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1997-04-11 第140回国会 衆議院 商工委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月十一日(金曜日)     午前九時三十一分開議  出席委員   委員長 武部  勤君    理事 小川  元君 理事 小此木八郎君    理事 中山 成彬君 理事 茂木 敏充君    理事 遠藤 乙彦君 理事 西川太一郎君    理事 大畠 章宏君 理事 大森  猛君       甘利  明君    石原 伸晃君       江渡 聡徳君    小澤  潔君       奥田 幹生君    加藤 卓二君       亀井 善之君    岸田 文雄君       自見庄三郎君    中島洋次郎君       中山 太郎君    林  義郎君       船田  元君    村田敬次郎君       伊藤 達也君    石井 啓一君       上田  勇君    鍵田 節哉君       神田  厚君    古賀 正浩君       今田 保典君    島   聡君       島津 尚純君    達増 拓也君       中野  清君    吉田  治君       末松 義規君    松本  龍君       渡辺  周君    吉井 英勝君       横光 克彦君    前田 武志君  出席国務大臣         通商産業大臣  佐藤 信二君  出席政府委員         通商産業政務次         官       石原 伸晃君         通商産業大臣官         房長      広瀬 勝貞君         通商産業大臣官         房審議官    藤島 安之君         通商産業省産業         政策局長    渡辺  修君         通商産業省環境         立地局長    稲川 泰弘君         通商産業省機械         情報産業局長  中川 勝弘君         通商産業省生活         産業局長    村田 成二君         工業技術院標準         部長      田中 正躬君         資源エネルギー         庁長官     江崎  格君         特許庁長官   荒井 寿光君         中小企業庁長官 石黒 正大君         中小企業庁次長 岩田 満泰君         中小企業庁計画         部長      田島 秀雄君  委員外出席者         法務大臣官房参         事官      菊池 洋一君         大蔵省主税局税         制第一課主税企         画官      川北  力君         大蔵省証券局証         券市場課長   柏木 茂雄君         文部省初等中等         教育局職業教育         課長      池田 大祐君         文部省学術国際         局研究助成課長 遠藤  啓君         労働省職業安定         局雇用政策課長 鈴木 直和君         商工委員会調査         室長      安本 皓信君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十一日  辞任         補欠選任   河本 三郎君     江渡 聡徳君   鍵田 節哉君     今田 保典君   吉田  治君     上田  勇君 同日  辞任         補欠選任   江渡 聡徳君     河本 三郎君   上田  勇君     吉田  治君   今田 保典君     鍵田 節哉君     ――――――――――――― 四月十日  電気事業法の一部を改正する法律案内閣提出  第七九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月十日  原子炉プルサーマル計画福島原発導入反対に  関する陳情書  (第一八八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  中小企業創造的事業活動促進に関する臨時  措置法の一部を改正する法律案内閣提出第一  六号)  電気事業法の一部を改正する法律案内閣提出  第七九号)      ――――◇―――――
  2. 武部勤

    武部委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中小企業創造的事業活動促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中山太郎君。
  3. 中山太郎

    中山(太)委員 自民党の中山太郎でございますが、きょうは質問の機会を与えていただいて大変感謝を申し上げます。  今、当委員会に付託されております中小企業創造的事業活動促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案、この法律案が成立した後、これからどういう形で現在の不況に悩む都市中小企業者にこれが適用されていくか。  私は大阪出身でございまして、大阪の景気の状況というのは肌で感じていますけれども、まず税金面で見てみると、大阪府の法人住民税法人事業税、これは平成元年では八千三百五十一億円、税収があったわけです。それが平成九年度の当初では五千四百十五億円になっているわけです。つまり三千億円弱下がってきているということで、大阪府は赤字団体に転落する寸前の状態に入ってきた。  それは、二つ大きな原因があると思います。つまり、地場産業である家庭電器産業、例えば大阪の場合でしたら、北大阪に松下電器とか三洋とか、あるいは大阪の中部になりますが、シャープ、こういったところがございますし、泉州地域では繊維産地がございました。  繊維産地の方は、政府の織機の登録制度というものがあって、過去、十年ぐらい前まではこの登録制以外の業者の参入は認められなかった。ところが、登録制が廃止されるということになって、自由に、境界線が外れてきた。そういうところに、一方では輸入自由化促進される。こういうことで、発展途上国からの繊維製品の追い上げで、輸入がもう大変な圧力になって地元繊維業界は非常な苦しみに追い込まれているわけです。  それで、電器産業の方は、どちらかというと、日本経済繁栄期家庭電化製品をつくって、高利潤を上げて、産業としては非常に成長してきた。ところが、それに関連する下請部品メーカーというのが東大阪とか堺とかいろいろなところに点在しているわけです。この親会社である家庭電器産業というのは、円高になって、円が八十円台に入った、八十九円ぐらいのころになってくると、もう発展途上国工場を移転させる。現地法人をつくって、現地の人を雇って、最新鋭設備を投資して、それで生産して、通産省報告書では、カラーテレビなんかは今日百台のうち七十台ぐらいは輸入品が国内の市場を占拠しているというような状態になってきているわけで、従来の下請への親会社からの発注はその分減ってしまったということになってきた。  こういう状況の中で、小さな家庭産業あるいは加工業をやっている人たちは、親会社からの注文はなくなってくる、輸入品はどんどん入ってくるということで、すぐさま次の新しい自分の仕事というものをつくり出す経験が今までなかったわけですから、そこでみんなが右往左往して流れを見ているというのが今日の状況であろうと思います。  一方では、大阪では商社がやはり繊維の扱いをしていましたから、これが中国あたりの土地を安く手当てして、産地メーカー現地会社をつくらせて、そこで労働賃金三十分の一ぐらいで繊維製品をつくって、どんどんと輸入してくる。  こういったよらな状態が続いたために、地方自治体である大阪府も、府の税収が三千億円近い落ち込みを見るということで、大阪の場合、失業率全国失業率よりも高いのですね。それで、預金残高平成元年と現在で比べてみると、預金残高だけでも四兆円目減りしている。貸し出しは、実に五兆円増加しているというような状況になってきております。  大阪というのは、通産省出身赤間文三という知事さんが、戦後、吉田総理アデナウアー首相の間で話し合いが進められてマルク債というのをつくって、中小企業の町の大阪臨海部を埋め立てて、そこで船からすぐに原材料を陸揚げして工場に入れて、製品をまた輸出するというシステムをやったために、大変重厚長大型産業大阪府に生まれた。しかし、これが公害をまき散らしたために住民反対運動に遭って、公害除去の問題が随分起こってきた。こういう経過をずっと踏まえて、現在の大阪というのは、どちらかというとだんだん産業規模自身が小さくなってきたような感じがいたしております。  そこで、この新しい法律大阪府のような商工業中心のところで適用する場合どうしたらいいかということを中小企業庁なんかに聞いてみると、ピッツバーグ方式というのがありますと。これは、ピッツバーグという製鉄で有名な町が、製鉄業が衰微して新しいベンチャーを起こしていく、そういうシステムで成功した町がある。こういうお話を聞いたものですから、きょうは委員会で、通産省中小企業庁に対して、この法律案を成立させた後、この法律案に準備されている、既に予算は成立しているわけですから、予算は一体どれぐらい組まれているのか。  そして、円安になっても注文が余り来ない、輸出も余りきかない、つまり、アジアに行った企業が十分成長して、そこで最新鋭設備でつくるものですから、円高円安というのは余りもう関係なくなってきている。こういう状況なので、逆輸入現象が起こってくるわけですね。  そういう中でピッツバーグ方式を、この法律の成立後、大阪でやるといった場合に、自六体的なケースとしてピッツバーグでやられた物づくりネットワークというのを通産省中小企業庁は考えているわけですけれども、これはピッツバーグケース大阪に適用した場合、地方自治体としては大阪府がピッツバーグ市に当たる。その大阪周辺には京阪奈学術研究都市という研究都市が京都と大阪と奈良県の境界線にできていますけれども、これは筑波と違って国立研究機関が移動したわけじゃない。民間の研究所といったようなものが集まっていって、一つぐらいですか、郵政省の基礎の研究所がある。そういったような研究都市もありますけれども、大阪には、大阪府に四つ、戦後、工業試験所があった。それを総合的にやろうということで、和泉市というところに大阪府の府立産業技術総合研究所というのができている。これが新しい産業の芽を育てる一つセンターになろうとしているわけです。  もう一つ繊維産業が大変な打撃を受けて、やはり生地織りからファッション化していかないと利幅が出ない、こういったことで、通産省繊維リソースセンターという構想をもう七、八年前になりますか、出して、その一つ大阪の泉大津市というところにできております。これは生地織りのところにいわゆるデザイナーな人かを集めてきて付加価値を高めようという構想でいったのですけれども、実際つくってみると、デザイナーというのはそういうところへ来ないのですね。大阪市内に集まってくる。不思議な現象があらわれてきた。  しかし、今回の場合に、例えばピッツバーグ方式を私なりにはめてみると、通産省の下に近畿通産局がある。それで大阪府がある。大阪府の大阪府立産業技術総合研究所というものがある。そうすると、大学というものがどうかというと、大阪大学とか大阪府立大学工学部とか、大阪市立大学あるいは近大とか関大とかの工学部がある。そういうものの研究機関がありますし、ほかに大阪市の商工会議所やら各市に商工会議所がある。これをピッツバーグ方式でやったら一番うまくいくんじゃないかと中小企業庁は考えておられるようですが、大阪モデルにして、それじゃどういうふうに仕組みを組めば、この新しいベンチャーなり新しい産業というものを起こしていけるかということを、モデル実験を一回きょうはしてもらうことも必要なのではないか。  今年度組まれた八億円の予算ですか、それを全国で分配するのか、あるいは極めて落ち込みのひどいところでこの問題は扱っていくのか。こういうところは、きょうは大臣大変お忙しいようですから、冒頭御発言をいただいて、それで後は、大臣、次の本会議趣旨説明があるようですから御退出いただいて結構でございますが、ここはひとつ、佐藤大臣にお願いしたいことは、中小企業庁が出した今度の法案は、うまくその地域ネットワークすれば、ピッツバーグのように再生するだろう、しかし、ピッツバーグで成功したからといって日本でやってみてうまくいくかどうかはわからない。それには人のネットワーク頭脳集団ネットワークというのか、それからコーディネーターをどうするのかとか、役人がどの程度入ってやるのか、学者がやるのか、こういったことをきょうひとつここで正式に御答弁をいただいて、御答弁によって私からまた改めて御質問を申し上げたい。通産省には大阪におられた方もたくさんおられますから、具体的に一体どうしたらいいのかということをひとつお話をしていただきたいと思います。これが一点。  きょうは二つ質問します。  もう一つの方は、関西国際空港ができた、これは生鮮食料品から、周辺アジアの国々からいろいろなものが入ってくる。そうすると、工業規格というのがヨーロッパとアメリカ、同一なんですね、大体。大体統一するように今動いています。技術者資格試験もEUとアメリカは大体共通性を持たすようにしている。アジア工業規格をこれから標準化していこう、こういうことで通産省法案を用意していられますね。これが標準化してくると、垂直型の産業形態から水平分業型になっていくわけです、アジアで。それが、空港コンテナ輸送船によって部品の往来が盛んになっていく。そういうふうな一つの新しい都市構造というものを通産行政の上からどう組み立てていくのか。  また、部品を、例えば韓国あるいは中国、台湾、香港、ベトナムあるいはタイといったところから、どの程度にどこの工場でいつごろできるかといったような情報処理を、一体どこでやれば中小企業者はこの法律によって恩恵を受けることができるのか、そこらの点をひとつ明確に御答弁をいただきたいと思います。どうせ法律案を出される以上は、仕組みを考えた上で法文をつくって、それで国会へ提出されて予算を通しておられるわけですから、どういうふうな仕掛けでやったらうまくいくと考えておられるのか、これをひとつ御答弁願いたいと思います。  以上、二点です。
  4. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 自由民主党の長老であられる中山先生、日ごろから大変な博覧強記な先生というふうに尊敬申し上げておりました。きょう中山先生質問なさるというので、実はどんな話だろうかと思って委員会室に来させてもらったのです。  大変直截的にこの法律について、非常にグローバルというか大きい話で、私のような若輩がお答えするようなことでございませんが、ただ、一つだけ言えますのは、今度のというか、実は今非常にこの予算という問題、財政構造改革ということで、予算、こういうものの財政支出を抑えようと。  今度ヒアリングがございました。そのとき、私の方も、対象は中小企業についての予算エネルギー予算、これに対するヒアリングでございまして、私が申し上げたのは、確かに中小企業予算平成九年度で千二百四十七億、こんな額では何にもできないというか、少ない。それを今までは少ないなりにさらにこれは細分化して全国にばらまくのだから、まあ期待どおりのものができないだろうというようなことを申し上げて、これからやはり中小企業対策ということでもって本腰を入れていくならば、物づくりの方は、この間からお願いした活性化法だとか、そしてまたきょうお願いしているベンチャーに対するエンゼル税制、こういうものでもって支援するわけですが、同時に、やはり今の活性化法で町をつくるという、こういうふうな観点に立った場合には、通産省だけではできないんだ、総合的に、建設も自治省も全部が乗り込んでやらなければできないんだ、かように申し上げたわけでございますので、先ほどの九億円、どういうふうにするのか、大阪に幾ら回すのかというお話は、その今の私の答弁で御勘弁、ごしんしゃく願いたいと思います。  いずれにいたしましても、これで日本産業の基盤である中小企業、こういうものをやはり力をつけないと、これから二十一世紀にわたって日本経済そのもの日本という国が沈没するだろう、こうした危機感から、こうした政策また法律をお願いしているということでございます。  もう一つつけ加えますと、繊維というものに関しては、今先生指摘のように、昔の時代と違って、いわゆる大きな名のある会社というのは、看板だけは残っていても実質は繊維部門から撤退している。そしてまた、言われたように、商社も昔は大阪中心として糸へんの商社というものが主流でございましたが、それ自体も影を潜めてきたということで、残ったのは本当に中小、こういうふうな方々でございます。それだけにやはり難しい問題がございますので、今おっしゃったピッツバーグ方式が果たしていいのかどうか。   いずれにいたしましても、やはり意欲ある業界、意欲ある中小企業というものに関しては、それに対して力をかす、技術も貸す、あるいは金も貸す、人材も、こういうのが通商産業省のとるべき道ではないだろうか、かように思っております。あとのことは事務方の方から答弁させます。  以上でございます。ありがとうございました。
  5. 岩田満泰

    岩田(満)政府委員 お答えを申し上げます。  御指摘の、ピッツバーグケースを例に引かれての御質問でございますが、先生もう御案内と思いますが、ピッツバーグと申しますのは、もともとUSスチールを初めといたします鉄鋼業の町として有名であったわけでございますが、一九七〇年代から八〇年代にかけまして、この間に十一万人に及ぶような製造業における雇用の減少、あるいは人口が一割を超えて減るというようないわゆる空洞化が現実のものとしてあらわれたわけであります。これに地域の人々が危機感を持ちまして、対応しようということでございまして、ピッツバーグが成功した一つの例として世に言われておりますのは、やはり地域人たち一緒になって地域を再生させようという明確な目的意識をお持ちになったということが、一つ極めて重要な要素として指摘をされております。  また、そうしたことに対応するために、池元の連邦政府ペンシルバニア州でございますが、ペンシルバニア州が大変なイニシアチブをとったということと同時に、それに対して、地域産業界あるいは大学、それから公的な機関ベンチャーキャピタルというようなさまざまな機関が自発的にこのプロジェクトに協力をするネットワーク活動というものがとられたということであろうと思います。  同時に、ピッツバーグ大学とかカーネギー・メロンといった地元にある大学がこれに積極的に参加をし、もろもろ企業創業支援とかあるいは新分野への進出を手伝うということでございまして、言ってみれば、地域にございます資源を総動員して、それによりまして、例えば研究開発あるいは資金面の問題、あるいは生産、販売といったような企業活動のあらゆる側面を総合的に支援する仕組みを包括的に用意をするというようなことが行われた点に特徴があるのではないかと考えております。  私ども、ピッツバーグケースについて注目いたしますのは、シリコンバレーのケースのように、この方があるいは有名なケースかもしれませんけれども、大学が主体になって始められるというケースよりは、むしろ日本の風土というものを若干考えますと、やはりピッツバーグのような、州政府というものが旗振り役をされて、そしてそれに大学やあるいは産業界一緒になって仕事をする、こういうあり方の方があるいはうまくいくことがあるかもしれないというふうに思う点が一つございます。  同時に、ピッツバーグが成功した内容としてございますのは、確かに州政府は音頭をとりました、かつこれに対して連邦政府一定支援をいたしておりますが、それは旗振り役を果たすと同時に、地元人たち展開をする事業について支援をするという立場をとっておりまして、主役はあくまで産業界あるいは地元大学にあるというところが一つ重要なポイントではないかと思っておりまして、そういうことに照らして考えますと、今御指摘大阪でということでございます。  御指摘ございましたように、大阪産業技術総合研究所という形で大阪府下研究機関が統合をされたわけでございまして、私も知事にお招きをいただきましてテープカットに参列をさせていただき、かつまた内容についていろいろと御説明を受けました。単なる研究所ということではなくて、いわゆるインキュベーターとしての要素であるとか、あるいは研修施設でございますとか、もろもろ具体的に、機械をいじっていろいろな勉強ができるとか、あるいは高度なものについての計測を受けることができるとか、非常に総合的なサービスを用意されておるわけでございます。  その意味におきまして、大阪大学、あるいは御指摘のように府立大学市立大学、近畿大学関西大学といったもろもろ大学は、関西の場合には非常に産学連携について熱心な大学が多うございます。そういう意味で、こうした大学との連携を視野に入れつつ、地元の自治体あるいは首長の方々イニシアチブを前提として、例えば大阪産業技術総合研究所というところが一つの中核的な施設となって、あるいは窓口となって全体をネットワークをし、大阪、さらに広くは関西全体の産業界を取り込んで大きなネットワークをおつくりいただくというのは一つの有力な方策なのではないかというふうに考え、これまでも通産局などのレベルにおいても議論をさせていただいてきております。  これから、特に九年度以降、きょうお願いをいたしました法律を含めまして、あるいは集積法という法律をこの間成立させていただきましたものですから、そうした新しく与えられました手段、あるいは九年度に新たにネットワークのための予算一定のまとまったものを用意することができましたものですから、これらを活用いたしまして、こうしたネットワークづくりというものをぜひ具体的なものとして展開をしていければいいな、こんなふうに考えているところでございます。
  6. 田島秀雄

