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1997-06-11 第140回国会 衆議院 法務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月十一日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 八代 英太君    理事 太田 誠一君 理事 岸本 光造君    理事 橘 康太郎君 理事 横内 正明君    理事 上田  勇君 理事 鴨下 一郎君    理事 坂上 富男君       奥野 誠亮君    河村 建夫君       栗原 博久君    笹川  堯君       高市 早苗君    谷川 和穗君       西川 公也君    福永 信彦君       吉川 貴盛君    渡辺 喜美君       安倍 基雄君    漆原 良夫君       加藤 六月君    斉藤 鉄夫君       山中 燁子君    石毛 鍈子君       北村 哲男君    佐々木秀典君       石井 郁子君    保坂 展人君       園田 博之君  出席政府委員         法務省民事局長 濱崎 恭生君  委員外出席者         議     員 坂上 富男君         議     員 枝野 幸男君         議     員 石毛 鍈子君         議     員 細川 律夫君         議     員 松本 惟子君         法務委員会調査         室長      河田 勝夫君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十九日  辞任         補欠選任   保坂 展人君     深田  肇君 六月三日  辞任         補欠選任   深田  肇君     保坂 展人君 同月十一日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     高市 早苗君   福岡 宗也君     山中 燁子君   石毛 鍈子君     北村 哲男君   正森 成二君     石井 郁子君 同日  辞任         補欠選任   高市 早苗君     加藤 紘一君   山中 燁子君     福岡 宗也君   北村 哲男君     石毛 鍈子君   石井 郁子君     正森 成二君     ――――――――――――― 六月十日  民法の一部を改正する法律案坂上富男外四  名提出衆法第一二号) 五月三十日  通称使用制度によらない選択的夫婦別姓制度の  法制化に関する請願秋葉忠利紹介)(第三  三〇九号)  同(石橋大吉紹介)(第三三三七号)  同(枝野幸男紹介)(第三三三八号)  同(小沢鋭仁君紹介)(第三三三九号)  同(桑原豊紹介)(第三三四〇号)  同(池端清一紹介)(第三四四〇号)  同(山花貞夫紹介)(第三四四一号)  同(池端清一紹介)(第三四五七号) 法務局更生保護官署及び入国管理官署増員  に関する請願斉藤鉄夫紹介)(第三三一〇  号)  同(坂上富男紹介)(第三三一一号)  同(石毛鍈子君紹介)(第三三四四号)  同(佐々木秀典紹介)(第三三四五号)  同(坂上富男紹介)(第三三四六号)  同(坂上富男紹介)(第三三七五号)  同(坂上富男紹介)(第三四四三号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法  制定に関する請願畠山健治郎紹介)(第三  三四一号)  同(日野市朗紹介)(第三三四二号)  同(肥田美代子紹介)(第三三四三号)  同(山花貞夫紹介)(第三四四二号)  同(畠山健治郎紹介)(第三四五八号)  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (秋葉忠利紹介)(第三四三八号)  子の姓を出生時に決める夫婦別姓選択制度の法  制化に関する請願秋葉忠利紹介)(第三四  三九号) 六月四日  裁判所の人的・物的充実に関する請願正森成  二君紹介)(第三五三七号)  同(石井郁子紹介)(第三五六一号)  同(大森猛紹介)(第三五六二号)  同(金子満広紹介)(第三五六三号)  同(木島日出夫紹介)(第三五六四号)  同(児玉健次紹介)(第三五六五号)  同(穀田恵二紹介)(第三五六六号)  同(佐々木憲昭紹介)(第三五六七号)  同(佐々木秀典紹介)(第三五六八号)  同(佐々木陸海紹介)(第三五六九号)  同(坂上富男紹介)(第三五七〇号)  同(志位和夫紹介)(第三五七一号)  同(瀬古由起子紹介)(第三五七二号)  同(辻第一君紹介)(第三五七三号)  同(寺前巖紹介)(第三五七四号)  同(中路雅弘紹介)(第三五七五号)  同(中島武敏紹介)(第三五七六号)  同(春名直章紹介)(第三五七七号)  同(東中光雄紹介)(第三五七八号)  同(平賀高成紹介)(第三五七九号)  同(不破哲三紹介)(第三五八〇号)  同(藤木洋子紹介)(第三五八一号)  同(藤田スミ紹介)(第三五八二号)  同(古堅実吉紹介)(第三五八三号)  同(正森成二君紹介)(第三五八四号)  同(松本善明紹介)(第三五八五号)  同(矢島恒夫紹介)(第三五八六号)  同(山原健二郎紹介)(第三五八七号)  同(吉井英勝紹介)(第三五八八号)  同(斉藤鉄夫紹介)(第三六二六号)  選択的夫婦別姓導入など民法改正に関する請  願(辻第一君紹介)(第三五五九号)  通称使用制度によらない選択的夫婦別姓制度の  法制化に関する請願秋葉忠利紹介)(第三  五六〇号)  同(秋葉忠利紹介)(第三六二一号)  同(金田誠一紹介)(第三六二二号)  同(桑原豊紹介)(第三六二三号)  同(坂上富男紹介)(第三六二四号)  同(山元勉紹介)(第三六二五号) 同月十日  通称使用制度によらない選択的夫婦別姓制度の  法制化に関する請願桑原豊紹介)(第三六  七六号)  同(坂上富男紹介)(第三六七七号)  同(山元勉紹介)(第三六七八号)  同(枝野幸男紹介)(第三七一四号)  同(藤田幸久紹介)(第三七一五号)  同(山元勉紹介)(第三七一六号)  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (大畠章宏紹介)(第三七一二号)  子の姓を出生時に決める夫婦別姓選択制度の法 制化に関する請願大畠章宏紹介)(第三七一  三号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法  制定に関する請願古堅実吉紹介)(第三七  一七号) 同月十一日  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (保坂展人君紹介)(第三八八九号)  同(土井たか子紹介)(第四〇三八号)  子の姓を出生時に決める夫婦別姓選択制度の法  制化に関する請願保坂展人君紹介)(第三八  九〇号)  同(土井たか子紹介)(第四〇三九号)  通称使用制度によらない選択的夫婦別姓制度の  法制化に関する請願山元勉紹介)(第三八  九一号)  同(石田幸四郎紹介)(第四〇四〇号)  同(枝野幸男紹介)(第四〇四一号)  同(土井たか子紹介)(第四〇四二号)  同(中川智子紹介)(第四〇四三号)  同(中川正春紹介)(第四〇四四号)  同(中川智子紹介)(第四一六六号)  同(中川正春紹介)(第四一六七号)  同(園田博之紹介)(第四三〇三号)  同(土屋品子紹介)(第四四五七号)  法務局更生保護官署及び入国管理官署増員  に関する請願保坂展人君紹介)(第三八九二  号)  裁判所の人的・物的充実に関する請願保坂展  人君紹介)(第三八九三号)  同(木島日出夫紹介)(第四四五九号)  同(正森成二君紹介)(第四四六〇号)  裁判所速記官養成継続に関する請願正森成  二君紹介)(第四一六五号)  同(保坂展人君紹介)(第四三〇四号)  同(佐々木秀典紹介)(第四三六八号)  同(坂上富男紹介)(第四三六九号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法  制定に関する請願五島正規紹介)(第四三  六七号)  同(五島正規紹介)(第四四五八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 六月五日  鹿児島地方法務局管内各出張所の存続に関する  陳情書(第  三五三号)  国選弁護人報酬増額に関する陳情書外一件  (第三五四号)  死刑制度廃止死刑執行停止に関する陳情書  (第三五五号) 同月十一日  裁判所の人的・物的充実に関する陳情書  (第四〇八号)  刑務所内の処遇に関する陳情書  (第四〇九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  民法の一部を改正する法律案坂上富男外四  名提出衆法第一二号)      ――――◇―――――
  2. 八代英太

    八代委員長 これより会議を開きます。  坂上富男外四提出民法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、提出者より趣旨説明を聴取いたします。坂上富男君。     ―――――――――――――  民法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 坂上富男

    坂上議員 本日から選択的夫婦別制等民法一部改正法案について御審議をいただくことになりました。これは、ひとえに法務委員会を初めとする関係議員皆様方の御協力のおかげでございます。審議冒頭提案者を代表いたしまして御礼を申し上げさせていただきます。  提案理由趣旨を御説明いたします。  本法律案は、最近における国民価値観多様化女性地位向上、諸外国における婚姻法制等の整備の状況、これらを反映した世論動向等にかんがみ、婚姻制度について、個人の尊重と男女の対等な関係構築等観点から選択的夫婦別氏制を導入するとともに、婚姻最低年齢及び再婚禁止期間見直し等を行い、離婚制度について、離婚後の子の福祉の観点から子の監護に関する規定等を整備するとともに、婚姻関係回復見込みのない破綻が離婚原因であることを明確にし、五年以上の共回生活の不存在をその例示として離婚原因に加え、相続制度について、摘出でない子の権利の保護観点から摘出でない子の相続分摘出である子の相続分同一とする等、民法の一部を改正しようとするもので、その主な内容は、次のとおりであります。  第一は、婚姻適齢男女とも満十八歳とし、再婚禁止期間現行の六カ月から百日間に短縮することとするものであります。  第二は、夫婦は、婚姻の際、夫もしくは妻の氏を称するか、各自の婚姻前の氏を称するかを定めることとするものであります。  第三は、摘出である子は、父母の氏またはその出生時における父母協議で定められた文もしくは母の氏を称することとするものであります。  第四は、協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父または母との面会、交流、子の監護費用分担等については、父母協議で定めることとするものであります。  第五は、婚姻関係が破綻して回復見込みがないときを裁判上の離婚原因として明確にし、夫婦が五年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしているときをその例示として追加することとするものであります。また、裁判所は、離婚原因があっても、離婚配偶者もしくは子に著しい生活の困窮もしくは耐えがたい苦痛をもたらすとき、または離婚請求が信義に反すると認められるときは、離婚請求を棄却することができることとするものであります。  第六は、摘出でない子の相続分は、摘出である子の相続分同一とすることとするものであります。  第七は、改正法施行前に婚姻によって氏を改めた夫または妻は、改正法施行後一年以内に、配偶者との合意に基づく届け出によって、婚姻前の氏に復することができることとすること。これにより、父または母と氏を異にすることとなった子は、父母届け出をした日から三月以内の届け出によって、婚姻前の氏に復した父または母の氏を称することができることとするなど、所要の経過措置を設けることとするものであります。  第八は、政府は、この法律施行後三年を目途として、離婚後の子の監護費用の支払いその他離婚後の子の監護に係る義務履行確保するための制度について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとするものであります。  以上のほか、失踪宣告取り消しに伴う婚姻関係の取り扱い及び夫婦間の契約取り消し権等につき規定を整備することとしております。  以上がこの法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、御可決くださいますよう、お願いを申し上げる次第であります。ありがとうございました。
  4. 八代英太

    八代委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 八代英太

    八代委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。太田誠一君。
  6. 太田誠一

    太田(誠)委員 ただいま坂上提案者から御説明のございました提案理由説明の中に、女性地位向上という言葉とか、あるいは男女の対等な関係という言葉が出てまいりました。そういう、女性地位向上男女平等にするという考え方そのものには私も大賛成でございますけれども、それは今出そうとしておられる法律案と必ずしも整合的でないというふうなことを最初に申し上げておきたいと思うわけでございます。  男女同姓でなければならないということは、夫が妻の姓を名乗ってもいいわけですし、妻が夫の姓を名乗ってもいいわけであって、共通した一つ家族名前を持つということが大事なことであるのであります。それは男女が、夫と妻が平等な立場でどちらかの姓を選べばいいのであって、その意味では、男女別姓同姓論というのは、これは男女同権とか対等とか女性地位向上ということは関係のない問題であって、いかに夫婦になった者が協調精神を発揮して共通の名前を持つかどうかということでありますので、この提案理由説明冒頭のところで私は納得ができないわけでございますということをまず最初に申し上げておきます。  それから、この本法律案は、実は、我々がこれまで説明を受けてまいりました、去年の暮れでしたか、おととしだったか、ちょっと覚えておりませんけれども、法務省法制審議会から民法改正についてこういう答申を受けたといって私どもに説明をしたものとほとんど同じであるというふうに思うわけでございます。  その点についてどうなのかということをお尋ねしたいわけでございますが、法制審議会答申をした民法改正案とこの民主党提案法律はどこが違うのかということをまずお聞きをいたしたいと思います。
  7. 坂上富男

    坂上議員 民主党提出民法の一部を改正する法律案と、法務省要綱案だろうと思いますが、これの比較についてでございます。  民主党法案法務省が発表いたしました要綱との相違点でございます。  第一は、別氏夫婦の子の氏の定め方についてでありますが、法務省要綱においては、夫婦が別氏夫婦として婚姻することとしたときは、その婚姻の際に、夫または妻の氏を子の称する氏として定めなければならない、こう要綱案ではしているのであります。  したがって、これによりますと、別氏夫婦複数の子がいるときは、子の氏は夫または妻のどちらかに統一されることとなるのであります。また、別氏夫婦がともに養子をするときも同様に、養子夫婦が定めた子の称する氏を称することになるのであります。  これに対しまして民主党法案といたしましては、別氏夫婦の子は、その生まれたときにおける父母協議で定められた父または母の氏を称するとしておるのであります。  したがって、これによりますと、別氏夫婦複数の子がいるときの子の氏は、それぞれ出生の都度の父母協議で定められ、それぞれの子は父または母のいずれかの氏を称することとなるのであります。また、別氏夫婦がともに養子をするときも同様に、養子はその縁組の際に定めた養親のいずれかの氏を称する、こうなるのであります。  そして第二番目は、離婚後の子の養育費等に関する義務履行確保制度についての検討でございます。  民主党法案では、政府離婚後の子の養育費等に関する義務履行確保制度について検討を加えて必要な措置を講ずるように求める検討条項規定しておりますが、法務省要綱にはこれがないのであります。とかくいたしますと、子供養育料の問題については、別れた夫婦の間で、この履行確保ができないことが一番大きな悩みになっておりまするものですから、これに対しては、きちっと確保する何らかの方法というものを検討がなされなければならない、こういうようなことでございます。これについては、強制執行できるのでありますが、強制執行だけで解決はとてもできない、強制執行以前に、もっとこのことをきちっと確保する方法を講ずるべきじゃなかろうか、こんなようなことを私たちの相違点としておるわけでございます。  以上でございます。
  8. 太田誠一

    太田(誠)委員 御説明をいただきましたけれども、子供がどちらの姓を選択するかということについて、法務省案は、一括してどちらかを選ぶということであり、それから民主党案では、それぞれ別々に選ぶということが違う。それからあとは、離婚をしたときの養育費をどうするのか、そこについてのきちんとした定めがあるかないかが違うという二点であるというふうにお聞きをいたしました。  そういたしますと、ほとんど九〇%ぐらいは同じものだというふうにみなして、これはやはり、法制審議会答申にかかわった法務省の御見解も、民主党と同時にお聞きをしなければならないと思うのでございます。  そこで、法務省にお聞きをしたいのですけれども、法制審議会答申を出されるときに、法制審で賛成反対があったと思うわけでございますけれども、賛否は何人対何人だったのでしょうか。
  9. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 結論を申し上げますと、最後の法制審議会の総会における議論におきましては、審議の途中におきましては、原案の一部、すなわち選択的夫婦別制度導入の部分について、一部の委員、具体的にはお一人の委員でございますが、から異論が示されました。しかしながら、いろいろ議論をしました宋、原案全体の採決の際には、審議に出席した委員全員賛成により答申が決定されたということでございます。  なお、付言させていただきますと、この審議につきましては、法制審議会民法部会における、約五年間にわたる長い議論が尽くされた結果であるということを付言させていただきたいと存じます。
  10. 太田誠一

    太田(誠)委員 最終的には全員一致であった、途中経過でも一人しか反対意見がなかったということでございますので、満場一致だということだと思います。去年のこの委員会でやりました民事執行法法制審議会での最終的な結論の出し方を見ると、賛否分かれていたようでございますので、これは著しい統一性、水も漏らさぬというか、合意ができたということでございまして、私、本当にこれはびっくりするわけでございます。  ただ、今民事局長がおっしゃいましたし、また、夫婦別推進論者の方々がしばしば、五年前からやっておった、五年前から議論をしておったということをおっしゃるわけでございますけれども、政府審議会は、たびたび私も言いますけれども、これは密室でございます。何を、だれが、いつしゃべったのかわからない状態で突然答申が出てくるわけでございますから、一部専門家によるそのような閉ざされた密室の討議というのは、国民的な議論に付されたということにはならないわけでありまして、これは、各政党の中で開かれた論争が行われたときが国民的な議論が始まったということになるのではないかと私は思います。もっと言えば、国会での議論が始まったときが、本当の国民に開かれた議論のスタートであって、政府の中の審議会とか、総理府を中心にした協議機関協議をされているというのは、まさにそれは閉鎖社会のものであって、一部の専門家がひそかにやっておったということでありますから、それは、議論が始まったとは言えないわけでございます。そのことをまず申し上げておきます。  そこで、一方、国民世論動向はどうであるのかということをお聞きいたしたいわけでございます。たしか平成四年ですか、ちょっと私、正確に覚えておりませんけれども、この夫婦同姓別姓について、第一回目の世論調査が行われたということでございますけれども、そのときの結果を、賛成反対、わからない、それだけを端的にお聞かせいただければ幸いでございます。
  11. 坂上富男

    坂上議員 大変重要な指摘なんでございます。率直に申し上げまして、私らも、この法案提出するに当たりまして、世論調査動向についても十分な調査をさせていただいたわけでございます。確かに、御指摘されること、ごもっともだというふうに理解はいたしておりますが、また、こういう観点もあるんじゃなかろうか、こうも思っております。  一つ最初は昭和六十二年の調査、認めるのがよいというのは、確かに一三%でした。認めないのがよいというのは六六%なんですね。それから今度は、平成二年の調査は、認めるのがよいというのが三〇%なんです。ただし、都市部女性に限りますと、四四%が賛成なんですね。このときは、認めない方がいいというのは、まだ五二%でした。でありまするから、先生おっしゃいました六十二年、平成二年というのは、非常に、俗に言うと、先生おっしゃるように、反対という立場の方が多いようでございます。そして、平成六年の調査でございますが、このときになると、今度は、認めるのがよいというのは二七%、認めないのがよいが五三%で、平成二年より賛成派が少し落ちたのですね。  そこで、この問題は、回答内容を分析いたしますと、また新しい発見があるのでございます。二十代の方、三十代の方の回答者においては、別氏を肯定する意見否定意見を若干上回ったのですね、ここへ来て。別氏肯定意見は、性別では女性の二九%、大都市で三四%、職業別では、管理専門技術、事務職で四二%という割合で高くなっているのです。別氏否定意見は、年齢別では四十歳以上が高いのですね。五十歳代は六三%、六十歳代は七〇%。それで、性別では、男性の五七%、小都市町村部で六〇%、職業別では、自営業者家族従業者で六〇%、こういう状況なんですね。  そこで、今度は平成八年六月、去年の六月でございますが、こういうふうになりました、全体的結果は。認めるのがよいというのが三二・五%、認めないのがよいというのは三九・八%。確かに反対派の方が多いのでございますが、回答内容を分析してみますると、これまた新しい発見なんでございますが、二十代から四十代までは、夫婦別氏制または旧姓使用賛成者が六割なんですね。それから、特に三十歳代では八〇%であったのですね。しかし、六十歳代以上では反対意見が六割以上、こういう状況なんです。  ここで御理解をいただきたいと思っておりまするのは、この八年六月の、三二・五%が別氏制度を入れてくれ、こういう意見でございますが、そして、入れたとしても、あなたはこれを利用しますか、選択しますかということが一六・三%なんですね。したがって、決まれば、私はこれを選択させてもらいたいというのが五二一九%なんですね。でありますから、この制度を入れたからといって、直ちにこの半分の人が、私は姓を別氏にするというようなことにはならないのですね。私は、これは非常にいいことなんじゃないかと。お互いに選択をするという道を残すということがいいことなんじゃなかろうか。  それから、今度は、いま一つ重要な調査があるのです。平成四年に裁判所長さんらにアンケートをとりましたら、現行法がいいというのが一五%、別氏にすべきだというのが六四%なんですね。そういうような状態で、私はこれを見て実はびっくりしたのです。それまでこんなのに余り関心はなかったのです。裁判官はどうも一般の人と接触がないから六四%も別氏制度賛成するのかなと私は思ったんです。だけれども、ずっと研究してみますと、やはりこの方がいいような気がしまして、それで今のような私らの提案になったということもひとつ御理解をいただきたい、こう思っておるわけでございます。  以上でございます。
  12. 太田誠一

    太田(誠)委員 念のためにお聞きしますが、法務省は、法務省がやった調査ではないけれども、大いに関心を持たれて、数字をよく覚えておられたと思うのですけれども、平成八年の調査で、選択肢は、この法案賛成反対かのほかに、通称使用というのはどうかというあれがあって、それに対する答えも相当数あったのではないですか。
  13. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のとおり、平成八年の世論調査選択肢の一つといたしまして、「夫婦は必ず同じ名字を名乗るべきだが、婚姻によって名字を改めた人が婚姻前の名字を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない」という選択肢がございまして、その選択肢を選んだ者が二二・五%に達しております。
  14. 太田誠一

