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1997-04-10 第140回国会 衆議院 日米安全保障条約の実施に伴う土地使用等に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月十日(木曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 野中 広務君    理事 甘利  明君 理事 杉浦 正健君    理事 鈴木 宗男君 理事 中谷  元君    理事 高木 義明君 理事 二見 伸明君    理事 村井  仁君 理事 前原 誠司君    理事 穀田 恵二君       石崎  岳君    稲葉 大和君       臼井日出男君    遠藤 利明君       小此木八郎君    大野 松茂君       嘉数 知賢君    河井 克行君       瓦   力君    岸田 文雄君       栗原 裕康君    河野 太郎君       阪上 善秀君    桜田 義孝君       下地 幹郎君    砂田 圭佑君      田野瀬良太郎君    滝   実君       玉沢徳一郎君    浜田 靖一君       林  幹雄君    松本 和那君       山本 公一君   吉田六左エ門君       青木 宏之君    東  祥三君       石田 勝之君    一川 保夫君       神田  厚君    佐藤 茂樹君       達増 拓也君    永井 英慈君       西田  猛君    西野  陽君       西村 眞悟君    平田 米男君       丸谷 佳織君    北村 哲男君       玄葉光一郎君    近藤 昭一君       山元  勉君    木島日出夫君       古堅 実吉君    上原 康助君       前島 秀行君    粟屋 敏信君       土屋 品子君    望月 義夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         外 務 大 臣 池田 行彦君         文 部 大 臣 小杉  隆君         建 設 大 臣 亀井 静香君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)梶山 静六君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久間 章生君         国 務 大 臣         (沖縄開発庁長         官)      稲垣 実男君  出席政府委員         内閣審議官   及川 耕造君         内閣官房内閣安         全保障室長   三井 康有君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第二         部長      宮崎 礼壹君         警察庁刑事局長 佐藤 英彦君         防衛庁長官官房         長       江間 清二君         防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君         防衛庁経理局長 佐藤  謙君         防衛施設庁長官 諸冨 増夫君         防衛施設庁総務         部長      伊藤 康成君         防衛施設庁施設         部長      首藤 新悟君         防衛施設庁建設         部長      竹永 三英君         防衛施設庁労務         部長      早矢仕哲夫君         沖縄開発庁総務         局長      嘉手川 勇君         沖縄開発庁振興         局長      牧  隆壽君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         外務大臣官房領         事移住部長   齋藤 正樹君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省条約局長 林   暘君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         建設大臣官房長 小野 邦久君         建設省建設経済         局長      小鷲  茂君         自治省行政局長 松本 英昭君  委員外出席者         安全保障委員会         調査室長    平川 日月君     ───────────── 委員の異動 四月十日  辞任         補欠選任   遠藤 利明君     松本 和那君   栗原 裕康君     岸田 文雄君   浜田 靖一君     山本 公一君   林  幹雄君    田野瀬良太郎君   青木 宏之君     丸谷 佳織君   東  祥三君     石田 勝之君   木島日出夫君     東中 光雄君   新井 将敬君     土屋 品子君 同日  辞任         補欠選任   岸田 文雄君     栗原 裕康君  田野瀬良太郎君     林  幹雄君   松本 和那君     阪上 善秀君   山本 公一君     浜田 靖一君   石田 勝之君     東  祥三君   丸谷 佳織君     青木 宏之君   土屋 品子君     望月 義夫君 同日  辞任         補欠選任   阪上 善秀君     遠藤 利明君   望月 義夫君     新井 将敬君     ───────────── 四月十日  駐留軍用地特別措置法改定反対に関する請願  (秋葉忠利紹介)(第二二〇九号)  同(上原康助紹介)(第二二一〇号)  同(辻元清美君紹介)(第二二一一号)  同(土井たか子紹介)(第二二一二号)  同(中川智子紹介)(第二二一三号)  同(中路雅弘紹介)(第二二一四号)  同(中西績介紹介)(第二二一五号)  同(畠山健治郎紹介)(第二二一六号)  同(濱田健一紹介)(第二二一七号)  同(東中光雄紹介)(第二二一八号)  同(古堅実吉紹介)(第二二一九号)  同(保坂展人君紹介)(第二二二〇号) は本委員会に付託された。     ───────────── 四月十日  駐留軍用地特別措置法改正反対等に関する陳  情書外二十五件  (第  二〇三号)  同外七件(  第二〇四号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の実施に伴う土地等使用等に関する特別措  置法の一部を改正する法律案内閣提出第八一 号)      ────◇─────
  2. 野中広務

    野中委員長 これより会議を開きます。  内閣提出日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定の実施に伴う土地等使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。杉浦正健君。
  3. 杉浦正健

    杉浦委員 自由民主党の杉浦正健でございます。  昨日、委員会終了後の理事会におきまして、我が党がきょうの委員会終了後採決させていただきたいというお申し出をさせていただきましたのに対しまして、日本共産党を除く各党の御了解をいただきまして終了後採決を願うことになりました。  昨日とけさの理事会における各党の対応は、共産党反対、社民党は遺憾ながら賛成しがたい、以外は全各党会派とも賛成との御意向でございます。これによりまして、危惧されておりました沖縄における現下の事態が回避せられる、安保条約によります我が国のアメリカに対する義務、約束が円滑に履行される見通しがついたことに相なるわけであります。  国権の最高機関である国会におきまして、国の安危にかかわる重要事項について、大多数の御賛同をいただいてこういう措置ができることになったということは大変意義あることだと思います。橋本総理大臣に、まずもって御所感、御所見をお伺いしたいと存じます。
  4. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私ども政府立場として、この特措法を提出せざるを得なくなりましたこと自体が本当に残念なことでありました。  本来ならば、収用委員会の作業というものが使用権原の中断を心配するような、あるいは使用権原喪失という事態懸念しなければならないような状況にならず、円満に裁決されることが最も望ましいことだったわけであります。そしてそのような思いから、平成七年の三月三日、手続を開始いたしました。その後のさまざまな事態の中で、政府としてこうした法案を御審議を願わなければならなくなったこと自体が、大変沖縄の皆さんに対しても申しわけない思いのすることでありました。  しかし同時に、日本条約上の義務を履行できないという状態は国家としてその基本にかかわる重大事、そのような思い法案を提出いたしましたところ、今、本日の委員会をもって委員会としての議事を終えられる、そしてその審判が下される。私どもとして、国会にかけました御苦労に改めてお礼を申し上げますとともに、この間の御努力に心から敬意を表します。  今後、参議院におきましても御審議をいただくわけでありますが、その参議院の御審議をも含めまして、使用権原喪失といった事態を招かないで済むことを心から願っております。
  5. 杉浦正健

    杉浦委員 月曜日から始まりました委員会におきまして、我が党を初め各党会派の熱心な質疑が行われてまいったところであります。  その中におきまして一つ大きく取り上げられたことは、沖縄の心の問題でございました。我々は、今総理が申されたような、沖縄の心にこたえなければならない。その心とは何だろうか、何をなすべきか、熱心な議論が行われ、また内閣からも各大臣から御答弁があったところであります。  参考人の田久保さんから、沖縄沖縄の方のことをウチナーンチュ本土人のことをヤマトンチュというふうに呼ばれているというお話があり、その歴史的な背景についての御説明がありました。本土沖縄に対して、長い歴史の中でいわば加害者立場にあったこと、沖縄被害者立場にあったことが根底にあるとのお話でございました。  同僚議員の中にもウチナーンチュはおられます。上原議員仲村議員初めウチナーンチュの方が多数いらっしゃいますが、皆様方の肺臓をえぐる思いの御議論を拝聴いたしまして、ヤマトンチュとしてのいわば負い目と申しますか、そういうものをさらにさらに強く感じた次第であります。  地主の代表として御出席いただきました参考人の金城さんが、あの大戦で負傷され、戦後の占領下における土地強制収用米軍による収用に対して体を張って、村挙げて抵抗されたお立場でありながら基地契約によって提供するお気持ちについて、安保条約日本の平和と安全にとって必要だ、そういう気持ち提供しておりますというお言葉をいただいたのには、粛然として襟を正す思いがいたした次第であります。この気持ち同僚諸君も同様だと思います。  私は、沖縄の心、ウチナーンチュの心を聞いておりまして、この沖縄方々立場気持ちは、過去のあの大戦で朝鮮半島、中国初め東南アジア方々にいわば日本加害者として与えた戦禍、それによってこうむっておるアジア方々のお気持ちと通ずるものがあるなという気持ちで拝聴しておった次第であります。  総理初め各閣僚、沖縄の心にこたえるということで大変に前向きのことを拝聴したわけでありますが、総理に、改めましてこの沖縄の心についての御所信を例えればありがたいと思っております。
  6. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 果たして、本土の我々に沖縄方々が胸の中に持っておられるものが本当にわかるのだろうか、今回の委員会審議を通しまして、改めて今私の胸にそのような思いがございます。  先般も御答弁申し上げたことでありますけれども、私は私なりに、昭和四十年初めて沖縄県を訪問いたしまして以来、復帰前の沖縄県、そしてその復帰が具体化するその過程沖縄県、復帰直後の沖縄県、その後の沖縄県、私なりにさまざまなかかわりを持ってまいりました。そしてそれなり沖縄県をある程度知っている、そのような思いでおりました。  そして、総理という立場になり、この問題に真正面から向き合うという事態になりまして、改めて私は大田知事著作物に目を通し、当初は実はその著作物の内容が信じ切れませんでしたので、いろいろと資料に当たり、調べ、その中で我々が全く知らなかった沖縄県における土地収用の実態というものも知るようになりました。  そして、それなり沖縄県の方々の抱えておられる重荷、そして痛みというものに我々なりの理解を持って臨んだつもりでありますけれども、まさに、県出身議員方々党派を超えてこの席上で述べられたことの中に、随分長い交友を持っていたにもかかわらず、御自身の周辺にそれだけの戦没者を出した、そのようなことがあったことを初めて語られ、今まで、のどまで出ていても言えないことがたくさんおありだったのだなということを改めて感じております。  それだけに、この問題、我々として心の重い部分を確かに持っておりますし、今、この問題とは切り離して沖縄県の振興というものを今まで以上に真剣に考えていき、経済的に日本経済に寄与し得る沖縄にしていく、こうした責任は我々はひとしく負わなければならないもの、そのような思いでおります。
  7. 杉浦正健

    杉浦委員 私は、本当にこの委員にさせていただくまで知らなかったわけでありますが、我々同僚議員の中にも、我が党の鈴木筆頭のように、沖縄重荷を少しでも解消しようということで、地元に射爆場を引き取るということで御奔走された議員がおられる。それから、あと四カ所ほどありますが、そういった地域でも党派を超えて同僚議員がいろいろと御尽力賜っておることを伺いまして、ヤマトンチュの一人として感謝するとともに、本当に恥じ入った次第であります。それらの同僚議員の御努力に心から敬意を表するとともに、今後ともできる限りの御努力をさせていただかなければいけないということを痛感しておる次第でございます。  本委員会審議は、連日熱心に行われたところであります。我が党も、鈴木甘利中谷の三議員によって、あらゆる面からの質疑を尽くさせていただきました。各党会派も同様に、長時間にわたって熱心に御議論賜ったところであります。議論は尽くされておりまして、私から改めて伺うことはないと言ってもよろしいわけでありますが、比較的議論がなされなかった面、一点についてだけ質疑をさせていただきます。  それは、基地提供していただく地主の方と、それを使用する国との法律関係についてでございます。  審議過程で明らかになりましたところによりますと、沖縄に限らず、基地提供地の大部分賃貸借契約土地等賃貸借契約書を締結させていただいて使わせていただくというふうになっておる。沖縄の場合、その方々の数は二万九千五百四十四人で、面積は九九・八%の方々契約による提供者であります。この方々には、私法でございます民法適用がある、関連法規適用があるというわけであります。  調達庁努力いたしまして、どうしても契約していただけない方を対象として特措法適用され、所定の手続を経て収用されるということも審議されたところであります。沖縄に限って申しますと、その方の数は二千九百六十八人、面積にして基地の〇・二%、こういうふうに承知しておるところであります。この特措法適用となった収用土地については、民法適用はない。公法でありますが、意思に基づかない収用でありますので、民法適用がないというふうに聞いております。  きょうは、法務省民事局長見えでございますが、公法の分野については管轄じゃないということでございますので、施設庁の方に、特措法適用対象地については民法適用がない、つまり、一番問題になるのは期限でありますが、期限満了日、今五年ごとに収用委員会の決めるところに従っておるわけでありますが、終わったら即、その終了と同時に特措法上の適用がなくなる、権限がなくなる。したがって、特措法との関係では違法状態になるというふうに思われますが、見解を求めます。
  8. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 お答えいたします。  私ども、この特措法に基づく権利というのは、あくまでも補償金の払い渡しあるいは供託等をすることによって使用権を取得いたします。したがいまして、先生御指摘のように、民法上の賃貸借とは異なりまして、公法上の権利であるというふうな認識に立っておるところでございます。  そこで、民法上の違いといいますか、その点についてちょっと簡単に。私ども適用しております土地収用法第百五条の規定によりますと、この期間が満了したとき、または使用する必要がなくなったときは、遅滞なく、その土地等は、土地等所有者または承継人に返還しなければならないという規定がございます。
  9. 杉浦正健

    杉浦委員 それに対しまして、民法適用されるカテゴリーのものについては民法適用されるということに相なります。したがいまして、現在施設庁使用しておりますのは、契約書は、防衛施設庁書式千七百九十九号によります土地建物等賃貸借契約書であります、大変分厚いものでありますが。この契約の中身、争いになった場合は、その解釈はすべて民法によることと相なるわけでございます。  今まで民法上で争われたケースが何件かございますが、代表的な判例を拾ってみますと、一つは、板付基地の一部土地の返還を求めた訴訟、これについて最高裁判例があります。昭和四十年三月九日付判決であります。もう一つは、いわゆる山王ホテル明け渡しを求めた事件について、東京地裁昭和四十八年八月二十九日付判決がございます。  この両方の判決に共通するところは、つまり民法適用があるのだということと、契約期限については、この契約書によりますと一年、つまり会計年度に合わせて一年となっておるわけでありますが、これは事実上の地代据置期間であって効力がない。実質においては、駐留軍提供趣旨に従い、使用を継続する限り国内法の定めるところにより存続させる旨の不確定期限契約だ、こういうふうに解しておるところであります。  もう一つ争点となっております、この契約条項には、契約書第五条ただし書きに契約更親権がある、協議が調わなくても国側意向で更新できるという規定があるわけですが、これは、同じ趣旨による提供義務を果たすための適法な規定だという解釈がなされております。  したがいまして、例えば沖縄でございますと知花さんのケースがこれに当たるわけでありますが、知花さんは、民法カテゴリーに属する契約地主であられたお父さんからこの土地を生前贈与を受けまして、二十年の契約期間満了後、明け渡しを請求された、それが争いになって現在訴訟になっておるわけでございますが、知花さんのような方のケースの場合には、民法規定に従って裁判所判断がされるということになるわけであります。  その余の、知花さんを除く沖縄ケースですと、そのほかの多くの方々は、特措法規定に従って、収用法の裁決がなければその期限終了とともに無権原状態になるという関係になるわけであります。  なぜこういうことを申し上げたかと申しますと、知花さんのケースの場合、ほかの地主の方とはいささかニュアンスが違うということを申し上げたかったわけであります。  民事局長見えでありますので、一般論としてお伺いいたします。  係争になった場合、知花さんの場合は係争になっているわけでありますけれども知花さんの所有権に基づく明け渡し請求が正当であるかどうか。国は争っておるわけですけれども、この争いが最終的に決着するのは裁判所における判断、まあ三審、最高裁まであるわけですが、どこで決まるかは別として、確定するまではいわば不確定状態になる、一般論ですが。したがいまして、今裁判中ですけれども判決確定するまでは、現時点において知花さんの主張が正当であるとか国の主張が正当であるとか言えない、いわば浮動的な状態に相なっておるというふうに思料されるところでありますが、この点についく民事局長の御見解を求めます。一般論で結構であります。
  10. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 一般論といたしまして、裁判で争われている法律関係のいかんということにつきましては、最終的に裁判所判断を経て確定するわけでございますので、その判断の前にそのいずれかを断定すべきものではないというふうに考えております。
  11. 杉浦正健

    杉浦委員 その点を踏まえまして、知花さんの土地につきましては官房長官談話が発表されております。当該土地については、過去二十年間にわたり土地所有者との間で賃貸借に基づき適法に使用してきたものだ、当該土地米軍に引き続き使用提供することは安保上の義務だ等の理由をもって、直ちに違法であるというには当たらないという談話を発表され、過般の臨時国会において同趣旨の御答弁をなさっておるところであります。  なぜ質問したかと申しますと、そういう法律関係のもとにございますから少し違うということを申し上げたかっただけであって、他意はございません。官房長官談話等について御質疑がございませんでしたので、ちょっと触れさせていただいた次第であります。  質疑過程におきまして、特に参考人意見陳述の中で沖縄方々懸念として述べられておったことで、非常に心にかかったことがありました。つまり、この法案が通過することによって、日本政府沖縄問題に対する取り組みの熱が冷えてしまうんじゃないかという御懸念があるやに伺ったところであります。  そうであってはならないわけでありますが、真剣に各委員の間で御議論をいただきました今後の沖縄基地問題への取り組み、とりわけ沖縄振興策確定と申しますか拡充と申しますかについて、真剣な御努力を賜る。たびたび御答弁を賜ったところでありますが、稲垣沖縄開発庁長官に、時間がございませんので、決意表明のほどをお願い申し上げる次第であります。
  12. 稲垣実男

    稲垣国務大臣 連日、委員長初め理事委員の諸先生から大変熱心な御討議を拝聴いたしまして、沖縄振興策がますます重要な問題だなと。また、これは内閣挙げて取り組まねばならぬ重要な課題であることは申し上げるまでもないわけであります。  ただいま現在、内閣官房長官関係大臣沖縄知事とで構成する沖縄政策協議会において検討がなされているところでございますが、特に、所管といたします沖縄開発庁としても、庁内に設置しております沖縄振興プロジェクトチームを中心に、昨年の総理大臣談話に基づきまして、何にしても本土から随分離れておる離島地域にあるわけでありますので、交通手段というと空港または港湾ということでありますから、これの社会資本整備、それからまた観光が非常に重要な産業でございますので、これらの関連施設整備、それからまた、沖縄県からの二十一世紀のグランドデザイン等々によりますと、国際都市形成、また自由貿易地域の拠点をつくらねばならぬということでありますから、そういった問題に対する拡充強化の問題など、各関係省庁沖縄県と連携をとりながら、沖縄県が地域経済として何としても自立をしていかなきゃならぬ。また、若い人たちが県内で雇用ができるというような、そういう場をつくっていかなきゃならぬ。  さらに、沖縄県民の生活の向上が本土と比べて遜色ないようにしていくということが極めて大事でありますので、我が国経済社会の発展に寄与する地域にさらに整備がされるように、私ども沖縄開発庁といたしましては、沖縄振興開発に全力を傾注してまいる覚悟でございます。
  13. 杉浦正健

    杉浦委員 外務大臣にもお願いしたいと思いますが、沖縄の心を心として、東アジア緊張状態を緩めていく。この地域にヨーロッパのような安全保障の枠組みができるかどうか、できる方向で努力しなきゃならないと思います。外交努力が、日米の基本的な関係をしっかりと踏まえた上で、アジア軸足を置いた積極外交を進めなきゃならないと思うのでございますが、その意味における決意表明のほどをお願い申し上げる次第であります。
  14. 池田行彦

    池田国務大臣 政府といたしましても、アジア・太平洋地域が一層安定度を増し、そして将来に向かって、我が国も含めまして、軍備の面におきましてもいろいろな負担の軽減を図っていける状況ができる、そういったことは当然目標としていかなくちゃいけないと思います。  そういったアジア・太平洋地域の安定を増す上におきまして一つ大切なのは、やはりこの地域においてアメリカがしっかりとしたコミットメントを維持していく、これでございます。  いま一つは、おっしゃいましたアジアの諸国との関係を、これは二国間の関係でのいろいろな努力は当然でございますけれども、この地域に、経済の面ではAPECであるとか、政治、安全保障の面ではARFというような多国間の枠組みも今育ってきていますから、そういったものをさらに進めてまいりまして、ヨーロッパにございますNATOのようなきちっとした実力を伴った組織になるのは、ちょっとまだまだいつというようなことは予見できる状態ではございませんけれども、いずれにしても、安全保障の面におきましても多国間の枠組みが発達していき、この地域により安定した状況がもたらされるように我が国としても主体的に力を尽くしてまいりたい、このように決意をしているところでございます。
  15. 杉浦正健

    杉浦委員 防衛庁長官、大変申しわけありませんが時間がございませんので、最後に総理に一言お願いしたいと思います。  二十四日御訪米と伺っておりますけれども、恐らくそれまでには参議院も通過させていただけるのではなかろうかと思われるわけであります。この問題をめぐってとかくぎくしゃくしがちだった沖縄問題について、円滑な道が開ける見通しがついたわけであります。  二十一世紀への橋渡し役を務めるのだという意気込みで当選されたクリントン大統領相手の会談となるわけであります。二十一世紀を見据えまして、もろもろの私ども議論を踏まえて、日本並びにアジアの将来の安定の方向に向かって、ひとつクリントン大統領と胸襟を開いて、木剣は正眼に構えるのではなくて腰にしっかりと据えていただきまして、じっくりと話し合っていただくことを期待しておるわけであります。  総理の御決意のほどを一言、最後にお伺いさせていただきます。
  16. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、恐らく二十一世紀に入りましても、日米関係というものが我が国にとって最も大切な外交関係である、その状況は変わらないと思います。同時に、その日米関係が安定しておりますこと、これは間違いなしに私は、来世紀になりましても、アジア・太平洋地域だけではなく他の地域の国々もこれを非常に強く求める、そのような関係でもあろうと思います。  そして、既に私自身が一月にASEANの五カ国を訪問させていただいたときに、あるいはさまざまな機会に日本にお越しになる海外のお客様方と話をしておりまして、経済関係を含めて日米間がぎくしゃくしないように、そして日米関係が安定するようにということは、どこの国もが求めておられる。それだけ国際的にも重い役割を持っておりますこの日米関係、今後ともに円滑なものにしていくように全力を尽くしてまいりたいと思います。
  17. 杉浦正健

    杉浦委員 ありがとうございました。終わります。
  18. 野中広務

    野中委員長 これにて杉浦君の質疑終了いたしました。  次に、東祥三君。
  19. 東祥三

    ○東委員 新進党の東祥三でございます。おはようございます。  本日は、三十三から三十五問、質問を用意してまいりました。時間の許される限り質問させていただきたいと思います。できるだけ重複を避けさせていただきたいと思いますが、もう既に徹底的な審議が行われてきまして、問題点もほぼ出尽くしている。ただ、本質的な部分がまだ論じられていないことが多々あるのかもしれません。いずれにいたしましても、何とぞ、質問は三十三問から三十五問ですから、三分ずつやるとちょうどうまくいくのかなというふうに思います。  本論に入る前に、ぜひ素朴な質問をさせていただきたい。  相互依存関係が進んできているこの状況下におきまして、総理大臣という仕事は本当に大変だなと。一億二千六百万人の国民の生命と財産、さらにまた、国際社会における日本の位置づけをだれよりも深く理解し、また、その責任が両肩にずしっと来ているわけでございますが、橋本総理、三つ質問があります。  総理は、いつごろから総理大臣になりたいと思ったのか、なぜ総理になろうと思ったのか、そして、総理になったときに何をやろうと思ったのか、この三点について、素朴な質問でございますが、よろしくお願いします。
  20. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私自身、本当に、総理になろうなろうと目をぎらぎらと輝かせたという覚えは、実は余りございません。そして同時に、先輩の方々あるいは同僚方々から、その責任を負わなければならなくなるときその責任から逃げるなということを言われ、その場合には逃げまい、そう自分に誓いましたのはそう遠い昔のことではございませんでした。  そして、私自身が、やろう、しなければならないと思っておりましたことは、今振り返ってみますと、その時期に考えていたことは二つだったと思います。  一つは、まさに今流の言い方をいたしますなら、財政構造改革と同時に金融システム改革が重なるんでしょうか、国際的に円というものの地位を強めたい、安定させたい。果たして、その時点では、実はマーストリヒトがどうなるか必ずしも見通しがありませんでしたけれども、いずれ国際的に基軸通貨が複数になる時代に、円をローカルカレンシーにすることはできないという思い一つございました。  それからもう一つは、やはり行政改革だったと思います。ただ、その時点で考えておりましたころには、今ほど突き詰めて全体を整理していたわけではありません。しかし、同時に、人口構造の変化に応じて、長寿社会、高齢社会というものに向いた行政の仕組みをつくらなければならないという思いは、私自身随分長い間持ち続けてまいりましたし、行政改革というものをそうした視点からとらえておりましたが、そのようなテーマがあったと思います、間違いなく。  そしてもう一つは、これは、大変恐縮です、時間を限られたのに申しわけないんですが、やはり私が非常に気になっておりましたことは、日米、日中、米中、この三カ国の枠組みを友好的なものとしてきちんと位置づけないと、将来ともにアジア・太平洋地域の安定はないんじゃないだろうか、そのような思いでありました。
  21. 東祥三

    ○東委員 ありがとうございます。三つ目の課題として、日米、日中、米中関係という、まさに国際政治における安全保障にかかわる問題に対しても当初から問題意識があったということで、すごくうれしく思う次第でございます。  今週から始まりましたこの特別委員会における議論で集約される課題は、基本的には日米安保体制を堅持しつつその信頼関係をいかに向上させていくのか、と同時に、沖縄県及び沖縄県民が今日まで過重な負担を強いられてきた、その負担を全国民がどのように分かち合うことができるのか、それがまさに本質的な課題なんだろうと思います。  と同時に、これは価値前提の問題になるかわかりませんけれども、私は、安全保障の問題というのは、他のどの分野と比較しても比較し切れない、全く違う別個の問題が潜んでいるんじゃないのか。つまり、失敗することは全く許されないものが安全保障政策なんだろう、リスクを負うことができないことが安全保障の根幹にあるんだろうというふうに思うのです。  ところが、日本の常識、世界の非常識というふうに言われますけれども、先ほど総理お話ししてくださいました金融改革の問題あるいは行政改革の問題、極めてこれは重要な問題でございます。日本の今の全国レベルで見ておりますと、乱暴な言い方をいたしますと、経済の問題というのはある意味で中央集権が行き届いている。どこかの村の村おこしをする、町づくりをするに当たっても、中央のコントロールが行き届いている。それがまさに、今規制緩和が叫ばれている状況なんだろうというふうに思います。郵便局一つ、鹿児島県のある村においてそれを動かそうとしたとしても、それは中央の許可がない限り動かすことができない。まさに経済優先が余りにも行き着いてしまった、その結果が今日の状況に見られるんだろう。  他方、安全保障という問題を見たときに、本来ならば中央集権でやっていなければならないことがまさに地方分権になってしまっている。ここに、私は、最大の今日の日本が直面している大きな問題があるんだろう。この価値前提のもとに質問をさせていただきたいと思います。  まず初めに、駐留軍特別措置法改正に関してでございますが、久間防衛庁長官政府として今回緊急避難的な措置をとる趣旨というのは一体どこにあるのか、まずこの点について簡潔に、重複しますけれども、何とぞよろしくお願いします。
  22. 久間章生

    ○久間国務大臣 御承知のとおり、我が国駐留軍に対して施設区域提供しなければならないという義務を負っておりますから、賃貸借契約できましたものについてはその同意を得て、しかし、同意を得られないものについてはこの法律に基づいて強制使用という形で、それを提供してきておったわけでございます。  かかる観点から、七年の三月三日に手続に入りまして、従来からのケースでいくならばこれで十分だろうということで推移してきたわけでございますけれども、あのようないろいろな不幸な事案等がございましたために、非常におくれてしまった。  しかしながら、その後幸いに大田知事と橋本総理との合意といいますか、理解といいますか、そういう中でうまく進み始めましたために、これで何とかいけるというふうに思っておりました。しかしながら、だんだんと迫ってまいりましたときに、どうしてもこれがうまくいかない。しかも、五月の十四日までにするためには三月の末ぐらいまでには、せめて四月の初めには裁決してもらわなければならないというところまで追い込まれてまいりましたが、収用委員会が次の日取りが決められないという、そういう状況になってしまいました。  これでは使用権限がなくなるということで、これを法律改正によって何とかクリアしなければならないということで、今回、暫定使用という制度をつくるということで出させていただいたわけでございます。
  23. 東祥三

    ○東委員 防衛庁長官の御説明の趣旨というのは、よくわかります。ある意味でやむを得ない措置だということなんだろうと思いますが、このような、ある意味で瀬戸際の事態を前もって防止するのが本来の政治家の、また為政者の責任なのではないのか。仮に、五年あるいは十五年前にこのような事態が起きることを予測できていたとすれば、本来どのような措置をとるべきだったとお考えになりますか。
  24. 久間章生

    ○久間国務大臣 五年前、十年前と言われますと、そのときの状況がわかりませんけれども、こういう事態が発生する前の、仮に二年前のその時点を考えてみましたときに、やはりこういうものを抜本的にもし改正するとなりますと、かなりの関係者の方々の理解を得なければやれないわけでございます。地方自治体に今ゆだねておるそういう権限を改正するのがいいのかどうか、そういうことについても、各党会派の御意見を集約させてもらいながらやらなければなりません。  そういうことを考えますと、二年前の時点で、こういう今日みたいなことが予想されなかった時点では、なかなかそういうことは難しかったんじゃないだろうか。今になって思ってみれば、もう少し抜本的な方策等についても検討すべきだったんじゃないかという御意見はあるかもしれませんけれども、そういうことがその時点で果たしてどうだったか。  やはり、地方自治体に縦覧公告の手続その他を経ていろいろなことがされるような、そういう土地収用法手続をやっているのも、一つ手続としてはできておるわけでございますから、そういうことを考え合わせますと、過去にさかのぼって検討できたか、法案を提出できたかとなると、ちょっと問題じゃないかなという気もいたします。  それともう一つは、地方分権のあり方について、推進委員会等で今議論してもらっておるわけでございますから、そういうのを抜きにして我々が抜本的な法案をぽんと出すというような、そういう雰囲気はまだできていなかったんじゃないか。今でもまだ、そういう分権推進委員会の意見等を踏まえながら検討しなければならない、そういうような状況じゃないかというふうに思うわけでございます。  やはり、沖縄方々気持ち等を酌んだときでも、この法案が、現時点ではやはり最小限の改正案であったというふうに私は認識しているわけでございますので、どうか、その辺の前後の事情等についても御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  25. 東祥三

    ○東委員 法案を通すという意味においては、それは最小限の修正をすることによって、また改正をすることによって通すことができる。ただ基本的には、その本質は事態の状況を改善させていくという本来あるべき姿とは遠いということは、これまでのいろいろな意見の御開陳等を通してこれはわかっているわけでございます。まさに、それがわかっている以上、それを踏まえた上でやっていかなければならないのが政治家の役割なんだろう。必要最小限、あるいはやむを得ないという言葉はよく日本で使われる言葉ですけれども、本来そういうことでいいのかという問題がここに潜んでいるのではないかというふうに思います。  法を最低限にいじって済まそうとしていること、それが如実に今の長官のお話の中にあらわれているわけですけれども政府の責任というのは、日本国民にとって最小限ではなくて最善の政策を提示していかなければいけないところに、まさに日本政府の最大の僕は責任があるんだろうというふうに思います。  よく、日本というのは、やむを得ないだとか、これはしようがないんだということを頻繁に最もよく使われる国民だというふうに言いますけれども、それが政治そのものだというふうに、また誤解されてしまう。本来やるべきもの、これは政府にとって最高の方法なんだということを提示していけるような国にならなければ、これだけ相互依存が進んできているわけですから、世界各国との交渉をやるにおいても、これはしようがないから頼みますよという形は、国内では通用しても国際社会においては全く通用しないということなんだろうと思うのです。  そういう意味におきまして、今の長官の発言を踏まえた上で、総理、この点についてどのように思われておりますか。
  26. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、現時点、最善の案を御審議をいただいている、そう考えておりますということを冒頭申し上げさせていただきたい。  その上で、たしか昨年、予算委員会におきまして、御党の山口那津男議員だったと思います。同じような趣旨の御質問がありました。そして、一体条約上の義務、これを履行する責任はどこにあるのか、そうした角度からの御論議だったと思います。  駐留軍用地特措法に基づく事務、用地を取得する事務、これは間違いなしに我が国の生存そして安全を確保する上で極めて重要なものですし、かつ、極度に公共性の高いものであります。  つまり、条約上の権限としての米軍の活動の担保として我々が基地提供する、施設提供するという責任でありますから、これはまさに条約上の義務履行であります。その際も御答弁を申し上げたことですが、本来国が執行責任を負うべき性格のものだと私も思います。  その上で、そのあり方について、現在地方分権推進委員会において調整中とされている事務であります。政府の責任者として審議会に審議をお願いをしております以上、その御意見等も見ながら、幅広く検討していくべきものだと考えております。
  27. 東祥三

    ○東委員 総理は、最善の策だというふうにおっしゃった。国家として、国民の安全を確保するため日米安保体制を維持すべきだとすれば、そのための措置というのはまさに、今できないかわかりませんが、本来、国家が責任を持って処理すべきであって、現在のように県に委任すべきではないんじゃないでしょうか。この点についてはいかがですか。
  28. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、こういう問題を議論しますときに、歴史的な沿革を抜きにして議論はできないと思います。敗戦から占領、そして独立。しかし、独立の時点において、最小限度の自衛隊を持ち、我が国安全保障の大半、国防の大半を日米安全保障条約によって米軍にゆだねてまいりました。そして、昭和三十五年の大変な国論を分断する大騒動の後、現行の安保条約に、この結果が生まれ変わりました。そして、それ以来今日がございます。  そして、その間において、ある意味では第二次世界大戦の教訓というものの中から、極度に軍備というもの、これは米軍とか自衛隊とかを問わず、軍備というものに対し住民が敏感であり、そうした施設が周辺にあることに対してさまざまな国民感情が渦巻く中で、私は、地方の考え方あるいは地域住民の声というものを一番よく把握し得る地方公共団体に協力を願わなければ、現実の仕事ができなかったという歴史は否定できないと思います。そうした中で、今日制度が定着をする、そうした素地はあったと思いますし、理屈だけでは割り切れない部分がここにございます。  現在、地方分権推進委が、調整中として第一次勧告にお入れにならず御議論をしてこられて、現在も継続しておられる。私は、そうした点も十分考えておかなければならないと思っております。
  29. 東祥三

    ○東委員 総理の御指摘、つまり、歴史的経過を抜きにして語ることができない、全く私は同感でございます。  しかし、歴史的経緯を踏まえた上で、今日の諸問題に直面する。その諸問題を解決していく上でどうしても足りない部分が出てきているとするならば、その歴史的経緯を踏まえた上でどうするのかという基本的な物の見方が確立されない限り、いつまでたったとしても同じ延長線上で推移していかざるを得ないのではないのか。それはある意味でびほう策になってしまうんじゃないのか。  日本の歴史、世界の歴史、常に歴史的な転換点がある一だからそのときには、あるときは革命という形で暴力に訴えてでもそのような転換がなし遂げられてきている。暴力が許されない時代です。しかし、だれがその歴史的な転換を果たしていくのかと言えば、私たちにとってみれば、総理が決断して方向性を示していただかない限りそれは無理なんじゃないのか、そういう視点から私は申し上げているのであって、基本的な考え方として先ほど申し上げましたとおり、安全保障という問題は、どの国を見たとしてもまさに政府が、国が責任を持ってすべての責任をとらなければならないということは自明の理であり、またそれぞれの国々が担っている最大の僕は役割だというふうに思っております。  今までは問題がなかったからそれでいいということではなくて、また、今回問題が起こったからそれに対してびほう策をつけ加えるということではなくて、本質的な物の見方、考え方が、今この時点においてまさにほころびを呈してきているんではないのか。  その意味において、安全保障日米安保体制を支えるその根幹をなす基地提供という面において、それを今ということを私は言っているのではなくて、物の見方として、それを県に委任しておくということがいいのかいけないのか、それはそうじゃないんじゃないのかということを申し上げているのです。歴史的経緯を踏まえた上で、それをどのように方向転換していくのかということが、今日、政府に与えられている最大の責任であり、また方向性なのではないのか、このことを申し上げているわけでございます。いかがですか。
  30. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ですから、今お尋ねをいただきました点は、先ほどのお答えの前に、私はまさに山口那津男議員に対する御答弁の際にも、言いかえれば、今のようにこうした問題に対して深刻な議論を行っている状況ではなかったときに、条約上の義務の履行の責任は国、本来国の事務であるべきものであろうということは議員の御指摘のとおりということで、私は、実は自分の考え方をはっきり申し上げています。その上で、行政府の責任者として地方分権推進委に審議をお願いを申し上げ、それが継続しております。当然ながらそのお答えも見た上で、参考にしながら幅広く検討する、政府としての姿勢は私はまたそうあるべきものだと思うのです。
  31. 東祥三

    ○東委員 次に行きます。  日米安保体制の重要性。ペリー国防長官が来られる、さらにまた現コーエン国防長官が来られる、またゴア副大統領が来られたとき、日米安保体制の重要性、なぜ重要性なのか、アメリカ側からはよく聞きます。またここに、この審議においても、居並ぶ閣僚の方々からも日米安保体制の重要性ということについて聞きます。抽象論として聞きます。それをもっと、なぜ日米安保体制というものが重要なのか、なぜ日米同盟というものが日本にとって重要なのかということをもっともっと国民にわかっていただけるように、政府からその説明が必要なのではないのかと私は思っております。  そういう観点から幾つか質問させていただきますが、米国は約十万人の兵力をアジア・太平洋地域に展開し続けるとの姿勢を繰り返し繰り返し表明しております。このことは、我が国安全保障はもちろんのこと、広くアジア・太平洋地域の安全に寄与するものと私も考えております。朝鮮半島における南北間の緊張を初めさまざまな不安定要因がある状況を踏まえると、政府としては、米国に対して引き続きこのようなコミットメントを継続するよう要請すべきなのではないのか。  つまり、米国から見れば、十万人の兵力をこの地域において展開したいと米国が言っているんだ、こういうメッセージとして伝わってきているわけです。日米安保体制というものが本当に大切であるとするならば、十万人のアジア・太平洋地域における展開は日本にとっても重要である、引き続きそのプレゼンスをお願いしたいというのが本来の僕はあり方なんだろうというふうに思うのです。  このコミットメントを政府がもっと明確に要請すべきではないのか、このように思いますが、いかがですか。
  32. 池田行彦

