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1997-06-04 第140回国会 衆議院 農林水産委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月四日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員   委員長 石橋 大吉君    理事 原田 義昭君 理事 松岡 利勝君    理事 松下 忠洋君 理事 山本 有二君    理事 久保 哲司君 理事 矢上 雅義君    理事 小平 忠正君 理事 藤田 スミ君       石破  茂君    植竹 繁雄君       金田 英行君    亀井 善之君       瓦   力君    木部 佳昭君       熊谷 市雄君    栗原 博久君       実川 幸夫君    鈴木 宗男君       御法川英文君    山本 公一君       井上 喜一君    池坊 保子君       一川 保夫君    木村 太郎君       佐々木洋平君    城島 正光君       菅原喜重郎君    仲村 正治君       宮本 一三君    佐々木秀典君       鉢呂 吉雄君    穀田 恵二君       前島 秀行君    堀込 征雄君       北村 直人君  出席国務大臣         農林水産大臣  藤本 孝雄君  出席政府委員         外務省アジア局 加藤 良三君         農林水産大臣官         房長      堤  英隆君         農林水産省経済         局長      熊澤 英昭君         農林水産省構造         改善局長    山本  徹君         農林水産省農産         園芸局長    高木  賢君         農林水産省畜産         局長      中須 勇雄君         農林水産省食品         流通局長    本田 浩次君         農林水産技術会         議事務局長   三輪睿太郎君         食糧庁長官   高木 勇樹君         林野庁長官   高橋  勲君         水産庁長官   嶌田 道夫君  委員外出席者         環境庁企画調整         局環境影響評価         課環境影響審査         室長      寺田 達志君         大蔵省理財局資         金第二課長   楠  壽晴君         厚生省生活衛生         局食品化学課長 黒川 達夫君         建設省河川局治         水課長     渡部 義信君         参  考  人         (日本中央競馬         会常務理事)  須田  洵君         農林水産委員会         調査室長    黒木 敏郎君     ————————————— 委員の異動 六月四日  辞任         補欠選任   井上 喜一君     池坊 保子君   木幡 弘道君     木村 太郎君   安住  淳君     佐々木秀典君   春名 直章君     穀田 恵二君 同日  辞任         補欠選任   池坊 保子君     井上 喜一君   木村 太郎君     木幡 弘道君   佐々木秀典君     安住  淳君   穀田 恵二君     春名 直章君     ————————————— 六月四日  遺伝子組み換え食品の表示に関する請願(中川  智子君紹介)(第三五一四号)  同(山本孝史紹介)(第三六四五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農林水産業振興に関する件等      ————◇—————
  2. 石橋大吉

    石橋委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件等について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件等調査のため、本日の藤田スミ君の質疑に際し、参考人として日本中央競馬会常務理事須田洵君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 石橋大吉

    石橋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 石橋大吉

    石橋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松岡利勝君。
  5. 松岡利勝

    松岡委員 それでは、幾つか質問をさせていただきたいと思いますが、まず最初に、今いろいろと論議を呼んでおるといいますか、話題になっております点につきまして、質問をさせていただきたいと思います。  まず、諌早干拓の問題でございますが、中身に入ります前にちょっと確かめておきたいことがございますので、その点につきまして御質問を申し上げます。  環境庁長官発言というのが、きのうございました。新聞に載っておったわけでありますけれども、それによりますと、現時点で環境アセスをすれば認められなかったのではないか、このようなことが言われたとの報道がございましたが、これにつきまして農林省としてどのように把握をされておられるか。真実関係、事実関係、それはどのように把握をされ、また農林省としてはこれに対してどのように対処されておるのか、また今後されるのか、この点につきまして確認をしたいと思います。
  6. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 御指摘のように、三日の閣議後の記者会見での石井環境庁長官発言が一部報道機関で取り上げられております。この発言の事実関係及び長官真意環境庁確認をいたしましたので、御報告を申し上げます。極めて、事実関係、正確に申し上げたいと思いますので、文書を読ませていただきます。  「石井環境庁長官は、質問に答えて、」これは記者会見での質問。「諌早湾問題という個別の案件について仮定の話をするのは不適当であるという前提で、」言われた。  それで、こちらに対する回答といたしましては、「一般論として、環境アセスメント科学的知見の水準や、その時々の環境保全についての政府地方公共団体住民等考え方が反映されるものであるところから、環境庁意見がいつも同じということではない」、こういう認識を記者会見で示したということでございます。  しかし、「なお、環境庁としては、諌早湾干拓事業については、昭和六十三年当時においても、干潟重要性等については十分認識した上で意見を述べており、環境庁としては意見の基本は変化していないし、環境アセスメントを再実施するつもりもない。」このように答えておられます。  政府といたしましては、従来どおり諌早湾干拓事業を実施していくというこれまでの方針にいささかも変わりはございません。
  7. 松岡利勝

    松岡委員 今の藤本大臣のお話によりますと、環境庁長官は、一般論として、その時々の状況によっていろいろと環境アセスの結果というか結論も変化することはあり得る、こういう一般論を述べられた。その上で、諌早については、既にやってきたことが今の時点において状況が変わったりまた結論が変わるようなことはないと思う、またその気も、そういうことで改めて実施しなければならないような事態にもないと思う、こういうことを明確に言われたわけですね。  したがって、そうだとすれば、これは一部分が、ある意味では特別に取り上げられて、誤った印象を与えるかのような報道になってしまった、こういう理解でよろしいですか。
  8. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 そのとおりでございまして、本件、極めて重要な問題でございますので、きょう環境委員会環境庁長官から真意を十分にお話しされる、このように伺っております。
  9. 松岡利勝

    松岡委員 わかりました。じゃ、その点はそういうことで終わります。  そこで、この諌早の問題でございますが、私も、自由民主党の農林部会長として、現地調査団の団長としても参ったわけでございます。そしてまた、それぞれ他党の皆様方とも議論をいたしておるわけでございまして、いろいろな議論があるわけでございますけれども、一番そこの中で他党の方々が問題にされておる点について確認をしておきたいわけであります。  要は、途中で干拓目的が変わったのじゃないか、言ってみれば、問題になり出したら、これは防災目的だというようなことを言っているのであって、くるくるくるくる都合のいいように変えているのじゃないか、こういうことを言う人もいるわけでして、現実にそう言う方がおられるわけであります。  そこで、私も行ってみて思うのですが、ここはやはり神代の時代から、有史以来、その特殊な地形なるがゆえに大変災害に苦しんできたところだ。行ってみればよくわかります。後ろに山が迫っておりまして、そして代々少しずつ干拓陸地が広がってきた。したがって、干拓で広がったところですから、オランダと同じで非常に低いわけですね。陸地堤防よりも低い。そういう状況の中で、大雨が降れば後ろからは水が出て、前からは、満潮ということになれば海の水が迫ってきて、そこに暴風雨でも重なれば高潮が来る、行き場がなくて水浸し、その繰り返しでずっと今日まで災害に苦しんでこられた、こういり地域なのですね。  だから、ここをそういう災害から救うというのはまさに政治の、これはもう最大目的、そういうことだと思うのです。そういう地域だということはよくわかります。私も、これはだれが考えてもその防災ということがまず第一に考えられる、そういうところだな、こう思うわけであります。  ただ、それを防ぐ道というのは、大きく言って一つしかないのですが、いろいろな面でいえば二つある。一つは、海岸堤防を築く。五十キロぐらいになるような、そういうものでありますけれども、海岸堤防を築いてとにかく高潮を防ぐ。ところが、これは高潮は防げても、後ろの水の排水はそれでは解決できないわけですね。したがって、前から来る高潮後ろから来る大雨が降ったときの水を解決するためには、その両方解決ができるやり方、方法、これは干拓で、潮どめ堤防をつくってそこで高潮を防いで、そしてその干拓調整池の中に、山で降った大雨はそこで受け入れる。この二つやり方でなければ解決ができない、そういうことで出てきたのがこの防災干拓である、こういうふうに、これはもうあそこに行けば素直にわかるわけであります。  ただしかし、一般国民皆様方マスコミを通じて聞けば、これは、またその人たち宣伝言い方も、非常にそこのところがうまいものだから、その宣伝に踊らされてというか、これは間違ったかのような印象を与えられて、間違ったかのようなどころか間違った印象に位置づけられてしまっておる、私はこう思うわけであります。  したがいまして、今さら改ざんしたりなんとかはできるわけはないわけですから、もう少し農林省は、ここのところはやはり声高く、毅然と主張を徹底して、しりかりとやってもらいたいと思うのですよ。だから、この点につきまして明確な答弁を求めておきたいと思います。  特に、二十八年度に最初調査費が計上されておるわけでありますが、これは、戦後すぐこの辺の防災問題をどうするかということからいろいろな運動があって、二十八年に最初調査費が計上されたわけですから、この二十八年の調査費の計上のその趣旨、目的、こういったことをしっかりと明らかにしていただいて、その後三回、計画でいうなら何回か変更して今日に及んでいるわけですね。その都度どうであったか、ひとつ明確にしていただきたいと思います。
  10. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 この諌早湾干拓事業目的二つございます。御承知のように、長崎県は非常に平たんな農地が不足しておる、長い間、大規模な平たんな農地をぜひ造成したい、こういう大きな希望があったわけでございまして、この農地造成のための干拓事業と同時に、それによって利益が見込まれる防災対策事業、この二つがこの諌早湾干拓事業目的であるわけでございます。  委員指摘のように、あの地域は海抜ゼロからマイナス一メートルの地域でございまして、雨が降ればその低いところには水がたまる。また、外海との関係で六メートルの干満の差があるわけでございますから、これも全国一の干満の差。こういう外海のことを考えますと、満ち潮になれば海水がこの低いところへ流れ込んでくる。ですから、海水洪水、この両方に悩まされてきた地域にとりましては長い歴史だったと思うわけでございます。  地元からいたしますと、この干潟とともに生活をしてきた長い歴史からすると、干潟に対する愛着、愛情も非常にあるけれども、もうこういう災害をなくするためにこの干拓事業をぜひ進めてもらいたい、これが地元の一致した要望でございまして、そういう地元の御要望に対して、我々といたしましても、この干拓事業は推進していかなければならぬ、もとより環境問題もございますので、その点にも十分配慮しながら推進していかなければならぬというふうに考えております。  二十八年当時の問題につきましては、構造改善局長から御答弁させていただきます。
  11. 松岡利勝

    松岡委員 私がはっきり確認をしたかったのは、私もその二十年当時、三十年当時に現地のこととかその辺の実態は、その場におったわけではありませんから、そういう意味ではわかりませんが、行ってみておのずと推測ができるのは、あそこの地形、事情状況からして、だれしも一番悩んでおったのは、毎年毎年打ち続く水害の若しみ、これから逃れたいというのがまず第一ではなかったか、こういうことなのですよ。そしてそれは、今の知事さんたち地元の市長に聞いても、それが第一眼目だった、そして当時の農業事情というか農地造成ということがあって、あわせて農地もつくる、こうだったのじゃないのですかと私は言っているわけなのです。  そこで、じゃ、何で農業予算でやるのだ、やはり農地造成が一番だったからじゃないかと。私は、一番、二番というのじゃなくて、両方一緒だったと思っているのですよ。そういう意味におきまして、農地を守るから農地防災なので、漁港を守るから漁港防災で、また港湾を守るから港湾防災でして、それ以外は建設省一般防災海岸事業をやっているわけですね。したがって、予算の仕組み上、これは農地を守るということで、農地を守るのが主であれば農地を守る防災予算でやるのだ、そういう意味でこれは成り立っている、こういうことなのです。そういうところを農林省はもう少し明確に、きちんと説明をしてもらいたい、こういう意味で私は言っているのです。  時間がないですから先に進みますが、やはりそういうめり張りのきいた説明というものをもうちょっとしてもらいたいと思うのですね。役所の中の予算折衝みたいな、理屈をどうつけていくかという説明よりも、もう少し世間にわかりやすくそこはきちんとやってもらいたい、こう思って今求めたわけであります。  それで、水門をあけた場合の効果とか問題点というのがいろいろあるのです。  これも、詰めればずっと詰めなければいけない問題はいっぱいありますが、やはり行ってみて思いましたのは、私も役人時代雪国に勤務をいたしておりました。雪国を知らない、雪を知らない人から見ると、雪はきれいで美しくてロマンチックでいいな、こう思うのです。またスキーなど、実際、雪のプラス面で、それがいい面に利用されるということで、スポーツにもなり、そこの人からすればそこが所得の場にもなるということです。しかし一面、雪によって死んだり苦しめられたり、いっぱいあるわけですね。  干潟は全くそうなのですよ。だから、干潟を守れ、干潟を守れと言っている人たちは、この干潟のもう一方の面というのを全く知らない。  例えば、雪かきをする、雪おろしをする、この苦しさ。もしそれをしなかったらどんどん雪が積もってきて、雪国の人まわかると思うのだけれども、積もり過ぎたら屋根が押しつぶされて死んでしまう、こういうことはやはりあるわけです。  干潟に行ってみましたら、あの干潟というのは、満潮のときの打ち寄せる波が運んで持ってきたものを引いていくときに取り残して、その砂がたまって干潟になっている。それが排水門など全部ふさぐわけですから、まさに雪国の雪と一緒なのですよ。雪かき雪おろし、そういう苦労というのを、あそこの人たちは胸までつかってやっておる。そういうことを一つも知らずに、まあ知っていてもそこのところはごまかして、そしてただ、環境だ、ムツゴロウがかわいそうだみたいなことを言って世論の歓心だけを買う、こういうようなこともあるわけでありまして、やはりそういうことも踏まえて、私はこの水門をあける——私も行くまで思っていましたよ。そんなに言うのならちょっとぐらいあけてやったっていいのじゃないかと思っていたけれども、行ってみたらそんな話じゃない。これは大変な距離もあり広さもあるところですから、機械でやったってそんな簡単に水は奥までは届きません。やはり自然の力で、干潮満潮で届かせるしかない。そうなると、これは常時ずっとあけておくしかないわけですね。  そうすると、何のために閉めたか、閉めた目的は全く果たされない、今までどおりの水害の危険に瀕してしまう、こういう状況であります。  そしてまた一方、その狭いところだけに集中して干満が起こるわけですから、物すごい圧力となって、そこが秒速八メーターぐらいの、言ってみれば滝がどうどうと落ちてくるような水の勢いになる。だから、漁場がそれによって荒らされて、漁民も、十二漁協とも全部水門をあけることは反対だ。こういうような実態が、私も行ってみてよくわかりました。  そういうようなことから見まして、この水門をあけた場合の効果問題点というものを、何か知らぬけれども、役所的に説明されるのではなくて、もう少し例示的に、私は効果的にわかりやすく明確に説明をしてもらいたいと思うのです。  私も、多少なりとも教えてもらって、勉強して思ったのですが、オランダあたり干拓でも海水を出し入れする門のあけ方というのはないのですね。あくまでも、たまったものを排水していく、干潮のときに。排水していく一方的な開門というのはあるのですが、世界のどこにも海水を出し入れする水門というのはないのです。ライン川の河口あたりでは、一部はずっとあけて海水を出入りさせていますが、それは二重構造になっていて、内部の方はもう一切締め切ったまま、こういうことなのですね。だから、そういうこともやはりもう少し説明をされた方がいいと思う。  この前テレビに出ましたときに、農林省のお役人は言ってもなかなかテレビに出てきてくれない、こう言っていました。大蔵省でも通産省でも建設省でも、長良川のときでも、どんどん役人が出ていってそういうことはどんどん説明をする。ひとつ大臣農林省役人もこれだけ優秀な役人がいるのですから、そして専門家でぴしっと整理した人たちがいるのですから、これは堂々と出ていって、私はそういう本当理解を得るための対応というものを積極的にやってもらいたいと思います。  だから、水門をあけた場合の効果とか問題点とか、こういうことをまた言っていたら恐らく時間がなくなって、とてもじゃないが次の質問ができませんから、その点について、もし所見があれば、構造改善局長でもいいですから、一言だけ答えていただいて後に進みたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。
  12. 山本徹

    山本(徹)政府委員 水門をあけるということになりますと、先生御指摘のように、調整池マイナス一メートルに維持して、山側から襲ってまいります洪水防止機能というものが果たせなくなりますとともに、有明海は優良な漁場でもございまして、そこの漁場環境に対して著しい悪影響を与え、また水質汚濁等の問題も生じてまいりますので、これは当初の計画どおり、きちんとマイナス一メートルの水位で淡水湖として維持する、このための水門操作をするということは極めて重要であると考えております。  また、私ども、できるだけマスコミには積極的に説明し、この事業理解を得るために一層の努力をしてまいりたいと考えております。
  13. 松岡利勝

    松岡委員 その点はぜひ積極的に、そしてわかりやすく、漫画的に、本当に人の理解を得やすいようにやっていただきたいと思います。  それと、この農地必要性についての問題ですが、盛んに言う人は、むだ金だ、農地が余っているのにもかかわらず国民の税金をむだ遣いしている、こういう、まことに物事をよくわかっていないというか、全く理解していない。食糧事情がどうなのか、これからの農地事情がどうなのか、そういうことも全然一顧だにせず、理解していない人が言っています。しかし、世間的にはそういう言い方というのが非常に、何といいますか、受けやすくて浸透している、こういう点がございます。私はここを言うわけですが、この前も現地に行きまして、十万ヘクタールぐらいの耕作放棄地があるじゃないかとこの委員会でもだれかそんな質問をした人がいましたけれども、この人たちは、私は、全く物事理解していないなと思うのは、農業でも商業でも工業でも、どんな仕事だって事業だって分野だって、これは今までよりもより条件の有利なところ、より利益の上がるところを求めてどんどん進出を繰り返していくわけであります。だから、商店だって、古い昔の商店よりも広げて、そしてまた場所のいいところに行って投資をして、最大利益を求めていく。工業団地だって商業団地だってどんどんそれでやっていくわけですね。  そういう意味で、この人たちは恐らく農業を差別しているのじゃないか。私は、これは徹底してやらなければいけないと思っているのですが、農業だけはいつまでも古臭い条件の悪いところで、おまえたちだけはそこでいいのだ、こういうことをこの人たちは言っているのかな、こう思うのですが、まさに農業差別ではないかと思うのです。  そういう意味では、確かに水田は、米は余っております。だから、その分の言ってみれば減反というものはあります。ありますが、それ以外のもの、生鮮野菜にしましても、また果物にしましても、そしていろいろな農産物、畜産、酪農、そういうものについては、日本は米だけが自給一〇〇%になっておるわけであって、それ以外のものはまことに自給率は低い。そして、そういう農業というものはこれからどんどんまたやっていかなければいけない。  私は中海干拓鳥取側にも行ってまいりましたけれども、それはやはり鳥取県で最先進の農業ですよ。これはもう一番生産性の高い、鳥取県では代表的、模範的、まさに先頭を切る農業である。それは現実にそこの人たち権も聞いてまいりましたし、そういう意味では農地というものは、そういうようなちゃんと本当必要性重要性、そして一方でつぶれていく、そういうもとで、やはり必要なものは確保してつくっていかなければならない、こういうことについて理解が少ないわけでございまして、その辺のことも私は、わかりやすく、そしてまた明快な形で農林省として整理をして、これは説明をしていただきたいと思うのです。  この点について、大臣のお考えをひとつ承っておきたいと思います。
  14. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 委員指摘のことにつきましては、まさしく私どもかねがね申し上げていることでございまして、非常に意を強くして聞かせていただきました。  今後の農政の展開を考えますときに、やはり国民皆様方の御理解、御協力ということが必要でございまして、そういう点でこの問題を一つの契機として、我々としてもさらに食糧需給関係委員も昨年十一月にローマの食料サミットに行かれたわけでございまして、あの大会での結論は、将来の食糧需給の問題を考えた場合に、これからの食糧安全保障について、各国がそれぞれ生産力を維持、強化していくということが結論であったわけでございます。その線に沿って我々としても、米は確かに余り、減反をいたしておりますけれども、他方、その他の食糧につきましては自給率が低いわけでございまして、そういう自給率の向上のために優良な農地を確保していく、これは極めて重要な政策の一つであるというふうに考えておるわけでございます。  お金のむだ遣いという一つ議論もありますけれども、私どもは、視点を変えて考えますと、我々の考え方が国民の皆さんには御理解いただけるもの、そういうふうに確信をいたしております。
  15. 松岡利勝

    松岡委員 今、食料サミットの話を大臣は申されたわけでありますが、昨年の十一月に行きまして、この委員会では藤田スミ先生も御一緒だったわけでありますけれども、当時、私どもも事前に交渉にも行きました。アメリカを初めケァンズ・グループは、WTOをさらにこれを加速させて、そしてこの食料サミットの場で一層の自由化、比較優位の原則、こういうことを主張として盛り込ませようとしたわけですね。私ども、それに対しまして、いやいや、それは逆だ、まさに農業が持っているいろいろな働き、多面的機能、これを重要視し、世界の八億五千万とも九億とも言われる飢餓を救うには、それは食糧生産全体を増大させることが必要なのだ、自由化とか比較優位の原則だけでは達成できないのだ、こういうがっぷり四つに組んだ主張をし合ったわけでありますが、結果として、EUがこちらの主張に賛同して、私どもの方が通って、向こうのことは落ちた、こういうことなのです。  それから見てもわかりますように、世界の食糧事情農業事情考えますとき、それはやはり容易ならざるものがある。そういう中で日本農業農地というものをしっかり守っていくということは必要ですから、ぜひともこのことについての国民理解、これについては、私どもも頑張りたいと思いますが、ひとつ農林省最大の努力をしていただきたいと思います。  最後にもう一点だけ。時間があとちょっとですから一点しか伺うことができませんので、お願いしますが、水産の問題であります。  日韓、日中の政府間交渉が締結の見通しが立たないまま与党合意の期限である七月が目前となっている、そういう状況であります。この間も、北海道初め山陰、九州海域では、依然として韓国、中国漁船の無法操業が野放し状態である、漁具被害、資源枯渇は深刻だ、こう言われております。しかし、漁業者はじっと耐えているというか、それは与党合意があるから一年以内に韓国、中国との間に新漁業協定が締結されるだろう、そう信じて耐え忍んでいるというか、そういう状況になっております。政府はこの信頼を裏切らないためにも早急に二百海里全面適用を実施すべきである。そのためには現行協定の終了通告、それ以外に残された道はないと私は思います。  したがいまして、これは相当の決断を要するわけでありますけれどもへぜひ実行されますように政府として全力で取り組んでいただきたい。この点について大臣の御所見を、御所信をお伺いしたいと思うわけであります。そして、よろしくお願いをしたいということを申し上げて質問を終わりたいと思います。
  16. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 本問題につきましては、これまで委員会でたびたび議論を、また答弁をさせていただきました。七月二十日にいよいよ一年の期限が来るわけでございまして、今、外務省で日中、日韓漁業協定の新しい協定を結ぶために努力をしていただいております。  我々といたしましても懸命に努力をしておりますが、期限が来るということは間違いないわけでございまして、その時点で与党の皆さんと十分に協議をして、この区切りをどう考えていくかということについては今考えておるところでございます。
  17. 松岡利勝

    松岡委員 それでは、漁業者の期待といいますか強い要望にこたえていただきまして、ひとつ最大の取り組みをしていただきますよう心からお願いを申し上げまして、時間でありますので質問を終わります。ありがとうございました。
  18. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、松下忠洋君。
  19. 松下忠洋

    ○松下委員 松下忠洋でございます。農業問題、国有林問題につきまして、二、三お尋ねを申し上げます。  昨夕、政府は、「財政構造改革の推進方策」を取りまとめました。ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策につきましては、対策決定の際の経緯も踏まえて、政治約束をきちんと果たせるようにすべきだと主張し、また行動してまいりました。それが最終報告にどのように反映されているのか。私も読ませてもらいまして、満足はしておりませんけれども、大臣はその内容をどのように評価しておられるのか、お考えを聞かせていただきたいと思います。
  20. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 この内容につきましてはもう既に御承知と思いますけれども、申し上げますと、総事業費は六兆百億、この総事業費は確保できたわけでございます。また、農業農村整備事業を中心といたしまして対策期間を二年間延長する、このことは、私どもといたしましては、厳しい財政事情のもとで総事業費は確保いたしましたけれども、期間の延長ということにつきましては財政上やむを得ないことと考え、農家の皆様方の御理解をいただきたいと思っております。  また、見直しにつきましては、これまで自民党農林部会、与党の皆様方で御議論いただいたところでございますけれども、私どもとしても、地域実態と農家のニーズに合った見直しを進めていくということにつきましては、委員会予算委員会等でその考え方を申し上げておるわけでございまして、そのような方向に沿って進めていきたいというふうに考えております。
  21. 松下忠洋

    ○松下委員 大変厳しい国家の財政状況の中でありますから、汗を絞りながら、知恵を絞りながらの結論であったとは考えておるわけですが、当然、新しい国際環境の変化というものに対する対応を考えなければいけませんし、また国内にあっては、地域の特性をしっかりと活用した農業対策というものもしていかなければいかぬわけでございまして、この「財政構造改革の推進方策」の決定を受けて、当然、ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策の見直しをしなければいけないというふうに考えておるわけでありますし、我々自身も、みずからの手で、中で議論しながら見直しをしていこうというふうに行動もしてまいったわけでございます。  今、六兆百億円は維持しながら期間は二年延長する、そして、この決定によりますと公共・非公共の割合をおおむね五対五とする、こういうふうにここに出ておるわけでございますけれども、こういう決定を受けてどのように内容を見直していこうとしておられるのか、大臣の御所見をお伺いいたします。
  22. 堤英隆

    ○堤政府委員 先生御指摘のように、この財政構造改革会議でまとめられた内容につきましては、見直しについて触れているところがございまして、これまでの実績の検証を踏まえ、新しい国際環境に対応し得る農業経営の確立、地域特性の活用により資するよう見直しを行っていく、こういうことになっております。  私どもとしましても、これまで三年間事業を実施してきたわけでございますが、その間の実績実証というものをこれから十分にしていく必要があるというふうに思っております。  それから、今御指摘のように、自民党その他与党の方におきましても、そういった主体的なこの事業の見直しということが進められているというふうに承知をいたしております。  私どもとしましては、このウルグアイ・ラウンド対策というものが六年間の緊急の新しい措置だということの原点に立ち返りまして、どういった事業内容を進めることが、より効果が上がって農家の皆様に喜ばれ、また地域実態により合った事業になるかという観点から見直しをしていく必要があるというふうに思っております。  そういう意味から申し上げますと、それぞれの地域の生産施設、それから流通、加工施設、こういったことにつきましては、ライスセンターとか、あるいはカントリーエレベーターでありますとか、共同育苗施設でありますとか、そういったものにつきましては地域のニーズも高く、かつ効果が非常に早くあらわれるというよさがございます。そういうよさを生かしまして、どの程度の実需があるのか私どもとしては十分調べていきたい、そういう意味での見直しをまず一点したいというふうに思っております。  それから、もう一つは、これから担い手の育成ということが重要でございますが、そういう方々にこれからも意欲を持ってやっていただくためのいわゆる金融措置というものでどれほどのニーズがあるのかということにつきましても、十分調べていきたいというふうに思っております。  そういうことを踏まえていきますと、ある程度のニーズが積み上げられてくるわけでございますけれども、六兆百億自体を、枠をふやすというわけにはいきませんので、他方で、公共事業につきましては少しウエートがかかり過ぎているのではないかという御批判もございますので、その点についての見直しをしていかなければ仕方がないのじゃないかと思います。  その際も、公共事業自体も、大区画の整理とかいう形で生産性の向上、コストダウンに直接つながる大事な事業でございます。それから、全国各地でかなりの実施地区が行われておりますので、そういうことに対する悪影響がないような形で十分検証もして、全体的な事業の積み上げ、見直し作業を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  23. 松下忠洋

    ○松下委員 事業の見直しというのは、ちょうど中間の折り返し点ですから、これはしっかりとしていかなければいかぬわけでございますが、やはり限られた予算でありますし、限られた時間内でございますので、どうしても事業の重点化というものはきちっとやっていっていただきたいというふうに考えるわけであります。特に、生産性向上のための、担い生育成のための圃場整備事業、これもきちっと重点化していくということが一つだと考えております。  それからもう一つは、土地改良負担金対策、これは、中山間地域について我々も十分見てまいりましたけれども、やはり農家にとってかなりの負担にもなっておりますし、担い手の経営面積の増加の要件を緩和するとか、助成後の利子率を引き下げるとか、そういうことをきちっとやっていかなければいけないかなというふうに考えているわけであります。  それからもう一つは、中山間地域対策でございますけれども、棚田地域等の緊急的な保全整備、それから、耕作放棄地と言われている手のつけられないような田畑のきちっとした管理、そういうものをきちっと地域で生かしていくような地域資源の保全、利活用といったものにしっかりと取り組んでいっていただきたいというふうに思いますし、やはり、この期間中に農村が目に見えてきちっと整備され、そして、美しい環境の中で生産性が向上して地方をつけてきたなということがわかるような、目に見える方策をぜひやっていただきたいと思うわけでございますが、そのためには、やはり予算措置も含めてきちっとした対応をしていかなければならない。  従来補正予算でこの問題に取り組んでまいりましたけれども、そういったことを含めて、目的達成のための予算措置をどのようなふうにこれからやっていこうとしておられるのか、その基本的な考え方を教えていただきたい。
  24. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 見直しの問題につきましては、先ほど官房長から御答弁申し上げました。これは、国会の御審議の中で、ラウンド対策費については今後与党と相談しながら見直しをする、そういうことも決まっておったわけでございまして、以来、私どももその線に沿って作業を進めてきた、こういう経緯がございます。  さらに、今委員指摘のように、見直しについてはめり張りをつけて行う必要がある、負担金対策、融資の問題、中山間地域、棚田の問題、いろいろ具体的に御指摘ございました。私どももそのような観点から十分に見直しをしていかなければならぬと思っております。  それで、公共・非公共の問題がございました。非公共の内容を、これから地域のニーズを積み重ねてまいりまして、その結果どの程度の内容になるか、また、公共事業も、先ほど言われましたように、大区画の圃場整備の必要性もあるわけでございまして、そういう公共事業もこれから進めていかなければなりませんが、全体枠が変わらないわけでございますので、非公共を積み重ねていけば、あるいは、今言われておりますように、公共・非公共の枠が目安として五対五に近い、そういう数字になることもあり得るというふうに考えておるわけでございます。  予算の取り扱いにつきましては、財政構造改革会議におきまして総理から、事業の見直しとあわせて予算編成過程で検討をする、ウルグアイ・ラウンド対策予算についてはそのように検討する、こういう御発言がございました。ウルグアイ・ラウンド対策費については農水予算に支障を来さないように処理をする、こういう政府・与党の合意を踏まえまして、適切な予算措置を講じていく必要がある、私どもはそういうふうに考えております。
  25. 松下忠洋