    太田(誠)委員 法務省がいろいろなところで説明するのを聞いておると、この二二・五%の人たちは、あたかも賛成をしているように解説をしていたこともあるわけでございます。正確に言いますと、いつもそう言っていたということではありません。あたかもここはあいまいなものであるというふうに、あるいは夫婦別氏に賛成意見の方に二二・五%を数えるという向きもあったように思うわけでございますけれども、ここははっきりさせておかなければいけないのは、私は今言う二二・五%の一人でございます。私は、問われれば、通称使用を認めるべきだということを言います。  それから、それぞれの党で御議論をされたと思いますけれども、自由民主党の大変熱心な議論をやってきた過程で、最後に通称使用でいくべきだということでまとまったのは、これは慎重論者がそのような妥協案を出したわけであります。自民党の中での議論は、通称使用ならばいいではないかというふうに全員が折り合った。それに対して、積極的な推進論者の方々は、これは通称使用では意味がないということで、その妥協案には反対をされたわけでございます。ですから、これは明らかに二二・五%は慎重論者の答えであるということをはっきり言わなければなりません。  そういたしますと、平成八年の調査においても、三九・八%と二二・五%を足せば六二・三%であって、賛成の三二・五%の倍いるわけでございます。ですから、何の世論調査をやっても、結局のところ、推進論者の倍の慎重論者が我が国の国民内容であるということを私は申し上げなければなりません。  それと、そういう発表をすると、必ず新聞にもその内容を分析したという話が今の坂上先生のお話のように出てくるわけでございますけれども、これはナンセンスであって、坂上先生と枝野さんは、坂上先生の方が先輩ではあるけれども、全く同じ発言力を持っているわけでありまして、国民は皆平等なのであって、大先輩の方々も若い世代も同じ発言力でありますから、若い人が言っているから価値があるなんていうことはないわけでございます。この問題については、国民は等しい発言力を持っている。女性だからありがたいというふうなことはないわけでございます。男女同権でございますから、男女ともに同じ権利を持っているんだから、答えた人は、これは世論調査の中で単にその比率を見ればいいだけであって、その中が、若い世代がどうだったか、女性がどうだったかというのは、この際、国民は法のもとに平等だというのが我が国の憲法でございますから、何もそんな勘定はする必要はないというふうに思うのでございます。  そこで、ここで明らかにしておかなければいかぬのは、世論は常に、何度調査をしても、推進論者の倍の慎重論者あるいは反対論者がいるということであるのに、それにもかかわらず、法制審議会が満場一致で可決をしておる。満場一致で答申案を出したということに、私は、実は今の法制審議会の構成に問題があるとむしろ思うわけでございます。法制審議会が言ったから正しいなどということはこの場合にはないわけでございまして、法制審議会がいかに国民から遊離した判断をするのかというその証拠であるというふうに私は思うのでございます。この際、私は、法制審がどうしたこうしたという議論に権威を持たせることには反対をいたしたいわけでございます。  そこでちょっと、夫婦別氏論というものは一体どういうところからこの考え方が出てきているのかということを私も興味を、関心を持つわけでございます。大分前の、これはジョージ・オーエルという人の書いた「アニマルファーム」という寓話があるわけでございます。「アニマルファーム」という寓話は――だれかお読みになったことがありますか。いない、本当に。いればちょっと、いや、別にきょうは予告しておりません。  「アニマルファーム」という大変有名な寓話で、最近、俳優座か何か、新宿かどこかで、それを一つのドラマ、劇にして、小屋にかけてというか、公演が始まったというふうにどこかで私、新聞で見たことがございますけれども、それは、いわゆる共産主義社会というものを風刺している、あるいは共産主義革命というものを風刺している寓話でありまして、大変有名な話でございます。  その中に、農場で動物たちが、豚とかあるいは牛とかそういう飼われている動物たちが反乱を起こして飼い主である人間、農場主を追い出して、自分たちがその農場を占拠してしまうという話でございます。そして、そこまではいいんだけれども、占拠した後、豚の一頭が、ナポレオンという豚なんですけれども、ナポレオンという豚がだんだんと独裁者になってきて、そして君臨をしていく。人間は追い出して、自分たちのものになったと思ったら、かわりに豚の一頭が君臨して、独裁で他の動物たちも圧政に苦しむという話でございます。  その中に、生まれたばかりの豚の子がいつの間にか神隠しのようにいなくなってしまうということが描かれておるわけでございまして、そしてみんなで、その豚の母親などが悲しんで捜していくと、結局、その子豚はどこに行ったかわからないんだけれども、数年して、突然そのナポレオンという独裁者の親衛隊あるいは秘密警察のような存在で、さらわれたその豚の子たちがナポレオンのもとで育てられて、ナポレオンの親衛隊として他の動物たちを虐げる先兵となるという話であります。  ここにジョージ・オーエルはまさに共産主義社会の本質は何であるのかということを示したわけであって、いわば子供というのは社会的に育てるものである、子供というのは社会的に育てるものであって、母が子供を育てる必要はないし、父が子供を育てる必要もないというような考え方であります。  私は大変この寓話というのが物事の本質をついておると思うのでございますけれども、夫婦関係とか家族制度というのが、ロシア革命があった当初、どのようになっていたかということについて、法務省で何か勉強しておられればお聞かせをいただきたいと思います。
  15. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 ロシアの、あるいはソ連の家族状況がどういうことであったかということについて私ども、詳細な情報を持っているわけではございませんが、これはいろいろな資料等によりますと、一九二〇年代に事実婚というものに法律婚と同じような法的な保護を与えるという立法措置が講じられたということを聞いております。これによって、離婚、堕胎、少年非行の増加、人口の減少といった弊害が生じたというようなことを指摘する論調もあるということも承知しております。その程度のことを承知している程度でございます。
  16. 太田誠一

    太田(誠)委員 そういうことなのですよ。  結局、共産主義の世界は、要は、先ほど言いましたように、自分の子供を自分で育てる、あるいはそこのきずなというものを否定するというか、あるいは子供を所有しているというふうな考え方を否定するという考え方です。社会的にすべての子供たちは育てなければいけないという考え方でありますから。子供がそうであれば、婚姻の意義というのは大幅になくなるわけでございますし、事実婚でいいではないかというのは、論理的、整合的な帰結になるわけでございます。  これは家族のきずなを否定するとか、あるいは夫婦ばらばらとか親子ばらばらというのは、結局のところ、こういう考え方を是とする者は、やはりどこかで共産主義というものと共通の、その人たちが全部共産主義の信者であるということは言わないけれども、共通の理念を持っておるというふうに私は思うのでございます。  だから、さっきの、法制審議会に対してやや疑念を私は持っておりますのは、例の、我々議員提案で、きょうの皆さんと同じように、ストックオプション等自社株の取得一規制緩和の法律提案いたしましたときに、この衆議院の法務委員会で、ついこの間でございますけれども、正森委員から辛らつな御批判を浴びだし、それから参議院に行きますと、また共産党の議員から辛らつな御批判を受けたわけでございます。そのときに、我々が経済界の手先であるようなことを言われたわけでございます。  なぜそうなのかというと、結局、我々が言っておることと経済界が言っていることの主張がどこかで共通の考え方であるから、これは、おまえは向こうの手先だ、こう言われるのでしょうけれども、そういうことで言うならば、法制審議会が言っていることと、あるいは日本共産党が言っていることが同じことがあれば、それは共通の理念で言っておるということになるわけでございまして、その辺はよくよく注意をしなければならないというふうに私は思うのでございます。  そこで、もう一つの話、親子の話でございます。  私は数年前に、踏切で子供が遊んでいるところに列車が走ってきて、そしてその母親が、子供が危ない、電車にはね飛ばされてしまうのを見て、その母親が踏切を乗り越えて線路に入ってきて、そして自分の子供を外に放り出して、自分はその電車にひかれて死んでしまったという記事を読んだわけでございます。世代がだんだんと変わってまいりますと、そういう親子のきずなというか、あるいは子供のために母が犠牲になるというふうなことはもうなくなったのではないかというふうに心配をしておりましたら、そういう親子の情、母と子のきずなというのはまことに自然な感情であって、みずからの命を犠牲にしても子供を救おうという崇高な気持ちというものは、世代が変わろうと時代が変わろうと、これは少しも変わらないのだということを見て、大変感動をいたしたわけでございます。  それとこの話はどういうふうに結びついていくかということでございますが、テレビのコマーシャルで、今もやっているかどうかわからないけれども、よく私が見たのは、食堂か何かに行って家族が食事をしておる。そのときに、突然お父さんが、自分の息子だったと思いますけれども、お父さんとお母さんのどっちが好き、こう聞くわけでございます。そのときに、子供は一瞬戸惑って、困ったような顔をして、そして、私は何々が好きと言って、そのコマーシャルの商品名を言ってちょんになるわけでございます。  最初にそれを見たときに、私は、一瞬、こういう質問を子供にする父親は本当に嫌な父親だな、配慮がないな、子供のことを思っていないなと思って聞いていて、最後に商品名をぽんと言ったから、思わずほっとしたわけでございます。  お父さんとお母さんのどっちをとるかというような質問ほど、子供にとって残酷なものはないわけでございます。子供が自分の意思で姓を、父親の姓をとるのか母親の姓をとるのかは、幾つですかね。(「十五です」と呼ぶ者あり)十五歳になったときに、子供たちは、おまえはお父さんの姓を名乗るか、それともお母さんの姓を名乗るか、どっちにするということを聞かれるわけでございます。この選択は、子供にとってまことに残酷なものだと私は思います。これは、これからお父さんとお母さんは離婚するのだけれども、おまえはお父さんと暮らすか、お母さんと暮らすかというふうに聞くのと、ほとんど同じ残酷さを持っているわけでございます。  私は別に生物学のことを言うわけではありませんけれども、母と父と両方があって、その生命は誕生しているわけでありますから、どちらか一つをとれというのはみずからの存在を否定することになるわけでございまして、こんなに悲しい、自分自身の存在を半ば否定してしまわなければいけないような選択を迫るというのは、これ以上残酷な話はないわけでございます。  夫婦別制度になりますと、この悲しい、残酷な選択子供に迫らなければいけない。どうしてそんなことをしなければならないのか。それは、お父さんが我慢をして、お母さんと同じ姓になるということになれば、子供はそんな残酷な選択をしなくても済むわけであります。お母さんがお父さんと同じ姓でもいいと言えば、そんな残酷な選択子供に強いなくてもいいわけであります。  これは要するに、我々日本人だけではなくて、あるいは人類と言わず、生物はすべて子孫のためにみずからを犠牲にするというのが本能であろう、種族維持本能というものはそういうものであろう、子供を犠牲にして、親が自分の満足に浸るというのは、これは種族維持の本能に逆らうことである、自然でないと思うわけでございます。  お父さんかお母さんか、どちらかが我慢をして、相手の姓になれば済むことを、そこで、私はどうしても旧姓でなくてはいけないということを言い募って、そのことによって子供につらい思いをさせるということになるわけでございます。  先ほどの、共産主義革命の直後に世の中が混乱をした、事実婚でもいいということにして混乱をした。事実婚の世界と夫婦別氏の世界は紙一重だと私は思います。  入っているのは戸籍だけであります。戸籍だけということは、何でそこで戸籍にこだわるのかといえば、それは私はよくわかりませんけれども、法的にそこに戸籍が入っているか入っていないかというのは、財産の分配のようなところに出てくる話であって、財産の分配についてのみは、これは法的な一体性を求め、しかし、事実として、世間に対しては、あたかもそれは別々の家族で、別々の個人であって、一体性はないのだということを主張するというのは、まことに不自然なことであろう。そしてまたそれは、そのことを今ここで認めれば、ロシア革命直後のソ連のような混乱に陥るであろうということを私は申し上げたいわけでございます。  申し上げたいことは山ほどあるわけでございますけれども、時間が参ったようなので、これだけは最後に申し上げておきますけれども、この民法の一部を改正する法律案は、主としてこれは法務省に責任があると私は思うし、法務省法制審議会の構成に大いに問題がある、イデオロギー的に問題があるというふうに私は思っておりますし、この法律は、全体として申し上げれば、簡単に一言で言えば、これは離婚促進法と言うべきなんだ、離婚促進法。離婚にかかわる規制を緩和するという法律でありますから、離婚促進法だと言わざるを得ないわけでございます。それは、そういう夫婦のきずなを簡単に切る、あるいは家族のきずなを切るということは、切ってみて、混乱をして初めてそこで後悔が出てくるわけでありまして、私は、このような問題提起、このような提案に対しては、我々は国民の代表として、六割が反対をしておる国民の代表としては、この法案については慎重な態度で臨むべきであるということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。
  17. 八代英太

    八代委員長 続いて、高市早苗君。
  18. 高市早苗

    高市委員 高市早苗でございます。  私は、高齢化、少子化、犯罪の低年齢化、こういった問題に悩む今の時代こそ、家族のきずなというのが大切な価値であり、家族や親族の助け合いによって福祉制度を補完したり、家庭の教育を充実したり、こういったことを図るべきだと考えております。したがって、すべての制度や法改正も家族のきずなを応援するものであるべきだと思っておりますので、民主党さんが出されました本案が、家族の一体性と連帯感、こういったものに影響を与え、我が国の家族と社会に取り返しのつかない影響と混乱をもたらすのではないかなというおそれ、これが払拭できない限りは賛同できません。特に、我が国社会の公序良俗として、夫婦親子同氏制の原則を変えることについては、今の時代を生きる者の責任として、よほど慎重でなければならないと考えるものでございます。そういった前提で、私のおそれを払拭するための御答弁を期待しております。  まず最初に、民主党案が可決、成立した場合の社会全体へのもろもろの影響について幾つか伺いたいのですが、まず、ずばり、夫婦別姓によって家族のきずなと言われるものに影響は出ますでしょうか。
  19. 枝野幸男

    枝野議員 御指摘のような、夫婦選択別姓導入されることによって、家族のきずなに影響があり得るのではないかという御指摘があることは十分に承知をしております。これについては、私どもはむしろ、いわゆる家族のいい意味でのきずなというものはプラス方向に働くのだろうと思っております。  といいますのは、形式、枠組みということで家族のきずなというものがつくられるものではありません。先ほどの太田先生のお話の中にもありましたように、まさに生物としての本質であったり、あるいは一緒に生活をしているというところから出てくる感情的な情であったり、まさに法や形式ではつくれないものが家族のきずなであると思っています。  そうした中で、従来の、夫婦同姓を強制されているという仕組みの中では、例えば、仕事上の都合、あるいは家族の環境などによって、同じ氏にすることがなかなか社会的な困難を伴う、あるいは社会生活上、例えば職業上不利益を伴うというような事情のためにやむなく同氏にしている、あるいは逆に、やむなく事実婚をしているというような家庭が現在急増をしているわけであります。そうした人たちが、もちろん、その人たちがすべて別姓制度ができたからといって別姓にすることにはならないでしょうし、一種の考え方によって、事実婚のままいく方もいらっしゃるかもしれませんが、そうした、本当は戸籍を一つにしたいのだけれども、今回氏強制のために事実婚をしている家族、あるいは逆に、本当は別氏にしたいのだけれども、別氏制度がないためにやむなく氏を変えている家族、そうした人たちに対する社会的なプレッシャーが少なくなるということは、むしろ家族のきずなを強める方向になっていくだろう。  そして、この別姓はあくまでも選択制で、強制をするものではございませんので、婚姻届を出そうという男女間において、別氏にすることで夫婦として共回生活体を円満にやっていくことがむしろいいと判断をされた男女間において別氏を選択するわけでありますから、その別氏を選択した夫婦においては、まさにそういった相互の尊重関係というものが維持されるわけでありますから、社会的なマイナスということはそれほど心配することではないと判断しております。
  20. 高市早苗

    高市委員 家族のきずなをむしろ強めるというお答え、非常に意外な感じがしました。そもそも別姓論というのは、個人の尊重、家族関係において、縦と横の縛り、こういったものを緩やかにする発想であったので、当然きずなというものに関しては緩めるのが目的だというお答えじゃないかなと思っておったのですけれども、次に進みます。  厚生省がゴールドプランで最も重視しているのが在宅介護なのでございますけれども、行き過ぎた個人の尊重というのが家庭の機能低下というものに結びつくのじゃないかという懸念がございます。夫婦で親の介護をし、福祉制度を補完していくという美風に悪影響が出ることがないかどうか。  それから、さっき太田委員からも話がございましたが、子供の養育への責任感、こういったものに本当に全く悪影響が出ないのかどうか。つまり、自立した女性の権利は守るけれども、高齢者や子供、それから主婦に冷たい制度になるのじゃないかという懸念の声も結構私は伺っております。この点について、全く子供の養育や高齢者の介護に影響が出ないかどうかということをお伺いしたいと思います。
  21. 石毛えい子

    石毛議員 前半の高齢者介護と夫婦のきずなという関係についてお答えさせていただきます。  現に今、高齢者核家族、高齢夫婦だけでお住まいの方というような家族の形態がどんどんふえておりまして、そして一新ゴールドプランが完成する二〇〇〇年におきましても、在宅介護で社会サービスの整備率は四割ということですから、高齢夫婦の介護の問題が残るというのは、これは政策的推移からいいましても事実だと思います。  そこで、別姓にする場合にきずなが壊れないかどうかということでございますけれども、北欧諸国などでは、高齢夫婦お二人で暮らしている場合に、介護の大変さを社会サービスが補完することによってむしろ夫と妻としての人間関係はうまくいくというような事実がよく知られるようになっております。よく、社会サービスを充実することがそれこそ家族の介護の実態を壊し、きずなを弱めないかという議論がされるわけですけれども、そういうことはないという社会的な現実が福祉先進国では見られるようになっております。  そこで、夫と妻が別姓でともに暮らして、そしてその高齢夫婦家族はどうなるかということになれば、それは今の団塊の世代の方たちが将来高齢期になったときがそのピークだと思いますから、その時期が来るのはまだ先で、私たちがそういう社会的なトレーニングを積んでいく期間はまだまだたくさんあると思いますけれども、要するに、男性と女性別姓を名乗ってともに暮らすことと、それから介護をするかしないかということは、相対的には直接的な関係があるというふうには私には受けとめられません。むしろ、別姓を名乗ろうと同姓であろうと、社会サービスが家族介護をサポートすることによって、家族の一体性、親和性は十分に維持されていく、こういうふうに考えております。
  22. 高市早苗

    高市委員 そのお答えで大体子供の問題に対してもわかりましたので結構でございますけれども、社会サービスの充実を前提としての議論というのは非常に無責任だと私は思います。  全く精神的に影響がないかどうかということを伺ったわけでございまして、例えば、私がだれかと結婚します。結婚した先の御両親と全く名字が違います。全く同じ名字の場合と名字が違う場合で、介護する、一緒に頑張って暮らしていくということに精神的に何の影響もないかどうかということをお伺いしました。短く御答弁ください。
  23. 石毛えい子

    石毛議員 先ほどの枝野議員のお答えの中にも、民主党提案しております選択制の別氏制ということでございますから、選択制を全部、社会的に一〇〇%そうするというように強制するものではありませんし、選択制の別氏を自分たちが意思して選ぶというときには、家族関係に関しては十分に話し合いがされていると思いますので、精神的には、親御さんの介護をするかどうかというのは、するかあるいはよそにゆだねるかも含めまして、合意を成り立たせて家族関係を結ぶと思いますので、おっしゃられたような心配はないというふうに考えます。
  24. 高市早苗

    高市委員 提案理由説明に「個人の尊重と男女の対等な関係」という文言がございました。現在、社会保障とか税制度、ほとんど家族単位のものが多いのですけれども、本当に独立だ、女性の自立だ、男女の平等である、個人の尊重だということでしたら、これらの制度も個人単位に切りかえていく発想をお持ちかどうかということを伺いたいのです。  例えば、アメリカの規制緩和論者というのは福祉も要らないと断一言するような人もおられますし、また、夫や夫の両親と別の姓を選択して家族関係の法的に縛られる縦横の関係を緩めたいということでしたら、例えば相続権や税制上の配偶者控除、こういったものも放棄すべきだと私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
  25. 枝野幸男

    枝野議員 私どもの提案が必ずしもそこにダイレクトにつながっていく話だとは私どもは認識をしておりません。もちろん私ども、個人の尊厳あるいは男女の対等な関係ということを提案理由とさせていただいております。そうした考え方の中から、例えば社会保障や税制について現行制度に対して見直す必要がないのかと言えば、そうではない、手直しをする部分があるのではないか。  例えば、これは私見でございますが、高市議員もそうでしょうけれども、私も、男女にかかわらず、税制上、社会保障上、配偶者のいる人間の方が大変有利で、配偶者がいない人間が非常に不利益をこうむっているという現状がございます。そうした中で、一生結婚しない男女が非常にふえているという不公平をどう解消するのかしないのか、かなり大きな議論があると思います。  そうした意味で、手直しをする必要がないとは全く考えておりませんが、しかし、今委員がおっしゃったような極端な話のところまで直接結びついている話だとは私ども考えておりません。
  26. 高市早苗

    高市委員 極端というか、権利と責任、こういったもののバランスの問題だと私は個人的に思っております。  影響ということで続けて伺いますが、夫婦、親子の間で姓が異なることによって、外部から、家族としての把握というのは今までよりは難しくなると思います、煩雑さというのは否めないなと思います。  例えば、民主党案が通過して、可決して、成立しますと、三種類の夫婦が登場しますね。別姓夫婦同姓夫婦、それから今までどおり原則同姓だけれども通称使用する夫婦、三種類の夫婦が出てきますので、戸籍事務とか徴税事務、それから保険事務とか郵便事業、こういったものへの面倒な影響がないかどうかということが一点。  それから、民主党さんの場合は公共事業縮減とか行財政改革に非常に熱心でいらっしゃいますので、この法案成立後、行政事務で新たにかかる県や国のコストについては当然試算をされていると思うのですが、どれぐらいコストがふえることになるでしょうか。  以上二点、お伺いします。
  27. 坂上富男

    坂上議員 私事で恐縮でございますが、私の家内は私の姓を名乗っているのです。それで、今度これが成立すると、一年以内に届け出ると別姓になれるそうだからどうだろう、こう相談をしました。そうしたら、嫌だよ、坂上という姓でいいよ、こういう話。私はまた、大変私にいわゆる好意を寄せてそういう話をしたのかと思ったら、考えてみたら、彼女が使っていたのは、生まれてから二十五年間、上村という姓なんですね、私の姓を使い出してからもう四十年近くになるのです。だから、これを変更するというのはなかなか勇気が要るのです。これはやはり人格権なんです、氏名権なんです。だものですから、そういう氏名権を結婚によって簡単に変えるということは大変な強要ということになるのじゃなかろうか。  それで、戸主制度というのがあったのですね、戸主は家族を守るという制度があった。これが新憲法になりましてから夫婦中心の制度になったのです。したがいまして、ちょっと御答弁申し上げたいのですが、そういうようなことでございますから、夫婦中心でございまして、やはり夫婦中心というのは愛を中心にして事が行われてくるのだろう。さっき答弁しましたとおり、これから結婚しようとする人が六割あるいは八割も別姓を望んでいるのです。だものでございまするから、私は、これからの別姓でございますから、行政上の影響は全くないのじゃなかろうか、こんなふうに思っておるわけでございますので、御理解賜りたいと思います。
  28. 高市早苗

    高市委員 行政上は何の影響もない、新たにかかるコストもないということですね。  では、例えば戸籍に記載する人手とか、いろいろな公文書を変更していく上でもコストは一切がからない、何の新たな行政事務的な面倒もないということですか。
  29. 坂上富男

    坂上議員 これからの話ですから、これはもう全然かかるわけじゃないのですね。結婚すればまたそれだけにいろいろ変更手続もあります、あるいは別姓なら別姓の手続、こういうことだけなんです。
  30. 高市早苗

    高市委員 これからの話でも新しいフォームを整える必要はあると思うのですが。では、コストとしては全くかからない、社会の煩雑さも、そういう意味では事務手続上全く影響がない、これが民主党さんの認識だということで伺っておきます。  それから、あと、別姓結婚というものと事実婚、いわゆる同棲ですね、これが外見上の区別がつきにくくなると思うのですけれども、これに対して懸念する声が幾つか出ております。  例えば、これまでのように社会的な体面を考えずに堂々と同棲できるようになるとか、それによって非嫡出子がふえるのではないかとか、アメリカのように離婚もしやすくなって子供が被害者になるのではないか、こういった懸念の声が、要は社会全体のモラル低下を心配する声がありますが、この点について全く悪い影響はないと言い切れますか。
  31. 枝野幸男

    枝野議員 若干、現行の事実婚制度について委員に誤解があるのではないかと思いますが、現行の事実婚制度は、いわゆる社会一般に言われている同棲と事実婚とは法律上明確に区別をされております。法律状態と同視できるような状況になったとき、事実婚として判例上認められているという状況にございます。  そうした事実婚関係にある方、あるいはそこには至らないけれども同棲をしている状況の方が、選択的別氏ができることによって婚姻届を出すかどうかということでありますが、逆に言うと、氏の問題がここで選択制が認められますと、婚姻届を出すことの法的な意味というものは、せいぜい言えば相続、あるいは逆に扶養義務が発生する、そういった部分にとどまります。そうした中で、わざわざ同棲の関係にある方が、事実婚にも至ってないような方が婚姻届を出すというようなことはちょっと考えにくい。むしろ、現在事実婚として非常に不便を強いられている方が、この制度ができることによって法律上の婚姻制度の枠組みの中に入ってこられる。そのことについて、法律制度をどう考えるかはいろいろな考え方があるとは思いますが、少なくとも、我が国の民法法律婚という制度を原則としている中では、法律婚にしたいのだけれどもできないで事実婚にしていた方が法律婚という制度を使えることになるということは、むしろ法秩序上プラスであると思っています。
  32. 高市早苗

