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1997-05-07 第140回国会 衆議院 商工委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月七日(水曜日)     午後一時三分開議  出席委員   委員長 武部  勤君    理事 小川  元君 理事 小此木八郎君    理事 中山 成彬君 理事 茂木 敏充君    理事 遠藤 乙彦君 理事 西川太一郎君    理事 大畠 章宏君 理事 大森  猛君       甘利  明君    石原 伸晃君       遠藤 利明君    小澤  潔君       大村 秀章君    奥田 幹生君       加藤 卓二君    亀井 善之君       岸田 文雄君    河本 三郎君       自見庄三郎君    中尾 栄一君       中島洋次郎君    能勢 和子君       林  幹雄君    船田  元君       安倍 基雄君    伊藤 達也君       石井 啓一君    鍵田 節哉君       神田  厚君    古賀 正浩君       島   聡君    島津 尚純君       達増 拓也君    中野  清君       吉田  治君    生方 幸夫君       川内 博史君    小林  守君       末松 義規君    渡辺  周君       吉井 英勝君    横光 克彦君       前田 武志君  出席国務大臣         通商産業大臣  佐藤 信二君  出席政府委員         公正取引委員会         事務総局経済取         引局長     塩田 薫範君         経済企画政務次         官       河本 三郎君         通商産業政務次         官       石原 伸晃君         通商産業大臣官         房長      広瀬 勝貞君         通商産業大臣官         房審議官    藤島 安之君         資源エネルギー         庁長官     江崎  格君         資源エネルギー         庁公益事業部長 岡本  巖君  委員外出席者         参  考  人         (神戸学院大学         法学部教授)  実方 謙二君         参  考  人         (専修大学経済         学部教授)   鶴田 俊正君         参  考  人         (経済団体連合         会競争政策委員         会委員長旭化         成工業株式会社         代表取締役社         長))     弓倉 礼一君         参  考  人         日本労働組合         総連合会総合労         働局長)    松浦 清春君         参  考  人         (日本商工会議         所中小企業委員         会委員長代理         (株式会社金鳳         堂取締役社長))小柳 重隆君         商工委員会調査         室長      安本 皓信君     ――――――――――――― 委員の異動 五月七日  辞任         補欠選任   甘利  明君     林  幹雄君   中山 太郎君     大村 秀章君   林  義郎君     遠藤 利明君   村田敬次郎君     能勢 和子君   吉田  治君     安倍 基雄君   末松 義規君     川内 博史君   松本  龍君     小林  守君   渡辺  周君     生方 幸夫君 同日  辞任         補欠選任   遠藤 利明君     林  義郎君   大村 秀章君     中山 太郎君   能勢 和子君     村田敬次郎君   林  幹雄君     甘利  明君   安倍 基雄君     吉田  治君   生方 幸夫君     渡辺  周君   川内 博史君     末松 義規君   小林  守君     松本  龍君     ――――――――――――― 四月二十五日  商店街中小商業者に対する支援対策充実強  化に関する陳情書外一件  (第二  四一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第六八号  )電気事業法の一部を改正する法律案内閣提  出第七九号)      ――――◇―――――
  2. 武部勤

    武部委員長 これより会議を開きます。  内閣提出私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  本日は、参考人として神戸学院大学法学部教授実方謙二先生専修大学経済学部教授鶴田俊正先生経済団体連合会競争政策委員会委員長弓倉礼一さん、日本労働組合連合会総合労働局長松浦清春さん、日本商工会議所中小企業委員会委員長代理小柳重隆さん、以上の五名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。参考人各位におかれましては、ただいま議題となっております本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いします。  議事の順序は、まず参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、御発言の際は、その都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑することはできないことになっていますので、そのように御了承願います。  それでは、まず実方参考人にお願いいたします。
  3. 実方謙二

    実方参考人 御紹介いただきました実方でございます。  きょうの陳述意見は、コピーされたものがお配りされていると思いますが、それに沿いまして申し上げたいと思います。  今回の独占禁止法改正でございますが、これは持ち株会社全面禁止を定めていた独占禁止法の第九条を、事業支配力過度集中することとなる場合に禁止する、そういうものに改めるという趣旨であります。  この改正については、結論を申しますと、現在の状況において必要な緩和意味するものとして支持するわけでございますが、ただ、系列取引が広範に見られる日本経済状況とか日本市場閉鎖性に対する強い国際的批判があることを考えますと、今回の改正案で示されている持ち株会社を通じた過度経済力集中防止のための歯どめ装置、具体的には改正案第九条第五項で禁止されることとなる場合が、いわゆる三類型という形で定められております。これが適切かつ厳正に運用されることを強く期待するものでございます。  また、これは少し余談になりますけれども、大規模会社株式保有総額規制を定めております九条の二の改正も含まれておりますが、これも必要最小限のものでありまして、九条の五項と九条の二とそれから十一条と相まちまして、過度経済力集中防止という独占禁止法一つの大きな柱でございますが、その基本的な枠組みが維持されていると評価いたしまして、賛成するわけでございます。そして、この基本的な枠組みは今後も堅持されるべきものであるというぐあいに考えております。  そして、今回の改正の位置づけでございますが、これは最近大きな課題になっております規制緩和関連しております。規制緩和は、一般的に言いますと原則自由、例外規制ということでございますが、その点に関連しまして、競争政策による規制原則自由にすべきであるというような説もございます。特に、持ち株会社に対するこれまでの規制原則自由に反するものであるという考え方がございました。そして、特に理論的に説明できない規制は全面的に撤廃すべきであるという議論も主張されております。  しかし、一般論でございますが、経済規制緩和というのは、これは市場メカニズムにゆだねるということでございまして、そうすると、市場メカニズムが十分に働くような条件をつくるということが不可欠になってくるわけでございます。そうしますと、規制緩和競争政策強化とワンセットになって実現されて初めて意味がある、こういうものでございます。そして、このような考え方は国際的にも常識になっているわけでありまして、日本競争政策に対しましては、これまでその運用が弱かった、そのために日本企業外国企業に比べて非常に有利になっているとか、あるいは日本市場競争政策が弱かったために閉鎖的になっているという批判がございます。その当否はさておきまして、今後国際的な経済社会一員として受け入れられていく、具体的にはさまざまな輸入規制等を向こうからやられないということでございますが、国際的な経済社会の中の正当な一員として受け入れられるためには、競争政策をきちんと運用いたしまして、それを国際的レベルにまで引き上げていくということが必要になるわけであります。  ところで、持ち株会社でございますが、これまでの原則禁止の根拠というのは、持ち株会社を通じて企業結合を進めていきますと、非常に効率的にできるということであります。したがって、持ち株会社を放置いたしますと、過度経済力集中を招いたり、あるいは個別の産業分野での競争制限をもたらすおそれがあるということでありますから、個別の産業分野では、非常に巨大な企業がバックについたためにほかの企業が萎縮してしまうとか、それからいろいろな分野でのもたれ合い関係相互関連を持って広がっていく、こういう具体的な弊害も考えられるわけであります。  これまでの独占禁止法第九条というのは、そういう点を考えまして原則禁止ということだったわけでございますが、そしてもう一つは、過度経済力集中、これをもたらすものを禁止するという規制基準を設定することが非常に技術的に難しいという点から、原則禁止にしていたわけであります。  しかし、持ち株会社を通じた企業結合企業結合一般というのは、後で書いてありますが、それ自体では別に反社会的な行為でもないし、企業活動の一環として正当に評価される場合も多いわけで、原則としてそういうことであります。特に新規分野への進出のために持ち株会社形態を使って活動分野を広げていくとか、そうなりますと、新規参入がふえますから競争もかえって促進される。あるいは関連企業間の、これは内部的分社化というような場合を考えているわけですが、関連企業間の意思決定を非常に効率的にできるというプラスの面もあるわけであります。したがって、全面禁止の是正を図るということは、それなりの意味があるということであります。  ただ問題は、過度経済力集中防止するための禁止基準といいますか、歯どめ装置がうまく働くかどうかということでございます。これは繰り返しになりますけれども、改正法の九条の五項になるわけですけれども、いわゆる三類型というものの基準が示されており、ある程度具体的な判断基準というのが示されているわけであります。ただ、ここでは要件の中に国民経済への大きな影響等価値判断によって左右されるものが含まれておりますので、これが有効に歯どめ装置として機能するかどうかは、今後の公正取引委員会運用のいかんにかかわっているということであります。したがって、今後、この改正法九条五項に定める基準の適切かつ厳正な運用公正取引委員会によって実現されるということを、強くここで、改めて期待するものでございます。  それから、いわゆる持ち株会社株式保有等による企業結合に関する一般的な評価でございます。  先ほど申しましたように、カルテルのように本来的に競争制限的で反社会的なものではなくて、一つ側面では通常の企業活動という側面も持っているわけですが、企業努力によって競争過程を通じて拡大していく場合と違って、これはちょっと専門的になりますが、市場のテストを受けていない拡大であるというぐあいに言われております。だから、それを適正に規制しなければ、企業結合過度に広がるということが出てくるわけであります。したがって、企業結合規制というのは、競争を活発に行うための条件を整えるためのルールとして、競争政策の中の一つとして不可欠なものでございます。  持ち株会社解禁につきましては、国際的ハーモナイゼーションということが言われております。これは、外国持ち株会社原則全面禁止する規定がないにもかかわらず、日本だけある。韓国にもございますけれども、それを除けば諸外国にはない。そうすると日本は非常に不利になる、こういう議論でございます。  しかし、国際的ハーモナイゼーションを言うのであれば、競争政策運用レベルをほかの諸国並みに強くする。少なくとも、日米間で通商の不均衡とか通商摩擦というのが問題になりました場合には、特にアメリカに比べて、レーガン政権のもとでかなり弱くなりましたが、それでも日本独占禁止法よりも強いわけでございます。それで、日本アメリカを比べると日本の方は競争政策運用レベルが弱い、それが貿易不均衡一つの原因になっているんだというような主張がございます。したがって、国際的ハーモナイゼーションを言うのであれば、繰り返しになりますが、競争政策レベルを上げることが中心でありまして、単に持ち株会社に関する原則禁止規定のあるなしだけを取り上げて論じるというのは、枝葉末節議論であると私は考えております。  このような考え方というのは国際的にも常識となっているところでございまして、具体例を挙げることは差し控えますが、WTO等でも競争政策強化ということが次の課題とされておりますし、日米間、それから日本とEU間の通商協議等でも競争政策強化というのが要求されているということは、皆さん御承知のところでございます。  このように考えますと、今回の改正案では、全体として見ますと、過度経済力集中防止という独占禁止法基本的枠組みが維持されているというぐあいに考えられるわけで、このような枠組みを維持するということは今後とも尊重されるべきだと考えております。  最後になりますが、これは理論的な話ではございませんが、持ち株会社原則禁止する九条というのは、憲法九条と並びまして一つのシンボル的な意味を持っているわけであります。したがって、この九条が改正されるということは、いわば競争政策の旗が一つおろされたというようなとらえ方がされるおそれがあります。そして、それがきっかけになって競争政策後退を招くのではないかというおそれもないわけではございません。したがって、今回の改正によって必要かつ最小限改正が加えられ、日本経済の実情に合うようになったということでございますから、改正された独占禁止法、九条も含めまして独占禁止法全体、企業結合合併等に関する規制も含めまして、今後とも、今回の改正によって競争政策後退を招くこともなく、競争政策がむしろ今回の改正きっかけとして強化されることになることを強く期待して、今回の改正案を支持する結論といたしたいと思います。  以上でございます。(拍手)
  4. 武部勤

    武部委員長 ありがとうございました。  次に、鶴田参考人にお願いいたします。
  5. 鶴田俊正

    鶴田参考人 鶴田でございます。  私は専門は経済政策でございますので、経済学立場から意見を述べさせていただきます。  まず、今回の私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案の原案に私は賛成いたします。そういう観点から、先生方のお手元に私のレジュメが置かれていると思いますが、それに沿って申し上げたいと思います。  まず最初に、「今、なぜ解禁か?」という項目であります。  三つ書いてございますけれども、まず第一に、一九八五年のプラザ合意以来の円高ドル安を契機として、日本経済構造変化が急速に進んでおります。日本企業は新しい競争時代に適応していかざるを得ないことが、今回の改正案の背景にあると思います。  第二番目は、バブル崩壊以降の閉塞状態をいかに克服するかという問題でありまして、日本経済が新しい成長フロンティアを見出すためには、企業結合の新しい選択肢が必要であると思います。特に、金融秩序を回復するためには持ち株会社解禁は不可欠であるというふうに私は思います。  それから三番目、公正取引委員会関係することでございますけれども、九〇年代に入ってから独占禁止法課徴金制度刑事罰制度等々、法制度強化され、整備されました。また、公正取引委員会の機構も拡充され、独禁法運用スタンスも大きく展開していると私は認識しております。こういう時期であるがゆえに、持ち株会社解禁しても、解禁に伴う弊害が生じないというふうに私は思っております。つまり、公正取引委員会十分独禁法を厳正に運用することによって、懸念される問題は克服できるだろうというふうに思うわけであります。  二番目、「過剰規制の排除」であります。  独占禁止法は強ければいいというものではないというふうに私は思います。やはりその時代にあってオプティマムな内容を備えていることが必要だと思うのであります。  まず、今日の一般的情勢として、レギュレーションは政府規制独禁法規制とがございますけれども、今日の日本経済では、一般的方向政府規制は見直し、緩和方向にあります。後者は一般的には強化方向にあると思うのでありますけれども、しかしそれも一般的にでありまして、後で申し上げます持ち株会社等々を含めていえば、必ずしも強いだけがいいというふうにはならないと思うのであります。規制緩和独禁法規制の交差するところに、市場機能を重視するということが位置づいていると思います。  二番目に、アメリカの例でございますけれども、アメリカでは一九六〇−七〇年代で反トラスト法規制が大変強化されて、その結果として経済活動が窒息した経験を有しているわけであります。レーガン政権になってから、アメリカの反トラスト法オプティマム方向緩和されたわけであります。日本も、持ち株会社禁止のほかに、去年の四月から自由化されましたけれども、景品規制も今まで過度規制が強かったという印象があります。ある意味では企業の自由な競争を阻害しているんだという認識が私にはございます。  三番目、ではなぜ持ち株会社禁止規定独禁法に入っているのだろうかということを考えますと、やはり歴史的な遺産というふうに考えざるを得ないわけであります。  一九四七年に独占禁止法が導入されましたけれども、当時GHQの基本的な考え方は、戦前戦中日本のミリタリズムの根底を断ち切ることにあったと思います。あるいはその復活を防ぐことにあったと思います。戦前財閥日本産業組織の中核を担っていたわけでありますし、また財閥は軍閥と結合して第二次世界大戦を引き起こした巨大勢力であるという認識GHQにあったと思います。したがいまして、財閥民主主義の敵だというふうな考え方もあり、戦後日本民主主義を定着させるためには財閥復活を防がなければいけない、こういう考え方があったがゆえに、独占禁止法第九条で持ち株会社禁止規定が挿入されたのだというふうに私は理解しております。  さて、この持ち株会社解禁した場合、競争政策上の懸念はないのかということでございますが、今度は三つのことを申し上げます。  まず第一に、独占禁止法改正案は、事業支配力過度集中防止するスタンスで依然堅持されております。従来は全面禁止であったわけでありますけれども、経済情勢変化等を勘案して、過剰規制を排除して現実の経済企業が適応しやすい制度的枠組みを整えたというふうに評価できると思います。  二番目に、事業支配力過度集中防止する観点から、改正案では、持ち株会社及び子会社の総資産が三千億円を超える場合には公正取引委員会届け出をする、また事後審査を受けることになっております。したがいまして、毎年度、持ち株会社が設立された後でも公正取引委員会のモニタリングを受けるわけでありますから、公正取引委員会が厳正な運用を行う限り、この過度経済力集中に該当する企業日本の中で乱立するということは考えられないと私は思います。  三番目、したがいまして、この届け出に関する情報開示が非常に重要だということであります。公正取引委員会に望みたいことは、競争を実質的に制限するのか否か、あるいは経済力過度集中に結びつくのか否かを厳正に審査することをあわせ望みたいと思います。また、そのことによって解禁独禁法上の懸念は解消するだろうというふうに思います。  四番目、「改正案ガイドライン」の関係について申し上げたいと思います。  独占禁止法は本来非常に抽象的な法律であります。したがいまして、反トラスト法先進国であります。アメリカでも、判例を積み重ねることによって、競争を実質的に制限しているかどうか、反トラスト法に違反するかどうかということを審査することになるわけであります。そういう意味では、独禁法に該当する違法行為というのは、カルテル等々、当然違法に相当する分野を除いては非常にグレーゾーンがあるわけでございますから、そのグレーゾーンに対して公正取引委員会ケースごと判例を下し、そしてその判例に基づいてグレーゾーンを確定していくことが必要でございます。  したがいまして、二番目に、改正案は大変簡素な形になっておりますけれども、これはある意味企業への過重な負担を避けるというスタンスが維持されているのだろうというふうに私は理解しております。そういう意味で、簡素であるということは抽象的であるということと同義であります。例えば、法律を見ますと、「過度に」とか「相当数」とか「著しく」とか「相互に」とか「有力な」とか「大きな」という言葉概念が使われておりますけれども、今申し上げた言葉概念に関して、それぞれケース・バイ・ケースでその範囲を確定していくことが必要だなというふうに思います。  三番目に、産業界には公正取引委員会裁量範囲を狭めたいというような意識があるかと思います。そういう観点に立てば、詳細なガイドラインの作成を求めることになると思います。しかし、ガイドラインを詳しくすることはむしろ産業界自由裁量余地を少なくしてしまって、ある意味では自殺行為になるのではないかなというふうに思います。公正取引委員会は今回の改正に際して三類型ガイドラインで示しているわけでございますが、その範囲でとどめることが望ましいのではないかなというふうに思います。  それから五番目、公正取引委員会機能強化であります。  まず第一に、公正取引委員会独立性中立性確保するということが極めて重要であります。独立性中立性確保することによって初めて独占禁止法の公正な運営ができるわけでありますから、改めてここで、公正取引委員会が政治からの自由を維持することが極めて重要だということを強調しておきたいと思います。  それから二番目、日本では六大企業集団を初め幾つかの企業集団が形成されております。株の持ち合い、あるいは事業会社にいたしましても、子会社相当数抱えております。そういう意味企業集団が形成されております。海外諸国からは、こういう企業集団なり系列が閉鎖的であるとかあるいは排他的であるという批判がこの十数年来絶えず行われているわけであります。したがいまして、この企業集団がそういう排他的な行動をとっているのか否か、あるいは競争を実質的に制限するおそれがあるのかどうかということを継続的に公正取引委員会は調査して、そして我が国の産業社会透明度を高めるようなことが必要だろうと思います。つまり、そういう実態把握というものを公正取引委員会が今後も継続して行うことが極めて重要だということであります。  それから三番目、この機能強化関連して、金融持ち株会社について一言申し上げたいと思います。  金融持ち株会社については、現在大蔵省の金融制度調査会で預金者保護の観点から検討を行っているやに伺っております。しかし、預金者保護という観点は、ややもすれば競争制限的となりやすい場合があります。金融持ち株会社のあり方を検討するプロセスでは、大蔵省は競争政策との整合性に十分配慮する必要があり、最終プランを確定する以前に公正取引委員会と事前協議して、望ましいあるべき姿をつくり出していくことが必要だというふうに私は思います。  最後に「付随した要望事項」でございます。  まず一つは、株式保有等を通じた企業結合につきましては、今回の改正案のほかに、例えば九条の二の大規模事業者の株式保有制限がございます。これは今度は適用除外規定が設けられているわけでありますけれども、また企業につきましては、株式保有制限が第十一条で規定されています。これはいずれも現行のままであります。これらの規制が、持ち株会社規定解禁に際しまして、経済効果を相殺しないような運用が望まれるということであります。例えば金融持ち株会社につきまして、持ち株会社に十一条を適用した場合には、この金融持ち株会社が機能しなくなる可能性がございますから、そういう面の配慮が十分必要だろうというふうに思います。  それから二番目、長期的には一般集中規制が本当に必要か否かということをやはりこれから考えていくべきではないかなというふうに思います。  今回の改正に際しまして、附則第五条で、持ち株会社範囲なり実態あるいは把握方法並びに第九条の二の大規模会社株式保有制限を五年後に見直すというふうになっております。この際に、独占禁止法規制観点から、一般集中規制が本当に必要か否かもあわせ検討することが必要ではないかというふうに私は思います。  最後に、持ち株会社解禁は、ある意味企業システムについての企業の選択肢を拡大するものであります。このような企業選択の自由を保障する一方、やはり経済社会というのは、あるいは企業というのは、従業員によっても構成されているわけでありますから、その企業を構成する多くの経済主体の権利をもあわせ確保することが私は大事だろうと思います。  日本法制度を見ますと、戦後五十年間、持ち株会社禁止という前提で各種の法制度ができていると思います。また労働の関係の慣行、制度等もそういう枠組みの中ででき上がったと思いますから、したがいまして、この持ち株会社解禁を契機に、そういう労働慣行、諸制度もあわせ見直すことが重要だろうと私は思っております。  また、言うまでもなく、連結納税制度を初め税法、商法など関連諸制度も見直して、持ち株会社解禁の効果が上がることを政府に要望したいというふうに思います。  以上で終わります。(拍手)
  6. 武部勤