    池田国務大臣 日米安保体制というものは、これは日本のために、そして米国のためにも必要なものでございます。であればこそ、両当事者の間で条約としてこの体制が維持されているわけでございます。  そしてまた、それだけではなくて、条約の当事者ではございませんけれどもアジア・太平洋地域の国々にとっても、この日米安保体制が持つ大きな地域の安定要因としての機能、役割というものは高く評価されているんだ、こういうふうに考えます。したがいまして、そういった条約をきちんと維持していること自体が、当事者であるアメリカも、そして日本もこれの有用性を認識しているという証左でございます。  さらに、世界が大きく変わった、地域安全保障環境が大きく変わったけれども、この体制というものを堅持しなくちゃいけないんだということを文字どおり昨年の四月の日米首脳会談で改めて確認をし、それを内外に宣明したところでございます。  そして委員の御指摘されますのは、それだけではなくて、その具体的な形としての、我が国に駐留する米軍も含めてこの地域への米軍の十万人のプレゼンス、そのことを日本側からも求めるべきじゃなかったか、そういう御趣旨もあるかというふうにお伺いいたしましたが、これは、先ほどまで申しました現時点においても日米安保体制が大切だという認識のもとで、日本もそしてアメリカもそれぞれ、これが有効に機能するためにこれまで相談もし、またそれぞれが果たさなくてはいけない役割も自覚しながらそれに必要な体制も整備してきたわけでございます。  そうして十万人体制と申しますのは、米側がこのコミットメントに基づいてみずからの条約上の責務あるいはこの地域の安定を図る上で必要だ、役割を果たさなくちゃいけない、そのために必要だと認識して置いているものでございます。  そういった意味では、条約の責任を果たす、当事者の一方として果たすためにどういった体制が必要だということは、一義的には米側が考えることでございましょう。しかし当然のこととして、条約の一方の当事者としての日本にも大きな関心があります。そういった意味では、これまでもいろいろな場におきましていろいろ相談もし、国際情勢その他を勘案しながら、我が方としても、現時点では米側のこの判断、そしてこのプレゼンスというものは妥当である、適当であるというふうに申し上げてきたわけでございます。  それから、こちらからも言うべきじゃないかという点でございますが、それはいろいろな場におきまして、今申しましたように、我々もそういう認識であるということを言っているということで御理解賜りたいと思います。  また、将来に向かっては、さらに情勢もいろいろ変化するでございましょうから、緊密に協議していこうよという、そういう仕組みを共同宣言の中でも明確に打ち出しているということを付言させていただきたいと存じます。
  33. 東祥三

    ○東委員 大事なことは、日本政府からのメッセージとして、日本に、またこの東アジアにおきまして米軍のプレゼンスがある、米軍のプレゼンスを日本からも期待している、そういうメッセージを与えることが重要だ、こういうふうに申し上げているんです。数の問題ではないんです。  ナイ・レポートをつくるときに、十万人という数を入れるかどうかというけんけんがくがくの議論があったということも聞いております。数を一たび入れてしまうと、それを減らすときにも、それは国際政治ですから、他の国々から逆のメッセージとして受け取られてしまう、そういうけんけんがくがくの議論があったということもよく理解しております。  本質的な問題としては、本当に日米安保体制というものが日本にとって必要であるとするならば、また近隣地域にとって必要であるとするならば、そのメッセージを明確にアメリカに、また国民に伝えていくべきなのではないのか。  その上で、この委員会においても何人かの方々から質問が出ましたが、明確なる御返答がなかったと思います。それは日米安保体制、これが重要であったとしても、果たしてなぜ十万人、この数は私はどうでもいいというか、もう出ておりますのでこの数は利用させていただきますが、十万人の米兵が前方展開している。そのうち約四万七千前後が日本に駐留している。そのうち特に約三万がなぜ沖縄に集中して駐留しなければならないのであろうかという、まさに素朴な疑問が出てくるわけです。これに対して明確なる防衛庁長官からの、また外務大臣からの答えが返ってきていないから、だから本当に米軍日本に駐留することが必要なのか、こういう疑問が当然出てくるわけです。なぜ必要なのか、その点についての御認識をまず防衛庁長官、どうぞ。
  34. 久間章生

    ○久間国務大臣 残念ながら、例えば仮に国内の話にしましても、自衛隊がこれだけ、十八万なら十八万人、今度防衛大綱で十六万に変えますけれども、そういうような配置をしているときに、それぞれの師団その他がやっておりますが、それは全体としての配置状況については言いますけれども、どこに何人がなぜ必要かというのは、やはりそれぞれの理由によって配置しているわけでございます。それは軍の、自衛隊の場合は自衛隊の運用に関することでございまして、なかなかオープンにできない点もございます。  そういう意味では、十万人体制については、昨年暮れのいわゆる2プラス2におきましても、私どももそれに一緒になりまして十万人のプレゼンスをお願いしたといいますか、一緒に認識したわけでございますけれども、全体で四万七千人ということにはなっておりますが、なぜ沖縄に幾ら、あるいは在日米軍の、本土の方にどこになぜ幾らかということは、なかなか運用上の問題でございますから、それはやはりつまびらかにできないという点もございますので、どうかその辺についてはひとつ御理解賜りたいと思うわけでございます。
  35. 東祥三

    ○東委員 防衛庁長官政府の方からそういうふうなことを説明できないというところが、まさに僕は不信を買ってしまうのではないのか。数ではないんです、本質は何なのか。私はこういうふうに理解しております。  それは、軍事的に見た場合、例えば在韓米軍が、北朝鮮との関係で韓国を守るという米国の決意を示すために、陸軍歩兵師団が中心になって韓国に存在するわけです。そして在日米軍というのは何かといえば、それは、ロシア向けの三沢のF16部隊、これは冷戦後減少しております。これは別としますと、アジアあるいはまた太平洋地域に至りますシーレーンを守る第七艦隊、及び第三海兵師団という、これは極めて広範かつ機動力にあふれる活動をする部隊です。これがまさに日米安保体制から日本が最も利益を享受しているうちの一つになっているわけです。これを任務とする部隊を中核としているというところに本質的な問題があると私は認識しています。間違っていたら防衛庁長官、後で訂正していただきたいと思います。  このうち、なぜ海兵師団が沖縄に本拠を置いているのか。それは、まさに同師団を支援する関連の部隊が、朝鮮半島さらにまた大陸をにらんだ制空権を確保するための嘉手納のF15空軍部隊とともに沖縄に駐留していること、さらにまた、これらのための長年にわたって整備された兵たん上のインフラが存在していることが沖縄へ集中している本質なんじゃないのか、このように私は理解しますけれども、いかがですかり
  36. 久間章生

    ○久間国務大臣 委員がどういうふうに御理解されるかはともかくとしまして、この米軍の戦略に関すること、また我が国の国防政策等に関することについて、何が理由でどういうふうに展開しているか、それをつまびらかにするわけにはまいりませんので、どうかひとつ御理解賜りたいと思います。
  37. 東祥三

    ○東委員 それでは、日米安保体制から日本が何の利益を得ているんですか。日本から見たら何の利益を得ているんですか。それを説明することができないとするならば、それは防衛庁長官という、まさにその仕事をやられる資格がないんじゃないですか。
  38. 池田行彦

    池田国務大臣 条約の意義に関する点でございますから、私の方から御答弁申し上げます。  当然のことでございますけれども安保条約というのは、我が国自身の安全を守っていくということが第一の目的でございます。それと同時に、我が国自身の安全にも非常に密接な関係のある極東地域の平和、安定を守っていくために米軍がその役割を果たしていく、そのために日本において基地提供する、そういう面がございます。それからまた、効果の面といたしまして、あるいは機能の面といたしまして、そのような日米安保体制のもとで日本が、あるいは極東地域の安定への努力がなされているということが、さらに広くアジア・太平洋全域の安定化要因としてその役割を果たしていく、そういう面があると思います。  そういった目的あるいは期待される機能というものを確保するために、条約の当事者でございます日本日本として、自衛隊も整備し、また米軍基地提供するというような責務を果たしておるわけでございますし、米国は米国として、日本から提供された基地を使い、日本の安全のため、また極東地域の平和のために役割を果たしていく、こういうふうになっておるわけでございます。  そして、具体的にどういうふうな体制でそういうふうな役割を果たしていくかという点は、第一義的にはそれぞれの条約の締結の当事者である日本あるいは米国がまず考えていく、こういうことだと思います。そういった中でいろいろな国際情勢、その中には、先ほど委員の御指摘になりましたこの近辺の諸国がどういうふうな軍事態勢をとっているかということも含まれるわけでございますが、そういうことをいろいろ勘案しながら、米側として一定の軍事態勢、一定のレベルとそして兵力構成というものをもとにした備えをしているんだというふうに私は認識しております。  そして、先ほど委員が御指摘になりましたシーレーンの関係であるとか、あるいはいろいろな兵種、空軍は空軍、海兵隊は海兵隊がこういう役割を持って、その間の相互関係がこういうふうになるという、委員の先ほどの御指摘といいましょうかお考えというものは、私もお聞きしておりまして同感できる部分が非常に少なくございません。ただ、先ほど申しましたように、それはそうではあるけれども、一義的には条約上の責任ある米側が考えることであり、そして、余り細部にわたりまして日本側から分析し、これはこうでございましようということを申し上げることは差し控えた方がいいのかなと考えている次第でございます。大筋においては、委員のおっしゃったことに私は異存はございません。
  39. 東祥三

    ○東委員 僕は、安全保障の問題だとかあるいは外交の問題に関して平場で議論するということの難しさ、よくわかっている人間の一人だというふうに思っております。  ただ、まさに外交あるいは安全保障の問題というのは、建前だけの議論をしていくと、その建前の議論がまさに本当のことなんじゃないのかというふうに思われてしまえば、それは、政府がやろうとすることと国民が考えていることとに大きなギャップが出てくるのではないのか。  まさに、戦後五十二年たって改めて歴史的な転換を迎えようとしているとき、さらにまた日米関係が大きく傷つけられているというふうに僕自身は理解いたしております。その信頼回復のために、また後から質問したいと思いますけれども総理が行かれるわけですが、ただ単に特措法が改正されたからといって、法案が通ったからといってよしとするものではなくて、まさに二十一世紀を志向して日本とアメリカとの関係がどういうふうになっていくのか、まさに戦略的な対話をしてくださらなければ、何のために行くのかということはさっぱりわからなくなってしまう。  そういう極めて重要な時期でありますから、日米安保体制というものが日本にとってどうして重要なのかということをわかりやすく国民に訴えていただかない限り、わかれわかれというふうに言ったとしても、日米安保体制が重要だというふうに言ったとしても、それは理解する方が無理なんじゃないのか。そういう意味で、抽象的な話であったとしても、より日本にとって何が日米安保体制から稗益される利益なのかということを常に政府の方から発信してもらっていない限り、これは全くおかしな法になっていってしまうんじゃないのか、そういう意味で言わさせていただいている次第でございます。  その上で、米国がこの地域の安定のためにみずからの部隊を展開することが重要であるとすれば、じゃ、このために日本が負うべき責任を明らかにし、また、より開かれた議論を通じて国民のコンセンサスを得た上で、そのための具体的な施策を講じていくべきであると私は考えます。我が国として負うべき責任と、そのための具体的な施策について政府は何を考えているのか、この点について説明願いたいと思います。
  40. 池田行彦

    池田国務大臣 まず、今の委員の御議論を聞いておりまして、私の先ほどの御答弁一つつけ加えなくちゃいけないと思いました。  米軍の今のプレゼンスがどうだこうだと言う前に、現在のアジアの情勢というものを考えますと、やはりヨーロッパのように、NATOのような地域的な実力を伴った安全保障の仕組みがないということを考えなくてはいけない。そうしますと、やはりこの地域の安全を考えるためには、いろいろなマルチのあるいはバイの安全保障面での対話は必要でございましょう。例えばARFなんという役割も必要でございましょう。しかし、根底のところではやはり実力を持った安全保障のための仕組みが必要なのでございます。  それを一体どういうふうに見るかといいますと、この地域では米国を一方の当事者とする二国間のいろいろな仕組みがございました。日米安保体制であるとか、米韓の関係であるとか、そういったものがやはりこれからの世界においても、少なくとも当面は実力を伴った安全保障装置の基盤になるのだ、こう思うわけでございます。  そういった意味で、やはりアメリカのプレゼンスが大切だ、ここのところを私はどうも大前提と思いまして、御答弁申し上げなかったところを補足させていただきたいと存ずる次第でございます。  そういった上で、さてそれでは、日本日米安保体制を大切だとするならば、我々として一体何をすべきかという点でございます。  それはまず、我が国自体が安定した状態にあることを確保するというのが基本でございましょう。そのためには、もちろん経済その他の面での、政治面でのこの国を安定するための施策、そして国民がこの国をみずから大切にし、守るに値するものだと思われる、そういった状況をつくるというのも肝心でございましょう。  しかし、安保条約上でいいますと、みずから適正な自衛の力を持つということで、やはりこれからの国際情勢の中にあっても自衛隊をきちっと維持することは大切だと思います。それと同時に、この日本の国を守るために依然として米国の力も期待しておるということ、あるいは、先ほどの極東地域あるいはアジア・太平洋安定ということは日本のためにも大切なのでございますが、その面で米国は役割を果たしていくために安保条約に基づいて日本基地を置き、そして活動する、こういうことでございますから、日本としてはそういった米国の活動が円滑に行われるような状況をつくるというのがやはり条約上の責務でございます。  その最たるものが、今文字どおり御審議されておる特措法にもかかわります、我が国としての施設区域提供でございましょう。また、提供された施設区域が円滑に運用されるために、防衛施設庁を初めとして、また地域の地方公共団体や住民の方々の御協力もちょうだいしながらいろいろなことをやっております。予算面でもいろいろな措置をしているのは御承知のとおりでございます。そういうことでございます。  それからさらに、日本を守る場合には自衛隊と米軍との間で共同対処というものもございますから、そういうふうなことがきちっとできるような体制を整備しなくてはいけない。さらに、極東の安全、平和を守るために米軍が行動するために、これは共同対処はできないわけでございます、自衛隊は動けないわけでございますけれども、しかし、米軍が活動する上において必要なことを、単なる基地提供以外に日本ができること、また出すべきことがあるのではないか。そういうことをこれまでも考えてはおりましたけれども、どうも必ずしも十分でなかったのではないかということで、ガイドラインの問題も含めまして、そういった日本が協力すべきことについて今研究を深めておる、こういうふうに御理解賜りたいと存じます。
  41. 東祥三

    ○東委員 西村議員が言及されました、アメリカ海兵隊に助けられてアルバニアから脱出した日本人記者の経験談が四月二日の毎日に載っておりました。これを読んで思うところが多々ありました。海兵隊員というのはこのような市民救出のための訓練を積んでいると私は聞いております。混乱の中で、実力をもって市民の安全を確保しながら、飛行場に殺到する各国の市民を区分して、また危険物を携帯しているかどうかをちゃんと素早く確認するのは無論のこと、彼らの健康状態を気遣ってパニックを防止する、このようなことを実にスマートにやってのけるというふうに聞いております。  紛争や自然災害で市民の救出が必要になるような事態アジア・太平洋地域で起きたら、沖縄に駐留している海兵隊が大きな役割を果たすはずである、このように私は思っています。このような役割は、日本のみならずアジア・太平洋諸国の国民に多大な安心感を与えているのではないのか。こういった海兵隊を初めとする在日米軍の貢献、この貢献に対して政府はどのように評価しているのでしょうか。
  42. 池田行彦

    池田国務大臣 御指摘のとおりでございまして、在日米軍も、また米軍全体もそうでございますけれども、狭い意味での安全保障、そういった役割だけではなくて、より広い意味での安全保障、その中にはPKO活動であるとか、あるいはいろいろな緊急事態においての対応もあるわけでございますが、そういった面でも大きな力を持っておりますし、現に世界じゅういろいろなところでそういった役割を果たしております。  それは、我が自衛隊がこれまで国内でいろいろ災害の場面でその役割を果たし、あるいは最近はPKOその他の点で海外においても活動していると同じことであり、また米軍の場合は自衛隊以上に国際的な活動については経験もあるというふうに我々は理解しております。そして、そういった面につきましては、私どもも高く評価しているところでございます。  御承知のとおり、例えば昨年締結いたしましたいわゆるACSAの協定につきましても、いろいろな御批判がございます。日本の場合はいわゆる有事に対応できるようになっていないじゃないかというような御批判がございますけれども、それはそれといたしまして、私どもはあのACSAの協定の中でも、いわゆる日米共同訓練だけではなくて、PKO活動であるとか、そういった平和目的に基づく、人道目的に基づくいろいろな活動を米軍があるいは我が自衛隊がいたしますときに、必要な物資あるいはサービスの相互融通というか提供もできる、これも対象に入れているということにごらんいただけるように、政府としても、米軍のそういった面での活動も評価し、またそれに日本として出し得る、またなすべき協力はしようということは考えているところでございます。  これはこれからの、またいわゆるガイドライン等の日米協力の研究の中でも、そういった面についてもさらなる改善を図るということも十分考えられると私は思っております。
  43. 東祥三

    ○東委員 最近の例といいますか、阪神・淡路大震災のときにも大変な米軍からの支援を受けている。あるときにその話をさせていただく機会がありました。全くそういうことが報道されていないじゃないのということを言われておりました。  改めて、どのような支援を受けているのかということで調べさせていただきましたけれども、あの阪神・淡路大震災のときに、すぐ米軍が反応してくれている。毛布あるいは飲料水。毛布に当たっては五万七千四百六十枚。本来ならば日本政府が、地震大国ですから、こういうことを用意しておかなくてはいけないわけですけれども、その要請をする先というのは在日の米軍に限られてしまった。さらにまた、飲料水に当たっても、二十三万二千八百リットルというまさに巨大な水も、すぐ、即座に送ってくれている。さらにまた、巨大なテント、テントも自衛隊員ではこれを敷設させることができない、沖縄の海兵隊員を数十名呼んで、そしてつくり上げている。  そういうことを、僕はやはり政府が、あの阪神・淡路大震災のときに世界の大半の、過半数の国々から真心の支援を受けているわけですけれども、そういう中で、とりわけ米軍からも多大なる支援を受けているんだということを克明に説明していく。やはり、ただ単に軍事面のみならず、いろいろな面において恩恵をこうむっているというメッセージを僕は送るべきなんだろうというふうに思っております。  そこで、本当に時間がたつのが早くてつらいのですけれども、戦後、先進諸国の中で経済的に最も成功した国が日本である。その結果として第二の経済大国になっているわけでございますが、同時に、世界各地で、約七十万人の日本人が海外で生活されている、海外に居住している。さらにまた、重複を入れると年間一千四百万人の日本人が海外旅行をしている。また、日本のタンカーやあるいはまた輸送船が世界各地と日本を結んでいる。このような活動によって支えられている日本は、完全に世界の平和と安定に依存していると言っても過言ではないと思う。  このような状況の中で、在外邦人の安全を確保するためにも、さらにまた米軍に期待するところは極めて大きいのではないのか。  さらにまた一方、独立国である我が国がみずから措置すべきことも多いと思います。米軍の貢献に対して我が国としてこたえていくために何をなすべきなのか、大いに私たちは考えを深めなければならないと思いますが、政府として今日までお考えになっていること、この点についてどのようにお考えになっているか聞かせていただきたいと思います。
  44. 池田行彦

    池田国務大臣 委員おっしゃいますとおり、もともと我が国は国際社会との相互依存関係の中にあって初めて存立が可能な国でございますが、とりわけ今日のように国際社会全体としてのグローバル化が進展する中、そうしてまた今御指摘になりましたように、我が国のいろいろな企業あるいは日本人の国際的な活動も全世界に非常に広がっている時代でございますので、従来以上にそういった邦人の生命であるとか財産、あるいはその活動が安全に行われるような状況を確保するということは、我が国政治あるいは外交にとりましても大きな課題になってきているところでございます。  そのために、私どもは、全体として世界の各国と良好な関係を取り結ぶということ、そうしてまた世界の各地がなるべく安定した状態に維持されること、そういったことを目指し、我が国として果たせる役割をいろいろな手法を用いながら、そういう外交努力あるいは経済協力のようなもの、あるいは文化面のいろいろな提携、いろいろなものを使いながら、そういったところでも意を用いているところでございます。  しかし、そういった一般的な努力だけではなくて、何か緊急な事態が起きたときにどういうふうに対応していくか、こういった面でも私どもそれなりにいろいろな努力はしておりますけれども、しかし決してそれが十分でないということは、現にそういった役割を果たしていくべき外務省の拠点であるペルーの外交施設が今ああいった占拠状態にあり、大勢の方々が人質状態に置かれているということにもあらわれている。これは残念なことでございますけれども、事実でございます。そういったことも考えながら、我々日本自身としてのいろいろな対処の能力、方法についてもこれから考えなくてはいけません。  緊急事態が起きたときに、例えば邦人を中心とした方々をどういうふうに安全な地域に避難させるか、そのためにどういうふうな仕組みとまたその能力、輸送手段なんかも含めて、そういうことを整備していくかということが肝心でございますが、それと同時に、委員も御指摘になりましたように、米国を初めといたしまして、国際的に日本と同様に、あるいはそれ以上に幅広く活動を展開しており、そうしてまた、長い伝統も踏まえいろいろ緊急事態への対応の手段も持っている国の力をかりなくてはいけないことが多々あるのも、最近では先般のアルバニアの事態であらわれた、委員の御指摘のとおりでございます。  そういった面でも、これからそういった国際的な協力のシステム、これは二国間だけじゃなくて、国際機関にもいろいろなものがございます。そういったところの協力も強化してまいりたいと考える次第でございます。     〔委員長退席、甘利委員長代理着席〕
  45. 久間章生

    ○久間国務大臣 先ほど委員が御指摘になりましたように、日米安保条約に基づく米軍は、いろいろな意味で日本として頼りになるわけでございます。そういうためにも、施設区域提供はもちろんでございますけれども、いざ米軍が動くときに我々としてどこまで協力できるか、これらについてもやはりできるだけ詰めて、できるものについてはそれをサポートしなければなりませんし、施設区域提供だけではなくて、現在行われておりますように、ホスト・ネーション・サポートとして、そういう駐留軍経費の一部等も負担しなければならないということで今やっているわけでございます。  そういうことで、やはり米軍我が国にとって必要であるならば、それにこたえるだけのことは我々としてもやっていかなければならない、そういう気持ちについて全く委員と同じ考えでございます。
  46. 東祥三

    ○東委員 ともすれば、戦後五十二年、乱暴な言い方をしますと、経済というのは常に発展する、さらにまた経済発展を持続しさえしていれば安全保障に代替することができるのではないのか、そのような考え方が全くなかったとは言い切れないのだろうと私は思います。  現在でも、世界で百八十五カ国、そのうちの約七十から八十カ国においては、何らかの内乱なりそういうものが起こっているという現実がある。また、二千三百万人にも上る難民が、難民というのは戦争の犠牲者ですから、それが世界にあふれているという現実、そういう中で、戦後まさに奇跡とも言われる形で日本は平和を守ってきたわけです。  平和主義を徹底的に追求していけばいくほど、ある意味で、世界で起こっている問題に対して、平和を私たちが志向する以上、同じように平和を他の国においてももたらしたいと思うのは当然のことなんだろう、それがまさに平和主義の行き着くところなんだろうと思いますが、ともすればこれは教育の面においても、一国平和主義、これを助長するような形での教育がなされてきてしまっているのではないのか。  本日、文部大臣にわざわざ来ていただいております。義務教育における日米安保体制の重要性、あるいはまた日本が国際社会においてどのような位置づけになっているのか、どのように日本の安全が守られているのか、どのような日本の外交の基軸が存在するのか、こういった点についても、まさに義務教育の段階からそれなりにちゃんとした教育が施されていなければならないのじゃないか。この点について、文部大臣、いかがでしょうか。
  47. 小杉隆

    ○小杉国務大臣 今御指摘の問題につきましては、学校教育におきましても、憲法や教育基本法に基づいて行っております。小学校、中学校の社会科、高等学校の公民科におきまして、日米安全保障条約、そして我が国の安全と防衛について教えることとしております。  さらに具体的に申し上げますと、例えば中学校の社会科におきましては、まず世界各国が自分の国の防衛のためにいかに努力を払っているかということや、我が国の平和や安全、防衛というものを、そしてひいてはアジア、世界の平和をどう維持していくべきかについて考えさせることとしております。こうした点について、各学校においてしっかり教育をしてくれることを期待をしております。
  48. 東祥三

    ○東委員 総理、何かありますか、コメント。
  49. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私、今文部大臣からお答えをいたしましたことに特に補足をすることもありません。しかし、やはり国の安全、そのために国民自身が負うべき責任、こうしたものは私は教育の中できちんと教えられてしかるべきものだと思います。  ちょうど敗戦が私は小学校二年でありまして、その後非常に教科書がしょっちゅう変わる、教えられる内容が変わるという時期に小学校から中学校を過ごしました。それだけに、自分のそのころを振り返ってみましても、やはり自分の国は自分できちんと守るのが本来であり、そしてその上で、他民族に向ける武器を持ってはいかぬ、私は、そうしたものは子供のときからきちんと教育の中に取り込んで教えていくというのは、全く実は議員と同感だったものですから、後ろで賛成と言っておりました。
  50. 東祥三

    ○東委員 今、総理の、安全保障のために国家国民として負うべき義務という次の議題に入っていきたい。時間が追っているので、総理が心配してくれたのかなというふうに思いますが。  まさにもうこの委員会において、沖縄が払ってきた負担といいますか、別の言葉で言えば日本国の安全のために沖縄が払ってきたこの犠牲、それに対しては、もう筆舌に尽くしがたいものがあると思います。私も何度か沖縄に行かせていただき、またひめゆりの塔にも何度も行かせていただき、まさに日本の平和の原点はこの沖縄にある、このように思っているわけでございます。  また、あの有名な大田少将が「沖縄県民斯ク戦ヘリ」「後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」との電報を発して玉砕したことは広く知られておるわけでございますが、さきの大戦で、また、戦後も終わっていないという参考人からのお話もありましたが、沖縄県民が払ったこの犠牲というものは本当に大変なものがある、このように思わざるを得ません。  在日米軍の駐留が、日本のため、また地域のために重要であればあるほど、その負担は国民が広く分かち合っていかなければならない。今後長期にわたって日米安保体制を維持するためには、負担をより平等にすることが健全であると全委員もここで述べているわけでございます。また、総理も言っているわけでございます。防衛庁長官も言われている。外務大臣も言われている。  国民が広く平和と安全のための義務を負っていくために、言いかえれば、沖縄の負担を減らして、そしてこの負担を沖縄以外の地域が負っていくために、政府はどのような施策を講じているのか、またどのような施策を講じていかなければならないのか。これはまさに党派を超えて考えていかなければならない問題ですが、まさに現在政府がどのようにお考えになっているのか、その点について御説明願いたいと思います。
  51. 久間章生

    ○久間国務大臣 沖縄基地をできるだけ整理、統合、縮小しなければならないということから、昨年十二月にあのような形でSACOの最終報告を出させていただきました。これが十分でない、最善のものでないということはわかっておりますけれども、やはりそういう形で、見える形でとにかく整理、統合、縮小を図っていこうということで踏み出したわけでございます。  今私どもに与えられました責務としては、まず、決めたこのSACOの最終報告をとにかく実現していくということに全力を挙げているわけでございまして、その一環として、本土の方で受け持ってもらう一〇四号線の射撃訓練、こういうものについては、本土で受け持ってもらうように今一生懸命当たっておりますし、また岩国の基地へ移すものについては、移してもらうということで、これは一応了解が得られているわけでございます。  そういうふうに、本土の方に移せるようなものについてはこれから先もまた検討はしてまいりますけれども、しかしながら、ともかく一応の報告が出ましたSACOの最終報告、これを実現することによって、目に見える形で返還が先へ進んだという実感を沖縄の人に持ってもらえるのじゃないか、そういう思いで今一生懸命取り組んでおるところでございます。
  52. 東祥三

    ○東委員 また、防衛庁長官、今当面する、何とかしてでき得るのではないのかという一つの問題として、県道一〇四号線沿いの、この早期中止並びにまたその移転の件ですけれども、この点については早期に実現させなくてはいけない。この現状についてはどのような状況になっておりますでしょうか。
  53. 久間章生

    ○久間国務大臣 これは村山内閣のときに決められたわけでございますけれども、発表されました途端に全国の各地で反対だというような、そういうことが地方自治体あるいは議会等でも行われたわけでございます。新聞等も、そういうことについて反対ばかり非常に目につくように報道があったわけでございます。  しかしながら、この中身について、沖縄人たちが今までずっと戦後こういうことで受けてきたのを、わずか年間で三十五日間、それも五カ所に分けて、一カ所では十日以内、しかも、行く人たちも三百人の隊員だ。そういうことなのだからぜひ理解してくださいよということで、うちの職員たちが熱心に各自治体あるいはまた地元の人たちと話を詰めてまいりまして、御承知のとおり矢日別等では鈴木委員等も一生懸命にやっていただきまして、まあそれならやはり引き受けなければしようがないのじゃないか、賛成とは言えぬけれども、やむを得ぬなとかいうような空気にはかなりのところでなってきておりまして、私は大変ありがたいことだと思っております。  しかしながら、まだまだ詰め切れておりませんので、この特措法の問題が片づきましたら、今度はその問題について一生懸命取り組んで、できるだけ早く、とにかく平成九年度にもうなったわけでございますから、平成九年度では沖縄ではなくて本土の方でこれはできるようにやりたいというふうなことで今一生懸命努力しているところでございますので、どうかもうしばらく待っていただきたいと思うわけでございます。
  54. 東祥三

    ○東委員 沖縄県に基地が集中してしまっている、それを何とかしなければならない。これも全国民、また全議員反対する人がいないほど同意が得られている問題だと思うのですが、問題は、それをどのように具体化していくのかということでスタック状況になってしまっている。ここにも、日本国がある意味で抱えている法的な欠落の問題があるのではないのか。  つまり、沖縄基地が集中しているその問題というのは、これはまさに戦後における歴史的経緯を踏まえなければならない。しかし、結果としてあれだけ基地が集中してしまっている。そこには、人家がまさにその近隣にあり、一たび何か事故があれば大変な惨事になってしまう。現実の問題として、そういう状況になっている。  ある意味で、日本政府にとってみれば、それは作為的な問題ではなくて、歴史の経過としてそういうふうになってしまっているというエクスキューズがあるかもわかりませんが、それを一たび何とかして軽減させようとして、日本のまさに本土の方にその基地を移転しようとすれば、そこには人が余りいなかったとしても、しかしその地域から反対意見が出てくれば、これまたその地域の声をおもんばからなければならないということで、そのプランが途絶してしまう。  一方においては、できてしまっている、多くの人々が本当に苦しんでいる。他方において、それを移転させようとしたとしても、これは少数の人間から出たとしても、そこで反対が出ればそこでもって途絶してしまう。これをどのようにブレークスルーしていったらいいのかというのが、国の一つの制度としてつくり上げていかなければならない重要な問題だ、このように思うわけです。  総理が一番初めに言われていたとおり、それはただ単に強権的な部分ということではなくて、国のあり方として日本安全保障というものを考えていく上で、これはまさに地方分権推進委員会においての議論に任せるということではなくて、日本の国のあり方としてどうしていったらいいのかということを、本当に政治家がすべての魂を投げ込んでつくり上げていかなければならない問題なのだろう、そのように思えてなりません。  この点について、総理、いかがお考えですか。
  55. 久間章生

    ○久間国務大臣 総理がお答えになる前に、ちょっと一言だけ私の方から申し上げさせていただきます。  法律があっても、地元の方々の御理解が得られないとなかなかやれないという、こういう現実についてはぜひ御理解しておいていただきたいと思うのです。国の制度としてつくって、あるいは地方の自治体に任せなくて国がやれるような制度をつくったとしましても、今度の場合もそうでございますけれども、一〇四にしても、その経験から申しますと、やはり地方自治体の皆さん方の御協力がないとなかなか先へ進まない、ここのところはあるわけでございますので、国が制度としてつくって、それで、それも必要かもしれませんけれども、法律の制度をつくるということではなくて、やはりその辺については、私どももそういうことについていろいろと研究いたしますけれども、実態面としてはやはり御理解を得ながら、要するに国民、政治家もそうでございますけれども、皆さん方の、要するに沖縄のことを我々も一緒になって背負っていこうというような、みんながそういう理解を得られぬと、なかなか現実問題としては、法律をつくる、制度をつくったからといって、さあやれという形でいくものでないという点もあることは、実務を担当している者としてぜひ御理解賜りたいと思うわけでございます。
  56. 東祥三

    ○東委員 防衛庁長官が言われているのはよくわかるのです。  ただ、制度をつくっていこうとするその努力過程の中に、まさに今直面しているそういう問題を克服していける土壌が養われてくるのではないのか。そういう制度がないわけですから、したがって、それを、ないところにすぐ新しい制度を持ってきて、さあこれでやるぞ、そういうふうにはいかないというのは民主主義の社会ですから当たり前なわけですね。ただ、そういう発想を持たない限り、今の現状がそのままずるずるいってしまう。  そういう視点から考えますと、まさに教育の問題でもそうでしょうし、議員が自分の地元に帰ったときに日米安保体制の重要性がどれだけ語られているのか、こういう問題もありますし、有権者がそういう問題に対してどれだけの関心があるかということ、まさに日本の土壌そのものが、日本のあり方そのものが問われている問題として噴出してきていることなのではないのか。  難しいから、法律をつくったからといってすぐできない。それはだれでもわかることであって、そういう制度がないのだから、その制度をどのようにつくり上げていくかということで、まさに最高責任者の方々が腐心していただいて頑張ってくれない限り、日本に対しての将来というのは希望が持てないことになってしまうのではないのか、このように思うわけでございます。  総理、いかがですか。
  57. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ですから、私は、繰り返してお答えを申し上げておりますように、条約上の義務を履行することは基本的に国のなすべきことである、これは繰り返しお答えを申し上げております。  そして、わざわざ、昨年予算委員会において山口那津男議員の御質問にお答えをしてというところから申し上げましたのは、その時点では、内閣として、総理大臣として諮問をいたしております地方分権推進委員会がまだ議論をし、方向を出しておられないときでありましたから、私は諮問をした立場としてもその制約を受けませんでした。  昨年の十二月の第一次勧告の中に、この問題はきちんと実は分権委としても議論をしておりますということを述べられた上で、検討中というのが、分権委から届けられた私に対する勧告の内容であります。当然ながら、それに私は拘束される部分を持っているわけでありまして、先ほど来、基本的に条約上の義務を履行する責任は国ということを、私は一回も否定したことはありません。  ただ、その上で、私は久間長官とはちょっと違った立場から、仕組みだけで物が動かないというもう一つケースを申し上げなければなりませんのは、成田空港をめぐる情勢です。御承知のように、法律上の仕組みは、収用委員会から建設大臣に問題を上げていくという手段がとれるものであります。ところが、収用委員会委員が危険の中で全員が辞任をされてしまい、後の収用委員が指名をされないという事態になり、結果として案件は建設省に送達されないという事態が現実に発生をいたしました。  仕組みだけではない。やはり私は、こうした問題を考えていきますときに、仕組み万能で議論をしていくと間違える危険性があるのではないだろうか。そして、その地方の実態を一番よく知っている方々の意見をどの部分で反映させるかを工夫しておく必要はあるのではないだろうか、そのように思います。
  58. 東祥三

    ○東委員 もう時間がなくなってきてしまったので、次の議題に入らせていただきます。日米防衛協力ガイドラインです。  これは、まさにアメリカはこういう次元で僕は考えているのだろうと思うのです。日米安保体制を、先ほどお言葉にもありましたけれども、いかに円滑に運用していけるかどうか。  幾つかのレベルがあるのだろうと思うのです。自衛隊及び米国の海軍間におけるこの議論というのは、それぞれが非常にプロフェッショナルですから、そういう意味では対話が極めてしやすい。お互い言っていることもよくわかる。いわゆる同一言語で議論することができる。他方、官僚レベルにおいての議論がこれまた進んでいる。しかし、一番最後の、三番目の一番難しい問題というのが、まさに国と国、国民と国民。そこには政治家が介在してくるわけですけれども、ここに今ショートが起こっているのだろうというふうに思います。なぜならば、既にアメリカの新聞にも寄稿させていただいていることでございますけれども日本のアプローチの仕方と、それから米国のアプローチの仕方が基本的に異なっている。  それはなぜかというと、日本の場合というのは、日米安保体制を運用していくに当たって、個々具体的な問題に関して、これはできる、あれはできる、そういう議論というのは平場のところまで落ちてきません。したがって、それを丸くするために、憲法の範囲内でできることならば何でもしますよと。ところが、アメリカ側が言ってきていることというのは、すべて具体的なオペレーションに関して、これをやれますか、やれませんか、こういう議論になっているわけですね。  そうしますと、その辺の議論も踏まえた上で、十七問用意してきているのですけれども、十五分以内でできるかどうかということですが、まず本質的な問題として、この日米防衛協力ガイドラインの性格はどういうふうになるのか。性格といいますと、日米防衛協力ガイドラインが協定という形になるのか、防衛庁長官あるいは外務大臣が署名して出すのか、総理大臣が署名するという形になるのか、どういう形になりますか。     〔甘利委員長代理退席、委員長着席〕
  59. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 現在、日米防衛協力に対するガイドラインというのがあるわけでございますが、形式としてはこれと同じものになろうかと考えております。  つまり、協定とか条約とか、そういうことではございませんで、防衛協力に関する日米間の当局の話し合い、そして、現在新しい防衛協力小委員会というのを日米間につくりまして、SDCと称しておりますが、そこで最終的にまとめたものを日米安全保障協議委員会あるいは両国の関係する大臣に上げる、こういうまとめになろうかと思っております。
  60. 東祥三

    ○東委員 といいますと、予定では九月に最終報告を出すということになっておりますが、今のお話だとすると従来どおりのガイドラインになってしまうということは、日米間で政府間協定の形にすべきなのではないのかと私は思っているのですけれども、その点についてはいかがですか。
  61. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 若干説明不足だったかとも思いますけれども、今委員御質問の中で、いわば日米共同作戦といったような運用面でのポイントが、例えば米側から見たら非常に重要な問題として指摘されているのではないかというお話がございました。  その点は我々としても非常に重要な要素であると考えておりますので、ガイドラインができた後の日米間の具体的な、例えば共同作戦計画のためのいろいろな検討ですとか、あるいは共同対応のための検討、これはオペレーションにかかわってくる問題であろうかと思いますけれども、こういったものが有効に機能するようなスキームをつくりたいということは、日米間でも現在議論しております。
  62. 東祥三

