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1997-03-04 第140回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月四日(火曜日)     午前十時六分開議 出席委員   委員長 額賀福志郎君    理事 金子 一義君 理事 坂井 隆憲君    理事 保岡 興治君 理事 柳本 卓治君    理事 北側 一雄君 理事 谷口 隆義君    理事 池田 元久君 理事 佐々木陸海君       飯島 忠義君    今村 雅弘君       衛藤征士郎君    木村 隆秀君       小林 多門君    菅  義偉君       砂田 圭佑君    田中 和徳君       田中 昭一君    中野 正志君       山中 貞則君    吉川 貴盛君      吉田左ヱ門君    渡辺 喜美君       上田 清司君    木村 太郎君       北脇 保之君    鈴木 淑夫君       中川 正春君    並木 正芳君       藤井 裕久君    前田  正君       宮地 正介君    村井  仁君       末松 義規君    田中  甲君       山本 譲司君    佐々木憲昭君       秋葉 忠利君    吉田 公一君       新井 将敬君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 三塚  博君  出席政府委員         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵省主計局次         長       林  正和君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省関税局長 久保田勇夫君         大蔵省理財局次         長       戸恒 東人君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         国税庁課税部長 舩橋 晴雄君  委員外出席者         農林水産大臣官         房審議官    鈴木 信毅君         農林水産省畜産         局衛生課長   青沼 明徳君         資源エネルギー         庁石炭部計画課         長       羽山 正孝君         大蔵委員会調査         室長      藤井 保憲君     ————————————— 本日の会議に付した案件  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三三号)      ————◇—————
  2. 額賀福志郎

    額賀委員長 これより会議を開きます。  内閣提出関税定率法等の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。三塚大蔵大臣。     —————————————  関税定率法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま議題となりました関税定率法等の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明いたします。  政府は、最近における内外経済情勢変化に対応し、我が国の市場の一層の開放を図る等の見地から関税率還付制度等について所要改正を行うこととし、本法律案提出いたした次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明を申し上げます。  第一は、関税率等改正であります。  石油製品粗糖等関税率引き下げ等を行うこととしております。  第二は、還付制度等改正であります。  中間留分石油製品等の増産に係る関税還付制度を廃止し、石油アスファルト等に係る関税還付制度を新設するとともに、平成九年三月三十一日に適用期限の到来する石油関係還付制度等について、その適用期限延長等を行うことといたしております。  第三は、暫定関税率適用期限延長であります。  平成九年三月三十一日に適用期限の到来する暫定関税率適用期限延長することといたしております。  第四は、税関手続簡素化であります。  輸出入申告の際に提出することとされている仕入れ書についてその提出を省略できる範囲を拡大する等、税関手続簡素化のため所要改正を行うことといたしております。  第五は、過少申告加算税等導入であります。  過少申告加算税及び無申告加算税導入のため所要改正を行うこととしております。  その他、所要規定整備を行うこととしております。  以上が、関税定率法等の一部を改正する法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。
  4. 額賀福志郎

    額賀委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 額賀福志郎

    額賀委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前田正君。
  6. 前田正

    前田(正)委員 おはようございます。関税定率法等の一部を改正する法律案について、新進党を代表してお尋ねをいたしたいと思います。  私も前回の衆議院選で二回目の当選を果たすことができました。その前のときは自民党に所属をいたしておりました。今度は新進党でございます。立場が違うわけでございますので、私の思いを、ひとつまたいろいろとお尋ねをいたしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  今回の関税率改正の主な項目として、まず石油製品ということでございます。これは一キロリットル当たり大体十九円、それを一キロリットル当たり十二円という値段に下げられるようでございます。それからまた、粗糖といいますかお砂糖でございますが、これは一キロ当たり二十円のところを十五円、それから発泡酒はいろいろ国内にも問題があるということでございましたけれども、これも一リットル当たり四十三・一円というものを一リットル当たり六・四円、こういう数字でございます。ジュート製の糸及びひも、これは五%を全く無税にするということでございます。それにかかわる布製品というのはどう当たるのか私もちょっとわかりませんが、そのほかいろいろとあるようでございますけれども、この関税引き下げが行われるそれぞれの理由とその背景、それから数値の決め方をひとつお伺いいたしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  7. 久保田勇夫

    久保田政府委員 関税局長久保田でございます。よろしくお願いいたします。  幾つかの項目について御説明がございました。特に、石油製品関税引き下げ粗糖関税引き下げ、それから発泡酒について、三つでございます。ちょっと、それぞれの背景等異にしておりますので、多少長くなることをお許しいただきまして、御説明をさせていただきたいと思います。  まず最初は、石油製品関税引き下げでございます。  これは、今委員御紹介ございましたように、原油につきましては、平成九年度から原油関税引き下げを実施するということが既に決まっているわけでございます。これは後ほど御照会があれば御説明をさせていただきますが、暫定税率ということで定まっております。  そういう状況で、一方で原油関税引き下げられますと、原油輸入した人は国内製品をつくるわけでございまして、国内で例えば灯油だとか軽油だとかをつくってそれを販売するということになりまして、そういう意味では、原油輸入コストが下がる、したがって国内精製をする人のコストが下がるわけでございます。そういう意味では、国内精製業者によってつくられます製品コストが基本的に下がるわけでございます。そのときに、灯油だとか軽油だとか、製品を直接外国から輸入する人の製品関税をそのままにしておきますと、これらの物価はそのまま国内にとどまることになりまして、したがいまして、結果的に、この国内石油精製業者のところの石油製品価格も下がらないという事態が想定されるわけでございます。  そういうことでございますので、今回の原油関税引き下げに伴いまして石油製品油種引き下げを行う、そういうことによりまして国内石油製品油種引き下げを図って、いわば原油関税引き下げメリット消費者及び産業界を含む非常に幅広い石油製品ユーザーに還元されるということをねらった措置でございます。  なお、原油につきましては、御承知のとおり我が国原油依存度はほぼ一〇〇%でございますので、国内産業保護を目的とした関税を課する必要はないというのが一般的な考え方でございまして、そういうことに基づきまして、我が国におきましては、これはちょっと複雑なんですが、原油関税基本税率というのは関税定率法無税とされております。後ほどお話があるかと思いますが、他方で、原油関税は、石油によって石炭産業が打撃を受けたという原因者負担的な考え方に立ちまして、石炭対策観点特定財源ということになりまして、それで関税暫定措置法により暫定税率規定されている、こういうことになっておるわけでございます。  この暫定税率が、現在キロリッター当たり三百十五円でございますが、四月一日より平成十三年度までキロリッター当たり二百十五円ということになっておりまして、十四年以降は基本税率である無税が適用されるということでございます。  そういうことを踏まえまして、全油種にわたって幅広くメリット消費者なり産業界に還元されるということをねらうといった趣旨で、今回の改正をいたしておるわけでございます。  なお、同様の、原油関税引き下げを踏まえた石油製品関税引き下げは、平成元年、平成四年にも行っておりまして、そういうものとして御理解をいただきたいと思うわけでございます。  二つ目につきましては、粗糖お話だったと思います。  我が国砂糖価格というのは、近年、低下傾向にございます。しかしながら、欧米諸国と比較をいたしますと、なお相当程度的外価格差がございます。農水省の直近の資料に従いますと、ことし、八年のキログラム当たり小売価格は、東京では百九十八円、ニューヨークでは百六十一円、ロンドンでは百三十七円、パリでは百六十三円ということでございまして、専門家の計算によりますと、諸外国主要都市の平均を一・〇といたしますと、東京砂糖価格というのは一・三ということになっているようでございます。  そういうことを踏まえまして、消費者それから食品製造業者等ユーザー及び砂糖業界からの内外価格差縮小に対する要請が高まっているというところが実態でございます。したがいまして、今回、国内砂糖価格引き下げによりまして内外価格差を縮小させるために、粗糖関税引き下げるということにしたものでございます。  それから、第三番目のお尋ねは、発泡酒ということでございます。  発泡酒と申しますのは、従来輸入がほとんどなかったために、個別の視細分が設定されておりませんでした。そういうことから、関税の方でまいりますと、「その他の発酵酒」というところに分類をされております。  ただ、発泡酒といいますとわかりにくい言葉ではございますが、泡のあるアルコール飲料でございまして麦芽を原材料とするものでございますが、既存の特定分類、特にビールのうちには入らないということでございます。アルコールは五%程度ということでございますので、大体その辺の御感触はおわかりだろうと思います。そういうことで、これまで、細分類がないということから「その他の発酵酒」ということで、分類上、リッター当たり四十三・一円というのが設定されていたわけでございます。  しかしながら、先ほど申し上げましたように、発泡酒につきましては、近年、酒類の生産技術の進展、麦芽がまあまあであっても通常飲めるようなものができるようになったとか、あるいは消費形態変化、お客さんが大変お飲みになるようになったというふうなこともありまして、輸入も、「その他の発酵酒」という分類の中でかなりの割合を占めるようになってきたわけでございます。そこで、今回、「その他の発酵酒」の中に発泡酒に対応する新たな視細分を設けまして、関税率を設定するものでございます。  関税率につきましては、内外価格差でございますとか国内産業事情等を総合的に勘案して設定をしたものでございます。
  8. 前田正

