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1997-03-19 第140回国会 衆議院 農林水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月十九日(水曜日)     午前九時一分開議  出席委員   委員長 石橋 大吉君    理事 原田 義昭君 理事 松岡 利勝君    理事 松下 忠洋君 理事 山本 有二君    理事 北村 直人君 理事 久保 哲司君    理事 小平 忠正君 理事 藤田 スミ君       荒井 広幸君    植竹 繁雄君       大石 秀政君    大島 理森君       大野 松茂君    金田 英行君       亀井 善之君    川崎 二郎君       熊谷 市雄君    栗原 博久君       佐藤  勉君    実川 幸夫君       鈴木 宗男君    丹羽 雄哉君       西川 公也君    野呂田芳成君       牧野 隆守君    御法川英文君       村岡 兼造君    茂木 敏充君       一川 保夫君    木幡 弘道君       佐々木洋平君    城島 正光君       菅原喜重郎君    仲村 正治君       宮本 一三君    矢上 雅義君       川内 博史君    鉢呂 吉雄君       春名 直章君    前島 秀行君       堀込 征雄君    石破  茂君  出席国務大臣         農林水産大臣  藤本 孝雄君  出席政府委員         農林水産政務次         官       保利 耕輔君         農林水産大臣官         房総務審議官  石原  葵君         農林水産省経済         局長      熊澤 英昭君         農林水産省構造         改善局長    山本  徹君         農林水産省農産         園芸局長    高木  賢君         農林水産省畜産         局長      中須 勇雄君         農林水産省食品         流通局長    本田 浩次君         農林水産技術会          議事務局長   三輪睿太郎君         水産庁長官   嶌田 道夫君  委員外出席者         厚生省保健医療         局エイズ結核感         染症課長    岩尾總一郎君         厚生省生活衛生         局食品保健課長 堺  宣道君         厚生省生活衛生         局乳肉衛生課長 森田 邦雄君         厚生省生活衛生         局水道環境部環         境整備課産業廃         棄物対策室長  仁井 正夫君         農林水産大臣官         房審議官    鈴木 信毅君         農林水産省経済         局統計情報部長 遠藤 保雄君         労働省婦人局婦         人政策課長   北井久美子君         自治省税務局資         産評価室長   北谷富士雄君         農林水産委員会         調査室長    黒木 敏郎君     ――――――――――――― 委員の異動 三月十九日  辞任         補欠選任   金田 英行君     荒井 広幸君   瓦   力君     佐藤  勉君   木部 佳昭君     大石 秀政君   熊谷 市雄君     大野 松茂君   牧野 隆守君     西川 公也君   村岡 兼造君     茂木 敏充君   安住  淳君     川内 博史君 同日  辞任         補欠選任   荒井 広幸君     金田 英行君   大石 秀政君     木部 佳昭君   大野 松茂君     熊谷 市雄君   佐藤  勉君     瓦   力君   西川 公也君     牧野 隆守君   茂木 敏充君     村岡 兼造君   川内 博史君     安住  淳君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五〇号)      ――――◇―――――
  2. 石橋大吉

    石橋委員長 これより会議を開きます。  内閣提出家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢上雅義君。
  3. 矢上雅義

    矢上委員 新進党の矢上雅義でございます。  今月末に乳価畜産物価格等決定も行われますことですから、それに関する質問をさせていただきます。  まず、農政全般について大臣にお聞きしたいのですけれども、今、日本農業及び農政について、我が国は本当にこのままの状態でいいのでしょうかという農民からの問いかけがなされております。特にヨーロッパ等を視察された方々によりますと、外国では確たる農政基本理念というのが確立されておるのに、日本ではその確たる何かが見えない。  それは何かというと、昭和三十六年の農業基本法の中で、選択的拡大ということで、米だけではやっていけないから、畜産酪農、そして施設園芸等に特化していこう、転化していこうということでやっておったわけですが、今、米価も、またこの畜産物価格自体も、価格政策自体が国民から合意を得られないということで、非常に危機に立たされております。  一体どの分野に重点を置いて自分たちは頑張ればいいのか、また日本農政の中でどこに位置づけしてくれるのか、非常に今農家方々も困っております。自助努力で改革しようとしても、生産費方式にも見られますように、努力してコストを下げても下げても、そのコスト低減分の努力した部分自分たちの懐に入らずに、結果的には、農産物価格低減という形で生産者に一方的にしわ寄せが来るのではないか、農家方々も非常に大きな悩みを持っておられます。将来の展望が見えないままこのような状況が続きますと、結局、働けど働けど我が暮らし楽にならざるというような言葉そのもの現状になるのではないかと思っております。  農家方々からもそのような御不満というか悩みをお寄せいただいておりますので、この農民の気持ちを、今回、乳価畜産物価格決定の時期でございますので、それと関連しまして、農林水産大臣にお伺いいたします。
  4. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 最初に、これからの我が国農業の方向についてお尋ねがございました。基本的には、優良な農地を確保しながら、やる気のある農家を育成していくということに尽きると思います。  また一方で、他産業並みの所得、労働時間、そういう内容の農家我が国農業経営体中心といいますか、そういう経営体農家をつくっていく。そのためには、今取り組んでいる、生産規模拡大であるとか高生産性農家をつくっていくための基盤整備、また農村生活環境整備というようなことが具体的にあるわけでございます。  そういうことを含めて、お触れになりました農業基本法、もう三十六年たつわけでございますので、四月からスタートする予定でありますが、食料・農業農村を検討する調査会、これは総理府に設置いたしまして、総理の諮問機関、今後の我が国農業について幅広く御検討いただく、こういう審議会をスタートいたします。その審議会で約二年かけまして検討していただいて、できるだけ早く結論をいただくということでありますけれども、その答申を受けて新しい農業基本法をつくる。これが、これからの日本農業の憲法、そういうことになろうかと思います。  それから、具体的な乳価の問題についてのお尋ねでございまして、要は生産性向上メリット生産者に還元する、こういうことについてお触れになられたわけでございますが、その考え方は私もよく理解できます。  ただ、この乳価決定という問題は、いろいろなルールに基づいて行われるわけでありまして、また審議会の御意見も聞いて決める、こういうやり方をやっているということも御承知のことなので、そういう進め方の中で、生産性向上メリットを直接的に反映はしませんけれども、ほかの幾つかの、例えば労賃評価がえの問題等、そういうことの中に生産性メリットを取り入れていくということで対応している、こういうことでございますので、御理解いただきたいと思います。
  5. 矢上雅義

    矢上委員 ただいまの御答弁の中にもありましたが、これから何日間かあと過程がありますが、その中で、労賃等の中でも、また労働条件を高めるという意味からも、ぜひ生産性向上メリット農家が実感できるようにお願いいたします。  続きまして、酪農農家現状と課題についてでございます。  去年の自給飼料不作、また、それに伴いまして購入飼料の割合がふえたわけでございます。しかし、残念ながら購入飼料価格は高騰してまいりまして、現場農家では非常に苦労しております。特に自給飼料中心にやっておったところでは、購入飼料に切りかえたその途端に結局値段がどんどん上がっていったわけですから、大変苦労しておられます。  そういう農家の御苦労が今回の生産費調査の中でどのように反映しておるのか、どのような影響として出ておるのか、お聞きいたします。
  6. 遠藤保雄

    遠藤説明員 お答え申し上げます。  平成八年の畜産物生産費調査結果を見ますと、まず第一は、生乳でございますけれども、全国の生乳百キロ当たり生産費につきましては、費用合計の三割強を占めます流通飼料価格上昇及びこれの給与量増加によりまして飼料費増加いたしましたが、規模拡大搾乳量増加から、前年に比べ〇・四%の減となっております。  また、保証乳価基礎となります北海道の生乳百キロ当たり生産費でございますけれども配合飼料価格上昇、あるいは畜舎等への投資の増に伴う建物費増加等影響いたしまして一・六%の増加となりました。ただし、これには配合飼料価格に対する補てん金は反映されておりません。  以上が生乳でございます。  次に、肥育和牛あるいは乳雄肥育牛の生体百キロ当たり生産費でございますけれども、これにつきましては、飼料価格上昇により飼料費増加いたしましたけれども素畜費、これは二十カ月ないしは十六カ月ぐらい前に導入したものでございますけれども、それぞれ減少いたしましたことから、前年に比べ二・二%という減少になっております。子牛の一頭当たり生産費につきましては、流通飼料費増加が大きく影響いたしまして、前年に比べ二・九%の増になっております。  また肥育豚につきましては、成体百キロ当たり生産費は、コストの六割を占めます飼料費増加により三・一%の増加になっております。  なお、御指摘のございました牧草生産の件でございますけれども、これは平成七年には順調でございました。しかし、御指摘のとおり平成八年に入り天候不順等によりまして減産どなりましたけれども、今回発表しました生産費といいますのは、品目によってそれぞれ違いますけれども平成七年六―九月から平成八年六―九月までを対象としておりまして、ことしの、八年産牧草不作影響の大宗というのは来年の生産費に反映されていく、こう見ております。
  7. 矢上雅義

    矢上委員 ただいまの御答弁ですと、自給飼料不作等がことしの生産費ではなく来年度に回るということでよろしいですね。  そうした場合、去年は八年度での特別な配慮として調整額二・九三円がつけられておるわけでございますが、ことしも平成八年度と同様に、配合飼料価格上昇が、一つの特別な配慮として調整費として計上される可能性があるのでしょうか。論理的に、また現実的にも同様だと思いますが、明快な御答弁をお願いいたします。
  8. 中須勇雄

    中須政府委員 昨年の加工原料乳保証価格算定当たりましても、当時の時点で見込まれる飼料価格上昇、こういうものを、当然、一定の幅の引き上げが行われますと、農家に対する補てん金も支払われます。そういった水準も加味して、値上げ分を見込んで価格算定に当たった。そういった算定を行った上で、なお前年水準との間に二円九十三銭の開きがあったということで、それを調整額としたということが経緯でございます。  したがいまして、基本的な、私どもルールに基づくという考え方で申せば、この四月からの飼料費上昇ということがあるならば、それについては適切にコストの中に見込むわけでありまして、それで出てきたものを基本的に保証乳価とする、こういう考え方で臨むべきではないか、こういうように考えております。
  9. 矢上雅義

    矢上委員 最近、配合飼料が下がりぎみとはいえ、数年前に比べればペース的に上がってきておるわけですから、その辺のかつてのレベルと今のレベルをきちんと比較していただきまして、やはり高い傾向にあるのではないかということもきちんと配慮して、保証価格決定等に向けて頑張っていただければと思います。  続きまして、消費税の問題についてお聞きします。  平成九年四月から消費税が引き上げられますが、加工原料乳保証価格、まあ加工原料乳保証価格の中には政府からの補給金とまたメーカー基準取引価格合計として入っておりますが、それをトータルとして考えるか別々として考えるかは別としても、それらの消費税の課税が内税として織り込まれる形でこれからも行われるのか、それとも外税で行われるのか。また、さらに言うならば、民間取引でありますが、飲用乳価等についても内税でいくのか外税でいくべきなのか。その辺について御答弁いただきたいと思います。
  10. 中須勇雄

    中須政府委員 加工原料乳保証価格というのは、現実には、国内で加工原料乳の再生産を確保するために必要な農家手取り水準を示す、そういう価格であるということでありまして、保証価格での取引が行われるわけではございません。そういう意味においては、保証価格には、それに消費税がかかるというか、そういうような概念自体はないわけであります。  ただ、消費税が三%から五%に引き上げられるということになりますれば、例えば農家のいろいろな物材購入当たりまして、従来三%かかっていた消費税が五%に引き上げられる、それは物材費上昇という結果になるわけでありまして、それは保証乳価算定の際、適切に織り込むべきではないか、こういうような考え方で基本的に対処すべきものというふうに思っております。  一方、加工原料乳基準取引価格と申しますのは、メーカー生産者団体との間で現実にその価格取引をするわけでございまして、この場合には、従来からでございますが、消費税込み価格として私ども基準取引価格については決定、公表している、こういう状況でございます。  それからさらに、飲用乳価についてお話がございました。  飲用向け乳価というのも、形はほとんどは生産者団体メーカーとの間で決済が行われるというか取引が行われるという形態だと思いますので、そういった生産者団体委託販売というような形でメーカー等取引をした場合の消費税の取り扱いについては、一応、最終的には取引段階では内税で行われるのではないかというふうに承知をしております。  ただ、例えば、現在問題になっておりますけれども、いわゆる飲用乳価乳価交渉でどれだけ上げるかとか下げるかとか、そういうような議論が行われているときは、それぞれ当事者の方が、一体内税なのか外税なのか、そういうことを意識しながらそれぞれのお立場議論がなされているもの、そういうふうに承知をしております。
  11. 矢上雅義

    矢上委員 改めて確認いたしますが、生産費調査をするときには、当然その中に農家が負担した消費税部分織り込み済みであると。ただし、加工原料乳保証価格においては、その補給金部分は一種の補助金でございますから、消費税対象とならない。そしてまた、基準取引価格においても現実としては内税で行われておると。  ただ、農家方々消費税について非常に御不満を持っておられるのは、やはり消費税が三%から五%、さらには一〇%、一五%まで上がるだろうということでございます。そういううわさが流れておる中で、消費税が三%程度でしたら、お互い織り込み済みですと納得することで、何かわからないけれどもお互いがうまく得したような気分になって、今までうやむやになってきておりました。そういうことがあったわけですが、これから三から五、一〇%、一五%とうわさされる中で、ちゃんと織り込んでいますということで生産者方々が納得されるのか。  言葉をかえて言うならば、不透明だけれどもちゃんともうけさせてあげますよという言葉がこれから消費税が上がっていく中で通用するのか、非常に大きな疑問でございます。特に消費税の導入のときに、基本的食糧には税金を、消費税をかけないということで政治的な決着が行われて、政府米米価算定の際には、表向きは消費税は課税しないということであるが、しかし、内実では消費税原価計算の中に織り込んであるということで農業者団体方々を説得した経緯がございます。それと同じように、この乳価というものも、基準取引価格においてさえも内税で行われております。非常に似たような不透明な部分があります。  繰り返し申しますが、不透明だけれども一応もうかっていますよということでこれからも押し通していかれるのか。それとも、将来の消費税アップをにらんで、きちんと、原価計算はこれだけですよ、そしてさらに取引すると五%外税でつけるのですよと透明性を求めていくべきなのか。その辺について、局長、お聞きいたします。
  12. 中須勇雄

    中須政府委員 私の説明が不十分だったかと思いますけれども加工原料乳保証価格というのは再生産を確保するのに足る水準である。そういう意味で、農家コスト加工原料乳でいえば、生乳生産のためにがかったコストというのを基本的に必要なものを積み上げていく形で算定をする。そうなりますと、先ほどお話がございましたように、例えば今我々が計算基礎にいたします八年生産費というのは、消費税三%のもとで数字が出てきた生産費でございます。  ところが、この四月からは五%にそれが引き上げられるということになりますれば、例えばえさ価格にいたしましても、本体価格が変わらないとすれば、三から五%に上がったことによってえさ価格農家立場からすれば上昇するわけでございまして、それは保証価格の中に適切に反映しなければならない。場合によっては、では幾らその分がふえたのかと言われれば、それは幾らふえたというふうに説明できるように、透明性のある形でコスト上昇分としてはっきり算定の中の一つの要素として織り込みたい、そういうふうに考えているということでございます。
  13. 矢上雅義

    矢上委員 それでは、さらに御確認いたしますが、保証価格の中に占める基準取引価格の分はあくまでもメーカーさんが大体決めるものですね。それと、飲用乳価メーカーさんと、農家民間で決めるものですけれども、この保証価格自体が内税的な織り込み済み方式でやっておられるということは、この方式をずっと続けるということは、結局、基準取引価格飲用乳価においても内税形式が続けられる可能性が高くなる。  そうした場合に、先ほど申しましたように、消費税率がアップしたら、当然次の流通段階消費税を転嫁していかなければ商売はやっていけません。もともと消費税というものは次の段階の方に転嫁して持っていただく、転嫁していくのが当たり前という税金なわけですよね。それが、もし内税方式でずっといくとか、既に織り込み済みなんだという方式でずっといきますと、今生産者が非常にメーカーさんに対して立場が弱くなっている状況で、そういう生産者力関係が弱い状況で、果たして適正に消費税を転嫁していくことが可能な方式であるのか。その辺について、御見解をお聞きいたします。
  14. 中須勇雄

    中須政府委員 例えば、基準取引価格の場合、内税か外税かというのは一つ扱いの問題でございまして、外税であれば、ある価格に五%を掛けてそれを足せば総体の価格になる。内税の場合でいえば、五%分を計算して百五だと、全体が百五になっているという意味で、百五分の百というものを計算すれば本体価格が出て、それに五%外についている、こういうことでございまして、内税だから透明性がないとか、外税だから透明性があるとか、そういうこととは一応関係がないというふうに私どもは思います。  そういう意味で、基準取引価格について言えば、従来から内税方式というか、消費税込み値段決定、公表してきた。こういうことは、今告示をしております価格から三%分の消費税を取ればそれが本体価格になっているということで、それは扱いの問題であって、透明性自体は、本体幾ら税額分幾らと、こういうことは計算ができるわけで、そこは扱いの問題ではないかなというふうに思うわけであります。  そういった意味で、基準取引価格については、三%から五%に上がる、その場合も、私どもとしては、一応従来と同様に、今の段階では内税方式で五%の消費税が含まれてこういう価格ですよということで決定、公表をしていく、こういうふうに思っているということでございます。
  15. 矢上雅義

    矢上委員 最後に念を押しておきますが、加工原料乳保証価格といりのま、あくまでも生産費調査に基づいて仮定された一つ価格ですよね。市場で取引される取引価格と違うのはよくわかります。あくまでも政府生産費調査基礎にして想定した保証価格であって、現実取引価格とは違う。  そういう理屈は私たち政治家とか行政はわかりますが、現場農家の人々にとってみれば、この保証価格も、例えば自主流通米の一俵当たり幾らという米価も、やはり現場での取引価格と同じ感覚を持っておられるわけですから、そういう現場価格に対する感覚行政価格に対する感覚に乖離があることと、消費税アップがこれから進むことも考えて、やはりこの点は検討材料にしていただきたい、お願いいたします。  続きまして、報道によりますと、こういうことが言われております、農水省幹部談話として。平成九年度加工原料乳保証価格については、昨年のように乳価算定値が下がっても据え置きに調整する手法はとてもできない、こういう談話が早々と出ておりますが、この発言の真意をお聞きいたしたいと思います。
  16. 中須勇雄

    中須政府委員 ただいま御指摘のような談話というかそういうものを正式に発表したとか、そういうような事実はございません。  ただ、私どもがいろいろな機会一般論として申し上げておりますのは、昨年度の保証価格については、生産費が前年に比べて三円九十四銭下がる、こういうところから出発をいたしまして、酪農経営をめぐる諸事情を勘案して、さまざまの特例的な、特別な配慮を実施して試算をしました結果、七十二円八十二銭というような一定試算値が出てまいりました。それと、その当時の、前年度の価格と申しましょうか、七十五円七十五銭との差額の二円九十三銭をいわば調整額という形で乗せて据え置きにした、これが昨年の経緯でございます。  実は、この調整額の加算については、この調整額を加算した試算値につきまして畜産振興審議会にお諮りをいたしましたが、一部には反対ないし強い不満があったというのも事実でございます。  私どもは、九年度の保証価格については、こういった経緯も踏まえまして、ルールに基づいて適正に決定していく、こういうことを基本的な心構えとして対処すべきではないか、そういうようなことをいろいろな機会に申しておる、こういう意味でございます。
  17. 矢上雅義

    矢上委員 冒頭の農林水産大臣のお答えですと、乳価決定、つまり政策決定のプロセスはきちんとしたルールに基づいて行うと。きちんとしたルールに基づいて行うということは、皆さん方からすると、きちんと現場農家生産費を調べて、また、国会等意見も聞いて、そして畜産振興審議会等に諮って、最終的には二十七、二十八、二十九日ごろに決定されると思います。それがルールになっておるはずでございますが、そのルールに乗らない別のルートで、この調整値について、上がるか下がるかという両方の選択肢ではなくて、下がってもやむを得ないというようなものが流れるということ自体政策的、というよりも政治的、恣意的な動きではないかと思うのですけれども、この辺について、私は、不当であり公正ではないと思うわけです。その辺についてどうお考えでしょうか。
  18. 中須勇雄

    中須政府委員 私が思っておりますのは、公正とかそういうことがますます重要になってきている、政策決定過程において透明性を確保するということが重要になってきている、そういう趣旨を申し上げているわけでございまして、別に、保証価格が上がるとか下がるとか、そういうような趣旨で申し上げているわけではございません。
  19. 矢上雅義

    矢上委員 このような問題は毎年出てまいりますし、また、さらにこれからは透明性が求められる時代でございますので、どうか、現場が動揺したり、逆に審議会のシステム自体が公正さを疑われるような発言は農水省としても控えていただきたいと思っております。  続きまして、これは農業基本法の問題にも立ち返るわけでございますが、農業基本法におきまして選択的拡大として大きな期待を集めました酪農畜産、先ほども申しましたが、日本農業の最後のとりででもあります。しかし、関係農家数は昭和六十年当時の半数にまで減少しております。これは、農業基本法の目指す精神が実現されたから半数に減ったのか、それとも、やる気のある農家を救えずに結果的に半数になってしまったのか。人によってはとらえ方がさまざまでございます。  ただ、一つだけ言えるのは、米価というものが形骸化してきまして、下支え機能がなくなってきております。それに対して、米にかわる特産物として酪農畜産がこれだけ振興されてきた。しかも、米と酪農畜産が違うのは、米の場合には兼業農家が大多数でございます。畜産農家は、やる気のある若い農家、つまり専業農家が大多数でございます。米価のときには私ども政治家も含めて大変お祭り騒ぎになってしまいますが、乳価畜産価格のときには非常に淡々とスムーズにいってしまって、結果的に米価は政治力によって支えられる部分があるが、畜産乳価等の部分においては非常にこういう現象が進んできておる。  それは関係者の数が少ないこともあるかもしれません。ほとんど農家は米をつくっていますから。専門農業である酪農畜産の宿命と言えるかもしれませんが、専業農家として頑張っておられる方々がこれだけ厳しい状況にある。そういう中で、価格政策をこれからきちんと維持していくのか。そういう意味で、保証価格の現行水準の維持とか限度数量の拡大をどのように重点を置いて実行していかれるのか、大きな問題だと思っております。  また、去年の全酪連事件に影響されまして、飲用乳価も下がってきております。乳価全体が非常に打撃を受けております。こういう中で、滅びるままに任せていいのか、それとも畜産酪農については国民的合意を確立して、この部分だけは価格政策を推し進めていくんだという考え方が農林水産省にあるのか。大臣にお伺いいたします。
  20. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 先ほど、農林省幹部の談話が公表されている、平成九年度加工原料乳保証価格については、昨年のような、試算値が下がっても調整額により据え置きにする手法はとてもできない、これはそういう事実はございません。また、今の段階でそういうことが言えるわけはございませんし、それはぜひ御理解いただきたいと思います。私もそういうことを言ったことは覚えはございませんし、我が省の幹部がそういう談話を公表するというようなことはとても考えられませんので、その点は御理解いただきたいと思います。  それから先ほどの、御指摘ございました選択的な拡大ということで、畜産農家、まさに専業農家であるし、傾向としてはどんどん農家戸数が減少している。こういう現状を見ますときに、今後我が国の食糧の自給率の向上、そういうことを考えましたときに、畜産という問題が非常に大きな柱であることはこれはもう間違いのないところでございまして、いかにしてこの畜産農家がまさに意欲を持って生産に取り組めるように、どういうふうに対応していくかという問題は、非常に大事な問題だという認識を持っております。  具体的に、保証価格水準の維持であるとか限度数量の拡大なと思い切った措置を講ずべきではないか、そういう御意見につきましては、私も私なりに勉強してみたいというふうに思っております。これは、今月の月末までに、この審議会の答申を受けまして価格を決めるわけでございますので、その中で、私なりに考えてみたいというふうに思っております。  また、飲用乳価につきまして、御指摘、御意見がございました。この飲用乳価につきましては、従来当事者間でこの価格決定が行われてきた、こういう経緯からいたしまして、当事者間で誠意を持って十分に交渉してもらいたいというふうに考えております。
  21. 矢上雅義

    矢上委員 私があえて飲用乳価にまで踏み込んだのはなぜか。財政改革が問われている中で飲用乳価まで言うのは踏み込み過ぎかなと思いましたが、こういう事例がございます。  かつて加工原料乳がきちんと保証されておったころは、北海道の牛乳は北海道でとまっておったのが、今は加工乳に回す枠も限度数量も少なくなってきたし、また加工原料乳に回すよりも飲用乳に回した方が高くなるということで、今北海道から約六十万トンを超える牛乳が生乳として入ってきております、本州の方に。そうしますと、飲用乳が中心である本州、九州の酪農家に大変な打撃を与えております。  それはどういう結果を生むかといいますと、六十万トンの北海道の牛乳が本州に入ってくる。そうすると本州、九州で生産した六十万トンの生乳が行き場を失って、結果的には本州の牛乳が北海道に渡って、買いたたかれて結局加工原料乳になる。そういう、よく考えてみればおもしろい現象が起きておるわけでございます。  牛乳というものは、水と一緒ですから、あんな重いものを、本来ならば地域で生産して地域で消費すれば非常にコストが安くて済むわけでございますが、今本当に、本州のものを北海道まで運んで、生乳価格よりも安い加工原料乳価格で処理される、昔よりも輸送コストがかかった上に買い取り価格は安くなる、そういう現象が起きておるわけでございますが、局長はそのような現実をどうお考えでしょうか。コスト削減という時代に対して逆行しているような気がいたしますが。
  22. 中須勇雄

    中須政府委員 ただいま御指摘のとおり、現状で申しますと、北海道から本州に向けて、飲用乳、これは飲用向けの原料生乳、あるいは飲用乳になったものが、合計で六十万トンを超す水準で入ってきている、御指摘のとおりだろうと思います。  これについては、いろいろ輸送技術の向上であるとか、もう一つ大きな要素としては、最近東京等でもよく見かけるわけでありますが、産地の名前の入った牛乳と申しましょうか、そういうものが非常にふえてまいりまして、そういう意味では、北海道の生乳が人気が高いというか、そういうふうな部分もあるようでございます。そういったことを反映してきております。  ただ、御承知のとおり、生乳というのは生もので、その日のうちに基本的には処理をしなければならない。そういう意味で、内地なら内地の立場に立てば、内地における生乳の需給関係というものがあるわけでございまして、問題は、やはりそれを必要とする方が必要とする分については入ってくるのは当然でございますけれども、そこはどちらにも生産者団体がおられるわけでございますから十分話し合って、全体の生乳の需給というか流通の秩序というか、そういうのが保たれる形でうまく行われるということを期待したいというふうに私どもは思っております。
  23. 矢上雅義

    矢上委員 これは私のお願いでございますが、需要に応じて物は動くわけですから、しかも輸送能力がアップして、また輸送技術自体もアップしていますから、広域流通が起きるのは当たり前です。この広域流通の時代の中で、加工原料乳保証価格制度がこのままでいいのか、強化した方がいいのか。逆に、一つの防波堤としての役割を果たさないとすれば、加工原料乳か飲用乳かの区別にこだわらずに、新たな価格政策制度を検討すべきなのか、この辺についての将来的な検討をお願いいたします。  次に、これも乳価に関する問題ですが、全酪連事件についてお尋ねいたします。  全酪連の長岡工場、宮城工場等が不正表示等の問題で営業停止になりまして、そのおかげで飲用乳の行き場がなくなり、乳業メーカー等からいろいろお助けしてもらって何とかさばいたということがございますが、これが物すごく、加工原料乳の分野とは違って、飲用乳の分野において非常に現場生産者影響を与えましたし、大変な事件でございました。結局、この事件が与えた影響として、二度とこの事件を起こしてまならないというような予防策について、簡潔に農水省のお考えをお聞きします。
  24. 中須勇雄

    中須政府委員 御指摘のとおり、昨年の全酪連の事件につきましては、やはり飲用牛乳の内地における都府県におきます需給という面でも大変大きな影響を与えまして、特に、全酪連系へ出荷する量の多かった内地の主産地では、飲用乳価がもともとかなり引き下げられていたところに配乳先が一時的になくなって、非常に安い価格で売らざるを得なかった、加工に向けざるを得なかった、そういうような意味で深い傷を残したというか、そういう問題があったというのが一つございます。  それと同時に、飲用牛乳に対する消費者の信頼というか、表示等に関する信頼についても大変損なう出来事でございました。そういう意味で、私どもこういう事件が二度とあってはならないというふうに考えております。  そのために、昨年の、平成八年の四月段階でございますが、乳業工場等に対する指導監督の強化というふうなことで、二度とこういうことが起きないように、社内における監督、監視体制を強化することであるとか、社内においてマニュアルをつくって、こういう事故が二度と起こらないように、そういうようなことについてお願いを申し上げております。  今後とも、そういった努力を重ねて、二度とああいった事件が起きないように、私どもとしては努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  25. 矢上雅義

    矢上委員 今回の全酪連事件が与えた経済的損害ですけれども、一キログラム当たり約四円の価格引き下げがこれで行われたということで、飲用乳が約五百二十万トンと計算しますと、五百二十万トン掛ける、それを掛けますと二百八億円ですか、二百八億円の経済的損失が、一組合の事件のおかげで全国の生産者の手取りに影響しておる。しかも経済原則というのは非常にシビアですから、人為的な事件で下がった、それをスタートにことしも始まると思うのですよ。一度人為的に下がったものであるならば、きちんとした生産費で決まったものじゃないわけですから、やはり何らかの力で上に押し戻すぐらいの応援がないと、このままでは農家は厳しくなるんじゃないでしょうか。  きちっとした生産費調査に基づいて下がったというならわかりますよ。例えば加工原料乳保証価格でも約二円調整額ですよね。生産費計算して、そして調整費をつけた。しかし、今回の四円下がったというものは、あくまでも全酪連の事件が影響して人為的に下がったと思うわけですよ。そういう人為的な原因をもとに下がったものをスタートラインにしてまたことしの飲用乳価も決まるとすれば、これは現場生産者からするとたまらぬなという気持ちはあると思います。どうかぜひ、民間取引ですから行政が口を挟むことではないですけれども、このような実態を知った上で各種関連対策等を立てていただければと思っております。これは要請でございます。よろしくお願いします。  続きまして、狂牛病、O157の影響による収入減や、またO157事件発生後の屠畜場の屠畜検査料の負担などが、きちんと生産費調査の中で、また価格算定基準等の中で反映されておるのか、お聞きいたします。
  26. 中須勇雄

    中須政府委員 屠畜検査料などの経費の問題という御質問でございますので、多分牛肉の安定価格についてのお尋ねだろうということでお答え申し上げます。  牛肉の安定価格算定におきましては、算定技術上の問題として、肥育牛の農家の庭先における販売価格、これを基礎にして一定計算をいたしまして、再生産加工水準ということを出した上でそれを市場での枝肉取引価格に換算をする。これは過去七年間のデータを使って、過去七年間における肥育牛の農家販売価格と市場の枝肉卸売価格関係式を使って換算をするということでございます。  その場合に、当然のことながら、農家の庭先で生体である牛から枝肉の卸売価格こなるまでの間にかかる輸送代であるとか出荷経費であるとか、あるいは屠畜料であるとか屠畜検査料であるとか、そういうものはその換算の中で適正に処理をされる、こういうふうに考えているわけでございます。
  27. 矢上雅義

    矢上委員 私も畜産農家を回っていろいろ調べてみたんですけれども、O157の影響で牛の内臓が、焼き肉屋さんが不振だったですから、売れなくなって、例えば内臓の値段が、枝肉換算一キログラム当たり四十円したものが一キログラム当たり二十円と、半分です。お聞きしますと、内臓の値段が一頭当たり二万円あったそうですが、O157事件以後、平成八年七月以降、二万円が一万円に減っているそうです。  私が調査しましたところは年間百頭から百五十頭出荷しておるそうで、多いときで百五十頭出荷しますと、一頭当たり一万円ですから、百五十万円の収入減でございます。それに対して、ことしの四月、平成九年の四月から、衛生設備の向上等も関係しまして、全国で屠畜場の屠畜検査料が上がるような計算になっております。内臓の値段は半分に下がる、検査料は上がる、非常にダブルパンチである。  しかし、O157の影響が表面化したのは平成八年七月以降でございますから、残念ながら生産費の調査は平成八年七月で終わっておりますよね。そうしますと、例えば今回の生産費調査の中で、いわゆるふん尿とか内臓とかの副産物価格が約二万五千円と計算されております。従来は二万五千円あったものが、これは肥育牛の副産物ですね、肥育牛の副産物で二万五千円あったものが、今の時点で計算し直しますと一万五千円にしかなりません。これは同じようにホルスタインとか乳用牛においても、雄とか古くなったものは食肉に回すわけですから、肥育牛と同じように内臓は売れなくなります。これは関連して言いますならば、乳価生産費にも非常に影響してくるわけでございます。  ただ、残念ながら生産費調査の期間からずれて、直後に、直後というか、重なっておりますけれども、六月ぐらいは。だけれども、反映されておりません。このような二つのダブルパンチというものをきちんと平成九年度の配慮として判断していただけるのか、局長の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  28. 中須勇雄

    中須政府委員 先ほど申しましたように、農家の出荷段階から卸売市場で枝肉になるまでの間の経費というのは、それぞれのデータの変化というか、そういうものの傾向値を含んだ換算を行うことによって、その中で適正に反映されるというふうに考えておるというのが第一点でございます。  それからもう一つは、確かにO157によって、ただいま御指摘のとおり、特に内臓については半値になるというような厳しい事態があったのも事実でございます。ただ、その後、その後というか、やはり我が国の消費者が、こういった狂牛病の問題だとかO157の発生、こういうことを契機にして、やはりもともとおいしいというようなことも当然あるわけでございましょうが、国産の牛肉への志向がかなりこの間強まったという部分がございます。これは別に私どもがどうこうということではございませんが、大変幸いなことに、例えば平成八年の四月からことしの二月までの牛の枝肉の卸売価格、これはいわゆる省令規格のものでございますが、平均千百六十五円しております。これは前年同期に比べると一〇%も上がっているということで、だからどうこうということではございませんが、肥育農家経営でいえば、確かに一部そういうO157で影響を受けた部分はございますが、本体の肉価格が大変好調だということで、収益性自体は大変改善されているというのが現状でございます。
  29. 矢上雅義

    矢上委員 ただいまおっしゃったように、確かに国産牛肉が見直されて収益は上がっておりますが、消費量も落ちて生産量も落ちておりますので、幾ら枝肉の価格は上がっても、生産量、消費量とも落ちておれば手取りは余り変わりませんから、その辺のきちんとした合計額等を含めた上で客観的に計算するとともに、副産物の問題もきちんと生産費に来年は織り込んでい先だく、またことしの配慮の中にもできれば加えていただく。そうしませんと、統計期間のはざまにはまってしまって、結局注目もされずに、何も配慮されずに終わってしまったではいけませんので、ぜひ客観的な配慮をお願いいたします。  続きまして、これも畜産関係でございますが、畜産業というものはいわゆる中山間地に多く配置されております。平場でなかなか環境問題的にもやれない、また、どうしてもいろんな状況のもとで、中山間地、過疎地に適した農業の分野だということで過疎地域、中山間地域に配置されております。そういう中で、いわゆる過疎地に限定して次のようなデカップリング的なものができないか、お聞きいたします。  例えば牛舎等の施設投資資金等の長期無利子融資、また素牛導入資金とか飼料購入資金等の無利子融資、現在抱えている負債の残高一括長期無利子融資、無利子ということで大変厳しゅうございますが、二〇〇〇年を迎えるに当たって、時間を区切ってとか地域を区切ってとか、そういう形でのデカップリングが考えられないかと私は考えております。  また、さらにあえて言うならば、今公的介護保険制度が出ております。平成十二年度から早ければ施行されますが、地方におきましては、なかなか老人ホームに人を預けることが、親を預けることが預けにくい。ずっと過疎地を回りますと、我が家でやはりお父さん、お母さんを面倒見たい、施設に入れないかわりに現金給付をしてくれないだろうかとか、基盤整備の負担金を、山間地は大変負担金が大きくなるから低減、免除してほしいとか、また、山間地において消防団員は、三十歳、四十歳までだけじゃなくて五十歳に入ってまで消防団員を務めなくちゃいけないとか、いろいろ社会的に貢献する分野が多い。そういう社会的に貢献する部分まで含めて、何らかの形で、できるところからデカップリング的なものを推し進めていってくれないか。これは農林水産省の該当する分野もあれば、また全然違う省庁横断的な部分もございます。その辺を絡めて、御感想なりお聞かせいただければと思っております。
  30. 中須勇雄

    中須政府委員 ただいま御指摘のように、中山間地について、例えば牛舎とか素牛導入とか、各般の分野について長期の無利子資金をつくったらどうか、こういう御提言でございますが、何と申しましょうか、通常の私どもが普通にやっております資金対策なり、そういう面でいえば、もちろん各種の低利資金等の手当てをいろいろ行っているわけでございます。そういうものとの横並びでいえば、御指摘のような話はなかなか実現は難しいお話だろうと思います。  ただ、ただいま先生の御指摘は、今までの、例えば畜産なら畜産の分野における施策の延長線上でどうかということではなくて、中山間地ということについて、いわばデカップリングということを含めた大きな政策転換というか、そういう中でそういうことが実現できないかというようなお話だと思います。その点に関しましては、私はお答えするにはいささか役不足でございまして、的確なお答えはできないわけでございますが、デカップリングについては、現在の農業基本法のこれから行われます見直しの議論の中でも、もちろんEu型のものはなかなかじかに我が国に持ってくるのは難しい、こういう状況はありながらも、一つの検討課題になっているのは事実でございます。そういうふうな中で、どのような対応が実際に可能なのか、これからの議論ではないかなというふうな気持ちで今聞かせていただきました。
  31. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 中山間地域対策というのは非常に重要な問題でありますし、またこのデカップリングの問題も避けて通れない、そういう課題だと思っております。  そこで、新しい基本法をつくる過程の中で、今いろいろ言われました点について、これは検討する、そういう問題、そういうふうに理解しておりまして、よろしくお願いいたします。
  32. 矢上雅義

