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1997-02-20 第140回国会 衆議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月二十日(木曜日)     午前九時開議  出席委員   委員長 石橋 大吉君    理事 原田 義昭君 理事 松岡 利勝君    理事 松下 忠洋君 理事 山本 有二君    理事 北村 直人君 理事 久保 哲司君    理事 小平 忠正君 理事 藤田 スミ君       植竹 繁雄君    金田 英行君       亀井 善之君    川崎 二郎君       瓦   力君    木部 佳昭君       熊谷 市雄君    栗原 博久君       実川 幸夫君    丹羽 雄哉君       牧野 隆守君    村岡 兼造君       目片  信君    茂木 敏充君       井上 喜一君    一川 保夫君       木幡 弘道君    佐々木洋平君       城島 正光君    菅原喜重郎君       仲村 正治君    宮本 一三君       矢上 雅義君    安住  淳君       鉢呂 吉雄君    春名 直章君       前島 秀行君    堀込 征雄君       石破  茂君  出席国務大臣         農林水産大臣  藤本 孝雄君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      堤  英隆君         農林水産省経済         局長      熊澤 英昭君         農林水産省構造         改善局長    山本  徹君         農林水産省農産         園芸局長    高木  賢君         農林水産省畜産         局長      中須 勇雄君         農林水産省食品         流通局長    本田 浩次君         食糧庁長官   高木 勇樹君         林野庁長官   高橋  勲君         水産庁長官   嶌田 道夫君  委員外出席者         外務省アジア局         北東アジア課長 別所 浩郎君         農林水産省経済         局統計情報部長 遠藤 保雄君         農林水産委員会         調査室長    黒木 敏郎君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十日  辞任         補欠選任   野呂田芳成君     目片  信君   村岡 兼造君     茂木 敏充君 同日  辞任         補欠選任   目片  信君     野呂田芳成君   茂木 敏充君     村岡 兼造君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件等農林水産業の  基本施策)      ――――◇―――――
  2. 石橋大吉

    石橋委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件等について調査を進めます。  農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本有二君。
  3. 山本有二

    山本(有)委員 自民党部会の中で一番人数が多く、また活発な議論が行われておりますのが、私の目から見ますと農林水産部会であろうというように思います。いわば自民党活力であり、また党が元気であるのもこの農林水産部会であろう、その源泉あってこそ今の自民党の勢力が維持できておる。ほかの党に参りましても、また農林水産関係部会が大変活発であるように思います。私のこうした観点から、実はこんなことを思っておるわけでございます。  農業は、産業としては衰退の一途でございます。耕地面積も下がりました、農業人口も減りました。けれども、やはりそこに、日本人の物の考え方の中に、農業の大切さを守っていくというものがあるのではないかというように思っております。  近代政治思想史を著して戦後政治学基礎を築いた丸山真男さんの著書の中に、西洋民主主義、特に議会制民主主義日本では西洋諸国のように完全に定着することができない、なぜかとずっと問いただしていくと、そこに古層という日本独特の、意識の中にあるいは無意識の中に古層というものがあるから日本人西洋文化外来文化をそのまま受け入れることができないんだ、また、言葉を変えて言えば、外来文化日本流に変えてしまって消化吸収してしまう、こういうことが書いてあります。その古層とは、古い地層の層と書きまして古層と呼びます。晩年の丸山真男政治学の探究の目標はそこにあった、こういうことも言われております。  私は、政治家として五年以上たちました。そのことを考えながら、政治、特に議会活動選挙運動をしてまいりまして、その古層とは何だろう、こう考えたときに、それは日本人米作文化から学んだ物の考え方がいわゆる古層ではないか、ほかの国にはない、米をどうやってつくるかということが、終局的に三千年の歴史の中から抜きがたい発想になってきているのではないかというように思います。  例えば、日本人幸福観の中に、努力すれば報われる。そしてその努力というのは、一ところで一生懸命に頑張る。これは土壌改良が容易にできないすきとくわの時代に、深く耕すことによって生産性を向上させるということに気づいた民族だけが持てる幸福観ではないかというように思います。いわば、そうした日本人日本人であることは米作から来ている、米づくりから来ているというように思うわけでございます。  そこで、この日本人の共感を得るためには、政治家も、農林あるいは米作文化というものを体得し、そしてこのことを十分理解しておかなければ、逆に政治的リーダーになれないということになろうかと思います。いわば、戦後、農林大臣経験者農林政務次官経験者日本政治の主要な地位を占めてきたということは偶然でなくて、私はそのことに、いわゆる丸山真男政治思想の中の古層にこの淵源を発するのではないかというように思います。藤本大臣にもそのことをお伝え申し上げ、先生になお頑張っていただきたい、こう思う次第でございます。  そこで、この古層を形づくる米作についてお伺いいたします。  今や米作は風前のともしびだ、こう言われております。特に、何も苦労して米をつくることはないじゃないか、よそから輸入して安い米を食べれば生活もより豊かになる、エンゲル係数が減って豊かになる。あるいは、減反政策生産調整せずに、転作もせずに、奨励金も出さずに完全自由化してしまえば、財政負担もなくて、計画外流通が勝手に謳歌して、市場経済原則でやがて逢着するところに逢着するだろう、こういうような議論もございます。  我が高知県の知事さんもそのような趣旨発言であるととらえられた向きもございますが、「減反に県は関与せず」、一月一日の年頭所感で申しました。この記事をよく読んでみますと、新食糧法趣旨生産流通も自由だと知事はおっしゃっておられて、しかし、面積割り当てなどの一定事務作業はやはり県はやる、こういうわけでありますから、それほど生産調整に真っ向から反対というほどのものではないにいたしましても、この発言によって、マスコミあるいは各界各層人たちは縦横に生産調整批判論を展開することになりました。  その意味で、今現在、この生産調整減反に向けられている批判、それについて大臣がどう思われるか、さらに、今後日本農政はいかにあるべきか、大臣の御所見、お考えをお聞かせいただきたいと存じます。
  4. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 冒頭に我が国農業に対する文化論お話がございまして、私も、日本民族はまず農耕民族でございますし、土の文化が源であるというふうな認識を持っておりまして、委員と全く同じ認識でございます。  それから、減反の問題につきましては、御承知のように今米の生産については需給ギャップが三百万トンある、需要に対して生産ま三百万トン多いわけでございまして、この三百万トンの需給ギャップがある以上は、米価の適切な価格、また安定的な供給という観点からいたしますと、生産調整は必要であるというふうに考えておるわけであります。そういう観点から、平成八年度から三年計画政府は今生産調整を実施しておるわけでございまして、この政策は三年間続けていくということがまず我々の基本的な考え方でございます。  それから、この生産調整に対していろいろな考え方があるということは私も承知いたしておりますけれども、この生産調整は主体的には生産者が行う、これは第一義的にはそうだと思います。しかし、農家が三百万戸もある、こういう現実からいたしますと、農家だけで生産調整というものが現実の問題として実施できるかというとそれは非常に難しい。そういうことからすると、行政助言をしたり指導したりということが必要になってくるわけでありまして、この生産調整に対して行政一定役割といいますか、そういう指導といいますか助言をするということは必要であると思います。私どもといたしましてま、この生産調整必要性については、消費者のためにも生産者のためにも必要なことである、そのような認識のもとに今実施をしておる次第でございます。  それから、これからの農政方向についてのお尋ねがございましたが、やはりこれからの農業の一番の基本的な目標といたしましては、他産業並み所得、他産業並み労働時間。生産性が他産業と比べまして低い、生産性を上げていくということについては、非常に、農業の持つ特性からいたしますと、他産業に比べて競争力が難しい、厳しい点もあるわけでございますが、これからの農政方向としては、少なくとも年間千八百時間から二千時間、また生涯所得が二億円から二億五千万円という他産業並み所得労働時間を確保できるような、そういう経営体が中心となるような農業構造、こういう農業構造に持っていくということがこれからの農政基本的な方向である。それによってまた我が国農業自給率も上がっていくというふうな考え方を持っておるわけでございまして、今後ともそういう考え方のもとにいろいろな施策を推進していきたいというふうに考えておる次第でございます。
  5. 山本有二

    山本(有)委員 どうもありがとうございました。  公共事業アゲインスト論が華やかでございまして、特に、本日の朝日新聞の社説などには「農家のためになる農業予算を」こういう見出しで「ラウンド対策費の約六割が、農業農村整備という名の公共事業だ。」「消化に苦労しているのが実態」だ。さらに、農業体質強化といいながら温泉ランド郷土資料館建設、こういったものが行われておる。また「富山県庁では、増えた農業予算を消化するため、カラ出張で金をつくり、それを職員に配っていた事実が明るみに出た。」というようなこと。さらには、最後には「農業関係公共事業の追加は、土建業者を太らせるだけとの批判が出てくるゆえんだ。」非常に手厳しい農業予算についての見解が最近多いわけでございます。  しかし、公共投資はまだまだ不足しておりまして、下水道は欧米の約半分、公園は十分の一、高速道も半分しかできていない、こんな段階公共事業が全くだめであるというようなことはちょっと国民には逆に気の毒な感じもあります。また、モンスーン地帯火山国である日本では災害が多いわけでありまして、公共事業が全くだめだというのは建設コスト等々から見ましても実情にふさわしくない話でございますが、こういった点、構造改善局長、今からこの公共事業を推進するためには、局長の自信とそれからこういう批判を喝破するだけのいわば反論が局長の中になければならない、こう思いますけれども局長にその見解決意をお伺いさせていただきます。
  6. 山本徹

    山本(徹)政府委員 ただいま先生御指摘のように、国際化の進展に対応できる効率的な農業の実現と、またこれを支える活力のある農村社会の確立を図るためには、その基礎的条件でございます圃場の大区画化、またかんがい排水施設整備等農業生産基盤整備、これとあわせて、都市に比べて立ちおくれております農村生活環境整備集落排水や農道または農村公園等整備、こういったことが大変重要であると考えております。  こういった考え方で、私どもは、農業農村整備事業の内容が現在の農業農村実情やまた課題、要請に本当に即したものになるように、毎年の予算の要求の段階で見直しを行っておるところでございまして、具体的に申し上げますと、平成九年度の予算案におきましても、農業生産基盤整備につきましては、担い手の育成に役立つように農地を担い手に集積する活動と一体となって生産基盤整備を実施する圃場整備事業への予算重点化、また生活環境整備については、集落排水事業予算の拡充やまた中山間総合整備事業というのがございますが、これは中山間集落道路また飲用水整備等でございますけれども、こういった事業採択要件を改善する、また事業集中化重点化を図るというようなことに努力をしたところでございます。  またあわせて、公共事業効率化というのは現在の大きな時代要請でございますので、昨年十二月には公共事業コスト縮減のための行動計画を策定いたしまして、さらに平成八年度中にはコスト縮減具体的目標を設定した事業別コスト縮減計画を策定することにいたしております。  またあわせて、本年一月こま、公共事業コスト縮減関係閣僚会議が設けられましたが、この中で、これからより幅広い観点からのコスト縮減事業効率化のためのいろいろな新しい工夫に取り組んでまいりたいと思っております。
  7. 山本有二

    山本(有)委員 ありがとうございました。  食糧庁長官にお伺いしたいと思います。  現在、自給率カロリーベースで四二%、こういう時期に一〇〇%自給できるのは米だけでございます。そう考えると、米の自給というのを一〇〇%に維持することの大切さ、それは、私が冒頭述べました米作文化論日本人日本人たるゆえんは米で、米をつくるからだというような考え方のもとには、大変ありがたい政策があったから今日自給一〇〇%になっただろう、こう思っております。しかし、これを市場経済主義に任せてしまいますと、およそこの自給一〇〇%は無理だろうと考えますが、食糧庁長官、今後この計画外流通米を認めたことは、高知県知事がおっしゃるように市場流通も自由にするということによって、いわば強い農業をつくるかもしれませんが、果たして自給率が一〇〇%維持できるかどうかわからないという状況にもなりかねないという危険もあろうと思います。  そこで、食糧庁長官に、今後新農政下での計画 外流通米を認めることによってこの自給との関係、それをお聞かせいただきたいと思います。
  8. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 お答え申し上げます。  先生お話ございましたように、米はまさに国民の主食としての役割、それから農業生産でも重要な位置を占めております。その需給価格の安定を図るということが極めて重要でありますし、一昨年の十一月に施行されました食糧法でも、そういった考えのもとに、市場原理を生かしながらも、適確な米の需給見通しを立て需給調整を適切に行うということで需給価格の安定を図るということを大目的にしておるわけでありまして、計画外流通米もそういう意味で米の流通の中では大きな一つの位置を占めてはおりますけれども、私ども、いわゆる生産及び出荷の指針とか米穀の需給及び価格の安定に関する基本計画、こういうものをきちっと立てまして公表するということ、さらには生産調整をきちっと推進をしていく、また豊凶変動に備えた備蓄、調整保管を適切に行うといったようないろいろな施策を今後ともきちっと実行していくということによりまして、今先生が懸念されたような事態は回避できるというふうに  私ども考えておるところであります。
  9. 山本有二

    山本(有)委員 次に、私の選挙区、高知県第三区、ここには六〇%、日本ショウガ生産の作付がございます。昨年の今ごろは値崩れで、ショウガ農家はもう来年からショウガをつくることをやめよう、こう考えておりました。しかし、中国からの輸入を何とか緩和できないかという農林水産省考え方のもとに、中国との二国間交渉をやっていただきました。高木農産園芸局長本田食品流通局長のおかげさまをもちまして、いよいよその成果が上がり、協定を結ぶことがほぼでき上がったと聞いております。そのことに関しまして、やっと高知県のショウガ農家も安心し、また価格も安定してきたわけでございまして、今後ひとつ、なおの御指導や、また御努力をお願い申し上げます。  最後質問でございます。  水産庁長官にお伺いいたします。  去年の三月二十二日、与党三党、自民党、社会民主党、新党さきがけで、「国連海洋法条約批准に伴う日韓日中漁業協定の取扱いについて」の覚書がございましたが、特に本年中、平成八年中に日韓漁業協定改定方針合意を得ることを基本として、「一年以内を目途に交渉を進めるものとする」、こういう大きな合意がございました。これに基づいて考えれば、もうそろそろ、来月三月でございまして、この日韓漁業協定日中漁業協定、この二つについてほぼ方針が固まりつつあるだろうというように思います。  また、昨年の五月には、当委員会における附帯決議でも、もしできなければ必要な措置をとる、こういう力強い御決議もいただいております。  そこで、水産庁長官にお伺いいたしますが、現状のこの交渉の推移、さらに、もし、場合によっては三月二十二日過ぎてもまとまらなければ、いよいよこれは現協定を破棄して頑張ろうという決意がおありになるかどうか、そこをお聞かせいただきたいと思います。
  10. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 本年一月から、漁獲可能量制度、いわゆるTAC制度も導入したわけでございますが、このTAC制度に基づきます適切な資源管理を行うという観点からも、今言われましたように、国連海洋法条約趣旨を十分に踏まえました新たな漁業協定を韓国、中国との間でもって早期に締結されることが必要であるというふうに考えておりまして、現在鋭意協議を行っているところでございます。  政府といたしましても、昨年の与党三党からの申し入れにつきましては非常に重く受けとめておりまして、またこれまでの議論を十分に踏まえまして、新たな漁業協定の締結に向けまして、残された期間、今後最大限努力していきたいというふうに考えております。
  11. 山本有二

    山本(有)委員 どうぞしっかり頑張ってください。  以上で終わります。
  12. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、栗原博久君。
  13. 栗原博久

    栗原(博)委員 ただいまの山本先生からの大変文化論の高尚な御質問に比べまして、ちょっと私は俗っぽい質問になるかもわかりませんけれども、お許しいただきたいと思います。  ウルグアイ・ラウンドが発効してからもう三年を経過しようとしているわけでありますが、世界の過剰の農産物を防ごうという観点もあったでしょうし、あるいはまた、各国の輸出補助金とか輸入障害あるいは過度の国内支持などを排するということで、このウルグアイ・ラウンド合意というものが果たされてきたと思うのです。私は、それでもやはり、国内農業が他の産業のいけにえになったという感じをまだ持っております。  その中で、このウルグアイ・ラウンドが、一九八六年九月のラウンド開始以来幾多の年数を経て、一九九三年の十二月、ドゥニ調整案でその合意の成立が十二月の十五日になされたわけであります。その日、私も、今こっちに並んでおります松岡先生松下先生、あるいはまた原田先生などと一緒に国会議事堂の前に立って反対反対と叫びながら、あるいはまたスイスまで飛んで、国内農業の将来に本当に責任を持てる施策ということで、果たしてこれが正しいだろうかということを問い詰めてまいりました。  平成五年の十二月十七日には、閣議了解で、「我が国の今日の繁栄がガットの自由貿易体制の枠組みによってもたらされている」という、この中で、やはりこのウルグアイ・ラウンドはどうしても国際的使命の中で合意を受けざるを得ないというようなことで、それには、農業に携わる人たちへの影響最小限度に食いとめ、あるいはその不安をなくして安んじて営農にいそしむことができる、そういうことで閣議了解を得て合意が果たされていると思うのであります。  特にこの中で米につきましては、「米のミニマム・アクセス導入に伴う転作強化は行わない」、この言葉農家方々は、ああ、生産調整は余り考えないでもいいんだなという感じも持っておる。しかし、実際、さらなる転作生産調整農家は強いられておるわけであります。  あるいはまた、国境措置の中で乳製品とかでん粉、これらに対しても最小限度影響で食いとめようとか、あるいはまた、特に土地改良等については、担い手の確保を含めながら農家負担の軽減をやって、大区画整備を積極的に推進して経営体を育成する、そういう名文句閣議了解対策項目で出しておる。  あるいはまた、農家に対しましても農村に対しても、やはり就業機会を確保するようにしなければならない、あるいはまた、環境を保全するということで、住みやすい活気ある農村をつくるというようなことを閣議了解で示されておるわけですね。  また、総理本部長とする緊急農業農村対策本部では、平成六年の十月二十五日に、「農業を誇りを持って携わることのできる魅力ある産業として確立すること。」そしてまた、「国土資源有効利用により可能な限り国内生産を維持・拡大し、国内供給力を確保すること。」あるいは、「消費者に対する良質・安全・新鮮な」云々、まあこれは、「適正な価格水準での安定供給」をやるという、あるいはまた、住みよい活力に満ちた農村をつくるということで――それも緊急ですからね。緊急農業農村対策本部ということで、ウルグアイ・ラウンド大綱が出ておるわけです。  さて、それから三年を経過している今日、果たしてこの閣議了解、あるいはまた総理を初めとする対策本部長名によるこの大綱に沿ったラウンド国内施策がされたかどうかとなると、実は私は大変疑問に思っております。  特に最近マスコミ等でも、六兆百億、六兆百億と言う。何か六兆百億を農家に与えたような感じが免れないですね、そういう表現では。今、国内専業農家は四十二万七千戸、そして農家は三百四十三万戸だと言っております。六兆百億ですから、それを単純に割ると、例えば普通農家であっても、単純に割ってみると一戸約二百万近い金に なるわけですね。いや、二百万なんかもらった覚えない、全然恩恵がないと農家はおっしゃっておるわけですね。  特にまた、とのウルグアイ・ラウンドで一番何を求めたか。私は、やはり農業が犠牲になるということだと思うのです。では、それによる負荷、マイナスの面をどのようにこのラウンド対策で補うか.そういう明確な計画性もなかったのじゃなかろうかと実は私、今思っておるのですよ。  それで、六兆百億といっても、実際問題、国費はこの六年間で二兆八千億ですから、それが六兆百億、六兆百億といつの間にか飛んでおるものですから、都市部の非農家方々からも、なぜ農家に、農業にこんなに金を投ずるのかというような、やはりそういう間違った解釈もされております。大臣おられますので、ぜひひとつこういう間違った解釈がされないように、純粋に国費は約二兆八千億ですから、これを国民に明確にコンセンサスを得るように、まず一つお願いしたい。  それから、このウルグアイ・ラウンド対策の中で、私は、スーパーL資金とかあるいはまた負債整理の借りかえ、こういうものが、この表を見ますと、融資枠、例えば六千億が三年度にはもうゼロですから、当初だけは三百四億ですか、これは利子負担だと思うのですが、もう全然、二年三年後、がたっと下がるわけですね。負債経費負担というのは当初年度が大事なんだ、当初年度が。それを六年間なんて。最初の一年度に農家救済をやらなければならぬ。  農林省の方は頭のいい方々ですから、本当に農家のことを思っていろいろ計画されていますよ。しかしそれが、地方自治体とか、また各県あるいは市町村へ行くと、昔の、旧態依然の貸付要綱融資要綱があるわけですね。それに準じていろいろやるわけだから、実際それを実行しようとなりますと、またもちがありますが、そのぼたもちを食べる方法をみんな途中の行政機関が、いや、あの協議だこの協議だとか、いろいろ要らないことをどんどんとやるものだから。やはり負担軽減は緊急ですから、余り従来の要綱などはこだわらないで特急列車で貸し付けするように、そういう制度にしていただかなければ、このラウンドのものは絵にかいたもちだと思うのであります。  こういうことについて、ウルグアイ・ラウンド合意による対策の進捗状況、そして今後に対する大臣決意をひとつお聞きしたいと思います。
  14. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 今委員から御指摘がございましたように、ウルグアイ・ラウンド対策というのは、農業合意に伴いまして、前例のない国際化の波を我が国農業農村は受けるわけで、それに対して足腰の強い農業農村をつくっていくということを考えて、基本的には、先ほども言われましたように、生産力の持続強化であるとか、また国民に対しての安定的な食糧の供給であるとか、活力のある農村建設であるとか、そういう基本的な考え方のもとに、農業の構造対策農業生産対策、また農山村対策、こういうことを柱としてこのウルグアイ・ラウンド対策というものが決められた、こういう背景がございます。  この六年間の期間中に、六兆百億のお金を使ってしっかりした日本農業を築いていく。これは国会での決議もございますし、政府与党が責任を持って決めてきた、こういう経緯もあるわけでございます。  今いろいろ言われました、ラウンド対策費が非常にむだがあるとか、またあるいは一面有効に活用されていないのではないか、こういうことについては、私ども十分にこれからも意を用いて適切に遂行していかなければならぬと思っております。特に三年目を迎えておるわけでございますので、今後の問題としては、地域の要望、ニーズに的確にこたえていく、こういうラウンド対策が非常に大事であろうというふうに考えております。  なお、詳細の問題につきましては政府委員から答弁させます。
  15. 熊澤英昭

    ○熊澤政府委員 お答え申し上げます。  先生の方から融資の問題について言及されましたので、ちょっと補足して御説明申し上げますけれどもラウンド対策負債対策として、融資枠として六年間で六千億円の枠を設定しておりまして、そういう意味では毎年一千億円の融資枠を設定しているわけでございますが、その中では、負債の負担の軽減といわゆるスーパーLの枠等を用意しているわけでございます。  先生が御指摘になりました、初年度国費が投入されてその後減っているということでございますが、これは初年度、二年度におきまして、利子補給に相当します部分の国費を当年度と二年度で投入したということでございまして、それを運用いたしまして、六年間で六千億の融資枠として、枠としては活用していただくということでございまして、現在、負担軽減資金、これは五百億でございますが、四百五、六十億の融資の需要がございます。  また、スーパーしにつきましては、ウルグアイ・ラウンド対策での枠と本予算での枠と合わせまして七百億の枠に対しまして、実際には八百五十億程度の融資の需要があるということでございますので、まだまだ県によって取り組みがおくれているというところもございますけれども、全体としては活用されている。今後さらに一層活用されるように努力してまいりたいと思います。  また、申請手続の迅速化ということもございます。  申請書類の簡素化その他につきまして改善をいたしたつもりではございますけれども、今後ともそういった点にも十分配慮しながら本資金の活用について努めてまいりたいというふうに考えております。
  16. 栗原博久

    栗原(博)委員 御説明はわかりました。  それで、私は、やはりこのウルグアイ・ラウンド対策につきましては、今までの予算枠を事業内容を変えても本当に適用できる、農家が本当に求めるものを優先的にしていただきたいということ。ウルグアイ・ラウンド対策は、農家方々の目に見えるものです。目に見えるものとしてそういうものもひとつ考えてほしい。あるいはまた、米の作物の代替は何をするか、そういうことについても、明確に農家から、ああ、日本農林省は大したものだ、そう言われるような施策をつくっていただきたいということをひとつ申し上げたいと思います。  そういう中で、特に圃場整備。大型区画にしまして農業をやりやすい、そして経営が向上するということで、私は農林省のお考えの圃場整備に実は大変称賛を申し上げたいと思うのであります。特に近年、非農用地の創出による地域の活性化。要するに、新しい圃場整備によりまして、換地の手法などを活用していろいろ公園とか住宅地とか道路について、ぜひ積極的にこの点を生かして、農家方々の実際の負担にならない中で生産性の向上する農地をつくっていただきたいと思います。  あるいはまた、問題は耕作放棄の土地が全農地の五%、約二十五万ヘクタール近いものが大変発生しているわけですから、これもやはり圃場整備を積極的に進めていただいてこういうものをカバーする。特に我が国は農地が不足しているわけですから、日本の食糧を全部自給するのに約千七百万ヘクタール必要だ。国内にはたしか五百万ヘクタールぐらいしかないわけですから、やはり国内の農地を創造することも大切だと私は思いまして、その点についてぜひひとつよろしく推進していただきたいと思います。  時間がございませんので、国有林のことについてちょっとお聞きしたいのであります。  我が国の森林行政は、ただ森林の収支、また国有林野の会計を見ましても大変収支は悪化しておりまして、大変な状況であります。約三兆円を超す債務残高があるということで、我が国の国家財政再建の大きな問題点として警鐘を鳴らしているわけです。  しかし、それはそれとして、国内環境を保全するとか、あるいはまた公益機能をこの森林が代替しておるわけです。かつて戦争で、国破れても山河あり、幾らやっても山も川もあり、その山や 川によって日本は再生するんだ、そういう気構えで戦地から多くの方々が引き揚げてまいった。今は逆で、山、川はかれて、その下流の都市は繁栄している。これは逆でございます。  私は、国民の皆さんにもかつての戦争での山河ありという言葉を理解してもらわねばならない。それは政治、我々にも責任があると思います。そういう中で、今後こういう問題について、林野行政そしてまた民有林の振興に対してどのような所信をお持ちであるかということをお聞きして、私の質問を終わらせていただきます。
  17. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 今委員御指摘のように、国有林の持つ大きな役割、国土の保全であるとか公益的な機能というのは、おっしゃるとおりで非常に大きな役割を果たしております。ただ、今自主的な改善努力を行っておりますけれども、財務状況は三兆三千億という累積債務がございまして、非常に厳しい状況であることも御承知のとおりでございます。  そこで、我々といたしましては、この経営の健全化に向けまして、先般閣議決定をいたしました行政改革プログラムに沿いまして、今審議会で御議論をしていただいておる最中でございます。林政審議会における論議の検討を踏まえまして、平成九年中に政府が一体となって抜本的な改善案を検討する、こういうことを決めておるわけでございまして、これから全力を挙げてこの財務状況の改善に向けて努力していきたいというふうに考えております。
  18. 栗原博久

    栗原(博)委員 どうもありがとうございました。
  19. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、一川保夫君。
  20. 一川保夫