    前田(正)委員 発泡酒は特に、四十三・一円から六・四円、こういう数字ですけれども、いっそのこと六円とか七円とか、六・四という数字の端数がいいのかどうか我々はわかりませんが、むしろ切り捨てとか切り上げをした方がわかりやすいのではないかというふうな気がいたします。  それから次に、今回、石炭対策財源になっているという石油関係関税引き下げが行われたわけでございます。この間の三井三池の炭鉱の閉山ということもございますけれども、今現在、石炭対策のこれからの展開をどのように考えておられるのか、お尋ねいたしたいと思います。
  9. 羽山正孝

    羽山説明員 御説明申し上げます。  現行石炭政策は、平成四年度から十三年度の十年間を期間として実施をしているところでございますが、その期間内の石炭勘定におきましては、石炭鉱業構造調整産炭地域の振興、鉱害復旧などの石炭政策に必要な予算を確保するため、原油等関税をその主要な財源に充てることとしているところでございます。  今回、関税定率法などを改正いたしました場合、石油製品関税率引き下げられることとなり、既に現行法において決定をされております原油関税率引き下げと相まって、石炭勘定における歳入が減少することは確かでございます。しかしながら、石炭勘定におきましては、平成九年度から平成十一年度における借り入れの規定もございますことから、これらの活用などを図ることによりまして所要財源を確保し、現行構造調整などの石炭政策の着実かつ円滑な推進を図ってまいりたいと考えているところでございます。
  10. 前田正

    前田(正)委員 今回の改正については別に異議はないのでございますけれども個別品目関税率改正について、今後とも国内産業保護するという観点があります。それから一方ではまた、消費者への利益還元などを考えますと、やはりそれぞれの観点からバランスをさせて検討する必要があると思うところでございますが、その辺、ひとつ大蔵大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  11. 三塚博

    三塚国務大臣 従来より、個別品目関税率改正におきましては、関税率体系バランス及び税制としての整合性を踏まえつつ、それぞれの品目事情に応じまして、御指摘のような生産者保護消費者等需要者利益国際的要請税収等観点を総合的に勘案をし、実施してまいりました。  今後とも、ただいまのやりとりのように、十分にその点を考慮をしながら関税率改正に取り組んでまいりたいと思っております。
  12. 前田正

    前田(正)委員 今大蔵大臣の御答弁がございましたけれども、極力、国内産業保護とそれからまた我々消費者という立場とを、うまくバランスよく関税のかけ方をひとつやっていただきたいというふうに考えております。  次に、加算課税の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  今回の改正項目一つ加算税導入提案されているとのことでもございます。原則的には、一〇%の過少申告加算税と一五%の無申告加算税導入について、課税適正化のために必要な改正だと考えられておるところでございます。  実は内国税では、昭和二十二年の申告納税制度導入と同時に加算税というものを既に導入しておるところでございます。しかし一方、関税については、昭和四十一年に申告納税制度というものを導入しておりますけれども、なぜそのときに加算税というものを導入しなかったのか、お尋ねいたしたいと思います。また、あえて今回の改正加算税導入することになったのはどういう理由なのか、それもひとつお伺いをいたしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  13. 久保田勇夫

    久保田政府委員 お尋ね加算税制度導入でございます。これは御承知のとおり、今年度の改正の大きなポイントでございます。  今御質問ございましたように、昭和四十年代の最初関税申告納税制度導入をされました。そのときに、あわせて加算税制度導入すべきではないかというのをかなり内部でも議論をしたようでございます。  そのときに、当時の状況といたしまして、一方では通関業法品目分類等に係る事前教示制度整備されていなかったという事情がございます。それから、後で少し場合によっては述べるかと思いますが、関税の場合の特殊性といたしまして課税対象が非常に多うございまして、品目数でいいますと、品目分類、これが全部課税対象になるわけではございませんが、七千分類になる、こういうふうなことでございます。  そういうふうな品目分類を一般の輸入者専門家の助けなしに行うのは技術的になかなか困難ではないか。そういうところで、無申告加算税、むしろ特に過少申告加算税でございますが、これを導入するのはちょっと酷ではないかということをかなり議論したようでございまして、当時の話といたしましては、そういう意味で、輸入者が適正な納税申告を行う環境が整っていないというふうに判断をされて、まずはその環境整備が重要であるということで、過少申告加算税等導入が見送られたというのが経緯でございます。  その後の展開を見てみますと、昭和四十二年に通関業法が制定されまして、業として通関手続の代行を行う通関業制度の創設及び通関士制度導入をされました。その後、これは分類に係るものでございますけれども事前教示制度、これはどの分類に入りますかということを輸入者が尋ねました場合に税関の方からこれにお答えをするという制度をつくりまして、特に昭和五十八年には運用体制整備を図っておりまして、書面による回答を制度化いたしております。さらに、平成七年に閲覧制度導入いたしまして、教示結果を第三者にも開示できるように、こういうことにしております。もし機会があればまた御説明をさせていただきますが、今回のこの加算税導入を契機に、この教示制度をさらに拡充することを考えております。  それでは、お尋ねの、今回加算税導入しようとする理由はどうか、こういうことでございますが、私どもは、三つ観点からぜひ加算税お願いをいたしたいというふうに考えております。  まず第一番目は、今委員おっしゃいましたように、申告納税制度のもとでは申告義務の適正な履行を図るために加算税は非常に効果的な制度である。金額的にどうこうということはあるかもしれませんけれども、効果的な制度であるということでございます。関税につきましては、先ほど述べましたように申告納税制度導入の際に加算税導入は見送ったところでございますけれども関税申告納税制度導入されてもう三十年云々ということでございまして、申告納税制度は十分に定着したと認められるし、環境も十分整ったというふうに判断した、これが第一でございます。  それから第二番目は、近年の税関事後調査によりまして把握された申告漏れ税額を見ますと、やはりこれは関税納税者間における課税の公平を維持し、より適正な納税申告を確保する必要が高まっているというふうに判断をしているわけでございます。そういうことで、関税におきましても内国税と同様に過少申告加算税及び無申告加算税導入いたしまして、関税申告納税制度内国税と同様のものに整備する必要があると考えたわけでございます。第二番目でございます。  それから第三点は、税関におきましては、似たような話ではございますが、適正な通関と迅速な通関とは車の両輪のようなものだと考えております。後ほど御質問があろうかと思いますけれども、従来から、通関手続迅速化でありますとか円滑化に対しては、規制緩和を含めていろいろ努力をしてまいりました。しかしながら、その反面といたしまして、やはり通関手続適正化というのは、税の面においても、また後ほどお話があればお答えさせていただきますが社会悪物品の場合にも同様でございまして、そういう意味では、加算税導入による適正な納税申告の確保というのは、通関手続迅速化を裏打ちするためにも必要な措置ではないか、こういうふうに考えたわけでございます。  以上、三つ観点から加算税導入お願いしているわけでございますが、今御質問の中にもございましたように、これは本来、申告納税制度が適用されている貨物に対して適用する、こういうことでございますので、旅客の携帯品でありますとか外国郵便物、これは賦課課税方式をとっておりますので、こういうものは定義上と申しますか、加算税は課されないということを念のために申し上げておきたいと思います。  なお、先ほどのような状況でございますので、私どもとしましては加算税の中身については非常に慎重を期しまして、税法の大先生でありますとか、内国税に詳しい方、あるいは貿易実務者通関専門家等と十分議論いたしまして、やはりこれはやるべきであるというふうな結論に至ったものでございます。
  14. 前田正

    前田(正)委員 わかりました。  それから、最近関税等申告漏れが非常に増加しておるということでございますが、これは具体的な計数及び増加の背景とか、それから何か典型的な事例を挙げてひとつ御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  15. 久保田勇夫