    矢上委員 先ほど申しましたように、本当に農村地域に行くとお年寄りの面倒をよく見る家庭が多いし、また山の中に行くと、中学生のころから下宿に出す、平場の高校に出して寮に入れさせるとか、また大学に至りますと必ず東京とか大阪に出ていかなくてはいけませんから、東京に住む場合と山間地に住む場合では、教育費に物すごい大きな影響が出てきます。  これから高齢化社会、少子化社会と言われながら、一番大きな負担を強いられるのは農村地域に住む農業者、またサラリーマンも含めてございますが、やはりその辺の日の当たらない部分に、ぜひ新しい形でのデカップリングとして検討していただきたいことを要望いたします。  あともう一つ、先ほど長期無利子融資をしてくれないかとあえて挑戦的なことを言いましたが、実は、今やられておられる認定営農者に対する融資制度におきましても、現場で非常な矛盾が起きております。それはどういうことかというと、まず営農計画を認定してもらう際に計画書をつくりますね。ただ、その計画書をつくるには物すごい作文能力が要るんですよ。そのゴーストライター的なことをしてくれる人が必要なわけですが、その方たちは役場の職員であったりJAの職員の方ですが、その地域のJAとか役場によって情熱度が違うものですから、作文してくれないというのですか、コンサルタントをしてくれない。  例えば、計画はやっとできた、営農計画は急げということで、やっと何とか達成する方に来ていますが、それから先、計画をもとにして融資を受けようとするときも、聞く話によると二センチ近い融資計画書が要る。そのときにどこで明暗を分けるかというと、そこの地域農協の担当者の方がどれだけ勉強しておるか、そしてその方にどれだけ作文能力があるかによって、同じ規模の農業者で同じ負債を抱えておる、それなのになかなか、不平等が出ておる、これが現場の声です。  しかも、担保はどうしても土地に頼らざるを得ない。中山間地の畜産農業において、中山間地、過疎地の土地の値段はないに等しいです。ないに等しいものを担保にして金を貸すといっても、金を貸してくれないのと一緒です。その辺の現実的な解消をぜひお願いいたします。これは要望でございます。  あと五分しかないので、続きまして、固定資産税の評価がえについてお伺いいたします。  これは、平成八年二月九日付、自治省から「土地評価替えに関して留意すべき事項」ということで出ております。これはどういう内容かと申しますと、畜舎とか堆肥舎とか、あと、ハウスですね、温室、ビニールハウス、ガラス張りのハウスを含めて、これが畜舎によりますと九割方が家屋として評価されて、結果的には宅地になっておる。結局、農業の効率化、生産性向上を求めてみんな施設園芸とか畜舎をつくって、放し飼いではなく畜舎をつくってやったのに、固定資産税の地目の評価が宅地になっておって全然優遇されない。その辺の農業基本法が進めてきた政策を、固定資産税の面できちんと評価するという受け皿ができていないように考えております。この辺について、どういうこの通達の状況、内容であるのか、自治省の方にお伺いいたします。
  33. 北谷富士雄

    ○北谷説明員 今お話のございました昨年二月の通知でございますが、これは、農業用施設用地の評価に当たっての留意事項を連絡したものでございます。  内容は、三つ注意喚起として挙げておりまして、一つは、施設用地を評価する場合には、一般的に地目の認定として、通常は宅地あるいは雑種地あるいま農地といった地目の中で、いずれかで評価されるわけでございますけれども、この地目区分の基本的な考え方をお示しした。  二つ目は、宅地あるいは雑種地として評価を行います際には、例えば市街化調整区域の、あるいは農用地区域内の施設については、価格差というのは、一般の宅地とは若干異なる価格差というものがありますと。いわゆる公法的な規制があって土地の利用が若干違いますので、そういった価格差が的確に反映できるように取り組みをお願いしたいということ。  三つ目は、そうはいっても取引事例が大変少ないわけでございますので、近隣の市町村との情報交換をよく行って適正な価格把握に努めてもらいたい、というような三点の通知をしたところでございます。  その後、幾つかの団体を抽出しましてその状況を聞きましたが、通知を受けまして改善を行っている団体、あるいはまだその改善が不十分と思われるような団体というのはございます。今後とも、その適正な評価について引き続き指導してまいりたいと考えております。
  34. 矢上雅義

    矢上委員 自治省の通達等を見ますと、基礎をコンクリートでしっかりやったガラス張りの農業用温室等がある場合には、これは宅地的に扱われるのですか、いろいろありまして、現実問題として私が要望したいのは、農業をやるために施設化していったわけですから、雑種地なり農地なりのように評価がえをしていただいて固定資産税の低減を図ることと、また、幾ら立派な施設でもそれは人が住む家と違うわけですから、家屋と同様に扱うのではなく、農業用施設として特別の枠をさらにつくっていただく、それがなされないとコスト低減はされません。  あるところによると、畜舎を建てて、畜舎の固定資産税が年間一千五百万、飼っておる牛が一千五百頭で、毎年牛一頭当たり一万円の固定資産税を負担しておるそうです。非常に矛盾が出ております。もしこの固定資産税の評価がえをきちっと行いませんと、施設園芸と畜産酪農の分野は工業の世界になってしまいます。つまり、農林水産省から通産省の管轄になってしまいます、こういう状態ですと。  あともう一つ。これは、地目で畜舎の九割が宅地という報道もなされております。畜舎の九割が宅地で、しかも近代的な温室設備が宅地と認定されるならば、前回質問しました農業に株式会社が参入する問題、株式会社は農地を取得できないとなっておりますが、もし今のまま畜舎が宅地で施設園芸のガラス温室が宅地だったら、十兆円ある農業生産額のうち、この二つで五兆円から六兆円近くあるわけですね。五兆円から六兆円近くある分野に株式会社が参入できるのじゃないか、今でもできるのじゃないかというような気がします、こういう現状を見ますと。もし宅地だったらできるとなるとですよ。株式会社は農地を取得できない、裏を返せば株式会社は宅地を取得できるわけですから。  それともう一つ、もう時間が来ましたが、これは農業者年金の問題です。  もう担当の課長さんに整理していただきましたからあれですけれども、つけ加えておきますが、ある方が六十歳を過ぎて息子に農地を譲って経営者移譲年金をもらった。そうしたら農業委員会から現況を見に来て、ちょうどそのときに堆肥舎をつくっておられたそうなんです。自分の農地をつぶして堆肥舎をつくって、その農家の方は、堆肥舎は農業用の施設だから農地でいいんだろうと思って届け出なかったら、農業委員会から、あなたは何で勝手に農地転用するんだと怒られまして、それで三十万円かけて測量して分筆して登記をされたそうです。それで、明くる月に見に来てくださいと頼んだのですけれども、結局農業者年金の支給停止が解けたのは一年後だったそうです。  こういう問題も地目について起きておりますので、どうか、平成九年四月がこの見直しの時期でございます。ただ、残念ながら、私が幾つか自治体を調査しましたら、地方自治体としては、固定資産税を減らされるのは困りますから、これは、自治省の通達はあくまでも適正にやってくれということであって、評価がえをしてくれという通達ではないということで現場指導をされております。  これはせっかく自治省の方が来ておられるのに申しわけないのですが、地元の自治体では、現場の自治体では、これは適正な評価の指針であって、平成九年四月に評価がえをしてくださいという指導ではないという指導がされておりますので、急いで農政部の方も地方自治体の農政部にハッパをかけてやりませんと、平成九年四月の評価がえを過ぎますと、次に行われるのは三年後です。また三年間この問題が蒸し返しになるということを避けるためにも、ぜひ、四月まで時間がありますので、農水省の方からも地方自治体への御指導をよろしくお願いいたします。  質問を終わらせていただきます。
  35. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、一川保夫君。
  36. 一川保夫

    ○一川委員 新進党の一川保夫です。今の矢上委員の問題にもいろいろと関連する質問になりますけれども、できるだけ重複を避けて質問をさせていただきたいと思っております。  まず私は、日本農業の中で畜産業というものが大変重要な役割を占めているということは私自身も全く同感でございますし、これからもこの畜産分野について農政の中でしっかりと取り組んでいただきたい、そのように基本的に考えております。  そういう中にあって、私は、近年の畜産業にかかわる農家の戸数が大変減少してきておるということについて、非常に心配をしております。  それは、先ほど大臣が冒頭の御答弁の中で、これからの農業はやる気のある農家を育てていくというお話がございました。私は、畜産に携わっている農家方々というのはやる気があってもなかなか農家経営を維持していけない、そういう環境が最近非常に目立ってきているのではないかというふうに思っております。  近年、家畜を飼育している戸数が大幅に減少してきているというのは、これは何か農政の中で一つ政策目標として意識的にこれまで減らしてこられたのか、あるいは結果的にこうならざるを得なくて減ってしまったのか、このあたりがまずちょっと見えてこないというのが確かにございます。  例えば乳用牛であれば、近年、毎年対前年六、七%ぐらい農家の戸数が減ってきている。平成八年では四万二千戸だというふうに聞いておりますし、これは平成二年当時は六万三千戸あったというふうに聞いております。  また、肉用牛を飼育している戸数は、これまた近年、毎年七%から八%農家の戸数が減ってきている。平成八年では十五万五千戸、平成二年当時は二十三万二千戸あったというふうに聞いております。  また、豚を飼育している戸数は、これまた大変な減少でございまして、年率一五%前後で減少してきておるということです。今現在、平成八年では一万六千戸、平成二年当時では四万三千戸あったというふうなデータになっておりますけれども、こういうふうに、家畜を飼養している農家の戸数が、何か私の感じでは想像以上に減少しているという感じがするわけです。  このあたり、先ほどちょっと触れましたけれども畜産にかかわるいろいろな施策の中で、これだけ関係する戸数が減っていくということを想定しておられたのかどうか。政策として、先ほども言いましたように、ある程度目標を掲げて、ここまで戸数が減ったとしてもやむを得ないという中で規模の拡大を図ってこられたのかどうか、まずそのあたりを基本的にちょっとお聞きしたいと思っているのです。
  37. 中須勇雄

    中須政府委員 御指摘のとおり、近年におきます畜産農家戸数、各畜種とも押しなべて減少しておりますが、特に御指摘のとおり、乳用牛とか肉用牛では各年六、七%台の減少、特に養豚等では一五%程度の減少といりことで、かなりの減少があるというのが事実でございます。  こういったやめていかれる農家方々状況等をいろいろ私どもも調査をいたしておりますが、やはりやめていかれる農家の大部分の方は中小、小規模の農家、それから経営主がかなりお年を召して、後継者がいないということでやめていかれる。いずれにしても、飼養規模でいえば小さい農家中心である、これが実情でございます。  ただ、例えば養豚なんかで典型的に見られるわけでありますが、従来は、そういった中小規模の方が戸数が減少しても、中規模ないし大規模の方が規模拡大をすることによって、生産力としてはかなりの水準を維持できた、こういうことがあったわけでございます。  最近では、養豚はこういった戸数の減少というのを十分上層階層も補うことができないというふうな形で、飼養頭数自体も若干減少傾向にある、こういうような状況でございまして、私どもとしては、やはり総合的に考えて、それぞれ畜種によって差はございますけれども、基本的に、今後の状況を考えますと、畜産についても新しい担い手の確保ということが大変重要な課題になってきているのではないか、そういうふうな認識を現在持っております。
  38. 一川保夫

    ○一川委員 私もこれまでの評価というのはおおよそそういうところにあるのかなという感じはいたしますけれども、農林省関係から出されているいろいろな資料の中でも、なぜこういうふうに家畜にかかわる農家の戸数が減るかということについての分析の中では、関係農家方々が非常に高齢化を来してきている。ということは体力的にそれを維持できないということになるのでしょうけれども、基本的にはその後継者が育っていないということにつながってきているというふうに私は思いますし、また、特に養豚関係中心に、環境問題で非常に悩みが大きい。そういうものにかかるコストも大変でしょうけれども、周辺からのいろいろな苦情、そういったようなことも精神的にたまらないというようなことから、酪農、養豚関係農家方々が、農業というより畜産業から手を放さざるを得ないという状況に追い込まれてきているのではないかなという感じもいたしております。  また一方、いろいろな国際化の流れの中で、価格の低迷、そういったことで畜産業の先行きが非常に不安だというふうなことも当然背景にはあろうかというふうには思っております。  ただ、全体の農家の中でも特にこういった畜産に携わっている農家の方というのは割と問題意識を持った方が多いのではないかというふうに私は思っております。特に、米作を中心にやってこられた農家の方以上に、酪農畜産等にかかわっている農家皆さん方というのは、やはり世の中のいろいろな動向というものを見ながら自分の農家経営というものに対して割と敏感に携わってきた方々が非常に多いというふうに思っております。  そういう方々農家から離れていく、農業から離れていくという現象は非常に寂しい現象であるわけですけれども、これからの一つ農政という中において、今後こういった畜産にかかわる農家というものを、おおよそ戸数的にはどういったところに目標を置いてある程度守っていこうとしておられるのか、何かそのあたりの考え方がございましたら御説明願いたいと思います。
  39. 中須勇雄

    中須政府委員 私ども畜産物に関しましては、それぞれ一定の需要と生産の長期見通し等に基づきまして需要の見通しを立てた上で、できる限りこれを国内生産で努力をしていこうということで、生産面での努力目標というかそういうものを設定してやってきておりますが、具体的な数値として、戸数についての目標というものは現実には掲げておりません。  ただ、当然のことながら、一定規模以上の頭数というものを確保するためには相当数の戸数が必要なわけでございまして、具体的な数値の有無にかかわらず、そこは、先ほど申しましたように、担い手対策というかそういう意味での取り組みを強化していかなければならないだろう、そういうふうに考えております。  そういった意味で、畜産の場合、どうしても小規模、中小規模を中心一定程度は離農されていく方が出ることは一面やむを得ない面がございます。問題は、やはりそれを補う形で例えば外からも新規就農者が入ってくる、そういうことも畜産の場合に大変重要だろうというふうに思っております。畜産では離農される方がおられれば施設とか土地というのがあくというかむだになってしまうわけで、そこをうまく新規就農者につなげていくというふうな形で事業が仕組めないかということで、実は平成九年度からも新しい予算をお願いをしております。  離農等であいた農場について農地保有合理化法人が中間的に保有をいたしまして、一定期間は貸す形で新規就農を志す方にお貸しをして、経営が軌道に乗ったらそれを売り渡す、その間必要な小規模な整備等を補助事業として行える、こんなふうな事業も予算化をしておるところでございます。そういった意味での担い手の確保ということに向けて引き続き努力をしていきたいというふうに思っております。
  40. 一川保夫

    ○一川委員 私は、先ほども言いましたように、畜産にかかわっている農家というのは基本的には畜産というものを続けたいという気持ちを強く持っている方が非常に多いというふうに思っております。しかし、周辺のいろいろな情勢、農政の全体のいろいろな流れの中で、あるいは先ほど言いましたように環境の対策の問題等々、これ以上続けていくのは非常に難しいということで畜産から手を離さざるを得ない状況に追い込まれてきているというような印象を持っているわけです。しかし基本的には、今残っておられる畜産に携わっている農家方々をしっかりとこれからまた農政の中でカバーしていく必要があるというふうに思っております。  そういう中にあって、先ほどもちょっと話題が出ましたように、中山間地域対策という施策の中で、こういった畜産業というものをしっかりと位置づけていくということもこれから農政の中では大きな課題ではないかなというふうに私は考えます。  御案内のとおり、畜産といいますのは、今まで平場でやっていても、市街化、混住化という中で周辺の住民の方々からいろいろな面で受け入れられないという面がございまして、どうしても山間地域の方に追い込まれてしまうといいますか、全体に点在化していくというような形になりつつあるわけです。そうすれば、私はやはり、一方では中山間というのは農政全体の中では大きな課題になってきているわけですから、その中山間地域の振興策という中で畜産業をしっかりと定着できるようにてこ入れしていくというような政策も非常に大事だというふうに考えておりますが、そのあたりの基本的なお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  41. 中須勇雄

    中須政府委員 御指摘のとおり、酪農畜産という事業形態は、他産業の立地が困難な中山間地域において十分展開し得る産業として、中山間地域の活性化を図るための重要な産業の一つというふうに位置づけられると私どもも思っておりますし、現に日本国内、かなりの中山間地域において酪農畜産が展開されている、こういう状況だろうと思います。  特に中山間地域については草資源というものが豊富に存在するわけでございまして、これを利用した大家畜の生産を行う、こういうことが国土の有効利用、そういう面からも重要なことだろうと思っております。そのために林野とか里山の放牧等を通じて低コスト生産に寄与する、そういった面もまた大きいだろうというふうに思っているわけです。  具体的なお話といたしましては、いわゆる畜産関係の公共事業で、林野を活用いたしまして林野と畜産が協調した形で畜産基盤の整備を総合的に進める林野活用畜産環境総合整備モデル事業というふうな事業もございますし、それから草地基盤とか畜産環境の整備を一体的に、これは草地の景観まで活用して都市住民との交流等の拠点を整備する草地畜産活性化特別対策事業といっておりますが、こういったものに例えば公共事業で現に取り組んでいるところでございます。  また、非公共の畜産再編総合対策事業におきましても、中山間地域に存在をいたします野草などの飼料の資源を活用いたしまして、放牧を主体とした山地畜産、山地酪農の確立、そういうことであるとか、拠点的な共同利用施設の整備を図る、あるいは作業受託組織の育成等を総合的に進める、そういうような対策を実施して中山間地域における酪農畜産の振興に現在努めているところでございます。
  42. 一川保夫

    ○一川委員 先ほどの質問の中にも、中山間地域における対策というのは、一つ発想の転換を図るという中で、政策そのものを大幅に見直す中で、これからの山間地域の農業、林業、そういったこともあわせて、畜産業というものをしっかりとした位置づけの中で強力な施策を推進していただきたいということを要望いたしまして、ちょっと話題をかえさせていただきます。  もう一つ、私は、畜産関係すると思いますけれども、農林省の施策で減反政策生産調整、こういう政策が一方で動いております。当然ながら、水稲以外の作物を導入するということをいろいろと推進されておるわけです。そういう中にあって飼料作物、これは当然ながら家畜のえさになるわけですから畜産全体のコストダウンということにもつながれば最もいいわけですけれども、そういう中で生産調整なりこういう政策と飼料作物の作付という問題が今現在どういうかかわりになっているのか、そのあたりをちょっと御説明願いたいと思います。
  43. 高木賢

    ○高木(賢)政府委員 飼料作物につきましては、先生御指摘のとおり、今後とも国内生産の増強を図ることが必要な作物であると存じます。そこで、新しい生産調整推進対策におきましても、麦や大豆と並ぶ主要な転作作物ということで位置づけているところでございます。  具体的な対策内容といたしましては、飼料作物に対する助成につきましては、生産の組織化とか団地化とか規模拡大などによって転作営農の高度化を図る、こういう場合には最高五万円の助成金が交付される、こういうことになっております。  実際にどのような取り組みが行われているかということでございますが、飼料作物につきましては平成八年度の転作実施面積のうちの二二%強、数値にして申し上げますと、十万ヘクタール強が飼料作物の転作ということで行われているということでございます。今後とも、飼料作物を重要な柱として位置づけまして、転作作物、転作の推進に努めてまいりたいと考えております。
  44. 一川保夫

    ○一川委員 今ほどの御説明では、全体の二二%ぐらいの作付が行われているということなのですけれども、どうも私が前からのいろいろなデータを見ておりますと、何か面積全体そのものが、昔と比べると飼料作物の作付面積が減っているような感じを受けるわけです。  これは、生産調整的な施策が相当前から動いておりますから、当初のうちは相当飼料作物を導入した時期があろうかと思うのですけれども、それが近年減ってきているというふうに感じております。そのあたり、また水田というものを飼料作物の作付をする農地としてしっかりと活用していくという施策も、連動して動かすということも非常に大切なことだろうというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思っております。  それでは、農林水産大臣に一言お聞きしたいのは、農政全般の中で、畜産業というものは大変大事な位置づけにあるということはいろいろとお聞きしておりますけれども、先ほど来いろいろ話題に出していますように、畜産業に携わっている農家方々も先行き非常に不安な気持ちでいらっしゃる。どうしても、いろいろな事情で畜産という一つの仕事から離れざるを得ないという農家もふえてきているわけです。  こういった農政全体の中で、畜産業というものを今後どういうふうに位置づけをして推進していかれるのか。そのあたり、大臣一つの見解をお聞きしておきたいと思います。
  45. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 その前に、先ほど御意見ございました中山間地域対策、これは我が国農政にとりまして極めて大切な課題であるという認識を持っております。  この問題については、ことしの四月からスタートいたします、仮称でございますが食料・農業農村に関する調査会、ここで十分に検討する、今こういう考え方でございまして、またその結果は新しい農業基本法に盛り込む、こういうことになるわけでございまして、十分に問題意識を持っております。委員は、農水省の先輩でもあるわけでございますので、いろいろとまたお考えを教えていただければ大変ありがたいと思っております。  それから、畜産業の農政における位置づけでございますが、先ほどからいろいろ御答弁申し上げておりますように、専業農家でありますし、また選択的な拡大を図る、こういう考え方のもとに進めてきておるわけでありますが、労働力の不足であるとか、先行きの不安というような問題等から、残念ながら減少しておるということも事実であります。  これはとにかく、農業の基幹部門である、国民の食生活の向上に貢献する、こういうことからいたしますと、我が国農政上、畜産業というのは重要な役割を持っておる、こういう認識でございまして、そういう認識のもとに立ちまして、これから国際化の進展等の状況に対応しながら、いろいろな施策を組み合わせて、畜産物の安定供給、こういう問題について努力をすることによってまた経営の健全な発展を図る、そういうことに力を入れてまいりたいというふうに考えております。
  46. 一川保夫

    ○一川委員 我が国の食糧自給率全体が非常に今低下してきているという傾向の中で、乳製品なり畜産物の自給率というのは割と、全体の自給率から見れば若干まだ高目にあるというふうに私は認識しておりますので、そういう面では、これからも農政全体の中で畜産というものをしっかりとまた位置づけをしていただきたい、そのように考えております。  私は次に、今の畜産にかかわる問題の中で、特に我々地域において一つの大きな課題となっているのはやはり環境問題なのです。  これは非常に残念なことなのですけれども畜産を営んでいる方々の周辺にいらっしゃる地域の方々となかなかうまくいかない。基本的には汚水の問題なりあるいはにおいの問題、そういったようなことが非常に環境問題として大きな問題になっておりまして、そういったことで、こういう家畜にかかわっている農家方々が非常に精神的につらい立場に今追い込まれてきているというふうに私は思います。  こういう対策を、もっと行政側がしっかりとてこ入れしていくということが非常に大切なことではないかなというふうに思っております。そうしないと、先ほどの戸数の減少にあらわれていますように、いろいろな面で意欲の減退につながってしまうというふうに思います。  そういう中で、一方で農政としては、そういったふん尿等から発生するいろいろなものを地力増進策につなげていくというふうなことも従来から取り組まれてきているというふうに思います。どっちかといいますと、乳用牛とか肉用牛、そういった牛の場合には、割と周辺の耕種農家とうまく連携をしながら、堆厩肥等をいろいろな生産につなげながら農地に還元していくということは非常にやりやすい分野もあるわけですけれども、養豚とかまた養鶏というような分野に入りますと、周辺の耕種農家とうまく力を合わせてそういう環境問題に取り組むというのは、非常に難しい分野もあるのではないかというような感じもちょっとするわけです。そのあたり、畜産局長はどのように認識しておられますか。お願いします。
  47. 中須勇雄

    中須政府委員 ただいま御指摘のとおり、畜産環境問題というのは、今後の我が国畜産が健全にまた安定的に発展していく上で、やはり解決していかなければならない基本的な非常に大きな課題だというふうに私どもも認識しております。  また、それを解決する際の基本的な認識として、家畜ふん尿は多くの有機物を含んでいるわけでございまして、環境保全という観点のみではなくて、先生今御指摘のとおり、地方の保全ということを含めた資源の有効利用、こういう観点からも、これを堆肥化して土壌に還元をするということを基本としたリサイクル型の生産、それを目指すということを基本的認識というか、方向とすべきではないかというふうに思うわけでございます。  基本的な方向としてはそういうことで、各種の堆肥化施設、そういうものの建設、設置についての支援ということが私どもの主なる仕事になるわけでございますが、同時に、家畜ふん尿からできた堆肥等を、地域的に考えますと、かなり広域的に流通させるということで、耕種農家と連携をとらなければならない。そういった分野で、これは物をつくるということではございませんが、行政的な手助け、そういうことも必要になってくるのではないかなというふうに思っております。  それから、養豚の場合につきましては、養豚農家自体が還元農地がなかなか少ないというふうなことを含めまして、やはり基本的には、かなり大規模化した養豚の場合には、固液分離というか、要するに、ふんはふんで処理をして堆肥化を図るけれども、し尿関係については、場合によってはある程度大規模な汚水処理ということを化学的な処理等を含めまして行って、きれいにした上で排水をしていくということも一つの方向でございまして、そういったものも助成対象の中に含めて対応しているところでございます。
  48. 一川保夫

    ○一川委員 もう時間も来ましたので、最後に大臣にちょっと御所見を伺っておきたいと思いますけれども畜産にかかわる環境問題というのは、非常に今地域にとっては悩み事になっております。これは当然、実際に畜産を営んでいる農家方々、特に若い人でこれから本当に本腰を入れてやろうとする人にとっては、いろんな周辺からの精神的なプレッシャーというのは非常に苦痛があるというふうに私は思います。それはやはり一酪農家だけで対応するというのは非常に難しいところも一方ではあるのではないか。点在化してきているということも含めて、あるいは大規模化されてきているという中で、採択要件あるいは助成する採択基準みたいなものをある程度緩和しながら、例えば一戸の畜産農家がその地域にいたとしても何らかの格好で補助対象になれるような、そういう方向のことも検討しなきゃならぬ時代に来ているんではないかというふうに私は思います。  特に中山間の政策とも関連するわけですけれども、地域全体の農政農業政策という中で、家畜を飼育する農家方々のいろんな悩み事を全体としてカバーしていくという中で、地域全体のイメージをアップしていくということが非常に大事ではないかというふうに思うわけですけれども、これから、特に若い方々畜産等の経営に携わる方々が本当に誇りを持って、生きがいを持って、やりがいを持って取り組んでいただくためにも、ぜひ大臣の方から力強い御見解をお聞かせ願いたい、そのように思っております。
  49. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 今委員から御指摘ございました畜産業に携わる方々にとって、その周辺の環境対策、非常に気を使われておられるということは私もよく選挙区の事情等から承知をいたしております。  これは畜産農家にとっては非常に頭の痛い問題であると思っておりまして、この問題の解決のために、今言われましたようないろいろな助成措置を講じておる、これもまた御承知のとおりでございますが、そういうことを通して、これからさらに畜産農家が意欲を持って経営が安定できるように我々もいろいろと勉強してまいりたいと考えております。
  50. 一川保夫

    ○一川委員 どうもありがとうございました。終わります。
  51. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、松下忠洋君。
  52. 松下忠洋

    ○松下委員 鹿児島から出てまいりました松下忠洋と申します。  時間も限られておりますので、簡明に御答弁をお願い申し上げます。  鹿児島県は日本有数の畜産県でございまして、肉用牛につきましては約三十三万頭持っておりまして、これは九州一位、全国二位でございます。乳用牛は二万三千頭、これは九州四位、全国十八位。豚に至りましては百三十六万頭、これは全国一位でございますし、採卵鶏、ブロイラー、これはともに全国一位ということで、今や日本畜産のリーダーとしての県だというふうに自負しているところでございますけれども、いろいろな課題も抱えながらの経営でございます。  今回の家畜伝染病予防法の一部改正に大いに期待するところでございますけれども、今後の家畜防疫はどのような点に重点を置いて推進していこうとしておられるのか、お伺いしたいと思っているのであります。  この法制定当初は、牛の結核病等の蔓延、伝染病対策に重点が置かれてやってまいったということでございました。家畜衛生技術の向上それから効果的な防疫措置の実施等によりまして、家畜の伝染性疾病の発生というものは大幅に減少してまいりましたし、畜産物の生産増大に大きく貢献をしてきたわけであります。近年、家畜の伝染性疾病の発生は、ワクチンの開発とか普及等その予防技術の進歩があり、また防疫体制も向上してまいりまして平静に推移しているというふうに聞いております。  しかしながら、最近では、畜産経営の大規模化、非常に規模が大きくなってまいりましたし、家畜の伝染性疾病が一たん発生した場合の被害の大きさというものが懸念されておりますし、現実にそういう問題も起こっております。それからまた食肉の輸入、これはふえてまいりました。そのことで海外からの伝染性疾病の侵入機会が増大してきております。さらに海外での、これは話があったと思いますけれども、伝染性海綿状脳症それから国内での豚の流行性下痢等の新たな伝染性疾病が発生してきております。  このような状況を受けて、このたび政府家畜伝染病予防法の一部を改正するということになったわけでございますけれども、そういう中で今後の家畜防疫はどのような点に重点を置いて推進していかれるつもりなのか、お伺いしたいと思います。大臣は別の委員会の方に御出席ということでございますので、保利政務次官、着席早々恐縮でございますけれども、よろしくお願いを申し上げます。
  53. 保利耕輔

    ○保利政府委員 お許しをいただきまして、大臣にかわりまして答弁をさせていただきます。  今度の家畜防疫はどのような点に重点を置いて今後推進をしていくつもりかという御質問かと存じます。  最近社会問題となりました狂牛病、イギリスにおいて発生をし、これまいろいろな歴史的経過を経て大きな問題になったわけでありますけれども、その狂牛病が発生をいたしましたときに、昨年の四月二十七日付の政令をもって、これを法定伝染病と同じ扱いをするということを一年間の時限で決めさせていただいたわけでございますが、その時限が参りますものですから、今度はこの狂牛病等の問題に対する対策を抜本的に考え直そう、そういう意味で今度の法改正を御提案を申し上げていることは委員よく御承知のとおりでございます。  それで、今後家畜防疫というのは、やはり日本人の食生活の中に食肉の部分が大分入ってきておりますし、そこにおいての衛生あるいは管理、そういうものをきちんと私どもが踏まえて対処していかなければならない、こんなふうに考えておりまして、それでありますがゆえに、恒常的にこれを法定伝染病として認定といいますか位置づけまして、こうした問題にきちんと対応していこうという姿勢を示したものとお受け取りをいただければありがたいと思います。  今後しっかりこうした家畜防疫の問題には取り組んでまいりたい、このよりな気持ちでおります。
  54. 松下忠洋

    ○松下委員 特に国際化の問題や経営規模が大きくなってまいりましたので、初期の段階での徹底的な対応といりことこ十分な御配慮をいただきまして執行に当たっていただきたいというふうに考えております。  次の質問でございますけれども、昨年社会的問題となりました病原性大腸菌O157、こういった食中毒のように、家畜には大きな症状は示さない、しかし人に対して重大な被害を及ぼす伝染性疾病が発生してまいりました。家畜の伝染性疾病ではないものにこの家畜伝染病予防法に基づく強制的な防疫措置というものをとることは難しいという考え方は理解できるわけでありますけれども、しかしながら、近年の食の安全性に対する高まりに配慮すること、そして生産から消費の各段階、とりわけ生産段階における畜産物の安全性確保対策、これはやはりしっかりと実施する必要があるのではないかというふうに考えるわけでありますし、また衛生的な食肉処理施設の整備も重要であるというふうに考えております。  こういった病原性大腸菌O157食中毒等が起きてきたという実態の中で、家畜生産段階における畜産物の安全性確保、これをどのように図っていくのか、そしてまた、衛生的な処理施設の整備というものも非常に大事でありますから、どのように推進していくのか、そこをお聞きいたしたいということでございます。  それとあわせて、これは、屠畜場と言われておりますこういった施設の統合整理の強い要望が出てきております。日本では全国に四百七十カ所以上もあると聞いておりますし、衛生の問題もさることながら、処理能力も含めて効率性が非常によくないというふうにも聞いております。こういうものの統合整理もあわせて進めていくということの中で衛生管理をきちっとしていくということも大事だと思いますけれども、これについてのお考えをお聞きしたいというふうに思います。
  55. 中須勇雄

    中須政府委員 昨年、実は病原性大腸菌O157による食中毒事件の発生に際しましては、私ども通達を発しまして、農家段階においても衛生管理を強化をする、特にO157に関しましては、屠畜場へ出荷前に牛の体表にふん便等を付着させない状態で出荷をさせること、あるいは現に下痢をしている牛については出荷しないこと等、こういう指導を通達いたしまして、御指摘のとおり、農家生産段階における食肉の安全性の確保ということに努めたわけでございます。  ただ問題は、O157に対して、とりあえず、対処的にそういうふうに対応したということでございまして、やはり、より長期的というか中長期的には、食肉の安全性に対する消費者ニーズというものに、先生御指摘のとおり的確に対応するという観点から、例えば家畜の生産段階において衛生管理基準に沿ったいわゆるHACCPというか、自主的点検方式生産段階で導入をする、こういうことの検討を含めて家畜生産段階における安全な畜産物の生産供給体制の整備ということを、今後さらに取り組みを強化してまいりたいというふうに思っております。  それからもう一点は、やはりO157の場合には、数は少ないわけでございますが、家畜のふん便中に菌が認められる例があるということでございまして、これは食肉の処理の段階でもって腸の内容物等が枝肉に付着するということを防げば、消費者に対する危害の防止ということは万全を期すことができるわけでございます。したがいまして、やはりO157等、食品の安全性ということに対応する衛生管理を徹底するということでは、食肉の処理段階においてこれを行うということが重要でございまして、ここについては、屠畜場の直接の所管は厚生省でございますが、厚生省におけるそういう規制と、我が方はむしろ補助事業等によりまして、そういった施設の整備であるとか、あるいは器具を取りそろえる、そういうふうな意味で連携をし合いながら、食肉処理施設の整備についても衛生上の観点からも努力をしてまいりたい。補正予算等で一定の事業を実施いたしましたが、さらに今後ともその点については努力していきたいというふうに思います。  そしてまた、それと同時に我が国の食肉処理施設、屠畜場で申しますと、平成八年で全国で三百三十三カ所というような状況でございますが、統廃合、昔から見ればある程度進展したとはいえ、いまだ一日当たりの処理頭数が豚に換算して五百頭未満という処理施設がこの三百三十三のうち八割を占めている、こういうことがございます。これは、衛生上の問題ということでも設備を改善すると同時に、効率的なというかより合理的な、安価なものを消費者にお届けをする、そういう意味からも統廃合を進めていくということが重要だろう、こういうふうに考えております。  このために、各県段階にお願いをいたしまして、都道府県における食肉処理施設の再編整備計画というのを関係者にお集まりいただいて都道府県で樹立をしていただいて、それに基づいて整理統合を進めるということでの指導事業を、九年度二千七百万円の予算で現在実施しております。これは、引き続きこの事業に来年度以降も取り組んで、都道府県が主体となりながら、食肉処理施設の再編整備ということにできるだけ強力に取り組んでまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  56. 松下忠洋

    ○松下委員 今の局長答弁でございますが、やはり一番大事な消費者との連携の中核になるところでございますから、十分なる施策とその実行をお願いする次第でございます。  次に、畜産物価格に関連して、畜産政策等について幾つかお尋ねを申し上げます。  今、我が党でも、畜産物価格とそれから政策等についての審議を活発に行っているところでございまして、私自身も党の畜産物価格等に関する小委員会の委員長という重責にありまして、毎日頭の痛い日を送っておるわけでございます。この畜産政策、今や米に次いで、本当に日本の食糧の安全確保、自給率の向上に非常に重大な、そして重要な役を担っているところだというふうに思っているわけでございます。  しかしながら、現在の畜産酪農につきましても、生産者の懸命の努力にもかかわらずに経営状況は厳しいという環境にございますし、環境問題等も含めて厳しい目が注がれていることも事実でございます。そういう中で農家経営の安定を図って、我が国畜産酪農生産基盤を維持して拡大していくということに、やはりどうしても強力な政策的支援措置が必要であるわけであります。  そのための議論を今しているわけでございますけれども、そういう中で、肉用子牛等はやや改善の兆しが見えてきたとはいうものの、依然として将来展望について多くの不安があるわけでございます。そういう中での本年度の畜産物価格決定ということでございますし、折しもまた、新農業基本法、新しい農業農村をどう構築していくか、憲法ともなるべき新農業基本法議論にも入っていくわけでございますけれども、そういう中でこの畜産というものをどのようにまず位置づけていこうとしておるのか、そういうことの中で今度の畜産物価格決定、どのような基本的な考えで臨もうとしておるのか、そこをお聞かせいただきたい。お願いします。
  57. 中須勇雄

    中須政府委員 ただいまお話しのとおり、今月末、具体的に言えば二十六日の畜産振興審議会の食肉部会、二十七日の畜産振興審議会酪農部会、ここにお諮りをするということで、現在私ども、いろいろ関係の皆様方の意見を聞きながら鋭意作業を進めている段階でございまして、なかなか明快なお話を申し上げることができないことをまずお許しをいただきたいと思います。  いずれにいたしましても、畜産をめぐる現下の環境ということを十分踏まえ、また各種の、行財政改革を初め改革議論ということが広範に行われている時期でございます。私どもといたしましては、法律に書いてあることでございますが、それぞれの食肉あるいは肉用子牛、加工原料乳等の生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮して、再生産を確保することを旨とし、そういうことを基本に置きながら適切な、ルールに沿った決定に向けて努力をしていきたいということで、現段階では、まことに舌足らずでございますが、私からのお答えといりことこさせていただきたいと思います。
  58. 松下忠洋