    ○一川委員 私、新進党の一川保夫でございます。この委員会でもちろん初めての質問でございますが、先ほど冒頭に、自民党山本委員から農林関係の話題は各政党の中で非常に活発に議論されておるというお話がございましたけれども、我々新進党の中でも、今現在、日本農業、林業、漁業についていろいろと勉強を重ねておりまして、近いうちにはしっかりとした政策を構築したいということで臨んでいることを皆さん方にも御紹介を申し上げたいと思います。  私は、昨年の九月まで地方の県議会に籍を置いていた人間でございますけれども、現在の一次産業を取り巻く情勢というのは大変厳しい情勢がたくさんあるわけでございます。しかし、やり方によってはまだまだ明るい展望が開けるという面でのそういう期待も十分あるわけでございますので、農林水産省の方におかれましても、できるだけ地域の皆さん方の声にしっかりと耳を傾けて、本当に自信と誇りが持てるような、そういう農政をぜひ展開をしていただきたい、そのようにお願いをまずしておきたいと思います。  それで、当面の非常に課題になっておりますけれども、私自身も石川県の出身でございますし、委員の中には瓦先生もいらっしゃいますけれども、今現在、重油の流出問題が特に漁業者にとつて非常に大きな不安な材料になってございます。そういう問題についてちょっと具体的にお尋ねをしたいというふうに思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。  それに先立ちまして、去る一月二日に島根県沖の日本海でロシア船籍のタンカーが損壊、沈没した事故によりまして、日本海沿岸の九つの府県にもまたがると言われている広範囲な地域に多大な被害を及ぼしたわけでございますけれども、私は、新進党を代表いたしまして、まず、これらの被害を受けられました関係府県なり市町村、それから漁業者並びに地域の住民の皆さん方に心からお見舞いを申し上げる次第でございます。  現地調査は、先般私も予算委員会で総括的な質問農林大臣も含めてさせていただきましたけれども大臣も当然現地を視察されておりますし、また我々衆議院の調査団も一月の末に現地に入っておりまして、当委員会委員長初め委員のメンバーの方々も数名の方々が参画されたというふうに思いますけれども、私自身も参加させていただきました。  そういう中で、現地の現時点の状況は、大勢の方々の熱心なそういう回収なり除去作業によりまして若干小康状態を保っておるというところだろうというふうには思いますけれども、しかし、まだ現実に海岸線へ漂着した重油が除去されないままに置かれている地域が特に多いわけでございます。我々のところでは、特に今瓦先生のおられておる能登半島に大変な重油が漂着いたしまして、今現在、沿岸の市町村それから漁業関係者にとつては大変頭の痛い、そういう問題だろうというふうに思っております。  そこで、私は、今回の重油事故による災害被害という問題は、やはり最も弱い立場にある漁業者にもろに来ている、そのように思うわけでございますけれども、今現在、事故が発生してからもう五十日経過するわけでございますけれども、現時点で漁業被害といったようなものを農林省としてどの程度把握されているのかというところをまずお聞かせ願いたいと思います。
  21. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 農水省といたしましての基本的な考え方をまず申し上げたいと思います。  今回の重油流出事故による漁業被害に対しましては、農水省としては可能な限り対策を講じてまいります。問題は、この流出事故が現在なお進行中であるということからいたしまして、この被害の実態ということについては完全に把握し切れていないという点がございます。しかし、現時点におきましては、漁業者が休漁状態になっている、それからまた重油の除去の作業に従事しているというようなことからいたしますと、相当、経営上また生活上の資金、そういう問題について非常に今お困りになっておられるということはよくわかるわけでございますので、そういう資金については円滑な融通ができるように、これは十分に対策を講じております。  それから、今後漁場によりましてはいわゆる最盛期を迎えるわけでございまして、そういう時期に、十分に調査をしてその対策も適切に講じていかなきゃならぬというふうに思っておりますし、また漁場について資源にどのように今回の流出事故が影響を与えるかという調査も今始めております。  さらに、現地の切実な御要望は、漁場の再生、保全、それから漁港機能の保全ということでもございますから、これはいろいろな制度が御承知のようにあるわけで、この制度を活用いたしましてそれぞれの地域に応じた適切な対応をしてまいろう、かように考えておる次第でございます。  その他のことにつきましては、政府委員から答弁させます。
  22. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 お尋ねの漁業被害でございますが、今大臣からも答弁ございましたように、まだ事態が進行しているという面もございますし、それから春以降に操業が開始されるという漁業も多うございますので、全体の把握はまだできていないわけでございますが、ただ、関係府県より現在聞いておりますところによりますと、まず油が漂着した地域でございますが、岩ノリ、アワビ、サザエなどを対象とする採貝藻漁業に既に被害が生じているということ。それからあと、底びき網漁業でありますとか刺し網でありますとか、いろいろございますが、これらの漁船漁業におきましては、当然ながら操業海域の制約を受けたということ。それからあと、一部の定置網漁業におきましては、油を避けるための網揚げが行われたというようなことによりまして漁業被害が生じたという報告がされております。また、操業するに際しましても、油処理のために休漁が生じたことでありますとか、それから操業を再開する場合におきましても、漁船を洗わなければいけないということで漁船の洗浄作業に日数を要した、そういうような報告を受けております。  春以降が本格化する漁業種類も、先ほど申しましたように、かなり多いということでございますので、現段階では被害状況の把握というのはできておりませんけれども、できるだけ早い段階で把握できますように、各府県、漁業者団体を通じまして実態把握に努めていきたいというふうに考え ております。
  23. 一川保夫

    ○一川委員 今ほどの答弁を聞いておりましても、現時点での実態把握というのはまだできていないということなんです。  ただ、この重油の流出、これはもともとナホトカ号の損壊、沈没ということに起因するわけですけれども、本当の本体約四分の三に相当する船体部分が二千五百メーターの深海にまだあるわけです。そういうことを考えますと、非常にこの問題は長期化する。  そうした場合に、これまでに約五千キロリッターぐらい重油が流出したと言われておりますけれども、その部分で受けた漁業被害、そういうものについては、まずやはり早目に一遍把握するということが非常に大事なことではないかなというふうに私は思うわけです。  沿岸の各地域の方々も、沈没している船体から今少しずつ流出しておりますけれども、それがまた大量に出てくる可能性も十分あるわけでございますので、そういうことを考えますと、やはり第一次的に、今漂着した部分に対する実態把握なりあるいはそれらに対する手当て、対策、そういうものは早急に方針を決めてほしいというのが切実な願いではないかと思うのですね。  最近、特に 関係府県なり各種団体からいろいろな要望書が来たり、あるいは今、各地方公共団体の議会の中でいろいろな意見書の採択がたくさんされておりますけれども、それがまさしく私は今現在の地方の声ではないかというふうに思います。  そのあたりを、農林省としてもうちょっとリーダーシップを持って、各地方公共団体を指導するなり関係団体を指導するなりしながら、しっかりと実態の把握なり今後の処理方針みたいなものを、もうちょっと具体的に詰めていただきたいと思うのですけれども、そのあたりいかがでしょうか。
  24. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 運輸大臣が、御承知のように本件については対策本部長という立場でございまして、全般的にはここで一元化しているわけでございます。しかし、今御指摘のような御意見については私も同感でございますので、各地域の今の被害状況、できるだけ連絡をとり合いながら、そういう具体的な御要望に対して今どれだけおこたえができるかなということを、早急に農水省の中でも検討いたしまして適切に処理をしていきたい、かように思っております。
  25. 一川保夫

    ○一川委員 この被害が発生した後、これから、当然ながら、こういった責任者が明確な事故についての補償問題等々のいろいろな交渉事が控えておるわけでございます。  これも聞くところによりますと、各漁連を窓口にしたり、あるいは各地方公共団体が窓口になって、そういう関係者との予備交渉に入っているというようなお話も聞いておりますけれども、こういった状況というのは何か把握されているのでしょうか。あるいは水産庁で、要するに、漁業被害についてこういう基準でもっていつごろをめどに大体取りまとめてくれというような趣旨の、何かそういう指導はされているのでしょうか、どうか。そのあたりを確認したいのです。
  26. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 現在、漁業被害の補償でございますが、これにつきましては、例えば防除費用等でございますと、これは防災センターの方が取りまとめるとか、それから漁業被害でございますと、これはまず漁協がまとめまして、全漁連が一括いたしまして弁護士を立てまして補償要求をするというようなことになっております。先ほども先生言われたように、確かに、あれは船尾部でございますか、それもございますけれども、とりあえずのものにつきましては、全漁連の方が中心となりまして被害額をまとめて要求していくということになっているわけでございます。  ただ、船首部のものにつきましても、先ほど申しましたように、まだ影響調査も進んでいない状況でございますし、操業がこれから始まるというものもあるわけでございます。そういう意味で、それがまだ把握はできていないものもございますので、それが取りまとめられた段階でもってその部分につきましては要求していくということで、段階的な形で要求していくことになると思っています。  そういうことで、現在のところ、全漁連が中心となりまして、弁護士を立てまして漁業被害につきましては要求していくということでございますので、私どもといたしましては、このような取り組みを、言うなら後方支援というのでしょうか、補償の円滑な実施については外務省など関係省庁等に働きかけまして、その円滑な実施に努めていきたいというふうに考えておるところでございます。
  27. 一川保夫

    ○一川委員 かねてから各自治体、団体等の声として、こういう非常にふなれな事態に対してしっかりと交渉するためにも、政府サイドでできるだけ相談的なそういう窓口も含めて一元化を図ってほしいというような要望が非常に強いわけですね。  今ほどのお話によると、基本的には各漁連単位に任せたような言い方なんですけれども、特にこういった漁業被害のこれからの保険の問題、基金の対応の問題、そういうことに対して水産庁がもう少し、そういう各種団体なり地方公共団体の相談にしっかりと乗りながら1余りばらばらな交渉というのは私は基本的にはおかしいと思うのです。特に考え方が余りばらつきがあるというのはおかしいと思うのですけれども、そのあたり、もう少し何か水産庁が前面に出るというお気持ちはないのでしょうか。
  28. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 今申しましたように、漁業のものにつきましては全漁連が中心となってやっておりますし、各自治体もそれぞれやっているという状況になっているわけでございます。  事柄は、先生も御承知のように、これは民事の話でございますので、それぞれの当事者がそれぞれの被害額をまとめて油濁基金などに補償要求をしていくということになるわけでございます。漁業につきましては、そういう意味では、全漁連の方がまとめておりますので、他のところに比べますと非常にまとまりがいいというふうに考えているわけでございます。  あと、水産庁の姿勢でございますけれども、私どもといたしましては、漁業者の方々からはいろいろな御要望を承っているところでございます。事は民事上の問題ではございますけれども、私どもといたしましては、各漁業者の方々の意見、御要望につきましては、政府の方に対策本部がいろいろございますので、その場を通じまして、漁業者の方々の意見につきましては、十分その意義、意味でございますか、それを伝えているところでございます。
  29. 一川保夫

    ○一川委員 政府全体の対策本部、運輸大臣のもとで、関係省庁でなされているわけですけれども、冒頭私が言いましたように、今回の事故での被害者というのは漁業者が圧倒的に多いわけでございますし、また、そういう面では最も弱い立場の方々が致命的な被害を受けているということでもございますので、政府全体の中でも水産庁がよりリーダーシップをとって引っ張っていっていただきたいというのが私の要望でもございます。  冒頭、農林水産大臣の方から若干今後の対策めいた御答弁もございましたけれども、非常に長期化するということも含めて、漁業者がこれから漁業を存続するという中で、いろいろな面で、生活資金なり生産的な資金も含めて恐らく非常に御苦労されるケースが出てくるんだろうというふうに思います。そういった資金面の対応とか、あるいは俗に言う風評被害ということが言われております。これも現地では現実そういう現象が大変起こっているわけでございますけれども、そういうものに対する対応なり、そのあたりは現時点で何かお考えになっているものがあるんでしょうか、その点お聞かせ願いたいんです。
  30. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 まず、最初の金融措置、融資の方の話でございますが、これにつきましては、被害漁業者に対します金融措置といたしまして、一月の早い段階におきまして経営などの相談窓口を 開設するとか、あと被害漁業者に対します生活・経営資金の円滑な融資、それから既借入金の償還猶予などの貸し付け条件の緩和、それから、経営が困難となっております漁業者の債務を、漁業経営維持安定資金というのがございますが、それに借りかえていくというような話につきまして金融機関、関係府県などに既に指導を行ったところでございます。  これを受けまして、例えば石川県では、重油事故対策資金というのを設けられまして無利子の資金が融資されておりますほかに、福井県及び京都府でも、無利子の緊急対策資金が設けられまして近々実行される予定と聞いております。さらに、新潟県等におきましても、同様の緊急資金の検討が行われているというふうに承知しております。  また、二番目の風評被害でございますが、これにつきましても漁業者の方々が大変心配されておりました。そういうこともございまして、これも一月十日でございますが通達を出しまして、生産段階流通段階におきます油の付着の有無等に関します検査の実施等を行うということによりまして安全な水産物の安定供給を行う、それによりまして、買いただきでありますとか、取引停止等のいわゆる風評被害が生ずることのないように関係者への周知徹底こ努めているところでございます。このために、例えば、スーパーでございますとか鮮魚小売店などの流通関係者によります連絡会議も設けまして、適切な情報の提供を行いまして、風評被害の防止を行っているということでございます。
  31. 一川保夫

    ○一川委員 これまでの対応状況なりこれからの取り組み方の御説明があったと思いますけれども、ただ、私は、今ちょっと答弁された中に、各地方公共団体、各府県がそういう無利子の融資とかそういうものを今用意している、現実にやっているところもあると思います。そういうものに対して、地方公共団体にとっては当然財源が相当必要だと思いますけれども、例えば利子補給的なものを水産庁側で今後の対策として考えていくというそのあたりの考え方がおありなのかどうかということと、それと、風評被害という中で今いろんなことをやっておられますけれども、じゃ、今後もっと大々的にあの沿岸地域をいろんな面でPRするという面のPR用の経費とか、あるいは物によってはいろんな具体的なキャンペーンをやるということも当然考えられるわけです。そういうものに要する経費等について、今後の問題として水産庁側として何かしっかりと助成する、そういう考え方はぜひとっていただきたいんですけれども、そのあたりいかがですか。
  32. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 金融面におきます国の支援措置といたしまして、先ほど申しましたように、漁業経営維持安定資金、これは現在二・九%になっておりますが、一般の国の制度におきましては非常に低い金融措置を用意しているわけでございます。このほかに、加えまして、先ほど来申しましたように関係のところでは特に、これはこういうことだけではございませんで、よくこういう事故が起きますと関係県では行われるようでございますけれども、先ほど申しましたような無利子の措置がとられておるということでございまして、ただいまのところこれに対する利子補給という措置はないわけでございます。しかしながら、先ほど来申しましたように、国といたしましては、一般の金融の横並びの中では非常に低い措置、制度がありまして、それを利用できるように今用意をしているということでございます。  それから、二番目の風評被害に対するキャンペーン等の助成ができないかというような話でございますけれども、これにつきましては、このための直接の予算はただいまのところないわけでございますけれども、どのような対策がとれるか、水産庁にもいろいろ予算がございますので、既存予算の活用によりまして何ができるか、これから検討させていただきたいというふうに考えております。
  33. 一川保夫

    ○一川委員 そうすると、またもとのきれいな海へ戻したいという地域の強い希望が出てきておるわけでございます。当然ながら、漁場についてももとの状態に復元したい、あるいはまたこれをきっかけにさらに従来より以上のすばらしい漁場を造成したい、そういう気持ちがその地域の漁業者の皆さん方の声としてあるわけですね。  そういうものに対して、当然ながらまた現行制度で対応できる部分、あるいは新たな制度を創設しなきゃならぬという部分も出てくると思いますけれども、そのあたりについて、基本的には今回被害を受けた地域に対しては、私は、やはり地元負担、受益者負担といいますか、そういうものをできるだけ軽減していく、あるいは、当然ながらそういうところは急がれるわけですから、優先的に必要な事業については採択していくというような、そのあたりの基本的な姿勢をお聞かせ願いたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  34. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 今後の問題といたしましては、今言われましたように、漁場の復旧対策というのが非常に重要になってくると思います。そういう意味で、この重油流出事故によります汚染された漁場の再生ということのために、一応現在あります制度といたしまして、例えば沿岸漁場整備開発事業、俗に沿整と言っておりますが、また、沿岸漁業活性化構造改善事業、これは沿構と言っておりますが、これらいろいろございます。これら各種事業を活用いたしまして適切に対処してまいりたいというふうに考えているところでございます。  また、このために、現在水産庁におきまして、今週から、被害を受けました府県の水産担当部局の方に集まっていただきまして、具体的な事業の要望につきましてヒアリングを実施しているところでございます。各種事業の活用につきまして、被害の状況を踏まえまして適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
  35. 一川保夫

    ○一川委員 では、最後にちょっと農林水産大臣に、今後の対応も含めてのお考え方を確認しておきたいわけですけれども大臣の所信表明の中でも今回のこの重油流出事故のことに冒頭触れられております。ただちょっと、この表現を見ておりまして、漁業関係者の不安を極力和らげるというような趣旨のごあいさつをされておりましたけれども、何かこのあたりが若干私にとっては物足りない表現だな、やはり漁業関係者の不安を解消するというぐらいの意気込みでぜひ取り組んでいただきたい、そのように思います。  特に石川県の場合、昨年能登の方で豊かな海づくり大会という大変なイベントを開催した直後でございまして、そういう面では能登半島の皆さん方を中心に大変なショックだというふうに私は思います。そういう面では、ぜひとも一日も早くきれいな海岸を復元していただきたい、また、すばらしい漁場を整備していただきたい、そのように思いますし、特に関係府県が九つの府県にまたがっている、富山県は直接の被害はなかったというふうにも聞いておりますけれども、しかし、それだけ広範囲に及んでおるわけでございますし、恐らく我が国の水産業の中でも、このあたり一帯は、そういう面では非常に貴重な地域であるというふうに私は思いますので、ぜひ、今後の被害に対するいろんな補償の問題等、あるいは復元の問題も含めて、農林水産大臣決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  36. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 不安を和らげるという言葉、確かに、不安を解消する、まさしく私もそのとおりだと思います。  これから、先ほどいろいろと御答弁を申し上げましたように、被害はなお現在事態が進行中ということもございますけれども、適切な措置をすることによりまして、漁業者また関係者の不安を解消するということに全力を尽くしてまいりますし、また補償の面につきましても、私どもといたしましても、円滑な処理が図れるようになおこれからも、今もそうでございますけれども、これからも努力をしてまいる決意でございます。
  37. 一川保夫

    ○一川委員 では、よろしくお願いをしたいと思います。  では、話題を変えさせていただきまして、農政 全般の中で、特に、当面の農林水産省の対応の仕方につきまして基本的な考え方を確認しておきたい、私はそのように思っております。  現時点で、農水省が抱える政策課題というのは非常に山積しておるわけでございまして、先ほどの質問にもございましたように、今のウルグアイ・ラウンド対策も含めて、大変緊急的な課題もたくさんあるような気もいたします。  こういった一次産業農業が抱える宿命的なものが当然あるわけでございまして、自然を相手にした分野でもございますので、経済効率一辺倒で物事を処理していくというやり方は、基本的にはやはり限界がある。やはり日本の経済社会の中で農業というものが絶対必要だというふうに私は思いますので、そういう面ではやはりめり張りのきいた、そういう行政、あるいは助成的なものも含めて、しっかりとした対策が当然国民全体の合意の中でとられるべきだというふうに基本的に考えております。  私たち、今地方におりまして、今日の農業を取り巻く情勢がいろんな面で目まぐるしく変化してきておる、そういう中にあって、非常に厳しい意見が多いわけでございますけれども、しかし、意欲を持ってこれから農業に取り組もうとする若者もこれまた少しずつふえてきておるということも言えるだろうというふうに私は思いますし、そういう面では、農業なり農村の持つ重要性なり役割、そういったようなものも再評価されつつあるなというふうに思います。  しかし、そこのところは、先ほどの質問にもあったと思いますけれども、やはり農政を担当される担当者みずからがしっかりと自信を持って、特に、直接農業にかかわっていない方々に、農業なり一次産業の持つ重要性、役割、そういったところをしっかりと理解させる。余り自分たちの専門的な分野でのそういう用語、語りかけじゃなくて、もっとかみ砕いた、わかりやすい表現の中で理解させていくということが非常に大切であろうというふうに思っております。  そういう中で、最近いろいろと資料で目に入る中に、農業基本法を見直すというお話がありまして、以前から農林水産省の内部でその検討に入ってきておるわけでございますけれども、これも、もともとは、ウルグアイ・ラウンド対策がスタートした段階の中で、こういった農業基本法を新しい流れに即して見直すべきだというような当時の見解がございました。  そういう流れを踏まえてのことだろうというふうに思いますし、大臣のもとでいろんな研究会もなされた。その報告も昨年出されたということでございます。  こういった農業基本法、もう既に制定されて三十年経過しておりますけれども日本農政の本当の基本中の基本になる法律でございます。こういうものが今日まで、いろんな状況変化の中で、当時ねらった目標がほぼ達せられた部分も当然あるかと思いますけれども、私の感じとしては、大部分のものはなかなか当時のそういう目標に達しなかったというような感じがいたします。  特に、最近の三十年間の現象の中でやはり一番心配なのは、我が国の食糧自給率が極端に低下してきたということだろうと思うのですね。それと、要するに、農業労働者、労働就業者の中で高齢者の占める割合が非常に高い。六十五歳以上の方々が四割近くもいるというような形になってきておりますけれども、こういう姿とか、あるいは、農家の中の第二種兼業農家のウエートが非常に大きくなってきています。一方、当然ながら、専業農家とか第一種兼業農家というものの比率が極端に落ち込んできているというデータがあるわけでございますけれども、こういうことを見ますと、日本農業の構造というのは、ある面では非常に心配な状況だというふうに私思うわけですね。  そのあたり、農林水産省の方としまして、今回の農業基本法というものがどういう役割を果たしてきたかというところの当然評価があると思いますけれども、今現在、具体的に検討本部を設けて、新しい基本法を策定する作業にもう既に入っておられるというふうに聞いております。農林水産省として、要するに、研究会の報告は報告としてあるわけですけれども行政側としての現時点での、新しい基本法を策定しなければならぬ、そのあたりの認識のところをちょっとお聞かせ願いたいのです。
  38. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 新しい農業基本法をつくろう、そういう背景には、今言われましたように、農業人口の高齢化であるとか農村の過疎化であるとか、何よりも大きな問題は国際化であったと思うわけです。  農業基本法、今ございます基本法は昭和三十六年に制定されて、今まで非常に時代がたっておるわけで、そういう農業を取り巻く環境が大きく変わってきたということから、新しい農業基本法、農業にとっては憲法ともいうべき基本法をつくっていこう、こういうことになってきた。また、ウルグアイ・ラウンド対策の中にもそういうことも指摘されておるということでございます。  今言われましたような一連の作業が今進んでおるわけでございますが、調査会を平成九年度から新たに二年間の期間で設置をいたしまして、基本的な考え方平成九年度で取りまとめ、それから、平成十年度には最終答申をいただく、こういうことを考えておるわけでございますが、具体的な内容といたしましては、新たな基本法の制定に向けた本格的な検討の中に、具体的には、一つは、・食糧の供給力の維持、確保という大きな問題、それから二番目の問題としては、望ましい農業構造の実現、こういう項目を中心にして検討していただくということになっております。.それから、最初御指摘のございました農業の重要性、まさしくそのとおりでございまして、国民の皆さんが必要とする食糧を安定的に供給する、しかも良質で安い食糧を供給する、これはもう基本でございます。そういう意味では、生産者の面にも目配りは要りますが、同時に消費者方々にも目配りが要るわけで、そういう御理解をいただかなければ日本農業振興発展というものはないし、また、一次産業が栄えて、いわゆる風上の産業が栄えることによって風下の産業も栄えてくるということでございますので、今後とも農業振興農林水産業振興のためには、我々としても重大な責任を持っておるという認識でございます。
  39. 一川保夫

    ○一川委員 農業基本法を、この際見直しをかけて新たなものをつくってまいりたいというようなことについては私も同感でございます。ただ、今ちょうど今世紀末と重なるわけでございますけれども、今ほどのお話によると、おおむね二年間ぐらい、調査会で国民全体のそういう各界各層のいろいろな意見を吸収したいというようなお話がございました。  また、先ほど、六十五歳以上と言われる高齢者の方々農業に従事しているウエートが非常に高いというお話をちょっとしましたけれども、これは後しばらくすると、そういう方々がもう体力的に当然ながら農業から離れざるを得ない、そういう時期がもう間もなく追っているわけですね。そうしますと、そういう方々が今耕作している農地、そういうものをだれが管理するか。農業に専業的に取り組むような方にうまく利用権が集積されていけば、それは私は構わぬと思うのですけれども、どうもまだその仕組みがうまく見えてこない。また、そういう機運も、まだそこまで盛り上がっていないような気がするわけでございます。  そうなりますと、そういうことも当然踏まえて、今高齢者の方々が従事している農地なり農家層、そういうところを今後農政としてどうカバーしていくかというところが非常に大きなポイントになるのではないかというふうに、私は自分の地方におってそう思うわけですけれども、そのあたりと、今おっしゃった新しい基本法の策定のタイミング、そういうようなものが何となく重なってくるような感じがするわけですね。ですから、そのあたりを見誤らないような分析が当然私は必要だというふうに思いますけれども、そのあたりの ことについて何か所見がございましたらお聞かせ願いたいのですけれども
  40. 堤英隆

    ○堤政府委員 今先生お話ございましたように、日本の就労構造ということを考えました場合に、高齢者の方々が非常にウエートが高くなっている、御指摘のとおりでございます。同時に、私どもはそういう状況の中で、大臣から申し上げましたように農業基本法の改正ということを考えているわけでございますが、そういうことで軌を一にするということのお話がございましたけれども、そういう条件が整ってきているというふうに思っております。そういう意味では、高齢化が進展をしていけばいずれリタイアという時期が来るわけでございますが、そういうリタイアの時期をとらえまして、やはり先生も先ほどおっしゃいましたように、意欲のある農家方々に農地をできるだけ集積していくということによります構造の変革ということを求めていくということが農政としての非常に大きな課題だというふうに思っておりますし、今回の農業基本法の見直しの中におきましても重要な課題として検討したい、こういうふうに思っております。  と同時に、高齢者の方々農村の中で安んじて生活をしていただくということのための対策も他方で充実していかなければならないというふうに思っておりまして、その補助政策等をいろいろな形でやっておりましたけれども、例えば農業者年金制度についての充実でありますとか、そういったことの中でも対応していく。さらにまた、そういう補助とかそういうことは別にいたしまして、  高齢者の方々農村の中で生きがいといいますか、そういうことを覚えていただくような、そういう農村社会の形成ということにつきましても、今回の基本法、農政の検討の中で、私どもとして、重要な問題として対応していきたいというふうに考えております。
  41. 一川保夫

