運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1997-04-22 第140回国会 衆議院 商工委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月二十二日(火曜日)     午前九時三十一分開議  出席委員   委員長 武部  勤君    理事 小川  元君 理事 小此木八郎君    理事 中山 成彬君 理事 茂木 敏充君    理事 遠藤 乙彦君 理事 西川太一郎君    理事 大畠 章宏君 理事 大森  猛君       甘利  明君    石原 伸晃君       小澤  潔君    奥田 幹生君       加藤 卓二君    亀井 善之君       河本 三郎君    自見庄三郎君       中山 太郎君    根本  匠君       林  義郎君    船田  元君       村田敬次郎君    伊藤 達也君       石井 啓一君    鍵田 節哉君       神田  厚君    古賀 正浩君       島   聡君    島津 尚純君       達増 拓也君    中野  清君       吉田  治君    末松 義規君       松本  龍君    渡辺  周君       吉井 英勝君    横光 克彦君       前田 武志君  出席国務大臣         国 務 大 臣 梶山 静六君         (内閣官房長官)  出席政府委員         内閣官房長官 与謝野 馨君         公正取引委員会         委員長     根來 泰周君         公正取引委員会         事務総長    糸田 省吾君         公正取引委員会         事務総局経済取         引局長     塩田 薫範君         経済企画政務次         官       河本 三郎君         法務大臣官房審         議官      柳田 幸三君         通商産業政務次         官       石原 伸晃君         通商産業大臣官         房審議官    藤島 安之君         通商産業省産業         政策局長    渡辺  修君  委員外出席者         大蔵省主税局税         制第一課長   伏見 泰治君         大蔵省証券局企         業財務課長   大西 又裕君         大蔵省銀行局調         査課長     五味 廣文君         労働省労政局労         働法規課長   岩崎 伸夫君         労働省労働基準         局監督課長   青木  豊君         商工委員会調査         室長      安本 皓信君     ————————————— 委員の異動 四月二十二日  辞任         補欠選任   岸田 文雄君     根本  匠君 同日  辞任         補欠選任   根本  匠君     岸田 文雄君     ————————————— 四月十八日  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の適用除外制度整理等に関する法律案(内  閣提出第四四号)  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第六八号  ) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の適用除外制度整理等に関する法律案(内  閣提出第四四号)  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第六八号  )      ————◇—————
  2. 武部勤

    武部委員長 これより会議を開きます。  内閣提出私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律適用除外制度整理等に関する法律案並び私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  これより両案について順次趣旨説明を聴取いたします。梶山内閣官房長官。     —————————————  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法   律の適用除外制度整理等に関する法律案  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法   律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 梶山静六

    梶山国務大臣 初めに、私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律適用除外制度整理等に関する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  政府は、我が国経済社会の抜本的な構造改革を図り、国際的に開かれ、自己責任原則市場原理に立つ自由な経済社会を実現していくために、規制緩和推進とともに、公正かつ自由な競争を一層促進することにより、我が国市場をより競争的かつ開かれたものとするとの観点から、競争政策の積極的な展開を図ることとしております。  その一環として、個別法による独占禁止法適用除外カルテル等制度について、事業者等の公正かつ自由な競争制限し、消費者利益を損なうおそれがあることから、原則廃止する観点から見直しを行い、昨年三月二十九日の閣議決定規制緩和推進計画の改定について」において、その見直し結果が得られたところであります。  今回は、この見直し結果を実施に移すに当たり、法律改正を要するもののうち一括することを適当とする事項を取りまとめ、ここにこの法律案を提出した次第であります。  次に、法律案内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、個別法による独占禁止法適用除外を継続する必要性が認められない二十九制度については、これを廃止、法整備をすること、第二に、個別法による独占禁止法適用除外過度に定められている六制度については、その限定、明確化等を行うこととしております。  この法律案は、以上のとおり、個別法による独占禁止法適用除外カルテル等制度整理等を図ることにより、公正かつ自由な競争を一層促進し、我が国市場をより競争的かつ開かれたものとするとの観点から、五省、二十法律、三十五制度にわたる改正を取りまとめたものであります。  なお、これらの改正は、公布の日から一月を経過した日から施行することとしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いをいたします。  続きまして、私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律、いわゆる独占禁止法は、公正かつ自由な競争を維持、促進することにより、一般消費者利益確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発展を図るものでありますが、持ち株会社設立等については、現在これを全面的に禁止しているところであります。この規制につきましては、事業者の活動をより活発にすら等の観点から、平成八年十二月十七日の経済構造の変革と創造のためのプログラムを初めとする累次の閣議決定において、独占禁止法目的を踏まえて見直すべきものとされたところであります。  今回は、これらの閣議決定を踏まえ、事業支配力過度集中防止という独占禁止法目的に留意しつつ、持ち株会社の全面的な禁止を改めること等の改正を行うべく、ここにこの法律案を提出した次第であります。  次に、法律案内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、現行法では設立等が全面的に禁止されている持ち株会社について、事業支配力過度集中することとなるものの設立等禁止することに改めることとしております。  第二に、これに伴い、一定規模を超える規模持ち株会社による事業年度ごと当該持ち株会社及びその子会社事業に関する報告制度及び新たに設立された一定規模を超える規模持ち株会社による設立後の届け出制度を設けることとしております。  第三に、大規模会社株式保有総額制限について、この株式保有総額制限の対象から除外する株式を新たに追加することとしております。  第四に、事業者による一定国際的協定または国際的契約に係る届け出義務を廃止することとしております。  なお、これらの改正は、一部を除き、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようにお願いを申し上げます。
  4. 武部勤

    武部委員長 これにて両案の趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 武部勤

    武部委員長 私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案について審査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、参考人出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  7. 武部勤

    武部委員長 これより質疑に入ります。   質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
  8. 林義郎

    ○林(義)委員 私は、独占禁止法の今回の改正に当たりまして、党内におけるところのいろいろな諸論議、さらには自由民主党と社民党とさきがけとの間の協議、それにずっと携わった者といたしまして、そのことを踏まえながら質問をさせていただきます。  平成七年十二月、行政改革委員会規制緩和小委員会が「光り輝く国をめざして」という報告書を出しております。それには、「純粋持株会社禁止は、事業支配力過度集中による市場メカニズム阻害防止目的として、個別市場における具体的な競争阻害性の有無に関わりなく一律に外形的な規制を行おうとするものである。」とした上で、こうした持ち株会社規制は、「財閥等による政治的、経済的弊害再発防止という歴史的背景の中で導入されたものであるが、日本経済社会を取り巻く環境変化の中で、今日においてもなおこのような一律に規制を行うべき明確かつ十分な根拠があるとは考えられない。」と述べておるところであります。実は、こうしたことは、その前に閣議決定が七年三月にございまして、そのときに、系列の問題、企業集団問題等を踏まえて検討するということで、公正取引委員会にもいわゆる四章委員会というのができて御検討をいただいた。さらには通産省の方でも審議会をつくられまして、その審議会でいろいろ御検討をいただいたという問題であります。  先ほど申しました三党の中でも、平成八年二月十六日から国会の終わる前まで二十三回にわたって協議を重ねました。また、総選挙が終わりましてから後でも、九年一月二十九日から二月二十五日まで十一回にわたりまして協議をしてきたところであります。それは、この問題は極めて基本的な問題である、しかも戦後の歴史を顧みてやらなければならない、こういうことでありまして、最終的な結論として申し上げますならば、三党の合意の中にありますのは、   独禁法が過去五十年間において公正かつ自由な競争確保することにより日本経済発展に果たしてきた役割を高く評価する。しかしながら、今日では経済構造改革金融改革を進めることが強く求められている。企業経営多角化多様化を図ることは、大競争時代といわれる国際競争時代を考えても必須である。   従って、持株会社を解禁することとしたい。これが三党合意最初に掲げてある文句でございます。  私はそもそもの話を若干申し上げたいんですが、独禁法というのはまさに戦後の法律でございます。戦前には独占禁止法というのはなかった。不正競争防止するという法律はあったんです。不正競争防止法というのがありました。これは何をしているか。特許権商標権等の侵害に対して、不正なことがあったならば内外を通してこれを排除していく、規制をしていくという法律がございました。戦前にはいわゆる独占禁止法というのはなかったわけであります。  そこで、占領軍がやってきて、日本でもやるという形で入りてきた。昭和二十年に入ってまいりまして、この規制をやろう、こういう話をしたわけでございます。当時の記録を調べてみますと、司令部から当時の商工省に指令がありまして、戦後の経済規制を考えている、新しい民主化立法をやれ、こういうふうな話があったんです。商工省には総務局企画課に若い事務官がいまして、それにいろいろと勉強してもらった。当時は統制経済のもとでありますから、事業者団体統制団体に対していかにして自由にしていくか、しかしながら、価格は公正でなければならない云々というようなことしか書いていない。いわゆる独占禁止法にありますような独占であるとか不当な取引制限であるとか、あるいは不公正な取引方法であるというようなものについては、当時の官僚諸君にはそんな話は頭になかった。  まあ戦後の話でありますから、日本法律では、今でこそアメリカ法律を勉強していますけれども、その当時アメリカ法律を勉強するなんて、敵国の法律を勉強するということですから、恐らくなかったんだろう、こう思いますよ。そういった形でやってきた。したがって、司令部からかくかくのものをつくれ、こういうふうなことで持ってきたというのが独占禁止法原始体系であります。この独占禁止法原始体系をつくったのは、その後いろいろありまして、二十二年七月に独占禁止法ができておる。  それと同時に、独占禁止法では、アメリカの中の一つルールをつくるというのと、もう一つ目的があった。占領政策でありますから、占領政策として日本経済力をたたきつぶしておかなくちゃならない。再び戦争を起こすような経済力を持たれたんじゃ困る、こういうことなんです。その根源は何であるか、これは財閥だ、財閥の力をやはり解体すべきである、こういうのが一つの方向としてあったわけでありまして、私は、その二つがミックスになって戦後の占領下経済政策を担ってきたものだと解しておるところでございます。  この辺の問題につきましては学者の間ではいろいろと議論がある。いや司令部の中からそういった問題が出てきたことではない。実は公正取引委員会に対して、公正取引委員会の昔の資料をずっと調べてもらったんだけれども、メモはあるけれども、はっきりした、こうなっている、こういうふうな話をしたとかどうだというような資料がないのですね、その当時の資料。いろいろな文献やいろいろなことを調べてみて私は今のようなことを考えたのでありますが、どうも私が言っていることはそんなに間違っていないんじゃないか、こう思うところでありまして、特に戦後の時代におきましてやった橋本龍伍さん、今の橋本龍太郎さんのお父さんでありますが、お父さん大蔵省の役人だった。それで、現在の経済企画庁、当時の経済安定本部財政金融局企業課長というので、ここにありますような「独占禁止法と我が国民経済」という本を、これはその当時のコピーですが、このことをやっておられる。  この中に民主的な経済体制をつくろうということで書いてありますが、今から読みますと、もう少し何かはっきりしたことが言えなかったのかなというぐらいの文章でありまして、日本ではまだその当時、独占禁止法という法律などというものは私はなかったんだろうと正直言って思うんです。  そのときにあったのは戦後の、もう一つ申し上げますと、財閥解体をいたそう、こういうふうな話でありまして、それは過度経済力集中排除法昭和二十二年十二月十八日付の法律第二百七号で出ておる。   この法律は、平和的且つ民主的な国家を再建するための方策の一環として、できるだけ速やかに過度経済力集中を排除し、国民経済を合理的に再編成することによって、民主的で健全な国民経済再建の基礎を作ることを目的とする。 ということで書いてある。「過度経済力集中」というのは、ここにずっと条文がいろいろ書いてありまして、その中に書いてありますのは、経済力というものがやはり過度集中する、やはり財閥目的とする、財閥だと法律の中に書くわけにいかないから「過度経済力」と書いてある。  この今申し上げました中で「過度経済力集中を排除し、」という言葉がある。現在の独占禁止法には「過度集中防止して、」こう書いてある。当時は排除したわけです。排除して、この法律昭和三十年に廃止された。廃止するというのは、この目的を達したから廃止したわけですが、廃止した後に防除していかなくちゃいけない、再び財閥を復活してはならないよ、こういうふうな規定が私は現在の独占禁止法に残っているんだろう、こう思っておるところです。法律の系譜的な問題を申し上げますならば、私はそういうふうになってくるんじゃないかと思います。  私が今まで述べたところ、公正取引委員会委員長、大体そんなことで間違っていないか、何か御異論があるならばちょっと言ってください。
  9. 根來泰周

    根來政府委員 大変詳しく御説明いただきましてありがとうございました。私どもの認識もそのようなところでございまして、何ら異存を申し上げるつもりはありません。  先ほどお述べになりましたように、この法案の作成につきまして三党協議会等でいろいろ御尽力いただきましたことについて、改めて御礼を申し上げる次第であります。
  10. 林義郎

    ○林(義)委員 そこで、財閥解体という話とこの持ち株会社の話は、論理的にはちょっと外れたところがあると私は思うんです。持ち株会社、ホールディングカンパニー、こういう話はアメリカでもいろいろと問題がある、またヨーロッパでも問題があったと私は思います。  まず、アメリカの方から申しますけれども、アメリカでは持ち株会社企業支配による独占のための手段として生じてきた制度であって、アメリカにおける成立が端緒をなすものであることは異論のないところである。アメリカではいわゆる一種の企業連合であるところのプール、さらにはトラストという形でやっていた、その形で巨大な独占体成立を見た。ところがこのトラストは、一八九〇年のシャーマン法の制定、一八九二年、このシャーマン法によってアメリカ最初の大トラストであったスタンダード石油トラストが違法の宣告を受けて解体されるに至って衰えを見せた。その後、ニュージャージー州に会社法がありまして、会社間の持ち株を一般的に認めることになった一八八八年の改正と同じような改正が、一八九〇年代に他の諸州にも相次いで行われましたので、一九一四年のクレートン法持ち株会社制限を定めたけれども、実際上は、その極めて狭い解釈によって巨大な持ち株会社による支配が行われたということであります。  アメリカでもやはり十九世紀の終わりごろにもうこの問題があった、こういうことであります。十九世紀の終わりというのは日本でいいますと明治時代、そのころから既にあったわけでございます。  ヨーロッパは、もう言うまでもありませんけれども、カルテルの国であるし、コンツェルンの国であります。ドイツなどというのはそういった形でありまして、この持ち株会社制度というのが非常にある。私からあえて言いますけれども、カールマルクスの「資本論」というのがあります。カールマルクスの「資本論」の中に持ち株会社という言葉最初に出てくるんじゃないかなと思います。それから「金融資本論」というのがあります。ヒルファーディングなんです。いずれもマルキシズムです、古典として考えなくちゃならないような話でありますが、もうその時代からそういった問題がある。そこでは、持ち株会社が排除されるべきものだということではない、持ち株会社資本主義の発達の一つの形態として、資本をいかにして効率的に使って経済力を高めていくかということと同時に、資本主義という成果を上げていくための一つ制度である、客観的に眺めなくちゃならないということだった、私はこう思うのでありまして、そういうふうなヨーロッパ規制があった。  ところが、戦後におきまして、ヨーロッパの中でも今のような規制を、これは変えていかなくちゃならない、アメリカが力を持って独占禁止政策をやる、ヨーロッパでも独占禁止政策というのをやっていかなくちゃならないという形で、ドイツが敗戦によって独占禁止法をやり、イギリスが独禁法をやり、フランスでもやはり独禁法をやる。フランスなどというのはヨーロッパの中で最もソリッドな、最も硬直した国だ、私はこう思っておりますけれども、フランスは、言いますと、百のファミーユ、百の家族が企業支配をしているということを言われるぐらいに極めて統制的な国だったと私は思うのです、戦前は。戦後の時代においてもそういったことがある。そういったものをやはり解体していくためにやっていかなくちゃならない。今のEUでありますけれども、EECができたときから、やはりそこでも独占禁止法というものを法制として六カ国の間でやっていこうというような話がだんだんできてきた、そういった長い歴史のある話だろう、私はこう思うのでありまして、こうしたことからして、日本でもこれをやっていかなくちゃいけない。  ところが、この持ち株会社というのは一体どういうことか。先ほど申しましたように、日本持ち株会社法というのは、占領政策としての持ち株会社財閥解体としての目的一つありました。それ以外に、やはり事業持ち株会社というものを禁止していくか、こういうふうなのは当然のことながら議論があったんだろうと私は思うのです。  ですから、昭和二十二年の原始独禁法のときにはこの規定が一般的にあった。しかし、二十四年の改正あるいは二十八年の改正で、現在のように事業持ち株会社純粋持ち株会社という形に二つに分かれた。事業持ち株会社というのは、事業をやる傍らほかの会社の株を持ってその会社支配していく、その会社を動かしていくというのが事業持ち株会社でありますし、純粋持ち株会社というのは専らほかの会社の株を持つことによって、自分そのもの事業はしないけれどもやっていく、こういうふうな話だ、こういうふうに理解をしておりますが、そういった事業持ち株会社純粋持ち株会社の差をつけて日本がやっているも純粋持ち株会社こそ経済力過度集中によって財閥的な支配をもたらすものだ、こういうふうな物の考え方がそこで割り切りとしてあったんだと思うのです。  本当を言いますと、事業持ち株会社だって、同時にほかの株を持ってしかも非常に力が強い、こういうことになったならば、私はそういったものについての規制があってもしかるべきだろう、こう思っているのです。しかしながら、それはやらなくて、それは事業持ち株会社自分事業発展させていくためには別のことで規制をすればよろしい、単に経済力過度集中するという一般集中という形でなくて、いろいろな形での規制をやっていけばよろしい。独占禁止法にありますところの競争の実質的な制限であるとか、独占であるとか、あるいは不公正な取引方法であるとか、いろいろな形で経済競争ルール規制をしていく、そのルールによって会社規制していったならばよろしいのだろう、こういうふうな形でやってきたのが今までだと私は思います。  ところが、いわゆる事業持ち株会社で今やっていますのは、大変に数がふえてきている。ちょっと通産省でもいいし公正取引委員会でもいいのですが、私の持っているところのデータでは、連結子会社の数は、上場企業五百社、上の方から順番にとりまして見ますと、大体十年間で三倍ぐらいに子会社がずっとふえている。会社経営としていろいろな形で子会社をつくるというような話というのは、企業経営としてはもう必然のことである、それをやることが必然としてやってきているんだ、こういうふうに思うのですが、ちょっと数字、だれか答えることができるかね。ちょっと言ってくれないかね。
  11. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  今先生御指摘ございましたように、これは有価証券報告書に基づく資料、統計でございますが、主要企業一社当たりの子会社数でございますけれども、昭和六十年、平均でございますが、大体十二・三社であったわけでございますが、平成六年の数字によりますと三十七・一社ということになっておりまして、おっしゃるとおり約三倍ぐらいになっておる、こういう実態でございます。
  12. 林義郎

    ○林(義)委員 どうもありがとうございました。  会社経営としては子会社という制度でやる場合もある、しかし、大きな会社になると、もう皆さん方御承知のとおり事業部制をとる。事業部制をとって、鉄鋼部門あるいはその他の、これは商事会社だけじゃありません、普通のメーカーでもそういうふうに事業部門をたくさんとって、その部門でやっている。あるいは最近のはやりではカンパニー制という形のものがある。さらには、合併をするかわりに、やはり相互に株式を持ち合いをしていくというような形での協力がある、こう思うのでありまして、そういった意味で、こうした事業持ち株会社なりというものが非常にふえてくる、これは私は経済の成り行きだろう。  やはり経済体制をやっていくときにおいてはこれはどうしても必要な——経済の規模がだんだん大きくなってくると、とても一人の方だけで、例えば鉄だけを見ていてやるわけにいかない。鉄鋼会社でも現在、コンピューターの部門をやって、半導体部門をやらなくちゃいけない。鉄をつくるのと半導体をつくるのと全然違うので、別の人で管理していかなければ技術的なこともわからないし、どんな商売になっているかとてもわからない。私は、そういうふうな形で企業というものがだんだん成立していったのだろう、こう思いますし、新しい時代に即応してやっていかなければならないと思います。  そうした国内的な問題もありますが、同時に私思いますのは、先ほどありましたが、日本がこれから国際化に進んでいかなければならない、こうしたときには、日本の国内だけの仕事をやっていく、それだけではしようがない。例えば、今や大きな会社は、中国であるとか台湾であるとかそういったところにいろいろな分工場なり子会社をつくって活躍をしている。上海は大変新しい新都市という形でやる、こういうことになっていますけれども、あちこちでいろいろやっていますのは日立製作所であり東芝であり、そういったところは皆、分工場をつくり、あるいは自分のところの子会社をつくってやっている。上海でつくった部品を香港に持っていって、香港の部品と一緒にして、その部品を日本へ持ってきて日本のコンピューターに使いましょう、こういうふうな話になってくる。  それを同じ会社でやりますか、あるいは子会社を使ってやりますか、自分のところの分工場といってやるか、事業部制といってやるか、どちらにしても同じような形でコントロールしていかなければならないのだろう。それが今の状況になっています。これは日本だけでやっているなら、日本が中国に対する侵略である、何だということになりますけれども、そうではなくて、アジアの諸国だって大変なことになってきている。  アジアの諸国でも、華僑資本というものがアジアの中で非常に大きくなっている。日本の総資産は、十三兆ぐらいのところが今一番大きいのですけれども、どなたか、アジアの華僑資本、一番大きな華僑資本は大体どのぐらいか。私の記憶で、持っているのは、百三十兆か何かぐらいとの話があったと思うのですが、アジアの資本というのは一体どのぐらいの資本になっているか。華僑資本というのは香港にある、あるいはシンガポールにありまして、それはそこだけでやっているのではなくて、同時にインドネシアをやる、タイをやる、こういった形でやっているのです。  インドネシアにこの前行ったとき大統領に私会って、ちょうどインドネシアで外資規制をやっている、何で外資規制をやるのですか、こういうふうな話を私がしたら、向こうが言いますのは、華僑資本にとてもやられちゃって、経済的には全部華僑に支配されてインドネシア人は何もできない、つい働くだけの労働者だというような話ではやはりインドネシアは困るので、インドネシアの企業を育てていくためにもやりたいんだ、とにかくとてもじゃない大きな企業だと。  しかし、一つの企業の名前になって、三井だ三菱だという名前になって、華僑資本ですから、お互いが同族会社みたいになっていて、リーさんがおる、ウーさんがおる、何とかさん、たくさんおって、一緒になってやっておるのがいわゆる華僑資本だと思うのです。そういったような話で、公正取引委員会でも調べたものがあったら、ちょっと言ってくれませんか。
  13. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 大変恐縮でございますけれども、華僑資本の実態はどんなふうになっているか、どのぐらいの規模のものがあるかというのは、現在調べた材料を持っておりません。大変恐縮でございます。
  14. 林義郎

    ○林(義)委員 それではここで私は、時間もありませんから少し話を進めたいと思います。  公正取引委員会に聞きますけれども、過度経済力集中というのを今度は書いてある。一体ここで書いているのは、法律にこう書いてありますが、この法律を読んだだけではなかなか一般の人にはわからない。グループの規模が極めて大きい、相当数の主要な事業のそれぞれにおいて別の大きな企業を有する場合とかと書いてありますが、この法律独禁法ですから、国会でいろいろ議論されて、国会の皆さん方の意見が通るような、やはりそれが常識だということだと思うのです。その常識に基づいて規制をしていかなければなりませんが、規制を国会でやったからどうだという話ではなくて、その中を取捨選択して、公正取引委員会がガイドラインをつくる。一体、具体的にガイドラインをどういうふうな形で今つくるというふうに考えておるのか、また、その辺をこれからどういうふうにやっていくのか。  商工委員会でも今度、集中討議されるという話ですね。各先生方からいろいろな議論を出してもらって、そして、こういうふうな形でやはり日本経済規制すべきだ、いやここは自由にしておくべきだという議論を積極的にやっていただいて、それで独占禁止法というのはつくっていかなくてはならない。  きょうはもう官房長官が帰ってしまった、あと公正取引委員会がいますけれども、公正取引委員会法律の提案権はないのです。だから官房長官が来て説明しているのですが、中身は、独立した機関ですから公正取引委員会が独立してやる。だから、その独立してやる公正取引委員会に対していろいろなことが言えるのは政府だと私は思うのです。内閣からちょっと独立しているのだけれども、国会に対しては、公正取引委員会、当然聞かなくてはならない、だから国会の権威というのは、独占禁止法に関する限りは非常に重たいものだ、こう私は思っておりますので、ぜひ次の機会に、委員長お願いをしておきたいと思いますが、公正取引委員会、ちょっとその辺。
  15. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 今回御審議お願いしている持ち株会社解禁の法律では、事業支配力過度集中することとなる持ち株会社禁止をするということでございまして、事業支配力過度集中することとなる持ち株会社というのはどういうものを言うかというのは、九条五項で具体的にあらわそうということで定義を書いてございますが、それだけでは必ずしも明確でないという、なかなか法律では書き切れないところがございます。したがいまして、そういうところにつきましては、これは今回初めてということではありませんけれども、ガイドラインという形でその法律の解釈なり運用の考え方なり、そういうものをお示しをして、なるべく法運用の透明性といいますか、そういったことに努めていきたいというふうに思っております。  今、林先生から御指摘がございましたように、ガイドラインをどういう手順でつくるのかということ、あるいは国会での御議論、当然参酌するのだろうということでございますけれども、私どもといたしましては、御審議いただき、法案が成立をした段階、なるべく早い時期にガイドラインのドラフトといいますか、案をお示しをして、各方面から御意見をお聞きした上で最終的に確定をしたいと思っておりますが、ドラフト、ガイドラインの案を策定する過程におきましても、当然国会での御審議等を十分参考にさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
  16. 武部勤

    武部委員長 ちょっと林委員に申し上げますが、この委員会におきまして、今理事会で、今後の委員会審議の日程の中で、参考人招致、それからフリートーキング、さらには最後に政府質疑と、その中ではもちろん官房長官にもまたおいでいただく、そういうようなことを協議中でございますので、参考までに各委員に今後の審議の進め方について申し上げておきたいと思います。
  17. 林義郎