    ○松下委員 これはまた、今月末の価格決定に際しまして、我々も熱心に議論をし活発に討論してまいりますので、よろしくお願いを申し上げる次第でございます。  その次に、食肉の消費拡大対策についてどのように進めていくのか、そのことについてお考えをお聞きいたします。  現在、牛因の需給でございますけれども、総需要量が約百十万トン、それを供給しているわけでございますけれども、そのうち輸入量は約六十六万トンということで、その過半数は輸入に頼っているという状況にございます。国内生産量が残りの約四十四万トンということになるわけでございますけれども、そういう状況の中で需要の拡大を図っていくということになるわけですし、特に国産の食肉の需要拡大ということに大いなる施策を実行していただきたいというふうに考えているわけでございます。  また、豚肉につきましては、総需要量約百四十万トンというふうに聞いておりますけれども、その供給に対して、国内生産が約九十万トン、そして輸入量は約五十万トンというふうに聞いておるわけです。  いずれにしましても、食肉全体の中でやはり海外からの食肉の輸入ということに頼っている部分も極めて大きいし、そのことがまた国産の食肉の生産者に対するいろいろな圧迫にもなっているわけでございますけれども、そういう中で、国産の食肉の拡大、そして食肉の消費拡大をどのように進めていこうとしているのか、大事なことでございますので、お考えをお聞きいたしたい。
  59. 中須勇雄

    中須政府委員 初めにちょっと、食肉の消費の動向に関しましては、近年、牛肉を中心に基本的には増加傾向で推移をしてくる、こういう状況であったわけでございますが、今年度につきましては、やはり昨年の春先からの狂牛病の問題、あるいは病原性大腸菌O157による食中毒事件、こういった問題の影響によりまして、実は牛肉については、一人当たりの消費量という面でも、今年度、年度途中でございますが、かなりの減少を見ている、また、家計調査による一人当たりの家計消費量ということでもかなりの減少を見ている。特別の、近来にない事情のあった年でございました。  ところで、私ども、ただいま先生が御指摘ございましたとおり、食肉の消費拡大についてはかねてから重要な施策の柱として取り組んでまいりました。ただ単にいわゆる肉を食べましようということではなくて、肉に対する正しい知識を普及をするのだ、そういうような観点から、食肉の消費に関する知識の普及啓発、こういうところを重点にしつつ取り組んできたところでございます。それと同時に、消費の拡大ということを図る上では、食肉全体ということはもちろんでありますけれども、その中で、でき得るならば国産のもののよさというか、そういうものをできる限りPRしていくということもその中に含めながら取り組んでいくというふうな対応をしてまいりました。  それと同時に、今年度につきましては、冒頭申しましたように、牛肉について、O157あるいは狂牛病等により消費が一時期かなり減退をしたという傾向がございましたので、これに対しまして、食肉の安全性、こうやって調理をして食べれば安全ですよというところを中心にしながら、夏以降、緊急的な宣伝、普及啓発を行うというようなことを含めて今年度は対応をしたところでございます。  引き続き、明年度以降も、食肉の消費拡大ということに向けて、また、時々の課題ということを適切に設定しながら消費拡大に向けた努力を続けていきたいというふうに考えております。
  60. 松下忠洋

    ○松下委員 安全で本当においしい食肉の供給と、そして拡大ということの大いなる施策を進めてもらいたいというふうに思うわけでございます。  次に、畜産の環境問題に対する対策についてのお考えをお聞かせいただきたいというふうに考えます。  私も鹿児島の生まれ育ちでございますので、毎週帰ると、どこかの畜産関係の人たちのところを回っておりますし、先日も、栃木県の那須高原の山ろく地帯の酪農家、そして畜産農家の人たちのところを一日回っていろいろ勉強もしてまいりました。環境問題が大きな地域の課題にもなっておりまして、これに対する強力な支援体制が必要であります。  特に、養豚農家の人たちの、大量に発生するし尿の処理を、やはり一度ため込んだ後、そこのところはいいのですけれども、それから養豚の畜舎そのものについての改善は進みましたけれども、そこにため込んだものを今度は次のところに運搬して処理する最後の処理の仕方のところで大きな問題を発生しているというふうに思います。  最終的には、そこにためる、そしてそれを土に還元していくというふうな方法をとっているようでございますけれども、大量に、しかも大規模になってまいりますと、そういうことの過程の中で、土壌そのもの、河川そのもの、そして周辺の人たちに対しても大きな環境的な影響をもたらすという心配がございますし、また、きょうの我々の議論の中でも、党の議論でも出てまいりましたけれども生産している農家そのものの人たちにとっても、自分たちの住んでいる家の周りに大量のそういったふん尿を処理したものを山積みにしながらその中で生活しているという、周辺に対する、農家以外の人たちに対する対応だけではなくて、やはり自分たちの問題にもなってきているわけでございまして、そういう中でやっているということは非常に大変でございます。  しかも、その処理されたものを、今度は耕種農家の、周辺の農業をやっておられる田んぼや畑に返していく、その返す仕事まで畜産農家がしているわけですね。そして、ただ返して田畑にまくだけでは、風や天候の状況によって飛んだりして周辺に影響を及ぼすということで、それをまた浅く耕すところまでして、土地に還元するところまで畜産農家がしているわけでございまして、田畑の、そういった耕種農家の作業の大事な部分基礎的な部分まで畜産農家がしているという実態なのですね。そして、わらを持って帰ってくるということですから、そういうサイクルの中で、今や畜産農家が果たしている地域での大きな役割というのをぜひ認識しなければいかぬ。  そういう中で、やはりこういった環境の問題、悪臭の問題とか処理の問題、衛生の問題を含めて、もっと重要な関心を持って、強力な施策が必要だというふうに思うわけですけれども、これの進め方についてお伺いしたいということでございます。
  61. 中須勇雄

    中須政府委員 ただいま松下先生から実態を含めてお話がございました。私どもも、今後畜産の安定的な経営の発展ということを図る上では、家畜ふん尿を適切に処理をする、畜産環境問題に適切に対処するということは避けて通れない課題だし、大変重要な項目として畜産政策の中で位置づけていかなければならない、こういうふうに思っております。  言うまでもございませんが、家畜ふん尿自体は多くの有機物を含んでいるわけでございまして、単に環境保全ということのみならず、資源の有効利用とか、あるいは土づくりとか、そういう観点も含めまして、これを基本的には堆肥化をして農地に還元をしていく、リサイクル型で利用を図っていくということを畜産環境問題の基本に据えて対応していくということだろうというふうに思っているわけであります。  このため、従来から各種の事業の中で、まず家畜ふん尿の適切な処理のための都道府県段階におきます指導でございますとか、共同利用による家畜のふん尿処理・利用施設、典型的には堆肥舎等の堆肥化施設ということこなるわけでございますが、その整備に対する助成を行う、それからまた、公共事業におきましても、畜産環境整備事業ということで、排せつ物の還元用草地だとか処理施設等の整備への助成、さらこ個人の処理施設については低利融資とかリース等の対策を講ずる、こういうことをやってまいりました。  さらに、九年度においては、新たに予算の中におきまして、当面、よりよい堆肥をつくるという意味を込めまして、地域で共同利用する基幹堆肥化施設と事前に水分調整を行う予備調整施設から成るリサイクルセンター、この整備を進めようということで新しい事業を考えておりますし、また、公共事業におきましても、環境規制等の厳しい地域における家畜排せつ物の処理施設の整備を促進するための事業の拡充、こんなことにも取り組んでいるところであります。  いずれにいたしましても、ただいま先生が御指摘のとおり、大変重要な課題だというふうに私どもも受けとめております。各方面の意見、これから聞きながら、技術開発も含めまして、さらに取り組みの強化に努めてまいりたいというふうに考えております。
  62. 松下忠洋

    ○松下委員 このことについては、党の委員会の方でもさらに議論を進めてまいりますので、よろしく対応策をお願いを申し上げます。  最後になりますけれども、余乳と言われております余剰生乳のことでございます。  この生乳需給の安定を確保するということのためには、季節的な需給ギャップによりまして、どうしてもこの余乳と言われる余剰生乳が避けられないことで発生してまいるわけでございますけれども、この適切な処理がどうしても必要になってまいります。このことが加工原料乳保証価格決定あるいは限度数量ということにもかかってまいりますし、そしてまた、飲用乳の価格のいろいろな交渉の過程の中においても問題になってくるわけでございますけれども、その余乳の処理、これを現在どのように措置をしているのか、今後それに対する対応をどういうふうに考えているのか、最後の質問としてお聞きいたします。お願いします。
  63. 中須勇雄

    中須政府委員 特に、やはり内地都府県におきます飲用乳価の安定と申しましょうか、そういった観点から余乳を適切に処理をするということが大変重要になっておりますし、一方では、都府県におきましても技術の進歩を含めて生乳流通が大変広域化をしている、こういう事情もございまして、より一層そういう意味では余乳の適切な処理ということが、乳価の安定、もう少し言えば集送乳の合理化というか、そういうことを含めて大きな課題になってきている、こういうふうに思うわけでございます。  このため、内地都府県につきまして、一定の区域を限って、生乳流通の広域化、今県単位の指定団体というものが主体になっているわけでありますが、これをさらに広域化することについての一定の検討への取り組みを生産者が進めておりまして、それについての支援を行っていると同時に、そういう議論の中から出てくるということでございますが、モデル的な意味で余乳の処理施設、これについて、具体的には拠点的な需給調整施設であるとか、あるいはもう少し小さくなればクーラーステーションの設置、こういうものも乳業再編整備等対策事業の一つのメニューとして入れておりまして、具体的なそういうものの整備にも取り組んでまいりたいというふうに思っております。  いずれにしても、生産者における取り組みがまず基本になるということでございまして、ちょうど平成九年度から、指定団体の全国組織でございます中央酪農会議も、飲用乳における余乳の発生を防止するための新しい生産者としての取り組みを考えていくというふうなお話も伺っておりますので、そういうことを含めまして、私ども、この余乳の適切な処理ということについて、さらに考え方の整理を含めて取り組んでまいりたいと思います。
  64. 松下忠洋

    ○松下委員 終わります。ありがとうございました。
  65. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、菅原喜重郎君。
  66. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今回の家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案についてまず質問したいと思います。  現在、日本の家畜経営も大規模化が進んでおりますので、伝染病疾病が発生すると被害も甚大になりますし、新たに海外では牛の海綿状脳症、すなわち狂牛病や、国内では豚の流行性下痢などが発生しておりますと、より効果的、効率的家畜防疫制度を構築していかねばなりません。そういう意味で、このたびの改正に異論はないわけでありますが、この中で獣医師による新疾病の届け出制度が設けられました。  それで、この届け出制が従前と比較し、どのような内容になっているのか、義務づけられる以上、何らかの拘束力的なもの、科料的なものが伴うのか、新制度の趣旨とともに説明をいただきたいと思います。
  67. 中須勇雄

    中須政府委員 ただいま御指摘のとおり、今回の制度改正に当たりましては、新疾病というふうに言っておりますが、これまで知られていない新しい病気にどうも家畜がかかったのではないか、そういうことを発見した場合に、獣医師さんに都道府県知事への届け出をお願いをする、届け出義務を課する、こういうことにしておる点が大変大きな違いの改正点の一つでございます。  現在の制度におきましては、家畜の伝染性疾病のうち、当然もう病気がわかっている、そのうち危険度が高いという評価が下されているものは法定伝染病あるいは届け出伝染病というふうに指定をされまして、これについてはその病気にかかった患畜というものを発見した場合には、所有者あるいは獣医師さん等は行政機関への届け出が義務づけられているわけでございます。  ただ、先生もただいま御指摘になりましたように、最近どうも知られていない新しい病気が幾つか発生している事例がある。外国においてもそうですし、国内においてもPED等の問題がある。やはり、そうなると、そういった新しい今まで知られていない病気の場合も、いち早くこれを把握して、それに対する対策が必要ならばやはり講ずるという体制を強化をする必要があるのではないかということで、冒頭申しましたような新疾病に対する届け出制度というものを設けたわけでございます。  具体的に獣医師さんから、どうも今までとは違う新しい病気ではないかという届け出を受けました場合、都道府県の家畜保健衛生所は直ちにその病気の病性鑑定であるとかそういう一連の検査等を行いまして、どの程度危険なものであるか判定をした上で、それに応じた対策を講じていく。こういうふうに対策を講ずることによって、新疾病が急速に蔓延をしたり、そういうことを防いでいきたいというふうに思っております。
  68. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 一応義務づけたことで、獣医も注意を払って、常に検診、治療に対策を練っていくと思うわけでございますが、またこの疾病の発生状況等の把握には現場の獣医師からの通報体制を整備することも、この協力なくしては情報の万全が期せられませんので、当然でございます。  しかし、また反面、新疾病が発生した場合、農家側の負担がどうなるのか、認定されていない疾病のような場合、農家側の負担が大きくなることがないのか、従来の法律と同様に国も負担していけるのか、お伺いしたいと思います。
  69. 中須勇雄

    中須政府委員 ただいまの御指摘は、法定伝染病等にかかった家畜、あるいはかかった疑いのある家畜が発見された場合に、殺処分、強制的に殺すことを命ずるそういう殺処分という規定がございますが、それに関するお尋ねだろうと思います。  今回のこの新疾病というか、どうも新しい病気だということをもって獣医師さんから届け出があった場合、それをもって直ちに殺処分が行われるということはございません。基本的に、先ほど申しましたように、病性鑑定であるとか病理学的にどういう病気であるのかということを判断し、これが、もし本当に殺処分をしなければならないような大変危険な、伝染力のある、治療法もなかなかない、そういう病気だということが判明した場合には、むしろ法律上の手続としては、例えば政令で指定をして、一定期間、暫定期間、法定伝染病と同じ扱いをすることができるという規定がございますが、そういうものに位置づけた上で殺処分を命ずることになる。  逆に言えば、そういう位置づけをしないまま、法定伝染病でもない、届け出伝染病でもないという段階で殺処分を命ずるということは法律上はできないわけでございまして、そういう形で殺処分を命ずれば、当然、法律上と同様に政府からの一定の殺処分手当が交付される、こういうことに新疾病の場合にもなるわけでございます。
  70. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、岩手県東和町において、自主減反問題で今大いに問題となっております。このことについてお伺いいたします。  農家生産者団体の合意を前提条件に、自主減反の導入方針を東和町が決めたわけでございます。十年度実施に強い意欲をこのことについて示しているわけでございまして、しかし、この町の決定に対しまして、一応これは町長の決定と言った方がいいと思うのですが、農協とのあつれきがあります。そこで、東和町の議会で、議長が農協と町との仲介をしよう、話し合いの場を設けようということで動いていることが新聞の記事に出ております。  米の自主減反問題をめぐっては、時期尚早とブレーキをかけているのが農協サイドのようでありまして、このことにつきまして町側、町長の方は、農協側と対立しているわけではないが、話し合いをするのはいいことだと応じる姿勢をとった、しかし、農協側は、十年度実施が町長の念頭にあるうちは、話し合いをしても意味がないのではないかと明言を避けている、こういう記事も出ているわけでございます。  新食糧法では、流通の自由化と規制緩和、いわゆる政府の全量管理の廃止がなされましたので、当然こういう趣旨からいいますと、強制減反はある程度効力を失っているとも解釈されるわけであります。  また、高知県佐川町では、九年度から町が減反の配分面積通知に関与せず、地元農協が中心となって設立した新生産調整協議会にゆだねることを決めたとも言っているわけでありますが、この問題について、農水省が対応をどのようにしようとしているのか、状況をお伺いしたいと思います。
  71. 保利耕輔

    ○保利政府委員 米の生産調整の問題は、私どもにとって非常に頭の痛い問題でもありますが、まず、新食糧法のもとにおきましても、いわゆる米の需給計画というのはつくらなければいけない。したがって、どの程度の生産が必要だということもその中から出てくる。そして、それを県別に配分するとどうなるのだということも計算をしなければならない。さらに、県は市町村に対して割り当てをしなければならない。あるいは、市町村が減反すべき数字というのはつくらなければいけない。これは法で決まっている手続でございますので、ここは、行政当局が御理解をいただいた上でその手続は踏んでいただかなければならない。しかし、個別の農家にこのぐらいの減反という話がいったときに、これをのみ込むかのみ込まないかは生産者の判断にゆだねられているというのが現在の法の体系と私は理解をいたしております。  その観点から申し上げまするならば、東和町において、個々の生産者に対してどのくらいの減反が必要なのだということを通知をする、そのことは行政として必要な手続であり、もしこれを行わない場合には、法令違反と言い切れるかどうかですが、法令違反の状況になるということを御理解をいただいた上で、この手続については御協力をいただかなければならない。私はそういうふうに考えておりますし、県もまたそのような立場に立って東和町等に指導をするということを申しておりますので、手続上、東和町長さんいろいろ御意見もあろうと思いますが、法に定められたことを実行していくのが行政立場であるということから申し上げるならば、町長さんに御協力をいただいて手続きはとっていただきたい。これが私どもの気持ちでありますし、また、そういう観点で見守ってまいりたい、県の動き等もまた見守ってまいりたいと思っております。
  72. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 実は、減反そのものを拒否しているわけではないのでありまして、今、新食糧法は、政府食糧管理、食管から、農協食管に変わったとも言われるぐらい、実は備蓄米、政府米の集荷問題あるいは自主流通米の集荷問題についても、農協が九五%ぐらいシェアを持っているはずです。  それに、共補償に対する補助も国から四百億円ぐらい出ているわけですか、そしていわゆる共補償そのものは、これは各地区で農協も中心になって進めているわけですから、もしもこの共補償のような、私は、そういう地域で相談しながら減反をやる方が村落共同体意識も強まるはずだというので、この共補償制度には絶対の支持、賛成をしているわけです。  ですから、農協が共補償制度を利用して減反面積を達成できれば、そしてそれをいわゆる町が認めて町から出していただく、こういう筋書きになっても、いわゆる減反、自主減反、名前はどう言おうといいのじゃないかというふうに考えるのですが、この問題は、今回の新農法は結局農民にいわゆる流通の自由化と同時に売る自由化もこれは与えようとしている法ですから、内容がどのようになろうと、今言ったようなことで本当は農協自身にもうちょっと汗を流させた方が自主的な新農政の精神というのが生きてくるのじゃないか、こう思っているわけなんです。  ですから、ひとつ町の方へのペナルティーとかなんとかということじゃなくして、いわゆる進め方を、それも十年度からといって今盛んにお互いが話し合いをやろうとしているわけですから、国としてはこの情勢を見守る態度をとってほしいなというのが私の意見ですし、また、こういう共補償という制度に補助金も出ているのですから、農協にもうちょっとこういう減反の話し合いができる、いわゆる権限というと変なんですが、何か取り組ませる主体的なものを国が考えられないかどうか、お伺いしたいと思います。
  73. 木幡弘道

    ○木幡委員 委員長、動議。議事運営に対する動議です。
  74. 石橋大吉

    石橋委員長 木幡弘道君。
  75. 木幡弘道

    ○木幡委員 議事運営に対する動議を申し上げます。  本委員会における本法案の審議につきましては、我が党は本会議における趣旨説明並びに質疑を求めておった案件でありますが、昨日の議運委員会におきまして、我が党以外の各党賛成によって本会議の趣旨説明を解き、本委員会に付託をした案件でありますが、委員の出席を見ますると、我が党以外の賛成をなさった各党で過半数を超えておりませんので、過半数の委員がそろうまで本委員会を休憩をいたしていただきたく、議事運営の動議を申し上げます。委員長においてお取り計らいのほどをお願い申し上げます。  以上です。
  76. 石橋大吉

    石橋委員長 ただいま定数確保のための、緊急に今努力をしておりますので、しばらく続行させていただきたい。
  77. 木幡弘道

    ○木幡委員 その間、休憩してください。
  78. 石橋大吉

    石橋委員長 それでは、暫時休憩します。     午前十一時二十二分休憩      ――――◇―――――     午前十一時三十六分開議
  79. 石橋大吉

    石橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。菅原喜重郎君。
  80. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今質問したところで、答弁を待っているところなのですが。
  81. 鈴木信毅

    鈴木説明員 農産園芸局の審議官でございます。  先ほど、岩手県の東和町の問題に関連しまして、農協が共補償事業等を活用してもっと主体的、積極的に取り組むべきじゃないかというお話があったかと思います。  そこで、今さら申し上げるまでもないことでございますが、米の需要に応じた生産を行うということは、本来生産者なり生産者団体が主体的に取り組むべき課題であると考えておりまして、これまでも、生産調整の推進に当たりましては、行政生産者団体が一体となった取り組みを行っております。  特に、お話ありましたように、食糧法のもとにおきましては、生産調整が、米なかんずく自主流通米の需給と価格の安定を図る重要な手段であるというふうに位置づけられているわけでございます。これまで以上に生産者なり生産者団体が主体的に生産調整に取り組むことが重要と考えております。  お話ありましたように、平成八年度も大変厳しい状況の中で、全国の農協一般論でございますが、共補償事業を活用して積極的に推進されておりますし、平成九年もそのように聞いております。  そのような中で、東和町の農協は、お話ありましたように、従来どおり推進するのだという確認をされているわけでございまして、農協、町、それから農業者の方々がよく話し合いをされるように、先ほど政務次官からもございましたが、県を通じて指導してまいりたい、こんなふうに考えております。
  82. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 実は今専業農家が減少を続けている状態でありまして、これ以上専業農家を減らしますと、第二種兼業は後継者のない農家ですから、現在の就農労働力がいわゆる高齢化でやめた場合に、だれがその土地を引き受けるのか。今この専業農家を守らないと、大変な事態がやってくるわけでございます。  しかし、今この米の減反は、町村や何かに任せますと、どうしても一律減反の方向に行く。そこで、国も共補償というやり方に補助金を出しているわけでございますから、どうかこの今の専業農家を守らなければならぬという立場で、何とか国も、こういう生産調整の実施に当たっては、共補償制度を生かして今後ともこの減反の配分を、その村落、共同体を破壊させるどころかかえって強化させると思いますので、専業農家を育成する方向でこの指導を進めていっていただきたい、こう思うわけでございます。  御承知のように、専業農家、二百三十万戸のりち三十一万戸、一四%という統計上の数字になっておりますが、しかし、高齢専業農家、これはもう年をとった方々が世帯分離してわずかな面積を経営されているのも専業農家の範疇に入りますから、これが十六万戸ありますと結局七%を切るわけです。今本当にそういう大変な事態になりまして、東和町におきましても、町長が五反歩の自分の水田を小作地に出しまして耕作してもらっていたところを、その小作者が老齢化でもう耕作できないと返上された、そういう実態にもなっているわけです。  この専業農家中心とした生産調整の実施、共補償というような手段もとっているわけですから、強化していける指導を何とか考えていかなければいけない、この点についてお伺いいたします。
  83. 鈴木信毅

    鈴木説明員 専業農家の育成と生産調整の配分のかかわり等の問題かと存じます。  私ども、将来の水田農業を担う専業農家、あるいは効率的、安定的な経営体の育成ということでいろいろな施策をとっているわけでございますが、生産調整の場面におきましては、専業農家、大規模農家にもっと配慮した配分を行えないかというようなお話があるわけでございます。  全国の市町村を調査いたしてみますと、おっしゃられましたように一律配分というところが多いわけでございます。数は少のうございますが、大規模農家に転作配分を配慮している、そんな事例も七、八%ほどあるわけでございます。  私どもとしては、それぞれの地域がいろいろ工夫をして、地域の実情に応じて配慮を行っているというようなことはやはり尊重すべきと考えておりまして、配分に当たって、全国画一的に専業農家に対してこうこうすべきであるというようなことはかえって現場の主体性を損ねるのではないか、そういう意味で適当ではないのではないか、こう考えております。  お話がありましたように、地域によっては共補償をうまく使ってこれから伸びる大規模農家にいろいろな知恵を出しているというところもございますので、そういう面からいろいろ指導を強化してまいりたい、こんなふうに考えております。
  84. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、担い手の育成の観点からも、第四次土地改良長期計画の達成は非常に大切だと思っております。  この第四次土地改良長期計画によりますと、平成十四年までに全水田の七五%を達成したい、そしてさらに一区画一ヘクタール以上の基盤整備を三〇%、残余は三反歩以上の区画整理を進めていきたい、こういうことでございます。このことはぜひ強力に推進していっていただきたいと私たちは思うわけでございますが、この点に関しての予算、それから人員の配置、また、そういう点についてこの計画を疎漏のないように進めることができるのかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  85. 山本徹

    山本(徹)政府委員 先生御指摘のとおり、第四次の土地改良長計、圃場整備を進めたり、また集落排水事業等生活環境整備を進めたり、農村の振興活性化に大変重要な計画でございます。平成五年度から開始しておりますけれども、これまでのところウルグアイ・ラウンド対策の実施、これは土地改良長計の上乗せ加速実施ということになるわけでございますが、これもございまして、計画の着実な進捗に努めてきたところでございます。  今後とも、厳しい財政状況の中でございますけれども、これまでどおり所要の予算の確保に向けて努力し、また円滑、効率的な執行のための人材を配置し、効率的な事業の執行と事業効果の早期発現に努力してまいりたいと思っております。
  86. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 最近、後継者を持たない農家が、こういう整備、いわゆる土地改良に対しまして消極的な態度をとっている人たちが目立っているわけでございます。こういう点も大変不安の種がありますので、ぜひ計画どおりの推進をするよう努力していただきたいと思います。  次に、中山間地域における基盤整備の採択要件なのですが、圃場整備事業に市町村営は十ヘクタール、県営は二十ヘクタール以上ということになっております。  実は私は、いわゆる機械が入る一区画の整備であるなら、こういう十ヘクタールとか二十ヘクタールという枠を設けないで、事業の一区画当たりの機械化できる単位で補助金を出すべきだということを今まで主張してきたわけです。  しかし、中山間地帯で今なかなかそういう大きな、いわゆる機械の入る圃場整備といいましても――大体一反歩以上はそれでもできると思いますので、国としては、この市町村営十ヘクタール、県営二十ヘクタールを下げても今の区画整理の内容が優良農地をつくるのであるなら補助金を出すという方向に考慮できないかどうかお伺いして、私の質問を終わります。
  87. 山本徹

    山本(徹)政府委員 中山間地域の振興のためには、これは平場と違った採択条件の緩和あるいはいろいろなかかり増し経費もございますので、補助率についての特別の措置が必要でございまして、これまでも努力しているわけでございます。  先生おっしゃるように、ただいま御指摘の、例えば市町村営十ヘクタール、県営二十ヘクタール、これは山間地域の特例でございますけれども、こういうものを完全に取り払うということは、公共事業の公益的な性格、また国の税金あるいは地方の税金を使うという事業の性格からなかなか難しい面もございます。  現在、非公共事業の山村振興特別対策事業がございますが、これによりますと、受益戸数が三戸以上ございますれば採択面積の下限がない形で区画整理あるいは農用地の改良、かんがい排水等の事業が実施できることになっております。また、中山間総合整備事業という事業は、これは圃場整備だけでまなくて、かんがい排水や農道等のいろいろな事業を組み合わせて、その結果受益面積が、今お触れになりましたような山間地域では二十とか十とかいうような要件に合致すればよろしいわけでございまして、圃場整備だけの採択要件でなくて、農道、かんがいなども含めた要件になっております。こういった事業を御活用いただければ、結果として非常に小さい面積の圃場整備も円滑にできるものと考えております。
  88. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 ありがとうございました。
  89. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、城島正光君。
  90. 城島正光

    ○城島委員 新進党の城島でございます。  今回の家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案、時宜を得たものだというふうに思っておりますし、タイミングとしても、あるいは内容的にも基本的には問題ないというふうに思っております。そういう観点の中でも何点か質問をさせていただきたいというふうに思っております。基本的には、私自身が農業あるいは畜産全体についての問題意識をどういう点に持っているかということをまず冒頭申し上げた中で、具体的な質問をさせていただきたいというふうに思うわけであります。  私、長年食品産業に身を置いてまいりましたけれども、そうした点から幾つか見てまいりますと、日本農業、いろいろな課題がありましたけれども、一番大きな問題というか課題であったのは、農業といわゆる工業、これがバランスよく発展してこなかったというところにあるのではないか。今流の表現をすると、農業と工業がいい意味で共生をするということが、そういう方向での国の政策がなかなかいかなかった。バランスがどちらかというと工業の方にかなりシフトしてしまった。その間に、農業と工業との間の、いわゆるいい意味で言うコミュニケーションが不足していたというようなことも含めて、やはりそこにお互いの理解あるいは共有化ということが欠けていた点が本質的な問題の一つではないかというふうに思っているわけでございます。そういったことを今後は改善をしていくということが極めて重要なポイントではないかというふうに思っております。  あわせて、特に、畜産に関していいますと、日本の国土といいますか自然環境というのは、相対的に言うと、やはり私は、畜産事業においては非常に恵まれた環境に実はあるのだろう、気候、風土含めましてそういう状況にあるというふうに思っております。特に、中山間地の活用を含めて、やりようによっては大いにさらに発展していく、そういう環境下にある。したがって、ぜひ将来展望を大きく持てるような、あるいは持った畜産の振興を強力に進めていっていただきたいというふうに思っております。  それで、まず、具体的に幾つか今回の法律改正案について御質問をさせていただきたいと思います。  今回の家畜伝染病予防法の改正でありますけれども、今日までも、現在あるこの予防法、それに基づいて多くの成果が上がってきたのだろうというふうに思うわけでありますが、現在ある家畜伝染病の予防法に基づいて実施をしてきた家畜防疫体制の成果、あるいは現在までの総括というのはどういうふうにされているのか、あるいはさらに、どのような課題を残しているというふうに認識されているのかを最初にお伺いしたいと思います。
  91. 中須勇雄

    中須政府委員 現在の家畜伝染病法が制定された当時の畜産の事情と現在は、特に農業基本法による畜産選択的拡大ということで大きく発展し、状況自体はもう一変をしているわけであります。それで、制度的には一回改正がございましたけれども、大きな改正を経ずして今日までやってまいりましたが、その中で、制度的にはともかく、特に、実際の第一線で家畜防疫を担当する家畜保健衛生所、ここにおきます家畜防疫員の質とかあるいは保健所の設備という点では、かなりの成果というか高い水準というものを、もちろん課題も残っておりますが、上げてきた、こういった体制のもとで、過去多くの伝染病について、かなりの防圧について成果を上げてきたというのが実情だろうと思います。  ただ、問題は、畜産自体が大変大きく発展をしてきているという中で一戸当たりの経営規模も大変拡大をしているということで、今一応、急性伝染病に関してはかなり発生状況は平穏な状況にございますが、万が一発生したときの被害の大きさということを考えると、今たまたま少ないというところに安住するのではなくて、より発生予防、蔓延防止の体制を強化し、最新の機材等を使った体制整備に努めていかなければいかぬ。  そういうことと、もう一点は、最近大変特徴的な、海外におきます、イギリス等におきます狂牛病の問題、我が国においてもPED等の今までなかった新しい病気がかなりあちこちで見られるようになっている、やはりこういったものに対する体制というのは、率直に言って今の防疫体制の中で必ずしも十分とは言えないわけでございまして、そういったところの強化が課題になっている、こんなふうな認識を持っているわけでございます。
  92. 城島正光

    ○城島委員 確かに新しい疾病が、世界各地見ますと今までになかったようなものが出てきているというような変化はあると思いますけれども我が国に関して見ると、この数年ぐらいでいいのですけれども、そういう家畜伝染病に関して特徴ある変化みたいなことはあるのでしょうか。
  93. 中須勇雄

    中須政府委員 特徴ある変化というか、まずここしばらくでの国内におきます家畜伝染病の発生状況というか、その辺を概観してみますと、先ほども若干触れたわけでございますが、防疫体制の整備であるとかワクチンの開発、普及、そういうこともございまして、総じて平穏に推移をしております。  具体的には、牛の疾病でございますブルセラ病と結核病、これについては大変散発的な発生というような段階にございますし、豚コレラについてはワクチンを用いた計画的、組織的な予防接種ということによりまして激減をしておりまして、平成五年以降、国内での発生はゼロになっております。また、鶏の場合、大変問題になりましたニューカッスル病につきましても、ワクチン接種により清浄化が進んでいる、こんなふうな状況にございます。そういった意味では、古くからある病気の中では、古くからあると言うとおかしゅうございますが、現在、昔からのあれでふえているのは、牛のヨーネ病、これはやや増加傾向にある、こんなふうな状況にございます。  そこで、新しい疾病という意味でいいますと、平成七年に南九州を中心にある程度発生をいたしました豚流行性下痢、PEDこつきましては、特に平成八年には、私どもの方に届け出というか把握しているだけで約四万頭が死亡、廃用となるというふうな形で、これは新しい病気の発生事例ということだろうと思います。国内では、そのほか、新しい病気ではPRRSとか、そういうものも見られている、こういうような状況でございます。
  94. 城島正光

    ○城島委員 それで、今回、この改正案の中で削除される伝染病がありますね。流行性感冒を含め豚丹毒まで、この削除される疾病の今後の取り扱いは一体どういうふうになるのでしょうか。
  95. 中須勇雄

    中須政府委員 これらの三つの病気につきましては、もちろん病気の危険性自体はあるわけでございますが、ワクチンの開発等を含めて従来ほど、防疫についてある程度実力がついている、そういう意味でいわゆる法定伝染病から除外をしようということでございまして、今後、届け出伝染病につきましては、いろいろ各方面の意見を聞いてどこの範囲まで届け出伝染病を考えていくかということをこれから議論するわけでございますが、基本的には一ランク下がったそこの段階に入るのか、こんなふうな感じを持っているということでございます。
  96. 城島正光

    ○城島委員 その一方、追加される伝染性疾病が幾つかあるわけでありまして、一見すると、よほどのことがない限り可能性が余り考えられないなというような、一見するとですけれどもね。そういった、例えばリフトバレー熱、アフリカ馬疫みたいなのがあるわけでありますが、これは、恐らくいろいろな要素の中で、まさしく国際化対応の中で出てきているかと思います。  念のためでありますけれども、新しく指定されたものについての理由をお尋ねしたいと思います。
  97. 中須勇雄

    中須政府委員 今回の家畜伝染病予防法の改正に当たりましては、家畜伝染病自体を総じて見直しをする。その中で、危険度を今日的に評価した上で、先ほど先生からお話がございますように、幾つかのものを落とすと同時に、必要な五つのものを加える、こういうような改正を考えているわけでございます。  見直しというか評価する場合には、その病気が我が国に侵入した場合の経済的な被害がどうか、それから伝播力の強さ、予防あるいは治療方法がどうなっているか、さらには人への影響がどうか、こういった総合的な観点から危険度を今日的に評価をする、その際には国際獣疫事務局の分類リスト、そういうことも参考にして検討したところでございます。  今回加えた中で、アフリカ馬疫あるいはリフトバレー熱等についてお話がございましたけれども、アフリカ馬疫については、大変病性が強烈であり致死率が高い。確かに発生地域自体はアフリカないし中東の一部というふうに限られているわけでございますが、馬について、競走馬を含めて、我が国との交流というか可能性があるわけでございまして、そういった意味で大変危険な病気でございますので、法定伝染病として加えたいというふうに考えているわけでございます。  それから、伝染性海綿状脳症は御承知のとおりでございまして、現在政令で暫定的に適用しているものを正規の形で法定伝染病というふうにしたいということでございます。  それから水胞性口炎については、大変病性が強く伝播力も強いということでございます。特に一昨年来アメリカで大量発生しておりまして、今日の畜産物流が多様化し複雑化している中から、従来から比べると、海外からの侵入の危険性が増大しているのではないか、こういうふうに思っております。  リフトバレー熱についてもアフリカ馬疫と同様の考え方でございます。  最後に鶏のチフスでございますが、これは病性が強く致死率が高いことに加えて、現在、法定伝染病にひな白痢というものがありますが、それと同じサルモネラ菌が原因であるということで、二つを合わせて一つの形で家畜伝染病として法定してはいかがか、こういうような考え方でございます。     〔委員長退席、小平委員長代理着席〕
  98. 城島正光

    ○城島委員 そういう中で、特に今回の改正の背景の一つになった、今御説明ありましたけれども、牛の海綿状脳症、いわゆる狂牛病でありますけれども、これについてはいろいろな科学的な解明が国際的な状況の中で進んでいるというふうに思います。  原因は、スクレイピーに感染している綿羊の肉骨粉等の飼料原料の熱処理が不十分なまま使われたというのが原因ではないかとか、あるいはまた、同じくプリオンによって人の間で発病する新型のいわゆるヤコブ病、その原因も、狂牛病に感染した牛の肉を食べたのが原因の一つではないかとする学説があるわけでありますけれども、この辺もまだ科学的に立証されたわけではないというふうに思います。  それにしても、昨年から非常に大きく我が国でも報道され、一般の市民の間でも、イギリスにおいて起こった狂牛病に対する不安感というものはやはりかなり強いというふうに思うわけであります。  我が国においては、今までの発表によると狂牛病は発生していないということでありますけれども、スクレイピーの発生状況ということについてはその報告があるようであります。この両方について、現在、我が国においてはどういう状況なのか、あわせて、こういった原因究明に向けての対応あるいま国際的な研究機関等の対応はどういうふうになっているのかについて御説明いただきたいと思います。
  99. 中須勇雄

