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1997-05-08 第140回国会 衆議院 農林水産委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月八日(木曜日)     午後四時四十七分開議  出席委員   委員長 石橋 大吉君    理事 原田 義昭君 理事 松岡 利勝君    理事 松下 忠洋君 理事 山本 有二君    理事 北村 直人君 理事 久保 哲司君    理事 小平 忠正君 理事 藤田 スミ君       石破  茂君    植竹 繁雄君       大島 理森君    金田 英行君       木部 佳昭君    岸本 光造君       熊谷 市雄君    栗原 博久君       実川 幸夫君    鈴木 宗男君       砂田 圭佑君    住  博司君       丹羽 雄哉君    野呂田芳成君       牧野 隆守君    御法川英文君       茂木 敏充君    山本 公一君       井上 喜一君    一川 保夫君       木幡 弘道君    佐々木洋平君       島津 尚純君    城島 正光君       白保 台一君    菅原喜重郎君       宮本 一三君    矢上 雅義君       安住  淳君    鉢呂 吉雄君       春名 直章君    濱田 健一君       前島 秀行君    堀込 征雄君  出席国務大臣         農林水産大臣  藤本 孝雄君  出席政府委員         農林水産省経済         局長      熊澤 英昭君         農林水産省食品         流通局長    本田 浩次君         水産庁長官   嶌田 道夫君  委員外出席者         法務省入国管理         局政策課長   塩口 哲朗君         運輸省海上交通         局総務課長   田村雄一郎君         農林水産委員会         調査室長    黒木 敏郎君     ――――――――――――― 委員異動 五月八日  辞任         補欠選任   大島 理森君     砂田 圭佑君   亀井 善之君     岸本 光造君   瓦   力君     住  博司君   村岡 兼造君     茂木 敏充君   城島 正光君     島津 尚純君   仲村 正治君     白保 台一君   前島 秀行君     濱田 健一君 同日  辞任         補欠選任   岸本 光造君     亀井 善之君   砂田 圭佑君     大島 理森君   住  博司君     瓦   力君   茂木 敏充君     村岡 兼造君   島津 尚純君     城島 正光君   白保 台一君     仲村 正治君   濱田 健一君     前島 秀行君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  水産業協同組合法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五八号)(参議院送付)      ――――◇―――――
  2. 石橋大吉

    石橋委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付水産業協同組合法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本有二君。
  3. 山本有二

    山本(有)委員 今回の水協法改正でございますが、漁業組合役割がいや応なしに問われてくることになろうと思います。  そこで、大臣の、漁業組合の今日的役割についてどうお考えなのかを冒頭にお聞きしたいと存じます。
  4. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 お尋ねの漁協役割に対する認識でございますが、御承知のように、我が国の漁業を取り巻く状況は、資源水準の低下による漁獲量減少であるとか産地魚価低迷漁業就労者減少高齢化の進展など、一段と厳しさを増しております。  このような中で、漁協は今後組合員に対しまして経営指導であるとか資源管理などの取り組みが期待されているところでございます。漁協がこれらの役割を十分果たすためには、漁協系統事業組織改革への取り組み、これがますます重要となっておるわけでございまして、農林水産省といたしましても、これら漁協系統取り組みが円滑に進むように適切に対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  5. 山本有二

    山本(有)委員 今回、自己資本及び内部留保の充実ということで最低出資金制度を導入いたしました。漁協加工協にあっては二千万円、漁連加工連にありましては一億円、こういうような大変高額の最低出資金制度が定められたわけでございます。  そうしますと、いわば弱小漁協の多い日本、特に沿海地区漁協は千九百七十七のうちもう七割以上が弱小でございますが、そういう弱小漁協を切り捨てるというような法律になってしまわないかという疑いがございます。  そこで、弱小漁協役割をどう考え、またこの弱小漁協についてどのように対処をするか、長官にお伺いいたします。
  6. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 漁業協同組合でございますが、今先生言われましたように、農協等に比べますと規模も非常に小さい、弱小のところが多うございます。また、漁協は今の難しい漁業情勢の中で非常に大きな役割を果たしているわけでございます。そういう意味では、小さな、弱小漁協ではございますが、非常に大きなウエートを持っておるというふうに考えております。  そういう中で、今回最低出資額を達成できない、していない漁協についてどのような対応をするかというお話でございますが、これにつきましては、平成十三年三月三十一日、要は三年間の猶予期間の間に、この信用事業を行う漁協最低出資金要件を満たしていない漁協につきましてはその要件を満たす必要があるということになっておりまして、このためには、基本的には増資を行う必要がございます。また増資が困難な場合には、他の組合との合併または信用事業信漁連への譲渡による対応が考えられるわけでございます。  一方、漁協系統におきましては、漁協を取り巻く状況が厳しい中で、従来から自主的に合併事業統合によりまして経営基盤強化を図ってきているところでございまして、水産庁におきましても、このような漁協系統の自主的な取り組み支援するために、合併助成法によります税制の特例措置などの措置を講じておりますほかに、これは予算措置でございますが、合併事業統合を促進させるための漁協経営強化総合対策事業を行っておりまして、これら事業の活用によりまして合併等の促進がなされますように適切に指導してまいりたいというふうに考えております。
  7. 山本有二

    山本(有)委員 私は、弱小漁協に対する支援の手を緩めないでください、こういうことを御要望申し上げます。水協法のこの制度は、農協二法、臨時国会で上げましたけれども、あれは住専問題の処理というような前提がございました。いわば漁協の方については住専の問題はないわけでありまして、そのことからしますと、住専処理策というのではなくて、これから日本漁業組合を新たに活性化して頑張っていこう、そういう法律と位置づけてほしいわけでございます。そんな意味で、弱小漁協が力をつけるということに常に心を砕いてほしいと思います。  それからもう一つ、蛇足であろうと思いますけれども、なぜ小さな漁協がこれだけ多くあるかということです。高知県は五十三市町村しかありません。しかし、もう七十を超える漁協がございます。それを参考にしながら私が考えたことは、入り江という自然の良港がある、そこにおのずから先祖伝来漁民が住んでいる、そして、そういう中で家族が、祖父、父、子供、孫と漁業を営んでいく、こういう中に家族的ななりわい、さらに地域的な漁業に対する宿命的な意識共同体意識、そういうものがあるからこそ後継者ができるわけであります。したがって、そこにおのずから、皆仲よしになれるぐらいの範囲の中で漁業組合自然現象としてでき上がってきた、私はそう思います。  したがって、それは、単に出資金であるとかあるいは経済活動信用事業販売事業というもので片づけられない、日本のいわば漁師の精神、マインドが根差している、このことを農林省あるいは水産庁、これは忘れてはならぬことだろうというように思いますので、支援をしていく、そういう姿を見せていただきたいと要望しておく次第でございます。  次に、沖合底びき網漁業についてお伺いいたします。  現在の底びき網漁現状をまずお伺いいたします。
  8. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 沖合底びき網漁業現状でございますが、沖合底びき網漁業につきましては、スケトウダラ、カレイ類、それからイカ類など、多様な魚種漁獲対象としておりまして、近年の漁獲量でございますが、平成四年、五年、六年と約四十万トン台でございましたが、平成七年には約五十二万トンと、若干増加しております。  しかしながら、生産金額はへ平成四年に一千億円を割り込みまして、その後も年々減少してきております。平成七年は約八百五十億円というふうになっております。  また、沖合底びき網漁業経営状況は、魚価低迷それから乗組員の不足などによりまして、全般的に厳しい状況にございます。
  9. 山本有二

    山本(有)委員 漁獲高は多少上がったけれども、魚価低迷して、いわば底びき網漁業者組合経営が難しくなっているということでございます。  すべての沿岸漁業はなかなか厳しいものがございますが、そういう中で、沖合底びきは大きな船で網を引いていくわけであります。そして、網の幅がかなり広いわけであります。それでざあっと引かれますと、特に、二隻で引く場合、さらにその二隻に横につながって四隻で引くと、そうすると幅も深さもあり、だあっと全部引きますから、いろいろな魚種がそこの中へ入ってきます。そして、もうそこの海域というのは、その後で行きましても、どんな漁法でやりましても魚がいない、こういうことになるわけであります。  これは、そこのところ、調整がどうしても必要になってくるわけでございますが、この沖合底びきと沿岸漁業の、端的に言えば釣り漁民との調整はいかようにしておるのか、そのことをお伺いいたします。
  10. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 沖合底びき網漁業者沿岸漁業者との調整問題でございますが、これにつきましては、今先生言われましたように、漁場競合等によります調整問題、全国各地に存在しております。このため、従来から、関係漁業者間の話し合いを基本といたしまして、操業協定などによりまして解決を図るように指導しているところでございます。  ちなみに、先生の地元でございます高知県の室戸岬沖合におきます沖合底びき網漁業沿岸漁業との問題、これはまさしくイカと、あとは沿岸との問題でございますけれども、これにつきましても、操業上のトラブルの防止でありますとか、それから両者ともに共存共栄していただかないと困るわけでございますので、そういう問題から、水産庁のあっせんによりまして、昨年から四回にわたりまして、愛媛県の沖合底びき網漁業者とそれから高知県の沿岸漁業者との間におきます意見交換の場を設定いたしまして、漁場有効利用等について話し合いが行われておるところでございます。  今後とも、このような話し合いを継続いたしまして、関係漁業者間での調整が図られますように指導してまいりたいと考えております。
  11. 山本有二

    山本(有)委員 大正年間からあります沖合底びき網の線引き操業海域、これについてこのたび四月に改正をした、こういうようにお伺いしておりますが、この事実、また審議の模様についてお伺いいたします。
  12. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 先生の今言われましたのは室戸岬の線だと思いますが、これにつきましては、言うなれば、計測機器でありますとか計測方法等のどちらかといいますと技術的な問題が中心でございまして、最近その技術が進歩したということもありまして、より正確に両者の間の線引きをするという意味で今回そのようなことを、新たな沖底線引きラインを決めようということにしたわけでございます。
  13. 山本有二

    山本(有)委員 大正年間からあった線引きを変えるという、それは技術的な話であれ、やっていただいたことを多といたします。そしてまた、水産庁が積極的に沿岸漁民との調整を買って出ていただいて、さらには新たな線引きという時代を迎えることを期待いたしておるところでございます。  またさらに、釣りというものは魚種一定にすることができます。したがって、新しい海洋法秩序、すなわちTACの時代にふさわしい漁法であろうと思います。したがいまして、網と釣り、いわば水産庁釣りの方に傾いた調整をしていただきたいということを私は希望いたす次第でございます  続きまして、漁業における研修住技能実習生のことについて法務省にお伺いいたします。  海外からの実習生研修生受け入れておるわけでございますが、それにつきまして現在の状況法務省にお伺いいたします。
  14. 塩口哲朗

    塩口説明員 お答えいたします。  海外からの研修生技能実習の数字でございますが、過去五年間の在留資格研修での新規入国者数は次のとおりとなっております。  平成四年が四万三千六百二十七名、平成五年が三万九千七百九十五名、平成六年が三万六千六百十二名、平成七年が四万五百九十一名、平成八年が四万五千五百三十六名となっております。漁業研修生はこれまで累計で八百三十一名となっております。  それからもう一つ技能実習制度でございますが、平成五年四月に技能実習制度を設けました後の研修から技能実習への移行者数でございますが、平成五年が百六十名、平成六年が千八百六十一名、平成七年が二千二百九十六名、平成八年が三千七百五十一名となっております。漁業に係る技能実習への移行者数は今までの累計で百六十六名となっております。
  15. 山本有二

    山本(有)委員 日本漁業技術水準が高いということは喜ばしいことであります。ただしかし、アジアの諸国とこれから共存共栄していく、しかも海で隣接しているという日本におきましては、漁業の面においても仲よくしていく必要がござやます。したがって、特に外国からの研修生受け入れ、そしてその人たち日本の高い技能技術移転していくということは、今後の日本水産資源を確保する上においても非常に大事なことだろうというように思います。  その点に当たって、研修生から実習生への移行手続をスムーズにしていただいて、特に、インドネシアやフィリピンの人たちが和気あいあいと日本で暮らして、しかもある程度の高い報酬を得て国に帰られるというようなことを見ておりますと、どうしても、その人たちからはもう少し日本にいたいというような要請もあります。また日本人からも、もっと長くいればすばらしい漁民として養成できるのだがな、こういう要望も逆にございます。  そこで、研修生実習生、合計してわずか二年しか在留できませんが、これを思い切って長期化するというような方策に出てはどうか。特に三年ぐらいにしてはどうかと思うわけでございますが、その点につきましていかがでしょうか。
  16. 塩口哲朗