    ○東委員 もっと具体的に申しますと、このガイドラインの内容について国会審議できるようになるのですか、それとも国会審議できないのですか。
  63. 久間章生

    ○久間国務大臣 条約とか、それに基づく取り決め等でございませんので、いわゆる国会で通していただくとかそういうことではございませんで、政府間の取り決めになるわけでございますが、今までも予算委員会等でも申しておりますように、これはかなりその経過、中身についてオープンにしていかなきゃなりませんので、国会に対してその中間的な取りまとめ等を、一応こういう方向でやっておりますというようなことを報告することによって、委員皆様方のいろいろな御意見等も見ながら、最終的な九月の取り決めまでの間にそういう議論をやはり反映させていってやる必要がある。  そういうことで、できるだけ早く中間的な取りまとめをして、いろいろな、国会だけじゃなくて国民にも、あるいはまた各国にも、どういうことをやっているかというのを見せながら、示しながら、そしてやっていくべきじゃないかというふうに考えておるわけでございまして、最終的に国会でそれを決めていただくということにはならないと思います。従来のガイドラインとそれは同じだと思います。
  64. 東祥三

    ○東委員 今回のガイドラインの見直しというのは、今後の日米安保体制というものを考えていく上で極めて重要なものになると私は理解しているわけでございます。  その意味で、私は、ぜひとも政府間協定、つまり国会議論すべきなのではないのか、このようにまず主張をいたしておきます。なぜなのかということはこれから議論させていただきたいと思うのですけれども。  まず、米側は、日本に対して、日本のあらゆる権限、つまり有事の際、あらゆる権限を使用させるよう求めてきていると聞いております。例えば、飛行場を米軍使用させる場合、基地外における輸送だとか、あるいは物資の調達だとか、資材の補給源、こういったものはだれが一体やるのか、こういう問題が出てくると思うのです。今、防衛庁と外務省だけで議論している問題ではなくて、それは運輸省にもかかわってくる問題になる。さらにまた、地方自治体や民間人の協力も必要になってくる。  じゃ、そうした場合、法的な根拠というのはどこにあるのか。当然、こういうことを具体的にやろうとするならば、国内法の種々の改正というものが必要になってくるのではないのか。国内法を一切いじらないで、そしてガイドラインの見直しをやるということであるならば、それは国会マターでなくていいのかわかりませんが、こういう法律がかかわってくる問題なんですから、当然、国会審議議論して、そしていわゆる拘束力のある、つまりアメリカ側から見るならば、このガイドラインというのは日本国の国民によってサポートされているという形でいかなければ、円滑な運用というのはできなくなるのではないのか、このように思いますが、いかがですか。
  65. 池田行彦

    池田国務大臣 一般的に申しまして、米軍の行動あるいは米国と日本との協力関係というふうな国際法体系、あるいは国内法で律するべきかという点をまず申し上げますと、まず日米安保条約というものがございまして、それからそのもとに地位協定というのがあるわけでございますね。それで一般的には律せられるのだと思います。ただ、それを具体的に国内法の方でつかまえまして、特に法律をつくるべき場合には、それぞれ国内的な立法手当てが行われているケースもあると思います。  さて、今回のガイドラインの話でございます。  ガイドラインというのは、今回決して初めてできるものじゃございませんで、先ほど防衛庁長官からも御答弁ございましたように、既にございます。そういったものを基本にいたしまして、今回、時代の変化に合うように見直しをする。それから、いわゆる日本の周辺地域に起きたいろいろな事態に対する協力については、どうもこれまでのガイドラインでは十分ではなかったので、その部分は大きく変わるというか、むしろきちんと整備するという作業になっておるわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても、ガイドラインそのものは、これまでもあったものをここで見直すということになっておりますので、それを直接政府間協定あるいは法律の形で国会にお諮りするというのは、性格上ちょっとなじまないんじゃないかと思います。  しかしながら、こういう観点がございます。このガイドラインだけではなくて、ほかにもいろいろ日米間の協力のあり方について協議をする、こういうふうに申しておりますが、そういった中で、いろいろな事態が出てまいりまして、そして、物によりましてはいろいろな角度から考えなくちゃいかぬ、それは法的な枠組みとしても。場合によっては、あるいは政府間の行政協定みたいになるのか、あるいはそれが国会に諮ることが適切なのかどうなのかということも検討しなくちゃいかぬようなケースが出るかもしれませんし、あるいは国内法的な何らかの手当てを要するものが出てくる可能性は、これは私も排除いたしません。そういったものにつきましては、その都度その都度、その事柄、その性格に応じまして考え、また国会にお諮りすることもあろうと思います。  ただ、ガイドラインそのものにつきましては、先ほど防衛庁長官からも御答弁のあったような性格でございますので、防衛庁長官答弁のような形で国会にも我々の考えあるいは作業の状況を御報告申し上げ、いろいろ御議論をちょうだいするということになろうかと存ずる次第でございます。
  66. 東祥三

    ○東委員 ガイドラインの見直しに関して、ミニマムな見直しだけで済むとするならば、僕はこういうことを申し上げていません。  ある意味で、先ほど申し上げたような国内法でどういうふうになっているのかということにもかかわる問題、さらにまた、これから内閣法制局長官に五分で全部答えていただきたいというふうに思っている問題等も入ってくるのではないか。まさに日本安全保障にとって極めて重要な問題がこのガイドラインの中に含まれてくる。  そういうことであるならば、今もう政府間協定だとかそういうふうにしないんだとか、あるいは形式の面において答えを出さないで、少なくともまず国会審議できるというような形はとっていただきたい、このように思うんですけれども、イエスかノーかでお願いします。
  67. 池田行彦

    池田国務大臣 したがいまして、実質的に国会でもいろいろお考えをお互いにお出しいただき、討議をする、こういうことだと思います。  それこそ、法律論的に国会の議決を経るかどうかという議論と、中身として実質的にいろいろその審議をするかというのは別だと思いますので、実質はしっかりやりたいと思います。
  68. 東祥三

    ○東委員 本会議が迫っているそうで、協力せよという要請がありまして、内閣法制局長官、これでやめます。  日本の領域外で米軍への情報提供というのは、憲法上できるのかできないのか。日本の領域外で米軍の要請を受けて日本が掃海活動を行う場合の法的解釈は、憲法上どうなるのか。日本の領域外で米軍のために補給や輸送を行う場合はどうか。海上自衛隊が予算要求している大型輸送船で邦人や避難民あるいは米軍家族を運ぶ場合、これを護衛するため、海上自衛隊の艦艇が米海軍と共同活動することが考えられるが、法的には認められるのかどうなのか。この三点、お願いします。
  69. 野中広務

    野中委員長 東君、ちょっと一分か二分では答えられぬというのですが、文書で提出させていただいてよろしゅうございますか。
  70. 東祥三

    ○東委員 はい。じゃ、文書でよろしくお願いします。
  71. 野中広務

    野中委員長 これにて東君の質疑終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  72. 野中広務

    野中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐藤茂樹君。
  73. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 新進党の佐藤茂樹でございます。  総理委員会、本会議と、食事もとられる間もなく、大変御苦労さまでございます。  私は、今回政府が提出された特措法の改正案というのは、国による不法占拠状態を回避するための必要最小限の措置として提出されたということなんですけれども沖縄問題の本質ということを考えましたときに、目の前の五月十四日をどうしのぐかという、そういう小手先また場当たり的な手法にしか思えてならないわけでございます。このまま泥縄的な法改正だけで終わらせてしまうと、沖縄問題の何ら本質的な解決にならないのではないか、そのように懸念をいたしております。  そういう意味からも、総理と我が党の小沢党首が交わされた三項目の合意事項を本当に具体的に実施されていく、そういう努力を我々としてもしていかなければならないであろうし、また、今回のこういう時点に至った村山政権以来の政府の対応の甘さというものを繰り返してはならない、そういうことをまず前提に申し上げまして、ただ残された問題に対して今後どういうように政府として取り組まれていくのかということを中心にお尋ねをしたいと思います。  まず、その第一は、何といいましても、沖縄の皆さんからもいろんな声が上がってきております。私もこの一年間で、数は少ないですけれども、四回ほど沖縄の方に行かせていただきました。そして、戦後五十二年間にわたる筆舌に尽くしがたい沖縄の負担、苦しみというものを行くたびに聞かされてきたものでございます。そして、今沖縄人たちが言われていることは、この特措法の改正によって逆に基地の固定化につながるのではないか。そういう懸念沖縄の皆さんが持っておられることを、何としても我々政治家として解消していかなければいけないであろう。  そういう意味から、まず最初に総理に総括的にお聞きをしたいのですけれども沖縄を二十一世紀まで今と同じ状況のままに放置していいのかどうか、また、総理としてどういうことを基地の整理縮小のためにこれからなさろうと考えておられるのか。まず、総括的にお尋ねをしたいと思います。
  74. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 二十一世紀までこのまま放置していいか、私は、だれ一人このまま放置していいとお答えになる方はないと思います。そして、繰り返し本院でも御答弁申し上げてきましたが、昭和四十年に初めて沖縄に参りましてから、私は随分沖縄の皆さんとはさまざまな形でかかわりを持ってきました。そして、今逆に、それでも私が知らないことがこんなにあったか、本院のこの御論議の中からでもしばしばそう思います。それだけに、恐らくまだ我々がとらえ切れていない沖縄の痛み、苦しみというもの、しかも過去の歴史の上に築かれたものはあるであろうと思います。  ですから、私は、これですべてを解決できるというほどうぬぼれたことを、とてもお答えはできません。同時に、沖縄県における基地の問題が、二十一世紀早々に、全部県民の方々が納得のいくような形でこの問題を終結できると私は考えておりません。  なぜなら、今私どもは、この東西冷戦の終結した後の国際情勢の中で、むしろ地域的な、あるいは民族的な、あるいは宗教的な紛争というものが拡散してしまっている、東西二大陣営時代以上に核兵器というものも拡散しているんじゃないかと言われる、そんな時代に生きております。そして、我が国安全保障というものを考えます場合、日米安全保障条約というものを抜きにして、我々は到底これを考えることはできません。そして、もしそういう事態を想定するのであれば、我が国は極めて多くの国防費を投入しなければ我が国の安全を確保できないという状態に至る危険性も多く存在するわけであります。そして、その日米安全保障条約というものを我々が大切にしていこうとする限りにおいて、我々は、その条約上の義務としての基地施設提供という責任を果たしていかなければなりません。  現実の問題として、本当に国土のごくわずかの面積でしかない沖縄県にすべての基地のうちの七五%が集中しているという現状、そして、それに対して今日まで我々が十分思いをはせてこなかったという点について申しわけない思いは本当にいたしますけれども、それを少しでも改善しようとして、私どもはSACOの最終報告に立ち至りました。もちろん、これで県民が納得されると思っておるわけではありません。しかし、少なくとも、日米政府が全力を尽くして議論し、まとめ上げてきたこのSACOの最終報告というもの、これすら実行できないのでは、その次のステップというものはなかなか出てくるものではありません。ですから、私どもは本当にこのSACOの最終報告の実現に向けて全力を傾注させていただきたいと願っております。  同時に、これとは切り離した形の問題でありますけれども、現実に、本土復帰がおくれ、その後の経済成長の中でその格差を埋め切れていない現実が沖縄県に存在をいたします。失業率一つをとりましても、本土に比べて非常に高い、殊に若年層の失業率の高い現在の沖縄県であります。県勢の振興というものを本気で考え、そして沖縄県が、ただ単に自立というよりも、むしろ日本の経済に神益し得るような県を築ける、そういう努力を今県はなさろうとしておられますし、国もまたこれを全力を挙げて、実現の協力を惜しんではならないと思っております。  既に政策協議会の場において、沖縄県知事さん、大田さん御自身からもいろいろな御提案があります。同時に、現在、県自身が委員会を持たれて検討しておられる項目があります。こうしたものも、まとまれば当然政策協議会の場に大田知事から正式に御提起がいただけるでありましょう。今日まで提起をされましたものは、沖縄開発庁を中心として、それぞれの役割の中でこの実現の方途を探っております。そして同時に、官房長官が主宰されました基地所在市町村に対するいわゆる島田懇の答申というものを、我々はこれを非常に大事なものと受けとめてまいりました。こうしたものをあわせながら、我々は、沖縄県勢というものの振興を図っていく、こうした努力も並行して進めていかなければならない、そのように思います。
  75. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 まあ非常に総論的に、広くわたって御答弁をいただいたのですけれども、その中で、特に二、三、これから沖縄基地整理縮小に絡む問題として、米軍の兵力削減ということについて、日米でどういう共通の理解をされているのかということをもう一度確認をさせていただきたいのです。  コーエン国防長官が昨日韓国の方に行かれたのですけれども、それまで、来日前のハワイでの発言も含めまして、いろいろな憶測を日本の国内に呼んだわけですけれども、コーエン国防長官だけではなくて、オルブライト国務長官、そしてゴア副大統領、そしてコーエン国防長官と、三人の第二次クリントン政権の要人と言われる方がこの一、二カ月の間に来日をされたわけです。  それぞれ第二次クリントン政権の外交、安保の中心的な人物だったわけでございますけれども、その方々総理が会談をされて、今のアメリカのクリントン政権というのが、東アジアの情勢を踏まえた上で、在日米軍の兵力というものについて一体どういう見解を持っておられるという、共通認識に立ったのかということを、改めてこの場で総理の会談の結果得た感触を述べていただきたいと思うのですけれども
  76. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず第一に、オルブライト国務長官との会談の中で、兵力構成といった議論はいたしておりません。なぜなら、むしろ使用権原なしという状態をつくらないために今全力を尽くしている、そのためにもアメリカ側にも協力を求めたいということで私の発言が終わり、オルブライト長官としてもそれに対する協力の意思表示があった。そして、それで議論は終わりでありまして、それ以上の話をいたしておりません。また、ゴア副大統領とは、オルブライトさんとの間でこういう話をしたということにとどまっておりまして、むしろコモン・アジェンダから、経済から、さまざまなテーマについての議論をいたした会合でありますから、兵力構成そのものを議論するような場ではございません。  同時に、私は、現時点において米軍の兵力削減を求めるつもりはないということを以前から申し上げてまいりました。これは、しばしば予算委員会でも、また本委員会でも申し上げてまいりましたので議員のお耳にも届いていると思います。同時に、国際情勢、我が国を取り巻く情勢が変化した場合には、当然のことながら、兵力構成を含む国防情勢というものについて論議をするということも申し上げてまいりました。昨日のコーエン国防長官との会談では、まさに今申し上げたような言い方をいたしております。  そして、私は軍事の専門家ではございませんから、例えば十万人が一人欠けても問題が起こるのかとか、日本に配置されている四万七千人体制というものが、例えば百人、千人動いて影響があるのかということになれば、わかりません。  しかし、今日までの日米安全保障条約昭和三十五年に改定をされまして、その後沖縄県が施政権が返還され本土復帰し、そしてその間にさまざまな、例えばベトナム戦争があり、あるいはその他の地域紛争があり、そして湾岸危機から湾岸戦争があり、さまざまな緊張を私どもは経験をいたしてまいりましたけれども、その中において、ほぼこのぐらいという兵力というものはまさに現在のアジアにおける十万人体制であり、日本における現行の四万七千人体制というものであろう、私はそのように思ってまいりました。  そして、本院でも御議論がありましたけれども、ヨーロッパ正面の方は削減をされるのに比して、なぜこのアジアにおける十万人体制が変化しないのか。私なりにそのときもお答えをいたしましたのは、ヨーロッパにはNATOという地域防衛の一つの仕組みができ上がっており、そして、むしろ現在それをどこまで拡大するかということでの議論が続いている、非常に安定した地域安全保障体制ができている。アジアにおきましては、ARF等対話の場はありますけれども、実際上ワークするような地域における多国間安全保障の枠組みが存在をしていない。そうした中において、現実にもいろいろな紛争を現に抱えているこのアジア太平洋地域の中で、私は、ヨーロッパ正面におけるプレゼンスと米軍のプレゼンスが異なるのはある意味では当然ではないか、そのような御答弁を申し上げてまいったことであります。
  77. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今の総理答弁の中で、事実関係も大体押さえているのですけれども総理は、兵力の削減について、現時点において求める考えはない、これは三月三十一日のときにも記者会見で言われていました。しかし、国際情勢が大きく変化した場合には、またそれからの話というのは協議もしていかないといけないであろうし、そういう余地はあるというように私はとらえているのですけれども、特に、今急激に変わってきた情勢として、北朝鮮の情勢というのが非常にここに来て変わってきたのではないか、そのように思われるわけです。これから五年後、十年後、それは予想はされませんけれども、しかし、今の北朝鮮の情勢がどういうように変わっていくのかというのは、今の時点でどういうようにしていくのかということも含めて、我が国外交努力というのが非常に問われているのではないかな、そのように思うわけでございます。  特に、国連によりまして、一億二千六百万ドルの第三次緊急支援アピールというのが出されたわけですけれども、そのあたりへの対応も含めて、北朝鮮の不安定な情勢というものをどういうようにとらえておられるのか、お尋ねをしたいと思います。
  78. 池田行彦

    池田国務大臣 まず最初に、私どももしばしば答弁しておりますように、今後国際情勢の変化があれば、それに対していかなる防衛政策、軍事態勢が適正であるかは日米間で協議しようということになっております。しかしながら、それは短期的なあるいは表面的な変化にすぐに反応するとか対応するという話じゃございませんで、これは軍事の備えの、安全保障の備えの問題でございますから、当然のことながら中長期的な趨勢というものをにらみながら協議もし、またしかるべき対応もすべきものだということをまず申し上げたいと存じます。  さて、それにいたしましても、最近、北朝鮮の情勢が動いているではないか、あるいはそういったことに対して日本がどういうふうに対処していくのかという御質問でございますが、確かに、北朝鮮、そして朝鮮半島をめぐる情勢に変化の兆しははっきり見えていると思います。しかし、それが本当の変化に結びつくのか、そうしてどの方向にということがまだ明確になっていないというのが私どもの認識でございます。  まず、情勢をどう見ているかという点でございますけれども、政治的には、御承知のとおり、先般来、黄書記の亡命事件であるとか、あるいは、軍部におきまして長老が相次いで死亡して、その後任がどうなるかといったことが注目される等々のいろいろな動きがございますけれども、現時点におきまして、やはり政治全般の指導はいわゆる金正日書記が掌握している、こういうふうに見ているところでございます。  そうして、いわゆる金日成前主席の喪が明けるのがことしの七月であるから、その後、正式にきちんとした主席なりなんなりのポストにつくのかどうなのかということも、それはありますけれども、ともかく、実態として金正日書記の指導という体制が整っております。  そして、軍事の方で申しますと、依然として地上兵力だけでも百万を超える兵力というものを維持し、そのかなりの部分を軍事境界線のそばへ前方展開しているという状況でございます。厳しい情勢の中でも、やはりそちらに優先的な資源の配分をしているという状態が続いております。そういった意味で、なお目を離せない情勢ではございます。  しかし、そういった政治状況あるいは軍事態勢を支える経済的あるいは社会的な基盤がどうなのかということになりますと、これは非常に苦しい状態にあるのだ、こう思います。食糧事情、エネルギー事情が今非常に喧伝されておりますけれども、経済全般を見ましても、少なくともここ数年間はマイナス成長になっているという状態でございます。その中で、食糧につきましては、不足量が、いろいろな見方がございますけれども、いずれにいたしましても、百万トンのけたの、オーダーの不足がある、こういうぐあいに言われている。エネルギーもそうでございます。  そういった情勢でございますので、北朝鮮といたしましても、当然のこととして、このままの行き方で将来にわたって安定した、あるいは強固な体制を維持できるとは思っていないのではないか、そういうことで、北朝鮮は北朝鮮としてのいろいろな道を模索しているというのが今の状態だと思います。  そういった中で、国際社会とのかかわりにつきましても変化の兆しが出てきております。  御承知のとおり、昨年の四月に米韓両国の大統領の共同提案されましたいわゆる四者協議のプロセスでございますが、これはなかなか動かなかったわけでございますが、ここに参りまして事前説明が行われるというようなことで、少しこれが動くのではないのかなという様子も見えてまいりました。そのほかにも、いわゆる核疑惑に対処する枠組みとしてつくられました、我が国も参画しておりますKEDOのプロセスにつきましても、共同の調査団が今北朝鮮に入る、こういったこともあるわけでございます。  そういったふうに、北朝鮮も国際社会とのかかわりにおいても変化の兆しを見せておりますので、私どもは、そういうことを注視しながら、米韓を初めとした各国ともよく連絡をとりながら、北朝鮮が国際社会との関係でなるべくソフトな形で進んでいくような道へ、日本としての果たせる役割は果たしてまいりたい、こう思っておるところでございます。  そういった中で、日本としての対応でございますね。KEDOについては御承知のとおりやっておりますが、食糧の問題、これについてどうかという具体的な御質問がございました。  食糧支援の問題については、WFPからの支援のアピールが出され、これに対しまして米国、韓国初め数カ国が既にそれに応ずる旨を明らかにしておりますし、委員が先ほど御指摘になりました新たなるアピールも出されたわけでございますが、これは、ことしの四月一日から来年の三月三十一日までをカバーするものとして出されたわけでございます。これについて我が国としてどういうふうに対応するかという点については、今いろいろな観点から総合的に勘案しながら、どうするか検討をしようとしているところでございます。  いろいろな観点、要素と申しますのは一体何があるかということでございますが、それは端的に申しまして、もとより国連は人道的な援助だ、こう言っておりますので、確かに食糧は窮迫しているし、人道的な観点から考えるということは、それは必要かもしれません。昨年までも、我が国はそういったことで国連アピールに応じてきました。しかしながら、それと同時にほかの要因もいろいろ考えていかなくてはいけない。  人道と言われますならば、御承知のとおり、私ども、北朝鮮との関係では、やはり解明しなくてはいけない人道的な問題もございます。そういった問題が何ら進展をしないままに支援をするということに国民の皆様がどう考えているかということも、これは、直接結びつけないにしてもやはり考慮はしなくてはいけない一つの要素でございます。それからさらに、国連アピールに応じただけで十分に食糧問題が解決されるとはとても思わないのですが、それを一体全体像としてどう考えるのかということも、関係各国ともよく相談してみなくてはいけないと思います。  それから、我が国の場合には、北朝鮮との間に国交関係がございません。そして正常化交渉も、御承知のとおり、例の李恩恵事件といいましょうか、あの疑惑の問題に絡んで中断されたままになっております。こちらの方は、その後も進展の兆しも見えていないわけでございますね。そういった中で国民の皆様が一体どういうふうにお考えになるか、そういったいろいろな要素を勘案しながらやってまいりたい。  もとより、我々、人道的なアピールであるということをよく承知しておりますし、それから、朝鮮半島の安定という観点、これは我が国安全保障の観点からも大切であるということも十分念頭に置きながら慎重に検討してまいりたい、こう考えている次第でございます。
  79. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今、外務大臣が最後の方に答弁されましたけれども総理もこの問題で、具体的にその問題の中身は言われませんでしたけれども、問題がある以上、政府としてきちんと答えをもらわなければならない状況は変わらないだろう、そういうことを言われていますし、外務大臣の言わんとされておりました、食糧支援も人道問題であるならば、また女子中学生を初めとした日本人の拉致疑惑解明というのも日本にとっての大きな人道問題でもありますし、やはりそこについては日本政府としても筋を通すようなきちっとした対応をお願いをいたしまして、次の質問に参りたいと思います。  そこで、先ほど総理が述べられた中にもありましたけれども、現時点において米軍の兵力というものを削減しない、またそれを現時点で求めていくつもりはないという、そのまま多分四月の末の日米の首脳会談にも臨まれるのじゃないかな、そういうように憶測するわけですけれども、そうしますと、逆に沖縄から見ると、非常につれない返事でございます。というのは、沖縄基地の整理縮小をやるためには、論理的に考えても二つしかないわけでして、その一つの方途は、アメリカの海兵隊も含めて削減するという方途か、その道が閉ざされるならば、もう一つは、沖縄から基地を減らそうとすれば、日本本土に移転する、分散する、そういう道しか残されていないわけですね。  今、総理がいらっしゃらない間は防衛庁長官を中心に、この本土移転の問題で、当面の問題をどういうように乗り切っていかれるのかということをお聞きしたいわけですけれども、まずその一つが、県道一〇四号線の実弾砲兵射撃訓練の本土移転問題ですね。  これについても、何らかのめどを持ってこの四月の末の総理の訪米には行ってもらわないといけないというように考えておられると思うのですけれども、今の状況を見ますと、北海道の矢臼別演習場だけは何とかめどがついたけれども、あとの四カ所ですか、このあたりについては何ら進展がない。  そういう状況を見たときに、在日米軍政府に対して非公式に、本土移転が実現しない場合は沖縄での訓練は引き続き実施する、そう伝えてきているという報道もあるぐらいに行き詰まっている、そういう状況が見えるわけですけれども、なぜこの県道一〇四号線の本土移転が進まないのか、今後の見通しはどうなのか。そして、先ほど報道を紹介しましたけれども、最悪できなければ、米軍が言うように沖縄での訓練を引き続き実施するということは考えられるのか。このあたりを含めまして、防衛庁長官答弁をいただきたいと思います。
  80. 久間章生

    ○久間国務大臣 今委員が御指摘になられましたように、沖縄基地をできるだけ整理、統合、縮小していくにはどういう方法があるか。これは、本当に整理、統合、縮小しなければならないということで政府においても一生懸命考えてきたわけでございます。私も、就任しましてから、何とかならないものかということでいろいろと検討してまいりましたが、やはり、SACOで、最終報告でまとめたこれ以上のことは今の時点ではやれないということで、ああいう形でまとめさせていただいたわけでございます。  だから、SACOにあります、沖縄県の中で移設できるものは移設していただいて、普天間等もそういう点では、今のところよりは移ることによってよりよい安全性を確保できるとか、そういうふうなことも目に見える形でやっていける。そのかわり、そういう形で約束しました県道一〇四号線とか、あるいはKC130の岩国への移転とか、約束したことは政府も責任を持ってやらなきゃならない。  そうして一つ一つSACOのものを片づけていくことによって、沖縄の人も、ああ政府は約束したことはちゃんとやるんだな、おれたちもそのかわり、ベストじゃないけれども、ベターな道というか、一歩でも前進するのなら、まあこれをのまなきゃいけないなというような形で、普天間の移転等についても協力してもらえればいいということで、本土で、約束したことについてまずやらなきゃならないということでやってきたわけでございます。  そして、全国の施設局、いろいろありますけれども、九州の福岡の施設局は日出生台に一生懸命全力を挙げますし、また呉の施設局は岩国の問題に全力を挙げますし、また横浜施設局は北富士と東富士に一生懸命全力を挙げまして、仙台局はいわゆる王城寺原の問題、そして札幌の施設局は矢臼別と、全部が全力を挙げて取り組んできております。  先ほど委員はあのように言われましたけれども、私の受けている感じでは、各局とも一生懸命努力した結果、最初スタートしましたときには、どこも中身がわからずに、沖縄のものをおれのところに持ってくるのか、反対だ、そういうような御批判ばかりが出ました。また、私のところにもいろいろな反対の陳情の方もいらっしゃいました。しかしながら、そういう中で、沖縄が今までやっておったものを五カ所に分散して、しかも最大で三十五日間、一カ所にしたならばどんなに長くても十日以内だ、そういうところで三百人の人しか、しかも、そこに施設をつくるんじゃなくて、行って帰るような形でやるんだから、治安上も問題ない、それについても心配はかけないということで説得してまいりましたので、今ではどこもやむを得ないかなという雰囲気になってきております。  だから、いろいろ来られる方にも、どうかこれ以上もう反対運動をしないでくださいと。まあ、ある党の方なんかはいまだにやっておられる方もいらっしゃいますけれども、大抵の方々はやむを得ないかなという空気になってきております。むしろ、どこの演習場においても、よそがやってしまってうちだけが反対だと言ったら、これだけ沖縄人たちに対する、本土で全部受けなきゃならないというときに、これはやはりいかがなものかという、そういう気持ちになってきておりますので、私は、必ず平成九年度に実施できるんじゃないか、そういうような雰囲気まで今来ておりますので、もうしばらく見守っていただきたいと思います。  まあ、総理が行けるまでに結論を出せればいいわけでございますけれども、そこまで言い切るまでのまだ自信はございません。しかしながら、できるだけそういう方向に向けて頑張っていきたい、そういうふうに思っているところでございます。そういうふうな形でこれから先も取り組んでまいりますので、どうぞ、よろしく御支援方をお願い申し上げる次第でございます。
  81. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それで、見守るだけじゃなくて、私は与党じゃないのですけれども、ぜひ防衛庁長官のリーダーシップを発揮していただきたい。  というのは、国がこの問題についてどう対応してきたかというのは、それぞれの施設局の職員に任せていたという部分もありますが、際立っているのは、ここにもいらっしゃいますけれども、昨年の八月に、臼井長官が関係自治体をずっと回られたわけですね。  そういう意味でいうと、九年度中には何とかなるだろうという、そういう希望的観測をされるだけじゃなくて、やはり防衛庁長官みずからが乗り出されて関係自治体を何とか説得に当たられるような、そういうリーダーシップを発揮されるときではないかな、そういうように思うのですが、長官の御所見を伺いたいと思います。
  82. 久間章生

    ○久間国務大臣 私自身もそれはそのつもりでおります。  それで、今、この特措法の問題がありますために、ウイークデーになかなか動けないということもございまして、この特措法が、今週こちらの衆議院の方でもし可決していただければ、来週は参議院でまた上げていただければ、一区切りつきますので、それから、とにかくいろいろな形でお願いをしようと思っております。  ただ、行きはしませんけれども、情報はとりながら、また電話等でいろいろ連絡をしまして、また各県の、市町村だけではなくて、県知事さん等にもいろいろとアタックしながら、いろいろなことはやっておるわけでございますので、まあ、アヒルの水かきと思われるかもしれませんけれども、少しずつ今進んでおりますので、最後には飛び立つような形でやらせていただきたい、そういうふうに思っておりますから、ぜひ見守っていただきたいと思います。
  83. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 総理が訪米されるときに、やはり片づけていかないといかぬ、何とか道筋をつけて持っていかないといけない問題が、一つは県道百四号線の問題とともに、もう一つは、何といっても、それより大きな問題として、普天間の基地返還に伴う代替ヘリポートの問題だと思うのですけれども、これについては、SACOの最終報告でも、遅くとも本年の十二月までに実施計画を立案する、そういうことになっているわけでございますが、特に、この一日二日で、一つの、一歩前進かなと言われるような道筋が見えてきたわけですね。  特に、キャンプ・シュワブ沖の事前調査について、当地の名護市の比嘉市長さんだったと思うのですけれども、建設そのものにはまだ反対だけれども、条件つきで、住民の理解等が得られるのなら事前調査をしてもいいのではないか、そういうことも言われてきているわけですけれども、その今後の見通しにつきまして防衛庁長官はどのように持っておられるのか、また動かれるのか、お尋ねをしたいと思います。
  84. 久間章生

    ○久間国務大臣 この名護のキャンプ・シュワブ沖が調査地区としては適当であるということで、私どもの方で、沖縄施設局長が一月の二十一日に市の方にお伺いしたわけでございますけれども、そのときは、県も一緒に立ち会わないとだめだということで、受け取っていただけなかったわけでございます。  しかしながら、その後、いろいろな方々、漁連の皆さん方とか地元の皆さん方とか、あるいはまた名護市御当局とか、いろいろとお話がなされておりまして、昨日、ああいう形で説明会が開かれたということで、一歩前進であるということを非常にありがたく思っているわけでございます。  特に、今の調査は、基本調査といいますか、まず適地であるかどうか、そういった調査をまずさせていただきたいということで申し込んでおるわけでございますので、これにまず入らせていただいて、その上で、十二月までに具体的な実施計画等が作成されるように、一生懸命これも努めていこうと思っております。  とにかく時間がないわけでございますので、十二月といってもすぐ参りますので、まず事前調査に入らせていただいて、基本調査に入らせていただいて、その上に、特に県御当局等にもまたお願いをしながら、何とか、SACOの最終報告でまとめました中の目玉になります普天間飛行場の返還を、とにかく目に見える形でそれを実現させていきたい、そういうふうに思っておりますので、これについても、これから先、私自身も必要ならば出てまいりますし、それよりも、むしろ、県御当局の御努力等にもぜひ御期待を申し上げたいというような、偽らない気持ちでございます。
  85. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 この普天間の基地の問題というのは、橋本総理になられてから、本当に、あの四月の土壇場でしたけれども、得た成果のような感じもするのですね。  これは総理にお伺いしたいのですけれども、訪米されるときに、一年がかりで、日本として日米安保体制の信頼をきちっと維持するためにもこれだけ努力しましたよという、そういう道筋をつけていかなければいけないであろう。総理として、この普天間の基地の代替ヘリポートの問題、現状の進展を見守るだけじゃなくて、これから、あと二週間ほどしかございませんけれども、どういうようにこの道筋をつけようとされているのか、この問題についての総理の御所見を伺いたいと思います。
  86. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 毎日国会でこうして御答弁をしながら、大変気になっている問題のこれは一つです。そして、さまざまな、政府はもちろんでありますけれども現地の機関、さらに国会の、現在おられる方だけではなく、既にOBとして自由な立場におられる方、そして県内の私ども気持ちを理解してくださる方々党派を超えて大変この事態を心配され、御努力をいただいてきました。  そして、昨日で、目に見える形での第一歩という状況が生まれたことを、私は大変喜んでおりますけれども、これが、すぐ続いて次から次へと動いていくのかというならば、まだまだ私は不確定な要素を多分に残しておると思います。  ただ、少なくとも、人家の密集地帯の真ん中にある飛行場を、比較的安全度の高い場所に移そうとして日米政府努力をしてきましたプロセスというものを、賛否を別にして、御理解がいただけるところまで、ようやく少しずつ変わってきたのかな、そのような思いもいたします。  そして、今防衛庁長官からも御答弁を申し上げましたけれども、私どもとしては、ここまでこのSACOの最終合意をまとめるに当たりまして、当時のペリー国防長官、モンデール大使初めアメリカ側の関係者が努力をしてくれたことでありますだけに、当然のことながら、少しでも前進した姿をアメリカ側に知らせ、ともに喜びたいという気持ちはございます。  しかし、同時に、地域方々気持ちというものを踏みにじったような姿でこれを進めるということは、私は決して将来に向けてよいことではないと思っておりますし、関係の市町村長さんに昨年お集まりをいただきましたときにもその気持ちは申し上げてまいりました。それだけに、賛否を別にして、理解をしていただいた上で基礎的な調査が開始できる、それが次に続くことを、心から願っております。
  87. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 当面の問題、これについては、本当に我々としても、野党ですけれども努力をしていかなければいけない。ただ、それで沖縄の皆さん方が希望がかなえられるのか。それはどうしても、中長期的な沖縄米軍基地の整理縮小のプログラムというものもやはり国が責任を持つて出していかなければいけないんではないかというように私自身は思っております。  そういう意味からいうと、冒頭にも申し上げましたけれども総理と我が党の小沢党首が交わされた合意事項の二項目め、三項目め、全国民が沖縄県民の負担を担うんだというそういう考え方に基づくということ、それとともに、最終的に国が責任を負う仕組みを誠意を持って整備するという、そのことをやはりこの基地の整理縮小につい  てもやっていかなければいけないんではないかな、そのように申し上げて、次の質問に移らしていただきたいんです。  きのうも、財政構造改革会議ですか、政府・与党の方で行われたというようにお聞きしているんですけれども、そこで、一つは、中期防の見直しの前倒しということが一つの話題になったということなんですが、まず防衛庁長官にお聞きしたいんですけれども、中期防の見直しの前倒しというのはされるんですか。明快に答弁をお願いしたいと思います。
  88. 久間章生

    ○久間国務大臣 財政構造改革会議に示されました「基本的考え方」では、見直しの時期について具体的に示されているものではございません。  しかしながら、防衛庁としましては、昨日開かれましたその財政構造改革会議の企画委員会における議論、また、これから先のいろいろな議論等も踏まえながらこの見直しの時期についても検討していきたい、そういうふうに思っているところでございます。
  89. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 要するに、前向きに財政構造改革会議で提示されたものを受けとめて検討していくという、そういうようにお受けしたんですけれども、それに関連して、在日米軍の駐留経費をどういうような扱いにされるのかということをお尋ねしたいんです。  総理は、当委員会で、たしか初日だったと思うんですが、鈴木委員の質問に答えられて、SACO関連経費については聖域なき見直しの例外扱いとする、そういうことを答弁されたと思うんです。御党の山崎政調会長が、これは朝日新聞だったと思うんですけれども、コーエン国防長官に会われたときに次のように言われているんですね。「日本では歳出削減に取り組んでいるが、日米安保体制を堅持する立場から、在日米軍への支援については現在の水準を維持する」とそういうように述べて、駐留米軍経費については歳出削減、そういう扱いにしないという考えを表明したというようにされているんですけれども、この在日駐留米軍経費の問題というのは聖域なき見直しの例外扱いとされるおつもりなのかどうなのか、御答弁をいただきたいと思います。
  90. 久間章生