    ○林(義)委員 時間もなんですから、私あえて今の問題を詰めません。この次の審議の中でもう少し話を詰められれば詰めてまいりたい、こう思っています。  次に、三つ四つ問題がありますので、それをまとめて申し上げますので、それぞれのところからお答えをいただきたい。  まずは労働省の方ですが、実はこの審議をするに当たりまして、労働問題をどう考えるか、子会社と親会社ができました、子会社に労働者は雇われている、そういったときに、親会社の方が経営権を持っているならば、労働者が親会社の方に対して文句を言うことができるのかどうなのか、これは法律上の問題がありますよという御議論があったのです。  最高裁の判例で、それは当然に応諾義務がある、こういうふうな話が出ています。出ていますが、それは法律的にどういうふうに考えたらよろしいか、どういうふうなことをやったらよろしいかというような議論がありまして、日経連と連合との間で話し合いをずっと進めてもらいました。そこで一応の合意に達していますから、私はこの合意は国会としては尊重してやるべきだろう。恐らく皆さん方もその点については御賛成だろう。もしも反対されるなら、その点についても反対だということになってしまうのだけれども、合意をつけた、その合意はやはり国会としても尊重してやらなくてはいかぬが、政府の方はこの合意について一体どういうふうに考えているのか。  労働法制を変えるということは、正直言ってなかなか大変な問題がほかにある。ありますから、どういうふうな形で、子会社云々ができたときの労働関係をスムーズな形に持っていくか。やはり労働関係というのは戦後の民主的な法制の大きな問題ですから、これは真摯に取り上げていかなくてはならない問題でもあろう。しかし、独禁法の中には労働法制を入れるわけにはいかない。これは全然別な話ですから、だれが考えてもそういうことだろう。この辺についてどういうふうに考えるか、その辺は労働省からお答えをもらいたい。  それから、あとこの法律には、別に定める日までは金融関係法律は別にいたします、こういうことで書いてある。この独占禁止法の今度の改正は、まさに企業経営多角化を図っていく、そして国際的な経営体制をつくっていく、そういったことが一つのねらいでありますから、そういったような格好の中で、金融関係だけは別にするということを書いてあります。  これは、書いてありますのは、いろいろと議論しますと、証券業界の中での議論あるいは保険業界の中での議論、銀行の中でも信託があり長期信用銀行あり、いろいろな銀行があって、それぞれのところで別々の規制がある。本当は持ち株会社をつくって、全部同じにやったらいい。特にこの問題はアメリカの銀行委員会でも、銀行委員長の提案と委員の提案と二つあって、まだなかなか議論ができていない。これは国際的な問題ですから、日本の金融持ち株会社法をつくる、金融関係法をつくるというのは、国際的にもやはり議論が出てくる話だと私は思う。日本は特に東京ビッグバンをやって東京で金をいろいろ運用する。日本には千二百兆の個人資産があるのですから、その資産をいかにして運用するかというのは、これは世界も関心を持っているところだと思う。アジアの国だって関心を持っているところであります。  それをどういうふうな形でやっていくのか。いい東京金融市場をつくっていかなければならない、こう思いますので、私は、そういったものを含めて、金融持ち株会社の関係あるいは金融についての規制、今五%規制というのがありますが、その規制を一体どういうふうにしてこれからやっていくのか。今からやりますという話でありますからそれを待っていて言うのですが、今どういうふうな形で話が進められているのか。別に法律で定める日だ、こう書いてありますから、別に法律で定めなければいつまででもよろしい、いつまででもいいなどということでは、とてもじゃないができない。外為法は来年の四月からもうやろう、こういうことですから、ほっておいて何もやらなかったならば、外為法でじゃんじゃん外国の資本が入ってきて日本のせっかくの資産が皆つぶされてしまう、こういうふうな話にもなりかねないという話ですから、その辺をどういうふうに考えて今やっているのか。   それからもう一つは、これも聞きたいのですが、金融会社がほかの会社について株式保有を制限される。確かに金融会社がいろいろなところを持つということは問題はあると思うのです。あると思いますが、何でもかんでもほかのところを持ってはいかぬというような形でやるのかどうか、その辺についてどんな規制をかけていくのか、特に建設業者についての問題を一体どういうふうにやっていくのか、この辺もやはり銀行法としてのあり方を問われるような話であって、独禁法でのルールの話ではないのではないかなと個人的には思っていますが、その辺、どういうふうに考えるのかということであります。  それから、ちょっと時間がありますが、商法の問題がある。あるいは税法の問題があります。これは今度企業会計原則を改める、こういうふうなことになっていますが、企業会計原則を一体どういうふうに改めるのか、それが一つの大きな方向です。この持ち株会社制度とすぐに結びついて、持ち株会社をやったらこちらも必ずやらなければいかぬという話ではないと思うのですが、企業会計原則を国際会計原則にしていくということは、そのこと自体としてやはり日本の企業会計の国際化になっていく、企業の国際化に役立つものだ、私はこう思いますので、その辺をどういうふうなことで考えていくのかということと、そのほかに諸制度として、株式会社設立するときに一体商法上の規定が整備されるのかどうか。お互いの株を持ち合ったりなんかするときの商法上の手続がいろいろかかる、株式交換によって会社分割をするというのが商法上どういうことになるのか、その辺の検討。  さらには、グループ経営に対応して、株主とか債権者の利害調整をどうしていくのか。商法の規定というのは株主保護であるし債権者保護なんですから、その規定と一体——先ほど申しました持ち株というような話で労働者のところの問題があるように、同時に債権者に対する問題も出てくると思うのです。その辺についての検討をしてもらわなければならない。単にこの独禁法をやっただけで日本の経済がさあっと国際化、自由化されていくとは私は思っていません。そういった商法上の関係もいろいろとこれから検討していかなければならない。この国会にすぐ出せなどということは私も言いませんけれども、私はそういったことを虚心に考えて国際化の時代になるような企業体制をつくっていくことが必要だと思います。  そういったことと関連して、これも最後になりますけれども、税制の問題。分社化をしたときに一体譲渡益課税をどうするかというような問題、それから分社化をしたときの連結納税制度をどういうふうにするのか。これまたそのこと自体で大問題だと私は思いますし、すぐにどうだということになりませんけれども、国際的にはこれは広く認められている制度であります。アメリカでもそういった制度がありましたり、ヨーロッパでもある。  特に、日本の企業が今度アメリカヨーロッパに進出して向こうで会社をつくる。その会社をつくったときに今度向こうに税金を納めるのかね、こっちで税金を納めるのかね、親会社が税金を納める、連結納税を親会社がやります、しかし税金だけアメリカで払いますよというのは一体どういうことだねというような話にもなってくるのだろう。こう思いますから、そういったような点など、やはり整備を図っていかなければならない問題がある。これもできるだけ早くやった方がいいだろうとは私は思いますけれども、そういったような諸問題がある。そういったようなことをぜひ検討してもらいたい。  労働省と大蔵省の銀行局と証券局と主税局それから法務省、それぞれちょっと、簡単でいいですからお答えいただきたいと思います。
  18. 武部勤

    武部委員長 簡潔に答えてください。
  19. 岩崎伸夫

    ○岩崎説明員 お答えを申し上げます。  独禁法改正にかかわります労使関係の問題につきましては、ただいま御指摘のように先般労使の合意がなされまして、与党の独禁法協議会にも報告されたところでございます。  労働省といたしましては、今後労使関係者とも相談しながら対処してまいりたいというふうに考えておりますが、この検討につきましては、労使の合意がもとになっておりますことから、労使関係者の参集を求めた検討の場で行うことが適当と考えているところでございます。  以上でございます。
  20. 五味廣文

    ○五味説明員 金融持ち株会社に関します現在の検討状況でございますが、御指摘のありましたように金融界にとりましても大変意義の深いものでございますし、また金融を利用する方にとって競争の促進で大変メリットの生ずる話ですので、これは急いで検討する必要があるということで、現在関係各審議会で東原版のビッグバンを検討しておりまして、六月をめどにそのプランを示すということにしておりますが、その検討課題の一つとして現在活発な議論が行われております。各審議会とももうそれぞれ複数の回数この議論をいたしてきております。‘  したがいまして、六月をめどに、与党のこの三党の合意でも示されておりました預金者、保険契約者、投資者の保護といったような観点あるいは金融機関の経営の健全性といったような観点、こういった点を含めまして、新しく導入されますこの持ち株会社について、どんなあり方でどんな金融上の考え方を適用していったらいいかということで鋭意検討しております。三党でお示しいただきましたように、独禁法の施行に間に合わせ国会に提出するように作業する、こういった基本線で現在作業を進めております。  それから、持ち株会社ができました場合に、この形態を使っての、建設業というお話がございましたが、ほかの業態への進出に関する考え方ですが、この部分も、実は銀行の経営の健全性ですとか預金者の保護ですとかいう観点かちの重要な検討項目の一つでございまして、現在金融制度調査会におきます持ち株会社検討の重要項目の一つとして、実はけさ十時から金融制度調査会やっておりますけれども、そこでこの問題も議論をする予定にいたしております。  いずれにしましても、同じスケジュールのもとで、あわせてこれを検討してまいりますが、預金者の保護あるいは外国における制度がどんなふうになっているか、ここら辺を参考にこれから結論を導いていきたいと考えております。
  21. 大西又裕

    ○大西説明員 企業会計の整備についてのお尋ねでございます。最近経済社会環境は変化しておりますし、それからグローバル化もいたしております。特に金融・証券市場はグローバル化いたしておりますが、その中で、企業のディスクロージャーの透明性を維持するということのために、御指摘のように、国際的な動向を踏まえながら、会計処理基準について一層の整備が必要となるというふうに考えております。  そこで、企業会計審議会におきまして、現在、整備を図るべき課題として、先ほど御指摘のありました連結財務諸表制度のほか、金融商品、企業年金などに係ります会計基準の検討を鋭意進めております。   連結財務諸表制度についてお話しいたしますと、この見直しは、連結ベースのディスクロージャーの充実と連結手続の抜本的見直し内容とするものでございまして、去る二月七日に、連結財務諸表制度見直しに関する意見書、公開草案と呼んでおりますが、案を取りまとめて、公表されております。  この見直しは、目標といたしますものは、投資家が企業集団、グループの抱えるリスクとリターンを的確に判断するために、連結情報に対するニーズが高まっているということ、それから、企業の方でも連結経営を重視する傾向が強まってきていることを背景といたしておりまして、従来は個別の財務諸表を中心としたディスクロージャーでございましたが、それから連結情報を中心としたディスクロージャーに転換をしようというものでございます。今後でありますが、公開草案に対します意見が出ておりまして、これにつきましては六月をめどに取りまとめを行う予定でございます。  なお、それ以外の企業会計審議会の金融商品ほかの検討課題につきましても現在鋭意検討が行われておりまして、まとまったものから順次意見を公表していくこととしているところでございます。  以上でございます。
  22. 伏見泰治

    ○伏見説明員 御指摘がございました税制に関連する部分でございますが、そもそもの税制が適用されます企業経営の実態、その動き、あるいはまた、御指摘がございましたような商法や企業会計の動き、そういったさまざま関連したものとの関連がある非常に複雑な問題であろうかと思っております。また、税制自体としましても実務的な十分掘り下げた研究が必要だろうと思っております が、いずれにしましても、そういった幅広い観点から十分な御議論をいただく必要があると思っておりますので、引き続き、十分な研究をしてまいりたいと思います。
  23. 柳田幸三

    ○柳田政府委員 お答え申し上げます。  持ち株会社は商法上はいわゆる親会社に相当するものでございまして、委員からも御指摘ございましたように、親子会社というのは、現在かなり一般的な存在になっております。この親子会社の存在によりまして、商法上、特段の弊害を生じていないというふうに認識しておるところでございまして、持ち株会社が解禁されましても、商法上、新たな問題が発生するものではないと考えているところでございます。したがいまして、当然に商法上の手当てが必要になるというふうには考えていないところでございます。  委員からは、今後の商法の規律のあり方について重要な御指摘をいただいたわけでございますが、委員から御指摘ございましたように、企業の国際化、あるいは企業の行動のあり方の変化というものに応じまして、必要な法整備を行うということは重要な事柄であると認識しておりますので、今後とも、時代の進展に応じまして適切に対処してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  24. 林義郎

    ○林(義)委員 もう時間も参ったようですからこれで終わりますが、私は、ここで活発な議論を当委員会としてぜひやっていただきたい、これを心から期待しまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  25. 武部勤

    武部委員長 次に、西川太一郎君。
  26. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 新進党の西川でございます。  ただいまは、政界の大先輩であられる林先生から、与党取りまとめのお立場での御質疑、もう既に準備の段階でいろいろ議論を活発になされた上での御質疑ですから、大変だったろうと拝察をいたしますが、大変参考にさせていただきました。これから後、私は野党でございますので、この三党合意についてはつまびらかに承知をしていない立場として、いろいろお尋ねをしたいと思います。  我が党は、本会議において、つるしが解けた段階で、古賀正浩代議士によって、世界は、冷戦構造の終結による市場経済の普遍化、アジア諸国等の急速な台頭に伴い、いわゆるメガコンペティションの時代に入った、こういう中で我が国の経済情勢に目を向けると、財政部門の大きな赤字、長い不況、企業の雇用や産業の空洞化が懸念されるという現状——こういう中で、この商工委員会も、いろいろな法案について武部委員長を中心に真摯に議論をし、幾つかの手だてを講じてきたわけであります。そういう中で、持ち株会社、憲法九条と独禁法九条、ともにこれは戦後のある時期まで機能したけれども云々というような議論もあり、今ここに持ち株会社解禁について議論をする機会をいただいたわけであります。  私は、質問の順序をちょっと変えて、御多忙の中御出席をいただきました官房副長官に先にお尋ねをしたいと思うのでございます。と申しますのは、政府を代表される政治家として御答弁をいただかなければならない、根來委員長にお尋ねするよりも、官房副長官にそういうお立場でお尋ねした方がいいであろうというふうに考えまして、一点、まずお尋ねするわけでございます。  実は私、ささやかな経験を持っておりますが、規制緩和に関する特別委員会の野党側の筆頭理事でございましたときに、持ち株会社の解禁について当時の山口鶴男総務庁長官にお尋ねをいたしました。議事録を御参照いただければおわかりいただけるのでございますけれども、極めて否定的なトーンで答弁が返ってまいりました。旬日を経ずして、この商工委員会における理事として、当時の橋本通産大臣に同じ問題をお尋ねしたところ、極めて積極的な御答弁をいただきました。委員と同じ考えだというぐらいの私に対する御答弁をいただきました。私は再び規制緩和の特別委員会で、山口総務庁長官に、主要閣僚において、この戦後の最大の経済界における問題と言われる大事な問題で内閣の見解が不統一というのはいかがなものかということをお尋ねしたのでございます。  そういう経験を踏まえて官房副長官にお尋ねをいたすわけでございますが、当時、官房副長官は文部大臣で、閣僚であられたと記憶をいたしますが、違いましたか。まあ、それはいずれとしても、何でこんなに急に解禁に傾いたのか。  例えば、第四章研究会なる公正取引委員会の中間報告は、必ずしもこの持ち株会社を解禁することに積極的な賛成をしていない、私はそう思う。したがって、与党三党の間の話し合い、これによって政治的に極めて大きな圧力が公正取引委員会にかかって、そして、その結果公正取引委員会が方向を転換した、こういうふうに思わざるを得ないのでございますが、この間のいきさつを、公正取引委員会に伺うのではなくて、ぜひ官房副長官にお尋ねをしたい。つまり、今回の法案がまとまるに至った経緯を、率直に、政治家を代表して、与党、政府を代表して、ひとつ御答弁をいただきたい、こんなふうに思うわけであります。
  27. 与謝野馨

    ○与謝野政府委員 まず、正確に、大体物事がどういうふうに進んできたかということを申し上げます。  これは、先生御存じのように、平成七年三月に閣議決定されました規制緩和推進計画におきまして、持ち株会社問題を検討を開始し、三年以内に結論を得る、こうされました。平成七年十一月から、公正取引委員会独占禁止法第四章改正問題研究会が開催されまして、十二月に、持ち株会社禁止制度については、事業支配力過度集中防止という独占禁止法第一条の目的規定を踏まえ、これに反しない範囲で見直すことが妥当である旨の研究会報告が公表をされました。  平成八年二月からは、与党において独占禁止法改正問題プロジェクトチームが設置され、多数の関係団体等からヒアリングを行う等して精力的に検討が行われましたが、主として労働問題及び持ち株会社解禁の範囲について与党内の意見の一致を見るに至らず、前通常国会における法案提出は見送られました。  平成八年十二月に閣議決定された経済構造の変革と創造のためのプログラムにおいて、持ち株会社規制について、事業支配力過度集中防止するという独占禁止法目的を踏まえて持ち株会社を解禁することとし、独占禁止法の一部改正法案を次期通常国会に提出することとされました。  平成九年一月から与党独禁法協議会が開催され、持ち株会社問題について公正取引委員会改正案を踏まえて再度検討が行われ、同協議会で十一回にわたり検討を行い、二月二十五日、持ち株会社を解禁することとし、「解禁に際し、事業支配力過度集中を招く持ち株会社は排除されなければならない。」等とする与党三党の合意がまとめられました。  ここでこういう御説明を申し上げましたが、与党の独禁法のプロジェクトチームで主として議論されましたことは、労使の関係をどうするかということでございます。持ち株会社をつくって、そこにいわば子会社ができて、子会社の中の労使関係と持ち株会社経営陣との関係をどうするかということが随分議論をされましたが、これは、理屈の上でやはり持ち株会社がいわゆる子会社の労使関係に入っていくということはどうかなという意見が支配的であったと私は思っております。  それからもう一つは、いわば古い考え方の財閥復活につながるのではないか、あるいは金融資本がいたずらにあらゆる産業資本支配するのではないかという懸念の声もございまして、昨年十月に行われました衆議院選挙までは与党三党の考え方はまとまらなかったわけでございます。しかし、衆議院選挙が終わりまして、独禁法改正して日本の経済にとっていろいろな経営形態がとれるという選択肢を広げる、こういうことに関しては与党三党が合致し、政府もまた、政府・与党一体として今回の法案を出すに至ったということで、全体としては行ったり来たりという部分はございましたけれども、結論は、大いなる議論をし、いろいろな方の御意見を伺った上で本改正案に至った、その経緯は西川議員も十分御理解をしていただけるのではないかと思っております。
  28. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 どうぞ、もう結構ですから。  いずれ、委員長のお計らいでフリートーキングもこの委員会は設定をしていただいております。そういう機会に与党や社民党の関係議員にもお尋ねをする機会があろうかと思いますから、きょうは心の程度にとどめておきたいと思います。  私は、こういう経済環境のもとで、喫緊の課題であるこの重要な問題がもっと早期に、我が古賀代議士の代表質問にもございましたとおり、遅きに失したのではないかという意見は、必ずしも野党である私どもだけではなく、財界からも出されています。基本的な考え方をたがえている連立与党の中で、これが今官房副長官の御説明にありました十一回の会議以前に実は四十回も検討を重ねられて、何も生産的な議論がなされていなかったということを私どもは漏れ聞いているわけでありまして、こういうところに無理があったような気もいたしますが、それは私の感想であって、答弁は要りません。  そこで、次に、基本的にこの法案に賛成をする姿勢を私は初めに明らかにしておきたいと思いますが、その立場でお尋ねをさせていただきます。さはさりながら、野党でありますから厳しいことも申し上げることはお断りをしておきます。  まず、私は、あきれたことが幾つかありますが、例えば公正取引委員会の元委員長であられました、ある銀行の会長になられている方は、   持株会社を禁じた独禁法九条は、戦後の日本経済をつくったニューディーラーたちの忘れ物だ。公正取引委員会委員長だったころは、どうしてこの規定が残っているのかずっと疑問に思っていた。   腹立たしいのは、公取が九条を金科玉条のように守っていることだ。 独禁法の精神である「経済力集中排除」と持株会社が直接つながるとは考えられない。   持株会社を認めて弊害は何もないだろう。むしろ、小さな新興企業グループのことを考えればぜひやるべきだ。   こうしたメリットをよく知る産業界から解禁論がなかなか出ないのは、マスコミの批判を恐れているからだ。解禁を唱えると、「戦前に戻れるのか」と言われる。これは日経ビジネスの一九九四年五月三十日号に載っている発言であります。   これについて根來委員長の感想を求めるということをしません、私は通告していませんから。それは、私のところに質問取りに見えた公取の幹部にはっきり申し上げてあります。私はインチキはいたしません。  しかし、こういう人が委員長にいたということ、これはすごく大事なことですね。何でその公取が、四章研究会の中間報告で消極的であった、それが何で変わったか。一説によると、これはいわゆる俗説でありますけれども、公取の事務総局制、これをかち取らんがための妥協だ、こういう意地悪なことを言う人もいますけれども、私はそうは思いません。  ついでに言うと、私は、全省庁を全部廃止して公取型省庁だけを日本の行政としてつくり出して、自由にさせていく、悪いことをしたり国民に被害を与えたりするものだけを厳しく取り締まる、それぐらいの規制の撤廃、これをやるべきだという持論でありますかち、公取には好意を感じている一員でありますから、決して意地悪なことを申し上げるつもりはありません。  さあそこで、第四章研究会の中間報告は公的な文書でありますから、公取がそこでどう言っているかということを今一々申し上げるいとまはないけれども、ちょっと言わないとまずいから言いますが、公取はそこでこう言っているのであります。持ち株会社は他の会社事業活動を支配するという本質から、強力な企業集団や企業系列を形成しやすいと考えられ、持ち株会社を容認した場合には、株式保有を通じた企業間関係がより強固なものになり市場メカニズムの機能が妨げられるおそれがある。こういうふうに述べている。だから、事業支配力過度集中防止目的とする現行の規制の枠組みは基本的には維持していかなければいけない、これがこれを発表された当時の、これはまあ平成七年の十二月ですか、中間報告は平成七年ですから、わずか少し前のこと。  それが何で、部分解禁とはいえこういうことに踏み切ったのか。これは、非常に公正取引委員会を信頼し、公正取引委員会的機能をふやして、強大にしてやるべきだという論者である私からすれば、信頼の基本が崩れると言うと大げさになるけれども、この間まで反対だと言っていたのが急に賛成だ、こういうふうになるということは、これはどういうことなのかな、こういうふうに思うわけですね。  そこで、今度の法律改正を公取は能動的に、積極的にこれをやられたのか。それとも、与党三党の力に押し切られて、または財界やいろいろな力に押し切られて、それを考慮してこういうふうに消極的に仕方がないという形でやろうとしているのか。そこを公正取引委員会にお尋ねをしたいのでございます。
  29. 根來泰周

    根來政府委員 私は昨年八月に任命された者でございますので、それ以前のことについては、あるいは伝聞に基づく判断になるわけでございますが、それをお許しいただくという前提で申し上げますけれども、平成七年の十二月に四章研究会から中間報告をちょうだいしました。  おっしゃるように、中間報告では四つの類型を挙げて、持ち株会社を解禁すべきでないかという意見でございました。もちろん、この研究会というのは、研究会の性格でございますが、審議会のようなものではなくて、いろいろの先生方あるいは有識者に研究をお願いしておるわけでございます。  その結果、そういう意見がまとまったということでございますし、また、その研究会の内容も、四つの類型に限るということではなくて、四つの類型は一つの例示ということで、やはり持ち株会社制度を解禁した方がいいんじゃないかという御意見だというふうに私どもが受け取っているわけでございます。もちろん、この研究会の意見で公正取引委員会の意見を決めるというわけではございませんで、いろいろの方の意見を聞く、そういう機会をちょうだいして、またいろいろの国会関係の方の御意見も聞くということでございます。  といいますのは、御承知のように、こういう法案は内閣から提出されるわけでございますから、各行政官庁の御意見もございますし、また国会の方の御意見もございます。そういうようないろいろの御意見をちょうだいした上で、私どもなりにこういう案がどうだろうかということで、昨年、与党プロジェクトチームに素案みたいなものを提示しまして、御検討お願いした。非常に精力的に御検討いただいたのでございますが、残念ながら、結論が出ないということで、そのまま見送りになっていたわけでございます。  ことしになって、さらにまた今度は与党協議会、独禁法協議会といいますか、そこでも御意見をいただき、またいろいろの国会議員の方の御意見もちょうだいして、こういう成案を得たわけでございまして、決して私どもが嫌々この法案をつくったというわけではございません。  公正取引委員会でも、委員も、また職員もいろいろ意見がございます。これは、ゼロから百までの意見があるわけでございますが、その意見が集約されたといいますか、その意見の中で多数決といいますか、そういうところでこの法案を作成したようなわけでございます。  時代というのはだんだん変化しまして、規制緩和ということになりますし、こういう独禁法の精神も国民に定着してまいりますと、持ち株会社禁止というのはやはり余り心配し過ぎだ。要するに、杞憂の部分が多いんじゃないか、こういう御批判がございますと、杞憂の部分を切り捨ててこの法案を作成するという立場でやったわけでございますので、ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  30. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 根來委員長は、昨年の八月以前のことについては伝間でしか御承知がない、こういうことですから、私はもう少しこの点について、当時のことを詳しく御存じの方に補足をしてもらいたい、こう思うんです。  と申しますのは、どなたがとか言いませんけれども、私がさっき冒頭官房副長官に御質問を申し上げた際に、ささやかな経験と申しましたが、その当時、日本経済新聞に二回にわたって公正取引委員会の有力な持ち株会社解禁論者、イデオローグ的な立場の方が消極的な論文を書かれたんです。それは私は、日経新聞の読者、つまり広く国民に、公正取引委員会持ち株会社の解禁はやらぬぞ、世間はいろいろ言って不透明だけれども、やらない方向だぞということをおっしゃったんだろうというふうに読みました。議会で質問すれば、総務庁長官は消極的である、ひとり現総理の橋本通産大臣は積極的である。  これはついこの間のことですから、もうずっと前のことなら、それは今の根來委員長のお話のとおり変化はあったろうということは理解できるけれども、ついこの間のことですから、私は随分御苦労さまなことだな、こういうふうに思うわけです。  公正取引委員会はどうしてそんなふうに変わったのと人に聞かれたときに、私も国会議員として、いや、実はこうなんだよと公正取引委員会の立場に立って説明ができるように、ひとつ答弁をしていただきたい。
  31. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 お答え申し上げます。  九条におきまして、現在全面的に持ち株会社設立、転化を禁止しておりますが、この規制のあり方について従来からいろいろと御議論があることは、先生御指摘のとおりでございます。公取の中でも、表に出したという形でのあれはありませんけれども、いろいろな考え方を持った職員といいますか、人がおるということも当然事実でございます。  私どもとして、この持ち株会社問題を取り上げてきちんと検討しようという作業を始めましたのは、平成七年の三月の規制緩和推進計画という閣議決定の中で、持ち株会社規制の問題につきまして、事業支配力過度集中防止するという趣旨を踏まえて、系列、企業集団等の問題に留意し、我が国市場をより開放的なものとし、その他というようなことで、検討を開始せよ、そういう閣議決定がございました。  それを受けて、私どもとしては、関係の方面といいますか、主として民間企業あるいは経済団体、経済官庁、そういったところから御意見を聞いたり、それから、先ほど先生御指摘のような四章問題研究会というところで各界の有識者に御参加をいただきまして、四章問題全般ということで、まず持ち株会社問題について鋭意検討していただきまして、先ほど委員長が御答弁申し上げましたように、持ち株会社禁止制度というのは、過度集中禁止する、防止するという第一条のあれから出てきているので、それに反しない範囲で解禁をする、具体的に、その目的に反しないものとして四つの類型がある、そういったような趣旨の結論といいますか、報告書をいただいたところでございます。  したがいまして、こういった検討の過程でいろいろな議論、意見というのは当然あり得ることだろうと思います。ただ、私どもとして、政府部内といいますか、政府全体としてこういう法案を提出させていただくに当たりまして、政府部内、関係方面、それから与党の先生方のしかるべき場におきまして御検討いただきまして、今回法案を出すということになったわけでございます。
  32. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 私は、先ほどの官房副長官の答弁、それから今の局長の答弁を伺っていて、どうしても一つ聞きたくなることがあります。  それは、いわゆる規制緩和の小委員会、そこからまずきっかけができた、こういうことですけれども、公正取引委員会という役所の性質上、そうした政府内部の提言によってこういう、あなた方にとってはもう憲法にも等しいこの大切なものを見直すという動機を、よそからきっかけをつけてもらってやるという姿勢は正しいんでしょうか。私は、そのことについて、もっと自発的にそういうものがあってほしかった。  なぜかというと、さっきからしつこく何度も公正取引委員会における積極派、消極派というか、政府部内におけるそういうものについて言及しているゆえんのものは、これから触れるガイドラインの問題等について、失礼な言い方ですが、極めて恣意的なというか、まだ客観基準が定まっていない、そういうものをガイドラインでなさっていく、事前相談等についてもいろいろなさろうとしている。こういう運用上の問題に、貴委員会のきちっとしたお立場というものが確立されないと微妙な影響が出るんじゃないか、そこのところを私は心配するから何度もお尋ねしているのでございまして、この二点、通告してありませんが、これは基本的な命題ですからお尋ねしてもよかろうと思いますので、お願いいたします。
  33. 根來泰周

