○山崎拓君 私は、自由民主党を代表して、
橋本総理の
施政方針演説に対して、
橋本総理大臣及び関係閣僚に質問いたします。
まず最初に申し上げたいことは、昨年暮れに発生した
ペルーの
日本大使公邸人質事件であります。
今日に至っても、いまだ未
解決のままであることは、
人質となられている
方々の御苦痛はもちろんのこと、御親族並びに
関係者の
方々もさぞ御心痛のことと拝察いたします。
我が党としては、
総理が
施政方針演説でお示しになった、
テロの圧力に屈することなく、フジモリ大統領に全幅の信頼を置き、
ペルー政府や関係国と緊密に連絡をとりながら、
人質全員が無事に解放され
事件が
解決されるよう、引き続き
全力で対処していくという方針を全面的に支持いたします。我が党は、このたび
テロ対策小
委員会を設置し、今後の国内外における各種
テロ対策について検討に入りましたが、
政府としてはどのような取り組みを考えておられるか、お伺いいたしたいと存じます。
さらに、先般の
日本海で発生したロシア船籍タンカー・ナホトカ号
重油流出事故は、極めて深刻な海洋汚染を引き起こし、海洋資源に大きく依存する
我が国の
国民生活に深刻な影響を与えています。
事故発生以来、
日本海側特有の冬の寒風の中、沿岸漁民を初め
地域住民の
方々、さらには全国各地からのボランティアの皆様の油回収作業に懸命に取り組んでおられる涙ぐましい御
努力を拝見して、感動を禁じ得ません。この上は、
早期の流出油の回収などや海底残存油対策、漁業
関係者への被害復旧対策や海洋汚染対策など、万全な措置が講ぜられなければなりません。
私は、
関係者の
方々が
事故による被害を一日も早く克服し、将来に対する希望と安心が得られるような措置を、
政府があらゆる手段を駆使して講ずる必要があると考えますが、
総理の御所見をお伺いいたします。
私は、目下
我が国が取り組むべき課題は、将来を見据え、二十一
世紀においても、
我が国が衰亡せずに、
活力ある
経済社会を維持発展させることができるかどうかということに尽きると思っております。
戦後良好に機能してきた
我が国の
経済社会システムや
官僚制などは、冷戦時代の米ソ東西対立、中国の
経済停滞、アジアの不安定さの中にあっては、
我が国が、平和と安定そして右肩上がりの
経済成長を享受することを可能としてまいりました。それが、今日では、冷戦終結によって米国は
経済重視に
政策を大転換し、中国においても
社会主義
市場経済を標榜し、
経済活動が活発化してきております。また、先般
総理が訪問されたASEAN諸国でも、
政治が安定し、
経済発展はかつての
我が国の高度
成長をほうふつとさせるものがあります。
世界は、今や大
競争時代に突入しております。
我が国がこうした国際
競争に打ちかつためには、従来よしとされてきた
我が国の慣行、すなわち各種の
規制、
行政のあり方、中央と
地方の関係といったあらゆる
分野におけるこれまでの
システムを大胆かつ早急に見直し、変革していく必要があります。もしこのまま
経済社会活性化のための
システム改革を講じずにいれば、
我が国の
経済社会は、
産業の高コスト構造、官業の民業圧迫、
中央集権等の弊害を克服できずに、急速に
競争力を失っていくでありましょう。
さらに問題なのは、
我が国は、
少子化とともに進展する急速な人口の高齢化、
財政の
危機的
状況、
産業の空洞化という他の国が持たない深刻な課題を抱えている点であります。もしもこれらへの適切な
対応を怠るならば、
我が国は
国家としての
活力を失い、完璧に老いていくだろうということであります。合計特殊出生率が一・四三のままでは、二〇九〇年には
我が国の人口は約五千五百万人になると推計されております。そうなれば、
我が国は、日出る国から日没する国になってしまうことは間違いないと考えます。
イギリスの哲学者バートランド・ラッセルは、近代
国家が持つべき必須要素として、第一に
活力に富むことを挙げています。もはや、手をこまねいていることは、
政治の
責任として許されることではありません。したがって、二十一
世紀に
国民が
我が国の未来に希望を持ち続けることができる
活力ある
経済社会を維持するために、今こそ、
総理の主張される
行政改革、
経済構造改革、
金融システム改革、