    高市委員 民主党案の七百九十条、子の氏について書いたところについて伺います。  子の氏については、その出生時における父母協議で定めるということでありますけれども、今から申し上げるようなケースの場合どうするのかということにお答えいただきたいのです。  まず、父母がお互いに子供の姓をとり合って譲らないで協議が調わなかった場合、それから、出生時に夫婦がもう既に別居状態になっていて協議をすることができなかった、口もきかないという状況だった場合、いずれも子供の氏が長い間定まらずに宙に浮いてしまう可能性が出てくるわけで、そうなると、戸籍法第四十九条「出生の届出は、十四日以内にこれをしなければならない。」これを守ることが難しくなり、法的な安定が崩れるように思うのですが、いかがでしょうか。
  33. 枝野幸男

    枝野議員 今のような御指摘の問題というものは、この選択的夫婦別氏制が導入されることによって、そして私どもの案でクローズアップされておりますが、冷静にお考えをいただければ、現状でも、親権者である父と母が共同して名前届け出をすることになっています。夫婦の間で、名前について母親と父親で意見が違うことは、私は経験ございませんが、少なくないようでございますが、にもかかわらず、出生届のところへ名前が決まらなかったから出せないのだなんという例は、少なくとも社会的に問題になるような話として聞いたことはございません。  これは、もちろん絶対に一件もあり得ないかという話をされれば、十四日ぎりぎりになって決まらなくてもめるということはあり得ると思いますが、まさに社会の知恵そして人間の知恵として、従来、子供名前が一致をしないということで社会的な問題が生じていないのと同じような扱い方をすれば、氏についても問題はないと考えております。
  34. 高市早苗

    高市委員 同姓夫婦子供だったら出生と同時に少なくとも姓は決まっているわけでございますけれども、別姓夫婦の子は、協議の不成立というものがあればその姓すら定まらない可能性があるというのは、私は、法的に不安定かつ不均衡で、子の人権や福祉の観点から見ても好ましくない、全く影響がないとは言い切れない、このように考えております。  それから、七百九十一条の子供の姓の変更について書かれた部分を伺います。  民法七百九十一条の規定というのは、従来は、両親の離婚などによる身分行為、この結果生じたもので、子の姓はやむを得ず父または母の姓と一致させようというものでございます。しかし、別姓夫婦の場合の子の姓の変更は、親に何らの身分行為がないにもかかわらず、変更が認められる。これは、姓の安定性からいって問題があると思うのですけれども、いかがでしょうか。
  35. 枝野幸男

    枝野議員 従来は、原則として両親が同じ氏ということで、片方の親の氏から他方の親の氏に変えるということの必然性、必要性というものが生じるケースが考えられませんでしたので、そうした法的な措置がとられていなかった。七百九十一条で、子の氏の変更、しかも非常に要件を絞っております。そう簡単に、思いつきで変えられるような仕組みにはさせておりません。  これは、少なくとも私の個人的な見解からは、いわゆる戦前の意味での家制度というものは戦後なくなっているはずという建前はありますけれども、現実の問題として、例えば母方の実家の氏を孫に名乗らせたい云々などということで、実際に子供のうちの一人を途中で家族関係養子にするなどという形で母方の氏を名乗らせるとかというような必要性が出てきた場合に、従来であれば、そういった養子縁組などという形で氏を引き継がせるというようなことをやってきました。そういったような必要性が生じたときに、まさに不自然な形の養子縁組をしなくても氏を変えることができる。そういった特殊な、まさに社会的に見ても許容できるような事情が生じたときに限って裁判所などを関与させて変更するということでございますので、社会的な法的安定性には問題ないと考えております。
  36. 高市早苗

    高市委員 それで安心したのですが、それは、この法律によるともう絶対これは思いつきでは変えられないと。例えば、同姓夫婦子供だったら、生まれたときからお父さんお母さんの共通の姓がつくわけですね。  ところが、今回の場合は、子供は選べないにもかかわらず、どっちかの姓をつけられる、お父さんと違う姓か、お母さんと違う姓に、こうなってしまうわけです。これを成人してから、いや、お父さんの姓をつけられたけれども、お母さんの姓の方がいいというようなことで、家庭裁判所に申し出て変更することは絶対できないということでよろしいのですね。何らの身分行為の変更がないということでは、そういう変更はできないということでよろしいのですね。一言でお願いします。
  37. 枝野幸男

    枝野議員 七百九十一条は、対照表があれば見ていただければいいと思うのですが、「家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出る」ということで、従来どおり、父または母と氏を異にする場合というのは。そういったところに、今回ただし書きで、夫婦別氏の場合についてを書いています。そこに「特別の事情があるときでなければ、」という条文を入れ込んでおります。したがって、御懸念のようなことはあり得ません。
  38. 高市早苗

    高市委員 だってこれ、未成年者の場合は「特別の事情があるときでなければ、」と書いてあって、成年の場合はそういう文言が入ってないと思うのですが、違うでしょうか。
  39. 枝野幸男

    枝野議員 従来の柱書きの部分のところでも「子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出る」ということで、家庭裁判所が関与をします。さらに、未成年者については、今回の場合「特別の事情があるとき」ということで絞りを強くかけています。  ただ、例外的に、安易に変えることができるというか、裁判所の関与等要らない場合として、五項に、未成年の間に一度氏を改めた子供が成年に達したときから一年以内に届け出たときは、これは従前の氏に復することができるという例外だけ書いています。この例外があるということは、これ以外のところはそう簡単に変えられませんよということであります。
  40. 高市早苗

    高市委員 それを徹底していただけるのなら結構でございます。  離婚について伺いたいのですけれども、現行民法七百六十三条でも、夫婦合意のみによる届け出により離婚が成立するということでございますけれども、今回、有責主義に加えて、さらに破綻主義というものを導入されております。「夫婦が五年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしているとき。」という内容なのですけれども、例えば女性にとって、たとえ愛情が薄れて形骸化した婚姻関係であっても、これを維持する方が扶養や相続や年金その他扶養手当などの受給の面で経済的に有利である場合もありますけれども、この規定によりこれらの利益を失う人のケースについては、どうお考えでしょうか。
  41. 細川律夫

    ○細川(律)議員 今度の七百七十条の改正では、これまでは、いわゆる破綻主義を採用していたということに加えて、運用は消極的な破綻主義ということで、有責配偶者からは離婚請求は認められないということになっておりました。そこで、今回の改正は、今委員が言われたように、明確な破綻主義を採用いたします。  そこで、今御質問がありましたように、どうしても離婚をしたくないというようなお気持ちであったとしても、実際にもう婚姻生活が完全に破綻をしているような場合に、それをあえて法律的に結びつけておくということが果たしていいかどうか。むしろ、新しい世界をつくっていくという形の方がいいだろうと。ほかにも理由がありますけれども、そういうことで破綻主義をとりました。  委員の心配されるようなところについては、第二項で、いわゆる公平な見地から、いろいろ救済措置をとるということにしています。
  42. 高市早苗

    高市委員 そもそも、夫婦別姓を認めてほしいという要望は、主として女性の社会進出に伴う社会生活上の不都合から出てきたものと考えております。これは、婚姻による改姓から夫婦の一方が受ける社会的な不利益、煩わしさの解消というのが目的だったのです。したがって、民法上の夫婦親子同氏の原則、これの変革まで迫らないでも、もしこの不便の解消が図れるというのならば、その目的は達すると思うのですね。  既に民間企業なんかでオフィスネーム制度導入など自主的な取り組みをしているところもありますし、もちろん、頭のかたい社長さんがいてまだ三割ぐらいの会社しか通称使用を認めていないというようなケースに関しては、これからどんどん啓蒙もしていかなければいけませんが、公務員でも申し入れで給与明細とか納税、こういったものは旧姓で可能なのが現状でございます。ですから、働く女性の職業上の不便というのは、本来は職場の内部規定の問題で、民法という上位の法規範にかかわる問題ではないと私は思うのです。ただ、戸籍名と通称名の使い分けを行うときに、個人の識別とか同一性の確認というものが簡易に証明できる必要性、これが生じてきますので、民法七百五十条については改正せずに、戸籍法の十三条と七十四条の一部を改正して、通称使用をオーソライズする、これでこの七百五十条の部分については事足りると思うのですが、何で民法改正なのかということについてお聞かせいただきたいと思います。
  43. 枝野幸男

    枝野議員 通称使用論というのはいろいろな形で御主張があることについては認識をさせていただいていますが、まず、その通称使用をどこまで認めるのか、通称使用の範囲ということについてが一ついろいろと議論が分かれているのかなというふうに考えています。  例えば、いわゆる公文書的な部分のところについてまで認めるのかどうか。例えばパスポートですとかあるいは登記簿謄本に記載をする名前ですとか、こういったところも、例えば職業上の問題ということを考えますと、職業上使っている名前とパスポートあるいは登記簿謄本などに記載される名前との間に食い違いがあるということは、社会的な不便ということを解消することにはやはりならない。では、パスポートや登記簿謄本などに記載をする名称まで通称を使用することを認めるといった場合、その場合の戸籍名とは何なのだろうかということに逆に翻ってしまう。その場合に、両方使えるというようなことであった場合には、先ほど来委員が御指摘になっておりました、それこそ行政上のあるいは法的な安定性上の使い分けの問題、その行政処理の問題ということで、大変な負担といいますか、社会的な負荷がかかると考えています。むしろすっきりと選択別姓を認める方が、そういった問題を発生させないというふうに私どもは判断しております。
  44. 高市早苗

    高市委員 選択別姓をすっきりと認める方がと言われますけれども、この民主党案が通ったら、一体何と何と何と何にその通称名の使用が認められるのか、併記なのか単記なのか、そういったことも含めて全体像が見えてこないのです。私が申し上げた戸籍法の改正でも、通称を使うことをオーソライズできるわけです。パスポートなんか今でも十分それが可能でございますし、こういったことも一つずつの法整備でできることでございますから、この民法の七百五十条をぱんと変えたからといって何もかも一斉に行政事務手続が簡単に統一されるわけでも何でもないので、その辺、何をおっしゃっているのやらよくわかりませんが、時間が来てしまいましたので。  地方議会で、既に二百八十以上の市町村で夫婦別反対決議というのがなされております。もちろん御存じだと思いますけれども。私も含めて、選択制とはいえ、公序良俗の観点から望ましくないんじゃないかと考えている人が地方議会にも、それから私のような三十代の女性にもいること、これに御配慮をいただきまして、いま一度慎重な対応をお願いして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  45. 八代英太

    八代委員長 続きまして、横内正明君。
  46. 横内正明

    ○横内委員 自由民主党の横内正明でございます。  二人の同僚議員に続きまして、引き続き質問をさせていただきたいと思いますけれども、今までの二人の質問でかなり論点が出ておりますので、多少ダブりがありますけれども、確認の意味で、ダブりの質問も含めてさせていただきたいというふうに思います。  この夫婦別制度につきましては、我が自由民主党の中でも大激論があったわけでございます。現在もまだそれは続いているわけでございます。  ちょうど一年ぐらい前ですけれども、法務省からこの民法改正が我が党に提示をされた、そこから議論が始まったわけでございますけれども、我が党としては、自民党の中の法務部会、それからその法務部会に特に家族法小委員会という委員会を設けて、約一年間、二十回にわたって議論を重ねてまいりました。しかしながら、結果的に我が党として意見の集約を見るに至らなかったということでございます。  我々自民党の中にも、夫婦別姓に賛成するという議員は大勢おります。しかしながら、これに反対だという議員も、これは実に多数おるわけでございます。そして、さらに第三の範疇といたしまして、夫婦別姓に賛成という議論反対という議論が非常に激しい議論を戦わせていく中で、中間案と言ったら少し言葉が悪いのですけれども、夫婦同姓、ファミリーネームはやはり一つだ、しかし、女性婚姻によって生ずるいろいろな不都合というものを解消するために、通称使用公認したらどうか、これは旧姓使用公認案とかあるいは旧姓続称案というような名前になると思いますけれども、言葉は悪いですが、中間的な案というものが浮上をし、それが支持者を拡大してきているというのが現状でございまして、要するに、私ども自民党の中では意見が三分をしているということで、今通常国会ではこの集約ができなかったということでございます。  我々としては、これはもう社会制度の根幹にかかわる問題でありますから、党内で多数決で決めるとか、そんなような性格のものではありませんので、引き続き精力的に議論を続けて、何とか国民の大方が納得する案を模索していきたい、そういう努力をしたいというのが現在の我が党の姿勢でございます。  ところで、自民党の中で議論が三分をしているという状況は、実は国民議論もまた、国民世論も三分をしているということと、それを反映していると言ってよろしいかと思います。  先ほど来お話がありましたけれども、何回かこれについて世論調査がありました。一番最近の世論調査平成八年六月の世論調査でございます。家族法に関する世論調査、総理府の調査でございます。先ほど坂上先生からその数字の紹介がございましたけれども、もう一回申し上げますと、夫婦別姓に賛成する人は三二・五%、夫婦別姓に反対をする人は三九・八%、そして、中間案といいますか、夫婦同姓であるべきだけれども、婚姻前の旧姓を通称として認めるように法律的に措置をするという中間的な案が、これが二二・五%、こういうような状況でして、大体三分の一ぐらいに国民世論は三分をしているわけでございます。  そういった国民世論が三分をしている状況をそのまま反映して、我が党内もそういう状況になっている。聞くところによりますと、新進党さんも党内で大変に激しい議論があるようでございます。  そこで、幾つかお伺いをしたいのですけれども、最初太田委員が御指摘をされました。この夫婦別姓の賛成者というのは今言いましたように三二%ということで、遺憾ながら過半数には達していない、こういう状況でございます。こういう状況のもとでこの夫婦別姓を法律化をするというのは、その法律国民の意思を反映したものとは言えない。夫婦別姓を現在法律化をするというのは、過半数の賛成が得られていない現状ではまだやはり、遺憾ながら時期尚早と言わざるを得ないのではないかというふうに私は思いますけれども、この点について、提案者の御意見を伺いたいと思います。
  47. 石毛えい子

    石毛議員 お答えをさせていただきます。  先ほど太田先生からも御指摘のあった点でございますけれども、横内先生おっしゃられましたデータは、内閣総理大臣官房広報室、家族法に関する世論調査の結果を御紹介いただいたわけです。  確かに、「法律を改めてもかまわない」という回答は三二・五%で、過半数に達するという状況ではございません。しかし、これも太田先生との間で議論があった点でございますけれども、もう一度繰り返させていただきますと、この調査を子細に見ていきますと、二十代の男性では四七・七%、三十代の男性で四三・一%、二十代の女性で四三%、三十代の女性で四五%、過半数までとは言えないにせよ、主要な結婚年齢層にある若い人たちの選択的夫婦別姓への支持がほぼ過半に近いという、そこのところが私は大変注目されるというふうに受けとめております。  また、この調査では、「仕事上の不便に対する考え方」といたしまして、「不便を生じない方がよい」と答えた層で五一・七%が「法律を改めてもかまわない」ということで、どういう状況にあるかによって回答が過半を超えるという状況も出てきております。  それで、これは内閣総理大臣官房広報室の調査でございますけれども、一方新聞社がこの問題には大変大きな関心を寄せておりまして、九四年、先ほどの紹介調査の一年前の調査でございますけれども、朝日新聞社の調査では選択的夫婦別姓賛成五八%、反対三四%。これは質問の方法が少し違っているかと思いますけれども、趣旨とすれば同意というふうに受けとめます。それで賛成が六割に近い。また、九六年の毎日新聞社の調査では賛成五六%。それからまた、年代別のデータに戻りますが、九六年、共同通信の調査では、実に二十代男性の五八・三%、女性では七二・五%が選択的夫婦別姓賛成しているということでございます。  先ほど来の御議論で、太田先生が御指摘なさいました点ですけれども、若い年代に注目するのはいかがかという御指摘もございますけれども、主要に結婚該当年齢層が多いのは確かに若い世代であるわけですから、若い世代が氏を選ぶということに、あるいは変えるということに対してどういう意識を持っているかということはやはり大いに注目すべきだというふうに私は考えます。  そしてまた、この問題は高齢者の方々あるいは中高年者がどう受けとめているかということも無論軽視していい問題とは思いませんけれども、初婚もそうですし、再婚もそうですが、結婚をなさる方たちが別姓選択をしたいという気持ちを持っていて結婚届を出せないでいるという、婚姻の意思がありながら婚姻届を出せない方たちが現に今かなりおられる、つまり困っている人がいる、こういう現実に注目をすべきだというふうに考えております。  そして、そういう実例を私どもが受けとめてみれば、少し話は飛躍するかもしれませんけれども、今の若い人たちの未婚率が高くなっているという理由のすべてと言うつもりは全くございませんけれども、大切な重要な一つの理由としてこの結婚と姓を決めるということが相関しているということは申し上げても言い過ぎではないというふうに私は考えております。年代層平均とか、男女平等とかというふうに申しますけれども、実際に結婚によって女性の九七・四%が男性の姓に変えているという現実を見ますと、項目を並べて全部平等、平均というようなとらえ方はできないのではないか。繰り返しになりますが、結婚年齢層の方たちがどういう意識にあるかということを注目すべきというふうに考えます。
  48. 横内正明

    ○横内委員 今石毛先生から御説明がありましたが、多少コメントいたしますと、結婚年齢層の意識というのが大事だというのは、それは大事なのですけれども、しかし、この夫婦別姓をとられることによって影響するのは若い人だけではないわけですね。結婚する人だけではありません。それに伴う痛みは、むしろその親たちといいますか、そういう人たちに痛みが多いかもしれない。したがって、若い人たちの賛成が多いからその意見を重く受けとめるべきだとか、年寄りと若い人によって意見のウエートづけをするようなことは、これは私は、太田先生もさっき言っておりましたけれども、どうかなというふうに思います。  それから、幾つか新聞社の世論調査の御紹介がありましたけれども、どういう状況のもとで世論調査をやっているかわかりませんから具体的なコメントのしようもないのですけれども、総理府の世論調査というのは、これはバイアスがかからないように、誘導尋問にならないように統計学的に十分な検討をしてやられているものですから、やはりその信用度というのは、これは総理府の世論調査の方が高いと見るべきではないかというふうに思います。  それから、夫婦同姓であるがために、制度がそうであるがために結婚したいのにできない人がいる、あるいはそれが未婚率を高める原因になっているのではないかという指摘は、あるいはそういう事情の方々もおられるかもしれませんけれども、それが具体的にどのぐらいいるのか、その数字を出さないと、一、二の例をもってそれが全国に非常に多い例であるというふうにとらえることはまた間違いであって、それは具体的な数字があればお示しをいただきたいというふうに思います。御答弁はいいです。  次に、この夫婦別姓に反対をする人たちの意見というのは、論拠というのはいろいろあるわけでございますけれども、先ほど高市委員が指摘しましたように、夫婦別姓が採用されることによって家族のきずなが崩壊をする、そういうおそれがあるのではないかという懸念というか、おそれというか、それが夫婦別姓に反対する人たちの一番大きなポイントだろうというふうに思うわけでございます。  欧米は個人、個を主体とした社会ですけれども、我が国は家族というのが依然として重要な社会の単位としてウエートを持っているわけでございます。とりわけ今後高齢化が進展していくという中で、そういった家族のきずなとか連帯といったことがますます重要になってくるのではないか。そういう中で夫婦別姓が導入されれば、そういう家族のきずなとか連帯といったものが少なくとも強化されるよりは弱体化する方向に働くのではないかという懸念が夫婦別姓に反対をする方々の共通して心配をしている点だというふうに思うわけでございます。  それに対して、夫婦別姓に賛成する皆さんは、推進論者は、いや、そんなことはない、先ほど枝野委員からお話がちょっとありましたけれども、いや、それは、家族のきずなというのは、これは愛情の問題であって、愛情があれば別姓であったって家族のきずなというのはしっかりあるのである、逆に、愛情がなければ夫婦が同じ姓だってこれはばらばらになってしまうよというふうにお話しになるのだろうというふうに思います。ただ、ここのところはなかなか難しいところでして、しかし私は、人間の情の問題として、姓が違うとその家族に、何というのか、よそよそしさといいますか、そういうものがやはり出てくるのではないかと思うのですね。  実は、この間ある新聞の投書を見ておりました。そうしたら、多分これは五十代の主婦なのだと思うのですけれども、投書をしておりました。こんなことが書いてあるのですね。長い投書ですけれどもちょっと一部だけ読んでみますと、「一人息子が結婚した時、もし夫婦別姓を選択したとしたら」どうなるでしょうか。「ただでさえ嫁、しゅうとの関係は複雑なものなのに、嫁が別姓となると、両者の間にさらに深い溝をつくる結果となりはしないでしょうか。」こう言っているわけですね。  やはりお嫁さんというのは、ほかから来る、他人から始まるわけですけれども、姓が同じだということでそこに一体感というか連帯感というようなものが生まれてくるのだろうと思うのです。嫁さんの姓が別だということになると、どうもまだよそのうちの人だという感じになって、この人は本当に将来うちの家を守ってくれるのだろうか、場合によっては気に入らないことがあればぷいっとすぐ出ていってしまうのではないだろうか、そういう心配をするのだろうと思うのですね。それは、人間の情として、そういう可能性というのは確かにあるのではないかという気がするのですけれども、この点について御意見を聞かせていただきたいと思います。
  49. 松本惟子

    松本(惟)議員 お答えをいたします。  御心配の向きはわからないでもありません。しかし、前の方が答えましたように、社会や経済が大変大きく変わってきている。そして、その変化に伴って人間の物の考え方、つまりニーズも変化をしてきている。今の民法が改正されましたのは、御存じのように昭和二十二年でございました。その後、日本の社会というのは、高度経済成長を過ぎまして、女性も外に出て働くようになってきた。そちらの側からも、外に出て働くときに、通称だとか、名前が変わるということについては大変不便を生じているというような問題も出てきています。  私は、人と人との結びつきというのは心が大変大切だと思います。夫婦はもともと他人ですから、ずっとお互いがお互いを尊重しながら努力をし合っていかなきゃいけないんじゃないか。それをつなぐための制度というものも全く否定をするわけではありませんけれども、この制度に対して、一つではなくて、今申し上げましたような社会や経済の変化の中でもう少しニーズを広げてほしいというのが選択的な夫婦別姓の要求であるというふうに思います。  したがって、例えば、同じ姓を名乗っているから夫婦の心が向き合っているかというと、昨今伝えられていますように、さまざまな要因が、これは二人の関係だけ、家庭の中の環境だけではなく、社会的なさまざまな環境もあります。離婚の原因のワーストワンは夫の暴力というのが統計的に出ていますし、二つ目は、外での男女関係といいますか、こういったものとか、性格の不一致とか、こういうものがワーストスリーで出ていたりしています。  ですから、私は、人間の関係というのは、あくまでも、特に夫婦はお互いがお互いを認め合って尊重していける関係を生涯にわたってどのように努力し合いつくり上げていくかということでありますので、同姓であればこれがばらけないということにはならないんじゃないかと思います。  ですから、今までのようにどちらかの氏を名乗らなければならないということに対して、いや、それは不便であるというニーズが出てきているわけですから、二十一世紀に向かっては選択の幅を広げてほしいという思いで私どもが提案をしております民法の改正であるということを申し上げたいと思います。
  50. 横内正明