    武部委員長 ありがとうございました。  次に、弓倉参考人にお願いいたします。
  7. 弓倉礼一

    弓倉参考人 経済団体連合会の競争政策委員長を務めさせていただいております、同時に、旭化成の社長を務めております弓倉でございます。  本日は、経済界を代表して意見を申し述べるようにという御指示をいただき、その機会をちょうだいいたしましたことに、ありがたく感謝をいたしております。  昭和二十二年、原始独禁法が制定されました。持ち株会社禁止をされて以来、五十年間の長きにわたりまして禁止が続いたわけでございます。この間に持ち株会社解禁を推進してまいりました経済界の立場からいたしますと、まことに感慨深い今日の状態でございます。  そこで、本日、今回の独占禁止法改正法案につきまして、経団連が出してまいりました提言、また、私どもが属する化学工業界といたしまして、今般の改正法案に賛成の立場から意見を申し述べさせていただきたいと存じます。  まず第一に、なぜ経済界が持ち株会社解禁を強く求めてきたのか、日本経済の構造改革を進める上で持ち株会社が必要である理由について、御説明を申し上げます。  旧ソ連・東欧諸国の自由主義経済への参加、アジア諸国の急速な発展によりまして、世界がいわゆる大規模競争時代に入っております。したがいまして、今までは効果的であった日本企業のあり方、これをグローバルスタンダード、世界的な標準に立ってもう一遍見直す必要が出てきておるのでございます。  事業の再編、多角化、あるいは新規事業の積極的展開を行っていくためには、硬直的で巨大なピラミッド型の会社の組織ではなく、経営戦略を専らつかさどる本社機能と個々の事業を担当する子会社とを分離いたしまして、絶えず経営資源の最適配分を行い、グループ全体としてフレキシブルな経営を進めていくことが極めて重要となっておるのでございます。持ち株会社はそのための有効なツール、道具立てでございまして、有効なツールの一つというふうに認識をいたしております。そもそも、欧米諸国で当たり前の組織形態として認められております持ち株会社日本では認められないということは、日本企業の経営戦略の選択肢を不当に狭めているということに相なるのでございます。  また、金融ビッグバンによる金融業務の自由化や金融業界の再編でも、持ち株会社が重要な役割を果たすことが期待されております。現在、金融制度調査会や証券取引審議会、保険審議会などにおいても、六月をめどに非常に熱心な議論が繰り返されております。  日本経済の活性化のために、企業がそれぞれの創意工夫を発揮いたしまして、国際競争力を維持し、そして強化できるように、現行の過剰な規制を見直し、ぜひともこの機会に持ち株会社解禁することが必要であると考えておるのでございます。  ここで改めて現行の第九条の問題点を申し述べたいと存じます。  まず第一に、現在の独占禁止法九条は、実際に競争を阻害する可能性があるかどうかにかかわらず、純粋持ち株会社を全面的に禁止をいたしております。独占禁止法規定の中でも特に異質な規制となっております。  第二に、純粋持ち株会社全面禁止は、日本と、一九八四年に日本の制度をモデルに導入した韓国だけにある極めてユニークな規制でありまして、競争政策の国際的整合性の点からも問題があると考えられる次第でございます。現に外国企業からも、我が国が持ち株会社禁止していることが海外からの直接投資や進出を妨げているという指摘がなされておるところでございます。これは、ヨーロッパビジネス協議会あるいは在日米国商工会議所等が明らかに言っております。  純粋持ち株会社によらずとも、社内分社化や事業持ち株会社の形で十分にその目的は達せられているのではないかという御指摘もございますが、それぞれの企業にとっての最良の組織形態は、その企業の事業、成り立ち、あるいは企業の持つ人材や技術力等によって異なっているのでございまして、いかなる組織形態をとるかは企業のニーズに任せることが望ましゅうございまして、競争上の弊害が生じない限り、持ち株会社の幅広い活用に道を開くべきであると考えておる次第でございます。  第三に、持ち株会社解禁をいたしますと、戦前財閥のような事業支配力の強力な集中が生ずるおそれはないかという議論がございます。この点につきましては、戦前日本経済と今日のグローバル化されたこの経済との間には著しい差がございます。まず、大きく状況が変化をしていると申すことができます。いずれにせよ、競争上何らかの弊害が生じました場合には、独占禁止法を有効に活用することで十分にこれを防止することが可能であるというふうに考えておる次第でございます。  次に、独占禁止法改正案につきまして、私ども経済界といたしまして、賛成の立場から意見を申し述べたいと存じます。  まず第一は、基本規定についてでございます。  現行独禁法第九条で全面的に設立が禁止をされておる持ち株会社につきまして、今回の改正法案では「事業支配力過度集中することとなる持株会社」の設立は禁止することに改めることになっております。経団連はかねてから、一律、外形的な禁止を改めて、具体的な弊害が生じる機会に事後的に規制をするということを提案申し上げておるのでございますが、今回の改正は、私どもの主張は受け入れられたものとして評価をいたしておるのでございます。  第二点は、事業支配力過度集中の定義の問題でございます。  新しい九条規定で特に重要になりますのは、事業支配力過度集中とはどのような状況を指すのであるかという点でございます。法案では三つの場合を列挙されておりまして、それぞれについて納得できるものであると考えております。  さらに、その詳細につきましては、公正取引委員会が策定するガイドラインにおいてより明確にされるとお聞きをいたしておりますが、ガイドラインの策定に当たりましては、公正取引委員会裁量の余地をできるだけ少なくすることによって、企業にとっての予測可能性を高めていくことが非常に重要であろうかと考えております。また、競争の実態を踏まえたガイドラインとするためにも、ぜひ企業意見も十分に聴取しながら策定をお進めいただきたいと希望をいたしておるのでございます。  第三には、監視手続と実効確保の手段についてでございます。  持ち株会社における監視の方法については、私どもがかねてから主張してまいりましたとおり、事前届け出や許可制等の公取委による事前の規制が不要とされました。そして、事後の報告によって持ち株会社状況を把握して、具体的な事実が発生しました場合には、それを排除するための必要な措置を講ずるということになっております。このことは、規制緩和の流れの中でまことにふさわしいものでございまして、事後の規制によりましても競争政策上の要請を十分に果たすことができるものと存じております。——なかなか、ゆっくりで申しわけありません。もうすぐ終わります。  独占禁止法の九条の二、大規模会社株式保有制限でございますが、経団連では、第九条とともに、その補完規定として昭和五十二年、独禁法改正で追加された第九条の二も廃止をするように提案をいたしております。しかし、この点につきましては、今回の独禁法改正では株式保有制限の問題の対象としない、いわゆる適用除外株式を追加するという形でまとめていただいております。  この規制は、競争上の弊害の有無を問わず、資本金額あるいは純資産額が一定規模以上の場合、企業株式保有の総額を外形的に制限するものでございます。事業多角化のための子会社の設立や育成が不当に制約されることにならないように、今回の改正で、会社の総資産に占める子会社の株式の割合が五〇%を超える会社は持ち株会社となるために、九条の二の規制対象とはならず、保有株式総額に制限はございませんが、総資産に占める子会社株式の総額が五〇%未満であった場合には、純資産額を超えて株式を保有することができなくなるということに相なります。
  8. 武部勤

    武部委員長 弓倉参考人にお願いでございますが、もうお願いした時間をはるかに超えておりますので、結論にしてください。
  9. 弓倉礼一

    弓倉参考人 はい。  それでは、結語にさせていただきますが、以上のような、今までの大変に長い純粋持ち株会社禁止というものがここで初めて明るい中に認められることになったことを本当に喜んでおりまして、特に今始まっております世界的規模における大規模競争のグローバルスタンダードをベースにいろいろ物を考えるべきときに、まさにふさわしい御決定であろうというふうに考えておる次第でございます。  甚だ時間を超過いたしまして、お許しをいただきたいと思います。どうも申しわけございません。(拍手)
  10. 武部勤

    武部委員長 どうもありがとうございました。  次に、松浦参考人にお願いいたします。
  11. 松浦清春

    松浦参考人 連合の松浦でございます。  私は、労働者、そして労働組合の立場から、この持ち株の自由化問題に対する、特に労使問題に的を絞って御意見を述べさせていただきたいと思うわけであります。  もちろん連合は、この法律改正並びに一連の規制緩和に対しまして、全面的に反対をしているものではないわけであります。しかしながら、言うまでもなく、自由競争の前提というのは公正そして公平ルールがあって、それをみんなが守るということが原点であるというのは言うまでもないわけであります。しかし、現行の労働組合法では持ち株会社の自由化を前提としていないことから、これが自由化をされますと、労使関係を持たない持ち株会社によって、実質的な労使の話し合いかないままに大規模なリストラなどが実施されるということが容易に想定をされるわけであります。  したがいまして、持ち株会社の自由化に対応する労使関係を律するための労働組合法を整備をし、持ち株会社の事業主への使用者性について明確にするということとあわせまして、労働協約の各条適用であるとか、あるいはその監視機能の強化など、適正な施策が同時に検討され、実施されなければならない、このように考えているわけでございます。  私どもが、持ち株会社が自由化されることによってなぜ労使関係が心配されるか、懸念をしているということに対して、心配のし過ぎである、こういった意見もあるわけでございますけれども、私ども労働組合として考えますに、企業や個人資本家、投資家が持ち株をする目的については、大きく分けて二つあるというふうに考えているわけであります。  一つは、投資をすることあるいは株を持つことによって直接的利益を追求するということでありますし、もう一つは、企業がグループあるいは企業系列のトータルの利益を確保するという施策であると考えるわけであります。  一点目の直接的利益の追求の関係につきましては、今日ほどグローバル化した経済環境のもと、日本の現状におきましては、株を取得して、その株価が上昇してその差益で利益を上げるということについては、極めて困難な状況にある。また同時に、株を取得してその株主配当によって一定の水準の利益を確保するということにつきましても、日本の商法におきましては株は原価に対する配当でございますので、それもおよそ期待できない。  こういうことになりますと、持ち株をするということの最大の目的は、やはり企業グループあるいは系列のトータルの利益を追求するということにほかならないわけでありまして、その過程では、労使関係のない持ち株会社、親会社の意向、方針によって原局の労使関係あるいは労使協議が形骸化をするという、持ち株主の意向に左右されて原局の労使協議が形骸化するということを一番心配をしているわけでございますけれども、具体的には四つの点で大きな課題があり、問題があるというふうに考えているわけであります。  その一つが、労使関係上の使用者性が不明確になるという問題でございます。  当然のことながら、現在の労組法や制度につきましては、いわば持ち株会社禁止を前提としたものでございます。したがいまして、親会社の使用者性はいわば現在の制度の中では非正規使用者、正規の使用者とはならないわけでございまして、これを例外として個別判断を迫られるということになるわけでございます。したがって、もしそうした労使関係問題が起こったときには、法的判断基準を現在の制度では欠くということになりますために、個別案件ごとに訴訟でその判断を求めなければならないわけであります。  したがって、私どもとしては、この持ち株会社を自由化する場合には、労働法制を整備をして、持ち株会社、親会社の使用者性というものを明確に法律で定めるということが極めて重要な事項だ、このように考えております。そのことは労使関係を極めてスムーズに行わせますし、そのほか経営の安定、従業員の雇用あるいは労働条件の安定という面でも大きな役割を果たす、このように考えているわけであります。  二つ目が、労働協約の適用範囲が縮小されるという問題がございます。  現在の労働組合法では、企業内あるいは一定地域内では、四分の三の労働者が同じ労働協約でカバーされますと、そのほかの労働者にも拡張適用されるという制度があるわけでございますけれども、持ち株会社が親会社になることによって、事業単位ごとに独立をする、分社化をするという問題、あるいは新しいベンチャービジネスの株を取得して系列あるいは傘下企業グループの中に入れる、しかもそこが未組織であった場合に、新しい労働協約が即できるかどうかという問題については極めて難しい問題でございます。  実情といたしましては、労働省が九六年の六月に調査をしました三十人以上の事業所五千の組合を対象に労働協約がどのように締結をされているかという調査を先日発表したわけでございますけれども、労働協約を締結しているのは九〇%、しかも大企業にいくほどその締結率が高くて九五%。したがって、逆に百人未満の事業場にありましては、労働組合があつでも十分な労働協約が締結をされていないという実情にあるわけでございます。  そしてまた、未組織のところにつきましては、現在日本の労働組合の組織率は二三・一%でございまして、ことしの四月一日から実施されました週四十時間制問題のときにも明確になりましたが、日本の場合には極めて中小企業が多いわけでございまして、千人以上の大企業と言われるところについてはわずか五%程度という実態にあるわけでございます。三百人以下のところが八〇%近くもあるという実情を考えてみますと、分社、独立あるいは株式取得による傘下、系列への投入ということに伴う労働協約の機能の低下という問題については、極めて大きな課題だというふうに考えているわけであります。  三つ目が、労使協議制の形骸化と労働条件の低下という問題でございます。  現在、大企業の九割以上が非常に充実した労使協議制を持っているわけであります。そのことによりまして、経営の安定化、雇用、労働の安定化というものが図られていると私どもは判断をしているわけでございますけれども、使用者性が明確でない親会社、持ち株会社ができますと、そことの直接的な労使交渉ができない。しかも、経営の基本方針については持ち株会社によってこれが提起をされるということになりますと、当該の労使協議というものはその意味をなさないということになるわけであります。  従業員、組合員が一生懸命生産性の向上やあるいは生産に努力をしたけれども、持ち株会社の収益目標に到達できない、外的要因によってその目標を到達できない場合も、その成果は労働者に還元されないということが容易に起こり得るということを私どもは心配をしているわけであります。なぜその成果を分配できないのかという経営方針を納得のいくまで話し合うということが労使の安定という意味では極めて重要な事項であるということを考えますと、持ち株会社、親会社の使用者性を明確にするということがいかに大事かということがおわかりいただけるものと考えるわけであります。  四つ目は、労働争議等が増大するおそれがあるということであります。  現在も、いわゆる事業持ち株制というのは許可をされているわけでございます。私どもが例えば春季生活改善闘争であるとか労働協約改善の交渉であるとかのときに、たまたまではなしにたびたび耳にしますのは、協力会社、部品メーカー、下請の労働者の労働条件改善に当たって、親企業からのコスト引き下げ目標を提示されたために、原局の労使では何とかこの頑張りにこたえたいという意思は経営側にはあるんだけれども、これが親会社のコストの指定、締めつけによって実現できないという問題があるわけでございます。そうしたことが増大をしますと、やはりこれは労使紛争へ発展をする、こういうことになることは間違いないというふうに判断をしているわけでございます。  最後に、こうした問題からさらにもう一歩進んで、企業倒産時の賃金確保の問題についてでございます。  系列あるいはグループ企業のトータル収益を拡大をするために、不採算部門の切り捨てという問題が、少し極端な例でありますけれども、これも容易に想定をされるわけであります。そうした場合に、優良な、資産あるいはノウハウ、技術であるとかはグループの他の企業の方に移されていって、結果として、倒産整理をする段階では、従業員への退職金あるいは賃金も払えるお金や資産を持っていないということなども想定をされるところでございます。労働債権は、持ち株会社、親企業についてはしっかりとした健全経営、そして大きな収益を上げているのに、その子会社は不採算部門ということで切り捨てられる段階で、従業員に対する適正なというよりもむしろ正当な還元が保証されない、そういったことも想定をされるわけであります。  したがいまして、こうした点を考えていきますと、当然のことながら、今回の独占禁止法改正によって持ち株会社の自由化を図るという前提には、そうした労使間における公正ルールというものをきっちりと検討、整備をしていただくということが極めて重要であるということを申し上げまして、私の意見とさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  12. 武部勤

