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1997-04-15 第140回国会 衆議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月十五日(火曜日)     午前九時二分開議 出席委員   委員長 額賀福志郎君    理事 金子 一義君 理事 坂井 隆憲君    理事 保岡 興治君 理事 柳本 卓治君    理事 北側 一雄君 理事 谷口 隆義君    理事 池田 元久君 理事 佐々木陸海君       飯島 忠義君    今村 雅弘君       衛藤征士郎君    小林 多門君       菅  義偉君    砂田 圭佑君       田中 和徳君    田中 昭一君       中野 正志君    山中 貞則君       吉川 貴盛君   吉田左エ門君       渡辺 喜美君    上田 清司君       木村 太郎君    北脇 保之君       鈴木 淑夫君    中川 正春君       並木 正芳君    藤井 裕久君       前田  正君    宮地 正介君       村井  仁君    川内 博史君       末松 義規君    田中  甲君       山本 譲司君    佐々木憲昭君       秋葉 忠利君    濱田 健一君       岩國 哲人君    新井 将敬君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 三塚  博君  出席政府委員         大蔵大臣官房金         融検査部長   中川 隆進君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省銀行局保         険部長     福田  誠君         大蔵省国際金融         局長      榊原 英資君         国税庁課税部長 舩橋 晴雄君  委員外出席者         防衛庁長官官房         防衛審議官   柳澤 協二君         外務省総合外交         政策局国連政策         課長      杉山 晋輔君         郵政省貯金局経         営計画課経営調         査室長     田中  進君         参  考  人         (株式会社さく         ら銀行代表取締         役専務取締役) 工藤 長義君         参  考  人         (バンカース・         トラスト銀行駐         日代表)    安岡 雅之君         参  考  人         (伊藤忠商事株         式会社代表取締         役副社長)   森澤 寛二君         参  考  人         (大和讃券株式         会社専務取締役         国際業務本部         長)      米山 幸治君         大蔵委員会調査         室長      藤井 保憲君     ————————————— 委員の異動 四月十五日  辞任         補欠選任   山本 譲司君     川内 博史君   秋葉 忠利君     濱田 健一君   吉田 公一君     岩國 哲人君 同日  辞任         補欠選任   川内 博史君     山本 譲司君   濱田 健一君     秋葉 忠利君   岩國 哲人君     吉田 公一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する  法律案内閣提出第五三号)      ————◇—————
  2. 額賀福志郎

    額賀委員長 これより会議を開きます。  内閣提出外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、参考人としてさくら銀行代表取締役専務取締役工藤長義君、バンカース・トラスト銀行駐日代表安岡雅之君、伊藤忠商事代表取締役社長森澤寛二君及び大和証券専務取締役国際業務本部長米山幸治君、以上四名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと思います。  なお、議事の順序でありますが、まず、工藤参考人安岡参考人森澤参考人米山参考人順序で、お一人十五分程度意見をお述べいただき、次に、委員からの御質疑に対してお答えをいただきたいと思います。  それでは、工藤参考人からお願いをいたします。
  3. 工藤長義

    工藤参考人 おはようございます。さくら銀行工藤でございます。  さくら銀行は、昨年四月来、全国銀行協会連合会会長行として、今回の外為法改正にかかわってまいりました。私自身も、外国為替等審議会法制特別部会専門委員として参加させていただきました。このたびは、外為法改正について銀行業界を代表して大蔵委員会皆様方参考意見を述べよとのことでございますが、ほかにより適切な方が多数いらっしゃる中、まことに僭越とは存じますが、民間銀行立場から所見を申し述べさせていただきます。  外為法は非常に守備範囲が広い法律でございますが、大きく申し上げて、私ども銀行では、居住者間で行われる外貨にかかわる取引並びに居住者と非居住者との間で行われる円貨及び外貨にかかわる取引を管理している法律、このように把握してまいりました。  現行法では、これらの取引は、外国為替公認銀行、以下為銀と省略させていただきますが、これに集中されております。これは、外為取引の実態を常時把握し、有事の際の規制を実効あらしめるためであると考えております。これがいわゆる為銀集中主義であります。  現行制度は、貿易生命線とする我が国経済発展のため、これまで一定の効果を上げてまいりましたが、我が国経済国際化進展に伴い、ユーザー皆様にとって使い勝手が悪い部分が目立つようになってまいりました。また、今後の金融技術の発達、取引エレクトロニクス化などの進展を展望いたしますならば、早急に制度を改めない場合には、金融取引海外へ逃避するおそれすら出てまいりました。このような認識に立って、現行制度を抜本的に見直し、空洞化の危機に瀕している東京市場ニューヨークロンドンに比肩すべきアジア金融センターとして確立することが今回の外為法改正の眼目であると理解いたしております。  本日は、民間実務家立場から、この改正を、一、支払いに関する自由化、二、居住者間の外貨資本取引自由化、三、居住者・非居住者間の資本取引自由化、四、為銀制度廃止、この四つ項目に分け、銀行業務銀行経営にどのような影響を与えるかを中心お話をさせていただきます。  まず初めに、支払いに関する自由化でございますが、これは、先ほど申し上げた外為法二つ守備範囲により、居住者が他の居住者との間で行う外貨での支払いに関する自由化と、居住者と非居住者との間で行う支払いに関する自由化にさらに分けられます。  前者は、一般に居住者間外貨決済と呼ばれるものが中心となります。例えて申し上げますと、あるメーカー商社を通じて製品を海外に輸出していて、その商社輸出代金ドルで受け取った場合、現行法下では、メーカーがその原料輸入決済などのため商社からドル建て支払いを受けようといたしますと、個別に大蔵大臣許可が必要となります。この許可経済合理性のあるものについては認められておるというふうに承っておりますが、外為法改正後は、許可手続自体が不要となりますので、より多くの居住者居住者間外貨決済を行うことが見込まれます。この結果、従来余り一般的でなかった国内での外貨送金取引外貨預金取引増加予想され、私どもは、これらの商品サービス内容お客様が利用しやすいように現在レビューしておるところでございます。  居住者間外貨決済増加銀行収益にどのような影響を与えるかにつきましては、従来必ず発生しておりました外貨と円との通貨の交換転換取引がどの程度減少するか国内外貨送金手数料がどの程度になるか等さまざまな要因の組み合わせが考えられまして、予想は非常に難しゅうございます。ただし、全体といたしましては、外貨と円との交換取引転換取引減少いたしますので、手数料減少する方向にあるもの、このように考えております。  次に、支払いに関する自由化のうち、クロスボーダー、すなわち国境をまたがるものでございますが、この中で最も影響の大きいのは、非居住者との受け取り・支払い相殺でございます。改正後は、第三者を含む複数の海外拠点との相殺、いわゆるマルチネッティングが事後報告のみで可能となります。海外に多数の拠点を持つ企業は極めて効率的な資金管理が可能になるものと思われます。  銀行にとりましては、従来取り扱っていた外国為替取引企業内で相殺される分だけ減少いたしますので、収入減少となることが予想されますが、逆に企業にとりましては、その分コスト削減になるわけでございます。しかし、銀行にとりましても、新たなビジネスチャンスがないわけではありません。相殺を行う企業は、正確、効率的な相殺を実施するために何らかのコンピューターシステムを必要とするでありましょうし、また、相殺を効率的に行うためには、日本の本社が各海外拠点資金ポジションを常時リアルタイムで把握する必要も出てまいります。銀行は、このような資金管理システムをトータルで提供することで、新しいビジネスの展開を図っていく考えでございます。  二つ目項目である居住者間の外貨資本取引自由化のうち、銀行営業に対する潜在的影響力が最も高いのは、外国為替業務がだれにでも営めるようになるということでございます。  新しい外為業務の担い手としてどのような方が参入してこられるのかにつきましては、現状、来年四月以降の参入を明言されておる企業も特にございませんで、予想は困難でございますが、当面は、外国為替取引を単独で提供するというよりも、既存の取扱商品外為商品を組み合わせた商品提供されるのではないかと推測いたしております。もちろん、銀行と同等ないしそれ以上のサービス銀行より安価に提供する新規参入の方があらわれれば、銀行顧客を奪われ、銀行収益は打撃を受けることになります。  第三の項目である居住者・非居住者間の資本取引自由化の中で、銀行経営にとって極めて重要な意味を持ちますのは、居住者海外金融機関との資本取引自由化であります。と申しますのも、今回の改正により、単に外為業務のみならず、預金貸し金を含むすべての銀行業務において、邦銀海外金融機関競争することになるからです。すなわち、居住者は、海外金融機関預金をし、その預金から送金を行うことによって証券を購入したり海外直接投資を行うことが事後報告のみで自由に行えることになります。  したがいまして、ニューヨークロンドン並み国際金融市場となるため、外為法改正されるとともに、他の金融監督規制税制会計制度グローバルスタンダードに達することが、邦銀海外金融機関と対等に競争するために必要となってまいります。外為法文字どおりビッグバンフロントランナーとなって、他の改革進展することを期待いたします。  すなわち、各国の金融市場をレースに例えさせていただきますと、外為法改正は、我が国金融システム改革という集団の中で、鼻の差先行しているフロントランナーとの位置づけではないかと思います。ただし、我が国金融システム改革という集団世界金融市場の中では第二集団でございまして、第一集団は、ニューヨークロンドンが激しいデッドヒートを繰り広げながらその速度を速めている。外為法改正に続く諸改革が速いピッチで進まなければ、第一集団を追撃するどころか、第三集団、第四集団にも追い抜かれてしまう、このような状況にあるのではないかと考えております。  具体的に申し上げますならば、規制監督面では、金融持ち株会社の導入、それに伴う業態間の相互参入が早急に認められる必要があります。御存じのとおり、欧州の銀行は、ユニバーサルバンク方式により証券業務を行うことが認められております。米国銀行におきましても、グラス・スティーガル法によります銀行証券の分離の実質的な緩和が進行いたしております。これら欧米金融機関商品提供力商品開発力において対等に競争していくためには、我が国におきましても、銀行証券子会社業務範囲にかかわる制限撤廃など、制度面整備を早急に行う必要がございます。その他、金融先物オプション取引に対する取引所税撤廃など、税制面の問題につきましても早急に対応する必要があると考えております。  ビッグバンは、従来の漸進主義からの決別を内外に示すネーミングと理解しております。外為法改正の後に続く諸改革が迅速に進むことを強く希望する次第でございます。  四番目の項目である為銀制度廃止は、エンドユーザーにとっての規制緩和及び外為業務への新規参入自由化と平仄を合わせたものでございますが、銀行にとっての規制緩和という側面も有しております。すなわち、為銀は、これまで銀行法のもとでの規制監督に加えて外為法上の規制監督をも受けておりました。具体的には、持ち高規制ですとか、外為業務を営む店舗にかかわる認可などの規制を受けておりました。今回の改正によりまして、これらの規制廃止され、外為業務外部委託ども含めまして、従来以上に効率的な業務運営が可能になるものと考えております。  以上、外為法改正銀行業務に与える影響について、四つ項目に分けてお話をさせていただきました。  銀行収益への影響という点から、再度まとめさせていただきます。  外為業務への影響という点から申しますと、企業間での相殺など銀行を通じない支払い増加新規業者参入による競争の激化など、基本的には銀行にとっての外為業務からの収入減少するものと考えられますが、新外為法お客様利便性の向上に資すること大であること、東京市場活性化国民経済発展にとって望ましいことであり、それがひいては銀行経営にとっても望ましいことである、このように考えまして、私どもは今回の改正に賛同いたしておるわけでございます。  銀行は、当面の収益減少業務合理化管理システムの販売によって補うつもりでございます。  ここで、銀行界からぜひともお願いしたいことは、業務合理化を進めていくためにも、支払いに関する確認義務海外送金に関する本人確認義務外為取引にかかわる報告義務など外為法上の諸義務資料情報整備にかかわる報告義務を極力簡素化していただきたいということであります。いずれも政省令や個別の法律により今後詳細が定められるわけでございますが、規制緩和流れに沿った形での簡便な内容、方法、特にコンピューターシステムを使った銀行事務処理になじむようなものとなるよう御配慮をお願いしたいと思います。  繰り返しになりますが、今回の外為法改正銀行業務に与える影響は、狭い意味での外為取引に限定されるわけではございません。国内預金貸し金を含めましたすべての銀行業務海外金融機関との競争にさらされます。しかし、私どもは、この点をネガティブにばかりとらえているわけではございません。例えば、銀行は、ニューヨークロンドンスワップなど金融デリバティブ取引を行う専門会社子会社として持っておりまして、現地の優秀な専門家を雇用して業務を行っていますが、これまで、これらの子会社日本居住者と直接取引を行うことができませんでした。外為法改正後は、海外子会社を通じた先端金融商品国内お客様への提供が従来よりも格段に容易になるものと期待しております。  このように、非居住者との取引自由化されたことの影響は必ずしも銀行にとってマイナスとは限らないのですが、国際標準に満たない規制税制会計制度改革されず、金融資産金融取引海外逃避が起こった場合、銀行収益に多大な影響があることは先ほど申し上げたとおりでございます。この点をぜひとも御理解賜りたいと考えております。  最後に、東京市場アジア金融センターとして再生する可能性について申し上げたいと思います。  発展を続けるアジア市場の中で、膨大な金融資産を有する投資家を背後に持つ東京市場欧米型の市場原理に基づく国際金融市場となることは、アジア経済の一層の発展に寄与するところ極めて大でございまして、世界経済発展にとりましても極めて望ましいことでございます。したがいまして、私は、東京アジア金融センターとなるニーズは高いと考えております。このニーズにこたえるため、金融制度改革によりインフラを整えるとともに、私ども邦銀も、ビッグバンを通じてみずからを変革し、世界の一流の金融機関に生まれ変わる努力をしてまいる所存であることを申し上げて、私の意見陳述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  4. 額賀福志郎

    額賀委員長 どうもありがとうございました。  次に、安岡参考人お願いをいたします。
  5. 安岡雅之

    安岡参考人 ただいま御紹介にあずかりましたバンカーズ・トラストの安岡でございます。  参考人として、今回の為替管理法改正及びビックバンに関連して、三点ほど、僭越でございますけれども意見陳述させていただきます。  まず第一に、今回の為替管理法改正について、私ども意見を述べさせていただきます。その次に、二点目として、米国金融改革が起こったときにどういうことが起こったか、そしてバンカーズがどのように乗り越えてきたかということを、例をもって、御説明させていただければと思います。三点目に、先週発表になりましたが、日債銀との業務提携について、私ども意見を述べさせていただきます。  まず第一の点でございますけれども東京に駐在する外銀としての所見でございますけれども、今回の為替管理法改正というのは、私ども認識では、これでニューヨークロンドン市場と同じ土俵東京市場が上がってきたという印象を受けております。基本的には、御存じのようにニューヨークロンドンとも資金流入流出について特に制限がございませんので、私ども東京市場もこの土俵の中に入ってきたという認識を持っております。これから日本金融界も本格的に国際金融に入っていくのであれば、まず、国内外資金流れをスムーズにして国際化を図る必要があると考えます。その点でも早急な実行をお願いしたいと思います。  外資系から見ますると、現在のビジネスでも、既に為替管理法で強く拘束されているという認識はそれほどございません。国内でできないものは海外取引することができるという環境がもう既に整っております。時には、海外でやった方がやりやすい、あるいはコストが安いというような取引がございます。具体的には、例えば株式取引手数料については海外ではかかりませんので、割安に取引ができるというような状況も生まれております。  為替事務処理コストでございますけれども海外の方が格段に安く、当行の場合には、既にシンガポールにその事務を集中しております。東京には端末機を置いて、そこから営業の人間がお客さんと話すという体制をとっております。こういたしますと、コストは約二分の一になります。このコスト削減によって、我々は同じ取引でもほかの銀行さんと比べて競争力をアップできる。さらに、コミュニケーションのテクノロジーが発達した結果、場所の差というものを驚くほど感じない事務形態にもう発展しております。  今後でございますけれども、傾向としては、外資系の場合、地域内一極集中して事務処理を行うという外銀がふえてくると思います。その場所シンガポールに持つか、香港に持つか、東京に持つか、各行の戦略によって異なると思いますけれども東京へ本拠を置く銀行がふえれば、東京市場活性化につながるのではないかと思います。  結論を申しますと、早急に改革を実行し、国内外の壁を取り除き、日本金融機関国際化を図ることが将来の国益につながるものと考えます。これにより国際市場日本金融機関さんの進出が図られ、競争力を強化し、結果として、東京市場が魅力ある市場に生まれ変わるのではないかと期待しております。  二番目の点でございますけれども金融改革ビッグバン、アメリカで何が起こったか、バンカースに何が起こったかということを簡単に述べさせていただきます。  一九七〇年代、金融改革が急速に進行したわけでございますけれども、その当時、バンカース・トラストという銀行は、シティーバンク、チェイスに次ぐ第二グループ、特色のない当たり前の中小銀行という位置づけでございました。自由化の波をもろに浴びて倒産寸前の苦境に陥った次第でございます。すなわち、バランスシートの左側であります借り入れ人サイド企業は、社債、株式コマーシャルペーパーあるいはユーロボンド等に走り、結局直接金融でその資金調達を図るようになる。一方、右側の預金サイドでございますけれども証券会社の出すMMF、投資信託等に逃げ、結局銀行としての収益力を落とし、被買収ターゲットにもなった時期がございます。  一九七八年、バンカース・トラストのマネージメントは、ニューヨーク州にある二百の全支店を売却いたしました。本店と四つ支店のみを残す形で再スタートいたしました。ホールセール中心投資銀行業務に絞って戦略をまとめていくという一大決心をいたしました。すなわち、自分の強い部門にフォーカスしていく戦略、他社との差別化を徹底的に図ったのでございます。人材を積極的に外部より取り入れて体質改善も行いました。  その結果、八〇年代、ユーロ市場拡大に伴う急速な証券化発展スワップオプション等デリバティブ商品拡大リスク管理手法発展等金融技術の進歩による種々の新商品開発が一気に進む環境が生まれたために、バンカーズとしてはうまくその波に乗ることができて、企業買収、LBO、世界的な金融自由化日本市場も含みますけれども、その促進も相まって、全体的な機関投資家金余り現象の中で、フォローの環境自己改革を進めることができたのでございます。  その間、バンカーズが毎年多額の金を投資し続けたのは、テクノロジーでございます。テクノロジーに対する投資は年間約五百億やっております。これを絶えず行ってきました結果、バンカーズとしては、金融ビジネスというものをリスク管理を伴う情報産業であるというふうにとらえるようになりました。すなわち、資金の出し手ととり手をグローバルなネットワークでつないで、金融技術を加えてリスクの調整を図って顧客提供する業務に取り組んだのでございます。その結果、収益力も上がり、リターン・オン・エクイティー、資本収益率についても一五%を上回ることが平均となりました。  現在では、銀行証券いずれでもない新しい形の金融機関を目指すという経営体制になっております。すなわち、銀行の持つ資金力バランスシートの力に加えて、証券会社の持つ市場の変化に対する機動力をあわせた金融機関というものをつくり上げたい、これが二十一世紀の金融機関になるのではないかと信じております。  ここ一、二年の動きを見ますと、昨年は、フェデラルリザーブでございますか、連邦準備委員会の総裁でございましたポール・ボルカー氏が会長をいたしますウォルフェンソン社、これは企業買収仲介アドバイザリー専門会社でございますけれども、そこの買収を行っております。最近は、中堅証券会社株式上場に強いアレックス・ブラウン社買収しております。  このように、銀行からスタートしたのでございますけれども証券会社をあわせ持った新しい金融機関にさらに前進しようと努力しております。  第三番目の点でございますけれども、今回の日債銀との業務提携について御説明させていただきます。  大きな流れとして、東京市場が変わりました。東京における外資系の動きというのを見ますと、八〇年代はグローバル化が促進され、東京市場というのは膨大な資金の供給ソースということでニューヨークロンドンから見られておりました。これをいかに米国市場に還流させるかというのが我々のビジネスということで、外資系はこぞって大量進出してきました。さらに、東京ニューヨークロンドン間の情報の格差をアービトラージ、裁定取引をすることによって、まだまだ情報の格差を利用して利益を得ることができた時代でございます  ところが、九〇年代、バブルがはじけ、東京資金供給源としての魅力が減少いたしました。さらに、東京ニューヨークロンドン市場間の情報緊密化が進み、市場の一体化が図られることによって、外資の間でも競争が激化し、先ほどの裁定取引の魅力も落ちてきました。その結果、一部外資の間にも撤退の動きもありましたし、空洞化の動きもありました。  これを打破する方法として、我々は、ローカル市場へのブレークスルー、本格的参入を図ることによってさらに付加価値をつける必要があるのではないか、そこにビジネスオポチュニティーがあるのではないかと考えました。  外資系には証券化、デリバティブ等金融商品の開発方はありますが、エンドユーザーに対するアクセスが弱いのが問題でございます。日本市場というのは世界第二位の大きさであり、今後の資金運用はグローバルに展開せざるを得ない魅力的なマーケットでございます。一方、顧客が十分にサービスされているかというと、まだまだ不十分であり、開拓の余地があると考えられます。  外資系金融機関の間の競争も激しさを増しており、競合相手と差別化をする必要もあります。ビッグバン以降東京市場で生き残るためには、外資系としてもローカル市場にブレークスルーを図り、そのコミットメントを示す必要があると考えた次第でございます。今回橋本内閣の打ち出したビッグバン構想は、外資系としても大いに歓迎するところであり、ぜひとも成功してほしいと願うものであります。そのためには、外資系サイドとしても真剣なコミットメントを示す必要があると考えました。  一方、日債銀側には、不動産関連ビジネス証券化ビジネス、デリバティブビジネス、地方の金融機関に対する、主に投資家でございますけれども、アクセスが非常に強いという強みがあります。日本のホールセールバンクとしてのポテンシャルは我々は高いと考えております。バンカースの経験、ノウハウ、それに日債銀の従来の実績をあわせることが、よい補完関係になり得ると信じております。  以上、陳述を終わります。ありがとうございました。(拍手)
  6. 額賀福志郎

    額賀委員長 どうもありがとうございました。  次に、森澤参考人お願いをいたします。
  7. 森澤寛二

    森澤参考人 おはようございます。伊藤忠商事の森澤でございます。  本日、参考人といたしまして、次の五項目に分けて私の意見陳述を行いたいと思っております。  第一に、全般的な所感、第二に、外為法改正の意義及び産業・貿易界への影響について、第三に、基本的金融インフラの必要性について、第四に、報告制度のあり方について、最後に、総括的な希望ということについて申し述べたいと思います。  初めに、全般的な所感を申し上げます。  約一年間にわたりまして、外為審議会の法制特別部会委員として参加させていただいた者としまして、今般、外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案が提出されるに至りましたことを大変喜んでおります。  外為審議会におきましては、各委員の皆さんが日本金融・資本市場が現在抱えている問題点をよく認識され、かつ、ある種の危機感を持って審議会に臨まれたという印象を強く持っております。各業界からの代表意見陳述の場が設けられまして、基本となる問題認識について、いろいろな角度から活発で、かつ具体的な議論がなされましたし、また同時に、大蔵省御当局側も相当な覚悟を持って本件に取り組んでいただき、まさに官民一体のプロジェクトであったというふうに思っております。  我が国の持つ閉鎖性、高コスト体質が内外で問題となっておりまして、グローバルスタンダードあるいは透明性に基づくシステムの構築ということが求められておりますが、規制緩和をめぐるこのような大きな潮の流れが背景にあったということも、外為審議会の各委員が同じ方向で議論をする上で大変後押しになったというふうに認識をいたしております。結果としまして非常にいいまとめになったというふうに考えておりますが、今回の審議過程は、今後のよいモデルケースになるのではないかというふうに期待もしているところでございます。  外為管理制度の見直しは、東京ビッグバンフロントランナー位置づけでございまして、法令整備に当たっては、外為審議会の答申の趣旨が十分に反映され、名実ともに自由化が達成されることを強く期待いたしております。  第二番目に、外為法改正の意義及び産業・貿易界への影響について申し述べます。  我が国経済国際化世界経済のボーダーレス化、また最近話題の国際金融業務エレクトロニクス化が急速に進展するなど、企業活動はグローバル競争時代を迎えており、こうした環境下において、過剰な規制が残っている現在の外為管理制度は、円滑な事業活動の妨げとなると同時に、既に大幅な自由化を完了している先進諸外国との競争力をいたずらに低下させております。結果として、金融資本取引をより利便性の高い海外へシフトさせるという、いわゆる金融市場空洞化をもたらし、このままでは、世界金融センターとしての繁栄はもはや望むべくもないというところまで来ているのではないかといった危機感を持っております。  こうした制度疲労の現状を打破する意味での今回の外為制度改革は、事前の許可・届け出を廃止し、業務として行う場合も含めて自由な内外取引を行えるという、グローバルスタンダードに沿った制度整備ということで、大変意義深く、また、これまでいろいろな形でお願いをしておりました業界の要望も十分に反映されており、大変高く評価できるものと思っております。  今回の改正の骨子は、一言で言いますと、平時の為替管理をなくし内外資本取引自由化する、かつ外為取引を行政の関与でなく市場原理を基軸とした枠組みの中で行うようにするということで、より一層の競争原理が働くようになりますが、市場原理、自己責任というグローバルスタンダード世界で既に競争している産業界にとっては、インフラが整うという意味で、大いに歓迎するところでございます。  ただ、法制面での整備がなされました暁には、自由で制度的制約のない市場を十分に活用してビジネスが行える土壌が醸成されることとなるわけで、新たなビジネスのチャンスも拡大いたしますが、他方、このことは、事業関係者が自己責任の原則に裏づけられた厳しい規範に律せられた世界にみずから身を置くということを同時に意味するものであります。  すなわち、市場参加者による市場ルールの尊重、ディスクロージャーの積極的遂行、自己責任原則の徹底など、市場参加者の自発的な努力が従来にも増して求められるというふうに認識をしており、この趣旨を理解し、各企業がみずから率先して不公正取引を防止するための市場慣行を遵守するとともに、適正なディスクロージャーも実施し、かつ自己の内部リスク管理についても一層の努力をしていく必要があると痛感しているところでございます。  いわゆる為銀主義の撤廃で、金融と非金融の垣根がなくなり、外為業務の独占が外れ、競争原理のもと、取引コストが下がります。また、海外との直接取引も可能となり、個人レベルから企業レベルまで、ボーダーレス取引が相当容易になります。これまでできなかった取引がふえるものと期待されます。このことは、日本金融市場及び日本経済全体にもプラスであり、結果として、東京市場活性化につながるものと大いに期待するところでございます。  もちろん、産業界へのメリットも数多くあると思われます。許可や事前審査つき届け出が事後報告となることにより、人的、時間的コストが削減されることは大きなメリットであります。また、貸し付け等の資本取引どもタイムリーに実行できますので、ビジネスチャンスを失うといった不合理性からも解放されます。  また、為替取扱手数料も国際価格にさや寄せされ、透明性ある体系になること、さらに、マルチネッティングを含む相殺が自由になることでのコスト削減効果も期待されます。外為審議会でメーカーの方々から指摘された点でもございますが、グループ間取引におきまして為替を集中する動きも出てくると思います。欧米銀行との競争外国為替を扱う銀行も集約されるものと予想され、企業為替の集中持ち込み等を通じまして効率を上げるといったメリットを追求することになると思います。  次に、第三番目に、基本的金融インフラの整備の必要性について申し上げます。  ビッグバンの遂行によりまして東京市場を国際金融センターとすることは、日本として広く内外にコミットしたことであり、この公約が守られない場合、看板に偽りありとして、東京市場は完全に見捨てられることになりかねません。  国際金融市場の条件として重要なことは、第一に、市場が自由であり、効率的であること、第二に、取引コストが安いこと、この二点であると思います。特にコストの要因は大きく、金融取引は、最もコストが安くかつ利便性のある市場に集中するわけでございますから、人件費、賃借料、取引手数料規制による許認可等にかかわるコスト、さらには所得税、法人税、利子課税、証券取引税等の税制コストが決め手になってまいります。  また、自己責任原則の世界になることで、顧客保護、株主保護等の観点も重要になってくると思います。ディスクロージャーが徹底されることで市場が安定するわけでございますから、この意味からも、会計制度も極めて重要になってまいります。つまり、金融空洞化を食いとめ、回復を図るためには、基本的金融インフラ、すなわち会計制度決済システム、税制金融証券制度といったものをきちんと整備し、透明で自由な市場にする必要があると思います。  外為法改正により、金融取引海外の良質な金融インフラを求めて日本から外国へ流出する現象がさらに加速化することも危惧されており、その意味からも、フロントランナーの次のセカンドランナーが出てこなければ金融市場の再活性化はあり得ないと言っても過言ではないと思います。  第四番目に、報告制度のあり方について申し上げます。  外為審議会における今回の改正論議の中では、東京ニューヨークロンドン並みの自由な市場にするために、各委員とも、規制色の排除、事後報告制簡素化を強く訴えてまいりました。報告義務の遵守は、市場参加者の義務であること、また国際収支統計上の要請のあることも十分に理解しておりますが、審議会でも御指摘がありましたように、報告負担をできるだけ軽減させる方向でお願いしたいと思います。報告制度には罰則規定が課せられることから、新たな報告規制になる危険性がございます。過度な報告要求によって取引海外へ逃げてしまうというようなことでは本末転倒となりますので、そのようなことにならないよう配慮が必要であると思います。  最後に、総括的な希望を申し上げます。  我が国金融・資本市場は、産業界にとって資金調達の円滑化、運用の効率化の観点から極めて重要なものであり、国際競争力を持った効率的な金融・資本市場を構築することが必要不可欠でございます。東京ビッグバンフロントランナーとして位置づけられた本改正が成功裏に実施されることによりまして、金融システム改革全体の流れに好ましい影響を与え、真にニューヨークロンドン並み金融・資本市場整備されますことを心から祈念いたしております。  以上をもちまして、私の意見陳述とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  8. 額賀福志郎

    額賀委員長 どうもありがとうございました。  次に、米山参考人お願いをいたします。
  9. 米山幸治

    米山参考人 おはようございます。大和証券国際業務本部長を務めております米山でございます。  大蔵委員会の諸先生方には、私ども証券界といたしまして日ごろ大変お世話になっておりまして、この場をかりて厚くお礼申し上げる次第でございます。また、本日は、外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案の審議に当たりまして意見を申し述べる機会を与えていただきましたことを、大変ありがたく存じております。  私の方からは、証券市場の担い手といたしまして、国際的な金融証券市場の動向並びに外為市場における証券会社の役割等について御説明申し上げました後で、それらを踏まえ、今回の改正法案につきまして意見を申し述べたいと存じます。  まず、国際的な金融証券市場の動向について申し上げたいと思います。  今日、世界金融証券市場におきましては、金融取引手法の複雑化、高度化あるいは情報通信技術の高度化などを背景といたしまして、金融証券取引が国境を超えて行われていることが日常化しております。つまり、取引のグローバル化あるいはクロスボーダー化と言われるものでございますが、金融証券取引におきまして国境という概念が次第に希薄化していることは、御高承のとおりでございます。  こうした取引国際化に対応いたしまして各国がどのような措置をとっているかと申しますと、多くの国におきましては、規制を強化することによって取引を自国の市場にとどめ置く、そういう対応はしておりませんで、むしろ自国の市場規制緩和を進めるとともに、市場の効率性及び顧客利便性の向上を図って、市場のインフラ制度整備を通じまして自国の金融証券市場の魅力を高める、そういった対応措置を講じております。ニューヨーク市場あるいはロンドン市場アジアの香港市場シンガポール市場、それぞれが自国の市場により多くの取引を呼び込むべく日々切磋琢磨し合っているわけでございます。もちろん我が国金融証券市場も、国際金融証券市場における有力な一員として、そうしたグローバルな市場競争の中に置かれているということでございます。  こうした国際的な競争の結果、現在、世界金融証券市場におきましては、市場制度の国際的な標準化、つまりグローバルスタンダードというものが確立されつつございます。競争力のある市場制度グローバルスタンダードとして認知されておりまして、立ちおくれた市場グローバルスタンダードに合わせるべく市場制度を改善しキャッチアップに努める、そういった動きになっておるわけでございます。  次に、そうしました国際金融証券市場の中で重要な機能を果たしております外国為替市場におきまして、証券会社がどのような役割を担っているかについて、簡単に御説明申し上げたいと思います。  証券会社は、一事業法人として、エンドユーザーとしてあるいは一顧客として外為市場に参加しておりますほかに、証券取引に絡んで発生する外為取引につきまして、一部仲介業者として外為市場に参加しているわけであります。証券取引に絡んで発生する外為取引とは、主として現在の外為法の用語で申し上げますと、資本取引のうち証券の取得あるいは証券の発行、募集に係るものでございますが、そうした証券取引に付随して発生する外為取引につき、証券会社は、指定証券会社、そういったステータスのもとで、外為市場の一部担い手として参加している状況でございます。  ただ、現行法のもとで証券会社が可能な業務は、取引の範囲等につきまして限定されている面がございまして、顧客ニーズにこたえられない、そういった面がございますのも事実でございます。  一例を申し上げますと、日本証券会社は、海外金融機関と直接為替の売買を行うことができません。証券取引クロスボーダー化あるいはクロスカレンシー化が進んでまいる中で、いわゆる二十四時間トレーディングが世界金融証券市場において当然のこととなっている現在、こうしたことが顧客利便性を高めるといった上で大きな支障になっているわけでございます。  次に、以上申し述べました国際的な金融証券市場の動向、あるいは外為市場における証券会社の役割等を踏まえまして、今回の改正法案につきまして意見を申し述べさせていただきます。  先ほど、私は、国際的な金融証券市場においては、グローバルなレベルでの市場競争が行われて、各国とも自国の市場の魅力を高め、競争力の向上を図っていると申し上げましたが、今般の改正案は、まさに我が国金融市場の国際競争力を高める、そういった国際的な動向に合致したものでございまして、グローバルスタンダードから見ましても遜色のないものであると考えております。  また、証券市場に与える影響という面から申し上げますと、証券会社顧客は、クロスボーダーあるいはクロスカレンシーに関しましてさまざまな外為取引ニーズがあるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、現行法のもとでは、証券会社顧客提供できる外為サービス制限的でございまして、十分なサービス提供できない面がございます。しかし、今般の改正案におきましては、外国為替業務に係る規制廃止されておりまして、私ども証券会社も、顧客が望む外為サービスを、証券取引にかかわらないものも含めまして、原則フルラインで提供することが可能となるわけでございます。この結果、顧客利便性は飛躍的に向上するとともに、我が国金融証券市場国際化進展に大いに寄与するものと存じます。  今回の外為法改正は、橋本首相が提唱されました金融証券市場改革でございます日本ビッグバンフロントランナーとしての位置づけであるというふうに理解いたしております。八〇年代には、ニューヨークロンドン市場と属を並べたと言われました我が国東京市場も、ここ数年はバブル経済の後始末に追われていたこともありまして、残念ながら、ほかの主要金融市場と比較いたしまして、相対的にその地位が低下したということは否めないだろうと考えております。  今般、この改正案のごとく、外国為替制度という金融証券市場の中核をなす制度グローバルスタンダードにのっとった形で改正されることは、まことに時宜を得たものであり、我が国金融証券市場競争力の向上、ひいては金融証券市場を通じました効率的な資金配分による国民経済発展に大いに資するものであり、大変意義深い改正であると考えております。もちろん、我が国金融証券市場改革は、ただ外国為替制度にとどまるものではなく、その後に続きます市場制度全般の改革が着実に進展していくことが、名実ともにビッグバンを実現するために必要不可欠であるということを切に考える次第でございます。  最後に、私ども仲介業者といたしましても、我が国金融証券市場発展のために全力を尽くす所存でございますので、委員会の諸先生方におかれましても、引き続き格段の御高配を賜りたいと申し上げまして、一陳述を終わらせていただぎます。  ありがとうございました、(拍手)
  10. 額賀福志郎