    塩口説明員 お答えいたします。  滞在期間を延長してはどうかという御質問でございます。  法務省では、技能実習生等関係者要望等を踏まえまして、現行の二年以内の滞在期間では習得困難なより高度な技能等を習得する場合に、業種によりまして、研修期間技能実習期間を合わせた滞在期間を三年以内に延長することといたしまして、ことし、平成九年四月二十四日、告示改正したところでございます。既に実施に移しております。
  17. 山本有二

    山本(有)委員 そうやって長期化をしていただくことでございますけれども、さらにその中で、漁業というのは季節がございます。例えば、四国や九州の漁法と北海道では全然違うわけであります。  そのことを考えましたときに、座学研修実務実習よりもさらに手前に置かなければならぬ、しかも三カ月これに要する、こういうようなことを画一的にやられますと、例えば高知県であれば、六月、七月、八月、お盆前ぐらいまでが非常にないでおりまして、漁法としては海に素人を出しやすいというところがあるのですが、お盆を過ぎますと、波が荒くなります。また台風も来ます。そういうようなときに逆に実務をしなければならぬという、いわば画一化によります弊害も出てきておるような次第でございます。  それぞれの地域地域によって座学実務を弾力的に考えてもよかろうというように私は思いますが、在留の面とそのような要請とをどう調和するかだろうと思いますが、これも法務省にお伺いいたします。
  18. 塩口哲朗

    塩口説明員 お答えいたします。  まず御質問の前段の、弾力的にすべきという点でございますが、入管法に基づく基準省令におきまして、研修の中に実務研修が含まれる場合に、原則として実務研修時間は研修を受ける時間全体の三分の二以内というふうに定めております。しかし、研修生資格外活動を行うおそれがないことなど告示で定める一定要件を満たす場合には、実務研修時間は研修を受ける時間全体の三分の二を超えるときでも研修生入国を認めるように取り扱いを緩和をいたしております。  それからもう一つ受け入れ時期の弾力化という点でございますが、研修生受け入れの時期につきましては、御指摘のとおりいろいろな事情があろうかと思いますので、今後とも、研修生受け入れ団体の御要望とも沿うように、できるだけ配慮してまいりたいと考えております。
  19. 山本有二

    山本(有)委員 いい御答弁をいただきまして、ありがとうございました。  さらに、市町村研修生受け入れ制度になっておりますが、思い切ってこれを漁協としたらどうかというように思います。例えば、沿海漁協弱小で不安もあるということであれば、大きな県漁連とかいう形で受け入れた方が、よりスムーズに事が運ぶのではないか。  すなわち、市町村受け入れますと、市町村長が交代した場合に理解の強弱があるということが一つ。それからまた人事異動があった場合に、非常に小さな人的な形で研修生は見ておりますので、漁業課長がかわると外国人たちも不安を覚えるというようなこともあります。  実際、漁業技術を移転するわけでありますから、漁協が適当ではないかというように考えておりますが、その点いかがでしょうか。
  20. 塩口哲朗

    塩口説明員 お答えいたします。  漁業協同組合研修生受け入れ機関として特例告示団体に追加するということにつきましては水産庁等からの御要望もございます。研修実施状況等も踏まえまして今検討しているところでございます。
  21. 山本有二

    山本(有)委員 どうもありがとうございました。  全体を通して私が申し上げたかったことは、弱小漁協もかなりの役割、特に水産食料の自給に貢献をしておるということでございますし、また、漁業後継者を必ずっくらなければならぬという使命に対しては、弱小漁協を守るということが第一番の前提になろうと思います。そういう観点から、この水協法改正に当たりまして、ぜひ水産庁大臣に、弱小漁協を守り支援するという立場もお忘れなきようにお願いを申し上げまして、質問にかえさせていただきます。どうもありがとうございました。
  22. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、佐々木洋平君。
  23. 佐々木洋平

    佐々木(洋)委員 新進党の佐々木洋平です。今回の水産業協同組合法の一部を改正する法律案について御質問をいたします。  先ほど大臣から漁業に対する認識は伺ったわけでございますが、漁獲量減少あるいはまた就業労働者減少あるいは高齢化ということ、あるいはまた輸入水産物の増加による魚価低迷、やはり漁業経営は総じて悪化傾向にあるというふうに思います。  このような背景の中で、今回、漁協系統信用事業、よりよい経営基盤強化を求められているわけです。そういう中での今回の水産業協同組合法の一部改正だというふうに認識をしているわけでございますが、そこで、るる質問をいたします。  まず最初に、本法律案提出するに当たって、平成七年度の漁協貯金は全体で約二兆円でございます。一漁協当たり平均貯金残高が約十五億円というふうに聞いておりますが、農協と比較して非常に規模が小さいというふうに思います。民間の金融機関全国の多くの地域にたくさんある中で、漁協信用事業を農水省としてどのように位置づけておられるのか、お伺いをいたします。
  24. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 漁協信用事業でございますが、今先生言われましたように、農協等に比べますと、一組合当たり貯金残高は、これは六年度末でございますけれども、十五億円ということで、農協に比べますと二十分の一弱ぐらいな感じになっております。  さはさりながら、漁協信用事業、他の経済事業でありますとか指導事業、それぞれの関係におきまして非常に大きな役割を持っております。そういうことでございますので、この漁協信用事業健全化を図るということが組合員のサービスの向上にもつながるということでございますので、今回水協法改正を出させていただいたところでございます。
  25. 佐々木洋平

    佐々木(洋)委員 今御答弁があったわけですが、それでは、金融健全化法あるいは農協改革法については昨年成立したわけですけれども、この水産業協同組合法一部改正法案がなぜ今回提出になったのか、お伺いします。
  26. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 信用金庫、信用組合などの協同組織金融機関につきましては、昨年の通常国会で成立いたしましたいわゆる金融健全化法によりまして、経営健全性確保のための措置が講じられたわけでございます。  一方、漁協系統につきましては、系統内で事業組織あり方について検討が進められてきておりまして、昨年の十二月に、漁協系統事業組織改革のための指針、案でございますが、これが取りまとめられました。そこで、信用事業につきましても、健全性確保に向けて早期に所要の法改正に取り組むという要望がなされたわけでございます。  また、水産庁といたしましても、昨年五月から水産政策検討会ということで関係の方に広く集まっていただきまして検討会を設けまして、その中で漁協小委員会というのをつくりまして、漁協系統信用事業健全化あり方も含めまして、事業組織あり方についでこれまでいろいろ御審議をいただいたどころでございます。それにつきまして、本年の一月に信用事業健全化あり方につきまして意見集約がなされたというようなことがございます。  そのような系統段階での一つ意見の方向が昨年十月に出されたということと、水産庁におきます検討が、研究会におきます検討がなされた、この二つを踏まえまして、今回、今国会水産業協同組合法の一部を改正する法律案を出させていただいたということでございます。  なお、この今回の法案でございますが、金融健全化荘によりまして措置されました平成十年四月の早期是正措置の導入にあわせまして施行したいというふうに考えております。
  27. 佐々木洋平

    佐々木(洋)委員 次に御質問いたします。  漁業協同組合合併助成法が施行されて、漁協系統平成四年に、二十一世紀の漁協系統あり方ということで、一県一漁協をイメージとして段階的に広域合併をしよう、こういうふうになっております。また、当面は一市町村漁協への合併を推進し、また、一県一信用事業への合体、こういうことで進められておるわけです。あるいはまた経済事業についても統合を推進しよう、こういうふうになっております。  平成九年度末を目途として、都道府県あるいは市町村と連携をとりながら、漁協系統合併及び事業統合の運動を進めているところでございますけれども、この合併あるいは事業統合が目標どおり進んでいないというふうに聞いております。  漁協合併あるいは信用事業統合等実績はどうなのか、また、これを推進する上で阻害要田とは何なのか、お伺いいたします。
  28. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 今先生言われましたように、漁協系統組織平成四年に、一市町村漁協への合併ということで、平成九年度末までにおおむね一千漁協へ再編するということを内容といたします合併計画を策定しまして、現在その合併に取り組んできたところでございます。  このような取り組みの結果でございますが、平成四年度から平成八年度末までの間の合併実績は六十四件、合併参加漁協は二百二十九の漁協となっておりまして、それ以前、言うなれば平成三年度以前の実績と比較いたしますと、かなり漁協合併は進展しているということになります。しかしながら、平成九年度末までに一千漁協へ再編するという目標から見ますと、これは大きくおくれているというのは事実でございます。  したがいまして、このように漁協合併が進展しない阻害要因は何かということでございますが、一つ漁協役職員及び組合員合併に対する意識ないしは意欲が不足しているということと、もう一つは県段階などにおきます推進体制が未整備である、さらに財務格差など経営内容の問題がある、それから合併後の展望の不透明性、さらに漁業権の問題などがありまして、これらが漁協合併の阻害要因となっているというふうに考えております。  なお、合併ではございませんが、合併に至る一つの過程といたしまして漁協から信漁連への信用事業譲渡がございまして、これにつきましては近年着実に進展しておるということで、平成八年度末までに三百一の漁協から十九の信漁連への譲渡が行われているということになっております。
  29. 佐々木洋平

    佐々木(洋)委員 今、合併を阻害している要因についてお話があったわけですが、役職員の合併に対する意識あるいは意欲が薄いという話がございました。あるいはまた漁業権の問題等々があるわけですけれども、やはりこれはなかなか難しい問題がございまして、漁協合併あるいは事業統合については、行政がしっかりと指導、支援をするということがまず大事だろうと思っております。  つきましては、合併事業統合を促進するために農水省はこれまでどのような対策を講じてこられたのか、お伺いいたします。
  30. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 漁協系統は、今申しましたように合併事業統合によりまして組織事業基盤の強化を図っているところでございますが、農林水産省といたしましても、このような漁協系統の自主的な取り組み支援しますために、まず漁業協同組合合併助成法でございますが、この合併助成法によりまして、合併の阻害要因となっております漁業権行使規則に関します問題、それの特例措置でございますとか、さらに合併漁協の税制上の特例措置ということを講じておりますほかに、予算措置といたしまして、漁協合併のための経営診断でございますとか合併後の漁協経営指導、さらにマーケティング強化等の助成に加えまして、合併の一番大きな問題となります漁協間の財務格差是正のための低利融資などの措置実施しているところでございます。
  31. 佐々木洋平

    佐々木(洋)委員 今説明があったわけですが、この合併事業統合の大きな阻害要因というのは、財務格差の問題、一つは不良債権の問題があると思います。これは、各単協とも大変今努力をしているわけでございますけれども、これがどうしてもネックになるというふうに思います。  全国で不良債権がどのぐらいあるかについてはなかなか発表はしにくいだろうと思いますけれども、やはり、何とか支援をするために、国あるいは県単独事業として、この不良債権のための超低金利の貸付制度等を創設することが私は今まさに必要だろうと思いますが、いかがでしょうか。お伺いします。
  32. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 先生おっしゃる超低金利貸付制度ということでございますけれども、不良債権を抱えまして経営不振に陥っています漁協が財務内容の改善を図っていくということのためには、基本的には、やはりその漁協みずからが、事業管理費の削減など経営の徹底した合理化を図る、さらに、増資など組合員の一致した協力体制がまずもって不可欠ではなかろうかと思います。  さらに、これとあわせまして、合併事業統合等によりまして事業基盤を確立しまして、漁協事業収益を増大させる、それによりまして、欠損金の補てんでありますとか、固定化債権の償却の財源を確保するということも重要でございます。  このようなために、農林水産省といたしましては、漁協合併のための経営診断でありますとか、それから、合併後の漁協経営指導などを支援するための予算措置、先ほど申しましたようにやっておりまして、本年度から漁協経営強化総合対策事業を発足させまして、合併ないし事業統合等を積極的に推進しているところでございます。  御質問の、貸付金の制度についてでございますけれども、これは、不良債権処理のための直接のものではございませんけれども、合併事業統合等によりまして財務内容の改善を図ろうとする漁協に対しまして、県の負担もお願いいたしまして、国として、当該漁協の欠損金や固定化債権等によります財務格差是正のための低利融資制度を設けているところでございます。  なお、一部の道県におきましては、漁協系統経営基盤強化のために、地域の実情に応じまして県単独事業実施されているというふうに承知しているところでございます。  いずれにいたしましても、今後、漁協系統や県とも密接に連携をとりながら、この漁協経営強化総合対策事業の効果的な活用も含めまして、漁協の財務内容の改善が図られますように引き続き対処してまいりたいというふうに考えております。
  33. 佐々木洋平

