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1997-07-10 第140回国会 衆議院 文教委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年七月十日(木曜日)     午後一時開議 出席委員   委員長 二田 孝治君    理事 稲葉 大和君 理事 河村 建夫君    理事 栗原 裕康君 理事 田中眞紀子君    理事 佐藤 茂樹君 理事 藤村  修君    理事 山元  勉君 理事 石井 郁子君       岩永 峯一君    栗本慎一郎君       佐田玄一郎君    阪上 善秀君       桜田 義孝君    島村 宜伸君       砂田 圭佑君    柳沢 伯夫君       山口 泰明君    井上 義久君       池坊 保子君    漆原 良夫君       旭道山和泰君    西岡 武夫君       三沢  淳君    川内 博史君       肥田美代子君    山原健二郎君       保坂 展人君  出席国務大臣         文 部 大 臣 小杉  隆君  委員外出席者         警察庁生活安全         局少年課長   勝浦 敏行君         警察庁刑事局捜         査第一課長   松尾 好將君         総務庁青少年対         策本部次長   中川 良一君         法務大臣官房審         議官      古田 佑紀君         法務省刑事局刑         事法制課長   渡邉 一弘君         法務省人権擁護         局調査課長   印部 久男君         文部政務次官  佐田玄一郎君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部大臣官房総         務審議官    富岡 賢治君         文部省生涯学習         局長      長谷川正明君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省教育助成         局長      御手洗 康君         文部省体育局長 工藤 智規君         厚生省児童家庭         局企画課長   伍藤 忠春君         郵政省電気通信         局長      谷  公士君         郵政省放送行政         局長      品川 萬里君         文教委員会調査         室長      岡村  豊君     ――――――――――――― 委員の異動 六月十八日  辞任         補欠選任   保坂 展人君     伊藤  茂君 同月二十六日  辞任         補欠選任   伊藤  茂君     保坂 展人君 七月十日  辞任         補欠選任   戸井田 徹君     砂田 圭佑君   渡辺 博道君     桜田 義孝君   西  博義君     漆原 良夫君   鳩山 邦夫君     川内 博史君 同日  辞任         補欠選任   桜田 義孝君     渡辺 博道君   砂田 圭佑君     戸井田 徹君   漆原 良夫君     西  博義君   川内 博史君     鳩山 邦夫君     ――――――――――――― 六月十八日  一、文教行政基本施策に関する件  二、学校教育に関する件  三、社会教育に関する件  四、体育に関する件  五、学術研究及び宗教に関する件  六、国際文化交流に関する件  七、文化財保護に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  学校教育及び社会教育等に関する件(児童生徒  の問題行動について)      ――――◇―――――
  2. 二田孝治

    二田委員長 これより会議を開きます。  学校教育及び社会教育等に関する件、特に児童生徒問題行動について調査を進めます。  初めに、神戸須磨区における児童殺害事件について説明を聴取いたします。文部政務次官佐田玄一郎君。
  3. 佐田玄一郎

    佐田説明員 佐田玄一郎でございます。  説明を前にいたしまして、まずもって、今回の一連の事件におきましてお亡くなりになりました土師淳君、そしてまた山下形花ちゃん御両名に対しまして心から哀悼の意を表すると同時に、おけがをされた児童の方に対しましても心からお見舞いを申し上げる次第でございます。  それでは説明させていただきます。  今回の神戸須磨区の児童殺害事件において十四歳の中学生被疑者として逮捕されたことを、文部省としては重く受けとめておる次第でございます。  このため、逮捕翌日の六月二十九日に担当課長現地派遣いたしましたが、今回の事件背景として推測される事柄、関係者に与える影響等が広範にわたるものと考えられるため、七月五日土曜日に、現状把握のため、文部大臣の命を受け、私が現地に赴きました。  神戸教育委員会との意見交換においては、子供たち保護者等が心の安定を得られるようにすることが当面の重要課題であるとの報告を受けました。また、子供たち教育に当たり、学校家庭地域がより一層連携を深めていくことが教育行政に係る今後の課題であるとの報告もあわせて受けております。  私からは、現在、今回の事件に関して政府全体として取り組みが進んでおり、文部省としても支援に努めたい旨を発言をさせていただいた次第であります。  兵庫県教育委員会との意見交換におきましては、県教育委員会として、これまで、人間関係あり方、今の大切さを理解させる教育を重要かつ緊急の課題として進めてきましたが、さらなる検討が必要であるとの報告を受けた次第であります。その後、ホラービデオの問題なども視野に入れた県としての全庁的な取り組み推進について意見交換を行った次第でございます。  今後、文部省としては、兵庫県教育委員会神戸教育委員会との連携を密にするとともに、両教育委員会取り組みについて積極的に支援をしてまいりたい、そういうことでございます。
  4. 二田孝治

  5. 松尾好將

    松尾説明員 本事件につきましては、五月二十四日土曜日午後八時五十分でありましたが、神戸須磨居住神戸市立多井畑小学校六年生の土師淳君十一歳の家族から、所轄須磨警察署に対しまして、被害者が午後一時三十分ごろ祖父宅へ行くと言って外出したまま帰宅しないという旨の届け出を受けたわけであります。  兵庫県警察におきましては、所要の体制によりまして捜索等発見活動推進中でありましたが、五月二十七日の午前六時四十二分、神戸市立友が丘中学校管理員から、男の子の頭部のようなものが学校正門前に置かれているという一一〇番通報を受けたわけであります。  その結果、所在不明となっております土師淳君の頭部であることが判明をいたしました。それには、「さあゲームの始まりです」「警察諸君 ボクを止めてみたまえ」という警察に対する挑戦的な内容が書かれていた文書が添えられておりました。  兵庫県警におきましては、即日、所轄警察署に百三十名体制捜査本部設置をいたしまして、聞き込み捜査等初動捜査を開始したわけでありますが、その後、同日午後三時になりまして、現場付近捜索中の捜査員が、頭部遺棄現場中学校から西方約七百メーター離れました竜が山所在ケーブルテレビアンテナ基地敷地内の機械室の床下におきまして被害者胴体部発見したものであります。  その後、六月四日に至りまして、地元神戸新聞本社に対しまして、「ぼくと同じ透明な存在である友人に相談して」「今回の殺人ゲームを開始した」というようないわゆる犯行声明文が送達をされてまいりました。  兵庫県警におきましては、本事件が極めて反社会性が強く、残虐な特異犯罪でありますことから、捜査本部体制とは別に、京都、大阪両府警からの応援も含めまして再発防止のための警戒活動をとりながら、現場付近を中心とする聞き込み、あるいは被害者足取り捜査等を強力に推進してまいったわけであります。  その結果、現場付近の聞き込み捜査等から、不審者として、神戸須磨居住中学三年生A少年十四歳が浮上いたしまして、身辺捜査を行いました結果、本件容疑が濃厚となりましたために、六月二十八日朝、少年兵庫警察本部に任意同行し、取り調べをしました結果、本件自供し、あわせて実施をしました自宅捜索によりまして、本件に使用したと認められるナイフ等証拠品発見押収をいたしたわけであります。こうした点から同少年本件被疑者と断定をいたしまして、同日の午後七時五分に通常逮捕したものであります。  被疑者につきましては、六月二十九日の午後、身柄を神戸地方検察庁に送致をいたしまして、勾留決定がなされ、現在、捜査本部設置しております須磨警察署に勾留して、動機背景等を含めた事実関係取り調べを強力に推進しているところであります。  さらに、その後の自宅捜索によりまして、書籍類ですとか、あるいはビデオテープ等多数の証拠品押収するとともに、七月六日には、被疑者供述に基づきまして、犯行に使用した凶器を投棄した現場付近の池について捜索をいたしました結果、本人自供どおり凶器の金のこ一個を発見押収をしたものであります。他の証拠品発見もありますために、本日も引き続きその他の捜索実施をしているところであります。  なお、本年三月、同じ須磨区内発生をいたしましたいわゆる通り魔事件につきましても、早期に解決しなければならない事件と認識をしておりまして、これに関してもいろいろな報道がなされているところではありますが、当面は淳君殺害事件全力を投入して捜査を行っていく所存であります。  また、被疑者が十四歳の少年であるということから、今後とも、法に照らし、少年の特性に配慮しながら適正な捜査推進し、事件全容解明に努めてまいりたいというふうに考えているところであります。
  6. 二田孝治

    二田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河村建夫君。
  7. 河村建夫

    河村(建)委員 自由民主党河村建夫でございます。  ただいま文部省また警察庁から、今回の事件概要等について、その対応について御説明をいただいたところであります。捕らえてみれば我が子なりと申しますか、神戸須磨区の小学六年生土師淳殺害事件容疑者中学三年、十四歳の少年であったというこの衝撃、筆舌に尽くしがたいものがあります。私も、中学三年を初めとして四人の子供を持つ父親といたしまして、これはまさに他人事ではない、我が家の事件としてこの問題に取り組むべきものだ、こういう思いに至ったわけであります。  私からも、改めて、亡くなりました土師淳君、そして山下彩花ちゃんにも心から哀悼の意を表する次第であります。  それにしても、なぜ十四歳のあの少年犯罪史上まれに見る凶行に走ったのか。この事件再発を大変恐れられたあの地元地域社会皆様方、これで安堵どころか二重のショックを受けられたわけでありますし、また、特に学校現場影響というものは大変大きな深刻なものであろうと思いますし、ましてや、子供たち児童生徒の心の動揺といいますか、それも懸念されるわけであります。  私どもは、これだけむごい、異常な犯罪をなした人間をこの社会が生んで、そしてそれが十四歳の少年だったというこの怖さといいますか、あるいはこの痛み、改めて思い知らされたわけであります。確かに、今回のケースにしてもそうでありますが、犯罪個人のやったことでありますけれども、その個人の行為の病理性というものはやはり社会病理を反映したものだと言わざるを得ないと思っているわけであります。私はオウム真理教のあの事件が起きたときも同じような感じであったわけでありますが、今回、この事件はまさにその徹底的な証拠を突きつけられたといいますか、日本社会がおかしくなっているのではないかという思いであります。  これはまた、日本だけではなくて、世界各国から日本がおかしくなっているのではないかと、こう思われ始めていることも事実であります。今回の事件犯行動機あるいは背景、これを解明していくことは当然でありますが、再びこうした事件を起こさないためにこれを大きな教訓として受けとめていかなければならぬと、こう思っているんです。少年個人の特異な事件だというだけで置かずに、今の教育、今日の教育あり方、あるいは社会が抱えているあらゆる問題というものがここに凝縮されたこのような事件であると、この縮図であると、このように受けとめるべきであろう、こう思っているわけでありまして、そうした観点から若干の質問をさしていただきたい、こう思うわけであります。  まず、この事件は、被害者は小学生でありました。加害者中学生という形になっておるわけであります。特に義務教育段階子供ということもあって、教育現場には非常に重い課題がのしかかっておると言っても過言でないと思いますが、事件発生以来大変御心労をされておりますが、文部大臣に、現時点でどのように受けとめておられるか、まずお聞きしたいと思います。
  8. 小杉隆

    小杉国務大臣 まず、今回の事件で亡くなった土師淳君に心から哀悼の意を表したいと思います。また、この件に関して非常につらい思いをされている御家族を初め御親族の皆様に、遺族の方々に心からお悔やみを申し上げたいと思います。  今回の事件で、十四歳の中学三年生が容疑者であったということに私は文部大臣として深い衝撃を受けました。そして、この事態を極めて深刻に受けとめております。現在、先ほど御報告にあったように、捜査全力を挙げてやっておられる最中であり、この少年に対する人権上の配慮ということもあって、私どもは今後の警察当局捜査の進展を待つ必要がありますけれども教育行政を預かる立場にある者として、私は心の教育重要性を痛切に感じている次第でございます。
  9. 河村建夫

    河村(建)委員 警察庁からも報告をいただいたところでありますが、まず事実関係を若干お尋ねいたします。  通り魔事件についてもあるんだがというお話でございましたが、山下彩花ちゃんの事件については、マスコミの報ずる等々によりますと、自供もあったように聞いておりますが、警察庁としてはこれは確認できておることでありますか。
  10. 松尾好將

    松尾説明員 いろいろとマスコミ等で報道されていることは承知をしておりますが、この中には、警察確認をしていないことあるいは確認できないこと等も多々含まれているわけでありまして、ただいまの御質問に対しましても、現在、事案の解明を含めて捜査中でありますので、答弁を差し控えさしていただきたいと存じます。
  11. 河村建夫

    河村(建)委員 ということは、本人供述があった、なしも含めて現時点では捜査中ということですか。
  12. 松尾好將

    松尾説明員 現在はいわゆるあの淳君の殺人事件全力を投入をしているところでありまして、通り魔事件については調べを行っていないということでございます。
  13. 河村建夫

    河村(建)委員 それから、マスコミの報ずるところではありますが、この少年児童相談所へ通っておったという情報でございますが、厚生省の方は確認されておりますか。
  14. 伍藤忠春

    伍藤説明員 お尋ねの事件に関しまして、被疑者少年児童相談所を来訪し、相談に応じていたことは事実でございます。  ただ、その具体的な相談内容については、本人のプライバシーその他ございまして、御説明は控えさしていただきたいと思います。
  15. 河村建夫

    河村(建)委員 わかりました。  さて、先ほど佐田政務次官から文部省の当面の対応について御報告をいただいたところでございますが、先ほど、これから文部省としては支援を惜しまないという話でありましたが、どういう形で、現場といいますか、そういうところへ支援体制をお組みになろうとしているのか、そういうことをお聞かせをいただきたい、こう思うのであります。  我が自由民主党調査団派遣をしたわけでありますが、カウンセラー派遣、あるいは、あの大地震のときにカウンセラー派遣したその方々をそのまま引き続いてという要請もあったようなわけでありますが、ただ私は、今回の事件、これ以上この現実について追及してどうこうということはもういたしませんけれども一つ気になったのは、学校側が本当に生徒、これは事件があったこの中学校のことでありますが、みんな必死で頑張っておられるんだろうが、本当に生徒学校側が向き合っておったのかという思いを抱きました。  というのは、逮捕者が出たというときに全校集会をおやりになった。その場で学校長は、我が校から残念ながら逮捕者が出たということは全く触れずに、平常心の重要さあるいは命の大切さをお説きになったと聞きました。直接現場で取材をした方からもそれは確認をしたわけであります。  私は、警察から、あるいは少年法関係等からして、その名前等を言えない、それはわかるのでありますが、生徒はもうみんなそんなことは知っていることでありまして、それを前提にしないで話をするというそのことが、本当に学校子供に向き合っているのかどうかという疑問を抱いたわけであります。本当はその学校長は、これは大変なことでありますから、上から何があろうと、むしろ教育者として、人間丸出しで、まさに全身を振り絞って生徒と向き合ってこの話をしなければいけなかったのではないか、そういうものが欠けておるのじゃないかという感じをちょっと抱いたのであります。  そのことも含めて、文部省としては、これからの支援体制、これはどういうふうになりましょうか。
  16. 小杉隆

    小杉国務大臣 まず、文部省としての基本的な対応について私は申し上げ、もし必要があれば、詳細は担当の方からお答えいたします。  この十四歳の少年容疑者として逮捕されたというニュースを聞きまして、私も、これは非常に重大な事態だということで、早速文部省に駆けつけ、深夜、事務次官、官房長初中局長等に緊急に集まっていただきまして、とにかく実態把握をすることがまず肝要であろうということで、翌日の六月二十九日早朝から担当官派遣をいたしまして、県、市の教育委員会、あるいは県警等との情報交換をいたしたわけでございます。  それから、これの情報収集に関して、継続的にプロジェクトチームをつくって実態把握をしよう、こういうことを決めました。さらに、先ほど御報告があったように、佐田政務次官派遣しまして、その後の情報収集にも努めたところでございます。  なお、スクールカウンセラー派遣につきましては、夏休み前まで継続して重点配置をしよう、こういうことで取り組んでいるところでございます。  それから、この問題に限らず、最近いろいろ青少年問題行動がありますので、専門家による会議というものも設置をし、今協議を進めていただいております。  それから、中教審に対しまして、心の教育について幅広く検討していただきたいということで、審議を八月の初めにもお願いをする予定にしております。  それから、この件は、今お話しのとおり、警察当局やその他関係省庁との連絡が不可欠であるということで、各省庁十分連携をとって進めております。
  17. 河村建夫

    河村(建)委員 さて、今大臣お触れになりました心の教育の問題であります。  中教審諮問を近々されるということでありますが、一口に心の教育と言っても、その心の教育というのは一体どういうものなんだという疑念があるわけであります。大臣は、中教審に対してどういう形で諮問をされ、また、どういうものを期待して諮問をしようとしておられるのか、その辺についてまずお聞きしたいと思います。
  18. 小杉隆

    小杉国務大臣 心の教育とは何ぞやというその概念は、非常に漢としていると思われるかもしれませんし、私自身もまだきっちりした概念でとらえているわけではございません。これはいろんな角度から検討されるべき問題だと思っております。  ただ、こうした事件に限らず、最近青少年犯罪が凶悪化している、あるいは援助交際とか薬物乱用とか、そういった状況にかんがみまして、やはりこれは、学校並びに家庭社会との連携ということが大事だと思います。家庭教育においても、生き物を大切にする心とか、弱いものに対する思いやりとか、善悪の判断というものをやはりつけていただかなければいけませんし、学校においても、その一人一人の個性を生かしながら豊かな人間性を育てるという視点も大事です。それから地域社会においても、地域社会全体が子供に対するひとついい環境づくりということをやっていかなきゃなりません。  そういったさまざまな角度からこうした問題に対処していく、そのアプローチの仕方をどうしたらいいのか、どういう問題点があるのか、そういったことを幅広い観点から中教審審議をしていただきたい、こういうつもりで諮問したいと考えております。
  19. 河村建夫

    河村(建)委員 私は、大臣がそういう形でこの問題に取り組まれることを評価したいと思います。心の教育という問題は、これはまさに、中学校小学校学校教育の中でやるというよりも、むしろ社会教育家庭教育の中でやるべきものであろう、私はこう思っておるのであります。  アメリカにおきましても、道徳教育必要性はまさに幼児教育からだ、こういう考え方で取り組んでおります。最近、ヒラリー・クリントン大統領夫人が、「子育ては「村中みんなで」親への支援を確立しよう」ということを述べておりまして、今出ている、ニューズウイークに出ているわけでありますけれども子供は生まれた瞬間からもう学び始めておる、時間も金もあり余っている親というのはそうおるわけはないのだから、子育てをする上で本当に重要な情報を伝えるシステムが必要であるということで、国を挙げてそういう問題に取り組まなければいかぬということを言っております。  また、アメリカでも最近は核家族化しているわけでありますが、おじいさん、おばあさん、いわゆる祖父母の役割を家庭の中で見出さなければいかぬ、こういう強い指摘もあるわけでありまして、中教審がどういう形で答申をされるかわかりませんが、私はまさにゼロ歳児教育から入っていかなければいかぬ。これまで文部省はどっちかというと家庭教育の域には入っていなかったと思うのでありますが、私は、そういうふうに入っていく必要があろう、こう思っております。  先ほど大臣指摘のように、今回のこういう事件を含めて、今の青少年のいろんな非行の問題等々は、学校教育もさることながら、家庭教育といいますか、あるいは地域教育力の非常な低下というものがやはり大きな遠因にあるというふうに思っております。  まず、学校教育については、今大臣からありましたが、日本教育制度からいえば初等中等教育というのは非常にレベルは高いんだという評価を受けておりますが、これはまさに知育偏重に偏り過ぎたという大きな問題ですね。学校教育は、学力、これはむしろ当然のこととしても、人間力といいますか、中教審中間報告にもありましたように、生き抜く力、こう言っておりますが、まさにこの人間力をつけるところでなければならぬのではないか、こう思うのです。  それで、特に中学、今度、中高一貫教育の話もございますけれども、もう高校は全入時代に入っておる、その事実を認めて、もう高校入試はやめるぐらいの思い切った改革をやらなければこうした問題に対応できないのではないか。いわゆる知徳体教育をやろうとしたら、今の現状でいきますと、とても徳育をやるようなゆとりがないのではないか、こういう感じがいたしております。いわゆる人生について、あるいは生きることについて、学校教育の中でどこでやるのかということではないかと思うのであります。  教育基本法の中に、宗教教育重要性であるとか、あるいは政治教育重要性であるとかということは触れでありますが、そうした徳育教育といいますか遺徳教育、そういうものについでは指摘がない。人間の品性の陶冶を高める、こういうことがございますが、私は、もっとその辺を明確にこれからの教育基本の中に据えていく必要があるのではないかと思うのです。  先ほど申し上げた幼児教育の問題からしても、この際、義務教育を一年下げていく必要も私は生まれてくるのではないかと思いますし、それから、幼児教育からいえば、保育所と幼稚園との関係、いわゆる幼保一元化ということが言われますけれども、幼稚園が保育所化し、保育所は幼稚園化している今の現状がありますから、そうした問題にもタブー視しないで積極的に取り組んでいく必要があるというふうに私は思います。  それから、今子供の数が減っていますから、教育予算は削るんだという財政構造改革の方針があります。しかし現実にこういう事件が起きて、考えてみましたら、やはり教育者の資質向上というのは非常に大きな問題だし、実は、きょうのある新聞の声の欄、最近この問題についていろいろな投書がなされております。  この中で、中学の教員の方が、これは横浜の方でありますが、中学校にぜひ着い教員を多数採用してもらいたい、カウンセラーは要らないんだ、こう言っておるわけであります。子供の数が減るから教育界は新しい教員を多数採用できない状況にあって、それがこのまま教職員の高齢化を来すならば、そして若い教員が採用できないということになれば、日本教育には未来がないということをはっきり言っております。  また、四十人学級が達成できたという話でありますが、本当に四十人学級で子供の一人一人をきちっと先生が把握できるかどうか。この投書の方は、二十五人学級の実現を望んでおる。このぐらい思い切った決断が今求められておるということを強く訴えておるわけでありまして、文部省としても、そのくらいの腹を決めていただいて今回の教育改革に取り組んでもらわなきゃいかぬ、こう思っております。  それから、家庭教育力の問題でありますが、ホームレスの人をゲーム感覚で平気で切りつけるような中学生少年がいる。なぜ出てくるのか。あるいは身障者、弱い者、こういう者を見るとむかつくという少年供述マスコミで報じられておりますが、いわゆる社会的に弱い人をいたわることが人間として正しいことで、これが美徳である、こういう感覚はどこで欠落してしまったのか。命のとうとさとか思いやりとか、これは教育上からも不易なるもの、変えてはならない、これは人間として当然のこと、こういうことをやはり家庭の中できちっと教える。  物の善悪をどこで教えるか。やはりまず家庭だろうと思いますが、厚生省子育て支援、あるいは週五日制、男女雇用機会均等法等々、私は、これは各省一体となってこの問題には取り組んでもらわなきゃならぬ、もちろん、教育的見地からいえば、文部省がその先頭に立ってもらわなきゃいかぬ、こう思っております。  それから、社会教育力の低下の問題、地域社会の問題。今回の神戸須磨区、自治会長を初めとして、まず自治会長が、新聞報道でありますが、こういう子供を出したことを申しわけない、こういう記事が出ておりました。  かつては、向こう三軒両隣、助け合い精神があったわけでありますが、最近、都会ではお祭りのみこしの担ぎ手がないという現況でありまして、この社会現象をどういうふうにして変えていくか。いわゆるボランティア、非営利団体、あるいは文化、スポーツ、そういうものをもっと取り入れた地域社会づくりをしてこうした犯罪の死角をなくしていく、この努力がどうしても必要になってきている、こう思うわけであります。  改めて大臣にこれからの、今教育改革は言われておりますが、今までの答申等から一歩踏み込んだ思い切った教育改革といいますか、こうしたものに対する対応取り組みについて聞きたいわけであります。
  20. 小杉隆