    ○横内委員 次に、三点目ですけれども、私は、この平成八年の世論調査の結果というのがこの問題についての一つの解決の方向を示唆しているのではないかと思っております。先ほどもあれしましたように、別姓賛成の方が三二%で、反対の方が約四〇%で、中間的な意見というのは二二%あるわけなんですね。  この中間的な意見というのは、先ほど枝野さんがおっしゃったようにいろいろ人によって多少違うのですけれども、大筋で言うと、家族同姓だ、やはりファミリーネームは一つだ。しかし、一つなんだけれども、女性が結婚することによっていろいろなマイナスが生ずる、それはやはり何とかしてやらなきゃいかぬじゃないか。したがって、そういう方には、ファミリーネームは一つだけれども、旧姓を通称として、パスポートとかそういう公的な場面で使用できるようにしてやるというのがこの中間的な案だろうと思うのです。  これはかなり常識的な意見じゃないか、バランスのとれた考え方ではないかというふうに私は思っているわけでございます。太田委員も大体この意見だと言っておられました。  こういう旧姓称私案というか旧姓使用公認案というか、こういうものについて、枝野さんは先ほど多少見解を述べておられましたけれども、もう一度、どうお考えになるか、御説明いただきたいと思います。
  51. 枝野幸男

    枝野議員 繰り返しになるかもしれませんけれども、私は、女性を中心とする、女性だけに限りませんけれども、婚姻時に名前が変わることの不利益の解消以外の理由も選択的夫婦別姓を推進している根拠としてございますので、個人的にはいろいろな思いがございますが、その部分を解消する方法として一つの見識であるし、例えば自民党内でもそういったことで御尽力をされていることについては敬意を表したいと思いますが、やはり、実際に通称使用というやり方によって問題が解決できるのかどうか、そのことによるコストはどうなるのかということを考えますと、戸籍名があり、それと同時に戸籍名とほとんど同じように使える通称がある。そうすると、公的な同一性の確認のようなことはどちらの名前でするのか、あるいは両方常に併記をするのか、非常に悩ましい問題になってくると思います。特に、併記をする場合には、まさに通称使用をする人にだけ一人の人間に二つの名前ができる。かなりの混乱が予想されるのではないかということを考えますと、なかなか実際問題として実現をしていくのは困難ではないかというふうに考えています。
  52. 横内正明

    ○横内委員 今の点についても幾つか意見があるのですが、時間の関係で先に進みます。  これは先ほど太田委員が指摘をしたことですけれども、そもそもこの問題は最初にちょっとボタンをかけ違ったんじゃないかと私は思っております。この議論法制審議会という場で議論をして一定の結論を出したというのは、やはりそこはまずかったのではないかというふうに思っております。  法制審議会は、太田委員が言っておられるように国民世論を反映していない。そこに少しバイアスがあるんじゃないか。偏向というかそういうものがあるということもありますけれども、それより何より、法制審議会というのは、そのほとんどの方が法曹関係者、法律関係者であるわけでございます。しかし、この家族制度、社会制度の根幹にかかわるような話は、やはり法律関係者だけで議論をするのは偏りが出てくるのではないか。歴史とか民俗学とか社会学とか心理学とか、石毛先生のような介護の専門家とか、そういう幅広い社会のいろいろな有識者が集まって議論をする中で一定の方向を出していくべきものではないかと思います。とりわけこういう国論というか世論が分かれている重要な問題については、例えば脳死臨調もそうですし、首都機能移転調査会というものもありますけれども、そういう重要な問題についてはそういう場を設けて議論をしている例は幾つもあるわけですね。  これは決して自民党としてというわけではありませんが、私個人の意見としては、やはりそういう非常に幅広い有識者を集めた議論の場をつくって、そこでじっくり議論をする、それをオープンにやる、その中で国民のコンセンサスを形成していく、そういう方法でやった方がいいのじゃないかという気が個人的にはしております。  そういうやり方について、提案者として御意見があれば承りたいと思います。
  53. 坂上富男

    坂上議員 横内先生とおつき合いをさせていただいておりまして、大変深い見識に裏打ちされました大変常識的な発言を常にされておりますことに、私は常日ごろ敬意を表しているものでございます。まさにそういう上に立った発言だと理解をしておるわけでございます。  そこで、今回私たちの法案についての審議をお願いするに当たりましても、特に横内先生からお世話になったわけでございますが、私は、この問題は、脳死臨調以上に全国民にかかわる問題、全家庭にかかわる問題、全夫婦にかかわる問題、そして子供たちすべてにかかわる問題、まさに国民全体にかかわる問題であるから、本日の審議もできるだけたくさん時間をとっていただきたい。それから十三日の参考人の御意見も、反対二人、賛成二人より以上に、もっとあらゆる階層からも、東京の中央でまずやってもらう、それから全国津々浦々まで、それはなかなか容易じゃないですから四カ所ぐらい差し当たりやってみることが、意見を聞くことが大事なんじゃなかろうかということを提案をさせてもらったのでございますが、何しろ会期末でもございますので、皆様方に本当にぎりぎりの選択をいただきまして、きょうと十三日に御審議いただいておる。これも提案者としては非常に感謝をいたしておるところでございます。  先生が御提案になっております点は私、大賛成でございます。もちろん私たちはこの法案を成立させてほしいのでございますが、なかなか議論のあることも私は承知しております。したがいまして、あるいはこの国会で廃案になるかもしれません。しかし、私たちの法に続きまして、社ささんから参議院に出ました。それから新進党さんの有志の皆様方からも選択的夫婦別姓について推進するという立場から出たわけでございます。一部違う点がございますが、これはまたできるだけ私は調整をして、今度の臨時国会になったら共同提案というようなやり方でやれればなおうれしいがなということを今実は感じておるわけでございます。  そしてまた、自民党さんの方も、旧姓継続制度案を提出されるのなら、ぜひまたこれは出していただいて、本当に国民的な議論をひとつこの国会の中でさせていただいて、どういうふうなことをしたら、国民として家庭生活の上においてどちらがいいかということを選択できるんじゃなかろうか、こう思っておりますので、ぜひとも御協力賜りますことをお願いいたしまして、大変貴重な御意見であることを承らせていただきます。  それからいま一つ、さっき申しました高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所の所長さんに質問をしたところが、これが六四の賛成、一五は今のままでいいじゃないか、こういうこと。これは、私さっきも申したのですが、裁判官だから、一般の人と接触がないものだからこうなったんだろうか、あるいは、いろいろこうやって裁判をやって、このことがやはり国民生活の上で、家庭裁判をやったり、また、ほかの一般裁判をやったり、刑事事件をやったりして、この方がいいんじゃなかろうかといって裁判所の所長さんらが選択なさったんだろうか、非常に私は目の覚める思いでこれを見て、夫婦別姓について自後、大変注目をさせていただいた。毎年毎年、世論調査別姓の方に傾いておる、これも非常に貴重な意見なんじゃなかろうか、私はこう思っておるわけでございますので、ぜひひとつ御指導賜りますこともお願いをいたしたいと思います。ありがとうございました。
  54. 横内正明

    ○横内委員 時間がなくなってまいりましたので、最後に一点、この夫婦別姓を採用したとしたときの子供の氏の問題について、先ほど太田委員から話がありましたように、この民主党案は法制審の案と異なっているわけでございます。この点については、これはなかなかやはり、いろいろ問題があるのではないかなというふうに思っております。  御見の案は、子供によって姓は父親の姓でも母親の姓でもばらばらでいい、それは生まれたときに父母協議をして決めるんだということになっているわけでございますが、どうもこれはいろんな意味で混乱を助長するのではないかと思います。そもそもが夫婦別姓というのは、例えば三世代同居なんかになってきますと、例えばおじいさんとおばあさんの姓が違って、今度はお父さんとお母さんの姓が違って、それでさらにまた子供の姓がばらばらだ、こういうことになるわけでして、口の悪い亀井静香建設大臣は、何だ、これはアパートの入居者の表札みたいな家族制度じゃないか、こういうのは反対だということを言いましたけれども、どうもそういうことになるわけですね。非常に混乱をするのではないか。  時間がありませんから二つ伺いますが、一つは、法制審と違う制度民主党として提案なさるのはなぜかということと、それから、平成八年の世論調査では、子供名前というのは別々でいいよというのは、賛成者は九・五%で、やはり子供の名字というのはみんな同じにすべきだというのが七二・五%と圧倒的に多いわけでございますが、この点についてどうお考えになるか、お答えいただきたいと思います。
  55. 枝野幸男

    枝野議員 わざわざ法制審とあえて違う案にさせていただいた理由でございますが、これは一つ消極面の方の理由から申し上げますと、現実に婚姻届を出す男女、必ずしも子供を産むことを前提としていない関係も少ないわけではありません。特に、例えば肉体的な問題で、お子さんを産みたいけれども産むことのできない男女関係婚姻届を出すというケースも現実に存在をいたします。そうした方に、婚姻届を出すに当たって、子供が生まれたらどういう氏にするのか届けなさいというのは、これは人の道に外れるのではないかという消極面のまず発想がございました。  その上で、今委員から御指摘のあったような、では、子供の氏を出生時に決めることによる弊害というものはどうだろうかということを見ていきましたときに、これはそれほど実は問題ではないだろう。現実の問題として、例えば従来の制度の中でも、お子さんが二人生まれたら二人目の子供を、今の日本の社会で一般的に多いのは、母方の実家の養子にして母方の氏を継がせて兄弟違う氏を名乗っているというケースというのは皆無ではありませんし、そういった家庭だから特別トラブルがあるというか、あるいはその子供の福祉のために特別悪いかというような話は聞いたことがございません。それは、それぞれの家庭の事情によって、特に夫婦の間で親同士がしっかりとした見識と合意に基づいて教育、子育てをしていくという中では、子供の氏がばらばらであったとしても、そのことによるデメリットというものはむしろ乗り越えることができるというふうな考えがございまして、こういった考え方を出させていただきました。  そして、世論調査の結果との兼ね合いでございますが、これは従来からも他の提案者からもお答えをさせていただく話と実は重なる話でありますが、私どもは、この選択別姓あるいは子の氏の名前の問題というものは、少数意見を持った者の人権の問題というふうにとらえさせていただいています。  御承知のとおり、世の中、民主主義は多数決と言われておりますが、すべてが多数決ではございません。極端なことを言えば、例えばサリン事件の犯人などというのは、国民世論的には、裁判なんかやらないでさっさと終わらせて死刑にしろというのは、国民感情といえば国民感情なのだろうと思いますが、しかし、民主主義というものは、法律的な手続をきちんと踏まなければ刑罰は処せない、多数決では侵害できないものというものは立憲国家ではある。  そういった観点から、今の制度の中における同姓を強制させることによる少数者の利益の侵害ということを考えたときには、むしろ、そういった侵害を選択を認めるという形で許容していくという人権的な観点からいく問題については、必ずしも多数決だけで断じ切れるものではないという観点に立たせていただいています。
  56. 横内正明

    ○横内委員 今の点について、父母のその協議に余り問題が起こらないんじゃないかとおっしゃるんですが、夫婦別姓を選択する御夫婦というのは、やはり自分の姓にそれなりの思い入れがあるから別姓選択するわけですから、やはり自分の子供を自分の姓にしたいというこの意見の食い違いというのは、通常よりも起こる可能性が高いんじゃないか。しかし、さらに離婚をしたりとか別居したりというような状態のときには、なかなかその協議が調わぬというようなことは大いにあり得ることではないかというふうに思います。  時間が参りました。いろいろとお聞かせをいただいてありがとうございました。我が党としても、冒頭申し述べましたように、現在、党内の意見が三分をしている状況でありますけれども、この問題について、引き続き国民のコンセンサスが得られるように党内議論を深めていきたいというふうに思っているわけでございます。ありがとうございました。
  57. 八代英太

    八代委員長 続きまして、山中燁子君
  58. 山中あき子

    山中(燁)委員 新進党の山中燁子でございます。  選択的夫婦別姓制の導入に関しまして、基本的に賛成でございます。ただ、幾つか問題点がございますので、その辺も含めましてきょうは質問させていただきたいと思います。  まず、質問の前に、実はきのう、ちょっとこれは通告以外のことでございますが、ある外国人の外交官の方から質問を受けました。土曜日の官邸での記者団との会見の中で橋本総理大臣が、フランスは女性閣僚が非常にたくさんこのたび登用されたけれども、日本はどういうことか、そういう質問の御回答の中で、冒頭のところだけちょっと申し上げますと、これは日本の女性の人たちがなかなか限られた進歩しかしないのは女性同士の助け合いが不足しているという一面がある、そのことが大きく出ました。  いろいろ考え方はあると思いますが、意識の問題だけではなくて、制度の上できちんと女性が対等に暮らせる、そういうところまでまだいっていない点ということも含めて、私は意識の面から申し上げると、総理大臣には大変失礼ですけれども、その総理大臣の認識は訂正していただきたいというふうに思っております。ちょっとこれはひとつ、どうしてもきょう皆様に御披露したいと思いました。  それでは、質問に入らせていただきます。  法制審議会からきちんとした答申が出ましたのが九六年二月でございますけれども、そのときに長尾法務大臣は、   これからの新しい時代というものを考えてみ  ますときに、今既にもう始まっているかと思い  ますが、やはり個人にとりまして多様な生き方  を選択する、そういうことを認めていく、こう  いう時代に私たちは入りつつあるのではないか  という気がいたしております。ということをおっしゃっております。しかし、残念ながら、今のところ、まだこの法制審議会からのきちんとした法案というものが提出されておりません。それは一体どういう理由なのかということについては、いろいろな御意見があるということをお聞きしておりますが、後ほどちょっと触れさせていただきたいと思います。  それでは、民主党提案なさっています民主党案について、質問をさせていただきたいというふうに思います。  その前に、家族法に関する世論調査というのが、先ほどからいろいろ皆様から御紹介があると思いますけれども、総理府の九六年六月の調査です。  氏が違っても家族の一体感には影響ないと思うという、この点につきまして、平均をいたしますと四八・七%でございますが、二十から二十九、三十から三十九、四十から四十九、つまり戦後生まれの五十歳以下の人たちでは、男性も女性も両方とも五〇%を超えている。ですから、六十代以上の方と合わせてみると半数にいっておりませんけれども、これから結婚をする、二十一世紀に活躍をする人たちの意識というのをきちっと認識することが大切だと思います。  氏を変えたくないという理由で正式な夫婦となる届け出をしない、つまり内縁の夫婦もいるのではないかと答えた人たちの中に、正式の夫婦と変わらないという意識で暮らせるかという点に関しまして、二十歳から二十九歳の男性では七八%、女性では七六・七%。三十から三十九では女性は何と八〇・一%がそういうふうな意識で暮らせるということを言っています。ですから、逆に、こういうふうな選択をしない場合に、正式の夫婦とならないという人たちがふえてくる、そういうことを読み取ることができます。  それから、選択的夫婦別姓制度に関しましては、これは何度も皆様から多分御紹介があったと思いますが、九四年に二七・四%、九六年は三二・五%。これもやはり男性女性ともに二十代から四十代までというのが、パーセンテージで見ますと、反対するよりもふえています。しかし、五十代、六十代以上になりますと、男性は七一%、女性も五九・六%。これは世代間の差が非常に浮き彫りにされているというふうに思います。  改姓が、姓を変えることで何らかの不便があるというふうに答えた人の中で、仕事の上で不都合を生じない方がいいのではないかというのは、総数で五九・三%を占めております。  ただし、子供の名字については、子供同士の名字は同じにすべきというのが六五%から七七%というふうに出ております。  さて、それでは民主党の案について御質問をさせていただきますが、きょうは焦点を絞りまして、子供の姓についてということと離婚について、この点についてお尋ねさせていただきます。  まず、夫婦別姓になった場合は、戸籍上どのようにするのでしょうか。
  59. 枝野幸男

    枝野議員 私どもは戸籍法そのものは提案をさせていただいておりません。これは、まさに行政事務と直接結びつく話でございますので、実体法ができ上がった場合に、それに合わせて行政手続的な面を詰めていただく必要があるだろうと考えています。  ただ、基本的には、このことと連動して、例えば戸籍制度の根本を変えなければならないとか、変わるとかということには必ずしもリンクはしていかない。従来の書き方は、普通は筆頭者のところに氏もつけてあって、ほかの方は名だけてありますが、そこの全員のところに氏と名と両方書くということが基本的にはオーソドックスで、最低限それだけはしなければならないという認識だけは持っております。
  60. 山中あき子

    山中(燁)委員 なぜお聞きしたかと申しますと、ちょっと個人的なことで恐縮でございますけれども、実は私は夫の姓に入っておりまして、夫の本籍地は千葉でございます。私は北海道の出身で、親の本籍地は北海道にあります。あるとき新聞で千葉県出身というふうに書かれました。えっ、私は千葉県の出身ではないのにどうしたのだろうと思いましたら、調べて本籍地を書いて、新聞の方で確認をして出した。それは間違いではないわけですが、私自身の出身は違うわけです。皆さん、ああ結婚して北海道にいらしたんですかというふうにおっしゃるわけです。戸籍上どういうふうに登録をするのか、記載するのかという点もいろいろ問題があると思いますし、解決の方法も見つけなければいけません。きょうのこの提案の中にもちろんございませんけれども、これから進める上でひとつぜひ配慮の中に入れておいていただきたいと思います。  子供の姓についてでございますけれども、出生時に決められない場合はどういうふうに解決するというお考えでいらっしゃいますか。
  61. 枝野幸男

    枝野議員 先ほどもお答えさせていただきましたが、基本的に出生時に決められないということを想定しておりません。それは、法的に不備ではないかという御指摘もあるかもしれませんが、現行法上も、名前の方も決められないことは理論上あり得るわけでありますが、名前の方を決められなかったということで問題が生じたということは聞いておりません。  基本的には、氏と名とセットで決める。むしろ、氏の方が問題の発生する可能性は少ないだろう。というのは、別氏夫婦選択して婚姻届を出すときには、将来子供が生まれたらこういう順番でこうしようねとか、あるいは男の子だったらこうしようね、女の子だったらこうしようねとかということを、むしろ子供を産むことを想定しながら別氏夫婦婚姻届を出す場合には、むしろそれが自然だろう、普通だろうというふうな認識をしております。そして、なおかつ、それでももちろん理論上は決められないというケースが出てくることはあり得ます。  その場合、決められないものは何かというと、実は名前、氏だけではなくて、親権はどちらが持つのか、監護権はどちらが持つのかという、名前の問題に限らない、子供をまさにとり合うという全体の話になります。その全体論の中で、家庭裁判所が介入をせざるを得ない。家庭裁判所が親権の所在、監護権の所在を含めて決めていくことにならざるを得ないというところで、いずれにしろそこまでやらなければ、氏だけ解決することもできませんし、そういった中でむしろ解決できるというふうな考え方をしています。
  62. 山中あき子

    山中(燁)委員 大変失礼かもしれませんが、決められない状況ということを想定しないというのは、少し甘いのではないかと私は思っております。と申しますのは、例えばヨーロッパ各地は夫婦別姓を導入しております。ドイツの場合には、両親の決定ということが当然あるわけですが、一人の子供で決めたら他の子供も全部同じ名字になるということが法律で決まっています。そして、父母が子の出生から一カ月以内に名字を定められないときには、後見の裁判所というものが決まっておりまして、父母の一方に、あなたが決めていいですよという裁判所の決定権が付与されます。それで、その与えられた方の親が決めるというところまで、そういう場合にどう対処するかが、御存じかと思いますが、法律にきちんと載っております。  北欧の場合、これはデンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドですが、所定の期間、これは国によって違います。スウェーデンの場合ですと、例えば二カ月以内に決められない場合、届けない場合には、母親の姓になるというふうに一応法律で決めてあります。また、カナダの場合には、意見が一致しない場合には、一、一とありまして、一、両親が同一の姓を有する場合、たまたまそういう場合には両親の姓、これは問題がないわけです。二番、両親が異なる姓を有するときには、両親の姓をアルファベット順にハイフンで結んだ姓または両方合わせて一つにした姓にするというふうに決まっておりますが、日本のミドルネームのない社会でこれは適用しにくいというふうに思います。  それからすぐお隣の韓国の場合には、子供は父の姓で、父の家に入籍するのだと。韓国の場合には、婚姻の場合に、先祖からの出身地の同姓の人との結婚を禁止するというようなことがあって、姓が異なっているのですよというのをきちんと見せるということもあって、これは夫婦別姓という歴史的なことがありますので、今論議されている別姓とは全く違った成り立ちになっておりますし、中国の場合には、女の子は名前がありませんでしたから、だれだれさんの娘がだれだれさんと結婚したということで、その夫の方の姓に、妻の父親のその子供というような、そういった形になるわけで、別々に出てきているというのはいろいろな成り立ちがあります。  私は、ただいまのようないろいろな国の、かなり意識の上では開けているという国であっても決められないということが現実に想定されて、しかもその国その国でいろいろ工夫しているのですが、これはやはり法に定めるべきだというふうに私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
  63. 枝野幸男

    枝野議員 御指摘の御調もごもっともだと思いますし、私どもは私どもの出した案を全部一言たりとも変えずに通してくださいという考え方ではございませんので、もちろん私どもも検討させていただきますし、ぜひ具体的にこういうやり方がいいのじゃないかというような御提言もどんどんいただければと思っています。  ただ、私どもも、では全く決められないときは放置されるのかといえば、そうではなくて、例えば戸籍上の夫婦である状況のままで子供出生届も出せないような状況が継続する場合には、例えば親権を喪失させる手続を家庭裁判所でやった上で後見人を設けてということは、氏の問題として限定をしてやらなくても、まさに親権そのものの行使がそういった両親に適切なのかどうかという全体の枠組みの中で氏の問題も解決できるような仕組みというのは現行法の中でも整備をされている。そこに吸収される中で解決を図れるのではないかというような考え方を持っておりますが、御提言の趣旨も踏まえて私どもも検討したいと思います。
  64. 山中あき子

    山中(燁)委員 関連してなのですが、例えば結婚するときに、もう既に一応姓を決めるということに関して先ほどもお答えがあったと思いますけれども、子供が生まれないかもしれない、そのときに姓を決めるのは非常に心理的に影響があるのではないかということはおっしゃいましたが、そのほかに矛盾点といいますか、それを採用できない理由というのはまだありますでしょうか。
  65. 枝野幸男

    枝野議員 まさに今申し上げた点が最大のポイントでありますが、例えば子供が生まれたとき、出生時のときに決めておかないと氏が決められないじゃないかという話の全く裏返しの話として、婚姻届を出したときの男女間の認識と、実は妊娠をして子供が生まれるまでの間にその夫婦関係がこじれてしまって破綻をしてしまったような状況のときに、夫婦関係がうまくいくことを前提として考えていた子供の氏というものと、破綻をしてしまって、例えば離婚出生の時点ではしていた場合にどうするかとか、あるいは事実上の離婚状態になっているときに出生届のときに決めた氏でいいのかどうかという問題は、いずれにしても出てくるのだろう。出生のときに夫婦関係がうまくいっていなければ、そういった問題はどちらのものについても生じてきますが、それについては、決めておく場合のトラブルというのはやはり避けられないだろうと思います。
  66. 山中あき子

