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1997-02-21 第140回国会 衆議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月二十一日(金曜日)     午前九時三十三分開議 出席委員   委員長 額賀福志郎君    理事 金子 一義君 理事 坂井 隆憲君    理事 保岡 興治君 理事 柳本 卓治君    理事 北側 一雄君 理事 谷口 隆義君    理事 池田 元久君 理事 佐々木陸海君       飯島 忠義君    今村 雅弘君       衛藤征士郎君    木村 隆秀君       小林 多門君    菅  義偉君       砂田 圭佑君    田中 和徳君       田中 昭一君    中野 正志君       宮路 和明君    吉川 貴盛君      吉田左ヱ門君    渡辺 喜美君       上田 清司君    木村 太郎君       北脇 保之君    鈴木 淑夫君       中川 正春君    並木 正芳君       藤井 裕久君    前田  正君       宮地 正介君    村井  仁君       末松 義規君    田中  甲君       山本 譲司君    佐々木憲昭君       秋葉 忠利君    吉田 公一君       新井 将敬君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 三塚  博君  出席政府委員         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主計局次         長       林  正和君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省理財局長 伏屋 和彦君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省国際金融         局長      榊原 英資君  委員外出席者         内閣官房内閣内         政審議室内閣審         議官      辻原 俊博君         大蔵委員会調査         室長      藤井 保憲君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   山中 貞則君     宮路 和明君 同日  辞任         補欠選任   宮路 和明君     山中 貞則君     ――――――――――――― 二月十四日  平成年度における財政運営のための公債の発  行の特例等に関する法律案内閣提出第一号) 同月二十日  酒税法の一部を改正する法律案内閣提出第六  号)  租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者  等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第七号) 同月六日  共済年金充実等に関する請願北村直人君紹  介)(第一四三号) 同月二十一日  共済年金充実等に関する請願今田保典君紹  介)(第一五五号)  共済年金制度の堅持に関する請願畠山健治郎  君紹介)(第二九四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月十七日  焼酎税率上げ幅抑制業界体質強化支援に関  する陳情書外一件  (第一八号)  保険年金税制の拡充に関する陳情書  (第一九号)  自然災害に対する国民的保障制度に関する陳情  書外十四件  (第二〇号  )  阪和銀行業務停止に伴う支援措置等に関する  陳情書  (第二一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成年度における財政運営のための公債の発  行の特例等に関する法律案内閣提出第一号)  酒税法の一部を改正する法律案内閣提出第六  号)  租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者  等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第七号)      ――――◇―――――
  2. 額賀福志郎

    額賀委員長 これより会議を開きます。  内閣提出平成年度における財政運営のための公債発行特例等に関する法律案議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。三塚大蔵大臣。     —————————————  平成年度における財政運営のための公債発行特例等に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま議題となりました平成年度における財政運営のための公債発行特例等に関する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  平成年度予算につきましては、我が国財政の危機的な状況にかんがみ、医療保険改革を初めとする各般の制度改革を織り込むことにより一般歳出伸び率を一・五%と九年ぶりの低い水準に抑制するとともに、公債減額四兆三千二百二十億円を実現するなど、財政構造改革元年として財政健全化に向けた第一歩を踏み出したところであります。  その中で、特例公債については、前年度当初予算における発行予定額から四兆五千二百八十億円減額したものの、引き続き平成年度においても発行せざるを得ない状況にあります。  本法律案は、以上申し上げましたように、厳しい財政のもと、平成年度財政運営を適切に行うため、同年度における公債発行特例に関する措置及び厚生保険特別会計年金勘定への繰り入れ特例に関する措置を定めるものであります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、平成年度一般会計歳出財源に充てるため、財政法第四条第一項ただし書きの規定による公債のほか、予算をもって国会の議決を経た金額範囲内で、公債発行することができること等としております。  第二に、平成年度における一般会計からの厚生保険特別会計年金勘定への繰り入れのうち経過的国庫負担については、七千二百億円を控除した金額繰り入れるものとするとともに、後日、将来にわたる厚生年金保険事業財政の安定が損なわれることのないよう、七千二百億円及びその運用収入相当額合算額に達するまでの金額一般 会計から繰り入れることとしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げ、提案説明といたします。
  4. 額賀福志郎

    額賀委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 額賀福志郎

    額賀委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田左ェ門君。
  6. 吉田六左エ門

    吉田(六)委員 当選を許されまして、初めて、国の命を預かるとも言われます大蔵委員会において、八万七千八百八十七人の思いを預かった私としては、日本の未来をゆだねられた一人という立場も踏まえて御質問をさせていただこうと思います。  まず、「橋本総理大臣、サッチャーたれ」と、当選して一番最初総理にお目にかからせていただいたときに私は申し上げました。それは何を言うかというと、英国病から見事にあの国を今の状況によみがえらせたリーダーシップ。そしてもっと言えば、アメリカは、かつてのホームレス蔓延という状況から、今は根っからああすることが好きな人以外は景気の中でみんなそれぞれ職を得ている。しかし、この改革のもとは大変に長い時間かかってのことだ。レーガン大統領の時代に仕込まれたものだ。いわゆる改革はロングランであるというふうに思っています。  財政改革、これは家庭に例えると、みんながひとつ入るをはかって出るを制する、節約をしながら立て直しをしよう、こういうことと思います。ふろお湯をためるときには先に栓をしてからお湯蛇口を開く。しゅうとがいる家であれば、先に蛇口なぞ開いたら嫁は怒られます。でありますけれども、ふろを入ることまで節約しなさいということではないんですね。順番に手際よく短時間にみんながおふろへ入ろう、今はやりのお姉ちゃんは朝シャンなんといって朝シャンプーするようなことはやめよう、お父さんも酔っぱらって遅く帰ってきてからもう一回お湯を張り直しておふろに入るようなことはよそう、こんな論旨に立って、自由民主党を代表して、平成年度財政運営のための公債発行特例に関して、これが必要な意味を周知していただく思いをも込めて、財政再建の大号令のもとで公共投資見直しの意見が出ている中で、私は、社会資本整備をやり続けなければならない、財政再建が成功したらそれで日本の国が終わるんではなくて、日本の国は未来永劫に繁栄し続けなければならない、こんな理念に立って伺わせていただこうと思っています。  若くして親のすねをかじらせていただきながら留学をさせていただいてかいま見させていただいた諸外国のそれと我が国社会資本整備、余りにも乖離があったように私は感じております。このようなレベル、この大きな乖離、このことについてどのようにお考えか、御見解を聞かせていただきたいと思います。
  7. 三塚博

    三塚国務大臣 哲学的な発想の政治論を御展開をいただきました。  長い歴史は、必ずしも構造物社会資本ということにイコールしないというのが東洋の違いなのでしょうか。中国のような偉大な文化文明を切り開いた国家は、遺跡遺跡として保存され、またそれだけの耐用年数をもって今日に往時をしのばせておるわけでございます。しかしそれは、戦国乱世に見られますように、覇権を競い合う、もちろん王道を目指して国民全般の幸せをということもあったとは思います。  そういう中で、我が国社会資本に対する努力は、先人最大努力を持ってきたことだけは間違いございませんが、地震国なものでございますから、その時折の災害によって崩壊をしていく。もう一つは、石の文化と木の文化、こういう仕分けの仕方がわかりいいことなのでしょうか、そういう点で、日々新たにそれをつくり上げていくということが日本社会資本という形であったというふうに思います。その日々は五十年であったり百年であったり、こういうミドルのスパンだと思いますが、そういう点で、政治原点は中央も地方も均てんをすることが大事、こういうことでございますから、社会資本充実に向けては不断の努力をしていかなければならない、その基本原則は変わらない。  しかし、財政構造改革ということで、累積する深刻な債務を解消し、租税租税として国民生活国家の将来に向けて使われるようにしていかなければならない。租税のうち多くの部分が元利合計で支払いを行わざるを得ないということで、租税収入に比較をして歳出予算に計上できる租税はだんだんウエートが少なくなっていくということはいかがなものか、やはりその悪循環は断ち切る時期に来た、こういうことで、その中で、聖域を設けずという言葉がありますとおり、全体を見直しながら、プライオリティーを決めながら措置していくことが大事ではないのか、こういうことであろうと思います。
  8. 吉田六左エ門

    吉田(六)委員 国内的な事情につきましては、よく理解をいたしました。  対外的に考えてみますと、この公共投資基本計画は、当時大変に話題になった日本巨額貿易黒字を減らして内需主導型の経済への移行を大きな目的とした、このように私は記憶しています。村山総理がナポリ・サミットの折にクリントン大統領との間で見直しを表明した、これは対外的な大きな意味があると思うのですね。この促進は、国際協調の上で特別な意味を持つ、約束を守る日本、守らないロシア、こういった状況から、日本の国の信用にもかかわることだと感じています。  公共投資基本計画の位置づけがどのようになっているのか、けさの新聞で官房長官の談話なんかも、私、はてなというような思いで読ませていただいたのですが、御説明がちょうだいできれば幸せであります。
  9. 三塚博

    三塚国務大臣 六百三十兆の話かと思うんですが、これは十カ年計画、そのとおりでございます。しかし、そのとおりとり行っていかなければならない決心はお互いが持つわけでございますが、財政構造改革という基本論に立ちますと、その中身の点検ということは、当然行ってよろしいことであります。  主権は、その国の国家形成基本的要素でございますから、主権国家としてその間の事情相手国理解を求める行動は当然必要になってくるわけでございまして、ただいま基本計画に基づいて五カ年計画がつくられ、あるいは毎年の要求がなされておる慣行の上から、なおかつ、両々相まって財政構造改革というこの計画も前進するように調和点を見出すことは、政府に与えられた、また政治に与えられた基本的なテーマではなかろうかと思っておりますし、そういうことで、この計画が確定をする会期末、六月末にはその方向を明示して、国会及び国民各位理解を求めていくということになろうかと思います。
  10. 吉田六左エ門

    吉田(六)委員 私は、内需主導型の経済を維持していくという意味合いもあって、また国民の幸せにこたえるという立場からも、公共投資基本計画は着実に進めていっていただかなければならない、このように考えている一人であります。  そうした中にあって、公共工事コスト減は最も重要な課題ではないかと思います。先般、公共工事コスト縮減対策閣僚会議が設置されたと聞いています。ぜひ、この会議目的検討された内容、あるいは今後のスケジュールについてお聞かせいただきたいと思います。
  11. 辻原俊博

    辻原説明員 公共工事コスト縮減に関します閣僚会議につきましては、昨年末の閣議におきまして総理の指示を受けまして、本年一月二十一日に、全閣僚の参加を得て第一回の会合が開催されたところでございます。  この閣僚会議趣旨とかねらいというものでございますが、公共工事の効率的、効果的実施を図るという考え方のもとに、これまでの関係省庁コスト縮減取り組みを一層進めていくという観点から、公共工事担当省庁のみならず、その他の関係省庁も含めまして、政府が一体となった取り組みを行うということでございます。  具体的には、現在の公共工事執行プロセスを総点検いたしまして、もう少し具体的に申しますと、工事発注効率化でございますとか、工事実施段階での合理化建設資機材生産流通の改善、それから民間技術有効活用といったような点につきまして、広範囲かつ具体的な検討を行うこととしております。その上で、国民にわかりやすい指標といたしまして具体的数値目標を設定することといたしまして、本年度末を目途に政府全体としての行動指針を策定いたしまして、これを踏まえまして関係省庁行動計画を策定することとしておりまして、現在、鋭意関係省庁と協力をしながら検討を進めておるところでございます。
  12. 吉田六左エ門

    吉田(六)委員 コスト縮減の成果は、現況だれもが認める大変おくれている社会資本整備に投入をせられるべきだと私は考えますが、これは私の考えを述べおくだけにとどめます。  財政赤字が大きく取り上げられますけれども、そもそも財政赤字の大きな誘因は、バブル以来の日本経済の停滞であり、その後の景気低迷のために税収が思うようでなかった、これが原因と考えられます。にもかかわらず、財政再建論議の中で、赤字国債建設国債の区別をせずに、あたかも公共事業が現在の財政赤字を引き起こしたかのごとく批判の中心にされていますが、しっかりとこのことは区別して論議をするべきだと私は考えます。  公共事業は次の世代発展のために基盤となるもので、長いそろばんをもって、長い見通しに立って積極的に進めてもらいたい。将来の国民生活経済生活を進める上で大きな障害となると思うのです、これができなかったら。地方にあっては、それぞれの地で育ち暮らしを営む者にとって、橋、道路、ダム、ドーム、サッカースタジアム、空港等々が逐次整うこと、それが子育てやその地を愛する郷土愛につながり、その地にこだわって生活をしていく大きな思い入れとエネルギーになっていると私は考えます。  高齢化社会を迎える二十一世紀に向け、ハイクオリティーな社会資本整備が行われなかったとしたら孫子世代に大きな禍根を残すことになる、そんな考えの上で、財政再建下における住宅、社会資本整備基本的考え方について、我が国財政を預かられます大蔵大臣に取りまとめた御所見をお聞かせいただいて、終わりたいと思います。
  13. 三塚博

    三塚国務大臣 社会資本の問題、孫子の代に立派な国土を残そうという政治基本的理念理念として理解をします。  しかしながら、累積する債務が、先進七カ国の中で我が国最大累積債務を抱える、こういうことになる。累積債務元利償還で首が回らなくなった実例は、国鉄分割・民営をやることによってスタートを切り直さなければならぬという先訓がございます。国家財政も決して盤石ではないわけでございまして、そういう点からいいますと、時に歯どめをかけながら健全財政体質に移行する努力をしなければならない。お互いがそういう気持ちを持ちながら財政運営予算運営をしてきたと思うのでございますが、危機的状況が深刻になってきた今日であります。アメリカにしても、あれだけ繁栄を謳歌しながら、財政構造改革健全化に向けての深刻な努力スタートを切っております。また、他のヨーロッパ諸国も同様であります。我が国も、気構えはそういうことで平成九年の予算編成に当たった。ひとり我が国先進七カ国の中において財政構造改革を傍観しておるなどということになりますと、信頼を失うことになります。  先憂後楽という先人言葉があります。政治原点一つでありますけれども、今日我々は後世代のために辛抱するときは辛抱し、そして予算執行優先順位を決めて、全国一律ではなく、必要なところには必要な予算を計上していくという基本論を確かなものにしていくということで、国民各位理解も得られますし、財政構造改革の道筋も着実に進むのかな、こう思っております。
  14. 吉田六左エ門

    吉田(六)委員 どうもありがとうございました。終わります。
  15. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、秋葉忠利君。
  16. 秋葉忠利

    秋葉委員 短時間の質問ですので、基本的なことを幾つか伺いたいと思います。  まず最初に、財政再建ということが非常に大きな緊急課題として取り上げられているわけですけれども、常識的に考えるとなかなか納得できない。  例えば二百四十兆円以上の国債残高がある。もろもろの借金地方の分、隠れ借金、その他を入れるとGDPに匹敵する、あるいはそれを超えるといった額の借金があって、それを減らさなくてはいけないというときに、まずかけ声だけがあっても、そのかけ声の次の年には例えば二十兆の借金をまたするというようなことが行われている。やはりこれは常識的に考えると、家計のレベル、あるいは子供たちのお小遣いを使うレベルではとても理解できないことなのです。しかも、その金額が二十兆円という単位、それがやはり庶民にはなかなかぴんとこないのです。一兆円というお金は、一日百万円ずつ使っても大体三千年近くかからないと使えない金額ですから、二十兆になると、一日、毎日毎日ですよ、百万円ずつ使っていっても、全部使い切るのに五万年という単位の物すごい日数がかかる。  それほど巨額な借金をするということはやはり大問題だと思うのですが、その常識的にはなかなかよくわからない借金を、大蔵省の皆さん、特に大蔵大臣はやはり国民との接点というところでかなめの役割にあられるわけですけれども、どう説明されるのか。説得力のある説明を短く、手短にお願いしたいと思います。
  17. 三塚博

    三塚国務大臣 二十兆の借金の例示を言われまして、改めてその巨大な額に驚くわけであります。  昨年は、公債金二十一兆円でございました。よって、四兆三千億円を減額することによりまして十六兆円にいたし、御指摘のような気が遠くなるようなお金を引き続き累増するような体質にこの際ストップをかけ、これは財政再建目標ではございませんが、確実に赤字国債借り入れ体質から脱却をしていく努力をしていくということになります。
  18. 秋葉忠利

    秋葉委員 減ったから、それは少しはいいんでしょうけれども、やはり説得力というところで、もっともっと大胆なことをしなくてはいけないのではないかと思いますし、特に、今度は支出の面で問題のある支出が非常に多いというところでもやはり説得力がない、それが一因になっているというふうに思います。  それに関連して、昨日の公聴会佐高信さんが何点か指摘をしたことがありますので、やはりそういった問題についてもきちんとこたえていかなくてはいけないんじゃないか、そのことが説得力を増すことにつながるのではないかと思いますけれども、例えばこれは「大蔵省主計局」、栗林良光という人の書いた本の中に出てくる「昭和の三大バカ査定」という、済みません、少し下品な表現が出てくるかもしれませんが、本に書いてあることですから。その中で三つ挙げてあるのが、戦艦大和や武蔵、昭和三十年代の伊勢湾、これは鍋田の干拓事業です。三番目が青函トンネル。これは昭和六十三年度予算編成のときですか、整備新幹線昭和六十三年度予算を認めたら、結局青函トンネルにかわって昭和の三大ばか査定になってしまう、こういう発言を当時の田谷廣明主計官がしている。それで、結局この田谷さんは発言をやめさせられるようなことになったらしいんですけれども、その時点では、少なくとも大蔵省の中には、整備新幹線ということについてかなり健全な考え方をしているお役人がいたという一つの証拠だと思います。  その後田谷さんはスキャンダルによって大蔵省をやめたということになっていますけれども、ちょっと勘ぐって解釈をすると、その後大蔵省考え方が変わって、昭和三大ばか査定を実はやることに省として決定をした、うるさいやつは結局ほうり出せというので、目の上のたんこぶの田谷さんをやめさせたということで、田谷さんがやめたのは本当はスキャンダルかもしれないけれども、実際、これは大蔵省整備新幹線その他さまざまな、三大ばか査定ではなくて、これは今は昭和ではありませんから、二十世紀の後半といいますか、あるいは二十世紀の三大、四大、五大ばか査定ということを堂々とやっていこうという意思表明とも考えられるのですけれども、そうなのかどうか確認をさせていただきたいと思います。
  19. 林正和

    ○林(正)政府委員 平成年度予算編成に当たりましては、財政の現状にかんがみまして、財政構造改革元年にふさわしい予算にしようということを最優先課題として編成をしたところであります。他方、整備新幹線整備、これは御案内のとおり、高速輸送体系形成を通じて均衡ある国土発展と地域の活性化に資するという点もございます。  こうした中で、平成年度予算におきます整備新幹線取り扱いにつきましては、ぎりぎりの判断が求められたわけでございますが、我が国財政事情が極めて厳しいという状況にあることを十分踏まえた上で、財政構造改革元年に沿ったものになるよう、新たな財源に裏打ちされた範囲内の事業規模としつつ、収支採算性見通しJR貸付料等負担、あるいは並行在来線経営分離についての地方公共団体同意JR同意等基本条件が整えられていることを確認した上で、その取り扱いを厳正に判断していくということで決めたものでございます。
  20. 秋葉忠利

    秋葉委員 今条件につけられたことは、新しい財源新規の大幅な増収というところにどうつながっているのか余りよくわかりませんけれども、新たな財源が見つかった範囲内でということを最初におっしゃいましたけれども、これだけ多額の借金を抱えているのであれば、新規事業を始めるのではなくて、新規事業は一応すべて凍結、その上で借金を返していく、そういったことがやはり常識だと思います。  あえてその常識的な選択を行わなかった理由を、やはりこれもわかりやすく、それこそ国の財政の複雑さということもあるかもしれませんけれども、常識的に、だれにもわかりやすい説明を行わなくてはいけないと思いますけれども、残念ながら、今の説明では、なぜ新しい事業をこれほど借金を抱えていて行わなくてはならないのか、知的に満足のできる説明ではないと思います。政治的な圧力に負けたんだというあたりが一番わかりやすいと思うのですけれども、大蔵省の認識はいかがなんでしょう。
  21. 林正和

    ○林(正)政府委員 先ほども御説明申し上げましたように、現在の財政事情、それから整備新幹線の意義、そういうものの整合性をとった形で九年度予算をセットしたということでございます。  いずれにしても、今後予算関連法律が上がりましたときに、政府・与党で、先ほど申し上げましたような点につきまして検討がなされることになっておるということでございます。
  22. 秋葉忠利

    秋葉委員 同じことを二度言うと真実になるという法則が大蔵省では何か通用しているみたいな感じの御答弁ですけれども、最後に一質問時間これで終わりですので、今の点について、大蔵大臣、一言お願いいたします。
  23. 三塚博

    三塚国務大臣 新しい事業をどう見るかということでありますが、基本的には、財政再建の究極のとどめは、おのれに厳しさを課して全力を尽くす、先ほどもお話がありましたが、出るを制して入るをはかるという経済原理の古い原則に立ち返る。しかしながら、今日、多様な事業展開をしていくことで国民の安心、安定が得られるということでありますから、プライオリティーを決めて果敢に挑戦をしていくということに尽きるのではないでしょうか。言われたことを言われたこととして承りながら、今後に生かしてまいります。
  24. 秋葉忠利