    ○久間国務大臣 そういう報道があったことは存じておりますけれども、具体的な中身については実は把握していないわけでございます。それと、聖域なき見直しというふうに言われておりますので、私どもとしては聖域なき見直しをしなければならないと、財政につきましてですね、防衛関係費についても。そういうような基本的スタンスはとっております。  しかしながら、その駐留軍経費だけではなくて、やはり防衛関係費は、非常に人件費とかそれに伴います糧食費とか、あるいは、今言われました駐留軍経費にしましても人件費的な要素が非常に強いわけでございまして、こういうものについてどれだけ切り込めるか、これはまたいろいろ検討してみなければわからない問題でございますので、これから先のいろいろな議論を踏まえながら、財政構造改革会議が掲げられましたそういう方針は念頭に置きながら、一生懸命今取り組んでいこうと思っております。
  91. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今の防衛庁長官の御答弁ですと、駐留米軍経費の扱いについてはまだきちっとした話し合いにのせていない、そういうように受けとめたんですけれども、そうすると、公党の政調会長がアメリカの国防長官にそういうような話を持っていかれたとしたら大変な問題ではないかというように思うんですけれども総理、いかがですか。
  92. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変申しわけありませんが、昨日も本日も、私どもこうして委員会に出席を続けております。そして、報道は確かに私も見ました。しかし、決してこれはマスコミの皆さんがいる前でマスコミの批判をするのではありません。必ずしも正確なときばかりではございませんし、その前後のやりとりというものが省略をされ、長い話の中の一部分だけが取り出されますと、誤解を生ずることもございます。  そして、先ほど、SACOの経費を例外と言われましたが、私は、実は財政構造改革会議に示しました五原則と大きな十三の項目についての考え方で、SACOの経費について例外とは書いておりません。SACOはきちんと実行していく必要があると書いております。  そして私は、他の問題以上に、まさに沖縄県民の痛みを国民が分かち合おうとしてくださるなら、このSACOを実施していくための経費を、まさか私は国民はむだなお金だとおっしゃることはないと思っております。
  93. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 SACOの部分についてはよくわかりました。  そうすると、その報道の問題もありますが、総理としては、この在日米軍の駐留経費についてはどういう扱いにされようと思われているのか、御答弁をいただきたいと思います。
  94. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 財政構造改革が必要であることは御理解をいただいていると思いますし、既に財政構造改革会議でなされてきた議論を受け、今企画委員会が立ち上がるについて、大きな項目を、十三であったと思います、それぞれ私なりの考え方を付して、その上で今企画委員会議論をしていただいております。個人的に云々を申し上げるタイミングではないと思いますが、全体を議論していく中で、おのずから、国際的な約束というものの重みも踏まえ、我が国の財政の現実も踏まえ、適切な結論を得ていくことになるであろうと思います。
  95. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 総理の考えを聞かしてもらえるかと思いましたけれども、企画委員会で検討されてからということですので、またそのときにきちっとした決断を下していただきたいと思うのです。  次に、コーエン国防長官が来られて、特に防衛庁長官に話された問題として、兵力の問題に加えて二つ話をされているんですね。まだほかにもされているかもわかりませんけれども、報道によると。その一つがガイドラインであり、もう一つはTMDの共同研究の問題を話をされているんです。  まず、そのガイドラインのことで特に総理にお伺いをしたいんですけれども、今回のガイドラインは、五十三年のガイドラインとの違いというのは三項目めですね。正確に言いますと、「日本周辺地域において発生しうる事態日本の平和と安全に重要な影響を与える場合の協力」、そういうようなところをどういうように進めていくのか。  これから後方地域支援についてどういうように進めていかれるのかというのは、五月の中間報告なんかを非常に我々としても楽しみにしているんですけれども、まず最初に総理にお伺いしたいのは、日本周辺地域、これは前回の五十三年のときには「極東」となっていたわけですけれども、この日本周辺地域というのは、総理はどの範囲までいうというように考えておられるのか。特に、いろんな報道ですけれども、来日中のペリー元国防長官は、これは朝鮮半島有事だけではなくて中東からのシーレーン防衛も含まれる、そういうように見解を表明したというように言われております。そういう部分も踏まえて、総理日本周辺地域というのをどういうようにとらえておられるのか。北米局長は前一回やりとりしたので、ぜひ総理にお願いしたいと思います。
  96. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず第一点、いわゆる第三分類のことだと思います。これは、現在、内閣安全保障室を中心として政府部内での検討を行っておるところでございます。なお、引き続いて検討は続けなければなりません。現況はそういう状況にございます。  それから、ペリーさんがこう言ったからそれを踏まえてとおっしゃるのは、ちょっと私、心外なんです。ペリーさんは、私の内閣の閣僚じゃないわけですし、確かに私は立派な国防長官だったと思いますけれども、既に現役を去っている方であります。  今までも申し上げてきておりますけれども、こうした議論で、特定の地理的範囲をここからここまでというふうに描いてする議論というのは余り現実性がないんじゃないかな。言いかえれば、その日本周辺地域というのは、まさに日本の周辺であり、そこで発生する事態我が国の平和と安全に重大な影響を与える可能性がある地域、まさにそういう一般的な意味と私は思います。
  97. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 別にペリー元国防長官の話を重視しろということで言ったんじゃなくて、ただ、  ついこの前まで、ペリー元国防長官というのは、このガイドラインがSDCに改組されて話し合われたときの国防長官なんですね。  だから、アメリカのその当時の国防長官がどういうように思っておられるのかということは、やはりこれは日本もとらえた上でどういうように見解を持っておられるのかということをお聞きしたがったわけで、そのことについては最後に聞きたいんですけれども、そういう今の総理の抽象的な答弁は、シーレーン防衛ということも十分にこの検討の範囲に入るんだというようにとらえてよろしいんでしょうか。
  98. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 御質問にあるシーレーン防衛のことにつきましては、実は、現在の防衛協力、つまりガイドラインの中で、我が国が武力の攻撃を受けた場合のいわゆる対処措置、今回もそれが入っているわけでございますけれども、その関係で、実は現行のガイドラインのもとでシーレーン防衛研究というのは実際やっているわけでございます。  したがいまして、我が国の防衛ということに絡む以上、シーレーンという問題も当然その念頭にあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、周辺地域という点につきましては、御質問にもございましたように第三番目にある項目でございまして、この周辺地域につきましては、今総理からも答弁がございましたような考え方で一般的に検討してまいりたいというふうに考えております。
  99. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 そのガイドラインと関連しまして、我が党の同僚委員からも二回ぐらい出されたんですが、これは四月五日の産経新聞だったと思うんですけれども、アメリカの有力研究機関の外交問題評議会が草案をまとめて、日米同盟は張り子のトラではないかというような、そういうことを言っているという話がありましたけれども、有事のときにどういうように働いていくのか、そのことから考えますと、やはり今、日米で枠組みを決め、またこれから九月に向けて検討されるこのガイドラインの見直しというのが一つの大きなポイントになろう。それとともに、国内の法整備まで含めて、昨年の五月に総理がみずから緊急事態対応策というものを四つの部会に検討するように指示を出されたわけですけれども、これについて、総理、いつごろ大体取りまとめのめどをつけられるのか、まずお尋ねをしたいと思います。
  100. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変申しわけありませんが、ここしばらくの間、報告は受けておりません。その上でお答えをさせていただきますならば、在留邦人の救出についての検討が一番進んでいると私は承知をいたしております。  その上で、実はごらんのとおり、こうしておりますとその報告を受ける時間すらないわけでありまして、その後細かくは聞いておりませんが、恐らく、在外の邦人救出の場合の作業が一番先行しているという状況は現在も変わっておらないだろうと思います。
  101. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 その検討をされているのはいろんな報道から伝わってきているんですけれども一つは、やはり大事なことは、そのときの原則として今進められているのが、日本国憲法の枠内で行うという、そういうことでずつとされているというように聞いておるんですけれども、もう一つ大事なポイントは、我々から言わせていただくと、情報の公開ではないかというように思うんですね。  午前中にも東委員がそういう部分を触れておられましたけれども、検討の結果、そこからさらに進んで有事に備えた法整備をするというところまでだんだん話が進んでいくとすると、場合によっては国民の基本的な自由とか権利、さらには経済活動を制約するという場合も十分考えられるわけでして、そういう意味からいうと、やはり今は研究段階、また検討段階でしょうけれども、内容をできるだけ国民であるとか、またその代表である国会にぜひ示していただく必要があるのではないか、そのように我々としては思っているわけですけれども、それについて、ガイドラインについては中間報告を五月にされる、そういう話もあります。昨年の九月にも第一次経過報告がありました。総理が今されている緊急事態対応策のそういう中間報告的なことをされるおつもりがあるのかどうか、総理にお伺いしたいと思います。
  102. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、大変申しわけありませんが、現時点でどの程度の作業まで進んでいるかを聞く暇すら与えられていない状況の中で、ちょっと私もお答えをしかねる部分がございます。  なぜなら、私は、できるだけ情報公開というのは進めるべきものの一つだと思います。その上で、この安全保障とか、進行しつつある外交案件といったものにつきましては、やはりそれなりの情報の秘匿が、交渉を進展させる上にも計画を整備していく上でも必要な場面は存在をいたします。その辺の兼ね合いを見て判断をいたしたい、そのように思います。
  103. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今そういう時間がなくてなかなか聞いておられない、そういうお話は今の忙しさから見るとよくわかるんですけれども、しかし、やはり事は、有事になってからでは非常に遅いわけでして、特に先ほどの答弁の中に、在外邦人の救出の問題については大分進んでいるという……。  それで、もう時間もないので最後の質問にさせていただきたいんですけれども、今、年間千五百万人という、千四百万というように午前中ありましたが、日本人が海外に出かけておられる、また常時六十万人を超える邦人が海外で居住をされている、そういうまさに国際的な時代なんですけれども、そういう意味からいうと、世界のどこで問題が起きても必ず日本人が巻き込まれる。先日来のこの委員会でも議論がありましたけれども、アルバニアでの例というのもしかりだと思うんですね。  そういう意味からいうと、大規模な救生活動をしなければいけないときに今の法体系で本当にいいのかというと、非常に不十分な部分があるのではないかな、そのように思うわけです。  九四年の十一月に自衛隊法が改正されて、邦人救出のための政府専用機と自衛隊輸送機の海外派遣というのはようやく可能になったわけですけれども、現実に起こったときに、大規模な人を短時間で救出できるということを考えていったときに、まだまだ不十分ではないかな、そのように思うわけです。そういう意味からいうと、飛行場がまずやられたときのこととか爆撃をされたとか、そういうことを考えていきますと、やはり船の利用というのが非常に大きなポイントになってくるのではないかな。  時間もないので、はしょって質問をいたしますけれども、そういう意味から、自衛隊法を改正して、海上自衛隊の自衛艦の派遣であるとか、さらには、それよりも収容能力やスピードがまさると言われている民間船の活用をするための法的措置をされるお考えがあるのかないのか、政府のお考えをお尋ねしたいと思います。
  104. 久間章生

    ○久間国務大臣 今おっしゃられたことでございますけれども、言われる意味はよくわかります。  しかしながら、先般改正されましたときの国会の御論議等を踏まえながら、そういうようなニーズ等もまたあわせて踏まえ、やはり何といっても法改正する場合には国会の御論議、国民の世論、そういった動向をちゃんとつかんだ上でやらなければならないわけでございますので、これから先、種々検討させていただきたいと思います。
  105. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  106. 野中広務

    野中委員長 これにて佐藤君の質疑終了いたしました。  次に、西田猛君。
  107. 西田猛

    ○西田(猛)委員 新進党の西田猛でございます。  本委員会もいよいよ大詰めに入ってきたわけですけれども、各委員の皆さん、それから関係閣僚の皆様には、連日お疲れさまでございます。  私は、今回の、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約、以下、単に安保条約と申しますけれども、この第六条に規定する我が国義務を果たし得なくなる可能性が生じたという今回のこの問題の本質的な問題を、以下、お話をしていきたいなというふうに思っております。  その中で、三つ問題点があると思うのですが、まず一つは、なぜこういう問題が起こったのか。それから第二は、それでは今後どうしていくのかということ。それから第三番目には、今回の問題の主舞台となりました沖縄県における問題をどうしていくのかという大きな問題があるのではないかなというふうに考えております。  具体的な問題に入ります前に、私は、今回の一連の事件それから問題が我々に投げかけました、国とは何か、あるいは国と地域、地方とは、そして国と個人とはどういう関係にあるのかということについて考えてみたいと思うのです。  私自身は、人間社会において最も大切なものは個人の自由と尊厳だというふうに考えております。そして、個人は、一定のルールに従って、みずからの才能と努力で幸福を追求できるのではないか。国というものは、その個人の幸福追求ということを担保するための共同体であるというふうに私自身は認識しておるわけです。  将来的には、これは非常に、私の発想でございますけれども、現在のような国という国家の枠組みはなくなって、もっとより小さな共同体、すなわち、それぞれの共同体の構成員が何かしら共通の帰属意識を感ずることのできるようなグループになって、それが一つのそれぞれの権力主体となりまして、それがこの地球上に何万として存在する。そして、地球規模的な問題あるいは地球上でいろいろ発生する紛争の問題については、現在あるような国連をさらに進化せしめたような、いわば地球政府というふうなものが調整していくという社会が実現すると、これは一つの平和のためにもなるのではないかなというふうに私は考えているわけですね。人間は、そういう地球と、それから、それぞれの帰属グループの中で個人の自由と尊厳を何にも増して最優先されて、その中で、経済の活動と移動その他の自由が保障されるというふうなことがいいのではないかなということを考えているわけなんです。  ところが、他方、目を現実の世界に転じてみますと、今の地球はそのような話とはまさにほど遠いわけでございまして、いろいろな問題を抱えておるわけでございます。その中で、我が日本が抱えている幸福とそれから不幸というものは、私は、日本という国が、人類の有史始まってほどなく、ほぼ一団地の一定の地域に、人種、言語、それから文化的にほぼ共通する人間が長く定住して、その中で自然的に国というものができ上がってきたという、世界の歴史上まれに見る例と言ってもいいような国の成り立ちであるということが挙げられると思うのです。  といいますのは、それの対極点に挙げられるものとして、当然、我々の問題にしている条約の一方の当事国であります。アメリカ合衆国が挙げられるわけなんですけれども、そういうふうに、例えばアメリカ合衆国などでは、つくらなければいけない、国は国として自分たちが守っていかなければいけない、構成員である自分たちが国としてやっていかなければいつ壊れるかわからないという、常に危機に直面しておるわけでございまして、私たち日本人は、何もしなくても国は国として存続するのではないかという、いわば幻想にも似たような感じを皆お持ちになっているんじゃないかなというふうに私は考えるわけです。このことが、我が国の強みでもあって弱みでもあって、そして幸福でもあって、第二次世界大戦に見られたような不幸でもあったというふうに私自身は考えております。  今申し上げたようなことは、私どもに二つのことを教えているのではないかなというふうに考えます。  一つは、まず、国すなわち自分たちの住む共同体と申しますか、国が国であるためには、構成員である自分たちが不断の努力をしなければいけないのだということだと思います。それと、やはり日本の、今申し上げたような国の成り立ちを考えてみますと、特に沖縄県と北海道については、私たちは特別の配慮をしていかなければならないのではないかということを教えているんだと思います。  他方、我々の憲法の前文にもありますがごとく、国政というものは、その権威は国民に由来して、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。すなわち、国の目的として、国民の福利以外の目的というものはあり得ない。これは私ども、理想的過ぎるかもしれませんけれども、要するに、そういうふうに考えております。したがって、私たちも国民の福利のために、共同体であるこの国を安全に存続させなければならない、それが安全保障であると私どもは認識しております。  私どもが、日本が全く一丁のピストルすら持たず、自国の安全保障を世界の国々の正義と公正の信義のみに依拠して全く何も持たないのだというのであれば、これはまた一つの行き方だったとは思いますけれども、今日の現実の国際社会の中で、私ども日本の今の状況を考えておりますと、やはり的確、冷静に安全保障を構成員である国民みずからが考えていかなければならないことだというふうに考えております。  そこで、この安保条約、これは我が国が締結し、そして批准をした条約でございます。この条約については、憲法においても、それから私が今申し上げましたような国民、構成員の義務といたしましても、その実施を図っていかなければならないわけですけれども、まず外務大臣にお聞きしたいのですが、この安全保障条約あるいはそれに基づく各協定等につきまして、これは現在の我が国国内法制でその実施が担保されているという  ふうにお考えでしょうか。
  108. 池田行彦

    池田国務大臣 安保条約に限らず、我が国が国際約束をいたします、そうして条約を締結いたします場合には、それに先立ちまして、その条約我が国が負うことになります義務がきちんと履行できるように、それが担保されるように、国内の法制がどうなっているか、そういうことを慎重に検討いたしまして、その上で締結するものでございます。あるいは、その条約を締結すると同時に新たなる法律が必要であれば、それを、新たなる国内法整備条約の承認手続とあわせて国会にお諮りするということが毎国会あるということは、委員も御承知のとおりでございます。それが原則でございます。  したがいまして、この日米安全保障条約につきましても、あるいはそれに基づきます地位協定につきましても、私ども国内法制上も条約上負うことになる義務が履行できる、それが担保されるということで条約を締結いたしましたし、その後もそういったことで参った次第でございます。
  109. 西田猛

    ○西田(猛)委員 であれば、なぜ今回のような問題が起きたのかということを考えていかなければならないと思うのですね。  今外務大臣は、今の、というかこの改正法案の前の段階の現行法体制で、安全保障条約等その他の国際条約を担保できるものと考えていたというふうにお考えのようですけれども、では総理にお伺いしたいのですが、総理もこの今の現行法制で安保条約その他の国際取り決めの実施が担保されているとお考えだったのか。そして、もしそうであるならば、そうお考えならば、なぜこのような事態が今回起きたというふうにお考えなのか、総理にお伺いしたいのです。
  110. 久間章生

    ○久間国務大臣 今、こういう事態がなぜ生じたか、現行法に欠陥があったのか、外務大臣は法的整備がされているではないかと言われたものですから、提案者として私の方から答弁させていただきます。  確かに昭和二十七年に安保条約が締結されましてから、それに基づく施設区域提供義務がございますので、現行法がつくられたわけでございます。そして、国内においてもこれが適用されてまいりました。沖縄においても、復帰以後、土地がいろいろと境界が確定しないときには暫定法でやりましたけれども、それが一応確定しましてからは、五十七年からはこの法律でやってきたわけでございます。だから一応これで整備されておったわけでございます。  そして、収用委員会の普通の状態でありますならば、百人とか二百人の方々対象にして収用委員会の仕事をやる場合にはそれはいいわけでございますけれども、御承知のとおり、とにかくこれは強制収用ではなくて強制使用なものですから、所有権については全く自由なわけですね。五十七年から六十二年になりますときに、所有者がたった二人の方からたくさんにわっとふえたわけでございます。その都度ずっと六十二年から六十七年というふうに、年を追うごとに五年ごとにふえてまいりまして、三千名の方になったわけでございます。  そういうようなことがございますために、ああいう不幸な事件が起きましたのを契機に、いろんな手続を踏んでいっても、最後になったときにどうしても間に合わない。通知を出すだけでも三千人だ。みんなを集めるにしても、三千人を集めて公開審理をやらなければならない。本来でございますと百十数名の人で済むわけでございますけれども、たった二人の人から三千名の人たち所有権が分かれていってしまっている。全く私どもが予想していなかったような事態が今日惹起されておるわけでございまして、そういう意味で法的な整備が不備であったと言われれば不備かもしれませんけれども、そういうことまで現行法が予想していなかった。  しかし、現行法の中でもやれるのではないかということでぎりぎりまで待っておったけれども、今度は最後の収用委員会が開かれましたときに次の収用委員会の日程も決まらないという状況になりましたので、今回出させていただいたわけでございますから、そうでたらめに、安保条約があるのにそれに対する法が全然整備されていないではないかというおしかりは、それはちょっと言い過ぎではないか。一応整備されておったけれども、こういう事態がレアなケースとして起きたんだということをぜひ御理解していただきたいと思うわけです。
  111. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 非常に文明史論的に組み立てられた御意見を大変興味深く伺っておりました。私は、今防衛庁長官が御答弁を申し上げました、これは率直な関係者の気持ちだと思います。言いかえると、条約締結時、全く予見し得なかったような事情が存在する、そのために我が国条約上負っている義務の履行に支障が生じることを避ける、今まさにそういう状況になっているわけでありますが、例えば行政行為あるいは統治行為にかかわるようなもので予見せざる事情を生じせしめたとすれば、やはり法の瑕疵を指摘されても私はやむを得ないと思います。  しかし、一昨年の九月に沖縄で起こりましたような、人間としてあり得ないような犯罪行為を予見し得なかった。そして、これが条約締結時において想定し得なかった事情であり、結果としてその法の施行の中で対応しようとしたことが、しかもまた収用委員会の日程が決まらなくなるというのも、これも実は予期せざることでありました。この点は私は、もしそれが予見すべきことであったと言われれば、考えるべきことだったのかもしれないと思います。しかし、あのような卑劣な犯罪が起こり、それによって法行為に支障を生ずるというような想定がなし得なかった。それは私は、安保条約と現行法制上の間に整合性を欠いているものではないと思います。
  112. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今橋本総理それから久間防衛庁長官お話をいただきまして、私は実は粛々とと申しますか、ちょっと法律論をやろうかなと思っていたのですけれども、今二閣僚の御答弁を聞いておりまして、ちょっと横道にそれてしまうのですが、私の方もちょっとお許しをいただきたいと思うのですけれども、今おっしゃった中で二点、私はちょっとわからない点があります。  それは、まず第一に、外務大臣は一応これで整備されていたんだ。久間長官は整備されていなかったと言われればそのとおりだ、ただ非常に行政的にも政治的にも予見しがたいことだったので、そこをも含めて法の整備がなされていないではないかというおしかりを受けたらちょっと困るなというお話でした。私は決してしかっているわけではございません、そのような立場にはございませんので。ただ、私は、なぜこういうことが起こったのかということを言っているわけです。  その中で、まず予見可能性がなかったというお話なんですが、しかし成田問題はどうだったのでしょうか。成田問題がありました。それからまた、今総理が、これは私、ここの部分だけを取り上げて議論の的にするのは非常に私自身も不本意なことではございますけれども、あの少女暴行事件は沖縄における初めてのあの種の犯罪でございましょうか、どうでしょうか。お答えいただきたいと思います。
  113. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず第一に、大変残念なことでありますけれども、あの事件、たまたま年齢が非常に低かった、そしてさまざまな課題が、ある程度、相当程度沖縄県民の間にうっせきしている中に、ある意味では爆発をさせるような状況になったことは事実でありますが、こうした犯罪が以前になかったわけではございません。  そして、それは沖縄県だけのことでもございませんし、むしろ、私どもは子供でありましたけれども占領下日本本土においても、報道されたものだけでもその例を見ない事件ではございませんでした。ただ、その意味では、これは議論を私は吹っかけるつもりではないのですけれども、犯罪の発生というものを行政手続の中に織り込んで予見するべきなのかどうか、これはちょっと私、そこは異論がございます。  それと私は、成田の問題と、現象的には似ているかもしれません、しかし、成田の空港の建設決定から今日に至るまでのプロセスの中で生じた問題と沖縄県の問題とは、決定的に違う部分があると思います。成田の収用について、戦争という行為あるいは戦争の結果生じた占領という行為の残滓はございません。あくまでも日本政府の行政上の意思において場所を決定し、その中から問題を生じました。沖縄県における問題というものは、本院でもしばしば御論議がありますように、振り返るなら第二次大戦中までの陸海軍の基地建設から始まり、占領下における米軍の行為というものがそのもとをなしている。私は、ちょっと異質のものではないかと思うのですが。
  114. 西田猛

    ○西田(猛)委員 おっしゃったことはよくわかりますが、しかし今の総理の御答弁で、しかしながら今回のような問題が起こることの、政府において予見が全く不可能だったということは、一切これは言えないと思うのですね。そして、こういう問題が起こるかもしれないということを政府において考え、そしてそのためにではどうしたらいいのか、ではどうしていこうかということを考えておかれる、これは政府の責任だと私は思います。そのことを私どもの党としてもるる申し上げてきているわけでございます。  したがって、総理言われたように、法律の中でいつ起こるかもしれない勃発的な犯罪のことまで盛り込むのか、それは不可能です。私はそういうことを申し上げているのではございません。  そしてまた、成田の問題と沖縄の問題が質的なもので異なるということは確かでございます。しかしながら、反対するという勢力がいた場合にああいう方法をとるという手法的なものはそこで見えたわけでございますよね。それと沖縄県の歴史、私もよくは知りませんけれども、何度か私も前の仕事上沖縄県に参りました。その中で見てきたことでございますけれども、歴史館とか行きますと、決して今の駐留米軍の用地、使用の用に供した土地所有者方々が喜んで差し出したものばかりではないということは、これは歴史の事実でございますから、そういうことも踏まえて、政府としてはありとあらゆる角度からこの条約を担保する、あるいは国際上の責務を果たすということのために日夜研究を重ねておく、これが私は政府の責任であったというふうに思うわけです。  私のような若造が言うのも何ですが、先憂後楽という言葉がございますよね。これは、最近の若者は、先に苦しいことは苦しんで後で楽しもうなんという話にとっているらしいですけれども政府はやはり人より先に憂えてそのことを着々と手段をとっておくということだったのではないかなと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  115. 久間章生

    ○久間国務大臣 確かに委員御指摘のようなそういうとり方もあろうかと思います。  しかしながら、逆に考えてみますと、早い時期に、地方自治体といいますか、そういうような土地収用委員会等にゆだねられている。少なくとも今事業の認定といいますか、使用認定は国が、総理大臣がやることになっているわけですから、あとは期間が適正であるかどうかという、その適正な期間、あるいはまた費用が、損失補償がどれぐらいが適正か、そういうのを地方自治体にゆだねているわけでございますので、そういうような判断を地方自治体に任せているのに、この件については国のあれだから全部国でやりなさいというようなものを早目に法案を出しますとすれば、なぜ今の法律でやれないのかということで逆におしかりを受けるわけでございますので、だから御党の委員からもたくさん質問がありまして、そういう方々はもっと抜本的な法律をつくれという御意見がありました。  しかしながら、そのときだって、御党の中で、じゃそれが政策的にまとまっているかというと、必ずしもそうでなかったかもしれません。それぐらい、また国会全体としてもまだまとまってなかったかもしれないわけでございます。  だから、過去を振り返ってみると、あのときになぜ抜本的な法律をつくっておかなかったのか、そのときやっておけばよかったじゃないかと言われますけれども、我々としましては、できる限り現行法でやれるのじゃないかということでぎりぎりまで努力して、どうしてもやれなくなったので、ここで、もうびほう策と言われるかもしれませんけれども、最低限の、地方自治体のその権限、収用委員会の権限、そういったのにはできるだけ触れないで暫定使用の形でやらせていただきたいということでお願いをしているわけでございますので、どうかひとつ政府の方の今までのかかわってきました経緯等も踏まえながら、これが現時点では最善の策だということについて、ひとつ御理解賜りたいと思うわけです。
  116. 西田猛

    ○西田(猛)委員 ようやく話が法律論の方に戻ってきそうになったなと思っておるのですが、まさに今長官が言われたように、現特措法の第三条を見ますと、これは「駐留軍の用に供するため土地等を必要とする場合において、」中略しまして、「この法律の定めるところにより、これを使用し、又は収用することができる。」と書いてあるわけですね。だから、これそのものを見れば、それでできる。  ところが、このシステムの問題点は、この法の最後の第十四条で土地収用法適用しているというところが今回の問題点の出発だなと私は思うのですけれども、これを引用しているということについて、まず総理のお考え、長官、ありますか。
  117. 久間章生

    ○久間国務大臣 個人の財産権とそれから公共の福祉と、その調整を図っているのがまさに土地収用法でございます。そして、条約上の義務の履行と財産権の制限とのその調整を図っているのがこの法律でございますけれども手続等についてはそれは同じじゃないか、事業の認定等については違いますけれども使用認定、総理大臣と、片一方はいろいろな手続がございますけれども、必要だとなったときの、今度は持っている人の所有権をいかにして制限するか、その調整に関しては同じじゃないかという発想のもとに土地収用法適用しているわけでございますから、それは私はそういうやり方も立法技術的にはあったろうと思いますし、それはそれで適切な適用の仕方だったのじゃないかというように思います。
  118. 西田猛

    ○西田(猛)委員 先ほど総理の御答弁の中で、私の方から提起した問題点ではございますけれども、成田問題と、それから今回の安全保障に係る問題とは質が異なる、こうおっしゃいました。私は、まさにそのとおりだと思うのです。  ですから、土地収用法が目途としている法目的と、この特措法が目指さなければいけない、完成させなければいけない法の完成というものとはおのずと質を異にしているものなのですね。でありながらこれを適用しているというところが問題であると私は今申し上げておることでありますし、恐らく総理もそういうことを質が異なるという表現でおっしゃっていたのだと私も思っております。  そこで、このような事態を生じた、しかも今までの議論の中でも明らかになってまいりましたが、安全保障を担保しなければいけないという問題と、それからやはり国内的にはいろいろな工事を担保しなければいけないということと、それぞれ質の異なるものがあります。それを引用しておるわけですが、今回の問題を契機として、今回の改正法案は、それはそれでいたし方のないことだという防衛庁長官お話ですけれども、さらにこれを踏まえて、今後安全保障体制を万全にする、あるいは国際社会に対する責務を真っ当に果たすために政府としてどのような仕組みを考えていかなければならないかということをお聞きしたいのですが、そのお答えをいただきます前に、今の問いも含めて、きょうわざわざ来ていただいていますので、土地収用法の所管大臣である建設大臣に、その土地収用法安全保障を担保しなければいけないという法目的の中で引用されているというお立場から、このことについての、今の事態についての御見解をお伺いしたいわけです。
  119. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 先ほどから委員の御質問を聞いておりまして、また私に対する直接のそういう御質問をいただいたのでありますが、日米安保条約上の義務を履行する際に、その法律の中で土地収用を準用しておるその状況がいいか悪いかということについては、議論としては、これは別な法体系の中で処理をすべきだという議論もあろうかと思いますし、土地収用法を準用するという中でもやっていけるのじゃないかといういろいろな議論もあろうかと思います。  また一方で、成田の例を出されましたけれども条約上の義務を履行するということではなくても、国家目的といいますか、そういうものを遂行する過程の中で、機関委任事務というような形で土地収用法上の処理でいいのかという議論も私はあろうかと思います。  こういうことについては、現在地方分権推進委員会の中で国の事務と自治体の事務の仕分け等どうするかということの議論も進んでおりますが、それとあわせて今委員の御提言のようなことも全体として今後議論をされていくことであろう、このように思っております。
  120. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今の建設大臣お話ですと、私が申し上げたような基本的な枠組みをこれからつくっていくことも一つ視野に入れながら政府としてはいろいろなことを考えていくべきだ、そういうふうにお聞きしたのですが、それでよろしゅうございましょうか。
  121. 亀井静香

    ○亀井国務大臣 私は土地収用を主管する建設大臣でございますので、我が国安全保障についての直接の担当大臣ではございませんので、いわばそうした政策的判断について閣内においてのきっちりとした議論を経ないで建設大臣あるいは国務大臣という立場でそういう問題について私がどうだということを踏み込んで申し上げるわけにいきませんが、しかし議論としてはそういう議論というのは当然あるだろうということを申し上げております。
  122. 西田猛

    ○西田(猛)委員 議論としてはそういうこともあり得るということでありました。  それで、先ほど申し上げたような、建設大臣行ってしまいましたが、先ほど建設大臣にお尋ねする前に私が問いかけをしたことについて、防衛庁長官のお答えをいただきたいと思います。
  123. 久間章生

    ○久間国務大臣 今建設大臣が言われました御答弁の中でもありましたが、いわゆる国が、成田空港なら成田空港という、国家としてやる事業について、現在のような制度でいいのかどうか、機関委任事務でいいのかどうか、そういうような発言等もあったように思いますけれども、結局そこら辺が問題になるのじゃないかと思うのです。  だから、総理もかねてから言っておられますように、機関委任事務として、結局、地方の都道府県知事に、例の署名押印を拒否した、それについてやらせるという、その辺が時間がかかったわけでございますけれども、そういう機関委任事務についてどうするか、この問題がやはり根っこにはあるわけでございます。  しかしながら、これは今地方分権推進委員会において議論されておるわけでございますから、そういった議論等を踏まえながら、そういう中でやはり我々もいろいろと検討していかなければならないのじゃないかと思う。  今回のを振り返りましたときに、そういうところについて全然問題ないと思っていないわけでございます。ただ、一方で考えなければならないのは、この法案ですら地方の権限を奪うものだ、地方自治体を関与させないようにするのじゃないか、そういうことで、かなりの御批判が沖縄県を初めとしてあるということを私ども聞いております。  だから、そういったような声なんかもやはり頭の中に置きながら、一方、地方分権推進委員会がそういう地方への機関委任事務についてどうするか、そういう議論をされておられるわけでございますから、そういった点を両方相見ながら、こういう国会の場とかいろいろなところで議論をしていただきながら、やはりこういう問題については詰めていかなければならない問題じゃないか。政府が一方的に、これは政府立場で、地方とはまた違った政府立場でどんとやるということでもまたいけないのじゃないかなという素朴な感じも持っております。  だから、そこら辺は、やはり地方分権推進委員会がせっかく機関委任事務について中間報告を出され、しかもこの問題についてはまだ先送り、保留しておられるわけでございますから、そういった議論等もよく見させていただいてから議論をしていきたいと思っておるわけでございます。
  124. 西田猛

    ○西田(猛)委員 私は、冒頭、国の安全を、あるいは私たちが国民を守る責務は国民全体が、あるいは国の責務であろうというふうに申し上げました。私も、長年地方自治を推進する役所に勤めておりまして、地方自治の圧倒的な信奉論者であり、極端とも言えるほどの推進論者であります。したがって、司法、国防、外交以外のすべての国民にかかわる事務、行政は、これは住民を一番よく知っている身近な地方公共団体で行うべきであるという論を私は持っております。  ところが、今の現実を見てみますと、長官のお話にもあったように、本来地方が行うべき行政に国が口を挟み、本来的に国が行うべきである司法、国防−司法には口を挟むことはほぼないのでしょうけれども、国防、外交等について地方公共団体が、これは口を挟むということではなくて、重荷を負わされているという、あべこべの状況があるのじゃないですか。  そこを私は指摘しておるわけでして、地方分権推進委員会の議を待つとか待たないとかではなくして、国が国としてやるべきことを地方に重荷を負わせることについて、今後やはり政府としてしっかりとした考え方をまとめていかれなければならないのではないでしょうかということをお尋ねしておるのですが、いかがでしょうか。     〔委員長退席、中谷委員長代理着席〕
  125. 久間章生

    ○久間国務大臣 まあ委員がおっしゃられる意味もよくわかります。  しかしながら、一方で、私の立場というわけではなくて、政府として、地方分権推進委員会に、今こういう地方分権のあり方、特に機関委任事務等についてどうあるべきかということで議論をしていただいておるわけでございますから、やはりそういう議論をしてもらって、直接執行するものと、法定受託事務と固有事務、そういうふうに分けながら、その中において、こういう事務はどうするのかということで議論していただいておるわけでございますから、やはりそういった、提起している以上は、そういう議論を十分踏まえながらやはり議論すべきじゃないかという私どもの姿勢は間違っていないのじゃないかと私は思うのですけれども
  126. 西田猛

    ○西田(猛)委員 具体的なことをお聞きしたいと思います。  今回の問題だけじゃなくして、基本的な国の作用である安全保障にかかわる行政事務の一部が、現実の問題として機関委任事務として地方公共団体に任されている、負わされているという現実がございます。  この現実に対して、今の地方自治法の百五十一条の二では、要するにこの手続です、裁判をしてその職務執行を代行するという、いわゆるマンダマス・プロシーディングが書かれておりますけれども、そういう時間的な余裕がないこともあります、今回のように。そういう場合のために、何かしらその機関委任されている事務を国がやむなく代理しなければいけない、代行しなければいけないということを担保する方策を、今早急に、機関委任事務というものが現実に残っている現在で考えるというふうなことについては、お考えになられませんか、長官。
  127. 松本英昭

    松本政府委員 御質問の地方自治法首五十一条の二の職務命令手続でございますけれども、これはもう委員御承知のように、国の機関委任事務の執行確保ということと、それから、住民から直接選挙されました地方公共団体の長、この自主性、独立性の尊重、その調和を図るという観点から、代執行に際しまして裁判を経る、こういう手続になっているものでございまして、その趣旨は、機関委任事務制度のもとにおきましては、私どもは尊重されるべきであるというように考えております。  いずれにいたしましても、地方分権推進委員会の第一次勧告におきましては、「機関委任事務制度そのものを廃止する」、こういうことになっておりまして、現在、廃止いたしました後の法定受託事務の代執行手続、これをどういうふうにしたらいいかというようなことを審議していただいているところでございますので、そういうところの動向を見て判断すべき問題ではないかというように考えているところでございます。
  128. 西田猛

    ○西田(猛)委員 一般的な機関委任事務の件については、まさにそのとおりでございましょう。  私が今申し上げていた、そして長官がお答えになろうとしておられることは、今現に機関委任事務として残っているものがあって、それが国の安全保障等国の基本的な作用にかかわるものがある、この場合のことのお考えを聞かしていただきたいと言っているのですが、長官、御意見をいただきたい。
  129. 久間章生

    ○久間国務大臣 いや、そうはいいましても、今、機関委任事務一般として国の仕事を地方自治体に機関委任しているわけですね。それで、それはいずれも国がやるべきことであるわけです。国防政策上は、防衛問題は国がやることかもしれませんけれども、各省庁それぞれ、本来国がやるべきことを機関委任事務として地方自治体に任せているわけですから、大きいか小さいかの違いこそあれ、それはやはり国がやるべきことを機関に任せているということでは同じなわけでございますから、法理論として議論するときには、やはりそれは地方分権推進委員会等の議論を経ながら整合性あるものにしなければならないわけでございますから、そうしますと、国がやるべきことと地方自治体がそれを拒否したときの手続、特に地方の場合は、地方住民から選ばれている地方自治体が、その責任において、自分としては反対をせざるを得ない、そういう場合があります。そういうときの訴訟制度等は地方自治法で現在決められているわけでございますから、これはやはり基本的には変わらないと思うのです。だから、機関委任が大きいか小さいかによって、それによって手続が変わるということではないのではないか。  そういうことから、機関委任をどうするのかということが今地方分権推進委員会議論されて第一次勧告が出されておるわけでございますから、やはり私たちはこれを見きわめるべきではないか、そういうふうに思うわけでございますから、どうかその点、問題が大きいからそんなものは見ないでやっていいのだというふうな議論には私は発展しないというふうに理解いたしております。
  130. 西田猛

    ○西田(猛)委員 事の大小で私も申し上げているのでは当然ございません。ただ、現実的に、その地方分権推進委員会の議が出て、機関委任事務をなくす、要するに地方に任されている国の基本的な作用を全部国でやろうということになる前に、これはまだ大分時間が残っているわけですから、だから、今長官がおっしゃっていたようなことを政府が以前もしておられたから、今のような問題が起こったのだと私は思うわけです。次に考えよう、あした考えようというふうに言っておられたから、今ここでこんなような事態になってしまったということなのですね。  その中で、私は外務大臣にお聞きしたいと思っていたのですが、問いは、要するに、今回の駐留軍用地特措法に限らず、日米安全保障条約を担保していくために、国内法規の中で今回のような法の空白が生じ得るかもしれない制度がほかにあるかどうかについてお尋ねしたいのです。
  131. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど来の質疑の中でも明らかになっておりますように、私どもも、この問題につきましても、条約締結時におきましては、国内法との関係においてもきちんと担保されるという、そういう確信を持ってきたわけでございます。  しかし、先ほど来お話がございましたように、その当時想定もしなかったようないろいろな事情あるいは要素というものが重なりまして、今回こういうふうな法の改正をお願いしていることでございます。  これ以外のほかの分野、局面において、安保条約との関係において法の不備があるか否かという御質疑でございますが、私どもは、全体といたしまして今条約上の義務を果たしていく法の体制というものはあるんだ、こう考えております。法の体制でもあるものと考えております、全体といたしまして。
  132. 西田猛

