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1997-04-09 第140回国会 衆議院 大蔵委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月九日(水曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 額賀福志郎君    理事 金子 一義君 理事 坂井 隆憲君    理事 保岡 興治君 理事 柳本 卓治君    理事 北側 一雄君 理事 谷口 隆義君    理事 池田 元久君 理事 佐々木陸海君       飯島 忠義君    今村 雅弘君       衛藤征士郎君    小林 多門君       菅  義偉君    砂田 圭佑君       田中 和徳君    田中 昭一君       中野 正志君    吉川 貴盛君      吉田六左エ門君    渡辺 喜美君       上田 清司君    木村 太郎君       北脇 保之君    鈴木 淑夫君       中川 正春君    中野  清君       並木 正芳君    藤井 裕久君       前田  正君    宮地 正介君       末松 義規君    田中  甲君       山本 譲司君    佐々木憲昭君       秋葉 忠利君    新井 将敬君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 三塚  博君  出席政府委員         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房金         融検査部長   中川 隆進君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省理財局長 伏屋 和彦君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省国際金融         局長      榊原 英資君         国税庁課税部長 舩橋 晴雄君  委員外出席者         警察庁長官官房         国際部国際第二         課長      小野 次郎君         法務大臣官房参         事官      菊池 洋一君         農林水産省経済         局金融課長   白須 敏朗君         郵政省貯金局経         営企画課国際業         務室長     西森 正広君         郵政省貯金局経         営計画課経営調         査室長     田中  進君         参  考  人         (日本銀行総裁松下 康雄君         大蔵委員会調査         室長      藤井 保憲君     ――――――――――――― 委員の異動 四月九日  辞任         補欠選任   村井  仁君     中野  清君 同日  辞任         補欠選任   中野  清君     村井  仁君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する  法律案内閣提出第五三号)      ――――◇―――――
  2. 額賀福志郎

    額賀委員長 これより会議を開きます。  内閣提出外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁松下康雄君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 額賀福志郎

    額賀委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  次に、本案審査のため、来る十五日火曜日、参考人出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 額賀福志郎

    額賀委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ―――――――――――――
  5. 額賀福志郎

    額賀委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木淑夫君。
  6. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 新進党鈴木淑夫でございます。昨日から議論を行われております外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案、いわゆる外為法改正案につきまして質問をさせていただきたいと思います。  松下日銀総裁、本日は、お忙しいところお越しいただきましてありがとうございます。三塚大蔵大臣は参議院の本会議でおくれていらっしゃるそうでございますが、中村政務次官、ありがとうございます。また、そうそうたる政府委員の方、おそろいでございますので、大蔵省及び日本銀行に対する私の質問を開始させていただきたいと思います。  いわゆる外為法は、皆さん方承知だと思いますけれども、一九八〇年に大改正がありまして、それまでの原則規制、例外自由から、逆に、原則的には自由化だ、しかし例外的に規制をするという体制に切りかわったわけでございます。当時としては画期的な為替管理自由化でございまして、もうこれで日本為替管理はほぼ撤廃されたという気分にあのころなっていたのであります。  しかし、その後、今日まで十七年間に、世界金融経済情勢は大きく変わってまいりました。一つは、いわゆる証券化でございます。証券の形式をとってさまざまな金融資産、今までなら銀行のバランスシートの中におさまっていたような貸し出し、預金、その他、みんな証券の形をとって動き出す。そして、それがコンピューターを駆使した金融技術革新によりましてさまざまな派生商品を生み出す、いわゆるデリバティブスでございますね、先物、オプション、スワップ等を駆使してさまざまな派生商品を生み出す。そういう、世界で、いわゆるホールセールバンキングと申しますか、大きな資金機関投資家が今言った証券化コンピューター化の波に乗って扱う。それが同時に、各国の市場を結びつける、いわゆるグローバル化をも促進した。ですから、俗に証券化コンピューター化機関化グローバル化というのが潮流だなどと申すわけでありますが、そういう中で、どんどん世界金融が拡大し発達してきたわけであります。  その中で、一つ大きな特色が国際間の市場間競争だと思うのです。そういう四つ潮流の中で、主要国が、自分の国の金融市場資本市場世界商売を取り込もうとして競争し始めたわけであります。ですから、今言った潮流に乗って、商売しやすくする、使い勝手をよくする、あるいは税制を工夫して取引コストを下げる、商売自分の国に呼び込もうという国際間の市場間競争が激烈になってきたわけであります。  市場間競争のはしりは、御存じのように六〇年代のアメリカ利子平衡税の実施、これに伴って、アメリカ国内ドル建て取引が、もっと使い勝手がよくてコストの安いロンドンを中心に逃げ出した。これが有名なロンドンユーロダラー市場のスタートでありますが、アメリカは、これに気がついて、しまった、市場間競争に敗れてはならぬ、ニューヨークが廃れてロンドンが発達するのは困るということで、七〇年代になって利子平衡税をやめて、またその取引を引き戻すわけですね。ニューヨークもどんどん、さっき言った四つ潮流に乗って工夫をしましてとてもいい市場にしていく、そのことによってロンドン市場取引を奪い返す。これではならじと、今度はロンドン側が大きな手を打ったのがビッグバンであります。ビッグバンによりまして、銀行資本を取り入れ、コンピューター化し、非常に使い勝手のいい、いいマーケットの再構築をしてまた呼び返したわけですね。そういたしますと、ヨーロッパ大陸のパリやフランクフルトのマーケットはみんな商いをとられちゃいますから、こっちも一生懸命始める。こういう形の市場間競争が大きく進んでまいりました。  これを可能にした一つの条件は、やはり為替管理の撤廃なんですね。アメリカにはもともと為替管理はきついものはないのですが、ヨーロッパはございました。八〇年の日本外為法改正のときは、日本の方がヨーロッパよりずっと自由化されているなんて言って威張っていたんですね。ところが、ヨーロッパはEUの統合を目指しておりますから、市場統合のために為替管理を撤廃する、さらには将来の通貨統合のために撤廃するということで、有事規制はあり得ますが、ほとんど為替管理を撤廃してしまった。そして、そういう壁を取っ払って、今言った市場間競争をじゃんじゃんやってきたわけです。  だものですから、八〇年当時、画期的な為管の自由化と言って威張っていたのですが、すっかり時流に取り残されたのが日本マーケットなんですね。為替管理は、例外規制とはいえ、今となってはまだ相当な規制だねということになっちゃった。壁があるところへ持ってきて、日本国内には結構規制が残っている、それから税制コストが高いといったことで、実はいろんな統計調べてみますと、金融空洞化と言われるように、じわじわ世界の中のシェアが落ちてきたわけであります。そういう流れの中で、今度ようやく本当に為替管理を撤廃しようというのが今度の外為法改正なんですね。  ですから、私ども新進党といたしましては、この外為法改正について、方向性は全く賛成、格別異論を差し挟む余地なしてあります。むしろ、あえて言えば遅きに失した、もっと早くやるべきではなかったか。これが遅かったために日本シェアダウンが起きている、空洞化が進んでいるというふうにさえ思います。ですから、これからの質問は、この外為法改正に対して反対という質問ではありません。  二つの種類の質問をさせていただきます、大きく分けて。一つは、どうも外為法改正案を拝見していても、ちょっと中身がはっきりしないなという点。それからもう一つは、この外為法改正によって、日本金融資本市場あるいは金融システム一定のインパクトが加わるわけですが、これで大丈夫かねという角度からの質問。この二つ質問をさせていただきます。  まず最初に、内在的なここに出ている法案に関連した質問でありますが、第一点は、日銀総裁がお越してございますので、まず金融政策有効性への影響から入りたいと思います。  これはちょっと榊原さんに確認させていただきますが、今度の外為法改正によって、外貨建て決済口座を持って、その振替という形で外貨を使って取引決済することが自由になったということですね。今までの外為法ではそれは自由にできなかったのだと思います。それは二十条四号の資本取引が二十一条一項によって自由化されたのだというふうに考えてよろしゅうございますね。  この点を確認いたしますのは、私は、このことを本会議で言ったら、自民党さんの席の方から、そんなもの前からやっているよというやじが来たのですが、そんなことはない。今度の外為法改正で初めてですね。外貨建て決済口座、あるいは恐らくドルの紙幣を使ってもいいのだと思うのですが、自由に決済ができるわけです。  その決済ができる決済中身、これまた確認させていただきますが、外国での取引決済だけではなくて、その気になれば日本国内取引決済外国にある外貨建て決済口座振替決済することができますね。できるというふうに、榊原局長、首を振っておられます。  この二つを確認した上で伺うわけですが、総裁、今のところ日本経済は非常に弱いのですが、しかしいつまでもこんなでは困るわけで、いずれは日本経済実力相応の成長、さらにはそれが加速して、勢い余って、これはこのままいくと物価が上昇しかねないので引き締めという事態もあり得ましょう。  日本金融引き締めをする、金利を引き上げる、マネーサプライ伸び率を抑制する。その結果、日本国内企業は簡単に決済資金を調達できない、あるいは調達すると金利が高い。そこで、ではということで、金融引き締められていない海外マーケット外貨建て資金を調達して、外貨建て決済口座へ入れる。そして、国内取引相手に向かって、おれ、ちょっと国内では金が余りないのだけれども、君も海外ドル建て決済口座を持っているだろう、おれはドル海外であなたの口座へ振り込むよ、こういう取引を始めたら、これは金融政策有効性にとって何を意味するか。これは極端な話、日本銀行が一生懸命引き締めをして、金利を上げ、マネーサプライを抑制してみても、それとは関係なく、アメリカ中央銀行マネーサプライを使って取引決済するということですから、日本金融政策有効性に風穴があいているということになるのではないでしょうか。  この日本金融政策有効性低下可能性について、日銀総裁はどのようにお考えでございましょうか。
  7. 松下康雄

    松下参考人 外為法改正によりまして、確かに内外資金取引は一層自由化されることになります。ただし、為替管理につきましては、これまでも実際のところかなり自由化が進められてきたわけでございますけれども、その結果、既に内外資本移動は極めて活発なものになっております。そうした中で、国内各種市場金利相互間、あるいはユーロ円などの海外金利との間でも現状におきましては金利裁定は十分に働いておりまして、金融政策有効性というものは、現状、十分確保されているように思うわけでございます。  そこで、この今回の外為法改正に伴いまして今後どのような動きが発生してくるであろうかということでございますけれども、もしも仮に国内企業の間で一般的に、円決済にかえまして、リスクヘッジをせずに外貨決済がかなり広範に行われるといったような事態が起こるといたしますと、あるいは御指摘のように金融政策の効果にも何がし影響が及ぶ可能性がないわけではないというふうに考えられます。  ただしかし、今回の外為法改正によりまして海外に直接預金ができるようになるということは確かにそのとおりでございますけれども、ただ、この場合に、やはり内外クロスボーダー取引から発生いたします為替リスクでありますとか、ヘルシュタットリスクでございますとか、いろいろのリスク関係、あるいは各市場インフラの違い、あるいはそのコスト差というようなものを念頭に置きますと、この外為法改正をもちまして外貨決済への移行が非常に大幅に進む、あるいは促されるというふうには必ずしも考えられませんので、私どもといたしましては、今回の外為法改正をきっかけとして金融政策有効性が大きく低下するといったことにはならないと考えておりますけれども、そういう点につきましては、今後とも細心の注意を持って見守ってまいる考えでございます。
  8. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ありがとうございました。  実はこの質問、本会議新進党代表質問総理にも申し上げましたところ、総理御返事というのは、ここにありますが、これまでも相当程度資本取引自由化を行っている、そしてその総仕上げが今度の外為法改正だから、まあ金融政策有効性に大きな影響を与えるものとは考えておりませんという御返事でした。  松下総裁も前半で同じような趣旨のことをおっしゃったわけですが、ただ、お断りしておきますが、私が言っているのは、資本のフローが自由になるところから、内外資本の出入りが自由になるところから金融政策ループホールができるという話ではなくて、海外にあるストックとしてのマネーを国内のために使えるからこれはアメリカ金融政策に左右されるような話になるよというストックベースの話をしているのですね。だから、資本移動の話とごっちゃにして議論してはいけないところだと思います。  後半におっしゃったことはごもっともでございまして、外貨建て決済しようとすれば、それは為替変動リスクがあります。それから制度の違いによってコストの差もある、インフラも違う、だから、そうそうそういうことをやらないのではないかという御趣旨であります。  しかし、お言葉を返して恐縮でございますが、為替変動リスクなら、さまざまの手段が今発達しておりますから、これを回避することは容易であります、一定コストを払えば。それから、向こうの方がコストが高いという事態、あるいは向こうの方がインフラが違うので使い勝手が悪いという事態余り考えられない。日本の方がコストが高い、日本の方が使い勝手が悪い、不便だという話なら幾らでも私は手元にありますが、日本が便利で向こうが不便だという話は余りないと思うのですね。日本金融機関は、あるいは大企業、多国籍企業は、もう向こう金融市場を大いに利用していますから、そんなことはないだろうというふうに思います。  したがって、私が心配しているのは、為替変動リスクヘッジするときにコストがかかりますが、それ以上に内外金利差があったら、やはり向こうに打っちゃうんじゃないのという話なんですね。  やや込み入った話ですので大蔵省にお伺いしたいと思います。やはりその心配があるんじゃないかという点です。リスクヘッジコストがかかっても、金利差が相当大きくなったら向こうお金を使うんじゃないかという点でございます。
  9. 榊原英資

    榊原政府委員 お答えいたします。  先ほど総裁からもそういう趣旨の御答弁がございましたけれども先生承知のように、今金利裁定というのはほぼ完全にきいておりまして、為替リスクを勘案すれば、日米金利あるいは日欧金利はほぼ同水準にあるということでございます。  そういう意味で、今まで非常に自由化が進んでおって資本取引がそこそこ自由にできたということを反映して、金利裁定機能というものが十分きいておるわけでございますから、日本での決済アメリカでやることによるメリット、あるいはロンドンでやることによるメリットはそれほど大きくないということ。それから、ヘッジをするための広範ないろいろな手段をとりますと、そのコストかなり高こうございます。そういうことで、我々としては、決済機能が東京からほかの市場に移るということはまず考えられないのではないかということ。  今御質問金利差については、金利裁定がほぼ完全に成立しているということで、むしろコストの面から向こうに出ることがあるかということでございますけれども、そういうことは考えられないのではないかというのが私どもの見解でございます。
  10. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 国金局長相手でございますからやや技術的なことを申しますが、金利裁定に二種類ありますね。直先スプレッド金利裁定に等しい。これはヘッジをとったときの話。もう一つアービトラージのない金利裁定というのがあって、予想の為替変動の率が金利差に等しい。二つありますね。  私が言っている金利差というのは、引き締めをされちゃって、お金を調達するときに払う金利海外だと随分安い、国内だと高い、あるいは場合によっては国内では簡単にお金を貸してくれないやというときは、向こうで安い金利で容易にお金を借りられます。そのお金は全然国内に引いてくる必要はないわけです。そのまま置いておいて、おい、ドルで払っていいかと言って合意が成立すれば、国内取引をその金を使って向こうでやっちゃうよという話ですから、資本流れに伴う金利差アービトラージの話とはちょっと違うのですね。だから、私はこれは起こり得ると思いますよ。  ですから、その点については、さっき日銀総裁は十分注意していくとおっしゃいましたが、大蔵省としても、これは余り起こり得ないというんじゃなくて、十分に注意してごらんいただきたいことだと思うのですが、いかがですか。
  11. 榊原英資

    榊原政府委員 御指摘のように、全く起こり得ないことではないから注意をしてそういう動向をウォッチしろということであれば、そのとおりでございます。  ただ、繰り返しになりますけれども、今までも、日本金融が極めてタイトなときには外国資金を調達することが十分できたという状況は存在していたわけでございますから、そういう意味で、大きく決済そのもの外国に移る可能性は極めて低いのではないかというふうに思っておりますけれども、御指摘のような事態が起こる可能性がゼロではございませんので、注意深く見守っていきたいというふうに思っております。
  12. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 しつこいようですが、今おっしゃったことは一つちょっと違うのですね。  今までも海外資金調達できた。それはそうですよ。海外で、仮にドル資金調達ができた、国内が引き締まっているから。だけれども、円にかえなきゃいけなかったでしょう。ドルのまま支払いに使ったら外為法違反になったでしょう。円にかえなきゃいけない。円にかえるその瞬間に日本銀行のマネタリーコントロールの中に入っちゃうのですよ。そうでしょう。そこが違ってきたよということに十分留意してくれと私は言っている。  だから、今までだって引き締めのときは海外で調達して資本は入ってきたとよくおっしゃるけれども、私はその話をしているのじゃないのですよ。そんなことは私は知っている。そうじゃない事態が今度あらわれますぞということを言っているのです。いかがですか。
  13. 榊原英資

    榊原政府委員 例えば、日本企業外国企業決済をするということであれば、従来から外貨外国決済が行われていたことでございます。  先生がおっしゃるのは、日本企業同士が、今まで円で決済を行っていたものが海外外貨決済をする、こういう事態が生じ得るのではないかということでございますけれども、論理的な可能性としては、おっしゃるように日本企業間土海外ドル建て決済をするということは起こり得ることであります。  ただ、日本企業同士取引が円からドルに大きくシフトして外国で行われるというようなことは、日本通貨がこれだけ広範に使われ、居住者によって信頼を受けているという事実からすれば、それほど大きく起こり得ることではないというふうに思っておりますけれども、御指摘の論理的な可能性については十分認識しております。
  14. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 論理的な可能性を御納得いただけたということですからこの質問はこれ以上追及はいたしませんが、これは相当厄介な問題だと思います。実際にやってみないとどうなるかわからないというふうに私も思っていますが、起きてきたときは相当厄介な話だと思います。  日銀総裁にも、大蔵大臣にも、私自身もこれは研究課題だと思っているので申し上げますが、そういうときにどういう対処をするのか。また為替管理を強化しちゃうのか。これじゃ逆行だという話ですね。そうじゃない場合は、今度は主要先進国金融政策というのは協調していないとまずいことが起きるんだよという話ですね。しかし、協調し過ぎると、今度は逆に国内物価安定に対して害が及ぶようなケースも起こり得ます。そういう意味で大変厄介な課題が出てきている。  ただ、私は、金融グローバル化というのを日本は前向きに受けとめて、この外為法改正していく方向は先ほども言ったように絶対崩しちゃいけない。だから、困ったらまた為替管理強化だということではなくて、やはり同じ悩みを持つ先進国との間の話し合いを十分にする。そして、先進国が大きく経済変動させると今言ったような問題が起きちゃうわけですから、先進国というのは経済変動をできるだけ小さくして、金融政策に大きな差が生じないようにしていく使命を負っているのかなと思うのですが、日銀総裁、いかがでございましょうか。
  15. 松下康雄

    松下参考人 御指摘のような事態につきましては、これまでなかなかそういう実例は現実には大規模に存在しなかったように思います。新興市場国でございますとかそういったところで全然別の事情から外貨決済が広く行われるというようなことはございましたが、先進国間での自由化の進行に伴いましてそういう事態が生じるかどうか、これは一種未知の分野でもございます。  しかしながら、私どもといたしましても、御指摘ございましたようないろいろな事態の発生の可能性ということはよく念頭に置きながら、この法律改正の結果というものは注意深く見守ってまいるべきことであろうというふうに考えております。
  16. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ありがとうございました。  三塚蔵相がいらっしゃいませんが、どうぞ今の点を中村政務次官からよくお伝えいただければ大変ありがたいと思います。  二番目の、内在的な問題点に移りたいと思います。  これも本会議代表質問のときにちょっと申し上げたことなんですけれども、今度の外為法改正で大いに自由化をする。したがって、今まで為替管理をしていたために求めていたさまざまの書類による外為取引の届け出制度、これは原則廃止で自由化だ。これは結構なんですが、今度はそれにかわって事後報告制度を整えるというのが法案ですぐ後ろに出ているわけですね。たとえ事後報告であっても、さまざまの書類を徴求し、細かい項目など設けられますと、やはり、取引自体は自由化されていても、それに伴う煩わしさ、コストが上がっちゃいますので、事実上、自由化された外為取引にブレーキがかかることになりますね。だから、この事後報告制度というものの中身がどの程度のものかというのは大変重要なことなんですが、法案を見ますと、みんな省令、省令なんですね。省令に基づきになっちゃっているわけです。  これは本会議でお伺いいたしましたら、これに対するお答えは、新たに報告の章を設け、報告の対象を可能な限り法律上明示しています、むやみやたらに広がらないようにしています、そして報告の負担軽減にも十分配慮をしていく。報告の負担軽減に十分配慮していただくというお答えをいただいたので、私はそれなりにぜひそうしてほしいなというふうに思ったわけです。  しかしながら、確かに第六章の二、「報告等」というのを新たに設けて内容を明示はしているんですが、これは相当なものですね、たくさんありますよ。支払い等の報告、銀行等の本人確認の実施状況の報告、資本取引の報告、対内直接投資等の報告、技術導入契約の締結等の報告、外国為替業務の報告、その他の報告ですよ。こんな詳しい項目でありますから、ほとんどの取引をカバーするような報告になっちゃいますから、この報告の中身、煩わしさの程度というのが実はこの外為法改正の効果を左右するぐらいのものではないかと思います。  これは大蔵省への質問になるわけですが、本会議でも申しましたように、これは全部省政令で定める、それは細かい話だから法構成上はそうかもしらぬが、もう少し省政令で定めるというところの中身をこの時点で出してくれなきゃ、この外為法改正の実効性について我々国会として判断できないという面がありますね。その点は、もう少し詳しく御説明いただけませんでしょうか。
  17. 榊原英資

    榊原政府委員 先生指摘のように、事後報告でどういうものを徴求するかということが改正後の外為法がどの程度自由化されたかということをはかる一つの尺度になるということは、そのとおりだというふうに思っております。  そういうことでございますので、先生指摘のように、今回、法律でも第六章二というものをつくって、こういう内容の報告を徴求しますということを明示したわけでございます。現行法律では報告義務があるという項目が一項あるだけでございまして、どういう報告をとるということは法律には全く明示されていなかったわけでございますけれども、今度六章二で、非常に詳しく、支払いに関する報告、何々に関する報告ということで、報告の内容を明示したところでございます。  それから、明示した上で政省令に実際の報告の内容は落としておるわけでございますけれども、これはいろいろな機会に申し上げておりますけれども、大体今私どもがとっておる報告というのは、国際収支統計をつくるための報告というのが結構多うございます。これは報告の数え方の問題もあると思いますけれども、私どもの数え方では、全体で報告が二百四十ぐらい現在ございます。そのうちの大体百五十程度は国際収支統計をつくるための報告でございまして、これについては大きく削減することはできない。ただ、二百四十から百五十を引きました九十というのは行政目的のための報告ということでございますけれども、これを半減する、半分以下にするということで現在事務的に詰めております。ですから、政省令で報告が最終的に確定されたときには行政目的のためにとる報告は半分以下になっているということでやらせていただいておるわけでございますから、報告も相当簡素なものになるというふうに思っております。  それからもう一つ、私どもが腐心しておりますのは、今、報告というのはすべて紙でとるということになっておるのでございますけれどもコンピューター時代でございますので、電子情報処理による報告ということも行いたいと思っておりまして、そういう規定を法律に設け、現実的にどういう形で電子処理をして報告をいただくかということを実務的に詰めておるところでございます。  これは実は企業等のコンピューターシステム、ソフトを変えるということにもなるわけでございますので、そういう形でかなり永続的な報告の体系というのをつくっていかなきゃいけないと思いますので、法律が通り次第、私ども鋭意、実務家と、どういう形の報告の簡素化が可能なのかということで、半減するということできるだけペーパーレスに持っていくということ、そういうことを二つの原則として、おっしゃるような方向で努力していきたいというふうに思っております。
  18. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 大変結構なお答えをいただきまして、私も喜んでおります。  半分以下だということ、あるいはできるだけ簡素にする、特に電子的な報告を認める、これはもちろんフロッピーディスクを持ってこいなんていうんじゃなくて接続でやらせるんでしょうね。これを民間の今どうなんだろう、どうなんだろうと気をもんでいる多国籍企業、あるいはそれに準ずる大企業の担当者が知ったら、大変喜ぶだろうと思います。  そういう意味で、内容については大変結構だなと思うんですが、タイミング、いつごろまでにこれは明らかになりましょうか。というのは、今民間の関係者はかたずをのんで待っているんですよ。これはまさに外為法改正の実効性を左右することですから、どの程度だろうと言っているんですが、いつごろ発表されますか。
  19. 榊原英資

    榊原政府委員 政省令の詳細にわたる協議については、当然、法律が成立しなければできないということでございますので、法律成立後、可及的速やかに、今もう実務レベルと接触はしております、審議会のプロセスなどで、商社、金融機関あるいは企業等の実務レベルとどういう報告にするかという接触はしておりますので、法律が成立し次第、可及的速やかにそういう接触を開始し、具体策を決めたいというふうに思っております。もちろん、法律が成立した場合、お願いしておりますのは来年の四月一日の施行でございますから、当然、施行までにはすべて詳細は決まっておるということでございます。  ただ、拙速ということを避けたいというふうに思っておりまして、これは実は、先ほど申し上げましたように、場合によると企業金融機関コンピューターソフトを相当大幅に変えなければいけない。一回変えたものをまた一年で変える、二年で変えるというようなことはかえってコストがかさみますので、十分その関係者と協議をしながら可及的速やかに政省令の内容を決定したいというふうに思っております。
  20. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 拙速を避けるというのは、ごもっともなことだと思います。しかし、今度は逆に、来年三月末までにやればいいんだというわけにもいかないと思うんですね。企業だって、やはりいろいろ準備がありますし、それから海外との契約の関係もありましょう、取引関係を変えたりする。ですから、おっしゃるように、可及的速やかにひとつお願いしたいと思います。  同じような問題は、今度は主税局長さんになるわけですが、受取利息の捕捉の問題にもあります。  海外外貨建て決済口座も持てるしということになりますと、御承知のように、アメリカやドイツでは非居住者の受取利息等に源泉課税しておりませんから、公正を期するためには日本の税務当局が海外での受取利息等をしっかり捕捉しなければいけない。しかし、そのために詳しい報告書を徴求すると、これまた外為法改正の実が上がらないような煩わしさを持ち込んでくるというふうに思いますので、これもなかなか手かげんの難しいところだと思うんですね。  公正の原則と簡素の原則ですが、税制の大原則の三つのうちの二つの間にトレードオフが起きるということです。本会議で伺いましたところ、大蔵大臣は、海外送金等に関する情報・資料に係る銀行等の報告制度の整備を図ることが重要だ、それでそのための立法措置の準備を進めている、こう言っています。  まだ大臣お見えでないので次官にお伺いしてもよろしゅうございますが、やや技術的ですので薄井主税局長でも結構でございます、この海外送金等に関する情報・資料に係る銀行等の報告制度というのはどの程度のことを考えておられるか、まずそこを伺って、さらに具体的にどうやって税務当局として追いかけていくおつもりか、お聞かせいただきたいと思います。
  21. 薄井信明

    ○薄井政府委員 来年の四月から為替自由化になります。そのこと自体、税を担当する私どもとして反対するものではございませんし、また時代の流れだと思っております。ただ、税は税として公平な課税というものを実現しないと、どこかに穴があいていれば、ほかの方々、例えば給料しかもらっていない方々が、税金を納めることについて、おかしいのではないかと思い始めるわけでございます。そういう意味で、税は税の世界で、経済の状況が変われば変わったなりに、適正な課税の実現を追求していくというのが私どもの務めだと思っております。  ただし、今委員が御指摘のように、そのことが行き過ぎて、為替自由化をしたことが、新しい税制上の制度ができたがゆえに、むしろマイナスになってしまうということになってはいけないということで、私どもはその調和をどう図るかということを考えております。端的に申し上げれば、ニューヨークロンドン並みとおっしゃってこれが始まっているわけですから、一番徹底しているニューヨークアメリカにおいて税と為替自由化がどうバランスをとられているかというところに着目して制度を仕組んでいくことかなと思っております。  先ほど国金局長から話がありましたように、そもそも為替自由化後にどういう取引になるかということについても必ずしもはっきりしない。また、制度上も政省令が外為法世界でもこれからできるということですので、税が先走って何かをきちんと決めてしまうということは問題だと思っております。ただ、これも委員が御指摘のように、来年三月末にできるというのでは間に合わないわけですので、私どもとすれば、現在既に郵政省を含めて、金融機関とどういう制度にするか詰めを急いでおります。昨年の十二月の政府の税調答申ですか、あるいは与党の税制改正大綱でもそのことを予告させていただいておりまして、そういう意味では技術的な面では今進めさせていただいております。  それ以上のことについてはまだ調整中ではございますが、これも国会との関係がありますが、できますれば、もし臨時国会が開かれるということであれば臨時国会に法律を出すということも含めて、私ども準備を急ぎたいと思っております。
  22. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ありがとうございました。  関連してもう一点、税務当局にお伺いいたしますが、先ほどもちょっと言いましたように、アメリカとドイツでは非居住者の受取利息等の源徴をしておりませんね。日本はきちっとやっているわけです。これは国際的な制度の違いということで、日本金融資本市場では非居住者にも源徴があるぞということで、さっき申しました国際的な市場間競争では何となく日本に不利に働いている面があるというふうに私は思います。  しかし他方、税制の公正ということを考えると、これはちょっと脱税の道をあけていることになりはせぬか。国際的な税制の標準化をするなら、日本の方へアメリカとドイツを引きつけたいものだと私は常々思っております。大蔵省もOECDなどでそういう努力をしておられると思いますが、この点は今どういうことになっていて、今後どうなりそうでしょうか。
  23. 薄井信明