    額賀委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 額賀福志郎

    額賀委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。飯島忠義君。
  12. 飯島忠義

    ○飯島委員 おはようございます。自由民主党の飯島忠義でございます。  本日は、外為の現場で長年御苦労いただいております専門家皆様に御多用の中御出席をいただき、法案の審査に当たりまして経験豊かな生の声をお伺いすることができまして、私物め大蔵委員のメンバーも、大変有意義な審査だと理解をしております。ここに改めて敬意を表したいと思います。  さて、限られた時間でございますから、率直に質問をさせていただきたいと存じます。  この委員会、この法案の審査でございますけれども、四月八日そして九日と総括質疑、我が党からも今村、田中、吉川委員から三塚大蔵大臣を初め榊原国金局長、さらには政府委員に、今回の法改正の目指すもの、背景や内容について整理をさせていただいたところでございます。そこで、私は、まず私自身のこの法案に対する考え方を若干述べさせていただいた上で、皆様に幾つか質問をさせていただきたいと存じます。  実は、私自身も、為替も含めて金融のずぶの素人でございますから、きょうの質問に備えてということで、東京の八重洲の本屋さんに先週半ばぐらいにお伺いしました。そこの出版物のコーナー、つまり金融証券関係も含めたコーナーに、出版物の多いことはもとよりでございますけれども、求める方、買われる方、これは銀行とか証券の方々もそうなのでしょうけれども、日中なのですが実に混雑しているわけです。さらに、出版物の多いことだけでなしに、そのタイトルが過激というのですか、例えば一九八〇年代には「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とか、そういうのがそのコーナーにはどしっと座っていた。それが、今はといいますと、崩れ行く日本というか、そうした基調のタイトルの出版物が内外のジャーナリストやアナリストによって、またそれが翻訳されて出されている。これは内外ですから、日本のそういう方々、ジャーナリストやアナリストなんかも執筆されている。こういうことで、私自身は率直に申し上げて、この十年間の日本の変遷というかその変化に、ただただびっくりしているわけです。  例えば、これはそうはならないと思うのですけれども、タイトルで「一ドル二百四十円」なんという本が出ているのです。つまり、今百二十五円、六円、七円の攻防、ここらでも大蔵大臣が強気な発言をして抑えにかかっている、それをきのうあたりの会議では取り消しというか訂正するのに躍起になったという記事も出ているわけでございますけれども、そうではなしに、今から十数年前の、あのプラザ合意以前に戻った二百四十円になってしまうのではないかという、そういう書物すら出ているわけでございます。  とりわけ、赤帯関係を整理してみますと、例えば、かつてない大変動が始まった、相次ぐ金融機関の破綻、迫る業界再編云々とか、まさに、たそがれの国日本あるいは沈みゆく日本、そんな基調のものが多かったわけであります。日本の財政や経済、金融等々、そういう状況にあるという認識も若干持たなければいけませんけれども、しかし、多くの皆さん、きょうお見えの参考人の皆さんも含めて、決してそうではないよ、日本はそんな方ない国ではないよという思いを持っておられると思います。だからこそ、今、橋本総理が六つの構造改革を掲げ、懸命な取り組みをしているさなかであるわけでございます。この機をいたずらに過ごすとしたら日本の再生はない、私自身、そういう思いでいっぱいでございます。  そこで、私は、時間の都合で整理をしまして、この十年間、例えば一九八五年九月のあのプラザ合意当時一ドル二百四十三円であった、翌年の東京サミットですか、その折に百六十五円、また御案内のとおり八十円割れというときもございました。この外為の改正については、当然のように、この為替の安定というものがやはり基調にないと産業界も含めてその対応に苦しむわけでございますが、そういうこの十年間の中においても、あらゆる知恵を絞って皆さん方におかれても厳しい局面をくぐってこられたと理解をしております。  そこで、まず、銀行業界を代表いたしまして、さくら銀行工藤参考人にお伺いしたいと思いますけれども、日米の公定歩合差、今、五%ぐらいに開いています。こういう差の中で改正がなされますと、相当数の国内資金の流出、すなわち円の流出が起こるのではないかと私自身懸念をしているわけでございます。  実のところ、これは証券銀行ではなかったのですけれども、私が日曜日の夕方、家におりましたら、近所の奥様が、奥様と申し上げましても六十過ぎの方でございますが、年はどうでもいいのですが、いや、飯島先生ということで話があったのです。証券会社の方がある商品を勧めに来ている、外債なのですよ、つまり外国の利回りのいい三年物の商品を勧めている。今私自身は基金融機関に預けてあるのだけれども、それを出してそれを買おうかと思っている、一体大丈夫なのでしょうかねというような会話があったのですね。私自身は、その方に対して勧めるわけにもいきませんし、またその道もいけないわけでございますから、なかなか難しい局面だから、しかしゆとりがあるならば何らかの形で利回りのいいそういう決断をなされるのがいいのじゃないですか、こういう話は申し上げたのですけれども、この金利差が生む国内資金海外流出といった点について銀行業界はどのようにお考えか、とりわけ工藤参考人においてはその辺についてお願いしたいと思います。  あわせて、反対に今度米山参考人に引き続きお尋ねしたいのですけれども、先ほどの意見陳述の中にもございましたが、東京市場を魅力ある市場にして海外資金の流入を促進させていく、そういう上で今回の法改正、それ以外にたくさんの障害があると思うのですけれども、その障害があるとすればどういうものがあるのか、あわせて伺っておきたいと思います。ですから、お二人の方から続いてということでお願いしたいと思います。
  13. 工藤長義

    工藤参考人 ただいまの御質問にお答え申し上げます。  御指摘のとおり、現在国境間をまたがりまして大量の資金が全世界的に移動をしておるわけでございますが、私は、この資金移動の一つの非常に大きなまた重要な要因はいわゆる国際分散投資ではないか、このように考えております。国際分散投資とは、一言で申しますと、投資に伴うリスクを厳密に管理しながら一方で長期安定的なリターンを求めて全世界を移動しておる、こういった資金でございます。  資金の運用は、多くの場合、豊富な経験と知識を備えた専門家、俗にファンドマネジャーと呼ばれる人たちが運用しておりまして、こういった人たちは仕事の性質上、絶えず資金運用のあり方をグローバルなコンテクストで考える、こういう格好になっております。そういったグローバルなコンテクストの中における一つの重要な出来事として今回の外為法改正位置づけられるわけでございますが、もちろんこういった人たちは欧米の景気動向、あるいは例えばヨーロッパにおける通貨統合、こういったことと並んで今回の外為法改正をとらえております。  こういった方々の御意見、私個人的にも大変今回の外為法改正に関して気になりましたので、何人かの有力な方々に直接御意見を伺いましたが、今回の外為法につきましては非常に高く評価されておりまして、具体的な国際分散投資のあり方で、日本向けの投資をもう少しウエートを上げよう、比率を上げようといった方の方が多いのではないか、このように理解いたしております。  したがいまして、ただいま飯島先生御指摘ございましたとおり、日米金利差等の理由により、確かにこの外為法改正をモメントとして一層の資金流出が起きることは十分見通されるところでございますが、一方で相応の流入も見込まれる、こういった状況ではないかというふうに理解いたしております。  したがって、外為法改正自体は、流出あるいは流入の直接の原因というよりも、そういった両方のものを促す要因ではないか、このように把握しておるわけでございまして、現実に英米での事例を拝見いたしましてもそのようなことになっておる。ただし、こういった環境変化を踏まえまして、個別金融機関として引き続きユーザー皆様ニーズによりフィットした格好でサービス提供に努力しなければいけない。これがなければ金融機関経営は非常に難しくなる。この点は御指摘のとおりでございます。  以上、お答え申し上げました。
  14. 米山幸治

    米山参考人 米山でございます。  ただいまの御質問の、東京市場を魅力ある市場として海外から資金の導入を図る、それに対する何か障害があるかという件でございますが、やはり東京資金流れる前提は、東京市場がフェアで、そしてかつ透明性のある市場であるということが何はさておきましても前提であろうかと思います。  そのほか技術的な問題として私が考えつくものといたしまして、例えば税制の問題があろうかと存じます。我が国特有の税制、例えば有価証券取引税あるいは債券の利子にかかわる源泉徴収制度、そういったものがあるかと思います。ニューヨークあるいはロンドンで既に日本の国債、JGBの大きなマーケットが立っております。これはやはり取引税がないといった、取引コストが安いということが一つの原因で海外日本国債のマーケットが大きくなっているという現状があろうかと思います。そんなわけで、考えつくものといたしましては、今申し上げました取引税の問題あるいは債券利子の源泉徴収制度の問題があろうかと思います。  そのほか考えつく技術的な問題といたしましては、証券決済制度。例えば社債の決済の場合は、我が国では社債の登録制度といいまして、実際に保有する人が自分の名前を登録する。実際にペーパーを出して保有を登録する、ペーパー上の事務上の問題が残っておりますが、欧米の慣行は、帳簿上の間で決済する。帳簿上で名義が変更するといった振替制度欧米では慣行であると理解いたしております。  そのようなことがいろいろ改善されることによって、東京市場のフェアなマーケットと相まって海外資金が流入するものと信じております。
  15. 飯島忠義

    ○飯島委員 ありがとうございます。  自由化が進む中、シンガポールでも、またアメリカでも大きな事件がございましたけれどもリスクマネジメントや商品開発、とりわけヘッジ商品というか、あるいはデリバティブ、これらの商品開発、また当然のように、それを扱う組織と人というところでいいますと人の問題でございますが、人材育成の観点から何らかの対応が必要ではないかと考えているわけでございます。銀行業界として、もう既にディーラーも含めてそういう為替専門家がたくさんいらっしゃるわけですけれども、さらに今回のこの改正を前提にどのような対応策をとっていられるのか、あわせて証券業界にもお尋ねをしておきたいと思います。ですから、工藤参考人米山参考人お願いをしたいと思います。
  16. 工藤長義

    工藤参考人 お答え申し上げます。  外為法改正に始まる一連の自由化の中で、先ほど御指摘ありましたような市場レートの大きな変動、これは恐らく避けられないことでございまして、このリスクの管理を徹底するということがますます重要になっております。特にマーケットのリスクでございますが、このマーケットのリスクをどのように管理するかということは、これに関して最近非常に新しい金融技術発展いたしております。一言で申せば、リスクを一つの量としてとらえる、定量的にとらえる、こういった統計手法の開発が進んでおりまして、私ども銀行界、日本銀行でもこの点におきましては欧米の先進行にほぼキャッチアップしたのではないか、このように判断いたしております。  また、リスク管理に当たっては組織対応が重要でございます。リスクを管理する組織を独立の部署としてとらえる、これが肝要でございまして、恐縮ながら、私どもさくら銀行の場合ですと、昨年の九月にリスク統括部というものを設置いたしまして、リスク管理を独立セクションで取り扱わせる、このように組織対応いたしました。  三番目に、先生御指摘のとおり、このリスク管理を行うに当たって最も重要な問題は、人材の育成でございます。特に、最近の複雑多様な金融先端商品、こういったもののリスク管理あるいは商品開発のためには、この人材の育成が今後の競争時代を乗り切るために非常に重要な問題であるという意識を強く持っておる次第でございまして、私どもの場合でも、外部機関への研修派遣、トレーニー制度の充実といったものから始まりまして、さらに野に遺賢なしと申しますか、適材を発掘するための行内の公募制度、また私ども、長い間終身雇用制度、こういったようなことでやってきたわけでございますけれども、それではこれから光とても人材の育成あるいは開発が立ち行かなくなる可能性もございます。したがいまして、年俸制、契約社員あるいは外部からの中途採用、こういったことも含めて人材育成・開発に努力しておる現状にございます。  以上、お答え申し上げました。
  17. 米山幸治

    米山参考人 ただいまのリスク管理あるいは商品開発の件でございますが、この問題につきましては、各社それぞれの取り組み方があるかと思いますので、業界を代弁するというわけでございませんが、当社の場合で申し上げますと、社内に既にリスクマネジメント部あるいは商品開発部あるいは人材開発部、それぞれ独立した部署を設けてございます。特に、リスクマネジメントに関しましては、営業体から完全に独立したリスクマネジメント部として機能をさせております。  今回のビッグバンに対応いたしまして、さらに社内に横断的なプロジェクトチームを設けるなどして対応を急いでおります。今後も一層の充実を図っていく所存でございます。  以上、お答え申し上げます。
  18. 飯島忠義

    ○飯島委員 大変申しわけございません。森澤参考人、それから安岡参考人、質問の方は用意してあったんですけれども、また打ち合わせもさせていただいたんですが、時間が参りましたので、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  19. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、濱田健一君。
  20. 濱田健一

    濱田(健)委員 社会民主党の濱田健一でございます。  四名の参考人皆様方、お忙しい中大変御苦労さまでございます。  時間がございませんので、早速三つの質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず最初に、森澤米山参考人に御質問させていただきたいんですが、今回の外為法改正のポイントは、対外取引、対外決済に関する許可などの事前規制撤廃という対外取引自由化と、外国為替業務に着目した規制撤廃という外国為替業務自由化という二つ自由化にあると私たちは思います。新しい外為制度に対して各業界ではどの程度まで準備を進めておられるのかまた、どのようなビジネスチャンスの拡大を考えておられるのでしょうかということでございます。外為法改正の施行までにコンピューターの新システムへの対応等やっていかれるのは結構大変なのではないかなというふうに思っておりますが、いかがでしょうか。
  21. 森澤寛二

    森澤参考人 森澤でございます。  外為法改正されました後、我々の対応といたしましては、いろいろな角度からこれを見ることができるわけでございますが、まず最初に対応すべきものは、我々はユーザー立場としてこの外為法改正というものをどういうふうに受けとめるかということであると思います。  まず、ユーザー立場でのメリットとしましては、先ほどの意見陳述の中でも申し上げましたが、許可・事前審査つきの届け出が事後報告になるといったことに伴う人的なあるいは時間的なコストの削減ということがございます。  それから、競争が自由になってくるということによりまして、この競争原理が導入されることによって、利用者側としてはこれを利用するコストが安くなってくる、すなわち為替手数料あるいは諸手数料、こういったものが削減されるということでございます。  続いて、我々自身の自社用のシステムの改善ということで、いろいろな資金運用面でのメリットを追求することが可能でございまして、それは、例えば決済の集中勘定の設定いわゆるネッティングの問題、あるいは多目的な海外預金をつくること、あるいは為替の先物予約を集中していってコストを下げるといったこと、それから資金の直接調達をさらに進めていくといったこと、こういったことで自分自身の資金調達、運用面でのメリットをとっていくということがあると思います。  続いて、本業に付随した業務自由化といったことがございます。これは例えば従来やっておりますプラント輸出一つとりましても、それに付随する決済関係でいろいろな制約があったために自由に動けなかったといったようなこともあったわけでございますが、そういったことが他の国際的な企業と同じレベルでそういった競争に入っていけるようになるといったようなメリットもとれるというふうに思います。  それが第一段階でございますけれども、第二段階としては、これを自社だけではなくてグループ に広げていく、そして次のステップとしては、これをビジネス化していって内部管理を充実し、管理手法を充実させることによって、第三者にこういったサービスをフィーベースで提供していくといったことが将来の姿としては考えられるというふうに思っております。  御指摘のありましたコンピューターの関係でございますが、これは外国為替管理法改正に伴って直ちに結びつくというものは特にないと思いますけれども、現在、例えば大蔵省当局と業界の間で調整をさせていただいておりますのは事後報告制の登録、こういったことをいかに合理的なコンピューターシステムでやっていくかといったことについては、現在、事務的に詰めをさせていただいているというふうに承知いたしております。
  22. 米山幸治

    米山参考人 ビッグバンに対応して業界としてどのような準備を進めておるかという御質問につきましては、業界を代弁するわけでございませんが、当社の場合に応じて申し上げますと、現在、私どもは社内に、いろいろなテーマに応じまして、予想される環境変化に対応していろいろなプロジェクトチームをつくって検討、研究を進めております。大事から組織からあるいはコンピューターシステムまで含めまして、あらゆる分野にわたってそれぞれのプロジェクトチームをつくって現在検討を急いでいるところでございます。  それから、新しい外為自由化の中でどういうビジネスチャンスがあるかと申し上げますと、いろいろ幾つもビジネスチャンスはあるかと思いますが、その中で一つだけ申し上げたいと思いますのは、現在千二百兆円という個人の金融資産、この膨大なお金がより取引コストの安いマーケットにあるいは利回りの高い商品資金シフトが起こっておるわけですが、我々証券会社といたしましては、新しい外貨建ての金融商品顧客提供することによって、そういった高い採算性を求める投資家ニーズに応ずる、あるいは投資家利便性を高めるために外貨建ての新しい金融商品提供できる、そういった方面が大きな一つのビジネスチャンスであろうかと考えております。  以上、お答え申し上げました。
  23. 濱田健一

    濱田(健)委員 工藤参考人にお尋ねしますが、外為管理の抜本的自由化に伴い、海外取引等を利用した税逃れやマネーロンダリングが横行しないように、きちっとした対応が不可欠であるというのは当然のことです。銀行界が各種報告の義務を負うことは銀行の公共性にかんがみ当然と考えますが、マネーロンダリングや脱税の防止に対する銀行界体制整備についてどのように考えていらっしゃるのか、お尋ねしたいと思います。
  24. 工藤長義

    工藤参考人 お答え申し上げます。  現在、外為取引におきましては、大蔵省銀行局の通達によりまして、五百万円超の現金取引について、その都度本人確認をいたすこととされております。今回の外為法改正によっても、この扱いには変更ございません。さらに、改正外為法におきましては、十八条によりまして、法律の中に本人確認に関する規定が盛り込まれております。本人確認の法的根拠がより明確になった、このように理解いたしております。  また、税務面についてのお尋ねがございました。税務面での資料情報制度整備に関しましては、現在大蔵省主税局において検討されておるものと理解いたしております。先生がおっしゃられましたとおり、私ども銀行業務の公共性にかんがみまして、脱税の防止に協力いだすことは当然でございます。ただし、この実施に当たりましては、過度の手続的負担とならざるよう、特に銀行の既存コンピューターシステムを利用した報告などが可能となるよう御配慮をお願いしたい、このように思っておるものでございます。  以上、御回答申し上げました。
  25. 濱田健一

    濱田(健)委員 最後に、安岡参考人にお尋ねいたします。  外国銀行の代表の参考人として、今回の改正については金融システム改革フロントランナー位置づけられているわけでございますけれども金融システムの改革を行っていくに当たって最も心がけねばならない点ということをどのように感じていらっしゃいますか。その点をお聞かせ願って、質問を終わりたいと思います。
  26. 安岡雅之

    安岡参考人 お答えいたします。  最も重要な点と私ども考えますのは、サービス提供者である金融機関、この場合、日本銀行さん、証券さんということでございますけれども、彼らの競争力の強化、これに尽きるのではないかと思います。このためには、競合各社が横並びではない、得意分野に特化して、差別化を図れるような土壌を行政としてつくり上げるということかと思います。  バンカース・トラストの経験を見ますと、十数年新しいカルチャーが育ってきたと思いますけれども、常に議論いたしますのは、競合他社のやらないことを先駆けてやること、常にイノベーション、改革をやっていくこと、そのような企業文化を奨励しております。さらに、そのような行動を奨励するようなインセンティブ、報酬体系をつくることも必要かと思います。加えて、組織につきましては、いわゆる日本型のピラミッド組織よりも、もっとフラットな組織にした方が効率的になるのではないかと思います。  以上のような環境をそろえますと、競争力のアップにつながるのではないかと思います。  以上です。
  27. 濱田健一

    濱田(健)委員 ありがとうございました。終わります。
  28. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、北側一雄君。
  29. 北側一雄

    ○北側委員 新進党の北側一雄でございます。  四人の参考人の皆さん、きょうは大変お忙しい中、ありがとうございます。今、我が大蔵委員会の方でこの外為法改正法案について審議をしておるわけでございますが、本日の各参考人の御意見につきましては、ぜひこれを今後の審議の重要な参考資料として十分に生かしてまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。  この外為法改正につきましては、当然、私どもも時代の要請であるというふうに考えております。ですから、この法改正そのものの方向性については、多くの委員の皆さんも共通しておると思うのですが、そうすべきであると考えております。ただ問題は、この外為法改正して内外資本取引自由化し、また外為業務自由化を進める、そのことによってグローバルスタンダードを実現するんだ、また金融市場活性化を進めていくんだという方向性はいいのですけれども、先ほど来参考人の御意見からも幾つか出ておるかと思うのですけれども、そのための条件といいますか、環境といいますか、それが果たして十分に整備されているのだろうか、ここに私どもの一番の不安といいますか、疑問があるわけでございます。  人によりましては、論者によりましては、この外為法改正されることによって、本来金融市場空洞化を阻止しようというふうなねらいがあるのですが、逆に金融市場空洞化が進んでしまわないのかという心配をしている方もいらっしゃいます。この点について、こういう視点からぜひいろいろな御意見を聞かせていただきたいわけでございますが、まず、安岡参考人にお聞きをいたします。  安岡参考人お話の中で非常に興味深い話が幾つかあったのですけれどもバンカース・トラストでは、地域内一極集中というお話をされまして、地域内一極集中で、一つに拠点を置くという方向でやっていますと。それで、この東アジアでしょうか、東アジアというこの地域内では、東京ではなくてシンガポール拠点を置かれて、東京も端末を置いて処理をしているんだというふうなお話がございました。シンガポールの方はコストが二分の一で済むというような話があったわけでございますが、なぜ東京ではなくてシンガポール拠点を置くことになったのか、コストが二分の一というふうにおっしゃいましたけれども、具体的にどういう点がこれまでの、制度での違いだと思うのですが、どういう違いがあったのか、できれば具体的にお答え願えればありがたいと思います。
  30. 安岡雅之

    安岡参考人 お答えいたします。  先ほど一極集中と申しましたのは、明確にするためにもう一度申し上げますと、外国為替取引にかかわる事務処理体制の一極集中でありまして、ビジネスそのものをシンガポールに全部集めたということではございません。外国為替事務処理というのは、大きなコンピューターシステムということになりますけれども、当然どこかに集めて処理する方が安くなるわけでございます。テクノロジー発展とともに、シンガポール東京の間の、その結果生ずるデータを送るコストというのは極めて安くなります。したがって、東京に端末を置くだけで、ほとんどの情報が同時に手に入るという状況をつくり出すことができます。したがって、東京事務処理組織を置く場合とほとんど変わらない営業体制ができる、しかもコストが安いために競争力はつくというのがねらいでございます。  それでは、具体的にどの部分が安くなるのかと申し上げますと、これは人件費、それから土地代、賃借料、この部分が非常に多くなっております。外国為替に代表されることでございますけれどもテクノロジー発展というのが地域間の距離というものをほとんどなくしてしまっているというのが現状でございます。当然、企業といたしましては競争力をつけるためのコスト削減を図りますので、どこか安いところでプロセスして、その結果だけを東京に持ってくればいい、それを営業の人が使ってお客様営業活動をするというのが最も効率的という結論になるわけでございます。  以上です。
  31. 北側一雄

    ○北側委員 そういう意味では、人件費とか土地代とか賃借料となりますと、そう急に日本の場合は変わらないでしょうから、むしろ外国銀行からすると、今おっしゃった外国為替事務取引拠点については東京よりもむしろ海外の近郊のところに置いた方がいい、テクノロジー発展で地域間の距離というのはほとんどないのだというお話でございますね。ありがとうございました。  それともう一点、同じく安岡参考人にお聞きしたいのですが、バンカース・トラストの過去のお話をお聞かせいただきました。かつてバンカース・トラスト倒産寸前であったというお話は極めて興味深い話でございまして、アメリカで七〇年代、金融制度改革が急速に進んだ折にバンカース・トラスト倒産寸前に陥ったという話でございますが、これは競争激化によるものだと思うのですけれども、差し支えない範囲で、そういう経営危機といいますか倒産寸前に陥った理由、もう少しお聞かせ願えればと思います。
  32. 安岡雅之

    安岡参考人 アメリカの七〇年代というのは、政府の方も自由化を進めたわけでございますけれども証券会社銀行の争いというのが非常に過熱した時代でございます。そのもとをただしますと、結局、消費者の金利選好が非常に強くなった。一般消費者の人が自分の金をどこに預けたら少しでもいい金利を得られるかという、その前までは考えられなかった、当然インフレも高かった時代、金利も一時は高くなった時代でございますけれども、金利選好が非常に強くなった時代であります。  それから、その前と違いますところは、機関投資家現象というのが起こっております。すなわち、小口の消費者が自分一人一人が投資するのではなくて、投資信託とかMMFとか、そういうふうにまとまってお金をどこかに預ける。証券会社さんの得意とする分野でございますけれども、そこでプロフェッショナルのファンドマネージャーがまとまったお金を投資するという、専門知識を生かした投資が活発になりました。当然、彼らは選択肢を全部調べたあげく、海外も含めて一番いいところということで、銀行としては相対的な競争力を失ったことが第一の現象です。  さらに、我々英語でディスインターメディエーションという言葉を使いますけれども金融の場合に、効率化すればするほど間に入ったむだな組織をはじき出すという、これは自由化の中で起こる当然の現象でございますけれども、はじき出される。すなわちエンドユーザーがなるべく近く資金の借り手のところに行ってしまう。  例えば、比較でございますけれども、アメリカで七〇年代大いに伸びたのはコマーシャルペーパーのマーケーットであります。コマーシャルペーパーエンドユーザーとボロワーとのスプレッドと申しますか、コスト差というのは預金と貸出金というものの何分の一がでもう終わってしまうという直接取引が大量にできるマーケットが出現してしまった。これは当然日本でも今後起こる傾向にあると思います。これは一般的な意味での商品証券化、お金の回転が非常に速く、効率的に回り出すという現象が起こったためでございます。  その中で、従来どおりの営業を続けてきたバンカース・トラストというのが、先ほど申しましたように、借り入れ人である企業は直接金融に、お金を預金する方はコマーシャルペーパー、MMFに、両方サイドを結局失っていってしまったというのがその大きな原因でございます。
  33. 北側一雄

    ○北側委員 ありがとうございました。  それでは、この外為法改正金融制度改革フロントランナーというふうに言われておるわけでございますが、先ほど来のお話の中で、例えば工藤参考人お話の中でも、国際金融世界では東京市場というのは第二集団である、やはりこの外為法改正に続いて、さらに続く改革が早くなされないといけないのだというお話をされておられました。また、森澤参考人お話の中でも、一方でセカンドランナーの必要性ということをおっしゃっておられました。この点で私どもも共通の認識を持っておるわけでございますが、ここのところをもう少し詳しくお話をいただきたいわけでございます。  例えば他の規制ですね、商品開発規制であれ、また業務分野の規制であれ、また税の違いであれ、こうした他の改革がおくれてしまうと、日本金融資産国内にある金融資産がどんどん海外の方へ行ってしまうのではないかということで、金融市場空洞化が逆に進むというふうな懸念が言われておるかと思うわけでございますが、例えば、この次の改革はどういう改革が必要であって、そして、それがこのような時期に、せめてこの制度改革については外為法改正と一緒にやってもらいたい、この改革については遅滞なくやってもらいたい等々、いろいろな御意見があろうかと思います。この辺の、他の金融制度改革についてどのようにお考えになられているのか、もう少し具体的にお話をいただければというふうに思います。  工藤参考人森澤参考人、よろしくお願いいたします。
  34. 工藤長義

    工藤参考人 お答え申し上げます。  現在、金融先進国であります、例えば米国あるいはイギリスの銀行経営者と話しておりますと、いわゆるバンキングであるとか、あるいは証券業であるとかあるいは保険業であるとか信託業であるとか、こういった区別は今やお客様ニーズという観点から見ると存在しないんだ、金融サービス業、ファイナンシャル・サービス・インダストリー、これだけが唯一存続し得る産業である、このように言われることが非常に多うございます。  翻りまして、よく千二百兆円の個人金融資産というお話が出ますが、御高承のとおり、この千二百兆円のうち六百兆円は郵便貯金を含めた預貯金でございます。これは諸外国の例に比べると極めて資産構造が偏った構造でございまして、特に、今後、我が国の人口構造の高度化、高齢化というものに合わせて、やはり資産運用を多様化するニーズというのが非常に強くなっておる、このニーズに対応できないところから金融界でのいろいろな制度疲労が起きておる、このように私自身は認識いたしております。したがいまして、一連の改革をできるだけ早期にというお話お願いしたわけでございます。  その中でもさらに何かという御質問でございますならば、私は、先ほどの業際垣根、こういうものをできるだけ早く撤廃していただく、これが一番重要な問題ではないか、このように考えております。もちろん税や会計制度改革、これについても重要性を軽視するものではございません。これもあわせて必要でございます。  以上、お答え申し上げました。
  35. 森澤寛二

    森澤参考人 ただいま工藤参考人からお話がありましたとおりで、特につけ加えるようなことはございませんけれども改革のスピードというもの全体を、特に税制の問題、それから会計制度の問題、こういったものをすべて国際基準に合わせていくということで、外為法だけではなくて、付随するあらゆるものを国際基準に合わせていくということを同時並行的に行うということが必要であると思います。そうでないと、お金の動きだけが自由を得て、そのほかのものが国際的になっていないということであれば、ほかの便利なところにお金だけは出ていってしまうということになると思います。  それから今、同じく工藤さんから御指摘ありました金融界と非金融界、これがだんだん垣根というものが世界的には低くなってきておりますので、そのことについても全く同じことが言えると思います。  要するに、日本改革というものが世界改革よりもおくれていれば、幾ら改革してもそれは世界の中でおくれているということであります。のぞみとひかりが走ったときに、ひかりがどんなに早く走っても、のぞみとの比較では、ひかりは後ろに向いて走っているということを意味するものでありますから、すべてのことを二〇〇一年を待たずして実行されることを強く希望いたしております。
  36. 北側一雄

    ○北側委員 ありがとうございました。  それでは、この業際の垣根の撤廃に関しまして米山参考人にお伺いをいたしたいと思うのですけれども証券業界としては、この業際垣根の撤廃、特に銀行との関係でございますけれども、この点についてどのようにお考えでございますでしょうか。
  37. 米山幸治

    米山参考人 証券業界といたしましては、銀行との競合を通じまして金融市場がさらに一段と拡大する、市場のパイが大きくなることによりまして活動の舞台が広がる、そういう前向きな形でこの問題をとらえてまいりたいと思います。  もちろん、競争するところは競争する、あるいは競合するところは一緒にやっていく、そういった形で、やはりマーケットがより効率的になっていくためには、市場参加者が多いということ、そしてフェアであるということ、これが市場の厚みを増していくものだと理解しております。そういった意味で、参入者が多くなることによってパイを大きくする、その中で活動の舞台を広げていく、そういった形で我々とらえてまいりたいと考えております。  以上、申し上げました。
  38. 北側一雄

    ○北側委員 先ほども安岡参考人お話の中で、これからは、要は国内金融機関競争力の強化が肝心であるというお話がございました。競合他社のやらないことをやっていかなければいけない。  いずれにいたしましても、この外為法改正によりまして、海外金融機関も含めまして、日本金融市場における競争激化が飛躍的に高まることは、これは明らかでございます。そのことを目指しておるわけでもあるわけでございますが、この競争激化、外国の金融機関参入を初め、競争激化となってくるということで、一つやはり私どもが心配をしておりますことは、日本金融機関の不良債権の問題でございます。  この不良債権処理がおくれているのではないか。このような中で、一気に外為法改正をし、金融制度改革を推し進めていったときに、弱い金融機関と言ったら語弊があるかもしれませんが、弱い金融機関が相当破綻また危機に陥る、そういうことが出てくるのではないか。そのことによって、日本全体の金融システムの安定化を損なうような場面も出てくるのではないか。そういう場合に、今、日本の仕組みが、特に預金者保護のシステムが本当にきちんとでき上がっているのか、金融システムの安定化を妨げないようなシステムがきちんと今の日本制度の中にでき上がっているのか。これは、実際、金融制度改革が目標を到達しまして、二〇〇一年になっていざというときではなくて、その前の何年間かが、今制度改革を進めていくこの何年間かが極めて大事なときなのだろうというふうに我々は思っておりまして、この間の金融システムの安定化のための装置といいますか、それをきちんとつくっておかないといけないのではないかというふうな心配をしております。  昨年、金融三法という法律が成立をいたしまして、この金融システムの安定化のための装置を一応つくったわけでございますが、残念ながら、この装置によりますと、金融機関の破綻の問題は、信用組合が破綻した場合には、最終的には公的資金導入等によって預金者を保護するシステムというのはでき上がっております。ところが、信用組合以外の金融機関については、このような装置が用意をされておりません。これがこのままでいいのかどうか私どもは疑問を持っておるわけでございますが、この点、この外為法改正をトップランナーとしてこの数年間で急速に金融制度改革全体を進めていくという中で、この金融システムの安定化のための制度、仕組みが現状のままでいいのかどうか、この点についての御意見がございましたら、ぜひお聞かせを願いたいと思います。  工藤参考人とそれから米山参考人にお答えを願います。
  39. 工藤長義

    工藤参考人 お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘ございましたとおり、ビッグバンは、一言で申せば自由な競争の実現でございます。したがいまして、さまざまな痛みを伴うことはやむを得ないことと思いますし、また、先ほど来のお話のとおり、我が国金融証券市場の置かれている状況を考えますと、この推進は待ったなしの状況まで追い込まれておる。したがいまして、すべての当事者が、私自身を含めて、相応の覚悟を持って取り組むことが不可欠である、このように思います。  ただし、このビッグバンを発表されたときの総理の構想の中にも、金融システムの安定には細心の注意を払いつつ進めていく必要がある、このようにおっしゃっておられます。これを推進していくためには、やはりルールをきちんとつくっておくということが、いたずらに混乱を惹起しないためには必要であろう。  特に、先生御指摘のとおり、ただいま信用組合の破綻処理については受け皿等が明確に決定されておりますが、それ以外の業態については用意されておりません。したがいまして、信用組合以外の業態についても破綻処理の制度的枠組みが整備されることが必要なのではないか、私はこのように考えております。  以上、お答え申し上げました。
  40. 米山幸治