    ○松下委員 対策の目的が確実に達成できるように、予算措置も含めて的確、適切、そして確実な対応がどうしても必要でこざしますから、大臣におかれましては、さらに予算の年度末に向けてきちっと努力をしていただきたい、我々もまたそれを支えていきたいと考えているところでございます。  次に、いよいよWTO協定三年後の見直し、これが行われるわけでございます。三年前、我々は野党でございましたけれども、今の筆頭理事松岡代議士ともどもジュネーブまで出かけていってサザーランドに会い、日本農業実態をきっちりと説明し討論しながら、米を含む農業の問題はこのWTOから外してグリーンラウンドをつくってやるべきだ、一般の通商品目とは違う何千年にもわたる農業の伝統、アジアのモンスーン地帯における稲作文化というものがあるわけですから、そこを踏まえた議論をしてまいったわけでございますけれども、残念ながら一括協定の中に取り込まれてしまって、現在に至っているわけでございます。  この三年後に向けて農林水産省は既に準備をしていると思いますけれども、どのようなふうに基本的な方向を考え、この状況に臨もうとしておられるのか、そこのところをお聞かせいただきたいというふうに思います。
  26. 熊澤英昭

    ○熊澤政府委員 お答え申し上げます。  次期のWTOの協定交渉に臨む考え方ということでございますけれども、私どもこれまでも、国内はもとより、国際的な場におきまして、先生が今御指摘になりましたような食糧の安全保障あるいは食糧の安定供給に果たす農業の役割、さらには国土の保全、環境の保全等農業が果たしております多面的な役割につきまして積極的に主張してまいったところでございます。特に、昨年に行われました世界食料サミットにおきましては、大臣出席をいたしまして、こうした主張を積極的に展開してまいったところでございます。今後とも、国内、国際的な場を問わず、そうした主張に理解が得られるように努めてまいりたいと思います。  二〇〇〇年に行われますWTOの次期農業交渉におきましては、このような我が国の主張を踏まえまして、さらに農業の現状を踏まえ交渉に臨んでまいるという考え方でございます。
  27. 松下忠洋

    ○松下委員 昨年の十一月のローマにおける食料サミット、これには、大臣に合わせまして、私も、自由民主党の農林部会の一員として、部会長を筆頭とする何人かのメンバーで参加して、大臣の御発言の内容もよく承知しておりますし、我々も日本の立場をきちっと主張してきたわけでございます。時間も迫ってきておりますから、もう早速プロジェクトチームをつくって、しっかりとした基本方針のもとに対応していくように準備をしていきたい、我々も協力していきますから、ぜひ頑張っていただきたいと思うわけでございます。  それからもう一つ、新農業基本法、この取りまとめの基本方針についてお伺いしたい、そのように考えております。  新農業基本法という名前が適切なのかどうか、名前も含めて、将来の食糧の問題、農業、農村のあり方、それをいかに活性化していくかということですから、食料・農業・農村活性化法案といったような名前でぜひ取り組んでいただきたいわけでございますけれども、これに環境も入れてやっていただきたいというふうに考えるわけであります。  今の農業基本法は昭和三十六年にできました。その一年前の昭和三十五年と最近の、これは平成七年の数字でございますけれども、いろいろな農業関係の指標がございます。二、三挙げながら、どんなに農業を取り巻く環境が変わったかということを十分認識した上で取り組んでいくことがどうしても必要だと考えております。  昭和三十五年の国内総生産は、名目で十六兆七千億でございます。それが平成七年には四百七十八兆六千億、五百兆に達する状況こなってきております。うち農業は、昭和三十五年が一兆五千億、これが平成七年には七兆六千億になっております。昭和三十五年は国内総生産に占める農業のシェアは九%、それが平成七年には一・六%というふうになってきております。この間、産業構造の変化や国際化、自由化といった大きな波、そして例外なき関税化といったことによるミニマムアクセスの米の輸入といった大きな変化があったわけでございます。  農業就業人口も昭和三十五年には一千百九十六万人でございました。それが平成七年には三百二十八万人になっておりますし、農業人口の総就業人口に占める割合は、昭和三十五年は二六・八%、平成七年では五・一%というふうになってきているわけでございまして、大きな変化でございます。何よりも心配なのは新規学卒就農者、これが昭和三十五年には七万九千百人でございました。七万九千百人。それが平成七年には二千人でございます。農家戸数も六百六万戸から三百四十四万戸に変わってきておりますし、専業農家のシェアは、昭和三十五年が三四・三%ですから約二百万戸だったわけですけれども、平成七年には五十万戸にまで落ちてきている、こういう大きな大きな変化があるわけでございます。  農業予算も千三百十九億円から三兆五千四百億円にまで多くなってまいりましたけれども、こういう激変の中で、これだけの厳しい環境の中で、少ない人間で農業を維持し食糧を供給しているという極めて重大な、そしてまた非常に緊張した状況の中で食糧の生産に携わっているということが言えるわけであります。決して農業の地位が下がったわけではなくて、ますますその必要性が高まり、土地の保全と農業食糧自給率を高めていくという努力をしっかりとしていかなければいかぬだろう、こういうことがこの数字から読み取れると思っているわけであります。  そういう中で、新農業基本法、食料・農業・農村・環境活性化法案といったものにどのようなふうに取り組んでいこうとしておられるのか。土地の有効利用も含めて、そしてまた水の保全も含めて、大臣のお考えをぜひお聞かせいただきたい。
  28. 堤英隆

    ○堤政府委員 基本法の問題につきましては、今先生御指摘のように、昭和三十六年の制定以来三十六年間経過しているわけでございますが、その間の社会経済情勢の変化、これは今先生が数多くの指標を用いて言われたわけでございますが、そのとおりだと思います。  そういった大きな変化にどういうふうに農政として対応していくかということが一つと、それからもう一点は、これも先生御指摘のように、二十一世紀を間もなく迎えるわけでございますが、そういう新しい二十一世紀の中で農林水産業はどうあるべきか、あるいは国民皆様方農業や農村に対する期待というものがどういうふうに変わっていくのか、そういうことを踏まえた対応をしなければいけないというふうに思っています。  そういうふうに考えますと、やはり今御指摘のように、食糧というものが中長期的にも非常に厳しい需給状況にあることが見込まれるということが一つと、それから環境問題、土地問題、それから国土利用の中における農村の位置づけという御指摘もございましたけれども、そういったものを農政の中にきちんと位置づけた枠組みをつくり直す必要があるのではないかというふうに私どもも認識をいたしております。  したがいまして、そういった事情の変化とそれから二十一世紀に向けましての国民の皆様の農業、農村に対する期待、こういうものをどういうふうに受けとめていくかということで、四月から食料・農業・農村基本問題調査会ということで発足をいたしているわけでございます。さまざまな御意見をいただきながら早急に結論を得ていきたいというふうに思っています。内容的に見ましても、タイミング的に見ましてもいつまでもゆっくりという議論ではございませんので、ことしの十二月末には第一次答申といいますか、そういった考え方をいただき、遅とも来年の夏ごろ、一年後でございますけれども、このころには最終的な答申をいただきまして、新農業基本法、先生は今活性化法案というふうにおっしゃいましたけれども、そういった新しい法案、それから全体的な農政の見直しをいたしますので、もろもろの制度、予算等の改革、そういったものをそろえまして国会で御審議いただけるよう最大限の努力をしていきたいというふうに考えております。
  29. 松下忠洋

    ○松下委員 気合いを入れて取り組んでいただきたい。我々もまた全面的に協力して、知恵を出して頑張っていくというふうにしたいと考えております。  もう一つ、国有林野事業についてお尋ねをいたします。  財政構造改革方策にも書いてございますけれども、我々が考え、我々が行動し、我々が主張してきた内容とかなり違う形で書かれていると私は認識しております。  森林の公益的機能を発揮させるのだということに転換していこうと自由民主党は決めましたし、そしてまた、国が一元的に所有管理をして、そこで基本構想を決めた形で森林の維持管理をしていくということも我々は主張してまいりました。そのもとで、事業は思い切って民営化するし、組織も思い切って合理化し、削減していくべきだということも申し上げてまいりました。独立採算制を廃止していかなければ、今のような状況では、木を切ってその木材生産の上がりで森林を経営するということには根本的にもう無理があるということで、一般会計による財政措置ということも主張してまいりましたし、三兆五千億に達する累積赤字もこれはきちっと国が責任を持って処理していくのだということを主張してまいりました。  我が自由民主党の改革本部がつくった、党から出ていった案にもこのとおりにぴしっと書いてありましたし、与党三党の合意内容もこれと全く同じものが出て、そして財政構造改革会議に諮られたわけでございますが、その内容が我々が議論してきたものとは相当違う形で、後退したと考えても仕方がない形で書かれているということについて、我々は大きな不満があります。  政権与党のまとめたものがなぜこうして変わってくるのか、この後ろでだれが何をしているのかということに我々は大きな憤りを持つわけでございますけれども、この国有林野事業をどのようなふうに農林水産業全体の中で位置づけ、日本の国土利用の中でどのようなふうに国有林を位置づけ、林野行政を位置づけて進めていこうとしておられるのか、大臣にお尋ねいたします。
  30. 高橋勲

    ○高橋政府委員 国有林は、脊梁山脈を中心にしまして我が国の森林面積の三割、国土面積の二割を占めておりまして、国土の保全、水資源涵養あるいは木材の生産、さまざまな機能を発揮しておるわけでございます。  御指摘のように、現在国有林の財政が累積債務三・五兆円というふうなことで大変厳しいわけでありますが、この厳しい状況を打開するために、現在、林政審議会の論議、検討をお願いしているわけでありますけれども、今回出されました「財政構造改革の推進方策」あるいは行政改革の動き等も十分に考えながら、適切に対処していきたいと思っております。  基本的には、国有林が森林全体の最奥部に位置しておりまして、これを、県をまたがったりあるいは流域をまたがったりというふうなことで存在しているわけでありますので、国が一元的に保有、管理するということが基本ではないかというふうに思っておりますが、そのような考え方のもとに今後適切に対処する考えでございます。
  31. 松下忠洋

    ○松下委員 国有林は大変厳しい状況の中に置かれていることはみんなが知っているわけでございます。しかし、また一方では、森林の持っている本当に大切な意味環境やあるいは水資源の涵養といった面で大きな役割を果たしておりますから、自信を持って大臣林野庁長官もこれからも頑張っていただきたいというふうに思いますし、我々もまたそれを全面的に支援してまいります。  最後の質問でございますけれども、麦について御質問をいたします。  麦に関する米価審議会が間もなく開催をされます。今年度の麦価、どう対応していくのか、そして将来にわたる農作物としての麦の位置づけをどう考えているのか、その長期見通しも含めて簡単に御所見をお聞かせいただきたい。
  32. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 お答え申し上げます。  麦は、今先生御指摘のとおり、我が国の基幹的な食糧でございます。米と並んで、大体米の消費量の半分ぐらいでございますが、今後、国内産におきましても自給率を一四、五%に上げていこう、こういうことで取り組んでいるわけであります。  そこで、本年産の麦価でございますが、きょう生産費が公表されました。その生産費によりますと、十アール当たりマイナス一・一、六十キログラム当たりマイナス一・七%ということであります。ただ、この八年産の一年だけの生産費をとって計算をするわけでございませんで、三年間の生産費をとって計算をするわけであります。  今計算に入ったわけでございますが、一つは、労働費を中心とした生産性の向上が顕著でございます。これが下げ要因としてきくと思います。また一方では、四月から消費税が三%から五%にアップしました。これを適切に反映させる、これは上げ要因であります。もう一つの上げ要因は、平年収量の変動をどう見るかということでございまして、平準化収量にこれがきいてくるということで、これが上げ要因であります。いずれにしましても、食糧法の六十六条の規定に基づきまして適正に価格を決定いたしたい、こう思っております。  一方、生産者団体は、十年産に向けて、良質麦の生産ということにつきまして、これまでと異なる取り組みをするということで実需者の支援を求めております。これにつきましては、私どもも、方向として、これからの麦作の振興ということで大変重要な取り組みではないかということで、この取りまとめをきちんとしてもらい、麦作の今後、将来に向かって生産者団体、実需者団体が一緒になって取り組む一つのあかしにしてまいりたい、こういうことでこれから作業をしてまいりたいというふうに考えております。
  33. 松下忠洋

    ○松下委員 生産者、実需者を十分に配慮いただくようにお願いして、質問を終わります。ありがとうございました。
  34. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、佐々木洋平君。
  35. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 新進党の佐々木洋平です。御質問申し上げます。  九六年度の農業白書が先般発表されました。それによりますと、六〇年代以降の食糧農業、農村の変貌ぶりが総まとめになっております。特に、食糧自給率が急激な低下、あるいはまた農地の大幅減少、担い手不足など、深刻化しております。まさに我が国農業の悩める姿を明示したと言っても過言ではないと思います。  しかし、所見の中で政策が見当たらない、現状分析だけで、今抱える課題、米の自由化の問題あるいはまた地方自治体から不満が出ておる生産調整の問題、補助金などばらまき農政と言われるような農業予算のあり方等については、どうも課題から目をそらしているような感がいたします。二十一世紀に向けた健全な農業のあり方、方向について見えてこないというのが私の考えでございます。  また、この白書の内容ですけれども、文章表現等については、やはりいかにも役人が書いた、余りにも専門用語が多過ぎるという感じがいたします。やはりもっと外部のあるいは農政審議会等のメンバー等が一緒に入って、そういう中で制作されるべきものだと思いますし、もっと国民理解を得られるような政策展望を示すべきと思いますが、大臣の白書に対する評価をまずお伺いしたいと思います。
  36. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 今回の白書につきましては、食糧消費の多様化と食糧自給率の問題、また世界食料サミットなどの世界の食糧需給につきまして重点的に分析をいたしております。  先ほど委員が御指摘ございました点でございますけれども、今回の農業白書も従来の農業白書も同じでございますけれども、農業白書は、農業基本法によりまして政府は毎年国会への報告が義務づけられておるわけでございまして、その内容につきましては、農業の動向、農業について講じた施策、また農業について講じようとする施策、この三部作になっておるわけでございまして、今回の白書も今後講じようとする施策の内容について明示をさせていただいた、このように認識をいたしております。  また、この農業白書の記述についてもっとわかりやすく、こういう御指摘がございました。その点については、私どもも極力わかりやすい農業白書の内容にするように努力をさせていただいておるわけで、今後も十分に配慮をしてまいりたいと思っております。また、消費者、生産者、学識経験者の皆さん、各界の委員の御意見、農政審議会におきましてこれらの皆さんの御意見を十分にお聞きした上で農業白書に反映をしておるわけでございまして、今後とも、そういう点につきましては十分に力を入れて、わかりやすい、また皆さんの意見が白書に入るように努力をしていきたいと考えております。
  37. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 国民に広く読んでいただきたいという大臣記者会見を拝見いたしました。確かに、消費者に対する工夫、あるいはまたコラムを新設したり、いろいろなことの努力の部分は見えます。  そこで、この農業白書という名前、ネーミングでいいのかどうか、この辺も、私もちょっと考えるわけですけれども、何か国民に受け入れられやすいような、食糧とかかわるような、食糧白書とでもいいますか、その辺も考えたらどうかなというふうに、これは要望でございます。  次に、食糧自給率についてお伺いをしたいと思います。  カロリーベースで、六五年度が七三%であった。九五年度では四二%。この三十年間で三一%も低下したわけです。穀物自給率に至っては、六一年度七六%、このときは大体世界の中で中間ぐらいであったと思います。それが九二年になりますと二九%と、世界の中で百十一位という数値が出ておりまして、四七%も減少したということでございます。ちなみに、ドイツは一一二%、イギリスが一二〇%という数値が出ております。  実は、イギリスのサッチャー元首相は、首相に就任いたしまして、穀物自給率を見て、当時七〇%台だと思いますが、びっくりしまして、各閣僚を呼びまして、すぐ檄を飛ばしたという有名な話がございます。それで今一〇〇%以上の自給率になった。確かに大変な財政負担も伴ったと思います。景気が低迷したことも事実でございますが、今イギリス経済がこのように発展しているというのは、やはり農業の政策がきちっと成功したことが評価をされているわけでございます。  そこで大臣、あなたは大臣になられて、この自給率を見てどういうふうに感じたのか、そしてまた、どのようにこれから進めようとしているのか。まずその辺、所感をお伺いしたいと思います。
  38. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 食糧自給率の問題は、今委員が御指摘のように昭和三十五年度で七九%、カロリーベースでございますけれども、これが平成七年度四二%、先進国の中では今、最低の数字でございます。  この自給率が低下しているということは、今後の食糧安全保障という問題を考えたときに非常に大きな問題をはらんでおるわけでございます。  現在、五百万ヘクタールの農地面積でございまして、この三十年ぐらいの間に農地面積が約二〇%、六百万ヘクタールから減少しているということ、これも食糧自給率の低下との関係があるように思っておりますし、また海外で千二百万ヘクタールの農地に今我が国は依存をしておるというようなこともあり、こういう現状がこれからも継続していけるかどうかということも考えますと、この問題も非常に考えていかなければならぬ問題でございます。  世界食料サミットのローマ会議でも私は申し上げたわけでございますが、主な食糧は国内で自給する、それから備蓄と輸入を適切に組み合わせをして、我が国の食糧安全保障考えていく、こういうふうに申し上げたわけでございます。  今後の私どもの考え方としては、この自給率の低下に歯どめをかける、これが何よりも基本的な戦略、目標でございまして、先ほど申し上げましたように、可能な限り国内で農業の維持拡大を図っていく、こういうことが大切であろうというふうに思っております。  そのためには、具体的に、まず他産業並みの労働時間と所得を実現していく。生涯所得は二億から二億五千万、それから労働時間は千八百時間から二千時間。こういう他産業並みの労働時間と所得を実現できる経営体を育成していく、この点がまず大事であると考えておりますし、それを実現するために生産基盤の整備を重点的に行っていく、また加速していくというような問題、さらに、生産、流通、加工につきまして、いろいろな施設を整備することによって生産性の向上ということにも資するようにしてまいりたいと考えておるわけでございまして、必要な施策を展開することによって自給率を上げていきたい、かように考えておるわけでございます。
  39. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 今、大臣から自給率についてるる説明がありました。確かに、食生活の変化というものが米の消費の減退につながっている、そしてまた畜産物のウエートが高まって飼料穀物も輸入がふえたということだろうと思いますが、今お話がございましたとおり、農地が五百万ヘクタール。三十五年で百万ヘクタールも減少した。これは東北地方の農地と大体同じくらいの面積になるわけですが、これは大変なことでございます。  今お話がございましたとおり、千七百万ヘクタールが必要だという中で五百万ヘクタールですから、外国に差し引き千二百万ヘクタールの農地を依存しているという計算になるわけでございます。まさに輸入依存の食糧政策と言わざるを得ないわけでございます。  ただ、白書でも、「完全自給は非現実的」と指摘をしているわけでございます。二十一世紀はやはり世界的な食糧不足が予想されるわけですが、食糧の海外依存度が高まれば高まるほど、輸出国に不作あるいはまた戦争など不測の事態が起きたとき、輸入がストップしたときの対応、これは非常に大事だろうと私は思っております。今必要なことは、輸入が途絶えたときの危機管理政策といいますか、それが必要だろうと私は思っております。  そこで、もし輸入が停止した場合に国民にどれだけの食糧が供給できるのか。そのためには、今ある農地の中でどういう改革が必要なのか、生産者数はどうなのか、生産技術はどうなのか、こういうところまで踏み込んで検討すべきものだと思いますが、大臣、この辺はどうでしょうか。
  40. 堤英隆

    ○堤政府委員 御指摘のように、食糧国民生活の最も基礎的な物資でございますので、いかなる事態があってもこれを安定的に供給していくということが国の責務だというふうに思っております。  ただ、現状の日本の豊かな食生活を前提にすれば、これをすべて国内で供給するということはまさに困難でございまして、そういう意味では、国内の供給ということを基本にしながら、備蓄それから輸入ということを適切に組み合わせた対応をしていかなければならない。そういう意味では外交的な努力ということも基本的に重要だという認識をいたしております。  他方で、今御指摘のように、不測の事態ということは想定されるわけでございまして、そういう意味で、これをどういうふうにしていくかということは非常に重要だと私どもも認識をしておるわけでございます。  ただ、これは一朝一夕にできるわけではございませんで、やはり生産の手段としての農地を常日ごろから確保し、これをきちんと整備しておくというハード面での事業。それからもう一点はソフト面というふうになるわけでございますが、立派な農地がありましても、そこで耕作する農家の方々がいなければいけないわけでございますので、そういった担い手の方々を育成、確保していくという意味での不断の政策努力。それから、そういう方々がやはり高い技術を持っていただくことが重要でございますので、そういう意味での農業技術の開発普及、こういったことを基本に据えながら不断の努力をしていくということが、いわゆる不測の事態にも対応することになるというふうに考えております。  かつて農林水産省におきまして、平成七年でございましたか、海外からの供給が途絶えるといった場合に、国内でどの程度の農地面積をベースにしてどういった形の食生活であれば国民の最小限度のカロリーにたえられるかという試算をしたこともあるわけでございます。その際におきましても、四百八十万ヘクタールということの農地をベースとして、今の食生活とはかなり違いますけれども、お米や芋類ということにつきまして、かなり数十年前の状態に戻るというようなことを前提に置けば、二千カロリーといった摂取ベースでの食糧供給は何とか賄えるという試算もしたことがあるわけでございます。  こういった試算等を通じまして、食糧というものが途絶えた場合にやはり国民生活に大変大きな影響を与えるわけでございますので、そういった不測の事態ということにつきましても、国民の御関心、コンセンサスをできるだけ得たい。そういう意味で、今進めております食料・農業・農村基本問題調査会におきましても、そういったものも視野に置いて検討を進めさせていただきたいというふうに考えております。
  41. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 ありがとうございます。  次に、農業保護論についてちょっとお伺いしておきます。  どうも日本農業は欧米に比べて過保護ではないかという指摘が、経済界あるいは評論家がよく意見を申し上げるわけでございますけれども、このうち資料によりますと、日本国民一人当たりの農業予算というのは二万四千円、アメリカ、EUは二万三千円から二万四千円、フランスがちょっと高いわけですけれども三万三千円。ほぼ予算は欧米並みだというふうに言えると思います。  ただ、農家二月当たりの農業予算を見ますと、日本は八十三万円、アメリカが三百一万円、フランスが二百三十八万円、イギリスが二百四十万円。約三分の一あるいは四分の一という割合でございまして、この数字を見ても日本農業は過保護でないというふりこ思いますが、この辺について大臣からお伺いします。
  42. 堤英隆

    ○堤政府委員 先生が今御指摘の点は、私どもの認識と共通いたしております。国民一人当たりの農業予算の負担なり、それから農家一戸当たりの農業予算額ということに加えまして、よく農業は過保護だという御指摘もあるわけでございますが、こういった形でそれぞれを分析をしていきますと、必ずしもそうではないのじゃないかというふうに私どもも理解をいたしております。  どちらかというと、農業予算が即、何といいますか、農家の方々に与えられている補助金だというふうな理解があるわけでございますが、決してそうではなくて、やはり、世界の食糧事情が非常に厳しい中で、国民の皆様に安定的に食糧を供給する、そういうことのための基盤整備なり担い生育成のためのいろいろな予算だ、そういうことにつきましての御理解もさらに今後得るべく努力をしたいというふうに考えております。
  43. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 そこで、この農業予算の中で、価格あるいは所得支持率というのが、日本の場合は九・五%、アメリカが一六・九%、フランスが五六 〇%、イギリスが六八・三%。欧米に比べて農家に対する直接補償率というものが非常に低いわけでございます。そういうことで、農家も余り行政から恩恵を受けているという感じを持っていない面があるのじゃないかなと私は思います。  そこで、これから農産物の自由化という中で、それに対抗するため、生産コストを下げるということも当然でございますけれども、ある程度、私は限界があるというふうにも思います。特に、白書でもこの内外価格差の一番の要因というのは、エネルギー価格が違う、それから農地価格、為替レートだということを強調しているわけでございまして、私は、これからの農政というものは、これはWTOの関係もありますけれども、国民理解を得て、やはり価格あるいはまた所得支持政策の方に変えていく、シフトしていく必要があるのではないかと思いますが、これは大臣からちょっと聞きたいと思うのです。
  44. 堤英隆

    ○堤政府委員 農政を展開します上でさまざまな対策はあるわけでございますが、大きく分けますれば、今御指摘のように、生産対策、それから構造対策、それから価格、所得対策というふうに大きく分けられると思います。  諸外国は、今先生がまさにおっしゃったとおりでございまして、基本的に価格あるいは所得政策のウエートが非常に高いというふうに私どもも認識をいたしております。  このよって来るべきところは何であるかというふうに考えますと、私は二つあると思っております。  一つは、まず欧米の場合は、御存じのように、アメリカであれば日本の大体百三十倍ぐらいの経営規模を既に持っている、それから、ヨーロッパにおきましても三十倍から、イギリスあたりだと六十倍か七十倍という、そういう非常に大きな経営規模ということで、ある意味では、構造改革的な視点、構造政策的な視点が大体完了しているということではないかと思います。したがいまして、そういう中で、価格、所得政策のウエートがどうしても高くなってくる。  日本の場合は、まだ一ヘクタール程度の規模でございますので、先ほどから先生御指摘のように、国内である程度自給もしていくということになりますと、やはり国民の皆さんの納得を得る形でのコストでなければ、なかなか国民の皆様も大変だと思います。そういう意味で、できるだけ経営規模の拡大を図ったり、コストダウンを図っていくということがやはり重要でございますので、そういう意味で、日本の場合は、土地改良的な事業も含めまして構造政策的な事業がやはりウエートとして高くなっている、逆に、価格、所得政策的な政策のウエートがやや低い、こういうことであろうと思います。  それからもう一点は、欧米の場合は、やはり天水利用の畑地利用ということが基本であろうと思います。したがいまして、農地に投資をするということが余り必要ないわけでございますが、日本の場合は、御案内のように、田んぼでございますので、これはやはり水を引いてこなければ田んぼとしての機能を果たさないということで、遠くからやはり水を引いてくる、かんがい排水等をしていかなければならない、水田自体も区画整理等をしていかなければならない。そういった面での天水利用である畑とそれからかんがい用水等を基本に必要とする田ということの違いもありまして、どうしても構造的な、あるいは土地改良的な事業というものが不可欠だということの中であらわれていると思います。  ただ、御指摘のように、これから先のことを考えました場合に、価格政策がどうあるべきか、その中で農家の所得をどう図っていくかということは極めて重要だというふうに思っておりまして、これも、恐縮でございますけれども、今検討を進めております基本法農政の中で、今申し上げましたようなことも念頭に置きながら、価格対策、所得対策がどうあるべきかということを十分検討してまいりたいというふうに思っております。
  45. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 次に、生産調整についてお伺いいたします。  米の需給均衡を図るために、生産調整、これは絶対必要と新食糧法では位置づけておるわけでございます。この新食糧法の中での生産調整は生産者、地域の自主性というものを基本にしておるわけでございますが、しかしながら、従来のようなペナルティーはなくなったものの、生産者サイドから言わせれば、やはりまだ強制的な感じは残っているだろうと私は思います。  確かに、市場原理が導入された今、価格の安定を図るためには、どうしても生産調整というのは必要悪であろうというふうに思っております。しかし、この生産調整、減反をいつまでやるのか。あるいはそれが農業者、農家の生産意欲といいますか、向上心を私は減退させるというふうに思います。  ここで、生産調整について基本的な考え方をひとつお示しをいただきたいと思います。
  46. 高木賢