    田島政府委員 先ほど予算の話もございましたものですから、予算の点でございます。  ネットワーク形成の関連につきましては、平成九年度四十九億円の予算を計上いたしてございます。先ほど先生指摘くださいました八億円といいますのは、このうち、組合等が行う活動に対して御支援申し上げるものでございます。具体的には物づくりネットワーク支援ということでございまして、中小企業者同士連携支援機関広域ネットワークといったものが有機的に形成されるように活用してまいりたいと思います。この予算につきましては国からの補助制度がございますが、国と県とで一対一で負担をしてまいりたい、こういうふうに考えてございます。  ネットワーク形成に対する支援と申しますのは、個々の事業者が単独で実施する事業に対する支援と違いまして、既存の組織の枠組みを超えた新たな関係を形成していただかなくちゃいけないということでありますし、やはり人のつながりが大変大事でございます。先ほども御指摘ございましたコーディネーターの問題、あるいは研究者の方にどういうふうに御協力をいただいていくのかといったことも大変大事でございまして、それなりに時間もかかる、すぐに一朝一夕にできることではございませんので、地域の実情等々も配慮しながら継続的に支援をしてまいりたい、こういうふうに存じております。
  7. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 先生が御質問になられましたもう一つの論点でございます。関西空港の例を引かれまして、その周辺地域に東南アジアでの部品その他が逆輸入してくる、そういったことも踏まえてアジア水平分業を一体どう考えるか、こういうもう一つの御質問がございました。  これにつきましては、既に御案内のように、一昨年でございますか、大阪でAPECの首脳会議がございまして、これでアジア、特にAPEC地域の貿易、投資の円滑化に資する技術協力を行っていこうという、ある意味で二十一世紀を目指した大変立派な合意ができたわけでございまして、これにのっとってAPEC全体、とりわけ日本がその中心的な役割を果たしまして、各種の技術協力あるいは標準化、そういったことが今行われておるわけでございます。  こうしたことが進んでいくことは、先生よく御案内のように、アジア地域の工業化が進展してまいりまして、アジア全体が経済が成長していく、それに伴って、当然のことながらアジアの人々の生活水準が上がりますけれども、同時に、その地域での工業化の過程で、日本からの各種の輸出あるいは投資、そういったものも活況を呈していく。そういった姿で、基本的な考え方は、比較優位を保てるところで物が安くつくられて、それで全体として経済効果が上がっていく、こういうことが原則になるのだろうと思っておりまして、これに伴って我が国の経済活動アジアとともに活性化していく分野が多々あると思っておるわけでございます。  ただ、おっしゃるように、本来、比較優位でまだ国内にも残れる産業が、国内の高コスト体質のために出ていかざるを得ないとか、こういったことになると非常にぐあいが悪いものでございますから、既に昨年来、経済構造改革で高コスト体制是正を行っております。そういった形をもって我が国の事業環境を整えていきたい、こういう考え方にのっとって施策を進めているところでございます。
  8. 中山太郎

    中山(太)委員 残り時間がもうございませんので締めくくりをさせていただきますけれども、今、大阪府の総合技術研究所通産省が力を入れた繊維リソースセンター、去年パソコン三十台を予算で組んで入れられておりますね。それでネットワークを張るようにしている。  そういう中で、アジアのいわゆる部品情報というのを受け入れるシステムがないのです。これが大阪市内のワールドトレードセンターまで行かないとだれもわからない。大阪南部、それから東北部、北部とそれぞれありますけれども、そういうものが産地で情報がとれるように、そういうシステムをひとつぜひ通産省としては考えていただくことが、仏つくって魂入れずといいますか、建屋はできても中身が十分機能しない。中小企業方々というのは、全部、大学工学部を出ている方ばかりではありませんから、なかなか大学先生方に接触するのにヘジテートする可能性が強い。そこらは、よほど優秀なコーディネーターを置くかどうかによって、すべてこの法律は生きるか死ぬかという結論になっていくのだろうと思います。  そういう意味で、きょうは大阪の例を申し上げましたけれども、恐らく全国のいろいろな地域でこういうふうなネットワークづくりがされていくのだろうと思いますが、ぜひひとつ積極的に努力をしていただくことをお願いして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  9. 武部勤

    武部委員長 次に、伊藤達也君。
  10. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 伊藤達也でございます。  いただいた貴重な時間を通じて、新しい風を起こして、二十一世紀を展望してダイナミックな国をつくり上げていくには今後どのような産業政策というものを実行しなければいけないのか、また、本法案の提出によって、ベンチャー企業の育成にどのように貢献していくことになるのか、そうした問題意識を持ちながら質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。  まず、通産省にお伺いをしたいのは、本法案によって日本で初めてエンゼル税制というものが導入をされるわけでありますが、通産省は、エンゼルとは一体何か、どういうものだというふうにとらえているのか、お伺いをしたいというふうに思います。  一九八〇年代、アメリカを見てみますと、大企業が約三百五十万人の人員をカットをいたしました。しかし、一方で、ベンチャー企業が約一千九百万人の雇用を創出した、このように言われているわけであります。これはアメリカ全体の新規雇用の約八割に当たる。ベンチャー企業雇用吸収面においても非常に大きな役割を果たしてきたということがわかるわけであります。  こうしたベンチャー企業を支えてきたのが、実はエンゼルでありました。また、このエンゼルが進化をしてベンチャーキャピタルというものが誕生してきたわけであります。ベンチャー企業の起業家から見れば、スタートアップの大変難しい時期に資金を提供してくれる、そして経営のアドバイスまでしてくれる個人投資家というのは、天使のように見える。したがって、これをエンゼルと恐らく呼んだのだろうというふうに思うわけでありますが、日本では、このエンゼルという言葉はまだそれほど聞きなれた言葉ではないわけであります。  そこで、通産省はこのエンゼルというものをどういうふうにとらえられているのか、エンゼルに何を期待するのか、そして、なぜエンゼルというものを重要視しなければならないのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  11. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答えを申し上げます。  今先生、御質問の中でお触れになられましたように、アメリカベンチャービジネスの振興の上でのエンゼルの果たした役割というのは、大変大きいものがございます。特に、アメリカの創業期のベンチャー企業にとりましては、個人投資家がどんどん投資をしてくれる。しかも、それに加えて、アメリカのいわゆるエンゼルと言われる個人投資家は、個人企業家である方はもちろんでございますけれども、弁護士であるとかあるいは公認会計士であるとか、そういったような、個人で大変知的水準の高い人たちがみずから投資をしながら、かつ、そういうベンチャー企業への経営に参画していく、あるいはアドバイスする。そういったような形で非常に良循環が行われて、今おっしゃったような発展が行われてきた。こういうのがアメリカの実情であろうと思っておるわけでございます。  これに対して、我が国の場合でございますけれども、我が国のいわゆるエンゼルと呼んでおるそういったベンチャー企業への個人投資家というのは、まだそういう意味ではアメリカに比べましてまことに微々たるものでございますし、そういった層をこれから掘り起こしていかなきゃいけないというのが我々の基本的な考えであるわけでございます。  ただ、御案内のように、一千二百兆円の預金を持っておるというふうに言われておりますように、個人の資産家も含めて、個人の投資家というのは日本にも潜在層は相当あるわけでございます。こういう人たちに、ベンチャー企業というものが一体どういうものであるのか、それに対してどういう投資機会があるのか、そういったような情報をしっかりますお知りいただいて、かつまた、それに対して、エンゼルとうまく出会うような場を設け、さらに、そういった投資というものが税制その他各種施策によって十分安全なものである、こういったような仕組みをつくっていくことによって、現在は画然たる差がございますけれども、アメリカベンチャー企業振興にエンゼルが果たしたような役割というのを我が国でも振興していくことができないか、こういうのが我々のここ数年来の考え方の基本にあるわけでございます。  今回、具体的な幾つかの施策はございますけれども、特に税制面で今御指摘のようなエンゼル税制の創設を行って、その着実な一歩を踏み出していった、こういうことでございます。
  12. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 今、渡辺局長の方から、アメリカベンチャー振興に当たってエンゼルが果たしてきた役割が非常に大きい、そのような役割を日本でも担ってもらえるような、そういう個人投資家、エンゼルというものを育成をしていきたい、こういうお話があったわけであります。  アメリカの場合には、エンゼルと言われる人たちが大体百万人以上いるわけでありまして、そして、この人たちが年間約二百億ドル、二兆円近い投資をベンチャー企業にしていくわけであります。投資残高は二千億ドル、約二十兆円にも上るわけであります。投資案件が大体五万件。アメリカは年間八十万件ぐらいの企業が新しく起こってくると言われていますから、そのうちの実に六%にエンゼルが投資をしている、こういうことになるわけでありますが、日本ではエンゼルの担い手として具体的にどういう人たちを想定をしているのか、この点をお伺いをしたいというふうに思います。  そして、こういった潜在的なエンゼルの人たちが今後どれぐらいの投資をしてくれることを期待をしているのか、この点もあわせてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。
  13. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 まず、我が国において、いわゆるエンゼルの担い手としてどういう人たちを想定しているか、こういう御質問でございますが、私どもが考えておりますのは、みずから事業経験を有するような各種の企業家、既に自分で一定の自営業を行っていたり、あるいは株式会社を経営したりしておるけれども、同時に、さらに投資を行う余裕のある、そういったみずから事業経験を有する、あるいは事業を行っている者、こういったようなのが一つあるかと思います。  さらに、技術あるいは経営面について大変豊富な知識を持っておる各種のコンサルタント、これは、特にサラリーマンを卒業されて技術経験あるいは経営ノウハウを持っておる中高年層に最近そういう方が相当多うございますけれども、こういったような人たちの活躍する分野も大変あるのではないか、こんなふうに思っております。  さらに、一定の資産、収入等を有しておるような者、先ほども申し上げましたが、一千二百兆円という個人預金があるわけでございますけれども、そういった資産家というのも相当いるのではないか。しかも、それは全国に散らばっておるのではなかろうか、こういうことでございまして、こういったような人たちを対象にいたしまして、エンゼルというものでベンチャー企業の投資というのを呼び込めないか、こういうことを考えておるわけでございます。  今、具体的に、そういう人たちからどのくらいの投資がこれから期待されるのか、こういう定量的なお話、これは正直に申し上げまして、なかなか難しゅうございます。必ずしも、これは定量的に今ここでお答えできるような確たるものは持っておりませんけれども、アメリカと比べればまだまだおくれてはおりますけれども、日本での各種の民間のリサーチ、あるいはシンクタンク等がアメリカの実例等を調べながらいろいろ計算いたしたところなどを参考にいたしてみますと、一千五百万を超える年収を持っておる人が相当数、約六十万人いるそうでございまして、そのうちの一体どのくらいが参画してくれるか、こういうことだろうと思います。一%として六千人でございますから、そういったような人たちが、各種の調査によりますと、アメリカなどでは一件当たり五百万ぐらいの投資をするというケースが多いようでございます。そういったようなものを頭に置きながら努力をしていきたい、こんなところでございます。
  14. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 六千人だと非常に寂しいものがありまして、アメリカは百万人以上でありますから、これはやはりもっと多くの方々にエンゼルになっていただけるようにしていかなければいけない。そういう意味では、そういったエンゼルというものをどうやって育成していくのか、これは非常に重要なことだと思います。  アメリカの平均的なエンゼルというのは、年齢が大体五十歳前後、ある程度事業にめどをつけて実績を上げてきた人、年収が大体一千万から二千万円ぐらいの人たち、これが平均的な像ではないかと思います。今局長が触れられたように、一件当たりの投資額というのが大体二百万から五百万ぐらいではないかというふうに思いますし、大体四、五件に分散的な投資をしているというのが特徴的だというふうに言われています。また、もう一つ特徴的なのは、自宅から百マイル近いところにある企業に投資をしている。これは、その土地柄が非常にわかる、また自分の専門的な領域にかかわる企業に投資をして、そしてリスクをヘッジしていくという部分もあるのではないかというふうに思います。  こういうことを考えていくと、潜在的なエンゼルの数というのは相当あるのではないか。日本でも年収が一千万から二千万の人たちというのは、今お話がありましたように相当程度おられるわけでありますが、そういう人たちがこれからの新しい企業に投資をしてみたい、投資をしていこう、こういうことが起こってくれば、これは相当にベンチャー企業を育成していくに当たって大きな原動力になってくると思います。  その中で、アメリカの場合にはリードエンゼルというのが非常に大きな存在であります。先ほども局長が触れられたように、これは、ベンチャー企業を成功させて、その創業者利益を通じて自分も新しい企業に投資をしていこう、こういう人たちであります。日本では大体、九三年から九五年、これを調べてみますと、日本の店頭市場、新規公開の時価総額が百億円以上のオーナー企業が五十社ぐらいあったというふうに言われています。こういう人たちがリードエンゼルになっていく可能性というのは非常に高いというふうに思っているわけでありますが、こういったエンゼルというものを育成していくために、これからどのような環境の整備やあるいは政策というものを打ち出していかなければいけないのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  15. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  今エンゼルを育成していく上での施策は何かという御質問でございます。幾つかございますけれども、やはり一番の基本になる施策の軸足というのは、店頭市場の活性化という、つまりエンゼルがこれから育っていく上での市場をつくっていくことではないかと私は思っておるわけでございます。  御案内のように、米国におきましてはNASDAQという市場がございまして、ベンチャー企業が創業から五年程度で登録できるような市場として育っておりまして、創業期におけるエンゼルからの投資の促進の上で大変大きな役割を果たしておるわけでございます。  我が国におきましても、平成七年七月でございますけれども、店頭特則市場の創設というのを行いました。このときは伊藤先生にも大変御支援いただいたこういうふうに私伺づておりますけれども、こういった店頭市場を創設いたしましたけれども、さらにこれを各方面に働きかけをいたしてまいりまして、これが具体的によりワークしやすいように、さらにはその店頭市場の創設をさらに容易にし、かつまたそこにかかる各種の規制その他を緩和していって、これが育っていくこと、これがもう一番の基本であろう、このように考えるわけでございます。
  16. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 通産大臣がお見えになられましたので、大臣に御質問をさせていただきたいというふうに思います。  大臣はインターネットというものを利用されておられるでしょうか。インターネットを高度に利用できるソフトとして、ナビゲーターというソフトがございます。このソフトは、ネットスケープという今世界でも大変注目をされている会社が開発をした商品であります。実は、この会社は一九九四年にイリノイ州立大学の学生であったマーク・アンドリーセンによって設立をされた会社でありました。それで、この会社は赤字であったのですけれども、たった十九カ月でNASDAQに株式公開をして、そしてこのアンドリーセンは、年収は当時六百万円でありましたが、株式を公開することによって株価が一気にその日に二倍にはね上がって、そして持ち株が五十八億円に一日で大化けをした、二十四歳の若者が一日にして億万長者になった、こういう例がつい最近あったわけであります。そして、このネットスケープという会社は、九六年九月の売り上げを見ても、もう一億ドルを超えて、今も急激な勢いで成長をしているわけであります。  このネットスケープの成功の舞台裏には、エンゼルの存在が非常に大きな存在としてありました。そしてこのエンゼルが、大変有名なベンチャーキャピタリストというものを引っ張ってきて、そのベンチャーキャピタリストがさらにこの会社の経営者のトップとしてフェデラル・エクスプレスの元社長にヘッドハンティングをしていく。さらには、マーケティングから財務の問題に至るまで全米のトップ企業の役員を引っ張ってきて、そしてこの会社の役員に配置をしていく、強力なプロフェッショナルのチームを用意したわけであります。  もしこのアンドリーセンのような学生が日本に存在をした場合に、同じようなことが今の環境の中で起こるのでしょうか。恐らく、ある程度のベンチャーの立ち上げの資金と仲間を募ることはできると思います。しかし、五年か十年かけてようやく中堅のソフト会社になっていく、それが関の山ではないか、それが今の日本の現実ではないかというふうに思います。この環境の差がベンチャー企業を創出していく日米の力の差になり、また、ひいては日本アメリカ経済力の差になっているのではないかというふうに私は思います  そういう意味では今回エンゼル税制を導入するということは大変意義深いことだと思いますが、それだけにとどまらず、さらにいろいろな政策というものを実現していかなければ、日本産業構造を展開し、新しいベンチャー企業を育成していくことはできないというふうに思いますが、大臣としてどのようにお考えになられているのか、お伺いをしたいと思います。
  17. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 中座して恐縮でございました。  今、伊藤委員お話をお聞きしながら、時代の変わりというか、まず年代の相違というものを感じました。  初めに言われたように、インターネット、もちろん存じておりますが、おまえ自身持っているか、使っているかと言われると、私の場合は使い切れていないとお答えいたします。それは、あたかも今、今日になってこうした国際化ということでもって英語が世界の共通語になりつつある、ああ若いときに勉強すればよかったなと思っても遅いという、それと同じように、やはり今時代の流れとしてはそうしたような流れになっているということですから、それに対する対応、日本においても、おくれていると思うならば、しなければいけないだろうと思います。  それで、今言われるように、新しい企業ということで、実は構造改革計画、この中においても新しい業種、これの創出ということで十五分野を決めてありますが、その中にも一番先に挙げられているものが電気通信分野であり、そして環境あるいは医療、福祉、大ざっぱに言えばこの三部門が最もおくれていると言えると思うのです。それにはやはり、言うまでもなく資金の問題、そして技術の問題、人材、こういうものがうまくかみ合わないと、新しいものは出てこないことは言うまでもありません。  特に今伊藤委員指摘のこの分野というのは、まさにやはりこれから始める、いわゆるベンチャーという場合に、まず技術は持っている、人材もある、しかし資金がないということで、今回、エンゼル税制、こういうものでもって、これも日本的な考え方をすると、一般の投資家が創業のときにお金を出す、こういうことですから、それだけではやはり企業として成功することはできない。こういうことで、後は、今も実は私が出席する前に御論議がありました店頭市場、こういうものの改革によって広く大衆から資金を得るということも必要だろう、かように思っております。  そういうことで、私の方は、今のお話のように、そしてまたアメリカの場合にはいろいろな背景も違います、ですから、必ずしもアメリカのように、一夜にして成功するアメリカン・ドリームのようにジャパン・ドリームというものができるかどうか、これはやはりこれからのこうしたことに対するそうした人の面の意識の問題、また社会の意識というもの、これの変革というものが相またなければいけない、かように考えているわけでございます。
  18. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 私は、どの世代にとってもこの国でジャパン・ドリームが見られるような、そういう国をつくり上げていきたいというふうに考えているわけですが、そこで、これからの質問の中で、今後どのような施策をベンチャー企業育成のために、新規事業を創出していくためにしていかなければいけないのか、そのことについて質問をさせていただきたいというふうに思っております。  今の大臣答弁の中にも、あるいは先ほどの渡辺局長の御答弁の中にも、店頭市場の改革というものが非常に重要なんだ、こういうお話がございました。私も、この三年間、この商工委員会においても、あるいは予算委員会においても、この店頭市場の改革というものを本当にやっていかなければいけないということを何度も要望し、そして質問もさせていただいたわけであります。  今、アメリカのNASDAQ、店頭市場は毎年五百社近い新しい会社が株式を公開をしております。そして、この市場というものは、もう既に東京の上場市場、ロンドンの市場をはるかに超えて世界第二番目の株式市場になっているっそういう意味では、日本の店頭市場とは比較にならない、こういう状況であります。そして、このアメリカのNASDAQは、ベンチャー企業を育成していくのに大きな役割を果たしているわけであります。  今、甘利先生がお見えでございますが、当委員会においても、甘利先生を初め多くの委員先生方、そして今日まで、通産省の関係の方々あるいは大蔵省の方々、そういう方々の御努力によって、この店頭市場の改革については、大変意識の面についてはその認識が広まってきたというふうに思いますが、まだまだ日本の店頭市場状況を考えると、これは思い切った改革というものを実現をしていかなければいけないというふうに思います。  私は、昨年の予算委員会質問の中で、当時の通産大臣そして大蔵大臣、また証券局長からも、これはやっていかなければいけないんだ、そういう御答弁をいただくことができました。では、具体的にどのようにこの店頭市場を改革をしていかなければいけないというふうに大臣はお考えになられているのか、その点についてお伺いをしたいというふうに思います。
  19. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 先ほども若干触れましたように、この店頭市場の活性化を図り、そしてアメリカのNASDAQのような、ベンチャー企業が創業から五年程度で登録できるような市場としていくことは、創業期におけるエンゼルからの投資を促進する上でも大変重要だ、こんな認識を持っております。  このため、通産省としては、これまでも平成七年の七月の店頭特則市場の創設等を初めとして、店頭市場の改革のために関係方面へ積極的に働きかけてまいっているところでございます。店頭市場の改革は進展しつつある、実はこんな認識を持っております。これからも店頭市場ベンチャー企業にとって活用しやすい市場となるよう、関係方面に対して積極的に働きかけていきたい、かように思っております。  以上です。
  20. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 店頭市場を改革をしていくためには、今の御答弁にありましたように、これは関係の省庁に対して大臣が強力なリーダーシップを発揮をしていただいて、働きかけをしていただいて、実現をしていただきたいというふうに思っております。  本日は、大蔵省の担当者の方にもお見えをいただいておりますが、現在までの進捗状況、そして今大臣の御答弁にありましたように、この店頭市場の改革をやっていかなければいけない。私は、この日本の店頭市場が、一部、二部上場企業の補完的な役割を果たしていく、何か二軍のような存在であってはいけない、アメリカのNASDAQと同じように、上場市場と競争関係にあるようなそういう市場に変えていかなければいけないというふうに思っておりますが、この点についていかがでしょうか。
  21. 柏木茂雄