    ○一川委員 各地方における、そういうこれから意欲を持って農業をやろうとする方々なり、また、いろいろ農業にかかわる関係者も、恐らく今回のこの新しい基本法の策定の問題については当然相当関心を持っているわけでございますので、これまでの農業基本法がいろいろな状況変化に十分ついていけなかったというところもございますし、また、それをしっかりとリードできなかったという面もあろうかと思いますけれども、そういうところの反省を踏まえて、新しい基本法の中では、できるだけ私は地方の実際に農業に従事している、そういう方々の御意見を十分吸い上げていただきたい。  また、今地方のそういう農業地帯でこれから意欲を持って農業をやろうとする、そういう人たちがどういう気持ちでいるかというところをやはりしっかりととらまえるということが新しい基本法の策定の中で私は大きなヒントを得られるというふうに思いますので、余り社会的に肩書のついた人だけの御意見じゃなくて、実際に農地の中で仕事をされている方々の御意見もぜひ聞いていただきたい、そのように希望しておきたいと思います。  それから、次に、先ほどもちょっと話題に出ましたけれども、ちょっとお聞きしておきたいのですけれどもウルグアイ・ラウンド関連対策というものが、最近いろいろと批判めいたものが目立ってまいりました。これは、残念な現象といえば私は非常に残念な現象だというふうに思います。  もともとこのウルグアイ・ラウンドの関連対策というものは、平成六年だと思いますけれども、スタートをしたわけでございますね。その段階で、当時私は国会にはおりませんけれども、国会決議があったというふうにも聞いております。相当の各政党の方々が恐らく賛同されてその決議をされたのだろうと思いますけれども、それを受けてこういった関連対策が当然動いているわけでございまして、私は、農林省の政策の中では割と骨太のしっかりとした政策かなというふうに、当時地方にいてそう思っていたわけでございますけれども、最近それが何かいろいろと批判されてきているということを考えますと非常に寂しい思いもするわけでございます。当時の背景として、私は、国民全体のおおむねのコンセンサスの中でああいう対策めいたものがスタートしたというふうに思いますけれども、それが今日いろいろな面で若干世論のそういう批判を受けるような事態になったということは、何か事業のやり方にどこか配慮が欠けているのじゃないかという感じもしないわけでもないわけです。  ただ、基本的にはやはり所期の目標に向かってしっかりと突き進んでいただきたいというのが私の気持ちでございますけれども、例えばその後の国際化の現象とか進展、それから新食糧法の施行とか、また、こういった景気がずっと低迷しているという中にあって、世の中の状況というのはこのUR対策がスタートした後も割と変化している部分があるわけです。そういうものをある程度とらまえて、やはり謙虚に、見直すところは見直して、もっと重点的にやるところはやるというところをもうちょっとうまく説明しないと理解していただけないのではないかというふうに思うわけですね。  それで、そのあたり、今農林省の方も当然努力をされているとは思いますけれども、私は、このUR対策、あと四年間ですか、ありますけれども、ではこの対策が終了する段階日本農業の姿というのはどうなるんだというところも含めてやはり国民にしっかりと合意を取りつけるような努力をしていただきたい、そのように思うのですけれども、そのあたりのお考え方を聞かせていただきたいのです。
  42. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 ウルグアイ・ラウンド対策は、御承知のように、ウルグアイ・ラウンド農業合意の実施によりまして我が国農業農村は前例のない大きな国際化の波を受けるわけで、それに対して足腰の強い農業をつくっていく、こういうことで考えられたものでございます。御承知のとおりでございます。その実施については、今、この三年半分を終わった。  この所期の目的というのは、御承知のように、足腰の強い農業をつくっていく、こういうことでございますので、私どもといたしましては、その所期の目的を達成するために今全力を挙げてこのラウンド対策を実施している、こういうことでございますが、今言われましたような御指摘もございますし、また、野党三党の補正予算のときの修正の問題もございますので、私どもとしては、平成十年度以降、このラウンドの実施状況、また地元の要望などを精査いたしまして、与党とも相談しながら対応していきたいというふうに考えております。
  43. 一川保夫

    ○一川委員 どうもありがとうございました。終わります。
  44. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、北村直人君。
  45. 北村直人

    ○北村(直)委員 まず大臣に、先般、大臣から所信表明を賜りました。その中でもきちっと所信表明をされております。特に、今後の「食料の安定供給の確保のためには、国内生産に加えて、輸入及び備蓄を適切に組み合わせていくことが重要である」、こうはっきりと所信表明をされている、あるいは、世界食料サミットにおいても大臣みずから主張されてきた、こういうことであります。  私は、政治というのは、そんなことは大臣に御意見を言うまでのものではありませんけれども、やはり、生命財産をしっかり守っていくというのが、これが政治の根幹だと思います。そういう面では、命をきちっと守ってもらうためには、やはり、腹いっぱい食べさせてもらう、それを保証する、そのためにも安全で安定的な供給をしていかなければならない、これが政治の原点ではないかと私は思います。そういう面では、大臣から所信はいただきましたけれども、毎回毎回、予算にかかわって、大臣の所信表明の中にこれはありますけれども、本当に日本の国の食糧の安定供給、これが大臣言葉のように確保でき得るのかどうかとなると、私は大変不安の念を持つものでございます。  いま一度大臣としての、この食糧の安定供給と いうことについて、大臣の理念なり、あるいはまた政治家としての所信というのでしょうか、それをもう一度お聞かせをいただきたいと思います。
  46. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 食糧の安定供給、今申されましたように、国民の皆さま方が必要とする食糧を安定的に、しかも良質でまた安い、そういう食糧を供給する、これは我が国農林水産行政基本的な責務であるというふうに私は思っております。  そういう観点からいたしますと、この食糧の需給関係というのは非常に大事な問題でございまして、現在、世界の人口が毎年一億人づつふえている。ことしは五十七億人でございますけれども、二〇五〇年には九十八億人ぐらいになろう。それに対して、食糧の供給力はそこまでは行かないだろう、今、二〇二〇年には食糧とエネルギーと環境問題でパニックが起こるだろうという説もございます。そういうことを考えますと、中長期に食糧の需給関係は逼迫するであろう、こういうことが考えられるわけで、これまた世界の一つの見方でもあると思うのです。  その場合に、安定供給をするということをどういう方策で実現していくかということになりますと、一方では完全自給、すべて食糧を国内でつくる、そういうことをまず考えてみますと、今、農地面積が五百万ヘクタールでありますが、これを完全自給しようといたしますとさらに千二百万ヘクタール必要になる一つまり千七百万ヘクタール要る。これは現実の問題としては、我が国にとっては不可能である。  それから、しからばこれを、農業貿易分業論というのがありまして、安い食糧はどんどん外国から入れたらいいじゃないか、こういう意見もございますが、これは今、余り大きな意見にはなっておりません。それは、将来の食糧事情の逼迫、また相手国の事情によって、今はこの食糧が買えるということがあってもやがて買えなくなるということもあるかもわかりませんし、また、経済力に物を言わせて食糧をいつまでも我が国が買い続けていくということが、政治上また人道上許されるのかなということも考えますと、結論として、主要な食糧は我が国でできるだけ自給していく、それから、足らない面については備蓄と輸入、この三つの適切な組み合わせで食糧の安定供給を図っていく、こういうことが現実的な対応になるのではないかな。  先般、昨年の十一月に行われましたローマの世界食料会議こおきましても、先進国で自給率が最低、最大の輸入国である日本といたしまして、先ほど申し上げましたような、できるだけ主要な食糧は、米であるとか野菜であるとか、そういうものについてま国内自給する、足らざるところは備蓄と輸入の適切な組み合わせで進めていくということを申し上げたわけでございまして、おおよそ百八十数カ国の首脳が集まったこの会議でも、そのような意見が大半を占めておったというふうに感じたわけでございます。
  47. 北村直人

    ○北村(直)委員 大臣認識は今お聞きをいたしました。完全自給、あるいは足りないところは輸入と備蓄で補っていく、完全自給が無理であれば、ということだと思います。そうなれば、では、我が国の国の中で自給をするということがどれだけ大切になるかということではないかと思います。やはり、自分の国のあるいは自分の食べるものは自分たちの手でつくり上げていく、そして備蓄もする、これが一国の、国としての基本的な考え方ではないかと私は思います。  そういう点からすると、我が国のこの自給率というのは、非常にお粗末な感じがしてなりません。  例えば、平成七年度の自給率のことがことしの一月三十一日の日本農業新聞にも出ておりますけれども、食糧の自給率が四二%になった、こういうことであります。米の方は、これは前年度の一二〇が一〇三になった、こうなっています。あるいは、牛肉の自給率は四〇%を初めて割り込んだとか、あるいは小麦は九から七ヘポイントを下げたとか、野菜も八六から八五にそれぞれ低下した、あとは軒並み大体現状維持であるというふうなことが報告されておりますけれども、そうなると、大臣がおっしゃる、国民に安定した、そして安全な食べ物を供給するというときに、じゃどのくらいの自給率、自分の国でこれを賄っていこう、こうお考えでしょうか。
  48. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 今考えておりますことは、今言われましたように、残念ながら我が国食糧の自給率が低下をしてきております。昨年では四六%であったわけですが、ことしになって、今言われましたように米の不作等が原因で四二%になった。その数字は別として、低落傾向にあるということは間違いない。まず当面は、十年先を目標にいたしまして、この自給率の低下傾向、これに歯どめをかける。目標としては四七%、それを目標として、それを維持するためにいろいろな施策をこれから講じていく、こういうことを考えておるわけでございます。
  49. 北村直人

    ○北村(直)委員 平成十七年度目標で、農水省、政府は、大体カロリーベースで四四から四六%というような試算をしているわけでありますけれども、そうすると、カロリーベースで四二ということは、この目標を設定して一年もしないうちに破綻をしたのかなという、非常に危機感を実は私は持っております。政府の方は、いやいや米がとれたりとれなかったりすれば簡単にカロリーベースが下がったり上がったりするのですよということで果たして済まされるかな、こういう気が私はいたします。  そういう面では、新農業基本法に自給率をしっかり位置づける必要が私はあるのではないかなと。今議論されておりますし、新農業基本法を政府は出されるでしょう。その中に、自給率というものをしっかり位置づける必要が出てきているのではないのかな。こういうことを考えたときに、その点はいかがでしょうか。
  50. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 お答えの前に、ちょっと数字を間違えましたので訂正させていただきます。  平成十七年に四四から四六%の自給率目標にしてやっていく、こういうことでございまして、四七%と申し上げたのは間違いでございましたので、訂正させていただきます。  それで、委員が言われましたこの自給率目標値の設定、私はそれは一つの考え方だと思うのです。私どもは、実は内部でいろいろ勉強するときに事務当局とそういう考え方について議論したことがございました、率直に申し上げまして。その場合の議論の結論は、要するに食糧の自給率につきましては、食生活の変化などの政策以外の要因によって自給率影響される、そういう点が大きい。つまり、どんどん食生活の内容が変化をしてきておりますので、そういう点からいたしますと、この自給率の問題は食生活の要因で影響を受ける、そういうことが非常に大きいということが私もわかりました。  そういうことからしますと、目標を仮に設定いたしましても、それは政策手段としては限界があるのかな、こういうふうに理解したわけでございまして、これから一つの自給率目標としては、今さっき申し上げましたように、十年先には四四から四六ということを考えておりますけれども、しかしそのことは、今申し上げましたように、食生活の変化などの要因によって、実は政策以外の要因により影響されるところも大きい、こういう点も実は理解したところでございます。
  51. 北村直人

    ○北村(直)委員 自給率をしっかりと位置づげるということがなかなか難しいというお話ではありますけれども、しかし、大臣の所信表明の中にもありますように、総理府の「食料・農業農村役割に関する世論調査」の結果――これは国の食糧というのは国民合意がなければなかなか難しいところがあると思います。  しかし、そういう中で行われた総理府のこの世論調査では、日本の食糧事情の将来について、七〇・五%の人方が不安がある、こう答えている。そして特に、食糧を何とか我が国で、こういう人方がパーセントがはね上がっている。こういう世論調査がある。その内訳は所信にもありますように、外国産より高くても、食糧は、生産コストを 下げながらできるだけ国内でつくる方がいい、こういう人方が圧倒的に、これはもう七割、八割いるわけですね。  つまり、基本となる食糧、これは国内でつくるべきだ、こういう総理府の調査ではないかと私は思いますし、また、国民のニーズではないか。つまり、国民の方は経済の合理性だけでははかり知れない価値を求めているのではないかな、私はこう思います。  先ほど大臣が、世界的に見ても、あるいは日本の農地を見ても、完全に自給すると一千二百という、そこまでなければならないと。確かにそうでしょう。世界的にも、あるいは日本国内を見ても、農地をこれ以上拡大するという余地はなかなか難しいのではないかな、ほとんどないといっても言い過ぎではないのじゃないのかなという気が私はいたします。そして、人口は大臣がおっしゃったとおり。  そうなると、自給率を――国民は、少々高くても自分の国の中でつくったものを食べたいということになる。しかし、今政府は、あるいは農水省の行政の中では、経済性を求めていく。つまり、自給率カロリーベースで四四から四六、その足りない部分については輸入と備蓄で賄っていくということになりますと、経済の合理性だけを求めていけば、今でも農家がどんどん離農したりしていく、あるいは荒れ果てた土地がそのままになっていくというようなことを考えたときに、ではどうするのだろう。どうすれば国民が求めている、少々高くても国内生産をしてもらいたい。  そうなれば私は、やっとマスコミも二月五日の日経の社説では、まあ、ウルグアイ・ラウンド対策費をどうこうというのはちょっと私もどうなのかなと思いますけれども、そういうことではなくて、やはりデカップリングという農家所得補償というものを、ヨーロッパ等々で定着している所得補償、デカップリングというものを、日本型のこのデカップリングを考えていかなければ、国民の、少々高くても国内生産を、食糧を賄おうということにはなかなかいかないのではないかと私は思うのですが、そのことはどういうお考えを持っているでしょうか。
  52. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 まず自給率を上げていく、その問題の中で、私は、全部の自給率を上げるというのはなかなか難しいと思うのですね。ですから、主要な食糧、米とか野菜とか、そういう中心になる食糧の自給率を上げる、これを目標計画的に進めていくということが必要だと思うわけです。まずその点があると思うのです。  それから、委員のデカップリングの直接所得補償というお考えは、あるいは自給率を上げるためにそういう政策が必要ではないか、こういうお考えかと思います。  それで、今アメリカやヨーロッパでこの直接所得補償を取り入れておるわけですが、これはいずれも不足払い、支持価格の引き下げ等に伴う内容でございまして、そういう不足払いとして直接所得補償制度を導入しておる、これはもう委員御承知のとおりです。  日本の場合には、まだ経営規模が小さいわけでございますし、経済社会や農業事情がアメリカ、ヨーロッパに比べまして異なるというような点から考えると、日本の国に今直ちに導入するということについてはいろいろと問題があるし、また今のデカップリングの問題は、特に中山間でそういう御要望が非常に高いということも承知いたしております。  今後のラウンド対策考えた場合に、中山間地域の対策というものが非常に中心というか大切でございますので、この対策の中でどういうふうに、いろいろな問題を組み合わせて考えていかなければなりませんけれども、その考えの中でこのデカップリングの問題もいろいろと御意見、御議論があるわけで、このことはよく知っておりますので、私もその点については十分に今研究しておる、こういう段階でございます。  いろいろまた具体的な御意見があれば、どうぞお教えいただきたいと思います。
  53. 北村直人

    ○北村(直)委員 主要な作物、食糧、こういうお話でありますけれども、主要かどうかというのはなかなか難しいところが私はあるのだと思いますね。これは人間の命にかかわるわけでありますから、米が主要であって、例えば大豆は主要ではない、日本の国で大豆というのは、自給率は、ゼロとは言いませんけれども、本当に一けた台であります。しかし、ではそれが主要な食べ物でないという決めつけ方というのは、私は、例えば今回、これは国がというよりも厚生省が、安全である、こう許可をしてしまいましたけれども、遺伝子組み換えの食品、これが、今まではバイオテクノロジーの中で遺伝子組み換え食品が許可されていましたけれども、それは遺伝子の組み換え技術を用いて生物を改造して、その生物に生産された食品だったのですね。しかし、今回は、その遺伝子組み換え技術を用いて生物を改造した、その改造したものを食べよう、こういうことです。  大豆やトウモロコシだとか、アメリカやカナダから七品目、これを国はいいとしました。私は、大豆だとかトウモロコシだとかいろいろなもの、我々の口に入るものとは別に、今度は農水省の管轄として、家畜のえさとしてこういうものが大量に入ってきた、そうなったときに、今は、画期的な出来事だ、すばらしい、ある一定の除草剤に適用する。それ以外は一こういう遺伝子組み換えの作物、すばらしい、科学の進歩だ、こういつて喜んでいる反面、これが五年、十年、十五年、二十年たったときに、家畜の胃袋を通じてその個体からでき上がってきた生産物が私たちの口に入ったときに、では本当に安全なのかというと、私はううんと首をかしげる。そうなったときには、今度は農水省の責任というのは非常に大きなものが出てくるのではないのかなと。  それは、厚生省が決めたから農水省はもう関係ないというようなものではなくて、政府行政とすれば、これは厚生省や農水省という分け方ではなくて、この問題についてやはりもう少ししっかりした農水省の考え方がなければ――例えば、去年あのイギリスで狂牛病の問題がありました。あのときも画期的でした。羊をたくさん処分しなければならない。処分するだけだったらもったいない。だれか科学者が考えたのでしょう、いや、動物性たんぱく質だ、それならミンチにして、それこそ濃厚飼料として牛に食わせたら一石二鳥じゃないか。みんな飛びついた、それはいいことだと。しかし、結果において、それが羊に常在しているスクレイピーという病気、プリオンが牛を介して今度は人間がヤコブ病、こういうような問題になってくる。  命を守るための一次産業、我々人間にとっては、農、林、水というのはもう命の根幹ですよ。そこのところが、ちょっとした想像性といいましょうか、本当にいいのかなということで、みんなが、いや、いいじゃないか、遺伝子組み換えもいいと、こうやって野放しにしたときに、狂牛病と同じようなことが起きてくるのではないか、私はこんな感じを実は持っているのですね。  その点について、これは食品としては厚生省が決めたことです。しかし、今度は農水省としては、家畜のえさとして入ってくるこの遺伝子組み換えのものについて、どういうような認識と、それから将来のそういう危険性、サーベイランス体制というものをどういうふうにお持ちなのか、お聞きをしておきたいと思います。
  54. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 基本的なお答えをいたしたいと思うのですが、先ほど言われました狂牛病の問題、O157の問題、そういう問題から、国民の皆さん方にとりましては、食糧の安全性の問題について極めて関心が高まっております。私どもも、この食糧というのは、量の問題と質の問題と、両面がまさに車の両輪でありまして、私も、平成九年度の予算の中に、この食品の安全性の問題について十分に研究するように、予算をとるように、措置するように指示をしてございます。食品の、食糧の安全性の問題については、極めて大事な問題でございますので、そういう強い問題意識を持っておるということを申し上げます。
  55. 中須勇雄

    ○中須政府委員 先ほどの遺伝子組み換え作物をえさとして利用する場合の問題につきまして御説明を申し上げたいと思います。  先生御指摘のとおり、飼料用として遺伝子組み換え農作物を利用するという問題は、やはり私ども農林水産省として責任を持って安全性を確認すべき問題だ、こういうふうに認識をしております。したがいまして、食品としての利用ということとは別に、家畜のえさとしての利用ということにつきまして、安全性評価指針に基づきまして、具体的な審議会としては農業資材審議会で専門家の御意見を聞いて安全性の確認を実施している、いわば確認されたものに限って利用を認める一こういうことを行っているわけであります。  具体的には、この指針に基づきまして大きく二点ございます。一つは、新しく導入された遺伝子については、その特性が明らかにされており新しい有害物質を産出することがないというポイント、それからもう一つは、既存の農作物、それとの間で栄養成分等について差異が認められない、これらの点について科学的見地から専門家による検討を経まして、飼料としての安全性、品質の同等性ということを確認している。現在、六品種確認をしております。大豆が一品種、菜種が三品種、トウモロコシ二品種 こういうことでございます。引き続き私どもとしては、全く新しい技術でございますので、こういった手続を経て審査を厳重に行うことによりまして安全性の確認に万全を期していきたいというふうに考えております。
  56. 北村直人

    ○北村(直)委員 安全というのは、もう安全に安全を重ねてもまだ安全ではないというものがありますので、特に、トリプトファン事件というのがありました。こういうことからいうと、本当に予期せぬといいましょうか、ましてや遺伝子を組み換えるというわけですから、DNAを組み換えていく、こここま組み換えができた、遺伝子が組み換わったということは確認できるでしょう。しかし、もともとある細胞の中で、それではその後何が起きたかというのは、これはなかなか確認できない。ですから、世界的なDNAの研究の第一人者でありますジョン・フェイガン博士、この方は、アメリカの遺伝子工学、DNA研究の第一人者と言われております。アメリカの国立衛生研究所などで二十年間にわたって最先端の研究に携わってきたキャリアの持ち主でありますけれども、この方ですら一遺伝子組み換えは画期的だが、いいかげんな技術であるとか、非常に安全性については不安がある、こうおっしゃっておるわけであります。  先ほど言ったように、トリプトファン事件もありました。そりいりことからいえば、これは我々の口に入るものです。人間の口に入るものは厚生省の管轄ばかりではありません。これはもう食糧の中に農水省がかかわる問題というのは本当に大きなものがあります。農水省の判断いかんでそれこそ第二のエイズが起きるというようなことだってあり得るわけであります。対岸の火だと思って、いや、厚生省大変だなと思っていたら、あるときに農水省がそのことで火だるまになるということだって私は将来起きてくると。  ですから、この遺伝子組み換えのことについては、くどいようでありますけれども、やはり農水省、厚生省、この省庁間の壁を省いて、特に、こんなことを言うと自分の宣伝みたいになってしまいますが、私も獣医師の資格を持って十年フィールドで頑張ってきた人間であります。つまり、病気が起きるとこれはお医者さんのところの分野であります。しかし、病気が起きるまでの、食糧ですとかいろいろな問題について、これはすべて第一線でやっているのは、実は獣医師の資格を持った方々が全国で非常な努力をしているのですね。努力をしている。ですから、そうなると、私は実は、獣医師の資格を、国家試験を受けたときの認定をしてくれたのが農林水産大臣です。大臣からいただいたわけですから、つまり私の親は農林水産省だと思っていますから。そうすると、その農林水産省が火だるまになるなどということは私はもうとても考えられない。  また、獣医師の一人として、この遺伝子組み換え、まあいろろな説があるでしょう。ですから、これが正しいとは言いませんけれども、しかし去年の狂牛病、O157、こういうことを考えたときに、私は農水省としては本当に全力を挙げてこのことに取り組んでいただきたい。そのときには、正直言って、やはりそういう専門的な知識がないとなかなかやれません。それは厚生省も一いろいろなところでは、医師の資格を持った方が企画立案をする、あるいは薬剤師の資格を持った人が企画立案をする、あるいは歯科医師とかいろいろな方、厚生省の方はしっかりしております。企画立案の役所のポジションもしっかりしております。しかし、厚生省も農水省も、実は獣医師の資格を持った人が企画立案に携わっているか、しっかりした責任を持ってやっているかというと、いないのですね。資格としては持っていて衛生課長さん。課長さんにしかられてしまいますけれども、課長どまりです。これからどんどんどんどんこの問題出てきますよ。  私はぜひ、このことから先は私の意見として大臣にまたお考えをいただきたいと思いますが、そういう面では、農林水産省あるいは厚生省を問わず、やはり企画立案できるそういった専門的な知識を持っている、そういう、せめて審議官ですとか、あるいはそういうところの局を任せられる、そういうものを、これは私は決して行政改革に逆行するとは思いません。きょうはそのことについてお答えはいただけないと思いますので、ポストのことまでについて、そんなことはあれですから。ただ、人間の命を守っていくところの、この遺伝子組み換え、あるいはこれから質問しようと思っておりましたけれどもサルモネラエンテリティディス、あるいは病原性大腸菌O157、こういう問題についても、真剣にやはり農林水産省は取り組んでいただきたい。命にかかわる。  そこで、実は、サルモネラエンテリティディスあるいは病原性大腸菌O157、これは、鶏や家畜に対しては危害はほとんどありません。しかし人に感染して重大な被害を起こす疾病です。四月の二十六日で日切れになる狂牛病の問題、これはこれからこの農水委員会の中で議論をされていくと思います。これはしっかりやっていかなきゃならぬと思いますけれども、私は、安全な食肉を供給するという農水省の重要な役割からかんがみて、このサルモネラエンテリティディスあるいは病原性大腸菌のO157等です。こればかりとは言いません、等を家畜伝染病の対象とすべきでないのかな、私はこう思いますが、そのことについてお答えをいただければと思いますが。
  57. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 先ほど委員から、食品の安全性の問題で農水省、厚生省を問わずしっかりやれ、こういう御指摘をいただきました。私も厚生大臣経験者でございまして、在職中ここの輸入食品の安全性について農水省が非常に頑張った事例を幾つか知っております。そういうことからいたしますと、私は農水省の事務当局に全幅の信頼をいたしておるわけでございまして、なお、我々の使命は国民の皆さん方に安全な食糧を提供するということでございますので、十分にその点はさらに意を用いて頑張ってまいりますことをお約束いたします。
  58. 中須勇雄

    ○中須政府委員 ただいまお尋ねの第一点目のサルモネラエンテリティディスにつきましては、確かに先生御指摘のとおり、一般的には成鶏、大人の鳥が感染してもほとんど症状を示さないと言われておりますが、幼雛段階ではかなりの死亡率があるというふうな知見もございまして、私どもの意識としては、現在、家畜伝染病予防法の、法定伝染病なり届け出伝染病ではございませんが、この予防法の対象の疾病である、こういうふうに考えております。したがいまして、主としてひなの段階に重点を置いた各農場の清浄化対策というか、サルモネラフリーを進めていくということでの対策をこれまでも講じてまいりましたし、引き続き努力をしていきたいというふうに思っております。  ただ、もう一つの病原性大腸菌O157につき ましては、先生御指摘のとおりでございまして、現在でも、実験症例を除きまして、牛では体内に菌が存在していても症状を示したという例は報告されておりません。したがいまして、今の家畜伝染病予防法、こういう体系のもとでは、この対象にしていく、家畜の伝染性疾病という意味では難しい問題があるというふうに思っております。ただ、O157の問題というのは、御指摘のとおり、公衆衛生上極めて重大な問題でもございますし、また、ひいてはそのことが畜産物の安定的な消費という面でも大変大きな影響を及ぼす事柄だというふうに思っております。  そういう意味におきまして、私ども引き続き、特に農場から屠畜場に搬出される牛の衛生管理面での指導、あるいはさらに、屠畜場、流通段階での食肉等畜産物の安全対策については、厚生省と十分連携をとりながら、引き続き積極的に取り組んでいきたいというふうに思っております。
  59. 北村直人

    ○北村(直)委員 本当に積極的に取り組んでいただきたい、このように思います。  特に、O157というのは、約一・四%は牛のふん尿、便中に常在するんですね。ですから、これはきちっとした畜舎における牛ふんの処理というのが非常に問題になってくるんです。きちっと完熟した堆肥にすると心配ない、こう言われております。  たまたま一九八〇年にはカナダでリステリアがはやりました。これはどうしてだろう、こういうふうにあれしていきますと、実はキャベツから感染していた。どうしてキャベツから感染するんだろう、こう思ったら、やはり肥料の中からキャベツに移って、それが人間に移ってきた。  ですから、私は、酪農、畜産の中で特に大切なことがあると思います、特に環境問題で。一つは、尿、ふんをしっかり処理をしていくということが一つ。あるいは、生産資材、例えばビニール、肥やしが入っていたビニールの袋、こういうものをどう処理をしていくか。三つ目は、へい獣、死んだ牛の処理をどうしていくか。この三点セットがしっかりされていないと、酪農、畜産においては、環境問題はなかなか解決できない問題があります。  これは、きょうはそれ以上は突っ込みません。この後三月は乳価の問題等々がありますので、また委員会も開かれると思います。そういうところで、環境問題をどうするか、ここら辺も議論をしていきたい、このようこ思っております。  さて、命というのは本当に大切なものですから、実はここに二月十七日付の水産の新聞がございます。「浜は悲鳴」を上げている、浜というのは水産をされている方、「史上最悪の漁具被害」、こういう見出しで、「韓国船が違法操業」をしている、こういう記事が出ております。「漁具被害の急増は異常なほどだ。韓国船の自主規制ラインはあって無きのごとく、領海侵犯もやっている。われわれの漁場監視レーダーが捕そく、記録している。明らかな主権侵害だ。日本は韓国政府に、き然とした態度で抗議すべきだ。そもそも日韓漁業協定は不平等条約だ。日本の二百カイリで操業していながら、わが国に取締権がないなど」不利益だ。「ましてや、海洋法条約を批准、二百カイリを設定していながら、韓国を適用除外にするなど言語道断。同協定の改定が三月中に決着しなければ、国は三党合意を忠実に」守って「協定を破棄すべきだ。」ここまで浜は殺気立ってきておるわけであります。  北海道のこの韓国船の違法操業で、平成八年、昨年の十一月から平成九年の一月、わずか三カ月間で百三十二件、昨年は百三十九件で、一年間に匹敵する被害件数が出ているわけであります。ある水産の漁業者は七回もやられてしまった。天候が悪いときをねらって侵入してくる、これもわかっている。  こういう問題について、水産庁はどう対処し、どうしていこうとしているのか、そして、最終的に、先ほど申したように、三月中にこれは決着できるのか、三党合意はしっかり守られていくのかどうか、そのことについて御答弁をいただきたい、このように思います。
  60. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 韓国漁船によります違反操業の問題につきましては、昨年十一月の日韓の実務者協議でありますとか、それから十二月に行われました日韓漁業指導取り締まり実務者協議、いろいろございます。それから、ことしになりまして一月十七日に、私が参ったわけですが、日韓漁業ハイレベル行政会議、いろいろな場を通じまして、これまでも韓国側に対しまして取り締まりのさらなる努力関係漁業者への徹底した指導ということを要求してきているわけでございます。  いずれにせよ、今後あらゆる機会をとらえまして、この韓国に対しましては、違反操業の徹底した強力な取り締まりを要望していくつもりでございます。  また、新たな日韓漁業協定の問題でございますが、これにつきましては、昨年与党三党の方から政府に対しまして申し入れがございました。これにつきましては非常に重く受けとめておりまして、これまで新たな漁業協定の締結につきまして鋭意努力をしてきたわけでございます。今後とも、新たな海洋法条約の趣旨に添いました新たな漁業協定の締結に向けまして、最大限努力していきたいと考えております。
  61. 北村直人