    ○薄井政府委員 今御指摘の点については、やや複雑な面はあるのですけれども国際的な流れといいますのは、アメリカ流のいわゆる納番を使って源泉徴収というものを基本にしつつ、一方で非居住者との関係をどうするか。その場合にも、非居住者であるかどうか本人確認をからっとさせるというようなアプローチと、それから源泉徴収制度によってそこをカバーしていく仕組みと、二つ世界の制度は分かれているように思います。  原則として源泉徴収を行いつつも、民間企業の発行する一部の国外債について、現在非課税として源泉徴収を免除としているのが日本の制度でございます。非居住者について源徴制度を維持していますのは、同じ利子所得を受け取った居住者の場合課税となることとの公平の問題、これは国内問題として考えなければいけない。それから、非居住者であるか否かの確認が、日本の現在の納番のない世界では非常に難しい。非居住者に穴をあけることが居住者の租税回避に使われかねないということから、現在の制度を設けているわけでございます。  非居住者への支払い利子に対する源泉徴収制度につきましても、自由化の徹底と、一方公正性、透明性の向上という金融システムの改革が行われていくわけですので、税制全体の中における位置づけを的確に押さえ、税制上の基本である公平、中立、簡素という原則を踏まえつつ検討を行っていくべき問題だと思っております。現在の仕組みを変えなければならない状況にはないと現状では思っております。
  24. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ありがとうございました。  三塚大蔵大臣、お忙しい中をお越しいただきましてありがとうございます。大蔵大臣お見えになりましたところで、二番目の大きな問題についての質問に移らせていただきたいと思います。それは、この外為法改正日本金融資本市場あるいは金融システムにどういうインパクトを与えるのだろうかという点でございます。  三塚大蔵大臣、予算委員会で私も質問させていただきましたが、蔵相はしばしばこの外為法改正をフロントランナーとして二〇〇一年までに金融ビッグバンを実施するとおっしゃっておりますが、そのお考えは今でも変わりございませんか。
  25. 三塚博

    三塚国務大臣 その前に、参議院本会議に呼ばれまして質疑がございまして、こちらを中座させていただきました。段々のお話、中村政務次官から要点を先ほどお聞きをいたしました。  それの前提に立ちながら、フロントランナーである外為法の今後の問題についてでありますが、以前申し上げましたとおり、これが我が国の金融システムの今後の安定、さらに信認を得るまさにフロントランナーである、こういう考え方については変わりありません。
  26. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 三塚大臣、私は予算委員会の席上で二度質問させていただきました。二度とも申し上げましたが、外為法改正はフロントランナーであってはいけないと思うのですね。マラソンで言えば先頭グループの一番後ろか二番手ぐらいについていなければいけないのであって、全体を引っ張るフロントランナーであってはいけないというふうに思っております。  なぜかといいますと、今日本金融資本市場の諸規制は、どう見ても海外国際金融センターであるニューヨーク市場ロンドン中心のユーロ市場などに比べてまだ規制がたくさん残っておる。それから、税制についても国際標準化が必ずしも十分に進んでいなくて、やや税制面からくるコスト高の要因もある。そういった規制緩和・撤廃、税制国際標準化というものこそがフロントランナーであって、それをしないで先にぽんと為替管理自由化を先行させると、日本金融空洞化を防ぐつもりの外為法改正が逆に日本金融空洞化を促進することになってしまう。  だから、これはフロントランナーではないのだということを再三質問もし、意見としても申し上げたのでありますが、依然として蔵相は、これは先頭グループのトップを走る、金融ビッグバンのトップを走る改正だとお考えですか。
  27. 三塚博

    三塚国務大臣 前段に御質問ありまして、政府委員から答弁の模様なども簡明に聞いたところでございますが、規制それから税制上の問題、そのとおりであります。  よって、規制の問題については、大蔵の担当局また官房が中心となりまして規制の見直しをスタートし、先般、三月末でありましたが、その要綱、ポイントを発表させていただいたところでございます。税制面については、マーケット全体の改正をどうするか、これはまさに平成十年度税制改革におきましてこのことが行われる、こういうことで段々の作業に入っておるわけでございます。  特に、空洞化が深まるのではないかという御指摘でありますが、問題のポイントは、趣旨説明におきましても申し上げたところでございますが、まさに日本にとりまして第三の開国、戦後五十二年、そして今後の五十年というよりも一世紀に向けて、日本のベースがしっかりとしたものになるためには全体が意識改革をしていかなければならない、こういう時点に立っておりまして、従前の、護送船団方式と言われて侮りを受けるようなことであってはならぬわけでございますから、そこに大きな視点がございました。  同時に、経済国際国家としての前面に立って頑張り抜いてきた企業群、大企業だけではございません、中小の中にもそういうことで成果を上げて、また経験を積んでおるところもあるわけでございますから、国際金融の実態に触れて、有利で確実な資金調達、あるいは資金参加、こういうことで経験を積み、失敗もあったでありましょうが、ほぼマスターをしつつあるわけでございますから、そんな点で、今後もその経験をベースとして取り組まなければなりません。  順序が逆ではないのかと言われることにつきましては、過去のよりよき経験、苦い経験、これをしっかりと踏まえながら、内政面における規制税制面の問題、前段申し上げたとおりのことで、さらに御注意があるわけでございますから、御見識などを承りつつ今後に対応をしていかなければならぬと思っております。  ヨーロッパは長い積み上げの中でということになるのでしょうか、EUそしてユーロ統一通貨に向けて、主権国家である各国の壁を超えてそこに結集しようとしている動きが着実にありますことを考えれば、まさに日本金融システム改革は待ったなしのところに来たという意味で、第三の開国を目指して万全の体制をとるという決意も秘めながら取り組んでおるということについて、御理解をいただきます。
  28. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 その御決意は私も御立派だと評価させていただきますが、私が質問していることに対する答えは一向にはっきりしなかったのです。フロントランナーじゃなくて、その前にやることがあるでしょう、それをしないと外為法改正がねらいとは逆になりますぞということを申し上げているのに、それに対する直接のお答えが、今の結構長い御答弁なのに、何もない。  先週、私、同じ趣旨のことを本会議代表質問で申しましたところ、橋本総理はかなり端的にお答えになったのです。外為法改正だけが行われ、規制緩和が行われないような市場というものは存立し得るかといえば、それは無理でしょうと。つまり、順番は規制緩和が先だということを言っておられると思いますね、これは。外為法改正だけではだめなのだと言っておられるわけです。  ですから、内閣不一致と言って騒ぐつもりはないけれども、やはりこれは三塚蔵相が、来年四月の外為法施行までに、これこれの規制緩和、税制改正はやるよということを責任あるお立場でおっしゃった方が、国民は安心すると思うのです。さっきちょっと、いやいや金融ビッグバンの計画もいろいろあるとおっしゃいましたが、行政改革の計画、この前改正になったものが出ましたが、あれを見ると、一番早いのがことしの六月に結論を出すよと、これは金制や証取審あるいは保険審議会等から答申が来るから、それを見てお考えになる、そういうのが来年三月までに結論を出すよと書いてありますね。結論出すよの段階ではなくて、もう実行の中身を言っていただかないといけない段階だと思いますので、それで蔵相にお願いをしているわけです。  フロントランナーなどとおっしゃらないで、その前にきちっと規制緩和あるいは税制国際標準化の方針を決め、実施の準備に入るというふうに言っていただかないとこれは危ないなというふうに思いますが、恐らくそういう趣旨でございましょうね。フロントランナーじゃないのでしょうね。本当の一番前じゃないのでしょうね。いかがでございますか。
  29. 榊原英資

    榊原政府委員 今大蔵大臣から申し上げましたとおり、規制の緩和全般を実施していくということが非常に重要なことだという認識は私どもしているところでございます。  ただ、一点、若干反論させていただきますと、アメリカの例でもイギリスの例でも、金融の大きな規制の緩和をやる場合には、外為関係規制の緩和が一番最初に来て、それで、それと余り時を隔てずに国内規制の緩和が進むというのが通常のパターンでございまして、もちろん先生おっしゃるように、それから大きく間隔があいて国内規制の緩和ということになると空洞化が進むということになるかと思いますけれども、来年四月以降、次々と金融関連の規制が緩和されるということでございますので、おっしゃるような空洞化の御心配はないというふうに思っております。
  30. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 私は、海外の例はむしろ反面教師だと思っているのです。アメリカ為替管理自由化しているときにぼんと利子平衡税を入れたりしたものだから、一種の空洞化が起きているのです。それから、イギリスでも為替管理撤廃の方が先行していて、やはりイギリスの金融市場の地盤沈下が起きてきて、ビッグバンで慌ててそれを取り戻すわけです。  ですから、国金局長のお話は、海外でもそうだというのは私も承知していますが、それは日本が見習うべき例ではなくて、日本はああいう混乱を避けるためにも、やはり外為自由化の前に、それにきちっと間に合うように規制緩和、税制国際標準化の具体的な方針を決めて発表し、民間に準備させていくということが極めて大事だというふうに申し上げておきたいと思います。その点は、もう恐らく御異論のないところだろうと思います。  さて、フロントランナーの話はこれぐらいにいたしまして、具体的に、この外為法改正金融システムに対するインパクトから質問をさせていただきたいと思います。  私は、外為法改正、そして、フロントか後かは知りませんが、それと相前後してさまざまの規制緩和が行われる、金融ビッグバンが二〇〇一年に向かって進んでいく。外為法改正するのですから、海外金融機関も入ってきて、弱肉強食の激しい競争が起こってくる。それをねらっているわけですが、それによって日本金融システム市場の効率が高まって、日本経済にとってプラスになる、国民経済の向上にもつながっていくということをねらってやるわけですから、弱肉強食の競争は、私はこれは当然だと思っております。しかし、弱肉強食の競争の結果、預金取扱金融機関の破綻が生ずる、それで、それに対するセーフティーネットがしっかり張ってないということになりますと、金融システム、特に決済システムの動揺が起きたら大変だという話になるわけであります。  私が本会議質問をしましたのは、その準備は大丈夫か、今のままぽんと外為法改正すると危ないんじゃないかということを申し上げました。それに対するお答えは、金融三法の枠組みを最大限活用することによって、金融システム安定に細心の注意を払ってまいりますというのが総理のお答えでした。  総理はここにいらっしゃいませんので蔵相にお伺いいたしますが、金融三法の枠組み、金融三法を含めてできている今のセーフティーネット、具体的に何を指しているのですか。
  31. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  金融三法を成立させていただきましたその内容でございますが、まず特徴的なことは、預金者に自己責任を問うことが困難な当分の間、預金の全額を保護し得る時限的な制度を整備させていただいたわけでございます。そのために、預金保険料の七倍への引き上げ、それから、預金保険機構の信用組合特別勘定に係る借り入れに対して政府が保証し得る制度を導入させていただきました。このほか、金融機関の健全性確保のための新しい監督手法である早期是正措置の導入など、また、裁判手続の簡素化等を盛り込んだものが金融三法でございます。
  32. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 銀行局長、ありがとうございました。  私は、その金融三法で十分なセーフティーネットかどうか、すこぶる疑問に思います。例えば、今おっしゃらなかったけれども、信用組合に公的資金を投入する、政府保証するということは、後で公的資金があるという道が金融三法で開けておりますが、私は、信用組合だけで大丈夫かなということが第一の疑問。  それから二番目に、早期是正措置は大変結構なんですが、しかし、今みたいに不良債権がたくさんある状態、その整理がまだ十分に進んでいない状態で、来年四月から早期是正措置を導入したときに何が起きるだろうか。これは山口局長のお耳にも入っていると思いますけれども、私も、信金あるいは第二地銀などの経営者の話を聞きますと、あれ、本当にやれと言っているんでしょうかねと言う人がいるのですね。本当に正直にディスクローズしていいのでしょうかね。非常に内容が悪い、きちっと不良債権を査定して、それを引いて実質自己資本を出すと、えらい自己資本比率の低いところがあちこちにある。そういうことはみんな知っていて黙っているんだけれども、それを本当にディスクローズさせられるんでしょうかね、あるいは、その辺少し甘くして、みんなが驚かないようにしなければいけないんでしょうかね、こういうことを、酒のさかなとは言わないが、年じゅう出てきますよ。  ですから、この早期是正措置ももちろん必要なことではあるけれども、この時期に入れて大丈夫か。それも、外為法改正自由化して、敵軍が押し寄せてくる、海外金融機関が押し寄せてくる。いろいろなことが自由になって、弱肉強食の世界が起きてきて、経営に問題がある金融機関がびくびくしているときに、おまえ、正直に全部ディスクローズせよというような話ですね。これは大丈夫なのかなと思っているのですよ。セーフティーネットとして将来こういうものは必要だけれども、これは今のセーフティーネットとして大丈夫かな、逆効果がないのかね。  山口局長は十分御存じだと思いますが、アメリカが早期是正措置を入れたのは九二年十二月ですよね。ということは、もう不良債権処理は終わっているわけですよ。二十兆円の公的資金を入れて、十兆円戻ったと言っていますが、それを入れてばあっと整理したのは、八九年から数年で一気にいっているのですね。その後入れているわけですね。だから、これも金融三法でつくったセーフティーネットでございます、それはそのとおりですが、これはセーフティーネットとしてきくのかねという点。  それから三番目に、預金保険、七倍にして〇・○八%の保険料にしたわけですね。年間五千億なわけで、二〇〇一年まで五年として、二兆五千だというわけですが、御承知のように、木津だけで一兆円飛んじゃったじゃないか、これからいろいろなことが起きてきたら、こんなものじゃとても足りないでしょうというのが、専門家の間では常識的な会話として年じゅう言っているのですね。  ですから、私は、金融三法で出てきている、今私、三点申し上げました、こんなセーフティーネットで大丈夫なのかなと思うのですが、日銀総裁、いかがでございましょうか。総裁のお立場では大丈夫だと言わざるを得ないかもしれませんが、私は、今申し上げたような点を心配しているのでございます。
  33. 松下康雄

    松下参考人 外為法改正、それから、それに伴う日本ビッグバン等の実現につきましては、全体として、我が国の金融機関や当局一体となって取り組むべきところの極めて重要な課題でございます。こういった改革の中で、競争原理の貫徹を目指して前進をしょうということでございますから、当然、市場による金融機関の選別というものもより一層厳しくなることも避けられないところでございます。  しかしながら、競争メカニズムに支えられた効率的で健全な金融システムを実現してまいることによりまして得られる国民経済的な利益は非常に大きゅうございまして、ニューヨークロンドン等の例に見ましても、やはり、金融資本市場が活性化をしますと、金融証券産業全体のパイが明らかに大きく拡大をしまして、個々の金融機関にとりましても新たなビジネスチャンスが生まれるということでございます。  こういうことを目指して進もうということでございますけれども、そういった構造改革の過程の中におきまして、個々の金融機関の経営破綻が金融システム全体の安定を揺るがすようなことがあってはならないということは、これは当然のことでございます。この点につきましての、昨年の金融三法の成立によりますところのいろいろな対応手段の拡充、金融機関の破綻処理のための包括的な枠組みの整備ということにつきましては、やはりその後の事例が示しますように、現在のところ、当初の期待されている方向での必要な破綻対応策というものが今日まで行われてまいったところでございまして、私どもとしましては、今後万一金融機関の破綻といったような事態が生じるような場合におきましても、その内容に応じてそれぞれのケースで十分に対応し得る体制が整備されたものであると考えております。  また、私どもといたしましては、当然、中央銀行の立場としまして、問題のある金融機関が自己の再建のために真剣な努力を行っておられる間に、例えば一時的な原因から流動性の困難に逢着するといったような場合におきましては、最後の貸し手機能を発揮いたしまして、こういったものに対する流動性の供与につきまして十分しっかりとした支援を行ってまいる考えでございますので、現在ございますところの金融三法を中心としました対応のシステムと私ども中央銀行としての役割、そういうものの組み合わせによりまして万全の対策をとってまいりたいというふうに考えております。
  34. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 順序が前後して申しわけございませんが、三塚蔵相、同じく今私が言った三点、金融三法できちっと手当てしているとおっしゃるが、信用組合にしか公的資金が入らないじゃないか。預金保険料を七倍に引き上げたって、二〇〇一年までに二・五兆円じゃないか。もうとうに一兆円はすっ飛んじゃっているのじゃないのか。それから、早期是正措置は結構だが、この段階で入れて、ディスクローズして、自己資本比率、それも実質ベースで見たら低い金融機関があちこちにあるよなんということがばれてしまって大丈夫か。この三点でございますが、今のセーフティーネットで本当に大丈夫なのでしょうか。
  35. 山口公生

    ○山口政府委員 大臣の答弁の前に、事実関係を中心に若干お話をさせていただきたいと思います。  一番圧の信用組合だけで大丈夫かという問題と、それから三番目におっしゃいました預金保険機構が十分に対応できるかということはかなり似通った問題提起だというふうに私は受けとめましたので、預金保険機構の現状を申し上げたいと思います。  先ほど御紹介いたしましたように、八年度から保険料の料率を七倍に引き上げさせていただきました。そうしますと、今後五年間の利用可能額というのは、それまでの責任準備金と一緒に足しますと二・七兆円になるわけでございます。今委員指摘の二・五兆円にほぼ近いわけでございますが、正確に言うと二・七兆円でございまして、八年度から起算して、その後にこの同機構が資金贈与したケースは六件、これは木津も含まれております。これが合計しますと一・三兆円でございまして、御指摘になりましたように木津信組の場合は、そのうち一兆円を占める大変巨額なものであったわけでございます。  したがいまして、五年間について二・七兆円と申し上げましたので、今は資金は不足しておりまして日銀から借り入れをやっているような状態でございます。ただ、これは毎年五千億程度入ってまいりますので、それはいずれ返済できるということでございます。  なお、最初に御紹介しましたように、信組の分については政府保証がつけてございますから、木津の方もそうでございますけれども、二、七兆円というのがリミットと考えるべきかどうか。それに、信組の分は政府のそういった保証をつけていただいているという面がありますので、まだ使える金が幾らあるかというのは別途の計算ができるかと思うわけでございます。  そうしたことを頭に入れた場合、及び八年度に導入された特別保険料率については十年度末に見直しをするということにもなっておるわけでございます。そうしたことを総合的に考えたときに、今の段階でこのセーフティーネットとしての財源が足りないというような判断をすべきかどうかということだろうと思うのでございます。  今後の経済情勢、金融情勢あるいは今御指摘の競争激化というものがどれくらい破綻という問題を招来するのかということの予測というのはなかなか難しゅうございます。非常に経営は厳しくなるとは思いますけれども、各金融機関とも相当なリストラと懸命な努力をしておりますので、その辺は、今の段階ではこれで対応するという方針で政府としてはいっているということを御理解いただきたいと思うわけでございます。  それから、二番目に申されました早期是正措置につきましては、確かに、これまでの企業会計の考え方からしまして、銀行にとってみますと相当厳しいという御指摘があるかもしれませんが、本来やるべきものをようやくやるのかという議論もあるわけでございます。したがいまして、自己責任を問うような時代になっていくのを見渡していきますと、こういった、きちんと金融機関自身が自己査定を行い、また外部のチェックを行い、それをきちんと金融機関がこなしていくということはどうしても必要だろうと思うわけでございます。  確かに、これまでの経営者にとってみますといろいろ厳しいという声があることも聞いております。ただ、早期是正措置は来年の四月からでございまして、そうした懸念もあるという配慮もありまして、昨年の十二月の段階でこういった基準でやらせていただきますという基本的な方針だけは既に示してございますので、各金融機関ともにかなり今積極的に自己資本の充実、資産の圧縮あるいはリストラ、あるいは特に信金等で目覚ましいのでございますが、どんどん合併ということが起きております。そういった自助努力がかなり今進んでいるということ。  それから、この早期是正措置自体の中にも、きめ細かいというのは僭越でございますけれども、制度導入時に既に合理的な経営改善計画が現実可能なものが入っておる場合には経過的な取り扱いの必要性についても言及してございまして、そういったところについてはやはり実態によく即した運用を行っていくというような考え方でいっておりますので、金融機関にとって厳しい措置であることは否定いたしませんけれども、どうしてもこれを乗り越えていっていただきたいというふうに切に思っているわけでございます。
  36. 三塚博

    三塚国務大臣 今、山口局長が具体的な内容について申されたとおりであります。特に、信組だけであとはどうするの、公的資金どうするのということを鈴木さんは言いたいところだと思います。  問題は、企業でありますから、みずから生き延びるための最大の努力をしていくというこの一点に尽きるのですね。拓銀、道銀なんというのは私は高く評価しているわけです。ライバルであった両銀行が最終的にトップ同士の、これからの金融のあり方、地域銀行としての取り組み方、ビッグバン体制に対応して道民の信認を得つつ期待にこたえていきたいという、二階でなく三階から飛びおりる気持ちでやられたと承りました。そういうことも企業努力。  今後、来年四月一日のディスクロージャーに向けて頑張るということ、これは、従前の経営方針は果たしてよかったのか、またこのままでいいのかという総点検の中で、金融システム改革の中で取り組まなければならぬわけでございますから、そういうきっかけを苦い体験の中で皆さんが与えられた、また求めてその中で乗り切るという経営銀行も幾つかありますことも聞いておるところでございます。不良債権が出てくるのも当たり前でしょう。しかし、それは償却できる、償還できるという具体的な対応がそこに示されてきますと、その銀行の規約と経営の方針というのが明確になるわけでございますから、そういう点なども大きなプラス点に変わっていくのではないでしょうか。  国民は、特にマーケットを通じて国民は、それぞれの銀行の実態に接したい、また、知りたい、こういうことですから、積極的にそれを打ち出すというのは自由主義市場における企業としての責任ではないでしょうか。恐れおののくことよりも、この開国の厳しい事態に立って、積極的に地域のために、国家のために果たすということでいかれることを期待をしておるわけでございますし、その限りにおいては万全の体制でこれをサポートすることは、金融当局大蔵省としては、また日銀にも、総裁ただいま本件についての見解披露などもありました、そんなことでありますので、懸念は懸念として承らせていただきますが、ひとつ、日銀の理事もやられ、シンクタンクの会長さんもやられ、日本を代表する専門家でありますので、サポート等をぜひお願いを申し上げる次第であります。
  37. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ありがとうございました。  私は、サポートするつもりで、心配の余り言っております。批判のしっ放しじゃなくて、ああしたらどう、こうしたらどうというインプリケーションを常に言っているつもりでございます。  山口局長にお答えいただきまして、銀行局さんが非常にきめ細かく対応しようとしている努力、今御説明のありました点は高く評価するものでございます。  それから、蔵相から決意を披瀝いただきました。大いにその精神で頑張っていただきたいと思いますが、蔵相のいわゆる自主再建の話を伺っているうちに、日債銀の再建問題が恐らく頭の中にあっておっしゃっているなというふうに思いながら伺っておりました。日債銀についてはこの委員会でまた改めていたしますが、今のこのコンテクストの中で、ちょっと蔵相及び日銀総裁にお伺いしたいと思います。  といいますのは、きめ細かい努力を山口局長さん以下銀行局がやっておられるのは高く評価するものでありますが、日債銀クラスのところが揺れ始めると、今の金融三法に基づくセーフティーネットではだめであって、足りないのであって、何か新しいセーフティーネットの張り直しの話になりかねない。だから伺うわけでございます。  私は、日債銀の再建の話を聞いてまず最初に、えっ、これは順序が逆じゃないかと思ったことがあります。蔵相並びに日銀総裁にお伺いいたしますが、大蔵省の検査はこれから入るわけですね。日債銀の再建計画というのは、自己査定に基づく回収不能債権はどのくらいとかなんとかという数字をもとにして自主再建計画が出てきたわけですね。そうしたら大蔵省は、検査にも入らないうちから、ああ、この再建計画は結構だ、みんな協力しなさいと言って民間に呼びかけている。はてな、何のために検査に行くのだろうと。検査に行ってから、自己査定を全部見て、日債銀の内部の数字をしっかりつかんで、その上で、この再建計画は実行可能だ、あるいは無理だとかという判断になるなら普通の順序ですが、順序が逆じゃないかと。私は、二つのことを考えたわけですよ。さては大蔵検査なんていうのは形だけで、もう大蔵省日本銀行も、日債銀の自己査定を査定し直して、内部のことを全部つかんでいるのかな、そうじゃなければ民間に向かってこの三千億の増資に協力しなさいなんて言えないだろうということを一つ考えたのです。もしそうだとすると、国民をだましているといいますか、不透明ですよね。実はおれたちはちゃんとチェックしたと言ってくれなきゃ困りますよ。  そうじゃないと、これはやはり無責任ですね。これから入っていって本格的に検査して、その結果、自己査定以上に回収不能債権があって、これを引いてみたら資本金がマイナスになっちゃって、これは債務超過だなんということになったら、その前に民間に向かって三千億の増資を協力せいなんて呼びかけたのは無責任至極ということになりますね。  だから、何かうそをついているというか、隠しているのか無責任か二つ一つになっちゃうじゃないかと。率直にお伺いいたしますが、どちらでございましょうか、大蔵大臣日本銀行総裁
  38. 山口公生

    ○山口政府委員 確かに委員のおっしゃるような御指摘がなされていることも承知しておりますけれども、この日債銀は、破綻の処理という問題ではございません。日債銀のあくまで再建策でございまして、案をつくっておりますのは、日銀や大蔵省がいろいろサポートはしておりますけれども、あくまで日債銀がつくるものでございます。御承知のように、厳しいリストラ、それから資本増強策というものがあるわけでございます。したがって、日債銀が自分で対外的に説明できる数字でもってこれを説得していくということであるわけでございます。これが破綻処理でありますと、検査が入って、実質幾らというような議論になると思いますけれども、あくまでそういうものだと思います。  そこで、日債銀は、私どもが報告を聞いておりますところによりますと、財務の状況につきましては、この再建策を策定するに当たりまして、改めて監査法人と十分に協議しながら自己査定を行っておるということでございまして、私どもとしましても、その査定をどういうふうにやったのかというような、きちっとした監査法人が見たのかというようなことは一応のチェックはしておるわけでございます。そうした自己査定がもとになっての再建策であるということを御理解いただきたいというふうに思うわけでございます。
  39. 松下康雄