    ○西田(猛)委員 ちょっとお答えが、私も理解が足らなかったのかもしれませんが、要するに、現行法体制の中で法の不備があり得るということですか。
  133. 池田行彦

    池田国務大臣 いや、現行の国内法体制で条約上の我が国としての義務を遂行していく、そのような体制があるということでございます。だから、対応できる、こう申し上げているわけでございます。  今回お願いしている件につきましては、条約の締結時におきましては対応できると考えてずっと来たわけでございます。また、現実に対応できたわけでございます、長きにわたりまして。  しかし、先ほど来質疑の中で明らかになっておりますように、条約締結時においては想定しなかった、また私は、想定しなかったということについて、それは決して、特に政府として十分な注意がなかった、配慮がなかった、足らなかったという御批判は余りないんじゃないかと思います、あの時点におきましては。ただ、その後、想定しなかったいろいろな要因が重なってまいりまして、今現実にこういうことをお願いしなくちゃいけないということになっておる。  ほかの分野におきましては、今私どもは見直しをしなくては対応ができないというような事情にはない、こう考えております。
  134. 西田猛

    ○西田(猛)委員 要するに、今の体制で安保条約を担保していく体制にはあるというお話だと思います。私もそれは当然そうあると思います。  ただ、いろいろなことが起こって、そして空白が生じ得る可能性が残っているということは事実、これは事実ですね。大臣いかがですか。
  135. 池田行彦

    池田国務大臣 それは、これからの、将来に向かってどうかというお話でございましたら、これは安保条約に限定せず、また条約との関係に限定せず、いろいろな国内の法制につきましても、これからのいろいろな事態の変化に応じて、今は考えられないけれども将来事情の変更に応じて新たなる手当てをしなくちゃいけない、そういった可能性があるということは、これは排除できない、こう思います。
  136. 西田猛

    ○西田(猛)委員 そのとおりでございます。  国民の皆さんにこれは誤ったメッセージを出さないように私は確認をしたいのですけれども、要するに、法的な体制として体制はとれていると。しかし、先ほどちょっと議論があって、これは本当に間違いのないように整理しておきたいと思うのですが、例えばああいう少女暴行事件があったからとか、それから二人いた所有者が何百人にもなってしまったから、何千人にもなってしまったからこんなことになったのだということでは、これはないのですね。  要するに、今の日本の法体制で全体的に担保していけるのですけれども、足らざる部分があるわけです。それはシステムに内在している問題なんですね。  ですから、総理にお聞きしたいのは、そこで今後、政府として全体的にこのシステムを、安全保障体制を担保するためのシステムを整備することを考えていかなければならないと思うわけですが、お考えはいかがでしょうか。
  137. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたけれども、これまでも当初想定しなかったいろいろな情勢の変化、そしていろいろな想定しなかった要因が複合する中で新たな法的な手当てをしなくちゃいけないということがございましたし、将来に向かってもそういう可能性は排除し切れないと私は御答弁申し上げました。しかし委員は、今おっしゃいましたのは、それはシステムに内在しているんだ、こういう御論議でございましたが、私はそうは思いません。  やはり日米安保条約をきちんと守っていく、そして我が国として条約上の義務を履行していくために必要な体制をつくる。そのための国内法の体制というのは、この日米安保条約との関連において、それを例えば一つの法律で担保していくようなものをつくらなくてはいけないんだ、それがないから問題なんだ、システム上の問題だというところにつきましては、必ずしも委員の御論議に同じ認識であるとお答えするわけにはまいりません。
  138. 西田猛

    ○西田(猛)委員 そうしたら、また一つの例を挙げたいと思います。  また瑣末な問題だとおっしゃるかもしれませんが、いわゆる楚辺通信所の問題ですが、これは平成八年の三月三十一日に期限が切れております。そして今回、今、本委員会審議しております法案が通ったといたしましても、この今審議している本法律案の附則二項で、担保を提供した翌日からこの部分については暫定使用が始まるというふうに書いてあるわけです。そうしましたらば、平成八年三月三十一日、期限が切れてから、本法律案が通って公布、施行されて担保を提供する日までのこの間、これはどういう状態になるわけですか。
  139. 久間章生

    ○久間国務大臣 それはもう無権原な状態、それは不遡及の原則もございますし、今度の法律は今言われたとおりでございますから、よくほかの委員から不遡及の原則に反するのではないかと言われましたけれども、そういうことにはならないわけでございまして、まさに今委員が言われましたように、それは無権原の状態のまま、その期間は残っちゃうということになるわけです。
  140. 西田猛

    ○西田(猛)委員 要するに、無権原の状態が残ったという事実を、今の現政権はこの安全保障条約という大切な国際約束の担保の中で歴史に残してしまったわけです。それは、そういう事件があったからとか二人が二千人になったからとか、そういうことだからですか。それだから、こういう大変な、いわば歴史的な汚点というか足跡を政府は残してしまっているわけですよ。
  141. 久間章生

    ○久間国務大臣 それはもう、形式的に言えばまさにそのとおりでございます。  ただ、その間、御承知のとおり裁決の申請は出されておりましたので、そういうようなこともございまして、また和解が成立しましたために混乱なく過ぎ去ることができれば非常にありがたいことでございますけれども、形式的に言いますならば、まさにそういう無権原な状態のまま、片や米軍提供して、片や本人には賃貸借契約が切れてしまっている。その間については、法的に言いますならば、その人に対する損失補償の、いわゆる法的な補償制度といいますか、そういうものに穴があいたということについても、もうおっしゃるとおりでございます。  だから今回の改正で、完璧じゃございませんけれども、その間についても協議をして、そして損失の補償をし、そしてまた、だめな場合には裁決ででもその期間の損失補償を相手さんにしなければならないという制度を入れているのもそういうことでございます。
  142. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今まさに防衛庁長官が言われましたように、形式的にということを強調されましたので、これもまた国民の皆さんに誤ったメッセージを受けていただいてはいけないと思います。これは実質的な問題でございます。  要するに、政府といえば、法治国家においては法を守らなければならない主体であります。その主体が無権原の状態をつくってしまったという、これは偶発的な出来事ではなくて、システムそのものに何かしらの問題があったからということにほかならないのではないかということを、やはり私はこの場で、委員会として考えておかなければいけないことだと思うのです。  したがって、そのことを踏まえてでも結構ですが、そのことと関連して、今後我が国における国家としての基本的な責務である安全保障体制を担保していくということについて、内閣総理大臣からもう一度、今後の政府の取り組みのあり方についてお聞かせ願いたいと思います。
  143. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 けさからでも何遍か、同様の姿勢についてのお問い合わせがありました。そして現状は、先ほど来申し上げ、また議員からさまざまな角度から御指摘を受けるような状況であります。  しかし我々は、日本として、日米関係の今後とも安定した状況でいよいよ深化する関係というものを国の将来のために必要としておりますし、その土台をなしておりますものが日米安全保障条約であることは申し上げるまでもありません。  そして、日米安全保障条約体制というものに信頼性を与えていくこと、これは日本自身のためになるだけではなく、これもしばしば申し上げてきたことですけれども、それがそのままこの地域における米軍のプレゼンスの確保としてアジアの安定の上にも極めて大きな役割を果たしております。  我々は、この条約を守らなければなりませんし、その条約を履行していく上で我々としての責任を果たさなければなりません。そして、その条約上の義務として負うておりますものの大切な大きな一つが、米軍に対する安定的な施設設備の提供とその円滑な使用を保障することであります。  そして、今日まで、現行法制のもとでそれなりに機能いたしてまいりましたものが、どういう事情がありましようとも、期限内に収用委員会の裁決の行われることを断念せざるを得ない状況になりまして、今回法案の御審議をいただく状況になりました。  そして、先刻来も御意見のありましたところでありますが、この議論の中で、一体こうした責任を国がとるべきなのか地方に預けておくべきなのかというお話が繰り返しあり、私自身、これはもう昨年の四月、御党の山口委員がこの問題を提起されたときに、条約上の義務の履行の責任は本来国の責任であるべきものということを御答弁を申し上げてきましたということから、繰り返し申し上げてまいりました。  その上で、当時は、内閣として地方分権推進委に作業をお願いをしながら、分権委が御意見を出しておられませんでしたから、私も自由闊達に御答弁を申し上げましたが、昨年の十二月に分権委の作業が第一次の勧告として結実をいたしました中で、分権委としてこれを調整中と位置づけておられます。  ですから、私は、先ほど来何遍も申し上げてきましたように、本来条約上の義務を履行することは国の責任と申し上げてきているところを撤回するつもりも何もありません。その上で、政府立場としては、地方分権推進委の御議論の結末をも見ながら広範に検討していきたいと考えているところであります。
  144. 西田猛

    ○西田(猛)委員 何度も御答弁いただきましてまことに恐縮だとは思いますけれども一しかし、本当に、今申し上げた──ただ、私が認識していただきたいのは、国が本来行うべき事務、行政をつくっていくシステムの中に将来的にもまだ、要するに、じゃ問題があると言うと言い過ぎだとすれば、当然、万全ではないということであります。そのことは政府も認識しておられると思いますので、今後とも、今総理がおっしゃられたような考えに基づかれて、ぜひ万全な体制がとれるシステムを構築していっていただきたいというふうに考えます。  それにしましても、今申し上げたように、国が本来負うべき安全保障責務のうち、しかも、これは国といえば国民、構成員である国民が全体として負うべきものであるというふうに考えますところを、この沖縄県に駐留米軍基地の四分の三が集中しているという状況から考えますと、これは余りにも、日本の他の地域の住民に比べ種々の危険に遭う蓋然性が高いというその一つの点だけをとってみましても、沖縄県の皆さんに対しては、我が国における法のもとの平等というものが十分に担保されているのかどうかという疑問を持たざるを得ないわけです。  いろいろと現地の方からもお話を伺っていましたら、要するに、あの方たちが思っておられるのは、何も自分たちが基地をたくさん持っている、あるいは危険に遭う蓋然性が強いということが嫌なんだということじゃなくして、等しからざることを憂えておられるわけです。等しからざることを憂えているというふうに認識をしておられるんだと思います。  したがって、そういう観点からすれば、私は、今後、冒頭申しました日本の国の成り立ちを考えても、やはり沖縄と北海道ということについては、もちろん北海道全部ではありませんけれども、一部にしても、ある種の特別な配慮を私ども日本全体としてしていかなければならないのではないかなというふうに考えております。  そういう意味でも、沖縄がなぜあれだけ基地がたくさんあるのかといえば、これはキーストーン・オブ・ザ・パシフィックだというふうに言われております。戦略上の要地であることは、これはもう交易上の要地でもあるわけですね。ですから、沖縄の位置的な、地政学的な利点を生かして、これから沖縄の皆さんが本当にどういうふうに自分たちがなっていったらいいのか、沖縄という地域がどうなっていったらいいのかということを踏まえて、いろいろなことを私たちとして考えていくべきだと思います。  その意味から、端的な一文字ですが、沖縄にだけ適用されてほかの日本地域には適用されないということも、私は、今後考えていっていいのではないか。いわば一国二制度、これは不可だという御答弁があったかと思いますけれども、必ずしも否定しておられないんであれば、じゃ、その一国二制度等も含めて、沖縄県についての今後の政府のあり方について、総理からお聞きしたいと思います。
  145. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 我々は、かつて全く気づかずに沖縄県の方々に利用できない法律をつくったことがございます。それは、先般も一つの例としてお話を申し上げた児童扶養手当制度でありました。  沖縄県は、御承知のように、御両親が国籍を異にされ、二重国籍になっておられるお子さんがあった時期があります。そして、当時、ベトナム戦争が熾烈であり、相手男性が死亡した結果、母子家庭となり、しかも母子の国籍が異なるというケースが多数存在をした時期がありました。その時期、我々は全く沖縄方々に使えなくなるという発想はなくて、児童扶養手当法の改正案を審議したのであります。それは、当然のことながらという前提で、親と子と双方に国籍要件をかけておる法律でありました。結果として、沖縄の母子家庭の相当部分方々がこれを使えなくなりました。  たまたま沖縄に参りましたとき、たしか那覇の国際福祉事務所の方々だったと思いますが、その母子家庭の代表者を連れてみえて、何とかしてくれと言われたとき、私は本当にその場で立ち往生じました。そして、おわびをし、翌年度の改正で必ず解決しますからというお約束をし、翌年、社会保障制度審議会にこれを提起し、当時の大河内会長の御配慮で、お母さんの方の国籍要件を残し、お子さんの国籍要件を外すことでこの問題に答えを出しました。しかし実は、今度は、それからしばらくたつと、そのお子さんたちがアメリカにおける徴兵制度、ベトナムの徴兵にかかるかどうかという問題を生じ、またこれに対する対策に腐心することになりました。  そういう意味で、私は、沖縄県が置かれている条件を考えれば、本土の各都道府県と違った制度を必要とする部分があることを決して否定しておりません。あるいは、自由貿易地域を実質的に効果あらしめるためにも、これを、例えば港湾機能や飛行場機能と結びつけながら拡充し使える、普通であれば、私は租税特別措置で工夫して対応することが一番実効性があるんだと思いますけれども、税制上の工夫をすることも必要でありましょう。  その上で、一国二制度という言葉を私は好みません。この言葉が一番ぴたりと合っているのは、香港の中国への復帰、その後の香港の姿であります。沖縄県に対しては、私どもはそういう考え方で接する気はありません。  それと、そういうこととは別に、一番私は沖縄県の皆さんと、大田知事とも議論をし、なるほどと言われ、その後まだ議論が集約しておりませんけれども、問題となるのはノービザ制度だと思います。沖縄県が非常に求めておられる制度であります。  しかし、御承知のように、今、組織的に密入国者を送り出している地域があると言われ、日本国内にもその密入国者を組織的に受け入れているグループがあると言われております。そして現に、本年になりましてからも、密入国者の取り締まりは現場は非常に苦労をいたしております。  そういう状況の中で、果たしてノービザ制度というものは本当に望ましいものなのか。これは沖縄県との間で、実は知事にもこの前申し上げたことであり、しかもなお、大変強い御希望を持っておられますから、何らかの対応方法があるかどうかを工夫をいたしておりますけれども本土の各都道府県にはない別種の制度をもって沖縄県の経済的自立、振興を図っていく必要があることを私は一度も否定したものではないので、この点だけはどうぞ御認識をいただきたいと思います。
  146. 西田猛

    ○西田(猛)委員 総理の御答弁で、私どもも今後とも頑張っていけるなというふうに考えております。  最後になりましたが、私は、安保万能論というのは非常に危険だと思っております。そしてこれは、非武装中立こそが日本を守るんだというのと同じように幻想的な話であります。したがって、本当に我が国を、我が国民を守るためには、私たち国民一人一人が魂の問題として日本のことを考えていかなければならない。  そのためにも、実は私は一九八九年に、かつて南西アフリカと呼ばれたナミビアに選挙監視隊長として参りました。我が国初めての組織的なPKOの派遣であったわけです。そのときに後方支援の団長として来てくださったのが、今ペルーで大使をしておられる青木盛久大使でございます。あの大使館が、日本が手薄だからといって襲われた、これは私は悲しい現実だと思います。我が国が世界的に、侵すべからざる信頼の友として世界から認知されるよう、今後とも政府の対応を期待いたしまして、私の質問を終えたいと思います。
  147. 中谷元

    中谷委員長代理 これにて西田君の質疑終了いたしました。  次に、村井仁君。
  148. 村井仁

    ○村井委員 四月四日、当委員会駐留軍用地特措法の改正案が付議されましてから、私どもも精力的に審議を続けてきたわけでございますが、一通りいろいろな角度から問題点を洗うことができたかと思っております。  四月三日の橋本自民党総裁・総理と私どもの小沢新進党党首との合意というのは、  一、日米安全保障条約は、我が国安全保障を確保するという国の根幹に関わるものであるという共通の認識に立ち、政府が同条約上の義務の履行に最終的責任を負う。  二、在沖縄米軍基地問題は、日米関係を円滑にし、絆を強化するとともに、沖縄県民の負担を全国民が担うという考え方に基づいて解決すべきである。  三、沖縄基地使用に係る問題は、県民の意思を活かしながら、基地の整理・縮小・移転等を含め、国が最終的に責任を負う仕組みを誠意をもって整備するものとする。 こういうことを合意したわけでありますが、私は、このたびの駐留軍用地特措法の改正のように、非常に重要な国益にかかわる問題につきまして広い合意が形成されつつあるということは、大変意義のあることだと思います。またこれが、日本の国際的な信頼というものをアメリカのみならず近隣諸国からも高めてもらうことができる、そういうゆえんだろう、このように思うものであります。  ここで最も重要なことは、沖縄基地使用に係る問題というのは、沖縄県民の意思を生かしながら、基地の整理、縮小、移転等を含めて国が最終的に責任を負う仕組みを整備するという決意の表明であろうかと思います。  総理はたびたび御答弁で、地方分権委員会審議にゆだねているので、現段階で御自分の意思を表明することは避けるという旨の御発言をなさっておられますけれども、政治家としては、このたびのような事態を招いた仕組みにいろいろ問題があったということは十分に御認識になっておられる、お認めになっておられる、私はそのように理解いたします。  昨日、私ども参考人の御意見をいろいろ拝聴したわけでございますが、田久保忠衛杏林大学教授、それから民主党から推薦されました森本敏中央大学客員教授、いずれも同じ御意見であられましたし、もとより、自民党から推薦のありました金城重正さん、あるいは太陽党から推薦されました末次一郎先生、いずれも同じような御意見であったというように私ども受けとめております。  考えてみますと、結局のところ、東京オリンピックを目指して昭和三十六年に公共用地特措法というのができ、そして建設大臣手続の途中で介入することができるという仕組みをつくっているという先例に徴しても、これは以前に予算委員会で私主張したことでもありますけれども安全保障というある意味では最高の公益に属することにつきまして、やはり新しい法律をつくって対応していくというのが、国の責任を果たし、そして結果的に沖縄基地の縮小を図っていくということを実現する本当に唯一の手段じゃないか、私はそのように思うわけでございます。  そういう意味で、いよいよだんだん時間も終わりに近くなってくるわけでございますけれども防衛庁長官そして総理からそれぞれこの問題につきまして、今後の運び方につきましてお話をいただければありがたいと存じます。
  149. 久間章生

    ○久間国務大臣 正直言いまして、沖縄の県民の皆さん方の意見も体しながら国を挙げてやっていく仕組みをつくるんだ、そういう話でございますが、非常に抽象的でございまして、例えば委員自身が、こういうような仕組みをおれは念頭に置いているんだということでひとつ提起していただけますと、非常に議論がかみ合いやすいのですけれども、私どもはこれを見ましたときに、具体的にどういうことなんだろう、本土の方に移転させるというようなことを法律でもって書いて、そしてそれのためには強権力が発動できるんだ、そういうようなことなんだろうかといろいろ考えてみたわけでございますけれども、どうもひとつ描けないわけでございます。  一〇四号線の問題について、あれですら、各地方自治体の皆さん方あるいはまた現地の住民の方々お話をするときになかなか御理解が得られない。そういう状況の中で、国が法律で何かそういう仕組みをつくるというのがどういう形でできるんだろうか。  だから、具体的に提起していただければ非常に、それに向かってまっしぐらにやりたいと思う気持ちはありますけれども、ただ、今やはり考えますのは、ともかくSACOで決まって減るわけでございますから、それについてまず第一歩としてやらせていただいて、そういう経過の中で、じゃ次どうするかというような形で進めていかないと、一遍にあれをこう持ってきてというような形で、絵にかいたようにはなかなかいかないような気がしてならないのです。  本当に、現地をとにかく五カ所回ってみまして、年間たった十日以内のそれをお願いするのですら、これだけやはり御理解がなかなか難しいのかというふうに思ってまいりました。やっと皆さん方、よし何とかしてやろうという気になっていただいてきておりますので、今は大変ありがたいと思っておりますけれども、それでございますから、ましてや大きい飛行場をどんと持ってきて、それをしかも強制使用の形ででもつくるというのは、そういうことが現実問題としてやれるのか。成田ですらあれだけの年数がかかったわけでございますので、ましてや米軍の飛行場をつくるとなるとなかなか大変なので、それをどういうふうに念頭に置きながらこういうふうに考えておられるのか、そういうところはよくわからないだけに、お答えにちょっとならないのかもしれませんが、非常に戸惑いを感じておるわけでございます。
  150. 村井仁

    ○村井委員 いろいろなやり方があると思うのですよね。さっき私は公共用地特措法の例を一つ引かせていただいた。これは、簡単に言えば、収用委員会でどうしても一定の期間内に話がつかなかったときには建設大臣が直接事業を進めるということを決めるということでございますよね。こういうやり方もある。あるいは、去年一度防衛施設庁の中で検討されたと報道された、私ども立場ではそういう言い方しかできませんけれども、国に特別の行政委員会をつくってこの問題を直轄して処理をする、こういう方法もありましょう。いろいろなやり方があるのだろうと思うのです。  もちろん、今防衛庁長官お答えのとおり、そういう制度をつくったからそれで直ちに物事がすべて進む、そんなふうにはだれも考えていませんよ。そうではなくて、どこへ基地を持っていってお願いしようかという話にしても、実際は国の防衛施設庁という機関がいろいろ段取りしているわけですよね。それを、最終決定権を収用委員会にお願いしているという仕組みでは、余りにもある意味では無責任じゃないですかということを私どもは言っているわけで、国がもっときちんと責任を持つ体制、それはいろいろな方法がありましょう。法律論もいろいろありましょうし、実際に今までに積み上げた行政経験もありましょう。そういうものを踏まえてやるべきだということを私どもは申し上げ、まだそういう意味での合意が私ども新進党の党首と総理の間で、そういう何らかの仕組みが要るね、そういうものを誠意を持って整備するという方向性は合意されているということを私は申し上げたつもりであります。そういう意味で御理解をいただきたい。  時間の関係もございますので、私は、ここへ来まして、五月十四日というデッドラインの日を控えて、こうして特措法の改正を急遽やらなければならないというような今度の事態になったことについては、いろいろな原因はありましょうけれども、やはりある意味では冷戦時代の遺制だと思うのですね。  といいますのは、日米安全保障というものを支える基地提供手続、これはもう非常に重要なものでありまして、先ほども西田議員初め同僚議員からたびたびいろいろ指摘がありましたけれども、その手続に欠陥があるなしの問題については、それはいろいろ議論があるでしょう。しかし、事ここに至ったについては、欠陥が全くなかったとは言えない。こういう欠陥があるということを、事態がここに至る事情はいろいろあれ、露呈したということ、これは私はやはり非常に実は重要な問題を含んでいると思うのですね。  といいますのは、いわゆる俗に有事法制というふうに言われておりましたり、あるいは自衛隊の行動における指揮官のマニュアルの不備というような指摘がいろいろな形でされておりますけれども、そういう問題とある意味では共通した問題だと私は思っております。本当は現在のこの駐留軍用地特措法も、もしもいわゆる冷戦構造というものなかりせば、もう少しきちんとした体制が早い時期に整えられていただろうと私は思うのです。同じように、有事法制や指揮官のマニュアルの不備というようなことで指摘されることも既に片づいていたと思うのですけれども、残念ながらそういうことがやれるような環境ではなかった。  しかし、今や非常に広い、何といいましょうか国民的な合意もそういう問題については形成されつつある、私はそのように思うわけでありまして、そういう意味で、政治的なリーダーシップは今非常に必要なんじゃないかと思うわけであります。  さっき総理から、近隣諸国から密入国者も入ってくる事態だということで、沖縄のノービザというような問題、なかなか踏み切りにくいのだという御指摘がございましたけれども、たしか二月の初めでございましたか、下甑島に中国人が集団密入国した事件があった。交番のお巡りさん、二、三人しかいない。そこでとりあえずは川内署ですか、どこかからともかく警官が派遣されて、その密入国者はそれなりに保護はしたわけでありますけれども、ほかにもいるんじゃないかということで、それで消防団が百三十人ばかり出動したという事件があった。その際に、あそこに航空自衛隊のレーダーサイトがあるのですね。その航空自衛隊の隊員が三十人ばかりお手伝いに出た。お手伝いに出なければ、これは随分おかしな話で、はっきり言って物笑いの種ですよ。  ところが、さあそれを報道する新聞報道、どうなっているかというと、命令もなしに出た、何だ、こういう話になるのですね。それで、訓練目的だ、こういう理由をつけて出た。もちろん、自衛隊のいろいろな行動につきましてある程度の制約が必要だということは、それは私もよくわかります。しかし、常識的に考えて、こういう事態のときに出るのが当たり前、動くのが当たり前。しかも、そのときにわざわざエクスキューズをして、武装していなかったと言って説明しているのですね。私は、これは非常に残念なことだ。これは、相手が武器を持っていない密入国者のグループだったからよかったけれども、もしそうでなければ、警官でなければ何も対応できないのかということになる。  これは、一番問題なのは何だというと、結局、現場指揮官がそのときそのときで、ある意味では自分の職を賭して判断しなければならない、非常に酷な環境に置いているという現実なんですよ。  私は、そういう意味で、今やらなければならないことは、例えばこの委員会議論でも既に論じられておりますけれども、有事という言葉はいかにもおどろおどろしいですけれども、いざというときに、本当に自衛隊がどういうふうに行動をするんだ、どういう行動を許されるんだ、どういう手続をとるんだということをあらかじめきちんと決めておくということは、もうそろそろやらなければいけないことだと思うのですね。  その研究というのは、私の知る限り、防衛庁の中ではそれなりに勉強もされている、政府内部である程度の横の調整もされている。大切なことは、政治のレベルで、これをやっていいよ、この勉強を進めなさいという決断を下す、そのことではないかと思うのです。  それをやらないと、いつまでたっても指揮官は、自分がやっていることは本当に大丈夫なんだろうか、あるいは現場の指揮官がみずからの保身のために不作為を選ぶ、こういうような恐ろしい事態も、御身お大切ということになれば招きかねない。私は、これでは自衛隊の存在意義というものも疑わしくなる。あるいは不作為か、あるいは自衛隊法違反か、どっちを選ぶのかというようなことを常に指揮官が考えなければならない、そういう状態をいつまでも残しておいてはいけないと私は思うのですね。  そういう意味で、今度の特措法の改正問題というのを一つの教訓として、これは私は一歩進めていただきたいと思うわけであります。この点については、防衛庁長官のみならず、総理の御見解もぜひ伺いたいと思うのです。
  151. 久間章生

    ○久間国務大臣 まず私の方から答えさせていただきますけれども、こういう委員会で野党の先生からこういう御議論を出していただけるというのは、私どもにとりましては大変ありがたいことでございます。  防衛庁としては、現行の自衛隊法により、防衛出動時における自衛隊の任務遂行に必要な法制の骨幹は既に整備されているというふうに考えております。しかしながら、これまでに行ってきた有事法制の研究を踏まえると、自衛隊がその任務を有効かつ円滑に遂行するためには、現行法制上なお不備な事項も残されていると考えております。  我が国の防衛を担当している防衛庁としては、研究にとどまらず、その結果に基づき法制が整備されることが望ましいと考えておりますけれども、いずれにせよ、単に研究にとどまらず法制化するか否かという問題につきましては高度の政治判断に係るものであり、特に国会における御審議、国民世論の動向等を踏まえて対応すべきものでございまして、今御指摘のように、国民世論も変わってきているじゃないか、国会審議もこれは大いにやるべしという意見が強まっているじゃないかというような御指摘は、そういう意味で大変ありがたいと思っている次第でございます。
  152. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員から御指摘を受けて、その下甑島のケースをもう一度読み返してみました。そして、本当に、警察への協力行動で行えば何ら問題がない、むしろ褒められるべきもの、マニュアルとして選択を誤ったのかなという感じもないではありません。むしろ出動したこと自体は、私は適切な判断だったと思うのです。問題は、警察活動への協力という形だったのではないのか、官庁間協力ですね。  そして、私は実は、こういう手続、今長官からもありましたように、相当程度に整備されていると思います。しかし、それを運用する場合にさまざまな疑問が生じたり問題があるのであれば、いろいろなことを想定しながら、これからも一層充実して対応できるような努力はしておく必要があるであろう、私はそう思います。  それから、有事法制というのは本当にいろいろな角度で今までも議論されてきました。そして今国会ぐらい、むしろ有事法制に積極的に野党の皆さんが論陣をそろえられて、何となく政府の方が引っ込み思案みたいな感じがするというのは私初めての経験ですけれども、やはり私はそれだけ世の中が変わりつつあるのかなと思いますが、これが一過性でないことを私は願っています。  そして、高度の政治判断というもの、国会における御論議あるいは国民世論の動向等をしっかりと踏まえて議論をしていかなければならないもの、政府として当然の研究をすることは必要なことですし、研究もしてきました。法制化となりますと、そうした点を考えていくべきものだと思います。
  153. 村井仁

    ○村井委員 私は、国民世論の変化ということもありますが、やはり、率直に言って、日米ガイドラインの問題とか、いろいろこれから控えている課題があるわけでございますね。それを考えますと、これはもう避けて通れない話であって、イデオロギーによる対立の時代はもうある意味では終わったわけでありますから、本当に意味のある議論をこれから国会の場でもしていける、そういう環境になっていると思うのです。  以前のように、機関銃を一丁持っていくか二丁持っていくかというようなばかな話があった時代に、私など非常に残念だと思いましたのは、機械というのは壊れるんです。機関銃というのも、あれは結構壊れやすい武器でございまして、あれ一丁、二丁ですと、壊れちゃったら後どうしようもない。使えないということがばれた途端に、これはもう非常なリスクにさらされるわけですよ。そういう実態というのをもうちょっとやはり私ども認識して対応しなければならない、そういう課題だと思うのです。  そのことを申し上げまして、さて、時間もだんだんなくなりましたので、昨日、私ども参考人の意見聴取で、沖縄の皆様からも大変深刻なお話を伺いました。とりわけて金城重正さんからいろいろな話を伺ったわけでございます。  英語で、日本語の同情という言葉に相当する言葉が二つあって、自分が経験したことと同じことを人が経験したときには、シンパシーという、まさに同情という言葉を使う。それに対して、自分が経験していないことの場合には、これは何か感情移入とかいうような訳語を当てられているんだそうでありますけれども、エンパシーという言葉になるんだそうであります。私はしょせん、沖縄の皆様の大変つらい御経験につきましては、その後者の、自分が経験していないことについてのエンパシーという意味での同情しかできないのかもしれませんが、それにしましても、できるだけのことをしなければならないということを痛感をいたしました。  それで、具体的に可能な話がきのうの参考人意見陳述で出てきている。それは何だといいますと、金城重正さんが御指摘になったことですが、軍用地が返還される、ところが返還されてからその跡地が再開発されるまでに、これは何遍も引用されている数字でありますけれども、平均して十四年三カ月かかっているという事実であります。その間、基本的に地代が入らない。  そこを埋めるために、平成七年の五月に、三年間だけ軍転特措法で補償を行うということになったわけでありますけれども、この制度ができる際に地元が要求していた数字は、実際は六年なんですね。それで、平均して十四年三カ月、こういう時間、実際に必要な時間、その間、全然収入が入らないという実態を考えますと、私は、これはひとつ前向きにどうしても考えなければならない問題じゃないかと思うんですね。  地主は、結局今になってみれば五十年間、簡単に言えば、米軍土地をとられて、そしてやっと返ってきたと思ったらまた長期間無収益の状態を強いられる。この問題を何とか改善するということは、私はどうしても必要だろうと思うんです。これをやらないと、私は、今の沖縄の皆様の非常につらい声というのにきちんとこたえることにならないんじゃないかと思うんですね。  この問題、直接の御担当は防衛庁長官でしょうが、同時に開発庁長官のお仕事にもつながると存じます。それぞれ御見解を伺いたいと思います。
  154. 久間章生

    ○久間国務大臣 平成七年の五月に議員立法により、この軍転法については、いわゆる返還給付金の支給期間を延長するようにとの要望が、平成七年五月にできたわけでございますけれども、この延長ということにつきましてはなかなか、ほかとのバランスの問題もあるのかもしれませんが、やはり返還されました跡地が時間がかかる、そういう事情は私どももよくわかるわけでございます。  ただ、一つ非常に難しいのは、正直言いまして、今のいろいろな関係で、普通でございますと、国有地を返してくれと言われる方はいろいろな計画があって返してくれと言われるから返すわけでございますけれども、この間二万九千人の地主さんたちが来られました、そういった方々は、おれたちは返しくれと言ってないんだ、ほかの人たちが返してくれと言って、返すんだ、そして我々は収入が入ってこなくなるんだというふうなことをおっしゃられまして、話を聞いていて本当にそれは気の毒だなと思いました。だから、普通、国有地等を要らなくなったから返すという場合と、あるいはまた地主さんたちが返してくれと言って返す場合とで、ちょっと沖縄の場合は違うんだなというふうに思いました。  しかしながら、本来はやはり、返った跡をどういうふうにそれを利用していくのか、そういう計画の中でこういう問題はやっていくべき問題でございまして、当庁としても、返還された土地所有者が早期に跡地利用を開始できる状態にすることが重要であると考えておりまして、そのために、返還の見通しについての通知、民公有地の上に国有財産が所在している場合の物件撤去及び原状回復等を可能な限り速やかに行うよう努力しておると同時に、後ほど沖縄開発庁長官からお答えになると思いますけれども、こういうような返還地をどうやって今度は開発して利用していくか、そういう問題については鋭意、一生懸命やっていこうと思います。  ただ、これは、本法律が議員立法により制定される際の国会におけるさまざまな御議論の結果と理解しておりまして、この三年間に決まりましたのは。そういうことを考えますと、現在、当庁としては、支給期間の延長というのは考えてないわけでございます。     〔中谷委員長代理退席、委員長着席〕
  155. 稲垣実男

    稲垣国務大臣 委員御指摘のように、この返還特措法は、平成七年、議員立法で成立されており、現在施行されておる法律でございますので、まず、この同法を適切に執行していくことが極めて大切なことであろうと思うのです。  返還跡地の有効利用は、沖縄振興開発の上で極めて重要な課題でありますし、現行の関係法律を最大限に活用いたしまして、御指摘のように、返還特措法の改正につきましては、現段階では具体的に考えていることはございませんが、返還跡地の整備に対する制度、手法につきましては、今後、沖縄開発庁を初め関係省庁及び沖縄県が参加した沖縄政策協議会基地跡地の利・転用プロジェクトチームにおいて検討していくことになっているのでございまして、いずれにいたしましても、沖縄開発庁としては、跡地の有効利用の促進について、引き続き精力的に取り組んで、適時適切に対応してまいりたいと思う次第であります。
  156. 村井仁

    ○村井委員 防衛庁長官から、議員立法だから政府としてはいろいろ言えない、こういうお話がございましたけれども、私はやはり、私どもとしては、この問題、恐らく与党の皆さんも非常に深刻な問題意識を持っておられると思うのです。そういう意味で、この点については、恐らく共同して何らか前向きの手だてを講ずることができるのじゃないかと確信をしております。  以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
  157. 野中広務

    野中委員長 これにて村井君の質疑終了いたしました。  次に、北村哲男君。
  158. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 民主党の北村でございます。よろしくお願いします。  民主党は、この法案につきましては、その態度を決めるについて、正直なところ、悩み、大きく揺れてまいりました。しかし、最終結論はまだ出ていません。  その理由は、大きく言いますと三つの点でございます。  その第一点は、たびたびここで議論になってきました沖縄の心、その心にどうこたえていくかという問題であります。第二点は、今後、沖縄をどうするか、その方向についてまだ見えていないということ。第三点は、特措法自体が抱えておる法律的な問題点でございます。  今までも議論になりましたけれども、憲法二十九条あるいは三十一条、三十九条、九十五条と、これほど憲法との関係が問題になってくる法律も珍しいと思います。  民主党は、二つのことを条件にして本案に賛成していこうという合意がほぼできております。その条件の一つは、五項目の提言をしてきたことであります。二つ目は、この法律を五年間の時限立法にしたらどうだろうかということです。  二番目の点は後に回しますが、まず最初に、五項目の提言について申し上げますので、政府の御見解ないし御決意を伺いたいと存じます。  その第一は、沖縄県民思いを踏まえ、在沖米軍を初め在日米軍の兵力構成・レベルについては、北東アジア地域を含む国際的な安全保障環境の好転を図りつつ、日米安全保障協議委員会あるいは日米安全保障高級事務レベル協議の場において、日米政府間で緊密に継続的に協議するよう努めていただきたいという点が第一点であります。  第二は、政府は、日米合同委員会の枠組みなどを活用し、米軍により環境を含め公共の安全や国民生活に妥当な考慮が払われるようしかるべく対処していくこととしているが、国内法に準じた環境保護の徹底、軍事演習の周辺地域への影響の最少化について、改善が得られるよう日米両国政府努力を求めていただきたいという点であります。  第三は、三者連絡協議会の活性化を図るため、沖縄大使を通じ、非公式の打ち合わせを関係者に呼びかけさせ、日米合同委員会における正式な位置づけの明確化に努めていただきたいという点であります。  第四は、大胆な独自制度の導入等による自由貿易地域制度の拡充及び国際観光の発展のための環境整備について沖縄政策協議会で積極的に検討させ、これらの課題について、平成九年中に結論を得ていただきたいということです。  五番目に、沖縄米軍基地所在地市町村に関する懇談会、いわゆる島田晴雄懇談会でまとめた提言の具体化に努めていただきたいということでございます。  これがいわゆる五項目の提案でございますけれども、これらについて、総理はいかように考えておられるか、御見解と御決意をお聞かせいただきたいと存じます。
  159. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 限られた時間でありますので、一項目ずつお答えを申し上げることもはばかりますけれども、本委員会におきましてしばしば御党の御質問に対してもお答えをいたしましたように、私どもは、この現在の沖縄の状況を何とかしなければならないというその一点において、基地の整理、統合、縮小に、SACOの最終報告でもお示しをしたような努力をする。同時に、基地振興に向けての努力もしてまいりました。  そして、こうした問題の取り組みには、当然のことながら、我々が今後やっていくべき努力の方向というものはおのずから定まってくると思います。その中で、今後のこうした問題の取り組みにつきまして、御指摘の沖縄米軍基地問題に関する民主党と自民党との合意五項目というのを我々も拝見をいたしました。そして、その方向、政府が目指しておるところとそう食い違うものではない。そして、こうした合意も踏まえながら、今後とも努力をさせていただきたいと思っております。
  160. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 確かに、今総理の言われたように、民主党と自由民主党の間に五項目についての合意を四月八日に、締結というか、合意に達しました。ぜひこの線に従って、政府の方にも御努力をお願いしたいと存じます。  次に、二番目に私どもが問題にしております法律関係について、若干の質問をしていきたいと思っております。  楚辺通信所が、平成八年四月一日に国の強制使用期間が切れて、ここに一年を経て、米軍使用の継続を続けておる、いわゆる空白状態になっておるということについてでございますが、当初、国はこの状態を、必ずしも違法ではないというふうに釈明しておられます。私は、この無権原で使用している状態はいわゆる不法占拠であって、はっきりした違法状態であろうと思っております。政府は今でも、必ずしも違法ではないという立場をとっておられるのか。もしそうであるならば、何も特措法を改正する必要がないのではないかというふうに思えるし、また、このようなあいまいな表現をして不法状態を正当化する態度がかえって問題をこじらせてきたと私は理解しております。  それは、平成八年五月十一日に下された、緊急使用の申し立てに対して沖縄収用委員会が出した不許可の決定の一つに、緊急取得の必要性の判断があります。ここで収用委員会は、国が言うところの、現在の占有状態は直ちに必ずしも違法状態ではないと国が言っているじゃないか、そういうふうに国は釈明しておりますよ、そうしたらその必要はない、何も緊急使用の必要はないんじゃないですかといって、却下の理由の一つに挙げているわけです。  私は、そこで、国の今の現状は不法占拠でかつ違法であるから、このままだと返還しなくちゃならなくなるということをはっきりと正直に言うならば、むしろ問題をすっきりさせたのではないかと思っておりますけれども、現在の政府の御見解は、どういうふうにお考えなんでしょうか。
  161. 久間章生