    久保田政府委員 申告漏れについてのお尋ねでございます。  まず、税関におきましては、輸入貨物に課される関税及び内国消費税につきまして、適正、公平な課税を確保するために輸入者に対する事後調査というのを実施いたしておりまして、その中で、今お尋ねのように、最近計数がかなり上がってきているということでございます。  具体的に計数をちょっと申し上げますと、どういうものかという意味で御説明を申し上げますが、平成事務年度、これは平成七年七月から八年六月の間でございますが、事後調査で把握した申告漏れ課税価格は五百三十三億円、申告漏れ税額は四十六億円、いずれも過去最高の事績を記録しているところでございます。平成二年度の申告漏れ税額は二十二億円でございますので、五年間で二倍以上に増加しているという状況でございます。  我々もこの申告漏れが増加している背景についていろいろ調べたわけでございますが、一つは、やはり貿易取引複雑化による申告漏れ、非常に取引自体が複雑になってなかなか金額が不正確だというところもある。あるいは輸入規模の拡大、要するに一つ規模が非常に大きくなりました。そういうことから高額の申告漏れが増加しております。さらには、我々の方も少し調査の人員をふやしているということもあるいはあるかもしれないというふうに考えております。  お尋ねポイントは、具体的なこの趣旨、どういうのがその税関申告漏れか、こういうことだと思いますが、例えば輸入者がある国から化学製品輸入しておりますけれども輸入した化学製品価格がさかのぼって引き上げられて、追加貨物代金を支払っていたにもかかわらず、当該追加支払いに係る貨物代金について申告をしていなかったということから、課税価格で見ますと三十億円、税額で二億円の追徴税額ということになっております。あるいはロイヤルティー関係ということから申し上げますと、貨物輸入に際して商標権、ブランドの使用に係るロイヤルティーを支払っていたにもかかわらず、これを申告していなかったということで、これは金額的には課税価格二億円、税額三千万円、こういうことでございます。  それから、実際に申告漏れ税額がどういうところが多いかということを見ますと、品目といたしましては、平成七年で見ますと、織物衣類ワイシャツ等で九億円、これは税額でございます。それから二番目に、編み物、衣類セーター等で六億円。それから三番目に、履物三億円、こういうふうな状況でございます。  いずれにしましても、申告漏れ税額は四十六億円と、国税の方に比べると大したことないじゃないかという議論があるかもしれませんけれども、そうなっておりますし、そのふえ方もふえておりますし、その相手もなかなか複雑な手口を使うようになったというのが実態だというふうに理解をいたしております。
  16. 前田正

    前田(正)委員 いろいろと大変な申告漏れが増加しているということの中で、織物とかセーターとか履物というのは、これはやはり時代が徐々に、そういうものの要求に応じてだんだん多くなっておるのだというふうに思っておるわけでございます。  その事後調査について、事後調査というのはこれはやはり各税務署単位で行われておるのかどうかをお聞きしたい。  それから調査は、その帳簿書類あるいはまた仕入れ書を調べればわかると思うわけでありますけれども、しかし、仰せその取引先というものは全部外国でございますから、そのためには、なかなか向こうまで行って、反面調査というものがとれないので非常に難しい面が多いだろうと思っておりますが、そういう点ほどのようにされるのか。あるいは全国でその事後調査をするのに大体何人ぐらいで当たっておられるのかということもお聞きしたいと思います。  それからその職員は、これはできれば外国語がわかる人でなければ、なかなか書類などは目が通せないのですけれども、そういうものもかなりいろいろと、アジアとかあるいはまたアフリカだとが、そんな各国の話学というものがわかる人が当たっておられるのか。その辺について、ちょっと詳しくお聞かせいただきたいと思います。
  17. 久保田勇夫

    久保田政府委員 事後調査についての実務的な御質問でございます。  まず調査は、これは税関の職員が当たっておりまして、この調査保税部門で事後調査担当の部門というのがございます。全国で、ちょっと私もうろ覚えでございますが、約三百名ほど、東京税関で八十数名ほどいるものというふうに記憶をいたしております。あるいは間違っていれば、また修正をさせていただきます。こういう人たちが今御指摘のように現場に行きまして、帳簿を繰ったり、相手に話を聞いたりしているわけでございまして、今おっしゃいましたように、外国との関係が非常に大事でございまして、そういう意味では、この税額の話も含め、あるいは不正な物品の取引を含めて、外国との協力をどのようにするかというのが我々の大きな課題の一つでございます。  そういうことで、例えば個々の物品、また税額について、税額についてというのはそれほど頻繁ではないかと思いますけれども、特に社会愚物品につきましては、場合によれば御説明いたしますが、香港にアジア・太平洋地域の情報連絡所というのがございます。これを九九年から日本に持ってまいりまして、そういうことで協力を強化したいと思っておりますし、あるいは税関の協力の取り決めを諸外国と結ぶということも内部で今検討をいたしております。  それから、語学の点でございますが、これは我々も非常に強く感じているところでございまして、やはり税関というのは物であれ、人であれ、本質的に国境をまたぐものでございますから、語学は非常に大事であるということで、実は去年から税関研修所の英語の研修の時間を倍にしたりして努力をしているわけでございます。なかなか一朝一夕にはまいりませんが、努力をしております。
  18. 前田正

    前田(正)委員 大変御苦労をいただいておることだと思いますが、公平、公正という税の立場から、ぜひひとつ頑張っていただきたいと思っております。  それから、先ほどいろいろとお話があった中で、申告漏れが多いケースというのは、やはり貿易の取引の形態が著しく複雑化したということであります。それは輸入者自身が関税申告に必要な情報だとか知識というものを理解していない場合が多いためだと思うのです。  そこで、追徴されたときの延納の場合の延納利息というのは幾らになるのか。あるいはまた、延滞の場合の延滞利息というのは幾らになるのか。私はせめて、今借り入れの市場金利ということもございまして、できればそういうふうに市場金利に合わせる方法とか、あるいは銀行から借り入れ可能な人はその市場金利に合わせることで納税はできるわけですけれども、やはり中には会社の事情によってなかなか借り入れが不可能な人には、非常に金利の負担が大き過ぎるのではないかという気もいたすわけでございます。その辺についてちょっとお尋ねをいたしたいと思います。  また、修正申告の延納、延滞については、時間があれば後ほどお尋ねいたしたいと思いますが、その辺ちょっとお伺いします。
  19. 久保田勇夫

    久保田政府委員 税金という面では、いわゆる内国税が非常に大きなシェアでございますし、そういうことから、基本的に関税につきましても内国税と同じシステムをとっていまして、そういう意味では、延滞税はこれは二カ月まではたしか七・三だったと思いますし、それ以後は一四・六だと記憶をいたしております。  いずれにしましても、当該納税者にとっては大きな要素だと思いますが、関税制度から見ますと、我が国全体のそういうことに係る制度がどうかという、それに追随をしてつくっていくということが考え方ではなかろうかというふうにとりあえずは考えております。
  20. 前田正

    前田(正)委員 わかりました。できるだけ金利は安ければ安い方が非常に喜ばれると思いますので、これはまた、いずれほかのところで申し上げたいと思います。  それから、関税申告納税制度導入されて以来約三十年間、加算税のない状態が続いていたのですから、今回この新しい加算税導入に当たって、輸入者などの間に混乱が生じないように十分な対策を講じていく必要があると思われるわけでありますけれども、何かその具体的な対策を考えておられるのか、ひとつお尋ねいたしたいと思います。
  21. 久保田勇夫

    久保田政府委員 加算税導入をソフトランディングさせるにはどういうことを考えているか、こういう御趣旨だと了解をいたしております。  先ほど申し上げましたように、私どもも非常に長い間入れていないものですから、納税者といいますか貿易者の方にもこれは新しい話であるし、あわせて税関職員にもこれは目新しいことになるわけでございまして、そういう意味では、今御指摘のように混乱を生じないようにどうやって入れるかというのは大変大事な話だというふうに考えております。  そこで、幾つか、現在考えておりますこと及び今度の制度の中に入っていることを申し上げますと、まず第一番目に、御承知のとおり一般的には改正法の施行期日は四月一日でございますが、この加算税に関する改正法案の施行期日は平成九年十月一日といたしておりまして、この法律の施行までに十分な周知期間及び準備期間を置くということで、まず一つ、多少工夫をしたつもりでございます。  それから第二番目に、輸入者、いわゆる民間の方々についてでございますけれども輸入者及び通関業者が制度内容を十分理解できるように各種の説明会を実施するなど、十分なPRを行っていくということを考えております。  それから第三番目に、税関におきましても、加算税に関する事務を処理するための業務処理体制の整備及び職員に対する十分な研修を行うということにいたしたいと思っております。いずれにいたしましても、そういうことでもって遺漏なきを期すつもりでございます。  それから、先ほど最初お話をいたしましたように、ちょっと関税の方は内国税と違うところが二つございます。  一つは、課税対象が多様であって、品目分類の技術的困難性があるということでございます。そういうことから、輸入者の適正な納税申告を確保するために、輸入者から品目分類に係る事項について事前に教示の求めがあれば適切な教示に努めているところでございますが、これをさらに一層明確にしていきたいというふうに考えておりまして、そういう意味で、品目分類に係る事前教示制度のさらなる充実策を考えております。  それからもう一つ関税評価。先ほど、我々の通常と違うところは二つございますと申し上げました。品目分類の話と評価の話でございます。関税評価につきまして現在事前教示制度というのはございませんけれども、新たに個別評価申告を対象とした事前審査ができないかどうか、今一生懸命検討いたしているところでございます。  具体的にこれまでやってきたことはいろいろございますが、いずれにいたしましても、加算税の円滑な導入当たりましては、輸入者通関業者等に混乱が生じないよう、また何をおいても税関職員にその内容を十分まず承知せしめるということも含めて、その対策を講じてまいりたいというふうに考えております。
  22. 前田正