    佐々木(洋)委員 平成十年三月の決算から、法律が変わりまして、不良債権の開示が行われます。あるいはまた、平成十年四月から、自己資本率が一定水準を下回った場合には、監督当局から、経営改善命令や、あるいは業務停止命令が発動されるというふうになっております。  漁協及び組合員等には不安あるいは混乱が予想されるわけでございまして、今、現場では大変苦労して努力をされているわけでございまして、信用事業統合等により、経営基盤を他業種並みにするには、やはり一定の時間がもう少し必要ではないのかというふうに思われます。こうした中で、早期是正措置の導入によって業務停止命令等が発動されるわけですけれども、少しその延期ができないものか、現場の声でございますが、お伺いしたいと思います。
  34. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 平成十年四月から導入されます早期是正措置でございますけれども、これは、金融機関経営の健全性の確保、それから経営破綻の未然防止ということを目的といたしまして、すべての金融機関を対象として措置されるものでございまして、その発動基準や是正措置の内容などにつきましては、一定の統一的なルールに基づくことが必要であると考えられております。  このようなために、その具体的な運用につきましては、現在、水産庁といたしましても、昨年十二月に大蔵省の方から早期是正措置に関する検討会の中間取りまとめを出したところでございますけれども、それを踏まえて現在検討しているところでございます。漁協系統は、漁業者の協同組織金融機関でありますとともに我が国の金融システムの一員であるということも踏まえまして、他の協同組織金融機関とのバランスなども考慮しながら適切に対応してまいりたいと考えております。
  35. 佐々木洋平

    佐々木(洋)委員 次に、監査体制の強化ということで、今回の改正により、監事のうち一人以上は員外監事を置くことが義務づけられたわけでございます。  これはいろいろ意味があると思いますけれども、実は、農協にせよ漁協にせよ、この資金の運用というのは、他の企業と非常に違う部分を持っておるわけでございまして、私もいろいろな組合の責任者をやっておる関係で、系統の資金、あるいはまた、一般銀行から借りた場合、非常にわかりにくい部分がございまして、よく監査で指摘される部分がございます。それは、どうしても資金の流れが違うということで固定化負債に見えるような感じになるということで、私は、そういう意味では、この員外監事の登用というのは非常に難しいのではないかと。  やはり、漁業に精通した人材を送る、これが大事であろうと思いますが、そういうことはできるのかどうか、ちょっと長官の御意見を賜りたいと思います。
  36. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 員外監事の登用の問題でございますけれども、漁協におきます監事の選任は、これまで漁業者である組合員の中から選任されるというのが通例となっていたところでございますけれども、金融自由化が急速に進展する中で、漁協等の信用事業につきましては、金融業務の高度化、専門化に対応いたしまして、組合経営を客観的にチェックする監事監査の重要性が高まってきているわけでございます。  今回措置することにしております員外監事の問題でございますけれども、これは監事のうち一名以上を員外監事としなければならないというものでございまして、監事のすべてを員外監事とするということではございません。また、漁協につきましては、経営の健全性を図る必要性が特に高いと認められる漁協といたしまして、貯金量が一定規模以上の漁協に対してのみ義務づけるものでもございます。また、信漁連につきましても、員外監事の登用のために要する期間を考慮いたしまして、一定貯金量に達しない信漁連につきましては、三年間の経過措置を設けているところでございます。  員外監事の登用が図られますように、漁協系統及び都道府県を十分指導してまいりたいと考えております。
  37. 佐々木洋平

    佐々木(洋)委員 次に、常勤役員等の兼職、兼業の制限についてお伺いします。  この信用事業を行う漁業協同組合を代表する理事及び当該漁業協同組合等の常務に従事する役員及び参事は、「行政庁の認可を受けた場合を除き、」云々とあるわけです。そこで、この常勤役員等の兼職、兼業の制限について、行政庁の認可の基準とはどういうものなのかお伺いしたいと思います。  実は、組合長になると仮にした場合には、漁業を営んでおる方々は、奥さんとか子供さんにこれは移譲するということができますが、定置網等、やはり漁業権、漁業といいますか、そういう場合は、その譲渡を一応禁止されておるわけです、ある条件があります。そういうことで、そういう場合のための行政庁の認可といいますか、そういう基準なのかどうか、この辺をあわせてちょっとお伺いしたいと思います。
  38. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 常勤役員の兼職、兼業の問題でございますが、信用金庫、信用組合農協など、他の協同組織金融機関の常勤役員につきまして、その職務専念を確保する、それから、責任ある業務執行体制を確保するという観点から、既に兼職、兼業制限の規定が整備されているわけでございます。  漁協につきましても、常勤役員等の職務専念性を確保するという趣旨から、他の金融業態と同様の兼職、兼業制限規定を設けることとしたところでございまして、この例外認可に当たりましては、他業態とのバランスや漁協の実態を十分踏まえまして運用を検討することとしたいと考えております。今先生が言われましたような事例も多々あるわけでございます。  そういう意味で、具体的には、例えば組合の代表理事につきましては、他に適当な人材がなく、また他に常勤理事を置いているというような場合におきましては、兼職、兼業を認める方向で検討したいと考えております。
  39. 佐々木洋平

    佐々木(洋)委員 次に、金融監督庁が今審議をされているわけでございますが、民間金融機関に対する監督権限を大蔵省から移行するという法案が今審議されています。仮に金融監督庁が設置された場合に、水産業協同組合信用事業はどこが監督をするのか、お伺いしたいと思います。
  40. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 金融監督庁との関係でございますが、農林水産省におきましては、水産業協同組合漁協経営の安定という水産行政上の観点から、信用事業も含めまして水産業協同組合事業全般について監督を行っているところでございます。  したがいまして、金融秩序の維持の観点から金融監督庁が漁協、水産業協同組合信用事業に対する監督を行う一方、農林水産省といたしましては、引き続き、水産行政上の観点から従来どおりの監督を行うことが必要であると考えております。  このため、金融監督庁の設置に伴いまして、現在、農林水産省と大蔵省の共管となっております信用事業を行う水産業協同組合に対する監督につきましては、農林水産省と金融監督庁との共管になるものとされているわけでございます。  農林水産省といたしましては、金融監督庁が設置された後におきましては、相互に密接に連携を図りながら水産業協同組合信用事業に対しまして的確な監督を実施してまいりたいと考えております。
  41. 佐々木洋平

    佐々木(洋)委員 では、最後にいたします。  水産庁は、平成十年の一月一日からスルメイカをTACの対象に追加しようということを検討されていると聞いておりますが、状況はどうなのか。あわせて、特に五トン未満の小規模イカ釣り漁業がどのように適用されるのか、お伺いします。  以上で終わります。
  42. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 スルメイカのTACの問題でございますが、スルメイカにつきましては漁獲量も多く、我が国の排他的経済水域内で韓国、中国等の外国漁船も採捕しております。このために、スルメイカ早期にTAC対象魚種とする方向で現在資源調査の充実に努めておりますほか、TACの対象とする上での技術的な課題につきまして、鋭意検討を行っているところでございます。  いずれにいたしましても、円滑な資源管理の実現のためには漁業者の理解と協力が不可欠でございますので、現在スルメイカ漁獲対象としております沿岸漁業者など関係漁業者意見をお聞きしているところでございます。  なお、スルメイカをTAC対象魚種とした場合には、スルメイカを採捕しておりますイカ釣り漁業のうち、五トン以上のものにつきましては複数県の漁船が沖合で入り会って操業するという実態が多うございますので、TACの管理は大臣が行うことが望ましいと考えておりますけれども、今先生が言われました五トン未満の漁船につきましては、そのような実態はほとんど見られませんことから、現在のところTACの管理は都道府県が行うことが適切ではないかと考えております。
  43. 佐々木洋平

    佐々木(洋)委員 どうもありがとうございました。終わります。
  44. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、一川保夫君。
  45. 一川保夫

    ○一川委員 新進党の一川でございますけれども、今回の水協法改正に伴いまして、水産業を取り巻く今日的な課題について若干御質問をさせていただきたいと思います。  先ほど来の質疑の中でいろいろと話題が出ておりますように、漁業協同組合はもちろん、漁業者にとっても、近年の水産資源減少といいますか、そういう中にあって、当然ながら漁獲量減少する、また産地における魚価低迷しているというような基本的な問題を抱えておるわけですけれども、最近の国際的ないろいろな情勢の中からも国際的な漁業に対する規制がいろいろな面で強化されてきている問題とか、また国内的な経済的な状況からしましても、金融の自由化が非常に進んできているというような背景、それから一方では、これは一次産品すべてに言えますけれども、海外からの水産物の輸入が非常にふえてきている。どれ一つ取り上げてみましても大変厳しい状況下にあるわけでございまして、そういう中で各地域漁業者なり漁協の皆さん方は、大変な御苦労の中で今頑張っておられるという状況にあるというふうに私は認識いたしております。  そういう中にあって、最近、昨年の国連海洋法条約の締結を契機にしまして、特に韓国、中国との漁業に関するいろいろな話し合い、そういったものに対して大変な関心が持たれてきているわけです。  私自身は、日本海側に面した地域の出身でございますけれども、先月も能登半島沖に韓国の大型の漁船が出没している。今年に入って二月ごろですか、福井県沖合でもズワイガニのそういった水域にやはり外国の漁船が操業しているというような動きもございました。せっかく日本国内の各漁業者が良識的な漁業を営み、操業している中で、そういう状態が野放しにされているというような実態は、沿岸漁業者にとっては大変ショックだというふうに思います。  現時点で、水産庁としてそういった韓国、中国の漁船が日本海の沿岸付近で操業されている実態というものをどのように把握され、まだそういうことに対してどういう対策をとられているのか、まずそのあたりからお伺いしたいと思います。
  46. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 日本海におきます韓国、中国漁船の操業実態と対応状況ということでございますが、まず韓国の漁船について申しますと、日本海、これは山陰、北陸海域が中心でございますが、韓国漁船の操業につきましては、大型トロール、それから中型トロール、アナゴかご、刺し網漁船などが視認されております。日韓漁業協定等に違反した操業は、近年その件数は減少しておりますものの、依然として根絶されていないという状況にございます。  なお、これら違反操業船のほとんどが船名等を隠ぺいしたり、それから我が国漁船の操業を妨害したり、内容はかなり悪質化しているという状況にございます。  このような状況に対処しますために、日韓首脳会談でございますとか、累次にわたる漁業協定交渉の場で韓国側に対しまして取り締まりのさらなる努力、関係漁業者への指導の徹底を要請してきているところでございます。  次に、中国漁船の関係でございますが、日本海におきます中国漁船の操業につきましては、イカ釣り漁船を中心に底びき網漁船等が視認されております。  これら中国漁船の操業は、山陰など一部の海域で我が国イカ釣り漁船との漁場競合が見られまして、漁業関係者から安全操業上問題があるという指摘もなされております。  この問題につきましては、日中漁業共同委員会の場におきまして、機会あるごとに、適切な操業についての指導強化要請しているところでございます。  今後とも、あらゆる機会をとらえまして、操業に対する両国の強力な取り締まり、指導を求めていく考えでございます。
  47. 一川保夫

    ○一川委員 これは今回の白書の中にも、今ほど御説明がありましたように、韓国なり中国のそういう漁船の操業に対して、しっかりと交渉していきたいというような記述がされておりますし、今ほど長官のお話にも、あらゆる機会をとらまえてそういう申し入ればしておるというお話なんですけれども、一番最近、ごく最近いつごろそういうことをなされたのか、御説明願いたいのです。
  48. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 この日本海におきます韓国船の問題でございますが、先ほど先生も言われましたように、最近、日本海側に大型トロール船が出てきておりまして、これは現地の漁業関係者からの苦情ということにつながっております。  このために、水産庁といたしましては、在京の韓国大使館を通じまして、直ちに適切な措置をとるように強く申し入れたところでございます。韓国大使館の方は直ちに本国に連絡いたしまして、韓国の漁業指導船、これは名前はムグソファと申しますが、その取締船を日本海側に派遣したということでございます。  また、この問題につきましては、去る四月三十日、五月一日に日韓の実務者協議が行われまして、その場におきまして早急かつ確実な措置がとられますように、韓国側に要請を行ったという段階でございます。  なお、四月三十日以降は、水産庁漁業取締船によります韓国太型トロール漁船は現認されておりません。
  49. 一川保夫