    米山参考人 証券会社は、銀行と違いまして、当然のことながら直接決済システムにかかわっておりませんので、ただいまの参考人の方の回答とは異なるかもしれませんが、証券市場の安定あるいは金融市場の安定、相互密接に関係するものであろうかと思います。やはりフェアなマーケットで透明性を持ったマーケット、そういったことで市場の参加者がそういった意識を持ちながら業務を展開し、またそれに見合った適切な法整備をしていく努力が必要であろうかと考えております。
  41. 北側一雄

    ○北側委員 終わります。
  42. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、谷口隆義君。
  43. 谷口隆義

    ○谷口委員 新進党の谷口隆義でございます。  本日は、大変お忙しい中、各参考人におかれましては御出席賜りまして、ありがとうございまし た。本日は、各業界の生の声をぜひお聞きしたいと思います。  この外為法改正は極めて重要な法案でございまして、二〇〇一年三月までにビッグバンをやる、そのフロントランナーとして位置づけられておるわけでございますが、実はこの外為法の完全自由化が、それこそ一挙にビッグバンを促進するのではないか、こういうことさえ言われておる極めて重要な法案である、このように我々は考えておるところでございます。  しかし、私の個人的な考えてありますが、若干タイミングが悪いなというように考えております。先ほど北側議員のお話にもございましたように、今回のこのビッグバン外為法改正はまず前提条件がある。一つは、先ほどの質問にもございましたように、金融機関の不良債権の問題は本年、来年、この二年間ぐらいが山場に差しかかってきておる、こういう状況の中でこのビッグバンというか、この外為法が完全自由化される。そうしますと、例えば金融機関の外為収益がまず減少するだろう。その他外銀がどんどん入ってくるわけですから、当然競争が厳しくなる。そういう状況の中で、多額の不良債権を持っておる金融機関が果たしてどうなるのか。これが破綻しますと、それこそ我が国が築いてまいりました金融インフラが崩壊する、そういう大変な事態、これは避けなければいかぬわけですから、そういう道筋をつけていく必要があるのではないかということが、まず第一点であります。  また、もう一つは、先ほど来山参考人の方からも触れていらっしゃいましたが、税制の問題でございます。我が国に国際的整合性を持った税制が果たして今現在あるのかといえば、そんなことはない。例えば法人税におきましても、実効税率が四九・九八%、所得税も住民税を入れますと六五%と高い税率であります。また、先ほど触れていらっしゃいました有価証券取引税も、これまた我が国に今存在しておる。また、規制緩和の観点でいきますと、手数料がまだ自由化されておらない。こういう状況市場をオープンにするといいますか、外為市場を完全自由化しますと、大変な混乱が起こるのではないかと巷間言われておるわけでございまして、まず、この外為法自由化する前に、今申し上げた三点はぜひ整備していく必要があるのだろうというように私は考えておるところでございます。  本日質問させていただく前提は、そのビッグバンを念頭に入れた外為法改正ということでお答えをいただければありがたいというように考えております。  まず、工藤参考人にお聞きしたいわけでございますが、先ほど申し上げましたように、この不良債権問題が今大変な状況になっておる。銀行界全体の問題でございますので、さくら銀行がどうこうということではございません。そういう状況の中で外為法自由化されるというようなことになった場合に、今回日債銀が問題になりましたが、ムーディーズ等の格付機関の我が国金融機関の評価が極めて低い、こういうような状況でございまして、護送船団が続けられてまいりました結果、極めて競争力の弱い収益性の低い業界になっておるのではないか、このように言われております。  そういう状況の中でのこの外為法自由化でございますが、都銀、いわゆる大銀行ですね、大蔵大臣も大銀行二十行というようにおっしゃっておるわけですが、大銀行中小銀行、また地域金融機関、こんなような太くくりの状況での、今回の外為法自由化がどのような影響を及ぼすかということについて、御見解をお述べいただきたいと思います。
  44. 工藤長義

    工藤参考人 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、今回の外為法改正につきましては、外為業務自由化により、競争が激化し、銀行収益減少いたします。また、先ほどの多角的ネッティングの緩和等により、外国為替取引自体のボリュームが減る、これも恐らく事実であろうと見通されます。こういったデメリットがあるわけでございますが、銀行から見るとデメリットでございますが、しかし一方では、従来外国為替公認銀行として受けておりました規制監督廃止され、また報告負担が軽減されるという、コスト面でのメリットもございます。  先生御指摘のとおり、この外為法改正によりまして最も強く影響を受けるのは、恐らく都銀を中心とした規模の大きな銀行ではないか、このように思います。この規模の大きな銀行がどのように対応するかにつきましては、先ほど私陳述させていただいたことで御理解をお願いしたいと思います。  中小の金融機関について申し上げますと、外為法改正影響ということに限定して申し上げれば、そもそも外国為替業務のウエートがさほど高くないわけでございまして、その分、経営に与える影響もその度合いが低いのではないか、このように思われます。さはさりながら、外為法改正によりまして為銀主義が廃止されますと、例えば海外銀行とのコルレス契約にかかわる大蔵省の承認手続等が廃止される、こういったことで、業務自由化の点でプラスととらえる中小金融機関の方もいらっしゃいます。これは中小あるいは地域金融機関に限った話ではございませんけれども、実務上の取り扱いがどうなるかは、これから政省令で規定される部分が非常に多いということで、私どもこれかもの議論をぜひ注視させていただきたい、このように思っております。  また、一部の地銀では、今回、外為法改正とは必ずしも限定されませんが、一連のリストラの中で、国際部門、海外部門の地元回帰というような格好での動きを打ち出されておるところもある、このように伺っております。  以上、お答え申し上げました。
  45. 谷口隆義

    ○谷口委員 ホールセールの分野と、またリテールの分野で影響があるというようなことを言われておりまして、例えばコンビニのPOSを利用した、銀行決済に近いようなシステムを利用して行われる可能性がある。今銀行の窓口業務は大体午後三時で終わられるというようなことでございますが、コンビニでは終夜、終日営業しておるところもありますし、深夜まで営業しておる。そういうようなことになってまいりますと、そのあたり、このリテール分野も影響が出てくるのではないかと言われております。このようなことについて。  あと、預金者のサービスですね。外銀状況を聞いておりますと、ATM・CD、二十四時間やっておるところもあるようなことも聞いておりますが、そのような預金者に対するサービス、またリテール分野における状況の変化、これについて、また申しわけございませんが、工藤参考人お願いいたしたいと思います。
  46. 工藤長義

    工藤参考人 お答え申し上げます。  経済社会が非常に急速に変化しておる中で、私ども銀行が、特にリテールバンキングの分野でお客様ニーズに十分こたえておるのかということを率直に考えをして、まだまだいろいろな課題が多いのではないかというのが私の認識でございます。例えば個人の活動領域や活動時間の広がり、情報通信技術の発達の中で、いつでもどこでも好きな方法で金融サービスを受けたいといったニーズが確実にふえておることは、先生御指摘のとおりでございます。  現在、私ども日本銀行でも、米銀などで導入が進んでおりますパソコンであるとかあるいは電話などを利用した、私どもこれらをダイレクトバンキング、このように申しております、この取り組みが活発化しておりますが、この動きは今後ますます強まっていくのではないかというふうに考えます。  こういった分野でのサービス日本銀行と外国の銀行とで総合的に比べた場合、果たして私ども金融サービスが国際的に相当劣後しておるかというと、比較自体が非常に難しいのですが、必ずしもそうは思っておりません。ただし、金融サービス競争がこういった外銀を含めて非常にグローバル化していく中で、現在私ども提供申し上げている商品サービスの中身を再度洗い直しまして、お客様の期待によりこたえ得る、質の高いサービス提供できるよう努力していかねばならぬ、このように考えておるものでございます。  以上、お答え申し上げました。     〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕
  47. 谷口隆義

    ○谷口委員 きょうは伊藤忠から森澤参考人に来ていただいているのですが、商社などは海外金融子会社、これは金融機関もつくっていらっしゃるわけでございますが、海外金融子会社邦銀よりも海外では信用力があって、低コスト資金調達をやっておるというようなお話を聞いております。  このような海外金融子会社のやり方を、国内で国際資金を集約すると申しますか国内でもまたやろうというように考えていらっしゃるというようなことを聞いておるのですが、こういう金融部門におけるこれからの商社の方向性と申しますかお考えと申しますかちょっとお聞きいたしたいと思います。
  48. 森澤寛二

    森澤参考人 お答えいたします。  外為法改正によりまして資本市場がより自由になってくるということで、調達の仕方等もユーザーとしての使い勝手がよくなるということ、あるいは機動的なファンディンクが行われやすくなるといったようなことから、企業の直接金融への傾斜ということは今後強まっていくというふうに思っております。私どもとしましても、現在の直接金融比率がさらに高まる方向に動くであろうというふうに考えております。  ただし、他方、調達する側にとりましても、これは逆に選別を受けているわけでございまして、市場からどういう企業であるかということを常にチェックされているわけでございますから、国際基準に沿った経営内容であるとか、あるいはディスクロージャーをきちっと行っているとかあるいは透明性のある経営をしているとか、あるいは経営のあらゆるレシオが国際的な基準から見て魅力的なものであるかどうかそういったことが充実しなければ、いかに直接調達をしたいと思っても調達ができないということになるわけでございますから、私ども自身、むしろ調達する側にとっても厳しい選別の時代に入ってくるというふうな覚悟をいたしております。  なお、私ども、自分自身が使う資金につきましてはより有利な資金を調達するということになりますけれども、巷国言われておりますように、商社が安いコストで調達してそれをほかに流用してそこでスプレッドを取るというようなことも言われておりますけれども、これはまた自分自身の会社のBSの大きさというものが重要なわけでございまして、小さなスプレッドのためにBSを膨らますということになっては、結局自分自身の企業体質が弱くなることになりますから、それはおのずと自律作用が働いてくるというふうに考えております。  以上でございます。
  49. 谷口隆義

    ○谷口委員 もう一問、産業・貿易森澤参考人にお聞きしたいのですが、先ほどもビジネスチャンスというような話が出ておりました。産業・貿易の業界におかれては、今回のこの外為法自由化は、メリット、デメリットを比較するとメリットの方が大きいというように私は感じておるのですが、新規の産業というかビジネスが起こる可能性があるというような観点で、具体的にもし御存じでございましたら、どういうような産業、ビジネスが起こる可能性があるか。  また一方で、現在まで商社中心にして、海外取引はもう従来からやっていらっしゃいましたから、例えばタックスシェルターとか、タックヘーブンとかいう税率の安いところを通過して節税をなさっていらっしゃいました。今度のこの外為法自由化は、そのようなことについて果たして影響があるのかないのか、また一層活発化されるのかどうか、このようなことについてお考えをお聞きいたしたいと思います。
  50. 森澤寛二

    森澤参考人 新しいビジネスの領域としてどういうことを考えているかという御質問でございますが、私ども経営の中の今後対応すべき三つの重要な分野ということで考えておりますのは、一つがマルチメディアの分野でございます。二番目が、これは日本の国益ともつなげた上での資源開発ということで、三番目にこの金融ビジネスということを会社として展開すべき重要な分野の一つという認識をいたしております。  金融ビジネスにつきましては、この外為法の関連ではどういうことがメリットとしてあるかということにつきましては先ほどお答えを申し上げておりますが、より直接的に、金融ビジネスというものに絞って、より積極的な見方をした場合にどういうことが考えられるかということでございますと、三つの段階でとらえることができると思っております。一つは自己完結型の取引、二番目が顧客を持つ取引、三番目が本格的な金融ビジネスへの展開というような段階になってくると思います。  最初の自己完結型の取引ということは、自分自身のために、現在、為替あるいは債券の現物、先物のディーリングあるいは資産の運用、こういったことは既に行っております。  二番目に、お客さんを持つ取引ということでございますが、これは非常に細々としたパイロットプラント的な展開でありますけれども商品ファンドの組成でありますとかあるいはプラントビジネスなんかと組み合わせたプロジェクトファイナンスあるいはシンジケートのコーポレートファイナンス、こういったことは既に行っております。新しい分野として、アドバイザリー業務ということで融資・投資顧問業、こういった部分にもそろそろ展開を始めているというところでございます。  将来の姿としては、本格的ないわゆるインターバンク等に入っていけるのかどうかということでございますが、これは非常に装置産業的な色彩も強うございますし、また、システムインフラに習熟した人がいなければそういうことはできないということで、今、商社の力としては、ここに入っていくのは十年あるいはそれよりも先になるのではないかというふうなとらえ方をいたしております。  最後に御質問のございましたタックスヘーブンの件でございますが、これは現在でも、いろいろな国際的なコンソーシアムを編成したオペレーションの中でタックスヘーブンを利用させていただいておるケースがございますけれども、これにつきましては、大蔵省の国税庁の適正なる税の捕捉ということが実施されておりますので、今後、この外為法の絡みで、またタックスヘーブンを使って、それが節税に特につながっていくというようなことは具体的には我々としては検討もいたしておりませんし、国税の捕捉ということの公平さからいくと、これによって特別な節税の道があるというふうには理解をいたしておりません。  以上でございます。     〔坂井委員長代理退席、委員長着席〕
  51. 谷口隆義

    ○谷口委員 わかりました。ありがとうございました。  今度は安岡参考人にお聞きしたいのですが、今回の日債銀の問題で、初めて外銀業務提携をされた。これからのビッグバンの先駆として今挙げられておるわけでございます。今後は外銀の資本提携を含めた業務提携がどんどん進んでくるのではないかというように言われております。まず、そのことについてお聞きしたいことと、あと、デリバティブズあたりは極めて集中して熱心にやっていらっしゃるということでございますが、我が国金融機関のそういう金融派生商品の企画開発力であるとか販売力であるとか、それは外銀と比べてどうなのか。一部では、外銀に席巻されるのではないかというようなことも言われておるわけでございますが、そのあたりの御意見と、あともう一つは、我が国金融機関が先ほど申し上げましたように大変不良債権を持っております。外銀あたりは、我が国の不良債権は政府の公表程度ではないのではないか、もっとたくさんあるのではないか、こういうように言われておるところでございますが、この大蔵省公表の不良債権について、外銀立場からどのようにお考えなのか。  この三点についてお聞きいたしたいと思います。
  52. 安岡雅之

    安岡参考人 お答えいたします。  まず、今般の日債銀との提携についてでございますけれども、御質問は、今後、外為法改正に伴い、ほかの企業と同じようなことがあり得るのかということかと思いますけれども、私どもはこれは進むであろうと考えております、十年後には、私どもの業界、国際金融で生き残るのは多分十社あるいは十のグループ程度であろうということはよく議論される議題でございます。  企業提携の進み方についてでございますけれども、まず分野を決めて、その部分で、外銀日本銀行さん、あるいは商社さん、証券さんと提携するというような、分野を決めた戦略提携が進むと思われます。さらにそれが進みますと、今度は世界のグローバルネットワークとしてのグループ化が進むと思います。これはほかの業種でもホテルあるいはエアラインで既にグループ化が進んでおります。最終的な局面としては、資本の提携も含めた関係というものに行く行くは発展していくのではないかと思います。このグローバルにネットワークを張るというのは、国際金融の中では避けて通れない必要条件でございます。  それから、デリバティブについてでございますけれども、私ども金融改革を乗り切る手段として、八〇年代に非常に大きく伸びましたデリバティブにつきましては、非常に強い部分と自負しております。ただし、この部分につきましても、日本銀行さんの競争力を見ますと、彼らの持つバランス等につきましては、既に非常に強く、大きなものになっております。  これはビッグバンあるいは自由化をされた市場の通例かと思いますけれども、新しい商品が陳腐化していく、あるいはスタンダードになっていくというスピードは、非常に速く行われます。常に新しいもの、新しいものというのが私ども競争力を維持するものだと思いますし、現状でいいますと、日本銀行さんと比べますと、いわゆる我々の言うプレーンバニラあるいは通常のスワップ等につきましてはほとんど、外国為替のレートと同じように、スプレッドが取れるようなものではもうなくなっている。大量生産商品になってきております。  私ども、まだまだ差があると思われますのは、いろいろと仕組んだ、ストラクチャードと申しますけれども、仕組んだデリバティブ、あるいはほかの分野とかけ合わせたデリバティブの仕様、例えば日本で資産運用をしたいというお客様がいれば、それに対してデリバティブを加味したリスク分析を行う。このポートフォリオは金利が一%上がるとこういうふうに値段が変わります、あるいは為替が変わるとこういうふうに変わりますというようなサービス提供する。その部分については、私どもまだ進んでいると自負しております。  今後の見通しでございますけれども、エクイティー関連、株式関連でございますね。予定では個別株式に関するデリバティブが解除になるということが大蔵省さんの予定に載っておりますけれども、この部分については、デリバティブの応用というのはまだまだ初歩でございますけれども、マーケットとして大きなものになると期待しております。  全般的に申し上げますと、日本銀行さんのデリバティブの力というのは日に日に強くなってきているという印象を強く受けております。  最後に、大蔵省さんの公表されました不良債権の金額というものでございますけれども、私どもニューヨーク等と話しておりまして、彼らからすると混乱しますのは、その定義についてアメリカサイドとスタンダードが非常に違う。不良債権につきましても幾つかの分類がある。その辺を統一していただくとわかりやすくなるのではないかと思います。  ただし、今回の日債銀のように、最終的にああいう形ですべてディスクローズして、公認会計士等も入れて記者会見を開くというようなレベルまでいきますと、外資の方も安心してその数字を受け入れることができるんじゃないかと思います。  以上です。
  53. 谷口隆義

    ○谷口委員 どうもありがとうございました。
  54. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、山本譲司君。
  55. 山本譲司

    山本(譲)委員 民主党の山本でございます。よろしくお願いいたします。  本日は、四名の参考人の皆さん、大変お忙しいところ、当委員会に御出席をいただきまして本当にありがとうございます。限られた時間でございますので、早速質疑に入らせていただきたいと思います。  まずは、工藤さくら銀行専務さんにお話を伺いたいと思います。  外為法改正資本取引自由化をされると、外資系金融機関はもちろんのこと、国内の民間企業が外国金融機関買収して金融参入してくるというようなことも考えられるわけであります。こうなりますと、従来の顧客、従来のお客さんが競争相手になるということで、先ほど谷口委員からのお話の中にもありました、護送船団方式で競争力が低いと指摘されるような、いわばぬるま湯につかった今の日本金融機関が一体対応できるのか。日債銀でありますとかあるいは拓銀のような大手の金融機関でも大幅なリストラに踏み切る時代でございます。次は一体どこの銀行が危ないのかなんということも言われるような昨今でございまして、さくら銀行としては住専問題以来の懸案でありますリストラ問題にどのように取り組まれるのか、これがまず第一点でございます。  二点目の質問は、この外為法改正をにらみまして、自動車会社でありますとかあるいは石油会社が共同で為替決済をするといったマルチネッティングハウス、こういったものの設立を検討する動きが出てきているわけであります。そうなると、当然、為替手数料が節約できる分、一般企業競争力は高まる。しかし、取引上はメーンバンクは要らないということになってまいりまして、銀行為替手数料は入らない。そういう大変厳しい、銀行冬の時代というものがやってくるように思えるわけであります。この外国為替自由化時代に対応しまして、銀行はどのように生き残りというものを考えているのか、これが第二点目であります。  そしてさらに、ビッグバンに伴って、金融関係の規制緩和はどのように進めていく方がよいとお考えなのか。  以上、三点についてまずお聞きいたします。
  56. 工藤長義

    工藤参考人 それでは、ただいまの御質問の順に従いましてお答え申し上げます。  御指摘のとおり、不良債権処理などで大変厳しい経営環境に各銀行とも置かれておるわけでございますが、当行も含めて、経営体質の抜本的な改善を図るために、合理化、効率化を旧来以上に徹底して行っておりますが、さらにこれを続けていかねばならない、このように思っております。  私どもさくら銀行の場合を申し上げますと、合理化、効率化の観点から、人員削減については、まず、入り口対策として採用を大幅に抑制いたしました。またさらに、出口対策といたしまして出向の促進、あるいは、私どもニューキャリア選択支援制度と呼んでおりますが、中途で退職していただく制度を新たに導入いたしております。また、人件費の抑制策としては、賞与枠の削減あるいは人事制度、給与体系等の抜本的改定を行うなど、種々のリストラ策に現在全力で取り組んでおります。  その結果、人員、人件費等いずれも大幅に削減されておりまして、人員構成のゆがみの是正など体質の強化も相当進んできた、このように判断いたしております。  第二番目の御質問でございますが、先生御指摘のとおり、この一連の自由化の中で銀行とお取引先との関係が変わっていくであろう、こういうことは全くおっしゃるとおりでございます。メーンバンクといった日本独自の金融界のあり方が、何か金融商品の中身であるとか金融商品の質であるとか、そういったものを力点とする関係にだんだん変わっていく、こういうふうになっていくことは流れとしては間違いないと思います。  しかしながら、こういった流れが非常に進んでおります、例えばアメリカの銀行家等のお話を伺いましても、そういった金融商品金融サービスの中身の勝負だとはいいながら、最終的には銀行どお客さんを規定する関係、リレーションシップというものが一番重要なんだ、こういうことは依然として残るのではないかと思います。  ところで、我々銀行は、規制のもとでどの銀行も規模の大小こそあれ同じような外国為替業務を営んでまいりました、これはこの外為法改正によりまして大きく変わっていくのではないかというふうに考えております。  例えば、ある銀行は、外国為替業務のバックオフィスと申しますか、その事務部門を他行に委託し、お客さんとの関係である窓口業務だけに特化する、あるいはほかの銀行は、そういったバックオフィス、事務業務だけを取り扱ってその事務部門を自分の収益源とする、またほかの銀行の場合には、銀行以外の企業業務提携を行いましてマーケットシェアの増加を図るなど、それぞれ各行が独自の外為業務のあり方を追求していく、いわばこれからは競争相手との差別化要因の追求、これが銀行にとって勝負どころになる、このようになるのではないかと思います。  第三番目の御質問は、ビッグバンに伴って金融機関規制緩和はどのように進めていくべきか、こういう御質問であったと思いますが、承るところでは、橋本総理の示されたビッグバンは、フリー、フェア、グローバルの三原則にのっとった金融市場改革と不良債権処理を車の両輪として進め、我が国金融市場ニューヨークロンドン並み市場として再生させよう、こういうものと理解しております。  私ども金融機関が一日も早く不良債権処理を進めるとともに、我が国市場の信頼の回復に努めなければならないことは申すまでもないのですが、同時に、ユーザーの皆さんに効率的かつ良質の金融サービスを享受していただくためにも、透明性とかあるいは自己責任原則あるいは市場原理に基づく公正な自由競争といった、グローバルスタンダードにのっとった金融システムを早期に構築していく、これが最も肝要な規制緩和ではないかと考えております。  先ほどもちょっと触れさせていただきましたが、ビッグバンは、一言で言えば自由な競争の実現でございまして、痛みを伴うことはやむを得ないと思いますが、外為法改正された暁には、国内業務分野においても海外金融機関との競争にさらされることを踏まえますれば、ビッグバンの推進は待ったなしの状況にありまして、すべての当事者が相応の覚悟を持って取り組むことが不可欠であると思います。  現在、幾つかの審議会において検討が進められております規制緩和項目についても、このような観点から、できるだけ早期に、前向きに取り組まれるよう改めてお願いいたしたい、このように思います。  以上、お答え申し上げました。
  57. 山本譲司

    山本(譲)委員 ありがとうございます。  続きまして、安岡さんにお尋ねをさせていただきたいと思います。  日債銀との今回の業務提携についての報道等を見てみますと、今回の合意内容、これは日債銀が撤退をします海外業務、この引き継ぎと不動産証券化、こういった国内の債権証券化などの一部業務、いわゆるインベストメントバンキング、投資銀行業務に関連したものであって、バンカース・トラスト日本で一般消費者を相手にするリテール業務、これに乗り出そうとしているのではないんだ、ちょっと違うんじゃないか、こう受けとめているんですが、一体どういう業務をやるために提携合意をしたのがその辺のねらいも含めて御説明をいただければと思います。これがまず第一点目でございます。  二点目は、今回の株式の持ち合いの合意、これが将来への買収の布石になるんじゃないかこんなことも言われているわけですが、バンカースのボイタ副会長さんは、日債銀の大株主にはならない、こういった発言もされているというのを新聞等で拝見をさせていただきました。この発言が正しいのかと申しましょうか、将来的にも、バンカースが日債銀を買収する可能性はないということなのかということが、これが二点目でございます。  そして第三点目が、バンカースが得意とされている不動産の証券化、これは我が日本では規制緩和税制の問題、こういったものの改善のおくれで余り進んでいないわけでありまして、これがどうも不良債権の処理がおくれている一つの原因でもあるんじゃないかと私は考えるわけなんですが、安岡さんの経験も踏まえまして、日本の不動産の証券化が進んでいない、また進まないそのネックというものは一体どこにあるのか、この三点についてお伺いをいたしたいと思います。
  58. 安岡雅之

    安岡参考人 お答えいたします。  第一の点でございますけれども、日債銀との業務提携の報道等を見ますと、情報を若干過大に載せているところもありますので、一応この機会にクリアにできればと思います。  まず、どういう業務をねらった提携なのかということでございますが、大きく分けて二つあると思います。  最終的に、我々、日債銀さんとやりたいのは、国内不動産債権の証券化業務でございます。この部門につきましては、先ほど御指摘のあったように、体制的に不備な点もございます。その点については後でまた述べさせていただきたいと思いますが、この不動産債権の証券化につきましては、バンカース・アメリカで既にSアンドL等の処理につきましても大きくやっておりますし、あるいはヨーロッパでもリストラビジネスというのは手を広げております。この経験、ノウハウを生かして、これを証券化したいというのが第一点でございます。これは多分に日本投資家層を広げるであろう、あるいは将来的には新しい投資家層というのができるのではないか。  同じような試みとしましては、アメリカで行いましたのは、これもバンカースが十年前にイニシアチブをとった例でございますけれども、貸付金の流動化というのもやりました。その後、バイイールド債、高金利物でございますけれども、それの流動化も手がけました。あるいは一時問題になりました南米の債権、これについても流動化されました。同じような機会、ビジネスオポチュニティーというのはあるのではないか。さらに、日債銀さんの今までの国内投資家層との関係を見ますと、四十年の間、金融債を売ってきた地方の金融機関あるいは農協関係の投資家等に対するアクセスというのは、非常に強いものがあるというふうに我々は理解しています。  もう一つの部門でございますけれども海外業務の部門でございます。今回、結果的に海外撤退ということでございますが、私ども日債銀とのつき合いは非常に長いものがあります。上から下まで関係も非常にいいものがあります。彼らの新しい投資銀行として立ち直る努力を外銀としても応援したい、ついては日本のお客さんで海外ビジネスチャンスがあるものであればバンカースがそれをお手伝いしたいということによって、日債銀の再建というものがスムーズにいくのではないか。その二つでございます。  第二番目に、ボイタ副会長の日債銀の大株主にならないという記事、発言でございますけれども、これは正しいです。今回の株式の持ち合いというのは、そもそも当初の業務提携について双方のコミットメントを確認するというのが目的でございますので、それをベースに、金額についてはこれから交渉いたしますけれども、日債銀の大株主になるということは、今の時点ではありません。  さらに、将来買収する可能性ということでございますけれども、将来のことについては保証できませんけれども、今現在では双方ともそのようなことは一切考えておりません。これは一義的には業務提携としてスタートするというのが事実でございます。  バンカースの得意とする不動産の証券化日本で何ゆえ伸びないのかということでございますけれども、これは今まで日本銀行さんも体力もありましたし、償却あるいは売却というものをなるべく控えた傾向もあると思います。ただし、日債銀のように、もう一挙にうみを出してしまうという動きも出てきております。その中で我々は、先日大蔵省さんの発表もございましたけれども、今のところ法律的な整備が不十分でありますけれども、今後整えていく中で、必ずこの証券化というのは達成ができるのではないか、あるいは達成しなければいけないのではないかと思います。  現状で不備な点を具体的に申し上げますと、例えば日本の場合、賃貸期間が通常二年と短いわけでございます。例えば、一定の物件について、十年間の賃貸契約というようなことになれば一応の資金繰りというのがつかめるわけで、それを加工して金融資産につくりかえるということも可能かと思います。あるいは税法上の問題、借地権の問題等多くあると思いますけれども、これは大蔵省の意向では一つ一つ整備していくということで、我々も積極的にやっていきたいと思っています。  さらに、日本で今のところないものは、不動産リスクというものを証券としてとれる投資家というのが育っていない点でございます。投資家の間に、アメリカであればローリスク・ローリターンからだんだん高いリスクをとっていく、最終的にはジャンクボンドもとりましょうといういろいろな投資家層がもう育っているわけでございますけれども日本の場合にはまだその段階に至っていない。これはこれからの展開になろうかと思います。  以上でございます。
  59. 山本譲司

    山本(譲)委員 ありがとうございました。  続きまして、森澤伊藤忠商事副社長に伺いたいと思います。  先ほどの意見陳述の中でもあるいは答弁の中でも、外為法改正貿易会社として大変なメリットがあるということでございました。この改正後をにらみまして検討中の経営戦略というものはどんなものなのか、為替のネッティングというものは検討されているのか、あるいは一般的に国内企業による外国金融機関あるいは証券会社買収といったことは考えられるのかどうなのか、あわせてお伺いいたします。
  60. 森澤寛二

    森澤参考人 将来うんと長期的な展開としてどういうことがあるかということになりますと、先ほどもちょっと申し上げましたようにいろいろなビジネスを考えているわけでございますが、まず差し当たり現在どういうことに対応していくかということを社内の外為法への対応ということで申し上げます。  第一に、決済の集中勘定、これはネッティングになってくるわけでございますが、これによって商品代の決済等における利便性の向上、効率性の向上ということを行っていきたい。これをやがて当社のみならずグループ間に広げていきたいというふうに考えております。  二番目に、為替の先物予約の集中ということで、これも同じように効率化を図っていくということで、管理システムを構築中でございます。  三番目に、多目的海外預金ということで、これは貿易取引での決済口座として利用してコストの削減を図っていくということ、資金の運用及び調達を効率化していくということでございまして、これも当社及び当面はグループ間で利用していくということを考えております。  四番目に、外貨建ての債権債務の売買ということでございまして、これは将来グループ内外で外貨建ての債権債務を証券化して販売していくといったようなことを考えていきたいと思っております。これはカントリーリスクがどれぐらいあるかということによって債権に乗せてくるスプレッドも変わってくるわけでございますが、これを証券化していくということもビジネスの一環として将来的には考えていきたいと思っています。ただし、これも会社としてのリスクの判断能力、リスクの判断手法、管理能力というものが充実しないとできない分野でございますが、将来はこういったことも考えていきたいというふうに思っております。  もう一つの御質問でございました外国の証券会社ですとか銀行とか、そういったところを買収できるかどうかという点でございますが、これは理論的には可能であるというふうに思っております。ただし、企業買収をするのは買収する側の企業にとってそれが利益をもたらすということが目的でございますから、企業買収してもそれを十分にマネジメントして利益を上げていけるという自信がないとできないわけでございまして、そういった能力のある企業であれば、将来そういったことを視野に入れることが十分可能であるというふうに考えておるわけでございます。  以上でございます。
  61. 山本譲司

    山本(譲)委員 ありがとうございました。
  62. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、佐々木憲昭君。
  63. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。本日は、参考人皆様、御苦労さまでございます。時間がありませんので、端的にお伺いをしますので端的にお答えをいただきたいと思います。  まず、為替取引それから資本取引規制緩和され自由化されるということになってまいりますと、一面では確かに自由で効率的な市場が形成される。同時に、その結果、極めて短期的かつ投機的な資金の流出入というのが非常に激しくなるということも予想されるわけでございます。その結果、外国為替市場が大変大きな変動に見舞われるということ、さらにまた国際収支そのものも振れが非常に大きくなる、こういうことが予想されるわけでございます。  そこで、森澤参考人にお伺いをいたしたいと思いますけれども、このように為替の変動が非常に大きくなる可能性があるということになりますと、産業界、貿易界あるいは中小企業、地場産業、こういう面で大変不安定な要因が広がるのではないかというふうに考えますけれども、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
  64. 森澤寛二

    森澤参考人 御指摘のように、為替の乱高下が起こるということは日本にとってもあるいは業界にとっても決して好ましいことではないというふうに認識をいたしております。したがいまして、為替はできるだけ安定することが望ましいというふうに考えております。  ただし、その問題と外国為替法の改正の問題が直接リンクするのかどうかということについては、私は若干、特別な因果関係はないのではないかというふうに了解をいたしております。米国初め欧米の先進国では既に日本の現行の外国為替管理制度のようなものはないわけでございますけれども、その理由をもって為替が乱高下しているというふうには了解をしておりません。日本がこの外為法改正しても欧米と同じレベルに並ぶだけのことでございまして、それゆえに円だけが乱高下をするということにはならないのではないかというふうに了解をいたしております。  以上でございます。     〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕
  65. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 それでは、工藤参考人にお伺いをいたします。  先ほどの意見陳述の中で、実態を常時把握し、有事に対応できるようにするというのがこれまでの為替管理のあり方ではあった、しかし国際化進展の中で自由化というのは必然的なものである、このようなお話をお伺いいたしました。外貨銀行以外の証券商社もまたは個人も保有するようになって自由な取引ができる、こういうふうになってまいりますと、日本経済の全体の発展という観点から考えますと、これまでの公的ないわばコントロールといいますか、そういう面が後景に退いていきますと、規制緩和ということになっていきますと、結果的には有事に対応するということがなかなか困難になっていくのではないかという感じがするわけですけれども、そういう点についてはどのようにお考えでしょうか。
  66. 工藤長義