    秋葉委員 終わります。
  25. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、北脇保之君。
  26. 北脇保之

    ○北脇委員 私は、新進党の北脇保之と申します。昨年十月の総選挙で初めて当選させていただき、きょうが初めての質問でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  私は、提案されております公債発行特例等に関する法律案に関連しまして、政府経済財政運営についてお尋ねし、法律案そのものの内容についても質問いたします。よろしくお願いいたします。  まず最初に、現在の経済状況をどう見るかということでございます。具体的には、株安、円安の原因をどう考えているかということでございます。  まず株のことについて申し上げれば、皆様御案内のように、東京株式市場の平均株価は、昨年夏以降、バブル崩壊後三度目の下落局面に入っており、特に、昨年末からことし年明けにかけて急落を演じております。きのうは一万九千円を回復しましたけれども、それでもまだ低い水準にとどまっていると言えると思います。また、為替相場についても、年明けから円安に加速がついて、現在は百二十三円台の動きというようなことになっております。  この原因をどう見るかということでございますが、私は、まず株価の急落については、二つの要因があると考えます。  一つは、財政運営でございます。  新年度予算を見ますと、消費税の増税、それから所得税、住民税の特別減税の廃止、それから社会保険負担増を合わせて九兆円もの国民負担増がございます。これは、やはりこの予算財政デフレ的な予算と言わざるを得ないと思います。これが景気を悪化させるのではないか、このような懸念が株価急落の一つの原因になっているということが言えると思います。  そしてまた予算についてもう一つ長期的に見た場合に、ことしの予算は、構造改革元年というふれ込みではございますけれども、従来型の予算ということで、財政構造改革がきちんと着手されたと言えないのではないか。こういったことも、市場が、長期的な目で見てこの財政構造が日本経済に悪影響を与えていく、こんな心配から売りに転じているということが言えると思います。  そして株価急落のもう一つの要因は、金融ビッグバン、このことにあると思います。  この日本経済に対する影響については見方がいろいろあると思いますけれども、まず一つは、不良債権の処理が余り進んでいない段階でビッグバンをやれば、日本の金融機関を淘汰し、弱体化するのではないか、このことが銀行株を中心とした株価の下落につながっているのではないかという見方もありますし、また逆に、現政権のビッグバンは進み方が遅いから余り期待できないということがまた株価に反映しているというような見方もあるようでございます。  いずれにしても、株価急落については、予算編成に見られる財政運営、それともう一つ金融ビッグバンの進め方についての懸念、こういったことが株価の下落の原因になっているのではないか、こんなふうに私は思います。  そしてもう一つ円安の方ですが、円安については、なぜ円安になるかといえば、非常にわかりやすいのではないかと思います。  一つは、今非常に超低金利政策が続いている。そこに加えて、今年度予算を見れば、増税、国民負担増ということで、これもデフレ的な要因があるということからすれば、金利はこれ以上ちょっと下がりにくいかもしれませんが、傾向的にいえば下がる方向の傾向であるし、それが米国の金利差と相まって、内外金利差のために国際収支が赤字基調になり、こうした円安をもたらしている、こんなことが言えるのではないかと思います。  このような見方について大蔵大臣にお伺いいたしますが、大臣は、現在の株安、円安の原因をどのようにお考えになっていらっしゃるか、この点をお聞かせいただきたいと思います。
  27. 長野厖士

    ○長野政府委員 株価の推移につきまして、私の方から若干御説明をさせていただきたいと思います。  株式市場と申しますものは、先生御案内のとおり、全く同じ時点で同じ経済状況のもとで、ある方が特定の銘柄をきょう千円で売った方が得である、買った方が得である、全く正反対の御判断をなさる方が両方にいらっしゃって初めて成り立つ市場でございますので、その中で、株価の水準の動向につきましてそれぞれ違う判断が行われておるわけでございますから、一概的に単一の要素で株価の水準を判断することは難しいと考えております。それぞれの市場参加者がそういった買いなり売りなりをなさるときに、それぞれの思惑によって判断なされておりまして、その中には企業業績の将来の見通しでありますとか、あるいは配当と金利の関係でございますとか、もろもろの要素を御判断になっておられるだろうと思います。  最近の株式市場において、そういった売りの方、買いの方それぞれが判断される要素として市場関係者で言われますのは、新しい要素として、経済構造の改革といったものへの期待あるいはその進捗度合いに対する評価といったことが言われておりますし、もろもろの構造改革の中ではビッグバンといったものも、先生まさに御指摘になりましたように、それをプラスの材料としておっしゃる方もあれば、マイナスの材料としておっしゃる方もございますけれども、全体としてはそういった構造改革に対する期待が込められておるというふうに判断いたしております。
  28. 榊原英資

    ○榊原政府委員 まず、為替の事実関係から申し上げますと、十二月の末に百十五円前後であったものが、一月の末には百二十円前後になったということでございますけれども、二月八日にG7で、円高是正は終わったのだということについてG7各国で合意した後、為替は比較的安定しております。G7直前に百二十四円七十五銭まで円安になったわけでございますけれども、その後は百二十四円前後で推移しております。また、きのうの東京の終わり値は百二十三円六十五銭、現在は百二十二円六十五銭ということでございまして、昨日のニューヨークあるいは本日の東京では相当外人が円を買っているということでございますから、少なくともG7以降に関していえば、円安が進んできているという状況ではないということを、為替相場は安定しているということを申し上げさせていただきたいと思います。  さらに、為替レートの決定要因でございますけれども、彼我の成長率あるいはインフレあるいは経常収支の黒字あるいは金利差というもので動くわけでございますけれども、委員指摘のように、現在は金利相場という感がかなり強うございまして、日米の金利差によって為替が動いているというところがございますけれども、これも今後の日本経済の動向あるいはアメリカ経済の動向がどうなるかということに関してさまざまな意見がございまして、今は若干、この二日、三日はむしろ円高に振れているというのが現状でございます。
  29. 北脇保之

    ○北脇委員 ただいまの答弁、特に証券局長の答弁をお聞きしますと、株の上下というのは個別の取引の判断だという御答弁が基調だったように思うのですが、それでは、なぜ一つの傾向として株が急落したか、その原因の説明にはちょっとならないのではないかと思うのです。やはり経済財政運営に当たっては市場の声を聞くということが大事だと私は思いますので、市場の声を大蔵当局はどう分析しているのかということをわかりやすく国民にお示しいただかないと政策論議にならないのではないか、そこを避けるべきではないと私は思います。そのことをちょっと申し上げさせていただきたいと思います。  次に、経済財政運営の最優先事項は何かということをお尋ねしたいと思います。  皆様御案内のとおり、今の財政とか経済、金融に関する問題というのはすべて関連しているので、やはり一貫性と整合性ということが特に重要だと思います。私ども新進党は、これらの点について、さきの臨時国会の消費税をめぐる議論から一貫して、経済再建なくして財政再建なしということを言ってまいりました。それは日本経済の潜在成長率は三%程度あるのに対して、九二年度から九七年度までの六年間の平均成長率を見てみますと、大体一・三%と見込まれる。そこにギャップがある、いわゆるデフレギャップがある。したがって、これを解消して日本経済をあるべき成長の軌道に乗せていく、このことが最優先の課題だというような考え方をとっております。  したがいまして、率直に言えば、まず景気対策が短期の課題だから、このことに集中してやるべきだ、財政再建というのはもう少し中期的な課題考えて割り切ってやるべきだ、そういうふうに政策の順序、そういったものをはっきりさせてやるべきだというふうな考え方を私どもはとっております。  もちろん今、片方で財政赤字が深刻だし、もう一方で超低金利政策をやっていますから、財政赤字のことを見れば公共事業の追加とか減税というような財政政策がもうとりにくい、また金利政策もとりにくいという、こういう非常に困難な状況にあるということはもう事実でございます。しかし、その中をどうすり抜けて一番いい解を求めていくか、これはある程度時間的な経緯を考えて手順を考えるということなくして、正しい解決策は出てこないのではないかというふうに思います。  その点で、新年度予算を見ますと、先ほども申し上げたように、まず、景気対策のことを考えると、消費税の引き上げとか特別減税の廃止のようなデフレ的な政策はとるべきじゃないと思います。しかし、景気対策も当然必要ですから、これに対してどう考えるかというと、私どもは、公共事業の追加ということよりも、減税ということを重視していくべきじゃないかという主張をしております。  それは、もちろん、乗数効果ということでいうならば、公共事業の方が減税よりも大きいという、こういう理論はあると思います。しかし、減税の利点としては、一つには、労働意欲をかき立てるというような点で、いわゆる供給サイドといいますかサプライサイドの改善をすることができるということが一つと、もう一つは、歳出削減をせざるを得ない、そういう構造改革の方にも促進策になってくる。こういう点を考えると、景気対策については、今は減税ということをやっぱり重視していくべきじゃないかという考えをとっております。  それで、その結果として、もちろん歳出削減もしていかなければいけませんが、公債発行が避けられない場合もあるかもしれません。しかし、それについては、景気対策が短期的な当面の課題だという割り切りで、若干公債発行があっても、景気の回復を図ることで中期的には財政再建を果たしていく、こういう手順が大事ではないかというふうに思います。  また、もう一つ政府のやり方について言えば、公共事業について、まあ今やってはおりますけれども、これはもちろん財政構造の悪化につながる問題がある。  そこで、これから先の政府の対応のことをちょっと予測してみますと、今、公共投資の基本計画見直しというようなことも出てきて、公共事業についても見直しをしていこうという動きがかなり出ているように見えます。そうしますと、当面の緊急課題である景気対策ということについて考えると、今年度予算で税負担増がある、そして、今後公共事業にかなり見直しを入れていくということになると、当面の課題である景気対策についてはデフレ的な方向しかないんじゃないかという心配があります。ですから、この辺も、こういうやり方で日本景気が本格的に回復するのかどうか。  私どもの、当面は景気回復、そして財政再建という、こういう手順の考え方に対して、政府の方のやり方はアブハチ取らずで、相互に矛盾することを同時にやろうとしているような感じがあるわけでございますが、これについての政府御当局のお考えをお示しいただきたいと思います。
  30. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 景気対策か財政再建かというお尋ねでございますけれども、まず、我が国経済見通しについて、私どもなりの考え方を申し述べさせていただきたいと思います。  御承知のとおり、設備投資あるいは住宅建設、個人消費等の主要な需要項目を見ましても、テンポは緩やかではありますけれども、堅調に推移しているというふうに思っております。まあ雇用情勢に若干の厳しい状況がありますが、これも基本的には改善の動きが見られるということで、私どもといたしましては、これからの我が国経済は、民間需要中心の自律的な景気回復の軌道にあるというふうに考えておるわけでございます。  御指摘のとおり、確かに消費税の引き上げなりあるいは臨時減税の継続をしないというようなことは、経済に対しましてそれなりに影響を与えると思います。したがいまして、来年度の前半におきましては、例えば消費税引き上げの、その前におきます駆け込み需要の反動減というようなことも考えられるわけでございますので、来年度の前半におきましてはそういう影響があると思いますけれども、今申し上げました民需の底がたさから考えまして、年度の途中からはまた回復軌道に入っていくというふうに基本的に考えておるわけでございます。  そこで、財政改革の重要性については、これはまた別途、場合によりましたら担当の方からお答えがあるかと思いますけれども、我が国のこの財政の危機的な状況というものを考えますと、やはりこのままではそもそも経済成長にも悪影響があり得る。これは、欧米諸国におきましても、基本的に同じような考え方の上に立って、むしろ景気対策のためにも財政赤字の削減が不可欠というのが共通認識になっているということが結論だろうというふうに考えております。
  31. 北脇保之

    ○北脇委員 今の御答弁、順序をどう考えていくかということについて必ずしも十分な答弁ではなかったかとは思うのですが、いずれにしても、問題は、経済見通しについて一政府の見方と私どもそして民間のエコノミストなどの多くの方の見方がかなり食い違っている。政府も、来年度当初の景気の減速は認めていらっしゃいますけれども、後半になれば持ち直していくという見方をされているようですが、果たしてそのとおりになるのかどうか、このところが一番懸念されるところでございます。まあ事実が証明するということでございます。  ですから、もし不幸にしてこの面が深まっていって政府見通しのとおりにならなかったらば、やはりそこは、政府経済財政運営に問題があったということを率直に認めて、経済財政面の転換を図っていただきたい。経済が回復すること、これは国民の願いでございますので、その願いを持ちながらこの経済の推移を注視していきたい、そんなふうに思います。  それから、次の質問でございますが、今まではマクロの財政政策、金融政策のことをお話しさせていただきましたが、今の財政経済運営において特に重要な問題は、金融システムの健全化ということであると思います。不動産が不良資産化している、そしてそこから金融機関の不良債権問題が派生している、まさにこれはもう日本経済の病気と言ってもいいと思います。  こういう金融不安にどのように対処していくのか、まず次の諸点についてお尋ねをしたいと思います。  何といっても、この問題については情報の公開ということが大事だと思いますので、不良債権の額がどれだけあるのか、このことを改めてお尋ねをしたいと思います。そしてまた、仮に信用組合などではなくて銀行が破綻した場合、どのようなスキームで国は対応する用意があるのか、このことについてお尋ねをしたいと思います。
  32. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  最初の不良債権の状況でございますが、数字で申し上げますと、不良債権総額、これは全国銀行のみならず、協同組織の金融機関も含めた総計で申し上げますと、七年の九月に三十八兆八百六十億円ございましたのが、半年後の八年の三月でございますが、三十四兆七千九百九十億円になってございます。そのまた半年後、八年の九月期では二十九兆二千二百八十億円ということで、次第に減ってきている状況でございます。  なお、この不良債権総額から債権償却特別勘定の残高を引いたもの、さらに担保でカバーした分を推計して控除したもの、これは要処理見込み額というふうに申しておりますけれども、これを申し上げますと、七年の九月で十八兆五千八百七十億円、それが八年の三月で八兆三千五十億円、八年の九月で七兆三千三十億円という数字でございます。したがいまして、七年と八年の比較で見ましても、十兆円程度不良債権及び不良債権の要処理が減ってきているということでございまして、金融機関全体で見ますと不良債権処理が進んできているということが言えるのではないだろうかというふうに思っております。  それから、さらにもう一つのお尋ねでございますが、銀行が破綻したような場合にどういうようなスキームで対処するのかというような御質問でございますが、昨年の六月に議会において金融三法を成立させていただいたわけでございます。それによりまして、金融機関経営の健全性の確保の諸施策が整備されるとともに、二十一世紀を迎えるまでの間は預金の全額を保護し得る等の措置をお認めいただいたわけでございます。もちろん各金融機関が自助努力で不良債権の早期処理を進め、経営の健全性の確保に努めていく、これはもう大前提でございますが、不幸な事態に陥った場合におきましても、お認めいただいたその三法の制度を活用して、個々の適切な対応をやってまいりたいと思っておるわけでございます。  いろいろなケースがございまして、物によっては整理回収銀行で全部事業譲渡を受けるという形式もございますし、物によっては新しい銀行をつくって、そこに事業譲渡する、そういう形をとりながら、赤字の部分は預金保険の方から支援をするという形で個々に対応しておるわけでございます。  今後とも、私どもとしては、まず自助努力を促すということを最大限の前提としながら、そういった万一の場合の措置も適切に図ってまいりたいというふうに思っております。
  33. 北脇保之

    ○北脇委員 今の破綻処理のスキームの問題でございますが、私の理解では、銀行が破綻した場合でも預金保険機構で対応する、そして関係金融機関の支援を期待するというような枠組みかと思うのですが、果たしてそれで対応できるのかどうか。特に、関係機関の支援を求めるというようなやり方というのは、いわゆる奉加帳方式といいますか、そういうことであって、金融の経営の独立性というようなことを考えていきますと、余り適切ではないのじゃないかというふうに思います。  そこで、公的資金の導入についてどう考えているのかということをちょっとお尋ねしたいと思います。  私個人の意見としては、金融機関を存続させるために公的資金を導入する、住専問題で見られたようなああいうやり方については問題があると思いますが、預金者保護のために公的資金を導入していくということは十分考えなくちゃいけない、金融機関の情報公開をきちんとやっていくという前提が守られるならば、公的資金の導入をしてもいいのではないかと私としては思います。  この点について、今のスキームでは、銀行が仮に破綻した場合に公的資金の導入ということについてはどうなるのか、これについて教えていただきたいというふうに思います。
  34. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  公的資金問題についてお答え申し上げる前に、預金保険機構が今どういう状況かということをまず御説明する必要があろうかと思うわけでございます。  先ほど申し上げました新しくお認めいただきました法律によりまして、今年度から保険料率を七倍に引き上げさせていただいております。これによりまして、毎年度保険料収入が約四千六百億円入ってくるということでございます。八年の三月末で責任準備金の残高が三千八百六十五億円ございましたので、今年度を含めまして五年間の利用可能額が二・七兆円という状況でございます。  これに対しまして、ことしに入りましてから決定しました預金保険機構の資金贈与でございますが、大変大型でございました木津、今後こういう大きなものはもうとても考えられないと私は思っておりますが、この木津の処理を今年度中にやるということにいたしましたので、それを含めまして、すなわち、太平洋銀行、福井県第一信組、けんみん大和信組、山陽信組、大阪信組、木津信組、こういったものを全部合わせますと、その処理に要する資金が一・二兆円というようになってございます。  したがいまして、今の状況では、毎年四千六百億ずつ入ってきますので、五年後には二・七兆になるのですけれども、途中、こういう木津のような大きな処理がありますと、一時的に資金が不足するときはあります。それは借り入れ等でやりますが、その後は必ず資金が入ってまいります。そういったことで対応させていただいているということでございます。さらに、信用組合の部分の特別勘定、そこには政府保証をつけてよろしいということをお認めいただいておりますので、そういうところの対応もございます。  そういった現状を前提に申し上げますと、不良債権の処理の問題は、先ほど申し上げましたように、金融機関の最大限の自助努力をやっていただく、思い切ったリストラを各金融機関にやっていただくということをまず大前提として、しかも金融機関システム内の負担というものを原則にするというのが基本だろうと思うわけでございます。  信用組合につきましては、大変厳しい経営状態になってしまっておったという事態から特別なお計らいをいただいておるわけでございますけれども、私ども大蔵省としましては、今申し上げました金融三法において整備されました預金保険等の仕組み、これを目下最大限活用するということが最も大切なことではないかと思っておりまして、預金者の皆様に心配を与えないように、自助努力とともに、私どもとしてもこういったお認めいただいた制度を目下最大限活用するという方針でまいっているわけでございます。
  35. 北脇保之

    ○北脇委員 ただいまの対処策については、不良債権がどれだけあるかということ、その大蔵省の把握に基づいての対応かと思います。しかし、八年九月段階で二十九兆円というお話でございましたけれども、これが本当にそうなのかということはかなり国民の間では疑問を持たれている。それは、一つには、破綻した幾つかの金融機関について、破綻する直前まで言われていた不良債権の類と、いざ実際に破綻して明らかになった類とが余りにもかけ離れていた例があるというようなこと、そしてまた、学者の推計などでは、大蔵省の言うよりも倍ぐらいの不良債権があるんじゃないかとか、そういったような見方もあります。そして、個別具体の金融機関についていろいろな不安がささやかれたり、そういったことが株価に反映しているというようなこともあります。  ですから私は、やはり問題は、情報のディスクロージャー、そういうことで、疑心暗鬼のような状態を解消するといったことが一番大事だと思いますので、今後の対応については、できるだけオープンな議論ができるように、そして疑心暗鬼が悪い結果を生まないように、そういうできるだけの情報公開をもとにした政府の対応ということをお願いをしたいと思います。  それから次に、九七年度予算の問題点についてちょっとお尋ねをしたいと思いますが、時間の関係もございますので、きょうは歳入の方の、税の問題だけちょっとお尋ねをさせていただきたいと思います。  新年度予算の税制については、新進党は既に幾つかの提案をさせていただいております。それについて、もう既に税制は政府としては決定をして法案も出しているところでございますから、新年度予算に取り込むという返事はなかなか期待できないかと思います。そうであるならば、私が今からお尋ねをする幾つかのことについて、できないならばなぜかというその理由をお聞かせいただければと思います。  まず一つは、所得税の特別減税を継続すべきだということです。景気対策の見地からすれば、この所得税の特別減税は継続すべきだと思います。これについては、なぜできないのか。もちろん財政再建ということはありますけれども、それは景気対策ということとのバランスで考えていったときに、それでもできないという判断になるのか、そのことをお尋ねいたします。  なお、大蔵省に対する質問ということで住民税のことはお聞きしませんが、私の考えとしては、住民税についても特別減税を継続すべきだということは当然のことと考えておりますので、申し添えます。  それからもう一つは、土地とか株などのストックに係る税制を改正すべきだということでございます。これは先ほど申し上げたように、不動産の不良資産化、そこから派生した金融機関の不良資産問題、そして金融、不動産株を中心とした株価の急落、こういった現象を見れば、こうした土地や株などに係るストック税制、これを改正すべき時点に来ていることは明らかだと思います。  まず一つは、世界にほとんど例のない有価証券取引税を廃止をして、金融ビッグバン、また金融市場の活発化、証券市場の活発化に備えるべきであると思いますが、なぜ有価証券取引税を廃止できないのか。これが一つでございます。  それから、土地税制については、まず地価税を凍結すべきだと思います。これはそもそもの目的が地価抑制ということであったわけでございまして、この地価抑制という目的自体が今現在の状況ではもう既に失われていると思います。  それと同時に、この地価税がいろいろな控除で非常に虫食いになってしまって、結局、本来この地価税というのは土地の資産としての優位性を調整するという目的であったはずですので、本来ならば土地の有効利用の促進ということであるべきなのに、例えば駅前のデパートとか、もう既に有効利用しているような納税者に限って課税の対象になってしまう。限ってという言い方は極端かもしれませんが、そういったところに課税されて、もう既に有効利用しているのに税負担にあえぎながら商売をしている。有効利用されていないような土地はいろいろな控除のせいで課税の対象から漏れてしまっている。こういうところにもこの税制の大きな欠陥があると思います。そういったことも含めて、この地価税は凍結すべきだと思います。  それから、法人の土地関係についていいますと、法人の長期所有土地等の譲渡益に対する特別課税、これは五%というふうに引き下げられて現在に至っておりますが、これについても、法人税はきちんとあるわけですから、もうこの特別課税は凍結すべきだと思います。  それから、次に、法人の新規取得土地等に係る負債の利子の損金不算入制度、これについてももう既に目的がずれている。したがって、凍結すべきだと思います。これについては、私の地元の浜松の不動産業者とか住宅開発をやっている業者からも、この制度は大変困る、こういう意見が寄せられております。この制度を凍結すべきだと思います。  これらの土地税制に関する議論については、恐らく平成年度の税制改正の中でもう政府・与党の中では十分議論されたおなじみの議論ではないかと思いますが、改めてこの時点において、今の点についての御答弁をお願いいたします。
  36. 薄井信明