    ○一川委員 ぜひそういう無謀な操業がなされないように、しっかりと監視をしていただいて、また適切な申し入れをお願いしたいというふうに思います。  そこで、大臣にちょっとお伺いしたいんですけれども、今ほどの話題に関連しますけれども、漁業者なり漁協関係者の皆様方にとつては、例の二百海里の問題がしっかりと決着をするということを当然期待されておるわけです。そういうことを前提にしてのいろいろな国内法の整備なり、その規制が割と先行しておるというふうに私は理解しておるわけですけれども、基本的には、日韓漁業協定なり日中漁業協定を新しい中身として早期に締結するということが急がれておるわけです。  これはもう皆さん方御案内のとおり、昨年の条約批准に当たって、国会決議もあり、また政府・与党の合意事項もある。それもやはりそういうことを踏まえてできるだけ早期に新しい協定を締結するということが申し合わせされておるわけです。それが現時点ではまだ円滑に進んでないというふうに聞いておりますけれども、現在のその交渉状況なり、また今後の見通し、その決意のほどを大臣からぜひお聞かせ願いたいと思います。
  50. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 日韓、日中漁業交渉の状況につきましてお尋ねでございます。また見通しについてもお尋ねでございますが、今委員が御指摘になられましたように、国連海洋法条約の趣旨に沿った新たな日韓、日中漁業協定を早急に締結する必要があるということで、去年からことしにかけまして数回にわたって交渉を続けてきておるわけでございます。  基本的にこの新漁業協定を締結することでは一致をしております。沿岸国主義にのっとりまして、新協定を締結するということにつきましては、日中、日韓とも一致を基本的にはいたしておりますが、協定水域、これが問題でございまして、この協定水域につきまして、日中間では何らかの暫定的な措置を導入して解決を図るということで意見が一致をしておりまして、この暫定水域について今詰めている、こういう作業の段階だというふうに承知をいたしております。  また、日韓間では、この暫定的な措置について、境界画定が必要な水域について暫定的な措置で決めていきたい、こういうことを我々の方は言っているわけでございますけれども、韓国側は、境界画定を行って問題を解決すべきである、この点が隔たりがある、こういう今状況でございます。  我々といたしましては、今後さらに、今申し上げましたような状況を踏まえまして、早急に両国との協議を行い、できるだけ早い時期にこの新たな漁業協定の締結ができるよう努力をしてまいりたいというふうに思っております。結論から申し上げますと、日中の場合が幾分前進しておるかな、こういう感じがいたしております。
  51. 一川保夫

    ○一川委員 今大臣の方から御答弁があったわけですけれども、恐らく、昨年いろいろな国会決議なり申し合わせが行われたという背景には、この交渉が相当難航するであろうということを想定してのそういう動きが当然あったんだろうというふうに私は推測するわけです。そういう中で、今ほど御説明のような状況であるわけでございますので、どうか一日も早く新しい協定が締結できるように全面的な御努力をお願いしておきたい、そのように思います。  それで、先ほど来ちょっと話題にも出ておりますけれども、国内では、そういういろいろな規制の中で、国内の漁業者なり漁業関係者が自主的にそういった水産資源を管理していきたいというような趣旨で、例のTAC制度というものができたというふうに聞いております。こういうものは、当然、関係者がそういう資源を将来的にしっかりと保全管理していくという前提で、お互いに自己管理しながらこの制度を運用していくということになろうかと思うんですけれども、ただ、今の対中国、対韓国というようなことがなかなか問題が解決しないと、割と自己本位に物事が動いていくという危険性があるんではないかというふうに私は思うんです。  ですから、正直者が損をするというか、ばかを見るというようなことがないように、やはり公平公正な形でこういう制度が運用されないと、中には、この制度の中で、先取りしたり、もう少し時期を待てまおいしい状態で魚が食べられるのを、もっと早くとってしまおうというようなことも当然想定されるわけです。  そういう公平性の確保とか、そういうことを考えた場合に、この制度そのものの運用、もう施行されて半年近くなるわけですけれども、何か現状で問題点なり課題というものがあるというふうに認識されておられるのかどうか、そのあたりいかがですか。
  52. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 漁獲可能量制度、TAC制度でございますが、この定着を図るためには、今先生言われましたように、韓国、中国との間で新たな漁業協定を早期に締結するということがまず何よりも大事でございます。そういう意味で、両国との間の漁業協定につきまして、先ほど大臣から答弁いたしましたような、鋭意協議を行っているところでございます。  また、そのTAC制度の定着を図るためには、基本的には漁業者みずからが自覚を持ちまして資源管理に取り組むことが必要でございます。TAC制度におきましては、漁業者が自主的にTAC管理を行うために協定を締結する協定制度の普及、定着が必要であるというふうに考えております。  この協定制度は、今回導入いたしましたTAC制度が基本としてはいわゆるオリンピック方式、先生先ほど言われましたように、オリンピック方式になっておりますので、そのオリンピック方式において生じ得ることが指摘されております、漁獲が一時期に集中することによりまして過当競争を招くというようなことでありますとか、今指摘されました、需要の高いときに十分な供給が行われない、それまでにとってしまったというようなこともございまして、そういうような事態の発生を防止するために、この協定制度は非常に有益であるというふうに考えておりまして、水産庁といたしましては、この協定制度が積極的に活用をされるように、今後指導していきたいというふうに考えております。
  53. 一川保夫

    ○一川委員 では、ちょっと話題を変えさせていただきまして、私は、先ほど海外からの水産物が相当輸入されてきているというお話もちょっとしましたけれども、基本的には、日本国内で漁業者の皆さん方が御苦労されてとられた魚をおいしく消費者に提供するということが、その前提にあるのではないかというふうに思います。  そういった場合に、漁業協同組合等を通じて、消費者に対するそういった魚食の普及的な対策、そういうことも当然いろいろと考えておられるというふうに思いますけれども、今の基本的な水産庁としての取り組み方針というのですか、そのあたりをちょっと御説明を願いたいのです。
  54. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 消費者に対する魚食普及対策でございますけれども、鮮魚や加工品を含めまして水産物の消費の拡大を図るということは、我が国の水産業の振興という面だけではございませんで、消費者の健康で豊かな食生活を実現していくという観点からも、極めて重要であると考えております。  近年、健康、安全志向、それから高鮮度志向などの食に対します価値観の多様化が見られます中で、水産物は栄養面でのすぐれた特性が評価され、おおむね消費は堅調に推移してきているわけでございます。しかしながら、その一方で若年層の魚離れなどの問題点も指摘されておりまして、引き続き水産物の消費拡大に努めていくことが必要であるというふうに考えております。  このために、水産庁といたしましては、これまでも学校給食メニューの開発などの若年層に視点を当てました対策でありますとか、医師、栄養士等の専門家に対します魚食の有用性の普及啓発等を実施しているところでございますが、今後とも地域、年代等によります消費の特徴に応じました、きめ細かな水産物の消費拡大対策を図ってまいりたいと考えております。
  55. 一川保夫

    ○一川委員 それとあわせまして、私が非常に気になることは、我々田舎の方に帰りますと、俗に言う魚屋さんがたくさんあります。新鮮な魚を直接消費者に小売している魚屋さん、皆さん方は魚商組合という組合組織しておりますけれども、そういう方々が最近非常に悩んでおられます。それは、後継者の問題もあり、大型店舗の進出の問題、いろいろとあるわけです。私はやはり、一般の国民の方々においしい魚をしっかりと日常の食事の中で提供していくという中では、新鮮な魚を小売される、そういう小売業の方々に対する対策というのは当然農林省の方で考えていらっしゃるのではないかというふうに思うわけですけれども、そのあたりの現状なり、今後の取り組み方針を御説明願いたいのです。
  56. 本田浩次

    ○本田政府委員 鮮魚等の水産物の中小小売業につきましては、先生御指摘のとおり、鮮魚などが効率的かつ安定的に供給され、多様な消費者ニーズに的確にこたえ得るようにするために大変重要な役割を果たしておるところでございます。こうした鮮魚などの小売業を取り巻く状況を見てみますと、御指摘のとおり、消費者ニーズの一層の高度化でございますとか多様化、後継者難、大型店の進出による競争の激化、それから環境問題など多くの課題に直面しているところでございます。  こうした中で、鮮魚小売店が、商店街におきまして、その集客効果から核となる店舗となって商店街などの活性化に寄与している例も見られるところでございます。このような活力のある小売業の事例におきましては、地域密着型商業としての対面販売の利点を十分に生かして、地域の消費者とのコミュニケーションを密にすることなどによりまして、消費者ニーズの変化を的確にとらえて、鮮度、品質、価格、サービスの面で大型店に負けない競争力を発揮しているものであると考えられるところでございます。  御指摘の鮮魚小売店の活性化対策につきましては、このような鮮魚小売店を取り巻く状況や商店街活性化の中核となつでいる事例などを考慮して、きめ細かな施策を講ずる必要があるというふうに考えているところでございます。このため、農林水産省といたしましては、最新の情報技術を活用した共同受発注システムの確立てございますとか、地域社会の担い手となる鮮魚小売店などの後継者の育成でございますとか、魚腸骨などの処理施設の整備などを推進しているところでございます。  今後とも、食品流通構造改善促進法に基づきます食品の流通部門の構造改善の基本方針に即しまして、鮮魚小売業界の方々の意欲的な取り組みに対し、積極的に支援してまいりたいと考えているところでございます。
  57. 一川保夫

    ○一川委員 ぜひ日本型食生活というものをしっかり定着させるためにも、こういった魚食の普及についてあらゆる施策を積極的に推進をしていただきたい、そのように思います。  では、ちょっと最後に、運輸省いらっしゃいますか。これは水産に関係しますけれども、先般のロシア船籍ナホトカ号の重油流出事故に伴いましで、漁業関係者が大変な苦しい思いをされ,また大変な被害をこうむっているわけですけれども、これまでに、聞くところによりますと、国際油濁補償基金に対して、油の防除費用なりとりあえず積算し集計されたものについて請求がされ、それに対して一部支払いが行われているというふうに聞いております。その全体の中で特に水産関係がどういう姿になっているかということも含めて、現時点でわかっているところを御説明を願いたいというふうに思っております。
  58. 田村雄一郎

    ○田村説明員 お答え申し上げます。  私どもが承知いたしておりますところで申し上げますと、現在までのところ、水産関係者におきましては、二月末までの海上災害防止センターの委託によりまして行いました油防除費用約二十三億円でございますか、これにつきまして、全漁連で取りまとめまして海上災害防止センターに請求をいたしまして、その一部の弁済として、三月三十一日に約士八億円の支払いを海上災害防止センターから受けているというふうに聞いております。  一方、海上災害防止センターにおきましては、水産関係者から請求を受けました約二十三億円の全額を、国際油濁補償基金に対しまして請求いたしました。四月の三十日にその一部の弁済といたしまして、国際油濁補償基金から海上災害防止センターに対しまして約五億四千万円の支払いを受けているというふうに承知いたしております。  全体の国際油濁補償基金に対する請求の状況でございますけれども、いろいろ関係書類とか準備は終わりまして、請求できるようなものから順次請求をしているところでございまして、私どもが承知しております範囲内で申し上げますと、現在までのところ、約五十五億円余りの請求を基金にしているというふうには聞いております。そのうち、漁業関係者については今申し上げたとおりでございます。
  59. 一川保夫