    ○北村(直)委員 長官からお話を聞きましたけれども、本当に浜は悲鳴を上げているんですね。特に北海道の東部、太平洋沿岸の方々は、毎回毎回出漁するたびに漁具の被害を受けています。そういう面では、これは大げさではなくて、ぜひ速やかな、今長官がおっしゃったことをきちっと積み上げていっていただきたい、このように思いますし、取り締まりも、平成九年度の予算書を見ると取り締まり船の新船、増船ですか、これもあるようですけれども、しかし、本当にそのぐらいの予算でいいのかなと。これは何というのでし、ようか、親のかたきと魚は見たときにとれということわざがあるように、なかなかその魚、大変だと思うのですね。しかし、そうも言っていられない。やはり、韓国との問題というのは、きちっとした外交問題としてこれを決着をしていかなければならないと思いますし、あるいは漁具の被害については、明らかにそれがわかるものはやはり韓国に補償もしてもらわなければならない。そのことについて、浜が悲鳴を上げないように、ひとつ水産庁の指導強化をお願いする次第でございます。  私に与えられた時間がそろそろ来てしまいました。しかし、もう一つだけ、これも命にかかわる問題でありまして、この後、この農水委員会では松くい虫等々の議論がされると思いますが、松くい虫で木が被害を受けていると同じぐらい、ひょっとしたらそれ以上に、実は北海道のエゾシカで国有林初め森林が壊滅状態にあると言っても過言でないような被害が起きております。きょうは問題提起だけさせていただいて、またそれぞれの委員会の中で議論もさせていただきたいと思います。  ただ、私は、基本的にはこの問題、エゾシカばかりではなくて、日本国じゅうにある、特に鳥獣保護をしているそういったものの被害というのはたくさんあるわけでありますから、決して北海道のこのエゾシカの問題だけではなくて、大きな観点から議論をしていかなければならぬと思いますが、特に鳥獣保護並びに猟銃に関する法律の改正というものがやはり急務なのかなと。国の責任ないわけですから、これは民法で無主物です、ですからこれ以上どうしようもないのですけれども、しかし、被害がこれだけ大きくなってくると、一地方自治体だけにその責任を任していいのかな、あるいは国有林等々、大切な我々の命を守る山、こういう問題について、やはり農水省も国も真剣な対策考えていかなければならない、実はこのように私は考えております。  きょうは時間が参りましたので、また松くい虫のときにこれをやらせていただきたいと思いますので、林野庁長官の御指導もまたいただきたいと思います。  きょうは長きにわたって質問をさせていただきました。すべてキーワードは命でありました。ま さしく農水省は命の番人でありますから、そういう面では人間の命を守るために本当に想像力を豊かにして、先ほどから何度も言うように、今は何でもないと思っても、あるいは今の科学ではこうであってもというのがたくさんあります。そういう面では、農水省は命を守るための食糧の安定、食糧の自給、あるいは先ほど言ったようないろいろな遺伝子組み換え、あるいは伝染病、こういう問題等々、水産もしかりであります、林野もしかりであります、そういう問題に、本当に、所信に書いてあるのをこれで終わらせることなく、所信ですから、これに沿ってきちっとやっていただきたい、このように思います。  きょうは総論になってしまいましたけれども、次はいろいろな形で、また各論を含めながら、私自身、自分の歩んできた人生の中で一次産業と切っても切れない人生を歩んできたわけであります、農、林、水。その中で、決して適切な言葉ではなかったり、あるいは難しい言葉を使えないわけでありますけれども、ぜひ謙虚な気持ちで農水省の方々大臣も含めて、今後の行政指導をお願いをしたい、このように思います。  以上、私の質疑を終わらせていただきます。ありがとうございます。
  62. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、菅原喜重郎君。
  63. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 まず、大臣質問を申し上げます。  その前に、私は、質疑にはできるだけ具体的な数値を入れて質問しようと心がけてまいりましたが、これもなかなか大変なことであることを経験しております。今回、三年数カ月ぶりに国会に戻り、各大臣の所信表明を聞き、非常に懐かしさもいっぱいですが、しかし、十数年前と相も変わらぬ、実体的数値の入らない作文的表現型の所信表明でございます。大臣の方からいえば、それは予算案の中で明示してあるからとの思いであるかもしれませんし、また、そのために次官をして予算説明もさせていると考えるかもしれません。しかし、聞く方からしますと、表明はどうしても抽象的な印象を受けます。ですから、この表明の中で、少なくとも重点、重点に数値を入れた説明をいただき、形式にこだわらないなら次官の説明は省けるとも思われます。論議が具体性を持つよう、所信の内容にもっと数値を入れ、具体的にしたらどうかとの考えからこのことを申し上げましたが、このことについて大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  64. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 委員から、国会におきましては具体的なわかりやすい議論を行うべきである、そのような御指摘に対しましては私も同感でございまして、質疑を通して率直な御答弁をさせていただきたいと思っております。  ただ、所信表明につきましては、農林水産行政を行うに当たりまして基本的な考え方を申し上げたわけでございまして、それにつきましては、今後委員会の質疑の中でお答えをさせていただきたいというふうに考えております。
  65. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 私といたしましては、次官と大臣の表明と説明を聞いて、もう一本化もできるなというような、そんな気持ちもしたものですから、一応お伺いした次第でございました。  次に、昨年十一月、ローマにおいて開催されました世界食料サミットについてお伺いいたします。  この会議は、同月十三日から十七日までの五日間、イタリアのローマで百八十カ国以上の首脳が一堂に会して開かれ、二〇一五年までに飢餓・栄養不良人口の半減と世界の食糧安全保障の達成をうたったローマ宣言、行動計画を採択しました。そして、すべての人々に食糧を、フード・フォー・オールのスローガンの実現に世界は動き出したと報じられています。国内的には四十数%そこそこの食糧自給率であり、世界的には一秒間に三人近いと言われる出生数等を考えますと、我が国がこれらにどう対応しようとするのか、またできるのか、全くの難題を抱えたことになります。  大臣はこのサミットに出席されましたが、そこで具体的にどのような主張をなされたか。また、サミットで率直にどのような印象を持たれたか、またそれを農政にどのように反映なされようとされるおつもりか、お伺いしたいと思います。
  66. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 今委員が御指摘になられましたように、この食料サミットというのは二つの問題を議論したわけでございまして、一つは、二〇一五年までに、現在、飢餓・栄養不足に悩んでいる八億人の人口を半減しようという数値目標を決めた。これは非常に意義のある決定であったと思うわけです。もう一つは、食糧の安全保障について参加した百八十数カ国の首脳がそれぞれ演説をいたしまして、どのようにこの食糧の安全保障について考えているかということを、意見を出し合ったわけでございます。  おおよそ食糧の輸出国は、比較優位論、つまり、簡単に言えば、食糧の安全保障というのは食糧を輸出できる国に任せておけばいい、そういう意見。しかし、大半の国は、やはりこれからの食糧の需給動向を考えますと、主要な食糧は自分の国でつくるべきだ、国内の資源を活用して自給率の維持強化のために努力をすべきだ、こういう意見に分かれたわけでございますが、おおよそ後者の意見がほとんどであったように感じました。  私は、先進国で食糧輸入が最大の日本といたしまして、一つは、食糧の安全保障については国内生産、これはすべて自給するというわけには御承知のようにできないわけでございますが、今後のこの需給の動向から見ますと、主要な食糧、米とか野菜とか、そういう主要な食糧は国内でできるだけ自給をしていく。しかし、全部は自給できないわけでございますので、足らないところは備蓄と輸入、こういう三つの政策を適切に組み合わせることによってこの食糧安全保障の問題については対応したい。  それから、先ほど申し上げましたように、中でも国内生産というのは非常に重要でございますので、その点を特に強調をさせていただいたわけでございます。  さらに、農業というのは、単に食糧を生産する、そういう一面的な問題だけではなくて、多面的に、国土の保全であるとか農村地域社会の維持発展であるとか、そういう問題も持っておるわけでございまして、貿易だけの問題ではないということも主張をいたしました。  それから、食糧の輸出国が、国内の事情のいかんにかかわらず、果たして継続的に輸出ができるかどうかということは、これは非常に疑問の点もあるわけでございまして、特に、食糧の輸出国に対しましては、安定的な供給責任があるということも主張させていただきました。  すべての首脳の演説を聞いたわけではございませんけれども、おおよそ承った各国の首脳の演説につきましては、ほとんどの方々の意見というのは日本の国の主張とほぼ同じ考え方であったというふうに理解して帰りました。二十一世紀に向けまして、食糧、農業問題の重要性を訴えたこの百八十数カ国の首脳が集まった非常に大きな国際会議として、極めて大きな意義、意味を持っておったというふうに私は理解して帰ってまいりました。  それから、最後のお尋ねでございますけれども、そういうこれからの主な食糧をできるだけ自給をしていくということについては、今の自給の低落、低下傾向に歯どめをかけまして、今後、自給力を上げていくためにいろいろな施策を組み合わせて対応していきたいというふうに考えております。
  67. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 私は、かつて日本が不作になったとき緊急食糧輸入をいたしまして、そのことが予算の乏しい食糧輸入国に大変な負担を強いさせた、そういうこともありますので、やはりこういうことは、日本は金があるからどのようなときでも優先して食糧が集められるのだという風潮を諸外国の人はあのとき持ったと思っているわけでございますので、やはり日本農林大臣は、日本農業の対応の責任と同時に、そういう世界的な対応への責任もあるわけですから、十分にそういう点も考慮して、今後、政治農政を進めていただきたいな、こう思う次第でございます。  次に、ウルグアイ・ラウンド農業合意に基づき、関連農業農村整備緊急特別対策費は、平成七年から十二年まで、六年間で六兆百億円が予算行使されると約束されたわけであります。その対策の中で農業農村整備事業はどの程度の事業量が予定されているのか。特に、米づくりの近代化と国際競争に負けない合理化には、必然的に水田の大圃場整備は必要であります。これらへの事業予算は全額の中でどの程度予定されているか、また、これまでその事業実績はどのようになっているのか、まずお聞きいたします。
  68. 山本徹

    山本(徹)政府委員 ウルグアイ・ラウンド対策費のうち、農業農村整備関係予算でございますけれども、これは、全体の六兆百億円のうち三兆五千五百億円を予定いたしております。  先ごろお認めいただきました平成八年度の補正予算までに、この三兆五千億円余のうち一兆七千七百七十八億円、五〇・一%の事業量を確保させていただきまして、これについては地元の強い要望に沿って円滑に実施させていただいております。  なお、この中で水田整備関係事業はどの程度になっておるかという御質問でございますけれども、現在まだ事業の途中でございまして具体的な数値を積み上げることまできませんが、この三兆五千五百億円の農業農村ウルグアイ・ラウンド対策は、都道府県が促進事業計画というのを数カ町村程度までの範囲で策定いたしまして、これに沿って圃場整備等の工期の短縮、あるいはかんがい排水と圃場整備等を有機的、一体的に実施することによって、事業効果の早期発現等を目的といたしておりまして、二千四百地域を全国で認定することにいたしておりますが、そのうち、平場の大規模水田農業地域については六百六十三地域を対象にすることにいたしております。  この地域、全体の二千四百地域の中の七百弱と、それからまた私ども事業の実施を担当しております立場からの推測でいいますと、これまでの全体のウルグアイ・ラウンド対策事業の実績のおよそ三割程度が水田を対象とした圃場整備等に活用されていると推測いたしております。
  69. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 私は、昭和五十八年に当選して以来、一貫して、自由化されても食える日本農業の確立を図らなければならないと主張してまいりました。当時、アメリカから農産物の自由化が要請されても、これを強く拒んでいたときであります。  繰り返すようでありますが、昭和六十年ころまで日本の全水田面積は二百九十五万ヘクタールありましたので、その中の二百万ヘクタールは、大圃場整備と完全なかんがい排水設備をなすなら決してアメリカの米作農業に負けないものができると試算もし、また訴えてもきたわけでございます。二百万ヘクタールのこういう整備された水田がありますと、もう東北から西にかけまして全国に米づくりの裏作が完全に可能であります。そうなりますと、米麦合わせまして二千万トン以上は毎年生産でき、食糧の安全保障確保にもなるわけであります。  しかし、それから十数年も過ぎ、平成七年には全国の水田面積は二百七十五万ヘクタールになり、宅地のスプロール化も進んでおります。現在では、このような優良水田はどのくらい確保できるのか。もう二百万ヘクタールは確保できないと私は見ておりますが、まだ新しく推計はしておりません。いずれ日本農業の救済は、殊に米作の救済は、整備された優良農地の造成と、ダムやため池によるかんがい排水の水の確保が重要であります。特に、国際競争に対抗できる稲作経営を確保するには、大区画圃場整備が、これからはもみ貯蔵もできる設備とともに絶対に必要であると私は思っているわけでございます。  それで、将来こういう優良水田造成、圃場整備がどの程度まで面積で整備を進められるのか、また進めようとしているのか、まずこの点をお伺いいたします。
  70. 山本徹

    山本(徹)政府委員 先生御指摘のとおり、体質の強い農業を育成するためには、大区画圃場の整備というのが大変重要な課題でございます。  こういった考え方から私どもは、平成五年度から平成十四年度までの十年間を期間といたします第四次の土地改良長期計画に基づきまして、おおむね一ヘクタール以上の大区画に整備された水田面積を、この第四次土地改良長計の始まります時期の平成四年度末、このとき水田面積の三%が大区画、これを平成十四年度末には水田の三〇%までに引き上げる。これは、三〇%は八十一万ヘクタールでございます。  これを目標に今大区画圃場整備を推進しているところでございますが、平成六年度末における大区画圃場の整備面積は、まだ水田全体の三・五%にとどまっておりまして、まだ目標には相当隔たりがございます。そこで、平成九年度の予算案におきましては、この大区画圃場を強力に推進することを目的といたしまして圃場整備事業の再編を行うことにいたしまして、今後は、担い手の育成を図る圃場整備事業、これは補助率が五〇%でございますけれども、これを活用すること、それから、新しく農地の利用集積の度合いに応じまして最大限事業費の五%の促進費を土地改良区に交付いたしまして、農家負担の軽減に配慮することにいたしました。  これらによりまして大区画圃場の整備を一層推進することを予定しておりまして、こういった新しい制度や、また農業農村整備の本体事業、またウルグアイ・ラウンド対策予算を十分活用いたしまして、圃場の大区画化を一生懸命進めてまいりたいと考えております。
  71. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今お聞きいたしましたが、このウルグアイ・ラウンド関連予算の実行、行使については、また議論も出ております。しかし、この農業合意による農業農村整備緊急特別対策と銘打たれる主要な対策目標は、何といっても米づくりについてであると思いますので、稲作の近代化、合理化には基盤の整備とかんがい排水の完備以外ありませんので、それに向かって全力を投球していただきたい。  しかし、最近、今お聞きいたしましたように、国と地方自治体の補助金を合わせますともう九〇%にもなる補助率が出ているわけなんですが、しかし、方々でこの整備になかなか合意を得られなくなってきている、そういうところも出てきているわけでございます。これは、後継者不足、負担金問題等でそういう農家があらわれてくるのは当然だと思いますが、しかし、事業の推進は後退させるわけにはいかないわけでございます。  これは私の持論なんですが、本来、土地というものは国家、社会に帰属しているものでございます、民主主義国家といえども。でありますなら、あと一割ぐらいは減歩制度で全面地方、国が負担し、事業実施の円滑、強力な推進が図れないものか、ぜひ検討をしていただきたいと思うのでございます。  こう言いますのは、後継者を持たない農家は、農業をやめたとき農地を手放さざるを得ない状況に立ち至るのですが、減歩されても、優良農地でありますなら小作地として土地保有させてやることができるのであります。これは整備の新たな対策になると思いますが、また農地の公共性を重視し、ぜひ積極的な法律の創設も必要だ、こう考えるものでありますので、これらの点について政府の所信をお伺いいたします。
  72. 山本徹

    山本(徹)政府委員 圃場整備を推進するに当たって、事業の同意を得やすくする、これが一つの大事な課題でございますが、このために、先ほど来御紹介いたしましたような新しい担い生育成と圃場整備を組み合わせた補助率五〇%の制度の活用とか、あるいは事業費の五%の促進費の土地改良区への交付等々の制度を活用しながら、関係者の同意を得るように現場での努力を進めてまいりたいと考えております。  それから、減歩でございますけれども先生御指摘のように、減歩によって非農用地を創設する、これによって実質的な農家負担の軽減を図るということも、これもさまざまな用途に、特に公共用地等への需要に対応した用地の創設というも のもこれも大変有意義なことでございますし、これをあわせて農家負担の軽減にもつながってまいりますので、今後ともこの減歩による非農用地の創設というような手法については、それぞれの地域でこの手法の周知または普及に努めてまいりたいと考えております。
  73. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、今建設省は建設大臣の諮問機関である河川審議会からの提案を受けて、河川管理の目的に、従来の治水、利水のほかに新たに環境を加えた大幅な河川法の改正が提案されております。環境に対する国民の関心も高まっている状況下で、良好な河川環境の形成を図るという名目には歓迎したくもなりますが、都市部環境用水を流すため農業用用排水路等を水路兼用河川として法指定された場合、今後の用排水路改修や施設改修に法律の縛りを受けるのではないか。  また、用水利用について、農業への本来的機能と優先権を持っている農業利用者にいろいろな阻害や、事務手続等の余計な煩瑣を受けないかと心配するものであります。さらに、農業用水が一番農作物の栽培に必要なときに、それがまた渇水時に重なったようなとき、環境保全の立場から利水規制がなされたら大変なことになると思いますので、こういうような細部の点についても建設省との両省間の調整がなされているのか、どうなっているのか、お伺いいたします。
  74. 山本徹

    山本(徹)政府委員 河川法の改正につきましては、昨年来、建設省がその案を御検討中でございましたので、私どもも、昨年から両省間でこの河川法の改正の問題について協議を進めさせていただいております。  この結果、先生御指摘のとおり、農業用水の確保という観点から、大きな論点でございました水路兼用河川の問題がまず第一点ございますが、これは農業用水路に河川法の規制をかけようという内容のものでございましたけれども、この水路兼用河川制度の創設につきましては、これは法改正は行わないということとなりました。  ただ、地域の環境改善、これも重要な課題でございますので、こういった目的のために農業用水路に河川の水を流すためのあり方については、今後引き続き両省で共同して検討するということで協議をさせていただいております。  それから、もう一点大きな論点でございまする水調整協議会、これは、最近渇水が多発化してきておりまして、農業用水の調整も行ってきたわけでございますけれども、この渇水調整協議会の法定化の問題につきましても、法改正は行わないということで、そのかわり、早い時期から利水者間での渇水調整を行うことと、またそのために必要な情報提供を河川管理者が行うというようなことを内容とする法改正を行うことになったところでございまして、農業用水確保の上で大きな論点となっておりました二点については、基本的には解決がついたと考えておりますけれども、これから政府として法案を国会に御提出するまでの間、目的に河川環境整備と保全というものが追加されるわけでございますけれども、これに伴って過度な地元負担あるいは規制がかかることのないようにする必要もございますので、環境に関する許認可の判断基準等も両省で共同して作成するということなどについて今鋭意協議をいたしておりまして、法案が政府案として成案を得るまでに細部まで両省間できちんと詰めて、農業用水の確保に遺漏なきを期してまいりたいと考えております。
  75. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 この水路兼用河川の方式には本当に慎重に対処していっていただきたい、こう思います。  次に、森林保全のためには除間伐の推進が重要であるわけでございますが、このことも私の長年の主張でありまして、本来森林の形態維持のためには枝打ちは全然と言っていいくらい必要がないわけです。枝打ちよりもむしろ除間伐が必要なんです。それを今反対に枝打ちをいたしまして光合成ができる葉っぱを全部落としているから、みんなもやしのような、最初からこれは密植森林の弊害と一緒になりまして枝打ちの弊害が出ているわけでございます。ですから何としても、今山がもうほとんど荒廃しかかっておりますので、ぜひ除間伐だけは進めていただきたい。  そのためには、今間伐した木材を搬出することがいわゆる補助の対象にもなっておりますが、これをそのまま林内に放置しても除間伐の補助ができるようにできないか。林内に放置しましてもこれは肥料になっていくわけでございますから、このことについては造林、間伐推進全国大会からの陳情も受けておりますので、ぜひ前向きに検討していただきたくお伺い申し上げる次第でございます。
  76. 高橋勲

    ○高橋政府委員 除間伐が人工林を健全に育成する上で、また森林の持つさまざまな機能を発揮させる上で大変重要な作業でありまして、林政の重要な課題というふうに認識しております。  しかしながら、その実施状況は、木材価格の低迷とか、あるいは経営コストの増嵩というふうなことで非常に環境が厳しいために不十分でありまして、必要な森林に対しまして現在実施割合が約五〇%ぐらい、その中で、利用するために搬出しているものはまたその半分ぐらいというふうな実態になっておりまして、先生の御指摘のような、林内に放置したらというふうなものも大分実行されているわけでございます。  このために、平成九年度におきましては、森林整備事業による除間伐の実施を引き続き実行しますとともに、新たに、森林の持つ公益的機能を発揮させる観点から、今このまま放置すれば間伐が手おくれになるというふうな森林を対象としまして、緊急に間伐を実施する機能保全緊急間伐実施事業、これを実施することとしております。  それから、枝打ちにつきましては、やはり良質材の生産ということだけでなくて、林床植生の育成を図って公益的な機能も発揮させるという意味でも必要ではないかというふうに考えております。  ともかく、除間伐の重要性にかんがみまして、いろいろな施策を総合的に展開しまして、除間伐の実施面積の拡大ということに努めてまいりたいと思っております。
  77. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 この枝打ちについてですが、私も言葉不足なのですが、後継木を育てようとする場合、枝打ちは必要ないわけです。もう除間伐なんです。あと択伐ですから。しかし、いわゆる化粧材を生産するにはどうしても枝打ちが必要ですから、この点、物価が下がってまいりますと化粧材では採算が合わないのはもうはっきりしていますから、やはりこの際、林業政策は、国土保全、後継木を育成する、そういう方向に切りかえていっていただきたい、こう思うわけでございます。  次に、ナホトカ号の重油流出事故についてお伺いするのでありますが、過般、私たちの地方新聞に、椎名参議院議員が務める国際経済政策調査会が特別セミナーを開きまして、アメリカからも専門家を呼んで講義をし、また現地も見たようでございます。アメリカから来た専門家たちは異口同音に、日本はこの重油の被害に対して認識不足だ、これは温度が上がってくると将来大変な被害が拡大されるということを言っております。  さらに、向こうではバイオレメディエーション技術というものも随分開発されているようでございまして、これは、二次汚染がなくこういう重油事故の処置ができていくというようなことも言われております。  政府は、これからこの海洋汚染対策についてどのような取り組みを行っていくのか、今回の流出事故を教訓にこのようなバイオ技術の導入も研究しているのか、ひとつこの件について御答弁をお願いいたしたいと思います。
  78. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 今回の油流出事故でございますが、これは島根から山形というふうに非常に広範囲にわたっておりまして、したがって、当然ながら生態系及び水産生物に対しましても広い範囲で影響を与えているわけでございます。  このような中で、沿岸域に漂着した油の除去に当たりましては、数県におきましては、生態系に配慮いたしまして、油処理剤を極力使用しないようにしているところもございます。また、水産庁 といたしましては、環境庁とともに、油処理剤の使用及び油を分解する微生物を利用したバイオ処理技術の活用につきまして、生態系及び水産生物への影響を考慮して対応するように、関係府県等へ通知しているところでございます。  また、今先生言われましたバイオレメディエーションでございますが、これは微生物を利用して油等の汚染物質を分解する技術でございます。水産庁におきましても、このバイオレメディエーションには注目しておりまして、現在、補助事業によりバイオレメディエーションを利用した油処理剤の開発を進めているところでございます。  ただ、この技術につきましては、栄養素によりまして海水の富栄養化が生ずる可能性でありますとか、微生物の散布によりまして海洋生態系に与える影響の可能性も指摘されております。実用化に当たりましては、こうした環境等に与える影響につきまして、今後調査研究を進めていく必要があるというふうに考えております。  いずれにいたしましても、今後とも海洋汚染対策を進めるに当たりましては、今回の事故を教訓にしながら、生態系への影響を緩和するように努めてまいりたいというふうに考えております。
  79. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 いずれにいたしましても、今回の重油流出事故もいろいろな教訓を残しております。殊に微生物による汚染源の分解処理技術、これはもう新しい課題ですので、ひとつ大臣、こういう面にも予算をどんどんとって、日本の研究水準を高めるようにしていただきたい、こう思っておる次第でございます。  次に、今後水産業においては、つくり育てる漁業の推進がますます重要になることは言をまたないところでございますが、そのために、今これらを推進するため、新たにどのような技術の開発がされているのか、最近そのような技術の開発による実用化ということもなされているのか、また、今後の見通しについてもお伺いしたいと思います。
  80. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 つくり育てる漁業の推進を図りますために、最近におきましては、これまで開発されておりませんでした、例えばハタハタでありますとかスズキなどの種苗量産技術、それから浮き魚礁、それから海底につい立て状のブロックを設置することによりまして栄養塩に富んだ海水を上昇させます人口湧昇流など、漁場造成技術が開発されておりまして、実用化されている段階にございます。  海洋法条約によります新たな秩序の中で、つくり育てる漁業の一層の推進が重要となっておりますが、今後とも、種苗生産、放流等に関する技術の開発を進めますとともに、例えばより深い海底に大規模な組み立て魚礁に相当いたします機能を有する、マウンド漁場造成システムと言っておりますが、このマウンド漁場造成システムの開発でありますとか、養殖業の省力化技術などの技術開発についても今後支援をしてまいりたいというふうに考えております。
  81. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 時間も来ましたので、最後に、大臣所信の国際協力の推進についてお伺いしますが、食糧需給構造の変化に対応した支援の強化、地球環境保全対策の推進ということがうたわれておりますが、具体的内容をお聞かせいただきたいと思います。
  82. 熊澤英昭