    小杉国務大臣 先ほどお答えしたように、中央教育審議会に対して、幼児期からの心の教育あり方を来月上旬諮問するという予定にしておりますが、今河村委員から御指摘のように、この問題は学校教育のみならず、家庭教育社会教育も重要なかかわりを持っている、そういう認識でおります。  そういった観点から、私どもは、家庭教育でやるべきこと、また学校教育でやるべきこと、社会教育で分担すべきもの、それぞれについて検討を進めておりますけれども、そういったことについて中教審で幅広く検討していただきたいと思っております。特に家庭教育におきます幼児からの教育、三つ子の魂百までという昔から言い古された言葉がありますけれども、やはり一番の基本は、家庭教育でしっかり教える。  特に今、少子化、核家族化という中で、家庭における教育力は低下しているということもありますし、また、学校教育の場でも余りにも生徒さんがゆとりがなさ過ぎるという状況、それから社会におきましても、他人の子供には干渉しないという、そういった人間関係の希薄化、あるいは情報機器が非常に普及発連いたしまして、何といいますか、子供たちがバーチャルというような環境の中で取り巻かれて、実際の体験、現場体験というものが非常に乏しくなって、間接体験というような状況が生まれておりますし、暴力とか性に関する情報がはんらんしているとか、さまざまな懸念すべき点がありますので、そういったことを含めまして、家庭学校社会における心の教育をいかにすべきか、こういうことを審議していただきたいと考えております。
  21. 河村建夫

    河村(建)委員 ありがとうございました。  私は、中教審に対してもむしろ大臣は積極果敢に自分の考えも述べられて、方向を、こういう点を特にということを強調されて、今御指摘申し上げたような点について思い切った取り組みをやっていただきたい、こう思うわけであります。  今大臣の御指摘の中にもありましたけれども、今日の情報社会の中で、今回の事件も、類似性をうかがわせるような小説とか、あるいはホラービデオの存在が指摘をされておるわけでありますが、この情報社会のもとで、未熟な精神しか持たない児童子供といいますか、これが夢と現実をごっちゃにしてしまう。さらに、受験競争の中ではじき出され、孤立な存在になってしまって、まさに仮想の世界に入る、バーチャルリアリティーと呼ぶそうでありますが、そうした世界に入っていく。こうした青少年に悪影響を与える有害な情報といいますか、ビデオであるとか、あるいは極端に暴力表現を含むような図書、こうした有害環境を除去するというのも、今、当面起こっている問題に対する対症療法としては喫緊の問題になってきておると思うのであります。  これは総務庁が青少年対策本部で担当をしておられるかと存じますが、各県においてもこういう対応もしておると思いますが、現状、どのように取り組んでおられますでしょうか。
  22. 中川良一

    ○中川説明員 御説明を申し上げます。  現在、長野県を除きます四十六の都道府県でいわゆる青少年保護育成条例というものが制定されてございまして、その中で御指摘のようなビデオあるいは図書などの規制を行っております。  規制の仕方でございますけれども、おおむねの規定ぶりが、著しく青少年の性的感情を刺激し、または粗暴性もしくは残虐性を助長し、青少年の健全な育成を阻害するおそれがあるものとして有害指定したものを十八歳未満の青少年に販売したり頒布したりあるいは貸し付けることを禁止いたしまして、その違反に対しまして罰則を科しているものでございます。そのほかにも、成人コーナーを設けるなど、有害図書類の陳列方法でありますとか場所の制限を行っているものもございますし、また自動販売機に有害図書類を収納することを禁止いたしましたり、あるいは自動販売機につきまして設置の届け出の規制を行っている県も多数ございます。  なお、有害な図書類の指定方法でございますけれども、各県が具体的に定めております基準に基づきまして、各都道府県ごとに設置されております審議機関に諮問をいたしまして、そこの意見を聞いた上で個別に有害図書あるいは有害ビデオとして指定する方式をすべての条例で採用してございます。また、このほか多くの県で緊急指定あるいは包括指定といったような方式もとっておるところでございます。
  23. 河村建夫

    河村(建)委員 出版の自由、表現の自由との絡みもありましょうが、青少年の健全育成からいえば、総務庁、総まとめ役としてもっと強い姿勢でこの問題には取り組んでもらわなければならぬ、私はこう思っております。  それに関連をするわけでありますが、放送――テレビ等ですね、それからインターネット等におきまして、少年にとって極めて有害と思われる暴力シーンであるとか殺人シーン、こういうものが放映をされる、あるいはインターネットで簡単にアクセスできるという状況があります。これも、この影響の強さといいますか、これまで指摘をされてきたところであります。特に人気番組ほどそういうものになっておって、そして今の中学生高校生は、そういう番組を見ておかないと学校で話し相手にならないというような現状になっておるという大きな問題があるわけであります。  諸外国、特にイギリスやアメリカ、フランス、ドイツといった先進国では、ペアレンタルロック、親がかぎを持ってこれは有害だという番組を見せないようにする、あるいはVチップ、バイオレンスチップ、暴力の度合いの強いやつは見せないようにする、あるいは事前にこの番組はどうだという表示をする、あるいは時間制限をする、こういうことに既に取り組んでおるわけであります。  日本におきましては、検討はされておるようでありますが、まだそこまで踏み込んでいないと聞いております。これはもっと前向きに取り組む必要があると私は思うのでありますが、郵政省、この問題についてどのように取り組んでおられますか。
  24. 品川萬里

    ○品川説明員 お答え申し上げます。  放送における青少年への配慮につきましては、現在までのところ、放送法に基づきます番組基準、これは放送機関が設けるものでございますが、ここにおきまして青少年への配慮事項を定め、例えば青少年に不適当な番組については放送時間を深夜にするというような配慮が行われております。  しかし、これからの放送の世界は、先生今御指摘ございましたように非常にたくさんのチャンネルがふえることがございます。このような状況にかんがみまして、より視聴者の視点を重視した放送ということから、一昨年から昨年にかけまして有識者の方々に集まっていただきまして、多チャンネル時代における視聴者と放送に関する懇談会というものを設けましていろいろ提言を受けたわけでございます。  この提言を受けまして、去る百四十回国会におきまして放送法改正をさせていただきました。番組全般にわたりまして番組審議機関の議事録の公表、あるいは同機関の機能の強化というようなことを図る法律改正をさせていただきまして、この秋には施行される予定でございます。  また、今申し上げました懇談会の提言を受けまして、放送事業者の側におきましても、例えばNHKと民放連におきまして、人権問題、視聴者の立場をより重視する立場から、放送と人権等権利に関する委員会というのを設けまして、これは既に本年六月に設置されておりまして、ここでいろいろ視聴者からの苦情を受けて審議をするという体制が整っております。  それから、通信衛星を使いましたたくさんのチャンネルを持つテレビ放送が既に八十二チャンネルばかり始まっております。いわゆる衛星デジタル放送でございますが、このチャンネルの中には成人向けのチャンネル、四社ばかりございます。この会社におきましては、先生今御指摘のありましたペアレンタルロック機能をつけることにいたしまして、いわば親がチャンネル権を持つという形で青少年にその放送が悪影響を及ぼさないような措置がとられております。また、このCS放送につきましては、番組審査のためにCS放送成人番組倫理委員会というのが設置されてございます。  今後の課題でございますが、さっき申し上げました懇談会におきましては、諸外国における先例等、時間帯による番組制限でございますとか、あるいは番組内容の事前表示、Vチップによる番組受信制御、こういった課題が検討されましたけれども、この課題につきましては、当面放送事業者側において自主的にこれをどのように今後実施するかどうか検討を期待するというところでございまして、私どもといたしましては、放送事業者側の取り組みを十分関心を持って見守って対応していきたい、このように存じております。
  25. 谷公士

    ○谷説明員 インターネットの関係についてお答え申し上げます。  インターネット上の有害、違法な情報の取り扱いにつきましては、私どもといたしましても極めて重要な課題であると認識をいたしております。昨年、事業者団体の代表者の方、それから刑法学者等の有識者の方々にお集まりをいただきまして研究会を開催いたしました。そこでインターネット上の情報流通のあり方につきまして御検討をお願いいたしまして、昨年の十二月に御報告をいただいたところでございます。  この中で二点の御提言をいただいておりますが、一つは、事業者による自主ガイドライン策定の支援ということでございます。それからもう一つは、受信者側で有害情報をブロックするシステムの開発ということでございます、  前者の、事業者による自主ガイドラインの策定といたしましては、第二種電気通信事業者の方々のうち約四百社が集まられた団体でございます社団法人テレコムサービス協会というのがございますけれども、こちらの方で本年五月に、電気通信事業における「公然性を有する通信」サービスに関するガイドラインの案を策定されまして、これを広く公開して意見を募集中でございます。  それから、二つ目の受信者側で有害情報をブロックするシステムの開発、これは先生御指摘のVチップのような考え方のものでございますけれども、私どもといたしましても、インターネットにつきましても、テレビ放送におけるVチップのような一定の格付をされました有害情報を受信者側で自主的に選別できるような技術を開発することは大変重要だと認識をいたしておりまして、平成八年度の補正予算で必要な施設の手当てをいたしまして、現在横浜市をモデル地域とし、文部省の御協力をいただきまして研究開発体制を整備しつつありまして、近く研究を開始できるという運びになっております。  この問題につきましては、欧米におきましても大変大きな社会問題となっておりまして、それぞれの取り組みがなされておるということは御指摘のとおりでございます。特に、インターネットは国際的に国境を越えて自由に流通する情報ということでございますので、こういった諸外国の取り組み状況あるいは表現の自由、通信の秘密の保護といった関連も十分踏まえた上で、技術や制度、プロバイダーの事業者としての責任範囲といったいろいろな側面から多角的に検討していく必要があるだろうというふうに考えておるところでございます。
  26. 河村建夫

    河村(建)委員 ありがとうございました。よりひとつ積極的に取り組んでいただきたいと思います。  最後に、法務省に二点ほどお伺いしたいのでありますが、いわゆるフォーカス等の雑誌に少年法違反と思われる記載があった、写真も出た、こういう問題であります。この雑誌社はほかにもそういうことがあったということであります。また、御丁寧にもこれをコピーして売ったところもある、あるいは学校でこれを配ったというような記事も見たわけでありますが、このようなことに対する対応は法務省はどうであったかということが一点と、時間の関係であわせてお聞きいたしますが、このフォーカスの問題等にしても少年法に罰則規定がないわけですね。それから、今回の事件に見るまでもなく、少年犯罪の凶悪化、いわゆる低年齢化、大変なものがあるわけでございまして、平成八年の殺人少年逮捕、九十六人という報告を受けておりますが、このような急増の状況でございます。  そうすると、現在の少年法現状に合わなくなっているのではないか、見直しのときを迎えているのではないかという議論が高まってまいりました。私も事実、事実を聞いてみますと、例えばこの少年はいずれ家裁送致になるであろう、しかし、家庭裁判所に行きますと検察官の同席は認められていない、こんな国は先進諸国で日本だけであります。この少年法ができたのは五十年前のことでありますから、こういう低年齢の少年がこういう事件を起こすという前提に立っていなかったのではないか、このような感じがするわけでございまして、今回、その十四歳は刑事責任はあっても刑事罰にはならない、こういうわけであります。  少年法の精神、いわゆる保護更生させる、これはいいとしても、この現実に合わなくなっているという問題について法務省としてはどのように考えておられるか、お聞かせをいただきたい。
  27. 印部久男

    印部説明員 お答えいたします。  本件各記事は、少年の保護更生の観点から、当該少年事件本人であることを推知することができるような写真等の掲載を禁止する少年法六十一条に明白に違反し、被疑者少年の本条により保障されている人権を著しく侵害するものであると考えております。  また、これら各記事を掲載しました出版社に対しましては、昭和六十年にも、殺人の被疑者少年に関する同種事案につきまして当省から、写真掲載について深く反省するとともに、再びかかることのないように特段の配慮をされたい旨勧告したところであります。今回再び同じ態様の人権侵害である本件各記事を掲載しましたことは、人権尊重の精神を著しく欠くとともに、法無視の態度が甚だしいと言うべきであると考えております。  そこで、当省としましては、本月四日、関係法務局におきまして、当該出版社に対し、本件各記事について深く自戒し、今後再び人権侵犯事件を起こすことがないよう早急に防止策を策定し公表するとともに、本件各週刊誌を速やかに回収するなど実効性のある被害の拡大防止及び被害の回復の措置を講ずるように強く勧告したところであります。
  28. 古田佑紀

    ○古田説明員 少年法につきまして二点ほどお尋ねがございましたので、お答えいたします。  まず第一点で、ただいま御説明申し上げました少年法六十一条の関係で、これに罰則が設けられていない理由はいかがか、こういうことでございますが、この規定は、少年が成長過程にあって将来性が大変豊かだということに配慮して、非行事実等に関しまして少年が特定されるような事項を出版しないように求めている、そのことによって少年の改善更生に資するという趣旨の規定でございます。しかしながら、出版の自由は、御案内のとおり、一方で憲法で保障されております権利でもございます。そこで、そこのバランスを考慮いたしまして、このような規制は設けるものの、それの実施につきましては罰則を直接使うということを避けまして、報道機関などの良識あるいは自主規制、ここに期待をしている、こういう趣旨であるというふうに理解しております。  それからもう一点、最近の年少少年事件等にかんがみ、少年法について改正が必要ではないか、こういうお尋ねだと考えます。  現行の少年法は、戦後の混乱期で非常に少年事件も多かった時代にできたものでございまして、当時から、少年院送致でありますとか教議院送致、その他保護処分を種々のものを用意して、できるだけ少年の特質に応じました処遇ができるように配慮した法律だというふうに承知しております。  しかしながら、私どもといたしましても、凶悪事犯を含みます少年事件の動向も踏まえまして、その一方でいろいろな少年の処遇等につきましての御意見もありますところから、こういうふうなものにも十分目配りいたしながら、現実に起きてくる事件への対応上、現行少年法にどのような問題があるかというふうな点を含めまして、少年に対し適切な処遇を実現するために、第一の基礎であります事実認定の問題など少年手続のあり方について検討を真剣に進めてまいりたいと考えております。
  29. 河村建夫

    河村(建)委員 ありがとうございました。終わります。
  30. 二田孝治

    二田委員長 次に、田中眞紀子君。
  31. 田中眞紀子

    ○田中(眞)委員 関連質問でございます。自由民主党田中眞紀子でございます。  質問に先立ちまして、被害者の方に対しましては哀悼の意を表しますし、また同時に、被害者の御家族に対しましてお見舞いを申し上げたいと思います。  私は、日本の治安のよさというものは本当に世界に誇れるものであるというふうに常々考えております。私たちの国民生活が非常に安全である、他国に比べまして極めて安全であるということは、日ごろ見えないところでしっかりと私たちの生活を守るために黙々と働いてくださっている警察官の皆様の御努力があるということを私ども忘れてはならないと思います。  そしてまた、今回の神戸殺人事件にいたしましても、事件発生以来ほぼ一カ月で容疑者逮捕したということは、やはり検察及び警察の方たちが非常に努力を、地道な努力を暑い日も雨の日もなさった結果であろうと思いまして、私は本当に心から敬意を表したいというふうに思います。  でございますけれども、今回の事件、もちろん、この事件が極めて特異な事件であるということと、それから少年事犯でありますから検察も警察も極めて慎重に捜査を今なさっているのだろうというふうに考えますけれども、現実の問題としまして、私どもが普通の国民生活をしておりまして、知りたくなくてもあらゆるメディアを通じていろいろな情報がもたらされてくるわけでございます。  例えば少年法ということ、先ほど質問が出ましたけれども、この被疑者の方ですけれども、この方のことを、例えばきょうの新聞を見ますと、もう十五歳というふうに書いてあるのですね。少年法が確実に守られているのであれば、果たして本当に十四歳の中学生であるということまで、冒頭のときから、逮捕時から公表されていいのかどうかということからかかわってくるわけでございまして、十五歳になったということは、今回拘置されている間に誕生日を迎えたのかということまでがわかるわけです。  そこで、私の非常に素朴な質問なんですけれども、この今の被疑者の方ですけれども、この方について具体的に法務省の責任で記者会見というものが何回ぐらいされているのか。  といいますのは、私ども、先ほど言いましたように、自然な形でいろいろな情報が入ってきますが、それは、メディアがもう御存じのとおり混乱して、独自のネットワークでもってどんどん取材したことも流していますから、どこまでが正確な法務省が言っている情報であるのか、どこまでがマスコミがつくっているものであるかという信憑性がさっぱりわからないわけでして、そういうことが何か揣摩憶測を呼んだり、非常に結果的には人権をじゅうりんするようなことにもなりかねないというふうに思うのですね。その点について法務省の方お答えいただけるでしょうか。記者会見というものを正式に何回ぐらいなさっているのかどうか、本件についてですが。
  32. 古田佑紀

    ○古田説明員 突然のお尋ねでございますので、事実関係ども承知はしておりませんけれども、仮に、もし私ども関係機関で記者会見というふうなことがあるといたしますと、これは神戸地方検察庁ということが考えられます。しかしながら、私どもとしては、そのような記者会見等を行ったかどうかという事実はただいまのところ承知しておりません。
  33. 田中眞紀子

    ○田中(眞)委員 正式なものはまだされていないというふうに理解してよろしいわけでしょうか。
  34. 古田佑紀

    ○古田説明員 ただいま申し上げましたことは、現在私どもの方で、神戸地方検察庁で何らかの記者会見をしたかどうか把握していないということでございます。
  35. 田中眞紀子

    ○田中(眞)委員 では、具体的にわかる形でお尋ねいたします。  例えば身柄の拘置ですけれども少年鑑別所ではなくて拘置延期、弁護団が、自分たちはもちろん接見もしておられるわけですけれども、ぜひ少年鑑別所へ収容したいということを言っているわけですけれども神戸地裁が拘置延長を決められたわけなんですね。ということは、この被疑者は成人と同じような捜査を受けている、取り調べを受けているというふうに認識してよろしいのでしょうか。
  36. 古田佑紀

    ○古田説明員 少年につきましては、少年法である一定の制限はございますけれども基本的に刑事訴訟法の規定によりまして捜査機関としては捜査を行うということになるわけでございます。  一般論として申し上げますと、少年の場合はできるだけ勾留は避けるようにというのが少年法の精神でございますけれども事件内容等でやむを得ない場合には勾留も認められておりまして、その勾留の過程で取り調べ等も行われるわけでございます。その場合でも、少年につきましては、やはり少年特有のいろいろな配慮すべき事項がたくさんあるのは事実でございまして、そういう点には十分の配慮をしながら捜査をするということになっております。
  37. 田中眞紀子

    ○田中(眞)委員 鑑別所ではなくて警察署で取り調べを受けているということは、結局、逮捕ということは、要するにその段階で人権が侵害される可能性が、そのときにされていますし、今後もされていく可能性が非常に大きいわけなんですね。  例えばサリン事件でもって誤認の逮捕というのがありました。ああいうふうなことも、もちろん人間ですから失敗もあるわけですけれども、ただ、こういうふうに取り調べ警察で行うときにどのような形で実態がなされているかということは、なかなか外部の人からわからない。  この取り調べで何をつくるかといったら、調書をつくるわけですね。調書は裁判に備えているわけです、検察対弁護人で必ずこういうことは裁判になっていくわけですから。この少年が将来、鑑別所に行けば別でしょうけれども、その辺の判断は今非常に慎重にしていらっしゃる最中だと認識はしておりますけれども。  ですから、現実に取り調べ警察で長引くということは、裁判のために、国家権力といいますか、法務省側が非常に強力に証拠固めができる環境が今続いているということを意味するわけなんですよ。そういうことが人権をじゅうりんしないのかどうかということについて弁護人も非常に危惧しておられると思いますし、私どももその辺のことがどういう判断でされているかということを知りたいと思うのです。おわかりになる範囲でお答えいただけますでしょうか。
  38. 古田佑紀

    ○古田説明員 本件、特定の事件そのものの問題としてはちょっとお答えいたしかねるわけでございますけれども、一般的に申し上げますと、先ほども申し上げましたとおり、少年の場合には基本的に勾留は避けて事件捜査をするということにはなっておりますが、非常に大きな事件あるいは難しい事件につきましては例外的に今回のような措置をとる場合も認められているわけでございます。おっしゃるとおり、そこでいろいろな取り調べ等も行いまして調書を作成するということも一般的にはあるわけでございます。  少年の場合には、十六歳未満の少年でありますと引き続き家庭裁判所での手続だけが残るということになっていきますけれども、そういうための資料にも使われることになるわけでございまして、そういう際に家庭裁判所におきまして十分的確な判断がいただけるよう、いろいろな角度から取り調べなり捜査をするということになるわけでございます。  その場合に、特に少年であるということに配慮いたしましてできるだけ細心の注意を払いまして、少年の気持ちなどをいたずらに傷つけないようにするとか、あるいは押しつけになるようなことを避けますとか、そういうふうなことを十分注意して少年については捜査を進めるわけでございます。
  39. 田中眞紀子

    ○田中(眞)委員 成人の場合なんかには、捜査を有利にし、裁判で有利な調書を作成するために意図的にマスコミ等警察側がリークをするというふうなことは、もちろん、やっていますなんということを言う方はおられるわけはありませんけれども、そういうことが往々にして現実に起こっていることを考えましたときに、今のこのことが特殊でありますけれども、今後またこれに類似したような少年の事犯が起こる可能性もあるわけでございます。本当に、このことだけは別ですからといって棚に上げてしまうのではなくて、このこと一回一回がやはり物事を決めていく、判断していく、世の中に影響を与えていく大きなファクターなわけですから、そういうことについても非常に慎重であっていただきたい。今後のためにもぜひそのような御配慮を法務省関係の方にしていただきたいと思います。私ども国民としてはとにかく冷静に見守るべきときであろうと考えます。  それで、文部大臣本件で伺いたいのです。  少し政治的なことになって恐縮でございますけれども、この事件が起こりましたときに官房長官が、閣議との関係でも伺いたいのですけれども少年法の改正をするような必要があるかもしれないとか、あるいはビデオなんかの出版物の取り締まり等についても考えなければいけなくなるかもしれないというふうなことを、厳密な文言は覚えておりませんけれども、そういう発言をなさっています。  内閣官房長官というのは内閣のスポークスマンでございますから公式発言と私は認識しておりますけれども、そういうことについて閣内でどういうふうに政府が考えておられるのか、文部大臣としてどのようなことを考えていらっしゃるか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
  40. 小杉隆