    山中(燁)委員 私は法律家ではございませんけれども、もし離婚に至れば、それは離婚したときの氏の名前になるわけですから、そうなってしまったときは問題ありませんけれども、おっしゃったように、別居をするとかいろいろこじれた場合に、それこそ生まれてくるときにそこでもう話し合いができない状況というのが起こり得るのではないか。ですから、生まれて決めるということのちょっとリスクを私自身は感じておりますが、成人したときには自分の姓を選択できるというふうに解釈してよろしいのでしょうか、子供がですが。
  67. 枝野幸男

    枝野議員 条文では、七百九十一条のところで、子供が未成年者のときは特別の事情があるときでなければ氏の変更はできないと。  ただ、未成年でない場合については、その特別な事情というものは要求されませんが、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出なければなりません。したがって、家庭裁判所の許可が必要になります。この場合には、気まぐれで変えちゃだめですよというようなことの後見的な作用は家庭裁判所は行えますので、自由に変えられるかということについては自由ではないというべきなのかもしれませんが、ある変える権利は持っている。  それから、あえて若干例外的な話として、成年に至るまでの間に、子供が十五歳未満の間、つまり親権者が親権者の都合で裁判所の手続をとって氏を変更しているような場合については、成年になってから一年以内に届け出だけでこれはもとに戻すことができます。
  68. 山中あき子

    山中(燁)委員 その件に関しましては、私は一〇〇%これがいいというふうなものは難しいとは思いますけれども、やはりいろいろなことを考えまして、生まれる前にとりあえず姓を決めておいて、子供が十八歳になったときに本人の意思によって選択できるということをきちっとうたって、そしてその手続もうたうということによって、生まれる子供は自分の意思というのはまだないわけですが、十八歳になりまして、まあ二十というのは一つの成人ということですが、現実に社会の中で、十八歳、高校を卒業して、就職をする、あるいは大学に入る。いろいろな節目としてそのときから後に姓を変えるということは、男の子にとっても女の子にとっても結構やはり社会的な、女性が姓を変えると同じような、若いですけれどもやはりいろいろな不利益、不便が伴いますので、私はスウェーデンの方式のをひとつ採用するとすれば、十八歳になったときに、先ほど申し上げましたように決められない場合は自動的にという形になっておりますが、十八歳になったときに姓が自分で、その意思で選択して、このままでよければそのままでいいし、変えたいと思うときには子供選択できるということをひとつ提案させていただきたいと思います。  それでは、次の離婚の問題に移らせていただきます。  五年間の別居をしてというのがかなり大きな流れにはなっておりますが、この場合に、現行の法制上の形と、男性と女性とどちらが現実に不利益を受けるという御認識でいらっしゃいますか。
  69. 細川律夫

    ○細川(律)議員 大変具体的な質問をされましたけれども、これは五年間別居をすれば、そういう客観的事実があれば離婚ができるということでございますから、特に女性、男性どちらに有利になる、あるいは不利になるというふうには考えませんけれども、しかし、実際に男性の方が勝手な振る舞いをしてこういう事態になるというようなことも多々あるというふうに思います。したがって、そういうことに備えまして、この七百七十条の二項も改正をいたしまして、そこに過酷条項あるいは信義条項というものを入れまして、そういう場合に女性に不利にならないように、そういうような配慮をして改正をするつもりでございます。
  70. 山中あき子

    山中(燁)委員 御趣旨はわかりますけれども、現在の実際の裁判になっているケース、それからどういう状況に置かれているかというようなケースを見てみますと、やはり一定期間の共回生活の後、そのときの不存在を離婚の理由にする場合に、その原因について責任のある方が離婚を申し立てるということが大いにあり得るわけですから。  そうしますと、今のように、例えばそのときの子供に対する責任であるとか、あるいは財産をどうするかというようなことに対するかなり突っ込んだ、きちんとした法制が補完されませんと、一応趣旨はわかりますけれどもという程度であれば、現実には女性の方が不利益を受けることが多いのではないかというふうに私は思っています。  ですから、欧米のように破綻主義ということを明確化するというのにはもう少し慎重にいろいろ検討して、先ほどおっしゃった条件をもう少しきちんと整備するということの御考慮の余地はありますでしょうか。
  71. 細川律夫

    ○細川(律)議員 その点もいろいろ考慮いたしまして、私どもの改正案では、七百六十八条の離婚の場合の財産分与につきまして第三項でこれを全面的に改正をいたしまして、特に財産分与についての清算的要素あるいは慰謝料的要素、そういうのを含めまして、女性が特に不利にならないような形での財産分与の規定を細かく規定をいたしまして、そこで救済ができるようにしたつもりであります。
  72. 山中あき子

    山中(燁)委員 私自身の個人的な考え方としては、もう少しそこのところをきちんと担保する形に深めていく議論をしていただければいいのではないかというふうに思っております。  民主党案に関しましての質問というのは大きく言ってその二点でございますが、先ほどから、あるいは新聞報道等で、家族のきずなということ、家族関係ということが姓を変えることによって危機に瀕するのではないかということが議論されておりますので、ちょっとその辺も、もしかしたら法務省が出すのにまた一つのネックになっているというようにも聞いておりますので、その辺についてちょっと御議論したいと思います。  総理府で調査しております「日本の青年」というのがあります。これは現在出ているのは九三年十二月に出されたものですが、国際比較をしておりまして、スウェーデン、ブラジル、フランス、タイ、イギリス、ドイツ、アメリカ、フィリピン、日本、ロシアそして韓国ということなんですが、今申し上げた順序というのが、実は家庭生活への満足度の順番でございます。残念ながら日本は十一カ国中九番目。離婚率ということからしたら日本はずっと高いところにいってもいいはずですし、家族の同居という形態からとっても、離婚が比較的少ないと言われているベルギーが二〇%というようなヨーロッパの国を考えてみますと、この数字というのは何を意味しているかということをもう一度考える必要があるのではないかというふうに思っております。特に別姓の国というのは、先ほど申し上げましたように、今申し上げたほとんどの国が夫婦別姓を採用しております。日本は採用しておりません。ですけれども、家庭で自分が幸せだと感じるかどうか、満足度というのは十一カ国中下から三番目という現状になります。  また、男女の役割ということで、現在の伝統的な役割分担ということに賛成であるかどうかというような調査もされておりますが、これに関しましては、フィリピン、ロシア、日本、タイ、韓国、ここまでが上位の五カ国で賛成でございます。ロシアはヨーロッパ側とアジア側とまたがっておりますからアジアとは言い切れませんが、ほとんどアジアの国でございます。ブラジル、フランス、アメリカ、ドイツ、イギリス、スウェーデンは、男女の伝統的役割に対して反対というふうなことでございます。しかし、その日本であっても、賛成が三二・九%、反対が五五・二%。  申し上げるのをちょっと忘れたかもしれませんが、これは十八歳から二十四歳までの日本の青年、世界各国の青年の比較でございます。  それから、離婚に対する考え方でございますけれども、愛情がなければ離婚をするというふうに考えているかどうかというのは、日本が一〇・六%、韓国が九・七%で、今申し上げた十一カ国中一番最後と最後から二番目でございます。事情によってはやむを得ないというのが日本は四一・六%、子供がいれば離婚をすべきでないというのが三六%、これは日本の目立った特徴ですが、でも、子供の方は満足であるというふうな感覚を持っていない。  ですから、家族の問題というのは、別姓が、それともそうではないかということよりも、もっと今日本の子供たち、あるいは日本の若い人たちが置かれているさまざまな状況というのが深い問題を抱えているというふうな認識を私はしております。  「日本の子供と母親」というやはり同じような国際比較、これは六カ国でございますが、一九八七年、これはちょっとショックな数字でございますが、総理府でやはりやっております。タイ、アメリカ、イギリス、韓国、フランスと日本ですが、お母さんを尊敬しているか、お父さんを尊敬しているか、どれも曲線でかきますと、かけ離れて日本は低いんです。  ですから、別姓でない現在、まあこれは一九八七年の調査でございますけれども、それが家族のきずなを壊すという根本的な原因には私はなりにくいのではないかと思っております。  また、歴史的に見ても、家族のきずな、つまり江戸時代には武士の位以外は名前しかなかったわけです。そして、明治になって姓をつけるという政策で、約百年たちましたけれども、じゃ、その時代の農工商にいた氏のない家族関係はどうだったかというと、私は今よりはるかに健康な関係であったのではないかというふうに思います。  そういったことの認識が広まれば、法務省としても答申に従った法を出したいというか出すという、これは大臣がいろいろな環境が整えばとおっしゃっていますが、そういったお考えは、法務省としては、政府としてはおありでしょうか。
  73. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 先ほど法制審議会のあり方ということについて大変厳しい御批判もあったところでございますが、私ども法務省としては、国民生活に重要なかかわりを持つ法案を事務当局として策定する場合には、事務当局だけではなくて、幅広い観点からの方々の御参画をいただいた法制審の場の議論を経て立案をするという考え方でこれまで臨んできているわけでございまして、今回、昨年の二月の法制審議会答申を得た段階におきましても、法務省当局としてはこれを尊重して法律案提出いたしたいという気持ちでいたわけでございます。先ほど御指摘の大臣の発言もそういうお考えから出たものと承知をしております。  ただ、しかしながら、この答申が出たという後になりましても、特にそういう答申が出たということを踏まえて、この改正に反対意見というのも大変高まりを見せてきたということがございます。そういう状況を踏まえまして、いろいろな方面で、また政党におかれてもこの問題について大変熱心な議論がされた。それから、先ほど横内委員の方から御紹介がありましたように、最大与党である自民党の中でも大変な議論がされてきているという状況にございます。  そういう状況の中で、法務省といたしましては、こういう国民生活に重要な影響を及ぼすものにつきましては、国民の大勢の理解を得ることができる状況の中で法案を閣法として提出させていただくということであれば、そうさせていただくのが相当ではないかというふうに考えているところでございまして、今後とも、そういった考え方で法務省としては法務省なりに努力をいたしたいというふうに思っているところであります。
  74. 坂上富男

    坂上議員 誤解があると困りますので一言だけ言わせてください。  五年間別居していれば破綻だからという御意見を、誤解をされると困りますので申し上げたいのですが、婚姻の本旨に反して別居した五年ということなんですね。だから、婚姻の本旨というのは何であるかというと、お互いに助け合わなければならない、お互いに扶養しなければならない、それから、子供についても、監護、養育をお互いにしなければならない、仮に別居の中であっても、そういうことが尽くされていない場合はいけない。こういう趣旨でございますから、ただ単に、嫌だからといって逃げ回っておって、五年間たてばオーケー、こういうわけではないことだけはひとつ、先生は御理解いただいているわけですが、一般の人が誤解をされると怖いものでございまするから、我が党の意見はそういう趣旨なんだということだけ言わせていただきたいと思います。  以上でございます。
  75. 山中あき子

    山中(燁)委員 先生のおっしゃっている意味は十分わかっているつもりでございます。やはり、女性立場女性の置かれている現状、特に子供を抱えた母親、そういった点からいたしまして、念には念を入れてきちんと担保されないと、私は、気持ちの上ではなかなか賛成というところまでは申し上げられないということを申し上げたつもりでございますので、どうぞ、その辺は誤解のないようにお願いいたします。  そろそろ時間になりましたが、国際人権規約の二十三条の採択というのは一九九〇年七月二十四日にされましたけれども、婚姻に係る配偶者の権利及び責任の平等ということで、それに附属している意見といたしまして、おのおのの配偶者が各自の原家族名、つまり氏、姓のことでございますが、を使用する権利を保留する、持つ、そういう権利、または、平等な立場で新しい家族名を両配偶者が共同で選択するという権利が、各国の政府によって保障されるべきものであるというふうになっておりますが、日本の政府はこの規約に批准をしておりますので、またそれが実現できないということは一この国際的な規約に対して履行をしていないというのが、国際社会から見た現状でございます。  それから、一九九三年、日本政府に対しては、きょうは全面的に賛成でございましたので触れませんでしたが、非嫡出子の相続の差別をなくするということについて、日本政府が国際機関から勧告を受けております。こういう現状もきちんと認識していただきたいと思います。  全面的に夫婦同姓を強要しているという国は、法務省の調べで、インドとタイと日本でございます。私は、進んだ社会というのは、そこにいるだれもが、ひとしく社会の発展のプロセスの中に参画する権利を与えられ、その機会を与えられ、そして責任も与えられるということだと思います。選択できる社会であること、それが日本の大きな一つのステップになるというふうに信じております。どうもありがとうございました。
  76. 八代英太

    八代委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十二分開議
  77. 八代英太

    八代委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。漆原良夫君。
  78. 漆原良夫

    ○漆原委員 新進党の漆原でございます。本法案選択的夫婦別制度導入と非嫡出子の相続分差別の撤廃を内容とするものでございまして、私は基本的には賛成でございます。若干法律的な面についてお尋ねしたいと思います。  まず、子供名前についてでございますけれども、別氏夫婦の子の氏については立法例として、あらかじめ婚姻の際に子の氏を決めておくという方法と、それから本法案のように「その出生の際における父母協議で定められた父若しくは母の氏を称する。」というふうに規定して、出生の際に父母協議で定めるという二つの方法があると思います。本法案は、なぜ婚姻の際にあらかじめ子の氏を決めるという方法をとらないで、出生の際に父母協議で決めるという方法をとったのか、その理由をお聞かせいただきたいと思います。
  79. 枝野幸男

    枝野議員 私どもは、婚姻時に子の氏を定めるという規定の仕方をした場合には、一般的に、子供を産むことを予定している、希望している夫婦については結構だと思うのですが、子供を産みたいという希望を持っていながら身体的な事情、条件によってお子さんを産むことができないということをわかった上で婚姻をされる男女というものも世の中少なからずいらっしゃるわけです。こうした方は子供を産みたいのだけれども産めないという事情の中で婚姻届を出すのに、生まれたらどっちの氏にするのかということを届け出なければならないということを強いるわけであります。これはかなり酷なことを強いることになるのではないか。逆に、いろいろと手続上の問題点は御指摘もいただいておりますが、出生時に定めるというやり方でもそれほど弊害はないのではないかということとの兼ね合いを考えましたときには、産めないけれども産みたいと希望しているこの男女の気持ちというものを大事にすべきではないかというのが出発点でございます。
  80. 漆原良夫

    ○漆原委員 いただいた法案のうちの対照表の七百九十条の第一項後段の括弧内、「(父母の一方がその意思を表示することができないときは、他の一方が定めた父又は母の氏)を称する。」この括弧内の規定で「意思を表示することができない」という場合はどういう事態を予想しておられるのでしょうか。
  81. 枝野幸男

    枝野議員 もちろん極端な場合としては、失踪宣告の失踪期間に該当するような場合であるとかあるいは精神病等によって意思表示が不可能であるというような条件の場合ということが、一般的に申し上げればそういった事情になるかというふうに思っていますが、そこのところはあえて厳密に、失踪宣告の失踪状況とかあるいは心神喪失状態とかというところまで厳密な線を引く必要はないだろうという書き方になっております。
  82. 漆原良夫

    ○漆原委員 その点について若干聞きたいのですが、まず、強度の精神病で意思の表示ができない、あるいは行方不明で意思の表示ができない、こういうケースはあろうかと思うのですね。ところが、その後何らかの事情で精神的に回復をした、あるいは行方不明が発見された、そういう場合に改めて氏を協議することの再考の機会を与えるべきなのか、与える必要はないとお考えなのか、いかがでしょうか。
  83. 枝野幸男

    枝野議員 これは名前でございますので、法的な安定性というものが非常に重視をされる部分だと思います。私どもの法案の七百九十一条のところで、特別な事情があるときには氏の変更ができるという中で、その出生時に一方の親が心神喪失状態であったとかというようなことというのはこの特別な事情で、氏の変更を認めるかどうかということの一事情にはなるかと思いますが、そのことだけで変更が可能というふうには法的安定性の見地から認めるべきではないのではないかというふうに判断しております。
  84. 漆原良夫

    ○漆原委員 例えば、半年後に意思を表示できる状態になった、あるいは一年後にできるような状態になったという場合に、その父母の一方の意思というのを何らかの方法で実現してやるような法的措置を講ずるべきではないのかと考えますが、いかがでしょうか。
  85. 枝野幸男

    枝野議員 御趣旨は十分理解させていただきますが、例えば半年後に意思を回復されたといった場合にも、両親が婚姻を継続している間であればまずは御両親の間で、ああやはり間違っていたから戻そうかねというような話があるのだろうと思います。そうしたとき、最終的には家庭裁判所の判断になろうかと思いますが、それも例えば半年ならいいけれども五年じゃだめだとかという線を明確に引ける話でもまたないであろうということを考えますと、七百九十一条の特別な事情の解釈の範囲の中でそれぞれの事情に応じて、御両親の話し合いもベースにありながら決めていくという運用で問題は生じないのではないかなというふうに考えております。
  86. 漆原良夫

    ○漆原委員 はい、わかりました。  戸籍の届け出をする場合には戸籍官としては形式的審査権しかないわけであって、その届け出事由が本当かどうかを審議する権限はない、そういう現在の法状態の中において、この父母の一方が意思を表示できない、例えば強度の精神病であるとか行方不明であるとかということを理由として戸籍官に申請した場合に、その客観的な正当性だとか真実性の担保、保証、これはどういうふうにしておとりになるのでしょうか。
  87. 枝野幸男

    枝野議員 これは、この括弧書きの「意思を表示することができないとき」ということに限らず、そもそも父母協議が一致して届け出るのかどうかというようなことまで含めて真実性の担保というのは理論上問題になるのかなということは認識をさせていただいております。ただ、これは最終的には私ども、実体法を私どもがつくらせていただいた上で戸籍法の行政事務的な手続的な部分は法務省に御検討いただきたいと考えておりますので、戸籍法の詳細まで詰めておりませんが、一般的にこの手の届け出については、形式審査でそういった要件を書き込んだ上で両親の一方が親権者として届け出を出すというようなことがあって、それに対して片方の親の方が、いや、それはおかしいのじゃないかとなった場合に家庭裁判所での問題が生じてくるというような形で、現実に問題になることがあるとすれば出てくるという扱いの仕方が一番妥当ではないか、そういった形で戸籍法上の届け出の要件その他形式等についてもつくられるべきではないかなというふうに考えています。
  88. 漆原良夫

    ○漆原委員 今のようなお答えですと、夫婦の一方が自分の氏を名乗らせるために事実と違った申請をして、客観的な事実と違う理由でもって自分の名前を名乗らせるというケースが非常にふえてくるのではないか、こう僕は思います。  先ほど申しましたように、戸籍官に実体的権利が、審査権がないという今の法律を考えますと、やはりそういう事態が多く起こり得るということは好ましくないのではないか、それに対する何らかの措置を講じておくべきではないか、こう思いますが、いかがですか。
  89. 枝野幸男

    枝野議員 実は午前中の議論の中でも私は申し上げたのですが、同じような問題は、氏だけではなくて従来の制度の中での名の方にも十分あり得るのだろう。氏の場合は七百九十条で「協議で定められた」と明文がございますが、名についてはそういった明文はございません。共同親権者として両親がいる場合は、両親が協議をして共同親権の行使として名を決めるというのが実体法上の法律関係だと思いますが、これについても、共同していないで届け出を出しているケースというのは従来もあるのだろう。ただ、一度出してしまっているのだからそれ以上問題にしないというようなことで、裁判所に出てくるケースまでは事実上存在をしないというのが実態だろうと思います。  そうした意味では、名よりも氏の方がトラブルになるケースは多いのではないかという御指摘もあろうかと思いますが、提案者立場としては、そういった経緯からも考えて、名の場合と比べたときを考えて、この制度でもそれほど大きな問題は生じないのではないかというふうに考えております。  御指摘の部分については、私どもも、できるだけ疑念を生じないような方向で、制度的に担保できるのかできないのかきちんと検討しながら、一言一句このままの案で通していただきたいというふうに考えているわけではございませんので、十分に検討させていただきたいと考えております。
  90. 漆原良夫

    ○漆原委員 余り物わかりよく答えていただかなくても結構だと思うのですが。  もうちょっとこの問題を聞きたいと思うのですけれども、現実にそういうふうな事態が起きた場合に、夫婦協議して定めると法文上なっているわけですね。ところが、その夫婦の一方が事実と違う申請をして登記をしてしまった、こういう場合に、どのような法的救済方法が考えられますか。
  91. 枝野幸男

    枝野議員 そうした場合には、実体法上の裏づけが違っていたわけでありますから、戸籍に記載された事実が事実と異なるということで、戸籍訂正の手続として家庭裁判所での問題になっていくというふうに考えています。
  92. 漆原良夫

    ○漆原委員 家庭裁判所の問題になるのですけれども、具体的にどんなふうな救済方法が考えられますか。
  93. 枝野幸男

    枝野議員 自分の意思が無視された方の親が、協議という法律の要件を満たさずに出されている届け出であるので戸籍の訂正の申し立てをすることになるのだろうと思います。それに対して裁判所は、訂正を、取り消すことはそれだけでできますが、裁判所の判断として、取り消すだけではなくて、取り消し後の協議の結果としての氏というものを定めろというようなところまで一緒にセットでなければ審判は法的安定性の見地から出せないということで、その審判の場で事実上協議が行われ、そこで協議の調わない場合というのは、私は、制度上いろいろなやり方があろうかと思いますけれども、二つに行き着くのかなと。  一つは、そもそもそういったケースになるような場合であれば、離婚の調停、審判とセットになっていく。あるいは、離婚をする気はないのだけれども、両親で氏のところで決まらないでトラブっているという場合には、今度は、親権者として適切であるか、親権を外して後見に付すべきではないかというような審判にいく。この二つのルートに流れていって、その上で結論を出していくのかなというふうに考えています。
  94. 漆原良夫

    ○漆原委員 では、それはそう聞いておきます。  現実にそういうトラブルがあった場合に、戸籍訂正の手続でできると仮定します。それでも相当な時間を要すると思うのですね。そういうことを考えますと、そういう事態の発生しないような措置を今のうちにとっておくべきでないかというふうに考えます。したがって、本法案では、そういう事態に対する認識が少し甘いのかな、法的にできることであればそういう事態が発生しないような措置をあらかじめ講じておくべきではないか、こう思います。  具体的に、私は、この七百九十条の後段、先ほどの括弧内の問題ですね、「意思を表示することができない」というのは、これは家庭裁判所の許可にかからしめたらどうなのかなと。家庭裁判所の許可にかからせて、その許可書、審判書きを添付書類として戸籍係に提出するというふうにしたら、あらかじめそういう措置を講じておけば、裁判をして訂正しなければならないという事態は避けられるのではないかと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  95. 枝野幸男

    枝野議員 御指摘の部分というのは、一つの考え方として私ども十分前向きに検討させていただきたいというふうに考えております。
  96. 漆原良夫

    ○漆原委員 それでは、もう一度七百九十条の一項後段の本文についてお尋ねします。  これは、出生の際における父母協議で定める、こうなっておりますが、戸籍の届け出については戸籍法は十四日以内に届け出義務を課しておりますが、十四日以内に子供の氏についての協議が調わない場合、そもそも戸籍上そういう出生届をなすことができるのかどうか、それから、できるとしたら戸籍上はどのような方法で記載になるのか、どうお考えでしょうか。
  97. 枝野幸男