    高木(賢)政府委員 米につきましては、御案内のように、約三割に及ぶ需給ギャップがございます。したがいまして、先生御指摘のように、生産調整は、需給、価格の安定を図る上で避けて通れないものであろうというふうに考えております。このような需給調整は、やり方の問題はともかくといたしまして、避けて通れないということでございまして、もう二十五年来やっているわけでございますが、必要な調整は、生産調整を基本としてやっていかなければならないというふうに私どもは考えているわけでございます。  その中でできるだけ、ただ単純なる生産調整ということではなくて、その地域地域で適切なる作物に転作をしていく、それが定着をしていくということを基本に進めているわけでございまして、現実にも生産調整の約七割は転作という形で行われておりまして、それぞれの地域地域で望ましい産地形成が進んでいるというふうに考えております。今後ともこの方向で進めてまいりたいと考えております。
  47. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 稲については、研究機関の努力によりまして品種改良が行われて、全国各地で生産が行われるようになったわけでございます。しかしながら、同一県内において適地適作ということがあるわけですが、全国に目を転じた場合にも、やはり適地適作というものがあろうかと思います。  そこで、地域間調整といいますか、市町村間の調整あるいはまた都道府県間の調整があると思います。市町村間の調整については各自治体がそれなりに、市町村と連携をとりながら取り組んでおるわけですけれども、都道府県間の調整というのは現状どうなっているか、お伺いしたいと思います。
  48. 高木賢

    高木(賢)政府委員 平成八年度の地域間調整の実績は二千ヘクタールということでございます。
  49. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 その話を聞いているんじゃないのですが、わかりました。  余り都道府県間の調整というのはやられていないというふうに認識せざるを得ないと思いますが、いずれ生産調整——米の主産県に対する配慮というものは当然なされておることも承知をしておりますが、適地適作という視点に立てば、都道府県間の調整を推進するということも必要であろうというふうに私は思っております。それによって自給率の向上に、国民の強い要望があるわけでございますから、ひとつ都道府県間の調整を行って、自給率の低い作目に転換をしていくということも非常に大事なものだろうと思っております。  そして、小麦とか大豆、非常に今自給率が低いわけでございますので、仮にそれに転作した場合には、もちろん収量も低いし価格も差があるわけでございますから、当然のことながら、所得に対して補償するということも必要になってくると思いますが、現行の助成制度の活用によってそういう助成ができるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  50. 高木賢

    高木(賢)政府委員 現行の県間調整につきましては、所要の助成措置を団体を通じて出しております。
  51. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  52. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、菅原喜重郎君。
  53. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 国有林の財務状況について御質問いたします。  今、国有林の財務状況はまさに危機的な状況にあります。国有林は国民共通の貴重な財産であり、この問題は、国有林だけではなく国全体の問題と考えるべきであると思っております。  先般公表された林業白書においては、「このまま現行改善計画に基づく経営改善努力を尽くしたとしても、目標である平成十二年度までの経常事業部門の財政の健全化等の完了が危惧される状況となっており、国民の期待にこたえて、将来にわたって国有林野事業の使命を果たしていくことが困難となるおそれがある。」とされており、事実上の破綻を宣言しています。  国有林は、営林署の統廃合やピーク時に九万人いた人員を六分の一の一万五千人にまで減らすなど、血のにじむような自主的改善努力を行ってきたにもかかわらず、抜本的に改革しなければならないほど危機的な状況になったことについて、まず初めに、現在の経営状況をどのように認識しているのか。  あわせて、このように危機的な状況になった原因として、木材価格の低迷等いろいろな要因があることは承知しておりますが、何といっても、債務の増大とそれに伴う利子の負担の増大が大きいと考えます。累積債務の処理のため、国民理解を得ながら一般会計の負担を求めることが必要と考えておりますが、累積債務についてこれまでどのような対策を講じてきたのか。  この二点をまずお伺いいたします。
  54. 高橋勲

    ○高橋政府委員 国有林は、国土の二割を占めまして、木材生産のほかに国土保全や水資源の涵養、自然環境保全等の公益的な機能の発揮と農山村地域振興に重要な役割を果たしております。  この国有林野事業でございますが、組織機構の簡素化、合理化、要員規模の縮減等徹底した自主的な改善努力を行うとともに、一般会計からの繰り入れなど所要の財政措置を講じてまいりまして、経営改善の推進を図ってまいりましたが、木材価格の低迷とか伐採量の減少というふうなことで、累積債務が三兆五千億円に達するような状況になっております。  この債務の丸めに、対策といたしまして、平成三年七月に策定しました国有林野事業の改善に関する計画に即しまして、林野、土地売り払い収入それから一般会計からの繰り入れというふうなことでその処理に努めてまいったところでありますが、土地需要の減退とか地価の下落というふうなことで林野、土地売り払いの収入が伸び悩んでおります。平成三年に一〇〇でありましたのが平成八年には六一というふうなことで、自己収入の方はなかなか収入が伸び悩んでいるという状況でございます。  お尋ねの、一般会計からの繰り入れ等でございますが、従来から、退職手当それから借りかえに係る借入金の利子とか償還金について一般会計の繰り入れを行ってまいったわけでありますが、平成八年度におきましては、その繰り入れの対象を拡充いたしまして、新たに造林借入金の利子に対する繰り入れに対しての助成、それから借りかえ借入金の利子に対する繰り入れの拡充ということを図っております。それから、平成九年度予算におきましては、退職手当借入金の償還金に対する繰り入れの拡充を図ってまいってきております。  これまでの状況を申し上げますと、平成三年度に債務対策費として一般会計から繰り入れられた総額は百億円でございましたが、平成九年度の予算では、三百五億円の一般会計からの繰り入れというふうなことで予算を計上しております。  それから、平成九年度の予算につきましては、当面の利子負担の軽減を図るために新規の借入金について、金利の支払いを当初数年間繰り延べするというふうな新しい借り入れ方式の導入も図っている之ころでございます。
  55. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今お聞きのように、自主的な努力を行い、一般会計からも繰り入れをされてきたわけですが、一向に累積債務は減らず、増大の一途をたどっております。これには財投の問題にも原因があると想います。財投改革を進めないと、この問題の本当解決はないのではないかと私は思っております。国有林の債務の中こま八%以上の高金利のものもあります。毎年、利子、償還金と合わせて三千億円を払っており、自己収入を上回っているわけでございます。これは、極めて再建の難しいことを物語っております。  昨年、利子負担の軽減を図るため、債務の一部を繰り上げ償還し、現行の財投金利で借りかえを要求したが認められなかったと聞いておりますが、引き続き債務の繰り上げ償還を要求すべきではないかと私は思っておりますが、この件についてお伺いいたします。
  56. 高橋勲

    ○高橋政府委員 昨年、平成九年度の予算要求の段階で繰り上げ償還の要求をいたしましたが、金利の低下を理由とする繰り上げ償還あるいは低利借りかえ、これは、借り手が負担の軽減を受けるかわりに資金運用部にそのコストを転嫁するものであり政府全体としてのコストが軽くなるものではないということなど、制度的にもいろいろ難しい問題がありまして実現を見なかったわけでございますが、現在、林政審議会における論議を踏まえまして、この債務処理も含めまして、政府一体となった抜本的な対策を検討、策定しておるところでございます。この案をつくり上げることによりまして、全力を挙げて国有林野事業の経営の健全化に取り組んでいきたいと思っております。
  57. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、大臣にお伺いします。  国有林は水資源の涵養や国土保全等の機能を持っており、本来的にはある程度の税金投入は仕方がない性格を持っているものであると思っております。また、このような公益的機能の発揮に対する国民の要請も高まっていることから、国有林の今後の森林整備はこのような要請にこたえたものとしていく必要もあると考えます。さらには、国有林は、何よりも次世代に緑を引き継いでいく責務を有していると考えます。  このような考え方から、抜本的改善策の検討に当たっては、単に累積債務の処理にとらわれるのではなく、国民の期待にこたえた森林整備を行っていくという観点から、一般会計からの支援を大幅に拡充するなどの思い切った改革が必要であると考えておりますが、この点に関してどうお考えですか。
  58. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 国有林の問題につきましては、農水省が抱えております幾つかの重要課題の一つであると私ども認識をいたしております。  問題は、いろいろ御議論がございましたが、累積債務の約三兆三千億円、この問題をいかに解決していくかということであると思います。財投の問題も絡みまして、平均金利が今五・四%ぐらいでござしますから、御指摘のように約三千億程度の金利の利払いがあるわけでございまして、そういう状況からすれば雪だるまにこの累積債務が膨れ上がっていく、こういうことになっておるわけでございまして、この累積債務の解決というものは、まずこの国有林野の問題を考える場合に一番のポイントだと思います。  先ほど委員が御指摘のように、この国有林野の持つ役割、特に公益的な役割、国土保全であるとか水資源の涵養であるとか、こういう役割は現在見直されつつございますし、また非常に大事な問題でございまして、この国有林野のこれからの維持管理ということを考えますときに、これはもうどうしても独立採算制では対応できない、こういうこともまさしくそのとおりだと思っております。そういう点で、御指摘のように一般会計の支援を大幅に拡充するということについては、私どもも同じような考え方でおります。  いずれにいたしましても、御承知のように今林政審で御審議中でございまして、六月にはこの中間答申が出るわけでございますので、行革プログラムに沿いまして、この林政審の中間答申も十分に頭の中へ入れまして、抜本的な改革に向かってぜひ頑張っていきたい、そういうふうに考えております。
  59. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、大蔵省質問いたします。  行政改革プログラムでは、国有林野事業の厳しい財務状況にかんがみ、林政審議会の検討を踏まえ、平成九年中に組織機構の簡素化、合理化、要員規模の計画的な縮減等、さらに徹底した経営の改善合理化を含む国有林野事業の経営の健全化のための抜本的改善策を関係省庁の密接な連携のもとに検討、策定の上、所要の法律案を平成十年の通常国会に提出するとともに、財政面での所要の措置を講ずることとするとうたつております。  大蔵省も御承知のように、国有林野事業の財務状況はサラ金地獄そっくりで、債務残高も平成二年末には二兆二千五百十一億円であったのが平成八年末では三兆五千二百二十八億円と増大し、利子、償還金も同年二千三百七億円であったのが同八年末には三千六億円と試算されております。  このような状況では、やはり財政面での所要の措置を講ずるということは、私は当を得ているものだと思っております。しかし、今大臣の方からも答弁されましたように、債務の繰り上げ償還、借りかえ、これは財投資金の償還計画マイナスの結果を生じ、結果的には政府全体としての負担が軽減しないということで、これは一応認められていないようでございます。  しかし、今この森林の持っている公益的な機能を試算すると、大体三十年ぐらいで三十九兆二千億円という評価額が出ております。これには水資源涵養関係の評価額あるいは土砂流出防止、土砂崩壊防止、保健休養さらに酸素供給、大気浄化、野生鳥獣の保護等、これらの機能総評価額が平成三年度価額で三十九兆二千億円と試算されているわけでございます。  さらに、今手元にありますが、岩手県で試算しました、間伐の手入れをした森林としない森林との評価額がどのようになっているかといいますと、四十五年生の杉の場合、間伐した地域は、直径二十七センチとなり、一ヘクタール当たり千本で、四百九万二千円。一度も間伐していない地域は、直径十八センチと細く、一ヘクタール当たり二千百本で五十五万六千円にとどまる、こういう調査結果が出ております。  ちなみに、現在、国有林の持っております人工林二百三十一万ヘクタール、天然林は四百六十万ヘクタールからありますが、この中で今手入れを必要としている百万ヘクタールに対しまして、一町歩、今申し上げました四百九万二千円を掛けていきますと、大体四十五年生の立木調査額では四兆九百二十億円にも上るわけでございます。これを、今林野庁が財政が厳しいとして手入れを行いませんと五千五百六十億円にしかならないわけでございます。  ですから、今この借りかえを認めて、いわゆるその分の利子の財投資金の方のマイナス分は、将来これはどうしてもどちらも国家が負担をしないといけない問題でありますが、こちらの方に今回じ金額を、いわゆる五・四%と言いましたが、二%を借りかえで下げましても六百億円からの金が浮くわけでございまして、こういうお金を投入しますと、これは国有林野だけで四兆円にもなります。  しかし、今民間と国有林と合わせて一千万ヘクタールありますが、そのりち七百二十万ヘクタールは民間林でございまして、この民間林で手入れを必要としているところも四百万ヘクタールあるわけでございます。  ですから、先ほど農林大臣が、国家の方では全体として負担が全然軽減しないと言っておりますが、一方に対応するとこういう利益が生まれる。私の試算でも、大体一年間一ヘクタール四、五万はこの木は成長しているはずでございますから、そうなりますと、大体国有林だけでも一年に一千億以上の成長率があるはずだと思っております、これは最低に見積もりまして。口径木になっていきますと、大径木ですね、これになっていきますと値段は二倍にも三倍にもはね上がりますから、手入れさえよくいけば、私は、国有林の年間の成長量、資産蓄積量というのはもう二千億円になっていくんじゃないかと思っています。  こういう状態でございますので、やはりこの際、大蔵省としても、財投資金の償還計画マイナスが出たとしても、どっちみち国家が最後は負担しなければならぬわけですから、今回はぜひこの国有林野の財務関係の方を助けるための借りかえを認めるべきじゃないか、これが私の主張であり、大蔵省への質問でございますが、大蔵省はどう考えておりますか。
  60. 楠壽晴

    ○楠説明員 財政投融資の繰り上げ償還、低利借りかえについての御質問でございますけれども、資金運用部は、先生御存じのとおり、郵便貯金、年金等から預かりました資金を原資として、国有林野事業、そのほか公団、事業団等に融資をする、そういう仕組みになっております。  それで、資金運用部は国有林事業等に対しまして長期、固定金利の資金を融通しておりますけれども、低金利時に貸し付けました債権につきまして、その後市場金利が上昇いたしました場合に、貸付先であります国有林野事業、また公団、事業団などに、既往の低利の貸付金につきまして繰り上げ償還や金利引き上げを求めることはございません。したがいまして、逆に、高金利時に貸し付けました債権につきまして、その後市場金利が低下したからといいまして、繰り上げ償還や借りかえによる金利引き下げに応ずることとなりますと、市場金利の変動の影響の不利な面だけを片面的に資金運用部が受けることになってしまいます。  先ほど御説明いたしましたように、郵便貯金であるとか年金のようなへ国の制度、信用に基づきまして国民から集められました公的資金をそのような一方的な不利益を受けるリスクにさらすことは適切でないというふうに考えておるところでございます。
  61. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 いや、財投資金は、結局国家が認定して融資しているんですから、マイナス面が出ても、結果的には国家がそれを負担していかなければならぬ、このように私は思っているんですよ。  ですから、資金運用部が国民の金だ何だかんだ言いましても、片っ方は決まった比率ですから、もしマイナスになった場合は損失になりますが、今国有林を助けますと、この森林というのはもう三十五年、いわゆる七齢級にもなって、間伐しないともう窒息状態になるんです、密植状態ですから。四十五年になりますとほとんど、先ほど言いましたように、もう活性を失った、盆栽化した、そしていろいろな森林機能も果たし得なくなる、いわゆる森林が死に体になっていくわけですから。こういう今危機にあるわけです。もう山が泣いているんですよ。そうでしたら、資金運用部の方がマイナスになるのどうのこうのじゃなく、こちらの方を助けますといわゆる山も生きるわけですから、ぜひその点を配慮していただかないと、お役人がこう、う一方的な計画を立てたから、その計画がそごを来すのではいかぬなどというようなことを主張してはだめだと思うので、もしよかったら大蔵大臣を呼んででもこのことを質問したいと思いますが、ひとつ部内で検討していただきたい、こう思います。  それでは次の質問に移ります。  もう時間もなくなってきましたが、実は過般、私は、高知県の四万十川の源流地点あたりまで視察に行ってまいりました。植林はよく行われているのですが、しかし、どこも間伐は全く不十分であります。  我が国の林業は、木材の低迷、経営コストの上昇などによって厳しい状況にあると言えますが、山を守るためには間伐は絶対に必要であり、水源涵養などの公益的機能を発揮させるためにも不可欠であります。同時に、東津野村で、大きい杉の輪切りの、昔この地方に生えていたという杉の大木の見本を見せられました。二百二十年と中心の方に書かれております。さらにそこから十年ぐらいあるのかなと思って見たのですが。かつてああいう山にもそういう大径木が生えていたわけです。ですから、今のようなこりいう不十分な森林整備で果たしてああいう木をこれから日本の国に存続させていく、そういう成長を楽しめるような森林が守れるのかどうかということに大変な不安を感じてきているわけでございます。  この点に関して、これは私の持論でございますが、今、山に入りますと、まさにそういう山の、森林のうめき声が聞こえるような、あの窒息状態の森林、密植林に対しての手当てをどうか緊急に行ってもらいたい、こういう観点から御質問を申し上げるわけでございますが、このことに対しての御所見を伺いたいと思います。
  62. 高橋勲

    ○高橋政府委員 私どもも、人工林の中で間伐が絶対に必要な施業だということはよく認識しておるわけでありますが、現在の木材価格等の要因によりまして、なかなか十分にそれが行われていない。全体的に見ますと、必要な間伐実施面積に対しまして実行割合が約半分というふうな状況でございまして、確かに、先生御指摘のような形で、人工林を今ここで手入れすれば本当にいい山になるのにというような思いをするところも多いわけでございます。  私どもも、ぜひこの間伐を推進したい、こう考えておりまして、公共事業の森林整備事業で林道をつけたり間伐も実行できるようにしたわけでありますけれども、平成八年度からは、補助対象齢級を六齢級から七齢級に引き上げる、あるいは、都道府県とか市町村というふうな公的主体が森林所有者との分収林契約に基づいて行う森林の整備、間伐につきまして、その助成の拡充を行ったり、平成九年度につきましては、このまま放置したら本当に間伐が手おくれになって、公益的な機能も果たせなくなるというふうな森林につきまして、緊急に間伐を実施する機能保全緊急間伐実施事業というふうなことも計画しているわけでございます。  今後とも、間伐の重要性にかんがみまして、これらの施策を総合的に展開して、間伐の推進に努めていきたいと思っております。
  63. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 以上をもって質問を終わります。  ありがとうございました。
  64. 石橋大吉

    石橋委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  65. 石橋大吉

    石橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。城島正光君。
  66. 城島正光

    ○城島委員 新進党の城島でございます。  私の方からは、きょうは、最近いろいろな委員会で話題といってはあれですけれども、論議をされております遺伝子組み換え食品を中心としたバイオテクノロジーの問題について、少し別な観点から質疑をさせていただきたいというふうに思います。  最近、この問題、特に遺伝子組み換えの食品について、あるいは食品添加物について、特に安全あるいは表示の問題がいろいろな委員会でテーマとなっております。当然、安全面というのは、食品でありますから最重要課題である、あるいはもちろん最も大事なテーマであるというふうには認識をしておりますが、一方、我が国の農業畜産業も含めてでありますけれども、農業の現状あるいは食糧自給の問題、さらには農業の後継者の問題といったこともトータルで含めていいますと、こうした遺伝子組み換えを初めとしたと言ったらいいと思いますけれども、バイオテクノロジーにおけるまさしく生産性の向上あるいは新しい農業の技術的な展開ということは、どうしても必須だろうというふうに私は認識をしているところであります。  そういった観点から、まず積極的にそういう展開を進めるべきだという観点にのっとっていいますと、幾つか課題があるというふうに私は思っております。  まず、そういう面において、現在、我が国におけるバイオテクノロジーの研究開発がどういう状況にあるのかをお尋ねをしたいというふうに思います。     〔委員長退席、小平委員長代理着席〕
  67. 三輪睿太郎

    ○三輪政府委員 バイオテクノロジー研究の現状についての御質問でございますが、農林水産業関係のバイオテクノロジーは、作物生産、畜産、水産、そして食品加工、大きく分けてこの四つの分野で行われております。  作物生産の分野では、作物の品種改良あるいは優良な種苗の増殖、そのための成長点培養あるいは細胞培養、こういった技術が既に実用化の段階に達しております。また、遺伝子組み換え作物の研究開発も進められておりまして、稲、トマト等の一般圃場での栽培が実施されております。さらに、稲を中心とした作物の遺伝子機能を解明するゲノムの研究、これも実施されているところでございます。  畜産分野では、牛の受精卵移植技術の実用化が進んでおります。さらに、動物のゲノムの研究も実施されております。  水産の分野では、養殖魚介類におきます商品価値の高いすべて雌の魚をつくるような技術あるいは体が大きくなるような魚の生産、こういった技術が実用化段階に移行しておりまして、組み換え体の研究開発も着手されております。  最後に、食品産業分野におきましては、細胞融合によって開発されました冷凍耐性のパン酵母、あるいはバイオリアクターを利用したオリゴ糖の生産、こういった技術が軌道に乗っております。  今後実用化が見込まれるものの例といたしましては、遺伝子の組み換えによりまして日もち性を改良した野菜とか花の生産、あるいは牛の肉質を早期に遺伝子で判断するような技術、さらには、バイオセンサーによる食品の鮮度、熟度といったものの判定技術等がございます。
  68. 城島正光

    ○城島委員 かなり広範囲に研究開発が進んでいるというふうにとらえていいかと思いますが、最初申し上げたように、特にその中で、いろいろな面で消費者の皆さんも含めて関心を持っております遺伝子の組み換えについてなのですけれども、この組み換え技術の特色というのでしょうか、あるいはその現状についてまずお尋ねをしたいと思います。
  69. 三輪睿太郎

    ○三輪政府委員 遺伝子組み換え技術の特色について、従来の交配育種との比較において御説明申し上げたいと思います。  従来、品種改良等に使われております交配育種ですと、利用できる遺伝資源が交配可能な同じ種類の作物あるいは極めて近縁な作物に限定されます。これに比べまして遺伝子の組み換えは、人為的にDNAを操作して導入をしますので、遺伝子の供給先を、同じ植物あるいは近縁の植物だけでなくて、微生物あるいはほかの生物種まで拡大して求めることができるということがございます。そのため、これまでの育種技術では作出が困難であったような新しい形質を持った作物の開発が可能になるというような期待がございます。  また、従来の品種改良ですと、目的とする形質以外のやや不必要なものも一緒に入ってしまう、そういったようなことがございますが、遺伝子組み換えを使えば、目的とする遺伝子だけを導入することができるために、例えば味等の品質を変えずに耐病性、そういったものだけを強化する品種の育成、そういったことが可能になります。
  70. 城島正光

    ○城島委員 そういう中で、いわゆるこの技術レベルは、世界的な、国際的なレベルで見て、現状の研究開発レベルというのはどういうふうに我が国の場合とらえたらいいのか、お尋ねしたいと思います。
  71. 三輪睿太郎

    ○三輪政府委員 バイオテクノロジーの中で、例えば先ほどお話をしました酵母を利用した食品の開発とか、あるいは細胞を操作した品種の育成、あるいは稲の遺伝子の解明といったような基礎研究、そういった面では、我が国が欧米諸国と肩を並べる、あるいはややリードする水準にございます。  しかしながら、先生御指摘の遺伝子組み換えにつきましては、国際的に大変激しい技術の競争が行われておりますが、遺伝子を細胞に導入するような技術、あるいは遺伝子の機能を調節するような技術、そういったものにつきましては、欧米諸国に比べて開発がおくれているというような現状でございます。この結果、例えばアメリカでは、遺伝子組み換えによって既に、日もちをよくしたトマト、あるいは特定の除草剤の影響を受けない大豆、そういったものが市場に出ているわけでございますが、我が国の試験研究機関や民間企業においては、こういった実用的な組み換え作物の開発は立ちおくれているというのが現状でございます。
  72. 城島正光

    ○城島委員 特にアメリカを例に挙げられたのですけれども、どうなのでしょうか、食糧の将来的な見通し等からいくと、例えば、隣の中国あたりというのは、僕なんかが見ているとかなり二十一世紀の食糧問題というのは大きな問題ではないかというふうに思うのですが、そういったところにおけるこの開発状況というか、それはどんな感じなのでしょうか。
  73. 三輪睿太郎

    ○三輪政府委員 中国については、国際会合等におきます研究者の発表、そういったものによりますと、今おっしゃった農業生産の視点から、綿とかたばこ、そういったものについて遺伝子組み換え体の試験栽培が行われているというような模様でございますが、研究の到達レベルとか、あるいは実用化がどこまで進んでいるかということに関しては、残念ながら詳細な情報はございません。今後とも、いろいろなチャネルを通じまして情報の収集に努めてまいりたいと思います。
  74. 城島正光

    ○城島委員 もう一つ。そうしますと、この技術というのは、いわゆるほかのものと同じように先端技術になるわけなので、特許の問題があると思うのです。先ほど、特にこの遺伝子組み換えの分野においては、ちょっと欧米、特にアメリカに現状はおくれているというようなことでありましたけれども、現状における特許というのはどんな感じになっているのでしょうか。
  75. 三輪睿太郎

    ○三輪政府委員 御指摘のように、遺伝子組み換えの遺伝子の導入技術とか、そういった基本的な特許は欧米諸国に押さえられておりまして、その面でいろいろ我が国の産業化について難しい面があることは事実でございます。その点に関しまして、ライセンスバーターといいますか、こちらで持っている特許を交換するというような形で技術開発が進められるというふうに思っております。現在、遺伝子そのものの特許あるいは独自の導入技術の開発、そういったものを推進する中で、我が国独自の特許の拡大、それに努めているところでございます。
  76. 城島正光

    ○城島委員 結局、クロスライセンスというか、そういう感じでやっていくということなんでしょうか。そのためにも、特にアメリカの場合は、民間の企業におけるその研究開発というのは相当進んでいるというのに比べると、どうも日本の場合は、いろいろな背景があると思いますけれども、民間企業における開発というのは、アメリカ、欧米に比べて相対的に少ないのではないかというふうに思います。特許の問題等からすると、やはり国公立の研究機関が相当、ある面で言うと戦略的に技術開発をしていくということが、国益からいってもこの問題については必要なことではないかなというふうに思っているのですが、そうしたことも含めて、今後のこの分野における研究開発の方向性あたりについてまずお尋ねしたいと思います。
  77. 三輪睿太郎

    ○三輪政府委員 先生の冒頭のお話にございましたように、二十一世紀半ばに顕在化がほぼ確実と見られております地球規模での食糧問題あるいは環境問題の解決、こういったものを考えますと、従来の技術では解決できないというものが多うございまして、その意味で、遺伝子組み換え技術には大変高い期待が寄せられていると認識しております。  このため、光合成の能力を高めることによる生産性の飛躍的な向上とか、あるいは砂漠等の不良環境下でも食糧生産が確保できるような技術、こういったことを目指しまして、遺伝子組み換え等の研究開発を進めているところでございます。  また、これも先生のお話にございましたように、国全体として、民間も含めて技術の推進を図るため、産官学の密接な連携に努める中、画期的な組み換え農作物の開発に直結するような我が国独自の遺伝子導入技術の開発、あるいは組み換え農作物の開発の基盤となるゲノム解析の研究の推進、あるいは稲等のアジア全体の基幹作物におきます組み換え体の開発、こういった分野につきまして、農林水産業、食品産業の振興の視点だけでなく、世界の食糧環境問題も念頭に置いた有用な作物開発に全力を傾注してまいりたいと思っております。
  78. 城島正光

    ○城島委員 そういう国全体の問題ということと同時に、もう一つはやはり、特に農業あたりをベースとすると、地域の農産物、地域農業、あるいは畜産もそうですけれども、それとの密着性を図ったような技術開発、別にこれはもちろん遺伝子組み換えだけではありませんけれども、先端技術を使った地域農業振興といったようなことも非常に大事じゃないかというふうに思うのです。そういう点ではいかがでしょうか。
  79. 三輪睿太郎

    ○三輪政府委員 おっしゃるとおりでございまして、地域の特色ある農業生産というものを考えたときに、いろいろ従来の技術だけではできないことがございます。例えば、一つ例を申し上げますと、山菜といったようなものが大変消費者に歓迎されまして、うまくつくって流通させれば地域農業に役立つわけでございますが、山菜自体は本来栽培植物でございませんので、増殖とかそういったものが、あるいは増収が大変難しい面がございます。そういった場合に、例えば細胞培養によりまして山菜を増殖する、そういったような技術を工夫しまして地域振興の材料にするといったような研究が各地で行われております。
  80. 城島正光

    ○城島委員 そういう点も含めて、今後、中山間地の農業振興も含めてなんですけれども、ぜひ積極的な展開をお願いしたいなというふうに思っております。  それから、最初申し上げたように、実は、特にこの遺伝子組み換えの場合、最近の一つの大きな課題というのが、安全性ということについての消費者の皆さんの疑念というのでしょうか、あるいは不安感というのでしょうか、そういうものがあるわけであります。  これは厚生省にお尋ねしたいと思うのですが、食品という観点で見たときに、この遺伝子組み換え食品プラス食品添加物というものについての安全性の評価というものに対する国の対応、現状をまずお尋ねしたいというふうに思います。
  81. 黒川達夫

    ○黒川説明員 お答え申し上げます。  遺伝子組み換え食品の安全性の評価については、科学的な見地から経済協力開発機構、OECDでございます、そこや世界保健機関、WHOなどにおいてその評価の考え方が取りまとめられておるところでございます。我が国におきましても、それを踏まえ、食品衛生調査会で専門的に御審議いただき、安全性評価指針を作成したところでございます。  この安全性評価指針は、最新の科学的な知見に基づくものでございますことから、この指針に沿って評価が行われた遺伝子組み換え食品については、既存の食品と同程度の安全性が確保されると考えております。  遺伝子組み換え食品は、この評価指針に基づきまして、提出された資料に基づいて、食品衛生調査会で指針への適合性の確認を行っているところでございます。  この食品衛生調査会における審議では、専門家意見をお聞きしながら、不足している資料等を要求し、科学的見地から個別品種ごとに指針への適合性を確認しておるところでございます。
  82. 城島正光