    松下参考人 日債銀の再建策の内容を見ますというと、これは、前例を見ないような徹底したリストラを実施いたしまして不良債権の早期処理を行い、これに伴って必要となります自己資本の復元を図るということでございます。これらによりまして同行の財務的な再建は十分可能であるというふうに考えておりますし、また将来につきましては、日債銀は、これまで培ってまいりました不動産や債権の証券化、流動化、あるいは金融派生商品を活用した企業リスクマネジメント、これらに関します金融技術を活用して、中堅・中小企業を中心とした創業時以来の取引関係の振興を図って、企業体としての再建を目指していくということでございまして、私どももその考え方を評価しているところでございます。  その際の日債銀自体の経営内容についてでございますけれども、ただいま銀行局長からもお話がございましたように、同行の行った自己査定、それから監査法人の行いました事前監査に基づきまして、償却、引き当てが妥当であるとされたすべての不良債権の処理を行うということで約四千六百億円の損失計上等を行ったわけでございます。これらの経理の結果、同行の資本勘定は約一千億円弱にまで減少することになるわけでございますけれども、これは総資産額に比しますと確かに過少ではございますが、決して債務超過の状況にはないということで、私どもも、資本の再充実につきまして、日本銀行としての措置をとってまいるということを決めたわけでございます。  また、同行の自己査定の内容でございますけれども、私どもは通常行っております考査の合間に必要に応じましてフォローアップの調査もいたしまして、日債銀につきましては、比較的近い時期にそういったフォローアップを行っております。  また、今回の自己査定の内容につきましては、私どもの考査の専門家を派遣いたしまして、先方におきましていろいろ話を聞きまして、内容の調査、確認を行いましたので、私どもとしては、その限りでは同行の計算について妥当なものだという認識を持っている次第でございます。
  40. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいまの山口局長からの話に尽きるのであります。日銀総裁のお話でも御理解いただけたと思うのですが、総裁の今の答弁と私のこれから申そうとしている基調は同じでございます。  ポイントは、自己査定、監査法人とも十分な協議の中の最終的な自己査定、こういうものが出てくる、その報告を受ける、それで、きちっとそれをチェックすることは当然の業務ですから、そのとおりチェックをし、報告を願いたい、大臣としてそう申し上げたところであります。  それと、債務超過状態にないということでございます。それと、再建策が、もう御案内のとおり必死の背水の体制でこれに臨む。こういうことを私なりに確認したとあえて申し上げます。そんなことどもの中で、この努力をサポートすることは当然である、こう思った次第であります。
  41. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 どうもありがとうございました。  日銀総裁が、日銀考査局のベテランが自己査定をチェックしたと言ってくださった。これは公表されているかどうか知りませんが、そういうことはぜひ言っていただくとみんな安心すると思うのです。自己査定によればと言うのではなくて、恐らく大蔵省も一緒になってやっているのじゃないかと私は思いますが、大蔵省、日銀の目で自己査定をもう一度見直したよ、だからこれは信用していい数字だと思うので、この数字に基づく再建計画への協力を呼びかけているんだと言ってくれた方が関係者、国民は安心すると思うのです。  監査法人が見たと。これは、監査法人を疑っては悪いですが、時々一倒産してふたを開けてみたら何倍も不良債権があった、今まで発表していた決算書は何だ、だれが監査していたんだといったような話がごろごろしているものですから、だから、監査法人が見ましたよだけじゃ今や余り信用しない人もいるのですね。  だから、ぜひこういうところははっきりディスクローズといいますか、実はこれは非常に大変なケース、重要なケースだから大蔵省と日銀が内々に入っていって調べたと言ってくだされば、ああそうか、だからこれから行く大蔵省監査というのはそんなに意味を置かなくていいのかな、検査前でも信用していいのかなとかいう話になると思うのです。それを要望させていただきます。  しかし、それにしても、債務超過じゃないとおっしゃるのはいまいち腑に落ちないですよ。だって、あれだけドラスチックに資産やなんかを売って、他方、自己資本が、これはBIS基準のティアーでございましょうね、一千億というのは。何もかも合わせて資本勘定がたったの一千億だったら、やはり資産側に隠れている回収不能債権ははるかに大きくて、これは債務超過じゃないのだろうかというふうに思いがちですね。  ですから、山口局長、あの再建計画で建物を全部売り払ってしまうとかなんとかいって、そのあげくの果てに資本勘定がたったの一千億になってしまって、なおかつ残っている不良債権、特に回収不能債権、どのくらいあるのですか。それによってはやはり債務超過かもしれないと思わざるを得ないのですが。
  42. 山口公生

    ○山口政府委員 日債銀の場合、委員よく御存じのように、これは市場性を持った金融債というもので資金調達をしているわけでございます。したがって、市場の信認をから得るということは最も大切だ。したがって、かなり思い切ったことをやらざるを得ないという銀行だと思うわけでございます。  そこで、日債銀の公表ベースの、いわゆる破綻、延滞、金利減免、経営支援、そこまで入れた合計額で公表されている数字だと、これは不良債権でございますから回収不能・可能とは別でございます、よく誤解される面があるので、そこを念頭に置いて御説明させていただきますと、約二兆二千六百億円でございます。今回の不良債権処理により、そのうち六千百億円を引き当てたことになります。これによりまして、いわゆる引き当て率というのをよく使うのでございますが、それが従来の約二四%から約四八%へ大きく向上いたします。この四八%といいますのは、他の大手銀行と比べても高い部類に属するわけでございます。  したがいまして、そういった思い切った努力をすることによって市場の信認をかち得ようということが今回の日債銀の再建案の中身だと承知しております。
  43. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 引き当て率の四八%はいいのですが、自己資本が物すごく減ってしまっているわけですね。それとの関係で債務超過かどうか判定されてくるわけですよ。引き当てされてない部分にどのくらいの回収不能債権があるのでしょうか。
  44. 山口公生

    ○山口政府委員 企業会計上、今期償却すべきもの、つまり回収できないというものについては、全額引き当てております。
  45. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 全額引き当てて、もう回収不能債権はないということでありますので、それならば、そこまで説明してくだされば初めて、そうか、それではこの数字を信用していいとすれば、債務超過でないなということになると思うのです。  最後に、えっと思ったのは、今度の再建に当たって関係銀行への増資の呼びかけをしております。これが一種の奉加帳方式じゃないか、いい銀行に負担を押しつけていく、ある意味での護送船団方式ですね、そういう批判がございます。これについて、大蔵大臣日銀総裁はどのようにお考えでしょうか。
  46. 山口公生

    ○山口政府委員 事実関係について御説明申し上げます。  今回、日債銀が出資を要請している先を申し上げますと、一つに、大手株主の銀行でございます。これは、もし再建がされずに、将来万が一のことになりますと株主の権利は全部毀損されてしまうという状況にあるわけでございます。もし再建されて順調に業績が上がってくれば配当も受けることができますし、また、株式でございますから市場で売却もできるということで、投下資金を回収できるということになるわけでございます。  三カ所ありまして、もう一カ所は、劣後ローン提供の生損保でございます。これは、この劣後ローンの一部を資本に振りかえてもらいたいという要請でございますが、劣後ローンも債権としては劣後いたしますので、場合によっては毀損されてしまうという危険性があるわけでございます。したがって、そうしたところについては、株式に振りかえていただいたその株式が、将来、売却等で回収ができるあるいは配当を受けることができるという可能性が出てくるわけでございます。  それからもう一つ、長期信用銀行である興業銀行日本長期信用銀行、それから東京三菱銀行にも増資のお願いをしておりますが、これは金融債そのものに対する信頼性というものを高めてもらえるというメリットもあるわけでございます。  協力を要請いたします以上は、もちろんその受ける側の判断ということが一番重要なことでございますけれども、その要請した光といいますと、それぞれ何らかの形で、メリットと言うと語弊があるかもしれませんが、そういったものがあるというものでございまして、いわゆる奉加帳方式と言われることの意味、ちょっと定義とかいうのがよくわかりませんけれども、理屈なしに、むやみやたらに金をかき集めてというもし意味でありますと、そういう形には今回はなっておらないということを御理解いただきたいと思います。
  47. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 これで見事に日債銀が生き返れば、つぶれた場合よりもメリットがある、そういう連中に頼んでいるんだという意味は私もよくわかっております。だから、やはりポイントは、本当に生き返るかね、大丈夫かねという点だと思うのです。  以上、日債銀についていろいろ質問させていただきましたが、やはり国民に対してクリアになっていないところがあると思うのですよ。何で大蔵省の検査が後から入っていくのにせっせとこれを信用しろなんと言うのかなとか、今言った点ですね。それから、債務超過になっていない、なっていないと言うけれども、さっきのポイントは物すごく重要なんですよ。引き当てした後、もう回収不能債権はないんだ、それを日銀、大蔵が裏書きしたと言わなきゃ、これは一千億なんて過少資本になっている金融機関危ないぜということになるのですね、常識的には。  それから、今おっしゃった奉加帳方式でないという言い方、こういうところを国民にもっとよく説明をしていただきたいということを、大蔵省、日銀の両方の当局にお願いしたいと思います。  それにしても、どういうコンテクストで言っているかというところへ戻るわけですが、これから弱肉強食が強まっていく、そういう中で、今程度のセーフティーネットで大丈夫なのかねと。実は、危ない大銀行は日債銀だけではないので、御承知のように拓銀と道銀の合併が発表になりましたが、あれ聞いて多くの人は何と言ったか。悪いところ二つ一緒になってよくなるという理屈はどこにあるのかね、悪いところといいところが合併するならともかくとかいうコメントもあるのですね。  ですから、どうぞこれからは、今の金融三法に基づくセーフティーネットだけじゃ間に合わない可能性が大いにあるんだということで、三塚大蔵大臣、山崎政調会長に観測気球みたいにしてぽかぽかと公的資金の話とか金融債の保証とか言わせないで、やはりこういうところでしっかりディベートしなきゃいけないと思うのですね。今のセーフティーネットじゃ足りないんじゃないの、だから観測気球でぽかぽか山崎さんおっしゃるように、公的資金の投入のスキームをつくり直さなきゃいけないんじゃないのとか、それから金融債もペイオフしないと言っている二〇〇一年までは保証してやらなきゃいけないのかなとか、そういう議論をここでやらなきゃいけないと思うのですよ。  蔵相、私は、今の政府のお立場はとてもこの先維持できないんじゃないかと思っております。政府のお立場というのはどういうことかというと、住専処理でさんざんいろいろあったから、住専を含むノンバンクには公的資金入れません、これはまあいい。それから、金融三法では信組に公的資金が入る道ができている。それから三番目には、何となく国際公約になっている、二十のマネーセンターバンクはつぶさない、いわゆるツービッグツーフェール・ポリシーは維持していくんだ。これが今の政府の枠組みですが、私は、これは維持できないようなことが起きてくる可能性があるなというふうに思っています。もちろん日債銀が苦況に陥ればたちまち維持できないわけですが、そういうことでなくてもぽつんぽつんと倒産が起きてきて、さっき言いました預金保険のお金だけでは足りなくなるというケースも十分あり得るというふうに思うのですね。  ですから、蔵相にぜひお願いしたいのでありますが、はっきりと、もう少し公的資金導入のスキームを拡大しないと無理なんだとか、あるいは金融債、日債銀がつぶれるとは思わぬが、金融債というのは、これは預金のような決済手段ではないが、しかし預金取扱金融機関の発行する債券という意味で普通の社債とは違う、その意味決済システムと密接不可分なのがこの金融債だから、これもやはりペイオフをしない二〇〇一年までは保護していく、その後、二〇〇一年四月以降はペイオフもするんだから金融債は保護しないとか、何かそういう新しいセーフティーネットの強化、張り直しということを、ぜひ私ども新進党とも議論をしていただきたい。そういう形で、何か起きてからパッチワークでなくて、こういう原則的なセーフティーネットの話を私どもとしっかりしてほしいというふうに思うのですね。ですから、この場でも今言っているわけです。  蔵相、やはり今のセーフティーネットだけじゃ不安だと思うのは私だけではないと思うのですね。それだけだったら、公的資金投入のスキームとかあるいは金融債はやはり保護するといった方針とかを私どもと御議論いただいて、ある程度そういうことを言うことによって国民を安心させる、金融システムの安定について安心させる、これは非常に大事なことだと思うのですね。特に外為法改正で弱肉強食になるわけですから。いかがでございましょうか、大蔵大臣
  48. 三塚博

    三塚国務大臣 外為法、来年四月一日のスタートの時点に立つ問題点の指摘、さらに今日の金融状況等々の分析の中で御見識を、また御研究の分析の中の御提言、これは真剣に受けとめます。決して私ども等閑視しているわけではございません。国民の動向、また国会の論議というものを第一に考えながら今後に対応するという基本でありますので、私自身も、本件についてはそれぞれのポジションとともに研究をしていかなければならぬということで、真剣に検討をいたします。しかし、最終的にはやはり国民世論の動向であります。  それと、私は、鈴木委員のそれぞれの分析と指摘指摘としてしかと受けとめておるのでありますが、一点申し上げたいことは、それぞれの金融機関が来年四月の早期是正に向けて渾身の努力をしておることだけは間違いありません。不安の余り、四月ではなくもう一年延ばしてよというのもちらりと聞くこともあります。しかしながら、健全化のために、これまたディスクローズという、ディスクロージャーというのは、マーケットの声でありますから、国民の声でありますから、これに着実にこたえていかなければならないわけでありますので、そんな点も御勘案をしていただく。  あなた頼りでまた政府が何かをということでありますと、せっかく盛り上がりましたリストラ、生き残りの再建策、そして不良債権の解消に向けての努力に水を差すことがあってはならぬということで来ておるところでありますが、本件については、前段申し上げましたとおり真剣に勉強してまいります。
  49. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ありがとうございました。  この問題は特措法の問題と似たところがございまして、せっぱ詰まったら、これはもう無権原状態になっちゃうんだから、これ認めてよ。私どもも三つの条件をつけた上で賛成をすることにしたわけでございますが、これとちょっと似たところがございますね。何かのはずみに金融システムが危なくなったら、もう待ったなしですから、公的資金導入を認めてよと言われると、私どもだって責任野党だから、公的資金を入れなかったらえらいことだなというのが見えたときは考えざるを得ません。  しかし、それじゃだめであって、せっぱ詰まった段階じゃなくて、事前に、公的資金導入のスキーム、あるいは金融債はどうするかということを、私ども考え方をしっかりまとめておりますから、政府もあんな観測気球じゃなくて、正面から打ち出してこられることをぜひお願いしたいと思います。  それから、金融機関が一生懸命、自立再建に努力している、そのとおりでございますね。ただ、同時に非常な不安を持っていることも蔵相は御存じだと思いますので、よろしくその点は先ほどからお願いしていることをお考えいただきたいと思います。  最後に、残りました時間で、同じく金融資本市場に対するインパクト、あるいは金融システムに対するインパクトで、規制税制の絡みについて短い質問をさせていただきます。  規制緩和を最低限これだけやっておかないと、外為を自由化した後で日本使い勝手が悪いということで空洞化が進みますぞという、最低限これというものの第一に、私は、予算委員会で申しましたが、金利自由化は全部終わっておると言っているが、FB金利、政府短期証券が残っているじゃないか。これの自由化が非常に大事であって、公開入札等で民間に十数兆円のマーケットが常に存在している状態をつくれれば、円の国際化にも非常に寄与する。  国金局長は、そんなことをしたら為券の発行額を見ていれば介入資金がどうなっているかがばれちゃうとかいう議論をされていたのをちょっと聞きましたが、そんな小さな話ではありません。もっと大きな市場間競争、特に日本の円の国際化あるいは空洞化防止のために絶対必要な短期の政府債券の市場というものをつくる。これは大蔵省日本銀行で話し合いが進んでいるんだと思いますが、今どういう段階で、いつからFB金利自由化されるか。これが第一点でございます。  それから、非常に大事だと思いますのは、これは証券局に関係があるのですが、日本は資産運用について規制が強過ぎるのですね。特に有価証券が限定列挙主義ですし、市場集中原則が強過ぎるために、店頭に新しい商品を出すことについての規制が強過ぎる。外為法改正海外のいろいろな資産運用あるいは資産全体のキャッシュマネジメント的なサービス、商品がどんどん出てきますと、日本は受け身に立ちます。この有価証券の限定列挙主義、市場集中原則を緩和して、もっと店頭商品の開発の自由化を進める気はないのか。これが二番目でございます。  この二点、規制緩和に絡んで御質問をしておきます。
  50. 榊原英資

    榊原政府委員 為券等政府短期証券はほかに蔵券、糧券とございますけれども、政府短期証券の発行については、現状では委員指摘のような具体的な支障が生じているとは私ども思っておりません。ただ、日本の短期金融市場をさらに奥深いものにする、幅広いものにするというような観点から政府短期証券の取り扱いを今後どうするかということの重要性については、私どもも認識しておるつもりでございます。  ただ、政府短期証券と呼ばれるものはいわゆる資金繰り債と呼ばれるものでございまして、日本の国庫制度あるいは財政制度等の観点からも極めて重要な問題でございます。これを金融、財政両面から総合的に勘案していく必要があるということでございまして、ただ短期金融市場をつくるためにすべて公募したらいいんだというふうに簡単にはいかない問題ではございます。  ただ、御指摘の点は理解できないこともございませんので、私どもとしても、日本銀行大蔵省の実務家の間で研究会を組織いたしまして、この問題について幅広い検討を行っているところでございます。
  51. 山口公生

    ○山口政府委員 二番目の御質問の点につきましては、現在、証取審で総合部会を設けまして、有価証券の定義、あるいは市場集中原則をどうするかということを議論をしていただいておりまして、六月には結論を出すというふうに聞いておりますので、そのときには何らかの結論が出てくると思っております。
  52. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 いずれにしましても、両方とも勉強するのは結構です、あるいは審議会で審議するのも結構ですが、来年四月という期限があるわけですから、それまでに実施の方向でお願いしたいと思います。  最後に、税制でございます。  薄井局長日本にある有取税のようなものは、似たものがイギリスにはあるが、外国株には適用されない。そうすると、やはりこれは日本取引コストを明らかに高めている。特にニューヨーク市場、ユーロ市場と競争する上で。それから、先物の取引所税、これもSIMEXにはない。だからシンガポール市場と競争する上で大阪市場は不利になっています。  私は、ちょっと先回りしちゃいますが、恐らく、税制調査会あるいは主税局さんの頭の中では、これは来年度、平成十年度税制改革の中で、有取税と取引所税は場合によっては廃止かなというお考えがあると思うのですね。私は、それは大いに結構。新進党はかねてより、この前は法案を出したぐらいですから、一年おくれでもいいから廃止してくれ、こう思いますが、主税局は、税収が減っては困りますから恐らくその代償を求めるのだと思うのですね。どうするおつもりなのかということであります。  二つ私には考えられる。  キャピタルゲイン課税を強化して、しっかり把握する。そっちでいこう。この場合には、納番制でも入れてかなり制度をしっかりさせないと、今まで以上にしっかりキャピタルゲインを捕捉するのはできないかもしれないし、これをやるとキャピタルロスを引いてくれみたいな話も当然出てきますね。こっちの方向でいくのか。  それとも、現在申告分離課税あるいは源泉分離課税でいっている税率を上げて、有取税や何かの廃止の部分を取り戻しちゃおうとしているのか。しかし、こっちでいきますと、コストが上がるという点では有取税と同じ話になっちゃうのですね。  私は一応二つ方向が頭にありますが、まず第一に、有取税、取引所税を廃止しますかという質問。それはお答えできない、これからだとかいうお答えかもしれませんが、仮に廃止した場合に、今私が申し上げた二つの点をどうするおつもりかということについてお答えいただきたいと思います。
  53. 薄井信明

    ○薄井政府委員 まず、最初のお話でございますが、証券税制全体の中で、本年末までに検討いたしまして、平成十年度改正において適切に対応してまいりたいと思っておりますが、その内容につきましては、もう時間もございませんので端的に申し上げますと、これからでございますし、先ほどイギリスの話もありました。予算委員会でのやりとりも私覚えているわけですが、あの際にも「一概には」云々という答えをしたと思いますが、イギリスでは印紙税というものがあって、印紙税である以上、その課税文書がイギリス国内でつくられているかどうかということで課税されるものですから、名義書きかえがどうなっているかということで課税関係が出てくるわけです。そういう意味で、イギリスの印紙税が外国株を非課税にしているわけではないんですね。ただ、名義書きかえを日本株についてはイギリスで行っていないという場合には課税されないというケースになってくるというのが正確な表現かと思います。  一方、日本の有取税は法律に基づいて課税されるわけでございますから、英国で取引が事実上行われていても、実際の株のやりとりが、名義書きかえ等が日本で行われれば日本で課税されるという仕組みになっております。  そういう意味で、よくよその国には有取税がない、日本だけある、したがって、自由化になればやめないといけないと言われますが、そこは必ずしもそうでない。イギリスにおいても〇・五%の、内容はちょっと違いますけれども、課税制度が残っているということは厳然たる事実であるということでございます。  最後にもう一つ申し上げますと、二つ目の御質問に対する答弁にもなりますが、証券税制の中でどう考えるかというときに、キャピタルゲイン課税との関係がやはりどうしても問題になると思います。私ども、現在、総合課税ができないということから現状の制度をとっておりますが、もし有価証券取引税について何らかの緩和の方向改正する場合には、キャピタルゲイン課税について何ができるか。ただし、これは個人の場合ですので、有取税の税収を個人のキャピタルゲインで全部稼いでしまうということはこれはとてもできない話です。平成八年の税制改正で有取税を三割軽減いたしました。このときも相当大幅なネット減税でやっているのが事実です。  今後を考える場合に、有取税それからキャピタルゲイン課税、その両方の関係から本来の姿がどうあったらいいかということからアプローチしたいと思っておりますので、財源面では、税制全体あるいは金融税制全体、どこで賄っていくのか、これは年末にかけて考えていく話かと思っております。
  54. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ありがとうございました。長時間にわたりまして、蔵相並びに日銀総裁を含め、きっちとお答えをいただきましたことに感謝申し上げます。  では、これをもちまして私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  55. 額賀福志郎

    額賀委員長 委員会は午後一時に再開することとし、この際、休憩をいたします。     午後零時三分休憩      ――――◇―――――     午後一時六分開議
  56. 額賀福志郎

    額賀委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田清司君。
  57. 上田清司

    ○上田(清)委員 新進党の上田でございます。大臣には、大変お疲れのところ、午前に引き続き御苦労さまです。  既に鈴木先生の方からさまざまな御質疑がございましたが、外為法改正によりましていろいろな展開が可能になるというメリットの部分を、特に法案の趣旨説明の中で御説明をされております。こうした背景も、あるいは確かにさまざまな資料を見ますとわかるような気がします。  例えば、日米英の製造業、金融保険業の対GDP比の推移を見ますと、例えば、一九八〇年当時、イギリスの金融保険業のGDP比が約一二%ぐらいであったわけですが、いわゆる一九八六年のビッグバン以降、そのGDPのシェアがぐんぐん伸びてまいりまして約二〇%近い、そうしたシェアを占めるように至った経緯がございます。我が国は、それに比べますと、五%ぐらいをずっと続けております。ちょうどバブルの最盛期の一九八九年に七%程度に上がったわけでございますが、当時、ちょうどアメリカと同じぐらいのレベルだったのですが、現在アメリカは、八%近く金融保険業の対GDP比の部分がございます。こうした背景から、日本における金融保険業のいわば活性化、こういう視点からも外為法改正という形になったものだというふうに思われます。  そこで、昨日、きょうの議論の中で、榊原国際金融局長は、この改正によって雇用がふえる、所得がふえる、こういうお話を再三なされておりましたが、具体的にはどういうイメージでとらえておられるのか、まずこの点から御説明を賜りたいと思います。
  58. 榊原英資

    榊原政府委員 今回の外為法改正、あるいはそれに続く金融ビッグバンというのは、ある意味では、日本の東京市場あるいは日本金融機関の反転攻勢というふうにとらえていただいていいかと思います。  ニューヨークロンドンあるいはシンガポール、香港、そういうところにかなりの金融業務が出ていったというような事情があるわけでございますから、今回、グローバルな環境を東京に整えることによって東京市場を活性化し、また東京における金融機関の活動を活性化するということでございます。そういう活性化に成功すれば、当然のことながら、ロンドンニューヨークで起こったように雇用はふえてくるというように思われますし、また、ふえた雇用でつくっていく国民所得というものもふえていくというふうに思われますので、この外為法改正金融ビッグバンが成功すれば、雇用、所得ともに大幅にふえるのではないか、そういうふうに考えている次第でございます。
  59. 上田清司

    ○上田(清)委員 余り具体的なイメージが出てきませんが、昨日と同じようなお話ですので、これはちょっと深追いを避けますけれども鈴木同僚議員もお話をされましたように、メリットの部分ばかりじゃなくてデメリットの部分も相当予想されたのではないか、こんなことから、特に一千二百兆からの個人資産、それから資本逃避、こういったものも起こり得るのではないかなということが予想されております。  こういう点について、金融当局としていろいろな想定をされたというふうに思いますが、どういう想定でこのデメリットについて考えられてこられたか。そして、それについてのいわば対策をどのようになされているのか。この点についてもっと深い議論をさせていただければと思いますので、私なりに持っているものもございますが、まず局長の方から御説明いただければありがたいと思います。
  60. 榊原英資

    榊原政府委員 お答えいたします。  先ほどメリットのところで申し上げませんでしたけれどもメリット一つというのは当然投資家、消費者にとって非常に幅広い金融商品がアベイラブルになるということでございます。また、その取引が完全に自由になる、そういうメリットがあるということがあるわけでございますけれども委員指摘のデメリットというのはちょうどその反対の点がございまして、取引が非常に自由になるということでございますので、例えば犯罪、マネーロンダリング、そういうものに対する懸念というのは当然出てくるわけでございます。あるいは、場合によれば脱税というようなことも考えられるということでございます。  それからまた、投資家保護というようなことを考えませんと、もちろんこれは自己責任の原則ということを前提にしてでございますけれども、そういう新たな意味での投資家の保護ということも考えていかなければならないというふうに思っておるわけでございます。  午前中に主税局長の方から話がございましたけれども、課税回避的な行為を防止するために、一定金額以上の海外送金に関する資料情報制度の整備というものを今主税局で鋭意進めておるところでございます。  また、マネーロンダリングあるいは犯罪というようなものに対する対応といたしましては、一つ、今度両替商の業務について完全に自由化いたしますけれども、業務を行う者についての本人確認義務というようなものを課しております。  また、これは今回の自由化方向が若干違うわけでございますけれども、現金の輸出入、つまり税関を通るときに現金を持ち出す、あるいは持ち込むということについては、現在よりも若干厳し目の届け出、税関に対する事前の申告ということでございますけれども、現金を持ち出す、持ち込むときには一定金額以上は税関に事前に申告してもらうというような制度をつくるつもりでございます。まだ金額については明確に決めておりませんけれども、例えばアメリカ等の例ですと、大体一万ドル以上を持ち出す、持ち込むときには税関に申告をしていただく、こういうことになっておりますので、マネーロンダリングあるいは脱税、犯罪ということについては十分留意して法を執行していきたいというふうに思っている次第でございます。  また、消費者保護、投資家保護というようなことでございますと、例えばイギリス等の例ですと、金融サービス法というようなものが後でできたわけでございますけれども、我々も金融自由化が完成したような環境では投資家保護ということに対しても十分配慮をしていかなければならない、そういうふうに思っている次第でございます。
  61. 上田清司

    ○上田(清)委員 大変細かく御説明いただきましてありがとうございます。  なかんずく気になるところは、やはり、先ほども鈴木委員との議論の中で、局長は、いわば金融空洞化は心配ない、海外でもそうだ、イギリスでもよかったと。しかし鈴木議員の方から、そうじゃないだろう、最初に混乱したではないかと。まさしく金融空洞化にならないためには、日本ビッグバンの前倒しのためにさまざまな規制緩和や税制改正をやることの方が先決ではないかという議論をされました。私も実はそう思っております。例えば日本総研のリポートでもそうした議論がなされておりますし、あるいはこれは新聞報道でございますけれども、大和総研の制度調査室長のコメントなどでもやはりそうした懸念をコメントされております。  そういう点について、先ほどの中身の中で、鈴木議員が指摘されたまま、その論争の最後の詰めをやっておられませんので、ちょっと確認をさせてもらいたいのですが、まさしくビッグバンをする前にさまざまなそういう仕掛けをしておかないと、ビッグバンじゃなくてビッグバタンになってしまう。そういうことをきちっともう少しやるべきじゃないか、免じゃないかということを改めて詰めさせていただきたいというふうに思います。
  62. 榊原英資

    榊原政府委員 確かに御指摘のように、外為法だけが改正されてほかの規制の緩和が進まない場合には海外への資本の逃避ということが起こるわけでございますけれども規制の緩和が必ずしも同時でなくても、例えばビッグバンというのが全体としてどういうことになるのかといういわばブループリントというか計画というか、そういうものが十分示されていれば大きく資本が逃避するようなことはないだろうというふうに思っております。この六月には各審議会から答申が出てまいりまして大体のピクチャーというものができるわけでございます。  例えば、もう既に今までの情報でかなり海外金融機関なんかが動いておりまして、日本での業務を拡大するというようなことが次々いろいろなところで報告されております。例えば、けさの新聞なんかでも、特定の名前を挙げることは避けさせていただきますけれども、大手の米国系の証券会社が日本での株の活動を大きく拡張するという計画があるというようなことが報道されているところでございまして、日本から海外へというような動きがあると同時に、海外から国内へ、あるいは日本の資産へというような動きも非常にあるところでございます。  それから、空洞化についてもう一点指摘させていただきたいのです。  これは午前中も述べたところでございますけれども、確かに海外での外貨取引というのは非常に多くなるわけでございますけれども、これは為替リスクというものがございますから、当然為替リスクというものを勘案しながら個人も企業も動いていくということだと思います。  ちなみに、例えば居住者外貨預金というのは日本で自由になっているわけでございますけれども一この円安の局面ではむしろ居住者外貨預金が減っております。平成七年度末では四百五十四億ドルあったものが平成八年十二月末では二百八十億ドルというふうになっておりまして、これはむしろ円安になったメリットドル預金を売却することによって個人が得ているということでございますので、そういう取引が自由になれば、必ずしもどっとドル預金がふえるということではなくて、むしろ為替の動向を見ながら、場合によるとドルを円にかえるというような動きもあるわけでございますので、自由化そのものが資本流出ということにはならないというふうに考えております。
  63. 上田清司