    小杉国務大臣 官房長官の発言は閣議で行われたものではありませんで、記者会見の席上であります。したがって、閣議の場ではこの問題について議論したことはありません。
  41. 田中眞紀子

    ○田中(眞)委員 それでは角度を変えて伺います。  そういう発言を記者会見場で官房長官がなさることはわかっておりますけれども、閣議の場でなくても、文部大臣としてそういうことについてどのようにお考えになりますか。個人的な御意見でも結構ですからお聞かせください。
  42. 小杉隆

    小杉国務大臣 これは、官房長官は官房長官としてのお考えを述べたものだと思います。私からは、閣議の席では、この問題が非常に社会的注目を浴びているという見地から発言をいたしました。  その内容は、先ほどお答えしたように、文部省としてこの事件が起こってからどういう対応をしてきたかということと、それから心の教育について中央教育審議会に諮問いたします、そういうことを発言したところであります。
  43. 田中眞紀子

    ○田中(眞)委員 今、中教審のことにお触れになりましたので、それに関連して伺いたいと思います。  十六期の中教審が提言なさった中で一番大きな柱、文言としては、「生きる力」それから「ゆとり」という言葉が繰り返し言われておりまして、まさしく今の日本教育現場に欠落している点をはっきりと浮き彫りにして示しておられるというふうに思います。ですが、この中教審の議論にいたしましても、教養審もそうですし、生涯学習審議会等でのトータルで伺いたいと思いますけれども、そういう場において、なぜか、勉強がおくれている子供たちに対する具体的な対応といいますか、そういう視点が何か欠けているような感じがいたします。  例えば公立の中高一貫教育校というふうなことについての提言があるわけですけれども、これは現実の社会が、今日本というものが非常な学歴社会でして、そして受験社会、受験競争の社会になっていて、それがどんどん低年齢化してきているという厳しい状態があるわけなんですね。  そういうふうな中でもって本当に何が一番大切かといったらば、エリートをつくるということ、それも、ある程度飛び級も将来理科系でもって認めようではないかと中教審は言われております。その辺はわかりますけれども、そういう視点もありますけれども、勉強を得手としない子供たちに対する配慮といいますか、具体的な施策のようなものは余りはっきり書かれていないのではないか。  要するに、具体的な哲学としては「ゆとり」を持たせるとかあるいは「生きる力」を与えようとか言っているけれども現場子供たちはもう疲れ果てて疲弊しているわけです。そういう中において公立学校というもの、もしも中高一貫、これは賛否両論ございますけれども大臣御自身が公立学校の役割というものは何だというふうに思っていらっしゃいますか。
  44. 小杉隆

    小杉国務大臣 中教審の第二次答申が先般出されましたが、これはひとつ、それがイメージが強過ぎると思うのですが、第一次答申もあわせて総合的に御判断いただきたいと思うのです。  今御指摘の点は、第一次答申では、個性尊重とかゆとりある教育とか、そういう部分がかなり指摘をされております。そして、第二次答申では、特に、個性を尊重しつつも、今まで余りにも形式的な平等主義という中で、それぞれの子供の持っている才能を伸ばすという視点がややおろそかにされてきたのではないか、こういう反省から、特に才能のすぐれた子供のそれをさらに伸ばす、こういう視点を入れたわけです。  ただし、だからといって、学習進度のおくれた子を置き去りにするということではなくて、そういう子供たちに対しても十分な配慮をしていけ、例えばチームティーチングとか繰り返し学習とか、そういった特別の配慮も同時に行うべきことを強調しております。
  45. 田中眞紀子

    ○田中(眞)委員 ちょっと私が伺ったのと趣旨が違うような感じがいたします。私の質問は、公立学校の役割、パブリックスクールが私立に比べてどうあるべきだというふうにお考えでいらっしゃるかということを伺ったのですが、まあ、時間の関係もございますけれども。  私が思いますのは、この中教審の答申等も拝見いたしまして、差異を認め合う態度を育成することが大事だという言葉がありまして、まさしくこのことだと思うのですね。このことが、勉強だけではなくて、大臣、一人一人が違うファクターを持っている人間であって、そういう人たちがともに過ごす。一つの勉強だけでもって――例えば今現在ある中高一貫というのは、結構私学でもって進学校と言われています、いいか悪いかは別問題として。そうではなくて、公立の学校でそういうふうなものをつくるということは、いろいろな人たちが集まってくるのが公立学校のはずですから、ところが、それがこういうものをつくると、それが受験エリート校化してしまって、それに入るために今度は小学生たちが激烈な戦争をしていくようなことになっていくのではないか、「ゆとり」とか「生きる力」なんというのとは逆行をしていくようなシステムになるのではないかなということを私は思っております。  僣越ですけれども、私が思っている公立学校というのは、むしろそうではなくて、みんなが違っていて差異があるから、そういうことを学ぶ。それで、学校というのは家庭教育とどこが違うかといったら、集団で人と人がぶつかり合う場所ですね。すべてが違う能力やらパーソナリティーやら環境やら将来を持っているわけで、それがすばらしいわけですから、それを指導するというところが公立学校であるはずなので、その差異を認めるということ。私立の受験学校はあう程度偏差値だけではっといくのかもしれません。ですけれども、そうではないところでもって一生懸命、そういう人材を集めることによって、学校教育、公教育というところでもって教育を受ける人のすばらしさが出てくるのじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  46. 小杉隆

    小杉国務大臣 公立学校の役割というのは、さっき答弁を漏らしましたけれども、これは、憲法とか教育基本法とか学校教育法で国民に広く学習の機会を与え、ある一定の水準以上の知識を習得してもらう、こういうことだと思いますが、今最後の部分でおっしゃられたように、私の経験でも、公立の小学校中学校のときは種々雑多な人が来ているわけですよね。私自身は職人のせがれでしたし、高級官僚の息子もいれば先生の子供もいる。そういう中で、ああこういう子供たちもいるんだ、ああいう社会もあったんだということをいろいろ幅広く勉強する場でもあったと思うんですね。それは、私は大変すぐれた経験であったと思っております。  優秀な人ばかりを集めた同質的な学校だけじゃなくて、そういういろいろな立場、いろいろな職業、いろいろな人たちと交わるということは、まさにこれは生きる力にも貢献すると思っておりますし、そういうことで、公立学校中高一貫教育をする場合には、ただ単にエリートだけを集めて、そして受験競争を低年齢化させるというようなことであってはいけないと思っております。
  47. 田中眞紀子

    ○田中(眞)委員 理想はそうであっても、今の日本現状というものをしっかり見据えましたら、これはもう大変な受験競争なわけですよ。ですから、子供たちがいらいらしている。今回の事件でも、あちこちで子供たちの声なんかも散っていますし、カウンセラーとか親の意見なんかも投書と か対談とかいろいろ載っていますけれども、どれを見ても、私も子供を三人育てている母親ですけれども、本当に子供自体がストレスなんです。  それは、朝学校に行って、塾に行かせますと、やはり一日二つやるわけです。朝八時から行って、そして五時ごろ、大人のサラリーマンが一杯飲んで帰ろうかなというころにそうやって塾に行くわけですね。そして今の塾なんかは、進学塾のことを申しております、おけいこではありません。進学塾なんかでは、本当に子供の成績順に、前、後ろ、席をかえたり、何かプラスチックのようなものでもって、ちょっとできが悪いとぽこぽこ先生がたたいていくとか、もうすさまじい。点数だけでいくわけですよ。そういう中でもって、朝から来て、体も疲れていますし、暑い日もあります、寒い日もあります。風邪っぽい日もあるでしょうし、それから頭もすり減っているわけです、学校で一生懸命やっていればですけれども、気を抜いていなければですが。  そして、もう本当に心もぼろぼろになって競争を強いられて、テンション、テンションであって、何か子供というのはいつも時間に追われていて、そして親とも余り会話もしないで、先生も学校もいつもいつも一つのドアに全員を押し込むような形でいくから、全然余裕が持てないのですよ。中教審がゆとりとか言っておられますけれども、それが一番ないのですよ、子供たちにも、親にも。  教育というものは、社会から遊離してあるものではなくて、社会の反映なんです。教育がまた社会に反映しているわけですから。きょうこの委員会室におられるほとんどの方が、多分御自分自身が経験した方もおられるでしょうし、お子さんを塾に行かせていないという方は本当は挙手してもらいたいぐらいでして、それほど蔓延しているわけですよ。子供たちは、そういう中で精神的な不満が、内圧がぎりぎりまで上がっているのです。そこで我慢して子供たちはいるということ。ですから、子供たちは本当にぎりぎりのところで適応をしているのであって、適応をしているふりをしているのか頑張っているのであって、もうすり切れている状態にあるのですね。  そこで、そういう子供たちと対峙する先生というもの、教育というのは人間人間なんです。ですから、私は前回も議員立法をさせていただきましたけれども、これはやはり、人がそれぞれ違うんだ、違うから、違うことでもって自分が楽にならなかったら、人生生涯教育なわけですから、公教育だけじゃないわけです。ですから、その中でもってどのような人間をつくるかといったら、いろいろなファクターを持った人を教育現場に教師として送り込むようなシステムが求められているのじゃないかと思うのですね。  先生方も大変会議等で疲れておられるのですよね。先生も疲れていて、親もきりきりしていて、塾の先生は点数点数でいくわけですから、そういう中で子供というものが非常に疲れているのに、ただいろいろなことを言っても難しいのであって、むしろ私は、今日本教育で求められているのは規制緩和じゃないかと思うのです。大臣、こういうことをお考えになられたことはおありでしょうか。
  48. 小杉隆

    小杉国務大臣 私は、文部大臣になってキーワードといたしましたのは、オープンということです。とにかく開かれた学校づくり、こういうことで、今言われた教師、非常に多様な教師が必要じゃないかという観点から、例えば社会人教師、教員免許状を持たなくても、特別非常勤講師としてどんどん教壇に立ってもらってその生々しい体験を学校で教えてもらったり、それからインターンシップという制度で学生にもどんどん社会へ出ていってもらって、学校教育だけでは知り得ない社会の厳しさを学んでもらうとか、そういうふうに学校社会との垣根を低くしてできるだけオープンな学校運営をしていくということ。  それから、第一に言われたテンションですね。親も子も、社会全体が今テンション社会と言われるような状況の中で、おっしゃるように子供というのは社会の反映だということですから、まずやはり学歴社会の是正ということで、就職試験のときもただ学歴一本やりじゃなくて、あらゆる要素を加味して選考してもらいたい。そのことがひいては大学の入試にも高校の入試にも影響を与えてくる。こういうことで、社会全体が、やはりそういう学歴だけを評価基準にするのじゃなくて、人間の多面的な要素を評価の要素として考える、こういうことが必要じゃないかと思っております。
  49. 田中眞紀子

    ○田中(眞)委員 心強く感じますけれども、ぜひ、具体的な施策として御在職中に何か打ち出していただきたいと思います。  私が申します教育の規制緩和と申しますのは、具体的には、教員の免許を持たない人、持っていなくても、例えばジャーナリストでもいいですし、作家でもいいですし、あるいは職人さんでも、一芸に本当に秀でた方たちを、何%かのある程度のポーションを決めて、公教育現場に行って対応してもらう時間をつくるとか、そのくらいの踏み込みをしないと、やはり知育偏重できたような人たちが学校の先生になって、また先生もいらいらするというふうなことだと思いますので、ぜひこれはひとつ考えていただきたい、私の提言として申し上げたいというふうに思います。  それからもう一つは、塾の問題でございますけれども、この塾のことを何か文部省もうまいことを言っていて、しっかり見ていないとすぐはぐらかされてしまうのですけれども子供の売春を援助交際と言っているのと同じように、塾のことを民間教育事業者だと言って、今まで塾のことは文部省はずっと無視して、シカトしてきたはずなんですけれども、最近はこの実態を無視できないからといっていろいろ議論することになっているそうです。  御存じかどうかわかりませんが、全国のいわゆる学習塾ですけれども、各種学校の傘下などの予備校を入れませんでも四万八千カ所もあるんですね。驚いたことに、事業収入は九千億円にまで達している。文部省の予算も削減されて大変厳しい昨今でございますけれども、何だかこういうふうなことを聞きますと大変なことで、公教育を充実して公教育現場にいい人を集めなければいけないのが、塾の方が教えるのもうまいしおもしろいし、いい先生がいるという実情はお聞きになったことがあると思うのです。もちろん学校現場にもいい方がおられると思いますが。  そうすると、その中でもって今ごろ急に、もう遅いんですよ。なのに文部省がやはり塾の役割を、実態を無視できなくなったので、これから、名前を民間教育事業者とかなんとか言いながら、これについて対応しなければいけないと言っておられるのは、ちょっと時代錯誤というか遅過ぎて、むしろ違う、逆のアプローチをしていかなければならないのではないかなというふうなことを私は感じます。  この塾というものの存在が子供の心をいやすことができないで、知育偏重、要するに知識というものを詰め込む技術にたけているところなんですね。今社会で求められているのは知識ではなくて、この事件もそうですが、その前も、今後もしばらくそうかもしれませんが、ゆとりがあって、人がそれぞれ違うものを、価値観を認められるような心、人の違いを認められる社会をつくらないと余裕ができないわけですから、すなわち、知育は知育でいいでしょうけれども、みんながその一つの知育というドアに殺到するのではなくて、ほかの価値を見つけて、生きがい、たった一度の人生をどのようにして生き抜いていくかということをできるシステムをつくるのが文部省なのであって、この考え方、塾の役割、議論というものについてはちょっと私は納得ができないでおります。いずれまたこのことについて伺う機会は欲しいというふうに思っております。  そして教育改革の中で、この内閣もいろいろなことをおっしゃっているようですけれども、きょうは涼しくなりましたが、先日来東京も本当に四十度近いような気温になりました。そういう中で、子供教育環境を物理的にも整備してあげるということを考えてみてはどうかなといつも授業参観なんかに行ってもずっと私思っておりました。  私はある新聞に一九八五年に投稿したことがありまして、それは、まさしく塾と教育環境の問題を書いて投稿したものなんですが、これは「主婦・東京在住・田中眞紀子」と書いてある大昔のものなんです。私の若いときの写真が載っているんですが。  このときからずっと思っていたことですけれども、何で学校にクーラーがないのかなと。いろいろなお母さんたちがお母さんのお茶飲み時間にぺちゃぺちゃ言うのですね。多分文部省、予算がない、やってあげたいとおっしゃるでしょうけれども、これは人権問題です。先生も子供も暑くて大変なのに、職員室は結構冷房があったりしますけれども、そういう中で、全国の国公立の小学校中学高校を数えましたらば、三万九千五百校というのが日本じゅうにあるそうなんですね。もちろん北海道とか涼しいところもあるでしょうし、それから、七月、八月だけなのに、そんな必要ない、期間が短いから我慢しろ、我慢我慢と言うかもしれませんが、親は涼しい顔をして扇風機に当たったり冷房を入れているわけですよ。  それを普通の経費で、今の四十人学級ぐらいであれば一台五十万円ぐらいかもっとそれ以下で冷房をつけられるというのを、これは業者に一応聞いておいたのですが。そうしますと、経費としては、ずっと数を掛け算しますと、単純計算で九百八十億ぐらいのお金がかかってしまうらしいのですけれども文部省も少し考えて、学校に行ったら子供も落ちついて本当に集中できるように、公教育現場を整備するためにそういうことをお考えいただけないものだろうかと一母親として切実に考えます。  もしだめだったら、六月で学校は休みにする、今のような学校のタームであるのであれば。七、八はゆっくり休ませる。宿題も一切出さないというふうなこととか、かなりトラスチックな変化をやっていかないとならないので、お題目を幾らこの委員会でやってもだめです。  そして最後に申し上げますが、中教審のメンバーを見ていますと、大学の教授とか一流企業の社長さんとか評論家とか本当に偉い方ばかりで、要するに学歴が高くで強い立場にある方たちが教育とは何ぞやを建前論で語っておられて答申を大臣に出しているのですよ。現実はそうじゃないわけでして、もっとカウンセラーとか子供の声とか外国人とか、痛みを持っている一般の人の声を答申しなかったら現実なんて改革にならないのです。  こういう委員会のメンバー、今回はきっと大臣が御指名になったのじゃなくて、前から申し送りで、多分文部省がこれこれこれと言ってくるんだと思うのですけれども、そういうものを受け入れないで、大臣がもっと現場に近く、目線を下げて、現実に近づくように、我々の痛みがわかるようなメンバー構成をしてくださるように、私は切実な要望としてぜひお願いしたいというふうに思います。  あと、いろいろと発想の転換というものが教育には必要だと私は思います。  先ほど河村先生の御質問の中でもアダルトビデオがどうだのこうだのと、これは深夜に放送するようにするんだと郵政省か何か言っておられましたけれども、私だったらそうしません。今、夜中に起きているのはむしろ子供ですからね。親の方が疲れて寝ているんですよ。そうであったら、子供学校に行った時間、学校の始まる時間ぐらいから始めるとか、そうすれば、見るのはうちにいるお暇な方しか見ないとか、子供はみんな学校に行っているわけですから。そのくらいの発想の転換でもしないとこの情報社会を乗り切れないということを申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  50. 二田孝治

    二田委員長 次に、藤村修君。     〔委員長退席、河村(建)委員長代理着席〕
  51. 藤村修

    ○藤村委員 新進党の藤村修でございます。  私も小学校六年生の男の子を持つ父親といたしまして、このたびの神戸須磨区の土師淳君に対しましては本当に心から哀悼を表明し、また御家族皆様に謹んでお悔やみを申し上げる次第でございます。  まず最初に、私ども、七月一日の日に新進党の文教の担当者メンバーで取り急ぎ神戸に駆けつけて、一日でありますのでまだ何もわからない時点ではございましたが、神戸教育長らからの意見聴取をしてまいりました。あるいは、私自身も多井畑小学校あるいは友が丘中学校の近辺を少し歩いてまいりました。  このたびの中三生逮捕というニュースは、須磨区の地元の小中学生や保護者、地域住民を初め日本じゅうの人々に戦慄と衝撃を与えたと思います。現時点では中三生はあくまで容疑者ではございますが、動物虐待のことやらあるいは学校内での傷害事件などのきっかけが報道されたり、学校社会への恨みと憎悪などの動機までが今語られる中で、学校教育関係者あるいは教育界全体をも揺るがす問題となっている。こういう意識から私も、閉会中ではございますが、早く文教委員会を開いていただきたいとお願いをしたところ、委員長ほか委員各位におかれまして検討いただきまして、きょうとりあえず開くということになりましたことを感謝申し上げる次第でございます。  私は、この一つの事件をこの文教委員会解明するということではなしに、これは教育界全体を揺るがす問題であるし、あるいは過去ずっと、いじめあるいは不登校そして青少年犯罪の低年齢化というものは何もこの事件一つではないわけでありますから、そこに横たわる教育の問題というものをこの委員会では整理する必要があるだろう、それも、緊急にやれることは何かということも閉会中に開いた理由だと考えております。  私自身、まず今回の認識としましては、いじめ、不登校そして凶悪犯罪の低年齢化などということが今の中学校に集中しているということをやはり直視しないといけないと思います。それから、中学校においてこれら問題が多発する大きな理由の一つに高校受験という問題も、これはずっと言われ続けていますが、結局は知育偏重のいわば偏差値教青という弊害がその中にあることもはっきりとここで確認をすべきではないかな、そのように考えるところであります。  そこで、まず初めに文部大臣にお尋ねを申し上げたいのです。  このたび緊急に中教審へ、心の教育というタイトルをつけられて、家庭教育学校教育社会教育の三つの面から、心理学の専門家も専門委員として加えて、これは予定外でありましたが、八月上旬にでも緊急に諮問したい、こういうことでございますので、どういう基本的なお考えで諮問をされるのか、まずお伺いしたいと思います。
  52. 小杉隆

    小杉国務大臣 来月上旬にこの件で諮問をするということは、そのとおりでございます。  具体的な諮問内容については現在鋭意詰めている段階ですけれども、特に、生命を尊重する心とか他人に対する思いやり、そういった社会性、倫理観というものを幼児期からはぐくんでいく、こういうことが大切ではないかという視点に立って、幅広く高い見地から御議論をいただきたいと考えております。  先ほどから申し上げているように、子供を取り巻く家庭環境あるいは学校の状況、社会の環境を考えましても大変幾つかの問題点がありますので、そういった懸念すべき点も十分検討していただきたいと思っております。そういうことで、本格的な諮問は本来九月に考えていたのですが、この心の教育については八月上旬に繰り上げて、先に諮問をしたいと考えているところであります。
  53. 藤村修

    ○藤村委員 先ほど来も話題になっております今開かれている中教審、昨年の七月十九日に第一次答申を出されて、実はこの中に相当部分が含まれているのじゃないかと思うのです。心の教育というものが、先ほどの質問では、いろいろな角度から検討されるべき問題でと、青少年犯罪援助交際云々と文部大臣お答えになりましたが、心の教育とは何かというのは、この昨年の一次答申の中で拾い上げてみても、例えば「よい行いに感銘し、間違った行いを憎むといった正義感や公正さを重んじる心や実践的な態度、他人を思いやる心、生命や人権を尊重する」云々、あるいは「共感することのできる温かい心、」あるいは「美しいものに感動する心、」あるいは「ボランティアなど社会貢献の精神」と、スローガンはもう既に出尽くしていると私は思うのであります。そこで、今回緊急に諮問をされるのですから、ぜひその心の教育をどう具体化するかというか、そこまで踏み込んで文部大臣からこれは諮問をしていただきたいのが第一点。  それからさらに、幼児期からのということでおっしゃっておりますので、私は、例えば赤ん坊の生まれたときに母親子育て支援みたいな形で、これは厚生省なのかもしれません。病院なんかでママさんスクールとか結構ありますが、こういうのと連動して、親となるのはどういうことかという、これは今の親御さんに大変失礼な言い方の部分が一部ございますが、やはり親とは何かみたいなことを若いお母さん、お父さんの時代から、これは文部省で何かそういう家庭教育支援ができないかなどもこの諮問の一つに入れていただきたいし、それから、今回中学校に集中している問題というものをとらえてこの緊急の委員会も開いているわけでございますが、やはりここでは具体的には、中学校にある程度少し重みを持って考えたときに、学校の先生対生徒の数がこれでいいのかということもひとつ考えていただきたい。  例えば、先生一人当たりの生徒数というのは、英国で二十一人、フランスで二十六人、旧西ドイツで二十五人、いろいろちょっとカウントの仕方が違うとしても、日本では全国平均三十四人とか言われております。やはりこれは明らかに日本の先生の対生徒数は大きいわけで、このことも中教審は、やはりこれを減らすべきでないかと去年も言っているわけでありますから、もう既に答申はしているので、じゃそれを具体化するというのは、これは行政の力でありますし、文部大臣の力でありますから、このことを具体化するにはどうするか。来年度以降、たしか定数改善計画が延期、繰り延べになりますね。しかし、その中でも中学校にはこうするんだという、そんなことをやはり諮問し、やっていただかないと、これは意味がないと思うのですが、いかがでございましょうか。
  54. 小杉隆

