○有馬参考人 まず、議員の
先生方が日夜
国政に御尽力になっておられることを心より感謝申し上げます。申し上げるまでもなく、
日本の状況というのは種々の点で非常に問題を含んでおります。ひとつよろしくお願いいたしたいと
思います。
本日この場にお招きをいただきまして、私
ども国会等移転審議会の
調査審議状況について御説明いたします機会を賜りまして、まことにありがとうございました。
国会等移転審議会は、昨年六月に一部改正がなされました
国会等の
移転に関する
法律に基づいて設置されることになり、衆参両議院の同意を得て内閣総理
大臣より二十人の
委員が任命され、昨年十二月に発足いたしました。
以来、本日までに五回の
審議会と二回の
調査部会を開催し、
国会等の
移転先の
候補地の選定などについて鋭意
調査審議を進めているところであります。
それでは、まず初めに、現在までの
国会等移転審議会の開催
経過について、回を追って御説明いたします。
昨年十二月十九日に開催いたしました第一回
審議会では、
東京電力相談役の平岩外四氏が会長に互選されました。そして私が会長代理に指名された後、橋本内閣総理
大臣より
平岩会長に対して諮問文が手渡されました。
その内容は、「
国会等の
移転先の選定及びこれに関連する事項について、
国会等の
移転に関する
法律第十三条第一項の規定に基づき、
国会等移転審議会の
意見を求める」というものであります。
また、
審議会の運営
方針が決定され、
審議会の公開につきましては、次の申し合わせを原則とすることといたしました。
その内容は、特定の
地域を対象とした
議論が行われ、土地投機等を通じて特定の者に著しい利益をもたらすおそれがあること、公正かつ中立的な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあること、こういう
理由から
会議及び議事録は非公開とすることを決めました。
他方、
審議会の公開に関する
閣議決定の
趣旨や
国民の
合意形成の促進の観点から、毎回、
会議後、事務局において速やかに議事要旨を作成し、公表する、毎回、
会議終了後、議事内容について記者団に説明するというものであります。
さらに、初会合ということから、
首都機能移転について
委員による自由な討論を行いました。
本年一月十四日に開催いたしました第二回
審議会では、前回時間切れ等で
発言できなかった
委員を中心に自由討議を行い、その後、事務局から
国会等移転調査会報告の「
首都機能移転の意義と効果」の主要点の説明があり、
審議会の今後の進め方について
議論を行いました。
二月二十四日に開催されました第三回
審議会では、前回に引き続き、
審議会の今後の
調査審議の進め方について
議論を行い、後ほど御説明申し上げるような
調査審議の
流れを確認するとともに、
調査部会を設置することを決定いたしました。
また、「
首都機能移転の意義と効果」「
東京一極集中」についての資料説明と質疑があり、さらに事務局から、キャンベラとブラジリアの海外の例についての説明が行われました。
四月三日には第四回
審議会が開催されました。
前日に開催された第一回
調査部会の報告を受けた後、事務局から
首都機能移転に関する論調説明が行われ、これに続いて
東京都からの
意見聴取を実施いたしました。
また、事務局から
移転費用のモデル的
試算について説明が行われ、審議の後一
試算の
方法や前提
条件の精査について
調査部会で
検討をすることといたしました。
五月二十一日に開催いたしました第五回
審議会では、五月七日に開催された第二回
調査部会の報告を受けた後、
地震及び
都市防災について、専門家の
意見を聞くことといたしました。元
東京大学教授の
溝上委員と科学技術庁防災科学技術研究所長の片山専門
委員から説明が行われました。また、阪神・
淡路大震災の教訓を踏まえた
災害対応力の
強化につきまして、震災当時に土木学会長であった中村英夫
委員から説明を受けました。
さらに、
調査対象
地域の抽出について、事務局からの説明の後に審議を行い、今後
調査部会において具体的な
検討を開催することといたしました。
以上が五回にわたる