    根來政府委員 ただいま第一点目でございますが、私どもは独立委員会という位置づけでございますけれども、もちろんそれは唯我独尊なりに陥るということは、これは厳に戒めなければならないことでございますので、先ほど申しましたように、国会の御意見なり政府部内の御意見を十分拝聴いたしまして、我々が競争法の立場から申しまして当然するべきことということになれば、当然モーションを起こすということになろうかと思います。もちろん、我々も日々研さんに努めまして、自発的にそういうモーションを起こすということは当然要請されることだと思いますけれども、ある意味では多少、こういう持ち株会社の解禁という、五十年間鎖国であったわけでございますから、こういう清水の舞台から飛びおりるようなことはなかなか部内では難しい、一つのきっかけを与えていただければ、こういうことに相なるのだろう、こういうふうに思っております。  二つ目の御意見でございますが、これも先ほど申しましたように、また林委員からもお尋ねがありましたように、こういうガイドラインを定めるにつきましても、我々だけの論理で定めるのではなくて、国会方面の御意見、政府部内の御意見、あるいは事業者、あるいは事業者団体の御意見を十分拝聴して、客観性をなるべく保持するように、あるいは大方の御同意を得られるようなガイドラインをつくりたい、こういうふうに思っておりますので、この上とも御指導をお願いしたい、こういうふうに思っております。よろしくお願いします。
  34. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 そこで、きょうは通産省から渡辺産政局長に御出席をいただいておりますからお尋ねいたしますが、通産省は、企業法制研究会という研究会を私的な局長の諮問機関としてお持ちになっている。そこからの報告は「企業組織の新潮流」という、こういうものになって出されておりますが、これを拝見すると、非常に積極的に持ち株会社の解禁を競争政策上も訴えておられる。こういうお立場からして今回の、全面解禁ではない、部分解禁、そして特に、後ほど大蔵省にお尋ねをいたしますが、金融持ち株会社については今回は先送りをされた、こういう着地点について局長としてはどう考えておられるか。これは失礼ながら通告していなかった、今のやりとりの中から思いついた質問でございまして、失礼ですが、もしよろしければお答えをいただきたいのであります。
  35. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  今先生御指摘ございましたように、私ども平成七年の二月に、企業法制研究会という報告書を、勉強成果を報告させていただいたわけでございます。  基本的な考え方は、経済のグローバル化の進展と国際競争の激化、そういった中で我が国企業をめぐる環境というのは激変いたしております。その中で、我が国企業が持っております資本とか人材とか、そういった経営資源を最適配分することが重要であって、実態的にもそういう世の中に諸外国ともなってきておるのじゃないか。そういう我が国を取り巻く経済環境を直視いたしまして、そういう視点から、その重要性に基づいて研究会報告を出したわけでございます。  したがって、そのときからの考え方は終始一貫いたしておりまして、規制緩和計画の中にも盛り込んでいただきましたし、また、専門家であります公正取引委員会の方にも私どもめ意見をお伝えし、よく御検討いただき、また御意見も伺った、こういうのが経緯でございます。昨年は、残念なことでございましたが、成就するに至りませんでしたけれども、その後ずっと同じ意見交換を続け、我々も研究を続けてまいりました結果が今回の結論でございます。  ただ、私どもも専門家であります公正取引委員会の事務局といろいろお話をして議論をする過程において、当然のことながら、財閥の復活につながる、形式的にはつながり得るようないわゆる事業支配力過度集中するようなケース、これは三つのケースに今回分類いたしておりますけれども、そういったようなものが起これば、それは確かに一つの問題が出てくるであろうという点におきましては私ども全く意見を一にいたしておりまして、そういう考え方に基づきまして、しかし、そういう経済力の、事業支配力過度集中というもののない形において、今回の法改正において我が国の企業の企業経営の選択の自由度というのは飛躍的に高まるのではないか、これによってメガコンペティションに十分対応できることになるのではないか、こういうふうに考えた次第でございます。  また、金融問題につきましては、これは専門家であります大蔵省の方で、まさに金融の視点から今専門的な御議論が行われております。当然のことながら、この法律が施行される時点で平仄を合わせて、ぜひそちらの結論を出して一体として運営していく、これが理想である、こういう立場をとった次第でございます。
  36. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 形式的という言葉を使われたからいいのですけれども、財閥の復活につながるというのはちょっと違うと私は思います過度集中を排除するということに受けとめますけれども。  そこで、局長に続けて伺いたいのですが、この報告書は、先ほど林委員からも御質疑がありましたが、いわゆるカンパニー制であるとか事業部制であるとか、こういうものをいろいろな類型の持ち株会社にすることによって、いわゆるデシジョンメーキングに専念できる親会社、または人事管理やいろいろな人事考課、組織、こういうものをそれぞれの子会社の空気に合わせてつくることができる。いろいろなメリットがあることは承知をしておりますが、一方、ある学者はその著作の中で、実際にいろいろな企業に問い合わせをしたところ、どうもこれが解禁になっても使う気はないというのがほとんどである。大企業はバブル崩壊後の自社の資産の目減り、こういうことによって、株の保有の、いわゆる九条の二ですか、これがある限りなかなかできないとか、いろいろな理由があって、これはぜひ解禁してもらいたいし使いたい、しかしほとんどの企業が、これが解禁されてもやる気はないよ、こういう答えを出しているという情報に接しますと、ちょっと何か水をかけられたような気になるのですが、具体的な調査物で、いや、そうじゃないんだ、あなたの目には触れなかったけれども、こういう結果があるんだよという、何かこう消極的に産業界、経済界が期待をしている、こういうようなものがありましたら教えていただきたいなと思うのですが。
  37. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  先生御案内のように、戦後五十年間、純粋持ち株会社というのは実は全くなかったわけでございまして、そういう意味では、現実に今企業経営を営んでいる経営者が直ちにそれを利用してどうこうというのが、直ちに次々に具体的な案が出てくる、こういう実態にないというのが恐らく今御指摘のあった点だろうと思います。  ただ、私ども、各業種のトップの方々といろいろお話しいたしておりますと、既に親子会社とか事業部制とかいったような、そういうまさに事業持ち株会社があったわけでございまして、それが今から起こり得るあらゆる事象に対して自由な選択のもとに企業経営していく場合に、ある一定のところから、事業持ち株会社から先のところは一切手を縛られておる、こういう発想でなくて、自由にそこの延長線上で物を考えられるというところは今まで全くなかったところで、そこで、これからの知恵の出しようはいかようにもあると思いますというのが相当数はね返ってまいります。現に、幾つかの企業では、専門的なチームをつくりまして検討しておる、こういったようなところもございます。  そういうことでございまして、今手元に幾つかデータ用意しておりませんけれども、既に分社化を行うことによって持ち株会社検討しておるといったような、そういったアンケートのかなり高い数字も出ております。手元に持ち合わせておりませんで恐縮でございますが、ということで、私は、まず自由な発想のもとにこれからいろいろなリストラ計画あるいは事業展開、そういうものを考える過程で着実に本件は根づいていくもの、このように考えておる次第でございます。
  38. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 そこで、次に公取に伺いますが、この持ち株会社を部分とはいえ解禁した場合に、系列の問題がより強化されてしまうのではないか。これはアメリカなどでは、系列というのがもうそれ自体、英語に直さないでケーレツというローマ字で通用している時代でございますから、非常にこの日本の系列については批判的に見ている。日米構造協議の段階でもそれについてはいろいろと論難を受けたわけでありまして、これを促進するんじゃないかという心配がありますけれども、これについては公取はどういうふうにお考えでしょうか。
  39. 根來泰周

    根來政府委員 ただいま御指摘の点が、まさに持ち株会社解禁の場合の一つの心配でございました。  しかしながら、今回の改正法案におきまして、お手元にございますように、持ち株会社グループが「相互に関連性のある相当数の事業分野においてそれぞれ有力な地位を占めていることにより、国民経済に大きな影響を及ぼし、公正かつ自由な競争の促進の妨げとなる」場合には、事業支配力過度集中となるものということで禁止されることになります。これは、このような持ち株会社のもとで系列取引が行われて、市場の閉鎖性が高まり、市場メカニズムがゆがめられることを防止することを念頭に置きまして規定したものでございます。  さらに、公正取引委員会といたしましては、系列取引が不公正取引方法等、独占禁止法上違法な行為を伴う場合には、これに対して厳正に対処してきたところでございますし、また今後もそういう姿勢で行うわけでございます。また我が国の流通・取引慣行について、我が国市場を国際的により開放的なものとする等の観点かち、事業者等のどのような行為が独占禁止法違反となるかを明確にするために、平成三年七月に流通・取引慣行ガイドラインを作成して、公表したところでございますので、これによって事業者はいわゆる賢い事業活動を展開していただくということを期待しますし、またその違反に対しましては、我々は、独占禁止法に違反するということになりますれば、厳正に対処するという姿勢でございます。
  40. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 今回の法案では、事業支配力過度集中することとなる持ち株会社禁止することにしているわけでありますけれども、その内容は法案だけでは私にはちょっとわかりにくい。そこで、禁止される株式会社の三つの類型のうち、第一類型の企業グループの規模が大きいとはどの程度のものを考えているのか、その根拠をお尋ねするわけであります。  と申しますのは、今度のこの法律のいろいろな説明の中で、相当程度とかそういう、先ほど私は恣意的というふうに申し上げたけれども、客観的な、科学的な、または計測可能な、そういう根拠というものじゃない、そういう要素が多分に含まれているという気がいたすわけですが、いわゆるガイドライン、それについてお尋ねをさせていただきたいのです。  例えば「相当数の事業分野にわたって著しく大きい」、これは日本語としてはわかりますけれども、じゃ実際にはどれぐらいのところをどういう根拠で「相当数」といい「著しく」というのか。それから、グループ企業が相互に関連性あるときに「相当数の事業分野」、その「相当数の事業分野」というのはどういうことで「有力な地位を占めている」というのはどういうことなのかということがはっきりしないと、このガイドラインが説得力を持たないのじゃないかなという心配をするのですが、それを御説明お願いしたいのであります。     〔委員長退席中山(成)委員長代理着席〕
  41. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 今回の改正法案におきまして、事業支配力過度集中することとなる持ち株会社設立等禁止するということで、事業支配力過度集中することという構成要件につきまして、今先生御指摘のように、法律に定義規定を置いてあるわけでありますけれども、法律上の概念や用語にはおのずから限界がございますので、規定ぶりが若干抽象的にならざるを得ないという面がございます。  そういうことで、私どもといたしましては、そういう法定化し切れない部分や解釈に幅のあり得る事項につきましては、改正法の施行日までにガイドラインという形で解釈の基準をお示しをして、運用の透明性といいますか、そういうことを図っていきたいということでございまして、これは、ガイドラインというのは、申すまでもありませんけれども、私ども公正取引委員会法律規定を離れて禁止対象の枠を設定するということではありませんで、むしろ法律規定を客観的かつ明確に説明しようというものでございます。  ガイドライン作成の手順といたしましては、法案の御審議が進んだところでドラフトを示す、その過程で、もちろんそのドラフトの中には、国会における御審議等での御意見も当然参考にさせていただくということでありますが、ドラフトを示して、さらに各方面から御意見をいただいて、最終的に法律の施行日までに確定をしたいというふうに考えております。  具体的に幾つかお尋ねがございましたので、若干申し上げたいと思いますが、第一の企業グループの規模が大きいということについてでございますけれども、現在いわゆる六大企業集団と言われるものがございますが、そういった六大企業集団の中で一番小さい規模の企業グループの金融業を除くメンバー企業の総資産額を勘案しまして、全体の合計、そういうものを勘案いたしまして、持ち株会社による企業グループの総資産額の合計が十五兆円程度を超えるものということにしてはどうかというふうに考えているところでございます。  それから、有力な事業者というのはどういうことなのかという、例えばそういうことでございますが、例えば現時点では、シェアが一〇%以上あるいはシェアが上位三位以内というようなことをガイドラインの中でお示ししたい、してはどうかというふうに考えておりますが、それはドラフトを作成し、その後最終的には確定するということになるだろうと思います。  以上でございます。
  42. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 ところで、ただいまの御答弁は、この質問をした後にまたちょっとお尋ねを追っかけてしたいのですが、金融持ち株会社は解禁の見通しはどういうことでございましょうか。
  43. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 金融会社子会社とする持ち株会社、これは金融持ち株会社と言っておりますけれども、これについての解禁の考え方といいますか、これは二つございまして、考え方が二つといいますか、ハードルが二つあると言った方がいいのかもしれませんが、独占禁止法上金融持ち株会社をどの範囲で解禁するかという問題が一つ、それから、独禁法上問題のないものはすぐに解禁してしまっていいのかという話で、これはむしろ競争政策以外の観点から、主として金融政策という観点から金融持ち株会社に対する法的手当てが必要かどうか、この二つがあるわけでございます。  私ども、第一番目の方の、競争政策上金融持ち株会社を解禁すべきかどうかということにつきましては、他の一般の持ち株会社、つまり金融会社子会社には持ってない持ち株会社と同様に、事業支配力過度集中することとなるものは禁止をする、それ以外のものについては独禁法上問題とはしない、そういう整理をしたいと考えております。  それから、金融政策上、金融持ち株会社について、例えば、先ほども御答弁がございましたように、預金者保護等の関係から何らかの規制をする必要があるというようなことでございますので、今回お出ししております改正法案におきましては、金融持ち株会社の関係につきましては、別に法律で定める日まで禁止をするという書き方になっておりますが、その意図するところは、金融関係の面から必要な手当てが行われれば当然そのときは法改正が必要でございますので、それと同時に独禁法上の附則百十六条で禁止しておりますものも解禁をするといいますか、二つ目のハードルを外すということを考えております。
  44. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 私はいつごろと聞いたのだけれども、それはちょっといいです。  そこで、そうすると、もし金融持ち株会社が解禁になったときには、当初、二十一兆であった住友グループに合わせて十五兆にしたとか、三千億はもともとは五千億の案だとかいうことを漏れ聞いているのですけれども、特にその十五兆の問題は、当然金融持ち株会社ができたら改めざるを得ないと素人考えで思うのですが、それは関係ないですか、ちょっと念のため。
  45. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 三つのグループの中に金融会社が入った場合をどう考えるかということでございますが、三つのグループのうち第一番目のグループの、十五兆円を超えるようなものということの中には、金融会社が入っていない場合、先ほど申し上げましたように、いわゆる六大企業集団の中で、一番小さい企業グループの中でメンバー企業の金融業を除いたもの、そういったものを勘案して十五兆円というふうに考えておりますので、金融会社を傘下に置く持ち株会社、いわゆる金融持ち株会社と言っていいのでしょうか、その例としては第二グループの、金融会社と非金融会社を傘下に置く持ち株会社の場合、これも一定の場合で、大規模な金融会社というようなことが入っておりますし、第二のグループで、相互に関連性のある事業分野において相当数のものはというような規定がございますけれども、第二グループなり第三グループの方で金融会社の方は考えていくべきなのかなというふうに考えているところでございます。
  46. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 法務省に伺いますが、持ち株会社解禁に伴って、株主でありますとか債権者の権利保護、こういうことが必要になってくる、そして、特に決算等については、親会社の株主と子会社の株主の情報が相互の、クロス関係にある企業の決算については特に不透明になるなどという心配が実際にあるわけですね。こういうことに対応するために商法の改正が必要ですよ、こう言う論者もいらっしゃるわけですけれども、法務省としてはこういう規定を整備する必要があるというふうにお考えでしょうか。その辺はどういう対応をしておられるか、お尋ねをしたいと思います。
  47. 柳田幸三

    ○柳田政府委員 お答えを申し上げます。  持ち株会社は、商法上は親子会社という場合の親会社に相当するものでございまして、この親子会社あるいは一〇〇%子会社というものは、現在、企業社会においてかなり一般的な存在になっているわけでございます。商法は、これにつきまして子会社による親会社株式の取得の原則禁止といった規制を加えているわけでございますけれども、この親子会社の存在によりまして、現在、商法上特段の弊害は生じていないというふうに認識しているところでございます。したがいまして、持ち株会社が解禁されましても、商法上新し い問題が特段発生するということではないわけでございまして、当然にこの解禁によりまして商法上の手当てが必要になるというふうには現在考えていないところでございます。  ただ、商法の規制というのは社会の実態に即したものである必要がございますので、今後、持ち株会社の運営の実情、あるいは、持ち株会社の存在というものが株主あるいは債権者にどういった影響を与えるかというような実情を見まして、現実に弊害が生ずる、問題点が生ずるという事態になりました場合には、その段階で検討させていただきまして適切に対処してまいりたいと存ずる次第でございます。
  48. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 今、具体的に困ったことにならないだろうという柳田審議官の御答弁でございますけれども、例えば、親会社子会社それぞれに株主がいますね、ディスクロージャーをすることがこれは理想なんですから、持ち合いとかそういうのではなくて。その場合、例えば子会社の株主は、親会社の戦略的意思決定によって子会社経営が、成績が上がるか下がるかということは非常に重大な問題ですよ、それを見て投資をしたりなんかするわけでしょう。  また逆に、親会社の株主も、子会社の成績によって投資をするかしないかということを、特にこのたびの解禁のメリットとしては、ベンチャー企業の育成ということで、ベンチャーキャピタルという問題についてやる、しかも、金融資本による支配はできるだけ、基本的な理念としては避けて、国民に株主として大きく参加をしてもらいたいという経済民主主義的思想もあるわけでしょう。  そうすると、先ほど私はヒントのつもりでちょっと申し上げたのですけれども、クロスして情報が不透明であって届かない場合には、子会社の株主、親会社の株主、それぞれが不都合を受けるケースが想定できるのではないでしょうか。私は、その辺をクリアにしておく意味で、現行の商法ではそこらがカバーし切れていないというふうに思いますが、そういう心配はないのでしょうかということなんでございます。重ねてお尋ねして恐縮ですが。
  49. 柳田幸三

    ○柳田政府委員 現在の親子会社の法制につきましては、商法の計算書類規則におきまして、その営業報告書におきまして、親会社との関係、重要な子会社の状況その他重要な企業結合の状況、子会社に対する債権の明細、子会社との間の取引の明細、各子会社に対する債権債務の増減等の情報を開示しなければならないということになっておるわけでございます。  また、持ち株会社は、みずから特定の事業活動をすることがございませんで、子会社を通じて特定の事業を行うということになるわけでございますので、当該特定の事業についての会計情報が企業結合等に関する情報の内容をなすというふうに解されるわけでございまして、子会社が作成する計算書類の重要な内容持ち株会社の営業報告書に記載すべきものであると解されるわけでございまして、委員から御指摘がございましたディスクロージャーの問題につきましては、現行の商法の計算書類規則上も手当てがされているということになると考えております。  それから、子会社に対する経営支配のあり方につきましては、持ち株会社の株主がその持ち株会社の取締役の選任、解任権があるわけでございますので、そういった選任、解任権を通じまして子会社に対する経営支配のあり方についてコントロールをするという形で、株主によるコントロールがされるということになるのではないかと考えているところでございます。
  50. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 しかし、これが運用されていく過程でそういう問題が起これば適切にひとつ対処していただきたい、こういうふうに思います。これは要望しておきたいし、当然そういう対応をしてくださるというふうに信じております。  そこで、大蔵省に伺うのでございますが、大蔵省は余り積極的でないというふうに、これは財政再建途上、その財源を、税収源を、税源を絞られることは望まないというのはだれでも思うわけですが、しかし、この持ち株会社をせっかく解禁してこれを機能あらしむるものとしていくためには、連結決算というものを認めるならば連結納税も、アメリカヨーロッパではこれは一体のものとして考えている傾向の中で、このたびの持ち株会社の解禁はいわゆる国際的なバランスをとる、そういう意味で、非常に欠かせない観点ではないか。  今、税収がいろいろな意味で大変なことはよくわかっていますけれども、今の段階はともかくとして、景気が回復してきて、この持ち株会社が非常に日本の経済の再建のために有効な武器になる。これは卵と鶏の議論になると思うのですけれども、そうなれば、自然増収がふえれば何も消費税の改悪みたいなことをしなくたってよかったわけだから、そういうことをどんどん広げていけば、逆に私は経済を大きくすれば税収も保障される、こういう観点から、これはかけみたいなことだけれども、やってみる必要があるんじゃないか、そういうふうに思うのです。大蔵省の御見解を、現時点と、仮の話を聞いて恐縮ですが、将来について、こういうことを聞きたかったから私は政府委員出席を求めたんだけれども、何か大蔵委員会と重なるからということで、説明員で我慢してくれということで、我慢といったら失礼だけれども、大蔵省課長さんといえば大変な力がおありになるので、将来のことについてもお尋ねさせていただきたいのであります。
  51. 伏見泰治