    小杉国務大臣 基本的なことは私から申し述べて、補足があれば局長の方から答弁させます。  まず、心の教育については、今御指摘のとおり、第一次答申の中にもかなりこの部分は含まれております。といいますのは、いじめ、登校拒否というような事態を踏まえてそういう答申になったと思うのですが、今回このような事件が起こって、さらに突っ込んだ詰めをやっていただく必要があるだろう。そこで、今お話しのように、単なる総花的な結論ではなくて、より具体的に出せるものは出してほしい、こういう気持ちで私は諮問したいと思っております。  それから第二に、この幼児からの教育ということですけれども、確かにこれは厚生省ともよく連携をとっていかなければいけませんが、文部省としてできることは、幼児教育、特に幼稚園教育の充実ということを私は具体的に取り組むべきだと思っております。  私もよく幼稚園のお母様方と話すのですが、みんな育児に、試行錯誤といいますか非常に悩んでいる方が多いのですね。したがって、幼稚園教育というのは単に幼児だけを教えるのじゃなくて、その母親とか父親に対しても、どう育てるかといったような指導も幼稚園教育の中で私は充実させていくべきじゃないかと思っております。  それから、おっしゃるように、中学校が一番問題が多い、今までのケースから見て。思春期であり、心の動揺の一番激しい時期でもありますから、生徒数と教員の数、これは非常に重要なファクターでありますので、私たちもできるだけ教職員の配置についても努力をしているのですが、御承知のとおり、第六次教職員の配置改善計画も、本当は来年度で終わるところを二年延長ということになりましたので、今どういうふうにバランスをとってやっていくかということは、各県別とか、いろいろ事務当局で協議をして、激変にならないような、そして中学校のこういった事態を踏まえまして、よりきめ細かな配置を努力していきたいと思っております。  第七次の計画については今のところ白紙でございますが、将来とも私たちは、やはり中学校教育重要性ということを考えまして、教職員の確保には全力で取り組んでいきたいと思っております。
  55. 藤村修

    ○藤村委員 前向きな御答弁だと受けとめます。  今おっしゃった教員配置について、本当に中学校の部分に重点を置くということは、これはやはりぜひやっていただかないといけないし、それからもう一つは、全国平均で三十四人とさっき言っておりましたが、都会と地方ということがありまして、一方で、地方については二十人ちょっとぐらいのところも十分あるわけですから、やはり問題が都会に起こるというところも重視していただきたい。つまり単に公平というか、何か計算で、割り算してこうというのではなしに、都会とか地域の、問題がある地域とか、そういう濃淡をつけての結果を出していただきたい、このように御要望申し上げますとともに、もう一点、幼稚園教育で今御答弁いただきました。私も賛成であります。  そこで、これは幼稚園のときにこそむしろお父さん教育も可能性が高い。幼稚園の運動会に行きますと、お父さんがビデオを持ってたくさん来ています。小学校へ行くと少なくなるし、中学へ行くとゼロに近くなる。その意味では、幼稚園段階で特に、親御さんの教育といいますか、それを支援していただくというのは、これは新しい発想でやっていただきたい。  今回、義務教育という言葉がいっとき問題になっておりますが、義務は親にあるわけでありまして、子供には義務はおいわけであります。その意味では、親の義務というか親権、親の権利といいますか、そういうものを少し、日本じゅうの親に対してといいますか、文部省ができることをいろいろ考えていただきたいというのが要望でございます。  次の質問に参ります。  いじめ、不登校と先ほど言っていらっしゃいますとおりで、きょうまでに幾つものケースがある中で、委員会でもいろいろ議論をした、あるいは審議会などでも検討いただいたということでありますので、ある意味ではもうぼちぼちいじめ、不登校対策というのは結論を出していいのじゃないか。  分析は大体どうなっているのかということでお伺いしましたら、分厚い去年の暮れに出たこういう冊子の中でも、児童生徒問題行動等に関する調査研究協力者会議報告も出ておりますので、私、ここで少し整理してポイントだけを報告いただきたいと思うのですが、現時点で、このいじめ、不登校に対する対策、どういうふうに考えておられるか、文部省の方でお願いします。
  56. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 いじめにつきましては、いろいろな原因、背景が考えられるわけでございますけれども基本的なしつけの不足、思いやり、正義感、善悪の判断についてのしつけ等が不徹底だ。これは家庭教育あるいは学校教育を通しての課題である。特にいじめにつきましては、弱い者をいじめることは人間として絶対に許されないという基本的考え方の徹底をしていくということが一つでございます。  それからもう一つは、一人一人の個性や特性というものを踏まえた教育というものを展開していく必要があるのではということが第二点。  それから三つ目は、子供たちにさまざまな自然体験、社会体験といった体験的な活動をさらに勧めるということの必要性というのが三点。  四点目としては、社会全体としこうしたいじめ等の問題についての深刻さというものの認識を 深めるということが、さまざまな事情が考えられるわけでございますけれども、私ども大きなポイントなのではないかというふうに考えております。  そういう背景、原因を踏まえまして、私どもといたしましては大きく四つの取り組みを進めているところでございます。  一つは、やはりこれは家庭である、あるいは学校である、いや地域だということではなく、学校家庭地域がそれぞれ役割を果たしながらより連携を深めていく、そういった取り組みをしていく必要があるということで、モデル市町村を指定しますとか、あるいは家庭教育子育て支援推進事業というようなものを行うというのが第一点でございます。  それから第二点は、主として学校教育にかかわる課題でございますが、ゆとりのある学習環境をつくり出す、そして考える学習あるいはみずからさまざまに工夫して取り組む、そういった学習を進めていく、そのためには教育内容の精選ということも必要であるわけでございますけれども、そういった指導のあり方の問題。それから、先ほどは大臣がお触れになりましたけれども、教職員配置の計画的推進ということも大切な課題だ。また道徳教育等の充実ということも大事だ。こうした一人一人を大切にし、個性を生かした教育の充実ということが第二点。  それから三つ目といたしましては、子供たち一人一人を理解し認識し、そして一人一人の子供たちにその存在感を実感させるような教育指導という意味で、カウンセリングマインドの育成でありますとか、あるいはいじめ等に対します研修を含めました教職員の指導力の向上ということが第三点。  四点目といたしましては、スクールカウンセラーの配置等を含めました教育相談体制といったものの充実整備。  大きくこの四つを私ども施策の柱といたしまして現在推進しているところでございますが、今後ともさらにこれらの施策の充実に取り組んでまいりたい、こんなふうに考えております。
  57. 藤村修

    ○藤村委員 最後に国の取り組みについておっしゃっていただいたわけですが、例えば教職員の配置改善計画にしても、提言はした、あるいは提案はしている、しかし現実はこうだということと、この乖離はどうするのかということ。これはさっきの繰り返しになりますが、やはり問題点がどこにあるかということを絞りながら、特に私は中学校問題だと思います。ですからそこに絞り込んで、ここは教職員の、例の先生の数が減らないように、あるいは都会とか地方とかを考えながら濃淡をつけて配置するというふうな、この財政の中で弾力的に考えていかないと、やはりこれが必要で、こういう考え方をぜひ、今回たしかこの協力者会議をまた改めてお開きになるということも聞いておりますので、もうスローガン、理想はようわかった、具体的にどうするのか、こういうことを提言していただきたいのですが、いかがですか。
  58. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 ただいま先生の御指摘は、専門家によります協力者会議の点だと思います。先ほど大臣から、心の教育、幼児期からの心の教育ということで、中央教育審議会で大きくとらまえて検討するということとあわせまして、私ども省内に専門家から成ります協力者会議を発足させて検討する。そのときには分析、検討ということも大事なことだと思いますけれども、あわせまして、具体的な実行していく施策ということが重要だというただいまの先生の御提言は十分踏まえまして協力者会議審議を進めるように留意したいというふうに思います。
  59. 藤村修

    ○藤村委員 次に、私は中学校問題に絞って、特に校内暴力の発生ということで、今回須磨事件につきましても、場合によって校内暴力があった、なかったということも問題にされるわけでありますが、中学校での校内暴力の発生件数が、例えば平成元年から平成七年で見ますとおおむね増加傾向で、平成元年には三千二百二十二件、それが平成七年では五千九百五十四件、倍増近くなっております。  ところが一方で、警察庁調べということで、同じく校内暴力、つまり言葉は悪いのですが警察ざたになったというものについては、平成元年から七年で見ますと、これは大幅に減少している。平成元年に八百九十六件であったのが平成七年で四百三十四件、こっちは半減している。中学校における発生件数は増加している、しかし警察ざたは減っている、これはどういうことなのか、分析がありますか、教えてください。
  60. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 校内暴力につきましては、その中身としては三つの形態がございます。対教師暴力、それから生徒間の暴力、それから学校の施設設備等に対します器物損壊、この三つを私ども校内暴力というふうにとらまえまして毎年調査をいたしております。  警察庁も同様に、この調査の対象自体はこうしたものというふうに認識しておるわけでございますが、ただいま先生が御指摘されましたように、私ども分析をするのはなかなか難しい点があるわけでございますけれども警察庁が発表しております数字は、まさに補導した件数ということでございます。  私ども調査は、補導された有無にかかわりませず、各学校からの報告をいただいた数、これを全国集計いたしまして発表いたしております。そういう違いがございます。  そこで、そういったことから、その原因を我々なりに分析をいたしましたその結果として、一つは、補導に至るようなある意味では重大な案件、この数自体はあるいは横ばいであるのかもしれない、しかし補導に至らない校内暴力というものが学校の数の点においてあるいは発生させた生徒の数においてふえているのではないか、そんなふうに私どもは分析をいたしております。  なお、技術的には暦年と年度と違うというようなことがございますけれども基本的にはそういった蔓延状況が進んでいるのではないか、こんなふうに私どもは認識をいたしております。
  61. 藤村修

    ○藤村委員 ちょっと、今の発言では、補導に至るようなのは横ばいかとおっしゃったのですが、横ばいではなくて、明らかにグラフにかいても右肩下がりに下がってきていますので、お間違いのないように。  確かに、対教師暴力について横ばいであります。それで、生徒間暴力が相当ふえているのと、それからいわゆる器物損壊が非常にふえている、このことは言えるのですが、しかし非常に常識的に言うと、校内暴力自身の件数はふえておって、しかし補導件数はずっと着々と減ってきているというのは、どう考えても解せないわけであります。  例えば、今回の事件関係して警察の方が分析している、これは報道によりますと、警察学校連携が緩み、校内暴力事件が潜在化した可能性があるという分析をしております。つまり、八〇年代、荒れる中学校と言われたようなときに、相当補導も多かったけれども、やはりそういうものを一生懸命努力してなくす方向でもあった。ところが、件数としてはふえてきているわけですね。そうすると、やはり補導件数もふえるのではないかと素人考えでは思うのですが、それが減っているというのは、潜在化しているという考え方に立てないかなと。  そのときに、私は、これは学校ないし教育委員会にひょっとしたら、推測ではありますが、管理教育的発想はないだろうか、見直す必要はないかと考えるわけです。管理教育などというともうやや古めかしい言葉になって、今はもうちょっと進んでいるはずなんですが、どうもそういう兆候というか、そういうにおいがしないでもないと私は勝手に考えるのです。例えば、今回のこれは神戸市でありますが、神戸教育委員会の体質はどうであろうかと、ひとつ見直す必要はないかどうか。  ここに実は十年前の一九八七年の新聞記事がございまして、これは「ザ・丸刈り」という特集を八回ぐらいにわたってした連載なんです。私は隣の大阪の公立中学校に行っておりまして、丸刈りではありませんでした。兵庫県は私の当時はもう全部丸刈りで、それも今から十年前でいってもまだ大半、神戸教育委員会、丸刈りであった。あの新しい港神戸の都市がどうして丸刈り中学校なのかと私たちも不思議であったのですが、そういうものが神戸教育委員会の中にずっとあっていて、それでこの新聞の最後の方では、ある先生がこう述べているのですね。「各校の生徒指導は主に保健体育担当の〝力のある教師〝に任され、そこに校長、教頭らが加わる話し合いで決められたことは半強制的に各教師に押し付けられる。多くの教師は知らず知らずに髪形の監視人になり下がり、生徒の大事な顔色や健康状態、心が発するサインを見落としている。もし疑問を口にすれば〝何と寝ぼけたことを″と白い目で見られる」「神戸では心より体から入る指導が主流です」。  これは一先生の偏った意見かもしれませんが、しかし何としても形から入るやり方が神戸教育委員会にはなかったかどうか。この辺はここで聞いてみてもしようがないのですが、私は神戸教育長にもお話を聞いてまいりましたが、最近は、そういうことでは全然なしに、非常に自由なことになっておりますということであります。  ただ、管理教育についても、昨年の中教審の一次答申で、というよりももっと古くに、これは昭和六十一年の、当時の臨教審ですか、臨時教育審議会の二次答申でこんなことが書かれています。「一部学校に見られる外面的に服装を細かく規制するなどの過度に形式主義的・瑣末主義的な事例の背景には、地域の状況、児童生徒実態、父母の意向など種々の要因があるが、このような教育は、児童生徒の内面の自己抑制能力の向上をもたらすことができず、情操豊かな人格の形成を妨げ、創造力・考える力・表現力の低下をもたらすものであり、徳育とはいえない。」と断言しているのですが、これは昭和六十一年。今さっき紹介しました「ザ・丸刈り」は昭和六十二年の連載であります。だから、こういうものがうまく現場教育委員会なり学校に伝わってなかったのか、あるいは神戸がやや特異だったのか、その辺はおわかりになりますか。
  62. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 神戸市につきましての評価といいましょうか、判断というのはなかなか難しゅうございまして、ここでのお答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、一点、先ほど、校内暴力等が潜在化したのではないかという御指摘、これは一つの御指摘だと思います。専門家によります協力者会議が開かれました上におきましては、その場でも、校内暴力が一方でふえている、しかし警察に補導されるような件数が減っているということをどのように考えたらいいかということは、また検討の課題とさせていただきたいなと思っております。  ただ、一つ潜在化に関連させて申し上げさせていただきたいと思いますのは、いじめ問題が大きな問題になりましたときに、その発生件数を毎年調査いたしました。そのときに、いじめが発生する学校というのははたから見て悪い学校だというふうにある意味で評価される。そこで、仮にいじめがあってもそれを公にしない、したがって、調査をしてもその数を報告しない、そういうことで、いろいろ数字が動かされているのではないかというような御指摘がございました。  そういうことを私どもは踏まえまして、教育委員会を通して、そういうことではない、これは全体で考えていくべき問題だということで、このいじめの把握につきましては、教育委員会学校ともに率直にこれを公表すべきところは公表して社会に訴えるというような経緯、傾向になってきているというふうに思っております。  そういう意味で、同じ調査でこの校内暴力につきましてもいたしておりますので、どういいましょうか、何か下に潜らせるというようなことは、私は相当に変わってきているのではないかと思います。  しかし、いずれにしろ、調査にそういう差異がございますので、その点はさらに分析をしてみたいというふうに思います。     〔河村(建)委員長代理退席、委員長着席〕
  63. 藤村修

    ○藤村委員 河村委員からも冒頭の質問の中にありましたけれども神戸教育委員会というか、今回の中学校といいますか、去年の中教審答申でも、例えば「開かれた学校」ということをおっしゃっていて、「特に、いじめ・登校拒否の問題などでの学校対応ぶりを見ていると、学校内での出来事や学校としての取組などをできるだけ外部に漏らすまいとする傾向が強いように感じられることがある。学校は、家庭地域社会との連携・協力に積極的であってほしい。」これは中教審が答申されているわけで、このことをやはりできるだけ速やかに徹底していただいて、今回の中学校がどうということではないにしろ、どうもまだそういうものが残っているのではないかという中教審のお考えでもあるし、私もそう思うわけでありますから、その点はぜひとも早急に全国の各学校にも行き渡るような措置をとっていただきたいと思います。  それからもう一点、私は、中学校教育問題の中で、平成五年ごろから中学校教育が変質してきたのではないかという危惧を持っております。  それは、文部省が打ち出した、例の新しい学力観というスローガンがあります。それは、学力に頼らず、学習への関心や意欲、態度、クラブや生徒会活動、さらにはボランティア活動なども評価に含める新学力観に基づいた教育であるわけですが、これを評価に含めるとしたところに、今までの偏差値教育は偏差値教育で残ったままで、そしてまた新しい学力観というものを積み重ねて評価に入れるとなると、先生あるいは生徒にとってさらにこれは肩の荷が重くはなっていないだろうか、そんな気がするわけでありますが、お考えがありますか。
  64. 小杉隆

    小杉国務大臣 御指摘のように、従来の知識を一方的に教え込むという教育から、生徒が一人一人みずから考え、主体的に判断し行動する、そういう教育をという、新しい学力観に基づいた教育、これは私は必要だと認識しております。ただ、今お話しのとおり、従来型の学科、教育内容でやっている上にさらにそうした新しい学力観がつけ加わって、先生方の負担感が増しているということも否めない点だと思います。  そこで今、教育課程審議会で、教育内容をいかに厳選するか、そして新しい学力観に基づく教育をどのようにやっていくか、それを十分に審議をしていただきたいというふうに考えております。
  65. 藤村修

    ○藤村委員 今、課程審議会のお話が出ましたので、これも小杉大臣に御要望申し上げたいのですが、これもたしかいただいた去年の一次答申に書かれているのですが、「あまりに多くのことを教えみことなかれ。しかし、教えるべきことは徹底的に教えるべし」という、ホワイトヘッド、英国の哲学者の言葉、私も、課程審議会が、きょうまでのやり方でなしに、ある意味ではきょうまでのやり方というのは、どうしても各教科の代表者が出てきて各教科の時間のとり合いのようなことになっていたという部分は否めない事実でありますけれども、そうではなしに、まず週五日制を目指しているわけですから、物理的に全体の時間は少なくなるわけです。ですから、明らかに物理的に減らすのが当然。  今、厳選とおっしゃいましたが、とにかく厳選は当然必要ですが、場合によっては、どの教科を教えるというのではなくて、どの教科は教えないということまでを課程審議会が審議しないといけないと私は思うのです。それでないと、新しい学力観を持ってこられてその上に積まれたら、属の荷が重くなるばかり。先ほど田中委員のお話でも、今、本当に子供や先生にストレスがたまっているのは事実でありますから、このことを軽くしないといけない。これは、課程審議会、今から開かれるのですか、そこで大きな課題としてぜひ取り上げていただきたいと思いますが、文部大臣、いかがですか。
  66. 小杉隆

    小杉国務大臣 今、情報が非常に多く得られる 時代ですから、昔のように学校でしか知識を教えられない時代とは違うわけですから、この部分は学校で教えなければいけない、この部分は学校で教えなくとも他の情報メディアから得られるとか、そういうふうに仕分けをきちっとして、学校で教える必要がないことまで教えなくてもいいというようなことも考えて今検討されていると思います。その辺の仕分けが、いろいろな要素から考えませんといけませんので、委員の先生方も非常に苦労されていると思うのですが、その辺は大いに厳選をしてやっていかれると思っております。
  67. 藤村修

    ○藤村委員 厳選に加えて、場合によってはこれをなくすという、それが大胆な教育改革であろうと思いますので、お願いをしておきたいと思います。  それから、河村委員からもお尋ねがあった児童相談所で、これは厚生省の管轄になるかと思うのですが、今回の中三生容疑者の方は児童相談所に通っていたという事実はあった、さっき厚生省の方からそういうことをお伺いしました。私は、神戸教育委員会に、教育長にお伺いしたときに、児童相談所というのは厚生省管轄で学校文部省でありますけれども連携はうまくいっていますかとお尋ねをしたのですが、年に一回程度研究協議会のようなものを開いておるということで、これは連携がうまくいっているということにはならないと思うのです。やはり個別個別のケースで相談所というのは学校にその都度問い合わせたりしているのかどうか。この辺、例えば今回の神戸市の児童相談所中学校との連携があったのかどうか、厚生省ですか、お伺いします。
  68. 伍藤忠春

    伍藤説明員 お答え申し上げます。  一般論として、児童相談所相談に応じます場合に、学校あるいは地域関係機関といろいろ連携を図ってやるようにということは常々指導をしておるところでございます。個別の相談事例につきましても、一般的には、学校とよく連携を図りながら具体的な相談あるいは本人に対する指導を行っておるところでございますし、本件についても、当然のことながら、そういう必要な連携は図られておったものというふうに考えております。
  69. 藤村修

    ○藤村委員 本件でなくても、一般的に児童相談所というものがいろいろな重要な役割をされているのですが、例えば家庭内暴力で子供が大変困っているとか、その場合は、例えば親に勧告をしたりなんか、そういう措置をされると聞いております。例えば学校内で暴力、あるいは、ほとんどそんなことはないのでしょうが、先生から虐待を受けたというふうなことが児童相談所に持ち込まれるのかどうか、その場合はどんな措置ができるのか、お尋ねしたいと思います。
  70. 伍藤忠春

    伍藤説明員 お尋ねの点で、学校内で先生から暴力を振るわれたというふうな事例をどうするかというのは、ちょっと、なかなかお答えしにくいわけでございますが、一般的に、学校内における暴力あるいはいじめ、虐待、そういった事例について、学校内の問題ではありますが、個別の事例によっては児童相談所相談が持ち込まれることもございます。  一般論としては、学校内において基本的な対応策が講じられるというのが一般的だろうと思いますし、そういうふうなことで解決できればそれが一番、最もベターだろうと思いますが、個別の問題におきまして児童相談所相談にあずかった場合にどういう措置がとれるかということで、参考までに申し上げますと、それぞれの事例によりますけれども児童相談所の専門職員による継続的な在宅での指導、あるいは、里親へ委託するとか児童福祉施設へ入所させる、あるいは、場合によっては家庭裁判所へ事例によっては送致をする、幾つかのいろいろなパターンがあるわけでございますが、一般的な学校内の暴力とか虐待といった意味での基本的な解決策は、できるだけ学校内において解決策が講じられるということを基本にしながら対応しておるというふうに考えております。
  71. 藤村修

