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1997-02-20 第140回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月二十日(木曜日)     午後三時開議 出席委員   委員長 八代 英太君    理事 太田 誠一君 理事 岸本 光造君    理事 橘 康太郎君 理事 横内 正明君    理事 上田  勇君 理事 鴨下 一郎君    理事 坂上 富男君 理事 正森 成二君       奥野 誠亮君    河村 建夫君       栗原 博久君    下村 博文君       谷川 和穗君    西川 公也君       福永 信彦君    吉川 貴盛君       渡辺 喜美君    安倍 基雄君       漆原 良夫君    加藤 六月君       西村 眞悟君    福岡 宗也君       冬柴 鐵三君    石毛 鍈子君       佐々木秀典君    保坂 展人君       笹川  堯君  出席国務大臣         法 務 大 臣 松浦  功君  出席政府委員         法務大臣官房長 頃安 健司君         法務大臣官房司         法法制調査部長 山崎  潮君         法務省刑事局長 原田 明夫君         法務省矯正局長 東條伸一郎君         法務省人権擁護         局長      大藤  敏君         法務省入国管理         局長      伊集院明夫君         公安調査庁長官 杉原 弘泰君  委員外出席者         警察庁警備局公         安第三課長   伊藤 茂男君         警察庁警備局外         事課長     米村 敏朗君         外務大臣官房領         事移住部邦人保         護課長     水野 達夫君         海上保安庁警備         救難部警備第二         課長      小原 正則君         海上保安庁灯台         部監理課長   山下 恭弘君         最高裁判所事務         総局総務局長  涌井 紀夫君         最高裁判所事務         総局人事局長  堀籠 幸男君         法務委員会調査         室長      河田 勝夫君     ――――――――――――― 二月十七日  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二二号) 同月六日  夫婦別姓選択制法制化に関する請願(辻元清  美君紹介)(第六一号)  同(金田誠一紹介)(第七九号)  同(桑原豊紹介)(第八〇号)  同(坂上富男紹介)(第八一号)  同(葉山峻紹介)(第八二号)  同(濱田健一紹介)(第八三号)  同(松本惟子君紹介)(第八四号)  同(中川智子紹介)(第九八号)  同(葉山峻紹介)(第九九号)  同(秋葉忠利紹介)(第一〇八号)  同(北村哲男紹介)(第一〇九号)  同(中川智子紹介)(第一一〇号)  岡(肥田美代子紹介)(第一一一号)  同(秋葉忠利紹介)(第一三〇号)  同(秋葉忠利紹介)(第一四二号)  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (辻元清美紹介)(第七一号)  同(土肥隆一紹介)(第一〇〇号)  同(秋葉忠利紹介)(第一一二号)  同(坂上富男紹介)(第一一三号)  同(松本龍紹介)(第一一四号)  子の姓を出生時に決める夫婦別姓選択制法制  化に関する請願金田誠一紹介)(第七二号  )  同(桑原豊紹介)(第七三号)  同(佐々木秀典紹介)(第七四号)  同(坂上富男紹介)(第七五号)  同(細川律夫紹介)(第七六号)  同(松本惟子君紹介)(第七七号)  同(佐々木秀典紹介)(第一〇一号)  同(細川律夫紹介)(第一〇二号)  同(北村哲男紹介)(第一一五号)  同(佐々木秀典紹介)(第一一六号)  同(肥田美代子紹介)(第一一七号)  同外一件(山花貞夫紹介)(第一一八号)  子の姓を出生時に決める夫婦別姓選択制度の法  制化に関する請願(辻元清美紹介)(第七八  号)  同(土肥隆一紹介)(第一〇三号)  同(秋葉忠利紹介)(第一一九号)  同(坂上富男紹介)(第一二〇号)  同(松本龍紹介)(第一二一号)  選択的夫婦別姓制度法制化に関する請願外三  件(石毛鍈子君紹介)(第一〇七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月十七日  法務局出張所統廃合計画等に関する陳情書  (第一四号)  愛知県の法務局出張所適正配置に関する陳情  書  (第一五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政法務行政及び検察行政、国  内治安人権擁護に関する件      ――――◇―――――
  2. 八代英太

    八代委員長 これより会議を開きます。  裁判所司法行政法務行政及び検察行政国内治安人権擁護に関する件について調査を進めます。  この際、法務行政等の当面する諸問題について、法務大臣から説明を聴取いたします。松浦法務大臣
  3. 松浦功

    松浦国務大臣 委員長を初め委員皆様には、平素から法務行政運営につきまして格別の御尽力をいただき、厚く御礼申し上げます。今後とも皆様格別の御理解と御協力をいただいて、法務行政の各分野にわたって全力を尽くしてまいる所存でございます。  それでは、法務行政に関する所信一端を申し述べさせていただきます。  現内閣が掲げる、国民一人一人が将来に夢や目標を抱き、創造性チャレンジ精神を存分に発揮できる社会等目標を実現していくに当たっては、安全で安心できる国民生活を確立することが重要です。そのためには、国民生活の安定を確保し、国家の平和と繁栄を図るための基盤ともいうべき法秩序が揺るぎなく確立され、国民一人一人の権利が十分に守られることが極めて重要であると考えております。  私は、こういった認識のもとに、新しい時代要請を踏まえつつ、法務行政の各分野にわたり適切な方策を講ずるよう全力を尽くしてまいりたいと考えております。  まず、第一は、治安確保及び法秩序維持についてであります。  国民一人一人が安心して暮らせる社会を確立するためには、各種犯罪に対して厳正に対処し、治安確保法秩序維持に万全を尽くさなければなりません。  我が国は、これまで主要先進国の中にあって、比較的良好な治安を享受してまいりました。しかし、国内外の社会経済情勢が大きく変動しつつある中で、最近の我が国犯罪情勢を見ますと、事件数の面において目立った変化は認められないものの、殺人、強盗、誘拐等国民生活の平穏を脅かす凶悪重大事犯が依然として後を絶たず、各種規制薬物若年層にも浸透するなど薬物事犯も深刻化しております。いわゆる住専等破綻金融機関をめぐる大規模な背任事件債権回収を妨害する事犯、巧妙かつ多額に上る脱税事犯証券取引をめぐる不正事犯中央省庁幹部公務員による悪質な汚職事犯など、我が国経済行政の根幹にもかかわり、国民がその真相解明を強く期待する事犯が相次いで摘発されるに至っております。さらに、諸外国との間において逃亡犯罪人の引き渡し、捜査共助等を要する事件も増加するなど、犯罪国際化傾向も一段と強まっております。  私は、このような犯罪情勢を的確に把握しつつ、変動する時代要請にこたえ得る検察態勢の一層の充実を図り、安全で公正な社会確保に努めてまいりたいと考えております。  近年、暴力団等による薬物銃器事犯オウム真理教関係者による一連の凶悪事犯等、悪質な組織的犯罪が多発しておりますが、こうした犯罪に適切に対処するためには、事案の真相を解明して厳正な処罰を行う必要があるところ、現行の法制度では十分にこれに対処することが困難な面があると考えられます。国際的にも、この問題に対する各国の協調した対応が強く求められ、主要国におきましても法制度整備が進んでおります。そこで、この種の犯罪に対処するため、刑事実体法及び手続法整備を図る必要があると考え、昨年十月、法制審議会に諮問を行ったところであり、その答申を得た上で、できる限り早期法案国会に提出いたしたいと考えております。  なお、オウム真理教に対する破壊活動防止法適用の問題につきましては、昨年七月十一日、公安調査庁長官が、公安審査委員会に対し解散指定処分請求を行いましたが、公安審査委員会は、慎重な審査を経た後、去る一月三十一日、本件請求を棄却する決定を行いました。私としては、公安審査委員会のこの決定は、法と証拠に基づいて慎重に検討された結果であると理解しており、その結果を厳粛に受けとめています。公安審査委員会決定書で、オウム真理教については、明白な将来の危険性までは認められないものの、現在なお危険性が存在すると指摘されておりますので、公安調査庁において、今後もオウム真理教に対する調査を継続し、公共安全確保に万全を期する必要があるものと考えております。  第二は、犯罪者に対する矯正処遇更生保護についてであります。  言うまでもなく、安全で平穏な社会確保するためには、犯罪者矯正処遇更生保護に万全を尽くし、犯罪者社会復帰の援助に努めなければなりません。  犯罪者矯正処遇につきましては、改善更生に多大な困難を伴う暴力団関係者薬物事犯者累犯者等が高い比率を占める一方、外国人収容者が急増するなど、依然として困難な諸問題に直面していますが、引き続き被収容者の特性、犯罪傾向等に応じた適切な処遇に努めてまいりたいと考えております。また、最近の非行少年の特質、多様な問題性等にかんがみ、その立ち直りを図るため、従前にも増してきめの細かい配慮のもとに適正な処遇、鑑別に努力してまいりたいと考えております。  矯正処遇充実のためには、施設整備が欠かせませんが、矯正施設のうちには、老朽化しあるいは狭隘なため、緊急に整備を要するものが多数存在いたします。特に、東京拘置所は、凶悪犯罪被告人等が多数在監し、首都圏治安維持するために極めて重要な拘置所でありますが、老朽化のため保安事故危険性増大するなど、施設管理運営していく上で深刻な問題を抱えており、公共の安全を確保するためにも、早期完成を要する施設であります。法務省といたしましては、今後も引き続き、東京拘置所を初めとした矯正施設整備充実を図りたいと考えております。  また、犯罪非行を予防し、罪を犯した者や非行に陥った少年の再犯を防止しつつその社会復帰を図ることは、刑事政策上極めて重要な意義を持つことにかんがみ、今後とも犯罪予防活動及び保護観察の効果的な実施に努めますとともに、平素から献身的な御協力をいただいている民間の個人や団体との連携を一層密にして、更生保護の実を上げてまいりたいと考えております。  第三は、民事行政事務効率化民事法改正及び訟務事件処理等についてであります。  国民一人一人の重要な権利の保全にかかわる民事行政事務につきましては、国民の利便に配慮した事務効率化と窓口のサービスの一層の向上に努めてまいりたいと考えております。  民事法改正に関しましては、法制審議会において商法改正につき検討が進められてまいりましたが、去る二月十四日に改正要綱答申が得られたところであります。  この改正趣旨は、会社合併手続簡素合理化を図るとともに、あわせて、株主及び会社債権者を保護するため、合併に関する情報の開示を充実させようとするものであります。この答申を踏まえ、商法等の一部改正案を作成して今国会に提出いたしたいと考えております。  また、民法につきましては、昨年二月に改正要綱答申をいただいておりますが、民法改正は、国民生活に密接なかかわりを有する重要な問題であり、特に、選択的夫婦別制度の導入につきましてはなおさまざまな御意見があるところでありますので、問題の所在を正しく御理解をいただいた上で関係方面において適切な御議論をしていただき、国民皆様方の御理解を得ることができる状況改正法案国会に提出するよう、努力してまいりたいと考えております。  なお、最近における情報機器及び通信手段の急速な発展、普及を背景として、電子ネットワーク上における取引が活発化してきておりますが、このような電子取引に関する法的整備やその安全を保護する制度整備は、必ずしも十分とは言えない状況にありますので、民法及び商法等民事基本法の立場から検討を加え、法的整備必要性等について研究するとともに、公証人制度及び商業登記制度等既存の関連する制度の変革のために必要な手当てについても検討してまいりたいと考えております。  訟務事件処理につきましては、近年における科学技術の進歩、社会経済構造変化国民行政に対する期待の増大権利意識高揚等を反映して、事件数は依然として高い水準にあるばかりでなく、質的にも複雑困難なものが増加する傾向にあり、その中には、訴訟の結果いかんが、国の政治、外交、行政国民生活等に重大な影響を及ぼすものも少なくありませんので、引き続き訟務事務処理体制充実強化を図り、適正、円滑な事件処理に努めてまいりたいと考えております。  第四は、人権擁護行政についてであります。  人権擁護は、憲法の重要な柱であり、民主政治基本でもあります。すべての人々が人権を尊重され、差別を受けない社会をつくり上げるため、人権についての正しい認識を広めていかなくてはなりません。  人権擁護行政につきましては、各種啓発活動によって国民の間に広く人権尊重思想が普及高揚するように努めるとともに、具体的な人権に関する相談や人権侵犯事件調査処理を通じて関係者人権尊重思想を啓発し、被害者の救済にも努めてまいりたいと考えております。特に、昨今、大きな社会問題となっているいじめ、体罰、不登校、児童虐待などの子供の人権問題、我が国社会国際化に伴う外国人人権問題、部落差別を初めとする各種差別問題につきましては、関係省庁とも緊密な連絡をとりながら、一昨年から開始されました「人権教育のための国連十年」の趣旨を踏まえて、一層きめ細かい啓発活動を行ってまいりたいと考えております。  また、法律扶助制度は、国民の裁判を受ける権利を実質的に保障するために極めて重要なものでありますから、今後ともその充実に努めるとともに、我が国にふさわしい制度あり方について抜本的な検討を進めるために必要な調査研究にも積極的に取り組んでまいりたいと考えております。  なお、さきの国会において御審議をいただき成立いたしました人権擁護施策推進法趣旨を踏まえ、今後も人権擁護に関する施策を推進するとともに、審議会によって答申等がなされました場合には、これを最大限尊重し、答申等を踏まえ、必要な措置を講じてまいりたいと考えております。  第五は、出入国管理行政充実強化についてであります。  国際化の著しい進展により、出入国管理行政が果たす役割は、ますます重要なものとなっております。  出入国管理行政においては、国際協調国際交流の増進への寄与、及び我が国社会の健全な発展確保基本理念としつつ、この理念に沿って、外国人の円滑な受け入れの促進を図るとともに、不法就労外国人問題に対する効果的な対策を推進していく必要があります。我が国と諸外国との間の経済的、文化的交流拡大等に伴い、本邦に入国する外国人は、年間約四百二十五万人に上っており、その活動内容はこれまで以上に多様化しております。また、その一方で、そのほとんどが不法に就労していると思われる推計約二十八万五千人の不法残留者が存在し、加えて、近隣諸国からの集団不法入国事件の発生が顕在化しつつあり、これが社会問題化いたしております。このような出入国管理行政をめぐる現下の情勢に適切に対応するため、今後も引き続き要員確保等所要体制整備を図るとともに、職員研修充実等に取り組み、より適正な業務運営を推進してまいりたいと考えております。  第六は、司法制度及びそれに関する立法についてであります。  司法試験制度法曹養成制度抜本的改革に関しましては、平成七年十一月に法曹養成制度等改革協議会意見書が提出されております。法務省といたしましては、この意見書趣旨を尊重し、真に国民的見地に立った抜本的改革を実現するための具体的な方策について、関係方面と鋭意協議を進めているところであり、速やかに成案を得るよう、最大限努力を尽くしてまいりたいと考えております。  また、行政改革委員会を初め内外から規制緩和を求める意見が出されている外国弁護士受け入れ制度に関しましては、昨年十二月、日本弁護士連合会との共催により、有識者等から構成される外国弁護士問題研究会を発足させ、外国弁護士受け入れ制度あり方等に関する調査研究を開始したところであり、速やかに妥当な結論を得るよう、積極的に対処してまいりたいと考えております。  なお、下級裁判所における訴訟事件の適正迅速な処理を図るため、今国会裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を提出したところでございます。  以上、法務行政重要施策につきまして所信一端を申し述べましたが、今国会に提出し、御審議お願いすることになります法案内容につきましては、今後、逐次御説明いたしますので、何とぞ十分な御審議をいただき、速やかな成立に至りますようお願いを申し上げます。委員長を初め委員皆様の一層の御指導、御鞭撻を賜りまして、法務大臣としての重責を果たしてまいりたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いを申し上げます。(拍手)
  4. 八代英太

    八代委員長 平成九年度法務省関係予算及び平成九年度裁判所関係予算につきましては、お手元に配付いたしております関係資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承をお願いします。     ―――――――――――――
  5. 八代英太

    八代委員長 この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所涌井総務局長堀籠人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 八代英太

    八代委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  7. 八代英太

    八代委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西村眞悟君。
  8. 西村眞悟

    西村(眞)委員 新進党の西村でございます。  このたびの大臣所信表明に関して、主に治安維持に関して質問を申し上げたい、このように思うわけです。  今の大臣所信は、やはり法秩序維持治安確保我が国国民生活国民の安全に最大の重大事であるという御認識に立たれておりました。もちろん、それは我が国津々浦々の領域に関してへんぱな部分、殊の部分があってはならないという前提でお話しされたと思うんです。  限られた時間ですから重点的にお聞きしますが、大臣のおっしゃる治安法秩序維持というものは、我が国尖閣列島をも含む我が国領域津々浦々というふうに確認させていただいてよろしいでしょうか。
  9. 松浦功