    工藤参考人 お答え申し上げます。  改正外為法におきましては有事に対する対応が困難になるのではないか、こういう御質問でございますが、拝見いたしますと、この改正外為法第二十一条二項によりまして、国際収支の均衡を維持することが困難になる場合には、資本取引を行おうとする当事者に対し「許可を受ける義務を課することができる。」このように規定されております。適切なモニタリング制度が備わっていれば、この義務の発動により我が国経済が回復不能な状態になる、外為法改正によりこのような状態になるということはないのではないかこのように私は理解しております。  以上、お答え申し上げます。
  67. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 それでは、米山参考人にお伺いをいたします。  日本ビッグバンが進んでまいりますと、証券にとっては非常に厳しい条件が出てくるというふうにいろいろ報道もされておりますけれども、例えばイギリスのビッグバンの場合は、証券業界を中心とした改革であった。しかし日本ビッグバンになりますと、金融証券と、全体を包括するビッグバンというふうに言われております。  イギリスの例で言いますと、新聞報道などでは、体力の消耗戦が起きて、英国を代表する名門証券会社が外国資本との壮絶な戦いにばたばたと敗れ去ったというふうなことも書かれておりまして、そういう点で、アメリカあるいはより強い資本にのみ込まれていくのではないかというような危惧もささやかれているわけでございます。  そこで、今回のフロントランナー位置づけられております外為法改正、さらに進みましてビッグバンが進んでいきますと、どのような対応が必要と考えておられるか。それから、そのビッグバンの進め方、ともかく早くやるべきだという話もありますけれども証券業界としては一定の前提を置きながら着実に進めていくべきだという考えも漏れ聞くわけですけれども、その点はどのようにお考えでしょうか。
  68. 米山幸治

    米山参考人 お答え申し上げます。  ビッグバンの進行する中で大変な競争にさらされることは紛れもない事実であろうと思います。  ただ、ビッグバンは、同時に自由なマーケットを実現するわけでございまして、証券業界といたしましても、新たな活動の舞台と申しますか新たなビジネスチャンスが生まれるものと期待いたしております。  イギリスのビッグバンが起こった当時の状況と現在我が国が置かれている現状の違いの一つに今考えられることは、マザーマーケットと言われる我が国金融市場で千二百兆円という膨大な個人金融資産を持っております。この辺のところが、当時ビッグバンが起こったイギリスの現状とは若干趣を異にしているのではないかと考えております。  また、先ほど申し上げましたビッグバンの進行する中で新たなビジネスチャンスが生まれるということは、皆様方もう既に御高承のとおりで、アメリカでは、ブティックと呼ばれます大変小粒な証券会社ではございますが、専門色、独自性を打ち出した、自分が得意な分野に特化した独自色を打ち出して、大変高い評価を得ている証券会社が多数ございます。そういったことが我が国でも大きな参考になる点であろうかと思います。  また、今後のビッグバンの進行ぐあいにつきましては、私どもが強く要望いたしたいことは、あくまでも外為の自由化といいますのはフロントランナーでございまして、それに続く諸規制のいろいろな制度税制を含めました規制緩和がやはりポイントでございまして、外為の自由化とそれからその後に続く規制緩和がいつ行われるか、その間隙が長ければ長いほど東京市場空洞化が起こる懸念があるというふうに考えておりますので、外為市場自由化とその他の諸規制緩和はパッケージで私どもは考えていきたい、そのように考えております。  以上でございます。
  69. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。
  70. 保岡興治

    ○保岡委員長代理 次に、岩國哲人君。
  71. 岩國哲人

    岩國委員 おはようございます。太陽党を代表いたしまして、質問させていただきます。  参考人の四人の皆さん、大変お疲れのところ御苦労さまでございました。私はきょうの最後の質問者でございますので、よろしくお願いいたします。  我が国の長い歴史の中で、金のことはおあしと言われてきましたけれども日本のお金は足のつかない、いつも足どめをずっと続けさせられておったお金がようやく足がつく時代がやってきたのではないかと、我々も大いに期待しておりますし、また、そういう意味日本の円そのものもこれから国際的な意味での活躍の時期を迎えておると思って、私も大変期待しております。またこうした個人のそれぞれのお客様にとりましても、金融サービスというものについて今までいろいろ不満もございました。そうした金融サービスもようやく外国並みのグレードの高い、そして質、量ともに充実した時代がやってくるということを期待しております。     〔保岡委員長代理退席、委員長着席〕  私も、皆さんと同じように三十年間こういう金融経済の世界におりまして、大変お世話になりました。  メリル・リンチは二つの大きなビッグバンを迎えました。今から二十年前にアメリカで、そして十年前にロンドンで。そしてそのメリル・リンチが対応したものは、十五年前からこうしたビッグバンを想定して、役員会の中では皆さんも同じように経営戦略を立てられたと思いますけれども、そうした銀行証券という言葉は二十一世紀の辞書にはどちらもなくなっているに違いない、銀行というところを見れば二十世紀までは銀行という名前の会社が存在しておった、証券会社というところを開けば二十世紀までは証券会社という会社が存在しておった、しかし、いずれも一つの金融サービス会社になっているに違いない、十五年前からそのような経営戦略のもとに世界展開を図ってきたわけであります。  そうした中で、しかし、一つのものになりながらも、先ほど皆さんの議論の中にありますけれども、三つに分化していく。一つはメガハウス。これは巨大な資本力あるいは情報網、そして人的資源、その三つを備えたメガハウス。二番目はスペシャリティーハウス。先ほど来山参考人がブティックという表現をされましたけれども、リースとか企業合併とかそういった得意な分野だけやっていく。小さな人的資源、小さな資本、小さなネットワーク、しかし深い専門知識。そして三番目にはローカルハウス。信用金庫、信用組合、そういった地方銀行。その三番目はメガハウスといえども対抗できないような、そういうお客さんとの深い、長いつながりを資本としてやっていく。この三つに分化するだろうという前提で進めてきたのがメリル・リンチでありました。  アメリカのビッグバンのときにメリル・リンチがとった作戦というのは、法人部門と個人部門を分離するという思い切った作戦でした。これは一つの会社を二つに割る。そして、これはメリル・リンチの場合には成功したと思います。もう一つの作戦は、五百万人のお客さんに一枚のカードを渡すことによって五百万の銀行支店をつくってしまう。これは、州を越えて支店を設けられないというアメリカの制約を逆手にとって五百万の支店を一挙につくってしまったというのがメリルの作戦でした。ロンドンビッグバンのときにメリルがとったのは、それに加えて銀行買収するということでした。  このような十年、二十年前の私の経験や知識も随分古くなりましたので、きょうは四人の参考人の方に幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に工藤参考人。メリル・リンチが日本に上陸したのは今から約四十年前、そしてそれは三井銀行の軒下でした。そういう長い関係を持たせていただいて、我々も大変お世話になりました。今でも三井銀行のキャッシュマシンしかメリル・リンチの東京支店には置かれていないはずであります。こうした日本の都市銀行さんが展開されてきた個人サービスの中で、二十四時間サービスというのはいつから、週七日二十四時間サービスというアメリカの顧客が受けられるものを日本顧客はいまだに受けることはできない、簡潔で結構ですから、そういう計画はいつごろ具体化されるお考えなのか。  また、こうした日本の年号というものがその制約になっておるのではないかと私は思います。お金は国際化になりながら、依然として昭和だとか平成とか、天皇陛下がおかわりになるたびにくるくる変えなければならない。これが本当に世界金融取引であろうかと私は疑問に思います。一日も早く金融世界から、まず西暦を原則とし、そして年号は併用するという方に踏み切るべきではないか、その準備は十分にできておるかどうか、このビッグバンに備えて。  この二点を簡潔にお答えいただきたいと思います。  それから次に、バンカース・トラスト安岡さんに、私もいろいろ個人的にお世話になりましたけれども、きょうこういうところで質問させていただくのを大変に光栄に思っております。  そうした、バンカース・トラストが苦境に陥って、モルガン・ギャランティーのホールセールバンクでもないし、またシティ・バンクのような大衆銀行でもないし、中途半端な行き方のときに大変苦しい状況にあったバンカースが、結局はモルガン・ギャランティーと同じように差別化差別化というのは人種差別とかいう差別ではなくて、ディファレンシエートさせることによって見事に立ち直ってこられたと思います。  今回の日債銀との提携というものも、その戦略の上に乗っていることと思いますけれども、そうした世界戦略の中で、この日本金融慣習、金融取引について、とかく不正な取引について非常に対応が遅い、アメリカのSECと比べて日本のSECについてどのような感想を持っていらっしゃるか。この弱体でそして信頼度の著しく低い日本のSECを持ちながら、本当にビッグバンというのはやっていけるんだろうか、むしろ不正のビッグバンが大きく広がっていくということを私は懸念しております。この辺について、簡単で結構ですから、御感想でもよろしいと思います。  それから、伊藤忠の森澤社長さんに質問させていただきたいと思います。  私も伊藤忠本社の中で三カ月、最初のヨーロッパの外債のときにいろいろと皆さんと仕事をさせていただきました。そうした溝口さん、加藤さんあるいは本庄谷さん、石田護さん、皆さんと一緒に最初のヨーロッパ第一号の、しかも商社という外国にはわからない存在をいかにしてわからせるかということで皆さん大変苦労されたことを懐かしく思い出しております。  そうした商社という存在が、今や物のサービス機関だけじゃなくてお金のサービス機関としてこれから入っていかれるわけでありますけれども、外国の金融機関をこれから買収される計画はおありかどうかあるいは既にトレーニー等の研修生派遣というような形によってどこかと特定な契約にもう入っておられるのかどうか、その準備をしておられるのかどうか、簡潔で結構ですが、お答えいただきたいと思います。  最後になりますけれども米山参考人に簡単にお答えいただきたいのは、このビッグバンによってアメリカでは個人手数料は逆に上がりました。法人に対しての株式手数料は三〇%下がり、個人の手数料は三〇%上がったのです。アメリカの個人投資家は決してビッグバンからプラスの結果を受けなかったのです。結局は、弱い個人投資家に、そうした採算性が悪いということでもって高い手数料を押しつけられた。このビッグバン株式取引手数料自由化によって日本ではどういう結果が出てくるというふうに想定していらっしゃるかそれをお伺いしたいと思います。  そして、もう一問。最近、野村証券の事件を契機に、そうした証券界あるいは銀行の黒い体質というものが取り上げられておりますけれども、これに対して、マネーロンダリングに対する対抗はできておりますか。その点をお伺いしたいと思います。
  72. 工藤長義

    工藤参考人 それでは、お答え申し上げます。  個人のお客様中心とした先ほど先生がおっしゃられたようなニーズにおこたえするという観点から申しますと、二十四時間ではございませんが、順次、CDあるいはATMの取扱業務拡大、あるいは稼働時間の延長あるいは休日稼働に努力いたしております。具体的に申し上げますと、最近のCD・ATM関係の事例では、平成七年十一月に稼働時間を延長し、現在、早朝の八時から夜九時まで利用可能、また八年二月には、都銀のオンラインネットワークでありますBANCSにおいても、同じ時間に延長を実施いたしました。このように、お客様利便性向上に努力はいたしております。  先生がおっしゃられました二十四時間稼働ということにつきましては、これは極めて個別行の経営判断に属する問題でございます。ただし、リテールの銀行業務の根幹に触れる問題でございまして、また、この取り扱いに疎漏を来しますと銀行の信用状態に傷がつく問題でございます。したがいまして、お客様ニーズ、本当に使っていただけるのかどうか、あるいはトラブル発生時のメンテナンス、現金が切れたあるいはジャムが発生した、それから防犯上のセキュリティーの問題、これは先生よく御存じのとおり、ニューヨークのCDが真夜中ついている中でお金をおろしているのは、決していい景色じゃないです。こういったことで、さらにコストとの兼ね合い、こういった検討すべき課題がまだあるのではないか、このように思っております。  それから、帳票の西暦表示の問題でございますが、これもまた各行それぞれ異なっておりますので、私どもさくら銀行の分だけ申し上げますと、大半のものが英文和文併記でございます。英文和文併記と申しますのは、西暦、和暦のいずれでも記載できるようなフォームになっております。若干和暦のみというものがあるようでございますが、主として担保の差し入れ書関係のものでございまして、私、ちょっと原因まで見てきませんでしたけれども、恐らく対抗要件等の問題で和暦にした、こういう問題ではないかと思われます。  以上、お答え申し上げました。
  73. 安岡雅之

    安岡参考人 簡潔にやらせていただきます。  先ほど、不正等の管理をどうするのかということでございますけれども日本の組織の場合、ピラミッド型になっているのを完全に直さないといけないと思います。アメリカの組織で例えるなら、東京支店の中に、私にレポートしない部隊がおります。私は営業担当でございますけれども、彼らはコントロールを担当する部署であります。彼らは、審査する。リーガル、法律に従っているか、さらに最近はアプロプリエイトネス、スータビリティー、仮にお客さんがこれだけ損してもいいと言っても、それは適正ではないということで断るようなケースもあります。  以上でございます。
  74. 森澤寛二

    森澤参考人 現在、海外におきます金融取引につきましては、約十三社の子会社をつくってグローバルに展開いたしております。北米、欧州、アジア及び日本ということで展開をいたしておれます。  それから銀行買収その他につきましては、よく議論には上がってきておりますが、現在のところ、具体的にそういう構想は持っておりません。
  75. 米山幸治

    米山参考人 お答えいたします。  手数料自由化に関連いたしましては、現在、証券取引審議会の総合部会で検討を重ねていると理解しておりますので、その結論を待って対応してみたいと思います。  それから二番目の御質問の野村証券の問題に関連してのことでございますが、私どもといたしましては、地道な努力を重ねながら投資家の信頼を回復維持してまいって、努力を重ねてまいりたいと思っております。  以上でございます。
  76. 額賀福志郎

    額賀委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位におかれましては、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。  この際、暫時休憩をいたします。     午後零時二分休憩      ————◇—————     午後一時十五分開議
  77. 額賀福志郎

    額賀委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き、内閣提出外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案を議題とし、政府に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前田正君。
  78. 前田正

    ○前田(正)委員 新進党を代表いたしまして、一言質問をさせていただきたいと思っております。  私に与えられた時間は約一時間でございまして、いろいろと私も勉強してまいりまして、多少重複することもあろうと思いますが、ひとつよろしくお願いいたします。  まず最初に、今回上程されております法案とは少し離れまして、私が日ごろ感じております問題とか、またいろいろとした方々から御相談をいただいております問題につきまして、何点かお伺いをいたしたいと思います。  まず、税務調査の方法であります。修正申告による税金の徴収とか、それから還付の件についてちょっとお聞きをいたしたいと思います。  税務調査をする企業、個人については、どのような基準とかプロセスを経て行われているのでしょうか。税務調査は、あくまでも任意で、協力を求めるということが原則だと思うのですけれども、私どもの地元の大阪の例として、税務署の職員が現金商売のサービス業のある会社に税務調査に行かれた際に、金庫をあげるという高圧的な態度をとったという実例もございます。その会社を担当しておる税理士さんが所轄に確認をしたところ、その事実を認めたということでもございます。調査のマニュアルといいますか、調べ方そのものも、まず疑って調査にかかっているというような態度になるのではありませんか。また、本来の目的は、ぼろを見つけて取るということではなく、正しい納税意識を持ってもらうということを原則とするべきではないでしょうか。この点についてお伺いいたしたいと思います。
  79. 舩橋晴雄

    ○舩橋政府委員 お答え申し上げます。  税務調査につきましては、まず、どのような基準、プロセスで行われているかというお尋ねでございます。  収集した各種の資料情報等を税務署におきまして十分分析、検討いたしました上で、まずは、所得の高額な音あるいは悪質な者を重点として、調査の必要性の高い者を選定しているわけでございます。また、税務調査に当たりましては、納税者の理解と協力を得つつ、法令に基づいて調査を進めているところでございます。今後とも、こうした方針のもとで適切な執行に努めてまいりたいというふうに考えております。  それから、通常の税務調査は任意調査なわけでございますけれども、金庫をあけろとかいうような、そういう高圧的な態度をとるというような調査はどうかという御指摘でございます。  税務調査におきましては、備えつけられた帳簿等につきまして、単に検算、集計等を行って形式的にその正否を検討するというばかりでなくて、帳簿の記載内容が事業の実態を正しく反映しているかどうかを各種の書類、物件等から多角的に確認する必要があるわけでございます。こういった税務調査の必要性に基づきまして、場合によっては納税者の了解をいただいて金庫の中身等の確認を行うことはあるわけでございますけれども、その場合におきましても、調査の公益的必要性と納税者の私的利益の保護との衡量を図ることに十分注意をしているところでございます。  それから、納税者に正しい納税意識を持ってもらうことを原則とするべきと考えるかどうかという点でございますけれども、税務調査において事実関係を正しく把握いたしまして、誤りが認められたような場合には、税法の定めるところによって是正するわけでございますけれども、その際に、納税者に調査内容を十分説明するとともに、将来にわたり適正な申告と納税が行われるよう指導にも努めているところでございます。
  80. 前田正

    ○前田(正)委員 我々、この事例だけではなしに、いろいろとした私どもの知り合いの方々からの話では、税務調査が、非常にもう疑いを持って、犯罪的な行為でもって取り調べるというふうな形の実例が多いのです。  私、ある方に福島区で会ったのですが、魚屋さんですが、突然に事前通告もなしに来て、それで調査をするときに、二階の事務所へ上がっていって、事務員が作業しておるその者に向かって、もうそのままで、何にもさわるなという命令を発して、そしてあげくの果てにその経営者の財布の中身まで出せということまで言っておるというふうなこともあるわけであります。  もちろん税務を調べる方々も大変だろうと思いますけれども、やはり人権という問題もあるわけでありまして、それぞれの立場をよく理解してもう少し適切に、しかも、もうちょっと相手さんにも納税を意識して納められるというふうな方法をとってもらわなければ、もう何か頭から金を取られるというふうな意識のもとに、結果的にまたほかのそういう納税団体の方へ走っていって、あそこはもう本当に丁寧に扱ってもらって税務交渉をしてもらうというところで、かえってそういう結果を招くという実例を私どもも何件か聞いておるということでございますので、ぜひそのようなことのないように指導をしてもらいたいと思っております。  それからさらに、その税務調査の結果、申告の修正をし、税金を追加して納めるといったケースの場合、過去何年間さかのぼって徴収されるのか、ちょっとお尋ねいたしたいと思います。
  81. 舩橋晴雄

    ○舩橋政府委員 お答え申し上げます。  調査の結果、申告の修正をして過去どのくらいさかのぼるかという御質問でございますが、課税処分を行うことができる期間、私どもこれを除斥期間と呼んでおりますけれども、これは通常過少申告の場合には法定申告期限から三年間、それから無申告の場合には五年間となっております。また、偽りその他不正の行為があるような場合には、過少申告であれ無申告であれ、七年間さかのぼってこの徴収をするということになっております。
  82. 前田正

    ○前田(正)委員 それでは逆に、申告の修正により税金が還付される場合は過去何年間さかのぼって対象となるかお教えいただきたいと思います。
  83. 舩橋晴雄

    ○舩橋政府委員 お答え申し上げます。  納税者の方が自分で行った確定申告や修正申告の減額を求める手段といたしまして、現行法上、税務署長に対して更正の請求をするという手段がございます。この請求ができる期間につきましては、原則として法定申告期限後一年以内とされておりまして、一年を超えた年分につきましては、更正の請求の対象となっておりません。
  84. 前田正

    ○前田(正)委員 その辺が非常に不公平だというふうに思うわけであります。税務署が取るのはさかのぼってかなりの年数でありますし、反対に、自分が納め過ぎたときは一年ぐらいしか取れないというのは、その辺、私はちょっとおかしな気がするわけであります。  それから、納税者が納めた税金が本来納めるべき税金よりも多かった場合、徴収側は五年の間に訂正すると法律で規定されているところだと思います。実際には、納税者のその訂正の請求が認められているのは、今あった一年間だけてあります。一年を経過してしまうと、要するに納税者は法律上その訂正の請求ができなくなってしまうということであります。徴収側は、納めた税金が少なかった場合にはその訂正を積極的に行っておるわけでありますけれども、納めた税金が多かった場合にはほとんど訂正が行われておりません。この場合、納税者は嘆願書というものを提出し、訂正を求めることになっていると思うわけでありますが、その手続について、実態も含め、ひとつ説明を願いたいと思います。     〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
  85. 舩橋晴雄

    ○舩橋政府委員 お答えいたします。  ただいま申し上げましたように、納税者が自分で行った確定申告あるいは修正申告の減額を求める手段として更正の請求というものがあって、それは法定申告期限から一年以内であれば認められるということなわけでございますけれども、税務署長がみずからする、税額を減額するための更正処分という形におきまして、この税額の減額をすることが可能なわけでございます。この場合には、原則として、法定申告期限から五年を経過する日までこれを行うことができるというふうに通則法上されているわけでございます。  例えば、この申告が誤ったことについての事情を記載した書面に証拠となる資料等を添付していただいて、それを税務署長に提出をしていただくということが必要でございます。税務署長は、これを見まして、適正な課税を実現する見地から見て必要と認められる場合には、その権限に基づいて減額更正を行うことにしているわけでございます。
  86. 前田正

    ○前田(正)委員 実務処理上、徴収側が有利に行われている所得税で、本来納付すべき金額よりも多く源泉徴収をされて、確定申告をしなかったためにそのままになっている場合には、徴収側は、申告すべき納税者の申告がない場合は、その調査により、その税金を決定するという法律の規定があるにもかかわりませず、その処理がほとんどされていないというのが現状だと思います。  また、この場合、納税者は、期限後においても申告ができ、過納付分の還付を受けることができるはずでありますが、その通知指導も全く行われていない場合が多いのではありませんか。  また、確かに納税者側の税に対する関心が低いということも問題があると思います。しかし、徴収側は、税に対する関心を向上させるための宣伝活動というのは大いに行っておると思うのですけれども、徴収側が有利の立場よりも、むしろ反対に、そういう還付もできますよということも積極的にこれからやっていくという必要があると思いますが、その辺、いかがでございましょうか。
  87. 舩橋晴雄

    ○舩橋政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のように、納税者におきましては、本来納付すべき金額よりも多く納付した場合には還付請求をするということができるわけでございます。その手続等についてはただいま御説明したとおりでございますけれども、それを税務署の方でむしろイニシアチブをとってそういう更正決定等の処理をし、納税者に対してその通知をすべきではないかという御指摘かと思います。  これに対しては、私ども税務当局は、納税者個々の所得について必ずしもすべてを把握しているわけではございませんので、一部の資料情報に基づいただけで還付のための更正決定をしたり、あるいは通知をするということが非常に難しいということについては御理解を賜りたいというふうに思っております。  それから、しかしながら、還付申告についてのPRが不足しているのではないかということでございますけれども、現在、所得税の還付申告というのは非常に多くなってきております。毎年八百数十万件という数の方々が還付申告を出されているわけでございます。確定申告におきましては、申告納税額のあるものを超えるような数字になっているのが現状でございます。  税務当局といたしましては、こういった還付申告は納税者の権利でございますので、その制度を含めて各制度内容や手続について国民に十分周知徹底していく必要があるという考え方のもとに、これまでも各種の広報媒体を通じて適時適切に周知を図ってきておりまして、パンフレットとかあるいはテレビでの番組提供とか、そういったことを通じてPRに力を注いでいるところでございます。
  88. 前田正

    ○前田(正)委員 できれば、取る方よりもそういった面をまた積極的にひとつぜひやってもらいたいというふうに思います。  それでは、本来の外為法改正そのものについての質問に移らせていただきたいと思います。  情報通信技術の早急な発達やデリバティブ取引拡大などを背景として、金融資本取引のグローバル化が進展してきております。これに伴いまして、我が国金融業のみならず、金融システムそのものが熾烈な国際競争にさらされ、国内金融資本取引がより利便性の高い海外市場にシフトする傾向が見られると聞いております。国際金融センターに期待される役割は、より低いコストで内外の資金の需要者に対し円滑に資金を供給するとともに、内外の投資家に対して十分かつ有利な資金運用の場を提供することにあるのではないかと思うところでございます。東京市場の目指しておられるところは、ローカルなマーケットではなしに、むしろニューヨークとかロンドン並みの国際金融取引中心的な役割を担う市場であると思うわけでありますが、東京市場が国際金融センターとして機能するためには、世界に共通するグローバルスタンタードに沿った制度整備を行う必要があると思います。  今回の外為法改正は、金融システムの改革フロントランナー位置づけられておられますが、フロントランナーといっても、後から何もついてこなければ、日本金融システムはがたがたに壊れてしまうのではないでしょうか。金融は産業の血液であり、日本の経済全体に及ぶことは必至であります。こうした事態に陥らないためにも、金融システム改革を行う前に、まずやるべきことがたくさんあるのではないかと思うところであります。このような点について質問をさせていただきたいと思います。  まず、外為法改正金融システム改革の時期との関連で、榊原国際金融局長は、先日の委員会においても、イギリスなどでも同時ではなかった、こう答弁されておられますが、イギリスの例は悪い例であり、日本における改革は、業態間の見直しについてはまだもう少し時間がかかるかと思うわけでありますけれども証券市場の活性の点から考えると、証券市場整備外為法と同時に改正を進めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  89. 長野厖士

    ○長野政府委員 国際金融センターとしての東京市場に期待される役割につきまして前田先生から御指摘がございましたが、まことにそのとおりであろうと考えております。そういう観点から、特に東京市場は、個人の金融資産千二百兆円と世界の最もすぐれた経済力を背景としたマーケットでございますので、証券市場の面でも、御指摘のとおり、ニューヨークロンドンに並ぶ市場として発展する必要があろうかと考えております。  御質問は、外為法改正との時間的な関連でございました。もとより、外為法改正というのはフロントランナーとして位置づけておりますけれども証券市場改革も、今日まで全く手を染めていないというわけではございません。昨年でございますけれども、例えば社債の発行市場自由化の措置を講じました。それから、それ以前になりますけれども、平成六年から株式委託手数料自由化、十億円以上のものについて行ってきておりますけれども、今日、そういった個々の断片的な改革だけでなく、総合的に東京証券市場というものを活性化していくために、全体としての、パッケージとしての改革は何が必要であるかということを検討させていただいております。  そういう意味では、外為法改正が来年の四月に予定されております、その時点までには少なくとも証券市場においても二十一世紀を見詰めた改革が全体像として提示され、着々と実施に移されておるということも必要であると存じますし、それを待たずに、例えば先ほどデリバティブの拡大ということもお触れになりましたけれども、そういった分野では、今日いろいろな分野で既に自由化の措置を実施に移しております。そういった意味では、外為法改正は一つの推進力でございますけれども、全体といたしましては、証券市場改革をこれと同時並行的に進めているというふうに御理解賜ればと存じます。
  90. 前田正

    ○前田(正)委員 次に、日本ビッグバン構想の本質的な問題は、金融制度改革論だけにはとどまらないと思います。二十一世紀の日本の進むべき道が問われているのだと思うわけでありますが、金融改革に、中身よりも何よりも、まず国際金融市場における生き残りをかけた日本の国家戦略そのものが議論されるべきであると思います。  日本がこれまでのような護送船団方式を改めなければならないことは当然だと思うのであります。そのためにも、規制緩和金融自由化というものは避けて通れないことはよく理解をいたしておるものでございます。だけれども、今なぜビッグバンなのか、そして大爆発の後に日本は国際社会で果たして本当に生き残ることができるのか、また、そのとき日本の国家そのものはどういう姿形に変わっているのか、お尋ねいたしたいと思います。
  91. 山口公生

    ○山口政府委員 御指摘のように、欧米金融市場は、ここの十年余り見ましても大変大きく変貌しております。また、これからも大変ダイナミックな動きが予想されるわけでございます。また、通貨面で見ましても、今世紀中には新しい通貨のユーロが誕生しようという動きになっております。一方、振り返って我が国市場を見ますと、やはりバブル経済の発生とその崩壊という過程を経まして、欧米市場に比べますとややおくれをとったのではないかという指摘もあるわけでございます。  一方で、我が国におきましては、先ほどもお話ありましたように、千二百兆円を超すいわゆる国民の金融資産がございます。円の金融資産、実需でございます。こうしたものをやはり有利に運用する、あるいは安く調達できる市場をつくるということで、あわせてその成長産業としての金融界銀行証券、保険、ノンバンク等が育っていくということを望むわけでございます。したがって、我が国戦略としましても、こういった実需というものを背景にした我が国金融産業というものを見渡しましたときに、そこには待ったなしの改革というものが求められるのではないだろうか、また、その力が私どもはあると思っておりますので、急ぎそのインフラ整備という意味でこの金融システム改革を行いたい、こういうことでございます。
  92. 前田正

    ○前田(正)委員 この間、読売新聞のことしの四月九日に、規制緩和の現状と課題と題して世論調査の結果が載っておりました。その中で、ここ数年間の政府の取り組みの結果では、規制緩和は「十分に進んだ」は九%、「かなり進んだがまだ不十分」という人が六二%、「ほとんど進んでいない」という人が一九%でした。この結果、国民の多くは、規制緩和がある程度進んだことを評価しつつ、今後もさらに進めていかなければならないと思っている人が多いと言えます。  金融機関に対する規制緩和をした場合、競争によるサービスの向上が期待できる反面、預金力の弱い一部の銀行が倒産する可能性があるとの指摘もございます。規制緩和の是非を聞いたところ、「慎重に進めるべきだ」という人が六七%、「しない方がよい」という人が八%、これを合わせると慎重派が実に七五%を占めておって、「積極的に進めるべきだ」という人はわずか一七%にとどまっておる結果でございます。  政府は日本ビッグバンを進めようとしておりますけれども規制緩和に当たっては、国内の事情の違いや、こういった世論を踏まえた慎重さも求められていると思いますが、金融システム改革のスケジュールを具体的に国民の前にわかりやすい形で示すことが重要であると考えますが、いかがでしょうか。
  93. 山口公生

    ○山口政府委員 御指摘のように、この金融システム改革を進めます場合には、いろいろと弱肉強食の激しい競争ということが予想されるということから、慎重に行うべきだという議論も当然出てくるわけでございます。かといって、そのペースをダウンしてしまうということは、せっかくの市場拡大し、また生き残ろうとする意欲のあるところに機会をより与えていくという面からいいますと、やはり縮小均衡ではなくて拡大均衡の方に持っていくということからしますと、やはりそこは乗り越えていく必要があると思うわけでございます。したがって、私どものこの金融システム改革もある程度スケジュール感を持ちながらやっていくべきであるということは先生の御指摘のとおりだと思うわけでございます。  ただいま外為法の御審議をいただいておりますが、同時に、先ほど御紹介を一部いたしましたように、規制緩和計画の中で相当な項目をこの三月末にも出しました。かなり細かい話ではありますが、それがかなりの数に上っていることから見ますと、これも相当な効果があると思うわけでございます。さらに、今後、証取法の抜本的な改正、あるいは市場活性化のための新しい法律を考えていくというようなスケジュール感を持っておりまして、ただ、そういうことを全部含めまして、各審議会で六月をめどにそのスケジュール感を持ったプランニングを出していただこうと思っておりまして、二〇〇〇年度、今世紀中にはこうしたある程度のスケジュール感を持った姿を持ちながら、果敢に改革を進めていくという所存でございます。
  94. 前田正

    ○前田(正)委員 次に、フリーという、自由という金融システム改革のまず最初に挙げられている原則というものは、市場メカニズムに沿った価格形成が行われることにより、消費者が最大のメリットを享受できるという点では望ましいことではあります。  しかし、それが仮に無秩序に行われた場合には、かえって消費者にとって取り返しのつかないような形になるということで、何か投資家の保護について配慮する必要はないのでしょうか。イギリスのように金融サービス法のようなものを検討する必要があると思いますが、いかがでしょうか。お尋ねいたしたいと思います。
  95. 山口公生

    ○山口政府委員 御指摘のように、ビッグバンがかなり進展していきますと、いろいろ複雑な商品というものが生み出されて、この販売が一般の国民の方々にも広がっていくということになるかけでございます。非常にこれまでの常識でなかなか律し切れない、複雑かつリスクを持った金融商品というのがあらわれてくるというふうになろうかと思います。そうしますと、今委員の御指摘いただきましたような投資家の保護という観点がどうしても必要になることは、私どもも同感でございます。  それで、このビッグバンを進めていき、業態問を超えたいろいろな金融サービス商品が出てくるということを見きわめつつ、その後に、新しい金融流れをよく見た形で、どうした法体系がいいのか。そこには投資家保護という観点を十分に織り込んだものをやはり考えていくべきではないかということは全く同感でございまして、実は、新しい金融流れに関するワーキング・グループというのを私どもも省内に設けさせていただきまして、銀行局の中に金融サービス室というそのための体制づくりもやっておるわけでございます。  諸外国におきましても今委員の御指摘のような観点からの法体系の整備というのはございますし、そういったものも参考にしながら、新しい時代の新しい法律の姿というものを将来としては展望しながら、それを追求していきたいというふうに思うわけでございます。
  96. 前田正

    ○前田(正)委員 ぜひこの金融サービスという法律にのっとったようなものを早急に整備してもらいたいというふうに思います。  それから、政府が提案しています日本ビッグバンとの比較でよく引き合いに出されるのが、実は英国でのビッグバンでございます。  八六年に実施された証券市場改革がその後どういう結果を英国の金融界にもたらしたかということを調べてみますと、そもそもビッグバンは、七九年に誕生したサッチャー政権が進めてきた金融・資本市場自由化政策の最終段階であったものでありました。具体的には、ロンドン証券取引所における株式それから証券の売買手数料自由化、単一資格制度廃止取引所会員への外部資本当資制限撤廃などを実行されたようであります。  しかし、自国の金融機関活性化を目指した当初のもくろみが外れて、ロンドン証券市場は、その後、欧州とかあるいはアメリカの金融機関に完全に牛耳られてしまうことになったようであります。ビッグバン以降、十年間に、イギリスの二十社を超えた英国系の証券業者が自由に敗れ、海外金融機関買収され、あるいは撤退を強いられて、現在生き残っているのはわずか七社のみとなっているとのことでございます。  そこで、問題なのは、こうした事態がもし日本で起こった場合、これが日本金融財政にどのような影響を与えるのか。大蔵省内で十分な議論がなされていると聞くわけでございますけれども、その辺はどう考えておるのかお聞きいたしたいと思います。
  97. 長野厖士