    ○薄井政府委員 幅広い御質問でございましたので、簡潔に御説明いたします。  まず、所得税の特別減税を継続すべきではないかという御指摘でございますが、まさに景気対策ということから、この三年間累積いたしまして十六・五兆円、特別減税だけではありませんけれども、先行減税と一緒にしまして、先行して景気のために対応してきたということでございます。  平成九年を考えたときには、先ほど総務審議官から申し上げましたように、これまでに比べれば、赤字公債発行してまでさらにその特別減税を継続すべきではない、こういう判断をしたわけでございまして、税制を必要に応じて景気対策に使うということはむしろやってきた話でございます。  今後のことを考えますと、所得税といいますのは、個人住民税も同じですけれども、これは制度でございます。どれだけ所得があったときにどれだけ税負担をするかという、そういう関係からしますと、なるべく安定的であるべきであって、景気対策のために減税を使う、あるいは特別減税を行うというのは極めて例外的に考えるべきものだと思っております。  それから次に、土地あるいは株についての税制についての御質問でございました。  株に関しましては有取税のことが御質問にあったわけでございますが、私ども、証券関係の税制全体の問題として常に関心を持っているわけでございまして、いわゆる株価がどう動いているかということとの関係で有取税の問題を考える必要はないと思っておりますし、昨年有取税は三割下げたわけでございますが、この一年を見ますと、むしろ株価は下がってきているというような状況でございます。  ただ、御指摘のように、これからの金融システム改革といったときに、有取税なり証券関係税制が開かれた市場の中でどういう機能を果たすか、あるいはどういう経済効果を果たすかということは分析しないといけないと思っておりますので、その点は、私ども、証券税制全体の中で時期を失することのないように対応していくべきだと思っております。  なお、有取税といった税金、あるいは株の譲渡益についての税金、キャピタルゲイン課税といいますが、各国それぞれにそれぞれの体系で税制を持っているわけでございまして、税制がないことをもってよしとするということではないというふうに私ども思っております。他の所得との関係を考えることは税制にとって重要なことだと思っております。  それから、土地税制についての御質問が最後にございました。  土地税制につきましては、これも御質問の中でありましたように、昨年、やや早かったのかもしれませんが、土地をめぐる状況変化に対応いたしまして、地価税につきましては半分にいたしましたし、また法人の譲渡所得に関しましても追加課税を半減するといったような措置を既に講じておるところでございます。  また、最後に、新規取得土地につきましての御質問がございました。  これは、どちらかといいますと、バブル対策ということよりも、一般的に土地を取得するときに借金で取得をする。そうしますと、その取得した土地が生産なり所得稼得にどれだけ有効に使われていくかということになりますと、これは時間がかかるわけでございます。にもかかわらず、その借金分の、借金に伴う利子について即時に落としてしまうということが適当かどうか、こういうことに関しての議論の結果負債利子の特例を設けているわけでございまして、最終的にはこれは控除はできるわけでございますが、この土地の利用に応じて落としていくという考え方についてどう考えるかということでございます。例えばアメリカでは、新規の土地を取得するときに借金をする、その利子分は減価償却の中に入れていくというような考え方も一部とっているようでございまして、それも一つ考え方かなと思います。  かつての一時に落としてしまうという方式ですと仮需要が出てくるのではないか、それによって税金を安くできるということから借金をしてまで無理に土地を取得するというようなケースは抑えることが必要ではないかなと思っているような次第でございます。  いずれにしましても、土地税制につきましては、状況に応じながら対応してきたということと、本年、これから九年度に関しましても御存じの固定資産税関係の改正が行われますし、対応してまいってきておりますが、今後とも、土地の状況等を見ながら、一方で資産課税の中で土地税制をどう位置づけるかということも踏まえつつ、常に関心を持ってまいりたいと思っております。
  37. 北脇保之

    ○北脇委員 最後の、法人の新規取得土地等に係る負債の利子の損金の不算入制度については、バブルの当時、土地をいわゆる節税ということに使うということが横行した、それに対する対策であったというふうに私は思います。当時は、相続税などでも、借金をして土地を買って相続税を少しでも少なくしようというような動きがありましたし、法人のこの制度についても、そういうふうに土地の取得ということを税金逃れに使おうという、そういったことを封じるというねらいがあったと思います。  しかし、今は、土地の流動化、土地取引の活発化ということが何よりの政策課題として求められているときでございまして、当時とは状況がもう百八十度違うと思います。したがって、私は、いわゆるあつものに懲りてなますを吹くというようなことであってはならない、こういう制度は速やかに凍結をして、少しでも土地の流動化、不動産取引の活発化、これに資する対策を講じていくべきだ、そういうふうに思います。  そしてまた、時間が五十三分までということでございますので、今回提案されている公債発行特例等に関する法律案についてお伺いをしたいと思います。  一つは、非常に単純なことでございますが、現下の財政状況を見れば、特例公債発行自体を認めない、そのような考え方は非常に非現実的だと思います。その点は認めるところでございますが、その発行額については、建設公債特例公債ともに、今政府の内部でも言われておりますような公共事業費、補助金などについて聖域を設けずに思い切った削減をする、こういうことをすれば減額が可能と考えます。今、予算に計上されている建設公債特例公債発行額、これは減額が可能と私は思いますが、これについての政府のお考えをお伺いしたいと思います。
  38. 林正和

    ○林(正)政府委員 お答え申し上げます。  公共事業費、補助金などを切り込めば公債が落ちるではないかという御質問でございますが、先生御案内のとおり、平成年度予算におきまして、公共事業につきましては、我が国財政事情等を考慮いたしまして、七年ぶりに前年度と実質的に同水準という抑制的なものにとどめておるところでございます。また、特殊法人に対する補助金等につきましても抑制に努めたところでございまして、加えて医療保険改革を初めとする各般の制度改革の実現に努めたところでございます。その結果、一般歳出については一・五%増ということで、九年度の物価上昇率一・六%を考慮いたしますと実質伸びゼロ予算ということになっているところでございます。  こうした結果、四兆三千億の公債減額特例公債については四兆五千億減額ができたというところでございまして、私どもとしては、九年度予算につきましては、全体として抑制を図る中で重点的、効率的な資金配分をしたものだというように思っております。ただ、いずれにしましても膨大な公債残高を抱えておりますので、今後とも、さらに思い切った財政構造改革を進めていくということが必要であるということは言うまでもございません。
  39. 北脇保之

    ○北脇委員 もう一つ厚生保険特別会計年金勘定への繰り入れ特例についてお尋ねをします。  私の理解では、九七年度の末のいわゆる隠れ借金というのは四十五兆円に達する。この年金勘定への繰り入れ特例隠れ借金一つでございますが、四十五兆円ということで、昨年度から比べますと二兆円増加するというふうに理解しておりますが、これで間違いないかどうか、それは一応確認ということで。もしそれがそうであるとすれば、政府は今回の公債発行額について、いわゆる増税が七兆円あったけれども、その中で公債減額に充てられる実質的な国の手取り額というのは二・七兆円しかない。途中で地方に出るものもあればいろいろあるから二・七兆円しか手取りはないのだけれども、その中で四・三兆円の公債減額を実現したということをおっしゃっております。ですから、その差は一・六兆円ありますから、増税による税収以外の部分で一・六兆円の努力をして公債減額に成果を上げたということだと思うのですけれども、もう一方の隠れ借金の増が二兆円ということであるならば、それでは隠れ借金の方に回しただけではないかという見方になるわけです。この見方に対して異論があればおっしゃっていただきたいというふうに思います。  それとあわせて、この七千二百億円の年金勘定への繰り入れ、これについては、もう年金勘定の方だって苦しいわけですから、七千二百億円分をいつ繰り入れるのかということについてのはっきりした見通しをお聞きしたいと思います。今までのたまっている分もあるわけですが、それについてあわせてお尋ねします。
  40. 林正和

    ○林(正)政府委員 一つは、いわゆる隠れ借金のお話がございました。これはもう御案内のとおり明確な定義があるわけではございませんが、これまで講じてきました特例的な歳出削減措置、あるいは清算事業債務など今後国が繰り入れを行う等適切な処理を行う必要がある措置というのを、今後処理を要する措置として整理してきたところでございます。  ただ、これは御案内のとおりさまざまな性質の措置が含まれております。したがって、これを全体ひっくるめて一つのものとして考えることには問題がある、従来からこういうように申し上げてきておりますが、あえて平成年度末において単純な合計をすれば、御指摘のように昨年度末の見込みから二兆円程度増加し、約四十五兆円になるということでございます。  ただ、御案内のとおりこの中には、この大宗を占めます清算事業債務約二十八兆円でございますが、これについては御案内のとおり用地あるいはJR株式の売却等を行ってもなお残る債務について最終的に国が処理するということでございますので、現在の債務残高すべてを国が処理するということではございません。  なお、この二兆円がふえておりますのは、細かな説明は省略させていただきますが、それぞれ事情があるわけでございまして、減るものもあるしふえるものもあるということでございます。清算事業債務がふえておりますのは、御案内のとおりの事情でございます。したがいまして、これと公債減額との関係というのは、私どもこれをもって、隠れ借金の総額がふえたことをもって公債減額ができたという御指摘は当たらないものというように考えております。  それから、厚生年金の七千二百億円の件でございます。これはこの法案にもございますように、将来にわたる厚生年金保険事業財政の安定が損なわれることのないよう後日繰り入れるということが法律に定められておりますが、具体的な御質問があったわけでございますが、ただその返済の時期、方法、こうしたことにつきましては今後の国の財政状況を勘案する必要がございます。したがいまして、現時点でこれを明らかにすることはできませんが、私どもとしては今回の繰り延べ分、これまでも含めまして、国の財政状況を勘案して、できるだけ速やかに繰り戻すことにしたいというように考えております。
  41. 北脇保之

    ○北脇委員 時間が参りましたので、同僚議員にバトンタッチをいたします。どうもありがとうございました。
  42. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、木村太郎君。
  43. 木村太郎

    木村(太)委員 きょうのトップバッターの吉田委員同様、私も初めて国政に参画させてもらいましたので大変ふなれな点が多いかと思いますので、委員長初め皆様方の御指導を冒頭にお願いしたいと思います。  まずは、大蔵省の方から先日、「財政構造改革への取組み」というこの冊子をいただきました。サブタイトルとして「活力ある別世紀への条件・明るい未来を子供たちに」という、大変カラフルな冊子だと思います。一読してみますと、今後財政改革を進めるために、よく言えば今の状況と問題点をわかりやすく記載していると思います。しかし、視点を変えた場合、これだけ財政事情が厳しくなったことを、もちろん私たち政治にも責任がありますけれども、その担当であります大蔵省みずからが待ったなしの現状を提示し、それは開き直りにも近いととられても仕方がないようにも思われます。  ここまで財政事情が悪化してきました主なる要因はどこにあると思うのか。また、公債発行を続けていれば財政の悪化に拍車がかかるのはわかっていても、現実に平成年度末には二百四十兆円の公債残高に増加する見込みであり、なぜそのような対応が続いてきたのか。加えて、待ったなしの現状になって財政再建へ具体的に今動き出そうとしているわけですけれども、もっと前に腰を上げることができなかったのか、三塚大蔵大臣にお伺いいたします。
  44. 三塚博

    三塚国務大臣 木村議員にお答えしますが、大変鋭い基本的なポイントをついた質問だと思います。  経済はいつでも成長していくのだという平和時における経済運営、また不況になっても対応策を講ずればそれまた回復をするものである、こういうことだと思うのです。それともう一つは、高齢化社会、少子化社会、先進国病と言われる最大のものでありますが、我が国がその先陣を承りまして急速に高齢化が進む、少子化現象も大変深刻な状況になってまいりました。こういう二つの要素があると思うのであります。そういう中で、今までの経済財政運営は、その都度その都度国民各位の要望にこたえていくという形で財政展開をしてきたところであります。  それともう一つは、一般論でありますが、国民負担という問題について、税制というのがその最先端にあるわけでございますが、税のあり方について本質的な論議が避けられてきたのではないか、私はその点を痛切に感じておる一人であります。  税負担はない方がいいに決まっておるのでありますが、しかし、国民負担という収れんされた形のタックスというのは民主主義社会、議会政治をやっておる中における最大のポイントでありますから、本件についてはオープンな議論と、総論と各論を分けるのではなくして一体的な議論を展開しなければならなかったことが、その都度後手に回ってまいりましたということが大きな原因であったのではないか、私はそういう意味で、政府、担当の与党の責任極めて重大、こう思います。  気がついた以上は二度と過ちを繰り返さないということで、まず、聖域なき歳出カットを断行して財政再建に全力を尽くすということから始めよう、今始めれば、そのことが期待される方向に一歩一歩前進するであろう、こういうことであります。
  45. 木村太郎

    木村(太)委員 答弁の中でも先進国病という表現がありましたが、私たちの暮らしの中でも、わかっていてもやめられないというようなことも確かにあります。ただいま、今始めればということでありますので、それこそ我々関係者すべてが努力をしていかなければならないと思っておりますが、ただ、財政再建において、その目標と方向性、手順あるいはまた手法をきちんとした形で示しながら取り組むことが大事であります。  政府は、昨年十二月十九日、財政健全化目標についてを閣議決定しています。また、同じく十二月には財政制度審議会から、平成年度予算編成に関する建議の中の「結び」において「財政構造計画の推進は、いうまでもなく国民課題であり、」云々と示していますが、私は、国民課題にした政治と行政に、まずは大きな責任がある課題だと思います。  また大蔵大臣は、九七年度予算案を財政再建の第一歩を踏み出した構造改革元年予算国会内でも述べていますが、このカラフルな冊子をつくった意義をも含めて、現在の財政状況をどう認識されているのか。  また、平成年度当初予算一般会計歳出に占める国債費は二一・八%に達し、九年度案で見ますと二一・七%となっており、政策的に使える経費が大変窮屈な状態になっています。今後、数年度国家予算に占める国債費の比率をどのように見込んでいるのか、お伺いいたします。  いま一つ、大臣の財政再建に向けての決意をお聞かせいただきます。
  46. 三塚博

    三塚国務大臣 財政健全化目標を昨年の暮れに閣議決定をいたしたところでございます。  御指摘のように、赤字体質からの脱却であります。同時に、目標を明確に示すということで後世代にツケを回さない、現世代は、受益についてはタックスの負担範囲内でこれをとどめる、こういうことであります。国債費を除いて税収と歳出がバランスするということでございます。最終的には、税収の中から国債費を返還できるような体質をつくり上げなければならないということで、公的債務残高が累増しない財政体質の構築、こういうことになるわけであります。  本件は、議員御指摘のように、国民各位理解を求めつつというのが民主主義ですから原点でありますけれども、まず国会であります。そして、内閣を構成する政党、内閣が責任を持って本件について当たることによって、オール国会が本問題についての共通の理解を得ることができるのではないか。その上に立って国民各位理解を求めるということでないと、この改革は前進をいたしません。  そういう意味で、内閣という意味で、政府機関それぞれが、今日の危機的状況を頭の中で考えるだけではなく全身でこれを受けとめて、むだな経費はカットする、また待てるものはこの際辛抱をする、こういうことで、シェアに基づいて予算編成を行うという従来の方式から脱却をしなければならぬ。聖域なき歳出のカット、制度の見直しということはまさにそういうことであり、政府機関、せんじ詰めれば内閣の責任においてこれを断行しなければなりません。  財政担当の国務大臣として、この件についてはまなじりを決してやり抜いていかなければならない、こう思っておりますので、格段の御鞭撻を賜りたいと存じます。
  47. 林正和

    ○林(正)政府委員 国債費の歳出総額に対する比率についてのお尋ねがございました。  御案内のとおり、九年度予算では二一・七%でございまして、国債費の重圧が政策的経費を大きく圧迫しているという状況にございますが、先般国会にお示ししました中期的な財政事情に関する仮定計算例によりますと、名目三・五%成長を前提として現在の財政構造を放置した場合、各年度の歳入歳出ギャップ、これをすべて公債発行で賄い続けた場合どうなるかという計算をいたしますと、国債費が増加し続けまして、例えば平成十二年度、二〇〇〇年度には二二・六、平成十七年度、二〇〇五年度には二三・五と国債費が歳出の二割強を占める状況が継続するという計算になっております。     〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
  48. 木村太郎

    木村(太)委員 大臣からは内閣がという言葉が答弁の中にあったわけですが、財政再建取り組みについてはいろいろな施策を総合的に展開していくことも大事であるし、また一方で、個々の施策が中途半端になったり、あるいはまたいろいろな施策を総合展開するにしても幾つかの柱がなかったならば、効果は生まれてこないと思います。ましてや政府内において、内閣において意見や足並みがそろわず乱れていれば、かけ声倒れになると思います。財政再建のためのスタートに立つ今、既に政府内において懸念されるような発言が出ているかのようであります。  経企庁の試算によりますと、公共投資の経済への波及効果は年々減少し、例えば三年目の公共投資乗数で考えますと、六七年度から七七年度までは約二・五あったものが、八三年度から九二年度では一・四〇まで低下をいたしております。これは民需の不足を財政で下支えをするという、先ほど大臣の答弁にもありました従来の方式ということになるかもわかりません。この従来からの経済政策の論理が通用しなくなってきていると思います。欧米等の先進国に関する数字を把握していれば、その数字と我が国とを比較して説明をいただきたい。また、大蔵省としてこの御認識、どうお考えかお伺いいたします。
  49. 林正和

    ○林(正)政府委員 公共投資の経済に与える効果についての御質問でございます。  言うまでもございませんが、公共投資それ自身需要になる効果と、あと民間需要を喚起する効果があるわけでございまして、確かに御指摘のように公共投資の乗数効果は、長期的には多少の低下が見られますが、私どもとしては、九〇年代に入ってからの累次の経済対策による公共投資の増加につきましては、バブル崩壊後の民間部門の設備投資、これが急激な落ち込みをいたしましたところは御案内のとおりですが、これを相殺する形で景気の下支えに大きく貢献してきたというように考えてございます。  これまで我が国では景気対策のためにこうした公共事業の大幅な追加が行われてまいりましたが、現在、先進諸国では不況期におきましても規制緩和などを通じて市場機能を活用しているところでございまして、我が国の今の財政状況ということを踏まえますと、今後は、これまでのような過度に財政に頼った経済運営については見直しに努めていく必要があるというように考えております。  なお、経済企画庁の第五次世界経済モデルによりますと、実質GDP一%に相当いたします実質政府支出の増加が実質GDPに与える効果、財政乗数でございますが、一年目を見てみますとアメリカが一・五九、イギリス一・一七、ドイツが一・二七、フランス一・〇八となってございます。我が国財政乗数は一・二四となっているところでございます。
  50. 木村太郎

    木村(太)委員 次に、総理が議長を務めております財政構造改革会議がきのう行われたようでありますが、増税に頼らず、厳しい歳出削減に手段を絞り、聖域を設けず、公共事業、社会保障を初めすべての分野で断行し、例えば六百三十兆円の公共投資基本計画を実質減額し、九八年度の概算要求基準にも生かす方針等々報道では伝えられております。きのうの会議でどう議論されたのか、お伺いしたいと思います。  また、大蔵大臣としてきのうの会議で議論されたこと、示されたこと、あるいはまた一致したことなどについての御見解をお伺いいたします。
  51. 三塚博