    ○柏木説明員 ただいま先生から店頭市場についての御質問をいただきました。先ほど通産大臣からも御答弁がありましたけれども、私どもといたしましても、店頭市場の重要性については全く同じ問題意識を持っております。  店頭市場につきましては、私どもとしましても、かねてから、成長産業による資金調達の場として重要な役割を果たすものとして認識しておりまして、特に、二十一世紀の高齢化社会におきまして我が国経済の活力を保っていくためには、こういう次代を担う成長産業へ資金供給を図っていくというのは極めて重要なことだと思っております。こうした観点から、店頭市場はますます大きな役割を果たしていくということが期待されているわけでございます。  ただ、一方におきまして、店頭市場の現状につきましては、先生も御承知のとおり、株式公開後に流通量が乏しくなりまして、取引リスクが大きくなるというケースが多くなるということが指摘されているわけでございます。したがいまして、店頭市場が期待された役割を十分に発揮していくためには、店頭市場の流通面での改善というのを図り、そのために機能向上策を講じていく必要があるということを考えております。したがいまして、そのためのさまざまな努力が行われてきているところでございます。  具体的には、昨年二月でございますけれども、日本証券業協会におきまして、店頭市場の流通面の改善を図るため、信用取引や借り株制度を導入するという検討に着手いたしまして、その後、具体的な措置につきまして関係者の間でいろいろ話し合いを進めてまいりまして、つい先月、本年の三月でございますけれども、これらを実施するための要綱が日本証券業協会の理事会において決定されたところでございます。  今後、これらの措置ができるだけ早期に実施に移され、株式流通市場における需給の厚みと流動性が増すことにより、店頭市場の効率化、活性化が図られるということを私どもとしても期待しております。  また、先生指摘になりましたように、店頭市場につきましては、かねてから取引所市場等の補完としての位置づけというのがされてきたところでございます。このような位置づけにつきましては、その見直し、そもそも店頭市場のあり方そのものにつきましても、現在、証券取引審議会総合部会におきましていろいろな検討を加えているところでございまして、本年の六月にはその結論を得るということになっております。
  22. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 今の御答弁内容、一日も早く実現に向けてぜひともさらなる御努力をお願いをしたいというふうに思います。  続いて、ストックオプションの問題についてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。  ベンチャー企業が有能な人材を確保するために、平成七年の十一月に新規事業法を改正をして商法の特例としてストックオプションの制度が導入をされて、今日まで、たしか八十三の認定事業者のうち、十九の事業者がこの制度を導入をしているというふうに思います。そして、近日中には株式を公開する、そういう事業者もあらわれてくるのではないかというふうに思います。  この制度の導入に当たっては、現在の牧野事務次官が本委員会においても、このことを導入するに当たって、率直に言って聞くも涙語るも涙、そういう経緯があったんだ、こういう答弁がございました。先ほどの大蔵省の担当者のお話を聞いていて、三年前の店頭市場の改革についての当時の担当者のやりとりと比べてみても、私も牧野事務次官と同じ思いがいたしているわけでありますが、この制度が導入をされて今日までの経緯を振り返られて、通産大臣としてどのように評価をされているのか、この点についてお伺いをしたいというふうに思います。  さらに、エンゼルのすそ野を広げていくためにも、また日本企業の活性化を促していくためにも、私は商法の特例措置じゃなくて、このストックオプションというものを一般的に導入をしていく、こういうことも必要ではないかというふうに思っておりますが、この点についても大臣のお考えをお伺いをしたいと思います。
  23. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 今伊藤委員言われるように、これは大変長い歴史があるようでございます。今の牧野君の場合でも、次官になる前、産政局長時代の国会答弁と思います。  今御指摘のストックオプション制度の一般化については、三月末に発表された規制緩和推進計画において、「特定新規事業に関する新株有利発行制度の運用実態調査を行い、調査結果を踏まえて、ストックオプション制度の在り方等について検討に着手し、九年度中に結論を得て、法改正を経て十年度中の早期に導入する。」こういうふうに実は今申した計画の中に入っておるわけでございます。この制度の一般化は、企業の人材確保や、取締役や従業員に対する新しいインセンティブを与えるための方策として有効であり、経済の活性化にも寄与するもの、こんな認識も持っております。  そこで、問題なのは、こうした認識のもとに、規制緩和推進計画に従って法務省と連携しながら新規事業法の運用実態調査などを着実に実施し、できるだけ早期にストックオプションが導入されるように努めてまいりたい、こういうことでございますが、御指摘のように、法務省というところでもって商法の改正をやろう、今の委員の話は、そんなことは飛ばしてやれ、ところが、まだ日本の場合、仕組みもございますし、法治国家でございますので、その辺、非常に苦慮するわけでございますので、委員各位の御支援、御協力というもの、これをお願いするわけでございます。
  24. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 今法務省との連携というものが重要なんだ、こういうお話がございました。  実は、法務省の担当者の方に来ていただいておりますので、お伺いをさせていただきたいわけでありますが、これは三月二十八日の閣議決定でも、平成十年度の早期に導入を図っていくんだ、こういう決定がなされているわけでありますが、これは全面解禁に向けて動き出しているんだ、こういうふうに理解をしていいのか、その進捗状況についてお伺いをしたいというふうに思います。
  25. 菊池洋一

    ○菊池説明員 お答え申し上げます。  ただいま通産大臣の方から御紹介いただきましたとおり、政府の規制緩和推進計画の再改定におきまして、ストックオプション制度については九年度中に結論を得て、十年度の早期に導入するということになっているわけでございます。これは「ストックオプション制度の一般的導入」という事項名になっておりますが、その内容といいますか、意味するところは、株式会社であれば、どの会社でもストックオプションを利用することができるように法制度の整備を図るという趣旨でございまして、そうなりますと、商法に必要な手当てをするというふうに私どもは考えておりまして、規制緩和推進計画に従いまして、九年度中には結論を得て所要の法律案を国会に御提出させていただきたい、そういうつもりで現在鋭意検討を進めているところでございます。
  26. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 これは大変重要な問題であり、これは国政の課題でもありますので、当委員会を通じてもこの議論をさらに深めていきたいというふうに思っております。  続きまして、Sコーポレーションの問題について御質問をさせていただきたいと思います。  渡辺局長、恐らくSコーポレーション、御理解をされているというふうに思いますが、アメリカでは、通常の会社であっても、法人税を課すのではなくて、出資者に対する所得税を課すSコーポレーションという税制上の優遇措置、優遇する制度があり、百九十万もの企業がこの制度の適用を受けています。この制度を活用すれば、投資家がスタートアップ、創業期の企業に投資を行った場合、赤字であってもその分を投資家の所得と損益通算することができるため、創業期の企業から見れば、Sコーポレーションを選択することにより、投資家からの投資を受けやすくなっているわけであります。  我が国においても、新しい産業を創出していくためには、こうしたSコーポレーションのような制度を新たに導入をしていくということも私は必要ではないか、この点を私も提案をさせていただきたいわけでありますが、通産省としてこの問題をどのように考えておられるのか、お伺いをさせていただきたいと思います。
  27. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  今先生Sコーポレーションの例を引きまして、ベンチャー企業創出のための税制体系というのを考えてはいかが、こういう御指摘でございます。  アメリカを初めとする各種の税制の制度につきましては我々もかなり幅広く勉強いたしておるわけでございまして、先ほど来申し上げましたような基本的な考え方にのっとって、まず市場を創設し、それから資金を入れ、それで人材を育成し、技術を開発し、そして税制で投資家を導入する、こういう体系で考えておるわけでございます。それで、まず着手しましたのがエンゼル税制でございます。  ただ、おっしゃるように、法人税さらに所得税体系全体の中で、ベンチャー企業の創出、成長といった問題でさらにどういう問題があるのかということについては、先ほどの御指摘も含めて、さらなる勉強を続けてまいりたいと思いますけれども、まずは今回、今お願いしておりますエンゼル税制、これも実は税務当局とも相談いたしてつくった画期的なものだと我々思っておりますので、これの円滑な運営、定着というものに全力を尽くしたい、このように考えておるわけでございます。
  28. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 先ほどの局長のお話の中にも、このエンゼルを育成していくためにはまず店頭市場の改革というものが必要なんだ。さらに私は、今お話もありましたように、やはり税制面の改革というものも非常に重要だ、そういう意味では、今回のエンゼル税制の導入というのは画期的なことだと思います。  ただ、エンゼル税制だけで十分なのか、こういう議論があるわけでありまして、そういう意味では、このSコーポレーションのような制度をぜひこれからの新しい政策の中に視野として入れていただきたいなというふうに思います。  また、大蔵省の担当者の方、お見えでございますので、店頭市場の特則市場を開設をしてくれ、店頭市場を改革をしてくれ、さらにSコーポレーションのような制度を入れてくれというのは、もう矢継ぎ早のようでありますが、こういうものもぜひとも検討をしていただきたいなというふうに思っておるところでございますが、今現在の感想なり、お伺いすることができればというふうに思います。     〔委員長退席、小川委員長代理着席〕
  29. 川北力

    ○川北説明員 Sコーポレーションについての御質問がございましたので、お答え申し上げます。  アメリカのSコーポレーション制度、先生からも御指摘ございましたように、一定の条件に該当する小さな規模の法人の場合に、法人税ではなくて、株主の所得として所得税を課税するという仕組みでございます。日本の場合、非常に私法上の法人格というものを大事にした法人税の仕組みになっておりますので、法人単位の課税ということで、私どもといたしましては、いろいろなベンチャー企業への支援は、法人単位で法人税の租税特別措置というような形で支援を行ってきているというところでございます。  そもそも、Sコーポレーション制度につきまして日本の税制をどうするかということになりますと、所得税と法人税の兼ね合いということで大変大きな御提案でございます。今のところ、私どもの税制上の課題といたしましては、日本の場合、むしろ個人から法人になっていく法人成りが多い、個人の事業者が少なくて、小さな規模の事業者が法人の形態を選ぶということについて税制上どう考えるかということがこれまで大きな議論となってきておりまして、そういう意味で、御指摘お話は法人を個人と考えるということでございますので、そういった方向の議論がこれまで余り煮詰まってきておらなかったという状況ではなかろうかというふうに考えております。  今回のいわゆるエンゼル税制につきましては、現在の日本の税法の仕組みあるいは株式のキャピタルゲインの課税が分離課税をとっているということの前提のもとで、譲渡損を三年間先延べして繰り越していく、損益通算できるという形でございますので、現行の制度の中では、現行の税制を前提といたしますと、相当大きなインセンティブ措置になり得るものというふうに考えておるところでございます。
  30. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 私は、ベンチャー企業に投資をしていくに当たって、今お話もありましたけれども、これは大きなインセンティブを与えるものだというふうに思っております。そういう意味では、これからこの議論を深めていかなければいけないというふうに思いますので、大蔵省当局においても、ぜひともこの辺について積極的な検討をお願いをしておきたいというふうに思います。  続きまして、マッチングシステムの問題についてお伺いをしたいと思います。  これもエンゼルを育成をしていくに当たって重要な視点でありまして、アメリカでは、エンゼルとベンチャー企業の起業家とのネットワークが非常に充実をしているわけであります。例えば、大学を核として非営利組織が運営をするコンピューターネットワークというものが、十以上アメリカの場合にはあるわけでありますが、日本では、こうしたネットワークづくり、マッチングシステムの構築に向けてどのような取り組みをされているのか、通産省にお伺いをしたいと思います。
  31. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答えを申し上げます。  今、もう既に先生よく御案内のように、アメリカでは、投資家の集まる場所で起業家と直接的な出会いが行われるようなマッチングシステム、それから投資家と起業家とがコンピューターを通じてマッチングできるような方法、こういったような、大きくいいますと二つに大別できるような形でマッチングシステムが動いております。特に、アメリカのコンピューターネットワークが発達いたしておりますものですから、例えばMITが運営するようなテクノロジー・キャピタル・ネットワークといったようなのが、大々的に今アメリカネットワークでマッチングが行われておるわけでございます。  我が国におきましては、こういったことも頭に置きまして、平成七年の三月に中小企業事業団が中心になりまして、ベンチャープラザやあるいはベンチャーリンクといったような名前で、民間でベンチャー企業とそれからそれに投資を行う人たちとの出会いの場を創設したわけでございまして、昨年一年間でこういったような出会いの場を全体で十三回実施いたしておるわけでございます。  さらに、最近では、今の第二の形態、ディーブレインといったような会社がございますけれども、こういった民間会社がインターネット上で構築しておりますネットワークを使いまして、幾つかの情報を提供し、出会いの場をつくろう、こういったようなものが現在動き始めておるわけでございます。  私どもは、先ほど来申し上げましたように、この出会いの場、特に我が国の場合はエンゼルの掘り起こしというのが非常に重要でございますので、ベンチャー企業が今すくすくと芽を出そうとしておるこの時期に、出会いの場、情報の提供、これに全力を尽くしたい、そういうことで環境整備を図っていきたいということでございまして、これにつきましては、中小企業庁さらには産業政策一緒になりまして全力を尽くしてまいりたいと思っておるところでございます。
  32. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 今のマッチングシステムの問題、これは非常に重要な問題であります。後ほどこの問題について掘り下げた質疑もあろうかと思いますので、私は、次に産学連携の問題について、残り時間、質問をさせていただきたいというふうに思っております。  たびたびになりますけれども、アメリカでは、大学で生まれた技術産業界へ円滑に技術移転されていたり、大学先生や学生がベンチャー企業を起こしたりするなど、ベンチャー企業の創出に大きな役割を担っているわけであります。一方、日本の場合には、大学で生まれた知的資産が有効に産業界へ移転しているというわけではありませんし、また大学からベンチャー企業が次々生まれている、こういう状況でもないわけであります。  これは、例えばアメリカ大学では、大学自体が特許を生み出したり、テクノロジー・ライセンス・オフィスと呼ばれる組織を有効に活用して大学一定の収入が入る仕組みを構築をしている。また、大学先生にも、研究開発を進め、特許権を生み出した場合に一定の利益を得られるような制度になっており、インセンティブシステムが確立をしている。また、大学先生企業で働いたり企業を起こしたりしやすい制度になっているということが背景にあるというふうに思います。  今後、我が国でも新規産業を創出していくためには、大学から生まれてきた研究成果が産業界に円滑に技術移転されるような規制の緩和、新たな仕組みの構築が私は必要であるというふうに考えておりますが、通産省としてこの点についてどのような認識をお持ちなのか、お伺いをしたいというふうに思います。
  33. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  大学ベンチャー企業との結びつきの重要性、これはもう御指摘のとおりでございまして、よく言われておりますけれども、シリコンバレーの現在の状況というのは、アメリカのスタンフォードユニバーシティー、隣接しておりますが、これとの一体的な、特にその大学先生あるいはそこの卒業生、こういったようなものとの結びつきが今をつくったと言われておる例からも見られますように、大変重要だと思っております。  私ども、特に産学官の連携というものの重要性をこのところ強調いたしておるわけでございまして、昨年十二月に閣議決定いただきました経済構造の変革と創造のためのプログラムにおきましても、この点について、幾つかの直ちに実施すべきこと、さらに長期的に実施すべきことというのを指摘しておるわけでございます。  その中で、先ほど先生から御指摘のありました問題意識と全く軌を一にするわけでございますが、例えば国立試験研究機関、これの研究職が民間の企業の職員を兼務できる形にすることによって、彼らの持っておる知識というのをベンチャー企業のために活用する、こういったようなことができないかということで、既にこれは平成八年十月に通産省の所管の関係の国立試験研究所はそれを先行して実施したわけでございますけれども、先般の閣議決定に基づきまして、四月一日から、国立大学におきましての大学の教授が今言ったような形での兼業ができる姿にする、こういったようなことで既にこれに踏み切ったわけでございます。  さらに、我々といたしましては、先ほど申し上げましたが、大学研究開発を行った場合の研究者あるいは大学、それが持っておる各種の知的所有権がございます、この知的所有権をベンチャー企業がうまく活用できるような、そこの連携を図るための、運用でやられる部分が相当あると思いますけれども、さらに制度的にこれをより改善することができないか、こういったようなところに着目いたしておるわけでございまして、この春には、さらに中期的な視点に立って、各種の産学官連携内容をプログラムの行動計画として打ち出すつもりでございます。その中に、文部省その他からも今随分お知恵をいただいております。関係各省、力を合わせまして、先生指摘のような御趣旨の方向で思い切った一歩、二歩を踏み出していきたい、このように考えておるところでございます。
  34. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 今、局長から文部省というお話がございましたので、文部省の担当者の方にも来ていただいているというふうに思いますが、今お話がありましたように、また、私先ほど質問をさせていただいたように、アメリカの場合には、新しい技術を開発すれば、その技術を、ライセンスオフィスというのがあって、リエゾンオフィスというのがあって、この技術を使ってビジネスを起こしましょうよと言って売り歩く、そういう組織というのがあるわけですね。そして、それが利益を生むことができれば、三分の一が大学に、三分の一が学部に、そして三分の一がその開発をした先生にその利益が渡るような仕組みになっているということであります。そういう意味では、大学というものがベンチャー企業を創出していくに当たって大きな役割を果たしているわけであります。  そこで、日本も、今議論になっているように、大学がこういった分野において大きな役割を果たせるように、規制の緩和であるとか新しい仕組みというものをつくり出していかなければいけないというふうに思っているわけでありますが、文部省としてこの問題をどのように認識をされているのか、お話をお伺いしたいと思います。
  35. 遠藤啓