    ○城島委員 やはり概念として、特にこの遺伝子組み換えというのは、いわゆる概念なのですけれども、一般の消費者が受け取るものというのは、何となく、非常に先端技術ということを含めて、そのこと自身での不安感というのが、これはあるのですね。ですから、今までの安全性に対する対応以上に、消費者からすると非常に慎重な対応を強く求めるというような感じがしております。  私自身は、私の体験といりか、約十年ぐらいこうした食品及び食品添加物なんかの安全性の試験研究をやってきた立場からすると、この消費者の皆さんの不安感というのも一方でよくわかるのですね。一方では、この問題についての本質的な問題の一つは、サイエンティフィックな問題をきちんとお互い共通の土俵に立って論議をしていくというような場がどうしても必要だろう。ただし、今までの流れでいうと、何となく消費者の立場から見ると、特に企業のこういう安全性等をやる研究機関に対する信頼性というのでしょうか、あるいは国のそういうものも含めてでありますが、安全性というものに対する研究機関というか、研究システムというか、そういうものがブラックボックスになっているというイメージが非常に強い。現実的にはいろいろなデータがオープンになっていても、そういうシステムを含めて、もう少しブラックボックスを外して一般的にオープンになっていく、その中できちんとした論議ができるというようなことを求めていかないと、なかなかこの問題についてはお互いの論議というのはすれ違いに終わるのではないかという感じを持っていますが、その点いかがでしょうか。      〔小平委員長代理退席、委員長着席〕
  83. 黒川達夫

    ○黒川説明員 お答え申し上げます。  審議いたします資料は、基本的に公開されておりますものを用いることにしております。  それから、先ほど申し上げましたが、食品衛生調査会における審議では、専門家意見を十分お聞きしながら、不足していると思われる資料につきましてはその都度要求いたしまして、科学的な見地から個別の品目、品種ごとに指針への適合性を確認している、こういう対応をとっているところでございます。
  84. 城島正光

    ○城島委員 厚生省という国の立場からすると、ある面で、極めて十分な対応をしているというような御答弁だと思うのですけれども、今申し上げたように、全体的に、今までの流れの中では、消費者サイドから見たこういった安全性に対してというのは、何となくいろいろなものをブラックボックスの中に置いているのじゃないかというような、そういうイメージが非常に強いという流れからすると、この問題について情報をオープンにしながら、共通の土俵の中で論議できる、そういう場面をかなり積極的につくっていく必要があるのじゃないかというふうに思っております。  これは、もちろん厚生省だけじゃなくて、現実的に消費者から出ているのは表示の問題ですから、それは農水省の管轄になるかと思いますが、少なくとも食品の安全性評価ということについては、ぜひそういう消費者の意向も踏まえながら、さらに慎重な、あるいは場合によってはできるだけ情報をオープンにした中での対応ということが、重要な先端技術でありますから、開発にとってもこの件がネックにならないようなそういう配慮をぜひしていただきたいというふうに思うのです。もしコメントがあれば、その点についていただきたいのです。
  85. 黒川達夫

    ○黒川説明員 お答え申し上げます。  遺伝子組み換え食品の安全性評価、この安全性評価指針への適合確認を中心に申し上げますけれども、公開につきましては、バイオテクノロジー特別部会、これは食品衛生調査会の中の一つの分科会のようなものに当たるものでございますけれども、そこで審議を行いました後、一カ月程度、企業から提出されました申請資料などを一般に公開いたしまして、その間に消費者団体などから意見が提出された場合には、その意見も含めて食品衛生調査会常任委員会で御審議をしていただいているところでございます。加えまして、一般消費者への普及啓発などにつきましても力を入れてまいりたいと考えております。
  86. 城島正光

    ○城島委員 ぜひ対応をよろしくお願いしたいと思います。  それで、最後でありますが、その安全性の延長線上にある、これまた一貫して各委員会で論議になっておりますが、組み換え食品の表示の問題があるわけであります。これも、私は率直に、これまでの論議を聞いておりまして、やはり今の安全性の問題と同じような課題があるな。やはりもう少し研究部門、特に安全性部門、それに対応している部門とそれを利用する消費者の皆さんとができるだけ同じ土俵で論議が可能になるようなことをこの問題においてもしていく必要があるというふうに思っております。  今回、農水省において組み換え食品の表示についての懇談会が発足したということでありますが、この表示についての農水省の対応についてお尋ねをしたいというふうに思います。
  87. 本田浩次

    ○本田政府委員 ただいま厚生省から答弁がありましたように、昨年、厚生省によりまして遺伝子組み換え食品の安全性確認が行われ、遺伝子組み換え食品の市場流通が現実のものとなったわけでございます。先生御指摘のとおり、消費者の皆様方、まさに最先端技術でもございますので、大変その不安感もあります。したがいまして、消費者の皆様方から、遺伝子組み換え食品についての表示を求める声が大変強まったということでございます。  一方、遺伝子組み換え食品農産物につきましては、従来の農産物と実質的に同じものであります場合には、区別が困難でございます。したがいまして、表示を行うためには生産から流通の各段階において区分する必要があるということ、それからさらに、加工食品におきましては、すべての原材料につきましてもとの農産物の素性にまでさかのぼることは極めて困難なことなどから、表示に関しては多くの問題が想定されるところでございます。  このため、私ども農林水産省におきまして、御指摘のとおり、遺伝子組み換え食品の流通実態を踏まえた表示のあり方を検討するために、食品表示問題懇談会を開催することにしたところでございます。第一回の懇談会につきましては先月の三十日に開催したところでございまして、今後一、二カ月に一回程度の頻度で開催します。遺伝子組み換え食品の表示のあり方について、広く有識者、関係者からヒアリングを行うことを考えているところでございます。  さらにその後、消費者の要望でございますとか、生産、流通の実態、FAO・WHO合同の食品規格委員会、いわゆるコーデックス委員会でございますけれども、コーデックス委員会の食品表示部会の検討状況、さらに諸外国の取り組み事例なども踏まえながら議論を進めていただきまして、一定の議論の集約が可能な段階で取りまとめを行っていただくことにしているところでございます。
  88. 城島正光

    ○城島委員 そうしますと、一定の結論ということですが、スケジュール的には、大体のめどとしては、期間としてまどれぐらいを想定されているのでしょうか。
  89. 本田浩次

    ○本田政府委員 期間でございますけれども、懇談会でどのような意見が出され、またどのような意見集約ができるか、なかなか事前には想定しがたい状況でございます。検討結果の取りまとめの時期につきましてあらかじめ予定をしているわけではございませんけれども、私どもとしてはできるだけ早期に、年度内にでも結論を得ていきたいというふうに考えているところでございます。
  90. 城島正光

    ○城島委員 わかりました。懇談会の委員のメンバーを見ても、私からの要請と同じように、かなり幅広く消費者の皆さんや、あるいは各界のそれぞれの立場の人が入っていらっしゃるようなので、そういう点ではメンバー構成はいいかなというふうに思います。  当然その中で、今申し上げたように、ある面ではサイエンティフィックな問題をきちんと踏まえた上で、消費者の皆さんの要望に、意味ある情報としてはどういうことが提供できるのかということを論議していただければありがたいなというふうに思います。ぜひそういう点でも、情報提供ということま非常こ大事でありますが、同時にそれが本当意味で消費者の皆さんにとってプラスになる、意味のある情報かどうか、あるいはそれが提供できるのかどうかということを、基本的に十分な論議の中で懇談会としても方向性を出していただきたいものだなというふうにお願いをしたいと思います。  最初申し上げましたけれども、この表示問題を含め、安全性という課題はこの問題については常にあるわけでありますが、先端技術である遺伝子組み換えも含めて、基本的にはバイオテクノロジーの問題というのは、我が国の農業あるいは食糧問題、そして僕は、もう一つはやはり後継者の育成といった観点からも、トータルの国益、それを国益と考えれば、国益からいっても極めて重要な技術であろうというふうに思いますので、先ほど申し上げたような地域農業振興もあわせて、国全体の国益も含めてでありますが、戦略的な技術開発を強く要請をしていきたいというふうに思います。  以上で終わらせていただきます。
  91. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、木村太郎君。
  92. 木村太郎

    木村(太)委員 木村太郎です。  まず、大臣には、先月リンゴに関して私たちの申し入れに対応してくださったことを改めて感謝を申し上げたいと思います。私のうちも農家でありまして、大臣初め農水省の皆さんにも一層の御努力を期待しながら、三十分の時間でありますけれども質問させていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。  まず第一に、そのリンゴについてお伺いしたいと思います。  今私述べましたけれども、先月私たちが申し入れをさせていただいた後に、オーストラリア本土のメルボルンの植物園で火傷病が発見されました。オーストラリアでは火傷病はこれまで未発生ということでありましたけれども、五月二日に開催されました我が国へ輸入解禁を求めているタスマニア産リンゴについての公聴会は、コドリンガの防除技術のみに限定したものでありました。オーストラリアにおける火傷病発生が事実とすれば、リンゴの主要産地、生産農家等に大きな不安を与えることになると思います。私の地元青森県でも、既にその不安を持っております。  そこで、この火傷病発見に伴い、我が国から既にオーストラリア政府に対して、全州においての調査の実施を要請し、植物防疫官を派遣したというふうにも聞いておりますので、まず、きょう現在の状況というものをお知らせいただきたいと思います。
  93. 高木賢

    高木(賢)政府委員 火傷病の件につきましてお答えを申し上げます。  御指摘のように、火傷病は、リンゴやナシなどの果樹類に感染いたしまして、甚大な被害を与える病害であります。したがって、我が国におきましては、植物防疫法に基づきまして、その発生国からの寄主植物の輸入を禁止しております。豪州にはこれまで火傷病が発生したという記録がございませんでしたので、火傷病の寄主植物であるサンザシ、ナナカマドなどの輸入を認めてきておりました。  ところが今御指摘のように、五月十五日、メルボルンの植物園でコトネアスターという観葉植物のうちの二本に火傷病が発生しているということが確認されたという情報が、豪州側から提供をされたわけであります。  このために、我が国としては、まず緊急の措置として、豪州政府に対しまして、火傷病の寄主植物の輸出の自粛、それからもう一つは、タスマニア島を含む全土での火傷病発生調査の実施というものを要請をいたしました。そして、我が国の専門家も派遣をいたしまして、豪州側の火傷病の検出・診断方法、周辺の寄主植物の調査、それから豪州側の調査の実施体制、こういうものが適切であるかどうかということの確認をするために行ったわけでございます。先般帰国をいたしまして、専門家の報告では、豪州側の対応は適切なものと認められるということでございました。  火傷病の発生が確認されて既に半月たっておりますが、今までの調査では、メルボルンの植物園以外におきましての火傷病は発生が確認されておらないという状況でございます。
  94. 木村太郎

    木村(太)委員 その要請に対しての答えが随時いわゆる生産者サイドに伝わるように、御報告をお願いしておきたいと思います。  オーストラリアでは火傷病ま未発生ということだったのが今回発見されたわけですので、私は、我が国への病害虫の侵入阻止、あるいはまた国民の健康保持という観点からも、オーストラリアのみならず、またリンゴのみならず、現行の植物防疫法で規定されております地域、植物、対象有害動植物等についていま一度再点検して、そしてより徹底した植物検疫体制の確立を図るべきだと考えますが、いかがでしょうか。
  95. 高木賢

    高木(賢)政府委員 我が国におきまして未発生で世界的に見て重要な病害虫の分布なり、その対象植物を常にチェックをするということは極めて重要であるということは、当然のことであろうと思います。  そこで、重要な病害虫が発生したときには、その発生を通報するということが国際植物防疫条約で規定されております。この規定によりまして、各国が協力をいたしまして、常に最新の病害虫の分布地域把握する、こういうことで情報収集に努めているわけでございます。オーストラリア側から今回、火傷病が発生したということが我が国に通報されたわけですけれども、これも国際的な条約の枠組みによる協力の結果というふうに考えております。  また、ちょうど法律改正がありまして、ことしの四月から改正植物防疫法が施行になりました。この機会に、私ども植物防疫機関といたしましては、我が国に未発生の重要病害虫につきまして、改めて世界における分布状況とかその病害虫の寄主植物の範囲につきまして、最新情報によるチェックを行ったところでございます。  今後とも、その重要性は非常に高いわけでございますので、各国と協力して、常時最新の情報を収集するということで病害虫の侵入防止に万全を期していきたい、このように考えております。
  96. 木村太郎

    木村(太)委員 重要視ということでありますので、その答弁を聞いていま一度オーストラリアの方に視点を変えたいと思います。  だとすれば、やはり今回のこのオーストラリアでの火傷病の発生、ないものがあったわけですので、これは本土のメルボルンというところでの発見でありましたけれども、いわゆるタスマニア産の輸入解禁を求めてきているこの動きを、いま一度凍結すべきではないか。すべてがはっきりするまではオーストラリアサイドからの要求に応じないで、我が国としての対応を定める必要がある、凍結すべきだという考え方を私は持っているのですが、そのことを、いま一度確認させてください。
  97. 高木賢

    高木(賢)政府委員 先まど御質問の中で先生御指摘になりましたが、五月二日に行われました公聴会は、コドリンガの検疫措置についてのものでございます。その時点では、当然のことですが、火傷病の発生がないという前提で進められたものでございます。したがいまして、今回豪州本土に火傷病の発生が見られたということでありますけれども、タスマニアに火傷病が発生していない、この確認がまず必要だと思います。それからもう一つ、タスマニアヘの火傷病の侵入防止策が講じられるということがなければ、輸入解禁を進めるというわけにはいかないと考えておりまして、この旨は既に豪州側に通知をいたしております。  今後の対応でございますが、まさにタスマニア州における火傷病の発生の調査の結果並びに侵入防止策の実施状況、これらを考慮して考えてまいりたいと思っております。
  98. 木村太郎

    木村(太)委員 私は、でもちょっと納得できません。我が国としては全州に対しての調査というものも要請しているわけですので、やはりオーストラリア全土、全州においての確認をした上でタスマニア産がどうあるべきかということを我が国として判断すべきだ、私まそのことを強く要望したいと思います。その辺、もしお答えがいま一度あれば。
  99. 高木賢

    高木(賢)政府委員 タスマニアは本土から離れておりますし、タスマニア自体について、火傷病が発生しているかどうか、それから侵入防止策が講じられているかどうかということがやはりポイントだと思います。もちろんその他の植物の関係もございますから、火傷病が本土にあった場合に、本土から輸入する寄主植物ですね、これは検疫措置がきちんととられない限りだめだということに当然なるわけでございますが、タスマニアは、いわば一つの島でございますので、そこは本土ということとは一応切り離して考えるべきではないかと思っております。
  100. 木村太郎

    木村(太)委員 多分、生産農家がこういう答弁を聞いても、私は、納得することはなかなか難しいのではないかなというふうに思います。ぜひきちっとした対応で、農水省として、国としてオーストラリア政府とのやりとりを行ってほしいと思います。  時間がありませんので、次は、お米についてお伺いしたいと思います。  八年度の農業白書を見ますと、我が国の米の消費というのが、一九六二年、年間一人当たり百三十一・二キログラムの消費量をピークにして減少してきた。そして、持ち越し在庫量というのが、八年度当初の見通しで二百二十五万トンから二百三十五万トンを大幅に上回りまして、八年度十月末では二百九十四万トンとなっておりますが、このお米の在庫量が多くなっている現状というものを見据えて、この解消のため、具体的な施策あるいはまた見通しというものをどう考えているか、お伺いしたいと思います。
  101. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 ただいまお尋ねの件でございますが、八年産米の作況が一〇五ということでございましたこともありまして、ことしの十月末の国内産米の在庫というのが二百九十ないし三百万トンになるというふうに見込まれております。  ただ、このうち、いわゆる備蓄として政府が持っている米は約二百二十万トンでございます。これは、備蓄制度が新しい食糧法のもとで発足をいたしましたが、百五十万トンプラス五十万トンという水準を若干は超えていますが、そういった水準であるということでございます。  ただ、全体として、在庫水準が、作柄がここ三年ぐらいよかったこともあって、確かに御指摘のような状況であるということでございます。したがって、この縮減ということが必要だということで、まず一つは、生産調整を的確に実施する、これで大体二十万トンぐらいの縮減効果がございます。また、備蓄している政府米につきましては、この三月に決めました基本計画で百二十ないし百三十万トンを販売していくという計画でございまして、これをきちんと実現をするということが必要でございます。  このために、四月からは八年産米の販売も、六、七年産米の販売促進を図るために実施をしているわけであります。それから、備蓄制度そのものについて、最近の需給が緩和してきたことから、その制度の趣旨の理解が若干薄れてきているということもありまして、備蓄制度そのもののPRそれから備蓄政府米の販売ということの努力をしているわけでありまして、そういったことによって在庫水準というものの適正化を図っていきたいというふうに考えております。
  102. 木村太郎

    木村(太)委員 今長官からの御答弁にもありましたけれども、その生産調整についてでありますが、八年度から十年度までの現在のいわゆる新生産調整推進対策、これを実施しているわけですけれども、農業白書の中では、八年度生産調整目標面積の実施について、十二府県で目標の未達成を見込み、また、その背景としては、ただいま御答弁にもありましたけれども「「食糧法」のもとで初めての生産調整に対し生産者に戸惑いがあったという一般事情に加えて、自給的農家の割合が高く生産調整への理解が得られにくかった等の事情」というものを白書の中でも取り上げています。また、きのうの財政構造改革の最終報告の中にも「生産調整助成金について市場原理の活用等の視点に立って見直す」云々と記されております。  こういったことも考え、あるいはまた白書の中で国みずから指摘した点、あるいはまた先ほどお伺いした最近の米消費動向や在庫量の現状というものを踏まえて、私は、この生産調整のあり方、制度そのものについて、ぜひ大臣の御所見を賜りたいと思います。
  103. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 生産調整の問題につきましては、当委員会でたびたび私どもの意見を申し上げておりまして、その点については御理解いただいておるものと思っております。  要は需給ギャップ、三割近いこのギャップについて、これをどう考え、またどういうふうにこのギャップに対して対応していくか、こういうことでございまして、三百万に及ぶ稲作農家を対象にして、御指摘のように平成八年度から三年間生産調整を行っておるわけですが、この生産調整のねらいは、稲作農家と消費者相互にとって生産調整は重要でございまして、これによって安定した需給と価格の安定を図っていく、こういうことでございます。  生産者に対しましては、十分に生産調整の意味を御理解いただいて御協力をお願いしておる、こういうことでございまして、生産調整について、県また市町村、担当者が非常な努力をしながら生産調整の事務をやっていただいておるということもよく承知をいたしておりますけれども、この問題は、やはり生産者米価の安定と需給の安定と両方の面から必要な事業でございますので、御理解の上、これからも私どもといたしましては推進していきたいというふうに考えております。
  104. 木村太郎

    木村(太)委員 もちろん、生産調整の持つ役割、また意義、ただいま大臣から御答弁あったこと、確かだと思います。  ただ、現実に、私の周りにおいても、県や市町村等が一生懸命になりまして協力していても、むしろ協力しない人の中でいい目を見ている人もいるということが事実としてあると思います。ですので、私は、生産調整のあり方というものを、国として、農水省として、いつどういうときであっても適切に今の状況に対応できているのかどうかということをきちんと認識してのそれこそ対応をぜひお願いしたいと思います。  ちょっと一つ、細かい点でありますけれども、地元の話になって恐縮ですが、私の地元青森県では、銘柄米を持たない県というふうにも言われてまいりました。県や市町村あるいはまたJA等が力を合わせて努力しまして、今「つがるロマン」という新しいネーミングをつけて、ことしから新しい品種を本格的に作付をし、秋の収穫を楽しみにし、また期待しております。  ところで、国においては銘柄米の区分の見直しにも入っているというふうに聞いておりますので、その考え方、また内容というもの、ねらい等、御意見をいただきたいと思います。
  105. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 お答え申し上げます。  銘柄区分の見直しの問題でございます。  銘柄区分につきましては、現行の政府米の銘柄区分は、基本的に言いますと、自主流通米の比率がどうだとかそういうことで五区分に分けております。ただ、これでは最近のいわゆる自主流通米が米流通の主体になったという点を十分に反映しておりません。  そこで、米の銘柄に関する検討会というものを昨年開催をいたしまして、自主流通米価格をきちんと反映した、いわば市場評価の高いものから上位の銘柄区分に該当するようにしていく、いわゆる価格というものに着目をして、市場評価というものに着目して銘柄区分を行うという方向が出されたわけであります。  これに基づきまして、新しい指定基準をこの三月に作成をいたしました。この指定基準は、既に関係方面に御通知申し上げているわけであります。  ただ、三月に作成をしたわけでございますので、九年産からの適用はやはり営農準備との関係で無理でございますので、十年産から適用をするというふうに考えております。その場合でも、営農の参考こ資するといりことを考えまして、九年産に仮にこの基準を当てはめたらどうなるかということを六月中にも提示をいたしたい、こういうふうに考えているところであります。  なお、先生の地元は大体地域指定で今まで行われておりまして、銘柄区分としては四類になっていたのではないかと思いますが、今申し上げたように市場評価というものを基本にして銘柄区分を考えるということでございますから、この地域指定は、新しい基準ではそういう考えはないわけであります。いわゆる市場評価によって銘柄区分が決まるということになってまいります。
  106. 木村太郎

    木村(太)委員 もう一回確認させてください。私の地元の話になりますけれども、そうすると、例えば現在の四類、五類というこの特定品種に適用されております特例措置というものが維持されないということになるのでしょうか。
  107. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 今申し上げたように、全く新しい基準で銘柄区分を決めますので、今までは、いわゆる四類は青森県産のもの、五類は北海道産のもの、こういうように地域で、もうそこの銘柄はどんな市場評価を受けていても基本的には四類、青森県産は四類というふうにしていたのですが、それは現実には市場ではそういう評価を受けていない、むしろ高く評価されている場合もあるということで、今のような新しい基準の考え方を導入した銘柄区分の中では地域指定という考えはとっていないということであります。
  108. 木村太郎

    木村(太)委員 農家にしてみますと、三類、四類とあれば、三類が四類に引っ張られるのか、また四類が三類の方に引っ張られていくのか、大変そういう点では不安でもあり、また注目もしていると思います。そういったことも踏まえて、米を取り巻く環境をにらんで銘柄区分においても適切な対応をお願いしたいと思います。  次に、きのうの財政構造改革会議が数値目標を盛り込んでの最終報告というものを全体会議で決定していますけれども、これについて、大臣また農水省にお尋ねしたいと思います。  この最終報告の中で、農業に関しては、総額六兆百億円のいわゆるラウンド対策、これについて計画期間を二年延長する、このことが単年度歳出を圧縮することにもなる、さらにまた、公共事業と非公共事業の比率を六対四から五対五に変更し、国費収支というものを抑制するとしておりますが、最終報告での農業ラウンド対策に関しての大臣の評価と御所見をいただきたいと思います。
  109. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 昨日、財政構造改革会議の最終の報告がございまして、今委員指摘のような内容で結論が出たわけであります。財政状況が極めて厳しい中で、他方、ウルグアイ・ラウンド農業合意に伴って足腰の強い農業をこれから六年間で築いていく、そういう経緯もございました。そういう中で、私どもといたしましても我々の意見をこの財政構造改革会議で十分に申し上げたところでございますが、結論として、今お話しのような内容で結論が出たわけでございます。  それで、私どもとしては、総額が確保できたということ、それから二年間の延長は、これを今の財政状況が厳しい中でやむを得なかったと、農家の皆様には十分に御理解いただけるものと思っておりますし、また、この二年間の延長も公共事業中心の延長でございまして、その他の非公共の事業については、これは六年間、つまり向こう三年間でこの事業は進めていかなければならない、そういうふうに考えております。  なお、数字の点にお触れになられましたけれども、まず数字があるのではなくて、内容の見直しをして、そして、地域実態、農家の実情、農家のニーズに合ったそういう見直しをして、そしてその積み重ねの上に、総額のラウンド対策費の中から、内容的に非公共が大体目安として公共事業に対して五対五ぐらいのそういう内容でふえるのではないか、そういうふうに思っておるわけでございまして、重ねて申し上げますけれども、数字がまずあったと、こういうわけではなくて、見直しの結果、目安としてそういうことになろうかというふうに考えておるわけでございます。
  110. 木村太郎

    木村(太)委員 実は、予算計上のあり方について、報道によりますと、大蔵大臣や、また、記者会見できのう発言された総理の考え方、そしてまた農林大臣藤本大臣考え方こ何かこう隔たりがあるような感を持っているわけですが、いわゆる予算計上のあり方、当初にすべきなのか補正で対応していくべきなのか、もし大臣としての考え方がきちんとあれば、いま一度確認させてください。
  111. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 予算の取り扱いにつきましては、総理から、事業の見直しとあわせて予算編成過程で検討する、この旨の発言がございました。ウルグアイ・ラウンド予算については農林水産予算に支障を来さないそういう処理を行う、このような政府・与党の合意もございますので、これを踏まえて適切な予算措置を講じていくということが必要であるというふうに認識をしております。
  112. 木村太郎

    木村(太)委員 私自身も国の財政再建というものは重要と考えますし、また、その見直しというものを否定しません。しかし、最近の言葉で言いますと、何か一律的な削減という考え方が強過ぎるような感を持っています。  例えば、このラウンド対策においても、この中身において、個々の施策、事業においても一律的に何%削減するというような考え方で仮に進んだ場合に、その後で地域別あるいはまた事業別にもし奪い合いというようなことになれば、根本的なことが何も変わらないような印象を持ちます。大事なことは、やはり当たり前の当然のことなんですが、本当に農家のために役に立つことなのか、必要な事業なのか、あるいは緊急性、優先性はどこにあるのか、あるいはまた、都市と農村部とのいろいろな面での格差の是正においてはどういった視点を持って取り組んだらいいのか、これらのことを踏まえての見直しが大事であって、その見直しにおいて結果的に何%削減というふうになるのが本来からいえば筋ではないかな、こう私は思いますが、その私の考え方に対しての大臣の御意見があればいただきたいと思います。  時間が来ましたので、いま一つ、先ほど言ったように、ウルグアイ・ラウンドに関しては六対四から五対五に変更するということでありますけれども、このことも、比率の見直しが最初にあるということではなくして、中身の見直しがあっての比率の見直しが筋であって、また当然の姿で、手順でもあろうと私は思います。それで、この比率の見直しが既に、六対四から五対五にするということが今回最終報告に入っているわけですので、農水省として、その中身の見直しにおいても当然に考え方がきちんとあっての今回の五対五に変更だと思いますので、具体的なことがあればお聞かせをいただきたいと思います。  加えて、いろいろな長期計画といりものもあります。この長期計画に対しても、土地改良でいえば四年間の延長、そのほかにおいては二年間の延長ということをこの報告ではうたっているわけですけれども、農水省が関係する長期計画農業、林業、水産業に関係する長期計画が六つあるというふうに聞いておりますが、きのうの最終報告によりまして農林水産業振興への影響というものをどう考え、また、今後どう対応していこうと考えているか、お伺いしたいと思います。
  113. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 まず、歳出の削減については一定の削減率ありきという感じを受けるがと、こういうお話でございますけれども、これは、財政構造改革会議におきまして、農水予算のいろいろな政策についてその必要性議論して、最終報告におきましては農林水産予算の重点化、効率化というものを図るための基本的な方向が示されたと、こういうことでございます。私どもは、その方向に沿いまして今後の予算編成において予算の一層の重点化、効率化を図ってまいる、こういうことでございますので、一律のこの予算の削減ということではなくて、めり張りのついた予算の編成をしていきたいと思っております。  それから二番目には、公共・非公共の五対五の話でございますけれども、これも、先ほど申し上げましたように、まず数字が最初にあったということでまなくて、六対四の公共非公共の比率について、従来から向こう二年の見直しをこれから図っていくということを申し上げていたわけでございまして、その見直しの中で、実際にいろいろな地元のニーズ、それから事業の進捗状況、こういうものを精査した上で、真に地元にとって必要なものについてはそれをふやしていく、こういうことを考えていたところでございまして、そういう考え方に立ってそういう地元のニーズを積み上げていけば、大体六対四から目安として五対五になるのではないかと。  ですから、まず五対五があって、それに中身を合わすのじゃなくて、必要なものを積み重ねていって、そして結果としておおよそそこのところは五対五の数字になるのではないか、こういうことを考えておるわけでございまして、その点についても御理解いただきたいと思うわけでございます。
  114. 山本徹

    山本(徹)政府委員 農林水産関係の長期計画の延長でございますけれども、今回の閣議でそういう方向が定められたわけでございますけれども、農林水産業関係の公共事業は、国際化の進展に対応した生産基盤の整備による体質の強い農林漁業者の育成、また、世界的に食糧自給の不安定化が懸念される中で、国内における食糧供給力の確保といった課題、また、都市に比べて立ちおくれております農山漁村の集落排水等の生活環境の整備、こういった諸課題が急務でございますので、この長期計画の中で事業の一層効率的、また重点的な執行、また事業効果のより早期の発現といった事業の執行にこれまで以上に工夫を凝らしなから、農林水産業、また農山漁村の振興に役立つように最大限の努力を払ってまいりたいと考えております。
  115. 木村太郎

    木村(太)委員 時間をオーバーして失礼しました。これで終わります。  ありがとうございました。
  116. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、池坊保子君。
  117. 池坊保子