    ○久間国務大臣 楚辺通信所の一部の土地につきましては、昨年三月三十一日に国と土地所有者の間の賃貸借契約終了し、四月一日以降、その占有につき権原がない状態になったのはもう御指摘のとおりでございます。  しかし、目下、駐留軍用地特措法に基づき、土地使用の権原を得るために、所定の手続をとり、引き続き適法に使用し続けるための努力を行っていることなどから、当該土地土地所有者に返還されていない状態について、直ちに違法であるというふうには当たらないのではないかとあのときに官房長官が言われたわけでございまして、現在でもこの考え方に変わりはございません。  しかしながら、直ちに違法ではないというものの、明け渡し請求訴訟が今行われております。あるいはまた、立ち入り請求がございまして、それに基づいて和解をして、二回ほど六十人の人たちに入ってもらったわけでございます。そういう状況が続くことがいいかどうかとなりますと、これはまた別でございますので、やはり今回の暫定使用の制度をつくるときに、それもあわせて、この法律施行後は少なくとも暫定使用という形で包含させてもらいたいということで法案を提出させていただいておるわけでございます。
  162. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 ただいまも、必ずしも違法ではないということをまだ言っておられる。これは非常に言葉をあいまいにさせるので、やはり日本の国民が遵法精神、法律は守らなくちゃいかぬ、借りたものが終わった後は返さなくちゃいかぬということ、これははっきり言って違法な状態なんです。ですから、そこのところは余りあいまいにされなくて、はっきりさせた方がいいと私は思います。  ところで、知花さんが土地明け渡し訴訟を出しておられます。既に四回の口頭弁論が開かれておりますけれども、その中で、やはり国の方の考え方は、報道によるのですけれども、法的な使用権原がないことはまず認めた。それから、明け渡しによる国の不利益は、安全保障政策及び国際関係にも影響を及ぼすほど甚大であるというふうに主張しておる。しかし、この明け渡し請求権利の乱用であるというふうな主張をしておられるのです。これほどに安全保障政策に影響を及ぼして、国に不利益を及ぼす、そして国際関係にも影響を及ぼす、不利益が生ずる、これは甚大であるというふうに言っておられる。それに対して、国の責任といいますか、そういう状態を生じさせてしまった国の責任はどうなんだろうかということであります。  一つは、法的な責任が生じます。一年以上の空白。先ほど長官が言われました、損害賠償を払うとか、使用料。しかし、また明確になっていないのは、これほどの国際関係に重大な影響を及ぼし、そして国民に不安を与えてきたときに、政治的な責任、法的な責任ではなくて、政府の政治的な責任はどういうふうに果たそうとしておられるのか。口ではいろいろと言われておりますけれども、目に見える政治責任についてはどのように考えておられるのだろうか。その点についてお伺いしたいと思います。
  163. 久間章生

    ○久間国務大臣 委員おっしゃられます政治的な責任というのが何なのか。知花さんに対しては、これは損害賠償その他、そういう責任はあるかもしれませんけれども、国の負う政治的責任というのは、これは混乱を生じさせてはいけないとか、あるいはまた米軍に対する義務をきちんと果たさなければならないとか、そういうのをきちっと果たせなくなるというのがまた責任でございまして、そういうことになってはならないものですから、裁決の申請に、この知花さんのものも一緒にやって一十三施設を今申請の申し立てをやっておるわけでございます。裁決が得られれば使用の問題は解決しますし、また、その間においては、こういうふうな形で無権原になったらいかぬということで暫定使用の制度をつくってもらう、その中にあわせて知花さんのものも出そうとしているわけで、政治責任と言われましても、どういうようなことなのか、私自身もはっきり言ってとらえようがないわけでございます。
  164. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 先ほどの西田先生からの質問でも、一年間にわたる空白状態をつくってしまった、歴史上に汚点を残した、汚点とまでは言われなかったのですけれども、重大なことを残してしまったというふうなことをお認めになりました。  私は、通常、民間であっても、会社と会社が契約をして不履行を起こして責任を負った、損害賠償を払っても、その場合、例えば社長が辞任するとか担当重役が辞任するとかという、いわゆる政治責任を民間でも負います。これを、国と国との関係は、国際関係に対する政治的責任、また国民に対する政府の責任というのはやはりあると思うのです。それについて、新しいものをこれからつくればそれで治癒されるという問題じゃないと思うのです。やはり、残った歴史的な過去の問題については、何らかの責任を負わないと、ああやりっ放していいんだな、将来的によくしさえずれば責任は果たしたな、それも責任の果たし方の一つですけれども、過去の問題は消せないのですから、それに対するやはり何らかの責任は目に見える形で負うべきだと思います。いかがですか。
  165. 久間章生

    ○久間国務大臣 今、橋本内閣になりまして、沖縄との関係でいろいろな問題について解決を目指してやっております。また、その一環として、これから先もこういうことのないようにしなければならないということで、こういう法律も出させていただいております。  しかし、過去の今までの経過の中で、こういうふうにおくれて、無権原な状態が一年にわたってできた、それについて政治的な責任をとれと言われましても、その意味をどういうふうにとればいいのか、具体的に言われればそれはあれかもしれませんけれども、その当時その当時は精いっぱいなことをやってきたのじゃないかという気もするのです。しかしながら、いろいろな事情がありましたために、ああいう形になってしまった。  振り返ってみますと、責任をちゃんととっておったとは言えないかもしれませんけれども、それをどういう形で責任をとれとおっしゃるのかよくわかりませんが、正直に言いまして、なかなかとりょうがないのじゃないか。現在の時点で、与えられた責務を一生懸命混乱のないように精いっぱい努めるのが私ども政府の責任じゃないか、そういうふうに思っております。
  166. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 どういう責任をとるか、私は先ほどある別の例をとって示唆をしましたので、それ以上言うことはやめたいと思っておりますが、私は何もなしで将来だけに向かってというのは、やはりどこか何かを残すし、釈然としないものが残るような気がします。  ところで、過去にもやはり同じ問題が起こっております。過去の、不法占拠と言われる昭和五十二年五月十四日から五月十八日までの、いわゆる歴史上に言われる地籍明確化法の立法化の際に、これは附則に公用地法による強制使用五年間ということがあって、さらに五年間の延長の強制使用が認められたのですけれども、この法律が五月十八日に成立しておって、四日間の使用期限切れという状態が起こりました。  このいわゆる空白の四日間について政府はどのように解釈し、あるいはどのように説明してきたのか。同じように、必ずしも違法ではないというふうな言い方をされておったのか、またこれについてどのような形で処理をされたのだろうか、それについてはいかがでしょうか。
  167. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 お答えします。  公用地暫定使用法を御審議いただく際に、昭和五十二年でございますが、いわゆる次の法案が通るまでの間に四日間の空白がございました。その間、私どものいわゆる法的見解としては次のような点を当時の法制局長官から述べております。  一つ、「この法律は期限のついた法律ではないので、昭和五十二年五月十五日以後も有効であるが、第二条第一項ただし書の期間は過ぎているので第二条による権原はない。従って第四条による返還の義務がある。」それから二つ目には、「五月十五日以降も返還するまでは国は管理する義務と権限があり、それに必要な行為を適法にすることができる。この規準に照らして適法な行為を行っている。」それから三つ目は、「現に議題となっている法律案が成立し施行されれば、国は、暫定使用法による使用の権原を取得するに至る。」というのが当時の政府見解でございます。
  168. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 要するに、そのままということですね。今回の一年についてももうそのまま残って、不法占拠の事実がそのまま残る、それはもう歴史的な事実として残る、こういうふうに聞いてよろしいのですか。
  169. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 当時は、衆議院のいわゆる議決は終わっておりまして、参議院法案審議中でございました。それで、その四日後にはそういう法律が通るという前提がございまして、その間、今申し上げたような、いわゆる民法上では事務管理的なことを政府としてはやる必要があるだろうというような考え方に基づいて適法であるとの解釈がされておる、こういうふうに理解しております。
  170. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 次に、収用委員会使用認定の裁決の申し立てを却下した場合には、施設庁が上級庁である建設大臣に対して審査請求をする、そういうシステムになっておるわけですけれども、その間も暫定使用ができるというふうなのが今回の改正法であります。もし建設大臣が取り消すと、収用委員会の再審査の判断を拘束してそのまま使用の継続ができるという形ですよね。現に沖縄において、実例としてこの建設大臣に審査請求をしている例があるようですけれども、それは大体五年たってもまだ結論は出ていないというふうなことも報告されております。  そうすると、この法律によるといかなる事態になっても、数年あるいは今では実例としては五年、いろいろな言い方をすると半恒久的に使用は続けることができるというふうになっておるのですけれども、そうなると、現行法で保障されておる期限の制限といいますか、それを逸脱することになるのじゃないか。ちょっと抽象的になりましたけれども土地収用法が緊急使用を六カ月に限っておるということは、その六カ月については更新も延長も認めていない。これは、やはり私的所有権の制限を無制限に認めることは憲法二十九条との間で好ましくないというのが立法趣旨だ、こういうふうに思うのですよね。  そうなると、今回のこの一部改正は、土地収用法に定めているこの百二十三条の緊急使用を例外として認めたことについての趣旨をはるかに超える法律であるというふうに思っています。  そこで、まず法制局に、この六カ月の期限を区切った立法趣旨と、更新とか延長というのはなぜ認められないのだろうかということについて、簡単にお答えを願いたいと思います。
  171. 小鷲茂

    ○小鷲政府委員 土地収用法に基づきます緊急使用期限についてのお尋ねでございますので、私ども所管いたしております立場で御説明をさせていただきたいと思います。  基本的には先生が御指摘になったとおりでございまして、この規定が発動される前提といたしましては、収用の裁決申請がなされた後に緊急の事情があって、緊急使用しないと公共の利益が損なわれるという場合に許されるものでございます。  ところが、一般の場合には、裁決申請をいたしましてから裁決が出るまでには大体六カ月程度というのが通常の姿でございますので、これを一つの目安として期限を切っておるわけでございます。これによりまして、関係者の審理促進を期待すると同時に、おっしゃいましたような暫定的な権利関係を早く収束させよう、こういう趣旨であろうと考えております。
  172. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 幾つか法律的な問題点がこの改正法にはあると思うのですけれども、この六カ月という点一つを見て、かなり長い期間所有権侵害との批判を避けるために、あるいは日本の法制度の安定性というか法的安定性のために、この法律を最大限どこかで区切るということも私ども民主党の考えでおるところでありますけれども、既に理事会では提案しておりますが、私ども民主党は、この特措法の一部改正案に対する修正案を提出しております。  これは、暫定使用に関する規定を施行日から五年後に失効させるということがその目的でありますが、それを求める趣旨は今私が言ったようなことでありまして、結局、いつまでも国民の権利を一方的に奪っているような形はやはりよくないのではないか。だから、期限を区切る、あるいは法的な空白状態を招くようなことは避けるべきであるということ、特に時限を付すことによって、必要最小限度といわれている政府のお考えをさらに国民に明確にするという趣旨でこの修正案を提案しておるわけですけれども、それについてはどのようにお考えでしょうか。
  173. 久間章生

    ○久間国務大臣 御承知のとおり、この特措法というのは日本全国に一応法として適用されておるわけでございます。たまたま今本土にはございませんけれども昭和三十七年までは本土でも五十件に上るこの法の適用があったわけでございます。  現在、沖縄の問題につきましては、今度仮にいろいろとありますと、前回みたいに五年間ということになりますと五年間は出てこないかもしれません。それでまた、こういう仕組みそのものがいいかどうかについては、先ほど来言っていますように、地方分権推進委員会等の議論を経ながら、また各党会派でも御論議いただいてつくっていけばいいわけでございますけれども、少なくとも現在の制度があるわけでございます。こういう制度で、今後、来年あるいは再来年契約期限が来ます土地等についてこういう事態が発生しないかというと、それは発生し得る可能性はあるわけでございます。  そうしますと、せっかく暫定使用の制度をそういうことで発足させて、現在の法律上不備な点があって、それを少なくとも裁決の権限は奪わないけれども裁決が行われるまでの間は暫定使用をさせようという制度をつくるならば、これは来年あるいは再来年に起こるかもしれないそういったところにもやはり適用するのが筋じゃないか、そういうふうに思いまして、私どもは、時限立法にせずに、これは現行法の本文を変えて、それに伴ってたまたま今手続をしておりますものだけを附則に書いて、やはり本法の改正として出しておりますので時限法にするわけにはまいらないのじゃないか、そういうふうに思っております。
  174. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 私どもは、なお時限立法にすることを強く求めていきたいと思っております。  ところで、今までも委員会で問題になっておりました、また、特に昨日の参考人の御発言の中でもこういうことがありました。たとえ不法占拠状態になったとして、現に使用している以上、自力救済を禁じているので、実力で土地内に入ったり取り返すことはできないはずだ。  また、過去の判例によっても、これは一九五四年七月五日の判決なのですが、これは私どもの党の松本議員のおじいさんの松本治一郎さんが板付基地土地を持っておられまして、そこで、使用貸借期限が切れたので返せという裁判をされたのです。それで、一九五六年二月十三日の一審の福岡地裁では、これはもう使用期限が切れたのだから返すのは当たり前であるということで、松本治一郎さんを勝訴とした。しかし、二審の福岡高裁あるいは最高裁では、これはそうはいっても国際上の義務があるのだから権利乱用である、権利乱用であるから返す必要はないという判決を下して、結局はこれは確定しておるわけです。  今回についても、国側は同じような主張をしておられます。使用権原はないけれども、それは権利乱用ではないかと。私は、判例からいっても、これは今の状態でも当然使用は続けられるというふうに思いますし、また、何か村山首相が頭が悪いとか言ってやめられた宝珠山さんも、どこかの発言で同じようなことを言われて、何もそう騒ぐことはないじゃないか、このままの状態だって余り問題はないのだよというふうに言われて、私もふと同感を覚えたということがあるのですけれども、それについてどのようにお考えになるのか。いろいろとそういう疑問も私どもに残っているし、多くの人たちにも残っておると思いますので、その辺についてのお考えをお聞きしたいと思います。
  175. 久間章生

    ○久間国務大臣 確かにおっしゃいますとおり、今回もしそんなようになったとしても、現に提供されている米軍としては、それは条約に基づいて使っているわけでございますから、それに対して返せと言いましても、恐らく権利の乱用として明け渡し請求に対しては退けることはできるかもしれません。  しかしながら、知花さんのときにもありましたように、立ち入り請求については、これは恐らく国としてはそれを認めざるを得ないだろう。そのことを今度は米軍に対して申し入れをしなければならないだろう。そういうことになりますこと自体が、国は提供義務があるのに、法律上欠陥がありますのでこういうふうに言ってきましたから立ち入らせてください、そういうふうに言っていくこと自体が、これは国際信用上物すごい落ち度になるわけでございます。  それともう一つは、立ち入りをさせた場合に、知花さんの場合は一人で六十人でございました。今度は三千人の方がそれを要求してきたときに、一人で六十人ということになりますと、単純に六十倍を掛けるわけにはいきませんけれども、もしそういうことを想像したときには、この混乱は今までと全然違うような気がいたします。  そういうことを考えますと、やはり私は、これは違法な、違法といいますか、そういうふうに無権原になっても現実には管理されてそのままやれるじゃないかというような、そういう議論にはくみするわけにはまいらないということについても御理解賜りたいと思います。
  176. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 時間が参りましたので、これで終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  177. 野中広務

    野中委員長 これにて北村君の質疑終了いたしました。  次に、近藤昭一君。
  178. 近藤昭一

    ○近藤委員 民主党の近藤昭一でございます。特措法の改正につきまして幾つか質問させていただきたいと思います。  先ほど、私どもの党の同僚議員も触れさせていただきましたけれども、私どもは、今回の特措法の改正につきまして、五項目の提案をさせていただきました。  私たちの思いといたしましては、日米安保体制は、これは維持はしていかなくてはならない。しかし、この維持をしていくのは、あくまで私たち国民一人一人が平和で安全に暮らしていく、このためであります。そして、その中には、もちろんすべての国民、もちろん沖縄県民も入っているわけであります。  ところが、午前中にもちょっとお話が出たかと思います。ウチナーンチュヤマトンチュという言葉、もちろんこの中に軽べつの言葉あるいは差別の言葉があるとは思いませんけれども、しかしながら、本土の人とそしてまた沖縄人たちを分けて、自分たちとそして向こうの人、そういうような呼び方があること、やはりそこに沖縄人たち思い入れがあるのではないかというふうに私は考えるわけであります。沖縄の心、思いということ、これはなかなかこれだというふうに表現するのは難しいとは思います。  しかしながら、沖縄の多くの人たちにとって、国の安全、平和、これはわかる、しかし、それならばなぜ、米軍基地というものが日本の国土、全国に散らばっていないのか、私たちの沖縄県に七五%の面積基地が集中しているのか、そういう思いが起こるのは当然だと思います。  また、起きます環境問題、あるいは航空機等の事故の報告、これがどうもなかなかきっちりと素早く行われない、沖縄県とそして米軍とが対等の立場でどうも交渉がされない、そんなことに対する不信感があるのではないでしょうか。また、いつまで沖縄米軍基地が駐留するのか、この状態がいつまで続くのか、そういった不安があるのではないかと思います。  私どもは、そういった不安を少しでも今回の法改正に反映させたい、そういう思いで、五項目の提案と、また時限に関する修正案を出させていただくわけであります。  ところで、この五項目の提案あるいは修正案、そういったことも踏まえまして、今、駐留米軍は必要だ。先般、アメリカの国防長官が、朝鮮統一があったとしても米軍を削減する意思は今のところはないということもおっしゃられました。しかしながら、今後私たちの日本日本国としてどうしていくのか。十年後の日本安全保障体制というものをどう描くのか。  例えば、やはり日米関係安保体制をもちろん堅持していくのでありましょうが、それを中心としてずっとやっていくのか、国連はどういうふうにあるべきなのか、世界の、またアジア安全保障について日本はどういうリーダーシップを果たしていくのか、そういったことも含めて、総理の御所見をお伺いしたいと思います。
  179. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今大変広範な御質問をいただきました。そして、できるだけ重複は避けたいと存じますけれども沖縄県また県民に対する思い同僚議員にお答えを申し上げました中で、民主党と自由民主党の間の合意というものも踏まえさせていただきたいということを私は申し上げてまいりました。  そして、現在の国際情勢の中におきまして、十年後の国際情勢がどうなっているであろうか、確実な予測をすることは不可能であります。そして私は、残念ながら、十年という期間の間に、現在各地に起きております地域紛争のすべてが解決している、新たな紛争の種はその間に生じないというほど世界は安定をしていないように思えてなりません。さらに今、各国が経済力をつけていきます中で、それぞれの軍備の近代化が行われ、それがお互いの間のまた緊張を呼んでいる、そうした状況もこの地域に存在しないわけではありません。  そうした中におきまして、我が国は、やはり日米関係というものを基軸とし、日米安全保障条約体制というものを基盤とした我が国安全保障体制をその時期においても必要とするであろうと考えております。その間には、当然ながら、午前中来御論議のありました、例えばガイドライン等につきましても今より明確化をしておるでありましょうし、さまざまな法制上の議論も今より進んでおりましょうが、基本的に我々が日米安全保障条約体制というものを必要とし、それを基盤とした日米関係の重要性を抱えているということは、私は十年という期間で変化をすることはないと思います。  また、それならば、十年後の沖縄はどうなんだ。十年という期間の中で、残念でありますけれども、私は沖縄県における基地の問題を全部解決できているとは到底考えられないと思います。当然ながら、このSACOの合意事項を進めていきつつ、沖縄県の基地の整理、統合、縮小というものはこれからも我々は追い続けてまいりますけれども、十年という期間でこれが完了するといったほど私は状況の甘いものではないと思っております。  その上で、十年の間に一番変化しているであろう、また変化してもらわなければならないのは、その間には沖縄振興策というものが相当な効果を奏していなければ困る。そして、少なくとも今の雇用失業情勢というものが変わっていなければ困る。本土各県に比べて沖縄県の失業率が異常に高率であり、しかも若年層においてそれが顕著といった状態は変えていかなければなりません。また、変えるための努力を全力を尽くしていかなければなりません。  そのためには、本委員会におきましてもしばしば御論議のありました自由貿易地域の量的、質的な拡充でありますとかさまざまな産業上の施策、これに加えまして、より高度な教育機関を沖縄県内に整備をする、研究機関を整備をする。さらには、既にこれは一部実施に移しつつありますが、大田知事とのお話をしております間に、沖縄県からの留学生の数が減少している状況を何とかしたいというお話があり、既に大学については動き始め、来年から、むしろ今度は高校の生徒さんたちの留学というものも考えたい。既に知事との間で御相談をしております。あるいは、同時通訳養成制度、県が既にスタートをしておられますものも、国もこれに加えていただき、拡充をしてまいりました。  要するに、産業政策だけではない、それを支える人材育成の面も、その十年の間には当然ながら大きく変化をいたさなければなりません。そして、当然ながら、沖縄県内におけるインフラも整備をされていくでありましょうし、この面においては、私は、沖縄県の十年というものは大きく変わっていただくだけの素地を我々は全力を挙げてつくっていく責任があると考えております。
  180. 近藤昭一

    ○近藤委員 ありがとうございます。  今、総理からお聞かせいただいたお話の中で、幾つかちょっと御質問をしたいのですが、確かに、十年後、時間的にもそう長いわけではありませんし、非常に複雑な世界情勢の中でどう描くか、難しい問題だと思います。ただ、その中で、私たちの国日本が能動的に動いていく部分はかなりあるのではないかと思います。そんな中で、朝鮮半島の問題、この朝鮮半島の平和、安定について日本がどう貢献できるか、このことについてはどうお考えでしょうか。
  181. 池田行彦

    池田国務大臣 朝鮮半島の安定化、これは、我が国にとってはもとより、この地域社会、あるいは国際社会全体にとっても大変大切な問題でございます。我々が、こういうふうな方向に行ってほしいなといろいろなことを考えますが、その中の一つは、やはり朝鮮半島の南北間の関係が改善すること、これは基本でございましょう。そしてまた、国際社会に対して、全体として開かれたといいましょうか、そういった方向に北朝鮮が進む、このことが望ましい方向でございます。もとより、我が国との間では国交の正常化という課題がございます。今申しましたような、そういった三つぐらいの観点を頭に描きながら、我が国としても、この半島情勢の安定のためにいろいろな努力をこれまでもしてまいりましたし、これからも継続してまいりたいと思います。  例えば、これまでどういうことをしてきたかと申しますと、御承知のとおり、当面、南北対話、あるいは国際社会に開かれた体制をつくる、姿をつくる一つのきっかけとして四者協議というプロセスがございます。これは、昨年四月に米韓両国大統領によって提唱されたところでございますが、我が国は、これの当事者ではございませんが、直ちに橋本総理からこれに対する支持を表明されまして、その後もいろいろな機会にそういった姿勢を明確にしてきたところでございます。  それからまた、これは核疑惑の問題とかかわる問題でもございますけれども、KEDOのプロセスにつきましては、米韓とともにこの理事国としてこれまでも役割を果たしてまいりました。  また、そのほかにも、米国、韓国、あるいは中国といったような、この朝鮮半島の問題について当事者であったりあるいは深いかかわりを持つ国々との間での、二国間、あるいは場合によっては三カ国のいろいろな協議の場がございますが、そういったところで常に意見を交換し、また、場合によっては協調をしながら行動してきたところでございます。これからも、そのような努力は継続してまいりたいと存じます。
  182. 近藤昭一

    ○近藤委員 ありがとうございます。  今、お答えの中で、幾つか具体的に、こう行動してきたというお話がありました。その中で、私は少々気になるのは、日本がどうしてきたかというよりも、米国あるいは韓国あるいは中国と一緒にやってきたというお話が多かったような気がします。もちろんそういう状況も必要だと思うのですが、ただ、どうでしょう、最近どうも、韓国、特に中国でありますけれども日本に対する感情がよくないような本が出ておるわけですけれども、特に中国の日本に対する感情的なものをどういうふうにお考えでしょうか。
  183. 池田行彦

    池田国務大臣 中国は、もとより我が国の非常に近しい国でもあり、それからまた、経済、政治、文化、いろいろな面でもつながりがございます。そういった中で、両国の国民のお互いの国に対する気持ちというのは、いろいろ、時には非常に盛り上がったり、また、場合によりましては若干冷めたりという、そういう経過がございますが、確かに、おっしゃいますように、ここのところ、世論調査などの結果を見ますと、我が国においてもそうでございますが、中国においても、日本に対する感情というのがいっときに比べますといささか冷めた感じになっているかなということは我々も承知しておりますし、また、それを、ある意味では懸念もし、改善するための努力をしているところでございます。  しかし、その根底のところには、日本の国、日本の国民もそうでございますが、中国側にも、やはり日中関係は大切だ、これを友好裏に推移させなくてはいけない、さらに発展させなくてはいかぬ、ここのところはよく理解されていると思いますので、そういったことで進めてまいりたいと思います。  特に、委員も御指摘されました最近の調査でというのは、実は、昨年の後半あたり、いろいろ両方の国民の気持ちを高ぶらせるようなことがちょっとございました。しかし、その後、御承知のとおり、双方でいろいろな努力をいたしまして、昨年の十一月、APECの際には江沢民主席とそれから橋本総理との間で首脳会談も行われ、この両国関係を一層進展させていこう、ことしは国交回復二十五周年の年にも当たるんだしということで合意もなされましたし、先般、私も中国を訪問いたしまして、江沢民主席あるいは李鵬首相にもお目にかかり、とりわけ外相会談におきましては、日中関係の懸案についてもいろいろ話をしたわけでございますが、そういった中で、両国関係をさらに友好裏に進めていくために、これから首脳の相互訪問も含む、広範な、またいろいろな、濃密な日中間の交流を進めていき、またその懸案についても、それの解決に向かっての努力を進めていこうということで合意もしたところでございまして、これからも日中関係改善に最善を尽くしてまいりますし、私は、必ずそれはできるものだ、こう考えております。
  184. 近藤昭一

    ○近藤委員 ありがとうございます。  今後の、日本の国民が安全に、そして平和に暮らせるためにも近隣諸国との友好関係は大切でありますし、大切にするためにも、私は、やはり国内の問題、沖縄県民との信頼関係、これは非常に大切にしていっていただきたい、そういう思いであります  ところで、先ほどもちょっと総理の方からもお話がありました。十年後の沖縄はどうなっているか、まだまだ基地の問題はすべて完了していないだろうというお話がありました。しかしながら、今SACOの問題が合意して、これをこれから推進していくということが決まっておるわけであります。そしてまた、沖縄振興策も進めていく。この中で、ヘリポートの問題が出てまいります。普天間基地の移転の問題でありますが、こういったことを解決していくために、かなりの予算が必要になってくると思います。そこで、もちろん、ヘリポートをどういう形でつくるか最終的に決まっていないわけでありますが、そのヘリポートをつくるのにどれぐらいの予算がかかると見込んでおられるのか、お聞かせいただければと思います。
  185. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 ただいま御質問の中にもございましたけれども、工法が幾つかあるわけでございます。昨年、SACOの最終レポートの中で三つの工法が示されております。その工法をどうするかという問題のほかに、まず場所をどこにするのかということも非常に重要な問題になってまいります。おおよその概念はあるわけでございますけれども、実際に施設をつくるということになりますと、運用所要も具体的に確定せざるを得ない、こういう不確定要素がたくさんございまして、特に、設置場所についてまだ決まっておりませんし、この設置場所によって非常に大きくまた変わると思いますので、現時点で、この経費の見積もりについてはまだできていないところでございます。
  186. 近藤昭一

    ○近藤委員 なかなか難しい問題ではあると思いますが、それをおきまして、そうしますと、一連のSACO関連の予算がこれから出てくるんだと思いますけれども、このSACO関連の予算につきまして、例えば湾岸戦争のときにおきまして、日本の拠出金の一部、たしか六千八百億ぐらいだったと思いますが、これが、中期防衛力整備計画費の中から一部の六千八百億円が拠出されたと思いますけれども、例えば、こういった防衛力整備計画費の中からSACO関連経費を捻出していく、そういうようなお考えあるいは計画があるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  187. 久間章生

    ○久間国務大臣 SACO関連経費につきましては、中期防をつくりましたときは、「引き続き在日米軍駐留支援及び沖縄施設区域の整理・統合・縮小を含む在日米軍の駐留を円滑かつ効果的にするための施策を推進する。」と記述されているところでありまして、中期防策定時には想定されていなかったわけであります。  今度の財政構造改革会議においては、聖域を設けなく、あらゆる経費を対象議論が行われているところでありますけれども、防衛力整備についても、「SACO関連事業を着実に実施するとともに、中期防衛力整備計画について、現行計画における整備水準等の見直しにより、縮減(又は期間の延長)を検討する。」とされましたことを踏まえまして、SACO関連経費の全体規模及び内容が明らかになった段階には、両者の関係について適切な整理を行う必要があるというふうに考えております。
  188. 近藤昭一

    ○近藤委員 ありがとうございます。  橋本総理におかれましても、財政の再建、財政健全ということが非常に大きな課題だと思います。その点につきまして、ぜひ御留意をいただきたいというふうに思っております。  ところで、先ほど総理のお言葉の中にもありました、沖縄振興させていかなぐてはいけない、それについて、計画をし、そしてまた実施をしてきている。過去におきましても、第一次、第二次、第三次と沖縄振興策が図られておるわけでありますが、その効果をどのようにはかっておられるのか。そしてまた、計画をより実効あるものにするためにどのようにしていらっしゃるのか、そのあたりについてお伺いをしたいと思います。
  189. 稲垣実男

    稲垣国務大臣 今日まで二十五年間にわたりまして、一次、二次、そして今三次の折り返し点ということで、後期展望を沖縄審議会の方でただいま検討しているところでございまして、その方向づけとしては、これから沖縄が、何にしても、長期的に見まして、自立経済を目指し、そしてまた若年労働者の方たちが十分に職が求められていくように、そしてまた、本土人たちと遜色のない所得を得られるような、そういう方向づけについて、私どもは着実に今次までやってきた。ただし、まだ道半ばだ、こういうことでございます。  さらに、詳細につきましては、後ほど政府委員よりお答えいたします。
  190. 近藤昭一

    ○近藤委員 沖縄の所得は低い、また失業率も高いという状況でありますので、ぜひとも実効ある振興策としていただきたい。  そしてまた、そこで要望なんでありますが、私どもの提案いたしております五つの中にも入っております、やはり沖縄に自立をしてもらう、そしてまた自立を中心とした振興をしてもらう、また、その振興策を有効にするために、やはり沖縄の声をしっかり聞いていただきたいという意味でも、三者連絡協議会、あるいは私どもがまた提案しております沖縄米軍基地所在地市町村に関する懇談会の提言でございますが、これをぜひ具体化していただきたいと思います。今回の特措法の改正につきましては、市町村の九割近くが反対しているようであります。そういった意味でも、この市町村の声を切実に受けとめていただきたい、そんな思いがするわけであります。  ところで、私は、沖縄の問題をよく家を貸すこと、土地を貸すことに例えるわけでありますが、大家さんが土地を貸してほしいとある人から言われた。どうしてもこれは大きな目的のために必要だからということで頼まれるわけであります。そして、自分のあいている土地をある人に貸した。貸したはいいけれども、その貸した期限を、いつまで貸すのかという契約を明確にしてくれない。また、裏庭だけを、庭だけを貸したはずなのに、いつしか土足で自分の母屋まで乗り込んできている。知らないうちに来てしまっている。そんな状況が間々、時々あるのではないか。そういう状況に例えております。  沖縄方々にとって、基地そのものをなかなか、騒音等の問題で、基地はできれば削減してほしい。  それとまた、基地関連の犯罪、これをやはり沖縄住民の方は非常に気にしていらっしゃると思います。自分たちの町がいかに安全に暮らせるか、これを非常に気にしていらっしゃると思うのですが、沖縄におきまして米国の軍人が犯します犯罪の検挙数についてのデータ、復帰後間もないころ、また最近の何年かのデータがあれば、お教えいただきたいと思います。
  191. 佐藤英彦

    佐藤(英)政府委員 お尋ねの件に関します当庁の統計は、昭和四十八年以降についてでございます。昭和四十八年は二百九十一件、そして五年前の平成四年以降申し上げますと、四十二件、六十七件、七十七件、五十四件、そして昨年の平成八年は十六件でございます。
  192. 近藤昭一

    ○近藤委員 ありがとうございます。  復帰後間もないころは、大変に混乱していた中であったと思います。それが、最近五年間に関する、特に昨年は随分と検挙数が減っているようでありますけれども、この数値をどう見るか、大変難しい問題ではあると思います。また、これはあくまで検挙をされた、検挙をされたことによって米国の軍人が罪を犯していたということがはっきりするわけでありますから、検挙されない部分でまた事件が起こっているかもしれない。そしてまた、この数値は決して私は少なくない数だという  ふうに思います。  御承知のとおり、一昨年、小学生の暴行事件が起きました。やはり沖縄人たちにとって、土地を貸すのは、まあ仕方がない。もちろん、積極的な方もいらっしゃるのかもしれません。仕方がないと思って貸している方にとって、やはりそういった犯罪が起きること、これは私は耐えられないことではないかというふうに思うわけであります。そういった意味で、ぜひとも、先ほども申し上げましたような三者連絡協議会を実質的なものにしていただきたい、そんな思いがするわけであります。  ところで、この日本に駐留する米軍の問題で、まだまだアジアが不安定だ、完全な平和ではない、だからこそそういったアメリカ軍のプレゼンスが必要だという話があるわけであります。ここでひとつ、私は、剣道をお得意であります総理にお伺いをしたいわけでありますが、駐留する海兵隊というのは、軍事力にはやはり攻める軍と守る軍というものがあるのではないかと思いますが、この海兵隊というのは攻める軍なんでありましょうか、守る軍なんでありましょうか。
  193. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 昨日の本委員会におきまして、北清事変の話から海兵隊の記録が述べられました。北清事変においての海兵隊は守る軍であったと思います。あるいは、古くなりますなら、トリポリ上陸作戦、これは海兵隊は先鋒部隊として出ましたけれども、全滅に近い悲劇を受けました。その後の第二次世界大戦においても、ヨーロッパ戦線、必ずしも攻める場面だけではなく、守る場面に使われたケースも多々あったと存じます。太平洋戦線においては、海兵隊はむしろ米軍の反攻とともにその力を発揮し、まさに攻める部隊であったと承知をいたしております。朝鮮戦争においては、相当程度の敗北も喫し、守る側に徹したこともありますし、また、上陸作戦もあったかと思います。
  194. 近藤昭一

    ○近藤委員 ありがとうございました。  時間も参ったようでありますので、質問を終了させていただきますけれども、今後の日本を含むアジアあるいは世界の安全保障にとって、やはり信頼関係というものが私は一番大切だ、そのように思っております。  ありがとうございました。
  195. 野中広務

    野中委員長 これにて近藤君の質疑終了いたしました。  次に、木島日出夫君。
  196. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党木島日出夫でございます。  最初に、防衛庁長官に、現行米軍用地特措法の仕組みについて基本的なことを二点だけ確認をしておきたいと思うのです。確認でありますから、主観を交えないで簡潔にお答えを願いたい。  第一点。米軍が現に使用中の土地について地主との合意に基づく使用期限が到来したとき、または特措法による収用委員会明け渡し裁決で定められた使用期間が満了したときは、米軍及び日本政府による土地使用権は法律上消滅する。そして新たな使用権原の取得がない限り、土地地主に返還されるべき法律状態になること。間違いありませんか。
  197. 久間章生

    ○久間国務大臣 使用権限がなくなるのは法律上そうでございます。ただし、地主に返るか返らないかは、これはいわゆる、先ほども別の委員からの質問がございましたけれども、板付の訴訟等にあるように、権利の乱用としてそれは拒否される場合があろうかと思います。
  198. 木島日出夫

    ○木島委員 余計なことは答えなくていいと思うのです。返るか返らないか云々というのは聞いていないことでありますが、特措法が引用している土地収用法第百五条で、期間が満了したときは「遅滞なく、その土地土地所有者又はその承継人に返還しなければならない。」とはっきり書いてあるわけであります。  それでは第二点。この場合、米軍が引き続き合法的に土地使用するためには、地主との合意がない限り、収用委員会による緊急使用の許可、これは土地収用法百二十三条、法十四条でありますが、これがあった場合を除き、土地収用委員会による権利取得裁決及び明け渡し裁決がなければならないこと、これもそのとおりでありますね。(久間国務大臣「もう一回、ちょっと」と呼ぶ)よく聞いてください。そういう場合、期間が来た場合、米軍が引き続き合法的に土地使用するためには、地主との合意がない限り、そして収用委員会による法に基づく緊急使用の許可があった場合を除いて、土地収用委員会による権利取得裁決及び明け渡し裁決がなければならない。米軍が引き続き合法的に土地使用することはできない。当然だと思うのですが、確認しておきたいと思うのです。(久間国務大臣「何か落とし穴がある」と呼ぶ)落とし穴なんてないですよ。法律そのものじゃないですか。
  199. 伊藤康成