    松浦国務大臣 お説のとおりと存じております。
  10. 西村眞悟

    西村(眞)委員 ちょっと聞こえなかったので……。
  11. 松浦功

    松浦国務大臣 お説のとおりと考えております。
  12. 西村眞悟

    西村(眞)委員 ありがとうございました。  我が国治安ですが、実は国際情勢との関連において非常な治安上の問題が過去にも発生しておるし、現在も発生しておるわけです。例えば、朝鮮戦争のときにやはり暴力革命を呼号する勢力が火炎瓶闘争をした、文化革命のときには今ベイルートで捕まっているあの方たちが大学紛争という中で造反有理を唱えたわけです。  今、経済格差ということの中で、この巨大な、我が国と隣国との、大陸との経済格差の中で、大臣、先ほど所信で表明されたとおり、密入国者増大がこの二月に入ってからもいろいろ新聞、そしてまた映像で見られるわけですが、それに対して、取り締まりの海上保安庁の涙ぐましい、荒海で船から船へ跳び移るという行為を我々はテレビ画面で見ておるわけです。  しかしながら、経済格差のみで密入国者我が国に来るわけではありません。ここに一つの、先ほど大臣所信では触れられなかった重大な犯罪、つまり我が国領土を否定して我が国領土に侵入してくるという犯罪が発生してきているわけです。つまり政治目的による領海侵犯密入国。つまり尖閣諸島の問題。これに対していかに対処するか、これは我が国法秩序を守る法治国家ならどうしても避けて通れない問題でございます。  そこで、また御確認させていただきたいのですが、二月に入って報道されておる、伊豆半島の下田とか八丈島に密入国集団が来ておるというこの動機は、主に経済的な、日本で稼ぎたいという動機である。昨年来話題になっている領海に対する侵入と尖閣列島への上陸は、とれは領土権の主張という政治目的である。ここに明確な違いがあると私は認識しているのですが、大臣はこれはどう認識されておりますか。
  13. 松浦功

    松浦国務大臣 最近の密入国集団密入国事件は、ほとんど表向きは経済が絡んでいる、こういうことになっております。もちろん不法入国をするのに政治目的だなんということは言うはずがありませんから、そういうことになっております。  やはりこれからの問題としては、不法入国については徹底的にこれを取り締まるということよりほかに道はないのではないかと考えております。そのために、要員確保その他について最大限努力をしてまいるということをお話を申し上げておきたいと思います。
  14. 西村眞悟

    西村(眞)委員 ちょっと重要なことなので。  今、尖閣列島に対する不法入国領海侵犯の点については明確にお触れがなかったのです。あれは政治目的なんですか、それとも稼ぎに来ておるのですか、いずれですか。
  15. 松浦功

    松浦国務大臣 必ずしも私のお答えが当たっているかどうか知りませんけれども、あそこに経済的な目的というのはあり得ない、そうなるともう片一方の方だということにならざるを得ないと思います。
  16. 西村眞悟

    西村(眞)委員 それではお聞きしますが、現段階での尖閣列島周辺周辺海域で日常的な警備行動はなさっておるのでしょうか。なさっておるとすれば、いわゆる装備、そしてその密度等を御答弁いただきたいと思うのです。
  17. 小原正則

    小原説明員 尖閣諸島周辺におきましては、海上保安庁が、航空機は随時でございますけれども、巡視船は常時あの海域に配備して領海警備に当たってございます。
  18. 西村眞悟

    西村(眞)委員 航空機はございますけれどもということは、航空機が飛ぶ密度等々はお答えいただけますか。それともう一つ、船について、何隻が常時おるのか、具体的にお答えいただけますか。
  19. 小原正則

    小原説明員 航空機につきましては原則一日に一機、一哨戒でございます。それから巡視船につきましては二ないし三隻を現在配備してございます。
  20. 西村眞悟

    西村(眞)委員 こういうふうな警備において、しからばお聞きしたい。昨年来、何隻の国籍不明船が我が領海に侵入したのか、何人が我が領土上陸したのか把握しておられるか否か。把握しておられたら、その具体的な人数、そしてできれば何月ごろということでお答えいただけますか。
  21. 小原正則

    小原説明員 領海につきましては、海洋法条約におきまして、領海内を、他国の領海内でございますけれども、ただ単に通航するという無害通航権が認められてございます。したがいまして、あそこの領海に入ったという船、今現在そういう意味では実数はつかんでございません。  ただ、もう一つのお尋ねですが、上陸者につきましては、我が方で四名確認した事実がございます。
  22. 西村眞悟

    西村(眞)委員 何月ごろに四名確認しましたか。それから、先ほど無害通航権のことを触れられましたけれども、無害通航権のことを除外して、尖閣列島上陸するために、その意図を明確にあらわした船というのは把握しておられるのですか。
  23. 小原正則

    小原説明員 昨年、国際関係の動きでいろいろな情勢がございましたが、明確に上陸するという意図を持って入った船というのは、実際にそうだったのかどうなのかはっきりわかっておりませんので、確認はしてございません。ただ、十月七日でございますか、約四十隻の船舶が抗議行動と称して尖閣諸島周辺に入域した事実がございます。
  24. 西村眞悟

    西村(眞)委員 上陸した四名は、何月ごろですか。
  25. 小原正則

    小原説明員 十月七日でございます。
  26. 西村眞悟

    西村(眞)委員 なぜそれら四名を逮捕しなかったのですか。逮捕する気はなかったのか、それとも逮捕する能力がなかったのか、いずれですか。
  27. 小原正則

    小原説明員 尖閣諸島をめぐる事案につきましては、国際関係に与える影響あるいは邦人の安全に与える影響等を総合的に判断しまして冷静に対処するという政府の方針がございます。海上保安庁といたしましても、関係省庁関係機関と協議しつつ、人身事故等不測の事態を起こさないようにということで、細心の注意を払って領海警備最大限努力してまいったわけでございます。  当時、あの現場につきましては、非常に急峻な、危険な岩場であるということから、相手が転倒したり、あるいは海中に転落する等の人身事故の発生する可能性がございました。また、高速で航走する船同士の衝突に伴う船舶の損傷、あるいは乗船者の負傷等の発生する可能性もございました。したがいまして、こういった上陸の阻止ということに当時全力を傾注していたということでございます。
  28. 西村眞悟

    西村(眞)委員 逮捕する意図はなかった、逮捕する気はなかったのだというふうにお聞きしてよろしいのですね。
  29. 小原正則

    小原説明員 その場の状況によるものと考えてございますが、関係省庁協議しつつ、私どもとしては最善の措置をとったと考えてございます。
  30. 西村眞悟

    西村(眞)委員 お答えに直截性がないのでわかりませんが、少なくとも、犯罪を現認して、犯罪に対処する意図がなければ法治国家の秩序は守れない。  また、後半の御答弁で警察比例の原則等々のことを触れておられたと思うのですが、伊豆半島下田で入ってきた人を逮捕する。そうであるならば、さらにそれ以上の犯罪が犯されていると私は思っておるんです。なぜなら、下田に入ってくる密入国者は、我が国経済的に豊かであってそこで稼ぐという個人的な目的であり、ある意味では我が国に敵対の意思はないわけです。  しかし、尖閣列島上陸してくる方の意図は、先ほど法務大臣も間接的に認められたように、我が国に対する挑戦なんだ。したがって、法秩序維持、あの地は私有地なんだ、日本国民の所有地なんだ。それを放置して、逮捕する意図のない我が国政治が果たして独立国の政治なのか、私はそう思う。法務大臣、どう思われますか。
  31. 松浦功

    松浦国務大臣 どうもお答えにくい問題でございますけれども、私、感じとしては、お説のとおりではないかというふうに思います。
  32. 西村眞悟

    西村(眞)委員 答えにくいことばかりを聞くのが私でございまして、しかし、私は、この問題が空洞になっておるときに、我が国の戦後という精神世界の特徴がある、このように思っておるんで、一代で二生を生きられた法務大臣としては、私の申し上げたこともおわかりいただけると思う。  この問題、まだ続きますけれども、北小島に灯台の灯はいまだついておりますか。灯台の灯はついているかその能力、三十キロ四方に灯が届くという能力はあるか否か。  それから、航路標識として許可申請があった昨年の七月二十五日、その許可申請に基づいて航路標識として有効か否か、調査したか否か。調査した結果、能力はどうであったか。調査に基づいて許可したのか否か。許可しなかったとすれば、その理由は何かということもあわせてお答えください。
  33. 山下恭弘

    ○山下説明員 御説明申し上げます。  北小島の灯台は現在灯はついてございます。  申請に関する経緯でございますが、昨年七月十五日に北小島へ灯台が当初設置されまして、七月二十五日に航路標識法に基づきます設置の許可申請が出されたところでございます。その後、台風九号によりまして灯塔が大きく傾いたということで一度申請が取り下げられました。その後、灯台の修復がなされまして、九月十日に再度申請が出されたということでございます。その後、非常に尖閣周辺海域におきまして抗議船が押し寄せてくる、あるいは香港、台湾におきまして反日抗議活動が非常に激しくなる、こういった経緯がございました。  このような情勢にかんがみまして、政府全体としての総合的な判断によりまして、処分を保留するということを十月三日に決定いたしまして、翌十月四日に申請者に伝達した、このような経緯でございます。
  34. 西村眞悟

    西村(眞)委員 灯台の能力については、政治的理由によって申請の許可はしなかった。しからば、その能力については、政治的に理由がなければ許可できる能力であったのか否か。
  35. 山下恭弘

    ○山下説明員 申請書類によりまして我々が審査したところでは、一応審査基準は満たしているというように考えております。
  36. 西村眞悟

    西村(眞)委員 先ほどから、本件問題に触れれば答えにくい問題である、また政治的配慮であるという問題が出てくる。我が国は法治の国であって人治の国ではないのです。  それで、原点に戻ってちょっと考え直す必要ありと思うんですが、この意図が、我が国領土我が国領土でないと否定してそこに上陸して住みつこうとする行為、これは刑法七十七条、内乱罪で言う邦土を僣窃する行為ではないですか。首魁は死刑です。また、外国政府と通謀して、仮に通謀があれば、我が国に対する武力を行使させる目的を持って通謀する行為、これは外患誘致罪。同じく死刑です。少なくとも、本件上陸した者たちを私は見るに、被疑事実としては、その事実を被疑事実としてもいいのではないかと私は思うんですが、法務大臣、いかがですか。
  37. 原田明夫

    ○原田政府委員 刑法の擬律に関することでございますので、とりあえず事務当局からお答えさせていただきたいと存じます。  ただいま委員御指摘の点は、ある仮定の問題を念頭に置かれまして、これについての擬律ということでございますが、それにつきましては、あくまでも一般論として申し上げますと、具体的事件につきましていかなる罰条を適用すべきかということにつきましては、具体的にその状況について、証拠によって認定いたしました事実に基づいて擬律するということが捜査当局また検察当局にも課せられた義務であり、また機能であると存じます。  そういうことで、ある一定事実と仮定してお答えを申し上げるということにつきましては差し控えさせていただきたいと存じます。
  38. 西村眞悟

    西村(眞)委員 私は、仮定の事実について申し上げておるのではありません。  我が国海上保安庁の先ほどの御努力にもかかわらず強行突破して上陸してくる、その人たちのいやしくも被疑事実としては、その意図において我が国領土を否定している、その行動において我が国官憲の制止を無視して上がっている、それによって内乱罪の要件に近いと私は思うんです。  刑法七十七条、「政府ヲ顛覆シ又ハ邦土ヲ僣窃シ」、これは邦土を僣窃です。「其他朝憲ヲ紊乱スル」行為、そして法定刑は「首魁ハ死刑又ハ無期禁錮ニ処ス」です。八十一条、「外国ニ通謀シテ日本国ニ対シ武力ヲ行使スルニ至ラシメタル者ハ死刑ニ処ス」、これが外患誘致です。こういうことに近いということは、私は、架空の問題ではなくて、我が国治安国民のために責任を持つ地位におられる方は、それに対して非常な警戒心を持ってこれに対処していただかねばならない。  治安維持というものは、警察行政というものは、何も起こらないことを目的にするわけです。したがって、何も起こらないことを目的にしますから、何か起こらないように未然に万全の準備を整えねばならないことでございます。  架空の問題ではないんですが、事実の認定を、逮捕しないからできない。本来、国内で起こった犯罪なら、伊豆半島へ上陸した者もすべて逮捕して事実を認定して、その意図を認定して、そして法定法を適用する、これが法治国家のプロセスでございますけれども、尖閣列島に関しては政治的意図で逮捕しない。  したがって、ただ単に経済目的で入国してくるのではなくて、政治的、それも邦土を僣窃するという重大な政治的意図を持っておるという疑いに足る十分な根拠があるのに、逮捕しないからそれを確認できない。したがって、今年もまた来る、こういう事態になっているということを大臣、重々お心にとめておいていただかねば、あなたが今所信表明をされたけれども、これは官僚の書いたきれいごとをあなたが読まれたことになる。  今後、新聞報道によると、中国というところが、香港が返還されてまいります。そして香港には北京の軍が、言葉のわからない軍が入ります。ただ中国としては、天安門事件が終わってからもそうですけれども、常に中華ナショナリズムを刺激することによって国民の目を外に向けて内部を統一させようとする。十二億の巨大な人口を抱えて、言葉も広東語も北京語も福建語もいろいろある国でございますからこういう傾向があって、鄧小平さんが亡くなられた。ファイナンシャル・タイムズを見ますと、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙を見ますと、鄧小平さんが亡くなられた後の反政府活動を抑える方策をまた北京がとるであろう。その絶好の標的が尖閣列島に対するナショナリズムの刺激なんです。ことしまた来ます。ことしまた来るんです。  そこで、我が国はもうぼつぼつ、いやしくも我が国領土なら、そして実効支配をしているなら、そして我が国法治国家なら、ことし領海に入り、また上陸した者を逮捕する意図はありや否や。法務大臣からお聞きしたい。
  39. 松浦功

    松浦国務大臣 日本一国の存亡にかかわる問題でございますので、私からの答弁は差し控えさせていただきます。
  40. 西村眞悟

    西村(眞)委員 答弁されるとおっしゃったのですか。
  41. 松浦功

    松浦国務大臣 差し控えさせていただきたいと申し上げました。
  42. 西村眞悟

    西村(眞)委員 一国の存亡にかかわるという御認識のもとに大臣として答えねばなりません。一国の存亡という御認識を持たれるなら、答弁を逃げられては大臣の職務が務まりません。私はそう思います。
  43. 松浦功

    松浦国務大臣 一国の存亡にかかわる問題でございますので、総理のお考えに私は従いたいと思っております。それで、私の意見は控えさせていただきたいと申し上げておるわけでございます。
  44. 西村眞悟

    西村(眞)委員 質問をまた違う観点に変えます。  今はそういう人々を逮捕もしてない、したがってわからない。しかし、明確にわかったことが、中国の海洋調査船海洋四号、大洋一号が昨年我が国領海を侵犯して、ケーブルを曳航しながら海底資源調査をしておりました。その事実はありやなしや、把握しておられるか否か、お聞きしたい。
  45. 小原正則

    小原説明員 昨年の九月二日でございますが、中国の海洋調査船海洋四号が大正島、尖閣諸島の大正島でございますが、この領海内において私ども確認いたしております。
  46. 西村眞悟

    西村(眞)委員 お答えは聞かなくてもわかっておるのですけれども、明確な主権侵犯がある、こういうことでございます。この事実、大臣、総理の考えに従われるなら総理と早急にこの問題について協議していただきたい。これについては後にまた申し述べます。  尖閣列島我が国領土、また尖閣列島の周囲、我が国領海、ここで我が国の漁民は操業ができる、これは当たり前のことでございます。日本国政府は操業する漁民を守る義務がある、これまた当たり前のことでございます。現在この周辺で漁民が操業できておるのかできていないのか、これについてお伺いしたい。
  47. 小原正則

    小原説明員 水産行政の問題でございますので、制度的な話につきましては私から申し上げることはできませんが、哨戒中の海上保安庁巡視船日本漁船の操業を確認してございます。
  48. 西村眞悟