    武部委員長 ありがとうございました。  次に、小柳参考人にお願いいたします。
  13. 小柳重隆

    小柳参考人 私は日本商工会議所の中小企業委員会小柳でございます。  本日は、衆議院商工委員会で純粋持ち株会社解禁に関しまして、参考人としてお呼びをいただきましてありがとうございました。この機会に、商工会議所の立場から本件に関して意見を述べさせていただきます。商工会議所は御承知のように中小企業を中心とした団体でございますので、その立場でございます。  この二月に、与党独禁法協議会というところで、私も経団連さんとともに純粋持ち株会社解禁に関して意見を陳述させていただきました。その際に、私はこの純粋持ち株会社解禁することに基本的に賛成というふうに申し上げてまいりました。この立場は現在も違っておりません。  昨年来、我が国経済の中におきましては、規制緩和という大きな潮流がございます。やがてこれはビッグバンにもつながってくるものと思われております。今回の持ち株会社にかかわる独占禁止法改正の動きも、この規制緩和の流れの中でとらえることができるものではないかというふうに考えております。  このたびの改定は、中堅・中小企業にとりましてもより柔軟に企業組織や経営組織が選択できる、こういうメリットがもたらされるものというふうに解釈をいたしております。これから中小企業が経営の多角化や多様化を図ったり、新規事業展開を行っていく上で有効な手段というふうにこの改正は言えると思います。特に、分社化などの動きが促進され、現在閉塞状態と言われております日本経済に活力を与えることが期待できると思っております。また、親会社の本社部門は、事業の経営はすべて子会社にゆだね、みずからはグループ全体の経営戦略の企画立案を行い、そしてその実行に専念できる、こういう意味でも歓迎すべきところでございます。  さらに、日本では最近かなり脚光を浴びてまいりましたのが、今のお話にも出てまいりましたベンチャー企業の問題でございます。  ベンチャー企業には、ベンチャーキャピタルがこれから有望なビジネスを発掘して、その企業の発展に直接的あるいは間接的な支援を行おうというふうにしております。そのような場合、このベンチャーキャピタルが持ち株会社という形式で新しいベンチャービジネスの株式を保有し、ベンチャービジネスに必要とされる資金を提供することが可能となります。通常、新規に事業を起こそうとする起業家は、その創業期にはなかなか必要な資金を集めることができないということで、我々の団体にもしばしばお問い合わせがございます。しかし、この純粋持ち株会社が導入されますと、ベンチャーキャピタルの経営手法の一つの有力な手段といたしましてこれが非常に活用されるということが考えられます。これから二十一世紀の日本の産業を担う新しいベンチャービジネスを発掘しまして、そしてその活性化を促すということが今非常に重要であるというふうに言われております。そのためにも、中小企業を初めとして、日本企業がこの純粋持ち株会社という有力な選択肢を手にすることが大事だというふうに判断をいたしております。  次に、今回の公正取引委員会の骨子では、事業支配力過度集中する場合にその持ち株会社禁止されるべきとして、三つのケースが定義されております。この定義をどのようにするか、具体的に細かく数字を決めるガイドラインをどうするかについては、与野党の間でもいろいろと議論があったというふうに承っております。  私は、現在の日本経済において戦前のような財閥復活が起きるような事態は今はあり得ない、当分あり得ない、絶対あり得ないというふうに考えております。しかしながら、事業支配が過度集中して、そのことが私たち商工会議所の大部分の中小・零細、そういった企業群の、正常で、さらに公正で自由な競争取引を阻害するような状態を生じたり、その結果国民に不当に高い製品価格を強要したりすることは、これは極めて問題でございます。このために、現在大枠が示されているようなある種の歯どめが必要かと思うものであります。  そして、法律で明確にできない場合、そのガイドラインが策定されることになっております。しかし、そのガイドラインも余りに御当局の裁量の余地が多いものでは困るのであります。できるだけ裁量の余地の少ない範囲で、その上わかりやすいものにするということをお願いするものでございます。  三番目に、さて、私はこの独禁法に関しては、法律論からは余り意見を述べることはございません。これまで実方鶴田の両先生、さらに経団連の方及び連合の方から、それぞれのお立場から御意見が述べられました。また、専門的で内容のあるお話でもございました。このような形で意見表明をなされましたので、私は、むしろ今回の改正をめぐりまして実態面から中小企業にとって懸念される点につきまして、以下四点ほど述べさせていただきます。これらにつきましては、先ほど触れさせていただきました与党の独禁法協議会の場でもお願いしたことでありますが、改めて御説明をさせていただきます。  一番目、事業支配力過度集中した持ち株会社は、規模の経済を実現できるという面で好ましいことであります。しかし一方、大企業がその優越的な地位を利用して、当該持ち株会社以外のグループの中小企業をその会社の意向に反して無理矢理に傘下におさめようというような行動がとられないようにする必要があります。そのためにも、企業買収などに一定の歯どめは必要かと考えております。公正取引委員会事業支配力過度集中させたグループの行動を絶えずチェックできるように、現在検討中の事前事後の届け出、報告を義務づけることのほかに、持ち株会社企業買収などに不正な動きがないかどうかの監視を強めていただきたいと思います。  二番目に、ただいま申し上げましたことは将来の懸念について述べているわけでございますが、現在、既に大企業が存在しているわけであります。また事業持ち株会社も認められていることから、今回の純粋持ち株会社解禁すると否とにかかわらず、中小企業が大企業との関係で不公正な取引を強いられるというようなことがないように、独禁法や下請法等を厳正に運用していただきたいと思います。  市場を構成する当事者が事業支配力過度集中させた持ち株会社のグループだけになると、企業集団の不透明な取引を助長したり、閉鎖的な市場形成につながることなど、最終的には日本経済の活力をそぐことになってまいります。絶えず、日本経済社会に異質な、ベンチャー企業も含めて、元気のある中小企業がこの事業支配力集中させた持ち株会社の対抗勢力として存在することが重要であります。そして、そのような経済社会であれば、経済自体に活力があるでしょうし、また新しいベンチャービジネスが次々と起こってくる土壌が醸し出されるというふうに思っております。我々は、そのような経済風土をつくり出すような努力が必要であるというふうに考えております。  三番目に、特に、昨年、公正取引委員会は審査部を中心に強化が図られました。したがって、大企業事業支配力過度集中し、中小企業の事業活動が圧迫されないように、監視の強化が一層図られることをお願いいたします。  ところで、四番目になりますが、持ち株会社系列企業集団関係についてはいろいろ議論がございます。  御存じのように、経済はますますボーダーレス化しておりまして、中堅・中小企業も好むと好まざるとにかかわらず、このメガコンペティションのあらしの中にはうり出され、そして中小企業も含めた日本企業は、この大競争に勝ち残っていかなければなりません。そのために現在、企業はますます経営の効率化を実現することが要請されておりますし、またその努力をいたしております。そして中堅・中小企業も、当然のことながら、自分たちがこのような厳しい状況にあることを十分に認識をいたしております。非効率な経営体質をそのまま温存するような企業は、今日生き残っていくことはできません。  まだ少しお時間がございますようですから、わき道へそれるかもしれませんが、私が日常聞いております話を加えさせていただきます。  飼えば本の業界、これは今、全国統一価格で行われております。あるいは先生方に本の業界からお願いが行っているかもしれませんが、こういった業界の方々にとりましては、定価で全国統一ということが非常に難しくなってきているという声が上がっております。こういった本の定価も撤廃していくということが独禁法の中に含まれているというふうに私は解釈いたしておりますし、本の小売屋さんにもそういう時代になるよということを申し上げております。今のところなかなかそれには抵抗がございますが、次第にそれの説得に努めているわけであります。  またカメラの現像につきまして、ゼロ円の現像というのも、最近では非常に宣伝が激しくなっております。こういう中におきまして、今後カメラ業界はどうするのか。本体の方は安売りに押されておりますし、現像で生き残っている多くの中小企業のカメラ業界、これも今や自動化されようというふうになっておりますし、その問題でもカメラ業界は今後大変な状況が見えてくるというふうに言われております。  このように、日本企業は日夜猛烈な競争を強いられておりまして、中小企業、特に下請企業は現在極めて厳しい経営環境にあることを御理解いただきたいのであります。彼らは、このメガコンペティションの中で、親会社から、従来の長期的な取引慣行の継続よりも、むしろ親会社の競争強化のために、下請企業がさらにコストを削減するよう強く要請される場面が多々ございます。このような親会社の要求にこたえられない場合には、下請企業は、親会社から取引の選別、下請の切り捨てというような深刻な事態に直面しております。  このような観点を十分御検討の上、懸命に自助努力を重ねております中小企業や下請企業に対し、さらに大企業競争のために攻め込まれております中小商業者に対しまして、政府からの御支援、施策の格段の強化をお願いするものであります。  以上、簡単でございますが、商工会議所の立場から、持ち株会社解禁について意見を述べさせていただきました。  ありがとうございました。(拍手)
  14. 武部勤

    武部委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  15. 武部勤

    武部委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大村秀章君。
  16. 大村秀章

    大村委員 自由民主党の大村秀章でございます。  きょうは独占禁止法の一部を改正する法律案につきまして、参考人の方々に貴重な御意見をお伺いをしたわけでございます。順次御質問をさせていただきたいと思いますが、その前に、大変お忙しい中お越しをいただきまして、貴重な御意見をいただきましたことを、まずもって厚く御礼を申し上げたいというふうに思っております。  先ほど来、参考人の諸先生方から大変貴重な御意見をいただきました。この問題は大変歴史のある問題でございまして、それぞれ議論がされてきたことを、きょうそれぞれの御専門の立場から総括をされて御意見をいただいたわけでございます。  私はこの問題は基本的には賛成という立場でございます。そして、国際的な大競争時代の中で我が国の経済が活力を持っていくためには、企業の自由度といいますか、企業経営の柔軟性をどうしても増していかなければいけないということはあるのではないかと思っております。そうした観点から、今回、事業支配力過度集中を防ぎながら、その目的に反しない範囲持ち株会社というものが解禁をされるということは大変時宜にかなったものであるというふうに思っておるところでございます。  そしてまず、この解禁に当たってのメリット、デメリットにつきまして、そうした観点からお伺いをしたいというふうに思っております。  ここに至るまで、もう既に諸先生方そしてまた本委員会の皆様方、御案内のとおりでございます、この持ち株会社につきましては本当にいろいろな意見が出されてまいりました。  まず、昭和四十年代前半に資本自由化ということが大きな問題になったわけでございますが、その際、産業構造の再編といった観点からこれが議論をされました。そしてまた今から十年ほど前でございますが、昭和六十年代の前半にもまた同じような議論、特に円高の進行の中での国際競争、そうした観点からこうした議論もなされたわけでございます。そして最近の、この数年にわたります議論でございます。  我が国経済は、改めて申し上げるまでもなく、企業活動はどんどん国境を越えていく、そうした中で円高がどんどん進んでおるという状況もございます。そしてまた、製造業を中心に産業の空洞化といった点も懸念をされるわけでございます。そうした中で、国際化そしてまた規制緩和といった観点から、この持ち株会社議論がこの二、三年にわたりまして活発に行われてきたわけでございます。  そして与党三党におきましても、年明けの一月二月、本当に精力的に、与党の独禁法協議会で連日審議を行いまして、今回の方向づけ、取りまとめが行われたというところでございます。  メリットにつきましては、先ほど来から実方先生、鶴田先生中心にお考えをお伺いしたわけでございます。  一つは、やはり実際の経営、企画部門と事業部門とを分けていくということは、企業自身の動きといいますか、大変合理化、効率化といった点が言えるのではないか。そしてまた、いろいろな事業展開をやっていくときに、やはり業態がそれぞれ違うということもございます。製造業そしてまた運輸、流通、それぞれやはり業態が違えば、それぞれに合った雇用形態、労働条件、そういったものがっくれるといったこともございます。そうした人事、労務管理の円滑な実現といったことも言えるわけでございます。そうしたことから、新しい事業分野への参画といったことも、先ほど小柳参考人からもお話がありましたように、そうした点もメリットになるのではないかと思っております。  一方ではデメリットも、これもるるお話がありましたように、日本の場合には大きな企業集団が現実に存在をする。そして、現在もまだ言われておると思いますが、海外からも、日本市場、取引は系列というものがどうしてもあるのではないか、それが公正な競争市場メカニズムを本当に発揮できているのかといった点も懸念をされております。今回持ち株会社解禁することによって、企業再編、企業集中といったようなことがさらに促進をされるのではないかといった点も懸念をされておるわけでございます。  私自身は、今世界的に競争が大変激しくなっている中で、系列といいますか、かつてのような系列企業集団というのが力を十分に発揮するというのはなかなか難しくなっているのではないか、そんな気がするわけでございます。そういう意味では、旧財閥復活だとかそういった点を心配をするのは、ちょっと心配し過ぎではないかというような感じもするわけでございます。  ただ、もちろん諸外国からアンフェアだといったようなことの指摘がないように、やはりそれはしっかりチェックをしていくということも当然必要だというふうに思っております。そういう意味では、独禁当局のそうした公正な対応、適切な対応というのが必要だということも言えるというふうに思うわけでございます。  そうしたメリット、デメリット、私が今申し上げたところが大体のところじゃないかと思うわけでありますが、先ほど来諸先生方から、この点につきましてもるる貴重な御意見をお伺いしたわけでございますが、これまでの経緯を踏まえまして、お考えをお聞きした上で改めて、今回の持ち株会社解禁措置の評価ということ、そしてむしろ、この持ち株会社解禁するということを受けて今後どういうふうに対応していったらいいかというポイント、何が今後の対応としてのポイントなのかということを、まず実方先生、鶴田先生そして経団連代表の弓倉参考人、お三方にお伺いをできればというふうに思っております。  よろしくお願いをいたします。
  17. 実方謙二