    三塚国務大臣 今朝各紙報道いたしておりますが、大体そのとおり伝えておると思います。  問題は、ただいまの御質問に答えますが、総理大臣として橋本さん、御調のとおりであります。全体を聖域なく見直し歳出のカットをしていかなければならない。そのところは、前段も申し上げましたとおり、当分辛抱していただくものも含め、もちろん任務が終わったという認定がされた場合は、それはストップになるのは当たり前であります。さらにこれからやらなければならぬものについては積極的にこれを推進する、予算の効率的な運用という意味で各項目について聖域を設けない、こういうことの議論でございました。  そこで特徴的な議論は、急激に進む高齢化社会において、年金の受給開始年、大体G7構成国は日本を除いて六十五歳に変わりました。そういう中で、我が国は御案内のとおりであります。この辺をどう考えるか。医療制度改革という深刻な問題がありますが、特に老後の問題の年金というシリアスな問題でありましても、全体の財政のあり方、そして受給と保険料との関係、この辺が、再計算の九九年はありますけれども、深刻な状態になるという認識でほぼ一致をし、これにどのように取り組むか、避けて通れない問題ではないのかという新たな提言であります。要すれば、受益と国民負担の問題というところに帰するのでしょうか、そういう議論でございます。  今後第三回、四回と三月中に行うことにより、参議院における予算審議が完了したころから精力的に個別問題について論議を進める。各省のヒアリングを進める。また、それぞれの国民代表の見識ある各位にお出ましをいただき、率直な意見を聞かせていただく。そして六月末には結論を出したい。よって、概算要求に向けて新しい基準でこれを行うということに取り組みたいというのが昨日の最後の取りまとめであります。
  52. 木村太郎

    木村(太)委員 今後一層努力し議論を本格化して六月には結論を出したいということでありますが、なぜこういう質問をしたかといいますと、今審議している段階の九七年度予算案においてさえ、先ほども述べましたけれども、足並みの乱れ、あるいはまた、どれを柱にしようとしているのか、心配してしまうような発言が続いております。  例えば、これも報道で知ったわけですが、中曽根、村山両元総理と武村元大蔵大臣との会談で、予算は成立させるが執行段階での公共事業の削減で一致という報道もありました。また総理も、執行段階での減額補正に含みを持つ発言をしております。また一方では、建設大臣が、執行段階での公共事業削減に反対を表明し、コストを削減し事業量を伸ばせばよいと語っており、また、建設業七団体との懇談の場では、六百三十兆円の公共投資基本計画の堅持、公共工事事業量確保などの要請に対し、財政再建のためにも社会資本整備に力を入れなければならないと、公共事業の重要性を強調したようであります。  大蔵大臣は十九日の記者会見で、六百三十兆円のこの基本計画見直し問題について、財政構造改革会議での検討の対象になるとの認識を示されておりましたが、政府内においてその考え方に違いがあるのか、また、今の時点から減額補正もあり得ると考えるのか、大臣にお伺いいたします。
  53. 三塚博

    三塚国務大臣 減額補正があるのかということについては、ありません。  予算編成は、約十カ月余をかけて積み上げた中で、概算要求、そして十二月の内示まで精緻な理論を展開しながら、これがベストということで提出をいたします。そして査定を行い、最終的な政府原案が構成をされ、国会に提出、御論議をいただく、こういうことでありますから、御論議をいただいて決定したものを執行過程において減額するということはない、あるべきではない。  一度ありましたのは、中東戦争の際に、我が国負担について、経費節減をかけ、そこから拠出をし、足らぬ場合は補正で、こういうことまでやって執行したことがございますが、全く例外中の例外と私は受けとめておりますし、それぞれが物理的な条件によって、というのは、用地買収が極めて至難、また地域住民の強い反対で執行ができないという場合は、これは明許繰り越しであり、また翌年度繰り越しということになることであって、それをもって没にするということにはならないことは御案内のとおりでございます。  さらに、十カ年計画、六百三十兆についていろいろな意見があります。それは承知をいたしております。それが五カ年計画の基本になっておるのも事実だろうと思いますが、国家の将来を決しかねない重要な財政構造改革に取り組んでおりますときに、現時点における分析、将来展望を明確にすることによって、それが若干延長されましょうとも、そのことによって非難はないと私は思いますし、また、そういう決心をし、決定をすれば、そのとおり実行するのは当然である、こう思います。
  54. 木村太郎

    木村(太)委員 今の答弁が、いわゆる政府、内閣としての考え方だというふうに理解していいのか、いま一度お答えいただければ……。
  55. 三塚博

    三塚国務大臣 国務大臣大蔵大臣としての方針であり、そのことは内閣の方針になっておると信じておるわけです。
  56. 木村太郎

    木村(太)委員 先ほど来の答弁にもありましたが、六月までということを一つの期間の目標として努力するということでありますが、私たちは、この国会においても財政再建法なるものを早急に、できる限り早く出して対応していくというのが、これまた政府、また政治の責任だと思っております。  ただ、私自身も今質問でこの公共事業のことを例として出したわけですが、私は、決して、国の財政が厳しい状況にあることに対して、公共事業だけが袋たたきに遭ってはいけないと思います。もちろん、効果ある事業なのかどうかの見直しは大切だと思います。  私の地元も社会資本整備が十分整っているとは思っておりません。むしろおくれている面もあると思っています。財政健全化に向けて、公共事業公共投資基本計画の総額あるいは計画期間の見直しについての発言が表面化してきているわけですが、きのうの財政構造改革会議でも、社会保障費の抑制に向け、先ほど大臣の答弁にもありましたけれども、現在六十五歳への段階的引き上げを目指している年金給付の開始年齢をさらに引き上げるべきだとする意見もあったと報道にはありました。公共投資基本計画見直しに匹敵するようなインパクトがある事項が他の分野においても大蔵省としてあるのか、お伺いをいたします。
  57. 三塚博

    三塚国務大臣 これは聖域なき見直しということでありまして、例外はございません。よって、医療改革、その中に年金問題、公共事業、ODA、防衛費のあり方以下、すべてそういうことでありませんと公正公平な行政、政治と言われません。
  58. 木村太郎

    木村(太)委員 もちろん分野として挙げれば、今答弁あったとおりだと思います。ただ、先ほどの、年金の給付年齢の引き上げなど、いわゆる国民が敏感に反応するようなことを既に大蔵省として何らか持っているのかどうかということをお聞きしたかったわけですが、もしあればお伺いいたします。
  59. 林正和

    ○林(正)政府委員 財政構造改革会議におきましては、大臣からもお答えございましたように、すべての経費についてこれから御議論を具体的にされていくということでございます。私どもとしては、そうした御議論あるいは国会での御議論、こうしたものを踏まえて具体的に検討していくということで、現在、私どもとして特定の考えを持っているということはございません。
  60. 木村太郎

    木村(太)委員 次に、先ほども同僚の北脇委員からも取り上げられましたけれども、特別会計からの借り入れなど、いわゆる隠れ借金が、会計上のやりくりを見た場合に、九七年度末の累計総額が四十五兆ということで、四十五兆三千七百四十億円に達する見込みで、これは九六年度比二兆円増加の見通しであります。隠れ借金の増加には歯どめがなされておらず、財政構造改革元年政府は言うものの、財政が厳しい状況にあると指摘されても私は仕方がないと思います。その一つ厚生保険特別会計年金勘定への繰り入れ特例であり、今回七千二百億円の控除が実施されると、三年連続での措置であり、累計で一兆九千三百五十億円となります。  四・三兆円の公債を減額し財政構造改革元年としたとしても、隠れ借金が増加することについて、大臣の御認識をお伺いいたします。また、隠れ借金の歯どめについての対応もお伺いいたします。私は、隠れ借金の増加がこれまでの公債残高の累増と同じ軌道を歩むことを大変危惧をいたしておりますので、御答弁を願います。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  61. 林正和

    ○林(正)政府委員 今後処理を要する措置ということでございますが、これは先ほども御説明申し上げましたように、御案内のとおりさまざまな性格のものが含まれておりますので、単純にこれを合計するということは問題があるということでございますが、あえてそのようにいたしますと、御指摘のとおりでございます。  確かに、九年度と八年度を比べますと二兆円ほどふえておるわけでございますが、ただ、これにつきましては、減少するものもある一方、あるいは地方財政対策に伴う後年度負担厚生保険特別会計年金勘定への繰り入れ及び国鉄清算事業団の長期債務により増加が見込まれておりますが、それにつきましては、詳細は省かせていただきますが、例えば国鉄清算事業団の長期債務の増加は、鉄道共済年金の厚生年金への統合に伴います移管金負担約八千億円の新たな債務増等によるものでありまして、国が九年度支出すべき歳出の繰り延べを行うということによるものではございません。なお、これは別途、清算事業団の債務の累増につきましては、約三兆円の無利子化、御案内のとおりの措置を行っているところでございます。  いずれにしましても、これらによって、今後処理を要する措置の額が増加する見込みだということでもって、その増加により公債減額の形をつくったものという御指摘は、私どもは当たらないものというように考えております。  それから、隠れ借金について何らの歯どめもないではないかという御指摘でございますが、こうしたいわゆる特例的な歳出削減措置等は、厳しい財政事情の中で、それぞれの制度、施策をめぐる状況を十分検討した上で、その時々の運営に支障を生じない範囲でぎりぎりのやむを得ざるものとしてとられた措置でございます。こうした措置につきましてもできる限り抑制すべく努めているところでございまして、九年度予算におきましても、八年度には二措置であったものを今年度には厚生年金の御提案申し上げている一措置にとどめるなど努力をしてきているところでございまして、慎重な検討を行ってきているところでございます。  今後も、それぞれの制度、施策をめぐる状況あるいは国の財政状況、こういうものも踏まえつつ適切に対応していく必要があるというように考えております。
  62. 木村太郎

    木村(太)委員 努力しているのだということでありますが、平成年度一般会計予算案は、公債発行対前年比四 三兆円を減額している。しかし、これは歳入面での消費税の引き上げ、政府の見込みでは五兆円、この税収の増だけでなくて、医療保険制度改革など諸制度の改革実現もあわせてのことと思います。消費税増収分五兆円は地方交付税交付金等にも向けられ、よって公債減額に充てられる実質的国の手取り増は二・七兆円としております。この冊子の中でも二・七兆円を上回る四・三兆円の公債発行額の減額と述べており、つまりこの考え方財政構造改革元年と位置づけられ、この考え方をもって後年も、これからも努力していくことによりまして、財政再建が達成されると政府考えているように思われます。  しかし、この例でいいますと、国の手取り増二・七兆円を上回る公債発行額四・三兆円を減額できるのは、諸制度の改革もあってのことであると思います。その一つが先ほど答弁にもありました医療保険制度の改革であり、それは実質患者負担増、つまりは国民負担増があってのことと国民の目には映っていると思います。私は、負担増イコール一〇〇%悪とは思いません。またしかし、改革イコール一〇〇%負担増であってもならないと思います。負担増であるならば、それに見合ったサービスの向上等何らかのメリットがなければなりません。それが各世代間にわたるものならば、国民の合意を形成する努力が必要であります。  そこで、大臣にお伺いしたいのですが、医療保険制度を初め諸制度を通じ、国民負担増が今後とも予想されていくのか。というのは、先ほども言いましたように、今後も財政再建のため公債発行を減額する方向が続くならば、並行してそういうことも行われないと進まないのではないかというふうに私には思えます。御答弁をお願いします。
  63. 三塚博

    三塚国務大臣 これからの政治の目標として、従前の政府体制を維持するのか、言うなれば大きい政府であります。各種改革を断行することによって小さい政府を目指すのか。私は、小さい政府を目指すべきであると。地方分権、最終的には道州制を目指し、その完成に努力をする、こういうことだろうと思います。  なぜ申し上げたかといいますと、中央政府がすべての問題を処理していくということには限界があることは御案内のとおり、よって国民負担をどうするかということになるわけです。これは避けて通れないところでありまして、しかし、それが五〇%を超えることであれば活力が減ずるということも社会経済学的にももう検証済みであります。しかし、税を合わせて七〇%の国民負担を持つスウェーデンは活力のある社会としておるということを他山の石として、これは今後、最大限の研究の価値のあるところ、北欧三国またしかり、こういうことであろうと思います。
  64. 木村太郎

    木村(太)委員 時間が来たということで、まだまだ質問したいことを準備していたのですが、これで終わります。質問はしません。  ただ、大臣、私は、三塚大蔵大臣のこれまでの歩みと人間像を記した本を以前一読したことがあります。これまでのいろいろな御苦労とかあるいは歩み、また経験、あるいはまた活躍というのがその御本には記されておりました。ぜひ大臣におかれましては、あくまでも国民の視点、目の高さにおいて、今後ともこの経済財政、特に財政再建に対して歩んで、努力をしていただきたい。大変若輩でありますが、心からお願いして、時間ですのでこれで終わります。ありがとうございました。
  65. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、末松義規君。
  66. 末松義規

    ○末松委員 民主党の末松義規であります。  私も、昨年初当選させていただきまして、この委員会で初の質問をさせていただきます。よろしくお願いします。今から三十五分間質問をさせていただきます。  きょうは特例公債の話でございますので、私はそちらに集中して、絞って質問をさせていただきます。  先日、住専の穴埋めで六千八百五十億円が赤字国債というか特例公債でなされた、その大半が赤字国債だったということを聞いて、今後六十年間の国民負担になるということを聞いて、私、若干ショックを受けたわけです。つまり、ことし生まれた赤ん坊が六十歳になるまでその負担を払い続ける、そのツケを払わされるということは、非常に問題ではないかと思うわけです。  特に、不良債権問題に何ら罪がないといいますか、そういうことに関係ない国民一般、今の現役世代国民にこのツケを払わせることが大きな問題になったわけでございますが、それ以上に、今生まれるというような、そういう全く関係のない、住専問題とは関係のない将来世代にまでこのツケを払わせるというのは、どうしても納得ができないものがございます。  昨年の財政審の建議、十二月十九日の建議ですけれども、その中でも、特例公債、特別公債発行は極めて遺憾であると書いてありますし、また特例公債が後世代に資産を残さず負担を残すことになり、世代間の公平という観点からも問題があるから、発行を厳に回避すべきであると言っております。私も、特例公債は本当は出してはいかぬというのが原則だろうと思います。この財政審の建議につきまして、大蔵大臣考え方をまず簡潔にお伺いしたいと思います。
  67. 三塚博

    三塚国務大臣 これは、財政赤字のさらなる拡大を招けば経済国民生活が破綻に瀕するというこの一点をにらんで対策をつくり上げたわけであります。  御案内のとおり、二〇〇五年度までのできるだけ早期に国及び地方財政赤字をGDP比三%以下とする。先進各国は、ここのところはゼロであったり一であったりということでございます。これらの目標達成のために、名目経済成長率より相当低く伸び率を抑えていかなければならないということで、本年度予算編成一・五ということにしたところでございます。この目標実現は、さらに、財政構造改革原点でございますから、全力を尽くすということであります。  改めて申し上げますが、あらゆる歳出の全般的見直しを進めるとともに、概算要求段階から一層厳しい抑制に取り組むなど、さらなる歳出削減に努力をしてまいる。ただいま赤字公債の御見解も承りましたが、いずれまた、突っ込んだ質問でしょうから、その節にやらさせていただきます。
  68. 末松義規

    ○末松委員 財政法四条の建設国債、これについて、償還期限を六十年としたその理由を言っていただければと思います。
  69. 林正和

    ○林(正)政府委員 建設国債の六十年償還ルールは、これは建設国債発行することになりました際に、建設国債の見合い資産について、例えば永久資産であります土地等の耐用年数は百年と仮置きいたしまして、その他の償却資産の耐用年数は原則として税法等の耐用年数に従って計算したところ、平均的効用発揮期間がおおむね六十年であったということから、これを一つの目安として六十年間で償還を図っていくべきであるというルールとして採用されたものでございます。
  70. 末松義規

    ○末松委員 そうしますと、建設国債は、確かに資産を残すという意味で六十年、耐用年数をいろいろ計算されたというふうに私も見たわけですけれども、それと違って特例公債は、これはもうその年その年の歳入と歳出の帳じり合わせというようなものであって、財政法ではあってはならない借金であるわけです。したがって、我々現役世代が、ある意味じゃ不名誉で恥ずかしい借金にならざるを得ないということです。  この特例公債がなぜ六十年の償還期間となっているのか。つまり、我々の現役世代、現世代で出したこの赤字をなぜ六十年という長い期間で次の世代まで負担させなければいけないのか、それについての哲学をお伺いしたいと思います。私は、大臣にお伺いしたいんですけれども……。
  71. 林正和

    ○林(正)政府委員 ちょっと先に申し上げます。  特例公債につきましては、御案内のとおり、借りかえを認めることになりましたのは、昭和五十九年度でございます。このときに特例公債について六十年の償還ルールになったわけでございますが、このとき財政審でもいろいろ御議論いただいたのですが、一つは、御指摘のように、特例公債については、もうできるだけ早く残高を減少させるべき性格のもので、原理的に一定年限で償還すべきとする方式は決めがたいという面があるという点が第一点。それから二番目に、財政事情は今後とも極めて厳しい状況が続くことが予想されるわけですが、このような状態の中で、仮に特例公債の償還について、より短期の一定年限で償還するルールというものをつくりますと財政事情をさらに厳しいものにすることは否めないという御議論がございまして、現実的な選択として建設国債と同様の六十年の償還ルールということになったわけでございます。  現在の我が国財政状況考えますと、特例公債について六十年償還ルールにかわる新しいルールを設定するということは、これは現実問題として困難でございますが、今後とも、その残高を速やかに減少させるように努めるべきものというように考えております。
  72. 末松義規

    ○末松委員 今の新しいルールをつくるのは困難というのは、だれが判断するのですか。
  73. 林正和

    ○林(正)政府委員 だれがというか、現在の財政状況を見れば、特例公債を早期に償還するということになりますと、その分についてまた特例公債発行せざるを得ないような財政状況でございますので、そういうものは現実的ではない、そういう意味で困難だということだというように思っております。
  74. 末松義規

    ○末松委員 その新しいルールを設定するのはまさにこの当委員会であり、それから国会じゃないですか。ちょっとその点を指摘させていただくのとともに、将来世代負担させるという根拠を次長は言われてないんじゃないですか。私が聞きたいのは、まずそこなんです。
  75. 林正和

    ○林(正)政府委員 確かに、御指摘のように特例公債は見合いの資産が何も残らない、ただ負担だけが残るという点で極めて不健全なものであるということで、現在の財政法では認められておりませんし、これを発行したならば速やかに償還をしていくという基本的な考え方は私どもも従来から持っておるところでございます。
  76. 末松義規

    ○末松委員 将来世代に対する根拠を言ってくれ、根拠を。
  77. 林正和

    ○林(正)政府委員 特例公債を将来世代負担させる根拠でございますか。——ちょっとお尋ねの趣旨が必ずしも私理解できておらないかと存じますが、いずれにしても、将来世代建設国債と違って見合いの資産を残さないで負担だけを残すというのは、将来世代にとって非常に問題であるということから、特例公債は極めて不健全なものだと認識せざるを得ないので、できるだけ早期に償還をするということでお答えにかえさせていただくということだろうと思っております。
  78. 末松義規

    ○末松委員 基本的に、将来世代に対して根拠はないという意味で私は受け取らせていただかざるを得ない。つまり、それほどいいかげんなものなのですよ。  将来世代がどんな状況に陥るかというと、少子化ということで生産年齢人口が非常に少なくなってくる。逆ピラミッドになっていくわけですね。数字でいくと、二〇〇〇年で七千八百万人の生産人口が、二十歳から六十四歳ですか、それが二〇二〇年には六千八百万、つまり二十年間で一千万人ぐらい減ると大蔵省の資料は言っているわけです。また、今度は六十五歳以上が、二〇〇〇年の二千百万人が三千二百万人に二〇二〇年にはふえる。つまり、生産する人口が減って、今度は六十五歳以上の人口がふえる。六十五歳以上の人口というのはだれだというと、我々現役世代であります。それがふえて、福祉だ何だといって将来世代負担を大きなものにしていく。  そういった意味で、私たち自身が、現役世代が将来世代に対してそのような負担を強いるというのは、さらに借金をつくって将来世代負担に上塗りをするということは、まさしく人非人の世界という気がしてならないわけです。  ちょっと逆に物事を考えてみましょう。  例えば、私たち現役世代が、一世代前、三十年ぐらい前の人たちからどの程度の負担をこういった赤字公債とかいう形で引き受けたことがあるのか。特に戦争賠償も免除されました。また、特例公債は多分昭和五十年から発行されておりますから、基本的には私たち現役世代は前の世代から借金をそれほど背負っていないと思いますけれども、それはいかがでしょうか。
  79. 林正和

    ○林(正)政府委員 そうした御指摘のような公債に係るものはございません。
  80. 末松義規

    ○末松委員 そういたしますと、一方、先ほども申し上げましたように、人口が減って福祉の負担がふえる、財政危機であるということは大臣が言われたとおりであります。一九九五年に六人で高齢者の人一人を支えるという統計もございまして、それが二〇一五年になりますと、三人で一人の高齢者を支えるということもよく言われていることであります。  ちょっとお伺いしたいのは、国債費の中で、労働生産人口一人当たり国債費というものを一九九五年と二〇〇五年の間で、十年間ですけれども、比較するとどういうふうになりますでしょうか。
  81. 林正和