    池坊委員 新進党の池坊保子でございます。  私は、農水に対しての知識は皆無といってよろしいのですけれども、御飯が大好きで、一日のうちに、おみおつけと御飯さえあればいいというお米党でございます。そういう一消費者として、そして私は都会に生まれ育ちまして、アスファルトの道を通勤し、大げさに言えば遠足でしか稲穂や麦の穂を見たことがないというような生活をしておりました。  ですから、農村、農業とのかかわりは全然ございませんけれども、かすかにございますことは、私の祖母が三重県の伊曽島村という川の水位よりも低い土地の村長をしておりまして、農村の振興に心を砕いておりましたことと、そこでの自然の厳しさ、そしてまたほのぼのと心和む風景が心象風景として、原体験として残っております。  そのような都会に生きている人間の一人である私が、農村に対してどのような関心を持ち、何を期待しているかを述べさせていただき、かつ幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  農村あるいは農業目的、存在意義というのは、言うまでもなく、私は二つあるのではないかと思っております。  一つは、食糧保全のため、食糧供給の農村です。エネルギー、食糧の安全保障というのは、国のなすべき政策の重要な一つであると思っております。自給率が四二%で世界最大の輸入国である日本は、ただ足りているのがお米であるという現状を見るときに、その足りているお米はやはり確保しなければいけないのかな。もしかしたらアメリカに大干ばつが起こって、日本食糧が輸入されないこともあるかもしれない。第二位の輸出国である、そして日本にとっては輸入国である中国が経済繁栄を遂げ、もしかして自分たち食糧を使いたいから日本にはあげないというような不測の事態等々に備えて、やはりお米あるいは農産物の生産というのは必要なのではないかという気もいたしております。  「食料・農業・農村の役割に関する世論調査」という総理府の統計によりますと、将来の我が国の食糧事情について七〇・五%の人が不安があると答えておりますし、外国産より高くても生産コストを引き下げながらできる限り国内でつくる方がよいと考える者が八三 四%であるそうでございます。食糧保全のための農村のあり方です。  そして、二つ目は、自然環境の保全としての農村のあり方というのがあるのではないかと思います。ただ農産物をつくるだけではなくて、役割分担、構造、作用の違っているものたちが補い合って一つの社会、一つの国をつくるのが健全な社会あるいは国のあり方だとするならば、都会だけがあってもいけないのであって、だれでも人間は、特に若者は、政治、経済、文化の中心であり、情報がたくさんある、快適な生活が営める都会に住みたいと願うのではないかと思います。ですから、それをほっておいたならば、都会が肥大化して過疎地ばかりができてしまう。それは国の政策としてやはり好ましくないのではないかというふうに私は思っております。  この二つ考えるときに、私はウルグアイ・ラウンド対策費六兆百億は、妥当であるかどうかは別として、多分妥当ではないと思いますけれども、そういうものもあるいは必要なのかなというふうに思っております。  ただ、私が大変残念に思っておりますことは、都会に住む人間と農村の人たちの間に大きなギャップがあるのではないか。その両者の間にお互いの信頼だとか理解が少ないのではないかと思うのです。都会の人間は農村のことを知らない。ときにはやきもちで、いいなと。都会も倒産している企業もあり、それに伴う失業者もいる、でも保護されない。農村だけが保護されているではないか。また、農村の人が都会を眺めるときに、自分たちは大変な思いをして、夏の暑いとき、冬の寒いときにも農作業にいそしんでいる、そういう苦労は都会の人にはわからないのだという思いがあると思います。  私は、今農水省の方々のなすべき最大の役割、責務は、その大きく隔たっている都会の人と農村の方々との交流というか、理解を深めることではないかというふうに思っておりますが、大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  118. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 委員は、最初謙遜されまして、農業、農村問題について余り勉強していないというようなお話から質問に入られましたけれども、農村、農業の問題に随分お詳しいわけでございます。どうぞ、今のお話の最後に言われました都市と農村のギャップ、これを埋めるためにも委員の役割というものは非常に大きいと思うわけでございまして、その点についてもひとつよろしくお願いいたしたいと思います。  それで、本題に入りますけれども、確かに農林水産業というのま二つの大きな目的がございます。  一つには、国民の皆様が必要とする食糧を安定的に供給する。これは先般、去年の十一月にローマで世界の食料サミットというのがありまして、ここで食糧の安全保障という問題についていろいろ議論がありました。その中で、要するに各国ともこれからの世界の食糧需給関係考えますと不安定だから、各国ともに食糧生産力を維持、強化していこうというのがこの結論でございます。そういう点からすると、第一の役割の食糧を安全に供給していくということは、私どもにとっても大きな役割だと思います。  もう一つは、これも委員が触れられました、国土、自然環境の保全。全体の面積からいたしますと、農地と森林とで国土の約八割の面積を占めておりまして、委員が言われました言葉をおかりいたしますと、この八割の面積で二割の面積に住む人たちの面倒を見させてもらっているということも言えるかと思うわけでございます。この森林また農地の持つ自然環境、また国土保全の役割も非常に大きい、こういうことであります。  そういう大きな使命、役割について言われましたように、国民皆様方の十分な御理解がなければなりません。そしてまた、その御理解の上に、農林水産業振興のために、いろいろな我々が取り組んでいるそういう施策についての御理解もいただかなければならぬと思っております。  今後の我が国の農業を、誇りを持って、また農業関係者みんなが自信を持って進んでいくために、今、総理のもとで食料・農業・農村基本問題調査会というものを四月からスタートいたしておりまして、各界の方々に入っていただいて、その結論をいただいて新しい農業をこれから進めていこうというふうに考えておりますので、その答申を我々も参考にいたしますけれども、そこで十分に国民の皆様に御理解またコンセンサスを得られるような結論が出るものと期待いたしておるわけでございます。
  119. 池坊保子

    池坊委員 ぜひ大臣には率先して国民のコンセンサスを得られる努力をしていただきたいと思います。  きょう、私は、食べ物としての農村のあり方というよりは自然保全の観点から幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  私の娘が、五歳になる子供がこのごろ生き物に対しての関心が強くなったので、ヨーロッパに見られるような長期滞在型の余暇をしたい、農業体験をさせてくれるところがあると聞いているので、そのような場はないだろうかということで、私、幾つか調べさせていただきました。その中でグリーンツーリズムというものを私は発見したのですが、実は、これは全国に七百四十九カ所あるということでございますけれども、情報提供がなかなかされておりません。岩手県の県民モニターによりますと、グリーンツーリズムを体験したい市民が九割にも達しながら、情報が少ないためなかなか実現できないというのが載っておりました。  岩手でもそうなのですから、都会の人間がもしこのグリーンツーリズムの存在というものを知ったならば、もっと農業体験をしたい、あるいは子供に一カ月ほどのそういう体験をさせたいと思うのではないかと思いますが、情報提供というのはどうなっているのか伺いたいと思います。
  120. 山本徹

    山本(徹)政府委員 ただいま先生御指摘のグリーンツーリズムでございますけれども、平成四年の新政策を契機に農林水産省はこれの推進を始めたわけでございますが、今御指摘のように、まだグリーンツーリズムの登録対象の民宿が七百四十九軒にとどまっております。これはまだまだ、私ども、この普及に努力が足りないと考えております。  現在実施いたしておりますのは、この四年の新政策を受けまして、その地域におけるグリーンツーリズムの担い手の人材の育成、また、先進的なヨーロッパの優良事例の我が国への導入、それから、グリーンツーリズムの一番大事なことは普及でございますけれども、この普及につきましては、平成七年に、全会一致による議員立法のグリーンツーリズムの促進法が施行されたところでございます。これによって、民宿業の登録、さらに普及の推進を進めることにいたしておるわけでございますけれども、具体的には、この法律によって指定されております農林漁業体験協会を通しまして、体験民宿ガイドというガイドブックを現在発行いたしておりまして、この登録民宿の全国への御紹介、あるいはインターネット、パソコン等による情報の提供に努力いたしておるわけでございます。  これからも、優良な事例等についてマスメディア等を通じてさらに一層普及、推進を図り、広く都会の皆様方、また青少年の自然体験、あるいは社会教育の場として御活用いただけることを期待してまいりたいと思っております。
  121. 池坊保子

    池坊委員 五年度に十二億円以上、八年度、九年度はそれぞれ三億円以上の予算を計上していらっしゃるのですから、ぜひこれを徹底していただきたいと思います。  そして、これは都会の人と農村との交流を図るということと、農村に生きている方々の地域全体の所得の維持、確保を図る観点からというふうに伺っておりますけれども、地域全体の所得の維持はこれによってなされたのでしょうか、ちょっと伺いたいと思います。その辺の現状も把握していらっしゃるのでしょうか。
  122. 山本徹

    山本(徹)政府委員 地域によってこのグリーンツーリズムを大変盛んこ推進しておられるところもございます。こういった地域につきましては、その地域に優秀なリーダーがいらっしゃること、また、グリーンツーリズムの推進の場としてすぐれた農林漁業の体験の場がそこに整備されていること、また、宿泊施設が、需要に応じた水準のものがそこに存在すること等々いろいろな条件がございます。地域によって皆様方大変苦労しておられますけれども、このグリーンツーリズムによって、地域の農産物の販売額が伸びたり、また新しい雇用の場が創設されて地域の活性化に役立っているというような事例が幾つかございます。
  123. 池坊保子

    池坊委員 予算が有効に使われますことを希望いたします。  一つ大臣にお伺いしたいのですけれども、五月三十日の文部省の中教審においては、生きる力を育てる、体験学習というのを提案いたしております。それで、このグリーンツーリズムというものがございましたらば、例えば都会の子供を、今やっておりますことは都会の子供と学校同士の交流というものをしておりますが、その都会の子供を一カ月間ぐらい農村に滞在させて、じかにその農村の、農家に生きている人々の生活、そういう体験をさせるのは、これは文部省の施策にとってもいいことでありますし、それからまた、農村を知る、あるいは——私たち、ミルクを飲んでおりましても、子供はどうやってミルクができるかということは知らない。ミルクというのは、本当に、機械の中から出てくるのかぐらいの意識でしかございません。ですから、ぜひ文部省との連携の中でこのようなことをしていただきたいと思いますけれども、大臣の御見解を伺いたいと思います。
  124. 山本徹

    山本(徹)政府委員 ただいま御指摘ございました中央教育審議会で、これは平成……(池坊委員大臣にお伺いしたい」と呼ぶ)その前に事実関係を御説明させていただきます。  平成八年に、自然体験を豊富に積み重ねるということがこれから二十一世紀の教育のあり方として大変重要だという御指摘、また、ことし一月の教育改革プログラムにおきましても、青少年の自然体験活動への参加を奨励するというようなことが重要であるとされております。  私ども、そういった報告あるいは答申を背景に、文部省と連携いたしまして、平成九年度、これは文部省が青少年の野外教育推進事業というものを新しく創設されましたけれども、これはグリーンツーリズムの一層の推進にも役立つものでございますので、このような事業に対して、農林水産省としても文部省に積極的に支援し、また、ことしの二月には「グリーン・ツーリズムと体験学習に関するシンポジウム」を両省で共催したりいたしまして、両省で、先生御指摘のように、積極的な青少年の教育、自然体験教育の場としてグリーンツーリズムを活用し、また青少年の教育機会の拡大を図っているところでございます。
  125. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 農林水産省といたしましては、この青少年の野外教育推進事業への積極的な支援、私ども、これは重要なことだと思っておりますので、今後とも文部省と十分に連携しながらグリーンツーリズムの一層の推進に努めてまいりたい、かように考えております。
  126. 池坊保子

    池坊委員 次に、地域農業基盤確立農業構造改善事業と、舌をかみそうな事業でございますが、いわゆる、言われております温泉ランドのことについて、ちょっと質問させていただきたいと思います。  実は、私、地方に参りまして、大変のどかな、川があって山並みがきれいな、そういう風景の中に突如鉄筋のビルがございまして、これは何だと言いましたら、今問題の温泉ランドだということでした。私ま、その存在そのものも問題ですけれども、自然破壊というか、自然との融和がもっとなされていたらよかったのになと思ったのです。  つまり、鉄筋ではなくて山や自然環境とマッチした建物であったならま、もっと違和感がなく批判も少なかったのにとむしろ残念に思っている一人でございますので、これができます過程、三十三地区に約十億円かけてつくったということでございますが、ポリシーが何かおありになったのかをちょっと伺いたいと思います。
  127. 山本徹

    山本(徹)政府委員 農村地域の雇用の場を拡大しまた所得の向上を図る、これによる農村の活性化というのは農政の大変重要な課題でございまして、このためには農林漁業の振興が基本的に重要でございますけれども、これとあわせて、地域資源、これはすぐれた農村の風致景観、これには、たまたまその地域で温泉が出るというような場所であればこれも活用して、広くこれを都市住民の利用に供し、都市農村交流という形で農村に滞在していただいて、地域の農林水産物を購入していただいたり、また農林漁業の体験をしていただく、これを通じて農村の活性化を図るという目的、ねらいのもとに都市農村交流施設というのを整備いたしております。この一部に温泉の施設を整備しているものが御指摘の三十三地区の事例でございます。  これも農村の活性化のために大変重要な試みであると考えておりますけれども、先ほど先生御指摘のように、農村のすぐれた風致景観にそぐわない施設であってはかえってマイナスでございますので、私ども、そういった施設が本当に農村の風致景観に適合した設計になっている、あるいは内容になっている、これは十分検証することが必要でございますので、そういった施設の設計についてはこれまで以上に十分工夫を凝らし、また、一部温泉ランドと言われるような、その規模、内容についてレジャー施設と誤解されないような、あくまで農村において農林漁業を体験す巨あるいは農山漁村の自然に触れるというようなことが主眼でございますので、そういった目的、内容に適合したものになるように、この事業の実施については十分にこれから指導をしてまいりたいと考えております。
  128. 池坊保子

    池坊委員 農村の自然がもたらす環境というのは、人類の生存のために私は不可欠なものだと思っておりますので、やはり農村というのは自然そのものであってほしい、そこに保全する、そして、そのことのために援助をしてもいいほど大切なものだと思っておりますので、自然の趣、景観を損なわない努力というのを、これからもぜひやっていただきたいと思います。  それから、今、よその方との交流というお話がございました。私は、外部の人も入れる努力をしていただきたいと思います。特に、このごろは、若い女性たちは温泉というのは大好きでございます。ですから、農村の方だけが楽しむのではなくて、都会の人たちも行ける、これはやはり、さっきのグリーンツーリズムと同じように情報提供というのが欠けていると思います。この情報提供というのをしていただきたいと思います。  たくさんの質問をしたいのですけれども、丁寧なお答えがございますので、時間があって私のいたしたい質問の五分の一ぐらいしかできないのですけれども、最後に、ちょっと有機農業について伺いたいと思います。  今、農薬による食べ物というものに対して女性たちは大変神経質になっております。有機農業をこれからも促進していらっしゃるおつもりなのかということ、それは簡単で結構でございます。  それと、私、きのう読みました本によりますと、私のような自然崇拝で自然にできているものというのはいいんだというのは大きな間違いである、有機農業の弊害として、寄生虫の温床になるということ、それから発がん性物質を誘発するというのが本に書いてございましたが、これらの研究がなされているかもちょっと御報告いだだきたいと思います。
  129. 高木賢

    高木(賢)政府委員 端的にお答えを申し上げます。  有機農業を含みます環境保全農業につきましては、現下の農政の重要な課題の一つとして取り組んでおりますし、これからさらに力を入れていくつもりでございます。  それから、二番目の健康の問題につきましては、これは厚生省さんの方が所管になりますので、そちらの方で御研究かと存じます。
  130. 池坊保子

    池坊委員 私が読みました本によりますと、厚生省ではなくて、その育っていく過程の中でそれは発がん性物質を含むということなので、これは農林省の分野だと思いますので、きちんと、人体にもかかわることですから、これはお調べいただけますでしょうか。  ちょっと読ませていただくと、   農薬を使わずに作物を育てていると、土壌の中で細菌が増える。その細菌は空気中の窒素を使って硝酸という物質を作り、これが根を通して作物に入り込むと亜硝酸という物質になる。最終的には、その作物を食べた人間の体内にこの亜硝酸が取り込まれるわけである。一方、体内では分解されたアミノ酸からアミンという物質が発生している。このアミンと有機野菜から摂取した亜硝酸が体内で出会うと、発ガン物質に変身してしまうのである。 というので、これは厚生省の分野ではなくて農水省の分野だと思いますが、いかがでございますか。
  131. 高木賢

    高木(賢)政府委員 食物の安全性というのは一義的にはやはり厚生省なんですが、生産過程を預かる私どもとしても、今御指摘の点は非常に重要な点でありますので、十分調査研究をいたします。
  132. 池坊保子

    池坊委員 これは人体にかかわる、先ほども申し上げましたように、今有機野菜などをわざわざ特別に取り寄せて食べたりしております。それはなぜかというと、農薬を使わないから体にいいのだということ、その信奉者である人間が結構多いので、これはぜひお調べいただいて、きちんとした報告をしていただきたいと思います。  それから、有機農作物がなかなか手に入りません。これの流通経路なんですけれども、もうちょっと入るような工夫もしていただけたらいいと思いますけれども、それもあわせていかがでございますか。
  133. 石橋大吉

    石橋委員長 そろそろ時間が参りましたので、どうぞ、簡単に。
  134. 高木賢

    高木(賢)政府委員 流通なり消費の世界ですので、官の側でどうこうするということではないと思いますけれども、やはり支持者、サポーターがふえればそれなりの店はできていく、私も何軒か知っておりますけれども、拡大されていっているのではないかというふうに思っております。
  135. 池坊保子

    池坊委員 たくさんの問題を質問させていただけなくて、欲求不満の中で終わりましたけれども、大変ありがとうございました。
  136. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、小平忠正君。
  137. 小平忠正

    ○小平委員 民主党の小平忠正であります。  きょうは、法案審議の場ではありませんので、それぞれ、当面農水委員会としていろいろと皆さん考えておられること等々御質問、御指摘ありましたが、私からも、限られた時間でありますが、何点か、政府質問をさせていただきたいと思います。  まず、藤本農水大臣は、昨年秋の総選挙後、大臣に就任をされまして、まず最初の大きな仕事として、早速ローマに飛ばれて世界食料会議に参画をし、その成果を持ってこられた、そのように報告されております。いろんな意見がございますでしょうが、私もそれなりの評価はしておきたいと思います。  特に、我が国は、まず国内生産をしっかり堅持をし、その中でできるだけ自給率を高めて、しかし不測の事態に備えて備蓄もしっかり構え、また足らざるを補う意味において安定輸入をするという、このことを基軸に据えて、特に比較優位原則といいますか、いわゆるコンパラティブ・アドバンテージ・プリンシプルですね、この論法で強引に迫ってきました先進輸出国との間で論陣を張られて、そういうことになったことは、私も評価をしておきたいと思います。  実は、その前段として、昨年のちょうど今ごろ、もうちょっと前、五月でありましたが、FAOの地域会議というか、アジア・太平洋会議が、ディウフ事務局長参加のもとに、百数カ国の出席のもとに、ポリネシアの西サモアで行われましして、私も当時、政府代表という立場で出席をしてまいりました。そのときに、やはり同じように、豪州やあるいはニュージーランド、アメリカ、そういうところが、国際分業論というか、そういう考え方で、我が国等々と大いに議論を闘わしたわけであります。当時、中国やあるいは韓国を代表する大臣や、その関係役人の方を含めてそういうやりとりがありましたが、大体そういう方向でローマ会議にまとまったことは、それなりの評価をしてみたいというふうに思っております。  さてそこで、そういう上で、政府が言う適正備蓄というか、これは百五十万トンという数字を言っておられる。また、米は農作物でありますから、天候に大いに左右される。そういう中で、生産調整を初め、需給調整のための適切な誘導というものが必要である。これが、今私が言いました、いわゆる国内生産、備蓄、そして安定輸入ということを進めていく中で一つの大きな要素であると思います。そういう状況の中で、我が国は、我が国の農業、農村、食糧というものをしっかり守っていくためには、長期見通しにのっとった生産基盤整備、また周辺の環境整備を急いでいくこと、これも肝要であるわけであります。  ところで、一九九三年、国会で三度の決議もしておきながら、苦渋の選択、まさしく文字どおり苦渋の選択をして、我が国はUR農業合意の名のもとに、米の部分開放を受諾し、そして今の体制がスタートしたことは忘れてはならないと私は思います。そして同時に、国際的な食糧の需要供給、この動向を見据えて、次のWTOに焦点を合わせて、今この六年間で、国際競争力に伍していける、そういう体制をつくっていきたいという思いのもとに、大変な議論のもとに、UR関連対策費として六兆百億円というものを決めて、それを今日まで三年間実行してまいりました。  しかし、六年間という短いスパンで進めた関係上、確かに無理もあったし、また人間がつくったルールですから、やはり不備もある。そして、残念ながら、役所的な発想で、またそれを十二分に対応しかねる面もありまして、いろいろな点が指摘をされて、今日このような問題が提起されました。  しかし、私どもは、折り返しに向かう今、当初の目的、精神をしっかりとらえて実行していかなければならない、この思いは、私も、そちらに座っておられる政府関係の皆さんも同じであると思います。ですから、ちょうど折り返しの今、このことをしっかり継承して、そして国民の血税が効率的に、また効果的に使われるようにしっかり検証をして、残り三年間に向かって進めていくこと、このことは当然のことであると思います。そういうことで私も主張してまいりました。  しかし、残念なことに、多様な考えを持った国民もおられる、いろいろな、各界各層のとらえ方もある、そういう中で、この六兆百億円というものに対して疑義が出された。同時に、不幸なことにバブルがはじけて、我が国の財政状況は悪化の限りである。そういう中で財政再建——戦後五十年というか、あるいは太政官制度以来というか、政治の仕組みが、戦後民主主義になっても、やはり実態は官に向かって、お上に向かって政治を行うという、そういうような方向があったのではないかと私は思います。しかし同時に、先人の大変な努力によって、戦後の我が国の復興もあり、今日の繁栄を築きましたが、そのひずみの中で、また制度疲労の中で、今回、行政改革を含めて、社会的な構造の改革を含めて、今ちょうど問題の時期にぶつかってしまった。したがって、そこでこの六兆百億円を、これも聖域とみなさずに、ここで削減しよう、縮減しようという意見が強く出たことも、これもある意味では、聞く耳を持たなければならないということもあるかと思います。  しかし、私は当時を振り返って、あのときを思い起こすならば、少なくともあのとき、国会に籍を置いて、このことを論じた議員の一人としては、やはり朝令暮改——言葉をかえて言うならば、改むるにはばかることなかれという言葉があります。しかし、政治家こ求められるものは、あるいは行政に求められるものは、二枚舌ではいけないという、このもとに、私はこのことを強く主張してまいったのでありますが、残念なことに、昨日、政府・与党の財政構造改革会議で最終報告が出まして、即、臨時閣議をやって、これが正式決定された、このように伺っております。  そこで、私はその資料も昨日手に入れましたが、今何人かの同僚議員の質疑の中で、大臣もこれについての基本的な見解をお答えになりましたので、それは私、あえて問いません、質問に対してお答えになりましたので。私は、昨日正式決定されたこの文書の中で、特に、期間は二年間延長する、それから、農業農村整備事業、公共事業構造改善事業やそういう非公共の方に振り向けて、大体五対五、そういう状況に持っていく。となれば、国費負担が多少というか、大分減りますから、中身は変わっていくと思いますけれども、これについては、農業団体あるいは農民各位の実質的な要望からしても、これは効率的に、効果的に国民の血税を使うという観点からいえば、これも一つの方法である、そんな思いで、これについては私は賛意を表したい、こう思っております。  しかし、問題は、二年延ばすことによって起きる、次のWTOの交渉に向かっての、二年間のギャップをどう埋めていくかという、そういう問題は、政府当局としても、これから大変な作業になっていくと思います。  と同時に、その次、ちょっと文章を朗読しますけれども、「主要食糧関係費に関しては、「食糧法」の趣旨を踏まえ、米について、政府備蓄水準の早期適正化を進め、米価を含む農産物価格について適切な価格設定を行う。」これをお手元にお持ちですね、長官大臣もお持ちですね、昨日の正式合意文書ですね。ここでまず米価について、農産物価格に「適切」という表現を使っていますね。その次に、「政府は、適正な備蓄の運営に責任を持つ一方、自主流通米助成、生産調整助成金について市場原理の活用等の視点に立って見直すとともに」「見直すとともに」という表現を使っています。さらに、「学校給食用米穀値引きについては廃止の方向で見直し、」「廃止」と書いていますね。次に、「集中改革期間中において主要食糧関係費を引き続き対前年度同額以下とする。」と。  いいですか、まず「適切な価格」とは何を言うのかということ、これは本当につかみどころのない表現ですよね。これはどうでもとれる。それから、自主流通米助成、生産調整助成金を見直すというのは、どう見直すのですか。それから、学校給食用米穀値引きは廃止という、これこそ米消費拡大の大きなポイントではないですか。我々より上の年代の人は覚えています。戦後、占領時代にアメリカは、パン食のいわゆる奨励のために、パンを食べれば美人になりますとか、肌が白くなりますとか、足が長くなりますということを言ってパン食を奨励しましたよね、学校給食等を含めて。今こそいろいろな手段を講じて、米の学校給食、これは奨励せんければならぬ。また、主要食糧関係費を対前年度同額以下とする、何となく寂しい思いでいっぱいであります。  これを今問うても、返ってくる答弁はまさしく官僚的な答弁で、これは私、答弁要らないです。大体想像つきます、これについては。でも、大臣、せっかくですからこの点について、このような正式合意がなされました。感想はいかがですか。ちょっとそれについてお聞きしておきたいと思います。よろしいですか。もし急でしたら、長官でも結構です。簡潔に感想だけで結構です。
  138. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 いろいろな点に及んでおるわけでございますが、価格を適切にというのは、私どもの理解は、当然、例えま米価であれば食糧法に規定があるわけですからへそれに従って適切に、こういうふうに理解をいたしております。  また、生産調整助成金とか計画流通対策費等、米にかかわる対策費についての見直し、これは考え方が市場原理等の観点ということであります。これも観点を示しているわけでございまして、私どもとしても、新しい食糧法のもとでこういった対策費等については、当然現下の米需給の調整の中で必要な見直しはしなければならない心また、農政全体が、先ほどもお話ありましたように、食料・農業・農村基本問題調査会の中でいわゆる見直し作業が行われているわけでありまして、そういったものとあわせて検討をしていくというふうに考えております。  また、学校給食の重要性を私どもも当然認識をしておりますし、これに現在二百億程度の値引き財源が使用されていることも事実でありますが、学校給食の重要性ということとその値引きということについてどう考えるかということは、私どもとしても、これは従来からいろいろな場面で指摘をされていたことでございます。  それから、「同額以下」というのは、これはこれまで毎年主要食糧関係費は減額をしてまいりました。私どもとしては、天候に左右される主要食糧関係費については、そういった点をきちんと考えた対応をしてもらいたいということでありまして、そういった点は「同額以下」という中ににじみ出ているのかなと考えております。
  139. 小平忠正