    ○熊澤政府委員 お答え申し上げます。  大臣所信の中で国際協力の推進、その中で第一番目は、食糧需給構造の変化に対応した支援の強化、二番目が地球環境保全対策の推進ということで述べたわけでございます。  最初の食糧需給構造の変化に対応した支援の強化という点でございますけれども、先ほど来大臣からも御説明申し上げておりますが、国際的には開発途上国の人口の増加、そういったようなことで需要が増大している。他方で、環境面の制約等から世界的な生産の伸びが鈍化しているということもございまして、国際的には需給がタイトになるという懸念が強いわけでございます。  そういう中で、地域的に見ましても、例えば経済成長が高い東アジア地域におきましては、畜産物の消費が増加している。他方で、アフリカの地域とか南アジアの地域におきましては、慢性的な食糧不足の状態が見られるということがございますので、私ども、国際協力を推進するに当たりましては、そういった地域とか国の状況に応じて農業協力を推進する必要があるというふうに考えられるわけでございます。  具体的には、例えば基礎的な食糧の増産ということでありますと、かんがい施設の整備とか、あるいは米とか小麦といった穀物の栽培技術の指導、そういったものもございます。  それから、畜産物の増産ということになりますと、家畜衛生技術の向上、あるいは家畜の品種改良、あるいは飼養管理技術の向上、そういったものもございます。  他方、畜産物の消費が増加したような国に対しましては農産物の流通整備に対する支援というのも必要になってまいりますけれども、そういう点ですと、例えば卸売市場整備といったような支援も必要になるかというふうに考えておりますので、関係各省とも協力しながらそういった協力を推進してまいりたいというふうに考えているところでございます。  他方、地球環境保全対策でございますけれども、これは国際的にも地球環境の保全対策必要性というのが各方面で強く主張されておるところでございます。  そういったことに対しまして、具体的に申し上げますと、例えば、熱帯林の減少という問題に対しまして造林、植林等の支援によります森林保全。あるいは多様な生物資源が減少しているということも言われております。そういうことに対しましては、生物資源、例えば遺伝子の資源の保存、そういった支援もございます。  それから、砂漠化の進行という問題もございます。これに対してもやはり植林技術あるいはそういった植林技術を通じてどういった計画によれば砂漠化の進展が防げるか、そういった技術指導もございます。  さらには、地球の温暖化、これも基本的には森林の造成というのが一番大事かと思いますが、そういう森林造成に対する支援、そういった支援が考えられるわけでございますので、これも農林省だけでというのもなかなか難しい面もございます。関係各省とも協力しながらそういった協力を推進してまいりまして、国際的な環境保全に貢献してまいりたいというふうに考えております。
  83. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  84. 石橋大吉

    石橋委員長 午後一時四十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十四分休憩      ――――◇―――――     午後一時四十一分開議
  85. 石橋大吉

    石橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。安住淳君。
  86. 安住淳

    ○安住委員 私、民主党の安住でございます。農水委員会質問をするのは初めてでございますが、我が党のお計らいで一時間も時間をいただいたものですから、きょうは農政全般について、藤本大臣初め農水省の皆さんのお考えを伺いたいと思っております。  最初に、午前中からもいろいろ質問がございましたが、食糧自給問題について基本的なところをお伺いしたいと思っております。  平成七年度の食料需給表が発表されましたけれども自給率四二%、平成五年の凶作のときは異例だったと思いますが、しかし、その次ぐらいにこれはちょっとショックな数字だったのではないかなと思っております。昭和三十五年に七九%だった自給率がここまで下がってきた。これまで農林白書の中でも体制の基盤強化ということは何度となくうたわれてきて、その施策を推進しているんだということを白書の中ではずっと言ってきたわけですが、しかし、結果として四二%という数字になっている。  このことについて、安全保障の問題ともこれは絡むし、それから、二十一世紀に向けて我が国農業をどう位置づけるかということに関して言えば、これはどういう方針でこの問題に取り組むかというのは非常に重要なことだと思っておりますので、まずこの点について藤本大臣のお考えをお伺いしたいと思っております。
  87. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 確かに我が国の食糧の自給率は、現在先進国では最低の数字である。四二%という数字は最低であるわけでございますが、これはよく中身を調べてみますと、食生活が多様化した、高度化したということが非常に大きな原因であるわけですね。お米中心の食生活であれば自給率はぐんと上がってくるわけですけれども、そういう食生活から今多様化、高度化している、そこにこの自給率が低下をしてきたそういう現状が見受けられるわけであります。  しかし、この自給率が低いということは、これは決していいことではなくて、今後の食糧の、世界の自給率需給関係を見ましても、日本の国の自給率を上げていくということは大事なことなんで、我々としては、基本的には今の自給率の低下傾向に歯どめをかけて、そしてこれから自給率を上げていく、こういうところに農政基本的な方針というか考え方を進めていかなきゃならぬというふうに思っております。
  88. 安住淳

    ○安住委員 自給率の向上を目指すというお話でございました。確かに、大臣、去年の食料サミットでの大臣の御発言の中にもそういう趣旨がありました。  しかし、この問題を考えるときに、確かに我が国で、国内自給のできるものもあれば、しかしどう頑張っても自給できないものもございます。ですから、そこの組み合わせ、かみ合わせといいますか、そういうものをどうしていくか。逆の面で見れば、どう輸入安定供給の確保もするかということも非常に重要な問題だと私は思うのです。ですから、我が国自給できるもの、それからそうでないもの。しかし、長期的に見れば、我が国を取り巻く環境は、中国が穀物の輸入国になったことを考えても、食糧の問題というのは極めて、国内自給といいますか、これを高めていくしかないと私は思いますので、新農業基本法の策定が今行われているとお伺いしておりますれども、もう少し具体的な見通しと申しますか、長期的な展望に立ってグランドデザインをかいていかないと、私はこの三十年の、ある意味では自給率が七九から四二%に落ちたこの失敗を、逆に言えば、次の世紀に私たちは繰り返すことはできない、そういう意味では今が非常に大事だと思いますので、長期展望に立ったもう少し詳細な見通し、決意を語っていただきたいと思っております。
  89. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 ローマの世界食料サミットで、私は、食糧輸入国、最大の輸入国として、主な食糧は国内自給する、できる限りつくっていく、それから、全部国内でつくるということになりますと、これはもう今の五百万ヘクタールの農地の上に千二百万ヘクタールの農地が要るわけですから、これは事実上不可能なことなので、そこで考えられることは、備蓄と輸入の適切な組み合わせでこの食糧の安全保障をやっていく、こういうことを申し上げたわけです。  今言われましたように、輸入の問題については幾つか問題点があると思うんです。それは、需給関係の逼迫の将来の先行きの見通しからすれば、安定的な供給が果たして可能であるかどうか。それから、不作になりますと価格はどんと上がるわけでございます。それからさらに、今は日本の国の経済力、これで食糧を買うということは可能ですけれども、そのことによって、やはり世界の中では食糧が欲しくても手に入らないそういう発展途上国もある、そういう国々がどういうふうに思うだろうか。そういうことから考えると、政治的にも、人道的にも、いつまでも輸入に頼るということは非常に問題ではないか。こういうようなことからしますと、まず第一に、やはり主要な食糧は日本でできるだけつくっていく、こういうことに結論としてなると思うんです。  今、平成十七年度の見通しといたしまして、米につきましてはほとんど一〇〇%近い自給率考えております。それから、小麦につきましては一二から一五%、野菜が八八%、牛乳・乳製品が七七%、それから肉類は五九%、……(安住委員大臣、そんなところでいいです」と呼ぶ)そういうようなことで、一応平成十七年度を目標にした、中身もそういう自給率の向上については計画を立てておる、こういうことでございます。
  90. 安住淳

    ○安住委員 短期的な視野ももちろんそのとおりだと思いますが、やはり長期的な視野に立って、中国がこれから人口もふえてくる、我が国の食糧、自分たちの民族の食うものは自分たちが基本的には賄っていくんだ、そういうことをやはり基本に据えて、この問題にぜひ取り組んでいただきたいと思っております。  と申しますのも、次に米の問題を何点か触れさせていただきますが、私が感じるのは、私も東北の、そういう意味では農村社会で生きておりますが、土地利用型農業、つまり米もそうですが、私たちの国では、土地の狭さもあって生産性もなかなか上がらない。それに土地の集約をしようとしてもさまざまな障害がある。しかし、こうした問題を整理をしていって、ある意味では生産調整減反政策は、ちょっと強烈な言い方をすれば、呪縛から解き放されて、ある程度若い人たちが米を産業位置づけて、そしてそこで収入を得ていくという、かなり基盤の強いものをつくっていかなければならない、私はそう思っているんです。  ただし、どうもここから先、価格の問題、自主流通米の問題と認定農家の問題のことを触れさせていただいて、農林省がどうお考えになっておられるのか、私、そこのところを少し質問をさせていただきたいと思います。  大臣、実はきのう自主流通米の相場というか、開かれたんですが、ことしたしか二回目だったと思いますが、とりあえず三十九銘柄の値段が決まりました。そのうち、新潟の魚沼産のコシヒカリと、私の地元なんですが、宮城のササニシキ、幾らの値段がついたか御存じでございますか。
  91. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 お答え申し上げます。  昨日行われた入札でございますが、宮城のササニシキは加重平均一万九千二百九十九円でございます。それから、新潟のコシヒカリでございますが、魚沼が三万二千九十八円、岩船は二万六千百八十円、新潟コシヒカリ、一般のものは二万三千六百三十九円ということでございました。
  92. 安住淳

    ○安住委員 大臣、実は、なぜこのことを聞いたかというと、自主流通米の相場が始まってから米の値段の格差がかなりあります。これは、ある意味では消費者が送っているシグナルでもあると私は思っているんです。  なぜ魚沼のコシヒカリの話を聞いたかというと、今長官の説明の中に一つながったんですが、前回に比べて、きのうの相場で実は五百九十一円下がっているんですよ。ところが、ササニシキでいうと、ササニシキは前回も一万九千三百五円なものだから、もともと底値なんですね。それでも六円下がっているんです。  つまり、私は何を言いたいかというと、市場実態というものがそろそろ反映してまいりました。そして、自主流通米、約六百万トンですか、それに対する流通の形態も随分変わってきました。これは去年から、実は、農林省の皆さんがお考えになっている以上に農村の風景を変え、米屋さんの風景を変えていると私は思うのですよ。  しかるに、そこからが少し、私と農林省の皆さんというか大臣ともしかすると考えが違うと思うのですが、そういう価格形成や実態の中で、もう一方で、じゃ、政府米はどうやって決まっているかということを考えたときに、今それこそ一夜で千円や五百円が一気に乱高下をして、これでもまだまだニューヨークなんかの穀物市場に比べれば少し安定しているというか、そうは思いますが、しかし、残念ながら政府米というのは、この百五十万トンの備蓄米は、決まる過程はどうであれ、いまだに、政治家含め我々、徹夜をして事実上の 政治決着をしている。これは、ある意味では、これからこの二本立てで政策を運営していくのは相当難しいし、ある意味で矛盾も起きてくるのじゃないかと私は思っているのです。  だから、この点についてとりあえず、手短で結構ですから、今の自主流通米の価格の流れ、そして大臣、お米屋さんや現場の農家の皆さんのお話を聞いたことがあるかどうかわかりませんけれども、そういうところの今の変化というものに本当にお気づきになられておるかどうか。簡単で結構でございますが、お話を伺いたいと思います。
  93. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 事実の関係が主でございますので私の方から申し上げますが、今先生御指摘のとおり、米の流通実態、大きく変わってきております。特に、食糧法が一昨年の十一月に施行されましたが、流通段階でも、いわゆる今までの許可制から登録制に変えたということで、競争が非常に行われるようになった。そういう川下の影響も出ておりますし、それから、先ほど御指摘のあったように、需要に見合った生産ということが、価格形成が、市場原理が生かされる中で行われまして、作付転換もかなり急速に行われている。  例えば、先生の地元の宮城のササニシキでございますけれども、かつてはササ・コンと言われたわけでございますけれども、八年産では作付順位は全国で六位と、かつて、元年産では二番目、二年産、三年産、四年産、五年産まで作付二位ということでございましたけれども市場の評価が下がってくるにつれてそういう変化をもたらしているわけであります。  それから、政府米のお話がございましたが、これは、新しい食糧法のもとで政府役割が備蓄ということが中心になりました。したがいまして、備蓄をきちんと持って、また、それを運営していく必要があります。  今ちょっと先生が御指摘の中で、若干誤解かなと思うのでございますが、政府農家から買い入れるいわゆる買い入れ価格、これにつきましては、やはり一定のコストの状況とか自主流通米の価格動向、こういうものを考えて決めるということにいたしております。これは、やはり生産者からきちっと安定的に買い入れるということが必要であるためでもございます。  また、備蓄でございますから、基本的には一年たって売っていくということでございまして、その場合にはやはり価格の問題、自主流通米の価格が、市場原理が非常に反映されるようになってきているわけでございますから、それに対応した売り方をしなければいけないということで、弾力的な売買、売却ということを行っているところでございまして、買いの価格と売りの価格については、そういった意味で手法を変えて対応しているということを御理解いただきたいと思います。
  94. 安住淳

    ○安住委員 できれば答弁をもう少し手短にお願いしたいのですが、大臣、私がお伺いしたいのは、今の長官の言った現状認識はわかっているんです。そうじゃなくて、新農業基本法をつくっていく中で、それでは農林省の方針として、この市場原理市場メカニズムをこれからもますます推進していくのか、そこのところの大臣のお考えを私はお伺いしたいわけですよ。  つまり、どういうことかというと、これは農林省の皆さん御存じだと思いますけれども、例えば大阪の米屋に行けば、今はもうお米をブレンドと称して、コーヒー豆を並べるように売っているわけですよ。それで、十キロのところ、私はコシヒカリを例えば一キロで、残りはササニシキ九キロちょうだい、そういうふうに、ブレンドを自分でできるような売り方をしている。つまり、米の流通の形態とか消費者に届くところの自由化というのはどんどん進んでいまして、また同時に、我々生産者の地域から見ると、それはいろんな売り方があります。私の地元では既に、一杯飲み屋さんのチェーン店なんかと特別に自分が契約をして、どんどん作付をして米を売っている。  つまり、ある意味では食管制度の呪縛から解き放たれたと言ったらちょっと言い過ぎでございますが、そういう意味ではどんどんと、私は、この市場の流れが、やる気のある若い人たちにとってはようやく光明が差してきた部分もあると思うんです。  それは確かに、そういう意味では、中山間地の農業地帯をどうするかという問題も抱えているので、一〇〇%そういう方向に行くとは私は思いませんけれども、しかし後で触れますが、減反の問題なんかを抜本的に改革する場合は、私は、やはり市場の流れの中で需要と供給というものがある意味では生産調整のアンパイアになるんだと思うんです。生産調整政府がすることによって、逆に言うと強制をして、中山間地から我々のような米作地帯まですべて二七%前後の網をかけて、逆に言えばつくりたい人にもつくらせない、そういうことを一律にやっている、言ってみれば食管制度の残滓というか、こういうのを、徐々にではありますが、やはり変えていっていただきたい。そういうふうに、オープンなマーケットの中で米というものをつくっていく、そういう中核農家というか担い手農家というものをやはり市場の中から育てていくという発想が、私はこれからの農業にはどうしても必要だと思っているんです。  その障害の問題については、今からちょっと何点か触れさせていただきますけれども、とりあえずそこのところの基本認識だけ、これは藤本大臣にお伺いしたいと思っています。
  95. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 今いろいろ御意見伺っておりまして、私も同じような考え方の部分もございます。  特に、言われました点で、平成七年から、新食糧法の施行を通じまして、言われております取引指標価格という価格の形成が図られたわけでございまして、それをもとにしまして需要に応じた生産がだんだん行われてきているという認識は私も持っております。
  96. 安住淳

    ○安住委員 大臣、そういう方向で、新農業基本法の中で市場メカニズムをより反映させたような方向で、今後の二十一世紀の我が国農業基本的な姿勢を明確に示していくというふうな認識でよろしゅうございますか。
  97. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 市場メカニズムがだんだん反映していくだろうという認識はございますが、一方において、やはり米の需要と供給の問題も非常に大事でありまして、安定した米の供給、それがまた安定した米の価格ということになるわけで、このことは生産者にとっても消費者にとっても重要なことでございますので、その両方が非常に大事なことではなかろうかと思います。
  98. 安住淳

    ○安住委員 まあ、そこから先の議論になるとちょっとまた時間がかかるので、ただ私はちょっとそこは、今までとそれでは何ら変わらないということにもとられる可能性があるので、私は、基本的にはやはり市場のメカニズムといりものをどういうふうに生かしていくかということを、ぜひそこは考えていただきたいと思っているんです。  つまり、先ほどから言いましたように、消費者のシグナルというのはもうはっきり見えてきているわけです。そういう中で、残念ながら、我が県のササニシキの値段が一万九千円台で、コシヒカリは三万二千円なわけですよ。そこにはもう一方三千円もの開きがある。だから、これを縮めるために、逆に言えば私たちの地域はもっとおいしい米をつくるために努力をしていかないといけないと思うし、そういうことに対して、私は、国というものは、野球でいえばコーチというんですか、そういうことをやっていくことは、私は、助言をしていただき品質改良なんかに力をもし与えていただけるんだったらばそれはする。しかし、原則としてはやはり市場のメカニズムの中に乗せて、むしろシカゴの穀物市場では、アメリカあたりはやっているわけですよ。しかし、そこで本当に需給のバランスが崩れているかというと、そうではないと思うんです。  そこで、減反の問題も、私の考え方というのは、国が一律にそういうことをやることが果たしてこれからも――現場で二十一世紀に農業を担っていこうという人たちから見ると、もうそれは全 体の三割もの田んぼを休耕田にさせられる、これは私は正直言って限界があると思いますけれども大臣お話を聞いていると、それは今後もやはり需給のバランスから見たら続けないといけないということになると思うんですね。その辺のことだけちょっと説明をしていただきたいと思うんですけれども
  99. 高木賢

    高木(賢)政府委員 委員御指摘のとおり、ただいま約三割の需給ギャップがございます。これがある中で生産調整をしない、各人の、生産農者の自由に任せる、こういうことにいたした場合には、やはり大幅な需給ギャップがありますから、著しい過剰になり、市場評価の低い米はもちろん、良質米と呼ばれるものでも価格の大幅な低落を招くということが容易に予想されるわけでございます。そうなりますと、まさに将来担い手たる稲作経営、大規模の農家方々の経営にも重大な影響を及ぼすということが予測されます。  それからもう一つは、やはり各地域各地域、ほとんどの地域、日本におきましては米は基幹的作物というふうに位置づけられております。どこの地域も、米は軽んじていいというところはございませんから、それぞれが皆さんつくりたい、こういう気持ちを持っているわけでございます。  それからまた、現在の生産構造は、一方で大規模な、意欲的な経営者も出ておりますが、かなり多くの部分はまだ小規模でございまして、価格動向に敏感に反応して生産量が調整される、こういうことが行われにくい状況にあると思います。  そうなりますと結局、市場で、自由に生産ということによる価格の低落の被害を一番受けるのが今後担い手として期待されるべき人たち、こういうことになってしまいまして、やはり需給価格の安定ということは、食糧法においても趣旨として規定されているわけでございますが、それを根底に置かないと、なかなか市場原理一本ではいかないんではないかというふうに思っているわけでございます。
  100. 安住淳

    ○安住委員 いや、もうそれは百も承知で、長い目で見たときには、しかし、そういうことで私は本当に強い農家の皆さんというのは育ってくるんじゃないかと思います。  そこで、認定農家制度のことでお考えを少し聞きたいと思います。  この制度始まってから、担い手農家の育成ということで始まりましたが、現在担い手農家の指定を受けていらっしゃる方、全国で何万世帯あるか、そして平成十二年度までのたしか目標も持っていらっしゃったと思うので、これはちょっと時間がないので簡潔にお願いします。
  101. 山本徹

    山本(徹)政府委員 認定農業者は現在八万八千九百九十戸を数えております。私どもは、できるだけ早い時期にこれが、詳細な計画は持っておりませんけれども、これは市町村が自主的に目標、構想を定めて実施しておられるものですから、できるだけ、二十万、三十万、あるいはそれ以上の認定農家が認定されることを期待いたしております。
  102. 安住淳

    ○安住委員 大臣、先ほどから農林省の皆さんは、担い手農家とか中核農家とおっしゃっていますけれども大臣、中核農家というのはどういう農家だと思っていらっしゃいます。大臣自身のお考え、ちょっと聞かせてもらいたいんですけれども
  103. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 これは、農業のこれからの発展のために、他産業並み農業、つまり所得労働時間、これが他産業並みになっていくということが基本的に私は大事だと思うんですね。それは、すべての農家がそういうわけにはいきません。ですから、そういうことを実現できる、そういう経営体農家を私は中核農家というふうに認識しております。
  104. 安住淳

    ○安住委員 基本的にはそれでいいと思うんですが、そこで、さっきからの話は平行線になっているんですが、他産業体と一緒に、つまりお米や、要するに農業をやってきちっと御飯が食えて、それでお金をもうけることができて、生活できる人を中核農家というか担い手農家というわけですね。  ところが、私から見ますと、認定農家制度の一番の問題点というのは、問題点というよりも、なかなか私の地域でも、正直なところ、なり手が少ないのですよ。これは市町村が推薦をしてという話はありますけれども、実際は、私から見るとそれはお仕着せで無理につくろうとしているだけであって、私は、それはあくまで非常に官製というか、そういうにおいがするのですよ。  だから私は、今八万戸と言いましたが、平成十二年に中核的農家というのはたしか三十五万戸ぐらいつくるという目的を持っていらっしゃると思うのです。しかしそれは、実はその基盤強化のためには、確かにそういう考え方かもしれないですが、それをつくるというのは、実はお仕着せの、つまり役所が指定をして、無理にその融資のパーセントを二%にして、あなたやってくださいということで私はつくれるものではないと思っているのです。つまり、本当の担い手農家、中核農家というのは、やはり自分たちできちっと土地の集約化もできて、そして自分たちで、つまりその個人が意欲を持って米で生きていくという人たちを私は中核農家だと思うのです。やる気があるなしにかかわらず、あなたは米が、田んぼが多いですから、それに野菜も少し多いし、少し資産があるからハウスもつくれるでしょう、だから、実態としては、それは融資も普通は三・五を二%にしますからなんて話になれば、何とか受けてもらえないですかといっても、なかなかそれが進まないというのが現実なんですよ。  そうした現実を私は踏まえると、農業産業として、大臣今おっしゃったように、他産業と同じようにやっていくということであれば、先ほどから言っているように、やる気のある農家の皆さんが、本当に僕は、自然淘汰というのはちょっときつい話かもしれません、しかし十年後、二十年後を考えたときに、やはり一時的には価格の変動で非常に混乱はあるかもしれない。しかし、そこはある程度国としてサポートできるところはあるわけです。その痛みをきちっとお互い受けながら、その中から私は実は大きく中核農家というのは育っていくものじゃないかなと思っているわけです。それを、平成八年に八万戸になりました、じゃあその八万戸の人たちの収入とか何かで、すべて一次産業でしっかり生きていって生活できているかといったら、そんなことはないと思うのです。  だから、私はその辺の考え方が、むしろ私から見るとどうもちょっと違うのじゃないかなと思っておりますので、この点だけひとつ、余り米の問題ばかりできないので、簡潔にお答え願えますか。
  105. 山本徹

    山本(徹)政府委員 先生ただいま御指摘の、やる気のある中核的な農家を育てるための制度が認定農業者の制度でございまして、これは市町村が基本構想というのをつくります。これはそれぞれの市町村の農業情勢等に応じて、こういった農家が中核的農家であると一つの目標をつくります。  これに対して、やる気のある農業経営者が、じゃあひとつ五カ年の計画でこういった目標に挑戦してみようという経営の改善の計画をつくられます。これを市町村が、その市町村の中核農家としてやはりふさわしいと考えられれば、これを認定して、こういったやる気のある農家の方に金融あるいは税制等の面で支援をしようとするものでございまして、官製ではなく、下からやる気のある農家の方が自主的にこの認定農家に応募していただく。これを市町村が認定し、またこれに国が側面から支援するという制度でございます。
  106. 安住淳

    ○安住委員 今の局長お話は、私はそれは建前はそうだと思いますが、私が現実農村社会を生きて、歩いていて、大臣、そこはもう政治家としてお話をしたいと思いますけれども、それはそうはいっても、現実には随分違う姿が私にはわかる、見えているのですよ。ですから、無理にそういうものをつくっていくという発想でこの農家の皆さんと接するというか、私はそこに何となくやはり問題があると思っていますので、むしろ本当 にやる気のある人たち、その人たちに開かれた市場というか、開かれた売買というものをさせてあげられる環境づくりをぜひしていただきたいと思っているのです。それが二十一世紀に本当に体制というか基盤強化に私はつながると思っているのですよ。  今、本当に、何といいますか、私どもの地域も、どこも含めて、過疎化で悩んでおります。大臣の四国も確かに中山間地は多分人口がふえているところはほとんどないと思うのです。(藤本国務大臣「いや、あります」と呼ぶ)少しありますか。しかし、全体で見たら、私はやはりこの疲弊した農村社会というのは、そこにやはりある意味では、何というか、お金をもうけて、そしてやっていこうという意欲をなかなか発揮できない、いろいろなたががあると思うのですね、それをできるだけ、逆に言えば時間をかけて、ソフトランディングをして、除外をしていくことが何となく私は必要じゃないかな。  そこで、これは議論の分かれるところですが、例えば、前大原農林水産大臣は新聞で次のようなことを書いているのです。これは日本農業新聞に連載をされた「ざっくばらん」というものなんですけれども、その中で、いずれは近い将来、土地の流動化を図らないと集約化は難しいだろう。今のままではなかなか容易でない。現実そうだと思うのです。そういう中で、例えば仮に大原大臣の話を引用させてもらうと、若い農家の三人ぐらいの方々が、自分が株式会社をつくって、そして多角的に農地を経営していこうといっても、今は現実には無理であるということを書いてある。私も全くそのとおりだと思うのです。  そういうことを考えると、ある一定の枠をはめる、つまり転用を禁止するなりそうした条件つきでやはり農地の流動化というものを、先ほどから何度も言っていますが、市場メカニズムの中でできるだけしていくように、私はむしろその阻害している要因を除去していくのがこれからの農政じゃないかなと思うのですが、そこは大臣、ちょっとお話を、直接大臣お話を聞きたいと思うのですが。
  107. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 今の農地の問題、農地法の問題ですね、流動化の問題、これは非常に重要な、新しい農業基本法の、今検討を始めておりますけれども、その中で大きな柱であることは間違いないと思うのです。それで、この平成九年、十年の二年でこの新しい農業基本法の検討こつきまして、審議会をつくって検討していただくわけでございますけれども、その中で検討していただく非常に大きな問題の一つだと思っております。  今そういう状況でございますから、具体的に私の立場からコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。
  108. 安住淳

    ○安住委員 私は前向きと受け取りましたが、この土地の流動化の問題については、そこは基盤整備以上に実は意外と大事なのじゃないかな、私はそう思っております。ですから、ぜひその辺は、より明確な姿勢を基本法の中でうたっていただきたい、そういうふうに思っております。  ぜひ米の問題、本当は大変奥の深い問題なのでもっといろいろなことを質問したいのですが、とりあえず今回はそういうことで、入り口だけ話させていただきました。  とにかく、私たちの国にとっては非常に重要な産業でもあり、また米というのは文化でもあると思っております。ただ中途半端なことをやって、ある意味では体力を損なうよりは、思い切って手術をして体質の改善を図る時期が来ているのではないかなと思ったものですから、そういう質問をさせていただきましたが、今後ともそうした観点からこの施策にかかわってまいりたいと思っています。  さて、我が党は、予算委員会を通じて、農業集落排水にかかわる日本集排協ですか、この事業のことについて、再三その運営等について、仙谷政調会長それから枝野幸男議員が質問をしてまいりました。  日本農業集落排水協会、要するに、この問題というものは、私は、集排の基本設計、そしてそのコンサルタントについて、まあ平たく言えば、これはもう本当に公取委員会で指摘されるというか、今実際にはもう独占状態でございます。しかし、これを市町村に対していわば強制をしているふうに思われる節もあるということで、より開かれた行政のあり方という点から、私たちはその改善とそれからその実態の透明化を図るべきではないかということをずっと訴えてきたわけです。  前回の予算委員会の集中審議の中でも枝野議員が大臣にその点をお伺いしましたけれども日本農業集落排水協会の今のこの実態の改善に向けて、私はぜひ藤本大臣のリーダーシップを期待したいと思いますが、この点について御答弁をお願い申し上げます。
  109. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 予算委員会におきまして民主党の二人の議員の方から御質問がございました。私も、初めは実態、実情を存じませんものですから的確なお答えができなかったわけでございますが、その後この日本農業集落排水協会の内容については十分よく調べてみました。確かに、会員が市町村ということもございまして、その受託件数は、基本設計、実施設計、その比率が高いわけでございますけれども、しかし、それは御指摘のようにおかしいじゃないかというような、そういう御指摘もございました。  今後、公正な競争関係のもとで適切な運営が行われるよう、私といたしましては指導してまいりたいと考えておりますし、特に、設計等の業務につきましては、市町村に対しまして、市町村の判断により委託先を決めるものである旨、構造改善局長名の通達によりまして周知徹底を図ってまいる所存でございます。
  110. 安住淳