    ○長野政府委員 御指摘いただきましたとおり、イギリスのビッグバン以降、イギリスの証券業界は大きな変革がございました。そして、かなり多数の英国金融機関が、諸外国、大陸あるいはアメリカからのいろいろな金融機関の資本参加という形で経営形態が変わっていったことも御指摘のとおりでございます。  ただ、この点、大変話題になっておりますから若干補足をさせていただきますと、イギリスの証券界は、今ビッグバンの三点を前田先生御指摘になりましたように、もともとはごく限られた資本のパートナーシップという形の証券会社が多数でございまして、そこに資本的な背景を持っていなかった。これがアメリカその他との市場競争の中で、やはり市場は発達するわけでありますけれども証券会社のあり方としては資本不足という状態が起こりましたので、それをどこからか、新しい時代の十分にリスクのとれる証券会社になるべく資本を増強する場合に、その資本の供給者として諸外国の金融機関があったということであろうと思います。  したがいまして、イギリスの金融機関が衰退し、滅亡したという認識は持っておりません。現に、ビッグバンを経まして、イギリスの産業構造の中では、かつて、ビッグバン以前は一割あるいは一割強でございました金融サービス部門の経済に占める比率が今日では二割という形で、生産という意味でも雇用という意味でも、イギリスの金融・保険産業は大変発達しておりまして、ただ、そこでのプレーヤーの資本の形が外資に仰ぐことになったということであろうかと思います。  翻って、日本につきましても、この点は私どももいろいろな面から研究していかなければいけないと考えておりますけれども、仮にも、日本金融機関が外国の資本にとってみて、これは資本参加すると非常に有望であるぞというふうな評価を受けるような金融機関になっていただきたいという気持ちはございます。  しかし、それでは外国の資本を仰がないと日本はやっていけないのだろうかと考えると、日本は、先ほど申し上げましたけれども千二百兆円という資金の蓄積があり、国内においても、そういう有望な成長産業であるならば進んで資金提供しようという方も日本にはたくさんおありになるはずでございますから、私どもとしましては、とにもかぐにも日本金融機関が、証券会社も含めまして、活性化をして将来の展望が十分開ける成長産業になっていただきたい。そのための環境整備をどうしていくべきかという点に絞って物を考えてまいりたいと思っております。
  98. 前田正

    ○前田(正)委員 それでは次に、金融システム改革との関連では、税制を抜きにして語ることはできないと思います。特に、有価証券取引税の扱いはどのようになるのでしょうか。また、取引所税の扱いはどのようになるのでしょうか。その辺のスケジュールと考え方についてお聞かせいただきたいと思います。
  99. 薄井信明

    ○薄井政府委員 金融システム改革が進むのに対応して、税制面でもいろいろな意味で対応が必要であるという認識を私ども持っております。  それは、単に税制規制と考えて軽減していくという面だけでなく、一方で、これまでの守られた為替世界が自由になるわけですから、そこで不正が起きないように、あるいは業界間の垣根がなくなるわけですから、業界ごとに認めている特典みたいなものもなくしていく、そういった総合的な意味での税制の対応が、金融システム改革が二〇〇一年に向けて行われますので、追っかけていかなければならないと思っております。  その際に、税制が先に行くわけにはいきません。どういう経済になっていくのか、どういう金融市場になっていくのかを見きわめつつ、時期を失することなく追っかけていくということになろうかと思います。  御質問の有取税でございますが、これは来年四月一日から外為法自由化される、そのときに現在の有取税でいいのかどうか、こういうことを考えなければいけないと思っております。  現在、平成八年の改正で有取税は本則に対して三割の軽減措置をとっておりまして、これが来年の三月三十一日には切れます。そのときにいずれにせよ見直しをしなければいけないわけですが、新しい時代に合った証券税制をどうするべきか、例えばキャピタルゲイン課税をどうするかといったようなことも含めて考えていかなければならないと思っております。タイミングとしては年度改正でやっていきたいと思いますので、年末までに議論を重ね、来年の通常国会に法律を出させていただくということになってくるのかと思います。内容的にはこれからの検討ということになります。  取引所税につきましては、ちょっと性格が違うかと思います。非常に軽微な税ですし、いわゆるデリバティブズと言われているものに属する先物についての課税でございまして、世界に例がないという言い方をされますが、逆に言うと、世界に例がなく早目にこういう税制があるとも言える面もありまして、この辺についてはいろいろな御意見があろうと思います。有取税との関係もあろうと思います。いずれも今後の検討課題と思っております。
  100. 前田正

    ○前田(正)委員 次に、金融市場において自由な競争を確保するために、金融機関の体力というものを強化していかなければならないと思っております。  そのためには、現在金融機関で最大の負担となっている不良債権、実は二十兆とも三十兆とも、あるいはまた百兆とも言われておるわけでありますけれども、この不良債権の処理をまず行う必要があると思いますけれども、その点についてお伺いいたしたいと思います。
  101. 山口公生

    ○山口政府委員 金融機関がこれからの新しい激動の時代を乗り切るためには、この不良債権の処理を早期にやっていくということは御指摘のとおりだと思います。今、各金融機関とも相当なリストラ努力をし、業務純益もかなり不良債権処理に充てる等によりましてその処理を進めているところでございます。全体として見ますと、この一年間で相当、十兆円程度の処理の進展を見ました。  しかし、これですべてが終わったというわけにはまだいきません。また、全体としてはいい方向に向かっておりますけれども、個々の銀行におきましてはいろいろな問題を抱えているということもあります。しかし、この不良債権問題を乗り越えていかない限りにおいては、なかなか新しい事業も十分に展開できないという事情にございます。したがいまして、全体としてよく努力され、克服のめどがついてきているとはいえ、やはり個別の金融機関においてさらなる努力をぜひやってもらいたいというふうに思っております。
  102. 前田正

    ○前田(正)委員 それから、大蔵省は平成八年の十一月の二十一日に、実は阪和銀行に対して戦後初めての業務停止を命令されました。  阪和銀行は、バブル期に不良債権を千九百億円抱えておると言われておりました。このうち四百億円が回収不能であって、三百七十億円は回収に重大な懸念があると報道されておりました。しかも、競売を妨害したり、担保不動産に暴力団が居座るなど、借り手が悪質で回収が特に困難と見られる不良債権がかなりの額に上っておると言われております。  阪和銀行に向ける大蔵省の姿勢と態度には、私は不自然さが目立つと思うのでございます。それは、さきに経営破綻に陥った兵庫銀行への対応との対比によってクローズアップされるところであります。兵庫銀行業務を永続的な新銀行であるみどり銀行に引き継がれることにより処理をされました。これに対して、阪和銀行は事実上解散に追い込み、死亡させてしまうという処理方法をとったのであります。つまり、大蔵省の処理方法が異なり、その判断基準というものが非常にあいまいであります。  業務停止命令の原因は、不良債権の中に暴力団絡みの多額の不良債権がまざっていたからなのでしょうか。山口局長も、昨年ですか、十一月の二十一日に阪和銀行問題で記者会見をした中で、暴力団との関係を聞かれたとき、何とも言えないというような答えで、暴力団絡みであることを暗ににおわせたようなお答えをしておられると思うのです。それが本当でしょうか。  それからまた、不良債権と一口に言っても、いろいろな類型があると思います。それを不良という一つにくくってしまうことは、金融機関の実態を非常にわかりにくくしてしまうことにもなりかねません。不良債権の内訳をその性格別に示していただきたいと思います。また、その性格ごとに適切な処理が行われていくべきであると思いますけれども、その辺はいかがでしょうか、お尋ねいたします。
  103. 山口公生

    ○山口政府委員 まず、阪和銀行のケースと兵庫銀行のケースの違いをお尋ねでございます。  まず、時間的にいいますと兵庫銀行の方が前でございます。この場合には、同じように大変な不良債権で再建が難しいということで破綻処理、しかし新しい銀行をつくったということです。このときには、例の大地震の後で、やはり地元のために何か核となる銀行が必要だということで、地元の盛り上がりもございました。資金提供の動きもございました。私どもももちろん支援を申し上げましたけれども、そういうことで、新しい銀行で再出発して地元の産業界に寄与するというような機運がございました。そこで、預金保険機構の資金も使いまして新しい銀行として出発させていただいたわけでございます。  ところが、阪和銀行の場合には、御指摘のように昨年の十一月二十一日でございましたけれども、このときには、実は私どもとしても、大幅な債務超過の状態でいかなる処置をすべきかということで、同じようにいろいろな施策を考えたわけでございます。私どもとしては、取引関係もございますし、それから預金者の保護のためにも、新しい銀行をつくるというより、できれば既存の銀行でどこか引き取っていただけないだろうかというようなことを考えたわけでございます。  その際に、いろいろな不幸な事件が絡まっていたという事情がございまして、私どもが内々にいろいろそういうお願いをしましても、そういったうわさというものがかなりネックになりまして、それが結局は受け皿になっていただけるところがなかったという状況で、それで預金者の保護のために新しい銀行をつくらせていただいたということで、私どもとしては同じような処理ができればやりたいのでございますけれども、そういった周辺の事情、あるいはそこの銀行が持っておりましたいろいろな取引の諸事情というものが違っていたということでございます。  この不良債権を抱え、不幸にして破綻した銀行の処理をどうするかということにつきましては、基本的には、預金者の保護はいわゆる金融三法で預金者保護の万全を期すということで、これは何ら考え方は変わりません。  しかし、そのときに、先ほど申し上げましたような受け皿の銀行がつくれるか、あるいは受け皿の銀行が出てくるかあるいは出てこないかというのは、個々に判断するしかないということでございまして、その辺を差別して考えているわけではもちろんございません。あらゆる努力をして、できればその取引、地域の経済のためにも、あるいは従業員の方々のためにも、私どもとしてはできるだけそれを一番影響の少ない形でやっていきたいとは思っております。ただ、そういったケース・バイ・ケースの対応にならざるを得ないということは、先ほど申し上げた例でおわかりいただけると思います。     〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕
  104. 前田正

    ○前田(正)委員 その不良債権の中に阪和は暴力団絡みが多かったというふうなことが新聞に出ておるわけでありますけれども、この不良債権の処理は、そういう司法の手にやはり一部助けてもらわなければ処理がなかなかできないというのも中にはたくさんあると思うわけであります。そういう点もひとつまた大蔵省もよく理解をいただいて、そういう処理のためにも、そういう法律上での問題を少し警察あるいはそのあたりにもよく御相談をいただいて、速急に処理を深めてもらいたいと思います。  今度は、金融持ち株会社を解禁しようという動きがこの間新聞でも少し報道をされておりました。その報道によりますと、金融持ち株会社を解禁しようという動きの中で、不動産業も銀行は行うことができるとのことですけれども、このようなことを実際検討をしているのでしょうか。また、担保不動産を処理させるために考えておるということであれば、それは単に不良債権をつけかえるということにすぎないのではないでしょうか。それよりも、現存する不動産業者を圧迫することにつながり私は問題があると思いますが、いかがでしょうか。お聞かせいただきたいと思います。
  105. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  持ち株会社の解禁を内容とします独占禁止法改正法案が、今次通常国会に提出されております。こうした動きを踏まえまして、現在、金融制度調査会などにおきまして、銀行などが持ち株会社の傘下に入った場合に必要となる預金者の保護など、金融上の観点からの検討が行われているところでございます。  金融持ち株会社傘下の子会社が行い得る業務の範囲についてのお尋ねでございます。それにつきましては、独占禁止法の改正による持ち株会社の解禁に伴って必要となる金融業法などの整備の一環として検討してまいりたいということで、御指摘のような内容の記事が出ておったということは私も承知しておりますが、それを決めたということはございません。
  106. 前田正

    ○前田(正)委員 不動産市場活性化ということには税制面でのてこ入れが最も効果が大きいと思うのであります。そのために、過日からいろいろとした税制改革も行われているわけでありますけれども、やはり土地譲渡益課税を思い切って軽減すべきではないかと考えますが、その辺いかがでしょうか。あるいは、恒久的な措置として問題があるというのであれば、時限的措置として検討ということではいかがでしょうか。お答えいただきたいと思います。
  107. 薄井信明

    ○薄井政府委員 土地譲渡益課税は、二つの分野があるかと思います。一つは個人の所得税の問題、もう一つは法人税の問題かと思います。  平成三年の改正によりまして、土地を持つことについてコスト感を持っていただくということで、譲渡益課税についても重くするという改正が行われましたが、その印象というかイメージが極めて強くて、いまだにその税制が維持されているというふうに世の中で誤解されている面がございます。  実は、個人の土地譲渡益課税につきましては、平成八年の改正によりまして、譲渡益、売り上げから取得額を引いた差額が八千万円を超えるものについては確かに三九%というものが部分的に残っておりますが、それ以下のものにつきましては、平成二年前よりもむしろ安い部分もあるというような状況に今なっております。  土地の流動化とかあるいは活性化ということから、重過ぎる税制を普通に戻してほしいということを背景にしておりますし、また、所得税制改正というものがその間にありました、それとの関連もありましてこういう措置をとっているわけでございまして、それをさらに他の所得よりも土地の取引による税金を安くする、低くするということが適切かどうかということについては、私は疑問があるように思っております。  それから、法人につきましては追加課税というものがございます。この追加課税も、平成三年の改正で、実は超短期、二年以下しか持っていないものにつきましては三〇%の分離課税という極めて重い税制をつくりました。しかし、土地をめぐる状況が変わってきたということから、平成八年一月一日から、当時の税制をほとんど半分にしておりますし、特に超短期については、分離を追加ということで、実質的にかなりの減税をいたしております。  その結果どういうことになったかというと、昭和五十七年から六十二年ごろ、バブルの前ですけれども、この当時の例えば十年以下の土地取引にかかっていた追加課税よりも現在の方が軽くなっているわけですね。そういう状況の中でさらにこれを軽くすることが適当かどうか、これは政策判断かと思いますけれども、そういう物差してごらんいただければ幸いと思っております。
  108. 前田正

    ○前田(正)委員 それからまた、先月の末に担保不動産の流動化総合対策がまとめられたと思いますが、この具体的内容についてまずお伺いいたしたいと思います。  それから、担保不動産あるいはまた破産申し立てによる競売物件、さらに物納による国有財産の公売物件などの処理に当たりでは、いろんな手法、手段を用いているとは思いますが、私ども不動産業者に聞きますと、まだまだ情報公開が不足しておるとよく聞くわけであります。したがって、民間のそういう不動産の情報公開をするサービス機関あるいは流通機関などには、もっと積極的な情報提供をするなどの手段を講ずるべきだと思いますが、できればあわせてお答えいただきたいと思います。
  109. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  担保不動産などの流動化を進めまして不良債権問題の処理を促進し、市場活性化を図っていくということは、我が国の経済が活力を維持していくために極めて重要でございます。  今御指摘の流動化の総合対策の中身を申し上げますと、大きくくくりまして、まず第一に、担保不動産の収益性の向上をいかに図るか、例えば虫食い状態をどういうふうに持っていくか、権利関係が複雑なのをどう整理するかというような問題が一つございます。それを思い切って解決を図っていくこと。第二に、担保不動産の証券化でございます。第三に、担保不動産の情報化の推進、今御指摘のとおりでございます。第四に、民間における担保不動産の有効利用促進の要請。第五に、この対策の推進にかかわる関係省庁間の情報交換の場の設置というのが柱になってございます。  具体的には、住専処理機構や整理回収銀行や共国債権買取機構が持っています担保不動産というものをとりあえず対象にして、いろんなケーススタディーをやりながらその実績の積み重ねをやり、民間の方々に大いにそれを参考にしていただこうという趣旨でございます。  それで、御指摘のように、確かに不動産関連は流動化のために情報が大変大切だということでございまして、情報交換の場というものを設置するという方向で決めたわけでございます。
  110. 前田正

    ○前田(正)委員 では次に、日本債券信用銀行の再建策についてお伺いいたしたいと思います。  日本債券信用銀行の再建については、大蔵省として非常に評価しているようでございますけれども、私は不十分な再建策としか思えません。  まず、債務超過でないことについて検査を行ったのでしょうか。あるいは、自己査定のチェックをしたというのであればどのような方法でチェックをしたのでしょうか。また、経営責任についてはどのようなお考えであるか。この間、再建策の中に経営責任も一緒に入っていましたけれども、しかし頭取は賞与カット、あるいは役員も五〇%のカット、さらに一生懸命会社のために働いてきた従業員までもリストラをして大勢の首を切ったり、あるいはまたそういった方々の給料までもカットするという非常な手段でやっておられることは当然でありますけれども、果たして頭取の出された経営再建策というものが本当にできるのか。役員が総退陣して、そして新たな役員大事によって再建をさせるという道の方がむしろ私は再建策としてはいいのではないかというふうに思いますが、その辺もあわせてひとつお考えをお聞きいたしたいと思います。
  111. 山口公生

    ○山口政府委員 日債銀の再建策をまとめました段階で、日債銀はその財務状況を改めて自己査定をしまして、さらに監査法人と十分に協議をしてチェックをしております。大蔵省、日銀は、その結果を報告を受けるとともに、その査定の考え方を一体どういうふうにしたのか、あるいは内容がいかなるものかということをかなり綿密にチェックさせていただいております。それをもとに再建策をつくり、関係先に増資等のお願いをしているということでございます。  それで、経営責任の問題でございますが、これはみずからの再建でございますので、どこまで経営責任というのを私どもが求めるべきかというのはいろいろ議論のあるところだと思いますけれども、やはり他に協力を求めているというようなことからしますと、現経営陣の努力と思い切った決断は大変評価するものの、こうした再建策を必要とする事態を招いた責任というものは、過去の人たちも含めて経営者などにあるのではないか、それは避けられぬのでないかというふうに思うわけでございます。ただ、みずから報酬等を返上されるというようなことをやりながら厳しいリストラに取り組もうとしておられるということも、一つの責任のとり方ではあろうと思います。まずは、この事態は、みずからの再建策でございますので、株主を含めた当事者間でどういった責任をとるべきかということを判断していくべきものではないだろうかというふうに思います。  そこで、経営陣の総退陣とかいうような御示唆がございましたけれども、それはみずからがいろいろ御判断されるものでございますけれども、ただ厳しいリストラをやるというときに、その銀行のことを一番よく知っている人、あるいは部下から信頼されている人たちがみんないなくなって果たしてできるのであろうか、そういう厳しい措置ができるのかということもあろうかと思います。これからやはり厳しい試練を経ながら新しい銀行に生まれ変わるというときに、やはり必要な人材が必要なことを苦しいながらもやるということが一つの責任のとり方でもないかというふうに考えるわけでございます。
  112. 前田正

    ○前田(正)委員 残って再建をするというふうなことも大事かと思いますけれども、人心一新して新たな形で再建をするというのも、私は責任の一つのとり方だというふうに思っております。  もうあと時間が余りありませんので、最後に一つ、大蔵大臣と榊原国際金融局長にお尋ねをいたしたいと思います。  今回のこのビッグバンは、我々としても大変大きな期待を持っておるところでございます。私は、いつも思うわけでありますけれども、円とドルの関係が、もう一ドル三百六十円ではなしに、今日のように百二十円とか 一時百円ぐらいだというときもございます。このけた数の問題ですが、三けたの関係は主要通貨では世界に余り類がないわけであります。私は、やはり真の国際化というものを考えるのであれば、換算単位を思い切ってデノミで一ドルを一円というふうにして、そしていわば国際化というところにどんと飛び出すという方法はいかがかと思いますが、最後に大蔵大臣と榊原国際金融局長に、デノミ論でございますが、ひとつよろしくお願いいたします。
  113. 三塚博

    ○三塚国務大臣 たびたび予算委員会でも本問題の御指摘、提言がございました。デノミまで参りますためには、それぞれの準備もあるでありましょうし、また全体を見てどうすべきかということなどもあると思います。私自身は、ただいまの段階でデノミということに踏み切るべきではないだろう、経済の安定を待ってということではないのか、待ってやるということではなく、それを見て判断をするということではないのか、こう思っております。
  114. 榊原英資

    ○榊原政府委員 大蔵大臣が申し上げたことにつけ加えることはございません。
  115. 前田正

    ○前田(正)委員 それでは、大変長時間いろいろとありがとうございました。
  116. 保岡興治

    ○保岡委員長代理 次に、北脇保之君。
  117. 北脇保之

    ○北脇委員 新進党の北脇保之でございます。  私は、金融ビッグバンの実施速度の問題について、そしてさらに、今回の外為法改正案に関する個別事項について御質問を申し上げます。よろしくお願いいたします。  まず、ビッグバンの必要性については、ただいま同僚の前田議員も指摘をされたところでございますけれども、私もこの金融ビッグバンをできるだけ早くかつ一気にやる、このことの必要性を認める者でございます。今、我が国金融システムを見ますと、市場競争とか、また各国との制度競争、そういったものについて立ちおくれが目立つ、そして我が国金融や資本市場空洞化の危機をはらんでいる、こういう状況にあると思います。  これをもう少し分析的に見れば、国際面で見れば、一つは世界の経済の大競争というものが金融の面にも及んできている、そういう中で各国の金融機関が非常に技術革新を遂げて、そうした競争が非常に激しくなっている、こういう状況があります。もう一つ、国内面を見た場合、我が国の経済も成熟化をしてきたということで、高度経済成長の時代の資金不足の状態から資金余剰の構造に転換してきている。またもう一つは、高齢化が進む中で経済のストック化と申しますか、そういったことも進行している。またさらには、情報通信の面で技術革新が爆発的に進行している、こういう状況もありますので、そういう中でいろいろな壁がなくなってきている。国境の壁もなければ金融といろいろな周辺のサービスとの壁もない、それから業務分野の壁もなくなる、こういう国内的な状況もある中で、金融システムの改革を進めていかなければならない、こういうことだと思います。  そこで、質問の一つは、ビッグバンの実施をどんな速度でやっていくお考えかということでございます。その質問の背景としましては、一つは外為法改正が一九九八年四月から実施される。そうなりますと、資本の国内への流入とかまた流出、こういったことが盛んになるということもあるでしょうし、また国外の金融機関日本市場参入してくる、こういうことも予想されるので、むしろ一九九八年四月の外為法改正自体が、もうそれそのものがビッグバンになってしまうのではないか、こういうような見方も出てきている。そういう点で、むしろ待ったなしになってきているのではないかということを考えるわけでございます。  そしてもう一つ、ちょっと細かな話になりますが、政府の金融ビッグバンの検討過程の中でも、どういうスケジュール、どういうタイミングでやっていくかということの議論がなされたことが伝わっております。もう公開されている資料の中でも、経済審議会行動計画委員会金融ワーキング・グループが平成八年十月十七日に発表した報告によれば、このビッグバンについては「遅くとも一九九九年度末までに改革を全面的かつ一挙に実現すべきである。」こんなような議論が報告をされております。この経済審議会行動計画委員会金融ワーキング・グループの議論によれば、遅くとも一九九九年度末までに一挙に実現するべきだ、こんなような議論がされております。それに対して、橋本総理の東京ビッグバンの指示によれば、二〇〇一年までにやるのだと。二〇〇一年というのは完了した状況をいうということでございますので、そのことを考慮に入れなければいけないとは思うのですが、政府内の考え方として、こうした金融ワーキング・グループの指摘の一九九九年度末までに実施するべきだという意見と、二〇〇一年にでき上がった状態を目指すということとの関係、この辺をどういうふうに理解したらいいのか、これをちょっとお教えいただきたいと思います。  それで、そのことを具体的に考えますと、やはり金融ビッグバンを実施していくときに、主要な政策については法律改正が必要であり、またそれから法律の施行がある。そうすると、その間に、今回の外為法改正の例を見ても一年という間が経過している。さらに、施行されてから民間がいろいろな対応をしていく期間が当然必要になってくる。例えば、主要な法律改正規制緩和をした場合に、業際間の規制を取っ払った、また商品の開発についても自由度が高まった、こうなっても、その民間がそういう新しい業際対応といいますかそれからまた新商品の開発、そういうことをやっていくには法律が施行されてからもまた時間が必要である。こういうことを考えていくと、一つの法律改正を提起してからそれが完成された状態になるまでには、少なくとも三年ぐらいかかってくることになるのではないか。そういう問題もあるものですから、私の理解では、今度の金融ビッグバンについては、法律改正を要するような主要なものについては、もう来年の通常国会に出さないと間に合わないのではないかというふうに思うわけでございます。  ちょっといろいろな角度から申し上げたので質問が散漫で理解しにくい面があったかとは思うのですが、要するに、外為法改正で来年四月からもう実質的なビッグバンになるのではないか、だからかなり待ったなしになるのではないかということが一つ。それから、政府内でもいろいろな議論があったように思うので、それが実際のところはどうなのか。そしてさらには、今の法律改正とかいろいろな手順を考えていくと、二〇〇一年までに完了された状態をつくり出すということになれば、行政的な、もしくは国会におけるいろいろな議論というものはかなり早くやっていかないと、二〇〇一年に完成された状態を目指すと言っても間に合わないのではないか。  そういう意味で、端的な質問としては、もう政府の考えとしては、この金融ビッグバンに必要な主要な制度改正法律改正は来年の通常国会へ出す、もう全部やるのだというぐらいの予定でいらっしゃるのかどうか、この辺を大蔵大臣にお答えをいただければありがたいと思います。
  118. 長野厖士

    ○長野政府委員 大臣お答えの前に、若干御報告をさせていただきたいと思います。  ビッグバン全体の実施速度の御論議は、先生御指摘のとおりであろうと存じます。経済審議会におけるワーキング・グループの勧告等の御指摘もございました。それらも全部含めまして今関係審議会で御議論いただいておりますけれども、そういったものの具体的な対応策の策定と、その実施に至る手順といったものを全体像としてこの六月にもまとめていただくように、今審議会にお願いしておるところでございます。そして、ただいま御審議いただいております外為法改正、来年四月に実施されることの影響ということも当然この御審議には含めていただきますし、この外為法の審議の過程で賜りましたもろもろの御指摘というものも的確にこの各審議会に伝達してお答えいただきたいと考えております。  そこで、御質問にございましたように、法律改正を要する事項について、法律改正を施行し、それに対して、例えば金融機関なり投資家なりあるいは発行企業といったものがそれぞれに対応できるようになるためには時間がかかる、二〇〇一年までにそれが全部そろうとすれば、法律が相当前倒しでなければならないではないかという御指摘は、まことにそのとおりであろうと思います。  私どもとしましては、国会の場で今きちんと私からそう断言申し上げていいかどうかということは、まだ審議会の答申もいただいておらぬ段階で若干勇み足かなと思いますけれども、私どもの気構えとしましては、来年の通常国会におきまして、ビッグバンを形づくります残余の外為法以外の改正につきまして御審議を賜ることができますように、これから全力を尽くしたいと考えております。
  119. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ただいま局長からもお話ありましたが、外為法フロントランナーというのは、開国への宣言であり、スタートです。来年四月一日にそのようになるわけでございますから、まさに待ったなしの状況に来ておるということであります。  さらに、昨年の十二月ぎりぎりいっぱいでございましたが、保険協議が日米の間に成立をいたしました。このことは、ヨーロッパ勢に対しましても、まさにフロントランナーの前の夜明けのこれまたアクションであったという位置づけをしても決して間違いのないことであろうと思っております。  ただいまお話ありましたとおり、関係審議会、三審議会でありますが、熱心な協議が行われております。そういう中で、中間答申という形で出てまいりますが、すぐやり得るものはすべて手をつけてまいる、こういうことになります。法律改正を要するものは、来年の通常国会に向けて準備が行われると見て間違いがなかろうと思っておるところであり、世の中もいよいよ本番だという感じになりました。  かつて、そうは言うもののなかなかそうはいくものではないだろうという空気で、しばらく様子を見ようというのが金融界の諸状況であったと思います。今日ただいまの段階で、金融界で、これは大変なことになるなという意識が定着しつつあります。生き延びるためにはどうするべきなのか。まさに一千二百兆の国民預貯金、これを有利に活用していく、そういう中でこのお金が日本の経済の部面に大きく貢献をするでありましょうし、預貯金者に対しても、預貯金というこのよき慣行が、逆に今度は、低減するのではなく、定着をしつつ有利な商品サービスという方向に流れていくでしょうし、ニュービジネスにとりましても、資金調達の機関としてのマーケットが活気を帯びることになるでしょうし、アジア諸国、またヨーロッパその他の諸国におきましても、お金を調達するなら日本東京マトケット、こういうことになる。円の価値が正しく評価をされる、信認を受けるということになりますと、当然そういうことになるのではないかと思います。もともと、ビッグバン、いわゆる金融改革、初めての大がかりなものだという評価を受けるようになっておるわけでございますが、これが完成に向けて進むことによりまして、円の信認は高まることだけは間違いありません。  これらの諸状況、また三審議会の研究、検討の成果を踏まえながら、二〇〇一年までの間、できるだけ早期に改革を進めるプランをまとめる、今申し上げましたとおりでございます。こうした努力により、結果として、多くの項目について、経済審議会行動計画委員会金融ワーキング・グループの報告書にあったように、一九九〇年代内に実現を見ることができるのではないか、こう考えております。  大蔵省も、全体を展望しながら、しかし待ったなしの金融システム・改革、円が評価をされる東京市場、また、その市場は自由闊達にアメリカ、イギリス・ロンドン、フランクフルト等の金融市場と全く引けをとらないイーブンな関係、さらによりよく、資金量があるわけでございますから、そういうことになっていくものだと思いますし、そのためには、やれるものは直ちに、法律改正を要するものは通常国会に向けて取り組んでまいる、こういうことになろうと思います。
  120. 北脇保之

    ○北脇委員 ただいまは、証券局長からは大変明快な御答弁があり、それを大臣が裏打ちをするということだったかと思います。主要な改正は来年の通常国会まででやるということでございますから、やはりできるだけ前広に、この国会の場できちんとした議論をしていくということで私どもも取り組んでいきたい、そんなふうに思います。  それから次に、外為法そのものの問題について幾つか御質問させていただきたいと思います。  一つは、今度、銀行が行う外為業務、これについて今までの為銀制度をもうやめるということがありますし、それに伴って銀行以外の外為業務を行う者が市場に参加してくる、こういうことがございます。これに関して、外為審のことし一月の答申ではこんなような指摘があります。「銀行が行う外為業務に関連する経営の健全性等の確保は、銀行法等の関連する法規の下で適切に行われることが必要である。また、銀行以外の外為業務を行う者についても、関連法規に従いディスクロージャー等が適正に行われ、市場のチェック機能が自己責任原則の下で有効に働くこと等を通じ、健全な市場参加者として活動していくことが期待される。」こういうことでございます。  これに関連して一つの質問は、銀行外為業務の健全性の確保に関して、「関連する法規の下で適切に行われることが必要である。」こういうことでございますが、そこで言っているところの関連する法規というものはどういう内容のものを指すのか。健全性の確保ということ、これは今の金融システムの改革の中で、もう行政の関与というものをできるだけ外して市場の規律にゆだねる、そしてルール化していくという、片方でそういう目標、また一つの制約というものがありますので、ここで言っているような外為審の指摘にこたえるその法規の内容、どういったことを指しているのか、ちょっとそれを教えていただきたいと思います。  そしてもう一つは、「銀行以外の外為業務を行う者」ということ、これはどのような者がどんな形態で参加してくることが予想されるのか。そのときに、これまた関連法規に従いディスクロージャー等が適正に行われることが必要だという指摘がございますので、ここで言う関連法規、どのようなものを具体的に指すのか、またなされるべきディスクロージャーの内容、どんなことになってくるのか、この二点についてお答えをいただきたいと思います。
  121. 榊原英資

    ○榊原政府委員 お答えいたします。  現在の法律の体系は、銀行あるいは金融機関業務を、経営の健全性に関して外為の部分だけ外為法でこれを見るという体系になっておるわけでございます。  ですから、外為法の抜本改正をやり、外為業務を完全に自由化するということであれば、外為法が持っておるその経営の健全性にかかわる権限というものがなくなるということでございまして、ただ、当然のことながら、金融自由化を進める中でも金融機関の検査・監督というものの重要性は決して減らないわけでございまして、そういうものについては関連法規、銀行法、証取法あるいは保険業法、そういうもので従来どおり行っていくということでございます。ただ、外為についての経営の健全性のチェックというのは、外為法改正に伴ってなくなっていくということでございます。
  122. 北脇保之

    ○北脇委員 先ほどの私の質問はもう一つございまして、銀行以外でどんな主体がこの外為業務参入してくることが予測されるかそしてその場合に、そういった者の健全性を確保するのはどうやってやっていくのか。それが今の業法ですとそれぞれ分かれているかと思うのです、銀行法とか。そういったことに乗らないような新たな業者が外為業務参入してきたとき、ではその健全性の確保のためのチェックと申しますか、そういったことはどんな方法でやっていくのか、それをちょっとお答えいただきたいと思います。
  123. 榊原英資

    ○榊原政府委員 当面、外為業務参入することが予想される業態は、例えば証券会社あるいは保険会社等の金融機関であるというふうに考えております。けさの参考人の質疑でも、商社は当面外為業務参入するつもりはないというようなことを商社の方が答えられておりましたので、当面は金融機関がこれに参加する。今までも限定的な形で参加していたわけでございますけれども、これをもう少し積極的に参加するというようなことがあるかというふうに思っております。  金融機関ということでありますれば、当然金融機関としてその業態を検査し監督する、そういう法体系があるわけでございますから、そういう法体系のもとで従来どおり検査・監督をしていくというふうに理解しております。
  124. 北脇保之

    ○北脇委員 金融機関については、一般的な検査、そういったことの中で健全性の確保をしていく、そのことはわかりました。しかし、ただ、当面は金融といいますか証券程度までの範囲しか新規参入予想されないのかもしれませんが、新しい事態が出てきた場合のその健全性の確保ということは一つの課題ではあろうかと思いますので、今後の検討が、国会という場も含めて必要かと思います。  それから次に、非常に細かいことではございますが、外為法の関連で、外為審の答申の中にいろいろな報告データなどを市場に還元することの必要性が指摘されております。取引者が市場について十分な情報を得て適切な判断を行うことができるように、市場の実態把握のための報告データを市場に還元するなどの環境整備を図ることが必要だ、こういう指摘がございます。との指摘にこたえて、これからどんな報告データをどういう手段で市場に還元していくのか、その仕組みについてお答えをいただきたいと思います。
  125. 榊原英資

    ○榊原政府委員 お答えいたします。  報告データの市場への還元につきましては、例えば国際収支統計あるいは対外資産負債残高統計等がございます。これに関しましては、実は国際収支統計、IMFの新しい基準に準拠した形に統計を切りかえてございます。地域別、通貨別統計などの拡充を現在図っているところでございます。  また、国際収支統計以外でも、現在、対内・対外証券投資状況あるいは本邦オフショア市場の動向等、外為法に基づいて届け出、報告をいただいているものについては新聞発表等を通じて公表しているところでございます。  今後ともできるだけ多くの情報を提供し、市場参加者の利便に資するという観点から、積極的に市場への情報還元を行っていきたいというふうに考えております。
  126. 北脇保之

    ○北脇委員 次に、また今回の外為法改正の中で大きな内容としては、国際情勢に対応しての経済制裁等を新しい仕組みでやっていくということが内容に入っていると思います。国際情勢に対応して経済制裁等を機動的かつ効果的に実施し得るメカニズムを確保する必要がある、こんなような指摘があるわけですが、今回の法律内容を見ますと、経済制裁などを発動するときには海外送金等について許可制を発動する、そして銀行等にその確認の義務づけをしているということでございますが、銀行等が確認義務を着実に履行しているかどうか、そういったことのチェックといいますか、それはどんな形でやっていくのかそれをちょっと教えていただきたいと思います。
  127. 榊原英資

    ○榊原政府委員 御指摘のとおり、有事規制、経済制裁を発動する場合には、銀行等にその禁止されたような送金が行われたかどうかをチェックする確認義務を課しているわけでございます。これにつきましては、通常の銀行の健全性の検査というようなものとは違った性格のものでございますので、そういう際には国際金融局が銀行を検査するというようなことも想定をしております。
  128. 北脇保之