社会保障構造改革、
財政構造改革、さらには教育
改革という
六つの
改革を断行する必要があります。(
拍手)
そして、そのことを通じて、
国家の安全、
経済の安定、老後の安心――安全、安定、安心という三つのAを確保し続けることが
政治の
役割だと考えますが、
総理の
改革への決意と御所見について改めてお伺いいたします。
次に、
総理の六大
改革についてそれぞれお伺いいたします。
当面の最重要課題は
行政改革であります。私は、
総理みずからが
政府の
行政改革会議の会長となって、二十一
世紀における
国家機能のあり方、それを踏まえた
行政機構
再編のあり方と官邸機能強化策という三つの課題について本年中に成案を出すとお決めになったことについて敬意を表します。
与党三党は、行革の先導的
役割を果たすべく、その中の主要部分を占めるはずの大蔵
改革について、昨年の住専問題の反省の上に立ち、
金融行政改革の立場から、日銀法
改正と
金融検査監督庁(仮称)の創設の提案をいたしました。本
国会への
法案提出と成立について、
総理の御決意をまずお伺いいたします。
行政改革の基本は、
規制の
緩和・
撤廃を大胆に行い、官から民へ、そして中央から
地方へ
業務と
権限を移譲し、スリムで
効果的な
国民サイドに立った
行政を実現することであります。同時に、
国民に開かれた
行政、わかりやすく透明なルールに基づいた
行政にしていかなければなりません。今こそ、
企業が
市場経済の自由
競争の中で存分に
活動し、国際
競争力を高めていけるよう
規制緩和を徹底して行わなければなりません。
また、
地方分権については、受け皿となる
地方行政の
具体案をつくることであります。三千三百の市町村は余りにも過多であり、その中には、
権限、財源、
業務を移譲しても
処理能力がない
地方自治体もあり、かえって壮大なむだを生じることになりましょう。
総理の火の玉となってやり遂げるという決意と
具体的な
行政改革の進め方、特に
地方分権における受け皿問題について御所見をお伺いいたします。
また、立法府においても、
行政改革の
効果を高める上から、
国会に
行政の監視監督、評価を行う機関を早急に設置するとともに、そのためのスタッフを強化する必要があるということを総選挙直後の与党三党の
政策協議で合意しているところであります。本
国会で十分に
論議を深め、実現を期したいと存じます。
昨年は、中央、
地方を問わず
官僚の不祥事が相次ぎ、ざんきの念にたえません。この際、
国民の
行政及び
官僚に対する信頼を取り戻すために綱紀粛正の徹底を図る必要があります。この点についても
総理の御
所信をお聞かせください。
次に、
財政構造改革等について質問いたします。
我が国の
財政の
現状を見ますと、八年末には国と
地方の債務残高を合わせて対GDP比が約九〇%にも達するなど、もはや
危機的な
状況にあり、先進国の中でも最悪の
状態にあります。今後の
少子・高齢化の一層の進展を踏まえ、今後とも
我が国経済社会の
活力を維持するために、
財政の
健全化、特に
財政構造自体の
改革に向けた
努力が不可欠であります。
財政構造改革の実現に向けては、国、
地方を通じた中期的な
財政健全化目標を立て、その
目標に向かって不断の
努力を続けていくことが肝要であります。
政府は、昨年十二月十九日に、二〇〇五年までのできるだけ早い時期に、国と
地方の
財政赤字を対GDP比三%以下にすること等を内容とする
財政健全化目標を閣議決定いたしましたが、
国民に周知徹底する必要があります。昨日発足した
政府・与党
財政構造改革会議においてこのことを確認するのか、改めて新たな
財政健全化目標を定めることになるのかどうか、
総理にお伺いいたしたいと存じます。
また、大蔵
大臣は、
財政演説の中で「
我が国においても、現在の
財政構造を放置し、
財政赤字のさらなる
拡大を招けば、
経済・
国民生活が
破綻することは必至であり、」と述べておられますが、なぜそうなるのか、
国民にわかりやすく説明してください。
あわせて、
新進党は、総額十八兆円規模の大
減税と二十兆円の歳出カットを行い、かつ、
消費税率を二〇〇〇年まで三%に据え置くと主張していますが、どう考えても実行不可能で非現実的な無
責任なこの案を仮に本当に実施に移したら、一体