    実方参考人 実方でございます。  私の立場からいいますと、持ち株会社形態を通じた過度経済力集中というのが過度に進むことのないように、きちんとした規制が行われるべきであるということでありまして、特に企業集団の問題につきましては、皆さん御案内のとおり、関連会社等も含めますと、金融会社を除いて、日本経済の四分の一ぐらいを占めているということでございますし、企業内取引というのも、これは評価がありますけれども、結構高い比率になっているという考え方もあるので、意見の中でも申しましたけれども、新九条五項による歯どめ装置の適切かつ厳正な運用というのが一つのポイントではないかと思います。  それからもう一つは、これと関連することでございますが、持ち株会社形態をつくりますと、合併等がかなり容易にできるようになってきます。そうなると、株式保有に関する十条、個別の産業分野での競争制限というのが生じてくる場合があるわけで、これは類型の三のところで、関連する分野での有力な事業者が結びつくのは過度事業支配力集中をもたらすということでありますが、欄別産業分野の中でもそういう問題が生ずるおそれがございますので、十条の規制についても、持ち株会社の九条の五項による規制とはまた別個に、持ち株会社形態を通じた企業結合に対して適切かつ厳正に行っていくということも必要だと思います。  それから、中小企業の方から御要望がありました、新規会社の取得に対する監視の強化という点もかつ必要である、そこら辺がポイントではないかということであります。もちろん、行政指導を通じた過度規制というのが望ましくないということはそのとおりでございますが、そういうことでございます。
  18. 鶴田俊正

    鶴田参考人 今の大村先生の御指摘について、私なりの考え方を述べさせていただきます。  三つほど申し上げたいと思うのですが、一つは、持ち株会社ができることによって産業支配が深化するんだという見方があると思うのですけれども、あるいは、旧財閥復活するのじゃないかという懸念を表明される方もいらっしゃいますが、現在の日本の置かれている状況を考えると、いわゆる企業が他の企業を支配するという観点から経営を行う、そういうのんびりした状態じゃないのじゃないかというふうに思うのです。恐らく、歴史上まれに見るくらいに競争の激しい時代になっていると思います。  その一つは、やはりアジアが産業化していることが非常に大きいと思います。第二次世界大戦後、日本経済は順調に発展してまいりましたけれども、日本はどちらかというと、外に攻める立場でありました。貿易の自由化、資本の自由化等々行いましたけれども、むしろその自由化を契機として、日本が海外に輸出を拡大するとかあるいは海外に事業展開するとか、そういう海外に出ていく方が強かったんだろうと思います。ところが、一九八五年のプラザ合意以降急速な円高ドル安が進みました。また、それに並行して、アジアが急速に力をつけてまいったのでございます。  そういう意味で、日本企業が非常に競争に直面しているわけでございますけれども、特にこの十年間に、海外の製品輸入額に占める比率が三〇%から六〇%になるくらいにマーケットの状態が厳しいわけですね。それに日本企業は対抗していかなければいけないわけであります。そのために、グローバルネットワーキングといいましょうか、多くの企業が海外展開をして、そして新しいメガコンペティションの時代に対抗できるような事業展開をされているわけでありまして、そういう意味で、やはり機能的に考えて、企業が存立できるような枠組みを恐らく経営者たちは考えるだろうと思うのですね。  したがいまして、産業の支配ということを直接の目的として事業を展開する時代ではないし、また、そういうことを考えている余裕がないんだろうというふうに私は思います。これが第一点ですね。  第二点目、日本経済の状態を考えてみますと、やはり九〇年代に入って五年ほどでしょうか、ゼロ成長の時代が続きました。これも戦後の五十年間の中で想像できないことであったと思います。  もう大分前、十数年前でございましょうか、一九八二年にアメリカのMITでシンポジウムがあったのでございますが、そのときのテーマが「レッスン・フロム・ジャパン」というテーマでありました。それを主宰したのがレスター・C・サローでございますけれども、当時サローが、私たち十数人、日本から議論に参加するためにコンファレンスに出かけていきましたけれども、そのときに、最後を締めくくる言葉として、アメリカは十年間ゼロ成長を続けたけれども、日本は十年間ゼロ成長を続けたらもたないんじゃないかということを言ったんですね。それはレスター・C・サローの自信でもあったと思うのでありますけれども、実はそのときに私は、日本に、十年間はおろか五年間でもゼロ成長の時代が来るとは思っていなかったんです。ところが、この九〇年代に入って、まさに五年間ゼロ成長の時代が続いて、やっとその閉塞状態から抜けかかっているんだと思うんですね。  そういうことを考えますと、やはり企業というのは、企業の、自分の持っている最もすぐれた企業能力というものを発揮させることが非常に重要であって、そのために一つ企業の結合の自由度を模索しているんだというふうに思いますし、またそのための法整備だろうというふうに思うんですね。  三番目に、さりながら、やはり重要なポイントでございますけれども、先生おっしゃいましたように、系列なり企業集団というのが存在していることは事実でございますけれども、その場合、株式を保有するということは、AがBの株を持つということは、AがBの会社に対して支配力を持つというふうに言ってもいいと思うんです。ただ、マーケットの中で対等の取引をしているときには支配、被支配という関係は成立しないと思うのでありますけれども、株を持った場合それができると思うんですね。ただ、じゃ日本の中で株式を持ち合いしているからそういうことが生まれているかというと、現在は、もしあったとしても非常に限られているだろうと私は思うんです。  一番大事なポイントというのは、やはり最終マーケットでの競争確保されているかどうかだということでありまして、系列と言われている、例えば自動車メーカーを調査しに行っても、血縁、地縁関係でもって部品等々を仕入れるんじゃなくて、そこで支配的なのは競争力である。つまり地縁、血縁関係で物を仕入れるのであるならば、例えば品質が悪くても、値段が高くても仕入れていかざるを得ないと思うのでありますけれども、もしそれをやったら最終マーケットでの競争に生き残れないことになると思うんですね。したがって、企業集団の中でも必ずしも集団内取引が一般的に行われているわけじゃなくて、各集団の中でも、例えば三菱、三井、そういう企業集団をイメージしているわけでありますが、グループの中で財やサービスを仕入れるよりは、最もすぐれたものをマーケットの中から調達するという慣行が日本には定着している。そのために何が必要かというと、結局競争政策がきっちり運営されているかどうかだと思うんですね。  それで、日本の中にそういう競争環境がきっちりつくられていれば、いわゆる血縁関係、地縁関係に依存したような企業取引は行われにくいし、やはり基本は競争力になってくるんだろうというふうに思うんです。そういうふうに私は考えておりますから、この持ち株会社がいわゆる産業の支配にストレートに結びつくというふうには私は思っておりません。  ただ、さりながら、経済活動の中で、結果として過度経済力集中に結びつくようなことが起こり得ないということは断言できないと思いますから、したがいまして、この改正案につきましては、そのおそれがある、懸念がある場合に限って、これは三千億円以上になっているわけでありますけれども、一応事前届け出と、それから事後的に審査するというふうになっております。  そういう意味では、公正取引委員会のモニタリング機能がここで注目されるわけでございまして、そういう公正取引委員会の審査能力というものをきっちり確保しながら、公正取引委員会に、過度経済力集中が起こらないような状態をつくっていくよう努力してほしいと思っております。
  19. 弓倉礼一

    弓倉参考人 今御指摘のございましたお話の中で、特に系列化それから株式の持ち合い、そういったことと、今度のお願いをいたしております独禁法の九条の解禁ということにつないでお答えをしたらよろしいかと、お許しをいただきたいと思います。  確かに系列化というものが、特にアメリカの人たちがあげつらうのでございますが、日本経済構造の中で一つの問題になっておった、排他的な一つの何かのつながり、特に外国人から見ますというと隠微な、陰湿な、密約のようにとられる。あるいは、株式の持ち合いにしてもそうでございますが、これはテークオーバービッドなんていうのは簡単にできない日本市場で、自分たちが防衛するためには株式の持ち合いという形で、一つの集団性といいますかグループ性を持たざるを得なかったように私は考えております。そういう意味では、アメリカの皆さんがおっしゃるように、それをことごとくが陰湿で悪いものとは言い切れないと思っておりますけれども、決して明るい、フリーなシステムであるとも言い切れないと思っております。  そこで、この持ち株会社、特に純粋持ち株会社が許されるという段階になりますと、もう堂々と一つの形での流れというものを、陰湿性がなくてこれは標榜することは可能になる。そういう点で、私は、今もう既に、最近の持ち株会社というものを踏まえて、株式の相互の持ち合いの関係なんかも減っていく方向に向かっておる、実績がもう出つつあるというふうに理解をいたしております。  そういう意味では、直接持ち株会社がすべてを変えていく、問題点を解決するとは申せませんが、今までの陰湿な感じというものを払拭するには非常に有効であるというふうに考えております。
  20. 大村秀章

    大村委員 ありがとうございました。  それで、あと何点かいろいろお聞きをしたいわけでありますが、次にお聞きをいたしますのは、持ち株会社解禁によりまして、先ほど連合の松浦参考人からもお話をいただきましたが、労使関係への影響というのはいろいろ御意見、御議論があるところであるわけでございます。この点につきましては、連合と日経連、経団連によりますスタディーチームによりまして、ちょうど一年前の四月に一定の取りまとめがなされたというふうにお聞きをしております。  この中で、労使は、持ち株会社解禁によって労使関係にさまざまな問題を生ずる可能性については認識が一致をした、またこれらの懸念を払拭していくために労使がともに努力すべきことを確認をしたというようなこと等々、いろいろなことが共通認識ということで確認をされておられるわけでございまして、そうした点を踏まえまして、ことし二月二十五日の連合、日経連、経団連という形での三者の合意になったというふうに認識をしております。私は、この合意にありますように、まさしく、労使関係の対応につきましては、労使協議の実が高まるように当事者間で十分議論をして適切に対応するということが大変重要だというふうに思っておるわけでございます。  そこで、この点につきまして、この労使関係への影響、大変重要な課題であるというふうに思っております。改めまして、労使双方の代表ということで、まず経団連の弓倉参考人、それから後、連合の松浦参考人から、それぞれ労使関係につきましての御意見をお伺いできればというふうに思っております。よろしくお願いをいたします。
  21. 弓倉礼一

    弓倉参考人 申し上げます。  労使関係についての問題点、御指摘は、私も純粋持ち株会社論議の過程において承り、あるいは一緒に考えたのでございますが、一番注意しなくちゃいかぬと思いますのは、極めて強力な持ち株会社、親会社が’孫会社といいますか、さらにその下の会社の労働条件その他、いわゆる労働者保護の基本に関する内容に強烈な圧力あるいは影響を及ぼして、そして組合側にしてみれば、これに対して直接要求ができないということの可能性の問題でございます。これは絶対ないというふうには言い切れないと思っておりますが、それが実質的に、いわゆる持ち株会社が一々その子会社条件について、採用から、あるいは給与のベースから労働条件まで一々全部かかわって指示をするということでありますれば、これは非常に問題が出てくる可能性はあります。  しかし、本来持ち株会社というのは、そういうことの実質的な経済活動からは離れて、もっと大局的に戦略を考えるためにできる機能でございますので、私はこれを防ぐことは可能であると思いますし、現在もう既に御厄介になっております三者、労働それから日経連、経団連の十分な協議でこれから十分な御検討がいただけることを期待いたしておる次第でございます。
  22. 松浦清春

    松浦参考人 言うまでもございませんが、本来、労働者と経営者との間には立場上の力の差があるということから、現在労働組合法あるいは労働基準法が設定をされて、労働者が団結をすることによって、労使対等の立場で労働条件等についてきっちりと話し合うということが確保されているわけでございます。  しかしながら、先ほども申し述べましたように、残念ながら現在の労働組合の組織率が二三・一%というところにあるわけでございます。私ども労働組合としては、これまでは高度成長過程にありまして、労働組合があるかないかによって企業間で労働条件の格差は生じていないわけでありますけれども、バブル経済がはじけて以降のここ数年間では、企業規模による格差という問題とあわせて、労働組合が組織されている企業か否かによって、労働条件の向上や安定というものに大きな差異が生じてきているということを現在危惧をしているところでございます。  したがって、私どもは、組織された労働者が未組織の労働者に対して、その労働条件や雇用をいかに安定をさせるための手だてをとるかということとあわせて、今回の問題につきましても、いわゆる間接的な経営者ということで、事業を支配する、事業運営に介入はするけれども、労働者の労働条件の設定には責任を持たないという、そういった中途半端な措置といいますか位置づけというものについて、これをなくすということが今回の持ち株の自由化問題には欠かせない課題だ、このように考えているということを申し上げておきたいと思います。
  23. 大村秀章

    大村委員 大変ありがとうございました。  まだまだお聞きしたいことがあるのでございますが、そろそろ時間になってまいりました。  今回の持ち株会社解禁、せっかく何年にもわたる議論を積み重ねて、今回こうした法改正ということで提案をされておるわけでございます。ぜひ実際これを契機として、これをうまく使って経済の活性化ということができていけば、していただければというふうに思うわけでございます。  そのためには、先ほど申し上げました、お聞きをいたしました労使関係の点も大変重要な課題であると思いますし、また税制、これも多分既にいろいろ御議論が当然あったと思います。この点につきましては、私も昨年末、いろいろそういう場でも主張させていただきました。連結納税制度の早期の実現でありますとか、実際に分社化をする場合の譲渡益課税でありますとか、いろいろな税制の課題がまだございます。  それからあと、持ち株会社による企業集団をつくった場合のディスクロージャー、連結財務諸表の問題だとか、また商法の規定の整備、いろいろな関連規定の整備という課題がまだまだあろうかと思います。そうしたことをしっかりやって、環境整備をしっかり行いまして、この持ち株会社解禁ということが日本経済にとってプラスに行くようにということをぜひ関係者の皆様にまた引き続き御努力をお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  24. 武部勤

    武部委員長 次に、伊藤達也君。
  25. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 新進党の伊藤達也でございます。  参考人先生方には、大変貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。  先生方から御指摘がありましたように、私も、世界経済のボーダーレス化、グローバル化の進展というものを考えてみますと、我が国経済がほかの国の企業と同じように競争力を維持していくためには、企業経営の多様化を図っていくためにも、持ち株会社の制度の活用ということは非常に重要な点ではないかというふうに思っております。  また、今回の法の改正が、事業支配力過度集中することにならないような持ち株会社解禁するということを内容としておりますので、この基本的な方向性については、私どもも大変評価をしているところであります。  しかしながら、本改正解禁結論が前面に、前に出てしまいまして、本来議論をしなければいけない点が多々積み残されてしまったのではないかというふうに思います。これは、今までお話がございましたように、労働問題でありますとか、中小企業に対する影響の問題でありますとか、経済力集中に対する監視体制の問題でありますとか、情報開示の問題でありますとか、株主の権限の保護あるいは連結納税制度の問題等々、持ち株会社の本質に迫る議論をやはりしっかりやっていかなければならないというふうに思っております。そういった問題意識を持ちながら、質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず初めに、松浦参考人に、労働組合、労働関係の問題についてお伺いをしたいというふうに思います。  この問題については、本会議においても与野党から労働大臣に対して質問がなされたわけでありますが、しかるべき対処をしてまいりたいという御答弁が繰り返されて、しかるべきという内容は何なのかなということでありました。本委員会においても、同じような質問が何度もなされたわけでありますけれども、しかるべくをしかるべくしてどうしかるべくなのか、よくわからないというようなことであったわけでありますが、この点について、労働界として政府、労働省に対してどのような対応を求められるのか、お伺いをさせていただきたいと思います。  また、あわせてお伺いをさせていただきたいのは、審議会の設置の問題であります。労働法制の問題については、国会の現場においても幅広い充実した議論をしっかりやっていかなければいけないわけでありますが、この審議会の設置については、本委員会で労働省は、行財政改革の観点から極めて消極的な意見を明らかにしているわけでありますが、この点についてどのように思われるのか、お伺いをさせていただきたいと思います。
  26. 松浦清春