    前田(正)委員 十二分にひとつ輸入者に混乱が生じないように対策をお願いいたしたいと思います。  それから、今回加算税導入は遅きに失した感もございますけれども税関において関税等の公正、適正な課税を維持することが非常に重要なことであると思いますが、一層努力をすべきであると考えます。そういう点で、ひとつ大蔵大臣にどのようなお考えなのか、お尋ねいたしたいと思います。
  23. 三塚博

    三塚国務大臣 確かに委員御指摘の面もありますが、加算税については、貿易実務者等有識者の御意見などを慎重に伺い検討をした結果、今回こそ導入の時期であると判断をいたしました。  厳しい財政事情の中で、税関は約三兆円の税収にかかわる徴税機関でございます。今後とも引き続き、御説のとおり適正、公平な課税の実現に努力してまいる所存であります。
  24. 前田正

    前田(正)委員 どうぞひとつよろしくお願いをいたします。  それから次に、税関手続簡素化関係についてお尋ねいたしたいと思います。  非常に規制緩和が今叫ばれている中で、規制緩和をして輸出入者や国民の利便性の向上をさせることは大変結構なことでございます。保税手続等の簡素化には私どもも賛同するところでございます。  まず、税関分野における規制緩和の経緯及び今回の手続簡素化背景をひとつお尋ねいたしたいと思います。
  25. 久保田勇夫

    久保田政府委員 税関分野における規制緩和の経緯及びその簡素化背景というふうな御質問でございました。  規制緩和につきましては、これは先ほどのお話にございましたように、時の要請でももちろんございますし、適正通関の確保を図りつつ輸出入者や国民の利便性の向上を図るというふうな観点から、電算化の推進を初めとして各種の手続の簡素化迅速化に向けた努力をしてきたところでございます。後ほど御紹介することがあればと思いますが、電算化は大変よく進んだ分野だと我々も自負いたしております。  政府レベルということで言いますと、例えば平成七年三月に規制緩和推進計画が閣議決定されましたが、その中に三十一項目税関分野として掲上いたしました。具体的なことは省略いたしますが、さらに、平成八年三月に閣議決定されましたその計画の改定計画においても、二十二項目追加いたしております。そういうことで、我々といたしましてはこのような計画に盛り込まれた項目の着実な実施に努めておりまして、現在まで、このうち四十五項目について措置済みとなっております。  さらには今回の改正の話でございますけれども輸出入申告時の提出書類の簡素化、それから保税地域に関する税関手続簡素化を行うことといたしております。これは、従来と同様に、規制緩和の推進を通じまして税関手続円滑化簡素化を図るということによって、繰り返しになりますが、輸出入者及び国民の利便性の一層の向上に資するとの考え方によるものでございます。  特に、保税地域に関する税関手続簡素化につきましては、税関の執務時間外の貨物の搬出入などについての許可制を届け出制に変更するなど、手続を大幅に簡素化いたしております。保税地域の利用者等の事務負担の軽減を図るものでありますが、あわせて、それによって保税地域の貨物の管理者による自主的な貨物管理を認めていくということでございます。  ただ、それで適正通関で手を抜くということでもございませんで、不正があった場合等の調査は、これはぴしっとやらしていただくというふうなことでございます。
  26. 前田正

    前田(正)委員 ありがとうございます。  それから、税関において、最近急増する輸出入に対応するために電算化が積極的に進められていると聞いておるんですけれども、その現状をひとつお聞かせをいただきたいと思います。  それからまた、先月から厚生省の食品衛生の手続が通関手続とインターフェース化というんですか、そういうふうなものがされたというふうに聞いておりますけれども、その概要についてちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  27. 久保田勇夫

    久保田政府委員 手続の電算化の話でございます。  これは我が国の経済社会の国際化に伴う貿易の拡大、非常な勢いで貿易が伸びているわけでございますが、そういうことで国際物流の円滑化等の社会的要請が大変拡大をいたしております。大蔵省・税関は、NACCS、これは通関情報処理システムと言うとわかりづらいんですが、ニッポン・オートメーテッド・カーゴ・クリアランス・システム、要するに自動的に通関を処理するシステム、こういう意味でございますが、このNACCSは、我が国初の、書面によらず行政手続をオンラインで処理をするという手続でございます。  具体的に申し上げますと、例えば輸入の場合には、通関業者の事務所にNACCSのパソコンを置いておきまして、パソコンを通じて輸入申告を行うわけでございます。これはパソコンをたたくわけでございます。そういたしますと、それで輸入申告が可能となりまして、そのシステムの中に問題があるものとないものというプログラムが入っておりまして、そのプログラムの方で問題がないと判断されたものについては、今度は口座振替によって関税等を自動的に納付する。口座振替で自動的にそのシステムを通じて納付する。さらに税関の方から言うと、申告者に輸入許可をオンラインで即時に処理する。  いわば通常考えられております、まず輸入申告書を出しまして、それでオーケーをもらって関税を納めて、それで輸入許可をもらって、許可書を持って引き取るということではなくて、そういう書類を全くなしに電算処理をするということでございまして、かなり画期的なシステムでございます。これは通関時間の大幅な短縮及び利用者の事務負担の軽減を大幅に図るわけでございます。他方、先ほど申し上げましたように、このシステムを通じてどうも審査、検査が必要であるなというふうに判断されましたものにつきましては、税関職員による重点的な審査、検査をする、こういうことになるわけでございます。  こういうNACCSの導入によりまして、全国の主要な税関官署におきまして、我々の方から見ますと、統一的な基準によって審査が実施可能になるし、あわせて通関適正化も確保できるし、人員の負担も減少する、こういうメリットがあるわけでございます。  現在、航空システムと海上システムと二つの系統がございます。これはお客さんが違うということもございますので、航空貨物等を対象として、税関と航空会社、保税業者、通関業者、銀行等をオンラインで結ぶ航空システム、Air−NACCSは昭和五十三年に導入しておりまして、さらに海上貨物についての海上システム、Sea−NACCSを平成三年に導入いたしました。現在全国の輸出入申告件数の九割以上がこのNACCSによりシステム処理されておりまして、この九割という計数は、我々は国際的に見ても大変誇れる数字であるというふうに理解をいたしております。  それから、今お尋ねのございました関税関係法令以外の輸入関連法令手続はどうか、こういうことでございますが、これも含めて、関係省庁と連携していろいろの方策を講じてきたところでございます。  その中では、今お尋ねの、本年二月には、NACCSと輸入食品に係る食品衛生手続を行う厚生省の電算処理システム、これは輸入食品監視支援システムということでございますが、これとの電子的な接続、専門用語ではインターフェースと言うそうでございますが、これを実施したところでございます。これによりまして、NACCSの利用者は、通関手続に加えまして、従来は厚生省の検疫所窓口で行っておりました食品衛生法に基づく届け出手続をも、NACCS専用のパソコンで窓口に出向くことなく処理することができるということになって、事実上、ワンストップサービスを我が国で初めて実現したというところでございます。
  28. 前田正

    前田(正)委員 それから、続いて農水省関係の手続とのインターフェース化というものも何か予定をされておると聞いておりますけれども、農水省におけるその準備状況もひとつ教えていただければありがたいと思います。
  29. 青沼明徳

    ○青沼説明員 御説明いたします。  動物検疫に係ります輸入検査手続の簡素化につきまして、迅速化、ペーパーレス化を図るために、大蔵省等関係省庁と緊密な連携を図りつつ、動物検疫に係る手続の電算化、それと税関通関手続の電算処理システムとのインターフェース化を図ることとしておりまして、九年度の供用開始に向けてシステムの開発を進めてきたところでございます。また、これらの電算化に係ります法的整備につきましては、今国会において御審議いただくことをお願いいたしておるところでございます。  このインターフェース化の導入によりまして、従来書類によって行っておりました輸入検査申請、輸入検査結果に基づく措置等の諸手続を、輸入者等の事務所において電算機により行うことが可能となりますことから、従来の手続に比べまして大幅な迅速化が可能になるものと考えております。
  30. 鈴木信毅