我が国の
財政はどうなるのか、その展望について専門的分析の結果をお示しいただきたいと存じます。(
拍手)
次に、
平成九年度
予算案についてでありますが、「
消費税アップ等七兆円も
増税を行うのだから、国債発行減額を四兆三千億にとどめずにもっと大幅に行って、
財政構造改革元年にふさわしい緊縮
予算にすべきであったのではないか」というマスコミ等の指摘があります。
しかし、
消費税五兆円と特別
減税廃止による二兆円を合わせた
増税額七兆円と言われている金額も、
地方に回る分を差し引けば、
平成九年度における国の歳入増は二兆七千億程度となります。それにもかかわらず、今回、特例公債発行額を四兆四千億も減額し、かつ、一般歳出を六千六百億円、一・五%増に抑えたことを私は大きく評価すべきであると考えます。(
拍手)それは一・五%増といつでも、
消費税二%増及び消費者物価上昇率一・六%増を考慮すれば、実質伸び率ゼロと同じだからであります。
さて、最近の
株価低迷もあり、各種
世論調査では、
国民の多くの
方々の声として、思い切った行
財政改革を進めるべきであるという声とともに、
景気対策にも万全を期すべきという意見があります。私は、そのためにも、まず
平成八年度
補正予算の
早期成立を図りながら、切れ目のない
予算執行を行うことが重要だと思います。今回の
補正予算は、緊急防災対策費、災害復旧
事業費、阪神・淡路大震災対策、ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策費、緊急
経済構造改革対策費、
消費税関連対策費等で構成されており、
景気対策にも資するものであると考えます。
財政構造改革元年と
景気対策に配慮すれば、
平成九年度
予算案及び
平成八年度
補正予算案は、現時点で考えられる最良の
予算であり、一日も早い成立を期すべきだと思いますが、
総理の御所見をお伺いいたします。(
拍手)
次に、
経済構造改革について申し上げます。
我が国においては、製造業の海外展開が急速に進み、通産省の調査によれば、製造業の
雇用は今後五年間で百二十四万人も減少するとされております。この背景には高コスト構造などの構造的問題があり、放置した場合、高付加価値
産業までもが海外に逃げ、
産業空洞化は現実のものとなります。
こうした中、新規
産業を創出し、質の高い
雇用を維持しながら豊かな
国民生活を実現していくためには、従来の発想にとらわれない抜本的な
経済構造改革こそ不可欠であります。
政府におきましては、昨年十二月十七日、
経済構造の変革と創造のためのプログラムを閣議決定いたしましたが、プログラムに定められた施策の確実な実行はもちろん、プログラムの内容を質量ともに充実し、実効ある
改革としなければなりません。
それには、
企業税制の
改革が重要であります。諸
外国に比べ高い水準の
法人課税は、
我が国市場の魅力を低下させており、適正な法人所得課税を実現すべく実質的に
負担を軽減することがぜひとも必要であり、また、ベンチャー支援
税制や
企業の柔軟な組織変更を可能とするため、多くの先進国で導入されている持ち株会社の解禁や
連結納税制度を
早期に導入することも重要であります。(
拍手)このために必要な財源を確保するため、
直間比率の是正等、税体系の
改革も一方の課題であります。
さらに、今後発展が期待される
情報通信
分野については、懸案となっているNTT
改革を推進することが重要であり、NTTの
再編成による公正かつ有効な
競争市場の実現、NTTの国際進出によるグローバル化への
対応が必要と考えます。
総理は
経済構造改革を
内閣の最重要課題に掲げ、
政府全体で強力に推進すると述べておられますが、
企業税制の
改革、持ち株会社の解禁、NTT
改革への
対応を含め、今後、
具体的にどのように
経済構造改革を進めていかれる方針か、
総理のお考えをお伺いいたします。
次に、
金融システム改革について質問いたします。
総理は、ここ十年間、世界の
金融市場が大きな発展を遂げたのに対し、
我が国金融市場はおくれをとったのではないかと憂慮され、
金融システム改革を
六つの
改革の
一つとして掲げられたことを私としては高く評価したいと思います。
一方、最近の株式相場を見ますと、年初来一万七千円台の局面がしばしば見られるなど、先行きについても極めて不透明な