    ○一川委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  60. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、鉢呂吉雄君。
  61. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 まず、日韓、日中の漁業交渉の関係大臣にお伺いをいたします。  私ども民主党は、四月四日に代表団を韓国に派遣いたしました。政府が今、日中、日韓の漁業交渉を行っておるのを側面から支援するということで、横路民主党副代表を団長といたしまして、石橋委員長も個人の資格で私とともに参画をいたしました。  韓国の外務部では李祺周次官、あるいはまた海洋水産部の、水産庁長官に当たる朴氏にもお会いをし、与党の政調会長、日本の政調会長に当たる責任者にもお会いをしてきました。政府関係者、あるいは政党レベル、あるいはまた韓国の大統領候補と言われている人に精力的にお会いをしてきました。  水産庁長官からは、今年中に漁業交渉を妥結したいという旨の発言が二度繰り返されましたけれども、後刻、これは通訳の誤訳であったというようなことで、私どもがっかりしたわけであります。同時に、韓国の外務部の李次官は、日本の境界画定の暫定措置というのは認められない、排他的な経済水域の境界画定をしくそして漁業協定のものにしたいという、すこぶるかたい発言に終始しておりまして、私どもも、日本と韓国との間に、特にこの境界画定については大変大きな隔たりがあるというふうな認識をしてきたわけであります。  今大臣は、先ほどの一川委員の御質問に対して同じような感覚のお話をされたと思いますけれども、このような特に韓国との状況を踏まえて、大臣は、今後、早期に妥結をしていくというふうに言葉では言っております。これは二十年前のあの当初の二百海里のときにも同じようなことが、国会大臣が言ってそのまま今日まで来たという経緯がございまして、私は、大臣がどのように早期に交渉を妥結するかというところの決意をまず最初にお聞きいたしたいと思います。
  62. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 先般、委員、韓国へ行かれまして関係者にお会いになられ、その模様を詳細に御報告いだだきまして、私どもも大変参考になったわけで、改めてお礼を申し上げたいと思います。  先ほど委員が申されましたような状況でございまして、我々としても、新しい海洋法条約の締結に基づいて新たな漁業協定を早期に結ぶということの必要性はよく認識をしておるわけでございまして、そういう認識のもとに、今日まで精力的に昨年から交渉を続けてきておる。  今の状況は、これも委員が申されましたように、日本側からは、協定の早期締結のために、境界画定が必要な水域につきましては暫定的な考え方に基づく解決の必要性を現実の問題として主張しておるわけでございますけれども、残念ながら、韓国の方は境界画定が先決であるということで、この点は一番のポイントでございまして、意見は非常に大きく隔たりがございます。  我々としてもこの状況を打開するために、決して手をこまねいているわけではございません。いろいろなことを考えながら辛抱強く、粘り強く交渉を続けておるわけでございまして、我々としてもいろいろな状況を念頭に置いて懸命に努力を続けてまいっておる次第でございます。
  63. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 そこで、私ども、昨年与党でして、私も具体的に提案をさせていただきまして、それを受けて、石農水委員長であります石橋氏がそのときの与党の政策調整会議の座長でありました。最終的には与党三党の政調・政審会長レベルの申し入れという形をとっておりますけれども、私どももかかわらせていただいて‘昨年三月二十二日に、年内中に合意を得ることを基本として、一年以内を目途に交渉を進めるものとするということをはっきりうたったわけであります。さらに、改定方針の合意が得られないと見通される場合には、いわゆる排他的な経済水域における漁業法律の規定がその一年後には全面的に適用されることとなるように対処するものとするということで、現協定の第十条二項のいわゆる協定終了通告を行って、その一年後には現協定が効力を失効して、いわゆる二百海里を適用することができるという形になるわけであります。  大臣、さまざまな粘り強い取り組みを今しておるというふうに言っておるわけであります。この与党の、あるいは政府・与党の合意と言ってもいいでしょう。昨年中、あるいは三月二十二日というのを一つの基準にするかどうかわかりませんけれども、一年以内ということの昨年の与党の方針、政府との申し合わせ、これをきちんと厳格に守るという決意、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  64. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 政府といたしましては、国会での衆参両院本会議での御決議、また、衆議院農林水産委員会及び参議院海洋法特別委員会での附帯決議、さらには、今御指摘されました与党三党合意を重く受けとめております。したがいまして、新たな漁業協定の締結につきましては今努力をしている段階でございます。  そういう段階でございますので、協議がまとまらない場合を仮定しての発言をするということは差し控えさせていただきたい、かように考えております。
  65. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 まさに先ほど申し上げましたとおり、タイムリミットを過ぎていると言ってもいいこの時期であります。無制限でということであれば、今そのことについての仮定の問題ということは言えるわけでありますけれども、まさにもうタイムリミットを過ぎて、国連海洋法が施行されたということであれば七月二十日ということも言えますけれども、今時点のこの五月で、もうタイムリミットが過ぎている時点で、大臣としてその決意を披瀝することは交渉の進展にとっても大きなものになるというふうに私は確信しております。  韓国とも、漁業関係では相互の入会についてもほぼ合意の地点に達したというふうなことを聞いておるわけでありますから、そういうものは韓国は失ってしまうわけだというふうに私は思います。  先ほどの終了通告を出すことに対して、これはもう条約に基づいてやるわけであります。まさに国連海洋法という、二百海里を引くということが大前提の国連でのお墨つきがあるわけでありますから、そういうものを背景にしてこのことをやるということは、これは外交交渉としてはあってしかるべきのことでありまして、まさにそのことを大臣が、この国会の場で、昨年の国連海洋法を審議したものを踏まえて、あるいは国会の決議を踏まえて、政府・与党のこの合意、申し合わせも踏まえて、今の時点で決意をされて、このとおり行うということについてこの場できちっと言っていただきたいというふうに思います。
  66. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたことをもう一度申し上げなければなりませんが、さりに申し上げますと、外務省ともよく協議をいたしまして、我々としても、国益にかかわる問題でございますので、全力を挙げて取り組んでおるということは、どうぞひとつ御理解いただきたいと思います。
  67. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 先ほども申し上げましたけれども、最大見ても七月の二十日だというふうに私どもは思います。その時点で、先ほども言いましたように改定の方針の合意が得られないと見通される場合には、きちんと現協定の第十条に基づいてこの協定の終了通告というものを出す用意があるというふうに大臣は明確に言えますね。これは仮定でも何でもなくて、そういうふうにきちっと決めているわけですから。
  68. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 今、この日韓漁業協定を、新しい漁業協定を結ぶべく全力を挙げている段階でございますので、その努力をしている段階に、もし仮にそういう協定が結ばれない、そういう場合のことについて言及することは差し控えさせていただきたい、かように考えております。
  69. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 繰り返しになりますけれども、仮定ということよりも、我が国会なり、あるいは政府・与党が重大な決意を持ってこのような文書を取り交わしております。これは政府も認めておるわけであります。仮定と言いながらも、この改定方針の見通しが立たないといった場合にはいわゆる現協定の終了通告を出すべきである、これは政府も認めて、この与党合意というものを受けて交渉に当たっているというふうに我々は認識しておりますから、その事態に立ち至ったときには速やかにそのことを行う。現協定の終了通告を行って、しかし、その後にも一年という猶予はあるわけですから、精力的にそこは交渉する期間というものが設定されるというふうに私は思うわけでありまして、そのような現協定の終了通告をする用意があるというふうに大臣は言えますね。
  70. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 我々としては、今新しい漁業協定を結ぶべく全力を挙げている段階でございますし、また、政府といたしましては、与党三党の合意は重く受けとめておる、かように申し上げておるわけでございます。
  71. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 七月二十日が期限になるということは言えますね。政府・与党で現協定の終了通告をするその期日として七月二十日というのは一つのめどになるというふうに言えますね。それは大臣も認めますね。
  72. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 一つの区切りであるという認識は持っております。
  73. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 次に移ります。  実は、昨年の国連海洋法の審議に当たりまして、水産全般を大きく見直す時期に来ておるのではないかということが各党からも主張されたというふうに記憶をしております。それに基づきまして、水産庁長官のもとだというふうに聞いておりますけれども、水産政策検討会というものが昨年の五月に設けられたと聞いております。  しかし、これはなかなか国民の目に触れない。どういう審議をしておるのか、一切、マスコミの皆さんにも、あるいは我々にも示されない。このことは、やはり水産業というのは国民の極めて貴重なたんぱく源となる食料を供給しておる、しかもさまざまな意味で大きな転換点にある、また国民の合意を得て水産政策をやっていかなければならないという時点で、私は非常に閉鎖的なこの検討会というものは決していい方向ではないというふうに思います。  もっと国民に開かれて、国民に訴えるものでなければならないというふうに考えますが、この検討会がどういう方向に今あるのか、このことについて大臣にお聞きをいたしたいと思います。
  74. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 この検討会水産庁長官研究会になっておりますので、私の方から答弁をさせていただきたいと思います。  今、先生言われましたように、我が国水産業の振興を図って水産物を安定的に供給していくという大きな目的のために、関係者及び有識者から成ります水産政策検討会というものをつくりまして、現在、我が国水産業が直面する課題を中心に検討を行っているところでございます。現在、四つの小委員会に分かれましてそれぞれ検討を行っていただいているところでございまして、六月ごろには中間的な取りまとめを行っていただく予定となっております。また、その際は、それを公表することといたしております。  なお、この水産政策検討会の成果を踏まえまして、本年夏には水産基本政策検討会というのを新たにつくりまして、基本的な政策、制度あり方につきまして、各方面から幅広い御意見を伺いながら、検討を深めてまいりたいと考えております。
  75. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 六月に中間的な報告をするということでありますけれども、ぜひ、もっと国民に訴えるように――私の聞いている範囲では、漁協あり方ですとか流通の関係だとか、非常に個別的なものになっております。もっと水産全般を大きく見直して、国民の理解を得るという方向にやはり示していくべきだというふうに思います。  そこで、大臣漁業水産関係についても、農業と同じように、水産資源あるいは水産食料、あるいはまた漁村ということに着目をして基本法をつくるべきだという熱意が漁業関係者からも大変あるわけであります。このことについて大臣はどのようにお考えになるのか。私は、基本的な法律というものを今つくる時点に来ておるというふうに考えますが、御所見を伺いたいと思います。
  76. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 今、長官から御答弁申し上げました内容に尽きるわけでございますが、この水産政策検討会の成果も踏まえまして、ことしの夏に水産基本政策検討会、これは仮の名前でございますが、これを農水省の中に設置をいたしまして、新たな基本法の制定という問題をも念頭に置きながら、基本的な施策、制度あり方につきまして、各方面から幅広い御意見を伺いながら、さらに検討を深めてまいりたい、かように考えております。
  77. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 次に、水協法改正について二、三御質問いたします。  水協法の第三十五条の二は、信用事業を行う組合を代表する理事並びに当該組合の常務に従事する役員及び参事については、「他の組合若しくは法衣の常務に従事し、又は事業を営んではならない。ただし、行政庁の認可を受けたときは、この限りでない。」というふうに改正案は述べております。  そこで、この関係は、昨年の住専問題に端を発して、信用事業を営む金融機関の体制をきちっとしなければならない、役員等の兼職、兼業の禁止という形で、業務に常時従事をする、あるいは取引関係において地位の利用があってはならないという観点でこのような条項になったというふうに思います。  漁業関係者の間においては、このことはなかなか難しい点があるという御意見もあります。  同時にまた、大蔵省は三月三十一日付でこの関係の役員等の兼職、兼業の制限に関する通達を出しておりまして、これは信組、信金に関する通達なのでありますけれども、やはり同じような形で、原則として認可しない方針で臨む。ただし、認可の申請あるときは、その審査に慎重を期するものとするということで、審査要領についても、役員の兼職等が真にやむを得ないものであり、かつ業務に支障を与えるおそれがなく、当該信組と兼職等先との間において健全な取引が阻害されるおそれがないものかどうかについて十分検討の上その認否を決定するものとするということで、さらにその通達に対する留意事項として、真にやむを得ないものということの中身について、その組合の所在地の現状組合員の構成、沿革等から見てその者を除いて他に人材がなく、その者が組合の役員として従事しなければ経営に支障が生ずるおそれのある場合であって、かつ、兼職等先の現状から見て、その者を除いてほかに人材がなく、兼職先の経営に支障が生ずるおそれがある場合ということで、極めて厳格にこの点についての判断をしています。  大蔵省にお聞きしますと、今信組で全国約四百ぐらいの兼職、兼業をやっておる役員がおるわけでありますけれども、そこから認められるのは数件ないし数十件だろうということで、極めて例外的にこの関係を扱うという考えで来ております。  この問題あるいは農協関係の、私は昨年の農協法の改正のときにもお伺いいたしましたけれども、施行まで検討するということでありましたけれども、経済局長水産庁長官、この点についてどのように御判断をされておるのか、見解をお伺いいたしたいと思います。
  78. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 役員の兼職、兼業の制限のことでございますけれども、これは今先生言われましたように、信用金庫、信用組合農協等他の協同組織金融機関の常勤職員につきましては、その職務専念を確保する、責任ある業務執行体制を確保するという観点から、既に兼職、兼業制限の規定が整備されているわけでございます。  漁協につきましても、常勤役員の職務専念性を確保するという趣旨から、他の金融業態と同様の兼職、兼業制限規定を設けることとしたところでございまして、今言われましたこの認可の例外でございますが、例外認可に当たりましては、他業態とのバランス、さらに漁協の実態を十分踏まえまして、運用を検討していきたいというふうに考えております。  漁協の場合におきましては、その中の漁業調整の問題いろいろございます。そういう漁協の、言うなれば漁業の実態ということを踏まえた場合に、例えば組合の代表理事につきましては、他に適当な人材がいない、またほかに常勤理事が置かれているというような場合につきましては、兼職、兼業を認める方向で検討してはどうかと考えております。
  79. 熊澤英昭