    ○藤村委員 昨年の一次答申でも、文部省の側では、いじめ、登校拒否などの問題が生じているが、「それらへの取組に当たっても、学校だけで取り組むべきもの、との狭い固定的な考え方にとらわれることなく、児童福祉、人権擁護、警察など広く関係機関との連携を一層図る必要がある。」これはもう答申されていることでありますから、この重みを感じて、先ほど、警察では着手学校との連携が緩みという分析もあるので、今回の児童相談所も含めて、学校とはやはり連携を本当によくしていただきたいということを要望しておきたいと思います。  最後に、少年法について、もう既に河村委員からも御質問がありましたが、私は、少年法をより厳しく、あるいは犯罪年齢を下げるなどという主張は、この事件から出てくるものではないと思います。これはもっと慎重に議論、検討すべきものだ、そういう立場です。  しかし、聞いておきたいのですが、今回、須磨中学生容疑者が十六歳未満であって刑事裁判は行われないとのことであります。この十六歳というのは一体どういう根拠、理由があるのか、教えていただきたいと思います。
  72. 渡邉一弘

    ○渡邉説明員 お答えいたします。  現行少年法におきましては、少年犯罪事件は、保護教育による更生の可能性を求めることとしております。保護処分が適さずむしろ刑事処分が相当な一定の事件については、家庭裁判所の判断で、検察官に送致することにより刑事手続に移行されることとしておりますが、このような検察官送致の手続をとることができる基準として処分時十六歳という年齢が採用されておりますのは、十六歳未満の少年につきましては、一般に、可塑性に富んでおり、性格の矯正や環境の調整に関する保護処分を行うことによって改善更生を図ることが期待できると考えられたものと思っております。
  73. 藤村修

    ○藤村委員 ですから、十六歳の根拠や理由が余りないということで、意味がわからないわけですね。ですから、法律がつくられたのは五十年前でありますから、やはり、慎重にではあるけれども少年法というものも論議すべきかという時期には来ていると私も申し上げたいと思います。  それで、少年法の中で、六十一条の件は先ほど来大体お話がありましたので割愛いたしますが、私は、このたびの回収勧告、回収勧告をしたということは非常に重要なポイントであると思うのです。やはり、表現、出版という自由の中に流通というところも付随しないと、表現、出版の自由が守られない。回収というのはそこを断絶するわけでありますから、大変重い勧告であったというふうに受けとめておりますし、こういう勧告は、本当に今後二度とない方がいいとは思います。ただ、この時点で回収勧告をされたことは、それなりに評価をしているところであります。  もう時間がございません。  被疑者とされる少年小学校六年のときです。阪神大震災があった。その卒業の作文集に、たくさん書いてありますけれども、「村山さんがスイスの人たちが来てもすぐには活動しなかったので、はらが立ちます。ぼくは、家族が全員死んで、避難所に村山さんがおみまいに来たら、たとえ死刑になることが分かっていても、何をしたか、分からないと思います」、こう書かせたのは  私も小学校六年生の父親で、あの五年、六年あたりで、国会とか裁判所とか三権分立とか、そういう社会のことを相当習うわけで、案外、びっくりするぐらいよく知っています。そういう人たちが、政治家の発言というのもちゃんと耳にして、それをどう受けとめるかということを、これは我々政治家自身の問題でもありますが、やはりよく考えながら発言しないといけないし、かつまた、それを報道するマスメディアの中でも、何かこの部分だけとらえてというやり方は今後反省すべきではないか。五年、六年ころの子供たちはちゃんと受けとめているし、場合によってはそれが大変なことにつながっているかもしれない。そんなことを今回の事件思いながら、質問を終えます。どうもありがとうございました。
  74. 二田孝治

    二田委員長 佐藤茂樹君。
  75. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 新進党の佐藤茂樹でございます。  質問に先立ちまして、今回の事件並びに三月の通り魔殺人事件で犠牲となられました方々、また、けがをされた方々に対して、心から哀悼とお見舞いの意を表したいと思いますし、また、残された遺族の方々、大変つらい思いをされていると思うのですけれども、心から弔意をあらわしたいと思っております。  今回の事件については、本当に、手口の残忍さに加え、突きとめた容疑者が十四歳の中学生だったということが、改めて全国に強い驚きと衝撃を広げております。詳細は、現時点ではさらに今後の捜査を待たなければならないわけでございまして、特に、人権の配慮がとりわけ要求される少年事件でありますので、慎重な捜査と、さらに、特に十四歳の中学生がなぜこのような事件を起こしたのかというだれもが抱いた驚きと疑問への答えというものをきちっとした形で出していただくためにも、本当に広がりのある慎重な捜査というものを今後求めてまいりたいと思っております。  そして、その結果を受けて、やはり社会全体が、また、特にこの文教委員会が、事件が投げかけた問題に対して冷静に検討していく必要があるのではないか、そのように私自身思っております。  そういう、現時点でさまざまな情報が錯綜している段階で議論をしなければいけないわけですけれども、その中でも、やはり何といっても、この事件逮捕された少年現時点ではあくまでも容疑者であるという点、さらにはその容疑者は十四歳であるという点、そういう二つの点に配慮しながら慎重に議論を進めてまいりたいわけでございます。  まず最初に、文部大臣にぜひお伺いしたいのですが、今回、文部大臣から発信されたキーワードは、何といっても、心の教育という、そういう言葉でございました。  この言葉が最初に出てきたのが、逮捕の事実が発覚したその晩だと思いますが、六月二十八日の夜に、文部大臣名でこの異例の談話が発表されたわけです。時間の関係上、全文を読むことは控えたいと思いますけれども、その中で「教育行政をあずかる立場にある者として、心の教育重要性を痛感しているところです。」そういうように六月二十八日の夜の時点でぱっと発表されたわけですね。  それで、その後、正式には七月七日だったと思いますけれども中教審に幼児期からの心の教育ということについて緊急諮問するということが正式決定されるわけです。その間約十日あるのですけれども、その六月二十八日の時点、また今もそうなのですけれども、まだ事件の全容というのははっきりしないわけですね。  断片的な情報、これは報道機関等を通じていろいろなことが出され、そして教育評論家とか心理学者と称するような人たちがいろいろな分析を出されている、また展開されているわけですけれども、しかし現実には、取り調べに対して果たしてこの容疑者である少年がどこまで供述しているのかも実際には明らかでないし、何よりも詳しい動機が今のところわからない。十四歳の少年がなぜかくも残酷な事件を起こしたのか、また残された紙片とか、また犯行声明をなぜ送ってきたのか、それらの動機背景にかかわることが十分に解明されていない段階なのです。  これは二十八日も今の段階もそうなのですけれども、言いかえると、まだまだやはりこの事件そのものが我々にとってやみの中にあるのですね。そういう段階のときに、なぜ大臣は二十八日の時点で即座に心の教育重要性を痛感しているということを出されたのか、この事件のどこから心の教育が必要であるというように感じられたのか、大臣の最初の思いの部分というものをぜひ大臣の方からお聞かせ願いたいと思います。
  76. 小杉隆

    小杉国務大臣 今度の事件背景なり動機というのがどこにあったのか、何がそこまで追い込んだのか、その子供個人の何か事情によるものなのか、あるいは学校教育に端を発しているのか、あるいは家庭なり社会に問題があったのか、その辺はまだ十分今の段階では明らかにすることは不可能であります。  しかし、その当事者が中学三年生、十四歳の少年であったということは、やはり教育を預かる立場にある文部大臣としては、これは厳粛に受けとめて、教育として何ができるのか、何がこういうようなあれになったのか、そういうことも考えなければいけない。  それで、特にこの問題についてはさておいても、いじめ、登校拒否は依然としてなくならない、あるいは年少者の事件が凶悪化をしている、薬物乱用援助交際、こういったさまざまな憂慮すべき事態が起こっている昨今の状況にかんがみて、そういうことも踏まえて、私はやはり心の教育が重要ではないかということを痛感したので、そういう談話を発表したというところでございます。
  77. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 私は、今も国民の気持ちとしては、だれもが早くこの事件の真相を知り、できるだけ早く対策を用意してもらいたい、また我々としても用意したい、そういう思いに駆られるのは、これはもうだれでもそうですし、よくわかるのですけれども、しかし、焦る余りに、十分な分析もなくて、非常に短絡的な分析で短絡的な結論を導き出してはいけないなと。ただ、心の教育ということがだめだなんということは言っていません。私は大事だと思っているのですよ。そういう前提の上で言っているのですけれども。  なぜそういうことを言うかというと、まだ特に動機の部分が解明されない段階で、今回のこの事件に潜む少年の個別事情、そういう個別事情に帰せられるものと、そうではなくて、これはやはり今の社会一般、教育一般が抱えている普遍的な問題である、そういうものとはっきり区別して考えないと、私は、今後の有効策というのは生まれてこないのではないのか。そのような観点から、やはり冷静に、きちっと十分に解明された事実をもとに対応策というものを解明していかなければいけないのではないかな、そういうことで、あえて大臣に、二十八日の時点でなぜ心の教育ということを言われたのかお尋ねしたのです。  それはそれとしまして、先ほど来の質疑を聞いておりますと、心の教育ということですが、まだ漠としたものなんだと言いながら少し答えられていた部分としては、幼児期の教育といいますか、それをもう一度見直したいということを大臣は強調されていたのですけれども、もう一度ここの部分について、心の教育ということについてどういう内容を考えておられて、そのねらい、また趣旨というのは何なのかということを、もう一度大臣の方からお答えをいただきたいと思います。
  78. 小杉隆

    小杉国務大臣 この神戸須磨区の事件については、いろいろな情報、未確認情報も含めて飛び交っておりますが、私としては、できるだけ冷静に、客観的に事実を把握するということがまず先決だろうと思いまして、直ちに担当官派遣し、またプロジェクトチームをつくり、政務次官も派遣をして情報収集に努めでいるところであります。  そういう中で、来月初旬に諮問をすることにしたわけですが、具体的な内容については今詰めを行っている最中ですが、いずれにしても、生きとし生けるものを大切にする心とか、それは生命を尊重するということにつながると思いますし、また、弱い、あるいは恵まれない人たちに対する思いやりといった正義感とか倫理観、こういうものは幼児期から植えつけていかないとなかなか身につかないということから、そういった観点から、ぜひ中教審皆様に高い見地から御議論をいただきたいなと思っております。  今の子供を取り巻く状況、家庭にしてもあるいは社会にしても、教育の面ももちろんですけれども、大変憂慮すべき点が数々ございます。先ほどから申し上げているような状況、豊かな心をはぐくむという点で非常に懸念すべき点が多々ありますので、そういう状況を踏まえて、ぜひあらゆる角度から検討していただきたいと思っております。
  79. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 今大臣がおっしゃったように、私も、生命を尊重する、また弱いものに対するいたわりを持つということは本当に大事なことだと思うのですね。  特に、今の時点で解明されていることから言えることは、まだ容疑の段階ですけれども、これが明らかになって事実であるとするならば、間違いなくこの十四歳の少年は顔見知りの土師淳君を殺害したということになりまして、要するに、被害者にもこの少年と同じように夢や希望があって、それを侵されることが自分に対するのと同じようにむごい仕打ちだ、そういう思いやりであるとか認識がないままこういう極端な殺人事件を連続して起こしてしまった、そういうことになるわけですね。  そういうことは、やはりきちっともう一度教育を小さいときからの段階で見直していく必要があるのではないか。何も宗教的なものを教え込もうとかそういう意味合いではございませんけれども、やはり人間も動物も植物も命はかけがえのないものである、またとうといものである、自分であれ他人であれ、その命を痛めつけるということは最悪の人間の罪であるということを、小さいときから、家庭にあって親も、また学校地域も一体となって教え込むというような、そういう教育をする必要が今こそあるのではないかな、そのように実感している次第でございます。  これ以上言いませんけれども、私も下は幼稚園の子供もおりまして、最近たまごっちというのを買ったのです。そうすると、ほかのテレビゲームもそうなのですけれども、死んでもリセットさえすれば生き返ってくるというのがテレビゲーム、またこのたまごっちもそうなのですね。そうすると、そういう意味では、現実には一回しか存在しない生というのが、テレビゲームであるとかそういったたまごっちなどのおもちゃの世界では生き返ってくるわけです。そういう意味では、ともすれば命の尊厳さというのはなかなかリアリティーを持って感じられないような子供の環境というのが、現実には社会の中でやはり進んできているわけですね。そういうことも考えた上で、特にその中で、今の大切さというものをどう教えていくのかというのがやはりこれからの課題ではないかな。これは何も子供だけに限ったごとではないと思うのですよ。  最近、この事件の前に私衝撃を受けた一つの事件がありまして、それはことしの五月に、埼玉県の大宮市の小学校の先生が、育て方がわからないということで、小学校の飼育小屋で生まれたばかりのウサギを児童の目の前で生き埋めにして死なせるという事件があったそうなんですね。私は、やはりここまで来たかと思ったのですよ。大臣も今回の事件で、ここまで来たかと思ったと電話で言われたそうなんですが、私は、先生がここまで来たか、そういうふうに思ったのですね。命に対する認識というのは、教える側の先生もむしばまれている部分があるのじゃないのか。  そういうことをきちっと踏まえた上で、何も生徒だけが社会の病魔に侵されているのではなくて、教師もやはり侵されてきているのだ。生徒だけにどう教え込むかじゃなくて、教師も、今の大切さ、また尊厳さというものをどうわかっていくのかというそういう教育を、心の教育と言われるならば、やはりこの際きちっと見直してもらいたいな、構築してもらいたいなと思うのですけれども大臣の所見をお伺いしておきます。
  80. 小杉隆

    小杉国務大臣 たまごっちの例を出されましたけれども、テレビゲームあるいはビデオにしても、大変どぎつい暴力の場面とか性の場面が出てまいりまして、何か幻想というのか空想というのか、そちらばかりが肥大化する傾向があります、バーチャルという言葉がはやっていますけれども。  私は、今の子供たちに欠けているのは、もっと生の体験、実際の体験、これか非常に徹底的に不足していると思うのですね。私は、例えば環境問題なんかも、実際に動物を育てたり植物を育てた子は、やはり生きとし生けるものを大切にしなければいけないという感覚が育つわけなんで、私のうちも子供が四人おりますけれども、小さいときからカメを飼ったり鳥を飼ったり犬を飼ったり、もうあらゆる動物、まあトラまでは飼いませんでしたけれども、そういうことで、随分子供の情操教育には役に立ったと思っております。  そういうことで、幼稚園の教育から始まってずっと学校教育の中でも、これからできる限り実物体験、体験学習というものをやはり強化していかなきゃいけないというふうに考えております。
  81. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 私は、新聞報道によると、何か八月中に答申を出すというようなことで報道されているのですけれども、多分私の勘違いでなければ、間違いだと思っているのですね。やはり今まで中教審、どちらかというと教育システム論のところを強調されてきたと思うのですけれども、ぜひそういう中身、何を教えるのかということは、さらにもっとやはり慎重に時間をかけていいものを出していただきたいなということを要望いたしまして、次の質問に移らせていただきたいと思うのです。  続いて、容疑者の顔写真が、雑誌フォーカスと週刊新潮に掲載された問題について若干お尋ねをしたいと思います。  今回新潮社が二つの雑誌に容疑者の顔写真を掲載したことが、これは私は、現行の少年法第六十一条により保障されている容疑者少年人権を侵害したことは間違いない、また、そういう観点から、新潮社の姿勢は、人権尊重の精神を著しく欠くとともに法無視の態度も甚だしい、そのように思っております。逆に、それぞれの販売ルートで販売中止の行動をされたことは、取り返しのつかない人権侵害を避けるための社会の良識が働いたものであるというように私は評価をしているわけです。  まず最初に法務省にお聞きしたいのですけれども、今回、新潮社が二つの雑誌に掲載したこと及び勧告後の態度について法務省はどのようにとらえておられるのか、まずお尋ねをしたいと思います。
  82. 印部久男

    印部説明員 お答えいたします。  これらの記事を掲載した雑誌社は、昭和六十年にも、十六歳の少年が両親を殺害したという事件につきまして、今回と同様容疑者少年の顔写真を掲載したということがございました。その際も、写真掲載について、深く反省するとともに、再びかかることのないよう配慮されたいということで勧告をいたしました。しかし、今回さらに同様の人権侵犯事件発生させたということで、非常に遺憾と考えております。  このようなことから、直ちに関係法務局におきまして同社に対する事情聴取をするなどしましたところ、同社は、法を恣意的に解釈して本件人権侵犯を行ったもので、十分な自覚と反省を持たず、再発防止のための具体策を何ら実施せず、当該週刊誌の回収など実効性のある被害救済措置をとろうとしないということが認められました。  そこで、本月四日、同社に対しまして、本件各記事について深く自戒するとともに、今後再び人権侵犯事件を起こすことがないよう早急に防止策を策定し公表するとともに、本件各週刊誌を速やかに回収するなど、実効性のある被害の拡大防止及び回復の措置を講ずるよう強く勧告したものであります。  この勧告を受けまして、当該出版社は、勧告については真摯に受けとめ、今後検討させていただきたいというコメントをいたしまして、さらに同社が昨日発行しました週刊誌におきましても、「編集長取材メモ」と題する記事の中で、今後の防止策の策定については法務省の勧告に素直に耳を傾けて検討していきたいと言っております。  そのようなことから、当省としましては、今後の同社の対応について注意深く見守っていきたい、こういうふうに考えております。
  83. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 今法務省の御説明をいただきましたけれども、私も昨日のフォーカスも読ませていただきましたが、そういう内容も書いています。  ただ、その上の欄に別のことも書いているのですね。「ただ、雑誌の回収が記事の撤回を意味するというのであれば、基本的に私たちは、FOCUSの問題提起は間違っていないと考えているので応じられない。」そういうことも上の方に言っているのですね。  時間もないのでこのことを長く議論したくないのですけれども、この新潮社、勧告を出されているのはフォーカスだけじゃないのです。週刊新潮、二つの雑誌を何とかしろ、そういうことで言われているのですね。  それで、フォーカスがこれから防止策を策定し公表するから、そう言うならきちっと見届けていきたい、そういう話でしたけれども、週刊新潮の方は、例えばこれは七月五日付の毎日で、報道によりますと、「週刊新潮編集部は「一方的な回収の勧告は、報道、表現の自由に対する干渉に等しく、勧告を受け入れるつもりはない」としている。」そういうように報道されていますし、きょう発売のこれは週刊新潮のコピーを持ってきたのですけれども、きのうフォーカスでそういうように検討したいというようなことを言っておきながら、きょうの週刊新潮では、「神戸「男児惨殺少年」を少年法で裁けるか」という見出しの記事と、その最後にはどう言っているかというと、「法律が時代に即さないなら、あえて一石を投じるのもマスコミの使命のはずだが、人権屋の弁護士を筆頭に偽善に満ちた少年保護の大合唱では絶望的である。」こういうように言っておるわけです。さらに次の記事では、「人権大合唱で圧殺されたこれだけの「民衆の声」」ということで特集を組んで、いろいろな声を載せているんですね。こういう態度の両方をやはり社の姿勢として見ないといけない。  フォーカスの方で一部、何となく検討しますというような、逆に言うたら、左手でそういうことを言っておきながら、右手ではなおかつ同じように、これでもかという形でやっているという、そういう意味合いにしかとれないのですけれども、法務省は、どのようにこのことをとらえておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  84. 印部久男

    印部説明員 確かにそういう記事が掲載されているということは承知しておりますが、勧告いたしましたのが今月四日でございます。そういうことから、人権機関の姿勢といたしましては、もうしばらく出版社の対応を見守って、場合によっては、その状況により適切な処置をとっていきたい、こういうふうに考えております。
  85. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 一々細かいところを執着したくないのですけれども、やはり、法務省が言いっ放し、勧告しっ放しということが一番よくないと思うのですね。だから、厳しく見ていっていただきたいと思うのとともに、あと一問法務省にお尋ねしたいのですけれども、今回の問題で、先ほど河村先生もおっしゃっておりましたけれども、この少年法の「第五章 雑則」というところに、第六十一条、「記事等の掲載の禁止」ということが挙げられているのですけれども、大体この少年法、全体をずっと見ておりますと、少年が非行や刑事事件を犯したときにどういう手続をとるのかという手続法的な部分が、条項が非常に多い中で、ここだけ禁止条項をぴしっと入れているのですね。ところが、やはり、それを破ったときにきちっとした罰則が載せられてない、そういう法律体系になっているのです。だから、先ほど御説明があったように、昭和六十年に同じことをやりながらまた今回も同じように犯している、そういうことがこれからもやはり出てくる可能性、あると思うのです。  だから、私はやはり、この少年法第六十一条を破ったときの罰則規定を設けるか、それとも、法務省の勧告というものに強制力を持たせるべきではないのか、そういう意見を持っているのですけれども、法務省はどのような見解をお持ちなのか、お尋ねしたいと思います。
  86. 渡邉一弘

    ○渡邉説明員 お答えいたします。  少年法六十一条は、将来性のある少年の名誉を重んじ、少年犯罪に関する出版を制限することによりまして、本人社会生活に与える影響を防ぎ、その更生を図ることを趣旨とする規定でございますけれども、同条が出版の自由を制限するものであることにかんがみますと、その担保の方法として、罰則によることが適当であるかどうかについては慎重な検討を要する問題であると考えております。
  87. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 この問題は、当委員会以外でもきちっと議論をしていきたいと思うのですけれども、これに関連して、文部省あるいは文部大臣に所見を聞きたいのですが、報道によると、福井県の県立高校で、社会科教諭が雑誌フォーカスに掲載された容疑者少年の顔写真と記事をコピーして、教材として生徒に配付し、期末試験で感想文を書かせていたことがわかったということになっておりますけれども文部大臣あるいは文部省は、このことをどのように認識し、評価されているのかお尋ねしたいと思います。
  88. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 私どもも、新聞によりましてこれを知りまして、事実を確認をいたしました。ある教師、県立高校の教師が、五分間これを見せ、直ちに回収し、翌日には焼却をしているということでございますが、先ほど来、少年法の趣旨につきましては法務省当局からも御説明があるとおりでございまして、このような少年法の趣旨を踏まえますと、容疑者である少年の顔写真を掲載した雑誌のコピーを授業で使用するということは、教育上の見地から適切でなく、配慮を欠いた行為であるというふうに思っております。  事件の経緯は、先ほど冒頭に御説明したとおりで、今は焼却されているわけでございますけれども、今後学校教育において、このような人権、特にプライバシーの保護に配慮を欠くようなことがないように十分に指導の徹底を期してまいりたい、こんなふうに考えております。
  89. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 時間の関係で、警察庁、お呼びしていたのですが、ちょっと質問なしに、文部大臣の所見をちょっとお伺いしたいのですけれども、今、もう既に警察庁からのいろいろなデータは大臣のところにも入手されて大体おわかりだと思うのですけれども、先ほどからの答弁の中にもそういう話がありましたが、最近の少年犯罪というのは、やはり非常に低年齢化し、また凶悪化している。一つは、おやじ狩りと称せられるようなそういう凶悪な強盗、さらには、女子の場合ですと援助交際などという問題、さらには薬物、これはもう当委員会でも我が党はずっと指摘してきた話なんですけれども、そういう問題がずっとありまして、これは何も文部省だけでどうこうするというようなそういう次元の問題ではないと思うのですね。  今政府の方では、総務庁、文部省警察庁、検察庁とか、そういう十四省庁局長級で青少年対策推進会議というものをきちっと設けられて、また、今回の事件をきっかけにいろいろ防止策を考えていかれるということなんですけれども、我が党が薬物のときにも要請しまして、薬物乱用防止対策本部を格上げしていただいたいきさつがあるのです。  薬物の乱用というのも少年犯罪の中の一つの柱なんですけれども、それを、総理を本部長とした対策本部をつくっていただいたのですけれども、問題は、この部分よりも全体の、例えば仮称少年非行防止対策本部というようなものを、この際やはり、ぜひ教育を預かる文部大臣の方から提唱されて、政府の中に、きちっと対応していくんだ、そういう姿勢を見せられるような提案をされてはどうかな、そういうふうに私は思うのですけれども文部大臣の所見を伺いたいと思います。
  90. 小杉隆