    ○伏見説明員 御指摘のございました持ち株会社と連結納税の関係でございますけれども、先ほど来の御議論でも出てございましたが、現在でもいわゆる事業持ち株会社というのは多数存在しているわけでございます。今回、今御審議をいただいておりますいわゆる純粋持ち株会社を認めるという形の御議論だろうと思いますが、これと事業持ち株会社、税の立場から見てまいりますと、純粋持ち株会社事業持ち株会社も、いわば資本関係を通じまして企業グループが形成をされてくるということでは違いはないのだろうと思います。したがいまして、現在の純粋持ち株会社の解禁の議論と連結納税の議論というのは、そのサイドだけから見ていきますと、直ちに直結した議論が出てくるというものではないのだろうと思っております。  ただ一方で今御指摘もございましたけれども、連結納税の議論、これがさまざまな角度から出てきております。私どももこの問題、いろいろなところで御議論されておりますのは意識しておりまして、昨年来、政府の税制調査会初めいろいろな場面で、広範な角度からいろいろな御議論をいただいているところでございます。  現行の法人税制でございますが、釈迦に説法のようになりますが、個別の法人格に着目をいたしまして個々の法人に課税をするという仕組みになっているわけでございます。  一方で、いわゆる連結納税ということになりますと、個々の法人ではなくてその企業集団なり企業のグループを一つの課税単位とするということで、それに対する課税を考えていくということだろうと思いますが、少なくとも現行の制度との関連で申しますと、今の全体の法人税制が地方税を含めまして単体課税という原則でできておりますので、非常にその根本的なところの議論が必要になってくるということではないかと思っております。  具体的な論点といたしましては、今のお話の中にも出ておりましたけれども、具体的な企業行動、企業経営のあり方というものがどういう状況であり、あるいはどういうふうに動いてくるのか、あるいは商法ですとか企業会計といった関連の諸制度のあり方、あるいは動きをどういうふうに考えていくのか。さらに、これは私ども税制を担当する者としてどうしても考えておかなければいけないわけでございますが、いわゆる租税回避の問題もございます。税収のお話も御指摘がございましたが、ここら辺はまさに財政状況全体との兼ね合いもございます。  いずれにしましても、そういった問題を含めまして幅広く総合的な御議論をしていただく必要があるのかなということで、重大ないわば研究課題だと受けとめておりますが、さらに議論を深めていきたいと思っておるところでございます。
  52. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 もう時間もあれでございますから次に進ませていただきますが、一言ただいまの御答弁について言わせていただければ、私は事業持ち株会社純粋持ち株会社を決して混同してお尋ねしているわけじゃありません。純粋持ち株会社の解禁が必要だから法改正をやるのであって、事業持ち株会社だけで機能するならばこの法改正は必要ないのです。それを直接的に結びつかないという御議論を大蔵はとっておられますけれども、それは我田引水的な大蔵省の省益のための発言であって、それならば私は、何もこんな経済憲法九条とも言われるものを改正してまで純粋持ち株会社をつくる必要はない。  そこには、通産省の産政局の御意見のように、メリットとしてリストラクチャリングがあるわけですね。それは納税拒否とはちょっと違う問題が私はあるのじゃないかと思いまして、しかし最後に課長おっしゃったとおり、これは重大な問題で、これから十分、五分や十分の問題じゃない、検討しなければいけないと思いますので、ただいまの御答弁で了とさせていただきますが、そういう感想を持っているということだけを蛇足ながら申し上げたいと思います。  あと二問で質問を終わりたいと思いますが、一つは公取に伺いたいのでございますけれども、これの解禁によって中小企業が、さっき系列の問題をあれして、これは根來委員長が大変重大なことだと言っていただきましたが、大企業の傘下に組み入れられるという悪影響が出るのじゃないか、こういう懸念、これに対してどう対応されるか、簡単に御答弁をいただければありがたいのです。
  53. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 持ち株会社が解禁されますと大企業の力がますます強くなるということで、中小企業が大企業の傘下に組み入れられるのではないかというような懸念があるということは承知をいたしておりますけれども、今回お願いしております改正法案の第九条におきましては、事業支配力過度集中することとなるような持ち株会社禁止をするということにいたしておりますし、それから現行の各種の規定、例えば持ち株会社株式保有によりまして個別市場における競争が実質的に制限されることとなる場合、あるいは持ち株会社が他の事業者を排除するような行為につきましては、それぞれ独禁法の十条でありますとか十九条でありますとかというようなところで禁止をされております。  したがいまして、持ち株会社につきましては、九条によって事業支配力過度集中になるということについては禁止をされますし、それ以外の三条であるとかその他、余の規定も当然持ち株会社に同様に適用になるということでございますので、こういった規定を適切に運用していくことによって、こういった問題が競争政策上の問題になることのないようにやっていきたいというふうに考えております。
  54. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 五年後に見直しをされるという見直し規定が入っていますから、そういうことについても適宜やっていただける、こういうふうに思います。  最後の質問でございますが、労働省においでいただいていますからお尋ねをさせていただきますが、持ち株会社の解禁によって労使関係のトラブルが発生するのじゃないか。例えば、子会社についての使用者責任の問題がいろいろ議論されてきたわけです。日経連とそれから連合との話し合い、二年間にわたって結論を出していこう、労働組合法の改正等についてこういう労使の歩み寄りがあったことも承知をいたしております。  そこで、お尋ねをしたいのですけれども、労働大臣は、本会議で与党、野党の質問に対して何回も何回も、しかるべく対応してまいります、こういうことなんですよ。しかるべく対応する。それで、これは毎回しがるべく、しかるべくと言ったものだから、しかるべくというのは一体どういうことなのか、みんな興味を持ち出してまいりまして、私もその一人で、しかるべくというのはしかるべくですけれども、具体的にどういうことなのか。今わかれば、大臣が本会議でしかるべくと言って、委員会課長さんがその中身を説明したのじゃ立場が悪いというならわからないで結構だけれども、そこらを、あれから時間が何日かたったから、少しはしかるべくの内容が具体的になっていたら教えていただきたいと思うのです。   〔中山(成)委員長代理退席、委員長着席〕
  55. 岩崎伸夫

    ○岩崎説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘ございましたように、この問題につきましては種々議論があった後、先般労使の合意がなされまして、私ども、その労使の合意を踏まえまして適切に対処したいということでございます。  ただ、今後の問題につきましては、今後の国会の御議論等を踏まえまして対処したいということでございますが、先ほど申し上げましたように、労使の合意というものが前提になっておりますので、今後労使関係者とも相談しながら対処してまいりたいということでございます。いずれにいたしましても、この検討につきましては、労使関係者の参集を求めた検討の場で今後検討していくことが適当じゃないかというふうに考えているところでございます。
  56. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 これで質問を終わりたいと思いますが、委員長のお計らいで、フリートーキングや参考人質疑、また締めくくりの総括的な質疑の場を持っていただいております。そういう場を通じて、さらに、同僚議員等の質疑を通じて我が党の立場を明確にしていきたいと思います。  最後に、個人的な感想を申し上げれば、戦後画期的な、こうした方向をとらざるを得ないほど我が国経済は深刻な状況に追い込まれている。私は、取り締まる、不正を正す、そういう機能を厳然と持ちながら、しかし、我が国の国民の幸せのために、経済の再生に公正取引委員会が何ができるかということから、こういうものが自発的かつ積極的になされたというふうに信じて疑わないものでございますので、ぜひひとつ、根來委員長におかれては、独立委員会のお立場を堅持しつつも国民全体に御奉仕いただく立場として、積極的1にこの法の運用を効果あらしむるものとしていただきたいということを要望申し上げまして、質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  57. 武部勤

    武部委員長 次に、達増拓也君。
  58. 達増拓也

    達増委員 新進党の達増拓也でございます。  政治の分野で五五年体制という言葉が使われておりまして、五五年体制の打破、克服ということが二十一世紀に向けての我が国において今必要だということが言われるわけでありますけれども、経済の分野においては四〇年体制、一九四〇年体制ということが言われております。  これは、戦時統制経済の枠組みやその手法が戦後の日本経済に残存し、それがゆえに戦後の復興から高度経済成長ということを達成したけれども、それが今の日本の経済の停滞、閉塞感の原因になっている。これを打破、克服していかなければならないというのが今の日本経済の課題なんだと思います。そういう経済の構造改革一環として、規制緩和の問題があり、今回のこの独禁法の九条を中心とした改正持ち株会社解禁ということが出てきていると理解しております。  この持ち株会社禁止した独禁法の九条でございますけれども、非常に逆説的なことが戦後起こったのだと思います。公正な取引を確保し、自由な競争確保するための持ち株会社禁止ということだったのでしょうけれども、この条項があったにもかかわらずといいましょうか、むしろあったがゆえに六大企業集団とか系列といったような事業持ち株会社というものが発展し、また、そういう大企業同士が株の持ち合いを大規模に行うことによって、諸外国に余り例を見ない、歴史上余り例を見ない日本型のそういう企業結合の形ができてしまった。  これは、復興とかあるいは高度成長の時代にはその目的めために有効に機能した点もあるわけではありますけれども、現在経済的な効率性をかなり損なっているのではないかという疑問が挙げられるわけですし、さらに社会的な弊害というのも考えられるわけであります。六大企業集団に象徴されるような大企業をいい会社とみなして、そういう大企業に就職するためにいわゆるいい大学に入らなければならない。そういう会社人間を目指す受験競争、管理教育といった日本社会の閉塞性、そういったものをもたらしているのがこの六大企業集団とか系列とかいったものに象徴される今の経済状況と考えます。今回のこの持ち株会社解禁というものが、こうした日本経済の構造的な閉塞性を打破することにつながることを切に望むものであります。  今回のこの持ち株会社解禁に関しましては、原則解禁ということにしようという議論と、原則禁止、部分解禁にしようという議論が長い期間にわたって対立し、議論を続けてきたというふうに承知しております。私は、基本的に、原則解禁という考え方で臨むのが適当ではないかと考えております。  この法案の九条の改正案を見ますと、これこれこういう持ち株会社禁止するということで、一見禁止規定しているように見えるわけでありますけれども、ただ実際には、これこれこういう持ち株会社禁止ということで部分禁止でありますから、その趣旨は結局原則解禁ということなのかなというふうに認識しております。  その部分禁止に当たる「事業支配力過度集中することとなる持株会社」、それがどういったものであるかのいわば定義が九条五項に規定されているわけでありますけれども、どうもこれは非常に抽象的で、先ほど西川委員も指摘したように、その中身というものがよくわからない。この国会審議を通じまして中身について詰めていき、またガイドラインの作成というものが予定されているそうですけれども、そのガイドラインのいわばガイドをするような議論をしていかなければならないのだと思います。  ただ、そのときに、やはり一般集中規制ですね。形式的な、大きさですとか形式ですとか形態ですとか、そういった基準を厳しく設けて企業結合を制限していく考え方よりも、できるだけそういう形式的なところは自由にしておいて、具体的な弊害が起こったときに、ダンピングですとかカルテルですとか、そういう弊害が生じたときに、そこを厳しくして規制していくような、そういうアプローチが基本的に適当なのではないかと考えております。特に今日、科学技術の発達ですとか高度情報通信の発達に伴いまして、過度集中ということを客観的に、形式的に規定するのがどんどん難しくなっているという側面があると思うんですね。  まず第一の質問ですけれども、例えば、日米半導体協議で問題になった大容量の半導体メモリーですけれども、技術開発に巨額の投資が必要で、ある程度の規模の大きさが国際的な競争を有利にするケースというものが存在するわけであります。このような技術集約的な産業において、過度集中に当たるかどうかの判断というのは特に難しくなると思うんですけれども、この点、どうお考えでしょうか。
  59. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 お答えいたします。  今お話がございました、例えば特定の半導体メモリーといいますか、そういったような分野を前提にしての御質問だと思いますけれども、持ち株会社がその傘下に特定の、ある一つの市場においてシェアが非常に高い企業を有するという場合、そういう持ち株会社について、この九条あるいは九条五項をどう考えるかということだと思いますけれども、九条で禁止の対象としようとしておりますのは事業支配力過度集中になるということで、特定の事業分野でのシェアが非常に高くなるということを問題にしようとしているものではございません。むしろそれは、独禁法のほかの規定で問題になり得るかどうかという観点から検討されるべき問題だと考えております。
  60. 達増拓也

    達増委員 特定の市場で急速にシェアを広めた会社がその他の近接する市場に進出していくことが問題となったケースで、アメリカで、ウィンドウズ95で有名なマイクロソフトという会社が、ウィンドウズ95というオペレーションシステム、基盤ソフトで世界的なシェアを獲得し、それがそのままマイクロソフト・ネットというパソコン通信事業に乗り出そうとしたときに、アメリカ独占禁止法上問題にされたケースがあります。  そのように、急成長中のハイテク産業の分野では、いわゆる世界標準をかち取った企業が急速に大規模化して、高度の集中が実現するケースがあると思われるわけですけれども、こうした傾向についてどのように考えるのでしょうか。
  61. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、ハイテク分野等におきまして、特定の技術を有する事業者が、その技術の優位性によりまして競争上有利になるということで、非常に大きな市場シェアを獲得することが可能になるということはあろうかと存じます。事業者が、自分の研究開発あるいは経営効率化の努力等によりまして、このような地位を獲得する、非常に大きなシェアを持つということは、独禁法でそのこと自体直ちに問題になるということではないと考えております。  ただし、そういった事業者が、そういった地位といいますか、強さといいますか、それを利用いたしまして、不公正な取引方法を用いて他の分野への事業拡大を図るとか、あるいは他の競争事業者の排除であるとか、あるいは新規参入をしようとしている事業者を阻止する、そういったことによりまして当該事業分野での地位の維持を図るということになりますと、そういう場合には独占禁止法上の違反ということになり得ると考えております。
  62. 達増拓也

    達増委員 形式的な集中の問題よりも、やはり具体的な弊害を規制していくことが大事なんじゃないかという文脈で今二点質問させていただいて、さらに、その延長上で質問を続けさせていただきます。  今回のこの持ち株会社解禁というものが財閥の復活につながるのではないかという疑問を生んで、財閥が復活しないように一般集中規制規定していかなきゃならない、そういう方向の議論があって、先ほどの答弁の中にもあったんですけれども、六大企業集団の中の一番小さいところを基準にして、そこから金融部門を抜いたところを基準にして十五兆円という数字を出したりしているわけですけれども、私は、財閥の復活を懸念するというのは極めてアナクロニズムと申しましょうか、現在の経済、産業の実態にはそぐわない懸念ではないかと考えております。  今月、高度情報技術の発達、コンピューターの普及、パソコンの普及ですとか、あるいはインターネットのようなコンピューター通信の普及によりまして、かなり情報の流れというものが自由で、しかもスピーディーになってきている。そういったテクノロジーと企業経営手法のイノベーション、改革によりまして、欧米等におきましては、かなり効率性の高い戦略的な経営というものが実現されてきているわけであります。最近、インターネットの次はイントラネットだというような一種ブームがあるわけでありますけれども、これなどは、まさにそういうテクノロジーの発達を企業の経営のイノベーションに採用した例であると思います。  持ち株会社解禁というのは、むしろそういう何か新しい方向で、戦略的な経営を進めていこうという人たちに役立つものであると考えます。六大企業集団のような、現状で居心地のいいようなことをやっているところが必要としているというよりも、むしろそういう六大企業集団株式の持ち合いとか、そういう居心地のいいところに入っていけないような人たちとか、あるいはもう入っていく気はないというような人たちが利用する可能性が極めて高いものだと考えております。  例えば、ソフトバンクという会社があるわけですけれども、パソコンですとかコンピューター通信分野で、先端的なテクノロジーで幾つかの商品の分野で成功し、その成功を利用して株式を公開して、そのお金でどんどん関連の会社を買って経営を広げていく。それで急速に成長しているわけですけれども、こうしたことを促していくというところに今回の持ち株会社解禁の趣旨があるし、そういう方向で解禁していかなきゃならないと思うわけであります。  そういう意味で、財閥復活を懸念するというのは、冒頭五五年体制という話をしましたけれども、まさに、階級闘争という発想が政治をも支配していた時代の発想でありまして、いわば階級闘争史観の亡霊に取りつかれたような発想ではないかと考えている次第でございます。むしろ、持ち株会社禁止し続けていたことによって事業持ち株会社とかそういったものが変に成長し、六大企業集団とか系列とか、それは独禁法上直ちに違法にならないとしても、競争政策上、本当にそのままでいいのか、不透明な取引慣行等について、もっとオープンにやっていかなきゃならないのか、そういう現状を看過することになりかねない発想だと思うわけであります。  そういう意味で、集中が経済的効率性を著しく高めていく新しい可能性が今開けているときに、規模が大きいという形式的問題よりも、不公正な取引が行われていないかという実態的な問題を問うていくべきではないかと考えるわけですが、その点について、政府のお考えを伺いたいと思います。
  63. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 お答えいたします。  幾つかに御質問がわたっていたと思いますが、今回の改正法案は、事業支配力過度集中することになるような持ち株会社禁止をする、その余については解禁をするということでございますが、なぜ禁止をする部分を残したかといいますか、過度集中になるものは禁止をするということにしたかということでありますけれども、やはり過度集中防止というのは、公正かつ自由な競争を維持、促進するために必要な手当てではないか、これは第一条にも書いているようなところでございますし、仮に、過度集中になるものも独禁法上問題にしないということにした場合にどういう問題が出てくるか。  もちろん、カルテルであるとか不公正な取引方法であるとか、そういったほかの規定に違反する違反行為が行われた場合には、そういった規定によって排除することは当然でありますけれども、そういった違反行為、具体的な行為を取り上げて禁止をされているものだけではなくて、株式を保有することによって一定の分野における競争を実質的に制限することとなる場合ということであるとか、あるいは事業支配力過度集中して他の事業者の自由かつ公正な競争がなかなかできなくなる、そういうことはやはり防止をする必要があるのではないかということでございます。  したがいまして、先生おっしゃったような、ハイテク分野である企業が新規分野にどんどん参入していく、あるいは事業展開をしていくというようなことは、ごく一般論として考えますと、今回の九条五項で禁止対象としておりますような過度集中になるようなものには、ないと言うと言い過ぎですけれども、ある企業が新規分野に入っていくというようなことであれば、そう大きな、そう大きなといいますか、九条五項の問題として出てくるというケースはまず考えられないかなという感じがいたします。そこは具体的な、改正法をお認めいただいたときの法律の当てはめでございますから、問題にならないというふうに言い切るのは無理だと思いますけれども、そんな感じを持っております。  それから、今回の法改正の考え方の背景として、財閥の復活を防止するという、そういうことがあるのではないかということでありますけれども、財閥という言葉といいますかイメージを、どう頭の中に描くかということで大分違ってくるんだろうと思います。つまり、我々にとっては過去のものですから書物で読むぐらいしか手だてがないのですけれども、要するに、戦前財閥と言われるものは、いわゆる同族、家族といいますか、特定の家族が中心となって、その財閥本社を中核としてピラミッド型に多数の主要な企業を持っておる、そういうイメージでございますけれども、その同族支配的な要素が今日あり得るかということになりますと、そこはまずないんだろうと思います。  ただ、持ち株会社を全面的に解禁をするということにした場合に、経済的な規模として、ある一つ持ち株会社の傘下に多数の有力な事業者が位置するといいますか擁される、そういうことで日本経済市場メカニズムが円滑に動かなくなる、そういうことは想定されないかというと、そこは、いわゆる六大企業集団ということで、これは持ち株会社でもありませんけれども、かなりの株式の持ち合い関係があるとかそういった状況にございますので、別に、六大企業集団がそういった問題になるような持ち株会社になるのではないかという想定をして申し上げているつもりはありませんけれども、そういう可能性といいますか、一般的に、過度集中になるようなものとしてやはり規制する必要があるのではないか、そういう法制をとっておく必要があるのではないかということを考えているところでございます。
  64. 達増拓也

    達増委員 財閥というのは、確かにその言葉だけひとり歩きしていて、実体というのがなかなか議論の中で詰められないまま使われていると思います。  先ほど林委員の質問の中で金融資本主義という、マルクス経済学の言葉ですけれども、そういう言葉が出てきたのを今思い出しまして、実は今の経済、産業というのは、いわば情報資本主義とでもいうような段階に入っているのじゃないかと思うわけであります。  過去のその典型的な財閥があった時代というのは、通信手段、情報の入手手段というのは電報かあるいは新聞程度しかなかったわけでありまして、そういった時代であればやはり世の中の動きがよくわからないから、血縁がある者同士でないと信用できないとか、あるいはお金をたくさん一カ所に集めておいて、そのお金の力で周りをコントロールしていかないと安心できないという、そういうテクノロジー的な背景があっての財閥だと思うのですが、今日ですと、先ほど何度も繰り返しているように、パソコン通信を利用したり、その他一般にメディアの普及ですとか、あとは民主的な意識の高まりとか、かなり経済に関する情報というのを広く経済に参加する主体が共有できる時代になっておりますので、そういう中での競争的な市場というのを考えていかなきゃならないのだと思います。  そういった情報資本主義時代においても、確かに過度集中というのはこれはいけないと思うわけであります。というより、過度のということで、行き過ぎたというふうに言っているわけですから、定義上、過度集中はよくないということは言えるのだと思います。  ただ、問題なのは、何が過度集中に当たるのかということをなかなか今詰め切れない状況にあるのじゃないか。ですから、十五兆円かあるいは十兆円か二十兆円かといった問題で余り時間をつぶすというのは非常に非生産的と考えるものでありまして、そういうところにこだわるよりは、やはり弊害規制のところで、ダンピングとかカルテルとかそういったものをいち早く発見して一つ一つつぶしていくような作業が非常に大事だと思うんですね。そういう意味で、公正取引委員会の強化、独占禁止法の運用強化ということが今、一方では非常に大事で、それとセットで持ち株会社解禁という話だと思うのですけれども、その点についてどうお考えでしょうか。
  65. 根來泰周

    根來政府委員 ただいまお話にありましたように、今、規制緩和ということがどんどん進んでいるわけでございますが、その反面といたしまして自由競争ルールづくり、あるいはそのルールの遵守ということで、我々に課せられた使命は非常に大きいわけでございます。幸い、国会あるいは政府の御理解を得まして、毎年人の増加もいただいておりますし、組織の改正も行っております。私どもは、それに甘えることなく、これからさらに自分の力をつけて適正に対処していく必要があろうかと思います。今の時代に、人が足りないというような弱みといいますか泣き言を言う時代ではないと思いますので、むしろ我々の個人個人の力をつけてこの難しい時代に対処していくほかないと思いますので、この上ともよろしく御指導のほどをお願いしたいと思っております。
  66. 達増拓也

    達増委員 情報資本主義時代においては、やはり情報の透明性、オープンな情報の流通ということが一番肝心だと思いますので、ドアの向こうでの秘密の取引ですとか、談合とか、カルテルですとか、そういった不透明なものをなくしていくこと、透明性の高いルールに従って競争的な市場が実現していくということが非常に重要になると思いますので、公正取引委員会には一層その点、期待するところが大でございます。  さて、きょうはこの独禁法改正をめぐる議論の初日ということで、ちょっといろいろな論点を出しておこうと思いまして、過度集中ということに絡んでもう一つ、国際的に話題になっている論点を挙げさせていただきたいと思いますけれども、アメリカで、放送とか出版、映画、音楽、それに加えて最近はコンピューターネットワークまでどんどん買収してやっていくという、メディアの集中という問題があるわけでありますけれども、いろいろな集中がある中で、このメディアの集中ということについてどのように認識されているでしょうか。
  67. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 お答えいたします。  メディアの関連、大変新しく発展しつつあるところでございますので、私の頭の中に的確にイメージができているかどうかわかりませんけれども、メディア関連の有力な事業者、それぞれ幾つかの分野があって、それぞれで有力な、私たち今考えておりますのは、例えばそれぞれの分野でのシェアが一〇%以上であるとか上位三位以内というようなことを考えておりますが、そういったメディアのそれぞれの分野で有力な事業者一つ持ち株会社の傘下に置かれる、そういうことで、それが相当数の事業分野にわたるということであれば、今私どもが御提案しているような過度集中に当たるケースとして、問題になるということではないかなという感じがいたしております。
  68. 達増拓也

    達増委員 次に、六大企業集団や系列の問題についてひとつ質問をさせていただきたいと思うのですけれども、まず、競争政策観点から、この六大企業集団や系列というのをどうとらえるかということでございます。  今のその六大企業集団や系列が、かなり不透明な取引慣行に従って行動しているんじゃないかという指摘が内外からなされているわけであります。下世話な例ではありますけれども、他のグループの車を買って乗ったりしないとか、他のグループのビールを飲まないとか、そういういわば暗黙の了解的なものが大規模に行われることによりまして、法律ルールに直ちにひっかからないような形でも、競争とか公正な取引が阻害されているようなところがあるんじゃないかと思うわけですが、この点、いかがでしょうか。
  69. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 よく日本には系列があるということでいろいろと問題が指摘されているところでございますけれども、競争政策といいますか、独占禁止法の立場から考えますと、系列取引関係というそれ自体を考えますと、それ自体は、企業にとって安定的な取引あるいは長期的な視野に立った経営を可能にするというようなことで、経済合理性を有する面もあるということで、独禁法上直ちに問題になるということではないと思います。ただ、グループ内の取引を不当に優先するとか、あるいは競争阻害性を持つような行為をするというような場合には、独禁法上の問題となり得るというふうに考えております。  我が国には特に我が国特有の取引慣行があるというふうに言われておりますが、そういった我が国特有の取引慣行というのも、歴史的、社会的な背景等を持って形成されてきたものでございまして、競争政策観点からは、そういった取引慣行自体が問題ということではなくて、やはり同じ言葉になりますけれども、それが反競争的な機能を有している場合に問題になるということで、具体的には、その取引慣行が市場閉鎖効果なりあるいは価格維持効果等を持つ場合が問題になるということでございます。  取引慣行あるいは系列関係というのはいろいろ問題がございましたものですから、私ども公正取引委員会平成三年の七月に、流通・取引慣行に関する独禁法上の指針、これも同じようにガイドラインと言っておりますけれども、それを作成し、公表をいたしまして、その中で、事業者間の取引について、どのような行為が独禁法上違反になるのかというようなことを明らかにしたところでございまして、現在、そういった取引慣行について独禁法を当てはめるに当たりまして、こういった指針をお示しをし、あるいはそれを頭に置きながら独禁法の厳正な運用に当たっているところでございます。
  70. 達増拓也

    達増委員 先ほど例に出しました、他のグループの車に乗らないとか他のグループのビールを飲まないということは、ある意味では非常に日本人らしい、日本的なそういう文化、伝統にのっとった行動様式で、ほほ笑ましくもあって、自分も何かそういう場に置かれたらそういうふうになるのかなというようなことも考えるのですけれども、一方で、そうした社会的な行動様式というものが、会社人間ですとかあるいは冒頭述べたような受験競争とか管理教育とか、さらには仲間外れ、いじめの問題とか、そういったものとも根深くつながっているわけでありまして、日本の文化だからいいとか伝統だからいいとかいう話でもないところがあると思うのですね。  一方で、日本人というのは歴史を通じて常にそうだったかというと、結構自主独立の精神にあふれ、起業家精神も旺盛で、近代日本が軍国主義化する前の明治、大正などを考えると、結構新しい事業を起こすとか、あとサラリーマンでも途中で仕事をどんどん変えるとか、そういうのがあって、実はそういう方が本来の日本人の姿であって、今の日本は本来の日本から、敗戦とか復興とかいう特殊事情によって、ちょっと曲がってしまったのじゃないかというふうに私は考えているわけであります。  この六大企業集団、系列の問題については、あともう一つの、競争政策観点のほかに、通商関係とか産業政策上もまたいろいろ議論があるところですので、そちらの方の観点からの御意見を伺いたいと思います。
  71. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 今先生から、日本歴史、文化、さらには企業行動あるいは個人の行動に根差した大変難しい御質問であったかと思うのでございます。  私どもは、改めて申すまでもなく、自由な競争というのが結局我が国産業の発展のために一番いいんだ、こういう基本認識であることは間違いございません。ただ、御指摘のような不透明な取引慣行というのは、それは行き過ぎますと市場原理の働きに反することになってくるのじゃないか。したがって、今公正取引委員会の方から御答弁ありましたように、独禁法の厳正な運用で対応する、これが原則であろうと思います。  ただ、今申し上げたように、違法ではないのだけれども、必ずしも自由かつ公正な競争観点からのビヘービアとしてどうかといった問題になってまいりますと、結局それは企業の自覚の問題であり、またその企業経営を行うマインドの問題に関するところも非常に大きいところがあると私は思うのでございます。  その点に関して、最近非常に変わってきたなと思うのは、先ほど先生御指摘ございました、まさにオープンネットワークの高度情報化に入りまして、今までどちらかというと企業は関連会社と独自のルートで、系列で囲い込みをすることによって他グループに対して競争力を維持している、こういう企業行動が非常に多かったのでございます けれども、デジタル化、ネットワーク化になりまして、むしろオープンネットワークを通じて、自分の関連会社競争相手と共有することによって、お互いにコストを下げることによって、うまくそれを利用していこう、こういう企業行動に相当変わってきております。そういう意味において、今までとは違った系列問題というか、系列問題というのがネットワークを使ってオープン化していくという、急速にそういう方向が出てきているのではないか、これが特色の一つだと私は思うわけでございます。  それから、もう一つ今おっしゃいました、通商上の観点からそういった不透明な問題をどうするか。これは、何よりも不透明というのがやはり一番誤解を招く原因でございまして、極力透明化する必要があるのじゃないか、こういう考え方に立ちまして、通産省におきましては、ここ数年間でございますが、毎年六業種ないし七業種、商慣行改善行動計画調査という調査を実施いたしてきております。ちなみに、平成七年度ですと、家電製品とか繊維、スポーツ用品、アルミニウム、住宅建材あるいはアパレル製品、そういったような実態調査をいたしまして、そこに見られた幾つかの系列的な問題というのをレポートにいたしまして、これを公にして内外に示しておるところでございます。何よりも透明化に努めていきたい、これが誤解を解消する一番大きな方法だ、こういうふうに思っておるところでございます。
  72. 達増拓也