    ○安住委員 大変明確な答弁をいただきました。要するにこの問題というのは、今規制緩和をやろうというときに、逆に言えば官が参入規制をしている、そういう問題があるものですから、それと同時に、やはり市町村が、逆に言えば、あらゆる面でバラエティーに富んだものを選んでいく、そういう権利をぜひ与えてもらいたい、そう思いますので、今の、これは通達でよろしゅうございますか、通達をぜひ市町村に出していただいて、その点の改善をしていただきたいのと同時に、私、きょうはちょっとこの覚書を持っております。  この覚書というのは、要するに農水省の構造改善局整備課長とそれから建設省の住宅局建築指導課長の言ってみれば覚書でございまして、財団法人日本建築センターの、つまり認定の申請を行うに当たって性能評定を受けて、その結果を添付しなければならない、つまり、まさに集排協を使ったらこれもあわせて使いなさい、これはそういうことを書いてあるわけです。  しかし私は、こういう覚書の存在そのものもどういうものなのか、そこを、私どもは これはおかしいじゃないかということを再三にわたって質問をしてきたわけです。ですから、この点についてもぜひ改善をしていただきたいと思いますが、農林省側のお考えを。
  111. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 この覚書は、社団法人日本農業集落排水協会の認定の手続などを定めたものでございまして、協会以外のものの認定申請を排除しているものではございません。しかし、無用な誤解を生ずるおそれがございますので、建設省と相談の上、この覚書を廃棄したいと考えております。
  112. 安住淳

    ○安住委員 大変今までの予算委員会と違って明確な答弁をいただきましたので、これ以上私どもとしては今回質問はいたしませんが、しかし、今大臣がわざわざお約束をいただいた点について、ぜひこれは構造改善局長、これは私どもはかなり重い約束と思って認識をしておりますので、改善に向けて、またこの覚書の問題についても、世間の皆さんから批判のそしりというか、無用な疑惑というものを持たれないような運営の仕方というものを図っていただきたい、そう思っております。
  113. 山本徹

    山本(徹)政府委員 ただいま大臣が集排協会のコンサル等の点の通達、それから二番目には農水 省、建設省の覚書の廃棄、この二点について御答弁申し上げましたけれども、私どもでこれについてはきちんと大臣の御指示どおり対応いたす所存でございます。
  114. 安住淳

    ○安住委員 それでは、予定をした質問がまだ十五項目ぐらいあるのですが、ちょっと無理なので一簡潔に質問をはしょりながらいきたいと思います。  大臣、問題のこのウルグアイ・ラウンド予算、我が党はちょっと誤解されているところがあって、そこのところをちょっと申し上げますけれどもウルグアイ・ラウンド予算を削るという論議は私どもの党にもないのです。むしろ、三年たってやはりきちっと見直そうじゃないか。その点でもしむだがあれば、それはそれで省いていかなければいけないのはこれは当然でございます。確かに、基盤整備の問題を考えたときに、今全国平均で五〇%でございますか、中山間地は特に低いと思いますけれども、構造改善事業というのは、目に見えませんが、しかしこれは農業の育成にとっては非常に重要なことであるので、それはそれできちっとやっていってもらわなければいけませんが、むしろ今のこのマスコミの風潮、これは、全体をよく見てみますと、まじめにやっている人もいれば、しかし確かにこれは問題があるなと思う点も多々あるなという感じはするのです。  これは事実かどうかは別にして先日報道されたところでは、富山県ではどうも予算の積み残しがあって、使い切れなくて一万円ずつ県の職員が受け取ったというような疑惑が持たれているという報道もありました。そういうことを考えると、やはりここは、三年間たっているわけですから、総理も含め自民党の加藤幹事長も見直しをしなければならないと明確に申し上げておるわけです。  そこで、この見直し、これはやはり大臣がリーダーシップをとられてきちっと一定の期間見直しをして、そしてある意味では透明性を高めて、箇所別の予算等を含めてオープンなところできちっと議論をして、そしてもし減らせるものがあるのだったらば、そこは勇気を持って削っていくということをやらないといけないと私は思っているのです。そこは私はむしろ政治の場での問題だと思っていますので、このウルグアイ・ラウンド予算に関して大臣、どのように省内に対して、例えば作業の見直し等、総理の意向を受けてこれからどのように具体的にやっていくのか、その辺のことをお伺いしたいと思います。
  115. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 野党三党から、平成八年度補正予算の組み替え共同要求に対する我が党の、自由民主党の回答、その中で、ラウンド対策については「平成六年十月に力強い農業構造農業経営の実現等を図るため決定したものであって、着実な実施が必要であり、その観点から所要の経費が計上されているところである。 しかし、三党提言をふまえ十年度以降について直ちに検討を進める。」これは公党間の約束でございまして、私どもは、この野党三党に対する回答もございますし、また今後のウルグアイ・ラウンド事業の進捗状況、それから各方面からの要望などを十分に承りながら、事業の内容を精査した上で与党と十分に協議をして検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  116. 安住淳

    ○安住委員 ぜひオープンな場で議論をしていただきたいと私は思っておりますので、その点は大臣、よろしくお願いをいたします。  ところで、林業の問題、林業の問題というよりも林政審議会、最近は、本当に累積債務三兆三千億円の問題というものをどうするのか、これは非常に新聞等でも、最近は国民の皆さん関心を持っていらっしゃる。しかし、正直言うと、なかなかこれは有効な手だてがないのではないかなと思っております。林政審の答申を受けないと正式なコメントはできないにしても、この三兆三千億円を仮に公的な負担でやるとしても、それをすぐ、はいわかりましたと納得していただくためには、国民の皆さんに相当な理解を求めるようなことをやっていかないといけないと私は思うのです。  ですから、むしろ私は、この累積債務の問題に対して藤本大臣在任中にきちっとおやりになるのが、逆に言えば大変大きな仕事なのかなとも思っておりますので、この問題に対する基本的な取り組み方、この点をお伺いしたいと思います。
  117. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 私が就任をいたしましてから、農林水産行政の中で非常に頭が痛いといいますか、非常に大きな問題だという認識の一つに、この国有林野事業の抜本的な解決を図っていかなければならぬという問題がございます。  確かに財務状況は三兆三千億という極めて厳しい状況でございまして、これの解決のためには、今までのような物の考え方の延長線上では非常に難しい。ですからこの際、抜本的な解決策を考えていかなければならぬ。それには我が省としても自己努力はやらなければならぬし一また我が省だけで解決できるわけではございませんので、まさに政府一体となってこの解決に取り組まなければならぬわけでございます。  平成九年度の予算編成の際に、大蔵大臣とその点については十分話し合いしまして、政府一体となってこの問題の解決のために、平成九年度で解決をしていく、こういうことを申し合わせをしておるわけでございまして、精いっぱい頑張っていきたいと考えております。
  118. 安住淳

    ○安住委員 森林や水資源の確保の問題というのは、その公的機能を維持するという点からいえば、三兆三千億円はきちっと処理してもらって、それとは別に、今後の、森を守るとかそういう観点で、むしろアメリカあたりは一般会計からきちっとお金を出して、国民の皆さんに理解を得て緑を守っていくんだという姿勢ですが、やはりそこはきちっと明確にした方がいい時代なのではないかなと私は思っているのです。役所の省益を超えて、一部には環境庁と一緒になったらどうだという意見もあります。私もそれは一考すべき考え方ではないかなと思っておりますので、その点のことをぜひ踏まえてやっていただきたい。  私も実は、前の職のNHKにおったときに、十三年ぐらい前に白神山地をずっと取材をしたのです。白神山地というのがありまして、世界遺産になりました。実は、あのときまでの林道の問題というのは、反対運動がなければ、今ごろ多分青森営林署はだあっと道を通して、ブナを大量に切っていて、世界遺産に本当に残ったかどうかわからなかったと私は思うのです。やはり、この八十年代、九十年代にかけて、森というものの大切さというのはだんだん認識がされてきている。  そういう中にあって、例えば大規模林道の問題なんかも、本当に、行革といえば必ず出てくる。つまり、産業のための道路とか、それから生活基盤を支えるための道路としてそれをつくるんだという発想が、実はそれも必要なのですが、余りにもそこにウエートを置き過ぎた林業行政のツケが今、回ってきているのではないかと私は思うのです。むしろ、やはりこれからは森を守るためにこの道路が必要だというふうな発想でやっていけば、林道に対してだって理解が得られるし、本当にそういう発想であれば、大規模な林道開発にこれだけのお金がかかるのかという問題も出てくるわけです。ですから、そこのところはきちっとした観念というか、きちっとしたコンセプトを持っていただいて、これからの林業行政のあり方についてはきちっとリーダーシップをとってやっていただきたいなと思います。  時間がございませんから、林野庁の基本的な考え方認識を少し聞かせていただきたいと思います。
  119. 高橋勲

    ○高橋政府委員 森林が公益的な機能を発揮するようにというふうな要請は年々高まっておるというふうに認識しております。  その中で、林道は木材の搬出それから山村の定住条件というふうな意味でも大変重要な役割を果たしておるものでありまして、大規模林道につきましても、やはり豊富な森林資源を開発し、あるいは林業の活性化とか山村定住条件のための林道ネットワークの骨格的な林道であるというふうな認識をいたしまして、その作設につきましては十分な環境のアセスメントを行い、路線の選定等で も本当にその必要性というふうなことから設計、施工等にも十分な配慮をしながら実行していく、そういう考え方でやっております。
  120. 安住淳

    ○安住委員 時間がなくなってまいりましたので、きょうはちょっと。  実は、よく調べると、一日の交通で車が五百台ちょっとしかないような林道で二車線の道路というのがいっぱいあるのですよ。費用対効果から見るとなかなか問題もあるなという点もあるのです。むしろこれからはそういうところを詳細に見ることが行革にもつながるし、林野行政考え方というものに一本線を入れていくことが私は大事だと思うのでこれを申し上げました。このことはまた改めてやりたいと思います。  最後に、水産の問題で、TAC元年でございます。このTAC制度の導入で、実はスルメイカの問題というのを通告していたのですが、時間がもうあと三分しかないので、ちょっと私の方から説明すると、去年スルメイカが大量にとれ過ぎまして値下がりをして、それでなおかつ、大島先生の地元でございますが、八戸で大量にとり過ぎて、私たち宮城とかそこから下の県で全くとれなくて、それで八戸の人も余り得をしなかったというのがあったのです。  つまり、こういう水産のありようが、もし逆にスルメイカがTAC制度になっていれば、私は意外と防げたのではないかと思うのです。そういう意味ではTACというのが重要なのはわかっていただけるのではないかと思うのです。私は、この元年になって早速ヨーロッパのような規制、つまり安定供給を図るために期間をきちっと決めるという改正をしたらどうか。  それからもう一つ、中国と韓国との外交交渉の問題がございます。この問題は、つまり我が国だけがTACをやって近隣諸国がそれに対して全く理解を示さなければ何のためにTACに入ったかわからなくなってしまいます。漁業交渉をやっていらっしゃると思いますが、そこをやはり早急に進展をしてもらいたいと思いますので、その見通し、この二点について農林省並びにきょうは外務省においでいただいていると思いますので、お話を伺いたいと思います。
  121. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 まず、スルメイカをTACの対象にしてそれで期間別にやったらどうかというお話でありますけれども、確かにスルメイカにつきましてTACの対象にすべきだという意見があることは私ども承知しているわけでございます。ただ、スルメイカは、御承知のように一年魚でありますし、また、一年じゅう産卵するという特性もございます。それからもう一つは、回遊範囲も広いということもございまして、期間別にやった場合、場所によりましては資源が全体にあるにもかかわらず、ある時期、その時期でとれないということも出てくるわけでございます。(安住委員「長官、そこは例えでスルメイカを出しただけで」と呼ぶ)わかりました。  そういうことで、今後ともスルメイカをTACの対象にするかどうかということは検討してまいりたいというふうに思っております。  それからあと、日韓、日中の漁業協定の問題でございますが、おっしゃるようにTAC制度に基づく適切な資源管理を行っていくためには、海洋法条約の趣旨に沿いました新たな日韓日中漁業協定を早期に締結することが何よりも必要であるというふうに考えております。  このようなことから、昨年来数回にわたりまして、韓国、中国との間でもって漁業協議を行ってきております。また、首脳会談におきましてもたびたび取り上げてきていただいているところでございます。今後とも、早期に締結されますように鋭意協議に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  122. 別所浩郎

    ○別所説明員 今、水産庁長官から御答弁があったとおりでございまして、外務省といたしましても、水産庁と一体となりまして、できるだけ早急に、海洋法条約の趣旨を十分に踏まえた新たな漁業協定の早期締結ができますように鋭意努力してまいる所存でございます。  先週末シンガポールで行われました日韓、日中外務大臣会合におきましても、その点を強く池田外務大臣から先方に要望したところでございます。
  123. 安住淳

    ○安住委員 時間が参りました。TAC制度の、中韓との交渉についてだけはぜひ進展を見るように頑張っていただきたいと思います。  時間が参りましたので質問を終わります。ありがとうございました。
  124. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、藤田スミ君。
  125. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 先ほどから食糧自給率の問題について論議されておりますが、私もまたこの問題から質問をしていきたいと思います。  一九九五年の食糧自給率は、カロリーベースで四二%、穀物自給率は三〇%まで落ち込みました。一九六〇年の食糧自給率が、カロリーベースで七九%、穀物自給率が八二%であったことから見ると、わずか三十五年の間にこれだけの急落をしているわけであります。こんな国は世界に例がありません。カロリーベースの食糧自給率は先進国では最低であるばかりか、穀物の自給率はFAOの統計によると世界百二十六カ国中百十四位という水準で、日本以下の国は、砂漠や熱帯地域で穀物が生育できない国しかないという状況であります。  品目別に見てみますと、自給率一〇〇%を超えている米を除いて、小麦は一九六〇年に三九%であったものが一九九五年には七%、同様に、大豆は二八%から二%であります。野菜は一〇〇%から八五%、果実は一〇〇%から四九%、肉類は九三%から五七%、その中で牛肉は九六%から三九%になりました。鶏卵は一〇一%から九六%、牛乳・乳製品は八九%から七二%、魚介類は一一〇%から七四%であります。  このようにすべての品目について自給率が下がっている国も、先進国と言われる国では日本以外にありません。もちろん国によっては、例えばスイスのように海に面していない国では魚介類の自給率が低い、あるいは緯度の高いイギリスやスウェーデンのような国では果実の自給率が低いというようなことはありますが、その国の条件に合った農産物の自給率が三十五年間もずっと下がり続けているというような国は日本以外にありません。  今回の四二%の食糧自給率について、日本農業新聞は「歯止めなき農政に失望」と見出しをつけました。この言葉を使ったのは、実は大阪の消費者運動の先頭に立つ大阪消団連の事務局長であります。  私は、大臣がこの問題をどのように受けとめておられるか、まずお伺いをしたいと思います。
  126. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 確かに、食糧の自給率は低下傾向にございます。最近の数字は今御指摘のように四二%、先進国では最低の水準であることは、残念ながらそのとおりでございます。  ただ、内容的にいろいろ検討してみますと、先ほど言われました三十五年前の七五%でございますか、そのときは米中心の食生活であったわけでございまして、現在のように食生活が多様化してきたこともこの自給率の低下の一つの原因であろうかと思っております。  ただ、自給率がこれからも低下をしていいということでは決してございません。私どもとしては、平成十七年を目標として、自給率四四%から四六%、そこに持っていくように今いろいろと計画考えておるわけでございまして、低下傾向にまず歯どめをかけてそして自給率を高めていく、そういう農政に進んでまいりたいというふうに考えております。
  127. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 食糧の自給率の低下を食生活の変化に理由を求めるというのは、私はいただけません。  今、大臣は、平成十七年を目指していわゆる長期見通しを立てているというお話がございました。九五年の十二月に決定され、四四から四六というカロリーベースの食糧自給率を打ち出しているわけであります。しかしこれも、考えてみるとまだ一年たたないうちに、もうこの数字をはるか に下回っているわけであります。米の豊作によって食糧自給率四六%となった九四年も、それから九五年も、その中身を見れば、米以外の品目はほとんどすべて前年より自給率は落ちています。米以外の品目の自給率の下落はまさに一貫したものであります。  私は、この下落傾向に歯どめをかける抜本対策を打ち出さない限り、食糧自給率が四〇%を切るのも時間の問題と言わざるを得ないという大きな危機感を抱かざるを得ないわけですが、もう一度御答弁を求めたいと思います。
  128. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 数字の問題でございますから、もう一度申し上げてみたいと思いますが、平成六年度四六%のカロリー計算での自給率平成七年度は四二%の自給率、これは主な原因が米に関係するわけでございまして、平成六年度は米の自給率が一二〇、七年度は一〇三、こういう数字の変化によって四六%から四二%に下がった、これは事実関係からしてそのように考えております。  それから、自給率を高めていくためには、何といっても農家の皆様方に意欲を持って農業に従事してもらわなければならないわけでございます。そのためには農林水産省としては、他産業並みの生涯所得二億円から二億五千万、それから労働時間は年間千八百時間から二千時間、こりいう農家方々農業経営体の中心となる、そういう農業の構造に進んでいってもらえるように、例えて言えば構造改善事業生産規模の拡大であるとか、また生産施設の高度化のためにカントリーエレベーターのような施設をつくるとか、そういうようなことを通じて、生産性の向上を図りながら自給率の向上に持ってまいりたい、かように考えております。
  129. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そういう話はずっとここ数年間皆さん方からしてこられたわけです。  しかし、今、この食糧自給率の低下は、おっしゃるように日本農業の衰退と密接不可分という点で、もう一度その中身に入りたいと思いますが、一昨年の九五年農業センサスに続いて、昨年十一月に九六年農業構造動態調査が発表されました。それを見ますと、日本農業農村が置かれている状況が、これまた加速度的に厳しいものになってきていることが非常によくわかります。  九六年一月一日現在の総農家数は三百三十八万八千戸、販売農家は二百六十万六千戸と、九五年一年間で総農家数で五万五千戸、販売農家数で四万五千戸も減少しています。総農家数は、一九六〇年と比べますとほぼ半減してきています。農業従事者は前年よりも二十七万二千人減、基幹的農業従事者は前年よりも八万五千人減少しています。基幹的農業従事者の減少数は、農業センサス過去五年間の年平均七万三千人を八万五千人と大きく上回り、離農に加速度がついてきているわけであります。このままでは、あと十年で、基幹的農業従事者数が百万人ほど減少しかねない事態であります。  また、農業従事者の高齢化も加速度を増していまして、農業就業人口の四六・七%が六十五歳以上です。この比率は、わずか一年間で三・二ポイントも上昇しました。八五年から九〇年の五年間での上昇率が二・五ポイントです。九〇年から九五年の五年間の上昇率が四・七ポイントですから、もう五年分の数字に迫る勢いがありまして、高齢化も加速度を急速に増していることを明らかにしています。  この数字の確認を求めたいと思います。間違いありませんね。あるかないかだけ言ってください。
  130. 遠藤保雄

    ○遠藤説明員 ただいま先生言及されました指数については、そのとおりでございます。
  131. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 問題は、なぜこのような事態になっているのか、その原因は何かということです。私は、そこにメスを入れなければ事態の打開には結びつかないというふうに考えますが、この点について端的にお答えを求めたいと思います。簡単で結構です。
  132. 遠藤保雄