    遠藤説明員 大学における特許の仕組みからまず御説明を申し上げたいと思いますが、これは原則といたしまして、教員個人に属するという取り扱いになっております。例外的に、特定の場合のみ、国立大学の場合には国に属するというふうな形になっておるわけでございます。この際、その特許の実施に伴う収入の取り扱いにつきましては、大半を占める教員個人の特許の場合、教員個人の収入になるということになっておるわけでございまして、それを一律に大学等に還元するということになりますと、やや難しい問題があると考えております。また、国有特許の場合には、発明者に対して発明補償金が支払われることとなっておりまして、その余は国の収入となるという状況でございますが、実際問題といたしまして、国の収入実績というのは余り上がっていないという状況にあるわけでございます。  しかしながら、御指摘の問題につきましては、私どもも重要な問題と考えております。本年三月、産学連携協力の在り方に関する調査研究協力会議から御報告をいただいておりますが、その報告におきましても、大学の特許等の知的財産から生じたロイヤルティー収入を大学の教育研究活動等に還元するための具体的な方策について検討する必要があるという御指摘をいただいているところでございます。  私どもといたしましても、関係省庁と連絡をとりながら、種々の方策について検討していきたいと存じておるところでございます。
  36. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 今、前向きなお話があったわけでありますけれども、アメリカベンチャーキャピタリストから見れば、日本大学あるいは研究機関というのは新しいビジネスを起こしていく種に満ちあふれているのだ、こういう話があるわけであります。しかし、そういうような種があっても、それを事業にしていく仕組みがないわけであります。これをつくり出していくことが非常に私は重要ではないかというふうに思います。  先ほど、特別会計の問題についても文部省の方からお触れになられました。そういう意味では、大学で新しい技術を開発をすると国の懐に入っていくわけですが、余りそういう収入がないんだ、こういうお話でありますが、それはインセンティブがないからであります。これは、大学で新しい技術を開発をして、それが非常に価値あるものであれば、国の会計に戻すのではなくて、その大学に直接戻すような仕組みに大きく変えていかなければいけないのではないか、そのことがインセンティブとして働いていくことにつながっていくというふうに私は思っておりますので、特にこの点についても、文部省の方にはぜひよろしくお願いをしたいというふうに思います。  さらに、知的所有権の問題から特許の問題に移らせていただいて、質問をさせていただきたいというふうに思います。  現在、六十四万件ある特許のうち四十五万件が未使用特許、休眠特許であるわけでありますが、こういった特許も新しいベンチャーを起こしていく種やあるいは大きなきっかけになり得るのではないかというふうに思います。そういう意味では、今の仕組みのままで本当にそういうことに資するような形になるのか、新しい仕組み、新しい工夫というものを導入をして、この特許というものを幅広く利用できるような、そういうものに変えていくということが必要ではないかというふうに思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
  37. 荒井寿光

    ○荒井政府委員 先生指摘のとおり、我が国には、特許権は取得されておりますが、事業化には結びついていないという休眠特許が多く存在しております。特許情報は宝の山だとも言われておりますが、こういう休眠特許を中小企業が活用して事業化を図っていくということは、企業技術力向上にとりましても、新規産業ベンチャービジネスの創出のためにも、極めて有効だと思っております。  特許庁では、休眠特許を有効に活用して特許市場をつくり上げるということが必要と考えておりまして、本年度から、特許流通データベースの整備、特許流通フェアの開催、特許マップの作成、特許流通アドバイザーの派遣など、いろいろな事業を実施して、何とか効果を上げていきたいと考えております。  先生の御指摘も踏まえまして、施策の一層の推進に努力してまいる所存であります。
  38. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 残り時間もあとわずかになってまいりましたので、通産大臣に最後にまとめて御質問をさせていただきたい、締めくくりの質問をさせていただきたいというふうに思います。  貴重な時間を一時間いただいて、私からは、エンゼルというのはどういうものなのか、なぜ日本ベンチャー企業の育成に当たってエンゼルというものを重要視していかなければならないのか、そして、このエンゼルというものを育成していくために何をしていかなければいけないのか、これからの新しい産業政策とは何なのか、こういうことについて今まで質問をさせていただいたわけであります。具体的には、店頭市場の改革も必要だ、エンゼル税制というものが導入されたけれども、さらなる税制の改革にも取り組んでいかなければいけない、ストックオプションの問題もあるへあるいは産学の連携というものをさらに図っていくような、そういう仕組みというものをつくっていかなければいけない、こういうお話をさせていただきました。  私は、一九九四年以降、アメリカ日本経済力がこれだけ差が開いてしまったのはどういう理由があるのかなということを最近よく考えております。私は、こういう差が出てしまったのは、景気後退、リセッションのときの対応に大きな差があったのではないかなというふうに思っているわけであります。  アメリカは、ブラックマンデーが起きた八七年以降、実は、今話題になっておりますエンゼルやあるいはベンチャーキャピタルというものが非常に活発に活動して、新しい産業というものを見つけ出してきて、そこに果敢に投資をしてまいりました。そのことによって、この七年間、メガベンチャーと呼ばれるような、そういう企業というものが次々と輩出をされてきているわけであります。そういう意味では、アメリカベンチャーブームのスタートはブラックマンデー以降にあったというふうにも言えるのではないかというふうに思います。  しかし、一方で日本ではどうかというふうに考えてみると、日本の場合には、この時期に、どちらかというとベンチャーキャピタルもほとんど休眠状態になってしまっている。全体的なムードが、何か新しいことをするよりも、ダウンサイジングをして、リストラをして身軽になりましょう、こういうことでこの時間を過ごしてきてしまった。そのことがこれだけの大きな差になってしまったのではないかというふうに思います。  アメリカの中では、例えばマイクロソフトやコンパックという会社は、もう既に売り上げが一兆円を超える、こういう企業に育ってきているわけであります。これは、日本のNECやトヨタを超える会社がこの七年間にアメリカでは現実に生み出されてきた、こういうことではないかというふうに思います。  さらに、アメリカのこの七年間、成長した産業を調べてみますと、例えば製造業においては、この七年間の年平均として、半導体は一五・四%、医療器具は七・九%、電子医療装置は七・一%、医薬品は七・一%、プリント基板は六・八%、年平均で成長しています。また、サービス産業を見ても、衛星ビジネスは何と四四・三%、電子情報サービスは三六・一%、データ処理サービスは一九・六%、健康サービスは一一・五%、音楽ソフト製造は一一・二%という驚異的な勢いで成長しているわけですね。こういった産業の担い手は、大企業ではなくてベンチャー企業なわけであります。  そういう意味では、私は、相当なスピード感を持って、新しい産業を起こしていくための具体的な政策というものを実行していかなければいけないというふうに思っているわけでありますが、通産大臣から、最後にこの点も含めて、今後の産業政策展開、新しい事業をどうやって起こしていったらいいのか、その決意をお伺いをできればというふうに思います。
  39. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 伊藤委員指摘のように、また、先ほどからの質疑を聞いていて、いろいろな示唆に富む話が出まして、大変いい勉強になりました。  今御指摘のように、大競争時代、こういうことを迎える中で、深刻化しているのが我が国の雇用空洞化の問題であります。そういうことで、良質な雇用機会を確保していくため、こういうことで、経済構造改革、そういうものもプログラムをつくってこれから実行計画でやりますが、その中の一環としては、こうしたベンチャー企業、こういうものでもって新たな産業というものをつくり出そう、こういうわけでございます。  今おっしゃいますように、私自身が申しましたように、これから新しい十五分野、その中においては、非常にベンチャー的な要素というか、これによって伸びていくであろうという企業というか産業が多いわけでございます。そういうことで、これからは、先ほども申し上げましたように、資金と技術力そして人材、これをうまく組み合わせていかなければ、あらゆるものができないということで、特に、資金という面においては、ベンチャー税制も必要ですが、店頭特則市場の創設だとか、それからストックオプション制度の導入、こういう面でもって総合的に支援していきたいと思うのです。  そして、こういう中において、エンゼル税制は、こうした基本的認識のもと、資金調達の困難な創業期ということで、この中に豊富な民間資金を導入していくということで、スタートとなりますから最も大事だということでございまして、こういうことでもって、先ほども申したように、これからの将来というものは、私たちの方で閣議決定し、そして今進めております経済構造改革、これを誠実に実行することによって、こうしたベンチャービジネスの環境整備にもまたつながる、かように考えております。
  40. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 ありがとうございました。これにて質問を終わらさせていただきます。
  41. 小川元

    ○小川委員長代理 次に、石井啓一君。
  42. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 新進党の石井啓一でございます。  まず最初に、今回、法案提出の背景でございます中小企業の現状について、大臣にお尋ねをしたいと存じます。  中小企業、特に中小製造業、この開業率、廃業率のデータ、この推移を見ますと、昭和四十年代初頭におきましては、開業率六%、廃業率二・五%程度であったものが、その後、開業率はどんどん長期低落傾向といいますか、だんだん少なくなって、一方、廃業率の方は最近少しふえておりまして、平成元年以降は廃業率が開業率を上回っている事態になっております。平成三年から六年の間の数値を見ますと、開業率が三二%に対して廃業率は四・五%、こういう状況でございます。  言うまでもなく、我が国の産業を支えてきましたのは製造業、とりわけ中小製造業が下支えをしてきたわけでありますけれども、このような、廃業率の方が上回るようになった、こういう事態が続きますと、製造業の基盤が崩れかねない、こういう憂慮すべき事態であると私は考えます。  そこで、大臣のこういった状況に対する御見解と、その原因についてどういうふうに認識をされているのか、お伺いをしたいと存じます。
  43. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 石井委員にお答えいたしますが、今御指摘のように、全産業の開業率は、近年やや持ち直しが見られるものの、長期的には低下傾向にあり、一方、廃業率は上昇傾向に推移しております。平成元年から平成三年の間に初めていわゆる開業率と廃業率というものが逆転して、廃業率の方が開業率を上回る、こういう状況が続いてきております。特に、製造業においては近年さらに開発業率の差が開いておりまして、創業をめぐる環境というものは非常に厳しいものになっている、実はこんな認識を持っております。  その原因ということにつきましては、平成八年版の中小企業白書で分析しておりますが、その中においては、自己資金の不足や借入が困難になった資金面の問題、必要な技術、知識を持つ人材、こういうものの確保が困難となっている、また販売先、受注先の確保といった取引面など、いろいろな点で創業者が厳しい状況に置かれる、こういうふうに考えられる、かように分析しております。  いずれにいたしましても、我が国経済の現状としては、開業率の低下により我が国経済の活力が損なわれているということが懸念されている状況であるという認識は強うございます。
  44. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 今、原因の中で、資金、人材、あるいは販売先、受注先等の減少、こういうお話がございました。  特に、その中の人材という面でお伺いをしたいと思いますが、これは先般の特定産業集積活性化法の議論の中でも随分御議論をいただいたところでありますが、中小製造業の大きな悩みの一つはやはり後継者不足ということでありまして、後継者がいないためにやむを得ず廃業せざるを得ない、こういうところもたくさんございます。また、三Kなどと言われて若者がなかなか製造業の現場に寄りつかない、そういう構造的な問題もございます。  ところが、製造業の発展を支えてきたのは、物づくりの名人と言われるような職人さんの腕が大きな力になってきたという現実があるわけでございまして、私が懸念しますのは、いわゆる技術というのは記録をして後世に残せるものでありますけれども、技能というのは記録として残せないもので、これはもう人から人に伝授するという性質のものでありますから、後継者がいないということはその技能が途絶えてしまうということになりかねない、一度途絶えたものはなかなか復活するのは難しい、こういう状況でございまして、中小製造業の後継者対策、特に技能の伝承といいますか、そういったものの対策について、大臣にお伺いをしたいと存じます。
  45. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 今御指摘のように、戦後、我が国の製造業、これの成長を支えてきたのは中小企業、そして生産現場で働く技術者、技能者の方々であるということは言うまでもございませんし、今後、こうした優秀な人材を確保し育成するということは甚だ重要なことであります。  しかし、今御指摘のように、技術者、技能者というもの、特に技能者に関しましては、高齢化が進んで、そして若者の製造業離れということで人材の確保が難しい、また就職しても数年間でやめてしまうという定着率の低さ等から、今まで養ってきた技術を次の世代に継承するということが甚だ困難になってまいっております。こうした状況は今後我が国の製造業の発展にとってゆゆしき問題だ、かように認識を持っておりますが、今御指摘のように、技術というものは継承、残せますが、技能というのは、やはりある意味ではその人その人の持っている天賦の才能というか、こういうものもあるかと思います。  そういうことで、当省といたしましては、中小企業庁技術者の研修制度とか、それから中小企業への技術指導等により、中小企業技術力の維持向上に努めてまいっております。これからも、研修制度の一層の充実に加えて、本年三月に成立させていただきました地域産業集積活性化法等によって産業そのものの活性化、中小労働力確保法による職場環境の改善、こういうものに努めていく所存でございます。
  46. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは、続きまして、中小企業創造活動促進法、平成七年に制定をされたわけでありますが、これまでの実績についてお伺いをしたいと思うのですけれども、この法律平成七年に制定をされて、平成八年に改正をして、また今回改正をする。三年続けて法律について手を入れるというのは、実はこれはなかなか異例の事態であろうかと思いますが、それだけ通産省の当局もこの法律について力を入れてやっている、こんなことであろうかと思いますけれども、私はこれまでの実績についてちょっと確認をしておきたいと思います。  まず、研究開発事業計画、これは都道府県知事が認定をすることになっておりますけれども、この認定の件数とその内訳ですね。特に、業種別の内訳がどうなっているのか。あるいは、これは特徴的なのは、これから創業する方も計画をつくることになっておりますが、個人で創業した方というのはどれだけいるのか、こういう内訳。あるいは、この認定を受けた方が、いろいろな支援策のメニューがあるわけでありますけれども、どういう要望が多いのか。そして、支援策の実績というのはどうなっているのか。こういったことについてお伺いしたいと思います。
  47. 田島秀雄

    田島政府委員 お答え申し上げます。  御質問のございました中小企業の創造法は、中小企業の創業の支援技術開発ということを御支援申し上げるということで、一昨年四月に施行いたしたわけで、施行後まだ日が浅いわけでございますけれども、都道府県の御協力も全面的に賜りまして、本年三月末現在、知事の認定件数で二千百五件という多きに上ってございます。  業種別に見ますると、製造業が約六八%、そのうち一般機械、電気機械がそれぞれ約一五%ずつということでございます。また、サービス業は一七%、うち情報サービス業が多くて二%ということでございます。  また、個人で認定を受けた事例は六十七件ございますが、このうちの約半数の三十件が認定を機に創業に至ったというものでございます。  ベンチャー企業事業を行っていく際には、資金面、人材面、経営面など、解決をすべき問題がたくさんございます。中小企業庁といたしましては、こういった課題に対して各種の施策を展開してまいっておりますが、御指摘の創造法の認定を受けた中小企業につきましては、やはり技術開発への補助金でございますとか、あるいは金融上の支援という点について御要望が特に多いというふうに承知をしております。  制定以来、支援策の利用実績について申し上げますと、平成七年度、八年度、二年間で技術改善費補助金につきましては、対象件数五百四十七件、総額七十三億円、それから金融面では、特に信用保証協会の保証件数が大変多うございまして、七年度から八年の十一月までで債務保証四百九十六件、百三十六億円といったような状況になってございます。  今後とも、この法律を御利用いただく方々のニーズを的確にとらえて、円滑な施行に努力をしてまいりたいと思ってございます。
  48. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 先般、この補助金の平成九年度の予算額をお伺いしましたところ、二十七億円。これは国費なんでしょうかね、ちょっと確認しませんでしたが、二十七億円という額。実績七十三億円。大変御努力いただいていると思いますけれども、ほかの省庁の予算と比べますと、もっともっと御努力をいただきたい、応援をする意味で申し上げたいと存じます。  それから、昨年ベンチャー財団制度が創設されたわけでありますけれども、ベンチャー財団制度によりましてベンチャーキャピタルの投資をより促進する、こういうふうになっておりますが、この財団の設立の状況等、実際に財団による金融支援はどういう実績があるのか、これについても確認をしたいと思います。
  49. 田島秀雄

    田島政府委員 ベンチャー財団と申しますのは、先ほどお話ございましたが、平成七年度の第二次補正予算をちょうだいいたしまして創造法を改正をいたしまして設けた、再保険の仕組みを設けた制度でございます。中小企業事業団が都道府県と協力して直接金融支援を行うというものでございますが、この事業におきましては、ベンチャー企業への投資の窓口となりますベンチャー財団を各都道府県に、既存の施設等も有効に活用していただきながら設けていただくということで、これまで四十一道府県につきましてベンチャー財団が設置をされてございます。先ほど申し上げましたが、昨年四月に法律を改正しまして、再保険のシステムを導入をいたしたわけでございます。  これまでの投資実績でございますが、これは先ほどの制度よりもっと日が浅いものですから、まだ一生懸命今やっておる、都道府県も職員の方も一生懸命やっていただいておるという状況でございますが、八年度末までに三十八道府県におきまして百四十二企業ベンチャーキャピタルからの出資が行われておって、その総額は七十二億円、こういうことでございます。
  50. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 このベンチャー財団も設立されてまだ日が浅いということかと存じますが、今後この実績を積み重ねて、よりベンチャー支援が十分なされるようなことを期待をいたしたいと存じます。  それでは、具体的な法案の中身について、ちょっと細かくなりますが、何点か確認をしたいと思います。  今回の改正案では特定中小企業者の対象を拡大しておりまして、第二条第三項で第三号を設けまして、その特定中小企業者に対してエンゼル税制等を実施する、こういうことでありますけれども、この第二条第三項第三号の特定中小企業者、今回の支援対象を決めた、この基準を定めた根拠について確認をしておきたいと存じます。
  51. 田島秀雄

    田島政府委員 今回改正によりまして追加をいたします特定中小企業者と申しますのは、エンゼル税制の対象につながるという意味でございまして、相当程度の研究開発を行って、それをベースに新しい商品や新役務の開発、事業化ということを行うという企業をとらえたい、こういう趣旨に出るものでございます。  しかも、創業期の企業においてこそいろいろな資金調達手段も乏しいということで、政策的な手だてを講ずる必要性も高いということでございます。設立後五年を経過していない企業につきましては、いろいろな前例等も参考にいたしまして、そういった要請に合致をする、そういうふうにとらえられるんじゃなかろうかということで、設立後五年を経過していない企業をまず一つの基準としてとらえておるわけでございます。  それから、研究開発等の費用を創業期においてあえて支出をされる中小企業者という方々が創造的な事業活動を行われるという蓋然性が高いというふうに考えられまするところから、こういった研究活動の程度につきましても一つの外形基準というふうにとらえて、重ね合わせておるわけでございます。  研究開発の外形基準を三%といたしました根拠は、なかなかうまい統計がないのですが、総務庁の科学技術基本調査等によりますと、中小企業のみならず、大企業も含めた全産業の平均の研究開発比率というのが大体二%前後というようなことでございまするので、この三%を超えたような中小企業でございますると、大変真剣に研究開発をされ、それをベースにいろいろな御努力をされておるというふうに考えられるのじゃなかろうか、こういうことで採用させていただいたものでございます。
  52. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 もう一つ、後段の方ありますね、第三号の後段で、一年未満の事業者であっても、研究者の数あるいは研究者の割合が政令で定められたもの以上については対象になりますけれども、この後段の方の説明もちょっとお願いします。
  53. 田島秀雄