    西村(眞)委員 政府機関が宮古、与那国、石垣の各漁民に、どういう名目か知りませんが補償金を渡しながら、尖閣列島周辺で漁をしないでくれと頼んでおるらしい。こういう事実は海上保安庁の方は確認されておりませんか。
  49. 小原正則

    小原説明員 海上保安庁ではそういった事実は全く確認してございません。
  50. 西村眞悟

    西村(眞)委員 政治的配慮とか近隣諸国への配慮とか、ある意味では我が国外交というか、これは我が国外交ではない。我が国領土領海に関することも何かに呪縛されておる。したがって我が国は、私から見たら、これでも国家かと言えるぐらいの消極的な姿勢に終始しているわけです。  そこで、法務大臣にちょっと御紹介したい。また、海上保安庁の現場で頑張っておる皆さんにも、私どもが先ほど来、非常に抑制的で、そして相手方の感情を害さずに、ただしその軸だけは失わずに努力してやっていることが中国ではどのように報じられているのかということを御紹介したい。  これは中国の昨年の「中国国防報」という機関紙、これが尖閣列島に関して発表した評論文でございます。  「日本軍国主義は強権と武力で他国を征服してきた。いまの日本経済力によって、東から再起を図り、中国の領土をうかがって武力で占領し、軍国主義の復活を夢想しているのだ」「日本軍国主義の復活の証拠であり、日本政府の新拡張政策の宣言といえる」そして最後は、  「寸土でも奪われるくらいなら、いっそ千金を失った方がましである」。  領土と主権の問題については、このような原則で、十二億中国人民は決して譲歩してはならない。 こういうふうに、私どもから見て非常に控え目な我が国のこの領土に対する姿勢を軍国主義の復活であると論評しておるわけです。  中国の今お読みした論評、最終的な要点だけ申し上げましたけれども、大臣、先ほど来私の質問で御答弁がございましたし、状況はおわかりのことでございますが、このように中国で論評されていることについて、大臣として納得できますか。
  51. 松浦功

    松浦国務大臣 お答え申し上げます。  その問題も非常にいろいろな問題が派生する問題だと思いますので、法務大臣という形では御答弁を差し控えさせていただきたい、こう思います。
  52. 西村眞悟

    西村(眞)委員 大臣がこの問題に答えなければ、我が日本国においてだれが答えるのですか。国民一人一人が防圧するのですか。尖閣列島国籍不明船が押し寄せたときに、日本国民も同じように漁船に乗って海上でぶつかり合えばいいのですか。  中国の海洋における戦略、これは第三者のインターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙、昨年十一月から抜粋した「国際情勢資料」という中にあります。これを御紹介しましょう。南シナ海における中国の海洋戦略についてこれは書いてあります。   九五年初め、中国はASEANの中で最も軍事力の弱い国の一つであるフィリピンから約二〇〇キロ離れたミスチーフ岩礁を占領した。一部のアナリストたちはこの行動を、貴重な石油・天然ガス資源および漁場を確保することを狙った南シナ海へのなし崩しの拡張戦略の一環だとみなした。この岩礁はスプラトリー諸島のうち、フィリピンが領有権を主張する部分にある。  フィリピンは中国の占領行動を非難し、他のASEAN加盟国もフィリピンを支持した。 四行飛ばしまして、  五月、中国政府は中国南部沿岸と南シナ海北部のパラセル諸島周辺の領海の範囲を規定した宣言を発表した。中国の部隊はパラセル諸島を占領した。同諸島についてはベトナムも主権を主張している。アナリストたちは、この宣言により、中国の主権下の海洋の面積は現在の三十七万平方キロから約三百万平方キロに拡大するだろうと語っている。 これが南シナ海における中国の戦略でございます。  領有海域が約十倍になったわけでございます。この南シナ海における中国の戦略が東シナ海において発動される、これを未然に防がねばなりません。そうでなければ、我が国治安維持できない。我が国法秩序がその部分で崩れる。したがって、大臣におかれては内閣の一員として、大臣としての御答弁は、差し控えられるの連続でございましたけれども、総理大臣、防衛庁長官、運輸大臣等々、警備一層の充実のため、そしていかに、再び繰り返させることがないかそのための方策は何かということを協議して、東シナ海が、海が穏やかになるのは三月末からでございます。六月はべたなぎでございまして、今は荒れておりますが、もう時間がないんです。早急に方策を実現する体制を整えていただきたい、このようにお願いを申し上げます。  こうお願い申し上げるのは、御答弁いただきますけれども、ミグ25という戦闘機が函館に強行着陸したことがございました。あのときに、強行着陸して、中からピストル持ってぶっ放して出てきたベレンコ中尉を警察が捕まえに行っていいのか、外務省が行っていいのか、防衛庁が行くのか、全く我が国はわからなかった。したがって、あれは逮捕できなかった。拳銃一つ、小銃一つ、自動小銃一つ持ってなかったらそういう事態になるんです。したがって、ミグ25の教訓を生かして、どうしても今のうちに体制を整えて、そして断固として尖閣諸島問題に臨んでいただきたい。御所見をお願いいたします。
  53. 松浦功

    松浦国務大臣 御意見を十分承りました。その方向で検討をさせていただきます。
  54. 西村眞悟

    西村(眞)委員 これで尖閣諸島に関する問題を一応終わらせていただきます。  それで、これはちょっと司法に対する国民の信頼という部分について危惧する事態が発生したと思われますので、その件について御質問申し上げたい。  これは、言うまでもなく愛媛玉ぐし料大法廷事件に関する新聞報道についてでございますが、二月九日、「玉ぐしに公費 違憲の公算」という一面で朝日新聞が報道したことでございます。これについて、昨日も最高裁の御見解をいただきました。そして、昨日、新聞社二社に対して、共同通信と朝日新聞に対して最高裁が抗議されたということをお聞きしました。抗議されたのは昨日何時ごろでございますか。
  55. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 二社それぞれ時間のずれがございますが、おおよそ昨日の午後、共同通信に対しましては一時半ごろから、朝日新聞に対しましては午後四時ごろから、それぞれ事務総長が社の責任者を呼びまして書面で厳重に抗議を行っております。
  56. 西村眞悟

    西村(眞)委員 抗議されたということは、全裁判官から事情を聞かれた上で、漏えいの事実なきという確認をされて抗議されたわけですか。
  57. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 御指摘の記事は、確かに読者にはどうもこの記事は裁判所の内部から合議の秘密が漏れたんではないか、そういう疑念を抱かせるような記事でございましたので、私ども、記事が出ました最初から、これはゆゆしい問題だと考えまして、今御指摘ございました裁判官を含むいわば審議に関与している者全員につきまして慎重な調査をいたしました。  その結果、内部からそのような合議の内容が漏れたという事実は認められない。他方、報道機関の側からは、この記事は自分たちがもろもろの取材に基づいて、いわば推測で書いた記事であって、裁判所の部内の方から秘密を漏らしてもらったというような事実は一切ないという釈明を受けましたので、そういう事実確認に基づいて抗議をしたわけでございます。
  58. 西村眞悟

    西村(眞)委員 裁判官全員の事情を聞いたとおっしゃった以上、これは触れねばなりません。大野正男裁判官は、三日から十九日までヨーロッパ出張をなさっていたんじゃないですか。
  59. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。
  60. 西村眞悟

    西村(眞)委員 大野裁判官からも事情が聞かれたんですか。
  61. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 具体的にどういう方法でというところになりますと、実はこれは事件審議にもかかってまいりますので、そこは控えさせていただきますが、大野裁判官からも事情は確認した上でこういう措置をとらしていただいたわけでございます。
  62. 西村眞悟

    西村(眞)委員 審議に差し支えるということを言われましたけれども、二月三日から十九日まで海外出張しておった裁判官に対して、どうして、どのようにして聞かれたかということ。また、一時半にこの抗議をされたということは、午前中に聞かれたのか否かという疑問は残りますけれども、内容からちょっと私も見てみたんですよ。  事実認定を仕事とする裁判所において、これほどの事実があれば、やはりこれはこうだろうというふうな経験則があると思うんですが、私申し上げますと、全くの予測記事であれば、朝日と共同の両社が同じ日の朝に報道し得るのか。全くの予測記事であれば極めて不自然である。また、予測記事であれば、第一面でスクープ扱いして報道し得るのか。これも極めて不自然である。全くの予測記事であれば、原告の喜びの記事を載せ得るのか。これも極めて不自然である。  また、記事内容が断定的である。と予測されるとか、そうではないんです。記事記事が断定なんです。違憲判決出るという断定なんです。朝日、「最高裁が憲法違反の判決を言い渡すのは初めてとなる。」断定的なんです。  三つ目、合議があった、そしてその合議の内容は報道されている。合議があったという事実は予測ではわからない。そして、昨日いただいた「愛媛玉ぐし料新聞報道等について」と題するこの最高裁の書面でも、合議があった事実は認めておられる。  そしてもう一つ、最高裁の抗議に対して、朝日、共同が、ともに厳粛に受けとめたと新聞で報道されました。予測であれば、報道の自由に対する裁判所の干渉であると、このようにマスコミは受けとめねばならない。なぜそれを厳粛に受けとめたのか。これも極めて不自然である。  私が四つ申し上げたこの事実を総合すれば、漏えいがあったという事実認定に至るわけです。そして、全くの予測記事であれば、最高裁は、「裁判の公平に対する国民の信頼を失わせるおそれがある」というふうに大騒ぎする必要はないんです。  これは、この最高裁の認識を出されておりますので、水かけ論になりましょうからこれ以上は申し上げませんが、私が先ほど申し上げた事実認定についての、予測記事とすればこれだけの不自然さがあるという認識に関して、何かおっしゃることがあればお聞きします。
  63. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 私どもの方で調査いたしました結果は先ほど申し上げたとおりでございますが、委員御指摘のように、この記事自体、お読みになると、確かに今委員がるる御指摘になったような疑念を抱かせるような記事でございまして、私どもは、その点が、裁判に対する国民の信頼を危うくするという意味で、この記事は非常に遺憾な記事である、そういう趣旨で厳重に抗議をさせていただいたということでございます。
  64. 西村眞悟

    西村(眞)委員 総括的に質問しても仕方がありませんので、五分ほど余りましたから、最高裁のことは今終わりましたので、私の危惧をちょっと申し上げておきます。  佐々淳行さんという方が香港の公安部の方に聞きましたら、香港というのは、昭和四十年には人口三百万、現在六百三十万。香港の公安部の方は、百五十万の出国が予測されるだろう。百五十万人、今年の七月一日までにです。そのうち五十万人は既に米、英、カナダなどの市民権を取得しておるんだ、金持ち層だ。あとの百万は、どうしても北京政府のもとで、天安門事件等の活動のため、いられない人間であろう。この百万が出ていく先が台湾であり韓国であり日本である、こう言っておるわけですね。  それで、私は、尖閣列島をも含む日本周辺海域について、本当に今の体制でいけるのか、海上保安庁の皆さんは、私が一昨日テレビで見たように、荒海で船から船に跳び移るような努力をされているわけですが、現場の努力のみに任せて、政治が無関心であってはならぬ、このように思うわけです。  行政改革の大合唱の中で、行政改革という、この行政の組織というものをいかなる基軸を持って改革するのかという、この議論は余りなされていないのが日本の現状でございますが、大臣、そこは、国防と治安、これは国家の、行政の最も頑張らねばならぬ部分なんです。これが欠ければ我が国は崩壊するのです。したがって、香港から百万の難民が出る可能性が六月三十日に迫っているということも認識されながら、我が国治安に万全を期していただきたい。そのために、行政改革という、総論賛成、各論反対のスローガンなんかに惑わされることなく、信念を持ってこれを強化するのが行政改革だ、治安維持するための組織を。そのように蛮勇を振るっていただきたい、最後の御奉公をしていただきたいと思うわけでございます。御所見をお願いいたします。
  65. 松浦功

    松浦国務大臣 全く御意見のとおりでございます。最後の御奉公をさせていただきます。
  66. 西村眞悟

    西村(眞)委員 時間が余っておりますけれども、これで終わらせていただきます。ありがとうございます。
  67. 八代英太

    八代委員長 続いて、上田勇君。
  68. 上田勇

    ○上田(勇)委員 新進党の上田でございます。  ただいま行われました松浦法務大臣所信表明並びに関連事項につきまして、何点かにわたりまして質問をさせていただきたいと思います。  最初に、前国会において成立いたしました人権擁護推進法について、これはいまだ施行されておりませんが、それらの今後の方針につきまして、前国会での審議内容も踏まえまして、何点か質問をさせていただきたいと思います。  まず、この法律は、五年間の時限立法でございますし、しかも、その中の教育啓発等につきましては、二年で方向性を出すということになっております。審議される内容が極めて重要であるということからすれば、当然、十分、また慎重な議論が行われなければいけないことではないかというふうに思うわけでありますが、その意味では、これは、法律で定められた施行期日がもう少し残っているわけでありますけれども、この限られた期間ということを考えると、やはり速やかに手続を進める必要があるというふうに考えるわけであります。  今後予定されております法律の施行であるとか政令の制定あるいは審議会委員の任命、大臣の諮問など、そういったスケジュールについて、今法務省の方で考えられていることについてお伺いしたいと思います。
  69. 大藤敏

    ○大藤政府委員 今委員御指摘になられましたように、人権擁護施策推進法は昨年の十二月二十六日に公布をされたところでございますが、この法律は、附則におきまして、「公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」ことになっているわけでございまして、現在、その施行に向けて私ども事務局でそのもろもろの準備を鋭意進めているところでございます。  この法律をできるだけ速やかに施行して審議会を発足させることが、委員御指摘のように、大変重要であるというふうに考えますが、その前提でございます委員の人選につきましては、この委員に課せられた任務の重要性ということにかんがみまして、特に慎重に行う必要があります。また、適任者につきましても、その内諾を得なければならないということがございますために、その期間として、どうしてもかなりの日数を要するのではないかということが考えられるわけでございます。  他方、この法律は五年の限時法でございまして、審議期間が大変限られているということがございます。こういうことがございまして、この法律を施行した後、速やかに審議会を発足させまして、実質的な審議に入るとともに、十分な審議期間が確保できるようにいたしたいと考えております。  こうした諸事情から、法律の施行は本年の三月の下旬ごろになるものと考えて今準備をいたしておるところでございます。
  70. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今、いろいろな方面の方々からこの推進法の今後の進み方についていろいろな御心配がある中の一つが、やはりこれは、今局長からも話があったように、非常に限られた時間であって、本当に議論が尽くせるのかどうかということと、それからもう一つは、やはりこの法律というのは、いわば人権擁護推進審議会、これを設置するための手続法でありますので、どういう委員が選任されるかということが大きな関心ということで、いろいろなそういうお話を伺うわけであります。  この点につきましては、前国会でも議論されまして、前国会の答弁の中では、「広い学識経験と専門的な知識を有する人を選任したい。」という御回答がありました。もちろんそのとおりだと思うのですが、その後、もちろん事務方の方ではいろいろともう御検討をしているのではないかということは推察するのですけれども、現時点において、例えばもう少し具体的に、この委員の候補者としてどのような分野の方なのか、また、どのような立場の方々を想定されているのか、そういったことについて、検討状況をお伺いしたいと思います。
  71. 大藤敏

    ○大藤政府委員 現在、事務局のレベルにおきまして、審議会委員の選考分野を主として検討を行っているところでございまして、今後、それを踏まえまして、大臣の御指示を仰いだ上ででございますが、委員候補者について具体的な人選を行いたいというふうに考えております。  それで、もう少し具体的なお話を申し上げさせていただきますが、この審議会審議事項は、推進法で明記しておりますように、人権教育人権啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項と、それからもう一つ人権侵害による被害者の救済に関する施策充実に関する基本的事項、この二つの柱で成っておりまして、これ自体大変広範囲で、しかも専門的な領域に及ぶものでございます。こうした点にかんがみまして、適切でしかも充実した御審議をいただくというためには、この問題について広い学識経験と専門的な知識を有する人材を国民の各層から幅広く選考をして、多様な国民意見が正しく反映されるように配慮する必要があると考えております。  私ども事務局の段階で考えている一応のものといたしましては、これは一般的に申し上げざるを得ませんが、例えば憲法、行政法、あるいは国際人権関係の方、あるいは教育関係などのこうした学者あるいは実務家、あるいは法律実務家、さらには一般の人権に精通した学識経験者といったような方々が一応考えられると思いますけれども、大変重要な選考でございますので、今後なお十分慎重に検討してまいりたいと思っているところでございます。
  72. 上田勇