    ○熊澤政府委員 農協関係についてお答え申し上げます。基本的には、ただいま水産庁長官からお答えしたところと内容は同じでございます。  先ほど先生が御指摘になりました信金、信組に対する大蔵省の通達、その内容についても私ども承知をいたしております。現在、そうした通達の内容も参考にしつつ最終的な詰めを急いでいる状態でございますが、先般の国会でも御論議をいただきました農協の実態につきましては、現在、平成十一年、二〇〇〇年を目標といたしまして、単協の合併あるいは組織事業の二段という、組織再編に取り組んでいるというさなかでございます。  そういう中でいえば、単位農協組合長が県連あるいは全国連の常勤役員を兼ねている、あるいは複数の県連の会長を同一人が兼ねているという状況も実態としてはございます。そうした実態の中で一律に制限することは、なかなか実態にそぐわない面もあるという御意見もございます。  他方で、先生御指摘になりましたように、農協の健全な経営を確保するという観点から、兼職、兼業の制限規定が導入されているという基本的な趣旨がございます。そういった点を踏まえまして、総合的にかつ早急に検討してまいりたいというふうに考えております。
  80. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 水産庁長官信漁連の会長が単協の組合長と兼職をするということはあり得ないというふうに理解をしてよろしいですか。
  81. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 今申しましたのは、これは横の場合、縦の場合同じでございまして、例外認可の場合もそのような場合を踏まえまして、十分いろいろな事情を踏まえながら認可をしていきたいと考えております。
  82. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 よくわからない答弁でしたけれども、時間がございませんので。  山口県下の黒井漁協の問題ですが、この問題は、最近、四十数億の不良債権で貯金保険制度支援を受ける、それが再建漁協を新設をいたしまして、その役員がすべて山口県信漁連の役員がなっておる。こういうことは、先ほど言った兼職に触れると。まだこの法律は生まれておりませんけれども、そういう形で三月になされたというふうに聞いておりまして、山口信漁連自体が再建団体という形でありまして、また後ほど、きょうは余りにも時間がありませんので、この点については質問をさせていただきたいと思っております。  最後になりましたけれども、TAC制度についてお伺いをいたします。  本年一月から特定海洋生物資源ごとに漁獲可能数量を定めまして行っております。北海道では、今スケソウダラについてこのTAC配分量を超えて漁獲をしてしまったとか、いろいろ大きな問題になっております。  まず最初に、可能数量、TAC配分量というものは、資源動向を初めとする科学的データ等を基礎として、漁業経営その他の社会的、経済的要因を勘案して決定するというふうに法律にはなっておりますけれども、この漁業資源調査については、詳細は一切公表されておりません。資源が低位で推移しておるとか、あるいは悪化をしているとかという程度のデータしか出ておりません。  まだ始まうたばかりでありますからなかなか難しい点はあろうと思います。しかし、やはり漁業現状や資源の現状、資源診断あるいは資源の利用方策など、調査の内容についてやはり公表すべきである。その中でやはり漁家の皆さんにも説得性を持ってくるというふうに思いますから、この資源調査の公表について長官はどのように考えておられるか、御所見を伺いたいと思います。
  83. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 TAC制度のTACを割り当てる場合におきましては、当然ながら資源調査をいろいろやっているわけでございます。  ただ一つ、現時点におきましては、先ほど来話がございましたように、韓国へ中国の問題がございます。そういう意味で、現在、我が国の排他的経済水域内で操業を行っております韓国及び中国を初めといたします外国との漁業交渉の問題がございます。言うなれば、資源との関連で外国実績づくりをするというような可能性もございますので、そういう影響も考えまして、これらの資源の状況の詳細を発表することは、現時点におきましては差し控えておるところでございます。  ただへ先生言われますように、このTAC制度を今後適切に実施していくためには、漁業者が資源の状況を正確に理解することが必要であると考えております。このために、今後とも、資源調査の充実及び評価精度の向上を図りますとともに、関係する漁業交渉の経過も踏まえながら適宜関係する情報を関係者に提供するように努めていきたいと考えております。
  84. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 北海道のスケソウダラについては、北海道知事管理分として十万一千トンが割り当てされました。しかし、道東太平洋海域という海域を設けてそこに二千トンを割り当てたわけでありますけれども、そのうちのはえ縄分一千六百トンについて、三月下旬で既に二千トンということで、配分量に対して十三〇%ということでもう大幅に超えている状況。秋も漁獲をしなければならないということでありますけれども、既にその枠は一切ないという状況であります。  中身をいろいろ聞いてみますと、TAC制度意識がまだ習熟しておらない、あるいは、その管理手法ですね、どのぐらいとったかという連絡だとか、そういうものもなかなかまだ徹底されておらないということで、この点については、今、日韓、日中との関係もまだ決まっていないということで罰則規定はないのでありますけれども、少し柔軟に、このTAC制というものを本当に定着させるためには、例えばことしの場合は年度途中であっても、配分見直しをするということはうたわれておるわけでありますから、そういう用意があるかどうか、長官に最後にお聞きをして質問を終わらせていただきます。
  85. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 今言われましたスケトウダラの話でございますが、本年、平成九年の基本計画におきましては、二十六万七千トンのスケトウダラのTACのうち、十万一千トンを北海道知事が管理いたします漁業の分といたしまして北海道に配分しております。北海道は、知事が定めます都道府県計画によりまして、この数量を五つの海域に分割いたしまして配分したところでございます。  三月末現在、北海道のスケトウダラのTACの消化率は全体では三一%となっておりますけれども、今先生言われましたように、道東の太平洋海域におきましては一一八%と北海道の計画を超えているという状況にございます。  TAC法におきましては、農林水産大臣または都道府県知事は、特定海洋生物資源の動向、特定海洋生物資源に係る漁業経営その他の事情を勘案して、毎年少なくとも一回、TAC等を内容とする基本計画または都道府県計画に検討を加えまして、必要こ応じて見直しを行うということにされておりまして、今回のスケトウダラの事例につきましては、今後、道庁において適切な対応が行われるものと考えているわけでございます。  ただ、年度途中の見直しの問題でございますが、資源状況全体といたしまして、資源状況が計画策定時に比べまして大きく異なっていることが客観的なデータによって明らかになっていることが必要でございまして、この点につきましては道庁の説明を今後十分に聞きたいと考えております。
  86. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 以上、終わります。
  87. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、春名直章君。
  88. 春名直章

    ○春名委員 日本共産党の春名直章でございます。法改正案についてまず質問をさせていただきたいと思います。  代表理事と常勤役員等の兼業規制についてお聞きをいたします。  漁協は、言うまでもなく漁業者で構成されている協同組合組織であります。漁業を営む者が組合の役員や代表になるというのは、そういう意味ではむしろ当然のことだと思います。そこに制限が加わるということについては、協同組合という組織の性格とのかかわりで検討されるべき問題ではないでしょうか。  先日、愛媛県漁連の役員にお会いをいたしました。この点での受けとめをお聞きしましたが、漁業を営む者が漁業者の協同組合組合長につくことができないという点について、相当な抵抗感を持っていると率直に言っておられました。  昨年の臨時国会における農協法の一部改正でも、代表理事と常勤役員等の兼職禁止が盛り込まれました。その際の議論の中で、農業経営が兼業に当たるかどうかが問題になりました。堤経済局長が次のように答弁をなさいました。「農協は農業者をもって構成する団体でございますから、そこで農業者をそのまま兼業という形に指定するということをもう少し農協法の趣旨に照らしまして考えてみたい」「例えば通常の日本の農業の経営の実情でございます家族農業経営、そういうことを通常営んでおられるという場合に、他の企業とか他の法人と同様に兼職、兼業で一切まかりならないということが日本現状に合うのかどうか、そのあたりをもう少し考えてみたい」、こういうふうに御答弁をされています。  こうした観点で見てみれば、漁協についても同様な問題が提起されてしかるべきではないかと思います。  漁業を営むことも兼業になる、代表理事等につくことはまかりならぬということが我が国の漁協現状に合うのかどうか。制限される兼業の範囲、そして漁業をどう扱うかについて水協法の趣旨に照らして検討すべきだと思いますが、御所見を伺いたいと思います。
  89. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 貯金者保護の観点でありますとか金融業務の高い社会的公共性にかんがみますと、役員等の責任ある業務執行体制を確立するためにはその職務に専念することが望ましいということと、また、情実融資の発生を防止するというようなことのためにも、協同組合組織でありましても兼職、兼業の制限は必要な措置であると考えております。  なお、一律に兼職、兼業を制限することは漁協系統の実態にそぐわない場合もございます。そういうことで認可制の道を開いておりまして、この認可の運用につきましては、他業態とのバランスでありますとか漁協の実態を踏まえまして運用を検討していきたいというふうに考えております。  なお、漁業の場合には、現在我が国において営まれております漁業の大多数は、漁業法及びその関係法令上漁業権免許ないしは漁業許可の対象となっておりますが、漁業法におきましては、漁業の定義で「水産動植物の採捕又は養殖の事業」とされておりまして、この漁業を営む者に対しまして免許または許可を与えるというような仕組みになっております。そういう意味では少し農業の場合とは違うのではないだろうかと考えております。  いずれにいたしましても、一律に兼職、兼業を制限することは漁協系統の実態にそぐわないというのはおっしゃるとおりでございますので、認可制の道を開きまして、十分対応していきたいと考えております。
  90. 春名直章

    ○春名委員 認可制という問題が出されましたが、その規定がされていることは私も承知をしております。先ほどのお話でも出ました。それで、きょう問題を提起しているのま、行政庁が認可する、しない、その以前の問題として検討してもいいんではないかということを提起をさせていただいておりますので、ぜひ御検討をいただきたいというふうに思います。  そこで、次に、この行政庁の認可そのものの問題ですが、先ほどのお話でも、他に常勤理事を置いているとか、そういう点を勘案するということが述べられております。そういうことですけれども、漁協の場合は、農協などと比べても極めて零細だということを考慮しなければなりません。  先ほどの話の続きで愛媛の話ですが、県下の漁協についても実情を聞かせてもらったんですが、信用事業を行っている六十九組合に対して常勤役員がおられるのが二十三、そういうふうにとどまっているそうです。常勤役員の年俸についても、低いので二百万程度、最もいいところでも八百万円程度、何とかそういうことでやりくりしているというのが実態であるというふうに言っておられます。  代表理事が兼業をやめて常勤化をする場合が出てきます。そういうふうになるわけですが、待遇面で常勤者にふさわしい対応が必要となってくるのは当然です。経営面でも、今でさえ大変なところに、負担が重くなるということも十分考えられるわけです。他に常勤理事がいなければ代表理事は兼業を認めるといっても、それ自体がかなり困難を伴うということになつでくるということを認識して当たらなければならないと思います。こうした漁協経営組織の脆弱性を十分踏まえた法の運用が求められていると思うのです。  今回の法改正では、信用事業には社会的責任が伴いますから、そういう点での主要な内容は必要な措置だと受けとめていますが、浜のにおいまで消えてしまうような漁協になったのではだれのための組織旭ろう、こういう声も率直に出ました。そういう点にもぜひ耳を傾けていただいて、実情を踏まえた法運用をさらにしっかりと検討していただきたいということを要望したいと思いますが、再度へもう一言お願いします。
  91. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 確かに、言われますように、漁協農協等に比べますと規模は零細でございます。貯金残高も非常に少ないというような状況にございます。  ただ、信用事業をやっております以上は、触れられましたように、高い公共性があるということと、やはりこのような執行体制を確立していくということがひいては組合員に対しますサービスの向上にもなるということでございます。非常に金融行政をめぐる情勢が厳しくなってしる中で、漁協信用事業の健全性を確保するという観点からもやはりこれは最低限の必要な措置ではなかろうかと考えております。  ただ、先ほど申しましたように、漁業の実態というのもございます。そういう意味で、例外認可の運用に当たりましては、十分その点を配慮してまいりたいと考えております。
  92. 春名直章

    ○春名委員 続いて、先ほどの鉢呂委員の話の続きみたいになりますが、今回の法改正では、漁獲可能量制限の導入で、資源管理に果たす漁協役割がますます重要になっているということも大きな目的になっているということが述べられているわけで、その問題で、資源枯渇の重要な要因となっている二百海里の問題、日韓漁業協定の問題について触れないわけにはいかないわけであります。  先ほどの大臣のお話の中で、新しい協定をつくるために全力を挙げる、そういう段階であるというお話が出ました。韓国がEEZ、排他的経済水域の線引き画定が優先するというかたくなな態度をとっておられる、そういう状況の中では、協定締結の見通しま率直に言って立たないのではないか。最近、四月三十日、五月一日にも第五回の日韓漁業実務会議が開かれたとお聞きしておりますが、一体何が前進をし、何がネックになっているのか、この場でお答えいただきたいと思います。
  93. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 先ほど言われましたように、四月三十日、五月一日と日韓の実務者協議を行いました。そこで進展しましたことにつきましては、まず海洋法条約の趣旨に沿った協定を締結する、言うなれば漁業協定の枠組みでございますが、そのことにつきましては、幾つかの基本的な考え方につきまして意見の一致を見たところでございます。  他方、境界画定が必要な水域の問題につきましては、日本側は暫定的な考え方に基づく解決を主張したわけでございますが、韓国側は境界画定をまず行って問題を解決すべきであるということで、この点につきましては、立場につきまして相違があったということでございます。
  94. 春名直章