    ○上田(清)委員 若干その辺についてはまだかみ合わない部分もございますが、議論は議論として承りたいというふうに思います。  そこで、野村証券なんかのいわゆる総会屋との癒着の問題があり、証券会社筆頭の野村にしてそうだというようなことで、大変今後のビッグバンに関して証券業界も太刀打ちができるのだろうかというような懸念もございますが、何よりもいわば経済の動脈と言われます銀行の不良債権が重くのしかかっておりまして、地価も下落しているような経緯の中で、その後住専国会で大変な議論があったわけでございますが、一体全体現在の金融機関の不良債権はどの程度あるのか、住専国会のさなかでは三十八兆円ということでございましたが、現在はどのようになっているのか、御説明をいただきたいと思います。
  64. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  不良債権総額、七年の九月で三十八兆、御指摘のとおりございました。これが八年の九月末で二十九兆二千二百八十億円でございます。要処理見込み額、すなわち、引き当てているものあるいは担保でカバーされているもの等を調整して引いた残りの要処理見込み額で申し上げますと、七年九月の三十八兆に対応するものが十八兆五千八百七十億円でございました。それが、八年の九月で、二十九兆に対応するものが七兆三千三十億円でございます。
  65. 上田清司

    ○上田(清)委員 そこで、先ほどもちょっと議論になりましたけれども、不良債権の額に関して、なかなか信用ならないのじゃないかと。木津信も兵庫銀行も太平洋銀行も、破綻して、ふたをあけてしまえば実際は十倍二十倍という話がたくさん出てきておる。今後、銀行が破綻した場合、実際の破綻額と発表された破綻額とが異なった場合、大蔵省は責任が持てるのですか、本当に。何度も何度も同じことをやっているのですね。このことについて、絶対間違いがありませんというような御答弁ができるのか、大蔵大臣、いかがでございますか。
  66. 山口公生

    ○山口政府委員 ちょっと事実関係を御説明申し上げたいと思います。  確かに、過去の破綻事例で、それまでの不良債権の公表額と比べて、破綻したときのいわゆる不良債権というのが非常にふえているという御指摘があるわけでございますが、以前の統計では破綻先だけを公表しておったというようなときに比べると、その数字のベースが違うということもありました。それからもう一つありますのは、破綻をいたした後に調べてみますと、つまり、その銀行がメーンバンクとなっておった取引先が行き詰まってしまう、そして、すぐよその銀行といっても、新しく担保を出さなくてはいけない、そういう取引はできないというようなことで、破綻した場合の不良債権額あるいは回収不能債権額というのは非常にふえる傾向にあります。したがって、銀行が健全で運営しているときの不良債権額と、それから破綻した後で調べて預金保険機構が出すときに前提となる数字というのは、そういう意味ではかなり違ってまいります。そういうことでございます。  それから、先生の御指摘は、まあそういうこともあるだろうけれども、もともときちんきちんとやっているかというお話でございますが、実は、不良債権額というものを公表しておりますのは、破綻、延滞、金利減免というものでございまして、来年の四月には全金融機関がこれでそろうわけでございますが、ある意味では、どうしてそういう基準をつくるかといいますと、各金融機関が不良債権を勝手に、自分で、これは不良だ、不良でないということを判断しないように、こういった類別のものは必ずディスクローズしなさい、こういうことを決めているわけです。これは、金融制度調査会で、ディスクローズをどういう形でやった方が一番公平であり、また信じてもらえるかという議論をした結果、そういった基準でやっているわけでございます。  そうしますと、よく御批判がありまして、三十八兆とか二十九兆とか言っているけれども、信用できないのじゃないかという、先生もそういう御指摘がありましたけれども、それは、潜在的にそういったものがまた出てくる可能性があるじゃないかというような御議論をされる場合でございます。それは、金融機関が意図的にそういうものは隠してということではなくて、だれが見ても、客観的な基準でもって、それにひっかかるものはみんなディスクローズしなさいというような統一的な基準でやっておりまして、またそうでなければ、ある銀行は非常にまじめに提出する、ある銀行は、まあとれるからいいだろうといって不良債権にしないということがあってはいけませんので、そういった前提で集めている数字でございます。  ただし、不良債権額というのは、あくまで回収可能か不可能かということとは必ずしも一致しないものでございまして、破綻の問題となってきますと、今度は回収可能か不可能かという問題になりますので、ちょっとその辺の定義の問題もあるわけでございます。  しかし、また話を戻しますと、最近に至りまして、特に阪和銀行の破綻問題以降、公認会計士の皆様方が非常に厳しくチェックされておる。それから、これから早期是正措置を導入いたします。これはあくまで自己査定と厳しい外部チェックということでありまして、公認会計士の方々あるいは監査法人の方々が大変責任を重く感じておられます。ということで、以前にいろいろ御批判されたような事態はないだろうなというふうに思っておるわけでございます。
  67. 上田清司

    ○上田(清)委員 今の話の続きでございますが、そうしますと、山口局長、破綻先債権、延滞債権、金利減免債権、この三つをきちっと不良債権として位置づけて掌握した数字が先ほどの数字だというふうに理解してよろしいのですね。
  68. 山口公生

    ○山口政府委員 一部の金融機関においてはまだ、来年の四月にそろうところがございますが、ほとんどの銀行は、おっしゃったようなことでございます。
  69. 上田清司

    ○上田(清)委員 ほとんどの銀行というと、イメージはやはり都市銀あたりのイメージですか。特に信金とか地銀になってきますと、今言ったところの金利減免債権だとかそういったところを外してやっている経緯が過去に多かったので、結果的には中身が違うという形になってきているということを含めて、もう一度御確認をさせてください。
  70. 山口公生

    ○山口政府委員 申しわけございません。一つ訂正させていただきます。  今私が申し上げた数字には全部入っております。ただ一部来年の四月にならないとと申し上げたのは、一部の協同組織の機関においてディスクローズをまだしていないということでございまして、私が先生に御報告した数字は、預金扱い機関の全部が、破綻先、延滞、金利減免というのは全部入ってございます。申しわけございません。
  71. 上田清司

    ○上田(清)委員 そうした形で、これは確かに、低金利政策とかで銀行をカバーする形で、急速と言うべきか、相変わらずと言うべきか、なかなか評価のしがたいところでありますが、三十八兆あるいは二十九兆というこの重みをどんなふうに考えるか、大変難しいところでありますけれども。  同じように、これを本当に償却しない限り、なかなか本当の意味でのビッグバンという形での環境整備にならないのじゃないか。ある意味では、本当にやるんだということであれば、先ほど鈴木議員の方も言っておられましたけれども、一体この不良債権をどうするんだということに関して、これは政府として、大蔵省として、ここらできちっとした考え方を持たなくちゃいけない。ペイオフをしないということを言っているわけですから、もう考え方としては公的資金の導入しかない。住専とかああいう形ではなくて、何かわけのわからない形じゃなくて、責任をきちっと明らかにした上でそのことをやらない限り、なかなかこれは、足かせ手かせになって、私は本当の意味での金融自由化ビッグバンにはならないのじゃないかというふうな考え方を持っております。  大蔵大臣、先ほど御答弁をされましたけれども、例によってはっきりしなかったので、ぜひはっきりした答弁を、検討するのかしないのか、あるいはもう決断しているのか、していないのか、ぜひ御答弁いただければありがたいと思っております。
  72. 三塚博

    三塚国務大臣 はっきりしないと言われましたけれども、丁寧に申し上げておるところであります。算数のように一足す一が二になれば、これは明快な答弁でありますけれども、生き物の経済社会。そして、大きな波の中で、いわゆるバブル崩壊。その後に起きた経済状況、社会状況。よく言われる、土地は半分以下あるいは三分の一、資産価値がまさに担保力とともに下落をしていく。それと、何重かの担保に入っておることによりまして、御案内のとおり、所有者がかわる、また偽装的な所有者などが出てきまして、法的処理がなかなか難しい。こういう中におきまして、公的資金の問題いかん。  こういうことになりますと、基本的に、自己責任という大原則、これは資本主義社会、自由主義社会の大原則ですから、これを踏まえて、精いっぱいといいますか、あらん限りの努力をして結論を出してくるということ。個別の金融機関ということになりますと当然そういうことでございまして、債務超過がありますと、業務停止命令を含めた措置を考えざるを得ない。しかし、それが、全体的な流れの中で、金融機関全体がそうであるということであれば、これはまさに論外の世界でありまして、前段申し上げましたとおり、私は、不良債権を抱えながらも、その償却に向けてありとあらゆる許される手段を講じていっておりますねと。そして、新しい経営方針を打ち立てることによって一日も早く信頼をかち取りたい、こういうことで再建策のもとにリストラが行われていくということが片方にあります。  そして、銀行局長が報告をいたしました、三十八兆八百六十億円から三十四兆七千九百九十億円に不良債権は減りましたと。要処理見込み額も御案内のとおりの報告でございます。そういう中で、これを着実に取り進めていくということ。もとの総額に不確定要素があるのではないかということでありますが、大蔵省当局として、全能力を駆使しまして確定をしているわけですから、これを信頼をしていく。信頼をして、大蔵省として、努力をする金融機関に対するサポート、これをどう進めるか、こういうことであろうと思います。  私は報告を受ける側で、その都度問題点の指摘もしてまいってきておるわけでございますが、着実に処理は進んでおると信じております。個別金融機関の経営状態はさまざまでありますけれども金融機関全体といたしますと不良債権問題を克服することが可能でありますから、その一点を見詰め、激励、督励し、時に監督庁の立場から、本件に対するさらなる踏み込んだ努力をせしめるようにしていかなければならぬということで今日取り進めておるところであり、公的資金導入というのは、やはり国民負担、タックスでありますから、後ほどそれは返しますよという、当然ながらそういうことはあると思いますけれども、国民世論の中で取り組んでいかなければなりませんし、国会の論議をしっかりと踏まえながらしていかなければなりませんし、当然、主管大臣とすれば、危機管理という基本的な概念はあります。  そういう意味で、鈴木さんにお答えを申し上げたのは、真剣に勉強してまいりますと、これにあらゆる意味を含めて申し上げさせていただきました。御理解のほどお願いを申し上げます。
  73. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。  釈迦に説法だというふうに思いますが、今の超低金利政策は、基本的にはやはり銀行救済策だというふうに私は理解をしております。  この銀行救済策をするために、結果的には預金者や年金者が泣いている、この部分があります。また、そうすることによって銀行は逆ざやで利益をたくさん出すことが可能になりますから、回収が後回しになってくるというサイクルの方に回ってくる。私はそんなふうに理解しておりますから、担保不動産は一向に減らない、塩漬けのままになる、土地がそのまま凍結される形になって流動化が進まない、したがって、地価の下落、低迷が続く、それがまた景気停滞につながり、なかなか金利を元に戻すことができない。ある意味では、この悪魔の経済の循環になっているのではないかなというふうに私は考えております。  この悪魔の悪循環を断ち切らない限り、ある意味では不良債権の処理もできませんし、経済もいわゆる全体的なボトムアップができなくて、まさしくそういう全体の流れ関係のない部分だけが突出して、景気がいい部分だけが出てくるというような形になって、なかなか全体としての底上げができないというふうに私は思っております。  この超低金利政策というものについて何とかもう考えなくちゃいけない、そういう意味との関連の中で、不良債権を早く片づけていくという考え方に立たなきゃいけない、こんなふうに私は思っておりますが、大臣、いかがでございますか、この考え方について。
  74. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま委員が、超低利金融政策は、まさに金融不安を取り除く、銀行援助のしからしむるところではないのかという御指摘でありますが、私からは、決してそうではないと。  バブル崩壊後の低迷状態から脱するために、財政の出動を補正予算ということで何回か試み、今日まで参りました。それなりの下支えはあったわけでございますが、膨大な赤字を残す、後世に負担を残す結果となってしまいました。  そういう中にあって、日本経済の成長率をどう見るかということもあるわけでございますが、この成長率の達成度、八年度は二・五確実であるということだけは間違いないようであります。そして、九年度一・九と見ましたが、APECの先般の会議におきましても、経済問題と成長率の問題等の論議の中で、IMFのカムドシュ専務理事からは、日本の指標を見てまいりますと、九年度一・九プラスアルファ、二%は確実に超えるであろうという見解表明でございました。しかし、実感がそれぞれありませんね、こういうこともございます。  そういう点からいいますと、経済の活力感を取り戻すために、また金融のスムーズな道筋が出てまいりますように、その需要の面におけるそれぞれの企業の活動、それから設備投資、ニュービジネスのスタート、こういうことになることによって、それのもたらす効果というのは、金利を上げることではなくしばらくただいまの金利体系を維持していくことが大事、こういう政府方針、特に金利当局日銀もそのことを明言をされておるところでございます。そういう点で、金融政策金融政策、しばらくこれで取り組むわけであります。  不良化しつつある担保物件、こう言われておるわけでありますが、流動しませんものですから有効活用が進まない。よって先般、御案内のとおり担保不動産等流動化問題について結論を出させていただき、協議会として今後、関係各省との連携の中で、いわゆる飛び飛びの土地を整形化することにより、あるいは証券化することによりましてまずスタートを切ろう、こういうことで取り組ませていただきましたし、不動産自体の今後の有効利用、政府全体としてこの問題に真剣に取り組んでいかなければならぬなと思っております。  政府全体のものは全体のものとして、私自身も、国土庁、土地政策の担当省、そして実行面は建設省、それと自治省、そして経企庁一関係閣僚として、この基本方針を踏まえながら、今勉強会をしながら、対応をどう進めていくか、具体策の実現のためにということでやらせていただいております。  土地の有効利用が、まさに流動化を進め、需要を起こし、今日の失速状態から脱出をする一つの有力な手だてでありますことは御承知のとおりであろうと思いますので、これからも全力を尽くしてまいりたいと思います。
  75. 上田清司

    ○上田(清)委員 実は、きのうの段階で、共国債権買取機構の現在の状況等を知りたいということをあらかじめ政府委員のスタッフの方にお願いをしておりましたところ、偶然にもけさ朝日新聞と産経新聞で、共国債権買取機構の不良債権の回収がどのような形になっているかということが記事になっておりまして、まさしく時宜を得た形で報道をされておりますが、さっきの関連なのですね。  とにかく不良債権を処理しようということで、民間の金融機関が共同出資で四年前に共国債権買取機構をつくって、消化をしていこうというふうな仕組みをつくってやってきたわけでございますが、私が先ほど悪魔のサイクルと言いましたように、低金利政策からぐるぐる回って、担保が塩漬けになって動かなくて、結局なかなか処理ができないという一つの証拠としてこういうことも言えるのではないかなというふうに私は思っております。  ここでもちょっと数字が出ておりますけれども、この四年間の実績で、金融機関から十三兆五千八百二億円の不良債権を時価の五兆四千百三十八億円で買い取ったけれども、担保不動産の売却などで回収したのは八千百二十八億円にとどまり、債権元本の六%で、買い取り価格の一五%にしかすぎなかった。これは、よくやったというような評価をする人はいないと思うのですね。全く予想外の出来事だというふうに私は理解しております。  私もこの機構の方へちょっと聞いたことがありますが、当初はぐいぐいと進めていくつもりだったのですが、なぜこんなふうに進まないのかということに対して、山口銀行局長、御見解を承りたいと思います。
  76. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  共国債権買取機構の活動実績については、今委員の方から御紹介いただきました計数になっておりまして、回収額が余り伸びてないということは御指摘のとおりでございます。しかし、額はまだ少のうございますけれども、各期、各年度少しずつ回収実績は上向きつつございます。それから、最近聞いた話によりますと、具体的な計数ではちょっとよくわかりませんが、いろいろ引き合いがふえているという話も聞くわけでございます。  そういうことを背景にしますと、決して胸を張って言える話ではないということはもう先生と同じでございますけれども、やはり土地がこれからまだ下がるのではないかという状況、あるいはそういう思惑があるときにはなかなか処分ができない、下げどまりという感じが出てくると、わっと話が出てくるということだろうと思うのでございます。地価の動向というのはなかなかわからないということで、私も自信を持って申し上げるわけにまいりませんが、最近聞くところによりますと、商業地でややいろいろな動きも出てきているというふうに聞いております。  したがいまして、私どもとしましては、大臣からもお話ございましたように、担保不動産の流動化対策というのを今こそやるべきでないかと思ったわけでございます。それで、その担保不動産の対象にしておりますのは、住宅金融債権管理機構、整理回収銀行、それから共国債権買取機構、みんな同じに担保不動産の処分ができなくて困っているところでございまして、そういったところの物件をできるだけ流動化させるという対策について、政府も本腰を入れてバックアップしようじゃないかということで、総合対策というのをまとめた、こういうことでございます。  したがいまして、先生の御指摘あるいは御叱責も、私も十分反省しなければいけませんが、これからその点を懸命に努力をしてその流動化を図り、回収の実を上げていくということに努めてまいりたいというふうに思っております。
  77. 上田清司

    ○上田(清)委員 本当の話が、何度もこういうお話を実はさせていただいておりまして、遅いと言うしかないのですが、これもこれも、なかなか下げどまりにならないというのも、金融機関に対する不安感というのはなかなかとれないというところですから、いま一度そういう意味での検討をぜひやっていただきたいというふうに思います。  今ちょっとお話が出ましたが、住宅金融債権管理機構の、去年の住専国会の中でつくられたわけでございますが、資料もいただいておりますけれども、昨日の段階では、ちょっと押し問答をしていましたら、なかなか数字が出ないということを言っておられましたが、数字が出ないようでどうするということでちょっと強く申し上げましたら、やはり強く言うものだなというふうに思いました。数字が出てきております。  私が伺いたいのは、とにかく一次ロスの中で、六千八百五十億の国民の税金を投入して、この住宅金融債権管理機構をつくってロスを処理していくという仕組みをつくったわけでございますし、特に、二次損失では、根拠不明のままに五〇%はまた税金で補てんしなければならないということでありますから、この額は少なければ少ないほどいいという意味で、どれほど進捗状況があるのか、今後どういう進捗状況になっていくのか。これを、適時、やはりさまざまな機会を通じて、政府、大蔵省が責任を持って報告をしていく、こういう仕掛けを今後ぜひつくっていただきたいと私は思います。  現況について資料もいただいておりますが、せっかくの機会ですので、各委員の皆様方に、譲渡された時点から今日に至るまでの処理状況についての御説明、それから二次ロス、二次損失の見通しとかもあわせてお話をいただければ大変ありがたいと思います。
  78. 山口公生

    ○山口政府委員 御報告申し上げます。  住宅金融債権管理機構が処理すべき旧住専七社からの譲り受け財産は、八年度ベースで六兆一千百二十九億円でございます。問題は、回収のところが順調にいっているのかというお尋ねでございますけれども、八年度における貸付金の回収見込みは二千七百四十三億円を予定しております。それは、正確に幾らの数字になるかというのは、六月ごろに取りまとめられます初決算に向けて今計数の集計をやっておりますので、確定的に申し上げることはできませんけれども、再度その達成がどうなのかということを確認しましたところ、平成八年度の回収額はおおむね目標に沿ったものになるのではないかというように聞いておりまして、私どももそういうふうに受けとめておるわけでございます。したがいまして、住宅金融債権管理機構は、中坊社長のもとで、預金保険機構とタイアップして、一体となって大変真剣に取り組んでいただいております。  それから、よく新聞等でごらん賜っていると思いますが、例えば刑事上の責任追及を厳しくする。例えば末野興産、桃源社、富士住建。それから回収妨害に対する刑事告発、そういった刑事責任をかなり厳しく追及する。あるいは、貸し手に対しても、日本ハウジングローンについて刑事的な訴追をしております。  それから、民事上の責任追及もやっておりまして、同じく末野興産、桃源社、日本ハウジングローンの社長、元社長等に民事上の責任追及もやっております。  こういったいろいろな手段を通じまして、できるだけの努力をしていただいておりまして、二次ロスを極力発生させないような努力をしておられるというところでございます。
  79. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。  九年度の見通しも事業計画の中でいただいておりますので、委員の皆様方に、せっかくの機会ですので、九年度は六千三百九億円の回収を予定して、年度末の貸付金残高を三兆七千三百三十億を予定しているというような事業計画あります。本当に御努力をされていただいているというふうに思いますが、先ほど私が申し上げました、逐次御報告をするというのは、国民に対して私は義務があるんじゃないかなというふうに思っております。  それは、先ほど申し上げましたように、税金投入をした、そしてまた二次ロスでしなければならないという意味において、どういう形で御報告が国民一般に向かってできるような仕掛けができているのか。この点について、あれば教えていただきたいし、なければ、これは大臣ぜひ、やれというお話をしていただきたいというふうに思います。
  80. 山口公生

    ○山口政府委員 実は、住宅金融債権管理機構、かなりの人数を集めていただいておりますけれども、もう全員がフル稼働で今やっておりまして、特に現場では、大変難しい、回収困難とも思えるようなものにも勇敢にやっております。そこで、立ち上がりも間もない当社、十二月末で督促状を出しまして、その督促状の返事を見て、この人はどういう処理をする、この人はどういう処理をするということまで今大変な作業をしております。  そういったときに、確かに、月次ベースでも四半期ベースでも御報告申し上げることが大変大切なことだと思いますけれども、物理的になかなかそこまで負担をかけるということはちょっと難しいということでございまして、先ほど申し上げたような推移だという御報告は申し上げましたけれども、これを一つ一つ今の段階で逐次御報告申し上げるというのは、体制上、負担上なかなか難しい面があるのではないか。  ただ、何らかの形で国民の皆様にいろいろ公表を努めていくべきだという御指摘については、今後の検討課題として重く受けとめていきたいというふうに思っております。
  81. 上田清司

    ○上田(清)委員 大体検討課題を重く受けとめてなんて言って検討しない場合も多いですから、余り信用できないんですが、なかなか技術的に難しいというお話を言われましたけれども、私は、月別に多分整理をされていると思います。また、そういう性格のものだと思いますし、だからこそ現時点においてこういう数字が、きのうの夕方、夕方というよりももう六時ですね、その時点でもこういう数字が出てくるわけですから、私はやっておられると思いますので、それを公表するような仕組みを、ぜひ大臣の栄邁なる決断できちっとやっていただきたいというふうに私は思っておりますので、これは大臣にちょっと御答弁をお願いできればと思います。
  82. 三塚博

    三塚国務大臣 情報公開、大きな流れになっております。その中で国民の理解と協力を得る、こういうことになるわけでありまして、ただいま局長説明のように、預金保険機構また住専機構と一体となりまして取り組んでおるわけでありまして、結果的に国民負担を軽減していくということになります。  私も、局長の努力、体制、スタッフの諸君の努力をこれからもサポートしていきながら、特に大蔵委員会が累次開かれていくわけでございますから、きちっとその機会をとらえまして報告ができるようにしていくのも一つの方法がな。閉会後は定時会見を通じてお知らせを申し上げる。集計に若干技術的な苦労もよりありますけれども、それを乗り越えることが、国民的な期待の中で、サポートの中で取り組むことになると存じます。
  83. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。ぜひそうした公表をシステムの中に入れていただきたいというふうに思います。  関連で、これはもう調べていただくだけで結構でございます。  御承知のように、いわゆる求償債権という、いわゆる住宅ローンとか破綻した場合に、銀行からお借りしている部分に関して保証会社がかわりに銀行に対して返済をする、そして、その返済権を、いわば保証会社が債権を持って、それも都銀十行当たりで、これは「選択」という雑誌の記事ですので数字について定かではありませんが、二兆円程度ある、こういうお話もございますので、実際この求償債権は一体どのくらいあるのか。そして、系列の親銀行がこれについて、やはりこれも不良債権の一つだというふうに私は考えざるを得ないんじゃないかという、そういう隅から隅までのさまざまな不良債権を、もう限定的に見せてごまかすんじゃなくて、洗いざらいきちっと出して、その処理の仕方を本当に一体となって、私どもも一生懸命協力しなければいけないというふうに思いますので、そういう意味で、そういう数字をぜひ後で資料として私どもの方に出していただきたいというふうに要望しておきます。  時間もなくなりましたので、郵政省の方にも来ていただきましたので、申しわけありませんが、郵便貯金はある意味では民間の金融機関とちょっとまた違った形でございますが、今回のビッグバン、こういう形での外為法改正をフロントランナーとしてとらえるという考え方はいろいろ議論ありますけれども、こういう状況の中で、郵便貯金の考え方の中でどんなふうにこの事態をとらえて、どういう対応をなされているのか、郵政省としての考え方を簡単に承っておきたいと思います。
  84. 西森正広

    ○西森説明員 お答え申し上げます。  今般の外為法改正に伴いまして内外資本取引自由化が図られるということでございまして、我が国の金融市場にも種々の影響があるかと存じます。  そうした中で、郵便貯金を含みます小口の預貯金市場につきましては、大きな影響を受けるという見方もある一方で、相対的には影響は小さいのではないかという見方も存在しておりまして、現時点で明確な見通しを申し上げることはできないかと存じます。  しかしながら、郵政省といたしましては、今般の法改正が預貯金市場に与える影響、これを注視し、利用者や国内の民間金融機関の動向を踏まえながら、非営利の個人貯蓄専門機関として国民のニーズに適時適切に対処してまいりたいと存じます。
  85. 上田清司

    ○上田(清)委員 金融グローバル化という形の中で郵便貯金も例外ではあり得ないという立場の中で、郵政三事業の民営化も含めて、郵便貯金業務の民営化の検討もぜひ考えていただきたいというふうに思います。  最後ですが、犯罪防止について、先ほど国際金融局長からもお話をいただきました。いろいろな可能性がある。各国にわたって自由な取引ができるということで、いろいろな想定ができます。  それで、偶然にも昨日、私、こういう事件のお話を伺いました。直接今後つながるかどうかは別にしましても、極めて巧妙な新しい事例かなというふうに思いますので、御報告とお知らせをしてみたいと思います。  いわゆる五十ccの原付バイクの免許証というのは簡単に取れるわけですね。学科試験だけですので即日免許ももらえる。例えば、だれかの生年月日や住所や氏名を知っていれば、その方の名前をかたり、自分の顔写真を張って免許証を取得する。その免許証を持って銀行に行って、カードと通帳を落としました、再発行してくれということで、再発行が可能なんですね。そうすると、そのカードなどを使ってどんどん引き出しができるという、こんな新手の犯罪が起きております。おとといの七日の朝日新聞でも、これはノンバンクからの引き出しだったのですが、私がお話を聞いたのではきちっとした都市銀行一つなんですが、銀行を通じてどんどん引き出しておるわけで、なおかつ、さまざまな高額商品を勝手に買い取ってしまった、こういう事例もございます。  今後、インターネットを含めたさまざまな通信機器を通じて、相当いろいろな形でそうした犯罪が予想されると思います。金融自由化先進国アメリカやイギリスといったところで一体どんな形で防止策をなされてきたか。そしてまた、今後日本においても、この金融ビッグバン外為法改正を通じてどんなことが予想されていくのか。当然、当局におかれましては検討を進めておられると思います。なかんずく警察庁ではそうした検討についてぜひしっかりやっていただきたいというふうに思いますので、その辺について、先ほどの偽造免許証の件はいいとしまして、後段の部分について御回答をお願いしたいと思います。
  86. 小野次郎

    ○小野説明員 お答え申し上げます。  マネーロンダリング対策につきましては、国際的レベルにおきましても、私が承知する限りでも、いろいろな協議の場で、各国が足並みをそろえてその防止と摘発のために所要の効果的な措置をとるよう強く求められているところでありまして、国境を超えた資金の移動については、マネーロンダリング対策の見地から、顧客の本人確認を徹底していただくとか、必要な場合に捜査機関がトレースを行うことなどもその一部と考えられております。  政府内部におきましても、当庁のほか、関係省庁と十分連携を図りつつ、その対策の推進に努めているところでございます。
  87. 上田清司