    中須政府委員 後段の部分についてお答えを申し上げたいと思います。  まず、我が国におけるスクレイピーの発生の状況でございますが、昭和五十九年に輸入された綿羊に由来した群で発生が確認されて以来、散発的な発生ということが若干続いておりまして、一番最近では平成八年六月に北海道で一頭発生、これを含めましてこれまで五十六頭、戸数でいうと二十九戸、この発生が確認されております。これらのほとんどのものは、国内での初発農場からの導入綿羊あるいはその産子、そういった綿羊での発生となっているという状況でございます。  なお、これらの国内初発農場での飼養群については、現在、全頭淘汰済みでございます。  発生状況はそういうことでございますが、一方、狂牛病の我が国での発生の可能性というか、そこは大丈夫かというふうなお話でございます。現在、世界的には、狂牛病の発生はほとんどが英国におけるものでございます。もちろんヨーロッパの若干の国あるいはカナダ等もあったわけでございますが、そのほとんどが英国からの輸入というか、それに由来するものというふうに現在ではとらえられております。  我が国の場合には、言うまでもございませんが、狂牛病に関しましては、英国を初めとする狂牛病の発生国に対し、生体牛、生きた牛の輸入を禁止するということと同時に、畜産物につきましても、いわゆる国際獣疫事務局、OIEの動物衛生規約に基づきまして、牛肉からの神経とかリンパ組織の除去等、大変厳しい防疫措置を講ずるよう家畜衛生条件を定め、安全性確保のため、我が国独自の条件として、狂牛病の発生のない農場の牛から生産されたものであるということの証明義務を課する、こういうような形で防疫の徹底を図っているという状況でございます。  今後とも、こういった措置によって、狂牛病の清浄国である我が国への狂牛病の侵入防止には最大限の努力を尽くしてまいりたいというふうに考えております。
  100. 三輪睿太郎

    ○三輪政府委員 御質問にございました試験研究と国際協力のことに関してお答えを申し上げます。  先生のお話のように、我が国の中では狂牛病の発生はございませんので、狂牛病そのものを対象にした研究は国内では実施しておりません。しかしながら、またお話がございましたように、極めて類似した病気であります羊のスクレイピー、これは一九八四年以来、少数でございますが発生がございます。これに関する試験研究を家畜衛生試験場で実施してきております。その結果、伝染性海綿状脳症につきまして、死んだ家畜の脳を使いまして、外見には病気の症状が出ていなくても病気の有無が判定できる診断法を確立したところでございます。  狂牛病につきましては、英国で発生しておりますので、一九九〇年以降、英国に、先ほど申し上げました家畜衛生試験場の研究者を派遣いたしまして、狂牛病の臨床経過あるいは診断法について共同して研究をしてきております。  今後、家畜衛生試験場を中心に、関係省庁あるいは海外の研究者とも連携をとりながら、狂牛病やスクレイピーについて、生きている時点での診断法の確立あるいは海外の発生例の情報収集と調査研究、そういったものに取り組んでまいりたいと思います。  なお、平成九年度からは「プリオン病の病態発生の解析」という新しいプロジェクト研究を開始するべく、ただいま予算の御審議をいただいているところでございます。
  101. 城島正光

    ○城島委員 ぜひ積極的に推進をしていっていただきたいというふうに思います。  次に、サーベイランス制度について、監視制度についてちょっとお尋ねをしたいというふうに思います。  今回の改正の中で、この辺については非常に重要なポイントだろうというふうに思いますが、先ほど菅原委員の方からも質問がありましたので、一点だけ。この中で特に新しい疾病については、やはり現場の、特に獣医師あたりの資質が向上することは必須ではないかというふうに思っているわけです。まさしく的確な判断がされることが前提となっているわけですね、ある意味でいうと。したがって、そういう現場段階での特に獣医師あたりのレベルというか資質の向上といった点についての具体的な施策があればお伺いしたいというふうに思います。
  102. 中須勇雄

    中須政府委員 第一線での獣医師さんの活躍というか、そういう意味では家畜保健衛生所に配置されております家畜防疫員、獣医師さんの資格を持っていただいているわけでございますが、そういった方々がまず一定の相当水準の資質と能力を持つということが大変重要でございまして、これに関しましては、従来から各種の家畜衛生講習会等を通じまして全国の家畜防疫員たる獣医師の皆さんの資質の向上なり能力の向上ということに努めてきているところでございます。  今後、やはり御指摘のとおり、特に未知の疾病等の判断とかそういうことに当たりましては、そういう現場での獣医師さんのお力が大きいわけでございまして、こういった講習会等を通じた資質の向上に引き続き力を入れていきたいというふうに思っております。
  103. 保利耕輔

    ○保利政府委員 ただいまの御質問に関連いたしまして、最近私が考えておりますことを申し上げたいと思います。  獣医師は大変重要でありますし、また食肉が国民の口にたくさん入るようになってまいりましたから、その衛生管理等について十二分にその仕事を全うしていただかなければならない。今局長から御答弁申し上げましたとおり、資質の向上のためのいろいろな講習会その他を重ねていくことは当然でありますが、同時に獣医師を供給する側の大学あるいは学校、そういうものの充実というのを考えていかなければならないと私は考えております。  最近の傾向から申しますれば、獣医師さんがどうしてもいわゆるペットの方に流れていく、ペットというものが大変獣医師としてはもうかる仕事になりつつあるというところに一つの社会的な問題もあろうかと思います。大家畜あるいは食歯等に供します家畜等についての獣医師さんの立場というのを尊重していく、あるいはそれをきちんと学校の中で位置づけていって、いい獣医師を供給していくということが日本の食肉食品の安全性を守っていく一つの大事な要素である。こんなことで、これは文部省と農林水産省、いろいろ協議をしながらその対策等に努めていかなければならないのかな、こんなふうに考えておりますことを申し添えさせていただきます。
  104. 城島正光

    ○城島委員 今政務次官がおっしゃったことについては、ちょっと私後ほど触れたいなというふうに実は思っておるところなのですけれども、ぜひ推進をしていっていただきたいというふうに思います。後ほどちょっとそれに関連した論議をさせていただきたい。よろしくお願いします。  その前にちょっと、今回の法改正で問題点があるとすれば、私はこのことだと思うのですよ。いわゆる人畜共通伝染病の取り扱いに関してなのですけれども、これは実は今回の中にも基本的には触れられていないというのがちょっと残念だなというふうに思っております。  昨今の環境からすると、ついせんだってもマスコミでこの辺のことは取り上げられておりましたけれども、今も政務次官おっしゃいましたけれども、いわゆるペット、伴侶動物が非常に広がっているという環境、社会変化からしても、いわゆる人畜あるいは人獣共通の伝染病というものが極めて重要なテーマになってきているのだろうというふうに思うわけでありますが、まずこの点についてどういうふうな見解をお持ちなのかをお尋ねしたいと思います。
  105. 中須勇雄

    中須政府委員 家畜防疫対策というか家畜衛塗対策における人畜共通伝染病の取り扱いに関する御質問でございます。  家畜防疫対策というのは、もちろん今御審議をいただいております家畜伝染病予防法に基づきまして、家畜の伝染性疾病の発生を予防する、あるいは蔓延を防止する、そのために必要な検査から始まって注射、投薬あるいは殺処分等一連の措置を講ずることができる、こういうような規定の体系でございます。  この家畜伝染病予防法に基づく一連の措置というのは、あくまでもこの法の性格からして家畜の伝染性疾病に対してとられるものである、これが原則であります。ただ同時に、家畜の伝染性疾病が人畜共通伝染病に該当する場合も、当然それは家畜に対しての措置としてとられ、それが結果的に人間の公衆衛生の上でも役に立つというふうなことがある、こういうことだろうと思っております。  具体的には、その病気の名前で言えば、現在法定伝染病になっております流行性脳炎とか結核病あるいはブルセラ病のように、発生予防のために検査、注射、あるいは蔓延防止のための患畜の殺処分、焼却等まで行っている法定伝染病もございましょうし、破傷風のようにこれに準ずる伝染性疾病でありまして、発生予防のための検査、注射等が必要のないものについては、届け出伝染病として必要な措置を講じている。こういうことでございまして、私どもは家畜の防疫という観点から取り上げますが、そこにおいては人畜共通伝染病も当然対象となり得る、こういうことだろうと思っております。
  106. 城島正光

    ○城島委員 そうすると、特に人畜共通伝染病については、中心的にこの問題について検討しているところはどこだということで理解したらいいのでしょうか。
  107. 中須勇雄

    中須政府委員 家畜に関しては私どもが担当し、人に関しては厚生省が担当する、こういうことだろうと思います。
  108. 城島正光

    ○城島委員 今、人畜共通伝染病についてのテーマというのは両方でやっているということですか。それとも厚生省が中心だということで理解していいのでしょうか。
  109. 中須勇雄

    中須政府委員 基本的には、ただいま申しましたように、それぞれその病気が人に危害を及ぼす、あるいは家畜に危害を及ぼす、その局面によって所管が分担されているということでありまして、もちろん実際の運用面において十分連携をとっていくという問題は運用上の話としては当然重要な課題としてあるわけで、そういう努力は行っているところでございます。  ただ、若干そういう扱いと異なるというか、違いがございますのは狂犬病でございまして、狂犬病は人畜共通伝染病でございますけれども、この場合には、狂犬病予防法自体は厚生省の所管でございますが、検疫については私ども動物検疫所が所管をしている。そういった意味で若干の違いがございますが、基本的にはさきに述べたような形でございます。
  110. 城島正光

    ○城島委員 これは畜産ということだけに限定するとそういうことになっていくと思うのですけれども、社会全体から見ると物すごく大きな問題になりつつあるというふうな認識を私は持っているわけであります。以前からもちろん問題ではありましたけれども、先ほど申し上げたような環境変化もあって、ますますこの問題はどこかが本当に集中的にテーマとして上げていかないと、いずれ本当に社会的に問題になっていく可能性を秘めているというふうに私は思っております。  したがって、特にこういった問題について厚生省、農水省それぞれ、あるいは所管はどうなんですか、獣医行政畜産局に集中しているからかもしれませんけれども、そこに僕は問題があるのではないかというふうに思っているのですね、この問題の本質は。  ですから、今例えば所管を調べてみると、家畜以外の、さっきあった犬、猫といった伴侶動物あるいは実験動物での人への感染のおそれのある伝染病と言った方がいいかもしれませんが、そういったものについては、おっしゃるようにそれぞれの主体によって農水省、場合によっては厚生省が持つというふうな、そういう分かれ方になっているかと思いますけれども、また野生動物は林野庁ですか、それから実験動物とか動物愛護に関しては総理府と、それぞれ管轄が分かれている。動物種によってと言った方がいいかもしれませんが、そこに僕はちょっと問題があるんじゃないかというふうに思うわけでありまして、環境変化からすると、そういったものをまとめた、あえて言えば、獣医課とか獣医局といったことで一元化して見てみる必要があるんではないかというふうに思っているわけでありますが、その点についてはどうでしょうか。できれば大臣あたりに答弁をいただければありがたいわけであります。
  111. 中須勇雄

    中須政府委員 ちょっと事実関係等について、私の方から前段で御説明を申し上げたいと思いますが、人畜共通伝染病という問題と並んで、ただいま御指摘のとおり、動物関係行政と申しましょうか、そういう分野につきましても、お話しのとおり、家畜伝染病予防法、家畜という観点での防疫というのは私どもが担当しておりますし、例えば狂犬病予防法は厚生省の御担当である、あるいは動物の保護及び管理に関する法律については総理府、さらに鳥獣保護、狩猟、野生鳥獣等に関しては環境庁、こんなふうな、例示をしただけでございますが、確かにそれぞれ分担が決まっている。  結局、何と申しましょうか、動物というものに着目した行政分類ではなくて、どういう目的で一体行政をやるのか。経済的動物としての家畜の保護を図る、例えば家畜伝染病予防法でいえば、そういう目的に従って分けたがゆえにそういうような形になっている、こういうことだろうというふうに思っております。  私ども、基本的には、こういった行政、それぞれ分野は分かれておりますが、相互に手を結ばなければならない部分というのがあるのは御指摘のとおりでございまして、その点については、総理府等に音頭をとっていただいて、関係省庁が集まったりあるいは課題に応じてそれぞれ横の連絡をとり合って、総合的な対策がとれるように努力をしている、こういうのが現状でございます。
  112. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 動物衛生対策について一元化をしたらどうだ、こういう御質問であろうと思います。  確かに、今まで、政府委員から答弁しておりますように、それぞれ各省が分担というか、別れて対応してきた、こういうことでありますから、連携を強化してこれをやっていく、こういうスタンスだと思うわけでありますが、一方で、これを一つの、つまり一元化をしてこういう問題を集中的にやったらどうか、こういう意見としてはあると思います。  その場合に、つまり厚生省とか総理府とか、そういう関係者が動物の問題について果たして詳しいかどうかという問題もあると思うんです。ですから、その全部の人を一つにまとめてやる場合に、そういう問題も考えていかなければならぬ点だと思いますし、また一方で、行政改革という見地からすると、そういう問題を一つにまとめるというのも一つ考え方かなというふうに思うわけでありまして、これは将来の課題としてぜひ勉強していかなければならぬ、そういうふうに思います。
  113. 城島正光

    ○城島委員 ぜひ前向きに、そういう最後のところの簡素化ということも含めてでありますけれども、やっていただきたいと思います。  もう一点あえてつけ加えると、最近これも話題になりましたけれども、いわゆるクローン羊。クローン人間の方はどっちかというと話題になり過ぎるくらいですけれども、クローン羊のような発生工学あるいは遺伝子工学を使ったような高付加価値型の畜産業というものが、恐らく今後、我が国だけじゃなくて、民間の中で、過去のいわゆる今までの農業の範疇を超えて発展していくのではないか、また、発展していかなければいかぬような状況になっていくのではないかというように私は思っているわけであります。  そうしたことが発展していくとすれば、こうした技術といったものについては、クローンの人というところで話題になっておりますけれども、人の医療とかあるいは我々人間が持つ倫理観といったようなところにも大きく影響を及ぼすような点にも入ってくるわけなんであります。そうすると、これはまさしくこの部分においても的確な行政というのが必要になってくるというふうに思います。  私、獣医そのものというのが、人と人社会の中でいろいろな目的に置いている動物との関係を取り扱う学問ですね。そういう点からしても、今言ったような新しい産業が起こってくるということもあわせて見ると、全体を統合したような、獣医そのものの統合した管理あるいは行政というものがどうしても必要になってきているのではないかという認識を持っておりますので、今大臣が御答弁になったように、一つの重要な課題として受けとめたいということでありますけれども、ぜひそういうこともあわせて、今後の農業の発展のあり方も含めた中で御検討をいただきたいというふうに思います。  それでは、次に、先ほどから少し話題になっておりましたけれども、O157について少し質問をしたいというふうに思います。  これは厚生省の方がいいと思いますけれども、端的にお尋ねしたいわけであります。O157の、特に話題になったのは、堺市を中心とした小学校の集団的な食中毒でありましたけれども、本質的な原因というのはどこにあったのか、どういうふうに究明されたのかということについてお尋ねをしたいと思います。
  114. 堺宣道

    ○堺説明員 お答え申し上げます。  昨年続発したO157による集団食中毒の原因究明というものが行われたわけでございますが、その結果として、岐阜市における集団食中毒でO157がサラダから検出される、それから、堺市については先生御指摘のことがございます。また、昨年の夏に実施いたしました流通食品に対する全国一斉安全点検の結果では、検査総数二万九百十八検体のうち、十一検体からO157が検出されました。また、調理施設における検食の保存期間を、マイナス二十度C、二週間に延長したわけですが、その結果、九月に発生した岩手県盛岡市における集団食中毒においてはサラダ等から、また十月に発生した北海道帯広市における集団食中毒においてはサラダから、O157が検出された等の成果が得られたところでございます。  しかしながらへ昨年の一連のO157の集団食中毒の多発の原因につきましては不明でございます。  そこで、今後、発生時の原因究明をさらに確実に行うために、厚生省としては、食中毒調査マニュアルの作成や食品中からのO157の迅速かつ正確な検出方法の開発に努めているというところでございます。  以上でございます。
  115. 城島正光

    ○城島委員 そうしますと、なぜ昨年ああいうふうにばっと全国的に広がったのかというようなことも含めてでありますけれども、また同じような状況が起こり得るということで理解していいんでしょうか。
  116. 堺宣道

    ○堺説明員 お答え申し上げます。  昨年のO157による発生状況を見てみますと、散発事例を含む健康被害というのは、全国の都道府県で発生しております。また、冬に入りましても、依然として散発事例が発生しておりまして、その点では予断を許さない状況というふうに思っております。
  117. 城島正光

    ○城島委員 予断を許さないということは、要するに起こり得るということですね。
  118. 堺宣道

    ○堺説明員 可能性が高いというふうに考えております。
  119. 城島正光

    ○城島委員 そうすると、これは一般的なマスコミ報道が一生懸命騒いだわけでありますけれども、特に堺市の問題については、原因究明ということでいかにもカイワレが原因だったみたいにわっと広がっていった。そのことによって、何となくまた一方では、原因がわかったみたいなことで鎮静化していったような雰囲気もあるわけであります。当然、カイワレが原因ということはあり得ないわけで、それはキャリアの一つであって、先ほどもありましたように、いろいろなものがあるわけですよね、キャリアとしては。ところが、全体的にはそういう雰囲気になっている、何となく落ちついてきた雰囲気があるということは、ある面で危険な状況と言えるのでしょうか。
  120. 堺宣道

    ○堺説明員 状況については先ほどお答えしたとおりでございまして、それからいたしますと、万一、昨年の一連の事件ですべてが終わってしまったというような、変な安心感といいますか、そういう風潮が蔓延すると危険なのではないかというふうに思っております。
  121. 城島正光

    ○城島委員 その中で、一つ私は問題だと思うのは、今言ったように何となく、あの当時の報道そのもののあり方かもしれませんが、いかにも原因がカイワしみたいになって、全国のスーパーからカイワレが消えていくみたいな、非常に間違ったとらえ方というのが一斉に広がった。  ところが、それに対して今度は、そういったある面で間違えたとらえ方をした動きがあったわけでありますけれども、それに対しては何か対応されたのでしょうか。いわゆる本当の原因というのはそういうカイワレということじゃなくて、それは百歩譲っても特定の生産者からなった、ある日の特定のカイワレですよね。しかも、カイワレそのものというより、それがキャリアとしてのものだというようなことについての指導というのはあったのでしょうか。
  122. 堺宣道

    ○堺説明員 報告書の中で、特定の生産施設から出されたカイワレ大根というのが食材として可能性が高いということは、重ねて情報発信したつもりでございますが……。
  123. 城島正光

    ○城島委員 そういうつもりだったということでありますけれども、一般的な報道は全くそうじゃないがゆえに、現実に起こったことというのはあほうみたいですよ、僕に言わせれば。すべてのスーパーからカイワレが一斉に消えていくというような、そういう行動が起こってしまったということが現実ですから、やはりその辺については、的確な正しい報道がされるようなことも注意していく必要は一方であるだろうと思う。同時に、本質的な問題というのは、ある面でいうとまだわかっていないということも、これも正しい報道というか、理解を求めないといかぬところだろうというふうに思うのです。  ですから、その辺について、今後の対応についてぜひしっかりお願いしたいというふうに思いますし、同時にこれは僕自身の印象でありますけれども、本質的な原因がそこにあるかどうかというのは僕はわからないのだけれども、印象として持つのは、どちらかというと、やはり公衆衛生上の意識とかそのレベルが低下してきているということが本質的にベースとしてあるのじゃないか、我が国状況の中において。そういったことを引き上げていくということがもう一つ極めて大事な施策ではないかというふうな、僕個人の見解を持っているのですが、それについてはいかがでしょうか。
  124. 堺宣道

    ○堺説明員 二点の御指摘ございまして、一点は、情報をどうしていくかということでございますが、これは一つは、情報というものは、情報を発信する側の問題、それから伝える側の問題、それを受けとめる側の問題、その三つあるのではないかというふうに思っておりますが、できるだけ的確に、それからまた小まめに情報を提供していくということを、これから私ども心がけていかなくてはいけないというふうに肝に銘じております。  それから、もう一つの一般の意識の問題ということの御指摘でございます。  言ってみますと、先ほど来家伝法の議論をされておられるわけでございますけれども、いわゆる伝染病というのは過去の病気だと、それからもう一つは、食中毒というのももう過去の病気であるというような風潮というのは、確かに日本を含めて先進諸国では起こっているのではないかというふうに考えておりまして、そこいら辺、世界保健機関のWHOも、そういうことではなくて、新興感染症あるいは再興感染症というようなことで気をつけていこうということを言っております。そこいら辺の意識を変えていくということも大切なことだというふうに認識しております。
  125. 城島正光

    ○城島委員 カイワレに端を発したマスコミ報道に対する対応というか、正しい報道と言った方がいいと思いますけれども、ぜひやっていただきたいし、そのことによって被害を受けたと思われるカイワレ業者が訴訟を起こしているわけでありまして、もし本当に何にもなかったとすれば、僕はもうその気持ちがよくわかるわけで、やはりそういったことも含めた的確な責任ある対応を、今後も可能性があるということですから、一層求めたいというふうに思います。  次に、米の生産調整について、ちょっと私の方からも質問をさせていただきたいというふうに思います。  先ほども菅原委員の方から、東和町の問題について質問をさせていただきましたけれども、この問題の、特に東和町あるいは高知県あたりからのいわゆる生産調整、減反政策に対する反乱というのでしょうか、というのは、現場段階からの反発の声というのは私なりにわからないでもない。もちろん、今までのいわゆる生産調整というのが果たしてきている役割というのは十分よくわかるわけでありまして、政策としても必要だったろうというふうに思います。今後も不要だというわけではありません。  しかしながら、環境が、米の一部自由化を含めて、御承知のように、そういうある面でいうと生産調整をしていくその一つの大きな意味というのは、米の価格を何とかやはり維持していきたいということが中心的なものだったとすれば、それをやってもやっても、もちろんやらなかったときに比べたらどうかという論議はあるにせよ、実際の生産現場から見るとそういうふうになっていかないという環境の中で、先ほども提起があったように、特に意欲を持った、現場でやっている若手の農業に携わっている人たちの気持ちからすると、やるせなさが募っている。特に、減反をやることによって、ある面でいうと自分の子供みたいなものですね、土地というのは。非常に愛着を持っている土地に対して、それがある面でいうと荒れていくということについて、やはり耐えがたいという気持ちがどんどん募っていっているという気持ちは非常によくわかるわけであります。  私は、やはりこういった新しい環境の中で、米の減反政策、もちろん自主的にという新食糧法の中で変わってはいっているわけでありますけれども、逆に行政面として必要なことは、そういった減反政策に協力していくその土地というか田んぼというか、それの地方をどう維持していくかということも含めた政策的な転作、その土地を有効的に活用できるような、将来につながる、将来の展望が見えるような施策、本当は具体的な施策が自治体単位で行われる、あるいは農協単位で行われるように政策を誘導していくということがセットでなければ、現場で一生懸命とにかくやっている、愛着を持って、意欲を持ってやっている人に対しては、なかなか理解が得られない状況は募っていくだろうというふうに思っているわけでありますけれども、その辺についての見解を承りたいと思います。
  126. 高木賢

    ○高木(賢)政府委員 米の生産調整の意義につきましては、改めて申し上げるまでもないことでありますので、詳細は省略をさせていただきますが、米の需給、価格の安定を図るということが基本であろうと思います。  ただ、委員指摘のように、それのみにとどまるものではなくて、やはり、生産調整に合わせて需給の動向とか消費者ニーズに適合した適切な転作作物が選択されるということが、まず大事であろうと思います。それからまた、御指摘のように、土地の合理的利用といいますか、ブロックローテーションなどをきちんとやった合理的な土地利用方式の定着ということも、米の生産調整に当たりましては重要な課題であるというふうに思っております。  そこで、昨年度から新しい生産調整対策をやっているわけですけれども、この対策におきましては、まず、各都道府県あるいは市町村、それぞれの段階におきまして、地域の実情に即しましてどういう望ましい転作、営農をやっていくか、こういうことの実現に向けました具体的な指針を作成するということにいたしております。  これは、それぞれの地域の実情に即しまして営農方針が位置づけられているわけでございますが、そこでは、麦でいくのか、大豆でいくのか、飼料作物でいくのか、それぞれの組み合わせでいくのか、さらには、地方の増進も含めたブロックローテーションなどにどういうふうに取り組んでいくのかということが、御指摘のように、市町村段階での指針ということで明らかにされることになっております。  それを応援するために、転作助成金の体系の中におきましても、作物の種類によって、より需給上重要な麦とか大豆とか飼料作物につきましては助成金の単価が上がる仕組み、あるいは作付体系も、より望ましい形で営農が行われる場合に助成を手厚くする、こういうような形をとりまして、先ほど申し上げました、市町村段階におきます指針が実現されるように、そういう誘導策を講じているというのが実態でございます。  その結果、麦、大豆、飼料作物、野菜、こういった国民生活上重要な他作物への転換、生産調整の中で約七割がこの転作という形で実施をされております。この転作を契機といたしましたブロックローテーションとか団地化とかが推進されているという状況にございます。  私どもといたしましては、この対策の推進、狭い意味の米の生産調整を契機といたしまして、それぞれの地域の条件に応じた農業の振興が図られるように、各地域の自治体あるいは農協などの関係者を指導してまいる、こういう方針でいるわけでございます。
  127. 城島正光

    ○城島委員 農業の後継者の問題というのが最近重要な問題として叫ばれている中で、やはり一番大事なことは、一生懸命生産しようというその生産現場生産意欲をそぐことは、それこそ一番の問題である。ですから、土地が荒れること以上に、一生懸命農業で身を立てていこうという若者の心の荒れることの方が重大な問題だと思うのですね。そういう人たちの将来にきちっとこたえるような政策誘導ということがやはり責任あることではないかというふうに思いますので、そういう極めて重要な転換期に来ているという認識の中で、心のわかる農政をぜひやっていただきたいというふうに強く要請をしておきたいと思います。  それに関連したことになるかもしれませんが、きょうの新聞報道でも、政府の財政構造会議の報告がされておりまして、個別分野調整の中で、特に農業においては、財政構造改革のために六兆百億円に上るUR対策費が最大の見直し課題として盛り込まれたという報道であります。  農水大臣、これについて、この盛り込まれた方向について、どういう御見解なのかを確認をさせていただきたいと思います。
  128. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 この件は、新聞等で御承知と思いますが、ごれからこの財政構造会議の下に企画委員会というものをつくりまして、この企画委員会で週三回ぐらいの頻度で、たたき台として、けさ新聞で出ました各論でございますね、いろいろな具体的な問題について検討して、五月の中旬あたりに結論を出しまして、財政構造改革会議に上げて、六月末を目途にして結論を出そう、こういうことできのり決まったわけであります。  私どもといたしましては、ウルグアイ・ラウンド農業合意というものが、平成五年、六年当時の経緯を考えてみますと、我が国の発展のためには自由貿易体制というものを維持強化していくということが何よりも大事である、こういう認識のもとに、ぎりぎりの決断としてあの農業合意を受け入れざるを得なかったということ、また、その当時、この農業合意によりまして農村農業が受ける影響を和らげるために、農家に対する対策は万全を期すということが決められ、それを受けて、政府・与党が責任を持って六兆百億のあのウルグアイ・ラウンド対策費というものを決めた、こういういきさつがあるわけでございます。  そういう経緯から考えますと、昨日の財政構造改革会議での決定、たたき台の中にありますラウンド対策費については、縮減もしくは期間の延長というような表現がございますけれども、この検討については、この経緯からいたしまして、それなりにこの経緯というのは非常に重い意味を持っておるというふうに認識をしておるわけでございまして、今後、この企画委員会におきまして、私ども、発言をするチャンスが十分ございますので、その席では十分に意見を申し上げようというふうに考えております。     一小平委員長代理退席、委員長着席一
  129. 城島正光

    ○城島委員 この問題、もう少し論議をしたいわけでありますが、時間がございません。  最後に一点だけ確認をさせていただきたいわけでありますが、これまた報道等によりますと、家畜の預託オーナーシステムに対していろいろ問い合わせが多いという報道がされております。せっかくまじめにこういったことをやっている業者もいるかというふうに思うわけでありまして、逆に今、そういった点について、農水省の対応、どういう対応をされているのかを確認をして、質問を終わりたいというふうに思います。
  130. 中須勇雄

    中須政府委員 いわゆる家畜の預託オーナーシステムにつきましては、さかのぼれば、十数年ぐらい前から、各地で村おこし的に行われたり、あるいは特定の方がこういった形で取り組まれてくるということがございましたが、実は昨年から、我が省に対して消費者からの問い合わせが大変多くなりました。その背景には、昨年から非常にたくさんの方が急にこういうことを始めて、特に利殖の道としていろいろ宣伝をされている、そういうことがあってたくさんの問い合わせが殺到してきている、こういう状況があったわけでございます。  このため、私どもといたしましては、一つは、中には農林水産省が推奨しているかのごとき広告をしているものがあるということで、そういった事実はないということ、それから、肉用牛の飼育というのは、言うまでもないことでございますが、価格の変動リスクがあって、常に確実にもうかる、確実に利益が上がるというものではないということ。さらに、若干技術的になるのかもしれませんけれども、受託会社が不特定多数の預託者たる一般消費者に元本保証等を約束して金銭を受け入れる、その態様にもよりますが、これが出資法に触れる可能性がある。この三点を示しまして、消費者からの問い合わせ等に対して注意喚起をするようにということで、都道府県等関係機関に対してお願いの文書を出したというのが現状でございます。  今後ともそういった方針で消費者に対する注意喚起を続けるとともに、関係省庁とも連絡をとりながら情報収集に努めていきたいというふうに思っております。
  131. 城島正光

    ○城島委員 最初に申し上げたように、こういったことをまじめにやっている業者もいるわけでありますので、そういったところについて悪影響が及ばない、もちろんそれに注意されていると思いますけれども、そういったことを含めた対応をよろしくお願いしたいと思います。  以上で終わります。
  132. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、川内博史君。
  133. 川内博史

    川内委員 民主党の川内博史でございます。  鹿児島の出身でございまして、先ほど松下先生が養豚のことをやっているのは自分一人であるというふうにおっしゃられたわけでございますが、この川内も養豚のことについて大変に興味を持つておりまして、特にふん尿の処理のことについて、本日は、三十分の時間をかけてふん尿のことのみお伺いをさせていただこうというふうに思っております。  まず、畜産のふん尿については、産業廃棄物の処理法そしてまた水質汚濁防止法、この二つの法律で規制をされているわけでございますが、ごくごく基本的な数字のことから確認をさせていただきます。農水大臣、現在、日本に何頭の豚がいて、そしてその豚がトータルで人間のふん尿の量に換算するとどのぐらいの量のふん尿を排出しているか、お答えください。
  134. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 私も専門家でございませんのでよく承知をいたしておりませんけれども、そういう御質問があろうかと思いまして、多少勉強をさせていただきました。  今、我が国の豚の頭数は約一千万頭、九百九十万頭、それから一頭当たりのふん尿の負荷量は人間一人の十倍へですから、人間に直せば一億人分に近いというふうに理解をいたしております。
  135. 川内博史

    川内委員 農水大臣、ありがとうございます。  委員の皆さんも今お聞きになったと思います。一千万頭の豚がいて、トータルで一億人分のふん尿が毎日処理をされている。これはだれが処理をしているのか。養豚農家日本全国に一万六千軒ございます。この一万六千軒の養豚農家が、人間の量で換算すれば一億人分のふん尿を毎日毎日処理している。  これは、養豚農家というのは父ちゃんと母ちゃんと二人でやっている例が多いわけでありますが、大変な御苦労だというふうに思うわけでございます。大体今、中規模のごくごく平均的なクラスで、母豚百頭、肥育豚千頭というのが平均的な養豚農家であるというふうに認識をしているわけでございますが、この肥育豚千頭、人間の人口でいえば一万人ですね、一万人の町のふん尿の量をその父ちゃんと母ちゃんと二人で処理をしている。  ふんについては、堆肥化すればいいじゃないか、あるいはその堆肥化したものを売ればいいじゃないかという議論、環境保全型農業という、それは議論の上では、言葉の上では簡単に言えるのです。しかし、堆肥化してもだれが売るのか、一々袋詰めをして十五キロの袋にして、毎日毎日豚の世話をしている人たちがどうやって売り歩くのか、流通の経路もない。  また、豚の尿というのが大変に厄介なものでございまして、BODの値が大変に高い、浄化するのが大変に難しい、アンモニアがそこらじゆうにまき散らされて木が枯れる。そしてまた、地下水に浸透して地下水の硝酸態窒素の値が上がり、地下水の汚染につながっているという現状があるわけでございます。  農水大臣は午前中の御答弁で、自分の選挙区の事情もあり、養豚のふん尿処理の現状については自分はよく知っているのだというふうに御答弁をされていらっしゃいますが、実際に、本当に養豚農家のふん尿処理の現状をごらんになったことがあるのか。またごらんになったとすれば、どういうところに問題点があり、それをどう改善していかなければならないというふうに問題意識を持っていらっしゃるのか、お答えください。
  136. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 選挙区で酪農を経営されておられる農家方々のところを訪問いたしまして、豚であるとか牛であるとかを飼っている状況を見ますときに、一口で言えば、今委員指摘のようなふん尿の処理、もっと大きく言えば、環境問題に与える影響というものが、経営側からいっても周辺の環境におられる方々からいいましても、両方から見て非常に大きな問題だというような認識は十分持っております。  そこで、これらの問題をどういうふうにうまく処理ができるのか、こういうことにつきましてはなかなか難しい問題でございまして、先ほど委員指摘されましたようなことをいろいろ考えながら進めていくことになるのかなというふうに思って受けとめておりましたけれども、私も、これから我が国畜産業の発展のためにこのふん尿の問題は避けて通れない問題でございますので、自分なりに至急勉強してみたいというふうに考えております。
  137. 川内博史

    川内委員 農水大臣から今、何かよくわからないお答えがあったわけでございますが、要するに、まだまだこの問題については、農林水産省としても突っ込んで解決策を考えていかなければならないという御見解であったというふうに理解をいたします。  そこで、きょう厚生省の方に来ていただいておりますが、人間一万人ぐらいの町の汚水処理にかかる費用というものは幾らぐらいなのかということをまずお答えいただけますでしょうか。
  138. 仁井正夫

    ○仁井説明員 お答え申し上げます。  家畜ふん尿につきましては、私どもの調査で九四%がリサイクルされているという実態がございますので、そのまま処理処分するし尿処理施設と比べることがなじむかといった問題がございますけれども、人口一万人といったところでのし尿処理施設を考えますと、日量で十八キロリッター日といった程度の能力が必要かと思われます。  こういったものにつきまして、最近の整備実績から見積もりますと、約六億円といったような事業費になっております。
  139. 川内博史

    川内委員 その六億円というのは月間ですか、年間ですか。
  140. 仁井正夫

    ○仁井説明員 施設の建設費でございます。
  141. 川内博史

    川内委員 ランニングコストは。リサイクルされているのは九四%なのだと。もう私が明らかに言うだろうなと思うようなことを言って、あなたはしようがないのですよ。ちゃんと答えて、ランニングコスト
  142. 仁井正夫

    ○仁井説明員 申しわけございません。今手元に数字を持ち合わせてございません。
  143. 川内博史

    川内委員 ふん尿の処理というのはランニングコストに相当なお金がかかるんですね。機械がさびついたりとかいろいろ、うんこの質とかあるいはおしっこの質も一定ではないですから難しいです、これは。大変にお金がかかるんですよ。  一万人の人間のふん尿を処理するためだけの建築費用も六億円もかかる。いいですか。養豚農家は一万人分のふん尿を人間二人で処理しているんですよ、人間二人で。お父さんとお母さんと、年をとって後継者もいないんですよ。だれが好きこのんでうんこやおしっこまみれになって養豚をやりますか。  今度は農水省に尋ねます。家畜のふん尿対策のために割いている費用、特に養豚のふん尿対策に割いている予算は幾らありますか。
  144. 中須勇雄

    中須政府委員 私がただいま手元に持っております、私ども畜産局では、公共、非公共合わせて、各種の畜産環境整備というふうに申しておりますが、堆肥施設等、一連の環境施設の整備に助成をしてございます。その国費のベースで平成七年度、補正額を含めて百四億円、平成八年度、補正予算額を含めて九十六億円、こういう数字がございます。
  145. 川内博史

    川内委員 それは家畜全体ですね、家畜全体。
  146. 中須勇雄

    中須政府委員 そのとおりでございます。
  147. 川内博史

    川内委員 あなたは、私の質問をよく聞いてください。養豚のと言ったんです、養豚の。
  148. 中須勇雄

    中須政府委員 申しわけございません。今ここで数字は持ち合わせておりませんが、養豚のウエートは、比較的この中では高いということだろうと承知しております。
  149. 川内博史

    川内委員 私が把握している範囲では、三十億ちょっとというふうに理解をしております。年間の豚のふん尿対策にかかる国の費用というのは三十億ちょっと。これを、日本全国で一万六千軒の農家のうちの何軒かが補助事業として採択をさせていただいて、豚のふん尿の処理をしている。しかしながら、先ほども申し上げたように、堆肥にしたところで売るところはない。だれも買ってくれない。ただで配ればみんな持っていきますよ、ただで配れば。トラックで運ぶだけ運送費がかかるわけです。  尿については本当に始末に困る。私、この前茨城県のある養豚農家に視察に行きました。母豚百頭、肥育豚千頭、やはり平均的な規模の養豚農家でした。一億二千万かけて、そのうち補助が九千万ぐらいあったんですか、国と県、市合わせて九千万ぐらいの補助がついている。しかし、自費でやはり二千万から三千万出しているわけですね。堆肥化施設をつくりました、ちゃんと処理できるようになりましたよと言いながら、そのおうちのガレージにはなぜかバキュームカーが置いてあったりするわけですね、なぜかバキュームカーも置いてある。  要するに、もともと無理なんですよ。産業廃棄物だから、事業者の処理が原則だから、家畜のふん尿については事業者が処理をしなければならない、国はそれに補助をつけるだけだという哲学、概念そのものが無理があるということを御指摘を申し上げたいと思います。  ではどうすればいいのか。環境保全型農業とか、若い人たちが夢を持って農業にあるいは畜産に。午前中の答弁で農水大臣は、畜産農業の基幹であるというふうにも答弁されていらっしゃいます。であるならば、それはそこに予算を突っ込まない限り、だれも夢なんか持ちませんよ。口で環境保全型農業とか、若い人たち、夢を持って畜産に励んでください。だれがそんな夢を持ちますか。  しかも、国が豚の価格決定に参加しているわけでしょう。最低価格と最高価格を決めて、その間に値が動くように国が仕組んでいるんでしょう。であれば、その出口、まさしく出口ですよね。おしりから出るふん尿についても、やはり行政が主体となってその処理をするんだということを産業廃棄物のくくりから外して考えない限り、二十年後、三十年後、畜産をやっている人などだれもいませんよ。農水大臣、そう思いませんか。
  150. 中須勇雄