状況にあります。大蔵
大臣は、
財政演説の中で「株式
市場の動向につきましては、今後とも十分注視してまいる
所存」とおっしゃったが、さきに「
市場のことは
市場に聞け」とも言われております。一方、「株式
市場はその国の
経済を映す鏡である」という言葉もあります。看過し得ない動向と考えて、
政府の適切な対処を求めたいと存じます。
原因については種々の言説がありますが、
政府予算が
景気刺激的でないものであることや、
金融システム改革、いわゆるビッグバンの進行によって
金融機関等の優勝劣敗が進むこと、とりわけ
金融、不動産関係の
株価の下落ぶりを思うとき、
不良債権問題に対する内外の機関
投資家や
国民の懸念が大きいこと等が主な
原因と考えられます。
そこで、
政府・与党は、この際、
補正予算の
早期成立を図るとともに、次のような姿勢と対策を明確にし、
国民や
証券市場関係者の不安を取り除くべきだと存じます。
第一に、
行政改革、
規制緩和、
財政再建、
経済構造改革等の諸
改革は、公表したスケジュールどおり遂行することが
政治の
責任であること。
第二に、
証券市場対策として当面どのような対処を考えているのか、
国民に説明すること。
第三に、
金融機関の
不良債権処理を初め、今後の
経済運営について
政府が
責任ある
対応を行うこと。すなわち、
金融機関の
不良債権の完全なディスクロージャー、
金融持ち株会社の設立、
連結納税制度の導入、昨年成立した
金融三法に基づき五年後のペイオフ実施まで預金者保護を完璧に行うこと等の対策を講じること。
第四に、
不良債権処理には土地の有効利用など総合的な土地
政策が不可欠であることから、現在
政府においで策定を進めている新総合土地
政策推進要綱(仮称)の推進に
政府を挙げて取り組むこと。また、土地流動化策、そして都心部における思い切った容積率の
緩和措置等を行うこと。
以上の提案につき、いずれも
日本経済の先行きについての
国民の不安を取り除くために有効であると考えますが、
総理及び大蔵
大臣の回答を求めます。
また、
金融システム改革は、二〇〇一年までに完了するとされていますが、できる限り速やかに実施していくことが重要であります。今
国会には、まず、そのフロントランナーとして、
外国為替及び
外国貿易管理法の
改正案が
提出されるものと承知しておりますが、これにより
我が国の国際的お
金融取引にどのような変革がもたらされるのか、あわせて大蔵
大臣にお伺いいたします。
次に、
社会保障も
構造改革の例外ではありません。二十一
世紀に向けて、
社会経済の
活力を損なわずに、将来を担う子供たちに過大な
負担を課すことのない安心して暮らせる
社会、すなわち
総理のキャッチフレーズの
一つである「長生きしてよかったと思える
社会の建設」を目指すとき、勇気を持って、医療、年金、福祉全体の
再編成を行い、公平公正で効率的な
社会保障制度の再構築を進めていかなければなりません。
こうした
改革には
国民のコンセンサスが必要であります。このため、
制度の
現状、問題点、複数の選択肢の提示等、正確な
情報の開示が大事です。その上で
国民に
痛みを伴うお願いをすることがあっても、取り組みがおくれたために
国民生活に将来不安と混乱を来すような
事態は何としても避けなければなりません。
そこで、まず、
社会保障構造改革の
具体化のための第一弾として、
介護を必要とする
方々ができるだけ
自立した
生活を送れるようにするため、包括的な
介護保障
システムの導入が必要であります。こうした前提に立ち、昨年の
政府の
審議会や与党間での
審議、与党三党による全国公聴会の開催等を経て、前
国会に
介護保険
制度が
提出されております。
改革の第二弾として、今
国会に
提出予定とされている医療保険、老人保健
制度の
改革につきましては、
経済基調が変革する中、高齢化の進行に伴い、
国民医療費は増大し続け、医療保険
制度は大変深刻な
状況にあることにかんがみ、
政府案作成の段階で詰めるべき点は十分詰めて、与党間の合意を完全にし、本
国会における成立を期すべきものと考えます。
第三弾として、
平成十一年の次期
財政再計算に向けての年金
制度の全体の見直し等があります。
二十一
