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伊藤参考人 伊藤でございます。よろしくお願いします。
お手元に少し書いたものをお配りいたしましたけれども、ここに書いていないことをまず御報告申し上げたいというふうに思います。
昨日、日比谷公会堂で、これがそうなんですが、「
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」が開かれました。私は、ちょっとほかに用件がございまして
出席できませんでしたけれども、約千人の
消費者の方が参加されたそうでございます。その折、今まで集めました署名を集計いたしました結果、四十四万八千二十八人の署名が集まっているそうでございます。
それからもう
一つの御報告は、四月二十一日現在、地方自治体で
表示の請願をまとめているのが、百二十一地方議会で採択されたということでございます。
これほど多くの方々がこの
遺伝子組み換えに非常に関心を持たれまして運動を進めていらっしゃるということを、まず御報告いたしたいというふうに思います。
その中で、なぜ私がここへ来て
消費者を代表してと申しますか、お話しするかと申しますと、私は少しこの問題をかじっておりました。昨年八月ごろまで
食品衛生
調査会という、
厚生省の先ほどからお話の出ておりましたところに入っておりまして、いろいろ審議に加わっていたのですが、そのときに、一九九一年ころからもう
安全評価指針を作成するという段階に入りまして、何が何だかわからないではこれは
委員としての責任が果たせないということで、少しずつ勉強いたしました。そんないきさつがありまして、少し長くこの問題に携わっているということで、きょうここへ出させていただいたのではないかというふうに思っています。しかし、もう五、六年勉強しているのですが、悲しいかな素人でございまして、本当に全部わかり切ってはいないというふうに反省しております。
それで、まず、私の
消費者としての
遺伝子組み換え食品をどう考えるかということを少しお話ししたいと思います。
今、どうしてこんなにたくさんの
消費者が関心を持ってこの
表示をしてほしいという運動に参加しているかと申しますと、まず第一が、いろいろ先ほどからお話に出ておりますように、
食品としての
安全性に対して非常に疑問に思っているということです。
農林水産省は、
遺伝子組み換え食品はこれまで行われていた育種とは何ら変わりはないという
説明をされます。そして、大豆は大豆だよ、菜種は菜種だよと、先ほどいろいろ
専門家からもそういうふうにお話があったわけですが、これが私
たちにはどうしても理解できない。
どうしてかといいますと、まず第一に、従来の交配、育種とは異なるのではないかなというふうに思っています。例えばお米の
品種改良、そういう育種などもすごい時間がかかるのだそうでございますが、そういうものと、短期間にやってしまうものは違うのではないかというふうに思っております。
それから、育種の場合は同じ種同士のかけ合わせですけれども、
組み換え食品は違うものを持ってくるわけですね。トウモロコシのところに土壌菌の
遺伝子を持ってくる、これは種が違うということで問題はないのだろうかというふうに思っています。それから、私
たちは
細胞学の話などは専門ではございませんが、
専門家からお聞きしたところによると、種が遠いもの同士のかけ合わせとか、そういうものについては問題が起こりやすい、同種のよりは起こりやすい、こういうふうに
説明を受けております。
それから、
新規性がないというふうにはどうしても思えないということです。
害虫耐性トウモロコシの場合、先ほども申しましたBT菌の毒素をつくる
遺伝子を入れる、そうすると、先ほど
神山さんもお話しになりました、それを食べた虫が死んでしまう、幼虫が死んでふ化しない、だからふえない。虫が死ぬけれども
人間は大丈夫だ、こういう
説明というのはなかなかわかりにくいのではないかというふうに思っています。私
たちは、これらのことを考えると、どうしても、従来なかった毒素をつくる
植物が他の
遺伝子を入れることによって新しくできるわけで、これをどうして
新規性がないというふうに言えるのかどうか、これを十分わかりやすく
説明してもらえないと、今もってわからないということでございます。
それから、次に、試験の方法が不十分だというふうに考えております。
安全指針では、入れる
遺伝子やそれからできた
たんぱく質を確認することになっているのですが、違った種の
遺伝子を入れることによってほかの
遺伝子に影響ないのかな、そんなふうなことも考えております。
ですから、そういう試験はされていないわけですね。本来なら、私などが考えるのは、例えば長い間腐らないトマトができたりしたら、そのトマトを丸ごと食べないと試験にはならないのではないかというふうに思っているわけです。
例えばいろいろな
食品添加物の試験などをするときには、それは