    ○上田(清)委員 各国との協議機関、これは公式的にそうした協議機関があるのでしょうか。これだけちょっと確認です。
  88. 小野次郎

    ○小野説明員 お答え申し上げます。  記憶の限りの話でございますが、一番典型的なのはFATFという機関がパリに本部がございますが、そこでマネーロンダリングを主として国際間で協議を行っております。その加盟国等はちょっと手持ちがございませんが、おおむねOECDに加盟している国等が中心になっております。  以上でございます。
  89. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございました。  時間が来ましたので、終わります。
  90. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、中川正春君。
  91. 中川正春

    中川(正)委員 新進党中川正春です。引き続き質問をさせていただきたいというふうに思います。  先ほどから、外為にビッグバンの一連の中でのフロントランナーとしての位置づけをという議論がございました。私なりに解釈をしますと、もともとこういう改革というものが橋本政権のもとで六つの項目を挙げながら発表されたわけでありますが、その中で具体的に一つの動きが見えてきたというのは、このビッグバンに連なる一連の金融改革であろうかというふうに思っております。そういう面では評価をいたしたいというふうに思いますし、また、ある面では、非常にこれがおくれてしまったために日本にとっては大きな損失をもたらしている、こういうことも逆に言えるわけであります。  それがなぜおくれたかということでありますが、これは、これまでいろいろな意味合いでの新しい政策というものを入れていくときに、業界単位でそれぞれの利害得失を調整をしながら、その調整の中で新しい政策を入れていく、こういう手法がこれまでのものであったのだろうと思います。それをやっていたために、結果的には、金融業界そのものも、この改革を本当にやるんだろうか、本気なんだろうか、こういうことの中で利害得失のみを探っていた、こういうことだったんだろうと思うのです。  ところが、今回のような形で、ビッグバン、それこそこれは一つの政治決断でもあったろうと思いますし、私たちもその流れを主張してきましたし、それが現実のものとなって政治決断として出てきたということ、これを歓迎しながら、ぜひ政治の中で実現をさせていきたい、こういうふうに思っておるのです。  そんな意味からいうと、この外為法改正というのが、金融業界に対しても、あるいは国民に対しても、これは本物なんですよ、本気にやっていくんですよという一つのアドバルーンのような形に受け取られていいのじゃないだろうか、こういうふうにも思っておるわけですが、まずは、この解釈に対して、大蔵大臣にひとつコメントをお願いいたします。     〔委員長退席、柳本委員長代理着席〕
  92. 三塚博

    三塚国務大臣 中川委員にお答えします。  橋本内閣、総選挙後の六つの改革、一斉に発表いたしました。そういう中で、金融システム改革、まさにそれは、ロンドンビッグバンの先例に倣い、我が国市場が活性化し、従前のベースを上回る役目を果たしていこう、簡単に言いますと、そういうことでございます。  これは、橋本首相の第二次内閣スタートに当たりまして、その前から勉強、検討をされた件と聞いておりますけれども、まさにトップダウン方式であります。今やらずして、こういうことの中で厳命を担当大臣である小生が受けたわけでございまして、大蔵省は全力を挙げてこの問題に取り組んでまいりました。  そういうことで、フロントランナー、外為法であります。四月一日のオープンに向けての諸作業が行われていくでしょうし、規制緩和はもちろん、証券市場における、金融市場における税制、御案内のとおり、来年度国会を目指してその検討に入る。与党でも勉強会が持たれておりますし、いずれ政府税調もスタートを切ることであろうとも思っております。  そういう中で、世間は、いよいよ本気だな、委員指摘のように。国会論議もマスコミ論調も、アドバルーンだけでいつスタートをするんだろうか、こういう論調でございました。そういう中で、フロントランナー、スタートを切る、そして御審議をいただき、ぜひとも今国会中に成立を期していただく、こういうことになります。  ありとあらゆる観点から、正常な金融制度、金融機関の健全化、これに向けての努力と並行しながらこの問題に突入をしたということで、金融界はいよいよ本気だな、外国から来られる担当者の皆さんも、いよいよ本番ですねというコメントを二人に一人は言ってくれます。APEC状況報告で、私は、この諸改革の中でビッグバンの持つ意味というものをお話をさせていただきました。  そういうことと相並行して、経済システムが、規制緩和から入りまして着実にスタートを切っておりますし、財政構造改革は、御案内のとおり、金融制度と一体、経済と一体でありますけれども、企画委員会が、きのうを入れますと三回、今週もう一回、来週三回、そして再来週、仕上げの検討。五原則と言われるこの基本を踏まえて、すべてをかけて、不退転の決心でこれをやり抜いていかなければならない、こういうことでありまして、御指摘のとおりでありますし、付言させていただきました。  感想は、というよりも実感、また、対人関係の中の御披露を申し上げた次第です。
  93. 中川正春

    中川(正)委員 そこの部分はいいわけでありますが、私たちも、ぜひともこれは成功に導いていかなければならない、こういう観点から、具体的に質問をしていきたいというふうに思うのです。  それぞれ、金融ビッグバンに向けての環境整備の中で、先ほどから議論が出ていますように、これをフロントランナーとして位置づけたという経緯というのは理解ができるのですが、その結果、それじゃ、それが本当にいい結果をもたらすかどうかということとはまた別だと思うのです。先ほどから鈴木委員が何回も主張をされましたように、これはやはり、これを先行するということによって、あるいはまた、それ以外のものがしっかりまだ見えてこない。  先ほどからの答弁では、六月のそれぞれの審議会なり委員会なりの答申を待ってから、こういうお返事でありますが、それこそあいまいなというか、先がはっきりしていない、そういう状況の中での為替だけの自由化、こういうことでありますから、それに対して、私たちは、それだけではやはりだめなんですよ、一つ一つはっきりさせていくこと。それと同時に、前倒しで早めていくべきところは早めていくべきであって、フロントランナーから一気呵成にそれぞれを進めていくべきである、こういうことだと思うのです。  そんな中で、実は、具体的に、一部導入をされ始めている部分、特に、今回のビッグバンに向けて非常に大きな影響が出てくる、その重立ったところの具体的な問題についてひとつ所見をお伺いをしたいと思うのですが、まず第一は業務分野規制の撤廃、これの具体的なスケジュールであります。  九三年四月に、金融制度改革法によりまして、銀行証券の業態別の子会社方式による相互参入、これが動き始めております。ところが、これが、激変緩和措置によって子会社の業務範囲に制限を持ちながら今運用をされておるわけでありますが、本来であれば、九六年の三月にこの激変緩和措置も緩めようじゃないか、こういう話があったということでありますが、それがいまだに続いておる、こういうことであります。一つは、これをどういうスケジュールで緩和をしていくのかということ。  それからもう一つが、これは生保と損保の関係、保険の方なんですが、九六年の四月の新保険業法によって、これも子会社方式による相互乗り入れが実施をされておるわけでありますが、これもまた激変緩和措置によって第三分野に制限が加わっておる。そのまま今推移をしております。業界にとっても、あるいは国民にとっても、この辺のこれからの推移というのをはっきりしていくということが、将来の一つの再編につながっていく基本になってくるだろうと思います。  そこで、その部分の緩和措置の具体的なスケジュールというのをひとつお聞かせをいただきたい。  そして、さらに将来は、保険に対して銀行証券、信託という、今度は縦のというか、もう一つスコープを広げた形での相互参入あるいはまた本体同士の相互参入、あるいはこれがまた続けていって持ち株会社、こういう議論につながっていくのだろうと思うのですが、その辺の解禁措置、これだけは、いわゆる海外からのいろいろな攻勢に対して私たちの心の準備も含めて根幹にかかわってくる部分だと思いますので、その辺を含めて今の構想をお聞かせをいただきたいと思います。
  94. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。四点ばかりポイントを御指摘いただいたと思います。  まず一点目の銀行証券間の子会社による相互参入に関する激変緩和措置の撤廃のスケジュールの問題でございます。  これにつきましては、確かに委員指摘のとおり、去年見直しという計画を立てておったわけでございますけれども、昨年はいろいろ、各業態、特に証券業態の状況は厳しい経営状況にございました。それからまた、金融機関の方も住専処理等で大変困難な状況にございました。  そこで、今般、ことしになりまして三月二十八日に実は閣議決定をいたしまして、「規制緩和推進計画の再改定について」という閣議決定でございますが、そこにおきまして、業態別子会社の業務範囲を、九年度下期より「証券子会社に現物株式に係る業務を除く全ての証券業務を解禁」する。また「信託子会社に年金信託・合同金銭信託を除く全ての金銭の信託業務を解禁する。」というふうにしたところでございます。  また「残余の業務制限の見直しについても、金融システム改革全体の中で完了させる。」というふうに文言がなっておりまして、今後、先ほど御指摘ございました六月に結論を得るという審議会等の報告とあわせて、これをまた結論を出していきたいというふうに思っているわけでございます。  それから、二番目の御指摘は、保険会社の第三分野のお話だったと思います。  生命保険と損害保険に関して、新保険業法におきまして、いわゆる第三分野の激変緩和措置ということが附則でうたわれておりまして、それに関連しまして、実は、子会社で出ていく場合においても、これは大変な日米の外交問題にまでなった話でございますけれども、いわゆる激変緩和措置をどうするかという問題が出てまいりました。これは、日米間のいろいろ厳しい交渉の結果、現在、生損保子会社の第三分野業務に一定の制限が課せられておるところでございます。  具体的に言いますと、子供損保会社といいますか、損保子会社といいますか、それに対しては、外国社等の既存の販売ネットワークを通じた傷害保険の販売の禁止とか積立傷害保険の販売禁止、あるいは子生保会社に関しては、医療単品保険及びがん単品保険の販売禁止というような激変緩和措置がとられております。  ただ、この激変緩和措置につきましては、この日米保険協議の決着を見ました結果、主要分野の規制緩和措置が実施された後二年半が経過した時点、すなわち、時点でいいますと二〇〇一年までには終了するということになっておるわけでございます。したがって、その点は時期的には明確になっているというふうに思います。  それから、第三番目のお尋ねは、生損保と銀証との相互乗り入れという御指摘であったと思います。  これにつきましては、平成六年の保険審議会報告によりまして、「まず、子会社方式による生・損保の相互乗入れを含む保険制度の自由化を進めるとともに、健全性維持のためのソルベンシー・マージン基準や新しい経営危機対応制度の導入などの法制化を急ぐことが肝要であり、その定着を見極めた後に子会社方式による他業態への進出も含めた制度改革が完了するよう、段階的に行うことが適当である。」という答申をいただいております。  今般、金融システム改革に係る総理の御指示におきましても、銀行証券・保険分野への参入促進ということが具体的に検討項目に挙げられております。したがいまして、これを踏まえまして、この相互参入問題、あるいは新規の参入問題につきまして、金融システム改革における重要な検討課題一つとしまして、本年六月に報告を取りまとめるべく、現在、保険審議会など関係する審議会において精力的に検討が進められているところでございます。大蔵省としては、こうした検討を踏まえ、適切に対処してまいる所存でございます。  若干長くなって恐縮でございますが、四番目の御指摘は、金融持ち株会社の話だったと思います。  いわゆる金融持ち株会社につきましては、金融システム改革の中で極めて重要な意義を有するものと考えております。独占禁止法の改正による持ち株会社の解禁が実現しますと、それに伴いまして金融業法等の整備を可能な限り速やかに作業を行い、金融機関につきましても、持ち株会社制度が解禁されるようにできるだけの努力をしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  以上でございます。
  95. 中川正春

    中川(正)委員 次に、破綻処理に対する明確な対策の確立と、国民に対してその合意をしっかり今求めていくときだ、こういう主張をしていきたいのでありますが、先ほど、今の不良債権についての現状というものをお答えをいただきました。  そこで、実は私も、買取機構のデータを持ってきまして、大変だぞという話をしようというふうに思っておったわけでありますが、もう一つ、この焦げついてしまったそれぞれの担保不動産の現状であります。この間の私どもの勉強会の中で出てきた議論が、こういうものについては、大都市中心に、特に東京、大阪中心にトータルで総額百二十兆円ぐらいの規模になっていくのだろう。その中で、いわゆる二十三兆円、きょうのデータではそれがちょっと下がっていますが、それがいわゆる銀行を中心にした部分であるとすれば、そのあとノンバンク、それからゼネコン等々含めて、ずっと合わせていくと大体これくらいの金額になっていくというのは妥当なところかな、こういう認識をしておるわけでありますが、これに対しての大蔵省なりの見解をひとつお聞かせをいただきたい。  それから、先ほどの議論の中で明らかになったように、これはなかなか動かない。動かない理由というのが、端的に言えば、虫食い状態になって、どうしようもない小さな区画の不動産、これが不良債権の担保不動産のほとんどを占めているんだ。実はそこの部分が、それこそバブルのときにばっと押し上がって、それが冷えたらどんと下がって、今全く塩漬けになったままなんだ、こういう現状一つ一つ具体的に例示を挙げながら、私たちも見る機会がありまして、愕然としたわけであります。  今回の総合的な土地の流動化対策というものの中で、どう考えても、大体、言うたらジャンクエステートみたいなものですから、これをどう動かしていくかというのは生易しいものではないということ、これが指摘できるのだろうというふうに思うのです。  それだけに、端的に言えば、この部分は相当長い間塩漬けにしたままでやっていかなければならないのではなかろうか、そういう私たちの腹構えというのがないことには、それが、言うたら業界筋から海外に至るまで、この中身が何かということは、我々が理解できるほどですから歴然とわかっている。その中での全体の動かし方ということを前提にしていけば、私たちのサイドもこれはこれでしっかり腹をくくって、バラ色の世界ばかりを描くんじゃなくてやっていかなければならないのだろう、こういうふうに思うのです。  そんな中で、実際、銀行自体は不良債権の償却を始めているわけですが、例えば債権買取機構に移したこうした債権であっても、ここでまた塩漬けにされて、焦げついているわけです。これに対して、またそれぞれの銀行が貸し付けという形で金を出しながら、結局帳簿の書きかえをやっているだけだ。こういう現状があるわけでありまして、結局のところ、バランスシートそのものからは実際には引き落とせない、そういう基本的な問題があるのではなかろうか、こういう認識に立っておるわけでありますが、そこの点について、所見をお聞かせをいただきたいと思います。
  96. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のように、大都市を中心に担保不動産が動かない状態で、滞留していると申しましょうか、いろいろな問題を生じているということは御指摘のとおりだと思います。ただ、それがどれくらいの規模になっているかということは、なかなか私ども把握できません。ただ、二番目におっしゃったように、どうもそれぞれが虫食い状態になって、利用しようにも利用しようがない、そうすると買い手もつかないということは、まさにおっしゃるとおりだと思うのでございます。  それで、私どもとしましても、この虫食い、不整形というものをどうするのかということを非常に真剣に考えていかなければいけない大事な問題だというふうに認識をしておりまして、まず、権利関係をできるだけ整理するということが前提になるわけでございますけれども、いろいろな工夫ができないかということで、例えば土地区画整理事業の弾力的運用などによる土地の集約化。これは税制上の特例措置の適用を受ける土地区画整理事業の基準の弾力化とか、民間都市開発推進機構の活用などによって、都心部に散在します低・未利用地の集約化を行って、これによって、良質な住宅供給、都市整備が可能となる一団の敷地を創出していくというような考え方があり得るだろうなというのが一つでございます。  そういったものをいろいろ探ってみると、先ほど御指摘いただいた、買取機構が持っている担保でとっている不動産とか、それから先ほどお話があった、住専のものあるいは整理回収銀行のものというものがまずは対象になると思うのですが、そのほかに、典型的な虫食い、不整形地の中から幾つか、数カ所を選びまして、それで有効利用ワーキンググループというものをつくって、官民合同で有効利用プランをひとつモデルケースでつくってみようじゃないかということも考えております。  虫食いで不整形だから使いにくいとあきらめてしまうと、もうそれきりになりますので、具体的に幾つかの例を出して、それで知恵を出して、こういうものはこういうふうに使えるかもしれない、こういうふうに集約化すればいいのではないかという、やはりモデルをつくって、それを参考にしていただきながら民間でも広めてもらうということが一つあるのではないか。それから、住宅・都市整備公団の活用等もお願いしたいというふうに思っているわけでございます。  したがって、こういった塩漬けになっておる土地というものを腹に入れて、そういったものがあるということも置きながらいくということも大切でございますが、少しでもそういったものを塩漬けにならないように、虫食いを整形化して権利関係をすっきりして、利用可能なものにしていくという努力をしていきたいというふうに思っているわけでございます。
  97. 中川正春

    中川(正)委員 それが、バラ色の夢を見過ぎているのではないかという私の思いなんです。  経済状況を背景にしながら、すべてが前向きに右肩上がりで上がっているときには、区画整理事業等々を含めてそれなりの付加価値が出てきて動き出す、こういうことなのであります。これはもう、私が言うまでもなく、そういう状況でないと、逆に言えば、先ほどの指摘をされたような事業というのは具体的には机上の空論になってしまう、これも現実であろうというふうに思うのです。  そんな中で、私が、しっかりと腹におさめなければいけない、いわゆる大蔵省として、金融当局として腹におさめなければいけないというのは、これはもう塩漬けになるんだということであっても、海外から見て、あるいはまたそれぞれの、全般的な金融情勢が大きな混乱に、あるいは逆に、国民に最終的に大きな負担になっていかないような方途を今のうちからはっきりと打ち出していくという姿勢というのが大切なのではないか。頼りにならないところを夢見ながら、だらだらといくうちに、どうにもならぬところにはまり込んで大変なことになってしまう、これがこれまでたびたび陥ってきた大きな穴でありますので、そこのところをひとつ腹をくくってほしい、こういうことなのです。  これをもっと具体的に言うと、実は、この不良債権の処理を旧ルール、いわば護送船団方式ですが、この護送船団方式で、事前の行政指導なりあるいは大蔵省一つのリーダーシップをとりながら何とか生かしていこう、何とかつぶさずにそのまま生かしていこうということを続けていくのか。それとも、今議論に出てきて、そういう方向にしようと、向けていこうとしておる新しいルール、それはいわゆる市場に任せた形で、ある程度破産、つぶすということも前提にして、それによって一つ一つの不良債権というのをはっきりさせていく、こういう部分を考えていかなければならないのではなかろうか、こういう意味なんです。  これを今やるか、それとも現状、将来に対して見込みがあるのであればいいけれども、先ほどの答弁にも端的にあらわれてきておりますように、これはどうも将来に対してもなかなか大変だぞ、そういう見通しがあるにもかかわらず、これまでの方式というのを変えられないという状況はいかがなものかということをひとつ指摘をしていきたいと思うのです。  具体的には、例えば今回の日債銀あるいは拓銀の一つのスキームを見ておりますと、いずれにしたって大蔵省が音頭をとって、それぞれ何とかつぶさずにやっていこうよ、こういうことには違いないわけであります。しかも、たまたま先ほどちょっと例に出ました、朝日新聞の買取機構の記事のすぐ下に日債銀の記事が出ているわけですけれども、この日債銀の優先株の引き受けを新金融安定化基金で八百億円で引き取りますよ、まずこれがあって、それから民間に対して、私どもこれをやるのだからどうか皆さんもつき合ってほしい、こういう形で救済策をつくり上げていった、こういう経過であろうと思うのです。  本当にこれでよかったのかどうか。先ほどから議論が出ているように、これは護送船団方式そのものではないか、こういうふうにも思うわけでありますが、そこのところも含めてひとつ御答弁をお願いしたいと思います。
  98. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  不良債権問題、全般的に言いますと、先ほど数字を御紹介いたしましたように、かなり処理が進んでおります。ただ、個々の金融機関の問題となりますと、いろいろ区々な事情があるということも御承知のとおりでございます。私ども銀行行政といたしましても、先生指摘のように、できるだけ市場に任せる、市場が判断していく、あるいは透明性を持って行政をやっていく、これは私どもそういう方向でいくべきだと思っております。したがって、早期是正措置も入れますし、ディスクロージャーも早期に完成させようというふうに思っているわけでございます。一ただ、市場に任せるということが、銀行とか信用金庫とか信用組合とか、つぶすということには直結しないんだと私は思うのでございます。不幸にしてそういう事態になったときには、それは預金者の保護ということで、預金保険機構で対応するということになるわけでございますが、あえてそういったものを淘汰させるということが目的ではございません。  なぜならば、預金者の保護と同時に、金融のシステムというものはやはり金融機関が信頼されているからこそ成り立っているわけで、これは社会にとってみると財産なんでございます。それをあちらでも分断し、こちらでも分断しというのは、できれば避けたいというのが私どもの気持ちでございます。  無理をして一つもつぶさないという方針でいくのは、それは市場原理と大幅に乖離すると思うのでございますけれども、自助努力をされて、それが十分に、あるいは自己資本努力、リストラをなさり、それからまた自己資本を充実されるということで立ち直っていくのであれば、それはそれで大いに私どもとしては支援をしていくべきものだというふうに思うわけでございます。それは、我が国における信用秩序というものは貴重な財産だと思っているからでございます。  ただ、あくまで、それも市場の方のシグナルといいますか、市場がどう見るかということを非常に大切にしていくということの基本の中にあるわけでございます。だから、早期是正措置で具体的にどういう措置をとるかも、自己資本比率が一定の場合というふうに余り恣意性を持たせない、きめ細かい配慮はいたしますけれども、基本的には恣意性をできるだけ排除したという形でやらせていただきたいと思っているわけでございます。  だから、一概に護送船団とかいうことで私どもはいろいろ御批判を仰ぐのでございますけれども、ケース・バイ・ケースによって私どもは一番ベストなソルーションは何であろうかということを考えていく必要があるだろうなというふうに思っております。しかし、行政の大きな流れは、先生の御指摘の範囲内に入っているというふうに私は思っております。
  99. 中川正春

    中川(正)委員 全体の金融制度に及ぼす影響ということを言われたいんだろうと思うんですが、ただ、国民が納得できないのは、じゃ小さいところはつぶしても、大きいところはつぶさない、そういうことなんだ、こういうことですよね、端的に言えば。ここのところをしっかりと説明をしなければ、この先まだまだいろいろな問題が起きてくるという予想は十分にされておるわけであります。  先ほどの説明だけではなかなか納得できない、また私たちは、国民に対して説明をするにも、それだけでは逆にこれは昔のままじゃないんですか、こういう話になってしまうわけであります。これは、端的に言ったら、結局我々の期待感に対して、まだ大蔵省そのものも、あるいは業界そのものもということだと思うんですが、明確なルール化と透明性、そしてどこでどういう基準の中で政策決定がなされているのかということ、これをしっかりと説明し切れていない、こういうことだと思うんです。  このままビッグバンに突入をしていけば、やはりこのビッグバンというものの将来に対して国民からの評価が得られない、そしてまた金融というものに対して、その業界に対して、じゃ我々も自分の資産を運用しようじゃないかという、いわゆる信頼性というものに対しても非常に疑問が残る、こういうことだというふうに思うんです。そこのところを大臣ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  100. 三塚博

    三塚国務大臣 先ほど来申し上げておるわけでございますが、金融政策の根幹は、自己責任を大前提として、その上に立った自主再建というベースもありますし、自己責任そしてリストラ、さらに、強力な経営の基盤をつくり上げていくという方式、ねらいはそこに一つあるわけでございます。やみくもに何が何でも、こういうことではございませんで、前提がそこにありまして、そういう中で全力を尽くす、その自己努力が、再建策が評価に値するものであればサポートをしていく、こういうことであります。  そういう点で、拓銀と道銀の合体は余り評価されておらぬようでありますが、私は前段申し上げましたとおり、その二つの原則で両者がしっかりと提携をし、新しい銀行で取り組みましょう、国際金融から撤退をいたしまして、地域銀行、地銀としての役割、それは北海道の経済の資金運用ということで全力を尽くしていくということでありますから、両者が、ライバルでありましたものが一体化されて思い切ったリストラを前提として取り組むということであれば、私は極めて理想的な一つのモデルを示したものではないのか、こう申し上げたのはそこです。  日債銀、長銀の中の一行でございまして、こういう世並みの中で苦労されておる、その苦労を再建に向けて、再生に向けて努力をしておる。前段局長からも詳細に報告をしましたとおり、それを多とし、ここを頑張ることで取り組める、こういうことであり、みずから、日債銀の責任者初め重役各位が各銀行を訪問をし、自分たちのリストラ案を示すことによりまして、理解と協調を得た、そう報告を受けておるわけであります。  仮の話でありますが、リストラ案がだめであれば、みんなバンカーでありますから、ビッグバンが四月一日、事実上オープンになってスタートするという、外為法成立後の話でありますが、そういうことで、早期是正措置の徹底ということで、それも四月一日にオープンするわけでございますから、そういう中でハンディを背負って、その競争、銀行というよりも、我が行の生き残り発展のためにやるということになれば、他は構っておれないというのが今日の厳しい経済状況ではないでしょうか。ですから、奉加帳方式はあり得ないと申し上げる次第であります。  そういうことをしっかりと、私どもは申告を、報告を受けたものをチェックをし、その中でなるほど、こういうことであります。国内金融システムの安定のためにも、もちろん国際金融市場における日本金融機関の信頼、そして国際信用システムの中において果たしてきた現在までの役割の評価、こういうものなどを総合判断をすれば、その努力をサポートするのは大蔵省として当然であったな、こう思っております。  それだけに、日債銀の責任者だけではなく、社員一同リストラの中で、人員整理もあるようでありますが、その中で一体化のうちに取り組んでおられるということであろうと思っております。
  101. 中川正春

    中川(正)委員 それこそもう一つはっきりしないというか、将来に向けて私が心配するのは、この日債銀の問題だけじゃないと思うのです。このビッグバンを本気になって進めていけば、将来にわたってこういうケースはまだたくさん出てくる。たまたま今回は、規制緩和が、持ち株会社方式を含めて十分に整っていない状況の中でのやりくりですから、こういう結果に持ってきたのだろうと思うのですが、一つはそのテンポというのが遅いために、現在のような無理をしなければいかぬ、あるいはまた、従来方式の形の解決しかない、逆に言えばこういうことにもなるわけでありまして、これは要望でありますが、早いところそのルール化というものを明確にしていただきたい、こういうことです。  それから次に、その部分は一つあるとして、もう一つは、じゃ、実際に破綻が起きたときのいわゆる政府のコミット、これも非常にあいまいなところで今議論が進んでおるわけであります。それこそ信金に対する一千万以下、これについては先ほどからの議論でコミットしましたよ、こういうことかもわかりませんが、その後の部分ですね、いわゆる保険機構からあふれてくる部分。特に、いわゆる日債銀で注目されました金融債、あるいはこれと同じような意味で言えば、譲渡性の預金だとかインターバンク取引だとか、あるいはまた劣後債、こういうものに対してどうしていくのかということ、これをはっきりさせるということによって、日本の国家として金融、これからの状況というのをどういうふうにとらえているのか、こういうことがはっきりしてくるのだろうというふうに思うのです。そこのところをもう一度お尋ねをしたいと思います。
  102. 山口公生

    ○山口政府委員 預金保険機構の制度は、預金保険法に原則を書いてございますが、預金保険の保険料の徴求及び保険金の支払いの対象として掲げられておりますのは、信託銀行を含む銀行、長期信用銀行、信用金庫、信用協同組合及び労働金庫における預金、定期積み金など、及び元本補てん契約のある貸付信託を含む金銭信託というふうになっております。  ただし、外貨預金、譲渡性預金等は対象から除外されております。これが一応の原則になっておるわけでございます。  ただ、現在金融三法におきましてお認めいただいていた特例な措置は、現下の金融環境を踏まえまして、預金者を保護しつつ円滑に破綻処理を行うために、五年間の時限措置として、特別保険料を徴収して、ペイオフを超えた資金援助をできるというふうにしていただいたところでございます。この資金援助にどこまで何を含めるかというのは、これは預金保険機構の運営委員会が決定することとなるわけでございます。  ただ、この制度があるおかげで、大口の例えばCDとか外貨預金とか、あるいは公的預金とかそういったものが、うわさが立った途端にはっとシフトしてしまうという状況は、今免れているわけでございます。したがって、健全に活動している銀行が、うわさが立った途端にそういう大きなソフトがあって資金ショートしてしまう、それで黒字倒産、いわゆる債務超過にならないのに行き詰まってしまうということは、今は起きておりません。そういったことが、今の仕組みでもって間接的には守られているという形になっておるわけでございます。現在の仕組みはそういうことでございます。
  103. 中川正春