世紀に向けて
社会保障制度をどのような姿としていくべきなのか、また、その構築をどのように進めていくべきであるのか、お考えのほどを、厚生
行政の大ベテランである
総理の御見解をお伺いいたします。
総理は、
行政改革や
経済構造改革などの五つの
改革とともに、このたび教育
改革を第六番目の
改革の柱として位置づけられました。
我が国の
社会、
経済、文化等の進展は人づくりにより支えられてきたものであり、
国家社会の大きな変革期において教育
改革を国政の重要課題の
一つとして取り上げられたことは、まことに適切なものと受けとめています。
教育
改革については、かつて昭和五十九年から六十二年まで臨時教育
審議会において精力的な取り組みが行われ、一定の成果を上げてきました。しかし、それから十年が経過した現在においては、
我が国が
国際社会において信頼される国として次の
世紀においても
活力を持って発展していく上でも、また一人一人の
国民が豊かで幸せな人生を送る上でも、現在の教育
制度で果たして十分なものであるか否か、いま一度全般的な見直しが求められていると思います。
教育は、すべての
国民にかかわる問題であり、
国民のコンセンサスを得ながら進めることが肝要と思います。このたびの教育
改革を実効あるものとするためには、
改革の
理念を掲げるとともに、
具体的なプロセスを
国民の前に明らかにしていくことが重要と考えますが、今後どのように教育
改革に取り組んでいかれるお考えなのか、
総理の御所見をお伺いいたします。
私は、現在の教育の現場における問題、とりわけ深刻ないじめ問題や頻発する
社会問題などを見るにつけ、一番
改革が必要であるのは人間形成の教育ではないかと考えています。すべての人間は完全でないということを自覚し、それゆえに完全なものになろうと努める、このような
努力をするからこそ人間はとうとい存在であるのだということを学ぶことが大切なのではないでしょうか。そして、このような人間観からこそ、謙虚さとか
生命に対する畏敬の念、お互いにいたわり合い助け合う態度等が育成され、充実した幸せな人生を送れるのではないでしょうか。
また、これからの
我が国は、明治維新以来の官主導を改め、
国民の自由闊達な発想や
創意工夫をエネルギーに、国の未来を求める歴史的な大転換を図ろうとしています。これは、公正な
競争社会を基本とする国づくりです。ルールを軽んじ
社会倫理や道徳性の希薄な
競争社会は、国が崩壊する最大の
原因となるのではないでしょうか。
したがって、二十一
世紀の
我が国の国づくりの基本、
国家百年の大計として、
国民の豊かな人間性や倫理性の涵養が強く求められていると思います。このたびの教育
改革においても、ぜひともこのような人間形成の教育、実践的な道徳教育を最重要課題として明確に位置づけ、お取り組みくださるようにお願いしたいと存じます。
総理並びに文部
大臣の見解をお伺いいたします。
今後の
我が国の世界に向けての
役割は、新しい科学技術を提供することだと考えます。
これまでの
我が国は、科学の基礎研究
分野で欧米が発明発見したものを巧みに取り入れ、応用技術の開発に成功し、
経済の発展を図ってまいりました。しかし、これからは、基礎科学の
分野でも独自の先駆的
役割を果たすことが
国際社会から求められているという自覚が必要であると思います。当然、学術研究を担う人材育成、研究資金の確保、施設整備の充実について、産学官の連携のもとに総合的な取り組みが必要だと考えます。
これを踏まえ、我が党が
中心になり、九五年十一月に科学技術基本法を、昨年六月には科学技術基本計画を制定いたしました。今から二十一
世紀までの間に十七兆円の大規模な
研究開発投資を行い、科学技術
分野で国際貢献していくことを目指し、
我が国が科学技術創造立国となることを大きな
目標としたいと考えます。
あわせて、二十一
世紀のリーディング
産業となると期待されている
情報通信についても、その基盤整備を進めていくべきであります。
平成九年度
予算案において、科学技術振興費一一・九%の伸びは独歩高でありますし、また
総理直轄査定で三千億円の
経済構造改革特別措置も講じられましたが、科学技術の振興と
情報通信基盤の整備は、今日、
我が国の最も力を入れて取り組むべき
分野だと信じます。