    松浦参考人 しかるべき対処をしてまいりたいということでございますが、私どもが考えております対処策は、先ほどもるる申し上げましたように、現行の労働組合法、制度につきましては、いわば持ち株会社禁止を前提としたものでございます。したがいまして、今の法律のままで持ち株会社が自由化されますと、持ち株会社は、いわば親会社の使用者性について、その都度裁判によってその責任を明確にしなければならないということになるわけでございます。  したがいまして、この独禁法解禁の確認とあわせて、少なくとも解禁によってそうした労使問題が生じるということを前提にして、持ち株会社の使用者性について明確にする、そういった措置をとっていただきたい。もちろん、法律を変えるということでございますので、その使用者については、直ちに持ち株会社についても使用者とするというような簡単なものではないということを承知をいたしておりますので、日経連、経団連と三者で話し合いましたのは、二年程度の時間をかけて、ヨーロッパやフランスなど、既に先進的な取り組みをしている国もありますし、労使関係もございますので、そこらあたりの実態もきっちりと調査をして踏まえていただいた上で、持ち株会社がどういう場合にいわゆる使用者であるということなのか、その判断基準について法律の中にきっちりと整理をしていただきたいということでございます。  それから二つ目は、審議会問題でございます。  私どもも、規制緩和委員会の中で、審議会については無用になったものがあるのではないかという指摘がされ、そのほかの規制問題についても、これは手続の一環ということでとらえられているわけでございますけれども、承知をいたしております。そしてまた、そういうふうに無用になった審議会について、これを廃止をするということについて、反対の立場はとっていません。むしろ積極的に賛成をしていきたいというふうに考えておりますが、冒頭にも申し上げましたように、経済的な規制緩和をする、自由競争市場を拡大をする、積極的な経済活動を展開をするという前提は、やはり何といっても公正な競争ルールというものが設定をされるということでなければ、弱者がさらに泣きを見るということになるというふうに判断をしているわけでございます。  したがいまして、審議会問題につきましては、行財政改革という状況のもとで不要なものについて削除するということは当然でありますけれども、経済規制緩和という問題に関連をして必要と判断されるものについては、行政改革の途中であったとしてもぜひ新たに設定をしていただきたいということをお願いをしておきたいと思います。  以上であります。
  27. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 ありがとうございました。  次に、持ち株会社解禁範囲について、弓倉参考人小柳参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。  この範囲については、公正取引委員会ガイドラインを策定することが実態に即した法適用が行われるためには必要であると思いますが、同時に、公正取引委員会の行政の裁量の余地を少なくし、その内容の透明性、明確性を確保することは極めて重要であります。可能な限り客観的で、かつ明確なものを策定していくために、経済界の立場から、あるいは中小企業立場から、どういう点に具体的に留意をしてこのガイドラインの策定に当たっていただきたいのか、その点について御意見をお伺いをしたいと思います。
  28. 弓倉礼一

    弓倉参考人 申し上げます。  本件は、長い検討の中の重要問題の一つでございまして、私どもの理想といたします点は、一切の条件、一切の拘束をなしにして、経済行動でございますから、企業はその最もいいと信ずる方向で活動すればいいのだ、一応ベースとしてはそういうものであるべきではないか。ただし、それでは自由公正な競争が制限されたり、あるいはもっと不当な競争になってはいけないということから、自由にして公正な競争の維持に対して明らかにそれを阻害するような内容については、純粋持ち株会社を認めていただくにしても、これはやはり厳密に禁止をされるということは甘んじて受けなくてはいかぬことであるというふうに考え及んでおるわけでございます。  ただし、これは非常に希望を申し上げたいと思いますのは、最小限規制ということでありまして、自由に経済活動を認めるのが本来の姿であるということをベースにお考えをいただきたい、そう考えておる次第でございます。  もう一つ、何と申しますか、先ほどからの参考人の方々のお話にもございましたように、グローバルスタンダード、世界的な標準にできるだけ合致をした状態で今度の持ち株会社に関する規制もお考えを願いたいという考えを持っておるわけでございます。今我々が一番悩んでおりますのは、日本人として、日本人のひとりよがり的な、これでいいだろうというのは、実はグローバルスタンダードに照らしてみたときに通用しない。ここでさまざまな困難にぶち当たるものでございますから、新たに持ち株会社解禁に伴う規制も、本来ならなしのところを必要最小限度の御指導をいただけるような形にしていただきたいと考えておるわけでございます。
  29. 小柳重隆

    小柳参考人 先ほど申し上げましたように、権力の集中、それから権力からの圧力、こういったものが中小企業を圧迫するという形が一番問題であることであろうというふうに思います。この辺を公取さんがどういうふうにお考えになっていただくのか。といって、余り強い規制では困るわけでありまして、競争社会の中にあっては、そういうものが力を発揮できる自社の努力というものも必要であります。この自社努力ができる範囲の自由さを持った上で、金額的圧力、こういうものはぜひ排除していただきたいというふうに思います。  あとは、そうは申し上げても、やはり取引先としてのいろいろの圧力というものはないとは言えないと思います。その場合、中小企業としては、それに対して物を申せる何か場を設けていただきたいというふうに思います。  以上であります。
  30. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 どうもありがとうございました。  次に、実方先生にお伺いをしたいと思います。  持ち株会社解禁後、経済力過度集中をどう監視するかをしっかり考えていかなければいけないわけでありますが、そのためには、先生が御指摘のように、競争政策の積極的な展開を国際的な水準に引き上げていくことがとても重要だというふうに思いますが、どのような具体的な視点を持ってこの問題に対応していかなければならないのか、その点についてお伺いをさせていただければと思います。
  31. 実方謙二

    実方参考人 問題は多岐にわたりますが、まず基本的には、カルテル規制、特に談合規制等は、これは諸外国でも、公共の利益に反するものに限定してカルテル禁止しているような国でも、談合はそれ自体違法になっております。したがって、カルテル規制の全体の強化ですね。  それから、企業結合につきましても、これはいろいろな側面があるわけですが、競争の国際化というのがございますから、本当に国際競争力の面で問題がある、それで外国からの競争も非常に現実に激しいという場合はそれも考慮することが必要でありますが、一面におきまして、例えば株式等を通じた流通支配があって、それが外国企業日本市場への参入に対する阻害要因になっているということがさまざまな交渉の中でも指摘されておりますから、企業結合につきましても諸外国並みにきちんとした規制をする。  それから、そのほか不公正な取引方法等につきましては、特に優越的地位の乱用とか、それから排他的な効果をもたらすような流通系列化に関連するもの、技術的になりましたが、そういう全体に強化すべき点はかなりこれまでに公正取引委員会によって実現しておりますけれども、それを今後ともさらに発展させておくことが必要であるということであります。  それから、余談になりますが、公正取引委員会というのは独占禁止法で権限行使の独立性が保障されておりまして、もちろん公正取引委員会の独立の判断で厳正かつ適切な独占禁止法運用が図られることが、実際にも、それから制度上も期待されているわけでありますが、ともすればその時々のさまざまな経済的環境によってその運用の強さが左右されるということがないとは言えないわけであります。したがって、持ち株会社に関する規定改正いたしまして、これで日本経済の実情に対応するようになったということでありますから、これをきっかけにして、さらに諸先生方独占禁止法の適切かつ厳正な運用に対する御理解の御深化といいますか、私が言うのは変でございますが、そういうのがあって初めて競争政策強化というのも実現するのではないかと考えております。
  32. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 さらに実方先生、あわせて鶴田先生に御質問させていただきたいと思います。  私は、現在の監視体制のままで経済のグローバル化に本当に十分に対応することができるのかなという疑問を持っております。  解禁後、最も問題となるものの一つとして、企業買収による競争制限があると思いますが、欧米では、合併、買収、ともに事前届け出が必要であります。独禁法第十条では、日本の場合には事前届け出制は現在のところありません。欧米の場合には、外国企業の合併、買収であっても、自国の市場に影響を及ぼす限りは届け出規制の対象にしているわけであります。したがって、例えば東京銀行と三菱銀行の合併は、事前に欧米に届け出がなされているわけであります。  さらに、日本以外の主要先進国は、独禁法運用協力協定を結び、経済のグローバル化に対応していますが、この点についてしっかりとした議論日本の国内の中でされているというふうに私は思えないわけであります。私は、早急に企業買収の事前届け出制の導入ということも真剣に検討していく必要があると思いますし、国際的な運用協力協定を結んで、日本の管轄権やあるいは協議権をしっかり確立をしていくということも非常に重要ではないかと思いますが、両先生、この点についてはどのようにお考えになられるのか、お伺いをしたいと思います。
  33. 実方謙二

    実方参考人 まさに御指摘のとおりでありまして、さらに私がつけ加えるところもございませんが、私も、それも早急に解決すべき課題だと考えております。  それで、聞きますところによりますれば、関係機関におきましても、研究会等を設置して、その点も次に早急に解決すべき課題として検討中であると伺っております。おっしゃるとおりだと思います。
  34. 鶴田俊正

    鶴田参考人 私は法律の専門家じゃございませんけれども、私も先生がおっしゃられたことについて多少の懸念は持っております。多少と申し上げましたのは、買収の際に自国の市場に影響を与える場合に事前届け出制を導入した方がいいというふうに考えますけれども、ただ、それを余り広く適用すると経済力をそぐ場合もあるかもしれない。買収するにしても、買収にはコストがかかりますから、買収のコストを上回る利益があった場合に限って買収行為があるのだろうと思いますから、おっしゃるようなことは私も重要だと思いますけれども、無差別に、何でも買収の場合に事前届け出が必要だというふうにはお考えにならない方がいいのじゃないかなというふうに私も思います。  ただ、やはりこれから国際化していくわけでありますから、今先生がおっしゃったことは十分に配慮しながら独禁法運用をしていくことが重要だと思います。  それから、モニタリングについてでございますけれども、私は、モニタリングというのは重層的な関係であるべきだというふうに思うのです。つまり、独占禁止法というのは言うまでもなくある一つのルールを決めているわけでございます。ルールをきっちり企業が守っているかどうかをモニタリングする機能を公正取引委員会は持っていると思うのですね。  本来であれば、アメリカのように例えば民事訴訟が活発な社会であるならば、企業相互に、相手がルール違反しているかどうかということを民事訴訟で白黒決着をつけるわけでございますから、そういう制度が定着している国では日本以上にモニタリングが、アメリカではFTCなり司法省になると思うのですが、そのモニタリングは日本公正取引委員会よりももう少しやりやすい関係だろうという気がするのですね。つまり、民事訴訟の中でいろいろ企業の取引についての双方の牽制が働いているわけでありますから。  日本という社会は民事訴訟等々について余り一般化しておりませんし、特に競争政策分野でそれが一般的に行われているというふうにも考えられない。特に、アメリカに行きますと、一年間の判例が、こんな厚いのが二冊もあるのです、細かい字で書いてあって。そういう意味では全部読むのはほとんど不可能なくらいな一般の民事訴訟を基礎として、それをベースとして競争政策が展開されているわけでありますから、それに欠ける日本のことを考えますと、私は、公正取引委員会の機構はかなり充実してまいりましたけれども、さらにそういう日本国有の社会のあり方を考えていった場合には、公正取引委員会の機構はこれでいいのかということを絶えず問題意識の中に持っていった方がいいのじゃないかなという気がするわけです。  それからもう一つ、重層的だと申し上げたのは、公正取引委員会がきっちりモニターしているかどうかということをやはりどこかがモニターしていくことになると思うのですよ。そのどこかがモニターする機能というのは、まさに国会が持っているのだと思うのですね。そういう意味では、先生方公正取引委員会がきっちりモニターしているかどうかということを絶えず監視されていなければいけないし、民主主義社会というのは、国会がきっちりモニターしているかどうかというのは、実は私たち国民が国会をモニターしているということになると思うのです。  そういう重層的なモニタリングの仕組みを日本社会に埋め込まなければいけないし、特にアメリカと比較していった場合に、民事訴訟制度が日本では余り、アメリカほど慣行化しておりませんから、その点を配慮した公正取引委員会の機構の整備ということをやはり考え続けることが必要だなというふうに私は思います。  それから委員長、先ほどのことで一言ちょっと訂正したいことがございますが、よろしゅうございましょうか。
  35. 武部勤

    武部委員長 はい、どうぞ。
  36. 鶴田俊正

    鶴田参考人 先ほどの発言で、モニタリングに関して、持ち株会社の事前届け出というふうに私は申し上げたような気がするのですけれども、法律は設立の日から三十日以内にということでございますから、そういうふうに訂正させていただきます。
  37. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 大変貴重な御意見をありがとうございました。  弓倉参考人に重ねてお伺いをさせていただきたいと思います。  持ち株会社制度は万能薬ではありませんが、この制度が積極的に活用されることにより、日本経済の発展に寄与することになるよう関連する諸制度の整備をしていくことは極めて重要であります。参考人の方からお触れにならなかったのですが、特に連結納税制度については、本会議においても野党から質問が出まして、大蔵大臣は、持ち株会社解禁と連結納税制度等の税の議論とは直接関係するものとは考えていない、慎重な検討が必要とされる研究課題であると重ねて答弁をしておられました。また、当委員会でも同じようなやりとりがされたわけでありますが、この点について弓倉参考人の方から、先ほどお述べになられてなかったものですから、御意見をお伺いしたいと思います。
  38. 弓倉礼一

    弓倉参考人 先ほどは連結納税制度に及ばず、時間を超過してしまいました。おわびを申し上げたいと思うのでございますが、先生御指摘の問題というのは極めてシリアス、重要な問題であると考えております。この純粋持ち株会社が九条解禁で許されることになりましたら、それを具体的に実効あらしめるのは関連する諸法規、特にいわゆる税制の改正が必要である。連結納税制度というようなことが認められませんと、持ち株会社をつくって子会社に資産を譲渡して税金をまたさらにお支払いするというようなことで、むしろ実際上非常にコストの高いことに相なるのでございます。  したがいまして、いろいろな法律があろうかと思いますけれども、国会の議決を経てその法律が認められまして施行に及びますと、ほかにほとんど関係はないのでございますが、この持ち株会社の九条の解禁ということにつきましては、まず改善の一歩に入った。引き続き、税制その他の関連の法制の改善ということに御論議をお願いをしたい、そう考えている次第でございます。
  39. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 私は、この問題は西川委員の方からも本委員会で御指摘がありましたように、また甘利委員の方から本会議でもお話がありましたように、税負担を逃れるということよりも、日本経済を再建をし、税収の向上につながる、そういう視点からこの問題を積極的に検討していくということは大変重要なことではないかというふうに思います。  ただ、納税に連結を求める以上、先ほど来から御指摘ありましたような労働問題でありますとか、あるいはドイツ政府が今情報開示の問題について、持ち株会社そして子会社の経営情報を積極的に開示をしていく、そういうことをねらいとした法律を準備しているようでありますが、企業側にとってもやはりこういった点、積極的にディスクロージャーをやっていく、そういう姿勢が非常に重要ではないかというふうに思います。  さらには、法の整備、商法、会社法の整備の中で、企業グループ法あるいは企業結合法といった法体系の整備という問題もこれから国会の審議の中でしっかりやっていかなければいけないわけでありますが、そういった問題についても前向きに経済界側も検討していくということも重要ではないかというふうに思いますが、この点についてはどのようにお考えになられるのか、御意見をお伺いしたいと思います。
  40. 弓倉礼一

    弓倉参考人 全く御指摘のとおりでございまして、先ほども申しましたように、我々も今回の独占禁止法第九条改正案がすべてだと思っておりませんで、これからこれを実のあるように、経済界も全面的に私心を捨てて提案を申し上げ、あるいは国会の御検討に御協力申し上げたいと皆考えておるということを御理解賜りたいと思います。それでよろしゅうございましょうか。
  41. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 持ち時間が参りましたので、今御指摘が参考人先生方から多々ありましたように、持ち株会社制度をせっかく導入していくわけでありますから、これがきちっとその実のあるものにしていかなければいけない。そのためには、やはり国会においてまだまだしっかり議論をしていかなければいけない点が多々あるわけであります。今まで参考人先生方からも多岐にわたってその示唆をたくさんいただきました。私たち立法府においては、そういったものをきちっと生かして、そして、今回の法の改正が国民生活の向上と日本経済力の回復に資するような形で、しっかり対応できるような行動をとっていきたいというふうに思っております。  最後に、先生方の本当に貴重な御意見に対しまして重ねて御礼を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  42. 武部勤