    田島政府委員 三%の研究開発費といいますのは、やはり実績がございませんと算出できませんものですから、創業後本当に日が浅くて一年未満というようなことですと、まだまだそういった実績等の数字も出ていない。あえてつくって持ってきてくださいというのも大変酷でもございまするので、研究者の人数等々で、一定の期間だけ、創業本当に間もない期間だけ三%にかわる基準で、いわば簡便な方法で対象を捕捉しよう、捕捉したらいかがか、こういう考えに出るものでございます。
  54. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 もう一つ細かい問題でありますが、法案の構成を見ますと、特定中小企業者のうち、第七条の二の通産省令で定める要件に該当する者に対して新たな支援措置を行うわけでありますが、この省令で定める要件の具体的な中身、これをちょっと確認をしておきたいと思います。
  55. 田島秀雄

    田島政府委員 お答えを申し上げます。  第七条の二の省令に係ります中小企業者と申しまするのは、外部から投資を積極的に受けようとされておられる中小企業者でございますけれども、同時にエンゼル税制の対象にもつながっていくというものでございます。したがいまして、そのような対象者として適切な、あるいは必要な外形的な基準を定める趣旨でございます。  具体的には、法律を成立させていただきました後になるべく速やかに制定をさせていただきたいと思いますけれども、現時点では、省令では、まず同族会社ではないといったこと、それから未上場、未登録会社であるといったこと、それから大企業の子会社や孫会社ではないというようなことを示すような基準を想定してございます。
  56. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 これは答弁は結構なんですけれども、本来であれば、この第七条の二の「省令で定める要件」というのが今回の支援措置の一番ポイントなんですね、特定中小企業者のうちのどこを対象にするか。私は、これは本来であれば省令でゆだねる事項なのかしらという、立法技術上のいろいろな問題はあろうかと思いますが、ちょっと指摘だけしておきたいと思います。  それから、この第七条の二で、「投資による資金調達の円滑な実施に必要な経営状況に関する情報の提供について診断及び指導を行う」、通産大臣が診断及び指導を行うものというふうになっておりますけれども、これはどういうことを実際に想定をされているのか、この点についても確認をしたいと思います。
  57. 田島秀雄

    田島政府委員 ベンチャー企業の皆様方が個人投資家の方などから資金を調達される場合に、ベンチャー企業の側から投資家に対しまして、その経営状況とか取り組もうとされる事業の概要とか、あるいは御自分の意のあるところ、意欲、展望等々について、的確な情報を提供されることがやはり必要であると思います。特にベンチャー企業の場合にはさまざまな不確定要素やリスクが伴いますので、これを十分に投資家に理解をしてもらってこそ、投資家の方々も的確な判断ができて、ではこれに投資をしようではないか、こういった状況が実現する、こういうふうに考えてございます。  しかしながら、なかなか現時点では、未上場、創立間もないベンチャー企業の情報というのは必ずしも十分に投資家のサイドに伝わっていると言えるような状況ではないのではないかというような御指摘、私ども、いろいろ勉強しておるプロセスでも御指摘も賜ってございますので、私どもといたしましては、投資家の投資判断に通常どんな情報が必要とされるのだろうか、どんな形で提供されたら投資家の投資の円滑化につながって、結果としてベンチャービジネスヘの円滑な資金供給につながるのだろうかといったようなことを考えまして、これをある種のガイドラインといいますかマニュアルといったものにまとめて、中小企業の方等の御依頼に基づいて、もしそういう御依頼があるのであればお示しをいたしたい、こういうふうに考えております。  また、これに加えまして、ベンチャープラザ等の場を活用いたしまして、ベンチャー企業に対して経営コンサルタントとか公認会計士等を紹介して、アドバイスを受ける機会を提供するといったようなこともいたしたいと思っております。  いろいろな取り組みによりまして、ベンチャー企業の投資家への情報提供は促進される、それを通じて資金調達が一層円滑に進むということを期待をいたしておるところでございます。
  58. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 今答弁にもありましたように、ベンチャーキャピタルあるいはエンゼルの投資を促進するという意味でも、情報開示というのは非常に重要だと思います。マニュアルをおつくりになるということで、要請に応じてこれを提示するというお話でありますが、政府が一々手とり足とりやるということはないと思いますけれども、そういったマニュアル等をつくるのであれば、その普及等にも努めていただきたい、このように思います。  それから、先ほどもマッチングシステムお話が出てまいりました。ベンチャービジネスとベンチャーキャピタル、エンゼルとの接点、結びつきということでありますけれども、先ほどもベンチャープラザ、答弁がありましたが、そういうイベントをこれからも進めるということはもちろんでありますけれども、日常的な情報提供のインフラといいますか、情報誌あるいはパソコン通信を活用したネットワーク、既にもうそういったものもあるようでありますけれども、そういう情報インフラの整備が重要というふうに考えておりまして、この点についての方策について伺いたいと思います。
  59. 田島秀雄

    田島政府委員 お答えを申し上げます。  御指摘のとおり、ベンチャー企業を育成していくという観点から、ベンチャー企業と投資家との間の日常的な情報交換、あるいはそのための環境の整備といったことが大変大事であると私どもも認識をいたしております。このために、既にベンチャープラザのホームページを立ち上げておりまして、ベンチャー企業の情報の発信を開始したところでもございますし、また、これまでブロック単位で、通産局単位で実施をしてまいりましたベンチャープラザをさらに地域に根づかせるということで、本年度からは、都道府県が開催するこういった同種の事業に対しましても御支援を申し上げるというようなことにいたしたところでもございます。また、各地で行われますベンチャープラザに関する情報を集めて、だれでも、いつでもアクセスできるような体制を今年度は整備したらどうかと考えておるところでございますし、こういったいろいろなことを通じて、御指摘の趣旨、常設化、日常化に向けたさらなる努力をいたしてまいりたいと思います。
  60. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それからもう一つベンチャービジネスに対する経営面での支援という点でありますが、この中小創造法においては主に金融面での支援措置を講じているわけでありますけれども、それと同時に、いわゆる経営に関する支援というのがこのベンチャービジネスを立ち上げるといいますか、大きく育てるための重要な要素であります。  先ほども伊藤委員質問にありましたように、アメリカにおけるベンチャーキャピタルあるいはエンゼルというのは、単に資金提供のみならず、幅広いさまざまな経営支援を行っている、このことによって多くのベンチャービジネスが成功しているということもございます。これはベンチャーの起業家にとってもメリットがあるのみならず、その投資後の経営支援を行うことにより、何というか、投資のリスクを抑えてリターンが期待をできるわけでありますから、ベンチャーキャピタルあるいはエンゼルを育てるという意味でも重要な事項であろう、また、我が国のこれまでのベンチャーキャピタルにおいては欠けていた面であった、私はこういうふうに思うわけでありますが、この金融支援のみならず、経営支援ということに対して、その方策についてお伺いをしたいと存じます。     〔小川委員長代理退席、委員長着席〕
  61. 石黒正大

    ○石黒政府委員 お答えを申し上げます。  ベンチャービジネスに対しまして、金融面の支援だけではなくて経営面のサポートもしろ、すべきではないか、まさに御指摘のとおりだと思います。極めて重要な問題だと思います。  これまで中小企業施策といたしましては、中小企業者方々の経営面、技術面の指導というようないろいろなことをやってきておりますけれども、ベンチャービジネスに着目した経営面の指導、研修といいますか、そういう面につきまして、既に八年度からベンチャービジネス用ということでスタートをさせていただいておりまして、先ほどお話がありましたベンチャープラザというところで一緒にやるというのもそういうサポートの一環であろうと思いますし、旧来からございます中小企業の指導診断事業の体系の中におきましても、ベンチャーの経営面のサポートということを今後とも力を注いでまいりたいと思います。
  62. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは最後の質問をさせていただきます。  先ほども、いわゆる産学の連携といいますか、大学の問題を取り上げられましたけれども、我が国のベンチャービジネスは、主に企業からのスピンオフといいますか、これが多いわけでありますが、アメリカでは、むしろ大学からのスピンオフが非常に多い。先ほども答弁でもありましたように、有名なところではシリコンバレーとスタンフォード大学との関係であり、あるいはルート一二八とMITとの関係であるわけであります。  一つ言えるといいますか、考えられることは、日本と欧米では研究者の流動性というのが大分違うのかな。我が国においては、大学大学、民間の研究所研究所、あるいは国立試験機関は国立試験研究機関、それぞれ終身雇用的な要素があり、なかなか流動性、交流というのが図られていない。まあさまざまな施策はとられているようでありますけれども、そういう背景もあろうかと思います。  今後、我が国においてもベンチャー創造への大学の大きな役割が期待されるところでありまして、そのための大学との連携方策、これについて通産省それから文部省、それぞれにお聞きをしたいと存じます。
  63. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、一例でいいますと、一九九四年の数字でございますけれども、アメリカ大学が特許を取得しておる件数というのが、千八百六十二件という非常に大きい数字になっておりますが、現在、日本大学による特許申請件数、これは公開中のものの件数でございますが、日本の場合は百二十四件ということで、けたが違っておるというような状況でございます。これは大学ベンチャー企業との特許との関係の比較でございます。さらには、大学におけるライセンスの実績でいきますと、アメリカの場合にはロイヤルティー収入が二億七千万ドルという九四年の数字になっておりますけれども、日本の場合、大学でそういうのを持っているのは約三千万円ぐらい、これもまた大変な差になっておるわけでございます。  こういう実績の数字から見ましても、今先生指摘のありましたように、大学の研究とベンチャービジネスと結びつけていくこと、これは極めて重要だという御指摘はそのとおりだと思っておりますし、我々も、この数年、その方向であらゆる政策努力をしておるところでございます。  それで、特に大学ベンチャー企業その他、あるいは一般企業との共同研究につきましても、昨年来、税制改正で大学一緒に行う共同研究の企業の税制の面についても新たな手当てをしていただくことで、今国会に法案をお願いしておるところもございます。  さらには、先ほど先生指摘のありました大学企業との研究者の交流でございますけれども、これも、今までどちらかというとその交流は進んでおりませんでした。それのネックとして、例えば大学先生が身分を民間の企業の職員にしました場合に、年金その他の通算のところで不利に働くとか、こういったような問題もございました。こういう点につきましても、現在、それについての手当てをすべく、法案が国会に提出されておると承知いたしておるわけでございます。  さらに、先ほども御説明いたしましたけれども、もっと大学と産学官の交流が進行いたしますように、運用面、制度面について、現在、関係各省、大学も入っていただきまして、経済界さらには有識者等で研究会をつくりまして、これの勉強を進めておるところでございます。  こういった成果を反映いたしまして、先ほども申し上げましたが、経済構造改革の行動計画の中でしっかりとこれからの方向を書き込んで進めていきたい、このように考えておるところでございます。
  64. 遠藤啓

    遠藤説明員 大学産業界との連携協力によりまして、ベンチャーの創設など、新産業の創造に生かしていくことは重要な課題と私ども考えているところでございます。  ただいま研究者の交流の促進という御指摘がございましたけれども、この関係でも、平成九年度から国立大学等の教官が民間企業において研究開発に従事できるよう、昨年十二月に兼業の許可基準を改正いたしましたほか、民間等との共同研究の場を拡大するべく、この三月に関係通知の改正を行いました。また、国立大学等の教官が休職によりまして企業等における共同研究等に参画する場合、退職金算定上の不利益がございましたけれども、この解消のため、今国会に教育公務員特例法の一部を改正する法律案を提出し、先般改正いただいたところでございまして、このような産学連携による研究を一層促進するための制度改正を行ってきたところでございます。  また、人材育成の関係でも、社会的要請を受けまして、平成七年度以降、ベンチャービジネスの萌芽となるべき研究開発の推進、あるいは人材の育成を目的といたしまして、二十四の国立大学ベンチャービジネスラボラトリーを整備しております。また、各大学において経営学的側面を中心としたもの等、多様な内容ベンチャービジネスに関する授業科目の開設ということも進めているところでございまして、今後とも、こうした施策に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
  65. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 時間が参りましたので、終了いたします。
  66. 武部勤

    武部委員長 次に、末松義規君。
  67. 末松義規

    ○末松委員 民主党の末松義規です。  きょうは、私、国会議員になろうとした一つの大きな理由が、このベンチャービジネスを育成したいということも理由にございましたものですから、率直にお伺いをさせていただきます。  今日本は、国を挙げてベンチャー企業やアントレプレナー、起業家、業を起こす人、これをバックアップすることが急務になっております。この国の支援の程度の有無が、将来の日本人の、私たちの生活を左右する、国の命運をかけることになるという認識を持っているわけです。  理由は二つございます。  一つは、日本が世界のトップコース、そういうコースを走り始めたということでございます。GNPが世界のGNPの約一八%強、こんな巨大な国になったということで、欧米のキャッチアップを卒業してこのトップコースを走り始めた日本は、それなりの国の命運のコース、そういうコースに入ったと思います。  これはどういうことかといいますと、その国の国民の創造力でもって新しい発想とか新しい技術、そして新しいサービスを開拓して、それを世界に提供していかなければ国が墜落していくというコースであります。  理由は、よく言われております高コスト体質、それがどうしてもこのくらいのレベルの国になってくると必然的についてくる。今の日本、コストを考えますと、土地代とかあるいは賃金、そして生活コストまた企業の税金など、どれをとっても世界一高いというレベルになるわけです。そうならば、安い商品を開発しようとする企業はすべて日本から逃げていく、いなくなっていくわけです。それが産業空洞化であり、産業空洞化になりますと、大失業時代が現出してくるわけです。そういった危機が私たちの目の前に迫っている。  これを解決していくのは、日本が世界で最も新しいサービス、新しい技術、新しい発想でもって商品開発あるいはそういったものを提供していくしかない。そうでないと、日本という国は未来の扉が開かなくなる、そういうことになるわけです。その担い手が、すなわち創造力あふれるベンチャーの起業家、あるいは創造的な中小企業であると私も思っております。つまり、日本にとりまして二十一世紀の時代の勝負というのは、日本人の創造性がうまく開発されるのか、それともされないのか、それによって決まっていくのだろう、これは国のコースについての認識でございます。  第二は、日本人の生き方についてです。  今、日本人は、この経済的な豊かさのおかげで飢えということを忘れました。皆が食べられる時代になりました。今、いかに食べなくてダイエットをしようかというような、そういう妙な時代になっております。  こうなりますと、人間というのは、単に物理的に生存しようというふうな物質主義的な価値が下がってまいりまして、今度は自己実現といった精神的な価値が重きをなすようになってきております。つまり、毎日生存できることを幾ら誇ったところで意味がなくなる。そうじゃなくて、自己実現、その人らしさといいますか、その人の価値というものを出して、その自分らしさというもので光り輝いていかに生きていけるのかということ、それが一番私たちの価値基準を決めるようになってくるわけです。  この自分らしさというものを難しい言葉で言えば、創造性ということになります。それが生産セクターに向かえばベンチャーという話になりますし、それが社会問題に向かえば、今度は市民活動とかあるいはボランティアとかいう活動になっていくわけです。結局重要なのは、いかにその人がクリエーティブに生きたかということ、これが未来の価値になると思います。私自身も、棺おけをあけるときは、本当に末松らしく生きたか、あるいは人の人生を生きていたのじゃないかという反省が、そこで入るのであろうと思います。  そういった意味で考えますと、国のコースそのものも日本人にこの創造性というものを問うている、そして個人の生き方そのものも、この創造性というものが必要あるいは求められる時代になってきた。つまり、その二つのコースがぴったりと合うわけであります。  そうした時代とともに、道具としてマルチメディアという道具を今得つつあります。これは時代の速度を加速化させるものであります。と同時に、この平成の大不況という時代を考えても、これは今までの時代の生き方あるいは産業のあり方に対して痛烈な反省を求める、神様が私たち日本人に反省を求めてきている、そういうふうな時代であろうと思います。  ですから、今求められているものは、キャッチアップという今までのやり方から、今度はパイオニア型にやっていかなければいけない、それが私たちの、この日本の進むコースでございましょう。それを支えていくものがこのベンチャーであり、アントレプレナーという起業家精神というものであります。その主要な任務を負っているのがまさしく通産省だろうと思いまして、私自身も本当に強く期待をしているところです。  具体的に言いますと、とにかく私は、この日本ベンチャー企業の成功例、一昔前のソニーとか本田とかいうふうなベンチャーの成功例を千なら千、一万なら一万、それをつくりたい。そして、大きくして成功例とやると、例えば末松というベンチャー企業があったら、これが成功したとすると、あの末松という男が成功したのだったら、あんな男が成功したのだったら自分にもできるというふうに考えれば、それはみんなおれもやろう、おれにもできるのだ、それが産業の活性化につながっていくわけです。それが実際的なやり方であろうと思います。  そういった意味大臣に御質問をいたしますけれども、そういったベンチャー企業の重要性あるいは日本の未来の扉を開くかぎであるという認識につきまして、お尋ねをしたいと思います。
  68. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 今委員の御指摘と、一口で言えば同感だということに尽きます。  これからの日本経済、こういうことを考えた場合に、このベンチャー企業の育成ということは、御指摘のように良質な雇用を確保し、産業空洞化の懸念を払拭する、こういうことで大変重要だという認識はまさに共通しておりますし、通産省といたしましては、新規産業ベンチャー企業の育成を図るために、店頭特則市場の創設だとかストックオプション制度の導入、技術開発に対する助成制度の拡充等、いわゆる資金面と人材面と技術面、この三面で総合的な支援を行ってきております。これからも引き続き、これらの方面での施策を実施するとともに、店頭市場のさらなる改革、規制緩和を通じて新規産業の創出、こういうことでそのための環境整備を図っていく。  これにつけ加えれば、私たちは今新しい世紀に向かって、このままの日本社会ではどうなるだろうか、日本経済はどうなるだろうかということで経済の構造改革のプログラムを策定していることは御案内のとおりでございますが、その中に、やはりこれからの担い手としてベンチャー中心に新しい産業を起こしていこう。その中での目標は、今御指摘のように電気通信分野であり、情報通信分野であり、あるいは医療、福祉、こうした分野であり、あるいはまた人間性の回復ということでは環境ということ、これを重視したそうした分野の産業をこれから伸ばしていかなればいけない、実はこんな観点に立っているところでございます。
  69. 末松義規