    ○林(正)政府委員 平成年度予算におきます国債費は十三兆二千億でございます。これを生産年齢人口、十五歳から六十四歳の人口八千七百万余りですが、これで割りますと、約十五万でございます。  それから二〇〇五年でございますが、これは先般お出ししましたいわゆる仮定計算例によりますと、名目三・五の成長を前提といたしまして、各年度歳出歳入ギャップをすべて公債でもって賄うという場合に、国債費は二十四兆三千億になりますが、他方、生産年齢人口は人口問題研究所の中位推計で見ますと八千四百万人余りということで、一人当たりにいたしますと国債費二十九万円という計算でございます。十五万円から二十九万円に増加するということでございます。
  82. 末松義規

    ○末松委員 そうしますと、一九九五年で一人当たり十五万円負担をしていて、二〇〇五年で二十九万円。ということは、今、私たちの公債借金が、私たち自身が払うべきであるのにもかかわらず、それが、将来世代に対してより多くの負担を私たちは課しているわけです。私たち現役世代というのは、前からの借金はない、後ろに対してはこんな大きな借金を背負わせている。それこそ将 来世代から見れば、日本史上最悪の極めて身勝手な世代と言われても仕方のないことであろうかと思います。  本当に、これにさらに国鉄の財産を勘定したとしても、隠れ借金四十兆円弱あるということです。今オープン化して、一体どれだけ借金があるのかという財政危機のきちんとした把握を国民皆さんにしてもらわないと、今大臣が進めようとしておられる財政構造改革もなかなかうまくいかないというものがございます。  ちょっと技術的なものを聞きたいのですが、この特例公債、六十年償還ということで今やっておりますけれども、これは特例法でその年その年で六十年の償還をしているということで、これをもっと早く返すということは、国債整理基金特別会計法などを見れば法的には多分早く返すことは問題ないと思いますけれども、それはそうでしょうかということを簡潔にお答えいただければと思います。
  83. 林正和

    ○林(正)政府委員 六十年償還ルールは、御案内のとおり、国債整理基金法におきまして全国債残高の百分の一・六に相当する金額を入れるということが基本になっておりますが、ただ、減債制度は、このほかに予算繰り入れあるいは剰余金繰り入れという三本柱で我が国の減債制度を組んでおりますので、ある意味で、償還期限を短くするといった場合に、現行の法律のもとでできないということではございません。
  84. 末松義規

    ○末松委員 私の考えを述べさせていただければ、特例公債というのは、百歩譲っても私たちの現役世代、現世代、つまり一世代三十年ですか、その中で処理すべきものだと考えております。次の三十年、つまり次世代まで引っ張っていくのはやはりおかしい、どう考えてもおかしいわけです。  ですから、私自身は、現行のこの六十年の償還を三十年、本当に理想を言えば特例公債を出さない、これがベストです。それが厳しい財政事情で無理というならば、それは三十年にこれを改めるということがぜひとも必要であると思います。そうすれば、国債整理基金への繰り入れ負担が一・六から倍になって三・二になるのでしょうけれども、それはある意味では、ハードルを高くすることによって、特例公債を出すならばそれだけまた財政資金がかかりますよということを明示することによって、むしろ特例公債を多く出すということに歯どめがかかるのではないかと思います。  私も、昭和五十九年の借換債の問題のときに、答弁もいろいろと読んでおりまして、当時の竹下元大蔵大臣が言っておられました。この借換債をやらなければいけない事情というのは、先ほど次長が申された非常に財政事情が厳しいのだということで、財源としては増税をやるのか、それとも歳出削減をやるのか、それとも公債で、借金で償うのか、この三つしかない。そこで、増税はできないし歳出カットもできないんだということで、結局公債でまた借換債を発行するんだということで、それをお願いしたいと国会で言っていたわけです。  ただ、当時と今の事情は全く違うわけです。国と地方合わせて五百兆円以上の借金を抱えていあと言われている国が、そこでもう国債だけでやっていくというのは不可能な話なので、さらに大臣が先ほど言われておりましたこの聖域なき歳出カット、つまり国の方向としては歳出カットの方向に行くということがここで明らかにされているわけです。そういうことをしないと、逆に公債がまたどんどん歯どめなくふえていくということ、そこを大蔵省としてももっと強く思っていただかないといけないというふうに私は思います。  ということで、大臣にこの特例公債、三十年で償還するということを検討していただきたいと思うわけですが、大臣の所見をお願い申し上げます。
  85. 三塚博

    三塚国務大臣 今日の財政状況考え、後世の負担を深刻に分析をした議論、大変傾聴しました。私自身はそうあるべきだと思いますし、その前に、やはり放漫な財政運営が続いたと言わざるを得ないことであったと思うのです。その結果が深刻な今の分析につながる。ですから、その根っこを断つという意味で、赤字公債に頼る財政運営とさようならをしなければならぬ時期に来たことだけは間違いありません。後世にツケ回しをして現世代がのうのうとしてやっておったのかという批判を、死んでしまってから聞こえないかもしれませんけれども、しかしやはりそれは現実の声として出るでありましょうし、世代間の大きな分裂を招く。  よって、三十年、必要ならば最小限三十年という提言は、もっともっと深刻にこの問題に取り組めという激励と提言、こういうことと受けとめて、一段と歳出カットということにまずもって全力を尽くすということを申し上げさせていただきます。
  86. 末松義規

    ○末松委員 今の御発言を重く受けとめさせていただきます。  それと、もう一つ提案をさせていただきたいものがございます。  それは、今の特例公債発行にやはりこれも歯どめがないわけです。何やかんや今の財政事情が厳しいから厳しいからと言えばどんどんそれが出ていく。恥ずかしながら毎年法律でやっております、それは特例公債法律で。でも、それもこうやられては恒常化して、ほとんど決まり切ったポーズだけになってしまう。それは本当に困るわけです。ですから、私は、例えばこの法定の限度額をつくれということを提案したいわけです。  例えば今八十二兆円か三兆円ぐらい赤字公債の残高がございます。アメリカなんかでも公債の残高で法定の限度額があるというふうに聞いておりますけれども、どうしてもこれから出さなければいけないということであっても、例えば、これは全くの例えばの数字で数字に余り意味はありませんが、百兆円なら百兆円を限度とする、それ以上出してはいかぬというふうな、そういう一つの指標を、これはお役人の皆さんが出すのは大変難しいかもしれないけれども、ここにおられるメンバーの方々が政治的にきちんと決定すればできないことではございません。そういった意味で、歯どめがあるのだという姿勢をとるべきではないかと思いますが、大臣の御所見をお伺いしたい。
  87. 林正和

    ○林(正)政府委員 特例公債の残高の限度額を法定すべきではないかというお話でございますが、先ほど来の特例公債の不健全性についての御指摘は私どももそのとおりだと思っておりますので、こうしたものについて何か歯どめをかけるべきではないかという見地に立たれた一つのアイデアだというように思っております。  ただ、特例公債の残高に限度額を設けるという具体的な御提案につきましては、例えばその法定された限度額に達するまでは特例公債発行が認められてしまうのではないかといった問題点や、あるいはアメリカで確かに御指摘のように一九一七年以来残高を法定しておるわけでございますが、一九八〇年代におきまして財政赤字が御案内のとおり拡大が防げなかったという事例もございます。慎重に対処すべき問題だろうと思います。  ただ、いずれにしましても、特例公債の毎年毎年の発行額を極力抑えていくというところがまず先決の問題であろうというように思っております。
  88. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま政府委員が答えました中で、歯どめの限度を決めますとそこまではやれるという、また、そういう安易な気持ちを起こさせる原因にならないだろうかというのを私も心配します。  やはり何としても、ここまでまいりました以上、赤字公債発行しないというその気迫で今後に対処する。歴代内閣におきましてもそのことに全力を尽くした総理大臣はおられたわけでございまして、バブル崩壊後の景気浮揚策をやることによって公債発行高がふえて今日の状況に来た。よって、これからはやはり歳出カットということの厳しい措置を講じながら、委員言われる後世代の問題に深刻に我々がこたえていく答えとしなければならないと思っております。
  89. 末松義規

    ○末松委員 ちょっとくどいようなんですけれども、先ほど政府委員の方が答弁されたことで、毎年毎年削減するように努力するということであれば、これが全く指標にならないのです。とにかくあしたからは酒を飲まない、酒を飲まないと言っても結局酒を飲んでしまうというアル中の方もおられるわけです。ある意味では、そういった厳しい認識に立ってやらないと、国の財政を預かっている大蔵省としての責任が全うできないということはあるのだろうと思うのです。  三塚大臣も、第百七代の大蔵大臣でございます。結局歴史的に評価されるのは、次の世代の人間が次の世代の価値に基づいて私たちの現役世代を歴史として確定していくわけです。そのときに、結局これだけ大きな財政の危機にありながらまだ眠っていたよというふうな形で評価されないように、ぜひここは三塚大蔵大臣に大英断を振るっていただきたい。そして、大蔵省の方々もそれにきっちりとこたえていただきたいという思いでございます。ひとつ、先ほどの私の提案も踏まえまして、ぜひ御検討を願えればと思います。  ちょっと時間がありませんので、次の質問にさせていただきます。  今度政府の目標で、先ほど三塚大臣も言われておりましたが、国債発行額をGDPの三%にするというふうに言われておりました。まだ議論中だということで今回答はないのかもしれませんが、そのための道筋といいますか具体的な手順あるいは目標値等、この議論の暁には明らかになるのでしょうねということを確認させていただきたいのです。これは政府委員の方でも結構です。
  90. 林正和

    ○林(正)政府委員 昨年末に政府がこれからの財政再建の目標を決めたわけでございますが、現在そのための具体的な方策につきまして、財政構造改革会議でいろいろ議論が行われているところでございます。  具体的な道筋というお話でございますが、御案内のとおり、財政政策、その時々の経済情勢あるいは社会情勢を反映して決定されるべきものでございまして、具体的な歳出削減手段との組み合わせにもかかわる問題でございますので、厳密な意味で、例えば計画をつくるといったようなことは困難だろうと思いますが、大臣もよく答弁されておりますように、財政構造改革会議におきます議論を通じて、財政構造改革についての国民にとって目に見える具体的な道筋が示されてくるということを私どもとしても期待しているところでございます。
  91. 三塚博

    三塚国務大臣 林次長、基本的なことの答弁をいたしましたが、財政構造会議、二回やりました。第三回目に向けてフリーディスカッションをやります。四回目から、この縮減について具体的な方策をどうやるかということについて議論を展開してまいります。  そういうことでありますと、全体の構成の中で聖域を設けないで見直していかなければならないということで、国民の皆様方にも御辛抱をいただくお願いをしなければなりませんし、その前に、まず政府・与党一体となり、また国会の皆様方の御理解を得て、この方策の樹立、樹立をした以上、概算要求の段階からその基準を示し縛りをかける、そして、その中で年末の内示、決定ということについて基本方針に基づいた決定をしていかなければならない、こう思っております。さらなる制度の見直し、そして歳出削減のため努力をしてまいるつもりであります。
  92. 末松義規

    ○末松委員 行政改革をやられるとかあるいは歳出カットをされるということは、大体国民の皆さんに対しまして不人気になりがちなわけでございます。もうこれはイギリスの例でもアメリカの例でも、あとカナダの例でも。それでも国民の皆さんの理解を得ながら、本当に財政危機とはこんなに大変なんだということを言うとともに、ちょっと重要なのは、なぜこんなに雪だるまになったのかということを謙虚に反省してもらうようなことをしっかりと言っていただかないと、国民の皆さんも全く納得できない。だから、例えば消費税増税もそうですが、増税がということよりも、むしろ増税してもまた変なところに使われて、妙なところに使われて、それが例えば汚職事件の原資になるようなことがあってはかなわない、だから嫌だという話になるわけですから、そこはもうぜひ心を鬼にして頑張っていただかないと、今度は国民の方から大きな反発が出てくることになります。  どうか大臣におかれましても、まず自分の身の安全ではなくて公務遂行という観点から、この日本財政を預かっておられるわけですから、不退転の決意でやっていただきたいと思います。その決意を伺いまして、私の質問を終わりとさせていただきます。
  93. 三塚博

    三塚国務大臣 末松議員の国家を思うお気持ち、また後世の世代に対する責任、言々切々として我が胸を打ちます。政治家である限り、またこういう困難な時期に大蔵大臣に就任した以上、おのれを滅してやり抜いてまいります。格段の御鞭撻をお願いを申し上げます。
  94. 末松義規

    ○末松委員 どうもありがとうございました。終わります。
  95. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、佐々木憲昭君。
  96. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。来年度公債特例法案に関連して質問をさせていただきます。  私どもは、今日の財政危機をもたらした原因を究明して、その構造にメスを入れるということを一貫して要求してまいりました。大蔵大臣も、歳出全般について聖域なく見直しを行う、このように答弁されました。しかし、来年度予算では、財政のむだと浪費、その構造には根本的なメスを入れたとは思えません。その上で、一方では不況下で九兆円の国民負担増を求めて、他方で財政法に違反する赤字国債を初め、歴代で二番目の大量の国債を発行しようとしております。今、まさにその転換が求められていると思います。  そこできょうは、歳出見直し一つとして、公共投資の問題についてお聞きをしたいと思います。  この分野は、一般会計だけで年間約十兆円、事業費総額で約五十兆円に上っております。この大もとにあるのが、十年間で六百三十兆円の公共投資基本計画でございます。昨日、政府・与党は財政構造改革会議の第二回会合を開かれまして、公共投資基本計画について見直すということが議論されたそうであります。この会議に出席されました大蔵大臣にお聞きをしますが、この見直しというのは圧縮ということを意味されているのかどうか、改めてお伺いしたいと思います。
  97. 三塚博

    三塚国務大臣 見直し見直したと申し上げざるを得ないところです。というのは、第二回会議でございまして、常会の終わりのころまでに私自身は財政再建法を提出したい、すべきである、こう主張を申し上げております。全体の空気にはまだなりませんけれども、しかし橋本さんは、九月に開かれるであろう臨時国会には確実に提案をしたい、こう言っているわけであります。  そこで、六百三十兆でございますが、財政構造改革聖域を認めず、カット、こういうことになりますと当然そこに波及するだろう、理論としてそうなります。その場合にどう進めるかはもう少し、私の考え考えとして申し述べておるわけでありますが、全体の論議の高まりを見まして、それが内容的なものなのか、それが期限的なものなのかということの最終判断をさせていただきますが、いずれにしても、全体を見直すという中から、長期計画を含めてこれが例外であるということはありません。
  98. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 見直し見直したということで、全体としては、やり方として期間をどうするか、内容をどうするか、そこを検討して、聖域を設けず、いわば報道によれば圧縮の方向ということが基本方向だというふうに思います。  そこで、この公共投資基本計画、六百三十兆というこの計画というのは、いわば総論であります。したがいまして、具体的には道路あるいは港湾、空港などの個別の五カ年計画、長期計画、これの見直しに進まなければ、実際に思い切った歳出の抑制ということはできないわけであります。そういう点で、例えばきょうの日経によりますと、個別事業の五カ年計画の減額などを通じまして「単年度事業費を減らさないと「まやかし」に終わる。」このように報道をされております。  そこで、具体的にお聞きしたいわけですけれども、現在十六分野の公共事業長期計画というのがございますけれども、これはやはり抜本的に見直すべきだと私は思います。総額の圧縮ということを言うだけでは、これは実効性に欠けるわけでありまして、やはり絵にかいたもちに終わらせないためには、それぞれの事業計画について見直しを行い、またこれを縮減していく、そういうことが必要だと思いますけれども、大臣いかがでしょうか。
  99. 三塚博

    三塚国務大臣 五カ年計画は目安を示すものでございます。そういう中で、この五カ年計画、その中に調整額が数%置かれておるわけでございますが、そういう点で、その辺の見方が一つこれからあります。それで、決定したものは決定したものとして認めるわけですが、目安であるという点、調整額が計上されておるという基本的な枠組みを踏まえて、有効適切に取り組む。今、公共事業全体についてのコストの低減を目指し深刻な議論が行われているところでありますから、そういう財政構造改革の実を上げるための諸作業と一体的になりまして、実現を期していくということになろうかと思います。
  100. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 公共投資基本計画だけではなくて、個別の長期計画についても具体的な措置検討していくということでありますが、私は、こういう時期ですから、一度十六事業全体を白紙に戻して、国民生活に必要な分野がどういう分野であるかということについて洗い直しを行って、そして積み上げ方式で効率化を図りながら生活重視の方向に全体として考え直していくということが非常に大切だと思うのです。そういう点では、アメリカとの交渉の中で六百三十兆という数字が出てまいりましたけれども、これにとらわれずに、この際、抜本的な見直しというのがぜひ必要だということを要求したいというふうに思います。  一つだけお伺いしますけれども、これからの長期計画の新たな作成の際には当然そういう観点からお願いをしたいわけですが、昨年十二月十三日に七つの個別の長期計画について閣議決定をされています。この七つの長期計画は総額五十一兆五千億円でありまして、前計画比でいいますと四一%増というふうに大変な伸びになっております。これは、現在財政構造改革会議で議論されている全体としての長期計画圧縮を検討する以前の段階での閣議決定でありますから、この際、その十二月に決定されたものも含めまして、もう一度再検討するということをぜひお願いをしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  101. 三塚博

    三塚国務大臣 先般の予算編成の前に、ちょうど十二月十三日、七分野五カ年計画決定、これに当たりまして閣議において申し上げたのでございますが、これらの実施に当たりましては、財政の健全性に留意をいただくとともに、各種事業の整合性の確保を図り、建設コストの低減等により効果的、効率的な整備に努めるようお願いを申し上げ、同時に、今後の社会経済の動向、財政事情等を勘案しつつ、弾力的に本計画の実施を図るとともに、必要に応じその見直しにつき検討するものといたしたい、こう申し上げておるところであります。これで御理解ください。今後の五カ年計画は、さらに表現を強くしなければならぬのかなと目下検討中であります。
  102. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 ぜひ抜本的な見直しをお願いしたいと思います。  そこで、公共事業の中でも大変比重の高いのが道路でございます。道路整備五カ年計画は、十六の長期計画の中でも最大規模となっております。一般公共事業関係費に占める道路事業費の比率というのは、来年度予算で見ましても依然として二八・七%、約三割と、各事業の中で最も大きな額が振り向けられております。そして、これを支えているのが実は道路特定財源でございます。  そこで、この問題についてお聞きをしたいと思います。  平成年度一般会計ベースの道路事業費は二兆七千九百八十二億円であります。このうち、特定財源であります揮発油税及び石油ガス税の分というのは一兆九千八百六十四億円。ですから、この二つの特定財源によって約七割が賄われている。さらに、国に入ります自動車重量税、その八割相当額の六千七百十二億円が追加されるわけでありまして、要するに、一般会計の道路事業費の九五%がこの三つの財源によって賄われるわけであります。ですから、道路の場合というのは非常に特定財源への依存度が高いわけであります。このように特定財源の比率が高いのは道路事業だけだと思いますけれども、これはいかがでしょうか。
  103. 林正和

    ○林(正)政府委員 先生御指摘のとおりでございます。
  104. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 したがいまして、道路特定財源というのは、それが余ったからといって、現在の状況ではほかに回せない。そういう非常に限定された特定の目的のために使われているわけであります。ですから、道路財源がふえればふえただけ事業もふえるという仕組みになっていまして、例えば第一次から第十一次までの道路の整備五カ年計画、どんどんふえているんですね。減ったためしはないわけであります。毎回毎回ふえております。しかも税収がどんどんふえる、こういう関係になっております。一次から十一次までの間に自動車ユーザーに対する新しい課税がどんどんふえてくる、課税がふえると税収が上がっていく、税収が上がるとまた道路投資がふえる、こういう関係になっているわけでありまして、それで、こういう特定財源方式というのはもうそろそろ見直すべきではないかというふうに私は思います。  例えば揮発油税などがつくられたのは、もともと昭和二十年代の道路事情が非常に悪い時期に緊急的な措置として導入されたわけで、最初は揮発油税は一般財源でありましたが、昭和二十九年からは特定財源として使われる、こういうことが行われたわけであります。それが四十数年間延々と、全くその仕組みを変えずに続いてきた。これは、非常に国際的に見ても特異な状況ではないかと思うのです。  例えば、イギリスの場合は、かなり早くから道路整備が行われまして、特定財源方式が導入されましたのは一九〇九年でありました。道路整備が完了したのが一九三七年でありまして、約二十八年でこの財源は廃止をされているわけですね。ですから、日本の場合ももう既に道路の整備水準はかなり高いわけであります。そういう点で、もう一度見直すことが必要ではないかというふうに思うのです。  例えば、財政制度審議会の「財政構造改革考える」、いわゆる財政構造改革白書でありますが、この中でも、道路の舗装率を見ますと、「昭和四十年には七・四%と、当時の主要国に比べて相当低位の水準であったものが、平成六年では全体で七二・八%にまで上昇してきており、国道については、ほぼ一〇〇%になっています。」こう言っているわけですね。つまり、道路舗装率あるいは改良率というのはかなりの水準に達しています。  それで、認識として、この白書に書かれていることはそのとおりだというふうに思われますか、いかがでしょうか。
  105. 林正和