    ○上田(勇)委員 前国会法案審議の過程におきまして、多くの委員から、この法案成立の経緯を踏まえまして、同和対策とこの法案関係についての質疑が行われました。そのときに松浦大臣は、この同和問題につきまして、極めて重要な一つの問題として残るのが同和問題だという意識でこの法案をつくっているということを申し上げておきますという御答弁をいただいております。こうした認識からすれば、当然審議会委員の中には、もちろんただいまあったように学問的にすぐれておられる方を選任するわけでありますが、単にそういう基準だけじゃなくて、この問題、実態も踏まえまして、同和問題の実態やそうした差別撤廃の人権闘争の実情についてもよく御存じの方、そうした学識経験者の方を選任していただくことが重要じゃないかというふうに思っております。  この問題について、もちろんこの法案成立の経緯からして、こうした運動に携わっている方々からも非常に今そういう懸念のというか、心配されている声もございますので、まずそういった御配慮をいただくようにお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  73. 大藤敏

    ○大藤政府委員 委員が今御指摘になられました点は十分理解できるところでございまして、同和の問題も今後の審議会の重要な審議事項の柱ということでございますし、その他のもろもろの人権問題も大変重要な問題であることには変わりはないと思いますが、いずれにいたしましても、あらゆる人権問題について十分精通をした人を選考することが大切であると考えておりますので、委員の御指摘を十分念頭に置いて今後検討してまいりたいと思っております。
  74. 上田勇

    ○上田(勇)委員 次に、この人権という問題を考えるときに、きょうちょっと触れさせていただきたいのが、いわゆる報道と人権の問題について御質問したいというふうに思います。  この問題、私も関心を持ったのは、平成六年に起こりました松本サリン事件が契機であります。  事件内容についてはもう皆さん御存じのことだというふうに思いますが、この事件を最初に通報いたしました、そして被害者でもありました河野義行さん、あたかも犯人であるかのように報道され、これはテレビでも新聞でも報道されました。著しく人権が侵害されたという出来事がありました。河野さんも、その後、御自分の体験をもとに多くの手記を書かれたり、また書物も書かれているわけでありますが、こうしたものを読み返しますと、改めて、当時の報道内容、そしてまた河野さんの置かれていた状況といったことについて、大変お気の毒な状況だったということを再認識するわけであります。  平成六年の六月二十七日の夜、事件が発生いたしまして、河野さんも当然被害者として病院に運ばれました。まだ病院で入院されているとき、苦しんでいるときに、翌々日二十九日のテレビニュースや各紙の朝刊では、一斉に河野さんがもうあたかも犯人であるかのような報道が行われた。例えばこれは各紙の見出しを見てもそうしたものばかりでございますし、いずれも結果的には全く根拠のないでたらめなものであったということがわかったわけでありますけれども、当時、これらを読んだときに、正直言いまして私も誤った印象を持ったのはそのとおりであります。また、その後も、これは例えば週刊誌、週刊新潮などでは延々とキャンペーンも続けられた。河野さんを本当にこうした意味で犯人扱いをすると同時に、事件とはほとんど関係のないようなプライバシーまで侵害されているようなものもあるわけであります。  私は、こうした報道は本当に河野さんの人権を侵害しているものだというふうに考えるわけでありますし、また、現代社会においてこうした面での人権擁護というのは非常に重要になってきているのじゃないかという認識を持っているわけでありますが、この人権擁護行政、これを所管されている大臣のこの件についての御所見をお伺いしたいというふうに思います。
  75. 松浦功

    松浦国務大臣 マスコミ報道によりまする人権侵害事案、この問題は、報道の自由、表現の自由、いわゆる憲法の規定でございますが、これに関する問題でもありますので、直ちに公的機関が関与するというのが適当かどうかは私ども非常に疑問を持っております。むしろ報道機関全体が自主規制というようなことでこの問題に対処していくのが一番正しいやり方ではないかと思います。  しかし、そういうことにならないマスコミの行き過ぎた報道によって個人の名誉やプライバシーが侵された、こういう事案につきましては、人権擁護という立場から、人権擁護関係機関としても前向きに検討するということがあってもよろしいと考えております。やるべきだと思っております。
  76. 上田勇

    ○上田(勇)委員 私も、マスコミの報道を行政とか公的機関が規制するというのは、もちろん憲法で保障されました表現の自由、こうしたものにも踏み込む危険性の極めて強いものであるので、必ずしも適当でないというふうに考えます。大臣のおっしゃるとおりであるというふうに思います。  もちろん報道機関による自主的な良識ある取り組みに期待せざるを得ない面もあるのですが、同時に、こうしたチェックというのは、政府とか公的機関というよりも、やはり民間の非営利団体、諸外国などの例を見ますとそういったところでチェックをしているというような例もありますし、いわゆる今言われておりますNPO等のそういう組織による国民の監視能力、そういったものを高めていくことが重要なんじゃないかというふうに思います。  そこで、報道を規制するということよりも重要なのは、こうした報道によって人権侵害が行われた場合にいかにしてその被害者を救済するかということじゃないかというふうに思います。河野さんの場合には、比較的早い段階から弁護士を依頼して毅然とした態度で臨まれた、そして、そのことと、その後の事件真相が比較的早い時期に明らかな方向になってきたということで、救済がある程度行われたというふうに思うのです。報道機関なども訂正記事などを多く掲載しましたし、その誤った報道に至った検証などの記事についても書いております。  ところが、河野さんが書かれているいろいろなものの中を見ますと、やはり河野さん、この期間に受けた精神的な苦痛、あるいは、河野さ人の方は当然のことといたしまして、やはり同じ被害者であられた家族の方々の苦痛、そういったことについては全然回復されていないということを随所で述べられております。また、先ほど申し上げましたように、河野さんの場合はそれでもまだ私は多くの事件の中では救われた方じゃないかというふうに思うのですが、ほかにはもっと泣き寝入りせざるを得ないようなケースも多くあるんじゃないかというふうに感じるわけであります。  先ほどから議論させていただいております人権擁護推進法、その審議会でも、人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策ということが重要な一つの柱になっております。こうした問題がとりわけ現代において重要な人権問題になっていることを考えますと、ぜひともこれからこうした問題についても法務省の方で積極的な取り組みをお願いしたいというふうに考える次第でございます。  それで、ちょっと時間が押してきまして、もう一点お伺いしたいと思いますが、裁判官それから検察官の人数のことについて御見解をお伺いしたいと思います。  まず裁判官についてでありますけれども、先日、日弁連の方からも、裁判官の数が余りにも少ないために、裁判官が忙殺されていて、国民が迅速で適正な裁判を受けられないような状況にもう至っているというようなお話をお聞きしました。この増員を裁判所の方から伺うのであれば、それは事務のことなのかもしれませんが、弁護士さんの方からそういう御意見が出ているということは、これはやはり本当に少な過ぎるんじゃないのかなということを考えるわけであります。  それで、いろいろと諸外国状況、数字をちょっと比較すると、もちろんこれは制度だとかいろいろな状況が異なるので単純に比較するべきことではないのですけれども、それでも裁判官一人当たりの人が担当するというのでしょうか、一人当たりの国民の数を比べてみると、日本はヨーロッパの諸国に比べて圧倒的に裁判官の数が少ないというのが、もう統計的にもはっきりいたします。  今後、当然、行政改革や規制緩和、こうしたものをどんどん進めていきますと、従来行政が担っていた役割、これが縮小していくわけであります。そうなると、司法、特に民事関係の司法の役割というのは従来にも増して重要になるんじゃないかというふうに思うわけでありますが、ぜひとも国民権利が守られ、迅速で適正な裁判が受けられる環境が整う必要がある、また、それができなければ行政改革もむしろ進まないんじゃないかということを危惧するわけであります。  今国会では、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案、これが提出されておりますが、裁判官の定員は二十名の増員ということになっております。これではちょっと、到底足りないんじゃないかというような気がするわけであります。また一方、こうした指摘もあるのですね。最高裁は裁判官をふやすのに余り積極的ではないんじゃないかというような指摘が行われていたり、そういう状況を踏まえたときに、裁判官の定員、人数につきまして、現状をどのように評価されていて、今後どのような方針で取り組んでいかれるのか、御意見を伺いたいというふうに思います。
  77. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 御指摘のような社会状況変化を踏まえまして、最近特に民事系統を中心にしまして事件がふえてきておりますし、今後さらに一層ふえていくだろうというのは、我々も同じような予測をしておるところでございます。  やはり裁判所今一番の課題は、こういう事件を、適正という点だけではなくて、スピードの点でも迅速に処理していく、そういう必要があるだろうと思っております。そのためには、もちろん裁判の運営あり方自体いろいろ改善を加えていく必要があるわけでございますけれども、それとあわせまして、今委員から御指摘がございましたような裁判官の数を中心とします事件処理するための人的な体制といいますか、その整備が必要になってくるわけでございます。最高裁の方が裁判官の増員に消極的だということは決してございませんで、数字で申し上げますと、平成四年から昨年平成八年までの五年間の合計数でいいますと五十名を超える裁判官を増加してきておりますし、ことしも二十名の増員をお願いしてきておるところでございます。  実は、裁判官を増員いたします場合、その実際の給源というのは司法修習生に事実上限定されてまいりますので、なかなか、枠だけをふやしていただいても、その給源の状況によってなかなか人数がふえないという問題が一つあるわけでございます。ただ、この点も、最近修習生の増加が図られてまいりまして、従前に比べますと事態がかなり改善されてきておりますので、今後とも適正迅速な裁判に必要な裁判官の人員の確保に我々は力を尽くしていきたい、かように考えております。
  78. 上田勇

    ○上田(勇)委員 もう時間がありませんが、検察官についてもほぼ同じような状況じゃないかと思うのですが、検察官の現状をどのように認識されていて、今後どのような方針で取り組んでいかれるのか、最後に大臣の御見解を伺いたいと思います。
  79. 松浦功

    松浦国務大臣 絶対数が不足しておるという認識でございます。  平成八年度において三十五名、それから今国会平成九年度予算で三十四名、それだけ増員を確保しておりますけれども、今後も引き続いて同様の努力をしてまいらなければいけないものと考えております。
  80. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ひとつよろしくお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  81. 八代英太

    八代委員長 続いて、鴨下一郎君。
  82. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 新進党の鴨下一郎でございます。  二月八日に、東京都の北区、委員長の地元でございますが、中国人の誘拐事件がございました。この事件は、被害者も犯人も含めて中国人で、言ってみれば、日本で中国人同士の犯罪が行われて、それも、現金の受け渡し等については中国で行われ、しかも、被害者不法滞在者であったため被害届を出すのがおくれたということで、なかなかこの実態をつかんで、言ってみれば即時に対応するということが難しかった事案でございますけれども、このことについて法務省はどういうふうな事件というふうにとらえられているか、お聞かせいただきたいと思います。
  83. 原田明夫

    ○原田政府委員 現在、警察当局において捜査中ということでございますけれども、法務当局また検察官といたしましても、本件については国際的にもまたがる大変複雑な面も持つ事件であるととらえていることと承知しております。
  84. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 国際的な犯罪ということでは間違いないのだろうと思いますけれども、言ってみれば、この事件に象徴されるような、外国人が絡んだ犯罪というのが今どうなっているのかというのを、ある程度法務省が把握している段階で、ここしばらくの間、数年間の中でどういう事件があって、どういう事態になっているかということについてお聞かせいただきたいと思います。
  85. 原田明夫

    ○原田政府委員 具体的な数字までただいま持ち合わせておりませんけれども、基本的には、外国人が被疑者になる、あるいは被害者になる事件というのは非常な勢いで増加いたしております。そのうちで、特にやはり覚せい剤を中心とした薬物事犯あるいはそういう外国人の絡む人身傷害の事件等も確実にふえている状況というふうに認識しております。
  86. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 そうしますと、こういうような事件がふえているというようなことで、例えば国際間の捜査に関する連携、法整備については今はどういうような状況で行われているのかということをお知らせください。
  87. 原田明夫

    ○原田政府委員 現在、法制的には、まず国際間で、捜査当局同士でお互いに共助するという点に関しましては、昭和五十五年に法制化していただきました国際捜査共助法という法律がございます。  この法律は、当時、ロッキード事件等のさまざまな国際事件を背景にして、その経験を踏まえて立法されたものでございまして、当時の状況といたしまして、国際的な条約を必要としないで、同様な条件で同様な協力をし合えるということが保証された場合には、かなり広範なお互いの捜査協力ができるということを定めたものでございまして、現在におきましても、この分野法制としては国際的にはかなり進んだものであるというふうに考えております。  また、身柄の処置につきましては、逃亡犯罪人引き渡し法という法制を持っております。これは昭和二十八年につくられたものでございますが、その後、やはりロッキード事件等、国際的なさまざまな事件を教訓にいたしまして、昭和五十二年に基本的な改正がなされました。  この法律におきましても、逃亡犯罪人の引き渡しに関しましても、国際条約を必要としないで、相互に同様なケースについて同様な取り扱いをするという保証がなされた場合には、かなり広範にそのようなお互いに逃亡犯罪人を交換し合えるという法制をつくっていただきました。  この二つの法律は、現在の国際水準からいっても相当進んだものというふうに考えておりまして、いわば手続的には、法制としては相当な協力ができ合えるものと考えております。
  88. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 その法律が、今回の二月八日のこの誘拐事件に関しては何らかの機能をしたのですか。
  89. 原田明夫

    ○原田政府委員 具体的な事件についてのあるいは情報の交換という点につきましては、直接この法律での捜査資料の交換という面を、その事前の段階における情報交換というものを含むものでございまして、直接この法律が対象とした状況ではなかった面がございますが、ただ、それ以外にも、例えば警察当局における国際刑事警察機構でありますとかそのほかの刑事警察相互の協力、また、検察官におきましても、各種の機会をとらえた相互の協力関係というものを推進しつつございまして、その点では、情報交換という点は一般的にはかなり進んでおるのでございますが、本件の場合、中国が絡むいろいろな背景の複雑な経緯があったということで、現在、私どもの方として、どのような状況でこれが掌握されるに至ったかという点につきまして詳しい状況を把握しておりませんが、今後ともそういう点での協力は進めていかなければならないだろうと考えております。
  90. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 今のお答えの中で、結局は機能しなかったということなんだろうと思いますけれども、今回の事件に関して、八日に事件が起こりまして、結果的に十一日に解決した、こういうようなことで、四日間での事件の推移なんですが、こういうふうにどんどんダイナミックに動いていく事件に関して、果たしてこの法体系だけでいいのかどうか、この辺についてどうお考えになっていますか。
  91. 原田明夫

    ○原田政府委員 御指摘のように、法体系だけですべてが賄えるものではないということは、よく自覚しなければならないことだろうと思います。また、国の捜査機関同士の常日ごろからの協力関係と申しますか、相互理解ということも大切になってこようかと思います。  そういった点で、法務省におきましては、今後とも、関係国の関係機関との相互の信頼関係をつくり、また、お互いの手続面での制約ないし法的な面での違いはあろうかと思いますが、そういうことを乗り越えまして、その一致する部分、つまり、関係者人権を守りながら法と正義を守っていくという観点で一致できる点を探しまして、相互に協力していくための努力を続けたいと考えております。
  92. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 昭和五十五年の施行の国際捜査共助法そのものも含めてですけれども、今後、例えば今、中国から不法入国を含めて密入国者が非常にふえているというようなことがありまして、今のお話ですと、例えば中国と個別にそういうようなことで連絡をとり合っているということはあるのですか。
  93. 原田明夫

    ○原田政府委員 実は、中国との間では、中国の法務省また最高人民検察院というのが私どものいわばカウンターパートになるわけでございますが、相互に人員を交流しようということで、ここ数年来、さまざまな形での交流も深めつつございます。これはもちろん、一般的な法制面の理解を進めると同時に、相互の信頼関係をつくっていくということで、広い意味での国際的な相互理解を進めるために有益だろうと思います。  それと同時に、委員御高承と存じますが、法務省には府中にアジア極東犯罪防止研究所という、これは国連の機関として、刑事司法に携わる国際的な機関同士、国同士の相互の、セミナーを開催したり、あるいは研修をしたりする施設を持っておりますが、そこにも中国政府から刑事司法に関係する人たちの参加がこのところ着実にふえておりまして、そういう機会を通じて相互の協力関係も進めていくということに努力いたしておりますし、今後ともそういう面での関係を深めていかなければならないと考えております。
  94. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 大臣、今中国からの不法入国が非常にふえています。そういう意味で、今おっしゃっていたようなことを本当に早急にやりませんと、大変な数の中国の密航の方々が日本の中に入ってしまうというような現実があるのだろうと思いますが、今の法体系の中で、きちんとそれをやり切れないというふうに私は思っているのですけれども、大臣、その辺のところはいかがでしょうか。
  95. 松浦功