    中須政府委員 御指摘のとおり、我が国の、特に中小家畜の生産というのは、外国から輸入したえさによって、それを食べさせて家畜を大きくする、こういう形で発展してまいりました。そういう意味におきましては、ふん尿処理に、土地に還元するという意味での難しさがあるのは御指摘のとおりの事実だろうと思います。  しかし、やはりこれだけたくさんの量の御指摘のようなふん尿が出てきている。これは、しかも有機物を含む一種の産業廃棄物でございます。これを、基本はあくまでも堆肥化して農地に還元をする。やはりそういうリサイクル利用をするのだということで取り組んでいくのが私どもとしては基本的な態度ではないのか、そういうふうに考えております。  個別にはもちろん難しい問題がございまして、そういう場合の御相談にも当然乗るわけでありますが、私ども、厳しい財政事情の中で、家畜のふん尿処理施設であるとか機械の助成に対して、先ほど申しましたような形で予算の確保に努めております。  今後ともまた、技術の開発あるいはこういった施設の整備ということに、厳しい中でございますが、最大の努力をしていきたい、こういうふうに考えております。
  151. 川内博史

    川内委員 先ほどから何度も申し上げておりますとおり、農地に還元するとか堆肥化するとか口で言うのは簡単なんですよ。そんなことはだれでも言えるんですから。実際にふん尿の処理をしている人たちの気持ちになってくださいよ。大変なことなんですよ。  今一万六千軒の日本全国の養豚農家のうち、補助を受けて堆肥化施設あるいは処理施設を持っていらっしゃる農家が何千軒かあるかもしれない。四千軒か五千軒かあるでしょう。しかし、残りの一万軒ぐらいはこれはどうしているか。生のまま、生ふんのままばんばんまいているわけですよ。あるいは人知れずこっそり処理しているわけですよ。あるいは雨がじゃんじゃん降って川が濁っているときに、申しわけないなと思いながらもそっと流すんですよ。しようがないじゃないですか、どうしようもないんですから。  それを、事業者処理が原則なんだ、だから、国は一生懸命努力はするが、農地に還元してください、堆肥化してくださいと言っているだけでは日本農業はだめになってしまいますよということを申し上げているんですよ。二十年後、三十年後に日本の養豚をやっている人はでかい会社の、ハム会社の経営する養豚場で、外国の人がふん尿の始末をしているということになりはせぬですか。  日本の文化というのは農村から出ているんじゃないですか、歴史とか伝統とか文化とか。農耕民族でしょう。ただただ口で、中山間地の農業を守りますとかどうたらこうたらくだらぬことを言っていないで、本当にお金をかけなきゃいけないところにかけずして何が日本農業を守るんですか、どうやって守るんですか、だれが守るの。あなたふん尿の処理できますか、豚小屋へ行って。畜産局長
  152. 中須勇雄

    中須政府委員 ただいま施設のお話が出ましたが、平成四年に私ども農林水産省の統計情報部が、養豚経営において全部の機械、施設等の所有状況を調べたものがございまして、その中でふん尿処理関係で申しますと、堆肥舎が一万二千八百七十戸、全体の七三・五%、尿だめが一万四千九百二十戸八五・二%、それから汚水処理施設が五千四百八十戸三一・三%、こういうような整備水準になっているわけでございます。もちろん、個別の経営でこういったふん尿の処理というのに取り組む場合多くの困難があるというのは御指摘のとおりだろうと思います。  ただ、そういう厳しい中でも多くの養豚農家、さまざまな水質規制とかそういうものをクリアする形で努力をしておる、そういう事実もある。また我々としては、そういう努力をできる限り支援をしていきたい、こういうような気持ちでおるということでございます。
  153. 川内博史

    川内委員 まあ畜産局長はお役人ですから、とにかく努力しますとしか言いようがないのはよくわかります。  委員長、私写真を持ってきたんですけれども、農水大臣にぜひ見ていただきたいんです。  要するに、養豚農家は今のところは素掘りで処理しているわけです。穴を掘って、そこにふん尿をためて、それがにおいもしないんですから。それは、そこにどっと流し込むとにおいがしそうな気がする、都会の人間は。ところが、土の中というのは、土の中のバクテリアがうまく働いてにおいはしないようになるんですよ。しかし、いつの間にかそのふん尿が地下に浸透をして地下水が大変に汚染をされる、そういうことなんです。そこを、ふん尿の処理についてはコストもかかるし、ただただ努力しますと言うだけではどうしようもないですよ。これから大変なことになりますよ、日本で豚肉食えなくなりますよということを申し上げているんです。  だから、ウルグアイ・ラウンド対策で六兆百億もの予算があるのであれば、そういう本当に若い人たちが、ああ養豚はもうかってしようがない、どんどんおれも豚を飼うぞというぐらいにしてあげるためには予算をつけなきやどうしようもないでしょう。ただ、一生懸命やってください、我々は応援しますと、口だけで応援しますと言うのは、それは応援しないのと一緒ですよ。ぜひ農水大臣にお答えをいただきたいんです。  今ふん尿の処理については、産業廃棄物処理法それから水質汚濁防止法、この二法によって規制をされている。それで農水省の方で畜産環境経営改善事業ということで、豚については三十億、畜産全体については百四億ですか、補助をしている、しかし、まだまだこれから努力をするんだというお話畜産局長からあったが、農水大臣は、日本農業を守る、日本農村を守るという観点から、家畜のふん尿については特に、産業廃棄物処理法あるいは水質汚濁防止法とはまた別途のくくりで処理をしていくんだというふうな御決意があるかどうか、その辺の問題意識を持っていらっしゃるかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  154. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 いろいろと御意見を言われました。私は、いろいろな御意見があることはこれは当然のことだし、よくわかります。ただ、先ほどから委員が、口から出任せであるとかできもしないことを言うといりよりなことについては言葉を選んで、当農水委員会でございますから、ぜひ御発言をいただきたいと思います。  それから、農水省としてはこの問題について十分問題意識を持っておりますので、やれる範囲の点については十分やります。政治がすべて解決するという、そういう幻想は私は持っておりません。
  155. 川内博史

    川内委員 農水大臣から、私が言葉遣いが悪いじゃないかという御指摘があったが、しかし正直な話、現場の養豚農家はどういう思いをして毎日豚を育てているか。冒頭に申し上げたように、人間一億人分のふん尿を一万六千軒の農家が処理をしているんですよ。それで我々は豚を食っているんですよ。二十年後、三十年後、日本で養豚をやっている人たちがいるのかいないのか。どんどん高齢化していく。よそから安い豚肉を買ってくればいいじゃないかということにはならぬと思いますよ。  環境保全型の農業を推進するとか堆肥化するとか土中に還元すると言うのは簡単なことじゃないですか。でも実際にそれができるのであれば畜産農家の方たちもそうしていますよ。予想を超える量が毎日毎日出ているんですよ。千頭の豚舎で人間一万人分のものが出るんですよ。それをただ単に、これから一生懸命努力しますと言うことだけでは済まない。農業対策としてウルグアイ・ラウンドの予算が六兆百億あるのであれば、もっとそういったところに、畜産農家コストを下げる部分に使っていかなければならないんじゃないでしょうかということを申し上げている。  畜産局長はお役人ですから、今現在ある法律の枠組みあるいは行政で決まっている制度の枠組みでおやりになられる。だから一生懸命努力しますと言うのはわかる。しかし、農水大臣が政治家として、御自分の選挙区でも養豚農家を見たとおっしゃる、その現状もよく知っているとおっしゃる。であるならばなおさらのこと、どういうふうにそれを改善していくのかという御決意をお聞きしたがったということでございます。  現状の枠組みの中でやるのか、それとももうちょっとつぶさに状況を調べた上で、なるほどこれは大変だ、大変なことなんだというふうに御理解をいただけたならば新しい措置を考えていくのか、いろんな方向があると思います。ただ、現状の枠組みの中で一生懸命やりますと言うだけでは、養豚農家の方は救われませんよ。もう一度お答えいただけますか。
  156. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 私は、農水大臣として、与えられた責任を果たすために全力を尽くします。
  157. 川内博史

    川内委員 農水大臣が、政治家として、与えられた責任を全力で尽くしますとだけしか答えられない。大変に日本畜産農家方々は寂しい思いをしていらっしゃるであろう。私がお渡しした写真もよくごらんをいただけなかったし、また今後この問題については松下先生ともどもやらせていただくことをお誓い申し上げ、私の質問を終わります。
  158. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、鉢呂吉雄君。
  159. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 私は、まず最初に、農水大臣が大変お忙しい参議院の予算委員会との関係で時間がずれまして、もう少しきちっとした運営を理事の皆さんにお願いをいたしたいというふうに、まずもって発言をさせていただきます。  そこで、大臣、先ほどの城島委員の質問と重なるわけでありますけれども、昨日、内閣の、政府・与党というふうになっておりますけれども、財政構造改革会議が開かれたということでございます。新聞報道しか知りませんけれども、いわゆる財政の、特に歳出を削減をしていくということで、この前倒しもさらにするというようなことで、その具体的な中身に、ウルグアイ・ラウンド農業対策費を削減していくということが方針として言明をされたわけであります。  先ほど大臣は、いろいろな経過あるいはこれからの日程等を話す中で、このガット・ウルグアイ・ラウンド合意に基づく対策はそれなりに重いと認識をしておるというような言葉だけでございましたけれども、これは大変重大なことでありまして、農水大臣として、このガット・ウルグアイ・ラウンド対策というものをきちっと守っていくということをこの場できちんと発言をしてほしいというふうにまず思います。
  160. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 昨日の財政構造改革会議で、第四回目でございましたが、そこで本部長の総理から、これから各論の議論を進めるに当たりまして、五つの原則というものが新聞で出された、御承知と思いますけれども、あの原則が示されました。続いて、これから毎週三回、この財政構造改革会議の下に企画委員会というものをつくりまして、ここで週三回の頻度で各論を議論する、そういうことが決まったわけであります。  それで、その議論を五月の中旬ぐらいまでに終えて六月いっぱいで、これをさらに上の財政構造改革会議に持ち上げまして、六月には結論を出して概算要求に間に合わそう、こういう一連のスケジュールがきのう決定して、この財政構造改革会議の後行われました閣僚懇談会におきまして、官房長官から説明報告があったわけです。  多少誤解があると困りますので申し上げますが、企画委員会におきまして、きのう示されました各論についてこれから、これがたたき台になるわけでありまして、このたたき台についてこの企画委員会で議論をする、その議論をする中で、役所であるとか、また各省庁の大臣もその議論の中に入りまして意見を申し述べる、そういう意見を申し述べながら企画委員会が議論をするわけでございまして、それで一応の結論を五月の中旬にまとめ上げる、こういうこれからの進め方になるわけです。  私は、先ほど申し上げましたように、この六兆百億というウルグアイ・ラウンド対策費というのはそれなりにぎりぎりの決断をした、また農家に対して、その受ける影響、混乱、不安というものを取り除くために国内対策は万全を期する、こういうことを平成五年、六年当時の、あの当時のことを思い出しますとそういう経緯があったわけでございまして、その経緯に基づいて、具体的には政府・与党で六兆百億の対策費をつくった、こういうことでございます。  その経緯から考えますと、私は、この検討、つまりウルグアイ・ラウンド対策費について削減もしくは期間の延長、こういうことについて企画委員会でこれから議論するわけでございますが、その議論の中で、この検討に当たっては今申し上げましたような経緯の持つ重みというものは十分に考えなければならない、認識していかなければならない、そういう問題であるというふうに私は思っておるわけでございます。当然、そういう企画委員会における私の発言をする機会には、この六兆百億円が決まった経緯から考えまして十分に私なりに意見を申し上げる、こういう決意でございます。
  161. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 経緯は先ほども聞きました。要するに、大臣の決意をここで、正式の委員会でありますから、その経緯を重大に受けとめて、そういう企画委員会の場があれば話をしたいというようなことではなくて、例えば、きのう閣僚懇談会があったというふうに私は思いませんでした、この財政構造改革会議は農水大臣は出席はなされておらないというふうに思っていましたから。  しかし、懇談会でどのような発言をして、ウルグアイ・ラウンド農業対策を大臣として、きちっとこの経緯を踏まえて死守をするのか、大臣の責任でもってこれを守るのかという決意をここでも聞かせていただきたいし、要するに、橋本総理は、みずから主宰をするこの会議で削減ないし期間の延長をうたったわけでありますから、そこのところの意味合いも大変大きいわけですから、大臣としての決意をお聞かせ願いたいと思います。
  162. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 これは、一方ではウルグアイ・ラウンド対策の重要性を総理も認識され、先ほども参議院の予算委員会でその趣旨の御発言がございました。また一方では、危機的な財政状況から考えて聖域なく検討する、こういう認識も示されているわけでございます。  私は、そりいり今の状況を踏まえながら、このラウンド対策費については先ほどから申し上げておりますような経緯があるわけでございますので、農林水産大臣としてはラウンド対策費が守られるように、私が全力を挙げることは当然のことと考えております。
  163. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 守られること、大臣としてはその決意でもって当たっていくということですね。(藤本国務大臣「当然のことだと考えています」と呼ぶ)もう少し迫力を持って、きのうの懇談会あたりで総理にどのような御発言をされたのか、もしそういう会合があったのであれば。やはり大臣としての決意をこういう公式の場、あるいは総理に向かってでも発言をして、持っていかなければならぬと私は思いますので、もう少し強いその姿勢というものをお聞かせ願いたいと思っております。
  164. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 きのうの閣僚懇談会におきましては報告をお聞きしたという、そういう内容でございまして、各閣僚がそれぞれ意見を言う、そういうような閣僚懇談会ではなかった、こういうことをまず御理解いただきたいと思います。  各閣僚から今後、それぞれの国務大臣として、また所管大臣として意見を言う場は、これからの、先ほど申し上げておりますような企画委員会においてそういう場があるわけでございまして、その場で十分に発言をしていく。また私につきましては、そういう場におきまして、このラウンド対策費を守っていくということは私の当然の責務だと考えております。
  165. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 そうすると大臣は、きのうの閣僚懇談会の前段の構造改革の会議では、私ども、たたき台というふうには新聞報道は出ていませんからわかりませんけれども、ああいう形で提起をされた。我が党も、内容の見直しはするけれども、六兆百億の減額は許さずという基本的な考えで党内をまとめました。基本的に削減という形で今後検討されていくということ、あるいは期間延長。期間延長ということは削減になるわけでありますけれども、何も全体的な見直しをするとか、金額的には削減をしないで内容の見直しをするということではなくて、削減という視点でこの見直しをしていくということでありますね。
  166. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 これはウルグアイ・ラウンド対策事業だけではなくて、各論におきましては数多くの具体的な項目がございます。その項目につきましては、例えば公共事業、長期の公共事業につきましても、公共事業費を削減もしくは期間延長する、こういう文言が入っておるわけでございまして、ウルグアイ・ラウンド対策事業費だけではございません。  それから、これはきのうの会議で決まりました企画委員会における一応のたたき台として今出ておりますことについて企画委員会において議論をする、こういうことでございますので、削減もしくは期間延長するということがきのうの段階で決まったわけではなくて、そういう内容のことについてたたき台として企画委員会で議論をする、そういうことが決まった、こういうことでございますので御理解いただきたいと思います。
  167. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 これはもちろん与党も入っておるようでありますけれども、内閣がこういう削減という形で明示をして、今後、企画委員会週三回と言いましたけれども、これはもちろん行政の事務段階でやることでありまして、私は、大臣が入る委員会かどうかわかりませんけれども、入りませんね。(藤本国務大臣「いいえ、入ります」と呼ぶ)入ります。いずれにいたしましても、枠組みあるいはたたき台の段階で、きちっとした大臣の姿勢を総理なり内閣全体に貫き通しておかなければ、削減ということを明記した中で、大臣、あなたの重い認識というものは入れられますか。
  168. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 財政構造改革会議のメンバーにつきましては、政府側から梶山内閣官房長官、武藤総務庁長官、麻生経済企画庁長官、三塚大蔵大臣、白川自治大臣、こういう各大臣が入っておりまして、事務的な検討の企画委員会でございますけれども、内容は閣僚が入っておる、こういうことでございますので、十分に権威のある企画委員会であることはおわかりいただけると思います。  そういうところで、例えば私が出席をして農業問題について意見を言う、議論をする、また、他の大臣が出席をしてその所管のことについて意見を言う、議論をする、こういうことにこれからなっていくわけでございまして、私が出席をして農業関係の問題を議論する場合には、いろいろなウルグアイ・ラウンド対策以外の農業関係の問題もございますけれども、主にこの問題が一番大きな問題として、大いにこの点については責任を持って取り組んでいきたい、かように考えております。
  169. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 大臣に対する時間が短縮されましたので順番を変えますけれども、続きまして、食糧自給率の問題について質問をさせていただきます。  先般、食料需給表が、平成七年度の分が示されました。前年度よりも四%低い四二%という、大冷害を除けば史上最悪の自給率、異常な事態になったわけであります。自給率の長期低落傾向に歯どめをかけるというふうに、これは新政策の中でも大変大きな意味を持って明記をされておるわけであります。また、昨年の初めに政府が策定をいたしました農産物の需要と生産の長期見通しについても、平成十七年度、十年後を四六%という形で自給率を明示をしたわけであります。そういう意味では、今回一年目にして、それを、四六ないしは四四というものをさらに下回る四二%に低下をしたわけであります。  きょうは中身も聞こうと思ったのですけれども大臣がいなくなりますので、この自給率の低下というものについて大臣はどのようにお考えになっておるのか、この点についてまずお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  170. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 この食糧自給率の問題は極めて重要な問題であると認識をまずしております。  それで、四七%から最近四二%に……(鉢呂委員「四六%」と呼ぶ)四六%から四二%に低下をした、カロリーベースで。これはある新聞に社説で自給率低下の原因を要約して書いてございまして、それによりますと、米の消費の減少、これが自給率の低下の約三一%に寄与している、それから、輸入飼料穀物に依存せざるを得ない畜産物の消費の増加、これが二八%の寄与をしている、それから、油糧ですね、輸入原料に依存せざるを得ない油脂の消費の増加、これが二八%の寄与をしている、こういうようなことで、結論としては、食生活の内容が変化をした、これが我が国の食糧の自給率の低下の原因になっておる、こういうことがわかります。  我々としても、この自給率の低落傾向に歯どめをかけまして、維持をしていくということは非常に重要な問題であるという認識を持っておるわけでございまして、そのことについては重大な問題として受けとめておる次第でございます。
  171. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 私は大臣とちょっと認識が違うのですけれども、今大臣は、食生活の変化によってこの低下が生まれたというような御発言でありました。それもあるかもわかりません。しかしそれは、昨年からといいますか、平成六年から七年にかけての大きな変化ではなかったというふうに思います。  もちろん米は一〇三%に低下をいたしましたけれども、これは前年豊作であったにすぎません。その前の、三年前に比べると、四二%の急激な低下というものは顕著になっておるわけでありまして、その原因はむしろ、ガット・ウルグアイ・ラウンドの合意後の自由化、これは皆さんは、いろいろな関税率を高く張ったからそのものの自由化をされておらない、例えば畜産物でありますと、バター、脱粉はカレントアクセス分しか入っておらないというような言い方をしますけれども、一方また、調製品という形で急激に海外の乳製品が入ってきておるわけであります。  そういった意味では、まず一番大きな低下の原因は、ガット・ウルグアイ・ラウンドによって、総自由化の方向が食糧の輸入に極めて大きな役割を果たしておるといりふりこ思わざるを得ません。その点、大臣、どうですか。  食生活の変化だけ、私は違うと思います。私は、この部分についての論議をしようと思っておらなかったのですけれども大臣が余りにも簡単に現下の食生活の変化ということだけでこのことをとらえられるのを大変残念に思うわけであります。もう一度御答弁願いたいと思います。
  172. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 多少補足をさせていただきますと、私が先ほど申し上げました数字は、昭和四十年度からの低下で見ると、以下の、というのは今さっき申し上げました米の消費の減少、輸入飼料穀物に依存せざるを得ない畜産物の消費の増加、また輸入に依存せざるを得ない油脂の消費の増加、これが自給率の低下要因の約三分の二を占める、正確に申し上げますとそういう数字でございまして、昭和四十年時点ではお米を約一千三百万トン食べておったわけで、このときは自給率は七三%だったわけでございます。米の消費量と自給率のこの数字とは非常に関連があるということも、四十年と今の米の消費量、自給率の数字ということは関連があるというふうに我々は理解いたしております。
  173. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 私は、三十年前と比較して論議をしておるのではありません。あの新政策が提起をされた平成五年、四七%程度の自給率を何としても歯どめをかけるんだ、そういう意味合いであのときは重大な文言として入ったわけであります。それに比べて、早くもその四四なり四六という長期見通しは、平成八年の一月、去年の一月につくられたものを下回るような状況、この間の状況について、大臣の御認識を聞きたかったわけでありますけれども、私にとってはそういう三十年前の見方とは全く違う危機的な様相がある。  なかなかこれは自給率を三十年前に戻そうなどということは夢物語でありますから、現下のこの四六、七のものを何とか維持をしていくためにはどうするのかという視点の大臣の危機的な認識を聞かせてもらわなければ、全く何を論議をしているのかわからないということになりますから、そこのところは、大臣、きちっとしていただきたいというふうに思います。  年一%、平成七年は四%も下落をしてしまいました。その上に立って、大臣として、これに歯どめをかけるにはどのような政策手法があるのか。これは農水大臣として本当に、あの当時歯どめをかけると言ったものに責任を持つ立場に私はあると思いますから、そういった面でどういった政策手法を考えておるのか。  これは今までもさまざまな長期計画はつくられて、本当にたなざらしといいますか、棚の上に置かれたような状態で来ました。今回のこの酪農畜産も、昨年酪近計画という長期計画をつくり、都道府県につくらせ、市町村につくらせております。しかし、これも同じような運命をたどるのは目に見えていると言っても言い過ぎでないというふうに思います。  後で具体的に言いたかったのですけれども大臣、その点どうでしょうか。どのような歯どめ策を考えていらっしゃるのか、大臣としての、政治家としての責任、あるいは最高の農水省の責任者としての決意を聞かせていただきたいと思います。
  174. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 食糧の自給率、四六%から四二%に一年足らずで下がった、それはどういうことだ、こういう御質問でございますけれども、これは委員はよく御承知のとおり、平成六年度の米の作況指数が一〇九という豊作、これによって自給率は一二〇%。それが平成七年度になりますと、一〇二の作況指数で自給率が一〇三%、この数字の差がそのまま食糧の自給率の差になってきておるということは、これは委員よく御承知のとおりだと思います。  それから、この自給率を上げていくためには、先ほど来申し上げておりますように、統計的に食生活の変化というものが三分の二の原因であるということでありますから、そういうことからすると、自給率を上げていくための政策には、国民の皆様方の食生活の内容、変化ということまで農政上的確に一〇〇%これを把握できないとすれば、これは非常に難しい問題が片方にあるのではないだろうかと思います。  それから一方では、農家の皆様方が意欲を持って農業に従事していただくためには、やはり他産業並みの生涯所得、二億から二億五千万だったと思いますけれども、そういう生涯所得を獲得できるような農家を育成していくとか、それから年間の労働時間が他産業並みに千八百時間、そういう農家を育成していくとか、そういうことが大事であり、まだそういう農家を育成していくことによって食糧の自給率が上がっていく、こういうことを期待しておる、こういうことでございます。  今、認定農家は御承知のように九万戸であり、この認定農家を将来二十万から三十万、育成していこうというふうに考えておるわけでございます。そういう農家が実現した暁には、この農家で今の米の生産の約九割は生産できる、こういうことも考えられるわけでございまして、そういうふうに向かっていきたいと思っております。
  175. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 今まではそういうような政策執行という形もあったかもわかりませんけれども、もうそれは破綻をしておるというふうに、大臣、私どもは思っております。  例えば、今大臣は、米が一二〇から一〇三になったのでと、これだけが原因のように言われましたけれども、それは六年から七年に比べますと――しかし、今示しますが、すべてが、この四、五年見ても、野菜なんかも大幅に自給率が下がっておる、低下をしておる。考えられない。野菜なんかは国内で自給するのかと思いましたら、長距離輸送も可能になるような輸送方法も出てきておるということで、さまざまな面で低下を来しておるのです。  大臣、例えば肉用牛、牛肉の自給率は三九%になりました。これは大変な低下であります。これはガットの前の牛肉の自由化の影響を受けたことは事実であります。  同時に、農水省が立てた、先ほど言いました酪近計画によりますと、平成五年の二百九十七万頭を平成十七年には四百三十三万頭にふやそうと、四五・八%増の大変意欲的な計画を今回も立てておるのであります。しかし、平成五年は二百九十七万頭でありましたけれども、ずっと平成八年、今回この統計情報部の資料によりますと、二百九十万頭と逆に七万頭減っておるのです。大臣、これで四百三十三万頭は可能ですか。  あるいは、今言われたような担い手を確保すればいいといったようなことで、具体的に確保されないで、どんどん減ってきておるのですよ。  私は何も個別のことを聞こうとしておるわけではありませんから、畜産局長、答える必要はありません。  大臣として、これからこの自給率に歯どめをかけるために、具体的にどういった政策手法の転換をしていくかということの決意を高い次元で述べてもらわなければ、今までのように、計画的な生産をすればそれは社会主義的な生産になる、何とかこの目標を達成するというようなことは計画経済になるということで、その手法をとらないというような言い方でこれまでの農水省の幹部の皆さんはここで答弁をしてきました。しかし、結果としてどんどん自給率が下がっておる。何とかしてこれに歯どめをかけなければならないという現下の極めて重大な日本の食糧という観点からいって、大臣としてどういう手法をとるのか、そこをお聞かせ願いたいと思うのであります。
  176. 中須勇雄

    中須政府委員 ただいまちょっと牛肉のお話が出ましたので、私から御説明したいと思うわけでございます。  基本的な方向として、酪肉近代化基本方針は極めて意欲的に算定をしておるというのはそのとおりだと思います。ただ、最近におきまして、特に牛肉で自給率が低下をしているというのは、自由化後、国内生産の減というよりも、もちろん今若干減少基調にございますが、全体としてその需要が伸びて輸入量が拡大した、そのことが大変大きく寄与している、こういうふりに思っております。  したがいまして、なかなか意欲的で厳しい目標でございますが、長期見通しについてはその実現に向けて努力をしていきたい、こういうふうに思っております。
  177. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 食糧の自給率の向上につきましては、先ほどから申し上げているとおりでございまして、非常に重大な問題だという意識は持っております。しかも、この自給率の低下傾向に歯どめをかけて維持していく、こういうことがまず当面の目標でございまして、それを達成するために、先ほど申し上げたような他産業並みの経営の中心になるような農家をつくっていく、そのためには、やはり今ラウンド対策でも取り組んでおりますように、大規模で高い生産性農家を、農業をつくっていくために生産基盤の問題に力を入れておるわけでございますし、同時に、都市と農村の格差を是正する意味において農村生活環境整備にも力を入れている、そういう農村農業の事業、そういう事業を中心にして今我々としても力を入れております。
  178. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 大臣が五十五分までですので、もう一問だけ大臣に御質問いたしたいと思います。  大臣、農水省は、新農業法をつくろうということで四月から内閣の中に調査会をつくって、私ども聞くところによると、二年をかけて検討するというような言い方をしております。しかしながら、内外の諸情勢は次のラウンドに向けてさまざまな動きをしております。  特に海外の動きというものは、もう現実にさまざまな1諸外国での国内対策、私はそれを大臣とぜひあと三十分やりたかったのですけれども。アメリカですとか、大臣はEUの農業大臣にもこの前お会いしたと思いますけれども、次のラウンドに向けて、しかもこのWTO下の今のウルグアイ・ラウンドの決着を前向きにとらえて、その中でどういうふうに各国の農業の中でさまざまな施策を講ずるかという形でやっておるわけであります。  しかし我が日本は、従来どおりの、例えば畜産価格決定についても生産費所得補償方式でやるというような従来の法律に基づいてやってきております。二年たって一九九九年になろうかと思いますけれども、果たしてこれで間に合うのかな。  アメリカでも、生産調整も全廃し、さまざまな輸出補助金あるいは国内の支持政策を削減して、不足払いから固定支払いのように変えてきております。あるいはEUも同じような形で、グリーンボックスに基づいた地域振興のための直接所得補償のような形もなされてきておるわけであります。ひとり日本だけが、次の時代に向けての対応は何か調査会というようなことで、国民的な合意が必要だと言いながら、やはりきちんと政治の世界でつくり上げていく必要がある。  私ども民主党もこの六月までに基本的な施策を明らかにして、この秋までには方向づけをしたい。むしろその前に、いろいろな行政段階で農地への企業の参入ですとかさまざまな価格支持政策を削減しろ、あるいは規制緩和の名のもとにやめろというような言われ方をしておるわけでありまして、私は、むしろ積極的に農水大臣が主導権を持って、二年というようなことでは遅過ぎるというふうに思います。もっと早急に大胆に、しかも本当に日本農業がこのような自給率が低下するという危機的な状況を脱するために、農業というよりもむしろ日本の国民の皆さんの食糧を安定して供給するという大事な視点で取り組む必要があるというふうに思いますけれども大臣のその点に対するお考えを聞かせていただきたいと思います。
  179. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 新しい農業基本法の問題についてのお尋ねでございます。この問題は、四月からスタートいたします食料・農業農村に関する調査会、総理の諮問機関として総理府に設置いたしますが、ここで各層の幅広いメンバーの方に入っていただきまして、我が国農業のこれからの憲法ともいうべき基本法を我々がつくるための御意見をこの審議会でまとめていただこう、こういうことでございます。  私どもとしては、今橋本内閣が取り組んでおります行政改革、経済構造改革、財政改革、こういう三つの観点から新しい農業基本法をつくっていこう、こういう考え方でもございまして、大きな改革という観点に立ってこの新しい農業基本法の検討に入っておるわけでございます。  それから、二年という期間については、これは調査会がこれからスタートするわけでございますから、あらかじめ今の段階でいろいろな枠を入れるということはこの調査会方々には大変失礼なことでございます。これは今の段階ではそういう枠めいたことは言えませんけれども、私個人としては、今委員が言われましたように二年ということではなくてできるだけ早く結論を出していただいて、先ほど言われますようなウルグアイ・ラウンドの三年先の問題もこれあり、そういうタイムスケジュールのことから考えましても、我々としてはできるだけ早く御答申はいただきたいな、そういう気持ちでございます。
  180. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 それでは、大臣が参議院の方に行かれますので。  続いて、二十六、二十七日に畜産物価格決定がなされるようであります。私も昨年は大蔵政務次官としてこの乳価決定等に当たらせていただきました。幸い去年は据え置きをして、ほっと胸をなでおろしたことを記憶をしておるわけであります。そこで、本年まだ決定までに時間がありますので。基本的にはやはり酪農状況というのは大変厳しいものがございます。同時に、生産費所得補償でやっておりますから、その中身にきちんと合うような試算の仕方をすべきであるというふうに考えております。  きのうも、北海道の酪農家の皆さん三十人ほど私のところにも要請に参りました。女性の方も、酪農家の奥さんでありますけれども五人ほどこの中に入っておりましたし、極めて若い、まだ独身の男性も数多くわざわざ北海道から出てきておりました。特に言われたことは、やはり将来ラウンドの流れとしてはさらに関税率を引き下げるような方向で、非常に将来の見通しが立てにくいということと、同時にやはり規模の拡大を今も行って、政府も述べておりますゆとりある経営、その中には経営採算的にもゆとりのある、またとりわけこの自家労働労働時間についての削減ということでの発言が特に多かったわけであります。  そこで、今回は加工原料乳乳価算定するに当たっての労賃の問題について御質問をさせていただきたいというふうに考えております。  きょうは、労働省の皆さん、来ておりますか。それでは、まず労働省にお話をお伺いします。労働基準法第四条こま「女子であることを理由として、賃金について、男子と差別的取扱をしてはならない。」という規定が「男女同一賃金の原則」ということで述べられております。この解釈について、どのように解釈をすればいいか、まずそこからお聞かせ願いたいと思います。
  181. 北井久美子

    ○北井説明員 お答えを申し上げます。  先生今御指摘労働基準法第四条の趣旨でございますが、これは労働者が女子であるからというだけで、あるいは社会通念として女子労働者が一般的、平均的に能率が悪いとか勤続年数が短いとか、あるいは主たる生計の維持者ではないといったようなことを理由として、同じ労働をする女子労働者に対して賃金に差別をつけることは違法である、こういう趣旨でございます。
  182. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 今、労働省が述べられましたように同質の、あるいは同一価値のある労働について、男女に対しては同一の報酬、これはILOでもそのようにうたっておるわけでありますけれども、そのように理解をするわけでございます。  そこで、統計情報部の部長に質問いたしますけれども農業経営統計調査の生乳生産費労賃算定、とりわけ男女の賃金、これは平成七年度の調査の結果においてでよろしいですけれども、どのような賃金になっておるのか、その実態、あるいはこの労賃の算出の方法、このことについてお聞かせ願いたいと思います。
  183. 遠藤保雄

    遠藤説明員 お答え申し上げます。  生産費調査上、家族労働評価についてのお尋ねでございますので、その点についてお答え申し上げます。  これにつきましては、家族労働農業に雇用し、賃金が支払われているとみなす、いわゆる市場評価原則を基本として対応しております。市場評価するに当たりましては、本来は農業雇用労賃により評価すべきでありますけれども、残念ながら実例が乏しいことから、次善の方策といたしまして、農業労働市場も含む一般労働市場の賃金としておりまして、具体的には労働省の調査している毎勤統計を使わせていただいております。  この毎勤統計を使うに当たっては、まず採用する業種については、製造業、建設業、運輸・通信、この三業種としております。そして、農業につきましては家族労働が主体でございますので、これと類似の規模といたしまして、五―二十九人の事業所規模のものを採用しております。  では労賃単価をどういう形で評価しているかということでございますが、市場評価の原則を踏まえまして、労働市場の実態を反映させるということで男女別の賃金で評価しているところでございます。具体的に、平成七年の生乳生産費に織り込みました家族労働評価単価でございますが、男性千七百二十二円、これは一時間当たり、女性八百九十六円でございます。
  184. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 千七百二十二円と今言いましたか、僕のデータでは千七百十七円でありますけれども。女性が八百九十六円、男性に比べて女性は五二%、約半分の賃金の見立てをしておるわけであります。  先ほど労働省が同一価値について同一報酬という言われ方をしましたけれども、このいわゆる酪農労働について、家族労働でありますから、平均すれば統計情報部の試算は二・七人であります、従業員は。そのうち、男性が一・五人、女性が一・二人というふうになっております。まさにこれは、働きにおいては男性も女性もほぼ同じぐらい時間としては働いておる。その労働の質についてはどのようになっておりますか、これは労働省に聞いた方がいいと思いますけれども
  185. 北井久美子

    ○北井説明員 酪農労働労働の内容がどういった内容で男女に違いがあるのかということについては、労働省として不十分な知識しか持ち合わせておらないかもわかりませんけれども、むしろ農水省の関係課から承っておりますところによりますと、乳牛の飼育管理であるとか牧草の生産に関するさまざまな労働の内容が、一般的に男女で異なる、あるいは男の仕事、女の仕事とはっきり分かれているといったような客観的データはないと聞いているところでございます。
  186. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 まさにそのとおりでありまして、私どもも酪農家をよく訪問いたしますけれども、この乳牛の飼育管理においても、あるいは外の粗飼料を生産するための労働についても、まさに女性も男性もない、同じような労働をしております。  皆さんも御案内のとおり、統計上は、平成七年度でありますけれども、先ほど言った二・七人で七千百六十一時間、一人当たりに直せば二千六百五十一時間。まさに千八百時間を目指しております今日のこの労働市場の中で、二千六百五十一時間は大変大きな時間であります。そういう中で、男性も女性もない、同じ労働の中で働いております。  これは、昨年も酪農家の大変大きな問題になりまして、とりわけ女性の方から、なぜ男性に比べて五二%、半分の評価しかされないのだという強い憤りが出ておったわけでありまして、この点についてどのようにお考えになるのか、政務次官の方からこれに対する御所見をお伺いいたしたいと思います。
  187. 遠藤保雄

    遠藤説明員 先生御指摘の問題でございますけれども、先ほど申し上げましたように、私ども生産費調査の家族労働評価といいますのは、市場評価を原則とするということでございます。この原則に照らしますと、酪農につきましては、それに従事する労働を市場で評価する、言いかえれば、その地域の労働市場で雇われた場合に支払われる賃金で評価するのが相当だというのが我々の考え方でございます。といいますのは、家族労働についてきちんと評価する賃金データというのが酪農労働の中にないということを反映しております。  そういう原則を踏まえまして、現在、労働評価上採用しておりますのは、先ほど申し上げましたように毎勤統計でございますけれども、その毎勤統計上、地域で得られる賃金実態といたしまして男女で差があり、こういう実態に照らし合わせますと、そういう労働評価を我が生産費調査評価上反映せざるを得ない、こういう実態にあるということでございます。
  188. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 労働省にお尋ねいたします。  昨年の六月五日に当衆議院の労働委員会でもこのことは論議をされております。そこで太田婦人局長は、男女労賃の格差そのままで農作業における家族労働の対価として使用するのは問題があるという御答弁をされておりますけれども、今の農水省の答弁についてどのようにお考えになりますか。
  189. 北井久美子