    ○春名委員 交渉が始まって一年がたちました。  昨年の二月の全国漁民決起大会で、長崎県のイカ釣り漁業の主婦の方が、不法操業を繰り返す韓国や中国漁船が目の前でいっぱいである。灯をたいてやっと集めた日本漁船のイカをねらって突進してくるトロール漁船、水揚げだけではなく、今まで危ないのです。魚価は安く、借金はふえ、息子は、何のために遠く家を離れているのかわからないな母ちゃん、こういうふうに言う。このような状態が続けば、あすの日本漁業は一体どうなるのでしょうか、こういう悲痛な訴えもありました。  読売新聞の調査では、二月十八日付ですけれども、韓国船による漁業被害が急増、北海道周辺で二カ月で昨年分を既に上回っている、こういう報道もされております。もはや一刻の猶予もならない事態になっています。与党三党合意でも、一年をめどに解決を図るということが提起をされました。当時の答弁も見てみましたが、当時の大原大臣自身も、その意向を踏まえて、一年がめどであるとはっきりと政府としておっしゃっていました。当委員会でも速やかな締結が決議をされた経緯があります。  ですから一つお願いしたいのですが、現在の到達点、その現状に立った対応方針について国会に明確に御報告いただきたい。そして、七月がめどともされていますけれども、海洋法条約のあれですね、七月二十日ですが、それまでに新漁業協定の交渉をまとめる見通しがあるのでしょうか。先ほどの質問でもありましたが、その時点で締結の見通しが立たない場合、どう対応するのでしょうか。現協定の破棄通告という道があるわけですけれども、日本側として敢然たる構えを今こそ固めて取り組むことが本当に大事になっていると思います。その点で、大臣の御決意を私からも改めてお聞きしたいと思います。
  95. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 先ほどからこの問題について申し上げているわけでございますが、政府としては、国会での衆参両院本会議での御決議、衆議院農林水産委員会及び参議院海洋法特別委員会での附帯決議、さらには与党三党合意を重く受けとめております。新たな漁業協定の締結につきましては、今もそうでございますが、さらに努力をしてまいりたい、この考え方には無論変わりはございません。  先ほど鉢呂委員にお答えいたしたことにつけ加えさせていただきたいと思いますことは、七月二十日の期日につきまして、一つの区切りであるというふうに申し上げたわけでございますが、その後の取り扱いにつきましては与党と十分に相談をして対応させていただきたい、かように考えております。
  96. 春名直章

    ○春名委員 一つの区切りということをはっきりおっしゃっておりますので、ぜひ全力を尽くして頑張っていただきたいと思います。  私は、三つ目のテーマできょう一言質問させていただきたい問題は、宇和海や英虞湾で昨年来大問題になっている真珠母貝の大量へい死問題について御質問させていただきたいと思います。  宇和海地域の真珠養殖の売上高は年間三百四十億円程度であります。そこで、昨年十一月の時点で被害額が約百八十三億円、その後も被害は広がっています。五月二日に現地を回って調査をしてきたのですが、母貝養殖の五〇%を占めている内海村というとこうのある業者は、常勤で三人を雇っていたけれども、三人ともやめてもらわざるを得ませんでした、内梅村だけで三百経営体がありますから、自分と同じ状況であれば、一気に九百人が職を失ったことになる、どういうことも語っておいでになりました。  総合的な対策を今水産庁として努力をされているとお聞きをしておりますが、特に養殖業者の経営維持安定対策についてお聞きをしておきたいと思います。  農林漁業金融公庫の沿岸漁業経営安定資金の活用による融資対策がとられました。限度額の個人二百万円、法人四百万円について、愛媛県漁連の方とも懇談をした際ですが、もっと枠を拡大しなければ実情に合わないということも語られました。宇和海地域の真珠養殖業の一経営体当たりの売上は、被害を受ける前では約五千万円程度だとお聞きをしました。今回の被害をカバーする資金手当てという点では、相当の限度額の枠拡大が必要だという話でありました。大量へい死を受けて、ことしは特に投資を手控えているということも少なくない業者から出されています。  ですから、ぜひお願いですが、今後、再建への努力の中で、展望が切り開かれていけば資金需要が非常に大きくなる可能性があります。沿岸漁業経営安定資金、この限度枠の拡大や、あるいは近代化資金の活用なども含めて、今年度はもちろん、来年度以降についても十分対応できる措置をぜひ親身に講じていただきたいということを要望も添えてお願いしたいと思います。
  97. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 アコヤガイへい死の影響を受けました真珠養殖業者につきましては、昨年の十二月十日でございますが、水産庁長官通達によりまして、既貸付金の償還期間の延長でありますとか経営資金の円滑な融通につきまして関係金融機関に指導したところでございます。  その結果、今言われましたように、最も被害の大きかった愛媛県でございますが、平成八年度におきましては、漁業近代化資金、これは専ら種苗とか母貝の購入資金でございますが、これの融資につきまして、二十億円弱の償還期間の延長等の条件緩和措置を行ったところでございます。さらに、借りかえ資金でございます漁業経営維持安定資金につきましては、十一億円強の融資を行ったところでございます。また、当面の生活資金といたしまして、公庫の沿岸漁業経営安定資金でございますが、これを活用いたしまして九億五千万円の融資を行ったところでございます。  平成九年度でございますが、平成九年度の愛媛県におきます漁業近代化資金の融資枠につきましては、地元漁家の要望にもこたえまして、平成八年度の二十億の約三倍の六十億円といたしまして、もう既にこの枠の配分を行っているところでございますが、今後、仮にこれを超える融資要望が出てきた場合におきましては、それに十分対応できるように措置してまいりたいと考えております。
  98. 春名直章

    ○春名委員 お話を聞いていてなるほどなと思ったのですが、融資は非常にありがたい、しかし同時に、そのお金を借りようと思ったときに、海がもとどおりになるのか、これからまともな経営が成り立つのかということの展望が見えないとそこにも手が出せないということがこもごも出されました。  四月九日に、水産庁のアコヤ貝へい死原因究明緊急検討会の中間報告書が出されました。私も読ませていただきましたけれども、この中身は、さまざまな要因が複合的に作用したものだというふうに分析をされておられます。考えられる要因の一番最初には、夏場の高水温などによってアコヤガイの正常な生理活動が阻害され、えさ環境が悪化したことが指摘をされていて、「今回のアコヤ貝の大量へい死の要因となった可能性が高いと思われる。」と結論づけておられます。  この検討結果を踏まえるならば、改めて確認するまでもないかもしれませんが、過密養殖など漁業者の問題だという単純な対応はとるべきではないと考えます。この点の認識一つま伺っておきたいと思います。  それから、環境面の要因に加えて、過密養殖などによって被害が拡大した可能性も否めないということも指摘をされています。この点では、養殖関係者による改善の努力が今始まっているとお聞きをしています。  そういう点で要因を単純に決めつけることはできないということを受けとめて、複合的だと私も思いますが、だからこそ原因究明については、引き続き総合的で説得的な調査検討が強く求められていると思います。そして、考えられる要因については、人為的努力で解決できるものについては全力で当たるということが大事だと思います。  それで、質問としてお聞きしておきたいのですが、中間報告では、ホルマリン問題については言及をされておりません。その使用が海の環境を悪化させて、プランクトンの死滅や減少などを通じてアコヤガイにも悪影響を与えることも指摘をされています。三月三日の予算委員会第五分科会でも、水産庁長官が、この点を含めて十分な調査研究をしていきたいとお答えになっております。この問題も視野に入れまして、総合的で説得的な調査検討をぜひ強力に進めていただきたいと思います。見解を伺って質問を終わりたいと思います。
  99. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 アコヤガイの大量へい死につきましては、四月九日に中間報告を出してございます。この中間報告は、今言われましたように、環境要因でございますとか人為的要因等につきまして述べているわけでございます。  今言われましたホルマリンの問題等についてでございますが、これにつきましては、水産庁の研究所を中心にホルマリンと今回のへい死との関係、さらにウイルス等の疾病の可能性も含めまして、現在、鋭意調査研究を進めているところでございます。これにつきましては、今後とも十分調査を継続してまいりたいと考えております。
  100. 春名直章

    ○春名委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  101. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、濱田健一君。
  102. 濱田健一

    濱田(健)委員 私の住んでおります鹿児島県には阿久根市という市があるわけですけれども、ここは漁業の町として知られております。近くには天然ブリがとれ、また養殖のブリなんかもたくさん養殖しているわけですが、イワシの豊富にとれる、水揚げされる場所でした。そしてそれをふるさと宅急便という形で全国に送っていたわけですが、三年前からですか、全くとれなくなったというようなことで、魚価を含めて水産業協同組合の振興につながっていない、だんだん衰退してきているという実態の一つの要因になっている事例がございます。また、三月二十六日の北薩の地震では、水揚げ場の中が波を打ったように壊れまして、ある意味では災特委に委員の派遣もしていただきたいなというふうに思うぐらいでございました。  一つの事例としてふるさとのことを申し上げたのですが、今回の法改正に当たりまして、水産業協同組合のいわゆる漁協経営といいますか、漁獲量減少産地魚価低迷からくるそういう経営の実態というのは正直言ってどうあるのか、そして、その対策についてはいかがされているのか、長官にお答え願いたいと思います。
  103. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 今言われましたように、最近の我が国漁業状況でございますが、周辺水域の資源水準の低下によります漁獲量減少でありますとか産地魚価低迷など、一段と厳しさを増しておりまして、こういうことを反映いたしまして、漁協経営も総じて悪化傾向にございます。このために、漁協系統といたしましては、合併であるとか事業統合によりまして、組織事業基盤のスリム化でありますとか強化を図っているところでございます。  農林水産省といたしましても、このような合併でありますとか事業統合支援しますために、予算措置によりまして合併後の漁協経営の指導でございますとかマーケティング強化支援を行うとか、さらに財務格差是正のための低利融資などを実施しているところでございます。  これらの制度の積極的な活用によりまして、漁協経営健全化するように指導してまいりたいと考えております。
  104. 濱田健一

    濱田(健)委員 そういう魚のとれ高の減少外国産の魚介類が入ってくる、現地の水揚げされた魚の価格がなかなか上がらない。役所から出していただいている資料を見ますと、信用事業貯金の方が、平成四年、五年、六年、トータルして二兆円前後、若干貯金量が減っているということもこの数字でうかがえますし、貸出金についても九千億、八千億という形で推移している、いわゆる小さな漁業協同組合が多い、水産業協同組合が多いという脆弱な基盤もあるかと思うのですが、それらの事業についての認識、そして、今長官に少し触れていただきましたけれども、対策等についてはどのようにされているのか。
  105. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 今言われましたように、平成七年度の漁協貯金額は、全体で約二兆円でございます。一漁協当たりにいたしますと、平均貯金残高は約十五億円と、これは他業態に比べまして非常に規模が小さいということでございます。それから、漁協の貯貸率、これは農協に比べますと若干高いわけでございますけれども、なお他業態に比べれば低いということで、収益力が弱い状況にございます。さらに、近年の金融自由化の進展もございまして、漁協系統信用事業は非常に厳しい状況下にございます。  このような状況を踏まえまして、系統みずから、合併とあわせまして、漁協から信漁連への信用事業譲渡によりまして、信用事業の基盤強化を図っているわけでございます。特に、信用事業譲渡につきましては、平成四年から着実に進展しておりまして、現在までに三百一漁協から十九の信漁連への譲渡が行われているところでございます。  農棒水産省といたしましても、このような系統の動きをできるだけ支援したいと考えておりまして、今回お願いしております水協法におきます最低出資金制度の導入につきましても、この信漁連への信用事業譲渡が加速化される一つの要因になるのではないかと期待しているところでございます。
  106. 濱田健一

    濱田(健)委員 今長官が最後に触れられましたけれども、いわゆる自己資本比率を高める、内部留保のお金を高めていくということで、法案の具体的な中身ですが、最低出資金制度が導入されるということでございます。出資の総額を、漁協については二千万、信漁連については一億を下回らないとされた根拠というのはどういうところに依拠するのか、他の信用組織金融機関との整合性というものはどういうふうになっているのでしょうか。
  107. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 最低出資金の下限となります法定額につきましては、他業態とのバランスでございますとかへ自己資本及び内部留保の充実という観点を踏まえて決定する必要があると考えております。  このような観点から、漁協につきましては、他業態のほとんどは最低出資金が一億円となっております。それから、漁協系統においても信用事業の整備強化に取り組んできているということなどから、本来はできるだけ高いことが望ましいと考えておりますけれども、一方、実現可能な水準であることも重要でございます。  このため、漁協につきましては、他業態金融機関のうち、信用組合最低出資金が昭和四十三年に、大都市の組合で二千万円、その他の組合一千万円と定められたということも一つの参考といたしまして、実現可能な水準といたしまして、二千万円としたものでございます。  ただしへ漁協の中には、離島、半島部を区域といたしまして事業を行っているものがございます。組合員が少なく、増資による対応が困難な場合もございますことから、一律に最低出資金制度を導入することは適当でない場合もございますので農協の場合と同様に、一定要件を満たす漁協につきましては、現行法上の最低水準でございます信用組合並みの一千万円を限度額とする特例を設けることとしております。  以上が漁協でございますが、信漁連につきましては、平均貯金量は約六百四十億円でございまして、これは、農協の方が合併構想実現時に駐金量の水準約八百五十億円ということを想定していまして、農協最低出資金は原則一億円となっておるというようなことでありますとか、さらに最低出資金が一億円と定められましたときの信用金庫、これは五十六年でございましたが、その当時の信用金庫が貯金高が約八百三十億円でありますとか、さらに当時の労働金庫、これが約七百二十億円であったというようなことを勘案いたしますと、信漁連につきましては最低出資金の額が約一億円でどうだろうかということで、最低出資金の額を一億円としたところでございます。
  108. 濱田健一