    松浦国務大臣 私も、自信を持ってどうこうと申し上げる自信はございませんけれども、ただいまの御指摘をいただきましたので、十分、法務省全体を挙げて、果たしてその必要があるのかどうか検討させていただきたいと思います。
  96. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 今回の事件は、言ってみれば氷山の一角なのだろうと思いますね。むしろ、我が日本の中に、我々が捕捉できていない、言ってみれば不法滞在の方々が相当たくさん存在しているのだろうと思います。その中の一部の事件がたまたま今回顕在化した。  そういうような意味で、ここ数カ月さまざまな報道の中でいろいろと不法入国のことが話題になっていますけれども、今、マスコミ報道なんかでは、昨年の十二月から約二カ月で密航事件は二十二件、人数は七百三十人というようなことも報道されていますけれども、ここのところの、例えば半年、一年ぐらいの密航者の数、そして過去からの推移というものについて教えていただきたいと思います。
  97. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 先生御指摘のとおり、最近、特に中国からの船舶による集団不法入国案件、これが大変多発しておりまして、今ちょっと手元にある数字ですが、平成八年十二月から本年の二月十九日までの間に関係機関が水際で検挙した不法入国者数、これは合計三十二件、八百九十四名、そのうち中国人は二十八件、八百三十三人となっております。  これらの不法集団入国事案というのは、蛇頭と言われる組織などの国内外の密入国ブローカー、こういう人たちが連携して密入国者の勧誘、運搬、出迎え、稼働先のあっせん等を組織的に行っているようでございまして、四囲を海に囲まれました我が国の地理的条件等もございまして、不法入国者全員を水際で阻止するということはなかなか困難な状況にございます。  我が国に潜在する不法入国者数というのは、なかなかこれは、事柄の性質上実態を正確に把握しがたいわけでございますけれども、これまでに摘発した者からの供述等によりますと、相当数の者が不法入国に成功しているというふうに思われます。
  98. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 今回の二月八日の事件も、その事件を起こした犯人たちの供述からいいますと、具体的な動機としては、二月上旬にまとまった人数が密入国する、その密入国のときの手配の代金が入ってくるから、その代金を目当ての誘拐だった、こういうような供述があるそうなのです。  そうしますと、今お答えになったように、たまたま見つかった、密入国の検挙された人たちは八百九十四人だったかもわかりませんけれども、捕捉できなかった人の方がはるかに多いような気がするのですが、その辺のところで、大体どのくらいの数が入ってきてしまっているのかというようなことについてはいかがなのでしょうか。
  99. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 なかなかちょっといい統計がございませんが、被摘発者の供述等から推計した数字でございますけれども、これは平成元年以降、被摘発者の供述によりますと、大体五千人ぐらいが我々の気づかないまま密入国に成功しているのではないかというような推計をしておりますが、この辺はちょっとわかりません。
  100. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 五千人にしても、検挙した人間の約十倍弱の人が入ってきてしまっている。  こういうような現実があるとしますと、私が心配しているのは、密入国者だけが入ってくればいいけれども、それとともにけん銃が入ってきたり麻薬が入ってきたり、それから伝染病が入ってきたり、こういうようなことにもなりかねません。そうしますと、水際でこれだけやっていますよということではなくて、現状を踏まえてどう対応するか、この辺が重要なことなのだろうと思いますけれども、この捕捉できない人たちをどう捕らえていくかというようなことについては、何かいいアイデアを法務省としてはお持ちなのかどうか。
  101. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 不法入国ということは我が国の出入国管理制度を侵害する非常に悪質な行為でございますので、いろいろな方策を考えておるわけでございますけれども、一つは、不法入国者の本国それから経由国がございますが、そこからの不法な出国を防止するということも一つ重要な課題でございまして、不法入国者の出身国、経由国に対して外務省を経由し、また我々自身も、事あるごとに、機会あるごとに、沿岸警備それから出航船舶の立入検査等不法出国防止策を強化するようあらゆる機会に申し入れている、こういう努力は一方でしていきたい。それから、もちろん国内におきましても、関係機関と連携を密にいたしまして、水際での取り締まりはもちろんでございますが、潜在している不法入国者の摘発等を強化していきたい、できるだけの努力はしたいと考えております。
  102. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 その国内に潜在している密入国者たちをどういう形で捕捉していくのかというようなことを伺いたいのです。
  103. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 これはいろいろな方法がございまして、もちろん入管局だけではなくて関係機関の協力も得てやっておりますが、我々自身が内偵をする場合もございますし、それから提報というのも結構ございます。そういうことを通じてできるだけの努力をしているということでございます。
  104. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 正規のビザを取得して入国しても、その後、入ってしまえば後は何とかなるといって不法滞在になっているようなケースもあるように、日本の国内で、一たん入ってしまえば後は野放し状態、こういうようなこともあるというふうに聞いているのです。  そうなると、その辺のところをきちんとしないと、一たんどこからともなく入ってしまえばもうどこにいるかわからない、その中で犯罪だとか何かの温床をつくっていく、こういうようなことにもなりかねないわけですから、その辺のところを先ほど西村委員が、政治的な密航とそれから経済的なものがあると。そういう意味で言いますと、この密航者は多くは経済的な理由なのだろうと思います。そうすると、結果的にはどこかで不法就労していたり何かするわけですから、その辺のところをきちんととらえていくような、そういうような法整備が必要ではないかというふうに思うのですが、そこはいかがでしょうか。
  105. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 法制上は、不法に残留している外国人を我々摘発いたしますれば、強制退去手続に乗せて外国にお帰りいただくという制度になっておりますが、なかなか十分にすべての不法残留者を摘発して強制退去できるというような体制には今のところなっておりませんが、できるだけの努力をしている、こういうことでございます。
  106. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 大臣、とにかく、これからもう野方図にそういうような人たちが入ってしまって、そして、例えば日本の中で、ある日本人の女性たちと結婚をしたりして子供をつくってしまったりということになれども、それはもうどうしようもないような状況になってまいりますので、この辺で、どういった形でそういう密入国者たちを管理し、そしてその後国外に出ていただくかというようなことの方策というのは、これは相当真剣に考えませんといけないのだろうと思いますけれども、私は、もうこの法体系そのものが、今国際的な、こういう非常にボーダーレスの時代の中で十分でないというふうに思っているのですが、法務大臣、どうお考えになっていますか。
  107. 松浦功

    松浦国務大臣 お説のように、法制面における不備がないとは私も申しませんけれども、それより、私どもしみじみ感じますことは、不法入国者をできるだけ捕まえる、あるいは少なくする、そういうことに要する要員が非常に不足をしておるということだと思います。  そこで、本年度、平成九年の予算においても、我が省では七十名近い、六十九だと思いますが、増員が、純増が認められましたけれども、そのうちの半数以上を出入国管理の方に振り向けて、一生懸命不法入国者の減少を図ろうと努力をしております。今後も、そういう基本的な態度を持ちながら、さらに、先生御指摘の法制度面の研究も進めながら効果を上げてまいりたい、このように考えております。
  108. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 人をふやすだけで果たしていいのかという、現場で働いているような方々は、もう皆さん一生懸命やってくださっているのだろうと思いますし、その努力は涙ぐましいことがあるのだろうと思います。ただ、そのことだけじゃなくて、私が申し上げている一つは、法務省の対応そのものが本当の意味で国際化に対応できているのかどうかというようなことなんですよ。  それで、一つ、これはたまたま私の地元で東京拘置所がございまして、そこからイラン人の脱獄がございました。あのときに、私は雑居房の中を見に行ったんですけれども、言葉の問題があるからといってイラン人何人かを一遍に入れて、その人たちがイラン語で共謀していることを看守の皆さんはわからないで、いつの間にか金のこて切って外へ出てしまった、こういうようなことなんですよ。  ですから、初歩的な、言ってみれば、国際社会になってきているこの日本において、法体系をどう整えるかという基本的なスタンスをもう一度考え直さなければいけない時期に来ているのかなと思うものですから、不法入国の問題も、それから東京拘置所の中の外国人管理の問題も含めて、ぜひ国際化に対応するような法務省になっていただきたい、このことをお願いしたいと思うのですが、大臣、最後に答弁をいただきたい。
  109. 松浦功

    松浦国務大臣 まことにごもっともな御意見でございます。十分胸に畳んで努力をしてまいります。
  110. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 ぜひよろしくどうぞ。
  111. 八代英太

    八代委員長 続きまして、佐々木秀典君。
  112. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 民主党の佐々木秀典です。  初めに、お断りをして御理解いただきたいと思いますが、御通告してあります質問ですが、順序をちょっと変えさせていただいて、これも一応そのことをもうお伝えしてはございますけれども、四番目の、いわゆる赤軍派の問題について一番最初に質問させていただきたいと思いますので、どうか御理解ください。  最近、レバノンの治安当局が日本赤軍関係者八人の身柄を拘束した、こういうことが報じられております。この八人のうちの五人は、国際手配中のいわゆる日本赤軍派の幹部、この中には、一九七二年の五月、イスラエルのテルアビブ空港、ロッド空港ですね、ここで自動小銃を乱射して二十四人を殺害、その他大勢の無事の人々を傷害した、その犯人である岡本公三なども入っているわけですね、容疑者が。こういうことが報じられております。また、これについて政府は、二月十七日、現地の大使館を通じて、レバノン政府に対して手配中の幹部五人の身柄引き渡しを求める口上書を渡したということが報じられているわけですけれども、今申し上げましたようなことが事実であるのかどうか、これをまず確認をしたいと思います。
  113. 米村敏朗

    ○米村説明員 お答えいたします。  レバノンの方で日本赤軍メンバーと思われる者が拘束されているという情報がございますけれども、私ども、まだ具体的にこれを確認しているわけではございません。ただし、確認されたならば日本側に引き渡していただきたいという旨の口上書は、先生おっしゃるとおり、先方の方へお伝えをしているという状況でございます。
  114. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 では、重ねてお尋ねをいたしますが、今お話に出ました口上書、これはどういう性格のものですか。だれの名義で出されているものですか、だれあてに。
  115. 米村敏朗

    ○米村説明員 ちょっと失念しておりますけれども、大使館を通じて先方の外務省の方に提出をしているということでございます。(佐々木(秀)委員「作成名義人は」と呼ぶ)たしか大使名になろうかというふうに考えておりますけれども。
  116. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 ちょっとはっきりしないところもあるのですけれども、とりあえずそうお聞きしておきましょう。  それで、日本とレバノンの間には、いわゆる犯罪人の引き渡し条約、これはないのですね。ないといっても、これはレバノンと日本の間だけではなくて、むしろ、犯罪人の引き渡し条約が締結されているのは、私の仄聞するところでは、日本とアメリカだけだ、こう聞いておるのですけれども、これは事実ですか。
  117. 水野達夫

    ○水野説明員 お答えします。  ただいま先生おっしゃいましたように、我が国との間で犯罪人引き渡し条約が結ばれておりますのは、アメリカとの間だけでございます。間違いございません。
  118. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 これが結ばれていれば、ここに条約を私も持っているのですけれども、この犯人の引き渡しということが条約締結国の両国の間で相互に非常にスムーズにいくのだろうと思うのですね。同時に、身柄の引き渡しだけではなしに、その者にまつわる証拠物件ですとか、こういうものの引き渡しも容易にお互い同士で求め合えるわけですね。  ところが、この条約がないということになると、それでも今までは随分こういうこともあって、引き渡しを求めてそれを実行したということもあるわけですけれども、まず最初に、こうお尋ねしましょうか、この犯罪人引き渡し条約締結がどうしてアメリカとの間だけしかないのか。ほかの、レバノンもそうですけれども、それよりも、ドイツだとかフランスだとかイタリアだとかイギリスだとかの間にもお互いに締結されていなかったというのはどうしてなんでしょうか。どんな事情だったんですか。支障はないんですか、それで。
  119. 水野達夫

    ○水野説明員 お答えいたします。  先生おっしゃるように、アメリカとの間だけにしか犯罪人引き渡し条約はございませんけれども、ただ、条約の存在を前提としなくても犯罪人の引き渡しをしている国は多数ございまして、私どもも、今まで相互主義のもとに犯罪人の引き渡しというのが支障なく行われてまいりました。もちろん、条約がある方がいろいろな細部においてよりスムーズにいくという面はございますけれども、実務上はその辺のところは支障なく続いておりまして、そういう意味では、大きな支障は感じておりません。
  120. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 しかし、アメリカとの間では締結されているわけですからね。今もお話しのように、ないよりはあった方がいいんだということならば、各国との間にできるだけこの条約を締結した方が、大臣所信表明でも、これからの国際犯罪に対処するための配慮ということを言われているわけだから、私はこれが必要になってくるのだろうと思うのですね。  今後の問題として、これは法務省あるいは警察当局からの要請もあるのではないかと思うのだけれども、外務省として、これは本当は外務大臣にお答えいただければいいのかもしれないけれども、積極的に各国との間でこの条約を締結していこうというような準備は考えられているのでしょうか、その辺、どうなのでしょうか。
  121. 水野達夫

    ○水野説明員 その辺のところは、相手国との関係もいろいろございますので、その辺のところを十分考慮いたしまして、私ども、総合的に判断して考えたいと思っておりまして、そのような御意見のあることも十分考慮させていただきたいと思います。
  122. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 この機会に、ぜひやはり政府として真剣に考えなければいけないのではないだろうか、取り組まなければならないのではないかと私は思いますね、各国との条約の締結について。  それで、今のお話は、条約が締結されてない国との間でも今まで支障はなかった、こう言われるのだけれども、支障がなかったと言われるのは、どんなように行われてきたのかということになるわけですね。これは、報じられるところによると、外交ルートを通じてなどなどと言われているのだけれども、さて、それではいよいよこの本件の場合に、レバノンに対して犯罪人の引き渡しを求める手続がどういうように行われるのかそれがいつごろになるのか。この辺の見通しと方法、今までの例に倣ってやるのだろうと思うのですけれども、スムーズにいくのかどうか、この辺をお話しいただきたい。
  123. 米村敏朗

    ○米村説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、引き渡しの手続といたしましては、条約によるケースがあるわけでございますが、もう一つ、相手国政府が容疑者を国外退去処分にするという形でありまして、これにつきましては、例えば、昨年六月逮捕いたしました日本赤軍メンバー吉村和江、これはペルーで逮捕したわけでございますけれども、これはペルーが国外退去処分といたしまして、これを受けまして、本邦到着した時点で逮捕したということでございます。  今後の見通しということでございますけれども、何分にも現在まだ確認中ということでございまして、答弁はちょっと差し控えさせていただきたいというふうに考えております。
  124. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 その身柄を拘束している国が国外に退去させる、その退去をさせた後にこちらが逮捕の手続をとる、こういうことになるというわけですか。その時点ほどこなのですか。どの時点なのですか。  例えば、今度の場合には、恐らく航空機で身柄を輸送することが考えられるわけですね。そうすると、こちらが実際に、日本側として容疑者の身柄を拘束できる、これはどの時点になりましょう、例えば航空機で送られることを想定した場合に。
  125. 米村敏朗

    ○米村説明員 お答えいたします。  前例で申し上げますと、ペルーの場合、先ほど申し上げました吉村和江の場合でございますけれども、航空機日本に、成田に到着をした時点で逮捕状を執行ということでございます。  それから、先ほどの口上書の件でございますが、訂正させていただきますが、大使館から外務省に対してということでございます。
  126. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 今の口上書の問題は、大使館からということだけれども、これは大使館の意思というよりは、政府の意を受けた大使館が、その政府の意思を口上書にあらわしている、このように聞いていいですか。いや、確認だけで、よかったら、うなずいてくれればいい。(米村説明員「はい、そのとおりです」と呼ぶ)はい、わかりました。  それから、逮捕の時点の問題は、今のお話のように、航空機で送られた場合はこちらに、日本国内に到着したとき、その時点でこちらが強権的な身柄の拘束をする、こういうことになるということですね。わかりました。  多分、今までも例があるからやっていけるのだろうとは思うのですけれども、ただ、心配なのは、例の赤軍派の幹部たちの問題について言えば、ハイジャックをされて超法規的に身柄を放さざるを得なかったという屈辱的な事実もあるわけね。赤軍派というのは、ひところに比べると確かに勢力も小さくなっている。それから、今度の幹部の逮捕などによっても、国外にあっても国内にあってもかつてのような勢いはないとは言われているけれども、また何が起きるかわからないし、今申し上げたような屈辱的な前例が繰り返されてはならないと思うのですけれども、この辺については警察はどうですか、万全の態勢をとれるのですか。
  127. 米村敏朗