    ○北脇委員 今のお答えですと、国際金融局がみずから検査を行うということで、今金融行政改革で予定されているような金融監督庁とは別に国金局自体が検査を行う、こういうことでございましょうか。     〔保岡委員長代理退席、委員長着席〕
  129. 榊原英資

    ○榊原政府委員 お答えいたします。  国際金融局は外為法に基づく事後報告というのを通常受け取っておるわけでございます。そういうものを持っているということでございますので、そういうものに基づいて国際金融局がチェックする機能は残しておくということでございます。これは常時やるわけではございませんので、経済制裁等有事のときだけということでございます。
  130. 北脇保之

    ○北脇委員 今の点については、郵政官署も同じように確認義務を負っているかと思うのです。今の経済制裁に関連して許可制が発動されたときの確認義務、これは郵政官署も同じことだと思うのですけれども、この郵政官署がきちっと確認義務を履行しているかどうか、こういったことのチェックといいますか、それはどのような形で行われる仕組みになるのでございましょうか。
  131. 榊原英資

    ○榊原政府委員 お答えいたします。  本人の確認義務は努力規定ではございますけれども、郵便局も負っておるわけでございます。そういう確認義務に対して私どもがチェックをするということは、理論上はあり得ることでございます。
  132. 北脇保之

    ○北脇委員 ここのところは重要なことだと思いますので、経済制裁等を効果的に実施されるように運用の面でもぜひきちっとやっていただきたい、そんなふうに思います。  それから、先ほどちょっと前田議員からも、銀行業務全体のことについての投資家保護、不正取引の防止ということについての質問がありましたけれども外為業務に関連して投資家保護それから不正取引の防止、こういった必要性についても外為審での指摘がございます。外為業務に関連する投資家の保護とか不正取引の防止、こういったことをどういうふうな形でやっていくのか、ちょっとお教えいただきたいと思います。
  133. 榊原英資

    ○榊原政府委員 今回の外為法改正の趣旨は、基本的には、外為業務自由化して自己責任原則と市場規律にゆだねる、完全自由化を行うというものでございます。ただ、御指摘のように、不公正取引の防止についても我々として最大限の努力をしていくことは必要だというふうに思っております。  この外為法の中で、例えば事後報告制度整備したというのはその一つの点でございますし、それからまた、税関で支払い手段等の持ち出し・持ち込みに関しては事前に申告をしていただく。これは現在より若干きつくなるわけでございますけれども、現在は持ち込みについては全く制限がございませんけれども、これを事前に税関に申告していただく、そのような方策をとっておるわけでございます。  もちろん、全般的な投資家の保護ということに関しては、先ほど銀行局長から答弁がございましたけれども、これは金融セクター全体の問題として対応していくというようなことになるかというふうに思っております。
  134. 北脇保之

    ○北脇委員 それで、外為審の答申の中で将来の問題ということでの指摘があるのですが、将来の問題としては、情勢の変化に対応した何らかの環境整備が検討課題となろうというような指摘がされています。  今あるような市場のチェック機能とか銀行に関する検査などといったような一般的な仕組み、さらにはマネーロンダリングとかに関連する本人確認とかまたは経済制裁等についての許可の仕組みとか、もろもろそういう仕組みをさらに超えて将来の問題として何らかの環境整備が必要ということでございますけれども、ちょっと私も今後の見通し、どういうことが生じてきて何を問題としてとらえていかなければいけないのか、それ自体がはっきりしないものですから、その辺のところ、外為業務に関連する投資家保護また不公正取引の防止ということで、将来起こり得る情勢変化とかそこでの環境整備、どういったことを問題にしているのか、ちょっとそれをお答えいただければと思うのです。
  135. 長野厖士

    ○長野政府委員 証券局長がまかり出まして申しわけございませんけれども、例えば私どもはこういう問題意識を持っております。  これから日本投資家自由化された外為市場を利用して投資活動をする場合に、それが外国株式への投資でございましたり、あるいは外国の債券の取得という形で、結果的に投資家外為法を利用しつつ海外の有価証券に対してアクセスを持っていく。したがいまして、外貨交換という意味ではなくて、そういった全体としての投資活動に対して投資家保護なり不公正取引を防止するにはどうしたらいいかという課題に恐らく直面するであろう、こう考えております。  その意味では、外国の企業株式であれ有価証券であれ、その発行体の会計のシステムなり、それを投資家に提示いたしますディスクロージャーといったものが、国内の基準あるいはニューヨーク等で行われている基準に照らしてどうであるかといったことをチェックしていく、あるいはそこにおきまして何らかの債務を履行する上でのトラブルが起こり得たときに、それは国際的な協調関係の中でどういうふうにこなしていくかといった問題がございます。そういった問題をこれから、全体の証券市場改革の中でも取り上げて検討し、成案を得ていきたいと考えておるわけでございます。
  136. 北脇保之

    ○北脇委員 今のお話は理解できたんですが、そういう形で外国への投資が盛んになってくる、外国の株式や債券への投資が行われてくる、そういう中でその投資家の保護をしていく必要がある、その際にいろいろなディスクロージャーが必要になってくるという、その一連の流れは理解できます。  ただ、その場合に、そこが外国への投資ということで、もちろん外国為替との接点はあるんですが、何か投資家保護という点で外為法の領域に入ってくるような対応というか、そういったものは考えられているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  137. 榊原英資

    ○榊原政府委員 お答えいたします。  投資家保護ということは非常に重要でございますけれども外為業務に限って、外為法のもとで投資家保護をするというようなことが将来起こるとは考えておりません。もっと全般的な意味での投資一般に関する投資家保護というようなことを今後考えていくということでございまして、ちなみに、イギリス等では、ビッグバンのときに金融サービス法というような投資家保護のための法律ができておるわけでございますけれども、そういう全般的な投資家保護ということでございますので、外為法外為業務だけに限定してということにはならないというふうに思っております。
  138. 北脇保之

    ○北脇委員 ただいまの点は両局長のお答えでわかりました。  次に、これまた外為法の一つの主要な論点でありますマネーロンダリングの防止策のことについてお聞きをしたいんですが、これは銀行等に本人確認義務を課するということでございますが、この本人確認についてたしか報告をさせることになっていたかと思うんですが、その本人確認がきちっと行われているかどうか、そういったことの行政上のチェックといいますか、それはどんなふうにしてやっていくのかお答えいただきたいと思います。
  139. 榊原英資

    ○榊原政府委員 お答えいたします。  マネーロンダリング防止については、今回の外為法改正案におきまして二つほどの措置がございます。先生御指摘のように、両替業務を行う者については、本人の確認義務というのを改正法十八条で課してございます。それから、先ほど申し上げましたけれども、現金等支払い手段の輸出入に関する事前届け出制度、これは改正法十九条第三項でございますけれども、そういう規定がございます。これはいずれも届け出あるいは事後報告でございますけれども報告義務違反については厳正に対処してまいりたいということでございます。
  140. 北脇保之

    ○北脇委員 これは本委員会の質疑の中でたびたび問われているかもしれませんが、今の支払い手段の輸出入に係る事前届け出制、これについて十分な対応ができるかどうかということでございます。税関に事前届け出をするということになると、新たな業務が発生するということには間違いはないんだろうと思うんですが、それについて現行体制で対応できるかどうか、増員の必要とか、そういったものが出てこないのか、その辺についてはいかがでしょうか。
  141. 榊原英資

    ○榊原政府委員 恐らくこれは関税局のマターでございますけれども、現在でも税関に対する申告というのは、通常、特に入国するときには行っているわけでございますから、そういう申告の一環として現金の持ち出し・持ち込みについて申告をしていただくということでございますから、新たな人員の配置というようなことは必要になるとは考えておりません。
  142. 北脇保之

    ○北脇委員 ただいま行革の必要性が本当に国民の大きな関心といいますか、そういう状態になっていますし、客観的に見ても行革の必要性言うをまたないということでございますから、今の局長お話にありましたような現行の人員で対応していく、それはとにかくそういう前提の中で、税関業務全体の中で工夫をしながらやるということで、ぜひともそれはお願いをしたいというふうに思います。  それから、これも今度の法制度の中での話でございますが、罰則制度のことでございます。  この事後報告に関する罰則制度については。これも公表されている資料によりますと、外為審の総会がことしの一月に開かれたときに幾つかの審議があって、その中で、報告義務に対する罰則の運用が余りに厳格過ぎると逆効果になるのではないかという懸念を表明される方があったようでございます。この事後報告に対する罰則の適用について、法令に違反していれば罰則を適用するというのは一つ当然なことかとは思うんですが、そのような形での厳格過ぎないような運用とか、果たしてそういうことがあり得るのか、そういうことをお考えになっているのか、この辺の議論についての当局のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  143. 榊原英資

    ○榊原政府委員 お答えいたします。  外為審の席上で、余り厳格に執行すると問題が出るんではないかという懸念が表明されたことは事実でございますけれども、私どもは、特に欧米諸国に比べて日本は今まで報告義務に対する責任ということが若干軽く思われていた節があるというふうに考えております。ですから、報告義務違反については、法律にのっとって厳正に対処していきたいというふうに考えております。
  144. 北脇保之

    ○北脇委員 今の御答弁はまことにもっともなことだと思いますので、そういう方向でぜひとも運用していただきたいというふうに思います。  幾つかの外為法内容についての質問をさせていただいたわけでございますけれども、私自身、この外為法改正そのものも必要なことであるし、今回の改正内容を賛同できるものというふうに考えているわけでございますけれども、その上に立って、その制度内容を少しでも国民に明らかにし、そして残された課題とか検討すべき事項とかあれば、そういったことをこれからも検討していく必要がある、そういう見地に立って質問させていただいていることをちょっと御理解いただきたいと思います。  あと、ちょっと個別のことと少し離れますけれども、一つは、今回の外為法改正の中でも、支払 い手段の一つとして電子マネーということをもう既に定義の中で取り込んでおりますけれども、この電子マネーについて、今後日本での普及の見通し、これがどんなふうになるのか、これをちょっとお尋ねをしたいと思います。  報道によれば、大きく言って二つのグループがもうことしから国内で実験を開始したり、また日本法人を設立するというようなことも報道がされております。そういう中で、我が国における電子マネー、これはどんなものになると考えられるか、これが普及していく上での問題点についてどんな考え方があるか、それを幾つかお答えをいただきたいと思います。  一つは、この電子マネーの発行主体、これはどんな発行主体が予想されるか。それから、この電子マネーについての一つの健全性の確保のための規制監督と申しますか、そういった仕組みをどんなふうに考えていくか。それから決済保護ということで、今の通常の決済システムということであれば日銀と大蔵省ということでその保護の仕組みができているわけですけれども、こういう電子マネーというものが普及してくるときに、決済保護、これをどういう仕組みでやっていくことになるのか。その三点について、政府内でもいろいろな検討がされているというふうに仄聞をしておりますが、その論議の内容も含めてお答えをいただきたいと思います。
  145. 山口公生

    ○山口政府委員 御指摘の電子マネーでございますが、かなり技術的、専門的な話になっておわかりにくい説明になろうかと思いますが、イメージとして申し上げますと、実はテレホンカードというのは、カードでございますね。これはNTTとかそういう電話会社のあれで、度数が五十度とか決められています。これを使い切ってしまうと、それで終わりでございますね。これはいわゆる決済手段にはならないわけでございます。電話をかけるときだけでございます。  そうすると、そういったカードというものを、今度は使い捨てだけれども何にでも使えるというのが一つの電子マネーの形でございます。これは、例えばビザキャッシュとかいうのがそうですね。それからもう一つは、カードは何度でも機械に入れると、例えば預金口座から十万円入って、また使って、捨てないでまた入れるとまた十万円チップに集積される、それでまたそれが使えるという、つまり再充てん可能なカードというのがあるわけです。これがケルトカルテとかモンテックスとかいう、こういったものです。それからもう一種類ありまして、これはいわゆるカードじゃなくてネットワークでやる。これはeキャッシュとかデジキャッシュとがよく言われるのですが、こういうネットワークを通じた、つまりディスプレーを見ながら何とかさんに幾ら送りますよというような形でやるという、大体考えられるのは、今三つぐらいの形だろうと思っております。  我が国においてはどういう状況かといいますと、従来からICカードの利用の取り組みがかなりなされておりまして、また最近においては、プリペイドカードの普及も進んでおりますので、幾つかの地域におきまして、そうしたプリペイドカード型のプロジェクトが実施されております。また、来年には首都圏における電子マネーの実証実験プロジェクトの実施が計画されておりまして、電子マネーの普及に向けての取り組みが進展しているという段階でございます。今、世の中に電子マネーが出回っているという状況ではございませんが、いろいろ今創意工夫で研究が進められ、実証段階に入ってきているということで、諸外国もおおむねそういった状況でございます。  こうした電子マネーが今後我が国にどれくらいのスピードで普及するかということについては、いろいろな考え方があると思います。かなり現金主義的な我が国の風土でいかがなものかと言う人もいます。しかし一方で、こういうプリペイドカードあるいはいろいろなカードを使う人が多くなってきたということからいうと、かなり普及するのじゃないかと言う人もおります。それはよくわかりません。しかし、情報化社会における国民生活の向上に資するものでございますので、あくまで民間部門の取り組みを見守りながら、健全な発展のための環境整備を図っていくというのが私どもの対応の仕方ではなかろうかと思うわけでございます。  そこで、いろいろ問題が生じてまいりますので、私どもの方ではいろいろ懇談会を開いて勉強をしております。その中で、今先生の御指摘のような、発行体をどうするのかというような問題も当然一つあります。それについては、キャッシュである以上、通貨である以上は、銀行は出せるだろうなというのは大体のコンセンサス。ところが、銀行以外のもので出せるようにするかどうかというのが一つまた問題。じゃ、出せる場合はどういうような条件が備わる必要があるのだろうか。今おっしゃいましたように、そういう人たちが健全性を保てるだろうかというような問題があるわけですね。  それから、決済システムの方は、おおむねこうした再充てん型のカードをもし使うにしても、そのもととして自分の口座が銀行にございますから、決済上はそこを通してやるということで、さほどそれは問題にならないと思いますけれども、あと不正使用、つまり他人の名前をかたって、あるいは拾って使ったとかいろいろなことが起きます。それから、電子決済ですから、何か機械が壊れたとかそういう安全性の問題がございます。それから、金融政策に何か影響があるかというような問題もございます。  いろいろな問題を今総合的に検討していまして、必要なものはその環境整備を整えていくというようなことで、研究段階ではございますけれども、今急ピッチでそういった議論を進めさせていただいているところでございます。
  146. 北脇保之

    ○北脇委員 まだこれからという段階のことでございますから、今の局長の御答弁のようなことになろうかと思いますが、急速に技術革新が進んでいる状況でもありますので、できるだけ広く議論を展開していくということでいくべきではないかというふうに思います。  それから次に、外為法改正に伴ってビッグバンが進むという中で、税制改正をしていく必要があるのじゃないかということで、先ほど同僚の前田議員も、有価証券取引税のことと取引所税のことを質問いたしました。  税制改正の問題としてもう一つよく取り上げられる問題として、やはり源泉徴収による利子配当課税、これをどうしていくかということがあります。これについては、先ほどの有価証券取引税に関しては、もういずれにしても来年度から見直しをせざるを得ない今の法律の状態になっているので、来年度にかけての税制調査会で検討していくというお話でございましたが、利子等に関する源泉徴収課税、これが日本のマーケットの魅力を損なう一つの原因にもなっているということも言えるかと思いますので、この辺についてはどうお考えか、お答えいただきたいと思います。
  147. 薄井信明

    ○薄井政府委員 利子に対します源泉徴収制度でございますが、日本を含めまして納税者番号のないイギリス、フランス、ドイツ、ヨーロッパにおいては、ほとんどこのシステムで行われておるわけでございまして、一つのグローバルスタンダードであると私ども思っております。したがって、源泉徴収制度そのものが、外為の世界自由化になるからといって必要がなくなる、あるいは意味がなくなるということではないと思っております。  ただ、日本のように源泉分離課税を利子について行っている制度のもとで、例えば外国に資金流れていって、そこでは外国の金融機関が利子を払う。そうしますと、その外国の金融機関に源泉徴収をお願いすることはできませんので、それをどうするかという問題はどうしても起きてしまう。そこで、税の立場からは、資料情報制度を確立するということがどうしても大事だと思っております。といいますのは、日本の資産を海外に移す、あるいは海外から資金流れてくる、入金してくる、この時点をとらえて課税資料を入手するということが、日本制度を維持していくためにどうしても必要だと思っております。  なお、こう言いますと、これから自由化されるのに面倒な事務が加わるではないかという声が出てくるのかと思いますが、この点につきましては、為替自由化の先輩国であるアメリカにおいても、今調査中ではございますけれども送金等についてのかなりしっかりした情報システムを持っております。日本の場合、そこまでできるのかなと思っておりますが、いずれにしましても、しっかりした資料情報制度をつくり上げることによってこの問題は解決できる、このように思っております。  なお、税制ですから、これは法律が必要でございます。臨時国会等が開かれるのかどうかは国会のマターでございますけれども、そういう機会があるならば、そのときに法案を提出することも含めて、今研究を進めているということでございます。
  148. 北脇保之

    ○北脇委員 ただいまの点について、資料情報制度整備が必要だということで、課税資料の収集ができる仕組みをつくるということでございましたけれども、それは今の外為法に基づく支払いについての事後報告とはまた別に考えられるのかそしてその場合の資料の提供義務者がどういうことになってくるのかその辺についてお答えいただきたいと思います。
  149. 薄井信明

    ○薄井政府委員 一般的に言えることでございますが、税制がほかの分野の制度にリンクしてつくられる場合と、しかしそういうこともできなくなってしまう事態というのがございまして、今回の事態はまさにそういうことでございます。  これまでは為替というものが管理されている中で大体動きが為替世界でとらえられたわけでございますけれども、そこがフリーになってしまう。そのときに税金に関してどうでもいいということにはならないわけでございまして、そうなりますと、税は税の立場から必要な制度を構築していくことが必要だと思っております。そういう意味で、先ほど申し上げました資料情報制度税制の中につくっていくということを考えております。  その場合には、銀行等の金融機関、先ほどちょっとお触れになりましたけれども、郵政官署も含めて金融機関等が送金業務を行いますので、そういった金融機関等に資料情報を出してもらう。資料情報を出してもらうためには、送金依頼者は金融機関に対して書面で告知をしていただくということが必要だと思います。また、金融機関はその人が本人であるかどうかを確認していただくということも必要かと思います。さらには、義務違反が生じた場合に罰則を置いておくことが必要である。こういったことの一連の制度をつくりたいと思っております。
  150. 北脇保之

    ○北脇委員 ただいまの話は、東京マーケットといいますか、日本金融市場全部にかかわることだと思いますので、またこれも十分に検討を要することかと思います。  あともう少しお聞きをしたいと思うのですが、先ほど、きょう午前中は金融機関の方などをお招きして、参考人ということで話を聞いていたわけですけれども、今の金融ビッグバンということでの議論、どうしても制度的なものをどうしていくかということが多いわけですけれども、やはりもう一つは、日本金融機関自体がどうやって新しい環境の中でしっかり生き抜いていくか、そういう問題もあると思います。  そこで、金融機関の体力を強化するために、一つはリストラ、例えば店舗網の見直しであるとか人件費のカットであるとか、そういったことにどんなふうに取り組んでいるのか。そしてもう一つは、人間の面で人的資源といいますか、そういったことの養成がどういうふうに進んでいるのか、これも重要なことだと思います。  これから金融ビッグバンということでいろいろな壁がなくなった世界になってくれば、もう今までのような銀行マンで預金と貸し付けの話しかできないとかそんな人ではなくて、預金証券、保険、不動産、そういった話がすべてできる、技術的なことについても精通しているというような、そういう人材が非常に必要になってくると思うのですけれども、そういう人材の養成、こういったことがどんなふうに進んでいるのか。  これについては、では行政としてどうしていくかという話になると、また市場原理と反する行政の介入というようなことになりますから、どうするんだということはちょっと聞けないとは思うのですが、今言った日本金融機関の体質の強化ということで、リストラとか人材養成、そんなことがどんなふうに進んでいるか。その状況をもし把握されているようであれば、お聞かせをいただきたいというふうに思います。
  151. 山口公生

    ○山口政府委員 御指摘いただきましたように、金融機関体質改善、体力強化というのは大変大事なことだと私どもも考えます。  具体的に例を申し上げますと、各金融機関ともかなりの努力をしておりまして、店舗を見ますと、平成五年度から六年度、七年度と全部純減になっております。五年度五十五店舗マイナス、六年度二十一店舗マイナス、七年度五十店舗マイナス。これからも統廃合が相当進む傾向にございます。  それから新規の採用でございます。これは人数でございますけれども、四年度、五年度いずれも一万六千人あるいは一万三千人、これは都長銀信託だけでもそうでした。それが八年度では六千二百人にまで、半分以下に減っております。  それから職員数全体も、都長銀信託で申しますと、二十万人を超えておりましたのが、七年度には二十万人を切りまして十九万一千六百人ということで、大分人数も減らしております。  ただ、いみじくもおっしゃいましたように、ただ人数を減らすだけでは本当のリストラにはならないわけで、体質を強化するための人材養成というのはおっしゃるとおりだと思います。人材養成については統計的なものはございませんけれども、聞くところによりますと、海外でいろいろな技術を習得して帰ってきているというようなことを聞きますし、次第次第にそういった人材が育ってきている。ただ、願わくは、各金融機関ともにそういった人材がもっともっとふえていくような努力をしていただきたいというふうに思うわけでございます。そういった人材が育つような環境をつくっていくということが、各金融機関がこれから伸びていくかどうかのキーワードになるのではないかという気もいたすわけでございます。  ただ、一つのことだけに精通しているということでなくて、お客さんの多様なニーズに即時に、すぐ対応できる、ネットワークを通じてニーズにすぐ対応できるような人材体制づくり、ネットワークづくりというのが大切だというふうに私どもも考えます。
  152. 北脇保之

    ○北脇委員 もう時間が参りましたので終わらせていただきますが、私は、この金融ビッグバンについても賛成ですし、今回の外為法改正の方向についても賛同しております。そして、とにかく一気に包括的にやっていくということが大事なことだと思いますが、スケジュールについても、本当にかなり速いペースで考えられているということをきょうはお聞きすることができました。  いずれにしても、それを国会の場で包括的に議論できるように、いろいろなメニューをできるだけ早く包括的に出していただいて国会の場で議論していく、こういうことを進めさせていただきたいというふうに思います。どうもありがとうございました。
  153. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、並木正芳君。
  154. 並木正芳

    ○並木委員 新進党の並木正芳でございます。既に多くの方が質問をされました。折あしく、兼務している委員会が同時進行しておりますので、あるいは質問が重なることがあろうかと思いますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。  日本ビッグバン、つまり金融システム改革についてということですが、御案内のとおり、昨年十一月十一日、総理よりこの金融システム改革、いわゆる東京ビッグバンについての指示が出され、その後、十一月十五日には大臣から五つの審議会の会長に、二〇〇一年までの間に金融システム改革が完了するプランをできるだけ早急に取りまとめるように、そういう要請があったわけです。  そうした中で、外為審がいち早く、昨年十二月十九日には報告を取りまとめ、本年一月十六日にはもう答申があったわけです。それにより今回の外為法改正案が提出されているわけでございますけれども、この外為法改正については、既に平成七年の秋から審議が重ねられ、平成八年六月には専門部会等、報告書が取りまとめられているわけであります。つまり、フロントランナーということについてでございますけれども、既にひとりで走り出していた、そういうことで、これは大変だということで総理の指示があったのじゃないか、こういう見方もあるわけですけれども、その辺、当初の、平成七年から審議が始まったという、それはまさに総理の言うところの金融システム改革とは別物で平成七年には始まっていったのか、そのあたりの経緯について、ぜひ大臣からお聞きしたいと思います。
  155. 榊原英資

    ○榊原政府委員 先生御指摘のように、外為法の抜本的な見直しについては平成七年秋から審議が始まっておりまして、去年の六月には審議会で、一応の、これは法律改正ということではございませんけれども、法改正をやる場合にはこういう方向で考えていったらいいだろうというような答申が出ていたところでございます。また改めて今度法改正について答申を行ったのは、去年の夏ということでございます。  総理の指示、いわゆる金融システム改革の指示よりも先に走っていたではないかということでございますけれども金融システム改革あるいは東京ビッグバンの御指示によって、外為法改正も当初思っていたよりも極めて抜本的なものになったということは一つの事実でございます。
  156. 並木正芳

    ○並木委員 そこで、多くの方から指摘あるところですけれども外為法改正について二つのとらえ方があろうかと思います。  一つは、まさにこの審議会の答申にあるとおり、日本ビッグバンフロントランナーである。大臣も再三おっしゃっているわけでありますけれども、そういうとらえ方によれば、金融市場の慣行だけでなく税制、会計基準など伝統的な日本型システムそのものがグローバルスタンダードに変わらざるを得ない。そういうことで改革が加速され、世界に冠たる日本市場ができ上がっていくのだ、そういうふうな考え方です。  しかし一方、これまた多くの方から指摘あるように、もろ刃の剣である。外為法改正が先行してほかの改革がおくれれば、東京市場空洞化は一段と進展し、日本は沈没していく、多くの金融機関がつぶれていく、こういうような指摘があるわけです。  どちらとなるかというのは、すなわち、多くの方が言われるように、ほかのランナーの走る速度いかんにかかってくるということであります。  先ほどから出ておる話ですけれども、やはりこの不安解消のためにはきちっとしたプログラムが必要である。六月ぐらいに各審議会が答申を出していくということですけれども、この辺、各審議会の進行ぐあいがどうなっているのか。あるいは、各会長で金融システム改革連絡協議会というのですか、つくられているわけですけれども、こうした中でも加速度的に改革を進めていくというような意見が出ていらっしゃるのかどうか、その辺の状況。そしてさらには、一番重要なあれですけれども、国会審議の中にどういうことで組み込んでいくのか。二〇〇一年までに云々という話がありますけれども、明確なプログラムをもっと早く、先ほど一九九〇年代というような話も出ました。二十世紀中というような話も出ましたけれども、その辺、もう少し明確なプログラムをつくる必要があるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  157. 長野厖士

    ○長野政府委員 外為法改正国内市場の関係につきまして、二つのとらえ方という御指摘でございまして、まさに促進要因であるという側面と同時に、他が追随してこない場合に日本市場がどうなるかという御心配でございます。  それを踏まえまして、今、御指摘の審議会でそれぞれ市場改革あるいは金融システム改革についての具体策の検討を進めていただいておりまして、お話のございました金融システム改革連絡協議会で各審議会の会長レベルでの相互連携もとりながら、この六月には各審議会ともそれぞれのそれなりの成果というものをまとめていただく。そしてその成果は恐らく、ここから先はこれからのことでございますけれども、こういった項目をこういう方向で改正しろ、それに当たっては法律改正を要するべき事項は来年の通常国会にも法案を提出して改正すべきであるという具体的なスケジュールが提示されると見込んでおりますし、その六月の時点で、おおむね二〇〇一年までに実施される改革の全貌とその具体的な手順、スケジュールといったものが世の中に提示されるだろうと考えております。
  158. 並木正芳

    ○並木委員 大臣は去る三月に、証券取引法などの抜本的改正市場活性化特別法の制定そして関連法制の整備の三つの立法措置を一体として行うんだ、このようなことをおっしゃっておるわけなのですけれども、それはどの辺の時点を視野に入れていらっしゃるのか、大臣にお聞きしたいと思います。
  159. 三塚博

    ○三塚国務大臣 先ほど来、フロントランナー、そして諸法制をどうするかということのお話の中の御質疑でございます。  経済審の御指摘のとおり、一九九九年には体制を整えてスタートできるようにというのが一つの目標であります。二〇〇一年には、形だけではなく、まさにきっちりとした、円の再認識、そういう中で世界三極の中の一極を占める金融市場、こういうことであります。  さらに、先般答弁を申し上げましたことについてでございますが、証券取引法の抜本改正に加えまして、我が国金融証券市場の基盤を国際水準にまで引き上げることを目的として、市場活性化のための新法制など、各般の立法措置を講ずるということでございます。これは六月の中間答申、中間報告主言った方がよろしいでしょうかそれの法制部分をしっかりと構築しながら来年の通常国会に提出をしてまいりたい、こういうことであります。
  160. 並木正芳

    ○並木委員 先ほど北脇委員の方からも出た、一つの技術革新といいますか電子マネーとかの問題なのですけれども、先ほど銀行局長は、民間の開発を見ながらというような形で、興味を持って見詰めていくというような大方御答弁だったかと思うのですが、今、電子の問題、ワインバーガーさんが日米電子戦争について書いた本もあるわけでございまして、これは全く架空の話だろうと言う方もおられますけれども、いや起こり得るというようなお話もあります。  日本は、私も、コンピューターでは世界最先端で、ハイテク技術も全くすぐれている国であると思っていたわけであります。しかし、今、光ファイバー等のスーパーハイウエーネットワークですか、こういったこともアメリカではゴア副大統領を中心にかなりの急速度で進めていますし、シンガポール等でもこうしたネットワークを進めている。日本は立ちおくれてしまった、いわゆる新社会資本整備がおくれているというようなことで、ちょっと認識を改めたわけなのです。  そういうようなことからすると、単に民間の開発に関して見詰めているというようなことではどうなのか。むしろ、このハイテクの技術というのを使った電子マネーの開発等では積極的にかかわっていくべきではないかと思うのですけれども、その辺についてはどのような対応策をとられるおつもりでしょうか。
  161. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  電子マネー等に代表されますこういったハイテクの技術を使った金融技術革新といいますのは、今後予想以上のスピードで普及していくということは大いに考えられるわけでございます。諸外国 もかなりこの辺には力を入れておりますが、諸外国を見ましても、かなり民間の創意工夫がそういう事業を引っ張っているというような状況でございます。モンデックスしかり、ケルトカルテしかり、プロトンしかり、eキャッシュしかりということで、各国ともそういう民間業界が非常なハイテク技術を使って日進月歩の進歩を遂げようとしている。  日本も決しておくれているということではございません。いろいろな民間の企業あるいは大学の中での研究もございます。金融機関もかなり関心を持ってそういったものを研究しております。そういったときに、確かに公的な機関が何か手助けをするということも一つの考えとしてはあると思うのですが、これだけ技術進歩が激しい、変化が激しいというときに、やはり一番それを先取りし得る民間の方々の創意工夫を伸ばしてあげる。だから、私どもとしては何をやるべきかというと、まずその環境整備してあげる、もしそこが何か問題があるとすれば解決してあげるということをやる方が、今の時期としては一番適当ではないかという姿勢でやっておるわけでございます。  先ほどもちょっと御紹介いたしましたような、新しい電子マネーというといろいろな問題が出てくると思います。不正使用をどうやって防止するかとか、発行体をどうするか、安全性をどうするか、消費者保護をどうするかというふうな問題、金融政策とのかかわりをどう考えるかいろいろな問題が生じるわけでございます。今までの日銀券を出して買うというのと全然変わってくるわけでございます。そういったことについて、何か法制的にも問題があれば変えてあげる必要もあるわけです。そういったことで、民間の自主性あるいはそういう先端的な活動を支持する形で、私どもとしては対応していきたいというふうに思っております。
  162. 並木正芳

    ○並木委員 ビッグバンの先として進めていく上で、市場改革というのは、徹底した自己責任原則、そういうものが問われていくと思うのですけれども、その観点で、少し話題になっております日本債券信用銀行ですか、それについての問題をお聞きしたいと思うのですけれども、日債銀とバンカースの提携が決まったわけです。今後もそういう中で、新金融安定化基金の導入、こうしたことや、あるいはほかの大手銀行に、これは日債銀そのものが求めているようですけれども、増資を求めていく、こういうふうな形で大蔵省が支援を講じていくというその枠組みは、バンカースとの提携によって変更するということはないのかということをお聞きしたいと思います。
  163. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  バンカースとの提携の方向で進んでおりますが、これは日債銀が海外の店舗を撤退いたします。そうしますと、海外とのつながりがなくなるということによる経営のマイナス面、これをカバーするというねらいがあろうかと思います。加えまして、御承知のような先端的な金融技術を駆使して活動しております金融機関でございますので、そういったものとの提携関係でもって、やはり新しい商品開発あるいは新しい業務の展開ということを期待する。両面があって、こういった提携話になったと思うわけでございます。  ただ、あくまで提携というのが主というふうに考えておりまして、資本関係も一部取りざたされておりますが、それが大規模だというふうな発表はなされておりません。したがって、大きな意味の再建策というものに何ら変更はないというふうに思っております。
  164. 並木正芳

    ○並木委員 その再建策の中で、ほかの銀行の増資を求めていく、こういうやり方なんですけれども、やはりまだいわゆる言われるところの護送船団方式、横並び体質といいますかそういうところを抜け切れないのじゃないか。ひいては、じりじりと船団全体が沈んでいく、つまり危ない銀行を救済するために健全な銀行までが体力を消耗して国際競争力を落としていくんじゃないか、こういう危惧があるわけなんですけれども、どういうふうにお考えでしょうか。
  165. 山口公生

    ○山口政府委員 日債銀が、厳しいリストラとともに、増資を依頼しております先は、一つは大株主の銀行でございます。これは、もし日債銀が非常な経営危機に陥って万一の事態になりますと、株主資本というのは当然毀損されてしまうということもございますし、そういった意味では非常に関係の深いところということが言えます。  もう一つの先は、長期信用銀行、つまり興長銀でございます。興長銀は金融債を出しております。金融債の評価というものは、日債銀の債券とともにやはりかなりの影響を受ける性格がございます。したがって、金融債そのものが信認をかち得るということは、そうした銀行にとっても大変プラスに働く余地が大きいというわけでございます。  もう一つは、劣後ローンを出していただいております生損保に対して要求しております。これも、劣後ローンでございますので、万一の場合はやはり毀損のおそれもあるわけでございます。  そうした関係先に、日債銀としては自助努力をやるので増資をぜひお願いしたいということで要請しておるわけでございまして、全体的にそれで、悪い事態を想定しますと、それよりはずっとプラスという面が期待できる先でございますので、一概に護送船団あるいは奉加帳とかいう批判は私は当たらないというふうに思っております。
  166. 並木正芳

    ○並木委員 日債銀への対応もそうなんですけれども、もともと日本銀行の数とか設備とか人員、給与、これはみんな過剰じゃないかというような指摘があります。現在必死にリストラ化をしているということですけれども、現在政府の方でも大手二十行はつぶさない、こういう枠組みで、ツー・ビッグ・ツー・フェール・ポリシーというのでしょうか、そういうことで枠組みをつくっているということなんですが、先ほどイギリスの話も出ましたけれども欧米先進国でも、世界を相手に仕事をしているという銀行は一けたであるということであります。そうしたことからすると、とにかく現行二十行は一緒に歩いていくんだというような、そういう枠組みでいいのかどうかという疑問がわくわけなんですけれども、その辺についてはいかがでしょうか。
  167. 山口公生