    中川(正)委員 私が意図した質問と答えの方がちょっとちぐはぐしたようなのですが、さっきも議論が出てきましたが、このままでいけば今の特措法みたいなことになってしまいまして、いざそういう混乱が起きたときに、ルール化していないということがまた次の混乱を起こし、また次の不安を起こしてくる、こういうことだろうと思うのです。これをやはりこの時点ではっきりしていくということ、これを要望をしておきたいと思います。  次の議論に入っていきたいと思いますが、時間がありませんので。次は、こういうビッグバン、いよいよ本物だなという前提の中で、公的金融機関あるいは財投を含めた公的な資金の部分の将来、これをどうしていくのかということは、この議論は避けて通れないことだろうというふうに思います。  具体的には、よく言われますが、千二百兆円に上る国民の金融資産、この中で、二百五十兆円を超える郵貯、これが規模が膨らんできた。これをそのままにしながらビッグバンに臨んでいっても、あるいはまた、財政投融資がそれぞれの分野で、今いろいろ議論が始まってきておるわけでありますが、その出口の部分、これをそのままにしながらビッグバンの議論をしても、これは外から見ても内から見ても片落ちであるなと。いわゆる規模の拡大ができないじゃないか、本当の魅力が出てこないじゃないか、こういうことだろうというふうに思うのです。  そういうことと、それからもう一つは、昔のように資金が欠けていた、何とか国民からお金を集めて、それをいわゆる社会基盤に向けていく必要がある、そのための活用なんだという議論が通るときであればいいわけでありますが、今民間では、資金は逆に余ってきておる、あるいは資産をいかに運用するか、そういう成熟期にかかってきておる、こういう大きな背景の違いというのが出てきている、こう言われております。  そんな中で、きょうは先ほど郵貯の方もお答えになりましたが、また別な観点で、それぞれ郵貯あるいは農林系の金融機関、それぞれに来ていただきまして、こうした状況の中で、それぞれの金融機関としては、このビッグバンに至る道というのをどういうふうに受け取り、また議論を始めておられるか、そこのところをまずお聞かせをいただきたいと思います。
  104. 白須敏朗

    ○白須説明員 御説明申し上げます。  ただいま委員の御指摘でございますが、包括的な金融システム改革を目指しておりますビッグバンが進展をしてまいりますと、お話しのとおり、全体として金融業務分野におきます競争が激化してくるというふうなことでございまして、農協系統金融機関をめぐります経営環境につきましても、厳しくなるのではないかというふうなことが予想されるわけでございます。  そういう中で、委員からお話ございました、どういうふうに受けとめ、どう対処していくのかということでございますが、系統金融機関につきましては、全国機関といたしましての農林中金、さらに県段階の信連、そして単協というふうなことで三段階あるわけでございます。  いずれにいたしましても、系統金融機関は、どちらかといいますと、一般の民間金融機関余り立地しておりません農村部におきます地域金融機関といたしまして、重要な役割を果たしておるというふうに認識をいたしているわけでございますが、これらの農協系の金融機関が、今後、事業を健全に運営していく、あるいは他の金融機関と同様に、我が国の金融システムの一員といたしまして責任を全うしていくというためには、やはり何といいましても、その事業機能の一層の強化あるいは効率化、健全化を図っていくということが必要であろうというふうに考えているわけでございます。  このため、さきの臨時国会におきまして成立を見ました農協改革二法があるわけでございますが、これを着実に実施していくということがまず必要であろうというふうに考えておりまして、この中で、農協の合併でございますが、これを進めていく、あるいはまた、信連と農林中金の統合によりましてそういった組織整備を進めていくということがまず第一に必要なのでございますが、あわせまして、業務執行体制あるいは監査体制の強化、あるいは自己資本の充実といったようなことで、農協系金融機関といたしましても、他の金融業態と同等の経営の健全性を確保していくことが必要であろうというふうに考えている次第でございます。
  105. 田中進

    田中説明員 御説明申し上げます。  私どもも、金融ビッグバンにつきましては、我が国の金融市場の活性化を目指し、民間金融機関に対する規制緩和を進めるものと理解しておりまして、これらによりまして、幅広いニーズにこたえる商品ですとか多様なサービスが提供されるようになるものと考えておるところでございます。  一方、郵便貯金につきましては、御案内のとおり、高齢化の進展がとりわけ顕著な山間辺地はもちろんのこと、都市部におきましても、民間金融機関の店舗配置が手薄な住宅地なども含めまして、バランスよく、全国あまねく公平に国民生活に密着した基礎的な金融サービスを提供しているところでございます。  一方、一連の金融自由化に関しまして、郵便貯金につきましては、これまでも主力商品でございます定額郵便貯金の金利につきまして市場金利に準拠するルールなどを設定するなど対応してきているところでございまして、今後とも、民間金融市場とも整合性の確保も図りながら、預金者利益を守るなどの基本的な役割を果たすよう努力してもらいたいと考えております。  なお、先ほど郵便貯金の増加状況のお話がございましたが、平成八年度の郵便貯金の残高増加額につきまして、郵便局段階での預金の出と入りの額、純増額と呼んでいるものでございますが、約三・一兆円でございまして、残高に対する割合で一・五%、対前年度比で四五%ぐらい、すなわち前年の半分ぐらいになっているところでございます。
  106. 中川正春

    中川(正)委員 時間が迫ってきましたので、要望も含めて一点だけお尋ねをしたいのです。  先ほどのそれぞれの答弁でわかりますように、今回、矛盾が出てくるのです。特に、農林関係一つの目的を持ってつくられた限定された金融機関であります。それで法律ができ、その法律の範疇の中でやっていく、これは郵貯もそういう意味合いがあるわけであります。ところが、ビッグバンの求めていくものというのは、この限定された世界の中でもう商売はできませんよ、そうじゃなくて、スコープを広げながら、それこそ保険業務あるいはまた証券業務、銀行業務それぞれが新しい商品というのを開発していきながら相互に刺激し合ってやる、新しい金融機構というものをつくり上げていく、これが目的であるわけです。  そういう中で、最終的には、これは今大蔵省の範疇に入ってないのですけれども、基本的にそれぞれの省庁かみ合わせて、どういうふうにそれぞれ矛盾する金融機関の情勢というものを解決していくかということは、今もうやり始めなければいけないことなのだろうと思うのです。だから、住専みたいなところへ向いてお金が集まっていってしまう。いわゆる金をどう使っていくか、どんなふうにそれを活用していくかということが限定されている限りは存続しようがないというのが私自身の意見であります。  そんな中で、ひとつ大蔵省としての、金融ビッグバンをそれこそ成功に導いていくというその前提から、財投も含めたこの問題に対する大蔵省としての見解をお聞かせいただきたいと思います。
  107. 三塚博

    三塚国務大臣 財投から申し上げますと、政策的目的をしっかりと持ち、民間金融になじまない金融部面で国家が地域に貢献していこう、こういうことでありますことは御案内のとおりでございます。そういう中で、毎年そのあり方について、決算その他を参照に、また国会論議なども踏まえながら、不断の見直し努力をしてきておることだけは間違いございません。  今後、金融システム改革が進むことにより民間金融の機能が拡充強化されますれば、その分野も含めてやり得る、こういうことでありますが、守備範囲についてもさらに見直すことがあろうかと思います。  きょうは、農林及び郵政ということでおいでで、段々のお話を承りました。これも大蔵所管の財投、金融の基本的な、政策的な目的で設置をされておりますこと、御承知のとおりであります。それぞれが現代に合う努力をされてリストラが行われておるものと私も理解をいたしておるわけでございます。  日進月歩の世界であり、我が国でありまして、世界金融の中でそのあり方はどうすべきかということは絶えず問われてくることであろうと思いますし、そういう中で、政策金融としてのあり方、独自に検討されることでありましょうし、政府全体として、やはり本問題に対する考え方なども進めなければならぬという趨勢にありますことは間違いございません。
  108. 中川正春

    中川(正)委員 残念ですが、時間が来てしまいました。  最後に、今の答弁、総括しまして、非常にはっきりしないということが、不安に導いていくおそれがある、こんなことかと思うのです。どうぞひとつ、六月と言わずに、大臣は大臣なりの信念を持って、ひとつこうだ、こういう話をぜひしていただきますように、そんなことも期待をしながら、質問を終わります。
  109. 柳本卓治

    ○柳本委員長代理 次に、末松義規君。
  110. 末松義規

    ○末松委員 民主党の末松義規でございます。  きょうは、大臣の胸をかりるつもりで質問させていただきます。ちょっと風邪を引いておりますので声がおかしいのですが、その辺は御容赦ください。  私は、まず、この外為法改正、私自身は本当にこれはすばらしいことをやり始めたなというふうに思っております。外為の抜本改正というのは金融ビッグバンのプレリュードあるいはフロントランナーという位置づけでございましょう。この日本経済の体質改善を進めて、さらなる繁栄と世界との共存、これをやっていくには、避けては通れない道だと思います。  午前中の議論で、これがフロントランナーなのかあるいはバックエンドなのかという話もございました。理論的には、やはりすべてがそろった上で、最後に外為法改正というのが美しいのではありますが、実際問題としては、まず外為をやるぞと言って、それで日本の危機というものをつくっておいて、そして日本社会がそれを見ながら、それを外圧ととらえてばたばたと規制緩和をやっていくという方が、私自身は多分日本人の国民性にも合っているのではないかという気がいたします。  そういった意味で、まず外為法改正、これから進むことですが、やはり要請は、ばたばたと一挙に熱を持ってやっていかなければいけない、それが要請であるかと思います。  それと同時に、この金融ビッグバンの本質は、市場中心主義、すべてが市場で決まっていく、そしてそれを容認していくということでございます。その市場も、グローバル化ということで、日本だけの市場じゃなくて世界全体の市場を一挙にやっていくということですから、この市場パワーというものがさらに拡大していく、そこの認識が非常に重要である。  ということは、日本政府、特に大蔵省が、金融政策あるいは行政指導ということでさまざまなことをこれからやろうとしても、従来ほどにはうまくはいかない、あるいは、金融政策がほとんど効果がなくなるということも出てくるであろう。そこの覚悟がないと、また大蔵省の行政指導で一つ一つやっていくという意味ではほとんど外為法改正というものをやる意味がないというふうに思うんですが、その御覚悟が大臣にありますでしょうかということをまずお聞きしたいと思います。
  111. 三塚博

    三塚国務大臣 市場中心主義というのはまさにそのとおり、日本市場でありますとともにアジアの市場であり、国際的な分野の広がりを持った市場でありますことも御指摘のとおりでございます。  金融ビッグバンを進めるに当たりまして、金融政策の効果が低下することのないようにという御指摘、これはそのとおりでありますので、効率的な厚みのある金融市場を構築しながら、金融政策を含めて、さまざまな観点から見て望ましい環境の形成につながるものと考えておるところでございます。
  112. 末松義規

    ○末松委員 今、ちょっと確認したいんですけれども金融政策といっても、市場がどんどんやって、なかなか金融政策が有効に機能しにくくなるだろうということを言ったんですけれども、それで答弁していただきましたですか。
  113. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 金融政策につきましては、御承知のとおり、日本銀行におきましてさまざまな手段を講じて行っておるわけでございます。最近におきましては、日本銀行金融調節におきます公開市場操作の手段の多様化を図るということで、いわゆる公定歩合の変更と並ぶものといたしまして短期市場金利の誘導といったようなことを重要な政策手段と位置づけておりまして、これは、すなわち市場機能を重視した政策運営を行うということでございます。  確かに、金融ビッグバンを進めますと、それだけ金融政策の効果が低下するおそれがあるのではないかという御指摘でございますけれども、むしろ、我が国の金融資本市場を、大臣から今お話がありましたとおり、自由かつ透明な市場にする、すなわち効率的で厚みのある金融市場を構築していくということは、金融政策も含めましてむしろ望ましい環境の形成につながるというふうに私ども考えている次第でございます。
  114. 末松義規

    ○末松委員 では、次に、外為法改正で一影響がさまざまに言われております。この前から聞いておりますと、大蔵省の方で、資金の流出入、これがそれほど大きくない、影響はそれほど出ないんだという印象を受けるような御説明をいただいておりますが、私も大蔵省からもらった資料を見ていまして、ビッグバンをやった英国や米国の例なんかで、資金量の移動というものが、入りにしろ出にしろ、これが数倍から十倍ほどふえているということは事実でしょうし、そういった意味で、影響が少ないということは言えないんじゃないかな。私の前に何人もそういう御質問をされた方がおられましたけれども、私もちょっとそういう気がするんですが、いかがでしょう。
  115. 榊原英資

    榊原政府委員 かなり影響が大きくなって資金が流出するのではないかということでございますけれども委員指摘の英国の例あるいはアメリカの例は、確かに英国が七九年に外為法自由化をし、あるいは七四年前後に外為法にちょうど当たるような規制自由化をしたアメリカで、流出、流入ともに、その前に比べると、例えば九倍とか四倍とか、そういうことで大きく流出しているではないか、こういう御指摘だろうというふうに理解いたします。  これは、午前中でも申し上げましたけれども、イギリスの場合、アメリカの場合でも、流出と同時に流入も大変ふえているという点が第一点でございます。  それから、イギリスとアメリカの場合に、一つ特殊な要因がございました。イギリスの場合は、外為法自由化は七九年でございまして、これは第二次オイルショックのまさにさなかでございました。そういうことでイギリスに大量にオイルマネー、アラブ諸国からオイルマネーが流入いたしましてイギリスの銀行預金をした、その預金をさらに貸し出すということで、イギリスの銀行が対外的に貸し出しを非常に大きくふやしたということで、イギリスのこの時期の流出、流入が非常に大きくふえたというのは第二次オイルショックのせいだという部分が大変あるわけでございます。  同様にアメリカについても、これは七四年前後でございますから、これも第一次オイルショックのときでございまして、そういうことでオイルマネーが相当入ってきたということがございますので、もちろん自由化によって流出、流入ともふえたという部分と、特にオイルショックということで資金がどっとアラブに流れて、そのアラブの資金ニューヨークあるいはロンドンで運用された、そういうことを反映しているわけでございます。  今回はそういう特殊事情がないということが一点と、何度も申し上げておりますけれども、今回の自由化というのは自由化の仕上げではございますけれども、かなりの部分既に自由化をされていた、特に企業の活動については非常に自由化が進んでおりましたので、今度の自由化で大きな流出が起こるというふうには私どもは思っておりません。
  116. 末松義規

    ○末松委員 先ほど榊原局長の御説明で、外貨預金を持っている人の額が、円安を利用して数百億ドルですか、下がって、そういった意味外貨預金を活用しているんで、すぐに資金的な影響余り出ないんだという御説明があったのですけれども、その説明を私も聞いていまして思いましたのは、それも実際に海外預金あるいは外貨預金を持たないと、持って初めて、つまり、外貨預金を持っている、そして国内でも持っている、そして為替が変わればその為替に従って有利なように、あるときは外貨預金を売って円にかえて、あるときは円を売って外貨にかえる。ということは、その前提として、海外に資産を持つか、あるいは預金を持つか、あるいは外貨口座を持つかということが日本国民の間で起こらないと結局そういう操作もできないわけですよね。そうすると、やはり日本からのキャピタルがかなりフライトするといいますか、出ていくというのは当然のことじゃないかなという気がするのですが。     〔柳本委員長代理退席、委員長着席〕
  117. 榊原英資

    榊原政府委員 先ほど申し上げましたのは日本国内における外貨預金でございまして、御承知のように、日本国内における外貨預金は完全に自由になっております。ですから、外為法が完全自由化された後も日本国内外貨預金というのは残るわけでございまして、恐らく、競争の結果、日本国内外貨預金金利海外における金利はほぼ同等のものになるだろうと思われますので、日本居住者の立場からいえば、やはり日本国内預金を置いていた方が便利だということがございますので、例えば外貨建て預金についても、外為法改正によって大きく外に流れるということはないのではないだろうかというふうに考えておるのが一点でございます。  それから、先ほど申し上げましたのは、為替の動向というのが非常に外貨預金の残高というものに影響を与えますので、例えば、自由化をしたときの為替の動向がどうなっているかということが、国内外貨預金を含めてどの程度外貨預金資金流れるかということを大きく左右するだろう、そういうふうに考えております。
  118. 末松義規

    ○末松委員 もうちょっと影響の方についてお聞きしたいのですが、いろいろな物の本を読んだり、人から話を聞くと、外為法が施行されると、有利な外貨資産に向かってキャピタルフライトが出るという一般の見方が強いのですけれども、そうなると、円安圧力がかなり加わっていくとか、あるいは、日本の低金利政策がどうしても影響を受けて、その金利関係で少し高くなっていかざるを得ない、そういうふうな影響とか、あるいはイコールフッティングという考え方から、日本の有取税とかその辺を廃止しなきゃいけなくなるんじゃないか。そうすると、国税の関係ですけれども、税が減っていって財政悪化がもっと出てくるんじゃないか。そういうふうなことが指摘されているのですけれども、そういう点についてのコメントはいかがでございますか。
  119. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 今回の外為法改正によって資本流出が生ずるだろうということで御指摘があるのだと思いますけれども、御承知のとおり、これは国際金融局長からも何度も答弁申し上げていると思いますが、クロスボーダーの資本取引につきましては、これまでも順次規制緩和を実施してきたわけでございます。今回の改正はその自由化の延長線上にある。したがいまして、今回の改正により、直ちに我が国からの大幅な資本流出が生ずるというふうには考えておりません。  したがいまして、今委員の御指摘のような一方的な円安の圧力でありますとか、あるいは国内金利の上昇圧力につながるというふうには考えられないということでございます。  ただ、いずれにいたしましても、今後の為替の動向等の状況につきましては、十分注視していく必要があるだろうというふうに考えております。
  120. 薄井信明

    ○薄井政府委員 税についての御質問もございました。  有取税がどういう影響を与えることになるかということはなかなか見きわめにくいところもあり、各国の対応もさまざまではありますが、金融システム改革の一環として証券市場の構造改革が今後進んでいくということは確かなことでございますので、そういった中で、証券税制全体の中でどうすべきかということを本年末までに検討いたしまして、来年度改正で必要な対応をしていきたいというのが有取税についての私ども考え方でございます。  そういたしましたときに、トータルとしてどういう税収効果があるかということになりますが、市場をオープンにすることが経済全体にどういう影響を与えるかというところはなかなか見きわめがたいところでございます。有取税そのものを緩和していけば、その分税収が減っていくということは御指摘のとおりかと思います。そういった事柄を、財政構造改革もやっていかなくちゃいけないという中で、どうやって調和していくのかというなかなか悩ましい問題があるということでございます。  なお、先ほど源泉徴収の話もちょっと出ておりましたが、この点につきましては、納税者番号のあるアメリカと、そうでないイギリス、フランス、ドイツの方式というのがありまして、この源徴制度そのものも一つのグローバルスタンダードと言えるのではな、いかなと私ども思っております。これがきちっと働くようにするには、租税回避が行われないような資料情報システムを拡充していかなければいけない。これは現在穴があいておりますので、その部分は法律改正によって対応していきたいと思っております。
  121. 末松義規

    ○末松委員 先ほどの審議官のお話ですけれども、直ちには資金流出は起こらないという話ですけれども、その期間というのはどのぐらいを考えているのですか。  榊原局長も直ちにという話はよくされますね。中長期的にはかなり海外資本流出になるだろうという見込みもちらっと聞いた覚えもあるのですけれども、例えば一、二カ月ではそんなに変わらないという話で、じゃ、一年たったら変わっていた。それだったら、余り直ちにと言う意味がないわけです。その辺についての見込みをもう一度お聞きしたい。
  122. 榊原英資

    榊原政府委員 確かに、中長期的には居住者海外金融資産の保有、あるいは非居住者日本の資産の保有、つまり資本の流出流入が増加するだろうというふうに思っております。  ただ、増加するためには、やはり日本の投資家なり預金者なりが国際的な取引になれていく、あるいはそういうリスクに対して十分な認識を持って投資をできる一定の期間が必要かというふうに思っております。  例えば外国の債券や株を取り込んだ投資信託というものがあるわけでございますけれども、そういうものに日本の投資家がなれていくということであればそういうものも売れていくのかなと思いますから、私ども考えているのは、二カ月とか三カ月とかいう単位ではなくて、二年三年、あるいは三年四年という期間のうちに海外への投資もふえていく可能性がある、そういうふうに考えているわけでございます。
  123. 末松義規

    ○末松委員 今の御答弁ですけれども、まさしく大蔵省として、ある意味では、そういうふうな取引が急速に拡大しないとするならば、この外為法改正のどこかがおかしいのですよ、システムとして。むしろ、それをどんどん拡大していくことが大蔵省がこれをつくった意図であるし、それが多分東京市場が中心市場一つになるということではないかと思うのですね。  だから、予測が外れたからどうだという気は全くないのですよ。むしろ、そういう取引をどんどん活発にさせるようなことを、まず大蔵省の方でやっていただきたいというのが私が申し上げたいことでございます。だから、影響が大きいからまずいという話ではないのですよということをちょっと申し上げたいと思います。  次に、今度は外為法金融法制についての話なんですけれども、私、この外為法を眠い目をこすりながらいろいろ見てみたのですけれども、そのときに思いましたのが、ちょっとごちゃごちゃしているなというのが私の印象でございます。  といいますのは、むしろこういうふうな金融法制をつくる場合には、まず市場のルールを定める市場法ともいうべきもの。あと、ユーザー、市場の利用者、つまり投資家とか消費者、それを保護する法律。あともう一つ、業者というか、市場の担い手、つまり業法。これが健全に行われるという三つぐらいの目的で分けてやっていくと、非常にこの法律自体がわかりやすいものなのかな。どうもこれが混然となっているような気がするわけです。どうもそれをワンセットにして法律にしている。  ただ、この三点から見ていきますと、業法という意味ではかなり書いてあるし、また市場のルールというのもかなり書いてあるわけですけれども、ユーザーの保護という点がそれほどこの中にないわけなんですね。この点についてはどういう御議論があったのでしょうか。
  124. 榊原英資

    榊原政府委員 今回の外為法改正案につきましては、御承知のように審議会で一年以上かけて議論をしたわけでございます。金融機関、商社、メーカー、あるいは投資家、消費者の立場からさまざまな御意見を幅広くいただいた上で答申をいただいたわけでございます。  今の委員質問は、外為法だけではなくて、金融関連の法案を全部含めた上での物の考え方ということだと思います。  外為法改正に限って言えば、外為法については完全に市場に任せる、完全自由化をするということでございます。外為業務に関する市場への参入、退出を完全に自由にして、市場参加者の自由な活動を確保して厚みのある市場をつくるということでございまして、基本的には自己責任原則、あるいは市場規律にゆだねる、そういう大原則を立てて完全自由化をしたところでございます。  ただ、このことは、投資家保護あるいは投資家に対するサービスということについてはかの法制がないということではございませんので、銀行法とか証取法とか、さらにそれを超えて金融サービス全体をどう考えていくか、そういう枠組みというのは当然あるわけでございまして、外為法については、今までの外為関連の規制を完全に自由化して市場にゆだねたということでございます。
  125. 末松義規

    ○末松委員 それも一つの政治でございましょうけれども、確かに、この外為法市場が整備されていくと、結局、ユーザーとして、海外日本、これのリスクとリターンをいつも図りながらやっていく、もちろん自己責任原則ではございますが、その中でどうしても、なれた企業はいいですけれども、まだなれない消費者もたくさんいるわけですね。  そういった意味で、投資に対する正しい知識とかあるいは情報公開、ディスクロージャーとか、あるいは企業会計面できちっとそれを充実させておくとか、紛争手続の面とか、そういった消費者から見た保護というのかな、それを注意するような、こういうところに注意すべきだというような、そういう広報の面も含めて大蔵省として何か対応策があるんでしょうか。
  126. 榊原英資

    榊原政府委員 これは必ずしも国際金融局長の仕事というわけではございませんけれども、この金融ビッグバン全体の一つの思想として、市場主義というか市場にゆだねるということでございますけれども、そのゆだねるについては二つ大きな原則があると思います。  消費者なり投資家なりに正確な情報を与える、ディスクロージャー、リスクに対して適切に対応するということに対して十分周知徹底するということが一点でございます。  もう一点は、市場規律を守るということについて極めて厳正でなくてはいけない、市場規律を守らない者については厳罰をもってこれに当たる、そういう二点が非常に重要な点であると思いますので、市場主義というものを貫徹するに当たりましては、その二点に十分配慮しつつ、全体としての金融ビッグバンというものをうまくやっていくということに留意したいというふうに考えております。
  127. 末松義規

    ○末松委員 まさしくその点で全く同感なんですけれども、それでどういうふうな対応を行うんだというのが私の質問なんですけれども、特に答えられる方がおられましたら……。
  128. 長野厖士

    ○長野政府委員 いろいろな金融市場がございますけれども、私の預かりきす証券市場というのを一つの例として申し上げますと、今榊原局長が申し上げたところでございますけれども、投資家に対する例えばディスクロージャーというものをどう充実していくかという課題がございます。審議会の名前ばかり出して恐縮でありますけれども、この点、企業会計審議会というものがビッグバン関連の重要な審議会として今御検討いただいておるのは、まさにそういった環境の整備が必要であろうということでございます。  それから、これも今榊原局長触れたところでございますけれども、例えば不公正取引に関するルールをどうするか、あるいは、これから複雑な金融商品がたくさん出てまいりますと、それを顧客に対して、仲介者、証券会社等がつなぐときのそのビジネスのあり方、そのつなぐべき営業マンそのものがある程度デリバティブとかいった複雑な商品について十分な理解能力を持たなくちゃいけませんし、そういったレベルの資格制度といったものを、諸外国では企業内に置いておりますけれども、そういったものを日本の中でどう整えたらいいだろうか。  それを適切に、顧客にこの商品はこういうリスクがある、もちろんこういうリターンが期待できるけれども、そういうことをきちんと説明していく義務といったものを商慣行の中でどう整備していくか。これは行政が直接手を伸ばしてああしろこうしろと言うことではなく、証券業協会の中の、諸外国でやっておりますようなルールをつくりましたり、あるいは証券業者そのものの社内におきましてそういったルールを整備していく、私どもはそれをチェックするということかなとも思いますけれども、そういったものが現在、検討の課題になっておるところでございます。
  129. 末松義規

    ○末松委員 その企業会計審議会ですか、お話が出ましたので、ちょっと私も質問を先取りになっちゃうのですけれども、もうちょっとお話をお聞きしたいわけです。  まさしく企業の会計制度も、このビッグバンを前提とすればかなり変わっていかなければいけないのか。消費者保護と同時に、ディスクロージャーとかアカウンタビリティー、これが重要になってきておりますから一それも意識すると同時に、現在の取得原価法から時価評価法へグローバル化の中で変えていくということも重要であろう、そういう審議が企業会計審議会の中で行われているという話も聞いておりますが、その辺はいかがでございましょう。現在の御議論と方向性について可能な限りお答えいただければと思います。
  130. 長野厖士

    ○長野政府委員 金融商品につきましては、特に時価というものを正確に把握できる体制というのはこれから大変重要になってまいります。  と申しますのは、ヘッジなどをかけましたときに、それは二つの商品の間の時価同士の上がり下がりをバランスをとるためにやるわけでございますから、それを取得原価で表示してしまうと何の取引をしているか全くわからないということになりますから、これは全体として、金融商品につきましては時価評価の方向に持っていかなければならないのではないかというのが国際的な考え方でございますし、アメリカにおいてもそんな考え方で、今国際的な場所でも、そして私ども企業会計審議会でも並行的にこの問題を検討いたしておりまして、恐らく企業会計審議会ではこの夏までに、六月、六月と申し上げておりますけれども、ある程度の中間的な考え方のものの取りまとめをお願いできたらなと思っております。  これはまた、金融商品は世界共通になりますので、IASと言っておりますけれども国際的な会計基準の検討の場所での議論と平仄が合っていなくちゃいけませんので、一方的に我が方の予定だけをお願いするわけにいきませんけれども、そんな問題に取り組んでおります。  それから、日本がちょっと特殊事情を持っておりますのは、例えばアメリカと比較いたしますと、アメリカには連邦商法というものはございませんで、企業会計がすべての会計制度を律してまいりますけれども日本の場合は商法に企業会計の基本原則がございまして、そこに取得原価方式ということが書いてある。  そうしますと、こういう金融商品といったものを世界の時価の流れ考えていくとすれば、この商法そのものの考え方を法制審みたいな場所で少し御検討いただくのか、それとも、金融商品に限った取り扱いとして、特例としてお認めいただくのかといった問題も、法務省御当局あるいは法制審の方のお考えと調和していかなければいけない、これが、アメリカとはちょっと日本の場合に違った特殊事情でございますけれども、そういった点もこれから精力的に検討させていただきたいと思っております。
  131. 末松義規