審議会の
経過報告でございます。
一方、
調査部会は、
移転先の
候補地の選定及びこれに関連する事項のうち
審議会が必要と認める専門的事項について
調査審議するため、第三回
審議会で設置が決定されました。
調査部会は、
審議会委員八名と、新たに内閣総理
大臣が任命した九名の専門
委員がそれぞれ会長より指名を受け、十七名の
委員で構成されております。
部会長には
平岩会長から私が指名され、
部会長代理には私から石原
委員を指名いたしました。
なお、
審議会の
委員は、
調査部会の
委員に任命されるか否かを問わず、
部会に出席することができることとされております。
四月二日に開催いたしました第一回
調査部会では、運営
方針の決定、事務局からの
国会等移転審議会の
調査審議
経過の説明等の後、自由な討議を行いました。また、
調査部会の公開については
審議会と同様の扱いとされ、詳細な議事要旨を公開することといたしました。
五月七日に開催いたしました第二回
調査部会では、
審議会から
調査審議を要請された
移転費用のモデル的
試算について
検討を行い、引き続き
検討を行うところであります。
以上が
調査部会の開催
経過の概略でございます。
続きまして、第三回
審議会で確認されました、
調査審議の
流れについて御説明申し上げます。
審議会の
調査審議の進め方につきましては、第二回
審議会において、事務局より、
移転先候補地の選定については次の三つの段階、三つのタームに分けて段階的に進めていくこと及び
部会を設置することが提案され、第三回
審議会において引き続き
検討を行い、以下の
流れで
調査審議を進めていくことが確認されました。
各段階ごとの
調査審議の内容は、第ータームは、全国から選定基準に照らして
調査対象
地域を抽出する。第二タームは、
調査対象
地域について関係
地方公共団体の協力も得ながら詳細な
調査を実施する。また、この際、必要に応じて現地
調査を行う。第三タームは、
調査対象
地域の相互比較を実施し、さらに総合評価により
移転先候補地を選定するという内容でございます。
〔西田(司)
委員長代理退席、
委員長着席〕
また、これとあわせて、第ータームにおいては費用のモデル的
試算を、第二タームから第三タームにかけては新
都市像の
検討を行うことといたしております。
関連
検討事項といたしましては、意義と効果、関係機関よりの聞き取り、海外事例の報告等を随時行うとともに、
国民合意形成の状況、
社会経済情勢の諸事情、
東京都との比較考量の
検討を行うことといたしております。また、第二ターム以後、公聴会を開催することといたしております。
以上が
国会等移転審議会の
流れでございますが、現状はまだ第ータームの、しかもそれも途中でございます。
なお、第四回
審議会において、将来の
国民の生活様式や文化的問題についても
検討すべきとの提案がなされ、提案した
委員を中心に
検討の上、その結果を踏まえて
審議会の扱いを
検討することといたしております。
次に、関係機関よりの聞き取り
調査の一環といたしまして、第四回
審議会において
東京都から
意見を聴取いたしましたので、
先ほど申し上げたとおりでありますが、その概要を御説明申し上げたいと
思います。
この聞き取りでは、
東京都の植野副知事、佐々木政策報道室長から、以下の
趣旨の
意見が開陳されました。
首都機能移転よりも
地方分権、
規制緩和を優先すべきである。人口面での
東京一極集中の状況は、
バブル経済全盛期であった
平成二年の
国会決議が行われた当時とは様相を異にしており、緩和傾向にある。諸機能の集中状況も鈍化傾向にある。
移転による過密軽減の直接的寄与はほとんどない。集中が集中を呼ぶからくりも、
地方分権、
規制緩和の徹底と市場原理による自主的な解決にゆだねるべきである。
地震に対して絶対に安全な地区はなく、
移転費用を全国各地の防災拠点の
整備に
投資すべきである。
移転は全国各地の経済発展につながらない。時間の制約にとらわれることなく、
国民各層の十分な
議論を経て慎重に対応すべきである、というのが
東京都よりの
意見でございました。
一方、
東京都の
意見開陳に対しまして、