    ○末松委員 そういった意味大臣から御同感をいただいたということで、私も勇気の出る次第でございますが、このベンチャー支援に当たりましては、やはりベンチャー精神、つまり起業家精神を鼓舞していくということが必要であります。  今、国民の間を見ますと、例えば企業という話になってくると、どうもイメージの悪いものがたくさんございます。業を起こすという意味で起業家精神を高めるには、まず現在の国民感情からももっとそれはよくなってもらいたい、そう思うわけです。今の事業家や企業家に対する国民の評価が必ずしも高いものという感じがいたしません。  そのために、起業家精神を鼓舞していくというために、例えば、アメリカのSBAという日本における中小企業庁に当たるところで、ナショナル・スモールビジネス・パーソン・オブ・ザ・イヤーというアウォード、こういうふうな表彰制度があるわけです。これがホワイトハウスで大統領から表彰されるという、その表彰活動をやっているわけですけれども、そういった意味で私は日本でも、若干今やられているかもしれませんけれども、もっと起業家精神というものを鼓舞できるような、するような、そういった表彰制度、総理大臣賞あるいは通産大臣賞、そういうふうな表彰制度、例えばザ・ベスト・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー一九九八とか、そういうふうな形でどんどん鼓舞していける、そういう制度を提案したいと思いますが、これに対して大臣の御意見を伺いたいと思います。
  70. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 いわゆる制度というものをつくる前に、今委員指摘のように、どうもベンチャー企業というものに対する国民的な期待、イメージというものを統一する必要があるような気がするのです。  私考えますに、こうした新しい企業を起こす、起こす方というとどうしても若い人だというふうに感覚的になってくる。もちろん年をとった方がベンチャー企業をやってはいけないという規則はありませんが、何だかそういうふうなイメージがある。ところが、ここ数年前から、バブルというあの時代に、やはり何か青年実業家、それとイメージがダブってくるのではないだろうかと。  私は、委員指摘のように、この中でもまた一番これから大事なことは、このベンチャーの精神というのは、物づくりというか、やはりそうした技術、技能、そういうものが中心となって新しい創造をしていかなければいけないだろうと思うのです。ということが私の前提でございます。  おっしゃるように、大統領がそうした制度をつくっているということは実は聞いておりませんが、今のように、ベンチャーというものが日本の社会にどのように貢献するかということになると、今実は、御存じのように、非常に日本社会を明るくしたということで、例えば総理大臣管轄では国民栄誉賞というものがございます。やはりこうした中では、ああいうのが一番、あれはあらゆる方に、スポーツマンでも報道関係でも何でも、その道でもって社会に非常に希望を与えるような人に上げる、こういうことになっておるわけでございますので、私はそういうふうな国民的英雄がこれからの経済界において生まれることがやはり必要であろう、こう思っております。
  71. 末松義規

    ○末松委員 大臣、お言葉なんですが、国民栄誉賞というのは、評価のある程度固まった実績のある方に贈られる賞だと私は思うのですね。私が申し上げたいのは、そうじゃなくて、例えば芥川賞とかいうふうな、無名の方がそれをもらうことによってばっと権威を得るような、新人がもらったことで一挙に有名になって躍り出られるような、そういった新人に対する表彰制度、それをぜひひとつ御検討いただきたいと思います。日本人というのはどうも、私も外交官時代に一思ったのですが、人を褒めるという制度が余りないのだろうと思います。これからは、人をいかに褒めていくか、そういう制度をつくらないと、この国自身がもっともっと暗くなってくる、そういう気がいたします。  その教育がいかに大事かということで、文部省の方にちょっとお聞きしたいのですが、そういう起業家精神というかクリエーティビティー、そういったものを国民の若い人たちの間でも刺激をするような、そういう教育についてどういうふうにお考えなのか、御答弁いただきたいと思います。
  72. 池田大祐

    ○池田説明員 情報化、国際化、技術革新の進展、あるいは産業構造、就業構造の変化等、大きく社会は変化しておりまして、こうした中で、創造性の育成というのは学校教育においても重要な課題となっております。  このため、現在の学習指導要領におきましては、子供たちの個性を生かし、みずから学ぶ意欲や思考力、判断力あるいは表現力などの育成を重視し、教育内容の改善を行っております。  例えば、理科教育におきましては、観察や実験などを重視し、創造的に思考する能力あるいは論理的な思考力や問題解決能力の育成に努めております。また、工業や商業などの職業に関する各教科には、生徒がみずから課題を設定し、その課題の解決を図る学習を通して問題解決の能力や自発的、創造的な学習態度を育てることを目標にしました課題研究という科目もございます。  また、昨年七月の中央教育審議会第一次答申におきましては、これまでの知識を一方的に教え込むことになりがちであった教育から、みずから学びみずから考える力、あるいは創造性の基礎となる力の育成を目指した教育にその基調を変えていく必要があるというふうなことも指摘されております。  私どもとしましては、今後とも、一人一人の個性と創造性を十分に伸ばし、豊かな人間性と活力にあふれた人材を育てる教育の充実に一層努めていきたいと考えております。
  73. 末松義規

    ○末松委員 そういった創造性の教育をもっともっと、あらゆる限りふやしていただきたい、そういうふうに思うわけです。  では、ちょっと時間がありませんので、エンゼル税制の方について質問させていただきます。  まず、キャピタルロスの繰り越し年限を三年としておりますけれども、この根拠はいかがなものでしょうか。私が考えますと、ちょっと短過ぎるので五年間ぐらいにすべきではないかと考えるのですが、いかがでしょうか。
  74. 藤島安之

    ○藤島(安)政府委員 お答え申し上げます。  委員指摘のように、エンゼル税制のキャピタルロスの繰り延べ期間の問題でございます。現在三年で補てんをさせていただいております。  このエンゼル税制そのものは、投資家のベンチャー企業に対する投資リスクを軽減する、こういうものでございますが、厳しい財政状況の中で、特に新規事業の創出を促進するという政策的な必要性の観点から、現行の課税体系の中で最大限の特例措置を講じたものだというふうに我々考えております。長ければ長いほどいいわけでございますが、とりあえず今回の制度の着実な運用を図った上で必要に応じて再検討していきたい、こういうふうに考えております。
  75. 末松義規

    ○末松委員 お話を聞けば、財政状況、つまり大蔵省が問題だというお話だと理解いたしました。私も大蔵委員会に属しておりますので、この問題は別途大蔵委員会で取り上げさせていただきます。  次に、エンゼルの対象なんですけれども、これは日本人だけを相手にしているということでございますが、広く外国人もエンゼルになってもらえばよいのではないかと考えるわけです。インターネットなんかを利用してかなり海外からも引き合いが来ていると思います。そういった外国人に対しても何らかのインセンティブのようなものが考えられないのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  76. 藤島安之

    ○藤島(安)政府委員 エンゼル税制そのものは、日本の所得税の特例を適用する、こういうことでございますから、そもそも外国に住んでいる外国人に対しては適用がないということになるわけでございます。しかし、日本の居住者であれば所得税法が適用になりますので、そうした外国人については対象になるかと思います。  しかし、先生おっしゃいますのは、海外のエンゼルが日本ベンチャー企業に積極的に投資を行う環境をつくったらどうかというお話だと思います。我々も全く同感でございます。海外のエンゼルが、例えば御指摘にありましたインターネットを通じて我が国のベンチャー企業の情報を得まして、積極的に投資を行ってもらいたい、こう思うわけでございますが、我が国のベンチャー企業の実態を見ますと、アメリカベンチャー企業のように情報開示が十分ではないといったような問題が指摘されておりまして、なかなか十分な投資を受けにくいという現状にあるわけでございます。  こうした現状を見まして、我々としては、海外のエンゼルがベンチャー企業に投資できるような、そういう環境整備に努めたいと思っています。例えば昨年の九月にはベンチャー企業のためのディスクロージャーマニュアルを策定して、情報開示をベンチャー企業に十分するようにというようなことを促しております。こうしたベンチャー企業に投資が行われるような環境整備をいろいろな面で図ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  77. 末松義規

    ○末松委員 情報開示の問題は後で触れます。  次に、先ほど伊藤議員からもさまざまな御指摘もございましたエンゼルと起業家との出会いの場、この御努力について先ほど通産省の方からお伺いしたわけです。ベンチャープラザとかそういった御努力があるということは聞いておりますが、御指摘のように出会いの場をもっともっとあらゆるところにふやしていく、そこが確かに一番重要なことであります。そういった意味から、例えばベンチャープラザの延長線でもいいし、それ以外でもいい、例えば各県とか各市とか、あるいは各大学とか、そういった非常に大きな多数のレベルでその市場あるいは出会いの場をつくるということが考えられるのではないかと思いますが、これについて御意見をお伺いしたいと思います。
  78. 田島秀雄

    田島政府委員 お答えを申し上げます。  ベンチャー企業が生まれて成長していくということで、お金、技術、人材、いろいろな資源が必要でありまして、御自分でそういうものをすべて備えるというわけにはなかなかまいりませんので、そういった力を持っておられる方と出会うというのが大変に大事でございます。  ただ、ベンチャー企業が投資家とかそういったエキスパートと出会う場というのは、特に中小企業は大変少ないわけでございますので、そういったことに着目をいたしまして、ベンチャープラザという催し、投資家、ベンチャー企業に投資をしてもいいなと思っているベンチャーキャピタルとか、あるいはここで御議論いただいておりますエンゼルのポテンシャルを持っておられる方とか、それから人材、技術を持っておられる方とか、そういった方との場を設定いたしておりまして、八年度は十三カ所、十三回、七年度は一カ所、一回やっておるわけでございます。今年度以降も一層充実をして、中身も充実をしてまいりたい、こういうふうに思ってございます。そういう場が多ければ多いほどいいわけでございますし、私どもとしてもこういった催し、今年度からは都道府県がそういった催しをやられる場合にも御支援を申し上げるといったようなことにもいたしております。できるだけこの制度を充実し、強化してまいりたい、こういうふうに思ってございます。
  79. 末松義規

    ○末松委員 私のところに御説明に来た通産省課長さんが言っておられました。黒子に徹するんだということを言っておられましたが、僕は立派な言葉だと思いました。通産省として全部が全部自分でやろうとせずに、いろいろなやれるところのコーディネーターという形でそれを専ら中心に置いていただきたいと思います。マルチメディアを使ってもどんどんその出会いの場を広げていっていただきたい。  それから、それと同時に、このエンゼル税制、悪用される場合もあると思うのですね。例えば息のかかった会社ベンチャー企業という形にして、それで計画倒産をして悪用するような、そういったことが考えられるかもしれない、そういったことに対して罰則もきちんとしなきゃいけない、そういうふうに考えるわけです。この点については、通産省さんの御検討もあろうと思いますから、指摘だけにとどめさせていただきますが、ぜひその点についてもクリアなルール、ルールを破った者に対してはクリアな罰則というその自己責任をきちんとやっていただきたいと思います。  と同時に、先ほど話題に出ましたけれども、投資家の保護といいますか、つまり情報提供ですね、エンゼルに対する情報提供、先ほどベンチャーお話がございました、情報提供がなっておらぬと。そうじゃなくて、むしろ、本当にこのディスクロージャーをきちんとさせるような、そういうふうなマニュアルも作成されておられるようですから、それを諸外国との比較の上で遜色のない程度まで引き上げる努力、ベンチャー企業内容を透明化させる、そしてそれに対して投資家が自分の夢なりあるいはメリットなりをかけてやっていく、そういうクリアなシステムをとらないと、危なくて日本の制度は利用できない、日本人自身がそう思い出したら終わりであります。そういった意味で、今証券についても社会的な信用が問われているわけですけれども、そこについてどういうふうな御決意か、お伺いしたいと思います。
  80. 田島秀雄

    田島政府委員 ベンチャー企業に投資をするということは、不確定要素もあればリスクもあるということでございまして、個人の投資家から投資をしていただきたいということであれば、投資家のお立場からすれば、一体経営状況はどうなっているのか、将来の展望はどうなのか、いかなるリスクが内包されておるのかというようなことについての十分なディスクロージャーが必要である、これは投資家保護の観点からもそういうことが言える、こういうふうに承知をしております。  このディスクロージャーにつきましては、例えばアメリカでは、商慣行としてといいますか、実態上定着をしたというふうに言われてございますが、我が国の場合にはまだまだ投資事例等々も少ないものですから、こういった形になっていないわけでございます。一方、投資をするお立場からも、あるいは投資を期待するお立場からも、どういうふうな形で情報を提供したらいいのだろうか、あるいはきちんとした情報を提供するようにするべきではないかといったような御指摘があることも事実でございまするので、私どもといたしましては、投資家の投資判断に通常必要とされる情報がどんなものか、どのような形態で提供されるのが望ましいかといったようなことをわかりやすいマニュアルというような形でまとめて、御希望に応じてお示しをするかたがた、広くベンチャー企業の方に普及をしていくということを考えておるところでございます。  先ほど申し上げたベンチャープラザの場等を通じまして、経営コンサルタントや公認会計士、そういう方を御紹介申し上げて、個別にアドバイスを受けるということもあわせてやってまいりたいと思いますけれども、こうしたいろいろな取り組みによって情報提供が促進をされて、海外の場合と遜色のないような形にまで引き上げる努力を続けてまいりたい、こういうふうに存じております。
  81. 末松義規

    ○末松委員 ぜひその御努力はよろしくお願いします。  と同時に、私も海外に赴任しているときに外国人の方からよく言われたのですが、日本の教育というのは二つの訓練だ、一つは暗記の訓練、もう一つは集団生活の訓練、その二つだけじゃないか、教育の「教」、教えるということはそれでいいにしても、「育」、はぐくむという発想がない、そういうことをよく指摘されていたわけです。これも、創造性の教育とともに、こういった投資家教育というのですかね、資本主義の仕組みをきちんとわかりやすく、どのレベルでするのか、高校でやるのか、つまり社会人の一歩手前でやるのが一番いいのかもしれませんが、そういった教育もしっかりとしていただきたい。それとともに、インターネットの利用等についてもおくれないようにしっかりやっていただきたい。ちょっと時間の関係で、これは文部省の方に指摘をさせていただくにとどめます。  次に、ストックオプションについてお伺いしたいと思います。  先ほど、最近の閣議決定でストックオプション制度の一般的な導入、これが九八年度の早期導入ということでやられていると。法制審議会の審議を経るという、かなりタイムコンシューミングな審議があると聞いておりますけれども、これは日本の未来がかかっているということで非常に重要です。ぜひ遅滞なくこの導入が行われるよう法務省の方に最大限の努力をお願いしたいのですが、その御決意をお聞きしたいと思います。
  82. 菊池洋一

    ○菊池説明員 お答え申し上げます。  ストックオプションを一般的に導入する、すなわち、株式会社であればどの会社でもストックオプションを使うことができるような法制の整備をするということにつきましては、今委員指摘のとおり、三月二十八日の規制緩和推進計画の再改定で、九年度中に結論を得て十年度の早期に導入するということになっております。これは閣議決定をいただいたものでございますので、それに沿って私どもとしては最大限の努力をさせていただきたい、九年度中に結論を得るということで努力をさせていただくという覚悟で作業を進めております。
  83. 末松義規

    ○末松委員 大蔵委員会でも、外為法審議の席で菊池参事官にそういう御答弁もいただいたわけですけれども、ぜひそこはお願いしたいと思います。  それから、ちょっとお聞きしますけれども、現在のストックオプションの運用状況について、どんな状況なのかお聞きします。
  84. 藤島安之

    ○藤島(安)政府委員 ストックオプション制度は、平成七年の十一月の新規事業法、特定新規事業実施円滑化臨時措置法の改正によって導入されたわけでございますが、それ以来、順調に利用件数がふえてきております。  平成九年四月一日現在、新規事業法の認定事業者、八十三件ございますが、そのうち十九件のストックオプションの制度の利用があります。特別決議が行われました後、権利付与されるわけですが、そういう特別決議についても既に八社が決議を行っている、こういうことでございます。さらに、三月十四日には、このストックオプション制度を利用している企業のうち、一社が大阪証券取引所二部特則市場に上場するなど、成果を上げているところでございます。今後も引き続き着実な実施について努力してまいりたいと考えております。
  85. 末松義規

    ○末松委員 八十三社ですか、新規事業法の対象企業。私ちょっと思うのですけれども、日本を担うベンチャー企業育成、アメリカというのは、先ほど伊藤議員の御指摘もありましたけれども、本当に大変な数の企業がどんどん育とうとしている。それに対して、この新規事業法でも、予算が少ないというのはあるかもしれませんけれども、百社未満とかいうのであれば、これは胸を張って言える数字ではないと思います。  それから、大阪の店頭の特則市場に一社が上場できたということですけれども、その一社をどう見るか。最初の一社というふうに見るか、何だ一社しかないじゃないかと見るか、そこは大きな隔たりがあるところなんです。  私のお願いしたいのは、このすそ野を、数をこなせるようなシステムにしてほしいということなんですよ。少数の人たちをやっても意味がない、もっと広く、とにかくその母体を広くしていただきたいと思います。そうすることによって、成功する人は少ないかもしれませんが、その広い幅の中から成功者が出てくるわけです。ぜひ、そこはお願いしたいと思います。  それから、法務省の方に聞きますけれども、一般導入がなされた場合の企業数と企業の範囲というのですか、それはどういうふうになっていますか。外国企業なんかもこれは入るのですか。
  86. 菊池洋一

    ○菊池説明員 私どもが現時点で考えておりますのは、我が国の株式会社であれば、どの会社であってもストックオプションを利用することができるように法制を整備するということでございます。  ちなみに、私どもが把握しております統計では、全国で株式会社の数は百万社を超えております。  それから、今外国会社というお尋ねがございましたが、外資系企業というような観点から申し上げますと、我が国の商法に基づいて我が国で設立された会社であれば、仮に資本が外国、外国人あるいは外国法人からの資本であっても、それは我が国の民・商法といいましょうか、私法上は我が国の株式会社という扱いになりますので、商法が当然適用されます。したがいまして、商法でストックオプション制度が法制化された場合には、そういった意味での外資系企業もストックオプションを利用することができるということになるのではないかというふうに考えております。
  87. 末松義規

    ○末松委員 私がさっきから外国、外国とこだわるのは、要するに、日本のナショナリティーにこだわってはいかぬ。外為法の改正の審議でも私は申し上げたのですけれども、要するに、白猫でも黒猫でもいい、ネズミをとる猫はいい猫だというのをどこかのトップの方が言われておりましたけれども、日本人でなくても、日本という国の中に大きな市場が育って、世界各国から成長を求める人が日本に集まってきて、そういうふうな活気の中で日本経済が育っていく、これが健全なこれからの姿であろうと思います。そういった意味で、日本というナショナリティーは余りこだわらない方が私はいいと思います。そういった意味で、ぜひそこに気合いを入れてやっていただきたい。  それから、ストックオプションの導入で日本経済構造改革についてどういう影響があるのか、また、そのストックオプションの広報、普及の努力、これは通産省としてどうやっているのか、それについてお聞きしたいと思います。
  88. 藤島安之

    ○藤島(安)政府委員 委員御案内のように、ストックオプション制度は、企業にとっては、有能な人材確保に寄与する、特に、成長が期待される新規産業にとっては人材確保が容易になるわけでございます。それから、役員や従業員にとっては、みずからの努力で企業成績、株価を上昇させればより高い報酬が得ることができるために、経営努力、勤労意欲が促進されるといった大きな効果が期待できるわけでございます。  これに加えまして、株価の動きに敏感な企業経営への移行が株主利益に合致した経営を促す効果を有するということで、株式市場の健全な発展にも寄与するものと考えられるわけです。  したがいまして、ストックオプション制度が一般化をしまして普及いたしますと、先ほども大臣の方から御答弁申し上げましたように、多くの新規産業の創出をねらって私ども経済構造改革プログラムをつくったわけでございますが、そうした面で花が咲いて、大いに日本経済の活性化に寄与するものと期待しているわけでございます。そうした意味で、ストックオプションの制度の一般化を急ぎたいと思いますし、その普及にも努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  89. 末松義規