    ○林(正)政府委員 そのように考えております。
  106. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 そうなりますと、かなりの水準に、今、道路の整備は達しているということになるわけですね。  そこで、大蔵省の主計局が一九八〇年に「歳出百科」というのをお出しになりました。この「歳出百科」の中でどのように書かれているかといいますと、「道路の整備水準が著しく向上した現在、道路財源に関する上記のような取扱いをいつまでも継続することが、財政資金の使い方として適当かどうか、早晩、検討を行う必要があります。」これを出されまして既に十七年たっているわけですね。ですから、この道路特定財源そのものについ て現在の段階で見直して、全体として公共事業見直しを行い、財源についても洗い直しを行い、そして国民生活密着の方には大きな比重を置きながら、総額として圧縮をしていく、これが日本の現在の財政危機を打開していく上で非常に重要なかぎになると思いますけれども、そういう決意はおありかどうか、お聞きしたいと思います。
  107. 林正和

    ○林(正)政府委員 道路に絞りまして特定財源制度についての御指摘でございますが、これは御案内のとおり、特定財源制度は受益と負担の関係が極めて明確だということ、それに、かなり密接な対応関係があると社会的に認識され得るような場合に、特定の公共サービスが特定の集団の受益に関連しているということに着目してとられているものでございます。  一般的に申し上げますと、特定財源制度は財政全体の弾力性というものを阻害することになりますので好ましくないと思いますが、道路関係についていいますと、受益と負担との関係が極めて明確だということで、それなりの妥当性はあるということでこれまで設けられてきたものですし、私ども、現在もそうしたことが言えるのではないだろうかと思っております。そういう意味で、合理的な理由があるということだろうと思います。  先生の御指摘は、現在の道路の整備水準等を考えるとそこはいかがかということなんですが、先ほど先生からも御指摘がございましたように道路の整備水準は確かに上がってまいりましたが、国民の道路に対するニーズ、特に高規格幹線道路を中心といたしますニーズは非常に強うございまして、現在、九年度予算におきましても特定財源だけではなくて一般財源をも投入している状況にかんがみますと、この道路特定財源それ自体が財政の硬直化を招いているというようには考えてはおりません。
  108. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 もう時間が参りましたので終わりますが、大蔵省の広報誌であります「ファイナンス」、これの昨年の八月号ですが、この中で、大蔵省出身で京都大学の吉田和男教授は、特定財源制度になっていると、歳出の要請で決まるのではなく整備の必要性と関係のない財政収入から決まる、事業が必要なのではなく税収があるから事業が行われる、道路の効率とは無関係に税収が入ってくるので税収によって事業が拡大することになると、大蔵省の広報誌がこう書いているわけです。  ですから、この際、根本的な見直しを、聖域は設けないと大臣言われたわけですから、その点を要望して、質問を終わりたいと思います。一言御回答いただければ。
  109. 三塚博

    三塚国務大臣 御提言は御提言として受けとめます。  政府委員答弁のように、全体の国土整備計画の位置づけの中における道路整備、こういうことでありますから、九年度予算におきましても、高規格道路の重要性にかんがみ、都市計画上、地域振興の観点から重点を置いたことであり、同時に、生活道路と言われる分野についても、これはやはり生活直結でございますから整備を進めなければならぬ分野であり、全体は全体として見ていきますことは当然のことであります。
  110. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 ありがとうございました。
  111. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、吉田公一君。
  112. 吉田公一

    吉田(公)委員 質問をいろいろしようと思いましたが、既にほかの方が全部質問をしてしまいましたので、余りなくなってしまいました。  大臣にお伺いしたいのは、まず、財政赤字を削減をして公債残高を減らしていくという決意の御答弁がございました。そこで、具体的には、削減をしていくためにはとにかく数字をカットするしかないと私は思うのでありますが、ややもすると、しがらみ予算みたいな、連綿と続いている今までの慣習、そういうものにとらわれて、なかなか歳出をカットすることができない。そこで、財政赤字を減らすためには、英断をもちまして歳出をカットするしか方法はないと思うのですが、いかがでございましょうか。
  113. 三塚博

    三塚国務大臣 しがらみがありますことは痛切に感じます。ですけれども、これを突っ切っていかないと成果が出ません。何回も申し上げますとおり、聖域を設けず、歳出一つ一つ、その前提にあります制度を基本的に見直し、直す、そういうことで実効を上げていかなければならぬと思っております。
  114. 吉田公一

    吉田(公)委員 そこで、今回の特例公債でありますが、特例公債というのは、赤字国債財政法第四条で発行してはならぬということから編み出されたのが特例公債だと、こう思うのですね。ところが、特例公債という以上は、言ってみればただし書きみたいなものでしょう。毎年毎年特例を重ねていたんじゃ特例じゃなくなっちゃう。だから、本来の姿に戻す。ただし書きばかり運用しているということはおかしいのではないでしょうかね。その辺いかがですか。
  115. 林正和

    ○林(正)政府委員 先生御指摘のように、我が国は、基本的には非募債、公債発行しない。ただし、財政法四条にありますように、いわゆる建設国債はいいということだけが認められておるわけでございまして、そういう意味では、今回御審議をお願いしておりますいわゆる赤字国債は極めて財政として不健全なものでございます。先ほど来申し上げておりますように、こうした不健全な特例公債からできるだけ早く脱却していこうということで、計画を、目標を定めまして、まずは歳出削減ということで努力をしていきたいと思っております。
  116. 吉田公一

    吉田(公)委員 まずは歳出削減と言いながら、平成年度は二百四十一兆円の累積赤字、平成年度は二百五十四兆円になると、三十三兆円ふえてしまう。そばから赤字がふえていくというのはどういうことになっているんですかね。そこがどうもよくわからない。  例えば国鉄清算事業団だってそうなんだ。国鉄清算事業団法で十年間で二十五兆返しますと言っていながら二十八兆円になって、いや、これは世の中が悪いんだみたいなことを言って、普通の永田町の敷地のほかでは通用しないことが通用してしまっている。その点についてはいかがですか。三十三兆円もふえてしまって、片方では削減を何とかしなきゃいかぬなんて力んでいる割には、どんどん数字がふえていく。これは仕掛けか何かあるんですか。
  117. 林正和

    ○林(正)政府委員 御指摘のように、国、地方を通じます長期債務、全体として三十三兆円ふえておるわけでございます。  今国鉄のお話の例がございましたが、これを解消するのには別にこれといった王道があるわけではございません。やはり毎年の歳出一つ一つの項目すべてにわたって見直しをしていく、それによって財政構造改革をしていくという地道な努力をしていかざるを得ない、そういう努力をこれからしていこうということでございます。
  118. 吉田公一

    吉田(公)委員 一つ一つ見直して地道な努力をしていくということなんですが、地道な努力がないから三十三兆円もまたふえていくとしか考えられないんですよ。地道な努力をしている割には赤字がふえていってしまうんだね。その辺が、努力というのはどういう意味なのか。実際にその数字をきちっといじくらなけりゃだめなわけですよね、削減しなきゃ。だから、しがらみ予算とさっき私が言ったんだ。みんなしがらみで予算をつけなきゃならない。  今度松くい虫の法案が出てきましたよ。今まで五年でやっていたやつを、今度は松くい虫を防除するんで恒久法律にするんだなんて、そんな松くい虫の法律まで恒久法律にしてしまって、またそれ、お金がついたから林野庁が恒久法律にしようとしたんじゃないの。そういうのを一つ一つと言うのなら、五年の年限で松くい虫を退治しようといって退治できなくて、また五年か三年やればいいものを恒久法律にしてしまって、延々に松くい虫の予算をつけてしまっているんだ。そういうのだって、一つ一つ見直しといったって、漏れてしまったんだな、それなら。
  119. 林正和

    ○林(正)政府委員 今松くい虫のお話ございましたが、これはこれといたしまして、先ほど来、大臣からも御答弁申し上げておりますが、そうした一つ一つ努力という中で、御案内のとおり、財政構造改革会議、これがいろいろ御議論をいただいておるわけでございます。財政再建のための法案の骨格も含めた御議論をいただいておるわけでございまして、諸外国の例もいろいろ参考にしまして、歳出削減の上限の設定であるとか、あるいはスクラップ・アンド・ビルドであるとか、そうした御議論が行われておるところでございます。  私どもとしましても、必ずしも諸外国の例がそのまますんなり適用できるかどうか、そこはいろいろ疑問があるところでありますけれども、こうした例も参考にしながら、これから御議論が進む、国会での御議論も受ける、そういう形で努力をしていきたいと思っております。
  120. 吉田公一

    吉田(公)委員 何を言っているんだかよくわからなかったけれども、次に進ませていただきますよ。  特例公債は六十年償還ではなかったんだけれども、借換債が認められるようになったので六十年償還にした、こういう説明があったような記憶があるんですが、その点は間違いないですね。
  121. 林正和

    ○林(正)政府委員 そのとおりでございます。
  122. 吉田公一

    吉田(公)委員 問題は、その六十年というのが一つの無責任につながっているんですよ。六十年なんといったら、半世紀よりかまだ十年多い。今ここで議論して、それで借換債だの特例公債だのなんて、ああでもないこうでもないなんて言っている人は二十三回忌を迎えてしまうよ、そんな、六十年では。本当だよ。法事だって五十年たてばもうやらないんだから。五十年までは生きているやつが大体やることになっておる。それを六十年なんということは、もうこれは責任持たない話と同じだよ。おれだってこれは三十三回忌になってしまうわけで、もうみんな十三回忌か二十三回忌だ。そういうようないいかげんな年限にしたこと自体が無責任なんだ。これは、ちゃんと責任が持てる、十年とか十五年とか最初からきちっと決めてやらないからそういうことになってしまう。六十年なんてまるで無限の話、宇宙みたいな話だ。だから、まず、六十年償還にするなんということ自体が一つは無責任。  それからもう一つは、大蔵省が各省の予算査定するんでしょう。査定をしていながら累積赤字がだんだん積もっていくということは、一体、大蔵省の主計局の査定の仕方というのはどういう仕方をしているのか。赤字はどんどんふえていくのに、どんどん、これはいいですよ、これもいいですよなんて、田んぼのわきに消火栓をつける予算まで、これもいいんじゃないですかなんといって、結局こういうことになってしまう。  だから、一つは、大蔵省の主計にも、昔福田大蔵大臣が主計官のときに、私は本で読んだんだけれども、あの軍部に対抗して毅然とした態度でやったというんだ、主計官が。そのくらいの気構えを持って、それはいろんなことを言ってきますよ、こっちの予算よこせ、あっちの予算よこせと。だけれども、そういうことをきちっとやらないから最後は国家が全責任を持たなければならない、こういうことになるんですね。  そろそろ時間がやってきたようでございまして、大蔵省の主計の責任ということについて答弁いただいて、質問を終わらせていただきます。
  123. 三塚博

    三塚国務大臣 段々の御論議、また政治観、これからの進め方の見識を承りました。お互い後生に責任を負うということが一番大事なこと、それには、一日一生の思いでこれに当たるということではないでしょうか。やはりしがらみをどう抜け切るかということに尽きると思います。  ただいまの短い時間の中で当を得て基本を御指摘いただきましたことを大事にしながら、主計官、主計局、大蔵省全体、本問題に取り組んでまいります。毎回こういう法律を出すことが、一日も早くと言っては気持ちだけでありますが、できるだけ出さぬで済むような財政構造改革の実を上げるため頑張ります。
  124. 吉田公一

    吉田(公)委員 とにかく大臣、ああでもないこうでもない、しまいには何でもない、こういうことにならないように、ぜひひとつお願いを申し上げて、終わらせていただきます。
  125. 額賀福志郎

    額賀委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。  この際、暫時休憩をいたします。     午後零時四十八分休憩      ————◇—————     午後二時五分開議
  126. 額賀福志郎

    額賀委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出酒税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。三塚大蔵大臣。     —————————————  酒税法の一部を改正する法律案  租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  127. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま議題となりました酒税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、酒税法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、現行の蒸留酒に係る酒税の税率格差をガット第三条に整合的なものとすることを要請した昨年十一月のWTOの勧告に対応するため、しょうちゅう、ウイスキー類、スピリッツ類及びリキュール類に係る税率を見直し、税率格差の縮小を図ることとし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  しょうちゅう甲類及び乙類並びにリキュール類の税率を現行のスピリッツ類の水準まで引き上げ、これらの酒類の税率をアルコール分一度当たりで同一とすることとしております。また、これらの酒類とウイスキー類とのアルコール分一度当たりの税率格差を一・〇三倍に縮小するため、ウイスキー類の税率を引き下げることとしております。  次に、租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、最近における社会経済情勢等に顧み、住宅・土地関連税制等について適切な対応を図るほか、租税特別措置の整理合理化その他所要の措置を講ずるとともに、阪神淡路大震災に関する特例等措置を講ずることとし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  まず、租税特別措置法の一部改正について御説明申し上げます。  第一に、住宅・土地関連税制について、住宅需要を刺激するための措置として、住宅取得促進税制を当初拡充した上、段階的に適正化を図っていくという見直しを行うこととするほか、住宅の取得等に係る登録免許税の特例の拡充、不動産譲渡契約書等に係る印紙税の税率の引き下げ等の改正を行うこととしております。  第二に、社会経済情勢等に対応するため、特定の中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除の創設等の措置を講ずるほか、沖縄振興の観点から、沖縄に対する税制上の特例措置の新設、拡充を行う一方、企業関係の租税特別措置等について整理合理化等を行うこととしております。  以上のほか、民間国外債の利子等の非課税制度等適用期限の到来する特別措置について、実情に応じてその期限を延長する等所要の措置を講ずることといたしております。  次に、阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部改正について御説明申し上げます。  阪神淡路大震災被災者の住宅の再取得等を支援するため、被災者が住宅の再取得等に係る住宅借入金等を有する場合の住宅取得促進税制の特例等措置を講ずることとしております。  以上が、酒税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げ、提案理由説明にかえます。
  128. 額賀福志郎

    額賀委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  129. 額賀福志郎

    額賀委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。砂田圭佑君。
  130. 砂田圭佑

    ○砂田委員 私は、自由民主党を代表して質問をいたします。  私は、昨年の総選挙において、兵庫県の神戸市であの阪神大震災で最も甚大な被害を受けた地域から立候補し、近畿の比例区より初当選を果たした者でございます。よろしくお願いを申し上げます。  私は、永田町あるいは霞が関でいまだ経験浅うございますから詳しいことは存じませんが、市民の、納税者の立場に立って、租税措置法及び阪神淡路大震災に関する法律に関して質問をさせていただきます。  我が日本の国は、決して政治家のものでも官僚のものでもありません。我々、皆さん、国民一人一人のものであります。したがいまして、国が豊かになれば国民もそれにつれて豊かになることは当たり前のことでありますし、国に借金がふえればそれを国民負担をしなければならないことは当然のことであります。この当たり前のことがなかなか国民に十分な理解を得られないことも、また事実であります。政治や行政に国民の不信が募る今日、税が公平に集められ、公平に配分されることを実行し、国民に知らしめることは極めて基本的なことでありますし、また、国民の信頼を再びから取るためにも、我が国にとって重要なことであると考える者の一人でございます。  そこで、大蔵大臣にお伺いをいたしますが、大臣の税に対する理念と申しますか、日ごろ大臣がどんなお考えで税と向き合っておられるのか、じっくりと御所見を賜りたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
  131. 三塚博

    三塚国務大臣 税の基本的理念は、御案内のとおり、公平であり、中立であり、簡素でなければなりません。さらにつけ加えさせていただきますと、租税は、基本的に公共サービスのコストを賄うための財源でございます。同時に、行政の簡素化、効率化を徹底して行った上で、なお国民の選択により必要とされる公的サービスを賄うために十分なものでなければならないと存じます。また、税制は国民生活や企業活動の前提となるものとして、安定性が求められますことは当然のことであります。経済社会の構造変化に対応した新たな視点から、変革が常に求められておるものと考えております。  こうした考え方を踏まえながら、少子・高齢化、国際化、情報化といった経済の急激な構造変化に対応しまして、公平、中立、簡素という租税基本原則に基づいて、より望ましい税制を構築していく必要があると考えておるところであります。
  132. 砂田圭佑

    ○砂田委員 大臣のお話を伺って我々は意を強くし、そしてまた、日本の税はこのような思いで徴収され、配分されているという、ぜひとも大臣のお考えをこれから我々は地元でも広く伝えたいというふうに考えます。ありがとうございます。  私は、日本の税制が、戦後の日本発展を見ても諸外国と比べて大変すぐれたものであると考えるものであります。御承知のとおり、租税特別措置法もその代表的なものであったと思います。措置法が政策税制として活用をされて、限られた特定の産業や企業が優遇税制を通じて日本経済の成長を助けてきたことも、また事実であります。ところが近年、税制調査会の答申などで、措置法が税制上不公平ではないかというようなとらえ方をされている。このことは、やはり長い間続いてまいりましたこの制度が一つの曲がり角、あるいは転換期に来ているのではないかという気がいたします。  ちまたでは、第二の補助金などといううわさを耳にいたします。この法律の適用の原則と申しますか、あるべき姿といいますか、性格と申しますか、そういうものはどんなものであるのか、主税局長、お伺いを申し上げます。
  133. 薄井信明

    ○薄井政府委員 ただいま御指摘のように、租税特別措置は、何か政策的に誘導したい事柄があった場合に一つの政策手段として有効に活用されてきたと思います。ただ、先ほど大臣から説明しましたように、税制は、公平、中立、簡素という基本原則を持っておるわけでございまして、インセンティブがあるということは、ある意味では公平を害している。しかし、公平を害していても、そのインセンティブがより重要であるということから、租税特別措置が存在しているというふうに考えております。  そういう意味では、本当に意味のある租税特別措置であるかどうかということを常に吟味しなければならないわけでございまして、御質問のように、そのときにはいいものであっても、時代背景が変わり、いろいろの状況が変わった中でプライオリティーが低くなれば、これは直ちにやめていくべきものだと思いますし、また、新しいインセンティブが必要になれば、それに取りかえていくべきものだと思っております。  また、もう一つ申し上げたいことは、だんだんに経済が自由化しといいますか、自由な取引が行われる中で、何が大事なことかということを政策的に政府が決めていくということが適当かどうかということも、私ども反省しなければならないと思います。なるべく自由に民間の方々が自分の発想で選択していただけるという環境をつくることも大事だと思います。そうした場合には、同じ法人税収でも、租税特別措置に割かれている財源を税率を下げる方に持っていくということによって経済に有効な税制となり得る、こういう考え方もあろうかと思います。そうした意味で、今後とも租税特別措置について関心を持ってまいりたいと思っております。
  134. 砂田圭佑

    ○砂田委員 ありがとうございました。  そこで、大蔵省では平成六年にも特別措置法の改正を行っております。所得税あるいは法人税、相続税あるいは贈与税、登録免許税、地価税、間接税等々改正を行っておりますけれども、今のお話のような、伺ったような話のそのような成果がこの六年度の改正で実質的に上がったのか、その辺のことをお聞かせいただきたいと思います。
  135. 薄井信明

    ○薄井政府委員 各年税制改正をさせていただいておりまして、今御指摘平成六年は税制改革を行った年でございますし、その後、七年、八年、九年、現在御審議いただいております九年度改正につきましても、幅広く租税特別措置法の世界で手直しをさせていただいております。従来の租特の期限を延長するという形でさらにその目的を果たそうとしている部分と、それから新たに時代が求めているものをつくっていくという面と、いろいろなものが重なり合っておりますが、少なくとも、私どもといたしましては、それがプラスになるという確信のもとに今回の法律をまとめさせていただいております。一つ一つについては御説明は省略いたしますが、それぞれに思いを持って改正させていただいているということを申し上げたいと思います。
  136. 砂田圭佑

    ○砂田委員 次に、法人税について少しお願いやらお伺いをしたいと思います。  私も零細小企業の経営の経験があるのでありますけれども、先般来、法人税一%軽減ということで話題になりましたけれども、引当金の見直しとの関係で結果的には合意に至りませんでした。引当金などの恩恵を余り受けない中小企業にとっては、ある意味では大変残念でありました。一%といえども減税にならなかったことは、日本経済の活力の源泉であります中小企業の育成のためにも非常に残念であったと思っているものでございます。  今後、世界で二番目に高いと言われるこの法人税をどのような方向に持っていこうとお考えなのか、お伺いをいたします。
  137. 薄井信明

    ○薄井政府委員 法人課税についての御質問でございます。  我が国の場合、法人の所得に対しましては国と地方で税金をかけさせていただいておりまして、それを合わせたものをもって法人課税という表現をさせていただいております。  この法人課税につきまして、いろいろな御意見があることは承知しております。  その一つは、国と地方を合わせた法人所得に対する法人課税の税率が諸外国に比べて、今御指摘のように高いのではないかという御指摘でございます。この点につきましては、政府の税制調査会も高いということについてはそのような認識をしておりますし、私どもも、税率水準を比較すれば確かに高いかと思います。  一方で、法人課税の重さということになりますと、税率の高さだけでは判断できないわけでございまして、税率をかける対象となる、課税ベースと私ども言っておりますが、課税ベースが広いか狭いか、あるいは、国際的に見て、国際的なものと共通しているかどうかといった観点から見たときに、新しい時代に合っているかどうかという問題がございます。この両面から法人課税を考えていかなければいけないと思っております。  そういう意味で、課税ベースの中には引当金というものも含まれるわけでございまして、引当金制度、この存在については私ども存在しなければいけないと考えておりますが、どういう形で存在させるべきかという意味で、課税ベースを広げる方向での引当金の見直しということを昨年考えてみたということは御指摘のとおりでございます。  今後のことという御指摘でございましたが、今申し上げたような認識からすれば、課税ベースを広げていく、そこで財源が生み出される、その範囲内で税率を下げていくということが現実的な姿ではないかと思います。  なお、実質的に法人課税の負担自体を下げるということも理論的にはあり得ようと思います。ただし、その場合には、その財源をどこで探すのかということも一緒に判断しなければなりません。けさからの御論議にありましたように、現在の財政状況のもとで、赤字公債発行して法人の実質負担を下げるということはなかなか、なかなかといいますか、避けるべきことだと思いますし、他方、他の税目を増税して、その財源で法人税の税率を下げるということについても理解を得られないのではないかなと思います。そうなりますと、税制の世界で考えるとすれば、法人税の世界の中で何か見直せることがないか、そこを十分考えた上で、税率の引き下げにつながるように課税ベースを見直していくということが今後の方向かと思います。  なお、最初に申し上げましたように、法人の所得に対する税制というのは、国の法人税と地方の税金と二つございます。法人税につきましては、標準税率が今三七・五%でございまして、それほど国際的にも高くありませんが、これを少しでも下げる方向での努力は今後とも進めていきたいと思っております。
  138. 砂田圭佑