    武部委員長 次に、小林守君。
  43. 小林守

    小林(守)委員 民主党の小林守でございます。  まず最初に、参考人の皆様には、大変御多忙のところ本委員会に御参加をいただき、そして貴重な御意見を承っておりますことを心から感謝を申し上げたいと思います。  私たちも、日本経済を取り巻く国際的な環境についての認識は、既にお話がありましたいわゆる経済のグローバル化、そして旧社会主義経済圏が市場経済化を導入して発展の過程にあるわけですけれども、これらを含めて、まさに地球規模の大競争時代に入っているという認識を持っております。  さらに、世界の成長センターと言われるアジア、特に東アジアの経済圏の高度な急速な成長によって、日本経済が追い上げられて、そして産業の空洞化が進んでいる。こういう現実に直面をしているわけでありまして、そういう点で、日本企業、そして経済のシステムは新たな段階での仕組みをつくり出さない限り、今後の発展の展望を開くことができない、そういう大変厳しい状況に陥っているというふうに考えております。  このような熾烈な国際競争と産業空洞化に対処して、日本企業が、経済が再度活力を取り戻す一つの方策として、そしてもう一つは、国際的な企業経営形態のハーモナイゼーション、そういう観点からも、五十年来の日本の独禁政策の柱であった純粋持ち株会社制度の解禁について、私たちは一定の条件整備の方向で、それを前提として同意していきたい、このように考えているところでございます。  それでは、どのような条件というものが求められているかということになるわけでありますけれども、申すまでもなく、経済憲法と言われた独禁法、そして特に第九条の持ち株会社禁止というのは、戦後の日本経済民主主義の象徴であった、このように考えておりますし、公正で自由な国内の市場競争政策の礎であった、そして今日までの日本経済の民主的な成長発展をもたらしてきた根本の理念であった、このように受けとめているわけであります。  もちろん、事業持ち株会社の問題で変質をしてきたということはあるわけですけれども、私どもは、このような憲法のもとで公正で自由な競争政策確保されたことによって今日の日本経済の発展があったというふうに受けとめているわけでありまして、そういう点で、一定の条件整備の方向でこの純粋持ち株会社解禁に同意するということには、まず何といっても競争政策強化、そして確保、適正かつ厳正な運用確保されなければならないということであります。  そして、実は独禁法の第一条の目的を再度読み直してみたわけですけれども、事業支配力過度集中防止して、一切の事業活動の不当な拘束を排除して、公正かつ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにして、そして大事なところは、雇用及び国民実所得の水準を高め、もって、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する、これが目的なんですね。  そういう観点に立つならば、それでは、持ち株会社解禁することによって懸念がされている雇用の問題、さらには中小企業の問題、そして広く一般消費者、国民の利益の問題、こういうものをしっかりと確保していく。こういう観点条件整備が確保される方向で、今すぐというのはなかなか難しい、やってみなけりゃわからぬという問題もあろうかと思うんですが、そういう方向での同意をしていかなければならないときが来ている、このように考えているところであります。  そういう観点に立ちまして、一つは、いわゆる企業の経営形態として、さらには競争政策観点から、国際的なハーモナイゼーション、そういう視点でこの問題を整理していく必要があるだろう。  それからもう一つは、国際競争力を持つ経営と、ともすれば、そのことによって阻害される関係にある、経済民主主義という概念を使いますけれども、そこに働いている、企業に働く人たち、さらには一般消費者、そういう人たちの利益の問題を考えなければならないわけでありまして、そういう点で、国際的なハーモナイゼーションと経済民主主義ということをどう調和させていくか、ここにこの独禁法改正方向性を求めなければならないと考えているところであります。  そういう点で、御承知のところ、既に触れられている問題でもありますが、日本企業法制というのは、経済的な用語だと思いますが、独特の単体原則というか、一つ企業ごとにいわゆる会社法、商法とか税制ができている。さらには、会計制度もそうなっている。そして労働法制も、すべて基本的には単体の企業として取り扱っているような仕組みになっているというようなことでありますけれども、今度の独禁法九条の改正というのは、いわゆる単体企業というか、そういう仕組みが大転換されていく一つの始まりだろう。このように見ていいと思うんです。これが私は、国際的なハーモナイゼーションをさせていく一つの切り口になるんだろう、このように考えております。  それからもう一つは、やはり先ほども言ったように、経済民主主義という立場から、経営至上主義に陥ってしまったり、資本の論理を追求する余りに、国際協調とか諸国民の、国民ばかりでなく諸国民の公共の福祉というものが阻害されるようなことがあってはならないわけでありますから、そういう点で勤労者や消費生活者、これは何も日本国民だけではないんですね。すべての諸国民の犠牲の上に立つような日本企業の国際競争力の強化であってはならないんだ。これが経済民主主義という立場考え方だと思うんですけれども、そういう点に立って、今後の独禁法の進め方について、運用のあり方について、それぞれのお立場からの御意見をお聞きしておきたいなというふうに思うわけであります。  まず最初に、やはり何といっても経済民主主義という観点から、基本的には、中長期的には規制緩和、そして独禁政策の解禁という観点に立つならば、中長期的、マクロ的には、新たな段階における雇用が創出されるであろう。また、されなければならない時代が来ているというふうに思うんですが、短期的、そしてミクロの企業レベルにおいては、相当のリストラとか人事政策上のさまざまな雇用問題が発生して、また増大していく、このように考えられるわけであります。そういう点から、従来以上に労使関係や雇用の安定に十分配慮した労働政策が求められている、このように考えるわけであります。  ちなみに欧米では、労使協議制とか共同決定とか、こういう被雇用者が経営に参加するような仕組みがもうどんどん取り入れられているわけでありまして、そういう観点に立っても、労働法制そのものも国際的なハーモナイゼーションが求められている時代になっている、このように私は受けとめているわけでありますが、その点について、松浦さん、そして、経営者側を代表されていると思いますが、弓倉さんに、それぞれお聞きをいたしたいというふうに思います。
  44. 松浦清春

    松浦参考人 御指摘いただきましたように、経済民主主義という立場からというよりも、むしろ現在は、バブルがはじけまして以降、企業の海外進出等によりまして、国内における雇用の数は極めて減少をしているというのが実態でございまして、私ども連合といたしましては、あらゆる角度から国内における雇用の創出を訴えているわけでございますけれども、今回のこの持ち株会社の自由化によりまして、労使の協議なしに経営のリストラが行われるとか、あるいは雇用に手をつけるような人員措置が行われるということについては絶対に避けなければならない課題だ、このように実は考えているわけでございます。  特に、先ほども申し上げましたように、ドイツやフランスなどでは既に持ち株が自由化されておりますけれども、その労使関係については法律で一定の水準、基準が設定をしてございまして、そうした中でスムーズに運営をされているわけでございます。  私どもとしては、そうした実情を勘案をしながら、これまで以上に、仮に持ち株会社の自由化が実現をされた後でも、労使関係がスムーズにいくように、法律の整備によって、少なくとも親会社、持ち株会社の使用者性を明確にしていただく。その上で企業グループ化が進められるということも想定をいたしておりますので、後は労使の努力によって、グループ企業間における話し合いの場を新たに設定をしていく、あるいはその企業グループ間における労使の協議の効力というものを強めていく、そういう取り組みを、これは法律で設定をしていただくということとは別に、労使で努力をしていかなければならない課題として、もう一つ大きな問題としてとらえているということについて、御理解をいただきたいと思います。  それから、そうした視点につきましては、既に与党のこの問題のプロジェクトチームの皆さん方に書面で、日経連、連合、そして経団連三者の合意事項として提示をいたしました文書の中にも明確にいたしておりますように、その検討期間は二年を限度とするということにいたしておりますので、仮に、この法律が先行して実施がされた以降こうした労使紛争問題が生じた場合には、日経連と連合が共同してその紛争解決に努力をするということについても既に確認をいたしているところでございますので、そうしたことについても御理解をいただきたいと思います。
  45. 弓倉礼一

    弓倉参考人 先生御指摘のとおり、今の労使の関係というのは、これからさらに議論は、持ち株会社と直接結びついたものではなくて、もっと大きな問題として私は論議を避けては通れないものと考えております。  特に、老齢者の増加の問題、それから、今までどおりの仕組みによる労使関係がそのままでいいのかどうか、経済の仕組みはどんどん変わって新しい波に乗っていく中で、労使関係だけが従前どおりのパラダイムで進めていけるものとはちょっと思えないのでございます。そういう意味で、先生の御指摘の抜本的な論議を、しかも辛抱強く、労使の根まで、根本にまで及んで今これから考えなくちゃならない。  特に、東アジアあたりに日本企業は大変な数が進出をいたしております。日本の労働組合の保護にあずかるのは、そこへ行っておる日本人のその会社の従業員、組合員メンバー。すると、ほかに現地のたくさんの労働者たちがもう黙っておりませんですから、そういうふうな大きな問題の解決の一つ持ち株会社というものの勉強が、そういうものとのかかわり合いのもとで、その刺激剤の一つであるというふうに私は考えておりまして、持ち株会社が御承認をいただけたから労働問題が新たに出てくるんだという問題とは少し違うように理解をいたしておるのでございます。  重ねて申し上げますが、御指摘の労使関係の再調整、新しいグローバルな関係改善というのはもう絶対避けて通れないし、我々が今これからやらなくちゃならぬことだと思っております。日経連の皆さんによく相談をしようと思っております。
  46. 小林守

    小林(守)委員 経営形態の国際化、ハーモナイゼーション、グローバル化というものに連動いたしまして新しい労使関係が創造されなければならない、このような御認識に立たれているというふうに受けとめさせていただきたいと思います。  同じような問題で実方先生そして鶴田先生に、これからの持ち株会社解禁も含めたいわゆるグループ企業企業結合の非常に多元化というのですか多様化の中で、新しい労使関係のあり方についてどのような御見識をお持ちになられているか。新しい雇用形態、企業の経営のあり方、その中における労使関係のあり方ということになるわけですが、その辺の御見解をお聞かせいただければありがたいと思います。
  47. 実方謙二

    実方参考人 まず最初に、持ち株会社解禁経済民主主義、広く経済民主主義関係ですが、競争政策と申しますと、個別の産業分野市場競争の制限が起こるかどうかということがまず中心なんですけれども、もう一つ観点は、特に上位の大企業経済力集中する、それによって中小企業ないし消費者、労働者との間の力の格差が広がるということも一つの大きな問題となるわけであります。持ち株会社解禁するというのは、経営形態の選択肢を広げて国際化時代に対応するということで必要な面もあるわけですが、一面では、そういう大企業とそれからその他の国民階層との間の格差を拡大するという側面もありますので、それが過度に進行することのないように考慮すべきであるということを考えております。  それから、それに関連しまして、これまでの日本企業と労働との間の力の配分関係でありますが、これも労働省の調査等でも明らかになっておりますけれども、特にドイツなんかに比べますと、いわゆる労働分配率ですが、労働分配率が五ポイント以上も日本の方が低い。それで、日本経済は奇跡的な回復を遂げて、国際社会でひとり勝ちと言われておりますけれども、その陰には、ドイツ等に比べると労働分配率が極めて低いというひずみが残っているわけであります。  そうしますと、やはり持ち株会社解禁というのは、一つはその活性化に役立つとともに、これまでのそういうひずみを拡大するおそれもないとは言えないということでございますから、労働法の改正それ自体は子会社が存在する場合のすべてに共通する問題で、なかなか全面的に見直すということは難しいかと思いますけれども、さらにこれまでのような、労働分配率の低さに見られるようなひずみというのが持ち株会社解禁によって拡大しないように、特に、経営者、労働者の間の自主的な話し合いとか公正な労働慣行を進めることによって、日本経済の活性化が中小企業、労働者、消費者をすべて含めた日本国民全体の利益につながるように運営していくことが最も重要ではないかと私は考えております。
  48. 鶴田俊正

    鶴田参考人 先生の、企業競争力を確保することと勤労者の利益を確保する、このバランスをとらなきゃいけないという御指摘は、まさにそのとおりだと私も思っております。  私が理解する経済民主主義というのは、集権的な意思決定ではなくて分権的な意思決定をする仕組みを経済民主主義というのであろうと思います。労使関係もその中で考えることができますけれども、経済分野で申し上げますと、分権的な意思決定の仕組みというのは、まさにマーケットメカニズムを働かせることであります。マーケットが有効に働いていることによって個々の企業が有効な意思決定をできるし、そのことが活力ある経済力確保することになります。また、マーケットが活発であれば、そこで雇用機会も確保されることもあり得るし、またその中で国民の所得の向上も考えられるわけでありますけれども、そういう意味で、今日の日本経済過剰規制を排除してマーケットの力を戻さなきゃいけない、あるいは今回の持ち株会社解禁も、ある意味では過剰規制を排除して経済のダイナミズムを復元しなきゃいけない、こういうふうになっているのだろうと思うのです。  その中でのこの労使問題でございますけれども、これは、フォーマルな仕組みとインフォーマルな仕組み、両面でやはり私はアプローチする必要があると思います。戦後の日本経済の発展の基礎を支えておりましたのがいわゆる日本的な労働慣行であったことは広く認められていることであって、その中で、雇用の安定なりあるいは分配の公正というものが確保されてきたことは否定できないし、また、そういうインフォーマルな労使協議の場というものを今後も確保していくことは先生のおっしゃるとおり非常に重要だし、そのことがあって日本経済の力が強まるのだろう、強化されていくのだろうというふうに思います。  その前提としていわゆるフォーマルな制度が位置づいているわけでございますが、今日、持ち株会社について言えば、五十年間禁止されていたものが解禁されるわけでありますから、これを機にフォーマルな仕組みを見直すということもある程度私は必要ではないかなと思います。ただ、フォーマルな仕組みなりあるいはインフォーマルな仕組みを見直す視点というのは、持ち株会社だけじゃなくて、先ほど申しましたけれども、今日の日本経済が直面しているのはアジアの産業化であります。あるいはグローバルな競争が非常に激しくなっています。日本企業が海外に進出するとか、あるいは海外の企業日本に財・サービスを輸出してくるとか、そういう意味で、経済が非常に、日本企業が立たされている状況が変わっているのだと思いますが、そういういわゆる日本競争条件も含めて、フォーマルなあるいはインフォーマルな仕組みが今までどおりでいいのかということを考えることはやはり重要だと思います。  もう一つ、ただ、労使間の問題を考える余り、持ち株会社について、例えばガイドライン等々で非常に企業が行動しにくいようなきついガイドラインをつくることは、やはり避けるべきだなというふうに思います。先ほど来、私、参考人の方々の意見を聞いていて、私の意見と違うなと思うのはガイドラインについてであって、公正取引委員会裁量性をなるべく小さくするために、ガイドラインを細かくっくれという御指摘がございましたけれども、私はそれは反対なんですね。  なぜかといえば、経済の社会というのは不確実性の世界でありますから、将来どういう経済状態が訪れるのかということは非常に不確実な世界でございますから、その不確実な世界に対応しようとしたら、細かい規定をいっぱいつくらなければいけないわけですね。例えば、アメリカ企業の契約書を見ると、どうしようもないくらい細かい。それは、将来起こり得ることをすべてを列挙しようとしたら、本当に細かい規定になります。−それは、ある意味で細かい規定をつくることによって公正取引委員会裁量性をそぐというふうになるのかもしれませんけれども、これは僕は逆だと思うのですね。むしろそういう細かい規定をつくることによって、企業自身が自縄自縛になって動きにくくなる。むしろ公正取引委員会が公正な判断をしているかどうかというモニタリングをきっちり、先ほど申しましたが、この国会の場で行っていくというような仕組みが確保されれば、むしろ公正取引委員会裁量にゆだねて、そして一つ一つ判例を積み重ねていく中でグレーゾーンをきっちり固めていくというふうな対応をしていくことが望ましいのだろうなと私は思います。何か物差しを当てて、すぽっと当ててみて、ここから上はだめよとかいうような紋切り型のガイドラインはつくらない方がいいなというのが私の率直な印象であります。ちょっと先生の御趣旨に外れたかもしれませんけれども、そういうふうに思っております。
  49. 小林守

    小林(守)委員 時間が来てしまいましたので、もう一問聞きたかったのですが、実は中小企業立場小柳参考人にも、いわゆる持ち株会社解禁状況の中で、元気のいい自立・独立経営の中小企業が育っていけるのかどうか、それから既にベンチャーとか何かで元気のいい中小企業もあるわけですけれども、それらをどう守っていけるのか、そういうことをお聞きしたがったわけであります。また中小企業における熾烈な労使間の問題も、もう一度松浦参考人の方からもお聞きしたいと思っておったのですが、後の機会に譲らせていただきまして、貴重な御意見をいただきましたことを感謝申し上げまして、質疑を終わらさせていただきます。  ありがとうございました。
  50. 武部勤

    武部委員長 次に、大森猛君。
  51. 大森猛

    ○大森委員 日本共産党の大森猛でございます。  きょうは、参考人の皆さんには御多忙の中御出席いただき、大変貴重な御意見をお聞かせいただき、本当にありがとうございます。  私は、二十分しか時間がございませんので、単刀直入にそれぞれの皆さんの御意見をお聞かせいただけたらと思うのですが、まず最初に、何点かまとめて弓倉さんにお聞かせいただければと思うのです。  きょうの最初の意見表明、それからお配りいただいた資料の中での経団連の見解、この中でも述べられているわけでありますけれども、弓倉参考人が「刊行に寄せて」を寄せられました企業法制研究会の「企業組織の新潮流」、こういう企業法制研究会の報告が刊行されたわけなんですが、その中で、純粋持ち株会社経済的な効用という点で、特に最初に挙げられているのが、多角化、多国籍化に対応した効率的な企業組織の実現に大いに効用がある、これに関連して、きょう既に述べられているわけでありますが、もう少しこれを掘り下げて御意見をお聞かせいただけたらと思います。
  52. 弓倉礼一

