千億円の公債減額を実現すると同時に、国債費を除く歳出を租税収入で賄える範囲内にとどめてまいりました。こうしたことを考えますとき、私は、九年度予算財政構造改革元年になっていると思いますけれども、今後ともさらに思い切った財政構造改革を進めていくことが必要であると考えております。  なお、御指摘のありました公共事業のコスト削減につきましては、現在、閣僚会議で論議をいたしており、今年度末までに具体的にその答えを出したいと考えて、努力をいたしております。  次に、税制についての御意見をちょうだいいたしました。  この四月には、消費税率の引き上げ及び地方消費税の導入が行われるわけでございますが、これは、平成七年度から所得税及び個人住民税の恒久減税が先行実施されている、これと平成六年度に一体のものとして決められたものであることをぜひ国民各位にも御理解をいただきたいと思うのであります。すなわち、今回の税制改革というものは、所得税などの減税消費税の引き上げなどを組み合わせて、全体として働き盛りの勤労世代の負担を分から合いながら、かつ、歳出面のさまざまな措置の安定的な確保に資する、そうした税制を実現するものでございます。  議員からは、減税についての御意見もちょうだいをいたしました。  しかし、我が国財政危機的な状況にある中におきまして、大幅な減税によって財政状況をさらに悪化させることは我が国経済活力をむしばむ、そうした視点からも適切ではないと考えております。  また、現行の土地税制は、土地の有効利用の促進を基本として構築しているわけでありますけれども、平成八年度税制改正におきまして地価税の半減などを含む見直しを行い、さらに九年度にも固定資産税、登録免許税など所要の見直しを行ってまいります。  また、有価証券取引税につきましては、平成八年度税制改正におきまして税率を軽減する措置を講じてまいりました。さらに、金融システム改革の進展状況等の中で、株式等譲渡益課税を含む証券税制全体の中で検討したいと考えております。  議員からは、その改革の痛みを恐れずに力を合わせて乗り切っていけという厳しい御激励をいただきました。政府としても全力を尽くしてまいりますが、どうか院におきましてもできる限りの御協力をよろしくお願い申し上げます。(拍手
  22. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  23. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十九分散会      ————◇—————