    鈴木説明員 農産園芸局の審議官でございますが、植物検疫について簡単に御説明申し上げたいと思います。  今御説明があったのと同様でございますが、植物検疫の件数がふえている中で、検疫の迅速化を図りたいということでございまして、大蔵省等関係省庁と連携を図りながら、植物検疫の申請、通知、これを電算化する、あるいは植物検疫のシステムと税関のシステムのインターフェース化を図る、こういうことを平成九年度の四月から供用開始をいたしたい、こう思っております。これによりまして輸入業者の手続の迅速化が図られるのではないか、こう考えております。
  31. 前田正

    前田(正)委員 機械化をすることによって簡素化することは大変結構なことでございますが、この間も、阪神大震災のときに何か犬が入るときに入れなかったというふうなことがあって、これは将来の危機管理としても、そういう税関での役割というものも大変重要だと思っておりますので、その辺もよろしくお願いいたします。  もう余り時間がないので急いでいきたいと思っておりますが、簡素化することは大変重要なことだと思いますけれども、一方税関には、いつも問題になっています麻薬それからけん銃などの密輸入を阻止するのも一つの大変重要な使命だというふうに思っております。税関手続簡素化を急ぐ余りに、麻薬類の密輸入の防止とか摘発がおろそかになっているのではないかという感じがいたすわけでございます。  この間も、覚せい剤暴落、こういう記事が実はこの一月の二十日ですか、読売新聞に出ておりました。今覚せい剤が国内では大分値段が下がってきておる、一時、一キロ当たり一千万円ぐらいしたのが、今暴力団の間では大体二百万から百八十万ぐらいという大変な大暴落、ということは市場に大分そういうものが出回っておるということのために値段が下がっておる、そのために一番困るのは若い青年の層に薬物の汚染が拡大しておるというふうな、こういう記事でもございます。  我々としても、そういう麻薬の問題は大変深刻な問題でございます。その辺についてひとつお尋ねいたしたいと思いますので、よろしくお願いします。
  32. 久保田勇夫

    久保田政府委員 今御指摘のように、いわゆる迅速通関と適正通関というのは税関の業務運営に当たっての車の両輪のようなものだというふうに理解をいたしておりまして、これまでも税関手続簡素化迅速化を推進するに当たりましては、適正な通関の確保を損なうことのないよう十分留意してきているつもりではございます。  特に、今御指摘のございましたように、最近におきましては覚せい剤とか麻薬等のいわゆる不正薬物が青少年層へ浸透しつつあるということでございます。価格が下がっているということであれば、なおさらのことだろうと思います。さらに、一般市民を標的としたけん銃犯罪が多発をしておりまして、これらの、我々が呼んでおりますいわゆる社会悪物品の水際取り締まりに対する国民の要請というのは非常に大きなものがあるというふうに理解をいたしております。  関税局・税関といたしましても、これら社会悪物品の水際取り締まりを現下の最重要課題の一つとして位置づけまして、全力を挙げて取り組んでいるつもりでございます。  それで、具体的に計数を申し上げますと、例えば昨年は不正薬物は全体で七百キロというのを挙げております。これは史上最高でございます。さらに詳しく申し上げますと、覚せい剤が五百三十キロ、大麻が百三十キロ、アヘンが三十三キロ、コカインが二十六キロ、こういうふうになっておりまして、実はこれら不正薬物をどこで挙げるかというのがございまして、国内で挙げるか水際で押さえるかという問題がございまして、実はこれらの不正薬物の我が国における全摘発量の約六割は税関で押さえているわけでございます。  そういう意味で、税関の貢献はかなりのものだとは考えておりますけれども、今委員おっしゃいましたような背景のもとで、ますます適正通関といいますか社会悪物品の取り締まりの要請は強まっておりますので、我々もいろいろな工夫をしながら、特別の専担班を設けたり監視カメラを設置したりしていろいろな形で努力をいたしているというところでございますが、なお引き続きその線に沿って考えてまいりたいというふうに思っております。
  33. 前田正

    前田(正)委員 特に麻薬、けん銃、こういうことは大変社会悪でございまして、大変大きな問題でございます。  特に日本は海に囲まれているという点もございまして、この間から密航者が大変多い。特に、中国人を中心とする外国人の集団密入国事件というのがこの間からもう何件もあります。検挙は、国籍別に見ると、特に中国人とか、次にバングラデシュ人、パキスタン人、こういうものが船に乗ってどんどん、本当に国境がないようにして入ってこられるわけでございます。  人が入ってくるということは物も入ってくるということにもつながるわけでございます。とりわけピストル、けん銃など、トカレフというソ連製、恐らくこれは、そういう意味ではかなり輸入といいますか密輸されておる。あるいはまた普通のリボルバーのけん銃だったら、フィリピン製の安いけん銃がフィリピンあたりへ観光で行ったら安く手に入るというふうなことで、そういうものを持ち込むケースが非常に多いというふうに考えています。それから、この間、野球人とか芸能人のベンツ車をいわば輸出をして、香港で捕まったというケースもあります。  特に、輸入ということも大変大事ですけれども、やはり輸出というところも、その辺もチェックというものを十二分にこれからしていただきたいというふうに思っております。特に、税関と警察、この辺あたりの連携をよくしていただいて、特にこういう問題にさらに鋭意努力をしていただきたいというふうに思います。  どうぞ最後に、もう時間がありませんので、今非常に国際的な日本の中で、これはもう日本とそれぞれの国々が、やはり国際的な協力を強化していくべきだというふうに考えております。そういう点で、この薬物の取り締まり等について大臣はどのように考えておられるのか、最後にお尋ねをいたしまして終わりたいと思います。
  34. 三塚博

    三塚国務大臣 日本は、麻薬に毒されない国家であると言われてまいりました。しかしながら、ここ十年大変深刻な、御指摘のような状況でございます。国際協力を密にしながら、全力を尽くさなければなりません。アルシュ・サミットそしてリヨン・サミットにおいても、我が国の首相から、本件につきまして強い危惧感と国際協力の必要性を提唱いたしたところでございます。  今後、情報交換を密にしながら、水際において、御指摘のように輸入はもちろん輸出についても、対応策、万全を期していかなければならぬと思っております。
  35. 前田正

    前田(正)委員 それでは、時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。
  36. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、池田元久君。
  37. 池田元久

    ○池田(元)委員 民主党の池田元久でございます。この委員会では久々の質問でございます。よろしくお願いをいたします。  九七年度予算の審議が大詰めを迎えようとしておりますので、まずは、公共事業関係長期計画と絡めて、予算編成のあり方についてお尋ねをしたいと思います。  まず、三塚大蔵大臣、九七年度予算編成に当たって大臣として一番心がけたことは何でしょうか、率直にお尋ねしたいと思います。
  38. 三塚博

    三塚国務大臣 御指摘の予算編成の基本方針でございますが、主要先進国中、財政が最悪と言われる我が国でございます。九年度の予算を財政構造改革元年と位置づけまして、その編成に取り組んだ次第であります。  まず、基本を、医療保険制度改革を初めとする各般の制度改革の実現に努めまして、歳出全般については、聖域を設けることなく徹底した洗い直しを行い、特に一般歳出増加額を極力圧縮することにより、全体として歳出規模を厳しく抑制することに努めました。  この結果として、消費税の国庫負担分の増加などの特殊要因、すなわち二%アップという現状の中でありますが、四千億円強の一般歳出からの歳出が出てまいるわけでございます。こういう中でありましたが、九年度一般歳出は一・五%の増ということになり、これは財政健全化目標達成のための方策として定められました名目経済成長率より相当低く抑えるという目標を実現いたしたところでございます。九年度消費者物価上昇率見通し一・六を下回る伸び率となっております。  赤字国債の縮減については、予算編成に先立ち、財政健全化目標が決定され、国の一般会計の財政健全化目標として、財政健全化の第一歩としては、早急に現世代の受益が負担を上回る状況を解消すべく、国債費を除く歳出を租税等の範囲内とする、また、平成十七年度までのできるだけ早期に特例公債依存から脱却するとともに、公債依存度の引き下げを図る……(池田(元)委員「終わっちゃう」と呼ぶ)  それじゃ、以上で終わらさせていただきますが、要すれば、簡単にもう一つつけ加えますと、何としても構造改革の第一歩にしたいということであります。
  39. 池田元久

    ○池田(元)委員 一番心がけたことはという質問でございますので、ぜひよろしくお願いします。  一言申し上げますが、三塚大蔵大臣、かつて、御存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、青嵐会という、当時大変勇ましいグループに所属されて明瞭な行動をされておりましたので、今がそうじゃないとは言いませんが、明瞭に、また端的に答えていただきたいと思います。  公共事業関係長期計画の計画数と事業総額を端的にお答え願いたいと思います。
  40. 林正和