総理の御所見をお伺いいたします。
立法、
行政に並び三権の一翼を担う司法の
改革についても一言申し上げたいと思います。
これまで述べたように、今、我々は
規制緩和や
地方分権を進め、
国民の
創意工夫に未来を託し、新たな国づくりを進めています。こうした流れは、
社会経済を初めさまぎまな
分野において
競争が一層促進されることになります。
そこで、
国家の基本である
社会の秩序や公正さを確保するため、かつ、
我が国が大
競争時代に入った
国際社会に
対応しなければならない意味からも、従来以上にルールを守るということが
社会の大切な
枠組みとなり、司法の
役割が一層重要なものになります。
経済活動のルールを守るために、既に我々が公正取引
委員会の
改革に着手したように、
社会の変化に的確に
対応し、二十一
世紀の司法の新たな
役割に着目した司法
改革は国づくりの基本ではないでしょうか。新たな時代の司法のあり方についで、
総理の御所見をお伺いいたします。次に、外交関係について
総理並びに外務
大臣にお尋ねいたします。
まず最初に、ASEAN歴訪については大変御苦労さまでございました。お回りになったASEAN諸国は設立三十周年を迎え、域内
経済協力や対話を通じ結束を固め、
成長著しいものがあり、
我が国との関係も、ODAを
中心とした協力に加え、貿易・
投資の重要性、さらには
経済中心の関係から幅広い対話へと成熟した関係に移りつつあります。
総理は意欲的に各国首脳と会談を重ねられ、首脳間同士の
個人的信頼関係も強化され、多大な成果を上げられたものであると存じます。
ところで、
総理が提案された
我が国とASEANとの首脳定期協議について、各国首脳の反応はいかがなものであったか、また、アジア太平洋時代の到来に当たり御提案された目的はどこにあるのか、承りたいと存じます。
次に、日中関係についてお伺いいたします。
最近の中国の核実験の実施、近年の著しい軍事力の増強、南沙群島をめぐる動きや中台問題などにより、昨年の日中間に多少ぎくしゃくしたものがありました。その後、両国の関係は、APEC等における首脳会談、外相会談等を通じて改善されつつあると信じます。本年は、国交正常化から二十五年の節目に当たる年です。
我が国は、まさに中国との安定した関係を築き、
改革・開放
政策を積極的に支援していくことが必要だと考えます。このような観点から、対中
経済協力を進めることは重要であり、昨年十二月に第四次円借款の前半部分のうち九六年度分、約千七百億円が約束されたのでありますが、
我が国の対中外交の基本姿勢、対中
経済協力に対する基本的考えをお尋ねしたいと存じます。
次に、朝鮮半島の平和と安定に向けた
我が国の
対応についてお伺いいたします。
先般の潜水艦潜入
事件は北朝鮮の遺憾表明によってひとまず落着し、今後は、米国、韓国とも緊密な協力のもとに
国際社会全体で朝鮮半島の平和と安定に大きな
役割を果たすべき、朝鮮半島エネルギー開発機構、KEDOの
活動に積極的に取り組む必要があると考えます。また、北朝鮮
自身も積極的に緊張
緩和への
努力をすることが重要であります。そのためにも、昨年四月、米韓両国首脳の提案した四者会合の提案を
早期に受け入れることが重要と考えます。本年もしそのことが実現すれば、日朝関係にも画期的な展開が期待できると信じます。このような点を踏まえて、来るべき別府における日韓首脳会談に臨まれる
橋本総理の朝鮮半島情勢の平和と安定についての基本姿勢についてお伺いしたいと思います。
次に、
安全保障問題でありますが、昨年四月に
橋本総理とクリントン米大統領との首脳会談の結果発出された日米
安全保障共同宣言において、日米両国は「アジア・太平洋
地域の
安全保障情勢をより平和的で安定的なものとするため、共同でも個別にも
努力する」と記述されました。これは、日米
安全保障体制が引き続きアジア太平洋
地域の平和と安定のかなめという点が再確認されたわけであります。
今後は、日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインの見直しの日米協議を行う中で、新しい日米協力のあり方、米軍支援などについて何を行うかを
具体的に詰めていくことになります。この作業はいよいよことしの秋を目途に進められているわけでありますが、