    ○末松委員 次は、働く方の従業員の立場からなんですけれども、そのストックオプションで雇用システムとか労働市場にどういった影響がありますか。労働省にひとつお願いします。
  90. 鈴木直和

    ○鈴木説明員 お答え申し上げます。  ストックオプション制度の雇用に対する影響という御質問でございますが、この制度の導入を進めるということになりますと、ベンチャー企業等に対する就業のインセンティブ、これを高めることになるわけでございます。そうした意味で、将来性の高い中小企業における人材の確保という面で大きな効果を発揮するものというふうに考えております。  また、こうした制度が広範に導入されるということになりますと、有能な人材にとりまして、自分の持っている能力、これを十分に発揮する機会がふえまして、そういった意味で労働移動が促進される、そういったような影響もあるものというふうに考えております。
  91. 末松義規

    ○末松委員 今いい点ばかり申し上げられましたけれども、何か悪い点はないんですか。
  92. 鈴木直和

    ○鈴木説明員 私ども、現時点では、そういった有能な人材が自分の能力を有効に発揮する機会がふえるという大きな効果があるものと考えております。  ただ、これからそういった制度が広範に導入されるということになった場合に、それが労働市場とか企業の採用行動、そういった幅広い分野で影響が出るというふうに考えておりまして、そういった影響については、これから注目し、また、分析をしていきたいと考えております。
  93. 末松義規

    ○末松委員 これから注目するんじゃなくて、今もう一年後にやられようとしているんですから、アメリカとか実際にあるところをどの程度研究しているんですか。
  94. 鈴木直和

    ○鈴木説明員 今の御質問の点で、これからストックオプション制度を広範に導入されることになりますと、そういった、先ほどのようなプラス面がまず第一に考えられます。それから、そういった人材の流動化とか労働移動の促進、これはこれからの産業構造の変化の中でも促進していかなければならない重要な課題と考えております。  ただ、そういう中で、勤労者にとってそれがどういう意味を持つのか、そういう点については、これから諸外国の例等も考えながら、必要な対策について検討していきたいと思っております。
  95. 末松義規

    ○末松委員 労働省の方に言いたいのは、本当にこれは、ある意味じゃ地殻変動を起こすような、そういうメンタルな変化も出てくるわけですよ。そういった意味で、労働省の方が、従業員の福祉の話とかいろいろな観点があるでしょうけれども、そこをぜひ認識していただいて、できる限り、労働市場が変わってきますから、それに対する備えといいますか、配慮もぜひ同時に行ってほしいと思います。  時間がなくなりました。最後の質問ですが、これは産学協力についてなんですが、先ほどからずっと産学協力についてお話を伺っておりました。  どうも日本大学には、特許という観点から、大学の教官に成果が帰属していて、それが学生の就職先とか教官の関係している企業、それとの間だけでメリットが循環しているような印象しかないんですね。そうじゃなくて、アメリカ大学のように、もっと大学に帰属させて、それから社会にどんどん還元させていく、そういうシステムがこれから望まれるのであろうと思います。  特に、先ほども出ましたテクノロジー・ライセンス・オフィスというのがアメリカの各大学にあるということですから、そういった仕組みを今御検討されていると思いますが、この点につきまして、通産大臣それから文部省の方でも、もっと産学協力がやりやすいシステム、ある意味では実利を伴ったシステム、特にアメリカの場合には、先ほども御案内ありましたけれども、大体一大学で数億円から数十億円稼いでいるという話ですから、日本全体のトータルで年間二千万円という話も聞いています。そんなシャビーなことはありませんので、ぜひそこの産学協力についての御決意を聞いて、私の質問を終わらせていただきます。
  96. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 今委員指摘のように、これから大学企業との連携、そして産学官の連携を一層推進することが必要だということは言うまでもございません。  こういう中で、大学や公的研究機関産業界との人的交流を円滑に図る、そういうことでいろいろ生み出される知的財産などが意欲あるベンチャー企業等に円滑にいくということが一番望ましいわけでございまして、今、一体何をしたいかということでございますが、現在、科学技術基本計画や経済構造の変革と創造のためのプログラムに基づきまして、兼業規制、大学先生で私たちの研究所、こうした兼業規制の緩和を初めとする産学官の連携の推進ということでもって、各種の制度の改正、これを行っております。  今言われるように、具体的に幾ら金をつけたかということは明確化されておりませんが、いずれにいたしましても、これからはやはり大学や公的研究所産業界との相互の連携強化によって、協力によって企業の創造的な事業活動が行われるよう、関係省庁とも連携を密にとりながら一層推進していきたい、かように考えております。
  97. 末松義規

    ○末松委員 これで質問を終えます。どうもありがとうございました。
  98. 武部勤

    武部委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      ————◇—————    午後一時五十分開議
  99. 武部勤

    武部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大森猛君。
  100. 大森猛

    ○大森委員 中小企業創造法改正案に関連して、まず景気問題、中小企業をめぐる問題についてお伺いをしたいと思います。  この間の八日に月例経済報告が出されました。景気は回復の動きを続けている、岩戸景気に並ぶ四十二カ月連続の景気回復と言われておりますけれども、ちまたではこの報告についてどのように言っているか、大臣は御存じでしょうか。国民生活の実感とはほど遠い回復局面だ、あるいは実感なき景気回復云々という形で、大変不評な評価、報告等もされているわけなんです。それもそのはずで、大企業の方は三期連続の増益、中には史上最高の経常利益を予想されている企業なども出ているわけなんですが、こういう一部の大企業とは大変対照的に、圧倒的多数の中小企業、国民の側は不況局面からまだ脱出していないというのが実感としてあるのではないか。  景気の二極化と言われているわけでありますけれども、今度の国会の冒頭でも私ども指摘をしたわけなんですが、その大きな理由として、景気の最大の回復の牽引車である個人消費が低迷から脱出していないということと、加えて、今度の予算は消費税増税、特別減税の打ち切り、さらには医療保険の改悪等による国民負担増、こういう九兆円もの負担増が個人消費を冷え込ます役割をしている、そういう政策が現にあるからということが言えると思います。  同時にもう一つ、これも経済白書で牽引車の役割を果たす主役の一つ指摘をしております設備投資についても、月例報告では回復傾向にあるとしておりますけれども、大企業に対して中小企業はやはりここでも力強さに欠ける、あるいはよくない、こういう側面は政府自身もこれはお認めになっていると思うのですが、今回の月例経済報告、今後の景気見通しとその要因について、まず大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  101. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 大森委員にお答えいたします。  今言われるように、月例経済報告、ああいうのはやはり数字でもっていろいろ議論がされます。御存じのように、ああした数字を見る限りにおいては、設備投資、住宅投資などの民需、これが堅調に推移しているということで、緩やかながらやはり回復の動きを続けている、こうした認識を持たざるを得ません。そうした中で、政府経済見通しにおいては、平成九年度の経済は、今御指摘のように四月から消費税率の引き上げ、こういうような影響がございまして、年度の前半は景気の足取りは緩やかなものの、次第に民需を中心に自律的回復を実現されていく、こう考えているわけでございます。  御存じのように、昨年というか、平成八年度は二・五%という成長率を見まして、これは大体達成するか、それより若干上回るということは御案内のとおりでございますが、そういうことで、平成九年度を通じて一・九%というように目標というか見通しを立てまして、そのうち今申し上げた消費税分は〇・九%下げるだろうということで、それを克服して年間を通じて一・九%、こういうふうに実は見ているわけでございます。しかし、これから今度、いわゆる景況感ということになると、やはり大企業中小企業、また中小企業の中においても工業部分と商業部分、そういうところで非常に跛行性を帯びている、地域性もある、こういうふうに見ております。  それで、私の方は、これからはやはりこうした景気の動向というものを注視しながら、先般成立いたしました平成九年度の予算、この円滑な執行をまず図る、こういうことでもって適切な経済運営というものに努力していくということでございます。それで、我が国の経済というのは中長期的には安定成長を目指すということで、さきに閣議決定いたしました経済構造の変革と創造のためのプログラム、これの着実な実施、こういうことに努めてまいる所存でございます。
  102. 大森猛

    ○大森委員 中小企業が力強さに欠ける、あるいはよくない見通し、日銀の企業短期経済観測調査、いわゆる短観でも、消費税先行き不透明とつい先般発表されたわけなんですけれども、こういう状況がどうして起こっているかという点で、これは私ども指摘をしておりますけれども、日本経済全体の中で、従業者数、事業所数ではおよそ八割から九割、売上高、出荷額では約五割を占める、日本経済の土台とも言える中小企業の置かれている現状、実態というのが今大変な状態であるということが、やはりこれはまず指摘をされなければならないと思います。  特に、大企業の海外進出、逆輸入を含む製品部品輸入の激増、産業空洞化が進行している、こういう産業空洞化という今の日本経済産業の根本問題にどう立ち向かうか。きょう議案になっております中小企業創造法改正案についても、そういう中できちんと位置づけられ、そういう立場でこの空洞化にどう対処するかという点からこれは検討されなければならないということを私は大いに強調するわけなんですけれども、先月、特定産業集積活性化法案、ここの質疑の中で我が党の吉井委員は、大企業の海外進出、輸入の激増の問題を取り上げたわけなんですが、きょうは私は景気との関係、投資との関係でお伺いをしたいと思います。  まず、製造業設備投資実績についてでありますけれども、特にバブル崩壊後の九二年以降、大企業、中堅企業中小企業の規模別の設備投資実績、製造業についてお伺いをしたいと思います。
  103. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答えを申し上げます。  平成二年度以降の我が国の設備投資でございますが、いわゆるバブル崩壊後、景気低迷の影響を受けまして大幅に減少したわけでございます。特に平成五年度におきましては、前年度に比べまして大企業で二〇・七%減、中堅企業で二四・〇%減、中小企業で二四・四%減ということで、四、五、六というところが対前年同期比で設備投資が大変落ちているわけでございます。特に平成五年度、これはボトムになった年でございますけれども、そういうことでございます。その後でございますが、累次にわたる経済対策、企業におけるストック調整の進展とリストラ努力による収益の改善、そういった効果も出てまいりまして、平成七年度以降は大企業、中堅企業中心設備投資は増加に転じております。  ただ、中小企業につきましては、最近の数字におきましても大企業ほどの設備投資の回復の力強さには欠けておるということでございまして、業種ごとの跛行性、そういったような影響がまだ残っておる、全体の景気回復の中でそういう要素を残しておるということでございます。
  104. 大森猛

    ○大森委員 今お答えのとおりで、その点については二月の予算委員会でも、我が党の志位書記局長の質問に対して、橋本総理もこのようにおっしゃっているのですね。「従来景気がある程度回復の局面に向かうと必ず中小企業の皆さんが持ち前の創造力と行動性を生かして前に走り出す時期があった、今回まだそれが見られない」、こういう形で七〇年代、八〇年代の景気回復期における中小企業設備投資と今回の違いについて明確な認識を示しておられますし、これは佐藤通産大臣も同様のお考えだろうと思います。  それではなぜ、今まで、七〇年代、八〇年代の回復と比べて今回は中小企業の立ち上がりがおくれているのかという問題でありますけれども、この点はどのようにお考えになっているのでしょうか。
  105. 石黒正大

    ○石黒政府委員 お答え申し上げます。  従来、景気回復局面におきまして、中小企業設備投資の先行性といいますか、景気回復に向かうないうときに、中小企業がまずその機動性といいますか、あるいは、設備自体はそんなに大きくないものから入りますので、小回りがきくということもございますし、そういうことからどんどん出ていって、その後に大企業の大型の設備がどんと来るというような流れで来ていたことは事実でございまして、今回そういう現象がないという認識は、私どもも昨年の白書でも分析をしているところでございます。  その理由についてはいろいろあるのだろうと思いますけれども、学問的に申し上げるのは別にいたしまして、私どもが中小企業方々といろいろお話をしている過程で感じられますところを一つ、二つ申し上げますと、やはり、日本経済がこれからどうなるのかということについて、長い間の景気低迷ということもありましたけれども、単なる景気循環の問題ではなくて、日本経済全体の先行き、先ほど委員空洞化というのも御指摘なさいましたけれども、そういうことも踏まえながら、先行きについて非常にヘジテートしているといいますか、ちゅうちょしている面があるというのが一番大きいのではないかというふうに思っています。
  106. 大森猛

    ○大森委員 そうだと思うのですね。先ほど紹介した予算委員会での答弁に続いて、橋本首相は、「その要因というものは幾つかあると思います、バブル崩壊後の不況という面だけではなく。大手企業の生産拠点が海外に移転し、その結果として従来の取引先を失い、新たな取引先を発掘できないといった状況産業もありましょう。」という形でこの点も的確に答弁されております。  今の長官のお話にもあった中小企業白書でも、長期にわたり設備投資が低迷している四つの要因を指摘をされているわけなんですが、その中で、「加工組立型産業における下請分業構造の変化が設備投資の先行性にも影響を与えている」という形で、電機それから輸送機械の二大部門を挙げて具体的にその状況等も指摘をされ、下請分業構造に変化が見られることなどが影響しているという形で指摘をされているわけなんです。  要するに、一言で言えば、大企業の海外展開及びリストラが原因で今日のような状況が生まれて、さらに中小企業と大企業との収益力の格差も生まれているのではないかと思います。こういう認識は共通できると思うのですが、いかがでしょうか。
  107. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 先ほど来の御説明、さらには中小企業庁長官答弁、その他総合的に判断いたしまして、大きく業種別跛行性及び地域別破跛行性が出てきておるということでございます。その要因は、おっしゃるように、メガコンペティションの中での海外投資がふえておる、そういった要素一つ要素だと考えられますし、他方また、中小企業の中でも、製造業に関しましては、これはいろいろな統計がございます。日銀短観によるとマイナスになっておりますけれども、既に幾つかの民間あるいは通産省の調査によりますと、中小企業製造業においてはプラスに設備投資が伸びてきておる統計もございます。  そういうことで、結論から言うと、製造業については、中小企業についてもここに来て景気の、設備投資の動向がかなりよくなってきていると思うのでございますが、ただ、小売業を中心としまして、商業部門、この辺が、これは全国展開しております地域の影響もあるのだと思いますが、いろいろ思わしくない点がございますので、中小企業の中においても幾つかの職種により跛行性が見られる、こういう状況でございます。  ただ、全体で見ますと、そういう問題を抱えながら緩やかな回復を示しておるというのは、冒頭に大臣から御答弁したとおりでございます。
  108. 大森猛

    ○大森委員 先ほどの日銀短観でも、とりわけ非製造業については悪化と、見出しでも大きくこれは報道しているわけなんですけれども、ここで海外展開状況について具体的にお聞きをしたいと思うのです。  我が国の製造業全体の海外生産比率は、二十年前の一九七七年度の二・三%から、九六年度の予測では九・九%と大きく上昇しているわけなんですが、特に電気機械は六・八から一五・五、輸送機械が三・五から二三・九と、物すごい高まりを見せているわけなんです。  そこで、これを品目別に見ると、さらにこれははっきりしてくると思います。例えば、電子レンジ、カラーテレビ、VTR、これを台数ベースで海外生産比率を比較するとどうなるか。九〇年と九五年の比較でお示しをいただきたいのですが。
  109. 中川勝弘

    ○中川(勝)政府委員 お尋ねの品目につきましては、公式の統計数字はございませんので、業界の統計資料によってお答え申し上げます。  カラーテレビでございますが、九〇年の海外生産比率六〇%、九五年が八二%でございます。電子レンジは、九〇年が四五%、九五年が七二%、VTRは、九〇年が一九%、九五年が五六%となっております。
  110. 大森猛

    ○大森委員 とにかく、答弁があったように、カラーテレビが八割以上、電子レンジが七割を超え、VTRも六割近いというような状況で、ついでに輸入浸透度で申し上げますと、カラーテレビが六三%、電子レンジが二五%、VTRも三三%と大きくなっているわけです。加えて、海外生産比率で、自動車でいいますと、九〇年一八%が九六年三二%と、いずれも急速な伸びを示しているわけです。  今回この創造法の改正案が出されたということで、私も川崎市に先般伺って、いろいろ機械製造関係の業者の皆さんのお話を聞いたり、それから、神奈川県当局のお話も伺ってまいりました。東京の大田区、あるいは東大阪と並んで、この地域というのは電機、自動車関係の集積地域ということになっているわけなんですが、こういう今申し上げたような状況が本当に集中的にこの地域にもあらわれております。大体、今、神奈川県全体で見ても、製造業の実情というのは、これは大変な状況なわけなんです。  そこで、通産省の方に、川崎市の製造業全体と、それから、基盤的技術産業が含まれると思われる、電気・一般・精密・輸送機械及び金属製品製造業の五業種について、事業所数、従業員数、製造品出荷額の推移を、工業統計表の九一年と九四年の比較でお示しいただけたらと思います。
  111. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 お答え申し上げます。  川崎市の製造業の合計で、事業所数は、三千二百十四から二千六百、一九%の減でございます。従業者数は、十三万四千から十一万六千人、一三%の減。出荷額で申し上げますと、六兆四千八百六十億から四兆八千八百九十億、二四%の減でございます。  主要五業種の数字を申し上げますと、事業所数では、二千二百から千七百、二〇%の減、従業者数は、九万から七万七千、一四%の減、出荷額は、三兆二千億から二兆三千億、二八%の減でございます。
  112. 大森猛

    ○大森委員 製造業全体で約四分の一マイナス、それから五業種で約三分の一マイナス、これは神奈川県全体も共通の傾向が出て、全国との比較でも、川崎あるいは神奈川県全体、これは大変な落ち込みだと思います。  そこで、私どもが伺った川崎市内の部品加工業者のお話では、ピークから仕事量が六五%も減ったとか、一番ひどかった三年前、このころには、同僚が相次いでみずから命を絶つというような状況まであったというような、詳しい深刻なお話も伺いました。  川崎市も当然こういう関連の調査をやっていますけれども、「かわさき基盤技術関連産業実態調査報告書」、これによると、ここ二、三年で六四・八%の中小企業の受注が減少した、しかも、受注量が平均で約三割減少をしているというような状況になっております。県の調べでも、電機、自動車関係を中心に大企業が次々と海外展開を行うという数字もいただきましたけれども、こういう影響が今本当に深刻な状況をもたらし、一番冒頭述べたような事態を生み出していると思います。  そこで、これを投資額で見てみたいと思うのですけれども、海外現地法人の再投資を含む海外直接投資額と国内投資額、そして、その国内投資に対する海外投資比率について、推移を数字で示していただけないでしょうか。
  113. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 九〇年以降、海外投資がウエートを増しておることは御案内のとおりでございまして、九五年の我々の調査をいたしました数字ですと、海外への総投資額、これは再投資額も含めてでございますけれども、七兆三千億円程度の規模になっております。  それで、国内の設備投資との比較をお尋ねでございますが、九二年ごろには、国内の投資額を一〇とすれば海外投資が一ぐらいであったわけでございますが、その比率が増しておりまして、九五年の数字では、国内を一〇といたしますと海外が一・六五というぐらいまでの比率に達しておる、こういうことでございます。
  114. 大森猛