    小杉国務大臣 薬物乱用というように割と特定したテーマについては、割と各省庁でもそれに焦点を当てて協議しやすいと思うのですが、青少年問題全般ということになりますと非常に多角的な要素が含まれておりまして、なかなか焦点が絞りにくい。そういう中で、今御指摘のように、総務庁を中心とした青少年対策推進会議というものを設けてやっているわけですけれども、今必死に事件捜査を進めておる段階でありますので、その推移を見きわめながら、必要に応じて関係省庁相談してまいりたいと思っております。
  91. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 済みません。最後に、今回のテーマとは若干違うのですが、この時期になると、私は大阪に住んでおりまして、昔、一時堺市にも住んでいたことがありますので、やはり、昨年の学校給食を原因とするO157による集団食中毒発生というもの、そういうものを思い出さざるを得ないわけですけれども、七月七日現在、ことしもO157による食中毒発症者というのは全国で六百三十四人、また、二百八十一人が入院して、そして二名が死亡している、そういう数字を厚生省から教えていただいておるのです。  特に堺の方、地元に聞きますと、昨年のあの学校給食の食中毒発生以降、十一月に給食が再開されました。それから、四分の一に減ったとはいえ、いまだ六百一人の児童が不安に駆られて給食を拒否している、そういう事実があるのです。私は、やはり全国の自治体、学校で、二度とこのような集団食中毒という問題が起きないようなそういう対応をしなければいけないだろう。  そういう観点から、学校給食における食中毒対策について、最後、もう若干ですけれどもお聞きしたいのですが、なぜきょう質問するかというと、六月二十九日、総務庁行政監察局の調査で、学校給食施設の衛生管理に関する実態調査結果報告書というのが出されました。続いて七月七日に、厚生省がまとめられたのですけれども、全国の学校給食施設の衛生管理についての立入検査結果というのが出された。  その両方ともあわせて見ましても、文部省が改善指導を去年の夏しておきながら、改善指導を受けながらほとんど改善されていないという給食施設がやはり相当な割合である、もうきょうは数字を言いませんけれども。やはりそういう学校給食施設の衛生管理がいまだに不十分であるという事実を指摘せざるを得ない。  そういう結果が出ているのですけれども、このことについても、最後の質問ですが、原因と対策、どのように文部省として考えておられるのかお尋ねしたいと思います。
  92. 小杉隆

    小杉国務大臣 私は、就任以来、O157を学校給食の現場からは絶対出すな、こういう趣旨を何回も強調してまいりましたし、私自身が給食関係者会議に出てそういうことを強く要請しましたし、また予算面でも、ドライシステムを初め施設設備の面でも相当破格の予算措置をしました。それから、たびたび、会議、研修、そういうことで私が現場を見た限りでは、もう本当に痛々しいくらいに学校給食の現場では衛生管理に物すごく気を使ってやっているなということを痛感したのですけれども、両省庁からそういう勧告が出たということは残念ですけれども、私は、学校給食の場から二度と出さないようにさらに徹底して指導していきたいと考えております。
  93. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 時間が参りましたので、質問を終わります。ありがとうございました。
  94. 二田孝治

    二田委員長 次に、山元勉君。
  95. 山元勉

    ○山元委員 民主党の山元勉でございます。  今回の事件は、日本子供たちが育つ学校社会家庭、そのありようを問う、そういう事件であった、そのありようの根幹のところをしっかりと見詰め直さなければならない、そういうことを投げかけている事件であったというふうに思いますし、とりわけ、今の大切さを学ぶという教育あり方を問う事件でもあっただろうというふうに思います。この委員会に所属している一員として、調べたら調べるほど、あるいは考えたら考えるほど、焦りのような、悲しさのような、あるいはやりきれなさというものを感じる、そういう事件でございました。  近所の人は、天使のような笑顔の子だと言っていたそうですけれども、この土師淳君の御冥福をお祈りをしたいと思いますし、その魂安かれという気持ちからも、しっかりとした対策を今私たちが立てなければならないんだというふうに思います。  私は、淳君の事件が起こったときに、その前に隣の学区で起こっていた少女殺傷事件とあわせて考えたわけですけれども神戸子供たちはあの大震災で大きな衝撃を受けて、その傷というのはまだいやされていないし、大変不安定な状況に兵庫神戸の子はいるわけですけれども、そういうことを考えるとむごいというふうに思いました。そして中学校三年の十四歳の子が容疑者として逮捕される、文部大臣も、第一の言葉が、ここまで来たかというふうに発せられたそうですけれども、私も大きな衝撃を受けました。  私は、教師の経験、二十年ございます。子供たちは、あるいは親たちはということを少しは知っているつもりですけれども、どのような家庭の条件にあっても、親は自分の子供を丈夫で賢い子に育ってほしいと思っています。子供たちはやはり明るく元気に勉強したいというふうに願っていることは間違いないわけです。  恐らくこの淳君も、あるいは容疑者も、あるいはこの子たちの両親も同じように思っていただろうと思うのですけれども、どこでこういう事件が起こってしまったのか、どこに背景や要因があるのかということを私どもはしっかりと考える、少なくともこの場にいる者の大きな責任だろうというふうに思いながら質問をしたいというふうに思います。  先ほどから何回も出てきています。文部省文部省対応方策として五つ挙げていらっしゃる。プロジェクトチーム、この事件のためのプロジェクトをつくるとか、スクールカウンセラーを配置するとか、専門家会議で、そして心の教育。その心の教育というのが何か決め手のような、ひとり歩きと言ったらおかしいですけれども、しているような気がしてならないわけです。  マスコミの中でも取り上げられていますし、大変失礼な言い方ですけれども、このペーパーを見て、五つあるけれども、五つのうちの各関係省庁への協力依頼というのは、これは対策にはならないと言ったら失礼ですけれども、私は、そういう決め手になる、この事件に対して直接的に取り組んでいくということではない。それは、心の教育について諮問をし、権威のある中央教育審議会から答申をいただこう、これだというふうに思うのですけれども、なぜ心の教育がその決め手というか、大臣はそうはおっしゃらないと思いますけれども、なるのかということについてわからないわけです。  今まで文部省は大変たくさんの、道徳教育だとかあるいは心の教育だとかいうことを実施してこられました。ことしの文教施策、文部省の本にも事細かにというのですか、積極的に、「豊かな心の醸成」だとか、あるいは事業でいえば「豊かな心を育む教育推進事業」だとか、取り組んできた。そういうときにこの事件が起こって、やはり心の教育をやり直さなければいかぬのやということについでは、私はわからないわけです。人を殺す事件があったから殺してはいけないよと教えるでは、これは短絡的過ぎるというふうに思うのですけれども。  けれども、今までの道徳教育なり心の豊かな教育のどこに不足があったと感じられるのか、どこを置きなければなられいと考えられるのか、それがなければ私は、これは諮問をしても答えようがない。今まで中央教育審議会も物を言ってきました。文部省も事業を進めてこられた。今までのことを精いっぱいやってくださいということしかないのではないかという気がするのですが、大臣、どうですか。
  96. 小杉隆

    小杉国務大臣 今までの答弁と重複するところは省きます。  私は、子供が成長していく過程の中には、家庭学校社会とそれぞれ教育的な働きかけがあり、それぞれ機能があると思うのです。しかし最近、こういった教育機能が果たして十分子供の成長にマッチしていっているかどうか、それは大いに反省しなければいけないと思うのです。したがって、今度、来月初旬に諮問をするというのは、単に学校教育だけではなくて、家庭における、あるいは社会における今果たしている教育機能で果たして十分かどうか、そういうことも含めて御議論をいただきたいと思っているわけであります。  もちろん、並行して、今のこの事件背景なり動機というものは決定していくこともやっていく必要がありますけれども、私はそういうふうに幅広く、まだ具体的に何を諮問するかというのは詰めている段階ですけれども基本的な考えとしてはそういうことでございます。
  97. 山元勉

    ○山元委員 それでは、そういう諮問の詰めをしていらっしゃる段階だそうですから、私から幾つか、希望だというふうに思いますが、申し上げておきたいと思うのですが、人にいろいろ、優しい心の問題だとか、もちろん人を傷つけてはいけない、殺してはいけない、いろいろの徳目がございます。これはもちろん大事なことですけれども、徳目の押しつけというのでは人は育たないだろうと思うのですね。ですから、これから精いっぱい心の教育をやるんだ、やらせるんだというときに、徳目の押しつけにならないようにこれはすべきではないかというふうに思います。  生活の中で幼児期からということを大臣はおっしゃいますけれども、本当に生活の中で子供が心豊かに育っていく方策というのをしっかりしないといけないというふうに思いますし、そして、先ほどから話がありますけれども、非行やいじめや不登校に対症療法的に心の教育をしてもいけないだろう。そこのところが出発点であってはいけないだろう。人としての豊かな気持ちというものをどう幼児期からつくっていくかということでなければいけない。  今まで文部省が出しているものについては多分に、いじめの対策だとかいうものはたくさん書いてあります。非行の対策というものはたくさん書いてある。けれども、そういうことの見直しということでは私はなしに、対症療法的なものについての見直しではいけないだろう。やはり心の雰囲気、家庭の雰囲気、そういうものをどうつくっていくのか、環境をどうつくっていくのかということについて諮問をしていただきたいな、明らかにする努力をしていただきたいな、こう思うのですが、いかがですか。
  98. 小杉隆

    小杉国務大臣 私は、小手先の対策じゃなくて、できるだけ根源に迫るといいますか、どこに問題があるのか、そういったことまで含めてやっていただきたいと考えております。
  99. 山元勉

    ○山元委員 先ほど来のところでも出ましたけれども子供たちの心は本当に、表現が適当かどうかわかりませんけれども、渇き切っているというふうに考えていいと思うのですね、受験、今の社会の中で。ですから、この知識偏重の教育になっていて、あるいは受験戦争の真っただ中にいて、子供たちがそういう状況になっている。  そこで、心の教育をどう進めていくのかということを考えていただく第一の決め手の一つだろうと思うのですが、この審議で、ぜひ中央教育審議会の皆さんが、学識経験者だけで結論を出すのではなしに、あるいは文部省とその人たちの審議で結論を出すのではなしに、一番今苦しんでいる、悩んでいる、行き詰まっている子供たちや親や学校現場の教職員の声を聞く。どうすればいいんだろう、どうすれば本当に心の教育が進められるんだろうということを、今挙げましたけれども、学識経験者だけでなしに、子供や教職員やあるいは父母のそういう声をしっかりと聞き取るという、そして物を詰めていくという方向での審議を要請をしていただきたい、中教審に。いかがですか。
  100. 小杉隆

    小杉国務大臣 心の教育については、学校の先生も親も模索を続けておりますし、また、子供自身も、日々いろいろな悩みの中で一生懸命生きようと努力をしております。私は、今度の中教審の答申に当たっては、できる限りそうした親とか教師の意見も聞く、それから、長い間子供のそういった問題について研究している人たちの意見も聞く、いずれにしても、幅広く国民各界の意見を聞くということを、ぜひ中教審の会長とも御相談をしながら、そういう姿勢でやっていただくようにお願いしたいと思っております。
  101. 山元勉

    ○山元委員 ぜひ今そういう努力を、不可欠の条件と私は思いますけれども、努力をしていただきたいというふうに思います。  そういうふうに考えると、これはマスコミ報道ですけれども、八月の上旬に諮問をして、八月中に答申を得たいというふうに書いてあるのですね、新聞では。八月上旬に諮問ということは、先ほど大臣からもありましたけれども、これほど根深い、これほど広い問題について、中教審の皆さんが二週間、三週間で結論が出せるのかどうかということについて、私はおかしいなと思うのですが、これはやはり、今申し上げましたように、子供からも親からも教職員からも聞いて、本当に心の教育とはということを考えていただく。審議を進めていただこうと思うと、拙速という言葉はどうかわかりませんけれども、妥当ではないのではないかというふうに思いますが、いかがですか。
  102. 小杉隆

    小杉国務大臣 必ずしも八月中に結論を得るということは決めておりません。できるだけ早くということはお願いしておりますけれども、今御指摘のように、幅広い観点から、そして大所高所から検討していただくということから考えますと、そう性急に結論を求めるということは酷ではないかと思っております。
  103. 山元勉

    ○山元委員 それでは次の問題ですが、高校の入試体制の問題です。  私は、この事件が起こって、私の地元中学校を幾つか訪問をして声を聞かせてもらいましたし、この間、実は佐田政務次官神戸に行かれたときに、同じ日でしたけれども、私も神戸の友人、知人のところへ行って、教育関係者にしっかりと状況を聞いてまいりました。そして、実態は大変だなという実感を持って帰ってきました。  少し神戸の人には酷かもしれませんけれども申し上げますと、神戸というのは大変大きな町ですけれども高校の進学の制度は三つに区分をして、一区、二区、三区というふうに分けられているわけなんです。そして、例えば事件が起こった須磨区は第三学区に当たって、そこのところには普通科を持っている公立高校は十一校あるわけです。割合大規模な学区です。十二局校があって、そしてその中に、そこへ行く中学校が三十五校あるんです。子供たちは公立の普通科だけでも十一受験をする選択肢がある。工業も商業もほかにあるわけです。私立学校、京阪神の中にわんさとあるわけですが、子供たちが大変たくさんの受験の選択肢を持っている状況になっている。私は大きな学区、ここだけではありませんけれども、大変な学区だなということを思いました。  一つの事件背景と考えてもいいのではないかと思ったのですけれども、この事件が起こってから、文部省神戸の受験のあり方についてどのような調査をされたのか、把握していらっしゃるのか。
  104. 佐田玄一郎

    佐田説明員 私も山元委員と同じように神戸の事情をある程度把握をさせてきていただきました。ただ、今回の件が文教行政とどういうふうなかかわりがあるか、それにつきましては、今警察当局等も、背景そしてまた動機等につきまして捜査中でもある、こういうことを考えますとなかなかコメントも難しい、これからも、捜査を見ながら、しっかりとやれることはやっていきたい、かように思っておるわけでございます。  それと同時に、学区の問題でありますけれども、これは先生も御存じのとおり、各都道府県において地域の実情等に即して総合的に判断して決定していくということでありまして、文部省として個別にこれを評価するということもなかなか難しい、一つの課題として考えていきたい、かように思っております。
  105. 山元勉

    ○山元委員 文部省から直接特定の学区については言いにくいかもわかりませんけれども、私の方からだったら申し上げられると思うのですが、今申し上げましたように、一つの学区で三十五の中学校から十一の普通科、そしてプラス商業、工業、私立というところに行くわけですが、去年の表を見せていただいてびっくり仰天をした。例えば三十五の中学校のうち、二十一の中学校子供は十一の普通科の高校に全部行っているわけです。ある子はAの高校へ、ある子はBの高校へといって、例えば六十四人が普通科へ進学した中学校、六十四人の子供が公立普通科へ行った。その六十四人は十一の高校に見事にばらまかれている。  神戸現場に行ったときに、神戸の先生から一つの言葉を聞いて私は首をかしげたのです。子供たちがスライスされる。スライスという言葉が出ました。私が現場にいたときも、輪切りという言葉をよく使って、文部省は輪切りとは何だ、教育委員会まで輪切りとは何だ、人間を輪切りするとはというのがありましたけれども、五つの高校があったら、中学校子供たちはAかBかCかDか、こうなる。この状態を輪切りするという。  親にしてみたら、子供にしたら、中学浪人になっては困るという一面と、ランクの上の学校に行きたいという両方があるわけです。上の学校へ行きたいといって失敗すれば中学浪人になるわけです。中学校の先生はこれを本当に見事にランクづけをして、中学浪人を出さないように努力をしなければならない。つらい仕事をしているわけです。  神戸では中学校から高校へ、三十五の中で二十一の中学校が見事に十一の学校に振り分けているわけです。輪切りどころではなしにスライスだ。私はこの一覧表を見て、これはみじん切りだ、こう言ったのです。  子供たちがこういう進学の状況、進学というのですか受験の状況になっているときに、もう一遍戻りますけれども、私は心の教育というのは難しいな、子供たちが心をお互いに大事にしながらという状況に私はならぬのではないかというふうに思うのです。新聞にもちょっと出ました。私もそう実感的に思うのですが、子供たちはどれだけできるというよりも、自分はどれだけだめな人間がという発想で学校を選択しなければならぬようになってくるわけです。僕はだめだからあれはだめだ、あれはだめだというふうになっている状況というのが神戸で見えるのです。  文部省として、この神戸の学区の問題は歴史があるということは承知していらっしゃるだろうと思うのですけれども、総合選抜とかいろいろ兵庫はあるわけですけれども、ここの状況について、もう一回、どういうふうに認識していらっしゃるか。コメントできないならできないと。
  106. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 ただいま先生から御説明がありましたように、そうした三つの学区に分かれていて、私どもの数字では三十七校と承知しておりますけれども、そのくらいの中学校から十一の高等学校に行く、それが第三学区であるということは承知いたしております。  ただ、先ほど政務次官から御答弁がありましたように、それぞれの高等学校の入学者選抜制度は、学区制を含めまして、各都道府県の教育委員会地域の実情を踏まえまして決定するということになっておりますので、私どもとしてその適否について論評するというようなことは差し控えざるを得ないだろうというふうに思っております。  ただ、私どもは、それぞれの都道府県がそれぞれの判断と決定においでよりよい入学者選抜の工夫をしてほしいということ、その際は各学校が特色を持てるような高等学校として育っていくように、そして生徒一人一人の特性が生かされる、そういった学校選抜が可能となるような方向の検討が必要であること、これは一般論でございますけれども。したがって、具体的にはいわゆる選抜尺度、選抜方法の多様化、多元化というようなさまざまな工夫をして、そうした特色のある高等学校あるいは個性が重視される生徒の選抜が行われるようにという御工夫を各県の教育委員会を通してお願いをしているところでございます。  この問題は、さきの中央教育審議会の第二次答申におきましても、ゆとりのある学習環境をつくり上げる、そのためには、いろいろな課題があるけれども、入学者選抜のあり方も非常に大きな要素であるという御指摘で御提言をいただいているところでございます。  さらに私どもとしても、この問題は大変重要な問題でございますので、この中教審の答申等も踏まえまして各都道府県の教育委員会の方にも助言をし、またさまざまな工夫を探ってまいりたい、こんなふうに思っております。
  107. 山元勉

    ○山元委員 余り神戸の入試制度というのをここでとやかくといいますか、結論めいたことを言うわけにはいかぬと思いますが、一つの背景として私は留意してほしいなと思うのです。  こういう状況というのは、例えばもっともっとたくさん言いますと、あそこの町には、あの学区では東大通りだとか灘校通りだとかあるいは西の学習院だとか、いろいろな言葉があるのですね。これは少し異常だと思うのです。あの住宅街において、あの通りは東大に行った子が何人かあって、ここは東大通りだとか、あそこはことしは灘校通りだとか、そういう中で生活をしている子供、灘校へ行かない子供がどのような思いで灘校通りを通るかわかるだろうと思うのですね。私は東大どころではないという子供中学生が東大通りと言われているところを毎日毎日通る、その気持ち、これはやはり異常だと思うのですね。  ですから、そういうものが消える入試制度というのをやはり全体で考えなければならぬ。私は、そういうものがこの事件の直接的原因だと決して言っているわけではないわけですけれども、心の教育を本当に進めようとすると、そういう地域なり入試の背景というものはしっかりと考えなければいけないのではないかと思います。  もう一言余分を言いますと、こういう状況の中で、この間出された飛び入学だとかあるいは中高一貫教育だとかいうものをただ進めるということについて、私は首をかしげる状況だというふうに思うのです。本当に子供たちがお互いを認め合って成長していく、そういう条件をつくろうとすると、やはり飛び入学よりもほかに視点を当てなければならないところがあるのではないかと思います。  どうかこの学区制、ここは大学区制ではないのですけれども、大規模学区のこういう状況というのはやはり全国にもあるはずですから、文部省でも留意をして検討していただきたいと思います。  次の問題についてお伺いをしたいのですが、教職員の配置の問題です。  行き届いた心の通い合う教育をしようと思うと、これはどうしても教職員が要るわけですけれども、私は兵庫の皆さんが大変努力をしていらっしゃることを承知しています。震災もあった、そのこともありますし、教育困難校もたくさん抱えていてということでいろいろの加配をしていらっしゃる、そういう努力はわかるのです。  しかし、この事件と結びつけて考えると、子供たちはあの容疑者の言動について異常を感じたという報道がたくさんあるわけですね。まだ決定的ではありませんけれども、あのA少年の異常な性格とか行為とかいうのがあったということが新聞にぼこぼこ出る、僕は人権問題だと思いますけれども。そういう事実があったのに、それではそのことを教師は知らなかったのか、家庭は知らなかったのか、あるいは地域の大人たちは気づいていなかったのかというと、もし気づいていなかったとすれば、これは大変なことだと思うのですね。学校で毎日接している教師が、途中から、最後の方はあの少年は不登校になりますけれども、そういうことを気づかない。あるいはひょっとすると気づいていても放置、排除されていたのかもしれぬ。けれども、少なくともその子に心の通い合う教育というものを持てなかった教師なりあるいは家族というのはやはり問題があると思うのです。  とりわけここで問題にしたいのは、やはり教職員の目がなぜ届かなかったのか。私は、今の実態、例えば四十人学級ですけれども、四十人中学生を担任をしている人からも実態を聞きましたし、私も容易に想像がつきますけれども、昔の四十人、私は小学校のとき五十六人の学級担任をしたことがある。五十六人の子供と日が暮れるまで運動場で遊んで、頭をたたいてしりをたたいてとかいうようなことをやっていれば、これは心が通い合うというか、あるいはしかってもあるいは褒めても心が通う。けれども、今の中学校生徒を四十人持ったら、その心の中を知って、あるいはそれぞれの心とつながり合うということはもう絶対に不可能だと私は思うのですよ。そういう意味からいうと、今の定数配置でよいのかどうか。  僕は、それはそれで文部省が努力していらっしゃることは知っているわけですけれども、この際どうするのだというふうにはっきりとしなければならぬ。財政再建で改善のチャンスだと思っていた。一万人ずつ教職員が子供の減少に伴って減っていく、だからせめてその半分は改善のためにということで第六次改善計画を立てたのですけれども、それも風前のともしびですし、第七次というのは全然見えてもこないわけですね。  ですから私は、やはりこの実態を見るときに、どうしても教職員の配置、チームティーチングであろうと何であろうと、配置について改善をしなければならぬと思うのですけれども文部省、どういうふうに決意をしていらっしゃると言ったらおかしいけれども、キャップ方式というのはこの間、おとといですか、新聞に出ました。頭かぶせてしもうて上へ伸ばさぬというのですけれども、同じように文部省もキャップをかぶせてしまわれたらどうにもならぬわけですけれども、どのようにお考えなのか、聞かせていただきたい。
  108. 御手洗康