    達増委員 今の御答弁、情報資本主義時代に即したかなり明るい方向性もあるということで、勇気がわいてくるところでございます。  次に、林委員も指摘していた点なんですけれども、持ち株会社解禁、そして市場がグローバルになって国境を越えて広がっていく、そういう中で、華僑系、華人系の財閥等、成長著しいアジアの財閥が今どんどん日本に進出して、いろいろ土地を買ったりとかして話題を呼んでいるわけであります。  それで、この法案についてなんですけれども、持ち株会社とその子会社が国境をまたいで設立されること、例えば外国の、華僑、華人資本子会社日本にできた場合ですとか、逆に日本会社が外国に子会社をつくるケース、そういった国際的な、ボーダーレスな企業結合についてもきちっと想定しているのかどうか、伺いたいと思います。     〔委員長退席、小川委員長代理着席〕
  73. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 御質問の点でございますけれども、今回御審議お願いしております改正法案の九条第二項におきましては、会社は、外国会社を含めて「国内において事業支配力過度集中することとなる持株会社となってはならない。」というふうに規定をしておりますので、九条の問題となるといいますか、規制対象としては外国の会社も入るということでございます。ただ、九条の規制対象にはなりますけれども、事業支配力過度集中することになるかどうかという判断につきましては、我が国市場について判断をするということでございます。
  74. 達増拓也

    達増委員 次に移ります。  日本の経済を立て直していくことを考えるときに、個人資産というものがかなり大きいものが今日本にある、そういう明るい材料があると思います。ただ、同時にそれは暗い材料でもありまして、これだけ巨額の個人資産が日本国内にあるにもかかわらず、それがうまく投資に回って経済活動を活発化させる方向に向いてないというところがあると思います。きょうは立ち入って質問はしないのですけれども、例えば郵便貯金の問題というのがありまして、巨額の個人資産が、郵便貯金というものを通じまして、財政投融資という経済効率性を度外視してどんどんお金を使っていくような仕組みの中に流れ込んでいく、こういうのも、これでいいのかという問題があると思うわけであります。  持ち株会社の話に戻りますと、持ち株会社を解禁して、その持ち株会社がうまく利用されていけばいいわけでありますが、バブルのときのことを思い出してみますと、あのときは、円高と貿易黒字の拡大等によりましてかなりの余剰資金が日本の中にできたのですけれども、そのお金が結局株ですとか土地ですとか投機に流れてしまいまして、建設的な投資に回らず、バブルがばっと膨れて崩壊してしまう、それで、いまだにその後遺症を引きずっているという悲劇的な状況にあるわけです。  当時、大企業が事業持ち株会社という形で、そこの企画部門、戦略部門がもっとうまくお金を使ってお金を回していれば、こんなことにはなってなかったのではないかと思うわけでありますけれども、その意味で、解禁される持ち株会社がすぐれた資産運用のノウハウを身につけて、例えば今問題になっている不良債権というものも的確に処理をして、そして、建設的な投資を推進することによって日本経済を大きな飛躍に持っていけるのではないかということが切望されるわけでありますけれども、バブルのときと同じ程度の経営しかしないのであれば、かえって国際的な競争の中で没落していくということになるのだと思います。この点、政府の方はどのように期待しているところか、伺いたいと思います。
  75. 糸田省吾

    ○糸田政府委員 今度、部分的ではありますけれども解禁されます持ち株会社がどういう使われ方をするかということで、達増委員からもいろいろ御指摘がございまして、私、一々ごもっともなことだと思っております。  私は、今回の持ち株会社問題の対応が、言ってみれば、日本経済の内外における非常に著しい変化に対応していくための企業経営戦略のいわば選択肢の一つがこれによって与えられることになるのではないか、そう思っておるわけでございますから、もちろんこれによって事業支配力過度集中になるようなものであってはいけないわけでありますけれども、事業支配力過度集中にならない範囲において、日本経済の一層の活性化、あるいは公正で自由な競争の一層の促進に役立つということを期待しているところでございます。
  76. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 バブル期の企業行動の実例を挙げての御質問でございます。大変難しい御質問でございますが、結局、最近の企業のリストラを行っております経営者のトップの方々のいろいろな意見を聞いてみますと、バブル期における三つの過剰、過大な投資、それから過剰な品質、それから過大な流通チャネルの創設、そういったようなもののとがを一斉に受けておるという反省が非常に強うございました。したがって、その後血の出るようなリストラを行っておる、こういうのが結果でございます。  したがって、私は、ある間違った企業行動を行った場合には必ず後でサンクションが来るということが、結局、将来にわたるモラルハザードを起こさない極めて重要な企業行動の原点になることなんだろうと思います。そういう意味で、私は、バブルの教訓というのは、一つの学習効果として、主要企業のトップの今後の企業経営に極めて大きな影響を与えるだろうと思っておるわけでございます。  あわせて、今回の持ち株会社でございますが、先ほど公正取引委員会の方から御答弁がございましたけれども、恐らく、そういった今の基本的な経営哲学の上に立ちまして、持ち株会社というのは、子会社に対する高い投資収益とかあるいはその配当とか、そういったようなものをより求めるわけでございますから、結局、投資先の経営の効率化というのを今まで以上に厳格にチェックしていく、こういうことになってくるのだろうと思います。  したがいまして、私といたしましては、今回のこういう新しい経営の選択の幅を広げたことを十分活用いたしまして、これからの経営発展、さらには産業の発展に十分活用していける、このように考えておるわけでございます。
  77. 達増拓也

    達増委員 では次に、連結納税制度について伺いたいと思います。  先ほど西川委員からも同趣旨の質問があったわけでありますけれども、改めて伺いたいのですけれども、この法案で持ち株会社解禁になることのメリットとして、会社を分ける、分社化によるリストラを促進することができるということがあると承知しております。ところが、今のままの税制であれば、会社を分けていけばかえって税金をたくさん払わなければならないことになってしまって、それでは、せっかく持ち株会社が解禁されても、分社化をみんなちゅうちょするのではないかという問題があるわけであります。  今、国会にかかっておりますいわゆるNTT法案、NTTを東西に分割してその上に持ち株会社を置くという法案ですけれども、このNTT法案においては、そのような分社化によって税金をより多く払わなければならなくなるということを避けるようにして、実質的に連結納税制度を認めた格好にしていると思うわけであります。この点どのように考えているのか、伺いたいと思います。
  78. 伏見泰治

    ○伏見説明員 まず、NTTの再編成に関する措置の関係でございますが、昨年の年末に郵政省とNTTの間で合意ができました。そのときに、御要望といたしまして連結納税制度というのを前提にというようなお話がございました。その後も議論を詰めてまいったわけでございますが、むしろ年明けから事務的にやらせていただきました。今回め措置でございますが、いわば国の通信政策という大方針のもとで法改正も行いまして、現在のNTTという特殊会社を再編成をしていくということでございます。   結局のところ、その問題を詰めてまいりますと、再編成後地域通信を担当いたします東西の地域会社がございます。この間に、特に西の方に、少なくとも現状で見る限り構造的にまだ難しい問題がある、当面赤字で出発するということもあり得るかもしれない、もちろんいつまでも永続的にということはないにしても、それがある程度続くかもしれないというような現状が出てまいりました。  そこで、依然として特殊会社でございます東と西の間の関係、再編成をしたからといって、例えば直ちに料金を引き上げるというようなことがとれるということでもないと思いますので、現行の料金体系を維持する、そういうような前提のもとで、東西の会社の格差が極端に開くということがないような、そういった工夫が必要なのではないかということになってまいりました。  具体的に税の面で申し上げますと、NTT法上、東会社が西会社の特定費用の一部を負担いたします特定費用負担金制度というものが三年間に限って設けられることになっております。税法上も、これを受けまして負担金の損金算入という形での一種の調整を行ってはどうかと考えておりまして、それで今、国会の方に提出をさせていただいたものでございます。  一方、いわゆる連結納税制度でございますが、これも一体何が連結納税制度かというのは少しあいまいなところもあるのでございますが、例えば、親会社と同一視し得るような、持ち株割合の極めて高い一定子会社を含めて企業グループを一つの課税単位とするものだというふうに考えますと、今回のいわばNTTにかかわる措置というのは、そういう意味ではちょっと違うものではないかなというふうに思っております。  それから、連結納税制度一般につきましては、繰り返しになりますが、今後におきます企業行動の実態なりあるいは企業会計や商法といった関連する諸制度の問題、それから税制上固有の問題もいろいろございますので、そういった幅広い角度からの議論をまた深めさせていただきたいと思っているところでございます。
  79. 達増拓也

    達増委員 大事な問題ですので、やはり議論をしていかなければならないと思います。  NTTの場合、西の方がちょっと弱いので特別にということですけれども、赤字部門を分社化することでリストラをしていくということがかなりあるのだということで、そのためにもやはり同様の連結納税の格好を認めてほしいという声が産業界、財界にあると承知しております。そういうのも踏まえてこの国会の場でも議論していかなければならないと思います。  大蔵省関連をもう一つなんですけれども、企業情報のディスクロージャーという点について、持ち株会社を認める一方で透明性確保、情報の一層の流通というのを進めていかなければならないと思うわけでありまして、情報についても連結開示というのを一層強化充実させなければならないと思うのですけれども、この点いかがでしょうか。
  80. 大西又裕

    ○大西説明員 連結開示の充実についての御質問でございます。  現在、企業会計審議会におきまして、会計基準の国際的な動向を踏まえて整備を図っております。その中で、連結財務諸表制度につきましても、従来は個別情報を中心としたディスクロージャーでございましたから、連結情報を中心としたディスクロージャーへ転換すべく見直しを行っているところでございます。  現在の有価証券報告書などでは、連結財務諸表のほかに企業集団の概況とかセグメント情報といったものの開示を求めているところでございますが、持ち株会社につきましては、その業績は、一般の事業会社、一般の会社に比べますと、傘下の子会社の業績に左右されることとなります。そのためこのような、今申し上げましたような連結ベースの情報の重要性がさらに高まるというふうに考えております。  今申し上げました企業会計審議会では、二月七日に連結財務諸表制度見直しに関します公開草案というのを出しまして、その中で持ち株会社についての連結ベースのディスクロージャーが重要ということも触れておられますが、現在、同審議会では、ことしの六月を目途に最終報告に向けまして鋭意検討が進められているところでございます。  以上でございます。
  81. 達増拓也

    達増委員 時間が参りました。今まで私が挙げさせていただいた論点のほかにも、西川委員が挙げた労働の問題、そして商法等関連法制の問題もまた非常に重要な論点であると思います。  きょうからこの独禁法改正案についての審議が始まったわけでありますけれども日本経済の活性化、そして日本人がより自由な自己実現を図れるような、そういう世の中をつくっていくための法改正となるように一層頑張っていかなければならないなという感想を述べさせていただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  82. 小川元

    ○小川委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後三時開議
  83. 武部勤

    武部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大畠章宏君。
  84. 大畠章宏

    ○大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案について質問をさせていただきたいと思います。  既に林委員からも、歴史的な経過も含めてさまざまな御質問がございましたけれども、私の方からも、この法律改正の経緯、あるいはまた、この独占禁止法改正というものがかなり急激な形で、改正作業が、準備作業が進んだわけですが、その背景、あるいはまた、この独占禁止法の第九条が生まれた歴史的な経緯を踏まえて、今公正取引委員会がどういうことを御認識されているか等々について、最初にお伺いをしたいと思います。  この法律改正の経緯でございますけれども、まず、公正取引委員会がこの独占禁止法改正案というものの骨格をいろいろ御努力はいただいたわけでありますが、これまでの独占禁止法に関する法律案審議過程において、さまざまな混乱も起こりました。  そういうことから、私自身も独占禁止法について随分関与をさせていただきましたけれども、まず、一つ指摘をしなければならないことは、ちょうど四年ぐらい前の改正だったと思いますが、原案というものがさまざまな経緯でかなりゆがめられた事実がございます。このゆがめられてしまった経緯から、現職の国会議員が逮捕をされるという事態にも発展をした経緯がございました。これも指摘をしておかなければならないことの一つであります。  さらに、今回の独禁法改正案につきましては、一昨年から動きが始まりましたけれども、一昨年の暮れから去年の初めにかけて、独占禁止法第四章改正問題研究会の中間報告を基本として、この改正案というものの骨格が昨年の一月十八日に示されたわけでありますが、それが、一週間後には大幅に基本的な骨格が変更をされるという事態も起こりました。これが新聞で報道されまして、二転、三転しながら、この独禁法改正というものが暗礁に乗り上げてしまったという事実もございます。  さらには、これも指摘しておきたいと思いますが、この間、公正取引委員会の幹部の方から経緯について説明を受けましたけれども、そのときにも、この経緯について、事実に反する報告を私自身受けたことも事実でございます。  したがって、私は、この法律案の骨格というものを公正取引委員会の事務方が行うということ自体がどうもそぐわないのではないか。先ほど林委員からもお話がありましたけれども、公正取引委員会が意思を持って法律案の骨格づくりに入るというのは、やはりそぐわないのではないか。言ってみれば、議員同士あるいは議会側が、議員が独禁法はどうあるべきかということを議論をしながら、その骨格を練り上げていって、議員提出法案という形にするのが本来の筋なのかなというのを、ここ四、五年の議員活動を通じて実感しているところであります。  公正取引委員会委員長として、この問題、どのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  85. 根來泰周

    根來政府委員 午前中にも申し上げましたけれども、私が就任前の話で、隔靴掻痒の回答しかできないわけでございますが、大変、手抜かりというか手落ちというか、あるいは言葉をかえましたら失礼というか、そういう段があったようにも聞いております。そういうことにもかかわらず、プロジェクトチームあるいは独禁法協議会で熱心に御協議いただきまして今日の法案の作成を見るに至ったのでございまして、そういう点で大変感謝申し上げているところでございます。  私といたしました場合に、この法案をどういうふうな形で国会に提出したらよいかということについては、やはり、競争法を所管しております公正取引委員会が素案をつくりまして、いろいろの方々から御意見を聞いて、そして、その御意見を集約いたしまして法案を作成し、内閣から提出されるのが一番妥当な筋ではないか、こういうふうに考えております。
  86. 大畠章宏

    ○大畠委員 新任の委員長さんとしてはそういうお答えかなと思うのです。  私も、議員活動をしていまして常日ごろ感じるのですが、もっと国会議員が世の中のさまざまな事象について真剣に考え、やはり議員立法というものを中心とした形の国会活動が本来であるのかなという、これは私自身の個人的な考えでありますけれども、そんなことも感じているところであります。  独占禁止法、私自身感じますが、公正取引委員会は、言ってみれば経済の裁判所的なところでございます。したがって、その裁判所がみずから法律の骨格を築いていく、そして自分でそれを守るということ、本来そのような形であっていいのかなという疑念は私自身まだ持っておりますが、この問題はまた別な機会にいろいろとお話をいただきたいと思います。  二点目に、この独占禁止法改正作業を急いだ背景についてちょっとお伺いしたいと思いますが、これについては、午前中の質疑にもありましたとおり、平成七年二月に、通産省関係がこの純粋持ち株会社の解禁の問題について提起をされ始めています。そして、平成七年十二月に、公正取引委員会が主管となりました研究会の中で、この改正案というものの骨格がまとめられました。そして、その後、さまざまな論議を経て、五十年ぶりにこの基本的な独禁法の九条について改正をしようというところに入ったわけです。  私自身、この問題、さまざまな論議の中で、国際経済社会の変革の中で日本の経済が大競争の中で対応するという意味では、イコールフッティングという、国際のルールの状況に日本ルールも近づけていくというのは、大変重要なものだと考えております。とはいいながら、この独禁法改正がそのような純粋なところからきたかどうかというのは、ちょっと疑念がありますが、いずれにしても、バブル経済の崩壊あるいは金融機関の破綻という、そういう社会現象があらわれ始めたころから、この独禁法改正というものが大変大きなうねりとなってきたような感じを持っています。  そう申し上げますのも、きのうの日経新聞にも出ていますとおり、一般企業がどのくらいこの純粋持ち株会社を求めているかというと、持ち株会社の導入を考えているかということでのアンケートでは、関心はあるが時期尚早であるというのが五一・四%、連結納税など制度整備があれば導入するというのが二一・六%、導入する方向で準備に入っているというのはわずか〇・九%ということでありますし、全く考えていないというのは七・二%でございます。  こんなことからすれば、多分、私が先ほど申し上げましたとおりの、いわゆるバブル経済の崩壊の問題あるいは金融機関の破綻の社会状況があらわれたということから、大蔵省等々のいろいろな考えもありながら独禁法改正というものに移行し始めたのじゃないかと思います。  この問題は非常に複雑な背景がございまして、いわゆる労働問題というもの、あるいは金融機関の、特に銀行の持ち株会社をどうするかという問題がございます。銀行につきましては、金融持ち株会社法というものを改めてつくるという状況に至りまして、今回の法律案からは外されておりますが、労働問題がまだ解決をしていないと思います。したがって、これから、きょうを含めてあと四回質疑を続けますが、民主党といたしましては、この質疑の過程の中で、どのくらい私たちが不安に感じている問題が解決できるかということをよく見てから判断をしていきたいと思っているところでございます。  このことを表明しておきますが、まず、先ほど申し上げましたとおり、独禁法改正が急浮上した背景について公正取引委員会としてはどのように認識をされているのか、お伺いしたいと思います。
  87. 根來泰周

    根來政府委員 今のお話で、持ち株会社解禁につきまして急浮上したというお話でございましたが、そういう御意見も当然あることと思います。  しかしながら、私どもの立場を申し上げますと、一つは、持ち株会社解禁、まあ解禁というのはどの程度かという問題がございますけれども、解禁につきまして、待望論といいますか、そういう要請がございます。これは経済界を中心にして、企業戦略の立て方について選択肢をもう少し欲しい、国際的にも持ち株会社禁止しているのは日本と韓国だけだとか、いろいろの議論がございます。その一方に、独占禁止法持ち株会社制度につきまして、一律規制というのはおかしいのではないか、持ち株会社の中では事業支配過度集中にはならない部分もあるのではないかという御批判もございました。  私どもの方はむしろ後者の方を中心に考えたわけでございまして、経済的な問題あるいは戦略的な問題というのは、これを正面からとらえてこれを公認するというわけにはまいりませんので、むしろ九条の一律規制というのが過剰な規制、まあ言葉は悪いのですけれども、過剰な制限といいますか、そういうことにわたっているという批判については真剣に耳を傾ける必要があるというふうな立場であったわけでございます。  それで、平成七年の十二月に研究会でいろいろ御検討いただいて研究会の結果を得て、いろいろの、先生御指摘のようないきさつがありまして今日に至っているわけでございますが、一方、平成七年の三月三十一日の閣議決定を見ますと、  事業支配力過度集中防止するとの趣旨を踏まえ、系列企業集団等の問題に留意しつつ、我が国市場をより開放的なものとし、また、事業者の活動をより活発にするとの観点から、持株会社問題についての議論を深めるため、検討を開始し、三年以内に結論を得るものとする。 という閣議決定があるわけでございまして、私どももこの閣議決定趣旨を体しまして今日に至っているわけでございます。  そういうことで、持ち株会社というのは五十年間禁止されてきたわけでございます。午前中に申し上げましたけれども、五十年間鎖国の状態であったのが今解禁という時代に至っているのでございまして、そういう時の流れをくみましてこういう法案を提出しているのでございまして、決して唐突に、あるいは経済界の意向を受けて解禁したというものではないということを御理解いただきたいと思います。
  88. 大畠章宏

    ○大畠委員 急浮上したわけではなく、時代の流れとともに、世界的な大競争時代日本の企業が生き抜くために、イコールフッティングの関係からアメリカヨーロッパが持っている純粋持ち株会社という制度を解禁することを決断したというようなお話をいただいたところでありますが、私自身、それから民主党といたしましても、純粋持ち株会社というものは条件を整理しながら解禁していくべきだろうという認識は持っているところであります。  昭和二十二年に制定された独禁法でございますけれども、この法律の形成過程で、林先生から先ほど、橋本龍太郎総理のお父さんがちょうど係官をしていまして、一つの本をその当時出しているわけですが、この当時の文章を読むと、今公正取引委員会委員長がおっしゃったようなものとはちょっと違うような感じを持っているのですね。  ちょっとこの問題を読ませていただきますと、   私的独占禁止および公正取引確保に関する法律は、昭和二十年十一月六日付の連合国軍最高司令官の指令に基き、日本政府関係者と総司令部関係者との間の苦心を重ねた調査と何十回にも亘る会議の後に、その制定に着手してから一年有半を経て結実した。各方面の意見もできるだけ聞いた。当局者が実状にうといためにこんな法律ができ上ったと思っている人もあるようであるが、実状を百も二百も承知の上で作った法律であることを、先ず充分に考えて戴きたい。という文言が一つございます。  そしてもう一つに、「この法律根本方針」というのがございますが、ここにも幾つかの指摘がございます。   私的独占、不当な取引制限及び不公正な競争方法を禁止すると共に、これらの行為を予防する為の補完的措置として、事業支配力過度集中防止する。事業支配力過度集中防止は、不当な事業能力の較差に対する措置、持株会社設立禁止事業会社の他会社株式取得の制限、金融会社の他会社株式取得の制限会社社債取得の制限会社役員兼任の制限競争会社双方を支配するような株式取得の制限会社の合併の制限及び会社の営業譲受等の制限によって行われる。   右によって、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限との他事業活動の不当な拘束一切を排除する。   右によって、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにする。   こうして、雇用量を増大し所得の機会を多くすると共に、良質廉価且つ豊富な物資及び用益の供給によって国民実所得の水準を高める。非常に崇高な理念を持って書かれているわけでございます。  この法律事業規模を小さくして我が国の経済を貧弱にするものだと思っている人があるようであるが、決してそうではない。また、企業結合体に属せず、他の勢力に服しない独立自由な事業者をなるべく多くすること。等々のさまざまな意見が述べられているわけであります。  私は、独禁法の九条で純粋持ち株会社禁止するという措置をとったのは、先ほど林委員からもお話がありました、財閥解体ではないかというのですが、私も財閥解体一環ではあったと思います。先ほど連合軍云々というのはありましたから、そういうことであったと思うのですけれども、それと同時に、戦前のいわゆる大手の企業が非常にはびこっていてなかなか自由な競争がない中で、新しい産業が生まれにくかった。やはりそういうものをできるだけ抑えて、新しい産業を育てたいという、そういう理想に燃えたものもあったのではないかと私は思うのです。  その中で、この独占禁止法の制定をいたしましたけれども、戦後もずっと続いてきた弊害もございます。これがよく言う系列の問題でございまして、この問題について、この四章研の中でもいろいろな指摘がされておりますが、一つには、我が国の特徴として、   我が国においては、現在、事業会社や金融会社による他の会社株式保有を通じた六大企業集団が存在するほか、大企業を頂点とし多数の子会社・関連会社支配する大規模企業集団や「系列」が存在していること。二番目には、   上場会社の発行済株式に占める法人所有株式の比率が極めて高く、しかも、公正取引委員会の調査によれば企業間の株式保有関係と取引関係の間には一定の相関関係がみられること。  三点目には、   企業による株式所有の目的として、企業間の取引関係の安定を図ることが重要であるとされており、企業集団内での株式の相互持合いが取引関係を固定的なものにしているおそれがあると指摘されていること。 等々の日本国有の風土というものがある。こういうものを何とかしたいという思いもあって、こういう独占禁止法の九条ができたと私は思うのですが、今日でも、今の指摘の三点、あるいはまた企業別労働組合という制度日本独特であります。  さらに、株の持ち合いの問題あるいは少数株主の権利がなかなか重きを持たれない。例えば、この間も三月二十六日の新聞に大きく出ましたが、VIP口座の存在等々、野村証券の不正な、不当な行為があって強制捜査をしたというのですが、アメリカヨーロッパ純粋持ち株会社が解禁されているから日本でも解禁しようというだけでは済まない環境があるのではないかと私は思います。  さらには、この子会社の株主の権利はどうなるのかとか、親会社子会社との関係の株主の権利、そしてまた労働問題等々それから金融機関と企業との関係、世界の流れとして、純粋持ち株会社を解禁するとはいいながら、日本独特のそういう風土というものにどうメスを入れていくかというのが大変重要な課題だと私は思います。  したがって、単純にこの独占禁止法改正をして純粋持ち株会社を解禁しようというだけでは、日本のこの風土の中で混乱が生ずると思いますが、ここら辺の日本独特の歴史的な風土の認識、そしてその風土の中で純粋持ち株会社を解禁するについてどういう基本的な御認識を持たれているか、お伺いしたいと思います。
  89. 根來泰周

    根來政府委員 ただいま委員がおっしゃった日本的な風土といいますか、そういう株式の持ち合いあるいは企業内取引、系列取引ということは残念ながら認めざるを得ない、こういうふうに思うわけでございます。  しかしながら、この持ち株会社の九条の改正というのは、そういう点も踏まえまして、全くそういうことを野放しにするという改正ではなくて、当然持ち株会社禁止については残しているわけであります。その残している点は、事業支配力過度集中を招くような持ち株会社というのは従来どおり禁止しているわけでございますし、また、九条の第五項には事業支配力過度集中というのは何かという定義がございますけれども、その定義の中にも系列取引等を禁止する旨の趣旨を持った規定を設けているわけでございます。  なお、私どもとしましたら、この改正案が成立した場合には、いろいろの運用の状態を見まして、そして再びまた見直しということも考えているわけでございまして、その点はこの五年間に、検討期間というか、そういうことを置くという規定も設けていただくようにお願いしているわけでございます。  そういう先生のおっしゃるような点も十分踏まえまして改正に踏み切ったわけでございますので、ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  90. 大畠章宏