    枝野議員 これは、いわゆる形式議論とそれから実質議論と、両面あろうかと思います。  まず、実質議論からさせていただきますと、こういったケース、つまり両親との間で協議が調わないようなケースというものの想定される場合を考えますと、一方の親が他方の親に無断で出生届を出してしまって、その有効性が問われるということのケースが基本的には一般的な場合であろうと。それは、戸籍の受理の方では、先ほど先生からの御主張、御指摘ございましたところは今後検討させていただくとしても、少なくとも現行法を前提とした場合には、実質審査権がございませんので受理をされてしまうのだろう。つまり、一般的には実際に子供さんを産んでいる母親の方が事実関係を把握しているわけでしょうから、母親が勝手に出してしまうというケースがほとんどになるのかなというのは一つ思います。  ただ、もちろんそれがいいということではございませんで、十四日以内に協議が調いませんと言って持っていったときどうなるのかということだろうと思いますが、これは現行の、例えば名前についても、昔、人の名前としてふさわしくないのではないかという名前について戸籍官の方が受け付けをしなかった、空白の状況のままで延々と何年かが続いたというケースがございました。あるいは、常用漢字等に含まれていない名前届け出しようとして窓口でトラブっているケースというのも現実にございます。  そうしたケースと同じように、一義的には、行政上の戸籍事務の取り扱いのところでとりあえず名前だけで受けておくのか、それとも、それは受け付けられないと言ってさっさと協議をしろと言ってはねつけるのかということは、現行の、従来の戸籍手続事務のそういった類似の例から考えれば、受け付けられないということでけるのかなというふうに思いますが、これは戸籍法の改正の部分のところでそういうわけにはいかないだろうと。それは、子の氏が決まらないケースに限らず、届け出をしようとする親の意思等と戸籍法上の一あるいはその裏づけになる実体法上との関係がずれている場合に、戸籍をどうするのか、空白にしておいていいのかどうかという一般論として、私は手を入れなければならないのだろうと思っています。
  98. 漆原良夫

    ○漆原委員 夫婦協議でなかなか名前が決まらない、協議が調わないという場合には、結局のところ、いつになっても届け出ができないという事態が発生することになりますけれども、それはそのとおりでよろしいのでしょうか。
  99. 枝野幸男

    枝野議員 そうした意味では、現行法名前についての話も理論上はそういうことになると思っておりますが、それと同じことになると思います。
  100. 漆原良夫

    ○漆原委員 現行法はともかく、この新しい皆さんの法律は、夫婦協議をして定めるという条文になっているわけでしょう。その場合に、夫婦協議ができない、お互いの主張が譲り合わなくて協議ができない、調わないというケースは十分考えられるわけですね。その場合には、子供名前は永久に決まらないということになるのではないでしょうか。これはいかがですか。
  101. 枝野幸男

    枝野議員 先ほどもちらりと申し上げましたが、そういった状況というのは、まさに子供の福祉にとって、親が自分たちの主張を突っ張り合って子の福祉に著しく反することを継続しているという状況になります。永遠にということ、まさに、理論上の問題として申し上げれば、そういった状況が継続して続き、それに対して、少なくとも家庭裁判所で調停の協議ぐらいはしろという話にはなっていくのだろうと思いますが、それすらもしない、あるいは、そこでも調わないというような状況が続く場合には、私は、親権者として適切ではないと両名の親権を奪った上で後見をつけるというような対応を後見的に検察官が行うというような手続で処理できるのではないかなというふうに思っています。
  102. 漆原良夫

    ○漆原委員 検察官が行うかどうかは別として、皆さんがつくった法律の中で首尾一貫していなければ、法律そのものが完結していなければいけないと思うのですよ。そうでしょう。そういう場合において、この子供名前が永遠に決まらないような事態が理論上あり得るとしたら、それはあるかもしれないわけですから、これに対する救済措置をきちっとしておくのがやはり法律をつくるということになるのではないでしょうか。その点をあいまいなままにしてつくった法律というのは、法整備上完結していない法律だというふうに私は思うのですが、どうでしょうか。
  103. 枝野幸男

    枝野議員 御指摘の趣旨は十分理解させていただいておりますし、そういった御指摘もあろうかと思います。  ただ、例えば、現行法上、名前についても、氏の方が名前よりもトラブルが多くなるのではないかという想定はありますが、しかし、夫婦、共同親権者として、両親で基本的には共同して子供名前は定めるわけであります。これについて、協議したけれども決まりませんでしたという場合についての対応策というのは、全く民法の中にはありません。従来からありません。ある意味では、家族法に属する部分というのは、実務上の運用のところで、問題が生じないようにという手続処理をうまくしていくという知恵は必要かと思いますが、全面的に、厳密に、協議が調わなかった場合ということをすべての部分で想定をしているのかといえば、従来から、必ずしもそうではない部分があるとは思います。  ただ、御指摘のとおり、私は、子供名前の部分も含めて、氏に限らず、今回の修正部分に限定をせずに一般的に、子供名前を含めた定め方等について協議が調わなかったらどう届けるのかということについて、しっかりとした法的に完結したルールをつくるべきではないかという御指摘については同感でございますので、それを、この制度の中に含めるのか、あるいは戸籍法との兼ね合いの中で考えていくのか、そういったことを含めて検討させていただきたいと思います。
  104. 漆原良夫

    ○漆原委員 一つは、提案者御自身が、私が今質問申し上げたことに関して、この法案は法整備上完全に完備しているのだというふうにお考えなのかどうか、この一点。もう一つは、そのような状態で、具体的に、子供さんが就学年齢に達したらどうするのだ、あるいは、もっと長く、婚姻年齢に達したらどうするのだ、この問題。二つお答えください。
  105. 坂上富男

    坂上議員 先生、現行法でも、例えば、私が自分の子供が生まれて太郎とつけよう、そうしたら、家内の方は一郎にしよう、こうやって、いつまでもいつまでも議論していることはないと思うのですね。これは、やはり十四日以内に届け出ないと過料という処置があります。私は、うっかり、選挙に出て二番目のとき忘れまして、裁判所に出されたことがあるのですが、やはり同じではないでしょうか。それを一々、家庭裁判所だ、いや、何だかんだと言わぬでも、やはり、これだけの今の現行法どおり、氏も名前もそのとおり決めればいいのではないか、私は、これは完備している、こういうふうに確信を持っているのでございますが、いかがでしょうか。あるいは、私たちの考えが少し間違いであれば、御指摘について修正することはやぶさかでない、こう申し上げておきたいと思います。
  106. 漆原良夫

    ○漆原委員 大先輩からそう言われると非常に反論しにくいのですが、ただ、十四日以内に届け出なさいという条文があるから大丈夫なんだというお考えは、少しどうかなと思うのですね。双方の主張が、自分の名前だ、自分の氏だということで折り合わないということは十分考えられる、また、そういうことを予想して法律をつくらなければいかぬと私は思うのです。そういう意味では、私は、大先輩のお言葉ですが、この法律は、あらゆる可能性を想定して全部対応できるように法律はつくらなければならない、そういう意味では、十分な対応がされているとは考えられないのですね。  私は、自分の方で対案を言うのはおかしいのですけれども、やはり、民法、特に家族法を見ますと、夫婦協議して決める場合、決められない場合には家庭裁判所の決定を仰ぐという条文が随所に見られるわけです。監護者の決定にしても、親権者の決定にしても、扶養料の決定にしても、協議が調わないとき、または協議することができない場合には、家庭裁判所は、これを決めるという条文が随所にありますね。この子供の氏についで、双方の協議で決めるのだ、しかし、協議が調わない場合には家庭裁判所の決定で決める、なぜこういうふうな措置を講じられなかったのか、それをお聞きしたいのです。
  107. 枝野幸男

    枝野議員 その前の御質問に対するお答えにも半分なるのかなと思っておるのですが、私どもは、私どもが提案をさせていただいた修正部分に限って考えさせていただければ、終始一貫をしている、貫徹をしているというふうに考えています。  ただ、そもそも、その土台となっている民法全体を考えたときに、子供の氏を決めるときの手続について、決まらなかったらどうするのか、あるいは、子供名前を決めるときの手続について、協議が調わなかったらどうするのかということについて、制度上の整備がされていないという土台の部分に不備があるということを認識しております。そして、ある意味では、民法全部の不備をすべて一度に提案をしろというのは事実上酷だと思いますので、私どもは、とりあえず、大至急直さなければならないと思ったところを、今回、一部改正案として出させていただいているわけです。  そうした中で、せっかく、氏という問題で、子供名前だけではなくて氏も含めて、協議が調わないで決められないときどうなるのだ、おかしいではないかという御指摘もごもっともだと思いますので、これを機会に、その部分を含めて改正をすべきではないかという御主張は十分理解をできますし、また、そうした場合には、先生御指摘のとおり、家事審判の手続というのが一般的であろうということも同感でございますので、これは、一体としてやった方がいいのか、修正という形でやった方がいいのか、別の改正案としてやった方がいいのか、いろいろ考え方はあろうかと思いますが、いずれにしても、この機会に、氏や名前について協議が調わなかった場合の対応というものをセットで考えた方がいいのではないかという御指摘は、前向きに承らせていただきたいと思います。
  108. 漆原良夫

    ○漆原委員 しつこく言いますけれども、もう一点だけ。  婚姻の際に、生まれた場合の子供の氏をあらかじめ決めておくという最初の立法例があると申し上げましたね。そういう立法例であれば全く問題はなかろう、こう思うのですね。確かに、子供を産めない人、産めない夫婦にもかかわらず、名前をあらかじめ決めさせるというのは酷かもしれない、それはおっしゃるとおりかもしれないけれども、しかし、そのために子供が、氏がいつになっても決まらないという大変な犠牲をしょってしまうという、その比較権衡を考えますと、感情的には大変かもしれないけれども、あらかじめ婚姻の際に氏を決めていただくというふうにしてトラブルを未然に防ぐ、こういうことも一つの方策ではないかと思うんですが、この点いかがでございましょうか。
  109. 枝野幸男

    枝野議員 氏が決まらなかった場合の対応をきちんと考えるべきだという点については全く同感でございます。  それについて、婚姻届のときに決めてしまうという考え方と、先ほど先生が御指摘になった家事審判等の手続をつくっておくという考え方とであれば、私ども提案者の考え方とすれば、基本的には出生のときに定めるとして、決まらなかった場合家事審判で決めるというやり方の方が、私どもの提案趣旨には沿っておるな、できればそういった方向で御検討いただければありがたいなというふうに思っております。
  110. 漆原良夫

    ○漆原委員 次の問題に移りたいと思います。  改正の七百七十条、これは離婚に関する規定でございますけれども、一項第四号になりますが、夫婦が五年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしている場合には離婚をすることができる、こういう条文になっておるのです。別居の理由はいろいろ考えられますが、性格の不一致とか、不貞だとか、暴力、虐待だとか、いろいろな理由があると思いますが、特に私が聞きたいのは、この五年以上別居の中に有責配偶者の別居も含まれるかどうか、これをお答えください。
  111. 細川律夫

    ○細川(律)議員 この四号の規定は、夫婦が五年以上継続して婚姻の本旨に反する別居の場合であります。これは、破綻主義を採用いたしまして、有責配偶者の方からも離婚請求ができるというのが今回のものであります。
  112. 漆原良夫

    ○漆原委員 そもそもなぜ五年に限ったのか。それからもう一つは、最高裁は有責配偶者からの離婚も認めたわけですけれども、最高裁は、三十六年とか、二十二年とか、三十年とか、一番短いので十年三カ月、こういう判例で有責配偶者からの離婚を認めているんですけれども、なぜ五年でいいとしたのか、それをひとつお答えください。
  113. 細川律夫

    ○細川(律)議員 現在の法制度のもとでいろいろ離婚が行われておりますけれども、大体、当事者が話し合いをして、そして調停にかけてもなかなかいけない、それで結局裁判になる、それが大体平均すると三年だというふうに統計的になっております。そこで、大体三年ならば破綻をしているんじゃないか。さらに加えて、それでも有責配偶者からの請求なども考えますと、もうちょっと期間を長くした方がいいだろうということで、一応五年ということになりまして、ほかの立法例なんかにつきましても、五年とかあるいは六年というようになっているところも参考に入れまして、一応五年というふうにしたところでございます。
  114. 漆原良夫

    ○漆原委員 有責配偶者からの離婚を認めるという趣旨であれば、これは一般にクリーンハンドの原則と言われておりますけれども、法律の力をかりて権利を獲得するためにはみずから正しくなければならないんだ、こういう民法上の大原則があるわけですけれども、自分で不貞行為をやりました、その結果家庭が破綻しました、五年間だったから離婚です。自分のそういう悪行為といいますか、自分が反社会的な行為をやったことを裁判所に立証して、その結果裁判所から権利を得る、こういう結果になるわけですけれども、これは僕は著しく社会正義に反する結果になるんじゃないか、こう思いますが、この点はどのように理解されたんでしょうか。
  115. 細川律夫

    ○細川(律)議員 その点につきましては、これまで有責配偶者からは離婚請求ができないというようなことで、裁判でいろいろ有責性について議論がというか、お互いの主張がなされます。そうしますと、お互いがさらに傷つき合い、子供にとってもそのことが決していいことではないというようなことも考え、そして、一たん破綻をしているその婚姻については、これを法律によって夫婦ということにするよりも、新しいそれぞれの人生を歩む方がいいだろうということで、こういうことになった次第でございます。
  116. 漆原良夫

    ○漆原委員 この七百七十条の二項、これは離婚請求を棄却する事由が書いてあるわけですね。この法案立場に立ちますと、離婚請求を棄却する事由の立証責任というのは相手方にあるわけですね。要するに、非有責配偶者が立証しなければならないという法律構成になっております。  これは、逆に言いますと、有責の人でも五年間別居すれば原則として離婚できるんだ、国は有責の人に対しても法的保護を与えるんだということが、そういう思想が大前提になっておると思うんですね。そういう思想そのものが法の精神に反すると私は思うんですが、そういう有責の人に対して国が法的保護を与えてはいけないんだというもう一方の理念があると思うんですが、その点はいか。がでしょうか。
  117. 細川律夫

    ○細川(律)議員 確かに委員のおっしゃるところもよく理解できます。ただ、婚姻というもの、この婚姻が事実上破綻をしている場合に、一体この婚姻をどうしたらいいのか、法律によっていつまでもそれを結びつけておくのか、それともこの婚姻を解き放して、新しいそれぞれの人生を歩ますか、こういう二つの考え方の中でどっちをとるかということだろうと思いますけれども、私どもは、いわゆる明確な破綻主義というのが妥当であろうということで、これを選択をいたしました。  そして、夫婦間におけるいろいろな不公平な点、それらの点につきましては、この二項におきます信義則条項とか、あるいは財産分与の法の改正もいたしまして、そこで経済的な問題につきましてもきちんと手当てができるような、そういう細かい条項も改正をしたところでございます。
  118. 漆原良夫

    ○漆原委員 最後に一点だけお尋ねします。  夫婦別姓の問題にしても、それから非嫡出子の相続分差別の問題にしても、基本的人権という観点からは非常に重要な問題でございます。この点、松浦法務大臣は、こうお答えになっております。国民各層及び関係各方面の意見が非常に分かれているんだ、国民の皆様の御理解を得ることができる状態で国会に出したい、こういうふうにお答えになっておるのですが、私は、基本的人権に関する件については、速やかにその法案を国会に出していただいて、それで政府も国会も一丸となって基本的人権の推進、こういう立場から国民をリードしていく、啓蒙していく、そういう姿勢が政府あるいは国会議員に問われているのではないか、こういうふうに思うのですが、これは提案者でございまして、また弁護士の大先輩である坂上先生、この点についてひとつ、いかがでございましょう。
  119. 八代英太

    八代委員長 簡潔にお願いいたします。
  120. 坂上富男

    坂上議員 先生とは法務委員会あるいは災害委員会で同じ所属をさせてもらっておりまして、先生の発言を非常によく聞かせてもらっておるわけでございます。大変実証的な立場から、かつ、判例あるいは解釈、学説、そういうものを本当に駆使されまして、人権擁護、被害者救済、そういうような観点から、厳しく御提言、御質問をなさっていることに、私は常日ごろ敬意を表しておりますし、この間日弁連へ行きましたら大変高く先生を評価しておりまして、うらやましく思ったわけでございます。  そこで、また今回は厳しい質問でございます。御存じのとおり、去年は長尾法務大臣でした。この女性法務大臣をつくったのはやはり選択的夫婦別姓を婦人大臣の手によって完成させたいという橋本総理の思いがあったのじゃなかろうかと私は実は思っておるわけでございます。そこで私は責めました。なぜ提出しないのだということを二度にわたって責めたのでございますが、まだ環境が整いませんで、この国会で必ず出したいと思いますと言って必死の御努力をなさったことも覚えております。  そして、次に、去年の暮れでございましたか、現大臣が就任されたわけでございます。大臣は自民党の出身でございまして、率直に言って自民党の先生方の中から反対が高いものでございまするから、自民党の法務大臣としてこれらの皆様方を説得する役割で橋本総理が法務大臣に任命したのだろうと私は実は思ったのでございますが、そういう観点から質問をいたしますと、私答弁いたしません、こういうような御答弁が返ってきまして、大変実は残念に思っておるわけでございます。  そんなようなことで、五年かかって法制審議会結論が出て、満場一致で立法化すべしという要請が出まして、それが一年以上たなざらしになってそのまま放置をして、閣法で出される見通しがないというようなことになったら、やはり国民はどっちにしても不幸なのじゃなかろうか、私はこう思ったものでございまするから、我が党はあえていたしまして、私は皆様方と相諮りまして、議員立法で三月十三日に提出をさせていただいたわけであります。  そして、これに続きまして、参議院の方に社さの方からも提出されました。それから新進党からも、有志の方でございますが、提出されました。そしてまた今回、横内先生によりますと、次の臨時国会までには何とか立法化のための努力をしたい、提出したいというような御趣旨の話もありまして、非常に私はうれしく思っておるという実情でございまして、今回、私は成立をさせてもらいたいのでございますが、万々一成立をしなくとも、これによって国民議論が巻き起こり、各党からこういうような、続々と案が提出をされたというのは本当にうれしいことでございまして、ぜひとも、これを機会に閣法が出てくれば、私たちはもちろん喜んで取り下げをいたします。そんなようなことを法務省にも大臣にもあるいは橋本総理にも期待しながら御答弁とさせていただきたい、こう思っております。ありがとうございました。
  121. 漆原良夫

    ○漆原委員 以上です。終わります。ありがとうございました。
  122. 八代英太

    八代委員長 次に、北村哲男君。
  123. 北村哲男

    北村(哲)委員 民主党北村でございます。提案者皆様方、御苦労さまです。  民主党提案されました選択的夫婦別姓主義といいますか、これは憲法二十四条の両性の本質的平等の思想に基づいたものであって、夫と妻が自主的に同等の権利すなわち氏名権を享有するということを期待した趣旨のものであって、私は賛成立場をとっております。  ところで、現行法上、婚姻に際しては夫または妻のどちらを選択してもよいという形で戸籍法上は一応両性の平等は保障されておるということは確かでありますけれども、しかし、現実の社会では非常にわずかに、妻の家を自主的に継ぐような入り婿的なものとか、あるいは男女合意に基づいて女性、妻の姓を選択するという場合以外はほとんど男性の姓に入っているというのが社会的事実であろうと思います。  しかし、現在の女性の社会的進出が目覚ましいという状況、あるいは、その中での婚姻による改姓が女性にとって非常に不便であったり、不利益であったという面もあります。この意味では憲法の両性の本質的平等というものは、まだそこに至っていないのじゃないかと思います。こういう意味で、個人の姓の、氏の選択権を国民に与えた点で、憲法二十四条の目指す理想というものが一歩現実に近づいたというすばらしい案であると私は考えております。  そこで、まず石毛議員にお伺いしたいと思うのですけれども、私たち男性のほとんどは現行法でも別に痛痒を感じていないわけです。一方、女性の多くが今までの婚姻別姓という利害を背負ってきたという歴史的あるいは現実的な立場があると思うのです。石毛さんは、女性立場から多くの福祉問題を取り扱ってこられ、そして家族制度男女の社会生活を見詰めてこられた長いキャリアもお持ちの先生でありますが、その女性立場から見て今回のこの法改正をどうとらえているのか、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  124. 石毛えい子

    石毛議員 先生おっしゃいますように、両性の平等、これは基本的人権として私たちは享有しているはずでございますし、そして、民主党が今回提案させていただいております選択的夫婦別姓あるいは非嫡出子の平等の問題が実現していけば、私たちが求めてきました基本的人権の実現に大きく一歩前進するというふうに私も考えております。  ところで、女性の現実的な立場を表面的にと申しましょうか、とらえますと、結婚によって姓が変わる不便はしばしば職業を持っている女性について強調されるという傾向がございます。私もずっと職業を持ち続けてまいりましたので、今まで書いたレポートが、姓が変わることによって丁寧に詳しく注釈しなければ同一人物と認められないというようなそういう問題もございましたけれども、そのことはおきまして、広く、例えば婚姻によって家庭に入って仕事をやめたというような女性も数多くおられるわけでして、そうした多くの女性にとって選択的夫婦別姓というのがどういう意味を持つかということもとても大事な問題だというふうに私は考えております。  そして、このことを考えますときに、私は、高度経済成長を経て日本の社会構造が大きく変わった状況で、女性の社会参加も広く進み、ライフサイクルが変わって意識も変わってきているというこのことは、濃度の差はあるにしても、職業を持つか持たないかというような違いではないというふうに思っております。  現に、女性の九五年の平均初婚年齢は二十六・三歳になっておりますから、例えば高卒後でしたら八年間、大卒後でしたら四年間ぐらいでしょうか、職業生活は言うまでもなく、友人関係との交わりとか、広い意味で社会参加を続けている、そういう女性が今は圧倒的に多いということです。  昔のように家業の中にいて花嫁修業をして、次に夫の家に入っていくというようなそういう時代とは変わってきておりますので、いろいろな社会生活の中でずっと出生以来の姓を広く使用してきたというその事実は、私たちそれぞれ、みんなの中に自分の氏名権、人格権として内面化しているのだというふうに思います。それはもう自然になっているというふうに思います。  現に、午前中議論になっておりました総理府の調査による家族法に関する世論調査を拝見しましても、四人に一人強の方が、二七・九%ですけれども、婚姻による姓の変更に対して違和感を持つと思うとか、今までの自分が失われてしまったような感じを持つというような答えをしておられます。ですから、繰り返しになりますけれども、職業を持つか持たないかというより、もっと基本のところで、やはり自分のアイデンティティーを大切にしたいといいますか、自己同一性、自分らしさを維持したい、そういうことが強く意識化されているのが今の女性立場だというふうに思います。  それから、もう少しつけ加えさせていただきますと、少子化の時代ということも言えるわけですけれども、この問題から姓の選択制をとらえますと、女のお子さんだけの御家庭ではむしろ親御さんの側から選択的夫婦別姓を望むというような見解も出ておりますし、時間が長くなって恐縮ですけれども、今家事、育児というような今まで経済的にカウントされなかった労働も、アンペイドワークをどう社会的に評価するかということが大きなテーマになって浮上してきているときに、仮に経済的な意味で企業に働いて所得を得るというような立場でなくても、経済構造に家庭にいる女性が参加するチャンスは、お金を借りるとかいろいろな意味で立場が広がってくると思いますので、そういう意味でも、自分の固有の姓を維持したいという希望はこれからもっとふえてくるというふうに思っております。  そういう意味で、姓の選択ができるということは大変重要なことだというふうに思います。
  125. 北村哲男