    ○林(正)政府委員 公共事業の長期計画につきましては、現在、十六分野の社会資本につきまして策定されてございます。
  41. 池田元久

    ○池田(元)委員 事業総額も聞きたいのですが、昨年末、閣議決定された七つの計画の事業総額と伸び率について、端的にお答え願いたいと思います。
  42. 林正和

    ○林(正)政府委員 昨年十二月の十三日に閣議決定いたしました下水道整備五カ年計画等七本の事業計画、先生御案内のとおりそれぞれ異なる事情がございますので、各事業総額をあえて足し合わせるというのはどういう意味があるかあれですが、御質問でございますので、機械的に足し合わせますと、事業総額は五十一兆五千億と相なります。合計額を前計画と比較いたしますと、一・四一倍でございます。
  43. 池田元久

    ○池田(元)委員 その長期計画の策定はどこがやるのか、お尋ねしたいと思います。
  44. 林正和

    ○林(正)政府委員 公共事業の長期計画、この七本について具体的に申し上げますと、これは八年度から五年間を対象期間としておりまして、既に昨年の二月、三月に閣議了解をされた内容に沿って、具体的な中身の決定をしたものでございます。  御案内のとおり、七本のうち五本はおのおの整備緊急措置法、緊措法の改正がされておりまして、御指摘のどこが決めるかということですが、まさにこれに基づきまして、法律に基づきまして閣議で決めているということでございます。
  45. 池田元久

    ○池田(元)委員 どこがやるのかというのは、おわかりでしょうが、答えていただけなかった。恐らく次の質問を予期されたと思うのですが、この長期計画に一たん事業を盛り込むことができれば、これから五年、十年の公共事業執行の大枠が決まるわけですね。ですから、事業実施の約束を取りつけられるということで、いわば族議員と言われる一部の政治家、経済界、自治体関係者が霞が関のいわゆる事業官庁に強く働きかけをするという光景が去年も見られたわけです。五カ年コールという言葉がありますが、五カ年計画に盛り込んでくれというのが五カ年コール、こういう言葉もあるぐらいです。  要求官庁は、現在の危機的な財政はどこへやら、所管の事業を伸ばすために全力を挙げています。特に、他の省庁と伸び率を競っている。事業を大事にして国家の財政なし、省あって国なしということも言えるのではないか。その結果が、この大変な財政の危機の中で、五十一兆五千億円、伸び率四一%ということになったわけです。  事業官庁、要求官庁は、長期計画に基づいて予算要求を出す。その結果、公共事業の省庁別、事業別シェアはほとんど変わっていません。九七年末の公債残高だけでも二百五十四兆円というこの危機的な財政の中で、歳出の膨張と歳出の硬直化を招くこの公共事業関係長期計画のあり方について、私は、白紙に戻して、事業別のプロジェクトの優先順位などを決めることにしてはどうかと思いますが、大蔵大臣の見解を簡明に述べていただきたいと思います。
  46. 三塚博

    三塚国務大臣 白紙に戻すということはできない相談です。それぞれが社会資本充実ということでつくり上げられてきておりますから。しかし、五カ年計画といえども、事業執行の目安でございます。最終のところに、経済、財政等を勘案し行うものとするという一項目を入れておるわけでございますから、そういう点で、単年度査定の際に聖域を設けず歳出を洗い直すということにいたしておりますので、その段階で調整をするということになり、私どもは所期の目的を達する歳出カットに手をつけてまいる、こういうことであります。
  47. 池田元久

    ○池田(元)委員 先ほどのお言葉では、聖域を設けない、財政構造改革元年とおっしゃいましたが、現実は、各省庁が伸び率を競っているこのような長期計画、しかも五十一兆五千億円、伸び率四一%という計画がそのまままかり通ってしまうというのは、大変おかしな事態です。歳出膨張の歯どめをかけ、内容を国会がチェックをするために、全部の長期計画を国会の承認事項とすることが必要であると私は思います。民主党は、公共事業コントロール法案を現在準備しておりますので、ぜひ御賛同いただきたいと思います。  さて、片や大蔵省の方ですが、歳出膨張に歯どめをかけるのは当然ですが、この財政状況悪化の中、こういった歳出の膨張を、歯どめをかけるのではなくて許してきたことについて、財政を担当する大蔵省は責任を感じていらっしゃると思いますが、いかがでしょうか。
  48. 三塚博

    三塚国務大臣 これは、許してきたわけではなく、国民の景気回復等に対する要求、乗数の問題が深刻になっておりますが、これに基づいて公共事業が即効的な役割がある、こういうことで今日の赤字国債の膨大な累積と、一般国債、建設国債といえども六十年後までかけて払わねばならぬ借金でありますから、こういう今日に至りました。  よって、破局的な状況を分析の中で明確にすることにより、九年度予算編成はまさに財政構造改革元年ということで、歳出をカットし、簡単にと言うから肝心なところがちょっと抜けましたけれども、その辺のところを明確にすることによって、赤字国債依存体質から二〇〇五年、一年でも早くこれを達成して健全体に変えていかねばならない。ちなみに、五年計画といえども、五ないし八%の調整費というのを入れておるわけであります。先ほど申し上げました目安でございますから、目安は目安として、財政、経済、諸状況の中で改革にふさわしい予算編成を行ったし、十年度の予算編成にはめり張りをつけて、さらに健全化を達成するということになります。
  49. 池田元久

    ○池田(元)委員 このような、公共事業長期計画をそのままにしておく、この実態と御発言との言行不一致ということを私はあえて言わざるを得ません。  現実にはどんなことがあるか。公共事業費は、例えば三千億円の使い残しがもう既に出ているわけですね。また農業関係予算、土地改良の予算等を消化するために、さらに公費を投入して農家の負担を減らすことまでやっているわけです。ありがたくないとも言っているわけですよ。それでもやるというのは、なぜやるか、そこをしっかりと考えていただきたいと思います。  こういった事例を見ると、本当にニーズに合った要求を事業官庁が出しているかどうか、そして大蔵省の厳密な査定があったかどうか。私はあったとは思われないのですが、大蔵省主計局の局長にお尋ねをしたいと思います。
  50. 林正和

    ○林(正)政府委員 五カ年計画の性格につきましては、先ほど大臣がお答えしたとおりでございますが、私ども、毎年度毎年度の予算編成、そして公共事業の事業別配分に当たりましては、それぞれのニーズあるいは事業の執行状況、こういうものを勘案しながら、個別に積み上げられるものは積み上げるということで作業をしておるところでございます。  確かに、御指摘にもありましたが、幾つか類似した事業間重複投資でありますとか、あるいは効率的な執行という点からはいろいろ問題点も指摘されておりますので、そういう問題につきましては、事業の執行官庁と一緒になりまして、効率的な執行になお努めていきたいと存じます。
  51. 池田元久

    ○池田(元)委員 予算を担当する主計官の配置を聞きたいのですが、これは省庁別に編成されているわけですね。配置になっているわけですね。一言で答えていただきたいと思います。
  52. 林正和

    ○林(正)政府委員 御指摘の公共事業につきましては、各省の公共事業、これを担当いたします公共事業担当主計官というのが横割りに見ているということでございます。
  53. 池田元久