化学物質ですから同じものをずっとつくれるわけですよね。そして、それを例えば動物に食べさせて長い間実験を続けられるということなんですが、私は、それでは果たして同じトマトを百個なら百個つくってそれを動物に食べさせ続けることができるかなというふうなことを
食品衛生
調査会で質問しました。そうしたら、わけのわからない回答が返ってきまして、今でもそのことは私には理解できません。どうしてそういう丸ごとの試験をしないのですかという質問をしたのです。それで、そのことについてはまだ解明はされておりません。
いずれにしても、現段階では
安全性の確認は不十分だと私
たち消費者は考えております。きょうは余り
安全性以外のことは触れる時間がございませんから申し上げませんけれども、さらに、異常な
植物それから生物の繁殖など生態系への影響があるのではないかなというふうに考えてもおります。
そして、そもそもその目的が何かよくわからない、
消費者にとっては。
農林水産省は今後食糧難になるから増産するための
技術だというふうに言われるのですけれども、例えば寒いところでできる
植物が
遺伝子組み換えによってできたとします。それから、水が余りなくてもできるような
植物ができたといたします。今の経済合理性、今の経済性の中で、そういう経営というのはへもうからないことをするわけはないと私なんかは思っております。では、果たしてそれはだれがやるの。できないようなところに
作物を持っていって植える、そして、それで利益が上がればやるでしょうけれども、利益が上がらない場合はそんなことをする会社なんてないのではないかというふうに思っております。
ですから、今
消費者にとって、何のためにそんな
植物をつくる、それさえ理解できないな、それも疑問を持っている。そんな中で、なおかつ
安全に不安を持つものを食べさせられる、これは嫌ですよねと、そういう運動が起きているわけです。
その次に、選択のためのまず
表示をということでございますが、以上のように、
組み換え食品には疑問となる点、不安な点があります。しかも、先ほどからいろいろ出ております
安全性評価指針はあくまでもガイドラインなんです。ガイドラインの性格というのは御
説明するまでもないと思うのですが、このガイドラインに沿って
安全性を確認しましょうということで、書類審査なんですね。書類が出てきてそれを審査して、流通してもいいでしようということになるわけですが、言いかえれば、その
安全指針にのっとってやったものかどうかというのは別に国は確認しているわけじゃないのですよね。ですから、違反しても法律ではないから処罰もないんだし、責任もないのではないかというふうに考えております。
私が非常に不思議に思っているのは、今、では
日本にそういう
安全指針にのっとった
遺伝子組み換えをした大豆がどのくらい入ってきているのですかというふうに聞いても、
農林水産省も
厚生省も企業もだれも答えられない。
安全指針をつくって、
日本ではこういうガイドラインに沿ってやったものしか輸入してはいけないわけだと思うのですけれども、どのくらい入っているか確認していないという、こんな無責任な話はないのじゃないですか。いや、本当は御存じかもしれませんけれども、今
日本はまだ行政は
情報公開が不十分ですから、そういうことをわかっていても教えていただけないということも考えられます。
であれば、
消費者は食べるものは自分で選択したい。そのためには、使用原
材料も含み、これは私どもの団体の要望書もございます、多くの
消費者団体が要望していることですけれども、できたトマト、そういうものではなくて、例えば油に使った大豆が
組み換えであればそのように書いてほしいということです。
組み換え食品を使用した場合はその旨を
表示が必要だ、こういうふうに考えております。
では、どこへどういうふうに依頼するかという問題がありますが、先ほど
神山さんが
日本の
食品の
表示はばらばら行政でというお話をなさいました。私も長い間この
食品の
表示問題をやっていますが、本当にばらばらで、いつもあっちに行ったりこっちに行ったり、この要望書でも
厚生省へ行ったり農水省へ行ったり公取へ行ったり、大騒ぎするわけです。したがって、今回は私もちょっとばらばらに要請を、考えていることを述べさせていただきたいと思います。
まず、
厚生省は
安全性を確認したものには
表示の必要はないと言っていらっしゃいますが、ではなぜ
安全性を確認したはずの
食品添加物が全面
表示なんですか、どうしても理解できない。どうしてあれはそういうことになったのですかと、
食品衛生
調査会の私どもの先輩の
委員の方とか元課長さんだとかいろいろな方に聞いても、明確な答えは返っておりません。それから
厚生省に現在聞いても、明確なお答えは返ってきておりません。
それからもう
一つ、放射線照射
食品の
表示などもするようにということで
厚生省は行政指導されているわけですが、これも
安全確認したはずです。じゃなぜ