    北村(哲)委員 どうもありがとうございました。  次に、提出者松本さんにお伺いしたいと思います。  松本さんは、大きな労働組合のナショナルセンターの連合の副事務局長として、働く女性の姿を長い間見てこられたと思います。特に、女性の社会的進出や、また今の社会における女性差別について実務的に問題に取り組んでこられた方だと思います。そういう意味で、働く女性、あるいは社会的進出をし、あるいはこれからそうしようとする女性立場から見て、今回の法案についてどのようにお考えか、御意見というか、御見解を伺いたいと存じます。
  126. 松本惟子

    松本(惟)議員 先生の御質問にお答えをいたします前に、私ごとでございますけれども、私は昨年十月に衆議院の九州から候補になりまして、そのときに実は通称を使用しておりまして、戸籍は夫の名前になっておりますが、通称が松本でございます。手続が大変でございました。たまたま私は衆議院ということだったから救われたのですが、これが参議院でございましたら通称は使用できないということ、今でもできないようでございます。そういったことからいたしましても、やはり私は選択的な夫婦別姓をきちんと一日も早く法律規定をしてもらいたいというふうに思っています。  特に、先ほど石毛議員の方からもお話ございましたけれども、姓というのは名前と同じように人間にとってアイデンティティーである。特に社会に出て働く場合には、男性はほとんど旧姓を使用していらっしゃいますけれども、女性の方が結果的に姓を変えているということでございます。これは、制度上はいずれかの姓を選択するということになっていますから別に女性を差別しているわけではないのですが、私は制度は中立的だと思いますが、その中立的な制度を社会的に動かしていった場合、結果として女性が不利益をこうむる、不便を味わう。これは男性とともに社会参加をしていくときに非常に強く出てくると思います。  もちろん選択でございますから、いずれかの姓ということで、夫の姓を名乗るという人があっていいし、これは長い間の慣行ですから、根強く男女の中にそういった慣習が根づいているというのも私はよくわかります。ですけれども、そうでない、つまりキャリアを積んでいったり、それから専門的な職種、職業に従事をしていらっしゃる方々で、姓を変えることによって大変不利益を得る、それから実務的にも、企業にとっても行政にとってもそうだと思いますが、姓を変える時点での大変な煩雑な事務というのはあるのですよね。男性はほとんどそういうものを経験しないで今までいらしたということであります。  私は、どういう点で問題なのかということを例示をさせていただきますと、パスポートの問題です。私は今ではパスポートに名前を二つ書いています。ちゃんと認知をしていただいた、外務省からいただいたものと、それから、向こうで国際会議をやるときには必ず旧姓で通っていますから、私の名前は、仮に事例を挙げさせていただけば、村上が戸籍名ですが、村上と書いたら、どこの人だということで、全然ほかの人かと間違えられた経験もたくさんございます。したがって、国際会議に出るときには、名前を二つ例示をして真ん中に丸ポチをつけてとか、そんな面倒くさいことをやっている。早くこういうものをなくしてもらいたいというのが個人的な願望でもありますし、働く女性たちからのいわゆる選択の幅を広げてという願いでございます。  それから、印鑑証明ですね。これは絶対に通称では今とれません。それから、国家資格の取得、運転免許証ですね。こういった問題とか、それから税金、年金ですね。さまざまなことで、二つの名前を持って二つの判こを持って歩いているという、この不便さを一日も早く取り除いていただきたい。  つけ加えさせていただければ、このことで国立図書館情報大学というところで今裁判が起こっていますね。この結果にも注目をいたしたいと思います。  それから、午前中のお話の中に出ておりましたけれども、国際的にも、人権規約及びこれを受けた女子差別撤廃条約、これは日本も批准をしております。この中に、一々読み上げませんけれども、婚姻及び家族関係に関するすべての事項について、女性に対する差別を撤廃するため適当な措置をとりなさいということがきちんと書かれてあって、日本は委員会から勧告を受けているというような事例があります。  そんな流れの中で、私はぜひとも、制度的には中立的な制度があっても、結果的に一方の姓が不利益を受けるようなこの民法は改正されなければならないと思います。  最後に、ちょっと長くなりますけれども、総理府が出しました文書の中に、この民法の改正を一日も早くというような文言がございます。御存じの男女共同参画審議会が二〇〇〇年に向けてのビジョンを提出しています。これは職場、家庭、社会、あらゆるところでの平等を推進していこうということで、共同社会の建設という方向を指し示しておりますけれども、この審議会が出しました文書の中には、中立的に見えるけれども結果的にやはり差別を引き出している、そのことが固定的な性別役割分担を強化していく役割も果たしているので改善を図らなければならないというような文言を引用しながら、具体的な施策として、民法現行制度のもとでは婚姻により姓を改めるのは女性が一般的になっているので、これは社会生活上に不便が生ずる、したがって女性の社会進出の上で障害となっているから、一日も早く別姓を含む民法の改正を実現すべきであるということを答申いたしまして、これを受けた政府の二〇〇〇年プランの中で、そういった方向で検討をすべきであるということが明記をされているということを御紹介させていただきます。
  127. 北村哲男

    北村(哲)委員 お二人ともとても熱弁で、ほとんど質問しないうちに時間が終わりと、思いも深いのだと思いますので、結構でございますが。  坂上先生も、今日この法案提案されるに至っては相当苦労もされたと思います。先ほどお話もあったのですけれども、確かにこの審議に至るまで長い間の歴史があると思いますし、女性の人たちの闘いもあったと思います。特に、本日傍聴に来ておられる中田千鶴子さんも、数年前に婚外子差別裁判で、今までずっと判例上もう絶対勝てなかったと思われたのを、数年前に東京高裁で勝ち取られたという、そういう方々の本当に苦しい闘いというのがあって今日に至ったと思うのです。  先ほどかなり長く説明されましたけれども、この法案提出されるに至った御苦労あるいはその経過について、加えることがおありでしたら、お願いしたいと思います。
  128. 八代英太

    八代委員長 簡単にお願いいたします。
  129. 坂上富男

    坂上議員 漆原先生に答弁をいたしましたことに追加をすることによって答弁となると思うのでございますが、松浦法務大臣に私は再三にわたりまして提出方を要請いたしましたが、環境が整わない現在においては消極的であるという御答弁だったものでございまするから、私は民主党立場において議員立法で提出しますということを法務委員会で宣言をいたしました。  そして、昨年二月まで自民党さんの方でいろいろと検討して、提案できるなら提案したいというお話もあったものでございまするから、それを待ちました。しかしながら、お話がまとまらなかったようでございます。  そこで、自民党さんを含めまして各党に、我が党はこういうふうな選択的夫婦別姓を中心とした民法改正提出したいのだが御協力をというふうにしてお願いに回りました。そして、各先生方からは大変な激励をいただきました。しかし、共同提案までには至らなかったのであります。そこで、私たちは、民主党単独で、三月十三日に衆議院に提出をしたわけであります。ほかの党については、参議院の方にその後出されたわけでございます。  そんなようなことでございまするから、また私たちの法務の理事懇におきまして、社民党の保坂先生から、委員長、もう大筋は同じ法案が出ているのだから、あるいは調整できないかというお話がありました。それで、これは委員長としては、できるかどうかわかりませんものでしたから、私は、ひとつ提出者間において話し合いをできるだけこれから続けましょうという提案もいたしたわけでございます。  そんなようなことでございますから、幸いにして政府の方で閣法として提出されれば私らは喜んでこれを取り下げます。しかし、まだまだその時期でないとするならば、私たちは今提案をされておる皆様方協議をいたしまして、少しぐらいのことの調整でありましたらできるだけ調整をいたしまして、基本的な選択的夫婦別姓を中心とした法律が成立するようにということの努力をこれからも尽くしたいと実は思っておるわけでございます。  そこで、この法案の運命でございますが、廃案になるか継続審議になるかということにもつながるのだろうと思うのでございますが、廃案になればなったで、私は、今出しておられる先生方と共同提案をすることによって、あるいはかえっていいのかなとも思っております。あるいはまた、幸いにして継続審議ということになりますれば、お話し合いの上で調整すれば修正をするということも可能であろうか、こう思っておるわけでございますので、どうぞひとつ国民的な幅広い立場において議論賜りますよう、そして私たちも重大な決意を持って努力することもお誓いをいたしまして、御答弁とさせていただきます。ありがとうございました。
  130. 北村哲男

    北村(哲)委員 時間が参りましたので、終わります。
  131. 八代英太

    八代委員長 続きまして、佐々木秀典君。     〔委員長退席、横内委員長代理着席〕
  132. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 民主党佐々木秀典です。  提案者の皆さん、ここまで御努力いただいたことに心から敬意を表します。  考えてみますと、今夫婦婚姻に際してどういう氏を選択するかということがこうして議論になったということには大変大きな意味があると思っております。しかも、きょうは自民党の太田委員冒頭質問をされまして、さまざまな問題を提起されましたけれども、しかし自民党の皆さんとしても全面的にこれに反対をしているふうでもなさそうだし、先ほど御紹介がありましたように、自民党の中でもさまざまな意見があるけれども、大体三分されているというふうなお話もある。そしてまた、太田委員によれば、通称名で何とかこれをやっていけないかというような折衷的なお考えもあるということで、こういうことを含めて、夫婦別姓選択的ではありますけれども、ここまで大きな問題になり、今実現に近づいているということに私は画期的な意義を覚えます。  と申しますのも、実は、民法は七百五十条で、現在の民法ですけれども、婚姻に際して、「夫婦は、」「夫又は妻の氏を称する。」こういうことになっている。同時に、離婚のときについて、その後どうするかということになりますと、これは七百六十七条の一項、二項がございます。七百六十七条の一項は、「婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、一協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。」かつてはこの条項しかなかったのですね。  だから、これは今の話とちょっと違うかもしれないけれども、例えば結婚して夫の氏を称するようになった奥さんが職業を持ち、あるいは社会的な活動を今度は結婚後の夫の姓でずっとお続けになってきた。ところが、離婚をするということになった場合に、これは「婚姻前の氏に復する。」というのですから、もとの結婚前の御自分の姓に戻るということになると、婚姻後にやったその社会的な活動だとかあるいは職業に関連することが、今度は名前を変えられる、名字を変えられることによって、これまた不都合が生じるということになるわけであったわけです。  そこで、これについては、これも相当以前にさまざまな議論がありました。特に、私が知る限りですけれども、弁護士としても先輩で、かつて社会党の参議院議員でありました佐々木静子先生、これは結婚によって佐々木という姓になった、旧姓はちょっと存じ上げないのですけれども。この佐々木静子先生が、離婚をしてもなお佐々木という姓で私は活動したい、それだけ佐々木という名字が定着してしまったということをおっしゃって、そしてこの条項についての改正を非常に強力に推進されて、そうした御努力が実って、七百六十七条に二項がつけ加わりまして、「前項の規定によって婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。」だから、必ず復氏しなくてもいい、もとの氏に戻らなくてもいいのだ、こういうことになったのですね。これも一つの大きな進歩だったと私は思うのです。  これが昭和五十一年ですから、それからもう既に二十数年を経て、さらに、今度は結婚の際にこうして姓を選択できるという議論がなされ、ここで実現に近づいているということは、これから見たら、隔世の感があるなということをつくづく私は思い知るわけです。  そこで、幾つか提案者にお尋ねをしたいと思います。  一つは、中身に入りますけれども、民法の七百五十四条という法があります。これは夫婦間の契約取り消しについて、夫婦間の契約というのはいつでも取り消すことができるのだ、こういう条文。そして今回の改正では、これを全面的に削除する、こういうような御提案になっておりますけれども、この意味合いと、それからこういうことになった場合に、今までこの条文があったこととの絡みでいろいろな問題が起きてこないか、こういうことについてちょっとお尋ねをしたいと思います。
  133. 細川律夫

    ○細川(律)議員 夫婦間の契約取り消し権、この条項につきましては、戦後新しく親族、相続が改正されたそのときに、もうそもそもこの条文が前と同じように規定をされたこと自体がおかしかったのじゃないかというふうに思います。  そもそも夫婦が円満にいっているときに夫婦間の契約を取り消すということは意味をなさないことでありますし、それでは、夫婦間が破綻をしているような場合、この場合に夫婦契約の取り消し権を行使する、このことについては裁判所の判例の中でも、これはこの規定を適用するわけにいかない、こういう判断をされているわけなんです。したがって全然この条項そのものが意味をなさないということでありまして、今後、この条項を全面的に削除しましても、一般的な契約の取り消しとかそういうようなことですべて対処できるというふうに考えておりまして、全く問題はないというふうに思います。
  134. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 そのように承っておきます。  質問の順序がちょっと変わるかもしれませんけれども、今婚姻中の夫婦間の契約の問題を出しましたが、今度は離婚に絡んだ問題をお尋ねしたいと思います。今度は離婚理由が変更されておりますが、これは法務省にお聞きした方がいいかな、法務省の案でもあったわけですね。  一つは、「五年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしているとき。」という条項が加わった。それから、「強度の精神病」というのが現行ではあったのですけれども、これは今度の案でもう除かれるわけですね。これは法務省案でもそうだったですかね。それから、これまで、これが破綻主義のあらわれだと言われているのですけれども、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」となっていたのを、今度は七百七十条一項五号ではっきりと「婚姻関係が破綻して回復見込みがないとき。」こうなっている。離婚原因をこのように変更したことの事情ですね。  それから、この点は私は大変結構なことだと思うのですが、二項を設けられて、そういうような七百七十条一項の一号から五号までの離婚原因がある場合でも、直ちに離婚請求を認めるということにはならないのだという保留規定が置かれているということは大変結構なことだと思うのですけれども、まず、この離婚理由を変更した事情について、これは民事局長からお聞きをした方がいいかな、提案者がいいか、どちらかお任せします。
  135. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 本来提案者にお尋ねいただく方がいいのかもしれませんが、ただいま御指摘のように、法制審議会答申におきましても今回提出されました法案と同じような改正の内容が提言されておりますので、これは、法務省の考え方ということではなくて、法制審議会答申においてそのようになった事情ということで御説明をさせていただきたいと存じます。  それで、裁判上の離婚原因の改正の骨格は、いわゆる破綻主義というものを明確にするということにございます。現行法規定におきましても、基本的な考え方は、婚姻関係が破綻して回復見込みがないときは当事者をその拘束から解放して新しい生き方を選択することができるように、そういう破綻主義の考え方に立って立法されたものであるというふうに考えられておりますが、しかしながら、従前は、最高裁の考え方におきましても、破綻について有責の側からの離婚請求は認めない、いわゆる消極的破綻主義と呼ばれておりますが、そういう立場の解釈で運用されてまいりました。  ただ、この考え方は、昭和六十二年の最高裁の判決によって、一定の場合には有責配偶者からの離婚請求も認められるようになってきているわけですが、しかし、こういう経緯がありますことから、現実の離婚訴訟においては、要するにその原因がどちらにあるのだということの責任のなすり合いが訴訟活動の中心になる、それによって双方の関係はますます悪化し、子供にとっても好ましくない事態が生じている、こういう指摘がありまして、この基本的な破綻主義の考え方を徹底すべきだということがかねてから主張されており、そういった方向での改正ということで検討されたわけでございます。  その場合に、客観的な破綻状況の典型として、要するに一定期間婚姻の本旨に反するような別居ということがあれば、それはもうそれ自体客観的破綻をあらわすものであろう、その期間としてどのくらいが適当かというようなことにつきましては、諸外国の立法例やいろいろな各界の考え方を総合して五年ということにしたというのが、この「五年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしているとき。」を離婚原因に加えたという理由でございます。  こういう形でいわゆる破綻主義を明確化する、一方では、どんなひどい場合であってもともかく破綻していれば離婚請求を認められるのかという他方の問題があるということから、五年以上の別居あるいはそのほかの婚姻関係の破綻という場合につきましては、請求する側に一定の信義則違反と見られるような状況があるときにはその請求は許さないという規定を置くということによって調整を図ることが適当であろうという議論がされたわけでございます。  他方、もう一点の、「強度の精神病」というのを離婚原因にしていることにつきましては、これは法制審の審議のかなり後の段階で検討されたわけでございますが、これは、現在の考え方からいって精神病ということを独立の離婚原因にするということは適当でないのではないか、必要な場合には一般的な婚姻関係の破綻ということで対応できるから、これは特別の離婚原因からは外すのが適当ではないか、このような議論を経て法制審議会答申になったというふうに承知しております。     〔横内委員長代理退席、委員長着席〕
  136. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 よく理解できました。ありがとうございました。  それで、離婚ですけれども、これは、夫婦子供たちがもう成人に達して一人前になっているような場合だと親が離婚しても余り子供たちには影響がないわけですけれども、実際には、離婚する夫婦というのは、子供がいる場合に、その子供がまだ未成年者、特に幼児である場合の離婚の方が数としては私は多いのだろうと思います。夫婦はともかく、それによって一番迷惑を受けるのは子供たちであるわけで、その未成年の、特に小さい、幼い子供たちの監護の問題というのが、この離婚については措置としてどうするかということが非常に重要な問題になってくる。そこで、これについても今度の改正では一定の配慮をなされているようですけれども、その特徴的なところをお示しいただきたいと思います。
  137. 枝野幸男

    枝野議員 離婚の場合の子供監護につきましては、まさに御指摘のとおり大変重要な問題でございますので、今御説明ございましたとおり、裁判上の離婚の理由のところにも、子に著しい生活の困窮を与えるような場合は離婚を認めないというような条項も入っておりますが、離婚を認めた場合であっても、子供監護に影響を与えてはいけないという視点が重要だと思っております。  ただ、委員も御承知のとおり、裁判などでの離婚の際、あるいは調停等で話し合った場合であってもそうでありますが、お金をまとめて払いなさいということについては、例えば裁判離婚などで確定をしておれば、それに従って強制的に払わせることができますが、今の日本の法体系の中では、毎月幾らずつ払いなさいという、まさに一般的な監護料の約束の取り決め方がそうなっておりますし、また現実的にもそういうやり方でなければ子供監護を経済的に維持することができないという中で、しかしその一方で、毎月幾らずつ払いなさいという約束を法律上公権力によって強制をするということには、実は大変な手間がかかる。毎月毎月一カ月ごとに裁判を起こして判決をとらないと、任意で払ってくれればいいわけですけれども、途中でごまかして逃げてしまったときには取り立てることが非常に困難であるという現実がございます。  そこで、私どもは、附則の第七条に、この法律施行後三年をめどといたしまして、こうした費用の取り立ての仕方について、きちんと確保するための制度検討して必要な措置を講ずるものとするという、政府に対して責任と義務を課す検討条項を設けさせていただきました。  本来であれば今回の改正の中に具体的な中身を織り込むべきであるという御批判、御指摘はあろうかとも思いますが、御承知のとおり、今申し上げましたとおり、一つ民法だけの話にはとどまらずに、日本の裁判において強制的に財産を取り立てる、強制執行をするという制度そのものの基本を動かさなければできないという問題になりますので、そう一朝一夕には変更ができないであろう。  さらには、諸外国の立法例なども研究してみますと、司法制度だけでこの問題に対する解決を与えるという、狭い分野での解決方法が果たしていいのかどうか。国によっては、離婚した子供養育費用について国が立てかえ払いをして、そして本来の扶養義務者、離婚して別居している父親とか母親のところに国が請求して取り立てるというようなやり方で履行確保している国もあるようでございます。こうした場合には、法務省あるいは司法制度だけではなくて、厚生省などとも関連をさせながら検討しなければならないだろう。  そういったことを考えますと、本来は一体でやりたかったのでありますが、三年ほどの経過措置を設けさせていただいて、その間に我が国の実情に合った履行確保措置というものをつくり上げていくというような責任を政府に負っていただくという立法の仕方をさせていただきましたら
  138. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 時間が大分迫りましたので、念のために、短時間で御答弁いただければちょうだいしたいと思いますけれども。  婚姻年齢ですが、今度の提案では七百三十一条、男女とも十八歳を婚姻年齢としていますね。現行法では男は満十八歳、女は満十六歳、二歳差があるのですね。今度は両方とも十八歳というと、現行法よりも少し幅を狭めたことになりはせぬか、こういう御意見もあるようですけれども、これを男女とも十八歳にした理由、簡単にお答えください。
  139. 枝野幸男

    枝野議員 基本的には、十八歳と十六歳とずれていることが平等という見地からいいのだろうかということで、そろえるべきだろうと。そろえるそろえ方はいろいろあるかと思います。これはまさに程度問題というか、十八歳ならよくて十七歳は全然だめなのかという議論になる話ではございませんので。  ただ、日本の今の一般的なライフスタイル、生活環境を考えますと、高校進学率が一〇〇%にほぼ近いというような実態などを考えましたら、高校を卒業して社会に出る十八歳という線が一般的ではないだろうかというようなことから、十八歳という方にそろえるという提案をさせていただきました。
  140. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 他に予定した質問がございましたけれども、時間が参りましたのでこれで終わりにしたいと思いますが、確かにいろいろな議論の中で、すっかりこれで完璧とは言えないのではないかという御意見も先ほどもあったように思います。  率直に言って私なども、例えば子供の姓、これは出生のときにその子、その子について決めるということになると、複数子供の場合に兄弟で氏が違うことになるわけですね。学齢に達して、例えば兄弟で同じ学校へ行くことがしょっちゅうある、うちの子供たちもそうだったわけですけれども。その場合に、兄と弟あるいは妹と氏が違うということでの不都合はどうなのかなということで、やはりちょっと懸念されるようなところはないではないんですね。ただ、夫婦別姓というのを徹底すれば、子供たちだって、別々だって人格形成には影響はないよということになるのかもしれないけれども、しかし、この辺はもうちょっと議論をしてみたいなという気もしないではありません。  しかし、いずれにしてもこれは強制的に夫婦別姓にするのではなくて、あくまでも選択をするわけですからね。選択の自由があっての上のことですから、この選択的夫婦別姓は基本的には皆さんの御納得をいただけるのではないかな。もう少しこの議論を通じて世論調査をすれば、国民も去年あたりの世論調査とはまた違って、これに賛成、支持する方々の意見が多分多くなるだろうということを私は期待しております。  でき得べくんばこの国会で本当は通ってもらいたいと思いますけれども、仮に不幸にしてこれが通らないという場合も、早期の実現を目指して、それぞれがそれこそ超党派で一本のものをつくり上げて、今度の国会には提出できるように、そのためにこの議論が大いに役立つことを期待いたしまして、質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  141. 八代英太