    ○御手洗説明員 御指摘がございました現在の教職員配置改善計画につきましては、御案内のとおり、平成五年度から十年度までの六年計画ということで全会一致で法律をつくらしていただきまして、計画的に進んできたわけでございます。  当時は、御指摘ございましたように、チームティーチング導入ということで、より少人数で目が届くような指導方法が工夫できるとか、あるいは生徒指導困難校への充実、あるいは登校拒否児童への対応、さらには特殊学級の通級指導や外国人子女や帰国子女の対応というような大変きめ細かな教職員配置ができるようにという観点から、現場の御要望も承りながら改善計画を進めてきたところでございますが、御案内のとおり、さきの財政構造改革会議の結論を踏まえまして、政府におきましては、この平成十年までの計画期間を二年間延長するということを閣議決定をいたしたところでございますので、文部省といたしましては、当面はこの閣議決定の趣旨を踏まえまして、財政状況大変厳しい中ではございますけれども、各都道府県、教育委員会等の意見を踏まえまして、残り三年間で計画的に当初の目標どおり完成できるようにと最大の努力を挙げてまいりたいと考えているところでございます。
  109. 山元勉

    ○山元委員 そうすると、もう既にキャップがかぶせられていて、一年を三年で、その先が全く見えぬという状況でしかないわけです。だから私は、文部省が方針として持っている行き届いた教育のための施策、四年次分、ことし五年、来年六年ですね。ことしの五年次分で四千九百八十四人という改善、きめ細こう確かになっているわけですね。それは来年から見えぬわけでしょう。今の話を聞くと、やはりもうキャップかぶっている感じがするわけです。努力ができるわけですか。余地があるわけですか。
  110. 御手洗康

    ○御手洗説明員 義務教育の改善計画で申し上げますと、当初三万四百人を六年計画でということで進めてまいりまして、現在その六分の五相当が終わっているというところでございまして、残り四千七百八十二人という改善増の計画があるわけでございます。この四千七百八十二人を平成十年から十二年までの三年間で精いっぱい改善をさしていただきたいということで努力をさしていただきたいと思います。
  111. 山元勉

    ○山元委員 それでは何の工夫もないということになると先ほどから申し上げているわけです。確かに財政危機だからといって四千七百八十二人の第六年次分を三年にならしてしまう、しようがないんだ、こういうこと。こういう今の状況を考えると、何としてでもやはり当初の計画どおり、文部省思いのとおりに改善をしていきたい、そうでなかったら心の教育も本当に絵にかいたもちになりますという立場で物が言えないのか。それを言うと、閣議決定されて、文部大臣が謀反人になるわけですか。  やはり思い切って、例えば、これは新聞で探したんですが、環境だとかいろいろ別枠のところがあるけれども、特別枠ですか、環境だとかあるいは情報通信だとか生活関連公共事業重点枠だとかいろいろあるんですね、その中に教育というのが入ってない。これに教育を入れるということについては余地はないわけですか、大臣、どうですか。
  112. 小杉隆

    小杉国務大臣 この定数改善計画につきましては、この委員会でもたびたび各委員から御指摘がありました。私も財政構造改革会議で何度か発言をしまして、そういう短期的な視点からやっては困るということ、教育改革を進めていく場合に、やはり教職員の確保というのは重要な要素であるということを再三にわたって強調いたしました。  国の長期計画の中にはいろいろあるわけでございますが、ほとんど中断というような形がとられる中で、この第六次の教職員配置改善計画については、計画そのものは予定どおり改善をする、ただしその終結期間を平成十年度であったものを平成十二年度まで二年間延長するということで、総定数は確保したということで、今の財政状況から考えて私はこれがぎりぎり精いっぱいのところではなかったかと思います。  ただし、来年の予算概算要求の考え方については、今お話しのとおり環境や情報通信と並んで科学技術という面、これは文部省関係があるところですが、そこは別枠ということで特別枠を設けていただきましたので、そういったところでまた大いに努力をしていきたいと思いますが、義務教育の定数問題については、今閣議決定をされた平成十二年度までに、できるだけ激変を避けながら、各地域の状況をきめ細かに調査しながら、できるだけバランスよく配置をしていきたいと考えております。
  113. 山元勉

    ○山元委員 言葉がないわけですが、今の状況を考えると、それは六次計画の最終年の分は当たり前のことで、もっと欲しいくらい、早く欲しい、こう思う。それは三年になるわけでしょう。ですから、今の教育実態からいうと、私は大変なことになるんだろうというふうに思います。  現場へ行くと、うちなんかは何年間これから新採用者、若い先生が入ってこないんだろうかという心配をしている学校があるわけですね。俗な例で、体育大会もできへんわ、こういう話があるわけです。ですから、そういう今の現場の不安に加えて、こういう事件で、心の通い合う教育ということを考えると、やはり前倒しをしこそすれ後ろへ三年というのは、本当に私は我慢できるものではないと思うんです。  国民の皆さんは、公共事業のばらまきについては強い批判を持つかもしれませんけれども文部省が、まず当面三十五人学級が必要なんですと言って旗振ったら、これを批判する、反対をする国民というのは、世論というのはないと思うんです。ですから、その点、私は与党の中でどういう話があるということはわかりませんけれども、ぜひ最大限の御努力をお願いをしたいというふうに思います。  幾つかあったんですが、少しだけこの定員の問題、人数の問題でいいますと、カウンセラーの問題がございます。  この文部省の対策の中にカウンセラーの配置ということが書いてあるんですけれども、私はこれも余り有効、有効と言ってはおかしいですが、カウンセラーや加配教員の延長措置――確かに今まで神戸に、兵庫に、地震の後のためのケアのためのカウンセラーが配置されてあって、それを今須磨区へどっと二十一校分ですか異動した。最初に私は申し上げましたけれども、地震の心の後遺症というのは神戸の子、兵庫の子に残っているわけです。そこのところに配置をされていたカウンセラー須磨区へ持っていって、増強しましたということには私はならぬ。それだったら、ほかのところはどうなるんだということになるわけです ね。本当に新しい人を見つけて、新しい人を配置したというんだったら私は値打ちがあると思うんですけれども。  これから夏休み、七月十九日から入っていくんですか、あとどういうふうにこの夏休みじゅうの子供たちのケア、二学期どうするんだということについても、時間がありませんから数字だとかそういうものは挙げませんけれども、私は十分な手だてを講じるそういう期間、夏休みだと考えてでも、これは私は本当に増強してほしいというふうに思います。  きょうの新聞で、カウンセラーよりも教職員が欲しいんだという投書がありました。私はそういう、両方ともだというふうに思いますけれどもカウンセラーも大きな役割を果たしていてくれるということも知っていますから、ぜひこのことについては、ただ異動するだけではなしに、確保して増員をしてほしいと思うんですが、その点いかがですか。
  114. 佐田玄一郎

    佐田説明員 先ほど報告をさしていただきましたけれども委員が言われましたように、今回の件につきましては、学校家庭、そして社会が、大きな影響を与えて、そしてまたそういうところから対処もしていかなくちゃいけない。  つぶさに私も神戸の方で、先ほど来から御説明申し上げているとおり、兵庫県の教育委員会、そして神戸市の教育委員会へ行ってあらゆるいろいろな議論をさせていただきました。とにかくやれることは何でもやらなくちゃいかぬ、こういうことでいろいろな議論をさせていただいたわけでありますけれども、その中で、例えば、社会においては、いわゆる地域の自治会であるとか、そしてまた婦人会の方々が、一つの組織をつくっていただきまして、児童の安全確保のために大変な努力をしていただいている。また家庭においては、ちょうど私は七月五日に行きましたけれども、七月四日に父兄集会を開きまして、その中で御父兄の皆さん方の動揺を抑えるための集会を催した。そして学校側におきましては、もう委員御存じのとおり、児童の安全を確保するためにガードマンを配置するであるとか、先生が今言われましたスクールカウンセラー、私もいろいろなお話を聞く中で、スクールカウンセラーがいかに効果を上げて、そしてお子様方の気持ちを本当に和らげているか。具体的にお話を聞きましたら、当該の中学において、いろいろな連絡をする係のお子さんがいらっしゃいまして、その方が特に大変に心の衝撃を受けられた、そういう方に対しましてもスクールカウンセラーがかなりの力を発揮されている。  そういうことを考えますと、今委員が申されたとおり、震災があり、そしてまたその中においてスクールカウンセラーが今回神戸市の方に集中をしている、全体的に把握していかなくちゃいけないじゃないか、こちらの神戸の問題も非常に大事なことでありますけれども、震災の問題も大事である、そういうことで、私が行った折に、兵庫県の教育委員会並びに神戸市の教育委員会に、しっかりとこれは議論をしていただき、そういう数字につきましてもしっかりと、そして地域割りにつきましても、これから検討して文部省の方に報告をしていただきたい、そういう議論もあったわけでございます。
  115. 山元勉

    ○山元委員 ありがとうございました。  私は、カウンセラーをふやしていただきたいというふうに申し上げました。しかし、考えてみますと、本当は心理士だとかあるいは精神科のお医者さんだとか、そういう人たちに助けてもらわなくてもと言うと語弊がありますけれども、本当は子供たちが伸びやかに学校で育っていける、あるいは問題があれば先生や親と相談ができるという環境をつくることが大事なんだと思うのですね。カウンセラーの不要な学校にしなきゃいかぬ。そういうことでいうと、もう一遍くどく言うけれども、定員の問題やあるいは受験の学区のありようについては真剣になって文部省は検討をしていただきたい、努力をしていただきたい、お願いをして終わります。
  116. 二田孝治

    二田委員長 次に、石井郁子君。
  117. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。  小学生が殺害される、また、傷つけられるという痛ましい事件が続いたわけであります。私は、まず最初に、被害者方々の御冥福をお祈りしたいと思いますし、またお見舞いを申し上げたいと思います。そして家族の方の心中は、本当に察するに余りあると思います。また現地では、三月の事件以来連日、地域関係者、自治会の方やPTAの方や、また学校関係者も、本当に大変な御努力をされているのですね。そういう御活動に敬意を表したいというふうに思います。  今回、逮捕はされましたが、まだ被疑者の段階ですから慎重に推移を見ていかなければいけないというふうに考えます。しかしながら、十四歳の、中学三年生になったばかりという子供被疑者として挙がったわけでありまして、その中で、弱い者ならだれでもいいとか、人を殺してみたかったというふうに伝えられているのですね。私は、このことに大変衝撃を受けました。子供たちの中に一体何が起こっているのか。それはやはり日本の今の教育社会の問題として深くえぐらなければいけないというふうに思っています。  そこで、最初に大臣にお尋ねですけれども、この少年逮捕されたときに、先ほど来出ておりますように、マスコミに、ここまで来たのかという感想をお述べになりました。私はその感想から、やはり教育をめぐる状況がこういう深刻な事態を迎えているという認識として受けとめたわけです。  私も先日現地に参りました。そこでもさらに大変胸の痛い話を聞いてきたのです。お母さん方もようやく初めてお互い同士この事件について話し合う場を持てたということだったのですけれども中学生高校生を抱えたお母さんが、あの通り魔事件のことになると口をつぐんでしまう。もしやうちの子ではないのかというふうに頭をよぎるからだと。中学生高校生を持つ御父兄の方が自分の子供の問題として話せないということになったということを聞いたのですね。  その後、新聞では、福井県で中学生の男子が自殺をしています。その遺書では、自分も一皮むけば恐ろしい人間だ、自分が何もしないうちに死ぬことができればという遺書だったのですね。私はこれも大変ショックでした。  そして、こういう事件マスコミがいろいろ中学生にインタビュー等々もしていますし、そのことは全部そのとおりだというふうに私たちは考えるわけにはいきませんけれども、多くの中学生たちが、あるいは高校生も、あの子供に共感ができる、わからなくもないという子供たちが大変多いのですよ。これをどう考えたらいいのかというのは、私たちにも今まさに突きつけられているというふうに思うのですね。  そういうことで、まず大臣に、こうした事件が起きて、しかも大変根が深いし、子供たちにいろいろな影響を与えているという点で、今の教育の何が問題なのか、あるいはどこを直していくというようなおつもりでいらっしゃるのか、最初にお聞きしたいというふうに思います。
  118. 小杉隆

    小杉国務大臣 中学生の時代というのは、非常に心身の発育が著しい時期であり、自我に目覚める時期でもありますし、また特に受験ということを考えますと、非常に精神的な動揺とか将来に対する不安というものがあるわけでありまして、学校全体あるいは社会全体に対する批判の気持ちがあるというふうに考えられますが、ただ、多くの中学生の意見、共感するというのは、そういう不安感があるという部分では共感するのだと思うのですけれども、しかし、あのような事件を起こすことまでを容認した発言ではないというふうに私は受けとめております。  この事件背景も、何があったのか、それは今懸命に捜査をしている段階ですからはっきりいたしません。私は、家庭学校社会、こういうもののあり方を含めて、今の教育に、特に心の教育重要性というものを痛感して諮問をしようとし ている段階でございます。
  119. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 そういう中で、私は、兵庫教育委員会あるいは神戸市、それこそ当該の教育委員会対応は、何か極めて遺憾に感じることがあるのですね。それで率直に申し上げたいというふうに思うのです。  これは、県の教育委員会が七月一日付で「基本的考え方」というものを発表してございます。六項目あるのですけれども、全部は読み上げる時間がありませんが、全く予期せぬことだった、衝撃を受けているということと、「事件背景動機等についても全く掌握し得ない状況にある。」という言い方。それで、その五番目に、「しかしながらそのような中で、十四才の中学三年生が小学生を殺害し、遺体を遺棄した容疑逮捕された事実は厳粛に受け止めなければならず、その子どもに生命の尊厳や弱者への思いやりの念などが十分であったか、また学校生徒指導上の問題など、今後の教育への課題であると認識している。」  ここで問題は、その子供の問題というふうにあえて限定していることなのですね。私は、今本当にひどく子供たちの中に、先ほど気持ちがわからないでもないと言った意味は、学校教育はこれでいいのかを問いかけているというふうに思っているわけですけれども、それは、その子供の問題だというふうに済ませようというふうに思わざるを得ないのですが、この「基本的考え方」は、文部省の指導もそのようにされたのでしょうか、あるいは文部省の指導でそうしたのか、あるいは文部省も同じ見解なのかということをまず伺います。
  120. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 ただいま御指摘のように、「基本的な考え方」として兵庫県の教育委員会が七月一日時点で発表したということは私どもも承知をいたしております。  ただ、この「生命の尊厳や弱者への思いやりの念などが十分であったか、」これはみずから課題を投げかけたものだというふうに承知しているわけでございますが、これは、こうした事件発生現場となった教育委員会の心情として述べたものであるわけでございますけれども、これを、ただいま先生が御指摘のように、子供個人個人的な問題に限定してよいかどうか、これについては今現在捜査が進行中であるわけでございます。そういう意味で、事件動機背景がまだ明らかになっていない段階においてこれを云々するのは差し控えなければならないことだろうと思います。  なお、この発表は、その場におきます兵庫県教育委員会としての真情が吐露されたものでございまして、文部省相談し、あるいは文部省の指導を受けてというようなことではございません。
  121. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 次に、事件後の学校対応というのが大変国民的に話題となっているわけで、あえて私は申し上げたいのですけれども学校とは関係ありませんという校長の対応でございましたね。そして、事件のことは学校で一切問題にしない、これはそういう方針だ、指導方針として明らかにされているということも報道されているわけです。これほど大きな衝撃的な事件、自分の学校の仲間ですからもちろん子供はよく知っている。知っているというにもかかわらず、三十日から始まる試験は一日延期されただけ、そして学校の中でこの問題では一切議論もされないというか話し合いもされない、校長先生は型どおりの訓話を述べただけということになっているわけですね。  そして、それはこの学校だけではないのです。神戸市内の周辺の学校も同じような事態になっているというふうに聞いているわけですね。私は、先ほど来も出ていますけれども神戸兵庫子供たちは、震災で本当に心の傷を負っているのですね。子供ほどその傷はまだいえていないというふうに言われています。その上に今回の事件ですから、このショックは本当に大きなものなのですね。  そこで、こうしたこの現場学校対応は、やはり神戸市の教育委員会の指導のもとでそういうふうに対応されたのか、あるいはもう議論をするなという指導もされたのかということをお聞きしたいのです。これは文部省と協議の上でそうされたのでしょうか。
  122. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 校長先生の記者会見等を指してのことかと思われますけれども神戸市の教育委員会学校の間でどのようなやりとりがあった結果か、私ども承知いたしておりません。少なくとも、私どもがこうした対応をすべしというような指導と申しましょうか、アドバイスをするというようなことはございませんでした。  なお、ただいま先生から、学校対応が責任がないというような対応であったのではないかという御指摘でございますけれども学校は大変重たく受けとめておりまして、当該学校だけでなく、県下の多くの学校におきまして、校長先生が在校生に対しましてお話をする、あるいは各学級において人権とかあるいは命のとうときについての話し合いを行う。あるいは当該学校におきましては、御案内のとおり、全校集会を開催して、校長から生徒に対してさまざまな指導をするとともに、心のケアということで、全校生徒を対象にした個別面談等も実施しているわけでございまして、決して、私ども、市の教育委員会から学校等の対応につきまして許される範囲の情報を聞いておりますが、学校も真剣に取り組んでいる、対応している、さまざまな御意見があろうかと思いますけれども、そういうふうに私どもは聞いておるところでございます。
  123. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 それではちょっと重ねて伺いますけれども逮捕という報が知らされたときにその学校に先生方が集まってこなかった、これもまた国民の目には異常に映っているわけで、しかし、それは教育委員会が何かそのような指導をしたという話も一説にあるのですね。その点ではどうですか。もしそういう形で対応したとしたら、文部省としてはそれはどう指導されますか。
  124. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 当日の対応につきまして市の教育委員会とどういうやりとりがあったのかは承知していないわけでございますが、私どもが承知しておりますのは、当日の夜の時点では、警察の方からの公式な発表は、須磨区内中学三年生の少年ということにとどまっておりまして、個人名はもちろんのことでございますけれども学校名も発表されない、そういう前提で対応する必要があるという判断があった、その判断のもとで学校は、その夜、ああした対応をしたというふうに承知をいたしております。
  125. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 この当該学校も、また周辺の学校も、職員の間でこうした十四歳の現役の中学生逮捕ということについての議論が行われている節がどうもないのですね、神戸の場合。それが一つは気になるという問題と、それからもう一点は、期末の時期であるとはいえ、ただ一日間を置いただけでいわば平常どおり試験が始まるというのも異常ではないかというふうに私は思うのですね。子供たちは実際大変落ち込んでいたり動揺したりしているわけです。一日置いて試験が始まる。結局、その試験の成績でまたランクづけされていくという中で、私は、そういうことは本当に心を踏みにじるやり方ではないのかというふうに言わざるを得ないのですね。だから、これが学校のやり方なのかというふうにやはり思うわけです。先ほど来、心の教育を重視されていると言いますけれども、これこそ本当に子供たちの心を痛めつけている、やはり非人間的なやり方だ。どうですすか。  文部省としては、それは教育委員会があるいは当該学校がおやりになったことだというふうにしか言えないだろうと思いますが、しかし、これは異常ではないのか。校長先生も、早く平常心に戻るようにと。事態の中身や、そしてそのことについての議論がなくて、子供たちがどうして平常心が持てるのだろうか、動揺があって当たり前ではないのかというふうに思うのですね。そういう点はいかがですか。
  126. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 学校におきましては、期末試験を延期いたしまして全校集会、その後、全生徒を対象にした個別面接を行ったということで、その後の判断として、試験は実施しても大丈夫であろうという学校の御判断であっただろうと思います。 そのことについてどういうふうに判断すべきか、今先生からは大変厳しい御指摘があったわけでございますけれども学校学校としての、学校を預かる立場でさまざまな観点からの御判断であったであろう、こういうふうに承知をしておりまして、文部省としてこれにつきまして云々というのは控えざるを得ないだろうというふうに思います。
  127. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 神戸事件を見る場合、私は、歴史的にぜひ見ておく必要があるというふうに考えているわけです。  ちょっと申し上げますけれども兵庫県でこの七年間に大変な事件が次々に起こっています。七年前には、あの県立高塚高校の女子生徒の校門圧死事件というのがございました。それから、龍野小学校では体罰を苦にして小学生自殺事件がありました。そして、県立吉川高校生の同級生殺害事件というものがありました。それから、県立神戸商業高校ではいじめを苦にした女子生徒自殺事件です。そしてこの五月にはもう一件、相生中学校というところで先輩殺害事件、やはり十五歳、中学三年生が起こしているわけですね。これは今回の事件の陰で余り大きくなっていませんけれども、あるのです。そして、あの有名な風の子学園の児童虐待事件ということなのですね。七件八名の児童生徒、いわば学校にかかわって死亡しているのです。  私は、とりわけ風の子学園の問題は、民間の施設ではありますけれども、これは今長くは申しませんけれども学校関係教育委員会、あるいはまた関係者等がかかわってこの子供を風の子学園にと送り込んだという話になっているわけで、大変重大な問題なのですよね。だから、これは全国的にこういう事態なのか、私は、やはり異常な多さではないのかと言わざるを得ません。  そこで、一つは、こうした事件について、当の教育委員会はどう対応して、どういうふうに対策を立ててきたのか。また、文部省はそのことについてどういう報告を受けているのか。実は一つ一つ伺いたいぐらいですが、もう時間がありませんので、一件だけ、龍野小学校事件について、つまり、どういう教訓を引き出しているのかということが重要だというふうに思うのですね。ちょっと短くお答えください、余り時間がありませんので。
  128. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 まず、兵庫県としての取り組みでございますけれども、私ども兵庫県の教育委員会を通しまして、県におきましては、ただいま先生から御指摘のありました自殺事件等につきましては、大変重たい問題としてこれを教訓として対応するという取り組みをしているというふうに聞いてございます。  具体的には、生徒指導のあり方等と今後の方向について検討するための有識者で構成されます教育懇談会を設置して、思春期の人間関係あり方、今の大切さ、生きる力をはぐくむ教育などのあり方について検討するということが一つ。それから自然学校、自然体験教室などさまざまな体験活動を通して人間的な触れ合い、あるいは自然との触れ合いを深めて豊かな心をはぐくむ授業の実施、さらには、専門のカウンセラーを配置した教育相談センターの設置などの教育相談活動の機能の充実というような具体の取り組み報告する中で、県としてもこの問題を重く受けとめているというふうに報告を受けております。  さらに、こうした取り組みが進められますように、文部省としては、兵庫県教育委員会を通しまして、指導助言ということについて努力をしてまいりたいと思っております。  それから、個別の龍野市立の小学校の件でございますけれども、自殺した件、あるいは他殺等そうした事件がございますと、県の教育委員会を通しまして、私どもの方には事件の経緯、それに対する学校、市教委、県教委等の認識等が報告されるということになっておりまして、この龍野市の学校子供の死亡事故につきましても報告がされております。そのとき、当日、授業後の指導中に体罰の事実はあったということも含めまして私ども報告を受けておりますが、この件は、ただいま体罰と自殺の因果関係につきましては係争中の件でございまして、それ以上のコメントは差し控えさせていただきたいというふうに思いますが、そういう報告は受けでございます。
  129. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 私は、ここで、結論を急ぐわけではありませんけれども兵庫神戸にこういう事件が大変多発しているという問題でいえば、やはりこの教育の管理主義的なあり方ということにどうしてもメスを入れなければいけないし、とりわけ体罰の問題なのですね。つまり、体罰というのは教師による暴力なのですよ。こういう暴力が日常茶飯にあるようなところでは、どうして子供たちの心が育つだろうかというふうに言わざるを得ないわけですね。  それで、実は、きょう私は東京新聞を見てなおショックを受けているわけです。この新聞によりますと、先ほど来出ていたこの当該の学校での全校集会がございましたけれども、校長の説明のときに中学生がひそかにメモを回している。小さな紙切れのメモが回った。校長はうそつきだ。そして、このメモを読んだ二年生の女生徒が、一年のときテストをサボったら生徒指導室で顔を二発殴られた、ブラウスが鼻血で赤くなったということを書いています。  一つは、私はぜひ伺いたいのは、指導室というのがあって、ここは何か本当に密室で、相当なことをされているという話は聞いているわけです、少なくともマスコミで言われている限り。今回の調査でも、あなた方は文部省としてこういう事態把握したのかどうか、聞いたのかどうかということをちょっとまず最初にお尋ねしたいと思います。
  130. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 ただいま先生が御指摘されましたその件につきましては、まだ私ども実情を把握しておりません。
  131. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 逮捕された子供にかかわって言えば、体罰があったかなかったかというのは一つまだわからない点ではありますが、しかし子供のいろいろな発言があるわけですね。これは、一年のとき受けた屈辱を忘れられないと言っている。その子供に、先生は、おまえは邪魔や、もう学校に来ぬでいいと言ったということまでこのきょうの新聞で報道されています。  ぜひ、一つは、この体罰の実態はきちんとつかんでもらいたい。それから、やはり体罰を、体罰というか私はもう暴力だと思うのですね、決して教育上認められるものではないわけですから、この暴力を学校から一掃する、この点で文部省は今毅然としてやはり貫いてほしい、そういう立場に立ってほしいということを思います。本当に暴力はあるのですよ。どうですか。     〔委員長退席、河村(建)委員長代理着席〕
  132. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 教師の体罰は、先生御案内のとおり、法律をもって明確に禁止されているわけでございます。したがいまして、この趣旨の徹底というのはこれまでも随分努力をしてきたつもりでございますけれども、ただいまの御指摘も踏まえまして、さらにその趣旨徹底に努力をしたい、こういうふうに思います。
  133. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 趣旨徹底じゃもうだめなのですね。やはり本当に実態に踏み込んでほしいというふうに思います。  私は、このことを強調するのは、やはり今回の事件とか今出ている教育問題でいえば、教師の多忙化ということを言われますけれども、教師と子供の間が疎遠になっているのですよ。それから、子供は教師に本音をしゃべらなくなっています。ここが問題なのです。だから、子供の姿が先生から見えない、またつかめない、こういう現場になっているのですよ。こういう状態では事故の再発防止なんてできないと思うのですよね。こういう実態になっているというのはどこから来るのかと考えざるを得ないのです。  先ほど受験競争の問題もありましたけれども、もう一つは、やはりいい学校と言われている、あるいはいい子でなければいけない、この物すごい圧力があるのですよ、子供たちの中に。それを、 やはりどうしてそういうふうになっているのか。この内申書重視、子供たちが教師の顔をうかがう、いつもいい子ぶりっ子でいなければならない。そして、全部それは受験の点数につながる、いい学校を選ぶためにつながる。だから、部活もボランティアもいろいろなところで教師に見られている。いい子でいなければいけない、いい学校に行けない、こういうことをしていって、本当にもう行き着くところまで私は今来ているのじゃないかというふうに思います。  ですから、子供たちの中のむかつき、ストレス、いらいら、よく言われていますよね。いじめはなくならない。だから裏に隠れていじめをするわけですよ。そのいじめも先生には相談しない、学校に言っても解決されない、こういうことだったら、本当に今の教育はもう何とかしなければならないというふうにやはり思わざるを得ないわけですね。  それで、私は兵庫教育についてあえて申し上げているのですけれども、問題を起こす子供とか、あるいはそういう点数競争から外れた子供というのを学校から排除していく、こういうことに行き着いていないのかということを大変心配するわけですね。そういうことの中でいろいろな問題が起きているのじゃないかというふうに思うわけです。  もう時間がありませんので、私はぜひ、今学校の教師たちが本当に多忙で子供と向き合えないと言っているわけですから、その学校の多忙さ、業務量もあるでしょうし、それから教え込む量が多過ぎるということもあるでしょうし、いろいろな会議もあるでしょうし、文部省として、この多忙の実態をまずつかんでほしい。本当にこれを解消するにはどうするか。先ほど来、定数問題もございましたけれども、それは根本にはそうですけれども、今すぐでもできるようなことは手を打つべきだと私は思うのですね。どうですか。その多忙の実態についての調査などはお考えになりませんか。   〔河村(建)委員長代理退席、委員長着席〕
  134. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 調査というとなかなかいろいろな観点から検討しなければならないと思いますが、一つの御提言として受けとめさせていただきたいというふうに思います。
  135. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 以上で質問を終わります。
  136. 二田孝治