    ○山口政府委員 今回の日債銀の例でもそうでございますけれども、現に国際的に活動をしている銀行につきまして、もしそれが万一の破綻というようなことになりますと、国内のみならず、国際的にも大変な大きな問題になるわけでございます。金融機能が損なわれ、内外の金融システムに大きな動揺、そして、その当該銀行のみならず、それに関連あるいはそれと同じような活動をしている日本銀行等が大変なダメージを受けるというおそれがあるわけでございます。そういった意味で、そういった国際的な活動を行っているところにつきましては、ぜひともその金融機能を維持してもらいたいということでやっておるわけでございます。  先生の御指摘のように、では、そういった活動をできる邦銀が果たして幾つぐらい存在するのかということになりますと、これは大変難しゅうございます。私どもが幾つが適当だというようなことを申し上げるべきものではございません。一行でも多く国際的な競争裏で勝ち残っていただけることを望んでいると言うしかございませんが、そこはやはりみずからの努力で切り抜けていくということが必要だろうと思います。
  168. 並木正芳

    ○並木委員 至極ごもっともなお答えだとは思うのですけれども、そうすると、二十行という枠組みの中でもこぼれていくものが出てくる。その辺についてはこれからの競争社会ではやむを得ない、そういう発想もおありなのかどうか。
  169. 山口公生

    ○山口政府委員 現実に、今回の日債銀は海外からの撤退を決めました。それから北海道拓殖銀行も、来年の四月一日までに海外業務からの撤退という方針を決めました。みずからがそういったみずからの進路を決めていくということになろうかと思います。それを、当局の方でこうすべきだ、ああすべきだと言うことではないというふうに思っております。
  170. 並木正芳

    ○並木委員 ちょっと外為の方で具体的にお聞きしたいのですけれども、結局、自由になるということで為銀もなくなるというようなことで、商社など外国と取引が多い企業、それは直接自分で為替業務をやっていくということになっていくと思うわけですけれども、その辺で、銀行を通さない取引というのがどの程度増加していくのか。ある大手の生保だと、銀行経由の外為取引を全部自前で実施したと仮定すると、銀行に支払っていた手数料というのは年間十億から二十億に上る、こういう生保もあるわけですけれども、この辺についてはどの程度掌握されているのか。
  171. 榊原英資

    ○榊原政府委員 お答えいたします。  今回の外為法改正によって、今までは原則として、企業外為取引については一本ずつ銀行を通して取引をしなければならないということだったわけでございますけれども、今後は、例えば商取引相殺等をして手数料を削減することが可能になるわけでございます。このような銀行を通じない対外決済は、海外営業拠点あるいは生産拠点を持っている企業等を中心として大きく拡大していくというふうに見ておりますけれども、これがどの程度のものかということについては、銀行自体もまだはっきりとした見通しを持っていないというのが現状でございます。  ただ、ちなみに、九五年度の二十一行ベースでの送金その他手数料、これは海外送金手数料だけを集計したデータはございませんので、送金その他手数料すべてでございますけれども、これが二十一行ベースで千八百億円ございます。この千八百億円がかなり削減されるということは間違いないというふうに思っております。
  172. 並木正芳

    ○並木委員 そうした一種の企業へのメリットは、銀行にはあるいはデメリットなのかと思います。さっきのさくら銀行の方からはさほどでもないというようなお話もありましたけれども、あるいは個人にとっても、もちろん海外のいろいろなところに投資できるというメリットが生まれるわけですけれども、榊原局長からは、これも相当今までも行われているから、これによってそんなには急にふえませんよというようなお話もあったようです。  企業も合わせての、企業、個人の海外預金残高というのは、これは九六年九月の日銀の調べですけれども、アメリカでは三千二百億ドル、ドイツでは千八百億ドル、イギリスでは一千億ドル、それに比べて日本というのは三百六十億ドルだということであります。千二百兆円の個人金融資産を持っていながら、こういう海外預金額であるわけですね。そういうことからすると、かなり大口の投資家等が、海外での口座開設や外貨預金あるいは外国金融機関商品サービス、こういうものを購入するということが考えられると思うのですけれども、この辺はどのようにお考えでしょうか。
  173. 榊原英資

    ○榊原政府委員 私どもは、何度か答弁をしておりますけれども、大きく海外資金が流出することはないというふうに考えております。  その理由は、先生御指摘のように、一つは、全く規制しているところから完全に自由になるということではなくて、今までも規制緩和は相当進んでおったということでございまして、個人の海外での外貨預金については、例えば投資目的であれば、今までも二億円までは許可なしで海外預金が可能であったということでございます。それから個人については、外貨預金国内では完全に自由になっておるわけでございまして、国内外預金というのは完全に自由にできるということでございます。  それからもう一つ、これはよく誤解されることでございますけれどもドルあるいはほかの通貨は金利が高いじゃないか日本は金利が低い、だから金利が低いところから金利の高いところに流れるんだということがよく言われるわけでございますが、これはちょっと専門的になりますけれども為替を完全にヘッジすれば、つまり為替リスクを全くヘッジした取引を行えば、例えば日米の金利は同じレベルでございます。ですから、金利差があるから海外流れるということではなくて、為替リスクを人々が今後どう評価していくかということに資金が流出するかどうかというのはかかっているわけでございまして、日本居住者が、為替リスクを大したものじゃないというふうに考えて、海外での外貨預金あるいは国内での外貨預金を一挙にふやすというふうには私ども考えていないわけでございます。  もちろん、中長期的に見れば、日本居住者の資産のうち外貨建て資産の占める割合というのは比較的低うございますから、これが次第に上がっていくということはあるかと思いますけれども、一挙に流出するというふうな性格のものではないというふうに考えております。
  174. 並木正芳

    ○並木委員 銀行局長の方にあれなのですけれども国際金融局長は一応そういうことだと、大した大きな影響はないだろうというようなことなのですけれども、今、それでなくても不良債権等の処理で大変問題を抱えているのが銀行であります。そこに、手数料はなくなるわ、いろいろな大口投資家がみんな海外銀行商品を買う、こういうようなことになると、さらに銀行が厳しくなって、金融システム全体の不安につながっていくのじゃないか、こういう見方もできないではないと思うのです。  そういうことになると、何らかの保護策をまた考えようとか銀行を支援する策を考えようとか、それが今までの日本のやり方で、大きな建前論を掲げながら各論のところで何らかの安全策を講じてしまう、こういうこともあるわけなのですけれども、今後はそういうことではなく、まさに市場原理にゆだねてしまうということなのでしょうか。銀行局長としては、銀行のデメリットについてどうお考えなのでしょうか。
  175. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  今先生御指摘の点はかなり深い意味を持っておるわけでございますが、外為法をきっかけとしたこうした大きな改革、これが競争をかなり激化していく、その中で日本金融機関がどういうふうに対応していくかという問題でございます。さらに、海外金融機関との競争というような観点も御指摘いただきました。  ただ、千二百兆円という日本の円での金融資産というものをベースに考えてみたときに、邦銀はかなりの強みを持っていることも事実だと思うのでございます。それは日本における一言で言えば顧客に関する情報だと私は思うわけでございます。しかも、円を必要とする人は、やはりそこは邦銀が一番把握しているんだと思うわけでございます。だから、ビッグバンによって競争が激しくなり、また外資との競合関係、それは海外との関係等では相当なものを予想しなければいけませんけれども我が国ビッグバンにより金融自由化、またそのインフラが整備されますと、相当邦銀金融技術も上がっていくと思います。そうしたときに、そういう顧客情報とのうまい結びつきが十分に行われれば、十分に成り立っていけるものだと私は信じております。  ただ、中にはいろいろと経営の問題として悪化していくというのも避けられないかもしれません。そうしたときに、私どもとして何を考えるかといいますと、一つは預金者保護でございます。もう一つは信用秩序の維持でございます。したがって、金融機関を生かしていくとか残していくという観点ではありません。  しかし、それが手段になることはあると思います。つまり、金融機関をめったやたらとつぶしていくことが、預金者保護であり信用秩序維持ではありません。私どもの目的は預金者保護であり信用秩序の維持でございますから、生き残っていける銀行はぜひ生き残っていただきたい。しかし、いつまでも漫然と金融機関として存続できないというものであれば、預金者保護という観点から、金融三法で認められた手段でもってそれは救済していくというような手段でいきたいと思います。  だから、御指摘の点については、経営悪化が進んだところ、また銀行あたりを保護するのではないか。そうした行政はとらずに、私どもが目的としているところの政策を追求していきたいというふうに思っているわけでございます。
  176. 並木正芳

    ○並木委員 ありがとうございます。  次に、この外為法改正に伴って生じるであろう一連の犯罪といいますか問題、その対策についてお聞きしたいと思うのです。これも既にいろいろな方からお話が出ているところであります。  まず、これは必ずしもすぐ犯罪ではなくて、見方なんですけれども、千二百兆円の個人金融資産が一部海外流出するということで、現在三兆六千億円ですか源泉利子税収があるということですけれども、これがかなり減るんじゃないかと考えるわけなんです。その辺はどのようにとらえておられるでしょうか。
  177. 薄井信明

    ○薄井政府委員 現在、いわゆる利子所得に係る源泉所得税収というのは一兆六千億円程度でございますが、御質問は、これが海外へ流出し、税収に響くのではないかということかと思います。  個人の金融資産海外への流出が仮に生じるならば、御指摘のとおり、その分源泉利子税収は減ることになります。ただし、向こうに行った資産が所得を生み、日本に戻ってくるという形で課税はできるわけでございますので、流出しても、仮に申告による総合課税が行われる形で利子所得が把握できるならば、源泉利子税収は減りますけれども、所得税収全体に対する影響というのはその分相殺されるという関係になろうかと思います。なお、海外金融資産が、金融システム改革日本で行われることによってむしろ流入してくることが考えられるということですから、その分は源泉利子税収がふえることになります。  御質問は、それでネットどうなるのかということだと思いますが、そこのところは正直申し上げて、どういう効果が生じるか、まさに為替自由化なり金融システム改革日本経済にどういう影響を与えるかによって税収は影響を受ける。そうなりますと、私ども税を担当する者としましては、為替自由化だとか金融システム改革というのは今後の日本の方向だと思いますので、税収がどうだからどうしなくちゃいけないという考え方をとるつもりはありません。  ただし、二点だけ考えておかなくちゃいけないと思っております。  租税回避行為、脱税に使われないようにきちっとしないといけない。かつ、それがせっかく自由化したのに煩わしいということにならないようにすること。これは先輩国であるアメリカのシステムを十分勉強して、そういうことがないようにしなくちゃいけないという点が第一点。  それからもう一点は、ことしの一月二十四日に政府税調の「これからの税制を考える」というものでも書かれているわけでございますが、金融資本が自由に国際間を流れるということになりますと、どうしてもその分金融に係る税収というのが、脱税をしなくても結果的に減っていく事態は考えなければならないかもしれない。  これは中長期的に見ていけばいいわけで、今から心配することはないのかもしれませんけれども、その点についての国民の意識といいますか、どういうところから税収をいただくことが必要なのか。トータルの税収が例えば一〇〇必要だとしたら、金融自由化なりシステム改革が必要である、その結果として税収がその方面から仮に減ったとした場合に、その減った分をどこで賄っていくのか、その点についての公平感についてどう考えるのかといったことについてきちっとしておかないと、仮に減る場合に、穴のあきっ放しては済まないわけでして、この点についての準備なり検討といいますか、そういうこともしておかないといけないと思っております。     〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
  178. 並木正芳

    ○並木委員 それで、その辺の問題で、金融機関に百万円以上の海外送金について税務当局に報告を義務づけるということで、海外送金資料情報制度法案というのですか、仮称と思うのですけれども、これを今秋の臨時国会に提出するという意向もあるようでございます。果たしてこのチェックシステムで海外預金の利子課税を捕捉できるのかどうか。むしろ、今もお話に出たわけで、この部分が、海外預金というのが脱税の温床になりかねないんじゃないか。そういうことになると、大変問題だと思うのです。  そういう観点からすると、今、先進国でも背番号制とかをとっていないところもあるわけですけれども、その辺も視野に入れた総合課税を考えざるを得ないのじゃないか、こういうことになってくると思います。先ほどの論議でも出ておりましたけれども、もう一度その辺について御確認をしたいと思います。
  179. 薄井信明

    ○薄井政府委員 税制のまさに悩みでございますが、経済がボーダーレス化になってくれば、なるほど所得の把握等々は当然のことながら今よりは難しくなっていく。その中でいかに公平な課税を実現していくかという努力をするよりしようがないわけでございます。どうも危ないから自由化をやめてくれということではないと思います。そうすると、できる限りのことをやっていくということだと思います。  先ほど来申し上げている一つの手法は、現在納税者番号がない日本では総合課税もしないわけですから、そういったことを前提で考えれば、イギリス、フランス、ドイツのような納番のない世界がどういうことをやっているか、それから納番のあるアメリカで何をやっているのか、いろいろ知恵を集めて租税回避行為が少しでも少ないように我々は努力しないといけないと思っております。また、やってみてうまくいかないとか、こうした方がいいということがあれば、これは直していけばいいのかと思います。  とりあえず今頭にありますのは、御指摘のような資料情報制度、例えば銀行等の金融機関や郵便局から税務当局に対して、一定金額以上の海外送金だとか海外からの入金の受け取り、これにつきまして一定の事項を書いて報告してもらうというシステムを導入したいと思っております。一定金額、一応私ども百万円ということを考えておりますが、アメリカでは一万ドルということで同種の制度を持っております。この辺がきちっと動くように考えてまいりたいと思っております。
  180. 並木正芳

    ○並木委員 これはもう既に先ほど出た話ですけれども、いわゆる金融詐欺といいますか悪徳商法、こういうものが、新しい商品とか海外外貨建て商品だとかあるいは先物のとかそういう組み合わせの中でいろいろ複雑なものが出てくると思います。当然金融機関等は専門的なリスクマネジメントをやっていくわけですし、その辺は心配ないのかとは思うんですけれども、個人消費者ということではかなりこれは理解がいかないということも多いかと思います。その辺の消費者保護の観点から、いわゆる金融サービス法案、こういうものはもう出さざるを得ないだろうという認識でよろしいのかと思いますが、いかがでしょうか。
  181. 山口公生

    ○山口政府委員 先生御指摘のように、金融制度改革が進みますといろいろな商品が出てくる。しかも今、外為法改正によりまして、外貨といろいろ絡み合わせたといいましょうか、組み合わせた新しい商品も出てくるだろうというふうに思うわけでございます。そうしますと、やはり消費者が十分にどういう商品がというのを理解した上で買っていただく、投資していただくということがどうしても必要になるわけでございます。  預金にしましても、預金は保証があるということで飛びつかれますと、そこに、外貨預金の場合ですと為替リスクがあるわけですね。為替リスクがあるということをはっきりと説明した上で買っていただくということが必要になるわけでございます。  だから、御指摘のような、これから自由化になればなるほど投資家保護の観点でいろいろルールをつくらなければならないということになるわけでございますが、現在そういった法制が全くないのかというと、実はすべて業法で手当てを一応はしてございます。例えば保険業法でいいますと、保険の勧誘はこういうことをしちゃいけない、こういう説明をしなさいと、細かく、昔で言いますと募取法、今は保険業法に入れましたが、なっております。それから証取法も、適合性の原則、相手としてふさわしくない勧誘の仕方をしちゃいけないとかいろいろなことが書いてございます。業法においてそういった行為に対する規制がいろいろございます。  そういったものがより複雑になってきたときに、従来の業法の縦割り的な規制で十分かどうかということは見直していく必要があると思います。しかし、それはどういう商品がどういうふうに出てくるかというのをある程度見極めた上で対応していくということになろうと思いますが、御指摘のような点は十分にこれから頭に入れて検討していきたいというふうに思っております。
  182. 並木正芳

    ○並木委員 あと、マネーロンダリングの対策とかいろいろあるわけなんですけれども日本金融犯罪に対してかなり甘いんじゃないかというような考え方もあるわけです。  今、大和銀行の巨額損失事件の主役の井口俊英がつづった「告白」という本が静かなブームを呼んで、売れているそうでございます。その本の初めの部分に、ちょっと長いですけれども日本では  不祥事が発生すると、関係者は都合のよい言い訳をした後、いわゆる引責辞任をする。辞任すれば事実を認める義務から赦免されると考えられているから、日本の不祥事は、最後はうやむやになってしまう。米国では七年前に規制緩和に端を発した金融投機バブルがはじけ、相次いで倒産した貯蓄貸付組合の処理のため国民に十兆円以上の負担をさせる代償として、厳しく関係者の刑事責任を追及し、千八百人を起訴したうえ、内千五百人が有罪となった。こういう背景もあって銀行の健全性に極度に敏感なアメリカ金融当局に対する即時通報義務の履行に二の足を踏んだ大和銀行は、日本では考えられない厳しい処罰をうけました。 とこうあるわけです。こういうふうに、かなり自由とともに責任といいますか、そういう犯罪に対する厳しい考え方を既に米国はとっているわけです。  日本では、この大和銀行事件においても、余り聞きたくないことかもしれませんけれども、報告を受けた大蔵省が公表を急ぐように指導はしなかったというふうに指摘され、銀行の対応とともにアメリカから批判を受けたわけであります。昨今、動燃において事故隠ぺい工作が厳しい批判にさらされているわけであります。他省庁のことと他山の石とすることなく、密室行政だとか閉鎖的だとか事なかれ体質だとかこう言われるわけですけれども、これを排して、ぜひ開かれた市場原理と自己責任原則の確立のために、まず徹底した情報の開示と、まあ法務省にも関係してきちゃうわけですけれども金融犯罪に対する罰則強化が必要と考えるわけですけれども、この辺については、大臣は犯罪の罰則についてはどのようにお考えでしょうか。
  183. 三塚博

    ○三塚国務大臣 犯罪は法律に基づいて決定をされることでありますから、ただいまの御質問にはそう答えるしかございません。  ディスクロージャーは、御説のとおり、そういうことで犯罪防止というものが確実になるでしょうし、時に踏み外した者があれば、法律に従いまして厳正に対処をしていかれるものと、当然のことながら、フェアな市場ということでありますから、そうなるはずであります。
  184. 並木正芳

    ○並木委員 そのとおりなんですけれども、要するに金融犯罪に対して甘いんじゃないか。こういった自由化されていく中ではより責任原則というのは重んじられる、そういう意味からの、これは法務省管轄の部分もあるわけですけれども、大臣として、金融を預かる立場でその辺の罰則強化についてどう考えるかということです。
  185. 三塚博

    ○三塚国務大臣 本件は、グローバルスタンダードということもあります。こういうものをしっかりと踏まえながら、従来、金融機関に対して、厳正な内部事務管理体制の確立によりまして不祥事件の未然防止に最大の努力を払うよう求めてきておるところでございまして、今後は、こうした関係法令にのっとりまして、金融犯罪に対しましては厳正に対処をしていかなければならぬことは、金融システム改革の三原則に照らしましても当然のことであろうと思います。
  186. 並木正芳

    ○並木委員 ありがとうございました。  これまた再三言われる話なんですけれどもビッグバンを成功させるためには、まず、大前提として金融機関の不良債権を早期に処理しなきゃいけない、こういうことですけれども、ここでもまた徹底した情報開示が求められるわけです。  それで、実はこの不良債権が幾らあるのかというのが本当のところ大変難しい。主要銀行二十行は二十四兆円というようなことを公表していますし、合計すると、大蔵省からすれば三十八兆円ぐらいだということなんですけれども欧米の調査機関とか格付機関では五十から六十兆、あるいはベリバンクというんですか、百四十兆という推定もあるわけですね。もちろんいろいろ見方が違うんでしょうけれども、現実に兵庫銀行とか阪和銀行、これが破綻した時点で、兵庫銀行の場合は公表六百九億円が、これは破綻先債権という解釈でしょうけれども、何と回収不能額七千九百億円、関連会社を入れた不良債権は一兆五千億円となっている。阪和銀行も公表四百九十四億円に対して千九百億円、こういうふうな数値が出ているわけです。  まさにこの辺になると、一体本当なのは何なのかというようなことになるわけなんですけれども、なぜこのような相違が公表と破綻後で生まれてしまうのか。もしそうだとすれば、もっと連結ベースで公表させるとか、そういう対応も必要かと思うんですけれども、その辺いかがでしょうか。     〔金子(一)委員長代理退席、衛藤(征)委員長代理着席〕
  187. 山口公生

    ○山口政府委員 金融機関の不良債権額というものにつきまして、私どもの統計は二十九兆二千億円になっております。八年の九月期でございます。この統計は、金融制度調査会におきましてどういった統計を不良債権として挙げるのが適当かという議論を相当やっていただいた結果でございます。  それはなぜかといいますと、不良債権といったものが余り主観的に判断されますと、ある銀行は物すごく大きく出す、ある銀行は非常に控え目に出してしまうということでは何のための統計がわからない、また、その期その期で余り恣意的に出されても困るということで、実は統一的な基準として、破綻先、延滞、金利減免というような概念をつくったわけです。さらに経営支援という概念もございます。それで統一的につくって出しておるわけです。  海外の調査機関がいろんなことを言っておりますが、これはこれで何かの根拠があり、推計を加えてお出しになっているのかもしれませんが、私どもとしては、そういう金融制度調査会の答申のルールに基づいて時系列的にずっとフォローして統計をとっているわけでございます。  それから、破綻した場合の不良債権、破綻の回収不能という額と、それからゴーイングコンサーン時のディスクロージャーと大分遣うんじゃないかという御議論があります。しかし、それは概念が、ちょっと先ほど申し上げましたように、一方はそういう統一的な基準、一方は回収ができるかできないかという目で見たというものが違うという、ちょっと比較にならない面があるのと、もう一つは、破綻した場合には自分がメーンバンクになっている企業が成り立たなくなってしまうということで、大きくなってしまうわけです。そういった事情がございます。  それから、その時点が違って、今のように地価が下がっているようなときにはどうしても大きくなるというような、種々の情勢がかみ合ってそういうふうになっていることを御理解いただきたいと思います。     〔衛藤(征)委員長代理退席、金子(一)委員長代理着席〕
  188. 並木正芳

    ○並木委員 もちろん債権ですからいろいろ移動していくと思うんですけれども、その辺、アメリカの証券取引委員会の基準だと、いわゆる東京三菱銀行ニューヨーク株式市場に上場しておりまして、そこに出している公表額と日本の公表額とは丁六倍ぐらい違う、これは延滞債権というのですか、それがアメリカは三カ月、日本は六カ月、こんな違いもあるようなんですけれども、この辺のスタンダードからすると、今の一・六倍から二倍ぐらいの不良債権と見た方がいいという考えもあるんでしょうけれども、それはいかがでしょうか。
  189. 山口公生

    ○山口政府委員 今のお尋ねの件につきましては、東京三菱銀行の例で御議論がされるわけでございますが、SEC基準でいきますと、東京三菱銀行とその子会社であります日本信託銀行、この合算したもの、あるいはその他の子会社、これをすべて合算した連結ベースでの議論でございます。  日本の場合は単体でのディスクローズでございますので、東京三菱銀行の額と日本信託銀行の額を合算してみますと、それほどの差がないということでございます。
  190. 並木正芳

    ○並木委員 それは御指摘しておきます。  それで、実はその不良債権に関して日銀の総裁が、大手の銀行は二、三年で不良債権を回収するだろうというような楽観的とも言える見方をしておられるので、この辺、今の不良債権が本当は幾らなのかという議論にも重なるわけですけれども、その辺の根拠がどうかということもあるんですけれども、大蔵省としては、この二、三年で大手銀行が不良債権を回収するだろうという見方に立てるのかどうか、この辺は大臣からもしあれだったらお聞きしたいんですが、いかがでしょうか。
  191. 山口公生

    ○山口政府委員 大臣がお答えになる前に、ちょっと事実関係を申し上げたいと思います。  今私が御説明した不良債権の統計でいきますと、二十九兆二千二百八十億円でございましたが、債権償却特別勘定に引き当ててあるもの、あるいは担保でカバーしているものを、推計値ですが控除したもの、そういったものを差っ引いて要処理でいきますと、七兆三千三十億円になります。業務純益というものでそれらを消していくということになるんですが、これが七兆八千六百億円というように見られます。  したがいまして、二、三年でとおっしゃったことが全く根拠がないというふうな感じではない。ただ、それはあくまで総裁も主要な銀行でというふうにおっしゃったんではないかと思うわけでございますけれども、個々の銀行になりますと、いろんな事情は、それはあると思います。
  192. 三塚博

    ○三塚国務大臣 松下総裁と全く同感なんです。これなぜかというと、ビッグバンクはだれよりも先駆けて最大のリストラの努力をしなければなりませ人。そういう点で、それぞれの報告を聞いておりますと、真剣に取り組んでおりますものでありますから、二年と三年じゃ幅はありますけれども、まあ三年たてばイエス、こういうことになるのではないでしょうか。
  193. 並木正芳

    ○並木委員 大変楽観的というかいい見方をお聞きしましたので、安心していいのかなと思うんですけれども、若干まだ安心とまではいきません。  実は、もう時間がありませんけれども、郵政省の方もお呼びして、いわゆる金融市場、民間ではいろんな意味でこれだけ自由化が進んでくる、郵政省だけ聖域でいいのかというようなことをお聞きしようかと思ったんですけれども、時間がありませんし、その辺は答えもわかりますので、ぜひ指摘をしておきます。そこも聖域ではないだろうということで、ぜひそれを御指摘して、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  194. 金子一義

    ○金子(一)委員長代理 次に、川内博史君。
  195. 川内博史

    川内委員 民主党の川内博史でございます。  鹿児島から出てきておりまして、まず、この外為法改正については直接関係はないわけですけれども、鹿児島で今震度四とか五とか地震が続いておりまして、おかげさまで人は亡くなってはいないのですが、三千戸余りの家が壊れたりしておりまして、大変な被害が出ております。今、鹿児島県の方で災害査定を急いでおりますので、また査定の申請が出ましたら、大蔵省さんの方でも何とぞひとつよろしくお取り計らいのほどを冒頭にお願いを申し上げまして、質疑に入らせていただきます。  外為法改正のこの法律案については、もう既にたくさんの方々が質疑をされていろんな論点が出ているわけでございますが、金融ビッグバンとかあるいはフロントランナー金融システムの改革とか、何か格好いい言葉がいっぱい出ている。しかし、その割には、政府の答弁を聞いておりましても、日本世界じゅうからお金が集まってきて、どんどん景気がよくなりますよというような話ではどうもないらしい。短期的には余り変わることはないですよ、中長期的には資金の出入りのボリュームがもしかしたらふえるかもしれないというような、何となく、だったらなぜ今この時期に外為法改正を持ち出すのでしょうかという素朴な疑問もわいてくるのです。  そもそも、本来ならば、市場を開放して自由にする、活動をどんどんやっていただくというのは景気がよくなる話につながると思うのですが、しかし、日本経済の現状のファンダメンタルズ、それから金融機関の体力等を考え合わせたときに、どうしても余り景気のいい話にはなっていかないのかなというふうに思うわけでございます。だからこそ、国金局長お話でも、資金が外に逃げることは、金融資産千二百兆円が外に出ることはないですから御心配なくという、どちらかというと、大丈夫です、大丈夫ですというような答弁にならざるを得ないのであろうというふうに想定をするのですが、しかし、マネーの世界というのは大変に冷徹な世界でございますから、万々が一、最悪のシナリオというのも考えられるわけでございます。お金がどんどん国外に出ていく、日本金融機関はがんがんつぶれる、そしてまた大蔵省さんはその面倒を見るのに追われるという、これは最悪のシナリオだと思うのですが、そういうことにはならない、大丈夫ですということを、まず大蔵大臣に御答弁を冒頭いただきたいと思います。
  196. 三塚博

    ○三塚国務大臣 大変、政治家として、展望をにらみながら最悪の事態を想定して御質問です。  危機管理という言葉がありますが、そういう場合に備えてやりますのが、政治、行政の基本姿勢であります。忘れてならぬことは、ジャパン・セール、日本売りだ、日本があしたにもアウトになるみたいなことを言うジャーナリスト、評論家、学者先生がおります。私は、それを聞くたびに、一体何を根拠に、こう思うのです。ここからむらむらとわく怒りも時に出るのです、余り激しいものですから。  そこで、足元を見詰めてください、こういうことですよね。一千二百兆という預貯金、これは個人預貯金です。世界の預貯金の三〇%。百八十六カ国でしょうか国連加盟国、そのうちの三〇%の預貯金を持つ勤勉さ、また勤労意欲、頑張り、もちろん不時に備えて、老後に備えてというのもあります。子供の学資のために、留学のためにというのもあるでしょう。一千二百兆というお金がしっかりと支えられておる。それも超低利政策の中で、それにもしっかりと対応していただくということは、こんな国、どこにもありません。  ですから、これを有利に運用して手元にそれなりの利益がもたらされるということで、商品サービスが選択できる。それにはオープンにしなければならぬ、業際を外して、そこで金融機関であれば何でもやれる、長短の区別をなくするというのもそういうことでございます。  そんなことでやりますと、暗い話題ばかり提供される中で、この金融ビッグバンというのは、天地創造の中で地球が生まれた大変おめでたい言葉をビッグバンと言うわけですから、いわゆる日本ビッグバンということで、我々は、このシステム、構造をしっかりとしたものにつくり上げてまいりたい、これが政治の使命だ、こういうことで頑張っております。日本人が頑張ってだめになったことはございません。そういう点で、ひとつ九州男児、頑張ってください。
  197. 川内博史

    川内委員 大蔵大臣から今大変力強い御答弁をいただきまして、私も、なるほど外為法改正に向けていよいよ日本も頑張っていくんだなということを強く感じさせていただいております。  国金局長にもお尋ねをしたいのですけれども、情報通信の世界では、マイクロソフト社というところのつくる通信機能を持ったウインドウズというオペレーションソフトがグローバルスタンダード世界標準になっているわけでございます。これは、アメリカンスタンダードがグローバルスタンダードになった一番わかりやすい例だと思うのです。この金融世界でも、アメリカンスタンダードがグローバルスタンダードになり、我が国は、世界金融マーケットの中で戦っていくために、そのルールを受け入れてこれからはやっていくんだということだと思うのですね。  その場合に、マーケットの論理というものを貫徹するならば、自己責任原則というものが確立をされていなければならないと思うのですが、先ほど新進党の方もお尋ねになっていらっしゃいましたが、今回の日債銀の救済の例などを見ましても、日本人というのはもたれ合いの構造というかお互いを頼りにし合うという、ある面では美徳であると思うのですけれども、そういう一面を持っている。結局、危機に瀕したときに、大蔵省さん何とかしてくださいよと、今後頼りにされないとも限らない。  そういう場合に、銀行局長、先ほど、信用秩序の維持と投資家の保護、これが大蔵省の役目だ、銀行を救うことは役目じゃないというふうにおっしゃいましたけれども、それをはっきりとこれから先打ち出していけるのかどうか、その辺の行政の中での仕切りといったようなものをお聞かせをいただければと思うのです。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  198. 榊原英資

    ○榊原政府委員 お答えいたします。  今回の外為法改正あるいは金融システム改革の一つの主要な目的は、大蔵省の金融行政をマーケットを中心としたものに切りかえていくということでございます。  先ほど銀行局長が答弁いたしましたように、投資家の保護、金融システムの健全性の維持、その二点を中心に、マーケットを中心にした行政というものに専心していくつもりでございます。
  199. 川内博史

    川内委員 続いて、個別具体的な問題に入らせていただきます。  主税局長にもお運びをいただいておりますが、源泉利子税については現状一兆六千億あり、それが、今回の外為法改正について若干の変動はあるのかもしれないが、しかし所得税の方で相殺をされてプラスマイナスは余りないであろうという見通しを先ほど御答弁をされました。しかし、有価証券取引税、こちらの方は税調の方でも今年度中に結論を出す。結論を出すということは、有取税については大分税収が減るということになると思うのですね。ロンドン並みにするとすれば、今二千五百億、それが三百五十億になってしまうと思うのですけれども、その辺の見通しについて、主税局としてはどのような見通しを持っていらっしゃるのか。
  200. 薄井信明

    ○薄井政府委員 先ほど利子の源泉税についてどうなるかということについて申し上げましたが、こうなるということは私はわからないとさっき申し上げた次第です。ただし、方向性としては、いろいろな要素があるということを申し上げさせていただきました。  それから、有取税の問題です。  これは、外為法が来年の四月一日から動き出し自由化される中で、証券税制はどうあるべきかということを議論することが必要だと思っております。特に有取税につきましては、来年の三月三十一日まで二年間の特別措置として本則の三割減という制度が今ありますので、これをどうしても見直さなければなりません。その方向として、あるいは具体的内容がどうなるかはこれからの検討ではございますけれども、仮に緩和の方向に行くならば、それは有取税の減収ということになります。一方で証券税制の中のキャピタルゲイン課税をどうするか、これも政策論を含めて総合的に考えなければいけません。トータルで考えていくのでしょうが、いずれにしましても、この方面では増収が出るという話ではないと思いますし、方向とすれば減収になってくるのかと思います。  ただ、先ほど大臣の答弁にもありましたように、それによって日本証券市場なり金融市場活性化し、雇用がふえ、それによって所得税とか法人税がふえる、そういった要素も一方ではあるのかもしれません。その辺は、私ども、今見込みようもございませんので、何とも言えないところでございます。  金融とか経済というのは、市場主義ということで、クロスボーダーでどんどん発展していくというのが方向かと思いますが、御存じのように、税金というのは国そのものでございます。各国が、自分の公共サービス提供するための財源は国民にお願いして、いただいて、その税収でもって賄っていく、それで国が成り立っているわけでございまして、市場主義を徹底するが余り税収がなくなるということでは、これは本末転倒だと思います。そういう意味で、自由な市場、これは大事なことですけれども、一方で税をどうするかということも考えていただきたいと思っております。
  201. 川内博史