    ○北井説明員 この問題に関します労働省の考え方は、昨年六月五日の衆議院労働委員会におきまして大臣あるいは婦人局長から御答弁を申し上げた考え方と変わっておりません。すなわち、当時局長から申し上げましたのは、この使われております平均賃金というのは労働者が得た賃金の平均額ということでございまして、これは確かに男女間で大きな格差が生じているわけでございますが、これは職種とか雇用形態、正社員、パートといったような雇用形態、あるいは勤続年数などが男女で差があることによる結果でございまして、これをそのまま男女別に酪農労働における家族労働評価として使用することについては、検討を要する問題ではないかと考えておるところでございます。  また、当時、永井前労働大臣から、そのような方法で男女別に労働費を推計することについては、男女同一賃金の原則の精神からも疑問があると考えるというような答弁もしているところでございます。
  190. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 永井労働大臣は、このように言っております。今後の労働費の推計に当たっては、労働に対する評価を男女で異にすることのないように、農水省に働きかけてまいりたい。  これは、保利政務次官にお答え願いたいのですけれども、昨年、このような形で大臣が述べております。これを受けて、やはり農水省としてはきちっと変えてもらわなければ、同じ内閣で別々のことを言ってそれが今日まで変わらないというのは、酪農においてもそうですし、農業において女性の方は大変な頑張りを見せておる。それなのに一〇〇に対して五二というような労賃を使って評価をする、幾ら労働市場とはいいながら、それはデータがないということでこのような形をとっておるわけでありますけれども、しかし政府が介在をして決めるわけでありますから、そこはやはりきちんとした労働省の男女同一賃金という原則を守って対応をしてもらわなければ、本当に、農村における女性の立場というものを盛んに最近言われておるわけでありますけれども、そういう形にならないのではないかというふうに私は思います。どのようなお考えでしょうか。
  191. 保利耕輔

    ○保利政府委員 酪農における労働評価、男女差、そういうものがあってはならないという御指摘は、非常に重要な御指摘だと私も受けとめさせていただきました。  そして、そのことは昨年来御論議があっているということでございますし、ことしの乳価決定に際しては、これから評価がえ作業とかいろいろございますけれども、やや基本的な問題を含んでいる部分がございますので、少し時間をかけさせていただいて、よく労働省とも調整をして、今後、どういうふうな形に持っていくかということを私ども労働省と検討させていただきたい、このように思います。  ほかの労働市場からの賃金評価をそのまま持ってきていいものかどうかというところが一つの大きなポイントかと思いますので、そういったことも、技術的にできるのかどうかも含めて、検討をさせていただきたいと存じます。
  192. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 これは政務次官、過去の経緯がございまして平成四年までは、農水省が独自にといいますか、統計情報部が単独で、酪農家の近辺の他産業の調査を独自に行っていたものを使っていたわけであります。  しかし、それもやはり問題があるということで、平成四年からこのように変えたわけでありまして、例えば昨年も、さまざまな改善はしております。今までは、粗飼料を生産する外の仕事と、それから乳牛を飼育管理する労働単価を、個別に、別々にやっておりました。これも、同一の単価でやるとか、そういう改善をして今日ここにたどり着いておるわけであります。  いずれにいたしましても、男女のこのように大きな差、これも中身は、きょうは詳しく申しませんけれども、他産業の女性の労賃というのは、必ずしもサンプルが多くなくて、例えば建設業ですと、外回りの、ダンプに乗ったり外の仕事をしているという女性は非常に少なくて、むしろ建設事業所の事務的なものをこのままとって使っておるとか、さまざまな問題もあることはあります。  しかし、今日ここまで来ておりまして、やはり男性と女性のそのままのものを使うというのはいかがなものかということで来ておりますので、政務次官、ぜひその辺の指導性を発揮されて、やはり政府が決めるものでありますから、男女の格差をそのまま踏襲したことでない、きちっと男性なら男性に合わせるということの算定方法に変えていただきたいというふうに、強く要請をしておくところでございます。  ちょっと時間がございませんから、次に参ります。後で質問に答えていただいても結構です。  それからもう一つ乳価算定上の問題点でございます、生産費調査をする場合の分母になります乳量の計算単位でございます。  これは、政務次官御案内のとおり、乳脂肪、脂肪率で乳量を換算する。いわゆる脂肪は三・五%に換算して、現状は乳脂肪はもう三・八七ぐらいになっておりますが、その高い脂肪率を乳量で補正する。ですから、三・五%に補正しますから、乳量は、見かけ上は非常に大きな乳量にして、それを分母にして乳価算定することになる、百キログラムの乳価算定する場合そういう方法をとっています。  一方、最近は、一つは、取引実態においては、もう脂肪だけの取引ではなくて、いわゆる脂肪以外、無脂乳固形分というふうに言うわけでありますけれども、八%、八・三%ぐらいあるのですが、無脂乳固形分について重要性を増しておるということで、加工原料乳価を算定する北海道は、この比率を、従来は脂肪の関係と乳脂肪の関係を五〇%、五〇%で見ていました。最近はそれが四対六、四〇対六〇で、無脂乳固形分の方を高い比率で取引をしておるという形になっております。  あるいはまた、政務次官も御案内のとおり、最近は、バターが余って脱粉が足りない、いわゆる生乳の跛行性というような言い方で、でき上がる製品、成分に差がある。成分に差があるというか、消費との関連で、どうも、無脂乳固形分というか脱粉は足りないのですけれども、バターができ過ぎる。したがって、去年、おととしの乳価のときには、一番論議になったのは、そういう乳牛の個体改良も極めて必要だということで、当時の今の食糧庁長官は、短期間で、五年でこの乳牛の改良もして、いわゆる無脂乳固形分の高い乳牛をつくっていく努力をしていきたいというような答弁をしておるぐらい、無脂乳固形分に対する考えは高まっております。  しかしながら、先ほど言ったように、従来の乳価算定方式は、無脂乳固形分でずっとやってきております。私どもはこれを、無脂乳固形分も、四〇なり六〇なり、あるいは五〇、五〇でもいいですけれども、その無脂乳固形分も勘案した算定をぜひやっていただきたいというふうに、強く要望したいというふうに思います。
  193. 中須勇雄

    中須政府委員 恐縮でございますが、ちょっと先ほどの話に関連して、最初に一言申し上げたいと思います。  先ほどのお話生産費調査における労賃評価というようなお話と思って承っておりましたが、先ほど先生から、自給飼料労働と飼養管理労働を同一にしたというようなお話が出まして、私どもの方が統計情報部から生産費調査をいただいて乳価算定に当たる際には、御承知のとおり、いわば私どもは時間だけ統計情報部からいただきまして、それに掛けます賃金の単価というものは、北海道における製造業五人以上の男女区別ない平均労賃評価がえを行っておる、こういうのが私どものやっておる実情でございまして、これ自体は別に、労働基準法その他で問題があるやり方だというふうには承知をしていないわけでございます。  それから、ただいま御指摘の、無脂乳固形分を加味した換算乳量を用いるべきではないかということに関しましては、まず第一点は、今後の生乳取引に当たって無脂乳固形分を加味した取引に進むべきではないか、そういう点につきましては、私ども、全く考えは先生の御指摘と同様でございまして、バターと脱脂粉乳の跛行の問題を含めても、ぜひ取引の場面において当事者間で、乳脂肪分のみではなく、無脂乳固形分も加味した取引が行われることを我々としても推進するというか、当事者間の取引でございますが、我々としても支援をする、こういうような状況でございます。  八年度までに、全国で二十一道県でこういった、両方を加味した取引が導入されております。ただ、すべての取引において導入されているのは十二道県、こういうことでございます。  ただ、問題は、この乳成分取引にあわせて、無脂乳固形分を加味した換算乳量を、保証価格算定する際に使うということになりますと、幾つかの問題がございます。  一つは、技術的な問題として、現在では、乳成分の基準だとか加算額については北海道と都府県で異なっている、こういう実態にあります。統一されていない。  それからまた、現実に、加工原料乳地域である北海道におきましても、乳成分ごとの需要の動向に合わせて、これまでも、乳脂肪、無脂乳固形分の価値比率あるいは基準ということを元年以降二回見直しをしてきている。これは結局、同一の価値の生乳について物差しを二つつくるということで、二つの物差しではかったときの全体の価値が動かないようにということでの調整上、そういう調整が途中で行われてきている、こういうことでございます。  そういう意味におきましては、今の段階現状において、加工原料乳保証価格算定する際、乳量換算を行う基準となるような確立されたものがない、こういう基本的な問題があるわけであります。  こういった中で、無理に一定の基準をつくるということになると、生乳取引に無用の混乱を招く懸念があるのではないかというふうに考えております。
  194. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 先ほど、乳価算定がえのときには混合賃金を用いているというようなことで、いわゆる労働省の同一賃金と何ら問題はないというような言い方をされましたけれども、それは全く違いまして、男女の混合賃金を用いているということは、まさに、女性の低い賃金を入れ込んだものの平均賃金になっておるわけでありますから、そこはまさに問題が大きいというふうに思います。  それから、今無脂乳固形分についても、取引実態は府県、北海道、いろいろまだ二十県ちょっとだとかいうような言い方をされました。物差しの見直しをされておるというようなことを言いました。  しかし、私は、乳価算定上の乳量についての見方をきちっとしろという言い方をしたのであります。これま何も、取引実態にしていけということではないわけであります。もちろん、あなたが前段言ったように、取引実態はそうなるということを国も我々も思っておるわけですから、まさに、そういった方向を、農水省が指導性を発揮してやるということが必要でないかというふうに私は思います。  今までの変化を見ますと、元年と七年を比べますと、脂肪の方は、三・七五が三・八七に上がっています。これは、何と七年間で、〇・一二%脂肪率は上がっています。これは、取引がそういうふうなことになっていますから。無脂乳固形分は、八・五八二から八・六二、〇・〇三八しか上がっておりません。まさに、無脂乳固形分というのは改良、改善がなかなか難しいわけでありまして、一方の、脂肪の上がる分を乳量に換算をするということは、いわゆる農家の無脂乳固形分を出さねばならないという方向に逆行するから、ぜひ早急に変える必要がある。このぐらいのことは、何年も言わなくても、早急に変えなければならならない。  私は、そういう意味で保利政務次官に期待をするわけでありまして、直すべきところはきちんと直すというのをことしのうちにやっていただきたい。二十六日までにはまだ日にちがあるわけでありますから、無脂乳固形分を入れた算定がえ、乳量の評価というものを、わかっている人は全部そうしなければならないというふうに言っておるわけでありますから、そのぐらいのことはきちんとやはりやるべきであるということで、保利大臣に、政務次官でありますけれども、副大臣に、いや、局長の御答弁はいいですから、ぜひお願いをいたしたいというふうに思っています。  時間がありませんからはしょりまして、本題の家畜伝染病予防法について御質問いたします。  一つは、今回、法の対象とすべき家畜について、特用家畜ですとかペットが除かれております。昨年の十二月に畜産局長が答申をさせました家畜防疫に関する研究会報告書によれば、例えば北海道ですと、最近シカが急増して森林や畑作物を荒らすということで、これの管理が大変重要になっております。同時に、ヨーロッパではシカの肉は高級品でありまして、北海道でもこれを食用に供するような施策を今北海道庁が挙げて行っております。  何と不思議なことに、シカは家畜でない、家畜でないから畜産局の所管外だということで、さまざまな先進的な加工施設ですとかそういうものについて、道庁しか補助を出していない。畜産局の補助はなしというような矛盾した実態になっております。したがって、シカが本当に食肉という形で供されるための手だてをするということであればへそのような法的な仕組みというものもやはりつくっていただかなければならないというふうに思っています。  同時に、この報告書も言っておりますけれども、基幹家畜にとって感染源となるような周辺の特用家畜というものがあるとすれば、それはこの法の対象とすべきという意見も報告書にはあるわけでありまして、イノシシですとかシカについてもこの法律における対象家畜にぜひしていただきたい、このように思います。
  195. 中須勇雄

    中須政府委員 現在の家畜伝染病予防法は、病性とか伝播力の強い特定の伝染性疾病について、特定の家畜を組み合わせることで法定伝染病として定義づける、こういう形をとっているわけでございますが、実は今回の改正で、その家畜の部分につきましては政令で追加指定ができる、こういうような改正案を今御提案申し上げているところでございます。  これは、ただいま先生からお話がございましたように、最近の食生活の多様化とか地域おこし、こういうことに関連して、シカとかイノシシ等のいわゆる特用家畜の飼育が伸びてきております。そして、これら特用家畜の中には、法定伝染病に関して、牛あるいは豚等の主要な家畜と同様に感染するものがある。一たび法定伝染病が発生したときには、その特用家畜自体が伝染病に影響を受けるということのみならず、介して伝播をするということを通じて、主要な家畜まで被害が及ぶ危険性があるというふりこ私どもも認識しております。  このため、今回の改正においては、先ほど申しましたように、政令で追加指定ができるという形をとりまして、牛、豚等、主要な家畜に加えて特用家畜についても、法の対象となる家畜として指定すること、これを可能にいたしました。ただ、こういう特用家畜については、飼養動向が必ずしも安定していないということで、機動的に行い得るよう、政令で定めることとしたものでございます。  今後、専門家等の意見をよく聞きながら、必要なものについての指定ということに取り組んでまいりたいと思います。
  196. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 私の聞きたいのは、政令指定の指定要件は何ですか。どういうものを考えておるのか。
  197. 中須勇雄

    中須政府委員 これは、ある意味で抽象的な言い方になるわけでございますが、一つは、その特用家畜というのが法定伝染病に感染をする、こういうことが明らかであるということが一点ございます。  それから二番目は、その特用家畜の飼養実態から見て、その特用家畜に法に基づく防疫措置を講ずることが、その特用家畜及び主要家畜の防疫に資するということが明らかな場合に指定をする、こういうことに相なるわけでございます。
  198. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 先ほども質問があったようでありますけれども、家畜にはそれほど重大ではないんですけれども人間に大変大きな影響を与える、例えば昨年のO157対策であります。ここは農水省でありますから、このO157がことしどういうような発生をするのか、まだわからないわけでありますけれども、完全に終息をしておるのか、いわば日本人にとっては甚だ不安なところであります。  O157が特に家畜の内臓に比較的高い割合で存在をしておるということは御案内のとおりであります。したがいまして、ぬれぎぬを着せられては困るわけでありまして、屠畜場ですとか、食肉センターですとか、そういうところのそれなりの衛生管理というものは私は極めて重大ではないかなというふうに思うわけであります。  あの研究会の報告書でも、これらの人間に対する社会的な不安、あるいは牛肉等に対する社会的な不安を払拭するために、安定した需要確保を図る上で、家畜の生産段階での対応策というものを十分検討すべきでないか。先ほどもありました、そのことについては別途法として対応すべきと。それはHACCPですとか、さまざまな対応策はあるのでしょうけれども、これはあくまでも法によらない対応策になっておるわけであります。この家畜伝染病予防法のようなたぐいで、法律的にきちんと農水省所管で対応する段階に来ておるのではないかというふうに私は思いますけれども、この点についてのお考えを聞かせてください。
  199. 中須勇雄

    中須政府委員 病原性大腸菌O157に関しましては、ただいま先生御指摘になりましたように、現在までのところ、確かに数としてはごく少ないわけでありますが、牛の腸内に存在する例がある。したがいまして、ふん便の中に発見される場合があるというのは事実でございます。ただ、これまで私どもが得ている知見では、この病原性大腸菌O157によって牛自体が何らかの影響を受けて疾病を発生する、そういうような知見は得られていないわけでございます。  私どもは、家畜伝染病予防法という範囲内におきましては、やはり家畜の伝染性疾病ということが出発点でございまして、そういった意味で、今の段階で病原性大腸菌O157について家畜伝染病予防法のような体系の中で法的な措置を用意するということま困難だろうと思っているわけでございます。  ただ、ただいま先生御指摘のとおり、実際問題として、家畜の飼養管理段階における衛生条件を向上させる、それから、特に出荷段階においてふん便等が体表に付着しないようにこれらを落として出荷をする、あるいは下痢をしている牛は出荷しないなど、当然守るべき注意事項がございますので、これらについては引き続き指導を図ってまいりたい、こういうふうに思っております。
  200. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 と畜場法の第五条あるいは第六条で、講ずべき衛生措置を定めておりまして、それに基づいて、昨年の十二月二十五日にと畜場法施行規則の一部を改正しております。この中には、牛、綿羊、ヤギにあっては内容物が漏出しないよう食道を第一胃の近くで結紮する、閉じてしまう、または閉塞させる、あるいは、肛門周囲の処理に当たっては消化管の内容物が外に出ないように直腸を肛門の近くで結紮するというような厳格な基準がつくられておるわけであります。これを屠畜場自体できちんと行うのは、もちろん厚生省も所管ではありましょうけれども、農水省も重大な使命を負っておると思います。  先ほど三百三十三カ所の屠畜場があるというような表現をされたわけでありますけれども、これは、規則の一部を改正して、いつまでにこれをきちっと全国で実施をされるのか。そして、食肉センター等ではそのための準備万端整っておるのか。  あるいは、昨年はその予算として、いわゆる畜産事業団、今は名前が変わりましたけれども、あの事業団の指定事業ということで四十億程度出されております。しかし、これは一昨年と変わらない四十億です。もちろん、今回の補正予算でも、あるいは去年の当初予算でもそれなりの対策は講じておるようでありますけれども、しかし、全国にきちんと衛生管理機械を、あるいは施設を設置するにはまだ不十分であるというふうに思います。  これは、私は四十億を八十億ぐらいにして万全な体制をとるべきだというふうに思いますから、この点についても保利副大臣に聞きたいのですけれども、また局長が出てくるだろうと思いますけれども、あなたは八十億ぐらいつけますか。その点で、とにかく前の口上は要りませんから、あと時間がありませんから、やるかやらないかを聞かせてください。
  201. 中須勇雄

    中須政府委員 ただいま御指摘のございましたと畜場法施行規則ということで、O157が枝肉に付着するということを防ぐために食道の結紮あるいは直腸の結紮ということが義務づけられることになっておりますが、それぞれ食道は平成十年四月一日から施行、直腸については平成九年四月一日、この四月一日から適用、こういうふうに相なっております。  しかし、事は国民の衛生と安全ということにかかわるわけでございまして、一定の強制措置でございますので、もちろん猶予期間があるわけでございますが、できるところではできるだけ早くこれに取り組んでいただく。そういう意味で、先ほどお話ございましたように、私ども、今年度の補正予算あるいは農畜産業振興事業団の指定助成事業等を活用いたしまして、こういった結紮に必要な器具だとか、その他衛生条件向上のための施設、機械について助成措置を講じたところでございます。  今後、やはり課題としては、さらに設備の改善を含めて食肉処理場、屠畜場等の衛生水準向上していかなければならない、こういう問題がございます。これについては、私どもが従来から再編整備という形で助成を行っておりますので、計画的な整備が行われるように必要な予算についても努力をしていきたい、こういうふうに考えております。
  202. 保利耕輔

    ○保利政府委員 簡単にお答えさせていただきます。  今局長から御答弁を申し上げましたとおりでございますけれども、従来、屠場におけるいろいろな慣行その他、なかなかやりにくい面もあるのであろうということは想像にかたくありません。しかし、国民の衛生管理あるいは食品の衛生管理という意味から、やはりこのことは私どもも熱心に力を入れて進めていかなければならないもの、そのように認識をいたしております。
  203. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 よろしくお願い申し上げます。  次に、未知の疾病について、発生の初期段階の対応ということでサーベイランスの仕組みをとることになったわけであります。これは、法律をつくるほどには、実際には、今まで知られていない未知の疾病を行政府に通告をするということですから、大変難しいことであります。  先ほども質問の中で、獣医師さんに対する研修等のお話もありました。同時に、研究会でも述べておりますように、国が一歩進んで海外における疾病の発生状況についての十分な調査体制、今は畜産事業団が二年ほど前から農畜産業振興事業団に変わりましたけれども、冊子を、あれは月に一回でしょうか、海外編と国内編ということで、私も見させていただいております。大変参考になるわけでありまして、まさに自衛防疫といいますか、伝染病予防についても毎日のように変わることでありまして、日本の海外の情報体制というものがしつかりしておらなければ大変なことになるというふうに思います。  これはどこかから、日本の国内でぽっと出たものにはならないわけで、絶対海外からこれだけ牛肉や、あるいは生体が輸入されている国はないわけでありますから、私は海外に対する疾病の発生を十分調査する体制というものが何よりも大切になるというふうに思いますから、これまでと違った体制を組めますか。
  204. 中須勇雄

    中須政府委員 御指摘のとおり、家畜防疫を的確に進めるに当たりましては、情報を的確につかむということが大変重要だ、そういうふうに私どもも考えております。したがいまして、今回の法律でのサーベイランス体制というものは、いわば国内での的確な情報収集、こういうことでございますし、もう一つ、御指摘のとおり、海外での伝染病の発生状況を含めた諸情報の的確な把握ということが重要だろうと思います。  基本的には、国際獣疫事務局、OIEと呼んでおりますが、この本部がパリにございまして、各国はこの事務局に対して、それぞれの国の伝染病の発生状況を初め諸情報をここに集中をする、そこからまた各国に情報が還元される、こういうような基本的な体制が組んであるわけであります。私ども、引き続きOIEとの接触を密にいたしまして情報の収集に努めるとともに、ただいま先生からお話ございました、もう少し我が国としても海外の伝染性疾病の状況等について独自に集める体制を組めるかどうか、今後検討していきたいと思っております。
  205. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 数年前ヨーロッパにいました、デンマークでしたか、農水省のまさにこの方面の技官の方が大使館に赴任をしておりまして、私はそういうところをこれからももっと強化をして、局長は一年か二年でまたかわるわけでありますけれども、やはり具体的に人員体制を整えて、そういう目に見えたものを行うべきだというふうに思います。  先ほど政務次官から、獣医師の学校教育における強化についての御答弁があったと思います。それと関連して、未知の疾病をどのように発見できるかというのはやはり獣医師の資質によるというふうに思いますから、現場の業務の段階でいち早く的確にその診断を行えるかというのは本当に重要だと思いますから、その辺の現場の獣医師の資質の向上についての具体的な対策というものについて、農水省としての考えがあればお聞かせ願いたいと思います。
  206. 中須勇雄

    中須政府委員 やはり第一線におきます獣医師さんのお仕事というところに的確な家畜防疫の実施というのが負うところは大変大きいわけでございます。そういう意味では民間の獣医師さんを含め、あるいは現在でも、防疫に当たりまして民間の獣医師さんの皆さんにいろいろなお手伝い等もお願いしておるわけでございますが、各都道府県の家畜保健衛生所に配置されております都道府県の家畜防疫員、この獣医師さんを含めて、総体としての資質の向上を図るということが重要だろうと思います。  基本的には、私どもは、家畜衛生講習会ということで、それぞれ高度な専門的な知識、新しい技術の習得というようなことを、そういった、ただいま申したような方々中心に実施しているところでございますが、今後ともそういうふうな機会の充実を図ることによりまして資質の向上ということに引き続き努力をしてまいりたいと思います。
  207. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 サーベイランス体制で、都道府県知事は、その事務等を家畜保健衛生所長に委任できることになっております。そういうことで、都道府県にあります家畜保健衛生所の具体的な支援体制というものも重要になってくると思いますけれども、この点について何かお考えがありましたらお聞かせ願いたい。
  208. 中須勇雄

    中須政府委員 現在、都道府県の家畜保健衛生所は、いわば第一線における家畜防疫のかなめのキーステーションになっている、こういうふうに私ども認識をしております。大体一保健所当たり十名の獣医師さんがいる、こういうような体制で、管内の家畜防疫ということの中心的な役割を果たしておられるわけであります。  したがいまして、ここでの活動、例えば未知の新疾病というものの届け出があれば、直ちに最寄りというか所管の家畜保健衛生所が動き出して、病性鑑定なり検査なり、そういうことが迅速に行われて、いかなる病気であるのかの判断がなされる、こういうことの出発点になるということでございます。  そういう意味では、先ほど申しました、講習会等を通じた人の資質の向上のほか、こういった施設にいろいろな最新鋭の機械、機材等を配置する、平成九年度についても幾つか予算措置を講じておりますが、そういった施設の充実という面でも努力をしていきたいと考えております。
  209. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 狂牛病対策であります。  狂牛病については、牛に十分加熱をしておらない綿羊等の骨粉を飼料として、えさとして使用したためであるというふうに言われております。  その原因についてはまだ確定はしておらないというふうに私ども思いますけれども、しかしこのようなことで、綿羊の骨粉というものを飼料として供することについて、我が国でも、農水省は通達を出して業界を指導したというふうに言われておりますけれども、この程度の業界指導で事足りるのかどうか、もっと強い規制というものが必要がないかどうか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  210. 中須勇雄

    中須政府委員 御指摘のとおり、昨年の狂牛病に関する経緯にかんがみまして、昨年四月十六日付で関係業界に対して通達を発令し、反すう動物の組織を用いた飼料原料、お話のございましたいわゆる肉骨粉等については反すう動物に給与することのないよう指導をお願いをしたところでございます。  それで、実は、我が国においてはもともと牛用の飼料の原料として肉骨粉はほとんど用いられておりません。そのために、さらに通達発令後、各メーカーに調べていただいているわけでございますが、使用実績は完全にゼロになっておりまして、現行の対策によって、この部門において、BSEの発生を予防するということの面において飼料の安全性は現段階で確保されている、こういう状況でございます。
  211. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 家畜改良技術についてであります。  酪近の方針でも、酪農、肉用牛生産の振興、合理化に資するため家畜の改良増殖、新技術の推進を図るものであるという形で、雌雄の産み分けですとか核移植等の受精卵移植関連技術等々というふうに具体的に書いておるわけであります。今回のクローン羊の、あの複製生物といいますか、このような研究をやっておるのかどうか。  それから、これが人類、人間に応用されるというようなことの危険、おそれもアメリカ、イギリス中心に大変言われております。日本でもそういう研究を仮にやっておるとすれば、これがそういうふうなことに使われない倫理規定なり厳しい法的な規制、まさに農水省の技術者がやる場合もあるわけでありますから、動物について、家畜について、そういう他に累を及ぼさない厳格な倫理規定というものをつくっておるのか、あるいはつくる考えがあるのかどうか。時間がありませんので端的にお答え願いたいと思います。
  212. 三輪睿太郎

    ○三輪政府委員 クローン動物の作製に関する研究成果の利用については、私どもは、あくまで家畜の生産性向上畜産業の振興の観点に限られるべきだというふうに考えております。  この技術の人への応用を初めとして生命倫理に関する問題については、現在、一つは科学技術会議の方に、ライフサイエンスに関する研究開発基本計画、この審議が始まっておりますが、その中で検討されているとともに……(鉢呂委員「もう一回」と呼ぶ)ライフサイエンスに関する研究開発基本計画の中で生命倫理について検討されております。  それからもう一つ、大学関係の研究に関しましては、学術審議会の場でやはり倫理の問題が検討されている、こういう状況でございまして、こうした問題は、単に畜産振興という視点だけで結論が出る問題でもございませんので、そういった動向あるいは海外の論調等を十分注意して見守っていきたいというふうに考えております。(鉢呂委員「研究をやっているかどうか、家畜のですよ、無精」と呼ぶ)研究は、受精卵に対する核の移植……(鉢呂委員「いや、受精卵じゃなくて、体細胞」と呼ぶ)人の――体細胞はやっておりません。(鉢呂委員「やる計画もなし」と呼ぶ)現在のところございません。
  213. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 時間がありませんので済みませんでした。  それで、最後に、政務次官にお聞かせを願いたいのですけれども、豚肉の輸入関税、これが、EUから異議の申し立てがあって、二国間の第一回目の協議を二月十七日にやられたというふうに聞いております。  そこで、これは、WTOのきちんとした取り決めの中で、見直すことは全くないというふうに思いますけれども、この豚肉の輸入制度について、見直しをするつもりはないということをここで確認をしていただきたいのと、あと、マルチの、多国間の協議に付す考え方がEUからあるのかどうか、その点についても確認をして、質問を終わりたいと思います。
  214. 保利耕輔

    ○保利政府委員 豚肉の問題につきましては、かねてからヨーロッパを中心に、かなりいろいろとお話を受けておりました。しかし、私どもといたしましては、ウルグアイ・ラウンドで一遍取り決められましたセーフガードの発動要件、これにのっとってセーフガードを発動しているわけでありますから、決められたルールに従って行動するという、その基本的な姿勢は絶対に崩すつもりはありません。現在、ジュネーブ、WTOにおいて論議をされておりますけれども、いかなる国に対しても同じようなスタンスで臨みたい、このように思っております。
  215. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 終わります。ありがとうございました。
  216. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、前島秀行君。
  217. 前島秀行

    ○前島委員 三月、乳価等々の時期でもありますものですから、その点を中心に二、三質問したいと思います。持ち時間も二十分でありますので、よろしくお願いをいたします。  最初に、畜産関係の負債の問題をどうしてもただしておきたいなと思っているわけです。  全中だとかあるいは農水省の農業動態調査等々の報告を見ますと、この畜産関係で負債と称するものが、総額でいうと二兆円というのが大体一致した見方のようですね。農水省は、これは固定部分も含めてでありますけれども、全体を見ると二兆二千億円ある。その中で、固定負債、固定化しているのが一千億から一千五百億というのが大体の見方で、全体の負債が、酪農の方が多くて、固定化率ということになってくると畜産関係の方が固定化率が幅が大きい、こういう状況だろうと思っています。  その結果、いろいろ現象として出てきているのは、やはり中小の畜産農家の撤退といいましょうか、倒産といいましょうか、ここが非常に激しい状況になってきている、こういうことです。これが片面では、それが集中化されて規模拡大という、そちら側からだけ見ると規模拡大されているからいいのだというけれども、逆に言うと、中小の方が倒産という事態、撤退という事態が起こってきている、こういう状況だろうし、また、その負債の大きいのも、乳用肥育だとか養豚等々という、かなり特定している部分もあるわけであります。  ともかく、数年前から言われているこの畜産関係の負債の拡大、とりわけその固定化率というのが非常に進んできている。そのことによって中小の畜産農家の撤退という事態がまだ依然として起こってきている、こういう状態ですね。特に、その負債の固定化というのが、一千億を超えて、一千億から一千五百億という大きな規模になっているということは、やはりこれは間違いない事実だろうと思っています。  これが数年前から議論になって、基本的にこの負債の減少というのは、まだまだ大幅に改善されていないと私は見るわけでありますけれども、この畜産を取り巻く負債の状況、とりわけその固定化が進んでいるこういう状況をどうとらえているのか、今後、この負債の問題というのはどう見通しているのかのところをまず最初に伺っておきたいと思います。
  218. 中須勇雄

    中須政府委員 初めに、畜産経営は、御承知のとおり、かなりの投資を必要とするということで、借入額も多いわけでございますが、最近の動向で申しますと、特に平成七年、八年、肉畜等である程度枝肉価格がよかったということも反映いたしまして、統計情報部で行っております農業経営統計調査を見ますと、平成七年、一年間、期首と期末ということで見ますと、例えば北海道の酪農家でいいますと、負債額が、二千七百六十万だったものが二千四百四十万に、肥育牛でいいますと、これは全国でございますが、一千三百九十九万だったものが一千二百六十六万というような形で、一般論としていえば、大体一割ぐらい一年間で負債額が減るということで、この面ではいいデータも出ているわけでございます。  ただ、問題は、その御指摘のとおり、固定化負債というか、かなり返却することが困難になった部分、これがどういうことになっているかということでございますが、こういった経営に対しては、実は、私ども農林水産省全体といたしまして、農家負担軽減支援特別資金の融通あるいは自作農維持資金の融通ということをやっているほか、御承知のとおり、私どもの方で大家畜経営活性化資金、それから養豚経営活性化資金というふうな形でもって、その年度に支払いが困難な分について、低利での借りかえを認めるという形での運用を実施してきております。  これが五年度から行われておりますが、八年度まで、各年の金額を見ても、そう大きな変化はございません。大体、大家畜経営活性化資金でございますと、五年度が八十六億、六年度百十八億、七年度百七億、八年度九十九億、こういうような借りかえ需要があるということで、ここの辺からしかなかなか推定できないわけでございますが、ある程度、その返済が困難になっている固定化負債の部分が確かに相当程度あるということも事実だろうというふうに思っております。
  219. 前島秀行

    ○前島委員 その固定化の要因等々、アンケートとかいろいろな状況を見ると、やはり景気低迷というような部分も大きくあるだろうし、あるいは自由化に伴う価格の低下というのが大きく原因している、あるいは経営上の問題点というのもやはりかなりある、この三つが大きなウエートを占めているような感じなのですね。自由化という大きな外的要因もあるし、それから内的な経営上の無理な問題というのがあるわけですね。  特に、いろいろ実態などを見てみますと、かなりの借金がかさんできてしまっている、撤退するのかどうかの判断を農家個人と組合がし切れずしてこれが先送りになってしまって、結果的に固定化してきてしまっている、こういう状況というのが意外と多いというのはよく聞くのですね。  したがって、固定化を防ぐという意味でこの負債対策をやる中で、制度的なといいましょうか、さまざまな改善というのが、傷口が小さいうちに処理をするとか、あるいは一定の決断をするとか、組合がそういう個別農家に指導するということが非常に重要になってきている。何かそれが、先送り、先送りする結果、積み重なっていってどうしようもなくなっているという現象をよく聞くわけですね。そういう面で、そういう内的要因、外的要因を含めて、対策をやっていく上で、個別の支援策といいましょうか、さまざまな対応策というものが求められる。  例えば、先ほども出ていましたけれども、税制面だとか書きかえをしやすいような条件緩和の問題だとか、あるいは、今、世代交代していく、新しい担い手に譲っていく場合の税制の扱い、相続税の扱い等々、決断しやすい区切りをしていかないと、先送りになっていくという原因が非常にあるので、そういう具体的な税制面での改善支援策だとか、あるいは資金融資の条件を変えていくとか、あるいは、特に平成十二年まで、やはり畜特資金のこの制度の問題なんかも今後どうなるのかというのは、やはりこれはこれからの負債対策、あるいは固定化を解消していく上での重要な一つの対策だろうと思うのですね。  そういうことで、この税制面での改善の余地、あるいは書きかえしやすい条件面の改善、それから具体的にいうと、この畜特資金の十二年以降の継続あるいはこの資金の充実ということが当面求められている対策なのでありますけれども、この辺の具体的な支援対策措置についての考え方をちょっと聞かせてください。
  220. 中須勇雄

    中須政府委員 後継者に経営を譲る、あるいは経営を中止して撤退をする、そういう場合の税制面のお話がまずございましたが、これについては私どももなかなか率直に言って難しい問題だというのが実情でございまして、御承知のとおり、後継者については、相続税の納税猶予制度、あるいは生前一括贈与を受けた場合の贈与税の納税猶予制度、こういうものがございますけれども、これ以上の措置という意味では、なかなか税制面では難しいというのが実情だろうというふうに考えております。  また、経営を中止してその負債整理を行うという場合の資産譲渡に関しましては、農地保有合理化等のための農地を譲渡した場合における特別控除の制度、こういうものの活用とか、そういう面はございますけれども、なかなかそれまでの段階で、青色申告者であれば三年間損失通算というか、そういう制度もとられておりますし、そういうことを含めて現状以上の税制での大きな措置というのは、今後の検討課題ではありますが、なかなか難しいというのが率直な感じでございます。  それから、しかし、こういったものをできるだけPRするというか、そういった意味での努力は我々もしていかなければならないというふうに思います。  それから、特に畜特資金、借りかえ資金でございますので、先ほど先生御指摘になりましたとおり、単に貸すというので門戸を開くだけではなくて、農協等の機関がやはり個別に指導していく、場合によったら、先生がおっしゃったように、早目に切り上げるということを含めてということでございましょうが、そういう体制をとることが重要だということで、現在進めております畜特資金については、平成五年度から開始しておりますが、これについてはそのそれぞれの農協等がマンツーマンというか、厳しい、厳しいというと語弊がございますけれども、指導体制をとって、農家経営も続ける場合には改善ということに積極的にアドバイスをしていく、そういうふうなことで取り組んでいるわけでございます。  現在、平成五年度から始まりまして、先生御指摘のとおり、一応十二年度までの計画ということで実施をしております。率直こ申しまして、現在ちょうど半ばに来たという状況でございますので、引き続きこの資金を活用される方については、先ほど申しましたような指導の充実というか、しっかりした指導ということを続けながらこの資金の活用を図っていくということで、率直に言って十二年度以降について、今確たる具体的な方針を持っているわけではございません。     〔委員長退席、小平委員長代理着席〕
  221. 前島秀行

    ○前島委員 多少の改善の方向は見えていることは間違いないだろうと思うけれども、やはり固定化が進んでいるし、中小の畜産農家が撤退というこれは事実ですね。やはり、ある時期で思い切った切りかえをするためには、融資等々の条件の緩和ということと、もとになるこの畜特資金の確保ということがやはり絶対的条件ですから、ここがないとさらに固定化が進むであろうと思いますので、その点を引き続きぜひお願いをしたい、こういうふうに思います。  それから、酪農の片方の問題として、ヘルパーという問題が依然として我々の地域でもよく言われることなんです。  確かに、基金をつくり、あるいはその補てん等々があって、それなりの畜産酪農等々の中でこのヘルパー制度が浸透しつつあるし、歓迎されているし、利用される率もだんだん多くなってきているということは事実だろうと思いますね。しかし、月に一回とか二回という程度のこのヘルパー制度の活用という段階、今までのところですけれども、それ以上の、例えば事故が起こったとか、あるいは家族の中に病気が起こったという、そのヘルパーを長期に活用したいということになってくると、正直、現在大きな問題にぶつかってしまっているという形ですね。  それが利用する生産者農家の方の側と受けるヘルパーの方の体制の問題と両方あるわけでありますけれども、とりわけヘルパーの方の体制の問題として、やはりここのところがぴしっと人的な確保もされていないし、組織的な対応もできていない。農協とか組合等がぴしっと受けとめる体制をし切れていない、こういう面が実際のところあって、月に一度か二度とか、一日か二日という利用の程度にこのヘルパー制度は今までいっているのですけれども、さてそれから先の状況というのは壁にぶつかってしまっているというのが今実態だろうと思いますね。  そういう面では、やはりもうちょっと長期のヘルパー活用の仕組みをつくるということが今求められているわけなので、そうすると、このヘルパーの人たちの身分保障といいましょうか、あるいは制度的な保障といいましょうか、あるいはヘルパーを組み立てるところのもう少し下、組合の方の充実というものが今求められているわけでして、資金を直接補てんするということはできないことはわかり切っている上でですけれども、このヘルパー制度のもう少し長期にわたる活用だとか、ヘルパーの人たちの組織化の体制強化という問題が、今ゆとりある畜産対策をつくりたい、酪農対策をつくりたいという中でやはり求められていることは事実なので、このヘルパー制度の充実といいましょうか、その方向についての検討事項、考え方をちょっと示してください。
  222. 中須勇雄