    ○大畠委員 そういう環境も十分考えながら、この純粋持ち株会社というものの解禁をしていかなければならないと私も思います。これまで約一年ほど、この純粋持ち株会社についてさまざまな方から御意見を賜りました。非常に大きな影響もありますし、したがって私としては、このくらいは大丈夫かな、このくらいは大丈夫かなという確認をしながら、その純粋持ち株会社というものをできるだけ開放していくという手段、方法もとるべきじゃないかと思っております。  特に、これまでの勉強といいますか、いろいろなお話を伺う中で、象徴的といいますか非常に印象的だったのは、稲盛和夫さんから、京セラの会長さんからお話をいただきました。通常ですと、経済界はこの法律案に賛成している、したがって、私も経済界の一員だから賛成した方がいいのじゃないかなと思うけれども、私は、創業時の苦労を思い出しながら、創業時の若いころの心で参りましたということでお話を伺ったことがあります。  今でも系列というものが非常にはびこっていて、私たち新しく企業を起こし、この製品はいい製品だと思ってもなかなか売り込めない、こういう実態を放置しておいて純粋持ち株会社を導入するということは、ますますそういう系列化が激しくなるのではないか。そういうことから考えると、私の会社はもうある程度になりましたけれども、新しい会社が芽生えるような余地がなくなってしまうのじゃないか。そういうことから、青年の実業家としての気持ちを持ってきょう参りましたという前段でのお話がありましたけれども、私はその稲盛さんの発言というのは非常に重いのだと思うのですね。  したがって、公正取引委員会という機関があり、そしてさまざまな形で努力をされておりますが、そういうところに、やはり十分な環境整備に公正取引委員会としても努める。これは公正取引委員会の範疇じゃなくて、あるいは通産省の範疇、あるいは労働省の範疇かもしれませんが、この純粋持ち株会社を解禁するという法律案を出すのであれば、その環境整備も公正取引委員会の責任としてやらないと、それは私の責任じゃないのだというわけにはいかないと思うのですね。  この問題についても、今公正取引委員会委員長からお話をいただきましたが、ぜひそういうものに対しても十分配慮をした形でこれから臨んでいただきたいということを申し上げておきたいと思います。  それから、さまざまな論議の中で、西川委員からは四十回も一体何をやっていたのだというおしかりのお話もいただいたところでございますが、この間、この四十数回の論議をする中で、共通認識というものもたくさん出てきたと思います。これは非常に私はよかったと思うのですが、我が国の企業は現在経済の国際化に伴い厳しい競争にさらされており、経営の選択肢を広げることにより対応能力を高める必要があるという話ですとか、いわゆる国際的なハーモナイゼーションの問題、あるいは現行の事業持ち株会社の親子会社間では種々の労働法上の問題が発生しているとか、持ち株会社が解禁されると現在の親子会社間で発生している同種の問題が発生することを認識するべきであるとか、持ち株会社解禁に伴い会社制度上の検討すべき課題が生じる可能性があるですとか、あるいは企業のリストラの促進、ベンチャー企業の振興等を図るため、独占禁止政策に反しない範囲で持ち株会社を解禁する必要があるとか、あるいは金融持ち株会社は金融業の異業態の相互参入の方法として議論されている、金融持ち株会社については個別業法上の対応について考慮する必要があるですとか、私はこの問題、四十数回にわたりましたけれども、非常に有益な論議がされたと思いますし、今回の法律案も十分そういう経験が生かされた形でなったのではないかと思います。  こういう形の中で、今回の法律案が提出をされたところでありますが、具体的な法律案について何点かお伺いをしたいと思います。  この法律内容についてさまざまな御意見をいただきながら進めてきているところでありますが、まず第一に、独占禁止法改正関係の中で、いわゆる日本独占禁止法が制定されてことしてちょうど五十年を迎えるわけでありますが、一つには、少数の企業の結合体のもとに多数の事業者が従属するのではなく、独立自由な事業者が多数存在し、談合やカルテルではなく、公正かつ自由な競争を通じて優秀な事業が大きく伸びていくような経済の姿を実現することが、今日の我が国の独占禁止法根本的な考え方としてしっかり堅持されなければならないという、いわゆる独禁法成立させるときにそのような理想を持ってこの独占禁止法が制定されたわけでありますが、五十年たって、公正取引委員会委員長として、現在このような根本精神というものが生かされた形の市場になっているかどうか、このことについて所見を伺いたいと思います。
  91. 根來泰周

    根來政府委員 私も昨年八月に全く方向違いのところから公正取引委員会委員長を拝命したわけでございまして、いろいろ、先ほど林委員あるいは委員から御指摘のありました公正取引委員会歴史なり独占禁止法歴史を十分勉強いたしたつもりでございます。しかし、勉強した結果、今おっしゃったような昭和二十二年に独占禁止法ができたときの理想あるいは現在の理想というのは、やはり社会の変遷に伴いまして多少変わっていると思いますけれども、高いところを見ながら仕事をしているという点については、私も、私どもの職員も同じような考えであろうかと思います。  ただ、いろいろ御指摘のような、省みますれば非力な点もございます。そういう点はいろいろ御叱正をいただいてそれを改めながら、より正しい独占禁止法独占禁止政策競争政策の運営に当たっていきたい、こういうふうに思っている次第であります。
  92. 大畠章宏

    ○大畠委員 現在でもさまざまな形の談合問題とか何かも言われているし、まだまだ田舎の方に行ったりなんかすれば、あるいはまたさまざまなところで談合というものも行われていて、私たちといいますか、国民の払った税金がどうもむだに使われているんじゃないかという指摘も財政難の中、さまざまな形で言われていますので、今御意見を賜りましたけれども、ぜひそういう姿勢で努力をしていただきたいと思います。  それから二つ目には、純粋持ち株会社禁止の第九条というものがございますが、これは先ほど申し上げましたように戦前財閥の復活防止という目的もあったと思いますけれども、今公正取引委員会委員長として、第九条、純粋持ち株会社禁止という、まだ法律改正されていないわけでありますけれども、この第九条についてはどういう御認識を持っておられるか、お伺いしたいと思います。
  93. 根來泰周

    根來政府委員 これは先ほど来御指摘のありました第四章研究会の中間報告に詳しく載っておりますけれども、この研究会中間報告によりますと三つぐらい理由がある、こういうふうに言っているわけであります。  一つは、先ほど来ちょうだいしております財閥の復活を封じるという理由。  それから二つ目は、持ち株会社の性格といたしまして、その機能が他の会社事業活動の支配そのものであり、それ自体が経済力集中の手段となりやすい。独占禁止法はそのような手段を利用すること自体を禁止した。また、持ち株会社は直接事業活動を行わず、専ら他の会社支配する機能を営むものであるため、市場経済の競争原理に直接服することがないという性格を有するという、一つ持ち株会社の性格からの議論。  それから、先ほど来御指摘のありました我が国の現状についての認識、それは、我が国では企業による株式所有が広く見られ、海外からも、株式持ち合い等が参入障壁、投資障壁として指摘されているという状況にある。企業集団やいわゆる系列の中核となり、経済力集中の手段となりやすい性格を有する持ち株会社禁止する。そういうことは市場メカニズムの機能が妨げられることを防止する意義を有する。こういうふうに言っておられるわけであります。  こういう議論がございますが、この議論を超えて、今回持ち株会社禁止規定を緩和するといいますか制限を一部解くといいますか、そういう法案を作成いたしまして御審議をいただいているわけであります。
  94. 大畠章宏

    ○大畠委員 次に、労働問題について、労働省の担当の方がおいでだと思いますので、何点かお伺いしたいと思います。  一つ目には、純粋持ち株会社解禁を含めて、中期的、マクロ的には雇用増大を期待することができるわけでありますけれども、短期的、ミクロ的にはリストラ等による雇用問題の発生も増大するおそれがあります。このため、従来以上に労使関係や雇用の安定に十分配慮した労働政策を展開し、社会的セーフティーネットを確立しておくことが不可欠だと考えるわけでありますが、労働省はこの問題に対して、純粋持ち株会社解禁に当たってどのような認識を持って、そしてまた対応されようとしているのか、現状をお伺いしたいと思います。
  95. 岩崎伸夫

    ○岩崎説明員 お答えいたします。  今後、ただいま先生御指摘のような規制緩和でございますとか経済構造改革あるいは少子・高齢化の進展等に伴いまして、こうした環境変化によります労使関係、労働市場にも大きな影響を及ぼすことも予想されるところでございます。労働省といたしましては、さまざまな雇用情勢の変化に適切に対応するため、必要な政策を講じてまいりたいというふうに考えているところでございます。  また、労使関係につきましても、これまで長年にわたる労使の努力によりまして良好な労使関係が構築されているところでございますけれども、今後規制緩和経済構造改革を進める上でも良好な労使関係の維持ということが重要であるというふうに考えているところでございます。
  96. 大畠章宏

    ○大畠委員 この問題は、多分また労働部会等々、あるいはまた総括のときにでも整理させていただきます。  次に、純粋持ち株会社解禁により親子会社関係が増加すれば、これに伴って労使関係上の紛争も増加することが予測されます。これについて、従来からある親子会社関係と異なる新たな法的問題は生じないという見解もお伺いしておりますが、これまでも親子会社関係下の労使紛争がしばしば裁判で争われてきたことからすれば、労働省としてこれまで法律面での措置を講じてこなかったのは、私は労働省の怠慢と言わざるを得ないんじゃないかと思っておりますが、このことについて労働省の見解を伺いたいと思います。さらに、労働省としては、少なくとも持ち株会社の解禁により親子会社関係が増加すれば、これにより労使関係上の紛争も増加する可能性がある、そうしたことによって労使関係の安定が損なわれることは、これからの日本経済にとってもマイナスではないかという感覚を持つところでありますが、労働省の現状としての見解を求めたいと思います。
  97. 岩崎伸夫

    ○岩崎説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のように、労組法第七条の使用者につきましては、現行法制のもとにおきましても、労働委員会あるいは裁判所におきまして、例えば形式的には雇用主の地位にない場合でありましても、労働者の労働条件に関しまして雇用主と同一視される程度に現実かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合を含めまして、一定程度適切な処理がなされてきたものと考えているところでございます。  しかしながら、我が国におきまして、先ほど申し上げましたように、これまで長期にわたる労使の努力によりまして築かれてまいりました良好な労使関係につきましても、今後、規制緩和あるいは経済構造改革など、社会経済情勢の変化の中でも引き続き労使の意思疎通ということは非常に重要な課題でございます。そういう中におきまして、御指摘のように労使関係の安定が損なわれることのないよう、労働省といたしましても労使合意の形成の促進に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  98. 大畠章宏

    ○大畠委員 さらに質問きせていただきますが、持ち株会社解禁に伴う労使関係問題について、労使団体間で協議を続けていくという合意がなされましたけれども、労働省としてはどのようにこれにかかわっていくのか。  さらにはまた、少なくとも、今後の我が国の経済構造改革の進展や持ち株会社解禁に対応してこれからの労使関係のあり方について検討するために、労使関係に関する審議会を設置すべきだと思います。そしてその中で、企業グループにおける労使協議制度の導入等についても早急に検討すべきではないかと私は思うわけでありますが、労働省の現在の見解をお伺いしたいと思います。
  99. 岩崎伸夫

    ○岩崎説明員 お答え申し上げます。  持ち株会社の解禁に伴う労使関係上の問題につきましては、御指摘のように、先般労使の合意がなされまして、二月二十五日の与党の独禁法協議会に報告されたところでございます。労働省といたしましては、今後、国会での御議論も踏まえながら適切に対処してまいりたいというふうに考えているところでございますが、今後の社会情勢の変化の中で、労使合意の形成の促進のために、必要があればいろいろな角度から検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。具体的にどのようなことを検討するかにつきましては、御指摘の問題も含めまして、今後労使関係者とも十分相談しながら進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。  なお、審議会の設置につきましては、この問題の検討につきましては必要ないのではないかというふうに考えているところでございます。
  100. 大畠章宏

    ○大畠委員 必要ではないと考えているということですが、審議会の設置というのは大変難しいということだと思うのですね。本来ならば審議会でやるべきだと私は思いますが、必要ではないということではなくて、審議会、今さまざまな形でたくさんありますので、新たにまたつくるというのは大変だということは間接的に聞いておりますが、審議会をつくるぐらいのつもりでこの問題には取り組んでもらいたいということを申し上げておきたいと思います。この問題も、さらに今後の審議の中で議論をさせていただきたいと思います。  それから、ちょっと具体的な話になってまいりますが、不採算部門を整理する目的子会社化して、労働者をその意に反して転籍ないし退職、出向させることは、労働基準法上は解雇に当たるのかどうかをお伺いしたいと思います。
  101. 青木豊

    ○青木説明員 意に反した転籍ということですが、判例、学説によりますと、転籍はもとの労働契約関係を終了させて新たな労働契約関係を成立させるというものでありまして、労働者の同意が必要だというふうにされております。したがって、労働者の同意を得ないで転籍あるいは退職、出向、そういった命令を行うことは、解雇に相当するというふうに考えております。
  102. 大畠章宏

    ○大畠委員 それからまた、転籍、退職、出向命令を拒否したことを理由とする解雇は懲戒権の正当な行使の範囲になるかどうか、この件についての見解もお伺いしたいと思います。
  103. 青木豊

    ○青木説明員 解雇につきましては、それが客観的に合理的な理由を欠いて、社会通念上相当として是認することができないというような場合には、権利の乱用として無効と解するという裁判例が確立しております。転籍、出向については労働者の同意が必要だというふうに申し上げましたけれども、それを拒否したことのみをもって、それを理由とする解雇は、一般的に合理的な理由を欠いているものというふうに考えられますので、無効と判断されるのではないかというふうに考えております。
  104. 大畠章宏

    ○大畠委員 以上、労働問題について何点か基本的なことについてお伺いしましたが、きょうの御回答を私も改めて分析をしながら、これからの質疑のベースにさせていただきたいと思います。  それから、金融問題についてお伺いをしたいと思いますが、この純粋持ち株会社解禁、いわゆる独禁法改正の論議の中で多くの時間を割いたのは、労働問題とこの金融持ち株会社といいますか、大手銀行の持ち株会社の問題でございます。  先ほど根來公正取引委員会委員長とも日本の風土についてさまざまな御論議をさせていただきましたが、金融機関のいわゆる環境、日本の国内における環境とアメリカヨーロッパにおける金融機関の環境というのは大きく異なっているという実態がございます。今回そういうさまざまな論議の中から、当初は、大蔵省もあるいは労働省もこの純粋持ち株会社に関する影響というものを余り実感されていないようで、どうして純粋持ち株会社の、いわゆる独禁法改正審議の中に引っ張り出されるのかなというような感じも受けたところでありますが、労働省も先ほど、一生懸命取り組みを始めましたし、また大蔵省も、この金融問題、非常に大きな課題があるということで、さまざまな形で検討を開始していただいていると伺っております。  金融持ち株会社は、先ほど林委員からも御指摘いただきましたように、別枠で法律をつくるということになっておりますが、特に日本の場合、改めて純粋持ち株会社をつくるからということよりも、世界的なイコールフッティングという観点から申し上げれば、銀行界の不祥事等々が昨今、一昨年あたりからさまざまな形で表面化いたしました。不良資産の問題も出てまいりました。銀行界に対する国民の不信というものも、金融機関に対する不信というものも出てまいりました。  私は、この問題を大蔵省がバブル経済の崩壊以降、言ってみれば放置してきたのじゃないか、もっと早く金融界の正常化といいますか、健全化に努めなければならなかったのではないかと思いますが、私は大蔵省の責任は大であると思うのです。もちろん、ちょっと話は別ですが、動燃問題の科学技術庁の責任も大でありますけれども、この金融の不安あるいは金融破綻、あるいは国民からの金融に対する不信感が出ている中で、大蔵省がその問題に対してなかなか腰を上げなかったという実態が大変私は問題だと思います。  まあ、それはそれとしながら、この純粋持ち株会社は、どちらかというと、先ほどのお話ではありませんけれども、事業持ち株会社がありますから、製造会社は余り興味を持っていないのですね。一番やりたがっているのはどうも金融業界だという認識を、過去のさまざまな勉強会等でわかりました。そういうことで、去年からやっているわけでありますから、本来であれば、もうこの金融持ち株会社に関する一つの方向づけというものがあってもいいのではないかと思うのですが、まだそれが出てきていないという意味では、大蔵省のこの問題に対する取り組みが非常に甘いのかなと思っていますが、現在の状況についてお伺いしたいと思います。
  105. 五味廣文

    ○五味説明員 金融機関が経営の組織形態といたしまして持ち株会社という手法がとれる、これを活用するということは、金融の効率化でございますとか、あるいは金融機関を利用いたします利用者の利便といった意味で非常にこれの向上に資するという効用を持っております。特にさまざまな競争が促進されるという中で、こうした組織形態を選んで選択の幅を広げていくということが、金融システム改革の中では非常に大きな意味を持っておるという認識でおりまして、持ち株会社が形態として使えるようになるという今次の改正を控えまして、私どもも、金融業法などの改正を非常に速やかに作業する必要があるというふうに考えております。  何分にも、業態間の相互の参入でございますとかあるいは新規商品の開発など、業態の間にさまざまな影響の出る話でございますので、具体的にどのような形の持ち株会社が利用できることになるかという問題が一つございましたのと、それから、こうした問題を、関係の審議会などで関係者の意見を十分聞いた上で、どういう形の金融持ち株会社のあり方、あるいはこういったものに対する業法上の規制のかかり方ということになるのが望ましいかということを少しきちんと議論をする必要がございまして、時間がかかっております。  現在、二〇〇一年を目指しました東京版のビッグバンの検討一環といたしまして、この六月をめどにこのプランを具体的につくるという作業を各審議会でいたしておりまして、その一環として、金融に関係いたします持ち株会社に関するさまざまな問題を活発に御議論をちょうだいをいたしております。各審議会それぞれ複数の回数の審議をもう行っておりまして、六月をめどに、こういった議論を十分踏まえながら、また諸外国の制度なども十分踏まえながら基本的な考え方を整理をしていく、こういう状況に今なってきております。  いずれにいたしましても、改正独禁法の施行日というものが決まってくるわけでございますので、この施行日をにらみまして可及的速やかな準備をしてまいりたいと思っております。
  106. 大畠章宏

    ○大畠委員 この質問をするに当たって係の方に来ていただいて状況についてもちょっと伺ったことがありますが、金融持ち株会社で一番問題になるのは、いわゆるファイアウォールの問題、それから金融持ち株会社がどういう業態の会社子会社にできるか、そういう規定が必要なんだろうと思うのですけれども、いずれにしても、大変な資本を持っていますし、やろうと思えば何でもできるということになるのですね。  したがって、アメリカの例が一番適切かなと私は思うのですけれども、アメリカにおいても、銀行持ち株会社法というのが一九五六年に制定されています。もう四十年前の話でありますが、そういうものが四十年前にできている。それから、ファイアウォールの問題についても、大体の骨格、まあこういうことなのかなと思うのですけれども、融資規制ですとか、機関名の規制の問題、あるいは情報の隔離の問題等々、もう昨年の二月、三月時点からこういう基本的な問題はわかっているわけなんですね。それでことしの六月ということでありますから、大蔵省の方は困らないかもしれませんけれども、あの当時、金融機関は非常に困っていた。一生懸命、何とかしてほしいというような話も随分聞こえてきましたので、この問題は、官僚の方は困らないかもしれませんけれども、やはり私ども政治家も、それから行政もそうなんですが、最大のサービス機関でなければならないと思うのですね、そのために税金を払っていただいているわけですから。六月という話が今出ました、速やかにという話もありましたけれども、ぜひこの問題、国民も納得する形で、あるいは金融業界も納得する形のものをぜひ早くつくっていただきたい。  特にその前提としては、先ほど申し上げましたとおり、金融業界のいわゆる不健全な実態というのが顕著にあちこちにあらわれていますから、純粋持ち株会社持ち株会社としながらも、全体的に洗い直して、不祥事が起こらないように、金融業界も証券会社も含めて総見直しをやっていただきたいと思います。ぜひそういう観点から、六月には、まとまりましたらまた教えていただきたい と思います。  そしてまた、金融持ち株会社が解禁された以降の社会的な影響といいますか、どういうことが予測されるのか、大まかな話をちょっとお伺いしたいと思います。
  107. 五味廣文

    ○五味説明員 組織形態として持ち株会社という形態を金融機関が選べることになりますと、組織形態としての選択肢の拡大の中で、特に新しい参入というところに非常に効果が出てまいりますのと、それから、こうしたことを通じまして機能の強化ということが行われます。  予想されますのは、例えば金融機関が提供いたしますサービスというのは国際的に現在非常にボーダーレスになっておりますと同時に、商品の性質自身が複雑、高度化をしております。これを利用しようとする利用者の方のニーズというのも非常に多様化をしてきておりますので、一つ会社ですべてを開発をするというやり方ではなくて、それぞれ専門性を持った、小さな機動的な会社が非常に高度な開発をし、かつ、それがばらばらに動くのではなくて、これを総合化をいたしまして、いろいろなパッケージを組み合わせて顧客のニーズに応じた提供をしていく、こういった高度化と総合化という開発が非常に重要になってまいります、金融制度調査会におきましても、こうした意味で組織形態としての持ち株会社というのは大変有効であるという指摘がなされております。  このようなことが可能になってまいりますと、日本の金融機関をめぐります環境としては、現在国際的な競争にさらされております金融機関が、国際競争の面で、いわば世界的なイコールフッティングのもとで自由な競争ができるようになる。結果として勝つか負けるかはわかりませんが、自由な競争ができるようになるということが一つございます。また、こうした競争が非常に激化をしてまいります中で、競争の中で利用者に対してよりよいものを提供しない者は生き残れないということから、金融機関を利用する者にとって、利用者利便あるいは利用者の資金運用の効率化という意味で大変なメリットが出てくるというふうに考えられます。  ただ、実際にどういう金融機関がどのような組織形態を選ぶのかというのは個々の金融機関の経営選択の問題でございますので、私どもといたしましては、個々の金融機関がこうしたニーズに応じた適切な経営形態の選択、経営戦略をとることができるように、そのインフラストラクチャーといいますか、まさにおっしゃいますサービスでございますので、行政の面でこうした自由な経営選択をなるべくお助けできるような、そういう仕組みもビッグバンの中で工夫をしていきたいと考えております。
  108. 大畠章宏

    ○大畠委員 時間があと二、三分になりましたが、大蔵省もぜひ、今いろいろぶしつけなことも申し上げましたけれども、やはり日本の経済の中枢である大蔵省がしっかりしていただかないとこれから大変なことになるというのは目に見えていますから、純粋持ち株会社問題にも積極的に対応していただきたい、そして金融機関の健全化に向けてさらに努力していただきたいということをお願いしておきたいと思います。  最後になりましたけれども、先ほど林先生からも御指摘がありました、これから純粋持ち株会社に関するガイドラインをつくるという話でありますが、林先生がおっしゃるように、これを公正取引委員会がつくる、基本的なものはそれでいいかもしれませんが、やはり私ども議員が、商工委員会の中で、ガイドラインの中でどんなものが必要かということを十分吟味した上でガイドラインは決めていただきたい。公正取引委員会にガイドラインについてはお任せしましょうとはならないと私は思うのです。   この点については、林先生の指摘のとおりだと、私は支持をしたいと思う。先ほど塩田局長から、もちろん参考にしますというような発言がありましたが、参考にしますではないのですね。この商工委員会で、私どもの委員会の中でこのガイドラインについては十分審議して、私は承認をした上でやってもらいたい。公正取引委員会がガイドラインを自由につくって、そのガイドラインに沿った形で公正取引委員会自分でコントロールするというような形は、決して私は健全な公正取引委員会にならないと思うのです。このガイドラインというのは非常に重要な意味を持ちますから、私は、この点で林先生と同じように、このガイドラインについては委員会として十分な審議をして、内容についでは精査させてもらいたい、このことを申し上げておきたいと思います。  ちょうど時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。
  109. 武部勤

    武部委員長 次に、大森猛君。
  110. 大森猛

    ○大森委員 日本共産党の大森猛でございます。  まず最初に、持ち株会社はなぜ禁止されてきたか、この点からお伺いをしたいと思います、  これに関連して、先ほど、これまでの議論で公取委員長は、持ち株会社禁止の意味について、例え話ではあるでしょうけれども、二度にわたって鎖国という表現をされました。これは、経済民主主義の象徴とも言われ、しかも少なくとも一時期においてはその積極的な役割をほとんど皆さんが共通して認められるこの条項について、やはり鎖国という表現は不適切、不見識じゃないだろうかと思います。  そこで、持ち株会社解禁については、これまで六〇年代あるいは八〇年代、解禁を求める相当大きな波が何度かにわたってあったわけですが、ともかくも今日まで五十年間、この持ち株会社禁止というのは守られてきたわけであります。なぜ持ち株会社は五十年間禁止をされてきたのか、この点をお聞きしたいと思います。
  111. 根來泰周

    根來政府委員 ちょっと言葉が過ぎまして、申し上げましたけれども、決してそういう本来の鎖国という意味で申し上げたわけではございませんので、御了承いただきたいと思います。  これは、今までもいろいろ御議論がありましたように、昭和二十二年の三月に旧帝国議会でこの独占禁止法、いわゆる独占禁止法でございますが、可決されまして、そして公布、施行されたわけでございますが、その法律の中で持ち株会社禁止された理由は、まず当時は沿革的理由というのが非常に大きかったと思います。当時の連合国の政策ということで、非軍事化、経済民主化ということの一つの方法としてこの独占禁止法というのも公布、施行されたのではないか、こういうふうに思っております。  当時は、御承知のようにいわゆる純粋持ち株会社事業持ち株会社も、これは一部解禁されておりましたけれども、この両方が禁止されていたわけでございますが、昭和二十四年の改正に至りまして事業持ち株会社というのが解禁になった、こういう流れになっているわけでございます。  そういうことで、この純粋持ち株会社というのは今日に至るまでずっと禁止されていたわけでありますけれども、その理由は、先ほど申しましたように、沿革的理由もございますが、持ち株会社の性格、持ち株会社に内在する性格ということもありますし、また我が国特有の株式の持ち合い、あるいは系列取引、企業内取引というようなことを前提といたしました場合に、やはり持ち株会社は有効であろうということで禁止されてきたのだと理解しております。
  112. 大森猛