    ○米村説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、今回のケースにつきましても、必ずしも日本への移送につきまして警備上楽観視はできないということでございますので、万全の措置をとって本邦への身柄の確保ということについて詰めていきたいというふうに考えております。
  128. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 身柄を引き受けた後は、日本の法律の刑事手続に従って捜査あるいは訴追ということが行われていくだろう、こういうことになると思います。これは常識ですから、このようなことは確認だけにしておいて、お答えは求めませんけれども、それでよろしいわけですね。はい。それじゃ、この問題はこのくらいにいたします。  次に、例の公安調査庁の長官が昨年オウム真理教解散指定処分の請求をいたしました。これに対して、公安審査委員会が去る一月三十一日、棄却決定をしましたね。これは申し立て側としての長官としては残念な思いがあるのだろうと思うのだけれども、しかし、こういう判断が下されたということはきょうの大臣所信表明の中でも、重く受けとめている、厳粛に受けとめている、こういうお話でした。  ただ、この間、予算委員会で新進党の中井議員がこのことを質問されて、法務大臣とやりとりをされましたね。その中で気になったのですけれども、中井議員の御質問の中で、公安調査庁公安審査委員会もともにこれは法務省の外局だ、同じ省に所属をする一方が申し立てた、請求したことについて、他方がこれを棄却するというのはおかしいではないか、こういうような話があった。それに対して法務大臣は、いや、同じような外局とはいいながらそれぞれの機関は、一つは違うのだ、公安調査庁の方は長官も法務大臣の任命だけれども、公安審査委員会委員というのは総理大臣の任命だ、任命権者が違うというようなお話などをなさった。  だけれども、私はそれだけの違いではなくて、これは法の建前からいっても法務省に所属するといいながら、公安審査委員会というのは、裁判所イコールではないけれども、裁判所に準ずるような準司法的な機関で、任命権者の意思に拘束されない、指揮命令に服さない独立性を持っている機関なんですね。  この点は、もう少しはっきり法務大臣言われた方が私はよかったのではないかと思うのですけれども、今私の言っていること間違いありますか。     〔委員長退席、横内委員長代理着席〕
  129. 松浦功

    松浦国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、破防法の中にも公安審査委員会が独立して判定を下すのだということが書いてございます。先生のおっしゃるとおりでございます。
  130. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 なおその際、中井委員が、公安審査委員会がこのような決定、つまり棄却決定ですね、これをするというのはあるいは当然かもしれない。というのは、この委員の多くが弁護士だ。大体、弁護士会がこの破防法そのものあるいは破防法の適用について反対をしている。だから、委員会のメンバーが弁護士が多いというのならこういう結論が出るということはある意味では当然かもしれないということを言っていたのだけれども、これも私はちょっと違うのではないかと思うのですね、事実と。  というのは、公安審査委員会の現在のメンバーですけれども、本当は七人のところ実際には六人ですね。そして、そのうち純然たる弁護士というのは委員長を務められている堀田勝二弁護士で、その他の方々は、元東京高等裁判所の裁判官、それから元東京高検の検事であった方、それから大学の教授、それから元英国大使の方、元東芝の会長であった方、元日本経済新聞社専務であった方というような方々なんですね。だとすれば、中井さんの言われているような構成じゃないわけですし、今の点、間違いないですか、大臣
  131. 松浦功

    松浦国務大臣 全くそのとおりでございます。  私もそのときに答弁の中に言いましたけれども、非常に人格高潔で判断力の豊かな人ばかりの集まりでございますので、その方々が六カ月もかかって判定を下したのですから、厳粛に受けとめますという答えをしておるのでございます。決して中井先生の御意見に従うという答弁は私はいたしておりません。     〔横内委員長代理退席、委員長着席〕
  132. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 官房長、それでいいですか、今の大臣のお答えで。それじゃ、せいぜいその程度にいたします。  ところで、この決定が出て、各党がそれぞれコメントを出しているのですが、私の所属する民主党では、ここにおられますけれども、法務部会長の坂上部会長と、それから仙谷政調会長の両名の名義で、この際、破防法、公安調査庁の改廃について検討したらどうだという意見。社民党はもう少し、もっと突っ込んでおりまして、破防法はこの際廃止すべきじゃないか、こういうことも言われているのですね。  破防法廃止ということになると公安調査庁も要らなくなるのではないか、こんなことにもつながっていくのじゃないかと思うのですが、一方、法務大臣所信の中では、オウム真理教の問題に触れて、今後も調査の必要があるということを言われているようですね。  そこで、警察としてももちろんオウム真理教については、これからも予防的な観点からの警備、これを怠らないだろうと思うのだけれども、その上でなお公安調査庁として独自の調査というのが必要なのかどうか、公安調査庁の存在意義と役割ということにもなるのかもしれないのだけれども、これは公安調査庁長官にお尋ねした方がいいかな。
  133. 杉原弘泰

    ○杉原政府委員 お答えします。  このたびの公安審査委員会の棄却決定には一事不再理の効力がないことは委員御案内のとおりでございます。したがいまして、一般論としては、今後将来の危険性に関する要件が整えば、再度規制請求を行うこともあり得るわけでありますから、当庁といたしましては、そういう観点から今後とも教団に対する調査を継続して、それによって公共の安全の確保に万全を期したい、こういうふうな立場でございます。
  134. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 公安調査庁調査の実態などということについては、どうもこれが公開されていないというような御批判もあったり、そもそも破防法自体が、成立から今日に至るまでの間に、その法律の性格、運用などをめぐってのいろいろな批判があることはもう御承知のとおり。そういうことから、今後もオウム真理教が確かに問題ありとしながらも、果たしてこれからの調査というのはどういうように行われるかということは、私どもとしてもやはり気にしないではいられないところであります。  きょうは余り時間がありませんので、この程度にいたしますけれども、またこの破防法の問題をめぐり、あるいは公安調査庁調査のやり方などをめぐってひとつ議論をさせていただく機会を持ちたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  それで、時間がなくなりましたので、その他はちょっと無理だと思いますので、三番目の問題。これは、きょうの法務大臣所信の中で、いわゆる悪質な組織犯罪に対する対処の方策ということを言われた。現在の法制では足りないのだ、したがって、実体法それから手続法両面にわたる対処法案として、新しい法整備をする必要があるということを言われています。  その具体的な対処の仕方として、昨年十月法務省は、組織的な犯罪に対処するための刑事法の整備について、法政審議会に諮問をされておられますね。そして、それについては刑事局が参考試案というものをつくられて諮問をされているわけですが、これが法務大臣の言われるその具体的な対処の方法なんだ、こういうふうにお聞きしてよろしいですか、組織犯罪に対処する方策
  135. 松浦功

    松浦国務大臣 そのように御理解をいただいて結構でございます。
  136. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 これもいろいろ議論をしなければなりませんけれども、今法制審議会審議の最中だろうと思うのですね。いずれは形として私どものところにも明らかになってくると思いますが、一応この参考試案、これがありますものですから、それを見せていただいておるのですけれども、いろいろこれはやはり問題があるのだろうと思うのです。  特に、マネーロンダリングの規制の問題だとか、これも犯罪化するというようなことですね。それから通信傍受、いわゆる電話の盗聴を合法化する問題。これは電話の盗聴だけではなしに、電話だとかファクシミリ、コンピューター通信、その他の電気通信についてもこれを傍受するというようなことが、もちろん裁判所の令状を必要とするとはいいながら、考えられているというようなこと。  これについては、昨年の十二月に、これを見た刑事法学者、相当な権威のある方々が早速に声明を出されて、この試案の内容は憲法や刑法、刑事訴訟法の大原則を逸脱するおそれがあるということを言っておられる。これは、一つ組織的犯罪ということについての概念が非常に不明確だし、無限定になるのではないか。そういう無限定な、不明確な概念に基づいて、刑の加重類型を創設するということには疑問があるということを言われている。また、最も重大な問題として、盗聴の合法化の問題がある。これについては、対象となる通信の無限定性が問題だという指摘をされているのですね。  いずれはこういうことについても当委員会でも相当議論しなければならないとは思っておりますけれども、この辺について大臣の御感想、いかがですか。
  137. 松浦功

    松浦国務大臣 明確に憲法に違反するとか、どの法律に抵触するとかいうことが出るならば問題でございますけれども、私は、法律論をするよりは、一件でも多く麻薬の問題あるいは武器の問題、それを取り締まることが国民の利益につながるゆえんではないかということを考えて、ともかく関係方面と十分論議をした上で、何とか法律案国会に提出をいたしたいという気持ちでいるのが現在の心境でございます。
  138. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 大臣はああおっしゃっておられるわけですが、刑事局長のお考え、それから今後の方向などについてお尋ねをしたい。  それから、今私が指摘したような刑法学者などからの批判的な意見について承知しておられるかどうか。
  139. 原田明夫

    ○原田政府委員 ただいま委員お触れになりました点を含めまして、さまざまな議論のあるところだということは承知いたしております。現在、法制審議会刑事法部会で極めて広い観点から熱心な御議論をいただいておりまして、しかし、基本的な方向としては、やはり現在の社会において新しく生じつつあるようなさまざまな問題、特に犯罪が組織的な形で行われていく、それに対して我々の社会がもう少し対応していいのではないかという点については、基本的な支持というものは得られるものだというふうに私は思っております。  しかし、委員の御指摘のような点からも、細心の注意を払って論議を重ねていただきまして、そして一日も早く合意が得られるような形で御答申がいただけ、それに基づいて政府としての案ができて、国会で御議論いただけるように願っている次第でございます。
  140. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 捜査の必要は理解できないことはない。それによって何とかそういう集団的な犯罪、組織的な犯罪も防止したいというお気持ちもわからないではない。しかし、何といっても事は人権の問題にも深いかかわりを持っております。試案を見せていただく限りでは、確かに刑法学者の指摘のように、刑法、刑事訴訟法あるいは憲法そのものにもいろいろやはり関係をしてくる部分が相当ありそうに私どもとしては思っております。  したがいまして、慎重の上にも慎重に考えていただきたいと思うし、また、これが具体的な形であらわれました場合には、しっかりと私どもとしても議論をさせていただきたいと思っております。そのことを申し上げて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  141. 八代英太

    八代委員長 続きまして、坂上富男君。
  142. 坂上富男

    坂上委員 私は二十五分だけ時間をいただきました。きのうの夕方からけさにかけまして駆け込みの質問が随分参りまして、質問することがたくさんあるのでございますが、そんなことから、簡単でいいですからお答えいただきたいと思っておるわけでございます。  まず一つは、私も十八日、十九日、それからきょうの新聞報道等を見てみまして、非常にびっくりいたしましたし、真剣に考えなければならない問題が提起されていると思ったわけでございます。それは、警察庁長官狙撃事件の犯行を自認しておる元警察官に対して脳機能の専門家が事情聴取を行っている状況を撮影したビデオが日本テレビによって報道されました。  警視庁は、警察官以外の者に取り調べをさせて供述を得ておられるのか。それから、時間がないから固めてやります。報道された専門家と元警察官との面接状況を撮影したビデオはだれが報道機関に提供したのか。また、こうしたことは元警察官の人権を侵害することになるのじゃないか。それから、専門家と元警察官との面接状況を撮影したビデオが報道されたことによりまして、捜査に差し支えが出ているのじゃなかろうかというようなことを、私は、見ながら、びっくりしながら感じておるのでございますが、まず警察当局、これはどうですかこの三問の質問。簡単に。
  143. 伊藤茂男

    ○伊藤説明員 お答えいたします。  まず、警視庁が、長官狙撃事件の犯行を自認しておるその元警察官に対して、警察官以外の者に取り調べをさせて供述を引き出しているのではないかという御質問に対しましては、警視庁は、元警察官が犯行を自認する点においては変化はなかったものの、彼の供述に今なおあいまいな点や矛盾が認められたことから、その元警察官の供述の真偽を判断する上で、精神状態あるいは健康状態を把握することが必要であると認めまして、昨年の十月以降複数の専門家に面接をさせたものでありまして、事情聴取を行い供述を得ようとしたものではないわけでございます。  それから第二点目の御質問でございますが、だれが報道機関に提供をしたのかということにつきましては、御指摘のそのビデオの放映につきましては、警視庁は全く何ら関与をしていないわけでございます。したがいまして、現在、そのビデオが報道されるに至った経緯等につきまして、事実関係調査中でございます。  そもそも捜査は、事案の真相究明の必要から、またその事件関係者に対する人権上の配慮から、原則として非公開で行っておるところでございます。長官狙撃事件の捜査を鋭意進めている中でこのような報道がなされたことは極めて遺憾であると考えておりますし、捜査に支障が及ぶというふうに考えておるところでございます。  以上でございます。
  144. 坂上富男

    坂上委員 報道によりますと、まず、警視庁が脳機能学者にカウンセリングをということで依頼して、軽い睡眠状態で聞き出しているという状況なんでございますが、これは捜査の一環なんですか、それとも治療なんですか何なんですか。そんなことがばんと放映されたのでは、これはなかなか捜査でも問題があるし、治療としてやったと言ったとしてもこれまた問題がある。こういうビデオなんでございますが、一体これはどうなるの。
  145. 伊藤茂男

    ○伊藤説明員 お答え申し上げます。  先ほどもお答え申し上げましたように、この専門家に面接させる目的は、本人の、元警察官の精神状態がどのようなものであるかということを把握することが目的でございまして、それによって供述を得ようとしたものではないということでございます。  現在、元警察官の供述の裏づけ捜査を行っているところでございますが、その裏づけ捜査を行っておる対象の供述というものは、この専門家によって一昨日、昨日報道されたような過程で引き出された供述を対象に裏づけ捜査を行っているものではないわけでございます。
  146. 坂上富男

    坂上委員 これは、治療しているのか、捜査しているのか。捜査の模様が放映された、あるいは治療しておる模様が放映された。いずれもこれは人権問題、もうこれ自体が。承諾したとかしないとかということも、報道で時間的な配置まできちっとしているから余りその点は問題にしませんが、これは私が提起をしたら、これからまたきっと議論が続くと思いますよ。今後、警察はどういう形でこの問題に対処するのですか。  それから、元警察官は、専門家との面接状況を撮影したビデオが報道されることに同意したと思っているのですかしないと思っているのですか警察としては。  警視庁は専門家の睡眠療法を使って事情聴取を行い、誘導によって供述した、こうさっき読んだように言われているのですが、そういうことは本当にないのですか。  この専門家は元警察官の精神状態、健康状態をどういうふうに判断なさっているのですか警察への報告では。専門家はそういうようなことを、どのような手段、方法で元警察官の精神状態を判断されたのですか。これ、ひとつ固めて、きちっと。
  147. 伊藤茂男

    ○伊藤説明員 お答え申し上げます。  まず、今後どのように対応するのか。これは先ほど申しましたように、現在事実関係調査しておるところでございまして、その調査結果を待って、とるべき措置を検討いたしたいというふうに考えております。  それから、本人は、元警察官は同意しておるのかということにつきましては、元警察官は弁護人に対しまして、本件ビデオが報道目的に使用されることに同意していない旨明確に意思表示をしておるところでありまして、弁護人はその旨を記載した文書を当該報道機関に番組が報道される前に送付し、申し入れておると承知しておるところでございます。  それから、専門家はどのような手段、方法で元警察官の精神状態を判断したのかということでございますが、専門家は本人の外観、それから本人との会話のやりとり等総合的に勘案をいたしまして判断したものと承知をしております。  それと次に、本人の、元警察官の精神状態についてどのような所見を聞いておるかというお尋ねでございますが、今回報道されました専門家以外にも、先ほど申しましたように複数の専門家を全体として面接させておるわけでありまして、精神科医を含む複数の専門家によりますと、本人は精神状態に異常はない、健康状態に特に問題はないという所見を得ておるところでございます。
  148. 坂上富男

    坂上委員 もう一つ、二月十九日放映のテレビ、「きょうの出来事」において、元警察官が昨年十二月二日、警視庁あてに提出した保護を求める文書について、警視庁の警察官から書き直しをさせられたと話をしております。同文書は元警察官が自分の意思で作成したのではないのですか、どっちですか。  それから、時間ないから、今度は法務省。  東京地検次席検事は捜査妨害と断定して記者発表しているわけでございます。これ、どうですか。捜査妨害であるとするならば、どういう点が捜査妨害なのか。それから、捜査妨害というのは公務執行妨害罪、捜査やるんですか。この辺どんなふうに、簡単にお二人どうぞ。
  149. 伊藤茂男