    中須政府委員 先生も御承知のとおりでございますが、ゆとりある酪農というものを実現していく上で、ヘルパー制度に対する期待は大変酪農家の皆さんにとっても大きいものがあろうかと思います。  お話ございましたとおり、平成二年度に七十億円の基金を造成いたしまして、その後若干のいろいろ現場研修への助成等も含めて内容を充実して現在に至っております。ちょうど現在では四十六都道府県、三百八十八の利用組合ができている、こういうことでございまして、二万戸の酪農家が加入をしておりまして、ただいまちょうど先生がおっしゃいましたように、定期利用されておられる方の平均の利用日数が十二日、一年間十二日ということでございますので、ちょうど月一日、こういうような形でございます。  今後とも、言うまでもなく、こういった形でのヘルパーの普及ということに努めていかなければならないのはもちろんでございますが、確かに今先生が御指摘になりましたような、若干長期間ヘルパーを使う、そういった場合に、今のままでは到底利用できないわけでございまして、そういうことについて何か知恵がないのかというような話も生産者あるいはヘルパーの関係しておられる皆さんから伺ったこともございます。少しその辺は今後の課題として検討させていただきたいというふうに思っております。
  223. 前島秀行

    ○前島委員 もう一つ酪農畜産の中で、最近の環境意識の向上という中で、ふん尿対策というのが大きな問題、特に内地の、北海道もそうというふうに聞いているのでありますけれども、それ以上に本州、内地の方の混住化地域における酪農畜産地域の衛生上、ふん尿処理というのは、私これから非常に重要な課題になってくるような気がしてなりません。  特に、私のところは富士山周辺の地域でして、観光とも結び合っている関係で非常に問題になっている。これに対する対応のメニューといいましょうか、対応策というのは具体的に出されているし、示されている、その点は私たちも理解するし、個別農家もそれなりに取り組んでいるのですが、こういうふん尿処理の具体的な対応になると実際は単価が二千万、三千万という多額の経費を要するので、個別農家ではなかなか対応し切れない、ここが問題なのですね。  確かに、ふん尿処理はやはり生産者が基本的に処理すべき対象物であるということは理解しながらも、二千万、三千万単位、何千万の単位で新たに個別農家に、新たなこの問題のために負担をかけるということについては、ちょっと荷が重過ぎてしまって、問題の意識はあるのだけれども、そこまで農家が踏み切れない、地域単位でできるところもあるけれども、できないところもまたあるという状況だろうと思っているのですね。  だとすると、この問題というのは、単に個別農家だけじゃなくして地域の課題、行政、市町村あるいは県、国も含めた、何か今までの制度を超えた新しい仕組みをつくってこの処理対応をしていきませんと、事の重要性は双方わかっているわけです。だけれども、具体的な処理ということになってくると進まなくて、ますます混住化が進んでしまって混乱する、このことが結果的には後継者問題にも絡んでこないとも限らぬような状況になってきているということですね。  また、平成七年の長期見通しは、この問題を解決するという前提のもとで長期見通しを組み立てているのですね、自給率なんかも見ますと。これは僕は、これからの重要な、ある意味でいったら課題でもあるんじゃないかな、それが一農家では、個別農家では処理できないだけに、どこかが大きく踏み出してリードしていかないとこれは処理できない問題だろうな、こういうふうに思いますね。  そうすると、やはり国がその辺のところを、国だけじゃなくして自治体も含めて、あるいは環境対策という観点からも一歩進んだ仕組みを制度的につくっていかないとこの問題は解決できないというふうな状況に今現実にあると思いますね。その辺のところの考え方をひとつ、今後どう処理しようとしていくのか、対応しようとしていくのか、ちょっと聞かせておいてほしいと思います。
  224. 中須勇雄

    中須政府委員 家畜のふん尿処理の問題、この委員会でもたびたびお取り上げいただいておりますし、やはりこれからの畜産経営の発展を図っていく場合にはどうしても取り組んで方向を明らかにしていかなければならない課題だ、こういうふうに私どもも思っているわけであります。  特に、ただいまお話ございましたように、個別の酪農家、個別の畜産農家ということでは、もちろんそれで取り組んでおられる方もあるわけでございますが、なかなか限界がある。そういう意味で、一つ畜産農家自体の方も幾つかの農家が共同する、そういうことの必要性と同時に、できた堆肥というものを有効利用していく上でも耕種農家との連携、こういうこともまた重要でございまして、そういう意味では先ほどちょっと何かお話を申し上げましたとき、堆肥センターが全国で二千五百ばかりできているわけでございますが、その設置主体として市町村であったり、JA、農協が主体になっているというものもある程度あるわけでありまして、そういった積極的な地域における取り組みというのが今後の解決の一つの方向になり得るのじゃないか、そういうふうに私どもも思っております。  それと同時に、相当お金がかかるわけで、ぜひ補助事業の対象にしてほしいという声が強いわけでございますが、補助事業の場合には、やはり共同した取り組みということがどうしても要件になります。そういった意味では、今このふん尿処理に関しましては、耕種農家を含めて三戸でもって取り組むということの場合、共同利用ということで補助対象にする、そういうような、ほかの事業に比べますとかなり優遇されたというか、そういう条件も適用しておりまして、いろいろ課題を持っておりますが、当面、今申しましたような地域ぐるみの取り組みを含めて、また国からの支援というような形で努力をしていきたいという状況でございます。
  225. 前島秀行

    ○前島委員 終わります。
  226. 小平忠正

    ○小平委員長代理 次に、堀込征雄君。
  227. 堀込征雄

    ○堀込委員 限られた時間でございますが、私はこの法案、畜産関係でありますが、とりわけ今、日本の国が財政の危機やいろいろな状況の中で行政改革を実行しなければならない、あるいは諸改革を実行しなければならない。そういう中で、日本農業畜産が極めて難しい立場に立たされているというふうに思うわけでありまして、そうした国家目標ともいうべき改革をなし遂げながら、しかしなおかつ日本農業畜産をどうしていくかということを真剣に考えなければならない、こういう立場で、幾つかの問題について、農林省の取り組みについてお尋ねをさせていただきたいと思うわけであります。  一つは、総務庁が畜産行政について行政勧告を行っているわけであります。特にこれは牛の関係です。補助金の整理合理化、それから指定食肉の価格安定制度の効率的な運営、それから畜産振興事業団の指定助成事業の見直しなどについて勧告がなされているわけでありますが、これを省としてはどのように受けとめ、どのように対応しているか、まずこの点からお伺いをしたいと思います。
  228. 中須勇雄

    中須政府委員 今回、総務庁が行った畜産に関する行政監察の結果に基づく勧告につきましては、ただいま先生から御指摘がありましたように、内容は三点ございまして、補助金の整理合理化が一点、それから指定助成対象事業の実施方法の見直しということが第二点目、そして三番目が指定食肉、いわゆる牛肉、豚肉等の価格安定制度の効率的な運営、この三つを内容とするものでありました。  この指摘につきましては、私ども、現在内容を十分吟味中でございまして、ことしの五月末を目途にこれに対する対処方針を取りまとめたいというふうに、内部的にそういう目途で作業しております。ただ、基本的には牛肉の生産から流通に至る各種の施策、これを効率的かつ効果的に実施を図る、こういう観点からの勧告でございますので、基本的に勧告の趣旨に沿って改善方策を検討していく、こういう方向で検討を進めてまいりたいと思っております。
  229. 堀込征雄

    ○堀込委員 続きまして、これは昨年の十二月五日、行政改革委員会の規制緩和小委員会から、農業に関する幾つかの指摘がなされております。とりわけ生乳生産、加工、流通に関する規制緩和の問題、それから繭、生糸の規制緩和の問題、麦の価格制度、これらが取り上げられまして、実は幾つかの見直しについての報告がなされているわけであります。  とりわけ今度のこの制度に関連する指定団体制度の見直しについても、これは後ほど関連質問させていただきますが、検討を行うべきだ、こういう指摘がなされております。これを今どのように受けとめて、どのような対応をされようとしているか、まずお伺いをしておきます。
  230. 中須勇雄

    中須政府委員 行政改革委員会規制緩和小委員会の報告におきまして、先生ただいま御指摘のとおり、指定生乳生産者団体制度のあり方について検討をすべき、こういう御指摘を昨年十二月にいただいているところでございます。  御承知のとおり、指定生乳生産者団体と申しますのは、いわゆる加工原料乳の不足払い法の中で規定されているわけでございまして、都道府県単位に指定生乳生産者団体が指定をされまして、ここが一元集荷、多元販売、牛乳についてこれを行っている、加工原料乳不足払いの一つの柱をなしている制度でございます。これについて行政改革委員会では、活力ある酪農業の展開、そういうために一定の競争条件を整備をする、そういう観点から見直しをすべきではないか、こういうような御指摘をいただいたわけでございます。  私どもといたしましては、確かに御指摘のような消費者ニーズの多様化とか生産者の差別化志向の高まり、そういうような側面があると同時に、生乳流通の広域化というのでしょうか、そういうこともかなり当時と、この制度が生まれたときに比べれば大きく進展をしております。そういった意味で、この制度について今、昨年十二月に検討会を設けまして、幅広く生産者、乳業者代表、学識経験者という方に集まっていただいて、これからの指定団体制度のあり方について検討をお願いをしているところでございます。  趣旨は、今の日本酪農というものをここまで発展をさせてきた一つの支えになった制度でございますし、そういった制度に対して見直しをすべきということであれば、やはり各方面の議論をできるだけ聞いて、コンセンサスを得た形で見直しということに取り組むべきではないかということで、そういった検討会を設けて議論をしているところでございます。  一応ことしの夏ごろを目途になお今後数回の議論を重ね、検討会の取りまとめをしていただきたい、こういうふうに思っておりまして、それを受けた上で私どもこの見直しについて取り組んでいく、こういうことを考えております。
  231. 堀込征雄

    ○堀込委員 もう一つ、規制緩和小委員会は、乳業施設の新増設について、いわゆる指摘をされているわけであります。これは、例の昭和五十八年の九・九通達というものがあるわけでありまして、この新増設の規制については廃止をすべき、こういう指摘がなされておりますが、これはどのように対応されておりますか。
  232. 中須勇雄

    中須政府委員 先生御指摘のとおり、五十八年に定められました九・九通達、九月九日付ということで九 九通達と呼んでおりますが、これは基本的に、乳業施設の乱立あるいは飲用牛乳市場における無秩序な過当競争防止というような観点から、五十八年、通達でもって一定の規制を行ってきた、こういう経緯がございます。  しかし一方では、現在市場原理を導入して、自由かつ公正な競争条件の整備を図るべき、こういう御意見もあるわけでございまして、同時に、村おこし的な生乳の加工等の障害となる、こういうような御指摘もございまして、各方面から議論があったのも事実でございます。  したがいまして、私どもとしてはこうした各方面の御指摘を踏まえまして、この通達については、今月末に予定されております規制緩和推進計画、政府の計画、この改定時期がちょうど三月でございますから、それに合わせてこの通達については廃止をする、こういうふうに考えております。
  233. 堀込征雄

    ○堀込委員 もう一点伺っておきます。  同じく規制緩和小委員会は、後発品に係る農薬取締法上の問題ともう一つ、畜舎建築に係る関連基準のあり方、これを取り上げておりますが、この畜舎建築に係る基準について緩和すべき、こういう指摘をなされておりますが、この点はどのように検討されておりますか。
  234. 中須勇雄

    中須政府委員 畜舎建設に関する建築基準の緩和の問題につきましては、行政改革委員会の規制緩和小委員会報告書の中では、風や積雪に関する安全性の水準が人の作業密度に見合ったものとなるような設計基準について、検討結果を踏まえ、九年度前半までに建築が可能となるように措置すべき、こういうような御指摘をいただいております。  実は、この問題については平成七年十月以降、農林水産省、建設省及び学識経験者等から成る検討会を開催いたしておりまして、畜舎の建築基準について緩和を図るという方向での議論を行ってまいりました。そこにこういった行政改革委員会の報告書が出されたというような状況にあるわけでございます。  現在、この検討会におきましては、この検討会として新しい畜舎設計規準というものを別途つくりまして、畜舎の建設に当たっては、建築基準法の規制にかえてというか、該当部分にかえてこの畜舎設計規準に基づいて建築を可能とする、こういうような特例措置をつくるという方向で取りまとめを急いでいるところでございます。  具体的に、この中では、先ほどの行政改革委員会で出されておりましたような積雪とか風に対する荷重というものの要件を緩和するとか、あるいは住宅の密集地以外のところに畜舎というのは基本的にあるわけでございますので、防火の面で、例えば外壁について規制を緩和するとか、そういった観点での新しい設計規準というのを間もなく取りまとめ、これによって今後は各都道府県建築部局と畜産部局、それぞれ建設省、私どもの省の双方からお願いを申し上げまして、ことしの九月以降、この新しい規準で畜舎が建てられるようにというふうな事態が生ずるように努力をしていきたいというふうに思っております。
  235. 堀込征雄

    ○堀込委員 総務庁の勧告、それから規制緩和小委員会の報告に基づいて、あるいはそれ以前から検討していたこともあったというふうに今答弁の中でありましたけれども、それぞれ対応がなされていることはよくわかりました。  そこで、指定団体制度の問題であります。私は、この規制緩和小委員会の報告を見て、とりわけ指定団体制度の指摘については極めて詳細かつ具体的でありまして、この委員会の中に相当専門的な人がいるなというふうに想定をされるわけであります。  それはさておきまして、一体、規制緩和小委員会なるものがここまで具体的に指示をする必要があるのかどうか。  つまり、規制があるからそれを直せ、撤廃しろという指摘ならそれでわかるわけでありますが、これを見ますと、一県一指定ではなく多様な指定をするべく、指定団体の広域化を行いとか、生産者はどの指定団体に加入するか自由に任せるべきであるとか、これはやはり規制緩和小委員会、ほかのいろいろな指摘も私読んでいますが、この部分だけ極めて具体的でありまして、かつ自主的ないろいろな畜産行政を相当踏み込んで縛るものではないかという感じを実は持っているわけであります。  私も規制緩和は全体的に、国家全体として進めなければならぬという考え方の持ち主でありますが、それはやはり、何といいますか、そういう具体的な指摘については、やはり指摘にとどめて、その方策については現場に任せるというようなルールが、どうも全体としてはあるような気がするのです。  この指定団体の部分だけ相当具体的にされているという印象を私持っておりますが、畜産局、どうですか、その辺の感想は。     〔小平委員長代理退席、委員長着席〕
  236. 中須勇雄

    中須政府委員 私どもは、こういった報告での御指摘を受けて、それに基づいて、できるできないを含めて十分検討してお答えをするという立場でございますので、余り内容の批判的なことを言うべき立場にはございませんが、ただ、この行政改革委員会規制緩和小委員会の中でのこの議論については、例えば具体的な例、特に地域おこしのために地元でアイスクリームをつくりたいだとかバターをつくりたいとか、そういったものがこの制度で阻害されるじゃないかというふうな具体例を挙げてのいろいろな議論があったということ自体承知をしております。
  237. 堀込征雄

    ○堀込委員 多少遠慮深い答弁でございました。そういうふうに私は印象として受けとめておるわけであります。  私は、日本酪農を、今ウルグアイ・ラウンドの結果を受けて、ようやく地域の特性を生かしながらさまざまな経営努力を酪農家の皆さんやられている、こういう段階だとも思っております。今頭数をふやしたり経営の合理化をしたり、それを各県の指定団体が、あるいは生産者団体あるいは県や市町村が支援して徐々に体制ができつつあるのではないか、実はこういう判断をしております。  そうした努力がなされている中で、実は中途で指定団体制度の変更、広域化というような話もさっきございましたが、そういうことが行われると、私は、このせっかくの努力が水泡に帰していくことになるのではないかというふうに案ずるわけであります。  今、各地で品質の高い牛乳、あるいはブランド品として乳製品なんかが自信をつけて生産をされているという実態があると思うわけであります。しかも、みずから販路を拡大し、それを今指定団体の皆さんがリードしたり、あるいは後押しをしたり、そういう中で着実な成果を上げつつあるのではないか、こういうふうに私は思うわけでありまして、そういう意味では畜産行政の一貫性というものは今の状況の中でどうしても必要なのではないか、こういうふうに私は思っているわけであります。広域化だとかあるいは多様な指定制度ということになりますと、そういう努力が、ここまで来たものが、結果としてそういう芽を摘み取ってしまうことになるのではないかというふうに実は私は心配しているわけであります。  私の長野県でも、産地指定牛乳、いろいろな努力によって、もう生産量の五〇%を超え、しかも指定団体が努力して販路を拡大して、着実にそういう成果が今上がって、量販店との間でも販売ルートがだんだん太いものができ上がりつつあるという状況が実はあるわけでありまして、消費者の嗜好に合ったそういう努力が今されている、こういうふうに思うわけであります。  私は、そういう意味では、この指定団体制度、先ほどの答弁で、夏ごろには結論を出したいという答弁がございましたが、ぜひ猫の目行政と言われることのないような対応をいただきたい、こう思うわけであります。  今指定団体は、いろいろな歴史的な経過がありまして、特に専門酪から発展したような指定団体についてま、失礼な言い方かもしらぬけれども、十分な資金力がないとかいろいろな制約があるわけでありまして、私は、そういう意味では、そういうものを支えていく行政が必要なのではないか、こう思っておりますが、最後にその点、見解をお聞きしたいと思います。
  238. 中須勇雄

    中須政府委員 確かにこの指定団体制度、先ほどもちょっと触れましたが、不足払い法ができて三十年、この間の我が国酪農を育てていく上で大変大きな力のあった制度だろうと思います。  そういった意味で、ただいま先生のおっしゃった意見を含めて多様な意見があるわけでございまして、私どもとしては、そういう意味では、ただ報告を受けてそのまま実行するということではなくて、やはり、今回の検討会にも指定団体の代表者の方にも数名入っていただいております。そういう中で十分議論を尽くして方向を考えていきたいというふうに思っております。
  239. 堀込征雄

    ○堀込委員 終わります。
  240. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、藤田スミ君。
  241. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 今、動物の伝染性疾病に対する国民の関心は大変高まっています。病原性大腸菌や狂牛病の問題はもとよりですが、ペットや野生動物の輸入が増加し、人から動物、動物から人へと感染する人畜共通伝染病の問題は、マスコミでも、その対策を急げということでしばしば取り上げられてきました。また、畜産物の多頭化が進む中で、家畜伝染病について、検疫や国内の予防体制の強化は生産者の中からも切実に求められてきています。  この間私はある酪農家の方にお会いしましたが、とにかく怪しいものは水際できっぱりと、そして危ないものは断固として対応してもらいたい、これが生産者の声でありました。  そこで、私は、家畜伝染病予防法の一部改正案についてお伺いをしたいと思います。  今回、家畜伝染病予防法対象疾病を、これまでのすべての家畜伝染性疾病を対象にしたものから監視伝染病と新疾病に重点化した、絞り込んだわけですが、これはWTO協定の中のSPS協定に基づく国際基準へのハーモナイゼーションの結果であったというふうに考えますが、簡潔にお答えください。
  242. 中須勇雄

    中須政府委員 今回、家畜伝染病予防法の改正におきましては、国内での防疫措置、そしてまた輸入検疫の対象となるそういった家畜の伝染性疾病、これを監視伝染病ということで統一をいたしまして、これに対して措置を集中するという方向での改正だということは御指摘のとおりでございます。  SPS協定におきましては、防疫に当たりまして、内外無差別の観点から、国内において定着している疾病及び蔓延防止のための措置をとっていない疾病を恣意的または不当に輸入検疫措置の対象としてはならないこと、国内に存在しないために国内的に何らかの防疫措置をとっていない疾病については、その国内への侵入を防ぐために正当化できる措置であれば輸入規制措置をとれること、こういったことが規定されておりまして、今回の改正は、法に基づく行政による強制的な国内防疫措置の対象となる疾病と輸入検疫の対象となる疾病を一致させたという意味において、これと整合性を持っているわけでございます。
  243. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 SPS協定では、国際基準へのハーモナイゼーションということで、昨年の植物防疫法の改正でも、FAOが策定した病害虫危険度解析ガイドラインと整合性を図るとして、病害虫危険度解析ガイドラインで打ち出された国内に蔓延定着した病害虫は植物検疫から外し、植物検疫対象病害虫を絞り込んでいったわけであります。  今回の動物検疫についても、輸入危険度評価手法のガイドラインが国際獣疫事務局により定められ、その輸入危険度評価に基づいて動物検疫の対象疾病の危険度を評価し、検疫条件を決めようとしているわけであります。  また、動物検疫の対象疾病の絞り込みはSPS協定二条三項に基づいて行われるものでありますが、問題は、動物検疫は植物検疫ほど単純ではないということです。それは何かというと、家畜の伝染性疾病は人畜共通感染症を含んでいるということです。  言われたOIEの危険度評価に人畜共通感染症としての危険度評価は入っているのでしょうか。入っているか、いないか。
  244. 中須勇雄

    中須政府委員 OIEの危険度評価ガイドラインにおいては、特定の動物あるいは畜産物の輸入を介して家畜の伝染性疾病が輸入国に侵入し発生する危険性を、家畜、人の双方について定量的に推定する、こういう観点から評価をしておりますので、家畜衛生への影響だけではなく、公衆衛生への影響も念頭に置いて策定されているものというふうに承知をしております。
  245. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 結局、危険度評価の中には、人畜共通感染症を危険度の中に取り込める仕組みになっているわけです。ところが、農水省は、先ほどから何遍も同僚議員に御答弁されておられますように、本法の性格からそれを採用するつもりはない、こういうことなのです。  しかし、それは随分いいかげんなものではないか。ハーモナイゼーションといいながら、輸入検疫の方は狭める、そして逆に言うと輸入しやすくする方は大いにハーモナイゼーションをしていって、国民の健康にかかわる問題は無視する。これは極めて問題がある態度と言わざるを得ないわけであります。  人畜共通感染症は、エボラ出血熱やマールブルク病、Bウイルス病、細菌性赤痢など、人間に致命的な被害をもたらすものも含まれておりまして、その対応は公衆衛生上急務であります。  問題は、感染源となる動物であります。日本では動物検疫の対象動物が家畜に限定されており、それ以外の動物については全く無検疫で日本に輸入されています。その余りにも無防備な状況について、多くの研究者や関係の皆さんから、すべての動物を検疫の対象にするべきであるという要望が強く出されております。  そのことは十分御承知だと思いますが、知っているか知っていないか、お答えください。
  246. 中須勇雄

    中須政府委員 ちょっとただいまのお話にございましたが、人畜共通伝染病、家畜にも伝染性疾病として影響を与える、こういう病気であれば当然のことながら家畜伝染病予防法対象たり得るわけでございます。ただ、もちろんその病気が家畜に対して、あるいは人の話を含めてどのような影響を与えるかという評価の上での話でございますが、人畜共通伝染病はとにかく家畜伝染病予防法の範囲外である、そういうふうには決して考えていないわけでありまして、今回の改正に当たりましても、そこのところはそういう方針で、今後とも、例えば届け出伝染病の範囲をどうするかということについても、そういうことも考慮しながら進めていく、こういうことに相なろうかと思います。
  247. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 知っているのか、知っていないのか。関係者の皆さんからの指摘については答えていませんよ。
  248. 中須勇雄

    中須政府委員 一部からそういう声があるのは承知しておりますけれども、この法律では家畜を対象にしている、こういうことでございます。
  249. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 いろいろ言われますけれども、人畜共通感染症に対する皆さんの見方というのは、あくまでも家畜伝染病、家畜に対する影響、これが主役になって物を見ようとしている。しかし、OIEの指摘しているのは、人畜共通感染症、これはまさに危険度評価の中に組み込まれる、それはあくまでも人に対する影響、そういうものが含まれているのだということを申し上げておきたいと思います。  どうして皆さんは家畜に限る、動物検疫はできないというふうにおっしゃるのか。それは、私は、技術的、専門的知識、人員、施設、検査機器などの家畜以外の動物の検疫をこなす基盤は十分あるというふうに思います。もし家畜以外の動物の検疫をこなす面で人員や予算が不十分だということならば、その体制を強化することは国民の健康を守ることに直結するものである以上、何も問題はないはずであります。  もう一度言ってください。どうして農水省はやろうとしないのか。
  250. 中須勇雄

    中須政府委員 私どもは、現行の家畜伝染病予防法、これが家畜の伝染性疾病の防疫を進める、これを基本目標にしておりまして、その枠内で事柄を考えている、こういうことでございます。  もし、人に対してのみ、家畜は全く影響を受けないけれども、人に対して一定影響、あるいは病気を発生させる、そういうものがあるならば、それは新しい分野として取り組むべき課題だろう、こういうふうに考えております。
  251. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 その新しい分野として取り入れていくべきだと、皆さんが取り入れていくべきだということを言っているわけです。  あなた方はできないと言うけれども、例えば輸入されているペット用の小鳥の検疫はしていますね。それは、ニューカッスル病が小鳥からも感染するということから、ニューカッスル病で小鳥の検疫が行われている。それならば、人畜共通感染症で、場合によっては人を死亡させる小鳥が感染源になっているオウム病、こういうものについても小鳥に対する検疫を行うこともできるわけであります。要するに、法律面を除けば技術的な対応は可能なはずであります。技術的な対応ができないということじゃないでしょう。
  252. 中須勇雄

    中須政府委員 先ほどから申し上げているとおり、私どもは基本的な私どもの所掌の範囲内、法律の範囲内で事柄を考えているということでございまして、例えば、御指摘のとおり、ニューカッスル病というのは鶏以外の小鳥に感染する例もございます。そういった観点からは、小鳥について相手方の御協力を得て検疫をしていただく、こういうこともあり得るわけでございます。
  253. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 大臣にお伺いしたいわけです。  私が言っているのは、国民の健康を守っていくためにも、今、人畜共通感染症の検疫が不可欠になってきているということを言っているわけです。  ところが、その人畜感染症問題に対して農林水産省は、今回の家畜伝染病予防法の改正の中でも全く触れていない。そういう点では、私は非常に残念です。落胆しています。家畜を主役にした面では触れておりますよ。触れているかもしれません。しかし、人畜感染症、この国民の不安に対して、今起こっている問題に対してまともに答えようとしていない。そして、人畜共通感染症とされている家畜の伝染性疾病でさえも、輸入検疫を重点化していくのだという方針のもとで、実は検疫対象から外されてしまうものもあるわけであります。このことについて、大臣はどう受けとめられますか。また、今後人畜共通感染症についてどう対応されるおつもりなのか、国民に対する回答としてお答えをいただきたいわけであります。  あわせて厚生省にお願いしておりますので、厚生省に御答弁を求めておきたいと思います。大臣にお願いしているのですよ。
  254. 中須勇雄

    中須政府委員 ちょっと事実関係だけ御説明を申し上げますが、現在対象になっている人畜共通伝染病を今回の法改正で対象外にする、この点につきましては、届け出伝染病、つまり監視伝染病の範囲にどこまでを取り込むかということによって決まってくる問題でございまして、そこについては、まだ我々はこれから先多くの関係者の、専門家の意見を聞いて届け出伝染病について範囲を確定をしていくという作業がございますので、そこは確定している問題ではないということでございます。
  255. 岩尾總一郎

    ○岩尾説明員 厚生省におきましては、近年の感染症対策を取り巻く環境の変化を踏まえまして、エボラ出血熱等の新興感染症の出現、国際化の進展によるこれら感染症の国内への侵入への対応も含めまして、感染症対策全般の見直しに着手したところでございます。  現在、公衆衛生審議会伝染病予防部会に基本問題検討小委員会を設け、平成十年の通常国会に関係法案を提出することを目指して、感染症対策の見直しを行っております。  また、外務省を通じ、諸外国に人畜共通伝染病に対する制度についても調査を依頼しているところでございます。  今後、この調査結果などを踏まえ、同小委員会において人畜共通伝染病対策のあり方について御議論をいただくこととしております。厚生省としては、その検討結果を踏まえて、適切な対応をしてまいりたいと考えております。
  256. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 今の御答弁で御理解いただけたと思うのですが、要は人畜共通伝染病である場合も同様に農水省として対象にして検疫をする、こういうことでございますので、その点は御理解いただけたと思います。
  257. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 いささか大臣のとり方が、そうであれば私はこんなに声を荒げて言う必要はないわけで、農水省はあくまでも、家畜伝染病予防法という法体系のもとでは家畜に影響があれば人畜共通伝染病は対象に取り上げていくけれども、家畜に影響を及ぼさない、先ほどから言われているO157の問題、あれはもう皆さんの御認識は片側通行みたいな言い方ですが、牛はどうもない、人間がどうもあっても牛はどうもないということで、もう全然門外漢だというような扱いですが、そういう見方はもうだめだ。そのことは、OIEでさえも危険度解析の評価の中にはちゃんと人畜共通伝染病というものを取り入れようということを指摘している時代に、もう農水省の対応は時代おくれで、そして私は、いつまでもそういうことでタコつぼみたいに家畜家畜と言わぬで、やはりもっと開けて、国民の健康、それがひいてはやはり家畜ということで、もっと大きく目を広げていかなければいけないということを申し上げているわけであります。  続けて質問をいたしますが、国内の防疫体制の問題であります。  ブルセラ病、結核病、馬伝染性貧血の検査を受ける義務を今回の法改正の中で廃止をするということになりました。現在、ブルセラ病、結核病、馬伝染性貧血の検査というのは、年に一度行われております。国の予算は、これに関連する予算が九億措置されているというふうに認識しておりますが、間違っていますか。
  258. 中須勇雄

    中須政府委員 ただいまお話しの点についてはそのとおりでございます。  ただ、一点だけ、ちょっと誤解があるようなので申し上げたいのでございますが、OIEの危険度評価というのも、家畜の伝染病についてそれが人にどういう影響を及ぼすか、そのことを考慮要素にしているというふうに言ったわけでありまして、家畜の伝染病である、そこがそもそもの前提であるというところは私どもと変わっていないわけであります。  それと、私は、今回の法改正は家畜伝染病予防法の改正であって、そういう意味では従来からの基本的な枠組みというのはこういう形でやるというふうに申しているわけでありまして、人畜共通、それ以外の、外にある、特に人に影響を及ぼす伝染性疾病についてどういう対策を講ずるか、これはまたこれとして議論があり検討がされるべき問題だ、こういうふうに思っているということでございます。
  259. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 自分の勝手で余り蒸し返しをしないでください。質問の時間は制限されているわけですから。しかも、これは動物なんですよ。そんな自分から門戸を閉めておいて、向こうの門戸も慌てて閉めに行こうというようなやり方はだめですよ。  ブルセラ病に戻しますが、九五年度にはブルセラ病は三万八千頭、結核病は八万六千頭、馬伝染性貧血は七万二千頭も検査を実施しています。関係者の意見を聞きましたら、この検査義務は、だれからも廃止した方がいいという御意見は聞けないわけです。現場の獣医さんは、確かに少なくはなったが、まだ出る以上これは続けてやってもらいたいと言いますし、それからまた獣医師会もやるにこしたことはないという見解であります。さらに、ブルセラ病や結核病は問題の人畜共通伝染病でありまして、国民の公衆衛生上もその検査、監視が必要なことは言うまでもありません。  今回の検査義務廃止というのは、要するに国の予算上の都合に尽きるんじゃありませんか。そうであるとすればこれは許されないことであります。大臣どう思われますか。
  260. 中須勇雄

    中須政府委員 国の予算の都合によるものでは全くございません。  本法制定当時、ブルセラ病とか結核病、そして馬伝染性貧血、いずれも日本国内に広く蔓延しており、しかも慢性病であるということから感染初期の発見、処置がなかなか行われがたいということで、全国を対象として家畜を網羅的に検査いたしまして、摘発した患畜を淘汰することによって清浄化を図ってきた、こういう経緯がございます。その後、この伝染性疾病のうち、ブルセラ病と結核病については実際上かなり清浄化が進みました。例えば、平成七年のブルセラ病の七十七万頭の検査の結果、患畜は一頭、結核病については九十五万頭を検査した結果、患畜は十頭、そういうようなことで、過去に比べますと患畜の数が急速に減ってきたわけでございます。  こういったことから、実は現在も、運用上として、昭和三十八年以降、一定の地域を限りまして、この両方の病気についてかなり清浄化が進んだ地域については検査義務を解除をする、なお危険な地域について検査を続けるということで今日に来たわけでございます。  結果として、先ほど申しましたように近年これらの疾病の発生は極めて散発的になっておりますが、引き続き私ども、この両疾病に関しては検査を実施していこうと思っております。  具体的には、現時点で清浄化されているというふうに考えられている地域におきましては、今回の改正法により新たに設けられますサーベイランス体制のもとで、具体的には現行法第六条の規定に基づき運用上定期的に行われている検査と同様な検査を実施しようというふうに思っております。それ以外の地域、つまり危険性のある地域でございますが、これについては、法三十条に基づく蔓延防止のための検査というものを行いまして、患畜の摘発、病畜の摘発を行いたい、こういうふうに思っておりまして、いわば今行われております結核、ブルセラ病等の検査はサーベイランス体制のもとに発展的に解消された、こういうような形で運用面でもやっていきたいと思っております。
  261. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私はそのサーベイランス体制が悪いということを一言も言っていないわけです。この法改悪には反対しますが、このサーベイランス体制はいい強化体制だというふうには思っております。  しかしながら、これまでずっと続けてきた検査義務を何も外すことないじゃないか。何で外さないといかぬのか。しかも、あなたは平成七年を取り出されましたが、平成に入ってからブルセラ病は四頭、それから結核病は百十七頭出ています。しかも、結核というのは、これは人間の中に今結核病がふえてきているのです。この人間の病気がまた牛にうつるのです。そういう点では、今結核病の検査義務は全国的にきちっとやるということが大変大事であります。  だから、公衆衛生の分野で規制緩和をやってこういうことになっていくということは取り返しのつかない事態を招くことになるわけでありますので、私どもはこれは納得できないと申し上げているわけであります。  次に、家畜の伝染性疾病の病原体の輸入の問題です。  家畜の伝染性疾病の病原体輸入については、試験研究の用に供する場合、そしてその他特別の事由がある場合において、農林水産大臣の輸入の許可を受けた場合を除き、これまでその輸入は禁止をしてきました。そして、許可を与える場合も、当該病原体の国内散逸の危険を考慮して、輸入の方法、輸入後の管理方法、分与の当否等必要な条件を付してきたわけであります。  しかし、各種試験研究、予防液の製造等が盛んになるにつれてこの病原体の輸入が増加し、その中には許可を受けずに輸入されたものや、輸入後の管理の方法等に関してかけられた許可条件を遵守していないという例が出てまいりまして、あなた方はそれは古いと言うかもしれませんけれども、しかし、とにかく関係研究機関や大学及び民間企業にその徹底を求めるという通達を出されたほどであります。  にもかかわらず、今回、既に知られている家畜の伝染性疾病の病原体のうち、公示されたものについては、輸入禁止・許可ということから届け出で輸入できるというふうに変わっていくわけであります。このことは、人畜共通感染症の病原体も含めて当該病原体の国内散逸の危険性をふやすことになりはしませんか。そうならないという保証はあるでしょうか。
  262. 中須勇雄

    中須政府委員 今回の改正案におきましては、先生御指摘のとおり、監視伝染病以外の病原体については輸入禁止の対象から除外し、届け出対象、こういうことにしているわけでございます。  その場合、御指摘のような、安全上問題はないのか、こういう御懸念があろうかと思いますが、まず第一点は、今後省令で定めることにしている届け出伝染病の選定に当たりましては、先ほどもちょっと触れたところでございますが、国内に侵入した場合どういうことが起きるか、やはり畜産上重要なものについては人畜共通伝染病を含め幅広く届け出伝染病に指定をする、こういう基本的な考え方で我々これから対処をしょりと思っているということでございます。  それから、未知の伝染性疾病の病原体については、監視伝染病の病原体と同様、輸入禁止の対象となるわけでございます。したがいまして、具体的に輸入禁止の対象から除外され届け出に移る病原体というのは、もう我が国に一般的に常在し、現状の家畜の衛生管理について特段被害を及ぼすことはない、そういう通常のものに限られることになる、こんなふうに我々は考えているわけでございます。
  263. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それで安心ということになかなかなりませんね。  これまでは、輸入禁止あるいは許可ということで、許可を受けたものに対しては、さっきも言いましたように、輸入の方法だとかあるいは輸入後の管理の方法だとか分与の当否というものについて許可条件というものをつけてきたでしょう。届け出ということになったら、その許可条件は外されることになるんじゃありませんか。そうでしょう。うなずいていらっしゃるわけですが、これは大変なことだ。だから、国内にいっぱい散逸する危険性はないかということになるわけです。  さらに、網羅的にできるだけ取り入れて、人畜共通感染症も取り入れていきたいということでありましたけれども、今回の監視伝染病から外れる家畜の伝染性疾病のうち、人畜共通伝染病は多数含まれています。その中でも、リステリア症やレプトスピラ症、トキソプラズマ症などは人間に対して軽くはない疾病、疾患をもたらすわけでありますから、届け出だけで済むということになれば、それらの病原体が軽々に扱われる。そしてまた、国が全く知らないうちに輸入されるということになりはしませんか。お答えください。
  264. 中須勇雄