    ○伊藤(康)政府委員 法律関係でございますので、私から答弁をさせていただきます。  先生米軍がとおっしゃいましたけれども米軍はあくまで地位協定に基づきまして日本政府との関係使用しておるわけでございます。したがいまして、日本政府としましては当然その種の米軍提供するための権原が必要である。そして、先生御指摘のような場合には、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、権限がなくなる状態ということでございます。
  200. 木島日出夫

    ○木島委員 私は落とし穴なんかに落とすつもりはないわけであります。  土地収用法百一条で、権利取得裁決がなければ取得できない。同じく法百二条で、明け渡し裁決がなければ物件引き渡し、占有ができないとはっきり書いてあるのです。そのことを二つ、前提にいたしました。確認をいたしました。  そこで、次に質問いたします。  改正法案はこの仕組みを変える、そして総理大臣使用認定と防衛施設局長明け渡し裁決の申請があれば、使用期間が切れても明け渡し裁決がなくても暫定使用権が付与される、こういうことです。また、収用委員会による却下の裁決がなされたときでも、防衛施設局長の建設大臣に対する不服審査請求があれば、米軍日本政府に暫定使用権が付与される、そういうことですね。  これは、収用委員会の裁決機能を事実上空洞化させる、そして国民の財産権を侵害する憲法違反の法改悪だということを七日の当委員会で我が党の志位書記局長が指摘したところであります。  ところで、では逆に、このことを土地所有者立場から見るとどうなるかお聞きしたい。  期限が切れたとき、自分の土地を引き続き米軍用地として貸すのはやめたい、海兵隊の基地として使用されたり、あるいは一昨年の少女暴行事件のような犯罪の根拠として使われるのはもう耐えられない、こう考えて返還を求める地主土地が戻るのは、改正法案が成立した場合、法律上どういう場合でありましょうか。
  201. 久間章生

    ○久間国務大臣 確かにおっしゃるように、地主の方から見た場合には、その期限が来た後には自分の方に返ってくるだろうな、そういうふうな思いがあろうかと思います。しかしながら、裁決申請がなされておりますと、その期限前に収用委員会が裁決をして、明け渡し裁決があったならば返ってこないわけでございます。そういう意味では、そういう期待を裏切ることには暫定使用といえどもなるのかもしれません。しかしながら、それはあくまで期待でございまして、期待権というはっきりした権があるわけではございません。  そういうことで、いわゆる今度の場合も、裁決がなされるということを前提にして、その裁決がなされるまでの期間は暫定使用を認めようではないか、そういう制度をつくろうとするものでございまして、そういうような限定された効果をねらう今回の法律の場合は、それは憲法上も許されるというような解釈のもとに私どもはこの法律を提案させていただいておるわけです。  それで、先ほど、却下されて、しかもその後不服審査請求がなされた場合には云々と言われましたけれども、まず、却下裁決がされること自体が、土地収用委員会先生方がかなりのやはり公平な、経済あるいはまた法律の知識を持たれた方でございますから、申請が、手続が法律に違反しておる、そういう場合に限って却下されるわけでございますけれども、その違反として挙げたのが、そうじゃない、事実が違うということで不服を持った場合に、施設局長が建設大臣に上げて、建設大臣がそれに対して同じように却下すればそれで決まりますけれども、そうじゃない、やはり間違っていた、そういう一連の今度の裁決申請が、土地収用法に基づいて一連の手続がずっと動いている間は、やはりその期間中は暫定使用を認めていいじゃないかというような形でやっているわけでございますから、この程度の限られた効果をねらう制度の改正については、私は、何ら憲法に触れるものではない、そういうふうに思っているわけです。
  202. 木島日出夫

    ○木島委員 私は仕組みを聞いているので、余分なことはいいですよ。  要するに、もう返してもらいたいという地主土地が戻るのは、この改正法案が成立して施行されると、防衛施設局長明け渡し裁決申請がまず収用委員会で却下される、そして引き続いて不服審査請求も建設大臣によって却下ないしは棄却されたとき、要するに二段階却下があったときにのみ地主土地が戻るのだ、そういう仕組みだということですね。イエスかノーか。
  203. 久間章生

    ○久間国務大臣 それはそういう仕組みになっております。
  204. 木島日出夫

    ○木島委員 最初からそう答えてくれればいいのです。  そういうことを想定することは事実上不可能じゃないのでしょうか。今度の法案について、水も漏らさぬ立法という評価があるのはそのためだと思うのです。  さて、それでは防衛庁は、具体的に、この二段階却下が行われて現実に土地が戻るとき、一体どういう場合を想定していますか。想定していないのですか。
  205. 久間章生

    ○久間国務大臣 まず、却下が行われる場合は、この法律に違反して申請がなされている場合でございまして、まず非常に少ないわけでございます。だから、そこでもしその判断が、しかもその四十七条の二で、前条の場合を除くほかは裁決をしなければならないということになっておるわけでございますから、そういう意味では、却下の裁決がされること自体が非常に珍しいケースでございますけれども、しかし法律上あり得るということで書いている以上は、そうなった場合に、じゃ、どこで手続を完了させるかということについては、やはり制度として追っかけなきゃならない。  そうすると、審査請求を出して、建設大臣が却下して、それで決まる場合もありますけれども、そうならない場合だってあるだろう。そういうふうな論理を立てますと、今言いましたように非常に珍しいケースだとおっしゃられる、まさにそのとおりでございまして、だから私どもは、こういうような却下をまず収用委員会がするケースというのは非常に少ないんじゃないか。防衛施設局が申請の手続を、違法なものを出すというような、そういうことについて、まず考えられない。そういう場合だったら、まず収用委員会が補正をするでありましょうから。そういうことまであわせ考えますと、非常にケースとしては少ないんじゃないか、そういうふうに思います。
  206. 木島日出夫

    ○木島委員 第一段階の収用委員会の却下がまずまれだという答弁で、そうすると、さらに二段階却下、さらに建設大臣が却下するなんということはさらにまれだという御答弁になると思うんです。そうすると、結局は、この法律が成立すると、期間が来てもほとんども地主には土地は戻らないということにならざるを得ないと思います。  今度の法案は時限立法ではありません。これから先、二〇〇二年、また五年おきに、五年間の使用期間が大体これまで三回認められておりますから、この前例に従うと二〇〇七年、二〇一二年と使用期限が切れる土地が出てくることが予想されますが、要するに、政府、防衛庁が引き続き使用したいと考えれば、何の障害もなく、将来にわたって米軍用地として使用し続けることが可能になる、そういう仕組みをこの改正法案は持っているということだと思うんです。  今回の法改正が、まさに沖縄基地の長期固定化のためであり、基地の整理縮小、基地のない沖縄を願う沖縄県民の期待に背を向けるものであることは、法の仕組みから明らかであります。  本日の朝日新聞が報道しておりました。仕組みがそうだ。今月の五日、六日両日、沖縄タイムスと力を合わせて世論調査をしたところ、特措法改正、賛成は一五%、反対は六一%、そういう数字が出ているのも、そのことを物語っているんじゃないでしょうか。  そこで次に、防衛庁長官は八日の当委員会で、我が党の東中委員の質問に答えて、極めて限定された要件をすべて法律で明定し、これに対して極めて限定された暫定使用という効果を付与するにすぎないと答えております。  そこで、聞きます。  暫定使用権という権利と現行法体系に基づく明け渡し裁決による使用権というのは、使用権の法的性格、中身──期間は別です、違いがあるんですか。
  207. 久間章生

    ○久間国務大臣 使用する権原については同じでございます。  ただし、暫定使用権というのは、あくまで本裁決が行われるまでの間の暫定的な、限定された使用権でございます。
  208. 木島日出夫

    ○木島委員 限定というのは、期間による限定だけだということですね。使用権という中身には全く違いがない、そういう答弁だと思うんです。それはそのとおりだと思うんです。  ですから、暫定使用権といっても、その権利自体は独立した使用権原である。そして期間はむしろ特定ができない。却下されるまでですからね、建設大臣が二段階却下するまでですから。期間の明定がない。要するに、この二つの権原の違い、権利の違いは、後に収用委員会による裁決を予定しているか否かだけだと。(久間国務大臣「そうです」と呼ぶ)そうですという答えがあったわけです。
  209. 野中広務

    野中委員長 双方で受け答えしないで、質問者と答弁者できちっとしてください。
  210. 木島日出夫

    ○木島委員 はい、わかりました。  暫定という言葉で期間が短いというイメージが起きますけれども、そんなことはないわけであります。沖縄収用委員会明け渡し裁決があり、五年という使用期間が決められて三回続いてきたわけでありますが、前回、五年前の裁決を不服とする地主から建設大臣へ審査請求が出されています。しかし、いまだに決定、出ておりません。もう五年になります。  要するに、建設大臣が決定をいつ出すか、期限の定めは法律上あるんですか、ないんですか。
  211. 久間章生

    ○久間国務大臣 今おっしゃられます場合には、もう本裁決があっているわけでございますから、本裁決があっていて、その地主さんのものについては、使用権は、権原はこちらが取得しているんじゃないでしょうか。
  212. 木島日出夫

    ○木島委員 本裁決の場合だけじゃなくて、まさに収用委員会が却下して、それで防衛施設局長が建設大臣に不服審査請求した場合ですよ。まさに今、この当委員会で問題になっている場合ですよ。わかるでしょう。却下した場合、収用委員会が却下して、不服として、防衛施設局長が建設大臣に、そんなもの取り消せという審査請求したときに、法律上、建設大臣はいついつまでにそれに対して審査しなきゃいかぬ、そして却下とか棄却とか、決定を下さなきゃいかぬ、そういう法律上の期限の制限はあるんですか。
  213. 小鷲茂

    ○小鷲政府委員 お尋ねの件につきましては、法令上、特に期限が付されておりません。
  214. 木島日出夫

    ○木島委員 そうなんですよね。  だから、沖縄収用委員会が却下した、法令違反で却下した。それで防衛施設局長が、不服だというんで建設大臣に不服審査請求しても、期限がないんですよ。五年も六年も握りつぶしたっていいんです。法律上はそういう仕組みになっているんです。ですから、私は建設大臣が、異例な場合ですよ、収用委員会が却下するなんていうことは。しかし、そういうこともあり得るから、こういう法律を皆さんはつくろうとしているわけですから。  結局、こんな収用委員がいるからだめなんだというので、任期、三年でしょう。大田知事が選任した、そんな収用委員がいるからだめなんだということで、県知事の任期、四年でしょう。その首をすげかえるまで時間を待って、それまでもう裁決をしないということだってあり得るわけであります。そういヴ期限がないということを確認だけしているんですよ。
  215. 久間章生

    ○久間国務大臣 今おっしゃられましたけれども、先ほどの例を挙げられましたが、土地所有者の方から、裁決が出た場合に、それに対していろいろと不服があって建設大臣に上げます場合には、これはいろいろな理由があると思います。ところが、却下する場合はこの法律に違反している場合でございますから、違反している例というのはある程度はっきりわかるわけでございまして、上げられるのが。それに対して、建設大臣に上がってきたときに、そんなに三年も四年も五年もそうかかるはずがないわけでございまして、だからそれは、却下することが非常に少ないと、そういうふうにさっきおっしゃられた、そこのところを踏まえて考えられればわかるわけでございまして、それを同列に比べながら、同じじゃないか、五年間でも、今言うように、委員がやめるまで待っておけという、そういうようなことを想定されて議論をされるというのは、非常に理屈の世界にと言われますけれども、それはやはり現実的でないと思います。
  216. 木島日出夫

    ○木島委員 それは現実的でないじゃない、法の仕組みを私は聞いているんですよ。  次の質問に移ります。  独立、中立の第三者機関である土地収用委員会の審理、裁定もなしに、そして権利を制限される土地所有権者の弁明も聞かず、政府側の一方的な行為だけで引き続き土地所有者権利を制限するという今度の改正法案、これが財産権の保障、法定手続の保障、これを定めた憲法二十九条、三十一条に照らして許されるか否か、それが問われている中心問題の一つだと思うんです。  橋本総理は、四日の本会議の我が党の金子議員の質問に答えて、財産権の保障手続について、憲法上、現行の土地収用委員会の裁決以外の手続によって土地使用することが許されないとは考えていない、こう答弁いたしました。  しかし、総理も、憲法三十一条の適正手続の保障というものが国民の財産権を使用ないし収用する行政手続に対しても適用されること、そのこと自体を否定するものではないと思いますが、念のため総理の憲法解釈はどのようなものなのか、お聞きをいたします。
  217. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 もう一つお尋ねの趣旨がよくわからなかったんでありますが、確かに委員御指摘のとおり、現行法制は憲法二十九条三項に基づく公共の利益のために……(木島委員「三十一条を聞いているんです、三十一条の適正手続が行政手続適用するかどうか」と呼ぶ)
  218. 野中広務

    野中委員長 答弁中ですから、私語しないでください。
  219. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 そのことをお尋ねならば、ただいまお尋ねの件につきましては、前回もここで御答弁申し上げましたとおり、憲法三十一条と申しますのは、直接には刑事手続を想定した規定ではございますけれども、最高裁判所判例におきましても言及しておりますとおり、行政手続にもその精神は押し及ばされるべきであるということは、前回もお尋ねに対して答弁したとおりでございます。
  220. 木島日出夫

    ○木島委員 法制局長官の答弁は私も聞いています。だからこそ総理の憲法認識を聞いたんですよ。同じですか。
  221. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 むしろ、法制局長官と私が違ったら、その方が問題なんじゃないでしょうか。  そして、三十一条は長官が今説明されたとおりであります。  たしか私は、二十九条の方を御質問の際、第一項を中心にお述べになったように思いました。正確に記憶をしておりませんので、もし多少食い違っておりましたらおわびをいたしますが、そして私は、むしろ二十九条の第三項「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」というそちらを引いてお答えを申し上げ、議論になりましたような記憶がいたします。  法案は、御承知のように、現に駐留軍の用に供されている、そして引き続きその用に供する必要があると認定された土地などを適正な補償のもとで暫定使用をするための要件、その手続を定めておるものであります。私は、三十一条にも二十九条にも触れるものだとは思っておりませんということは、前も御答弁を申し上げました。
  222. 木島日出夫

    ○木島委員 法制局長官は、八日の本委員会で、平成七年七月一日の最高裁の大法廷判決を引用しました。むしろ引用しなかった部分、可部恒雄裁判官の補足意見、これが立法府にとって、また法案を提出する行政府にとって大変重要なことを指摘していると思います。行政府の最高責任者である橋本総理にもぜひ知っていただきたいと思います。  その部分を読んでみたいと思います。可部恒雄裁判官の補足意見。「憲法三一条にいう「法律に定める手続」とは、単に国会において成立した法律所定の手続を意味するにとどまらず、「適正な法律手続」を指すものであること、同条による適正手続の保障はひとり同条の明規する刑罰にとどまらず「財産権」にも及ぶものであること」「いずれも当裁判所判例とするところである。」いろいろ述べまして、さらにこう述べています。本件にもかかわります。「論点をより具体的に限定して、私人の所有権に対する重大な制限が行政処分によって課せられた事案を想定すれば、かかる場合に憲法三一条の保障が及ぶと解すべきことは、むしろ当然の事理に属し、」ことわりです。「事理に属し、」当然の事理だというんです。「属し、かかる処分が一切の事前手続を経ずして課せられることは、」事前の手続なしに課せられることは、「原則として憲法の許容せざるところというべく、これが同条違反の評価を免れ得るのは、限られた例外の場合であるとしなければならない。」  法律家の言葉ですから、わかりにくかったかもしれません。これが、我が国の最高裁判所でなされた、財産権と適正手続の保障についての一番最新の、しかも補足意見、補充意見です。最高裁裁判官の意見であります。要するに、一切の事前手続なしに国民の財産権を行政によって制限することは、原則として憲法に違反するというのです。  私は、国会政府も、この立場を基本にして法律を制定することが、司法府から立法府に対して、また提案者である行政府に対して求められているのではないかと思うんですが、法の提案者である総理は、この最高裁、可部補足意見、どう受けとめるんでしょうか。総理総理の認識。
  223. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 一切の事前手続なしにと繰り返されました。事前手続が一切存在しない状況ではございません。正当な補償もまた当然のこと、私はそう思います。  その上で、専門家であります法制局長官から丁寧にお答えを申し上げます。
  224. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 御提案申し上げている暫定使用制度を導入する一部改正法案と憲法三十一条との関係につきましては、三十一条と申しますか、適正手続保障との関係につきましては、先般も申し上げましたとおり、今回の改正法案による暫定使用制度は、駐留軍の用に供する土地等使用収用につき公益と私益の調整に関する詳細な手続を定めた駐留軍特措法に基づく一連の手続の中で、ここが非常に大切なところでございまして、現に駐留軍の用に供されていた土地等で引き続き駐留軍の用に供する必要があり、かつ、それが適正かつ合理的であると個別具体的に内閣総理大臣が認定したものを対象といたしまして、従前の使用期間内に使用裁決の申請等を行った場合で、その期間内に収用委員会の裁決その他必要な権利を取得するための手続が完了しないときに、事前の担保提供土地所有者等の請求による担保の取得、収用委員会による裁決等によって損失の適正な補償が確保される措置を講じた上で、安保条約義務の履行に支障を生ずることを回避するための必要最小限度の措置として裁決による使用権原を取得するまで引き続き使用することができることとしたものであります。  このように、この結論が大切でございまして、憲法の要請に適合する適正手続そのものである駐留軍特措法に基づく一連の手続過程におきまして、これら厳格な要件を法律で明定し、これに対して極めて限定された暫定使用権の付与という効果を認めるものでございます。したがいまして、憲法の求める適正手続の要請に何ら反するものではないというのが私どもの達した結論でございます。
  225. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、可部裁判官のここまで達した水準について、総理の認識を聞いているんです。  今回の特措法改正で、防衛施設局長土地の暫定使用権を取得するに必要なことは何かと言ったら、一つ総理使用認定であります、二つ、防衛施設局長の裁決申請であります、あるいは不服審査請求、そして三つ、みずから決めた供託金の提供、この三つだけであります。これが、収用委員会の裁決機能を事実上空洞化させるものは、もう指摘したところでありますが、空洞化するのは収用委員会の権限だけじゃないんです。土地所有者の防御権そのものが侵害される、そのことが憲法上大問題であると思うわけであります。  時間がありませんから、もう私が指摘します。  収用手続土地所有者にはどんな権利が、防御権が保障されているでしょうか。裁決審査開始前の権利、裁決申請がなされたら速やかにその通知を受ける権利です。明け渡し裁決申請がなされたことをすぐ知らされる、まずそういう権利があります。そして、裁決申請に対して意見書を提出する権利があるんです、縦覧期間中に。こういう非常に大きな権利です。  それから、審査開始後の権利は、大きなものとしては四つあります。公開による審査を受ける権利、法六十二条。裁決申請に対して意見を述べる権利、その裁決申請はおかしいじゃないか、こういう点が、理由がおかしいじゃないか、平和の問題は違うじゃないか、そういう意見を述べる権利があります。そして三つ目、資料提出、参考人審問、鑑定人による鑑定を受ける権利。そして四つ目、土地物件を実地に立入調査する権利、これを申し出する権利があります。  こういう大きな権利があって、そういう審理を経て初めて収用委員会というのは権利取得裁決ないしは明け渡し裁決をするのですね。だからこそ国民の財産権を取り上げることができるわけなんです。今回それを奪うのです。それがなくても使用することができるようにするのですから、奪われるのです。  沖縄地主さんたちは、五十年前に米軍土地を強奪されて以来、今日まで一度もみずからの土地に入ったことのない人が多い。その状況は一昨日、当委員会古堅委員から生々しい事実の一部が明らかにされたとおりであります。土地立ち入り権が収用委員会における審査手続の中で認められていることがどんなに大事なことか、沖縄では実証されております。このような、土地所有者の防御権の行使が一〇〇%否定される、そして、事前手続、まともなものなしに権利を制限する今回の特措法改正法案は、さきの可部裁判官の補足意見に照らしても、もうこれは明らかに憲法違反じゃないかと私は思います。  時間の関係で、次の質問に移ります。  改正法案によれば、裁決申請によって、防衛施設庁長官は暫定土地使用権を取得します。そこで聞きます。裁決申請そのものに対して、土地所有者は不服審査請求や取り消し訴訟はできるのでしょうか、できないのでしょうか。法律上どうなんですか。
  226. 伊藤康成

    ○伊藤(康)政府委員 裁決申請と申しますのは、一連の手続の中の……(木島委員「いえ、もう結論だけでいいです。裁決申請そのものに対してできるかできないか」と呼ぶ)
  227. 野中広務

    野中委員長 ちょっと静かにしてください、答弁中は。
  228. 伊藤康成

    ○伊藤(康)政府委員 一連の手続過程でございまして、裁決申請そのものが行政処分ではないと存じますので、裁決申請そのものに対する不服審査申し立て等というのは考えられない、こういうふうに思います。
  229. 木島日出夫

    ○木島委員 それでは次に、改正法案によれば、収用委員会の却下裁決に対する防衛施設局長の建設大臣に対する不服審査請求によって、防衛施設庁長官は暫定土地使用権を取得いたします。それでは、土地所有者は、この却下に対する不服審査請求、建設大臣に対する不服審査請求そのものに対して、同じように取り消しを求めて不服審査請求や取り消し訴訟はできるのでしょうか。できるのかできないのか、簡潔に御答弁願います。
  230. 伊藤康成

    ○伊藤(康)政府委員 御質問の趣旨がよくわからないのでございますが、土地所有者の側から見ました場合に、裁決申請が却下されたということは決して不利益なことではないと存じますので、その不利益でない、いわば何というのでしょうか、裁判で例えれば勝訴のようなケースについて、なぜ不服申し立てということがあるのか、ちょっと理解に苦しむところでございます。
  231. 木島日出夫

    ○木島委員 ですから、できないのですよ。これはもう明らかですよ、法律家なら。要するに、不服審査請求や取り消しを求める行政訴訟、これができない。もっと言うと、行政処分じゃないのかもしらぬのです、裁決の申請とか不服審査請求というのは。行政処分じゃないんだと思うのです。だから不服審査の道がない。司法救済の道がない。司法救済の道がないそういう行政行為に対して、本法案土地使用権原を与えてしまっているのです。大問題じゃないのでしょうかね。  国民から財産権を強制的に取り上げるには、私は、それに対して司法による救済の道があいていること、これがやはり求められている。これが憲法三十一条、二十九条の要請するところではないのでしょうか。答弁があったらしてください。短くしてください。
  232. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 先ほど二十九条、三十一条という言及がありましたが、三十二条にも、国民は裁判を受ける権利が保障されております。それとの関係で、この暫定使用制度というのは国民の裁判を受ける権利を侵害するものではないかという御指摘が一部にあるやに聞いておりますが、確かに、この暫定使用権の発生は行政処分に基づくものではございませんから、これ自体に対する取り消しの訴え、抗告訴訟というのは、それは考えられません。しかしながら、裁判を受ける権利が一切封じられているということじゃございませんで、種々ございます。  まず、内閣総理大臣による使用認定の取り消し請求訴訟、これは本命だろうと思います。その次に、暫定使用権の発生が違法または無効であるという御主張ならば、それを前提としまして、所有権に基づく土地明け渡し請求というのも、これは訴訟としては何ら封じられておりません。  また、暫定使用中に、それを不法行為であるということを理由に損害賠償請求訴訟を提起することも何ら封じられておらない。また、暫定使用による損失の補償につきましては、裁決が予定されているわけですが、それの取り消し請求訴訟というのも予定されているわけでございます。また、損失補償の訴えというものも否定していないわけでございます。  このように、国民の裁判を受ける権利を一切封じているということは何らございませんで、暫定使用制度というものは、国民の裁判を受ける権利を否定しているということとは無縁の存在であるということであります。
  233. 木島日出夫

    ○木島委員 私が言っているのは、本法案で裁決申請とか不服審査請求とか、そういう申請とか請求という行為、行政処分じゃないですよ、しかし行政庁のそういう行為によって地主所有権が奪われる、そういう仕組みですから、それに対して不服審査の道がないじゃないかということを言っているのです。それはもう憲法上、欠陥だ、欠陥法案だと言わざるを得ないと思います。  国民から財産権を強制的に取り上げるには、私は、人の命が目の前で危ないというような特別の急迫、緊急な状況にない限り、最低三つの要件が憲法から見て必要だと思います。  一つ土地収用使用するものから独立した、要するに国や防衛施設局長から独立した公正中立の第三者機関による審理及び判断に基づいて土地所有者権利の制限がなされること、これは当然ですね。土地を使いたいという者が審理をしたんじゃだめだということ。第二、土地所有権者の事前の防御権が基本的に保障されていること、可部恒雄裁判官の意見のとおり。一切なんという言葉じゃなくてもいいです、基本的に保障されているかどうか。現行法にはあります。第三、収用使用の行政処分に対して司法による救済の道があること、これは当然だと思うのです。  現行法体系、特措法、そして特措法が準用する土地収用法には三つきっちりあります。ところが本法は、この三つを全部取り除いているのです。ですから、この法案がどんなに欠陥を持って、憲法に反するものであるか、明白ではないでしょうか。  私は、こういう重大な欠陥というものは、どんなに政府総理安保条約上の国際的義務の履行は我が国の国家存立の基本だと叫んでも、どんなに叫んでも解消されるものではない。逆に、国民の基本的人権が法によってきちっと守られていることこそが、法治国たる我が国の国家存立の基本ではないのでしょうか。憲法違反の法律によって国民の財産権がいとも簡単に奪われるような国こそ、私は国際社会から軽べつされるのじゃないかというふうに思わざるを得ないわけであります。(発言する者あり)いや、そうですよ。総理見解を問います。
  234. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、議員と全く考えは同じです。憲法違反の法律で国民の財産を収奪するなら、それは尊敬される国ではありません。残念ながら、憲法違反ではないと繰り返し御説明を申し上げ、なお御理解のいただけないことの方が私は大変残念であります。
  235. 木島日出夫

    ○木島委員 大体、憲法に違反しないという説明が全然なされておりません。第三者機関による判断もない、地主の防御権もない、そして、事後に司法による救済もないのです。そうでしょう。明け渡し裁決の申請が権利を奪ってしまうのですから、この法律は。権利を奪うその申請に対して不服申し立ての道がなければ、救済の道はないということでしょう。当たり前じゃないですか。
  236. 野中広務

    野中委員長 答弁させますか。
  237. 木島日出夫

    ○木島委員 もういいです。次に移ります。もう必要ないです。必要ないです。必要ないです。もうさっきの答弁以外出ない。私の意見を申し上げました。
  238. 野中広務

    野中委員長 いやいや、木島委員、木島委員、あなた、聞いて断定をしないで、答弁権は答弁権で確保しなさい。
  239. 木島日出夫

    ○木島委員 いや、もう時間がありませんから、次の質問をさせてください。
  240. 野中広務

    野中委員長 質問をして答弁を受けないというのは、あなたは間違いです。質問権を認めるかわりに、答弁権も認めるべきであります。
  241. 木島日出夫

    ○木島委員 いやいや、もう時間がないのです。
  242. 野中広務

  243. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 先ほど委員は、財産権の制限の要件といたしまして、まず第一に公正中立な機関の判断によること、第二に事前の防御権を保障すること、第三に司法救済の道が開かれていることと、この三つの要件をお話しになったわけでございますが、現在あるいろいろな制度の中で、必ず土地収用委員会のような合議制の委員会判断によらなければその財産権が制約されないというものではなくて、いろいろその類似の制度がございます。  まず、土地収用法百二十二条による「非常災害の際の土地使用」についてもそうでありますし、もう重々御案内のとおり、公共用地の取得に関する特別措置法による代行裁決、これは建設大臣が行うものでございます。次に、沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律による暫定使用、これは法律によって直接に暫定使用権を与えた制度でございます。そしてまた、電気通信事業法七十四条二項の規定による、第一種電気通信事業者による線路等を設置するための土地等の継続使用につきましても、類似の制度はございます。  このように、土地収用委員会のような合議制の機関の判断によらなければできないものであるというものではないわけでございます。しかも、暫定使用につきましては、その前に内閣総理大臣土地使用についての公共性の判断がございます。もしそれについて御不満があるならば、その使用認定自体を争う道が開かれているわけでございますから……
  244. 野中広務

    野中委員長 答弁も簡略にしてください。
  245. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 それにつきまして、第三の司法救済の道も開かれているわけでございます。即それは事前の防御権の保障にもなっているわけでして、独立の暫定使用制度というものを土地収用制度と別個の制度として立てているのではございませんで、土地収用制度の一環として、一連の手続の中の一こまとして制度を立てているわけでございますから、その三つの要件が欠けているという非難は当たらないのではなかろうかと思います。
  246. 木島日出夫

    ○木島委員 だから私、さっきくどくど聞いたのです。暫定使用権という権利と、明け渡し裁決によるまあ本権というのですかね、本来の権利、一連の手続だというのは百も承知ですよ、そんなことは。しかし、おのおの別の法体系によって、法律条項によって権限が付与されるのですから、それぞれについて今言った三つの要件が必要ではないかというのを私は言ったのです。  特措法ができて六年後の一九五八年十月、防衛施設庁の前身である調達庁不動産部審査課の後藤衛氏は、「特措法六年の歩み」という小論を、調達庁、調査時報ナンバー二十三に書いております。こう書いています。「要するに行政協定を円滑に実施するために、土地収用法の特例を定めるというのがそのねらいであった。」特措法のねらいであった。「その実質は、新憲法第二十九条とのからまりの下に、財産権の保障を原則としつつ、最低限の線において公共の福祉のために、その譲歩を求めんとした現行土地収用法の諸原則を大きく緩和したものである事は否めない。」  土地収用法の基調を四つ挙げています。「私権の保護の徹底」、二つ「公益事業の範囲の整備」、これは何を意味するかというと、軍用目的には土地収用をしてはいかぬ、天皇のために土地収用はできない。新憲法のこの基本原則が土地収用法に盛り込まれたのです。これを「公益事業の範囲の整備」と彼は言葉を使っています。皆さんの先輩です。三つ「正当な補償」、四つ「正当な手続」、すばらしいですね。この「四点にあるとすれば、特措法においては、正当な補償、正当な手続の二点においては欠くるところがないが、前二者」要するに「私権の保護の徹底」と「公益事業の範囲の整備」、要するに軍用目的で土地収用できるということを決めたのですから、「前二者の原則に対しては、若干の留保をつけたものといわざるを得ない。」こう書いています。若干の留保どころじゃないのです。なかなか、しかし正直に問題点を指摘しているわけであります。私権の保護の徹底と公益事業の範囲の整備の原則で、憲法の財産権保障の原則を大いに緩めてしまった、それが特措法だということをつくった人たちが自認しているわけであります。  そして、こうも書いてあります。「板付や砂川において、特措法は身動きのできない重圧にあって、制定の目的とされた効果を十分に果し得なかった。」「冬ごもりの特措法」とも書かれているのです。もう時間がないから次に移ります。  それから二十四年たった一九八二年、特措法は、本土復帰十年後の沖縄で息を吹き返したわけであります。沖縄では、米軍の銃剣とブルドーザーによって、暴力によって土地が奪われた。そして、一九七二年の本土復帰から十年間は、公用地法によって沖縄の県民の皆さんは、それこそ法によって問答無用で土地を奪われ続けたのです。救済の道はなかったのです。法制局長官は、さっきその法があるということを合憲の理由に挙げましたが、あのときの国会で、さんざん公用地法が憲法に違反しないか大論争になったのです。時の佐藤総理ども、もう時間がないからとか、沖縄では地籍が明確じゃないからとか、外国に行ってしまった人もいるからやむを得ない、これしかないということを言って、合憲だという理屈を言っていました。ようやく特措法土地収用法適用の時代になったのが、沖縄では一九八二年でありました。  そして十五年たったわけです。ようやく収用手続の中で、土地所有者手続上の諸権利が保障され始めたやさきです。またしても今回の法改悪によって、土地収用法の中に残っていた権利が今まさに奪われようとしているわけであります。それが今回の特措法改正法案の本質であります。  私は、この改悪の根底に昨年の日米安保共同宣言があると。沖縄基地を二十一世紀まで固定化して、そして沖縄県民から憲法の財産権の保障を奪う。安保絶対主義、安保のためには何をやってもいいというそういう安保絶対主義の立場から、法治国家の根本を否定するのが今度の法改正、これを衆議院でわずか四日間という短い期間でもう採決してしまおうというのは、私は議会制民主主義の上からも許されないと思います。  憲法と国民の基本的人権、そして平和を守る立場から、そして何よりも私は、沖縄県民の願いに真っ正面からこたえる立場に立って、今回の特措法改悪には断固として反対するということを表明いたしまして、時間でありますから質問を終わります。
  247. 野中広務

    野中委員長 これにて木島君の質疑終了いたしました。  次に、上原康助君。
  248. 上原康助

    上原委員 今もお話がありましたが、この米軍用地特措法の改正が、きょうで本委員会では議了されようとしております。ある面では大変無念の思いを込めながら質問をさせていただきたいと思います。  まあ、余り繰り返しとか、あるいは沖縄のこれまでの歴史というものを説いてもどうかと思いますので。  私は、総理、大変懸念していることがあります。これは昨日の参考人先生方も御指摘をしておりました。この特措法改正が衆参で圧倒的多数で議決されたとすると、確かに日米関係、あるいは総理の御訪米等々でほっとする方々が多いし、また、それをてこに、SACOで決めた基地の整理縮小であるとか、あるいは政府がお考えになっておられる沖縄振興策について強力に推進していくということ、私はそれを信じたい。だが、果たして1予算委員会以来この委員会でも、しばしば、沖縄の心とか、沖縄の痛みを分かち合う、安保の重要性とどう調和をさせていくかというようなことが、各党派から、各先生方から御指摘がありました。私は、特定の党とか取り上げた先生方のことをとやかく言うつもりはありません。それが本当に、一過性のものではなくして、国会政府、国民全体が沖縄の痛みについてこれを機会に分かち合って、沖縄基地問題や抱えている重要課題というものを解決していく、その方向性というものを明示してもらわなければならないと思うのですね。  そういう意味で、橋本総理の訪米を間近にした段階で、今私が指摘をしたようなことを含めて、改めて、どういう御決意で、基地問題初めこれまでいろいろ取り上げられてきた課題について、解決、前進をさせていくための立場でやっていかれるのか、決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  249. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 議員の無念な思いという言葉から始まった御質問にどうお答えをすればいいのか、私自身少々言葉に苦しんでおります。なぜなら、今まで、議員との間にも繰り返し、沖縄の問題と、あるいは沖縄県の方々と私自身のかかわり合いと、そして、その中で、どのような思いを持ち、総理として改めてこの問題に取り組む時点で学び直し、しかも、今この審議の間にも我々が知らなかった多くの沖縄県の思いというものを知らされてきている。そうしたことを振り返りますとき、本当に、ちょっと言葉に苦しむものがあります。そして、今まで申し上げたことをもう一度繰り返すつもりはありません。  その上で、昨年、私は知事との間に政策協議会における論議を、また梶山官房長官のもとに置きましたいわゆる島田懇、基地所在市町村の問題を誠心誠意進めていくについての決意といいますか、あかしといいますか、どういう形なら一番信じていただけるのだろう、大田知事との間でもお話をいたしました。その結果、それを示す一つの手法として選びましたものが、補正予算における調整費の計上でありました。これに何ら制限をつけず、県の御意向どおりにこれを使っていただく。繰り越して現在も、県の必要な調査、事業等にこれが使える姿にあります。  同時に、今後におきましても、私ども沖縄県に対して、基地の問題とは別に、県の、いわば県勢の力をつけていただくための施策というものは、全力を挙げて進めていかなければなりません。言いかえれば、これは少し言葉は失礼かもしれませんが、ほかから助けられる沖縄経済ではなく、むしろ日本経済を引っ張れるような力を持つ沖縄経済というものをつくっていくためにも、現時点において我が国の中に存在しない仕組み等までを含んで物を考えながら今後の対策を練っていかなければならないと思います。  そして、あかしという言い方は私は余り好きじゃありませんけれども、今まで政府が何らかの施策を考えますときに、閣僚と当該県の知事さんを同じ発言権を保障して、一つの仕組みで物を進めようとしたことはなかったと思いますが、この橋本内閣になりましてから、御承知のように、政策協議会、沖縄県知事は、官房長官以下各閣僚と同等の発言権を持ってここに臨んでおられます。そして、このメンバーは、すべてが、県が例えば規制緩和についての県独自の案をつくるための委員会を持っておられることも承知しており、やがてそれがまとまれば知事の手によって協議会の席上に論議の対象として出されることも存じております。そして、県のさまざまな構想は既にここで議論され、整理され、具体化のために沖縄開発庁を中心としたそれぞれのプロジェクトチームが動いております。  これはもう信頼関係と言う以外にないことかもしれませんが、我々は、少なくとも沖縄県の抱えている問題のうちの一つ、県勢の振興というものに対し、これを放てきするつもりのない、その意思を表明するためのでき得る限りの努力をしてまいりました。  人間の進めることでありますから、これ以上いい方法がありましたら、私はそういうものを取り上げていくことにも決してやぶさかではありません。しかし、少なくとも梶山官房長官が、みずからのもとに基地所在市町村への対応を議するための島田懇を、県民の代表者も加えてその結論を得るために努力をされる、今日それを具体化するために努力をしておられること、また、閣議として沖縄政策協議会の場を設定し、沖縄県知事に閣僚と同等に議論をしていただける場を設定し、現にそれが動いていることをもって、せめてその程度の信頼は与えていただきたい、私はそう思っております。
  250. 上原康助