    ○砂田委員 ちょっと聞き漏らしましたが、引当金制度が大企業にとって有利か、あるいは中小企業にとって不利かということについてはどのようにお考えでございましょうか。
  139. 薄井信明

    ○薄井政府委員 現在、引当金の積み方、積まれ方といいますか、これを客観的データとして見ますと、大きな法人に多く積まれているということは事実ですから、引当金の縮減をすれば、大きな法人に影響が大きく出てくるということかと思います。  ただ、例えば退職給与引当金という仕組みを一つとってみますと、自分の社内に退職給与引当金という形で引き当てる形と、中小の企業の方々は社外にそれと同等のものを積み上げていく手法をとっておりまして、社外に積み立てる場合には引当金の仕組みはとりませんけれども、経費といいますか、損金に落ちていくという意味では同じですので、必ずしもそこでどちらに得だということは言えないかと思います。
  140. 砂田圭佑

    ○砂田委員 ありがとうございます。  それでは次に、阪神淡路大震災に関しての法案に関連したことをお伺いいたします。  ちょっと時間をいただいてお話を申し上げたいのでありますが、私は、平成七年の一月十七日午前五時四十六分、神戸市の灘区というところの自宅で大震災に遭遇をいたしました。九階建てのマンションは、二十秒で二階の部分と一階の部分がつぶれました。そして、七人の人が生き埋めになりました。消防も警察もとても間に合いませんし、どこを探しても連絡もつきません。マンションの人が、男性が寄ってたかって二階の床のコンクリートを割って、そこから一日かかって人を助けた。七人生き埋めになって、六人が助かって、一人は即死でありました。  そして私は、そのマンションを十五年のローンを払って、やっと二、三年前に終わったところでありました。たった二十秒でそれがつぶれてしまうという憂き目に遭って、そのときは、震災の不運と地震の不運だから仕方がないという思いで、何とかもう一遍やり直せばいいという気持ちでありましたけれども、やはり国民が営々として築いた、私どもにとってはわずかな財産、そういうものをそういう形で失うことは、まことに、ほかの市民の思い考えると大変なことでありました。  しかも、その日は、兵庫県下で約六千三百人の人が亡くなりました。そして、重軽傷者は四万三千人余りになりました。住宅の被害に至っては、全壊、半壊が二十万九千棟であります。そして一部の損壊が二十三万棟、火災が二百九十四件、道路の損壊一万カ所でございます。日本を貫く阪神高速道路は六百メートルにわたって瓦解をして、そして各所でけたが落下をして、昨年の九月三十日に全通するまで不通でありました。そして港湾は、使用できる埠頭は一つもなくなりました。そして、今なお仮設住宅に七万人の人が生活をしているのが現状であります。  こんなことを申し上げるのも、一つは、だんだんと震災のことが風化をしてまいりました。特に中央と地方では温度差が厳しくなりました。世間では盛んにアメリカの地震に比べて日本の国は何もしてくれないというようなことを言っておりますけれども、いろいろな震災に遭ったパターン、全壊した人、半壊した人あるいは仮設に移った人、そういう人たちがどれほど国から恩恵を受けているかというデータでは、最低が四百七十万、最高で六百五十万の恩恵をいろいろな形で、義援金もありあるいは仮設住宅もあり、あるいは家賃もありあるいは利子補給もあって、そういう中で、市民、被災者が受けたのはそういう額になっております。アメリカのロサンゼルスの地震で、政府が三百万小切手を切ってくれたとかくれぬとかという話と非常に認識が違います。その辺のこともぜひ皆さんにおわかりをいただきたい。  しかしながら、そんなに周りで一生懸命手助けをしても、いまだ神戸の住民は十分な経済復興ができておりません。市場へ行きますと、何とかお店は仮設住宅でもできました。しかし、周りに家がありませんから人が買い物に参りません。したがって、借金をして店は建てたけれども売り上げは震災前の五割にも達しないという実情でありますから、大変厳しい状況に置かれていることは事実であります。きょうは、阪神の地震に関する特別な法律のお話でありますから地震の支援あるいは復興についての話は省きますけれども、そういう実情についても、委員の皆様初め、ぜひとも御理解をいただき、認識を改めていただきたいという思いがするわけでございます。  そういう被害の中で、大蔵省では早速に現地を視察していただきました。そして、非常に迅速な早い対応で税制の優遇措置をいろいろな面で講じていただきました。今私は、ここにこんな紙を持っていますけれども、この項目、これはすべてが税制の優遇措置であります。皆さん方に一々御説明する時間がないくらいの配慮をいただきました。いろいろ御批判の多い大蔵省でありますけれども、神戸の市民を代表して、心からお礼を申し上げたいと思います。  そういう中で、大蔵省の皆さんに大変な御努力をいただきながら、市民生活は、先ほども申し上げましたようになかなか元に戻る状況にありません。震災地における消費税の増税は、市民の思いからすれば、こんなひどい目に遭ったのに、その上二%の増税は国家として情がなさ過ぎるではないかという思いが非常に強うございます。私は、消費税の必要性について決して否定するものではありません。しかし、不運であるとはいいながら、家も家財も一瞬にして失った国民生活を思えば、何とか被災地における消費税の凍結、あるいは住宅再建に御配慮をいただきましたような住宅取得でその減免措置をしていただく、そういう施策をほかの分野で考えることができないか、何とかして少しでも被災者の税負担を軽くしていただくことができないか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  141. 薄井信明

    ○薄井政府委員 おととしの一月十七日のことを私も思い出させていただきましたが、税の世界では、御指摘いただきましたように、税としてはというのも変な話ですが、非常に早い対応をさせていただいたという認識でおりまして、税で対応できるものとして何があるかということを一生懸命、おととしの一月、二月と考え、二月、三月と法律を出させていただいたという記憶がよみがえっているわけでございます。  今申し上げましたように、税というものの限度といいますか、税を納めておられる方あるいは税を納めなければならない方への対応であるという基本的な原点がありますし、税目ごとにそれぞれの性格を持っております。地方税と国税の違いもありますし、国税の中でも、所得課税でできること、それから地価税でできること、それぞれ別でございます。その点を一生懸命考えた末が、今御指摘いただいたたくさんの税制上の対応だったというふうに認識しております。  そのときには消費税の五%ということは現実の問題として御認識なかったかと思いますが、御指摘のように、この四月からは、全国どこでも税率が三%から地方消費税を入れて五%になるわけでございます。この点について、今の時点で私ども考えてみますと、といいますかもうこの一、二年いろいろな方からお話を伺って私どもも直接お話し申し上げているわけですが、消費税というその税金、税目の組み立てといいますか、あるいは税金計算の手法からいたしますと、どういうように考えましても、神戸地区あるいは被災地だけの消費税の税率を凍結する、あるいは別にするということが難しい、長いお話は省略いたしますが、向いていないということは御理解賜りたいと思います。  本日、御審議いただいている所得税の世界で何ができるかということから一つ出てまいりましたのが、今回の住宅取得控除の特例でございます。いろいろ申し上げましたけれども、税目ごとに特徴がありまして、消費税の凍結ということで対応することは不可能であるということを御理解賜りたいと存じます。
  142. 砂田圭佑

    ○砂田委員 ありがとうございます。  できるだけ前向きに、消費税に限らず被災者の税負担が軽くなる御配慮をこれからも御検討をいただきたいと思います。お願いを申し上げておきます。  さて、今後の震災復興と被災者生活再建は、阪神間の経済活性化ということが大変重要なポイントになると考えております。  神戸市で現在計画しておりますエンタープライズゾーン構想というものがございます。国からは民活法、FAZ法の被災地特例という形で支援をいただいております。神戸市においては固定資産税、都市計画税、県では不動産取得税等の軽減措置を講じて、エンタープライズゾーンに優良な企業を誘致しようと現在努力をいたしておるところでございます。  つきましては、国税の分野で、法人税の軽減や新増設の資産の特別償却あるいは事業用資産の買いかえ特例、地価税の免除、間接税の免除等の税制上の優遇措置を講じていただけるならば、優良企業を誘致して、そして経済の繁栄につながるものと、少し時間はかかりますけれども努力をしていきたいというふうに考えております。その辺のことについて、お考えがございましょうか。よろしくお願いします。
  143. 薄井信明

    ○薄井政府委員 今の御質問は、法人税の世界での御指摘かと思います。  エンタープライズゾーンという地域がどう限定されるかということは詳しく存じ上げておりませんけれども、先ほど来申し上げております被災後の租税上の特別措置の中には、今の御質問との関係で思い出してみますと、次のような制度もございます。  例えば、事業用資産の買いかえ特例というものが特別に認められておりまして、通常でございますと、国土政策上、都会地に移っていくことについてインセンティブを与えることはしていないわけでございますが、この被災地に関しましては、被災区域外の土地等を売って被災区域内の土地建物その他の減価償却資産を取得する場合には圧縮記帳による課税の繰り延べを認める、あるいは被災区域内の被災地の土地を売って、国内にある土地建物その他の減価償却資産を取得する場合にも圧縮記帳による課税の繰り延べを認めるという仕組みもございます。  また、これも今御質問の中にあったように思いますが、被災代替資産の特別償却という制度がありまして、被災した建物とか構築物、機械装置の代替資産、または被災区域及びそれに付随して一体的に使用される土地の区域内で取得する一定の建物につきましては、これは建物だけではなくて構築物、機械装置も含めてですけれども、特別償却をお認めいたしております。御指摘のエンタープライズゾーンという地域においてもこれは活用できるかと思いますので、御活用いただきたいと思います。  また、御質問の外に出るかもしれませんが、今度の法律の中では、個人につきましていわゆる二千万の土地の特別控除というものを認めております。そういったことが復興に役立っていくのかと思っております。
  144. 砂田圭佑

    ○砂田委員 今のお話の二千万円について、最後の質問としてお願いをいたします。  震災後、区画整理事業あるいは都市計画事業等でいろいろな策を県、市は今進めているところでありますけれども、公の団体に売った土地に対して二千万円の特別控除を認められる、そのことは大変ありがたい。ことであります。しかしながら、この事業がなかなか思うように進んでいません。特に、利害関係のふくそうあるいは国民、市民の価値観の違い等から、上からおりてきた計画をなかなかすんなりと市民はのんでなくて、年がら年じゅうもめている状況であります。物によっては二、三十年かかるのではないかというぐらいのものもあるわけでございます。二年延長されたその先でなければ見当のつかないことでありますけれども、恐らく長期化するだろうというこの事業に、これからもこの適用を延長して続けていただきたい。これはもうお願いにとどめておきますので、よろしくお願いを申し上げます。  日本政治あるいは行政の信頼を取り戻すためにも、最初に大臣が申されたように、ぜひとも日本の税制は国民から見てしっかりと、きっちりと、まじめに、そして公平になっているのだというそんな印象を国民が持って、大蔵省やあるいは日本政治が再び信頼されるためにぜひとも御検討いただきたいと思います。  ありがとうございました。質問を終わります。
  145. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、渡辺喜美君。
  146. 渡辺喜美

    ○渡辺(喜)委員 渡辺喜美でございます。一年生の同僚砂田先生に引き続き、質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。大臣におかれましては、G7、予算委員会、連日の御出席、まことに御苦労さまでございます。また、大蔵委員会も、予算委員会の合間を縫ってのお仕事でございます。本当に御苦労さまでございます。きょうは大臣には御質問はいたしませんので、どうぞゆっくりお休みになっていただければと思います。  昔から、大蔵省というところは局あって省なしだ、こういうことがよく言われておるわけであります。橋本内閣、六つの改革、そのうち、例えば財政構造改革あるいは金融ビッグバン構想、こういうものを進めていくに当たっては、私は、相当各局間の調整を精力的に行わないとなかなか難しいものがあるなという気がしてならないのでございます。  この間テレビを見ておりましたら、榊原局長さんがお出になっておられまして、いや、私の同期の主税局長とはうまくいっていますよ、そういうお話でございました。局長さん、そのとおりでございますか。首を縦に振っていただければ、お答えは要りません。
  147. 榊原英資

    ○榊原政府委員 そのとおりでございます。
  148. 渡辺喜美

    ○渡辺(喜)委員 ありがとうございます。  薄井局長さんも大丈夫でございますね。
  149. 薄井信明

    ○薄井政府委員 税制のあるべき姿というものを踏まえて、将来、国のために役立つ方向を考えていくということだと思います。
  150. 渡辺喜美

    ○渡辺(喜)委員 税制のあるべき姿を考えてと、まさに主税局長さんの御答弁だと思います。こういったことは、恐らくこれから、例えば銀行局と理財局あるいは証券局と理財局、いろいろな場面で出てくるのであろうというふうに思います。  そこで、こういった局間の調整というものをやはり一番確実に推進をするには、まさに大臣のリーダーシップであると思うのでございます。大臣には御質問はいたしません。そこで、例えばこの局間調整がうまくいかないときはどうするか。そのときは、ぜひ大臣がつぶやいていただければいいのだと私は思うのです。あしたから国金局長と主税局長は入れかえてもらいます、たった一言そのつぶやきがあっただけで、私は、調整はスムーズにいくと思うのでございます。それでも調整がうまくいかなくなった場合には、そのとおり実行されればなおさらよろしいのかと思います。  いずれにいたしましても、この六つの改革、これを我々はなし遂げなければならない。何でこんなことをやらざるを得ないことになったのかと申せば、今さら言うまでもありませんが、直接的なきっかけは土地と株の大暴落に始まる平成大不況でございました。もちろんその背景には高齢・少子化といった人口構造の急激な変化、あるいは東西冷戦構造の大崩壊、そういったことが重なり合ってこういったことをやらざるを得ない状況に追い込まれてきたのだと思うのであります。  考えてみますと、平成元年十一月だったと記憶をいたしておりますが、ベルリンの壁が大崩壊をいたしました。ちょうどその一カ月後に我が国の平均株価が最高値をつけたのであります。まさに象徴的な出来事であったなと思うのであります。この我が国におけるバブルの大崩壊過程と冷戦構造の崩壊過程とは実に見事にぴったりと一致してくるのであります。  例えば統一ドイツをつくるためには膨大なお金が必要になります。また、社会主義のソ連から市場経済のロシアをつくるためにも膨大な資金が必要になるわけであります。昭和六十年九月、プラザホテルに集まってなされたプラザ合意以降じゃぶじゃぶと我が国に入ってきたお金が、この冷戦構造の崩壊過程の中で今度はどんどんと日本から逃げ出していく、そういう状況があったわけであります。いつの日にか日本お金の受け取り手からお金の出し手にかわってしまっておったということであろうと思います。そういうときに、例えば土地税制を強化し急激な地価抑制策をとる、あるいは不動産融資規制をやるということをやれば、恐らく効果はすぐに出てきたのではなかろうかと思うのであります。  平成二年でありますが、日本銀行が調査月報というものを、これは何か毎月出しておられるのだそうですが、平成二年の四月号というのは実は大変に有名な論文でございます。「わが国における近年の地価上昇の背景と影響について」と題して、それまでの日銀のとってきた政策の失敗あるいは自己批判といったことを書いたレポートであると思います。  ちょうど三重野さんが総裁になられましたのが平成元年の十二月でございました。平成元年の十二月のころ、公定歩合は三・七五%でございました。公定歩合が一番安かったのは昭和六十二年から平成元年の五月三十一日まで、二・五%でございました。この三重野総裁の時代に、数えてみましたら公定歩合の操作というものを十回ほど行っておられます。最初の三回は三・七五から四・二五へ、そして五・二五、六%というぐあいに上げる方向で動かされたわけであります。その後の七回については下げる方向で動かされたわけでございます。  ちょうど私のおやじが、平成二年の十一月ごろだったと記憶をいたしておりますが、こんなことを言っておりました。十五歳の少年がおった。身長百八十センチ、体重八十キロ、こいつはいい相撲取りになりそうだなというので相撲部屋に入れて、三年間飲ませ食わせをして、十八歳になったときに百五十キロまで太った。ところが、関取になるどころか、やれ糖尿病は出るわ痛風は出るわ、これはちょっと相撲取りは廃業だなというので、いきなりもとの体重の八十キロまで半年間で戻そうとしたらどんなことになるか。十八歳の少年でも死んじまうぞと言ったのであります。  ちょうどそのころ、公定歩合についてこんなことを語っておりました。平成二年の十一月ごろであります。来年平成三年は、桜の花の咲くころ〇・五、梅雨が明けたら〇・五、秋が来たとき〇・五、年の暮れにも〇・五、こういうぐあいに公定歩合を引き下げていくべきであろう、そんなことを言っておったのでございます。  その後、平成三年十月には当時の三塚会長と一緒に総裁選挙に出させてもらいました。そして、平成三年十一月に副総理・外務大臣という立場に就任をさせていただいたわけであります。代表権はあるけれども、渉外担当副社長みたいな立場でございました。この間、月例経済閣僚会議というものが行われ、当時の三重野日銀総裁と大変な激論を交わしたという話を私は父から何度も聞かされておりました。  結局これだけ大量の不良債権をつくってしまった責任、それは住専問題において昨年本当に嫌というほど聞かされた話でありますが、大蔵省の皆さんや大蔵大臣が大変な火の粉をかぶり矢面に立ってこの問題と対処してこられたのでありますけれども、一体日本銀行の責任はどこに行ってしまったのかなというのが私の率直な感想なのでございます。この今日の状況を、お金状況をつくった責任の一端は日本銀行にもあったのではなかろうか、私は率直にそう言わせてもらいたいのでございます。  今般、日銀法の改正という問題が取り上げられつつございます。日本銀行法というのは、確かに昭和十七年に立法された戦時立法でございます。確かに文言を読んでみても極めて古い。第一条の目的というものを読んでみても、「国家経済総力ノ適切ナル発揮ヲ図ル為国家ノ政策ニ即シ通貨ノ調節、金融ノ調整及信用制度ノ保持育成ニ任ズル」、こういう条文でございます。確かにこういう古い法律を変える必要は大いにあると私も考えるのでございます。  政府あるいは大蔵省からの独立性を確保し、意思決定の透明性も同時に確保しつつ、物価の安定と信用秩序の維持に資するというのが、この間出た金融制度調査会の答申ではなかろうかというふうに思います。事実上の金融政策の決定機関であった役員集会、これも廃止をする。そして、いわゆるスリーピングボートと言われておりました政策委員会を最高意思決定機関とする、そういうことも金制の答申では述べられております。そして、政策委員会の議事録の公開あるいは年二回の国会への報告、こういったことによっていわゆるアカウンタビリティー、説明責任を確保いたしましょうということもうたわれております。  私は、この答申の中で若干の問題点があるような気がしてなりません。例えば、政策委員会への政府からの出席は二名というふうにされております。しかし、この最高意思決定機関である政策委員会においては、政府からの出席者二名については議決権は与えられないということであります。同時に、総裁や副総裁というものは内閣任命、これは同じことでございますが、国会同意というものも入れていきましょうという提案でございまして、それはそれで結構なことだと思いますが、政府との意見の相違があっても、そのことによっては解任をされないという身分保障を明確にしてもございます。つまり、一たん国会同意をし決めてしまったならば、五年間は首を切ることはできないということであります。  私は、率直に言って、今までも政治家の言うことなどは日銀は当然聞く耳を持たなかったわけでございます。そして、ここにおいて独立性の強化ということを金制の答申のとおりにしたとき、一体だれに対して日本の中央銀行は責任を負うのかという実に重大な問題については、私は、この答申は答えていないような気がするのでございます。  この答申の前に中央銀行研究会のレポートというものも発表されております。それによりますと、「国会主権者たる国民を代表し、その国会の信任を得て内閣が存立するという我が国の制度の下では、日本銀行は国会や内閣から完全に独立した存在ではありえない。」ということも添えられております。結局、私は、この金融制度調査会の答申が、政府国会の中央銀行に対する極めて抑制的な意味でのコントロールにおいても、極めて不十分であると言わざるを得ないのでございます。  この問題について中村副大臣の御見解をお伺いしたいと思うのでございますが、まだこの法案は国会に付されていないものでございますし、差し支えのない範囲で結構でございます。
  151. 中村正三郎