    ○末松委員 今のお話で、また私の質問の順番が狂ってくるんですけれども、その商法のことで、法制審というのが出ました。きょうは法務省の方も来られておるかと思います。この法制審で、いろいろと今商法とか民法のお話、特にこの外為法改正後、そういったところでこの哲学そのものが変わってくるというようなことも出てくるわけですから、御議論をいただいていると思いますけれども、その議論の現状及びその方向性がわかるような答弁をいただければと思います。
  132. 菊池洋一

    ○菊池説明員 お答え申し上げます。  外為法という枠組みではなくて、私ども金融システム改革という関連で検討いたしておりますが、この問題につきましては、大蔵省とも緊密に連絡をとり合い、協議を重ねながら、民法なり商法でどのような法律上の問題点があるのかということを現在、鋭意検討を進めているところでございます。  この中で、私どもにとりまして緊急の課題というふうに認識しておりますのは、ストックオプションという問題でございます。このストックオプションといいますのは、会社の取締役または使用人に対しまして、あらかじめ合意で定めた一定の価格で会社の株式を購入する権利を与える、会社の取締役または使用人にそういう権利を与えるというものでございますが、このような制度を株式会社であればどこでもどの会社でも利用することができるように法制の整備をするということが一つ緊急の課題であるというふうに考えております。  現在、私ども、ではどのような手法でこのストックオプションを導入するのか、その具体的な仕組みをどうするのかという点を内部で検討している段階でございまして、現時点では、まだ審議会の審議はスター小いたしておりません。これは、白紙で審議会の審議をお願いするよりは、こちらの方で論点をある程度取りまとめた方が効率的であるというふうに考えているからでございます。  なお、今後のスケジュールでございますが、私どもといたしましては、平成九年度中には結論を得て十年度には実施に移すということを目標に検討を進めたいと思っておりますので、法制審議会の審議をしていただく場合には、なるべく早く結論を出していただけるように、私どもとしても審議のあり方などについて工夫をしてまいりたいというふうに考えております。
  133. 末松義規

    ○末松委員 ストックオプションについて本当に早い御審議をお願いしたいのと同時に、まだ審議にも上がっていないということなんですね、ストックオプションについては。そうですね。ただ、九年度中にできるというのであれば、それは熱いまなざしで期待しているわけですが、そうすると、時価法ということについては全く検討の端緒にもついていないということですか。
  134. 菊池洋一

    ○菊池説明員 株式会社の資産の評価のあり方につきましても、私ども一つの問題であるという認識は持っておりまして、この問題につきましても、現在、大蔵省と鋭意、どういう問題があるのか、どういうアプローチがあり得るのかということについて、協議といいますか、御相談を進めているところでございます。
  135. 末松義規

    ○末松委員 この見通しみたいなのがありませんか。こちらの外為法の方は来年の四月に施行するという話なんですけれども、時価法というものが確定しないならば、そうすると、海外からさまざまな企業日本に投資をしてきたり、あるいはこちらから行ったりするわけですけれども、それに間に合わないという話であれば、これまた非常に大きな問題であります。  そういった意味で、私も幾つかの省庁から法務省の審議が遅いという話をよく聞くのです。民法とか商法とか、三年から五年かかる。そんなことをやっていたら、日本の命運が法務省さんの審議過程に、肩にかかってくるという話になるわけですから、そこは、問題意識をお持ちだったら、問題の重大性も持っていただいて、直ちにやっていただきたいと思います。  大蔵省さんの方は、その辺はいかが考えているのでしょうか。
  136. 長野厖士

    ○長野政府委員 私ども、先ほどちょっと申しましたけれども企業会計審議会におきましての金融商品に関する時価会計についての中間的なお取りまとめを、願わくば六月ぐらいには一回まとめていただいて、いろいろな角度から各方面に問いたい。この六月に企業会計審議会としての中間的なお取りまとめをお願いして、それを各方面の御論議のために公表していただければなと審議会の方に今お願いしております。  そのような段階で、具体的に、法務省の御当局とも、それが商法の観点から見たらどういう問題なり対応なりがあり得るかということを精力的に詰めてまいりたいと思います。
  137. 末松義規

    ○末松委員 そういうスケジュールがあるということですが、これについては早急な御検討を法務省さんの方にお願いして、日本経済の足を引っ張らないように、ぜひともお願いしたいと思います。  ちょっと話がそれたわけなんですけれども、ユーザー保護、まだちょっと私は残っておりまして、例えば、両替商も勝手にできるということで、いいかげんな両替商なんかが詐欺事件を起こしたり、そういった可能性も当分の間はあるわけなんでしょうが、この辺についての、例えば、さっきの話と若干重複しますけれども、消費者の保護という観点から、一々大蔵省注意するということはないというのはよくわかってはおりますが、消費者の保護あるいはユーザーの保護という視点を、さっきの、証券局ならば証券業協会に任せるのではなくて、むしろそちらの方の意識も大きく持っていただきたいと思うのですね。  その意味で、ちょっとこれは大臣に、突然の質問で恐縮ですけれども、消費者の保護あるいはユーザーの保護という観点からも、きちんと配慮をするんだという御決意をいただければありがたいと思います。
  138. 三塚博

    三塚国務大臣 先ほど来、論議を聞いておりますが、国金局長からも言われましたとおり、ビッグバンは、完全自由化を目指す、こういうことなんですね。賢い消費者、賢いユーザー、そして大事な資産を賢く運用をする。こういうことで、PRをしっかりおやりなさい、それは、政府公報なり、それぞれ、メディアもそういうのを取り上げていただいて、専門家はたくさんおりますから、懇談放送などをやるようにお願いをする手もあるのかなとは思っております、マスコミ活用型で。  そういう中で、ユーザーの問題、業者の健全な育成という視点で申されておるわけでございますが、本件については、もちろんPRが大前提で、それでこういうシステムになります、こういうこと。それと、これを仲介するそれぞれの業界も育つんじゃないでしょうか。そういう専門の会社というもので取り次ぎをさせていただくことによって、前に進むなと私は思います。  審議会におきましても、ユーザーの保護の観点から議論はなされております。答申を拝見しますと、「市場への参入・退出を自由とし、市場参加者の自由な活動を確保するなど、効率的で厚みのある市場とすることが求められている。」云々と書かれておるわけでございまして、基本的には、やはり自己責任原則や市場規律にゆだねていくという考え方というものが一貫して流れておるというふうに思っております。     〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
  139. 末松義規

    ○末松委員 ユーザーの行動の結果まで責任を食えということではないです。それはまさしく自己責任の世界ですから。それのトランジショナルといいますか、過渡的なところできちんとPRをしてくださいということを申し上げているつもりです。  次に、市場の担い手の業者の健全性について質問させていただきたいと思います。  先ほどから何人かの委員の方が、今、外為を自由化した場合に、外国勢と日本勢が勝負したら本当に大丈夫かと。日本勢の方はかなり規制で縛りつけられていて、手数料も高い、そういった意味で非常に不利になるのではないか。特にまた、不良債権なんかも抱えて、病み上がりというか、まだ病気中というところもたくさんあるということで、そこで元気のある外国勢が入ってきたらどうしようもないのではないか。  私も最近、外国市場関係者と話をしていると、日本市場について、やはりあの千二百兆円、これがもう魅力で魅力でたまらないと言っておりました。何とかこの千二百兆円を世界に活用できないかということで、意欲を燃やしておられたわけです。特にまた、今は日本株も安いし、買いどきであると。榊原局長もどこかの雑誌に書かれておられましたけれども。  そういったことで、日本の中核産業、金融業も買収の対象になるのではないかというふうなお話もその市場関係者がしていたのですが、これについて、特に今、コメントはございますでしょうか。つまり、病み上がりの状況の日本、それで時期的に今やったらかなわないのではないかということなのですけれども
  140. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  確かに、日本金融機関、特に銀行等は不良債権問題を抱えていることは御指摘のとおりでございますが、その不良債権問題に懸命に取り組むとともに、前向きに何をやっていくのか、あるいは何を得意分野として残し、何を切り捨てていくのかという経営戦略をそろそろ本格的に検討しておる、私はそう思うわけでございます。  千二百兆が非常に魅力的だということは、結局千二百兆円のマネジメントあるいはオペレーションをだれが主体的にやるのかということだろうと思うのです。そこにはやはり金融技術が要りますし、それからリスクをテークするだけの資本力というものが要るわけですね。そういったものをなるべく早く十分のものにしていくということが、これからの金融機関が活躍できる大もとだと思うのでございます。  そういう意味では、私どものいわゆるビッグバンと言われているようなものも、そういったものに寄与する面が非常にあるのではないかと思うわけであります。具体的に銀行証券の取り扱い業務をどうするかという話もありますし、それから持ち株会社を認めるかどうかという話もあります。こういったものも全部前向きの方に使っていただければ、かなり私どもが期待し得るそういった金融機関が育っていくのではないかというふうに思うわけでございます。  ただ、私は、昨日も申し上げましたように、余りにも我が国の国益というもの、一番大事なものだというふうに思いますけれども、ただそれで排他的になりますと、ビッグバンはグローバルスタンダードにならないわけですから、そこは矛盾を生じるわけでございます。  したがって、あくまでグローバルスタンダード、自由な競争の中にあって、できるだけ早くそういった体力をつけてほしい、そのために私どもとしてやれることは何であろうか、そのインフラ整備は何であろうかということでこのビッグバンを進めたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  141. 末松義規

    ○末松委員 今の銀行局長さんのお話、非常にすばらしいと思います。とにかく白猫でも黒猫でもネズミをとる猫はいい猫だ、どこかのトップの方が言われていましたけれども、基本的に東京市場そのものを活性化させるということが、すなわち日本企業がその場で大きな利益を得るということではなくて、この市場の活性化によって、物の流通、人の流通、情報の流通、それが東京市場世界じゅうで最も魅力的なもののうちの一つになる、その規模をもっと拡大するのだということが目的でしょうから、そういった意味で今の銀行局長のお話は傾聴に値しました。  ただ、そうはいいましても、日本企業の場合に縛りが多過ぎてどうにもならない。例えば手数料が非常に高い、あるいは先ほど中川議員の質問にもございましたけれども銀行証券あるいは信託、保険、そういうふうな相互参入、垣根がちょっときつ過ぎるとか、手を縛られてさあけんかしてみろと言われているのと一緒のような状況になるのでは、確かにアンフェアだというふうに言われざるを得ないわけです。そういった意味で、今審議会の審議が進んでいるようですけれども、ぜひその点で一刻も早い規制の緩和というものを同時にやっていただきたいと思います。  あとそれから、ちょっと具体的で細かいことなんですけれども、関連して、国内送金と海外送金の価格差が非常にあり過ぎるという話をよく聞くのですね。専門家によりますと、五億円を東京から大阪に送ると手数料が七百円しかかからないのに比べて、東京からニューヨークにそれを送ると十二万円もかかる。ただ、このような手数料が高過ぎるので、最近某都市銀行が手数料を従来の二十分の一に下げたという話もあるのです。それだけ、二十分の一に下げられたということ自身は、また実際に本当に適正な価格がもともとついていたのかという疑念も生じせしめるわけなんです。  こんなことでフェアな競争ができるのでしょうかということにも通じるのですけれども、この点はどうお考えになっておられますでしょうか。
  142. 山口公生

    ○山口政府委員 今委員の方から海外送金の手数料の例を挙げられましたけれども、基本的にはこうしたものは自由にしてございますので各金融機関が自由に決めるものでございます。今私の手元にある資料で、個別銀行がありますのでちょっと名前を伏せさせていただきますが、某大手のアメリカ銀行の手数料に比べまして、文書によるものはむしろ日本銀行の方がおおむね安い。それから、電信のものは日本のものが少し高い。銀行によっては低いものもあるということでございまして、決して日本の方が何か特別な規制で特に高く云々ということはないと思います。     〔金子(一)委員長代理退席、保岡委員長     代理着席〕
  143. 末松義規

    ○末松委員 もう時間も残り少なくなってきましたので、次の議題に移ります。  今度は市場そのものについての質問でございますが、先ほどから市場を完全自由化するというのが原則であるというお話をしておられました。市場自由化したとしても、先ほども質問が出ておりましたけれども、巨大な郵便貯金、郵貯というのがございます。この郵貯というのが日本の個人預貯金総額の約二割を占め、民間預貯金の約半分も占めている。そういう巨大なものが、羊の群れの中に象がいるわけです。これがそのままいるということは、基本的にこれは市場原理が金融市場で働くのかという疑念を生ぜしめるのですけれども、いかがでしょうか。
  144. 三塚博

    三塚国務大臣 郵便貯金については、御案内のとおり少額預金という上限が設けられております。そういうことの中で財政投融資資金の原資として有利かつ確実に運用をしていく、こういうことでございまして、その目的というものと民間金融市場との整合性をどう考えるかという点であろうと思いますが、図ることが必要であると考えておるわけであります。  いずれにせよ、政府事業の将来のあり方については、国がどのような機能を果たすべきなのかという観点から、行政改革すべて聖域なしでいくわけでございますから、聖域なく検討が今後も行われる、こう考えております。
  145. 末松義規

    ○末松委員 済みません、ちょっと私自身がとらえ損ねたのかもしれませんけれども、郵貯について、市場原理との関係で、大蔵大臣どうお考えになられていると言われましたか。
  146. 三塚博

    三塚国務大臣 ちょっと簡単なものですから意味不明で、ちょっと質問のポイントを、失礼ですがずばりと言ってもらえばいいわけでございますが、郵貯と市場金融との整合性いかんということなのでしょうか。そのあり方をどう考えるか。
  147. 末松義規

    ○末松委員 市場原理が貫徹できるのかということです。
  148. 三塚博

    三塚国務大臣 市場原理ということになりますと、これは郵便貯金が長年の経過の中で少額預貯金、それを有利確実に運用して還元をしていかなければならないという視点で、財投資金、こういうことで来ておるわけであります。  それで、御案内のとおり長期大型プロジェクト、一般会計においてなかなか達成のできない事業がこのことによって行われるという意味では、政策金融機関でございますから、市場原理ということからいいますとどうかなという考え方が言われる。しかし、民業補完という観点で今日まで使命を果たしてきたことだけは、一つの視点であります。閣内にも、担当大臣、元大臣小泉今は厚生大臣、論争があります。そういう論争を踏まえながら、国民の世論の落ちつくところ、また懇談会をつくってこれはやられておるわけでございますから、そこで的確な結論は出るだろう。  いずれにしても、ビッグバンがスタートをしてまいるということになりますと、日本市場に対する魅力の資金でございますから、それぞれに対応し、市場性を高める。今でも御案内のとおり、みずから資金運用を郵貯会計やられておることでございます。郵政省全体と言っていいのでしょうか。そういう点を今後、先ほど申し上げました間断ない聖域ない見直しを進めることで、本件をビッグバンの全体の中で活用をしていくということになるのじゃないでしょうか。してまいりたい、こう申し上げましょうか。
  149. 末松義規

    ○末松委員 私、論理的に考えれば、やはり市場原則というのは、これはビッグバンが出てくると、それは市場原理から外れたいびつなものというのはどんどんはじき出されるのですよね、基本的には。そうなると、郵貯の存在が余りにも大きいとちょっとそこはおかしいという話になって、これはどんどんしぼんでいくか、そういうことになりかねない。だから、市場原理でどんどんやっていけば、今でも市場連動をしているという話はお聞きはしていますけれども、どうもそれは余りにもやはり巨額だ。どんどんそれが自由化されればされるほど魅力がなくなっていき、魅力をつけるために無理して政策金利という形になってしまうと、これがまた無理が財投の方に行って、また循環して大きな五百兆を超えるという借金の話になっていくと思うのですね。  そういった意味で、郵貯もそれから財投もワンパッケージでそこは規模を減らしていかざるを得ないのじゃないかというふうな感触を私は持っておりますので、これ以上大臣に答えてくれとは言いませんけれども、そこはぜひお考えいただきたいと思います。外為市場関係からもそういうもの……。  それから、ちょっと時間がなくなりましたので先を急ぎます。  外為法の十六条に政府の経済制裁に対する緊急の対応というのが書かれているわけですけれども、この場合、この代表質問でも民主党から田中甲議員が質問をしたのですが、この緊急の制裁をやるときに政令一本に委任されているわけですね。これはちょっとおかしいのではないか。人々の経済活動の自由を奪うおそれのあるこの緊急の政策の場合に、それを政令一本で、しかも国会に何ら報告がないというのは問題じゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  150. 榊原英資

    榊原政府委員 改正法案の第十六条は、現行法と同様、政令によって支払い等を直接禁止するものではなく、許可を受ける義務を課するにとどまるものでございます。また、原因行為が許可を受けたもの等である場合には、この規定による規制の対象にならないものでございます。  つまり、例えば送金が禁止されても、親族送金などやむを得ない場合はこれは許可を与えるということがあり得るわけでございますから、非常に一般的に生活権に関するものを禁止するということとはかなり性格の異なったものでございます。  それからまた、その許可義務を課する要件というものは法律で明定されております。ですから、その法律で明定されたものについて、全面的に禁止するというのではなくて許可を受ける義務を課するということでございますから、これは政令で行って問題のないものだというふうに私ども考えております。
  151. 末松義規

    ○末松委員 この許可を課するという言葉、確かに代表質問に対する答えでも出てきました。ただ、私は外務省にいたときにイラクの経済制裁を実際大蔵省に頼みに行った側だったのです。そのときに、基本的にイラクに対して全部送金は禁止だったのですよ、国連決議によって。  基本的に禁止であるならば、これはこれから外為法改正日本人の海外資産がどんどんまた世界に広がっていくわけですね。そのときに禁止というのは、ある意味では、まだどこの国がなるともわからないわけですよ、そういうような禁止のときに、これが経済活動自体を練るわけですね。その縛るということ自体に対して、緊急時であれば国会の事前の承認が得られないというのはよくわかるのですよ。ただ、事後に対してまでも一切知らぬ顔をするのかということはおかしいではないかというのが私のポイントなのです。そこをちょっと、ぜひお答えいただきたい。
  152. 榊原英資

    榊原政府委員 一切知らぬ顔するということではございませんで、これは十分そういうことで制裁を行うということは周知徹底させなければいけないと思います。  ちなみに外国でこれに対してどういうふうに扱っているかということを参考までに述べさせていただきますと、例えば米国ではこういう制裁というものは大統領権限ということになっておりまして、大統領は、しかも私どもはかなり制裁の要件を法律で明定しておりますけれども、米国の場合にはかなり広い、国家の安全保障というようなことで大統領に権限が委任されておるということで、大統領権限で経済制裁を行うということができるようになっておるわけでございます。ただ、大統領は可能な限りこれを議会にコンサルトをし、議会にこれを報告するということは明定されております。  また、フランスにおきましても、これは議会の承認を得るとか議会の了解を得るというようなことにはなっておらないということです。ほかの国の場合ももし必要があればお話しいたしますけれども、議会に報告するというふうな規定があるところはございますし、あるいは議会がこれに対して問題があるとしたときには、例えばイギリスのような場合には、国王に対して枢密院令によってその命令を覆すというようなことを要求することができるというようなことはございますけれども、一般的に言って、経済制裁の場合には行政府の権限でこれを行っているということでございます。
  153. 末松義規

    ○末松委員 日本のお役人さんは選挙で選ばれていないのですよ。大統領は選挙で選ばれているのですよ。そのアメリカの大統領が、可能な限り議会にコンサルトをすると言っているわけですね。  そういう目で見ますと、十六条で、国連決議もその「等」で読むという話もございましたけれども、ほかの、自発的に日本国政府が独自にできると読めるわけなのですね。そうした場合に、議会が最初から関与せずに、そして最後まで関与しないのかということについては、ここがちょっと納得できないと思うのですけれども、これは大蔵大臣の所見もできればお伺いいたしたいと思います、政治家として。
  154. 三塚博

    三塚国務大臣 この法律改正十六条は、先ほども触れられましたように、許可を受ける義務を課するにとどまっておるのですね。本件も、政令ではなくて、最終的には、スタートを切るときには閣議決定であるわけですから、議院内閣制における政府の責任においてこのことが行われる、こういうことであります。個人の生活を脅かすということはないという、許可面の問題であります。
  155. 末松義規

    ○末松委員 ちょっとこれは、これをやっていると時間がなくなるのですけれども、国会と行政府との関係で、これについて全く相談がないというのはちょっとおかしいと本当にそう思うので、そこはぜひ御検討いただきたいと思います。  それから、ちょっとおかしいところというのがまだありまして、細かくなって恐縮ですけれども、第七条に「大蔵大臣は、」外為相場を「定め、」と書いてあるのですね。そして、その第三項に「大蔵大臣は、」「外国為替相場の安定に努める」と書いてあるわけなのですけれども外為法改正して市場中心主義にするということの中でこの「大蔵大臣は、」外為相場を「定め、」というのはちょっとどうも言葉としてなじまないと思うのですが、その辺についてお伺いしたいと思います。
  156. 榊原英資

    榊原政府委員 外為法改正案の七条第一項において基準外国為替相場及び裁定外国為替相場を大蔵大臣が決定するという旨がございますけれども、基準外国為替相場あるいは裁定外国為替相場というのは、予算あるいは税の執行のときに使うレートでございまして、実はこの法律の体系の中でその計算の方法を定めるということでございまして、当然のことながら、為替レートそのものは市場が決定するものでございます。  その決定された為替レートを受けて予算等で使う為替レートをどのように計算をするかということでございまして、外国基準相場というのは、過去一定期間の市場で決まった実勢レートの平均値を六カ月ごとに更新するというものでございまして、例えば予算を執行するとき、予算を編成するとき、一定為替レートを使わなければいけないわけでございますから、その為替レートをどのように計算するか、それを定めておるのが七条一項でございます。  それで、七条三項につきましては、これは努力規定でございますけれども為替レートが安定するように大蔵大臣が努めるということでございまして、これは、例えば介入というような手段を使って為替レートの安定に努めるということでございます。
  157. 末松義規

    ○末松委員 一応その御説明もお伺いはしたのです。したのですが、この第七条の前に「外国為替相場」と物々しく書いてあるわけですよ。それでこれが出てきているので、どうも読んでいるとあたかも古い遺物が残っているかのような印象を受けるのです。それはもう気にするなど言えばそれで終わってしまうかもしれないのですけれども、どうもそのにおいがあるので、何とかこれは、そういった、本当に予算に使うのだったら予算に使うという形の表現の仕方があるだろうということを私は言いたいわけです。  それから、外為相場の安定ということなのですけれども、今御説明がございました。これは介入ということで話がございましたけれども、これはどういう場合を念頭に置いて、そしてどういう対応の基準をもって為替相場の安定ということをやっているのでしょうか。
  158. 榊原英資

    榊原政府委員 為替相場というのは、我が国経済あるいは企業にとりまして大変重要な価格の一つであります。我が国の経済がバランスのとれた持続的成長を達成できるように、為替相場が経済のファンダメンタルズに沿って安定的に推移するということが望ましいというふうに考えておるわけでございます。  ですから、御指摘の点につきましては、大蔵大臣為替相場が経済のファンダメンタルズに沿って安定的に推移しているかどうかということを判断基準にして為替相場の安定に努めるということでございまして、為替相場が経済ファンダメンタルズから大きく乖離しているような場合には介入を行うことがあり得るということでございます。
  159. 末松義規

    ○末松委員 この場合、外為特会から資金を使って、それで為替相場に日銀を経由して介入しているということなのですが、そのとき、実際にどのくらいの資金をどういうふうに入れるかということについての裁量は、大蔵大臣あるいはその部下の方がやられている、そういう理解なのでしょうか。
  160. 榊原英資

    榊原政府委員 どの特定のタイミングにどれだけの額を投入するかということは、大蔵大臣が決めることでございます。
  161. 末松義規

    ○末松委員 この介入した結果とその効果、あるいはそれの報告というのはどういうふうになっているのでしょうか。
  162. 榊原英資

    榊原政府委員 特定の介入が効果があったかどうかという判断はなかなか難しいものでございまして、まず介入の目的が何であったかということと効果がどうだったかということは関連してくるわけでございます。  為替介入に対する統計と申しますと、幾つかございまして、一つは、為替介入をすることによって民間金融市場に非常に大きなインパクトを与えるわけでございます。例えば、ドルを買うということであれば円資金を民間市場に供給するということになるわけでございますから、それに関しては財政の対民間収支という統計がございまして、これは一カ月置きにこの統計を出してございます。それが一つでございます。  それからもう一つ、当然のことながら、ドルを買ったり売ったりしますと外貨準備が減ったりふえたりするわけでございますけれども、その外貨準備の総額については、毎月これを発表しておるところでございます。  それから、特定の為替介入に効果があったかどうかということは、外国為替特別会計というものがございまして、これの決算で、評価益がどのくらいある、積立金がどのくらいある、こういうことを公表しているところでございますので、その外為特会の決算を見ていただければ、その年に評価損が減ったとかふえたとか、あるいは積立金が減ったとか、そういうことがわかるような仕組みになっておるわけでございます。
  163. 末松義規

    ○末松委員 今ここに、その「外為特会の決算状況」というのを私も見ているわけなのですけれども、平成三年度で歳入と歳出を差し引いた損益が約三千億円程度。それで、平成四年度が四千三百四十七億円、平成五年度は九千百三十億円、平成六年度は八千五百九十六億円、平成七年度は六千七百八十二億円。物すごい黒字になっているわけですね。  この黒字の中で、この過去五年間の中に一回だけ、平成七年度なのですけれども、「一般会計へ繰入」というのが書いてあります。三千五百億円を一般会計へ繰り入れているわけです。これは過去四年間なかったのですけれども、どうして平成七年度に繰り入れられたのでしょうか。
  164. 榊原英資

    榊原政府委員 外為特会の一般会計への繰り入れにつきましては、各年度の予算編成の中で一般会計の財政事情あるいは特別会計の状況等を総合的に判断して行っているところでございます。  厳しい財政事情を背景として、外為特会の運営に支障が生じない範囲で、昭和五十七年度以来、外為特会法第十三条に基づく前年度剰余金見込みの一般会計への繰り入れが行われております。  また、特例公債の発行を回避するためのぎりぎりの措置として、御指摘のように平成七年度には特別法による一般会計繰り入れが行われ、平成八年度においても同様の繰り入れが行われているところでございます。  なお、平成九年度予算においても、極めて厳しい財政状況も勘案しつつ、外為特会の健全性、九年度の外為特会の収支状況等を勘案し、外為特会法第十三条に基づき、利益見込み額の大宗を一般会計に繰り入れることとしておるところでございます。
  165. 末松義規

    ○末松委員 ちょっと私、ちまたの話で恐縮なんですけれども、今、外為特会、七兆円の含み損があると聞いたことがあるのですね。それの評価損があるという話なんですが、そういうふうなことをいろいろと聞いてみると、かなり黒字になっているこのフローの数字なんですけれどもストックが一体どのくらいあるんだというのも聞きたくなってくるのですが、ストックではどのくらいあるのでしょうか。
  166. 榊原英資

    榊原政府委員 今、外為特会の繰越評価損ということに言及がございました。平成七年度末には繰越評価損が十兆九百二十二億円でございましたけれども、平成八年度に相当評価益が発生いたしました。これは、割に円高のときにドルを買っておるということでございます。そういうことでございまして、ほぼ三兆円強評価損が減りまして、八年度末には七兆一千六百三億円の評価損ということになっております。  ただ、これがストックの損すべてということではございませんで、一方で積立金、例えば外貨準備を持っておりますと金利収入があるわけでございます。そういうものをその評価益、評価損と見合わせるために積立金として積んでおりまして、この八年度末の積立金は七兆六千二百二十一億円であり、八年度末には、外為特会では積立金が評価損を上回るという状況になりました。  つまり、実質的な黒字に平成八年度末で復帰したということでございます。平成八年度末は四千六百十八億円の実質黒字でございます。これは、七年度、六年度、五年度、四年度というのは赤字でございましたけれども、平成三年度末には、実は実質黒字三千十四億円だったわけでございます。八年度末で実質黒字を回復いたしまして、四千六百十八億円の実質黒字ということでございます。  なお、この評価損は、為替レート百十円で計算しておりますので、今のレート、百二十六円で計算いたしますと、さらに評価損は大きく減ることになるというふうに理解しております。
  167. 末松義規

    ○末松委員 実際に、この外為特会というのを、簡単に数兆円という話、言葉には出しますけれども、相当大きな額が動いているという気がいたしますので、これ自体も、本当にもうかったときは、確かに、一般会計へもっともっと繰り入れていただきたい、あるいは、公債の減額に努めていただきたいという話もありますけれども、あと、本当にタイムリーな報告がきちんとなされないと、十兆円近く評価損が出ているときには大変な話になっていたわけでしょうから、そういった意味で、この外為法改正、これをやった暁、基本的には市場中心主義ということで、市場にはそれほど大きく逆らわない、それに逆らってやるということは、非常にこれは勇気のあることと同時に、大きなやけどをするということにもなりかねませんので、そこのところはぜひ慎重にやっていただきたいと思います。  続けます。  それから、この為替リスク、非常にそういった意味で大きな状況になるわけですけれども、それを避けるために、円の国際化というのを大蔵省もかなり御努力をされているやに聞いておりますが、この円の国際化努力及びその今後の見通しについて、これはできれば大臣の方にお伺いしたいと思います。
  168. 三塚博