    ○伊藤説明員 お答え申し上げます。  当該警察官、元警察官が提出をした文書はあくまでも本人の自由意思で書いたものでございまして、本人も自由意思で書き、自由意思で署名をしておるところでございまして、本人の意思に反するような内容を強制的に記載させるようなことは断じてしていないというふうに承知しております。
  150. 原田明夫

    ○原田政府委員 現在、委員御指摘のいわゆる警察庁長官狙撃事件につきましては、警察当局において所要の捜査を行っているものでありまして、検察官、検察当局も高い関心を持って見守っている段階だと承知しております。  その段階で、恐らく東京地検次席といたしましては、あのようなテレビ報道がなされるということについて事前に承知してなかったわけでございましょう。そして、その中で検察として、いずれはこの事件につきまして判断をすべき段階が来るということは一応想定しなければなりません。そういう面で見守っているわけでございますが、この極めて難しい事件の、これから仮にそういう状況になった場合の捜査の困難さということを考えますと、関係者、特にこの元警察官の供述というものはとても大切なものでございまして、その真偽をどうやって判断していくかということは担当検察官としては極めて重要な責務になってまいると思います。そういう中で、こういうテレビにおけるインタビューが表に出てしまう、しかもそのことが公の事実になってしまうということにつきまして、捜査上極めて問題があるということでそのような所感を述べたものというふうに承知しております。
  151. 坂上富男

    坂上委員 大臣、今の経過はおわかりになりましたか。――わからぬ。まず、わからぬながらお答えいただきましょうか。  国民にとってもどういうふうにこれについて対処したらいいか、私もあなたとしてもわからぬというのは率直な人間的なことだろうと私は思いますよ。治療のためにこういう専門家を治療させにいったのか、あるいは捜査のためにさせておったのか、全然はっきりしてないわけです。結果が大変な事態になると私も思いますよ、これは。殊に、信憑力に大変大きなかかわりのある問題になってきたわけでございます。しかし、また一面、報道の自由というところもあるわけでございまして、これもなかなか難しい話だ。  そんなような観点から、さっき所信表明をされました、法の厳正なる適用という観点から見て、また秩序維持という面から見て、法務大臣としてはこの問題をどうお考えになり、今後どう対処されようとしてますか。
  152. 松浦功

    松浦国務大臣 具体的なこの問題についての見解は避けさせていただきたいと思いますが、一般論としては、当然のことながら、いろいろの過程において法令に触れる事案があれば、法と証拠に基づいて厳正に検察庁としては処理するものと存じております。
  153. 坂上富男

    坂上委員 少し意見もありますが、これ以上言いませんが、これから各先生方からもいろいろの議論が出てくると思います。また私は、これはしなければならぬ大変な問題だなとも思っておるわけでございます。一応私は、この問題は、終わったわけではありません、続行させてもらいまして、別の問題です。  裁判所、何か速記官をことしは採用しない、募集停止をする、こういうことのようでございますが、これはまた大変なことじゃなかろうかと私は実は思っておるわけでございます。  せっかく文章を整理してきましたから申し上げますが、報道あるいは最高裁の説明、日弁連の中間意見書、また、ここに働く職員組合の皆様方説明によりますと、最高裁はこの二月中に、法廷での逐語録の作成方法について外部委託によるテープを起こすことを導入し、あわせて、裁判所速記官の新規の養成を停止することを決定しようとしておりますが、裁判所速記官の養成が停止となると、いずれ裁判所から速記官がいなくなり、裁判所の法廷速記がなくなるのは明らかでございます。  ところで、裁判所で作成する事件記録は公正な裁判を実現する上において基礎的な資料であって、記録は正確で客観的に作成されることが重要であることは言うまでもありません。正確で客観的な記録なしには、憲法第三十二条の裁判を受ける権利が保障されない。  裁判所では法廷速記がとられ、これまでも刑事、民事、重大事件、複雑困難な事件などの適正な処理について必要不可欠なものとして最高裁を初め法曹関係者から高く評価されておることは、最高裁自身が作成した資料を見ても争いはありません。裁判所法六十条の二を見ても、第一項には裁判所に速記官を置くことが規定されております。このまま速記官の養成停止となりますと、この条文自体が有名無実の条文になります。そうした重要なことを国民的な議論もなしに最高裁が独自に決められることには私は強い懸念を覚えているのです。  そこでまず、最高裁判所は法廷での逐語録作成について、なぜ国会の議論を経ずに、外部委託による録音反訳方式の導入と速記官の新規養成停止を決めようとしておられるのか。速記官の養成が停止されれば、そのうち速記官がいなくなり、法廷速記がなくなってしまいますが、日弁連などが指摘するように、多くの問題点を抱えておる録音反訳方法だけにしてしまうのはどういうわけなのか。  それから今度は、職場の職員組合の皆様が言っているのですが、製造しておる日本タイプライター社を訪問して聞き取り調査をした結果によりますと、日本タイプライター社は、経営者を含め、全体として採算割れしない程度であれば少なくとも頑張ってつくっていくとのことであると答えております。そういうタイプの確保については最高裁はどのような努力をされたのか、努力を続けてもなお将来的にこのタイプの確保は困難だという根拠はあるのでございましょうか。  また、速記官の採用試験の応募者も平均一千名前後もありまして、合格率は平均二十倍となっておるわけであります。このごろ司法試験より難しくなったんじゃないの。適性のある人材は少なくということが、応募者の増減にかかわらず合格者は毎年四十五名前後と二足しておって、人材確保は困難だという考えはないのであります。全国の高校、短大など相当数あるが、これまでこのような募集活動を行ったのか、努力を尽くしてもなお人材確保は難しいというのか、その辺。  それから、外部委託による録音反訳方式でも、裁判で最も重要であるとされる正確性、客観性が損なわれることになりはしないか。最高裁判所の行った録音反訳検証実験の結果を分析した日弁連の報告書によりますと、録音や反訳書、校正の仕方などや最高裁のデータ自体に対する多くの疑問が言われておるわけでございます。  実例はもう省かせていただきますが、そういうような状況でございます。  ひとつ、裁判所も言い分はあるのでございましょうが、的確な御答弁を賜りましょうか。
  154. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 ごく簡単に御説明いたします。  御承知のように、裁判所の速記の特徴は、速記タイプという特殊な機械を使って打つ速記でございまして、今一番の問題は、今の裁判では速記を必要な事件というのはどんどんふえてきておりますが、今の速記システムでは量的な面でとても今裁判に出てきております速記録の需要にこたえられない。  簡単に言いますと、この機械速記というのは、先生御承知のように深刻な職業病の歴史を抱えておりまして、一人の速記官が立ち会います時間というのは延ばせない。今平均的なそれで言いますと、一回当たり一時間以内の立ち会いを週に二回程度が限度でございますので、なかなかこの制度では増大してまいります事後調書の需要に応じ切れない。片や民間では、今どういうふうな議事録の作成方法がとられておるかといいますと、速記ではなくて、録音テープを直接文章に起こすという形の録音反訳方式がもう一般になってきておるわけでございます。  そういうふうな状況を踏まえまして、裁判所でも、今後の裁判のあり方ということを考えてまいりますと、こういう新しいシステムを考えていかないと適正な裁判が行えないようになる。そういうふうなところから、今回録音反訳制度を導入しようということになったわけでございます。  ただ、誤解のないように申し上げておきたいのですが、今八百名ほど速記官がおりますが、この人たちの仕事を変えるという意味ではございません。この人たちには今までどおり、機械を使って速記をしてもらいまして、それと並行して録音反訳の方式を導入する。もちろん新規の養成を停止しますので徐々に速記官の数は減ってまいりますが、相当の時間をかけて、緩やかに新しい方式へ移行していこう、こういうふうなことを考えておるというところでございます。
  155. 坂上富男

    坂上委員 最高裁の言い分はわかっているのです。私は募集停止することに問題があると言うのです。  それから、これが国会で議論になったのは今初めてなのではないでしょうか。こういうような重要なことにかかわることでございますから、国会で十分な議論が僕は必要だろうと思っているわけでございます。したがいまして、裁判所だけで拙速に決めることは、司法の、裁判という観点からも非常に問題だと私は思っておるわけであります。国会での論議を待って、慎重に対応されることを期待をいたしまして、これも今後、各先生方から意見が申し述べられると思います。二月を過ぎればもう採用しなくて大丈夫だなんて思わないで、本当に真剣に、私は議論をしながら、この問題の解決をさせていただきたいなと思っておるわけでございます。  しかも、私は、これが導入されたときの議事録を見ました。この導入されたときはどういうふうに皆さん考えていたのですか。これはもう日本の裁判が続く限りこういう制度をやろう、こういうわけでしょう。国会の答弁も、みんなそうなんだよ。私は今これを持ってきている。そうしたら、裁判所、何を言っているのです。タイプが今後できなくなります、それから職業病が出てきて容易じゃありませんとか、いろいろのことをおっしゃっているのでございますが、最高裁判所はそんな見通しで政策の申し出をしているのですか、裁判のやり方を決めておられるのですか。これだと、最高裁判所を信頼するわけにいきませんよ。でありますから、もう一度、国会の議論になって、なぜ速記官を入れるかということ、そして速記官を入れることによって、日本の裁判が続く限り、このものよりもよくならない限りは、今の状況が続かなければ、私はいかぬと思っているわけでございます。  どうぞ、裁判所、もう少しよく検討していただきませんと、裁判所が本当に、私が弁護士やったのが二十七年なんですが、間もなく入れられて、本当にこれ、確かに持って歩くの大変ですよ、リュックをおぶって、裁判所を行ったり来たりしているのですから。それだけ大変なのだけれども、それほど、正確に、客観的な判断をもらうために、みんながそうやっておるわけでございます。それが一挙に、こういうようなことがまた別のやり方になったとしたら、これは大変です。私ら決して誤解してません。  ことしの募集停止ということが、裁判全体に大きな影響を及ぼす、しかも国会でもっと議論を尽くすべきだ、こういうふうに私は思ってこの問題を実は提起をしておるわけでございますので、裁判所の方も、拙速にならないで、もう少しひとつ御検討賜りますこともお願いをしたいと思っておるわけでございます。  さて、もう時間がありません。殊に、ちょっと日本赤軍の話も聞きたかったのでございますが、せっかくでございますから、一言だけ聞かせてください。  何か日本に着いたら逮捕するというのですが、岡本でございますが、これはイスラエルで判決を受けたのではないでしょうか。判決の執行を受けたのだったろうかどうだろう。執行はイスラエルがやってしまうということが第一次のあれになるのではないでしょうか。日本に来るのですか。それで、逮捕できるでしょうか。まだいろいろ聞きたかったのでございますが、これだけ一つ、せっかくのあれでございますから。
  156. 原田明夫

    ○原田政府委員 法の適用問題でございますので、とりあえず私からと思いますが、先ほど答弁ございましたように、現在身柄の確認中ということもございまして、それに基づく今後の措置については慎重にならざるを得ませんが、基本的に申し上げますと、岡本公三につきましては、今委員御指摘のとおりイスラエルで判決がございまして、受刑中、ある種の措置で、これはイスラエル政府と何らかの形での交渉があった際に、交換ということで釈放されたというふうな情報もあるわけでございますが、そういうことも含めまして、今我が国関係でいえば、殺人罪というのは国民の国外犯ということになりまして、我が国にも関係のある事件ということにもなるわけです。  そのあたりを踏まえまして、今後どうするかという点につきましては、警察当局によって第一次的に判断をいたすと思いますが、私どもも関心を持って今後協議してまいりたい、そのように考えております。
  157. 坂上富男

    坂上委員 もう一点だけ、外務省、せっかくですから。今拘束されているというのですね、五人が。だけれども、だれらかかはまだわからないというのですが、何で拘束されているのですか、逮捕ですか。どこにいるのですか。
  158. 水野達夫

    ○水野説明員 今、警察庁の方からお答えがございましたように、細部につきましては今確認中でございまして、とりあえず私ども、レバノン政府から聞いておりますのは、拘束したということだけを聞いておりまして……(坂上委員「だから、そこは逮捕なんですかと聞いているのです」と呼ぶ)その辺の法的関係も含めて、今確認中でございます。(坂上委員「わからぬの、まだ」と呼ぶ)今、鋭意レバノン政府の方に……
  159. 坂上富男

    坂上委員 だけれども、そんなのは一言なのだよ。何だか知らぬけれども、これももったいぶったような答弁ばかりが続いているね。もう少しきちっと、警察はわからぬかね、何で拘束と言っているの。逮捕なんじゃないの、どうですか。
  160. 米村敏朗

    ○米村説明員 お答えいたします。  大変申しわけございませんけれども、拘束の事実の有無並びにその根拠等について、現在さらに確認中であるということであります。拘束をしているということは承知をしておりますけれども、その法的根拠あるいはどういう人物を拘束しているか、これは現在まだ確認中ということで御容赦をいただきたいと思います。
  161. 坂上富男

    坂上委員 では、いつわかるのです。
  162. 米村敏朗

    ○米村説明員 私どもは、ぜひ早く承知をしたいというふうに考えております。
  163. 坂上富男

    坂上委員 一月も二月もたったのではだめだよ。きょうあすぐらいにもう調べなさいよ、それぐらいのこと。  終わります。ありがとうございました。
  164. 八代英太

    八代委員長 正森成二君。
  165. 正森成二

    ○正森委員 法務大臣、あなたの所信表明を読ませていただきますと、オウム真理教について触れた部分が二カ所になっております。私たちは、オウム真理教についての破防法の適用に関し、公安審査委員会が棄却をしたということは当然のことであるというように思っております。  しかし、あえて言いますと、私たちは、破防法自体が憲法に違反する疑いの非常に濃い法律であるというようにもともと思っておりますので、例えば、本来棄却すべきでなしに却下すべきであったというように日弁連が声明しておりますが、こういう態度をとるべきであったというように思っておることをまず最初に申し上げておきたいと思います。  そこで、あの棄却決定が出ましてから、各方面で論評が行われております。その中で軽視することができないのは、破防法自体を修正あるいは新しい法律をつくるべきではないかという議論が一部にあることであります。  端的に申しますが、昨日、時事が情報を流しました。それにはこう書いてあります。「松浦功法相は十九日までに、オウム真理教に対する破壊活動防止法による団体規制の処分請求棄却を踏まえ、同法の問題点を三月末までに洗い出すよう公安調査庁に指示した。請求棄却で破防法の欠陥が明らかになったとの認識から、新規立法も含めた破防法の早急な見直しが必要と判断した。法務・公安当局は〝論点整理〟をもとに見直しの具体的な協議に入る。」「法務・公安当局は破防法をより適用しやすいように見直す考えだ。具体的には、①適用要件の一つである「将来の危険性」の条件が厳格過ぎる②弁明手続きに時間がかかりすぎる-などを見直し対象とする方向。」というように報道されております。  これがもし事実とすれば、非常に重大な問題でありますが、法務大臣に率直に意見をお伺いしたいと思います。失礼ですが、私はあの席におりますが、法務大臣の声はほとんど聞こえません。したがって、重要な問題ですから、頑張って大きな声で答弁してください。
  166. 八代英太

    八代委員長 マイクのボリュームをちょっと上げてください。
  167. 松浦功

    松浦国務大臣 全然そういう事実はございません。
  168. 正森成二

    ○正森委員 全然そういう事実はございませんというように御答弁になりましたので、私としてはこれ以上聞かなくてもいいということで非常にありがたいことだと思っております。  といいますのは、仮にこういうことが行われるとすれば、適用要件を緩やかにするということは、相撲に例えれば、土俵が広過ぎるからおれは負けたので土俵をもっと小さくした方がいい、大体時間がかかったのでおれは勝てなかったので相撲というのは十秒以内に勝負をつけろ、そういうものをやろうというとんでもないことになるわけですね。  そこで、念のために伺いますが、法務省公安調査庁で具体的に協議に入ったなどと言っていますので、法務省とそれから公安調査庁の責任者からそれぞれ、大臣の御答弁で異議なくよろしいかどうか、念のために伺っておきます。
  169. 杉原弘泰