    ○池田(元)委員 主計官は、一定の範囲内では要求を削減する、これは当然の役割ですが、省庁別に配置されている。日本の横並び社会、横並び主義で、どうしても主計官の間で予算額の均衡、つり合いを図るということになりやすい、そういう現状になっていると言わざるを得ません。私は、この予算編成のあり方、やはり省庁別の査定ではなくて、経費別の査定を考えるべきであると思います。  いろいろ質問をしたいのですが、その先の話をいたします。  予算というのは政策の総合調整ですね。ですから、これは内閣がやるべきなんです。憲法にも、内閣は「予算を作成して国会に提出すること。」ということをうたっております。私は当委員会で五年前に指摘をしたのですが、昭和三十九年の臨時行政調査会、そこでこういうことを言っております。   現行制度では、内閣総理大臣の地位が著しく向上し、総合調整機能を発揮することができるようになったにもかかわらず、従来からの伝統と、内閣の補佐機関が弱体であることのために、依然として調整機能を確保することができず、ことに予算編成は、事実上の政策の決定であり、内閣の重要な任務であるにもかかわらず、内閣にしかるべき補佐機関が欠けているために、実際は大蔵省が予算編成のすべての事務を担当し、内閣の決定は形式に堕している。 内閣の決定は形式に堕しているということをこの答申では言っているわけです。  ようやく最近、省庁の再編成、官邸機能の強化等が言われてきました。私は、この赤字垂れ流し、歳出の膨張に歯どめをかけることのできない今のシステムというのは、やはりゼロベースで本当に見直さなければならないと思います。本来、政治が責任を持たなければならないと思います。志が余りない方は、要するに予算の分捕り合戦、利益誘導型の政治ということに陥りやすい。しかし、そうではなくて、やはり予算は国の政策の総合調整ですから、まさに内閣の任務です。責任の所在を明確にすることが必要であると私は思います。具体的な、内閣に予算庁をつくれとかいろいろな構想がございます。それはまた、これから論議していきたいと思います。  さて、関税定率法について一言だけ、一点だけ質問をしたいと思います。  過少申告加算税と無申告加算税導入する、これは私質問しようと思ったのですが、一言申し上げたいのは、これは昭和四十一年からそのままになっておる。もう三十年もたつわけですね。いろいろ、先ほど前田委員質問に対する答弁を私も聞きましたが、これまで三十年できなかった理由にはならないと思うのです。私は、一言で言うなら、公平の論理を棚上げして、今財源難になってきて、財政の論理から導入をするのではないかと考えざるを得ません。公平、公正の論理がいつも財政の論理よりも優先することを私は強く指摘して、私の質問を終わりたいと思います。
  54. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、佐々木陸海君。
  55. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 関税定率法について質問いたします。  近年、輸入の許可・承認件数が急速にふえているということが、統計上明らかであります。八五年に二百六十四万件、以後五百万、六百万、七百万と件数がふえて、九五年には八百五十六万件になっております。八五年を一〇〇とすると、九〇年は一九三、九五年は三二四。航空関係が特に伸長が著しくて四〇〇を超える。海上も二〇〇。合わせて三二四という輸入の急増、このもとで税関のなすべき仕事が急激にふえている、こういう傾向は間違いございませんか。     〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕
  56. 久保田勇夫

    久保田政府委員 御指摘のとおり、数量的に大変ふえてきております。
  57. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そこで、先ほどお話もありましたが、麻薬や覚せい剤、けん銃などのいわゆる社会悪物品の密輸の手口も複雑化、巧妙化していると聞きます。それらの密輸の防止や摘発に力を入れるのは当然でありますけれども、七百万件、八百万件という膨大な件数の貨物があるもとで、こういう物品の持ち込みに本当に有効適切に対処できているのかどうか、その辺のところをお聞きしたいと思います。
  58. 久保田勇夫

    久保田政府委員 御質問ございましたように、数量の面でも非常にふえておりますし、さらには、手口の内容複雑化をいたしております。さらには、我々の所掌いたしております仕事は、覚せい剤、麻薬、銃砲等のいわゆる社会悪物品の水際取り締まりの必要性が非常に社会的に増大しているということもございますし、そのほかにも、知的財産権の侵害物品でありますとか、ワシントン条約の該当物品の取り締まり等の重要性も大変増加してきておりまして、税関業務の複雑さ、困難さが大変増大をしてきているという実態でございます。  そこで、実際にどういうふうにやっているかということでございますけれども、我々といたしましては、社会悪物品の取り締まり強化、あるいは迅速通関等の社会的要請に的確にこたえるために、従来から事務の効率化あるいは機械化あるいは業務運営の効率化に努めているところでございまして、今後とも、このような方策によりまして、できるだけその要請にこたえていきたいというふうに考えております。
  59. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そういう社会悪物品の持ち込みを本当に阻止するという国民の要望と同時に、今回は、過少申告加算税、無申告加算税導入提案をされております。今の時期にこれを導入するその意味について、先ほど説明がありました。取引の複雑化規模の拡大、そういったものも背景にあるということも言われました。  先ほど挙げられた九五年度の実地調査の結果を見ますと、調査対象輸入者の一六・五%の調査を実施したところ、申告漏れのあった輸入者が五九・五%、こんなにたくさんあった。非常に高い率であります。一〇〇%の実地調査をすればどれだけになるか。それはいろいろ推測があるでしょう。その結果をどう見るかという問題ともかかわりますけれども、適切な、適正な申告を確保するために、先ほど電算装置の導入等々も言われましたけれども、それが進んでいるもとでもこういうことが起こっているわけですから、実地調査などさらにきっちりとしなければならない。今回こういう制度導入するということになりますと、その趣旨関係者にあまねく徹底をして、そしてきっちり調査もして、不公平が起こらないようにきっちりと集めるということも必要になってきているわけではないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  60. 久保田勇夫

    久保田政府委員 確かに、税額的には余り大きな金額でございませんが、委員御指摘のように、実際に調査をしたものの非違というか、これは非常に高いものだというふうに理解をしております。もちろん、これはリスクの高そうなものをねらっているというものももちろんあるわけでございます。  しかしながら、先ほど申し上げました三つ導入理由一つにそういう背景があるということは間違いのないところでございまして、そういうことから、従来、迅速通関ということ、円滑化ということは非常に努力してまいりましたけれども、先ほどのお話のように、我々としましては、適正申告ということについていろいろな場で皆さん方の御協力というか御理解を得る必要があるし、また、職員にもその旨一層の徹底を図りたいというふうに考えています。
  61. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 今申し上げましたように、輸入の件数が本当に急増していく、これからもしていくでしょうが、その中で、麻薬や覚せい剤などの不正な持ち込みをきっちりと阻止すると同時に、また適正でない申告をきっちりなくしていく、これは社会の強い要請だろうと思います。同時に、今言われたように、輸入通関迅速化しなければならないというのも一面の事実であります。  こういった社会的な、場合によっては相矛盾するような要請を満たすのは容易なことではないと思いますが、こうした業務に携わる職員の数の推移はどうなっているのか。余りふえていないのじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
  62. 久保田勇夫

    久保田政府委員 お話のように、この税関を取り巻く業務は非常に複雑化、困難化しておるわけでありますし、一方では、迅速通関要請及び適正通関要請ということがあるわけでございます。  そういうことに対する定員の推移はどうか、こういうことでございますが、これは年によってでこぼこございますが、例えば平成三年度では七千八百七十六人でございましたが、平成八年度には八千二百六十五人と、約三百九十人増加をいたしております。平成九年度の予算案におきましても十人の純増が認められているところでございます。
  63. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 率直に言って、輸入の量の増大に比べて職員の増加というのは微々たるものだと言わざるを得ないと思うのです。職員は余りふえない、必要な仕事量はふえる。そのもとで毎年毎年通関手続簡素化措置がさまざまにとられてまいりまして、今回も五点の提案がされております。  しかし、今回の中身を見ましても、これは人手の節約措置というよりも、むしろ輸入業者側の手数の節約措置と位置づけられるものではないかというふうに思うのです。それももちろん必要ではありましょうが、こういう措置が進むことが、チェック体制の強化ということには当然ならないで、チェック体制を弱めていくということにもならざるを得ない。  今度の簡素化措置一つ、例えば輸出入申告の際の仕入れ書提出省略の範囲の拡大というものも挙げられておりますが、仕入れ書貨物を輸出入する際の船積み書類の中では最も基本的なものであるはずでありまして、申告に際しては、貨物の品名、数量、価格など、その申告内容を明らかにする書類として重要なものであります。その提出省略範囲を拡大する。もちろんいろいろ配慮しながら拡大しているのでしょうけれども、不適正な申告などに今でも十分に対応できていないのに、こういう手続だけが簡素化される。これでは適切な対応はますます困難になるということを憂慮せざるを得ないと思うのですが、そういう点はいかがでしょうか。
  64. 久保田勇夫

    久保田政府委員 確かに手続の簡素化をやるというのは、適正通関との両立をうまく図らなければならないという要請を持っているのは事実でございます。  しかしながら、御承知のように、税関のこれは一つの宿命でございますが、国境を通して行うということでございますので、国際的なスタンダードがどうかということもまた考えざるを得ないわけでございます。そういう意味では、この簡素化迅速化の流れは非常な勢いで進んでおりまして、率直に申し上げまして、我々としてもまだその余地はあるというふうに考えております。しかしながら、その裏打ちといたしまして、適正通関でないものについてのペナルティーを上げるということは一つのやり口であろうと思いますし、さらに、電算化でありますとか国際的な情報の交換等によりましてこれをいかに補っていくかというところになかなか難しいところがあるというふうに考えておるわけでございます。  なお、仕入れ書の省略につきましては、現在の時点でそれに格別の支障はないというふうに判断をしておるということから踏み切ったものでございます。
  65. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 もう時間が来ましたが、税関の職員からのいろいろな訴えも聞いております。特に航空関係が大変だ。朝八時三十分の始業から事務の終了する午前零時までいすに座りっ放しで腰痛を訴える人もいるとか、夕食時間も要員の確保のために二交代で二十分程度、食後の休みもなく働いているとか、要するに長時間かつ不規則な勤務、仕事の中身も大変ということで、精神的にも肉体的にもくたくただ、そういう訴えをたくさん聞いております。  この税関での人手不足は大変大きな問題でありまして、最後に大臣に対して、こういう税関に課せられている重要な使命達成のためにも、税関職員に今度の加算税導入などで一層負担を負わせるということのないように特段の配慮をしていく必要がある、そして税関の適正な使命が達成できるようにしていく、そのための大臣の決意をお伺いしたいと思います。     〔保岡委員長代理退席、委員長着席〕
  66. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま久保田局長御説明のように、また委員質疑のように、大変ハードな日程をこなしておりますことは私もよく存じ上げております。今後とも要員確保について、税関についてはこれは特別ですから、どんどん輸入輸出がふえて密輸入の取り締まり役、水際作戦とハードな日程につき、努力をしてまいります。
  67. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 終わります。
  68. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、吉田公一君。
  69. 吉田公一