    八代委員長 続きまして、石井郁子君。
  142. 石井郁子

    石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。  この民法改正については、法務省が一年半も前に法制審の答申を得ながら、いまだに法案提出されていないということであります。これには自民党の中で強い反対意見があったからだというふうに聞いているわけでございますが、まず最初法務省に伺いたいと私は思うのです。  松浦法務大臣が国民意見が真っ二つに分かれているからだという消極的な発言をされたということがございますけれども、国民意見が分かれているというふうに言われるのは、どの部分を指してのことなんでしょうか。  そしてまた、自民党内にある反対意見というのはどういう御意見なのかについて、ちょっと御説明いただきたいと思います。
  143. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 国民意見が真っ二つに分かれているということの主たる理由は、平成八年に総理府でこの問題について実施された世論調査の結果を踏まえてのものというふうに理解いたしております。夫婦別姓については、現在の法律を改める必要はないというものが三九・八%、希望する場合には別氏を名乗ることができるように法律を改めても構わないとするものが三二・五%という数字になっているということが中心でございます。  加えまして、この法制審議会答申がされた後におきましても各方面でいろいろな議論がされておりまして、むしろ法制審議会答申がされたことを契機に、夫婦別姓等の改正が家族制度の崩壊をもたらすものだというような観点からの反対意見もいろいろな方面から強く提示されることになったという状況もございます。  そういった状況を踏まえて大臣がそういう発言をされているものというふうに了解をしております。  次に、この改正、選択的夫婦別制度導入についての反対意見の理由ということでございます。  さまざまな理由が述べられておりますが、今申しましたように、主として、家族制度の崩壊をもたらすものである、家族の一体感、一体性が損なわれるのではないか。それから、両親の氏が違うということによって子供の福祉を害するのではないか。さらには、日本の古い伝統に反するとか、それからこれは消極的な反対意見ということでございましょうけれども、いわゆる導入論の一つの重要な理由とされております社会生活上の不利益の解消、これはいわゆる通称として旧姓を使用できる、そういうことで解決できるものではないかということ、そういった点が主たる反対の理由として私どもお聞きしているものでございます。
  144. 石井郁子

    石井(郁)委員 同じような質問で恐縮ですけれども、こういう法案提出がおくれている事情につきまして、提案者の方はどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  145. 坂上富男

    坂上議員 午前、午後にかけて私も答弁を各先生方にしてまいりまして、あるいはダブった発言になるかと思いますが……。  特に私は考えていただきたいと思うのは、昨年六月の調査の結果、三二・五%の人が賛成ということなんでございまして、このうち、選択的夫婦別姓が行われるとした場合、あなたはその別姓選択しますかという質問については、大変少なくて、五・二九%なんじゃなかろうか、こういうふうに世論調査が出ているんじゃなかろうかと思いますから、これは、やはりこういう道を講じておくということは、希望する人、それから結婚する人が、その道もあったらいいかな、場合によってはそちらを選択したい、こういうような意味を持つものでございまするから、私は、やはり立法者の立場としては、こういうことはちゃんと国民のために用意すべきことなんじゃなかろうかな、こう思っておるわけでございます。  それについて法務省は、いわゆる法制審議会からあの答申があって、確かにもう一年数カ月放置したままなんですね。  そこで、ちょっと聞くところによりますと、あるいは間違っているかもしれませんが、法制審議会答申があって、法律をつくって提出をするということを、今までは必ず出したんであって、出さないでそのまま握りつぶしたなどというようなことはないそうですね。だから、そういうような観点からも、これはもう放置できない問題なんじゃなかろうか、こんなふうに私は実は思っておるわけでございます。  それから、家族制度の崩壊とか家族の一体感が薄れるなどという言葉でございますが、これは、私は、戦後新憲法時代に勉強したんでございますが、戸主制度というのがありまして、戸主が家族を養うという制度なんですね。したがって、家督相続制度というのがあったんですね。長男だけが相続をするということなんですね。したがって、実は、裕福でない、娘さんが一人だけのところは、嫁にも行けない、戸主であるから。また、婿さんにも来てくれない、こういうことがあったそうです。  そんなようなことから考えまして、憲法の平等の原則から親族、相続の特別措置法ができたことを知っているわけであります。このときも、戸主制度を廃止するということは日本の麗しき伝統を崩壊させるものである、たとえ戦争に敗れたといえども、日本のこのような美しい家族制度は守らなければならぬというようなことを、強い主張があったんですね。  ではどうだろうかと思って、五十年間たってみましたら、家庭生活、社会生活が崩壊するということは全くありませんでした。ましてや、今度は、おのおの、夫婦中心の生活になったんですね。夫婦中心で、しかも今度は、お互いのいわゆる人格を認めて夫婦別姓にしようじゃないかというのが今回のあれなんじゃないか。しかし、それでも選択にしようと。強制しませんよ、希望する人はどうぞどちらかを選んでくださいよ、こういうことなんです。  さっきも、私ごとで恐縮ですが、私は家内に言ったんです。この法律ができたら、一年以内ならばおれらも別姓ができるそうだがどうしようか、こう言ったら、家内が言いました。私は坂上でいいわよ、こういう話でございます。私がよくてそう言ったのかと思ったら、彼女は私のところ、結婚するまでの間に二十五年なんですね。自後もう四十年もたっておるものでございますから、本当に積み重ねて、自分のこの氏名権というか、人格権というものをやはり自分のものとして獲得をしておるから、これに変更するということについて抵抗があるんですね。  そんなようなことを考えますと、これから結婚する人が、いわゆる六割、八割、ぜひその道をつくってください、こうおっしゃっている以上は、法務省がせっかくの答申をいただいた、しかもこれが仮に否決になったとしても、やはり法務省の責任において、大臣の名において提出をされて、真剣な議論のもとでこの成否が決せられなければならない、私はこう思っておるわけでございます。ぜひとも次の臨時国会にでも、あるいは来年の通常国会でも結構でございますが、閣法として提出されることを何よりも期待をしたい、こう思っておりまして、以上をもって答弁にさせていただきたいと思います。  以上でございます。
  146. 石井郁子

    石井(郁)委員 提案者のお気持ち、また御意見もよく伺わせていただきました。  反対意見の中にある、特にこれは自民党の中にということで限定してお話しいたしましたけれども、家族制度の崩壊とか家庭のあり方の問題として言われているということがあったわけですが、もう一点、この点で、外国の例などで、例えば選択別姓というか、導入した場合のこういう論議など、あるいはどうなのかということが検討されたかどうか、ちょっとお聞かせいただければと思います。
  147. 松本惟子

    松本(惟)議員 外国も、かつては日本と同じような制度であったというふうに思っておりますが、実は、六五年あたりからヨーロッパを中心にして別姓選択の自由を認める改正が行われてまいりまして、特に七〇年代以降につきまして、差別撤廃条約、先ほど私が答弁で申し上げましたように、その条約の中における条項を受けまして、各国で改正の議論が進んでいったということであります。  諸外国の夫婦の氏の状況というのは、いろいろありますけれども、原則自由な国、それから別氏を法制度によって定めている国、それから同氏の場合もまだございますし、それから結合氏という中から選べるというふうな国もございまして、実に多様な状況でございます。  我が国のように夫婦同姓を強制している国は、日本とインドとタイであるというふうに承知をしております。夫婦ともに選択を認めて原則自由な国としているのは、イギリス、アメリカ、オーストラリア、スウェーデン、デンマーク、ドイツなどでございます。そして、夫は不変で妻のみ選択を認める国としては、オランダ、ハンガリー、イタリア、ペルーといったような国がございます。別氏を原則とする国といたしましては、カナダのケベック州、そしてスペイン、韓国、中国、フランスといったような状況になっております。  いずれも改正するに当たりましては、基本的人権という立場から、子供の問題も含めまして議論がなされたというふうに承っておりますが、いずれにしても、変えている国は七〇年代に既にやっているということを述べておきたいと思います。
  148. 石井郁子

    石井(郁)委員 どうもありがとうございます。  我が党は、既に、一九八七年以来選択による夫婦別姓を認める民法改正政府に求めてきたところでございます。  ちょっと私の個人的な感慨なんですが、私も、大学で仕事をしておりましたので、論文を発表したときに、結婚後だとやはり大変不都合を感じるということもありまして、こういう問題意識も持ってまいりました。個人の尊厳と両性の本質的平等を保障した憲法二十四条を完全実施させていく上で、この選択的夫婦別姓制度は当然の要求だというふうに考えているところであります。  それで、二問目でございますけれども、非嫡出子の相続分二分の一を平等にすることについてお伺いしたいというふうに思います。  一九九五年七月の最高裁大法廷判決で、多数意見が、次のように述べて、これは一定の合理的理由がある、憲法十四条違反とは言えないというふうにしているわけですね。ちょっと読ませていただきます。   本件規定の立法理由は、法律上の配偶者との間に出生じた嫡出子の立場を尊重するとともに、他方、被相続人の子である非嫡出子の立場にも配慮して、非嫡出子に嫡出子の二分の一の法定相続分を認めることにより、非嫡出子を保護しようとしたものであり、法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったものと解される。これを言い換えれば、民法法律婚主義を採用している以上、法定相続分婚姻関係にある配偶者とその子を優遇してこれを定めるが、他方、非嫡出子にも一定の法定相続分を認めてその保護を図ったものであると解される。  現行民法法律婚主義を採用しているのであるから、右のような本件規定の立法理由にも合理的な根拠があるというべきであり、本件規定が非嫡出子の法定相続分を嫡出子の二分の一としたことが、名立法理由との関連において著しく不合理であり、立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えたものということはできないのであって、本件規定は、合理的理由のない差別とはいえず、憲法一四条一項に反するものとはいえない。 ということでございます。  他方、少数意見でございますけれども、憲法十四条に違反するという説、また、多数意見に同調しつつも、社会情勢の変化により立法府において改正すべきだという考えもあるようでございます。  ちょっと長くなりますので省略いたしますけれども、こういうことについて提案者はどのようにお考えになりますでしょうか。
  149. 細川律夫

    ○細川(律)議員 嫡出子と非嫡出子、この相続分が異なる。非嫡出子の方が二分の一ということ、これが憲法十四条の法のもとの平等に反するのではないかということだろうと思います。  私どもは、今回の法律案ではこれを平等にする。嫡出子も非嫡出子もいずれも、相続分は平等ということにいたしております。それは、非嫡出子の相続分が嫡出子よりも少ないということについては、これは最高裁の判例でも少数意見で述べておりますけれども、憲法十四条違反だ。特に、非嫡出子その人がみずからの意思だとかあるいは努力によって変えることのできない、そういう身分なんです。それを法律上はかの者と差別をして相続分を少なくするということは、これは憲法十四条に反する。全くその考えに従って私どもはこの改正案提案をしているところでございます。
  150. 石井郁子

    石井(郁)委員 ちょっと次の質問に移らせていただきますけれども、再婚の場合の婚姻禁止期間ですね。  百日とすることについて、現在では科学の進歩で父の決定はほぼ一〇〇%可能ではないか、また、男女平等の見地からも禁止期間を置く必要はないとする意見女性の多くの団体で主張されているというふうに聞いているわけですが、これらについての提案者の考えをお聞かせいただきたいと存じます。
  151. 細川律夫

    ○細川(律)議員 再婚禁止の期間、今は六カ月という現行法になっておりますけれども、必要ないのではないかという意見があることも十分承知をいたしております。  ただ、女子の方が懐胎してそして出産をした場合に、法律上、一体父親はだれかということを決めることは極めて重要なことでございます。その場合に、法律上、こういう場合にはこの男性から生まれたんだということの推定をされるような制度もまた必要ではないかということで、いわゆる嫡出推定の規定があるわけでございます。  その嫡出推定の規定からいきますと、やはりダブった形の推定がされるというふうに条文になっておりますから、したがって、再婚の禁止期間というのが今も定められておりますけれども、今は六カ月、これは余りにも長過ぎるので、必要にして十分な百日ということでその期間を提案した法案を出しているところでございます。
  152. 石井郁子

    石井(郁)委員 法務省にお伺いしますけれども、このことにつきまして法制審ではどのような検討がされたのか、ちょっとお聞かせください。
  153. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 法制審の答申における結論も今御審議されている法案内容と同様でございまして、現在六カ月という待婚期間を、ただいま細川提案者がお答えになりましたように、嫡出推定のために必要最小限度の百日とするという改正案でございます。  その案に至りますまでには、ただいま御指摘のように、女子だけに存在する待婚期間をなくしてしまうという考え方も検討されたわけでございますが、その場合にはどうしても、嫡出推定の関係で何らかの必要な手当てを置く必要がある。その場合にどういう方法があるだろうかといういろんな議論がされました。そういう場合には推定を受けないという状態にしてしまうということも一つ考えられるわけでございますが、その推定がないということになりますと、必ず何らかの形で、裁判的な形でどちらが父親であるかということを決めるまではどちらが父親かということが全くわからない状態になるということで、これは子供にとって、子供の身分の安定という観点から大変ゆゆしい問題なのではないか。  また、現行の嫡出推定を見直して、例えば重複する場合には後の方の、要するに前婚、後婚の後婚の方の夫の子と推定する。世の中の実態としては、別れた前夫と新しく結婚した後の夫とどちらの子供の蓋然性が高いかというと、後婚の子である蓋然性が高いのではないかというようなことから、後婚の子と推定するというようなことも考えられたわけでございますが、そういう推定をする。すなわち、前婚の夫と婚姻関係にありながら後婚の夫との間で懐妊したというような推定をするということが立法上許されるだろうかという大変難しい問題もある。そういう議論を経まして、結局やはり嫡出推定の関係で、最低限必要な百日の間の待婚期間というのは維持することが相当であろう、そういう議論を経たということでございます。
  154. 石井郁子

    石井(郁)委員 どうもありがとうございました。  もう一点ですけれども、離婚事由について、法案が破綻婚主義に基づいて五年別居条項を採用しているわけでございますね。この破綻婚主義そのものは時代の流れだというふうに私は思いますが、現実の社会では女性の社会的、経済的立場は極めて弱い。身勝手な男性からの離婚強要が横行し、事実上これに手をかすことになって、一方的に女性が不利益をこうむる状況が生まれるのではないかと心配する向きもあるわけですね。この点をどうお考えになっておられるかという点です。  我が党としては、女性の生活と権利を守る観点から、離婚に伴う財産分与、慰謝料、生活費、養育費を確実かつ簡易に取得できるような制度を整備することが同時に必要ではないかと考えているところでございますが、提出者はいかがでございましょうか。
  155. 細川律夫

    ○細川(律)議員 今お話がありました、確かに、有責配偶者から離婚請求してそれが認められるというようなこと、これについては納得しにくい、あるいは一般的にもそういう感情もあろうかと思いますけれども、その点につきましては七百七十条二項におきまして、相手方に耐えがたい精神上の苦痛を与えるような場合とか、あるいはまた信義則条項といいまして、婚姻生活で協力だとか扶助とか、そういうことについて怠っていたような場合、そういうような場合には離婚を認めないというようなことを入れております。  そしてまた、離婚をする際に財産分与というのがありますけれども、その財産分与につきましても今度の改正案では細かく規定をいたしまして、清算的な問題あるいは慰謝料的な問題、そしてその寄与分などについてよくわからないような場合には、これは夫婦双方で二分の一ずつ持っているというような二分の一条項のようなものも入れまして、その点については、一方の配偶者保護するような、そういう規定をつくっているところでございます。
  156. 石井郁子

    石井(郁)委員 以上で質問を終わります。
  157. 八代英太

    八代委員長 続きまして、保坂展人君
  158. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党保坂展人です。  今回の法案が、本当に会期末ぎりぎりでようやくこういう議論の場が持てたということに対して、御苦労された民主党の議員の皆さんに非常に感謝をしたいと思います。  坂上議員の声はいつも大きいのですけれども、この呼びかけについて、もうちょっと早く耳に入れば、ぜひ共同でやりたかったということも思いますが、その辺は先ほどお話しいただいていますので、省かせていただきます。  何よりこの民法の改正の中で私が一番気になるのが、先ほどからお話が出ている婚外子差別の点なんです。その婚外子差別の点で、三月十日に法務省に市民運動団体の方々と、これは国連のB規約違反ということで警告もたびたび受けていて、どうするんですかという話し合いの席に同席をさせていただきました。その際、法務省のお答えは、現在政府レポートを準備すべく、もう直前の段階である、したがって今は言えないのです、待ってくださいということだったのですが、三カ月たったのですね。もう報告はなさったのでしょうか。なさっていないのだとしたら、どうするおつもりなのでしょうか。その点、まず法務省の方から簡潔にお答えいただきたいと思います。
  159. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御質問の報告書の作成、提出は外務省の所管でございますが、現在外務省において国連に対する提出の手続をとっているところである、その提出の手続中だというふうに聞いております。
  160. 保坂展人

    保坂委員 それで外務省に聞くと、内容法務省に聞いてくれ、こういうふうになるわけなんですが、どういう内容で、しかもこれはどうですか、今回この民法が閣法として出てこなかったということで、国際上非難を浴びるだけじゃないんですよ。実際上婚外子として生まれて現在いらっしゃる方たちが、明らかにこれを差別であるというふうに言われている事情をそのまま引きずっていくわけですね。これに対して、責任ある法務省の鮮明な態度を示してください。もう一度お願いします。
  161. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 私どもあるいは我が国政府としては、この現在の相続分の区別というのは、正当な婚姻関係及びそれに基づく家族保護するという観点からの区別ということで、合理性を有する区別であると。したがって、我が国憲法あるいは御指摘の人権B規約に違反するというものではないという考え方をこれまでも対外的に主張してまいりましたし、その考え方は現在も変わっていないところであります。  ただ、立法政策の問題としてどうあるべきかという観点の問題であり、その点については委員既に御案内のとおり、法務大臣の諮問機関である法制審議会議論をいただき、答申をいただいている。その答申に基づく法律案を閣法として提出することができる状況に至っていないという状況については、委員御案内のとおりであるということであります。
  162. 保坂展人

    保坂委員 前回、これは三月十八日に、同じ濱崎さんの方から、この問題については、法制審のこの二分の一条項を変えるということに対しては、国連からのコメントが経緯の一つにあったというふうにはっきりお答えになっているのですね。ぜひお忘れなく、これはこのまま済まされない問題だということを指摘して、時間も短いので、今回の民主党案について、一、二点になるかと思いますが、せっかくですから伺いたいと思います。  一つ、子の氏の変更の部分についてなんですが、新しく民主党案でも法制審案でも追加されているところで、別氏夫婦ですね。「子の父母が氏を異にする美婦であって子が未成年者であるときは、父母婚姻中は、特別の事情があるときでなければ、これをすることができない。」というふうに書いてあるわけですね。あるいはまた、その七百九十一条の③のところを読んでいきますと、別氏夫婦子供名前も違うという場合なのかと思いますけれども、最後のところで「ただし、父母婚姻後に子がその氏を改めたときは、この限りでない。」というふうに、いわば制約をされている文言がついているのですが、これはなぜつけられたのかということと、もう一点、やはり「特別の事情」ということをどういうふうにイメージされているのかということを伺いたいと思います。
  163. 枝野幸男

    枝野議員 人の氏、名前というものは、まさに人をあらわす記号でございますので、簡単にころころ変わっていたのでは御本人も不利益でしょうし、社会生活上、周りの人間にとっても大変困る問題が出てきます。したがって、一般的に法的な安定性というものが求められる分野であるというふうに思っています。  そうした見地から、氏を変えるという事情については、ただ思いつきで、ただ本人の意思だけで変えていいのかどうかということについては、必ずしもそうはいかないのではないか。変える必要性、変える相当性というものを、ある程度社会的に納得できるような事情が存在をして初めて氏を変えるというようなことがあるべきではないかというふうな考え方に立ちましてこういった条文にしておりますので、この「特別な事情」というのも、今申し上げましたような事情を裁判所として総合的に考慮する。もちろん、その事情の中には御本人の意思というものも含まれるということになると思います。
  164. 保坂展人

    保坂委員 例えば、今回の、婚姻ができる年齢が十八歳ですよね。つまり、婚姻に踏み切れば氏を変えることができる。しかし、未成年であるということは未成年なんですね、十八歳も。ここの辺はどういうふうに整合性を保たれますか。
  165. 枝野幸男

    枝野議員 一般的に、民法全体のところで見直しをすべきであるというふうな趣旨であれば、私自身、個人的にはそう思っておりますが、他の条項との横並びなどを考えた場合には、この線の引き方、未成年の場合ということの線を引くのが横並びとして、ちょっとほかのはつくりにくいかなと。ただ、十八歳になれば婚姻で氏を変えることができるのだということの事情は、この「特別の事情」の考慮の中では、当然含まれてくるのだろうなと思います。
  166. 保坂展人

    保坂委員 それで、同じ視点からなのですが、要するに、子どもの権利条約の中で、やはり子供の自己決定権、自分で自分のことを決める権利、市民的な権利ということをうたわれて、少しずつこの社会でも浸透しているわけですけれども、経過措置のところで、これは、民主党案が法制審案の部分よりも一歩踏み込んで子供の自己決定権をうたっていただいたことは大変ありがたいというふうに思うわけなのです。つまり、坂上さんの場合は、もう四十年なれ親しんだから、まあ今変えないというお話でしたけれども、これを待って変えたいという夫婦もいるわけですね。その場合、今度は子供が氏を変更することが三カ月以内というのは、実際に子供と日々つき合って、特に思春期の子供等、揺れていますからね。日々揺れているようなその思春期の子供が三カ月というふうに言われたときに、これ、ちょっと過酷な、短い期間過ぎないか、この三カ月などというものを取っ払ってしまって、どうせなら、それこそこういった制約条項を外したらどうかと思うのですが、いかがでしょうか。
  167. 枝野幸男

    枝野議員 お子さんのいる既に婚姻されている御夫婦が移行措置によって片方が旧姓に復されるということについては、御夫婦の方は一年以内に届け出をしてください、そして、それから三カ月以内にということですが、一般的には、お子さんのお気持ちということを考えても、お子さんとも話し合った上で、お子さんを含めた三人で、ほぼ同時に、相次いで出されるということを基本的には想定しておりますので、三カ月ということで考えさせていただきました。  そして、この三カ月を超えた場合には本則に戻って、先ほどの「特別の事情」ということは要りますが、一般論として、全く変えることができないという話でもございません。そうしたところでは、届け出だけで簡単に変えられる期限というのをどこまで置くかというのは、もちろん立法政策上は、そういった移行措置の場合には、いつまででもいいですよということはあるかもしれませんが、しかし、そこの法的な安定性といいますか、そこは三カ月だけではありませんので、御両親含めて一年三カ月かけて考えてくださいという趣旨でこの期間を見ていただければなというふうに思います。
  168. 保坂展人

    保坂委員 大体、中学生以上になると親子関係はうまくいかないのですね、日本の場合。まあほかの国もそうだと思いますけれども。もう親子の会話はないに等しいのですよ、ほとんどの家庭で。サラリーマン、お父さんは忙しいし、お母さんもいらいらしているし。そういうときに、子供に氏を変えたことを言おう、言おうと思っているうちに三カ月たってしまったということだってこれはあり得るわけです。それから、この民主党提案の、例えばこれがこのまま可決されたとしたら、ここを見て、これは新たな親子げんかの火種にもなりかねないと思いますので、ここは議論の争点として今後とも深めていくこと。そして、ぜひ超党派で、これはもう党の枠を超えて、国民の要望ですから、ぜひ一緒にこの民法の改正に取り組んでいきたいと思います。どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  169. 八代英太

    八代委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、来る十三日午前十時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  170. 八代英太

    八代委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、来る十三日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十四分散会      ――――◇―――――