    川内委員 今主税局長からも最後の方で御答弁があったわけですけれども外為法改正というのは、橋本総理のおっしゃっている六つの改革の入り口、金融システム改革フロントランナーではなくて、六つの改革フロントランナーであるというふうに位置づけてもいいと思うのですね。あらゆる面で大きな影響を及ぼしていくであろうというふうに思われるわけでございます。ですから、税制についても、今主税局長はっきりとはおっしゃいませんでしたけれども、減収になる、有取税が緩和するとすれば。税制全体についても議論をしていかなければならないというふうにもおっしゃいました。今後、日本税制全体をどうしていくのかということも含めて大きな議論にこれからつながっていくのであろうというふうに思うわけでございます。  また一方、大蔵省内部の問題としても、この外為法改正によって国際金融局の仕事が大分変わる。また銀行局、証券局の仕事も変わるわけでございまして、そうすると、大蔵省の現在の金融部門、国金局、銀行局、証券局、この三つの局がどのような組織に行政改革に絡んで変わっていくのかな、変えようとしていらっしゃるのかな、あるいはスリム化しようとしていらっしゃるのかなというふうに思うわけでございますが、具体的にはどういうふうに組織が変わっていくのかを御説明いただければと思います。
  202. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 ただいま御指摘のありましたとおり、近年におきますデリバティブ等の業態間にまたがる金融サービスの出現あるいは金融市場のグローバル化など、新たな金融行政の課題に対しましてより迅速かつ的確に対応していくためには、どうしても従来の縦割りの業態や業法を前提とした現行の組織を改めまして、市場原理を基軸とした業態横断的な組織に改めていくということが有用だというふうに考えられるわけでございます。  そこで、一つは、これは昨年末の三与党合意を踏まえてのことであるわけでございますけれども、大蔵省の銀行局と証券局を統合いたしまして金融局、これはまだ仮称でございますけれども金融局というものに統合をする。一方、銀行の検査・監督につきましては、このたび新たに金融監督庁というものが設置されるということで法案が提出されているわけでございますので、大蔵省の金融局は、金融証券全般にわたります制度の企両立案、あるいは取引に関する事務監督庁の所掌に属さないものといったようなものを所掌するということになるわけでございます。  それで、先ほど触れました金融監督庁は、法律上、来年の、平成十年の四月一日から七月一日までの間に政令で定める日から発足するということになっておりますので、この大蔵省の銀行局、証券局の統合により出てきます金融局も、同じ時期に同時に発足するということになっておるわけでございます。そういたしますと、十年度に組織が改められるということから、機構及び定員の関係は十年度予算編成時に決定するということになるわけでございます。そういうことでございますので、現在、その要求に向けまして内部で検討をさせていただいております。そういうことでありますので、具体的に定員がどうとか機構がどうとかということはまだ申し上げられる段階にないということをお許しいただきたいと思います。  それから国際金融局につきましては、外為法改正に伴いまして、例えば銀行外国為替業務等の認可制度あるいは指定証券会社制度廃止されるといったように、現実に所掌事務が変わりますので、その所掌事務の見直しを行うということにしております。こういう改革の中で、国際金融局そのものにつきましては、従来どおり、これは三党の合意でもそうなっているわけでございますが、現行どおり存続するということが前提になっているわけでございます。
  203. 川内博史

    川内委員 どうもありがとうございました。  きのうのレクでは国金局は何かなくなるというふうに私は聞いたのですけれども、そんなことはないですね。済みません。じゃ、私の聞き方が悪かったのでございます。  続いて、先日の本会議で我が党の田中甲代議士が法案の第十六条についてお尋ねをさせていただいておりまして、今回の改正では、経済制裁の部分ですけれども、国連の安保理決議に基づかなくても、我が国が国際平和に寄与するために特に必要があると認めるときには支払い等に関して許可を受ける義務を課することができるという内容改正というか、つけ加わっているわけでございますね。これは私どもとしては非常に重い内容ではないかというふうに考えております。先日の本会議で、総理は、法案はあくまでも支払いを禁止するものではない、許可を受ける義務を課するにとどまるものであるというふうに答弁をされていらっしゃるわけですが、現実としては、許可を受ける義務を課するということは、支払いを禁止するというのと表裏で同義じゃないかというふうに思うわけでございます。  まず最初に、我が国が特定の外国人に対する支払いを認めない、つまり資産を凍結するとか支払いをしないという、そういう経済的な制裁というのは安全保障上どのような意味があるのかというようなことを、防衛庁さん、外務省さんにそれぞれ見解をお尋ねしたいと思います。
  204. 杉山晋輔

    ○杉山説明員 外務省の方からお答えいたします。  ただいまの先生の御質問は、いわゆる経済制裁と言われるものの実施が我が国の安全保障という観点からいかなる影響を与えるかというようなことであったというふうに思われますけれども、確かに先生御指摘のように、我が国として特定の国にもし経済制裁を科するということになれば、我が国とその特定の、いわゆる制裁対象国と言われるところとの間で一種の緊張状態というものが生じる可能性が非常に高かろうということは否定はし得ないことだろうと私どもも考えております。  他方、そのような経済制裁の措置を発動するかどうかということになれば、それは当然のことながら、我が国の国際社会の一員としての責任を的確に果たすという観点から、あるいは、その具体的な状況に応じて、そのときの国際社会の動向あるいは国際情勢全般の動き、そういったものを考えて、さらに、その制裁対象国との関係の悪化の可能性、そういった種々いろいろなことを総合的に判断をして決定されるものだろうというふうに思われるわけでございます。  特に、今先生御指摘のように、今度の外為法改正の中で明記させていただこうとしている点は、国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与することを可能にするということでございますから、恐らく、一時的、短期的、あるいはそのときの状況に応じていろいろな状況が出てぐるだろうということはあると思いますが、全般的、一般的に考えれば、そのような形で我が国が国際社会の中の責任ある国家として一定の措置をとることというのは、大きな目で見れば、我が国の安全保障に好ましい状況を創出することにもなろう。  ただ、いずれにいたしましても、その具体的な状況については、一定の経済制裁をやったからすぐに安全保障上こうなるとかああなるとかいうことを一定のことで断定することはなかなか難しかろう、そういうふうに外務省としては考えている次第でございます。
  205. 柳澤協二

    ○柳澤説明員 防衛庁でございます。  ただいま外務省の方から御答弁した点に私どもとしても尽きておると思いますが、あえてつけ加えさせていただきますと、こういう形の経済制裁が考慮される段階といいますのは、恐らく、我が国の安全あるいは国際秩序の観点から早急に何らかの対応を迫られている事態、その事態の悪化を防ぐため、あるいは事態の解決のためにいろいろな手だてを考えなければならない事態であろうと思います。したがいまして、そういう我が国として国際社会との協調のもとでとり得る手だてが広がるという意味で、私どもも、一般論として申し上げれば、安全保障上大変有意義なことであると認識しております。
  206. 川内博史

    川内委員 今、外務省の方は冒頭で、緊張関係は二国間において高まるであろうというふうにお答えをいただいて、防衛庁の方は、経済制裁をすることが安全保障上好ましいことだというふうにお答えになる。どうもよくわからぬのですが、とにかく、国際平和のために何らかの措置をしなければならないとしても、それが国連の決議やらに基づかず、我が国独自でやることができるようにするという今回の法改正は、慎重の上にも慎重を期した方がいい、というより、我々国会の側もその決定に携わるべきではないかというふうに考えておりまして、今回、民主党は、この十六条に対して修正案を提出させていただきたいというふうに思っております。我が国の安全保障上の重要な決定である経済制裁に国会の事後承認を必要とするという内容のものでございます。  基本的には、必要があれば経済制裁等は実施をすべきである、それは国際社会の中における我が国が国際平和を守るための責務であるというふうに考えるわけですが、我が国独自でそれを発動するという場合には、先日の三塚大臣の御答弁では、当然閣議の決定も経るわけだし何ら問題はないんだという御答弁をされていらっしゃるわけでございますが、そういう国と国との、特に緊張関係が高まるような状況の中においては、国会がその考えを表明する、その事後の承認を政府が行う、経済制裁に対して与えるということが必要だというふうに思うのです。また、この修正案に対しては、自民党の皆さん方もぜひ御賛成をいただきたいというふうに思うわけでございますが、三塚大臣、この国会の事後承認という問題に関しては国金局長もお答えになりたいかもしれないのですが、まず大臣に、よろしくお願いいたします。
  207. 榊原英資

    ○榊原政府委員 お答えいたします。  私どもは、三つの理由から、国会の事後承認の規定は必要ではないというふうに考えております。  まず第一は、これは直接政令によって支払いを禁止するものではない、許可を受ける義務を課すということでございまして、許可はすなわち禁止じゃないかというふうにおっしゃられたのでございますけれども、例えば大使館員の給与の送金ですとか、それから人道的な医療、食糧、そういうものにかかわる送金等は、これは許可することが十分考えられるわけでございますから、そういうことで、許可即禁止ではないというのが一点でございます。  それからもう一点は、これは法令上、今回新たに、国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するために特に必要があるときという条項を加えたわけでございますけれども、これはどういう場合に経済制裁を行うべきかということを法律で明確に定めてあるわけでございますから、法律で明確に定めた上で政令に委任するということは十分妥当なことだというふうに考えております。  それから第三点は、政令に委任される事項が極めて限られたものである。送金ですとか資本取引ですとか、そういう限られた事項である。  その三点によって、私どもは、これは議院内閣制のもとで内閣が責任を持って行うべき行為であるというふうに考えておるわけでございます。
  208. 三塚博

    ○三塚国務大臣 榊原局長、私の言わんとしたところを丁寧に法令的に言われました。基本的には、議院内閣制です。与党と内閣が連帯を持って国民にその責任を明確にする、こういうことでありますから、軽々に行われるものではなく、全体の展望の分析の中で、このことが国際社会における我が国の基本的な立場に合致をするという観点で行われるわけでございます。そういう点で、許可対象を技術的に規定する、これは全く法律の授権の範囲、こういうことでもございます。よって、この政令、いわゆる閣議決定事項でございますから、国民に内閣を通じ、議院内閣制における国会、与党の皆さんの共同の責任を通じ、そのとき出させていただく、そういうことで、段々の論議はこれからまたいろいろあろうと思います。基本的にはそういうことでございます。
  209. 川内博史

    川内委員 今大臣から、これからまた議論をしてまいりましょうという御答弁をいただきましたが、PKOの派遣とか、あるいは本会議でも我が党の田中議員も災害対策基本法のことやら申し上げたわけでございますが、大変に重要な事柄であるというふうに思います。国と国との間のことを決定していくときに、政府というのは与党が構成をするわけでございますが、もちろん国民全体ということであれば、今私どもは健全な野党ということを標榜しているわけですけれども、野党の側の人間にも賛成を取りつける、みんなで一致してやろうということであれば、それをすべきであるというふうに考えております。またいろいろ御指導をいただきたいと思います。  終わります。
  210. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、佐々木陸海君。
  211. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日本共産党の佐々木陸海です。  今回の外為法改正案では、事前の許可や届け出制度が基本的に廃止され、個人も自由に海外企業や個人と取引決済を行うことができるようになります。個人が海外預金口座を持つこともでき、その口座を使った証券取引も可能になります。  しかし、こうした自由化の結果、便利になるというだけの話ではなくて、為替取引の投機性も増すもとで、個人の為替リスクなど大きなリスクを抱えることにもなります。商品面でも、既に話もありましたが、外貨建ての金融商品や、それと先物を組み合わせた複雑な金融商品などが出回り、その取引をめぐるトラブルの発生や不正取引による個人の投資家の被害も予想されるところであります。  しかしながら、今回の改正案には、消費者保護、投資家保護の規定が何ら設けられておりません。本年一月の外為審答申では、外為業務に関する投資家保護や不正取引の防止についての何らかの環境整備ということに触れてはおりますが、将来の問題としての検討課題という位置づけになっております。  私は、これは甘い。こういう自由化をやる以上、本改正案とあわせて消費者保護、個人投資家保護規定を、ルールをしっかりと設けるべきではないかと思いますが、その点について大蔵省の考えはいかがでしょうか。
  212. 榊原英資

    ○榊原政府委員 お答えいたします。  今回の改正の目的は、市場に任せ、自己責任原則というのを貫くということではございますけれども、先ほどから答弁をいたしておりますけれども投資家保護については、それぞれ銀行法、証取法、あるいは保険業法というものに盛られているところでございまして、私ども外為法にその規定を設けなかったというのは、外為業務のみに着目して投資家保護を行うということは今後しないということでございまして、例えば、先ほど申し上げましたけれども、イギリス等では金融ビッグバンの後に金融サービス法というようなものができているわけでございますから、投資家保護というのは、外為業務だけではなくて、全般的な金融リスクというものに対する投資家保護ということを考えていくわけでございまして、現在の法制の中にも既にそういうものが盛られておるわけでございますし、今後また投資家保護という観点でさまざまな研究を続けていきたいというふうに考えているところでございます。
  213. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 現在の法制でもかなりのものがあるんだというお話ですけれども、少し先の問題を論じておきますけれども外為法ビッグバンフロントランナー、そしてビッグバンでは一千二百兆円の個人の金融資産がいわばターゲットにされていて、この一千二百兆円というのも大部分は預金であり、保険である、これを投資に向かわせようというものであります。国民全体を巻き込んでいく、そういうものになっていくことが予想されるわけであります。  ですから、大蔵大臣も財政演説の中で、この金融システム改革の問題について、市場参加者にリスクや痛みをもたらしますということを明確に述べておられるし、あるいはまた首相の施政方針に関する演説の中でも、リスクを伴う取引を自己の責任のもとで行うことを意味する、大変リスクが大きくなるんだということは、明確に首相も蔵相も述べておられるわけであります。  複雑な金融商品が出てくるもとでは、一般投資家はアマチュアであり、そして銀行金融機関はプロであって、アマチュアとプロとの力関係が同列に置けないものであることは非常に明白であります。そのことを端的に示したのが、バブル時期以降の金融機関の行動と金融被害の続発であります。国民生活センターの調べでも、バブル以前と比べて以後は、こういう被害の訴えが三倍ないし四倍にふえている。変額保険とか不動産共同投資とか抵当証券等々がそれであります。  ところが、ちゃんと法律整備されているんだなんて言いますけれども、こういう被害は全く救済されていない。私は、必要な法が今でも整備されていないということを言わざるを得ない。かつて金制調の答申でも、規定の整備とか法の整備の必要性が言われていました。ところが、そういうことが放置をされてきている。その結果が現在の事態を招いているのではないか。なぜ法整備が進まなかったのか。その責任をどう考えておられるのか。今、新しいビッグバンに向けての体制をつくり上げ、検討を始めるということも先ほどから言われておりますけれども、しかし、そういったものも、今までの、うまくいかなかった、こういう被害が生み出されてきた責任をはっきりさせていかないと、うまくいかぬのではないかと思いますけれども、その点、大臣の見解いかがでしょうか。
  214. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  各関連の法律、特に業法におきまして、それぞれの取引に固有の特徴がございますので、それに沿った消費者保護の規定がございます。  例えば証取法をごらんいただきますと、証券会社等が顧客商品を販売する場合には、取引内容の説明義務あるいは取引報告書の交付義務顧客の知識、資産等に合った商品を販売すべしとの適合性原則の遵守義務等が課せられております。それから、当然、ディスクロージャーの義務が課せられております。  保険につきましては、保険業法において、保険募集に関して、契約書等に虚偽のことを告げまたは重要な事項を告げない行為云々というようなことで禁止規定がございます。クーリングオフ制度も法定化してございます。  貸金業につきましては、過剰貸し付けの禁止、契約締結時及び弁済受領時の書面の交付、取り立て行為の規制等の行為規制がございます。  抵当証券業法におきましても、著しく事実に相違または人を誤認させるような表示の禁止などなどの定めがございまして、それぞれの業法において、消費者の保護ということに努めてまいってきたわけでございます。  したがって、法整備がされていないということにはならないというふうに思っております。
  215. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 今るる説明をされましたが、そういうもとでもいろいろな被害が起こってきていて、救済されていないということを私は申し上げているのです。  それは、法律専門家である日本弁護士連合会が去年の十月二十五日に「銀行取引における消費者の権利確立を求める決議」というものを採択しておりまして、「消費者の権利擁護の立場から、現行法制に欠落している銀行の融資業務における行為規制の立法措置を求める。」、という決議を採択しているところです。その中では、この間の銀行取引をめぐる不満や紛争のうち、とりわけ問題とすべきは、資金需要を特に感じていない消費者に対して、銀行が積極的に投資プランを設定して勧誘する「提案型融資」である。銀行が提案した融資対象は、変額保険や不動産共同投資、あるいは証券やゴルフ会員権への投資、賃貸住宅建設、相続税節税商品購入等々であった、その多くが、リスクの高い不適正な投資であって、銀行の提案はバブル経済の崩壊とともに破綻するに至った。消費者被害は、往々にして被害者の生計の基盤を危うくするに至る。不適正・過剰な提案型融資のうちの少なからぬ例が、被融資者の生計を破綻させ、自殺者を出すまでの悲惨な顛末に至っていることは、重い現実として受け止めなければならない。 ということも、日本弁護士連合会が決議の中で明確に言っているところなのです。こういう指摘を率直に受けとめて、今後の消費者保護の立法なども当然考えていかなければならぬというふうに思うのですが、大蔵大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  216. 山口公生

    ○山口政府委員 今先生が御紹介いただきました日弁連の決議は、どちらかといいますと、消費者信用の観点からの消費者保護でございます。この点につきましては、いわゆる借り手でございますね。先ほど私が御説明しましたのは、投資家とかいう立場でございます。今度は借り手としての消費者保護でございます。  大蔵省としましては、この消費者信用保護の問題につきましては、例えば典型的な例でございますが、貸金業規制法等に基づいて、過剰な融資の防止、苦情処理体制整備などの措置を講ずることなど、借り手としての消費者の保護を図ってきたところでございます。引き続き、一層、消費者の保護に努めるよう全力を尽くしてまいりたいと思います。今、よく社会問題として、多重債務問題とかいろいろございます。こういったことも、業界の方での問題があるとすれば、それは是正されなければならない問題だと思っております。  金融制度調査会の金融機能活性化委員会におきましては、この金融システム改革の検討の一つの項目としまして、金融商品サービスの多様化、高度化に対応して金融機関がとるべき行動など、顧客、消費者保護のための適切な仕組み、制度を検討する必要があるというふうにされておりまして、御指摘の借り手としての消費者保護問題につきましても、この検討の中で議論を深めていきたいというふうに思っているところでございます。
  217. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 いろいろお話がありましたが、この金融消費者保護という問題で、これからのビッグバンに向けていろいろな法整備をしていくということが当然必要でありますし、そしてその上で大蔵省が、金融機関のいわば利益の代表者や調整者であるのではなくて、まさに消費者保護の立場に立った行政を進めていくということが強く求められているというふうに私は思います。  つまり、どういうことかといいますと、金融機関の問題のある行動に対して断固たる態度をとっていく、そういう大蔵省である必要がある。そういう姿勢がないと、どんな法をつくっていっても、仏をつくって魂を入れずということになりかねないというふうに思うのです。そして、これからのビッグバンなるものに向かっての政府の姿勢は、まさに現在起きているさまざまな問題への対応で試される。バブル期以降吹き出してきている金融被害を本当に解決していく上で、まだ問題が吹き出しているわけですけれども、どういう態度をとるのか、これが今後の試金石で、それがちゃんとしないと、またこういう被害が繰り返されることになる。  そういう意味で、私は、解決が求められている一つの代表例として、変額保険被害の問題をここでちょっと取り上げさせていただきたいと思います。  変額の保険被害というのは、さきに言った日弁連の人権擁護大会の決議が指摘する銀行の問題行動、すなわち提案型融資、過剰融資による被害の典型であります。標的にされたのは、バブルのもとでの地価高騰のあおりを受けて、このままでは代々住み続けた家や土地を子や孫に残してやれないと悩んでいる高齢者であります。  変額保険の被害の本質は、銀行と保険会社が提携をして、融資一体型の一時払い終身保険として販売した点にあります。銀行や保険会社が行ったセールスで、銀行からの借り入れる金利と変額保険の運用成績とを比較して、借り入れるときの借入金利よりも変額保険の運用の方が利益が上がるから、だから一銭も要らない相続税対策になるのだ、こういうトークやシミュレーションの文書でこの保険が販売されたわけであります。  ところが、保険勧誘の際に示されていた運用成績の数値というものが、本来銀行金利とは比較し得ない、そういう数値であったということが、最近被害者の皆さんがお調べになった中からも明らかになっております。  変額保険の運用成績を示す数値には、性格の違う二つの概念があります。すなわち、一つは契約月別運用実績というのがあり、もう一つは年複利の数値であります。  資料一をごらんになっていただきたいと思います。これはわかりやすく具体的な例を入れて書いてあるものですが、上から三番目に「運用実績」というのがあります。ゼロ年目は〇%で、二年目に一千万円のものが一千二百五十万円になっていれば二五%、五年目に一千三百万円になっていれば三〇%。こういう三〇%というような数値が示されるわけであります。しかし、これを年複利に換算いたしますと、その下に出ておりますように、〇・〇%、約一二・〇%、約五・三%というふうになるわけであります。年複利とは、この運用実績を単複利に換算したものであります。ですから、銀行の借り入れの金利と比較するならば、当然この年複利が比較の対象にならなければならぬわけであります。  ところが、資料二をごらんいただきたいと思います。これは八九年十二月に契約をされたある被害者の方がセールスの際に示された文書であります。二ページ目の全体がそうです。そして二ページ目の右の表の右側に、契約月別運用実績から試算した年複利というのがありますが、この年複利の計算と表は後から私どもが付け加えたものでありまして、配付された、セールスの際に示された文書にはこの年複利はもともと入っていない。  セールスはこの文書を使って、常に二けたで回っている、つまり右の端の方を見ていただきたいと思いますが、「契約月別運用実績」というのは上が四八・四七%、下の方には一二・九二%と いうのが出ていますが、全部二けた以上、こういう運用実績の数値を示して、九%以下になることはないというトークを通じて勧誘が行われた。しかし、年複利の実際は、試算を見ればわかるように、変額保険販売以降、七%とか八%台のところが三分の一を占めているわけでありまして、こういう事実は実際には隠されて販売された。当時の銀行からの借入金利は六%であります。これと比較できる数字が示されていなかったわけです。示されていなかったというよりも、この四八%とか一二%とかいう二けたの数字がそれに該当するものと思い込まされて売られたということであります。被害者の方は、この年複利の方の数字が示されていれば契約しなかったとはっきり言っています。  明治生命は、営業員用教材として「変額保険Q&A」、こういうものを出しておりますが、この中で、この二つの数字の概念の解説をし、他の金融商品と利回り比較する際に適しているのは年複利だというふうにはっきりと認めております。しかし、セールスでは、年複利を隠して、本来借入金利とは比較し得ない運用実績の数字が示されて売られたわけであります。  率直に言いますけれども金融の問題に詳しくないお年寄りなんかがこういうことを示されれば、こう信じ込むのは当然でありまして、これは詐欺同然ではないか、こういう契約は本当に契約そのものが無効になるのではないか、そう言わざるを得ないと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  218. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 お答えいたします。  変額保険につきましては、御案内のとおり、資産運用実績によりまして保険金額が変動する、そしてその実績が契約者に帰属するという自己責任を前提とする商品でございますので、その商品特性にかんがみまして、契約者保護の観点からディスクロージャーを十分進めることが重要でございます。このため、生命保険各社におきましては、この変額保険を経理しております特別勘定の運用方針、運用実績等のディスクロージャーを実施してきたところでございます。  具体的に申しますと、販売当初の六十一年以降毎年、当該契約の保険金額の状況、過去一年間の保険金額の変動状況、解約返戻金等を契約者に対して開示してきております。また、今御指摘ございましたが、それまで契約時からのインデックスの伸び率が開示されておりましたが、これに加えまして、平成二年九月からは、その伸びを年複利換算の数値で示したものを支社に備えつけるなど、生命保険各社は逐次改善を図っているということで御理解を賜りたいと存じます。
  219. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 確かに、運用状況のディスクロージャーの資料としては、生保協会が位置づけている「変額保険の現況」でも、九〇年の、今平成二年とおっしゃいましたが九〇年の秋以降、年複利が開示されるようになりました。  しかし、ディスクロージャーが充実されて、そのときから開示されるようになったとはいえ、それ以前、非開示であった事実には変わりがありません。九〇年以前の時期に年複利が公表されていなかったことが、変額保険において契約者をだましたと言える事態を生み出しているのではないか。  大蔵省は、年複利の非開示は好ましくなかったとはお考えになりませんか。
  220. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 お答えいたします。  今申し上げたとおりの変遷をたどっておりますが、その平成二年九月以前につきましては、インデックスの伸び率が開示されておったわけでございます。それでは、それまでは不備があったかと申しますと、必ずしもそうは考えておりません。むしろディスクロージャーの充実につきましては、その時点その時点で業界においてできる限り努力してきたものと考えております。  インデックス表示そのものにつきましても、これは保険契約の長期性にかんがみまして、長期的な視点で、資産の伸びを開示することが利用者の御判断のニーズに適合するのではないかということで、そういう表示が始まったものでございまして、その後は、ディスクロージャーにつきまして、逐次できる限りの充実を図ってきたというふうに考えております。
  221. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 ちょっとひどい答弁だと思います。  融資一体型で売られた変額保険にとっては、銀行からの借り入れの金利と、運用実績がどうなるか、その運用の金利がどうなっていくかということの比較は本当にかなめをなす部分なんですよ。年複利を示されることが、借入金利との比較の上でかなめになっているわけです。そのかなめになっていることが九〇年の秋まではディスクローズされていなかった。保険会社の方はそれを示さなかった。示さなかったのですよ。そのことは今お認めになった、九〇年九月からは示すようになったということなのですから。だから、示していなかったその時点までは、これは本当に大事なかなめになる事実を示さなかったという点では、保険業法や旧募取法の不実告知とかあるいは重要事項不告知、こういうことに当たるのじゃないですか。
  222. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 お答えいたします。  インデックス表示自体が、そのような利用者の判断に供するために開示されているものでございます。年利換算の数字が当初なかったということでございますが、そのことをもって、例えば募取法違反と言うか否かは、一概にそうは言えないのではないか。募取法違反かどうかにつきましては、契約者と募集人の間でどのような資料を用いてどのような説明が行われたかというそのときの事実関係を総合的に勘案して判断されるべきものであると存じます。  あえて申し上げますと、この当時の開示資料につきましても、最後の行はちょうど直近のインデックスになるわけでございますので、当時一二・九二であったということは年利相当額ということでございますし、その以前の数字につきましても、あえて申し上げればでございますが、経過年数で除しますとおおよその姿がわかるのではないかと存じます。
  223. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 具体的な対応に照らして見れば法律違反ということもあり得る、逆に言えばそういうこともお認めになったということになりますけれども、しかし、今の説明はなかなか納得できるようなものじゃありません。  ここに日本生命の資料、これも被害者の皆さんが足で歩いて探して出された資料なんですが、日本生命が平成元年、八九年十一月に出した「エクセレントニュース」というニュース、日本生命が出したものがあります。これは「取扱いには十分ご注意下さい。」ということで、支社長経由で営業部長あてに出された文書ですが、ここで、日本生命の方は先ほどの明治生命とはちょっと言葉遣いが違っておりまして、契約月別運用実績という言葉を使わないで、騰落率という言葉とそれから年換算騰落率という二つの数字を使っております。  この文書を見ますと、騰落率というのは「業界統一の運用利回りの表示方法であり、」というふうに説明しているのです。つまり、先ほど言った契約月別の運用実績ですね。月が重なっていけばどんどんふえていく。そして、おもしろい。年換算騰落率とは「上記によって求めた騰落率を年率に換算した値。」で「あくまで参考数値であり、ディスクローズを行う際にも公表は行っていない。」八九年の十一月に出した資料の中で、こういう二つの概念が明確にあることを承知していて、そしてもうプロなんですからわかり切っているのです、年換算騰落率の方が銀行から借り入れる金利と見合うものだということは百も承知の上で、そっちはあくまで参考数値で、ディスクローズを行う際にも公表はしていないということを会社の内部には通達をしているわけですよ。大蔵省、こういう文書の存在を承知していますか。
  224. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 御指摘の社内の文書については存じておりません。
  225. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 九〇年の秋以降、年複利が公表されるようになりましたが、その九〇年の秋以降に年複利という考え方が初めて出てきたわけじゃなくて、それ以前から年複利なんという考え方は当然ないはずがないわけで、あったわけです。しかし、年複利は公表しなかった。これは本当に販売の現場での個々のケースの話ということじゃないのですよ、この資料が示すのは。業界統一の表示方法だと言っているわけですからね。業界が一致して年複利でない方の数字を示すということをやってきた、もう一つの数字の方は隠すことにしてきたということを認めている、そういう文書であります。  つまり、世界に名立たる大金融機関が、本来比較し得ない数値であることを百も承知で、それをセールスの際に示して、ハイリスクの保険に、こういうことに本当にアマチュアのわからない人たちに、しかも自分たちから積極的に加入したいと言ってきた人じゃなくて、無理やり勧めて、そういう数字で勧めて、だまして加入させた。本当に詐欺的行為と言わざるを得ない、そういう問題が提起されているわけであります。  ですから、今のこの日生の資料なんかは知らないと言われましたけれども、やはりこういう事実があったということを私たちも指摘し、そして被害者の皆さんもいろいろ調べ上げて、こういうことでだまされたんだということを言っているわけですから、大蔵省、本当にこの事実をしっかり調べる必要があるのじゃありませんか。
  226. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 御指摘の文書について存じませんでしたことは申しわけございません。  ただ、一般論でございますが、私ども冒頭に申し上げましたように、変額保険が、その資産運用リスクが契約者に帰属するという商品であるということから、この販売に当たりましては、特にディスクロージャーについても徹底するように指導してきたわけでございます。  また、変額保険の販売に当たり、昭和六十一年の七月に通達を出しておりまして、まさに将来の運用成績についての断定的判断を提供する行為、特別勘定の運用成績について、募集人が恣意に過去の特定期間を取り上げ、それによって将来を予測する行為、それから保険金額あるいは解約返戻金を保証する行為等を募集上の具体的禁止行為として示すとともに、この通達を遵守、徹底するよう指導してきたところでございます。  その後、バブルの崩壊とともに解約返戻金が払込保険料を下回るようになったために、変額保険をめぐる苦情トラブルが発生したわけでございまして、そのため、平成三年九月には、保険料ローン契約を伴う変額保険の販売につきましては、保険本来の趣旨から外れた取り扱いがなされることがないよう改めて指導したところでございまして、変額保険に限らず、保険募集活動一般につきまして、適正な募集活動に努めるよう指導してきているところでございまして、今後とも徹底してまいりたいと考えております。
  227. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そういう指導をしてきたことはいいのですよ。そういう指導をしてきたもと。で、一番肝心な数字が九〇年の九月、秋までは隠されて売られて、実際上、変額保険の加入者をだますような、ペテンにかけて加入させるようなことがやられていたのではないかということを、そして業界統一の方向でそんなふうにやられてきたのではないかということを私は指摘をしているわけですよ。  ですから、そういう一般的な指導の問題はいいのです。この具体的な問題について、きちんと調べて、白黒をはっきり大蔵省としてつけるべきじゃないかということを私は求めているのです。そのことについて明確に答えていただきたいのであります。
  228. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 繰り返しになりますが、インデックス表示の開示自体は、保険契約が長期性を帯びるということで、利用者の加入判断に供するために開示されたものでございますので、今御指摘の年換算率の扱いについて、例えば業界が悪意を持って開示しなかったかどうか、その辺については、私どもは、必ずしも隠ぺいしていたというふうにとらえる必要もないのではないかと考えております。
  229. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 それがまさに業界寄りの姿勢ということになるわけですよ。大蔵大臣、いかがですか。
  230. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ただいま来の御質疑を聞いておりました。  変額保険をめぐる苦情につきましては、当事者間におきまして話し合いが行われ、早期解決が図られることが望ましいとは考えておりますが、双方の募集時におけるいきさつ等について見解が相違をしており、御指摘のような訴訟にもなっておると承知いたしておるところであります。  また、当局としては、変額保険を含む個別問題について苦情の申し出がありました場合は、申し出内容をお聞きいたした上で、必要に応じて事実関係等についてヒアリングを行い、問題があれば適切に対応するよう保険会社等に指導をいたしてきたところであります。しかしながら、既に訴訟となっておる事案につきましては、裁判でございますから、当局がその内容に立ち入ることは難しいこと、佐々木議員もおわかりいただけると思います。  保険会社等は保険業法に基づく免許企業であります。その公共的側面にかんがみまして、業務の適切な運営による経営の健全性確保が強く期待をされておるところであり、大蔵省としては、保険会社に対する国民の信頼が損なわれることのないように、その業務運営について一層適切に指導してまいりたいと考えております。
  231. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 もう時間が来ましたから最後ですけれども、今大蔵大臣、裁判になっているからちゃんとしたことは言えないというようなことを申されましたけれども、これは通らないと思うのですよ、正直言いまして。金融機関というのは、いわば巨大な象みたいなものですよ、その被害者一人一人から見れば。そして被害を受けた後、少しぐらい声を上げたってだれも取り上げてはくれないのですよ。それで訴訟に訴えたら、今度は係争中だから大蔵省は関与しませんなどといったら、本当に指導監督する官庁の責任なんか何も果たせなくなってしまうじゃありませんか。そういうことが果たせないからこそ、今の法に不備があるということを私は最初に言っているのですよ。やっぱりそれをきちんとやるべきだ。そういうことがやれないようでは、どんな法律をつくってみたって、本当に頼りにならぬ、大蔵省というのは結局金融機関寄りじゃないかということになってしまうのですよ。  ですから、この問題については、もうきょうは時間がありませんから、引き続き適及をさせていただきたいと思いますけれども、こういう事実が明らかになっているのですから、やはり徹底的にこれは調べるべきだと思いますよ。そして、係争中だとかなんとかと言うのじゃなくて、指導監督する大蔵省の責任として、事態がどうだったのか、本当にこれはだますような事態だったのかどうなのかということは、きちんと調べて結論を出すべきだ、私はそう思うのですよ。  大蔵大臣、そのことについて、最後にもう一言答えてください。
  232. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 今大臣から答弁ございましたが、大蔵省といたしましては、多数の変額保険訴訟が提起されるなど社会的関心が高まっておる現状にかんがみまして、現在訴訟中の事案について影響を及ぼすような調査等は行うことは不適切でございますが、訴訟に至っていない事案等については、検討し、実施してまいっております。  具体的には、生命保険商品が多様化する中で、生命保険商品内容の照会あるいは商品リスクについての説明が不十分であったとの相談、苦情が増加しておりますので、昨年の十月十六日付の通達によりまして、各生命保険会社の相談苦情処理体制の充実強化を図り、適切な対応に努めることを要請しております。また、生命保険協会に対しましても、協会内で相談所等の相談、苦情への処理体制の一層の充実強化を図り、一般へ周知をするように要請したところでございます。そのように、できる限りの努力をしてまいっております。
  233. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 それじゃ話にならないということをもう一回重ねて申し上げて、時間が来ましたので、質問を終わります。
  234. 額賀福志郎

    額賀委員長 次回は、明十六日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会をいたします。     午後五時二十四分散会