    ○中村(正)政府委員 今、差し支えない範囲でというお話がありましたけれども、御質問いただくときに先生がつけられました条件は、政治家として答えよというお話があったと思うのですね。できましたらそういう立場で、政務次官という立場を捨てまして答えさせていただくことをお許しいただければ大変ありがたいと思います。
  152. 渡辺喜美

    ○渡辺(喜)委員 政治家としてお答えをいただければと思います。
  153. 中村正三郎

    ○中村(正)政府委員 ありがとうございます。  今、渡辺先生が御指摘になりましたような問題が過去いろいろ指摘をされておりますが、私は、我が国においてどうも行政がわかりにくい部分がある。  その理由は、一つは、非常に古い法律日本で生きている。日銀法もそうでございます。明治憲法の下でつくられた法律があり、戦争中につくられた法律があり、日銀法は明治につくられ、そして十七年に、先生おっしゃられましたとおり起草委員会をつくって、株式はあるけれども議決権はないという変な出資会社にしたわけでございます。その後に憲法改正という大改革があったわけですが、憲法という基本法が変わったにもかかわらず、その後にいろいろな法律整備をされてこなかった。その結果、法制度がはっきりしない中で行政指導が行われたり、そういったものがはびこりまして、国民が準法的、準則的な生活がしにくい、そして行政改革がやりにくいというような現象が起こっているのではないかと思うのです。そういう中で考えますと、今の日銀法を、遅かったですけれども、今改正しようということになったことは大変喜ばしいことだと思うわけであります。  そして、日銀法改正の中の今の問題点でありますけれども、先生おっしゃいましたように、私どもの国は議会制民主主義、議院内閣制の国体を持つわけであります。そして、憲法六十五条、六十六条、七十三条等で、我が国で行政を行い得るのは内閣だけであること、そして、内閣は行政権の行使について国会に対して連帯して責任を負うこと、それはすべて法律に従って行うというきちっとした法治主義の憲法を持っているわけでございます。そういう中で、今まで日銀の地位がわかりにくいと言われてきたことは事実だと思います。  今、先生御指摘の中央銀行研究会、そして金融制度調査会の答申が出まして、これに基づいて私どもは法律をつくる作業をするわけでありますけれども、その中でも、先生がおっしゃられましたように憲法判断を避けている面がございます。金融制度調査会におきましては、この「独立した中央銀行の憲法上の位置づけについて、確定的な結論を出すことは、本調査会の任務を超えた問題」と言っておられます。そして、この中央銀行に対する民主的コントロールのあり方という重要な問題については、今後の論に待たなければいけないということで明快な解釈を避けております。そうなりますと、この憲法問題をどうするかということは、まさに政治の責任で私どもが行わなければならないことではないかと思うわけでございます。  そういう中で、私は、日銀法を改正するに当たっては、これは私の私見でありますが、幾つかの点をきちっとしなければいけないと思います。  まず第一に、旧日銀法にも、旧というか現行日銀法にもありますように、日銀が行う行政の代行的な仕事というものは政府経済政策に沿ったものでなければいけない、政府の全体の経済政策をサポートする存在でなければいけない。それは金利の水準、公定歩合の操作、それから市場流動性だとか準備率の問題だとか、極めて重要なものを持っているわけでありますが、そういったものを決定するときの決定の独立性と政府の代行機関であるということは相矛盾しないものだと私は思うし、矛盾しないようにすればいいのだと思うわけでございます。ですから、まず、政府から法律によって代行権を与えられて、政府の代行をして行政を行っているのだということが明確になるような法律であることが望ましいと思います。  それから、憲法の規定に照らせば、行政の一部として、国民の代表たる国会に対して責任をとらなければいけないということであります。ここで出てまいりますのが法人格の問題でありますけれども、日銀は認可法人であります。国民金融公庫が特殊法人で日銀が認可法人というのも変な話でありますけれども、この日銀の法人格を特殊法人になかなかできなかったという議論を昔の人に聞いたのですが、日銀を特殊法人にすると地方税が入らなくなる、そして自治省の反対があるからやりにくかったのだというようなことをおっしゃる方もいらっしゃいますが、これは本末転倒の議論でありまして、日銀に入るべき、これは利益が出るわけですから、国家に入るべき金がこういった制度によって地方に移転されているということも考えられるわけでして、これはやはり日銀というのは法人格がきちっとしていなければいけない、そこは特殊法人であるべきだと思います。  実際に、この大蔵委員会で日銀の人を呼ぼうと思っても、政府委員としては呼べません。参考人として呼ぶことになる。理事会で一人呼ぶのが嫌だと言ったら呼べません。そういうことをきちっとクリアできるような法律にしなければいけないと私は思っております。  よく言われる、ブンデスバンクというのがありまして、ドイツの中央銀行ですが、これが見本のように言われますが、これは非常にいい参考になると思います。  ブンデスバンクは、ドイツの基本法で連邦にブンデスバンクを置くということがきちっと規定されております国家の機関であります。そして、国家の権限はすべて国民に属するということが基本法に書いてあります。そして、このブンデスバンクの総裁、副総裁、理事、すべて政府の推薦で大統領が任命いたします。これらの方々の地位というのはベアムテンと書いてあります。官僚であります。官まであります。そして、官吏に関する一般的なすべての法律が適用される。そして、一〇〇%の国家出資の法人である。そこの意思決定機関には連邦政府の者が出席する権利を擁する。議案の提出権がある。議決の延期権がある。そして、議決をするときに、しかしながら、政府の意見に左右されないということも書いてあるわけですね。  こういった独立性の維持のやり方というものが、私は、戦争中の、戦争目的遂行のためにつくられた今の日銀法の独立性と、政策執行上の相緊張関係を持った、より国民のためになるような金融政策を導き出そうというための独立性と、ごっちゃにされて話されているのではないかと思うわけでございまして、問題意識については委員と同じでございます。  ただ、これは、政府といたしましては、今出されました答申に従って、与党とも調整をとりながら法案を作成中であるということを申し上げさせていただきたいと思います。
  154. 渡辺喜美

    ○渡辺(喜)委員 大変率直な政治家としてのお答えをいただきまして、感銘を受けました。本当にありがとうございました。ぜひ、法案作成に当たっては、副大臣のそういうお考えが反映されるような法案の調整をやっていただきたいということを御要望申し上げさせていただきます。  次に、この平成大不況という未曾有の経済状況を克服をするために、ありとあらゆる手だてを尽くしてまいったわけであります。その一つが、平成六年に行いました特別減税、そして平成七年、八年の恒久減税プラス特別減税ということでございます。  平成六年の特別減税においては最高二百万円まで税金をまけてもらうことができました。しかし、平成七年、八年の特別減税においては最高五万円までしか税金をまけてもらうことができないのでございます。結局これは、私は、例えてみるならば、ウナギのかば焼きを食べたいなと思っておったところ、かば焼きの半びらにドジョウがくっついてきた、そういう種類の減税ではなかったのかという気がしてならないのであります。結局、ウナギを食べようと思っておったところ、ドジョウがくっついてきたわけですから、余りおいしいと思わない、そういう種類の減税ではなかったかと思います。十六兆五千億円の借金だけは確実に残ったのであります。  私は、どうせやるならば、例えば平成五年の政府税調においても決意がされているとおり、個人の所得税の最高税率、現在六五%、こういうものを法人税の実効税率と頭をそろえてやるべきではなかったのかという気がしてならないのでございます。  結局、日本の社会においては、法人税の実効税率と個人の所得最高税率との間にギャップがあるがゆえに、本来個人が持つべき資産を大企業から中小零細企業に至るまで法人に持たせたり、あるいは本来個人が払うべき費用を法人に払わせたり、そういう実にみみっちい社会をつくってきた最大の元凶の一つがこの税率構造のギャップにあるような気がしてならないのでございます。  我々は自由社会というものを目指します。六つの改革というのもまさにそういう理念で動かされていることだと思います。自由社会というのは、個人が自由に使えるお金をできるだけ多く持っておった方がいい、そういうことであろうと思います。ですから、法人税の税率構造あるいは税体系の見直しということは今からすぐにでも始めなければいけないことでありますが、法人税の議論をするときには個人の所得税の最高税率とセットの議論で行っていかなければならないと私は考えるのでございます。時間がございませんので、局長の答弁は結構でございます。  次に、平成大不況を克服するために公共投資というものをやりました。残念ながらゼネコンにも大量の不良債権を抱えているところがたくさんあり、また公共投資が民間投資の呼び水効果というものを非常に喪失してしまったという状況の中で、波及効果が薄らいでしまったのだと思います。例えば道路一本つくっても周りの土地が売り買いされないという中では、とても民間のお金がついて回るような状況ではなくなってしまったのだろうと思います。  そこで、おととしの七月でしょうか、これはミスター円と言われる榊原局長さんが大活躍をされたわけでありますが、円を安くするという政策をおとりになったわけであります。これによって、結果として株価が上がり、企業収益が回復をし、平成八年の二月九日には平成時代第三回目の景気回復宣言を行ったわけでございます。例えてみれば、不動産融資規制や土地税制の強化によって冷房をかけっ放しにしておいた、そこへ借金をして暖房をかけ始めた、それでもいい気持ちにならないので、今度は窓をがらっとあけて空気を入れかえた、そういうことであったろうと思います。  しかし、こういうことをやり続ければ電気料金はかさんでいく一方でありますから、恐らくこういう冷房と暖房を一緒にかける政策はこれからはもうやりおおせないのであろうと思うのであります。窓をあけるのも、おそらく半分ぐらいはこの間のG7で閉めることになったわけでありましょう。来年の七月からは玄関のドアまであけて空気を入れかえてください、こういうことになるわけでありますから、この際、私は、冷房をきちんととめるということが大事なことであろうというふうに思うのでございます。  政府は二月十日の閣議において土地政策の劇的な転換の決定をいたしております。つまり、地価抑制策から土地の有効利用への転換ということでございます。昨日も日経新聞に「土地流動化へ公的資金」、こういった新聞の見出しが出た結果、株価が上がったようでございます。  結局、私は、この土地流動化策の中で非常に大事なポイントになるのが土地税制であろうというふうに思うのでございます。もう時間がございませんのでかいつまんで申し上げますと、例えば、きのうの新聞に出ておりますような不良債権絡みの担保不動産を証券化してさばいていく、そういうことをやるときに、土地重課という制度を残しておけば一体買う人がいるんですかということであります。日本の税制のパラダイムでは、恐らくこういった土地証券というものは土地取引そのものであるということになるわけであります。土地重課というものを残しておけば、当然これは重課税がかかってくる対象にならざるを得ないわけでございます。ですから、恐らくそのあたりについては、土地重課そのものを廃止するか、あるいは証券化されたものについては土地重課をかけないか、そういった工夫が必要になってくると思います。  そして、昭和六十三年の改正においてとられた、例えば新規取得土地に係る負債利子の損金不算入、こういったものははっきり言ってもう役割を終えている制度でありますから、もう平成年度の税制改正においては撤廃をすべきだというふうに考えるのでございます。また、土地の有効利用を促進しようということであれば、今四段階に分かれております個人の譲渡益課税、こういったものはフラット化をするべきだというふうに私は思うのでございます。  いずれにいたしましても、こういったことは、例えば個人の所得税の最高税率とのバランス論というようなこともあるわけでございますから、平成年度以降の税制改正において、もうすぐにでも議論を始めていかなければならないと考えるのでございます。  そのほかいろいろ聞きたいことが山ほどあるのでございますが、ちょうど時間となりましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  155. 額賀福志郎

    額賀委員長 次に、秋葉忠利
  156. 秋葉忠利

    秋葉委員 酒税法、それから租税特別措置法並びに阪神淡路大震災被災者関連の国税関係法の臨時特例について、一、二質問をさせていただきたいと思います。  与えられている時間が毎回十分、もうちょっとまとめて時間をいただけると、きちんとした内容質問ができると思うのですが、今回の場合には、まず酒税法についてですけれども、私が理解しているところでは、これは現在アメリカとの交渉を行っている問題なのですけれども、そのアメリカとの交渉において、結局WTOの決定である十五カ月、それ以上の期間を使ってしょうちゅうの乙類についての税率を上げていくということを実施する、それが内容になっているわけです。  そこで心配をしておりますのが、我が国の、これも外交交渉と言っていいと思いますけれども、対外的な交渉のまずさといいますか、そういうところばかり少なくとも今まで目立ってきたような気がいたします。一方においてこの問題についてアメリカと交渉をしながら、もう一方においては国内において私たちが法律をもうきちんと通してしまう。ある意味ではアメリカの要求していることは、もうはなから私たちが聞かないというメッセージを非常に強烈に伝えることになるわけですけれども、そんな交渉で最終的にうまい結果が生じるのだろうか。かえって交渉のプロセスに水を差すようなことになるのではないか、そんな危惧を持っております。  そうではなくて、例えばアメリカ側との交渉の条件はこうであるとか、あるいはその他さまざまな具体的な交渉の場でのいきさつによってそのあたりの疑問が氷解すれば大変結構だと思いますし、逆に日米間の交渉においても、我が国の交渉の手腕といいますか、それがいかに向上したかというような証拠にも、とりようによってはなるかもしれません。  日米交渉の状況と、その日米交渉に与える今回の酒税法の一部を改正する法律案、これが通った場合、アメリカ側にどんなメッセージを送り、どんな影響を与えることになるのか、簡単に御説明いただきたいと思います。
  157. 薄井信明

    ○薄井政府委員 本来であれば、アメリカとの交渉もすべて終えた上でこの法律案が出せることがベストであったと思います。  御存じのように、今回のしょうちゅう、ウイスキーの間の税率格差に関しましては、スコッチウイスキー、つまりイギリスを中心とするEUが初めこれを問題視し、十年来の日欧間の大きな課題となっておりました。その後、対話はしてきたわけですが、パネルへの提訴ということになったわけです。その際にアメリカとカナダが同時に提訴してきた、こういう位置づけになっておりまして、外交交渉であることは間違いないのですけれども、相手が三カ国あるということと、本家本元といいますか、中心的にはEUとの関係が長くあったという前提のもとに、これをどうまとめていくか腐心を重ねてまいったわけでございます。  簡単に申し上げますと、EUとの関係では今回の具体的な税率の水準についての内容、それから実施時期等について合意を見ているわけですが、アメリカとの関係ではこれがまだ合意を見ていないという状況にあります。  内容的に申し上げますと、デ・ミニミスと言われるしょうちゅうとウイスキーの間の税率格差の点、この点についても実ははっきりとした形でアメリカの意思表示はなかったわけですが、ただしこの点は、私どもの決断について、これが適当であるかどうかという点についてはほぼ解決はしているのではないかと思います。そういう意味では、私どもアメリカとの間において、この問題については一つクリアしてきていると思います。  それから、実施時期の問題につきましても、アメリカは私どもの案に乗っておりません。仲裁の協議の際には、アメリカは再来月の四月から実施せよということを強く迫ったわけでございます。それに対して、今回の二月十三日ですか、裁定では原則の十五カ月ということを言ってきておりますので、そういう意味ではアメリカの主張も覆され、私どもの考え方も覆されたという位置づけになっておるわけでございます。  そういう背景の中で、今回法律を御審議いただいているということは、一つはもともとの当事国でありますEUとの正式合意を見ておりますので、実施はこの十月一日から第一段階が始まるということでありますので、ぜひとも法案の成立を望みたいということ。それから、先ほど申し上げましたが、しょうちゅうとウイスキーの格差を最終的に一・〇三という法律レベルの問題に関しましては、WTOの勧告に沿ったものであるというふうに言えるということでございます。また、酒税法を改正しない場合には、WTOの勧告に沿った前進は一切図れないということにもなります。そうしますと、我が国の国際的立場は一層厳しくなると思っております。この点を考慮しますと、今国会において御提案している法律をそのまま通していただきたいと思っておるわけでございます。  そのことが日米交渉にどういう影響を与えるかというのが最後の御質問でございました。私どもとしますれば、裁定はWTOの一員として尊重していくわけでございますけれども、それはWTOの協約の中で必ずしも、例えば十五カ月という裁定がおりたからそのとおりにしなければならないということではなしに、それを基準にして二国間で話し合いがつけばそれもよいということでございまして、その交渉の期限となり得ると思われますのが十五カ月、来年の二月までということでございますので、私どもとすれば、酒税改正法案を成立していただきながら、EUとの関係をそれによって確固としたものにした上で米国と協議を続けていく、こういう関係になろうかと思います。米国に対しては、このような手法をとらせてもらうということは伝えてあるところでございます。
  158. 秋葉忠利

    秋葉委員 最後の点が一番気にかかるところなんです。  確認をしておきたいのですが、つまりアメリカ側には、例えばEUとの関係等があって、今国会でこの法律審議、成立の方向で政府提案をしているのだということについてはきちんと伝達してあり、公式にせよ非公式にせよ、アメリカ側からはそれに対する明示的な、何といいますか反対の意見、あるいはそれは困るといった意思表示はなかったというふうに理解してよろしいわけですね。
  159. 薄井信明

    ○薄井政府委員 日本政府法律案を提出するということについて、それをしては困るというような意思表示は受けておりません。裁定後に、向こうは記者会見の席上で、交渉がうまくいかなければ、そのときは制裁もあり得るというような表現はしたそうですが、その前提として交渉があり得るということを言っているようですので、法律が出るということを承知した上で、今後の交渉が行われると認識しております。
  160. 秋葉忠利

    秋葉委員 両国にとって満足のできるような最終結論が出ることを期待しておりますが、この酒税法に関連して、しょうちゅうの乙類のメーカーは売り上げが恐らくかなり落ちるであろうということはだれしも予想するところですけれども、そのメーカーに対して何らかの形での援助策がある、これまた当然だというふうに思います。それと同時に、ウイスキー類の税率は下がるわけですから、恐らく常識的に考えればウイスキーの消費は増す。となると、それに従って、困るところには援助をする、もうかっているところからはそのもうかった分を出してもらうというようなプラス・マイナスのバランスのとれた措置というのが、やはりこういった上がるものとそれから下がるものが同時にあらわれる場合に、常識的にはそんなことが考えられればいいと思うのですけれども、ウイスキー類の税率が下がって、その消費が伸び、その結果として、——例えば税収の面でしょうちゅう乙類のメーカー等に出す補助金の分が大体相殺されるものかどうか、そのあたりの大まかなそろばん勘定をどう見ておられるのか、お教えいただきたいと思います。
  161. 薄井信明

    ○薄井政府委員 簡単に申し上げますと、私ども、ネットでは持ち出しというか減収になるという計算をしておりまして、しょうちゅうの消費数量が減少する、これに伴いまして税収が落ち込むわけでございますが、一方でウイスキーはある程度ふえる、それによって増収が出てくると思いますが、両方をネットアウトしますと減収になると思っております。それに加えまして、しょうちゅう等の乙を中心とした零細な事業者に対する対応というものを予算上別途また行っているという状況にございます。
  162. 秋葉忠利

    秋葉委員 この場ではなくても結構ですけれども、大体どのくらいの規模になるのかお教えいただきたいと思います。  それから、阪神淡路大震災被災者が住宅を再建する場合に、国税についての特別な措置を導入していただきまして、これは昨年我が党が皆さんにお願いをして、阪神淡路大震災被災者のために最低限消費税の値上げ分くらいやはり何らかの形で援助をするといったこと、消費税としてそれを実行することはできないにしろ、何らかの税制措置が必要ではないか、そういう主張をいたしまして、多くの皆さんの御理解、御協力を得て実現した、そんなふうに感じておりますので、まず最初にその御協力に対しては感謝をしたいと思います。  そこで伺いたいのですけれども、阪神淡路大震災のこの税制の特例を利用して大体どのくらいの需要といいますか、税の方から考えると税収減になる部分ですけれども、大ざっぱに大体どのくらいの人がこれを利用するのか、あるいは住宅建設促進税制の方でもいいのですけれども、大体どの程度の利用者があるものか、それについての予測といいますか、それは大蔵の方ではお持ちになっているんでしょうか。
  163. 薄井信明

    ○薄井政府委員 この点につきましては、住宅建築が必ずしもその税制だけで行われるわけではないものですから、どこから計算してもきちっと一つの数字が出るということではないかと思います。ただ、新しい税制をつくる以上、積算の根拠といいますか、どれだけの減収額が改正によって立つかということではそれなりのめどをつけている状況でございまして、現在、住宅取得促進税制の改正によりまして、平年度八百二十億円、それから初年度四百億円の減収と見ております。  ただ、この平年度と初年度の概念は非常にわかりにくいかと思いますが、六年間適用されるものですし、また、今回の改正の内容が、平成九年の特殊性から、平成九年については今までの住宅取得控除を拡充し、それが先へ行くほどかつての、昔の住宅取得控除に適正化されていくという形で、初めのうちは減収が大きく立つのですが、後ろに行きますと増収が立っていきまして、これを平均化すると平年度八百二十億円の減収、こういう計算になるということで、御質問に直接答えにくいところはございますが、そのような計算をしているということだけ申し上げておきます。
  164. 秋葉忠利

    秋葉委員 実は、その後で、景気をどの程度刺激するのかといったところに論を持っていきたかったのですが、時間が参りましたので、これは継続してまた別の機会に伺いたいと思います。どうもありがとうございました。
  165. 額賀福志郎

    額賀委員長 次回は、来る二十五日火曜日午後五時五十分理事会、午後六時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十七分散会      ————◇—————