  137. 保坂展人

    保坂委員 社民党の保坂展人です。  現在、事実そのものがまだ確定をしていないという段階で、つい私たちは、この問題の根本原因は単純な、例えば学校である、あるいは家庭である、あるいは何であるというふうに片づけがちなのですが、私自身は、これは、率直にわからないものはわからないというふうにしっかり言うことも一つの勇気だと思います。中学生の世界にあることを、学校の先生も、親も、そしてもちろん我々議員も、本当につかんでいるのかどうかということをちょっと考えてみたいと思うのです。  本来、できたら委員長の許可を得て子供の声をそのまま御紹介しようというふうに考えたのですが、私の方の準備が整いませんでしたのでちょっと読ませていただきたいのですが、留守番電話に子供からの声が入ってくるというテレホンサービスを運営しておりますけれども、こんな声が入ってきました。  あの事件がワイドショーなどを見ていて毎日報道されていて、何か私の感覚が麻痺してしまっていて、残酷な事件なのに、毎日のように当たり前に報道されると、もう何だか何も感じなくなってしまって、リアルに伝わってこないというふうに感じるのです。私がこういうことを言っちゃうとすごい危険な発言なんですけれども、犯人の気持ちというのがわかるとまでいかなくても、何かぶつけようのない気持ちというのは伝わってくるんですね。それが最悪の形の殺人という形であらわれちゃって、何かもう世の中だけじゃないけれども、昔から、一人の人間が本当に一人の人間として真っ裸になって、自分の思っていることを発言したり主張したりできる場が本当にないなと思うのですね。これは、中学生逮捕される前に入った声なので、中学生であるということは知らないで言っているわけなのです。  けさ、ずっとそれ以降に、逮捕されてから入ってきた声を聞きましたところ、やはり僕と全然違う人間だとは思えないというような声が幾つかあります。もちろん、こんな犯罪は絶対許せない、亡くなった子に対して一体どう罪を償うのかという意見もたくさんございます。  そうやって考えていきますと、いわゆる犯行声明文の中の、たびたび紹介されているのですが、このくだりですね。「ボクが存在した瞬間からその名がついており、やりたいこともちゃんと決まっていた。しかし悲しいことにぼくには国籍がない。今までに自分の名で人から呼ばれたこともない。」別の箇所ですが、「ボクがわざわざ世間の注目を集めたのは、今までも、そしてこれからも透明な存在であり続けるボクを、せめてあなた連の空想の中でだけでも実在の人間として認めて頂きたいのである。」  これは繰り返し紹介されていますが、恐らく子供たちの中に広がっている理解というのは、もちろん犯罪行為そのものではなくて、この声明文の中にある自分の存在や主張や叫びや訴えや実存、それを一度も受けとめられたことがないという渇きだと思います。  そこで、特に、先ほどの石井議員からの質問にもありましたけれども、この問題自体が学校にすべて集約するというふうに私は考えていないのですね。考えていないのですけれども、記者会見で校長先生が出てこられて、その表情なり語る言葉を聞いていて、いわば学校教育に対する失望といいますか諦念といいますか、そういうものがどんどん広がっていったように思います。例えば、体罰はなかったという発言もありました。この学校に問題はなかったという発言もありました。それから、小学校には先生たちが集まったのだけれども中学には人影がなかったという報道の言葉もありました。  こういったときに、公務員として守秘義務があるからということもたくさんおっしゃられましたけれども、やはり胸のうちをオープンにして、これはもう想像もできないことであったけれども、動揺も十分見せながら自分の気持ちを語るということが、やはりそのかけらが感じられなかったというふうに私は思うのですが、小杉文部大臣はそのあたりをどうお考えでしょうか。
  138. 小杉隆

    小杉国務大臣 まだ真相が解明されておりません段階ですし、捜査が進展している中でありまして、私もできるだけ早く真相、背景動機を探りたいということで、早速担当官派遣したり、佐田政務次官にも行っていただいたりして情報収集に努めているのですが、正直なところを言って、今までこれぞといった情報は得られておりません。  しかし、私たちは、学校あるいは地元教育委員会等とよく連絡をとりながら、今御指摘のように、できるだけ心を開いて、自分たちはこれだけ一生懸命やっているのだけれどもまだこういう状況だということを赤裸々に率直に申し上げて、お互いにやはり、父母と学校、そして教育委員会、あるいは文部省も含めてですけれども、そこら辺の意思の疎通というのは今後とも十分図っていきたいし、私は、そのためにも情報収集のためのプロジェクトチームをつくって、ずっと継続して市の教育委員会、県の教育委員会、そして学校等との連絡をより密にしていこう、こういう姿勢で臨んでいるところです。
  139. 保坂展人

    保坂委員 一日学校が休講になりまして、翌日から期末テストが始まったわけです。そのときに校長先生の方から、平常心でという言葉が出たそうです。その平常心という言葉そのものを突き詰めていきますと、極めて、子供たち自身がこれはもう大声を出して叫びたい、あるいはもう泣きじゃくりたい、あるいはもう学校なんか行きたくない、あるいはもうだれの顔も見たくない、友達のだれもが信用できなくなった、まさか、いろいろな気持ちが交錯しているわけです。そのときに、平常心で学校生活を送る、テストを受ける、そんなことを全部忘れて英語の熟語を思い出す、あるいは国語の漢字を正確に書くということが本当に生命の尊重につながるのかどうか。  こういうときには、思い切って学校のプログラムを停止して、何も考えられなかったら休校にするとか、あるいは、できれば子供たち自身の心のおりのようにたまっている言葉をしっかり受けとめられる話し合いの場を持つとか、そういう選択ができなかったのかというふうに思うわけですけれども大臣に見解を伺いたいと思います。
  140. 小杉隆

    小杉国務大臣 私は、地方分権とか規制緩和とかと言われる根本のところは、やはり自己責任原則だと思うのです。ですから、こういう細かいことまで一々文部省なり教育委員会が口出しする前に、私は、学校長なり学校が判断をして決めるべきことだと思うのです。  けさの河合隼雄さんの論文なんかを見ますと、そういうことでおたおたするのじゃなくて、日常のことをしっかりやっていくことだという指摘もありまして、考え方はいろいろあろうと思うのですが、私は、第一義的には学校が判断すべきことだ、そこまで教育委員会なり文部省におんぶするという考え方じゃなくて、学校の当事者が父兄ともよく相談をしてしっかり対応してもらいたい、こう思います。
  141. 保坂展人

    保坂委員 私は、七年前のちょうど今ごろ、神戸市の神戸高塚高校の校門の前で少女が圧死をするという事件のさなかに、まさにテストを終えて家路につく高校生たち一人一人にマイクを向けて、どう受けとめるのか、どういうふうに考えるのかというのを聞いてみました。その中で答えてくれた子が大勢いて、その中に生徒会の役員の子がいた。実は、高塚高校では、あれほど悲惨な事件でも、本当に痛ましい少女の死でしたけれども、その中で生徒会の役員たちがアンケートをとって、あの事件をどう受けとめるのか、そしてマスコミに見つからないように付近の店に集まってやっていたのです。  そういう中で極めて残念だったのは、高塚高校の二百四十キロあるあの校門が撤去をされました。つまり、レール式の門で圧死をしたわけでございます。それで、撤去をして材質が軽く観音開きタイプのものにかえるというのがその処置でございました。これは本当にブラックジョークのような処置じゃないかと思います。  本当に、人が亡くなったというときに、やはり学校全体として、子供の声を出させて、そして徹底的に話し合うというようなことがこういうときにこそ行われてほしいというふうに当時も思ったのです。ですから、文部省としてそういう指示をするようにということを申し上げているのではなくて、やはりそういう考え方があっていいのではないかということで見解を伺ったわけです。その点いかがでしょうか。
  142. 小杉隆

    小杉国務大臣 私は、先ほども申し上げたように、文部大臣になって一番心がけたことは、公開というか、オープンということなのですね。ですから審議会も全部公開に踏み切ったわけです。今こそ私は、学校と父母、あるいは生徒教育委員会、こういったところがもっと胸襟を開いてフランクに話し合う、こういう困難があるのだ、こういう障害があるのだということをお互いにさらけ出して、事態をみんなで考える、認識を分け合う、そういう気持ちがやはり必要じゃないかと思いますので、何か自己弁護的に、自分をよく見せようとか自分の責任を回避しようとかという態度じゃなくて、お互いに、ともに悩み、考え、そして解決策を見出そう、そういう姿勢が必要じゃないでしょうか。
  143. 保坂展人

    保坂委員 そのオープンということの中には、学校で何があったのかということを率直にきちっと事実として出していただくということが必要かと思うのです。  それで、事は体罰の問題になるのですけれども学校の校長先生は当初、体罰はないというふうに会見でおっしゃっていて、その後、七月四日でしょうか、過去三年間で体罰は九件ありましたというふうに修正をされております。  それで、初中局長の方に伺いたいのですが、この九件というのは市教委に報告として上がってきておる件数なのでしょうか、あるいは上がってきていないものなのでしょうか。そして、文部省調査派遣をされて、実態をどういうふうに把握しているのか、この点について伺います。
  144. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 この九件というのは、校長先生が保護者会の席で明確におっしゃった数でございます。したがいまして、市の教育委員会も、こうした報告をしたということは当然承知しておりますし、私どもも、こうした報告を保護者会で校長が行ったということは、現地に参りましても承知いたしております。
  145. 保坂展人

    保坂委員 その校長先生が保護者会で言ったということを市教委が承知をしたということではなくて、学校現場で体罰が起きれば、体罰の事故報告書ですか、そういうものを提出しなければいけないわけです。これをきちっとやっていたのでしょうかどうでしょうかという質問です。
  146. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 失礼いたしました。  ちょっと私は、そこの点につきましてははっきりと、この体罰についてどういう報告をしたか、それぞれの九件につきましてその都度学校教育委員会の方にどのように報告したかということについてまでは承知をいたしておりません。
  147. 保坂展人

    保坂委員 いろいろな報道によりますと、先ほど石井議員のお話にもありましたけれども、二階に恐怖の部屋と呼ばれる生徒指導室があって、これは、本当に大変だと思うのは、最近の体罰で、たたくというのではなくて足でけるという行為がふえてきているのですね。おなかをけられたというような証言が出ている。そこのところをきっちり調査をして、体罰がそのように蔓延していたとしたらこれはとんでもないことで、神戸の高塚高校事件から七年たってそういった体質がまだ変わっていないとしたら、もうこれは根本からメスを入れていただきたいと思います。そこはぜひお願いをしておきます。  さて、もう一つ具体的に大臣の方に伺いたいのですが、心の教育ということをおっしゃっているわけなのですけれども、具体的に、この地域通り魔事件子供が亡くなっている、そして大けがをしていますね。そうすると、その年代の子供たち、とりわけ幼い子供たちは大変な恐怖で日々を過ごしていたに違いないですね。そしてまた、淳君の事件が起きる。そして、この展開の中で、容疑者少年中学生である。これは、もういやしがたい傷を子供たちの間に生んでいると思います。  そして、現在まず急がなければいけないのは、その子供たち自身の心の中にたまってしまった恐怖、心の傷をいやしていくプログラムということを、これは本当に急がなければいけないのではないか。  このことに対して、マスコミ報道は子供の声を聞きたいということでいろいろ競争しておりますから、PTAがガードして、このことを外に出さないという形で今進展しているようですけれども、このことについてもう二度と語らないという形は、子供自身が学校の場でもうこのことについては触れないのだ、みんなが忘れるのを待つ、それまで黙っておくということは、かえってこの傷を深める結果になろうかと思います。  その点で、一つは、子供たち自身が非常な恐怖の中で、地域一帯の子供が傷ついていることに対して、その心の傷を回復していくプログラムを緊急に検討してほしいという点と、もう一つ、今回のこの事件で、本当に子供たち自身が、先ほどの声にもありましたように、声を上げたい、話をしたいというわけです。恐らく、当該の中学校、そして小学生たちも、安全な形で、そして自分の思っていることをすべて吐き出して語り合うという機会を切に望んでいると思います。こういう機会をぜひつくっていただきたいということを思うのですが、いかがでしょうか。
  148. 小杉隆

    小杉国務大臣 心のケアというものは非常に大事でありまして、あの後、心の動揺を持っている 子供が非常にふえているということで、須磨区内に特別にカウンセラーを配置したり、それを継続して夏休み前までやっていこう、こういうことを決めて対応しております。子供それから御両親からの相談もかなり多いと聞いておりますから、そういう体制をやっていきます。  それから、子供の声を聞く手段というのはなかなか難しいと思うのですけれども、私どもは、やはりそこは学校に努力をしていただいて、できるだけ子供の心をつかんでいただく。そして私たちは、そういう活動は教育委員会とも相談をして、文部省としても、何が原因であったか、何が背景にあったのか、そういうことを究明するというのですか、その模索の努力は十分これからもしていかなければいけないと思っております。  だからこそ、プロジェクトチームもつくったり担当官派遣したりしていろいろとあらゆる角度からその真相に迫る、こういう努力をしているわけでございまして、今後とも、十分くみ上げられるかどうかわかりません、子供が本当に大人に話すかどうかもわかりませんし、またいいお知恵があったら拝借したいと思いますけれども、そういう努力はこれからも続けていきたいと思っています。
  149. 保坂展人

    保坂委員 文部省としていろいろ努力をされるということとは別に、子供同士が、例えばホームルームで、あるいは生徒会や児童会で、このことについて、もう本当にいろいろたまっている心の中のおりのようなものをちゃんと吐き出して、そして今、一言で言えばこの地域一帯には本当に不安と人間不信と絶望が渦巻いていると思うのですね。その三つを安心と信頼と希望に切りかえていく、これはやはりどうしても子供にとって必要なことだろうと思います。ですから、子供自身の声を子供たちの間で酌み交わすという取り組みをぜひ考えていただきたいというふうに思います。その点についていかがでしょうか。
  150. 小杉隆

    小杉国務大臣 なかなか難しい問題なのですけれども、どういう方法があるのか、いろいろ研究してみたいと思っております。
  151. 保坂展人

    保坂委員 実は、大河内清輝君が亡くなって、そこで大変衝撃的な遺書が残されたわけですね。そして、我々自身が非常に深く問われる、何をしてきたんだろうかと。  私は、ジャーナリズムの立場で自分自身がいじめにかかわって、過去何度か、しかも子供たち向けの本を書いてきたということで、非常に無力感も感じながら、やはりこれは何かしなければいけないという思いで非常に思いを重ねたんですが、今回、土師淳君がやはりいじめに近い対象になっていたというようなことも伝えられています。  それから、いじめということは、関係のこじれでございますね。A君がB、C、Dに囲まれてずっといじめられるということは、非常に難しい問題だけれども解決の余地があるわけですね。B、C、Dの三人が、これはよくないんだということで、A君をいじめるのをやめていくということで介入をしていくことができるわけなんですけれども、通り魔というのは解決のしようがない。たまたま出会って後ろから暴力を加えられるというようなことが起きたら、これはもう未然に防ぎようがない。  こういうふうに考えると、恐らく子供の間では、いろいろなうわさとか不安、あるいはこんなことをされかかったとか、危ない目に遭ったとか、あるいは小動物が殺されているというようなことについて、不気味でならない、怖い、そういう気持ちが子供にあったと思うのですね。この子どもの声を、先般から申し上げていますけれども、二十四時間フリーダイヤルで子供の声を受けとめていくという、イギリスのチャイルドラインのような、子供が直接SOSが発せられる場があれば、これはそれでも完全に解決はしませんけれども、SOSのサインを受けとめることができたのではないかというふうに思います。これを緊急の策としてぜひ進めていきたい。民間の力を中心に、ぜひそういった子供の安全を守る政策を推し進めていただきたいと思います。その点について伺って、終わりにしたいと思います。
  152. 小杉隆

    小杉国務大臣 子供の悩みとか訴えに耳を傾けていくということは大事なことで、文部省としても、今、国立教育会館でフリーダイヤルというのをやっております。それから、今保坂委員指摘されたイギリスのチャイルドライン、私もできたら現場を見てみたいと思っておりますし、近くその関係者文部省でお招きしよう、こういうことにしておりますし、民間でいろいろな取り組みが行われております。保坂委員もその一員でもありますけれども、そういった取り組みに対して、できるだけ文部省としても協力するところはしていく、こういう姿勢で進んでいきたいと思います。
  153. 保坂展人

    保坂委員 ありがとうございました。終わります。
  154. 二田孝治

    二田委員長 小杉文部大臣初め委員の皆さん、御熱心な審議、閉会中にもかかわらず御苦労さまでございました。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時十三分散会