    吉田(公)委員 何しろ一人しかいないものですから、酒税から租税から公債から関税定率法まで全部やらなくちゃならないというのは容易なことじゃありませんが、ほかにいませんのでやらせていただきます。  まず関税定率法でありますが、改正案において、規制緩和の一環として、輸出入申告時の提出書類の簡素化など、通関手続簡素化が今回提案されているわけでありますが、規制緩和税関事務について伺いたいと思います。  今回の改正では輸出入申告時の必要書類の簡素化を行ったということでございますが、この背景についてお尋ねをしたいと思います。
  70. 久保田勇夫

    久保田政府委員 輸出入申告時の提出書類の簡素化ということでございますが、これは、輸出入申告の際に提出することとされている仕入れ書につきまして、その提出を省略することができる範囲を拡大をするというものでございます。  御質問の御趣旨は、背景はどうか、こういうことでございますが、これは、我が国の経済社会の国際化に伴いまして、人や物の国際交流の量的な拡大、これは非常な勢いで、海外に旅行する人もふえておりますし、輸出入の件数あるいは金額もふえてございます。それから、さらには質的にもいろいろなものが出てきて多様化をいたしておりまして、そういう意味では、輸出入通関を取り巻く状況というのは近年非常に大きく変化してきているところでございます。  特に、御承知のように、最近では、海外商品の割安感を背景といたしまして、通信販売を利用いたしました個人輸入の増加でありますとか、あるいは企業活動の国際化に伴う商品サンプルの輸出入の増加などによりまして、特に航空貨物を利用した小口急送貨物というのが急増している状況にございます。このような国際物流の活発化に伴いまして輸出入申告件数は増加の一途をたどっておりまして、特に輸出入の手続の簡素化迅速化に対する社会的要請というのは一段と強まっているところでございます。  そこで、このような状況を踏まえまして、従来から、税関分野における規制緩和につきましては、輸出入者や国民の利便性の向上を図るというふうな見地から、手続の簡素化迅速化に向けた努力を進めてきているところでございまして、今回の改正におきましても、輸出入申告時の必要書類の簡素化を行いまして、通関手続簡素化迅速化を図ろうとするものでございます。  端的に申し上げまして、その背景にございますのは、輸出入数量の増加、それから人の国境を越えた往来の増加、そしてそれに伴うニーズの多様化、複雑化というふうなことであろうかと考えております。
  71. 吉田公一

    吉田(公)委員 人も物も多いから規制緩和をしてスムーズにやらなくちゃならない、こういう背景があるということであります。  小口急送貨物を中心に航空貨物が急増しているということでありますが、先ほども質問がありましたが、急送の状況についてはいかがでありますか。
  72. 久保田勇夫

    久保田政府委員 小口の急送貨物状況はどうかということのお尋ねでございます。  これは、御承知のとおり、個人輸入貨物でありますとか、あるいは企業間のドキュメントや商品サンプルなどを中心にいたしまして、航空便を利用した迅速な輸送が求められる貨物が非常に多くなっておりまして、航空貨物輸入許可件数で見ますと、昭和六十一年に約百六十六万件でございましたものが、十年後の平成八年には約六百三十三万件と三・八倍に増加をいたしております。なお、航空貨物及び海上貨物を合わせた件数を見てみますと、過去十年間で輸入許可件数は約三百九万件から約九百二十万件と三倍に増加をいたしておりますし、税関業務の対象となる件数は大幅に増大をしてきております。  なお、それとの絡みでは、先ほど申し上げました輸出許可件数は六十一年から八年の間に一・五倍に、船舶入港隻数は約一・三倍に、それから航空機の入港機数、これは昭和六十一年には五万七千機ございましたが、平成八年には十一万四千機と約二倍になってございます。同様に、国際郵便物につきまして、その輸入検査呈示個数でございますとか課税通知書発給件数でありますとか、これもそれぞれこの年の間に約二・三倍及び二・七倍というふうに増加をしてきているというところでございます。
  73. 吉田公一

    吉田(公)委員 税関分野で従来から規制緩和を進めてきたようでありますが、その主な規制緩和というのはどういうことでございますか。
  74. 久保田勇夫

    久保田政府委員 税関の手続の規制緩和の御質問でございます。  地味ではありますが、税関の手続の規制緩和というのは、我々としては非常に着実にやってきたというふうに考えております。先ほど申し上げましたように、税関手続規制緩和につきましては、一方では適正通関の確保を図りつつ、輸出入者や国民の利便性の向上を図る等の観点から、電算化の推進を初めとする手続の簡素化迅速化に向けて着実な努力を進めてきたところでございます。  具体的にどういうことかという御質問でございましたが、例えば平成七年三月に閣議決定されました規制緩和推進計画におきましては三十一項目を掲上いたしております。その中で幾つか申し上げますと、一つは到着即時輸入許可制度というのを平成八年四月に措置をやっておりますし、さらに成田空港に到着する輸入貨物通関場所選択の自由化というのをやっております。  そのうち最も興味と申しますか、最も注目を浴びましたものの一つが到着即時輸入許可制度というものでございます。これは、貨物が本邦に到着する前に税関貨物についての予備的な審査を行いまして、ここが大事なのですが、検査が不要とされた貨物につきましては、その貨物を保税地域に搬入する前に輸入申告を行いまして輸入許可を受けることができるという制度でございまして、文字どおり、到着をすれば即時に輸入の許可を与えるという制度でございます。先ほど申し上げましたように、これは検査が不要だというふうに判定された貨物についてということではございますが、そういう意味で画期的なものだと考えております。ただ、類似の制度外国にもある程度ございます。これが一つの典型的な例でございます。
  75. 吉田公一

    吉田(公)委員 通関手続等を簡素化することは規制緩和として大変結構なのですが、逆に、水際でチェックをしなきゃならぬ、要するに好ましからざる物品が入ってくるわけでありますが、そういう覚せい剤などの密輸入のチェックがおろそかになってはいけない、こう思うのでありますが、税関の検査体制は大丈夫でしょうか。さっきも質問ありましたから、簡単な御答弁で結構であります。
  76. 久保田勇夫

    久保田政府委員 先ほどから申し上げますように、適正通関と迅速通関というのは税関の業務運営の二つの柱でございます。  特に適正通関の方は、特に近年におきましては二つございますが、一つは覚せい剤、麻薬等の不正薬物が青少年層へ浸透しつつあるということと、もう一つは一般市民を巻き込んだけん銃犯罪が発生しておりまして、これらのいわゆる社会悪物品の水際取り締まりに対する国民の要請が増大しているわけでございます。  いろいろなことで取り組んでおりますが、例えば貨物通関当たりましては、社会悪物品の流入を水際で効果的、効率的に阻止するために、適正な通関を確保するために必要な各種情報を蓄積した通関情報総合判定システム、CISというのを持っておりまして、これを活用いたすことによりまして、社会悪物品が隠されている可能性が高い貨物、ハイリスク貨物、それから可能性が低い、我々はローリスク貨物と申しておりますが、それに選別をいたしまして、社会悪物品が隠されている可能性が高い貨物については重点的に検査を行う。ローリスクについて行わないということではないのですが、こうした可能性が低い貨物につきましては検査を極力省略するという選別的な検査を実施して、全体としてチェック機能の重点化、集中化を図っているところでございます。  もし御質問がございましたら、具体的な中身をさらにお話しをさせていただきます。
  77. 吉田公一

    吉田(公)委員 時間が参りましたので、終わらせていただきます。
  78. 額賀福志郎

    額賀委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。  次回は、明五日水曜日午後三時三十分理事会、午後三時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会をいたします。     午前十一時四十五分散会      ————◇—————