    ○小平委員 役所の答弁はお聞きいたしました。要は食糧というものは、単にその生産者が営々と額に汗して、また大変な肉体的な労働あるいは精神的なものも含めて、農作業のもとに米の生産があり、それをおいしくて良質なものを消費者に提供するという、これは簡単な論理ですけれども。ですから、生産者そして消費者、両者が喜ぶ、満足する形に持っていかなければならぬということ、これは簡単なことであります。  そういう中で、いろいろな立場立場によってその主張なり考えがありますけれども、私は短い時間でありますので、ちょっと話が前後したら失礼かと思いますけれども、今新食糧法に変わって、そして自主流通米、まさしくお米というものを市場経済、市場原理に投げ込みましたね。一方、政府米というのは備蓄用に呈する。そういうところで価格形成の場を設置をして、お米の価格を決めてきている。昨年からことしにかけてのことでも、昨年十二月の取引結果、非常に高値でお米が取引されましたけれども、そのときの、言うならばやり方問題点もありまして、ことしに入ってからは低落傾向に入ってきている。  そういう状況がある中で、政府米におきましても、これは食糧庁からいただいた資料ですが、それを見ましても、例えば昨年政府米の販売状況についても、予定では九米穀年度については百二十から百三十万トン、月平均十万トンを売却する予定で計画を立てても、実際には十一月から三月まで、この五カ月間の販売量はわずか二十一万トンになっている、非常に厳しい状況が一方である。自主流通米はそういう形で、言うならば相対取引まで影響が出てきているという状況で、したがってそういう状況の中では、逆に業者が基準価格の引き下げまで希望して、言うならば銘柄米とされるコシヒカリまでそのようなことになっている。そういうことで、最近では本当に取引の場においては、値幅制限の下限に張りつくような状況が起きている、そういうのが今の実態であります。  そこで、長官、短い時間ですから議論にならないでしょうけれども、なぜこんなことが起きるのか。これはいろいろなそのときの背景はあるにしても、基本的に私が思いますことは、米がいわゆる備蓄という名のもとに、政府は百五十万トン適正備蓄、あるいは調整保管五十万トン、これらを含めて備蓄というものを言われていますよね。私が今別段に申しましたように、ローマ・サミットでも国内生産と備蓄と安定輸入、これが必要であるという、私もその考えはそのとおりであると思います。  しかし、新食糧法のもとに米が市場経済に投げ出された今、需要と供給のバランスで、これは米のみならずほかのものでも同じであります。物がたくさんあれば、当然値は下がりますよね。少なければ値は張るものです。何でもそうでしょう、どんな商品でも欲目に。一方倉庫に山積みにされておれば、当然値段は下がってくるのです。ところが、少ない、希少価値となれば値は上がっていく、これが市場原理ですよね。それの意味が私は今備蓄だと思うのですよ。  備蓄は必要だ。一億二千万以上の国民の安全を守るためには——言うならば農業というのは天候に左右される。あるいはこれだけ情報化が進みこれだけ近代化しても、依然として各地では民族紛争や宗教紛争、いろいろな動乱や戦乱が絶えないですね。毎日のように起こっている。そういう中で、一朝有事の際に、我が国は食糧をしっかり、少なくとも米ぐらいは——自給率がもう五〇%を切っている、こんな中でほかのものすべてを海外に頼っている今、少なくとも米だけはしっかり自給体制をつくり、しかも予備をもって備蓄をし、国民の胃袋を満たすこと、この安全のために備えるという精神は私も同じであります。また、そのために食糧庁が存在するのですよね。  でも、不幸なことに、そのことがこの価格形成の場において、この大事なお米の値段が何となく、余っているのだ、余分にあるのだと厄介者扱いされているような感じで下がってしまうし、国民の多くの方もお米に対して、そこに貴重というか大事というか、お米は大事なものだという感覚が今希薄になっている。私の時代は、御飯を食べて、お茶わんに御飯一粒残したら親から怒られました、全部きれいに食べないと。今はそんな時代じゃないですよね。そういう風潮の中で、この備蓄ということが市場経済の原理の中でそういう問題を引き起こしている。  なぜこんなことを言うかというと、あるところでこういうことが指摘されました。昨年来の豊作によって、そして部分自由化の外米の輸入等によって、今三百万トンからの在庫がある。このために要する予算は一兆円だというのですよね。一兆円だという。それは私が言っているのじゃないのですよ。そういうことを言うのですよ。私も、それは何だと聞き返したのですよ。そうしたら、こう言うのですね。大体一トン当たり三十万円だ、政府米の価格で。だから、三百万トンだから九千億円ですね。あとは金倉ですよ。これで約一兆円だという。私も聞いて、あいた口がふさがらないというか、そういう意識を持つということに。だから、こんなに余分にお金が農業のために使われていると。しかし、それはそれをお金にかえた場合の話でしょう。皆さんの住宅や土地を、持っている自動車や何でも、物をお金にかえたら幾らかという話でしょう。だから、血税を投じているわけじゃないのですよね。価値の問題ですよ。でも、そういう余分なことをして、この財政事情逼迫している中においてそれだけのものが農業に使われていると。  そこについて、私は、こういう認識が欠けていると思うのですよ。備蓄は消費者のためにある。大きく言って国民のためですよ。でも、どちらかというと、お米の備蓄というものは消費者のためにあるのだ、生産者のためじゃない。ところが、この備蓄に要する費用は、何か生産者のためにこの備蓄のための予算措置を講じている、こんなふうに今受け取られているのではないか、私にはそんなふうに思えてならないのです。国民の意識がですよ。この我が国の置かれた立地条件、島国で、しかも自給率がこれだけ低迷している中で、お米というものをしっかり蓄えることが大事なんだという、この認識が、この意識が、コンセンサスが国民にしっかり浸透していれば、私は、このような誤った考えはないと思うのです。  こんなことを思うと、今の食糧庁、何か「たくわえくん」ですか、備蓄について。そんなことじゃなくて、ローマ・サミットで国内生産と備蓄と安定輸入というものをきちんとまとめてきた、この備蓄というものの重要性についてもっとしっかりやっていかなけれず、私は、あらぬ誤解と間違った認識のもとに、大事な国民の命を守る基幹食糧というものが消え去っていく傾向はこれからもとまらないと思うのですよ。そんなことを思いますが、どうですか長官、御意見は。
  140. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 今、備蓄の問題で、先生の方からいろいろな角度からお話がありました。私どもも、新しい食糧法でいわゆる備蓄というものが制度上位置づけられたわけであります。また、法律の第一条でも、米穀の需給及び価格の安定を図るための重要な政策手段、こういうふうに位置づけられてもいるわけであります。  おっしゃられるとおり、まず第一には、この備蓄制度は、米穀の生産量が減少した場合に、その供給が不足する事態に備えてのものであるという意味では、国民、消費者に対する役割が一番大きいわけであります。しかし一方では、やはり需給・価格の安定を図るという面でも、いわゆる市場から隔離しているという点でそういった面での手段でもあるというようにも思います。  それで、これはもう先生御案内のとおり、平成五年の未曾有の大不作を背景に、国民的な議論の中で備蓄制度が位置づけられたわけであります。その後三年間が、作況一〇九、一〇二、一〇五と豊作ぎみに推移した。非常に需給が緩和基調になっている中で、現在、備蓄制度について、先ほど先生がおっしゃられたような三百万トンが丸々過剰であるとか、そういった、私どもからするとこの平成五年のときの議論、これは何だったのだろうかと思うほどの議論といいますか、議論にもならない話が出てきている。これは、私どもも大変残念でありまして、そういったことで、備蓄制度のPR、これを本格的に私どもとしても始めております。そういった中で、備蓄政府米、これもきちんと計画どおり売っていきませんと、売れ残った分は積み上がるわけでございますから、そういったことで、私ども、備蓄政府米についても、備蓄制度のPRともども、その販売の促進に努めていくということであります。  いずれにしましても、先生おっしゃられたことは、十分私どもも同じように認識しておりますので、平成五年というものを振り返っていただいて、これからも備蓄制度をきちんと認識をしていただくように努めてまいるつもりであります。
  141. 小平忠正

    ○小平委員 前段の方は私もそれでいいと思うのですが、はっきりしていることは、どんなことを言っても、いわゆる備蓄米がここにある、しかも部分自由化等を含めて、そして豊作の関係もあり、余剰ぎみである、このことが心理形成上、自主流通米の取引の場においてやはり左右していることは私は事実だと思うのですよ。実際に、平成五年のあの大凶作のとき、お米がないとなったら、もうみんな群がって、あの手この手を尽くして皆さんお米を買い求めましたよね。これは、需要・供給の当たり前の原理ですよ。  そういう中で、今麦価の交渉の麦価米審、いよいよあしたでありますが、この時期にいつもなら米価とセットでやるところなのですがね。そういう中で、価格交渉の場においても、やれ生産費はどうとか、やれ労賃がどうとかなんとかいってへ理屈をつける。だけれども何となく生産者価格を下げようということで、もうその魂胆は見え見えだ。言うならば、そういうことが大きくのしかかって−私は、備蓄の必要性重要性は、それは認識しているのですよ、大事だということ、国民の命を守るために。でも、こちらにあるということが影響して、自主流通米の取引においても価格が低落傾向に進んでしまう。また、今回の麦価、麦価というのはこれはもう御承知のように、転作においても、あるいは輪作、裏作に必要な要素でしょう。また、米価、お米は今お話ししましたよね。そういう中において、政府価格の場ですら私はそういう影響があると思うのですよ。  ですから、それを思うとき、これはもう単純に、犠牲者は生産者だと私は思うのですね。しかも、もうかっているならいいですよ。でも、夫婦して家族労働をやって得る年間の収入が幾らかはもうおわかりでしょう。とにかく、いい年をした中高年の方が、長年働いて働いて世の中に貢献してこられた人ですら、学校を出たての若い青年や若い人たちの給料とそう変わらないような収入ですよ。こんなことがまかり通っていいのか、こういう単純な疑問に対して、私はこんなような意味からの指摘をさせていただきました。  ぜひ食糧庁は、備蓄の重要性というもの、これは何のためにあるのだとしうこと、これははっきり言って生産者のためでないということ、消費者のためだということ、このことをしっかり腹を据えて取り組んでいっていただきたい。もっとPRしていただきたい。国民の認識をしっかりつくっていっていただきたい。それが政府の務めでもあると思うのですね。そんなことを強く主張しておきたいと思います。  麦価について質問をする予定で用意しておったのですけれども、私、きょうは同僚の鉢呂議員と与えられた時間を二人で手分けをして臨みましたので、同じ質問について同僚の鉢呂議員から次にすることになっていますので、私は、重複しますので割愛します。  また、今の二百海里問題、これも七月という期限で、今漁民を初め関係者は大変な思いで毎日を過ごしておられる。中国との交渉、韓国との交渉、いろいろな問題点があります。しかし、長官、ここのところは外交交渉ですから、非常に大変なことはわかりますが、ぜひ我が国の正しい主張を粘り強く貫いていただいて、よい結果に持っていくように、もうこれ以上いったら、七月にはこれを破棄して、一年間の協議期間を通じてですよ、そこまでの気概を持って臨んでいっていただきたい。そうしなければ、大事な水産資源、これが荒らされる一方で、明るい展望は開けないと思うのです。  そんなことも含めて申し上げて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  142. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、鉢呂吉雄君。
  143. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 それでは、大臣に御質問をいたしたいと思います。  きょうは、あすの麦価を決める米審の諮問案を決定する重要な段階であります。私どもの北海道からも、きょうは五十名の農家の方が上京して、私どもにも要請をされましたし、大臣の方にも要請をされたのだというふうに思っております。今回は女性の方も、今まきつけの忙しい時期でありますけれども、これに加わっておりますし、何とか見通しを持った畑作経営に入りたいものだなというふうに思っていらっしゃると思いますから、大臣、きょうからあしたにかけて重大な決意で臨んでいただきたいというふうに思うところであります。  さて、東北ですとか九州ですとか、日本の畑作経営はさまざまございます。しかし、とりわけ北海道は、日本全国の三四%、これは土地利用型の畑作物の面積を維持して、まさに曲がりなりにもEUやある、は欧米の純粋畑作経営というものをやっている地域でありますから、私はそこの地点から大臣質問をいたしたいと思います。  まず最初に、大臣は畑作経営といったものにどんなイメージを持っていらっしゃいますか。率直なところ、これはなかなか四国と北海道では違うのでありまして、その点、先ほどの池坊さんのように率直な畑作に対するイメージをお聞きいたしたいと思います。時間がありませんので、端的にお願いいたします。
  144. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 四国の人間からいたしますと、北海道は、一口に言えば、大きいな、こういうイメージでございまして、そういうイメージの中で、北海道の畑作農業、いろいろな種類ありますが、その代表的なものは麦であるとかバレイショ、豆類、そういう作物が非常に大きなウエートを占めておる。そういうウエートを占めておるということからいたしますと、これらの対策については十分に配慮していかなければならぬ、そういう問題だというふうに考えております。
  145. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 でっかいことは北海道でいいことだということでありますけれども、北海道の畑作経営の現状について、端的に申し上げます。  畑作農家の経営状況は、この八年ほど著しく低下傾向を示しております。農水省の統計情報部の農家経済調査によりますと、これは畑作単一経営です。これま、畑作四品、いわゆる麦ですとか豆類ですとかビート、バレイショ、この四作物に八〇%以上依存しておる。この単一経営は、六十一年から六十三年ごろをピークにして農業粗収益は年々低下をして、平成六年には昭和六十一年の七三%の粗収益、これは粗収入といってもいいのですけれども。農業経営費は逆に、九六%、必ずしも下がってはいない。したがって、農業所得は、当時六百七十万円あったものが、先ほど小平さんからもお話あったとおり、四百五万六千円の農業所得であります。これは六十一年に比べますと六〇%に低下をしておるという状況でございます。  したがって、でっかい割には経営が必ずしも基盤強化になっておらないということでありまして、農業経営費の削減が進んでおらない。特に、肥料や農薬については必ずしも下がっていない。農業パリティー指数でいけば、平成二年に比べますと一〇三・一%、逆に多くかかっております。  したがって、先ほど言った農業所得四百五万六千円がそのまま全部使えるわけではありません。家計費は実は五百七十万円ほどかかっておって、この農業所得からだけでは七〇%の家計費充足率にしかなっておらないわけであります。農家経済余剰もマイナスになる年もあります。何に使われておるかといいますと、これは、先ほど言いましたように、農機具の購入等がなされますし、同時に、規模拡大ということで土地の購入費も多くて、二十ヘクタール以上の層では借金が二千五百三十二万に上っておるという状況でありまして、この経営状況はかなり逼迫をしておる。  大臣は平成二年ころからのデータしか農水省から見せられておらないと思いますけれども、実は押しなべてこの畑作の生産者価格は約二〇%ほど昭和六十一年—六十三年に比べますと下がっておるという状況でありまして、この点について大臣は、これも率直な御感想でいいのですけれども、どんな感じを持って私の今のこの数字を聞かれましたか、お答えをいただければと思います。
  146. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 率直なお話でございまして、私も率直に申し上げますけれども、事情を十分に私も調べた上で対応していきたいと思います。
  147. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 そこで、麦なんというものは日本の米の敵だというふうに思われておる方もいらっしゃると思いますけれども、決してそんなことはなくて、大臣も、私と同じ宿舎ですから、朝は御飯を食べているかもわかりませんけれども、多分そばですとかそういうものも食べて、時間のない中で陳情客に会ったり、大変な御苦労をされておると思います。  実は、小麦は約六百万トン、しかし、全部麦類を入れますと約九百二十万トンくらい、大臣も御案内のとおり、米は、一年間の日本の消費は一千万トンであります。まさに米に相当するくらいの麦類を食べておると言っても過言でないわけであります。お米は六十七キロくらい、一人平均一年間の消費量は。小麦だけに限っても三十二キロ食べておるのですから、まさに、先ほどだれかが五〇%という言い方をしましたけれども、これは小麦に関する限りでありまして、麦類全体からいけば大変大きな比重を占めておるわけであります。  大臣も御案内のとおり、今、国内の小麦の生産量は四十四万トンです。六十三年当時は百万トンありました。今はその当時の自給率一七%に比べますと半減をしておる。七%しか自給をしておらないという現状であります。この実態について大臣はどのようにお考えになりますか。——いや、大臣、率直なお答えでいいです、私の数字は間違っておりませんから。
  148. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 おっしゃられましたように四十四万トンという数字でございますが、ただこれは、一つは、作が非常に悪かったということが大変響いております。八年産では七年産に比べれば若干面積、収量とも回復をしている。そうはいっても、まだまだ一時期に比べれば低いと。これについては、私ども、例えば北海道であれば輪作体系の重要な作物でございますし、また、内地では水田裏ということで大変重要であります。また、転作先の作物としても重要でありますので、そういったことを十分考えて対応してまいりたいと思っております。
  149. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 収量の変動が大きいという意味では、ある面でままた別の大きな課題を持っていますけれども、しかし、そういう変動は別としても、大変低迷を続けておるということは事実でございます。大臣、いいですか。長期見通しでは、平成十七年で今の倍程度、四十四万の倍程度を生産したいと。これは、計画経済ではないということを盛んに言っておりますけれども、昨今の自給率に歯どめをかけねばならないという観点からいったら、決してこれは達成できるような見通しにないというのが現状ではないでしょうか。大臣、どうですか。率直なお答えを聞かせていただければと思います。——まある長が出てくるのであれば答えは要りません。  そこで、大臣、今いろいろなことが言われましたけれども、一つは、やはり先ほど言ったように、価格は一八%から二〇%下がっています。これはもうガット・ウルグアイ・ラウンド締結前に先取りしてこの価格の低減政策というのをやられたわけであります。最近は、私も去年は大蔵政務次官でしたから全部据え置きをしました。しかし、私どもがかわったら全部今引き下げの動向ですから、私は安心がならないのですけれども。  同時に、もう一つ大きなものは、大臣農地の有効利用が図られておらない。もちろん、北海道の畑作も重要な位置を占めております。しかし、過去に裏作や転作田を利用する麦類というのは極めて多かったのです。この十年前を見てもですよ。しかし、私どもは、水田の転作をしやすいということで水張りの水田を認めたり、あるいは実質耕作放棄田になっているようなところを認めるというような手法を使ってきました。しかし、今日、生産の長期見通しに基づいて自給率を上げるという観点に立てば、農地を有効に利用する、同時に、その生産、さまざまな生産の動向がありますから、天気に左右されますから、私どもわかりますけれども、しかし、それを柔軟に農地を有効に利用するというそういう仕組みをやはり農水省として考えていく必要があるのではないか、私はそういうふうに思います。  したがって、やはり麦をつくるという、日本は水田を主体にしておるようですけれども、やはり先ほど言ったように、主食からいけば麦も決して比重の小さい作物ではありません。これを何としても日本農地に植えていくというこの努力が大切ではないでしょうか。大臣の率直な御意見を伺いたいと思います。
  150. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 民主党さんの九七年産麦価等に関する申し入れをきょうちょうだいいたしまして、いろいろ拝見しております。  それで、私どもとしては、まず、麦は機械化適応性が非常に高く、また、北海道は非常にスケールは大きいわけでございまして、このスケールメリットを発揮し得る作物でもあるわけでございまして、麦の主産地形成事業、これにおきまして、期間借地等の推進、生産組織の育成等による麦作経営規模の拡大、これを推進してまいりたいと考えております。  それから、麦の生産の安定確保を図るためには、収量や品種の高位安定化を図ることが重要でございまして、そのために、ちょうど麦の収穫時期と梅雨がぶつかるといいますかそういうこともありますので、わせ品種の育成、普及であるとか、それから色の問題も含めまして品質を改良する、こういうことも必要であろうかと思っております。高水分麦収穫技術や新しい技術の実用化、そういう問題につきましては、これは農水省として全力を挙げて対応する課題でございますので、これは、十分に指示をいたしましてそのようにいたしたいと考えております。
  151. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 大臣の個別の課題についての真摯な御答弁、ありがとりございます。  私、その前段のところをやっているのですけれども、そうはいっても、大臣も御案内のとおり、いわゆる国内産麦の価格と輸入麦とが四・七倍ぐらい、昨年ま国際的こ麦類も逼迫をしたということで、あるいは円安に振れたということで、価格は円高にも重なったということでぶれがありますけれども、しかし五倍程度の価格差があるということも事実であります。  そこで、経済界を中心として、このようなことでは国内の製粉業界が経済的な競争にもならないと——大臣、御案内のとおり、小麦粉は韓国から日本に大変な輸入量が入ってきているのですね。韓国は何も小麦をつくっておるのではなくて、海外で調達したものを小麦粉調製品ということで砂糖なんかまぜて日本に輸出をしているという、農業もこういう流通経済の中に押し込められておると言っても過言でないわけであります。  そういった観点からいきますと、大臣、やはりこの辺で価格政策と所得政策についての考え方というものを抜本的に検討する段階にあるのではないかと、私はそのように思います。むしろ、そのことをきちんと農家の皆さん、生産者の皆さんに指し示す時期に来ておるのではないか。今、九千円内外のものをそのまま踏襲していけるのかどうかというその岐路に立っておるというふうに私は思います。やはり、そこには一つの大きな政策的なものを投入すべきである、私はそのように思いますけれども、ちょっと今抽象的な観点で個別の中に入っていきたいと思いますけれども、大臣として、今の価格政策、いわゆる法律に基づく価格政策、これについては限界にあるのかどうか端的に答えていただきたいと思います。     〔委員長退席、小平委員長代理着席〕
  152. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 麦の自給率を上げてまいりたい、これはもう基本的な考え方でございまして、平成十七年度を目標にして今の倍ぐらいの数字を考えておるわけでございますが、そのためにこれからどういうふうにこの自給率を上げていくかと、こういうことでございます。  今委員言われましたように、価格支持制度のあり方、所得補償制度の導入等につきまして御指摘がございました。我々といたしましても、今、総理の諮問機関でございます食料・農業・農村基本問題調査会におきましていろいろな重要な問題を検討しておるわけでございまして、その結論を見て考えてまいりたいと思っております。
  153. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 それこそ五年ほど前は、直接所得補償というこの概念に対して、農水省を初め、極めて否定的でした。これは、社会保障的な観点で日本の風土になじまないというようなことも言われてまいりました。しかし同時に、EUも含めて今回のWTOの合意にも緑の政策という形でこの観点が入っておるわけであります。基本的に、日本では中山間地の直接所得補償というような言い方をされるわけでありますけれども、実態的には条件不利地域政策ということで、例えば北海道のようなこういう純粋土地利用型の、四・七倍も五倍も価格差がある、そういう条件不利地域が市場経済に対応しながらどう経営的な存続を図るか。もちろんそこには、食糧の安全保障という観点も国民の合意として求めなければなりません。  あるいはまた、自然環境保全、あるいは農地の維持といった観点のものを含み込んで、私はそこに直接所得補償というものが、こういう土地利用型の経営にこそ必要になっておるというふうに思うわけであります。  これはイギリスとか北ドイツの直接所得補償というものもそういう基本的な理念に基づいて入っていると思いますので、大臣、そこは調査会に指導的な役割を果たしていただきたい。  どうも調査会も、私も大変開かれた調査会ということで敬意を表しています。調査会の論議の中身は、前回の第二回は、保利政務次官の冒頭のあいさつが、きちんと我々にも教えていただける状況になっています。しかし、どちらかというと、非常に地味なマスコミの取り扱いで、国民の合意を得るにはインパクトがいま一つ少ない。そこのところをぜひ大臣の創意工夫で、国民の皆さんが積極的に論議に参加して、日本食糧やあるいは生産者としての農業を、どのように国民的な合意を取りつけるかという観点で積極的な取り組みをぜひ果たしていただきたい、このように思うところであります。御意見をいただければと思います。
  154. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 委員指摘の御意見につきましては、同感でございますので、できるだけそのように計らってまいりたいと考えます。
  155. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 外務省の加藤アジア局長、今まさに外務委員会で朝鮮半島状況等の御質疑がある中で農水委員会に来ていただきまして、大変ありがとうございます。  そこで、五月八日の農水委員会の繰り返しになるわけでありますけれども、一カ月が経過しましたので、藤本農水大臣と加藤アジア局長に御質問をいたしたいと思います。  まず、五月二十六日に日本と韓国との日韓漁業交渉が行われました。実務の段階の交渉ということ、その責任者ということで加藤アジア局長が交渉の場に臨まれたと思います。私ども外務省からいただいておるペーパーによりますと、日韓の排他的な経済水域、EEZの境界画定交渉については、率直な意見交換をしましたが、日韓双方の基本的な立場にはかなりな隔たりがあることが明らかになったというふうに交渉の概要の中に書かれておりますけれども、このとおり受けとめてよろしいでしょうか。
  156. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 結論を申しますと、日韓双方の基本的立場にまだかなりな隔たりがあるという状況だと思います。今回の交渉の中で、韓国側は、排他的経済水域の境界画定が漁業協定締結のための前提であるという考え方を強調いたしました。私の方からは、短期的にあるいは短期間にそのような排他的経済水域の境界画定について合意に達することは困難であって、国連海洋法条約を踏まえた漁業秩序の構築こそ急務であるという立場を先方に強く主張したわけでございますけれども、その間の折り合いがつかないでいるという状況でございます。
  157. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 同時に、池田外務大臣と柳宗夏韓国外務部長官の日韓外相会談がパリで五月二十六日に行われております。これについても、時間がありませんので、外務省のペーパーでお話をさせていただきますけれども、池田外務大臣より以下のとおり述べたということです。  漁業問題については早期解決を図ることが重要である。境界画定につき早期に合意することは極めて難しいので、暫定的措置を取ることで双方が知恵を出していくことが必要。七月がひとつの節目であり、国内では早期妥結を求める声が一層強まっている。 このように述べたというふうに言われておりますけれども、このとおり受けとめてよろしいでしょうか。
  158. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 そう受けとめていただいて結構でございます。
  159. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 そこで、藤本農水大臣、五月八日に私はある程度執拗に質問を繰り返させていただきました。その際、最後の段階でありますけれども、私は、「七月二十日が期限になるということは言えますね。政府・与党で現協定の終了通告をするその期日として七月二十日というのは一つのめどになるというふうに言えますね。それは大臣も認めますね。」という私の質問に対して、「一つの区切りであるという認識は持っております。」というふうこ御答弁されました。  これは池田外務大臣も、先ほど私がお話ししましたように、七月が一つの節目であるというふうに向こう側の大臣に言っておられるわけであります。これは大臣、このように七月が大きな節目であるというふうにここで責任を持って答弁できますね。
  160. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 五月八日の農水委員会で御答弁申し上げましたとおりでございます。  なお、補足いたしますと、一つの区切りであると認識をしておりますということと、その後の取り扱いこつきましてま与党と十分こ相談してまいりたいということも御答弁申し上げました。
  161. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 これは私の質問ではなくて、共産党の春名委員質問しないのに、後で大臣がこのように答弁されたことも私ま承知しております。  しかし、与党と十分に相談をしてその後の取り扱いについて対応させていただきたいというふうに述べておられますけれども、大臣も御案内のとおり、昨年の国連海洋法の審議の際に、前農水大臣の大原大臣は、一年がめどである、このように明確に政府として国会答弁をされております。  私は、これは与党と相談するということではなくて、政府が責任を持って、私どもも加わらせていただいたあの与党の申し合わせといいますか、政府・与党の合意、一年以内に合意をする見通しが立たない場合には、現日韓漁業協定の十条の第二項に基づいて、相手方に終了通告をするというふうに受けとめてよろしいですね。
  162. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 先ほど申し上げましたように、七月二十日は一つの区切りであるという認識を持っておるということと、仮にそれまでに新しい漁業協定が締結できない、こういう場合には、その後の取り扱いにつきましては、与党と十分に相談して対応してまいりたい、かように考えておるということを申し上げた次第でございます。
  163. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 そこで、視点を変えまして、一九七〇年当時の二百海里が国連海洋法という形で提起をされたときに、一九七六年の二月に、当時のソビエトが二百海里を一方的に宣言いたしました。これも時間がございませんから、その経緯については私の方から話させていただきます。  四月には、日本に対して当時のソ連が日ソ協定について破棄通告をいたしました。ソビエト二百海里内でこの四月以降は日本漁船が締め出されるということになったわけであります。しかし、その後、日ソの漁業交渉というものがそれによって促進されたというか、始まりまして、日本も国内法を整備する。日本も国内法の二百海里暫定措置法というものを整備して、翌年の一九七七年の五月に日ソ漁業協定が結ばれました。これは御案内のとおり、北方四島というものが存在をしながら、そこのところを双方で譲り合うというか、そこはそことして置いておいて、この二百海里について日ソの漁業協定を結んだという経緯がございます。  この点について、大臣はその経緯について御案内だというふうに思いますけれども、そのときの経緯についてはどのような感想を持ちますか。
  164. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 先生言われましたように、一九七七年に日ソ協定が結ばれる前にいろいろ経緯があったというのは我々承知しているわけでございます。  ただ、当時は日本、ソ連とも、当時はソ連と言っておりましたが、両国いろいろな事情を抱えていた。例えば、我々が聞いている限りにおきましては、当時のソ連は非常に日本のイワシに対して関心があったというようなこともございます。また、北方四島の取り扱いにつきましても、あの協定にはディスクレーマー条項というのが入っておりますが、そのようなことで解決したというような事情もございます。当時の両国の事情ということが一つ背景になったということでありまして、現時点におきます日韓の問題等をそのままそっくり持ってくるわけにはいかない事情もあるのだろうと考えております。
  165. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 先ほども申し上げましたけれども、不法占拠しているという事実があるわけでありますけれども、それを踏まえまして、双方の立場を害さない形でこの二百海里漁業協定というものが締結に至ったわけであります。  そこで、大臣にお聞きをいたしますけれども、現在の日韓の協定、この十条の二項に基づいて終了通告をした場合にどのような日韓双方のいわゆる漁業協定ライン、境界ラインというものが現出するのでしょうか、これもお答え願いたいと思います心
  166. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 廃棄通告を行いました場合には、協定の定めによりましてその後十二カ月間は現行協定がそのまま適用されるということになっておりますので、廃棄の起点から十二カ月を経過した時点で無協定状態になるということでございまして、それぞれがそれぞれの国内法のもとで管轄権を行使するという姿が生ずるかと思います。
  167. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 そこで、竹島という島が存在しているわけでありますけれども、その無協定状態になったときにどういう状況が起こるわけでしょうか。
  168. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 今、実は私自身交渉の途中でございまして、したがって、ここで交渉が調わずに協定が切れてしまった場合のことを詳細に申し上げるのはいかがかと存じますけれども、竹島につきましては、基本的に、委員も御案内のとおり、間違いなく国際法上も歴史的にも日本の固有の領土である。しかし、事実上の占拠というものは韓国がこれを行っているという現実がある。その現実を変えるということは難しいことではないかと思います。
  169. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 そこで、無協定状況になりますと、まず北海道周辺は、日本が二百海里を引くことは、完全にこれはもう国連海洋法で認められております。  問題は、二百海里プラス二百海里、四百海里未満の状況、これについては中間線という形、起点をどこにするかということが出てくるわけであります。特に竹島については、今局長がおっしゃいましたように、日本の固有の領土、しかし現状はその管轄は韓国が持っておるという状況であります。  ここで、紛争、漁船の拿捕という事態は起きますか。
  170. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 今私の立場から、協定が失効していわゆる無協定状態になった場合に何が起こるかというのを詳細に見通すことは困難でございます。  ただ、私といたしましては、日韓首脳会談の合意、すなわち、竹島の領有権の問題というものと、それから海洋法条約のもとにおける暫定性を十分考慮に入れた双方に納得のいく境界画定、この二つを切り離して話し合いを進めるという線に沿って最大限努力をしているところなのでございます。領有権の問題については、これは領有権の土俵で日本は粘り強く交渉をする。そして、日韓間で新国連海洋法条約のもとでの秩序にふさわしい安定した操業が行われるようにどうしたらいいかということで今必死の交渉を行っているところでございますので、この時点で、拿捕合戦になるかどうかといった、そういう見通しについて私から述べることは差し控えさせていただきたいと思います。
  171. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 大臣に最後に御質問いたします。  この問題、国連海洋法をもう双方が批准をしておるという段階で、いわゆる国際法上のお墨つきがある中で漁業協定を変更するという形で今交渉をされておるのだといりふりこ思います。したがって、国際法上の後ろ盾がないという状況ではありません。それからまた、現協定に基づいてこの終了通告をして、そのした後の一年という猶予期間があるわけであります。  これは双方にとって、例えば、日本の二百海里内に韓国が共通の入会を持つということで、ほぼ日韓の漁業協定の段階では合意といいますか、煮詰まりつつあるというふうなことであります。これは、日本が一方的に二百海里を引いて、日本が優先的にそこの漁業権を持つわけでありますから、韓国はそこで締め出されることに多大の損失をこうむるわけであります。私は、そういったものを背景にしてこの漁業協定を行うべきであると。  ですから、期限は七月二十日ということであれば、もう一カ月有余しかありません。やはり所管の農水大臣として、この国会の答弁も踏まえて、きちんとした、国際法に基づく大臣としての決意を今の時点で示すことが、この漁業交渉を一歩踏み出すことになるというふうに私は思いますから、大臣としての決意を、終了通告を出す決意がある、このことを踏まえて交渉するということのかたい決意を披瀝していただきたいと思います。
  172. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 新しい漁業協定の締結は外務省の所管でございまして、委員よく御承知のとおりでございます。  ただ、新しい海洋法条約をそれぞれ日韓両国とも締結をして新しい漁業協定を結ぶということについては、必要性を韓国も認めております。そして早期締結も認めている。問題はEEZの境界線の画定の問題でございまして、そこでそれぞれ双方の意見が食い違っておる。沿岸国主義でやっていこうということについては合意をしておる。こういうこれまでの経過がございます。  我々としても、たびたび申し上げておりますように、七月二十日が一つの大きな節目、区切りでありますから、それまでに新しい漁業協定が締結されるように外務省と連絡をとりながら全力を挙げておる、こういうことでございまして、先般もお答え申し上げましたように、今努力中でございますので、それから先の話については御答弁は差し控えさせていただきたいと思っております。
  173. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 今国会も、十八日で会期延長なしというような段階であります。七月二十日が大きな節目であるということでありますと、委員長にぜひ閉会中審査というものを農水委員会として開くことを御要望申し上げまして、私の質問を終わります。
  174. 小平忠正