    三塚国務大臣 この問題の取り組みですが、基本的には取引当事者の経済的、合理的な判断で選択、決定されるものであります。政策的に誘導できるものではございませんが、円資産の運用、調達の場としての東京市場の利便性を高める、円の通貨価値に対する国際的な信認を向上させるということによって、円の国際的な評価、また国際化のより一層の推進を図るものと考えておるところであります。  これまでも、国内短期金融市場の整備、ユーロ・円取引規制緩和、健全な外為市場の育成など、円の国際化と環境整備に努めてきたところでございまして、今後とも、外為法改正を初めとする金融システム改革を着実に実施することによりまして、円の国際化の環境整備に努めてまいりたい、こう思っておるところでございます。
  169. 末松義規

    ○末松委員 もし円がもっともっと国際化されれば、為替リスクが減るということになります。日本経済のファンダメンタルズいかんでしょうけれども、ぜひその御努力を続けていただきたいと思います。  それと同時に、また、もう一つ大臣にお聞きしたいのですが、大臣も先ほど、APECの幹部の方々とお会いされて、いろいろな話をされたと言われておりましたが、日本ビッグバンを進めて外為法改正をするということで、これはアジアの諸国の方々にも大変大きなインパクトがあるのだろうと思います。  そういった意味で、各国の反応というものはいかがだったかということと、それと、アジア諸国との間で、他のアジア諸国の中のまだ経済的に未成熟なところが、この中から、日本と同じようにビッグバンをやれとか、そういうふうな圧力を感じる国もあると思うのですけれども、そういう国とはお話しになられておられますでしょうか。
  170. 三塚博

    三塚国務大臣 本件につきましては、全体会議の中で、IMF専務理事による加盟国また地域のマクロ経済のあり方の中でも触れられたところでございますが、私の基本的なスピーチの中で、当面する我が国経済の諸問題の中で諸改革にさらりと触れさせていただき、特に、金融システム改革については、痛みを伴うものではあるが、全力を尽くしておるところ、フロントランナーとして外為法改正を提出、今国会で成立を期することといたしており、このことは、まさにグローバルスタンダードに立った、フリー、フェアの市場に生まれ変わることと相なる、以下、幾つか諸改革、是正、規制緩和等の問題なども申し上げさせていただきました。  そういう中で、バイの会談を――それで、その評価でありますが、十七国のメンバーからは大変清聴をいただきまして、後ほどバイの会談を七カ国とやりましたが、全体会議における報告、それに基づいて、日本経済金融システム金融不安、こういう問題についても全体会議で触れさせていただいたものですから、その話を聞いて安心をした、なお一層頑張ってほしい、こういう激励は各代表からいただきました。  それと、中国の代表でありますが、上海を中心に、今実験的なスタートを切っておることは御案内のとおり、香港を残すことにより、一国二制度の中で、中国の進展は、やはり金融市場の整備、こういうことでありましたし、それにフィリピンも、市場改革、改善に向けて極めて積極的な発言がなされておりました。以下同様でございます。  アジア諸国は、御案内のとおり、これからインフラ整備等に巨大な資金を要する国々ばかりでございます。そういう中で、日本市場の生まれ変わりというものに対して大きく期待をしたということも事実であります。それと、輸銀を中心とした民間活力、いわゆる他の民間金融機関と触媒効果を発揮して、それぞれ国家の、地域の整備発展に当たる、こういう共同提案を我が国から出させていただいたわけでございますが、本件も満場一致で、ぜひということです。そんな点で、円に対する問題、円借が昨今、御案内のとおり、多様に活用をされておるところでございます。  そういう点で、ビッグバンがAPEC加盟国家に対して静かなインパクトを与えたことだけは間違いございませんで、いろいろと今度は情報開陳のネットワークをつくらさせていただいたものでございますから、大蔵省大蔵省と、対大蔵省、各国が全部それでホームページを開いていただくことによりまして、金融の情報がそれぞれの国家に、ビッグバンの進めぐあい、それもできるということで、そういう意味では、遅きに失したという御批判もありましたが、大変いいタイミングでビッグバンが進んでおる、こう思っておるところであります。
  171. 末松義規

    ○末松委員 確かに、日本がアジアにおける実験場ということなので、その後に続く国のことも考えながら、ぜひこの実験を成功させていただきたいと思います。  税について、最後にちょっとお尋ねをいたします。  世界市場とイコールフッティングの立場から、さまざまな日本市場をもっともっと開放して自由化するということの中で、先ほどもちょっと触れましたけれども、有取税と取引所税、これを撤廃すべしであるという議論が強いという主張を私も持っております。  ただ、これにつきましては、先ほどいろいろとお答えになられた経緯もありますので、要望だけ言っておきますが、この税が撤廃されたといって、すぐにこれにかわる税を主税局の方で見つけるという発想がもしあるとすれば、いかがなものかと思うわけでございます。といいますのは、これはビッグバンをしたところの後で、税収がどうなっているのかをお調べになっているとは思いますので、私も後でお聞きしたいのですけれども、まず経済のパイを大きくして、そしてその中から税も大きな形で取っていく、少し時間をかけてという発想も必要なのかなという気もいたしております。これは指摘だけにとどめさせていただきます。  それから、さらに税の捕捉ということで質問をさせていただきます。  資料情報制度というものができるということで、その内容と報告の頻度、従来との違いというものにつきまして、御説明をいただきたいと思います。
  172. 薄井信明

    ○薄井政府委員 税金の話で、有取税等については先ほど申し上げましたので省略いたしますが、いわゆる源泉徴収制度、それを補完するものとして、それがきかない部分については、お金流れについて把握していかないと、そこが穴があいてしまうということから、御指摘のように、資料情報制度というものを今検討いたしております。  それを実効性のあるものとしなければなりませんが、ただし、これが余りきついと自由化した意味がなくなるという点もありますので、現在、自由化されているアメリカにおいてどういうことがなされているかということを十分勉強の上、それ相応のものを、それ相応のものをすると大変かもしれませんが、日本でできる限りのもので欧米並みのものということを考えております。  具体的には、銀行等の金融機関それから郵便局から税務当局に対しまして、一定金額以上の海外送金あるいは海外送金の受け取りに関して資料を出していただく。内容的には、当然のことですが、送金人または受取人の住所、氏名等です。それから、相手先の所在地、住所、氏名等、それから送金額、日付、それに送金の原因といったようなことが内容になるかと思います。  なお、送金を依頼した方々はこれらの事項を金融機関銀行等に書面で告知していただく。銀行等の方は住民票だとか、今もあるのですが、運転免許証等によってそれが本人であるかどうかの確認をしていただくということになります。また、銀行等の報告義務違反とか、本人の告知義務違反がありましたときに、罰則を設けることなどについても検討させていただいております。  なお、一定金額につきましては、どこかで線を切らないといけないと考えておりまして、現在アメリカが一万ドルということもあり、日本の実情も今調べておりますが、百万円程度ではないかなということで詰めをいたしておるところでございます。  いずれにしましても、制度の実効性の確保と取引実務との関係、これを考えて最終的には決めていきたいと思っております。
  173. 末松義規

    ○末松委員 百万ということで、一回百万ということですね。  そうすると、例えば一日に何回かやった場合には、それは数百万になるという理解でよろしゅうございますね。  それと、課税逃れということで、海外における資産とかその辺の捕捉についても、ある程度それはやっていかなければいけないところかもしれません。その意味で、今調査されているということですが、体制整備を含めて、それはどういうお考えなのかお聞きしたいということです。  最後に、アメリカの例を調査されているということで、先ほど納税者番号制、納番制とのかかわりで、海外との関係でいけば、ある意味では、この外為法を契機として納番制導入についての議論を深めていくということも一つの有効なやり方ではないかなと思いますが、それについていかが考えられているか、その辺についてお伺いします。
  174. 薄井信明

    ○薄井政府委員 まず最初に、分けて百万円以下にして送金されたらどうなるかという問題がございました。これは割り切りだと思っております。名寄せをしていただくことはなかなか難しいと思いますので、仮に銀行を分けてそういうことをされるようであれば、これはつかまえようがないと思っております。ただ、そういうことが一般的に行われるということであるならば、百万円という金額を下げていくということで対応せざるを得なくなると思っております。  それから、海外の資産についてというお話ですが、なかなか資産そのものを把握するのは、よその国ですので、難しいと思います。したがいまして、送金、こちらから送る分、向こうから返ってくる分、これを端緒にして海外の資産を把握していくということが一つの方法かと思っております。  なお、租税条約によって情報の交換がお互いにできますので、そういったものを活用していくという手法も、方向としては考えられるかと思います。  それから、最後に、納番制度でございます。納税者番号制度を用いて所得課税の公平を確保していく手法をとっているアメリカの方式、それからヨーロッパの、イギリス、ドイツ、フランス等は、どちらかというと、どちらかというとというか、納番制度をとっておりません。いろいろな理由があってとっておりませんで、そのかわり、いわゆる源泉徴収制度を活用しつつ全体に対応していく。このどちらかの手法になっているのが現在の世界の状況でございます。  日本現状は納番はありませんから、源徴制度を確保しつつ、そこから漏れていくものについて資料情報制度で拡充していくという手法、少なくとも当面はそれしかないと思っております。  将来の問題として、納番制度をどうするかということになりますと、納税者番号に何が使えるか、今、年金番号だとか住民票番号、いろいろ出てきております。こういうものが今後活用できるのかどうか、それからプライバシーの問題をどうクリアするのかということを乗り越えて、今後の検討課題としてまいりたいと思っております。
  175. 末松義規

    ○末松委員 本当にどうもありがとうございました。質問を終わります。
  176. 保岡興治

    ○保岡委員長代理 次に、佐々木憲昭君。
  177. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。  本日最後の質問になりますので、どうかよろしくお願いいたします。  外為法改正案に即して御質問をしたいと思います。  大切なことは、経済の基礎にあります実体経済との関連で問題をとらえることではないかと思います。国民生活と実体経済の安定的発展にとって最も重要な価格の一つ為替レートであり、それが例えば購買力平価と極端に離れたり、あるいは相場が不安定になるということのないようにしていくことが非常に大事だというふうに思うわけであります。  この点で、外為法の第一条には、「目的」として、「対外取引に対し必要最小限の管理又は調整を行うことにより、対外取引の正常な発展を期し、もって国際収支の均衡及び通貨の安定を図るとともに我が国経済の健全な発展に寄与する」と書かれております。  この「目的」でありますが、これは以前と変わりはないと思いますが、いかがでしょうか。
  178. 榊原英資

    榊原政府委員 現行法と同様でございます。
  179. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 私は、一定の秩序ある国際化というのは必要なことだと思うわけでありますが、その中で、やはり一定のルールが求められるというふうに思います。ここの「目的」にありますように、「国際収支の均衡及び通貨の安定を図る」、そして「我が国経済の健全な発展に寄与する」という、この目的を達成する手段ですね、これがこの外為法に備わっているかどうかということをお聞きしたいわけであります。  為替取引自由化が進むことによりまして、内外資金の動きというのはこれまで以上に非常に活発となり、流動的となってまいります。為替相場の不安定性というのは、そのことによりまして一層強まるわけであります。既に一九八〇年に原則自由とされまして、さらに実需原則が撤廃されて以降、為替取引というのは極めて投機的な色彩が非常に強くなってきております。  大蔵省国際金融局の金融業務課長編の「新外国為替管理法Q&A」という本がここにありますけれども、この中にはこのように書かれているわけです。「少なくとも、対外取引がより自由にできることになりますと、特に、短期性、投機性の資金の流出入もやりやすくなるわけで、その結果、外国為替相場が急激に変動したり、あるいは短期的に国際収支の振れを大きくするようなことが起きやすいということも否定できないと思われます。」このように書かれているわけであります。  ところが、今回の改正によりまして、外国との間の決済資本取引について、事前の許可や届け出が不要となる、また一部の直接投資や経済制裁等の場合を除いて、原則として全く自由に行うことができるようになる、報告は事後報告だけで足りる、こういうことになるわけですね。また、為替取引自由化によりまして、内外資金の動きはこれまで以上に加速され、かつ投機的、流動的となるというふうに思われるわけであります。そのことによって、為替の不安定性は一層高まるということが予想されるわけです。  現行の外為法では、円相場の急騰などの異常事態が生まれたときに必要な措置をとる、いわゆる有事規制の仕組みが設けられております。大蔵省国際金融局年報によりますと、この有事規制というのは、外為法の「要をなす重要な制度」である、このように位置づけがなされています。  そこで確認をしたいわけですが、「要をなす」とされた、この有事規制考え方というのは、現在もこれは変わらないのかどうか、これについてお聞きをしたいと思います。
  180. 榊原英資

    榊原政府委員 今引用なされました、その「Q&A」というのですか、それは八〇年度の改正に伴ってつくったものだというふうに思っております。八〇年代と今と、国際経済の状況が相当変わっておりまして、グローバリゼーションが相当進んでおるということでございます。八〇年当時は、やはり有事規制というものによって、かなり為替レートなり国際収支なり、そういうものに我が国政府が影響を与えるということがあり得るというような考え方に立っておったわけでございますけれども、現在の私ども考え方は、為替レートの決定というものは基本的に市場にゆだねるということでございまして、そこのところの考え方は八〇年当時とかなり大きく違っているというふうに御理解いただいて結構だと思います。     〔保岡委員長代理退席、金子(一)委員長代理着席〕
  181. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 つまり、その有事規制という考え方は、これは全く放棄されたということをおっしゃったわけですか。
  182. 榊原英資

    榊原政府委員 委員承知のように、有事規制の概念そのものは維持しておりますし、今後とも経済制裁というような形で有事規制を発動するということはしばしばあると思います。  ただ、私が今申し上げているのは、今も規定の中にございますけれども、経済的な理由で有事規制を発動するというときの物の考え方でございまして、もちろん世界恐慌のようなことが起これば、これは経済的理由で有事規制を発動するということがあり得ないわけではございませんのでそういう規制を維持しておるわけでございますけれども、恐らく八〇年当時は、もう少し頻繁に経済的な理由で有事規制を発動するということを考えておったのではないか、こう推測できるわけでございます。  その点については、十数年たった後、相当、市場原理というかマーケット主義というか、そういうものを尊重する立場に変わってきておりますという御説明をしたところでございまして、有事規制あるいは経済制裁ということについての考え方は、法律的に維持しておるわけでございます。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  183. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今回の改正では、確かに有事規制の仕組みというのは形の上で残っているわけであります。しかも、今おっしゃったように、経済的有事よりもいわば政治的有事、経済制裁ですね、この方を優先させておりまして、条文上も前面にそれが出ているということであります。しかも、その政治的有事、つまり経済制裁の発動要件について見ますと、これは以前よりも緩和をしていると言わざるを得ないと思うわけであります。  これまでは「我が国が締結した条約その他の国際約束の誠実な履行のため必要があると認めるとき」というのが基準でありました。国際的約束というのは、例えば国連安保理の決議などを指すというふうに説明がなされていたわけであります。しかし、今回の改正案では、発動要件の中に、「国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため特に必要があると認めるとき」というふうに書き加えられております。例えば、これは日本政府の判断あるいは日米政府によって必要と判断すれば制裁を発動できるということになるわけでありますが、そのように考えてよろしいでしょうか。
  184. 榊原英資

    榊原政府委員 委員指摘のとおり、十六条におきまして、「又は国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため特に必要があると認めるとき」ということで、国際平和のための国際的な努力に我が国が寄与できるために特に必要、こういう条件のもとに経済制裁を閣議決定を経て発動することができるということでございます。
  185. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 要するに、日本政府が単独で判断をして経済制裁を行うことが可能となるというのが今回の内容でありまして、これは、今までよりは大幅に発動要件を緩和をしたというふうに感じるわけであります。  さて、次に聞きたいのは、経済的有事の問題であります。経済的有事という点では、二十一条の2にありますけれども、これは、一つは「国際収支の均衡を維持することが困難になること。」二つ目は「本邦通貨外国為替相場に急激な変動をもたらすことになること。」第三が「本邦と外国との間の大量の資金の移動により我が国の金融市場又は資本市場に悪影響を及ぼすことになること。」ということで、このいずれかの事態が生じ、外為法の目的の達成が困難な事態になると認められる場合は、一定資本取引を許可制にできるというふうにしているわけであります。  ただ、問題は、これまでは事前届け出制がありまして、それで事態の把握というのは比較的容易にできたと思うわけでありますが、事後報告ということになりますと、事態の掌握というのは比較的おくれていくわけであります。  したがって、仮に経済的有事の場合、その判断をするということになりますと、事後報告では資金流れを十分把握できないということで、投機的な動きを把握する有力な手段を失うというおそれがあるのではないかと思うわけですが、この点はいかがでしょうか。
  186. 榊原英資

    榊原政府委員 御指摘のとおり、完全自由化を行いましても、市場動向の的確な把握というのは大変重要なことでございまして、そのために事後報告制度を整備することにしているところでございます。私どもといたしましては、事前が事後になっても、状況の的確な把握が困難になるとは思っておりません。  また、私ども、実は、例えば為替市場等の観点では常に行っておりますけれども市場に対するヒアリングということで、非常にインフォーマルに市場関係者と情報の交換というようなものを行っておりまして、こういうインフォーマルな情報の交換というのは、情報を的確に把握するためには極めて重要なものになってきているというふうに思っております。  非常にグローバリゼーションあるいは市場化というものが進んだ状況では、各国とも事後報告及びマーケットとの常日ごろの対話というのを非常に重要視しておりまして、私どもの行政もそういう方向に向けて変化してきているということでございます。
  187. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 その点が法文上不明確なわけであります。  次に、外為の担い手の問題についてお聞きをしたいわけですが、これまで、外国為替業務の担い手というのは、大蔵省が認可した外国為替公認銀行に限定されてきました。また、一部の業務につきましては、証券外為という形で証券会社の営業が認められてきたわけであります。いわゆる為銀主義であります。なぜそのようなことをしてきたかということについてはいろいろな理由がありますけれども、中でも大事な点だと思われるのは、当局が対外取引の状況を把握しやすくなるということと、そして、特定の取引の適法性の確認等の行政的機能を分担させるということが為替管理の実効を確保するために有益であったということにあったと思うのです。この点から、為銀主義は現行外為法上重要な柱としてこれまで位置づけられてきたと思います。  外為審議会の昨年の六月の答申では、許可・届け出制度を廃止し、担い手の多様化を図る中で有事規制の実効性を維持するには、「引き続き外国為替公認銀行等による顧客との取引の適法性確認が重要」、このように述べていました。また、外為業務の新たな担い手に対しても、その要件を定め、適切な監督の枠組みをつくることが必要であると指摘していたわけであります。しかし、今回提案されております改正案は、この外為公認銀行制度を撤廃するということにいたしまして、新たな担い手については、これは登録制もないということであります。  外為審の法制特別部会長の大場さんは、「金融財政事情」という雑誌の中で、外為の担い手に関しては一切の監督はないのかと問われまして、外為法上の制約は一切ない、こういうふうに答えておられるわけです。  そうなりますと、対外取引の実態を把握し、そしてその適法性をチェックするというこれまでの有力な手段を失うことになるのではないかと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
  188. 榊原英資

    榊原政府委員 御指摘のとおり、担い手、為銀制度の廃止というのは、実は今回の外為法改正案の最も重要な柱でございます。中間報告の段階ではまだそこまで踏み切れておりませんで、例えば担い手を拡大するというようなことを考えておったわけでございますけれども、最終的には、審議会の審議を経まして、担い手を全廃するというのが望ましいという結論に達したわけでございまして、それに従って法改正案を提出させていただいておるわけでございます。  確かに、為替管理というか、為替を当局がしかるべく監督し、これを管理していくという立場からいえば、外国為替公認銀行制度というのは大変有益な制度でございました。そういう意味で、当局の監督なり管理の一端を担って、それなりの役割を銀行が果たしてきたということでございます。  ただ、私どもの今回の改正趣旨は、外国為替という観点からの監督は必要ないということでございまして、もちろん銀行法、証取法等の監督は残るわけでございまして、それは今度新たにできる監督庁というようなところがやることになるわけでございますから、金融機関に対する監督というものを全く放棄したわけではない。しかし、外国為替という特定の業務に着目した監督というものについては、今回、全面的に放棄するということでございます。  ただ、これを放棄することによって、適法性の確認等、そういうものに問題が生じるのではないかという御指摘ではございますけれども、これにつきましては、事後報告を徴求することとしておりまして、事後報告をしなかった場合のペナルティーというのは当然科せられるわけでございますから、私どもとしては、正確な事後報告がなされるということを期待しております。  また、銀行等の確認義務ということは、この法律の中、例えば第十七条でございますけれども銀行等の確認義務等は旧法どおり残るということでございますので、今度の改正によって、いわゆる外国為替を監督するという大蔵省の従来の役割は放棄することになるわけでございますけれどもマーケットにおける違法行為あるいは犯罪行為、そういうものに対するグリップが緩くなったというふうには思っておりません。
  189. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 監督は必要がないということでありますが、そうなりますと、為替レートが異常に乱高下するというような事態に責任を持って対応するといいますか、つまりそれは、第一条の「目的」でありますが、その「目的」に沿うように全体を運営していくというのが政府、大蔵省の本来の役割だと思うわけですが一その点について非常に不安を覚えるわけであります。  現行の外国為替公認銀行制度、これは幾つか重要な規定がありまして、例えば外国為替持ち高規制というのがありますね。これは、大臣は銀行外国為替の持ち高の限度を規制できるということになっておりまして、これは、外国為替相場の急激な変動を防止するということと同時に、銀行経営の健全性を確保する、そのためにとられた規制であります。  それからもう一つは、外国為替公認銀行の確認義務でありますが、これは、今も少し御説明がありましたが、外為業務を行うに当たりまして、その原因となった対外取引が所定の手続を経て行われているかどうかを確認しなければならないというものであります。  それからもう一つは、外国為替銀行の報告義務。この法律の適用を受ける業務について、主務大臣に報告しなければならない。こういう制度が、外為銀行制度の廃止によってこの規定がすべて廃止されるということになるわけですね。  そうなりますと、これらのことが基本的になくなるというふうになりますと、対外取引の内容をまず当局が把握するということ、それから、その適法性をチェックする、そういう点での手段を失うということになるのではないか、それから、持ち高規制の廃止によって、為替投機の防止、それから為替相場の激変に対処する手段、これも失ってしまうということになるのではないかと思うわけですが、この辺はどのように考えておられますか。
  190. 榊原英資

    榊原政府委員 大蔵省が権限を失うということに関して大変御心配いただきまして、ありがとうございます。ただ、私どもは、これが非常に正しい方向の行政の転換だというふうに思っております。  一つずつ議論させていただきますけれども、まず、持ち高規制というものにつきましては、確かに今まで各銀行外貨の持ち高について規制をしておりましたけれども、一年ぐらい前に持ち高の上限を大変大きくいたしまして、事実上、持ち高規制がバインディングではない、持ち高規制によって銀行の自由な為替の売買が制約されることのないような形に既になっておりました。ですから、今、現行の持ち高規制を廃止するということがそれほど大きなインパクトを持つというふうには思っておりません。  ただ、本当に為替市場が大きく揺れるようなときに、緊急事態ということで持ち高規制を復活するということは可能でございますけれども、そういうような事態は生じることはないというふうに思っております。  これも、やはり七〇年代、八〇年代と現在の考え方が違っておるわけでございますけれども、基本的に、為替レートというのはマーケットが決めるものである。それに対して政府がどういうふうに対応するかということでございますけれども、これは、例えばG7諸国が、金融政策あるいは為替の介入政策、そういうものを協調することによって為替レートが乱高下しないように努めるというのがほぼ国際的な合意になっておるわけでございますから、私どももそういう国際的なコンセンサスに沿って、若干時代おくれになっておる大蔵省の権限を放棄した、こういうふうに理解していただいていいのではないのかというふうに思っております。  また、銀行の確認義務につきましては、例えば有事、経済制裁のときには特定のところに支払いをしてはいけないということになるわけでございますから、そういう規制についての違法行為についての確認義務というのは、これは改正法でも残っておるわけでございます。  それからまた、報告についても、できるだけ簡素なものに、必要のないものについてはできるだけ削減するという努力をいたしておりますけれども、必要な報告については徴求させていただく。そして、報告義務違反に対しては厳しくこれに対処するという点については、現在と変わるところはございません。
  191. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 私、なぜこのことを重視するかといいますと、規制がどんどん緩和されまして自由化が進んでいくと、資金流れが極めて自由に内外動き回るわけですね。そして、その規模も。極めて巨大なものになっていく。そうなりますと、為替そのものの変動が、予想をはるかに超えた非常に大きな変動になって、つまり投機的な市場に一変する。このことが実体経済に極めて大きな被害を与える場合が生まれるのではないかという点を心配しているわけであります。  例えば、一昨年の四月に一ドル八十円という非常に重大な急激な円高が起こりました。あのとき、物づくり産業の中から悲鳴が聞こえたわけですね。これは、もちろん中小企業もそうですけれども、大企業の幹部の中からもそういう声が聞こえました。  例えば、日立の磯部専務が、文芸春秋の九五年五月号ですけれども、こう言っているのですね。今の為替相場はほとんどマネーゲームによってつくられるものになっているのだ、地道な労働で製品を生産している産業がマネーゲームの成り行きに振り回されている、こういうふうに述べたことがあります。また、NECの関本会長は、これは週刊東洋経済ですけれども、白昼堂々と賭場が開かれ、総理の前で、大蔵大臣の前で、皆の眼前でばくちが行われている、こういうふうに、当時の円の急騰に対して激しく告発をしているわけであります。  ですから、現行制度のもとでもあのような大変な事態が起こり得るわけでありまして、こういう改正が今回行われるとなりますと、より一層そういう危険性が強まるのではないかというふうに私は危惧をするわけであります。  ぜひその点を、一定為替の安定といいますか、そういう方向を常に念頭に置いて、日本経済全体の健全な発展の前提として為替相場が機能するように要請をしておきたいと思います。  最後に、対外的な直接投資との関連ですけれども、二十三条では、事前の届け出を求めて審査をする場合の審査の観点として四点が挙げられております。これは今の外為法でありますが、これが二点に変わるわけですね。  四点一々紹介いたしませんが、その中に、三つ目の項目として、我が国の特定の産業部門の事業活動その他我が国経済活動に悪影響を及ぼすこと、こういう場合にチェックをする、そういう項目になっているわけであります。  対外直接投資というのは資本取引一つでありまして、海外に進出した企業から今度は我が国に逆輸入で国内産業に悪影響を与える、そういうおそれもあり得るわけでありますが、そういう場合を想定して、そういうことの起こらないようにということでこの項目が規定されているというふうに思うわけです。  今回の改正は、この対外投資につきましても、原則として事前届け出制は廃止するということで、そしてその二つの要件、一つは、「我が国経済の円滑な運営に著しい悪影響を及ぼすことになること。」二つは、「国際的な平和及び安全を損ない、又は公の秩序の維持を妨げることになること。」こういうふうに極めて抽象的な項目に変わっていくわけですが、現行法の三の項目が、私はこれを削除したということに非常に注目をして、これは非常に困ったことだなというふうに思うわけです。  なぜかといいますと、今でも空洞化で大変な状況にありますが、中小企業、特に地場産業あるいは下請関係もそうなのですけれども、非常に大きな不況の中での苦しみを今抱えているわけですね。そういうときにこの項目が削除をされて一般規定に変わっていきますと、果たしてこれで国内産業を安定的に発展させることができるのだろうか、そういうふうな不安を覚えるわけでありまして、この点について、国内産業の影響というのはもう考慮しなくてもいいという判断に立たれたのかどうか、この点を聞きたいと思います。
  192. 榊原英資

    榊原政府委員 もちろん改正法案に残っております、我が国経済の円滑な運営に著しい影響を及ぼすとき、こういうときは別でございますけれども、今度の改正外為法考え方は、特定産業を保護するために外為法を使わないということでございます。そこには明確な方針の変更がございます。
  193. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 時間が来ましたので終わります。どうもありがとうございました。
  194. 額賀福志郎

    額賀委員長 次回は、来る十一日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十一分散会