    中須政府委員 いずれにいたしましても、ただいま先生が名前を挙げられたものを含めて、これから届け出伝染病をどこまで規定をするかという議論を私ども進めてまいりたいと思いますが、その結果で、あるいは御批判があるのかもしれませんが、その結果によって今回は解消される部分も当然あるのではないかというふうに思います。  それからもう一つ、先ほどうなずいたというふうに申されましたが、条件は付さないことになります。御指摘のとおりでございます。ただ、私が申しましたのは、仮にそれが国内で散逸しても、もう国内にそもそもあちこちに、あちこちというと言葉はおかしゅうございますが、常在する菌がそういうことで許されているわけだから、そこは、新しい病気が発生するとかそういう問題が生ずるおそれはな、というふうに考えているということでございます。
  265. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 大臣、大事な問題ですので、これから決める対象疾病については、それこそ本当に、家畜にはそんなに影響しないだろうけれども人には影響があるというものも含めて、幅広く、網羅的に、動物の伝染性疾病に対してやはりそれを対象にしていくという、そういう構え、構えというのですか、そういう決意で取り組んでいく、その約束だけはしておいてください。大臣にお願いします。
  266. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 幅広く取り組んでいくことをお約束いたします。
  267. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それでは、次の問題に移ります。  私はここに、「国産牛オーナー募集中安心と信頼。」利益還元、六・五%から七%の利子がっくということで、こういうものを持っています。これは牛の預託システムであります。  最近、金利が下がって、国民は大変苦しんでいます。だから、こういうふうに年利六・五%から七・三%というと、もう消費者はそのうたい文句だけにつれてしまうわけです。だから、家畜オーナーシステムというようなこういう新商法があらわれました。ところが、私たちから見れば、何で和牛の売却益がそんな年利六・五%から八%近くも出せるんだ、こう思うわけですが、全く消費者はそういう今の畜産の事情もわかりませんで、この高利に単純につられるわけです。  この広告を見ますと、何か、牛一頭の契約で配当は七・一%、百万円。百万円の牛って今あるのかな、こう思いますが、天の川コースというところに行くと、二百万円。百万円と二百万円の一頭のこの価格の差はどこからくるのかということで、実はここに尋ねてみましたら、何と、肉質がいいから二百万円。いいかげんなこと言うなあ、こうなるわけですが、傑作だなと思うのは、何か二分の一頭で五十万円とかいうような、一頭を藤田スミと、失礼ですが大臣と一緒に買うた、こういうようなやり方なんですね。ほんまにいいかげんな話で、これは国民生活センターの方にも随分、苦情が寄せられてきています。  それだけではなくて、北海道の畜産農家にも消費者から集めたお金が設備資金として貸し付けられ、増頭はしたものの、一体この先どうなるのかという不安を持っているわけであります。このシステムが出資法違反の可能性があるという指摘がされておりますし、場合によっては、これは日本農業に対する消費者の信頼を大きく損なうという点で私は心配をしています。  農林水産省としてどう対応されていこうとしているのか、お答えをいただきたいわけです。
  268. 中須勇雄

    中須政府委員 実は、牛の持ち主になって、何というのでしょうか、都会と地方との交流というか、そういうことを目指して、小さな試みとしては、ずっと昔からいろいろ、農協とか第三セクターがそういうことを行ったことがございます。それからまた、一定の法人がそういうことをやるというのも、十数年前からずっとやっておられる方もございました。  ところが、それはそれで別に特段の問題はなかったわけでございますが、昨年夏ごろから私どもの方にもいろいろ消費者から問い合わせが来る。こういう話があるけれども大丈夫だろうか、農林水産省推薦とか書いてあるけれども、本当に推薦しているのかとか、そういうような話が幾つか寄せられまして、私ども、それからいろいろ調べてみた、こういうことでございます。  その結果、要するに、昨年に入って、正確にはおととしの冬からだそうでございますけれども、急速に十何社という形で、こういう商法を始めた方が雨後のタケノコのように出てまいりまして、それが消費者からのいろいろ心配の相談の背景にあった、こういうことでございます。  そういう状況をつかんだという段階で、私ども一応、まず第一点は、農林水産省はこういうものを全く推奨することはございませんということと、それから、肉用牛の飼養については、言うまでもございませんが、価格変動のリスクがあるということで、常にもうかるという性格のものではありませんということ、そして三番目には、こういう家畜のオーナーシステムというものを、預託者たる一般消費者に対して元本保証を約束して金銭を受け入れるというふうな形で運営されていた場合、もちろん態様にもよるわけでございますが、出資法に触れる可能性がある、これは出資法の担当の省庁、部局にそういう可能性があるというお話を伺いまして、そういう三点ばかりを内容といたしました文書を作成いたしまして、各都道府県、関係部局に文書を送付し、消費者からの今後の御相談に対して、こういうことを間違いなく伝えてほしいということをお願いしたというのが現段階でございます。  今後とも、そういった消費者への情報提供ということと同時に、こういったシステム自体の情報提供にも努めてまいりたいと思います。  ただ、先ほども実はお話にございましたが、システム自体が同じとか違うとか、いろいろさまざまな形はございますが、まともというか、まじめにやっておられる方もあるという話自体も伺っておりますので、その辺は、私ども、別にそれがそうだからお墨つきを与えるとかそういうこともございませんけれども、その辺にも注意をしながら、こういう形で対応していきたいというふうに思っております。
  269. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、こういう世界にまであのオレンジ共済のような、この手の問題が出てきたということをとても悔しく思っています。そして、これで結局は生産者がまたひどい目に遭わされ、消費者ももちろんですが、生産者の方は金を借りている人は債務者ということになるわけですから、債権取り立てたといってわっと押しかけられたりした日には、それこそ本当にどうなるかということを考えると、私は、もっと日本畜産業というものについてリアルに国民に理解してもらいたい。そうすればこういうことに取りつくということもなくなるわけです。  そして同時に、やはり日本畜産業は本当にもっともっと自給率を高める方向で育てていかないといかぬなという認識にも行くわけですから、そういう点で私は、農水省がそういう問題について、今回通知を出されて対応されるということですが、さらに真剣な取り組みを求めておきたいと思います。  最後になりますが、病原性大腸菌O157の問題についてお伺いをいたします。  私の住んでいる堺市で、昨年の夏、O157問題で大変な問題が起こりました。感染者が六千五百人、全国では九千人を超えております。亡くなった人も十一人に及んでいます。被害は、肉屋さんだとか、場合によったら魚屋さんも八百屋さんも、それから飲食業者も野菜の生産者畜産農家も大変深刻な打撃を与えられました。何よりも、毎日毎日台所に立つお母さんたちやそうした人たちが脅威と不安を抱かざるを得なかったわけであります。  私は、こうした被害は全く避けられないものであったのかという点については、そうではなかったというふうに思っています。政府が本当に適切な手をこれまで打っていれば防げたものだ。その点では政府の責任は極めて重大だということを、私はきょうこの場で明らかにしていきたいと思うのです。  政府がO157に対する抜本的な手を打つ機会は、過去に三度以上はありました。  最初は、一九八四年に国立予防衛生研究所の坂崎研究員が、その二年前のアメリカでの初めてのO157による大規模中毒事件を受けて、公費で日本国内の調査を行いました。そして、日本国内でもO157感染者が出ているという調査報告をまとめて、厚生省に早急な調査検討を求めたときであります。これが最初です。  しかし、このとき厚生省はこの報告を無視して何の手も打たなかったわけであります。このとき、もし早急に調査検討をさらに進め、輸入牛肉や輸入生体牛などに対する輸入検疫を強化し、べロ毒素に対する薬剤研究、治療指針の策定などに手を打っていれば、O157が今日このように国内に蔓延することや、それによる被害をもっともっと小さくすることができたのじゃないかというふうに考えます。厚生省、いかがお考えですか。  私は、二度目の問題も重ねて申し上げておきたいと思います。  二度目の問題は、九〇年の埼玉県で起きた幼稚園の園児たちの集団感染事件です。日本で初めてのO157による集団感染事件であります。このとき、さすがに厚生省も事の事態の深刻さに気がつきまして、O157の実態と予防、治療法について専門家に研究を依頼し、九一年三月に報告書をまとめました。  驚くべきことは、この調査報告では、全国三千七百七十六の小児科の病院に対するアンケート調査で、八六年から九〇年の五年間で、O157など腸管出血性大腸菌による溶血性尿毒症症候群、HUS、これの症例が五百八件も出、そのうち二十三人が死亡しているということが明らかになったわけです。  こういう事態が報告され、事態の深刻さが明らかになっているにもかかわらず、このときも厚生省はこの報告書をただ地方の自治体に配付しただけで、病院や保健所に対する徹底を怠ってきました。このことが堺での集団感染での混乱の原因ともなったというふうに、私はあの七月、八月、病院や保健所を歩きながらしきりに考えざるを得ませんでした。  また、依然として輸入検疫の強化や屠畜場の衛生管理の改善にも取りかかることもしませんでした。なぜそのときに輸入検疫の強化や屠畜場の衛生管理の改善に取り組まれなかったのか、これは農水省だと思いますが、お答えをいただきたいわけです。
  270. 堺宣道

    ○堺説明員 昭和五十九年の研究論文につきましては、当時発生した散発例を調査した結果、溶血性尿毒症症候群と考えられる症状で死亡した患者のふん便からO157が検出された、それで今後のO157感染についての調査研究の必要性というものが指摘されたわけでございます。厚生省といたしましては、その後、病原大腸菌による食中毒の実態あるいは本菌の分布状況といったような調査研究を平成三年度まで継続的に行ってきたというところでございます。  また、平成二年十月に発生しました幼稚園の事例を踏まえまして、委員先ほど御指摘になりました、浦和市における感染性下痢症患者の集団発生に関する専門家会議というものを開催いたしまして、その意見をもとに、都道府県に対しまして、飲用井戸等の衛生確保あるいは食品関係業者、営業施設等に対する監視指導の徹底や衛生対策の徹底を平成二年十一月に指示したところでございます。  また、平成二年度の厚生科学研究におきまして「腸管出血性大腸菌の疫学的、臨床医学的研究」を実施いたしまして、平成三年十一月には腸管出血性大腸菌の迅速検査法について地方衛生研究所職員を対象とした技術研修を実施しまして、全国の衛生研究所において菌を検出できる体制というものを整備したというところでございます。  以上でございます。
  271. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そんな穏やかな問題じゃなかったのですよ。あなた方のテンポは本当に波静かです。実はその波の底に本当に大きな問題が爆発しようとしていた。  しかも、三度目は九〇年以降です。あなた方は今日までずっとやってきた。だったら、何で九〇年以降の集団感染、二次感染の続発、こういうものに注目されないのですか。特に学校給食や保育園での給食が原因となる集団感染が続発していた。このときに文部省が学校給食での集団感染を防ぐ抜本的な対策に真剣に取り組んでいれば、私はこれまた堺や岡山での集団感染は防げていたと思います。  また、専門家による調査でも、食肉や家畜が広範囲にO157に汚染されていることが明らかになっていました。にもかかわらず、厚生省は、それでも積極的に感染予防対策及び感染治療対策をやってきたと言えますか。九六年の一月に予研からも、感染症としての対応を早くやらなければ大変だ、これが最後の予研の忠告であったはずであります。ところが、それでもあなた方はおみこしを上げなかった。そうして結局は岡山県、堺、あの集団中毒事件が起こりました。そのときの混乱を考えるときに、私は皆さんの御答弁に納得できませんよ。どうなのですか。
  272. 堺宣道

    ○堺説明員 昨年の一月に病原微生物検国情報においてO157の対応ということが、対策が望まれるとの指摘があったということでございますが、昨年の三月に食品衛生調査会の食中毒部会におきまして大規模食中毒対策の検討を開始いたしました。本部会において、六月にはO157に関する緊急提言、八月には学校給食における食中毒防止のための衛生管理事項について取りまとめていただき、これに基づき都道府県に対しまして通知を発令したわけでございます。  また、感染症としての対策を講じるために、昨年六月以降、二次感染防止についての注意を喚起する通知を出したほか、八月には伝染病予防法に基づく指定伝染病として指定いたしまして、必要な対策を講じてきたところでございます。  以上でございます。
  273. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 学校給食に対する通知があったことも私はよく知っています。堺市がその通知の扱いに私は問題がなかったとは言いません。しかし、それほどに学校給食こ対する皆さんの通知というものにも、いわば切迫感が持てなかったほど、実は皆さんのそれまでの取り組みに対する、何というのですか、本当に事の重大性に匹敵した取り組みが見えなかったということは言わなければなりません。  そして、本当に治療指針の策定などに手を打っていれば、ああいう状態というのは出なかったはずであります。一体どうしたらいいのかということで、初期の治療に本当に大きな混乱があったことは大変残念であります。ベロ毒素の問題についても、いまだにまだ十分な薬剤というものが出ていないわけでありますよね。  だから、そういう点では、あなた方、もっと責任を感じないのかと私は思いますがね。そうは思われませんか。厚生省として責任をお感じにならないのか。あれだけの子供が感染し、あれだけの人々が亡くなっていて、あなた方は平静でいられるのですか。
  274. 堺宣道

    ○堺説明員 私どもといたしましては、そのときそのときに精いっぱいやってきたつもりでございます。  ただ、いろいろな御意見、御批判等あろうかと思います。それは今後の行政に生かしていきたいというふうに考えております。
  275. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 問題は、今後二度とあのような大規模なO157の被害をもたらさないようにすることであります。  そのための対策実施には、もとより人員を含めた体制だとか財政面の裏づけが必要であります。政府として、責任を持って取り組んでいくことを私は求めたいと思います。  そこで、まず何よりも求めていきたいのは、輸入検疫の抜本的強化です。政府は、これだけO157が問題になっているにもかかわらず、輸入食肉を初め輸入食品のO157検査を、輸入業者の自主検査ないしは輸入食品を通関させた後、任意に検査をするモニタリング検査だけにとどめています。これでは国民の健康を守るということにはなりません。私は、国による責任を持った検査を行い、結果がシロでなければ通関させない、本来の輸入検疫検査を実施するべきだというふうに考えます。厚生省はいかがですか。  あわせて、農林水産省にお伺いします。  生体牛の輸入は、現在も年間一万頭の規模で行われています。先ほどからもうさんざん言われておりますので、私はもうあえて人畜共通感染症に対するあなた方の問題を言おうとはしませんが、せめて輸出国に対して、この牛はO157に感染していない、そういう証明書を添付させるぐらいのことはやったらいかがですか。つまり、O157に感染していないという証明書がついたものでなければ受け入れられない、相手国にそれを求めるということぐらいはやったらいかがですか。  大臣、御答弁を願いたいわけです。
  276. 森田邦雄

    ○森田説明員 輸入食肉に関します病原性大腸菌O157の検査につきましては、平成八年の七月から、牛肉を輸入する営業者に対しまして、これは厚生大臣の指定検査機関、もちろん制度管理も十分行われている検査機関でございますけれども、そこにおいて、O157の自主検査をするよう指導してきております。  また、厚生省といたしましても、東京、大阪検疫所で採取した牛肉につきまして、横浜、神戸の輸入食品・検疫検査センターに送りまして、病原性大腸菌O157の検査を実施しております。  また、それと同時に、アメリカですとかオーストラリアのような牛肉の主要輸出国に対しましては、当該国において屠畜場における適切な衛生管理を行い、そして、病原性大腸菌O157の汚染防止対策をとるようにという申し入れも行ってきているところであります。  そういうことで、今後とも私どもといたしましては、輸入牛につきまして検査を行うなど、輸入牛肉の安全確保に努めていくこととしております。
  277. 中須勇雄

    中須政府委員 先生お話しのとおり、この話は、また再びもとの話というか、先ほどの話に戻るわけでございますが、現在、私どもが得ておる知見でございますと、O157については、牛の腸内に一部いる、ふん便の中から発見される例があるということは確認をしておりますけれども、それが牛の病気である、牛に疾病状態をもたらす、これについては知見がないわけでございまして、そういう意味では、私ども家畜伝染病予防法立場から検疫を行うということは、この点に関しては困難だというふうに思っております。
  278. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 言っていることに答えていないわけです。そういうことであったとしても、輸出国に対して、この牛はO157の感染はありません、そういう証明書をつけてもらって入れるということぐらいは相手国に求められるじゃないかということを言っているのです。当たり前のことしょう。そんなことさえも言えませんか。検疫を言っているのじゃないんですよ。私は今ここで検疫を言っているのじゃないんです。もうあなたいいですから。大臣、素人同士で考えましょうよ。  検疫でいうとそれはもう話はややこしくなる。私は、それでもあえて求めたいと思いますが、それを外して考えても、私の牛はO157には感染していません、そういう証明書をつけたものを入れるんだ、相手国にそのことを求める、それぐらいのことは、昨年九千人も出てきた患者、その中で何人も死んでいるという事実からも、この国の主権としてそれぐらいのことは言えませんか。  私は大臣に御答弁を求めています。
  279. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 証明書を求めるか、求めないかという問題ではなくて、食糧の安全性の問題については、これは極めて大事な問題でございますから、私は、就任早々この食糧の安全性の問題について事務当局に指示をいたしまして、調査費を九年度の予算に計上した、こういう経緯もございます。それだけに、この問題について非常に関心を持っておりますので、検疫の問題であるとか原産地の表示であるとか、いろいろそういう点の工夫はしていかなきゃならぬというふうに考えております。
  280. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 もう時間が参りましたのではしょりますが、私は、今度の問題が起こってから、つくづく屠畜場だとか食肉処理場の衛生管理の抜本的な強化ということを痛切に感じました。そういう点では、私はアメリカに輸出をしているという屠畜場も実は行きました。輸出をしていないという屠畜場にも行きました。そして、牛の解体も目の前で見てきました。そして、やはり、もっと食肉処理場の衛生管理を引き上げていかなければならない、そのためには大変なお金がかかってくると思いますけれども政府も相応の助成措置をとってもらいたいと思いましたし、それから、処理施設の中で、食肉の定期的なO157の検査を実施して、感染源の特定を進めてもらいたいということも痛切に求めておきたいと思います。  また、食品生産に使われている地下水も計画的に検査を進め、汚染が明確になった場合にはすぐにも消毒をするというぐらいの処置は、これはもう日々に行っていかなければいけないというふうに考えたわけでありますが、最後にこの問題について御答弁を求めて、終わりたいと思います。
  281. 中須勇雄

    中須政府委員 いろいろ御議論ございましたけれども、私どもとしては、現行の制度の枠内というか、そういう中で、家畜の伝染病の輸入防止ということについて最大限努力をしていくという気持ちでおりますので、どうかよろしくお願いをしたいと思います。
  282. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 時間が参りましたので終わります。私は、O157がこれほどまでに全国に広がったという政府の責任を肝に銘じていただいて、今後の取り組みを藤本大臣に求めておきたいと思います。  ありがとうございました。
  283. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、春名直章君。
  284. 春名直章

    ○春名委員 昨日、日本共産党としまして、乳価問題などで四点にわたって藤本大臣に申し入れもさせていただきました。  それで、肉用牛の飼養農家が、昨年二月の時点で、一年前より約一万五千戸減って十五万五千戸に激減をしている、酪農家も二千七百戸減って四万二千戸余り。それぞれ、十年前と比較してもおよそ半減になるという事態です。同時に自給率も後退をしています。なぜ、これほど急激に離農が続くのか。最大の問題は、農家所得が上がらないということが横たわっております。経営としてなかなか成り立たず、設備投資につき込んだ多額の負債が一向に解決されていかない。だから、息子さんが跡を継ぐと言ってくれたけれども、うれしいのか悲しいのかよくわからない、こういう声もあちこちで聞かされます。農家所得に結びつく価格政策決定的です。  そこで、昨年の加工原料乳保証価格が一キロ七十五円七十六銭に据え置かれたわけであります。これは、八五年の九十円七銭、これをピークに、そこと比較しても十四円三十一銭下がっております。今から二十二年前の一九七五年でも八十円二十九銭でした。二十二年前よりもまだ低い、そういう状況に今陥っています。  一方で、昨年は飼料が高騰を続けたために、これはお聞きしますが、搾乳牛の一頭当たりの所得は減少していると思うのですが、これを御確認いただきたいと思います。
  285. 中須勇雄

    中須政府委員 平成七年の生産費と八年の生産費ということに出てまいります、酪農の搾乳牛一頭当たりの所得ということで申しますと、全国でいうと、七年が二十六万一千六百二十六円、八年が二十五万五千百五十八円、こういうことに相なっております。
  286. 春名直章

    ○春名委員 二・五%減少しているという数字だと思います。これは、粗収入は多少増加したけれども飼料費などが増加をしたということが大きな要因として挙げられております。  そこで、この飼料価格の値上がりの問題ですが、これが酪農経営への打撃になっていることは間違いございません。配合飼料価格は、昨年七月から九月期をピークに値下げに転じておりましたけれども、この四月から六月期には再びトン当たり千六百円の値上げになる見通したということが伝えられております。  配合飼料価格安定制度による通常補てんが発動されるかどうかの基準価格は、前年度の第四・四半期の価格となっています。したがって、この四月からは、今の一―三月期の価格、つまり、トン当たり三万八千六百円が基準となると考えます。つまり、その価格水準までは通常補てんの対象とはならなくなる。伝えられているように、四月から千六百円値上げになりますと、その値上げ部分は通常補てんの対象とはなりますが、トン当たり三万八千六百円までは農家負担ということになると思うのですね。昨年一月から三月期の農家負担額はトン当たり三万一千六百二十一円、これと比べますと六千九百七十九円、約七千円近く農家負担がふえるということになるわけですが、これも間違いありませんね。
  287. 中須勇雄

    中須政府委員 ただいまの御質問に対するお答えについては、二点、ちょっと前提条件がございます。一つは、先ほどの酪農の収益についてのデータ、このとおりの数字なのでございますが、農林水産省の統計情報部が行っております生産費調査においては、これは、えさ代については、今お話しになりました補てんの制度は全く計算の中に入っておりません。したがいまして、実は、平成七年と八年と比べますと、八年はかなり大幅な補てんが農家に対して行われておりますので、その分を農家の手取り、もちろん、払った分もございますので、それを差し引きまして計上いたしますと、一頭当たり所得、一頭当たり家族労働報酬等見まして、ほぼ横ばいの水準というのが八年の数字だというのが第一点でございます。  それから二点目は、先ほどのえさ価格上昇の問題は、御指摘のとおりでございます。端的に申しますと、配合飼料価格は昨年の七月から十月の間がピークでございまして、それ以降二回にわたって低下をして、三月まで来ている。ただ、この間補てんが行われておりますので、見た目は、昨年四月以降徐々に階段を上って十月からは横ばいで来ている、こんな感じになっております。  そこで、実は、昨年の乳価算定の際、この八年度におけるえさ代をどの程度乳価の中で見込むかということを私ども考えましたときに、いろいろ関係方面の御意見を伺い、結局、実質的に農家が負担している額以上に上がると実は見込んで算定をいたしました。ですから、そういう意味では少し、これは別に、私どもの見込み違い、もう自然に起きることですから仕方がないわけでございますけれども、若干高くして見込んでおった、そういう経過がございます。  いずれにいたしましても、この四月からの加工原料乳保証価格算定する際には、四月以降の価格水準がどうなるか、これによって実質的な、補てんが行われるか行われないかを含めて、行われた場合には補てんされたものを含めて、その実質水準は、当然のことながら保証乳価の中に適切にその水準として織り込みたいというふうに思っているわけでございます。
  288. 春名直章

    ○春名委員 今回の乳価算定の上で、十分それをカバーし、入れていくということを検討するということでありますけれども、私がお話をいろいろ聞いておりますと、昨年についても、飼料価格上昇分を考慮に入れた算定にしたということもお聞きをいたしました。それで、酪農家の皆さんの一番の思いは、これから飼料代、これが高くついて、そして保証乳価据え置き飲用乳価に至っては昨年三円五十銭もこれは引き下げになる、これはメーカーとの関係ですけれども、なぜこのようなことになるのかという思いが、率直な声としてやはり寄せられているわけであります。  今のお話でもありますが、えさ代の値上がり分の、えさ代への補てんの分を加味をするというような問題や、それから、私がレクチャーをいろいろお聞きしますと、飼料代の値上がり分を上回って生産性がアップしているというようなこともよくお話しになります。しかし、私が非常に感じるのは、農家のそういう生産性のアップ、そしてコストの削減、こういう努力が目に見える形でやはりあらわれてこない。ここの苦しみというか、いら立ちというのが非常にあるわけです。  それで、一番最初に御質問された方が大臣に対してそのことを問うたとき、藤本大臣は、生産性向上メリット価格に反映することは理解できるということを最初におっしゃったと思います。昨年、二円九十三銭の隔たりを政治判断で埋めて据え置いたという説明が午前中にございました。逆に言えば、そこにはやはり私は、現実酪農経営の実態と余りにもかけ離れた算定の基準がある、そして結果的に、試算値を超えて据え置きをしなければならない現実がやはり背景にあるということでこういう政治決着がされたのではないかと思います。  そういう点で考えると、昨年の三月の当委員会での審議の中で、当時の大原大臣がこう述べていることは非常に注目できることです。「一般の営利法人でしたら生産性拡大部分は、労賃や配当、そしてあすの投資のための内部留保、」「さらに、消費者価格も下げなければならない。」生産性拡大した部分はそういうものに充てなければならない。「そういったことも、私は、これから農林省当局に研究してもらったらどうか」と考えている、「後ろで聞いている畜産局長はびっくりしているかもしれませんが、それぐらいのことは、やはりこれはもう生産をする人、営業する人の公理であります」ということを答弁をされているわけでございます。当時の農林水産大臣でさえそう言わざるを得ないほど、生産性拡大分が農家への還元アップという形で見えていないという事態があるわけです。  ですから、局長がびっくりするような答弁をぜひ大臣にもしていただきたいと思いますけれども、ぜひ算定方法の見直しということ、この一年間どう研究されたのか。例えば、都市勤労者並みの労賃を保障する価格に本格的に引き上げる問題、あるいは、ヘルパーの利用日数がふえてきているわけですからその増加を加味すること、こういったことについて本格的こ検討すべきではないかと思いますし、また、この一年間どうなのかということをお答えいただきたいと思います。
  289. 中須勇雄

    中須政府委員 酪農経営状況についてのお話がございましたが、先ほど、七年と八年の数字を私申し上げたわけでございますが、その前の六年の数字と比べてみますと、例えば、北海道の酪農家の一日当たり家族労働報酬でいえば、六年、一万三千四円、七年、一万五千二百七十三円ということで、六年から七年にかけて大幅な収益性の改善があったというのもデータの上からは紛れもなく見えるわけでございます。そして八年は、御指摘のとおり、若干生産費調査の上では下がっておりますが、えさの補てんを加えればほぼ前年水準が続いている、こういうことだろうと思います。  基本的に、もう一点の、コスト削減努力による生産性向上分、こういうものを酪農家の手元に残るようにすべきではないかという御議論につきましては、基本論としては、私どもは法律に基づいて、加工原料乳不足払いの保証価格については、加工原料乳地域の生乳の再生産を確保することを旨とし、酪農経営の合理化促進に配慮をして決定せよ、こういう法律の規定に基づいて定める、これが基本論だと思います。  ただ、もちろん、具体的な個々の年度における保証価格算定当たりましては、そのときの状況に応じましていろいろ、これも細かく述べると切りがございませんけれども生産性向上メリットの一部を酪農家段階にとめ置くための算定上の配慮は、既に過去においても行われているというのも実情でございます。
  290. 春名直章

    ○春名委員 前大臣自身がそういうことも言っておられるわけですから、ぜひ御検討を真剣にいただきたいということをつけ加えておきます。  それで、もう一つの大きな柱で、加工原料乳保証価格は据え置かれたわけですが、飲用向け乳価が、メーカーとの交渉の結果で、全国平均で昨年は三円五十銭引き下げられております。  私どもは、二日前ですか、栃木県の大田原市の酪農家を訪ねまして実情を聞いてまいりました。こう言うのですね。今やメーカーから生産者に支払われる乳価はキロ七十九円五十九銭にまで下がってきている、加工原料乳保証価格に近い水準になりつつある、えさ代の高騰と相まって大幅な減収になっています、にもかかわらず、メーカーからは、ことしさらに三円程度の引き下げ要求が出されている、一体どうしたらいいのかという声でありました。  加工原料乳保証価格の推移と比べましても、その下がり方は酪農経営の実情から離れているぐらいのひどいものであります。  本日の日本農業新聞では、局長自身が、このメーカーとの交渉のことで、交渉を対等、平等に行う条件整備としてやることはいろいろあるというようなことを言われたということが報道されておりますけれども、私は、こういう酪農への展望を奪うような結果を見過ごすべきではないと思います。ぜひ適切な対応を強力にしていただきたいというふうにお願いしたいわけですが、この点はいかがでしょうか。
  291. 中須勇雄

    中須政府委員 確かこ、昨年の場合、加工原料乳保証価格については据え置いた、据え置きということに相なったわけでございますが、その後の飲用乳交渉の中で、全国的には三円五十銭から五円の引き下げということが行われた。それともう一つ、昨年の場合は、特別の要素ということになるのだと思いますけれども、全酪連の事件がございまして、全酪連へ飲用牛乳の原料乳を主として納めておられた組合なり団体の中では、全酪連自体が牛乳を引き取れなくなったということで大変あちこち行き先を求めて御苦労され、あげくの果てに大変安い価格でやむを得ず売らざるを得なかった、そういうことが、これは一定の地域でございますが重なりまして、かなり都府県の酪農家で大幅な手取り減ということになったというのは、御指摘のとおりだろうと思います。  そういう意味におきまして、ことし、現在、加工原料乳保証価格についていろいろ議論を私どもも承っておりますが、各方面から、その辺のバランスをどう考えるのかというような御意見が寄せられているというのも事実でございます。  ただ、基本的に飲用乳価の問題につきましては、これは言うまでもございませんが、ある一つのものについて買う者と売る者、その間の対等な交渉の中で実現、交渉で決着をするもの、こういう基本的な性格でございますので、行政がその価格交渉に介入をするというふうな性格のものではないと思っております。  ただ、私どもがいつも申しておりますのは、飲用乳価の交渉が対等なものになるように、条件整備と言うとおかしゅうございますが、特に都府県におきます余乳の処理の問題であるとか、あるいは指定団体の強化というか、指定団体の側の強化というんでしょうか、そういうふうな部分については、私どもとしてもお手伝いをする部分があるのではないか、適正な価格決定に向けて。そういった意味お話を申し上げているわけで、やはり価格そのものは民間の交渉によって決まる、こういうことだろうと思っております。
  292. 春名直章

    ○春名委員 そのお手伝いを強力にぜひやっていただきたいというふうに思うのですが、特に最近では、皆さんも御承知のように、量販店での牛乳を目玉商品に仕立てての価格破壊的な安売り、こういうものがあちこちでやられて、生産者価格の値がたたかれるという状態が出ております。生ものなので保管がきかない牛乳の生産者はもともと弱い立場にありますから、一層販売者の主導権、メーカーの圧力が強まる。力関係でいえば、先ほどお話あったように、生産者側は非常に弱い立場に置かれているというのが実態だと思います。  そこで、先ほども質問が出ましたけれども、弱い立場を一層弱体化しかねない問題ということで、指定生乳生産者団体制度の見直し問題は、私はそういう問題として見なければならないと思います。行政改革委員会の昨年十二月の報告に盛り込まれているものでありますけれども、一県一団体の指定団体制度が崩されるということになりますと、生産者側の交渉力は一段と弱まるということは確実だと思います。そういう方向に推進すべきではありません。生産者団体立場を弱くする見直しはすべきではないと思います。この問題は、ぜひ農民立場を十分踏まえて、その利益が損なわれないように考えていただきたいと思います。  先ほどの答弁の中で、生乳流通の広域化もある、そういう問題も見て、ブロック化というようなこともいろいろ検討するということが言われておりますが、生産者団体立場を強くするという角度から、しっかり腰を据えてそういう方向に進んでもらいたいというように思いますが、大臣の見解を伺いたいと思います。
  293. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 指定団体制度のあり方につきましては、規制緩和小委員会の報告を踏まえまして、指定生乳生産者団体制度の在り方に関する検討会を昨年の十二月に設置をいたしました。この検討会で今検討を進めておるところでございまして、今後、検討を重ねた上で、ことしの夏ごろを目途にこの検討会の取りまとめを行おう、こういうことを考えておるわけでございまして、十分に検討させていただくことになると思います。
  294. 春名直章

    ○春名委員 終わりますが、生産者団体立場を強くするというしっかりした立場で頑張っていただきたいと思います。  以上で終わります。
  295. 石橋大吉

    石橋委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
  296. 石橋大吉

    石橋委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。春名眞章君。
  297. 春名直章

    ○春名委員 私は、日本共産党を代表しまして、家畜伝染病予防法の一部改正案に反対の討論を行います。  輸入動物検疫については、エボラ出血熱、病原性大腸菌O157などの人畜共通感染症への対応の強化や野放し状態のペット検疫の対応など、家畜動物の検疫強化だけにとどまらない課題が山積しております。このような状況のとき、輸入動物検疫を強化するのではなく、SPS協定に基づくハーモナイゼーションに応じて、逆に輸入動物検疫の対象疾病を狭め、人畜共通感染症と指摘されているような家畜伝染性疾病を輸入動物検疫の対象から外すようなことは到底認められません。  現在、家畜以外のペットを含む動物は無検疫で輸入されていますが、人畜共通感染症の感染動物として被害を与えることが明らかになっている以上、無検疫で輸入されることを放置することが許されないことは言うまでもなく、先進国では日本だけであります。  これに対して、今回の家畜伝染病予防法改正では、SPS協定のハーモナイゼーションに応じて、輸入動物検疫の対象をこれまでのすべての伝染性疾病から監視伝染病と新疾病に限ることにし、それ以外は対象から外すことにし、病原体輸入についてのみ監視伝染病以外の伝染性疾病のうち公示されたものを届け出にするということにしました。  その結果、人畜共通感染症として早急に対策を立てるべきものとされているうち、家畜に関連するリステリア症、病原性大腸菌感染症などなどが輸入動物検疫から外されることになります。これは国内畜産への影響とともに、国民の健康への影響をもたらすものであり、認めることはできません。  家畜の伝染性疾病の病原体輸入については、今回、既に知られている家畜伝染性疾病の病原体のうち公示されたものについては、輸入禁止・許可ということから届け出で輸入できることになり、人畜共通感染症の病原体の国内散逸の危険性を増すことになり、認めることはできません。  今回の改正案が、獣医師に新疾病の届け出義務を課することによって新疾病の対応を確立したことは評価できます。しかし、今回の改正で、国内の予防体制の対象家畜伝染性疾病を家畜の伝染性疾病から特定疾病または監視伝染病に範囲を制限するとともに、ブルセラ病など三疾病の検査義務を廃止することは賛成することはできません。  家畜伝染病の範囲の変更で、狂牛病を新たに指定することは重要なことではありますが、そのことだけをもって、これまで見てきたような法案の問題点が多々あることを捨ておいて、法案全体に賛成することはできません。  以上、討論を終わります。(拍手)
  298. 石橋大吉

    石橋委員長 これにて討論は終局いたしました。
  299. 石橋大吉

    石橋委員長 これより採決に入ります。  家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  300. 石橋大吉

    石橋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
  301. 石橋大吉

    石橋委員長 この際、本案に対し、松下忠洋君外五名から、自由民主党、新進党、民主党、社会民主党・市民連合、太陽党及び21世紀の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。提出者から趣旨の説明を聴取いたします。北村直人君。
  302. 北村直人

    ○北村(直)委員 私は、自由民主党、新進党、民主党、社会民主党・市民連合、太陽党及び21世紀を代表して、家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   畜産は、我が国農業の基幹的な部門として重要な地位を占めるとともに、動物性たんぱく質の主要な供給源として国民の食生活の向上に大きく貢献している。   よって、政府は、本法の施行に当たり、家畜の伝染性疾病による被害の大型化、狂牛病等の新たな疾病の発生などの状況に対処し、より効果的かつ効率的な家畜防疫制度を構築するため、左記事項の実現に万遺憾なきを期すべきである。       記  一 狂牛病等プリオンが原因で発生する家畜の伝染性疾病は、家畜に甚大な被害をもたらし、畜産業に大きな打撃を与えるのみならず、人にも危害を及ぼすおそれがあることから、その発生メカニズムの研究及び防疫方法の確立に全力を尽くすこと。また、今後とも、引き続き、牛、めん羊等の肉骨粉等を牛、めん羊等の飼料原料として用いないよう指導すること。  二 病原性大腸菌O-一五七による被害の発生・伝播を防ぐための措置の一環として、と畜場、食肉センター等における衛生管理の徹底を図ること。また、安全な畜産物を国民に供給するため、政府は、HACCP方式の導入を推進すること。  三 家畜の防疫体制に万全を期すため、動物検疫所及び家畜保健衛生所の機能の充実を図るとともに、防疫対策を強力に推進すること。また、獣医師の家畜の伝染性疾病の予防に果たす役割の重要性にかんがみ、新疾病等に関する知識・情報についての研修等による一層の資質の向上等に努めること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  303. 石橋大吉

    石橋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  松下忠洋君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  304. 石橋大吉

    石橋委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣藤本孝雄君。
  305. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 ただいま御決議いただきました附帯決議の趣旨を尊重し、今後、最善の努力をいたしてまいります。
  306. 石橋大吉

    石橋委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  307. 石橋大吉

    石橋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     〔報告書は附録に掲載〕
  308. 石橋大吉

    石橋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十八分散会