    ○大森委員 一つは沿革的理由、それから我が国経済特有な系列取引等との関係、そして持ち株会社が持つ内在的な性格とおっしゃったのですが、内在的な性格というのはどういう性格ですか。
  113. 根來泰周

    根來政府委員 これは先ほど来引用しております中間報告にあるのでございますけれども、持ち株会社の機能が「他の会社事業活動の支配そのものであり、それ自体が経済力集中の手段となりやすい」、こういうようなことで、「手段となりやすい」という点に着目いたしまして持ち株会社禁止したという趣旨があるのではないかということでございます。
  114. 大森猛

    ○大森委員 今おっしゃったように、それ自体が経済力集中の手段と事業支配力過度集中をもたらすということで、まさにそれは内在される性格、さらにもっと言葉をかえて言えば、持ち株会社の存在そのものが反競争的であるということを私は示すと思いますが、どうでしょうか。
  115. 根來泰周

    根來政府委員 そういうようなことで、またこれも言葉が悪いとしかられるかもしれませんが、持ち株会社の内在的性格にかんがみまして大きく網をかけた。大きく網をかけて禁止しておったということについて最近いろいろ批判がありまして、もう少しその事業支配過度集中することがないような持ち株会社、例えば小さな会社二つありまして、それの上に持ち株会社があった場合に、そういうのは事業支配過度集中するというようなことは考えられないのじゃないかというふうな議論がありまして、そうしたらこういう場合はどうだ、ああいう場合はどうだというふうないろいろの例示が提示されますと、やはり我々も、持ち株会社の中には事業支配過度集中しない持ち株会社もあるのではないかというようなことで、いろいろ検討しました。また、いろいろの御意見もちょうだいしました。  そういうようなことで、今回、過度集中しない持ち株会社については解禁する、過度集中する持ち株会社禁止するという法案を作成して、内閣にお願いして国会に提出したといういきさつであります。
  116. 大森猛

    ○大森委員 こうやって今回の事業支配力過度集中になるものの設立、転化について禁止をしたということになるわけでありますけれども、それによって、先ほど公取委員長自身が示された三つの持ち株会社禁止の理由は解消をされないと私は思いますが、どうですか。
  117. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 先ほど来委員長から、九条におきまして持ち株会社を全面的に禁止している理由として三つ、一つは沿革的な理由、二番目に持ち株会社の性格、これはそれ自体が経済力集中の手段になりやすいということ、それから三番目に我が国経済の実態からということでございます。  それぞれにつきまして考えてみた場合に、戦前のいわゆる財閥が復活することを防止するというのが第一番目のあれだと思いますけれども、午前中の議論もございましたが、戦前のいわゆる財閥をどういうふうにとらえるかということであります。一般に言われておりますのは、特定の家族といいますか、人的な関係を持っている同族がその株の大半を持って、それが財閥本社を所有している、その傘下に多数の大企業がある、こういった図式だろうと思うのですが、現在の日本で考えてみた場合に、第一番目の家族といいますか、人的な関係で大企業、大きな持ち株会社グループを支配するということが出てくるかというと、なかなかそういうことは想定しにくい。よく言われておりますように、株式の分散がかなり進んでいる。しかもそれが法人の所有の比率がかなり高まっているというようなことが言われておりますので、そういう意味でのあれは出てこないだろう。ただし、規模としての大きな持ち株会社グループが出てくるかどうか、これは可能性があるだろう。  それから持ち株会社の性格として集中につながりやすいといいますか、そういう点はありますけれども、その点をどうするか。  それから現在の日本経済の実態から見てどう考えるか。その点を考えてみた場合に、独禁法の第一条の目的規定の中に「過度集中防止して、」ということがございますので、持ち株会社を全部禁止しておくのではなくて、過度集中にはならないようなものについては禁止を解除する、事業支配力過度集中するような持ち株会社は引き続き禁止をする、そういうことで、独禁法目的といいますか、市場における公正かつ自由な競争を維持促進するという競争政策は貫けるのではないかというのが今回の改正法案の考え方でございます。
  118. 大森猛

    ○大森委員 存在自体が反競争的であるという点からいって、私は今回の改正案でそういう三つの理由というのが解消されないと思うわけなんですが、その点は、例えばこれはいろいろな形で言われているわけなんですが、公取事務局自体が報告しました欧米における持ち株会社の実態調査、この中で、私も本会議でこれを引用しましたけれども、そういう実態があると思います。  そこで、事業支配力過度集中の、では過度とは何かということでありますけれども、先ほどお話があったように、戦前財閥支配、こういうものを念頭に今回法案の中に盛り込まれているわけなんですが、まず確認をしておきたいのですが、戦前財閥を中心としたピラミッド型支配の特徴について、これは財閥傘下企業の払込資本金の対全産業比率は一体どういう状況であったか、四大財閥について、昭和十二年、一九三七年の時点と、それから六大企業集団について同じように払込資本金の全産業比率はどうなっているのか、現在の数字を示していただきたいと思います。
  119. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 どうも手間取りまして申しわけありません。  第一番目に、戦前財閥のウエートがどのぐらいあるかということでございますが、手元にあります資料によりますと、いわゆる四財閥で見ますと、これは全部の産業だと思いますが、昭和十二年が一〇・四%でございます。昭和十六年が一二%でございます。それから、昭和二十一年時点だと思いますけれども、この数字が非常に高くなっておりますが、二四・五%という数字がございます。今の戦前財閥のデータは全部払込資本金のシェア、ウエートでございます。  それから、私ども現在やっておりますのは主として総資産の方でやっておりますので、若干比較のあれが違うので御容赦いただきたいと思うのですけれども、直近で六大企業集団の実態調査をいたしましたのが平成四年でございますので、それより若干年次は古いかと思いますけれども、これで見ますと、金融業を除く六大企業集団のメンバー企業の総資産全法人といいますか、金融業を除いたところで見ておりますけれども、総資産で見ますと一二・五二%でございます。なお、五〇%を超える子会社を含めますと、この総資産の一二・五二%というのが一六・五六%になるという調査結果になっております。
  120. 大森猛

    ○大森委員 公取の方からいただいた、資本金の方の現時点では、六大企業集団で一九・二九%と、二〇%近くこれはなっているわけですね。今御答弁いただいたように、戦前の四大財閥の場合も一九三七年が一〇・四%、一九四六年、わずか九年そこそこで二倍以上の二四%を超える。私は、このことが大変重要なことを歴史的に示しているのではないかということを指摘をしておきたいと思います。  それで、先ほど来申しております持ち株会社禁止趣旨根本的に変える理由についてでありますけれども、これは私本会議でも総理に伺いまして、総理は、持ち株会社解禁で我が国企業の国際競争力を強める、こういう趣旨の答弁をされました。  そこで、きょう官房副長官にもおいでいただいているのですが、持ち株会社を解禁するとどうして国際競争力が強まるのでしょうか。
  121. 与謝野馨

    ○与謝野政府委員 日本の経済の競争力というのは何も日本全体としての国際競争力ではなくて、やはり個別企業の集合体としての経済の競争力だと私は思っております。今回の独禁法改正が直ちに国際競争力の強化に結びつくかといえば、それはそうではないのだろう。国際競争力を持つためには、生産性が高い、品質がよい、商品に新規性があるとか、いろいろな要素で成り立っているわけでございます。  ただ、私どもが競争をしております、特に欧米先進諸国の制度と比べますと、いわゆる今回の持ち株会社、ホールディングカンパニーという制度は、戦後我々は持っていなかったわけでございますが、やはり個別の企業を経営される方々、こういう方々にとりましては、そういう経営形態も選択し得る、そういう中で新しい分野に進出をする、あるいはややベンチャー的な分野でもそういう資本という意味で参加していく、いろいろな道が開けるという意味では、経営者にとっては欧米先進諸国との競争場裏において同じルールで戦うことができる。そういう意味でありまして、独禁法改正をすればにわかに国際競争力が高まるということではなくて、そういう独禁法改正によって与えられた欧米先進諸国とほぼ同じルールの中で戦う、あるいは国際競争力を競う、そういうことになり得るというのが今回の法改正趣旨だと私は思っております。
  122. 大森猛

    ○大森委員 戦前は、明治期以来の富国強兵とか、まあ私は戦前のことは余り知らないのですけれども、さまざまな経済を興していく標語等が、スローガン等が使われて戦後はそれがもう一貫して、それこそ国際競争力をつけるため、これが大看板であったと思うのですね。六〇年代あるいは八〇年代の持ち株解禁の要求というのも、その背景には、国際競争力をつけなければならない、こういう大号令があったからだと思うのです。  それで、いみじくも官房副長官、個別企業の総体と言われたのですが、日本の企業の総体ではなくて、ごく限られた企業の国際競争力、これは一九九二年の通商白書で使われている言葉でありますけれども、多国籍企業の利益と国家の利益は一致しない、今日本の大企業は多くが既に多国籍企業になっているわけなんですが、こういう国際競争力のもとで今日までずっとやられてきた結果が今経済構造改革、一国の総理が火だるまになって取り組まなければならないという日本の経済の深刻な行き詰まりを今迎えていると思います。  これは時間がかなりせっぱ詰まりましたので一つ一つ申し上げませんが、鉄鋼、自動車、電機あるいは半導体等々、本当にシェアでも相当数を日本の企業は占める、既に国際競争力を十分に持っているわけであります。しかし一方で、では国民生活の方はどうかといえば、戦後最悪最長の不況が今日まで続いてきた、あるいは失業者も戦後最高だ。さらには、住宅の質、面積等々、あるいは労働時間でも欧米諸国と比べて大きな差、乖離が生まれている。そういう日本経済二つの側面を、二つの顔を、こういう国際競争力の大看板のもとで今日まで進めてきた結果、引き起こしたのではないか、このことを強く申し上げて、国際競争力の名前で五十年間守り続けてきたこの持ち株会社禁止を今解くことは、国民にとっては新たなこういう二重の大変な被害をもたらす、そういうことにならない保証は全くないということを申し上げておきたいと思います。  そこで、具体的に法案に則して質問に入りたいと思うのですが、まず新しい改正案の九条の問題であります。  今回、本法案の九条の中身は、持ち株会社の定義を改めて、事業支配力過度集中するものについてのみ設立、転化を禁止する、持ち株会社とは、現在の定義から変えて、単に子会社株式資産が総資産の五〇%超となる会社といたしました。  そこで、事業支配力過度集中するものの特定として三つの類型とそれから二つの要件を示されているわけでありますけれども、事業支配力過度集中、この「過度」というのは一体何を基準に決めるかという問題であります。例えば、第一類型では、持ち株会社等の総合的事業規模が相当数の事業分野にわたって著しく大きい場合、こういうぐあいになっているわけなんですが、「相当数」というのは一体幾つから相当数になるのか。それから、これは旧財閥系の三井、三菱、住友グループを念頭に置いたものと言われておりますけれども、その点の確認とあわせて御答弁をいただきたいと思います。
  123. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 今回の改正法案におきまして、過度集中になるような持ち株会社禁止するということにいたしまして、先生ごらんいただきましたように、九条五項でどういうものが過度集中することとなるものかということについて要件を規定しているものでございます。それで、ここである程度といいますか、かなり具体化したつもりでございますけれども、さらに明確化をするということで、先ほど来何度か申し上げていますように、各方面の御意見を十分いただきながらガイドラインをつくって明確化を図りたいと思っております。  今おっしゃった、具体的なものとして総合的事業規模がかなり大きいというのはどのぐらいのことを考えているのかということでございますが、これは、現時点で私どもとしては十五兆円という規模を考えておりまして、ガイドラインのドラフトをお示しして各方面から御意見をいただくときには、多分そういうことになるのではないかなという感じがいたしております。  その次の「相当数の」というところでございますけれども、ここにつきましては、現時点で五程度というようなことを第一番目の類型として考えております。  なお、総合的事業規模十五兆円というのは、あるいは御質問がなかったかもしれませんけれども、現在存在いたしますいわゆる六大企業集団のうちの一番小さいものを頭に置きながらということでございます。
  124. 大森猛

    ○大森委員 相当数が五というのは、これはさらに一層範囲を狭める、そういうことになってしまうのではないか、最初に指摘しております危惧がさらに一層拡大するということにつながってくるのではないかと思います。  加えて、旧財閥企業集団が丸ごと統括される場合を想定されているようでありますけれども、一部の新聞でも企業集団を分割して持ち株会社化というようなことも言われておりますけれども、そうなると、これは現実に可能性が出てくる、しかも、これは事業支配力過度集中ということにも当然なると思うのですけれども、こういうようなやり方についてはどうでしょうか。
  125. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 大変恐縮でございますけれども、御質問の趣旨をあるいは取り違えているかもしれませんけれども、今現在ある一つの企業がその部門を分社化していって、分割していって自分持ち株会社になったときの問題ということでよろしいわけでしょうか。恐縮でございます。
  126. 大森猛

    ○大森委員 いや、そうではなくて、第一類型については旧財閥全体を念頭に置いたということになっているわけなんですけれども、それを、旧財閥集団丸ごとではなくて、その一つのグループを二つないし三つに分割して持ち株会社化を検討する、そういう可能性は十分にあり得るのではないか、しかも、それは格段の結合力があって、過度集中に当然値するものだと私は思いますけれども、そういうことです。
  127. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 大変申しわけありません。  今ある六大企業集団一つがその一つ持ち株会社のもとに構成されるのではなくて、幾つかの持ち株会社グループに分割して、それぞれ幾つかのグループに属することにしようとした場合にどうなるかということでございますが、今回の九条五項で、相当事業規模が大きいということで十五兆円ということでございますので、第一類型として考える場合に、一つの企業グループを分割してそれぞれが十五兆円以下のグループを構成するということになりますと、当然それは第一グループに該当することにはならないということになります。
  128. 大森猛

    ○大森委員 結局、特定のタイプだけ規制する本改正案のやり方では、今の現実の経済の中で幾つもしり抜けを許してしまうということになってしまうと思うのですね。  もう一つ持ち株会社の定義が今回変わったわけなんですが、五〇%を超える会社、五〇%超という問題でありますけれども、これはなぜ五〇%超なのか。加えて、従来、これは四十二年ですか、ベンチャーキャピタルが持ち株会社に当たるか当たらないかということのガイドライン、それから平成六年に同じくそういうガイドラインが出されたわけでありますけれども、その場合のガイドラインというのは、五〇%、二五%、一〇%というような、まだこの段階ではできるだけ実態的に合うように、少なくともこの段階では公取の努力が見られると思うのですよ。  しかし、今回は、四十七年の時点では役員の派遣もありました。ところが、役員の派遣も、役員による支配、こういうものも取っ払って、平成六年には五〇%、二五%、一〇%ということになったわけなんですが、今度はこういうのを全部取っ払ってただ五〇%超だけという、ここに今回の改正案の公取の姿勢の典型的なものが私は示されていると思います。このベンチャーキャピタルの定義との関係で、なぜ五〇%超だけにしたのか、お示しいただきたいと思います。
  129. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 今回の改正法案におきましては、持ち株会社の定義を御指摘のように変更いたしておりまして、ある会社の総資産の中で子会社株式が五〇%を超えるもの、しかも、その子会社の定義が、五〇%を超える株式を保有する会社ということでございます。そこは現行の規定とかなり定義が変わってきております。  変えた理由でございますけれども、今回、持ち株会社一定の範囲で許容するということにいたしたわけでありますけれども、持ち株会社につきましては、一定規模以上の持ち株会社については、毎年持ち株会社グループの事業の概況等について報告をしていただくことにしております。したがって、いわゆる持ち株会社といいますか、自分持ち株会社であるのかそうでないのかという判断を自分でできるような、なるべく明確な基準にする必要があるのではないかというのが第一点でございます。  それから第二点は、持ち株会社は、九条の二という、「大規模事業会社株式保有総額制限」という規定がございます。これも、第一条の事業支配力過度集中防止と同じような趣旨に基づいて昭和五十二年に制定された規定でございますけれども、今回の改正案では、持ち株会社については、過度集中という観点からは九条で規制をする、持ち株会社でない会社につきましては九条の二で規制をする、したがって、九条の適用対象になるのか、九条の二の適用対象になるのか、これを判然としておく必要があるというその二点から、五〇%超、五〇%超という定義をしたわけでございます。  ただ、持ち株会社の定義はそういうことにいたしましたけれども、過度集中にわたるかどうかという判断の際には、五〇%を超える株式を所有している子会社だけではなくて、事業支配力が及ぶそれ以外の会社についても考慮の要素にするということでございます。
  130. 大森猛

    ○大森委員 事業者が客観的に判断できる、そういう意味で、判断しやすいという意味で五〇%超を取り入れたということなんですが、それはいわば苦し紛れの御説明で、先ほど申し上げたベンチャーキャピタルの比較的厳密な定義等は説明できないと思うのですね。  実態的にも、六大企業集団の社長会メンバー企業百八十九社の上場企業に対する融資比率は三七・八%ということですが、役員派遣数が上場企業社外役員数に占める比率が四六%ということで、企業支配という点では、かつてベンチャーキャピタルの定義にあったように、役員の派遣という面も重要な側面を持っておるということがあるわけなんですが、そういうのが一切抜かれてしまっている。ですから、もう特定の、ごく限定されたケースだけを示して、それだけを禁止して、あとはもう自由にやってください、そういう意味では、いわば今回の改正案は持ち株会社のお勧め法案だ、このように申し上げてもいいのではないかと私は思います。  もう時間がなくなりましたので、金融持ち株会社について、これは従来、七〇年代には、株式保有制限一〇%から五%により一層強化するというような形で、金融機関が株式を持って他の会社支配することに対して厳しい規制が行われてきたわけであります。今回、金融持ち株会社は解禁するということで、しかも、傘下の金融機関についても、株式の保有をどうするのか、現在これは検討中ということでありますけれども、これまでの従来の立法趣旨からいえば、やはり傘下の金融機関について、株式保有制限、きちんとこれは持つべきではないかということが第一点です。  それから、既に日本の金融機関が、産業支配力、あるいは他の中小金融機関等々に相当な影響力、支配力を持っておるということで、現状についてお聞きをしたいのです。我が国の国民金融総資産、これに対して、六大企業集団の中心、中核銀行である六行の総資産、これは三百三十六兆円だそうでありますけれども、金融機関全体では総資産はどのぐらいになり、そして国民金融資産に占める比率はどのぐらいになるのか、もしわかりましたら示していただきたいと思います。
  131. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 順番が逆でございますけれども、二番目のデータのお話でございますが、大変恐縮でございますが、私ども、今手元にございません。ちょっと私、まだ見たことがないものですから、あるいは難しいのかもわかりません。いずれにしましても、ちょっと現時点では手元にありませんので、御容赦をいただきたいと思います。  それから、最初の御質問で、十一条の規定を例えば金融持ち株会社についても適用すべきかどうかというお話だろうと思います。  この点につきましては、十一条の規定自体が金融会社に対してのみ適用になるという規定でございますので、確かに、一昨年の四章問題の研究会の中間報告書の中では、金融持ち株会社についても金融会社と一緒に合算をして五%にしたらどうかというような御提言がございましたけれども、この点につきましては、その後、我々の中で検討いたしまして、金融持ち株会社は金融業を営む者ではないということで、金融会社に対する規制としての十一条の規制は金融会社に対してのみ適用すべきではないかというようなことで、今回は特段、金融持ち株会社について十一条を適用するような、そういった改正案は御提案をしていないところでございます。
  132. 大森猛

    ○大森委員 時間が参りましたので、最後に、せっかく官房副長官に残っていただきましたので、論議のあり方、そして、公正取引委員会のあり方についてであります。  二月の産経新聞に、「『十五兆円』の理屈はこれから考えます」ということで、根來委員長は、「「二十兆でも十五兆でもそう変わらないが、与党の議論の赴くままに十五となった。根拠があるといえばあるし、ないといえばないので国会(提出、論戦)までに理屈を考えなければいかんと思っているところです」と会場を沸かせた。」こういうぐあいになっております。このことを今ここであれこれ申し上げる時間はありませんけれども、私は、もしこの報道が事実とすれば、極めてゆゆしき問題であると思います。公正取引委員会の独立性というのは、単に職務執行の独立性だけではないと思うのです。  一九四七年、独占禁止法が制定されて直後の、当時はまだ司法省でありますけれども、司法省民事局第一課長の石井良三氏が、職務執行の独立性について述べると同時に、  委員会の立法的機能の主なるものは、不公正な競争方法の指定権と国会に対して、本法の目的を達成するために必要な事項に関して、意見を提出する機能である。加えて、内閣総理大臣は、自己の意見を表明するのは格別、委員会の意見に対して修正又は変更を加えることはできない。国会に対して、意見を提出しうる事項は、本法の目的を達成するために必要な一切の事項に及ぶのであるが、国会が立法機関である点からして、本法の観点からする既存法令の改廃、新法令の制定等の所謂立法勧告が、その主要なものとなるであらう。 その機能について、非常に重く、重大視して、明確にしているわけで、ここに原点があるわけであります。  内閣総理大臣も物が言えないとまで言っているわけでありますが、先ほど来の議論で、わずか一週間で大きく百八十度転換した。これは、内閣総理大臣は言えぬけれども、与党は言えるのかというような形になると思います。公正取引委員会が独立性を持って、本当に公正かつ自由な競争が維持されるようなお一層の御努力をお願いして、私の質問を終わります。
  133. 与謝野馨

    ○与謝野政府委員 公正取引委員会は極めて独立性の高い行政機関でございますけれども、憲法に書いてありますように、「行政権は、内閣に属する。」こういうことでございますから、やはりその憲法の原則に従った組織であると私は思っております。また、独禁法関係の立法、あるいはそういうものの提案、そういうものも公取としては考えることがあるでしょう。また、与党として、あるいは内閣として、独禁政策あるいは公正な競争を維持するためのいろいろな政策も考えるでしょう。しかし、これはあくまでも国会に法律として御承認をいただくという過程を経るわけでございますから、やはり公取が立法機能を持つというのは言い過ぎであろう、提案するという場合はあったとしても、これは国民の代表である国会で御承認をいただき、法律として成立した場合、公取が権限を付与されるということが、私は正しい姿であると思っております。  それから、個別の、いわゆる職権行使の独立性というのは、これは、個々の事案についていろいろな人がいろいろなことを言わない、やはり独立した国の組織が個別事案に照らして物事を判断していく、それがより公平な判断になるであろうという推定のもとに成り立っている制度でございまして、これは一つ公正取引委員会ばかりでなく、検察庁もまた独立して職責を遂行しているわけでございます。  しかし、行政権は内閣に属するという大原則は憲法にあるわけでございまして、行政機関が行うことについて全く内閣が責任を持てないというような体制はむしろ民主的ではない、私はそのように承知をしております。
  134. 大森猛

    ○大森委員 終わります。
  135. 武部勤

    武部委員長 次に、横光克彦君。     〔委員長退席、小川委員長代理着席〕
  136. 横光克彦

    ○横光委員 社民党の横光克彦でございます。  戦後五十年間経済憲法とも言われました独禁法の九条の改正によって、純粋持ち株会社の解禁がこれから行われるわけでございますが、ここに至った経緯、林義郎先生からお話ございました。現在のこの日本経済構造の中で、多角化多様化、そしてまた国際的な大競争時代に入った中で、先般、与党三党でこの解禁が合意されたわけでございます。  現在の私たちの国の経済は、目覚ましい技術革新、そしてまた国際化、サービス化、そういった進展によって経済構造が大きく変化しております。そういった中で、従来の業務の垣根を越えた企業間での競争が始まっているわけでございます。そういった意味で、各企業は競争に打ちかつためにこの不況の中で本当に御奮闘されている。その一つの道が、リストラと呼ばれる事業構成の再構築に取り組んでおるわけでございます。  このリストラというのは、企業が生き残るための努力の一端であるわけでございますが、現在、これは新規分野への進出による事業多角化を目指す企業が非常に多いわけです。また、こうした事業部門だけでなく、本体事業に附帯して必要となる不動産管理サービスやあるいはコンピューターなどの情報関連サービス、あるいは物流などの間接部門でも分社化が進められ、本社のスリム化に取り組まれているわけですね。  分社化によるグループ経営、これは経営者サイド、いわゆる経営戦略という意味ではいろいろなメリットがあるわけでございます用意思決定が早く機動的な対応ができるとか、あるいはまた給与水準や労働条件等を独自に決定できたり、リスクの分散ができたり、そういった利点があるわけでございます、ですから、そういったことから、企業のリストラの動きは、今回のこの法改正、大改正によってさらにこの分社化が進んでいくであろう、このように思われるわけでございます。  これまでの持ち株会社規制は、企業がそのすべての事業を分社化することは許されておらなかったわけです。本業部分は親会社に残すという方法がとられていたわけですね。しかし、今回の持ち株会社の解禁後は、本業をも含めた事業構成の見直しが、子会社の売却などの形で機動的に実行できるようになるものと考えております。そうなりますと、やはりいろいろなこの法案に関しての諸問題が生じてくるのではなかろうか、そういったいろいろな関連法案の法整備というものもこれから必要であろうと私は思うわけですが、その中で、私、子会社の従業員の労働者としての権利をどのように保護していくのか、この問題をちょっと取り上げて質問させていただきたいと思っております。  戦後の経済成長は、これはまさに労使一体となってここまで来たわけで、この経済の大改革の中では、それぞれに関与する人たちのこともやはり考えていかざるを得ないだろう、このように思うわけでございます。  そういったリストラが進んでいる、そしてまたバブルの崩壊後、不況が続いてきたわけですが、余りにも激しいバブルであったがために、その後遺症としてまた厳しい不況が続いているわけですね。これまでの不況、これまでのそういった感じは、いわゆる構造不況業種が生み出す雇用の問題は、輸出産業を中心とした生産産業が吸収して、そして国全体の経済の中ではそれなりに雇用の安定というものが実現されてきたということもあるわけでございます。  しかし、今回のバブル崩壊後の不況はとてもそんなものじゃない。自動車や電機といったリーディング産業から素材型産業、また建設業やまたさらにホワイトカラー比率の高いサービス業に至るまで、広範な産業が不況の深刻な影響をこうむっているわけでございます。そのためにリストラが進行して、広範な産業分野で雇用の不安がさらに指摘されるのじゃないか、そういった危惧があります。  労働界では、今回のこの純粋持ち株会社の解禁によって分社化などを中心としたリストラが一層進行することで、雇用水準がさらに低下するのではないか、またそのことによって労使紛争等も増加するのじゃないか、そういった不安や心配があるわけでございます。  そこでまず、労働省にお聞きしたいわけでございますが、今回のこの大改正、これを契機として、持ち株会社の団体交渉応諾義務、これを司法の判断に任せることなく労働組合法にはっきりと明記すべきじゃないかと思うわけですが、労働省の御見解をお聞かせください。
  137. 岩崎伸夫