    ○遠藤説明員 要因は何かという点についてお答え申し上げます。  最近、農家減少ないしは高齢化のテンポが速まっているという点でございますけれども、まず、高齢化の方につきましては、基幹農業従事者のうち大きな割合を占めておりますのは、昭和一けた世代でございます。こういう方々が現在六十五歳代を迎えるということ、他面、若年層の参入が少ないということ、こういうことがあろうかと思います。  また、もう一点は、農業機械の普及などによりまして高齢まで農作業が可能となりまして、他産業に定年まで勤務している方々がリタイアいたしまして、いわゆる高齢専業というものがふえてきている、こういうことが要因として挙げられると思います。  次に、農家戸数の減少でございますけれども、これにつきましては、農家の中で、高齢化によってリタイアする農業者が増加する一方で、その後継者が必ずしも十分確保されていない、こういうことが言えるのではないかと思います。
  133. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 大体そんな御答弁では、事態の深刻さに対する認識と真摯な分析の姿勢が極めて欠けているというふうに、残念ながら私は指摘をせざるを得ません。  そこで、私の方から、なぜこうなってきたのかということを歴史的に少し振り返ってみたいと思うのです。  農業基本法から論議を起こせば、政府が進めた選択的拡大の破綻であることは明らかでありますが、問題をこの十五年間に絞ってみれば、まず第一に、臨調行革による農産物価格支持の引き下げ政策であります。これは、国際化の進展のもとで、需要に即した農業生産再編成を行うとともに、生産性向上を図り、内外価格差を縮小し、産業として自立し得る農業を確立することが重要である、こういう方針のもとに、米価を初めとする農産物価格の引き下げが始まりました。この政策で農産物価格は下がる一方となり、農業者の将来に対する希望を奪ったわけであります。  同時に、この臨調行革は、高生産性農業を実現するためには積極果敢な投資が必要要件であるが、今後重点投資すべき分野は、土地基盤の整備であろう、こういう経団連の提起を受けて、第二次土地改良計画の実に二・五倍もの事業量になる第三次土地改良計画の発足にもつながっていったわけであります。この問題は後ほど取り上げます。  二つ目の問題は、八五年のプラザ合意です。このプラザ合意によって政策的に円高が進められました。内外価格差の縮小と臨調行革で声高に言われても、農業者の努力を超える円高のもとで内外価格差はさらに拡大し、農業者に絶望感を与えていきました。そして、輸入農産物が急増し出したのもこのプラザ合意以降であります。輸入農産物の急増は、農業経営に深刻な打撃を与えたことは言うまでもありません。  三つ目は、公約を破る形で行われた農産物の十二品目の自由化、そして牛肉・オレンジの自由化、そしてWTO協定に基づく米の受け入れ、農産物の完全自由化が行われたということであります。これは、農業者に対する最大の裏切りであるとともに、日本農業の基盤を大きく掘りましていくものとなりました。  農業者が希望を失い、後継者が育たない。日本農業をだめにしたのは、あなた方の政策の結果ではありませんか。大臣、お答えください。
  134. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 共産党の政策として今まで掲げておられたことを今重ねて主張をされたわけで、拝聴いたしたわけでございますけれども基本的に私ども考え方は異なりますので、別に、それに対するお答えはなかなか難しいかと思います。
  135. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 大臣が、国内農業生産を重視するんだ、少なくとも主要な作物については米とともに自給率を維持していくようにするんだ、こんなふうに幾らおっしゃっても、それではそれもできません。はっきりしています。  農水省の統計情報部の九五年の「輸入が急増している野菜の国内産地の状況について」という報告書を見ました。「輸入品との競合で価格が低迷 し、生産者所得低下、高年齢化等により生産意欲が減退しており、作付面積が減少している。また、将来展望が不透明で後継者も育たないため、このままの状況で推移すれば、」「当産地も消滅の危機を感じている。」こういうふうに産地の情報が多数報告されているわけであります。これが政府が出している報告書なんです。  本当に、今、日本農業の現場の状況、その事実というものを認め、そしてこれまでの施策の誤りを正さなければ日本農業の展望が開けないということを改めて申し上げておきたいと思います。  次に、公共事業の見直し問題、特に農業分野の公共事業の見直し問題について質問をいたします。  未曾有の財政危機の中で、アメリカの圧力によって進められる十年間に六百三十兆という異常な公共投資基本計画の見直しが今求められています。我が党は、公共事業の見直しについて、六百三十兆の総額先にありきという方式を改めること、公共事業の長期計画十六本を全部白紙に戻して抜本的に再検討すること、国民生活から見て壮大なむだ、浪費につながる首都移転計画など巨大プロジェクトなどの不必要な計画を抜本的に見直すことが必要であるということを主張してまいりました。おくればせながら、与党幹部の皆さんも、閣僚の皆さんも見直しの声を出し、総理自身が公共事業といえども聖域ではない、こういう姿勢を示されております。  そこで、農林水産大臣としてはどのような視点とプロセスで公共事業の見直しをお考えになっていらっしゃるのか、明確にしていただきたいと思います。
  136. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 私が農水大臣を拝命いたしましたときにも、またそのあとにも、総理から、農水省の公共事業の執行につきましては、投資効率、費用対効果の分析等、十分にそういう観点から公共事業の執行を図り、重点化、また早期に効果があらわれるようにという御指示がございました。  その後、内閣全体として公共事業費の縮減の問題について取り組むことになりまして、一月には第一回目の閣僚会議が行われたわけでございますが、その関係閣僚会議で、関係する省庁、ほとんどの省庁が入っておりますけれども、そこで公共事業の縮減について計画を進めていくということになっておりますし、またその前の話として、総理から縮減計画について方針が示され、それを受けまして、ことしの三月の終わりまでこ各省ともに具体的に公共事業の縮減を決めていく、こういうことで今進んでおるわけでございます。
  137. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 大臣農林水産省公共事業予算は毎年増加してきておりまして、九七年度の予算では一兆九千六百四億円、これは農林水産省予算の五五%を占めるようになってきています。こういう姿、公共事業予算農林水産省予算の半分以上を占めるというような姿になっている国は、これも諸外国では大変珍しいというのか、日本だけでありまして、他の国は、農業予算の多くが価格所得関係費に使われているのが常識であります。それに対して、日本政府は、農業者が最も望んでいる価格支持や所得保障に予算を振り向けようとしないで、専ら農林水産公共事業に注ぎ込んでいるわけであります。  食糧自給率の維持強化を図るということを基本方針の目的に明記していた第三次土地改良計画は一九八三年から始まりましたが、これが総額三十二兆八千億円。この計画の達成率は五七・三%です。にもかかわらず、九三年から始まった第四次土地改良計画は、総額実に四十一兆円の計画を立てています。  大臣、八三年から九五年までで食糧自給率は一〇%落ちています。その間、この土地改良計画で使われた公共事業費は約二十二兆円なんです。つまり、言いかえると、二十二兆円もの土地改良事業を行って、食糧自給率は一〇%も落ちている。おかしいと思われませんか。大臣に御答弁を求めているんです。率直なところ、政治家としておかしいと思わないか。
  138. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 そういうような考え方もあるかと思いますけれども、私はそういうふうには考えないんです。  それはなぜかというと、やはり農業のまず大事なことは、コスト削減、国際的に競争できる農業をつくっていくということが最も大事な、これからの農政基本であると思うんです。ですから、そういう観点からすると、残念ながら今の日本農業は、なかなかそういう大規模化、コスト削減ができるような、そういう農業の実態ではない。ですから、まずそこに力を入れていく。そして、その結果として、我が国農業の発展、また生産者所得の向上、ひいては消費者に対して安定して食糧の供給、そういう手順になるのではないかと思います。  また、外国との比較をされましたけれども、それは国によっていろいろと状況が違うわけでございまして、アメリカ、ヨーロッパにおきましては既に大規模化が進んでおるわけでございまして、日本の場合はまだまだ零細な農家が多い、土地の集積もまだ十分ではない。ですから、そういう差がある以上は、アメリカやヨーロッパの現実日本農業が必ずしも一致しないということもやむを得ないことではないだろうかというふうに思います。
  139. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、その御答弁、本当にいただきかねるということを先ほどから言っているわけです。  おっしゃるように、国際競争力に強い農業を育成しなければならないということで、大規模化を進めるんだ。規模拡大をした北海道をごらんなさいよ、どういうことになっているかということがはっきりしているじゃありませんか。そして、実際には、そう言いながら進めてきた結果が今日の食糧自給率四二%、日本農業の衰退の姿になっているから、もっとお互いに真剣にこの問題を議論しなければいけないということを申し上げているわけであります。  ところで、私は、大臣がおっしゃったそのお答えにも矛盾する公共事業の実態というものを今から少し具体的に申し上げておきたいと思います。  二十二兆円もの公共事業をこなすために、私は、はっきり言って随分多くのむだや浪費が行われてきたと思う。  むだの典型とも言えるものが農道空港であります。農水省が推進する農道空港は、幅二十五メートル、長さ八百メートルの滑走路と管制室を備えた小型空港。これを農村地域に建設し、小型セスナ機を運航させて新鮮な農産物を空輸するというものでありますが、一九八八年から全国九カ所、総事業費百二十三億円で進めています。既に四カ所の空港が完了しました。  その第一号になったのが、岡山県笠岡市の笠岡地区農道空港であります。当初の計画は、大型セスナ機で年間二百回、約四百五十トンの農産物を運搬すれば採算がとれるんだ、こういうことで、国と地方自治体が予算を投入してきました。しかし、実際は年間四トンしか運搬していません。どういうことかというと、たった一%しか運搬していないのは無理もないんです。トラックで運ぶのと時間が大差がないのに、運賃はトラックの七倍になっているからであります。しかも、農道空港は夜間の離発着ができない。夜間の輸送もできるトラックの方が飛行機より大阪の市場に早く着くという珍現象が起こっているわけであります。したがって、同空港の目的にしていた農業生産性の向上及び地域の振興に役立っているというような声は、現地ではほとんど聞くことはできません。失敗は明白であります。  ついでに言えば、この笠岡地区というのは、農道空港が設置されたところは、実は事業費三百二億円を使って行われた笠岡湾干拓事業で造成された畑地の上で、言ってみれば二重、三重の浪費になっているのです。みんな国民の税金なんです。大臣、いかがですか。
  140. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 食糧自給率の四二%の問題について、しばしば引用されますので、二月十三日の朝日新聞で、「下がった要因を詳しく分析すると、食生活の変化による影響の大きいことが分かる。 この三十年間に自給率を三一ポイントも押し下げた要因として、米の消費の減少による寄与度が三一%、畜産物の消費の拡大による飼料穀物の輸入増加が一六%、食用油をつくるための大豆やなたねなどの輸入増加が一六%を占めている。つまり、自給率低下の三分の二が、食糧の消費構造の様変わりによるものなのだ。」この記事を非常に私は興味深く読んでおります。  それから、農道空港の問題は、言われるように八カ所ございまして、四カ所が完成、開港し、四カ所が八年度中に開港いたします。私は、これは個人的な見解でございますけれども、当初あの農道空港が、アイデアとしてこういう事業を県が事業主体として農道空港を実施する、こういうことを知りましたときに、非常に夢があっていいな、産地直送で、これはうまくいけば非常に一つのアイデアだなというふうに思いました。  ただ、残念ながら、その当時と今とは、いわゆるバブルがはじけまして、経済構造が随分変わった。それから、この機材の飛行機が小型化になってしまったために、飛行機によって運ぶ農産物の量が極端に少なくなったというようなことから、初め計画していたような利用率、それから貨物の輸送量、それが確かに言われるように非常に少ないことも事実です。今 県が中心になりまして、特に農道空港の管理運営は地元の農協の青年の方々なんかも加わってやっているように聞いておりまして、そういうところで、この利用率、また輸送量をふやすようにいろいろと努力をされているというふうに承っておるわけでございます。  ちなみに、この農道空港八カ所ともに県が事業主体でございまして、国の事業ではございません。国が五〇%近くの補助をいたしておることは事実でございますけれども、県の事業でございます。
  141. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 自給率の問題にえらいこだわっておられますので、私もこだわって言いますけれども、朝日新聞がその消費構造によって食糧の自給率の変化を語っているのはいいんです、これは。朝日新聞ですから。私も消費構造の変化を全く無視して言っているわけではないのです。それはそうだなという面もあります。しかし、ドラスチックにこんなにも大きく低落をし、歯どめがかからなくなっているところの深刻な問題として申し上げているわけであります。  それから、農道空港の問題に話を戻しますが、現地の野菜生産者は私にこう言うのです。こんなところに金をかける。さっき大臣は、これは県の事業だ。でも国は五〇%出しているわけですからね。こんなところに金をかけるぐちいだつたら、何で野菜価格を安定させてくれないのか。  そこで、ちなみに私は計算をしてみました。例えば、野菜の価格補てん、この制度をもっと本当に農民の声にこたえるような内容で切りかえていくとすれば、もうあと三百六十億円継ぎ足すだけで、対象量は九五年の二百四十万トンから七百万トンにふやすことができる、価格補てんの方は四倍強に改善させることができる、こういうことでありますから、私はやはりもっと本当に生産者の率直な声というものを受けとめていかなければならないと思います。  むだや浪費は農道空港にとどまるものじゃありません。水田を整備し大規模化する圃場整備事業というのがありますが、まだ農家の負担金は大変なものになっている。農水省が進めてきた三十アール区画の圃場整備、その圃場整備を行った地域に新たに一ヘクタール区画の圃場整備事業を行う大区画圃場事業や、あるいは農地を集約して十ヘクタールから二十ヘクタールもの規模に拡大することを前提とする土地改良事業に限定して進めるなどというようなことを言っておりますが、実際にほとんどの農業者にこれはメリットをもたらさないばかりではなく、零細農民切り捨ての事業になっているのが実態であります。  また、国営の干拓事業を見てください。九百九十億円の事業費の中海干拓事業、百五十四億円の木曽岬干拓事業、二千三百七十億円の諫早湾干拓事業、八十二億円の熊本羊角湾干拓事業、それぞれみんな行き詰まっています。これまで投入された国費がもう本当に浪費になってきているわけであります。  農道についても、広域農道が国道と重複投資になっている事例が多く出されています。  六年間で六兆円と言われるウルグアイ・ラウンド国内対策も、その大半が公共事業であります。無理矢理にこの事業を達成しようとするものですから、温泉の施設をつくってみたり、クアハウスをつくるところに補助をつけてみたり、また補正予算措置するという比率が非常に高いために、既存の公共事業を促進するというようなもの非農民には全く見えてこない使われ方になっているわけであります。結局、これもゼネコンに利益をもたらすだけで、日本農業の再建につながらない。  大臣、食糧自給率の、また言いますが、四二%にまで落ち込んだ日本農業を再建するためには、公共事業中心の農業予算を抜本的に変えること、そうして生産者米価に下支え機能を持たせるなど農産物価格の支持予算を拡充し、所得保障といった農業者に対する直接支援を行うなど、本当に日本農業を進めていく上で役立つそういう予算の使い方に変えるべきであります、御意見が違うと思いますがね。どうぞお答えください。
  142. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 食糧の自給率四二%ということにつきましては、どうもそんなことばかりが初めに出て申しわけないのですが、私も非常に危機意識を持っております。  ですから、申し上げましたように、この低下傾向に歯どめをかけて、できる限り我が国で主な食糧を自給していく、このことには農林水産省としては全力を挙げてまいりたい、これは基本考え方でございますので、その点についてはいろいろと御意見があろうかと思いますので、御意見についてはどうぞ承らせていただきたいと思います。  それから、いろいろ例示で挙げられました温泉ランドの問題も、多少誤解がおありであるように思いますので申し上げますが、中山間地域の問題は非常にこれは大事な問題でありますと同時に、また難しい問題でございます。この地域の活性化、また生活環境をよくしていく上で、全体の四割のこの中山間地域をどう進めていくかという、これは非常に重要な問題だというふうに認識しておりまして、その進め方として、その中山間地域の特性、特徴でございますそれをうまく生かして、つまり資源もその中に入るわけでございますが、資源を生かして、そして都市との交流を図り、またその中山間地域の方々の雇用、所得もふやしていく、こういうことで考えておるわけでございますが、その資源の中に例えば温泉があるとすれば、温泉を活用して大いに都市の人に来てもらう、こういう政策考えることは、これはラウンド対策事業としてま間違っていない、そういうことでございますので、その点はひとつ御理解いただきたいと思います。  それから、干拓事業の問題についてしばしば御意見がございます。それは、我々としては、食糧の自給率、それから農業用地の減少の問題、そういうことを考えますと、今後この自給率の低下に歯どめをかけて、国民の皆様方に安定的に食糧を供給していくためには、一定の農地を確保していくということが非常に重要であるというふうに考えておるわけでございまして、そういう観点からいたしますと、干拓事業というのは、大規模で平たんで高生産の農地を造成できるわけでございますので、そういう視点から考えますと御理解もあるいはいただけるのではないかなというふうに思っております。
  143. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 時間が限られておりますので、この問題はまたこれからも議論していきたいと思いますが、どうぞ、二十二兆円もかげながら一〇%自給率が低下したという、このおかしさですね。そして、本当に今、世界食料サミットで約束されたように、二〇一五年には八億人以上の飢餓・栄養不良の問題を解決するために日本も貢献する、二十一世紀の食糧不足の時代に生き抜いていくという立場から、日本農業を発展させるた めに予算はどうあるべきかということをぜひ検討していただきたいということを申し上げて、次に移ります。  昨年の十一月に、経団連は規制緩和に関する財界の要望を政府に提出しました。農業分野の規制緩和要求は、米流通規制の一層の緩和、自主流通価格形成センターの値幅制限の撤廃というふうにいろいろあります。本命としては、株式会社の農地保有ができるように農地法第一条、二条の改正要求を持ち出してきたことであります。これを受けて、農水省は株式会社による農地利用を認める方向で検討に入ったと報道が行われました。  一方、二月十四日に、武藤総務庁長官が記者会見で、規制緩和推進計画改定に株式会社の農業経営参入を盛り込みたい意向を表明し、事務当局に検討を指示したという報道もなされております。まさに経団連の意向に沿った動きになっているわけであります。  しかし、農業関係者からは一斉に反発の声が出されております。言うまでもなく、農地法の耕作者主義を崩して株式会社参入を容認すれば、土地投機を生むだけでなく、農業の家族経営という根幹を崩すことになるでしょう。私は、そういう点では、大臣は一体この問題についてどういうふうに考えていらっしゃるのか、お聞きをしたいと思います。簡単にお願いいたします。
  144. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 それでは簡単にお答えいたします。  農地法の基本は、農地の権利移動及び転用の規制、これが大きな規制でございまして、このような基本的な枠組みを維持しながら、適切な農地政策が図られるよう対処してまいろうと考えております。
  145. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 報道されている橋本行革ビジョンの省庁再編構想では、農水省は、国土農水省として公共事業分野を建設省、国土庁に合体させる、公共事業分野以外は経済産業省として通産省などと合同させるというふうに伝えられていますが、こういう姿になりますと、結局農地法についても将来的には農林水産省として現行の運用が担保されなくなるおそれが極めて強くなるというふうに私は考えますが、これが一点。大臣のお考えを聞かせてください。  もう一つは、今現在、新農業基本法策定作業がこの橋本行革ビジョンとリンクして進められているのではないかという問題であります。新基本法検討本部のもとこあるプロジェクトチームには、行政組織・行政手法プロジェクト・チームというのが設けられておりまして、こうなりますと、新農業基本法制定作業が省庁再編構想とリンクしていることを想定しないわけにはいかないわけでありますが、この点はどうでしょうか。  そして最後に、この関連でもう一点伺いますが、規制緩和の実施に当たっても、抵抗する省庁に対して省庁再編、つまり省庁の解体のおどしのもとで極めて安易に規制緩和が進められることになりはしないかという、この三点、大臣のお考えを聞かせてください。
  146. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 新農業基本法の問題でございますけれども、これは何もリンクしているわけではございませんで、我々としては、昭和三十六年につくられた農業基本法が時代に合わないというような背景から、新しい農業基本法をつくらなきゃならぬ、こういう考え方で数年前から取り組んでおるわけでございまして、平成九年、十年に、新しい審議会をつくらせていただいてそこで十分議論していただいて、御答申をいただいて、その上で進めていこうというふうに考えているわけでございます。  その他の御質問に対しましては、政府委員から。
  147. 山本徹

    山本(徹)政府委員 農地法につきましては根幹が二つございまして、農地の権利移動を規制する、それから農地の転用を規制するという点でございます。こういった点は、農業振興を図る上で大変重要な点であると思いますので、私どもは、農業基本法の見直しの一環として農地法の見直しも検討していくわけでございますけれども、こういった基本的な枠組みは大事にしながら、今後の農政方向づけにかかわる重要な問題でありますので、適切な農地政策が図られるように十分慎重に検討してまいりたいと考えております。  なお、省庁再編とこの農地制度の検討とは全く関係のないものでございまして、私どもは、これからの農地政策はどうあるべきかという点から検討してまいります。
  148. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 最後に、簡単に言います。  遺伝子組み換え問題。先ほどからも出ておりましたが、大豆の輸入が始まっております。消費者の間から不安の声が大きく出されております。安全審査面でなぜ食品添加物並みの審査体制ができないのか、なぜ表示がなされないのか。この問題は、先ほども言われましたように、遺伝子組み換え食品は人類が初めて食するものでありまして、未知の食品なわけであります。それだけに、世界各国ではこの問題に対する取り組みが行われています。  スイスでは新たな立法措置で表示の義務づけを行い、アメリカのイリノイ州シカゴ市では食品表示条例を制定し、そうして表示を義務づけにしていったわけです。オランダの遺伝子技術会議も、遺伝子組み換え技術を利用して製造した食品や組み換え成分を添加した食品すべてにパッケージに表示をするようにということで合意をしたと報道されています。オーストラリアでもやはり表示に前向きの検討ということになっています。  日本でできないわけはないわけです。表示を義務づけるべきであります。私は、このことを大臣にどうしてもやっていただきたい。私は消費者の一人としてそのことを強く求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
  149. 本田浩次

    本田政府委員 食品に表示を義務づける制度といたしまして、私ども関係では、JAS法に基づく品質表示基準制度がございます。  この制度は、一般消費者が食品を購入する際に、食味、日もちなどの品質を識別することが特に必要であると認められるもののうち、一般消費者の経済的利益を保護するために、食品の品質に関する表示の適正化を図る必要があるものにつきまして、製造業者または販売業者が守るべき品質に関する表示の基準、具体的には原材料名、賞味期限、産地などを定めるものでございます。  したがいまして、遺伝子組み換え食品の表示につきましても、品質の差異、消費者が品質を識別することの必要性、表示を義務づけることの国際的規則との整合性などのほか、関係者の負担なども総合的に考慮して判断すべきものと考えております。  いずれにいたしましても、遺伝子組み換え食品の表示につきましては、FAO・WHOのコーデックス委員会の食品表示部会で検討が行われているところでございます 私どもといたしましても、こうした場での議論を踏まえながら、その表示のあり方について調査検討していくこととしているところでございます。
  150. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 消費者が、このてんぷら油は遺伝子組み換えの大豆を使っているのだということを識別したいわけです、わかりたいわけです。そして承知の上で買いたいわけです。何にも知らないで食べさせられるのがたまらないわけです。だから、国産大豆と表示されていたら、ああ国産大豆かということで買う。そのメリットを知っているから業者は積極的に、国産大豆使用、おしょうゆもみそもみんな国産大豆使用、こんなに国産大豆二%でできるのかなと思うぐらいに表示しています。それと同じように、遺伝子組み換えの大豆を使ったのだということの識別をしたい、これは消費者の権利であります。  大臣最後に、この表示について積極的な取り組みをしていただくという御答弁を求めたいと思います。
  151. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 平成八年の八月に厚生省が、七品目の遺伝子組み換え食品につきまして、安全性評価指針に沿って安全性の評価を行っておりますが、今委員言われましたように、この遺伝子組み換え食品であるという表示が欲しい、消費者の側 から見れば、そういうものであるということを承知の上でそれを食するとか食しないとかそういう判断の材料にしたいという御意見については、私ももっともな御意見だと思っております。十分に検討させていただきたいと思います。
  152. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 ありがとうございました。  終わります。
  153. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、前島秀行君。
  154. 前島秀行

    ○前島委員 時間が三十分でありますので、私はまず林業問題についてお尋ねをしたいと思います。  とりわけ、今林政審で国有林問題のあり方について議論が始まっていますし、また昨年は長期計画を含めた基本計画の答申等々も出されている、こういう状況でありますので、この林業問題、基本的な国有林対策の問題について、希望を含め、要請を含め質問をしたい、こんな観点質問をしたいと思いますので、大臣、可能な限り、基本的な認識を含めてぜひ御答弁、考え方をお聞きしたいと思っています。  まず第一に、今国有林がぎりぎりのところへ来ているということはもう御案内のとおりで、過去四回にわたって改善計画をしてきたわけですね。昭和五十三年でしょうか、特措法をつくってやってきたわけですね。それから五十三年から五十九年、六十二年、そして平成三年と、この四回にわたって次から次に改善計画というものを積み重ねてきた。これをやれば国有林は再建できるのだとその都度言われてきて、我々もその都度議論をしてきたわけですね。  その四度にわたる改善計画、約十八年間、二十年近くかかっている。この改善計画、特措法の基本的な流れというのは、林野庁、現場で自助努力をせいということが柱でしたね。それで徹底的な合理化をしよう、こういうことだった。そして、資金の方は財投を借りる、そこに依存する、こういう二つの基本的な流れの中でこの改善計画が四回積み重ねてこられた。  結果は、例えば組織のことを考えると、営林局というのは十四あったけれども九つになった。あるいは、営林署というのは、三百五十一あって二百六十四になった。森林事務所というのは、二千三百三十三あったけれども今日千三百六十。事業所も、一千二百十四あったが百六十。そして、働く要員というのは六万五千人が今一万七千人。この間、林業労働者というのは徹底的にこれだけ、一万七千に減って、高齢化というものになった。六十歳代がもう圧倒的ですね。これは民有林にも言えるわけですね。  現場の人たちの声を聞くと、おれたちがまだ元気で働いているときまともかく、せめてあと五年、よくて十年よ、そのときに、国有林を含めて山を守って森林を維持してくれる人というのは本当にいるのだろうかというのが現場の責ですね。  率直に申し上げて、これが十八年間四回にわたる改善計画の結果、そして借金は今三兆三千億になってしまっている、こういう状況ですね。  もうぎりぎりのところへ来ているので、何とかしようということでまた改めて議論が始まっているのだろうと思いますけれども、そこで一つ、率直に言ってこの四回にわたる改善計画は、言葉として言いにくいかもしらぬけれども、結果としては失敗だったなと。そういう表現ができないとするならば、少なくとも、これからの国有林の再建はこの改善計画の延長線上で考えることは無理だ、こういう認識は私は成り立つだろうと思います。  この認識について、今日までの基本的な経過について、ひとつ大臣、あるいは長官で結構ですから。
  155. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 今、御意見を交えまして御指摘がございました国有林野の問題につきましては、私が大臣に就任いたしまして、農林水産省行政の中で最も大きな課題の一つだというふうに思っております。  そこで、今言われました、過去二十年にわたって努力はしてきたけれども結果としてどうか、こういう御指摘、今の状況を見ますと、これから国有林野の抜本的解決のためには、今までの解決の延長線上ではだめだという認識を私も持っております。そういう意味で、国有林のあり方ということについて十分に議論をして、そしてそのあり方の中でこれから抜本的な対策というものをつくっていかなければならぬと私は思っておりますし、今ちょうど林政審議会議論していただいておりますので、その議論の結果を拝見いたしまして、またそれを参考にいたしまして、その上で、この三兆三千億の今の財務状況、これを抜本的に解決するためにどうしていけばいいかということの結論を出していこうと考えております。  それで、このことは、昨年暮れの平成九年度の予算編成のときに大蔵大臣とも十分協議をいたしまして、そして、農林水産省一省では抜本的な解決はできないわけでございますので、大蔵省にも十分御理解と御協力をいただきたいということもはっきりと申し上げて御了解いただいておるところでございまして、結論としては、政府一体となってこの問題の解決のために進んでまいりたいというふうに考えております。
  156. 前島秀行

    ○前島委員 そうすると、いわゆる特措法に基づいて四回積み重ねてきた改善計画路線といいましょうか、それの延長線上はとらないということは、自助努力にも合理化にも限界が来たな、こういう前提だろうと思いますね。そういう状況でなおかつ民有林を含めて森林への国民の期待というものは大きいこともまた事実ですね。そうすると、合理化、自助努力を中心とした改善計画路線ではなく、新たな方法で、新たな手法でといいましょうか、新たな森林行政の理念で出発してやっていかないと、これからの林業も国有林も無理だな、こういうことになるわけですね。そうすると、それでは、新たなといいましょうか、従来の考え方と違った森林の理念、国有林の方向は何なのかというところだろうと思うのです。  そこで、やはり国有林、林業というのは、国民の要望あるいは無視し得ない時代的背景が今日まであった。そういう面では昔から、戦中戦後、やはり林業、とりわけ国有林というのが、生産ということ、そういう面に大きなウエートがあって、それがまた時代要請であった、こういう時代だったと思いますね。高度成長時代までがそうであった。同時にまた、日本の財政という側面から見て、この国有林というものに一定日本の財源、財政の根拠を求めて、国有林に増産させてきた、拡大させてきたというのも、これも時代背景である。そのためにやられてきたのが独立採算制であり特別会計路線でもあったと私は認識しています。これが昭和三十年代、高度成長時代までのある意味では時代要請であった。それに合った一つの林業というものもやってきた。いろいろな見方があるけれども、これも一つの選択であり、現実にやってきた、時代要請ここたえてきた林業、林政、国有林のあり方であったと思います。  しかし、高度成長が終わったのを境にして、林業、国有林を取り巻く情勢は変わって、国民要請も変化してきた。しかし、この変化に林業の行政というものがずれてしまったので今日の国有林の現状になってしまった。だとすると、ここでもって基本的に対応の仕方を変えてみよう、こういうことですね。  そうすると、今日の国有林への期待と要請というのは何かというと、現に白書で出てきているわけですね。平成三年の白書のところに国有林の任務、国有林の果たすべき役割というのが出てきて、国民の期待、要するに、従来の生産から、環境へ向かっての、あるいはリフレッシュに向かっての、そういう期待に変わってきたのだと。それから山村移住へと国有林の任務というのは大きく変わってきたということが平成三年の白書で明確に三点出てきているわけです。もちろん、二点目に生産の提供ということを言っていることは間違いないのですけれども、出てきている。それが三年。そして平成六年の白書には、これは森林文化という言葉を使って、森林文化の新たな展開という形でもって、白書でもって国有林、森林の役割というところが変わってきているわけですね。こ れが私は最近の新たな情勢、新たな国民の期待だろうと思います。これにこたえていくという行政展開をしていくことが今後の国有林再建の道であり、林業転換の道だろうと私は思っているわけです。  そういう面で、私は、基本的に今度の再建の議論を境にして、いわゆる生産主義といいましょうか、大きく言うと、農林省というのは昔、聞くところによると農商務省といって、通産省、農林省が物をつくる官庁なんだというところで出発してきた官庁なんですね。しかし、私は、こういう林業を取り巻く情勢から考えると、事林政に関して  は、この生産官庁としての役割よりか、七〇年代、八〇年代に起こってきた環境を中心とした国民の期待にこたえていく、そういう林政の方向に変えていくところにこれからの道があるような気がするのです。そういう面で、この生産主義といいましょうか、生産官庁としての林政の基本理念から、環境を中心とした国民の新しい期待にこたえるような、要請にこたえるような、環境保全あるいは資源の保全だとか、こういう観点基本的に農政を変えていく、こういう方向に行くべきではないだろうかというふうに私は基本的に思っているわけなんです。  大臣、ここの基本的な認識の転換が今求められているのじゃないのでしょうか。私は、またこの考え方が昨年の長期計画あるいは基本計画の答申の中にも出ているだろうし、これはこれからの国有林の再建の一つの基本的な理念であるべきではないだろうか、それがまた改善計画路線で限界が来てしまった結果としても、これからとるべき道ではないだろうかと思っていますが、その辺のところの基本的な認識大臣に伺いたいと思います。
  157. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 先ほど御答弁いたしました中で、今までの林野庁の努力、これは十分できるだけのことはやってきた しかし結果としてその努力が報われなかったという、そういう点につきましては、ちょっと言葉足らずの点がありましたので、訂正させていただきます。  それから、これからの国有林野の対策の進め方ということにつきましては、私は公益的な役割が非常に大きいというふうに理解しておりますし、先ほど申し上げましたように、国有林のあり方ということについて時代の変化に伴いましていろいろと考え方が変わってきているわけでございますので、そういうことを十分ここの際整理をして、そして林政審議会の答申、意見も踏まえた上で、そういう国有林野の持つ役割、あり方ということを十分に今の時代に合わせて整理した上で、それぞれの役割について対策を立てていくということが現実的な対応ではなかろうかというふうに考えております。     〔委員長退席、小平委員長代理着席〕
  158. 前島秀行

    ○前島委員 それで、やはりそういう方向というか、新しい時代要請に合った林野行政、それは具体的にこれからはどんなことかというと、例えばやはり経済主義、生産主義という林野行政から、環境あるいは公共性というものを中心にした行政に転換していくのですよという意味を、具体的な制度、仕組みの上で変えていくとなると、例えば会計システムをひとつ抜本的に変えてみょうではないか。会計のシステムを、独立採算制というものを全部変えるということは無理なんだけれども、かなりそこのところに大きな変化をもたらしていくとか、あるいは先ほどの公共投資の金も、予算の組み方も、やはり農林省という一つの省庁だけではなくして、その要請にこたえている、例えば役所でいえば他の省庁、今の省庁の枠を超えてひとつ予算執行の仕組みをつくってみようではないかとか。あるいは下部では流域管理システムでやっていこうということですね、六年前の改正で。私はこれは非常に賛成です。これがこれからの現場における一つのシステムかなと思っています。これは、局長の答弁でもいいですけれども、実際これはまだうまくいっていないですよ、正直な話、うまくいっていない。私もいろいろ現場の人に聞いてみると。  しかし、私は、この流域管理システムが現場の一つの受け皿としての、実行部隊としては必要だと思う。しかし、そうなってくると、それは実際に考えてみると、農林省、林野庁だけではなくして他の省庁の枠を超えた受け入れシステムでないと何の実効性も出てこない。それはそうですね。  例えば、間伐一つやるにしたって、民有林はそれなりに助成が出てくるからそれなりに進むけれども、国有林は助成なんかありませんから、予算がついてこなければ間伐ができない、実施計画は立てたけれども実際の実行は民有林と国有林は流れが違うんだからそろわない、だから計画なんか立てたって意味がないよという現場の声というのは僕も聞いてきているんですね。  国有林の方は金がないからやらないとなれば、間伐だけじゃなくして、ほかの高樹齢の木とも一緒にやらないと業者が参加しないから、間伐という目的は別な形でもって消化せざるを得ない、ずれが生じてしまっている、こういうのが原因ですね。  そうすると、やはり単なる経済主義といいましょうか、あるいは改善計画、特措法路線じゃない新しい手法でないと林業だめだよ、国有林だめだというふうになると、そういう、例えば会計システムだとか予算の執行の問題だとか、あるいは財源の確保の問題も新たな発想を入れるとか、あるいは現場の受け皿である流域管理システムも省庁を超えてひとつ組んでいくとか、そういうものも抜本的に変えてやっていかないと、国有林の再建もないんだろうし、これからの民有林を含めた森林の再建もないような気がいたします。  林政審を前にしてですから、これ以上具体的なことを言うといろいろ議論があると思いますけれども、私の言わんとしている趣旨はおわかりだろうと思うのですね、従来の延長線上じゃだめなんだから。あるいは同時に、一つの役所だけの枠にこだわっていたら林業は国民の期待にこたえられないのならば、枠を超えた仕組みだとか新しい制度に思い切って踏み込む必要があるんではないだろうかと私は思っています。  具体的なことの答弁は要りませんけれども基本的にそういうところまで踏み込まなければだめなんだ、そういう認識をお持ちなのか、従来の延長線上でやれば何とかなるよということなのか、その基本的なところを。
  159. 高橋勲