    ○小平委員長代理 次に、藤田スミ君。
  175. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 諌早湾干拓問題について質問をしたいと思います。  我が党の不破委員長は、橋本総理にお会いをしまして、この諌早湾干拓問題について、それぞれ事実を検証することが必要ではないか、こういうことで意見が一致いたしました。私もその立場に立ってこの問題を検討していきたいと思います。  まず第一に明らかにしたいことは、耕作放棄地の問題であります。  全国の耕作放棄地は九五年で十六万一千七百七十一ヘクタール、九〇年から九五年のこの五年間に一万一千百十六ヘクタール増加しているわけであります。長崎県はどうかというと、九五年で五千三百八十二ヘクタール耕作放棄地があり、その面積は、北海道を除いて都府県で見ると、福島、長野、茨城、千葉、それに次いで五番目の広さであります。そして、長崎では、この五年間に三百七十ヘクタール耕作放棄地が増加しています。これは確認ですが、その点間違いありませんね。
  176. 山本徹

    山本(徹)政府委員 耕作放棄地は、営農条件の制約の多い都市、あるいは、傾斜地が多くて農作業に上りおりを要したりあるいは機械化が難しいというような急傾斜地等が多くの場合耕作放棄地の原因となっておりますけれども、ただいま、全国及び長崎県の数字については先生の御指摘のとおりでございます。
  177. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 大臣、この諌早干拓事業説明するときに、食糧自給率の向上ということを強く理由に挙げられています。私は、もしまじめに食糧自給率向上を言うのであれば、この全国で十六万ヘクタールに及ぶ耕作放棄地、そして長崎であれば五千三百ヘクタールを超える耕作放棄地の解消に全力を挙げ、有効に活用することが求められているというふうに考えるわけです。長崎の耕作放棄地のわずか四分の一の面積の千三首三十五ヘクタールを創設するために二千三百七十億円の事業費を投入して、その大部分に国民の税金が使われる、そのことに国民の合意が形成されるとお考えでしょうか。
  178. 山本徹

    山本(徹)政府委員 耕作放棄地が発生いたします原因は、市街地に存在いたしまして、例えば営農しようとすると都市の住民から例えばほこりが出るというような苦情を受けたり、あるいは用水が不足するというような事情にあって営農上の制約が多いとか、あるいは、長崎がそういう地域でございますけれども、傾斜地の農地であって、効率的な農業生産が非常に難しい——具体的に申し上げますと、長崎県の水田の傾斜度、これはいわば棚田的なところでございますけれども、二十分の一以上の傾斜度、おおむね一ヘクタールの団地の水田の傾斜度でございますけれども、これは全国平均が一三%に対して長崎県は四九%と、四倍近い棚田の存在がございますし、また、畑でいいますと、十五度以上の割合、これはいわば段々畑でございますけれども、全国が九%に対して長崎県は三三%と、これも四倍近い段々畑、傾斜地があるわけでございまして、営農条件が非常に不利な地域が長崎県は多いわけです。  こういった原因によって耕作放棄地の多くは発生しているわけでございますので、この耕作放棄地をまず使えということは、大変条件の悪いところで営農、農業に取り組めということを求められるということでございますので、これだけでは将来、二十一世紀に向かって、若い担い手が定着して希望の持てる農業経営を展開することにはならないわけで、もちろん耕作放棄地の解消には私ども大変大きな努力を重ねているわけでございますけれども、一方では、このような平たん地の少ない長崎県において、平たんな生産性の高い優良農地が欲しいという農業者の声が大変高いわけでございます。現に、諌早湾周辺には若い農業者が育って、全国一の春ジャガの地域でございますけれども、これは主として干拓地でございます。そのような事情にございます。
  179. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私は、あなた方からいただいた資料を持っておりますが、一九八九年、平成元年から九七年、平成九年までのこの間に、あなた方が耕作放棄地対策事業として投ぜられた予算というのは、全部で六十三億二千九百万円です。長崎県はそのうち二千三百四十万円にすぎません。ことしの予算を見ても、国費は十七億九千七百万円、長崎はわずか四百二十万円です。耕作放棄地に対するあなた方の事業というのは、この程度の予算です。どうして、一方、二千三百七十億円の事業、千三百三十五ヘクタールの創設ということでこれだけのお金をかけるのか。  しかもあなた方は、今もおっしゃったように、条件が決してよくないところが多いのだと頭から決めてかかっておられるようですが、長崎では、一ヘクタール以上の経営耕作面積を持っている畑作農家で耕作放棄地を抱えている農家が二千百六十九戸あります。その耕作放棄地面積は五百二十一ヘクタールに上っています。一ヘクタール以上の畑作農家は全国的に見ても都府県ではわずか六・一%にしかすぎない、いわば優良農家であります。その一ヘクタール以上の畑作農家の耕作放棄地対策に真正面から取り組んでいくことこそ、食糧自給率向上の対策に求められていることではありませんか。大臣、お答えください。大臣にお願いしているのです。——簡潔に言ってください。
  180. 山本徹

    山本(徹)政府委員 耕作放棄地の解消対策というのは重要な政策課題と私ども考えておりまして、地域において農業委員会あるいは市町村等で協議会を設置いたしまして、耕作放棄地を具体的にどう利用するかということを考えております。  長崎県につきまして耕作放棄地が多いのは、先ほど来申し上げておりますように、急傾斜地が多い、営農条件が悪いところが多いということに基づくものでございます。
  181. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 耕作放棄地事情状況につきましては、委員も御承知のように、やはり中山間地域であるとか傾斜地地域であるとか、条件が悪いところがやはり多いということは事実でございます。一方、その耕作放棄地をいかに活用するかということについては、これはまた大事な考え方、視点であろうかと思うわけで、その点についても、我々としても十分配慮、対応をしていかなければならない、さように考えております。
  182. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私が申し上げましたのは、そういうところばかりじゃなく、よく見れば一ヘクタール以上の優良農家と言われる畑作農家の中で耕作放棄地になっているところがある、そういうことを申し上げたのです。私は思うのです、もし皆さんの説明で、よっしゃ、ようわかったということになったとしても、それでも二千三百七十億円の税金を支払おうという点でま納得の得られるものでないことは明らかであります。  さらに問題はあります。一体、事業が完成したとき、最終的に幾らの事業費がかかるのかということです。それがはっきりしないと営農計画も立てられないはずであります。二千三百七十億円で終わるなどということはだれも考えていないわけでありまして、単純に消費税の引き上げ分だけでも、残りの事業費八百億円で済むとしても十六億円余分にかかってくるわけであります。  問題は、内部堤防工事と農地造成工事が残っているわけですが、その内部堤防工事は総延長十七キロに及ぶ工事であります。完成期限の二〇〇〇年まで、あと三年間で仕上げなければならないものですから、その工事自身が大変なものです。  しかも、ここに大きな障害があります。それは、調整池としての役割を果たしながら工事を進めなければならないということであります。潮受け堤防がある中で、洪水高潮のときは、あの調整池に満々と水がためられることになる。そのとき、内部堤防が工事中であればどうなるか。未完成の内部堤防から干陸地に一気に水が流れ込んでくるわけでありますから、その工事への打撃など、極めて困難な事態が生じてくる可能性があるわけであります。  このことについて、農水省はどう認識しておられますか。そして、その対策、あるいは今後の事業費八百億円の中に、初めからそういうことを計上していらっしゃるのか。
  183. 山本徹

    山本(徹)政府委員 総事業費二千三百七十億円は、約千五百ヘクタールの平坦で優良な農地造成することを目的とするとともに、高潮洪水に毎年悩まされております諌早湾の沿岸地域の住民の方々の生命財産を守るための、高潮洪水防災対策を強化するための防災機能を持っておる。これを合わせて二千三百七十億円の事業費として事業を進めているわけでございます。  来年度以降につきましては、残り約八百億円の事業費を見込んでいるわけでございますけれども、内部堤防については、約十七キロでございますが、単位延長当たりの築堤量、すなわち断面積が、これは外部の、有明海に面しております潮受け堤防に比べて二割程度と小規模でございます。基礎処理も簡単でございまして、相当な区間が陸上施工も可能でございます。これは堤防の上を車が通せるというような事情にもございますので、内部堤防は潮受け堤防に比べましてはるかに安価な施工が可能でございます。  また、地区内整備につきましては、干陸後の整地、道路、水路等の整備で大規模な工事を必要といたしませんので、総事業費が不足するとは考えておりません。
  184. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私は、大きな障害があるということについて質問をしているわけですが、あなた方は、地区内整備は、既に干陸している範囲を中心に一定の湛水を許容できる工事を施工する、そういうことを言っていらっしゃいますね。これは間違いあるかないか、そのことだけ言ってください。説明はいいのです。地区内整備は、既に干陸している範囲を中心に一定の湛水を許容できる工事を施工する、それでいいですね。
  185. 山本徹

    山本(徹)政府委員 調整池マイナス一メートルを基準に設計いたしておりまして、洪水のときにはこれが一時的に上昇することはございますけれども、これは短時間の間に排水いたしましてマイナス一メートルを基準に維持するようにいたしますので、工事に大きな支障はないと考えております。
  186. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私はそうは思いません。そして、しかもそのことが、これからの工事に大きな障害をつくり出し、時間的にも長引かせていくのではないかというふうに思うわけです。  ここでもう一度確認をしなければなりませんが、内部堤防工事は、早くて来年の予算成立後ですね。そうですよね。それから入札を行い、落札した業者の立てる工事計画によって取りかかっていくわけです。そうでしょう。そうすると、早くて来年の夏。それから二年、この三メートルの内部堤防というのができるのです。完成時は四・五メートルですから、いわば仮堤防という形で、とにかく二年かかってつくるということになるわけです。だから、それだけでも二〇〇〇年を超えていくということは、これは明らかであります。  さらに、途中で洪水高潮どで、建設中の内部堤防が崩れたり、あるいは大量の土砂や水の流入で干陸地が覆われるというような事態が来れば、完成時期がもっとおくれてくる。  また、安易にできるとおっしゃいますが、何しろ二年で十七キロの内部堤防を、とりあえず三メートル高さ——完成時は四・五メートルですが、三メートル高さで仮建設をするということは、これは一日の建設ノルマは、年間三百日工事としても、一日三十メートルのピッチで進めていかなければならない、そういうことになるわけですよ。そうすると、こんな突貫工事が技術的に可能なのかということです。  大臣、建設費についても、長崎県知事は、河川や海岸堤防のことを指しているわけですけれども、そのかさ上げや新設を五〇キロ進めるためには、二千億から四千億かかる、これは潮受け堤防計画に反論したお言葉として言われているわけですが、そうすると、結局十七キロで、あなた方は三百億円という見通しを、計画を持っていらっしゃるけれども、知事の言うとおりとすれば、九百億円あるいは千二百億円というように、うんと価格が変わってくるわけです。  そういう点で、こういうふうな突貫工事が技術的に可能なのか、建設費の点でもこれでいけるのか。そういう中には人件費も当然含まれていると思いますが、そういうことで、この金額でいけるというふうに思っていらっしゃるのか、明らかにしてください。
  187. 山本徹

    山本(徹)政府委員 この内部堤防でございますけれども、これは平成十年度、十一年度、十二年度の三年間を予定しております。継続事業でございますので、平成十年度の予算が計上され、かつこれが予算議決されれば、できるだけ早い時期にこの事業に取り組みたいと考えておりまして、三年間かかって、この工事は実施いたします。  それから、今堤防構造あるいは作業工程のことを御指摘がございましたけれども、知事の御指摘海岸堤防というのは、潮受け堤防がない前提で、潮受け堤防のかわりに、海岸に、防潮効果を持った、いわば潮受け堤防をつくるわけでございまして、その構造強度は、私どもが現在建設いたしております潮受け堤防と同じ程度の構造強度が、直接外洋に面しておりますので、必要でございますけれども、先ほど御説明申し上げましたように、内部堤防につきましては、調整池の中で、マイナス一メートルで水位を維持し、潮汐の干満がない、あるいは高潮にも襲われない平穏な内部の調整池の中での作業でございまして、構造も、先ほど申し上げましたように、断面積が潮受け堤防の二割程度と、小規模で済みます。  したがって、建設単価も当然安くなりますし、作業も平穏な内部の調整池での作業になりますので、陸上からだんだんこの堤防を延ばしていきますので、その堤防の上を作業車が運行することが可能でございます。したがって、潮受け堤防のように、工事船の運航というような形で作業する必要がございませんので、施工費は格段に安価になります。  これは、潮受け堤防あるいは潮受け堤防のない状態での海岸堤防と大きく異なっておりますので、私ども、現在の予算で十分実施可能であると考えております。
  188. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 もう一つの問題は、潮受け堤防と内部堤防の耐震性の問題であります。  私、調べましたら、諌早地域というのは、橘湾に活断層がたくさん見られるわけです。そして、島原地方には活断層が縦横にあるわけです。こういう地域に巨大な構造物をつくるわけですから、耐震性が極めて重要なことは、阪神大震災の例を持ち出すまでもなく、明らかであります。  この潮受け堤防と内部堤防の耐震性は、震度五の地震の耐震性しかない、見ていない、こういうことをあなた方は答えていらっしゃいます。一体この程度の耐震性でいいのか。もし高潮時に震度五以上の震災があったらどうするのだ。現に今、九州では地震があちらこちらで起こっておりまして、五月十三日の鹿児島の震度ま六度弱です。こういうふうに考えますと、これは大変なことになるのではないかというふうに考えますが、どう答えられますか。
  189. 山本徹

    山本(徹)政府委員 耐震性については、私ども設計の段階で十分に検討、吟味いたしておりまして、その結果でございますけれども、諌早湾内には活断層は存在いたしておりません。したがって、活断層のずれ等によって、直接上部堤防に被害が及ぶことはないと考えております。  ただ、隣の島原半島には活断層が存在しております。この活動による地震等、これは十分配慮する必要がございますので、土地改良の設計基準、これは耐震構造の基準を定めておりますけれども、これに沿って耐震設計を行い、このもとに築堤いたしておりまして、潮受け堤防については、非常に緩い傾斜の堤防になっております。したがって、耐震設計の現在の潮受け堤防に問題はないと考えておりますし、最近起きました阪神の大震災においても、土地改良施設について、これは同じような設計基準に基づいて実施しておりますけれども、致命的な破壊というような事態は生じておりません。     〔小平委員長代理退席、委員長着席〕
  190. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私は、きょうは時間がありませんし、防災問題についてやりとりをするというよりも、検証したいという立場でありますので、余り議論ということをしたくありませんけれども、阪神大震災の認識というのは、私は現にあの地域に何度も足を運んでおりますから、納得しかねるところがたくさんあります。  本当に今防災やあるいは耐震性、そういう点でこれが十分拍手できるものなのか、それからまた、農業本当に役立つのか。そういう点では、工事中の困難も予想されることですし、私はわからないことがたくさんあると思う。しかも、当然営農計画の策定も迷走することが予想されるわけであります。県当局は、ヘクタール当たり一千百万円、こう言っておりますが、事業費がオーバーすれば、これでできる保証はありません。  大臣、改めて言うまでもありませんが、二〇〇一年は、WTO協定の見直しの後になり、引き続いて関税率が引き下げられることになりはしませんか。しかも、営農計画でバレイショの生産をうたっていらっしゃいます。今日本の冷凍バレイショの生産量は三万五千トンであるのに対して、輸入の冷凍バレイショは二十万トンに及んでいます。その輸入量の八七%がアメリカから来ておりますが、二年間で二八%ふえています。こういう状況で、さらに野菜農家で五百二戸、酪農肉牛農家で八十二戸。畜産農家は恐らく一億をはるかに超える投資をしなければならない。そういうところに参入する農家がいるとお考えですか。私は、これはもう大臣に聞きたい。どうですか。大臣の御答弁を。局長は結構です。
  191. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 諌早湾干拓事業目的は、もう申し上げるまでもなく、平たんな、大規模な農地造成とあの地域防災対策であります。  今委員指摘農地の活用の問題につきましては、地元知事、また関係市町村、非常に熱心に営農対策を考えておりますし、また県の構想も、現在発表している以外にもさらにいろいろな構想を私どもは伺っております。これから対外的な競争ということを考えますときに、生産性の高い、コストを下げる、そういう方向でこれから我が国農業を進めていくということは極めて大事な選択でございまして、だからこそ私どもは、これらの平たんな農地造成をして、生産性の向上、コストを下げるということについて努力をしていかなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  192. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私の尋ねていることに答えてください。私は、これだけの投資をして、本当に参入しようとする農家が出てくるのかということを大変心配して聞いているのです。そのことについて大臣はやっていけるというふうにここではっきり言われるのかどうか、それを聞きたいわけです。
  193. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 私は、長崎県の知事から大丈夫だというふうに聞いております。
  194. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 知事が大丈夫と言われても、私は国としてそのことを本当こ検証しなければいけないというふうに思います。きょうは建設委員会でも実は中島議員が質問をしておりまして、これで防災問題を終わりますが、多くのマスコミ指摘をしておりますように、あの八三年十二月に出された諌早湾防災対策検討委員会の中間報告でも、遊水池の余裕がない、容量が足らず、防災面から不十分であるということが指摘されているわけです。この中間報告は、今日もなお農水省はみずから公表されていない。私は、その責任は重大であると思います。  いずれにしても、さまざまな点から、この諌早干拓事業は十分に時間をとって吟味し、最良の道を選ぶときであります。それまでは一刻も早く水門をあけ、干潟の命を救うべきであります。そのことは、もう既に朝日新聞の世論調査でも、これはきょうですか、毎日新聞の世論調査でも、はっきりと国民の声、長崎県民の声として出ております。私は、大臣にその決断を求めたいと思います。
  195. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 防災効果の点について、中間報告をしばしば引用されますけれども、正確に御理解いただきたいと思いますことは、あの中間報告からさらに潮受け堤防をかさ上げをいたしまして、貯水池の能力をふやして、そして今の計画に至っておる。中間報告のとおり防災効果を疑問視されるということは、今の潮受け堤防をかさ上げを妙で、それによって調整能力をふやしておる、こういう事実関係も御理解いただきたいと思うわけでございます。  それから、世論調査の結果につきましては、設問の仕方等によりましていろいろな答えが出てくるということも、私どもは当然のことだと思っておるわけでございまして、十分に地元の、この事業の推進についての熱心な御要望を踏まえて、私どもはその地域の方々の生命、財産を守る、そういう立場、また地方分権、そういう今の流れの中で、地域の人の切実な願いを実現していくということが私どもの大きな責任であろうかと思っておるわけでございます。
  196. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 それでは、次の問題に移ります。生産者麦価の問題でお尋ねします。  大臣は、諌早湾干拓問題では食糧自給率の向上を強く主張しておられるわけですが、この生産者麦価問題こそ、まさに食糧自給率向上に直接結びっく問題であるわけであります。  麦の食糧自給率は九五年でわずか七%、これは九〇年の一五%から一貫して低下してきました。ぞして五年間で半分になってしまっているわけです。大臣もおっしゃってお、でですが、日本の穀物自給率は、FAOの最新統計でも世界百五十一カ国中百八位、日本以下の国は、国土が砂漠や熱帯地域あるいは群島で穀物が生育できない国しかない状況であります。それだけに日本での麦生産の抜本的な引き上げを図らなければならないときであります。  そのために必要なことは何なのか。それは何といっても、麦生産が振興する、すなわち生産者が意欲を持つことであります。そしてそれは、具体的に言えば、生産費を償い、生産者が意欲を持って増産を図れるような生産者麦価に引き上げていく心ここが決定的に大事であります。  私は、大臣のお考えをここでお聞かせいただきたいわけであります。
  197. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 委員御承知のように、麦の政府買い入れ価格につきましては、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の規定に基づきまして、生産費などを参酌した上で、生産性の向上と品質の改善に資するよう配慮して決定するものとされております。  九年産の価格につきましても、生産費調査結果等を踏まえ、米価審議会の意見を聞いて適正に決定してまいりたいと考えておるわけでございまして、麦価についてはそのような法律の定めるところにより決定をしておる、こういうことについては委員もよく御承知のとおりでございます。
  198. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私は法律のことはよく知っての上で聞いているのです。大臣食糧自給率の向上を非常に熱っぽく語られる、私はそのお言葉自身に大変共感しています。やはりサミットにいらっしゃったなということをつくづく思っています。それだけに本当に、この際、食糧自給率向上につながるポイントのところをお互いに確認しようじゃないかと思って申し上げているのです。法に定められた云々を聞いているわけじゃないのです。  私は、生産費を償い、生産者が意欲を持って増産を図れるような麦価の引き上げが今求められている、そうでないと、五年間で半分に生産量が落ちてしまうというような、その崩れをとめることができなくなるという点を聞いているわけであります。  大臣、御自身のお言葉で率直に聞かせてください。
  199. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 御指摘の点につきましては、私ども、四月からスタートいたしました食料・農業・農村基本問題調査会で検討いたしておりまして、新しい農業基本法の制定をも考えているわけでございますが、その中で価格政策の問題についても検討することが大きな課題であるというふうな認識で今おるわけでございます。
  200. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 時間がありませんから、最後にもう一点。  きょうは、わざわざJRAの須田常務にお越しをいただきまして、ありがとうございます。堺に進出を予定している場外馬券売場の問題についてお伺いをしたいと思います。  この問題は、ことしの三月、建設予定地になつている花田口町の自治会の住民は、誘致に反対している自治会長を百六十八名中百十四名という支持で再選をいたしました。ずっとこの地元の住民は誘致反対を叫んできたわけでありますが、ことしの三月末、この自治会は重ねて、推進反対、誘致は嫌だという住民の意思を会長の再選によって示し、意思表示をしたわけであります。  JRAは地域の同意が前提ということを言っていらっしゃるわけですが、そうであるならば、もう本当に断念の意思を示すべきじゃありませんか。今もって調整は終わってない、引き続き見守っていきたい、どういう態度は許されないというふうに考えるわけであります。一体いつそういう決断をされるのか、きょうははっきりそのことをお伺いしておきたいのです。
  201. 須田洵

    須田参考人 委員ただいま申されましたように、三月二十三日に反対派の会長名で総会を開いたということは知っておりますが、その詳細につきましては、これがこういう議事録だという形で私どもが見る機会にまだなっておりませんで、十分にはその内容について把握はしておりません。  ただ、賛成派の住民なり、あるいはウインズをここに設置したいというその誘致者からのお話では、その会合では反対派の代表者が再任された、今委員が申されたことでございますが、本件に関する審議等については特に行われなかったという話を聞いております。  このように、内容が、詳細がわかりませんけれども、基本的には、この花田口町会におきましても賛成、反対並立した形になっておるというふうに、私どもとしては実態をそのように理解しております。  いずれにしましても、これにつきましての私どもの対処する基本方針としましては、ただいま委員も申されましたように、地域調整といいますか、地元調整がなされるということが私どもがこの設置に乗り出すことの前提でございますので、そのような調整がなされない限りは、私どもとしては、設置するあるいは農林水産省に申請するという段階には至らないというふうに思います。  これについての具体的な期限といたしましては、私どもとしましては、本年いっぱいということで、誘致者の方からはことしいっぱいはぜひ調整の努力を続けさせてくれということでございますので、そうした期限の中で対処していきたい、かように考えております。
  202. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 どうもあなた方の言葉にはひっかかりがあります。反対派の会長が招集したと。天下の花田口町自治会が自治会役員を選挙するための総会を開いて、そこで再選されたのが反対派の自治会長であって、何か意図的にその会が開かれたような言い方というのは全くいただけません。  それから、調整とおっしゃいますが、一体何を調整するのですか。地元の住民は、推進をしようとする人たちのあの会長に対して異議ありということで、反対をする人を会長に選挙して、一度当選し、二度目も当選を果たして、二度の意思表示をそこで住民はいわば示したわけです。しかも、選挙でいえばえらい勝利ですよ。百六十八名中百十四名、一遍こんな選挙をしたいものだと思いますが、それくらいの圧勝をしているのです。それをあなた方、何を調整と言うのですか。  私は今、ことしいっぱい、年内、十二月三十一日ですね、それを延ばすことはしないということは聞きおきますが、しかし、それでは納得できません。  大臣、聞いてください。バブルが崩壊した後、いろいろなこういう場外馬券売場などの誘致の動きが不動産屋さんなどから出てきているわけです。そして、そういうところで必ず起こってくる問題というのは、地域調整ということで話が長引くわけです。地元の、足元の住民が反対しても地域調整だと。  そして、この花田口町もそうなのですけれども、大臣は高松にお住まいですから、大変古い、歴史のある町ですからおわかりだと思いますが、親子二代、三代、四代と続いて仲よく暮らしてきたこの町にこの馬券売り場の話が始まったばかりに、地域の中で深刻なトラブルが始まりました。  もう高齢化になっているこの地域人たちは、それでなくてもお互いに助け合いをせんならぬ、何かあったときには声かけ合わんならぬ関係をつくり上げたいと思っているときにこういう問題が起こった。そして地域住民は、賛成だと言う人もいるけれども、やはり反対だということで、みんな自治会の中で意思表示をして、そういう方向で今意見はまとまっているのです。ところが、調整だといって時を延ばせば延ばすほど、その地域の中で取り返しのつかない傷、人間関係の傷が出てくるのです。  岡山市で同じような問題が起こりました。私はかつて当委員会でこの問題を取り上げましたが、JRAの断念が引き延ばされたために、住民の対立が大変な痛ましい傷を広げてしまいました。これは双方にです。反対派でも推進派でも双方に傷を残した。そして、オーナーの方は建物までつくってしまいました。それでも、地域の調整まとまらずということにせざるを得なくなって、JRAは、結局はこの計画は断念するとしたわけであります。しかし、これは大変な経済的ロスであり、かつ地域コミュニティーを取り返しのつかないような状態に追い込んだという点で、私は、もうこういう過ちを繰り返してはならぬと思う。調整という名は、きちっとJRAの判断で今決断を下すべきであります。  最後に大臣のお考えを聞いておきたいと思います。
  203. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 実は、私の郷里の高松で場外馬券場が数年前にできました。いろいろ意見がございました。私も、地元でございましたからよくわかっております。いろいろな意見がございました。プラスだという意見もあるしマイナスだという意見もあります。要は、地元がこの事業によってどういうふうに利益を得るか、不利益をこうむるか、そのことを真剣に地元の方々は考えて、そして、何事でも同じでございますけれども、プラスもあればマイナスもある、総合してマイナスだと考えればやめたらいいし、総合してプラスの方が大きいと思えばやれまいいし、そういう判断を地元の方々が下されたらいいと思うわけでございます。  農林水産省としては、これは許可する立場でございますので、地元の皆さん方が総合的にどういうふうな判断をされるかということを見守っておる、こういうことでございますので、十分に御理解いただいておると思いますけれども、私どもといたしましては、そういう考え方でおるわけでございます。
  204. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 もう時間が参りましたので終わりますが、JRA、早く結論を出してください。もう結論の中身はやめるということで皆さんの判断は決まっている、その時期を十二月三十一日だというふうに私は判断をいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  205. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、前島秀行君。
  206. 前島秀行