    ○杉原政府委員 お答えいたします。  私ども公安調査庁といたしましては、このたびの公安審査委員会の棄却決定内容及びそれに至ります規制請求の手続上発生しました諸問題について十分に検討した上で、今後発生する問題について対応していきたい、こういうふうに考えております。
  170. 頃安健司

    ○頃安政府委員 お答えします。  ただいま大臣がお答えしましたとおりで、法務省公安調査庁が破防法の改正について具体的に協議に入ったという事実はございません。
  171. 正森成二

    ○正森委員 法務大臣と官房長の答弁はまことに明快ですが、公安調査庁長官は何やら未練ありげなことを言っておりますが、これは役所の性格として仕方のないことであろうというように思って、これ以上追及しないことにいたします。  ただし、もう一つ伺いたいことがあります。  これは私どもの新聞である赤旗が十七日に報道したことですが、公安調査庁は「大衆・市民運動における注目点」という題で二月五日付で見解をまとめて、これを政府・与党等の関係方面に配付しております。私どもはその筋からいただいたのですが、私どもに提供された方に御迷惑がかかったらいけませんので、その方のお名前とかあるいは現物を示すということはやらないで、赤旗に写真を写しておりますので、それに基づいて伺いたいと思います。  これを見ますと、例えば「先行き不安な政治経済社会情勢を背景に大衆・市民運動が新たな展開を見せることが予想される」、こういうようなことを言いまして、「消費税引き上げ反対の世論と運動の動向」というところでは、「日本共産党が、国会内で新進党などに呼びかけた消費税率引き上げ反対の共闘などに触れるとともに、地方議会で増税反対決議や意見書を採択した自治体が一月二十日までに六百八十三にのぼっていると指摘。消費税引き上げ反対の動きは「連合や中立系の組合、老人クラブ、これまで日共とのかかわりがなかった中小業者の多くからも共感をえているといわれる」」こんなことまで報告をしておる。あるいは、全国市民オンブズマン連絡会議の取り組みについても触れております。あるいは、新潟県巻町の原発建設可否をめぐる住民投票等々についても触れまして、そして、住民自治の高まりにも警戒の目を向けている。  これは、詳しくはもうこれ以上言いませんが、そういうことをあなた方はまとめて、そしてしかるべき筋に配付したという事実があるのかないのか。また、法務大臣の明快な御答弁のように、ないとおっしゃれば、これは私どもの報道の誤りですから私どもはこれ以上聞きませんが、ありとするなら、いかなる法律的な根拠に基づいてこういう情報をとり、しかもこれを文書にまとめて、そしてある方面には配っているのか。それを御説明ください。
  172. 杉原弘泰

    ○杉原政府委員 お尋ねの資料につきましては、具体的な調査内容にもかかわることでございますので、その点について一々具体的に御説明することは差し控えさせていただきたいと思っております。  ただ、一般論として申し上げますと、私どもは、憲法の保障する民主主義体制を暴力で破壊しようとするおそれのある団体につきまして、その組織や活動状況等を調査しているわけであります。したがいまして、そうしたおそれのない、いわゆる市民運動とか、あるいは市民団体の正当な活動調査の対象とすることはありません。破防法第三条にもその趣旨は明記されております。  しかし、これらの市民運動等に対する調査対象団体からの働きかけ、あるいは、これら市民団体内における調査対象団体構成員の活動等があると認められる場合には、これら活動調査することがあることを御理解いただきたいと思っております。
  173. 正森成二

    ○正森委員 だから公安調査庁というのはとんでもない役所で、今の答弁でこういうことをやったということを明白に間接的に認めて、詳しい調査方法は言わないが、暴力主義的破壊活動を行うおそれのある団体、その中に、彼らの今までやってきたことでは、日本共産党が明白に入っているのですよ。私ども共産党の本部の前にアジトを借りて、四六時中その出入りを監視する。正森成二がいつ入ったかということまで監視しておるということをやっていることを前提にして、つまり、それがオンブズマンの団体であろうと、消費税反対の団体であろうと、原発反対であろうと、いやしくも日本共産党やその同調者がたとえ一人でもその運動に参加している場合には、それについては調査をし、しかるべきところへ報告する義務があるという意味のことを言っているのですね。  とんでもないことで、私は、ほかのことも聞かなければなりませんからこれ以上言いませんが、こういう役所は結局はリストラの対象として自民党の行革で真っ先になくしていただく必要がある。そうすると、国家公務員が千数百名削減できますし、予算も非常に節約できるということを一言申し上げて、速記官の問題に移らせていただきます。公安調査庁長官、結構でした、どうぞ御退席ください。また正森が何を質問したかなんて聞き耳立てられても困りますから。  それでは続けます。  速記官の問題については、今同僚委員から簡潔にお聞きになりました。それで、時間もございませんので、重複することを避けて、裁判所に伺いたいと思います。  私の方から要約をいたしますけれども、裁判所はこの二月、三月にも裁判所の裁判官会議を開いて、そして速記官の募集をやめるというような方向だと伺っております。それにつきまして、速記官が非常に大きな役割を果たしてこられたことは事実であります。  例えば、この間、井上ひさしという有名な作家が、浦和市内で開かれた裁判所速記官のリストラ反対の集会でこう言っておられるのですね。「速記官養成所の卒業試験では十分間に三千六百字の捕捉が求められる。」そして、いろいろな方の名前を挙げまして、これは日本人の話し言葉を完全にカバーする、この技術は大変な芸能あるいは芸能家だと思うということを言いまして、それがなくなればこの技術がなくなる、「速記官というのは実は神様だ。法廷ではどちらにもひいきするわけじゃなく、その場で起こることを客観的に正確に写していく神々のうちの一人なのだ。」こう言っております。これは小説家特有のややオーバーな表現かもしれません。我々政治家も、有権者は神様だというようなことを言いますから、宗教的な意味で神様と言ったのではないと思いますが、こういう評価をしている人がいる。  あるいは、速記官白書というのがほぼ二年前に出ました。その中に出ているものですが、元最高裁判所の判事の岸盛一氏が、第一審で実際に速記を利用してきた立場から、次のように述べているというのが引用されております。これは横川さんとの共著の「事実審理」の中の引用であります。「法廷速記は、弁論主義を発揮するために欠くことのできない制度である。訴訟関係人の発言内容や法廷のやりとり、裁判官の訴訟指揮の実情がそのまま速記録にうつし出されて、法廷の現実の姿が如実に描写される点については、書記官の要領筆記は及びもつかない。したがって、速記は書記官の調書作成の補助ではない。弁論主義を発揮して事実審理を充実させるために、法廷速記の制度は、今後ますます拡大されなければならない。」これが最高裁判事をされた方の意見であります。  私の知っているところでは、これは裁判所に勤務している職員との交渉の中でいろいろ出ている、あるいはその職員団体が言っていることですが、これは速記官不足をカバーするものとして、二十数年前に二年間にわたって、東京地裁の民事部で民間委託による録音反訳方式は実験したものではないですか。これは最高裁が予算をつけて実験したが、結論として適当ではないといって不採用になったんではないですか。それからまた、その後も一九九〇年ごろ、東京地裁では、当事者の費用負担で続けてきたけれども、一九九〇年になって当局がついに問題意識を持ってやめさせるということをやったというように承知しております。自分がこれはぐあいが悪いといってやめさせたものを、今突如十分の論議もなく、国会でもこれを知って質問するのはきょうが初めてですが、それを実行に移す。もちろん緩やかな導入ということで、現在の速記官八百何名は、これは職業に変化はないと言われておりますが、少なくも今後は採用しないというようなことは、余りにも乱暴ではないですか。
  174. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 委員の方から御指摘ございましたように、かつて東京地裁の民事部で、これは関係者の間では三十五部方式という呼び方で呼ばれておりましたが、録音テープで録音いたしました当事者のやりとり、証人の供述を外部に反訳してもらって、書記官がそれを校正して調書をつくる、そういう方式を採用しておりました。  いろいろ経緯はありましたのですが、一番問題になりましたのは、実は、これは本来速記録の作成というのは裁判所の責任において行うべきなのを、いわば費用を当事者に転嫁したといいますか、したがいまして、その費用の負担ができる当事者の事件については逐語的な詳しい調書ができるのに、そうじゃないものについてはできないというのは、これは国の制度として非常におかしい、そういうところからこの制度を廃止したわけでございます。ただ、実は、このときの調書のできばえ自体については、弁護士さんからもかなり高い評価をいただいておりまして、ぜひ続けてほしいという声もあったわけでございます。  今回考えております調書につきましては、その正確性、我々の方も非常に問題だと思いまして、昨年半年間全国の裁判所で非常に詳細な実験をやってみまして、関係されました弁護士さんからも個々に評価をいただきまして、九割ぐらいの弁護士さんからは、従前の速記録と変わらない正確な調書ができるという御評価をいただいておりますので、そういう意味で今回の制度、しかも国費でやるということでございますので、従前とは違うということでございます。
  175. 正森成二

    ○正森委員 最高裁が出している書類も日弁連が出している書類も私は一応目を通しました。しかし、例えば日弁連の司法改革推進センターの委員長が検証結果報告書を出しております。それを見ますと、七ページのところで「書記官報告書では校正箇所が二十九箇所に過ぎないのに実際には百十五箇所と大幅に違うものがあるが、他の対象事件中にも、書記官報告書では二十七箇所なのに実際は百二十八箇所のもの、二十二箇所の報告に対し百三十五箇所、二百十九箇所の報告に対し約五百六十箇所のもの、二十箇所の報告に対し百五十四箇所のもの等、書記官報告書と実際の校正箇所の数値に極端な違いがあるものがあり、」というように報告されております。これに対して、最高裁判所の総務局は、数カ所に存在する同一誤記を一つと数えるとかいろいろあると言って反論しておりますが、しかし、日弁連の調べたのと大分違うようであります。ですから、録音と反訳が非常に正確であるというように一方的に判断するのでなしに、より慎重な態度が望まれるのではないかというように私は思います。  時間がもう非常にございませんので、言いっ放しで失礼いたしますが、この検証報告書の中で「総括」という部分があるんですね。それで、これは日弁連は今直ちに速記官の採用をやめるというのに反対だということを言いながらも、しかし逐語録の需要が非常に大きいということで、今までよりも五割ふやすということを前提にして、録音反訳方式も入れるが、速記官も残すというような案を出しているようであります。  その中で、そういうことを前提にして「総括」の中で五つほど、こういう点が少なくとも前提として満たされなければならない、こう言っております。その中で、例えば録音テープを複数置くとか、そういう問題はもう解決されておるように伺っておりますからよろしいと思いますが、反訳をするのについての一定の反訳基準とか等々が書かれております。時間の関係があるので一々言いませんが、それについて簡潔な最高裁の見解をまとめて述べてください。
  176. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 日弁連の報告書で、その正確な調書をつくるためにこういう工夫が必要だという指摘をいただいております点、いずれももっともだと考えております。  まず、反訳と校正自体を正確にするために、反訳の基準とか校正の基準というもの、これをつくっていこうと思っておりますし、また、制度の上で、録音テープがきちっと反訳されて調書ができるというふうなそういう制度もつくる必要があるだろう。これは規則等で、録音テープを反訳して調書をつくるんだというそういう規則の整備もやりたいと考えております。  さらに、調書に正確性に異議が出た場合には、テープを保管しておきまして、そのテープと照合して間違いがあるかどうかも検証できる、そういうふうな手当ても講じていきたいというふうに考えております。
  177. 正森成二

    ○正森委員 私は、ここに全司法という職員団体と、おたくの給与課長だと思われるのですが、交渉されたほとんど速記に近いものを持っております。その中には、非常に詳しく出ておりますが、例えば保存や、聴取を場合によったらしなくちゃならない等々の点については、民訴規則とか刑訴規則でこれを定めるとかあるいは書記官にも一定の基準を設けるとか、また書記官を大幅に増員するとか、また速記官の心情も考えて、速記官の今後の処遇について、例えば九級をこしらえるとか、あるいは書記官への試験のときにCEの条件を有利にするとか、CEというのは、書記官に採用試験のための条件等のことですが、そういう点が述べられております。  問題が問題ですから、全司法との交渉が十分に行われないうちに国会で言うことが必ずしも適切でない点もあるでしょうが、姿勢について、あるいは言える限りのことについて御答弁願いたいと思います。
  178. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 今回の制度改正の構想は、単にこれからの逐語調書の作成方法のシステムを変えるというだけではございませんで、現在裁判所に在職しております八百名を超えます速記官の方に、これまで以上に生きがいを持ってといいますかやりがいを持ってといいますか、仕事をしていただける、そういうふうな新しい職務内容充実改善といったことも考えておるわけでございまして、そういう検討の中で、先ほど御指摘ございましたような給与上の格付といった問題も含めて、速記官の新しい処遇というものを前向きに検討していきたい、こういうふうに考えております。
  179. 正森成二

    ○正森委員 それから、録音反訳方式をやる場合に、これは予算を伴いますね。反訳は今までのようにOBだけでなしに民間にも委託するなどということが言われておりますからね。ところが、五割も容量をふやすといいましても、予算がつかなければこれはできない、あるいは訴訟当事者の負担になるというようなことになっては、これは非常に問題であります。そういう点についてはどう考えていますか。
  180. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたように、やはり逐語的な調書の作成体制というのは裁判所の責任において整備しないといけないと思っておりますので、この経費を当事者に負担させるというようなことは考えておりません。予算が必要なことはわかっておりますので、そこはできるだけ努力して必要な予算を獲得していきたい、こういうふうに考えております。
  181. 正森成二

    ○正森委員 全司法と給与課長との問答は非常に興味深いものですけれども、例えば反訳官には録音テープを渡すだけでなしに訴訟記録の一部、証拠物も渡さなければ、証拠物の引用をしてどんどん尋問するのですから反訳できないという問題が当然起こってくると思うのですね。  最高裁は、裁判公開の原則だとか刑訴法四十七条のもちろん解釈とかいうことで外部へ出しても問題がないと言いますが、しかし、証拠書類や証拠物まで外へ出すということは普通の裁判公開の原則ではないのですね。速記官に対する実施要領が出ておりますが、それでも、「必要と認める事項を指示し、事件記録、証拠物を閲覧させる等、なるべく事件内容を事前に理解させるよう配慮すること。」というようになっているのですね。  その場に立ち会って専門的にやる人でさえ、証拠物や証拠記録を閲覧させなければ正確な速記はできないと言っているのですから、全然いない、反訳する人は、これは家庭の主婦なんかもアルバイトでやる可能性があるのですから、そういう方に対しては、正確な反訳を求めることが不可能だ。そうなると、単にテープを聞かせるだけでなしに、重要な証拠書類や証拠物を見せなければならないという問題も起こってきて、単に裁判が公開されているから問題がないではないかというような議論では片づかない問題があるのですね。井上ひさしさんなんかは、有名な俳優の離婚事件なんかがあれば、週刊誌は万金を投じてそれを手に入れるようにするであろう、こういうように言っているのですね。  そういうおそれは十分にあり得ると思うのですが、それに対してどういう対応を考えていますか。
  182. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 公開の法廷で行われる証拠調べであるから秘密の点を軽視していいものでないということは、まことに御指摘のとおりでございます。  我々の方としても、今回実験をやるに当たりましても、録音反訳の業者との間ではきちっと守秘条項といいますか、そういうものを決めまして、テープの管理とかあるいは反訳書の管理について、一切それが漏れないようにという体制を組んでもらいました。また、実はこういう業者の方、随分そういう秘密のといいますか書類をおつくりになっているようでございまして、この業態というのは秘密が漏れるともう商売にならないのだということをおっしゃっていまして、会社自体のいわば存在基盤が守秘という点にかかっておるので、その辺は十分配慮すると言ってくださっておりますので、今後工夫をいたしまして、そういうおそれがないような体制を整備していきたいと思っております。
  183. 正森成二

    ○正森委員 お約束の時間ですから終わらせていただきますが、全司法との交渉の中では、例えば反訳をするにしても、そういう微妙な事件裁判所の中で反訳させるとか、いろいろなことが具体的に挙がっているのですね。私は何も、全司法とは腹打ち割って話したが国会で言わないのはけしからぬというようなことまで言いませんが、現にその交渉記録を私が持っているのですからね。ここで言われているようなことは、国権の最高機関である国会で報告するのは当然じゃないですか。あなたの答弁は、これを読んでいる私としたら非常に省略されたものだ。時間がないからやむを得ないと思って言いませんが、もっと国会にはきちんと報告する必要があるということを指摘して、時間でございますから、私の質問を終わらせていただきます。
  184. 八代英太

    八代委員長 次回は、明二十一日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十六分散会