    弓倉参考人 浅学非才の私が大きなことを申すのは大変におこがましいのでございますけれども、今そういうことを申し上げます一番の根拠は、余りにも急激に我々の周りの経済環境が変わっているんだ。それで、非常に大げさなことを言わせていただきますれば、世界のパワーポリティックスも通用しなくなった。今までなら大砲を向ければよかったのですけれども、そうはいかぬ。あるいは、極めてシリアスな論争が持たれている、ある意味では私は非常にいい点が多かったのではないかと思いますが、イデオロギーの大きなディスビュートにならないようになってしまった。  それやこれやを見ますというと、新しいルール、新しい考え方がこれからの経済を、あるいは政治を進めていくときに必要になっているのではないか、そんなおこがましいことをつらつら思った上での発言でございますけれども、その中で、純粋持ち株会社ということの、これは今まさにその時が来ているんだなという感懐を持って申しておる次第でございまして、そこに書いております。その条々は、お恥ずかしいことがたくさんだと思うのでございますが、考えている根拠のところはそんなものだというふうに御理解をいただければありがたいのでございます。
  53. 大森猛

    ○大森委員 関連して、同じこの「企業組織の新潮流」の中で第二に効用として言われているのが、円滑な人事・労務管理の実現と新規事業展開及びリストラの促進というぐあいになっていまして、こういう趣旨のことは、新聞等で弓倉参考人はたびたび登場されてたびたび発言をされているわけなんですけれども、円滑な労務・人事管理のために大いに効用があるという点、もう少し具体的にお聞かせいただけないでしょうか。
  54. 弓倉礼一

    弓倉参考人 申し上げます。  円滑な人事管理ができることがすべての必要なポイントであるというふうには考えておりませんけれども、私どもの実際のつたない経験を御披露申し上げますと、私どもも百四十社余りの子会社といいますか、関係会社を持っておりまして、その中には事業持ち株会社、何だ、もう純粋持ち株会社などというのはやらぬでもやっておるじゃないかという御指摘が、議論がいつも出てまいりますあの事業持ち株会社も持っておるわけでございます。  今私どもが経営の場で一番悩ましいと思いますのは、一方ではLSI、最も新しい技術及び発想に基づいて半導体をつくったり、あるいは開発したりしている社員も、それから、何にもそれは恥ずかしいことではないのでございますけれども、そういうふうなことよりも、一トンでも二トンでもたくさん物を売ればそれは非常にいい成績を上げたと褒められる社員もおるわけでございます。当然に、その人事配置には、それを理解した上での人事配置をすべきでございます。なかなかこれは異動ができないのでございます。同時に、給与の面でもそうでございまして、思うような、従業員の諸君が皆さん満足してくれるような結論はあり得ないとは思いますけれども、最大多数の諸君が満足してくれるような、そういう配慮というのは非常にしにくいのでございますね。  やはり戦力という、単に競争で勝つためにそれぞれの子会社をつくるんだ、あるいは分社化をするんだということではなくて、そういうふうな一つの経営の機能を維持するためにもそういうことは必要であると考えた次第でございまして、これは長いことかかって考えておる内容でございますから、そう変わる内容ではないと思っております。
  55. 大森猛

    ○大森委員 関連してもう一点、二点お聞きをしたいのですけれども、これは新日鉄の取締役の方が日経新聞で、最近「企業の選択」というタイトルで持ち株会社関連して話をされているわけなんですが、「雇用責任はだれが負うのか。」こういう質問に対して、「資本の論理の産物である持ち株会社が雇用責任を持ったり、ましてや傘下の事業会社の賃金体系まで決めるのは筋違いだ。誤解や反発を受けるかもしれないが、それが経済全体を活性化し、雇用の最適配置を実現する道だと思う。」と、割と率直に語っておられるのです。今具体的なみずからの会社の事例を挙げて述べられましたけれども、弓倉参考人は、こういう持ち株会社の雇用責任など言うのは筋違いだというような見解に対してはどうお考えなんでしょうか。
  56. 弓倉礼一

    弓倉参考人 私もその記事を読んだと思っておりますが、非常にいい内容だと思っておりまして、そこに指摘しておられる意見には全く異論のないつもりでございます。
  57. 大森猛

    ○大森委員 先ほど連結納税制度等についてのお話がありましたが、この点は割愛をしますけれども、納税が連結を必要とするならば、雇用における責任、この面でもやはり連結ということは求められるのではないかと私は思います。  次に、実方先生にお伺いをしたいのですが、御存じのように、この独禁法改正案が出る過程の中で、公取での四章問題研究会、いわゆる四章研での論議も行われてまいりました。一昨年、この中間報告が出されたわけでありますけれども、四章研のメンバーのお一人であります立教大学の舟田先生がある新聞で、中間報告とその後の公取等の動きとの関係でこんなふうに述べておられるのですね。「経済力過度集中する恐れのある持ち株会社の全面解禁を防ぐため細かく注文をつけ、部分解禁にとどめたのに、その努力が宙に浮いてしまった。」こう舟田先生は述べておられるのですが、先ほど今回の法案に対する基本的な立場の御意見を表明をされたわけなんですけれども、この中間報告と今回の法案との関係で、実方先生はどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  58. 実方謙二

    実方参考人 非常にデリケートな問題でございますが、基本的に言えば、四章研の一昨年の暮れに出た報告でございますが、それに基づいて原案が一応つくられたわけなんですけれども、経緯とすれば、それは結局棚上げになってしまったということだと思います。前回の場合は、それが棚上げになって、それにかわるものとしていわば今回のような歯どめ装置が余り明白でない法案が用意されたというぐあいに伺っておりますが、今回は、そういう経緯を一応横に置いておきまして、最初から事業力の過度集中というものの規制手段としてどういうのがあるかという点から、ある程度具体的な基準を今度の新法の五項で定めて法案をつくったということであります。そして、そのガイドラインの中にも、四章研報告で指摘された、これは問題がないというのも一つのシロとなる場合の実例として多分盛り込まれることとなると思います。  したがって、昨年度の四章研報告が出て突然全く歯どめ装置のない法案が用意されたという過程と今回の過程とを比べてみますれば、今回の過程は一応、一応といいますか、非常に微妙な問題なんですけれども、一応納得のできるプロセスを踏んで進められたものだと考えられております。したがって、その点では最低限度の民主的な手続というのをクリアしていると考えまして、先ほど意見表明のところで結論として支持するものである、こう言ったわけでございます。  どうも、それでお答えになりますかどうか。
  59. 大森猛

    ○大森委員 四章研の中間報告と今回の法案との間で最も乖離が大きいというのは、先ほど来述べられております三つの類型を九条五項で述べて、それ以外は事実上全面解禁、中間報告においては、日本の今の経済実態からいって、あれこれのあれはありますけれども、基本的に枠組みを維持しなくてはいけないという立場であったと思うのですけれども、それが三つの類型以外については事実上全面解禁ということになって、しかも、この三つの類型についても非常に抽象的、恣意的である。持ち株会社の定義についても、子会社の五〇%超、こういうことだけに限定するという点で、役員等を含めた会社の支配という今の日本経済実態からもかなりこれはかけ離れたものになっているのではないかと思います。  結論的に申し上げれば、これがそのまま実施をされれば、一層の資本集中を加速することになるのではないか、あるいは、市場支配、価格支配、中小企業への圧迫弊害が一層拡大される、こういう懸念がやはり強く残るわけでありますけれども、重ねて実方先生に御意見をお聞きしたいと思います。
  60. 実方謙二

    実方参考人 おっしゃるとおり、新九条五項の三類型は、かなり明白にその過度経済力集中競争制限効果というのが出てくる場合を対象にしているということでございます。  それは、過度経済力集中弊害は、一つは、大企業とそれから中小企業その他との格差が大きくなるということと、それからもう一つ、先ほど意見表明の中で申しましたように、それが個別の産業分野での競争に対してかなり悪影響を与えるということがございます。それは、メンバーの中の一人が非常に巨大な企業と結びつくことによって競争を萎縮させるおそれがあるとか、それから寡占的な産業の多くの分野にわたってメンバーが全部同じになりまして、みんな仲よし組合になってしまうとか、そういう具体的な弊害というのが出てくるおそれがある。  それからさらに、三類型の中の関連する分野で有力な企業相当数対象になるという場合にも関連するわけですが、持ち株会社解禁されますと、そのような垂直的な結合関係とか、あるいは関連する分野での結合関係というのは広がるおそれがあるわけです。  したがって、持ち株会社解禁する場合には、明白に経済力集中をもたらすような、九条の五項に定めてある三類型の場合を規制の対象とすると同様に、先ほど申しましたように、個別の産業分野競争制限を対象にしている、これは株式保有を通じてでございますから第十条というのでございますが、法律的に言えば、「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」という基準規制するわけです。それについては、公正取引委員会運用基準ガイドラインがずっと前に出されておりまして、その垂直あるいは混合の場合も対象になりますし、それから、競争会社間の場合についても、総合的な事業支配力というのを考慮するということになっております。  したがって、持ち株会社解禁によって、今言った点での競争制限効果というのが強化されることになれば、十条での規制というのを適切かつ厳正に行うことによって対応すべきだ、そういうぐあいに考えております。したがって、持ち株会社形態を通じた予防的規制というのはかなり後退するということになりますが、そのかわり、十条による手当てというのはちゃんとバックアップする形でやるべきではないかというのが私の考え方でございます。
  61. 大森猛

    ○大森委員 時間が参りましたので、最後に金融持ち株会社について一点だけ、実方参考人にお聞きして終わりたいと思うのですが、今回、金融持ち株会社については十一条の対象にしない。また、既に打ち出されている方向としては、金融機関の株式保有についても緩和方向も出ているわけなんですが、銀行による産業支配、金融支配等についてお考えをお聞きできたらと思います。
  62. 実方謙二

    実方参考人 金融持ち株会社については、どこまで関連分野への進出を許すかとか、ファイアウォール、業務隔壁をどうするかという問題がまだ積み残しになっておりますので、大蔵省でのそういう成案を得るまでは、金融持ち株会社原則禁止ということになっていると思います。  それが、大蔵省の方で原案が出てからも三類型の中の資金力を背景とする支配力の拡大というのは生きてくると思いますし、それからもう一つは、先ほど申しましたところですが、新九条とそれから部分改正された九条の二とそれから十一条というのは、これはワンセットで、過度経済力集中防止のための基本的な枠組みとして独禁法の不可欠の部分として今後も維持すべきものでありまして、金融機関の産業支配の防止のためには、十一条による規制というのは今後も堅持すべきであると考えております。そして、十一条的な規制というのは日本だけ突出したものでなく、さまざまな違った形で各国でも行われいる、特にアメリカでは行われているということを一言つけ加えさせていただきます。
  63. 大森猛

    ○大森委員 終わります。どうもありがとうございました。
  64. 武部勤

    武部委員長 次に、横光克彦君。
  65. 横光克彦

    ○横光委員 社民党の横光克彦でございます。  きょうは、参考人の皆様方には、本当に御多忙の中にもかかわりませず本委員会出席いただき、また貴重な御意見を賜りまして、感謝いたしております。  戦後五十年間にわたり経済憲法九条と言われてきましたこの独禁法改正されるわけでございますが、今回のこの独占禁止法改正案に至るまで、持ち株会社の論議は、持ち株会社が目指すグループ経営のあり方、こういったものに目を向けさせることになったと思うわけです。実際に、この純粋持ち株会社解禁されれば、これまでの事業持ち株会社形態とともに、企業のグループ経営が一層進展すると考えられているわけでございます。そうした中で、このグループ経営に対応したこれまでのもろもろの法制が現行のままで果たして十分なのか、また、不十分であるとするならはどのように改めるべきなのか、そういった方向性あるいは見直しといったことも考えなければならない、このように思うわけでございます。  まず、私は、持ち株会社によるグループ経営において、子会社の従業員の権利が十分に守られるのであろうかという点について質問をさせていただきたいと思います。  先ほど松浦参考人から、労働問題に対しての切々としたお話がございました。また、鶴田参考人からも労使関係のお話がございました。鶴田参考人のお話の中で、これまでの独禁法がもとでの労働法制であった、この独禁法の大改正を契機に労働関連諸制度も見直すべきという御指摘があったように承っておりますが、端的にお聞きいたします。  鶴田参考人にお聞きしますが、その趣旨は、労働組合法七条に親会社あるいは持ち株会社を使用者として明記する必要がある、このように受け取ってもよろしいのでしょうか。
  66. 鶴田俊正

    鶴田参考人 非常にデリケートな問題を含んでおりますけれども、グループ側における労使の安定の問題というのは、いわゆるインフォーマルな仕組みの中で確保されている部分がかなりあると思うのです。例えば労使協調といっても、これは法制化されているわけではありません。実態的に見て法制化されていない、いわゆるインフォーマルな部分で日本の経営が成り立っている部分がかなりあるわけですね。それがある意味日本産業界の力になっています。あるいは日本の例えばQCサークル等々も、これはインフォーマルな仕組みの中でつくられていて、しかもそれが一つの国際的な慣行になりつつあるわけですね。  そういう意味で、労使の問題を考える場合には、インフォーマルな仕組みの中でどの程度問題が解決できるのか、そこはやはりきっちり僕は考えておく必要があると思うのです。その上に立って、現在のこの持ち株会社だけではなくて、国際的な競争関係の中で現行の労働基準法等が十分に適用できないならば、それはやはり見直すことが必要であろう、これは労働関係法ではなくて、いろいろな法制度というものを関連的に位置づけながら一応見直す一つの時期に来ているなという印象を持っています。
  67. 横光克彦

    ○横光委員 どうもありがとうございました。  どのような企業でも、労使紛争があれば団体交渉を通じてその解決が図られるべきなんでありますが、持ち株会社を用いたグループ企業や一般の親子会社なんかでも、子会社の従業員の交渉相手が当の子会社だけじゃこれはもう足りない、紛争の解決にはなかなかならないのですね。  実際にグループ企業における数々の紛争の中で、判例といったものが確立されております。いわゆる親会社、これからは持ち株会社もこういった親会社になるわけですが、そういった会社が雇用者と同視できる地位にある場合は使用者として団体交渉に応じなければならない、判例ではそういうふうになされているわけです。  ところが、現在労働組合法では、親会社と直接雇用関係にない子会社の従業員との間では交渉義務があるかどうか、明確に規定されていないわけですね。そのために数々の労使紛争が起きてきましたし、また現在も起きております。子会社の解散による解雇やあるいは賃金未払いで親会社の責任の有無を問われる労使紛争で、最初から私は使用者ですと認める親会社は一社もないわけでございます。そのために裁判ということになる。しかも、長い裁判になってしまう。その争いによって認めさせていくということになる。しかし、五年あるいは十年後に使用者でありましたと言われても、これはもう実際には救済にはならないわけでございます。しかも、労使双方で多大なる時間と金を使用しなければならない。  松浦参考人にいま一度改めてお聞きいたしますが、労組法七条に親会社あるいは持ち株会社を使用者として明記する必要があるとおっしゃられておりましたが、その意図するところは、親会社や持ち株会社にまず団体交渉に応じる義務が課される。親会社、持ち株会社は、子会社従業員の労働条件を実際に決定できる立場にないことを証明しない限り、そうした義務を負う。それによって、労働者の権利の確保と、そしてまた一々裁判を起こして時間と金を浪費する必要はなくなるというふうな、そのように理解してよろしいでしょうか。
  68. 松浦清春

    松浦参考人 御指摘いただきましたとおり、現在の労組法は持ち株会社解禁をされていないということを前提に設けたものでございまして、今回新たに持ち株会社が自由化されまして、親会社、持ち株会社ができましても、そことの関係で使用者性が明確になっていなければ、御指摘がありましたように、裁判によって確認をしなければならないということになるわけでございますので、私どもは、既に幾つかの判例でも出ておりますように、使用者性はこうしたときにあるということはもう明確になっているわけでありますので、そうした内容をもって第七条に明定をしていただくということを求めているわけでございます。
  69. 横光克彦

    ○横光委員 今回の法改正弓倉参考人は大変歓迎されております。経営者サイドからしますと、経営戦略もろもろの点でプラスの面が非常に大きいわけでございます。  しかし、じゃ労働者の問題はどうかということになるわけで、懸命に会社のために努力して、そしてそういった労働者があって初めて企業が成り立つわけで、言わずもがなのことでございますが、企業の発展は労使の協調というものが私は根底になければならない、そういう気がするわけでございます。今回、与党協議会の場でも、労使協議を続ける、二年間の期限を切って連合と経団連と日経連で話し合うということになっておりますが、なかなかはっきりとした形になっていないわけですね。  そこで、弓倉参考人にお伺いいたしますが、この労組法七条に親会社あるいは持ち株会社を使用者として明記する必要がある、あるいは明記することによって経営者サイドとしてはどのような不都合が生じるのか、ちょっとお聞かせください。
  70. 弓倉礼一