    ○前島委員 最初に、森林・林業、国有林等々についてお聞きをしたいと思います。  昨日、財政構造改革会議が一定の結論、中間報告的なものを出したのでありますが、その国有林の項のところで、与党間での各党の申し合わせといいましょうか、相当この部分が後退をしているわけですね。とりわけ、国の責任、その森林・林業、山に対して国がどう責任を持つかということが非常に不明確になっているわけです。この文章そのものも、国が一体どういう形で責任を持つかということが非常に不明確なのですね。  今さら言うまでもなく、山に対して、森林に関して、物、生産財的な機能に始まって、さまざまな機能がある。公益的機能があるということが言われていることはもう今さら論をまたないわけですね。片や、林業・森林を取り巻く状況というのは非常に厳しい。であればあるほど、国が真剣にこの山に対して、森林に対してどう取り組んでいくかということを示すということが、その決意といいましょうか方向を明確に打ち出していくということがこれからの具体的な施策に通じていくだろう、こう思っているわけです。  構造改革議論から今度は行政改革の方に議論が進んでいくだろうと思うので、まず大臣として、農林省として、林野庁として、この森林、山に対してぴしっとした責任を持つのだ、国は責任を持っていきますよということを明確に出さないといかぬと思うのですが、何かあいまいなような気がしてしようがないのです。この森林に対し、山に対し、国はどうその辺の責任を持っていくのか、その辺のところの考え方といいましょうか、腹構えみたいなものをまず大臣に聞きたいと私は思っているのですけれども、どうでしょうか。
  207. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 財政構造改革会議で農水省所管の問題につきましていろいろと議論がなされた中で、国有林野の問題も、御承知のようにあったわけでございます。結論から申し上げますと、今、林政審で御審議をいただいておりますので、それを待ちませんと、これも総理の諮問でございますから、結論として財政構造改革会議で具体的な内容について出すというわけにはいかなかったというふうに承知をいたしております。  ただ、委員が言われましたので申し上げますけれども、我々としては、この森林の持つ公益的機能、国土保全、水資源涵養の問題については、非常に重要な役割を果たしておるというふうに認識しておりまして、こういう考え方からいたしますと、基本的には、国が一元的に保有、管理することが適切であるというふうに思っております。  これからいろいろな議論が進むわけでございますけれども、そういう議論の中で、いかにして国民共通の財産である緑と水を守っていくか、ここに焦点を合わせて考えていきたいというふうに考えております。
  208. 前島秀行

    ○前島委員 そういう姿勢だと林野庁など要らないということになってしまいませんか。山といいますか林業を取り巻く内外状況というのはやはり厳しいわけですから、これを国が責任を持たなくて民間にというわけにはいかないだろうと思うのですね。民間というのはある程度経営という側面があることは、これはやはり当然でありますから、そこをベースに山の政策を立てていったらどうなるかということは今さら言うまでもないと思うのですね。こういう状況であり、財政構造改革、これから行政改革、国有林をどうするかという重要な岐路に立っているときに、農林省が、林野庁が、国が責任を持ちます、責任を持っていきますというところを打ち出すということがやはり今非常に重要だろりと私ま思っております。もっと積極的な意味で前に出ていかなくちゃいかぬではないだろうかな、こういうふうに思います。  そういうことからしますと、これから行政改革等々の方向が議論されていく中で、国有林に対して、この文章を見ると非常にあいまいなのですよ。国はどう責任を持つかということについて、ないですね。与党間の政党間の中では、一元的に管理する、管理と所有は国が責任を持つ、それから、具体的な作業については民間に作業を委託したり云々はしますけれども、基本的には国有林の管理、所有、これは一元的にやります、国が責任を持ちます、こういうことが私はすべての出発点の柱だろうと思うのですね。そこのところを農林省として、林野庁として、大臣として明確に方針として訴えていく、これがこれから財政構造改革、予算編成から行政改革の議論に向かって行くときに大切なことだろうと私は思います。  そこで、国有林の管理、所有は一元的に農林省であるということを大臣、明言できますか。
  209. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 私はそういう思いを込めて申し上げたつもりでございますけれども、もう一度申し上げますと、委員が申されましたように、国有林の管理、保有は一元的に農水省でやるべきものだと思っております。
  210. 前島秀行

    ○前島委員 ぜひ、これから重要なときですから、その辺の、国が責任を持つという線だけは、あらゆる側面で大臣として強調してお願いをしたいと思います。  それから次に、先ほどから議論されています諌早干拓のことについて建設省環境庁に伺いたいのですが、この事業一つの大きなテーマ、目的防災ということでありますので、当然、河川を中心とした洪水対策というのは建設省の役割だろうと思うのですね。農林省の方は高潮という側面でやってきたと思います。  そういう面で、この一連の事業の出発点から建設省は、この防災対策、とりわけ洪水対策ということでもってどういう役割を担ってきたのか。事業着手以来今日まで、どういう事業をしてきて、どういう金をつぎ込んできたのか。とりわけ河川の堤防の達成率、何%になっているのか。今後、一連の防災考えたときに、いつごろまでに、本明川のダムの完成目標、それから本明川を中心とする周辺の河川の堤防の完成目標はどうなっているのか。これは建設省、明確に数字で答えてください。  一緒環境庁に聞きます。環境庁は、この一連の事業で三度にわたって意見書を出していますね一六十三年、それから平成四年、そしてことしの三月の例の遮断する直前に、三度にわたって意見書を出しているわけですね。やはり最初は、公共排水のものは調整池の外に出せというのが条件であった。二度目のときには、中に出すのはやむを得ないけれども、公共下水等々との調整が十分必要ですよ、こういうことを言って、やはり環境面の悪化を指摘したと思いますね。今度の直前のときにも、やはりその辺のところを十分意識され予測されただろうと思いますので、環境汚染、とりわけ水質汚染のことについて意見を述べられた。  そして、閉めて五十日に達した今日、環境庁は、今日の水質状況を——データが出ていますね。環境庁からのデータも農水省からのデータも出ています。今日の状況を、とりわけ水質汚染という側面で環境庁はどうとらえているのか。この今日のデータから見て、どういう対策をとるべきであるというふうに環境庁は思っているのか。  それぞれ恐縮ですが、簡単でいいですから、建設省環境庁に聞きたいと思います。
  211. 渡部義信

    ○渡部説明員 簡単にお答えさせていただきます。  本明川の治水事業につきましては、昭和二十四年に長崎県において行われ始めました。ところが、昭和三十二年に諌早水害がございまして、これを契機といたしまして、昭和三十三年から建設省の直轄事業として河川改修を行っておるところでございます。特に被害が大きかった中流域を対象といたしまして、昭和三十九年ごろまでにはその付近につきまして概成させておるところでございますが、現在は、昭和五十七年の出水で、溢水、はんらんのございました下流域及び支川の半造川の改修を重点的に実施しているところでございます。  委員質問の現在の河川の堤防が完成断面になっている堤防の延長の比率で申しますと、本明川につきましては三四%ということでございますが、現在、大河川の当面の目標といたしまして、三十年ないし四十年に一度起こるであろう洪水を当面の目標といたしまして整備を図っておるところでございますが、そういう観点から見ますと、約七〇%の流下能力を確保、整備済みになっておるという状況でございます。  それから、御質問のございました本明川ダムの件でございますが、諌早市街地を拡幅するのが非常に難しいということで、本明川ダムで洪水調節をするという計画になってございますが、本明川ダムにつきましては、現在、基本計画をつくるための調査中ということで、地質調査環境調査等々を行っているところでございます。  そういうことから、いつまでにこの事業が完成するかということについてははっきり述べられませんが、一生懸命頑張ってまいりたいというふうに思っております。
  212. 寺田達志

    ○寺田説明員 まず、調整池の水質についてでございます。  調整池の水質測定結果につきましては、現在まだ整理中ではございますけれども、有機汚濁の代表的な指標でございますCOD、これについて見ますと、平成六年度から八年度まで、おおむね二・一から四・九ミリグラム・パー・リットルという水準であったものが、締め切り後徐々に上昇してまいりまして、最近では七ミリグラム・パー・リットル程度になっております。また、その他の物質でございますけれども、富栄養化の原因物質でありますところの窒素あるいは燐についても濃度の上昇傾向が見られるということでございます。  ただし、調整池の水質につきましては、天候に左右されるとともに、現在工事が実施されておること、あるいは従来の海域の生態系が淡水生態系になるという生態系の大きな遷移期であるということでございますので、一定期間その推移を見る必要がございまして、短期間のデータで判断をするということはなかなか難しい面があると考えているところでございます。  しかしながら、水質が悪化傾向を示しているということは事実でございますので、環境庁といたしましては^水質の動向を的確に見定めるとともに、必要な対策をとるべきであろうと認識しておるところでございます。  このため、さきに、農林水産省と連携を強化するということで、環境庁と農林水産省の担当課室長から成りますところの諌早湾干拓環境保全連絡会議を設置いたしまして、体制の整備を図っております。第一回会合を去る五月三十日に開催いたしまして環境モニタリング結果や環境保全対策につきまして意見交換を行ったところでございます。  また同時に、私どもとしては、第三者の専門家意見、これを十分お聞かせいただくということが大事であろうと考えておりまして、当庁の申し入れを踏まえまして、九州農政局に設置していただきました諌早湾干拓調整池等水質委員会の機能が拡充され、メンバーに水環境に詳しい専門家が加えられたところでございます。  私どもといたしましては、今後、水質監視を強化するとともに、この委員会意見を聞きつつ、従前から環境庁意見として述べております環境保全対策に加えまして、必要な場合には追加的措置についても検討することとしております。
  213. 前島秀行

    ○前島委員 建設省防災対策という意味で非常に大切なのは、下からの高潮対策という側面と上からの両面があって初めて防災対策になることは、私のところもちょうどその時期に台風に遭いまして、狩野川台風でやられたわけですよ。ほとんど河の方とあれとが一体こなってやっている。両方やって初めて防災対策なのです。ダムもいつ建つかわかりません。本明川の半分の側面のあと半分の方の堤防は仮でしょう。それがまだ何年に完成するかわからないという状況ですね。  環境庁に聞きたいですけれども、それでは、三度意見書を出しているけれども、それは全部そのとおりに、環境庁が指定したとおりに、言ったとおりに現状はなっているという認識なのですか。
  214. 寺田達志

    ○寺田説明員 環境庁から申し上げました意見は、大きく分けまして二通りになろうかと思います。  一つは、調整池に流入する水質汚濁負荷量の削減対策、これは下水道の整備等々でございます。こちらについて言いますと、本年三月段階で対策の進捗状況などをヒアリングさせていただきまして、おおむね御努かはいただいておりますけれども、下水道等については一部整備のおくれがあるという認識に立っております。  それから……(前島委員「いいです、いいです」と呼ぶ)よろしゅうございますか。
  215. 前島秀行

    ○前島委員 時間がありませんから、そんな環境庁らしくない話なんか聞きたくありませんからね。  農水省のデータ、あるいは環境庁のデータから見れば、CODの結果なんというのは、五月十九日、もう十を超えて二十二・〇という結果が——P2地点というのはちょうど有明川からの出口のところなのですよ。二十二ですよ。八を超えたらもう異常だという状況の中で、これはそう簡単に環境庁が楽観視できるような汚染状況じゃないと私は思います。  そこで、時間がありませんから、大臣に聞きたいのです。この事業を決定したのはあなたじゃありませんから、ある意味では大臣に気の毒だなというふうに思います。  僕は、この事業を四つの角度から見るべきだと。  一つは、農政の側面からどうかなということです。  農政の側面から見ると、私は、あそこに千五百ヘクタールの農地を何が何でもつくらなくてはいかぬ必然性はない。しかし、農地があるにこしたことはありませんね。長崎県が中山間地が多いから平地の農地を求めている、これはわかりますよ。だけれども、あそこに一千五百ヘクタールが何が何でもなくてはいかぬかというと、そうではないと思いますね。私はそう思います。  平地の農地があるにこしたことはないけれども、問題は、何をつくってそれをどう展望するか。私は、現地に行って県の農政部長に、酪農できるかと聞いたら、無理でしょうねと言っていました。私の静岡県のいろいろなところから比較した場合、なかなか厳しいなということは私自身も思いますから。生産調整していますものね。そこへ十アール百万以上、八ヘクタールを分けるというのでしょう。一億以上の借金をして、さてさてというのが現状だろうと私は思う。それを聞いたら、県の農政部長は、知事の横にいる前でそのとおりですと言いましたよ。  ただし、農地をつくりたい、農地を確保したいという農政の側面の必然性は、私は必ずしも否定しません。だけれども、水害の側面、防災の側面あるいは環境の側面から見て、あそこに千五百ヘクタールの干陸地をつくらなければいかぬのかというところは、議論の余地があるだろうと思います。防災の側面が大きなウエートになると思います。  先ほど言いましたけれども、上と下、両方相まって防災対策ができる。この洪水対策と高潮対策、かみ合っていません。これはやはり、本当防災対策をするのだったら、本明川ダムがこのせきとめと一緒こなるぐらいなスケジュールでくれば、なるほどなとわかります。  あるいは、環境汚染。汚染しているのですよ。あの排水事業というものを、いまだ実行していません。実行して、予測よりか半分しかいっていないのでとめていましたから、これは日に日に汚染していることは間違いないですよ、生活排水と下水のあれが流れてきているのですから。汚染することはわかっていたから、六十三年の環境庁条件は、その排水調整池の外に出しなさいと提起したのでしょう。それが今、中になっているのですから、汚染することは間違いない。片っ方をとめてしまっているのです。そういう対策は合っていません。  あるいは、公共事業の側面から見る必要もあるだろう、私はこう思っています。  二千三百七十億の金が、今日まで来て、今いろいろな議論をしていきますと、さらにかかるだろうな、私はこういうふうに思います。  そこで、大臣に一いろいろな経過がありますからね。私たちの党にもいろいろな経過があることを私、百も承知で言っているのです。私たちの党にも経過がありますけれども、やはりこの干拓事業、その目的をさらによくするために、さらにその目的を達成し国民理解を得るためには、農政の側面から見ても、あるいは環境の側面から見ても、あるいは防災対策の側面から見ても、公共事業のあり方から見ても、さまざまな課題がこの事業の中にあるような気がして私はなりません。だとすると、この事業の実行責任者である大臣、あるいは政治家としても、この課題を一つ一つクリアしていく努力は必要ではないだろうかなと私は思います。  まず初めにやらなければいかぬのは、環境対策として、あの調整池の水質保全についてどうしたらいいかというのが今緊急の課題ではないだろうかなと思います。そういう面で、私は、やめろとか直ちに水門を上げてどうのこうのなんということを言うつもりはないけれども、大臣として、政治家として、この事業の抱えているさまざまな課題を一つ一つ処理していく責任と、その処理していくためのさまざまな政治決断は担当大臣として求められているのじゃないだろうかなと私は思います。その第一弾として、今起こっている、時間がたてばたつほど起こる調整池を中心とした水質汚染に対しては、一定の政治判断をもって何とか処理するということが今求められているような気が私はいたします。  そういう面で、さまざまある課題を処理する、クリアする、そのために必要な、大臣として、政治家としての政治決断もあえてやる、その辺のところはどういうふうに大臣として思っていらっしゃるかを聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  216. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 大変重要な御指摘をいただきまして、私もそのように認識をいたしておりますので、御意見は十分拝聴させていただきました。  まず当面、最初に取り組むことは水質の問題でございまして、そういう意味で、環境庁と農水省は連絡会議というものをつくりました。今いろいろ内容を検討いたしておりまして、その検討の結果に応じて具体的な対応をいたします。  その他のことにつきましても、防災効果は、雨が降って既にその効果があらわれたというふうに理解しておりますし、さらに、干拓事業造成する農地の問題についても、十分に検討して取り組んでまいりたいと考えております。
  217. 前島秀行

    ○前島委員 終わります。
  218. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、堀込征雄君。
  219. 堀込征雄

    ○堀込委員 最後でございます。時間をいただいて、ありがとうございます。  私は、きのう、財政構造改革、報告がなされたわけでありまして、今後の農政はやはり基本的にはこれに沿ってといいますか、その枠というものを抱えながら展開せざるを得ないという意味で、この問題について少しく質問をさせていただきます。  いずれにしても、国家財政がこういうときですし、とにかくこの危機を乗り切らなければならない。我が農政も、そういう意味ではつらいことをやっていかなければならぬということは事実だと思いますから、そういうことでやらなければいけない。ただし、そういう状況国民、農家、農民の皆さんにわかっていただきながら、了解をしながら進めていかなければならぬということだろうというふりこ思います。  そういう意味で、一つは、今度のラウンド対策の期間の延長というのがあるわけでありまして、この期間につきましてはもう私が申し上げるまでもないわけでありますが、先ほど来大臣の答弁では、総額確保、そして苦しい中で期間の二年延長はあったけれども、農家に理解される範囲内ではないか。まあ、御努力もされたので、それはそれですけれども。しかし、これも、八六年−八八年をベースにしながら九五年からミニマムアクセスが導入される、そして二〇〇〇年にはその数字が八%になる、こういうことがあるわけで、そして、七年目以降の問題については、終了前、二〇〇〇年の一年前から交渉していくということになっているわけでありまして、場合によればまた新しい対策も必要になるかもしれないという中でのこの二年間延長ということでありますから、やはり、そういう点も踏まえて、農家に約束したことであるけれども、国家財政がこういうことだという理解を得ることが必要ではないか。  そのためには、農林省自身もこういうふうに改革しますよ、例えばこういうふうにスリム化したりいろいろな苦しみをやりながらやりますよ、だから農家の皆さんわかってくださいというようなことをやはり説得というか、総合的にわかってもらおうというような対応が必要ではないかというふうに私は思うのですが、その点いかがでしょうか。
  220. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 公共事業につきましては、御承知のように三年であるとか、また四年であるとか、いろいろ期間の延長というものがございました。そういう中で、ウルグアイ・ラウンド対策につきましては、農業農村整備事業を中心にして二年間の延長、総額は六兆百億を確保できた、こういうことでございます。  今委員指摘のように、六年間で足腰の強い農業を築いていく、こういうことは非常に大事なことでございまして、六年間の中でいかに今申し上げたことを実現していくか、こういうことでございますので、このたびの期間の延長については農業農村整備事業を中心とした延長であって、我々としては六年間ということを念頭に置いて日本農業の体質強化には努力をしていかなければならぬ、このように考えておるわけでございます。
  221. 堀込征雄

    ○堀込委員 今の答弁わかるわけでありますが、ただもう少しわかりやすく国民説明すべきではないか。その一つが、例えば公共、非公共の、五対五にしますよということが書いてあるわけです。これは、先ほど来の答弁では、おおむね五対五とするんだ、現場の要求が先にあって、それを積み上げると大体五対五になるのだろうという答弁があった。これはちょっといただけないのです。やはり公共事業に対する全体的な制約というものはあるのだろう。その中である程度公共を減らさざるを得ないという理屈なりなんなりというのはどこかにあるのではないか。なぜ農業農村整備事業だけ二年間延ばすのか、なぜそれを五、五にしなければいけないのかというところがやはりわかりにくいのですよ。ここはどうですか。どういう理屈でしょうか。
  222. 堤英隆

    ○堤政府委員 UR対策の内容を見直すとした場合に、これまで三年間事業を実施してきて、残り三年間あるわけでございます。やはり本対策の趣旨から見ますと、できるだけ早期に効果の上がるものということを求める声も大変強いというのは、これは現実であろうというふうに思います。  そういうふうに考えました際に、さまざまな御意見を各方面からいただいているわけでございますけれども、やはり本対策の趣旨に沿って見直すとすれば、地域の実情を踏まえてニーズの高いものと、それから効果がより早くあらわれるもの、そういうものをある程度取り上げていくということも重要ではないかという御意見が大変強く私どもに寄せられております。  そうしました場合に、先ほどもちょっとお答え申し上げましたけれども、共同育苗施設でありますとかライスセンターでありますとか、それから集出荷施設でありますとか、そういった生産、流通、加工にかかわります施設、これはコストダウンをそれぞれで図っていくわけでございますけれども、そういうものに資する事業というのは効果の発現も早いということでへそういうものを大きく取り上げたらどうかということで考えますと、そういったものをある程度積み上げていくという作業が一方でございます。他方で、六兆百億円は一応動かさないわけでございますから、そうなると公共事業についてはUR対策の中ではややウエートがかかり過ぎてないかという御指摘も多分にあるわけでございます。  そういう中で、公共事業はもちろん大変重要な事業でございますけれども、そういうことも配慮して、公共事業から若干割愛をして先ほど申し上げたような趣旨の非公共の方に回していくということによって本対策の効果をより高めることが必要だ、そういう認識でこの問題に取り組んでいきたい、こういうことでございます。
  223. 堀込征雄

    ○堀込委員 ニーズの高いものあるいは効果が出るものという話でございまして、私は、公共事業が何か批判があってまずくてほかのものの方をやるべきだというような議論は、やはりなぜ五対五にしなければいけないのかという意味ではちょっとわかりにくいところがあるのではないかという気がします。しかし、今の答弁のように、もしこの集出荷設備だとかいろいろなところで即効性がある、あるいはニーズが高いとすれば、それはそれで理解がてきるわけであります。  ちょっと事務的にお尋ねをしますが、三年間経過をしてきました。これを積み上げてみて五対五になるという話がありましたけれども、おおむね五対五にするのでしょうけれども、これは今までの三年間は別で、これからの三年間そうする、こういう意味にとらえていいですか、どうですか。
  224. 堤英隆

    ○堤政府委員 UR対策は、御案内の六年間でございまして、今御指摘のように三年間事業実施をいたしております。そういうことを考えますと、見直しをするとすれば、自然に考えまして、残りの事業について考えるということが自然ではないかというふうに思っております。ただ、この文書にも「概ね五対五」という書き方をされておりますので、大臣もこの見直しの目安としてということで「五対五」ということで、かつ「概ね」ということを考えました際に、どちらでなければならないというふうに決めつける必要はないのではないかと私ども思っております。  要は、先ほど来お答えを申し上げましたように、それぞれの地域のニーズを積み上げてくるということで、五対五を目安としながら地域の実需を積み上げていくということが何よりも肝心なことだ、それが基本だというふうに考えております。
  225. 堀込征雄

    ○堀込委員 私が心配をするのは、このラウンド対策は六年間で事業費ベースで六兆百億円、国費、真水ベースでは二兆八千億ちょっとということで計画が立てられたはずでありまして、やはり公共事業を減らすといいますと、そこには国費ベースでどうなんだという話がどうしても出てくるわけであります。例えば、融資枠を拡大すると、確かに六兆百億は動かない、動かないけれども、国費ベースではやはりある程度結果的に減っていくということになるわけですね。ですから、今度の作業を見ていて、そういう意味で何かこう、六兆百億は維持するよ、ただし期間は二年延びるよ、だけれども国費ベースではどこか結果的に減っちゃうよという話になるおそれがあるのではないかということを実は心配しているわけであります。  そこらも、財政が厳しければある意味ではみんなで泥をかぶらなければしようがないのだけれども、しかしやはり農家にはわかりやすくそういうことは言っていくべきではないかという感じがするのですが、いかがですか。
  226. 堤英隆

    ○堤政府委員 本対策の見直しは、決して国費を減らすということを主眼としてということでもともと考えているわけでは全くございませんで、先ほど申し上げたような趣旨で非公共の事業をある程度ニーズを踏まえてふやしていく、他方、全体がふやせな、とすれば公共の方から若干の割愛をさせていただくという考え方で対応しているということが一つでございます。そうなりますと、非公共の事業といいましても、先ほど御説明いたしましたように、共同集出荷施設でありますとか、あるいは育苗施設でありますとか、ライスセンターでありますとかということになりますと、構造改善事業であったり山村事業であったりということになります。これはそれなりに五割前後の補助ということがつくわけでございまして、公共に比べると若干は下がるかもしれませんけれども、一定の補助のもとで実施をしてきているということでございます。  かつ、融資の場合も、そういうニーズがあればある程度これは取り込んでいったらいいではないかというふうに思っておりますが、基本的に、やはり先ほど申し上げましたような農構事業や山村事業の方のニーズが非常に高うございますので、そちらの方が割合としては相当高くなってくるのではないか、そういう意味で、国費がどうこうという感じは今のところございません。結果として若干の変動ということはあるかもしれませんけれども、それはあくまでも結果だというふうに理解いたしております。
  227. 堀込征雄

    ○堀込委員 その辺のところは私どもも応援をしながら対応したいと思います。  そこで、もう一つちょっと、これはラウンド対策じゃありませんが、財政構造改革の中で、例の土地改良の計画の四年間延長の話。これは、土地改良の長期計画は十年計画ですから四年、そのほか十六本ある事業は大体五年が主体だから二年延ばしますよというのはわかるのですね。十年だから四年というのはわかるのです。だけれども、実は、平成五年からこの十年計画というのをやってきて、既に五年経過しているわけですね。残り五年で四年を延長すると、これは、単純にすれば年間の土地改良事業費というのは半分になるのじゃないかという感じがするわけですよね。  恐らく、ほかの五年計画でも、道路計画などは来年から始まるからちょうどいいのですよね、道路整備の第十一次計画ですか、それはそれでいいのだけれども、ほかの事業、五カ年計画でも多分あると思うのです。既に三年過ぎたものだとか、そういうものを残りの期間でまた二年延ばすのかという問題になるわけですね、これはどうなんですか。  土地改良の長期計画は、そういう意味では十カ年で四十一兆円をやるということになっていますが、残り五年間をさらこ四年間延ます、こういうことになりますか、どうですか。
  228. 山本徹

    山本(徹)政府委員 土地改良長期計画の四年延長の件でございますけれども、これは、十カ年計画を十四年の計画で延ばして伸び率を算定することになっておりまして、五年を、残りの残年期間を四年間延長するということではございませんので、毎年の伸び率としては、仮定で計算いたしますと、ほぼ横ばい、若干マイナスかという程度でございます。  それで、私どもは、いずれにしても、これは計画でございますので、あくまで毎年度の予算の計上というのが大変重要であると考えておりまして、この計画のもとで、来年度以降の予算編成の中において事業の重点化あるいは効率的な推進、さらに現在実施している事業効果の早期発現、あるいは具体的に事業計画が上がっているところの早期の着工等々、実際の予算編成の中で工夫いたしまして、農業農村整備事業によって期待されておる生産性の向上、あるいは農村生活環境の整備といったような目的に対して悪影響のないように極力工夫して、効率的な予算執行に努めてまいりたいと考えております。
  229. 堀込征雄

    ○堀込委員 工夫しては結構なんですがね。ただ、十カ年計画がそういうふうになっていくわけでありますから、ここのところは余りまだはっきりしていないのだろうと思うのですね、ほかの十六本、全体の計画が。だから、私は、この十カ年計画がもしそういうことになると、相当土地改良事業というのはダウンはするなと心配をしているわけでありまして、これからまたもう少し明確になったところで議論をさせていただきたいと思います。  最後に、ラウンド対策はみんな補正予算で処理してきて、私も実は予算委員会で、もう決まっているものを補正でやるのはおかしいよという議論をさせていただきましたけれども、やはりここへ来て、どうしても補正でやらないと農林予算が目立ってしまうとか、そういうことを言われているわけであります。ただ、私は、やはりあれだけ堂々と決めてきたものですから、これはもう予算上乗せになってもしようがないのではないかという考え方なんですが、しかし、当初予算に入れると目立ち過ぎるから補正予算に入れなければならぬ、とりあえず、ことしは、当初予算で九百九十三億ですか、いずれにしても、これは補正か何かで措置しないと、事実上ちょっと事業が途切れたり、いろいろな問題が出てしまうのだろうというふうに思います。そこのところは何か先延ばしになったようですが、一体どうなっていますかというのが一つ。  それから、もう一つは、恐らく、これからデンバー・サミットなどが開かれて、特に日本とドイツあたりについては、各国から内需拡大策をやれという意見が出てくるのだろうというふうに思うのです。橋本総理も、クリントン会談で補正による景気刺激策についてはちょっと否定したというふうな経過もこれあり、一方では、アメリカあたりから、貿易黒字が円安で拡大していくと、相当内需拡大策やれよといったようなことがあったりして、補正をめぐる情勢というのは、相当混沌としているのじゃないかという感じがしますが、大臣の所見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  230. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 補正予算案の取り扱いにつきましては、今までいろいろと議論がございまして、そのことにつきましては御承知でございますから省略いたしますが、財政構造改革会議におきまして、昨日、総理より、事業の見直しとあわせて予算編成過程で検討する、この御発言が、文書ではなくて直接言葉であったわけでございます。したがいまして、現段階では具体的な方針は定まっておりません。しかし、従来、政府・与党合意でこのウルグアイ・ラウンド対策費については農林水産省の予算に支障を来さないように措置をする、こういった合意がございましたし、また、これまで補正予算でこの対策の大半を講じてきた、こういう経緯を踏まえますと、私どもは、適切な予算措置を講じていく必要がこの経緯を踏まえてあるというふうに思っております。  それから、サミットの問題にお触れになられましたが、総理は、今の非常に厳しい財政状況からしますと景気対策のための財政出動はしないと、これまた明言されておられますので、その点につきましては、今回は様子が違うのではないかというふうに思っております。
  231. 堀込征雄

    ○堀込委員 終わります。
  232. 石橋大吉

    石橋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十七分散会