    ○大森委員 御答弁あったように、再投資がふえてそれが押し上げているというような関係もあって、国内設備投資額の低迷もしくは後退に比べて海外投資が非常に伸びている、その比率も高まっているというわけなんですが、電機、自動車など、アジアなどへの大企業のこういう海外進出ラッシュとか、あるいは逆輸入の激増、こういう、一言で言えば大企業の海外展開、リストラが中小企業設備投資を冷え込ませ、全体として日本経済全体の景気を冷え込ませる悪循環に陥っているのではないかということがやはり言えるのではないかと思います。いわば、ざるの底に穴をあけたまま公共投資その他の手を打っても、なかなか効果が上がらないということになっていると思うのです。  私は、とりわけここで申し上げたいのは、活性化法あるいは創造法の改正と、いろいろな形で今努力をされ、それは大いに評価をするわけなんですけれども、中小企業が困難に陥っている一番大もとのところにやはりきちんとメスを入れていかなくてはいけない。そういう面で、地域経済、そのことを、いわばもう野となれ山となれという形で海外展開を進めていく大企業のこういう企業行動について、やはりこれは正すべきではないかと私は思いますけれども、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  115. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 今言われるように、まず最初に申し上げたいのは、海外進出、大企業だけではなく中小企業もやはり同じように出ているというのが、現実の姿ではないかと思うのです。  いずれにいたしましても、本来、日本国内において比較優位を有する日本産業までもが外国に行くということが、我が国経済全般の危機につながるということでゆゆしき問題でございますが、これも御存じのように、三つの原因があると思うのは、一つは、やはり国際的に比較した場合に、日本の場合、どうしてもコストが高いという高コスト構造があるとか、それからまた、新規産業、これをつくり出すときにいろいろな規制があるとか、もう一つは、外国に比べて、為替の変動というものがございまして、そういうことからいって、もともと日本は、戦後、やはり中小企業中心として物をつくってそれを外国に売るということでもってまさに国の経済というものを支えてきた、それが、為替相場の変動によって、円高というこうした傾向だということから、私は、海外進出がふえたのではないだろうか。  今、一時的には、円安ということでまた問題はございますが、ということでございますから、もう基本的というか抜本的にそうした構造的なものを変えなければいけないということで、昨年の閣議決定いたしましたプログラムのように、経済構造改革、その中における規制緩和、それから、高コスト構造、これを徹底的にやはり是正していくこと、そういうことによって、きょうの議題になっていますように、若い経営者が優秀な技術でもって新規の産業、これを創造してくるだろう、このように考えております。
  116. 大森猛

    ○大森委員 もう時間がなくなって、創造法そのものについての質問も、例えば、過去三回のベンチャーブームというようなことも言われておりますけれども、そういうブームの興隆と衰退の要因とか、これは午前中既に議論もありましたけれども、日米のベンチャーキャピタルをめぐる相違と共通点あるいは特徴等々についてとか、あるいは、エンゼル税制の展望、見通しはどうかというような問題についてもお聞きをしたがったわけなんですが、時間が参りましたので、最後に一点、お聞きをしておきたいと思います。  これは、事前の質問レクチャー等々でもお話を伺ったわけなんですが、今、大企業が、分社化や、あるいは社内ベンチャーその他、さまざまな形で新規事業にも進出をしておりますけれども、この創造法との関係で、こういう大企業のダミー会社といいますか、子会社といいますか、ひもつきの会社といいますか、こういうものとのかかわりで、やはりその立法趣旨が中小企業創造ということにあるわけですから、そういう点で、通産省の方のお考えをきちんとこういう場で確認をしておきたいと思います。
  117. 田島秀雄

    田島政府委員 お答えを申し上げます。  今御提案を申し上げております、創造法の改正によりますエンゼル税制につきましては、本当に支援を必要とするといった中小企業にきちんと支援をする、支援を申し上げたい、こういうことでございます。  そういった観点から、新しい商品の開発等に積極的に取り組みながらも、創業間もなくて信用力が乏しいといった中小企業を対象とすることにいたしておりまして、法律にも一部書き込んでございます、研究開発費率と書き込んでございますが、法律を成立させていただいた暁には、省令で、同族会社でないこと、あるいは大企業の子会社でないこと、あるいは未上場、未登録の企業であること等々の基準を定めたく考えてございます。
  118. 大森猛

    ○大森委員 最後に一点だけ、要望を述べて、そして御決意を伺って終わりたいと思うのですが、神奈川県に伺って県当局といろいろ懇談をした際にも、申請数に対して予算規模の拡充をぜひやってほしい、こういう強い声も聞いてまいりました。  この中小企業創造法にかかわる予算もそうなんですが、とりわけ中小企業庁予算、これは、私ども、昭和三十八年からずっと統計をとってみましたけれども、一般会計に占める中小企業庁予算全体は、過去、最高で〇・七〇%というときもあるわけなんですが、年々このところ減りまして、今日ではこの昭和三十八年以来最低の〇・二四%になっている。創造法の関係の予算とともに、中小企業庁関係の予算をもっと土台として大きく広げるために、関係の皆さんの大いなる努力を要望して、質問を終わりたいと思います。  一言、大臣の御見解を伺いたいと思います。
  119. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 予算お話でございますが、確かに中小企業庁予算は、平成九年度で千二百四十七億というふうに大変少ない額でございますが、しかし考えてみると、この中小企業対策というのは、幾ら金があっても足りないぐらいな問題です。そういうことからいうと、やはり少ない金を知恵でもって補っていく、政策でもって知恵を出すということでございますので、その点御理解いただきたいと思います。
  120. 大森猛

    ○大森委員 終わります。
  121. 武部勤

    武部委員長 御苦労さまでした。   次に、前田武志君。
  122. 前田武志

    ○前田(武)委員 中小企業の創造活動支援する、それへの、特に直接投資といいますか、そういった面を中心に同僚議員、御議論をいただいてきたわけでございます。  実際には、中小企業の財務内容といいますか、金融機関から借入するその借入依存度というのが大体八〇%ぐらいだ、こういうふうに言われております。自己資本比率というのがいかにも低いわけでございます。だからこそこういった施策の必要性というものが現実の問題となっているわけでございますが、そういったことを踏まえますと、やはり何といっても金融機関からの借り入れというものが中小企業にとっては非常に重要であり、またそれが大企業と違って難しい。そういった面で、まず政府系の公的な金融機関に頼りたいというのが地元においても実情なんですが、なかなかこれまたいろいろ難しい面がございます。  そういったことで、これまでの政府系、公的な金融機関における融資実績といいますか、そういったものについてまず政府委員からお聞きしたいと思います。
  123. 田島秀雄

    田島政府委員 起業家精神に富むベンチャー企業に対しまして政策支援が極めて大切だということは、私ども強く認識をいたしておりまして、従来からいろいろな支援策を講じてまいっておるところでございます。  融資につきましては、中小企業金融公庫等におきまして、担保徴求の特例、弾力化といいますか、これを設けました新事業育成貸付制度あるいは低利の地域中小企業活性化貸付制度などを設けまして御支援申し上げているところでございます。  これら融資制度の実績でございますが、平成七年度、件数で百八件、四十五億円強、八年度、件数で百六十一件、六十六億円弱といった規模になってございます。ベンチャー企業に対する融資につきましては、なかなか新規性の評価が難しい、担保力が通常の借入先に比べて小さいといったことなど困難な問題がございますけれども、ベンチャー企業に対する政策支援が極めて重要であるということを踏まえまして、間接金融の分野につきましても一生懸命努力をしてまいっておるところでございます。
  124. 前田武志

    ○前田(武)委員 私の地元の奈良県も、これはもちろん歴史の発祥の地でございますから、いろいろな事業等についても相当古い歴史を持っておるわけでございます。  近代的な最先端の産業、例えば我が県にも、シャープの中央研究所、シャープの主力工場がある。あるいは松下電器の工場や森精機があったり、それから、何といっても大体は大阪下請、孫請といったような関係で発展してきたところがありまして、繊維産業、そういったもののもともとは河内木綿の加工、そういったところぐらいまで繊維関係もさかのぼるようでございますが、そういったところから、染色であったり、さらには蚊帳であったり、そういったものをさらに応用していって、靴下産業などという、これはなかなか大きな産業になっております。これを縫っていく、靴下の編み機ですね、そういった関係でも、シームレスのストッキングをつくる機械、すばらしいものができたりというようなことでございます。  そういった企業家の方々に、創業の時期の非常に苦しかった苦労話などを聞いておりますと、銀行というのはとにかく晴れるときに傘を持ってきてくれる、雨が降ったら全然貸してくれない、こういうようなことで、非常に苦労をされてきておるわけでございまして、その事情は余り変わらない。  そういった意味においては、今局長から、政府系の中小企業金融公庫等、大いにベンチャービジネスに対して支援をしていこうということはなかなかありがたいお話ではあるのですが、実態を聞いておると、やはり窓口において担保がどうだ、いろいろなことがあるようでございますね。  創造的な中小企業に融資を行うということになれば、もちろん有形の担保のみならず、先ほどそういった担保のことについてもお触れになっておりましたが、ソフト関係、あるいはその企業家のやる気、その資質、そういったものについても大いに高く評価してやってあげるべきであろう、こう思います。これはいろいろな、今大きくなっている企業ベンチャー時代にいかにそういう金融関係の方々に見込まれて、信頼されて急場をそういう融資で切り抜けてきたか、そういう話にもあるわけでございます。  さて、間接金融の方はそのくらいにいたしまして、シャープの技術指導をされた総帥に佐々木正博士という方がおられます。私、非常に親しく御指導いただいているわけでございますが、その佐々木先生お話なんかを聞いておりましても、例えばこの方は、今を時めく孫さん、ソフトハウスというのですか、一番最初から御支援され、相談に乗ってきた、こういうことを時々お伺いするわけでございます。  そういう話を聞いておっても、ベンチャー支援していくというのは、もちろんこの金融関係というものも重要でございますが、何といってもそういう事業家を見出し、そしてまたいろいろな面でサポートしていく、いわゆるエンゼルなのでありましょう。リードエンゼルであったりサポートエンゼルであったり、その役を果たす人たちが非常に重要であり、その人たちがプレーし得る市場といいますかマーケット、そういうものが非常に重要になってくるのだろうと思うのですね。  したがって、今御提案になっているこの法改正の中で、直接投資の場を広げていこうということで、まことに結構かと思います。これはその市場によってベンチャービジネスがそういうベンチャーキャピタルを呼び込むことができるという以上に、そういう市場を整備していくことによって、いろいろな支援するエンゼルがここへ登場してくる。むしろその重要性というものが非常に大きいのではなかろうかなと思うのですね。  私の地元の先輩方、あるいは後援者の中にも、自分の代で自分の企業はもうこれ以上さらに新たな展開をするところまではちょっともうファイトもない、後継ぎも、せっかく頼りにしておったのが、都会の、東京あたりの大企業に就職してしまって、ちゃんと自分の会社から後を継いでくれるのはおるのだけれども、資産を全部つぎ込んでどうこうというところまでのファイトもない、しかし起業家意識はあるというような方々は結構いるわけでございます。そういった方々をいかにプレーヤーとして引っ張り出すか。バブルのときに随分といろいろな投機をされた。あれは多分金もうけをしたいというだけで踊ったのかなというふうな気もするのですね。いろいろその後話を聞いていると、いろいろなプロジェクトに夢をかけて、ひとつ乗ってやろうというような投資家も随分おられた。それがああいうことになった。  私は、日本企業家の持っている、新しい創造的なビジネスをやっていこう、あるいはそういうことをやっている人たちに期待をかけようという気持ちはまだまだあると思います。そういった意味での市場というものが随分重要である、こう思います。  当法案によりますと、いろいろ考えておられるわけでございますが、まだ店頭に上場する前のベンチャーに対してエンゼルをいかに見つけてくるか、そしてそれをどういうふうに支援するか、損金算入等を三年間考えようとか、こういうことでありますが、そういう今言っていた市場を整備するとともに、アーリーステージ、創造期におけるベンチャーキャピタルを呼び込むと同時に、それが各段階を経てなるべく早く店頭公開に持っていけるように、何だったですか、何とか市場、店頭市場の中でも特にそういう配慮もなされているやに承知はしているのですが、そういった店頭、さらにはちゃんと上場していくというそのプロセスを想定して、各ステージで多くのベンチャーキャピタルなりあるいはエンゼルなりを引っ張り出せるような、そういった市場整備というような観点においてどういうふうに考えておられるのか、政府委員の方にお聞きをいたします。
  125. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 ベンチャー企業を育成していく上での大変幅広い観点からの御提言でございました。まことにいずれも私どもが極めて重要だと思っておる方向と軌を一にするわけでございます。  御案内のように、アメリカにおきましても、エンゼルと言われるものというのが、経営コンサルタントだったりあるいは技術コンサルタント、公認会計士、弁護士、こういったようなお金を投資をするエンゼルであると同時に、ベンチャー企業を育てていく上で大変立派なアドバイザーになり、その経営に場合によれば参画していく、こういったようなことで育っていっているというのがまさにその一つの典型でございます。  私どもといたしましても、今お話ございましたように、今度この法案によってエンゼル税制を新たに創設いたします。アメリカに見られるようなエンゼルを全国からしっかりと募っていきたいと思いますし、その過程で、お話がございました店頭市場、さらに、その中で特にベンチャーにふさわしいような、店頭特則市場と我々呼んでおりますけれども、こういったものも整備していきたい。このための関係各省との規制の緩和その他も進めておるところでございます。  特に、今先生お話のあった経営アドバイザーといいますか、そこのベンチャーを育てるというところでネットワークをうんとしっかりつくらなければいけないのじゃないか、それは全く同感でございまして、私どもといたしましては、午前中にも申し上げましたけれども、出会いの場をつくるということのほかに、例えば一、二例を申し上げますと、人材サポートセンターというので、ベンチャービジネスにいろいろなお金を出しておりますVECというのがございますけれども、そこに大企業を退職した、経営ノウハウをしっかり持っておる人のデータバンクをつくりまして、そういう人を登録しておいて、必要な場合にそこにどんどん派遣する。  あるいは、産業基盤整備基金というのが政府関係機関でございます。そこに全国大学や民間企業における技術者研究者あるいは市場専門家、そういったような者の所在とそれぞれの得意とする分野のデータベースをつくっておりまして、これは約三千人ぐらい全国で今つくっておるわけでございますが、このうち約五百人ぐらいをインターネットに全部入れ込んでおりまして、既にこれについては、そういう意味でアドバイスを求めようとするベンチャー企業からインターネットでそれぞれコンタクトがあるようでございます。  そういったような、緒についたところでございますけれども、おっしゃるような御指摘、我々必要性は十分わかっておりますので、さらにこれを充実させていきたい、このように考えておるところでございます。
  126. 前田武志

    ○前田(武)委員 そういったネットワークということにおいては、例えば私どもの地元でも奈良工業会というのがありまして、そういうところで盛んに創造的な企業主の方々が集まっては異業種交流とか、いろいろやっておられます。そういうのをさらに、最近発達したインターネット等コンピューターネットワークに乗せてやっていくということも通産省渡辺局長のお話では今支援されている、まことに結構かと思います。  さらに、時代はどんどん動いて、よく言われるシリコンバレーのスマートバレーですか、これなんかは、あるいはちょっとこのネットワークを包含するような、もっと幅広いものかと思います。一種のデジタルコミュニティーズの概念だろうと思います。そのぐらいの広がりを持っているわけでございますが、なかなかこういうものを利用するにはベンチャー方々はまだしづらいところもあります。そういった意味では、ぜひ通産省のそういった面でのきめ細かい指導が必要かと思います。  時間が参りましたので、最後に通産大臣に、とにかく創造的な中小企業がいかにどんどん元気に育っていただくか、そのためのベンチャーキャピタルをどう呼び込むか、そのためのエンゼルをいかに幅広くプレーヤーとして市場にのせていくか、そういった観点から大臣の御決意をお伺いして、終わります。
  127. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 このベンチャー企業は、良質な雇用の機会を提供する、また経済活力、そうした担い手でもある。産業空洞化の懸念、高齢化の進展による経済活力の低下、こういう懸念を払拭するからということで、今日では大変重要な課題だという認識を持っております。  これのいわゆる育成方法ということでございますが、これはきょうの御審議も通じましていろいろなアイデアというようなもの、アイデアと言ったら失礼かもわからぬが、いわゆる御提言がございました。それぞれもっともでございますし、またこのこと自体が歴史的に見てどうしてもアメリカの方からの導入というような、経緯に関してそうでございますので、やはり日本に定着したような育成の仕方をしなければいけないな、こう思っております。  今説明がございましたように、やはり企業をつくり育てるというものは、何といっても資金とそれから技術と人材、これが三要素だと思います。そういうことで特にベンチャーという、技術は持っているし、またなかなか人物はしっかりしているが、金がない、こういう人たちにどうやって資金を生み出すかということでこのエンゼル税制というものがございますが、同時に、店頭特則市場の創設だとかストックオプション制度の導入、こういうものをしていって総合的に支援してまいりたい、こう思っております。  それで、私の方といたしましては、このこと自体がやはり昨年の閣議決定いたしましたプログラムの中に入っておりますので、これの着実な実行を通じてこうしたベンチャー企業を含める新規産業の創出、このための環境整備ということに全力を尽くしたい、かように考えております。
  128. 前田武志

    ○前田(武)委員 終わります。
  129. 武部勤

    武部委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  130. 武部勤

    武部委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出中小企業創造的事業活動促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  131. 武部勤

    武部委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  132. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  133. 武部勤

    武部委員長 次に、内閣提出電気事業法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより趣旨の説明を聴取いたします。佐藤通商産業大臣。     —————————————  電気事業法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  134. 佐藤信二

    佐藤国務大臣 電気事業法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  環境影響評価につきましては、内閣総理大臣の諮問を受けた中央環境審議会の本年二月の答申において、法律に基づく制度を創設するとの方針及び発電所を含め例外なく本制度の対象とする等新たな制度が備えるべき基本原則が示されたところであります。   一方、発電所につきましては、過去二十年間、通商産業省省議決定に基づく環境影響評価が実施され、これまで世界最高水準の環境保全対策の実績を上げてまいりました。こうした背景を踏まえ、本年二月の電気事業審議会の報告において、中央環境審議会の答申を尊重することが必要であるとした上で、電源立地の円滑化のためには引き続き環境の保全に万全を期すことが不可欠であるとの見地から、発電所については、これまで行ってきた環境影響評価の仕組みを踏襲することを基本とすべきであるとの提言が行われたところであります。  このため、発電所を環境影響評価法案の対象とした上で、各事業に共通する一般的な手続については同法案において規定するとともに、発電所に固有の手続については電気事業法において規定することとし、環境影響評価法案の提出とあわせて、本法律案を提出した次第であります。  次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。  第一に、環境影響評価に関する特例を規定することとしております。  発電所に係る環境影響評価手続の各段階において、国が審査を行い、必要な事項について勧告または変更命令を行う等所要の特例措置を規定することとしております。  第二に、環境の保全についての適正な配慮がなされることを確保するため、発電所の工事計画の認可要件として環境影響評価書に従ったものであることを新たに追加すること等を規定することとしております。  以上が本法律案の提案理由及び要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  135. 武部勤

    武部委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十三分散会      ————◇—————