    濱田(健)委員 何はともあれ、自分自身で体力をつけていくということが一番大事でございますので、この改正案が成立いたしましたら、役所の方としても全面的なバックアップをしていただきたいということを申し添えておきたいと思います。  もう一点は、監事、監査体制の強化についても、本改正案は触れられているわけでございますが、それらを含めて、より経営全体について目配りをしていくためには、農協法の改正に伴って取り入れられました経営管理委員会}漁協が小さいということも、それを導入しない、外部監事等で賄っていくということになっているのでしょうが、そういうふうに全体的に目配りをやっていくための制度が取り入れられてもよかったと私は思うのですが、なぜ取り入れられなかったのでしとうか。
  109. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 先般の農協法改正で設けられました経営管理委員会の漁協への導入でございますが、これにつきましては、当然のことながら私どももいろいろ検討したわけでございます。  ただ、今言われまじたように、漁協事業規模農協に比べまして零細でございまして、これは現行法上の員外理事枠を活用することによりまして、漁協に求められております業務執行体制の専門性は十分確保できるというふうに考えられますことから、今回の改正では取り上げていないところでございます。  ただ、今後、広域漁協が実現した場合におきましては、経営管理委員会の必要性が生じることも考えられますから、今後の漁協系統組織の再編状況を見ながら検討してまいりたいと考えております。
  110. 濱田健一

    濱田(健)委員 鹿児島県でも、漁協の不正融資とか内部でのお金の回し方とか、いろいろな事件も起こっているようでございます。私たちは、それらを含めて、経営管理委員会ないしそれらに似たようなものを、県下全域でも結構ですから、つくっていく方向性というものを今後検討する必要があるのじゃないかと申し添えておきたいと思います。  最後に、大臣に。今後の我が国の漁業振興について、大臣が考えておられる振興策というものを、これは展望の持てるものを役所の方で、勇気づける意味も含めて、漁民の皆さん、協同組合の皆さん方に示していく必要がある、そういう責任を私たちは持っていると思うのですが、いかがお考えでしょうか。
  111. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 我が国の水産業の振興を図り、また水産物を安定的に供給していくために、我が国二百海里水域内の適切な資源管理であるとか、またつくり育てる漁業、流通、加工、販売体制の整備、さらには漁港、漁村の整備などの施策を積極的に推進していくことによりまして、我が国の漁業の振興を図ってまいりたいというふうに考えております。  また、今交渉中でございます、韓国、中国との間での、国連海洋法条約の趣旨を十分に踏まえた新たな漁業協定を早期に締結するための協議を現在進めておるところでございまして、この協議もこれから全力を挙げて取り組んでいきたい、かように考えております。
  112. 濱田健一

    濱田(健)委員 終わります。
  113. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、堀込征雄君。
  114. 堀込征雄

    ○堀込委員 最初に、経済局長お見えでございますので、協同組合金融という観点から経済局長に伺いたいわけであります。  ここ数年来、金融制度調査会の答申を受けて、我が国の金融全体の再編が取り組まれているわけでありまして、金融健全化法案、そして農協法等の改正が行われてきたわけであります。今回ここで水協法改正も行われる、こういう状態になっているわけでありますが、市場規律に基づく透明性の高い金融システムを確立をしていくということで、農協漁協を問わず協同組合金融もその体制をつくり上げていかなければならない、こういうことだろうというふうに思うのです。  私どもも、住専問題を初め農協法の改正を含めていろいろな議論をしてきました。その中で、とりわけ不良債権を早くなくさなければいけない、あるいは農協系統金融のいろいろな体制をつくらなければいけないということでへ農林中金の問題だとか全共連、共済事業の問題だとか信連などの問題について議論をしてまいったわけでありますが、不良債権の議論なんかも全国段階、県連段階の議論はしましたが、単協段階はどうなっているかというところについては、どうも余り議論をしないで来たのではないかという実は反省をしているわけであります。  最近、新聞紙上で、田無市の農協の事件それからJAとちぎの事件、不祥事が相次いで報道をされているわけでありまして、やはりこういった事件が起きないような仕組み、体制というものをつくり上げていかなければならない、こう思うわけでありまして、協同組合の金融事業が当面している難しい問題はいろいろあるわけでありますが、単協段階のそういう指導体制、検査体制、そういうものについて、今この二つの代表する農協の事件を含めてどのような考え方で把握をし対応しようとしているのか、まず経済局長お願いをしたいと思います。
  115. 熊澤英昭

    ○熊澤政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘がございましたように、今、農協経営全般をめぐる情勢、大変厳しいものがございます。中でも、特に金融事業をめぐる状況につきましては、厳しさを増しているというのは先生御指摘のとおりでございます。  そういう中で系統組織全般といたしましては、みずから組織あるいは事業の合理化、改善に取り組むということで、二〇〇〇年を目標といたしまして基本指針を樹立して、現在鋭意取り組んでいるところでございます。これはもう御承知のとおりでございますけれども、いわば農協広域合併の推進とかあるいは組織事業の二段階の推進、さらには業務の執行体制あるいま監査体制の強化、そういったことに取り組んでいるところでございます。  そこで、そういった取り組み支援するという観点から、制度面ではさきの臨時国会で成立させていただきましたいわゆる農協改革二法、その中で具体的に、業務執行体制の強化、先ほど来御論議をいただいております兼職、兼業の制限あるいは経営管理委員会の導入、さらには監査体制の強化、これは常勤監事の必置とかあるいは員外監事の必置義務、そういったことで措置を盛り込んでいただいたわけでございますけれども、そういうことで、基本的には、系統組織全体が取り組んでおるそういう健全化に向けての取り組みにつきまして、私どももそういった措置の適切な運用も踏まえながら全面的に支援してまいりたいというふうに考えております。  また今般、農林水産省の検査機能の強化ということで、大臣官房に検査部を設置することといたしております。そういったことによりまして、検査機能の強化も図ってまいりたい。その一環といたしまして、都道府県の検査機能の強化ということも必要でございますので、そういう意味では都道府県の検査職員に対する研修の充実も図ってまいりたいというふうに考えております。  なお、先生から御指摘がございました田無市の農協の問題あるいよJAとちぎの問題につきましては、現在、県、田無市の場合は都でございますが、都と地元の農協系統、それからJAとちぎにつきましては、栃木県と地元の農協との間でそれぞれ再建計画の具体的な検討に入っているところでございますので、私ども、そういった検討状況、再建の取り組みにつきまして十分見守るとともに、適切な指導を行ってまいりたいというふうに考えております。
  116. 堀込征雄

    ○堀込委員 ぜひこれは、協同組合金融の全体の信用の問題として、今後そのような類似の事件が起きないような適切な指導をいただきたい、こう思います。  時間があれですから、ちょっと。きょうの議論の中で佐々木委員を初め鉢呂委員から、兼業禁止の三十五条の二の質問がございました。  よくわかったようでわからないわけでありますが、御存じのように大蔵通達も、さっき御指摘をされたようにあるわけでありまして、先ほど水産庁長官答弁では、役所が認可を与える場合、これは他業態とのバランスを一つ考えるんだ、二つ目に漁協の実態を考えるんだ、たしかこういうことの答弁でしたね。  その漁協の実態を考える場合に、他に適当な人がいない場合とかというような答弁があったと思うのです。そのことを役所が判断するのですか、他に適当な人がいるかいないかということを。そして認可するかしないか決めるのですか。  これは法律で決めることですから、法律で書く以上は、やはり原則的にそういうケースはないのですよ。例外的にあるケースとしては、もう本当に例外的に、この漁協の実態を見てやむを得ないなと認められるケースだけなのではないか、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  117. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 まさしく例外の認可をいたしますときの判断でございますが、他に適当な人材がないというようなことで、これにつきましては、その時々のケースケースでもって判断していく、厳密に判断していくということになると考えております。
  118. 堀込征雄

    ○堀込委員 その現実の判断はいいのですが、法律に書いてあるわけですから、まさに  じゃ、ちょっと質問を変えますが、例えば農協関係でもほとんどが今単協、県連、全国連の会長を兼ねている実態があるわけで、漁協でも、信漁連会長さんの皆さんは大部分漁協の会長さんを兼ねているという実態がある。これは原則的にだめなんです、この法律が施行されれば。そういうことでいいですね。
  119. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 代表理事、常務理事、参事等は他との兼業、兼職の制限ということになっておりますので、まさしく言われますようなケースは原則として禁止されるわけでございます。その場合に、いろいろな事情、漁業の実態でございますとかそういうのを考えた場合に、先ほど申しましたように、他に適当な人材がない場合でありますとかほかに常勤理事を置いているというような場合につきまして兼職、兼業を認める方向で検討したいということでございます。
  120. 堀込征雄

    ○堀込委員 そういうことで、組織的にはなかなか大変なことだと思うのです、これは漁協だけでなくて農協の方も。やはり法律でこう書いた以上は、あるいは決める以上はそういうふうにせざるを得ないわけでありまして、まさに例外規定は例外規定でありまして、行政庁の判断でむやみやたらに広がるものではない。原則だめなんです。しかし、本当にやむを得ないケースだけ認められるんだということなんでありまして、そうでなければやはり法律の書き方を変えなければいかぬわけですから、そこをよく系統団体の皆さんにも理解をいただかないといけないのではないかという感じが実はしていますので、ぜひそういう指導をいただきたい、こういうふうに思います。  そうは申しましても、日本漁業は大変でございますから、この法律を契機にしながら、漁業家はもちろん、零細な漁協を含めて指導強化をしていただきますように、ぜひ、できるだけの支援施策を政策の中で講じていただきますことを要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。
  121. 石橋大吉

    石橋委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  122. 石橋大吉

    石橋委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  水産業協同組合法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  123. 石橋大吉

    石橋委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  124. 石橋大吉

    石橋委員長 この際、本案に対し、松下忠洋君外五名から、自由民主党、新進党、民主党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び太陽党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。小平忠正君。
  125. 小平忠正

    ○小平委員 私は、自由民主党、新進党、民主党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び太陽党を代表して、水産業協同組合法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     水産業協同組合法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   水産業協同組合は、水産業の振興や漁村地域の活性化はもとより、新海洋秩序への移行に伴う資源管理の推進等に果たす役割がますます重要となっている中で、漁獲量減少産地魚価低迷、金融の自由化等により、その経営環境は一段と厳しさを増している。   よって政府は、本法の施行に当たっては、左記事項の実現に努め、漁協系統の健全な経営の確保に遺憾なきを期すべきである。       記  一 漁協系統組織体制の整備と事業基盤の強化が促進されるよう、地方公共団体とも連携し、各種施策の積極的な推進に努めること。  二 自己資本及び内部留保については、組合員の理解と協力のもと、早急にその充実が図られるよう指導すること。また、部門別損益の組合員への開示については、これが組合経営体質強化に適切に反映されるよう十分指導すること。  三 員外監事・常勤監事の必置等については、組合信用事業規模地域の実情等にも配慮しつつ、監査体制の強化が図られるよう十分指導すること。併せて、全漁連による監査が公認会計士等の積極的な活用により充実したものとなるよう指導すること。  四 役員等の兼職・兼業の制限の適用に当たっては、漁村の実情や組合事業の特性・専門性にも配慮しつつ、責任ある業務執行体制が確立されるよう十分指導すること。また、学識経験者の理事への登用促進につき十分指導すること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願いいたします。  以上です。(拍手)
  126. 石橋大吉

    石橋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  松下忠洋君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  127. 石橋大吉

    石橋委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣藤本孝雄君。
  128. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 ただいま御決議いただきました附帯決議の趣旨を尊重し、今後最善の努力をいたしてまいります。(拍手)     ―――――――――――――
  129. 石橋大吉

    石橋委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。      〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  130. 石橋大吉

    石橋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕
  131. 石橋大吉

    石橋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十五分散会