委員からは次のような
趣旨の
意見が述べられました。
東京すなわち
日本ではない。
日本全国のためにある
中央省庁や
国会などと
東京都の現状が全部緊密一体化しなければならないという発想はいかがなものであろうか。
首都機能移転により小さな
政府に変えることが必要なのであり、それは
地方分権と異
次元ではない。
改革の一番の隘路は
国民の意識が変わっていないことであり、
移転による強い衝撃を通じて新しい
時代の到来が明確になる。
東京に首都があった方がよいという積極的な
理由が感じられない。
東京圏周辺から
東京への遠距離通勤が増加しているのが実態である。インターネットのホームページなど、
情報面での
東京一極集中はかつてないほど進んでいる、というような
意見が述べられました。
以上が
東京都からの聴取の概要でございます。聴取をめぐる討論も含めて御報告いたしました。
続きまして、現在、
調査審議を進めております
移転費用のモデル的
試算について御説明をいたします。
移転に関する費用については、
平成四年六月に
国土庁長官の主宰する
首都機能移転問題に関する懇談会において、
作業仮説として現行の行政組織等を前提に、最大六十万人、開発面積約九千ヘクタールの規模で、約十四兆円と
試算されているところであります。
しかしながら、近年の
移転をめぐる論議の中で、懇談会
試算は
平成四年に行われ、古いデータに基づくものであること、費用のうち、国費等税によって賄われる範囲を示す必要があること、広域交通についての基盤
整備等にかかわる費用を示す必要があることから、新たな
試算の必要性が
指摘されてまいりました。
このため、
審議会においては、懇談会の
試算時以後の状況変化を踏まえて、
移転に関する費用のモデル的
試算を行うことといたしたところであります。
試算に当たって、主な
検討内容としては次の論点を掲げております。
行政改革の
議論を踏まえて
検討することとし、
中央省庁について、すべての職員が
移転する場合と半分が
移転する場合を仮定する。費用の官民分担について
検討し、
試算する。第一段階、すなわち新
都市での
国会開催時までの費用を
試算する。文化施設等の新
都市の情景を表象する、
イメージを表象する施設等の
整備費を計上する。鉄道、高速道路、空港等の広域交通基盤構造を
検討し、費用を計上する。
以上の論点について、第四回
審議会において事務局から説明が行われ、審議の後、
試算の
方法や前提
条件のもっと正確な
調査について
調査部会で
検討することといたしました。
また、第二回
調査部会において、論点ごとの
検討を行い、引き続き
検討することといたしました。
以上が
国会等移転審議会の今日までの
調査審議状況の要点でございますが、より詳細な内容につきましては、既に事務局から配付されていると聞いております議事要旨をごらんいただければ幸いでございます。
なお、六月三日にまとめられた
財政構造改革会議の最終報告において、「
首都機能移転問題については、その経緯及び
財政構造改革においてあらゆる分野で痛みを伴う
改革が進められている状況を総合的に勘案して慎重な
検討を行うことを提起する。」旨が記載され、同日、
政府においても同報告の
推進を図る旨の
閣議決定がなされたと伺っております。
政府において、この決定を踏まえ、
財政構造改革期間、一九九八年度より二〇〇三年度は原則として新
都市の
建設事業に対する
財政資金の投入は行わない、それまでの間、
移転先候補地の選定等必要な
検討を引き続き進めるという
方針と伺っておりますが、
政府から
審議会への正式な説明を待って、
審議会としての対応を
検討することとなろうかと考えております。
いずれにいたしましても、今後とも、
平岩会長のもと、
国会等の
移転先の
候補地の選定等についての諮問にお答えすべく、
審議会委員一同、
調査審議に励んでいきたいと考えております。
国会におかれましても、
国家百年の大計と呼ぶにふさわしいこの重大
課題に対し、より一層御
検討を深められますことを期待申し上げまして、私の御説明を終わらせていただきたいと
思います。
ありがとうございました。(拍手)