我が国及び
我が国周辺
地域の
安全保障情勢を考えると必要不可欠なものであり、実効ある施策を
具体的に検討し、これらを着実に実施していくことによって、日米
安全保障体制の信頼性の向上を図ることが肝要であります。
また、
総理指示として
政府に検討させている在外邦人等の保護、大量避難民対策、沿岸・重要施設の警備、対米協力措置などについても、
ペルー日本国大使公邸占拠
事件により
我が国の
危機管理能力が問われている現在、早急に検討すべきであります。
ガイドラインの見直しと緊急
事態対応策についての
総理の御所見をお伺いいたします。
一方、
新進党は、先日発表した
日本再建のための
基本政策構想の中で
安全保障三
原則をうたっています。すなわち、一、集団的自衛権の行使は認めない、二、日米安保条約の
拡大解釈はしない、三、国連の平和維持
活動に積極的に参加するとともに、湾岸
危機時の多国籍軍のような侵略に対する平和回復
活動等へも参加する道を開くとしています。
この
考え方は、どうも木に竹を接いたような矛盾したところがあって、
国民には到底理解されないと存じます。もともと、国連の軍事的
安全保障活動は加盟各国の集団的自衛権の行使を前提としたものではないでしょうか。私は、
日本国憲法の範囲内で日米協力を進めるという
国民世論の動向から見て、堅実で安定した橋本内観の方針を支持いたしますが、
総理のお考えを改めて確認しておきたいと存じます。(
拍手)
沖縄問題は、橋本
内閣並びに我が党が総力を挙げて取り組むべき課題と認識しております。
基地の整理、統合、縮小等の問題は沖縄県民の願いでありますが、昨年末にはSACO最終報告が出され、普天間飛行場の全面返還を含め、沖縄県における米軍の施設及び区域の総面積の約二一%が返還されることとなりました。今後は、地元民の理解を得ながらこれらを着実に実施していかなければなりません。
沖縄県の振興策につきましては、航空運賃の引き下げ、沖縄県特別
経済ゾーンの実現に向けての動きなど、
具体的振興策が着実に推進されつつあります。今後とも、沖縄県民の
負担の軽減と
経済・
雇用振興策の推進によって、若者が将来に夢と希望が持てる沖縄県の実現に向けて
全力を傾注していく必要があります。
ここで
一つ心配なことがあります。それは、五月十四日に嘉手納基地など十二施設の沖縄米軍基地用地の使用期限切れとなることであります。もしも県収用
委員会の審理等手続が順調に進められない場合には、日米
安全保障条約等をベースとした米国に対する
我が国の責務を果たすためにも、
政府としてもそれなりの措置を講ずる必要が出てくるものと考えます。
総理は、米軍基地用地の使用問題にどう対処されるのか、また今後の沖縄問題への取り組みについてお考えをお聞かせください。
最後に、私は
我が国の将来像として品格ある
活力国家を提唱したいと思います。
ノーブレスオブリージュという言葉がありますが、中世フランスの貴族
社会に伝わった高貴な者はその
責任を伴うという意味を持つ言葉であり、現在は、広義な解釈として、地位のある者はその義務を負うという意味に使われております。
我が国も二十余年前からG7の一国であり、
経済大国と言われ出して久しく、今や安保常任理事国入りを目指す立場でありますから、
国家としての品格においても
国際社会において名誉ある地位を占めなければなりません。
そのためには、第一に文化と伝統を重んじ、道義を大切にする
国家として魅力ある
日本の創造に努めなければなりません。
日本国民の内外における振る舞いが節度のあるものであり、高い道徳の水準が要求されます。とりわけ公職につく者の倫理の回復や政官財労などの各界の指導的立場にある者のノーブレスオブリージュに徹することが望まれます。
また、
我が国は、一国
平和主義や一国繁栄主義に走ることなく、二十一
世紀においても、みずから
活力ある
経済社会を維持することにとって国際貢献の質と量を高めていく必要がありましょう。
以上申し上げたことは
橋本総理の
政治理念や
政治姿勢と一致すると信じますが、いま一度
総理の
国家最高指導者としての
政治理念をお聞かせくださるようお願いして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣橋本龍太郎君
登壇〕