表示しなければいけないのですかという問題があります。
ですから、
安全性を確認したものは
表示の必要はないというのは全く私どもには理解できない。多分、いろいろなものに書いてあるわけですが、
国際的な動向や社会の要請に沿い、
食品衛生法で
情報提供をしていこうというふうになったのではないかと私は解釈しております。法律というのは、これは
弁護士の方が言われているのですが、いろいろ解釈によって運用は変わってくるということですから、そういうふうな解釈をしております。
それから
農林水産省ですが、今度
農林水産省は予算三百万円で
表示をどうするかという
検討をされるようでございます。JAS法では「一般
消費者の選択に資し、もって公共の福祉の」云々というふうにありますから、この線に沿ってぜひ
消費者の求める
表示を実現させていただきたいというふうに思っております。
それから公正取引
委員会でもできるのではないかと思うのですが、例えば、
遺伝子組み換え大豆が使用された豆腐なのにその旨書いていないと、
消費者は、使われていないというふうに誤認する。例えば、公正取引
委員会の景表法で、不動産の
表示で傾斜地の場合は傾斜地である旨を広告に書きなさいというふうに決まっているわけですね。これはどうしてかといいますと、書いてないと
消費者は真っ平らだと思う、だから傾斜地の場合は傾斜地と書きなさい、こんな決まりが公正取引
委員会の景表法にあります。これを採用して、公正取引委は、
消費者の誤認を排除するため、
消費者が適正な商品選択ができるように、
組み換え食品を使用した商品には景表法で規制をしていただきたいと思います。
余り時間がなくなりまして、申しわけございません。
それから、今、
組み換え食品を使用していない旨
表示を行おうとする事業者が出てきました。青森の辺の豆腐屋さんですが、自分は、自分のつくった豆腐に使っている大豆が
組み換え大豆であった場合、
消費者にこれを食べてもいいですよというふうに言う自信がないから書くのだというふうにおっしゃっています。
それから、一部事業者が、
組み換えられていない
作物を輸入しようとする事業者へ圧力をかけているという報道がございます。
日本経済新聞に載っておりましたが、そういうことがないよう、公正取引
委員会は事業者の指導をされるべきだというふうに思います。
最後になりました。
消費者の知る権利と企業の責任ということについて述べさせていただきたいと思います。
多くの人が科学論争に参加するには私は時間がかかるというふうに考えております。
専門家、学者の間でも、先ほどは
安全確認されたというようなことをおっしゃいましたけれども、いや、そうではないと言う学者もいらっしゃいます。
専門家、学者の間でもさまざまな
意見があります場合、
消費者はどう判断していいかわからないわけですよね。ですから、
消費者がどう判断し、行動するか、納得して食べるためにはまずその商品がどのようなものかを知る必要があるというふうに思っています。
今、規制緩和、それから自由競争の拡大、自己責任という言葉、私はこの自己責任というのは非常に嫌な言葉なんですが、強調されています。そして、自己責任と
情報公開の関連を考えると、事業者は
消費者に対して自社の製品について
説明する義務があるというふうに思います。そして、行政は事業者に対して
情報の公開を指導する責任があるというふうに思っています。
今、
消費者は自分の意思に従って主体的に行動しなさいというふうなことが強調されているわけですけれども、それには
消費者へ十分な
説明と
情報の提供が必要だと思います。その
情報の提供の方法の
一つとして、本体に
表示をしてほしい、
組み換えた
食品の場合はその旨
表示してほしいということでございます。
それから最後に、事業者の言い分として、これは行政もおっしゃっていますけれども、大豆などは混合されて、まざって輸入されているので
表示は不可能であるという御
発言をよくされておりますが、
国民へ
安全な
食品を提供し、それによって利益を得るという企業が自社の販売する製品の原
材料を品質の確認なしに使っている、そんなことがあるだろうかというふうに、自分の製品をつくるための原
材料はどこのどんなものだということは企業は早晩知るべきではないかというふうに思っています。関係者に対して
説明を、その方法は企業者が考えればいいわけですね。さかのぼって考えるとか、輸入業者にそれは入れないでほしいと言う、いろいろな方法があるというふうに思いますが、ぜひ今後とも関係者のなお一層の努力をお願いしたいと思います。
私ども
消費者団体として、先ほども申し上げたように、署名活動や要望書、いろいろな活動をしておりますが、
農林水産省、
厚生省、公正取引
委員会が努力され、その上、なお議員の皆様方が私
たちの考えていることを理解していただいて、
表示の実現へ御努力いただくよう、よろしくお願いいたします。
少しオーバーいたしました。済みませんでした。(拍手)