    上原委員 まあ、今までも総理からしばしば、今お述べになったことは聞いてまいりました。余り心情論をやっても時間がありませんので。  私が申し上げたいことは、やはり、沖縄米軍基地の整理縮小とか安保の運用とか、そういうことについて政府の御認識を改めていただきたいということなんですね。  今、私は、確かに変わりつつあると評価しますが、なぜそのことを申し上げるかといいますと、例えば、国会で余り何も議論されてこなかったんじゃないのか、国会の怠慢もあったのじゃないかという御指摘もございます。確かにそうだ、そういう点もあったと思います。しかし、私から言わせれば、本当に、五五年体制でできなかった面も、対立し、対抗的な面があったからかもしれませんが、正直申し上げて全く馬耳東風でしたね、私が幾ら問題を取り上げても。  ナンバープレートの問題なんか、御承知のように地位協定に書いてあるのですよ。地位協定の第十条に、「合衆国軍隊及び軍属用の公用車両は、それを容易に識別させる明確な番号標又は個別の記号を付けていなければならない。」と書いてあるのです。これは私は何度か外務大臣にも迫りました。だが、私が写真を撮ってきて、これを見せると、あなたが撮った写真は本物かどうかわからぬというようなふまじめな答弁しかしなかった、当時の外務省の局長は。だれとは言いませんけれども。  さらに、最近ようやく騒音防止協定が締結になりました。しかし、嘉手納、私は嘉手納町に住んでいるからよくわかる、まだそう正確には守られていない。普天間もそうでしょう。本土では、昭和三十九年、横田基地の騒音防止協定があるんじゃないのか。本土並み基地ならなぜ沖縄にこれを適用しないかというと、沖縄基地の性格は異なるからできないと言ってきたのですよ。  そういうのが積もり積もって県民の政府に対する不信、不満、沖縄にだけ安保を押しつけているんじゃないかというこの歯がゆさというかじれったさというか不満というのは、積もり積もって今日のいろいろな問題に発展してきているということを、総理を初め各閣僚なり、特に外務省なり防衛庁が改めて御認識をしていただかないと、私は、SACOの問題にしても、今我々が指摘している問題も、またいっか熱が冷めるとこういう結果になりはしないかと、それを私は懸念を持っているということを申し上げたのです。今一、二例を挙げましたが、このことについてどのようにこれから対処していかれるのか、明確に、簡潔にお答えください。
  251. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま委員から御指摘がございましたが、基地の整理、縮小、統合ももとよりでございますけれども基地が存在し、米軍が活動するということに伴ういろいろな問題につきまして、確かにこれまで、政府としての対応あるいは米軍の対応に、沖縄の県民の方々の本当の御負担あるいは苦しみ、さらにはお気持ちに対する配慮が不十分であったということは率直に認めさせていただきます。  そのことも踏まえながら、私ども懸命に努力してきたところでございまして、今委員が例示されました問題のほかに、例えば補償の支払い手続を促進するとか、あるいは自動車の任意保険に全員加入させるとか、また、これまでいろいろ事故の報告が出されないまま推移しておりましたけれども、それを三月三十一日に航空機事故について五件の報告をさせていただくと同時に、将来に向かって、事件事故についての連絡通報体制を抜本的に改める等の措置も講じさせていただいた次第でございます。  今後もこういった問題、地位協定の運用をめぐるいろいろな問題につきましては、さらに合同委員会の場等を通じまして、不断に見直しながら改善を図ってまいりたい、このように考えている次第でございます。  これは委員の例示されましたこととの関連で申し上げましたけれども、この問題にとどまらず、私ども沖縄の県民の方々になおお願いしなくちゃいけない我が国の安全を守るための御負担、そういったものにつきまして、本当に県民の方々の御負担とお気持ちというものを常に忘れることなく、これからも処してまいりたい、こう考えている次第でございます。
  252. 上原康助

    上原委員 やはりそういうことについて、政府がみずから安保の運用なり地位協定なり合同委員会でのことを資料開示をするなりして積極的にやればいいのです。みんな隠しに隠してやってきたのが、沖縄県民だけに全部、そういう不満がある。それを直してもらわぬと、今後これはどうにもなりませんよ、総理。だから米国にだけ顔を向けているのではないかという不満があるわけであります、率直に申し上げて。  それと、そのほかにも、厚生年金の格差是正の問題にしても、あるいは戦争マラリア問題にしても、総理がしばしば六歳未満のことをおっしゃいましたが、これなんかも、確かに総理のいろいろな御努力でできたことは私もわかりますが、こういう問題とて、私たちが野党時代に酸っぱく厚生委員会や予算委員会なりで取り上げて、ようやく渋々やってきたんですよ。戦時船舶犠牲者の問題はいまだにナシのつぶて。土地の取り上げ問題しかりです。  こういった沖縄に対する御認識というか、安保の犠牲と負担だけを押しつけるのではなくして、やはり県民の人権とか環境とか、そういうことについてより重視をする政治姿勢に変えていただかないと根本的な問題解決はできない、私はそう思います。  ようやく我々も、微力ですが、連立政権とかあるいは、いろいろ苦しい立場もありますが、政府の方との協力関係もありますので、徐々によくはなっておりますけれども、ぜひ、私が今指摘をしたことについてさらに特段の御努力を願いたいと存じます。  それと、法案については、時間もありませんので、既に法的な点はいろいろ指摘されましたが、やはり緊急使用を申し立てなかったということに対する県民の不満は強いですね、これは。それはもう一度んなに防衛庁長官が首を振ったって県民はそう思っているのですよ。それほどこの法案はやはり土地収用委員会の権限を著しく制約をする、あるいは形式的なものにするんじゃないのかとか、なぜ過去にさかのぼって遡及をするのかというようなことに対する県民の不満というのは強い。これはもう感情ですから、皆さんがどう法律論で正当だと、法制局長官が言ってみたって受けとめ方はそうじゃないんですよね。だから、基地問題を解決をする中で、そのギャップをどう生かすかというのが私は総理防衛庁長官や閣僚の皆さんのお仕事だと思うのですが、その点、どのように今の県民感情とのギャップを埋める努力をしていかれようとするのか、お聞かせ願いたいと思います。
  253. 久間章生

    ○久間国務大臣 今委員がおっしゃいましたように、確かにそういった感情というのは強いものがあろうかと思います。私どもはるる説明してまいりましたけれども、やはりどうしても全部の人に理解してもらうことはできないかもしれません。そういう意味では、この法律は法律として、暫定的な使用制度をつくらせていただくと同時に、やはりこれまでつくりましたSACOの最終報告に基づく、基地を整理、統合、縮小していくという、そういうステップを一つずつ着実に地元のまた御理解を得ながらやっていって、目に見える形で動き出したなというようなことを早く皆さんに見ていただきたい。そのためにも、例えば、本土内に移転するようなものについてはきちっと約束どおりやはりやってみせなければならない、そういう決意でおります。  そういうことをすることによって、誤解とは言いませんけれども、そういう感情を少しずつ和らげていただくと同時に、今回私どもがいかに真剣に沖縄の問題と取り組んでいるかということもまたわかっていただけるのじゃないか、また、わかっていただくために頑張らなければいけない、そういうふうに思っております。
  254. 上原康助

    上原委員 約束したことは守って実行していただきたい。しかし、一〇四号線越えの砲弾演習は年度内と言ったのだが、何か来年までかかるという話があるのですね。こういうことを繰り返しておったのじゃ、なかなか感情のギャップというか不満は小さくなりませんよ。  それで総理に、今のこととも関連して申し上げるのですが、私は海兵隊の縮減、縮小ということは、確かに現時点では無理だというような総理のその御発言はよくわかります。しかし、沖縄側として、この要求というか、この主張をいささかも緩めるわけにはいきませんね、正直申し上げて。  改めて、今月末訪米なさるわけですが、直に言わないにしても、先ほど来私が指摘したような問題点を含めて、日米間でどういうふうに首脳会談でやるおつもりなのか、それもぜひ聞いておきたいですね。よろしく御見解をお聞かせください。
  255. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 目下、連日国会にこうして朝から夕方までおりまして、首脳会談にどのような問題が出るのか、またどのような論議をすべきなのかを整とんをしているだけの実は時間のゆとりすらございません。  その上で、どうぞお聞きをいただきたいと思いますが、先日、ゴア副大統領との議論の際には、国際情勢もございましたり、二国間経済、日本の景気の見通しといったような話題が随分多くの時間を占めました。それは、オルブライト国務長官と、ちょうどまだこの特措法の問題についてどうするかを悩んでおりました時期でありましたけれども、率直な話をし、それが伝えられておりましたために、重複をしないで済んだということであったと思います。  そして、これは議員にしばしばおしかりをいただきますけれども、私は、確かに現時点で、米国大統領との間において、在日米軍沖縄を含めましての規模の縮小といった問題を議論するべき時期ではないと思っております。これはお許しをいただかねばなりません。同時に、中長期的な国際情勢の変化の中で、当然のことながら、我が国の周辺事情、安全保障環境が変化をすれば、兵力構成を含めた軍事情勢を議論をすることは当然のことであります。  そして、きのう、コーエン長官との論議の際にも私が申しましたことは、こういう議論が一々政治問題化することを私は望まない、だからむしろ、例えばSSCでありますとかSCCでありますとか、そうした場を利用しながら、日本側が軍事情勢について聞いたときにはあなた方の方も正確に答えてもらいたいという言い方をし、それは必要なことですということで別れました。  今回の首脳会談、どのような形態になるか、現時点でまだ全く想定がつきません。また、それを準備しておるだけの時間のゆとりも、現実に私は今持っておりません。しかし、そうした議論をする場面があれば、同様のことを私は心の中に持って臨みたいと思っております。
  256. 上原康助

    上原委員 確かにお忙しいし、今、国会がこういう状況ですからわかります。テーマ、アジェンダは決まっていないかもしれません。しかし、大変注目されていることだけは間違いないですね。  それと、官房長官、おいでいただきましたので、私は、総理振興策なり自由貿易地域の問題に対して、ちょっと気になることがあるんです。これは総理のお考え、お気持ちだということですが、一国二制度という表現とか言葉は余りお好きじゃないという、香港云々の。だが、きょうも、与党三党の沖縄振興策についてのことが、合意といいますか一応まとまったわけですが、その中でも、自由貿易地域の拡大強化ということと、一国二制度的の大胆な施策という表現がなされているわけですよね。  これはぜひやっていただかなければいかないし、その場合に、やはり縦割り行政ではだめだと思うんですよ、自由貿易問題というのは。ですから、今の政策協議会か閣僚協議会の中に、内閣というか、官邸直轄の自由貿易問題に対しての調整をする役割というか権限を持ってもらわなけれ一ば、この問題はなかなか、大蔵、通産、農水と一か、まあ開発庁がやるかどうかはわかりませんが、やはり、官邸直轄の何かの機関がいいんじゃないかと私は思うんですが、このことについて、官房長官の御見解、あるいはまたどういう方向で進めていかれようと思うのか、もう一度お聞かせを願いたいと思います。
  257. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 再三総理から御答弁を申し上げておりますように、総理としての国の責任、それから過去、現在における沖縄の問題に対する深い反省と、それから沖縄の再生と申しましょうか、自立にかける総理の情熱、こういうものを身近に私は一日じゅう触れているわけでありますが、今委員御指摘の一国二制度的という表現、総理も私もなるたけは使うまいとしている言葉であります。  しかし、今総理委員に対するお答えの中に、我が国にない制度をという言葉を明確に使ってこの問題にはお答えになっております。私も、総理の機微に触れて、全力で、今委員が御指摘になったような方向ができるものかどうか、懸命な検討を重ね、成果を上げてまいりたい、このように考えます。
  258. 上原康助

    上原委員 この点について、総理のお気持ちなりお考え、少し聞かせていただきたいと思います。
  259. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほども、ほかにない制度という言葉を私は使いました。私は、本当に、例えば自由貿易地域沖縄につくっていく、現在のものを量、質ともに変えていかなければならないと思います。その場合に、例えば港湾機能、また空港機能、従来以上にその自由貿易地域はアクセスを持たなければ、本当の意味での活用は難しいと思っております。そういう意味では、県に対しても、むしろ私の方からこうした方がいいですよということを申し上げたいぐらいの気持ちがあります。  また、きょう名護の市長さんと知事がお会いをいただきました中に、北部地域に国立高専をつくりたいという私どもの持っております夢も、お二方のお話の中で出ておりましたようであります。私どもは、そうしたものは、国立高専はもうしばらくつくっておりませんでしたけれども、改めてまた私は、県の皆さんが喜んでくださり、地域の皆さんが喜んでくださる、そういうものであるなら、我々はこれを復活させてつくっていこうと思っております。  一つ一つを拾えばさまざま申し上げたいことはありますけれども一つ、私が一国二制度って好きじゃありませんと申し上げるのは、実は、密入国に関連する治安上の問題。現在、我が国に密入国者がふえている。そして、送り出す組織と受け入れの組織が存在すると言われている。こうした事態は我々としては非常に心配をしておりますから、県の強い御要望も承知した上で、まあ一国二制度的ぐらいであれば、私も別にぴりぴりといたすつもりはございませんけれども、そうした御要望の中に問題点があることもどうぞ御理解をいただきたい。よろしくお願いいたします。
  260. 上原康助

    上原委員 ようやくにっこりして一国二制度的ということまでおっしゃいましたので、それに期待をかけておきましょう。  あと一分ありますが、これとの関連で、せんだって外務大臣が、ノービザ制度との関連で簡素化をしたいという御発言がございました。これは、沖縄側の今の要望とか意見が強いのは、やはりトランシット、三日程度でも十分当座としてはいいんじゃないかという意向もあるんですが、具体的にその件についてはどのように進めていかれようとするのか、もう一度御見解を聞かせていただきたいと思います。
  261. 池田行彦

    池田国務大臣 ノービザ制度につきましては、ただいま総理からもお話がございましたような問題もございます。それにさらに、もし厳密なノービザ制度をつくりますと、かえって沖縄日本の他の地域との間にやはりまた別の種類の壁をつくるという問題も出てくるということなのでございますので、厳密な意味でのノービザ制度というのはできないということが前提でございますが、しかし、現実にそういった査証その他の制度のために沖縄と諸外国との間の往来に壁ができる、その壁をあとう限り低くしていこう、こういう努力はしたいと思っています。  そういったときに、ビザの取得の手続におきまして思い切った簡素化を図るとか、それから、今委員もおっしゃいましたけれども、トランジットのときはどうするかとか、あるいは滞在期間はどうするかとか、あるいは観光でございますと団体旅行の扱いはどうするか、いろいろ県からも具体的な御要望もお受けしておりますので、そういったところを政府部内でもよく関係省庁とも検討しながら、先ほども申しましたように、往来のための壁を実質的になるべく低くしてまいりたい、こう考えている次第でございます。
  262. 上原康助

    上原委員 終わります。
  263. 野中広務

    野中委員長 これにて上原君の質疑終了いたしました。  次に、粟屋敏信君。
  264. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 私は、本委員会審議の初日の冒頭におきまして、沖縄復帰二十五周年をこの五月十五日に迎えるけれども、改めて、戦中戦後を通じて沖縄県民が抱いておられる苦しみ、悩みまた痛みに思いをいたさなければならないということを申し上げたところでございます。  一方、この法律案安全保障条約義務を履行することが国家国民の平和と安全を守るゆえんである、そういう見地でぎりぎりの判断をされて政府案をお出しになったと思うわけでありますし、私どももぎりぎりの判断を迫られているところであります。しかし、それはそれとして、沖縄県民の痛みにこたえるためには、これは全国民がその痛みを受けとめて沖縄米軍基地の整理、統合、縮小に真正面から取り組まなければなりませんし、また、沖縄県の自立を図るための振興開発政策を進めていかなければならないと思っておるわけであります。  昨日も参考人の御意見をお聞きしまして気にかかることがございました。この特措法が通ってしまえば、政府基地の整理、統合、縮小、また振興開発にかける熱意が冷めてくるんではないか、そういう危惧が沖縄県民の間にあるということでありました。私は、絶対にそういうことがあってはならないと思うわけでございます。  また、SACOの最終報告、総理も非常な決意を持ってこれに当たっておられるわけでございますが、普天間の基地廃止に伴いますシュワブ沖のヘリポート問題、名護の比嘉市長もいろいろと今まで苦悩を重ねてこられたわけでございますが、決断をされて調査を認めるという方向をとられて、今住民に対する説明をされておられるようであります。やはりこのSACOの最終報告をしっかり実行することが、私は、政府の信頼を高めるし、また将来の米軍基地の整理、縮小、統合に対する希望を抱かせることになると思うわけであります。  そこで御質問でございますが、先ほども申し上げましたような、特措法が通ると政府の熱意が冷めるという沖縄県民の危惧、これを打ち消していただきたい。総理の決意を伺いたい。また、SACO最終報告を実行することに対する総理の御決意も伺いたいと思います。
  265. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 この委員会質疑が始まりましてから、要するに政府の関心、沖縄問題に対する熱意というものは一過性のものではないのかというお尋ねを繰り返しいただいてまいりました。そうではないということを一生懸命に御説明をしてまいったつもりでありますが、本委員会の最後の御質問に立たれた議員からなおこの御質問を受けることを大変残念に私は思います。  そして、私どもとしては、政府の取り組みの心というものを何とか県に御理解をいただきたい、さまざまな工夫をしてまいりました。恐らく日本国政府始まりまして以来、官房長官を首座に関係閣僚全員と特定の県知事さんが対等の立場で構成される政策協議会をつくり、それが形式だけではなく現実に機能しておりますのは、この沖縄の政策協議会が初めてであろうと思います。そして、ここに県の国際都市形成についてのお考え等も既に述べられ、それはそれぞれの、沖縄開発庁を中心としたプロジェクトチームにおいて現実の検討が始まっております。さらに県は今、県としての、例えば規制緩和についての委員会をおつくりになっております。ここでおまとめになりました考え方は、知事の手によってこの政策協議会に反映されるでありましょう。我々はこれを真剣に受けとめます。  そして、官房長官自身が、一方ではその政策協議会の中核でありますが、これとは別に、基地所在市町村のためにいわゆる島田懇をスタートさせ、その報告をまとめられました。この島田懇の結論がまとまりました際、私から閣僚懇談会の席上において、五百億から一千億と言われるこの経費、財政の厳しいときではあるけれども、我々はこれは全力を挙げて実現しなければならない、全閣僚の協力を求めるということを宣言し、全閣僚だれ一人異存なく、この実現方に今取り組んでおります。  私どもの力足らずで御信頼がいただけないとすれば大変残念でありますが、なお信頼をしていただけるような努力も、また工夫もしてみたいと思います。
  266. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 総理の御熱意というものは、私もこの委員会審議を通じてしみじみとわかっておりますが、いろいろな難しい問題がありましょうけれども、これから確固たる決意をお持ちいただきまして沖縄問題の解決に御努力をちょうだいをいたしますことを心からお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。
  267. 野中広務

    野中委員長 これにて粟屋君の質疑終了いたしました。  以上をもちまして本案に対する質疑は終局をいたしました。     ─────────────
  268. 野中広務

    野中委員長 この際、本案に対し、前原誠司君外四名から修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。前原誠司君。     ─────────────  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び   安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並   びに日本国における合衆国軍隊地位に関す   る協定の実施に伴う土地等使用等に関する   特別措置法の一部を改正する法律案に対する   修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  269. 前原誠司

    ○前原委員 私は、民主党を代表し、今回の法律案に対しまして修正案を提出することについて、その提案理由及び概要を御説明いたします。  我が党は、日本安全保障、そしてアジア・太平洋の平和と安定を責任を持って追求をしていく立場から、在日米軍基地に係る土地使用に関して法的空白を放置することは、立法府として許容するわけにはいかないと判断するのであります。しかし、今回の特措法の改正は、プロセスの踏み方、法律的側面など幾つか問題があるということは、委員会質疑等を通じ我が党も指摘してまいりました。  したがいまして、民主党は、以下の根拠及び趣旨に基づき、修正案を提出いたします。  まず、本来、使用期間内に収用手続を完了する義務を負っているにもかかわらず、それができなかったのは、基本的に政府の責任であることは指摘をさせていただきます。  次に、政府案は、収用委員会が却下裁決をしても防衛施設庁が審査請求しさえずれば、いつまでも暫定使用を許される仕組みになっており、実態的には恒久使用を許すおそれがあるということであります。その結果、米軍基地が固定化されるのではないかとの危惧を沖縄県民方々が持っておられることも事実であります。  他方、日米安保条約の円滑な運用に支障を来すような法的空白を招くことは避けるべきであります。  以上の点を踏まえ、民主党は、特に時限を付すことによって必要最小限度の法改正にとどめるべきであるという見地から、法律の施行から五年後、その効力が失われるという条項を盛り込んだ修正案を提出するものであります。これによって法律の限定性を明確にするとともに、特に政府に対して、五年という期間内において沖縄の諸懸案に積極的に取り組むことを促すことができると考えております。  以上が、我が党提出の修正案の趣旨と内容であります。  委員各位におかれましては、修正案に対して何とぞ御賛同賜りますように強くお願い申し上げ、提案理由といたします。(拍手)
  270. 野中広務

    野中委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     ─────────────
  271. 野中広務

    野中委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。杉浦正健君。
  272. 杉浦正健

    杉浦委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりましたいわゆる駐留軍用地特別措置法一部改正法律案に賛成、同法律案に対する修正案に反対立場から討論を行うものであります。  本案は、駐留米軍の用に供するため継続して使用する必要がある土地等使用権原の確保について、政府が最大限の努力を尽くしても、なおその使用期限までに収用委員会の審理その他必要な権利を取得するための手続が完了しない場合において、その手続が完了するまでの間、その土地等の継続使用ができることとするとともに、これにより土地所有者等が受ける損失について適正な補償を確保することを内容とするものであります。  これは、公正中立な立場にある収用委員会の審理手続、並びに土地調書の署名押印の代行手続などの市町村長及び都道府県知事の権限、その他現行制度の基本的な枠組み、役割を変更することなく現下の状況に対応するため、やむを得ない必要最低限の措置と認められるところであります。  戦後五十年有余、施政権が返還された後も二十五年の長きにわたり、駐留米軍施設区域が集中することによりさまざまな御負担、痛みを担ってこられた沖縄において、大田知事を初め県民の間に反対の意見があることは重々承知をいたしております。我が党は、沖縄県を含む我が国全体の生存と繁栄にとって必須の措置であると考えております。  長きにわたって耐えがたきを耐えてこられた沖縄県民の心にこたえるためには、それをしっかりと受けとめ、沖縄県民が担っておられる重い負担、痛みについて、国民全体で分かち合うとの精神のもと、SACO、沖縄に関する特別行動委員会の最終報告に盛り込まれた普天間飛行場等の返還、県道百四号線越え実弾射撃訓練の本土演習場での分散実施等の諸施策を実行することが重要であります。また、沖縄の自立発展のための振興策の一層の充実を図らなければなりません。我が党は、沖縄県の均衡ある発展並びに県民の生活の安定及び福祉の向上に資するため、政府とともに、これら施策の推進に最大限の努力を尽くす所存であります。  本案は、我が国の安全並びにアジア・太平洋地域の平和と安全に極めて重要な役割を果たしている日米安保条約上の義務履行のために、ぜひとも必要なものであります。また、我が国にとって必要不可欠な日米関係の維持のためだけでなく、国際社会における信用の維持という観点から、極めて重要な意義を有するものであることは申すまでもございません。  他方、修正案は、本案の適用年限を限定するもので、賛成いたしかねるものであります。  以上をもちまして、私の討論といたします。ありがとうございました。(拍手)
  273. 野中広務

    野中委員長 次に、西野陽君。
  274. 西野陽

    ○西野委員 私は、新進党を代表して、ただいま議題となっておりますいわゆる駐留軍用地特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、賛成の立場から討論を行うものであります。  今回の政府案は、沖縄駐留軍用地の強制使用にかかわる県の土地収用委員会の裁決が来る五月十四日の使用期限までに間に合わないことに伴い、国による不法占拠状況を回避するための必要最小限の措置として提案されたものであります。  我々は、率直に言って、今回の事態を招くに至った村山政権以来の政府の対応や、あるいは法案の問題点を考えれば、法案は極めて便宜的、場当たり的であり、安全保障という国にとっての最重要課題に対する基本姿勢として極めて問題が多いと言わざるを得ません。  これは、自民、社民、さきがけ三党の連立維持を最優先にし、日本安全保障の根幹である日米安保条約上の国の義務を軽視してきた結果にほかなりません。  また、法案そのものについても幾つかの問題点を指摘せざるを得ません。すなわち、今回の改正案は、土地収用委員会の審理中にそのルールを変えるもので、民主主義国家のあり方として疑問があり、沖縄基地の固定化につながりかねないこと、沖縄基地負担の軽減について何らこたえていないこと、楚辺通信所で同様の無権原状態となったのを放置しておきながら、今回このような提案をしたこと、この法改正で収用委員会の裁決により使用権原を取得するまでの間の暫定使用を合法化したとしても、収用委員会が限定的裁決をした場合、基地の安定的使用に影響の出かねないことなどの問題点を持っております。  我々は、昭和二十七年に制定された駐留軍用地特別措置法そのものが、国の安全保障の根幹である日米安保条約に基づいて安定的な基地提供を行い得る法体系かどうか、疑問を持つものであります。  すなわち、特措法は、基本的には、総理大臣基地用地として国の使用が必要であるとして認定したものを都道府県知事や県の収用委員会が審査する仕組みとなっているところであります。純国内的な施策であれば土地収用法規定も当然ですが、在日米軍基地の確保は国の安全保障の根本問題であり、条約上の義務でもあります。したがって、政府が最終責任を負う仕組みが必要であると考えるものであります。  さらに、沖縄基地の負担を減らすために日本国全体で基地負担を分かち合おうとするなちば、国が責任を持つ法整備は不可欠であります。これは一見厳しい法改正のように感じますが、そうしなければ、結局、国内移転が進まず沖縄基地の固定化となり、沖縄県民にとっても、日本安全保障にとっても正しい選択ではないと確信するものであります。  こうした認識に基づき、四月二日、三日の両日、橋本総理と小沢党首との会談が行われ、三項目の合意がなされました。この合意は、基本的にこれまでの新進党の主張を原則として受け入れ、国として最終的に責任を負う仕組みを整備することで一致したものであります。我々は、この合意を重く受けとめ、その実行を求めるものであります。  その上で、この特措法改正案は問題点の多い法案ではありますが、沖縄米軍基地用地の不法占拠状態を避け、日米安保条約上の義務を履行するとの観点から必要と判断し、暫定的措置として容認するものであります。  最後に、一言申し添えます。  先日来の本委員会での質疑参考人陳述を通じて感じましたことは、沖縄の心という問題であります。唯一、国内戦を通じて悲痛な体験をこうむったこと、その上、二十七年間にわたり米軍の統治下にあったという歴史的経緯、そして昭和四十七年、本土復帰とともに数々の振興策が講じられつつも、製造業の不足や若年失業者を多く抱えていることなどなど、本土との格差がなお存在しております。  にもかかわらず、米軍基地の約四分の三が沖縄に集中し、しかも沖縄本島の約二〇%が基地で占められ、沖縄に戦後は残っているのではないかという事実認識。これらの沖縄の歴史、現実を踏まえながら、沖縄の自立発展と将来に向かっての明るい展望を醸成するためにも、政治、なかんずく政府の責任の大きさを十分認識して、沖縄の心を我が心として取り組んでいく必要を痛感した次第であります。  なお、民主党提出の修正案については、見解を異にしますので、修正の必要はないと考えるものであります。  以上をもちまして、私の討論といたします。(拍手)
  275. 野中広務

    野中委員長 次に、山元勉君。
  276. 山元勉

    ○山元委員 私は、民主党を代表して、我が党提出の駐留軍用地特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案に賛成する立場から討論を行うとともに、また政府提出の原案についても、以下に述べる理由から、基本的に賛成する用意があることを申し述べさせていただきます。  我が党は、本委員会審議を通じて、沖縄駐留軍用地の収用問題に関して、法的空白状態のまま土地使用を認めることは立法府としてとるべきではないとの基本認識を踏まえつつも、政府提出の特措法改正案では、暫定使用制度と言いながら、実質的に半永久的な暫定使用制度に変質する危険性をはらんでいることを鋭く指摘してきたところであります。  とりわけ、仮に収用委員会が防衛施設庁の求める使用期間を大幅に減ずる使用期間しか認めず、これにつき施設庁が審査請求を求めた場合に、ずるずると暫定使用が続けられることも許容されるという法律構成になっている点は重大な問題であると考えたものであります。また、こうした点こそ、米軍基地が固定化されるのではという危惧を持っている沖縄県民方々が強く批判してきたところであります。  したがって、こうした沖縄県民方々が抱く不安を少しでも払拭することに努め、あわせて、一定期間において沖縄米軍基地の整理縮小、日米地位協定の改善、地域振興策の充実などの重要課題について集中的に政府に取り組むことを促すために、今回の改正項目の効力を施行日から五年を経過した日において失わせる形に修正することが、現下の沖縄問題に立法府として対処する最も妥当な方向であると確信するものであります。  政府は、特措法改正案の提出に至るまでの経過において、本来、使用期間内に収用手続を完了する義務を負うていたにもかかわらず、またそのための十分な時間的な余裕があったにもかかわらず、事態を放置したまま、我が党が提案した緊急使用の申し立てさえ拒否してきたのであります。その結果、沖縄県民の厳しい批判にもかかわらず特措法の改正案を提案せざるを得ない事態に追い込まれたその責任を、政府は厳しく受けとめるべきであります。  この際、政府における責任を立法府においても厳しく受けとめ、法案を五年間の時限立法に修正して、沖縄県民の願いを一歩ずつ着実に実らせていく契機とすべきであると考えるものであります。  最後に、我が党としては、沖縄県民基地縮小にかける思い日米安保条約を堅持することの重要性という二つの課題を両立させる道筋を探求するという立場に立てば、特措法改正案を時限的なものにすることが望ましい選択であると考えるものでありますが、日米安保条約を適切に運用する上で、土地使用の法的空白を招かないようにするためには、次善の策として政府案に賛成する用意もあることを表明して、賛成討論を終わります。  以上です。(拍手)
  277. 野中広務

    野中委員長 次に、穀田恵二君。
  278. 穀田恵二

    ○穀田委員 私は、日本共産党を代表して、反対討論を行います。  今回の法案は、二十一世紀にわたって沖縄県民土地強奪を続け、米軍基地を固定化するための仕掛けをつくり上げようとするものであります。米軍基地の縮小、撤去を求める沖縄県民の声を真っ向から踏みにじり、沖縄県民を憲法の外に置く許しがたい大改悪案であり、断固反対であります。  本法案は、米軍基地用地の使用期限が切れても、国、防衛施設局が収用委員会に裁決を申請をしていさえすれば、収用委員会の裁決がなくても、さらに、収用委員会が却下の裁決をしても、収用委員会の結論のいかんにかかわらず暫定使用の名で土地強制使用を続けられるようにする、まさに土地永続使用法であります。これは、地方自治体の独立した機関である収用委員会の機能と役割を否定するものであります。  憲法二十九条が保障する国民の財産権の侵害という点でも、憲法三十一条が保障する適正な法手続の原則の否定という点でも、また、当事者の一方である政府が、自分の思うように収用委員会の審理が進まないからといって土地収用のルールそのものを都合のいいように変えてしまうという法治主義の否定という点でも、さらに沖縄県民権利制限を沖縄の声を聞かずに強行する差別立法という点でも、憲法を二重三重に踏みにじるものであり、明白な違憲立法であります。  このような違憲明白の法案は撤回しがありません。にもかかわらず、総理の訪米日程もにらんで、わずか四日間の審議で、私どもが要求した公聴会も開かず強行することは断じて許されません。日米安保を絶対とし、アメリカの戦略を支えるために国民の財産権を踏みつけにする悪法を推進する政府各党の責任は、厳しく問われなければなりません。  なお、民主党提案の修正案は、五年の時限立法としても違憲明白の法案を正当化できるものではなく、反対です。  以上、反対理由を述べて、討論を終わります。(拍手)
  279. 野中広務

    野中委員長 次に、上原康助君。
  280. 上原康助

    上原委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、駐留軍用地特別措置法の一部を改正する法案に、遺憾ながら反対の討論を行います。  沖縄復帰してから満二十五年を迎えようとする今日、またしても沖縄の心と県民の切実な声が国政に十分反映されないまま本法案がこの特別委員会で可決されようとすることは、無念のきわみであります。  以下、反対する主な点を指摘しておきたいと存じます。  まず、特別措置法の改正に関連する問題点であります。  緊急使用の申し立てを行わず、いきなり法改正に訴えた強権的手法は容認しがたいものがございます。  従来、政府が説明してきた必要最小限、緊急避難的なものではなく、内容的には特別立法、新規立法に等しい内容になっていることでございます。  また、実質的に沖縄のみに適用され、沖縄差別の法律だという印象を強く与えていることでございます。  憲法上保障された財産権の侵害のおそれがあるという指摘、憲法下の現行土地収用法制を抜本的に変更し、収用委員会の権限、存在を否定しようとしている点が指摘をされております。  次に、特別措置法改正の法的手続の面の問題点があります。  特措法が準用する土地収用法では、県収用委員会による使用裁決と損失補償金の支払いをして初めて使用権原が取得できるのでありますが、改正案によれば、総理大臣使用認定があれば、暫定使用の目的で一方的に使用権原が付与される内容になっております。  県収用委員会が却下裁決しても、建設大臣へ審査請求すれば暫定使用ができる内容となっております。  改正案によると、暫定使用に対する司法的救済手続手段がないように思われます。  既に不法占拠している読谷村の象のおりの土地についても暫定使用を認めるもので、法律不遡及の原則に反する疑いが強く指摘されております。  象のおりを本文に入れず附則に入れたのは、本文に入れた場合、沖縄のみに適用される法律であるが、いずれにせよ、憲法九十五条との関係が強く批判されることは免れません。  緊急使用申し立て制度を骨抜きにするおそれがあります。  六カ月更新制度の導入は、一方の当事者で国の優位的地位を保障するもので、公平の原則に反するように思われます。  また、沖縄駐留米軍基地の整理縮小については、日米間で昨年SACO合意が明らかにされましたが、それ以降、さらなる沖縄米軍基地、とりわけ海兵隊の計画的、段階的な縮減の方向性は、いまだ明らかにされておりません。沖縄県民の負担と犠牲を少しでも軽減するため、目に見える成果を出すように強く政府に求めたいと存じます。  日米関係の重要性は、私たち社民党もよく理解をいたしております。しかし、指摘いたしましたように、従来のように日米安全保障面の過重な負担を沖縄県民のみに押しつけたままでの、今回の駐留軍用地特別措置法の一部改正に多くの県民が反対していることを留意をしつつ、私たちはこの法案に対処してまいりました。  また、私は、民主党提出の修正案、暫定使用に関する規定の五年後失効には、緊急避難的な要素を少しでも取り入れられたものと評価いたしておりますが、社民党は法案の改正、修正も同意しかねることを決定しておりますので、その点を申し添えて、私の反対討論といたします。(拍手)
  281. 野中広務

    野中委員長 次に、粟屋敏信君。
  282. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 私は、太陽党を代表し、政府提出のいわゆる駐留軍用地に関する特別措置法の一部を改正する法律案に賛成の立場から討論を行います。  本法案は、駐留軍用地に関する一般法の形をとっておりますが、沖縄米軍基地の十二施設に係る土地使用期限が切れることに伴い、使用継続についての特別措置を定めるものでもあります。  現行法の定める手続によって使用権原を取得することができなかったことにつきましては極めて遺憾でありますが、使用権原を失うことによって違法状態が生じ、我が国の平和と安全を守る日米安全保障条約に亀裂をもたらすことは、我が国の国益に重大な影響を与えるという見地から、本法案に賛成するものであります。  一方、戦中戦後を通じ、沖縄県民が受けられた苦しみ、痛みに思いをいたさなければなりません。我が党は、これにこたえるため、一つ、国際情勢の変化に対応し、米軍の配置、兵力構成等について常時SCC等の場において協議し、沖縄基地のさらなる整理、統合、縮小について努力すること、二、地位協定に係る諸問題、特に米軍の演習、行動による環境破壊の防止、住民との摩擦解消等について不断に改善の努力を行うこと、三つ、沖縄県が自立できる振興開発沖縄県の発意を尊重して推進すること等を主張してきたところであります。  このことにつきましては、先日の羽田党首と橋本内閣総理大臣との会談、また当委員会質疑を通じて、政府もこの趣旨に従って取り組むとの姿勢を明確にされたと存ずるところであります。私どもも、党を挙げてその実現に向けて努力いたす決意であります。  なお、民主党提出の修正案につきましては、問題の基本的解決にはならないという考えから、残念ながら賛成しがたいことを申し上げまして、討論を終わります。(拍手)
  283. 野中広務

    野中委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  284. 野中広務

    野中委員長 これより内閣提出日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定の実施に伴う土地等使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決をいたします。  まず、前原誠司君外四名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  285. 野中広務

    野中委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  286. 野中広務

    野中委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  287. 野中広務

    野中委員長 この際、本案に対し、鈴木宗男君外五名から、自由民主党、新進党、民主党、社会民主党・市民連合及び太陽党の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。甘利明君。
  288. 甘利明

    甘利委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして案文を朗読し、趣旨の説明といたします。     日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定の実施に伴う土地等使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たり、沖縄米軍基地が極度に集中している実態と沖縄県民のおもいを踏まえ、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。  一 沖縄に関する特別行動委員会(SACO)における合意事項の推進に当たっては、着実かつ迅速な実施を確保するため、最大限の努力を払うこと。また、最重要課題のひとつとして米軍基地の整理・統合・縮小等の沖縄に関連する問題に引き続き全力で取り組むこと。  二 日米安保条約義務我が国全体で果たすべく、沖縄への過重な負担の軽減を図るよう、最大限の努力を払うこと。  三 アジア情勢の安定のための外交努力を行うとともに、米軍の兵力構成を含む軍事態勢について、継続的に米国政府協議すること。  四 在日米軍の演習、直轄工事に対しては、国内法令の趣旨を尊重し、人権の保護並びに自然環境の保全のため、なお一層努力するよう申し入れること。  五 沖縄基地依存型経済から脱却することを目指し、沖縄政策協議会で集約しつつある振興策を着実に推進すること。  六 在沖縄米軍基地の整理・統合・縮小、返還給付金の支給期間の検討を含む返還跡地の有効利用の促進、沖縄米軍基地所在市町村に関する懇談会の提言、沖縄振興策等の実施に当たっては、予算措置に特段の配慮を講ずること。 以上であります。  何とぞ御賛成賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。(拍手)
  289. 野中広務

    野中委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  290. 野中広務

    野中委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することといたしました。  この際、久間防衛庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。久間防衛庁長官
  291. 久間章生

    ○久間国務大臣 ただいま御決議をいただきました附帯決議につきましては、政府といたしましても、沖縄米軍基地が過度に集中している実態と沖縄県民思いに心をいたし、御指摘の六項目の御趣旨を踏まえまして、適切に、全力で対応してまいりたいと存じます。     ─────────────
  292. 野中広務

    野中委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いただきました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  293. 野中広務

    野中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  294. 野中広務

    野中委員長 この際、一言ごあいさつを申し上げます。  本案の審査開始以来、終始真剣な審議を重ねていただき、本日ここに審査を終了することになりました。  これもひとえに各党理事並びに委員各位の御理解と御協力のたまものと存じます。ここに深く感謝の意を表明いたします。  日米安保体制の継続、発展について第一歩を新たにすることができましたこと、さらに、本審議を通じまして、長い歴史の中において耐えがたい犠牲とそして傷を残してこられまして、現にその重圧に耐えておられる沖縄県民の現状に思いをいたし、本案成立を新たなる沖縄振興の発展の歴史のスタートになりますよう、橋本総理を初めとする一層の関係各位の御努力を期待をいたしまして、委員長のごあいさつといたします。(拍手)  本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十分散会      ────◇─────