    弓倉参考人 御質問に対して、主として日本の労使関係について責任を持って考えていただいている団体、日経連がございますので、余り知ったようなことを申し上げるのはいかがかと存じますけれども、私の感じておることを申し上げますと、非常に身勝手かもしれませんが、今度の純粋持ち株会社、これは先ほどからも何遍もいろいろな方からお話がございますように、今グローバルな、しかも大規模な競争がどんどん進んでいる、それに対応するだけではないと私は思っておるのでございます。  そうするためにも、従来、世界に誇った労使関係という、ストライキをやらない、労使協調してできるだけの効果を上げる、見事なもので今までは進んできたと思うのです。しかし、若い人の意識も労働者の構成も皆やはり変わっておる事実も無視はできないと思うのでございます。  同時に、そういうことであればあるほど時間のかかるいろいろな研究が必要であろうかと存じておりますが、もしも本当の意味で国際競争力を持って利益追求をするというときに、子会社の労使関係は、一番よく知っておる子会社の社長と子会社の諸君、その論議を十分にまず第一義的に尊重してあげる。それを上からすっ飛んでどうこうするということは、現実には非常に、きれいな言葉に聞こえるかもしれませんが、困難がある。  ただ、子会社の社長諸君がその集団企業の中で余りにも勝手なことをしたりしますと、企画、戦略を立てる部門でございます持ち株会社のトップが、これはいかがなものかというブレーキをかける。しかし、あなたのところの給料はこうすべきだというふうな直接指摘をするということは、実態を知らない経営者が管理することになりますので、私の判断で申しますと、今の形でいける、非常にむしろよくなるのじゃないかと思っておる次第でございます。
  71. 横光克彦

    ○横光委員 それぞれの立場によって本当にお考えが違うわけですが、そのために今回二年間を目途にそれぞれの三者の立場が協議を続けるということですので、私は、どうか前向きに取り組んでいただきたい、日経連の皆様方にもともに前向きに取り組んでいただきたいと思うわけでございます。  それと同時に、労使問題の問題解決のために、労働省内の審議会などの公開の場で早急な検討を行って、そこで出した結論に従って労働大臣が法改正など必要な措置をとるものとすべきじゃないかと私は思うわけですが、そのためには労組法に関する審議会の設置も必要ではないかと思うのですが、この労組法に関する審議会の設置について弓倉参考人はどのようにお考えですか。
  72. 弓倉礼一

    弓倉参考人 本件につきまして、指導的な立場を日経連の皆様にお願いをいたしております。我々は労働問題の専門ではないものでございますから、いろいろとちったり、とんでもないことがあってはなりませんので、慎重に考えておりますけれども、今先生御指摘のこれからの協議の進め方とか、その仕組みは、これから論じ、決まるものだと考えております。それに従いたい、そう思っております。
  73. 横光克彦

    ○横光委員 参考人の皆様方、ありがとうございました。終わります。
  74. 武部勤

    武部委員長 次に、前田武志君。
  75. 前田武志

    ○前田(武)委員 太陽党の前田武志でございます。  参考人の皆様方におかれましては、貴重な時間を割いて、きょうはこうやってすばらしい御意見を開陳していただき、我々の審議の参考にさせていただきました。まことにありがとうございます。  さて、先ほど弓倉参考人からも御指摘があったように、世界のグローバルな市場、グローバリゼーションというのは進んでおります。かつて東側経済あるいは南の方がまだ市場経済に入ってこなかったころ、十億ぐらいだと言われていたのが、今多分三十億を超えるぐらいに、規模自体が格段に、しかも短期間の間に拡大した。これは多分、量だけではなしに、質にまで大きな影響を与えているグローバルな市場だろうと思います。  そしてまた、情報化がどんどん進んで、数年前までは秒単位でと、こう言っていましたが、今やインターネツト等、もうまさしく瞬時に、金融なんかは瞬時に動いているんだろうと思います。そういった意味では、世界のグローバルな市場というものがどんどんと進化を遂げているんだろう、こういうふうに思います。こういう世界で仕事をされている方々からいろいろお話を聞き、また私自身も非常に興味を持って、実は毎年ウォール・ストリートまで出かけていって、この間も、日米の議員交流を毎年やっておりますが、その機会を利用して、ウォール・ストリートでゴールドマン・サックスの会長にもお会いをしてきました。  そういうことを通じてつくづく感じるのは、まさしく市場というものが森羅万象が映るような、言ってみれば、大げさに言えば地球上の一人一人の価値観までが映し出されるような時代になってきた。したがって、そこで優勝劣敗の、何か弱肉強食みたいにすぐ言われがちなんですが、やはり基本的には市場というのは交換の世界でありましょうから、それぞれそこで自分の価値観と、大きな意味で言えば価値観でしょうか、そういう交換、合理的な交換がなされるというような意味においては、今の市場というものの持っている意味は、かつての局所的な、あるいは情報もそれほど開示されていない時代と違って、非常に大きな意味合いを持ってきたと思います。  そういう中で、持ち株会社解禁ということについて、これだけのグローバルな市場において、経済活動一つの大きな主体である企業、ビジネスというものが一つ手を縛られていた、多様な形態で市場の中で活躍をしていく、活動していくその自由度を縛っていたという意味において、私もこの持ち株会社解禁というのは非常に大きな意味があるということで、基本的には賛成をしております。  しかし、素人なものでございますから、こういった持ち株会社というものが、現実の市場あるいはビジネスの場でどういう形態をとって出てくるのか。先ほど来幾つかのお話がございましたが、最初に、アカデミーの方でこういったことを御研究されていると思いますので、実方先生、鶴田先生にそれぞれ、典型的な持ち株会社が、どういうようなインセンティブでどういう持ち株会社が出てくるのか、その辺何点かお示しを、御教示を願いたいと思います。  まず実方先生、よろしくお願いします。
  76. 実方謙二

    実方参考人 私は、法律家なもので、具体的な経営の実態のことはそれほど詳しくございませんが、一番最初に申し上げられるのは、やはり、四章研報告等でも予想されました、内部分社化でこれまでカンパニー制とか事業部制等で対応してきたのを、法人格を分けることによって危険の分散を図ったり、あるいは意思決定の分散化を図ったり、それから、統一的な意思決定機関を別個の純粋持ち株会社にしておくというようなことだと思います。それが一番やりやすいところです。  それからさらに、これまで違った分野で別個の会社であったものがある程度関連した分野で結合した方がいいという場合に、合併だと非常にコストがかかる。それから、一方的株式保有もコストがかかるという場合に、持ち株会社をつくるということが出てくるんじゃないかと思います。ただ、持ち株会社をつくる場合に、これは会社法上とか税法上の問題で結構コストがかかりますから、言われているほど簡単に活用できるものではないという印象もあります。  それともう一つは、特に危険の大きな新規分野に対して進出する場合に、持ち株会社をつくって、その下の兄弟会社という形で危険を完全に隔離、完全にといいますか、できるだけ危険を隔離しながら進出していく、そういうのが考えられる形態だと思います。
  77. 鶴田俊正

    鶴田参考人 私は経営者じゃございませんものですから、具体的にどういうインセンティブがあるかということは申し上げることはできないと思いますが、現実に即して若干のことを申し上げさせていただきます。  例えばNTTの経営形態について、この十数年間でしょうか、いろいろ議論がございました。その一つが分離分割をした方がいいという議論がございましたけれども、私は、NTTの経営問題について必ずしもそうは思ってなくて、やはりグループ全体としての、特に通信分野というのは技術進歩の非常に激しい分野でありますから、トータルとしての企業の力を片っ方では持たなきゃいけない。さりながら、NTTはローカルネットワークを通して独占的な立場にございましたから、そういう競争確保するという意味から、ある意味で分離分割をしなきゃならないかな。この二つの命題をどう解くかといったときに、私は持ち株会社方式しかないんじゃないかというふうに考えたことがあります。このことは、私の近著でございます筑摩書房から出ておる本でも明記しておるわけでありますが、その意味では、企業としての総合力を維持していくというところが一つの大きなインセンティブになると思います。  それから、第二番目でございますけれども、ただ、企業が大規模化いたしますと、今度は規模の不経済性があらわれることがあります。したがいまして、分社化することによって、それぞれのユニットを小さくして、そして風通しのいい経営を行い、なおかつ効率性を維持していくということは十分考えられるなということが第二番目であります。  それから第三番目は、金融の分野でございますけれども、過去の金融・証券行政の結果として、保険も含みますけれども、日本では垣根ができ上がっております。ある意味で、証券と銀行の間に垣根をつくるということは必要性もあるわけでありますけれども、日本の場合には、過度に垣根が高過ぎちゃって、したがって、これからの国際的な時代日本企業が適応できないんじゃないか。したがって、持ち株会社をつくって、ある意味で総合的な力を一面で発揮させながら、なおかつその垣根を維持して実効性のある競争を展開させるという意味は私はあるんだなという気がいたしております。  それから第四番目が、いわゆるベンチャーキャピタルの問題であります。日本でもやはり、中小規模で、小さいですけれども非常に事業意欲に満ちた、創造的意欲の豊かな起業家がたくさんおります。そういう起業家に対してベンチャーキャピタルがサポートをしていくことが必要不可欠でありますし、そのために持ち株会社というものを解禁していくことが日本経済の発展にとって不可欠かなというふうに思っております。
  78. 前田武志

    ○前田(武)委員 次に、コインの裏表と申しましょうか、情報公開について弓倉参考人にお聞きしたいわけです。  実は、大きな市場という意味で、アメリカあたりから見ていると、日本市場というものが透明性が非常に欠けている。最後に言うのは、日本市場というものの信頼性が得られなければ、日本というものが今後、余り経済的に期待できないんじゃないかというぐらい強い意見も出るわけですね。そういう意味において、これだけの大きな市場のグローバル化、情報化、そういう中で公正取引委員会の持っている役割というのは、持ち株会社等を解禁すればするほど非常に大きな役割を、責任を持つわけであります。  特に、これは資料として、欧米における持ち株会社の実態なんかをちょっと見せてもらっていたわけですが、持ち株会社というのは、経営陣が株主の追及や敵対的買収から身を守ることができて、そういう意味で非常に便利だ、利用できるというようなことの指摘があるのですね。複数の持ち株会社を頂点とした、複雑に絡み合った企業集団内部で価格維持工作が行われると、情報が隠ぺいされ、その立証は困難になるとか。  もちろん、会社のことでございますから、自分の会社に有利なようにいろいろやられるということになってきます。したがって、そういうものを防ぐためには、やはり透明な市場、公正さが確保されている、情報が公開されていないといけません。そういう意味では、日本の場合には非常におぼつかない。一般論で言いますと、次から次へと、例えばこの時期、株主総会の時期でございますが、しゃんしゃんしゃんと、みんな各上場会社が同じ日に、しかも時間もなるべく短く上げてというようなことで、これは本当に株主の利益に沿った株主総会なのかな、こう思うわけですね。  もちろん、総会屋の暗躍だとかいろいろあります。しかし逆に、そういった総会屋対策として証券会社の不詳事件が出てきたりもする。そういった面では、やはり日本経済界、経営陣というものは株主に対して一番責任を負うわけでございます。広く言えば、この持ち株会社解禁にしろ、あるいはグローバルな市場にしろ、国民あるいはタックスペイヤーあるいは株主、そういった一人一人の国民の利益のためにそういった自由な市場確保して、そして国民経済そのものに大きく貢献してくれたらいいわけでございますから、それが会社の経営陣にとって都合のいいというようなことで、結果的には不祥事がどんどん出てきている、ここで一番重要になってくるのが情報公開であろう、こういうふうに思うわけですね。  さて、持ち株会社解禁されて、先ほど私が欧米のケース等で指摘したような、どうも隠ぺいの方に、あるいは自分たちの経営の都合のいい方向に、むしろ情報がクローズされる方向に行く心配もあるということでありますから、その辺のことも踏まえて、経営者の代表としてどういうふうにお考えか、御意見を聞かせてください。
  79. 弓倉礼一

    弓倉参考人 非常につたない知識でお答えをさせていただくことをお許しをいただきたいのでございますが、今先生御指摘の問題点は、まさにひしひしと我々も感じていることでございます。それで、時にはこんちくしようと思うことも実際はあるのですが、アメリカの指摘が、やはり意地悪いばかりに我々の不透明さを責めてきております。  つらつら考えますに、現在までの状況で、持ち株会社も許されないという状況の中で、何をして経営者たちは自分の企業を防衛してきたのか。まず第一番に申せることは、お金がございませんから、蓄積が非常に欧米と比べて違うものですから、しかし、一方では株式の買い占めというのも、これはもう人並みにちゃんとあったわけでございます。  一例を申しますと、夜中に、ある我々の近しい友人の社長から、おおい、助けてくれ、あした市中で三十万株拾ってくれぬか、今、妙なやつが買い占めにかかっておるんだよというような依頼を受けたこともございます。これは結局株式の持ち合い、あるいは今、公正取引委員会の皆さんも決して愉快なこととは考えておられない不透明さのポイントが、会社同士の株の持ち合いとかそういった形で出てきておったのでございます。  実際に株価は毎日、新聞に出ますけれども、あの株価というのは一体どういう株主の方々によって形成されているものか。これは日本では非常に個人株主というのは少ないのでございます。個人はお金を持っていないからでございますけれども、たんす預金、すごい金額があるのは聞いておりますけれども、個人株主が少ないのは事実でございます。そういうことから企業間で自己防衛のためにどうしても株を持ち合うというようなことを外から見ますと、そのネットワークを外から見ますと、何という不透明な会社だ、何か密約があるんじゃないか、こういうことを許しておいていいのかというのが批判でございまして、今の先生のディスクロージャーの不足という御指摘も、すべてがそうでないにしても、そういう印象をお持ちのベースでのお考えかと思うのでございます。  この持ち株会社ということが認められるということ、それからこの後に、私はやはり非常に大きな波が来るのではないかと考えておりますのが、テークオーバービッド、MアンドAというものでございます。これは海外の資金がばあんと企業を、一遍に、一夜にして株式を買い上げてしまうという、そういう動きが日本にもやってくる。そういうことが考えられる状況でありますれば、私は、早く持ち株会社という形で、できるものならば透明な透き通った株式保有状態にまで持ってくるということの方が大事ではないかと、へ理屈かとお考えになるかもしれませんが、そう信じておる次第でございます。
  80. 前田武志

    ○前田(武)委員 時間が過ぎておりますので、終わります。参考人の皆様方、どうもありがとうございました。
  81. 武部勤

    武部委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。  参考人の皆様には、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して、心から感謝と御礼を申し上げます。ありがとうございました。  速記をとめてください。     〔速記中止〕
  82. 武部勤

    武部委員長 速記を起こしてください。      ————◇—————
  83. 武部勤

    武部委員長 この際、内閣提出電気事業法の一部を改正する法律案議題といたします。  他に質疑の申し出がありませんので、これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  84. 武部勤

    武部委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。吉井英勝君。
  85. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、日本共産党を代表して、電気事業法の一部を改正する法律案に対する反対の討論を行います。  反対理由の第一は、改正案で示された仕組みが、一般のアセスメントの手続を定めた環境影響評価法から発電所アセスメントだけを切り離し、発電所の立地推進主体である事業者と通産省の合作による自作自演のアセスメントを行うものであり、公正で厳格なアセスメントを侵害するものだからであります。  通産省は、発電所建設の許認可官庁であるだけでなく、推進官庁としての性格を持っています。その通産省が、環境影響評価の最初の段階である、どんな調査をするかという方法書、そして調査結果とその評価を載せた準備書及び評価書の作成にかかわるそれぞれの段階で強力な権限を持って深く関与することは、発電所の立地を申請した電力会社と事実上一体となって調査から評価、そして審査まで行い、ゴーサインを出すということです。このような自作自演のアセスメントは、環境保全という環境影響評価法本来の趣旨に大きく反するものであります。  第二に、地元意見の反映という点で、環境影響評価法に定める手続よりも大きく後退していることです。  住民の声を代表できる都道府県知事が意見を出す場合、事業者の見解に配慮することが義務づけられ、しかも意見を出す相手は事業者でなく通産大臣となっており、事業者にはその写しが届くだけであります。地元と事業者との間に常に通産省が介在し、事業者に地元の声が直接届かなくなることは極めて重大な問題です。  また、環境庁長官が評価書に対して意見を言うことができず、準備書にしか意見を言えないことも、環境影響評価法から発電所アセスメントを別建てとすることによって大きな後退となっているのであります。  以上の理由により、本改正案に反対であることを表明して、討論を終わります。(拍手)
  86. 武部勤

    武部委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  87. 武部勤

    武部委員長 これより採決に入ります。  内閣提出電気事業法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  88. 武部勤

    武部委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  90. 武部勤

    武部委員長 次回は、来る九日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十三分散会