    ○高橋政府委員 具体的に、流域管理システムで国有林、民有林あわせて一体的な事業をやっておりますが、御指摘のように、国有林の方に予算がないからうまくいかないじゃないか、あるいは一体的に間伐をするのに国有林の方が間伐ができないじゃないか、そんなふうな悩みのある地域もあるわけでございます。そういうところは、やはり国有林の収入が不足をして事業費がなかなか工面ができない、こんなふりなこともあるわけでありまして、しかし、この流域管理システムで国有林、民有林、それから上下流一体、これが一体的な活動をしてこそ地域の林業も森林も整備されていく、この基本的な考え方は我々としてもこれからも定着させていかなければならない。昨年成立させていただいた林野三法をさらに推進していくためにもこういうシステムをぜひ推進していくべきだと思います。  そういう中にあって、国有林がその流域管理システムで非常に重要な役割を果たしております。全国的に見ましても、国有林が国土の二割、森林の三割、しかも公益的な機能を非常に果たすべき位置にあるわけですから、その国有林がいかにあるべきかというふうなことでは、やはり従来の手法とか従来の枠組みにとらわれず、先ほど大臣がお答えしましたように、まさに抜本的な検討を行って、林政審議会でもそういうふうな趣旨を踏まえて抜本的な検討を行っていただきたい、その論議結果を待って対応したいというふうに考えているわけでございます。  もちろん、省庁もその枠を超えて、現在でも国土庁とか建設省あるいは自治省、いろいろな省庁の枠を超えながらの協力事業も行っているわけでございますので、これも引き続きなお一層徹底し て実行ができるような国有林の体制ということを考えていきたいと思っております。
  160. 前島秀行

    ○前島委員 林政審の議論の最中ですから細かな点はこれ以上聞きませんけれども、ともかく従来の特措法の延長線上では無理がある、限界が来た、だめだということは間違いないし、同時にまた、会計も独立採算制だけで処理できるものではないわけでありますから、各省庁を超えたさまざまな努力をぜひやっていただくということを要望をしたいと思います。  もう一つ私聞きたいのは、中海の問題で聞きます。  時間がありませんもので、まず一つは、与党調整会議の中でも議論が分かれています開削の問題なんですね。これは、やはり私も現地に行っていろいろな人から聞きました。自民党さんとの議論の分かれば、シミュレーションでいいではないか、こういうことなんですが、いろいろな人に聞くと、シミュレーションでわかる部分も間違いなくある。それは水の流れと水の質はわかるでしょう、シミュレーションで。しかし、生き物そのものがどう変わっていくのか、どうしていくのか、これはやはり開削してみないとわかりませんというのが御意見でした。大体そのことは間違いない。  だとすると、やはり今後の、客観的に公平にあの地域をどうしていくかという結論を出していくためには、開削というのは、合意を得るためにおいて絶対にやらなくちゃいかぬ、通らなくちゃいかぬ方法ではないだろうかな。しかし、あのでき上がった道路、生活道路の一部になっているところをということについては、なかなか現実的には無理だなということになってくると、せめてあの北部承水路のところの、あそこを試行的にやってみるという、ここだけは最低やる必要がある、やってみる必要があるんではないか。  そこをやってみる必要があるかないかということが一つと、もう一つ、今後の全面開拓した後のあの部分を、地域をやっていくためには、中海を淡水化という、今凍結されている部分と、私は今後の農業展開ということを考えると、切っても切れない関係にあるということなんでございます。  この二点、開削をするかしないか、淡水化の基準は今後どうなるか、その二点だけ聞かせてください。
  161. 山本徹

    山本(徹)政府委員 まず第一点の開削の問題でございますけれども、私どもはこれは水産振興調査のためと承知しておりますけれども、これは、開削と同じような結果はシミュレーションで可能であると思っておりまして、具体的に申し上げますと、潮位や水質観測をもとに、これは水理シミュレーションによりまして、開削による潮の流れあるいは水質の変化等は予測できます。先生御指摘のとおりでございます。  それから、そこに魚類等がどのように変わっていくかという点でございますけれども、これにつきましては、このシミュレーションとあわせて水産振興に係る調査を現地で行いまして、予測された水質と同様な地点の水産資源の現状を把握いたします。それからさらに、県が行う漁業環境の改善のための調査結果等をもとにいたしまして、開削した場合の潮の流れ、水質の変化、これに伴う魚類の変化というものは十分に予測可能であると考えております。  この開削の問題につきましては、与党農政議会において現在御検討をいただいているところでございますので、私どもとしては、適切な結論が得られるように御協力させていただきたいと考えております。  それから、二番目の淡水化の点でございますけれども、この淡水化の問題については、水質保全等の面で懸念があるということから、島根、鳥取両県知事の御要請を踏まえまして、昭和六十三年度から当分の間延期いたしておりまして、これは現状も変わっておりませんけれども、この淡水化の問題については、それとともに農業用水をどうするのかという御質問だろうと思います。  この農業用水の問題につきましては、与党の三党の調査項目の中で、「農業用水対策」ということで周辺の河川流量等の観測、それから農業用水対策の検討、あわせて、「土地利用・営農」ということで土地利用・営農計画の詳細検討ということが調査項目に入っておりまして、私どもは、これに沿って、来年度からの予定しております農業用水の対策について、営農計画とあわせて調査してまいりたいと考えております。     〔小平委員長代理退席、委員長着席〕
  162. 前島秀行

    ○前島委員 私がなぜ淡水化ということを改めて聞いたかということは、あそこの本庄工区を全面開拓して全面的に農業用地として展開していくためには、淡水化ということが絶対的条件だというふうに私は思っているからなんであります。  それと、もう時間がありませんが、私は、非常に不信といいましょうか、農林省として慎重にあるべきだと思っていますのは、私たちが行ってもらった島根のパンフレットの中に、平成七年、農林省が島根に出向いて、農業用に開拓、干拓するんだけれども、用途変更もできるんだよ、こういう農林省の見解が、わざわざ島根に出向いて、出て、そのことがまた、あの中海の今後のあり方の大きな一つの議論のきっかけになっているわけなんであります。  先ほど来の公共投資のあり方の議論の中で、農林省のこの数十年、三十年、四十年に及ぶ干拓事業ができ上がらない前から、別の用途が可能なんだということを農林省があえて島根県に行って見解を表明することの政治的な意味ということは非常に問題があるし、このことを見たときには、何だ、別の用途を前提にしてやっているのかという議論に地域住民は受けとめられている、こういうことなんであります。もしそうであるとするなら、これはとんでもない話なんでありまして、私は、基本的にやはり問題になるところだろうと思います。  もう時間もありませんから、要望として、委員長の地元の問題でもありますから、この中海の干拓の問題というのは、島根、鳥取両県の合意を得てやるべきことだろうと私は思っています。合意を得るためには、やるべきことは一つ一つ全部やっていく、開削も一つである、そういうふうに思いますので、つまらぬ理屈をつけて避けるのではなくして、地元の要望を一つ一つやって、公平にやって結論を出す、こういうことをぜひ要望をして、最後に、構造改善局長の答弁を求めて質問を終わりたいと思います。
  163. 山本徹

    山本(徹)政府委員 淡水化の件につきましては、延期された中で農業用水をどう確保するかという点については、先ほど御答弁申し上げましたように、調査項目の中に、与党三党の合意に従って入れさせていただいております。  それから、他転について触れたという点でございますけれども、これは、経過的には、そういういろんな島根県とのお話し合いの中で、干拓地の他用途利用をする、干拓地として事業が完了した後に他用途利用する手続について御説明したものでございまして、これが誤解されたことは大変残念なことでございますけれども、いずれにいたしましても、国営の干拓事業は、土地改良法に基づいて実施するものでございまして、あくまで農地を造成するものでございまして、非農用地利用を前提として事業を実施することはできません。  また、島根県知事からの昨年三月の御要請は、全面農業利用することで平成九年度からの工事の再開を要請されたものでございまして、将来の他用途利用を前提としたものではないと承知いたしております。
  164. 前島秀行

    ○前島委員 他用途なんというのは絶対にあり得ないということだろうと私たちは信じていますから、それと同時に、地元の皆さんの合意というものを絶対大事にして、これから事を進めてもらいたいということを心から要望して終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  165. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、堀込征雄君。
  166. 堀込征雄

    ○堀込委員 ちょっと予算委員会でも触れさせていただきましたが、最初に、ウルグアイ・ラウン ド対策費の問題について触れさせていただきます。  今年度の農林予算ウルグアイ・ラウンド対策費の着実な前進というのが極めて大きな項目として挙げられているわけでありますが、見直し論議があちらこちらで行われていますし、大臣も各所で触れられているわけでありますが、なぜ見直しなのか。つまり、二年間やってきたこの対策事業の中にやはり反省すべき点もあるだろう、そして、情勢も変わったから見直さなければならぬこともあるだろう、そういう問題意識があるだろうと思いますが、そういう二年間の対策で、どんな点を反省しながらこの見直しをするという結論に至ったのか、その点をまずお伺いをしたいと思うわけであります。  あわせて、この予算では九百九十三億円、対策費ということで計上されております。しつこいようでありますが、やはり、事業費ベース六兆百億円を消化し、そして、しっかりした農業農村対策をやっていくためには当初予算できちんと盛るべきだろう、こういうふうに私は思っておるわけでありますが、この点につきまして、ことしもまた補正予算頼りなのかなという印象を実は与えておる点もあるわけでありますから、この二つの点についてまずお伺いをしておきます。
  167. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 ウルグアイ・ラウンド対策につきまして見直しの問題、これは、野党三党からの補正予算の組み替え共同要求に対します自由民主党の回答でございまして、公党間の約束でございますので、その点は、私どもも十分に重く受けとめておるわけでございます。  今後の問題といたしましては、この実施状況、それから現地の要望、そういうものを十分精査させていただきまして、この野党三党の組み替え共同要求に対する回答の中に、平成十年度からこの見直しを進めていく、検討していく、こういう文言があるわけでございまして 私どもも、与党と十分に相談をしながら、先ほど申し上げましたように、実施状況、各地の要望、そういうものを十分に精査してまいりたいというふうに考えております。  それから、ウルグアイ・ラウンド対策を補正ではなくて当初予算、これは一つの基本的な考え方としてはそうであると私は思います。ただ、六年間で六兆百億という事業費を考えておるわけでございまして、御承知のように、毎年毎年金額を決めているわけではございません。それで、足腰の強い農業をつくっていくということのために、できるだけ早く効果が発現するようにこの対策事業は進めていかなければならぬわけでございますので、その年度におきまして追加的な事業ができる、そういう場合もあるわけでございまして、そういう場合につきましては、財政法の二十九条の措置の問題として御検討を願う、そういう場面もあるかと思いますけれども、それは、いずれにいたしましてもこれから先の問題でございますので、十分に事業の実施につきまして、農林水産省としては懸命に努力をしていく、こういうことであろうと思っております。
  168. 堀込征雄

    ○堀込委員 そういう答弁だろうと思うのですが、しかし、やはり三年目でございまして、そういう意味では、補正予算のときにいろいろな議論もありましたし、今マスコミからいろいろな批判も出ておるわけでありまして、やはり胸を張って、検証すべきものはきちんと検証するという対応が必要なのではないかというふうに思うわけであります。  そこで、もう一点確認をさせていただきたいわけでありますが、公共事業の例の六百三十兆の見直しというようなことが今議論をされておる。もう一つは、十六本の公共事業計画、この計画期間を延長しようというような議論も一方であるわけであります。農水省も幾つかその計画を持っているわけであります。私は、このラウンド対策につきましては、二つの点をきちんと確認しておいていただきたい。  つまり、見直しをする中で、より足腰の強い、国際競争力にも耐え得る農業生産基盤をつくり上げていくという意味で、事業費ベース六兆百億円は、これは約束したことだから、これをもし削るようなことがあると農家農政不信は高まるわけでありますから、これはひとつきちんとやる。それからもう一つは、六年間という期間でありまして、御存じのように、ラウンド対策、六年間でありますから、WTO、次はまた新しい交渉でどんな交渉になるかはわからない。何か自民党の山崎政調会長が、関税化前提だというような発言もあったようであります。これは松岡筆頭理事が適切な対応をいただいたというふうにお聞きをしているわけでありますが、いずれにしても、そういう議論をしなければならない時期が来る。そうしますと、この二つの点はきちんと確認をしておきたいわけですが、念のため、ひとつ答弁してください。
  169. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 最初の、ウルグアイ・ラウンド対策費の六兆百億円、これについてどうだ、こういうお話でございまして、これは国会で御決議もいただいた、そういう経緯もございますし、また政府与党が責任を持って決めた、そういういきさつもございますので、今後この六兆百億円を減額するというようなことは、私はこのような趣旨からしたらあり得ないことだというふうに考えております。  それから、公共事業費の縮減の問題で、長期計画を一年延ばして歳出をそれだけ減らしたらいいじゃないか、こういう御意見も確かにございますけれどもラウンド対策事業というのは、ある一定の期間を前提にして六年間ということを考えたわけでございまして、そういう事情から考えますと、六年間でぜひウルグアイ・ラウンド対策は済まさなきゃならぬ、私はこういうように考えております。
  170. 堀込征雄

    ○堀込委員 そういうことで確認をさせていただいたからいいのですが、一つ心配は、当初予算に九百九十三億円しか計上されていないということにつきまして、実はこのラウンド対策は六兆百億円のうち四兆四千四百億が公共、非公共合わせた構造改善事業を中心とした事業だ、こういうことになっておるわけでありまして、これは市町村の要望を聞きましても、一方でこの六年間という枠がある、そうすると早目に手当てをしていかないとこれはやはり六年間で消化できないのじゃないか、あるいは計画が向こうへ行くのではないかという心配をするわけであります。  これはあと残り期間四年でありまして、六兆百億円のうちの四兆四千四百億の大部分をこれで対応しなければならないということになると極めて困難があるのではないかという感じを受けますが、どうですか。
  171. 堤英隆

    ○堤政府委員 予算委員会でも先生の御質問がございましたけれども、今大臣からお答え申し上げましたよりこ、このウルグアイ・ラウンド対策につきましては六年間で六兆百億をこなしていくということでございますので、当初の段階で組めるものは極力組んでいくということが基本だということだと思います。これは、予算委員会でも関係閣僚の方からお答えを申し上げたところでございます。そういうことを前提にした上で、なおかつ年度途中で実行可能だということであれば、このラウンド対策の中で重点的、加速的にこの対策を講ずるという趣旨から見ましても、追加的な補正措置を講ずるということは十分あってしかるべきじゃないか、こういう基本的なスタンスで対応しているわけでございます。  地元のことを考えれば、確かに御指摘のように当初から組んでおれば計画的にこなしていただけるということでございますので、そういうことも念頭に置きながら、今申し上げましたような基本的なスタンスでこれからの予算計上に臨んでいきたいというふうに考えております。
  172. 堀込征雄

    ○堀込委員 私は、この四兆四千四百億にそうこだわる必要もないのではないか。つまり、見直しをする以上、本当に農村農家が強くなるような、そういう方面に重点的に配分することも検討してもいいのではないかという前提で実は申し上げているわけであります。  きょうの前段の質問の中で、このラウンド対策費はいろいろマスコミのやり玉に上げられているわけでありまして、富山県の空出張問題に始まって、あちらこちらにある温泉ランドだとかいろいろな資料館だとかというのが代表的に実はマスコミに報ぜられているわけでありまして、大臣、さっき中山間対策としては間違っていないという答弁をされました。私も、ある意味でわかるわけであります。  しかし、中山間対策なら対策で、やはりそれは本来農政としてきちんと行われるべきであって、このラウンド対策費でそういう事業を、何といいますか、余りにもそういう目立つ事業をすると山うのは、やはりこのラウンド対策費は一般消費者なりマスコミから見ると、何か米輸入の見返りにつくってやったんだよというような風潮も出ないわけではないわけでありまして、そういう意味では、きちんと中山間対策でやるものは一般事業費でやる、ラウンド対策費はそれなりにめり張りのきいたものでやるという仕分けが必要なのではないか。答弁、結構ですから。それで、そういうことを実はちょっと要望しておきたいと思うわけであります。  そこで、事業の採択基準でありますが、これなんかもいろいろな意味で公開というか、ある程度明らかになっていた方がいいのではないかというふうに思うわけであります。各県別に、北海道が一番多くていろいろなことがあるわけでありますが、この採択基準は、予算の配分基準というのは一体どうなっているか、ちょっと説明してください。
  173. 山本徹

    山本(徹)政府委員 事業の採択基準でございますけれども農業農村整備で申し上げますと、これは土地改良法及びそれに基づく政省令等、それから、さらに関係する各種要綱におきまして事業趣旨必要性、それから技術的可能性、投資効果、農家負担の可能性等の基本的な要件とあわせて受益面積の規模等の採択基準を明確にお示しいたしているところでございます。これは、非公共の構造改善事業、山村振興対策事業も同様でございます。  さらに、これらの基準に加えまして、事業ごとに、例えば環境保全あるいは農業外の効果を含む地域への経済的な波及効果、あるいは構造政策の推進等にどのように役立つかというような各種の配慮項目を設定しておりまして、事業の優先度を判断することこいたしております。  新規事業の採択に当たりましては、このような基準、配慮事項を総合的に勘案して判断しているところでございまして、これによって効率的で、かつ重点的な事業の実施ができるように努力しているところでございます。
  174. 堀込征雄

    ○堀込委員 ぜひ、できるだけこの情報を公開しながら、そういうものを明確にしていただきたいと思います。  やはり市町村段階ではいろいろな要望があるわけでありますが、例えばウルグアイ・ラウンド対策費というのは期間が短くて中山間地の市町村ではなかなかたえきれない、だから一般でやってくれというような要望もたくさんあるわけでありまして、そういう意味では、県がかなり市町村に頼み込んでいるというケースがなきにしもあらずというようなことも聞いているわけでありまして、ぜひそういう意味で、もしこの採択基準というようなものがあるのなら、県にあらかじめ、できるだけ県別に事前に枠というものを示しながら、その市町村の要望を踏まえた対応をすべきではないか、こういうふうに思うわけであります。  そこで、先ほど農業集落排水事業質問がございまして、大臣から適切な答弁がありました。戦後の、これは農政だけじゃなくして政治構造も行政機構も見直しが必要とされている。そういう観点でいいますと、例えば構造改善事業に関しましても、構造改善協会というようなものがあって、一部事業などについても農水省所管の公益法人によって事業が一部集中的にやられているという実態があるようでございます。まあそのほかにも、これは農水省に限らずいろいろな戦後行政の中でそういう仕組みというようなものがあるんではないか、それがまだ残っているんではないかというふうに思うわけであります。  私は、こういうものについて、先ほど集落排水協会については大臣の明快な答弁がございましたが、その他についても全体的に見直しをいただいて批判を浴びないような体制をつくるべきだ、こう思いますが、いかがでございましょうか。
  175. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 透明性を高めていくという問題は非常に大事な問題でございまして、今御指摘のように、いやしくも批判を受ける、誤解を受けるということのないように十分指導してまいりたいと考えております。
  176. 堀込征雄

    ○堀込委員 もう少し時間があれば細かく質問したかったわけでありますが、行政改革、規制緩和、いろいろあります。特に、明治以来この国の中心産業であった農業というものを担ってきた農水省初め、いろいろやはり改革が必要とされているだろうと思うのです。そういう意味では、今公共事業を初め批判も多いわけでありますが、私どもは、そのことにこたえてむしろ率先して改革を進める、そして本当に他省庁よりも先に改革ができたな、きらきらする農水省になったなということが農家にも希望を与え、期待を与えていくのではないか、こう思うわけでありまして、ぜひ大臣にそういう意味で特段の御努力をいただきたい、こういうことを要望申し上げて質問を終わります。
  177. 石橋大吉

    石橋委員長 次に、石破茂君。
  178. 石破茂

    ○石破委員 冒頭にお願いをしておきますが、できれば大臣の御答弁をいただきたいというふうに思っております。幾ら考えてもよくわからないこと、そして官僚の皆様と議論していてもよく結論が出てこないこと、農政の最高責任者である大臣の御所見を承りたい、そういうような思いで立たせていただきました。  午前中からずっといろんな論議を拝聴いたしておりまして、ラウンド対策費というものをどう見直していくかというようなお話が多うございます。  私は、自民党のときも新進党のときも、いろいろな価格の責任者をやってきましたが、そのときに思いましたのは、とにかく農業地帯の議員しか出てこない。消費者たる、東京とか大阪とか名古屋とか、本当はそういう人たちも出てきて議論をしなきゃいかぬのですが、二晩も三晩も徹夜をしてわあわあと議論をするのは農業地帯の議員だけである。これは極めて不思議な現象だというふうに思っております。  そして、今回のラウンド対策予算六兆百億円、いろいろ見直し何がし言われておりますが、そのことは結局消費者の側も議論をしていただかなければいけないことだが、税金のむだ遣い云々かんぬんという話は出てくるけれども、どれだけこの六兆百億なるものが消費者の利益になるものかという観点での議論、そしてそういうようなことを、農林当局からこれをやることによってこれだけ消費者に利益があるんですよという話を、私は寡聞にして聞いたことがない、残念なお話であるけれども。  そこで、大臣にお尋ねをしたいのは、端的に申し上げますと、構造政策価格政策所得政策の連関いかんということです。この三つをどう連関させてこれから農政を展開させるかということです。  日本の国の農業予算の特徴というのは、御存じだと思いますけれども、基盤整備事業にかなりの部分が割かれておる。このような農業予算を組んでおる国は世界じゅうどこにもございません。日本だけの現象です。  一方、考えてみますと、私は、ラウンド対策議論のときに、これは第四次長計の焼き直してはないですかというような、ちょっと意地悪な質問をしたことがございますが、大臣御案内のように、土地改良の第一次長期計画というのは二兆六千億円だった。昭和四十年から昭和四十九年まで、一〇〇%の達成率でした。第二次長計、昭和四十八年から五十七年、十三兆円でしたが、一〇 〇%の達成率でした。しかし、五十八年から平成四年までの三次長計になりますと、三十二兆八千億を組んだにもかかわらず五六%しか達成をされなかった。一次長計、二次長計は一〇〇%達成をしたが、三次長計は五六%の達成率であった。四次長計は四十三兆円です。  日本農業予算の組み方というのは余り変化をしておらぬですね。つまり、基盤整備の達成率が五六%に落ちたにもかかわらず、余り組み方は変わっていない。このことについてどのようにお考えか。  構造政策価格政策所得政策、それがどうやって連関をしていって、どのような農政というものをつくっていくかというビジョンを示すことが農業基本法の最大の眼目であるべきです。  土地改良をやっていくということは、冒頭申し上げましたように、そのことが消費者の利益にこれだけ資するものであるということを明確にせねばならぬでしょう。そして、土地改良法並びに施行令に示されておりますように、そこにがかった費用は上がってくるもので償わなければいけないというふうに書いてあるはずでございます。それは本当にそうなっているのか、かけたお金がどのように納税者の利益に返っておるのか、その点につきまして大臣の御所見を賜りたいと存じます。
  179. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 冒頭に、農業農林水産業振興を図っていくためには、生産者だけではなくて消費者の理解、協力というものが必要だ、この御意見は私は全く賛成でございまして、やはり国民的な理解がなければ農林水産業振興というのはなかなか難しいというふうに私も思います。  それから、構造政策価格政策所得政策のつながりについて、なかなかこれ、難しい問題だと思うわけでございますが、構造政策が今なお続いておるということについては、これはやはり日本農業が他産業に比べましてなかなか生産性の向上が今なおできていない。そのために国際的に見ましてもコストが高い。またそれによって農家所得も需要と供給との関係でなかなかふえない。そういうことからしますと、まず構造政策を進めていくことによってコストダウンを図っていく、そのコストダウンが結果として価格にはね返ってきて、その価格で十分に生産者も引き合うし消費者もそれによって利益を受ける、それが結果としてまた生産者にとっては所得にはね返ってくる、こういうことになろうかと思います。
  180. 石破茂

    ○石破委員 これだけ財政難の折であります。国の借金が二百四十兆にもなっている。問題は、どうやって本当に納税者の理解が得られる農業予算の使い方をしていくかということを、農政当局として、本当に納税者の側に説明する責任があるであろうということなのです。  申し上げましたように、土地改良にかけたお金はそこから上がってくる利益で償われなければいけないということです。それによって価格が下がる。お米にしても何でもそうですが、価格が下がったということにおいて、本当にその分、かけたお金が役に立ったねという実感が得られなければいけない。しかし、価格が下がることによって農業者の所得が減る分をどうやって所得政策で補うのか、その接点をどこに求めるかということが今一番問われておることだろうと思っています。  そこで、できることは何であるか。  土地改良の負担金の償還というのは最長二十五年のはずです。二十五年間かけて返していかなければいけませんし、借地農業の場合には地主が返すわけです。その分が常に地代という形でオンをしてくるわけですから、やることの一つというのは、では、小作料、地代というものをどうやって減額していくかということになければならないでしょう。そうでなければ、直接所得補償というような、日本にはなかなかなじまない政策というものを導入せざるを得なくなる。  だとするならば、これから先は、本当に借地農業というものをどれだけ拡大をしていくか、そして、借地料、小作料でも日本全国大変なばらつきがあるわけですが、その分を下げていくために、むしろ自己負担というものを減らしていくという形を考えていかなければいけないのではないか。なぜ七割とか八割とか八割五分とか高率の補助が行われているかということを、納税者に対して、あなた方の利益でもあるのですよということを正面から農政当局が訴えない限りは、六兆百億円というのは、いつの間にか本当に、世間の誤った大合唱の中に消えてしまうのではないかと思っておるからそのようにお尋ねをいたしておるわけでございます。  そして、もう一つ最後にお尋ねをしておきますが、これは言ってはいけないことかもしれませんが、今、特に農村部におきましては製造業の就業人口というものが大変減っているわけですね。産業の空洞化ということによって、弱電でありますとか縫製でありますとか、そういう製造業の就業人口は非常に減っている。その分はどこへ行ったかといえば、それは公共事業に行っているのです、新産業というものは創出をされておりませんから。大臣の御地元でもそうかもしれません。その分が公共事業に行っている。もし公共事業なかりせば、農村地帯の失業率というのは上がるということは間違いない事実です。公共事業というものが、ラウンド対策も含めまして、本来の目的と別の作用を果たしておるということについてどのような評価をするかということなんです。  公共事業をやめてしまえ、ラウンド対策不必要、そういうような声が都市部からありますが、そうしますと、では田舎の就業というものはどうしてくださいますかというふうに私は問いたいのであります。そのことにつきましてどのような御所見をお持ちか。  以上二点、最後に承りたい。
  181. 藤本孝雄

    藤本国務大臣 確かに、農業関係に対しまして我々が努力をしていることが、非農家を含めて質的に生活の向上に寄与しておるという事実、これが今まで国民の皆様の理解が十分でなかったという点はそのとおりであろうかと思います。これからパンフレットの発行など、また、ことしからインターネットの活用などで国民各層に対して広報活動を進めていこうということを考えております。  それはそれといたしまして、先ほどのお話の中で二つばかりお答えいたしたいのでありますが、今、土地改良事業につきましては、費用対効果の手法を使っておりまして、この事業に対して必要な費用と受ける利益とを計算いたしまして、利益の方が上回るという場合にはその事業は採択する、下回る場合は採択しない、こういうことで今進めております。  それから、もう一つの問題としては、今、基盤整備を進めております中で大規模な水田事業がございますけれども、これが進んでまいりますと、我々の見通しとしては、労働時間が約六割、それからコストが六割に下がる、そういうことも考えておるわけでございまして、その構造改善事業というものが、生産者にとりましても消費者にとりましても非常に大きな利益をもたらすというふうに我々は考えておるわけでございます。
  182. 石破茂

    ○石破委員 時間が参りましたから終わりますが、失業の話も承りたかったのですけれども、それは結構です。また別の機会に承ります。  ですから、それが本当に立証されておればこんな問題にならないであろうということです。土地改良法施行令第二条第三号、これが本当に立証されなければいけないというふうに書いてありますが、大臣がおっしゃったことが本当に立証をされ、納税者の皆様にわかったとするならば、こんなラウンド対策批判というのは起きないであろう。私たちはそのことをきちんと立証することがこれから先の農業基本法の見直しにもつながることであり、土地改良法もそうでしょう、農地法もそうでしょう、すべての法律の根源にかかわることであると思いましたので、承ったような次第でございます。  以上で終わります。
  183. 石橋大吉

    石橋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十六分散会