    ○岩崎説明員 お答え申し上げます。  持ち株会社の解禁に伴います労使関係法上の問題として、ただいま先生御指摘になったような議論も種々あったわけでございますが、この問題につきましては、先般、労組法などの改正問題も含めて今後検討し、必要な措置をとるということなどを内容といたします労使の合意がなされまして、与党の独禁法協議会にも報告されたところであります。また、与党の方から労働大臣にも協力方の要請がなされたところでございます。  労働省といたしましては、この要請、今後の国会での御議論を踏まえながら、労使の合意というものも踏まえ、適切に対処してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  138. 横光克彦

    ○横光委員 確かに今度労使の関係者がそういった合意を目指して協議を始める、検討期間二年を目途としてやるということになっておりますが、この問題は労働省が所管しているわけですので、そういった労使の関係者のこれからの話し合いを見守るだけでなく、率先して労働省の意見を明快に表明すべきだと私は思うのですね。  この問題は、いろいろな裁判ざたとかにこれまでなってきた。そしてそういった司法の場にゆだねられますと、中小企業、いわゆる弱い企業の人たちは、どうしても法廷費用とかあるいは期間の長い問題とかいろいろなことで、結局は渋々、あるいは泣き寝入りという形が起きかねないわけでございます。そういった意味で、確かに労使の協議が始まるわけですが、それの協議には労働省はどのような形で関係を持たれるんですか。
  139. 岩崎伸夫

    ○岩崎説明員 お答えを申し上げます。  労働省といたしましては、この問題につきましては、先ほど申し上げましたような労使合意を踏まえまして、今後労使の関係者とも相談しながら対処してまいりたいというふうに考えているところでございますが、いずれにいたしましても、この検討につきましては、労使の関係者の参集を求めた検討の場で行うことが適当ではないかというふうに考えているところでございます。
  140. 横光克彦

    ○横光委員 労使の関係を見守る、そういうお答えですが、これはもし附帯決議がなされれば労働省に適切な対処を求めることになるということで与党三党で合意していますので、そうしたときにはこのことに適切に対処するということになっていますので、むしろ率先してそのことに今から対応していただきたい、取り組んでいただきたい、そのような気が私はいたしております。これは長い間の懸案でございますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。  次に、もう一つお聞きしたいんですが、こういった問題をクリアするためにはやはり審議会等が必要ではなかろうかという気が私はいたしております。労働省の中には労働法制に関して幾つかの審議会があるわけですが、労働組合法については現在審議会がございません。また、法制定時やあるいは改定時には労働組合法についても審議会が置かれたことはあると聞いておりますが、今回は大変な法改定になるわけですので、ここで審議会を設置すべきだと思いますが、このことについて御意見をお聞かせください。
  141. 岩崎伸夫

    ○岩崎説明員 お答えを申し上げます。  ただいま審議会の設置というお話がございましたけれども、新たな審議会の設置につきましては、行政の簡素合理化という観点から、特に審議会につきましても見直し、縮小ということが求められている今日におきまして、新たな審議会をつくるというのはなかなか難しいんじゃないかというふうに考えておるところでございます。  特にこの持ち株会社解禁に伴う問題につきまして、そういう意味からいいましても審議会という形式をとる必要は必ずしもないのじゃないかというふうに考えているところでございます。
  142. 横光克彦

    ○横光委員 これは経済全体の、すべての国民にかかわる大きな問題なんです。ですから、幾ら行革とはいっても、私は、審議会を設置して各界の声を聞いて、労働省はそういった審議の意向を受けて、それをむしろ政策に反映すべきだという思いがいたしております。これはまた改めてお聞きしたいと思います。  次に、経営サイドの責任の問題についてちょっとお尋ねしたいと思います。  今労働問題を取り上げたわけですが、持ち株会社子会社という関係で、この労働問題は、子会社の従業員に対して事実上の雇用主である持ち株会社の責任が明確ではないんじゃないかという問題ではあったんですが、これに加えて今度は、持ち株会社形態では、子会社の利害関係者に対して、事実上の経営者である持ち株会社の責任があいまいではないのか、そういう思いがしているわけです。  例えば、子会社経営の失敗や倒産、もしこれがあったとしたら、こうした場合、子会社に金銭を貸すなどをしていた債権者はそのことによって損害をこうむることになるわけですが、こうした子会社の債権者は、その子会社経営について具体的な指示をしていた持ち株会社の責任を追及できるのか、法務省、ちょっとこのことでお答え願いたいと思います。
  143. 柳田幸三

    ○柳田政府委員 お答えを申し上げます。  持ち株会社は、子会社経営支配いたしまして、子会社の営業活動により利益を受けるというものであるわけでございますけれども、その持ち株会社の取締役がこの子会社に対する支配につきまして法令、定款に違反する指示を行った、そのことによりまして持ち株会社子会社が損害をこうむるという場合があるわけですけれども、その場合には子会社自身が、持ち株会社あるいはその取締役に、取締役の第三者に対する責任あるいは民法の不法行為責任を根拠といたしまして損害賠償を請求することができるわけでございます。  また、債権者が直接損害を受けたという場合でございましたら、同じく取締役の第三者に対する責任あるいは不法行為責任ということで損害賠償を請求することができる場合があるというふうに考えております。
  144. 横光克彦

    ○横光委員 わかりました。そういった責任、あるいは損害賠償等ができるということですね。  また、これと逆に持ち株会社が、今私が質問したのは持ち株会社が具体的な指示をしていた場合ですね、そういった場合の出来事。今度は、持ち株会社が適切な経営上の指示を行わなかったために子会社が倒産したという場合、こういった場合は、子会社の債権者は持ち株会社の責任を追及することができるんですか。
  145. 柳田幸三

    ○柳田政府委員 お答えを申し上げます。  ただいまの御質問は、不作為、本来適切な指示をすべきであるのに不作為ということで指示をしなかったというケースでございますけれども、本来適切な指示をすべきであるのにもかかわらず持ち株会社の取締役が漫然とこれを行わなかったという場合には、これが違法ということで評価される場合があるわけでございまして、違法であると評価される場合には、先ほど申し上げた場合と同じ取り扱いになるというふうに考えているところでございます。
  146. 横光克彦

    ○横光委員 わかりました。  それでは次に、これは非常に大事な問題だと思うんですが、情報開示ですね、このことについてお聞きしたいと思います。  持ち株会社自体も株式会社でありますから、既に株主がいたり、またこれから投資しようとする一般投資家もいるわけですね。持ち株会社子会社を使って間接的に個別の事業を行っているわけですから、こうした個々の事業のあり方は、みずからの株主やあるいは一般投資家などに十分説明していかなければならないことは当然であろうと思います。そういった意味からも、持ち株会社にあっては、子会社がどのような事業活動を行おうとしているのか、そういった監視が行き届くような仕組みをつくっていかなければならないと私は考えております。  現状でも、親会社が公開会社株式を公開している会社であるときは、有価証券報告書で、子会社を含めた情報開示がなされておるわけです。しかし、これは現状では情報開示の内容はどうしても親会社の情報が主であり、株主や一般投資家にとって、子会社を含めたグループ全体の事業内容がよくわかるような、そういったディスクロージャーが必要であろう。とりわけ、今回こういった大改正になった場合は、本当にそういった意味では子会社の現状というものは把握しにくくなるんじゃないかという気がしております。こうしたディスクロージャーの充実についてどのような方策をお考えなのか、大蔵省、お聞かせください。
  147. 大西又裕

    ○大西説明員 持ち株会社の解禁に伴いまして、子会社も含めた情報開示の充実が必要ではないかというお尋ねでございます。  現在、私どもの企業会計審議会におきまして、企業会計の国際的な動向を踏まえた整備を図っているところでございます。その中で連結財務諸表につきましても、子会社も含めた企業集団、これを連結情報というわけでございますが、これに重点を置いたディスクローズへ転換をすべく見直しを行っているところでございます。  現行の有価証券報告書では、連結財務諸表のほかに、企業集団の概況とかセグメント情報の開示などを求めているところでございますが、持ち株会社につきましては、その業績は一般の事業会社に比べまして傘下の子会社の業績に左右されることになります。したがいまして、連結ベースの情報の重要性が著しく高まるものと考えられます。  それで、企業会計審議会でありますが、去る二月七日に「連結財務諸表制度見直しに関する意見書案」、公開草案と呼んでおりますが、これを公表いたしまして、連結ベースでのディスクロージャーが重要であるという提言をいただいております。最終報告は本年六月を目途にしておりますが、現在、最終報告に向けまして検討が進められておるところでございます。     〔小川委員長代理退席、委員長着席〕
  148. 横光克彦

    ○横光委員 この重要性というのは皆さん認識しておられるわけで、今企業会計審議会でも取り組まれている。  ちょっとお聞きしますが、連結財務諸表これの早期導入というのをお考えということですが、確かに、この法案がもし成立したら半年以内に施行できるわけで、一月からこういうことが行われる可能性もあるわけです。そういった意味でそれに間に合うような状況ですか、どうですか、ちょっとお聞かせください。
  149. 大西又裕

    ○大西説明員 まず、連結財務諸表につきましては現在でも開示が行われておりますが、現在企業会計審議会議論されておりますのは、いわゆる連結情報を中心として、単体と連結のいわばウエートを逆にすべきではないかということで、連結の重視ということが検討されております。それで、この連結財務諸表の見直しは、ディスクロージャー及び連結会計原則の見直しも含んだ抜本的なものでございまして、一定の準備が必要でございまして、できるだけ早くその実施が進められるように公開草案での提言も行われております。  なお、独禁法の関係でディスクローズは間に合うのかという御質問であろうかと思いますが、ディスクロージャーの充実のための手当ては、企業会計審議会の提言を受けまして、その後、これは開示の様式でございまして、関係の省令で行う必要があろうかと思います。したがいまして、その具体的な開示が行われるタイミングに間に合わせる必要があるというふうに私どもも考えております。
  150. 横光克彦

    ○横光委員 次に、会社が通常その事業部門を他社に譲渡するとき、いわゆる営業譲渡するときは株主総会の特別決議が必要で、株主がその決定に関与し得るようになっておりますね。これは商法二百四十五条でそうなっております。  ところが、この持ち株会社では、既存の事業分野からの撤退などの際に、いわゆる保有株式を手放すというような方法で子会社の売却等を行った場合、株主総会の特別決議は不要とされております。株主はこれに関与できないようですが、これはちょっと私、均衡を欠くような気がするのですが、ちょっとそこのところを法務省に説明お願いいたします。
  151. 柳田幸三

    ○柳田政府委員 ただいま委員から御指摘ございましたように、会社がその営業の全部または一部を譲渡する場合には、その会社の株主総会の特別決議を必要とするということとされているわけでございますが、他方、会社がその子会社株式を売却するときには、このような特別決議が必要でないということになっております。  現在、一般の事業会社においてこのような取り扱いがされているわけでございまして、このような取り扱いについて特段の弊害が生じているというような指摘もないようでございまして、持ち株会社の解禁に伴って当然に何らかの手当てをするという必要はないのではないかと考えているところでございます。  ただ、その子会社の営業がもともと親会社の営業でございまして、親会社子会社設立して子会社に親会社事業を移転するという場合が考えられるわけでございますけれども、この場合におきましては、先ほど申しました親会社の営業の全部もしくは事業の一部の譲渡に該当いたしますと、親会社の株主総会の特別決議が必要であるということになりますので、親会社の株主は、持ち株会社への移行の際に、みずからの判断で株主になるかどうかを選択することができる、あるいは特別決議に加わることができるわけでございまして、これを望まない場合には、株式買い取り請求権を行使して投下資本を回収するという道が認められているわけでございまして、この特別決議の際に株主の権利は保護されているということになるのではないかと考えているところでございます。
  152. 横光克彦

    ○横光委員 今、法改正で余りこういうことは起きないだろうというお話だったのですが、私は、この法改正によって、株式譲渡で子会社を手放すということはこれから起きるのじゃないか。そういったときには、営業譲渡も株式譲渡もやはり子会社を手放すわけで、そこに、片一方は特別決議があるが、片一方は特別決議が必要ないということではちょっと困るのじゃないか。持ち株会社も、重要な子会社の売却については株主総会の特別決議を必要とするなど、私は、株主の意見をしっかり聞くような制度検討すべきであろうと思っております。   終わります。どうもありがとうございました。
  153. 武部勤

    武部委員長 次に、前田武志君。
  154. 前田武志

    ○前田(武)委員 しんがりを承るわけでございますが、きょうは第一回ということで総論的なことを聞いておきたいと思いまして、大体四点にまとめて質疑の通知をしているわけでございます。  先般来、官房副長官あるいは林委員初め、この持ち株会社の解禁の背景といいますか、世界的な大きな市場のグローバル化であったり、そういった中で日本持ち株会社解禁に踏み切らざるを得ない状況になっているということでございました。同僚議員の議論の中にも随分あったわけでございますが、何といいましても、今の市場経済原理による世界の経済のありようというものをどういうふうに見るかということで、大分違ってくるのかなという感じがしております。  そこで、既に指摘があるわけなんですが、自由な市場あるいはそのグローバル化、そしてまた、そういった市場の中で日本も今規制緩和等を大いに進めなければいかぬという議論になっているわけでございますが、そういったものが徹底的に追求されて、まことに透明性のあるオープンな市場、競争原理が働く、そういった中で、片一方で公正というものをきちっと確保していかなければいかぬということで、公正取引委員会の役割というものも非常に大きいわけでありますし、その公正取引委員会がしっかりと市場のフェアネスというものを確保していく手段として独占禁止法があるわけだ、こういうことだろうと思います。  そこで、よく言われるように、独禁法の九条、持ち株会社の全面禁止ということで今までやってきたわけでありますが、これがまさしく憲法九条に対応する日本の経済の一つのシンボル的な、公正の確保というものにおいての大きなよりどころになっていたかと思います。  もちろん、今のこのグローバル化した市場といったようなことについて私も危機感を持っておりまして、日本が随分おくれをとってきている。したがって、この段階においてこういう持ち株会社の解禁ということに進まざるを得ない状況というものも理解するわけでございますが、どうも一方で、市場に対する認識というものが日本の場合にはまだまだ甘いところがあって、それが事ここに至ってどうしようもなくなって、ついに各所で破綻が出始めている、そのために急にこの対応を迫られているというのが現状だろうと私は思います。  そういった面では、外為法の改正、来年の四月一日からというのも、もう本当に一年前は住専国会ということでやっておったわけでございまして、そのときには、頭のいい大蔵省がこの金融関係については護送船団で全部自分たちで仕切れるというぐらいの感じがまだ残っていたわけでありますが、その結果があの住専であったわけでありますし、また大和銀行事件などであったわけです。そういったことが破綻し始めて、ついにビッグバンの先駆けとして外為法の自由化ということにもなり、そしてこの木曜日にもかかる金融監督庁ということについても、ある意味では経済のインフラである金融関係の業界の公正というものを確保するための法改正、あるいは組織の改正であろうかと思います。  そういった意味では、公正取引委員会が今まで堅持していた原則、全面禁止のこの持ち株会社を、こうやってわずかの期間に、たしか議論をし始めて全面禁止から原則禁止、例外解除というようなこと、さらには原則解禁というところまでいった経緯、その背景等もいろいろ聞いてはおりますが、そこに一種の、何となく危うさを感ずるわけでございます。  やはりこの独禁法公正取引委員会のしっかりした番人がおって日本の市場というものも世界の中で信頼をされ、透明性が確保され、公正さが確保されるということになるわけでございますから、そういった意味において、公正取引委員会が今のこのグローバル化した市場において基本的に市場の公正さをどう確保していくかということについて、本当に腹を据えての認識があるのか、まず冒頭その辺をぜひ聞かせていただきたいということでございます。
  155. 根來泰周

    根來政府委員 先ほども申しましたように、今の日本の市場というものは必ずしも理想的なものではないことは十分承知しております。そして、その理想的でないというのは、やはり先ほど来申し上げておりますように、企業内取引が多いとか、株式の持ち合いが多いとか、あるいは系列の問題があるとかいういろいろの問題を抱えていることも事実であります。そうして、また一方では、規制緩和ということが声高に叫ばれているのでございまして、好むと好まざるとにかかわらず規制緩和の方向で進んでいくだろうと思います。  そこで、規制緩和推進ということは、我が国の経済社会の抜本的な構造改革を図り、国際的に開かれた自己責任原則市場原理に立つ自律的な経済社会の基盤を形成することを基本的な目的としておりますから、これは私どもの使命であります公正かつ自由な競争を基盤とする経済社会の実現を目的とする競争政策の目指すところと一致しているわけでございます。そういう規制緩和目的と私どもの目的が一致するわけでございますから、この場合に、公正取引委員会としては規制緩和競争政策の積極的展開を一体的に推進していくものと考えているわけでございます。  しかしながら、先ほど申しましたように、必ずしも経済社会は透明というわけにはまいらないわけでございまして、いろいろ問題を抱えていることも事実でございます。そういう問題については、私どもは十分それを念頭に置きまして、それを意識しまして、その事柄が独占禁止法に触れるということになれば厳正に対処していくということで、これからの経済社会の透明化の一部といいますか、私どもだけでその透明化を図るということは申し上げておりませんが、その一部を担っていきたい、こういうふうに思っております。
  156. 前田武志

    ○前田(武)委員 根來委員長社会の公正の確保に真っ正面から取り組んでこられた方でございますから、そういう面についても随分と御経験があると思うのですね、必ずしも透明でない、こういうことでございましたが。  ここに、公取が欧米における持ち株会社の実態調査をされ、この改正法案をつくるために随分と勉強もされているわけでございますが、そういう報告書を見ておりましても、株主が経営陣に対していろいろと追及をしていく、それに対して持ち株会社というのは一種の防御的な働きもするというような指摘もあります。それからまた、こういう持ち株会社というような形をとることによって、情報が随分と隠ぺいをされるというようなことも指摘をされております。  そういった意味においては、もちろんこの持ち株会社解禁そのものは、こういうグローバル化した市場における日本の企業のあり方というものを同じ土俵にしようというようなことで、規制緩和になるわけでございますけれども、その実態からいうと、消費者というか納税者の側から見ると、あるいは株主等から見ると、規制を緩和するよりも、逆に、納税者あるいは株主、そういった立場の国民一人一人からむしろ情報遮断していくような方向にも働きかねないというようなことでございますから、当然公正取引委員会におかれましては、これは何も公取がすべてということではないのでしょうが、各業態別ごとにそれぞれの責任の組織があるわけでございましょうが、トータルでいえば、市場の透明性であるとか、市場に対する接近のしやすさというか参入のしやすさというかアクセシビリティーであるとか、それからもう既に議論になっている系列の問題であるとか、そういったことを含めて、公取においてはどういうような取り組みをしようとされているのか。その辺のところについてお伺いをいたします。
  157. 根來泰周

    根來政府委員 ただいまお尋ねのように、正直申しましていろいろ問題のあることは十分承知をしております。この独占禁止法持ち株会社制度を解禁することによって、すべて世の中がバラ色に展開するとは思っておりません。先ほど来御指摘のありましたような労働問題とか株主の問題とかあるいは税法の問題とか、いろいろあると思うのでありますが、私どもとしては、まずこの独占禁止法の九条の規定というものを見直しまして、要するに事業支配力過度集中に至らないものについてやはり解禁すべきであろうということを考えまして、この法案を作成したわけでございます。  ですから、これからいろいろ問題があろうかと思いますけれども、この法案の中にもありますように、五年間の経過規定で、いろいろ見直し規定もいただくようにお願いしておるわけでございますから、これから、おっしゃるここの委員会での御指摘等を十分踏まえまして、独占禁止法の厳正な運用のみならず、また法律のいろいろの問題点等についても十分考えていきたい、こういうふうに考えております。
  158. 前田武志

    ○前田(武)委員 さてそこで、今回の改正案については、金融持ち株会社、これは別に政府の方でたしか検討委員会か何か進めておられるというふうに承知はしているんですが、この法改正と金融持ち株会社との関係、特に独禁法十一条との関係はどういうことになっているのか、お聞きをいたします。
  159. 塩田薫範

    ○塩田政府委員 金融持ち株会社関係についての御質問でございますけれども、九条におきましては、いわゆる金融持ち株会社につきましても、事業支配力過度集中するものについては禁止をする、それ以外のものについては許容する、解禁をするということにいたしております。  先生御指摘の十一条の関係を金融持ち株会社に適用するかどうかということでございますけれども、今回の改正法案におきましては、特段、十一条の関連の改正は行っておりません。すなわち、金融持ち株会社については、九条で過度集中になるかどうかという観点から規制をするということでございまして、個々の金融会社については従来どおり十一条で規定をするということで考えております。  なお、あるいは蛇足になるかもしれませんけれども、いわゆる金融持ち株会社関係につきましては、今申し上げたような独禁法の関係のほかに、金融政策上の観点から対応するということで今関係当局において御検討されておりますので、その結果を踏まえて、別に法律の定める日をもって、独禁法上も金融持ち株会社を解禁をするということにしております。
  160. 前田武志

    ○前田(武)委員 大蔵省は来ていますかな。  今のことと関連しまして、そういうことで、今不良債権問題であったり、あるいはまた海外における日本の金融機関の格付、随分と下がっているわけでございますが、経済のインフラである金融システムをどういうふうに、各個別の企業ごとにリストラをやり、そしてシステムとして、日本の市場の一番基礎をなす金融、証券、債券、そういったものも含めて金融システムをどう再構築していくかということが、経済政策の中でも一番重要な政策であろう、こういうふうに思います。  そういった意味では、各種金融機関、この持ち株会社解禁によって、選択の幅も随分広がっていく、こういうふうに思うわけでございますが、持ち株会社というものがどのような役割を担ってこの金融システム再構築に貢献し得るのか、どういうふうに期待をしておられるのか、その辺のことについてお伺いをいたします。
  161. 五味廣文

    ○五味説明員 御指摘のように、金融システムはまさに経済の血液、インフラストラクチャーでございまして、現在、政府としましては、二〇〇一年に東京の金融・資本市場をニューヨークあるいはロンドン並みの国際市場にするということを目標にいたしまして、いわゆる東京版のビッグバンというものの具体化を目指して、いろいろ検討を進めております。自指しますところは一千二百兆円に及びます個人貯蓄、これができるだけ有利に運用されるような場を設ける。また同時に、次代を担う成長産業に資金供給を円滑に行っていく。さらには、我が国から世界に対する円滑な資金供給ということも目指していく、こういうような形でいわゆるビッグバンを検討しておりますが、その際の原則といたしましては、フリー、市場原理が働く自由な市場にすること、またフェア、透明で信頼できる市場を目指すこと、さらには、グローバルということで、国際的で時代を先取りをする市場を目指す、こういうようなことで具体策を検討しておるところでございます。  この金融持ち株会社といいますものが金融機関の経営の組織形態として活用できるということになりますと、これは過去、金融制度調査会でも御意見が出たり指摘をされたりしておりますが、一つは、金融業態間の相互参入というものをいたします場合に、リスクの遮断その他の面で、持ち株会社というやり方は非常に使い勝手のよい手法である。あるいは、専門化による高度な機能と、これを総合的に統合いたしまして豊富なサービスを提供する、こういったような面で、非常にサービスの効率を上げるための有機的な高度な分業体制というものを構築する上でもこれは有用であって、それによって、商品の開発競争が非常に促進をされてくる。同時に、日本の金融機関が国際市場において競争いたします場合の国際競争力というものも高まり、また競争も促進をされるというような、こういったメリットが指摘をされております。  こうしたことを通じまして、金融の効率化、あるいは利用者利便の向上ということが実現をされていくのではないかというふうに考えております。  このことは、先ほど申し上げました二〇〇一年を目指します金融のビッグバン、この目指すものを実現していくための非常に有力な道具になっていくというふうに考えます。  私どもといたしましては、そのような位置づけをいたしまして、持ち株会社というものができるということになります場合に、金融の面でもこれが有効にかつまた正しく利用されるように、金融業法等の関連する法律の整備を進めておるということでございます。  こういった経営形態をどのように利用してどのように競争をしていくかというのは、やはり具体的には各金融機関が自分の組織の持っております得意わざ、特色というものをどう生かしていくかという経営判断の問題でもございますので、金融機関が、こうした選択の幅の広がりに応じまして、利用者のニーズに的確に対応する選択をしてくださるということを期待しておるところでございます。
  162. 前田武志

    ○前田(武)委員 この持ち株会社の解禁も、あるいは為替自由化、金融ビッグバンにいたしましても、いずれにしろ、これはグローバル化した市場の中で、日本の市場というものが多様なプレーヤーを呼び込んで、そしてそれぞれが、自分たちの企業活力あるいは企業に新鮮な血液を引っ張ってくることができるような、そういうような市場をいかに構築していくかということに尽きると思います。その中で、一千二百兆円の国民貯蓄というものがまさしく実体経済の中で大きく回るようになれば、日本の活力も取り出せる、こう思います。  そういった意味においては公取の役割というのは非常に大きいものがある。特に情報公開、私は一番大きな公取の役割といいますか、情報公開というのも、単に財務諸表であるだとかそういった面にとどまらず、市場の中できちっと公正さが保たれているということを、国民から見ても、あるいはまた諸外国、海外から見ても信用ができるような透明性と公正さを保っていかなければいかぬ、その基本が、僕は情報公開というものをきちっと担保していくことではなかろうかな、こういうふうに思うわけでございます。  時間が来ましたので、これで終了いたします。ありがとうございました。
  163. 武部勤

    武部委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十九分散会      ————◇—————